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1993-04-21 第126回国会 衆議院 政治改革に関する調査特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月二十一日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 田邉 國男君    理事 大島 理森君 理事 北川 正恭君    理事 中西 啓介君 理事 野田  毅君    理事 浜田卓二郎君 理事 左近 正男君    理事 堀込 征雄君 理事 伏木 和雄君       石井  一君    岩屋  毅君       衛藤征士郎君    大原 一三君       奥野 誠亮君    河村 建夫君       佐藤謙一郎君    自見庄三郎君       島村 宜伸君    園田 博之君       武村 正義君    津島 雄二君       戸塚 進也君    額賀福志郎君       葉梨 信行君    鳩山由紀夫君       深谷 隆司君    穂積 良行君       細田 博之君    増子 輝彦君       簗瀬  進君    山本 有二君       阿部未喜男君    池田 元久君       大畠 章宏君    菅  直人君       小林  守君    後藤  茂君       鈴木  久君    田並 胤明君       土井たか子君    土肥 隆一君       細川 律夫君    三野 優美君       井上 義久君    河上 覃雄君       北側 一雄君    平田 米男君       山田 英介君    木島日出夫君       東中 光雄君    伊藤 英成君       川端 達夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  宮澤 喜一君         国 務 大 臣 後藤田正晴君         自 治 大 臣 村田敬次郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 大出 峻郎君         内閣法制局第一 津野  修君         部長         皇室経済主管  河部 正之君         総務長官官房  陶山  晧君         審議官         経済企画庁調整 長瀬 要石君         局長         外務省経済局次 林   暘君         長         大蔵大臣官房審 田波 耕治君         議官         農林水産省経済 眞鍋 武紀君         局長         建設省建設経済 伴   襄君         局長         自治大臣官房審 谷合 靖夫君         議官         自治省行政局選 佐野 徹治君         挙部長  委員外出席者         議     員 石井  一君         議     員 小渕 恵三君         議     員 塩川正十郎君         議     員 武村 正義君         議     員 津島 雄二君         議     員 西岡 武夫君         議     員 額賀福志郎君         議     員 深谷 隆司君         議     員 小澤 克介君         議     員 佐藤 観樹君         議     員 早川  勝君         議     員 細川 律夫君         議     員 松原 脩雄君         議     員 井上 義久君         議     員 北側 一雄君         議     員 渡部 一郎君         衆議院法制局第 臼井 貞夫君         一部副部長         自治省行政局選 松尾 徹人君         挙部選挙課長         自治省行政局選 中野 正志君         挙部管理課長         自治省行政局選         挙部政治資金課 大竹 邦実君         長         特別委員会第二 田中 宗孝君         調査室長     ————————————— 委員の異動 四月二十一日  辞任         補欠選任   石井  一君     簗瀬  進君   武村 正義君     園田 博之君   津島 雄二君     岩屋  毅君   戸塚 進也君     河村 建夫君   深谷 隆司君     鳩山由紀夫君   岩垂寿喜男君     三野 優美君   大畠 章宏君     土肥 隆一君   河上 覃雄君     平田 米男君   草野  威君     井上 義久君   木島日出夫君     東中 光雄君   川端 達夫君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   岩屋  毅君     津島 雄二君   河村 建夫君     山本 有二君   園田 博之君     武村 正義君   鳩山由紀夫君     深谷 隆司君   簗瀬  進君     石井  一君   土肥 隆一君     鈴木  久君   三野 優美君     岩垂寿喜男君   井上 義久君     山田 英介君   東中 光雄君     木島日出夫君   伊藤 英成君     川端 達夫君 同日  辞任         補欠選任   山本 有二君     戸塚 進也君   鈴木  久君     大畠 章宏君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案梶山静六  君外二十三名提出衆法第六号)  衆議院議員選挙画定委員会設置法案梶山静  六君外二十三名提出衆法第七号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案梶山  静六君外二十三名提出衆法第八号)  政党助成法案梶山静六君外二十三名提出、衆  法第九号)  公職選挙法の一部を改正する法律案佐藤観樹  君外二十四名提出衆法第一〇号)  衆議院議員選挙画定等審議会設置法案(佐  藤観樹君外二十四名提出衆法第一一号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案佐藤  観樹君外二十四名提出衆法第一二号)  政党交付金交付に関する法律案佐藤観樹君  外二十四名提出衆法第一三号)      ————◇—————
  2. 田邉國男

    田邉委員長 これより会議を開きます。  梶山静六君外二十二名提出公職選挙法の一部を改正する法律案衆議院議員選挙画定委員会設置法案政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党助成法案並びに佐藤観樹君外二十四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案衆議院議員選挙画定等審議会設置法案政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党交付金交付に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  本日は、政府より宮澤内閣総理大臣及び村田自治大臣出席を求めております。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野誠亮君。
  3. 奥野誠亮

    奥野委員 本委員会に付託されております法案、さらに政治改革ということで、若干これをはみ出してお尋ねさせていただきたいと思います。  総理は、学生時代から海外も体験しておられますし、昭和二十六年のサンフランシスコ講和会議には政府随員として出席されて、それから今日まで四十年の長い国会議員としての経歴、しかもその中で国の枢機に参画されてきたことが非常に多かったと思います。そういう意味で、私は、日本にとって貴重な存在だと思っております。その体験からお考えになっていることを率直にお聞かせいただきたい、こう思います。  最初にお尋ねしたいのは、これからの日米関係をどう構築していこうと考えておられるかということでございます。  こんなことをお尋ねしようとしますのは、昭和二十年の敗戦直後のアメリカ日本に対する姿勢には厳しいものがございました。やがてヨーロッパ米ソの対決が始まりました。アジアでは朝鮮戦争が起こりました。自来、アメリカ日本に対して庇護者立場に変わったと思っております。そして、順次日本はその保護のもとに経済成長を遂げてまいりました。その東西冷戦が終わったわけでございます。終わったわけでございますし、戦後四十八年でございますから、今さら戦勝国戦敗国でもないのじゃないか。そうしますと、アメリカ姿勢も変わっていくだろうし、日本姿勢も変わってしかるべきじゃないか。そう考えますと、やはりこれからの日米関係をどうするかということは国民にも知っておいていただかなければならないんじゃないかな、こう思いますので、総理の考え方を伺いたいわけでございます。  一つの例をとって申し上げますと、昭和二十一年二月に、マッカーサーはホイットニー准将に命じまして、三原則を示して、日本国憲法を部下に作成を求めたわけでございました。その中には、主権の発動である戦争は放棄する、国際紛争解決のための手段としての戦争も、自国の安全を守るためのそれをも放棄するとうたわれているわけであります。全く独立を認めないようなことでございますけれども、それをそのとおりの表現憲法を書くわけにもいきませんので、今のような憲法の字句になったと思います。  また、あの憲法制定国会論議におきましても、吉田総理が、しばしば自衛のための戦争だと言って戦争に出かけていっているというような表現を使われたことに対しまして、その後、芦田さんとの問答で、いや、そんなことを言うた覚えはないとか、多少吉田総理も、総司令部の顔も見なければならないし、日本国民の顔も見なければならないわけでございますから、あいまいなままで過ぎたと思います。やがて独立いたしましてからは、独立国である以上は自分の国の独立を守るのは当然だという姿勢になってきているわけでございますけれども、この憲法を解釈するにつきましては、国論にはいろいろな違いがあるわけでございます。  そういうことを考えてまいりまして、この間日米首脳会談を終えて帰られた。新聞の報道を見ていますと、クリントン大統領は、特に貿易の黒字のことだろうと思うのでございますけれども、日本側に対して無遠慮な強い要求をしたと書いてありました。これに対しまして総理は、管理貿易的な手法あるいは一方的な行動のおどかしによっては貿易不均衡の是正の実現はできないよと答えておられる。私は、我が意を得たような感じを持ちまして、心強く思わせていただきました。  なぜ心強く思わせていただいたかといいますと、日本経済がだんだん復興していく、その過程で日本の品物がどんどんアメリカに入っていく、アメリカ関係の産業が脅かされるということで日本に改善を迫ってくる。そんなことから、最初繊維製品自主規制だったじゃないかと思います。それから鉄鋼、自動車、工作機械、半導体と大変な自主規制をやっているわけでございます。これが世界から日本大変批判を受ける原因になっているのじゃないかな、こう私は思うわけでございまして、特にヨーロッパなどでは、日本アメリカの言いなりになっているじゃないか、そして日米、二国間だけで管理貿易をしているじゃないか、こういう不信気持ちが強いようでございます。もっともなことだと私も思うわけでございます。  前大統領のブッシュ氏は日米戦争に参加した人でございますから、やはり戦勝国敗戦国という関係は身にしみついているのじゃないかなと思います。ですから、しばしば彼は日本に対する庇護者のような立場に立つ、ある場合には日本に対して恫喝的な態度をとるようなことがあったように私には見受けられているわけでございます。クリントン大統領は戦後生まれの方で、戦争を知りませんし、アーカンソー州知事の時代には企業誘致を求めて日本に来たりもしているわけでございます。だから、新しい立場お互いに話し合える時代をそういう意味でも迎えたんじゃないかなと思っているわけでございます。  事実、新聞を見ていますと、クリントン大統領共同記者会見の冒頭で、冷戦時代日米関係は終えんした、こう言っている。そのとおりだと思うのでございます。でございますから、これから日米関係をどう持っていくかということは大変に難しいけれども、相当な度胸を持って日本も当たっていって、国際的にも信用される日本になっていかなければならないんじゃないかな、こんな思いを私は持っているわけでございます。  したがいまして、日米お互いに言いたいことはどんどん言い合ったらいいんじゃないかなと思うのでございます。国内でもあるいは国外でも、とかく日本アメリカ一辺倒ではないかという批判を受けております。まさにそういう面があったと思います。こういう感じも払拭していきたいな、私はこう思っているわけでございまして、しかし、基本的には日米関係は大事だと思います。したがいまして、ただアメリカについていくんじゃなくて、日本が進んでアメリカ協力していくんだという姿勢が出てくるなら一番好ましいんじゃないかな、こう思っております。  アメリカ側日本基地を持っております。この基地も、基本的にはアメリカ世界戦略上前方展開していく、日本基地を求めることが必要だったわけでございますけれども、今やアメリカにどれだけ必要なんだろうか。しかし、日本アジアにとっては必要じゃないか、こういうふうに私には考えられるわけでございます。  そういういろいろなこともございますので、ひとつ率直な総理意見をお聞かせいただきたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 戦争中から、日本敗戦になり占領を受け、そして主としてアメリカの援助によってその後復興をし、今日に至りますまでの長い時間の間で、奥野委員政府のあるいは政界の中心になられて今日に及ばれました点は、私について御言及がございましたが、奥野委員こそはやはりその間のいろいろな苦労をなさったお方であることは世間の皆様がよく御存じでございます。  その長い年月を顧みまして、その間に起こったことのいろいろな解釈あるいは評価というのは、あるいは奥野委員と私と必ずしも全部御一緒でないかもしれないと思いますけれども、しかし、この長い年月を考えまして、まさに住専渺茫と申しますか、感慨深いものがございます。  ただいまお話しになられましたことを私なりにいろいろ承って考えてみますと、今日、経済関係におきましては、我々の対米関係というのはむしろ日本がいろいろな意味アメリカ側から要請を受ける、あるいはお互いあり方について構造協議のような形で協議をし合う、そういう立場にございますが、安全保障関係においてどうであるかということについてはいろいろ議論が分かれておるであろうと思います。私自身は、日米安保関係というのは両国にとって利益であるから存在している関係だというふうに考えております。一般的に、我が国の安全がアメリカの核の抑止力によって守られているということは、冷戦中も冷戦後も同じことではございましょうけれども、しかし、それは我が国だけの利益として働いておるのではなくて、アメリカ自身がそういう日本との関係自分にとっても利益である、こう考えておるからだというふうに判断をいたしております。  その基本には、日米両国間がやはり基本的な価値観民主主義であるとか自由であるとか基本的人権であるとかいうことについて、基本的な価値観を同じくしております。経済関係文化関係等々いろいろございますけれども、そういう基本的な利害の一致のもとに日米間の安全保障関係が平等の立場において成立しているというふうに私は考えております。  大変端的な例を申し上げますけれども、今度、せんだって訪米をいたしましたときに、私のところヘアメリカのレス・アスピン国防長官が訪ねてこられました。コリン・パウエル統幕議長を率いて首脳部が来られました。そのことは、安全保障面においても軍事面においても、アメリカ自身我が国を大切に考えているということの一つの証左だと申し上げてよろしいと思いますが、それは例えば今日我が国駐留米軍に対して負担しておりますいわゆる受け入れ国としてのサポート、ホスト・ネーション・サポートと申します、四十六億ドルに達しておりますので、この点は財政的に必ずしも楽でないアメリカにとっては高い評価を受けている部分でございますが、私は、それに対しまして、例えば沖縄のように非常に基地がたくさんあって県民が苦労をしておられるところがある、基地はできるだけ集約、統合してほしいというようなことをお話をしておるわけですけれども、我が国にとっても、また東南アジア各国にとっても、米国存在というものは積極的に歓迎をされておるというふうに考えておりますので、したがいまして、安全保障関係においても我が国が何かを一方的に負うておるというふうには私は考えておりません。それもお互い利害に合致した上で生まれている関係だというふうに思っているわけでございます。  現状をそういうふうに考えますと、まさに奥野委員の言われましたように、今度のクリントン政権というのは、クリントン自身我が国との過去の戦争といったような関係現実に知らないわけでございます。現実体験をしないことと、したことと本で読んだこととはおのずからやはり違いまして、クリントンさんにとってはやはり日本との関係自分が物心ついたところから始まっていると申し上げても私は間違いでないと思いますが、しかも、それは基本的には非常にいい関係にある。  クリントンさんは、今度日本との関係三つに分けて説明をしておられましたが、一つは、政治安全保障等関係である。これは、ただいま申しましたようなこともありまして、アメリカにとって満足すべき状態である、こういうふうに言っておられます。次に、両国一緒になって国際的に共同して行わなければならない幾つかの責任の遂行という点では、例えばせんだってのロシアに対する経済支援会議のように、お互いの協調のもとに大変にうまくいっておると思う。その他、北朝鮮でございますとかカンボジアでございますとか、幾つかの例が挙げられましたが、国際的な協力関係もまず満足と思う。問題は、両国の間の経済問題であって、ともかくアメリカが何年努力をしても貿易の赤字というものが解消しない、改善しない国は日本である、それにはいろいろな理由があるだろうと思うけれども、これから少し時間をかけてお互いに検討していこうではないかと、最後のところはちょっと省略をいたしましたが、そういったようなことで、三つ目の問題について非常な問題意識を持っておられる、こういう関係であったと思います。  したがいまして、しかし、本当は奥野委員の言われましたことはもっともっと深いことを言っておられるので、それは私、決しておっしゃっている意味を聞き落としてはおらないつもりでございますけれども、そういう長い間の両国関係の中で、現在、世界経済の第一、第二の大国であるという状況、そして、我々としては、憲法のもとに民主主義基本的人権、自由というようなものを享受をしておるという状況から考えまして、幸いにして冷戦という状況がなくなりつつございますから、その冷戦後の世界平和秩序というものはどういうものであるかということについて、我が国米国等々と一緒にその平和秩序の再構築に努力をするというのが今我々に与えられておる任務ではなかろうか。  御質問に対して十分にお答えをし切れておりませんが、さように考えております。
  5. 奥野誠亮

    奥野委員 日米関係世界各国から評価されるようなあり方を求めていきたいなという願いも込めて伺ったわけでございまして、おっしゃったこと、全く私もそのとおりだ、こう思っております。  今の日本の国際的な地位というのは、私は、さま変わりしてきたな、それだけ政府対外折衝も広範にわたっている。そうすると、政府そのものが安定した基盤に支えられる政府でなければならないなと。今の衆議院の中選挙区制は旧憲法時代のものでございまして、必ずしも新憲法に沿うた選挙制度であるかどうかについては、やはり議論があってしかるべきじゃないかな、こう思っておるわけでございます。  自分のことを言って恐縮でございますが、私が初めてアメリカを訪れたのは昭和二十五年でございますから、もう四十三年前でございました。外務省開店休業でございますので、外務省河崎一郎さんが一緒に行ってくれまして、通訳の労をとってくれました。そのときに、この河崎さんは戦前のアメリカを知っている方でございました。第二次世界大戦後初めてアメリカヘ来て、アメリカという国は偉大な国になりましたよ、アメリカ国民世界じゅうの問題を全部自分たちの問題だと考えるような国民になっていますよと驚いて語っておったことが、いまだに私の脳裏から消えません。  当時私は、日本アメリカ百万長者とこじきの違いがあると言うたものでございまして、物にも書きました。今はもう全く同じように話し合っていける。大変な変化だなと思うのでございまして、私は軍用機に乗って、アメリカで三月ほどいろいろ教えてもらって、軍用船で、北周り横浜の港に着きました。横浜の港から横浜の町を見ますと、焼け野原に見えたものでございました。鉄筋の建物があるかなと探しまして、やっと見つけたのが黒ずんだ神奈川県庁建物でございました。アメリカは何十階のビルが当時から既に林立しておったわけでございますから、私がそういう思いを持ったのも当然かなと、こう思ったりしているわけでございます。  自来、長年の経過とともに日本アメリカ経済力が伸びる。相対的にアメリカ経済力が落ちてきておるわけでございますけれども、やはりアメリカ基本的な姿勢というものは、みずから世界戦略を行っていく、国連をてこにして世界戦略を行う、私はこの姿勢は変わらないだろうと思いますし、また、その気概は持ってもらってしかるべきじゃないかなという気持ちもするわけでございます。したがいまして、経済力が伴いませんから、日本やドイツに協力を求めながら世界戦略を行うということにならざるを得ないんじゃないかなと、こんな思いがするわけでございます。  当時は、日本国連への加盟さえ許されませんでした。今は国連の重要な一員になっております。国連経費の一番の負担者アメリカで、総経費の二五%、日本は二番目でございます。一二・四五%。したがいまして、日本はこれまで国連中心主義国連中心主義と言ってまいりましたけれども、国連中心主義という言葉は私は否定しませんけれども、国連意思決定日本が参加していく、それに影響を与える存在であることを国際社会は求める時代になっているんじゃないかなと、こう思うわけでございます。国際社会にも積極的に日本が出ていきませんと、やはり世界の期待にはこたえられない状態になってきているんじゃないかなと、こう思います。  そういうふうに日本の役割が大変大きく必要になってきておりますことが、今の日本に振り返ってみますと、こんな日本政治不信のままでは、世界からも不信の目を持って見られる、これで日本が十分な活動ができるんだろうかなという不安が一つございます。やはりこれまで以上に強力な基盤に支えられた政府を一層つくっていくことが必要になっているんじゃないかなと考えるわけであります。  そんなこともあってであろうと私は思うのですけれども、首相公選制を唱える方もございます。やはり同じような気持ちを抱いておられるんだなと、こう思っておるわけでございます。現在の日本憲法では、衆議院で総選挙が行われたら内閣は総辞職をして、選挙後直ちに内閣総理大臣を選ぶことになっているわけであります。衆議院参議院議決が異なりますと、最終的には衆議院議決をもって国会議決とすることがうたわれているわけであります。さらに、条約や予算については、衆議院優位性もうたわれているわけでございます。こういう規定から類推してまいりますと、やはり衆議院選挙というものは、どういう内閣をつくるか、それに即した、その目的にかなった選挙制度であるべきではないだろうかなと思えるわけでございます。  同時に、参議院には、国民の間にはいろいろな意見があるわけでございますから、その多様な意見を議席に反映させて、いろいろな角度から国政のあり方議論していく、そして日本政治の過ちなきを期するということを期待されていると考えてしかるべきじゃないかな、私はこう思います。  そうなりますと、私は、野党が衆議院で比例代表制を言っておられる、参議院でも比例代表制をとっている。同じことをやっておったんじゃ、せっかく二院制をとっている二院制の使命が十分果たされないじゃないかなという心配を持つわけでございます。現実には、私は、参議院に比例選挙がとられた結果、一層参議院の政党化に拍車をかけたと思います。これはいいことじゃないのであって、私は残念な方向に行っているんだ、こう思っているわけでございます。衆議院参議院が同じょうなことをやっていろんなら一院でいいわけでございまして、だから、悪口を言う人は、参議院衆議院のコピーだなんというような失礼なことを言う方もおられるわけでございます。  かつて参議院に緑風会というものがございまして、緑風会というものは、議員それぞれが党議に拘束されない、それぞれ自己の判断で決めていくんだ、こういう姿勢を貫いてこられたように思うわけでございます。総理参議院にも議席を置いておられたわけでございますだけに、いろいろなお考えを自分体験を通じてお持ちだろうと思うのでございます。  私たちは政治改革をねらっているわけでございますから、党のためを考えているわけじゃないのでございまして、日本国のためを考えているわけでございますから、日本国のためを考えるなら、この憲法の規定に沿って、あるべき国会の姿、どうお考えになっているかということをちょっとここでお述べをいただきますと、参考になるんじゃないかなと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私の今の公の立場で、両院のあり方あるいは憲法における両院の持っている意味というようなことを公の立場で申し上げますことには非常にはばかりがございますので、どうか一人の政治家としての意見としてお聞き取りをいただきたいと思うのでございますけれども、確かに衆議院選挙というのは参議院選挙と異なりまして、それによって事実上総理大臣を選ぶ、そういう意味を強く持っておると思いますし、また、そのように今日まで運営されてきておると思います。それはそれで正しいというふうに考えます。  参議院参議院として憲法に設けられましたことを制憲当時の事情等々から判断をいたしますと、やはりそれは衆議院とは別な意味での、ちょっと言葉はよくないかもしれませんが、いろいろな各方面における有識者、あるいは職能と呼んだ人もあると思いますけれども、そういったような有識者を、政党でなく、個人個人として国政において貢献をしてもらおう、そういう考えがかなり私は、そればかりじゃございませんけれども、あったのではないかと思います。  したがいまして、御指摘のように、緑風会が参議院で大きな力を当初持っておりました。それがだんだん崩れましたのには幾つか理由があると思うのでございますけれども、全国区制というもので勝つためには、相当大きな組織を持っていないと当選できない、あるいは極めて著名な人であればまた別でございますけれども。そういうことから、当時非常に大きな組織でありました労働組合が、参議院に当選をするためには非常に有利な組織であったことは事実でございます。そこから一つの勢力というものができ上がってまいりました。それに対しまして、保守と申しますか、おっしゃいますように、保守の側も大企業といったものを中心に、それに対抗する候補者が立てられたようなことになってまいりまして、お一人お一人の良識によって、どちらかといえばグループでなく、国政についての意見、貢献を期待しておったところとは、どうも私はやや違う結果に、これは比較的早い段階でございます、終戦後そんなに長くない、十年ぐらいの間にはややもうそういうふうになっていきまして、緑風会が事実上崩壊をするということになったと思うのでございますけれども、この点は、本来立法者の意思は、衆議院参議院とは違った機能を期待をしておったのではないかと、私は学者でもございませんし、深くそういうことを考えたこともございません。また、これは個人の意見として申し上げておりますが、そのように考えております。
  7. 奥野誠亮

    奥野委員 占領軍が示した憲法草案では一院制でございましたし、日本が二院制を要望して、基本的には、許されたのは私はこの点だけじゃないかと思うのですけれども、公選という枠をはめてきた。そこが私は、なかなかいい知恵が出ないで、今日のような経過をたどっているのじゃないかなと思っているのですけれども、これはあえてこれ以上申し上げる意思はございません。  私の体験を申し上げさせていただきますと、私は三十八年の末に国会に議席を持ちました。その当時、選挙制度審議会が政府の審議機関としてございました。国会議員も特別委員として参加しておったわけでございました。私も社会党から出ておられる委員の方々と個人的にいろいろな話し合いをしまして、やはり今の中選挙区制を改めていこうじゃないかと。共通点は、やはり小選挙区と比例代表をかみ合わせるということでございました。私たちは小選挙区で少しでもたくさん選びたいと思いますし、社会党の方は反対でございました。同時に、比例代表については、私たちは、自民党ではとても人間に順位なんてつけられるものじゃないや、こう言ってまいりました。したがって非拘束であります。社会党の方は拘束名簿式比例代表でございました。いわゆる一部を小選挙区、一部を比例代表ということでございますから、並立制でございます。  今野党が出しておられるのは、これはもう比例代表でございますから、比例代表と単純小選挙区という、与党と野党の案がはっきり分かれていることは、案外わかりやすいのじゃないかなと、こう思います。わかりやすいと思うのですけれども、玄人でありませんと、社会党の案の中にも小選挙区で選ぶ人数がございますので、比例代表制でないような誤解をされる方もあるのじゃないかと思いますが、そういう違いが明らかに出ていると思うのでございまして、結果は、それぞれなかなか党としてまとまり切れる状態ではございませんでした。その結果、今の中選挙区制が長い期間にわたって続いているわけでございます。  大正十四年に、護憲三派が勝利を占めて、護憲三派、政友会、憲政会、革新倶楽部がそれぞれの選挙区にそれぞれの候補者を立てられるようにしようということから、三人ないし五人の中選挙区制ができ上がったわけでございました。これが昭和三年に初めて実施されまして、自来二十四回衆議院選挙を行っているわけでありますけれども、違った仕組みをとったのはただの一回、昭和二十一年だけでございました。府県単位、二名を連記する大選挙区制でございました。一回やったきりで、これはいかぬということでまたもとへ戻ったわけでございました。その選挙制度のおかげだばかり申し上げるつもりはありません。また、自民党から政権が他に移った場合に、社会主義政権に移るという危惧の念が、間違いを犯しても国民が自民党を支えてくれた点もあったと思うのでございますけれども、長い間自民党一党の政権が続いてまいりました。  私は、政界も官界も財界も、それぞれ一生懸命努力し、それぞれの役割を果たしてきていると思うのでございますけれども、やっぱり長く続いてまいりますといろいろなことも起こります。どんなに制度を整備しても間違いを犯す人が出てくるわけでございますから、あとは検察なり裁判なりの公正な活躍にゆだねざるを得ないと思うのでございますけれども、いずれにしても、国民の目から納得できない感情が出てきているわけでございます。  日本のみならず、国外からも日本政治批判を受けるような状態になっているわけでございますから、私たち、日本の将来を考えますと、これを打開するのは、政権交代可能な選挙体制をつくる以外にはないじゃないかなということでございます。自民党のために考えているわけじゃなくて、自民党のためなら今の選挙制度がよろしいわけでございます。みんな自分たちの個人後援会を持っております。個人後援会に支えられて私たち衆議院選挙は戦っておるつもりでございまして、これを力にしてやっていきますと、なお私は、いろいろ批判があっても、多数を維持できるのじゃないかなという気がいたします。しかし、それじゃ緊張感を与えない。やっぱりここで政権交代可能な選挙制度にすることだと、それが単純小選挙区制を選んだ基本姿勢だったと私は理解をしているわけでございます。単純小選挙区制でございますと、案外、ちょっと間違いますとがらっと変わってしまいます。四年前の参議院選挙がそれを物語っているわけでございまして、あのときには、消費税の問題もございました、リクルートの問題もございました、女性問題もございました。結果は、一人一区、定員一人のところが二十六あるわけでございますけれども、二十六の選挙区で、これはもう自民党の金城湯池であります、そこで二十三負けたわけであります。勝ったのはわずかに三つでございました。単純小選挙区制だったら、一遍に自民党は政権を投げ出さざるを得なかったわけでございます。  私はまた、今の選挙憲法から考えますと、やっぱりどの政党を選ぶかということと直接結びつくわけであります。各政党が、人と政党が一つ、終わったらどの政党に国政をゆだねるかということを決めなければいかぬわけでございますから、小選挙区は有権者が政権選びに参加するという気持ちを私は強く持つのじゃないかと思うのでございます。有権者の政治に対する意欲が一層高まるのじゃないか、活力が出てくるのじゃないかな、こんな思いさえしているわけでございます。  しかし、初めての選挙は、あるいは政権を今持っております自民党に有利かもしれません。有利かもしれませんけれども、こういう選挙制度になりますと、やっぱり政権を担う政党をつくる体制が生まれてくると思うのでございまして、政権を担う政党はおのずから二つ以上になってくると思うのでございます。それが今日、政界再編成、政界再編成と言われておりますが、その政界再編成というのは、政権を担う政党が二つ以上生まれてくる日本の政界にしなければならぬということでございまして、私は、鶏が先か卵が先かということだと思います。  昭和三十年に左右の社会党が一つになった。自由党と民主党が一つになった。五五年体制というわけでございますけれども、二大政党対立の時代を迎えて、あそこで単純小選挙法案を鳩山内閣提出する、そしてそれが参議院に送られたわけでございました。あのときにゲリマンダーがなかったら私は成立しておったと思います、ゲリマンダーがなかったら。あれは間違ったことをしたなと思います。だから、参議院で緑風会がキャスチングボートを握って、教育制度の改革を選ぶか選挙制度の改革を選ぶか二者択一で、私は自民党は教育の改革を選んだと記憶いたしております。やはり政界が、政権を担う政党が二つ以上存在して単純小選挙区というのが一番素直な移行だと思うのですけれども、しかし、今の状態から考えますと、まず単純小選挙区にして、そして政界再編成、政界に政権を担う政党が二つ以上生まれてくる、こういうことを考えていかなければならないんじゃないかなと、こう思うわけでございます。  今マスコミは選挙制度の改正の大合唱であります。私は、やはり生まれた妥協案がよいものであれば、それはそれでいいと思いますけれども、悪いものであるなら、これは将来に禍根を残すわけでございまして、やはりそういうものは現状の方がいいんだということに結論はなると思うのであります。  ちょうど私は、昭和二十六年のサンフランシスコ講和会議のときに、ソ連は、アメリカの軍隊が日本に駐留している、その限りにおいては日本独立を認めることはできない、こういう姿勢をとりました。だから、国内にはソ連も賛成してくれるまでは待とうじゃないかという意見、いわゆる全面講和でございます。マスコミの大部分も私は全面講和だったと思います。その中で日本は多数講和、とにかく認めてくれる国とから独立を回復していくんだという姿勢をとった、これは私は賢明な選択だったと思います。  昭和三十五年の安全保障条約、これがまた、こんなことを続けていると戦争に巻き込まれる、マスコミの大部分は廃止の大合唱でございました。その中であえて自民党は継続を選択いたしました。結果は、戦争に巻き込まれるところか、今日まで平和を維持することができたわけでございます。ですから、私は、今のマスコミの大合唱、無責任な大合唱も多数あるな、こう思っておるわけでございまして、ここは総理としての勇断の問題でございますから、マスコミに振り回されて判断を誤ることのないような決意を持っていただきたいなと、こう思うわけでございます。私はあくまでも現行制度を変えたい人間でございますけれども、何でも変えさえすればいいという無責任な考え方は持てません。  そういうことを通じまして、総理の御決意を伺っておきたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 いわゆる比例代表でない制度と申し上げればよろしいんでしょうか、例えば、かつて政友、民政という時代が、長くはありませんでしたが、ございました。ああいうときの選挙は、やはり今度は政友会が、今度は民政党かという選挙、そういう意識で選挙民は選挙をしておりました。それは、したがって衆議院選挙は政権を選ぶという意識があの政友、民政の時代にあったことは私は確かであって、奥野委員の言われるとおりと思います。それが恐らく衆議院選挙というものの一番大切な意味一つであろうと思います。  戦後、おっしゃいましたゲリマンダー、ハトマンダーと申しました。あのハトマンダーの時代にそういう問題が一つあったわけですけれども、あのときに本当に政権交代が可能になるような二つの政党が、例えば仮に五五年体制、そういうようなことにあのときになることについては私は実は心配を持っておりまして、これは申し上げるまでもなくまた個人で申し上げることでございますけれども、つまり、あの時代でございますと、もし政権交代がありますと、突然自衛隊がなくなったり、何かどこかが国営になったり、またそれが少したつと逆になるといったようなことでありますと、それは国民が大変に実は選択に迷われる、とても選択し切れぬということになる心配があったんではないかということを、これは個人で思うことでございますけれども、今御議論になっておりますことの政権の交代ということは、その後随分年月もたちまして、そのような急激な変化が政権の交代によって起こらない、願わくは起こらないであろうような風土が少しずつ醸成されておるかと思いますので、そういう意味でも政権交代というものはやはり政権に緊張感をもたらすということではないかと思います。
  9. 奥野誠亮

