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1993-04-21 第126回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月二十一日(水曜日)     午前十時四分開議 出席委員    委員長 藤井 裕久君    理事 井奥 貞雄君 理事 石原 伸晃君    理事 田中 秀征君 理事 前田  正君    理事 柳本 卓治君 理事 仙谷 由人君    理事 渡辺 嘉藏君 理事 日笠 勝之君       浅野 勝人君    岩村卯一郎君       江口 一雄君    衛藤征士郎君       大島 理森君    大野 功統君       河村 建夫君    小林 興起君       鴻池 祥肇君    左藤  恵君       福田 康夫君    光武  顕君       村井  仁君    山口 俊一君       山下 元利君    伊藤  茂君       池田 元久君   宇都宮真由美君       上田 卓三君    小野 信一君       佐藤 恒晴君    沢田  広君       戸田 菊雄君    中沢 健次君       中村 正男君    細谷 治通君       山下洲夫君    河上 覃雄君       倉田 栄喜君    正森 成二君       伊藤 英成君    中井  洽君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣  林  義郎君  出席政府委員        皇室経済主管   河部 正之君        大蔵大臣官房総  日高 壮平君        務審議官        大蔵省主計局次  涌井 洋治君        長        大蔵省主税局長  濱本 英輔君        大蔵省理財局長  藤井  威君        大蔵省証券局長  小川  是君        大蔵省銀行局長  寺村 信行君        大蔵省銀行局保  鏡味 徳房君        険部長        大蔵省国際金融  中平 幸典君        局長        証券取引等監視  石坂 匡身君        委員会事務局長        国税庁調査査察  野村 興児君        部長  委員外出席者        公正取引委員会        事務局審査部管  上杉 秋則君        理企画課長        宮内庁長官官房  古居 儔治君        審議官        環境庁企画調整        局環境保健部保  清水  博君        健業務課特殊疾        病対策室長        法務省刑事局刑  大泉 隆史君        事課長        法務省人権擁護  澤田 成雄君        局調査課長        外務省北米局北 佐々江賢一郎君        米第二課長        厚生省生活衛生  織田  肇君        局食品保健課長        厚生省保険局保  紺矢 寛朗君        険課長        通商産業省通商  小平 信因君        政策局米州課長        運輸省自動車交  星野 茂夫君        通局保障課長        労働大臣官房参  後藤 光義君        事官        建設大臣官房技  城処 求行君        術調査室長        自治省行政局選        挙部政治資金課  大竹 邦実君        長        会計検査院事務        総局第三局運輸  重松 博之君        検査課長        大蔵委員会調査  中川 浩扶君        室長     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十一日  辞任         補欠選任   遠藤 武彦君     山口 俊一君   中村正三郎君     鴻池 祥肇君   渡辺美智雄君     大野 功統君   上田 卓三君     山下洲夫君   早川  勝君    宇都宮真由美君   大野由利子君     倉田 栄喜君   中井  洽君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   大野 功統君     渡辺美智雄君   鴻池 祥肇君     中村正三郎君   山口 俊一君     遠藤 武彦君  宇都宮真由美君     早川  勝君   山下洲夫君     上田 卓三君   倉田 栄喜君     井上 義久君   伊藤 英成君     中井  洽君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  皇太子徳仁親王婚姻記念するための五万円  の貨幣発行に関する法律案内閣提出第七〇  号)  国の会計、税制及び金融に関する件      ――――◇―――――
  2. 藤井裕久

    藤井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出皇太子徳仁親王婚姻記念するための五万円の貨幣発行に関する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。林大蔵大臣。     ―――――――――――――  皇太子徳仁親王婚姻記念するための五万円   の貨幣発行に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 ただいま議題となりました皇太子徳仁親王婚姻記念するための五万円の貨幣発行に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、皇太子殿下成婚記念するため、五万円記念金貨幣、五千円記念銀貨幣及び五百円記念白銅貨幣発行を予定しておりますが、現在、通貨単位及び貨幣発行等に関する法律においては額面が一万円を超える記念貨幣発行できないことから、五万円金貨幣発行ができるよう本法律案を提出した次第であります。  この法律案は、皇太子殿下成婚記念して、特別に五万円の貨幣発行できることとするとともに、本法律案に基づき発行される貨幣につきまして通貨単位及び貨幣発行等に関する法律関係条文を適用し、その素材量目発行枚数等政令で定めること等とするものであります。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 藤井裕久

    藤井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 藤井裕久

    藤井委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  6. 上田卓三

    上田(卓)委員 まず、皇太子の御結婚につきまして国民の一人として祝福を申し上げたい、このように思っております。  それでは、記念貨幣発行につきましての概要についで御質問申し上げたい、このように思います。  まず、記念貨幣発行枚数、それから金貨金地金の量、それから一般財源への繰入額について説明していただきたい。  また、最近一万円札の偽造事件が発生いたしておりますが、今回の記念貨幣偽造防止対策はどうなっておるのか、また、希望者への引きかえ方法はどうなるのか、あわせて御説明願いたいと思います。
  7. 藤井威

    藤井(威)政府委員 御説明申し上げます。  まず、今回の皇太子殿下の御成婚に係ります記念貨幣概要でございますが、今大臣の方から提案理由で御説明いたしましたように、五万円金貨幣、五千円銀貨幣、五百円白銅貨幣発行を予定いたしております。  まず、五万円金貨幣でございますが、正式には法律の成立を待って政令により決定するということになりますけれども、現在我々考えておりますのは、もちろん素材は純金でございますが、量目十八グラム、直径二十七ミリ、枚数は二百万枚というふうに考えております。この二百万枚という枚数は、前回発行いたしました金貨今上天皇の御即位記念金貨発行枚数と同じでございます。  それから、五千円銀貨幣につきましては、素材は純銀でございますが、量目は十五グラム、直径三十ミリ、枚数は五百万枚という予定をいたしております。  五百円白銅貨幣につきましては、素材白銅でございまして、量目七・二グラム、直径は二十六・五ミリメートル、枚数は三千万枚ということを予定いたしております。  それから、二番目に御質問がございました歳入増加の問題でございますが、今回の記念貨幣発行歳入増加を目的として行うものでは全くございませんけれども、結果としては、一般会計歳入増加要因になるだろうということは事実でございます。現在、必要な経費等を勘案しまして、今回の記念貨幣発行による歳入増加見込み額の計算をしている真っ最中でございましで、まだ正確な精査を必要とする段階でございますけれども、現在のところの大ざっぱな見込みでは、大体六百億円程度の収入になるのではないかというふうに考えております。  それから、三番目に偽造防止対策について御質問がございました。  御承知のように、戦後初めて発行いたしました御在位六十年記念の十万円金貨幣につきまして大量の偽造事件が発生したというまことに遺憾なことがございまして、前回今上天皇の御即位記念金貨幣につきましては、種々の偽造防止対策を施したところでございますが、今回の皇太子殿下の御成婚記念金貨幣につきましでも、天皇陛下即位記念金貨幣と同様の偽造防止対策をしたいというふうに考えております。  具体的には大きく四つの点がございまして、一つは表面の光沢の強い貨幣とするということ。  それからもう一つ図柄の、非常に細部でございますけれども、これを全部同じということにしませんで、一定枚数ごとに微妙に変えまして、同一パターン貨幣が大量に存在することのないようにする。同一パターン貨幣が大量に存在するときには、これはおかしいというふうに判断できるような、そういうことを施したいというのが第二番目でございます。  第三番目は、機械装置を用いますと判別可能な特殊加工を施したいと思っております。  第四番目に、金貨を入れますパックの一部に、印刷局等高度技術を用いまして、パックに入っている限り偽造が非常に困難なようにする、こういう処理をいたしたいと思っております。  天皇陛下即位記念十万円金貨幣につきましては、今のところ偽造というような不慮の出来事は発生しておりませんが、これと同様の十分な措置をとりたいと思っております。  なお、銀貨幣につきましても、今回はパックに封入する、そのほかに新たな図柄細部一定枚数ごとに微妙に変えるという、先ほど金貨幣についで申し上げましたと同じような技術を使いたいというようなことも考えております。  それから、四番目に引きかえ方法について御質問がございました。  金貨幣引きかえは、国会で御承認いただけるということが前提でございますが、その上で、技術的にもやはり鋳造に若干の時間を要しますので、どうしても秋口ぐらいにならざるを得ないと思っております。その段階までの間に引きかえ方法を考えたいと思っておりますけれども、今のところまだ決めてございません。公平な引きかえが行われるように努めるとともに、引きかえに当たって混乱をできる限り回避するような十分な配慮をいたしたいというふうに考えております。
  8. 上田卓三

    上田(卓)委員 宮内庁にお伺いをしたいと思います。  現行貨幣法は第五条第二項で、記念貨幣は「国家的な記念事業として閣議決定を経て発行する」こういうふうに定められておるわけであります。今回は皇太子の御成婚を国の儀式とするという四月十三日の閣議決定が根拠とされておるわけであります。  そこで、まず一点は、国の儀式という行事で何をするのか、法的性格はどうなのかということ、それから予算金額支出費目は何か。  二番目は、国の儀式以外の行事についてはどのような行事があるのか、法的性格、費用、支出費目は何か。  それから三番目でありますが、秋篠宮結婚の隊との違いは何か。簡単に説明していただきたい、このように思います。
  9. 古居儔治

    ○古居説明員 先生おっしゃいましたように、去る四月十三日の閣議で国の儀式とする儀式が決まったわけでございまして、中身は三つございます。皇太子殿下結婚式に係ります一連の儀式行事のうち国の儀式といたしますのは、結婚の儀と朝見の儀と宮中饗宴の儀の三つ儀式でございます。  結婚の儀と申しますのは、皇太子殿下皇太子妃殿下賢所におきまして結婚のお誓いをするという儀式でございます。それから朝見の儀と申しますのは、天皇皇后陛下皇太子、同妃両殿下から結婚のあいさつを受ける、そういう儀式でございます。それから宮中饗宴の儀と申しますのは、皇太子殿下皇太子妃殿下、両殿下結婚を披露され、国民の代表の方々から祝福を受けられるため、宮中饗宴を催されるものでございます。  これらの儀式性格でございますけれども、憲法第七条の定める国事行為として行われるものでございます。なお、経費の点につきましては、後ほど経済主管の方から御答弁申し上げます。  それから、国事行為以外の皇室行事としてどういうものが行われるかということでございます。  主なものだけ申し上げますと、これはもう四月十三日に行われた儀式でございますが、一つは、納采の儀というのがございました。これは、皇太子のお使いが妃となられる方の住まいに赴きまして、皇太子結婚の約をなされる旨を述べて、いわゆる納采の品を呈するという儀式でございます。  それから、昨日行われました告期の儀というのがございまして、これは、勅使が妃となられる方の、小和田邸に赴きまして、結婚の儀を行う期日を伝えるという儀式でございます。  それから、結婚の儀のあった当日の夕方、供膳の儀というのがございます。これは、東宮仮御所におきまして、皇太子皇太子妃殿下が初めてお膳をともにするという儀式でございます。  それから、三箇夜餅の儀というのがございます。これは、皇太子皇太子妃殿下お祝いのおもちを供するという儀式でございます。  主な儀式はこういうものがございまして、この法的性格は、皇室の内輪の行事でございまして、国事行為でもなく公的行為でもない、その他の行為になるというふうに考えております。  それから、第三点目の御質問でございますが、三つ儀式皇太子殿下国事行為として行い、秋篠宮殿下の場合には国事行為としなかった、どういうふうに差があるのかという御質問でございました。  皇太子殿下の御結婚は、皇太子殿下皇位継承の第一順位者であられるということ、それから我が国憲法皇位世襲制を定めているということ、それから国民関心が高く国民的慶祝の対象となるということなどから、その根幹をなす今申しました三つ儀式を国の儀式として行うことが適当だというふうに判断をしたものでございます。  これに対しまして、秋篠宮殿下皇位継承第二順位者でございまして、皇太子殿下とは御身位が異なるということで、国事行為とはなされなかったものでございます。  以上でございます。
  10. 河部正之

    河部政府委員 ちょっと初めに、ただいまの古居審議官の答弁で訂正させでいただきたいと存じますが、納采の儀は四月十三日と申し上げたと思いますが、四月十二日でございまして、失礼いたしました。  それでは、経費関係につきましでお答え申し上げます。  今回の御結婚に必要な経費は、国事行為として行われます結婚の儀、朝見の儀、宮中饗宴の儀の三つ儀式に必要な経費、それから、妃殿下が御使用になられます乗用車の整備等に必要な経費でございます。  これらの経費全額予備費使用で対応することといたしまして、昨日、四月二十日の閣議におきまして、宮廷費で二億八千六百万円の予備費使用決定していただいたところでございます。そのうち、結婚の儀、朝見の儀、宮中饗宴の儀の三つの国の儀式にかかわる経費は二億二千三百万円でございます。
  11. 上田卓三

    上田(卓)委員 結婚の儀、朝見の儀、宮中饗宴の儀、いずれも基本的には皇室私的行事行為としてやはり内廷費を増額してでもそれで処理することが正しいのではないか、私自身はそのように思っでおるわけであります。  特に結婚の儀は、旧皇室典範皇室親族令に基づく賢所大前の儀を踏襲した宗教色の強い儀式であるわけでありまして、国事行為にはなじまないと私は思っております。秋篠宮の場合は公的行事にすぎなかったわけであります。  今回は皇位継承第一位といっただそれだけの理由だというふうに思うのですけれども、御兄弟でもあるわけですから、同じ扱いでいいのではないかなというように思うのです。秋篠宮もそのぐあいによれば皇位継承する場合もあるわけですね。だから、そういうことで殊さらにそういう差を設けるということについて私はどうもわからない、こういうように思っておるわけであります。その点について余り大した答えは出てこないのじゃないかというふうに思いますので、さらに進めたいと思います。  金貨発行でございますが、どうも皇室関係に偏っているのじゃないかな。皇太子結婚を機に、今回は三度目の金貨発行を行うわけであります。何か大蔵省が最近の皇室ブームに便乗してというんですか、あるいは財源確保のために結婚を政治利用化しているのじゃないか。実際余り財源確保につながっていないようにも思うのですけれども、どうもそういう金貨発行となれば皇室関係というようになるものですから、国民はそのように見るわけです。  そういう点について、現在の天皇あるいは秋篠宮結婚の際には記念貨幣発行されておりませんね。そういう意味では今回だけですね。その理由は何かあるのですか。
  12. 藤井威

    藤井(威)政府委員 最後にお話がありました点だけお答えをいたします。  皇太子殿下の御成婚記念した貨幣というものの発行は今回が初めででございます。前回と申しますか、現在の天皇皇后陛下皇太子の時代に御結婚なさったときには発行いたしておりません。私の理解では、実はあのころは記念貨幣発行する観念、慣行、そういうものがなかったんだと思います。  戦後初めて記念貨幣が出ましたのが昭和三十九年のオリンピック記念の千円銀貨でございまして、それ以降記念貨幣という概念が登場したわけでございましで、今回たまたま、御成婚に際しては初めででございますけれども、そういう事情があったものというふうに考えております。
  13. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにいたしましても、どうもよくわからない感じがするわけであります。  そこで、さまざまな機会記念貨幣発行するということはいいことではないか、このように私は思っております。しかし、先ほど申し上げましたように、皇室関係だけが金貨に偏っておる、こういうようなこともありますので、やはり国際的に意義のあるテーマについて政府あるいは国が挙げて取り組む際に、社会啓発世論喚起を促す意味記念貨幣発行するということが大事ではないか。  例えば、ことしは国際先住民年であるわけでございますから、アイヌ民族権利宣言記念する記念貨幣などはむしろ積極的に発行したらどうか、こういうふうに思うわけであります。  皇室にこだわると金貨額面がどうしても上がる、こういう嫌いがあるわけでありましで、そうじゃなしに、プレミアム貨幣にして額面をもっと下げるということも大事ではないか。また、通貨としてというよりも記念品として流通させるということも大事ではないかな。金貨であれば、買ったときだけ関心があるのですけれども、金庫にしまっでおるということで実際通貨として流通することはないのですね。だから、額面を下げれば、記念品的なものであれば、常に国民が手にとって、ああこういうことがあったんだなということが認識されるというように思うのですね。  それと、例えば一万円の額面であっても、記念品であれば、価値のあるものであれば、実際は五万円で流通する、そういう場合もあると思うのですね、だから、一万円のものを大蔵省は五万円で売ることもできるわけですね。切手などはそういうことはしておりませんけれどもね。しかし、そういうような形で、財源確保というならそういう方法もあるのではないのかなというように私は思っております。  また、先般も大蔵委員会で大阪の造幣局を視察、私も参加させでいただいたのですけれども、手工業というのですか、非常に緻密な技術を要して、大変熱心に現場の人たちが働いておられるのを見まして、これはどうしても継承していかなければ、仕事がなければ技術が落ちてくるわけですし、人も要らないということにもなるわけでございますので、できる限り記念品というのですかそういうものを機会あるごとに発行して、そういう技術を蓄えていくというのですか、あるいは継承するというのですか、そういうことが非常に大事ではないか、私はこういうふうに思っておるわけであります。その点についてどのようにお考えになっておられますか。
  14. 藤井威

    藤井(威)政府委員 今先生から幾つかの御提案があったというふうに考えます。  まず第一番目に、例えば国際的行事のようなものに際して記念貨幣発行するというような考え方はどうだろうかという御示唆がございました。  どのような行事に際して記念貨幣発行するかということは、従来から我々繰り返し御説明いたしておるところでございますけれども、国民がこぞってお祝いをし、または記念すべき事柄についで、国がこれを記念するにふさわしい事業であるかどうかというのを重要な判断基準として、記念貨幣発行の前例なども勘案しながら決定してまいっております。  こういう事業はどうだということについて、今の判断基準に合うかどうかということを仮定の問題についで具体的にここで申し上げるのは非常に困難でございますけれども、一般論といたしましては、そういう国際的行事国民的記念すべき事柄かどうかという点を勘案して、ケースバイケース判断していくべきものであろうというふうに考えております。  それから、二番目にプレミアム型の記念貨幣発行について御示唆がございました。  これは昭和六十三年四月一日から施行されました現行貨幣法通貨単位及び貨幣発行等に関する法律によりますと、貴金属を含む記念貨幣等について、先生がおっしゃいますように、額面以上の価格で政府が販売する貨幣、我々プレミアム型記念貨幣と言っておりますが、そういう発行が認められております。したがって、やろうと思えばできるわけでございます。実際今までこういうプレミアム型の記念貨幣を販売した例はございませんけれども、諸外国の例なんかを見てみますと、むしろこういう型の記念貨幣の方が多いという先生の御指摘のとおりの状況があろうと我々も思っております。  先ほど申しましたように、記念貨幣発行の要件、条件、環境というようなものも当然考えなければいけませんが、そういうものが合致して、適当な機会があれば発行することについても検討してみたいというふうに考えております。  それから造幣事業技術維持、おっしゃることは非常によく私も理解できます。しかもまだ、この造幣事業の中核であります貨幣製造事業というのが我が国経済にとって非常に重要なことであるということもよくわかっております。  ただ、余り記念貨幣を頻繁に発行するということも、記念貨幣というものの持つ性格からどうかなということもございます。記念貨幣というのは、先ほどのようなやはり国民全員国家的行事として記念すべきだというふうなある程度のコンセンサスのもとで、今のようなペースで発行していくというのが今のところ適当なんじゃないかなというふうな考え方を持っております。
  15. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても記念貨幣が余り流通していないですね。たんすにしまい込んであったり金庫の中にあったりして、実際国民の目に日常触れる機会がないような形になっているんじゃないのか。だから、そういう点はやはり抜本的に改革していかなければならない。しょっちゅう出すのもどうかというような理由にはならぬ、私はそういうふうに思っておりますので、切手などのようにシリーズ化するというようなこともあるわけですから、ぜひともそういうこともしてもらいたい、こういうふうに思います。  今お話しのように、国家的な記念行事に限らずケースバイケースで、こういうことで、いわゆる国民的行事という幅広い範囲でならば弾力的に貨幣発行できるということになりますので、ぜひともそのことをしていただきたい。  また同時に、現場で働く人たちからは、やはりこれまで培ってきたそういう技術やノウハウを将来にわたって残していく、こういうことをしなければ大変だという声も非常に強く出ておりますので、そのことをひとつお考えをいただきたい。大臣に発言を求めたいと思います。
  16. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 上田議員の御質問でございますが、貨幣発行するのに、お話のようにいろいろな事業があったときに記念して出したらよろしい、もう少し流通するということも一つのお考えだと私は思います。  ただ、余り貨幣というものをたくさん出していないというのが今までの形でありますし、あれもこれもといろいろなものが出てくると、これも貨幣かね、どうかねというような話になってもやはり困るだろうと私は思うのです。メダルとは違いますから、やはりその辺はおのずからなる限界がある。  我々の今まで持っている貨幣のイメージというのは、やはり何年と書いてあるものが貨幣だろうな、こう思っているところでありまして、その辺とのバランスをどうとっていくのかというのがこれからの問題だろうと思います。御提言もありますから、いろいろと私も考えさせていただきたいなと思っているところです。
  17. 上田卓三

    上田(卓)委員 ぜひとも前向きに検討していただきたい、このように思います。  次に、皇太子結婚にかかわって身元調査のことが新聞などで今までにいろいろ報道されておるわけです。今の天皇は即位に当たって、皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たす、こういうように述べられておるわけであります。  憲法の第九十九条は、憲法遵守の義務が天皇にもあることを定めているわけであります。また憲法第十四条は、華族制度を廃止し、社会的身分や門地による差別を否定しております。二十四条では婚姻は両性の合意に基づいて成立する、これは当然のことであろうというふうに思うわけでありますが、国内には部落差別とか民族差別あるいは障害者差別など厳しい差別が今なお存在していることは御存じだというふうに思うわけでありますが、とりわけ結婚や就職といった人の一生にかかわる大切な時期に大きな壁となってあらわれてくるのではなかろうか、こういうように思っております。  そういう意味で、結婚や就職の際の身元調査や家系調査は差別につながるということで、我々は法務省や労働省あるいは地方自治体、民間企業、宗教界の皆さんとともに身元調査お断り運動というのですか、全国的に展開しておるわけでありまして、大阪などでは部落差別を目的とした興信所や探偵社による身元調査を規制する条例もできておるわけであります。  ところが、先ほど申し上げましたように、一月六日の皇太子妃内定以来、新聞、雑誌、テレビなどでは江戸時代にまでさかのぼる小和田家の家系図を掲載して、家柄や家族などについて過剰な報道をしておるわけでありまして、皇太子妃を選ぶに当たっては皇室専門の興信所員が四代前まで徹底調査、こういうような報道もあるわけでございまして、宮内庁みずからがそういう民間調査機関に指示して調査しでおったのかどうか、その点についてお聞かせをいただきたい、このように思うわけであります。  その前に、法務省と労働省の方がお見えでございますが、一般的な身元調査についてどういう見解を持っているのかお答えいただきたい、このように思います。
  18. 澤田成雄

    ○澤田説明員 お答えいたします。  私ども法務省の人権擁護機関といたしましては、部落差別など人権侵犯を意図した身元調査をすることはもちろんでありますが、部落差別等人権侵犯につながるおそれのある、そういう身元調査をすることも許されないというふうに考えているところでございます。
  19. 後藤光義

    ○後藤説明員 お答えいたします。  労働省といたしましては、かねてより同和関係住民の就職の機会均等を確保することは同和問題解決の中心的課題との認識のもとに、応募者の適性、能力のみによって採否を決める公正な採用選考を行うよう啓発指導を展開してきているところでございます。  しかしながら、就職差別につながるおそれのある不適正な事例につきましては、全国から報告をとっているわけですが、これを見ますと、昭和六十年当時に比べますと減少してきてはいるものの、最近では横ばいの状況にございまして、身元調査にかかわる事例も年に数件の報告を受けているところでございまして、まことに遺憾であると考えているところでございます。  平成三年の地対協の意見具申では、今後の重点課題の中に就労対策や啓発が取り上げられているところでございまして、労働省といたしましては、この意見具申を踏まえ、今後とも就職差別を解消し、同和関係住民の雇用の促進と安定を図るため、公正な採用選考の実施等について事業主に対する積極的な啓発指導を粘り強く実施してまいりたい、このように考えております。
  20. 上田卓三

    上田(卓)委員 宮内庁はどうですか。今回の皇太子結婚相手、いろいろ二百人ぐらいおられたようにも聞いておるわけですけれども、そういう方々の身元調査というのですか、あるいは小和田家についてのそういう調査などをしたのですか。あるいは直接しなくても民間の調査機関に依頼したということはありますか。
  21. 古居儔治

    ○古居説明員 お答えを申し上げます。  宮内庁といたしましては、将来日本の象徴になられる皇太子殿下にふさわしい配偶者をお世話するという立場にあるものでございますので、まさにお妃候補としてふさわしい方が、どこにどういう方がおられるかといったこと等につきまして、必要な情報収集等の調査を行ったことは事実でございます。その際に、宮内庁の能力にも限界がありますので、一部外部の方の協力を得たということも事実でございます。
  22. 上田卓三

    上田(卓)委員 ふさわしくないとかふさわしいとか、それじゃ、候補にのった方々は要するにふさわしくなかったわけですか。  そうすると、どこでだれがそういうことを、ふさわしいとかふさわしくないとか、特に本人の「経歴、性格、趣味、素行、健康状態」あるいはもっと「直系は四代前までさかのぼり、大祖父、祖父の兄弟姉妹まで徹底的に調べた。両親については交友関係、勤務先、近所の評判」と、これは人権侵害になりませんか。  気持ちはわかるんですよ。だけれども、これは憲法で定められている両性の合意に基づくということで、皇太子自身も憲法を守るとおっしゃっているのだから、また結婚については恐らく自分が決めるということになるのじゃないですか。それを、取り巻きというのですか、あなた方がふさわしいとかふさわしくないとか、どうのこうのと言うこと自身、私は問題があると思うのですが、どうですか。
  23. 古居儔治

    ○古居説明員 先生おっしゃいますこともわかるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、皇太子殿下の配偶者につきましては、皇太子殿下が将来我が国の象徴になられる方であるということから、その配偶者としてふさわしい方を見出す必要があるということ。  もう一つは、一般の国民の場合と異なりまして、皇族男子の婚姻につきましては、先生御案内のように、皇室典範の第十条によりまして「皇室会議の議を経ることを要する。」というふうに規定されておりますところから、これらに必要な限度において調査をさしていただいたところでございます。
  24. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、昭和二十二年に制定された皇室典範皇位継承は男性というのですか、男に限るというようなことも含めて、私は憲法違反の疑いがあるのじゃないか。それとも皇室典範というのは、もう憲法から乗り越えて雲の上にあるのかということになると思うのですね。皇太子自身もあるいは今の天皇自身も日本国憲法を守るとおっしゃっておるわけですから。  今また、ふさわしい人であるかどうかというのは本人が一番わかっているのじゃないですか、皇太子さんが。自分の相手なんだから、生涯連れ添う相手なんですから、任しでおくわということではないのでしょう。いろいろおつき合いがあったということもあるのですからね。  それを後で、家柄がどうであってこうであって問題はなかったということが新聞で報道、テレビで報道されると、やはり国民の中で、それはそうだという意見も当然あるでしょうけれども、多くは何だ、我々国民を差別しているのかと、やはりあの人たちは一握りの人たちだよなと、あるいはそういう二百人近いうわさされた方々、選ばれなかったことで喜んでいる人もあるのじゃないかと思いますけれども、それは好き好きですけれども、非常に私は問題を残しておるというふうに考えております。  そういう点についで、私は労働省とか法務省は身元調査、これは同和問題だけじゃないですよ。あらゆる差別につながるということで、そういうものを、やはり今の本人の問題なんですから、親、兄弟あるいはその過去をさかのぼるということ自身、非常に人権侵害なんですからね。だからその点についてちゃんとすべきではないか、こういうふうに思いますし、またイギリスの例じゃないけれども、女王がおられるように、男でなければならぬというようなことも、もう時代の流れから見ても私は時代錯誤もいいところじゃないかなというように思っておりますので、そのことだけ申し上げておきたい、もう答弁はいいですから。  次に、もう時間も余りございませんけれども、大蔵大臣に新総合経済対策についでお聞かせいただきたい、こういうように思います。  新聞によりますと、宮澤総理は今回の経済対策について、大きさもスピードも画期的だ、こういう自画自賛をしておられるようでありますが、私はそんなに大げさに自慢するほどのものではないのではないか、こういうように思っております。  そもそも三・五%という政府の九二年度の経済見通しは一体どうなったのかと言いたいわけであります。先日、大蔵省に聞いたところ、十二月に修正した一・六%という数字も怪しい、こういうようなお話であったわけでございまして、財政運営の責任者として、大蔵大臣はこの見通しが達成できなかった責任をどう受けとめておられるのかということでございます。  また、政府は三・三%の成長を達成できるということで九三年度本予算を組んだのではなかったか、こういうように思うわけでありまして、不足があれば本予算に組み込むべきであって、予算成立直後に十三兆二千億もの追加策を組まねばならないというのは予算編成上ゆゆしき事態ではないか、このように思っておりますので、大臣の所見を伺いたい、このように思います。
  25. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 上田議員御質問の問題は、昨年の予算の問題、平成四年度の問題、それから昨年の八月につくりました総合経済対策の問題、平成五年度の予算及び今回の新総合経済対策に対するところの問題だろうと思います。  確かに平成四年度の問題につきまして、当初三・五%の成長、こういうことでやってまいりました。やってまいったのですが、やはり株式の価格の下落であるとか土地価格の下落、いわば資産価額の下落ということが相当に経済に影響いたしまして、なかなか難しいことになってきた。そんなことから昨年の八月に総合経済対策を立てたわけでありまして、それを実行していこうということでやってきたわけであります。  やはり経済でございますから、当初見通しをしたところでなかなかそのとおりに動かないということも事実であります。特に日本が持っていますところの経済社会というのは自由社会でありますし、国民所得の中で申しますならば、消費というものが六〇%を占めている、民間設備投資というものが二〇%を占めるという、大きなところでいいますと、そのぐらいになってくる。  民間の活動がいかがかというものが大きなものでありましで、政府がつくりましたところで政府の働く役割というのはわずかでありますから、やってみると、当初予定しでおったというか、当初見通しておったものよりはなかなかうまく動いていってないのは、私は正直にこれは事実だろうと思います。  むしろ政府見通しというものは、あくまでもこういった形でもってやっていきたい、こういうふうな見通しを申し上げたところでございましで、状態がうまく動いていかなくなったならば、それに対し適切な判断を下して追加的なことをする、また、少しよ過ぎるような話になったならば、それを抑え目に判断をしていくというのが、私は経済運営の基本的なあり方だろうと思うのであります。  そういったことからいたしまして、補正予算を組みまして、新総合経済対策をやりました。やったときに、また四年度のものは一・六%ぐらいになるだろう、こういうふうなことを申しました。正直言って、つくりました段階のときには、補正予算を出したりなんかするのがちょっとおくれでしまったものですから、ちょっと時間的におくれた、だから本当ならば十二月ぐらいにある話のものが一月に伸びてしまった、こういうふうな話でありますし、今、出しましたものは相当にいい方向で動いではきておりますから、特に三月ぐらいになりましたならば相当にその効果は出てきておったと私は言えるんだろう、こう思います。  そういったような格好でやってきましたし、平成五年度の予算につきましても、昨年の十二月に編成いたしまして、一月から国会に予算の御審議をお願いして、三月三十一日に成立させでいただいた、こういうことでございます。  その審議の過程を見ましても、一月、二月、先ほど申しましたような補正予算の執行がなかなかうまくいかないというような話もありまして、特に二月ごろになりますと、なかなかこれは大変だなという感じを持っておったわけでありますが、予算を早く成立させるということも一つの大きな景気対策にもなりますし、そうした形のもので予算をまず成立させていかなければならない。  その後におきまして、言うならば若干早かったといえば早かったかもしれませんけれども、やはり適切な対策を打つという形で新しい施策をやっていこう、これでもって私は三・三%という、目下考えでおりますところの経済成長というものはまず達成される範囲にある。宮澤総理の言葉をかりますと、ウィズインリーチというんですから、手の届くところに、こういうことをアメリカで言った、こういうふうな話でありますけれども、そういうふうな格好で動いでいけるものじゃないかな、私はこう思っておるところであります。  財政を預かっております私といたしましては、日本経済を持続的な経済成長の方向へ何とか持っていけるような格好に持っていかなければならない。当面の状況を見ましても、いろいろないい数字も出ておりますけれども、まだまだもうひとつというのが正直なところ、感じでございますので、こうした形の新しい政策を、いずれ補正予算の御審議をお願いすることになるだろう、こう思っておりますが、そうした形でもって、いい、持続可能な成長の方向へ持っていきたい、こういうふうに考えていることを申し上げておきたいと思います。
  26. 上田卓三

