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1993-04-20 第126回国会 衆議院 政治改革に関する調査特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月二十日(火曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 田邉 國男君    理事 大島 理森君 理事 北川 正恭君    理事 中西 啓介君 理事 野田  毅君    理事 浜田卓二郎君 理事 左近 正男君    理事 堀込 征雄君 理事 伏木 和雄君       石井  一君    衛藤征士郎君       大原 一三君    奥野 誠亮君       佐藤謙一郎君    坂本 剛二君       自見庄三郎君    島村 宜伸君       武村 正義君    津島 雄二君       額賀福志郎君    葉梨 信行君       深谷 隆司君    穂積 良行君       細田 博之君    増子 輝彦君       山本 有二君    阿部未喜男君       池田 元久君    岩垂寿喜男君       大畠 章宏君    菅  直人君       小林  守君    鈴木喜久子君       田並 胤明君    土井たか子君       細川 律夫君    松前  仰君       河上 覃雄君    北側 一雄君       草野  威君    木島日出夫君       川端 達夫君    小平 忠正君  出席政府委員         自治大臣官房審 谷合 靖夫君         議官         自治省行政局選 佐野 徹治君         挙部長  委員外出席者         議     員 伊吹 文明君         議     員 石井  一君         議     員 小渕 恵三君         議     員 塩川正十郎君         議     員 武村 正義君         議     員 津島 雄二君         議     員 西岡 武夫君         議     員 額賀福志郎君         議     員 深谷 隆司君         議     員 小澤 克介君         議     員 佐藤 観樹君         議     員 早川  勝君         議     員 細川 律夫君         議     員 松原 脩雄君         議     員 井上 義久君         議     員 北側 一雄君         議     員 日笠 勝之君         議     員 渡部 一郎君         衆議院法制局第 内田 正文君         一部長         衆議院法制局第 臼井 貞夫君         一部副部長         自治省行政局選 松尾 徹人君         挙部管理課長         自治省行政局選 中野 正志君         挙部管理課長         自治省行政局選         挙部政治資金課 大竹 邦実君         長         特別委員会第二 田中 宗孝君         調査室長     ————————————— 委員の異動 四月二十日  辞任        補欠選任   戸塚 進也君    山本 有二君   後藤  茂君    鈴木喜久子君   細川 律夫君    松前  仰君   鍛冶  清君    草野  威君   山口那津男君    河上 覃雄君   川端 達夫君    小平 忠正君 同日  辞任        補欠選任   山本 有二君    坂本 剛二君   鈴木喜久子君    後藤  茂君   松前  仰君    細川 律夫君   小平 忠正君    川端 達夫君 同日  辞任        補欠選任   坂本 剛二君    戸塚 進也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案梶山静六  君外二十三名提出衆法第六号)  衆議院議員選挙画定委員会設置法案梶山静  六君外二十三名提出衆法第七号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案梶山  静六君外二十三名提出衆法第八号)  政党助成法案梶山静六君外二十三名提出、衆  法第九号)  公職選挙法の一部を改正する法律案佐藤観樹  君外二十四名提出衆法第一〇号)  衆議院議員選挙画定等審議会設置法案(佐  藤観樹君外二十四名提出衆法第一一号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案佐藤  観樹君外二十四名提出衆法第一二号)  政党交付金交付に関する法律案佐藤観樹君  外二十四名提出衆法第一三号)      ————◇—————
  2. 田邉國男

    田邉委員長 これより会議を開きます。  梶山静六君外二十三名提出公職選挙法の一部を改正する法律案衆議院議員選挙画定委員会設置法案政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党助成法案並びに佐藤観樹君外二十四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案衆議院議員選挙画定等審議会設置法案政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党交付金交付に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  本日は、特にテーマ別質疑として、梶山静六君外二十三名提出公職選挙法の一部を改正する法律案及び衆議院議員選挙画定委員会設置法案並びに佐藤観樹君外二十四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案及び衆議院議員選挙画定等審議会設置法案の各案について質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。穂積良行君。
  3. 穂積良行

    穂積委員 おはようございます。  先週の衆議院会議及び当特別委員会におきましてのまことに画期的な真剣な議論を通じまして、選挙制度に関しましてはほぼ議論が出尽くしつつあるのではないかと思います。特に派閥及び金権政治をもたらしたとされている現行の中選挙制度について、これを改めるべきかどうかということと、それから、これを改める場合に、提案されている自民案社公案のいずれをとるべきか。また、それぞれの長所と短所についてはどう見るべきかということについて議論がされたわけでありますが、その結果明らかになりましたのは、自民案社公案いずれも双方が、それぞれみずからの提出案最善案であると主張されて対立していると事実であります。  私は、お配りいただいていると思いますが、質問要旨をごらんいただければおわかりいただけると思います。基本的立場は、こうした状況の中で自民案社公案それぞれを固執して歩み寄らずに、いずれも不成立に終わらせてよいのか、それでは国民が納得しないのではないか。我々は今こそ、英知を結集して、真剣に検討を進めて、これを打開する、すなわち何とか合意を目指して検討を進めるということが必要だろうと思います。そうして、政治改革の柱としての選挙制度改革を実現すべきであると思います。こうした立場で私は質問をさせていただきます。  なお、肝心なことでありますが、もし真剣に政治改革考えるならば、政治日程をどうしても頭に置かなければなりません。もうわかり切ったことですが、来年二月には我々は任期切れとなります。待ったなしの期限であります。次の総選挙から新しい制度を実施しようとすれば、選挙区割り法律措置やら周知期間やら、あるいは各党候補者選定といったいろいろな難しい問題をクリアした上で選挙をしなければならない。そうした必要な期間考えますと、今国会で成立させるとすれば、できるだけ早期に成立させなければならないと思います。そして、間に合わないということで、今度の選挙を新制度で行わずに次の次の選挙からやろうというようなことになったら、どうなるかわからない。現行制度のもとで選出された国会でどういう議論になるか。ここは、鉄は熱いうちに打てということわざを念頭に、真剣に早期に焦点を絞って、建設的な話し合いを進めるべきだと思います。  それでは、まず確認的にお伺いしますが、自民党側は、自民党案を妥協なしに成立させる可能性は、私はこれまでの論議を通じてこれはないと思いますが、いかがでしょうか。仮に衆議院自民党が多数決で通しても、参議院に送った場合に、参議院現状からはこれは野党の諸君、これを同意して可決に持ち込むということはまずないのではないかと思います。これは、今お話がありましたけれども、常識だと思います。しかし一方、自民党側は、社会党公明党提出された案について、自分たち党内をクリアしてこれに全くそのまま同意するという可能性はあるでしょうか。これはまた、全くないと私は思います。  この辺について、まず塩川先生いかがでしょうか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  4. 塩川正十郎

    塩川議員 穂積さんには大変真剣に、深刻に考えていただいていることを感謝いたします。しかし、我々は自由民主党といたしまして、長年にわたりまして議論議論を重ねまして、現在の案が最良の案として提出した法律案でございますので、そう簡単にあきらめないで、ひとつ真剣に野党皆さん方もぜひこれに賛同してくれるように働きかけていきたいと思っておりますし、またその努力も重ねたいと思っております。
  5. 穂積良行

    穂積委員 それでは、このことについて社会党さん、公明党さん、いかがごらんになっておられるでしょうか。
  6. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 先週十二日に本会議質疑を始め、当委員会としては二日間総括質疑をやったわけでございます。この時点で、私たち党内的にもいろいろ議論を積み重ねてやってまいりました小選挙併用型の比例代表制、最も私たちは合理的だと思っているわけでございます。自民党さんが六割とりたければ、小選挙区二百に比例代表戸とればちゃんと六割とれるわけでありますから、初めから六割を組み込むというようなそういう案ではなくて、その意味では国民民意を極めて正確に反映をする案だということで、私たち自信作でございますから、より論議を深めていただいて、ぜひ私たちといたしましてもこの最善策を実現させていくというのが、私たちに課せられた責任だと思っております。
  7. 渡部一郎

    渡部(一)議員 お答えいたします。  穂積先生の多年にわたる御所論につきましては、人づてに承っていたことはございましたが、きょうこうして直接お目にかかってお話を伺う。チャンスを得まして、初めて明快な形で承りました。御所論のほどに敬意を表するものでございます。  私どもといたしましては、ただいま佐藤委員からお返事をいたしましたように、社公案につきましては一つの理想的な形で練り上げたものでございまして、これはなかなかのものであると実は自負をいたしているわけでございます。論議の途中で、単純小選挙区制というのは相当無理のあることもかなり率直に申し上げましたので、議会の中におかれる各議員におかれましても、相当その意見に賛同してくださる方もふえてきたという気分を持っているわけでございます。しかしながら、今穂積議員がおっしゃいましたように、私どもが旧来型の論議をいたすといたしますならば、衆議院参議院両方とももうつぶれてしまう、廃案になってしまう。そして、国民の一番怒っておられますところの政治不信というものがますます増幅することは明らかでございまして、そのような事態にならないように、私たちは全力を挙げて進む必要があるのではないかと考えているわけでございます。  各党も、この席上で述べた御論議では、何とかして今国会中にまとめたいということは表明されました。強弱はいろいろございますが、表明されました。私は、この審議の最初にそうでございましたから、今もまたその決意をもう一回強固にいたしまして、今週の議論を進めていくのが正しいのではないか、こう思っている次第でございます。
  8. 穂積良行

    穂積委員 今お聞きいたしましたように、それぞれが我が方の案が最善だと思う、入念に検討を重ねてきた結果だ、こういうお話でございますが、それでは、自分の方だけが最善の案だと言いましても、相手がそうでないと現に言っているわけですから、それは、まあ口は悪いが、片方はひとりよがりということになりかねない、そういう状況だと思います。  そこで、重ねてお聞きしますが、この両案がそのまま成立しないとなった場合には、いわゆる自民社公案が相打ちで、結果は現行の中選挙制度が続く、こういうことでよろしいんでしょうか、こういうことでございます。  実は、中選挙区制の方が実は本当はいいと思うんだという、本音でそう考えていらっしゃる国会議員がかなりいるのは事実であります。我が自民党の中でも、言うをはばかるかもしれませんが、元議長経験者の方とか有力な方もそういうことをしばしばおっしゃいました。野党の方でも社会党の、この社公案を了承するについては党内で激しい議論があり、根底には現在の中選挙制度のままでそこそこいけるじゃないか、いいじゃないかという雰囲気があったと、これも人づてにお聞きしておりますがね。それ、いかがでしょうか。  この中選挙制度は、これは後ほど申しますけれども、長い歴史がございます。長い歴史の上にここまで行き着いてしまった。現在の金権腐敗と言われる政治状況を打開するために、心機一転この選挙制度そのものを変える、そうして政治資金規制や何やらを含めて政治改革を達成するという、いわゆる一括方式、そういうようなことが双方から言われておるわけですが、そういう意味で、この中選挙区制は少なくとも直したい。これは、先送りにして、資金関係等だけ一部食い逃げ的に成立させるかということではだめだというふうにお考えかどうか。そこを、双方からどうお考えかを、これも簡単にお答えいただきたいと思います。いかがでしょうか。
  9. 石井一

    石井(一)議員 穂積議員は、我が党の選挙制度調査会にも大変熱心に御参加をされた、言うなれば超一流の議員でございまして、その間我が党でどれだけの議論をしたかということを、十分参画をされまして、御理解をされておる方でございます。  そういう意味で、私、くどくどとここで御答弁をする必要もないと思うのでございますが、我が党におきましては、当然、これだけ長い間この制度が続きまして、その間議席を保持されてまいりました議員立場としては、率直に申しまして、地元に対しますこれまでの貢献、評価、そしてなじみもございますし、後援会の組織もできております。知名度もある程度通っておるというような状況になっておる中堅以上の議員の方の立場からいたしますと、自分を生んだその制度というものを切り捨てるということは、何と申しますか、そこには非常に耐えがたい一つ気持ちを持たれるというのは当然でございまして、現在の制度を維持しようという議員自民党の中にも相当存在しておるということは御承知のとおりでございます。特に当選五期、六期以上の中堅あるいは古手の議員の中に、中選挙支持者が多いということも御承知のとおりでございます。  しかし、若い議員の切実な声というのは、激しい同士打ち、また、昨今の経済情勢の中での厳しい資金の負担、過当な競争の中から、この制度を続けるということは大変大きな問題があるので、まあ新しい若い感覚もあると申してもいいと思いますけれども、非常に改革派が多い。言うならば、党内は新旧の構造の中にある程度そういう色分けもできるというふうな状況になっておることも確かでございます。しかしさらに加えて、最近の国民の中にあります政治不信等々のそういうふうな状況をも考えますと、この際、我々は個人の利害とか主張というふうなものをかなぐり捨てて、新たな角度から新しい改革を行わなければいけない。  その場合にどの制度がいいのかということで、最終的に審議審議を重ねた結果、党利党略ということでなく、現状を追認した、今の五党を中心にしたそのままの制度を存続するのでなく、未来を志向し、二十一世紀の政治が、政局の安定と政権交代と政界の再編成をにらんだ場合にどの制度が最も正しいかという、そういう観点からあの結論を出してきたわけでございまして、その間の経緯というふうなものは十分御承知でございますけれども、幸い、これまで多少異論もございました野党のサイドにも、別の判断からも、また厳しい政局に対する認識からも、中選挙区制を打破しようという空気が出てまいりましたので、これはまさに有史以来初めての与党と野党との足並みのそろった行為であるということでございますから、この機会には、今議員がおっしゃいますようにつぶれたらどうなるのかということなぞは考えておりません。この際、必ず選挙制度抜本的改正を断行いたしまして、国民の御期待にこたえるとともに、新しい立場に立ってひとつ政局運営に当たりたいというのが我々の一貫した姿勢であるということを主張しておきたいと思います。
  10. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 お互いに中選挙区制で出てきたわけでございますから、確かに新しい制度に移るということは、そこにはやはり恐怖感があったり、あるいはもう一期だけという気持ちがある議員もあるかとも思います。しかし、その出てくるべき議会そのものが、議会制度そのものが今もう大変な危機に瀕しておる、その根幹が中選挙区制にあるということは、お互い国会に籍を置く者として既に私は理解に達していると思うわけでございます。  議会制度の本来のあり方でございます政党本位選挙制度あるいは議会運営自体を変えていく、そこで初めて政治資金につきましても、政党交付金法あるいは政党助成法という法律によって政党自身を育成していこうということも生まれてまいりますし、また、腐敗行為をした者については公民権停となりあるいは立候補制限という厳しい罰則を科する根拠もまた出てくるわけでございますし、お互いに、皆さん方の方は、今石井委員言われましたように、同士打ち、うちの方が共倒れということで政権交代が起こりにくくなってくる。それ自体社会そのものを大変硬直化さして、政財官癒着構造というのは極めてかたいものになってしまっているというこの状況を打破するには、私たちがまず中選挙区制というもとから絶たなければ、今のこの厳しい国民政治不信の払拭をすることはできないという危機感に立って臨んでおるということでございまして、もちろん中選挙制度だけがすべてとは申しませんけれども、多くの原因が中選挙区制にある。そこで新しい、私たちとしましては、国民民意を正確に反映をする比例代表制中心とした、かつ自民党さんの言われますような小選挙区も四割含んだ、そういう案にしていこうということを提案しておるわけでございます。
  11. 穂積良行

    穂積委員 このように、自民案社公案が全くかけ離れて歩み寄りもないという状況の中では事は成らない、これはもうはっきりしていると思うのです。それぞれの党派が、選挙制度をどうするかというこの大事な問題についても、党利党略抜き考えようというのは、これは人情に反する、不自然だと私は思います。党利党略はあってもいいけれども、その両方のかけ離れた党利党略立場をどうやって歩み寄って成案を得るかというのが英知の結集、知恵の出しどころではないんでしょうか。  過去の歴史考えますと、戦後の小選挙区制の提案が何回か行われました。もう御存じのとおり、鳩山内閣のときは、これは絶対多数を獲得し、憲法改正まで意図をしての小選挙制提案と言われております。これは、ハトマンダーということまで悪口を言われてつぶれました。それから田中内閣のときに、田中さんは再度、長期低落傾向にある保守政権の前途を案じたのでしょう、小選挙導入を図りましたけれども、これも反対に遭って、これは提案に至らず終わった。次は私ども海部内閣でございます。いわゆる小選挙比例代表並立制提案して、それが事成らず内閣退陣に追い込まれました。いずれもこれが事が成らなかったということの原因としては、自民党党利党略案であるという国民の反発がかなり強かった。私ども自民党側は、これは遺憾な状況であったわけですが、結果はそういうような中で事が成らなかったということですね。  片方で、それでは野党側は、これは本来は民主主義の原点に立って比例代表制民意を正しく反映する制度であるという気分の方が多く、できるならば比例代表制導入したいというのは一貫した主張だったんではないんでしょうか。しかし、これが今日まで導入できなかったのは、これは政権政党側がそうなれば損をする、政権を失いかねない、そんなことに乗れるかということが明らかな拒否反応の心情であったと思います。  そうしたことについて、ここで党利党略は認めつつもお互いに譲り合うということこそが、これは当面事を成すに必要なことだと私は繰り返し申し上げたいと思うわけであります。そこで、こうした認識についてまず簡単に、私が今申したことについてそういうことだとお認めになるかならないか、それぞれお答えいただきたいと思います。いかがでしょうか。
  12. 石井一

    石井(一)議員 ただいまの御指摘で私と意見を異にしますのは、自民党党利党略鳩山内閣時代田中内閣時代、まあ海部内閣の方は多少政治改革という大きな基本的な哲学なり政策の遂行というものがございますが、前二回の場合に党利党略でそれをやったかと申しますと、私はそうではないと思うのでございます。  党利党略ということを考えれば、中選挙区制を維持することによって党利党略の大半はその目的を達成することが当時でもできたのではないか。また、当委員会で私が大正八年の床次内務大臣の発言を引用したことがございます。これは繰り返して申し上げませんけれども大正八年時代から七十数年間、我が党の悩みは、結局選挙に金がかかるという問題とか、同士打ちというものが避けられないというふうな問題等々、これは党内事情だと言われればそれまででございますけれども、これを頼ることによって政権を安定できたということでありまして、ただ、健全な民主主義の発展というふうなことを考えましたときに、それを繰り返すことがどうかというふうな反省の中から小選挙区制の導入というふうなものを打ち出してきたわけであって、あくまでも党利党略という観点からではなかった。やはり政治を進化せしめるには、世界に唯一無二の中選挙区制を堅持するよりも、小選挙区制なり、あるいはまた比例の国もございますけれども、そういう中に我が国の制度を前進せしめるという観点からこれらの改革案というふうなものを当時の内閣議会に問うた、私はそのように判断いたしておる次第であります。
  13. 渡部一郎

    渡部(一)議員 本委員会の討議を通しまして、私どもは小選挙比例代表併用型を推進する立場から論議を進めたわけでございますが、少なくとも民意反映する上では、小選挙併用型比例代表制は最も優秀な制度であることは、論議の上でもう明らかになってきたと存じます。  ただ、自民党側からの論議におきまして、政権交代ができないという議論がしばしば展開されたわけでございます。この政権交代がされないという議論はやはり論議の過程でだんだん後退してまいりまして、例えば中選挙区制におきましても、選挙区の区割りあるいは定数是正を完璧に行うならば政権交代が行われていたということが、数字的にも論議の上で明らかになってまいりました。また、併用制を採用いたしますならば政権交代はもう即時に起こりまして、現行自民党の実力からいたしますならば過半数をとれない事情がある以上、政権から直ちに脱落しなきゃならないことまでが明らかになってまいりました。それに対しまして自民党側からは、その場合に連立を志向しなければならない、連立を志向しなければならないということは政権の不安定さを招くという議論が盛大に行われたわけであります。  しかしながら、政権が不安定になるかどうかにつきましては、学者の多くの観察、特に西欧先進諸国の実例を挙げながら、これは不安定ではない、連合で行われている国の方がむしろ多い、七〇%ぐらいある、しかもその中で長期的な安定度を示すものはさらに多いということまでがるる述べられたわけでございます。したがいまして、民意反映の上では併用制がよし、政権交代という面についても単純小選挙区制の利点というものはない、それから政権交代連立によるところの政権の不安定さというものは考えられないというところまで、だんだん論議が煮詰まってきたと思うわけでございます。  そういたしますと、もう少し議論をいたしますとほとんど合意に達することができるのではないかという明るい展望を私は持ち始めているわけでございまして、しかもそれが、恐縮ではございますが、私ども提案している議論の方が議論的にちょっと優位な立場に立っているのではないか、多少うぬぼれもございまして、こういうふうに見ているわけでございます。したがいまして、私は、もうこうなりますと、どの党が有利かなんという下品な話からは、お互い自制してはおりますけれども、どの党が有利かなどというレベルではなくて、国民、主権者にとってどれが民意反映するか、そしてどういう形で政権交代が行われるかということをもう少し詰めて議論するならば、合意に達する素地ができるのではないか。  穂積先生には恐縮でございますが、従来の委員会運営と、あるいは予算委員会あるいは選挙制度委員会の討議とこの場所、雰囲気が大分変わっておりまして、何とか合意をつくろうと言いながらやっておるものですから、お互い譲るべきは譲り、聞くべきは聞き、よきものはとり、そして合意を見出そうという根底的意思が存在しているはずだと私は言い続けながら議論をしているわけでございまして、きっと自民党側提出者におかれましても、同様の見解に最終的には立たれるのではないかと、ありがたく思っている次第でございます。
  14. 穂積良行

    穂積委員 私は、明治以来の選挙制度をずっと振り返って、問題を二、三申し上げたいのです。  一つは、金権腐敗をもたらすのはいずれの選挙制度かということについては、これはどの選挙制度になれば金権腐敗になり、どの選挙制度に直せば金権腐敗はなくなるというものとは言い切れないものがあると思うわけであります。  ちょっと歴史を振り返りますと、明治時代まず大選挙区制がとられ、それから大正年間、有名な原敬平民宰相のもとで小選挙区制が導入されたわけであります。そのときに、これはもう明らかに、当時政友会の総裁として原敬首相は、与党に絶対有利な小選挙区制を実現するために心血を注ぎ、その結果、その小選挙区制のもとで、これは大正八年、一九一九年に導入されましたけれども、次の選挙で政友会が大勝した。ところが、その選挙ではまさに金権選挙、そうしてその後、原敬内閣政治的腐敗にまみれ、疑獄事件が続出し、その中で原敬首相は大正十年に東京駅頭で暗殺されたわけでありますが、このときに、私は非常に今も感銘を受けたやりとりなんですが、原首相がある人にこう言われた。政治の腐敗する原因選挙に金がかかるからだ、金の要らない政治を建設する必要がありましょうと、ある人が言いました。今と似たような状況ですね。それに対して原さんは、そんなばかなことがあるものか、みんな金を欲しがるだけだ、金を欲しがらない社会をこしらえてこい、そうしたら金のかからぬ政治をしてみせる、こう言ったそうであります。  しかし、これではたまらぬという中で、一九二五年、加藤内閣のもとで普通選挙法、中選挙区制が導入され、戦後の一時期、約二年間を除いては中選挙区制で今日に至っている。そのあげくの果てに今日、中選挙区制のもとで派閥の弊害、金権絡みの話ということによって、あたかも中選挙区制が金権腐敗の元凶の責任の一端を担うべき制度というふうなことを言われて、この是正を求められるというような状況になってきた。まことに歴史の皮肉というべきでありましょう。これは、政治資金絡みの金権政治を是正するということについては、選挙制度はどうあろうが、全力を挙げて取り組まなければならないということは自明のことでありますけれども、しかしその金権政治打破のためには、これはもう選挙制度そのものも改めてみて、言うなれば人心一新、新しい制度のもとで、新しい考え政治に当たるということしかないのではないかということがこの特別委員会での共通認識となれば、私は幸いだと思う次第であります。  そうしたことを考えつつ、もう少し民主主義政治機構の原点に立ち返って、選挙制度はどうあるべきかということについて原理、原論的なものを簡単に整理させていただきたいと思います。  これはもう憲法の問題に戻ります。憲法第四十三条、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」となっております。全国民を代表する議員というのは、これは国民の中の特定の音あるいは集団、例えば私は官僚出身ですが官僚組織、それから資本家、企業、あるいは労働者、労働組合といったもの、あるいは選挙区の特定の地域住民といったものだけの利益を代表するものでなしに、我々は国民の全体の代表者として位置づけられ、そうした判断のもとに行動すべきものだ、我々はそうした代表民主制のもとでの議員である、こういう国民の代表者であるということで行動しなければならないし、また、選挙制度はそうした国民の代表者としての議員を選ぶというような制度でなければならないし、その場合には、選出母体あるいは地域、利害代表といったことでなしの議員が選ばれるような制度であることが望ましいということになると思います。そうして、何よりも肝心なことは、代議制度における国会民意をできるだけ正確に反映する、そうした構成が望ましい、これは否定できないと思います。そうした中で、公明正大な、できれば自由な選挙で立派な議員を選ぶというシステムでなければならないと思うわけであります。そのような議論を進めますと、私は、やはり民意をできるだけ反映させるという意味からは、比例代表制というものは十分これは考えなければならないと思います。  ということで、実は私自身は、海部内閣のときに並立制が提案されて、事が成らなかったわけですけれども、あの案ではやはり自民党にとって有利な、という意味では、野党側から党利党略的案だとそしられるような案ということで、これは通らないだろう、残念だ、こう思っておりました。それで、もし通すことをまじめに考えるならば、基本は比例代表制のもとでの併用制で、自民党党利党略的にそう損はしないというような案が考えられるならばというふうな気持ちでおりました。私は、このことは海部総理にも直接申し上げましたが、同意はいただけませんでした。それから、当時の幹事長の小渕さんにも私はそういうことを申し上げに行ったことがございます。まあ、それは個人的な話ですけれども。  しかし今回、私はこの自民党案の賛成者の一人になっておるのです。これは弁明をさせていただきますが、こうした自民党の案を国会に正規に提案し、議論の俎上にのせられ、土俵の上で議論することによって、まさにこの特別委員会論議を通じて、本当に、先ほどから申しております民主主義政治の原点に立ってのあるべき選挙制度で折り合おうじゃないか。その場合、党利党略的なことはお互いあるんだから、かけ離れて自分たちが不利になるような案ということは同意しないはずですから、その辺を十分考えながら、多少は、落語じゃありませんが三万一両損というか、そういうふうなことで折り合う知恵が出るかどうかというようなことを、私は両方に問いたいわけであります。  そのようなことについて、ちょっと長くなりましたけれども、再度双方のお考えお話しいただきたいと思います。
  15. 伊吹文明