    奥野委員 国民政治に対する不信の念は、いろいろな汚職問題もございますけれども、国会の運営のあり方についても私は批判の目を向けているのじゃないかなと考えざるを得ないわけでございます。本当に、よく与野党の見解が合いませんと審議ストップでございます。開店休業でございます。のみならず、予算委員会が対決してストップになったら全委員会がストップになっちゃうわけであります。話し合いの場が何ということであろうか。国民は汗水垂らして働いているんだ、その結果今日の大きな経済発展を遂げたのだ、こういう私はやり切れない気持ちがあるんじゃないかなと、こう思っておるところでございます。同時に、この予算委員会の総括審査、随分長く続きますよ。全閣僚をこれに並ばせるのですね。質問する相手は二人か三人ですよ。一体、やはり三権分立というけれども、国会が少し三権分立を考えながら、行政府にも足を引っ張らぬように考えなきゃいけない。また、既に司法の手にかかっている者については、証人喚問だなんて検察まがいのことはやらない。やはりそれぞれわきまえを考えながらやった方がいいんじゃないかなと思うわけでございます。  これは私の体験を申し上げるのですけれども、昭和三十二年、ですから三十六年前であります。オランダで国際地方自治体連合の総会が持たれまして、私は政府代表として出席いたしました。そのときに私が演説しましたのは、町村合併でこんな成果を上げているということを誇らしげに申し上げましたが、同時に、今の町村の政治課題は次三男対策なんですよということを言いました。次男坊、三男坊にどうやって職を与えるかということが町村の最大の政治課題だ、そんな日本でした。それからばたばたっとよくなっていったのです。同時に、日本でこの国際会議を持とうじゃないかと言ったら、だれも相手にはしてくれませんでした。それが今は大変な国際会議日本で行われているし、海外においてもいろいろな協議の場に日本は臨まなければならない。多数の要人も来ていると思います。行政府の姿は三十六年前と今とは本当にさま変わりだろうと思うのです。国会は三十六年前と今とどう変わったかということになりますと、ちょっと私は首をかしげたくなるものですからこんなことを申し上げているわけでございまして、事務当局で結構ですから、どう変わってきているかということについてのお話を聞かせていただいたら幸いだなと、こう思います。  時間の関係もございますので、もう一つ。  先ほど申し上げましたように、与野党の一番の違いは、小選挙区か比例代表か、もう一つは企業献金を認めるか禁止するかということだと思います。今日、各企業はどうやって社会に貢献するかということを真剣に考えていますよ。自分利益を上げることだけを考えているのじゃありませんよ。それは企業にもいろいろあるかもしれません。その一つが私はメセナ活動だと思いますよ。日本もみずから文化活動、芸術活動に参加する。冠イベントをたくさんやっていますね。冠コンサートとかいろいろやっていますよ、企業の名前はつけますけれども。直接、文化や芸術の進展に貢献している。あるいはまたお金を出して財団をつくって、その財団から文化活動、スポーツ活動に進んで出していますよ。これは企業の名前はわかりません、この場合は。間接的な貢献ですよ。  基本的に企業は学校を卒業した人を採用するのですよ。どんな教育をしてくれるかということは、企業の発展に大きな影響を与えるのですよ。輸送については、道路を使う、港湾を使う、飛行場を使う。いろいろな問題がありますよ。情報の問題もありますし、いろいろありますよ。社会のあり方政治あり方が企業活動に積極的に結びついているんですよ。それなら企業が政治に深い関心を持ってもらわなければならない。お金を出した方が一層熱が出てくるだろうと思いますよ。企業も私は積極的に提言をすべきだと思うんですよ。それを、何か悪いことがあったから企業献金は禁止だ、こういうものはあつものに懲りてなますを吹くというたぐいじゃないかなと思うのでございます。ですから、私は、企業のこの意欲は政治の発展に結びつけていくべきじゃないかなと思っておりますので、この点についての総理の見解を伺ってみたいと思います。
  10. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 企業からの政治献金につきまして、私は反対をされる方々の中に、よく伺ってみますと、企業というのは何か悪いものであるという、そういう感じを持っていらっしゃる方が意外にある。(発言する者あり)いや、ここにいらっしゃいます方はそうでいらっしゃらないそうでございますけれども。それはどういうところから来ますかといいますと、そう思われる方にはそう思われる方の理屈があって、企業というのは、つまり余剰利益を上げているものである。これは労働を搾取することによって生まれるべきでない利益を生んでおるのが企業であるという、大変に古典的な説をいまだに信じていらっしゃる方があるように思います。この席にいらっしゃると申しているんじゃございません。  で、そこから発しましたのがあの例の八幡製鉄についての訴訟であったわけでありまして、あのときのことを私はよく記憶をいたしておりますけれども、あの訴訟に対して、あれは起こされたのは弁護士さんでございましたが、最高裁判所が、企業というのはやはり社会的な存在である、今奥野委員の言われるような判決をされたのでございますから、その点は判決としてははっきり済んでおると思います。  ただ、そうは申しても、やはり企業もだんだん大きくなってまいりますと、勢い非常に大きな金が政治支援の単位になりやすい。政党に対してならそれもまだでございますが、個人に対してとなりますと、やはり個人がそれについての何かの影響を受けやすいということは、私はありそうなことに思いますので、とかくありがちなことに思いますので、やはりそれには節度がなければならないだろうと、こういうふうに考えております。
  11. 奥野誠亮

    奥野委員 私は、政治を行うについては国民によく理解を求める、そして国民とともに進めていく、これが大切なことだと思うのですけれども、残念ながら、昭和二十年から二十七年の占領されておった期間のことは余りわからないままで今日に来ていると思います。その占領政策も、初期は大変厳しい姿勢でございました。中ごろになりますと、ヨーロッパ米ソの対決が始まりましたから変わってまいりまして、昭和の初めの生活程度を超える産業設備は撤去して賠償に充てるという方針も中止になりました。終期になりますと朝鮮戦争が始まります。むしろ日本を育てる側に変わっていっているわけでございます。  その最初のときには大変厳しいものがございまして、神道指令、公務員は国家公務員であっても地方公務員であってもいかなる神社にも参拝してはならない、あるいは教科書から神道にかかわり合いを持つ神話や伝記は全部削れと言うてまいりましたし、大東亜共栄圏という言葉や八紘一宇という言葉も禁句になってまいりました。衆議院選挙の前にも、立候補するためには資格審査を受けさせたわけでございました。また、アメリカの考える憲法をおまえたちがつくったということで公表しろと命ぜられて、それが今日の憲法になっているわけでございますが、憲法と総司令部との関係に触れてはならないという検閲項目もございました。また、極東国際軍事裁判が開かれまして、日本は侵略戦争をやったのだ、残虐行為をやったのだと一方的に決めつけられたものでございました。  当時、朝日新聞が四十八時間の発行停止処分を食らったのです。数年前でしたが、何で発行停止処分を食らったかなということを調べさせました。そうしたら、鳩山さんの談話記事もあったのだということを教えられました。それで、昭和二十年の朝日新聞の九月の縮刷版をずっと拾って発見いたしました。そうしたら、それはこういうことでございまして、鳩山さんが新党をつくろうとしておられる、その考え方をいろいろ述べておられる、取材に応じて。終わりにこういう言葉があるのです。「広島や長崎に原子爆弾を落とした、ああいう行為というものは病院船を爆撃したり、毒ガス弾を使ったりした以上の大きな戦争犯罪行為だ」、こう言っておられるのですよ。私は、それはそうだ、日本の残虐行為と比較にならないなと思いました。  私は、二十年の三月、江東地区が焼夷弾を落とされた、そのときに内務省の五十人の職員を連れて二つの区役所の応援に行ったのです。そうしたら、猛火で熱くてかなわない、どぶ川にどんどん身を投げて、十万人死にましたよ。非戦闘員を殺してはならないというのは、これは戦争法規の鉄則ですよね。  もう一つ例を挙げますと、日本はポツダム宣言を受諾して戦争終結に持ち込んだのです。これにはソ連もその後参加したのです。あれには、軍隊は武装解除するけれども、家庭に帰して、平和的な生産的な業務に従事させると書いてある。書いてあるのに、六十万人シベリアに連れていきましたよ。六万人命をつぶしていきましたよ。みずから言っていることをほごにしているわけですから、大変な違法行為です。  私は、アメリカやソ連を非難するつもりでこういうことを言っているわけじゃございません。日本人に自覚をしっかり持ってもらいたいということを私は言いたいのです。今の日本は、日本を悪くさえ言えば喜んでいるような人たちも出てきておるわけでございまして、我々の先輩に対して申しわけない感じがするものでございますからあえてこういうことを持ち出したわけでございまして、時間の関係がありますから言いませんが、やはりこの七年間のことをもう一遍客観的に検証することを考えていただけぬだろうかなという、そういう組織なり機関なり考えていただけぬかなと思うわけでございます。  なおもう一つ、自治大臣も見えておりますのでつけ加えさせていただきますが、今は世界は五十年に一回の大転換期を迎えているとか、あるいは五百年に一回の大転回期を迎えているとか、いろいろ言われております。日本もそうだと思うのですよ。また宮澤総理が生活大国を言っておられるのも、今までは産業を政府が保護してきた、もうそういう時代じゃないのだ、生産者に視点を向けるよりも、消費者、生活者に視点を向けなきゃいけない時代を迎えているんだということも考えておられるし、規制緩和にも取り組んでおられる。みんなそういう精神だと思うのでございます。我々は、こういう成熟した時代ですから、画一的にそんな行政をやるんじゃなくて、地域の特性を生かした手づくりの行政を考えていかなきゃならない、中央集権よりも地方分権に向かって努力しなきゃならない時代を迎えていると思うのでございまして、そういうことで村田大臣が何を考えておられるかということを御披露していただけたらありがたいと思います。
  12. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 戦後の地方自治を文字どおり育ててきていただいた奥野委員の御発言でございまして、非常に傾聴さしていただきました。  現在、選挙制度政治資金改革ということに絞られて政治改革議論をされておるわけでございますが、今後の二十一世紀に対する我が国のグランドデザインということを考えますと、私は、最近非常に御指摘になっておるように、国と地方団体とのあり方、これをしっかりと考えていくことが必要だと思います。総理が今御指摘になりました生活大国づくりを実現するためにも、行政事務はできるだけ住民に身近なところで、地方公共団体の責任においてやっていかなければならない、こういうふうに思います。  したがって、これからのキーワードの一つは、私は政治改革との関連で地方分権だと思います。そして、国から地方への権限移譲、それから財源の移譲、そして都道府県や市町村の自主性や自律性をしっかりと認めていかなきゃならぬ。そういった意味で、一昨日、宮澤総理に地方制度調査会から地方分権に関連する非常に重要な諮問の答申がございました。これは、内答は広域連合であるとか中核市制度でございますが、こういった問題を総理にしっかりと御検討をいただいて、そしてまた、この問題が政治改革と密接に関連をするように地方分権をやっていきたい。これは私は、自民党のみならず、各党のコンセンサスであると思っておりまして、今後地方自治法の改正等もしっかりと審議をしていっていただきたい、このように思っております。
  13. 奥野誠亮

    奥野委員 終わります。
  14. 田邉國男

  15. 園田博之

    園田委員 通常国会も半ばを過ぎて、特にやはりこの政治改革というのが最大の課題になりましたし、これは制度の改革ですから、予算なんかとは違って、これからの日本政治形態というものを頭に入れながら決める制度の改革ですから、当然慎重に議論もしなければなりませんが、しかし、残されたわずかな期間の中でどうしてもやり抜かなければならぬ。そういった意味では、自民党だけではなしに、各党の皆さん方もそうお考えだろうと私は信じておるわけでありますが、きょう私が与えられた時間内で、法案の中身というよりは、少しこの政治改革基本的なことについて、主として総理の御見解をお尋ねしたいと思っておるわけです。  私は、政治改革というもの、今は選挙制度ばかりが議論をされて、どちらかというと新聞報道なんかも選挙制度が主として報道されております。しかし、実際は、政治資金規正法なんかを見ましても、私は、今までの政治生活をずっとやってきた経験からいいますと、この新たな規正法では、本当にこれで自分政治活動をやっていけるのかなという不安を覚えるぐらい、大変厳しい自民党の案でありまして、私は、そういった意味でも今度の法案は、選挙制度を絡めて議論して、どうしてもこれを一括して結論を出していただかないと大変困ることになるだろうと思っているのです。  しかも、この選挙制度の問題も、世間では、嫌な事件が起きました。この事件があったからというふうにとられている向きもありますが、私は決してそうではないと思うのですね。これは明らかに時代の要請であるというふうに私は考えております。今まで自民党が中心になって政治を安定させて、そして結果としても、この日本の成長というのは目覚ましい成長を遂げたわけでありますし、自民党の政策が結果的に間違いではなかったということも、それは確認はできると思います。  しかしながら、時代は変わりました。まず、国際情勢が変わりました。国内では、自民党と社会党を中心とする野党との対立が緊張感を持って対立した時代もありました。しかし、それは世界のある意味では縮図であったわけでありまして、世界が変わったのであれば日本政治体制というのは変わるのは当たり前でありまして、そうじゃなければこれからの日本の、次の世代に向けての豊かで自由な日本を引き継ぐことはできないわけでありまして、それをやるのはまさしく私は政治でなければならない、こう思っておるわけです。  したがって、選挙制度の、選挙のやり方について議論は当然しなければなりませんが、それとは別に、当然総理としては、将来の日本政治形態というのはどういう形が望ましいのか、こういうことも考えながら制度改革を実行しなければならないと思うのですね。私は、後で自民党の問題なんかについても触れますが、今望まれるのは、そういう国際情勢に対応できるだけの有効な政策をすぐ立案して実行できるそういう政治体制、それはもっと日本の国内の政治体制がやはり緊張感を持った政治体制でなければならない、こう思うのですね。その点で、総理のお考えをまずお聞きをしたいと思います。
  16. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほども奥野委員と、政権交代について申し上げていたわけですが、今また園田委員からそういうことについてお話がございまして、確かに冷戦後という時代になりまして、そういうかつて我が国にありました、園田委員のお言葉をかりれば、世界の勢力分野の縮図といったようなことがなくなってまいりました。そういう意味では、政権交代ということが比較的国民の意識の上で考え得るような状況に変化をしてまいったかと思います。  そうなりましたならば、やはりそこはお互いが常に自分の政権をかけて政治をやっているという、そういう緊張感というものが極めて私は大事なことであろうと思います。どうやっても負けることはないんだというような試合からはどうもろくな結果が生まれませんので、やはりそこのところの緊張感は私は大変大事なことで、しかも、以前と違いまして、仮にそういうことがございましても、日本政治の基軸というものが非常に大きく揺れるというようなことは、幸いにしてそういう危険が少なくなりつつあるのではないかと思います。
  17. 園田博之

    園田委員 そういう観点から、さっき奥野議員の御意見も聞いておりましたが、今度の制度改革というのは、いろいろな御意見ありましょうが、政権党である自民党、何年か前に選挙制度の改革の議論を党内でしたときに、当時は、中には、そういう制度を持ち込むと自民党に不利になる場合もあるじゃないか、こういう意見があったことも事実であります。しかし、今日に至って、選挙制度というものは将来の政治形態なんかも考えなければならないんだ、こういう意見が浸透してまいりまして、今や今度の国会では、私は少なくとも自民党は、自民党にとって有利であるか不利であるかなんということは考えるべきでもないし、また、自民党の提案者の御意見を聞いていても、これは党利党略ではなしに、将来の政治形態を考えてやろうじゃないか、こうおっしゃっているわけでありまして、私はそういった意味で、そういった共通認識を持って双方の案を話し合わなければ、余りにも間が広過ぎて、これはなかなか煮詰まらないということになってしまうんじゃないかと思うのですね。そういった意味では野党の皆さん方にもぜひ、もちろんそういう認識を持っておられるのでしょうが、そういう認識さえ持っていれば必ずこれは煮詰まりますから、これからの議論も、残された期間ぜひ煮詰まるようにお互い議論してもらいたい、こう思っておるわけです。  そこで、総理は、従来の委員会には出席もしておられませんけれども、当然議論の中身をお聞きになっていると思います。議論の姿は私は大変いいと思っているのですね。これは議員立法の案を双方から出し合って、お互いに格式張らずに自由に意見を言い合う、そういった意味では、国会改革という意味でも、国会が本当にこういう姿になれば、これからのいろいろな法案ももっとよりよい審議ができるんじゃないかという意味では非常に私はよかったと思うのですが、さて、余りにも広がりのある、隔たりのある両方の案をどこかでやはり妥結させなければならぬ。まだ委員会が始まったばかりでそんなことも言えないという方もおられるのですが、しかし、そう期間があるわけじゃないのですね。総理として、自民党総裁でもあるわけですから、今度の特に選挙制度中心とする制度改革、どんなことをしてでも、これは場合によっては自民党の方から歩み寄ってでも妥結させるんだ、この決意をぜひ私はお聞きしたいと思うのです。  これは別に野党の皆さん方に加勢しているわけじゃないのです。野党の皆さん方は、これじゃなければなりませんなどという議論がまだやはりあるのですよ。こんなことではだめなんですね。しかし、責任を持つのはやはり我々の方だから、そういった意味での、かつてこの議論が始まる前に、総理は、自民党の我々に、不退転の決意だ、退路を断ってでもやる、こうおっしゃいましたが、この場で再び総理の決意をお聞きをしてみたい、こう思います。
  18. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 やはり政治に対する国民不信感がここまで参りますと、この状態はこのままほうってはおけないということにつきましては、お互い国会に議席を置く者として、党派に関係なく、そういういわばせっぱ詰まった気持ちでいるということは、私はもう間違いないことだと思います。それでありますからこそ何かの結論が必ず生まれるだろう、これはこのままほうっておくわけにはいかないというふうに、私は実はこの委員会の御審議をはたから伺っておるわけでございます。  ただ、私は提案者でございませんので、これをどういうふうな終末にしていくかということを私の立場から申し上げることは適当でないというふうに存じますが、必ずや成案を得ていただくことができるだろうということを期待を申し上げております。(発言する者あり)
  19. 園田博之

    園田委員 あんまり応援しないでください、これは私の聞く気持ちと若干違うかもしれないから。  私はちょっと不満なんですね、総理、自民党総裁として。やはり今まで政権を担い、そして最初に申し上げましたように、将来の政治形態は今のままじゃまずいんだ、こういう前提のもとに今度の制度改革をおやりになろうとしているわけですから、しかも総理は自民党総裁でもありますから。  この委員会最初の日に、野田毅議員が各党に、どの政党もどんなことをしてもやり遂げるという決意をお聞きになって、それぞれの政党が退路を断ってでもやろう、こう皆さんが言っておられるわけでありますから、そういう環境がもう一つでき上がっているわけですから、総理はもちろん提案者じゃございませんが、しかし、総理は今度の制度改革についてのやはり一番の責任者であることは間違いないのです。そういった意味でのもっとしっかりした決意を私は聞きたいのです。そういう気持ちをお持ちのはずでありますから、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  20. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 そういう観点から遠慮なく申させていただければ、私は自民党の議員によって提案されました四案というものはやはり最善のものだと思いますし、四案を分けずに一括して成立させていただくことが私は一番いいことだと自分自身としては思っております。
  21. 園田博之

    園田委員 自民党の提案がもう現実にありますから、総理の言われることもわかります。しかし、これ以上申し上げませんが、私が言った意味というのはよくおわかりでしょうから、これは現実問題として自民党の案でどうしてもやっていけるのかどうかということも、今後のことにつきましてはやはり考えなきゃならないわけでありまして、その時点に来ましたら、基本的にはどうしてもやり抜くんだという決意をお持ちのはずですから、ぜひ総理も責任を持ってこの制度改革に対応していただきたいことを重ねてお願いを申し上げたいというふうに思っております。  それから、私はいろいろなことを申し上げておりますが、現実に我が党が政権党でありますから、いろんな制度改革とかなんとか言っておりますが、これは端的に言ってしまえば政権党である自民党さえしっかりしていれば日本の将来に不安を抱くことは何もないわけでありまして、私は、並行して、やはり自民党の総裁として総理が党の改革もあわせてやっていただくことも必要じゃなかろうかと思うのですね。仮にこの制度が改革されましてもすぐ政治形態がばっと変わるわけじゃありませんから、その間、政権党である自民党は、よりよい方向に改革をすべき点が幾つも私はやはりあると思うのですね。  実は私は国会議員に当選をしてちょうどもう七年ぐらいになります。国会に出てきて自民党員としてのいろんな活動をしながら、そのとき私が持った感想というのは、やはり自民党の先輩の先生方は、第一に勤勉である、非常にいろんな個性を持った有能な方々が集まっておられる。これは、私は実は国会議員でない前はただの国民で、政治批判的な目で見ておりましたから、自民党はもっとしっかりしなきゃだめだというぐらいの気持ちがやはりあったのですね。しかし、私の想像したよりもはるかに一生懸命個々の議員の方々は務めておられる。それがずっと継続されているのです。しかし、残念ながら、個々にはそういう人たちがそろっていながら、結果として時代の要請にこたえられるような、有効に政権党としての機能を果たせてない、そこからやはり問題が出てきていると私は思うのですね。  私は、一つにはやはり外側の環境も悪かったと思う。これは、野党の皆さん方も悪いけれども、もし、最初に申し上げましたように、自民党が政権をとられるかもしれないという緊張感さえあれば、もう自動的に自民党はもっと活性化しただろうと思うのですね。しかし残念ながら、七年間、申しわけありませんが、政権を取ってかわられるという心配は一回も持ったことがないのですね。これは全員がそう思っちゃったのですね。そこにやはり政権党である自民党として緩みが生じてしまった。これはもちろん人ごとじゃいけないのです。自民党がしっかりしなければだめなんです。したがって、党の改革をやはりやらにゃいかぬ。  そこで、もうこご数年、党の改革についていろんな決め事をしておりますが、なかなかやはり実行できていませんですね。どこに問題があるのか。いろいろな問題がありますが、既に自民党のこの派閥の問題というのは、これは正式な機関でも何でもありませんが、国民の皆さん方の前では、派閥というのはもう自民党内の正式な機関みたいに誤解されるぐらい機能してしまっているのですね。  この派閥がよかった時代もやはり私はあるだろうと思うのです。自民党というのは、その時代に応じて幅広い一つ基本政策を持ちながら、その中でいろんな意見があって、意見の対立もあって、場合によっては自民党内で政策を中心に対立をしながら、そしてよりよい方向を求めて自民党がこうやってきた、そのことが結果として日本の将来を誤らせなかった時代も実はあったわけであります。しかし、今日の自民党内の情勢を見ておりますと、そういう長所がだんだんだんだんなくなってきたのですね。そこはやはり気の緩みだろうと私は思うのです。挙党一致ということが確かに必要でありますが、悪い方向に向かう場合がやはりどうしてもあるのですね。だれかが言い出したことは、それがいいことなんだ、いいことなんだということになってしまう可能性も実はあるわけでありまして、本当の意味での自民党内での切磋琢磨ということがもっと行われなければならないと私は思っておるわけです。  人事一つとってもそうなんですね。申しわけありませんが、今の日本の世の中でこれほど年功序列が徹底した人事が行われるところというのは、私は自民党くらいしかないと思うのですね。これはもちろん、例えば大臣をおやりになるには相当な経験を踏んでいかなきゃなりません。だから我々若い者を大臣にしろと申し上げているのじゃないのですよ、これは。しかし、ある程度の経験を踏まれて、その分野で一生懸命努力をされて、そういう有能な方は何年でも大臣をやってもらっていいじゃないですか。そして、申しわけないのですが、大変な長所を持っておられるけれども大臣にはちょっと向かないという方は、その他の分野で国会議員として御活躍願えればいいんじゃないでしょうかね。当選回数がある程度来たら、しかも派閥のある程度の枠があって、その中から選ぶというやり方は、いい時代もあったけれども、これからは政権党である自民党にはもう許されないと私は思っておるわけですね。  これは総理、自民党総裁であられますから、総理自身でできることなんですね。これはぜひ実行していただきたいと思いますが、お考えを聞かせていただけますか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 実は、昨年の秋ごろでしたけれども、私どもの党内で政治改革をいろいろ議論をしていただいている中で党改革という問題がありまして、そのことを私はその小委員会に出ましてお願いをいたしました。派閥というものが、金の問題、人事の問題等々いろいろ、いいところは無論あるが、弊害がある。どうしてもこの弊害が除去できない。これを何とか除去を考えてほしい。できなければこれは派閥というものをやめていくしかないんではないか。過去何度も解消を試みましたけれども、自然にまた復活をしてきたようないきさつがございますので、まず金のことからひとつ考えてもらえないかということをお願いをいたしました。  そういう背景があったわけですが、せんだって、これは園田委員も御存じでございますけれども、私どもの党内では、これから後は、この法案の成立、非成立のいかんにかかわらず、個人は政治資金を受けることも出すことも保有することもできないということを現実に実行しようではないか、そのために三月間のひとつ検討をして実行していこうというのは、実は夏から実行をしたいということなのでございますけれども、それはもうすぐお気づきのように、派閥が派閥のメンバーに対して、仮に盆暮れという言葉がございます、そういったようなことはできなくなるということでございます。  派閥にはいろいろいい効用がございますから、いい部分は残しておきたいと思いますけれども、金の面倒を全く派閥が見ないということは、従来私どものお互いの党内でやってきたこととは実は大変な変革でありまして、これは法律が成立すればもともとそうなるはずでございますけれども、それに先んじてこれを行って、我々としての党改革のかたい意思を世間にもわかってもらいたい、こういうふうに考えております。
  23. 園田博之

    園田委員 それは確かにそのとおりなんです。総理おっしゃるように、自民党の派閥の形態も少しずつ変わりつつあるんですね。それはお金の面では確かにそのとおりでありまして、我々が派閥の一員として将来に不安を感じるぐらいのことを今もう実行に入っておられるんで、それはそれで結構なんです。  私は、派閥というのは弊害が幾つかあって、それは一つはお金の問題である、それはなくなるだろうと思います。しかし、もう一つ私が申し上げたいのは人事の問題なんですね。これもやはり派閥の弊害であるのです、これは明らかに。そして、この人事の問題さえ解決すれば——派閥というものはなくなりませんから、また派閥の効用というものがありますから、私は派閥を全部なくせとは言っていないのです。そうすると、残された派閥の役目というのはやはり政策集団だと思う。自民党の中で、自民党の一つの決められた枠内でよりよい政策を求めてグループが議論をし合う、これはまさに派閥の効用なんですね。だから、資金面は解決されたでしょうが、人事の面をこれから解決してくださいと私は申し上げたのであって、その点についてお聞かせをいただきたいのです。
  24. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは、私の気持ちといたしましては、すべて思っていることがそのとおりいくのではありませんけれども、先般組閣をいたしましたときはかなり自由な人選をさせていただいたつもりでございます。ただ、何事もすべていっときに全部片づきませんので、事実問題として、いわゆる派閥別の何人といったような人員のバランスは、これはある程度は正直を申して考えさせていただきましたけれども、しかし、個々の人選につきましてはかなり自由にさせていただいたつもりでございます。  ただ、このことは、私ができるということではなくて、党内にそういうことでいいではないかという、今園田委員のおっしゃいますような雰囲気ができてまいりますと、自然にそういうことはやりやすくなってまいりますので、自分としても党というものはそういうふうに運営したい、また、党員におかれてもそういう運営についてひとつ支持と御協力をいただきたいというふうに思っております。
  25. 園田博之

    園田委員 この点は現実にすぐできる問題でありますし、総理のおっしゃるとおりでありまして、総理にだけ責任をおっかぶせるわけにいかないと思います。その方向に向かって、自民党の各位の方々も、制度改革と同時に、やはり政権党である自民党を活性化させる、こういうことでぜひ御認識をいただけたらありがたいと思います。  そして、もう最後になりましたけれども、最初に申し上げましたとおり、今度の制度改革というのは、まさに党利党略を離れて、将来の政治形態が本当に今日の国際情勢に対応できるように、やはり有効に個々の議員が努力したことがそのまま結果に反映できるような、そういう制度改革ができるように強く要望をいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  26. 田邉國男