    上田(卓)委員 実際国が確実に公共事業として年度内に使える金額はどれだけになるのか、こういうふうに考えますと、やはり限られてくるんじゃなかろうかなというふうな感じがしでいるわけでございます。  何といいましても、例えば、住宅建設の促進のための住宅金融公庫の融資の拡大をするとか言っておりますけれども、これは建てるのは結局民間でもあるわけですし、また、地方単独事業をお願いするといっても、これはどれだけ地方がそれにこたえてくれるのかということにもなるんじゃないかと思います。また、土地取得や融資などは、波及効果は確かにあるんですけれども、直接GNPに寄与するということではない、こういうふうに思うわけであります。  また、先ほど申し上げましたように、公共事業が年度内にどれだけ消化されるかというようなことで、本当に三・三が達成できるのか、具体的に根拠というものを明らかにしていただきたいのですが、本来は達成目標というんですか、あるいはこの数字、こういうものについては、大蔵省自身はもう自信をなくしているんじゃないかな、余りにもかけ離れているんで。だから、その点について、大臣考え方をもう一度お聞かせいただきたい、このように思います。
  27. 日高壮平

    ○日高政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、これからの景気の先行きを考えてみた場合に、先般の十兆七千億円に及ぶ総合経済対策の効果というものも、かなりの部分が本年一月以降に出てきているということは否めないだろうと思います。先般、年度内成立させていただいた五年度当初予算、これも景気に配慮しで公共投資等については十分配慮しているという状況でございます。  それに加えて今回の新対策の公共投資等の追加が決まり、いずれ私どもできるだけ早く補正予算をお願いをして、その早期の成立をお願いしたいと思っておりますけれども、そうしたことが相まってまいりますと、公共投資等につきましては、年度を通じてあるいは本年一月以降、ずっといわば切れ目なく執行されていくということが可能になってまいると思います。  そういう意味から申し上げますと、例えば昨年の秋ごろから十二月にかけての公共投資等は若干中だるみの状態がございましたけれども、これは補正予算の成立が十二月になったということもございますが、早期に今回の対策を実行してまいりますれば、そうしたことがなく、切れ目のない執行が可能になってくる。そういう状況を考えますと、私どもとしては、政府の経済見通しで想定した姿というものも、先ほど大臣も申し上げましたように、十分達成範囲内のものであろうというふうに考えているわけでございます。
  28. 上田卓三

    上田(卓)委員 国が公共事業に力を入れる、こういうことでありますが、多くの企業はリストラをやっておるわけでありまして、縮み志向とかあるいは減量経営、こういうようなことで、結局縮小均衡というのですか、あるいは雇用調整をするというような形で、なかなか景気の先行きが見えない、こういう状況ではないかなと思っておるわけであります。  三月期の東京地区の百貨店の売り上げを見ましても、前年比で二・四%も落ち込んでおりますね。あるいは日本経済研究センターの調査によると、消費低迷はこれからが本番、こういうようなことも言われておるわけでありまして、所得税減税抜きの総合経済対策というのでは、どうも景気回復に直接つながってこないのではなかろうか、こういうように考えておるわけであります。  政党も、与野党協議ということもあるわけでございますけれども、やはり大蔵大臣はここで、景気の気というのは気分の気ということもあるように、病は気からという言葉もあるように、やはり減税になると少し気分が乗るというのですか、それがその部分だけじゃなしに、つい家にある預金もはたいて、衝動というのですか、そういう気分にさせなけりゃ、各家庭に何ぼ金あっても買う気しない、先が見えない、こういうことになるんで、やはり呼び水的な性格というものも私は非常に大事ではないかと思うのですね。  だからそういう意味で、所得税減税というものが景気浮揚に大いに役に立つ、こういうふうに私たちは考えているのですが、大臣、どうですか。
  29. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 病も気からというお話でございますが、私は今、日本経済はそんなにおかしなところになってきていない、少し明るさが見えてきている、しかしながらまだまだいいところには行かないような、まだ気迷いの状況がある、病気で言うならばそんなようなことじゃないかなと思っているのです。  そういったような状況でありますから、今これで政府の方が指導してやるということならば、いろいろな新しい公共事業等を起こしまして仕事を起こしてやる。仕事を起こしてやれば皆さんそこで働くことができる。病院をつくりましたり、下水道をつくりましたり、あるいは道路その他のことでいろいろ仕事をやっていけば、その仕事によって日本経済全体として活気がついてくる。むしろ公共事業というような形でやることによりまして活気がつくのじゃないかな、こういうふうに考えているところでございます。  所得税減税というのは、今上田先生からお話もありましたが、随分長く当委員会におきましても御議論いただいているところであります。私は、もうたびたび繰り返し申し上げているからまたかとお聞きになるかもしれませんけれども、やはり景気対策として、今申しました公共事業等と比較して所得税減税でやるのは一体どうかということになりますと、せっかく所得税減税に回したものがなかなか消費に回らないのじゃないか。  もう一つ言いますと、給料、今大きなところは皆銀行振り込みみたいな形になっているわけですね。減税いたしましても、銀行振り込みで、なんぼしたよ、こういうことでちょっとわからないということであろうと思うのですね。それを、例えば小切手か現金か何かではあっと渡してこれだけ減税したぞと言えばあれでしょうけれども、そういったシステムというのはなかなかこれは大変な金がかかる話だし、とてもできる話じゃありません。  それから、第一に、何といったところで巨額の財源を要する。こういうふうなお話になってきますと、どうしても赤字国債によらざるを得ない。そうすると、赤字国債によるということについては、今の人がいい目を見るために将来に負担を残すというふうな形になったときに、一体その辺をどう考えるのか。特に我々が今生きている政治家として後代に対していろいろな負担を残すことは一体どんなものであろうかなという御議論があります。  それから所得税減税ということになれば、所得税のあり方として、相当に高いところまで日本は所得税のかからないような形になっておるわけでございますから、そうしたものでやるのは一体どうだろうかな。むしろ先ほど先生からも御指摘になりましたような住宅促進のための促進税制であるとか、あるいは民間の企業がリストラをやるといったときの設備投資減税などという税制上の措置でやった方がいいのじゃないかな、こういうふうに考えておるところでございます。  もちろん、こういった問題につきましては、もう私から申し上げるまでもありません。与野党間で引き続き協議をするというふうなことになっておりますので、その協議の行方は十分に見守ってまいらなければならないというふうに考えておるところでございます。
  30. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、やはり国民の消費というのが究極の景気浮揚策だと私は思うのですね。だから、そういう企業が融資を受けるとか、家を買いたい人が融資で買えるようになるとか、これは限られた人々でもあるわけですね。直接やはり景気そのものに影響するものではない、波及効果はありますが、私はそういうふうに思っているわけです。  そういう意味で、減税すれば振り込み、直接現金じゃなしにそういう銀行振り込み云々ということもありますけれども、それはそんなことを言ってもちゃんと戻ってくることは事実なんですから、やはりそれだけ気分がよくなるということにもなるわけでありまして、きのうも中村議員からもお話がありましたように、要するに可処分所得が減っているわけですから、それをやはりちゃんと解決するということが私は根本ではないかな、こういうふうに思っでおるわけでありましで、そういう意味で、国民に消費とか購買意欲がないというのじゃなしに、やはりそういう可処分所得に問題がある、減少に問題があるということでひとつ理解をしてもらたいたい、こういうふうに思うわけであります。  後世に借金を残す、こういうようなことですけれども、それも事実ですけれども、一にも二にも景気を回復することが大事でありまして、景気が回復されたら税収も伸びるわけですから、普通の企業でも一緒なんですね。そうですね。やはり労働者に労働意欲がなければ賃金を上げて意欲を沸き立たせるということも、これは企業の経営戦略の一つなんですよ。やはり意欲がなければだめなんですからね。  だから、そういう点で国民に活を入れるというんですか、奮い立たせる、そういう役割を所得税減税は持っているんじゃなかろうか、こういうふうに私は考えておるわけであります。そのことを強く要求したい、このように思っております。  いずれにしても、円高が進んでおるわけでありまして、あるいは不況がどうなるのか、こういうことで国民は非常に心配をしておるわけです。大臣がおっしゃっでいるように、三・三を達成する、こういうことでありますけれども、これは実際達成できなかったらどうするんですか。その点についで、最後にひとつ自信のほどを答弁しでいただきまして、質問を終わりたい、このように思います。
  31. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 いろいろと上田さんの御意見を承らせでいただきました。私は、経済運営というのは、今確かに考えていかなければならない問題はいろいろあると思いますけれども、単に日本ですから、やはり持続的な成長を図っていく、安定的な成長を図っていくということが一番大切なことだろうと思います。  一方におきましてはインフレがないように、一方ではバブルが発生しないように、そういった形での運営というものを着実に図っていく。やはり国民が額に汗して働いたならば必ず報われでいくような形のものをやっていくことが必要でありまして、そのためには、将来に残るような資産を形成しながら着実に日本の国をよくしていくということが私たちが考えていかなければならないものだろうと思っています。  今お話がございました、特に昨今の円高によりましていろいろな問題が出てくる、こういうふうな話があります。  確かに急激な円高になりますと、輸出産業その他につきまして採算の問題等が出てきまして、いろいろ非常に苦しい問題が出てくる。私は決してそういったものがいいとは思いませんし、そういったものはやはり何とかいい形で解消していかなければならない。こうした努力を一方でやりながら、経済全体としては、先ほど来申し上げていますような持続的な成長の路線へ持っていく。  その一つの目標としてというか一つの見通しとして三・三%という数字を置いておりまして、まだ今から補正もやらなくちゃいけません。経済の運営もやらなくちゃいけません。対外的な交渉もやっていかなければなりません。そういった形、全体を総合いたしまして、平成五年度におきましては申しましたような形のものに持っていけるものだと私は確信をしているところであります。  もう一つ申し上げるならば、一・六%という数字、先ほどお話がありました。たったこの前まで、十二月の数字が一%云々、こういうふうな話でありましたけれども、一-三はもう少し伸びると私は思うんですね。だから、そういった形でいくならば、同じようなスピードで同じような伸び率でいくならば、三・三%というのは毎四半期ごとに一%ちょっとやればできるわけでありますから、そう三・三%というのは難しい数字じゃ正直言ってないと私は思っています。  まさに難しい数字じゃないけれども、諸外国や何かにか比べましたならば相当に高いところの数字でありますし、国際的にも日本の経済力というのは評価されているところでありますから、そういっことは当然にやれるものだろう、またそういった形で着実に経済運営を図っていきたい、こういうふうに私は考えているところでございます。
  32. 上田卓三

    上田(卓)委員 質問を終わります。ありがとうございました。
  33. 藤井裕久

    藤井委員長 日笠勝之君。
  34. 日笠勝之

    ○日笠委員 まず、委員長に、資料を委員の皆さん、関係者の皆さんにお渡しいただくことをお許しいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  35. 藤井裕久

    藤井委員長 承知しました。
  36. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、資料がお手元に行く前に何点がお聞きをしておきたいと思います。  まず、既に発行されております天皇在位六十周年の記念金貨でございますが、昭和六十一年に一千万枚、六十二年に百万枚、これが製造されたわけでございますが、その後、年次別で結構でございますが、どの程度還流をしておるか、枚数をお答えいただきたいと思います。
  37. 藤井威

    藤井(威)政府委員 昭和天皇御在位六十年記念金貨幣発行は、先生もおっしゃいましたとおり、二年間にわたりましで一千百万枚発行いたしました。平成五年三月、前年度末でございますが、その前年度末現在で還流しております貨幣枚数は約三百八十万枚、千百万枚のうち三百八十万枚が日銀に還流しているという状況でございます。  それから、天皇陛下即位記念金貨幣につきましては、平成三年に二百万枚を発行いたしましたが、これも前年度末現在で見ますと、約三十万枚程度が日銀に還流いたしております。年度別で申し上げますと、六十一年度に発行しました後、百四十五万枚が還流いたしておりまして、その後、毎年のように何十万枚という単位で還流しておって、先ほど申しましたような数字になっておるということでございます。
  38. 日笠勝之

    ○日笠委員 天皇在位六十周年の金貨の場合は三四・七%が日銀に還流しておる、三枚に一枚がもう日銀の方に返ってしまっておるわけですね。私はそういうことも心配して、かつて金貨発行の法案のたびに、名前を言っていいかどうか知りませんが、窪田理財局長とか大須理財局長藤井局長の大先輩ですが、これは愛蔵されるということを念頭にして発行するのですかと、このように聞きました。  会議録を読んでもいいのですが、時間がわずかですから結論を申し上げると、ほとんど記念にしまっておかれることになるのではないでしょうかという大変楽観的な予測で、はい一千万枚、はい追加の百万枚、こういうふうになった結果が、もう三枚に一枚以上が日銀に返ってきておるわけです。これはやはり見通しが甘かったのじゃないかな、かように思いますが、これは大臣の責任でございますから、前の大臣ですが、継続性があるから、大蔵大臣、どうですか。
  39. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 この金貨を、一体、日銀に還流したものをどうするかという問題もまだあるのだろう、こう思います。ありますが、やはりそのときの見通しで出した、全部が持っていなくではならないという話でもないのだろうと、私は正直言って国民が持っていなくではならないとも思っていない。それは流通するものですから、私は全部退蔵、保蔵をしなければならないというものでもないのじゃないかな、こう思っております。
  40. 日笠勝之

    ○日笠委員 ですから、当時の窪田局長は、ほとんど記念にしまっておかれることになるのではないでしょうか、愛蔵されるのだ、こう言っておるわけですよ。それがもう三枚に一枚が日銀に返ってきでおるから、これは見通しが甘かったのではないですか、それに対して大臣どう思いますかと、こう申し上げでおるわけですよ。  だから正直に、ちょっとそのとき見通しがまずかったのかなというぐらいのことを言うなら次の質問に行きますが、それで抵抗されるというなら幾らでもまだ資料がありますからやりますけれども。
  41. 藤井威

    藤井(威)政府委員 千百万枚出した経緯ということもございます。当初一千万枚、それから百万枚という追加発行までいたしましたが、当時はやはり初めての金貨ということもございまして、国民の間でかなりの需要があったということであろうと思います。  結果的に見ますと、確かにおっしゃいますように三枚に一枚が返ってきておりますので、やはり千百万枚は多過ぎたかなという、その結果論としてはそうだろうと思いますが、当時としてはそれだけの需要があったというふうに考えております。
  42. 日笠勝之

    ○日笠委員 ですから、昭和天皇在位六十周年の記念金貨は、平成四年度現在、三百八十二万枚還流しておりますし、天皇即位の十万円金貨は三十二万枚還流しておる、こういうことでございます。  今回の皇太子成婚にかかわる五万円金貨ですが、二百万枚、こう聞いておりますが、天皇即位のときも二百万枚でしたね。それがもう既に三十二万枚還流しているということは、一六%ぐらいもう還流しちゃっているわけですね。これから、バブル崩壊の後、持っていた人も背に腹はかえられず、減税もないし、じゃ、これを使おうかというようなことになってくると、ますますふえる可能性もあるわけですが、この二百万枚の発行というのは現時点で適正である、こういう確信を持ってお答えできますか。五万円金貨ですよ。
  43. 藤井威

    藤井(威)政府委員 今回の五万円の金貨を二百万枚発行するという計画で今準備体制を進めております。  それで、今回金貨幣を御成婚ということで発行するに際しまして、有識者懇という、前回、前々回の金貨発行のときにもそういう有識者懇談会で意見をお伺いいたしましたが、今回もそういうことをいたしました。  その過程で、御成婚という国民的な御慶事に際して慶祝の意を国民があらわす、それでそれを国家的な記念行事として金貨発行する、その場合にできる限り多くの国民が喜んで持ってもらえるようなものにしたいというのは当然前提でございまして、それを考えて今までの十万円ではなくて五万円というふうに単位を半分ぐらいにしたらどうか、そこまではっきりおっしゃる方はおりませんが、少なくとも単位を下げた方がいいのじゃないかというような御意見が非常に多かったわけでございます。それで、我々はそういう御意見が多かったということもありまして、今回は十万円ではなくて五万円ということにいたしました。  それで、持っていただきやすい格好ということを念頭に置いてやったわけでございましで、このほかに銀貨も、かっては一万円銀貨ということもございましたが、今回は五千円銀貨ということにする、ただ枚数につきましては、余りふやしたり減らしたりということはしないで、金貨については二百万枚、銀貨については五百万枚という従来のペースで出して、我々としましては、余りフィーバーが起こって欲しい方のお手に入らないというわけにもいきませんし、かといって、どうもちょっと多過ぎるというような状態になるというのも決していいことではございませんが、この枚数でちょうどうまくいくのじゃないかなという、まあこれは計画でございますから、そういうような考え方で進めておるところでございます。
  44. 日笠勝之

    ○日笠委員 会議録が残っていますから、何年後かにまた検証いたしましょう。  そこで、にせ金貨が大量に発見されて、今現在捜査がまだ進んでおるわけでございますが、その押収されたにせの十万円金貨以外には今日本の国ではにせ金貨はもうない、こういう確信がおありですか。
  45. 藤井威

    藤井(威)政府委員 かつて御在位の十万円金貨に十万枚を超えるにせ金貨が発見されました。これらのにせ金貨は今すべて日銀で保管いたしておりますが、我々が捜査当局から承っている範囲内では、現在の鑑定状況あるいは市中に出回っているというような情報もないということから、偽貨が現在でもなお市中に出回っでいるということはもうないのではないかという判断だというふうに伺っております。我々もそういうふうに考えております。
  46. 日笠勝之

    ○日笠委員 そこで、お手元の資料をちょっと見ていただきたいと思います。  私の事務所で、電話ではございますが、天皇在位記念の十万円金貨がある、現実に持っていますから、これについて都銀、地銀、信用金庫、信用組合、労働金庫等々に両替してもらいたいと電話で確認をした結果がお手元の一覧表でございます。  ちょっと申し上げますと、例えば住友銀行青山支店は、ケースがない場合は鑑定してから両替いたします。大和銀行青山支店、両替の可否に関しては即答しかねる。第一勧銀青山支店、ケースがあるなしにかかわらず、いずれの場合にも第一勧銀に口座を持っていないと難しい。換金でなく十万円を口座預金する形でお願いしたい。あさひ銀行有楽町支店、ケースなしては両替できません。大蔵省の通達により、ケースのないものは扱えません。あさひ銀行丸ノ内支店、購入した銀行で換金してほしい。できるだけ断るようにしている。換金する場合も身元がはっきりしてい卓いと引き受けられない。三菱銀行御茶の水支店、いずれも鑑定が必要。なぜならば、十万円金貨は流通の貨幣でないから鑑定が必要となる。山日銀行東京支店、日銀鑑定後、口座に入金。金貨に関しては備えつけの見本がないため、店頭では判断できない。おもしろいのがあります。西南信用組合神田支店、親銀行を通じて日銀で鑑定した後でないと両替できないので、他行く持っていってほしい。こういうことなんですよ。  二十四行調べますと、ケースがあるなしにかかわらず即両替できますと答えたのはわずか六行ですよ。四分の一です。あとの十八行は条件つきなんです。にせ金貨はないのにどうして両替商である銀行が両替できないのですか。銀行局長、どうなっていますか。
  47. 藤井威

    藤井(威)政府委員 金融機関の窓口で金貨の受け取りにつきましてどういう方針でいくかということにつきましておっしゃいますような昭和天皇御在位六十年記念金貨幣について、六十一年十一月に全銀協から業務通達が出されております。これに基づいて各金融機関が取り扱いを行ってきたというふうに我々は考えておるわけですが、その後、金貨偽造問題の発生ということがございまして、全銀協におきましては、平成二年二月に、金融機関窓口における金貨の取り扱いについて、顧客利便にも配意した新しい通達を出しております。  この通達によりますと、個人からの少量の金貨による両替、預金等の要望に対しては、従来どおりその場で応じる。例外的に疑義のある場合には、別段預金として受け入れ、鑑定の結果、真正と判明したときには、受け入れ当初から顧客が依頼した種類の預金として受け入れる。ただし、これは鑑定結果が判明するまでは引きおろしはできない。特に疑義が深い場合には、鑑定に回す。  金貨というものは確かに日々流通しているようなものではございませんし、銀行に見本があるわけでもございませんから、こういう三種類のケースに分けて取り扱いをするということはやむを得ないというふうに我々も考えておりまして、こういう三ケースに分けた取り扱いをきちんとやっていただければ、窓口で円滑な対応が行われるというふうに我々は考えております。
  48. 日笠勝之

    ○日笠委員 ですから、わざわざ資料をお配りして、他行に持っていってくれとか、そういうことを通達で言っているのですか。先ほど、もうにせ金貨はない、そう確信しているとおっしゃったじゃありませんか。だったら、疑義のあるものは全然ないわけでしょうから、堂々と両替してさしあげればいいじゃありませんか。もう一遍通達を出し直しますか。
  49. 藤井威

    藤井(威)政府委員 取り扱いに関する通達は以上のようなことで、それに関する我々の考え方は今申し上げたわけでございますが、御指摘の点もございます。  それから現実に先生がお調べいただいたそれでこの三ケース、この通達にかんがみてこの回答はどうかなというのも確かにございます。これから銀行局とも御相談のことだと思いますが、現実にはもう偽貨というのは多分市場には流通してないということを前提にいたしまして、そういうことをもう一度確認するというようなことも検討してみたいというふうに思います。
  50. 日笠勝之

    ○日笠委員 私は割としつこい方ですから、もう一遍同じ銀行の支店に電話をして検証して、皆さん方が通達なり全銀協を通じていろいろやられたことがどうなったかということをまたやるかもしれませんから、一生懸命取り組んでいただきたいと思います。  それから、この資料の下の方のいわゆるスーパー、家電の量販店、こういうものにも電話してみました。十万円金貨を持って買い物に行きたい。そうすると、この結果のとおりでございまして、六割は、使用できません、こういう答えです。  これは以前も、都内十のデパートにも同じように、十万円金貨使用できるかどうか、可否についで電話で尋ねたのですけれども、そのときもやはり六割ぐらいが、使用できないと、こう言った。  そうすると、当時の理財局長は、いや、すぐこれは通産省の担当とも相談して、そういうことはやってはいけない、このように再度要請します、こう言われたのですよ、二年ほど前に。それから二年だって、ではレギュレーションがうまくいって、十万円金貨でも買い物できるのかなと今度十店舗を検証したのです。そうすると、やはり六割はできないと言うのですよ。これはどうしてですか。  これは日本国政府が信認して出した法貨でしょう。これは日本の国内で使えないのですか。そういうものを出していいのですか。大臣、どうされますか。
  51. 藤井威

    藤井(威)政府委員 十万円金貨が他の貨幣と同様に法貨であり、円滑に流通すべきものであるということは全くそのとおりでございまして、十万円貨幣を持っておられる方は、法貨十万円を持っているのと全く同じでございます。一部のデパート等あるいはスーパー等の取り扱いが、頭からそれは使えないというのは、我々としても理解に苦しむところでございまして、通産省にもお願いし、円滑な流通の依頼文書を業界団体あてに発出しておるところでございます。
  52. 日笠勝之

    ○日笠委員 発出しても、この一週間以内の調査では、六割も使えないと言うのですよ。これは大蔵大臣と通産大臣が話し合っていただいて、我が省が自身と確信を持って出した十万円金貨が使えないというデータがあるんだ、ぜひひとつこれは通産省の方からももう一度発出して、使えるんだ、もうにせ金貨はなくなったんだ、そういうふうにきちっとやってもらわないと、十万円金貨、これはもう大変大きな悔いを今後に残す問題になりますよ、大臣。できますか。やっていただけますか。
  53. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 通貨として出したのが今の記念金貨でありますから、先ほど来申しておりますように、通貨というものは当然に流通してもらわなくちゃ困るわけでありまして、退蔵されるというもので出したのならメダルでありますから、まさに流通するような形でやらなくちゃならない。  今お話を聞いておりまして、銀行でもいろいろとあるというような話でありますけれども、その辺は政府通貨の問題として当然いろいろなことをやっていかなければならない。通産省の方にもお願いをして今までやっておりますけれども、もう一遍その辺もよくチェックをしましてやっていきたい、こう思っておるところであります。
  54. 日笠勝之

    ○日笠委員 日本国政府のこの法貨が銀行に行っても当然両替はしてもらえる、両替の免許を持ってやっているのですから。それからまた、量販店でも当然これは使用できる、こういうふうになるようにすることが、今までのにせ金貨事件の問題にきちっと対応したということになるのじゃないでしょうか。この点は、大臣、重ねて要望、要請をしておきますので、ひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。  それから、時間もなくなりましたのでちょっと細かいお話になりますが、このたびの五万円金貨につきましては、光沢仕上げのプルーフ金貨ですね。これは大体どのくらい発行される予定か、また、五万円金貨と五千円銀貨、五百円白銅貨の三点セットの、俗に言う貨幣セット、これも何セットぐらい発行される予定なのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  55. 藤井威

    藤井(威)政府委員 おっしゃいますような御成婚記念貨幣のプルーフセットにつきましては、販売を検討中であります。これは造幣局で検討するわけでございますが、どの程度の量をつくるか、あるいはその価格をどうするか、そういうことにつきましては検討過程でありまして、まだ一切決まっておりませんし、私の方も報告を受けておりません。  いずれにしましても、プルーフ貨幣セットの価格等につきましては、もちろんコストを適正に反映したものにさせたいというふうに考えております。
  56. 日笠勝之

    ○日笠委員 突然何か口がかたくなってきたのですけれども、前回天皇即位のときにはプルーフ金貨は何枚だったのですか。大体それの横並びでしょう、二百万枚ということであれば。ちょっとお聞かせ願いたい。  それとあわせて、海外の在留邦人の方も、こういう国家的な慶祝行事発行される記念貨幣でございますから、欲しいという要望は当然あると思います。海外在留邦人だけとは限りませんけれども、海外用にはどのくらいの枚数を考えておられますか。もしまだ考えていないということであれば、天皇即位のときの金貨はどうであったか、あわせてお答えいただきたいと思います。
  57. 藤井威

    藤井(威)政府委員 まず、プルーフセットの、前回といいますか、天皇即位記念のときには、金貨のプルーフセットは十万セット、それから金貨白銅貨をセットにしたものを別途約十万セット販売いたしております。  それから、海外の需要にどうこたえるかということでございますが、これも配分、引きかえをどうするかという全般のやり方をまだ決定しておりません。もちろん海外での需要も考慮いたしまして、公平な引きかえが行われるような方法を考えたいと思っておりますが、現在のところは、まだ決めてございません。  昭和天皇御在位六十年記念の十万円金貨は、海外販売が約三万四千枚、天皇陛下の御即位記念十万円金貨は、約千三百枚を海外向けに配分したという実績がございます。
  58. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、最後にまとめてお答えいただきたいと思います。  一つは、このたびの記念貨幣発行した場合の俗に言う税外収入はいかほど見込まれるのかということ、既にお答えがあったかもしれませんが、再度確認したいと思います。  それから、長野オリンピックがございますが、この長野オリンピックなんかはいわゆる国家的行事ということで記念貨幣発行対象になり得るのかどうか、あわせで二点、簡略にお答えいただければと思います。
  59. 藤井威

    藤井(威)政府委員 最初の、これに伴います財政収入でございますが、もちろん今回の記念貨幣は財政収入を目的として発行するものではございませんけれども、結果的には収入になります。現在細かい計算をやっておる過程にありますが、現在までのところの大体大ざっぱな見積もりでは、約六百億円程度の収入になるというふうに考えております。  それから、長野オリンピックでございますが、もちろん基本は国家的な記念行事として閣議決定を経で発行するという記念貨幣性格に基づいて判断するわけでございますけれども、長野オリンピックは国際的なスポーツ大会でもありまして、国家的な意義を持つものだということ、あるいは前例等から見ましても、当然検討対象には上がってくるというふうに考えられます。  しかし、開催は平成十年ということで、まだかなり先のことでございますので、まだ現時点では具体的な検討に入るというのは時期尚早であろうというふうに思っております。
  60. 日笠勝之

    ○日笠委員 終わります。
  61. 藤井裕久

    藤井委員長 正森成二君。
  62. 正森成二

    ○正森委員 私どもは、皇太子と小和田雅子さんが結婚されること、憲法でも、婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立する、こうなっておりますから、二人が合意に基づいて結婚されることには何ら口を挟むものではないし、一般的に言ってはおめでたいことであります。しかしながら、宮澤内閣は、皇太子結婚に当たって、天皇家の私的行事である四月十二日の納采の儀を受けて、神事を含む一連の結婚儀式のうちの結婚の儀、朝見の儀、祝宴の儀を国事行為とする閣議決定を行いました。  しかし、国事行為というのは、憲法第七条の十で規定されておりますが、それは一定の限界があるはずであり、「註解日本国憲法」などでも、天皇の、あるいは天皇家の私的行事国事行為とすることについでは疑義が呈されております。特に結婚の儀などというのは、婚姻は両性の合意のみに基づいて行われるべきものなのに、それを一方の父親である天皇国事行為として行うなどということは道理にも合わないのじゃないですか。見解を求めます。
  63. 古居儔治

    ○古居説明員 三つ儀式国事行為とした理由でございますけれども、皇太子殿下の御結婚は、皇太子殿下皇位継承の第一順位者であるということ、それから我が国憲法皇位世襲制を定めているということ、それから国民関心が高く国民的慶賀の対象となるというものであることから、おっしゃいました一連の儀式行事のうち、その根幹をなす儀式を国の儀式としてお祝い申し上げることが適当であるというふうに考えられますことから、閣議決定をもって国事行為とされたものでございます。
  64. 正森成二

    ○正森委員 今の見解にまつわる議論については、現天皇皇太子のときの結婚に際して、一九五九年ですか、詳細な議論が行われております。ここにその議事録を持ってまいりました。それについて質問してもいいのですが、ほかに聞きたいことがありますので、我々はその見解には承服できないということを申し上げで、次に進ませでいただきたいと思います。  そこで、宮内庁に伺いますが、広く報道されているところでは、小和田雅子さんの祖父、江頭さんだそうでありますが、一時期、現在のチッソの社長だったということから、宮内庁は、水俣病の原因となった企業であることから皇太子妃にはふさわしくないという判断だった、水俣病発生後の就任であったとしても、御夫妻で熊本に行ったとき歓迎してもらえるかなどの意見が説得力を持ったと報道されております。別の報道では、雅子さんの件はおあきらめくださいと皇太子様に当時の宮内庁首脳が伝えたこともあった、一月八日付毎日新聞、ということが書かれております。こういうことはあったのですか。
  65. 古居儔治