    ○伊吹議員 穂積先生、いろいろ両提案の今の議論現状を踏まえて、国民的な視野に立っての御意見だと思いますが、我々はこの案を党利党略という立場からは出したことはございません。もし自由民主党の立場ということだけを考えれば、私は現行制度が一番自民党にとっては有利だと思っております。  しかし、そんなことで国民には許されないと思うから、自民党が政策を失敗し、あるいは自民党が緊張感を欠いた場合には政権を失うかもわからない。同時に、一つ選挙区でお互いに同じ政党の者が相争わなければ政権がとれない。相争う状況の中からいろいろな、政党本位選挙ができず、個人がお金を集めねばならないというチャンスがあり、そのチャンスの中に結局人品骨柄というものがあらわれてきてスキャンダルが出てくるという制度国民のためにやめようということであります。  したがって、今憲法のお話がありましたが、比例制であっても小選挙区制であっても、いわゆる有権者というか全国民がこの選挙に参加をしておられるわけですから、適法に代表したという概念が、選挙のときに、つまり国民の意思があらわれて一人が選ばれるというふうに考えるのか、あるいは極端なことを言えば、全国の得票に合わせて代表を選んで、その最終的な国民の意思というものが国会にあらわれてくるという制度をとるのか、どちらが適法に国民の意思をあらわしているかという判断に私はなってくると思います。  単純小選挙区制も比例制も、私は、先生がおっしゃるとおり、必ずしも万能な制度ではありません。どちらにも長所と欠点はあります。問題は、今の歴史の流れの中で、現在の日本という国あるいは国民の感情を踏まえた場合に、どの長所を大きく取り入れてどの短所をのみ込んでしまうかという、最後は政治的決断になるわけでありますから、私たち歴史観、私たちの現在の国民感情の判断から見れば、小選挙区が私どもは一番いいと思って提案をしておるわけですから、もう少し議論をし、この議論国民に聞いていただいた中から委員会の場あるいは各党の話し合いというものが始まるということは、私はあっていいと思いますけれども、それは現段階で、当然そのことを前提としながら法案の提出者になったとか賛成者になったというのは、私はいささか筋が外れているんじゃないかという気が率直にいたします。
  16. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 穂積さんのお話を聞いておりまして、併用案というのを海部内閣のときに総理に進言をしたというお話をお伺いしまして、我が意を得たりという感がいたすわけでございます。  確かに穂積さん御指摘のように、憲法四十三条の「全国民を代表する選挙された議員」というときに、今伊吹さんからもお話ございましたけれども、地域が小さくなればなるほど、全国民を代表するという性格、これがやはりだんだん薄れてきて、全国的な視野で物を考えようというのからいいますと、政党というものを媒介にして、なるべく高い広い視野、そして広い地域から選ばれた方が、より全国民を代表するという、そういうものにかなうのではないかというふうに私は思っているわけでございます。  したがいまして、先ほど穂積さんから、どういう選挙制度が金権あるいは腐敗というものからだんだん距離が遠くなっていくのだろうかというお話がございましたが、私は、やはり小選挙区にした場合に、今度いろいろ公民権の停止や立候補制限、あるいはお金の面でもいろいろ厳しくはしてまいりますけれども、やはり小選挙区にした場合には、有権者数が限られてくるわけでありますから、そういった意味では、日常活動は極めて密着したものになってき、そして、そこにやはりお金というものが動きやすい。これはもう過去の日本の例あるいは現代の例を見、現在の中選挙区制をさらに地域を狭くした場合にどういう腐敗が起こるだろうかということは、私は大体想像がつくのではないだろうか。  しかも自民党皆さん方、本当に小選挙区制になった場合どうなっていらっしゃるかということを、私は不思議なんでありますが、地元の首長さんあるいは地元の県会議員、五百の小選挙区ということになれば、県会議員選挙区、広いところでやっと二つになるか、あるいは一つ半ぐらいかというようになっていったときに、自分のところの足元は、次の候補者は、県会議員の方あるいは首長さんというのが絶えず皆さん方の候補者としてのポストをねらっておるというようなことで、一体、本当に全国的な視野、全世界的な、国際的な視野で国政が論じられるだろうか、できるだろうかということについて、私は大変疑問を持っておるわけでございます。  そういった意味におきまして、今穂積さんが自問自答のような格好で言われましたけれども、私は、憲法四十三条のことから申しましても、やはり政党というものを媒介にし、できるだけ広くすればするだけ買収、供応というのは限界があるわけでありますから、腐敗にまみれない選挙制度ということを含めまして、私たちといたしましては小選挙区型の比例代表を提案しておる。  ただ、この場合の私たちの言う小選挙区というのは、あくまで皆さん方の単純小選挙区制と性格が違う。つまり、その上には政党比例という、政党が主になっているという、そういう大きな網がかかっているわけでありますから、具体的な選挙戦というのは、それは個人と個人の戦いにはなりますけれども、そこではかなり政党というものは大きく前に出てくる、多分に皆さん方の単純小選挙区制とは違ってくる。  しかも、私がかつて申しましたように、たくさんの派閥がある自民党さんの場合には、ロッキード事件は田中派のことだと。つまり、自民党の問題ではないのだ、田中派のことだということで置きかえてしまう。リクルートが起これば、これは中曽根派のことだと言う。五つか六つの顔を持って、悪いのはあそこだということになる。しかし、今度は政党が前に出ますから、そういう腐敗があった場合には、何派のことというふうに派閥に置きかえることはできなくなる、党自身の問題になってくる。このことが非常に私は重要なことだと思っておるわけでございます。
  17. 武村正義

    武村議員 大変親しい穂積さんの御所見でありますから余り申し上げたくありませんが、ちょっと比例代表制について意見を異にしますので、御答弁をさしていただきます。  御承知のように、小選挙区制という概念、言葉は世界にはないようであります。比例代表か多数代表かということでありますが、学者も言っておりますように、比例代表というのはどっちかといえば、野党の皆さんの御意見を聞いていましても、国民意見をこの国会に縮図のようにきちっと議席で反映さすべきだ、縮図というか反射鏡といいますか、そういう状況であることが国会は望ましいんだという御主張のようにうかがえるわけであります。果たしてそれでいいのかどうか。  抽象的な言葉をかりれば、我々は国民の代理者なのか代表者なのかという、代理か代表かという論議にもなってくると思うのでありますが、さまざまな利害が衝突し、価値観を持っている国民、有権者の皆さんの声を我々はそのまま素直に代弁して、代理をしてこの国会反映させればいいというものではなしに、やはりそういうさまざまな利害、価値観の衝突を統合して、立体的であるか総合的であるか知りませんが、統合して一定の哲学なり思想なり、みずからの価値判断によって、そして一つ主張をまとめて代弁する、代表する、これが私は民主主義の基本だと思うのです。  そういう意味では、我が自民党の多数代表制こそ、多数が全体の代表をさしていただくということでありますが、そこにはさまざまな意見を統合するという重い責任を背負った代表でありまして、単に国民の声をそのまま延長線上で国会に表現すればいいという考え方とは違うわけであります。代表か代理がという概念、そこにも目を向けていただいて、所属されている我が自民党のこの単純小選挙区制こそ民主主義の基本にかなっているということに御理解をいただきたいと思うのであります。
  18. 穂積良行

    穂積委員 今、私への御質問ですからお答えしますけれども、それは明らかに代理じゃなしに代表なんですよ。これは明々白々、そういうことであります。
  19. 渡部一郎

    渡部(一)議員 委員自民党議員であるという枠を超えて、また提出者のかなり拘束されている立場を超えて所論をお述べになりましたことに対して、敬意を表したいと存じます。といいますのは、私ども、ここのところで真っ二つの議論で論じているわけでは決してない。いろいろなニュアンスを持って議論しているわけであります。であるからこそ、討議の間に次の協調のための伏線が張られているものだと私は信ずるからであります。  それで、私は、今委員お話しになった代表、代理と多少議論が分かれている点についてひとつ申し上げておきたいと思うのでございますが、これは上智大学の西平先生あるいは慶応大学の小林先生等の御所論でありますので、ちょっとこれは受け売りのたぐいで恐縮なのでございますが、小選挙区制というものが原理的に国民を代表しないということにつきましては、既にフランスにおきましてコンドルセという人が二百年前に論及されて以来、その論議は破られていないのであります。  それが、なぜ小選挙区制が欠陥であるかと申しますと、二遍にわたって二度にわたって代表というものを選ぶシステムにあるわけであります。一回目、例えば五一%であったといたしますと、もう一回その人たちが集約されて、代表制民主主義と称してもう一回投票いたしますと、五一%の五一%ということになるわけであります。そういたしますと、結局、機械的に計算いたしますと、もちろん五一%なんという低い場合はないのかもしれませんが、五一%という最低の場合が二遍続きますと、実に二度の投票によりまして二六%しか国民を代表しないということになるわけであります。これは、〇・五一を二乗してごらんになればすぐわかることでございます。こうなりますと、こういう形で選ぶ、つまり多数決型の選挙を代表を選ぶ際につくるといたしますと、こういう致命的な欠陥が生じてくるわけであります。  したがって、保守党あるいは労働党等のイギリスの議会を見ていく場合に、しばしば全体の票数と逆転した政権が誕生してしまう。つまり、多数派の労働党に対する得票があるのに、少数党で少数得票の保守党の方が政権を握ったり、その道さが生じたりする。これは奇現象として、奇現象というのは奇妙な、奇怪なという意味でありますが、こういう現象があらわれることは認められてきたのであります。じゃ、どうしてその小選挙区制というのがはやったかというと、各国において明らかにイギリスの植民地政体というもの、イギリスの制度を無批判にまねした。そして、まねしてまた同じようなことが続々あらわれてきたという歴史的な考察が必要なのではないかと思うのであります。  私どもは、今国民を正確に代表する、なるべく正確に代表するようにしなければならない。その正確に代表するという点について、委員はまことに率直に御理解を示されましたが、私は貴重な御意見ではないかと存じます。その点に立たれましてこの討議を考察していかれますならば、別の面のまた提案があってしかるべきだろうし、それに結びつくものと私は理解しているわけでございます。
  20. 穂積良行

    穂積委員 とにもかくにも、自民党側は単純小選挙区制、これが最善だと言いながらも、これを成立させるめどが立たない。片や社公それから野党の皆さんは、この社公案に固執して、それで自民党側衆議院で多数を占めている現状で、これを成立させるめどもない。そういう中で共通するのは、とにかく中選挙区制はもう今回人心一新のために改めようじゃないか、小選挙区制を導入しよう、それが一つ。それから野党の方は、民主制の根幹からしても、皆さん方等々の比例代表制というものをこの際導入しようじゃないか、これははっきりしているわけですな。この二つの接点をどこに求めるかということに私は絞られると思うのですよ。  そのときに、これは野党の皆さん、この案のままじゃ、これは私も自民党員の一人としてイエスと言うわけにいきませんよ、それは。そういう党利党略的なことも踏まえて私は申していますからね。そうしますと、何らかの歩み寄りを野党の皆さんもひとつ考えていただかなきゃならぬだろうし、そのときにしかし、これは本当にここまで来た政治状況の中で、選挙制度を変えようというのは千載一遇のチャンスだと思いますよ、これは。そのチャンスをとらえる器量があるかどうか、私は野党皆さん方にそこはお聞きしたい。  それから自民党の方も、これはこのままで、先ほど言いましたように、両案相打ちでまあしょうがない、もとのもくあみの中選挙区制でというようなことで、自民党が将来政権政党として引き続き責任を果たしていくというようなことを考えた場合に、それでいいのでしょうか。その辺、歩み寄りの用意があるかどうか。  これはそれぞれ今あると言えるかどうか。これはまことに見ものだ、国民も見ておられると思うのですが、お答えいただきたいと思います。
  21. 深谷隆司

    深谷議員 穂積議員の御発言でございますが、率直に申し上げて、現在自民党から出している単純選挙区制と、野党から出されている小選挙比例併用制とは本質的に違うということを、もう一回御認識いただきたいと思うのですね。  私は、野党は小選挙区制とは言っているものの比例併用制の場合には、私はもう比例代表制と言った方が正しい、つまり最初の一票の党の支持票で総枠を決めるわけですから。ですから、そういう意味では、小選挙区制という言葉はついていますが、実際には比例代表制、我々の考えているのはあくまでも小選挙区制という制度そのものですから、基本的な立場が全く異なるわけでございますから、そういう点では、歩み寄りというのはなかなか容易なものではないというふうに思っていますし、我々は単純小選挙区制、小選挙区制という制度をとるという前提に立って物を言っているわけでありますから、そういう意味では、私はそう簡単に妥協ができるというものではないと思うのです。  現在イタリアでも、国民投票という形で決着をつけようとしているわけであります。私は、ここの議会あるいはこの委員会での発言というのは、マスコミを通して国民の皆さんがずっと注目されておる。いずれはそういう国民の声を聞きながら結論を下していくという立場であって、その前に妥協をするといったような、そういう考えはないということを申し上げたい。
  22. 穂積良行

    穂積委員 ちょっと時間がなくなりましたので、最後の質問で、お答えいただいて終わりにしたいと思います。  あの海部内閣のときに、並立制に海部総理は命運をかけるとおっしゃいました。そして最後には、重大な決意をして取り組むということを、何といいますか言葉じりの関係もあって、重大な決意のままに辞職されたわけですね。
  23. 田邉國男

    田邉委員長 時間が参りましたので、簡潔にお願いします。
  24. 穂積良行

    穂積委員 宮澤総理については、私は、不退転の決意で取り組むとおっしゃるならば、これは本当にリーダーシップを発揮していただきたいと思うわけであります。そのときに、歩み寄りなしに、事ならずということでは、本当に大変な政治状況になると思います。総辞職か解散か、そういうことに必然的に転がっていくのではないのですか。  そうでないようなことにするために、この委員会で与野党本当に理性的にこれから話し合いをすべきだと思いますが、そのときに、最近になっていわゆる運用案というようなものも出されましたけれども、ああいうものもいろいろ参考にしながら議論を進めるべきではないかと思います。そのような中で、本当に国民の期待にこたえられるような政治改革、その中核となる選挙制度改革が達成されることを期待いたしまして、これはお答えいただく時間がなくなってしまったのですが、私の質疑を終わらせていただきます。
  25. 田邉國男

    田邉委員長 簡単にお願いします。
  26. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 自民党深谷さんが答えて、うちの方が答えないのは均衡を欠くと思います。簡単に答弁させていただきたいと思います。  宮澤首相も不退転の決意と言われておる。海部さんもかつて不退転の決意、重大な決意と言われて、責任をとってやめられたということは、議会民主主義の中で私は大変立派なことだと思っておるわけでございます。  今審議を通じまして、単純小選挙区制でできてくる内閣政治というものがいかに弊害が多いかということは、さらにまだまだ言い足りないぐらいあるわけでございまして、渡部議員からも御説明ございましたように、だんだん自民党さんの中にも、おお、併用制というのも、あるいは比例代表制というのもなかなかいいところがあるのではないかというのが、だんだん私はしみ渡ってきたのではないかというふうに自信を深めておるわけでございますので、より審議を深めていくことが当委員会の責任であると考えて、お答えにさせていただきたいと思います。
  27. 田邉國男

    田邉委員長 増子輝彦君。
  28. 増子輝彦

    ○増子委員 自由民主党の増子輝彦でございます。  限られた時間でございますので、ひとつ簡潔にお答えをいただきたいと思います。また、いろいろ今日までの本会議やこの総括質問の中で、大分理念やあるいは多くの部分で議論をされましたので、私は若干細かい点に触れて、いろいろと御質問をさせていただきたいと思います。  実は私、ある本で次のような記事を読んだことがございます。日本人というのはとにかく何でもまねをしてっくることが大変上手である、特にゴルフ場に一つ例をとれば、日本のゴルフ場、それこそ世界各地のすばらしいゴルフ場、全く変わらないでそのものを同じくつくる技術を持っている、これはすばらしいなということでございました。ただ、一つだけまねのできないものがある。私は余りゴルフをやりませんのでよくわからなかったのですが、そのゴルフ場をつくる際にも、セントアンドリュースだとか、すばらしいゴルフ場と全く同じ設計をして同じゴルフ場をつくることはできる。ただ、一つまねのできないものがあるのだ、それは何だということになりますと、実は風である。この風だけは自然の恵みでありまして、なかなかこれをまねをしようといっても、すぐれた日本人の英知であろうが技術であろうが、これだけはまねをできない。この風というものの重要性というものを、私はゴルフはやりませんが、スポーツを愛する者として、なるほどな、そういうふうに実は思いました。  今回のこの政治改革、まさしくこれはもう国民の声として、制度をも含めた、本当に今日までの日本の戦後歴史の中の政治の中で、この選挙改革政治改革、これはどうしてもやらなければならないというのは、まさしく私はこれは国民の声、すなわちまねのできない、国民が腹の底から出してきている風ではないのかな、そういうふうに実は認識をいたしているわけでございます。そういう意味では、この一連の議論の中で、両案とも、とにかく何かはやらなければならない、政治改革は天の声だ、待ったなしだ、そういう形の中でどういうふうにしてこの政治改革を進めていくか、我々政治にかかわる者が与えられた使命であり、責任だと認識をいたしているところでございます。  たまたま先週の土曜日、私ども若手で政治改革を実現しようというグループがございまして、長野市で政治改革フォーラム・イン・長野というものをやってまいりました。その中で、国民の皆様方の声、率直にお聞きをいたしてまいりました。一つの例といたしますと、いろいろ議論も大事だ、制度も大事だ、資金も大事だ、しかしその前に国会議員の数を半分に減らしたらどうだ、そういうような大変厳しい声もお聞きいたしました。さらに、自由民主党の単純小選挙区は非常にわかりやすいけれども、実は社公のこの案はなかなかわかりにくいという声も一つ出たということも、お伝えをいたしたいわけであります。  その中で、この休みの間地元に帰っているときに、一つの提言がなされました。それは、いわゆる民間政治臨調が新しい形の中で、小選挙比例代表連用制という一つの提言をなされました。これは塩川先生初め自民党の関係の方々もまあまあの評価をされ、一つ検討するに値する案ではないのかなというようなコメントもいただいています。公明党の方からも、大変これは積極的に評価すべきであろうというようなお話もマスコミを通して伺っておりますが、社会党さんからはいま一つ、これというものが実は出ていないというような中で、今回民間政治臨調が発表いたしました小選挙比例代表連用制について、それぞれの立場でどのようなお考えをお持ちになっているのか、まず最初にお聞きをいたしたいと思います。  自由民主党の方からお願いいたします。
  29. 小渕恵三

    ○小渕議員 民間政治臨調が政治改革に対しまして積極的に取り組んでおられること、また、特に国民運動を展開しておることについては、大変評価いたしておるわけでございますし、また今般、民間政治臨調といたしまして一つの案をお取りまとめていただいて発表いたしたことは承知をいたしております。  私どもも、謙虚にこうした国民のそれぞれの意見というものは拝聴しなければならぬということで、勉強をいたしていきたいというふうに考えておりますが、現下、先ほど来お話しのように、各党とも公党としての責任において考え方を明らかにいたしておりますので、そうしたことを国民の皆さんに十分御理解をいただいていくことがまず前提ではなかろうかというふうに考えております。
  30. 石井一

    石井(一)議員 総括的には小渕議員からお答えになったところでございますが、この案が非常に苦労をされ、民間、財界そして労働界、学識経験者等の長い議論のもとに英知を絞って出された、そういう御努力には私たちも敬意を表しております。  また、小選挙区制の特徴、利点、比例代表制の利点、それからまた府県別等に配慮を与えるというふうな形から、今、自民、社公、そして民社等が真剣に出しております案に対しましても、それぞれの特徴を相入れられておる。そういうふうな意味では苦心の跡も見えるところでございますから、これから先議論をする、そういう中における一つの指針といいますか、そういうガイドラインを示した、こういうふうなところは十分評価できるわけでございますけれども、またさらに、ドント式にもプラスワンというふうなものを加えまして、多数政党に対する極端な有利さというふうなものを排除する等々、苦労の跡が見えます。  しかしながら、問題点として言えることは、まだ議論が始まったときに、今ここでもうこれで落ちつきなさい、これは時期的にいささか早々といいますか早計といいますか、いかにも時期は不適切であるとまず申さなければいかぬと思うのでございます。できるものでもできなくする時期に出されると、これはどうしようもないやないかというような感じがまずいたします。  それからその次に、やはり制度というのは妥協か、妥協というのは大正十四年にもやりましたし、昭和二十二年にもやったわけでございます。その結果、今日の状態が起こっておるわけでありまして、制度を変更するというのは現状を追認するのでなく、未来を志向すると。我々の主張は繰り返しませんけれども、二十一世紀の政治を見た場合には、政権交代可能な政界再編成を行い、新しい制度をつくろうという場合に、ただ単に妥協の点だけを求めるというのは、それは民間の臨調はそういう御姿勢であろうかと思いますが、我々政治家としては見識を持って進むべきではなかろうか、そういう感じがいたすわけであります。
  31. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 今、増子さんからお話がございましたけれども、連用案にいく前に二言だけ。  社公案はわかりにくいというお話でございましたけれども、投票自体は、御承知のように、一枚の投票用紙に、右の欄に政党名、左の欄に個人名を書いて入れてもらえばいいだけですから、そう難しいことはない。しかも非常に正確に、みんなの一票一票が、投票価値が、投票価値の平等性はもちろんでありますが、もちろんその政治的な効果も一緒になるという、極めてこれはわかりやすい案でございます。  さて、民間政治臨調が出されました運用制というものでございますけれども、民間政治臨調の皆さん方が今の政治を大変憂え、いろいろな格好で心配なさり、いろいろな御提言を今日までもなされてきましたこと、また今度この運用制ということにつきまして提言をなされましたこと、このこと自体には、私たちも大変敬意を表しておるところでございます。  ただ、私たちは、選挙制度というのは基本的に国民皆さん方民意を正確に反映するということが一番基本であるという考えからいいますと、超過議席をなくしているということは、第二党、第三党にその分だけしわ寄せになるという可能性もありますので、その意味では、正確性ということからいいますと、私たち併用案よりも、第一党の方が比較的有利になる可能性がある。  それから二番目に、県別になっておりますので、非常に比例の部分の選挙区の単位が小さいということでありますから、第三党、第四党は大変出にくいという問題がございまして、その意味で私たちは、比例は、できれば全国一本が一番理想的でありますが、しかしそれは現実に選挙ができません。できないことはないのですが、要するに非常にやりにくいということで、一定のブロックというものをもって、選挙運動がやりやすく、かつ比例代表のいいところが生かせるという格好でブロックにしておるわけでございますが、連用制の場合には県別ということで、非常に第三党、第四党以下が出にくいという結果を導くであろうと思うわけでございます。  しかし、民間臨調の方々がいろいろな角度から考えてくださったことでありますから、より私たちも今後もいろいろな格好で検討は続けていこう、こういうふうに思っておるわけでございます。
  32. 増子輝彦

    ○増子委員 公明党さん、簡潔にお願いいたします、時間がありませんので。
  33. 渡部一郎

    渡部(一)議員 民間臨調の案につきまして、まだ正確に私どもが聞いているわけではございませんので、代表の方々から直接お伺いして、検討させていただきたい、こう思っております。  それから、大変な御努力をしていただいておる、国会議員議論するだけではなくて、民間でそうやって議論する活力が生じだというのは、敬意を幾ら表しても表し足りない。また、その目指される方向、相当な御苦心があるようでございまして、敬意を表したいと存じております。
  34. 増子輝彦

    ○増子委員 民社党さんにも一言。(発言する者あり)じゃ、結構です。  わかりました。それぞれの党でお考えをお持ちのようでございますが、いずれにしても、今はこの国会の中でそれぞれの案が審議をされているわけでありますから、十分な議論を深めながら、ひとつそれぞれの立場でしっかりとやっていくことが私自身も好ましいと思っておりますので、より深い、そして中身の濃い、これからも審議を進めていくことが大事かと思っております。  さらに、実はきのうからきょうにかけまして、これまたこの国会審議において一石を投じる、実はイタリアの国民投票の結果が出てまいりました。この件につきましても簡潔にお答えをいただきたいと思いますが、イタリアの上院の選挙法改正につきまして国民投票が行われたことは、御案内のとおりでございます。比例制廃止が圧倒的な実は賛成を得たというような数字が出ております。また、選挙以外の、国家からの政党の交付金を廃止する等の政党献金法も、これまた圧倒的な実は国民の支持を得たということ、これは何といいましても、小党乱立、連立政権の不安定、弱体化、こういったものに対する国民のやはり危惧というものが端的にこれはあらわれた結果ではないのかなと。  この上院の結果、すなわち下院の選挙制度比例から小選挙区へなっていくということにこれはなってまいるわけでございます。やはり今後、イタリアも変革を望み、混乱と腐敗の戦後政治を総決算しようというような国民の総意が明確にこれはなってきたわけでありますが、この点について、やはりそれぞれから簡潔にこれについての御所見を伺いたいと思います。
  35. 深谷隆司

    深谷議員 既に今までの議論の中で、比例代表制の場合に非常に細かい党がたくさん出る、それでしかも最終的な政権ということになると連立という形になる、その場合、選んだ国民の合意でなしに、政党が集まって政党同士の交渉ということになるために、例えば国民の三%か四%の支持であった第七党が首相になって事実上の政権をとるといったような、そんな弊害もイタリアにおいてはありましたというようなことを含めて、小党乱立というのはかえって政局を不安定にするということを申し上げてきたのでありますが、図らずもそういうイタリアにおいて、国民全体がやはりこういうことでは政局不安定になるということで、これをやめようという結論が出たことは、むしろ具体的な目の前の例として非常に参考になると受けとめています。
  36. 小澤克介

    ○小澤(克)議員 小党乱立の問題と連立政権の安定性の問題は混同して議論されがちでございますけれども、正確に言えばこれは別の事柄でございます。  仮に小党が乱立していても一つの党が過半数を制していれば、いわばガリバー型になっていれば、これはもう単独政権でございますし、それから有力政党が三つぐらいしかなくても、それぞれが過半数を得られなければ連立政権にならざるを得ない。このことからわかりますように、これは別の事柄であるということをまず第一点、分析をさせていただきたいと思います。  その上で諸外国、特にEC諸国では連立政権がむしろ常態でございまして、しかも、極めて安定した福祉国家が建設されているというのは、非常に多数の実例、実績があるわけでございます。イタリアに関しては、おっしゃるとおりの小党分立が確かにあるわけでございます。そしてその上で、連立政権も不安定だという事実が、これは事実としてあると思います。ただ、これをもってすべての比例制がまずいということには全くならない。それは、先ほど申し上げたとおり、広い意味での比例制をとっている諸国で、安定した政権、そして安定した福祉国家が現実に建設されているということから実証されると思います。  イタリアに関しましては、やはりすぐれてその国の国民性といいますか、他国のことを余りあれこれ言うのは適当でないかもしれませんけれども歴史的には、ルネサンス前期のころからフイレンツェなどでは大変な政争が行われていたというお国柄、そんなことが影響しているのではないかな、こんなふうに考えておりまして、我が国で比例制を採用しても、直ちにイタリアのような状況になるということは全く的外れであると考えます。  なお、つけ加えさせていただきますが、小党乱立に関しては、これはもう繰り返し申し上げておりますけれども、ブロック制を採用することによって、余りに小さい、例えば〇・二%程度で一議席を確保するということはほとんどないというような形で、ドイツのような五%条項のようなものは設けておりませんけれども、事実上そのような機能を営む、かようにも考えております。
  37. 伊吹文明

    ○伊吹議員 今のイタリアの件ですが、比例制には長所と短所がありますし、長所がうまく出たときは、私はあのようなことにはならないと思うのです。イタリアの場合は、その短所が出ちゃったということだと思います。  ここで実は、我が党の大島さんが質問をしたことに対して野党の皆さんが答弁をしておられる速記を私は持っておりますが、公明党の共同提案者である井上委員は「選挙の結果、比較第一党がやはり政権を担う。したがいまして、国民は比較第一党を選ぶという形になるだろうと思います。そこで連立ということが起きて」まいります。このような運用になった場合は、私は、国民の意思が明確に反映されて、スキャンダルめいたことは起こらないと思います。  その後、社会党の共同提案者である佐藤委員は、自民党さんはやはり四〇%を切って、例えば三〇%になるかもしれない、そうしますと、社会党中心になって、公明党と組むという場合もあるかもわかりませんと。つまり、比較第一党ではないけれども、公党間の話し合いによって政権を担う可能性があるのだということを示唆しておられます。  これはどちらがどう正しいかわかりません。これは運用の問題だと思いますが、運用が誤ると非常にスキャンダルめいたことが多くなる制度であるということは確かだと思います。
  38. 北側一雄

    北側議員 イタリアの例でございますけれども、一点だけお断りしておきたいのは、あれは比例代表制でございます。我々も比例代表制を基本にしておりますが、併用制でございます。小選挙区を二百併用するという意味は、私は決して小さな意味じゃない、大きな意味を持っておるというふうに思いまして、イタリアの例をそのまま我々の言っている併用制には当てはめることはできないというふうに思う次第でございます。
  39. 増子輝彦