  27. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 総理に御質問をさせていただきます。  今、後ろの方で総理の御答弁を伺っておりますと、残念ながらいま一つ政治改革をどうしてもなさらなければならないというそのお言葉はよくわかるのでありますが、迫力の部分で私どもに伝わってまいらないところがございます。  実は、一月に総理に随行させていただいてASEAN訪問をさせていただいた折に、海外での総理は大変に生き生きと、はつらつとしておられまして、その生き生きとしたお態度でぜひ政治改革も乗り切っていただきたいと思っております。  日米首脳会談をなさった後でお疲れの御様子がと思いますが、まず、クリントン大統領にお会いになって、率直な印象をお聞かせいただければと存じます。日米首脳会談の内容等々は新聞等々で私ども承っておりますが、ぜひクリントン大統領の印象を、宮澤総理、率直にお聞かせいただければと思います。
  28. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 何度か電話などでは話をしておりましたけれども、直接に会ってかなり長い時間お話をしたのは初めてであります。  それで、もう世間によく言われていることでございますけれども、やはり非常に若いなということと、それから大変に、どう申しましょうか、大変によく勉強をしておられる、つまり、問題を非常によく把握をしておられるということ。それから、しかし、いろいろな人がいろいろなアドバイスをしておるに違いありませんけれども、結論としては、その間のバランスをかなりよく考えて、余り極端なアドバイスに耳を傾けてすぐそれを実行するということについては、かなりよく考えてから物をされる、そういうお人であるという、これは数時間でございますので、数時間だけの印象を申し上げるわけですが、そういう印象でございました。
  29. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 ありがとうございました。  そのクリントン大統領、実は四十六歳であられる。私も四十六になってしまいましたが、実はある方からこんな御批判をいただいたのです。クリントンさんはあなた方と同じ世代じゃないか、一方はもはや世界最大の国の大統領だ、あなた方は全く迫力ないじゃないか。何でこんなに違いができたんだろうか。  クリントン大統領は、実は太平洋戦争、第二次世界大戦戦勝国でもある、大いに青春時代を謳歌したはずの人物だ。ところが、現実はそうではなかった。あれから朝鮮動乱とかあるいはベトナム戦争があって、クリントン大統領はそのベトナム戦争を忌避をされて、徴兵を忌避をされた方である。その当時から、ですから若いころから魂が燃えて、この国をおれの力で新しい方向に引っ張ってやらなきゃいかぬじゃないか、多分高校時代からそんな思いになられたというふうに承っています。そして現実大統領になられた。これから大変に私も期待をしておるわけでありますが、期待だけしているわけにはまいりません。  一方の私どもは、第二次世界大戦敗戦国に生まれて、もっと苦しい青春時代を送っていくべきであった。ところが、あなた方のお父さんやお母さん、あなた方じゃない、お父さんやお母さんが大変に苦労をして、血と汗と涙で高度経済成長まで導いていったんだ、あなた方の手柄でも何でもない、あなた方はその手柄に乗っかって、高度経済成長期にただぶつかって、のほほんと青年時代、成長期を迎えてしまった。  今、そのような青春時代を送った青年たちが結構多く国会にも登場するようになった。その私どもがもっと、クリントンと同じように、おれたちがこの新しい流れをつかまなきゃならないときに、自分たちが底力を発揮しなきゃいけないんじゃないか。それを例えば宮澤総理に託するとか、あるいは竹下さん、金丸さん、こういう方々がおったからこういう時代になった、のほほんとしていたんじゃいけないよ、あなた方からしっかりとした行動をしなきゃならぬと言われたわけであります。私どもは大変にその場で反省をさせられました。  ある意味で、国民の皆さんに、まさに先ほど園田委員が申されましたけれども、年功序列型社会、その中で私どもは喜びを享受していた、甘えていたわけであります。甘えていた我々が年功序列型社会が悪いといって怒ったってしょうがない、その中から飛び出る勇気がなかったわけでありますから。ですから、私どもはそんな意味で、新しい流れを、みずからの力をある意味で信じて、蓄えて、努力を今こそしなきゃならない大事な時期だというふうに理解をしております。  そこで、政治改革という話になってまいりまして、私は、単純小選挙区制度を実は五年ほど前から、国会と申すよりも地元で申し上げ続けてまいりました。単純小選挙区制度の案が自民党の案として採用されたということは、私にとりまして、個人的な思いとしては感慨無量のものもございます。しかし、行く先は大変に厳しいなというふうな思い感じないわけにはいきません。  地元に戻らせていただいて、しばしばこんなことを言われるのです。あなた方も制度改革にすりかえているんじゃないか、制度改革に逃げ込んで、それですべてだと思っているのですかとよく言われる。我々は、数百時間の議論をさせていただいて、その結論を皆様方にお見せして、やはり制度を変えなければ、つまるところいかぬのだということになったわけでありますが、そして宮澤総理も所信表明演説などで、盛んに国民の皆さんに、このような事態になったということを、政治不信がここまで募ったということに対してしばしばおわびを申されておりますが、どうも国民の皆さんにまだまだ十分にその気持ちが伝わってきていないというふうに受け取っております。  そこで、大変に恐縮ではございますが、いま一度この政治改革特別委員会の場で、このような事態に至ったこと、そして何ゆえに政治改革をやらなければならないのか、その原点、総理からその原点的なお言葉を聞かせていただきたいと思っております。
  30. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ここ何年間かの間にいわゆるスキャンダルと言われる事件が頻発をいたしました。その多くのものは政治家と金に関係をするものでございました。その都度、無論司直の手によりまして厳正な対応がなされてはまいりましたけれども、一つはやはり、これは法によるプロセスでございますので、国民から見ますと、なかなか時間がかかる、どうしてもっと思い切って黒白はっきりできないのかというような、これはもうとかく理解のできることで、ありがちなことですけれども、そういう一つ国民の側の焦燥感というものがあったと思います。と同時に、そういうことはもう行わないということで、いろいろ政治家の側でも制度の改正等々もいたしましたけれども、事件はなかなか頻発をやめないというようなことで最近に及んだわけでございます。  殊に、最近になりまして、政治に金がかかるということについては国民がある程度理解をしておられるでありましょうけれども、その金が必ずしも政治に使われたのではなかった、そういう疑いの濃い事件が出てまいりましたために、今まで政治に金がかかるのはある程度やむを得ないと考えていた国民が、実は全くそうでないことがあるではないか、そういう国民の非常な不信というものが頂点に達した感がございます。ここまでいきますと、政治家というものすべてが現在までのこういうやり方を改めませんと、私は民主主義そのものが国民から見放されるのではないかということを強く心配をしております。  また、自分立場といたしますと、国政を預かる人間として、こういう出来事が再び起こって、そうしてそれに十分に対応できないということになれば、これはまことに申しわけないことであって、何とか、行政としてはもちろんでありますけれども、この政治家の倫理を高め、そうしてその倫理を担保するための政治改革というものを何としてもこの際やってしまわなければならない。それは恐らく一八八三年にイギリスの腐敗防止法が成立せざるを得なかったほど状況は実は悪いというふうに考えておりますし、したがって、やはりどうしてもここでそういう思い切った政治改革をしていかなければならないというふうに考えております。  問題はもちろん幾つかあるわけでございますけれども、一つは金の問題がございます。これについては従来から、何とかして金の出というものをできるだけ制限をしようではないか、いわゆる冠婚葬祭のたぐいですが、そういうことについてはある程度のことが、多少のことはできましたけれども、しかし、依然として入りの方については十分なことができておりません。出の方も決して普通の我々の才覚で賄えるような金額まで縮減されてきたとは申しにくい。ですから、金の問題がどうしても一つございます。  それから、金がどうしてもかからざるを得ないということの一つ選挙区制の問題があるであろうということと、金の問題をやはりきれいにしようと思いますと、選挙に対する公費の補助というものが要るのではないかという大方の御意見でございますが、そうであるとしますと、その公費が間違いなく、これは政党ということにならざるを得ませんが、政党に補助され、それが政党間の政策論議、政治のための選挙等に使われなければならないということを担保いたしますためには、やはりもう一つそこで選挙制度を改めなければならない、そういう状況になっておるというふうに考えます。  したがいまして、これらのことは、一つだけ取り上げて政治改革が成就するのではなくて、全部を総合的に取り上げてこの政治改革をいたしませんと、本当に思い切った改革というものにはならないということを恐れておりまして、しかも、この時期を逸しますならば、再び国民政治に対する信頼を回復することは容易ならざることである、こういうふうに考えております。  それで、この委員会における先日来の御審議をはたから伺っておりますけれども、いわばこれは何党、何派の問題ではなくて、お互い一つの船に乗っておって、沈んでしまうかどうかというほど深刻な問題であるというふうに考えております。
  31. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 総理のおっしゃるとおりだと思います。金と政治家の問題にメスを入れて、私どもは政治改革の四法案を最終的につくらせていただいたと理解をしております。ただ、国民の皆さんは、政治家と金の問題とかあるいは選挙制度という話になると、何だ、結局は自分たちの話じゃないか、それによって我々国民は何かいいことあるのかい、生活は豊かになるのかい、どうもそう短絡的に考えがちでございまして、しかし、私どもは現実に、いや、皆様方の地域のためにも政治改革、そしてその真髄であるところの選挙制度改革が大事なんですよという話をするのですが、なかなか簡単には理解をしてくれません。  先ほど園田委員が申されたとおり、国際的な流れが大きく変わっていくこの状況をとらえて、日本としてもリーダーシップを今こそ、単なる経済という問題だけではなくて、安全保障等々にも果たしていかなければならない、そのために選挙制度までメスを入れて議論しなければならないということだと私どもは理解をさせていただいておりますが、ただ、それだけではなくて、国内問題にも相当なひずみがある、また、赤あるいは不合理性が相当たまりにたまってきてしまっている部分がある。国内のひずみというものを一番生じせしめてしまっているのは、国の機関が大きくなり過ぎてしまっていることに由来すると私は感じておりまして、そんな意味で、行政改革こそこれから私どもはしっかりとやらなければならない。総理も、行革審に諮問をされて、大変に行革には御熱心でございますが、本気で政治改革をやる真の目的は、その次に来る行政改革を成功あらしめるためのものではないか、それが国内的には一番大事な話ではないかと私は実は理解をさせていただいておるのです。  そこで、現在の中選挙区制度というものが存在する限り、御案内のとおり、私ども政権政党としては多数を握らなければならないということで、一選挙区で複数の候補を立てて、むしろその複数の自民党の候補同士が相争うような形になり、政策が同じだからサービス合戦ということになる。サービス合戦でお金が動くということも一方であるかもしれません。しかし、それ以上に私は重大だと思っているのは、むしろ、この町をつくったのは、一番貢献したのはおれだ、この橋は私がやったんだぞ、そんなことしか自慢できないような寂しい国会議員の体質、すべてとは当然申し上げませんが、そういう体質が一部に出てきてしまっておるのも非常にゆゆしき問題で、その中でいわゆる行政と政治家が絡んできてしまう。失礼な言い方をすると、行政の手のひらの上に政治家が乗っかってしまって、その手のひらに乗っかった中で、地方のためにあれをやってあげた、これをやってあげたというような話になってしまいがちである。その体質のもとはやはり中選挙区制度にあると私は理解をしておるのです。ですから、今中選挙区制度を社公案でももうやめましょうとおっしゃっておられる、自民党案も中選挙区制度はもはやとらないというふうに言明しておるわけでありますから、その行政改革を実際に実現させていくためのまさに力として政治改革が先に必要なんだ。政治改革をやらなければ行政改革は、車の両輪といえども、政治改革を先にやらせていただかなければ真の意味での行政改革はなし得ないと私は思っておりますが、総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  32. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 いわゆるポークバレルということは、本当に御承知のように民主主義の国には、残念ですが、どこでもございます。ございますが、ちょっと我が国の場合にはそれが、御承知のような選挙制度になっておりますから、その間に競ってという要素が入ってきていまして、確かにおっしゃいますように、私は今おっしゃっていることには大変同感をするのですが、行政の方の許認可というようなものがもっと簡単に、少なくなりませんと、絶えずそこで政治家との間の癒着が起こる。また、行政の方もよく知っておりまして、この部分はあの先生にひとつおやらせしましょうというようなまことにどうも情けない状況になっておりますから、本当に行政改革と地方分権ということはどうしてもやってしまわなければならない問題と思います。
  33. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 行政が許認可事業を大変に握っているという現実、これは現行の中選挙区制度が続く限り、私どもが幾ら許認可事業をもっと地方に差し上げてくださいと申し上げても、にこやかな顔つきはするかもしれませんが、現実なかなかそれは進行しないと思うのです。ある意味で私は政治改革を、寂しい言い方ですが、行政からの独立運動だというふうにとらえておるのですが、独立をさせていただかない限り、行政の許認可事業を地方に差し上げてください、権限移譲をどんどんやりましょうというふうにこちら側がお願いしてもなかなか実効が上がらないのではないかと思いますが、いま一度総理の御答弁をいただければと存じます。
  34. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 これは先ほど自治大臣もお答えでございましたけれども、地方分権といわゆるディレギュレーションというのは、これはこのことがあってもなくてもどうしてもしなければならない問題でございまして、これが行政改革の主眼でございます。何とかこれは、どうしてもやってしまいたいと思っております。
  35. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 ぜひその方向で今後とも御努力をお願い申し上げたいと存じます。  そうなりますと、私の論理からいきますと、中選挙区制度をまずは廃止をしていただかなければならない。その後に来るものは、行革ということを考えたならば、必ずしも単純小選挙区制度にこだわるべきではないし、比例代表でも構わないのかもしれません。ただ、若干比例代表制を入れますと、その中に、例えば八千万有権者がいるとして、〇・五%という話ですと、四十万程度の団体、組織というものを持つ方が当選をしやすくなる。勢い、例えば役所というものあるいは役所のOBの方々が選挙に登場をし、また当選しやすくなるかなというふうには感じますが、必ずしもそれは比例代表制をだからといって捨て去るべき議論にはならないというふうに思っております。  ただ、先ほど園田委員が盛んに、執拗に中選挙区制度はもはや捨てられてあるんだと。総理、ぜひいま一度、中選挙区制度にはもう戻らないんだ、我々は、社公案もまた自民党案も中選挙区制度からは脱却することになっておるのですから、議論が合わないからといって、最後にまた、結局変わりませんでしたよということにはならないように、ぜひ御配慮をいただかなければならないと思います。園田委員に続きまして同じ質問でありますが、総理から明快な御答弁をいただきたいと存じます。
  36. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私は、この委員会の御議論の趨勢は、まさにそういうことであるというふうに理解をいたしております。
  37. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 委員会の中で当然結論を出していかなければならない話だと私どもは思いますし、かつて本会議で小渕先生が、この法案が不成立な場合に、その責任は、内閣にあるのではなくて、国会にあるんだというふうにおっしゃったのも私は事実だと思います。ただ、党総裁としての当然の責任もありますから、また総裁としてのリーダーシップを強く発揮していただいて、もとにはもう戻らないんだぞというふうに私どもに勇気づけを与えていただくことも極めて必要なことだと思います。現実に、妥協というものが極めて難しいという話になって決裂、結局はもとのもくあみというような状況になったといたしましたときには、私どももそれなりの覚悟をやはりしなきゃならないと思っております。  冒頭に申し上げたように、要するにこの世の中、日本をこのようにしてしまった責任、先ほどクリントンの例を出したわけでありますが、私ども若い世代がいつの間にか若年寄り的な発想になってしまって、ここから抜け出し切れていなかったことに原因があるわけでありまして、そうであるならば、もし今と同じような体質をこれからも自民党があるいは野党の皆さんも続けていこうというふうな判断をされたときには、それなりの思いで私どもは新しい流れというものも築いていく努力もしていかなきゃならないというふうに理解をしておるところでございます。  その妥協というものを、私は最終的には政治は妥協だというふうに理解をしておるんでありますが、妥協の案として、総理、なかなかお答えにはなりにくいとは思います。しかし、民間政治臨調の亀井正夫会長が、御案内のとおり、小選挙区比例代表連用制というものをお出しになった。その提出された案を総理も大分御勉強されているというふうに私ども理解をさせていただいております。妥協案としてその連用制を今採用するかどうかなんということを申し上げられないことは十分に理解をしておりますが、大変によく考えられている連用制だと私は拝見させていただいたわけでありますが、総理のお考え、妥協案としてある程度認識でき得るものであるかどうかというようなことを聞かせていただければと思います。
  38. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 自民党の同僚議員によりまして提案をいたしました四法案につきましては、これは私どもの党で決定をいたしたものでございますので、総裁としての私が責任を持たなければならない案でございます。したがって、この案をぜひ成立をさせていただきたいと考えております。  今お話のありました連用でございますか、書類では読みましたが、直接お話を聞かせていただく機会をまだ持っておりませんので、ただいまここでとやかく批評を申し上げないことにいたしたいと思います。
  39. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 実は私も総理と同じように、自民党の四法案がそのまま成立することが日本の将来にとって、長い目で見て最高によろしいものであるというふうに理解をしている一人でもございます。ですから、四法案の成立に向けて最大限の御努力をぜひお願いをしたいと思いますし、私どもも最大限の力を振り絞っていかなければならない、そのことは理解をしたいと思っています。  特に、小選挙区制度と比例代表、よく比例代表の方が民意を代表しているんだ、民意をあらわしているのは比例代表だというふうに申されます。また、小選挙区制度の批判の中で、死に票が多いなどというようなことをおっしゃる方もおります。その意見は、特に死に票などという言葉は日本にのみ存在している言葉であるようでありますし、死に票というものはむしろ有権者にとって大変に無礼な言葉だと私は思います。一票を投じたという、その票の価値というものを感じるならば、どんな票も死んでいないわけでありまして、むしろ緊迫感を与える選挙だということになれば、その死に票は十分に生きているというふうに理解したいと私は思っております。  同時に、民意を代表していない、あらわしていないという御批判に対しても私は申し上げたいことがございます。  選挙というものがあって、それが単純小選挙区で行われた場合に、四〇%の支持率で九十数%の議席を得るのではないかという御批判があります。もしそのことを御批判をしておられる方が本気で信じておられるならば、残りの六〇%、そちらの方が過半数を占めておるわけでありますから、その六〇%のうちの四〇%以上を選挙協力をされれば圧倒的に逆転をされるということになるんです。  私が申し上げたいことは、小選挙区制度が採用されたときには、必ず事前に選挙協力あるいは連立構想というものをどういうふうに行うべきかという議論がなされるはずでございます。もしそれがなされないとするならば、比例代表併用制を採用された場合にも、その後で、選挙の後連立などというものが組めるはずがございません。選挙の前になるのか後になるのかの話だけてあります。選挙の前に民意を問うのが小選挙区制度だと私は思うんです。ですから、小選挙区制度を採用してくださった方がむしろ民意を正確に代表している、選挙国民の皆さんが民意を、連立をどうするか、選挙協力をどうするかということを判断された後での投票ができるわけですから、私は民意があるというふうに思っております。  最後に、時間がなくなりましたので、私も総理が申されたような自民党の四法案成立に向けて努力をさせていただきたいと思いますが、総理の最後の御決意をお聞かせいただければと存じます。
  40. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、ここで、やはり国会におかれまして政治改革をしていただきませんと、本当に国民政治に対する信を失うということに私はなりかねないと心配をいたしておりまして、どうぞ十分に本委員会におきまして御審議の上、政治改革の実が実りますようにお願いを申し上げたいと存じます。
  41. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 終わります。ありがとうございました。
  42. 田邉國男

    田邉委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  43. 田邉國男

    田邉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。簗瀬進君。
  44. 簗瀬進

    簗瀬委員 総理、ここに小さな紙マッチがございます。この紙マッチは総理大臣官邸の応接間のテーブルに置かれていたものであります。置かれていた日付は九一年の十月三日であります。すなわち、あのとき、前に出された政治改革法案、これを絶対に日本の将来のためになし遂げなければならないということで、若手議員が自分のバッジと引きかえにでも改革はしなければならないということで、当時の海部総理のところに押しかけてまいりました。そのときにそれぞれが思いのたけの話をしたわけでありますが、私も、たまたまメモ用紙がなかったので、手元にありましたマッチにメモをしながら発言をさせていただきました。そのときのマッチであります。  どんなメモが書いてあるか。「自民党、社会党、そしてすべての政党が一緒になって、新しい時代へ勇気を持って離陸していかなければならない。まさに今までの永田町の論理をきょうこそここでかなぐり捨てていかなければならない」といった、そんなメモが書いてあります。私にとっては大変貴重な歴史的なマッチでありますが、このマッチに込められた時間は、九一年と現在はどうもそれほど進歩が見られていないのではないかな。日本政治は、特に政治改革のその一点に絞って考えてみますと、もう時間がとまってしまっているのではないかといった感じがいたします。まさに待ったなしの改革をしていかなければならない、そういう時期に今到達をいたしていると思います。  私は、地元で毎週月曜日に街頭演説をさせていただいております。昨年の八月に金丸問題で街頭演説をしたときに、高校生の男子から、ばかやろうとやじを飛ばされました。私はそのときいろいろなことを一瞬考えたわけであります。一つには、こんな若者の正義感からやはり政治というようなものを切り捨てられているんだな、そういうものが一つありました。大変すごい政治不信をそこに感じたわけであります。  また、それと同時に、改革派ということを免罪符にしてきた自分に対する一種の恥というものを感じました。彼らにとってみれば、守旧派であろうと改革派であろうと、この永田町に住んでいる国会議員はみんな同じなんだな、そういう意識で見られているんだなということを非常に痛切に感じ自分ながら恥じ入った次第であります。まさにスキャンダルの再発を防止できない政治、あるいはスキャンダルによる政権交代ができ得ない政治、まさに何も起こり得ない政治に絶望しつつある国民の率直な印象というようなものを、若い男子高校生のやじから私は酌み取らせていただきました。  今、日本政治的に停滞をしている、そういう余裕は一つもないはずであります。まさにポスト冷戦ということで、新しい政治のダイナミズムが要求されてくる時代であります。そして、今までの小さな個別利益を上げていくことだけにきゅうきゅうとしてきた政治から大きな政治をしていかなければならない、そういう体制を我々は一刻も早く築き上げていかなければならないはずであります。しかし、今こそその政治のよみがえり、ルネサンスを図らなければならないときであるにもかかわらず、年々歳々のスキャンダルの中で政治的な空白が出てまいります。  そして、いろいろなことを考えると、やはりすべての問題の根源にあるのは、現行の選挙制度に帰着をしてくるのではないかなと私は思っております。同士打ち、そしてそこに秘書の人件費、活動費がふえる、相互扶助組織としての派閥が生まれてくる。そして、日本のリーダー自体が、資金能力がリーダーになるための一つの要件なんだと週刊誌などに言われてしまう。このような、世界で非常に変わった国になりつつあるのではないか。  あるいは、自民党は一つの政党であるにもかかわらず、五つの派閥あるいは六つの派閥、そういう派閥の連合体であることによって、本当の意味でのきっちりとした政権基盤が固まりません。何をやるにしても、大きな政策展開をやるにしても、まず派閥のリーダーたちがチェックをし、お願いをしなければ進んでいかない。そういう意味では、リーダーシップの基盤は大変弱い。その根源は派閥の連合体という自民党の体質にあるのではないかと私は思っております。  また、族議員、そしてこれの帰着をするところが、今政治と行政とそして経済界の癒着のトライアングルだなどと言われておりますあの金丸問題ということになってくるわけでありますが、私は、これを政治対行政という大づかみにしたときに、一つのローマ時代の格言を思い出します。ローマは征服をしたそれぞれの国を分割して統治をする、それによって被征服者が一致して横並びで反抗してくるのを防いだ。まさにそういう意味で、政治と行政の間で、言ってみれば族議員という縦割りのそういう仕組みが議員の総体の中に貫徹をしてしまっているということは、政治が行政によって分割して統治をされているのではないかな、こういう気持ちすらしてくるわけであります。行政改革をするためにも、まさにこの政治の行政依存というようなものを本当に乗り越えていかなければならない。そのための一番の根源は、やはり族議員が誕生する一番もとになっている、票と金を必要以上に要求させてくるこの選挙制度の部分を直していかない限りは、私は究極の解決というのはできないのではないかと思っております。  また、このような政治のダイナミズムというものが奪われていることによりまして、例えば縦割りが自民党の中にあってはいろいろな意味での弊害をもたらしております。大きなビッグプロジェクト、ビッグプロブレムができた場合に、必ず政調会の横並びのあの横断的なそういう調整をしていかなければならない、根回しに時間がかかってしまう、そこでツーレイトと言われてしまう、このような欠陥というようなものも自民党は持ってしまったのではないかなと思います。  しかし、それと同時に、一番その背景にあるのは、やはりスキャンダルの都度に、本当はそれを利用して政権交代ができなければならない、そういう状況がありながらも、それをうまいぐあいに使えない野党の存在、これも大変大きな問題になっているわけであります。そして、なぜ政権交代ができ得ないかというと、全国津々浦々すべての選挙区に同士打ちをやりながら過半数を得ていかなければならない、そういうエネルギーをなかなか野党が持ち得ないというところに、その究極の政権交代ができないという原因があるのではないかと私は認識をいたしております。  そして、これが政治家だけのことであったら結構であります。しかし、政治家が自分の失敗によって地獄に落ちるのは勝手でありますが、それと道連れにされる国や国民はたまったものではありません。まさにそういう意味で、日本政治は、国民に対して本当の意味での政策の問題点を突きつけながら一緒に考えるといったそういう情報提供をやり得ているかというと、私はやはりそれについてもクエスチョンマークがつかざるを得ないと思っております。まさにこのような現代の政治と行政、これが絡み合ったシステムの破綻、これをどのように乗り切っていくのか、これが今問われている一番の問題であると思いますが、この点についての総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  45. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 冒頭に、たくさんの秘書を置かなければならない云々という、これは冠婚葬祭だけでもきちんとやろうとすれば、本当にアルバイトを含めればもう各村に一人ずつ置かなければいかぬというようなことになっておりました。これは、幸いにして冠婚葬祭というものを自粛しようとすることにはなりましたけれども、しかし、秘書、アルバイトを仮に三十人置くとすれば、それだけでももう六百万円、少なくともそういう金ですから、そういう金を集めるのに狂奔するようなことがあってはならないし、またそういうことでは、簗瀬さんのような本当に前途春秋に富んでおられる方がそういうことで体をすり減らしてしまってはいけないわけなんでして、そういうところに、今回士打ちとおっしゃいました、その問題がもう既にあったのだと思います。  それで、そういう若い方々を幾らかでもお手伝いをしようという派閥の先輩たちにいたしましても、ろくなお手伝いは実はできません。数が多うございますから、それだけの金をつくるという、そういう金をちゃんとつくるということはいつまでもできるものじゃございませんから、やはりこの制度はしょせんもう崩壊しなければならないところへ来ていたというふうに私も実は実感をしておりました。  それで、前からいろいろな努力があって、そのとおりでございますけれども、しかし、ここへ来まして、やはり国民政治に金が要るということを聞かされていたが、その金は必ずしも政治にばかりは使われていなかったというような報道を読みますと、いよいよ国民不信は深い、それが現状であると思います。  このことと、また、行政と政治との関係というのは確かに御指摘のようにありまして、私は族議員というものについて二つの面を見ておりますけれども、一つは、自分のいわば得意とされる分野を非常によく勉強されて、そして事によっては役人よりもよく知っておられる、役人の方は二年ぐらいでかわりますものですから。そういう意味では、それをうまく国政に生かしていただけますとこれは大変に意味のあることだと思いますけれども、その反面は、実は本来国の行政に属すべきことがそういう族議員の方々の間で実際上決定されてしまう。しかも、それが特定の派閥であったり、あるいは次々リレーをしていったりというような、そういうことになりますと、今度は行政というものが実はひん曲げられてしまうというような弊害を、これも事実だと思うんでございます。  派閥の方は、私、けさも申しましたので繰り返しませんが、ともかく自由民主党の中では、この法律が成立いたします前でも、ことしの夏からでも、もう事実上、派閥が派閥のメンバーに対して、いわば盆暮れのというようなこともできないように、個人が金の収受、保有を、政治資金はできないようにということを今党内で御承知のようにやろうとしております。それから、大事についても、ある程度は、だんだんに派閥というものから自由になっていきたいと思っておりますけれども、政策問題で皆さんが御一緒議論されることは、これは結構でございますが、そういったようないろいろな意味で、もうこの制度は、疲労というよりは、実際はもうちょっと機能しないところに事実上来ておると思いますので、この機会にもうこれをやりませんと、本当に民主主義というものは国民から見放されて、もし見放されてしまえばこれは大変なことになりますから、そういうところまで来ておるという切迫感を私も同様に感じております。
  46. 簗瀬進

    簗瀬委員 今国民との関係でのお話でございましたが、私、実はこれは国内問題であると同時に、国際問題であると思っております。まさに日本という国がきっちりとした意思決定能力を持ち得ているのか、そういう観点で見られているのではないか。  先ごろクリントン大統領と大変率直な意見をお交わしになったということで、私どもも心強く感じておる宮澤総理に対して、特に、三月二十一日から私はアメリカに行ってまいりまして、例えばロン・ブラウンとか、実務者まで含めますといろいろな方とお会いしました。そのときに大変ショックだったのは、例えばCRSレポートというようなものがございます。これは、湾岸戦争の問題がここでいろいろと、アメリカの総括をされております。これはアジア問題専門調査員のラリー・ニクシュとか、そういう方が書いたものでありますけれども、その中で指摘されていることが、まさに今我々が悩んでいることをずばり、例えば、「国際的責任を負うことへの日本の消極的な見解」「不戦憲法日本の平和主義」の問題、「野党勢力の役割」「海部首相の指導力と自民党内の分裂」、こんなことが項目を分けてきちんと分析をされている。これはアメリカの議会のもちろん公式なレポートであります。そして、その中で、例えば「一日遅くて、一ドルたりない。」これが日本だ、また「政治的な小人」である、こんなふうなことも、まあ遠慮会釈のない言葉で言われておりまして、読むとちょっと不愉快になるような感じもあるんですが、こういう湾岸のときの一つの我々の対応があった。  そして、それを受けた形で今政治改革を我々はやっている。顔の見える日本政治にしようというふうなものもそこに入っている。まさに今回の政治改革がきちんとやり遂げられるかどうかというふうなことにおいて初めて、例えばアメリカから見た日本のパートナーシップ、パートナーとしての能力があるのかどうか、あるいはアジアから見て、日本という国の本当の意味での友人としてのこれからのつき合いができるのかどうかということが私は問われているんではないか。まさにこれは国内問題であると同時に、すぐれて国際問題である。これがなし遂げられないようであっては二十一世紀の日本もない、私はこのように認識をいたしておるんですが、総理の御見解を聞かせていただきたいと思います。
  47. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私も同じ経験をしばしばいたしますが、一番よく聞かれますことは、日本選挙に当選するにはどれくらい金かかるんだ。友人ですから本当のことを申します。申しますと、その金はどうやってつくるのかねと、その辺からもう実は選挙というものがちゃんと正規に行われているのかという、そこのところがやはり一番私は根本のところだと思います。そういうことで民主主義なのかという、いろいろなことを聞かれます中でやはりそこのところが一番日本の信用にかかわる部分だというふうに、私もしばしばそういうことを痛感をいたしております。
  48. 簗瀬進

    簗瀬委員 今民主主義かどうかというふうなお話がございました。私は、民主主義の根幹はやはり多数決であると思います。しかし、どうも我が国は本当の意味での多数決の国なのであるか、こういう基本的な疑問をいつも持たざるを得ません。例えば、自民党の総務会では、反対をする人が良識的であるならば最終的な部分で席を外してくれる。残っているのは賛成派ばかりでありますから、全会一致。これは自民党型の意思形成の仕方であります。全会一致をやはり求める。これはどうも自民党だけではなくて、野党もそれから会社の中でもしゃんしゃん総会が一番好まれる。そういう意味では、本当の意味での多数決が機能していない国なのではないかな、そういう疑問を常々感じております。  まさにこれから二十一世紀の日本がボーダーレス時代で、政治家は政治家として外国の政治家と渡り合いをする、また、国民国民として、それぞれの貿易関係の中でお互いにちようちょうはっしのやりとりをするといったときに、我々はすぐれて話ができる口とよく回転できる頭、そういうようなものを持って彼らに対抗していかなければならないはずでありますが、どうもその辺、私は、基本的なウイークポイントを我々は抱えているんではないか。  そうしたときに、ここで小選挙区というようなものを入れる。私は、そういう意味では小選挙区というのは一種の多数決の極致であると思います。五十一対四十九でも選挙区の意思は五十一に決まらなければならない。そういう意味で、多数はきちんと認知をされる。また、少数は少数としてきちんと指定席を持つ。ところが日本の場合は、少数と多数がぶつかり合いをするとすぐ必ず感情的なしこりになってしまう、そういうふうな問題があるんではないかな。だから私は、そういう意味では小選挙区制をどう入れるということは、ある意味では二十一世紀の日本のウイークポイント、その部分を精神的なあるいは意識の部分からかなり変えていく、全会一致主義からの離陸というようなものができるようになるんではないかなと勝手に思っているんですけれども、総理はこの点はどうでございましょうか。
  49. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 大変興味ある御指摘だと思います。簗瀬さんは弁護士でもいらっしゃいますから、殊に今のようなお考えをごくごく自然になされるんだと思いますが、日本の社会における意思決定の方法というのは、これについてはいろいろな議論がございますし、いわばしゃんしゃんになるために透明性を欠くというようなこともありますし、人の前で反対をするということは何となく相手に対して好意を抱いていないと、仲が悪いんだというようなふうにすぐとられてしまうというような風土もございます。いろいろございますから、それ自身には私はメリットがないわけではないとは思いますけれども、おっしゃいますように、中選挙区というのは多分そういうことをかなり許容する社会である。これもこうだけれども、まあこれもこうだから、この辺でバランスとっておくかというような。それが小選挙区ということになりますと、これは白か黒になりますから、そういう意味で、小選挙区になりますと、日本の社会におけるこれはやはり一つの革命なんでございましょうね、一つの変化、少なくとも、何といいますか、新しい出来事だと、それは確かにそうなるだろうと思いますですね。
  50. 簗瀬進

    簗瀬委員 そこで、だれのための政治改革かということをいつも我々は念頭に置いていかなければならないと思います。政治家の御都合主義で制度をいじられるのだったら、国民はたまったものではありません。でありますから、まさにそういう観点で、まず制度論ありきではなくて、制度が根づくべき社会がどうあるのかという分析から入っていかなければならないのではないかなと。  そういうことを考えてみますと、やはり政権交代がないというところで、まあボウフラがわいてくる。でありますが、やはり政権交代ができるようなそういう状況をつくらなければならないし、国民としては、どこの党に政権を担当してもらうのかという、政権が選択できるようなそういうシステムでなければならない。まさにその点では私は小選挙区制が一番ベターであると思います。  しかし、一方、日本というこの社会は、二大政党制が生まれてきたような、そういう国に見られるような本質的な裂け目というようなものを持っている国なんだろうか。これは政治学ではクリビッジ、溝というような言葉を使うんですけれども、深いクリビッジが日本にあるのかということを考えてみると、宗教、例えば神棚があり、仏壇があるというこの日本状況であります。あるいは階級といっても、大変中産階級が多くて、非常にそういう意味では平等な社会であります。言葉もメンタリティーも同じであります。基本的には同質的な社会。これを無理やり二つに切るということもやはりちょっと問題があるかなと。  むしろこれから考えられるのは、社会の表面に分かれてくるこの新しい溝、これをどういうふうに吸収をし得るシステムなのかということを我々は考えなければならない。例えば、外国人労働者問題についてもしかりであります。あるいは過疎・過密の問題でもしかり、環境と開発の問題でもしかり。そういう意味でのいろんな溝が入ってまいります。高齢化の問題であってもそうであります。そのような溝をいかに吸収し得るのかというと、やはり多様なものを入れていくという比例の部分も日本社会の中では許容した方がいいのではないかなと。しかし、それが主になっては私はだめだと思います。  そこでまたもとに戻るんですけれども、やはり政権交代ができなければだめなんです。そして、政権交代ができ得る制度は何かといえば、この前のあのフランスの選挙を考えていただきたい。あれはRPRを中心とするあの昔の野党が圧倒的にがらっと政権を奪取できるということ、まさにそこに小選挙区の特徴がドラマチックにあらわれた。でありますから、よくよく考えてみると、この日本社会にふさわしいそういうシステムとしては、やはり小選挙区の部分、しかし、それに比例をちょっとプラスしていく。ちょっとかどうかはこれから話し合いでやることにいたしまして、そういうふうなことで、この辺を許容したらどうなのかなという考え方もあるわけでありますけれども、総理はその辺、どうでありましょうか。
  51. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 初めの方のお話からそういうところへ行くとは思わないで伺っておりましたけれども、先ほどおっしゃいまして、私御遠慮していたんですけれども、つまり、アメリカはよく、今度は逆に、訴訟の社会だと申しますね。日本では訴訟にならないものが訴訟の社会になる。そういうことをさっきちょっと申し上げたら失礼かなと思って黙っておったんですけれども。  今のことは、結局、私はどうも思い切りをつけなければならぬのじゃないかなと。つまり、何となくお互いの心情の中に、個人は簗瀬と書いてもこっち側は違う党を書く、そういう、それが何となくこうバランスとしていいんじゃないかというような気持ちがございますですね。そこのところはやはり思い切らないと選挙の制度としてはいかぬのじゃないかなと、私はそういう感じを持っています。
  52. 簗瀬進

    簗瀬委員 とにかく、今国会で成案を得なければなりません。政治が結論を出せなくなってから、特に政治改革について結論を出せなくなってから幾久しい年月がたっております。どうかそういう意味で、自民党総裁としてのお立場もお持ちでありますから、もう全力を挙げての御決断、そして御努力をいただきたいなと思います。  そこで、これからはちょっと委員会の審議の仕方についての話なんですけれども、私は二つの提案をさせていただきたいと思っております。  これは他の先輩議員、例えば野田議員からのお話の中でも出ておりましたが、ドイツにおきまして選挙委員会というようなものがかつて開催をされました。そのときの議論の仕方が大変参考になるのではないか。私は、ドイツの制度がいいからというふうに言ってドイツを出しているんではないんです。そこは誤解しないようにしていただきたいのですけれども、審議の仕方がいいというふうに言っているわけでありますからね。この選挙委員会ではどんなふうなことをやったかといいますと、CDU・CSUから四人、それからSPDから四人、そしてFDP、それからKPDから一人という、十人の委員をつくりまして、もうどん詰まりの議論をしたわけであります。その議論の仕方で特徴的なのは、まず全会一致でワイマール共和国の言うならばナチスを生んだような選挙制度は否定しましょう、全会一致でそれを否定しました。それを第一番目でやった。それから第二番目に、第二帝政の小選挙区二回投票制、これは言うならばプロイセンの制度であります。小選挙区二回制であります。これを全会一致で否定をした。そういう形で退路をきっちりと切った上で、もう後戻りできないようにして、そしてもう絶対結論を出すんだ、結論が出るまでは飲ませ食わせしないぞぐらいのそういうふうな決断でやったわけであります。そしてその結果、いろんなことで最終的には併用制ということになったわけでありますけれども、それはドイツのいろんな国情があるから、一概に持ってくるわけにはいきません。  ただ、私が言いたいのは、先ほど言ったように、全会一致、全会一致という形で退路を一つ一つ切っていく、そういう形で積み上げていくという議論をしなければ、結局またもとに戻ってしまう。そして、もとに戻ってしまうことによって、これは総理自身がおっしゃったように、もう与党も野党もなく、泥舟でざあっと沈めばいいんだ、そういう話になってしまいます。それは絶対避けるべきだ。だから、そういう意味で退路を遮断をする。その退路遮断式の議論をしてほしいというのが一点。  それからもう一つ、これは私が勝手に、自分で五原則というふうに言っているんでありますけれども、その五原則に従って一つの結論を出したらどうだ。  その五原則は何かといいますと、先ほどの議論の中でもありましたように、やはり政権交代の軸になれるような政党が必要だ、だから小選挙区のモメントは入れるべきだ、第一原則。しかし、いろんなひび割れが入ってくる。これを吸収できるようなやはり比例の部分も入れましょう、これが第二原則。それから第三番目は、やはり民主主義基本は投票価値の平等であります。でありますから、投票価値の平等を入れましょう、これが第三原則であります。そして、その上で、やはりこれは最終的には議員立法ということで、国会の皆さんが一致して成案を得なければならないということを考えてみれば、基本的には現有議席、それを極端にぶらすような、そういうシミュレーションが可能な制度は避けましょう。でありますから、それを現有議席均衡の法則というふうに勝手につけさせていただきました。これを第四番目といたしまして、第五番目は、やはりこれは有権者のためのものであります。わけのわからないような制度であってはだめであります。説明をするのが難しいような制度もなかなかこれは定着をいたしません。そういう意味では簡明性といいますか明晰性ということで、わかりやすい、それが五番目の原則として来るんではないかな。  この五つの原則をきっちりと把握した上で、もうここで結論を得ていただくための最大限の努力をしていただきたいということでの考えを持っているわけでありますが、この提案について、それぞれ、自民党それから社公の提案者の側の御見解を聞きまして、私の発言を終わりにさせていただきたいと思います。
  53. 石井一

    石井(一)議員 本委員会におきます議論は、今簗瀬議員がおっしゃいましたように、共通の部分が次々に出ておることは御認識をしていただいておるところではなかろうかと思います、中選挙区に対します認識、また一括処理に対する方向、またこの国会で処理しなければいけない問題等々。  ただ、率直に申しまして、大変大きな変革でございますから、それぞれ党内の事情を持っております。また、それを無視して、総裁といえども、また我々提出者といえども、それを決定する権限は与えられておりません。党内は党内のそれだけの歴史と伝統があり、その中のコンセンサスの中に与党、野党が形成されておるわけでございますが、しかし、今仰せられましたような決意で臨むべき重大事件である、そういう認識で今後も取り組んでいきたいと思っております。
  54. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 簗瀬議員のドイツにおきます憲法制定会議及びその選挙委員会等につきましては、大変勉強していらっしゃることにつきまして感銘深く聞いておったわけでございますけれども、最初の、退路を遮断をしてやるべきである、過日、野田委員の方からもお話がございましたけれども、お互いに今立っているところはいかに重大なところに来ているかということ、そしてお互い法案を出しているということで、本当に最終的には一種の党首会談なりなんなりで、今、簗瀬委員御指摘があったようなやり方も含めて、最後まで結論を得なきゃいかぬと私も思っております。  それから五原則の問題、小選挙区のモメントを入れることと、比例的な要素を入れること、投票価値の平等、それから現有議席を原則的に均衡の法則、それから有権者にわかりやすい、これはまことに当を得た私も五原則だと思っております。
  55. 田邉國男