    ○古居説明員 お尋ねの経緯でございますけれども、昭和六十一年以降、小和田雅子さんが皇太子妃候補の一人として皇太子殿下と親しくお会いになられた時期があったわけでございますけれども、昭和六十三年に雅子さんが外交官補として海外研修のために英国に赴任をされ、一方で、今おっしゃいましたように、江頭豊氏がチッソの社長等の地位にあったということについて、やはり慎重を期すべきではないかというようなことから、御交際は一時中断という時期もあったわけでございます。  しかしながら、その後、江頭豊氏につきまして、チッソの社長等に就任されました時期等の関係からいたしますと、水俣病の発生に直接関係がありませんし、また刑事法上の責任もないということが明らかであることを考慮し、また一方で皇太子殿下の強いお気持ちを体して、小和田雅子さんを皇太子妃候補としたところでございます。
  66. 正森成二

    ○正森委員 一般的に言って、宮内庁などが結婚する当事者双方の責任に属さないことについてとやかく言うなんということがそもそもおかしなことであります。  同じく別の報道によると、今言われたあなた方の婚姻差し支えなしという理由のほかに、「ここ一、二年、水俣病訴訟では和解の動きが出ている。宮内庁のトップは実はこの動きを気にしていた。和解のメドのついた時が、皇太子妃候補雅子さんの復活のひとつの節目とみていたようだ。」これは、一月九日付東京新聞にそういう記事が出ております。  それを裏書きするかのように、三月二十五日の東京新聞の夕刊でありますが、「熊本地裁での水俣病三次訴訟の判決で国や県の責任が認定されたことについて、皇太子さまと小和田雅子さんの「結婚の儀」を控えた宮内庁では、「被害者が救済される形で早く決着してほしい」との立場から、ホッとした雰囲気が。」と、こう書いてあり、「雅子さんが、皇太子妃候補として挙げられた当初から、祖父がチッソの幹部だったことがネックとなり、今回のお妃内定へと進展した背景には、訴訟が和解へと進みつつあることなどの事情もあったとされている。」こうした上で、「ある幹部は」宮内庁の幹部です。「この日の判決を聞いて「これが、各地の訴訟の和解につながっていけばと思う。個人的には、責任うんぬんではなく、これ以上、国は被害者を苦しめではいけないと思う」」と、宮内庁にしては珍しくいい発言をしておりますが、こういう事実はあるのですか。
  67. 古居儔治

    ○古居説明員 そういう事実があったということは確認いたしておりません。
  68. 正森成二

    ○正森委員 たまにこちらが褒めると、そういうことは確認していないと、こう言う。  そこで、厚生省と環境庁、来ておりますか。  そこで伺いますが、ここに和解期日の調書を持ってまいりました。福岡高等裁判所で、原告側と熊本県やチッソの間での和解の交渉が行われまして、和解協議の結果を取りまとめた調書がここにあります。  それを見ますと、福岡高等裁判所での原告側と熊本県、チッソの間での三十一回に及ぶ和解協議を踏まえて、裁判所は和解救済対象者の範囲と一時金の額を内容とする最終和解案を示しております。これは七ランクに分けたものだそうであります。これは水俣病被害者救済の解決の全体像を示したものである、こういうように評価されているはずであります。  非常に重要なことは、水俣病の被害者の高齢化が進み、死亡者が続出していることであります。裁判で救済を求めている全国の原告約二千人のうち、提訴後二百十九人が死亡し、裁判所による和解勧告後わずか二年間でも、十日に一人の割合で七十三人が亡くなっております。被害者の悲痛な叫びである、生きているうちに救済をという声にこたえるのが人道的にも政治的にも緊急に求められていると言わなくてはなりません。  政府はこれまで、九〇年十月の水俣病に関する関係閣僚会議で、当事者双方の主張に大きな隔たりがあることを理由に、和解に応じるのは困難としてきましたが、しかし、その後この福岡高等裁判所でのこういう交渉結果あるいは今回の熊本地裁の判決等々から、明白な状況の変化があることは極めて明らかであります。また、宮澤総理は昨年一月の通常国会で、水俣病問題の早期解決に努力する旨を答弁しております。  私は、国の環境行政に責任を負う環境庁、あるいは水俣病に深く関与がある厚生省が、この水俣病についてこの機会に全面的な解決に国として踏み切ることが非常に大切だ。こんな金貨などをつくって六百億円金を稼ぐというようなこととか、あるいは国事行為を行うとか、そのほか何か記念切手を出すとか、そんなことよりもこの方がよほど国民に対して歓迎されることではないですか。  もちろん、天皇や皇族は国政に関する機能を有しないから、これについてとやかく言うことはできないでしょう。しかし、政府としては、この問題に関係がなくても、水俣病患者に対して早急に解決のために一歩を踏み出すということは絶対的に必要じゃないですか。見解を伺います。
  69. 清水博

    ○清水説明員 和解の問題につきましては、訴訟の争点が究極的には何らかの損傷が生じた場合に、どこまで国民全体の負担によってそれを補てんすべきかという行政としてゆるがせにできない重要な問題を含んでおりますので、交渉等により妥協を図るという性質のものではないと考えております。このような和解に関する考え方は、御指摘のように、平成二年十月にまとめました水俣病に関する国の見解に述べられているとおりでありまして、和解勧告に応じることは困難であると考えております。  環境庁といたしましては、これまで公害健康被害の補償等に関する法律等に基づきましで、二千九百四十五名の患者の方々を認定し、医学を基礎として公正な救済を推進してきたところであります。また、平成四年度から、水俣病とは認定されない方々に対する対策も含めて水俣病総合対策事業を実施しておりまして、既に三千名に上る方々が医療費や医療手当の支給を受けておられます。  環境庁といたしましては、これらの行政施策の推進によりまして、水俣病の早期解決が図れるよう最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。
  70. 織田肇

    ○織田説明員 和解の問題につきましては、訴訟の争点であります国の責任の有無が法に基づく国の行政のあり方の根幹にかかわる問題でありまして、和解勧告に応じることは困難であると考えている次第でございます。
  71. 正森成二

    ○正森委員 何だ、二つの省庁とも血も涙もない答弁じゃないか。しかも、環境庁が交渉によって解決すべきことではないなんて言い切るというのは、政府説明員という正式の答弁能力を持たない人間の言い方としても、言語道断じゃないか。  大体、宮澤総理が通常国会で水俣病問題の早期解決に努力すると答弁しているじゃないですか。早期解決に努力するというのは、これは、最高裁まで行けば十年、二十年かかるから、和解で解決するということを示唆したものだというのは、政治家にとっては当然のことだ。水俣病患者をあれだけ大量に発生させ、しかも解決されていないという責任を感じるどころか、ぬけぬけとそういうことを言うのはもってのほかだ。  そういうことをやりながら、結婚がめでたいなどといって、天皇家の私事についで金貨を出して六百億円ももうけるというようなことは断じて賛成できないということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  72. 藤井裕久

    藤井委員長 中井洽君。
  73. 中井洽

    中井委員 このたびの皇太子殿下の御成婚、まことにお喜ばしく、国民の一人として素直にお祝いを申し上げたい。国の儀式として決定されたことを当然のことと思い、同時に、それを契機に記念金貨発行されることを私どもは率直に賛成をしていきたい、このように考えております。  それだけ申し上げれば法案審議もしなくていいようなものでありますが、せっかくの機会ですから、一、二お尋ねをいたします。  金貨銀貨白銅貨三種類が発行されるわけですが、十三日の国の儀式決定を待ってこういう法律をおつくりになって審議をするわけですから、金貨の発売が秋口になる、このことはわかります。しかし、せっかくの記念金貨銀貨白銅貨ですから、何かの方法で、同じ時期に一斉に売り出す、こういったことをお考えにならなかったのか、お答えをいただきます。
  74. 藤井威

    藤井(威)政府委員 先生のおっしゃいますように、金貨は秋口、銀貨白銅貨は何とか御成婚の前後には間に合わせるということで、今一生懸命造幣局で努力をしております。  確かに、同じ時期に、それもできるだけ御成婚の御日取りの前後にというのは理想ではございますけれども、かなり我々も一生懸命そういう日程も検討いたしましたが、やはり金貨というのは、法律が必要であるということももちろんございますけれども、やはり技術的にもかなりの期間を要する、かなり難しい作業も中に入っているということで、どうしてもこういう時期にならざるを得ない、これは技術的な問題としてならざるを得ないというのが結論でございました。  過去の御即位記念とか、あるいは御在位六十年記念というような金貨につきましでも、時期的にいいますと、実際の行事が行われたときと必ずしも一致して発行することができないでいたということもございます。いろいろ検討いたしましたが、やむを得ないというふうに我々は判断したところでございます。
  75. 中井洽

    中井委員 次は、前回の御即位のときにも質問申し上げたと思うのですが、デザインであります。  おめでたいツルで統一をされて、立派なデザインだとは思いますけれども、世界じゅう、こういう人、個人に関することで出される記念金貨銀貨というのはすべてその人の肖像画だ。天皇陛下の御即位あるいは御在位何周年のときにも、どうして陛下のお顔を刻まなかったのか疑問に思います。また今回、皇太子様、雅子様のお顔を刻まずにツルにされた。ここら辺がどうも素直に結構だなと言えない、ひっかかる部分であります。  専門家の中でいろいろ議論されたということでありますが、初めから肖像画を入れるということが何らかの理由で抜かれているのじゃないか、こんなふうにさえ邪推をせざるを得ないのであります。この点の経過について、またどういう考えで肖像画を金貨にあるいは銀貨に刻むということを決めなかったのか、お答えをいただきます。
  76. 藤井威

    藤井(威)政府委員 御在位六十年の記念金貨発行いたしましたとき、あるいは御即位金貨発行いたしましたとき、いずれも有識者の懇談会という懇談会を開きまして、各方面の有識者の御意見を伺いました。そのときから懇談会の中で、デザインをどうするかということの一環といたしまして、御肖像を使うということに関する意見を強くおっしゃる方もいらっしゃいましたが、それは日本の文化的な伝統、社会的な伝統からいって適当ではないという意見を強くおっしゃる方もおられまして、結局どうも総意として御肖像というふうにはならなかったという経緯がございます。  今回も、御成婚に際しての記念貨幣の検討の一つの重要なテーマといたしまして、デザインをどうするかということを御議論をいただきました。  要するに、有識者懇の総意としてのデザインに関する意見は、御成婚お祝いするにふさわしい華やかで親しみやすい図柄ということに関して意見の一致を見たということでございまして、御肖像をその中に、そういう図柄として採用するかどうかというところまでいきますと、やはりどうしても意見が分かれてしまう。我々見でおりましても、大体半々ぐらいの意見でございました。  こういうような御意見を踏まえまして、瑞鳥であるツルをデザインとして採用するということを現在考えておるわけでございます。懇談会の統一した一致した意見としての、華やかで親しみやすい図柄ということにぴったりだというふうにも思いますし、また平成五年の歌会始の皇太子殿下の御歌「大空に舞ひ立つ鶴の」という、いわば心がちほとばしり出るようなお喜びのお気持ちがこのデザインに反映できるのじゃないか、こういうこともございましてそういうふうにしたいと考えておるわけでございます。
  77. 中井洽

    中井委員 立派な有識者の方が御議論になったということですが、文化的に伝統的に肖像画を刻むのがなじまない、こうおっしゃるけれども、かつて一万円札には聖徳太子がずっと使われておったのであります。  先ほど日笠議員の質疑の中で、海外へもお売りになる。海外の人はこんなツルを見たって何がおめでたいのか、何が記念になるのかさっぱりわかりません。とり年だからという今冷やかしがありますが、そういった意味でもっと素直に世界に通用する発想で私はおやりいただきたい。今後またこういうのが何年先にあるかわかりませんけれども、ぜひ御議論をいただいて、素直に肖像画が採用されるように。何か漏れ承ると、情けない古い話を私どもは聞かせていただきます。そういった思いがなく、素直に喜べるようなコインであるように御努力をいただきたい、このように思います。  もう一つ、この機会ですから。  過日から一万円のにせ紙幣が、しかも両替機だけだます紙幣が発見されて貨幣に大変な不安を与えでいるわけであります。現在大蔵省として、両替機を持っておる銀行等に対してどういう対応を指示なさっているのか、お聞かせください。
  78. 寺村信行

    ○寺村政府委員 十二日に事件が発生をいたしまして、翌十三日に当局といたしましては、全銀協を通じまして各銀行に注意を促したところでございます。全銀協におきましては、翌十三日に傘下め金融機関に対しまして注意喚起の文書を発出いたしました。  翌十四日、警察庁から防犯体制の強化と捜査協力の依頼がございます。監視警戒の強化と警察への通報、それから自動両替機の点検ということを内容とした協力依頼がございましたので、その旨さらに財務局等を通じまして、文書によりまして傘下の金融機関に同じような趣旨の注意喚起を行ったところでございます。  各銀行の対応でございますが、両替機を一時使用停止をしたというところ、全店を通じまして停止をしたところ、あるいは地域を限定して停止をしたところ、あるいは行員の立ち会いのもとで両替機の使用を続けでいるというような対応をしているような、それぞれの対応でございますが、こういった趣旨で今対応をしているというところでございます。
  79. 中井洽

    中井委員 貨幣の両替機というのは世界じゅうあろうかと思いますが、機械による貨幣の両替というのは多分日本だけじゃないか、それぐらい日本はいろいろなものに機械を使っているわけであります。  今回はその機械にだけ通用する、目で見たらちょっとおかしいとわかるにせ札だということで、極めでユニークであります。マスコミ等は大変な金がかかってもうからないのじゃないかと言っていますが、私はもうかっでいるのじゃないかと思う。逆に既存の機械やら使ってもうけでいるのじゃないか、これすら考えます。そういった意味で、この両替機の交換等を含めて、精度アップを含めて、どういう対応をおとりになろうとしているのか、これが一つであります。  それからもう一つは、日本はこれだけ機械化あるいはコンピューターを使用している社会であります。一昨年の銀行不祥事、例えば尾上縫という人の犯罪でも、あるいは赤坂のどこかの銀行の支店の課長ぐらいがやりました数千億のにせ預金証書でも、コンピューター過信であります。コンピューターを使うということは確かに人手減らしになり、すばらしく事務を遠くすることでありますが、同時に犯罪がやりやすくなる、あるいは違った発想の犯罪が出てくるということであります。  お金を扱う大事な、しかも信用の根幹となります金融機関でこういう機械化がどんどん進むときに、コンピューターに対する犯罪防止、こういったものを初めから考えてやっていかないと何が出てくるかわからない、そういったところで少し甘いのじゃないかという感じを抱いております。これらの二つの点について、大蔵当局としてどのようにお考えになって対応をどうされておるか、お答えをいただきます。
  80. 藤井威

    藤井(威)政府委員 最初に御指摘のありました両替機のチェック機能の問題等につきましては、各省庁の問題を持ち出すつもりはございませんけれども、やはり通産省の行政指導ということであろうかと思います。通産省から我々が受けております報告では、今回のにせ一万円札事件を踏まえて、日本自動販売機工業会に対し、通達を出したという報告を受けております。  その概要は、偽造紙幣問題にかかわる対策委員会の設置、専門技術者間の協議体制の確立等、適切な対応を図られるように通産省が自動販売機工業会に要請するというものであるというふうに伺っております。
  81. 寺村信行

    ○寺村政府委員 コンピューターを利用いたしました新種の犯罪が出てくるという可能性は十分これからも考えられるわけでございまして、そういった可能性に対しまして、信用秩序の維持を図るという観点から、銀行行政当局としても引き続きいろいろな対策を検討してまいりたいと考えでおるところでございます。
  82. 中井洽

    中井委員 まあ結構です。  最後に、今回の記念金貨等の発行で約六百億円の国庫への収入があるというお答えがございました。ここに日笠さんあるいは中村さんと私と、与野党の減税協議のメンバーがおります。私どもは当然、これは減税の財源として交渉をさせていただこうと考えているところでありまして、大蔵当局におかれましては、ゆめゆめこのお金を他へ安易に流用をなされない、こういうことを要望いたしまして、質問を終わります。
  83. 藤井裕久

    藤井委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  84. 藤井裕久

    藤井委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  皇太子徳仁親王婚姻記念するための五万円の貨幣発行に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  85. 藤井裕久

    藤井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 藤井裕久

    藤井委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  87. 藤井裕久

    藤井委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  88. 藤井裕久

    藤井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の会計、税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤恒晴君。
  89. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 私は、この二、三日話題になっております円高問題もありましで、大蔵大臣の見解をぜひ明らかにしていただきたい、こう思うのでありますが、昨日来もいろいろとやりとりをされておりますので、ごく簡単にお尋ねをしたいと思います。  振り返ってみますと、八五年のプラザ合意以降のいわば不均衡な貿易の是正あるいはまたドル高の是正、さらには進んで金利の引き下げをやりながら円高が進行し、株価が暴騰し、土地の取引が活発になってこれまた値段が暴騰する、こういうことを八九年ごろまでずっと流れとしては繰り返してきたわけでありますが、八七年ですか、たしか六兆円ぐらいの経済対策が打ち出された。当時の成長率の見通しは二・二%ぐらいだったかどうか、ちょっと記憶にありませんが、そんなような状況だったと思うのです。  当時と景気の向かっている方向はちょっと違うけれども、しかし過去の実例を見ますと、どうも景気が上向きかげんに入るのではないかというときに対策が打たれて、景気が下降あるいは底に来ているときになかなか打てない、過去のいろいろなデータを見ますとそういう傾向になっているのであります。  今景気対策、十三兆円ほど打ち出されている中で、どういう景気回復の見通しかということではそれぞれの議論がありますけれども、ここに来でまた円高要因ということになりますと、輸出産業と国内を中心とする企業との間ではかなりの経営上の問題を引き起こす、こういうことになってくるわけであります。  G7なども控えて、一体我が国の為替のレベルがどの辺にあればどういうふうな展望を持てるのか。過去には百五十円台になったらどうなるとか、いろいろな議論があったわけでありますが、今回は百十円台、しかもそれを割るのではないかといったようなこともあって、ここ二、三日大変議論の多いところでありますが、一言今後の対応なり見通しについてお伺いをして、お願いをした課題に入っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
  90. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 御指摘のございましたように日本経済はいろいろな形で動いておりますが、当面の円高の問題でございますけれども、大変思惑的な動きである、しかも神経質な動きを示しておる、こういうことでございますし、先般の日米首脳会談の後の記者会見で突如クリントン大統領から発言があったというような話でございまして、それをきっかけとして思惑的に円が買い進まれたというような動きがあります。我が国としては、やはり為替相場がファンダメンタルズを反映しで安定的に推移していかなければならないものだろう、こういうふうに考えておるところであります。  一般的に申しまして、為替相場が思惑等によって短期間のうちに大きく変動するということや不安定な動きが起きますことは好ましくないことである、そういったときには適時適切に対処をしてまいらなければならない、こういうふうに考えておるところでございます。
  91. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 後ほどの質問の中でも若干触れますが、具体的な問題に入っていきたいと思います。  九一年事務年度の税務調査にかかわって使途不明金等の問題を中心にちょっとお尋ねをしたいと思いますが、先般新聞で公表されました使途不明金は、資本金一億円以上の企業を調査した結果、そのうちの一一・七%の企業五百五十四社から自己否認分で三百九十六億円というような数字が明らかにされ、そのうちで建設業が百八十九億円ということであります。自己否認分の解明率というのは二四%ぐらいということで百三十九億円、そのうち交際費、リベート、手数料等々がありましで、俗に言うところのやみ献金が二十四億円というようなことが報道をされております。  そこで、法務省の方にお尋ねをしたいと思うのです。  わかり切った問題でもありますけれども、報道によりますと例年六千万円、これは自治省に届けた分だけてありますが、六千万円以上の政治献金をしている大手ゼネコンの社長が、政治献金の扱いについては担当重役に任せているから私は知らないという発言をしたという報道がなされております。  担当重役がやみ献金、つまり使途不明金というものを不明のままに、明らかにしないままに決算諸表をつくるということになって、それが株主総会でも承認されていくということになりますと、その取り扱った担当重役というのは商法違反ということになるのではないかというふうに思うわけであります。  ところが、実際問題としてはそういうことは余り適用されたケースがないようにも伺うわけであります。それは捜査当局が、おまえのところの決算は違法性があるからといってどこへでも捜査に入るわけにはいかぬ、内部告発なりあるいはどこからか告発でもなければ捜査に入ることはできないということに実はなるわけであります。そうではありますけれども、こういう法律違反と思われるようなものがあると私は思うのでありますが、なぜそれが適用されないのかということについてちょっと所感を伺っておきたい。  さらに、今度の佐川、竹下あるいは金丸、こういった一連の事件についてこうした点から、つまり政治献金をやみ献金という形でやっていた、そういう部分について、どのような捜査状況にあるのか、差し支えなければ中間状況を御報告願いたいと思います。
  92. 大泉隆史

    ○大泉説明員 お答え申し上げます  ゼネコンの取締役が政治献金という形で会社の資産を支出したという問題についての刑事上の問題でございますけれども、具体的事案における犯罪の成否につきましては、委員御案内のように、捜査機関が所定の証拠に基づいて判断すべき事柄であるということで、法務当局としては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、一般論として申し上げますと、特別背任罪ということが考えられるわけでございますが、株式会社の取締役等が、自己の利益あるいは第三者の利益を図る、あるいはまた、殊さらに会社に損害を加える目的でその任務に背いて会社に損害を加えたという事実が認められるかどうかというところが問題であろうかと思います。  またさらに、今後の捜査の見通し等についてもお尋ねでございますけれども、これにつきましては、事柄の性質上答弁を差し控えさせでいただきたいと存じます
  93. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 そこで、大蔵の方にお尋ねをいたします。  今一般論として答弁がありましたけれども、今お話がありましたようなケースというのは、税務調査の中で、そういう商法違反の犯罪的な捜査をするわけではないけれども、税法違反ということだけれども、使途不明金を具体的に解明をしていく過程の中ではそういう問題に突き当たっているはずだと実は思うわけであります。そういうことになりますと、私はそういう問題があると思うのだけれども、なぜ国税庁は告発をしないのかというふうに思うわけですね。いや、実は今日までの国税調査の中で告発するような要件は一件もございませんでしたということなのかどうか、そこら辺のところは大蔵省の税務調査を通してどうなのか、はっきりさせでいただきたいなと思うわけです。  つまり、ただいま一般論としてお話があったようなことは税務調査を通して発見することができなかった、だから告発もしていない、あったけれどもやっていないということなのか、そこら辺はどうなのか。ちょっと御答弁をいただきたいと思います。
  94. 野村興児

    ○野村(興)政府委員 お答えいたします。  ただいま、税務調査の過程でいろいろ犯罪が認知されるのではないか、そういったものの告発はどうなっているのだ、こういうお尋ねかと思います。  御承知のとおり、税務職員につきましては、所得税法等によりまして、国家公務員法に定められているより、より厳しい守秘義務が課せられているところでございます。税務調査上知り得た事実を第三者に通報することはその守秘義務に触れることになるという問題があるわけでございます。  また、それ以上に重要なことは、守秘義務を守ることによって長年培われてまいりました納税者との信頼関係。私ども、調査におきまして取引の非常に機微にわたる部分、あるいはプライバシーにわたる部分、いろいろな分野があるわけでございますが、そういったものを開示しない、第三者に通報しないということにより信頼関係を保ってきている、税務調査の円滑な遂行に努めているわけでございます。  そういった守秘義務の話と、またそれに加えまして、税法上の質問検査権の行使につきましては、「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」こういった規定が所得税法及び法人税法に具体的にございます。こういったようなことから、税務調査によって知り得たいろいろな事実、こういった事柄関係当局に通報することについではおのずから消極的とならざるを得ない、こういった事情にありますことを御理解いただければと思うわけでございます。
  95. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 守秘義務のことは私もよくわかるのですが、そうしますと、国税調査を通して追徴課税して、税金さえ取ればいいということになるわけでございますが、申し上げましたように、商法違反のような事実があっても、それは犯罪捜査が目的じゃないからということで消極的にならざるを得ない。こういうことになりますと、商法にある規定は、何かの事件が発端となって捜査の手が入らない限りは重役等は何らの処罰も受けない、こういうことになるわけですね。  現在、税法上の守秘義務の関係でそうならざるを得ないというのであれば、これは改めで対応しなければいかぬと思いますが、そういう点について、例えば使途不明金の中には、税務当局が解明していく過程でわいろ性を帯びたものが出てくることもあるだろうと私は思うのですね。そういう問題も含めて、課題としてこれから私も検討させていただきたいと思います。  ところで、公取の方にお尋ねをいたします。  今日の建設業界の状況は、まさに談合団体と言っても差し支えないと思うのですね。一連の事件はまさにその談合の中で行われた。一連の事件というのは例えば山梨の問題、あるいはリニアのトンネルの問題とかも含めて、私は総体的にそう申し上げるのでありますが、当然これら一連の事件の中では談合罪があるのではないか、あるいはまた不公正取引として公取委が調査に入るべき内容があるのではないか、こう思うのでありますけれども、どういう方針を持っておられるのかお尋ねをしたいと思うのです。  とりわけ今度の事件で私は、公取委が出した指針というものが実は談合を許可する指針になっているのかなと、八四年の指針というものに非常に疑問を感じて読んでおります。  確かにあの前文には、企業者を対象としてこの指針を出す、こう言っておりますけれども、とりわけ中小企業ということで、特に断り書きをして前文が書いてある。そうして、さまざまな情報収集活動ができる。その収集活動を行った情報に基づいて研究会をやることができる。こういうことになりますと、私はかつて業界の方から、今は談合の集まりはやらないで研究会といってやっているのだよという話を聞いたことがございますけれども、まさに談合というものを名称を変えて許可するような指針が出ている。  私は、やってはならないことを書くのが法律であり、法律を具体化するためにやってはならないことを明示するというのが法の建前だろう、こう思うのでありますが、やってよろしいことを指針として出している。具体的に読むと実は談合をやってもよろしいというふうに、業界は悪く解釈していると言っているけれども、実際は素人が見てもそう解釈できる、こういう指針が出ているわけですね。  そういう指針の問題などにも触れながら、公取は、談合罪あるいは不公正取引の実態についで、一連の事件に今後どう取り組んでいくお考えか、お尋ねをしたいと思います。
  96. 上杉秋則

    ○上杉説明員 御説明申し上げます。  入札談合、これは私どもの言葉では、官公庁等が入札を行うに当たりまして入札参加者側があらかじめ受注予定者を決定するという行為を指しておりますけれども、これは入札制度の根幹を揺るがすものであるとともに、競争制限行為を禁止する独占禁止法に違反するものでございますので、公正取引委員会としては従来から積極的に入札談合の摘発に努めできたわけでございます。  公取としまして、独占禁止法に違反する疑いがあるとする具体的な端緒となる情報に接した場合には、必要な権限を行使いたしまして調査を行うことにしておりますけれども、他の入札談合事件同様、山梨等で報じられている問題につきましても公正取引委員会として強い関心を有しておりまして、鋭意情報収集に努めているところでございます。  二番目にお尋ねの昭和五十九年の建設業ガイドラインでございますけれども、これは、昭和五十四年八月に作成いたしました事業者団体一般に係るガイドラインの特則といいますか、建設業における一定の状況を説明するために特につくったものでございまして、この一般ガイドラインの中では、今申し上げました、受注予定者をあらかじめ決定するような入札談合行為は独占禁止法に違反するものであるということが明示されております。  それから、この建設業ガイドラインの中におきましても、そういう場合はこの限りではないということが明示されておりまして、仮にガイドラインの中で明示されておりますような情報交換活動が行われた結果として受注予定者が決定されるような事態に至れば、これは独占禁止法に違反するものとして厳正に対処するわけでございます。  ただ、一部にこの建設業ガイドラインの読み方につきまして、必ずしも私どもの申し上げていることとは異なる見解があるようにも闘いでおりまして、もしこのようなことがございますれば、これは私どもがこのガイドラインの中身について正しい理解を求めている努力が不十分だということにもなりますので、正しい理解が得られますようその趣旨について周知徹底を図り、入札談合行為の摘発に努めてまいりたいと考えております。
  97. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 今徹底を図りという答弁がありましたが、この指針によりますと、例えば「競争入札において」という言葉を使っていますね。  競争入札と言っても、今一般競争なのか指名競争入札なのかということになりますと、もうほとんど指名ですよね。指名ということが現実には行われていて、これは指名の場合は適用しませんよとは書いてないのです。だから、どの場合でもこれは適用されるガイドライン、こういうことだろうと思うのです。だから、この指針に基づいて特定の人たちがやることができるようになっているのですよ。しかも、予定工事の情報、労賃、価格の積算基礎というものまで全部情報を収集することができることになっている。  ということは、この工事はどういう積算で幾らで仕上げてということが全部わかるということですね。しかも、それらについて積算の基準や施工の技術、調査研究を行ってもよろしいとなっているわけです。そうしたら、談合はもう十分にできますね。談合はできる。談合はやらないでしょうが、談合と言えるようなことができるようになっているということで、私は、指針というのは、どのようにでも読めますという解釈をされたときに、それに抗弁できないような内容ではいけないのではないか。そういう意味で、今後についてはこの指針の改正を行うべきではないか、私はこう思いますが、いかがでしょうか。
  98. 上杉秋則

    ○上杉説明員 御説明申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、このガイドラインの趣旨というものにつきましては、私ども当初から一貫した説明をしてまいったわけでございますけれども、一部の条項につきまして、必ずしも私どもの解釈とは異なるような解釈をするものがいるということにつきましては、そのような状況があってはならないわけですから、その趣旨については徹底したいと考えております。  それから、今御指摘のような点につきましても、公正取引委員会として大事に受けとめまして、今後の運用に生かしていきたいと考えております。
  99. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 建設省にお尋ねをいたしますが、使途不明金というのは、結局はお金を隠すということですよね。お金を隠すわけじゃなくて、出た金を隠すということだけれども、お金を隠すということになると思うのです。  そういうお金を隠すという行為の中に、例えば建設業の場合が中心だろうと私は思うのですが、国税庁の調査の結果あるいはまたいろいろな方の使途不明金の内容の一部分として、地域対策費というようなものもあるとかあるいはリベート、手数料といろいろありますが、地域対策費というものがあるというお話がございます。そういうものについて若干お尋ねをしたいのであります。  私は逆のことを言いたいのですが、地域対策費というのは、例えば土木工事のような場合に、果たして、相手側の利益になるから、相手側に迷惑がかかるから、相手側が税金を払わなければならぬようになるからこれは明らかにできないというようなものなのだろうかということなのです。  例えば、私の地元に今一億五千万トンのロックフィルダムの建設が始まっておりますけれども、もう朝は四時ごろから真夜中までダンプは通る、それからダイナマイトで発破はかける、振動で眠れない、ほこりが立ってどうしようもない、河川の流れをしょっちゅう変えるものだから、伏流水がかれて井戸水が飲めないとか、こういう問題があるわけですね。これに例えば地域対策費として出したら、これは所得になるのでしょうか。  現に井戸がかれるのですね、あるいは騒音でどうにもならない、振動でこの前は何かが壊れたとか言っていましたね。すぐ近くですよ、五百メートルくらいのところでダイナマイトをかけるわけですから。そういうものは私は、いわば具体的、実際的な損害賠償、迷惑料だと思うのです。  これは一般論として、地元対策費とか地域対策費というのは我々も通常使ってまいりましたけれども、やはり工事見積もりの中にこういう経費が入っていないときには、企業が、請負工事者が、何とか出さざるを得ない。そのときそれは使途不明金、自己否認でやらざるを得ないのですか。それは発表したときに相手側に税金がかかるのですか。これは国税の方、通告しておらなかったのですが……
  100. 野村興児