    ○増子委員 今、社会党さん初め民社党さんからも出たことにつきまして、この後若干質問の項目に入っておりますので、またお伺いいたしたいと思います。  しかしいずれにしても、イタリア国民の総意がこういう形で明確に小選挙区制に志向、求めたということの事実だけは、これは今回の論議の中で間違いなく一石を投じたということは、私は間違いないと思っております。  それぞれ短所、長所、自由民主党の案も社公の案もあるわけでありますけれども、その中でやはりそれぞれの政党が長所を伸ばしながら短所を補っていくということを、政治の場はしっかりとこれを心構えとしてやっていかなければなりません。短所は見逃して長所だけということであれば、政治は生き物でありますから、どういう方向になっていくかということは、これは全く予測がつかないのが政治であります。私ども、何もスキャンダルをつくろうということで政治家をやっているわけではありませんので、その点も含めまして十分考慮をしていただきたいと思います。  それでは次に入らせていただきます。主に社公案について御質問をさせていただきたいと思います。  まず、なぜブロック制を取り入れたのか、本来ならば都道府県単位にすべきではないのかと実は私は思っているわけであります。先ほど来の答弁の中にも、本来であれば全国一本が好ましいという話も出ておりますが、これは私は、都道府県単位の方が好ましいのではないのかなというふうに認識をいたしているわけでございます。例えば社公案の参考の例としましたドイツの場合には、全国単位の比例制になっていると私は認識をいたしております。なぜブロック単位にしたのか。  次に、なぜこのブロックを十二に分けたのか、この分け方について若干問題があるのではないのかな。どういう基本的な考え方を持ってこの分け方をしたのか。例えば地勢、交通等を初め、社会的、経済的、歴史的に見ますと、選挙区の単位とするようなまとまりの地域であると言えるのかどうか、これは甚だ疑問でございます。  一つの例といたしまして関東の分け方を見ますと、東関東、西関東と分けておられます。東関東は一千八百七十万余の人口で定数が七十六、他のブロックと比べて余りにも突出し過ぎているのではないのかなという若干の疑問があります。むしろここは、私考えるのに、千葉、神奈川、山梨を一つのブロックとして、茨城、栃木、群馬、埼玉、静岡を一つのブロックとすることの方が好ましいのではないのか、これがバランスがとれた分け方ではないのかなと実は私は思うわけでございますが、このブロックになぜしたのか。そして、なぜ十二に分けたのか。  時間がございませんので、これからいろいろ細かい点でお聞きしたいことがございますので、簡潔にお答えをいただければありがたいと思います。
  40. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 増子さんに申しわけないのですが、私、大事な答弁を落としておりましたので。というのは、先ほど連用制の問題につきまして、小選挙区が三百、比例が二百になっている、まず一見するところ極めて自民党さんに有利だなということを言い落としましたので。大事なことでございます、申しわけございません。  それから、伊吹さんの方からあえて議事録を持ち出して言われました。それは、過半数を割った第一党と第二党が組むときもありましょうし、第二党、第三党が組むときもあるわけで、だから、第一党が入っていればスキャンダルもなく、二党、三党でやるとスキャンダルがあるがごとく聞こえるのは、これはおかしな話だと思うのであります。第一党でも長くやっているからスキャンダルが起こったのでございまして、このことはやはりはっきりしていかなければいかぬと思います。  あと、ブロックの問題につきましては、交代させていただきます。
  41. 井上義久

    ○井上(義)議員 なぜブロックにしたのかということでございますけれども比例代表でございますので、全国一本ということが最も民意が正確に反映するということで出たかと思いますけれども、余りにも名簿が膨大になり過ぎて、やはり国民の判断という観点からいいますといかがなものかというのが一つでございます。  それから、県別というふうに考えたのでございますけれども、県別では定数の非常に小さくなる地域が出てまいりまして、比例意味というのが非常に損なわれてしまうということから、全国をブロックに分けたわけでございます。  それから、西ドイツの場合は、各州ごとのいわゆる名簿で選挙をやるわけでございますけれども、集計は全国で集計をする、こういう仕組みになっていまして、それで、各党に配分された議席をもう一回また各州の各党に配分をする、こういう方式をとっておるわけでございますが、日本でいろいろ検討をいたしますと、どうしても選挙民の皆さんは各党提出した名簿の候補者に投票する、こういう前提に立っておりまして、ところが全国で一本で集計いたしますと、例えば東京ブロックで東京の名簿に投票したのに、その自分の票が例えば北海道の名簿の当選者に寄与するというようなことが、果たして国民的な理解が得られるかどうかというようなことを勘案いたしましてブロック完結型、こういうふうにしたわけでございます。  それから、ブロックを十二に分けた理由でございますけれども、地理的、歴史的、また経済的な一体性というものを考慮いたしまして、北海道、東北とか九州とかあるいは四国、中国というようなところについてはスムーズにいったわけでございますけれども、おっしゃるように、関東それから近畿につきましてはいろいろ苦労いたしました。関東につきまして、今お話があった案も考えたわけでございますけれども、やはり地理的な一体性、いわゆる飛び地はできるだけつくらないということが一つと、それから参議院比例区を参考にいたしまして、総人口二千万を超えないということがこの地域を分割した理由でございます。そういう形でブロックを十二に分けたということをぜひ御理解いただきたい、こう思います。
  42. 増子輝彦

    ○増子委員 そのブロック制の問題、やはり私は、あくまでもこれは政党を選で選挙でありますから、北海道の方が例えば九州という今の話でなかなか民意反映されないというのは、ちょっと考え方が違うのではないのかな、そういうふうに私は思っているわけでございます。  しかし、それはそれとして、次の質問に入らさせていただきますが、この小選挙区定数を二百としたのはどんな理由からかな。実は顔の見える選挙という観点を重視するならば、当然総定数に対してこの小選挙区が余りにも少な過ぎるのではないのかな、そういうような実は私、感じを持っておりますけれども、この点についてどういうふうにお考えになっているのか。
  43. 小澤克介

    ○小澤(克)議員 先ほどから御指摘ありましたとおり、社公案は本質的には比例代表制でございます。比例を重視したといいますか、まさに比例を基本とした案でございます。しかしその中で、やはり人という要素も重要であるから、顔の見える選挙にしたいということで小選挙区制の要素も取り入れた、こういう基本的なまず構造がございます。  その上で、どの程度小選挙区の数をつくるかというのは一つの問題点でございますが、率直に申し上げて、これは余りに多くしますと、これはあるいは彼ほど御質問があるのかもしれませんが、超過議席が多数生じてしまうということが事実上ございます。超過議席が多数生じれば、比例原則からすればやや問題があることは当然でございますので、超過議席が余り生じないようにという極めて実際的な配慮もございます。基本は比例代表制であるということを踏まえて、二百程度が妥当なところではないだろうか、かように判断した次第でございます。
  44. 増子輝彦

    ○増子委員 私は、大変失礼な言い方になるかもしれませんが、小選挙区を余り多くし過ぎると、候補者をそろえられないのではないのかなというような自分なりの心配を実は持っているということ、あるいは政権担当意欲が本当にあるのだろうか、連立政権担当意欲はあったとしても、単独でこの国をどうするかというやはり政党としての理念、国家理念に欠けているのではないのかなというように実は心配をするわけでございます。いずれにしても超過議席、この問題は当然これから大きな議論になってくるかと思いますが、これまた後でこれに関連して質問を申し上げたいと思います。  その次に、名簿登載者数要件がブロック定数の十分の一以上とされておりますね、これ。そうしますと、例えば社公案の中でいくと、四国ブロックの場合、二人の名簿登載者がいれば名簿届出政党となることができるわけでございますね。二人で政党になることができる。これでは私は、やはり小党乱立を招くのではないのかな。先ほど来、社公案の中で言われておりますような考え方から若干外れて、政策本位、政党中心選挙の実現の見地からいきましても、これが果たして適当なものかどうか、ちょっと疑問を持っております。  また、これに加えて、当選がほとんどできないということになれば、そこに投票された票は、いわゆる社公の皆さんがおっしゃられる死に票をつくりたくないという点からも、これは甚だそれとは逆の方向に行ってしまうのではないのかなというように実は思うわけでございますが、この件についても簡潔にひとつ、この後いろいろ大事な質問がありますので、よろしくお願いをいたします。
  45. 北側一雄

    北側議員 政党要件を緩和しましたのは、できるだけ多くの政党がこの比例代表選挙に参加できるようにというような配慮でございます。  それから、小党分立というふうなお話がございましたけれども、例えば四国の場合ですと定数十七でございます。十七で一議席をとろうと思いますと、約六%前後の得票率をとらないと一議席をとれないわけでございまして、おっしゃっている小党分立のおそれというのは、私はないのではないかというふうに考えております。
  46. 増子輝彦

    ○増子委員 この辺が若干見解の違うところでございますが、それはそれといたしまして、次の質問に入らさせていただきます。  実は、社公案の中によりますと、小選挙区で無所属等候補者が無投票当選したときには、当該小選挙区では投票を行わないこととされておりますね。その理由はなぜか。この取り扱いは、選挙人のブロック選挙への投票参加の機会を不当に奪い、憲法違反のおそれがあるのではないかというように私は実は認識をいたしているところであります。これは、憲法十四条の法のもとに平等であるという点から憲法違反のおそれがある、そういうふうに私は思っているわけでございますが、どなたか簡潔に御所見を述べていただきたいと思います。  加えて、できましたら、法制局当局もお見えになっているかと思いますが、法制局からもこの件について御所見を例えればありがたいと思います。
  47. 小澤克介

    ○小澤(克)議員 細かい議論については、法律論については、質問者御指摘のとおり法制局からお答えいただくのが適当かと思いますけれども、概略だけ申し上げますと、社公案では一票で二つの要素を、二つの記載をするということになっております。一つはまず政党を選ぶ、そして選んだ政党の枠内で、選ばれた政党の枠内でさらに個人の当選者を定める。そういう意味で二つの記載をすることになっているわけですね。  ところが、無所属の候補、これを排除することはできません。無所属の立候補の機会を奪えば、まさにこれは憲法に抵触いたしますので。そういたしますと、政党による議席配分の枠から外れたところに無所属の候補者が仮に当選をするということになれば、これはもうこの政党への投票、そしてその枠内における人の特定というところと別枠で選挙行為が行われるわけですね。そういたしますと、無所属の候補者が当選をしたときにはもうそれだけで一票の価値が全部行使された、かような状況になるわけです。  そこで、御質問はそもそも無投票当選の場合についての御質問であったと思うのですけれども、その場合にも全く同じ構造から、既にその小選挙区における有権者総体としての選挙行為はもうなされたものというふうに考えますと、さらに政党投票だけ行わせるというのはダブルカウントになる可能性がある、こういうことであろうかと思います。
  48. 臼井貞夫

    ○臼井法制局参事 今、小澤先生の方からお答えのありましたように、これは一票制でございまして、一票二記載ということで仕組まれております。そして、無所属等候補者が当選した場合においては、その一票が評価され尽くしたという状態になりますために、第一欄をキャンセルするということを仕組まれたわけでございます。憲法に違反しておりません。
  49. 増子輝彦

    ○増子委員 違反していない。
  50. 臼井貞夫

    ○臼井法制局参事 はい。
  51. 増子輝彦

    ○増子委員 それでは引き続き、同じような憲法違反の疑いのあることにつきまして、時間がございませんので二つ続けて御質問を申し上げますので、その後にもう一つだけどうしても社公にお聞きしたいこと、大事なことがございますので、簡潔にひとつお答えをいただきたいと思います。  まず一つには、同じくクロスボーティングを認めている中で、無所属等候補の当選の場合、比例制のブロック選挙の政党名投票が無効とするのは、これもまた憲法十四条の「法の下に平等」という点で憲法違反のおそれがあるのではないのかな。これは、本会議で実は菅直人議員がお答えになったことかと思いますが、自民党社会党という場合には認められるけれども、無所属と例えば自民党社会党という組み合わせの場合には認められない。これはやはり私は、法の平等という憲法十四条からいけば、憲法違反のおそれがあるのではないのかということを一つ思うわけであります。  加えて、小選挙区選出議員が欠けた場合どのようにするのかという中で、比例区から補充するということであれば、小選挙区で選挙された候補者でないのであるから、憲法第四十三条の「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」という点から、これもまた憲法違反のおそれがあるのではないのかな。私は、この点についても若干これは疑念を持っているわけでありますけれども、これについても簡潔にひとつ、法制当局からこれは伺った方がよろしいでしょうかね。
  52. 臼井貞夫

    ○臼井法制局参事 お答えいたします。  一票二記載ということでつくられましたために、どちらの記載が、他事記載等がありまして無効ということになりますと、一票全体を無効ということで仕組まれております。
  53. 増子輝彦

    ○増子委員 いや、ちょっと答えが違うな。これどうしましょうかね。
  54. 北側一雄

    北側議員 今ちょっと御質問の趣旨が法制局の方わからなかったと思うのですけれども、先ほどと同じ回答でございまして、併用制というのは比例代表が基本でございます。政党間の争いでございます。無所属当選者というのはそういう政党間の争いという、こういう比例代表の土俵の枠の外から当選した候補者でございます。その場合には、もう一票が行使をされているということでございまして、憲法上の平等権の侵害という問題はございません。
  55. 増子輝彦

    ○増子委員 これでは無所属軽視というふうに私は思わざるを得ません、それは。自民党社会党とかいう政党間同士の組み合わせならばこれが認められて、無所属の場合は認めないということでは、これはおかしいんではないか。それと同時に、後の質問についても、「選挙された議員でこれを組織する。」という点からもお答えがないわけなんです。まあこれはいいです。ちょっと後でまただれか議員にやってもらいますが、この後質問させていただきます。  それでは、運用面について、次に若干お聞きしたいと思います。ブロック選挙の管理執行機関、いわゆる選管ですね、これを新たに設置するということになっておりますが、これは幾つか言いますから、ちょっとよくお聞きになってお答えをいただきたいと思います。  どんな組織のブロック選管を考えているのか。現在、中央、都道府県、市町村とそれぞれ選管がありますが、当然別組織になると思われます。その選管委員はだれが任命して、どのような数を考えているのかということが第一点。  第二点に、新たに設置されることになれば、全国ベースでは相当の人員増となります。これは、行財政改革の点からもこれに反すると同時に、十二ブロックもあり、平時の体制としては過剰人員にならないかどうかという点が二番目であります。  さらに、採用基準と選管職員についてどのようなお考え方を持っているのか。  四番目に、ブロック選管はブロック内のどの地域に設置して、その設置基準は何なのか、また日常活動として何をしていくのか、これがその次であります。  さらに、立候補の届け出につきましては、ブロック、小選挙区それぞれどこにするのかということでございます。例えばブロックの場合、どの地域の、選管によっては、例えば東北でいいますと仙台に置かれるとすれば、青森の方が仙台まで行って届け出をするということになれば、当然これは時間的な問題が生じてまいりますからね。  それから、投票用紙一枚で政党名と候補者名を書くことになるということが、これ当然その案になっているわけでありますが、これは有権者に混乱を引き起こすと同時に、無効投票の増大をもたらすというように私は心配をいたしているわけでありますが、この開票事務の増加、複雑化についてはどのようなお考えを持っているのかということもお聞きをいたしたいと思います。  また、自由民主党に一つお聞きをいたしたいのは、自由民主党はなぜこれを記号式にされたのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  56. 小澤克介

    ○小澤(克)議員 多数の御質問一挙にありましたので、あるいは落としがあればまた他の方に補充していただきますけれども、基本的にブロック選管は、これは自治省に置かれる特別な機関でありまして、全国を十二のブロックに分けますことから、当然に各ブロックに設置することになります。そして、十二に分けた各ブロックにおいて、選挙会のもとに都道府県ごとに選挙分会が置かれる。そして、記載数の集計等の実務をつかさどることになります。そして、都道府県の選挙管理委員会がその選挙分会の事務をつかさどる、こういう方式になりますので、実際問題としては、都道府県選管が実際の事務の大多数を行うことになりますので、御心配のような行政改革の趣旨に反するとかいうことには実態としてならない、かように考えております。
  57. 増子輝彦

    ○増子委員 一つ、届け出はどこですか、立候補の届け出。
  58. 小澤克介

    ○小澤(克)議員 届け出はブロック選管ということになります。名簿を含めて、政党が届け出をする、こういうことになります。
  59. 増子輝彦

    ○増子委員 では、記号式についてお答えください。
  60. 石井一

    石井(一)議員 開票事務の簡素化の推進、無効投票の減少、そうして投票の効力に関する訴訟の減少等、自書式は非常になれておりますが、世界的に見ましても非常に少ない例でありまして、この際、将来の電子式のいわゆる開票制度というふうなものの中から選挙事務全体の合理化というふうなことを考えました第一歩といたしたい、こういうことであります。
  61. 増子輝彦

    ○増子委員 終わります。ありがとうございました。
  62. 田邉國男

    田邉委員長 細田博之君。
  63. 細田博之

    ○細田委員 私は、四十五分間時間をいただきましたので、大きく分けて二つの問題について質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、私、自民党に少しいろいろ質問しますので、これはむしろ野党の皆さんに聞いていただきたいという意味も含めまして質問をしますので、よくお聞きをいただきたいと思います。  自民党という党は衆議院選挙でどういう党かということを考えますと、非常に大きな特徴があるわけでございます。それは、当選者はたかだか三百、この間は非公認を入れて二百八十八、その前は二百五十台しか当選しないのに、立候補者は常に三百六十人を数えているわけでございます。そこで、過激な競争が生じ、そうして結果としてお金がかかるというようなことになっております。今度の選挙はどうか、調べてみました。三百六十人立候補予定者がおります。それがまず一つ大きな問題点。そして、これは自民党の活性化にもつながっております。  今質問した増子議員などは、などはと言ってはいけませんが、この間の選挙は非公認ですよ。現役の、大臣を何回も経験した人が出ているところへ無所属で立候補された。そして当選をした。そして、後から自民党に入って、党には入っておられたでしょうが、自民党所属議員として頑張られた。こういうことの歴史であります。この中にもたくさんの方が無所属で出てきて、当選してから入っているのですよ。つまり、これは政治の世界の一つの典型的な利点、つまり、政治家を志そうとする者が一生懸命努力すると何とか仲間に加えてもらえる、金も地盤も何もなくても入れるという意味もあるのでございます。  ところが、派閥のいわば会長、小渕議員もいらっしゃいますけれども、そういうお立場から見ると、これは大変だと思うのですよ。なぜ大変かというと、そういう人は立候補したい、立候補したいと言ってやってくるのですね。現に大分やってこられるでしょう、何人か。そうすると、やりたいということが先に来ているわけですよ。そうすると、それじゃやってみたまえと言う程度で、しかし君はやめた方がいいんじゃないかというぐらい言っても、それでもやりたいと言えばやらせる、そしてまた次の選挙をやる、こういう形態でございますね。  そして、競争のないところは余り金を使わないのですよ、群馬三区のように。これはいわば指定席ですから、後から入ろうったってなかなか入れぬ。弁当を配るくらいが関の山で、弁当代なんというのは大したことはないので、色をつけているようなもので……(発言する者あり)それはちょっとあれですが、修正しますけれどもね。それはほとんど使っていないのですよ。つまり、そういうことを言いたいのですよ。群馬三区じゃほとんどそんなに金を使っていないと思います。なぜかというと、競争が余りないからであります。つまり、私が思いますのは、選挙制度と金との絡みというのはまさに競争条件との関係であるということが第一点、これを御理解いただきたいと思います。  そして、今小選挙区制を導入される。そして、穂積先生言われたように、自民党案も大変だ、このままで通るまい、社公案も通るまいということでいろいろやる。そして調整をして、民間臨調のような案が出たり、私が先週試算をして、あれは問題点の提起をしたわけでございますが、問題点提起の紙がございますからお読みいただいたかと思いますが、ああいう制度、つまり運用制のような制度ができた途端に何が起こるかということを考えてみたいわけでございまして、これは、三百六十人はもう立候補に向かって走っているのですよ。既に、我が自民党はすべて走っております。そして、やめると言ってもやめません。  そして、三百の小選挙区ができた場合、東京とか大阪とか、そもそも立候補者数が予定される小選挙区の数よりもまだ小さい、つまり当選可能性がないからやろうとも思っていないところは低いわけでございますから、そして通りそうだというところはたくさん立候補予定者がいるわけです。そして、三百に割り当てようと思うと、公認候補を我が自民党は二百七十名に、今いる三百六十名を九十人あきらめてもらって二百七十人にしないとだめなんです。はっきりしています、これは数字の上ですから。皆様方も三百の選挙区に割ってごらんなさい、わかります。したがって、民間臨調の案も私自身の私案もそこが最大の問題点であります。  そのときに、小渕先生に特にお伺いしたいのですが、そういうことが我が党はこれから可能がなということについてどう思われるか。これは何も案として聞いているのじゃないですよ。もし、野党が言うように三百の小選挙区というようなことになった場合に……(発言する者あり)失礼、野党は二百、そして民間臨調は三百、そういうときに、やはりこれは相当大変だと思うのですが、これは決めなければいけませんね、党としては。どうでございますか。
  64. 小渕恵三

    ○小渕議員 中選挙制度の利点というような点にも触れてお話してございます。  総選挙ごとに本院の議員の五分の一、四分の一が交代するという現実がありますし、その中では、御指摘のように、我が党の場合には若手の方々がその中に入ってきて、まさに国会の活性化が行われたということも過去あったと思うのです。  そこで、今の御質問は、そうした制度を残す前提のお話のように承っておりまして、我が党の方は五百人の小選挙区でございますから、五百人の立候補者は当然立てられるものだと思っております。
  65. 細田博之

    ○細田委員 まさにそこなんです。自民党が出している五百の小選挙区案というのは、非常に我が党にとっては実情に合った案である、これは一つわかるわけでございます。それは、私はまず一つ支持をいたすわけでございます。  翻って、そのことは私は問題点として提起しているだけですから、三百の民間政治臨調の提言が、これは妥協が可能ないい案じゃないか、これなら何とかなるのじゃないかと非常にシンプルに考えておられる方がおられるかもしれないけれども、これは大変なことなんです。だから、その大変なことであっても乗り越えてやれるかということが大問題。もちろん、二百なんかはもっと大変でございますよ。そういうことをやはり世の中の人にも、傍聴席には記者さんもいらっしゃいますから、そのことを私は指摘しておきたい。  そのことは皆さん考えているわけですよ。だから、五百にもなっていますし、妥協案というようなことを党内で簡単におっしゃる方はいらっしゃいます。私は案を出しているけれども、それが妥協案で、これで行けという案として出しているのじゃないですよ。お読みいただければ、こういう大変な問題があるが、これを乗り越えられるかどうか早く検討しよう。まさに民間臨調が案を出したということは、それを早く検討しないと、この制度、つまり中間的な妥協の制度を採用した途端に我が党は分裂するのですよ。逆のことを言っているのですね、世の中は。つまり、党でだれかが分裂して、そうなれば自民党はよくなるとか、そうなれば分裂した人が小選挙区を支持して小選挙制度ができるだろうと言っているのですよ。  そうじゃないのです。与野党が妥協できるような小選挙区制ができると我が党は分裂するのです。なぜかというと、約九十人の人が離れまして、公認漏れとかあるいは主義主張が違って、私はこの隊と。そして、野党さんにまあいいじゃないかという話で、まさに結構なことなんですよ。そうすると、野党さんの一部と一緒になって、政策を一緒に遂行できるような大きな政党をつくろうじゃないか、こういうような話ができる、こういうシナリオなんですね。  だから、こういうシナリオだということをよく認識していただきたいのですが、どこから選ぶかということは非常に大変ですよね。まず制度導入して、それから党が分裂せざるを得なくなって、さあ社会党さん、あなたも分裂してください、そして一緒になりましょう、評論家たちはそんなことを言っていますけれども、そうなるのかどうかという点は非常に大きな問題を含むということを、まずこの制度の面で申し上げておきたいと思います。  そして、そういうことを申し上げた上で、野党さんの提案に対して御質問したいのですが、特に私は公明党さんが大変大事な役割だと思うのです。民社党さんも大事だと思っているのですよ。ところが、民社党に質問してはいけない。制度を変えなければいけないのですが、フリーディスカッションのときには質問できると言っていますから、それは保留するにしても、したがって、いわゆる少数野党さんを代表する格好で公明党さんから党としてのお考えを伺いたいのですけれども、今まで中選挙区制で百三十の選挙区で、今度百二十九になりますけれども公明党さんは候補をお立てになったりお立てにならなかったりしていますね。  余計なお世話だとおっしゃるかもしれないけれども、私はそのことはこれからの選挙制度について非常に大きな意味を持っていると思うのです。つまり、小選挙制度というのは政党が政党の政策を掲げて戦う制度ですから、例えば公明党さんが、この際大阪の何区においては我が党は候補を立てません、そして支持者の方は自由投票にしますとか、あるいは社会党を支持してくださいというような、そういう性格じゃないのですよ、本来小選挙区制というのは。ところが、今までの中選挙区制の場合は往々にしてそういうようなこともあらわれます。  それはいろいろな御都合によられると思いますが、党の御方針として、あるいは基本的なお考え方として、これは民社党さんにも実は聞いているつもりで言っているのですよ。しかし、制度的にお答えになれないようでございますから、制度的にだめなようでございますから、公明党さん、どうお考えになるのか、それから長期的にどうお考えになっているのかをちょっとお答えいただきたいのです。
  66. 井上義久

    ○井上(義)議員 細田委員の御質問にお答えいたします。  今、私ども議論しておりますのは、いわゆるこの中選挙区制が制度疲労を起こしている、今の状態では自民党の長期政権が続く、それから政権交代もできない、たび重なって起こる政治スキャンダルというものを抜本的になくすことはできないということで、政権交代可能な新しい民主主義というものを日本に根づかせようということで、いわゆる中選挙区制にかわる民主政治の土俵、ルールをどうつくるかということを今、私ども議論しているんだろう、このように認識しているわけでございます。  その中で、じゃ新しい土俵ができたら公用党はどうするんだという御質問だったと思うんですけれども、やはり新しい土俵をどうやってつくるか、日本の民主政治というものをどうやって発展させていくかという議論の中で、例えば、じゃ今公明党がこういう状態だから、その公明党に合った制度ということを考えるとこの議論はできないわけでございまして、私どもは、やはりまずそういう新しい土俵をつくる、新しいルールをつくるということがまず一番その大前提になければいけない。  そのルールができた中で、私どもが例えばじゃ政権を目指す、政権の一角を担うような努力をどういうふうにするかということ、当然その新しいルールの中で議論をしていく、工夫をしていく、そういうことだろうと思うんです。今の勢力が残るような、今の公明党がそのままともかく残らなければいけないとかいうような議論では、やはり本当の政治改革はできないわけでございまして、やはり身を切る、血を流す、そういう覚悟で新しい土俵づくりのために今全力で取り組んでいる、こういうふうにぜひ御理解いただきたい、こういうふうに思う次第でございます。
  67. 細田博之