    田邉委員長 答弁は簡潔にお願いします。
  56. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 これらを頭に入れながら、私たちはドイツを参考にしながら、あわせまして日本型の小選挙区併用型比例代表制を国民の皆さん方に提示をしている。簗瀬委員の御意見に私は極めて一致をするところが大であるということでございます。
  57. 田邉國男

    田邉委員長 簡潔に、もう時間が過ぎておりますので。
  58. 簗瀬進

    簗瀬委員 はい、簡潔にやります。  昨年八月に、私ども自民党若手議員はカンボジアに行ってまいりました。そこで、UNVの中田君と会ったりして話を聞いてまいりました。彼は、国際貢献について日本はいろんな制約を持っている、その部分を自分は担っていくんだというそういうかたい決意で、非常に明るく、さわやかにボランティア活動に邁進しておりました。彼はこの前御承知のように命を落としたわけでありますが、政治家が選挙に落ちたって命が落ちるわけではありません。だから、そういう意味で、我々は中田君のあの霊にも報いるような、本当の意味での党利党略を超えた結論を得るよう心からお願いをいたしまして、私の質問を終わりにいたします。ありがとうございました。
  59. 田邉國男

    田邉委員長 岩屋毅君。
  60. 岩屋毅

    岩屋委員 私は、きょうはせっかく総理がお出ましいただいているわけであります。選挙制度の詳細についてはともかく、私は総理に、この委員会で長らく議論をされてきました議論幾つかのポイントについて、基本的なお考えを伺ってまいりたいというふうに思います。  私は、まず最初に、総理の今の政治状況日本の置かれた状況に対する大局観というものをお伺いしたいと思うんです。私は、今の政治不信は、言ってみれば複合不信ともいうべき状態にあると思うんですね。もちろん国民の皆さんが今一番怒っておられるのは、いわゆる政治家と金の問題、金権スキャンダルの問題であります。これについてはもう多くを申し上げる必要はないと思います。  それ以外に、例えば政策決定過程というのが非常に見えにくい、これは我が党の派閥政治の弊害ということも言えるかもしれない。私は党内では総理のグループに属して御指導もいただいている身でございますからなかなか言いにくい議論ではありますが、しかし、今日まで派閥政治というのは一定の役割を果たしてきたかもしれないけれども、この派閥というものに対しては国民の皆さんが意見を伝えることもできない、選挙で選ぶこともできない、選ばれた国会議員がある意味では勝手につくっている私的な集団であります、私の集団であります。しかし、今日まで残念ながらその私的な集団が日本政治中心にあって権力の主体であった。そこに政策決定過程というものが非常に見えにくくなっているという大きな原因があったと私は思うんです。政策と政治権力とそして政治責任というものの関係一つもクリアでない。そこに私的なものが入ることによってそれが非常にあいまいになってきたということが、私は国民の皆さんの大きな不信を買っている一つの原因だと思っています。  さらに、国対政治、これももちろんすべてを否定するわけにはいかない。交渉事でありますから、裏舞台で汗をかく人も必要であります。しかしながら、最終局面になるといつも密室の中で与野党の最後の政策の詰めがなされる。国民の皆さんにはどういう理由でそういう政策決定になったかということがこれまた判然としない。こういう政策決定過程が不透明であるという、そういう不信というのは私は根強くあると思います。  さらには、冷戦が終わって新しい時代を迎えたんだ、もうたくさんの国民の皆さんがそういう思いでいらっしゃる。けれども、日本政治にはいつまでたっても新たな選択肢が提示されない。  さきに自民党の両院議員総会で総理から演説がございまして、私も粛然たる思いで聞かしていただいたわけでありますが、総理はこの中でこういうことをおっしゃっている。「我が党がこれまで一貫して政権を維持することができたのは、次の二つの理由からだと思います。一つは、我が党が冷戦下においてはっきりと西側陣営に立つことを選択し、国民の希求する自由民主主義と市場経済主義を理念として、その具体化に取り組んできた唯一の政党だったことであります。」二番目は、自民党には人材が豊富で、立派な人がいて頑張ったという話ですから、これはちょっと手前みそになるんでやめますが、続いて、「国民の大多数は、しばしば過ちを犯す我が党の体質に疑念を感じながらも、政権をゆだねることができる政党としては我が党を選ぶ以外にはありませんでした。」総理はこうおっしゃっている。私もそうだったと思うんですよ。  そしてそれは、残念ながら野党の皆さんに私は大きな責任があったと思うんですね。過半数に達するような候補者を社会党さんはついぞお出しにならなかった。社公民で連立政権をつくろうという話はいつも出てくるけれども、基本政策が一致しないからいつまでたってもできない。選挙で共闘は組んでみたけれども、やってみたら社会党だけがひとり勝ちしたんで、ばからしいからやめちまおうということになった。いつまでたっても選択肢が提示されない。でも、冷戦が続いている間は私はそれでもよかったと思うんですね。しかし、冷戦が終わって、もう右だとか左とか言っている時代じゃなくなった。にもかかわらず日本政治がいつまでも古い古い枠組みにしがみついているということに対して、国民の皆さんは大変ないら立ちとそして焦りをお感じになっていると私は思うんです。  そこで私は、戦後政治の立て役者であり、ある意味では生き証人であられる総理に、この日本の戦後政治、五五年体制、自社対決の枠組みが日本政治を今日まで引っ張ってきたこの功罪について、ぜひ総理ならではのお考えをお聞かせいただきたい。そして、この新しい時代日本政治というのは基本的にどういう方向に進んでいくべきなのかということについて、これまた総理ならではの展望をぜひ聞かせていただきたいと思います。
  61. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 五五年体制というものをどう考えているかということでございますけれども、これはまだ歴史になり切ったほど昔のことではありませんし、したがって、そういう意味からもどうも私は今の公の立場で申し上げるのにはばかる点がございますから、一人の同じように政治に携わる者としてという意味でお聞き取りをいただきたいのですが、それにしても実は判断をするのに時間が十分たってないという感じがいたします。まあ五五年というときは、我が国独立いたしまして、いわばひとり立ちの政治をしなければならないというそのころのことでございます。したがって、保守党側には、長いこと占領にございました、その占領下に起こりましたいろいろなことのいわば整理をするという段階であったように思われます。人的にも、いわゆる追放でしばらく政治から遠ざかっておられたような、しかし力のある人々、追放によって初めて政治に出てきた、しかしそのときまでにかなりのもう力を蓄えた人々、そういう人的なあやもございますけれども、いろんな問題の中で、一つはやはり憲法の問題であったのだと私は思っております。  つまり、憲法というものが制定されたいきさつがああいういきさつでございますから、これはもう一遍考え直すべきだというそういう思想と、それから、いや、そういう新しい憲法のもとに新しい日本は健全に育ちつつあるのであるから、後ろを振り返る必要はないという基本的な考え方と、これは軍備すべきかどうかということも一つの中の問題でございますけれども、それに限りません、いろんな問題がございました。そういう問題を含みながら、ともかくも日本独立をするのであるから、したのであるから、内輪争いはやめて一つになろうではないかというのが保守党側に起こったことと思います。  そういう思想のしかし流れと申しますかは、それからもう四十年近くたちますが、今日でも自由民主党の中にやはりそういう二つの考え方がないわけではありません。世の中がずっと変わってまいりましたので、そんなに激しく対立するということはございませんが、思想の流れとしてはやはり全くないとは言えない。それが保守党の側の問題だったと思います。  で、何というんでございましょうか、社会党、民社党、そういう方のことはこれは大変申しにくいので、先ほど申しましたように一人の政治家の思いとしてお聞きいただきたいんですけれども、やはりまだまだマルクス・レーニズムというものの力といいますか、それに対する信頼あるいは信仰というものほかなり強く革新側に残りまして、そのことは実は今日はもう大変に薄くなってはおります。が、しかし、まだ全くなくなっているとは申せない部分もございます。部分もございます。  それで、それが五五年体制だったと私は思うわけでございますが、その後の経緯で見ますと、まあ日本経済的にずっと繁栄をいたしてまいりましたし、世界全体も、まあ米ソの対立と言われながら核戦争に陥ることもなく、比較的この世界経済の繁栄というものが続いてまいりましたものですから、その五五年体制の中ではどうやら保守党側が続いて政治を担ってきたという、こういうことだったと思います。  今日的な意義でございますけれども、やはり冷戦というものが終わりました。事実上、マルクス・レーニズムというものあるいはその担い手であったソ連邦というものは存在を失ったわけでございます。そこで、この委員会でしばしば御議論になっております政権の交代というものがかなり現実的な意味合いを私は持ってきたのではないか。それは、お互いに相手に政権を渡すということは、自分たちの主張が他の主張にかわるわけでございますから、その間に絶対に相入れないものがあるということでございますと、なかなか政権交代、よしきたというわけにはまいらないわけですけれども、こういう新しい時代になってまいりますと、しょせん考え方のニュアンスの問題であるとかあるいは濃淡であるとかいうことまでまいりましたら、それはやっぱり政権の交代ということが比較的現実の問題として考えられる、そういう変化が今生まれてきつつあるのではないか。  まことに未熟なことを申し上げましたけれども、そんなふうに思います。
  62. 岩屋毅

    岩屋委員 総理のおっしゃるとおり、その五五年体制というのは、私は、ある意味では自民党の護憲派と野党が一緒になって憲法を守り、自民党の改憲派と護憲派が一緒になって安保を守ってきた、ともに相補完しながら戦後の日本をつくってきた、こういう役割を果たしてきたと思うのですね。しかし、もう既にその時代的役割をお互いに果たし終えつつあるんだという認識がなければ、この制度改革の議論にも私は入っていけないと思うので、まず冒頭にそのことをお伺いをしたわけであります。  それから、時間がありませんので急ぎますが、この委員会議論の中で常に議論されてきたポイントとして、民意とは一体何かというのがあると思うのですね。さらに、その民意の反映と集約というのをどう考えるかという問題があると思うのです。しかし、私は、この民意とは何かということをよくよくお互い議論を煮詰めませんと、やっぱり議論が拡散をしていってしまうというふうに思います。  よく野党の方からは、民意を鏡のように映し出す制度がベストなんだというお話がございます。しかし、衆議院選挙は言うまでもなく政権を選んでいただく選挙内閣総理大臣を選ぶ選挙でございますから、その衆議院選挙で問われるべき民意とは何かということになりますと、私はおのずから意味は限定されてくると思うのですね。示された政権構想に対する支持、不支持という意思をもってその国民の皆さんの民意、こうみなさなくてはその議論が成り立っていかないというふうに思うのですね。それぞれのテーマについて個々の国民の皆さんの意見を最大限に反映する制度がいいんだということになりますと、これはレファレンダムですね。国民投票をやるのが一番いい、世論調査によって政治をするのが一番いいという話に最終的には行き着いていってしまう。しかし、私は、世論調査では政治はできぬし、またするべきでもないというふうに思っているのです。  我々は、ここで、政党の役割とは一体何か、あるいはその代議制、代表制の役割、我々議員の役割は一体何か、さらには選挙区というのは何ゆえに設けられているかということをやっぱり考えなくちゃいかぬと思うのですね。これ、三つの装置、今申し上げた代議制と政党と選挙区というのはそれぞれ相助け合ってどういう機能を果たしているかといいますと、これはやっぱり民意を、ばらばらな民意を集約をしていくという機能を果たしていると思うのですね。政党は政策を提起する、争点を提起する。そして我々は、おこがましい言い方ですが、プロフェッションとして、専門家として民意の集約という機能を果たす。さらに、選挙区がなぜあるかということを私はやっぱり考えたいと思うのです。つまり、一定のまとまりのある有権者の皆さんの意思が那辺にありやということを、そのまとまりの中で判断をして結論を出していただくために私は選挙区というものがあるというふうに考えなくてはいけないと思うのですね。  ですから、よく野党の皆さんが、今の中選挙区のもとで、自民党は得票率が過半数を割っているのに議席がそれを超しているから不当だということをおっしゃいますけれども、私はそれこそ不当な議論だと思うのですね。つまり、このルールの中で、国会議員の数、選ばれた我々の数が集約された民意を代表している、代弁をしているわけでございますから、国民の皆さん方が過半数以上の議席を常に自民党に与えてきたというのがおかしいという議論は私は不当だと思うのですね。  私は、その民意という問題、その反映と集約という問題を一体どう考えていくのかというのが、その制度の骨格というのを定めていくということになっていくのだろうと思います。それで、野党の皆さん方ももちろん全国単位の完全比例代表なんかじゃいかぬ、小選挙区も入れましょう、あるいは比例も全国単位ではなくてブロック別にしましょうというのは、そこに選挙区を置く、まとまった単位の有権者の皆さんの判断をいただくということに意義を置いていらっしゃるから私はそういう制度になされたのだと思うわけでございますけれども、その民意とは一体何か、そしてその反映と集約というのをどう考えるべきか、まあ漠とした質問でございますけれども、総理のお考えを伺いたいと思います。
  63. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私にはますます難しいお尋ねですけれども、例えば岩屋議員、岩屋毅は別府市において仮に、四〇%と仮にいたします、四〇%の得票しか得ておられないかもしれない。しかし、そうではあっても、別府市民全体をやはり代表される議員だ、そういうふうに考えて、お互い議員というものは行動すべきものだと私自身は承知をいたしております。  それは、先ほど死に票という言葉がちょっとあったのを伺っておりましたのですが、およそ議会政治というものは、少数党と多数党がございます。その討論の結果一つの結論が出る。しかし、その結論というものは、多数党が自分ひとりで出した結論ではないので、多数党と少数党とのその討議の結果として一つの結論が出てきたというふうに考えなければ、議会政治における多数党と少数党というものの存在意味は定義ができませんので、私はそういうふうに考えるべきものではないかと思いますけれども、これも素人で申しわけありません。
  64. 岩屋毅

    岩屋委員 次に進みたいと思うんですが、もう一つ、民意とは何かという問題と一緒にこの委員会での議論の柱になっているのが、果たして将来の政界の姿として二大政党的なものをイメージするのかあるいは多党制というものをイメージするのか、言いかえますと、単独政権なのか連立政権なのかという大きなテーマがあるというふうに私は思うんです。  で、民意という言葉もかなり安易に使われておりますけれども、民意の多様化という言葉も私はかなり安易に使われているような気がするんですね。人の物の考え方が画一的ではなくなると、いろいろな考え方が出てくると個性的になるということをニーズが多様化するというふうに使っているわけですけれども、じゃ一体、民意が多様化していくから政党の数もそれに合わせてふえていかなければ、多党制にならなければ国民の皆さんの声を吸収することができないのかということになりますと、私はそれはちょっと違うんじゃないかなというふうに思うんですね。  例えば、今の中選挙区の中でも、もちろんそれぞれに熱心な支持者、支援者がついているわけですけれども、有権者の皆さんが、自民党、社会党、公明党、民社党、共産党、あるいは社民連、日本新党というものの政策を見比べて物事を判断しているかというと、決してそうではない。今これだけの数の政党があるというのは、もちろんレーゾンデートルが違う、物の考え方が違うということが出発点だったと思いますが、実は三人区、四人区、五人区という中選挙区の定数が今の政党の数を規定をしてきている。  ですから、自分がどういう団体に属しているかという属性をもってして政党が分化している。分化しているから違うことを言い分けて差別化を図らざるを得ない、こういうことになっているという側面も私はかなりあると思うんです。だから、選挙区の定数というのは自動的にやはり政党の数を規定してくる、あるいは我が党でいいますと派閥の数を規定してくる。三人区、四人区、五人区ですから、自民党の派閥は五つなんですね。それ以上にはなり得ないんですね、今ちょっと変わった現象が起こってきておりますけれども。  ですから私は、将来どういう政界像というのを描くかということをお互いに、これは出口論ですからなかなか議論しにくいのですが、イメージを共通のものを持っておかないと、この議論は集約されていかないというふうに思うわけでございます。  政界再編ということが盛んに言われますが、これも、じゃ、どういったものが軸になるのかといいますと、例えば、憲法に対するスタンスもそうでしょう、あるいは国際貢献をどこまでやるのかやらないのか、環境か開発か、消費者か生産者か、いろいろな物差しが考えられますが、当然これはオール・オア・ナッシングではないので、どっちにウエートをかけるかという問題でありますし、その組み合わせなんですね。  そうすると、その組み合わせをまとまった政策体系として提示できる政党は、当然私は数は限定されてくるべきだと思うんですよ。選挙のときにわかりやすくて選びやすいという単位にまとまっていく必要がどうしたってあると思うんですね。そういう意味では(私は、二大政党、完全二大政党というふうに申し上げるつもりはありませんが、二つの少なくとも基軸政党があるという政界像をイメージして、そこに結びついていく制度改革を我々はやらなくてはいかぬというふうに思うわけでございますけれども、こういう問題についての総理のお考えを伺いたいと思います。
  65. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 我が国のように、生活水準がかなり高くなりましたし、教育水準も高い社会では、価値観がどうしても多様になると思います。価値観が多様になるということは私は極めて好ましいことだと、国が一つ価値観しか持ってないというようなことは、我が国もかつてそういう時代がございましたけれども、決して自慢できることでない。価値観が多様になるということはいいことだと思いますが、それはつまりベクトルでいいますと、七色なら七色になってしまう。で、その中から何かの決断をしようということは大変に難しいことになります。  で、一番簡単化して、小選挙区とこう言ってしまっていいかどうかわかりません。これは白黒という社会になりますから、ここでは結論を出すことは比較的やさしい。ですが、その片一方の議論を使えば、この七色という広いベクトルは白黒という形に極端に単純化されてしまう。それはよくないではないかという御議論になるわけですから、結局、政治なり政治決定の安定性というものを大事に考えるか、いや、ほとんど場合によっては結論らしい結論は出ないけれども、とにかくたゆたっていると、漂っていると、そういうことでいいと考えるか、あるいはその中間があるのかという、そういう選択の問題ではないかというふうに思います。
  66. 岩屋毅

    岩屋委員 実は私は民間政治臨調の方から出された連用制について総理の御見解を伺いたいと思っておったんですが、先ほど鳩山議員とのやりとりの中で御答弁を伺っておりますので、多分その域を出ることはないでしょうから、これは省略いたしますが、ただ、私はやっぱり今度の国会で結論を出さないというわけにはいかないと思うんですね。それぞれ今理想の案をお互いに出し合っているわけでございますけれども、これは平行線でいけば、決裂してまたできない。あれだけの議論をして、また国会は何もやらなかったかという結論にならざるを得ない。それは何としても避けなくてはならない。  そして、お互いの案の長所を取り出して融合するというのは、これはやっぱり知恵を絞れば必ずできると思いますし、今度出されてきたあの連用案というのは、もう専門家ばっかりですからあれですけれども、海部内閣のときの並立制と野党の皆さんの案の中間のような案でございまして、私はお互いに妥協点をこれから探っていくに極めて有力な案だと思っておりますから、若手議員の会でもきのうから勉強を始めておるところでございますし、ぜひこれは前向きにひとつ検討していただきたいということをお願いだけさせていただきたいというふうに思います。  それから、最後に、今国会において何としてもこれは成立をさせるべきだと、総理の御決意を伺いたいというふうに私は思うんですけれども、総理はやっぱり自民党の両院議員総会のときにこういうこともおっしゃっているのですね。「改革の機がこれほど熟したときはなく、私たちは、今国会の会期中にぜひともこれらの法案の一括成立を図らなければなりません。もし、この機を逃せば、抜本的政治改革の実現は再び遠のき、政治政治家に対する信頼を回復することが困難になることを深く恐れます。その結果が今後の我が国我が国民に及ぼす影響を考えるとき、懐然たる思い」がする、こういうふうに総理はおっしゃっている。  私はこれは総理の偽らざる御心境だと思うんですね。そして、我々との会見の中でも総理おっしゃった。もうこれで何もできないようならお互い泥舟に乗って沈むだけですなというふうに総理はおっしゃったんですね。最後はやっぱり私は自由民主党の総裁でもある総理のリーダーシップというものにかかってくると思うし、国民の皆さんもそのことを本当に注目されていると思います。  さっき簗瀬さんが最後に中田さんのお話をしました。私は、最近これほど国民の皆さんに深い感動を与えた、そして悲しみを与えたということはなかったというふうに思うんですね。で、息子さんも立派だったけれども、僕はお父さん立派だったなと思いましたし、ああいうことがあったにもかかわらず、あの親子の志がいささかも変わることがなかった。  翻って、私は、今政治家にそういう高貴な精神というのは一体あるのか。あの人たちは選挙のときに声をからして、国家国民のために私は命をささげますと言ったのはうそだったのかと、政治家にとって自分の議席を守るということ以上に大事な価値というのは一体ないのかということを、私は国民の皆さんは見詰めておられると思うのです。人間の証明ならず、政治家の証明というのを今度の国会お互いにやらなくてはならぬというふうに思います。改革の犠牲になっても私たちは命を落とすわけじゃない。たかだか選挙に落ちるだけであります。政治生命をなくすだけであります。そのことすらできないような政治に私は国民の信頼は絶対に戻ってこないと思うのです。  総理の御決意を承って、質問を終わりたいと思います。
  67. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 もう中央政界にも戦後にお生まれになった方がたくさんおられるようになりましたけれども、しかし日本が、敗戦をし、ここまで来たのには、もう何百万という我々の先輩がとうとい血を流したわけでございます。それで、戦後、民主主義という道に入って今日まで参りました。結果は決して私は悪くなかったと思いますし、何より大事なことは、国民がこの民主政治というものをやり切るだけの、国民にそれだけの資質があるということが証明されてまいったと思います。  その中でもし民主主義が成功しないというのであれば、それは国民から負託を受けた我々に問題がある。我々がそのとがを受けなければならない。国民にそれだけの資質がある以上、我々は何とかして自分たちを改革して、国民の理想である、しかして国民自身がそれを担うに値する民主主義というものをつくるか、これを続けることができるか、滅ぼすことになるかは我々自身の問題だというふうに考えていまして、ここ数年来のことを思いますと、その時期はもう今しかないという思いがいたします。  泥舟というお話がありまして、泥舟では我々は全部乗り切れませんから、タイタニックとでも申し上げた方がいいかもしれない。そういう思いであります。
  68. 岩屋毅

    岩屋委員 終わります。
  69. 田邉國男

    田邉委員長 阿部未喜男君。
  70. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 総理、御案内のように、きょうは理事会の計らいで、政府に対して質問をし、あるいは意見をお伺いをする時間をつくっていただきましたので、御出席を願いまして、お疲れのところを恐縮ですが、御協力を願いたいと思います。  まず、本題に入ります前に、せっかくの機会ですから、きのうの本会議、そしてきょう、先ほど奥野先生からも、総理がおいでになった日米首脳会談についての御質問がございましたが、もう少しできるならば具体的に国民の前に明らかにしてもらいたい、そういう趣旨で具体的にひとつ質問させてもらいます。  まず第一点は、クリントン大統領は円高を通じての不均衡是正策が極めて有効であると述べた、こう報道されておりますが、これに対して総理はどういうふうにお考えになり、お話しになったのか。  二点目は、十三兆円を超す新総合経済対策についてクリントン大統領は必ずしも高く評価はしなかった、第一歩である、こういうことが報じられておりましたが、この点についての総理とのやりとりといいますか、総理のお考えも含めてお知らせを願いたいと思います。  三点目は、クリントン大統領は分野別市場開放を強く主張されたのに対して、総理はどんなふうにお答えになったのか。分野別です。  それから、その次は米の問題ですけれども、米の問題について、クリントン大統領は、例外を認めればまとまらない、こういう主張をされたのに対して、総理は包括関税化は困難だというふうに主張されたとありますが、この米の貿易自由化については内容をもっと具体的に、かつ総理のこれからの見通しも含めてお知らせを願いたいと思います。  最後に、天皇訪米の招請があったというふうに承っておりますが、どうお答えになり、また総理はこれからどうされようとされておるのか。  以上、日米首脳会談のいきさつについて少しお知らせを願いたいと思います。
  71. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 第一は為替のことでございますが、私とクリントン大統領との話の中で出ましたことは、クリントン大統領が、かねて日米貿易の黒字、赤字の差がなかなか縮まらないという話をされましたときに、私から、一九八七年から九二年の間にアメリカの対日輸出は実に六九%ふえています、なぜこの時期にふえたかということを今から分析しますと云々と言いまして、八五年にプラザ合意がございました、当時二百四十二円だった円が、その年の暮れには二百円になり、翌年の夏には百五十円台になったわけでございますので、これはやはり、これが日本としては非常につらい問題だったけれども、一つの原因であったろうという過去の話を私はいたしたことはございます。しかし、それは済んだ話でございます。別途クリントン大統領は御自分の記者会見の際に円についてのことを多少言われましたけれども、それは非常に明確に何かを言われたということでもなく、アメリカ政府日本の円についてこうありたい、ああありたいということを言われたものとは考えておりません。  それから第二に、過般の総合経済対策のことでございますが、これはドルにいたしますと千百十六億ドル、非常に巨大な金額になります。これは文句なく我が国努力評価しておられた、こう申し上げてよろしいと思います。  それから、分野別の交渉についてでございますけれども、これから日米経済問題を取り扱う上で、クリントン氏としては三つのアプローチを考えたい。その一つは、いわゆるマクロ経済基本的な経済政策の問題、調整の問題。もう一つは、構造に関する問題、それは例えば系列といったような問題とかそういうことでございますけれども。それからもう一つは、お話しの具体的な、仮にセミコンダクターであるとかあるいは自動車の部品であるとか、そういう具体的な品目についての問題。この三つの問題について議論をしたいが、しかし、いずれにしてもどういう仕組みでやるかは、これからお互いに七月まで考えましょうということであったわけでございます。  今阿部委員御指摘の点は、この最後の分野別についてどういう雰囲気であったかということと思います。  それは、一部には確かに、品物についてある時期までに日本における市場のシェアをこのぐらい確保する、そういう目標を合意したいという意見があることは確かですけれども、これは明確に私はそういうことはできない。市場経済でそういうことはやれるはずはないし、政府にそういう力は第一ないわけでございますし、企業としても、何年か先に何を幾ら買いますといいましても、値段もわからない、品質もわからない、納入の時期もわからない、そういうもの何もわからずに、何年までに物を幾つ買いましょうといったような約束は、企業にできるはずはない。できないことはしたがって私はオーケーいたせませんということを申しておりますが、これはいずれにしても三月先にどういう仕組みの中で話をするかということでございます。  それから、米の問題につきましては、私は、いわゆるダンケル・ペーパーについてはアメリカ幾つか修正をしなければならないところがあるわけでございますが、同様に日本もあのような形での関税化というものには問題があると思っているので、これについては日本も修正を主張するつもりである、こういうふうに答えでございます。  最後に、天皇皇后両陛下に御訪米をいただきたいということがございましたので、私から謝意を表しますとともに、この点は帰りまして両陛下に私から言上をいたしますと返事をいたしまして、既に言上をいたしました。  以上でございます。
  72. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 今回の政治改革は、いわゆる金権腐敗の政治を一掃して、清潔な政治国民に信頼される政治を目指して、政治の倫理や政治家のモラルを確立するために、その手段として政党本位、政策中心の制度をつくろう、そういう意図から今各党間の話し合いが進んでおる、そう私は理解をしております。もとより政治改革国会みずからの手によって行われなければならないものだと思っておりますが、三権分立の中で、特に立法府と行政府のかかわりにおきまして、共同して政治改革に取り組まなければならない課題も多いと思うのでございます。  この委員会でも、先ほど来、あるいは総理もそうでしたが、国政選挙、なかんずく衆議院選挙は政権を選ぶ選挙である、そういうふうにおっしゃられたように私は承っておりますが、そうなると、私は疑問に思うのですけれども、政権とは一体何だろうか、政権の定義を総理はどうお考えになっておるのか、まず承っておきたいと思います。
  73. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほどから私深く考えずに申し上げておりましたが、ごく常識的に、国会において首班指名を受け得る、そのような見ないし複合体の存在というふうに考えております。
  74. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そうしますと、三権分立の中では政権というものは主として内閣に属するものである、そういうふうに理解してようございますか。
  75. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 これは法制局長官からお答えをしていただきますが、私が選挙との関連で思っておりましたのは、いわゆる内閣、行政府というふうに、そういう意味で使わせていただいておりました。
  76. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 国会は国権の最高の機関である、これは憲法に明定をされております。国政選挙は、国会国民の代表を送る、代表を選ぶ、それが私は目的ではないかと思うのです。そして、国会は立法府であり、立法が一番大きな任務である。あわせて、今お話しになった内閣総理大臣の指名や、あるいは行政をチェックする、そういう機能を持っておるのが国会だ。そうすると、私は、国政選挙、とりわけ衆議院選挙が直ちに政権を選ぶものであるという理論にはくみしがたいのですが、どうでしょうか。
  77. 大出峻郎

    ○大出政府委員 ただいまお話しの政権という言葉は、いろいろな場面においていろいろな意味合いを持って使われる言葉であろうかと思います。もちろん法的な用語ではないわけであります。  我が国の統治機構といたしましては、先生先ほどおっしゃいましたように、三権分立という形で、立法権あり、行政権あり、そして司法権があるということで、それぞれがそれぞれの立場において我が国の統治的な機能というものを行使しておるわけであります。  国会国会なりに、あるいは法案を審査し、立案をするというだけではなしに、行政府に対していろいろ監督的な作用というものも及ぼす、そうすることによって民主主義国民の意思というものを反映させるという機能を果たしておられる、こういう意味合いでありまして、そういう意味合いでとらえれば、国会はそういう意味合いで重要な国家の機能というものを持っておる、こういうことであろうかと思います。
  78. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私は、国民国会議員を選ぶに当たって、単に内閣総理大臣の指名をすることのみを目的に選んだものか、あるいは行政府をチェックする、そういう機能、あるいは立派な法律をつくって、それを行政府に執行させる、そういうことを期待しながら国民国会議員を選んでおるのではないか。  したがって、もう一遍繰り返しますけれども、国政選挙、なかんずく衆議院選挙が政権を選ぶための選挙であると言い切るのには無理があると思うのですが、どうでしょうか。
  79. 大出峻郎

    ○大出政府委員 先ほど申し上げましたように、我が国は三権分立という体制を憲法上とっておるわけであります。そして、いわゆる行政府内閣というものは、これは憲法全体の姿で見てまいりますというと、いわゆる議院内閣制というようなものを前提といたしておるわけであります。したがいまして、国会、とりわけ衆議院において大きな力を持ったそういう政党というものが行政権を行使するような立場になる。その前提として、いわば衆議院におけるところの内閣総理大臣の指名、こういう仕組みを通じまして、そうして行政府の機能というものがそのもとに行使をされていく、こういう形になるのであろうと思います。
  80. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 今の法制局長官のお話をそのまま承りますと、国会が行政権に介入することになりますが、それでは三権の分立にならないんじゃないですか。そうでしょう。  そこで、私が思うのは、こういう手順だと思うのです。まず、選挙の結果ですよ、選挙の結果、内閣総理大臣を指名をする、その権限はこれは立法府である国会にあることは間違いありません。そして、どの政党が推した人が内閣総理大臣に指名をされるのか、これは政党政治ですから、どの政党が推した方が内閣総理大臣に指名をされるのか、その指名をされた内閣総理大臣が所属をする政党、それが政権与党ということになるのであって、初めから内閣総理大臣をつくるために選挙をしておるというふうに解釈するのは国会議員の任務を極めて狭いものにしてしまうおそれがある、こういうふうに思うのですけれども、今の法制局長官のお話で、国会が行政をコントロールするというのはどうなんですか、それは。
  81. 大出峻郎

    ○大出政府委員 国会が行政権に対して干渉するという観点でのお話がございました。この点に関しましては、こういうことであろうかと思います。  我が国憲法体制というものは、三権分立という仕組みをとっている。しかし、その三権分立というのは、全く相互に、お互いに関連を持ち合うということがない、こういうことではなくて、我が憲法体制のもとにおきましては相互に関連性を持っておるわけであります。ある場合には、国会は、行政府に対して、憲法上認められた権限といたしまして、その行政運営のあり方等についてこれを監督するといいますか、そういう機能というものは憲法上認められておるわけでありまして、三権分立といいましても、相互に全く無関係にそれぞれが権限を行使するということではないわけであります。特に我が国の場合には、行政府国会との関係というのは、議院内閣制という形で、政府はいわば国会の、とりわけ衆議院の信任を前提として成り立つ、こういう仕組みになっておる、こういうことであろうと思います。
  82. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 このことを長く議論する気はありませんが、そういう理論でいきますと、三権の分立の中で、司法についても国会がコントロールできるのか、介入ができるのか。そうなってきますと、明らかにこれはおかしいんです。相互に関連があるのは認めますよ。例えば内閣総理大臣が最高裁の長官を任命する、これは関連がありますよ。しかし、それで決まった後なお介入ができるというならば、司法の独立が保てるだろうか。そういう意味合いからいうならば、コントロールする権限は、これは憲法上定められておりますよ。しかし、行政の執行に当たっては内閣が責任を持つんでしょう。そして、あとは国会に対して責めを負うことになるだけであって、国会が行政を指示するようなことはあり得ぬと僕は思うんです。  しかし、仮におっしゃるように実体論としていろいろあるにしても、原点としてはやはり三権の分立というものは、行政府に、内閣総理大臣を選んで、そこに行政をお任せする、これを僕は政権だというふうに理解をしないと、政権が非常に混同されて、国会議員そのものが政権を選ぶのだというような、しかし国会議員の任務は、申し上げたように、ほかに行政をコントロールするとかいろいろなことがあるわけでしょう。その中の一つ内閣総理大臣を指名をする権限があるんであって、その指名をされた内閣総理大臣が行政を預かる、これを政権という、こういうふうに私は理解をしておるんですが、これはもう総理政治的な見解でしょう。どうでしょうか。
  83. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 有権者が衆議院議員選挙で投票いたしますときに、例えば阿部未喜男議員に対していろいろなことを期待をして、国政の面でもその他の面でもお働きを願いたい、こういう気持ちで投票することは、これは間違いございません。そういう気持ちの中に、もし社会党が多数を占めるならば社会党内閣ができるだろう、自民党であれば自民党ができるだろうということは、これは当然有権者の意識として多くの人にはあるであろうと思われます。それはもうおっしゃるとおりでございます。
  84. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 これだけを議論しておると時間がなくなりますので、残念ですが、いずれまた改めてこの議論はさせてもらいたいと思います。  さてそこで、三権の分立、特に立法府と行政府との関係ですけれども、まず、憲法の第四十一条、これはもう法制局長官を煩わせないように読み上げます。「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」また、憲法六十六条には、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」これは内閣法にも同じ規定があったと私は記憶しておりますけれども、この定めは、国会は立法機関であると同時に内閣の行政全般をチェックするという、言いかえれば内閣国会のコントロールを受けるという解釈は、これは学説でも大体定着しているようですし、先般、予算委員会の分科会で番頭役の官房長官にお伺いしたら、大体そのとおりという見解でございましたが、この点は、総理、間違いありませんか。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  85. 大出峻郎