    ○野村(興)政府委員 突然のお尋ねでございますが、一般的に申し上げますれば、例えば迷惑料に相当するようなもの、これは所得を構成するというよりも、むしろそういった性格からいいまして課税の対象にはならないかと思いますが、いわゆる賠償金あるいは一括したつかみ金的なもの、これは当然所得を構成するという考え方のもとに課税の対象としているところでございます。
  101. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 私は一般的な賠償金ではなくて、今具体的な事実を、器物が壊れたとかほこりが口の中に入ってこうだとか、具体的な事実を申し上げでいるのであります。  ところで、それぞれの工事過程において諸掛かり費というものがある程度の割合で積算根拠の中に入っているのじゃないかと思うのです。だから地域対策費というのはどういう意味がわからぬけれども、通常は入っているものだと私は思うのです。だとすれば、あえて地域対策費を自己否認するということは、それは、例えば悪く解釈しますと、その地域にいる政治家に献金をして、その政治家が地元の人間を説得してとか、こういう格好になっていくのだろうか、こう思わざるを得ないわけですね。  そういうことについては、これは税務上の問題ではなくて、いわゆる工事の適正なあり方の問題として、あるいはまた地元に迷惑料などを払わざるを得ないというのであれば、損害賠償をやらなければいけないというような問題があるならば、やはり積算の諸掛かりの中にきちんと計上させていくということが必要だと思うのだけれども、それ以外のものでこういうことがあるとすれば、これは非常に問題なのでありますが、その辺についてちょっと建設省に御見解を伺っておきたいと思うのです。
  102. 城処求行

    城処説明員 お答え申し上げます。  建設省は工事を発注するに当たりましては、予算決算及び会計令によりまして、取引の実例価格に基づきまして予定価格を定めることと規定されております。  この予定価格は、工事を行うに当たりまして必要な材料費、労務費等からなります直接的な工事費と、工事の準備費あるいは機械の運搬費といった共通仮設費と呼んでおりますが、それからさらには、工事を管理するために必要な現場管理費、それから一般管理費等ということで構成されておりまして、それらを合計して定めているわけでございます。  それで、工事施工に伴いまして発生します事業損失を未然に防止するための仮の設備、例えば今お話がございましたような防じんのための工事用道路の舗装でありますとかトンネル発破の騒音を防ぐための防音壁、こういった費用につきましては、今申し上げました共通仮設費の中に計上することとしております。  さらに、通常発生いたします物件を毀損したときの補修費でありますとか、振動や濁水による事業損失に係る補償費、この明らかなものにつきましては、現場管理費といった中に入れて計上しでいるところでございます。
  103. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 この際、公共事業を円滑に推進するために、地域対策は行政上責任を持っていく、こういう点をきちんとしていっていただきたいと思います。  そこで大臣にちょっとお尋ねをしたいのでありますが、これは大臣の個人的な所感でも結構なんでありますが、政治献金というのは私は参政権の行使の一形態だというふうに思うのです。つまり一般の個人が基本的人権として認められている参政権、選挙権や被選挙権、あるいはその他の政治結社云々といったことも含めてでありますが、要すれば、政治献金というのは参政権行使の一形態だと思うのです。  しかし、そういう政治献金といったようなものは基本的な人権であって、現在は法律的に認められておりますが、本来法人等に認められるべき性格のものではないのではないかと私は思うのですね。つまり政治献金をするというのは、企業の定款なり規則その他に政治活動をやりますとか政治献金を行いますというようなことは、企業の目的外行為ではないのかと思うのです。そういうふうに見てまいりますと、法人の権利能力を定めた民法にも反しますし、公序良俗に反するというふうにも私は思うのですね、基本的人権を侵害することになりますから。  そういう意味で、今は腐敗防止ということで政治献金の議論がされておりますが、私は、本来的には企業の政治献金というのはあってはならない、実行されてはならないのではなくて法制的にもあってはならない、実はこう思うのであります。この点について、私見でも結構でございますので、お尋ねしたいと思います。
  104. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 御指摘のように、大蔵大臣としてでなくて一人の政治家個人としての話だということでございますから、私も率直に申し上げたいと思います。  かつて八幡製鉄の判例が出ましたが、あの中にもありましたけれども、企業の献金がすぐに否定されるものではないという考え方が今の法律の建前では出てきているだろうと私は思いますしかるがゆえに、政治資金規正法で企業献金というものが今のところ認められている、こういうことだと思います。  先生の御指摘は、そもそも参政権ということからしてどうであるか、個人的なものだけがしかるべきであっで、企業献金あるいは団体献金というものは否定されるべきではないか、こういうふうな御指摘だろうと思うのですね。思いますが、お互い社会生活をしておりますし、企業なり会社その他は一つの社会的存在でありますから、それが政治献金を出してはならないという理屈にはならないのではないかな、私はこう思います。  そういった意味で、私は一概に否定されるべきものではないと考えますけれども、やはりそのときに、国民の批判を招くような形のものは慎まなければならない。これは出す方もそうでありますし、もらう方の我々も、やはりそういったものについでは批判を招かないようなことでやっていかなければならないのではないかな、こう思っておるところであります。  現在、政治改革特別委員会で各党間でいろいろと御議論されているところでありますし、自民党案では、政治資金の調達を政党中心のものとしようというような形で出ておりますけれども、私は、基本町な考え方は今申し上げたようなことであるということで御理解を賜ればありがたいと思います。
  105. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 いささか意見が違いますけれども、そこで、自治省にお尋ねをいたします。  やみ献金が国税調査で明らかになった場合は、従来自治省に届けている報告の量的な問題と、それから質的な部分で違反している内容が当然そこには含まれでいるということになると思うのですね。  例えば、私は数字をはじく材料がありませんけれども、大手ゼネコンで六千万円台の資金を政治資金報告書に出しております。しかし、毎年盆暮れに一千万ずつやっていますとか、その他明らかでないものを出しでいるということになりますと、当然一億円を超える、こういうことになるわけであります。  残念ながら、自治省は、どのくらいの資金を企業が出しでいるかということを精査していないというふうに私は思いますけれども、そういう算定調査ぐらい、つまり、書面の上で算定調査ぐらいはあってもいいのではないかと思うのです。そういうことを調査してあれこれするという権限は自治省にはない、こういうことでしょうが、しかし、書面上、あるいは事件が明らかになって、そこが幾らやみ献金を出していたかというのと公に出されてきたものとを足して、これは一億円を超えているとか、あるいはその他、資本金や何かにおいて基準がございますね、そういう基準を超えているとか、そういう算定調査ぐらいあってもいいのではないかというふうに思うのです。  さらには、質的な問題ですけれども、これは今度の特別委員会の中でも議論されていないのですね。これはざる法だと私は思っているのですけれども、国の補助金なり助成金をもらっている企業は出してはいけませんということになっているわけです。ところが、国の補助金、助成金というのは無数にあって、どういう助成金なり補助金をもらった企業は政治献金ができないかということは明らかでないのですね、ただ括弧書きで、研究費云々は別ですよということは書いてあるけれども。それでは何か規則とか細則にあるのかというと、ない。  結局はそれぞれの企業が、自分のところは国から補助金なり助成金をもらっているから政治献金はできないのだということで、それぞれの出す側が自主的に判断せざるを得ないという格好である。昨今、雇用調整助成金なるものを受給または支給することに決定するとか、いろいろあります。その他、今までの補助金も助成金もあります。  私は、こういう問題を考えたときに、今まではかなりの企業において恐らく質的違反の献金というのはあったのではないか。このあたりどうなっているのか、考えがあればお尋ねしたいと思いますが、対策としては、やはり自治省が、こういう性質の補助金、助成金をもらっている企業は献金できませんという基準を出して、そして金を出すところ、各省庁ではそれを具体的に明示する、こういうようなことをやらないと、質的違反を問うということはこの政治資金規正法ではできないのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  106. 大竹邦実

    ○大竹説明員 お答え申し上げます。  第一点の調査に関する件でございますけれども、委員御指摘のとおり、政治資金規正法では、私ども自治省に与えられます権限はいわゆる形式審査と言われるものでございまして、提出された書面等において誤りがある場合、そういった外形的な、明白にわかるものにつきましての訂正等はできるわけでございますけれども、いわゆる政治資金の実態にわたって調査する権限は自治省として与えられてないわけでございますので、御了解いただきたいと思います。  それから、第二点の補助金との問題でございますけれども、現在、政治資金規正法では、補助金等を受けた会社の政治活動に関する寄附を禁止しているわけでございますけれども、委員御指摘ございましたとおり、自治省といたしましては、個々の補助金の内容等については実際承知している立場にございませんし、また、しておらないわけでございますけれども、補助金の所管省庁等からの照会には適宜対応させていただいているところでございます。  いずれにいたしましても、現在、政治資金規正法の改正問題、特に企業献金のあり方をどうするかにつきましては政治改革特別委員会で御論議されているところでございますので、この御論議の動向を見守りながら対応してまいりたいと考えている次第でございます。
  107. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 いや、この部分については、私の記憶では、政治改革の改正法律案の中には入ってないと思うのですね、量的な問題は入っていますけれども。だから、政治改革特別委員会でやっている法案の問題ともちろん関連をいたしますが、申し上げましたように、基準を明示し、そして助成金あるいは補助金については、出す側、各省庁がきちんと、具体的、個別的に、これを出している企業は政治献金できませんよということを明示することをぜひやっていただきたいということを宿題として申し上げたいと思うのです。  今度の特別委員会ではその部分がまだ法律案になっていませんので、法律案なり、またその施行規則で出てくるのか、政令とかいうもので出てくるのかわかりませんが、そういうことで積極的な役割を果たしていただきたい、こう思います。  ところで、最後に大蔵省にお尋ねをいたしますが、使途不明金の問題は、やみ献金という問題もございますけれども、さまざまな問題をこの中に内包するわけですね。今度商法改正の問題も提起をされておりまして、企業情報の開示という問題がいろいろ議論されると思いますけれども、やはり社会的な存在だという、先ほどありましたけれども、その社会的存在が株主をも欺瞞して、わけのわからない金をつくり出していくということは私は問題だと思うのです。そういう意味で、使途不明金という制度をこの際やめるべきではないかと私は思うのです。  諸外国の例でも、例えば、やめてはいないけれども、相手側が利益と見られた場合には、その分の所得税なりがかかる。明らかにしないならば、追徴金だけではなくて、例えば相手側が払わざるを得なくなるであろう所得税まで出す側の企業に負担をさせる、こういうことの厳罰をもって、厳罰といいますか、重い追徴金を取ることをもって使途不明金というものを極力抑えでいくというやり方をしているところもあるわけですね。  だから、そういう意味で、私は廃止をすべきだという立場でありますけれども、縮小させるためにどうしていくのかということについで今一例を申し上げましたが、そういう対応を具体的におとりになる考えがあるかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  108. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 税制サイドからの対応についてのお尋ねかと存じますが、このさまざま御議論ございます使途不明金の問題は、結局法人税の計算に当たりましで、所得金額を確定します場合に、何を経費として認め、経費として認められればそれを控除しますし、経費として認められなければそれを控除しないという形で所得金額が確定し、それに対して課税が行われる。つまり、経費というものをどのように見るかということによりまして事柄を尽くす、そういうやり方で対応しておるわけでございます。  不正な行為がございまして、税を免れる、その結果としまして国家に損失を及ぼすといったようなものにつきましては、これをとがめるという対応を当然伴っていくわけでございますけれども、そういう次元で税務計算を確定していく。それ以上の話ということになりました場合には、いかなる問題が生じるであろうか。  今外国の例が出ましたけれども、フランスに特殊な制度があるということは確かにそのとおりでございますが、通常、アメリカにしましても、イギリスにしましても、ドイツにしましても、やはり税務計算上、使途不明金というものは存在しておるようでございまして、その処理に当たりましては、それを経費として認定し得るか、経費として認定し得ない場合には、所得計算上、益金として課税するということが限界であるという立場をとってきておりまして、それ以上のところに踏み込んでおらぬわけでございます。  それ以上のところに踏み込むということになりました場合に、これは表現が適切かどうかということはあろうかと存じますけれども、一つのモラルの世界の問題に税がどこまで入っていけるかということになっていくのではないかと思います。モラルの世界に税が入っていく、何についてどこまで入っていくかということは非常に大きな問題であろうと私は思います。慎重に検討されなければならない問題だというふうに思います。  ただいまのお話の中に、いわば代替課税的なものをもう少し考えてみてはどうか、一歩歩を進める上で考えてみてはどうかというような御提示もございましたけれども、代替課税と申しますのは、一種の推計によりまして課税をするということになるわけでございますけれども、我が国の所得課税の体系というのは、所得あるところに課税ありということで、実際に所得があった人を特定し、その所得を確定して課税をするということに徹しておりまして、そういった代替課税的な行為が税の世界の中にばらばらと入ってくるということにつきましては、これは税体系そのものとして、全体としてどう考えていぐかというかなり基本の議論を要する部分であろうというふうに思います。  そのようなことがございまして、この使途不明金の問題につきまして、そうにわかに妙手を見つけることができないというのが今日の状況でございます。
  109. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 次の問題に移らなければいかぬのでありますが、今税がモラルの問題にどこまで入れるかという問題だというふうにお話がありましたけれども、支出の日とか支出の金額とか支出先というのは、これはそういうことは記帳しなければいけないということに法律でなっているのではないですか。支払い先は、支出先は書かなくても、日にちと金額さえ書いておけば伝票はそれでいいのだ、こういうことにはなっていないでしょう。それは税法上の問題じゃないですよ。商法上の問題ですよ。  だから、そういう問題が一方であり、一方では税の問題でモラルのようなところまで入れないとか、先ほど法務省にも見解を伺いましたが、さまざまなところで、自分の領域で問題を全部とどめてしまうということになれば、悪の道は栄える、こういうことになるわけですね。そういう意味で、使途不明金というのは税法上もあるいはまた商法上も十分に検討して、廃止の方向に向かっていくべきだということで、とりあえず申し上げておきたいと思います。  それから、消費税の問題にかかわって若干お尋ねをしたいと思います。  実は消費税も、税務調査をいたしますと、かなりの申告漏れというか脱税というか、そういうのがあるようですね。かなりの金額になっているわけです。消費税は調査した範囲内だけで、一〇%の調査ですか、五百四十九億円、追徴を含めて六百二十二億円、こういう申告漏れという税務調査の結果が出ております。  ところで、生協連での調査ですけれども、九二年一年間の分でありますが、三百八十四世帯を対象に調査をした結果、年間平均十二万四千三百六十一円の消費税を払っている。平均しまして年収の大体一・五%に当たる。これを年収別で見ていきますと、一千万以上の世帯では負担率が一・三%、三百万ないし四百万の世帯では二・五%、こういう結果が出た、こういうお話でございます。  それから、内税か外税かという問題についても調査をしたけれども、八九年の導入時点では、大体平均五〇・二%の内税状況であった。今日段階では五八・八%の内税化というふうになっている。特にそれはレストランとか飲食店に多いようだというのが生協連の調査の結果であります。  私どもは、政府も当然認めているわけでありますが、消費税の逆進性の解消ということが一つの重要な課題でございます。そういう点からいたしまして、政府が公約をしてまいりました、飲食料品の非課税というような公約をやってまいったわけでありますが、現在実行されておらない。この統計からどのような見解をお持ちか、お尋ねをしたいと思います。
  110. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 消費税が逆進的な税であるということが言われますが、確かに所得に対します税負担の割合が逆進的な傾向を有しますことは事実でございます。ただ、税の負担能力をはかります尺度というのは所得だけによるわけではなく、消費というものも一つの重要な尺度でありまして、消費税というのは、この消費というものに対して見ます場合には、比例的な負担を求める税でございます。  それからまた、所得に対して確かに逆進的であるということでございましょうが、およそ所得再分配に係ります問題と申しますものは、消費税という道具だけで、一つの税目、そういう特定の税目のみで判断いたされるものではございませんで、所得税も含めました税制全体はもちろんのこと、社会保障制度等の歳出面を含めましたトータルの財政として御判断いただくべきものであるというふうに考えておりますが、そういったことを考えますと、今少し具体的にお示しがございましたような計数につきましても、もう少し広くお考えをいただけないかという気がするわけでございます。  平成二年分の所得階級別の税負担表というものを見てみますと、直接税たる所得税を含めました税負担率というのは、各分位階層ごとに計算することが可能かと存じますけれども、第一分位から第十分位までとりまして計算してみますと、第一分位で六・八%、第十分位で一七・二%、そういった年収階級別の税負担率というものを計算することもできますし、確認することもできます。したがいまして、税制の世界だけではございますけれども、税制の世界だけで見ましても、トータルとしましては依然としてかなりの累進性が保たれているという感じが私どもはいたします。  それから、先般の税制問題に関します両院合同協議会の議論を経まして、住宅の家賃でございますとか、社会福祉事業の非課税追加、非課税品目の追加がございまして、こういったことによりまして逆進性が緩和されているという面もあろうかと存じます。
  111. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 いろいろ所得税がどうとかというお話がありましたが、逆進性という問題についてはこの大蔵省が出したパンフレットの中でも、食べるとか生まれるとか学ぶとか住むという問題で逆進性の緩和に努力しなければいかぬと、こう書いてあるのですよ。だから、消費税がどうとか今特別伺ったわけではなくで、先ほど申し上げた統計の中でどうかということなんであります。  ところで、今私が申し上げましたパンフレットの中に実はこういうふうに書いてあるのですね。食料品は十月一日から小売店では非課税になるようにします。それから、国の取り分の消費税については、消費税収は福祉に優先して充てると法律で明らかにすると、こう書いてあるのです。こういうパンフレットを出しておるのですね。まあ食料品の問題は与野党協議でいろいろやったから結果としてだめになったというような議論ならそれは答えていただかなくて結構です。  しかし、福祉に優先して充てるように法律で明らかにしますということを書いたのは、これは何も与野党協議の議論ではなくて、政府みずからがパンフレットに書いて国民に知らしめたものなんです。これがそうなってないのですけれども、これはどう理解すればいいのですか。
  112. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  税制改革法の中で、「国及び地方公共団体は、今次の税制改革の趣旨及び方針にかんがみ、福祉の充実に配慮しなければならない。」五条でその旨規定されております。この規定の趣旨を踏まえまして、消費税収のうち、国分につきましては、社会保障関係費のうち、高齢者福祉等の公共福祉サービスの分野に優先的に充当していくという考え方をとっているところでございます。
  113. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 こういうふうに法律で明らかにする、こうなっているものですから、法律に明らかにするということはそれを裏打ちする行政行為がなくちゃいかぬわけでしょう。法律では書いたけれども、行政行為は何もなくていいんだということにならないでしょう。つまり、予算でどうするとか、そういうことが具体的に裏打ちされなけりゃいけないわけですよね。法律というのはそのために決めるのでしょう。一般論としては、最初に消費税が打ち出されたときにそんなことが必要な理由としてるる述べられてきたのですよね。  大体私は消費税の法律を読んでみたけれども、別に福祉に優先して使いますなんで書いてないですよ。今五条とかなんとかおっしゃられましたか。だから、見直しの段階であえでこういうことを書いだというのは、私はそれだけの責任を持ってもらいたいということでパンフレットのお話を出したわけであります。仮に法律に書いてあるんだというなら、それじゃ具体的に行政上あるいは予算上保障される状況にあるのかといったら、そうではないというふうに申し上げておきたいと思います。  ところで、みなし仕入れ率の問題についてちょっとお尋ねをしたいのです。  九一年の十月でみなし仕入れ率、その前ですね、改正になったわけですが、これは四段階になったのは御案内のとおりでありまして、このこと自体は一歩前進なのでありますが、租税法定主義といいますか、そういう立場から見れば、仕入れ率を、原価をみなしで決めるなんてこと自体が問題でありますけれども、それをさらに政令で決めるというのも、これまた問題ではないのかと実は私は思うのです。  それは税の公正化を図るという立場から、仮に消費税を現存させるとするならばその点は改正されるべきではないのかな、私はこう思うのですね。そういう点についてどう思うのか。  さらにまた、例えば建設業についで言えば、第三種ということで今度は七〇%のみなしになったのですね。これは二段階段階での試算でございますけれども、民間の機関が十七万社を対象に調査をした平均数値がありまして、それによりますと、土木コンクリート工事業の実際の仕入れは五七%ということであります。現在は、これは第三種ですから七〇%ですね。これを当時の、当時のというのは二段階段階で試算をいたしますと、簡易方式を採用した場合には八十九万円の税で済む、通常方式でやると百八十八万円の税になる、したがって差益は百万円になる、こういうことなんですね。  現在第四種と言われている六〇%のみなし率の中に組み入れられている業種を見ると、業種によって違いますが、実際の仕入れ率は二〇%ないし五〇%というように言われております。例えば二〇%ということになりますと、差は四〇%ですよね。これは大変な差です。全体の七百七十二業種中、みなし選択をとった場合に有利になるのは九四%の業種、不利になるのは野菜とか米とか牛乳などを売っている小売店、こういうものが不利になるという試算が出ているわけです。  サービスをも含めて、広く、浅く課税をするという消費税のよさというふうに政府は盛んに強調してまいりましたけれども、この四段階修正でも、私は消費税については廃止をすべきだという立場でありますけれども、仮に現在の四段階でも、このみなし仕入れ率というのは非常に問題を残しているという意味で、多段階方式にすべきなのではないか。これは、消費税は廃止をすべきだけれども、実際の、現在の制度そのものであっても、多段階にすべきじゃないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。     〔委員長退席、柳本委員長代理着席〕
  114. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 二つの御指摘をいただいております。  一つは、このみなし仕入れ牽制度を政令で定めでおりますことにつきまして、租税法律主義上、問題があるのではないかという御指摘でございます。  一般的には、その法律にあります事項を法律に規定するか政令に規定するかという判断に際しまして、国会が唯一の立法機関でございます旨を定めた憲法趣旨を損なうことは許されず、その許される範囲内で初めてその政令の委任が可能であるというふうに心得ておりまして、白紙的な委任でございますとかそういったものは許されない。ただ、具体的、個別的に事柄によりまして政令に委任するということは許されるものと解しております。  税法につきましでも、憲法八十四条に租税法律主義の原則というのが明定されておるわけでございましで、その点が厳格でなければならぬと思っておりますが、この場合におきましても、技術的、専門的な事項を一々法律に書き込むわけにいかないということで、お許しをいただき、個別、具体的なものをかなり政令にゆだねているという事実がございます。  消費税法の規定の中でも、ただいま御指摘ございました仕入れ率の定め方につきまして、「事業の種類ごとに当該事業における課税資産の譲渡等に係る消費税額のうちに課税仕入れ等の税額の通常占める割合を勘案して政令で定める」という書き方で政令委任が行われておりまして、先ほど先生からお話がございましたような現在の運用になっているわけでございますけれども、これが租税法律主義に照らしで不当であるというふうに我々は考えておりません。今回の内容それ自体がかつて議員立法によりまして全会一致で改正を見たものでございまして、その合意内容を受けた措置というふうに私どもは受けとめさせていただいておるわけでございます。  それから、いま一つございましたみなし仕入れ率を適用するという場合に、要するに実態に即したものでなければならないという御指摘かと存じます。  以前消費税がスタートしました直後の状況というのは、余りにも粗っぽ過ぎるということで、現に、やや細かくなりますけれども、課税売り上げ、例えば簡易課税制度におきまして、実際の課税売り上げに係ります税額に対する課税仕入れに係る税額の割合がみなし仕入れ割合よりも小さい場合、つまり、マージンが大きい場合には、結果としての納付税額が実際の課税仕入れに係る税額をもとに計算しました税額より小さくなってしまうということがあること、これは否めないことである。  そこで、できるだけ実際に即したものにしようということで、データに基づいて今のみなし仕入れ率が検討されたわけでございます。これはそういうお気持ち、つまり実態に即したものにしようという気持ちで四段階の新しい構成に衣がえされたわけでございましで、その気持ちは先生の御指摘の気持ちに沿った流れになっておるというふうに考えます。今後ともこの問題というのはそういう考え方で運用されていくべきものだというふうに私どもは思っております。
  115. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 最低の段階が六〇%、しかし、実際の仕入れ率が二〇%台の業種がたくさんあるということを見た場合に、その趣旨に沿っているということではないということを私は申し上げておきたいと思うのです。  なぜそういう問題をお尋ねするかというと、消費税を導入された後の議論があったころに、政府は国庫に納まらない税はどのぐらいあるのかというようなことについで、当時、免税問題あるいは簡易選択問題等々約四千八百億円ぐらいだろう、こういうふうに述べておられたのでありますが、現在の段階では、もう実施をして三年、四年ですか、だっている今日にあっては、この国庫に納まらないお金というのはどのぐらいあると試算しておられるのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  116. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 消費税創設当時の試算としましてそういった数字をお示ししたことがあろうかと存じますけれども、当時、平成元年度、二年度の予算におきまして消費税収を見積もります際に、何分課税実績がございませんでしたことから、マクロの経済統計をもとにして計算をせざるを得なかった。マクロの経済統計をもとにしまして計算します場合に、国内の付加価値額から免税点制度でございますとか簡易課税制度でございますとか、そういった特例によります課税対象額の減少額を差し引きまして課税対象額を決めまして、そこから税収を計算する、こういう段取りでやったわけでございます。  課税対象額から外れます付加価値額として、当時計算しましたものが十六兆円ございました。今御指摘のお話というのは、この十六兆円に恐らく三%を乗じましたもの、これがそういった特例が全くなかった場合と比較しまして、そういう特例が設けられたことによって生ずると見込まれた国庫の理論上の減収額としてお示しをしたものではないかと存じます。  しかし、考えてみますと、この減収額というのは今申しましたような二つの概念の差額として算出されたものでございまして、例えば転嫁を行っていない事業者、つまりよく益税ということが言われますけれども、その益税が発生するようなことのない事業者というものもたくさんおありになるわけでございまして、そういったものにつきましても一種の仮定計算で減収額を計算していたわけでございます。したがって、今の実態でそれがどうなっているかということを計算することは非常に困難でございまして、その復そういった計算はいたしておりません。  と申しますのは、三年度以降の予算の編成に当たりましては、消費税収の見積もりを行いますのに課税実績が備わっでまいったものでございますから、その課税実績をもとにして次の年度を推計するということをいたしておりまして、したがいまして、そういった計算をやっておらぬわけでございます。
  117. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 大変御丁寧な答弁をいただいたのでありますが、それほど計算ができないみなし仕入れ率を使う、計算はできない、試算はできないという非常にさまざまな矛盾を含んだ税制度であるということだけを私は申し上げておきたいと思うのです。  時間がないから、私は税の還付の問題、一兆二千四百億円ぐらい予定をしている還付の問題についても実はお伺いしたかったのでありますが、また丁寧な答弁をいただいておりますと次の質問ができなくなりますので、省略をします。  ただ、申し上げておきたいのは、例えば輸出還付税の場合に、これは当たり前のものであってというふうにお考えでしょうが、しかし、現場、つまり実際の取引過程ではさまざまな多段階の取引がございます。  多段階の取引があるというのは、下請、孫請といったような取引があって、これらの過程で、実際は税は課せられでいないけれども税が課せられたようにしで納品をするというようなものがずっと積算されて輸出製品ができ上がるということでございますから、輸出還付金の中には非常に矛盾を含んだ税が還付されることになるということだけを指摘しておきたいと思います。  そこで、消費税の問題の最後にお尋ねをいたしますが、私は、この消費税というのはさまざまな矛盾を含んでいる税制であるというふうに思いますし、逆進性も解消されておらないという点からいって、これは抜本的な対策をとるべきであって、私ども社会党としては、当面飲食料品だけは非課税にしなさいという要求を持っております。  総理は、所得税減税の議論の過程で、今国会におきまして消費税の増税を強く示唆してきているわけであります。しかし、この消費税議論のときに、当時の村山大蔵大臣が、少なくとも三%は今世紀中には上げないという衆議院予算委員会の答弁をしているというようにも、ちょっと速記録全体を私は読んでおりませんが、そういう話も聞くわけであります。  いずれにしましても、来年に向かってこの税制改革議論が盛んになると思いますけれども、消費税の増税はやらない、私は大蔵大臣にこういうことを御答弁いただきたいのですが、いかがお考えでしょうか。
  118. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今佐藤議員の御議論をいろいろと聞いておりまして、大変いろいろな角度から御議論がありました。消費税につきましてもその逆進性がどうであるかとか、いろいろな議論がありました。  今お話がございました中で、所得税の問題を考えていかなければならないな、こういうふうな話がありましたのは、やはり税の基本問題を議論しなければならないということだろうと思うのです。そのときにやはり考えなければなりませんのは、資産、消費、所得というような多面にわたりましていろいろな形のものを考えていくということが税のあるべき姿だろうと思うのです。  と同時に、簡素にして公平な税制体系をどうつくっていくかというのがやはり税の基本的な考え方でありますし、我々も考えておりますのは、高齢化社会が到来してくる、そのときに一体どういうふうな負担をしていくのかな。それは、単に租税だけではなくて社会保険料負担というようなものもありますから、そういったことも含めて、どういうふうな形でやらなければならないのかなということを議論していかなければならない話だろうと私は思いますので、今後のあり方につきましては、今申し上げましたような観点から議論をしていかなければなりませんし、所得税もやはりその中の一環として議論されるべきものではないかな、私はこう思っておるところでございます。
  119. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 私は、消費税の増税をやる前に不公平税制、例えば、利益であるものを利益でないようにみなすとか、経費でないものを経費であるようにみなすとか、さまざまな制度がございます、これは一々申し上げませんが。そういうものをはじいてまいりますとかなりの金額が出てくるわけでありまして、いうところの不公平税制、つまり税制の全体的な洗い直しの中から、こうした矛盾を含んだ消費税というのは解消していくという方向に尊いでいくべきではないかということを申し上げておきたいと思います。  本当は新総合経済対策についてお尋ねをしたかったのでありますが、時間が詰まりましたので、要点だけ申し上げます。  私は、二月十七日の大蔵委員会におきまして、昨年の八月の経済対策に引き続いて今年度、つまり新年度にいわゆる新指定単の問題、これをどうするのだということになりましたら、来年度からはずるずるとやるようなことはいたしません、こういう答弁をいただいたわけです。今度の経済対策の中では引き続き実施をしたい、こういうふうになっているわけですね、文章上。  これは二兆八千二百億円というものを予想されているのだろうと思いますが、引き続きというのとずるずるやらないという答弁のつながりをどう理解すればいいのか、ひとつお答えをいただきたい。  それから、公的資金の出動ということについては、私は疑問を持っている立場でございますので、NTT株の値上がり問題あるいは公的資金の出動という問題を時系列的に並べまして、いろいろな雑誌、新聞等々の報道を時系列的に見でいくと、なぜこのNTT株にしかるべき立場の人間が動いたのか、こういったような報道もございますが、そういう問題はちょっと省略をしまして、今度の経済対策の中ではさらに四兆六千億ぐらいですか、財投の追加をやる、こういうことになっておりますね。  ところで、この財投の投入の問題でありますけれども、現在の段階で見てまいりますと、これは私のはじきが正確かどうかわかりませんけれども、財投の原資となる残高は、郵便貯金が百四十兆円ぐらいなのかなということでずっとはじいでまいりますと、年金、簡保などを含めて二百八十兆円台ぐらい、それから、いわゆる資金運用部等から財投ということで融資をされている金額はどのぐらいかということになりますと、二百五十兆円。ということになりますと、単純に比較をして、その金額差は非常に詰まってきているわけです。  しかも、財投の運用に当たっては、最近は新規原資の増加率というのは、郵便貯金が五%台ですね、それから年金は零コンマという状態ですね。しかしながら、回収金を充当する率合いというのは、九二年が前年比一七%、九三年が前年比二二%増。つまり、財投資金の原資を回収金に依存するという状況が進んでいる。加えて、資金運用部の原資となる郵貯、年金、簡保の総量に対して融資残高が非常に大きくなっている。こういうような状況を見た場合に、金が必要なときは財投だ、さあ事業だから財投だということでいいのだろうかという問題が出てくるだろうと思うのです。  それで、御案内のように、財投は税金として集まった金をやるわけじゃございませんで、国民から預かっているお金であります。それだけに、株の運用あるいは財投に頼り過ぎるというのは、今後の財投のあり方に、財投のあり方というのはこうした運用の幅の問題ですね、こういうあり方に問題を引き起こすのではないか、私はこう思うのでありますが、お答えをいただきたいと思います。
  120. 藤井威