    ○細田委員 党の委員長でもあられませんから、そういうあれで、党を代表するお立場ではなかなかそういう、党の政策ですから、その立候補者をどう立てるかということは……(発言する者あり)わかりました。そうですか、いいですか。それじゃ、それは撤回いたしますが、いや、そこが大事なことでございまして、そこが非常に大事なこと。  お答えになれるということですからさらに申し上げたいんでございますが、大変大事なことでございまして、公明党さんは非常に立派な実績を参議院選挙でも上げておられます。比例区でも一四・二七%この間とっておられますし、その前の三年前でも一〇・八六%、衆議院選挙でも立候補者数が制限されているとはいえ、非常にとられているところでの得票率は高いわけです。本当に、立てられなかったところを立てていれば、もっともっとたくさんとれるわけですね。そして、その数を数えてみると、一三%ぐらいとれば、五百人の総議席でも六十人から六十五人ぐらい通すことはできるわけですね。それだけの実力をお持ちになっている大政党ですよ。それは、第三政党でございますからね。  そして、私がこの社公案のいわば一票制のような二票制のような案を考えるときに、やはり疑問に思いますのは、政党政治をこれから進めていくというために、特に小選挙制度導入し、しかもその中で比例制度的なものを導入するということは、得票率を反映させるんだというときに、できるだけ多くの選挙区において、できれば今の共産党さんのように全選挙区で候補者を立てるということが政党政治の基本だと思うんです。それは私の政党に任せてくれと言われるかもしれませんが、これは非常に大きく制度と関連するんですね。  民間政治臨調の提案を読むと、一番欠点のあるのがそこなんですよ。二票制と言っている。そして、今の社公の提案も一・五票制のような感じがして、この場合はああで、あの場合はこうでとさっきから議論がありますから詳しく言いませんけれども、堂々と公明党も民社党も小選挙区において、もし比例制度を加味する制度をやるならば、一票制にして、全選挙区に候補者を立てて、そうしてそれが比例制の議席に必ず反映するようにやるべきだと私は思うんです。  なぜそう申し上げるかというと、これは内政干渉で言っているんでも何でもないんです。政党が政策を掲げて競争をして一名だけが当選する制度でございますから、例えば自民党と公明、民社とか、社会党と公明、民社とかが政策的に、いや政策的というよりは戦術的に、選挙区において私の方をよろしく頼むというようなことが起こり得るような制度をしてはだめなんですね。  つまり、一票目で自民党自分自民党候補だから私を書いてください。そうすると、二票目はほとんど自民党関係ないわけですよ、もし併用制のようなことをやれば、もう比例区ではほとんど落選しちゃうわけですから。そうすると、もう私の二票目は、じゃ公明党さんに上げましょうというような者が、そういう不心得な者が出かねないような制度になってしまいますし、それから、それは人を悪く言っちゃいけないから我が党の例として言っただけで、例えば社会党公明党とか、民社、公明とか、いろいろな党がそれぞれに候補を立ててこれをやろうというときに、いわゆる政策協定じゃなくて選挙協力ということで行われていく。私は、このことが今の日本の選挙制度を害してきたんじゃないかなという気がするわけでございますね。  つまり、公明党支持者も、時にこの選挙区では、まあ自民党支持者でもあの人は立派な政治家だから投票したらいいと思いますとか、自由投票にしますとか、あるいは今回はいろいろな問題が、消費税の問題があって自民党はけしからぬから、候補者はいないけれども社会党がいいんじゃないでしょうか、いろいろなことで御苦心はあると思いますけれども、やはり我が国政党制というものが未熟なところはそこにあるんですよ。我が自民党でもそういうことはよく耳にすることなんですよ。参議院選挙などが起こりますと、比例選挙がいろいろ起こる。我が自民党は普通に衆議院選挙すれば四八%の得票率なのに、比例でやれば三三しかとれないんですから。この間の、去年の選挙で三三、その前はもっとはるかに低かったわけですけれどもね。  そういうことを考えますと、もっと国民全体が、政党というものがどういう政策を掲げているんだ、私は自民党だ、私は公明党だというようにきちっと政策的に縦割りの考え方で臨むような選挙をやるべきだ、私はそう思っているんですよ。そうでなければ、日本の政治というものがだんだんよくならないんじゃないかということを思っておりますので、この今の併用制などを、あるいは連用制でもいいんですが、そういうことを考えるときに、二票制、二票制ということで話が進むようなことを言うことは、我が国政治を大きく誤らせるもとじゃないか。  私は大分演説をしましたので、何でも御意見をちょっとおっしゃってください。
  68. 小澤克介

    ○小澤(克)議員 まず、私から簡単にお答えをしたいと思いますけれども社公案も実は一票制というふうに理解しております。一票の中に党の要素と人の要素を二つ記載できるというふうに理解しておりますけれども委員のおっしゃる二票制と一票制というのの実質的な違いは、いわゆる異党派投票、つまり党はある政党を選びながら人の方はその政党に属しない候補を選ぶということを認めるか認めないか、実質的にはこの差だけの問題でございます。  私どもは、比例選挙は政党選挙が基本でございますが、そうはいってもやはり人の要素にも注目する場合に、有権者の選択の幅をなるべく広く認めようということからこの異党派投票を認めようではないか、こういう判断に立ったがために、委員おっしゃるところの二票制にしただけでございまして、選挙協力云々ということではなくて、あくまでも有権者の立場を尊重してこのような制度をとった、このように御理解いただきたいと思います。
  69. 細田博之

    ○細田委員 おっしゃる点はよく理解しておりますし、それから法案を提案するのがどの見とどの党が一緒に提案してももちろん自由でございますから、その間でいろいろな妥協案が出てきたり、こういう御提案が出るのはわかるわけですが、私が申しましたのは、せっかく小選挙区制をつくろうという場合に、やはり党というものの独立性、独自性がはっきりするような選挙制度にすべきであるし、それから、そうでないというなら、これは党がどんどん合併して二大政党になっていけばいいことでございますので、そういうふうな方向で見るべきだ。  だから、今回民間政治臨調というものが一つの妥協案であるということで案を出してきたんですが、その最大の難点は、自民党にとっては先ほど申し上げましたような、立候補者を絞れて党が分裂しないでいけるか、これは党にとっては大事でございますからね。党の人でない人にとってみればそこがねらいで、それはいい、結構なことだとおっしゃるかもしれませんし、それは御意見はいろいろあると思いますが、やはり政党として長年やってきておるわけでございますから、我が政党がしっかりと根づきながら、しかもきちっとした国民の支持を得ながら政策を打ち出していくということが一番大事でございますので、いたずらに制度のために割れていくということではいけません。  したがって、これは我が党のリーダー自身が非常にその点を肝に銘じて、候補者選定をぎりぎり絞り、そうして制度に対応していかなきゃできないぞということを申し上げたいというのが、自民党に実は注文しているわけですよ。軽々に、いや妥協案でいいものができて、それが制度さえ変えられれば何でもいいというような感じのことがありますけれども、そこまで考えて、そこまで血が出てもやるんだ、しかも党は分裂しないで自民党として再生をしていくんだ、そういうことをやらなければ意味がないじゃないかということなんでございますので、誤解のないようにお願いを申し上げます。  それから、野党に対しては、社会党さん、今まではむしろ公明党さんに質問ばかりしておりましたけれども、その一票制だ、二票制だという問題は、私の案をちょっと言いますと、案というのはもし一票制の場合ということでございますが、これはもう候補者名を書かせればいいじゃないか、各党とも候補者を出しなさいということでやるべきだ。もしどうしても投票ができない、個人が出ないという場合に、例えば公明党と一票目に書いた場合にどうなるかということは、法律的に検討して、憲法的にも検討したらいいと思いますね。なぜかというと、その人は公明党を支持しているんだから、何も社会党の候補や自民党の候補を無理して書くことないんですよ。それが第一ですね。  それから、無所属の候補が出た場合は確かに問題でしょう。しかし、その場合はやはり第一欄と第二欄があればいいと思うのですよ。そして、第一欄に無所属候補をこの人がいいと思えば書いて、第二欄に公明党と書いたり、自民党と書いたりする余地は残してもいいじゃないか。なぜなら、無所属というのは党の比例制に反映できないんだから。これは、そういうふうな比例制、併用制なり連用制なり並立制に向かった場合の話ですけれども、そういうふうに考えるのですが、そういうことについて社会党さんとしてはどういうふうに考えられるか、ちょっとお答えください。
  70. 早川勝

    ○早川議員 細田さんの提案を、四月八日のも拝見させてもらいましたし、その以前にいただいたのも読ませていただきました。  率直に言って、一つの見識だと私は思いますね。現行制度を含めて、また単純小選挙区並立制と併用制の三つの案は、それぞれ検討すべきだという提案でございました。同時に、二票制ではなくて一票制でということも書いてございました。  今のお話の中で、伺っていますと、場合によっては二票制でもいいんじゃないか、すっきりするという議論をされ、反面、一票制でいい、個人の候補者を介してその政党としてカウントしなさいという提案だと思うのですが、一つの見識だと思いますけれども、今回私たちの出しているのは、基本は政党ですよというところからスタートするわけですね。政党を書くことで一票、そして個人の顔を見せるように二記載にしたというのが基本でございますので、細田さんの提案というのは一応それなりの評価をさせていただいております。
  71. 細田博之

    ○細田委員 それからもう一つは、並立制ということについてお伺いしたいのですが、並立制だめだということがありましたけれども、並立制は確かに数によって非常に不公平が生ずる可能性があります。なぜならば、特に民社、公明、共産のような少数政党にとって並立制というのは、まず小選挙区を分離、独立して当選者を決めてしまって、比例制の比例区の中で割り振っていくから、その割り振った率が、得票率と掛け算しますと非常に少なくなってしまうということはあるんでございますが、私自身いろいろ計算をしてみますと、並立制もその掛け算の仕方といいますか、議席の配分の仕方によっては、今の公明、民社、共産の案よりは少しもっと民意反映できるといいますか、得票率により近いことができるような中身にもし得るんじゃないかというふうにも考えているんですよ。  その場合、並立制というのは、つまり二票制を生かす前提の案になりますから、あくまでも候補者が立てられないとか、いろんな事情考えたときには妥協し得る案じゃないかと思うのですが、非常に社会党さんが、並行制というのはとんでもない制度だというふうにおっしゃっているようにも聞こえますものですから、なぜとんでもない制度かということをちょっとお伺いしたいのですが。
  72. 小澤克介

    ○小澤(克)議員 並立制は、いわゆる多数代表の小選挙区制とそれから比例代表制とを、全く異質のものをまさに木に竹を接ぐように単に機械的に接合したという意味で、理論的にほとんどこれは成り立たないものだというふうに考えております。諸外国でも、韓国で一部そのような制度導入されていると聞いておりますけれども、他に類例を見ない制度である。何といいますか、哲学がないといいますか、そういうふうに考えております。  なお、小選挙区制の弊害、すなわち、ごく低い得票率で大多数の議席を制するというこの基本的な欠点が、部分的に比例制を導入したところで基本的に払拭されない、こういう実質的な欠点もあるために、私どもは到底採用できないものだというふうに考えておる次第です。
  73. 細田博之

    ○細田委員 参議院でやっていますよね。参議院についてはどういうお考えでしょうか。
  74. 小澤克介

    ○小澤(克)議員 先ほど韓国に例があるのみだと言いましたけれども、確かにおっしゃるとおり、参議院ではいわば並立という形になっておるかと思います。ただ、これは職能代表などを想定した全国区制度、ここが出発点になりまして、いわゆる残酷区と言われる弊害を除去するために一部比例制を導入したという歴史的な経過があるわけでございまして、参議院にこれがあるからといって、衆議院にも導入していいということには全くならないというふうに考えております。
  75. 細田博之

    ○細田委員 私はむしろ論理が逆だと思っているのですね。もう衆議院にそういう並立制が導入されるのなら、参議院を変えるべきであって、衆参両方考えたらどうかというふうにも考えますので、何か最初から門戸を閉じるような、絶対並立制がいけないというようなことを御発言になる前によくやはり考えられて、その数によっては案外おもしろい制度ができるかもしれないし、よりいい制度ができるかもしれないということを、頭を柔軟に考えられたらどんなものかなと思うわけでございます。  自民党に今度はいろいろお伺いしたいわけでございますけれども、例えば今中選挙区制でお金がかかり過ぎるとか、競争が激し過ぎるというのがあったわけですけれども、特に石井先生はその道の権威でいらっしゃいますけれども、例えば中選挙区でお金がかからないようにするために候補者をふった切って、言葉がちょっと悪いからおあきらめいただいて、五人区は三人とか、四人区は二人、三人区は二人というふうに調整すれば、随分政治資金が楽になるんじゃないかなと思うのですが、それはできないことでしょうか。
  76. 石井一

    石井(一)議員 まず一点だけ。  五百人の場合には、当然我が党は五百人の候補者をどんなことがあっても探してまいりまして擁立し、政権政党としての責任を果たしますし、三百の場合だと四、五十名カットしなければいかぬと思います。しかし、政党を中心に、組織を中心に支部を固めまして、イギリスのエージェントのような例もございますけれども、私は、そうしてそこで同士打ちはなくなり、激しい過当な競争というのは、まず最初、今三百五十人走っておる人々にすぐやめろと言ってもどうかと思いますが、二回目、三回目のうちにはこれはきっちりと、平静に整然と問題は処理されると思いまして、私は細田さんの言われましたように、直ちに自民党のその九十人が分裂して野党と合同してというような話は、私たちの頭には全くございません。  それから、今の最後の御質問でございますけれども、例えば島根全県一区で見られました場合に、あなたは、御尊父のときからどういうことが行われてきておるか、例えばそういうような統率力を時の総裁が持ったか、現実に同士打ちの活力、自民党の活性化活力というのは派閥とその中から出てき、政権を維持してきたというのは紛れもない日本の歴史ではないか、この事実をひとつ直視していただきたいと思います。
  77. 細田博之

    ○細田委員 いや、そういう事実を直視しておるからこそ私は心配しているわけでございます。したがって、余り我が党としては軽々に、特に幹部の方が、私らが事務的に計算するとこうなるかもしれない、こういうふうに問題になるかもしれない、それはいいと思うのですよ。むしろ勉強しないと、どこに問題があるのかわからないでいいかげんなことを言う人が出てきますから。しかしそうじゃなくて、本当に責任ある地位の人が、このように制度を変え、しかも与野党の妥協案で今国会でその法律を通した場合にはこういう問題が起こる、しかも我が党としては、毅然としてそれをやるべきだとかあるいはこれは大変だからちょっと待とうとか、その辺の判断をすべきだと思うのですね。その上での制度であって、五百名で我々が今頑張っている、自民党が頑張っている間はいいのでございますが、その後軽々に、総理大臣も含めて、何とかなるだろう、話し合いなんだ、こういうことだけではうまくいかないと思いますが、その点とうでございますか。
  78. 石井一

    石井(一)議員 細かいことについてはこの席でどうかと思うのでありますが、大都市の周辺のように、候補者を今後物色し、探してこなければいけない選挙区もございましたり、あるいはもう既に過当な、過重な状況の中に調整を強いられておるというところもございますね。しかしそこは、前回、海部内閣三法案のときにも党内ルールをつくりました。しかし、今度は今度の新しい状況に対応する中に党内のルールをつくり、まあ長幼序ありという制度もあれば、その反対もございます。そのほか得票率等の、あるいは惜敗率というようなものもございますが、いろいろな知恵を出しながら一つのルールをつくり、それに従っていき、それに従ってもらい、それに従われない方はひとつ党からお去りをいただく、こういうものを制度を変えるときに決めていかなければ、ほかに脱出の方法はない、そのように考えておるわけでございます。
  79. 細田博之

    ○細田委員 そういう御覚悟でひとつよろしくお願い申し上げます。  今ちょうど大都市周辺だとか地方だとかという話が出まして、これは社会党案自身も、非常に社会党公明党の共同提案も大きな問題を含んでいると思うのですよ。ブロック制の問題点については、増子議員が相当突っ込んだいい質問をされましたから余り重ねて申しませんけれども、あそこは非常に苦労のあるところだと思う。社会党さんだって、地方の人は、より自民党が有利でございますから、従来の支持率で言うと、そうすると小選挙区では自民党が勝つかもしれない。しかし比例区では何とか上げなければいけない。そのときに、得票の数が多かった方がいいのか、当選者に対して肉薄した方がよかったのか、全体の比率を余計とった方がいいのかというとなかなか問題がありまして、それが全国でいきますと、例えば全国区制度になると、今度は、都会で当然勝つべきところで負けた人と、負けるべきところで一生懸命やった人とをどう評価するかというのは非常に難しい。  これは自民党の場合は、併用性の場合は、普通は今のままであれば余り比例の順序なんということは問題にならないわけですが、逆に、ブロック制をしくと自民党も、民間政治臨調の案で出てきておりますように、都会で当選するようになるのですね。つまり、あのシミュレーションでごらんになったように、都会で落ちる、そうすると連用制といって、比例がゼロになってないんです。都会では落ちた分だけ上がる。で、地方ではまた上がるということで、数の面ではある程度有利になるような感じもある。その辺についての社会党さんの考え方というのは整理されているのかどうか。一応非拘束ということになっていますけれども、その辺の均衡というのはどういうふうに考えるかということですね。今度は拘束名簿、拘束というのは、あれは多い順でしたかね、ちょっと……。
  80. 早川勝

    ○早川議員 拘束名簿にしないといけないわけで、しますが、その順位ですね、同一順位を置きます。したがって、今細田さんの言われたような、どういう形で具体的に比例で当選させていくのかというときに、どういう順序をつけるかという問題があります。そのときに社会党なり、各党そうだと思いますけれども、それぞれの党内的な、地域性を配慮するとかいうところで、その党内それぞれで順位をつけるときに考慮すれば十分対処できるという考え方です。
  81. 細田博之

    ○細田委員 公明党さんどうですか、公明党さんの順位は。比例の当選の順位をブロックの中でどういうふうにつけていくのかということについての考え方。
  82. 井上義久

    ○井上(義)議員 もうひとつちょっと今のみ込めないんですけれども、基本的には拘束名簿になっておりまして、拘束名簿の一部を同一順位とすることができる。その同一順位については、いわゆる重複立候補者、小選挙区との重複立候補者についてだけ同一順位とすることができる。それで、その当選の決め方は、いわゆる小選挙区における肉薄率で決めますよ、こういう仕組みになっているわけでございます。それのどちらを選択するかというのは、それぞれの政党で基本的には考えるということでございます。  この問題で、これは小選挙区の場合も同じだと思いますけれども、要するに政党間の勢力を争う選挙でございますから、やはりそれぞれの政党がどういう候補者の決め方をするかということが一番問われてくるんだろうというふうに思うわけでございます。したがって、やはり政党政治でございますから、政党がきちっとした候補選定の手続というものを定め、それを公表し、有権者の審判を仰ぐ、こういうことで、私どもの法案につきましても、それぞれ党が候補者選定の、あるいは名簿順位をつける手続を自治大臣に届け、自治大臣がそれを公表するという仕組みを仕組んでいるわけでございまして、やはり一番大事な問題は、それぞれ政党間の勢力を争う、そういう選挙でございますから、その政党がきちっとする、候補選定の手続についてもきちっとしたルールを確立するということが、これからのやはり大事なポイントになるんじゃなかろうかというふうに思っているわけでございます。
  83. 細田博之

    ○細田委員 きょうは法案の提案者だけに質問をしろということでございまして、やはりこういう問題は民社、共産ともに、法案を提出したいという意欲は本当は持っているわけですし、内々の案は持っているわけですから、いずれフリーディスカッションのときに各党がそれぞれの関心をもっと言うべきであるし、先ほど言いましたように、民社党さん、それではこの立候補者をどういうふうに立てていくのか。そういうことが、これから自民党案社公案がぐうっと歩み寄っていく、これは可能性がなきゃ、穂積先生言われたようにどうしようもないわけですから、そのときに制度を選択するときに、いろいろな利害もありましょうけれども、我が党の利害というのもさっき申し上げましたが、それをなるべくクリアしながらやっていかなければ、何ら積極的な案、建設的な案というのはできないんではないかということを危惧しているわけでございまして、民間政治臨調も出たことをきっかけに、そういう制度に内包するさまざまな問題点を申し上げるとともに、私自身もいろいろな案を考えていますし、むしろ私はこの両方の案というのは、やあやあ我こそはと言ってまず一合まみえるためにつくった案であることは確かでございます。それを最後まで主張するかどうかというのはこれからのことでございますが、そのシミュレーションをよくやって分析をして、それぞれの場合はこういう問題があって、ここならのめる、ここならのめないということを詰めないと、六月二十日までにできるわけがありませんよ。  そういうことを最後に申し上げまして、質問をこれで終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  84. 田邉國男

    田邉委員長 池田元久君。
  85. 池田元久

    ○池田(元)委員 きょうから選挙制度の問題を中心論議することになったわけですが、選挙制度というのは、もう申すまでもなく議会民主主義のルール、土俵の問題です。今もシミュレーションが大事だという話もございましたが、それを否定するものではありませんが、やはり基本は、党派的な主張をできるだけ離れて、客観的に議論を進めなければならないと思います。選挙制度については、一部で言われておりますように、それがこの政治改革の中のすべて、全能と言う人もいますが、政治腐敗防止策と並んで改革の重要な柱であることは当然です。日本にふさわしい公正で民主的な選挙制度をつくる必要があるのではないかと思います。  もう既にきょうからテーマ別質疑に入ったのですが、既に妥協案が取りざたされております。きょうは第一回のテーマ別質疑ですから、基本的な点に戻って議論をしていきたいと思います。  まず、選挙というものの意義、役割は何か、自民党案提出者から伺いたいと思います。
  86. 石井一

    石井(一)議員 憲法四十三条、四十四条でございますが、国民の代表を選挙によって選ぶ、そうしてそのことによりまして、議会におきまして民意を総括し、集約した中にその代表としての権利を行使する。また、衆議院選挙の場合は参議院と違いまして、政権の選択ということに関しましても国民の意思表示を求める、そのように理解いたしております。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  87. 池田元久

    ○池田(元)委員 社公案提出者からも端的にお伺いしたいと思います。
  88. 早川勝

    ○早川議員 これは非常に重要な問題だから総括責任者が答弁するのが妥当と思っておりまして、ちょっと遠慮いたしましたけれども、やはり基本的には国民政治への参加という基本があると思いますし、その中で議院内閣制をとっているというのが我が国の制度でございますね。  その中で基本になるのは、先ほど四十三条、四十四条の話が出ましたけれども、やはり民意をいかに反映するかということで、御存じのように普通選挙制度がとられていたり、あるいは自由選挙であると、つまり投票してもしなくてもいいのですよと、有権者にはそれだけの裁量権を与えていますよとか、あるいは平等でなくてはいけない、格差の問題とかですね、あるいは直接選挙とか、選挙の基本がございますけれども、やはり意義というのは、いかに国民の、そしてまた有権者の意思を国政の場に、国政参加、政治への参加という形で平等に反映させるかということにあると考えております。
  89. 池田元久

    ○池田(元)委員 選挙制度は、同意とか代表のような観念を現実の世界に置きかえる道具だというふうに言われています。直截に言えば、有権者の投じた票を議会での議席に変換する方法であるというふうに言えるのではないかと思います。民主主義は人民による政治である以上、人民、国民が直接政治に参加するのが望ましいわけですが、しかし、それができないために、次善の策として国民を公正に代表する者を選ぶシステムがどうしても必要だ、そこに選挙の意義が第一義的にあると思うわけです。  民意の集約ということはこの後論議しますが、では選挙の意義に関連して、議会の役割は何か、端的に自民党側に答えていただきたいと思います。
  90. 伊吹文明

    ○伊吹議員 先生はこれはもう御承知のことでありますが、憲法等に国会の本来の役割というのは規定をされております。  その中で、国会というものは本院と参議院の二院から成り立っているわけでありまして、本院が特に特徴づけられておりますのは、内閣の首班を選ぶ、そして予算案の審議において参議院の議決に優先するという二点に集約されると思います。予算案というのは、言うまでもなく、内閣が全国政をお金という面であらわしたものであります。内閣を選び、予算案の決定については優先をし、かつまた場合によっては任期内に解散があるということは、まさに単なる立法機関であると同時に、国政をゆだねる人を国会を通じて選ぶ場合に、衆議院の役割にはその役割が託されているということであります。
  91. 池田元久

    ○池田(元)委員 衆参の優位性を問題にしているわけではありません。議会の役割、それは端的に言って、民意の統合といいますか、集約する機能があるのではないかと思います。衆議院政権を選ぶ、それは一面正しいのですが、これは別に衆議院だけじゃないんですよね、総理大臣の指名選挙は。ただ優位性があるというにすぎないわけです。選挙政権、政策を選択するということは言えるのですが、小選挙区制にしても、いつも単独過半数の政権ができるわけではないわけです。場合によっては連立政権ができることもある。その場合、政権を皆さんおっしゃるように直接選択できなかったことになるわけです。  憲法四十三条、先ほどから出ておりますが、全国民を代表する選挙された議員で両院を構成するというふうにうたっています。まず、選挙によって公正に国民の代表を選出し、議会をつくることが何よりも重要ではないかと私は思います。その議会が首班を指名する仕組みになっているわけです。つまり、選挙は公正に国民の代表を選び、議会がそれを集約、統合するということがまず一つといいますか、大事なことではないかと思います。  それから、時間がないので一言申し上げますが、安定政権をつくるということをよく言います。しかし、それが国民の過半数の支持を得ていないのであれば、これは見せかけの安定にすぎないと思います。それよりも、国民の多様な意見を吸収できる政権が本当の安定政権ではないかというふうに考えます。  次に、小選挙区と政権交代についてお尋ねしたいと思うのですが、選挙制度論議すみ場合には、幾つかの仮説、推論、そういったものをもとにいろいろ主張を述べるものが多いわけです。自民党の中でも、また過去の選挙制度審議会の委員の中でも、小選挙区制では政権交代可能性が高いとか、比例代表制では政権が不安定になりやすいとか、よくこういった言葉が耳に入るのですが、それをちょっと検証していきたいと思います。  小選挙区制を採用すると政権交代可能性が高くなるのかどうか、自民党案提出者に端的にお伺いしたいと思います。
  92. 石井一

    石井(一)議員 小選挙区制が施行されました場合には、私は、確実に政権交代を促進するというそういうふうな作用が起こると思います。これは諸外国の例もいろいろございまして、小選挙制度をとっておりますところがやはり政権交代が比較的スムーズに行われておるという、そういう検証もございます。もちろん例外的に違うところもあるわけでありますけれども、基本的にはそういうふうなことが言えるだろうと思います。  また、二者択一という中に、政策を対比し、政局に緊張感をもたらしてくる。こういうふうな中から、まあこの例はどうも社会党さんはお好みにならぬのでございますけれども、平成元年の参議院選挙のこの一例を申しましても、私は、劇的な変化というものが政党の支持をも超越してそこにあらわれた、非常に日本国民一つの見識を示した結果というふうなものがある。  私は、今負けることを言うなと私申しまして大変失礼しましたけれども、今この時点で選挙をやりまして、野党の連合が行われました場合には、劇的な政権交代というふうなものが、二大政党ではございませんけれども、起こり得る余地というふうなものはある。やはり政策の二つの流れの中から、二者を択一させ、その中からそういう形での政局の緊張をつくっていくということは、非常に重要な政治の選択だと思っております。
  93. 池田元久

    ○池田(元)委員 社公案提出者にお伺いしたいと思います。
  94. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 今まで、石井さん初め自民党さんのお話を聞いておったのですが、小選挙区制のときは政権交代が起こりやすい、それはわずかな国民の意識の変化が政権交代をもたらすんだ、こういう論理立てになっているわけですね。一方、比例代表に対しましては、中政党といいますか小政党がキャスチングボートを握る、だからこれはおかしいんだ。  しかし、それは言っていることは一緒なんですよ。その選挙の場合には、少人数の人の意識の変化によって政権交代が起こりやすいと言われる。比例代表の方には、政党という国民にわかる一つの団体が、これがキャスチングボートを握る。そのことは一緒なので、目に見えない、国民が秘密投票でやるか、政党という、いわばそれは小政党かもしれませんけれども、それがキャスチングボートを握るか、どちらが国民にとってわかりやすいかどうかの比較の問題だと思うのであります。  それから、石井さんのずっとお話を聞いていますと、政権交代は劇的に起こるんだ、平成元年の例を言われる。確かに我々の支持が多かったことはまことにありがたいが、参議院の例は、二十六の小選挙区の中で二十三が社会党及び連合、連合という票の中には公明党さんの票も入っていれば民社さんの票も入っているんだろうと思うわけでありますけれども、何もそこだけではないんですね、勝ったのは。五十の比例代表のうち、二十が社会党、それから十五が自民党と、比例代表の方でも変化があったわけでありまして、小選挙区だけにそのことの結果をもたらすことは、まことに結果につきまして正当なる、あるいは正確なる評価ではないということを申し上げさせていただきたいと存じます。
  95. 池田元久