    ○大出政府委員 ただいま先生がおっしゃられた考え方、そういうことであろうかと思います。
  86. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこで、次に問題になりますのが、衆議院の解散について伺っておきたいんです。  憲法第四十五条には、「衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。」こう定められております。大体、これは法制局長官、新憲法いわゆる日本国憲法の施行以来総選挙は何回あったか、そのうちに任期が満了したのは何度あったのか、解散が何度あったのか、簡単に答えてください。
  87. 大出峻郎

    ○大出政府委員 お答えを申し上げます。  日本国憲法のもとにおいて解散がどれくらいあったか、手元にきちんとした資料を取りそろえてきておりませんけれども、私の記憶で申し上げますというと、日本国憲法が施行されて以降におきましては、まず衆議院議員の総選挙が十六回であったかと思います。そのうち任期満了による選挙というのが一回あったということでありまして、十五回は解散による総選挙ということであったというふうに記憶をしております。
  88. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこで、解散権の行使は、これはもう総理御案内のとおり、有名な憲法六十九条の、いわゆる「内閣は、衆議院不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。」これは余りにも有名な規定でございますから。  さて、もう一つ憲法の第七条の三号に、天皇の国事行為として「衆議院を解散すること。」という条文があります。しかし、これはあくまでも天皇の国事行為を列挙したものであって、あくまでも内閣の助言と承認がなければこれはやれない。したがって、天皇に解散権があるなどという説はどこにもありません。  そのことはまた同じように、憲法の三条に、「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」というふうに定めておりますから、天皇に解散権があるなどというばかなことを言う者はこの世界に合いないと思うんです。  そこで問題になりますのは、それでは内閣に解散権があるのか、これが問題になってきます。ここは法制局長官でしょう。内閣に解散権ありとするならば、第何条に定められておるか。
  89. 大出峻郎

    ○大出政府委員 結論的に申し上げますというと、憲法第七条三号でございますが、「衆議院を解散すること。」という規定を通しまして、そこに根拠があるということであります。  憲法の第七条でございますが、「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」というふうに規定をいたしておりまして、その第三号におきまして「衆議院を解散すること。」という規定を設けておるわけであります。ここに言いますところの「内閣の助言と承認」というのは、これは天皇が行われる国事行為、国事行為としての衆議院の解散につきまして内閣が実質的にこれを決定をする、「助言と承認」というのは内閣が実質的にこれを決定するというふうな意味のものとして理解をされるわけであります。憲法七条が内閣による衆議院の解散権の法的根拠であるというのはそういう意味合いのものであります。
  90. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 今憲法七条をわざわざ出した。だから私はあらかじめ申し上げたんですけれども、これは天皇の国事行為を列挙したものであると解するのが正しい。  しかし、私もいろいろなことを考え合わせてみて、六十九条限定説はちょっと無理があると思っておるんですよ。しかし、同時に、いつでも内閣は解散できるという解釈も問題がある。したがって、これは最高裁の方でも、いわゆる統治行為に属するものだとして判断を示してないんですよ、最高裁が。だから、争いが残っておるというのが事実であり、実績ができてきたというのも事実だと、そう僕は思うのですが、これは総理、そう思いませんか。
  91. 大出峻郎

    ○大出政府委員 日本国憲法のもとにおけるところの衆議院の解散権、こういうものについては、日本国憲法が制定されましたそのころからいろいろな形での論議があったのは先生御承知のとおりであります。また、最高裁判所にもそういう問題が持ち上げられまして、先ほど統治行為というお話をなさいましたけれども、そういう扱いがなされて、最高裁の判決の中では具体的な結論というものは出されていないというのは御指摘のとおりだろうと思います。  しかし、その後におきまして、日本国憲法全体の規定というものをよく分析をいたしまして、現在では、先ほど申し上げました政府の見解であります、憲法七条によって解散をすることができる、こういう考え方というものは定着をしておるというふうに考えております。学説の中には、いろいろな形での学説があるということも承知しておりますが、先ほどのような考え方というものが政府の見解であるということであります。
  92. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 総理、定着ということは、結局、実績をつくった、既成事実をつくり上げてきたということと私は余り変わらないと思うんです。なぜならば、明確な結論は出ていないから。しかし、実績ができてきた、既成事実がある、その上に立って、こういう解釈ですと長官はお答えになっておると思うんですけれども。  そこで、実は実体論として、本院においても今までこの解散権の行使についてはいろいろな議論がありました。その代表的なものは、一つは、昭和四十五年の二月十七日、本会議における水田三喜男先生の代表質問で述べられた意見です。恐らく総理も御記憶があると思うんですが、私も出てきたままで非常に感激をしてその意見を拝聴したことがありますから、参考までにちょっと重要なところだけ読んでおきます。これは、水田先生ですよ。   総理の述べられますように、国会の正常化は、確かに国会みずからの立場において解決さるべき問題であります。国会みずからの手によって、与野党すべての責任においてなさるべきであることは言うまでもありません。   しかしながら、私は、この問題に関する限り、政府の責任もまたきわめて重大であることを指摘せざるを得ないのであります。すなわち、国権の最高機関である国会の解散が政府の恣意によって随時行なわれ得た従来の慣行が、国会の正常化に寄与するものであったとは必ずしも思われないからであります。近代民主主義憲法は、政府の一方的意思による議会の解散を否定するのが通例であります。いやしくも立法府を構成する国会議員の任期が行政府の一方的意思によって左右せらるるがごときは、民主主義憲法の指向するところではないからであります。したがいまして、国会の正常化は決して政府と無関係なものではあり得ません。私は、国会混乱の遠因は、むしろ政府における憲法運用の態度の中に根ざしているものであることを憂えざるを得ないのであります。国会議員の任期が保障されない限り、議員は常に選挙運動に追われて落ちつかず、国会の公正な審議と採決が常に選挙用のゼスチュアによって妨げられる実倍も、決してゆえなしとは思われないのであります。したがいまして、私は、国会運営の正常化は、まずもって、憲法の定むる議員の任期が憲法を運用する政府によって保障されることから出発しなければならないと思うのであります。 以下は略しますけれども、これは水田先生のそのときの質問です。非常に私は感激しながら承った記憶がございます。  その後、実は元衆議院議長の保利茂先生が議長のときにお出しになったいわゆる「解散権について」というのがございますが、これは解散権の乱用を戒めたもので、これも全部読む時間がありませんから少しだけ読ませてもらいます。   それがいわゆる”七条解散”である。ただ世間では、一部少数意見と思われるものの、解散は”六十九条解散”に限定されるべきで、内閣の権限による”七条解散”は認められるべきでないとの説がある。故水里二喜男氏が四十五年二月の代表質問で述べた見解もそれだが、確かに現行憲法下で内閣が勝手に助言と承認をすることによって”七条解散”を行うことには問題がある。それは憲法の精神を歪曲するものだからである。 しかし、こうも述べております。途中飛ばしましたよ。   従って”七条解散”は憲法上容認されるべきであるが、ただその発動は内閣の恣意によるものではなく、あくまで国会が混乱し、国政に重大な支障を与えるような場合に、立法府と行政府関係を正常化するためのものでなければならない。つまり”七条解散”の底には、”六十九条解散”と同様な精神が流れていなければならないのである。”七条解散”の濫用は許され  るべきではない。 これが保利茂先生の、議長のときの、国会の解散についてまとめられた論文みたいなものでございました。これも総理は御記憶があろうかと思いますけれども。  こういうふうに考えていきますと、先ほど法制局長官が述べられた、十六回の選挙のうちに衆議院の任期が全うされたというのはただの一回しかない、あとは全部解散。そのうちで、たしか私の調べたところでは、六十九条解散によるものが三回あったと思います。あとの十二回は全部、例えば、ばかやろうと言って解散してみたり、だまして解散してみたり、そのことがいかに政治に混乱を与え、いわゆる政治改革にも大きな課題として取り組まなければならないかという、私が問題提起しなければならないゆえんであります。  私はもう今度でやめますからどうでも構わないんですけれども、率直に言って、これから私が申し上げるのが本論ですよ。率直に言って、そうでしょう、こんなふうに簡単に政府が恣意的に解散をどんどんやっていったのでは、水田先生がお述べになるように、もう衆議院議員は当選した日から、いつ解散があるかわからない、その解散の準備のために、選挙地盤を培養するために、膨大な政治資金をつぎ込み、しかも金帰火来という言葉に象徴されますように地元に帰って選挙運動をやらなければならないから、国政に専念することができない。  この政府の一方的な恣意による解散というものが、私は、政治改革の大きな課題、大きな柱でなければならない、そう思っておるんですが、総理、どうでしょうか。これは総理が答えてください。
  93. 大出峻郎

    ○大出政府委員 憲法七条に基づくところの衆議院の解散でありますが、どういう場合に解散されるかということに関連をいたしましてのお話であったわけであります。  どういう場合に解散されるかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、衆議院の実質的な解散権というものは、これは憲法内閣に与えられた機能であるということで、法律論といたしましては、その内閣政治的な責任で決すべきものと解されるわけであります。  憲法には六十九条の規定があるわけでありますが、この六十九条は、先生も先ほど触れておられましたように、これが根拠となる規定ということではなくて、六十九条の規定は、衆議院不信任の決議案が可決され、または信任の決議案が否決された場合には、内閣は、衆議院が解散されない限り、一定の期間内に総辞職をしなければならない、こういう、一定の場合には内閣は総辞職をしなければならないという場合についての規定でありまして、これが根拠となるというわけではないということであります。  そこで、いかなる場合に解散されるかということについて、繰り返しますが、六十九条に書かれておりますような、衆議院におきまして不信任の決議案を可決した、例えばそういうような場合に限定されるわけではなく、さらにそれ以外の場合にも民意を問うために必要な場合には解散ができる、憲法は解散ができる場合ということを法的には限定しているわけではない、こういうことであろうかと思います。
  94. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 民意を問うという場合には、それは私は国会みずからの責任の方が大きいと思うんですよ。内閣が民意を問う手段として国会を解散するということは、これまた逆に言えば三権の分立からもおかしくならないのか。だから、民意を問う場合の一つの手段が六十九条による解散、これは国会が民意を問うために内閣不信任するという手段がある。  しかし、どんなに拡大解釈して考えてみても、憲法七条解散は、これはやはり無理があるんです。無理があるけれども、全然これを認めないとなればやはり問題が残るというところを、私はそれは認めるんですよ。全然七条を認めなければ問題があるが、しかし七条の精神は、これは運用上そうなったのであって、憲法上、私はやはり認められないというのが本当だと思います。  しかし、私の議論ではどうしようもないでしょう。解散さるべき状態とは、総理、水田先生やあるいは保利元議長がおっしゃったような事態においてのみ考えらるるのか、いや、これは内閣の権限だから、いわゆる政権のたらい回しあるいは内閣の延命策、そういうもののために利用されていいものかどうか、どうお考えになりますか。
  95. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 いろいろ御説のあるのを承知しておりますけれども、私といたしましては伝統的に内閣がとってまいりました見解に従いたいと思っております。
  96. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 伝統的に内閣がとってきた手法とおっしゃるのは、政権のたらい回しあるいは政権の延今、そういうときに内閣が恣意的に解散をするんだ、そういうことですか。
  97. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 純粋に、解散権の行使につきましてはそういう条件がついておらないというふうに考えております。
  98. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 やはりこれは、どうしても政治改革の一環としてもう少し議論を詰めなければならないと思うんです。  それでは、総理は、水田先生や保利先生、特に保利議長が国権の最高の機関である国会衆議院の議長としてお述べになった説は、当たっていないとおっしゃるんですか。
  99. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 保利議長の御見解あるいは水里二喜男先生が衆議院で述べられた御見解、私両方とも承知いたしておりますけれども、政府としては従来そういう見解をとってまいりませんでした。私も従来の見解に従っていきたいと思っております。
  100. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 重ねて聞きますが、それでは、国会の解散はいわゆる総理の自由な裁量であって、いつでも自由にできるんだ、そういうふうにあなたはお考えになっているんですか。
  101. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 総理大臣に専属する権限と考えております。
  102. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 仮に百歩譲って総理大臣に解散権がありとしても、その解散が行わるる状態というのはどういうときを想定するか、私はこれを聞いているんです。こういう場合には解散やむを得ないんだとお考えになっておるのか、極めてフリーにいつでもおれが思うたままに恣意的に国会は解散できるんだ、そう思っているんですか。
  103. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 どういう状況ということを一々想定することができませんので、それは政治的な判断によると申し上げるべきかと思います。
  104. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 分かるるところは、非常に重大な事態に立ち至ったときに解散権を行使するということと、解散権は総理に与えられた特権であっていつでも自由にやれるんだというお考えと、どちらをおとりになるんですか。
  105. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほどから何度か御議論になっております憲法第七条、「天皇は、内閣の助言と承認により、」云々という、「三 衆議院を解散すること。」これによりまして政治的判断によって衆議院を解散することができる、こう考えております。
  106. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 もう少し具体的に言うならば、いかなる場合に総理は天皇に対して助言と承認をするというお考えですか。それがわからなければ、いつでもおれはできるんだというお考えか、非常に重大な局面においてやるんだというお考えかと、それを聞いているんですよ。
  107. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 憲法上制約を課せられておるとは思いませんので、政治的な判断によって助言と承認を得て、なし得ることと思います。
  108. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私は総理のその見解については理解をすることができません。そうなれば、もう一遍憲法の条文に照らして、最高裁の判断でも仰がなければならない課題だと思うんです。  私が六十九条限定説では困ると言ったのは、実体論として、総理が、異常な事態に立ち至ったときに助言と承認によって天皇に国事行為を行ってもらう、これはやむを得ないという私の理解であって、この憲法の第七条は、内閣総理大臣に自由に国会を解散する権限がある、そう解釈されるならば、これは納得することができません。どうでしょうか。
  109. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 憲法の条章によりますれば、それについての条件は特に付されておらないというふうに承知しております。
  110. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 これは議論を残しておきます。私はこれは、総理のおっしゃった、いつでも自由に恣意的に総理大臣が解散権が行使できるというお話については了解ができません。これは残しておきますから。  さて、次にお伺いいたしますが、石井提案者、お伺いいたします。  先般来の理論の中で、お伺いしたい第一点は、比例代表制は連立政権につながる、こういう認識のようでございました。比例代表制であっても五〇%以上の得票があれば単独で政権を担当することもできると私は思います。したがって、比例代表制が直ちに連立内閣になるんだという認識は少しおかしいんではないでしょうか。
  111. 石井一

    石井(一)議員 阿部先生おっしゃられるように、比例代表制で五〇%を得票率で獲得することもできますし、当然議席で獲得することもできるわけでございます。しかし、ちなみに世界各国で出ております形態といたしましては、比例代表で単独政権になっております国も二つほどございます。それから、二大政党がかなりスムーズに動いておるところもある程度ございます。しかし、おおむね多党化しておるというのが一つ現実の姿ではないか、こう申し上げておるわけでございます。
  112. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 比例代表制が多党化するだろうという議論は、これは必ずしも、初期においてはもちろんのこと、否定しません。多党化するかもわかりません、それはそういう傾向になると思いますけれども。  しかし、選挙の結果として五〇%以上得票する政党がなくて、政権を担当する手段として連立内閣ができたとしても、これは議論にありましたけれども、なぜそれが連立内閣では悪いのか。国民の意思としてそういうふうにそれぞれの政党を、比例代表制の場合ですよ、支持をした、その支持に従って政党が過半数を集めて連立内閣をつくったとして、連立内閣だから悪いという理論はどこにもないんじゃないですか。
  113. 石井一

    石井(一)議員 悪い、いいという問題ではございませんけれども、結局、例えば政局がやや不安定化する、責任の所在が明確でない、そうして第三党、第四党がキャスチングボートを握る等々、多党化におきます一般的な批判と申しますか、これを私は指摘しておったわけでございます。
  114. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 確かにおっしゃるようなことを想定はできないわけではありません、多党化するわけですから。しかし、今日のように国民の意識が多様化して、政策に対するニーズも多様化しておる、そういう中でそれぞれの国民が選ぶ方法は、それぞれの政党に投票してその政党に対する支持が最も端的に表明さるるのはやはり比例制だと私は思うんです。その結果として、国民の多様なニーズあるいは多様な意識を調和を図りながら連立して政権を担当しても、それが悪いということにはならない。悪いということにはならないんですね。どうですか。
  115. 石井一

    石井(一)議員 そこが非常に意見の分かれておるところでございまして、どちらにも言い分があるように私にも思えるのでございますが、例えば阿部先生の方が御主張になっております民意が鏡のように映るという制度になりますと、果たしてそれが本当の意味での民意なのかという問題になってまいりまして、もともと議会に出てまいります代表というものは、ある程度民意を集約して出てこなければ意味がないのではないか。例えば我が国に一億人の人がおられましたら、細かく申しますと、一億人、千差、それぞれ意見が違うわけでございますけれども、民主主義の制度におきましては、代議制ということになりますと、ある程度民意を集約した形の中で出てこなければできません。また、民主主義の原理というのは多数決でございます。そういうふうな中からダイナミックな意思決定をし、責任の所在をきっちりするというふうな場合には、今言いました形におきまして、多党化の現象、比例の現象というものは、民意を反映するといいましてもそこに大きないろいろの欠点が出てきておるということが指摘されておるわけでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  116. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 わかりにくいんですけれども、公明党の渡部提案者に伺いたいんですが、私は渡部提案者の理論が最もわかりいいと思うのです。  いわゆる民意の集約とは何かというならば、四〇%の得票のある政党は四〇%の議席、これが民意の集約ではないでしょうか。三〇%しかとれなかったものは三〇%の議席と、ここでちゃんと私は民意は集約をされておるし、それこそ最も民主的な国民が代表を選ぶ手段だと感激しておるんですけれども、もう一遍そこを説明していただけませんか。
  117. 渡部一郎

    ○渡部(一)議員 委員からお褒めをいただき、恐縮でございます。  私が申し上げましたのは、政権の安定度の前提になる国民政治不信というのを考えてまいりますと、現在のこのごうごうたる政治不信に対しまして、どのような政権をつくったとしても、その政権が基礎となるべき各政党のアンバランス、そして反省の度合いというものが的確にシステムとしてあらわれていなければもう耐えられないのではないかという深い思いがあるわけであります。今までの中選挙区制における四二、三%の得票で五五%、六〇%の議席を占めたという程度の、かなり日本国民としては許容していた制度ですらも、現在の日本国民政治不信にとりましては耐えがたい数値になり始めておる。自民党の方々がこの間から言われておりますような、多くの間違いを自民党はしたけれども国民はそれを許容していただいておる、そしてほかにかわり得るものがないからだと御自分でつけ加えておられるわけでありますが、そういう説明が、とてもじゃないけれどもこの委員会の結論としてはふさわしいものとは考えられない。  それであります以上は、政治改革は原点に立ち戻って、国民の皆様方の希望がそのまま明確にあらわれているという第一前提がなければならない。それは、私どもの提案しておりますこの併用制の中におきまして議席数というものは見事にそのままあらわれてくるわけですから、それを取り入れる。そうしておきまして、その最初の候補者として選択する部分としては、小選挙区というやり方を導入いたしまして、議論国民の前ではっきり議論する。ちょうど店頭に、ショーウインドーに、店に品物が並んでいるように、その二百の議席については論戦を国民の前にしてみせることによりまして、併用制の特色でございますが、この比例制のパーセンテージというものを正確に反映したところにその小選挙区制で当選された方々をまずはめていくというのは、極めてわかりいいものではなかろうか。そういたしますならば、三〇%の得票を得たものは三〇%の議席を得る、四〇%の投票を受けたものは四〇%の議席を得るという形になる。  しかも、その上でどういう形の連立になるかというのは、現在のマスコミが存在し、事前事後の政党の交渉があります以上、それこそあけっ広げに政党間で交渉すればいいことでありまして、これは私はむしろ日本の場合理想的に行われるものだと存じますので、併用制のこの利点につきましては、この間から何回も申し上げたところでございます。  幸いにして、委員会におきまして各党の皆様方からこの議論は大分激しくいたしましたが、だんだん最近は御批判が少なくなってまいりまして、ありがたいと存じておりまして、もう一息だと、総理、お喜びください、もう一息でまとまりそうなところまでこの委員会のメンバーでやってまいったわけでございます。それで、喜んで毎日頑張っているところでございます。委員の御努力も本当に深く感謝いたしているところでございまして、一応御説明をさせていただいたところでございます。  ありがとうございました。
  118. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 最後になりますが、総理にお伺いしたいのですけれども、総理、昨年の五月に、衆議院の定数是正、あれ一昨年ですか、衆議院の定数是正があったときに、総理はこういうことをおっしゃいましたね。九増十減案の方針を示された際に、「これは平成七年の国勢調査の時点でも違憲状況を回避する必要があると考えたものである。」正直に言って、総理、このときあなたのお考えは、平成七年の国勢調査の後までは現行の制度でいきたい、いけると、そういうお考えがあって平成七年の国勢調査にも耐えらるる九増十減をやっておきたい。単に憲法に違反しないというだけならば、四増四減でも間に合ったはずです。それを九増十減を言われたときにあなたがそうおっしゃったというのは、率直に言って次の次だなというお考えがあったのではないか。  しかし、今御案内のように、委員会はもとより国民の中でも、早くつくって早く実施をしなさい、こういう声が強いわけですけれども、もし成案を得るならば次の選挙からこれをやるように行政府としては準備をおやりになるというふうにお考えになっておるかどうか、お伺いしたいと思います。
  119. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 昨年改正をお願いいたしました際に、確かに将来のことの可能性も考えていたしましたのは、このような改正をお願いいたしますときには、当然可能性としては、やはりできるだけ先までをカバーしておくのが本来であろう、そういうことでなければ幸せでございますけれども、いわばそういう用心はしておいた方がいいということを申し上げました。もちろん、この委員会におきまして今回の御提案について御審議が進んでおりますので、これは成立いたしましたらば直ちに、できるだけ早い機会から適用していただくべきものというふうに承知をいたしております。
  120. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 終わります。
  121. 田邉國男

  122. 田並胤明

    ○田並委員 まず第一に、総理に対して、最近起きている一連の不祥事に対する総理としての責任と、さらに現在審議をしております自由民主党案、社公案、それぞれ熱心に今論議をしておるわけでありますが、この政治改革にかける総理の決意についてお聞きをしておきたいと思うのです。  もう御案内のとおり、国民政治不信はその極に達して、今や日本政治はどうにもならぬところに来ているのではないかという、こういう絶望感さえ持っていると思うのですね。ということは、長年続いてきた我が国の議会制民主主義の危機的な状況がある、このように私は思うのです。  なぜ国民政治に対する怒りと不信というのがここまで頂点に達したのか。はっきり申し上げて、さかのぼってみれば、例の田中元総理の犯罪と言われたロッキード事件、さらに大変言いづらいことですが、竹下元総理と当時大蔵大臣であった宮澤総理辞任に追い込まれたリクルート事件、そして阿部元北海道開発庁長官が関係をした共和事件、そして今回の東京佐川急便事件、金丸さんの五億円の不正献金に対しての検察庁の対応、つまりそういうのが後から後から、しかも年を追うごとにその深さと広がりというのが、国民にとっては耐えがたい金権腐敗の土壌というのを目の当たりにして、しかもこれらを解決する手段というのは、真相究明がまず第一ですね、真相解明というのが。その真相解明の上に立って、再発防止をするための法整備が二つ目です。さらにもう一つは、金権腐敗の根を断つということがなければならないと思うのです。しかし、この真相究明が非常に不十分。これはもちろん政府だけの責任じゃないと思います。野党にもその一端の責任はあると思いますが、一番最大の責任というのはやはり政府・与党だと思いますよ、これはどなたが考えてみても。つまり、こういう事件が後から後から出てきている。  例えば証人喚問してみても二時間で、しかも静止画像。幾ら野党が静止画像をやめようじゃないかと、こういう要求をしても自民党がのんでくれない。これは数ですから、残念ながら通らない。国民の皆さんは、まさに金権腐敗の真相解明もろくにできないと。今までの流れを見ると、一生懸命政治改革をやってきたのでしょうけれども、根が断たないのですから、後から後から同じような事件が出るのですから、これは政治改革も一向に進んでいないな、このように国民の皆さんは思っている。しかも、金権腐敗の根元が断ってないものですから、同じようなケースで後から後から金権腐敗のスキャンダルが出てくる。これはもう国民が怒らない方がおかしいと思うのですね。  その上きわめつけで、自民党の前副総裁である金丸さんの巨額不正蓄財と脱税事件。この間の中間報告を見ますと、ワリシンとワリコーだけで三十五億円分押収をしたとなっている。生原元秘書は六億円分のワリシンとワリコーを持っていた。政治献金、いわゆる政治資金報告に言った内容が全然違っているということが明るみに出ると同時に、まさに総理がよく言うように政治は税金だ、国家国民のために一生懸命私はやるのだと言ってきた方が、残念ながらこういう事件を起こす。これでは国民の皆さんが取らない方が不思議であって、しかも今や国民の怒りだけじゃなくて、日本政治に対して外国が信用しなくなる、こういう状況というのがある。大変残念なことだと思うのです。  ぜひ、この国民政治不信に対して、我々野党の方も一端の責任はあると思いますが、総理・総裁としてどのような責任を感じているのか、まずお聞かせ願いたいと思います。
  123. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 午前中に、それにつきましては私の考え方を申し上げました。経緯としては、ただいま委員の言われるような経緯であったと思います。政治の責任を預かる者といたしまして、国民に対して極めて申しわけない事態である、一刻も早く政治改革を完全になし遂げまして、信頼の回復を図りたいというふうに考えております。
  124. 田並胤明

    ○田並委員 そこで総理、最近マスコミ各社の世論調査というのがどんどん出ていますね。私は三月から四月にかけての世論調査の結果をよく見ましたところ、大体共通をしている結果が出ているのですね。先ほど世論調査じゃ政治はできないと言いますが、私はやはり世論を知る上で大変重要な方法ではないか、手段ではないかと思うのです。  そこで申し上げたいのは、最近のマスコミ各社の世論調査というのは、政治に対する不満が約七割前後です、今の政治に対する不満が。さらに金権腐敗の怒りが、これまた大体七割前後です。それで、抜本的な政治改革を望むというのも七割前後です、世論調査は。ついでで申し上げますが、企業献金の禁止も約七割ぐらいです。しかし残念なことに、国民の皆さんは抜本的な政治改革を望むという方が七割もいるのですが、同じ七割の人が今回も政治改革はできないだろうと、こういう見方をしているのです。  何が原因か。今の政治家がこの一連の不祥事を深刻に受けとめていない。それともう一つ大事なことは、これは本当に総理にこういうことを言っては失礼なんですが、総理のリーダーシップが期待できないというのが七割なんです。これは大変なことです。もちろん六割から七割、七割から八割というのがありますが、大体収れんをすると七割近い方が、今言ったように政治改革はとにかくやってもらわなくちゃいけない、しかし、それが期待できないという言い方なんですね。それは今までロッキードから始まってリクルート、共和と続いてきて、徹底的な真相解明ができて再発防止のための法整備が今までされてなかった。にもかかわらず、また新しい東京佐川が出てきた。脱税事件も出てきた。だから恐らく同じようなことをまた政治家はやるのではないか、こういうふうに見られてしまっているのです。これはまさに、私は、だからこそ今政治改革をやり遂げなければ日本の議会制民主主義というのは根底から覆ってしまう、こういうまさに後のないがけっぷちに今政治改革は立たされている、こういう認識を持つのです。  ですから、もうここのところずっと連日のように当委員会で自民党案、社会党並びに公明党案を中心にして制度改正についての論議をしております。私は、社会党、公明党の提案者の皆さん、答弁者の皆さん、いろいろな話を聞いて、もちろん自民党も立派ですが、今まで自民党さんが言っておった、野党に政権担当する力がないんじゃないかなんということは、この幾日かの答弁の内容を聞いていてそんなことは絶対ない、大丈夫だ、こういう自信を恐らく持った、我々も持ったと同時に自民党さんの方もびっくりしているんじゃないかと、こういうふうに思うのですね。  だから私はそういう意味で、この委員会で何としても政治改革をやり遂げなければいけない、それが今国民の期待にこたえることだと、このように思うのです。それはもちろん総理も共通認識に立つだろうと思うのです。したがって、ぜひ自由民主党の総裁でもあり政府の最高責任者である総理大臣としての決意を改めてひとつ、政治改革にかける、ぜひとも実現をする、こういう意気込みを国民の皆さんの前に示していただきたいと思うんです。
  125. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは今朝からしばしば申し上げておりますとおり、このように深い国民不信の現状でございますから、この際抜本的な政治改革をいたさなければ、我々に対する信頼を取り戻すことはもうできないのではないかということを心配しておりまして、当委員会におきまして、速やかにひとつこの抜本改革の御決定をお願いをいたしたいというふうに考えております。
  126. 田並胤明

    ○田並委員 そこで総理総理の決意は朝からずっと聞いているんですけれども、改めて今総理のリーダーシップというのが非常に重要だというように私は思うんです、前にもどなたか言っておりましたけれども。  例えば、これはマスコミの報道でございますが、四月の十八日の日に静岡県の熱海市のホテルで自民党の女性総局の活動者研修会というのがあったんだそうですが、そこで梶山幹事長が講演をされ、その後佐藤総務会長ですか、講演をした。その梶山幹事長の講演の中身が、新聞報道によれば、政治改革で大切なのは世界の動きに敏感に対応できる政治システム、はっきり物が言える政治形態をつくることだけれども、選挙制度を変えるだけで改革ができるものでもない、制度だけ直してうまくいくなら、諸外国で制度を直したところは全部よくなるはずだと。  私も確かに、新しい政治システムをつくるということだけで果たしてどうなるか、選挙制度を変えるだけで果たしてどうなるかということは一理あると思うんですね。ただ、自民党さんが今まで提案理由として説明をし答弁してきた内容というのは、今の中選挙区制度がとにかく同士打ちをし、金がかかり、政策の争いじゃなくてサービス合戦だと。したがって、政権交代可能なシステムをひとつ選挙制度を直すことによってやろうじゃないかと、こういうことで言ってきたんですね。私は、この後、ただ単に今出されている四法案が通っただけで金権腐敗の政治がなくなるとは思っていませんから、そのことについては改めてお聞かせを願いたいんですが、こういう発言を梶山幹事長はされているわけです。  その後佐藤総務会長は、先が不透明なときほど一呼吸置いて全体の青写真を考えるべきだと。いろんな意味があると思うんです、これは。一呼吸置いて、お互いに冷静になって、今度の国会で与野党が話し合いで何とか通そうと、今そんなに急がなくてもいいじゃないかということを言うかもしれませんが、しかし会期は六月の二十日でありますから、時間もないんですね。しかも、この後景気対策もあるんでしょうし、総理としてはいろいろなことを政治日程を考えながらやっていらっしゃる。私どもも、後半国会の大変重要な課題は政治改革である、もちろん景気対策も重要ですが、とにかく国民の期待にこたえて、先ほどの総理の決意のとおりやり遂げなければいけない課題なんです、これは。  ところが、どうもこの自民党の大幹部のお二人がこういう発言をするというのは、何やら消極的にとれる発言というふうに受けとめられちゃうんですね。そうすると、総理の決意と、同じ自由民主党の大幹部のお二人の発言とどういう整合性があるんだろうか、まさに宮澤総理の党内におけるリーダーシップが問われているんではないか、こういう気が私はいたします。その辺、まず総理のお考えをお聞かせを願いたいと思います。
  127. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 せんだっての日曜の発言のことかと思いますが、ちょうど私は外国出張中でございまして、詳しい報告を別に聞いておりませんけれども、そういうことはございません。私以下、党の執行部みんな、この国会において抜本的改正を行いたいという希望でございます。
  128. 田並胤明