    藤井(威)政府委員 二点御指摘がございました。  まず、新指定単の問題でございますが、昨年の八月の総合経済対策におきまして、当時の株式市場の動向等をベースに考えまして、株式市場の活性化あるいは健全な株式市場の発展ということを目指しまして、株式組み入れ比率の制限をしない指定単、指定単そのものは従来からあったわけでございますが、そういう新しい新指定単というものを設けて、これを信託銀行の信託に預託をいたしまして、信託銀行のファンドマネジャーの自主的な判断によって運用をしてもらうという仕組みをつくって、それで全体としての新指定単の枠は二兆八千二百億円ということを予定したわけでございます。  その後、平成五年度の財政投融資計画を考えております過程におきまして、具体的には去年の十二月でございますが、その段階におきましてもなお株式市場等さらに引き続いて活性化が必要な状況であるというふうに我々は判断をいたしました。平成五年度の財政投融資計画の中の資金運用事業のうち二兆八千億円を引き続き、平成五年度の四月からこの財政投融資計画が国会で承認されましで、その後これを二兆八千億円の枠で運用しようという計画をつくっておったわけでございます。  今先生から御指摘がございましたが、その後の状況を見まして、現在の新たな総合対策、この前決めました新たな総合対策におきましては、平成五年度の財政投融資計画で予定しておりました二兆八千億円という枠を動かさないで、それを適切に運用しでいくことによってさらに株式市場の活性化あるいは健全化ということを確保していきたい。そういう意味でこの前決めたばかりの新しい総合経済対策で文章にしたわけでございまして、新しく何か追加したということではないわけでございます。  それから、去年の二月に新指定単というものを今後どう考えていくのかという御質問先生からございまして、今申し上げましたように、当時の株式市場や経済の状況をベースに考えた制度ではございますけれども、やはり基本的には従来型の指定単に比べますと、この新指定単の枠組みというものはやや臨時異例の措置であるという性格が強いことは否定できないわけでございまして、こういう臨時異例の措置を例えば六年度以降もずるずると続けでいくというのは今のところ考えていないというふうにお答えしたわけでございます。  一般論としまして、来年度以降の扱いにつきましては、そのときどきの金融財政状況がどうなっているか、株式市場がどうなっているか、そういうことも含めて判断しなければいかぬわけでございます。  それから二つ目の問題、回収金の問題と財政投融資の問題がございました。  財政投融資の置かれております現在の状況は、確かに先生がおっしゃいますように非常に残高としても規模が大きくなってきでおりまして、資金運用部資金という財政投融資計画の基本をなします資金、それに一部財投協力をいただいております簡保資金、それに政府保証債等を全部含めてお預かりした公的資金を安全、確実に運用するという立場で財政投融資計画をつくっておるわけでございますが、非常に規模が大きくなっておりまして、過去に実行いたしました融資が回収されて返ってくる、またそれが次の融資資金として回転していくという形で、現在かなりの部分が回収金という形の原資になっておることは事実でございます。  全体としての財投資金の量が非常に大きくなってきている、それに合わせまして、いわゆる財政投融資計画が持つ資源の配分機能でありますとか、あるいは景気調整機能でありますとか、そういうものも大きくなってきておりまして、その政策的な重要性ということが非常に大きくなってきておることは事実でございますが、その中での回収金の割合というのは、かなり高率ではございますけれども、急激にその割合が上昇しているというような現状ではございません。最近では大体四割くらいのところでほぼ回収金が横ばいで推移しているというふうに考えております。  もちろん、新たに入ってまいります郵便貯金のお金あるいは年金のお金、過去に実行いたしました融資の償還金である回収金、これはいずれも財投の貴重な原資でございまして、適切な運用に心がけでいきたいというふうに思っております。
  121. 佐藤恒晴

    ○佐藤(恒)委員 財投の回収金は大体年間十四兆円くらいの回収金という状況で、しかしながら新たな資金として使う場合には、その回収金が二四%も投入されるということは異常な状態であることだけは間違いないわけでありますから、今後の財投の運用については、今後改めてまた議論の機会をいただくことにしまして、終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  122. 柳本卓治

    ○柳本委員長代理 小野信一君。
  123. 小野信一

    ○小野委員 昨日、日本銀行の政策委員会の月報をちょうだいいたしました。経済概況は、こう書いてあります。「最近のわが国経済をみると、公共投資が増加し、住宅投資も総じで堅調な動きを示しているが、設備投資が減少を続けているほか、個人消費も減速傾向にあることから、最終需要は全体として引続き停滞している。このため、生産活動の抑制基調が続く中で、企業収益は悪化傾向を辿っており、企業マインドもさらに慎重化している。」こう書いてあります。  ところが、先日経企庁の長官があるところで、三月に底入れをしたのではないだろうか、はっきり断定したわけじゃありませんけれども、そういう見通しを話しております。この日銀の報告書は残念ながら二月の資料をもって分析したものでありますから、現在の景気の状況がこのときよりは少なくてもどの部分でどれだけよくなっているのか、その辺の大臣の認識をお聞きしたいと思います。  というのは、現在の景気が底なのか、それとももう一段下がっていくのか、ここを底として上昇に向かうのか、こういうことに国民も大変関心を持っておるものですから、大臣の認識をまずお伺いをいたしておきます。
  124. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 いろいろな数字があると思いますから事務当局から御説明を詳しくさせますが、私の持っております認識は、二月ごろ、また三月ごろに比較いたしまして、いろいろな点の数字を見ておりますと少しよくなってきたな、こういう感じはしておりますが、果たしてそれが上向きにずっと続いていくのかどうか、私は正直なところまだ自信を持てないというのが実感でございます。いわゆる景気の谷であるとかどうだという御判断は経済企画庁の方でするわけでございますけれども、私は、まだそこについてどうだという判断を今の段階でするだけの自信はないというのが正直なところでございます。  そういうふうなことですから、新しい政策もやっていかなければならない、念には念を入れてと申しますか、そういった感じで私はやっているところでございます。  今先生御指摘になりましたようなこともありますから、事務当局から詳細を御説明させたいと思います。
  125. 日高壮平

    ○日高政府委員 ただいま大臣がお答えいたしましたように、景気の谷なり山という判断は、政府部内では最終的いわば事後のものとして経済企画庁が判断をするということになっておりますので、その具体的な判定については御答弁を差し控えたいと思いますけれども、ただいま委員御指摘のように、基本的な見方として政策委員会の月報にありました、いわばことしの前半を占う意味でも申し上げますと、例えば公共投資なり住宅はある程度堅調であるけれども、いわばGNPの大宗を占める個人消費なり民間の設備投資についてはまだまだ低迷を続けているという基本的な考え方は、大筋のところで私どもも同じような見方をしているところでございます。  先般の景気対策、この間決定させていただきました新総合経済対策の決定の背景にあります考え方も実はそういうことでございまして、いわば年度の前半は大どころである個人消費なり設備投資といったものがぐいぐいと景気を引っ張り上げるような力がない、そういう状況でございますので、公共投資なりあるいは堅調を続けている住宅投資である程度景気を支えていく必要があるだろう。そうこうしているうちに年度の後半に向かえば、そういった個人消費なりあるいは設備投資についても明るさが出てきて回復の軌道がより確かなものになっていくだろう、そういう意味合いを込めて今般の景気対策を決定させていただいたわけでございます。  そういう意味で今回の景気対策のいわば重要な点と申し上げますのは、その規模が非常に大きいという点ももちろんございますが、それだけではなしに、特に年度の後半以降景気をよりしっかりとしたものとするためには今のうちに、つまり早目に決定をし早目に実行をしていくことが大事であるということで、今回の景気対策の持つ重要性というものもそういうところにあるのかなというふうに考えておるわけでございます。
  126. 小野信一

    ○小野委員 日高さん、十二月に十兆七千億円の補正予算を組みましたけれども、この一-三月期にこの予算が実質経済成長率にどれほど寄与したと計算をいたしておりますか。
  127. 日高壮平

    ○日高政府委員 先生御承知のように一-三月のいわゆるGNP統計、QEと申しておりますけれども、これが最終的に発表されますのは本年の六月でございます。したがいまして、補正予算によって追加をされました前回の公共投資の追加が、一-三月にどれだけ景気を押し上げているかという数量的なものは現段階では何とも申し上げられないわけでございますので、その点は御理解をいただきたいと思うわけですが、いずれにいたしましても補正予算の成立が十二月の十日でございましたから、そういう意味で申し上げますと、実際の数量面で見ますれば、かなりの部分が一月以降に出てきているということは間違いないだろうと思います。  GNP統計では申し上げられませんが、例えば公共工事の請負金額の数字で申し上げますと、十一月なり十二月は実は前年に比べて一けたの伸びにとどまっておりましたけれども、一月以降それが二割台あるいは三割近く伸びるということで、実際問題として補正予算によって追加された公共投資が事実上、一月以降かなりの勢いで景気を押し上げているということは、こういった数字からもうかがえるところでございます。
  128. 小野信一

    ○小野委員 日高さん、平成四年度には三・五%の経済成長率を目標としておりました。ところが、十二月に十兆七千億円の補正予算を組みましたが、一・六%の実質成長率に下方修正をいたしました。三・五の目標に対して十兆七千億円の補正をして一・六%に下方修正をしたとすれば、当然一-三月期に十兆七千億円の景気対策はこれだけ押し上げましたよと理論的に数字が出なければ、一・六%の下方修正の数字ははじき出されないはずだと私は思うのです。  ただ、実際の問題として、一―三月期には年度末として十兆七千億円の中から投下してどれだけそれが消化されたのか、それは大変難しい問題ではありますけれども、実際結果が出なければわからないとはいいますけれども、一・六%に下方修正したときに既に一-三月期の寄与率は理論的にははじき出しでおらなければならないし、はじき出しておったと私は思うのです。  ですから、それが間違ったから足を引っ張るとか批判するということはいたしませんから、当時の状況の中でどれだけを予想したのですということぐらいは説明してもいいのじゃないかと私は思うのですけれども、いかがです。
  129. 日高壮平

    ○日高政府委員 昨年十二月の政府の経済見通しを策定する際に、御指摘がございましたように、当初の見通し三・五%を一・六%まで下方修正をさせていただいたわけでありますが、これは十兆七千億円の効果も見込みながらも、さらにそれを上回るような形で個人消費なり設備投資といった国内の他の民間需要が大幅に下方修正せざるを得なかったということによるわけでございます。  その背景としては、いわゆる株価とか地価の大幅な下落、そういったものが実体経済に大きな影響を与えた、いわゆる資産デフレの側面ということもあったのは否めないわけでございますが、そういったこともございまして下方修正をさせでいただいたわけであります。  御指摘がございましたように、今の状況、つまり十-十二月までで判明しているGNP統計の数字から推計をいたしますと、一-三月は、私どもとしては十-十二月期よりはさらに悪化しているという感じは持ってはおりませんけれども、実際問題として一・六%の実績見通しを達成するのは甚だ困難であるというふうに考えているわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、実際にどれくらいのものが一-三月に消化をされ、それがどれだけ押し上げたかという数量的な見込みにつきましては、ただいま申し上げるような状況にない、その点だけ御了解をいただきたいと思います。
  130. 小野信一

    ○小野委員 どうも私には、十分理論的に算定をしておったのだけれども、当時の見通しとかなり食い違っているために発表しかねるというような理解の仕方しかできないということを申し添えておきます。  そこで、平成四年度実質経済成長率のげたが一・一%ございました。目標は三・五%であります。したがって、十二月の補正予算で十兆七千億円を成立させて実施をする、そうすれば当然実需寄与度が出てくるはずだというのが私の考え方であります。  そうしますと、もし十兆七千億円の補正予算が一-三月期で〇・九%実需を押し上げた、こう仮定いたしますと、実質的な平成四年度の数字は〇・七%ということになります。そうしますと、目標三・五%の実に五分の一であります。もし〇・五%しか成長しなかったとすれば、七分の一であります。補正予算を組んで一・六、比較する場合に、私は補正予算を組む前の数字で比較しなきゃならないと思うものですから、五分の一、多く見ますと七分の一というまことに大きな見込み違いをなし遂げた、そうなってしまったということでございます。しかも一・六%の実現が大変難しいということになりますと、平成四年度の予算編成をした際の目標と実態との乖離は、私は余りにも大き過ぎるのではないか。  政府の経済成長率は民間の予測とは違いまして政策目標であることを私は十分承知をした上で、なおかつ乖離が大き過ぎるのではないだろうか。民間研究所も政府と同じような大きな過ちを犯しているならば、私はまだ許されると思います。ところが、民間はかなり低い実質経済成長率を予測しておるのに政府が三・五を見たということは、やはりこれからの政府の政策に大きな不信感を生む要因になった。その意味で経企庁、大蔵省の責任は私は大きいと思わなければなりません。  その意味で、この目標と実体経済の乖離はどういう原因で生まれたと皆さんは分析をいたしておるのですか、お聞かせ願いたいと思います。
  131. 日高壮平

    ○日高政府委員 当初の四年度の政府経済見通し三・五%を昨年の十二月に実績見込みをつくるときに下方修正をさせていただいた一番の大きな理由というのは、個人消費の低迷と設備投資の伸びをその後大きく下方修正をしたということであります。  具体的に設備投資につきましては、当初四・五%を見込んでおりましたけれども、それをマイナスの三・八ということで大きく下方修正させていただきました。これは御承知のように、いわゆるバブル経済時代に過去三年間にわたって設備投資というのは二けたの大きな伸びを示しましたけれども、そうした反動、いわゆるストック調整という反動が、私どもが当初三・五%の見通しを策定した段階に比べて非常に大きかったということは否めないだろうと思います。  その背景には、いわゆる循環的なストック調整という側面だけではなしに、いわば資産価額の急激な低下というものが経営者のいろいろな心理にも大きな影響を与える、あるいは設備投資の計画にも大きな影響を与える、そういった側面があったことは否定できないわけでございまして、その限りにおいて、過去のいわゆる景気循環的な景気調整の彼と、今回の景気調整の波が非常に大きな違いがあったという点を当初過小評価していたのではないかという御指摘であれば、私どもも率直にその点はある程度認めでいかざるを得ないかなというふうに思っております。そのような反省の意味もありまして、昨年八月の総合経済対策のときには、いわゆる金融・証券問題についても思い切った手を講じてきたということでございます。  したがって、昨年十二月以降もさらにまた下方修正せざるを得ないではないかということであれば、それはそのとおりでございますが、今申し上げたような個人消費なり設備投資といった需要の見込みというものが私どもの見込みに比べてさらに落ち込んでいったということは、これは事実であろうと思いますし、それが一番大きな原因だったろうと思います。  ただ、もう一つあえて申し上げれば、昨年の八月の総合経済対策によって、いわばそうした設備投資なり個人消費の落ち込みを公共投資でかなりカバーしていこうということで景気対策を策定したわけでありますが、補正予算の成立がおくれたということもあり、その景気対策の効果が本年以降にかなりの部分がずれ込んできたということも否定できないわけでございますので、その点は、そういった側面もあることを申し上げておきたいと思います。     〔柳本委員長代理退席、委員長着席〕
  132. 小野信一

    ○小野委員 それで、十兆七千億円あるいは今回の十三兆二千億円と言われる補正予算の規模は、景気に対してどういう条件を満たそうとしたのか、算定の根拠を説明願いたいと思います。  何で十兆七千億なのか、何で今回十三兆二千億なのか。私は、不景気対策ですから、当然需給ギャップを補正する、補う、あるいはこれを解消するということが基本的にあるんだと思うのです。そうでなければ補正予算は必要ないわけですから。  そうしますと、十兆七千億円の補正をするときには、どれだけの需給ギャップがありましたから十兆七千億円を必要といたしました、今回はこれだけの需給ギャップがあるから十三兆二千億円が必要です、こういう説明があってしかるべきじゃないだろうかと思います。ただ、需給ギャップの解消を目標といたしましても、現在の我が国の財政事情あるいは景気の上り下り、景気から来る判断によって、その規模が制約されることは当然であります。  しかし、基本的にはどういう条件をこの補正予算は解消しようとしているのだということは説明いただいてもいいんじゃないだろうかと思いますので、答弁をお願いいたします。
  133. 日高壮平

    ○日高政府委員 本年の一月に当委員会におきまして、十兆七千億円の規模の問題をめぐりまして、小野委員から同じような厳しい御指摘をいただいたことは私も承知をいたしております。  そのときも申し上げましたけれども、国が行います景気対策という場合には、当然のことながら、いわばそれによって需要を創造する、つくっていくということは間違いないわけでございますけれども、ただ、私どもが最終的にそういった景気対策の規模を決定する場合に、現在の景気の状況から見でどういった手だてが実効性があるか、あるいは、例えば公共事業について見れば、それをどのように円滑に執行していくのかという執行能力、そういったものもいろいろ総合的に考え、関係省庁との間で積み上げた結果が十兆七千億円であり、今回の十三兆二千億円であるというふうに御理解をいただきたいわけでございます。  その需給ギャップを埋めるための手だてを政府は考えるべきではないかという御議論があることは私どもも承知はいたしておりますけれども、需給ギャップの計算というか、需給ギャップの算定方法は実は千差万別でございます。しかも、これは従来言われておりますのも過去のいわば分析によって出てきているというようなことであって、これからの見通しについて、需給ギャップがどの辺にあり、それをどういう形で埋めていくかという政策手段をとるのは実際問題として難しいし、また現実的ではないだろうということでございますので、そういう委員の御指摘のような御議論があることは承知をいたしておりますけれども、実際に景気対策を決めていく上では、最終的には各省庁からの御意見も伺って、それぞれの各項目について積み上げていったということで御理解を賜りたいと思います。
  134. 小野信一

    ○小野委員 大臣、十兆七千億も十三兆二千億円の補正予算も、不況克服と言いながら、その需給ギャップをどれだけ解消させるというような政策手段としての数字ではなくて、各省庁からの積み上げによっでそれができ上がったものだという説明だとすると、実に私にとっては不本意な、わかりにくい、しかも科学的じゃないのじゃないかというような感じがいたしますけれども、需給ギャップの算定は大変難しいとは言いながらも、そういうものがなければ適切な補正予算規模は算出できないのじゃないだろうか。  特に、今の財政が赤字国債を出すか出さないかということで大変議論をしているときに、もし需給ギャップがはっきりいたしまして、これよりも少ない補正予算で景気が回復できるのだということがわかるとすれば、公債発行発行の限度額が判明してまいるわけですから、そういう努力は大蔵省としてあるいは経企庁としてこれから一生懸命やらなければならない最大の課題ではないだろうか、こういう気がいたしますけれども、いかがですか。
  135. 日高壮平

    ○日高政府委員 科学的でないというおしかりをいただきましたけれども、実際に私どもこの経済対策の中身を策定し、決定していく過程におきまして、これは先ほど委員も御指摘になられましたように、例えば国や地方における財政状況を全く考慮に入れずに、例えば需給ギャップだけで、あれにはこれだけ必要だという判定は現実問題できない。  それと同時に、先ほど申し上げましたように、公共投資を実際にやる場合、例えば住宅投資を拡充していく、住宅金融公庫のいわば新しい制度をつくって住宅投資をふやしていこうという政策をとるときに、どの程度の需要見込みが見込めるかということも離れて、例えば住宅金融公庫への融資限度額を幾ら引き上げていくか、そういったものの判定は難しいわけでございますから、私どもは、ちょっとさっき総論的に申し上げましたけれども、全体の規模は需給ギャップがこれだけあるからこれだけ必要なんだということを、いわばそういう一つの手段だけによって対策を決めでいくということではなしに、それぞれの公共事業なりあるいは住宅なりあるいは中小企業関係の話もあると思いますけれども、そういったものも含めてそれぞれの担当省庁の御意見も伺いながら積み上げでいったということでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  136. 小野信一

    ○小野委員 今のような立場で私は大臣にこういう意見を申し上げておきたいと思います。  株価の崩れた九〇年には日本全体の株式時価総額は約三百七兆円目減りをいたしました。地価は九一年には二百二兆円減少をいたしました。これを単純に加えでみましても、一年の我が国の名目GNPに相当いたします。それだけの資産が減少をしたわけであります。  正式にまだ政府から発表になっておりませんけれども、九二年度は株価は二ないし三割の下落、地価も大都市の商業地を中心に二割近くも減少をいたしております。これもまた単年度のGNPに相当する消滅でございます。資産価額の目減りでございます川九一年、九二年の株と地価の目減りは実に九百兆円から一千兆円になります。  計算しやすいように数字を並べてみますと、一億二千万で割ってみますと、一人当たり七百五十万円の目減り、一世帯三千万の資産の目減りということになります。一世帯三千万の目減りということになりますと、十兆円や二十兆円の補正予算を組んでも、あるいは一人当たり二万五千円、一世帯当たり十万円の所得減税をいたしましても、一千兆円の資産目減りから見れば、二階から目薬じゃないかという理屈は当然成り立つでまいります。  にもかかわらず、国は今景気の回復のために一生懸命やっている。そういうことは、逆に言うとこういう理屈を成り立たせてしまうのではないか。一千兆円も目減りをすれば、今言っているような十兆円や二十兆円の補正予算を組んだってどうにもならないのじゃないかという理屈が通るようになってしまいます。私は、そういう余りにも漠然とした議論であってはならないのじゃないかという気がするものですから、こういう理屈に対して、大臣はどういう所見をお持ちですか。
  137. 日高壮平

    ○日高政府委員 九二年度の目減り額がどのくらいか、私は手元に、まだ計算しておりませんけれども、いずれにしても、いわゆる資産デフレの効果といいますか、地価なり株価の急激な低落によっていわゆる資産デフレの効果、悪影響が非常に出てきているのではないかということは御指摘のとおりだろうと思います。  ただし、今私どもが御議論している十兆があるいは十三兆という景気対策のベースと、今申し上げたいわゆる資産所得による目減り分はいわば同列に論ずるわけにはまいらないだろう。これがいわゆるバブルと言われるものでございまして、それ自体が直ちに実体経済に影響を与えるということではなくで、そうした資産価額の下落あるいはその資産所得の低下がどういった形で、例えば設備投資の減少なりあるいは個人消費の減少なりいろいろな経路があろうかと思いますけれども、そういった形を通じて実体経済に悪影響を及ぼしてきた。  したがって、私どもとしては、そうした実体経済への影響に少しでも政府として立ち向かっていかなければならないということで、昨年来の景気対策あるいは先般通していただいた五年度の当初予算の編成に着手をし、なおかつそれでも不十分だということで今回の景気対策を策定をしたということになるわけでございます。
  138. 小野信一

    ○小野委員 この三・五%の目標が、一・六%の実現も大変困難になっているという見通しの誤り、これは当然対策の立ちおくれを呼びました。対策の立ちおくれは当然不況をより深刻化させたことも間違いございません。その上に、政府の経済政策、政府の発表する数字、経済数字の信用を台なしにしたのではないかと私は大変心配しているところでございます。  したがって、今後の経済政策の立案、対策に大変困難さを来しておる、国民がなかなか信用してくれないという大きなハンディキャップを背負ったという感じを私は痛感いたします。したがって、こういう過ちを二度と繰り返さないためにはどうしたらいいのか、どういう反省を大蔵省なり経企庁はしているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  139. 日高壮平

    ○日高政府委員 経済見通しといいますものは、もう委員御承知のとおり、その策定時点におけるいろいろな指標をベースに、それを前提としていわば経済運営に当たっての制度の基本的態度を想定しで策定するということになるわけでございます。  正直申し上げて、これは私ども、随分今回の不況の過程でも御批判を仰いだわけでございますが、経済指標というものは二、三カ月おくれのものにどうしても依存せざるを得ない。これだけ経済の流れといいますか動きが激しいときには、二、三カ月のおくれというのは、実は相当大きなものになりかねない。そういう問題意識は持ってはいるわけではあります。しかし、そうした指標をベースにできるだけ先を見通すということは、私どもとして努力をしなければならないというのは当たり前でありますけれども、実際問題としては難しい。  したがって、従来も政府の経済見通しの違いというものの御批判は、歴代いつも御批判を仰いだこともございますけれども、これからも私どもとしてはできる限りいろいろな手法を駆使しながら努力をしていかなければいけないということはわかってはおりますが、非常に難しいこともある。  なおかつ、政府の経済見通しというものは、実態はこうであるということを確信を持って確定させるようなものではなくで、いわばこういった政府の方針、努力目標という言葉がございますけれども、そういった意味合いを込めでつくられる場合もあるわけでございますから、そういった政府の経済見通しの政策といったものも御理解を賜りたいというふうに思います。
  140. 小野信一

    ○小野委員 我が国のGNP統計は、経済企画庁経済研究所国民支出課で算定をしているようであります。要するに、マニュアルがありまして、それに数字をインプットいたしますと結果が出てくるという仕組みなようであります。ところが、このマニュアルは、課外極秘であります。どこにも出しておらないようであります。だれも見ておらないから多分そうだろうと思います。  ところが、今度の高度成長期に、四年間の成長期に設備投資が大変行われました。したがって、産業構造が大きく変わっております。以前から使ったマニュアルと今回のマニュアルでは産業構造の転換に適用できないのではなかったのかという批判がございます。現在のマニュアルは、経済の実態を正確に反映しておらないのではないかという外部からの批判があることは、皆さん御承知のことだと思います。  したがって、こういう過ちを再び繰り返さないためには、基本的にこのマニュアルを公開いたしまして、現在の産業構造を的確に反映するようなシステムになっているかどうか、いろいろな人の知恵をかりる必要があるのではないか。経済企画庁だって十分その対応はしておるとは思いますけれども、今回十分対応し切れなかったのではないかという感じを私は持つものですから、その辺、大蔵省の方から経企庁の方に十分その注文をなし遂げて、要するに産業構造が大きく転換した現在の経済の実態に合うようなマニュアルにしていただくことが、二度と過ちを繰り返さない大きな基本的な問題じゃないのか、私はこういう感じがいたします。  皆さんが経済企画庁といろいろな意見を交換する場合に、そういう実感をお持ちになったことがないのかどうか。持ったとすれば、政府の間ですから、率直な注文をすべきだと私は思いますけれども、いかがですか。
  141. 日高壮平

    ○日高政府委員 行政府の統計を策定する場合に、私ども、いつもいわば二律背反的な矛盾というか悩みを持っておりまして、それは速報性と同時に正確性ということであろうかと思います。  これは、それぞれの省庁が自分が所管をしている統計を策定する場合に、おおむね三年とか五年に一回は中身を入れかえていくというのが私ども通常行っていることでございますので、GNP統計について経済企画庁が、私も今委員御指摘の細かいマニュアルというのを見たことはございませんけれども、そういった努力をしておられないということは全くないと思っております。  ただ、そのGNP統計というのは、いわばそれぞれの国の経済力を比較するあるいは外国と比較するということも含めて非常に一番基本になる統計でございますから、経済企画庁としても各省がつくられでいるいろいろな統計を集大成して集合した結果としてGNP統計をつくっているわけでございますが、そういう意味で、例えば本年一-三月のGNP統計が、しかもQEという速報という形で出てまいりますのが六月中旬になるということになるわけでございます。  ただ、先ほどちょっと申し上げたように、政府の統計というのは、実は国によって、例えば非常に早く統計を出して、そのかわり改定をしょっちゅうする、しかもプラスをマイナスに改定することもいとわないような国もございます。そういったものが統計の作成方法としていいのかどうかという点はいろいろな問題があろうかとは思いますけれども、今委員御指摘のございましたように、できるだけ速報性と同時に正確性も追求するという姿勢は各省共通の認識であろうと私どもも思いますし、経済企画庁も同じ認識のもとに立ってそのGNP統計を策定しておられるというふうに思っております。
  142. 小野信一

    ○小野委員 私は、経企庁の皆さんが、経済研究所の皆さんが、現在の経済の実態に合うようにマニュアルを大変努力して研究して整備していることを疑うものではございません。しかし、幾ら研究いたしましても、第三者から見たいろいろな意見、批判というものを受け入れないとより完全なものにはならないのじゃないか。同じ役所の人間として見ますと、同じ過ちを繰り返すというのが人間の特性でございます。その意味で、民間のエコノミストあるいは研究所の率直な批判を受けてみたらどうだ、こういう感じを私は持つものですから、意見として申し上げておきます。  次に、もうちょっと厳しいことを言わせていただきます。  四年連続五%台の大型景気が続きました。特に九〇年度はGNPが五・六%、GDPで五・九%、これが九一年に一挙に三%に減速をいたしました。マネーサプライを見ましても八七年から四年間M2プラスCDの伸びは二けたでございました。これが九一年には二・六%にダウンをいたしました。  これは明らかに高度成長過熱から安定成長への軟着陸、ソフトダウンと言うのですか安定成長への着陸に失敗した、私はそう分析せざるを得ないのですけれども、どういう感想をお持ちですか。
  143. 日高壮平

    ○日高政府委員 一般的に言えば、いわゆる高度成長から安定成長へという移行であったということは私どもも全く同じような見方をしているわけでございます。  ただ、マネーサプライの件をちょっと御指摘になられましたけれども、マネーサプライの点だけから見ますと実はもう一つ別の要素、つまり経済が安定成長へ向かっていく、そういう意味でのマネーサプライの鈍化ということもあろうかと思いますが、マネーの流れというものを見ましたときに、これは、先ほど委員も御指摘になられましたけれども、バブル時代のいわゆる土地なり株価、そういう資産取引をめぐっての金の流れというものが急激に収縮をしたということも否めないのではないかということで、マネーサプライの統計自体から今の成長路線に少し動きがあったということには直ちに結びついていかないというふうに思っているわけでございます。
  144. 小野信一