    ○池田(元)委員 政権交代は、どんな選挙制度であれ、得票率第二位以下の政党が一位に躍進することなどによって起こるわけです。社会党が得票率トップで勝った八九年の参議院選挙の例というのは、よく耳にたこができるほど前から言われているんですが、衆議院選挙を小選挙区制にすれば社会党政権をとれる、こういう宣伝がかなり行われておりますが、しかしこの場合は、今も出ましたけれども比例代表制にしても社会党は比較第一党になるわけです。その場合は、政権交代可能性が高まるわけですね。  むしろ私は、社会党にいるからというか、社会党と離れてといいますか、社会党であれ何であれ、三〇%そこそこの得票率の政党が過半数の議席を占めるということ自体制度としてはおかしいわけです。これは不公正なものだ、アンフェアなものだ、このように言わざるを得ないと思います。  石井議員もよく御存じのアメリカでは、昨年大統領選挙とともに上下両院の選挙が行われたわけですね。ここで、単純小選挙区制をとっている下院の選挙では民主党がまたもや圧勝したわけです。ニューヨーク・タイムズの記者も書いているのですが、アメリカの下院では、民主党の多数支配が長期に続いて岩盤のようになっていると言われているわけです。そして、大統領と違って、下院議員の再選率は極めて高いわけです。このため、最近アメリカから来た訪問団から聞いた話ですけれども議員の任期を制限する動きが各地で出ているわけです。一言で言って、単純小選挙区制をとっておりますアメリカ下院では、議席の固定化が問題になっているわけです。  質問していると時間がかかりますので、もう一言申し上げたいと思うのですが、日本では中央集権のもとで利権構造が広がっているわけです。小選挙区制になるとしますと、議席の固定化によって、皆様これは言わなくてもおわかりでしょうが、一人の議員が長くその地域への予算配分などを握って、地方での利権構造を増幅することになりかねない、こういう心配もあるわけです。小選挙区制というのは、民意の変化を増幅するということは言えます。しかし、政権交代可能性を高めるどころか、議席とそして政権の固定化につながりやすいというのが最近の学者の意見でもあり、それが通説になっているのではないでしょうか。  次に、比例代表制政権の不安定について少し検討してみたいと思います。  これもよく言われることですが、比例代表制では政権が不安定になる、果たしてそうなるのかどうか、自民党の代表に端的に、先ほども出ましたので端的にお伺いしたいと思います。
  96. 伊吹文明

    ○伊吹議員 先般来お答えしておりますように、これは比例制であるから必ずしも常に不安定になるとは私は思いません。結局運用の問題でしょう。  ですから、私はむしろ質問者である池田先生に私の方からお伺いしたいんですが、先般来私どもの野田委員から質問をいたしました際にもいろいろ出ておりましたが、もし社会党さんが比較一党になる、あるいは二党になった場合に、今の自衛隊であるとか韓国であるとか原発であるとかいう基本的なお考えのもとで、どことお組みになって安定的な国民のための政権をおつくりになろうとしておるのか、その具体案がなければこの話は国民の前には私は進められないと思うんですが、いかがでしょうか。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  97. 池田元久

    ○池田(元)委員 この伊吹さんの今の質問といいますか、これもよくある話でございまして、今制度一般を論じているわけですね。で、具体論として今お尋ねになりましたけれども、その場合は、当然比例代表制になれば、そこでどういう政権をつくるか、国民が予測できるような、そのような形になるわけですよ。ですから、それは攻撃のための攻撃でございまして、一般化できない議論だと思います。  比例代表制が政党の分立をもたらす、もたらすというより、選挙制度が政党配置を僕は決めるとは思わないのですけれども、政党の分立は現在の社会では当たり前のことかもしれません。比例代表制は、政党の分立をそのままにするということはだれしも考えます。その結果、複数の政党による連立政権を生みやすいということまでは言えると思います。しかし、連立政権が本当に不安定になりやすいか。一部お認めになりましたけれども、よく戦後すぐの片山内閣や芦田内閣、ヨーロッパの一部の国の例から、連立政権は不安定というイメージがあるのではないかと思います。  さきの本会議でも引用されましたが、お手元に配りました資料の下の方ですが、アメリカの政治学者でローレンス・ドッドという人がいますが、その人の研究がこの方面では知られております。議院内閣制をとっているヨーロッパとカナダ、オーストラリア、合わせて十七カ国の国会を分析した結果、ここ五十年の間、各国議会の四分の三で連立が行われているが、四十カ月、つまり三年四カ月以上続いた内閣の八〇%が連立政権であると指摘しているわけです。連立政権が不安定であるとは言えないことを実証しているわけです。また、戦後のヨーロッパ諸国の政権安定度を調べると、比例代表制だから不安定になるとは言えないという日本の研究者の分析もあるわけです。ですから、いずれにしましても、こうした比例代表制では政権が不安定になるというのは、これは俗耳には入りやすいですけれども、まさにこれは今では神話になっているということを強調したいと思います。  次に、政党制について取り上げてみたいと思います。  選挙制度にかかわりの大きい政党制なんですが、現在政党制としては、二大政党、それ以上の数の政党でつくる多党制があります。どのような政党制が望ましいか、それぞれお尋ねしてみたいと思います。自民党の代表のお答えをいただきたいと思います。
  98. 石井一

    石井(一)議員 一言だけ先ほどの問題に触れさせていただきたいと思いますが、現在イタリアの上院の選挙が行われておりますこと、また、西ドイツの第一党と第二党がある中に第三党がキャスチングボートを握ったり、第一党を無視して二党と三党が連合をし、その中に政権が不安定になったというのも現実の姿でございます。今のドッド教授の研究も非常に勉強するに足るものではあると思いますが、多党化なり比例代表をやっております典型的な国はその二国であると申してもいいと思いますが、そういう現実ということを申し上げさせていただきたいと思います。  次に、政党の問題でございますけれども、私は日本のような国、前にもちょっと申して御反論もございましたが、教育レベルも高く、見識を持ち、そして言語その他、国にユニフォーミティーといいますか、そういうふうなもののある国は、アメリカなんかに比べて大変に違いが僕はあると思います、私はアメリカで長く生活しておりましたけれども。そういうことから考えますと、二大政党というものが望ましいというふうに考えております。  また、冷戦構造が終わりまして、今やイデオロギーの対立もない。今必要なことは、五五年体制をいかに払拭し、そして共通の基盤に立った二つのもの、例えばオーバーに言いますと、PKOか反PKO、護憲か改憲、あるいは環境か開発、あるいはそのほかいろいろ国民に選択を求める共通の地盤というものができておりますので、その選択を求めるという制度がいい。そして、私もう一つ申し上げたいのは、政権交代のない制度は、二大政党や多党政党ではない、我が国の制度とは一カ二分の一政党である、こう申し上げたいと思います。
  99. 池田元久

    ○池田(元)委員 いろいろ質問していただいて大変光栄でございます。  その前の石井さんのおっしゃるのは、時間がないから余り多くは申しませんが、それが政治的現実なんですね。連立政権であれ何であれ、民意をよく吸収できる政権が安定なんです。いわゆる少数で、過半数割れの得票率をもって過半数以上の議席をとることが果たして本当の安定政権になるかどうか、これは大変疑問なわけです。その点をお答えにしたいと思います。  それから、今の政党制でございますが、この点につきまして、社公両党の代表にも一言お尋ねしたいと思います。
  100. 石井一

    石井(一)議員 ちょっと一言、済みません、池田さん、今の質問に対して、長く言いませんから……(池田(元)委員「いや、いったんやりとり終わったんじゃないですか」と呼ぶ)委員長が指名したらいいんですよ。  池田さん、今お配りになりましたこの紙で、保守党、労働党は政権とっているんですよ、過半数とっていなくて。イギリスでは過半数以上、五〇以上とっている政権はないんですよ。そこは間違えないでおいていただきたいと思います。どちらも、自由党の存在がございますが、場合によっては三〇%台で政権をとっているんです。自民党は四五%ぐらいでとっているんですから、この点……(「おかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)おかしいじゃないじゃないですか。だからこの点は、この書類を見ていただきましたら、過半数をとらないと政権がとれないというのは間違いですよということを申し上げておるわけです。
  101. 早川勝

    ○早川議員 池田さんの質問は二大政党か多党制がという御質問だと思うのですが、その前に先ほどの、比例代表制は大変に不安定だということを言われたのですが、西ドイツの例だけ言いますと、六九年から八二年まではSPDが中心になった政権が十三年続いた。そして今は、キリスト教民主同盟ですか、これが今日まで続いているということで、必ずしも不安定とは言えないというふうにまず実証されていると思います。  それから、二大政党がいいかというのは、私は結論だと思うのですね。国民が非常に多様な価値観と、そして生活態様、文化論等、いろいろな問題を持っている、そういった反映が政党になるわけでして、初めから二大政党がよろしい、ましてや制度的にそれを指向するというのは、とらない方がよろしいと思っています。
  102. 池田元久

    ○池田(元)委員 政党制というのは、各国のまさに全体のあらわれ、伝統、文化、社会、経済、そういったものを映しているんじゃないかと思うのです。イギリスでは、有産階級と労働者階級という社会内溝、クリビッジと言うらしいのですが、それによって保守党と労働党という二大政党が形づくられているわけです。  現在の日本では、こういった階級、宗教といった深い溝はほとんどないことは御承知のとおりです。しかも、冷戦の終結によって、政党間の観念的な対立軸はもう意味を失ったのではないかと思います。それにかわって、最近よく言われますが、生産者サイドか需要者サイドか、中央か地方か大きな政府か小さな政府が、さまざまな政策対立軸があるわけです。それに加えて、環境とか人権問題等で新しい対立の軸が生まれているわけです。このように多様な対立軸が生まれているわけですから、政党はどうしても多党制、マルチパーティー・システムにならざるを得ないのではないかというふうに考えます。  第一に、脱イデオロギーの時代には、従来の対立型ではなくて、コンセンサスの形成に当たって十分な納得を必要とする協調型の、よく言いますね、自民党内閣でも、対話と協調とかね、そういう協調型の政治が望まれるわけです。対立を際立てる二大政党制よりも、ヨーロッパの主要国を見ても実際は四つぐらいの政党配置が多いのですが、我が国では五つですが、そういった多党制の方が、こうした点ではよりよいのではないかというふうに考えます。  そしてさらに第二には、わずか二つの政党では多様な国民意見を吸収することは難しいことは、これは明白です。イギリスでは、社会自由党というのが出現しました。また去年のアメリカの大統領選挙では、ペロー現象なども起こりました。こういったことから、二つの政党でくくるというのはなかなか、なかなかといいますか、現状にマッチしないということが言えるのではないかと思います。  第三に、二大政党の対立のもとでは、政権交代のたびにスイングするわけですね。第一党が相対多数で連立を組むことで、むしろ国民のコンセンサスの幅を広げることができるのではないかと思うわけです。こうした多党制にふさわしい選挙制度が何かというふうに皆さんにお尋ねすれば、答弁を求めなくても、多くの党の中から支持政党を選択して議会に代表を送り込める比例代表制であることは明白ではないかと思います。  さて次に、選挙制度の比較を若干してみたいのですが、これまで私は小選挙区制は政権交代可能性を高めるとか、比例代表制では政権が不安定になるというのは神話にすぎない、こうしたことはもうこれまでの議論で明らかになったと思います。こういったことから離れて、それぞれの選挙制度を客観的に比べますと、まず小選挙区制は、比較第一党に極めて有利に作用する制度だというふうに言われております。逆に言うと、第一党に得票率以上に議席を与えるかわりに、第二党以下に多くの死に票が出ることは明らかです。  その甚だしい例が、お手元に配ってあるのですが、この資料の上の方を見てください。イギリスでは、一九五一年の選挙では、労働党に投票した者は保守党の支持者より〇・八%多かったのですが、議席は逆に、保守党三百二十一に対して労働党は二百九十五でありました。一九七四年にも、得票率と議席数が逆転して、労働党の議席が保守党を上回ったということがあります。こうしたことが今世紀になって、イギリスの選挙では二十六回の選挙のうち四回も起きている。また、カナダやニュージーランドでも起きておりまして、ニュージーランドでは、こうした逆転現象が併用制選挙制度を変えようというきっかけになっているわけです。小選挙区制では、全国民の多数意見の方が死に票になって少数意見の方が政権を担当することになることが時々起こるというわけです。  ただ、小選挙区制の欠点はいっぱいあるんですが、そればかり言わなくてもいいと思うんですが、小選挙区制にも、候補者の顔がよく見えて候補者の人を吟味できるというメリットがあると思います。ですから、非常に自民党の皆さんみたいに単純な、短絡的な思考ではなく、両方をよく考える必要があるのではないかと思います。比例代表制は、得票率と議席数の開きがなく、現代社会の多様な民意を正確に反映する制度と言っていいのではないかと思います。しかし、比例代表制も、比例選挙区を大きくすればするほど候補者の数が多くなって、顔が見えにくくなる。  そういった点を、両者を冷静に判断して、やはり選挙制度に完全無欠ということはないんですけれども、私は、民意を正確に反映する比例代表制を基本に、候補者の顔が見える小選挙区制を併用した社公提案の形が、今ある中で一番いいというふうに考えるわけです。  この点について端的に、小渕さん、いかがでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  103. 深谷隆司

    深谷議員 先ほどのお話の中に、国民考えというのは非常に多様化している、したがって多党化の方がいいというふうなお話があったんですが、それは大変短絡的な物の考えだと思うんですね。二大政党で、責任政党として政権をとるということになれば、国民の広範な意見をいかに吸収できるかということが政権をとり得るかどうかの境目になってまいりますから、国民のニーズがどのように多様化しても、むしろ政権をとろうとする意欲のある政党は、それらの国民の声を率直に反映させるということに全力を挙げますから、国民の声が多様化するから多党化というのは、私は議論がおかしいと思っています。  それから、イギリスのせっかくの例をお出しいただいて、確かに一九五一年と七四年は得票率と議席数はおかしいですが、これは十四回もの選挙の例を挙げて、その中のそういうケースはたった二回しかないわけですから、むしろ大体おおむねうまく進んでいるというふうに私は思います。
  104. 池田元久

    ○池田(元)委員 今の答弁は甚だ残念です。選挙制度の比較、優劣を聞いているわけですね。部分的な話は幾らでも私の方から説明できますけれども、正面から答えていただきたいと思います。  社公案提出者から答弁をいただきたいと思います。端的に答えていただきたいと思います。
  105. 井上義久

    ○井上(義)議員 池田委員御指摘のとおり、比例代表制には民意を正確に反映する、こういう利点があるわけでございます。それに対して小選挙区制は、候補者の顔がよく見える、候補者に直接投票できる、こういう利点があるんですけれども、ここで考えなければいけないのは、確かに候補者の顔が見える、候補者に直接投票できるということなんですけれども、それは確かに利点の一つなんですけれども、これは要するに、やはり政党政治で政党の勢力を争うということが当然比例代表にも小選挙区にも言えるわけでございまして、そうすると、例えばある選挙区の選挙民は、確かに顔は見えるんですけれども、要するに政党の決めた候補者にしか投票できない。例えば、私はこの政党はいいんだけれどもこの候補者はどうも我慢ができないという場合も、その政党を支持する限りはその候補者に入れなきゃいけないという意味では、顔が見えるといっても非常に限定的だということは両方に言えるわけでございまして、そういう点は、顔が見えるから小選挙区が全面的にいいんだというような議論は、私はちょっといかがなものかと思っているわけです。  選挙ですから、やはり選挙で示された民意というものが議席に正確に反映をする、この比例代表というものを基本にして、顔がみえる、あるいは無所属等の候補者にも配慮をするということで、我々、併用制といいますか、小選挙区を併用したわけでございまして、と同時に、何回も申し上げているんですけれども、小選挙区を併用したということは、小選挙区というのは定数一を争う選挙ですから、やはり小選挙区に立てられるようなそういう全国的な政党というものに民意というものはどうしても集約していくわけでございまして、私たちは、そういう自民党さんがおっしゃっているような政権を担うような大きな二つの勢力、こういう形に将来この制度が適用されることによって集約していくであろうということは当然予想しているわけでございます。  それを小選挙制度、単純小選挙区という形で鋳型にはめて、それこそ三〇%、四〇%の支持率で八〇%、九〇%といういわゆるつくられた多数派をつくるのか、民意に従ってそういう政権を担うような政治勢力というものをつくっていくのかという、ここに私は違いがあると思うわけでございまして、そういう点から考えますと、小選挙区を主張されている自民党の皆さんもこの併用制には十分理解ができるものであるということで私は御提案申し上げているので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
  106. 池田元久

    ○池田(元)委員 今の井上さんの議論は非常に傾聴すべき意見だと思います。  私も、ただ井上さんがおっしゃった中で二大政党というのはちょっと違うと思うんですが、いずれにしても小選挙区制の中で政党の数が絞られてくる、その可能性はあるわけです。その点は、多党制につながる。僕の言う多党制は、単なる小党分立てはなくて、ヨーロッパ諸国を見ても大抵、日本も五つですけれども、四つぐらいですね。ですから、そういう形で集約する、そういう限りにおいて正しい。しかも、単純に候補者の顔が見えるというだけじゃなくて、そういう効果もあるということも私は十分考えなければならないと思います。  時間がありませんので、次に、自民党案について、自民党考え方についてお伺いしたいと思います。  自由民主党は、海部内閣のときの臨時国会で、私も当時特別委員をやっておりましたが、政府提案の形で小選挙比例代表並立制提案したわけです。これは、第八次選挙制度審議会の答申を受けたものなんですが、それは結局八九年五月にまとめた自民党政治改革大綱を出発点にしているわけです。この政治改革大綱、なかなかいいことも書いてあるわけです。なかなか実行されないところもあります。これによると、「われわれは、国民本位、政策本位の政党政治を実現するため、小選挙区制の導入を基本とした選挙制度の抜本改革にとりくむ。そのさいこここを聞いてください。「少数世論も反映されるよう比例代表制を加味することも検討する。」こういうふうに明白に書いてあるわけです。このように、自民党はみずからの政治改革大綱、それから前回の選挙制度改革案でも比例代表制の意義を認めていたんですね。認めていたわけです、はっきりと明白に。それが今回は、それを一切認めてないというのはいかなる理由によるのか、明快な答弁をお願いします。
  107. 武村正義

    武村議員 お読みいただいたとおりでございまして、自由民主党は四年前の大綱の党議決定におきましても、小選挙区を基本とした新しい選挙制度導入するときちっと書いているわけです。この際、比例云々は検討する、結びの言葉で御認識いただけるように、そのことも検討はじょう、しかし基本はあくまでも小選挙区であるという意思表示をそこで明快にしているということであります。  先般来の論議からいきましても、私ども比例制の加味といいますか比例制の特に長所というものを全く無視をしているわけではありません。ただ、何回も御答弁申し上げていますように、民主主義とか政治というのは、民意をどう反映するかというのが第一段階、大変大事な要素です。しかし同時に、多様な民意をどう集約して国家意思を決定していくか、この第二段階が当然あるわけでございまして、そのことを私どもは大変重視をしているわけであります。  池田さんにもぜひお伺いしたいのでありますが、小選挙区の長所も素直に評価をいただいたわけですが、なぜ四〇%だけ顔が見えたらいいのか、あとの六〇%は曇りガラスで顔が見えなくてもなぜいいのか。これは比例制そのものの、抽象的な政党名を投票するという今の参議院で四回経験いたしましたが、この選挙は、明るい選挙推進協会の世論調査を見ますと、六〇%の人が否定的であります。なじめない、やはり名前を書くべきだと。国民の六〇%が四回経験してなおなじめない曇りガラスの比例制、しかも抽象的な、憲法四十三条は「選挙された議員」によって組織すると明快に書いているわけですね。議員でなしに、選挙された政党によって組織するという、参議院比例の当初の論議にも憲法違反の論議がありましたように、今なおそういう論議も残っている比例制を、国民のなじまない比例制を民意の面だけで主張されるのか。私どもは納得ができません。その辺も少し説明をしていただきたい、なぜ四〇%だけ顔が見えるのか。
  108. 池田元久

    ○池田(元)委員 それは、ひっきょう比例代表制というものに対する理解がちょっと十分ではないんじゃないか。つまり、民意の正確な反映、これは選挙の意義なんです。それを優先するからこそ、私ども比例代表制を基本とした選挙制度提案しているわけです。その点をぜひ理解していただきたいと思います。  ちょっとそれをやっている暇がありませんので、今の自民党案がどうして後退したのか、比例代表の意義を全く認めなかったのか、これについて答えはなかったと思うのですが、それで別の質問が出てきたわけです。比例代表制の意義を全く認めず今回の単純小選挙区制をまとめたのは、私は専ら自民党党内事情によるのではないか、こういうふうに思わざるを得ないと思うのです。  まず、伝えられておりますように、現職議員のいわゆる国がえがないということ、これはもう報道されましたね。それから、先ほどの細田議員の中でも出てきましたが、自民党選挙を準備中の候補者は三百五十人を超える。完全小選挙区制五百人であれば、ほとんどすべてといいますか、おつりが来るのですが、現職、元議員、新人が立候補できるということになるわけです。この辺のところに動機があるのではないかと見ざるを得ないのですが、時間がないので、一言で答えていただきたい。
  109. 深谷隆司

    深谷議員 私たちの政党の中で、今までいろいろな形の議論が出たことは確かです、おっしゃるとおり。しかし、議論のプロセスの中で出たものを今そこで取り上げて、それがどうなんだと言われたら、あなたの政党でも同じことでございまして、我々は、最終的に何が一番いいのかということを議論をした末にこの単純小選挙区制がいいと考えたのでありますから、その途中で大勢、政権とっている政党ですからいろいろな方がいる、その方の御意見を一々ここで反論をしようとしてもそれは無理なことで、我々はそれらの意見をまとめて検討した答えがこの提案になったというふうに御理解いただきたい。
  110. 池田元久

    ○池田(元)委員 最近は改革派ばやりでございますが、いわゆみ改革派の小選挙区論の中にも、地域に割拠して自分の地盤にしがみつきたい、こういった、自民党じゃなくて自分党的な動機があるとしたら、これは改革とは逆行するものではないかと私は思いますので、一言ここで申し上げたいと思います。  いずれにしても、ここまでは自民党の対応を僕は批判しましたけれども、これからちょっといわゆる妥協の問題について若干触れたいと思います。  いずれにしても、自民党の執行部は今回、単純小選挙区制案を提出したわけです。比例代表制の意義を認める意見は、むしろそういった執行部の自民党提案とは裏腹にふえているのではないかと思います。私はここに一つの資料を持ってきたのですが、自民党議員選挙制度改革案、これは十五あるわけですね、十五出ているわけです。そのうち三分の一が、何らかの併用制を取り入れているわけです。この辺をやはり冷静に見ていただきたい。この辺について、政治改革本部のどちらかから一言お願いします。
  111. 石井一

    石井(一)議員 十五の案で、そのうちが今あなたがおっしゃいますような民意反映的なバランスということではございません。一つの案は、非常に極端なハンガリーの案でありますとか、一つの案は、こういう思考からできるオーストラリアの四回投票制でございますとか、自民党議員が幅広くいろいろの案を提出をしたということでございまして、当然小選挙区制ということになりますとそんなに複雑なものではございませんから、まあ二つか三つのパターンしか出てまいりません。比例代表なり併用なり並立というのは世界に三百から五百ある形式でございますから、それだけの数が出てきておるわけで、そういうプロセスを経た後に結論が出た、こういうことでありまして、十五の中の数ということは問題にならない議論じゃないかなというふうに思います。
  112. 池田元久

    ○池田(元)委員 これは、それは逆に無理ではないか。余り党内干渉はしたくないのですが、選挙制度の問題は、僕はかなりお互いにやってもいいのじゃないかと思います。やはり……(発言する者あり)余計なお世話だというのは、これは全くこの問題については違うと思うのです、別に党派的に対立するとかなんとかとかという本来の問題じゃないと思うから。そういったふうに、三分の一も併用制というのが党内に出ている。しかし、この期に及んでといいますか、この段階で逆に並立制じゃなくて単純小選挙区制に後戻りをする。これは僕は専ら、専らと言いません、かなり党内事情があるのではないかと先ほどから申し上げております。  しかし、今はこの選挙制度改革案をまとめなければならない段階ですから、僕は、自民党の皆様、特に指導的な皆様に申し上げたいのですが、何といっても単純小選挙区制、そして比例代表の意義を認めない、ここに立ちどまっている限り実りある成果は得られないと思います。  小渕さんは本委員会で、政治は妥協であるという言葉もある、謙虚に社公案について勉強した上で結論を出したい、こうおっしゃいました。また、自民党の筆頭理事は、最後は相手の考えを聞きながら大胆な妥協をやらざるを得ないと述べています。こうした発言には心から敬意を表するわけです。しかし言葉だけでなくて、自民党が並立制から出発するならとにかく、これまで意義を認めてきた、明確に認めてきた比例代表制を一切認めないということで、単純小選挙区制に固執している限り、妥協はできないのではないかと思います。その点についてお尋ねしたいと思います。
  113. 武村正義

    武村議員 御承知のように、昨年は政府の提案として並立制をお出しをいたしました。あのとき皆さんの野党がどういう反応を示されたか思い起こしていただきたいのですが、現行選挙区制でいい、変える必要ないという論陣でありました。あれは選挙制度調査会の答申でございましたから、野党立場、少数党の立場考えた申立的な答申をもとにして自民党の案、政府の案はつくられたわけでございますが、一考もされなかったその経緯も踏まえながら、今回は自民党自民党としてまさに党内事情党内の世論を十分集約して、信ずる単純小選挙区制の結論に達したわけであります。  だから、比例制については全く意味がないとは今も認識をいたしておりません。そしてまた、最終的にはこの国会で通していくというお互いの決意であるならば、自民党側も最後までこの案をかたく固守する考えはありません。何らかの妥協が必要だ、そういう認識は持っております。
  114. 池田元久

    ○池田(元)委員 妥協が必要だとか不退転の決意で取り組むということをこれまでもおっしゃっているし、今武村さんの最後の言葉もございました。  要するに、社会党のことを言われますが、社会党は中選挙区制から併用制に踏み出したわけです。自民党は並立制から単純小選挙区制に後退した、こういうふうに認識していただきたいと思います。妥協はだれがするかというのは、これは明白ですね、世の中の常識では。自民党が単純小選挙区制のざんごうにこもっていては実りあるものにならないと私は思いますので、ぜひこの点、自民党の皆さんは、この国会で成果を上げるために、一大決心まではいかなくても、考えていただきたいと思います。  さて、ちょっと少し質問したいのですが、週末に民間政治臨調が小選挙比例代表連用制案を打ち出しました。民間政治臨調がこれまで政治改革について努力をしてきたことを高く評価したいと思います。ただ、選挙制度として客観的に見た場合はどうか。私も検討したんですが、論議をしなければならない点はあると思います。また、皆さんがおっしゃっているように、出るタイミングが早過ぎた、これも言えるでしょう。私は社公案最善と思っていますが、選挙制度についてはさまざまなバリエーションがあると思います。併用制でも、小選挙区の部分をふやすとか、一人一票にするとか、いろいろ考えられると思うのです。この連用制について、まだ消化されていないかもしれませんが、一言ずつ双方にお伺いして、終わりたいと思います。
  115. 小渕恵三

    ○小渕議員 まだ勉強をすべていたしておりませんので、内容についてコメントは控えたいと思います。
  116. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 民間臨調の皆さんが、この政治腐敗を脱却する一つの方法として、選挙制度について、あるいはその他のことも言われておりますけれども一つの御提示をなさったことには敬意を表したいと思います。  それから、連用案というものは基本的に併用案の変形であるというふうに思っておりますが、小選挙区が三百、比例が二百ということもこれあり、それから県別に行われるということの問題等々から考えまして、併用案の方がより民意の正確な反映ということは実現できるのではないか。  ただ、いろいろなことを我々は勉強しなきゃいけませんので、今後も我が党内としても検討して、十分勉強させていただきたい、こういうふうに考えております。
  117. 池田元久

    ○池田(元)委員 終わります。ありがとうございました。
  118. 田邉國男

    田邉委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十二分休憩     午後三時五十六分開議
  119. 田邉國男