    ○田並委員 それは総理がそういうふうに言っても、そういう新聞報道が出るのですから、これはちょっとどういう気持ちでそのように言われたのか、我々一生懸命ここでやっている人間にしますと、大変不可解な感じがしますし、総理の決意とはまた別なところで何か物が動いているのかなと、こういう気がいたします。そういうことは絶対ないというふうに同じ宮澤派の先生が言っていますから、間違いないのでしょうけれども。  まあしかし、これは国民がそういうふうに思ったら、先ほど言ったように、七割の人が抜本的な政治改革を望みながらも、七割の人が今度もできないのじゃないだろうか、こういう御意見に論拠を与えることになると思うのですね。これだけみんな一生懸命やっているのですから、いやしくもそういう総理と違うような、総裁と違うようなお話というのはしてほしくない。  聞くところによると、連用制が発表されたことによって、いろいろな物事を言うなと箝口令がしかれたというお話を聞いていますが、とにかくぜひ改めて総理として、総裁として、政治改革をやり遂げるということで党内のリーダーシップを発揮をしていただきたい。他党のことですから余計なことは言いませんが、ぜひお願いをしたいと思います。  あわせて、非常にこれまた残念なことなんですが、ここのところ、世論調査を見ると総理のリーダーシップを問う声が非常に多い。内閣支持率も残念ながらなかなか上がらない。これは本当にゆゆしきことだと思うのですね、総理・総裁として。私は、なぜ宮澤総理がリーダーシップを問われるのだろうか、これは今までの一連の流れを見て、どうも総理の言動というのが国民の皆さんにははっきり届いていないんじゃないかなという、そういう気がするのですね。  例えば昨年の八月、自民党の金丸前副総裁が副総裁を辞職をしたいというときに、宮澤総理は、これはいろいろな関係があるのでしょうから仕方がないと思いますが、慰留工作をされた。まさかこれだけの大事件になると思われなかったのでそういうことをされたのでしょうけれども、こういう状況。それと逮捕をされたときに、何かこれは新聞報道ですから真偽のほどはわかりませんが、あの方は議員をやめた方なので個人的なことだと、このような見解が述べられたとか、あるいは佐川急便疑惑の真相解明に決して積極的ではないという、こういう姿勢が見られたり、あるいは自治体が、既に全国の四分の三の自治体で、昨年の十二月議会までですが、東京佐川急便事件に端を発して大変な決議をしているわけですね。全国自治体の四分の三、二千二百以上ですよ、決議をされたのは。この中には、やはり金権腐敗の真相解明をしるというのが圧倒的に多い。その次に、竹下元総理の議員辞職を求めるというのもある。とにかく徹底的な金権腐敗のうみを出すべきだという決議。もうとにかく地方自治体の議会に至るまで、国民の皆さん方の意見にしっかりと耳を傾けて、こういう決議をされてくる。まだ全体じゃありませんけれども、全国で四分の三というのは、これはでかい数ですし、私は大変重い数字だと思うのですね。  こういうものがあるにもかかわらず、野党が提出をしている竹下元総理の議員辞職決議案については、これは総理が直接やることじゃないのですが、自民党の総裁として、自由民主党がそれを断っている。これは少し国民の感情を逆なでするものであって、まさに総理・総裁としての決断とリーダーシップが今求められているのではないかと、私はそういうように思うのです。総理が先ほど政治改革実現に対する決意を述べられ、やるぞという気持ちを私も受けとめましたけれども、本当にやる気だったら、今言われたような事柄についてもしっかりと反省をするなり、あるいは気持ちを持ち直して、ぜひひとつ決断を持って、野党がいろいろ言っている要望等についてもそれを実現をするためにひとつ先頭に立っていただきたい、このように思うんです。  これは社公の提案者の方にもぜひひとつお気持ちをお聞かせを願いたいと思うんです。まず、総理の方からお聞かせを願いたいと思います。
  129. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 幾つかのことについてお話がございまして、それにつきましては自分の考えておりますことを国会に対しまして何度かの機会に申し上げてまいりました。いろいろ御注意は謹んで承りましたが、いずれにいたしましても、政治改革につきましてはこの国会においてぜひともひとつ成立をさせていただきたいというふうに考えております。
  130. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 田並委員におかれましては、前の選対委員長、その前は広報局長という国民と接する機会の非常に多い仕事をやってこられたわけでありまして、今お話がございましたように、大変敏感に国民の皆さん方の今の怒り、不信、これを端的に受け取っておられる。それを我々受け取って、そして、もうここまで来た我々の議会制民主主義の危機というものをお互いに、我々は社会党、公明党が提案をした完璧のこの法案を成立させることによって、しかもそれは選挙制度だけではなくて、政治資金の問題あるいは腐敗防止の問題、こういったものとを一体にして初めて、これは日本政治の腐敗一掃ということができる、またやらなければならぬ。  ぜひとも、会期はだんだん迫ってくるわけでございますから、私たちといたしましても、なお一層精力的に審議を進め、国民の皆さん方の、渡部委員ではございませんが、自民党さんもだんだん言うことがなくなってきて、我々の議論の方に分があり、こういう感じがこの中におるとするわけでございますので、より一層国民の御支持をいただいて、ぜひとも私たちとしてはこれは実現をさせていかなければならぬ。今の御質問に改めて決意を表明をさせていただきたいと存じます。
  131. 渡部一郎

    ○渡部(一)議員 お答えいたします。  田並委員が先ほどから非常に丁寧に現在の日本政治に対する不信状況についてお話をされました。特に、その話の出だしが、静止画像の点からお話しいただきまして、私はなるほど、私どもの議論がこうしたところから始めたという、その注目点に私は敬意を表しているわけでございます。  当委員会におきまして、私どもは主張すべき立場では猛烈に主張したわけでございますが、それと同時に、多くの傾聴すべき意見を伺ったこともまた私は事実だと存じます。少なくとも、静止画像を含め、私どもは両方あわせてお互いに反省すべきところが随分あったなという感じを深くいたしているわけでございまして、政治的システムの問題につきましては断固として頑張っておりますけれども、それ以上に多くの聞くべき意見を伺ったということを感謝を持って今回顧をしているわけでございます。  私は、梶山幹事長が政治改革の上では制度を片づけるだけではだめだと言われたのも、今委員が鋭く指摘せられておりますように、確かに注目すべき要点を含んでおると存じます。我々の議論は制度改革の問題に極めて偏った議論が行われておりますが、その運用の問題について、特に政治資金の問題などはそのシステムができているのにそれを全部突き破って大事件に発展したという様相を広く含んでおりますために、今後もこの点はもう少し深く掘り下げていかなければいけないのではなかろうか、こんなことも今お話を伺っていて思ったわけでございます。  そして、委員が今言われた言葉の中から申しますと、国民の七割が結局この委員会政治改革はできないよというふうに見ているという言葉を引用されましたけれども、この議論の中間に当たりまして、私どもは、国民不信というものをもう一回目の前に突きつけた上で議論を進めていくべきだという委員の御意見に対しては、心からの敬意を表するとともに、みずからの立場も反省しつつ議論を進めていきたいと思っているところでございます。  ありがとうございました。
  132. 田並胤明

    ○田並委員 続いて、先ほど来の総理の決意だとか今までの記者会見、あるいは自民党の代議士会ですか、そういうところのあいさつをずっと一連の流れとして聞いていますと、今やらなければ悔いを百年に残す、あるいは不退転の決意でやる、真剣勝負の時期だ、こういうふうに述べられているんですね。私はその決意は大変すばらしいと思いますし、ぜひそのようにあってほしい、最後まで、こういうふうに思うんです。  ところが、もう一方では、確かに今の時期に野党との妥協なんていうのは口にはできないでしょうが、野党と妥協することは敗北主義だ、このようにも新聞報道によると総理が述べられているというんですね、敗北主義だと。これは私は、確かに自由民主党は衆議院では数多いですから、それは採決しようと思えば自民党案通るでしょう。しかし、参議院ではこれはだめになっちゃうんですよ、参議院へ行けば今の小選挙区制だなんていうのは。  そうしますと、不退転の決意でいくけれども、野党と妥協するのは敗北主義だなんていうことになると、これは一歩も進まない話ですね。今国民の皆さんが一番望んでいるというのは、金権腐敗のもとというのは金ですよ、もちろん、金権なんですから。この金について、政治資金規正法をきちっと改正をして、まず企業献金をやめるということ。先ほども申し上げましたように、国民世論は、企業献金は七割近い人がやめるべきだ、こういうふうに言っているんですから、大もとはそこにあるんだというふうに思っているんですね。  決して私は企業の性悪説はとりません、企業の活動が我が国経済社会の発展に大きな貢献をしていることを私たちも認めますから。しかし、残念なことに、ロッキードから始まって、それ以前もそうですが、すべて見返りを期待をしてのわいろ性の強い企業献金がもとになって、こういう事件が後を絶たないわけですよ。これはやはり思い切って総理・総裁としてリーダーシップを発揮をして、私はすぐにでも企業献金をやめるべきだ、このように思うんです。  それと、もう一つは、先ほど来言われておりますように、私どもはやはり議会制民主主義をとり、戦後新しい憲法のもとで、主権在民という崇高な理念を憲法の中に盛り込んだわけです、もちろん平和主義、基本的人権も含めて。あくまでも政治の主人公は国民である。まさに国民の意思が鏡のようにストレートに選挙に反映をされ、それがイコール議席に反映されるという比例代表制を中心とした新しい選挙制度というのが、これはもちろん社会党並びに公明党が提案している内容になるわけでありますが、それをすることが、より今国民政治不信を持っている、怒りを持っている、それを解消する一番大きな道筋ではないか、私はこういうふうに思うんです。  それで、ひとつ企業献金のことでお聞きをしたいと思うんです。  これは、提案者の方にもお伺いをしたいと思いますが、私は、もう本当に反省するんなら企業献金をまず廃止をすることから、禁止をすることから始めるべきだと思うんです。先ほども申し上げましたように、国民政治改革にかける気持ちというのは金権腐敗の一掃にあるわけです。金権腐敗の一掃というのは、日本政治をここまで金権腐敗の体質にした企業献金にあるというふうに思っていると思うんです。  これは、財界からも反省の声が出ているんですね、今。これが実は私は政治改革の原点だと思うんですよ。金権腐敗体質をなくすこと、そのためには、確かに企業の政治献金というのがかなりの悪さをしてきたことは事実です。金丸さんの問題、後ほどまたいろいろと言わせてもらいますけれども、すべて金権腐敗のもとというのは、残念ながら企業献金が要因になっているような気がしてならないのです、私は。  したがって、我が党並びに公明党が共同提出をした政治資金規正法改正案は、企業献金を禁止しています。したがってそれを担保するために新しく公的助成、つまり税金によって政党への交付金を交付しよう、こういう案を提案をしているのは総理も御存じのとおりです。ところが、自民党の案を見ますと、自民党の政治資金規正法の改正案を見ますと、企業献金は五年間かけて、政治家の政治資金調達団体、新しく二つに限定をしたその政治資金調達団体、ここから漸次金額を減らして六年目で、漸次減らして六年目にして年間二十四万円にする、漸減方式ですね。それで、他の企業献金は党に集中するようにする、こうなっております。  しかし、ここで言うところの党というのは、仮に自民党の五百の小選挙区制案が通ったとすると、五百、それぞれ候補者になる人あるいはそれに準ずる人というのは、あるいは現職の人も今まで個人後援会的なもので資金を賄ってきた、それができなくなりますから、二個の調達団体、年間二十四万、それ以外はだめですから、すると、当然そこには党の支部をつくると思うのですね、党支部、今でもあるでしょうけれども。そうすると、今までの個人後援会が党の支部と看板をかえるだけで政党は企業献金を受けていいということなんですから、自民党の案では。しかも、従来の二倍にしているのですね、企業献金の枠を。七百五十万を一千五百万、一億円を二億円と。これでは金による腐敗土壌というのは健全化されるんだろうかどうだろうかという疑問を持ちます、はっきり申し上げて。それどころか、企業献金の枠を二倍にしようというのですから、先ほど言ったように。  ちなみに、九一年度の政治資金収支報告を見ますと、自民党はおおむね三百億円報告していますね。国民政治協会から約百七十五億円、失礼しました、百七十五億は総額なんですが、そのうち自民党に入っているのが百六十七億入っています、国民政治協会から。これが今度は、可能性としては二倍になるのですよ。二倍までもらえるのですよ、自民党の案でいいますと。百六十七億円。  それで、しかも自民党の政党助成法ですか、税金で政党に助成をしようという案を見ると、全体で三百九億円のお金が税金から政党に交付されます。そのうち百五十億程度が自民党さんに入る計算になります。そうしますと、百六十七億足す百五十億、三百十七億、これだけ今度の政治資金法の改正で、可能性として出てくるのですね。これはあくまでも従来の政治団体が集めておった企業献金は除いてあります。これらを入れると、果たして今回の政治資金規正法の改正によって、そうですね、四百億から五百億ぐらい今までよりも余計に入る計算になるんでしょうか。  ですから、こんなことを言うと怒られるかもしれないけれども、要するに、それだけ、じゃ倍にしなければ自民党さんとしてはもたないだけの金が今までもかかっていたのかな、こんな感じがするのですね。確かに金がかかるのはわかります。それは、今度の法律改正の中で、社会党並びに公明党案によりますと、例えば、当該公職の候補者等が専ら政治上の主義または施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会に、実費でも出してはならないんだ、こうなっているのです。ところが、自民党さんの案では「実費の補償としてする場合は、この限りでない。」金を出してもいいと。  ですから、今、加藤先生いらっしゃいませんが、加藤紘一先生が本会議で、五千人集会をやるとこれだけの金がかかるとおっしゃいましたですね。例えば五千人の集会をやって、弁当ぐらいはいいんだと言うから、一人当たり千円かかる、五千人集まれば五百万。五千人集めるためにバス代としてという話がありましたね。百台仮に頼めば十万かかったとしたってそれで一千万。合計一千五百万はぱっと飛んじゃうのですね、五千人集会をやると。これじゃ金がかかりますよ。  ですから、そういう意味で、公職の候補者等の寄附の禁止についてもはっきり私はやめるべきだ、このように思うのです。ぜひひとつ総理のお考えをお聞かせを願いたいと思うのです、政治献金について。
  133. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私の考え方は、基本的には自民党議員提案によります法案の中に盛られているとおりでございます。つまり、繰り返すようでございますが、最高裁判所が八幡製鉄事件で判決をいたしましたように、企業が社会的存在として政治団体の応援をするということは禁ずべき理由はないということでございます。  個人につきまして、ただ、私どもの御提案しておりますのは、そうは申しても、やはり個人との場合には特定の請託等と結びやすいという理由もあるからでございましょう、これは極めて小さくし、漸次減らしていくという考えをとっております。党に対しましては、これはやはり体制の問題であるとか政策の問題であるとか、具体的な請託よりはやはり全体の政策のあり方等々についての企業側の希望もございましょうし、また体制についての企業側の考え方もあろうと思いますので、党につきましてはそういうことを考えておりませんけれども、個人につきましては、やはりおのずから節度があるべきものだというふうに思っております。
  134. 田並胤明

    ○田並委員 今の総理の答弁としてはそうせざるを得ないのでしょうけれども、だから私は、この冒頭、ロッキード事件、リクルート事件、共和事件、もちろんその間にダグラス・グラマン事件なんかもありましたけれども、それと今度の東京佐川急便事件、みんなやはり企業からのやみ献金であるとかそういうものに象徴されているいわゆる企業からの金ですよね。私は、企業だって大変な迷惑だと思いますよ、そういうものをしなくちゃならない今の政治土壌というのは。  ですから、後ほど申し上げます政官業といいましょうか政官財の癒着構造というものをしっかり断ち切らなければ、これは絶対なくならないし、政官財の癒着構造を断ち切れば、今度金が入ってこないですよ、見返りを求めなくても済むのならば。それだけのことを言うと怒られるかもしれませんが、私はやはり企業の政治献金というのは決して日本政治の現在の腐敗の土壌というのを解消しない、それがある限りは残念ながら、という気がいたします。  したがって、総理の答弁は答弁として、ひとつ提案者の方から御意見がありましたならば、ぜひお聞かせを願いたいと思います。
  135. 松原脩雄

    ○松原議員 お答えいたします。  田並委員御指摘のとおり、日本政治の腐敗現象の原因を手繰ってみますと、収賄的なお金の出し方にしても、あるいは今回問題になっておりますやみ献金にしましても、すべてこれは企業が深く関与をしておった、こういうことであります。  実際、政治資金規正法がありまして、企業に対する一定の制約を課するような、罰則つきで課するような法整備もありましたが、すべてそれを踏みにじった形で続々とそういう事件が発生しておるということの反省を踏まえますと、この機会に企業及び団体献金はこれを一律に禁止をして、政治の根本的浄化を図るべきだ、そういう時期に、水準に達したというふうに私どもは考えました。したがって、企業・団体献金は、この際一切禁止をする、そういう政策判断をすべき段階に入った、こういうことで今回の法案の提案をした次第でございます。
  136. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 総理は、八幡製鉄判決をもって、あるいは自民党の方は、さらにそれに諸外国においては企業献金を禁止をしていないということをもって企業献金存続を言っていらっしゃるのでありますが、今、田並委員御指摘のように、一体これは本当に政治改革になっているのだろうか。自民党は、金権一掃ということがこの政治改革の根本的なものであり、そのための制度改革だということを言っておるにもかかわりませず、今、田並委員御指摘のように、実は大変な金額が、自民党さんは枠をふやすことによって大変な企業献金が入れるようになるわけです。  総理、よく聞いておいていただきたいのでありますが、今、国民協会から自民党さんの本部に入っているのが百七十五億、うち若干残留がありますから百六十四億になっておりますか、まあ百七十億としておきます。この百七十億が、総理、倍にするというわけですから、百七十億さらに財界から取れるわけですよ。これはみんな地方本部へ行っていますね。  それから、自民党さんの議員が今衆参三百八十人ほどでございますが、落ちていらっしゃる方もいらっしゃる。これはなかなかよくわからないのでありますが、恐らく自民党さんの周辺の政治団体に行っていらっしゃるのが約五百億ぐらいあるのじゃないかと思うのです、総計いたしましてね。これも確かに一つ政治資金団体にもらえるものは小さくはなりますけれども、しかし残りは党へというのでしょう。五百億はさらにまた党に大きく入ってくることになるわけであります。  しかも、我々はこれらの企業・団体献金を禁止をするかわりに公的な助成をしなさいということで政党交付金法という法律を入れたわけでありますが、皆さん方の政党助成法では、三百九億という国民の税金のうち、計算してもらいますと約百五十億が自民党本部に行くことになるわけであります。  これは締めて八百二十五億ですよ、八百二十五億。今、自民党の収支の報告が三百億であります。収支報告書には三百億であります。直ちにこれが皆さん方のところに行くかどうかわかりませんけれども、枠だけはこれだけ広げたことは間違いないのですよ、間違いないのです。  金権を一掃しよう、腐敗を一掃しようというこの政治改革というものが、制度も大事でありますけれども、片方では、皆さん方のは企業献金はこんなに、約八百二十五億もふやせるような格好にしておいて、一体何がこれは政治改革なのか、これで腐敗が一掃できるのか、私はこのことについて、枠がふえることは間違いないじゃないですか。  一体、総理が、八幡製鉄裁判だけをもって、いや、企業献金はいいんですというようなことで、本当に政治改革をやる気があるのか。私は、まさに田並委員御指摘のように大変な問題をこれは含んでおる、このことをぜひ答弁として申し上げさせていただきたいと思います。
  137. 渡部一郎

    ○渡部(一)議員 私は、委員のただいまの御質問の中で、いよいよ最大の課題である政治資金の問題にお触れになりましたので、ちょっとお願いしたいのでございますが、ここには村田自治大臣も佐野選挙部長も来ております。そこで、議論をいたしますときに、政治資金の総量とかその他がいつも不安定な資料で論戦をせざるを得ないものですから、こうして公的な場所で政治資金の総量ですね、各党別の総量、ずっとさかのぼる必要はありませんが、ここ一、二年ぐらいの各党の政治資金の総量並びに企業献金の、企業、団体が一緒になっているのはそれでもやむを得ませんが、企業献金の総量ですね、各党に対する。  それから、いわゆる政治パーティーのデータも全然わかりませんものですから、総額、こうしたものについての資料がございましたら、お述べいただく、提出していただくというふうに質問者からお願いしていただけませんでしょうか。もし、きょうそろわないようだったら、提出していただくようにしていただくとよろしいのじゃないか。  それからもう一つは、主要な各国アメリカとかイギリスとかドイツとかその辺でいいと思いますが、各国政治資金の使い方が日本とは、ひどく金額が少ないみたいなんです、総額にいたしますと。そのデータもなおかつ一緒にお出しいただいた方が今後の議論のためによろしいのではないか、そう思いまして、その辺を委員から聞いていただきますことをお願いしたいと存じます。
  138. 田邉國男

  139. 田並胤明

    ○田並委員 ちょっと待ってください。今の件を、委員長、よろしく取り扱ってください。
  140. 田邉國男

    田邉委員長 武村君にまず答弁させてください。その後で……。
  141. 武村正義

    武村議員 それじゃ、委員長さん御指名でございますから、お答えを申し上げます。  先ほど来社会党の皆さんの御意見を伺っておりますと、まず基本的に重大な誤認があるのじゃないか、論議の基本に間違いがあるのじゃないかと私は思います。  率直に申し上げますが、この企業献金、まず党に対する企業献金で過去問題を起こしたことは一度もありません。問題は政治家と企業の間に流れる献金の問題でありますが、これもいわゆる正規の、企業側から見れば献金枠が寄附された場合、これで問題を起こしたことはまずないのではないか。問題は企業の違法な献金なんですね。これはやみとか墓とかいろいろな表現がございますが、企業の違法な献金を禁止すべきだ、こういう論陣を張られるべきであって、何かこのやみの献金、違法な献金で問題があるから、表のいわばクリーンな、問題のない献金まで十把一からげに全部やり玉に上げてしまおう、これはいかがなものかと言わざるを得ません。  ましてや今回の我が党の案は、総理がおっしゃったように、節度を持ってこれを一層厳しく、しかもガラス張りにしていこう。一つの企業が一つの団体に月二万円、これは個人献金にほぼ近い、会費並み程度の献金なら、たとえ万一相手側の企業が問題を起こしても、いわゆる癒着といいますか深い関係を云々されることは大幅にないだろう、こういう認識があって、今回はごく少額で広く薄く寄附を仰ぐという決断を我が党はしているわけであります。  もう一点は、なぜ企業献金の枠を倍に広げたのか、この点でありますが、五年前の議論でございましたが、我が党は政治改革大綱をまとめました。この大綱にうたっております基本的な考え方でございますが、少なくとも今日までは政治家個々が金にかかわっている、金集めにかかわっている、この状況思い切って変えよう、政党中心に流れを変えて、政治家個々の金のかかわりはうんと大幅に減らしていこう、そのために、約三分の一という数字が大綱に書かれているわけでありますが、公費のサポートで全体の三分の一、それから党からの援助で三分の一、したがって残りの三分の一程度、できたら三分の一以下がいいのですが、その程度の額に減らして、これを個々の政治家が寄附を仰ぐ、大まかこんな前提に立っておりまして、まあ公費助成の論議も、したがって企業からの政党に対する献金枠の拡大もこの大綱の自民党の基本的な方針に沿って打ち出している考え方であります。全体の姿としては矛盾がないと。  皆さん、何か五百億を足して八百億とかいろいろ勝手なことをおっしゃっていますが、社会党も同じ年、自民党が百六十七億のとき社会党も六十何億ですから、国会議員の数に比べれば同じ程度の金権体質だな、同じ程度の金が社会党でも使われているんだなというふうに認識せざるを得ません。
  142. 田並胤明

    ○田並委員 一つは、先ほど渡部提案者の方から言われた三つの資料についてぜひ理事会で取り扱いをお願いしたいと思います。よろしいですか。今持っていれば答弁していただきたい。資料を出してもらいたいのですが。  それで、今武村先生から答弁がありました内容については一面は理解できるのですが、ただ、節度を持ってガラス張りにと言うのですが、これは額を倍にすることは間違いないわけでしょう、企業からの政治献金、党が。党といったって、先ほど言ったように、政党の支部をつくる、今までの個人後援会を政党の支部をつくることによっての受け入れだって当然できるわけですね、これは。要するに、資金調達団体を二つの団体に限るんだといって個人の企業からの献金は受けないというふうになっていても、結果的には総枠をふやすことは間違いないし、個人後援会を政党の支部にすればそのことによって受けることはできるわけですからね。もちろんそれは政党が規律を持ってやるのですからそこまでの論議というのはいかがかとは思うけれども、そういう可能性はあるのですよ。  それで、自民党さんが言っている、何か大綱をつくって今度は節度を持ってこの政治資金についてはやるんだ、これはもちろん政党がやることですから、そのことを我々は信じたい。しかし、何回も今まで同じようなことをやられて、こういう問題が絶えないのですから、これはやはりもとを断つということが非常に重要だということで、私は、企業献金の禁止というのは今度の政治改革の根幹をなすものだということをあえて主張をしておきたいと思います。  次に、金権腐敗の根絶のための諸施策の推進ということでここへ書いてありますが、現在、当委員会で自民党案、社会党、公明党案それぞれ論議をして、新しい選挙制度政治資金規正法、これらをやろうということで論議をしております。もちろんそのことをやり遂げると同時に、あわせてこの金権腐敗の温床となっている政官業の癒着構造の打破であるとか、あるいは入札制度の公正、透明性の確保であるとか、あるいは使途不明金が今非常に問題になっていますから、この使途不明金については本来なくすのが私は正しいと思うのです。ですから、仮にこれがなくならないとすれば制裁的な課税をかけるとか、あるいはいわゆる使途不明金についてやっている企業の公表をするとか、これはやはり企業の協力を得ないとなくならないような気がするのですね。それからもう一つは、許認可事務の見直しの問題。それから、やみ献金に対して罰則強化の問題。つまり、見返りを期待をしてやみ献金をしたんだということを言われているのですね、業界の内部では。そうすると、見返りを期待してお金を出すというのは、これはわいろじゃないかと思うのですよ。あるいは現在の政治資金規正法上でも問題ないのかどうか、こういう気がするのですね。  例えば、今度の金丸前自民党副総裁の脱税事件に関して、このお金が山梨県の建設業協会あるいは中央の総合建設業、こういうところから出されたということで東京地検特捜部の事情聴取も受けました。その結果どういうことが起きているかというと、山梨県の建設業協会も理事会を開いて、適法なもの以外は一切政治献金は行わないということを決議をした。一九八六年から九〇年まで三回にわたって一億円のやみ献金を認めたということになっているのですね。上納金で盆暮れのつけ届け、これは公共事業に指名を入れてもらうための保険金だ。あるいは、公共事業の受注と引きかえに、一個百万だそうですが、まんじゅうを幾つにするとか、こういうのが残念ながら報道されています。こういう事実に対して、今、山梨県の建設業協会では、適法なもの以外は一切政治献金を行わないと、暗にやみ献金を認めているわけですね。やらないことは非常に結構なことなんでありますが。  さらに、全国建設業協会、日本建設業団体連合会、これらも相次いで役員会を開いて、要約すると、適法なもの以外一切政治献金は行わない、つまりやみ献金を中止をする、政治献金を公共事業の受注額に連動させて決める方法はとらない、三つ目が裏献金を使途不明金として会計処理する方法をやめるというような内容の申し合わせをしたというのが報道されています。  これはもう本当にがっくりきましたけれども、ということを申し合わせをしたということは、こういうことをやっていたということですからね。改むるにはばかることなかれだからいいことなんですが、少なくもこれらの取り決めをしたということは、まず入札指名の見返りを期待をして献金をし、利益を受けたことに対するお礼としてまた献金をした。しかも、やみ献金の場合は使途不明金で捻出したことをみずから明らかにしたものだと私は思うのですね。  ですから、ぜひ総理にお願いしたいのは、こういう金権腐敗の根を断つためには、政界、政治家、業者それから官、政官業、これの相互依存関係、癒着構造というのを打破をしなくちゃいけないと思うのですよ。そのために、現行の入札制度を公正な競争を保障して透明性を確保する制度に抜本的に改める必要があると思いますし、少なくも、公共事業の見返りとしてお金を持ってくるということは、これは、公共事業の見積もり価格の中にそういうものが含まれているのかなというふうに誤解を生みます。ですから、そういうことのないようにまずしてもらうこと。それから、官庁の許認可権限を、拡大は絶対に抑制をして、許認可事項の思い切った削減をすること。先ほど申し上げた使途不明金の徹底解明と制裁課税、これらもぜひやってほしいし、やみ献金に対する罰則の強化も行うべきである。そのことによって、今、自民党さんが出している四法案、社会党、公明党が出している四法案、いずれにしてもこれを実現をする。その新しくできる制度、これをより実効あらしめるために、そのもとを、こういった事例幾つもあります、地方分権の問題もありますが、これらのものを同時並行的に、やはり政府が決断をしてやれることなんですからぜひやってほしい、このことをお願いをしたいと思うのです。
  143. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 公共事業は国民の税金においてなされるものでございますから、それが不適正に使われておるということであれば、これはもうもとより正さなければならない問題であります。既に建設大臣から、公共事業の入札、契約、施工等について、指名も含めまして、いかにすれば、もし従来の税金の使い方に誤りがあればそれをどのようにして今後改めるかということについて、新しく監督、規制の基準を研究してもらいつっございまして、それは必ず実行をいたします。  それから、確かに役所が多くの権限を持ち過ぎるということは、ともすれば間違いを起こしやすいと言われることも事実でございますから、これはその理由がありませんでも、もともと権限というものはディレギュレートしていくべきものでございますので、その点はさらに努めてまいりたいと思っています。
  144. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 今こういうふうに審議が進んでまいりますと、どうもここの審議というのは選挙制度のことばかり審議をしているのじゃないだろうか、根本であるところの政治腐敗の一掃あるいは金権政治の一掃ということがどうも余り聞こえないのではないかというのが我々のところに国民の皆さん方から入ってくる声であります。  今、田並委員が具体的なことで御指摘になったわけでございますけれども、例えば入札制度につきましても、御指摘があったように、例えばもう少し公開制度を入れるとか、私はその道の専門家ではありませんが、愛知県の岡崎市では新しいやり方をしているとか、そういうことをやはりちゃんとやっていく。つまり、政治改革というのは、政治だけではなくて、そういう意味での社会改革だとも私は申し上げましたけれども、そういうこともやっていかなければいかぬ。それから、使途不明金につきましても、確かに中小企業というのは大変いじめられておるわけでございますから、営業費として使っているところがないわけじゃありませんが、一定の額以上のものあるいは企業の売り上げの一定額以上のものは一・五倍課税するとか二倍課税にするとか、やはりそういうようなことも考えていく。  いずれにしましても、当委員会といたしましても、この政治改革の中に、決議をするなりあるいは具体的な法制度も考えるとか、やはり田並委員御指摘のようなそういう問題までやっていって、この法案が通れば本当に政治の質、日本政治の体質自体が変わるんだということが国民の皆さん方に見えるようになっていかなければいかぬということをつくづく感じておるわけでございますので、どうぞ政府・与党の皆さん方におかれましても、この点につきましても十分ひとつ考えていただきたいということをもって答弁にさしていただきたいと存じます。
  145. 田並胤明

    ○田並委員 終わります。
  146. 田邉國男

    田邉委員長 伏木和雄君。
  147. 伏木和雄

    ○伏木委員 総理にお伺いいたします。  総理、毎日の新聞の投書欄をごらんになっているでしょうか。今や国民の声は頂点に達しております。また、新聞の投書欄を見なくとも、町へ出れば、我が国政治に対する批判というものはあらしのような勢いになって巻き起こっていると言っても言い過ぎではございません。今、ここでいろいろ政治改革について議論が行われております。自民党あるいは社公の提案者からも、身を切るような思い政治改革をやらなければならない、こういう決意のほどを伺いました。私は、身を切ると同時に金も断ち切っていかなきゃならぬ、それが本当の政治改革ではなかろうか、このように考える次第でございます。  海部内閣政治改革を叫んで出発いたしました。リクルート事件に端を発しまして海部内閣が誕生をしたわけでございますが、あの海部内閣誕生のいきさつというのは、総理よく御存じであろうと思います。まさに政治改革を絶対の使命として出発した内閣でございます。しかし、その政治改革は残念ながら果たすことができませんでした。そして海部内閣は退陣、こういうことになりました。それを受け継いだのが宮澤総理でございます。したがいまして、宮澤総理も、出発のときからこの政治改革ということは天命であらねばならない、私はこのように考えている次第でございます。  そこで、総理にお伺いしたいのでございますが、その天命たる政治改革総理がどのような決意で、どのような思いで果たそうとしていらっしゃるか、お伺いをしたいと思います。
  148. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 今朝からしばしば申し上げておるところでございますが、就任をいたしまして、まず緊急になさなければならないことがあると考えまして、私ども、党内で政治改革推進本部というものを設けまして、緊急改革分の案を大体三月ごろまでに取りまとめてほしいという要請をいたしまして、それはそのとおり案ができまして、この緊急改革は昨年の国会において御承認をいただきましたので、既に発足をいたしたわけでございます。なおその当時、つまり昨年の春に、ただしこれは緊急分であって、抜本改革は十一月の末までには大体完成をしてもらわないと、来るべき国会で御審議をいただくことができない、こう考えまして、緊急改革の作業を終えますと直ちに抜本改革への作業を党内でかなり詰めまして、たくさんの討論参加がありまして、ほぼ十一月の末には完成をいたしたわけでございます。  それがただいま御審議をいただいております法案になっておるわけでございますが、この間に、実は予想をいたしませんでしたような新しい政治不信の問題も出てまいりました。それをもさらに、抜本改革にその体験をも加味いたしますとともに、ここまで政治不信が深まりましたにつきましては、どうしてもこれはこの国会で成立をお願いしなければならないという判断のもとに、委員会に御提案をいたし、また幸いにして他の党、会派からも御提案がございましたので、かねての党首会談のお申し合わせのとおり当委員会においてガラス張りで御議論を願っておるわけで、案の内容は各党、会派によって同一ではございませんけれども、しかしこの国会で成案を得なければ、国民の信を失って再びそれは取り戻しがたいほど深刻であるということを委員各位の御発言の中からも酌み取ることができますので、必ずやこの国会で成案を得て実施をすることができるものと期待をいたしておるところでございます。
  149. 伏木和雄

    ○伏木委員 私が伺っているのは、両案、与野党の案でございますが、一生懸命審議している、それは我々も一生懸命審議しているのです。総理が何をやろうとしていらっしゃるか。それを、何かアメリカで記者会見のときには、多分通るんじゃないでしょうかというような、いかにも国会にげたを預けだというような感じに私どもは受け取れるわけであります。せんだっても、与党の中の質問者の中からも、前の政治改革のときは総理は消極的であったんではないかというような言葉が出ておりましたけれども、また一歩引いて国会の様子を眺めて、総理みずからがリーダーシップをとって何をやろうとしていらっしゃるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  150. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私がお願いをしていることは極めて明快でありまして、自民党の議員の提案による四つの法案の成立をお願いいたしたい、こういうことです。
  151. 伏木和雄