    ○小野委員 景気循環の大きな特徴の一つに、上昇も下降も累積する性格があるということが言われております。景気が上昇し始めますと、外部からのショックでも受けない限り、スピードはそのままで上昇しでいくということであります。下降も同じでございます。ですから、景気の上昇でも下降でも、行き過ぎを抑えようとすれば、当然公定歩合を何度も上げたり下げたりしなければなりません。  今回のバブル景気を抑えようとして、日銀は八九年五月から公定歩合を五回も引き上げました。その後の不況克服を目指して、九一年七月から同じく公定歩合を五回も引き下げました。これは景気の累積傾向を十分承知をしておったからだと私は思います。  しかし、今度は別ですけれども、大蔵省の政策当局の過去での政策のてこ入れは、遅過ぎ小さ過ぎるという批判が圧倒的な声でございました。このことから、大蔵省の経済当局が景気の累積傾向、累積性格を軽視していたのではないか、こういう批判があることは恐らく御承知のことだと思います。むしろ累積性格を無視してきたのではないかという批判さえございます。大臣、この批判にどうお答えになりますか。
  145. 日高壮平

    ○日高政府委員 金融政策と財政政策を比較してみた場合に、一番大きな違いは、金融政策については機動力があるということだろうと思います。財政政策の場合には、どうしても必要な予算の手続を私どもとらなければいけないということで、そういう違いがあることはひとつ御理解を賜りたいと思います。  今委員御指摘になりました累積的な効果云々という話につきましては、そういう御批判があることは承知をいたしておりますが、私どもそれを検証するといいますか、実際どうなのかというところで直ちに承服いたしかねるところがございます。  ただ、一つ申し上げておきたいのは、過去の景気循環の流れを見ますと、景気の後退局面のときにはどうしてもやり過ぎてしまう。最終的には、金融政策においても財政政策においてもやり過ぎてしまう傾向があることは否めないことでございます。これは、先ほど申し上げたように、経済指標というものはどうしても数カ月おくれのものになるわけでございますから、これからだんだん景気が回復していく過程においても、景気後退時の指標をベースに物事を考えていきますと、どうしても過剰防衛になっていくということは今までの経験からも十分予想されることでございます。  したがって、私どもとしては、先ほど指標面でのいろいろな努力が足りないではないかという御指摘をいただきましたけれども、今までの反省をベースに、その点も十分認識しながら、これから政策運営を行っていかなければならないというふうに考えているところでございます。
  146. 小野信一

    ○小野委員 九二年から九六年までの新経済計画は、インフレなしに潜在成長率と思われる三・五%を目標にいたしております。しかし、この目標を達成してまいりますと、貿易黒字は今から減るわけではございません。少しは減っても、かなり膨大な数字になるのではないか。しかも、この貿易黒字は、我が国の内需拡大のみでは解消不可能な金額ではないかと思います。したがって、価格効果の期待できる為替相場との併用が必ず必要になってまいります。  しかし、その前に、貿易黒字が諸外国と摩擦を起こさない範囲、外国の許容範囲とはどういう条件を満たすことなのだろうかということをお聞きしたいのです。  経験的に申しますと、GNPの一ないし二%であれば貿易摩擦が起こらないのではないか、こう言われておりますけれども、これも情勢が変われば大きく変化するのではないか、こう思いますので、その辺の許容範囲をどういう条件で満たすのだろうか。もしそれらが研究してあるならば、お教え願いたいと思います。
  147. 中平幸典

    ○中平政府委員 ただいま御指摘がございましたように、我が国の貿易黒字はこのところ増加しておりまして、このような黒字が海外における保護主義の台頭というものを招くことがないように、私どもとしては調和ある対外経済関係の形成に向けて努力をしていく必要があるということは、ただいま先生からも御指摘のあったとおりでございます。  ただ、貿易収支の数字というのは、今お話がありましたように、内外の経済の動向もありますし、為替レートの動向もありますし、その他種々の要因に影響されるものでございますし、また二国間で見ますと、貿易相手国によって我が国が黒字になる国もあれば赤字になる国もあるわけでございまして、具体的にどの程度の黒字まではよいということは一概に決められるものではないのではないか。  ただいま先生から経常黒字のGNP比のお話がございました。かって昭和六十一年度、一九八六年度には、経常黒字のGNP比は四・四%になりました。それから漸次下がってまいりまして、このところ再び上昇はしておりますけれども、平成四年、一九九二年、これは暦年ベースでしかまだ数字がございませんけれども、三・二%ということになっております。  しかし、これも一概に何%ならばいいかということはなかなか言えない。ふえでいくのか減っていくのかという傾向も含めて、あるいは保護主義ということになりますとそれぞれの相手国との関係もあるということで、一概にどの程度であれば許容できるということは言えないのではないかというふうに考えております。
  148. 小野信一

    ○小野委員 OECDの世界の経済成長率を見ますと、六〇年代は五%、七〇年代は四%、八〇年代は三%、九〇年代はクエスチョンマークがついております。この傾向からまいりますと、世界の経済成長率は二%台と予想されるのでございます。  ところが、日本が三・五%を潜在成長率として持ってインフレーションを起こさないとすれば、貿易黒字は、恐らくこれより大きくはならないにしても減少しないということは当然予想されるわけでございます。そうしますと、当然貿易摩擦、二国間摩擦を含めまして世界の非難の的になるだろう、こう私は考えるのですけれども、そんな心配はないと大臣はお考えになりますか。
  149. 日高壮平

    ○日高政府委員 「生活大国五か年計画」におきまして、日本の今後の五カ年間のいわば一つの目標として三カ二分の一%程度の成長を掲げていくことは昨年決定させていただいているわけでありますけれども、その前提にありますのは、いわば生活大国づくりということで内需中心の成長を図っていくということでございますので、それによって貿易摩擦が再燃することのないような形での内需中心の持続的な成長というものをこれからの政策運営の基本に据えていくということであろうかと思います。したがって、そうした計画を遂行していく上で、さらに貿易摩擦が激化するではないかということがあってはならないだろうというふうに思うわけでございます。
  150. 小野信一

    ○小野委員 そう思うのですけれども、それが回避できるかどうかが大変な問題だ、こう思います。  そこで、これからの我が国の財政運営のポイントについでお尋ねをいたします。  私は、現在までの政府の、要するに政府支出を、これまでの方針を認めるかどうかが大きなポイントになるのではないか、こう思います。というのは、政府支出が大き過ぎるので中身を縮小させるような制度改革がおおむね支持できる、こういう考え方であれば、八〇年代の財政運営の基本を踏襲すればいいと私は思います。  しかし、高齢化社会に対応して社会保障面での政府の役割をより重視し、貯蓄率の高い今のうちに公共投資の拡大がより必要であると考えれば、より積極的な財政運営が必要になってくると思います。これが、これからの我が国の財政政策を選択するポイントになるだろうと思います。大臣の感想、所見をお尋ねいたします。
  151. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 小野委員御指摘のように、小さな政府ということではなくて、高齢化のときに一体どうしていくかということは、我々がこれから本当に真剣に考えていかなければならない問題であろうと思います。  ある程度の国民負担率の上昇というものは避けられない問題だろう、私はこう思いますし、そのときに税負担と社会保険料負担というものをどうしてやっていくか、また、受益と負担とのアンバランスというのをどう考えていくかというのは、我々が今まさにこれから議論をしていかなければならないところの問題だろうと思います。だれが負担をしていくか、受益をどういうふうな形でしていくか、低福祉低負担、高福祉高負担、あるいは中福祉中負担というような諸問題もございますけれども、そういったようなものにつきまして、今までも議論が行われておりますけれども、まさに九〇年代あるいは二十一世紀に向かって、私たちはそういったようなことを考えていくことが一番必要なところではないだろうか、こういうふうに思っているところでございます。
  152. 小野信一

    ○小野委員 より具体的にお尋ねします。  小さな政府を目指すのであれば、近い将来の財源の不足に公債のより大きな発行を考えなければならないだろう。反対に、より大きな政府を目指すのであれば、恒久的な財源対策を早急に検討しなければならない、私はこう思いますけれども、いかがです。
  153. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 ただいま大臣がお答え申し上げましたように、長い流れで見てまいりますと、やはり高齢化の進展、それからもう一つは国際化、国際貢献に対する日本の責任度合いの増大ということで、国民経済の中における財政の割合というのは逐次上がってきているわけでございます。  その点で、最終的には受益と負担とのバランスは国民の選択になるわけでございますが、一つ考え方としましては第二次行革審の答申がございまして、行革審の答申におきましては、「二十一世紀初頭の時点においては、国民負担率は四〇%台半ばをめどにその上昇を抑制すべきである。」基本的には上昇することを是認しつつ、上限を設けるべきだという考え方をとっております。二〇二〇年、高齢化のピーク時である二〇二〇年においては五〇%を下回ることを目標とするという提言がなされたところでございます。
  154. 小野信一

    ○小野委員 現在の不況を考えてみましたときに、四年連続の二けたの伸びを示した設備投資がございました。大変景気がようございました。そして大不況になりました。  この経験から言えることは、設備投資であっても大きければ大きいほど好ましいということではないということがはっきりいたしました。近年のように高い投資は、いずれも生産能力の増強につながり、輸出依存型の経済を温存することが明らかになったからでございます。したがって、政府が長い間目指しでおりました内需主導型経済への転換に私は反することだと思っております。  要するに、八〇年代後半の望ましい投資と貯蓄の調整は、Sを下げ、Iを上げるという形で行うべきであったと思います。これは結果論でありますから余り気にしないで聞いていただきたいと思いますけれども、ところが、Sが一定のままIが大幅に上がるという望ましくない形になってしまいました。これは大臣、政策の失敗と言えないでしょうか。これはやむを得ない形だったと評価をいたしておりますか。いかがです。
  155. 日高壮平

    ○日高政府委員 確かにそういう状況にあったということは委員御指摘のとおりでございますが、それについての評価というのはなかなか一概に言えないのではないかと思います。  例えば設備投資一つをとりましても、確かにバブル時代はその二けたの伸びがずっと続いてきました。その結果、GNPに占める設備投資のウエートというものもずっと上がってきているわけであります。一〇%台から二〇%台にほぼ倍増している、そういう状況にございます。  ただ、いわゆるバブル時代に言われた設備投資の内容を見ますと、過去の高度成長時代のような、いわば能力増強投資一辺倒ではなくて、例えば研究開発投資とか、あるいは卑近な例で言えば社員の福利厚生施設とか、そういった投資も数多く行われてきたということも事実でございますので、いわゆる設備投資そのものが非常に伸びて、そちらが中心となって景気を引っ張ったというのが望ましくないという批判は、判断は、もう少し時間が欲しいのかなというふうに思います。  問題は、従来の景気循環のときもそうでございましたけれども、設備投資についても、いわゆる数年間にわたって伸びていけば、その後反動としてストック調整というような形でその反動が参るということでございましたけれども、今回の景気後退局面を考えた場合には、確かにその直前のバブル期の設備投資の山が非常に高かったということも事実でございますが、それと同時に、その反動を考える場合に、先ほどちょっと申し上げた、いわゆる資産デフレの効果が通常の循環的な要因にプラスアルファとして大きく影響して、その谷が深くなっているというのが実際の姿であろうかと思います。  したがいまして、今の姿というものが本当によかったのか悪かったのか、その辺はもう少し、いわゆるこのバブルの調整というものが完全に終わって、その正常な姿に戻った時点で判断をすべき事柄ではないのかなというふうに思っております。
  156. 小野信一

    ○小野委員 そこで、最適投資率とは、GNPとの関係でどういう条件を満たさなければならない、どういう条件を満たしておれば最適投資率とGNPの関係で呼ぶことができるのでしょうか。
  157. 日高壮平

    ○日高政府委員 投資と言う場合には、いわゆる政府投資と民間投資がございますので、今委員御指摘の投資というのは民間の投資というふうに受け取らせていただきますが、先ほどちょっと申し上げましたように、民間の設備投資のウエートというものは、随分時代の流れとともに変わってきております。  特に、高度成長時代には民間の設備投資が急激に伸びて、それがいわば成長を支えだということは否めないわけでございますし、先ほど申し上げたように、若干設備投資の中身が変わってきではおりますけれども、バブル時代の成長を民間投資が支えだということも否定できないだろうと思います。  ただ、それではどれだけが適正かという点につきましては、そのときどきの経済の状況、あるいは今申し上げたGNPに占める割合だけから見ましても、これはいわば相対的なものでございますから、実際に適正な投資割合というものがどの辺にあるかという点については、なかなかお答えするのが難しいという点を御理解賜りたいと思います。
  158. 小野信一

    ○小野委員 最適投資率が出ましたので、最適貯蓄率とはどういう条件を満たすのだろうかということをお聞きいたします。  私は、最適貯蓄率とは、国民一人当たりの消費を最大にするために、経済成長率と実質利子率を同じくする水準だ、こういうふうに教科書で習いました。こういうことが今の政府の運営の中に原則として生きているのでしょうか。一切こんなことは考えません、こういうことなのでしょうか。いかがですか。
  159. 日高壮平

    ○日高政府委員 だんだん私の能力を超えるような御質問になってまいりましたけれども、貯蓄率につきましては、国民経済計算ベースでの貯蓄の可処分所得割合という動きを眺めでみますと、一九七六年がピークでございますが、その後ずっと低下してまいりました。九一年のいわゆるバブル時代にはさらに耐久消費財を大きく積み上げたというようなこともございまして、消費性向が低下したということもございますが、その後、現在では貯蓄率は若干上昇に向かっているというふうに思います。  ただ、先ほど委員もおっしゃられましたように、例えば投資そのものを考えてみた場合でも、多ければ多いほどいいとは一概に言えないということは言えるわけでありますから、貯蓄率についても同じようなことが言えるのかなとは思います。  いずれにいたしましても、適正な貯蓄率は幾らであるかというのはなかなか教科書どおりには言えないのではないかということで、お答えにはなっておりませんけれども、この辺で御理解を賜りたいと思います。
  160. 小野信一

    ○小野委員 要するに、今回の好景気、不景気から学んだことは、貯蓄率を最適値以上に高めることは、一人当たりの生産高も高めますけれども、貯蓄の額がその増加分を上回るために、一人当たりの消費額を低くする結果をもたらすということがわかってまいりました。つまり、非効率的な成長路線の選択、こういうことになるだろうと思います。  近ごろ日本は過剰貯蓄の状態、こう言われております。その証拠に、成長率よりも低い実質利子率にあらわれておるからであります。日本は、貯蓄があればあるほどいいというわけにもこれからまいらないのだろうと思います。  しかし、国民は貯蓄をいたします。なぜ貯蓄をするのだろうかということもいろいろ言われております。高齢化社会に対応してということもありますけれども、大臣、現在の日本人の貯蓄率はどうあるべきか。低くすべきだと思いますか、現状を維持すべきだと思いますか、それとも、もう少し個人消費を伸ばすために低くすべきだと思いますか。  いろいろな判断は出てくると思います。世界の資金需要にこたえるとか、まだ日本の公共施設は不十分であるからあった方がいいとか、いろいろあると思いますけれども、基本的な考え方があったらお聞かせ願いたいと思います。
  161. 日高壮平

    ○日高政府委員 貯蓄というのは言うまでもなく消費の裏返してございますから、消費の内容自体にも、消費がいい場合もあれば悪い場合もある、いろいろ言われることはあるだろうと思います。いわゆるバブル時代の過剰消費から最近のような堅実な消費行動に向かっているという動きを考えた場合に、これをもって、消費全体が落ち込んでいるからよくない傾向であるというふうに一概に決めつけるわけにはいかないだろうと思います。  そういう意味で、裏返しである貯蓄率についても、高いからいい、あるいは低いからよくないということは一概に言えないだろうと思いますけれども、中長期的に考えましたときには、先ほどお話がございましたように、これから我が国は人口構成が非常に高齢化が進むという状況にございます。概して、高齢者世帯の貯蓄率は現役世帯に比べれば低いと言われでおりますので、そういうことであれば、今後、我が国の家計貯蓄率というものは低下傾向を示していくのではないかなと予測をするわけではございますけれども、それをもって、一概にいいか悪いかという判断は難しいだろうと思います。
  162. 小野信一

    ○小野委員 我が国の財政を語り、貿易黒字を語り、最適貯蓄率を語り、投資率を語れば、次に、日本の世界への資本供給の量と形が一つ残されました。要するに、内外の収支の均衡の問題でございます。  この均衡をどんな形で実現させるかは基本的には我々自身の問題であり、日本政府の問題であります。貯蓄と投資のバランスの問題になります。つまり、国全体としてGNPのどれぐらいを貯蓄とし、それを国内の民間投資と公共投資、そして国外投資にどう振り向けるかが問題になります。  私は、残念ながら、我が国のこの資本収支といいますか内外収支の方針、基本的な考え方を聞いたことがございません。むしろ提示しなかったのではないかとすら考えておる一人でございます。この問題についてどういう基本的な考え方をお持ちになっているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  163. 中平幸典

    ○中平政府委員 先ほどもお話が出ておりましたけれども、我が国の国際収支を見ますと、経常収支の黒字がずっと続いております、ふえたり、減ってまたふえたりということはございますけれども。そして、その黒字になったお金は一体どういうふうになっているかということになるわけでございますが、黒字の分が外貨準備の増加になっているかといいますと、必ずしもそうではございません。外貨準備は、今から二年ちょっと前に一千億ドルを超えました。実は、その後だんだん下がってまいりまして、今六百九十億から七百億ドルぐらいのところへ来ております。  そうしますと、経常黒字として入ったお金は一体どうなったかということになりますと、これは、民間の企業等がこのお金を海外へ長期のもの、短期のもので投資したり、あるいは銀行が借りていたお金を返すといったような形で返っているわけでございまして、そういう意味では、お金は循環しております。  その場合に、どういうものに投資をするのが望ましいかということを一概に国の方で決めでかかるわけにはまいらないと思いますけれども、私どもは、世界を眺めまして、例えばマーケットを通じて順調に資金が流れていく部分についてはマーケットに基本的には任せる部分だと思います。  例えば発展途上国のようなところには、資金需要はありましてもなかなか行かないということがありますし、また、行くといたしましても、民間ベースで参りますのは、工場をつくったり何かするということでお金が行きます、あるいは証券投資で参りますけれども、港湾をつくったり道路をつくったり発電所をつくったりというようないわゆるインフラストラクチャーの方にはなかなかお金が行かないということもありますから、そういう面で、例えば経済協力、あるいは日本の輸出入銀行といったような公的機関を通じた資金をそちらにできるだけ回しまして、そしてそういうインフラの整備に伴って、民間の資金も途上国の方へ流れていくようにするといったような資金フローの確保に努めている、こういうのが私どもの基本的な考え方でございます。
  164. 小野信一

    ○小野委員 円相場が百二十円台になるためには四年七カ月かかりました。百十円台になるにはわずか七カ月で達成をいたしました。その間、貿易黒字はずっと続いております。しかし、黒字が大きいにもかかわらず、円は高くなりませんでした。要するに、海外から入ってきた資金は海外に出ていったからでございます。これは借金の支払いという形じゃないか、こう説明されております。ところが、大部分の借金が支払いを終わりましたものですから、今度は国内に資金がたまるというときになってまいりました。  要するに、日本の資金が豊富であるから、私は、円が高くなった理由はそういう背景が基本的にあるのではないか、こういう気がするものですから、日本の内外の収支政策というものは、方針として政府が示さなければならないんじゃないだろうか。  特に、資金をいい投資の場に誘導する、投資の場を政府がつくるという資金計画がなければ、日本の資金は世界の皆さんに迷惑をかけるときが出てくる、急に引き揚げたり急に出すものですから。やはりそういう迷惑はかけないことが経済大国として最低の条件ではないだろうか。その意味では、政府の内外収支政策指針というものが必要になってくるんじゃないだろうかという気がいたしますけれども、いかがですか。
  165. 中平幸典

    ○中平政府委員 先ほども申し上げたことでございますけれども、基本的には我が国はフリーマーケットといいますか、自由貿易体制、自由市場体制を維持していく、そういう基本的な考え方に立っておりまして、資本取引につきましても、かつではいろいろな規制もしておりましたけれども、その規制を外し保てまいりました。そして、基本的には資本取引も全く自由になっている、こういうことでございます。  したがいまして、金の流れというのも、マーケットを通じて金が流れていく、そしてそれぞれの企業なり投資家なりというものの批判によって行われる、こういうものが基本であろうと私どもは考えております。  ただ、先ほども申しましたように、長い目で見て非常に重要なところに必ずしもマーケットを通じてだけでは十分な資金供給が行われない、あるいは民間の投資も、長い目で見ればそれが必要なものであり、日本にとってもプラスになる、そういうものでありながらなかなか流れでいかないというようなものがあります。  そういう部門に対しては、これは国の政策として、先ほど申しましたように、例えばそれは発展途上国に対する資金のフローを確保していく、そして民間の投資も安全な形で行われる、そういう形になるように私どもとしてできるだけのことをやっていく、そういう補完的なことが必要であるというふうに考えております。
  166. 小野信一

    ○小野委員 終わります。
  167. 藤井裕久

    藤井委員長 日笠勝之君。
  168. 日笠勝之

    ○日笠委員 大蔵大臣、午前中から長時間御苦労さまでございます。余り大臣が御答弁なさらないので、一つ御答弁していただける質問をつくりましたので、お答えいただきたいと思います。  実は、私も政治改革特別委員会の社公案の政治改革関連法案の提案者ということで、答弁をする側なんですね。皆さんから質問いただいて答弁する側でございますが、白熱した議論で、久しぶりに国会が改革されたなんというようなことを言われております。大変熱心な議論が続いて、きょうは宮澤総理においでいただいて今委員会が行われていると思います。  そこで、大蔵関係議題ではございませんが、政治家林義郎ということで、いわゆる政治改革について一問だけお聞きしようと思うのです。  いわゆる民間政治臨調が連用制というのを出しましたね。民間政治臨調から言わすと、いわゆる自民党案の単純小選挙区制、社公案のいわゆる併用制、この両方のいいところを取り入れた、安定政権ができる、どちらも譲歩できるだろう、合意点が見出せるんじゃないか、こういう鳴り物入りでございます。  この連用制ということについて、大臣とか宮澤派の云々じゃなくて、衆議院議員林義郎個人としてはどういう御見解をお持ちですか、まずお聞きしたいと思います。
  169. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 せっかく国会で日笠委員を初めとして活発な御議論をしておられるところでありますし、いわゆる連用制というような話が出ております。私もお話は聞いておりますが、なかなか話がまとまらない、単純小選挙区制、比例代表併用制、こういうふうな格好で話がなかなか進まない。  私は正直申しまして、どちらの制度がどういう欠陥があるか、どういったいいところがあるか、そういったものの御議論をされた上でだんだんと出てきたらもう少しいいものになったんじゃないか、ちょっと出てきたのが早過ぎたんじゃないかなという実は感じは持っているのです。  私は、これは制度でありますから、完全なものというのはなかなかないと思うのです、正直申しまして。どうしてもいろいろな形でやりますから、完全なものはない。ましてや政治というものは、一〇〇%これがよくてこれが悪いというような話は、私は正直言ってないんだろうと思いますし、その政治制度をつくる上においで、いろいろな形で議論をして、まあこの辺がなというような形でやるのが一番大切なことじゃないかなと思っております。  私も自民党ですから、自民党の案を今出しておるところで、それに従ってやる、こういうことでありますけれども、個人的には私は一つの考えていいような問題じゃないかと思います。  むしろ私は、政治改革特別委員会の方でいろいろな御議論を十分していただけたらと思っでいるところでありますし、私も大蔵大臣でなかったらそちらの方に参加したいぐらいでありますけれども、残念ながらちょっとそういうわけにもまいりませんので、活発な御議論をぜひ期待したい、こう思っているところです。
  170. 日笠勝之

    ○日笠委員 確かにちょっと早過ぎた感が否めないですね。  円高もちょっと急ピッチということも言えるのです。ちょっと円高のお話をしたいと思うのですが、きょうは午前中一時一ドル百九円九十銭ですか、史上最高、いわゆる百円台突入か、こう思いましたら、午後からちょっとまた百十円台に返っでいるようでございますが、いずれにしても恐らく百円台、百九円、八円、クリントン発言等々を考えてみれば、また日本の貿易黒字を見れば、そういう方向へ市場も容認しているのかな、このような感じもするわけなんです。  そこで二、三、円高のことについてお聞きをしておきたいと思いますが、いずれにしましても、為替市場において投機的な売買の規模が非常に巨大になってきたわけですね。  そこで、日銀が単独で介入をするということでは非常にその効果は限定される。俗に焼け右に水じゃないか、こういうふうに言われておるわけでございますが、今の円高基調、急ピッチで百円台へ突入をしようかとしておる時期において、大蔵省、特に大蔵大臣としてはいつもコメントを求められると、適時適切に対応する、こういうお言葉がほとんどなんです。それはわかるのですけれども、もう少し踏み込んで、御感想なり、この円高に対しての大臣としての決意といいましょうか、これをちょっと肉声でお聞かせ願いたいと思います。ですから、答弁書は後ろへ返して、ぜひ。
  171. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 正直申しまして、円ドル相場は日笠委員御指摘のような状況に今なってきました。  この四月十六日、日米首脳会談の記者会見でクリントン大統領からの発言がありまして、それで思惑的に円が買い進まれたのだろう、こういうふうに私は思っています。やはりその辺は思惑でありますし、私は基本的には、今もお話がありましたけれども、為替相場というのはファンダメンタルズを反映して安定的に動いでいくということが望ましい。  これは、日本経済に対してもちろんいろいろな影響が出てくる。特に輸出関係につきましで悪影響が出てくるということは当然でありますけれども、また一方では、日本の市場におきましても、もしもこれが続いていくならば、例えば輸入価格は下がっていきます。輸入品につきましては、プラスの面、影響も出てくるというふうなこともあるわけでございます。  しかしながら、全体として見ていくならば、日本の中でもそういった影響が出てまいりますが、これだけの急激な形で動いていくということは、日本だけではなくてアメリカの市場でも、アメリカ経済に対しても余りいい影響をもたらさないのじゃないかな、正直に言って私はそう思っておるところであります。  ただ、為替市場というものは大変大きな市場でありまして、単に輸出為替とか、輸出為替というのはドルが入るわけでありますから、そのドルを日本では円にかえるというような話であるとか、輸入為替は逆の動きになりますが、そういったものの個々の動きでなくで、大きな市場で、市場が売った、買った、こういうふうな話でやっていまして、いわゆる経常取引なんかの三十倍も五十倍も大きな取引が行われている、そういった市場であります。私は、そういった市場というものがどう反応していくか、それは究極的には日本の国際収支の状況というものを反映する、日本のファンダメンタルズを反映するものになっていくのではないかな、こういうふうに思っでおるところでございます。  今どうしたらいいかというのは、先ほど先生から御指摘のありましたような答えしかありませんが、適時適切に私も対処してまいりたい。もちろん、各国ともいろいろな連絡はしょっちゅうとりながらやっているところでございます。
  172. 日笠勝之

    ○日笠委員 まさにファンダメンタルズを反映しておるということですが、急ピッチですといろいろなところに大きな影響を与えますので、ソフトランディングという方向が一番いいかと思うのですね。  せっかく与野党で不況対策に関する与野党協議会をつくりまして、私も公明党の代表で実務者レベルでのいろいろな会合にも出て、いわゆる十三兆二千億円規模の景気対策の側面からいろいろ協議にあずかった一人でございます。三月三十一日に当初予算も通った、追加景気刺激で、日本経済もこれから少し展望が見出せる、こういうときにあって、円高というのは、学問的に言えば五円の円高でGNPを〇・二%引き下げる、けさ勉強会でこういうふうに聞いてきたところなんです。そういう意味では景気に大変な懸念があるわけです。  そこで、円高も確かに光と影がありますね。光の方は、先ほどおっしゃった円高差益を輸入の側から見れば何とか還元してもらえるのじゃないか。輸出産業は大変だ。そういう光と影があるわけです。なるたけソフトランディングで影響を少なくしていくということが政府の大きな一つの使命だと思います。  そこで、今月末、主要七カ国蔵相・中央銀行総裁会議がございますね。そこでは、この円独歩高、意図的な円高誘導は世界経済に悪影響を及ぼすのじゃないかということで、ぜひ大臣、ひとつ各国のある程度の合意を取りつける、また努力する、こういう姿勢が今大事じゃないでしょうか。そういうことがマインドとして市場に大きな好感を与えるということも考えられるのです。今月末のG7に対するお考え、決意といいましょうか、どのようなおつもりかをお聞きしたいと思います。
  173. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 G7の会合、この前ロンドンでやりましたし、その前にもワシントンでベンツェン財務長官などともいろいろ話をいたしました。いろいろなところで話をしておりますが、今私が申し上げでいるようなことは大体のところ各国での今までのコンセンサスだったと私は思うのです。先生御指摘のような、ファンダメンタルズを反映して安定的に推移をしていくのが一番望ましいのだということは、大体今まででもコンセンサスになってきでおった、こう思っておるのです。  そういったことですから、これをどういうふうにやっていくのがいいのか、いろいろなことをまた議論しなければいかぬのでしょうけれども、私は今申し上げておるような形で、先ほど申しましたような基本的な考え方でG7にも対処しでまいりたい、こういうふうに考えております。
  174. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、次の通告をしております質問に移りたいと思います。  各省庁が作成されます各目明細書というのがございますが、これは財政法上、予算決算及び会計令におきましてどういう位置づけになっておるか、お聞きしたいと思います。
  175. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 各目明細書は、予算決算及び会計令第十二条の規定によりまして、歳出予算の基礎資料として各省各庁の長が作成し、予算が作成された後に直ちに大蔵大臣に送付するとともに、国会の方にも、これは法令上の義務ではないのですけれども、予算審議の資料として提出しているものでございます。
  176. 日笠勝之

    ○日笠委員 実は私、予算委員会、大蔵委員会等々でこれについて質問をする予定だったのですが、二日間ほど予算委員会がとまったりしましてとうとうできなくて、もう平成五年度の予算は通ってしまったのですけれども、今後の大蔵省の御見解をお聞きしたいということで、あえて、平成五年度の各目明細書の中身につきましで何点が御指摘を申し上げておきたいと思います。  きょうは各目明細書を全部持ってきていただくようにお願いしておったのですが、ありますか。重たいでしょう、全部で十四センチぐらいありますね。私も国会議員の端くれですから、大体毎年読ませていただいております。  平成二年の予算委員会で、若干誤りもございましたし、また各省庁が伝統墨守でそれぞれの省庁のやり方でもって各目明細書を大蔵大臣に送付されるものですから、統一性、総覧性がないということを、橋本大蔵大臣の時代でございましたが、指摘をさせていただきました。  平成二年の八月ですか、各省庁の会計課長会議でその旨のお話があり、立派なマニュアルをつくっていただいたわけでございますが、そのいきさつをちょっとまずお話しいただきましょうか。
  177. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 各目明細書は、時間的な制約があるものですから、従来、各省それぞれまちまちでございまして、その点につきまして平成二年度の予算審議の過程において先生の方から詳細なる御指摘を受けたところでございます。  その御指摘を受けましで、国会へ提出する趣旨等も踏まえ、できる限りわかりやすく、かつ丁寧なものとするように、平成二年の十二月に大蔵省から各省の方に、「各目明細書の記載例について」という一種のマニュアルのようなものを示したところでございます。
  178. 日笠勝之

    ○日笠委員 それから二年たちまして、またことし各目明細書をいただいて、じっくり見させていただきました。  裁判所所管の各目明細書をお持ちですか。この二ページに警備手当八百四十万、積算内訳が一万四千人、こうなっておるのですが、一万四千人で八百四十万の手当なんていうと、一人当たりわずか、幾らですか、六百円ぐらいということになっちゃうのですが、これはどういうことでしょうか。
  179. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 一万四千人というのはやや舌足らずでございまして、これは一万四千人回ということでございます。
  180. 日笠勝之