    田邉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松前仰君。
  120. 松前仰

    松前委員 朝からまた熱心な討議が続けられたんですけれども、一番最初の自民党穂積委員だったでしょうか、いろいろと議論を聞かしていただきました。私、大変そこで憤りを感じました。  これちょっと内容がぴったりかどうかわからないけれども、二つの案には大きな隔たりがある、そして歩み寄れないということをおっしゃった。そのことは明確であると。その理由として、二つの案は党利党略が前提となっているからだ、こういうことをおっしゃったんですね。そして、党利党略選挙制度の過去の歴史を立証されたのでありますが、そこで要求されたのは、これだけは一致しているわけですが、今回は政治改革のチャンスだということは一致している、ただ、党利党略を認めつつ歩み寄れないかとおっしゃった。党利党略を認めつつということ。  これについて両提案者の代表の方は、私がほっとするような答弁をしていただきました。自民党石井委員は、政治を進化せしめることを考えている、党利党略ではない、我が国の制度を前進せしめようとしているんだということを明快に答えていただきました。渡部委員は、民意をどう反映するかそれを決めるために互いに制度を出し合って、そして案をぶつけ合って、その議論の中からコンセンサスを得ようじゃないか、こういうように答弁をしていただいた。そして、これまでと違った委員会なんだから、そこを理解してもらいたい、コンセンサスが得られてきているんじゃないかと感じるということをおっしゃった。  私もまさにそういう感じがしているんです。議論をぶつけ合うことによって、お互いに歩み寄れるといいますか、コンセンサスを得ることができるんじゃないか。これは議会の一番の重要なところだと私は思うわけでありますが、合意形成を図ろうという、議会のあり方を変えようとしている真剣な姿を私はここで見ることができて、本当にうれしく思っております。そしてこの法案は、両者とも党利党略をできるだけ殺して出されたものであって、単に党利党略だけではないことを確認できたわけでございます。  伊吹議員は、この制度について、これまた非常に私は同調できることをおっしゃいました。どの長所を取り上げ、どの短所はのみ込むかと。のみ込むかというのは、意味はいろいろとれますが、わかります。その長所を見つけるため、もっと国民に聞いてもらいたい、そして判断してもらいたい、そのために議論をしなければいけないんだ、こうおっしゃった。これは、まさに本当にすばらしい言葉だと私は思います。  だから、我々はここに、党利党略の上に立った議論をしているのじゃないということ、議論の中から今の時代と将来のために、国民の繁栄のためにいかに制度をつくり上げていくのかということを今議論しているのだということをもう一度確認したいと思うんです。両者からもう一度お答えをいただきたい。
  121. 小渕恵三

    ○小渕議員 政治の社会では、党利党略、党で言えば派利派略、個人の議員で言えば個利個略とよく言われますけれども選挙制度に関する限りは、これは現中選挙制度大正十四年に起こって以来約七十年間でございまして、今後新しい制度が発足するとすれば、半世紀、一世紀にわたってこの制度が維持できるような立派なものをつくり上げなければならぬということは当然のことでなかろうかと思っております。一部悪いところがあればまた制度は直したらいいだろうというような意見も野にありますけれども、やはりこの際、かなり長期にわたって日本の政治を安定させていく一つの確立した制度としてやっていかなければならぬ。そういう意味で言えば、やはり党利党略を離れて、真剣に考えていかなければならない重大な課題である、こういうふうに考えております。
  122. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 松前委員の言われることは私たちも非常に相感ずるところがあるわけでございまして、中選挙区制というものの問題点というのはかなりあぶり出てきたのではないか。これは、かなり共通認識が与野党ともできてきたのではないか。その次のできる新しい家、新しい制度というものはいかにあるべきか、私たちはこういう議論を通じて、お互いにわかっていることでありますが、おのおのの制度、いい点もあれば悪い点があるということはお互いにわかっているわけで、次の新しい、きれいな、清潔な、しかも政権交代が起こり得るような制度というのはいかにあるべきかという議論で今議論を深めつつあるところではないかというふうに思っておりますので、私たちから言わしめれば、小選挙区制の悪い点というのは随分わかっていただいたのではないだろうか、なお一層議論を深めていくべきであると思っておるわけでございます。  ただ私も、ずっとこの問題をやっていて、しかし残念ながら、やはり自民党さんが多数なものですから、自民党さんの方に最終的には、党議が一緒だとすれば、党議がまとまっているのだとすれば、自民党さんが衆議院においては多数だということで、自民党さんの都合のいいと申しましょうか、これの方に引っ張られるということに、筋だけ言えばなってしまうわけでありますが、それではいけないのじゃないか。最終的にやはりこういう議論を通じていただいて、国民皆さん方にも判断をしていただいて、次にどれがたえ得る新しいいい制度かということを、国民皆さん方理解のもとにできるべきであるというふうに考えておるわけでございます。
  123. 松前仰

    松前委員 その確認の上に立って、ちょっと問題を離れますけれども、私がどういう質問をするかというのをお配りした一番最後のところに連用制問題というのが書いてありますが、今連用制というのが民間から提出されました。けさもそれちょっと議論がありましたけれども、私も、民間の方々はいても立ってもいられないということはよくわかります。だけど、今真剣にこれまでの国会を反省して、そして議論の中から何かを生み出そうとしている、そうして今産みの苦しみである、そういうみんなが苦労しているときにこういう案が出てくるということ、これはちょっと私たちも水を差されたというような感じがして仕方ないのでありますけれども石井委員はそのとき、ここで落ちつけよ、早過ぎる、真剣な議論に水を差すことになりかねないというようなこともおっしゃっておられた。  ですからこれは、今連用案というのが出てきておりますけれども、今ここで二つの案で議論をして、ここから、あるいはそういう形になるかもしれないけれども議論の中で深め合っていってそういう案が出てくる、結果として出てくればいい。ですから、二つの案で今やっていくということ、しばらくこの連用案というのは検討の外に置かしてもらいたい、そう思うのですが、いかがでしょうか。
  124. 深谷隆司

    深谷議員 松前議員の御発言は全く賛成でございます。  今、自民党野党議員提案で二つの法案が出されているわけでありますから、法案として出されているものを当委員会では審議するというのが当然のことであります。ただ、民間の臨調からも熱心に一緒にこのことを考えようということで提案されたのでありますから、提案したお気持ちは十分理解した上で議論しなければならないと思っております。  心配なのは、一般の国民の皆様が、連用制がせっかく出ているのになぜ委員会議論しないのかといったような疑念を持ちやしないか、それが一番心配の種であります。やはり委員会あるいは国会というのは出された法案を中心議論するのであって、十分にその連用制の趣旨は我々も勉強しますけれども、今はこの二つの法案の議論を明確にしていくことが最も大事なことであって、そのことについての一般の皆さんの認識もぜひいただきたいと考えています。
  125. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 きょう午前中にも申し上げましたように、民間の方々、政治改革に熱心に今日まで取り組んでこられた方々がこういう案を提示された、大変いても立ってもいられないという心境にあること、そしてこういう案をとりあえず提示されたことにつきましては、私たちもそれなりの敬意を表するところでございます。  ただ、まず見たところ、三百の小選挙区ということで、これは随分自民党寄りではないかというふうにまず率直に思いました。あわせまして、併用案の変形型ということでお考えをいただき、また民社さんの府県別ということも入れている、そういうものをミックスした案というのが一体どういうことになるのだろうかということは、担当する者としては、また政党としてももう少し研究はしてみなければいけないのではないかというふうに思って保おります。  いずれにしろ、これから議論の中で、先週本会議で二日、この特別委員会で二日、お互い自民党案社公案というものを議論したところでございますから、私たちは私たちの案がベストだと思って出しておるわけでございますので、それを中心にしながら、また我々としては連用案というのについて研究はそれなりにしていきたいと思っておりますが、ひとつそういう角度から御質問いただければというふうに思います。
  126. 松前仰

    松前委員 一応これが前提でございますけれども、こういう前提の上に立って、これから質問をさせていただきます。  特に、小選挙制度について質問をさせていただきたいと思いますが、先ほど一番最初に申し上げておきましたけれども、伊吹さんの言葉をおかりして申しわけないのですけれども、どんな選挙制度でも、完全にいいものというものは理論的にもあるわけはないのでありまして、社会の中でどういう制度がとられていくのがベストであるかというのはみんな考えていかなければいかぬというようなことが当然だと思うわけです。  ですから、イタリアの例もけさございましたけれども、イタリアは比例代表がだめであるというようなことになってきた。これは、そういう条件ができてしまったから、それはいい制度であろうとも、そこに全然合わなくなっちゃったということがあるのではないか。ちょっとイタリアの例はいいことかわかりませんけれども、そういうことだろうと私は思うのです。  ですから、小選挙制度、イギリスで大変すばらしい制度だといって、我々も大分勉強に行って、そして二大政党政治、そして政権交代ができる、そしてそのことによって国民が非常に真っすぐな路線を歩んでいけるのだという理想を私たちは追求していることはいるわけですね。ですからそれを、小選挙区制だからそう必ずなるんだ、こう決めつけるのはまだ違うと思うのです。というのは、今の環境でこの小選挙区制をとっていったらどうなるかということはやはり考えなきゃいかぬ、我が国のこの現状で。  そこでお聞きしますけれども、まず第一に、現状で小選挙区制がとられたらどういう結果が出るかということを。
  127. 伊吹文明

    ○伊吹議員 英国の小選挙区の例をお出しになりましたので、私の考えているところを申し上げたいと思うのですが、東大の佐々木毅さんという方がおられて、この方の書かれた本の中に、民主主義の要するに代表観ですね、これがどのようなものかということが書かれております。正確には覚えておりませんが、その要旨を引きますと、英国の代表観というのは、エドマンド・バーク以降、個別の利益を直接国会に持ち込むというのではなくて、国会議員というのはやや個別利益や選挙区の国民気持ちと距離を置いている人が理想の代表者だ、こういう代表観だそうであります。アメリカの民主主義の代表観というのは、地元の利益をストレートに体現して、国会へ持っていくというのが代表観だ。  したがって、日本の場合、小選挙区にすれば選挙区は小さくなるわけでありますから、いろいろな御心配が当然そこで出てくると思いますけれども、私は、日本の国民性あるいは日本人の政治に対する意識を考えると、それほど個別利益で必ずしも代弁をする人を選ぶということにはならないんじゃないか。そしてまた、結果において、よく言われるように、少数意見を無視したり、政策上の欠陥があったり、いわんや倫理上の失敗をした場合にはかなり厳しい審判が行われているわけでありますから、小選挙区にすればかなりの程度政権交代可能性もあり、それによって結果的に、政権が移動したら困るという気持ちが強く出て、緊張感を持って政局運営に当たるんではないかというふうに私は思っております。
  128. 松前仰

    松前委員 今御答弁いただきましたけれども政権交代できる、政局に緊張感が得られるというようなことが期待できるんじゃないかというお話がございましたけれども、この小選挙区制は、前からも議論されているように、トラスチックにばあっと変わる制度でございますから、これはある条件のもとには物すごい変動が起こる。これを日本に適用すると、きのうだかおとといの新聞に出ていたけれども自民党は四百五十六議席とるというんですね。社会党は十九、公明党が十七、日本新党八、あとゼロ、こういうようなのが出ていた。四百五十六議席とって、次に政権交代ができるなんて、だれもこれは思えないんですよ。  それで、なぜそうなるか。イギリスと日本との違いというのがすごいあるんですよ、これ。イギリスでできていることが日本では全然できていない。全然できていない。日本は本当に単純の単純の小選挙区制、ただ考えた小選挙区制である。何を言っているかというと、野党のことをきちっと考えていないということですよ、日本のこれは。全然野党のことはない。位置づけもされてない。イギリスは野党がきちっとオポジションという形で認められている。憲法上も認められている。野党の存在ですね。そして、議会に入るときだって、二人の党首が、影の内閣両方あって、それが一緒に入っていくという。そして、与野党お互いに認め合い、そして国民がそれを認知する。そういう条件が一つある。  それから政党助成法。これはイギリスはあるんですか。イギリスは野党の方に国庫からお金が出ているんじゃないですか。野党の党首に出ているでしょう。野党をいかに大事にするか、国民がいかに民主主義を大事にしようかという思想がそこにあらわれているんですよ。  ところが、日本はそれがないのです。野党をこきおろすことだけ。一番最初のイギリスの政治と同じですよ、無視。その前は、消滅させる、攻撃ですね、それからその衣無視に行って、ようやく最近承認という形になってきたのがイギリス。そして今認知されて、きちっと来ていますけれども。その二つぐらいですね。野党の問題、政党助成法。  日本の政党助成法を見ればおわかりだと思います。四百五十六議席とって、この議席比例配分数が四百五十六の半分でしょう。そうすると、三乗の法則で増幅されたところに半分も助成をされてみてごらんなさい。これは一体どうなるか。これは、ますます与党が強くなる。与党というか、多数党が強くなるに決まっているじゃないですか。これはもう野党消滅の理論ですよ。いかがですか。
  129. 武村正義

    武村議員 イギリスの例は、お互い学べば学ぶほど、やはり与野党関係も健全でありますし、与党から見れば野党は絶えず大変健全な、いつでも政権を渡し得る存在であるというところが違いますね。何年か前に保守党が選挙で大敗したときに、保守党の党首が言った言葉を本で読んだことがありますが、これでほっとした、しばらく政権から離れて、しっかり充電することができる、こういうことを負けた保守党の党首が敗戦の弁で語ったというのを読んだことがありますが、こういう関係というのは本当にうらやましいと思います。  それから、そのイギリスにも政党助成法はないというふうに私どもは聞いております。  それから、過去の数字を当てはめる議論でありますが、いろいろなシミュレーションが行われておりますが、いかがでしょう、例えばどのシミュレーションも、中選挙区制における、自民党が三人、四人立てております、あるいは無所属も含めた、その自民党の票というのは、それを全部合算してコンピューターにほうり込んでいますし、野党は単独でばらばらでほうり込んでおりますから、確かに数字の上ではああいう極端な結果になるわけです。  しかし、例えば今三人、四人立てている選挙区で候補者を自民党が一人に絞った場合は、合算したよりもかなり目減りする。二割か三割むしろ減らしてシミュレーションをしないと間違うんじゃないか。そして、野党の場合は逆に、今ばらばらで出しておられるよりも、これを統一して一本の候補をお出しになれば、一、二、三を足すよりも四も五も票がふえる場合が過去の皆さんの経験でもあるわけでございまして、我が滋賀県でも、過去四回の参議院選挙で一勝三敗であります。やはり野党が結束していい候補を立てれば今でも自民党は負けるということを経験しておりますが、そういう意味ではシミュレーション、過去のデータを当てはめるときに、野党はむしろ三党なら三党プラス二割増し、自民党自民党候補の得票の○・八掛け、このくらいでシミュレーションをしないと私は正確な数字ではないというふうに思っております。(発言する者あり)
  130. 松前仰

    松前委員 我田引水というふうに言いましたけれども、まさにそういう感じがしますが、それはそれとしましょう。  自民党の方々もいろいろな本を読んでいらっしゃるかどうかわかりませんけれども、吉村正先生の本なんかにぴしっと書いてあるけれども、小選挙区制をとれば、二大政党というかな、政権交代可能なシステムができるということは大間違いだと書いてあるのですよ。  イギリスの二大政党は、これはもともと二大政党の要素があった、そこに小選挙区制を適用した、それによってきちっとした形ができた。結局、条件がそろっていたんですよ。そろっているところで初めて、本当に政権交代可能な、それによって民主的な運営をしていこうとする制度を取り入れた。それが命ずうっと定着をしてきている。そして、その中で野党をきちっと評価をして、位置づけているのが、これはトラスチックな制度ですからいつばあっとひっくり返るかしれません、だから、そういうことになったらこれは大変だから、野党は次の政権としてできるように、能力があるように野党をきちっと位置づけているというのが今日のイギリスの二大政党政治であると思うのです。  最近ちょっとサッチャーさんがそれを崩そうとしてやってきていましたけれども、それも恐らくまたもとへ戻さざるを得ないという状況になると思いますけれども、そういうことはどうお考えになりますか。
  131. 石井一

    石井(一)議員 松前議員お話も大変納得できるところも多いのでございますけれども、今問われておりますものは、現状に存在しております。その政党の権利なり存在を追認するのか、あるいはこの国の将来、政党政治をどういう方向へ持っていくべきなのか、こういう視点からも一つの問題を提起しなければいかぬのではないかと思うのでございます。  私、五五年体制を崩壊せしめ、東西冷戦構造の崩壊の後に、新たな共通の、そして本当に実力の備わった、政権交代制度を我が国のようなところへは持ってきたいな、そういう意味で、与党も野党もここで仕切り直しをして、大いに反省をして、スタートをしなければいかぬ。  ドイツのSPDがゴーデスベルク綱領を発表いたしまして、国民政党への脱皮を宣言いたしましたように、我が国に国民政党は幾らあるのか。一つと言ったらおこがましいと申しましょう。それじゃ、五つあると言いますけれども国民政党というのは、少なくとも全選挙区で相当数の候補者が立て得、また全般的な、全域における一つの組織を持ちというふうな形の方向に持っていかなければいかぬ、  しかし、それにはまだ時間がかかるであろう。そこで、やはり集約をしながらそういう方向へ持っていくという考え方が我が国の政党政治に必要なことではないんだろうか。多数を追認することもいいけれども、我々は、未来志向という意味でそういう形をとりたいということを申し上げておるわけでございます。
  132. 松前仰

    松前委員 お考え、よくわかるのでございます。現在の政党の追認ですか、そうではなくて、もっと政治を変えていこう、前進させようという意気込みはよくわかります。しかし、それを達成するために制度を使おうというのは、ちょっとこれは僕は問題あると思うのですね。制度を使って、人間ができないということですよ、これは。能力がないということになってしまう、下手するとね。だから、これは、そういう考え方であるというならば、制度を使って政界再編成をしようという魂胆がある。  それは、四百五十何議席でしたか、さっきシミュレーションに出たやつ、これからいえば、恐らくその次は野党はゼロになってしまうでしょう。すると自民党だけになって、二大政党ができるわけはない。これは、真っ二つに二つに割って政界再編成して、そして新しい二大政党をつくろう、こういうような意図がわかるのですよ。だから党利党略なんですよ、これは、下手すると。下手するとじゃなくて、本当に党利党略なんですよ。それで、もしそうなったとしたら、そこはそういうふうになったと一〇〇%認めてもいいですよ。もしそうなって、二つできた、これで二大政党政治がこれから先、生きるかというのですよ。  なぜイギリスが、二大政党制できちっとやって来ているか与野党がこういうふうにうまく政権交代できるか、それだけの力があるかといったら、全国にきちっとした組織が両方ともあるからなんですよ。この組織があることの条件は、これは大分違う。それを、二つに分けて、組織ができるかというと、恐らく僕は、組織なんというのはなかなかできないですよ、これは、長い時間たってイギリスはできてきた。その上に立っての今の安定なんですから、それをまねしようといったって、これは無理なんだ。無理じゃないけれども、時間がたてばいい。とにかく時間が、とにかく余りにも慌て過ぎていやしませんか。  だから、そういうことをもしやるとしても、それを達成できるようないろんな人の意見をここで出し合って、議論し合うような場をつくる、そういう選挙制度を通らしたらいかがでしょうか。それは比例代表制じゃないんでしょうかということ。ですから、これから先何年続くかわかりません、比例代表制。これが十年か二十年か、その先に、整った場合には、これは二大政党に持っていったっていいかもしれない、そういうふうに私は思うのですが、いかがですか。
  133. 深谷隆司

    深谷議員 先ほども我が党の方から答えが出ましたが、シミュレーションの出し方が本当に基本的に問題がありまして、私、その議論をすると、どうも答えが違ってしまうんですね。  例えば、この間も申し上げましたが、平成元年の参議院選挙を土台にしてシミュレーションを立てれば、社会党は四百二十三とれるという数字が出てきているわけですよ。今の状態はどうかといったら、ややそれに近いくらいだ。だから、今単純小選挙区やったら社会党は逆に勝つかもしれないという条件もあるわけですから、そういう意味では、既成の数字でシミュレーションをすること自体に無理がある。例えば自由民主党は中選挙区制の中で複数出ているわけですから、しかも個人中心選挙になっていますから、それを一名にして政党選挙になったときに、複数出ているときの数字がそのままあらわれるなんて保証は何にもないわけなんですね。ですから、逆に言えば、そういうことなどを両方意見を聞いてみると、政権交代可能性があるのはむしろ単純小選挙区だ。  イギリスのケースをお出しになりましたが、二大政党が、いつでも政権とり得る能力と、切磋琢磨しておられたわけですよ、イギリスは。それがないから今無理だとおっしゃるのは、そういうような状況をつくろうとなさらないからとしか聞こえないので、私どもの方を向いてそれをおっしゃられても、社会党が準備するまでもう少し待てというふうにしか聞きようがないというのが実際の気持ちでございます。
  134. 松前仰

    松前委員 今のお話聞いていると、そういうような考えをお持ちですと、これは恐らく二大政党の政治にはなっていかない。一番最初のイギリスの状態でありますよね。無視とか、ばかにする、誹謗する、そういうような状況があったわけですよ。そういうようなところで、我々、今おっしゃったように、一生懸命努力はしたけれども政権とれないという状況にありますが、これは認めます。我々は努力不足だということはわかる。だけれども、そういうのがやはり、余りこの制度でもって非常に小さな状況になってしまって、そこから立ち上がれといったって、これはこういう制度を、しかもトラスチックに三乗の法則でやられる、その上に政党の補助金でいっぱいハンディをつけられるということになれば、これは大変なことですよ。つぶれるよりほかはなくなってしまう。あるスレッシュホールドと僕ら技術屋では言うけれども、そこから下になればどさっといくのですよ。それから上になればぱっとこううまくいくわけですけれども、その上にいかないという状況が今ある。  ここでは、本当に皆さんが二大政党政治とかそういうものを志向するというならば、既成政党を割ってという話もあろうと思いますけれども、いろんな条件が今まだ整ってないじゃないかと僕は思います、はっきり言って。今、政党助成もそうだけれども、組織の問題、野党の認知の問題、国民のコンセンサス、野党を大事にしようという、ハー・マジェスティーズ・オポジションとか、そういうような言葉だって向こうはあるぐらいですからね。そういうようなことが全然整っていない。  そういうときにこういう制度を持ち出すということになると、これはとんでもない誤りといいますか、誤りよりも独占政治を、逆にそういう意図をした人がいたら、そういう方に持っていかれちゃうじゃないか。やはり慎重にここのところは考えて、慌てないでくださいと言いたいですよ、本当のことを言うと。この辺ちょっと、何か御意見ありますか、野党
  135. 渡部一郎

    渡部(一)議員 お答えいたします。  自民党の法案提出者より、国民政党になろうとする努力が野党は欠けていたのであり、その野党をしつけるためにはこの際小選挙区制がよいのだという意味合いのお話が、ただいまも出ましたし、何回も出たわけでございますが、それはちょっと、余りにもちょっと妙な御発言ではなかろうかと存じます。  といいますのは、現行の中選挙区制でも、共産党さんがさんざんおっしゃっておられますように、もし定数是正が行われますならば、自民党の過半数ということは期待し得ない。また、私どもの社公両党が提出している小選挙比例代表併用制でいきますならば、もう即日政権から滑り落ちるわけであります。国民政党に野党がならないからできなかったというのはむしろ詭弁と言うべきでございまして、この委員会の始まって以来何回も御説明したところでございます。  余り何回も言うものですから、だんだん自民党委員の方々は、しみてこられたせいか、最近余り言わなくなられたなと私は感じているわけであります。随分浸透してきて、いい雰囲気だと私は思っているわけであります。  それで、今度は、委員がただいま御質問の最中におっしゃいましたように、小選挙区制を導入するのは、二大政党政治可能性があるというのは間違いであって、一大政党とあと附属品みたいな小さい政党があるのみで、二大政党にもならないのだという御指摘は、当を得たすばらしい御意見だと思います。それは、時の勢いで自民党があるいは社会党が、現行でありますならば、どちらかがその一大政党になる可能性はあることは私も十分察することができるのでありますが、もう一つの小さい野党が、十とか二十とかというレベルでしか第二党が存在しない。第三党以下の話はもう言うのも面倒なので省きますが、そうするとどういうことになるか。ブレーキのきかない自動車を坂道で走らせたのとほぼ等しくなるのであります。こういう暴挙を許すのは、民主政治でも何でもない。  私は、実は何回も当初、かなりおかしな議論をなさるものだ、こんなことを知らないのかと思って、元気よく申し上げたのでございますが、最近に至りまして、自民党の同僚議員並びに法案提出者は、その辺を十分承知の上で言われているということをだんだんわかってくるようになったのであります。これは、別の意図があるなと思い始めたのであります。  つまり、小選挙区制をぶつけることによって社会党公明党のどぎもを抜き、そしてこの両党が法案提出という、それこそ快挙に出るのをひたすら待とうという高度な戦略があったのではなかろうか、こう見るのが、尊敬すべき委員に対する一番適切な解釈ではなかろうかと存じます。もしそうでないとしたならば、余りにもこんな低俗なことを何回も申し上げなければならぬということは、自民党委員の知性を疑う発言を私はせざるを得ないのであります。  したがって、この際、党略の問題にもお触れになりましたが、高度な党略というのは何かといえば、自分の党を生き残らせ、自分政治生命を長からしめるためには、高度な党略が要るのは確かであります。それは、基本的に日本全体の政治的信頼を回復することこそ最高の党略でなければならぬと思うからであります。まさにそのような最高の党略が必要なのが現時点の政治情勢であります。それを、いきなりそろばんを持ち出して、うちの党が二ふえたとか三ふえたとか何%とかといきなりパチパチやるような議論で、国民は説得し得ないからであります。  私は、その意味でもっとまじめに議論をすべきだし、その意味では、ここで議論されていることは、新聞で報道されようともテレビで報道されようとも、だれが突然聞きに来られても恥ずかしくないだけの論理的根拠がなければならぬと心からお願いをする次第なのでございます。
  136. 松前仰

    松前委員 いや、すばらしい御意見でしたですよ。  そこで、国民の今政治の信頼を回復するということでありますから、それにまた中選挙制度というものについて、私はこれは完全に否定はしておりませんけれども、この制度自体が問題を生んでいるということになれば、やはりこれは何かしら変えていかなければならない。そして、その中で議論をしながら新しいいい制度をつくっていく、こういうことであろうと思うのでありますが、中選挙制度比例代表とそんなに、国民民意というかな、民意というのは当選する党派の得票率と当選者数、議員の数、それは比例代表とそんなに変わらぬということでありますけれども、個人選挙ということが一番問題で、やはり政策中心選挙に持っていくということ、これがやはり今の金権腐敗政治を正すこと、国民の信頼にこたえることだということになれば、やはり比例代表を中心にしてやらなければいけない、民意の部分ではそんなに変わらないけれども、そういうような感じがします。  それから、中選挙区制をやっていると、御承知のように、幾らやったって定数是正ができないという過去の歴史がある。中選挙区制をやったら、絶対これはできない。みんな党利党略以上に個利個略、自分の利益ばかり考えてやっちゃうからそういうことになるので、そういう選挙制度はやめというのを私は考えている。提案者も、代表者の方も考えていらっしゃると私は思うのでございます。  そういう意味で、小選挙比例代表併用制、完全なものではないというのはもう伊吹先生からいろいろ御指摘をいただいておりますが、今の日本の状況の中でこの制度を取り入れるということは、一番これはフィットするというように私は感じるのでありますが、いかがでございましょうか。
  137. 石井一

    石井(一)議員 松前委員が言っておられますように、確かにイギリスのトーリーとホイッグのように、一つの原型があり、それを発展してきた国と、我が国のような、今のような五党がやや定着したような形の国、これは大きな差があることを認めます。  ただ、制度に振り回されるのかと申されますけれども制度が非常に政治体制なり政党政治を規制するということも確かでございます。大正十四年、七十年前に、これは妥協の産物として、中選挙区の三名から五名を規定しましたところ、七十年たちまして五党が存在し、また自民党の中にも五つの派閥が存在しておる。これは、結局五人立てられるのですね、一〇%ずつぐらいの票をとって。だから、すき間がこう入ってくるわけですよ。私は前に共産党さんに失礼なことを申しまして、滑り込み政党だなんて言いましたけれども、要するに、三名ということを仮に決めておったとしたら、恐らく共産党はその制度によって排除されておったかもわからぬ。こういうことを考えますと、制度をばかにすることはできないんじゃないかという点も指摘しておきたいと思います。  それから、最後に、これも申し上げたことでございますけれども、今、松前議員の御提案のものを一応常識的シミュレーションをいたしますと、十党ぐらいになるのじゃないですか。これから統合していこうということになるというのも一つの案でございますけれども、私たちは、そこまでの多党化の中に不安定な政権をつくりたくないという考え方をいたしておるわけでございます。
  138. 松前仰