    ○伏木委員 そこで伺いたいのですが、ずっと審議の様子を国民の皆さんも見ていらっしゃる、あるいはマスコミの皆さんも見ていらっしゃる。マスコミの論説では、これは平行線ではないかというようなことが言われております。ということは、そのまま平行線で、総理はじっとそこへ座っていらっしゃるという意味のことでそうおっしゃっているのでしょうか。  一点お伺いしたいのは、今一番議論中心になっているのは、比例代表か多数代表制か、こういう点でございます。前回、第八次選挙制度審議会の答申に基づいて前内閣は、必ず答申を実現したい、答申案こそ最高の案である、こういうもとに法案提出されました。私もここで大分海部総理議論をいたしました。しかし、あのとき一貫して政府は、多数代表制だけ、小選挙区だけじゃだめなんだ、少数党の意見を聞くために、民意を公平に反映するためには比例代表がなきゃだめなんだ、それを加味して初めて与野党合意できる案として私どもは責任を持って提出する、要するに小選挙区だけじゃだめだ、比例代表がなければだめなんですということは、海部総理は一貫して政府の責任者として発言をしておったわけであります。  同じ使命を持って誕生した宮澤内閣がいつ変わってしまったのですか。総理として、内閣の政策の継続性というものは全く無視してしまうわけでしょうか。前総理が考え、前総理が最も責任を持つ、比例代表制を加味することが我が国における選挙制度では最もいい、この発言をどうされるのですか、お伺いします。
  152. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 お話のございました審議会の答申に基づきます提案は政府がいたしましたが、国会において廃案となりました。このような事実、国会の御意向は、これは政府としても当然事態の推移として考え直さなければならないところであったわけでございまして、自由民主党としまして、そういう状況のもとでこの四法案を御提案をいたしたわけであります。
  153. 伏木和雄

    ○伏木委員 前回の政府案が廃案になったことは私も承知いたしております。考え方として、比例制を加味しなければ我が国選挙制度はだめなんだと。私は、あの案をそのまま出せと言っているわけじゃありません。選挙制度について、あの小選挙区並立制がいかに矛盾が多いかということは、この前の議論のときに徹底的に議論をいたしました。しかし、政府の考え方として、小選挙区制を加味することが我が国政治制度にとって最もふさわしいんだ、この基本になる考え方はそうころころ変わるものじゃないんじゃないでしょうか。この点伺います。
  154. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 政府が御提案をいたしたものにつきましては、ただいま伏木委員の言われましたように、いろいろ御議論がございました。その御議論はもとより政府も伺っておったわけでございますが、結果として廃案ということになりましたので、その考えは政府として再度御提案はいたさない、国会の御意向もございましたから、そういう決定をいたしました。
  155. 伏木和雄

    ○伏木委員 それでは、前回提出した、少数党の意思を反映させる選挙制度でなくてはならない、このお考えは今ないわけですね。
  156. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 しばしば御議論になっておられますように、自民党の議員から提案になっております案がベターである、こう考えております。
  157. 伏木和雄

    ○伏木委員 そうすると、前の内閣との政策の継続性というものはもう必要ない、こういうことですか。
  158. 塩川正十郎

    ○塩川議員 こちらから提案したわけでございますので、ちょっとお答えさせていただきます。  実は、仰せのように、前は第八次選挙制度審議会の答申に基づきまして政府提出したものでございます。したがいまして、あれはあれなりで、政府が提案して廃案になったという経過は御存じのとおり。  今回党が出しましたのは、その貴重な議論を踏んまえて、自由民主党としては、要するに、政治改革の一環としての選挙制度の改正は、一つはそこに哲学を持たなければいけないということ。  それは一つは、基本は何かといいましたら、選挙において選ばれた結果、その結果に基づくところの政権が絶えず責任を持つという体制を明確にするということ。そのためには、やはり小選挙区制にすることが一番政治の責任を明確にするということであろうということが一つ。  それからもう一つは、でき得れば、多数党で構成されるところの、小選挙区制で選ばれた結果として多数党が政権を担当することになりますが、この政権がリーダーシップを発揮しやすくなる、つまり、連立政権を避けるためにはやはり小選挙区制がいいのではないかということ。  これは党が決めたことでございまして、党議として一応出したということでございますので、御了承いただきたいと思います。
  159. 伏木和雄

    ○伏木委員 私は、党が出してきたのは、それはそれとして一つの考えで出したのだろうと思いますけれども、私が聞いているのは、政策の継続性を言っているわけです。(発言する者あり)いや、今前進ということがありましたけれども、民意を公平に反映するために比例代表制というものが必要なんだというこの政策ですね、それを削ってしまうということは、これは必要ないということなんですね、前内閣との違いは。
  160. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ただいま御審議を願っております自由民主党議員の提案によるものの方がベターである、政府もただいまそういう判断をしています。
  161. 伏木和雄

    ○伏木委員 時間がありませんから、もうこれ以上申し上げません。明らかに前内閣と変わったということははっきりしたのではないか、私はこのように思います。  そこで、少しお伺いしたいのですが、我が国選挙制度議論というのはいろいろな形で今日までございました。国会においても大分選挙制度については議論をしてまいりました。ただ、我が国選挙制度というのはヨーロッパに比べますと二十年も三十年もおくれているのではないか、こういうことを痛感しております。  と申し上げますのは、今までの選挙制度というのは、議論はされてまいりました。その国会における議論の大多数は、選挙民の選挙権の問題あるいは選挙運動の問題というような点がほとんどでございまして、その選挙権を行使した国民の一票の重みというものに対しての議論というのが少なかったのではなかろうか。選挙制度議論するに当たりまして、今一番議論されていることは、その一票の重み、一票行使の見返りと申しますか、これが問題であります。  確かに、我が国選挙制度、いろいろな形で行われてまいりました。しかし、ヨーロッパに比べるとおくれているという点は、長い間いろいろ改正がございましたけれども、まず明治二十二年に選挙制度は始まりました。このときは、二十五歳以上の男子で、直接国税を十五円以上、今一万倍ぐらいとしてどのぐらいの金額になりますか、十五円以上の納税者に限定して選挙権を与えた。その後、三十三年に十円になり、大正八年に三円以上にした。が、このとき、三円以上にする条件、その代償としてといいますか、小選挙区制を導入した。三円にする、そのかわり小選挙区制だぞと。しかし、その小選挙区制は、大正十四年、中選挙区制に変えざるを得ない。腐敗が横行して、十四年に中選挙区制、こういうことになりました。  そして昭和二十年、敗戦という大きな代償のもとに、初めて女性参政権が加わってまいりました。  また、選挙権の行使について、有権者の年齢制限につきまして、もうほとんどの国が十八歳以上に選挙権を与えております。これも議論されましたが、いまだに我が国はできておりません。日本ぐらいなものじゃないでしょうか、二十歳以上というのは。ほとんどの国が十八歳以上に選挙権を与えている。  このように、国民選挙権に対する議論、この点ではヨーロッパにはるかにおくれております。ヨーロッパにおいて婦人参政権が与えられたのは、我が国よりも三十年ぐらい前です。  こういう面から見ても、選挙制度、主権者たる国民の一票の重みに対する考え方が浅過ぎるのではないか。その結果が、最高裁判所において違憲の判決が二回も出てくる、あるいは違憲状態という判決が出てくる、こういう状況でございます。これも一票の重みに対する考え方の浅さといいますか、我が国選挙制度のようにしょっちゅう最高裁から違憲の判決が出るような選挙制度の国が、果たして先進国にそうたくさんあるでしょうか。ございません。  こういう面から考えまして、国民の一票、一票の重みという、それが余りにも薄いのではないか。そこから、先ほどから出ております国民の投票行動に対して、その結果、強い政府をつくるためには、その有権者の貴重な投票の一票、少数ならば無視して、そして逆三角形の形で力の強い統治権を持ちたいということから少数の意見を排除する。少数の意見だけではございません。四〇%という得票率で、そして八〇%、九〇%の議席を得よう、このような結果になるのではないかと私どもは考えております。  そういう面からいいまして、比例代表制こそ、今こそ、おくれている我が国選挙制度にありまして、国民の一票、これをしっかりと選挙制度に反映させるべきではないか。そういう面から考えますと、私は、やはり比例代表制にすべきではないか、このように考える次第でございます。  この国民の一票の重みですね、国民の権利、これに対して総理のお考えを伺いたいと思います。
  162. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 国民の一票の重みというのはその投票に参画する重みという意味であって、ある選挙区において、仮に小選挙区といたします、六割を得た人が当選をし、四割を得た人が落選をしたという場合に、四割が投票権を与えられなかったわけではなくて、六割と四割という全部の有権者が投票して、その結果当選人が決まったという意味では、すべての人が同じ一票の価値を持ったわけであります。
  163. 伏木和雄

    ○伏木委員 ですから、私は、先ほどから選挙権の問題ということをわざわざ言ってきたわけです。選挙権、公平な選挙権というものは、その一票行使は公平な結果になってあらわれなきゃいかぬ。それでなければ一票等価とは言えないではないですか。ここに政府自身の考え方、自民党案の違いがあると思います。  私は、あくまでも一票等価こそこれから我が国が将来に向かって行われるべき国民主権の上に立った選挙制度、こう考える次第でございますが、渡部さん、この点について提案者として御説明願います。
  164. 渡部一郎

    ○渡部(一)議員 国民の投票権に対しては、これはただいま伏木委員がおっしゃいましたように、最も重点を置いて考えるべきテーマだと存じます。  私どもが併用制において大変苦労したのもその一点でございまして、これを正確に受け取り、重視することなくしては国民の根本的な不信を解消することができないということは、先ほどから何回も申し上げたとおりでございまして、委員の御指摘もまさにその点をついておられるものと先ほどから傾聴していたところでございます。
  165. 伏木和雄

    ○伏木委員 あるカナダの政治学者が言ったことでございますが、選挙制度についてはいろいろと各国違いがある、ただ、選挙制度というとすぐ、民意の集約であるとかそれから公正な反映であるとかという議論がされておって、それが多数代表制あるいは比例代表制という形で論じられているけれども、各国の実態を見ると必ずしもそれは当たっていない、比例代表でうまくいっている国も幾らでもあるということから結論づけて、確かに民意の集約という形で小選挙区制をやっているところはあるけれども、それは民意の集約は集約として一つの考え方である、しかし、その民意の集約は民意の公正な反映というものを犠牲にして成り立っているものだ、このように言われております。  私も、そのとおりではないか。その民意の集約ということに余りにも思いを置くために、公平な反映というものの犠牲においてそれは成り立っている。果たしてこれが主権在民の我が国選挙制度として、将来このような考え方でいくことが真の民主主義であるかどうか、こういう点が大きな疑問でございます。やはり民意の公正な反映ということは比例代表制によって初めて実現されるということを強く申し上げまして、次の質問者とかわります。
  166. 田邉國男

  167. 平田米男

    平田(米)委員 宮澤総理、訪米で大変お疲れのことと思いますが、御苦労さまでございます。  政治改革につきましては、あちこちの場で総理は強い決意をお述べになっておいでになります。三月の二十五日の自民党の全国幹事長会では、法案をこの国会で成立させなければもうそういう時期はない、あるいは、政治改革法案を成立させなければ到底国民の信頼を回復できない、このようにおっしゃっておいでになります。また、四月の九日の党首会談では、このままでは与野党とも泥舟だ、沈むかどうかの瀬戸際であり、議会制度としての危機にある、このようにおっしゃっておいでになります。  私は、皆様の議論の趨勢はまさにそういうことではないかというふうに思います。そういう意味では、自民、社会、公明、民社すべての政党、共産党さんは若干違うのかもしれませんが、そういう意識でもって今真剣な議論をしておいでになるというふうに思っておりますが、十三日以来の各党の真剣な、また活発な論戦、これについて総理はどのようにお感じになっておいでになりますか。
  168. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 御引用いただきましたように、私は今、国民政治不信の深刻さをそのように感じておりますので、いわばこれが我々に与えられた、言葉が大げさかもしれません、いわゆるラストチャンスであって、やはりお互いにここで本当に政治改革をしてしまわなければ、国民の信頼を回復することがもうなかなか難しい、そういう思いでおりますので、当委員会において活発に、しかもガラス張りで御議論が行われておりますことは、大変に私としては心から敬意を表しますし、また、この国会において成案を得ていただくことを確信をいたしておるわけでございます。
  169. 平田米男

    平田(米)委員 今国民は、議論をする国会に新鮮さを感じ、少なからず期待をしている、私はこのように思っております。  国会で今このような活発な論戦、議論が行われているその理由は、先ほど申し上げました危機感とともに、今国会内で第二党以下が相当な議席を持っている、勢力を持っているから可能であるというふうに私は思います。  朝日新聞の自民党案のシミュレーションによりますと、九二年の参議院選挙では自民党の議席は四百五十七議席、比率としましては九一・四%、また八九年の参議院では、社会党が逆に四百二十三議席、八四・六%、これだけを占めるということになっております。すなわち、いずれにしましても、いずれも一党が大勝して、第二党以下は極めて少数になるというのがこの自民党案の結果でございます。これでは国会議論する国会にはなり得ないのではないか、私はそのように思います。議論する国会、これは今総理大臣、評価をしていただきました。その国会が自民党案によっては、その選挙の結果によっては、シミュレーションの結果によってはなくなってしまう、このことをどのようにお考えでございましょうか。
  170. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ただいま前々回の参議院選挙のお話がございまして、一人区の二十六選挙区、かつては自民党がほとんど独占いたしましたが、前々回はほとんど失ったという、そういう政治上大きな出来事が起こりましたときに、国民がそれを端的にやはり満足、不満足、批判として表現し得る、その一番端的な表現の場は小選挙区であると思います。それによって、政権にある政党あるいは野党がそういうチャンスあるいはそういう一種のエラーというものについて非常にやはり真剣になる、それが政治に緊迫感が生まれるということだと私は思っておりまして、公明党もそういうことで圧倒的な多数をとられることが私はあり得るのだと思います。それはしかし、世論がそういうふうに傾くわけですから、それが政治に反映されるということは私は決して悪いことではない。  今おっしゃいました政治の、大変大きな数字、シミュレーション、ちょっと私はそのシミュレーションの結果そのものに意見を申し上げられるほど検討いたしておりませんけれども、そういう大きな内外の変化があったときにそれが政治のリーダーシップに反映されるということは、私はやはり民意というものが真っすぐに政治に反映される道ではないかと思います。
  171. 平田米男

    平田(米)委員 民意が反映されると。自民党の皆さんは、民意を反映ではなくて集約をするというふうにおっしゃっておいでになりますね。四月の十八日付の毎日新聞の世論調査では、単純小選挙区に対しましては五〇%が反対であるというふうに出ております。そして、三八%が賛成。すると、自民党のおっしゃる民意の集約というのは、五〇%の反対を無視して単純小選挙区を実現する、それが民意の集約だというふうにおっしゃるのでしょうか。いかがでしょうか。総理、いかがですか。  今私は、議論すべき国会議論のある国会というのは、自民党さんもたくさんおいでになるが、同時に野党もたくさんいる、そういう中で起きるのだというふうに申し上げました。しかし、それに対して総理は、いや、それは国民の意思がそういうふうに反映をしたのだからそれでいいのではないか、こういうふうにおっしゃいました。しかし、国民の意思というのは、まさに世論調査の結果によりますと五〇%の人が単純小選挙区に反対だというふうにおっしゃっているわけでございます。これは、民意、民意ということをお考えならば、いかがでございますか、民意の反映ということをお考えになれば、単純小選挙区は取り下げるべきではないのでしょうか。
  172. 石井一

    石井(一)議員 その世論調査がいかなる調査によって、どれだけのバロッティングが行われてということがございますが、一々それに答えられるほど、何と申しますか世論を反映した結果を示しておるものとは考えられません。  要するに、小選挙区制の特徴は、五〇対三八と申されました、六%移動すると同点になる、こういうふうなことでございまして、今後の議論の深め方によっては、国民にはもっともっと理解が深まってくるのではないか。仮定のシミュレーションなり問題で既に民意を無視しておるというのは、少し言い過ぎじゃないかな。あなたも立派な弁護士のようでございますから、もう少し今後の議論を深めた中でひとつ御判断をいただきたいと思います。
  173. 平田米男

    平田(米)委員 まさにこの答弁が、国民の民意を大切にしないという自民党の姿勢があらわれているというふうに私は思えてなりません。自民党の皆さんは、選挙制度は政権をつくるんだ、こうおっしゃって単純小選挙区制を主張しておいでになります。  しかし、この命題は明らかに憲法上誤りであるというふうに私は思います。憲法によれば、選挙制度はまず国会をつくるわけでございます。衆議院をつくり、参議院をつくるわけでございます。そして、国会が政権、すなわち内閣総理大臣を指名しているわけでございます。しかしながら、皆さん、国会の機能は内閣総理大臣の指名だけではありません。国の唯一の立法機関であり、国権の最高機関として行政をチェックする重要な機能を持っている、それがまた本来の機能なわけでございます。それを単に内閣総理大臣の指名権のみを取り上げて選挙制度を考えようとするものは、議会制度の本質を見誤った議論である、私はそのように思えてなりません。  先ほどのシミュレーションで申し上げましたように、状況によっては確かに野党が、社会党が、野党第一党が圧倒的多数をおとりになるでしょう。そういう意味では政権交代は起きるかもしれません。しかし、議会というものは、国会というものは、単に政権を決めるだけではありません。法律をつくるときに、また行政をチェックするために十分な議論をしなければなりません。すなわち、私は、民主政治というものは選挙のときに健全な野党があるだけではなくて、国会の中にも健全な野党が厳然として存在をする、それによって初めて民主主義というのは行われる、このように思えてなりません。  ところで、今参議院選挙制度については論議をされておりませんが、参議院があるじゃないかという御議論がございます。しかし、参議院が幾ら法案を、衆議院が決めた法案を否決いたしましても、三分の二以上を占める自民党が衆議院で再度可決すれば、法案はすべて通ってしまうわけでございます。すなわち、参議院はなきに等しい、こういう結果さえ招来をするわけでございます。本来、このような結果を招来するような選挙制度は、憲法の予定する議会の機能、それを破壊するものであって、私は到底許されないものである、このように思います。総理、いかがでございますか。
  174. 石井一

    石井(一)議員 第三党以下が切り捨てられるということを前提に小選挙区に対する批判をされておるように例えるわけでございますが、選挙の結果はシミュレーションのようにはまいらないと思います。  例えば、自民党の場合は、これまで派閥がございまして同士打ちをやってまいりましたから、制度が変わりましても、直ちに一致結束、すべて自民党の票になるとは思いません。また、野党の方も、これまでばらばらに戦ってこられたわけでございますが、制度が変わることによりまして、連立なり統合を志向し一致結束されるというふうなこともございますから、そんなに、八対二とか九対一に変わるというふうなシミュレーションはまず考えられないというふうなことを申し上げたいと思います。  また、その後の政界の編成として、自民党が二党なり三党に変わっていくという可能性もあれば、野党が集合していく可能性もあり、今後の、将来の政界というふうなものは、自由に動いていく中に非常にダイナミックな政治の決定というのがなされる、私たちはそのように期待いたしております。
  175. 平田米男

    平田(米)委員 今、連立政権という説明をされました。連立政権はよくないというのが自民党の御主張じゃないんですか。よくないとおっしゃっていて、野党で連立政権をとれば小選挙区の弊害が解消できるなどという弁解は、国民が納得するものではない、私はこのように申しておきたいと思います。(発言する者あり)総理に御質問申し上げているのに、お答えにならないわけですよ。  ところで、民主主義時代の流れというのは果たして二大政党制へ向かっているのか、あるいは多党制へ向かっているのかということを我々は考えた上で選挙制度をつくっていかなければいけないと思います。  私も含めまして、自民党の議員九名、社会党六名、公明党五名、民社党一名で、衆議院の当選一回の議員二十一名が、海部内閣政治改革法案が九一年十月に廃案になった直後の十一月、日本政治腐敗の根源にシステムの制度疲労があるとの共通認識のもとに一つの超党派の研究会をつくりました。比較政治制度研究会と申します。略称CP研でございますが、その後毎月一回の会合と、また昨年の八月には合宿を行いました。率直かつ密度の高い、深い議論を重ねてまいったわけでございます。  私たちがCP研を発足をさせ、精力的に活動してきたのは、その原動力は何かと申し上げますと、それはもはや議員としての選挙の当落、個利個略、また所属をしている政党の党利党略、それを考えて行動しているような時期ではない、日本政治が深い危機に遭遇をしているという、そういう切迫感でございました。  そして、私たちは本年の二月二十一日に議論の集約を発表いたしました。題して「新政治システムヘの提言」でございます。その主要な結論の第一は、これからの政治状況にふさわしいのは二大政党制よりも多党制であるということでございます。これは超党派の結論でございます。その理由は三つございます。  第一に、脱イデオロギーの時代政治は、従来の対立型ではなくて、コンセンサスの形成に当たっての手順と手法に対して市民の十分な納得を必要とする協調型の政治が望まれる。対立を際立てる二大政党制よりも、五つ前後の政党の存在を認める多党制の方がこれからの議会の姿としてよりふさわしい。  二番目といたしまして、わずか二つの政党では、多様な国民意見を吸収し集約することは非常に困難である。このことは、英国における最近の自由民主党の出現や、昨年のアメリカ大統領選挙におけるペロー現象などによっても明らかなとおりである。多党制の方が国民の選択肢は広がり、民意の吸収機能は高まる。  第三に、多党制及びそこから導かれる連立政権の方が国民のコンセンサスの幅を広げることができる。二大政党制という対立のもとで政権交代のたびに大揺れするよりも、第一党が相対多数で連立を組むことで初めて政治における変化と連続の調和が得られると考える。  これが我々の理由でございます。  そして、現実に先進主要諸国も、二大政党ではなくて多党制を現出しているわけでございます。  この理論、また現実からいって、時代の趨勢は二大政党制ではなくて多党制に向かっている、このように我々は理解するわけでございますが、総理はどのように見ておいでになりますか。
  176. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 比較的議会政治にフレッシュな感覚を持っておられる方々が超党派でそういう結論を出されたということは、私は一つ意味がやはりあると思います。  結局おっしゃっていらっしゃることは、今や日本政治においては、いわば余り大きな決断というものは、つまり国民的な賛否を問うような大きな決断というものはもう多分要らないのであって、むしろファインチューニングといいますか、そういう国民の中の微調整をしていくことが政治の役割である、多分そういう思想に基づいた御結論だろうと思います。ある意味ではそこまで日本が成熱社会になった、今ヨーロッパの国が多くそうだと言われましたから、多分そういうお考えだろうと思います。  ですが、私自身は、これは人によって見方が違うと思いますが、日本はまだまだそういう成熟社会になっていないのではないだろうか。国としてもっともっとすることがあるし、幾多の政治的な決断をしていかなければならない、そういう段階に日本はまだあるのではないだろうか。  つまり、おっしゃいますことは、国民に非常にたくさんの、幾つかの、複数の意見があって、それをそのまま政治に反映させるということは恐らく、政治は比較的細かなファインチューニングだけをするということになると思いますし、いや、もっと国民に呼びかけて大きな改革をしていかなければならぬということであれば、これはやはりどちらかといえば二大政党があって、そして議論をして、小選挙区でどちらの方向に向いていくかということを決めるわけでございますので、今の日本国民の、それこそその政治的なニーズでございますか、それをどういうふうに考えるかということに私はよると思います。  私自身は、たくさんの、いわば複数のかなりの政党ができて、その連立でございましょうか政策協定でございましょうか、そういう中で政治が行われている西欧の幾つかの社会を見ますと、それは余りうまく動いてはいないように思う。いや、それでいいんだと国民が思われれば、それは一つの選択ですけれども、日本にとってそれは今余り賢明な選択でないと私は思います。
  177. 平田米男

    平田(米)委員 日本がこれからまさに国民の意思をしっかり聞いた上で結論を出してその決断をしていかなければいけないという点では、我々超党派の研究会のみんなの共通した基盤でございました。これから外交の問題につきましてもまた内政の問題につきましても重要な課題が山積をしているというのが我々の認識の前提でございました。その上で、国民がきちっと理解をして、そして私たちがきちっと国民に対して責任を持って政治を行うためにはどうしたらいいのか、そういう考えのもとで今申し上げたような結論を出したわけでございます。ですから、今総理がおっしゃったような前提での議論ではございません。我々も、今の国の前途というものをしっかりとらえた上であるべき政治システムというものを考えたわけでございます。  そういう意味で、ぜひ今の、我々一回生の衆議院議員が真剣に考えた理論的、私は大変説得力のある説明だと思っておりますが、ぜひ総理、真剣にお耳を傾けていただきまして、お考えをいただきたいというふうに思います。  そして、選挙制度あり方あるいは政権のあり方等についても論議をいたしましたが、もう時間がございませんのでここでは省略をいたしますが、きょう朝から何度も議論を繰り返されているわけでございますが、現在の状況からいたしますと、自民党案も、そして社公案も、妥協をしなければ、妥協をした上で新しい選挙制度を我々の力でつくっていかなければ、もうだめだと言っている中選挙区制度が残ってしまいます。それでは私たち、国民に対して何の責任も果たすことができない。国民から完全に我々は見捨てられてしまうでしょう。そういう意味で、総理は、第一党の党首であり、また内閣総理大臣として、国民の負託にしっかりとやはりおこたえをする責任、義務というものが私はあると思います。そういう意味で、どういう妥協の道を探るべきなのか、これが我々は一番今重要な岐路に立たされている、このように思います。  総理は、本会議場でこのようにおっしゃいました。各党間で審議を尽くしてもらうことが肝要だ、そのとおりだと思います。抜本的な改革が必要であることについては各党が共通の認識を持っているから、必ずや合意点を見出してもらえると考えている、その実現のため最大限の努力を払う、このようにおっしゃっていただきました。私は、その言葉に大きな期待を持ちたい、このように思っております。  総理として、どのようなお考えでこの最大限の努力、このお言葉を現実のものとしていただけるのか、ぜひお答えをいただきたいと思います。
  178. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは本会議で、今お読みくださいました、申し上げたとおりが私の心からの願いでございます。国民は、非常に熱心な御議論が当委員会で行われていることをよく知っておられますから、そのこと自身はきっと評価しておられると思います。そして、そういう中から必ずいい結論が出るだろう。それにつきまして、政府としていたすことがあれば、もとより喜んで何なりといたす用意がございますが、委員会におきまして最善の結論を出していただくことを心から祈っております。
  179. 平田米男

    平田(米)委員 ぜひ、最大限の努力とおっしゃった国民に対する約束を守っていただきたい、このようにお願いをしておきます。  きょうは副総理にもおいでいただいたわけでございますが、副総理は、もう長年政治改革については大変な情熱を持ってその政治活動をされておいでになるわけでございまして、私も大変敬服をいたしております。  今般、自民と社公案の対立を見て、民間から、民間政治臨調から、小選挙区比例代表の連用制という、まさに自民党案と社公案の折衷案ともいうべき案が出てまいりました。私は、妥協点といたしましては十分に参考にすべき、いや、参考にしなければならない案が出てきたというふうに理解をいたしております。ぜひ副総理の御所見を伺いたいと思います。
  180. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 先ほど来、平田さんのお話を聞いていまして、これはとてもじゃないがあなたに妥協するなんという考え方はゆめゆめないなと思って聞いておったのです、私は。ところが、一転して民間臨調のお話を持ち出されて、どう思うかということで、私は、何といいますか、あなたのそういう幅の広いお考えに心から敬意を表したい、こう思います。  私は、本来的にいいますと小選挙区論者でございますから、その点はひとつ御理解をしておいていただきたいと思います。そうしまして、先日来、本会議からこの特別委員会にかけて、自由民主党は既に四法案を提案をし、野党の社公両党からはまた法案が出てきておって、そしてこれ、かんかんがくがくの、今、何というか、それぞれのお立場に立って議論を交わしておられるさなかでございましょう。したがって、私は、こういった議論の中から国民が望んでおるような本当の、今もう政治の改革は待ったなしてございますから、そういうことを背景にお考えになって、ともかく日本のこれからの政治を担当することができるような、ひとつ新しい政治のシステムづくりに役立つような選挙制度あるいは政治活動、こういったようなことを私は期待をいたしておるのです。私の今の立場は、小選挙区制度が一番いい、こう思っておるわけでございますから、私は、今自由民主党の提案した案に賛成をいたしておる、こう理解をしておいてほしいと思います。  問題は、民間臨調の案にどう思うか、こういうことでございますが、新聞の発表の前日でございましたが、三十分ばかり、責任を持っていらっしゃる方からお話を私は伺いました。何といいますか、民間臨調の方の大変な御労作に対しては私は心から敬意を表しておるわけでございます。敬意を表しておりますが、しかし、幾つかの点に疑問があります。その点については、民間臨調の御説明の方にも私は疑問を呈してありますが、まだその回答をいただいておりません。そういうような段階でございますし、まだ、今ここであの案がいいだ悪いだ私が言う立場じゃないでしょう。これはもう少し各党間で真剣にひとつ議論をやっていただきたいな。  問題は、それから皆さん方がどのような英知をお出しになられるのか。党の立場を超え、あるいは派利派略を超え、個利個略を超えてやらなければならぬ時期だ、こういう観点に立っての立派なひとつ結論を出していただきたいな、これが私の今旦言える限度でございます。
  181. 平田米男

    平田(米)委員 副総理が小選挙区のお立場である、小選挙区論者であると同時に、私も併用制論者でございます。しかし、お互い自分立場だけ守っていたならば、日本政治は開くことができません。それぞれの立場から大きく出て、国民のために大きな妥協をしていく、お互いに血を流すというそういう覚悟で臨んでいきたい。きょう御出席委員の各位、また提案者の各位も、ぜひそういう御決意で妥協案を見つける、そういう作業をやっていただきたい、心から強くお願いをするわけでございます。  それで、私は具体的な提案といたしまして、委員会に二つ提案をさせていただきたいというふうに思います。  私は、この妥協点を見つけるに当たっては、いわゆる国対政治と言われるようなやり方で妥協点を見つけるべきではないというふうに思います。そういう意味で、開かれた場で、国民の目の前で各党が妥協点を見つけ合意を達するために、一つとしましては、これからフリートーキングもあるそうでございますが、委員会での審議は、ぜひもう党議を超えた議論をするということを申し合わせていただきたい、このように思います。  もう一つは、これは全衆議院議員のまさに身分にかかわることでございますので、全衆議院議員が本会議場において、選挙制度改革の必要性あるいは自・社公案の妥協の必要性、また自分の考える妥協案というものを意見表明できる場をつくっていただきたい。これをぜひ委員会で御検討いただきたい。委員長、よろしくお願いいたします。御返事いただけますか。
  182. 田邉國男

    田邉委員長 よく検討させていただきます。
  183. 平田米男

    平田(米)委員 以上で終わります。
  184. 田邉國男

  185. 東中光雄

    東中委員 総理にお伺いをしたいと思います。  一月の二十九日の予算委員会で我が党の不破委員長が、自民党に巨額献金を行っている企業が公共事業発注の上位を独占していることを指摘しました。内容は、例えば建設関係でいいますと、鹿島建設や大成建設、清水建設等々は年間三千万、四千万、五千万というような巨額献金をしておりますが、こうした企業が国の公共事業発注の上位を独占しているということを指摘したのですが、それに対して総理は、それはたまたまのことであって因果関係は推定すべきではないという答弁をされまして、企業は社会的存在として機能を果たしているんだ、こういうことでありました。  しかし、金丸事件は、建設大企業の政治献金と公共事業の発注の間に紛れもない因果関係があるということを明らかにしてきたと思うのです。例えば、大手ゼネコン各社の大半が、仕事が有利に進むよう保証金的意味で献金、やみ献金を提供していたんだというような発言をしておりますし、金丸前副総裁へのやみ献金を認めた前田建設工業の社長は、円満に施工が可能となるよう一番の実力者に解決策をお願いしたんだ、これは新聞紙上でも言っています。  これはもう発注とそれから献金というのは因果関係があるということが、今度のいわゆる金丸事件を契機にして明らかになったと思うのですが、そういう点で総理は、不破委員長の質問のときに因果関係はないとおっしゃいましたけれども、今はどうお考えでしょうか。
  186. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 正確な意味での因果関係ということについて私は報告を受けておりませんけれども、しかし、公共事業ということになりますと、これは国民の税金を使ってする仕事でございますので、たとえそのようなことがあってもなくても、国民の税金が正しく使われているということを確認することは、これは政府としての当然の義務でございます。  したがって、公共工事の入札・契約制度あるいはその透明性、競争性等々について、現在の指名競争入札制度にいろいろ欠陥がないかどうか、この点は既に建設大臣を通じて所要の改善措置を、もしありましたら直ちに講じてもらいたいということを指示をいたしてございます。  それからなお、建設業界における企業活動の適正化あるいは企業倫理等の問題にもし問題があるとすれば、これも建設省として業界の実態を踏まえて適切な指導をしてもらいたいということも申してございます。
  187. 東中光雄

    東中委員 先日の党首会談で不破委員長から総理に、公共事業の発注と建設業界の政治献金の実情をぜひ調べて報告してほしいということを申し上げました。そのときに総理は、犯罪を構成したかどうかは別に、公共事業の発注、受注の上でフェアな関係があったかどうかを究明する責任があると、政府として、今おっしゃられたことだと思うのですが。  ただ、ちょっと今言われたのでは、現実にどうあったかということを、犯罪捜査ではありませんけれども現実にどうあったかということについての事実関係の究明をやって、それから対策ということになるはずだと思うのですよ。入札制度をどうするかという前に、今建設業界でやっている多額献金あるいはやみ献金と言われるいわゆる政治献金と、それと受注の関係、実態はどうなっているんだ、ゼネコンの大手六社、準大手九社、いろいろ言われておりますが、そういう点について具体的な建設省の調査、そしてその結果を報告するというふうなことはやられるのですか、どうでしょうか。     〔委員長退席、大島委員長代理着席〕
  188. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 不正、不当な行為があるかどうかは、これはやはりきちんと調べてみてもらいたいと思います。それが法に触れるようなことであれば、それはもとより法によって処理をしなければなりません。
  189. 東中光雄