    ○日笠委員 それから、同じく裁判所所管の三ページの庁費の積算内訳のところに、国家公務員財産形成施行事務費とありますね。施行事務費。これは、マニュアルは促進事務費、こうなっておりますね。それから、同じく総理府総務庁の三十九ページにも国家公務員財産形成施行事務費。マニュアルは促進、こうなっていますが、まあ細かいからいいんですよ、そういうところがあるということを、マニュアルどおりになっていないよということを言いたいわけなんですよ。そのほか、もう時間がありません。これだけ、せんをしたところは全部マニュアルどおりじゃないわけです。  そこで、もう一々やりませんが、河野一之さんですか、「予算制度について」という本を、私あれを教科書のごとくよく読むのですが、その冒頭に「予算ほどわかりにくいものはない。」こうあるのですよ。我々素人が見でも、特に庁費の中の積算内訳なんかを見ていますと、もうばらばらなんです、今もって。何でしたら幾らでも言いますけれども、時間がありません。皆さんもよく御承知だと思いますからカットします。  そこで、どんなものでしょうか、もう一度というのは失礼かもしれませんが、後で何でしたらどこがどう違うか御伝授申し上げますから、やはりせっかくこういうマニュアルをつくられて、各省庁が短時間ででしょうけれどもつくられた、それを大蔵大臣に出す、大蔵大臣がそれを国会に出すのですから、私たちの手元に来るのですよ、参照資料ということで。もう一回、総覧性、統一性ということで、この各目明細書について、どうでしょうか、何か対応をしようとか、したいとか、全然やる気がないとか、いろいろお考えがあるでしょうが、いかがですか。
  181. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 平成二年に通達を出しまして、その結果、大幅な改善が図られたというところは先生褒めでいただけると思いますが、先生御指摘のとおり、まだ不十分な点が見受けられますので、今後また関係省庁を指導して、一層の改善に努めてまいりたいと考えております。
  182. 日笠勝之

    ○日笠委員 大臣大臣のところへ送付されてくるのですから、しっかり統一性、総覧性のある各省庁の各目明細書にさせますと、ちょっと決意を言ってください。答弁をしないと疲れるでしょう。私も答弁席へ座って疲れるのですよ、じっと待っているのは、いつ来るか、もうそれだけで緊張していますので、こういうのがいいでしょう。どうぞ。
  183. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 やはり予算制度、予算決算制度でございますから、やはり統一的にいろいろなことをやっていかなくてはならない。しかしながら、今までのしきたりもあるでしょうし、各省のいろいろな違いもありますから、できるだけ方向としては統一的な方向でやれるようなことをやはり考えていくということが予算のあり方として正しいあり方だろう、私はこう思っています。  いずれまた、そういった形で持っていくようにやってみたい、こう思っておるところです。
  184. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、次の質問に移りますが、ぜひひとつ先ほどのことを強く要望しておきたいと思います。  それから次は、証券取引等監視委員会が昨年七月二十日設立されました。以来、約九カ月間たったわけでございます。この関大変なお仕事をしていただいた、活動されたということに敬意を表します。きょうこの場で、できる限りで結構でございますが、中間報告といいましょうか、九カ月たってこの証券取引等監視委員会の活動報告、中間報告、こういうものを概略まず御説明いただければと思いますので、ぜひひとつよろしくお願いします。
  185. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 昨年のちょうど五月に、委員会の法案を当委員会で御審議を賜りまして、五月の末に成立をさせていただいたわけでございます。  ただいま日笠委員おっしゃいましたように、昨年の七月二十日に委員会が発足をいたしました。法案が成立いたしましてから、まずこの七月二十日までの間にいろいろ物理的な準備がございました。部屋の整備等々を初めといたしまして、火急的ないろいろな努力をさせていただいたわけでございます。  七月二十日に、御案内のように三名の委員のもとに発足をさせていただきました。機構は、総務検査課と特別調査課、総務検査課が五十九名おります、特別調査課が二十三名おるわけでございますが、この二課を有します事務局を設置をさせていただきまして、合わせまして、局長、次長も入れまして八十四人の職員をそこに配置をさせていただきました。それと同時に、全国の財務局等に百十八人の担当職員を配置いたしまして、総計二百二人の陣容で発足をしたわけでございます。  監視委員会が発足いたしまして、この組織の体制固めということがまず最初に必要でございまして、したがいまして、部内のさまざまな会議でございますとかあるいはいろいろな研修をまず実施をさせていただきました。そして、昨年の八月の末から実地の検査、つまり証券検査に着手をさせていただいております。  ちなみに、これまでに、証券検査につきましては、証券会社につきましては六十一社、それから証券業務を営む金融機関につきましては四機関に対しまして検査を実施をさせていただいているところでございます。このうち、コスモ証券につきまして、検査の結果、法令違反等が認められたものでございますから、昨年の十二月に大蔵大臣に対しまして行政処分等を求める勧告を行ったところでございます。この勧告を踏まえましで審問を行い、十二月の末に行政処分が行われたところでございます。  それから、犯則事件の調査につきましては、昨年の十二月に、株価操作の嫌疑によりまして関係者に対する初めての強制調査に着手をいたしまして、引き続き調査を実施しているところでございます。検査に当たりましては、証券市場におきます取引等につきまして法令に従って厳正な姿勢で臨みますとともに、犯則事件につきましては果断に処理しでまいりたいと考えておるところでございます。  また、この監視委員会は、その仕事の性格柄、業務を円滑、効率的に実施していくためには、いろいろな有効な情報や端緒というものを把握するということが重要でございます。そういう意味で、常日ごろからあらゆる方向にこのアンテナを張りながら、積極的な情報収集にも努めさせでいただいているところでございます。  また、この監視委員会の業務の遂行のかなめとしては、どうしても予算が必要でございます。この必要な経費につきましては、平成五年度におきましては、おかげさまで平成四年度予算対比六千二百万円増の一億六千百万円の予算を計上していただきました。  発足いたしましてまだ御質問のように一年を経過しておりませんけれども、今後ともこの法改正の趣旨を踏まえまして、証券市場等の公正性、透明性の確保という責務を着実に果たしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  186. 日笠勝之

    ○日笠委員 余り犯則事犯なんかない方がいいわけなんですけれども、しかし、頑張っていただきたいと思うのです。仮名口座がどうだ、飛ばしがどうだ、インサイダーがどうだというのは、新聞紙上を見ているだけでもまだまだ証券市場、完全に個人顧客、十分信頼を取り戻しているのかなというさまざまな事象が散見されるものですから、ぜひひとつ、透明で公正な証券市場のために頑張っていただければと思うわけでございます。  次に、本年四月一日から金融制度改革法がいわゆる施行されたわけでございます。この法案については大議論をやりまして、最終的にこの法案が通りまして、いよいよ施行されるわけでございますが、そのときに、トピカルな事象として私が二、三遍この委員会で申し上げたのは、いわゆるファイアウォール、証券会社と銀行、信託銀行の間につくるんだ、そういうことで、じゃ、どういう名称、名は体をあらわすといいますね。マイクロホンと言ったらこういうものだと皆わかるわけです。そういう意味で、名は体をあらわすので名前が非常に大事であるということで、当時の松野証券局長に二、三遍そのことで御質問をいたしました。  これは昨年の五月二十二日の当委員会の会議録でございますが、松野証券局長はこのように答弁されています。「第一義的には各社が判断することでございますが、要はやはり証券子会社と銀行が一体であるという誤解をなるべく与えないということが必要だろうと思うわけでして、いろいろこれから検討してまいりたいというふうに思っております。」そのときのニュアンスは、ドイツ銀証券というのがあって、これは銀と証が名前の中にある、看板が出てくる。ちょっと銀行なのか証券会社なのか、またいわゆるユニバーサルバンクなのかというような感じで、両方やっているのかな、そういう誤解を与えるということで、そのときも証券局の中では大変議論があったようですね。  しかし、このようにまた御答弁されていますね。「外国銀行が日本に証券会社をつくりますときに、最小限度銀行という名前は使ってもらっては困るという指導をした経緯がございます。」「一方では銀行と証券子会社とが一体になって営業するのではないかというようなおそれを高めるという問題もあるわけでございます」、結局、ドイツ銀証券だけは外資系だということでやむを得なかったというニュアンスでございました。  じゃ、日本ではどうか。銀行、信託銀行もそうですが、証券子会社をつくるときは、何とか銀証券、こういうことがあり得るのか、そういう質問だったわけですね。それに対して、第一義的には各社が判断するけれども、銀行と証券子会社が一体であるという誤解を与えない方がいいんじゃないか、こういうようなお話だったんです。  ところで、この四月施行になりまして、いろいろ新聞等を見ますと、長銀証券とか興銀証券とか、銀と証があるような申請がなされている、こういうふうな報道があるのですが、実態はいかがでしょうか。
  187. 小川是

    ○小川(是)政府委員 先ず、銀行の証券子会社の申請につきましては、現段階におきましては正式な免許申請は行われるに至っておりません。しかし、四月一日以降、今お話がありました興銀、長銀、さらに農中の三社から証券業の免許の予備審査のために準備する書類が持ち込まれて、相談に応じている、そういった状況にございます。  その中で、それでは名称についてどうかということでございましで、例えば興銀の場合であれば証券子会社の名称に興銀証券という名前を付したいというのも、その準備の段階として相談が参っているわけでございます。  こうした証券子会社の商号の問題につきましては、資本市場の健全な発展の見地から、証券子会社の独立性という問題もございます。この観点も踏まえて検討していく必要がございますが、あらかじめ一律に、銀という字を付するのは差し支えない、あるいはいけないという形で可否を論じるということではなくて、ただいま申し上げました具体的な申請について、これを審査する段階で社会通念等に照らして総合的にこれから審査をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  188. 日笠勝之

    ○日笠委員 局長、今三社言われましたですが、あと信託銀行が証券子会社という予備審査ですか、そういうお話はなかったのですか。
  189. 小川是

    ○小川(是)政府委員 ただいま申し上げましたとおり、現段階におきまして、予備審査のための準備をこれらの親元でやっておられますが、その準備している書類が持ち込まれて具体的な相談に乗っておりますのは、先ほど申し上げました三社でございます。  今おっしゃられたのは、報道としては承知をいたしておりますけれども、私どもにまだ具体的な相談が来ているという状況ではございません。
  190. 日笠勝之

    ○日笠委員 これは銀行局、来られていますか。おられますね。  信託子会社の方の予備審査というのでしょうか、これは突然の質問なんですが、何行ぐらいが、証券会社が、または銀行が信託銀行の子会社をつくりたいというふうなお話はございますか。
  191. 寺村信行

    ○寺村政府委員 証券会社数社から事前の相談を受けておりますが、先ほど証券局長が申し上げました、証券子会社の予備審査のための準備している書類が持ち込まれるという段階にもまだ至っておりません。
  192. 日笠勝之

    ○日笠委員 金融機関も大変厳しい情勢ですから、果たして出されるかどうか、今後関心を持って見守っていきたいと思います。  その次、国債、赤字国債、建設国債という国債の議論をちょっとしたいと思います。  建設国債は発行対象事業を予算総則で明示をしておるわけですね。財政法四条にそうなっております。その財政法四条で言うところの建設国債とはどういうものか、スタンスといいましょうか考え方といいましょうか、そういうものがあればまずお聞かせ願いたいと思います。
  193. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 財政法は、先生御承知のとおり、まず非募債主義の原則に立っておるということでございます。その上に、公共事業費等の財源については例外的に公債の発行を認めるということでございます。これは、公共事業費等はその支出により資産が形成され、その資産からの受益も長期にわたることから、国債発行を認めているものと理解しております。
  194. 日笠勝之

    ○日笠委員 じゃ、もう少し細かくお聞きします。  例えば金額であればどのぐらいの金額以上のものとか、それから設備とか施設とかいろいろございますが、以前航空機、ヘリコプターなんかはなぜ入らないのかという議論もいたしましたが、その辺のもう少し細かいスタンス、区分けといいましょうか、これはいいけれども、これはだめだ、そういうものがあればもう少し詳しく。
  195. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 財政法の趣旨にかんがみまして、公共事業の範囲につきましては、従来から、公債を発行するにふさわしい性格とそれから一定の耐用年数を有する経費、ですから道路、下水道等の公共事業費とその他の各種施設の建設費等に限定しているところでございます。
  196. 日笠勝之

    ○日笠委員 いや、ですからそれはわかっているんです。例えば金額で数千万円でも、じゃ、第四条で言う建設国債発行対象事業になるのかとか、設備と施設は一体でなければいかぬとか、そういう区分けというんでしょうか、私の言い方が悪いかもしれませんが。  御存じのように、総合経済対策をいろいろ議論したときに、パソコンを建設国債でとか、いろいろな議論がありましたね。だんだん精査されて、やはりそれはできないねということになったようです、実務者レベルでも三塚政調会長がそう言っておられましたけれども。  そういう意味で、ある程度の理念というものがないと、あれもこれも取り入れようという動きは、まだまだ財政が厳しい中で、来年も再来年もそういう話し合いが大臣折衝とか局長レベルの折衝で、これも入れてよ、これも入れてよということに、建設国債ならいい、こういう感じですから、そうじゃないんだ、建設国債はこういう理念、こういう考えでやっているんだというある程度スタンスがなければ、またぞろ、パソコンがだめなら、じゃ、天体望遠鏡はいいんでしょうかとか、わかりませんけれども、そういうものがぞろぞろ出てくると思うのですよ。そういう意味で私は、建設国債のスタンス、理念はわかりましたが、もう少し細かく、あればということを申し上げているのです。
  197. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 国債整理基金特別会計法の中で定率繰り入れというのは百分の一・六と決まっておりますのは、実はこれは要するに全体として六十年の耐用年数を考えているということでございます。  そういう法律趣旨から参りますと、一つは、公共事業関係の中では、例えば住宅公庫の補給金、これは経常的経費ですけれども、いわゆる道路とか下水道、そういったぐいのものは当然公共事業関係費になる。  それから、いわゆるその他の施設費でございますが、施設も基本的には公債対象になるわけでございますが、ただ、便宜上一億円以上の経費を対象としているということ、これは運用基準でございます。なお、施設費と一体化したものにつきましては、これは要するに全体として施設であるという認定で、これも公債対象としておりますが、例えばパソコンだとかこういうものについては、法律解釈として公債対象にはならないと我々は考えております。
  198. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、与野党の実務者レベルで自民党側から、スーパーコンピューターを総合経済対策で十一台ほど考えているという話がありました。それは結局備品調達ということで、これは建設国債発行対象にはならない、そういうふうに考えていいでしょうか。それとも、スーパーコンピューターを入れる施設を改造するかつくればいい、こういうことになるのでしょうか。その辺の基本的なお考えをお聞きしておきたいと思うのです。
  199. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 今回スパコンあるいはパソコン等につきましても対策の中には織り込んでおりますけれども、考え方としては公債対象にはならないということでございます。
  200. 日笠勝之

    ○日笠委員 それから高度医療機器も、国立病院とか国立大学附属病院、そういうところにも入れたらどうか、こういう話もあったのですが、こういうものは建設国債発行対象になり得るのでしょうか。
  201. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 先ほども申し上げましたように、施設一体のものについては公債対象になります。  それからなお、国立病院あるいは国立大学の病棟の建てかえだとかあるいは大型の医療器械については、診療報酬という収入がございますから、これは特別会計の借入金でこれらの事業が行うことができることになっております。
  202. 日笠勝之

    ○日笠委員 大体概略わかってきたのですね。高度医療機器も、いわゆるそれが稼ぐものは財投で借入金で借りて、それで収入が上がったもので返していけ、こういうことなんですね。その辺の原則がわからないから、病院も建てかえて医療機器も入れろ、はい、これで建設国債でいけるじゃないか、こういう乱暴な議論が、乱暴かどうか知りませんが、議論が出てしまうのですね。  その辺のスタンスをしっかりすれば、建設国債とは何ぞや、財政法第四条に言うところの発行対象はどういうものがあるということがきちんとわかって、当初、追加景気刺激だ、あれもこれもというような議論は出てこなかったと思うのです。ぜひそういうことで、どうしても人間安易な方へ流れやすいのですね。財政が逼迫してくると、赤字国債はだめだけれども建設国債ならいいのだろう、じゃ、そこへ全部入れ込めと、いろいろな理屈をつけて野方図にどんどん来るおそれもあるわけですね。そういうことでございますから、その点のスタンスをきちっとお持ちいただいた上で対処をお願い申し上げたいと思うのです。  そこで、国債の話なんですが、また資料を持ってきましたけれども、「財政法第二十八条による平成五年度予算参考書類」というのがございまして、これの八ページに「国債及び借入金現在高」というのがあるのですね。お手元にございますか。区分が内国債、借入金、短期証券、その内訳、いわゆる糧券と為券、合計、たくさん余白があるのですね。  これを見たのでは、皆さんおっしゃるように、建設国債が幾らで、出資国債が幾らで、俗に言ういわゆる特例公債が幾らか、これはわからないのですね。どこを見ても、予算書等を見ても、百八十四兆円のいわゆる国債がある、借金がある。しかし、じゃ、建設国債は幾らなんだろうか、建設国債と称するものの中でも出資国債、交付国債はどうなんだろうか、俗に言う特例公債は幾らなんだろう。もう少しわかるような資料にできないのかな。これは涌井次長、竹島次長と話がついでいますから、やりますと言ってくだされば済みますから、どうぞ。
  203. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 突然の質問で、資料も持ってきておりませんので、ここで確たることは申し上げられないのですけれども、先生の問題点の指摘は念頭に置いて、持ち帰って検討したいと思います。
  204. 日笠勝之

    ○日笠委員 事前レクでそういう話になっておりますから、ひとつよろしく対応をお願いしたいと思います。  そこで、私たち社公民で、当初予算のときにも強く要求いたしました、いわゆる大幅所得減税でございます。実務者レベル等を通じまして、最終的に全体会議を開きまして、第一弾ということで政策減税、俗に言う教育減税、特定扶養控除五万円上げるとか住宅減税、中小企業等の投資減税、こういうものの減税は第一弾ということで了解いたしまして、しかし、さらに引き続き広く財源を求めて所得税減税については協議をするということで終わったわけでございます。  政策減税についてはいろいろ申し上げたいこともあるのです。あるのですけれども、この労を歩といたしまして、やはり大幅所得税減税というこの旗は私たちもなかなかおろせないのですね。一部景気に明るい兆しが見える。俗に自動車の販売台数も三月はふえたとか、住宅の着工件数も昨年は百四十万戸いったとか、在庫調整も進んでおるとか、いろいろ言われます。  しかし反面、三月の日銀の支店長会議でも、消費、設備投資はまだ低迷しているという報告がなされております。そして、最近の雇用調整、倒産件数、こういうものを見でも、やはり景気は深刻なんだろうな。そしてまた、特に消費と設備投資でGNPのうち八割を占めるわけですが、そこのところが低迷をしておる。ということは、やはり所得税減税というものが大きな火つけ役になる、また消費を下支えするのではないか、このように私たちは思ってずっと主張を続けております。  そこで、宮澤総理がアメリカに行かれました。私もその二週間ほど前にワシントンにも行っておったのですが、どうもアメリカのクリントン政権を支えるスタッフの人は、今度日本は経済対策をされるそうですが真水はどのくらいになるのですか、真水という言葉は通訳してもらったので、英語でどう言うのか知りませんよ、実質はどうなんですか、いわゆる水膨れしていませんかと、非常によく研究しておりました。  そういう意味では、五月中旬ですか、補正予算を閣議決定されて国会提出というふうにお話を聞いておりますが、公共投資を中心とした景気刺激だけで果たして景気の下支えといいましょうか、経済成長率等から見てインパクトが相当あるんだろうかな、そういうふうな感じも持ちます。  所得税減税については今後与野党で協議をすることになっておりますが、何としても今国民が望んでおるのは、一回こっきりかもしれませんけれども、物価調整減税的な意味も踏まえてやはり所得税減税ではなかろうかな、こういうふうな声がほうはいとして起こっているのではなかろうかと思います。  そこで、何回も同僚の議員が聞かれておりますけれども、所得税減税は財源の問題だというところに行き当たるわけなんです。そこで、財源なら私たちは一回こっきりの緊急避難的ということで赤字国債ということまでも勇断を奮って申し上げておるわけなんですね。  それが先ほどから言っておるいわゆる国債の増発になる、後世にツケを残す、きのうも大臣がこういうふうに御答弁されていましたけれども、短期、五年ぐらいの国債ということであれば、そんな子や孫の代まで残すわけではありませんし、これで景気がよくなれば当然税収もふえでくるだろうとか、楽観的な見方かもしれませんが、今の雇用調整、倒産件数、消費、設備はまだまだ低迷ということであれば、どうしてもそこのところへ手を入れなければ、そこをてこで動かさなければ、本当に景気は回復するのかな、こういうふうに思っておるわけでございますが、総括的にまず御所見を伺いたいと思います。
  205. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 日笠委員は与野党協議の公明党の代表でやっておられますからいろいろなお話は詳しいことでありますし、私からくどくど改めて申し上げるまでもないと思います。  四月八日の不況対策に関する各党協議会におきまして御了解があって、今会期中に前向きに検討していこう、こういうふうなお話であります。私は、与野党協議のお話の推移を今後とも慎重に見守っていきたい、こう思っておりますが、私の方としては、言われておりますところの所得税減税というのは、やはり景気に及ぼす影響というのは相当効果として問題があるのではないか。また財源対策としても、やはり巨額の赤字を抱えるという話になりましたならば、将来の問題としてどうか。  もう一つは、税制全般の考え方として所得税減税の中でそんなことをやるのは一体どんなものかというような点、克服すべき問題が多々ある、こういうふうなことを今までも申し上げておりますし、またきょうも申し上げなければならないと思っております。  今五年、こういうふうな話でありましたけれども、かつて赤字国債を発行したときも十年という話であったわけですね。ところが、結局それが十年でなくなったというふうなこともありますし、やはり財政の節度、規律というものは持っておかなければならないのだろうと思っておるところであります。  もう一つ申し上げますならば、景気の方もお話がありましたように消費がもうひとつ、こういうことでありますが、景気というものは、全体のことを見ておりますと、ことしの二月ごろあるいは一月ごろに考えておりましたよりはやはり相当動意が出てきたな、こういうふうな感じを持っておりますし、それをさらに確実なものにするために十三兆二千億円という大きなものを追加的にしかも早目に打ち出しできているところでありまして、そういったことによりまして一般の活動が上がっていくものであろうと思っております。  政府活動を刺激する、こういうことは政府活動についていい影響が出てくるだけじゃありません。それが呼び水になりまして民間の活動、また民間の消費に対しましてきっといい影響を与えてくれるものだ、そういったことによりまして経済全体の浮揚が図られていくものだというふうに私は確信をしているところでございます。
  206. 日笠勝之

    ○日笠委員 終わります。
  207. 藤井裕久

  208. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 きょう私は、自賠責保険に関係することに絞りましで質問をいたしたいと思います。  まず最初に自動車事故対策センターについて伺いますが、私は昨年の三月十一日の予算委員会で、この事故対策センターについて、その運営並びに人件費の問題等々につきましてかなり詳しく論じたつもりであります。そうした経緯を踏まえて聞くわけでありますが、まず、仄聞いたしますと、自動車事故対策センターにおいて職員の空出張が多発しているというふうに聞いておりますけれども、監督官庁であります運輸省の調査ではどういうふうになっているか伺います。
  209. 星野茂夫

    ○星野説明員 御説明申し上げます。  ただいま御指摘がございましたが、今週発売されました週刊誌におきまして、自動車事故対策センターの地方支所において御指摘のような経理処理が行われているのではないかという趣旨の記事が掲載されたところでございます。  事故対策センターは、政府出資法人といたしまして国の監査に服し、厳正な経理処理に日ごろ努めるようにということで指導してまいったところでございましで、記事にあるような運用がなされているということは私どもとしては考えがたいところでございますが、これは可及的速やかに事実関係を明らかにすべきである、そういうことで同センターに対しましてこれへの対応を指示いたしたところでございます。現在、このための調査を実施している段階でございます。
  210. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 運輸省としては調査をしているということでありますね。  会計検査院の方はいらっしゃいますね。会計検査院も本件についで、この職員の空出張情報を入手していると思いますけれども、調査を始めているかどうかを伺います。  それから同時に大蔵省にも聞きますが、このことについて承知をしているかどうか伺います。
  211. 重松博之

    ○重松会計検査院説明員 御説明申し上げます。  自動車事故対策センターにつきましては、私ども、その経理が適正に処理されているか、事業が経済町、効果的に実施されているかといったような観点から、毎年会計実地検査を実施しているところでございます。  ただいま先生御指摘の件につきましては、私どものこれまでの検査では特に問題となる事態は見受けられなかったわけでございますけれども、このたびの先生からの御指摘もこれあることでございますので、私どもといたしましてもこれを十分に念頭に置きまして検査したいと考えております。  以上でございます。
  212. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 自動車事故対策センターの問題につきましては、私ども所管をしておりませんものですから、事実関係について確認できる立場にはございませんが、私どもとしましても一部週刊誌で報道がされておるということは承知しております。
  213. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 会計検査院に再度確認いたしますが、まだ調査を始めてはいないけれども、これから始めますということですか。
  214. 重松博之

    ○重松会計検査院説明員 先ほど運輸省からも調査をさせているということでございましたので、それらも参考にいたしましてこれから検査をしたいと考えております。
  215. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 御承知のように、この自動車事故対策センターというのは昭和四十八年に自動車事故対策センター法に基づいて設立された法人で、その活動資金のほとんどは自賠責保険特別会計の運用益から出されております。しかも、その額は年々どんどん上がっておる。そして、平成四年度の予定ですと、約百五十五億円にもなる。この辺の状況については、昨年の予算委員会のときにも私はいろいろなことを申し上げました。もともと、この自動車事故対策センターの存在意義そのものについても、あるいはまた現在の運営のやり方にも問題があるということは、この間も私は指摘をいたしました。  しかも、今回のように職員の空出張あるいは不正な問題があるとすれば、ますます事故対策センターの存続そのものが問われてくるというふうに私は思っております。そういう意味でぜひ厳格な調査をやっていただき、そして報告をしていただきたい、こういうふうに思っております。  私としては、もう少し真相がわかった段階で事故対策センターの理事長を別途参考人として呼びたい、こういうふうに考えておりますので、その旨申し上げておきたいと思います。  それから次に、自賠責保険そのものについて伺います。  まず、この質問に先立ちまして、ことし四月から自賠責保険の料率が平均一三%引き下げられることになりましたけれども、これについては大蔵省、運輸省を初めとしてそれぞれの皆さん方の非常な御努力があったものだと思いますし、その意味では私からも感謝を申し上げたい、こういうふうに思っております。  ところで、これからのことについて考えるわけでありますが、昨年の自賠責保険審議会で、平成三年に引き続いて平均一三%の料率引き下げが答申されました。平成三年の検証で平成五年度の損害率の見通しは一一七・一%、それが平成四年の検証では七・九%改善して一〇九・二%と、自動車のユーザーにとってはよい方向に予想は外れた。しかし、これはどういう要因だったのだろうか。  そして、私は特に医療費の適正化の影響が大きいと思っているのですが、現在十地区で実施中の診療報酬の基準案がさらに普及拡大していきますと、今後もこの収支はさらによくなっていくと思うのですね。現時点で大蔵省は、そうした見込み額あるいは今後の収支の見通しについてどの程度織り込んでおられるのか、あわせて伺います。
  216. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 自賠責保険の料率算定に当たりまして、今先生がおっしゃられましたように、平成三年に平成五年度の損害率を見込んだものは一一七・一%でございましたが、平成四年の検証で平成五年度の損害率を推定しでみますと一〇九・二%と、前回よりも改善しているところでございます。  この要因は、今先生から御指摘がありました医療費の支払いの適正化が進んできたということもございますし、また、事故率そのものが良化したというような要因もあるわけでございます。  医療費の適正化の問題につきましては、昭和五十九年の自賠責保険審議会の答申を受けましで、診療報酬基準を普及拡大させていくということで、現在実施地区は十一地区になっておりますが、こういう効果があらわれてきていることが今回の損害率の良化にも結びついてきているというふうに考えているわけでございます。  ただ、このような効果が今後とも拡大していくことを我々としては大いに期待したいところでございますが、料率検証として考えますときには、先生御承知のように料率検証は毎年行っておりまして、自賠責審議会も毎年開催をする。そして、そのときどきの料率検証に基づいて、適正な料率がどのような水準であるべきかということを毎年御議論いただいております。  今後の効果というようなものにつきましては現時点ではなかなか見通しが難しいという問題もございますので、毎年毎年料率検証を行っていく中でこういった適正化の効果の浸透というようなものも料率に反映されていく、こういうことを期待したいと思っておる次第でございます。
  217. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私の方で試算してみますと、これからの医療費の適正化という効果を織り込まないで計算をしてみて、大体、平成十二年度の滞留資金が約七千億、それから平成十五年度か十六年度ぐらいに滞留資金は底をつくかなという感じだと思うのですね。しかし、これは今申し上げた医療費の適正化等を織り込んでいきますとかなりよくなるのだろう、こう思うのです。  そういう意味で、これは要望しておきますが、今後、毎年の収支の検証をするときに、ぜひ予定損害率に照らしで十分に料率のチェックをしていただきたい。そして同時に、可能ならばさらに料率を引き下げることをぜひ検討していただきたい。これは要望しておきます。  ところで、今回の料率の引き下げに伴って、損保業界の累積運用益の方が早くお金がなくなっていくようになると思います。だから、特会から損保業界にお金を回してやるようなことを考えないといけないと思います。  したがって、そのためには特会法を早期に改正をして、特会の累積運用益を保険料勘定に入れる必要がある、こういうふうに思うのですが、運輸省はこれについてどう考えているか。そして、この改正法案の提出時期をいつごろと考えておりますか。
  218. 星野茂夫