    松前委員 あといっぱいありますけれども、時間が来ましたから、また次の機会ということで、終わります。
  139. 田邉國男

    田邉委員長 草野威君。
  140. 草野威

    草野委員 本会議総括質疑におきまして連日白熱した議論が展開されておりまして、答弁者の方々には心から御苦労さまと申し上げたいと存じます。  このような議論をテレビや新聞で国民の多くの方々がごらんになっておられるわけでございますけれども、いろいろな声を伺っておりますと、今度こそ改革が本当に行われるのじゃないだろうか、こういう期待を国民の多くの方々が持っておられるような気がしてならないわけでございます。  今も委員席に座っておりまして、机の上にあった新聞の切り抜きを見ておりましたら、こんな記事が出ておりました。これはある新聞のコラム欄でございますけれども、「支持率一八% 不退転の支持者ですね ——宮沢首相」こんな記事が出ておりました。私は、これは国民の声というものを率直にあらわした記事だな、こういうふうに思いながら今見ておったわけでございます。  例えばきょうの朝刊におきましても、自民党の単独政権に対するアンケートが発表になっておりまして、皆さんもごらんになったと思いますけれども、それによりますと、自民党の単独政権を支持するか、しないか。これは日本の主要百社に対するアンケートでございますけれども、何と支持する方は一五%しかいない、こういうような結果が出ておりまして、ああ、これがやはり今の国民の声なのかな、こういうことをつくづくと今感じていたようなわけでございます。  そこで私は、きょう今まで熱心な議論を伺っておりまして、まあ大方の論点は大体もう出そろってしまったんではないかな、こういうふうに感じております。したがって、きょうは私は、今感じていることを、本当にごく簡単に確認というような形で、答弁者の方にお答えをいただきたい、このように思っているわけでございます。  まず第一は、自民党それから社公の方にお答えをいただきたいと思いますけれども選挙制度につきましては、与野党間の隔たりというものは非常に大きいものがあろうかと思います。今までずっと議論を伺っておりましても、そのように感じたわけでございますけれども、このたびの政治改革論議の中で最大の論点というものは、選挙制度を変えることでどういうふうに日本の政治形態を変えていこうとしているのか、実現させていこうとしているのか、どういう政治を目指すか、こういうことではないかと思うのです。  まず、この点につきまして、自民、社公両党の答弁者からお答えをいただきたいと思います。
  141. 石井一

    石井(一)議員 政権交代の可能な、でき得れば二大政党、あるいは複数の政党でもございますが、そういう形のものにしたい。自民党の一党単独の政権というものに対しては、今一五%ということもおっしゃいましたけれども、こういうことに関しましても我々みずから襟を正して、野におりてもやむを得ない、そういう形の中から、五五年体制を崩壊せしめ、新しい時代に向かった政治形態をつくっていくべきではないか、そういう意味において、もっと国民政党の育成というふうなことを考えるべきではなかろうか、こういうふうなことを考えておるわけでございます。
  142. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 既に草野委員承知のように、自民党が保守合同以来、選挙のたびにとってきた得票率というものは過半数を超えたことがないということは、もう御承知のとおりでございます。もちろん、今、渡部委員が前の質問者に対してお答えした中でも言いましたように、定数是正をしていれば、もっとこれは変わっておったでしょう。それから、野党がもっとたくさん候補者を出しておれば、その自民党の率というのはもっと下がっていたと思うわけであります。  いずれにしろ、今国民皆さん方が期待をしているのは、そういった過半数の国民の支持を得ていなかった政権がずっと長いこと続いて、そして一党でやってきたことが腐敗を招いでこのような状況になってしまった。そこで私たちは、まずひとつ国民民意に沿う政権というものをつくるべきではないか。その後には、連合政権なり連立政権というものが当然出てくるでしょう。そういう中にあって、自民党へのチェック、つまり腐敗に対するチェックも出てくるでありましょうし、また石井先生がいろいろと御心配でございますけれども、そこに改めて政党本位ということになっていけば、やはり政権交代ということを我々もなお一層たくさんの候補者を立てて目指すわけでございますから、そこでまた、その中で政権交代が起こり得る。  そして、お互いにチェックをしながら、国民のために、より民意が多様化している中で、国民皆さん方に沿う、そして国際性、将来性、二十一世紀に向けての政治ができる、こういうものが私たちの目指すものである、そのための選挙制度であるというふうに考えております。
  143. 草野威

    草野委員 新しい政治というものを国民の多くの方々が期待していると思います。宮澤首相もアメリカへ参りまして、クリントン新大統領と会談をしてまいりまして、またこの委員会にも総理が御出席になる、こういうお話も伺っておるところでございますけれども、私もぜひ総理の見解、いろいろなことを聞かしてもらいたいと思っております。  その中で、私はこういうことを一つ今感じております。クリントン新大統領が誕生したときに、アメリカの国民の方々は非常に喜んだ。何を喜んだか。それは、今まで政治に携わってきた人たちががらっと変わってしまった、全部新しい人が今度政治を動かすことになる、それがうれしいんだということで、アメリカ国民の方は非常にそれを喜んだということを新聞の記事か何かで読んだ記憶がございます。  したがって、今、国会におきまして、政治改革ということでこのような白熱した議論が行われておりますけれども、一体どういう形の政治がこれから実現するんだろうかと国民の方は恐らくかたずをのんで見ているのではないか、このように私は思います。そういう意味におきまして、この議論を不もの議論とすることなく、どうかひとつ合意点を目指して、国民の期待にこたえられるような政権をぜひとも実現していただきたい、また、していかなければならない、このように思うわけでございます。  そこで、繰り返してお話のあったことでございますけれども、まず、各党の共通の認識ということについて確認をさせていただきたいと思います。  今までの議論があった中で、中選挙区制はもうだめなんだ、改革法案は一括して処理をするんだ、また今国会で必ず成立をするんだ、これは全部各党の合意であったと思います。このことについて確認をさせていただきたいと思いますけれども、何か御意見はございますか。
  144. 小渕恵三

    ○小渕議員 おっしゃるとおりでございます。
  145. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 草野委員言われるとおりの決意で、私たちは今審議に臨んでおるわけでございます。
  146. 草野威

    草野委員 具体的な問題につきまして、これも確認の意味でお尋ねをしたいと思います。  自民党案の小選挙区制なら政権交代可能性が高い、こういうお話でございます。そうしますと、社公の比例代表制は逆に低くなるのか、こういうことでございます。小選挙区制だから必ず政権交代が起きるという学問的な実証はないわけでございまして、日本の現状からいえば、自民党がこれからも圧勝を続けていくんじゃないか、こういう感じがするわけでございますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  147. 武村正義

    武村議員 私どもの勉強した限りでございますが、半世紀も近い間、単純小選挙区で、一つの政党が政権を担っている例はないんではないか。少なくとも小選挙区制は、イギリス等を初めとして、一定の期間の中で政権がきちっきちっと交代をしているというふうに認識をいたしております。
  148. 草野威

    草野委員 先ほども議論になっておりましたけれども、単純小選挙区制は政権を選ぶ制度自民党はおっしゃっておりますけれども、必ずしも政権を選ぶ制度ではないということが実証されておりまして、極めて一方的な主張でしかない、このように思うわけでございます。  しばしばイギリスの例が取り上げられておりまして、労働党と保守党の問題でございますけれども、先ほども深谷先生のお話の中で、これは十四回中たまたま二回だけ起きたことだ、まあまあじゃないか、こういうような御答弁をされておりましたけれども、やはりこれは小選挙区制の原理的な欠陥である典型的な例ではないか、このように思うわけでございます。やはり民主主義の最大の基本というものは多数決の原理、多数決をとうとぶということは非常に重要なことではなかろうかと思います。  私どもは、小学校の生徒会から始まりまして、この国会の議決に至るまで、多数決というものを尊重しているわけでございますけれども、やはりみんなで決めたことをみんなで守る、当然のことでございます。しかし、みんなで決めないことにみんなが従わなきゃならない、これは大変おかしなことでございまして、私は、このイギリスの例を見ましても、もしこういうことであったならば、非常にこれはやはり民主主義の原則というものに反するんじゃないかな、こういう心配を非常に強くするものでございますが、この点は、皆様はいかがお考えでしょうか。
  149. 伊吹文明

    ○伊吹議員 草野先生おっしゃるような例が、確かに小選挙区にも私はあると思います。同時に、比例制の場合は、むしろもっとその傾向は甚だしくなるんじゃないでしょうか。比較一党を中心政権が組まれるのか、あるいは比較一党を除いて、先ほど佐藤提案者もおっしゃいましたように、二党、三党、四党の合意によって政権が組まれるのかということになると、国民の代表観を集約するというのは、どちらの制度にも私は一〇○%満点ということはないと思います。しかし、比較的国民意見がストレートに政権に集約されるというのは小選挙区の方ではないでしょうか。
  150. 深谷隆司

    深谷議員 草野先生から名前を出していただいたものですから、蛇足でございますが、去年のアメリカ大統領選挙、私、現場に行ってまいったのでございます。十二年間の共和党の政策に対して、チェンジを求める国民の声が非常に多かった。そしてそのチェンジと叫ぶ声が、結果的には民主党クリントンの勝利になったわけでございます。しかし、そのクリントンの支持率は四〇%台でございました。結果においては大統領になりましたが、やはり四〇%台でございました。それでも、総体的な国民の声として、大統領としてはきちんと迎え入れられているわけでございます。ですから、そういうことを考えましても、私は決して無謀なことを申し上げているとは思えないのでございます。
  151. 草野威

    草野委員 社公の併用案の中におきまして、国民が直接政権を選べないではないか、こういう御指摘がございました。これにつきましては、選挙による比較第一党が政権の軸となって政権をつくることになる、このように御答弁されているわけでございますけれども、ここで一点お伺いをしたいと思います。  憲法第四十三条の中で、このようにございます。「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」このように書いているわけでございますけれども政権ということについてはこの中では直接触れていないわけでございますが、これについて、両党はどのようにお考えでございましょうか。
  152. 武村正義

    武村議員 午前中もお答えを申し上げたわけでありますが、この憲法四十三条は、我が国が参議院比例制を導入するときにも大いに論議があったところでございます。果たして、比例による名簿提示をして政党を選ぶ選挙が、この四十三条で言う選ばれた代表と言えるかどうかというところでございます。  そもそも政党というのがまだまだ、日本の場合は申選挙区制で来ましたから、国民の中にそれほど認識が深まっていない点もございます。ましてや政党の選んだ候補者名簿というのは、その中で一人か二人知っている、知っていないということはあるかもしれませんが、ずらりとたくさんの名簿を総合比較をして、こういう人物がそろっている政党の方がいい、そこまで判断するということは至難のわざであります。結局、名簿はあっても、ふわっとした政党イメージで大方の国民は投票をなさっているのではないか。そうすると、今御指摘のように、憲法の規定と果たしてうまく合うのかどうかという議論が残っているわけであります。  午前中申し上げたように、明るい選挙推進協会の世論調査でも、実に五九%、六割近い方が、四回の比例選挙を経験して、これはなじめない、やはり人の名前を書かないと実感がわかないということもあると思いますが、そういう世論結果が出ておりまして、皆さんのおっしゃる比例代表制というのは、そういう意味で、確かに政党支持の世論は国会反映することができますけれども、結局それは、間接的なものといいますか、私に言わせれば曇りガラスと申し上げましたけれども、ふわっとした印象で政党を選ばざるを得ないというところに、この日本の、今の世論調査の結果を見ましても、比例制に対する違和感というものが如実に表現されているというふうに思っております。
  153. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 先ほど深谷委員の方からアメリカの大統領選挙の話をされましたが、私たちは、執行官、物を決裁して実際に執行する者は、知事であろうと首長であろうと、何も五〇%とっていなければいかぬということは一回も申してはおりませんので、少しお答えが違うのではないかと思います。  それから、今の草野委員の御質問でございますけれども、この第四十三条というのは「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」ということでございますから、確かに小選挙区で選ばれた議員とて、その意味では議員であることは私たちも間違いはない。ただし、ここで言っておりますのは、まず第一義的に議会というものは選出された議員で構成される、第二義的に政権をつくるんだというふうに私たちはこれを理解しておるわけでございます。  それから、小選挙区で選ばれた、皆さん方の案でいきますと五百でありますから、十六万人から三十二万人の国民から選ばれた議員と、さらに広い、私たちのところでいえば小選挙区は平均六十万でございますから、四十万から八十万の有権者、国民から選ばれたものと、どちらが全国民を代表する性格が強いだろうか。しかも、私たちの方は政党というのが前に出てきておるわけでございますから、それこそ全国に網を張った政党が公認をした小選挙区の候補者それから比例代表の候補者ということで成り立っている方が「全国民を代表する選挙された議員」という性格をより多く持つのではないか。  武村議員の方から参議院比例のことに関して言われましたけれども、あの場合に拘束名簿、完全拘束名簿ということがございまして、国民皆さん方には少しなじみにくいのではないかと思う部分は確かにあると思うわけであります。そこで、私たちの方といたしましては、拘束名簿でもいいですし、それから何といっても小選挙区があって、顔があるわけであります。これで二百選んで、政権をとろうと思ったら二百五十以上ですから、さらに五十人なり百人なり比例からとってくるということでありますから、参議院の形態とは基本的に違う。  逆に私たちは、自民党皆さん方が単純小選挙区と言ってこられるけれども、十六万人から三十二万人からの国民ということで、一体本当に皆さん方が世界のこと、宇宙のこと、日本のこと、全国のことを、改革はやりますよ、やりますが、皆さん方の足元は絶えず首長に脅かされたり、県会議員さんに脅かされたりして、本当にそれだけ広い立場でやれるだろうか。武村先生も知事からの御転身でございますけれども、やはり行政を現実に握ってきた人は現実には選挙に強い。やはり個人的色彩が強ければ強いほど政治は腐敗をする可能性が多いことは、中選挙区制の中で私は証明をされておると思うわけでございまして、個人中心の中選挙区制から変えるならば、変えるものというのは、方向性というのは、政党というものを媒介にして、政党本位選挙制度に変えることがこの際ぜひ私たちは必要だと考えておるわけでございます。
  154. 伊吹文明

    ○伊吹議員 私どもの方の提案者の武村議員から御説明もいたしましたが、今佐藤先生のお話をも踏まえて、少し申し上げたいと思います。  先生御指摘の憲法の規定によって国会議員というものは選ばれ、国会はその議員によって構成されねばならないわけですが、小選挙区で選ばれた場合も、これは小選挙区という全く公平なルールのもとに多数決で議員をだれにするかという一つのルールをつくるわけです。その中から多数決で選ばれた人が院を構成するというのも国民の代表であろうと私は思いますし、野党の皆さんの御提案にあるように、各政党のとった得票によって比例をして選ばれた人たちにその比例の数によって議員国会に送り込んでくるというのも、言うならば一つの私は代表観だと思います。  要は、どちらの代表観の方が今の激動する国際情勢や何かに対応しながら国家意思の決定を明確に行い得るかという政治的判断をしなければならない、そこに私は、どちらの制度を選ぶかという政治家としての判断が働くんだと思います。  私は、英国の例を必ずしも日本には当てはめませんが、サッチャーも、かつての大宰相であったチャーチルも、世界を動かした人でありますが、八万の選挙区から選ばれております。したがって、佐藤先生のおっしゃるようなことをそのまま当てはめていくならば、全国を一つの大きな選挙区にして、その中から政党の得票に応じて人を選べば一番大きなことができるかといえば、私は、必ずしもそうじゃないのじゃないかと思います。要は、運用の問題じゃないでしょうか。
  155. 井上義久

    ○井上(義)議員 今の伊吹議員からお話のあった点に関連いたしまして、私どもは、憲法の四十二条、四十四条に定めている観点から申しますと、やはり議会というものは、国会というのは国権の最高機関であって、立法府である、これがまず大前提なんだろうと思うんですね。したがって、選挙で示された民意というものが議会反映されていなければいけない、こういうふうに申し上げているわけでございます。その議会が、いわゆる執行官である内閣を選出する、そういう役割をあわせ持っていますから、同時にやはり国民の目から見て、政権というものが選択できなければいけない、こういう要素も確かにある、こういうふうに認識はしているわけでございます。  先ほどから例えばアメリカの例なんか出ていますけれども、それじゃどういう選出の仕方がいいのかということで、要するにアメリカの大統領選挙というのは執行官を直接国民が選ぶわけでございますから、これはもう多数選挙制で、比較多数の人が執行官として選ばれる。同時に、そこには議会というものがあって、その議会が立法府として明確に存在しておるわけでございまして、大統領に対するチェック機関というものもそこできちっと果たされるようになっている。  今の日本の現状の中で、先ほどからシミュレーション、いろいろ議論が出ておるわけなんですけれども、かなりトラスチックな変化が、今の現状考えますと、予想されるわけです。要するに、四〇%ぐらいで八〇%、九〇%の議席を得るようなトラスチックな変化が今のままいきますと起こるわけでございます。そういたしますと、要するに議会は、事実上、大統領の選挙人を選挙するのと同じような結果しか持たないわけでございまして、四〇%台で選ばれた大統領が八〇%、九〇%の翼賛議会を持っているのと同じような政治状況が生まれてしまうということを、非常に私どもとしては危惧するわけでございます。  先ほどから、そのシミュレーションの場合に、自民党は今多数立っているからかなり得票率は高い、野党一つになれば得票率はもっと高くなって、もっと均衡してくるのじゃないか、政権交代可能性が高まるのじゃないかというふうにおっしゃっているわけでございますけれども、今の政党というのは、それぞれ民意があって今の政党の地図ができ上がっているわけでございまして、野党一つになることが前提でこの小選挙区制が機能するということを盛んにおっしゃっているわけなんですけれども、それは、今既に、先ほど言いましたように、それぞれ民意があって今の政党ができ上がっているわけでございまして、必ずしも基本政策が一致するわけでもない。  その野党がこの選挙制度ができたから一つになるということは、これは仮定として成り立たない仮定なわけでありまして、もしそういうことができなかった場合、できなかった場合は、今言いましたように、四〇%台で圧倒的に強い政党ができて、残りの政党はほとんど消えてしまうというような政治状況がずっと続いてしまうことになるわけでございますから、やはりそこは今の政治状況というものを十分踏まえた上で、政権交代可能な日本の民主政治をどう育てるかという角度から、この選挙制度というものを考えなければいけない。  そういう意味で、この単純小選挙区制というのは、今の日本の政治状況の中で適合しがたい。我々の目的としております政権交代可能な民主政治を育てる、そしていわゆる腐敗と決別をし、政策本位、政党本位選挙が行われる、こういう今選挙制度に求められている目的といいますか、それを満たすものとは到底思えないというふうに私は認識をしているわけでございます。
  156. 草野威

    草野委員 政権の問題、また民意反映政権交代、非常に重要な問題につきまして両党から御答弁がございました。そういう中で、私は、やはり憲法にも関する問題で、今後ともこの問題につきましては十分に議論を深めていかなければならない非常に大切なことであろうと思います。  そこで、民意反映ということでございますけれども自民党さんは、衆院選に民意反映は関係ない、このような議論もございました。非常にこれは暴論であろうと思います。政権を選ぶ選挙だからこそ民意反映というものは非常に重要じゃないか、私はこのように思うわけでございます。自民党さんは、民意反映政権の選出を二者択一に論ずること自体民意の切り捨ての法案じゃないかということをお示しになっているのじゃないか、このような感じがしてならないわけでございますけれども、いかがでしょうか。
  157. 深谷隆司

    深谷議員 草野議員にお答え申し上げますが、民意反映しなくてもいいといったような意味の発言というのは、かつて我が党からだれも出しておりません。  今までの皆さんの議論の中で、つまり民意というのは多様化されている、だからたくさんの党が出た方が民意反映されるといったような話でしたから、それは違うのではありませんか、一つの党が、例えば自民党なら自民党社会党なら社会党が仮に政権をとったとしても、それを支持しなかったところを無視して政治を行うなどというのは近代の政治学では全く考えられないことでありまして、政権をとりました政党は、そうではない、それを支持しなかった人たち民意もくみ上げながら政治を行っていかなければ次はまた逆転されるということになるわけでありますから、そういう意味では、民意が多様化しているから多党化が必要だというのではなくて、政党はどうやって民意をくみ入れて、それを具体的な政治に生かすかということが問題なんだということを申し上げたいわけです。
  158. 草野威

    草野委員 これは非常に私は重要な問題だと思いますけれども、社公の方は、どなたか御答弁される方は。
  159. 早川勝

    ○早川議員 先ほどの全国民を代表してというのは、参議院制度導入されたときにたしか広島地裁の判決が出ていまして、基本的には、その選出された集団とか特定の地域のそういったものから拘束されないんだ、全国民的な観点に立って活動するのが議員だ、たしかこういう判決がありました。  したがって、併用制か小選挙区制がというのは、従来からここでも再々言われておりますので申し上げませんけれども、やはり民意というのは、先ほど二党論もあるわけですけれども、その政党が本当に民意反映して、信頼されて議席を得るかどうかというのは国民が、有権者が判断するわけでして、初めから二党でなくてはいけないということはないわけです。  まず、政党の乱立という話をされたのですが、それぞれの政党に所属する候補者がどれだけ出るか、これは広くオープンにしておいた方がよろしい。その中で、有権者、国民がどの政党を自分たちの意思を反映して選ぶかというのは、それこそ国民が選べばいいわけでして、その結果として二党になるか、四党、五党あるいはもっと多党になるか、それは結果でございまして、初めから制度的に、文字どおり二党でなくてはいけないという発想はとらない方がよろしいというふうに考えております。
  160. 草野威

    草野委員 地方の選挙制度の問題でございますけれども、今まで余り議論がされてこなかったのではないかと思います。地方の選挙制度のあり方につきましてどのような構想をお持ちになっておられるのか。  特に衆参両院に新たな選挙制度導入された場合、府県、市町村議会選挙制度のあり方、国会議員と地方議員の責任と役割など、こういうものにつきましてどのようにお考えになっておりますか、両党の御見解を承りたいと思います。
  161. 武村正義

    武村議員 この問題につきましては、自民党としましても、まだ論議のさなかでございます。ただ、基本的に言えることは、国の選挙制度を変えれば、当然その改革論議は地方選挙制度にも及ばざるを得ないという認識でございます。  特に、地方を都道府県、政令都市レベルと市町村レベルで分けて考えてみますと、御承知のように、都道府県、政令都市段階はほとんどの議員選挙が政党公認、推薦等になっております。当然議会の会派もほぼ中央の政党と並ぶ形で、一部に例外はございますが、おおむね政党政治を貫いているというふうに思います。市町村の場合は無所属立候補が全国的には多い。一部の地域では市も政党立候補が多い例外がございますが、おおむね無所属立候補が多いという実態がございます。  そういう実態を踏まえますと、少なくとも同士打ちの問題にしましても、地方議員選挙のお金の問題にしましても、あるいは政党本位選挙論議するにしましても、都道府県議員あるいは政令都市議員レベルまでは国政の論議をほぼそのまま持ち込むことができるのかなという認識でございますし、片方、市町村レベルはちょっと状況が違うな、こんな認識を持っております。
  162. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 我が党もいろいろの角度から討議中でございますけれども、世界的に見た場合、ドイツでも併用案を御承知のようにやっておるわけでございますが、国が併用案でございますが、州、ラントの方も併用案をやっておるところがたしか私の記憶では半分ぐらい。それから、そうじゃないやり方でもやっている。それから、イタリアも同じように、国と同じようなやり方をしている。  世界的にそういう傾向ではございますが、ただ、これはこれからの地方分権のあり方の問題とかいろいろな要素を、日本の場合には自治体には考えていかなければいかぬじゃないか。県の問題、市町村とはまた違うだろうし、政令市はまた違うでしょうというようなことで、いろいろなケースがあろうかと思いますので、冒頭申し上げましたように、まだ研究中、勉強中というところでございます。
  163. 北側一雄

    北側議員 国の政治と地方の政治の一番違うところは、地方の政治は、より有権者の方々、市民の方々のニーズが多様な問題について取り扱わないといけない課題が多いのではないかと私思うのですね。ですから、そういう意味ではなおさらのこと、地方議会において、私は、多様な民意をしっかり酌み取れるような地方選挙制度でないといけないのではないのかなというふうに思っております。  また、先ほどの委員お話ですと、政令指定都市とか、それから都道府県、そういうところは単純小選挙区制の選挙をやるようなお話の趣旨に聞こえたのですけれども、それは今の、より民意反映しなければいけないという趣旨からすると、私は、大変誤りじゃないか。また、皆さんのお立場に立ちましても、首長選挙というのがちゃんとあるわけでございますので、むしろ地方議会においては、そういう一人を選ぶというのではなくて、より多様な民意反映していくというような選挙制度がやはり妥当するのではないのかなというふうに私は考えております。
  164. 草野威

    草野委員 基本的な問題につきまして何点かお伺いしたわけでございますけれども、単独政権か、また連合政権か、こういう政権の問題につきましてもいろいろとお話がございました。自民党提案者の方々からお話がございましたけれども、特に先日、きょうですか、石井先生の方から、民意を集約し、政権交代可能な二つの政党をつくるべきだ、こういうような御意見もございました。また、社公両党からは、民意を正確に議席に反映させる制度が必要だ、こういうような御意見とともに、渡部一郎先輩からは、争うのではなく、互いに知恵を出し合い、よきを学びつつ総合していく能力が今問われているのではないか、こういうような御意見もあったわけでございまして、それぞれ傾聴に値する御意見だと思っております。  さて、先日、民間政治臨調から、小選挙比例代表連用制の御提言がございました。それによりますと、いろいろな立派な御意見を書いておられるわけでございますけれども、きょうの段階ではやはりこの中身については余り議論の対象にしないということでございますので、あえて深く触れるわけではございませんけれども、私も、新聞で読んだ限りでは、なかなかの御意見だな、こういうような認識は持っているわけでございます。  その中にこういう一節がございました。政治改革推進協議会は、客観、公正の立場に基づいて、衆議院選挙制度改革政治浄化の実現などについて与野党双方が歩み寄るべき公正な案で、これからの日本の政治の再生に真に寄与することと信ずる案を策定した、こういうような一節があったわけでございます。  私は、与野党で現在おのおのの提出案について真剣に議論がされている中で、大変恐縮でございますけれども、この連用制についても、簡単で結構でございますので、感想でも結構です、御意見でも結構ですので、ぜひお述べをいただけたらと、このように思うわけでございます。  もちろん私は、我々社公両党が現在提案をしておりますこの併用制につきまして、これが最もすぐれた案である、このように考えているわけでございますけれども、ただ、今国民政治不信が頂点に達しているときに、各党自分たち主張だけをいつまでも言っていていいものかどうか、やはり何とか努力をしなければならないのではないかこういう気持ちを持っているわけでございます。そして今国会中に何とか合意点を見つけて、次回の選挙から新しい選挙制度を適用すべきではないかと強く主張させていただきたい、このように考えるものでございます。  そこで、この連用制の問題につきまして、石井先生にお尋ねをさせていただきたい、と思います。  自民党さんの御意見の中で、今まで伺った中では、併用制では小党分立の可能性が高い、その上に超過議席が発生する、こういう御指摘が再三ございました。しかし、この運用制の提言の中では、ほぼ現状どおりの、適度の多党制であり、また超過議席は発生しない、このように書いてありますね。また、政権交代を目指す案と言われておりますけれども、こういうものにつきまして、石井先生はどのようにお受け取りになっておりますか、御意見をお聞かせください。
  165. 石井一