    東中委員 不正、違法の行為があれば、それは犯罪を構成したかどうかということになりますが、業界として、構造的な業界としての金権あるいは腐敗の現象が起こっているということが、財界でも建設業界はといって言っていますね。そういう状態なんで、そこへ具体的に建設省が、あるいは政府として内容を明らかにする。それぞれの、三千万、五千万というような献金をしている業界がさらに裏献金をやっている。おまけに、ある大手ゼネコンが自民党政治家に対して献金リストを作成していたということが明らかになっていますね。そこで竹下さん、金丸氏をトップランクにしてSAクラスだ、そのほか首相、建設大臣経験者あるいは自民党派閥の領袖という人たちなど、建設省や建設業界への影響力が高い政治家ほどランクが高くなっておる、こういうことが新聞にも報道されました。そういう状態というものをちゃんとやはり明らかにして、それはやるべきじゃないと、そこヘメスを入れなければいかぬというふうに私たちは思っております。それが金権腐敗政治をなくしていくための政治改革なんだというふうに私たちは思っております。  金丸事件で明らかになった企業献金と公共事業をめぐるそういう構造的な金権腐敗の政治の実態にメスを入れて、そこから政治改革をどうしていくかということだと思うのです。そこヘメスを入れないままで政治改革だと言っても、あるいはその事態についてメスを入れないままで小選挙区制というようなことを言ったって、これは政治改革でも何でもない。多くの国民は小選挙区制では金権勢力の議席がふえるだけだ、こういう厳しい批判をしています。私は当然だと思います。世論調査でも、企業献金に厳しい条件をつけてもだめだ、全面的な禁止をすべきだというのが、朝日のあの世論調査では六五%というふうに出ております。  総理はこういう国民の怒り、批判にどうこたえようとされるのか、具体的にお示しを願いたい。
  190. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ただいまのゼネコンでございますか、もちろん不正があればこれは厳正に対処をいたします。また、やみ献金とおっしゃいましたか、それが税法上の問題があれば、これは当然税務の調査の対象にいたさなければならないところであります。
  191. 東中光雄

    東中委員 そういうことについて具体的なことは何も進んでいないわけですか。  私たちは、その根源になっておる企業・団体献金を禁止をする、企業献金を禁止をするということが一番抜本的な、構造的な金権政治を打破する中心になる、それが政治改革中心だというふうに考えておるんですが、その点については、今度の改革案でも政党への献金の枠を今までよりも倍に広げるというふうな形にさえなっていますね。企業献金の禁止、やみ献金はもちろん、企業の献金は禁止すべきだと思うんですが、その点いかがでございましょう。
  192. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 企業献金そのものにつきましては、私はやはり八幡製鉄に関する最高裁の判決に従ってよろしいというふうに考えておりますが、ただ、個人に対するものにつきましては、やはり特定の請託というようなものに関係を持ちやすいということもございますから、これは最小限度にして、やがてこれはもう、ごくごくノミナルなものであればともかくですが、個人の方は時間をかけて事実上はほとんどないというような状況にした方がいいのじゃなかろうか、私自身はそう思っております。
  193. 東中光雄

    東中委員 企業献金についての八幡製鉄の最高裁判例は、総理も答弁されておることがありますが、企業は、判決は社会的実在と言っていますが、総理の言葉では社会的存在である。だから社会的行動ができる、納税者なんだ、納税の義務があって納税をしている、こういうことであるから、自然人である国民と同じように企業も献金できるんだ、こういう趣旨のことを言われましたね。  しかし、企業と国民とは決定的に違う問題があります。企業は、あるいは会社はと言ってもいいと思うんですが、営利事業を行うことを目的にしているわけであります。しかし、社会的存在だから社会的行為を行うこともあるというふうにあの判決では書いていますね。その社会的行為というのは、例えば地域のお祭りに寄附をするとか、天災地変があった場合にそれに対して救助金を出すとか、これは社会的義務といいますか社会的行為というふうに言っているわけですね。それと政治献金が一緒であるなんて、これはとんでもないことであります。そういう点でいいますなら、特定の政治家、特定の政党に対する献金をやるということは、これは社会的行為だとは到底言えません。あの最高裁の判例というのは、そういう点では、専門家の議論としてはもうとにかく全く筋の通らない話だということになっていますね。  同時に、企業は営利事業を行うのが目的でありますから、選挙権はありません。国民は主権者であって、選挙をする権利というのは憲法十五条で明白に、公務員の選定は国民固有の権利である、憲法上の大原則であります。だから、そういう国民の、主権者である国民選挙権というものに対して、営利を目的にする企業がその金の力で、政党、政治家を支持することによってその選挙権の行使に影響を与えていく、これは結局、個人の選挙権、主権者の権利に対する侵害になるんだということで、これは許されないことだというふうに私たちは考えています。  納税者であるから、納税の義務を果たしているんだから自然人と一緒だ、こういう論理は通らないと思います。選挙権のない者は政治活動もできないんだ。それは現行法でも、例えば、外国人及び外国法人は選挙権を持っていないから、だから政治献金をすることができないことになっていますね。そうでしょう。だから、企業も選挙権がないんだから、企業の経営者があるいは重役が個人的にやるなら、それはそういう立場でやればいいでしょう。しかし、企業というそういう法人組織体が、営利事業をやるものが献金をするということになれば、それは結局見返りを期待するということでやっているのだと、財界人自身もそう言っていますね。そういう性質を持っているんです。そうしなければ背任罪になるんだという財界人の発言もあります。  そういう点でいいますと、企業献金というのは、国民の主権者としての権利を侵すものだという点で、しかもこういう腐敗現象が起こってきているということでありますから禁止をすべきだと思うんですが、いかがでございましょう。
  194. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 外国人が政治献金をしてはいけないというのは、納税者でないからということもあるかもしれませんけれども、主権国家として、よその国の人から政治をあれこれ言われることは適当でないという意味思います。  それから、企業につきましては、これは社会的存在でございますから、政策なり政策の動向について企業として支援をする、これは自由があると思います。ある種のイデオロギーはあってもらっては困るとかいったようなことについて、企業がそういう意思表示をすることは私は自由であろうと思います。
  195. 東中光雄

    東中委員 企業は納税者であって納税の、国税の負担をしておるんだから、だから選挙について、国政の施策について発言することができるんだという論理を、この前総理は展開されましたね。  しかし、納税者だから、納税の義務を負担しているから、だから政府の施策に対して発言できるから企業献金もできるんだという論理でいけば、外国人も、日本にいる外国人、外国法人は納税していますから、施策について物を言うことができるでしょう。しかし、選挙権がないから禁止をしているんじゃないですか。そういう点について、これは企業に依拠して、そして政治が、企業に奉仕をするような政治にならざるを得ない。私たちは、そういう点で禁止をすべきだということを強く申し上げたいわけであります。  このことは、アメリカの、現在行われていると一年に制定された連邦選挙運動法、これの規定を見ましても、正副大統領選挙、上下院議員等の選挙については、すべての会社、労働団体による寄附の禁止、あわせて外国人による寄附の禁止、あわせて政府契約者による寄附の禁止、こういった禁止条項、これは現行法で今生きていますね。  だから同じことなんです。そういう点は別だと今発言がありましたけれども、それはなぜそういうことなのかといえば、アメリカの判例でいつでも、例えば会社がそういう金を、会社の目的からいって政治に金を出すということはこれは許されないんだ。そしてまた、法人財産の使用によって公職の選挙の戦いに一つの能動的勢力となることを許すことは、選挙人の権利の侵害を認めることになるからである。これはアメリカの判決でありましたね。二つ言っているんです。企業は営業用の金を使うんで、それで全く関係のない選挙について、あるいはそれに金を出すということは、企業自体として許されない。もう一つは、選挙権を侵害するからいかぬのだ。そういう判決もあって、これは一九〇七年の判決ですが、それがあって一九〇七年にあの法律ができたのです。そして今もずっと続いているんですよ。それは、企業を否定するとかそういうことではなくて、ちゃんとまともに考えてください。  ただ、選挙権というのは国民固有の権利であると憲法十五条に書いてあるんです。企業の権利じゃないんです。企業はそれに金の力で影響を与えたらいかぬのです。発言することはできますよ、政治的なこと、自分の営業に関係することで。そのことと企業献金というのは違う。アメリカだってそうはやってないんだということをわきまえてやるべきじゃないかと私は思うのですが、いかがでしょう。
  196. 津島雄二

    津島議員 御答弁させていただきます。(東中委員「あなたに聞いてないよ、総理に聞いているんだ」と呼ぶ)
  197. 大島理森

    ○大島委員長代理 御静粛に願います。
  198. 津島雄二

    津島議員 東中委員の御質問の中に正確でないところが幾つかございますから、御答弁させていただきます。(東中委員「何を言っているんだ、あなたに聞いていませんよ」と呼ぶ)
  199. 大島理森

    ○大島委員長代理 御静粛に願います。
  200. 津島雄二

    津島議員 まず第一に、政治資金のあり方について御質問がございましたけれども、最初に申し上げたいのは、問題になっておりますのは違法の政治資金、政治献金でございまして、私の知る限り、合法的な政治資金で社会的な問題を起こした例はないと思っております。  それじゃどういう政治資金が違法になるかと申しますと、第一に、まず質的制限というのがございまして、外国から政治献金をいただくようなことはこれはあってはならないわけでございます。そのようなことはないと期待をしておるところでありますけれども、まずこれは絶対にいかぬ、こういうことになっておるわけであります。それからその次に、もろもろな量的制限を超えた、政治資金の制限を超えてはいけないということを申し上げておるわけでございます。  それと関係いたしまして、アメリカの法律についていろいろお話がございますから、ちょっとかいつまんで申し上げます。  これは、バックレー判決の原文でございまして、さっき委員は一九七一年に連邦選挙運動法とおっしゃいましたけれども……(東中委員「そんなことは言わぬでよろしい。何を言っているんだ、君は」と呼ぶ)
  201. 大島理森

    ○大島委員長代理 東中君、御静粛に、答弁中ですから。
  202. 津島雄二

    津島議員 この一九七一年の法律は一九七六年のバックレー判決で幾つかの点で違憲であると言われて、それを受けまして一九七六年に改正法が出ているわけであります。  違憲として言われている中で幾つかございまして、一つだけ申し上げますと、アメリカ憲法上、個人またはグループ、グループの中には企業も入りますけれども……(東中委員委員長、こういう質問妨害は許せぬ。何を言っているか、でたらめを言うな」と呼ぶ)これによるところの独立した政治上の支出を制限するということは違憲であると判示をしておるわけであります。事実でございますから、申し上げさせていただきます。
  203. 東中光雄

    東中委員 津島君の今の発言は、企業・団体献金禁止の規定が連邦の選挙運動法の中にあるということを私が指摘したのについて、それには一言も触れない。外国人の禁止があるということは、私が言うたことだ。それを言っただけですね。バックレー判例というのは、これは量的制限のことについての判決であって、全然関係ない。七六年も、七四年の体系は変わってないんです。だから、企業献金が禁止をされておる、労働関係も禁止をされておる。禁止されているということを私が言っているのに、それについて答えないで、そしてそれ以外の私の触れていない、関係のないことだけ述べた。アメリカの最高裁の判例は、企業献金禁止は合憲であるという建前を一貫して貫いています。何を言っているんだ。  時間がありませんから、次に進みます。  金丸事件からいいまして、公共事業受注と政治献金のかかわりを断ち切ることが緊急に必要になっていると思うのです。国の公共事業の受注企業については、公職選挙法上、百九十九条で選挙に関する寄附を禁止をしています。公共事業を受注している、例えばゼネコンなんか大抵そうですね、あるいは防衛産業もそうです。そういう受注をしている企業は、選挙活動に対する寄附を禁止をされているのです。それは、腐敗をなくし、公正にするために。  ところが、選挙のときは禁止するけれども政治献金はいいんだ、これは通らないことですね。先ほど言いましたアメリカの法律だって、企業じゃなくて個人でも、政府と契約している関係の者は寄附を禁止するというふうになっているのです。日本は、選挙の寄附は禁止をするけれども、日常的な政治活動の寄附、自民党への寄附、一社で二億円も、こんなものを許すというのは、これはもう筋が通らない。受注企業はそういう寄附は一切禁止すべきだ、企業・団体献金は禁止すべきだと思うのですが、いかがですか。(発言する者あり)
  204. 大島理森

    ○大島委員長代理 傍聴者は静かにしてください。
  205. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは私も常識として知っておりますけれども、そのところの条文をちょっと政府委員に読んでもらいます。きちんと条文に書いてあるはずです。(東中委員「だから、選挙に関する寄附じゃないか」と呼ぶ)ですから、そこのところを条文を読みますから、ちょっとお待ちください。
  206. 東中光雄

    東中委員 条文を読んでもらう必要ないです、私は条文、十分読んできて言っているのだから。だから、百九十九条は、選挙に関し受注の会社は献金してはならぬ、寄附してはならぬと、はっきりそうしたのです。しかし、それが選挙に関する寄附だけに限定している。政治活動に関する寄附も当然禁止すべきじゃないか、そうでなければ筋が通らないと、私は今立法政策を言っているのです。百九十九条の解釈を言っているんじゃないのです。百九十九条では、受注企業について選挙に関する寄附を禁止していますね。それをなぜ日常的な政治活動に対する寄附の禁止をやらないのか。それは何としても企業からの金をもらって自民党が糧道を断たれないようにするんだと言うのだったら、それはそれでいいですよ。筋が通らぬじゃないかということを言っているのです。自治大臣、答えてください。
  207. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 東中委員にお答えいたします。  私は、最高裁の八幡製鉄の判例は非常に正しいものだと思っておりまして、民主国家である以上、最高裁判例に従うのは当然でありますし、また、企業も当然社会的な存在でありますから、その意味において、政治資金規制の関係は各党で真剣な御論議をいただいておりますから、それに従って結論の出たところをしっかりと守らして法制化していく、こういうことであろうかと思います。
  208. 東中光雄

    東中委員 まるっきり答えになっていません。最高裁の判例は、違法でないと言っているだけであって、そういうものは立法政策上、あの判決の一番最後に書いてありますよ、立法政策上やるべきことだと書いてあるでしょう。だから、公共事業の受注者は、国の公共事業をやっている者は、これはできない。同時に、国から補助金、給付金をもらっている者は献金はできない。これも二十二条の三にちゃんとある。これを厳格にやるべきだ。  ところが、技術開発補助金などということで三十億あるいは五十億もの補助金を毎年もらっているそういう三菱重工や日立製作所、東芝、石播、そういった大企業が四千万、五千万というふうな寄附をやっています。これは本当に法律の趣旨からいっても、やはり企業献金を禁止する、ここを、根源を断つということが必要だと思います。今こそ金権腐敗政治をなくするために企業・団体献金を禁止すべきだということを、これこそが政治改革だ……
  209. 大島理森

    ○大島委員長代理 時間が参りましたので、終わってください。
  210. 東中光雄

    東中委員 自民党が政治と金の問題を選挙制度にすりかえて、そして小選挙区制を言う。何回も……
  211. 大島理森

    ○大島委員長代理 質問者に申し上げます。  時間が参りました。終わってください。
  212. 東中光雄

    東中委員 時間を妨害されたのは津島さんです。質問してないのに発言をした。自民党の発言を許したということについて、私は質問時間を、今さように言っておるわけであります。  小選挙区制導入の、そんなものをやって政治改革と言えるか、このことをはっきりと申し上げて、むしろこれは、自民党の一党永続政権をつくるための、戦後何回もやろうとしてできなかったことをやろうというだけじゃないか、政治改革の名で。こういう政治反動は断じて許されぬということを申し上げて、終わります。
  213. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 先ほどの発言の続きでありますから、一言申し上げます。  そういった不祥事件があったということと新しく企業からの政治献金を禁止するということは別問題であって、正しい対応を示していけばいいのである。そのために各党が真剣に議論をされておるわけでありますから、その真剣な各党の議論を我々はまた真剣に政府として見守らせていただいておるわけでございます。御了解を願います。
  214. 大島理森

    ○大島委員長代理 伊藤英成君。
  215. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 総理にまず伺います。  日米首脳会談と円高の問題についてお伺いをいたしますけれども、総理が四月十六日の日米首脳会談から帰られた後に円は急騰をしております。そして、本日は百十円を切りまして百九円台ということであります。  まず最初に伺いますけれども、両首脳の記者会見の折に、クリントン大統領が円高容認発言をされておりますが、私は、これだけ重要な問題は事前に相談があったんではないか、こう思うんですが、総理は事前にこのことについて承知をしておられましたか。
  216. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 クリントンさんと私との話し合いの中ではそういうことは出ておりませんで、済みました後、記者会見をされた中でクリントンさんが言われましたのは、こういうようなことを言われたのでございますね。一般的に今のアメリカ貿易のインバランスを直す道として幾つかのことが考えられるといったような、そういう議論の中で円に触れられたということでございました。もちろん、そういうことを事前に、言われることを私は知っておりませんでしたが、クリントンさん自身が円が高いことがいいんだということを言われたのではない、私は聞いておりましたけれども、そういう意味ではなかったようです。
  217. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今回のこの円高の、輸出産業を初めとして日本経済に与える影響というのは、私は大変重大なものだ、こういうふうに思うんですね。  それで、総理はこの状況につきましてどのくらい深刻に受けとめておられるのか、そしてこれからどういうふうに対応をされる御方針か、伺います。
  218. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 我が国がまだ不況から脱出をしたと申し得ない状況でございますから、そういう中で急激な円高が、しかも多少投機的なものであればなおさらですが、あることは好ましくないという判断をいたしております。ここで起こっておりますことは、ややそれに類するものだと思いますから、恐らく通貨当局においてそれに対する対処をいたしておると考えます。
  219. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 政治改革の問題について伺いたいと思うんですが、まず最初に、私は、まさに私も、今こそ本当にこの改革をなし遂げなければならない、こういうふうに思うんですね。  しかし、最近非常に気になるのは、自民党の皆さん方が特にそうだと私は思っているんですが、制度が悪いから制度が悪いから、だから制度を変えなければならないという話が非常に多いんですね。しかし、どんなに制度を変えても、それをみんなが守らなければ、これは全然だめですよね。  例えば、今ここに写真がございます。これはベニヤ板で裏打ちされた自民党の現在の代議士、こういうことなんですね。裏張りはいけませんよね。これが今もだっと張られたりしているんですよ。これは明らかに公選法違反であります。実際に、聞いてみますと、撤去命令も複数回既に出されているそうでありますが、要するに、こういうような状況で本当に政治改革はできるんだろうか。守らなければならない今の法律をまずは守ることということだと私は思うんですね。そういうことがまさに改革の第一歩だということをこれは申し上げたいと思います。  そこで、総理に伺いますが、今、政治改革政治改革と、こう言うんですね。政治改革の最大の目的は何だろうか。最大の目的は何だろうか。私は、実はいろんな制度云々は、本当はこれは手段ですよね。政治改革の目的はあくまで、最大の目的は、国家として本当に適切に、適切にというのがまた重要なわけでありますが、その意思決定が行われるようにされること、これが最大の目的だ、こう思いますが、総理はいかがですか。
  220. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 政治改革の最大の目的、それはいろんな見方がありますけれども、ただいま伊藤委員の言われましたことも確かに最大の目的の一つ思います。
  221. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私はそう思っているんですね。適切に本当に国家として意思決定ができるためにはどうした方がいいんだろう、そして、そういうふうに考えて、だから国民に本当に信頼される政治にしなければならないよ、そしてまた、そういうふうにしていくためにも政権交代可能な体制をつくることが必要だということになりますよね。これは私もそう思います。だから、私も、今の日本政治状況の中において、本当に日本の政界再編もそのためにぜひ行われるように、また行いたいな、こんなふうに思います。  そういう意味で、この間来、この政治改革のキーワードって何だろうかという話がここでも議論されました。政治改革のキーワードは何だろう。そのときに、自民党の委員の方もこう言うわけですね、政権交代の可能性をつくることだ。そしてまた、本会議のときにも小渕委員も言われたりいたしました。政権交代を可能とするための小選挙区制を主張するんだよということを言っておられました。  あるアメリカ政治学者はこういうことを言っておりました。私の記憶が間違っていなければこういうふうに言っておりましたけれども、かって政権政党にあるところが自分たちの政権の座をおりやすくするような提案をした歴史はないということを言っておりました。そういう意味では、今回自民党が言われていることは非常に価値あるということなんだと私は思うんですね。  そういう意味で再確認いたしますが、自民党は政権をおりることになるかもしれないけれども、日本の将来のためにそれは非常によいことだから政権交代可能な体制をつくろう、こういう意味ですね。総理にお伺いしておりますが。     〔大島委員長代理退席、委員長着席〕
  222. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 提案者から既に御説明をいたしておると思いますが、国の現在、将来を考えますと、やはりそういう制度をつくっておいた方がいいという判断をしておるわけでございます。
  223. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 そういうふうに考えたときに、今、日本の実際の政治状況を見たときに、じゃどういうふうになったらより政権交代可能な体制になるのだろう、そういう政治構造になるのだろうと考えたときに、このこともここで議論もされたりいたしました。なぜ日本はそういうふうにならなかったのだろうか。いろいろな問題があるかもしれない。  しかし、制度の問題よりは、これは若干残念でありますが、野党に対する国民の、政権担当をすることに対する不信ですね。国民がそんなに信頼しなかったから今日の状況になったという議論もここでもされたりしておりました。そういう意味からすると、本当に現実的に日本の将来のことを考えたらどうなった方がいいのだろうか。社会党さんもかもしれませんが、一番大きな意味を持つのは自民党が割れることかもしれないということですね。日本の将来を考えればそういう話なんだろうと思うのです、先ほどの話からすれば。  総理にお伺いいたしますが、もしも自民党の一部の方がそのために分裂をしよう、あるいは党から離脱しようとしたような場合には、ああ、そのことは日本の将来のために政権交代をし得る、そういう形になるかもしれないという意味で非常に価値ある行動であろう、こういうふうに私考えられますね。そういう意味で、総理は、もしもそうした行動があったとしたときには、日本の将来のために歓迎をされますか。
  224. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 いろいろお考えいただいておりますけれども、公の立場としてでなく申させていただければ、やはり野党に政権担当能力を持っていただきたいということを私ども長く考えてまいりました。
  225. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 先ほど日本のこれからの政治改革は、日本がどういう政治構造になればいいのだろうかという意味で、自民党さんの主張は、あくまで政権交代し得るようなそういう可能性のある体制にぜひ日本を持っていきたいという、非常に美しいといいましょうか、価値ある立場で提言されてきたのだと私は思うのですね。もしもそうならば、今私が申し上げたようなことが日本の本当に政権交代するような政治勢力になるかもしれないということであれば、私は、本当に歓迎もしながら、したがって、逆に言えば邪魔をしないようにと言ったらちょっと表現がよくないかもしれませんが、今は日本はまさにそういう時期にあるのだろう、こう思うのですね。また、そんな気持ちでぜひこれからの政治に対していただきたい、こんなことを思います。  次に、今選挙制度改革等を議論しているわけでありますが、私は、やはり一番大事なことは、民主主義の原則に照らしてどうなんだろうかというふうにこれは考えなければならぬと思うのですね。ひょっとしたら今いろいろなものが、ムードやそんなもので議論されたりしてはならない。本当に日本選挙制度はどうあるべきか、民主主義の原則に照らしてどうあるべきかと考えるべきだと思うのです。私は、民主主義の原則は三つあると思います。  一つは、何といったって主権在民でなければならぬ。これは実際には一票の重さをどれだけ公平にするかという話になるでしょう。二つ目は、どれだけ少数意見と多数決原理を尊重するかということ、よく民意の反映という話をいたしますよね、ということが二つ目。三つ目には、どれだけ国民政治参加に関心を持つか、政治参加を保障するかということでしょうし、そしてそのためには、選挙制度として考えれば、どれだけ顔の見える選挙をやったらいいだろうかということだと私は思っています。  だから、そういう意味でいきますと、第一の一票の格差、一票の重さということについて言えば、これはもう私から申し上げるまでもなく、小選挙区制を入れたやり方、例えばそれが五百選挙区であろうが二百選挙区であろうとも、今まで日本のやってきた定数是正の状況からすれば、私は、これはなかなか大変だろう、五百や二百の小選挙区で定数是正ということが本当にうまくやっていけるだろうかということを非常に心配をいたします。そういうことが一つ。  二つ目には、今二つ目に申し上げた少数意見の尊重、民意の反映ということでありますが、このことについてお伺いしたいと思います。  国民の意思の公正な反映をしなければならぬ。それで考えたときに、小選挙区制は、文字どおり、これは今までここで議論もされてきたとおりに、少数意見を切り捨てるといういわば民主主義の大原則に反するものだと思うのですね。それで思い起こせば、一昨年の政治改革のとき、あのときに自民党は小選挙区比例代表並立制を提案いたしました。当時、海部総理はこう言ったのですね。民主政治のもとでは少数意見の尊重が重要であり、この観点から比例代表制を取り入れたと答弁をされました。今回、この比例代表制を削除したことは、民主政治基本である少数意見の尊重は必要ないだろうと判断したのでありましょうか。
  226. 塩川正十郎

    ○塩川議員 民意を尊重するという精神は我々はちっとも変わっておりませんし、大体、野党の皆さん方がよくおっしゃる死に票というのが私はどうにも理解できないのです。死に票を問題にする前に棄権を防止するということの方が大事なんだろう。棄権される方が多いということ、これはどこに問題があるかというと、やはり政治に活性化がないこと。そういうことから見まして、もし民意をくみ出すということになるとするならば、全員が投票に行っていただくような生き生きした政治、それは政治の責任の所在が明確になる政治、私はこういうものを思っております。そういう意味において我々は現在の法案提出している、こういう次第なんです。
  227. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今塩川議員の御答弁は、私から見ますと非常に残念であります。今私たちが何を議論しているんだろうか、本当に日本政治はどうあるべきだろうか、そういう意味議論をしているときに、民意の反映という話の制度の問題と、そして、そこのところの投票率の問題云々は全く別次元の問題だと私は思います。今まじめに、真摯に日本の制度はどうあるべきかという話をするわけでありますから、そういう意味で考えていただきたい。恐らく今の説明をせざるを得なかったのは、今回の小選挙区制という自民党が提案されているものが、ああ本当にこの民主主義の大原則からすればやはり問題だなと思われている証拠だろうと私は思っております。
  228. 塩川正十郎

    ○塩川議員 それじゃ、投票された方の意思というものは、民意である人と民意でない人とあるのでしょうか、ちょっとお尋ねいたします。
  229. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 もう私がここで今さら申し上げるまでもなく……(発言する者あり)本当に、今同僚議員から話がありましたように、それは時間のむだであります。小選挙区制でやったときに何%とれば当選するんだろうか、そのときに他の候補者に投票した人は議員を送ることができないわけでありますから、そんなことは申し上げるまでもありません。
  230. 塩川正十郎

    ○塩川議員 投票したら何らかの議席に結びつかざるを得ないというそういう発想が民意の尊重なんでございましょうか。それとも、民意の尊重というものは、いわば選んだということがすなわち民意の尊重なのか、いずれでしょうか、ちょっとお尋ねいたします。
  231. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私には余り時間がありませんので、これはまたの機会に、そうさせていただきます。いいですか。  そして、先ほど私は三つの原則を申し上げました。第三の原則を申し上げれば、これはあくまで国民政治参加をできるだけ保障するような形にしようということで、だからできるだけ顔の見える選挙にしましょうよというふうに考えますよね。そういうふうに考えたときに、今提案されている、これは自民党案にしても、これは選ばれる過程のことを私は念頭に置いて申し上げているのですが、自民党案にしても社公案にしても、この問題についてはやはり問題があると考えなければなりません。だからこそ、私ども民社党が都道府県単位の非拘束名簿方式の比例代表制を提案しているのは、今私が三つの原則を申し上げましたけれども、一票の重さの問題にしても、これは定数是正を自動的に調整できる、一票の重さを自動的に調整できる制度でもあります。そしてまた、顔の見える選挙でもある等々、それぞれ三つの原則を私は最も満たしている、こういうふうに思っておりますけれども、そういう意味で、ぜひこれは皆さん方にも我が民社党案を真剣に御検討を願いたいと思っております。この選挙制度は実は恐れからですね、本当にどうするかは。そういう生味で、ぜひ御検討をよろしくお願いをしたいと思います。  もう一つ、これは小選挙区制の問題について伺いたいわけでありますが、この小選挙区制は、もしもやろうとしたときには、どういう条件が本当は必要なんだろうかということを考えるために申し上げるのですが、何といったってこの制度は、実際に見てみますと、極めて議席を固定化させるんですね。新人の進出も難しくさせる傾向が強い。これは、今まで行われております例えばアメリカの例を見てもしかり、あるいはイギリスの例を見てもしかり。今このときに私はそれぞれのデータでお話をするのは省略をいたしますけれども、いずれにしても事実が物語っておりますよ。  ある学者がこういうふうに言っています。小選挙区制が比較的抵抗なく受け入れられる条件というのは、そのときはどういうときかというと、地方自治の強力な社会になっていなければならない。これは物すごくわかりますよね。わかることであります。なぜかと考えれば、日本のように大変な中央集権国家になっていると考えましょう。そうしますと、政治家が地方と国とのパイプ役になる。したがって、そのために議席も固定化される、あるいはそのためにまた政権交代も起こり得ないというふうになっていくと私は思うのですね。  そうすると、これは自治大臣にお伺いしますが、地方分権が十分に行われていなかったときには、今私が申し上げたようなことが起こりますよ。したがって、そのときにはまさに百害あって一利なしの状況が生まれるだろう、こう思いますが、いかがですか。
  232. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 伊藤委員にお答え申し上げます。  小選挙区制では民意の変化が非常に鋭敏な形であらわれるわけですね。例えば四年前の参議院選挙のような、非常に民意の変化が敏感にあらわれた、こういうことになりますと政権の交代が起こりやすい。したがって、言われるように、小選挙区制になると非常に自民党に票が集まるというようなことは私はあり得ない、むしろ議員の世襲化とかそういうような議席の固定化ということは必ずしも進まないと思うわけでございます。  政治改革の断行は、今後の日本あり方を考えていく上で、御指摘のように地方分権の抜本的な推進も現下の重要課題であると考えております。この点において、民社党におきましては、従来から主要な政策課題の一つとして地方分権を掲げられておりますし、伊藤委員におかれましては、党の政策審議会の中心として御活躍をしていただいておるというふうに承知をしております。最近では、そのための具体的な方策として、地方分権推進基本法の制定といった傾聴すべき御意見も出しておると伺っております。  総理が御提唱されましたように、生活大国を実現するためにも、行政事務はできるだけ住民に身近なところで地方公共団体の責任において行うということが望ましいわけでありますから、国から都道府県や市町村への、地方への権限移譲をしっかりとやっていただいて、そして地方公共団体の自主性、自律性を強化していくことが地方分権にとっても必要であり、またそれが今回の政治改革の、午前中にも申し上げましたが、キーワードになっておる、こういうふうに思っております。
  233. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 地方分権なるものが極めて十分になっていなければ、これは必ず固定化する。そうでなくても固定化すると私は思うのですね。だから、そういう意味でも地方分権もやらなければならないし、それから規制緩和とかいろいろないわゆる行政改革、これはいわば政治改革と全く不離の関係一緒にやらなければならぬという問題ですよね。だから、これはそういうふうに思って、これはいわば選挙制度を直すときにはもちろんでありますが、そうでなくても当然やらなければならぬ、これは今まで申し上げてきたとおりでございますが、ぜひそういう考え方で遂行していただきたいと思います。  総理に、これからのこの政治改革法案選挙制度中心として、この問題についてどういうふうに取り組んでいかれるかについてお伺いしたいと私は思っているのですが、少なくとも今の状況では、これは、各党がみずからの案に固執しておればもちろん絶対に成立をしないというわけですよね。したがって、各党がお互いにこれは妥協するといいましょうかよりよいものにするためにということが起こらなければ、これは不可能であります。総理も、今国会での実現への不退転の決意も今までもされております。  そこで伺うわけでありますが、これから本当にやろうとしたら、やはり私は、それぞれの政党の中でもこれは自民党が最も歩み寄る以外に方法はないだろうと思っております。なぜかといいますと、まず第一は、これは先ほど私が民主主義との関係でもいろいろ申し上げましたけれども、単純小選挙区制そのものにやはり大変大きな欠陥を持っているということがある。第二番目は、今日の政治不信をもたらしている最大の方は、私は自民党が当事者であると思っています、最大のものが。だから、そういう意味で、これからまさにこの政治改革の実現に向けて総理のリーダーシップこそが必要だ、こういうふうに思うのですが、総理は、そのリーダーシップを発揮して今国会でどうしても成立をさせるというその決意はございますか。
  234. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 当委員会も連日御熱心に御審議ではございますが、まだそう長い日時がたったわけではございません。いろいろ御議論の中から必ずや一つの結論を生み出していただけるだろう、そういうふうに信じております。また、そうでなければ実際国民の信を回復することは難しいと思いますので、委員会におかれまして十分御審議をいただきまして、必ずや抜本政治改革の案をおつくりいただける、御可決をいただけるものというふうに信じております。
  235. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 これからどういうふうになっていくかという意味では、これからもさらに審議をされていかなければならぬ。そして、現実には、先ほど申し上げたように、それぞれの党が今のままだと、同じ考え方で固執しておればそれはまとまらないということになるわけですね。だからこそ私どもは、民社党案を第三の案として、非常にこれは考えるべきものですよという話をしてまいりました。  これはもう一度繰り返しますと、民社党は、都道府県単位の非拘束名簿比例代表制というふうになっています。それは、先ほどもこれも申し上げました。一つは民意の反映という意味においても、二つ目には一票の重さを自動的に調整するという意味においても、第三には顔の見える選挙になるという意味においても、私は、制度の本質論からすればこれはすばらしい案だ、こう思うのですね。  総理、この民社党の案は、与野党がこれから考えていく上での第三の案として極めて検討に値する案と思われますか。
  236. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 委員会において御熱心な御審議が行われる過程におきまして、いろいろ御議論になるのではないかと想像いたします。
  237. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 時間も参りましたので、最後にもう一点だけ。  今こういう状況の中で、民間政治臨調が小選挙区比例代表連用制というのを提起をされました。この案についてどのように思われるか、それについてお伺いをいたします。
  238. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 概要を報道では読みましたけれども、まだ直接にお話を伺っておりませんので、十分判断を申し上げる用意がございません。
  239. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。
  240. 田邉國男

    田邉委員長 次回は、来る四月二十三日金曜日午前九時理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二分散会