    ○星野説明員 御説明申し上げます。  ただいま委員から御指摘いただきましたように、今回の保険料率の引き下げの原資でございます累積黒字及び累積運用益につきましては、自賠特会と損保業界との間で今後財源調整が必要でございます。どのような形で財源調整を行うか、その方法いかんにもよるわけでございますが、こうした調整を行いますためには何らかの法改正が必要である、私どももそのように認識をいたしております。  なお、この点につきましては、今回の引き下げにかかわります自賠責審議会の答申におきまして、「累積運用益を責任保険の収支に充当するため、将来、手続上の所要の措置を講じる必要がある。」旨明らかにされているところでございます。  いま一つ、いわゆる法改正をどのようなタイミングで行うかということでございますが、私どもといたしましては、答申にのっとり、損保業界の意見も十分伺いながら今後検討してまいりたいというふうに考えておりますけれども、いずれにせよ自賠責保険は、ノーロス・ノープロフィットという原則で運営されておりますものですから、損保業界の決算収支を阻害することのないように、そういう考え方でやっていきたいと思います。  具体的に何年ごろになるのかということでございますが、現在の見通しては、現実に財源として損保業界側に不足が生じるのは今後五年ないし六年後の契約年度にかかわる部分から生じてくるということでございますけれども、今後の収支状況等を毎年検証されるわけでございますので、そういった実態を踏まえながら、必要な時期に必要な資金移転は確実に行う、そういう考え方で対応してまいりたいと存じます。
  219. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は、ことしじゅうに改正しなければならぬだろう、こういうふうに思っております。損保業界の実態もよく見きわめてぜひ検討してみてください。  次に、医療費の適正化、中でも診療報酬基準案について伺います。  昭和五十九年の自賠責審議会の答申では、診療報酬基準案が全国に浸透した後に制度化を検討することとなっておりますけれども、全国展開はいつごろ完了すると考えますか。
  220. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 診療報酬基準案の作成につきましては、平成元年六月に日本医師会と損保業界との間で中央レベルでの基本的な合意が行われた後、各都道府県単位で各県医師会と鋭意協議が進められているところでございます。本年一月一日より兵庫県が実施されまして、現在実施地区は十一地区となっております。また、本年二月十七日には大阪府でも合意が成立したということでございますので、今後合意地区が順次拡大していくものと思われます。そして、その結果合意地区から実施地区への移行も順次行われていくというふうに考えております。  我々としましては、全国展開がこのような形で徐々に進んでいくわけでございますが、全国展開が完了する時期がいつごろになるかということにつきましては、このような努力の積み重ねの中で一日も早く全国展開が行われていくことが望ましいとは考えておりますが、いつかということはまだ明確に見通せるような段階には至っておりません。
  221. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 どういうことが問題になって、さらに拡大するということが難しくなっているのでしょうかね。
  222. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 いまだ合意に達していない地区につきまして調べてみますと、例えば大都市圏などでは医師会の会員数も多いというような事情もございまして、会員一人一人の理解を得るのに時間を要している実情にあるというふうに聞いております。
  223. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今実施しているところが十一地区あるわけですね。それで、合意したところが八でしたか、あるのだろうと思うのですね。  そういう現状からしますと、もう全国の定着を待たずして法制化を検討したらどうかと思いますが、いかがですか。
  224. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 先ほど申し上げましたような中央レベルの基本的な合意を受けまして、現在実施地区が十一地区、それから合意地区が八地区となっておるわけでございます。それで、先ほど申し上げましたように、これが全国的に実施されるように鋭意努力をしていきたいと思っておるわけでございます。  その診療報酬基準案の法制化につきましては、昭和五十九年の自賠責審議会の答申で指摘されたとおり、基準案が全国的に浸透し、定着した段階で制度化を図ることが適当ではないかと考えている次第でございます。
  225. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 なかなか進まない、一生懸命に御努力をされてくださっているわけですが、しかしなかなか進まないなというのが率直な感じでもある。そしてまた、十九地区くらいになってきますと、これはもうそろそろ本当に法制化くらいしないとなかなか進まないかもしれないということも考えられる。そういう意味で検討をしたらどうか、こういうふうに思うわけでありますが、それにあわせてちょっとまた基本的なことを聞きたいわけです。  自賠責の診療は健保の水準でできないだろうかということなんです。かつて幾つかの委員会で私この問題も議論をしたことがありますが、昭和四十年代の初めに健保診療についての議論がありまして、昭和四十三年には厚生省、四十四年には運輸省が、交通事故の診療は健保でもよいという見解を出しましたよね。今でもそれぞれはその考え方に変わりありませんか。
  226. 紺矢寛朗

    紺矢説明員 お答え申し上げます。  基本的にはその考え方には変わりはございません。  私ども、自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変わりがなく保険給付の対象となる、この旨につきまして四十三年に通知を出しておりまして、その後もこの旨は保険者に対して周知徹底を図っておるところでございます。  なお、あわせて、御案内のとおり、医療保険が適用になります場合、加害者に求償という行為が必要でございますので、この旨もあわせて周知を図っておるところでございます。
  227. 星野茂夫

    ○星野説明員 運輸省といたしましても、考え方、認識に変わりはございません。
  228. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今診療報酬基準案の運用は各県でどんな基準になっていますか。
  229. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 診療報酬基準案の作成につきましては、先ほど申し上げましたように、平成元年六月に日本医師会と損保業界との間で中央レベルで基本的な合意がなされたところでございます。  その合意の内容でございますけれども、自動車保険の診療費については、現行の労災保険診療費算定基準に準拠しまして、薬剤等の物につきましてはその単価を十二円とし、その他の技術料についてはこれに二〇%を加算した額を上限とする、ただし、このような内容につきましては、個々の医療機関が現に請求し、支払いを受けている診療費の水準を引き上げる趣旨ではない、このような基本的な合意がされたわけでございます。  診療報酬基準案が適用されている地区につきましては、今申し上げましたような合意内容を踏まえまして、各都道府県単位で各県医師会と協議がなされ合意に達しでいるものでございまして、基本的には今申し上げました中央レベルの合意を踏まえたものになっているというふうに聞いているところでございます。
  230. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のは、医師会の方からの強い要請もあったりして、そしてそういう経緯も経て今部長説明されたような形で、物については十二円ということでありますから、それは健保水準の二割アップという格好になっているわけですね。そしてまた、技術料についても労災の二割アップという形になったりしている。  ただ、今の事故の傷害の程度といいましょうか、こういう状況はやはり本当に実態をよく見て考えなければならぬ、私はこう思いますね。それで、実際に事故の状況を傷害度別に見てみますと、全部で六段階に分けました傷害度の程度ごとに調べたデータによれば、軽度というのが七七%ありますね。軽度、中程度くらいでもう九三%を占めている。ここ数年の実態を見てみますと、実際にはいわゆる重傷の件数というのは五・数%しかありませんね。  というような状況を見ておれば、この基準案という問題についでもよくよく検討してみる必要があるだろうな、こういうふうに思いますので、そういう意味で、これからもこの法制化の問題もある、そして診療報酬基準案そのものについての妥当性ということもこれからますます考えていかなければならないということをぜひこれはお願いをしておきたいと思いますので、よろしくお願いします。  それから、自賠責審議会でいろいろ議論をされてやってくるのですが、そもそも審議会そのものについでなんですが、この審議会の機能から見で、今は行政機関の責任担当局長委員として入っている構成になっておりますよね。私は、学識経験者あるいは利害代表、ユーザー代表など、そうしたところが本当にバランスを持った構成にすべきだと思いますし、今臨時委員として何人かが入ったりしていますよね。しかし、この臨時委員もこれは正規の委員にすべきものである、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  231. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 自賠責審議会の委員につきましては、十三名と法定されておりますが、今先生から御指摘がございましたように、それ以外に五名の臨時委員を登用し、広く各層の意見を求めることとしているわけでございます。また、委員の登用に当たりましては、行政機関の職員のほか、学識経験者あるいは利害代表を複数登用し、バランスのとれた構成としているほか、ユーザー団体の代表の方にも現在一名の臨時委員を登用し、ユーザーとしての意見も十分審議に反映されているところであると思っているところでございます。  ただ、今先生から御指摘のありました点につきましては、引き続き検討してまいりたいと考えております。
  232. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 審議会のメンバーをつらつら見てみれば、例えば臨時委員の話も、私は先ほど申し上げましたように、臨時委員も五名入っていますよね、臨時委員が五名。そしてまた、先ほど私は行政機関の職員の話もいたしましたけれども、本来は、行政機関の職員というのは、いわば事務局といいましょうか、こういう人たちは、この審議会が審議をし、そしてそこである答申をしようとするときの、何といいましょうか、問われて説明する説明員といいましょうか、という役割じゃないかと私は思うのですよ。  ところが、現在のこの審議会は行政機関の職員が何名入っているのだろうかと考えれば、警察庁の交通局長、法務省の民事局長大蔵省の銀行局長、農水省の局長、運輸省の局長、そして自治省の局長という感じで並んでいるんですよね。しかも、こういうのを見れば、ああ本当にいいのだろうか、こういうふうに思いますし、そしてまた、例えばユーザーの話なんかも先ほど部長説明をされましたけれども、本当にこういう状況でいいのだろうか、あるいは、もっとこういう人は複数入れた方がいいのじゃないかとか、私はこういうことを検討すべきだと思うのですね。  今部長も、見直しといいましょうか、検討されるような話をされましたけれども、これは、今のお話のように、法改正をする必要があるということでありますが、大体いつごろそういうことを考えようとされますか。
  233. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 今、行政機関の職員が数多く委員に入っているのではないかという御指摘もございましたが、自賠責保険制度につきましては、非常に広範囲の行政機関にかかわる制度になっておりますものですから、審議会の議論を深めるという意味で現在こういうことが法定されているというふうに私どもは理解しているわけでございます。  それから、実際の運用につきましでも、先ほど申し上げましたように、現在は自動車を所有されている方がほとんどになってきておりまして、そういう意味では審議会の委員の皆さんはユーザーである面も相当あるわけでございますが、それ以外に臨時委員としてユーザー代表、ユーザー団体の代表の方も参加していただくとか、そういうことで実質的な審議が実のあるものにするように努力しでいるわけでございますけれども、先生から御指摘のあった点につきましては、なお引き続き検討させていただきたいと考えている次第でございます。
  234. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 これは、先ほど特会法の改正の話もちょっといたしましたけれども、そういうこととも関連をするかもしれません。そういう意味では運輸省とも大蔵省ともよく相談をして、ぜひ早期に改正ができるように御検討をお願いをしたい、こういうふうに思います。  時間が参りましたので私も本日はここで終わりますが、この自賠責の問題につきましては、私が議員として初当選以来約十年、ずっと私はフォローをしてきたといいましょうか、関心を持って取り組んできたつもりでありますけれども、本当に善良な自動車ユーザーがこの保険を払って、そして何かあったときの保障のためにということでみんながいわば一生懸命やってくれている。  じゃ、その運営をどういうふうにうまくユーザーのことも考えてやるかということは本当に考えなければならぬし、先ほどもお話があったように、原則ノーロス・ノープロフィットということでありますから、本当にそういう意味意味のあるようにしていただきたいと思いますし、またそういう意味でも最初に申し上げた事故対策センターの件は、これは私は極めて大きな関心を持って見なければならぬと思いますよ。  どれだけこの事故対策センターそのものが適切に運営されているかどうかということについては、申し上げたように本当に大きな関心を持って見ておりますので、冒頭申し上げたとおりに、この調査並びにその報告については厳重にやっていただくようにお願いをして終わります。  どうもありがとうございました。
  235. 藤井裕久

    藤井委員長 正森成二君。
  236. 正森成二

    ○正森委員 きょうは一般質問でございますので、宮澤総理の訪米による首脳会談及びそれをめぐる問題についてまず質問させていただきたいと思います。  宮澤総理は、十六日夜、ワシントン市内のホテルで行った記者団との内政懇談で、米国内に輸入目標を示せという考えを持つ人はあるが、クリントン大統領自身はそういうことは一言も言っていない、私は絶対反対だ、日本側がそんなことをしたら管理貿易になってしまうと言うとすっとわかってくれると語ったと報道されております。  しかし、米側は本当に個別品目での輸入目標設定を要求していないのかどうかという点については非常に疑問があります。大統領は記者会見で、具体的分野に目を向けたい、そして具体的な結果を望みたい、半導体がよい例だと述べているのは、まさにその個別品目ごとの輸入目標を設定をせよということではないのですか。まずそのことを伺いたいと思います。
  237. 佐々江賢一郎

    ○佐々江説明員 首脳会談についてお答えさせていただきます。  首脳会談におきましては、経済面において両国間の新しいパートナーシップを前進させることが重要である、こういう認識のもとで新しい協議の枠組みを創設するということに合意したわけであります。この協議では、重要産業におきまして貿易、投資の拡大が可能となるように構造問題それから分野別の問題を取り上げると同時に、環境テクノロジー等の分野での日米協力についても協議することとしたわけであります。  この具体的なやり方と申しますか、仕組みにつきましては、今後三カ月以内に日米間で協議の上合意するということにしておりまして、今後日米間で共同作業を通じて具体的内容を固めていくということが合意されたわけであります。  先生が今御指摘になりました、いわゆる個別セクターの問題について何をどのように今後議論していくのかという点については、現時点で何ら決まっておりません。ただし、一般論として、アメリカ側において一定の数字を設定することによって問題解決の進展の尺度とする、そういう考え方があることは事実でありまして、これについては我が国としても、総理が首脳会談で申し述べましたとおり、数字のターゲット等そういう管理貿易主義につながるようなものについては賛成できないという立場でございます。したがいまして、総理もそのこともはっきりと申し上げられたわけであります。このような原則的な立場に従って今後アメリカ側と話し合いをしたいというふうに思っております。
  238. 正森成二

    ○正森委員 そういう答弁ですが、しかし半導体問題を例にとると、その後各新聞は次のような論評を一斉に掲げております。「この達成には、「二〇%」というシェア目標の圧力の下で、通産省が強力な行政指導を展開し、日本の産業界も無理な購入努力を重ねた、という背景がある。」半導体で十月から十二月、二〇%のシェアをアメリカ製品が超えたということを指してこう言っているんです。「日本の協力は米側にこうした結果重視の管理貿易的手法に自信を強めさせる結果をもたらし、今後の日米交渉で米側が多用する大きな根拠を与えたといえるだろう。」結局日本政府は、米側の圧力に迎合しで管理貿易のお先棒を担いで、そうすれば一定の成果が上がるということを首脳会談の前にまず示すということをやったんじゃないですか。  しかも重要なことは、今答弁者が言いましたように、日米首脳会談で新たな包括的協議機関の設置について合意したことであります。この協議機関が、結局は半導体の経験を踏まえた個別品目のシェア設定を迫る場となることが強く懸念されております。少なくとも米側の位置づけとしてはそうなっているんではないんですか。
  239. 小平信因

    ○小平説明員 お答え申し上げます。  新しい半導体協定におきましては、九二年の末までに外国系半導体の日本市場におきますシェアが二〇%を超えるというアメリカの半導体業界の期待を日本政府が認識し、実現可能と考えるというふうに書いてございます。あわせまして、これは日米両政府がこれを保証するものではないというふうに明確に記されておるわけでございまして、二〇%のシェアは日本側のコミットメントやゴールではございませんで、市場アクセスの進展を図る一つの指標に過ぎないものであるわけでございます。  実際に、今御指摘がございましたように、昨年、第四・四半期の外国系半導体のシェアが日本市場におきまして二〇%を超えたことは事実でございますけれども、これは日米双方の企業努力のほか、我が国の景気低迷に伴います国内半導体需要の落ち込みが分母の減少につなかったという点も大きいわけでございます。クリントン政権が発足いたします前から、アメリカの一部におきましては、結果を重視するという観点から個別品目について数量目標を設定しようという考えがあったわけでございまして、昨年第四・四半期におきます半導体のシェアが二〇%を超えたことがアメリカ側のこういう考え方につながった直接の理由ではないというふうに考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、今回の日米首脳会談におきまして、宮澤総理からクリントン大統領に対しまして、日米両国の経済的繁栄は数値目標の設定といったような管理貿易によっては実現されないというふうに明言されたというふうに伺っておりまして、クリントン大統領もこういう日本の立場については認識をしたものというふうに期待をしております。
  240. 正森成二

    ○正森委員 認識をするのは自由ですが、事態はそれほど容易でないんじゃないですか。  今私が言いました、米側は新たな枠組み、協議機関で合意しなくても一方的に目標を押しつけてくる意向を示しております。「日米半導体協定でわかるように、単なる努力目標だった数字が独り歩きするし、カンター米通商代表は米議会で「(目標が達成されなかったら、報復、制裁の)対象となりうる」と証言」をしております。これは四月十八日の毎日に載っております。「米政府当局者は十七日、日本の市場開放に個別分野ごとの数量目標を設定する際の具体的な考え方を明らかにした。目標設定は基本的には日本との合意を前提にするが、「合意が得られない場合は米側で独自に導入したい」」こう言っております。そして、「米市場での外国製品のシェアの上限など「許容水準」を設定する意向も示し」まして、「日本の市場開放が進めば米市場の許容水準を高くする」、こういうことで、「日本との合意は不要」というような言い方をしているわけです。  つまり、交渉なんかやらなくても、米側は勝手にどんどこやっていくぞという考え方で、完全な管理貿易を要求し、それが入れられなければ米側が勝手にやるという立場をとっているんではないですか。だからこそ、あなた方も、日経の四月二十日付を見ますと、通産省や外務省の高官が「米政府が求めた分野別の輸入目標値の設定は「日本として絶対受け入れることはできない」」これは管理貿易につながる。別の通産省幹部は、米国製自動車部品の購入計画のような努力目標についても今後は一切提示しない、こういう珍しい高姿勢を示したということが報道されております。この点について真意を説明してください。
  241. 佐々江賢一郎

    ○佐々江説明員 先生が御指摘になりましたとおり、今アメリカ政府部内ではいろいろな対外的な発言がされております。  私どもの理解しているところでは、アメリカ政府は今現在、対日経済政策についての包括的レビューを行っているというふうに承知をしております。その中で、今言われましたような幾つかの管理貿易的な考え方についてまさに議論をされておる、そういうふうに今思っているわけであります。しかしながら、具体的に数値を示して交渉をするというような最終的な方針を固めたのだ、そういうふうには理解していないわけであります。  他方で、先生おっしゃいましたように、アメリカ側でそういう議論がされている、あるいはそういう発言がされているということは事実でありましで、その点については、我々としてもできることはやるけれども、できないこと、あるいはすべきでないこと、特に自由貿易の観点からすべきでないことについでは、はっきりそれはできないのだ、そういうことで臨みたいというふうに考えているわけでございます。  アメリカ側が自分で一方的に自分の交渉上の目標を掲げる、それはアメリカ側の自由でございましょうけれども、日本政府としてはそういうふうなものに乗って交渉する気はないのだ、これが今現時点の考え方であろうというふうに思います。
  242. 正森成二

    ○正森委員 一応課長はそういうお答えでありますが、国務大臣としての大蔵大臣に伺いたいと思います。本来は通産大臣がおられれば一番いいんですが、これはやはり政治家としてもお答え願わなければならないことであります。  最近の我が国の社説は、こういうアメリカ側の態度を非常に憂慮する見解があふれております。  例えば四月十八日の東京の社説ではこう言っております。  新しい協議機関で気になるのは米側が個別分野ごとに「市場開放の目標値」を設定しようと図っていることだ。  半導体開放の目標値は日本側が公式の約束として認めたものではなく、米側の解釈を強引に押しつけられたものだ。日本は社会主義、計画経済の国ではないから特定商品の輸入量を政府が決めることなどできる話ではない。  もともと貿易収支を二国間で均衡させよ、という主張には無理がある。例えば日本は石油輸出国との貿易では昨年も大幅な赤字である。これは当たり前の話であります。  インドネシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦など、いずれも五十億ドル以上の赤字だ。欧米諸国との貿易で黒字がなくなれば石油を輸入できず、日本沈没だ。  結果重視は米産業に自助努力を失わせる安易な解決法でもある。こういう主張を掲げております。  これは、この限りで、この東京新聞の社説というのは肯繁に当たっていると考えるわけであります。政府の閣僚として、アメリカ側の最近の目に余る自国中心主義、他国を無視するようなやり方に対しては断固たる態度をとるべきではありませんか。
  243. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 正森議員からのお話がありましたが、今の論説は大体そういうことじゃないかな、私もそう思うんです。  そもそも国際的に申しましてガット・IMF体制というのがありますが、ガット・IMF体制というのは、多国間におきまして自由な貿易をやっていこうという形でやってきておるところでありましで、一国の問題についでどうこうするということじゃなくで、やはり多角的なトレードの自由化というものをやらなければならない、これが私は大原則であろうと思っておりまして、その原則に反するような話というのはやはり認めるべきでない。アメリカがいかに言おうとも、それはそういうことでやらなければならないのが当然のことだと私は思っているところでありまして、これこそがやはり自由世界をうまくやっていくところの体制だろう、こういうふうに思っております。  宮澤さんもアメリカへ行ってその約束をしたわけじゃない。むしろそういったことがあるからいろいろな議論を、これからつくってやらなければならないだろう、こういうことでありますし、さらに、そんな経済問題だけじゃありません、環境の問題とか教育の問題とか、その他いろいろな問題について議論をしていこう、こういうことだと思っておりますし、私も、これから幅広い自由化の体制をどうつくっていくかにつきましで努力をいたしたい、こう思っでおるところであります。
  244. 正森成二

    ○正森委員 それにもう一つつけ加えなければならないのは、クリントン米大統領が円高歓迎の発言を首脳会談の場ではなく共同記者会見で一方的に発言したという問題であります。  同席していた宮澤首相は、クリントンの円高容認発言には何ら言及しない。したがって、円高容認と受け取られて今日の急激な円高の進展につながったのではないんですか。きょうの新聞あるいはテレビを見ますと、百九円九十銭というように、百十円を割り込むということになりました。一方では管理貿易を要求して、勝手におれがやりたいことをやる、それで言うことを聞かなければ口先介入やら何やらで、大統領が円高がいいんだというようなことを言う。  きょうの新聞によりますと、外務大臣は、異常、異例なことであっで遺憾だというような意味のことを言っているようでありますが、そういう外交的な慣例も無視する。きょう北米二課長が来ているようでありますが、大体、首脳会談はさしでやろうということになっていたのに、いきなり副大統領は入ってくるわ、国務長官は入ってくるわ、一対四で急遽やったそうでありますが、こういうものは対等の国の外交関係ではそもそもできないことじゃないですか。そういうことを臆面もなくやり、しかも円高がいいというようなことを一方的に言うこと、これは大蔵省が、もちろん中心は日銀でありますが、大蔵省も非常に関係のあることだと思いますので、こういう点について御見解を承っておきたいと思います。
  245. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 アメリカのクリントン大統領が記者会見の席で話をされた、こういうことでありますが、話をされるのは、これはアメリカの考え方でありますけれども、私は、アメリカとしても円高がこれからもずっと続いていくなどという、また急激な変動をするということを望んでいるはずはない、こういうふうに思っております。  というのは、今まで我々がいろいろと財務省当局その他と話をしておりましたところでは、やはり為替相場というのはファンダメンタルズを反映しでなだらかな形で動いていくということにつきまして、G7あたりでも大体のコンセンサスはできてきでおる、こういうふうに思っでおるところでありまして、なぜそういう話があったのかということにつきましては、私も極めて意外な受けとめ方をしているところであります。  しかしながら、事態はこういうふうになってきでおりますし、私としては、先ほど申しましたように、ファンダメンタルズを反映したような格好で為替相場が動いていかなければならない、それに対しましては適時適切に対処してまいりたい、こういうふうに考えでいるところでございます。
  246. 正森成二

    ○正森委員 ところが、アメリカは逆に、今の円ドル相場はファンダメンタルズを反映していない、そう思っているのじゃないですか。  きょうの夕刊を見ますと、こう書いてあります。日米蔵相会談、これは十四日に行われて、林蔵相も参加されたものであります。「日米蔵相会談について、日本側は記者団に「急速な円高は望ましくないとの認識で一致した」と説明したが、実際はベンツェン米財務長官はそうした見方を示さず、米側は大蔵省に「事実に反する」と強く抗議、訂正を要求していたことが明らかになった。」こう言っております。そういう抗議はあったんですか。
  247. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 G7の会合をロシア支援の問題で行いましたときに、ベンツェン財務長官も日本に来られましで、会議をやる前に私もいろいろとお話をいたしました。  為替についてもいろいろと意見の交換をいたしたのでありますけれども、市場が非常に神経質になっているという状況でもありまして、対外的な説明については双方ともノーコメントでやろう、こういうふうな話をしたことは事実でございます。為替の問題についてどんな話をしたかというのは、極めて市場が敏感になっておったときでありますから、一切ノーコメントという形でお互いが話をしたということでございます。
  248. 正森成二

    ○正森委員 きょうの毎日新聞夕刊によると、日銀が猛烈に介入して、一たん百十円台に戻したけれども、「その後、米財務省が「先の日米蔵相会談では、急激な円高は望ましくないとの認識で一致したわけでない」と再び、円高を容認する姿勢を見せたとの情報が市場に伝わり、一斉に円買い・ドル売りの流れが加速」しで百十円を割り込んだという意味のことが書いてあります。さらに、このような状況に対して米財務長官は、「議会の公聴会の後に記者団から円相場に関するコメントを求められたが、一切応ぜず円高を黙認する姿勢を示した。」こう書いてあります。  だから、蔵相はどういう御認識か知りませんが、アメリカは終始一貫、管理貿易は要求するわ、そして自国に有利だと思って、本当は有利でない面も大いにあるということは経済企画庁その他言っておりますから、私も承知しております、時間があれば申しますが、そういう立場で、もう無理無算に押してきているということがあるのではないですか。  ですから、今度二十九日にワシントンで行われるG7の蔵相あるいは各国中央銀行総裁の会議でも、この点は相当腹を据えて、言うべきことは言う必要があるのではないですか。御決意のほどを承りたいと思います。
  249. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 先ほど申し上げましたように、為替相場につきましては私は一貫した考え方を持っておりますし、新聞がどう言ったとかどうだという形で相手をどうだということではありませんし、やはり各国の通貨当局はお互いがいろいろな点で意見の交換をし合い、議論のし合いをして、そしていいものをつくり上げていく。世界全体の協調をどう図っていくかということが私は一番大切なごどのように思っているわけでございますから、そういった姿勢でこれからも臨みたい。  考え方といたしましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
  250. 正森成二

    ○正森委員 さらにアメリカのけしからぬことは、首脳会談前に訪日したアメリカのクリストファー国務長官は、四月十四日の各紙によりますと、「「一九八六年から九〇年にかけての日本の姿に戻っていくことが望ましい」と述べ、かつての「バブル経済」時代のような内需主導の経済運営を強く期待していることを示唆した。」こう報じております。大体、一九八六年から九〇年のバブル時代というのは、証券・金融の不祥事を起こしただけでなく、猛烈に公定歩合を下げで、金がだぶついて、さまざまな悪影響が起こったから、今、景気対策を去年、ことしと、異常な補正予算を組んで四苦八苦しでいるんじゃないですか。  ところが、事もあろうに、国務長官ともあろう者が日本へやってきて、そういう時代に戻せというようなことを、まさに属国に対する内政干渉のようなことを言う。もってのほかじゃないですか。大体、大蔵省は、「資産価格変動のメカニズムとその経済効果」というのを出しましたが、その中で、一々読みませんけれども、バブルの、そういう経済運営は間違っていたんだ、あるいはそれに対しては反省しなければならぬということを、そうそうたる人が集まって書いているじゃないですか。それに対して、そんなものは構わずに、あの時分の経済はよかったから、あの時分のようなことをやってくれというようなことを言われて、それで黙っておるなどというようなことは、いやしくも誇りのある独立国ではないし、G7の一員だなんて言えない。そうじゃないですか。
  251. 日高壮平

    ○日高政府委員 一つ申し上げておきたいのは、確かにそういう趣旨の御発言があったということを私どもは承知いたしておりますが、どういうコンテクストの中でそういう発言が行われたかということでございます。  私が解説するのも変でございますけれども、恐らく、黒字の問題が議論されているときにそういう御発言がありました。「八六年から九〇年にかけて」というところは、先保ほど国金局長からもお話がございましたように、経常収支の黒字のGNP比率が四・四から一・一に下がっている、そういう時代でございますので、そういうコンテクストから見でその御発言があったというふうに私どもは理解しておりますし、まさか委員御指摘のように、バブル時代に戻れというようなことがアメリカから言われたというふうには私ども全く理解しておりません。
  252. 正森成二

    ○正森委員 それは、あなたがそういうぐあいに理解していないというのは自由だけれども、新聞でも全部、そういうように言われたというように報道しているじゃないですか。また、客観的に見れば、そんなもの、一九八六年から九〇年代のああいう経済状態が好ましいなんて言えば、我々が非常に反省もしなければならない、大蔵省も反省しているあのバブル時代をアメリカが慫慂した、どのようなコンテクストで言われようとも、そうとるのが当たり前であります。なお、大蔵省の責任ある高官が、あるいは官僚が、そういうようにアメリカ側にばかり有利な、あるいは配慮するようなそういう認識を示すというのは、非常に問題がある。  だから、新聞によりますと、今度の宮澤訪米はぼろくそですよ。例えば、四月二十日の毎日新聞を見ますと、「十三兆二千億円にも上る新総合経済対策という「おみやげ」を持って訪米しながら「市場開放や円高など、言われ放題では、何のために首脳会談を行ったのかわからない」」「「宮沢外交の失敗だ」との声が噴出している。」これは赤旗で言うでいるんじゃないですよ。毎日新聞に書いているんですよ。  そんなことを言われて、それでのこのこ出かけていって、それをまた大蔵省の責任ある審議官などが、いやいやというようなことを言ってアメリカを弁護するというようなことでは、本当に日本の将来は心もとないと言わなければならないのです。私がこんなことを言うのはおかしいけれどもね。いや、本当ですよ。できれば私はこんな質問をしたくないと思ったけれども、言わざるを得ないですよ、このごろのアメリカのいたけだかな態度を見ると。クリントンというのは、もうちょっとよく考えた人物かと思ったけれども、外交礼儀も知らなければ、言うことも常軌を逸しておるというようなことで、国会でほかの党が言わなければ、せめて共産党だけでも言うでおかないと、日本の国会もあんなことを言われっ放しかというようなことでは、これは我が国の権威にかかわる。  蔵相は、やはりこういう声が大蔵委員会内にもあるということを理解した上で、非常に御苦労さまですが、連休の間も休まずに外遊をされるようであります。外遊じゃなしに交渉ですね、会議に参加されるようでありますが、その成果を、あるいは立派な御発言を心から期待したい。これは本当に心からそう思っているのです。  これはこのぐらいにいたしまして、銀行局、おいでいただいておりますので、一つだけ次元のちょっと異なる問題ですが、――あなた、後で。  金融機関の年末休業について全国銀行協会連合会が実施しました「第二回銀行に関する生活者意識調査」、ここに持ってきでおりますが、それを見ますと、銀行が年末の十二月三十、三十一日の両日を休業することに対しては、「完全休業にしても支障はない」が二三・三%、「自動機が動いていれば構わない」が六三・七%というように、圧倒的に多数になっております。  何年か前までは、紅白歌合戦を家庭で見ようというようなささやかな要求で、三十一日のせめて夕方からは家におりたい。それが、三十一日は休めるようになった。せめて、日本のいろいろな慣習から、三十、三十一日は休みたいという要望がありましたのが、全銀協が実施したアンケートでも、そういう回答がいろいろな銀行利用者等々から出ているということについて、銀行局はこういうのに前向きに対応をすべきじゃないかと思いますが、御見解を承っで私の質問を終わります。  審議官は、お答えになりたければ、その後で答えてください。
  253. 寺村信行

    ○寺村政府委員 金融機関の年末の休日化の問題につきましては、金融機関の労働時間の短縮に資するというメリットがございますが、一方におきまして、年末の決済資金需要への対応という利用者の利便をどう考えるかという問題がございまして、まさに利用者のコンセンサスがどうなのかというところが問題でございます。現在、金融界におきましては、こういった点につきまして検討をしているところでございます。金融界にとりましては、お客様の納得が得られるかどうかという問題でございます。  例えば、三十日も休日にするということになりますと、カレンダーによりましては、十二月二十八日から一月五日まで九日間、銀行が店を開かないということになりますと、中小企業者でございますとか個人事業者の年末の決済時資金需要に対応できるかというような問題もございますので、そういったことも含めまして、現在金融界で検討をしているところでございます。こうした金融界の検討を踏まえた上で、当局といたしましても、全体の資金需要に対する金融機関の役割の問題も含めましで検討をしてまいりたいと考えております。
  254. 日高壮平

    ○日高政府委員 お許しをいただきまして、一言申し上げておきたいと思います。  非常に誤解を与えたら、私ども舌足らずということではございます。私は、アメリカの言い分を擁護するとかそういうことではなくて、いたずらに、そういうコンテクストの中での発言というものをよくとらまえずに、ただその一言一句だけをもって批判するのはよろしくないのではないかということを申し上げたかっただけでございます。
  255. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  256. 藤井裕久

    藤井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十七分散会      ――――◇―――――