    石井(一)議員 この委員会の冒頭に党としての見解を述べさせていただきまして、何か非常に厳しい考え方を申し過ぎたようでございますが、私といたしましても、評価をいたしております一面も当然ございます。  やや個人的な見解になるかもわかりませんけれども、これらが三党の提案をことごとく取り入れるような形でいろいろと英知を絞っておられるということ、それから、スタートの時点ではどの党にも極端な有利、不利というものを与えないような工夫というふうな一つの接点を見出そうとしておる努力、それからまた、今後の妥協の、将来でございますが、私たちは今私たちの案を主張しておりますけれども、方向の一つのヒントを与えておるというふうな面も評価できると思いますし、ドント式の計算の仕方にもそれなりの工夫がございます。  ただ、これは臨調ではございませんが、もう直ちにマスコミあたりはそれに対しますシミュレーションというのがついておりますが、私はこれを見まして、大変間違ったシミュレーションだなというふうに思ったのでございます。  この基礎にありますのは、保守は一本化して、そして野党はすべて分立する、こういう形の中からこのシミュレーションの数が出ておるわけでございますけれども、実際は逆に作用するのではないか。長年の、七十年間の中選挙区の中に、保守が直ちに一本化するということはまことに難しいことでございます。二名、三名、四名の候補者が載っておりますときに、同じ党のレベルがあるかといいますと、これは一本化するのに五年や十年かかる作業じゃないか。その反面、国民の熱い希望を受けて、野党は今こそ一本化という空気が流れておるのではないか。  そういうふうなことになりますと、シミュレーションの結果は再議席以上達うんじゃないか、私はそういう感じがいたしたような次第でございまして、そういう点につきましても所見の一端を、こういう席ですから、ざっくばらんに申し上げさせていただきたいと存じます。
  166. 小澤克介

    ○小澤(克)議員 民間政治臨調の方で御提案のいわゆる連用制でございますか、このような大変貴重な御提案をしていただいたその御努力に対して深く敬意を表したいと思います。  先ほどから出ておりますとおり、本委員会では自民党案そして社公案がまないたにのっているわけでございまして、当面これについて双方議論しながらより理解を深めていこうということでございますので、この連用案について今直ちにあれこれ申し上げることはできるだけ差し控えたいというふうに思います。  ただ、私どもがこの委員会議論しておりますのも、何も我々だけが議論しているのではなくて、まさに国民の代表として、国民にかわって議論しているわけでございますので、国民の中から、民間の中からあのような貴重な御提案をいただいたということは、これはこれとして十分参考といいますか尊重しなければならぬなと、基本的にはそのように考えております。  それで、中身についてお話しするのはちょっと早いかと思いますけれども、感想を述べよということでございますので、若干申し上げましょう。  基本的には、マスコミの報道で理解しておりますので正式な中身の説明は受けておりませんけれども、基本的には超過議席について、これを総議席数に上乗せさせないで、他の政党にその分をしわ寄せするという工夫であろうかなというふうに思います。そういたしますと、超過議席が全く生じない場合には、完全に比例制と同じ結果になるわけでございます。超過議席が生じても、それが僅少にとどまる場合にはほぼ比例制の原則に近似した結果が出る、このように思います。ただ、超過議席が非常に多くなりますと、これはもう明らかに比例制の原則から遠く外れてしまう、その辺が最大の問題点がなという感想を持っております。  以上でございます。
  167. 井上義久

    ○井上(義)議員 私どもは、小選挙併用型の比例代表制がベストの案であるということで、今御提案申し上げているわけでございます。ただ、民間政治臨調が英知を結集されて、連用制なる案を御提言されたということは、私どもとしては、その労苦に対しては心から敬意を表する次第でございます。  特に、相打ちで現状維持ということはもう許されない状況で、今国会で一定の決着をつけなければいけないという状況考えますと、やはりいろいろな意見というものは虚心坦懐に耳を傾けなければいけない。そういう意味でしっかり検討を、勉強をさせていただきたい、こう思っているわけでございます。  余談になってちょっと申しわけないのですが、こういう機会でございますので。  実は、選挙制度を勉強するということで、ハンガリーの選挙制度を勉強に行ったことがあるわけでございます。ハンガリーは、民主化の過程でどういう選挙制度導入するかということで、国内で相当活発な議論が行われまして、旧社会主義労働者党は、いわゆる小選挙区制を主張したわけでございます。それに対して民主勢力は比例代表を主張して、がっぷり四つに議論を行った。そういう中で、ともかく民主化の過程で一年以内に選挙制度を決めて選挙をやらなければいけないという状況の中で、最終的には両方の妥協が成り立って、並立なんですけれども、小選挙区が二回投票制、しかもその小選挙区の死に票を全国集計して各党に再配分するというような、いわゆる民意をどれだけ議席に反映するかということで、併用に近い妥協案が成り立ったわけでございます。  それで選挙をやり、今ハンガリーは比較的民主化の過程で混乱が少なかったわけでございまして、そういうことをずっとこう見てまいりまして、今私たちが置かれている状況は、実は同じじゃないかと。ともかくこの国会の中で結論を出さなければいけない、決着をつけて、新しい出発をしなければ日本の民主政治は本当に崩壊の危機に瀕している、こういう認識なわけでございまして、そういう意味で、今政治家としてやはり知恵を出さなければいけない、いずれそういうときが来るだろう、こういうふうに認識をしているわけでございます。その辺の私どもの決意といいますか、それをぜひ御理解賜りたい、このように思うわけでございます。
  168. 草野威

    草野委員 せっかく両党で真剣にこの両案につきまして議論がされている最中におきまして、大変恐縮でございましたけれども、それぞれ御答弁をいただきまして、ありがとうございました。この臨調の提言につきましても、やはり第三の案として非常に今注目を国民の間からも集めているわけでございまして、この機会をおかりしまして、御意見をちょうだいしたわけでございます。ありがとうございました。  では、次の問題に移らしていただきたいと思います。  自民党さんにお尋ねしたいと思いますが、戸別訪問の問題でございます。  新聞報道によりますと、三月三十一日の自民党総務会におきまして、一たんは解禁を認めた戸別訪問、これは一部の議員の方々から、自民党にとっては不利になる、このような意見が出て自民党案から外されてしまった、こういうことが新聞報道で出ておりまして、極めて私はこれは残念なことであると思っております。  今まで戸別訪問を禁止してきたのは、政権党が選挙運動の自由を、民衆からできるだけ自由を奪い、見ざる、聞かざる、言わざるの状態に閉じ込めておく方が都合がよかったのではないか、まあそのように思いたくなるような気もするわけでございまして、恐らくそういうことで選挙そのものも非常に陰湿化してしまった、このように言わざるを得ないわけでございます。     〔委員長退席、北川(正)委員長代理着席〕  民衆の側は、もうびくびくしながら選挙運動をしなきゃならない。選挙が始まると、おまえのうちに行きたいけれども危ないからやめておく、こういう笑い話のような現実もあったわけでございまして、最近の選挙の投票率を見てみましても、棄権する有権者が既に五割にも達している、こういうような状態が出ているわけでございます。私は、やはり民衆が楽しんで選挙運動に参加できるようにするためにも、戸別訪問は絶対にこれは認めるべきだ、このように思いますが、自民党さんの御意見を承りたいと思います。
  169. 武村正義

    武村議員 我が党の中にも賛否両論ございまして、おっしゃるような経緯もあったわけでございますが、率直に申し上げて、やはり今回の選挙制度改正は本当に政策本位の選挙に変えていきたいというのが基本でございます。  今もし戸別訪問を全面解禁にしたとして、日本の選挙の実態から考えますと、本当にこれが政策本位にどこまでなるだろうか。イギリスのように、パンフレットを持ちながら一軒一軒の家庭を訪問して、出てきた奥さん、御主人がいろいろ労働党や保守党の政策を質問される、それに丁寧に答えていく、パンフレットを置いて帰る、こういう選挙に日本がなるなら私どもも即戸別訪問解禁でいいのかなと思いますが、少なくともしばらく時間を置いてこの問題は見詰める必要があるのではないか。むしろ、必死で戸別訪問合戦になって、恐らく有権者の家から見れば、うるさいなと、電話以上にですね。お願いします、名前だけ頼みに来るという、こういう状況に広がってしまうのではないかという危惧を持ったのであります。  この際、草野さんにお尋ねしてよろしいですかね。  選挙運動の議論になりましたが、我が党は流し連呼を禁止しておりますし、片方、事前ポスターも禁止で踏み切っております。私は、大正十四年以来の公選法の歴史の中で、やはり数十年の流れを考えますと、日本国民の感性も随分変わってきた。選挙風景に対する見方も変わってきているんではないか。御承知のように、最近の若い日本人は、音楽とか美的な感覚が非常に鋭くなってきました。そんなときに、選挙になれば、もうお互いに町じゅう我々のポスター、でかでかとカラフルなポスターを張りめぐらす。これは、地方選挙もそうでございます。  このことが、やはり国民から、かなり今の国民感覚からいえば、美意識に触れている。当然町の美観、景観にも触れているわけです。また、候補者は車に乗って、手を振りながら、専ら名前の連坪を中心にしてガンガンガンガン音を立てて走り回る。私自身も、時々子供さんを抱えた奥さんがこういう格好されるのをみずからも体験しまして、こういう名前だけをガンガンとなり散らす選挙はこれでいいのかな。顔写真と名前だけを書いたポスターをいっぱい張りめぐらすのもこれでいいのかな。両方とも、少なくとも政策本位の選挙になっていないじゃないか。この反省から、自民党選挙運動の改革案として二つの新しい問題提起もしております。  戸別訪問の問題も、そういう視点から真剣な議論をしますと、今は少し時期尚早ではないか、もう少し議論を続けよう、こういうことになったわけであります。
  170. 草野威

    草野委員 戸別訪問の解禁についてはもう少し議論を続けよう、そういうことでございますけれども、一九二五年以来七十年近くたとうとしておるわけです。七十年間議論されてきているんです。もうそろそろ結論を出してもいいのではないか、こういうふうに思います。  それから、今武村先生のお話の中で、感性が変わってきた、したがって、事前ポスターや連呼の問題についてもお触れになっておりますけれども、私はそれはそのとおりだと思うのです。ただ、大正十四年以来の衆議院選挙法以来ずっと変わってこなかったわけでございますけれども、その当時戸別訪問を禁止した理由、それはこういうことになっているんですね。情実を利用し、投票のための決意を唆すばかりでなく、実に買収を容易ならしめることができる、こういうような理由で当時禁止されているんですね。  確かに最高裁は、一九五〇年、憲法第二十一条の表現の自由について訴えが出された後、裁判で、戸別訪問禁止を合憲とする、こういう判決を下したことはございますけれども、しかし、大正十四年以来禁止になってから、例えば戦後新憲法ができた、新憲法ができてからでもこの制度というのは全然変わらず今まで来ているんですね。ですから、今武村先生の、もう少し議論をしていこう、時期尚早だ、こういう御意見についてはどうも私は承服しかねる。ぜひこれは、今諸外国でも、手軽な選挙運動、費用のかからない選挙運動、金のかからない選挙運動として諸外国では大いにこれが利用されているわけです。それで、日本の場合はこの戸別訪問をいまだに禁止している、時期尚早、こういうことではどうしても私は承服できないわけでございます。  社公の方で御意見あったら伺いたいと思います。
  171. 北側一雄

    北側議員 草野委員の御意見には全く同感でございまして、特に自民党案によりますと、今回の自民党案ですと、小選挙区の候補者が政見放送というのをできないようになっておるんですね。小選挙区の候補者が政見放送もできない。そういう中でどうして有権者の方々に訴えていくのか。私は、政見放送を認めない以上は、当然戸別訪問の自由化というものを認めないといけないんじゃないのかなというふうに思うわけでございます。  今草野委員おっしゃったように、だれでもできる選挙運動である、それから一方通行の選挙運動ではないわけですね。双方通行、コミュニケーション、対話の選挙運動でございます。欧米ではどこの国も、この戸別訪問が一番有力な選挙運動として認められているわけでございまして、ぜひこの戸別訪問の自由化を今回の政治改革の一環として実現させていきたいというふうに考えている所存でございます。
  172. 草野威

    草野委員 時間がもうそろそろ来ましたので、これで終わりにしたいと思いますけれども、今の戸別訪問の問題ですね。  確かに最高裁では、禁止合憲、こういうことになっておりますけれども、しかし、全国の下級審におきまして、戸別訪問を禁止する理由として今挙げられている、買収それから利益誘導それから威迫、こういうことの不正行為の温床になるという点につきましては、下級審においては、合理的な根拠はないとする判決を下した例は全国でも数例に上がっているわけですね。最近におきます最高裁の判例におきましても、やはりこういうものについてはかなり今までのと変わった見方をしてきている。そういう裁判官の補足意見も発表されているわけでございまして、やはり私は、選挙運動の一つの方法として戸別訪問、これはすぐれた選挙運動としてぜひとも実現をすべきである、このことを申し上げまして、終わりにさせていただきたいと思います。
  173. 石井一

    石井(一)議員 御意見は篤と拝聴をいたしました。  海部内閣の三法案のときに、我が党の提案の中には十五名を限定して戸別訪問を解禁する、こういう決定をいたしたことがございます。また今回、民社党の御意見の中には、本人の戸別訪問を解禁するというような御提案もあるようでございまして、この点は今後検討をしていきたいと思うわけでございますけれども、要は、この戸別訪問というものが逆に、迷惑をかけるというふうなこともございますが、例えば政党中心選挙をやりますときに、片一方がこれを実行する、片一方が実行しない、それじゃ日本の場合、片一方には仁義を切られて片一方に仁義を切られぬという場合に、それじゃというようなことになりますと、かえって政党、政策不在の、結局大衆動員をかけた方がというようなことになる。そういう嫌いもありますが、方向としては自由化ということを非常に評価するべき時期であるということも認識いたしております。
  174. 草野威

    草野委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  175. 北川正恭

    ○北川(正)委員長代理 木島日出夫君。
  176. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  いよいよきょうから一般の質疑に入るわけでして、最初に選挙制度論議になったわけでありますが、私は、どうも国民がこの政治改革に関する調査特別委員会に求めている願いとちょっとずれているのではないかなと思うわけです。国民はやはり、金と政治の関係を遮断してもらいたい、真っ先にこの金と政治の問題をこの政治改革特別委員会で論じてほしいということを願っているのではなかろうかなと思うわけです。  昨日、毎日新聞のアンケートの結果が報道されておりました。「現在検討されている政治改革の中で、あなたはどれを優先して実施すべきだと思いますか。」という設問であります。一番多いのが「政治腐敗防止のための制度確立」五三%、次が「政治資金の規制」二三%、そしてようやく三番目に「選挙制度改革」わずかに一九%です。  私が本会議で代表質問で挙げましたように、選挙制度の問題と政治腐敗の問題は直接関係ない。今、比例代表選挙であるイタリアでも大変な腐敗、それから併用制をとっているドイツでも腐敗、そして小選挙区制をとっているフランスでも腐敗、そして中選挙区をとっている我が国でも腐敗しているということを挙げたわけでありますが、それでも、きょうは選挙制度に関する質問のテーマでありますから、そちらに移ります。  最初に、社会、公明両党にお聞きしたいのですが、社会、公明両党の政治資金規正法改正法案には企業・団体献金禁止がはっきりとうたわれている、これは前進だと思うわけです。どうしてもこれを成立させて、国民の期待に沿って、金と政治をきれいにしてほしいということだと思うのです。しかし、社会、公明両党の立場は、政治資金の問題と選挙制度の問題は一括処理、一括成立だという立場であります。  それだけじゃなくて、法案そのものも、社公両党の法案を読みますと、政治資金規正法、今の企業献金全面禁止がうたわれている政治資金規正法政党助成法が成立しなければ発動しない仕組みになっているのです。政党助成法が発動できるのは、小選挙区割り画定委員会が発動しなければできない仕組みになっています。当然のことながら、区割り画定委員会が発動するには小選挙区制を内容にする公職選挙法改正法案が通らなければ発動しない。要するに、リンクされているのですね。小選挙区制を内容とする公選法と政治資金規正法とがリンクされてしまっている。  これは、この毎日新聞のアンケートにある、まずは優先して政治腐敗防止をやってほしい、政治資金規制をやってほしい、この要求から見てずれるのではないか。どうしてそれを遮断して、選挙制度の問題は、自民党の完全小選挙区制と社公の比例代表を中心とすると言われる制度とは、水と油のようで、なかなか一致は難しい。国民の期待にこたえるにはこのリンクを外すべきではないかと思うのですが、最初に社会党から、佐藤委員。(佐藤(観)議員「担当者がいますから、松原君が担当していますから」と呼ぶ)じゃ、松原さん。
  177. 松原脩雄

    ○松原議員 お答えします。  政権交代のないところに政治腐敗というものが生じてきたというのが根本的な我々の認識でありまして、今まで政治腐敗が頻発をしておりました。それで腐敗をなくそうという趣旨で政治資金規正法の規制強化をやってきましたけれども、いつまでたっても同じ状態が頻発をしておる。  この問題を根本にまでさかのぼって我々が検討したところ、やはり政党本位、政策本位の選挙制度システムを入れる。そして、政権交代が可能になるような選挙制度システムともあわせて考える。そして、政治腐敗の根源である企業献金を禁止する場合には政党に対する助成もあわせなければいけない。おのずと、指摘された四つの点につきましては、これをセットとして、あわせて抜本的、総合的に変えないことには、根本的な日本政治の転換にならないというかたい信念で今回の我が社公案提案しているところでございます。
  178. 日笠勝之

    ○日笠議員 今、松原委員の方から御説明がありましたが、私どもは、政官財のいわゆる構造的なところにメスを入れなければ、いわゆる抜本的な改革はできない、こういう意味で一体化して、一括して処理をと言っておるわけです。  木島議員のアンケートでございますが、政治腐敗防止の制度五三%ですか、それに選挙制度が一九%、一括してやれば七二%の民意が可能になるということになるわけでございます。(木島委員「優先してということ、どちらが優先か」と呼ぶ)だから、一緒にやればいいのです。同時、一括、優先してやれば、七二%ということになるわけでございます。
  179. 木島日出夫

    ○木島委員 今のは全くごまかしですね。そもそも政権交代を可能にするために選挙制度をいじるというのは邪道です。選挙制度の根本は、民意がどれだけ正確に議席に反映するかが根本的な命題であって、力不足で政権がとれないのに、選挙制度を変えて政権にありつこうなんというのは邪道だと思うわけです。政権交代ができない理由に、先ほど再三、現行選挙制度の抜本是正をやっていないからじゃないかと、私が言っていたことを採用して発言がありましたね。そのとおりだと思うのです。  まあ、次に質問を移ります。  社公両党の併用制について御質問いたします。  社公両党は、併用制は顔の見える比例代表選挙である、最善のものである、四〇%しか得票のない政党は国会には四〇%しか議席を持ってはならぬのだ、一〇%しか得票がない政党は一〇%しか国会に議席を持ってはならないのだ、そして鏡のような国会をつくって、その中でどういう政権をつくるか、国会の中で各政党がしのぎを削って論ずればいいじゃないか、それは正論だと思うのです。  ところが、そういう比例代表制度の持っている特質、いい面が、二百の小選挙区制をつくることによって、そして小選挙区における当選者には無条件で最優先して議席を与えるというこの仕組みを持ち込むことによって、残念ながらそれが後景に押しやられてしまうのではないかと思わざるを得ないのです。各政党、候補者とも、まず目の前にある小選挙区制での勝利のために全力を尽くすということになるわけです。そうすれば、再三社公両党からここでも指摘をされました、小選挙区制の持っている弊害、いろいろあるのです。  例えば、候補者の選挙区の有権者への利益誘導選挙になるのじゃないか、金が物を言う選挙になるのじゃないか、買収、供応が絶えないのではないか、狭い地域的視野しか持てない、そういう視野の低い、小さい政治家が輩出するのではないか。先ほどの午前中の論議にありましたが、アメリカの小選挙区制でもう既に矛盾が出ておりますように、当選できる候補者の固定化など、さまざまな小選挙区制が本質的に持っている弊害がもろに、この社公の二百の小選挙区を前提にすることによって、そこに無条件で議席を与えることによって、出てくるのではないか。これは、比例代表選挙をとるための理念である政党本位、政策本位の選挙からの逆行ではないかと思うのですが、社会党佐藤委員
  180. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 どうしても私に答えろということですから、答えさせていただきますが、一番大事なことは、その政党にどれだけの議席が行くかが先であります。しかも、全体的に選挙を覆っておりますのは、小選挙区の問題であろうとも、これは政党本位に、政策中心選挙全体がなっていくわけでありますから、木島委員が言われますこと、全くないと私申しません。それはいろいろな意味で起こるかもしれませんが、それは、政党が公認をしてその小選挙区に候補者を責任を持って出していくわけでありますから、そこでかなり選挙のありよう自体が基本的に、自民党さんの言われる単純小選挙区とは、かなりありようが違ってくる。もしそこで腐敗が起こった場合に、それは政党自体の腐敗だというふうに有権者は見るでありましょうし、今度は腐敗を取り除くための公民権の停止にいたしましても、立候補制限にいたしましても、かなりつくっているわけでありますから、それから私たちは、木島さんから御指摘をいただきましたように、企業・団体献金の禁止ということで、お金を使おうと思ってもそのもと自体はかなり締めてあるわけでありまして、個人献金が中心になってまいりますから、木島さんの御心配いただくようなことは、ほとんど政党中心選挙ということでその中に吸収をされていく、そうあるべきだと私たちは思っております。
  181. 木島日出夫

    ○木島委員 併用制の持っている性格、併用制が現実に実施されたときに選挙がどういう状況になるであろうか、ドイツが既に経験を持っているわけです。ドイツの選挙の経験など、自由法曹団という民主的な法律家で組織している団体の弁護士たちがドイツまで、実際に選挙をやっているところまで行って、実際どういう選挙になるかつぶさに研究、見聞してきている報告書があるわけですが、選挙運動の実態、有権者の意識などから見ても、実質上小選挙区制が前面に出てきますから、やっぱり一つの結果として、小選挙選挙で当落を事実上争えない得票率の小さな政党、ドイツでは例えば第三党以下第四党、第五党、こういう政党、その候補者はやっぱり有権者の関心の対象から外れていって、その結果、比例代表選挙での政党名選択にも必ず大きな影響が出てくる。これは、その見聞した弁護士だけじゃなくて、もうかねてから日本の学者によって指摘されている問題であります。  これは、大政党、小政党の間に比例代表制というのは本来実質上公平なんだ、そういう理念で比例代表制がつくられようとするわけですが、その基本的な理念を、実質上、小選挙区制が選挙の前面に出ることによって掘り崩されてしまう。小政党に大きなハンディをつけることであり、平等の原則から見ても問題ではないか、こういう形で比例代表の持っているよい特質が掘り崩されるのではないか、ドイツの実態から見て、そう思うわけですが、どうでしょう。
  182. 井上義久

    ○井上(義)議員 私どもが小選挙併用型の比例代表制考えましたときに、やはり第一義的には、選挙で示された民意というものが議席に反映をされる、そういうことを基本として考えたわけでございます。  それで、比例代表を基本とする制度、その中で、民意反映と同時に、やはり民意の集約あるいは民意の統合ということも当然あわせて考えなければいけないわけでございますから、それをどういう仕組みで実現していくかということで、当然もちろん小選挙区を併用した理由は、無所属等の候補者の立候補を担保するとか、あるいは顔の見えるとかというようなことが理由でございますけれども、あわせてやはり、小選挙区を併用することによって、当然そこには、木島さんがおっしゃったように、小選挙区に立てられるような政党が、民意によってこれが二つになるのか三つになるのか、これは実際選挙をやってみなければわかりませんけれども、やはり政権を担い得るような政党を育てていかなければいけないということを一方で考えたわけでございまして、これを欠陥と見るのか、これを制度の利点と見るのかここが大きく見解の違うところなんだろうと、私どもは、これがまさに一つの、何といいますか、この制度の持っている重要なポイントの一つだというふうに考えているわけでございます。  それでもう一つは、ドイツの選挙形態ということを我々も研究いたしました。その中で、私たちが今回の法案の中で工夫をしたことは、要するに選挙が、確かに顔が見えるということで、直接候補者に投票できるということで、小選挙区の選挙運動というものがやっぱり直接目に見える選挙ということになって、そこが中心になる、これは否めない事実でございますけれども、あわせて我々は、比例代表、特に名簿を提出した政党が十分な選挙運動ができるように今回法案の中にきちんと仕組んであるわけでございまして、そこもぜひ法案をよく精査していただければ御理解いただけるんではないか、こういうふうに思っている次第でございますので、よろしくお願いいたします。
  183. 小澤克介

    ○小澤(克)議員 一点だけ補足させていただきたいと思います。  今、井上提案者の方からお話があったとおり、事実上小選挙区に候補者をそろえられるような有力政党に国民の支持が収れんしていくということは、私は、決してそれ自体否定すべきことではないというふうに考えております。  その点は井上委員の発言と同じでございますが、一点だけつけ加えさせていただきますと、その一方でドイツの経験では、例の緑の党ですね、グリューネンですかこれがリストによってこのシステムの中で進出を果たしたという歴史的な事実もございます。そして、このような一種のシングル・イシュー・パーティーでしょうか、の主張を既存の政党、特に社民党が大幅に取り入れることによってその民意を集約していったという経過がある、こういうことも一つ指摘をさせていただきたいと思います。     〔北川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  184. 木島日出夫

    ○木島委員 これは当然でありますが、それぞれの地域を直接に代表する政治家は、小選挙選挙で当選した一人の国会議員だけということになるわけであります。それ以外は比例代表から配分されてくる国会議員になるわけです。そうなれば、その政治家の所属する政党、日本でいえば比較第一党、圧倒的に強い自民党がほとんどすべて占める、小選挙区では、と皆さんも考えているでしょうから、それぞれの地域を直接に代表する政党は自民党だけになる。そうしますと、その自民党政治活動のみが有権者にとって直接見える政治活動にならざるを得ない。第二党以下の政治活動はますます見えなくならざるを得ないんではないか。  ドイツの経験に簡単に触れてみたいと思うのです。  ドイツで併用制導入されたのが一九四九年、第一回の選挙が一九四九年、第二回が一九五三年、第三回が一九五七年です。この初回の三回がどういう結果をもたらしたか。比較第一党であるキリスト教民主同盟・社会同盟、CDU・CSU、一回、二回、三回と連続して数字を並べてみます。小選挙区制での当選者が百十五、百七十二、百九十四とふえています。比例代表で配分されるのがプラス二十四、七十一、七十六と加わってきますから、第一党は第一回目百三十九、第二回目二百四十三、第三回目二百七十と大きくなります。第二党である社民党、SPD、第一回の小選挙区制の当選者九十六、次が四十五、三回目が四十六です。配分される比例代表での議席が三十五、二回目が百六、三回目が百二十三であります。小選挙区制で負けますから比例配分が多くなるわけでありますが、合計しても百二十一、百五十一、百六十九という状況であります。比較第三党、自由民主党、FDP、これが第一回が五十二、第二回が四十八、第三回目が四十一。第一回の併用制で十あった政党が、その後五%条項とかいろいろ足切りも入りまして、それも含めてでありますけれども、結局二大政党に収れんをさせられていったという歴史を持つわけであります。  これは、もうすべての学者が一致して言っているいわゆる小選挙区制効果と言われるものであります。小選挙区制が持つ統合機能だとも言われていまして、公明党の井上委員はそれがあるからむしろ評価すべきなんだというふうにおっしゃられておりますが、これはむしろどういう本質がというと、選挙制度によって民意を人為的に束ねてしまう、そして少数政党を政治の舞台から排除するという結果になるものであって、本来比例代表選挙が持たねばならない、そして持っていると言われている国民主権、議会民主主義の基本原理にもとるのではないかと思うわけであります。これに対してどう答えますか。
  185. 渡部一郎

    渡部(一)議員 大変御丁寧に勉強してこられまして、いろいろ例を挙げて言われましたので、話が半分で済みますのでありがたいと思っております。  一つは、CDU・CSUの連合ができて選挙をやっているからこそ国民の信頼が集まったのであって、ばらばらに選挙をやったら第一党にそんなに集まるはずはないのであります。我々としては、どなたかの議員が言われましたように、この社公案が完成いたしました場合には、断固比較第一党は私どものどちらかがいただくという確信を持っておりまして、その熱意を持って頑張りたい。初めから、選挙をやる前から負け腰でいるなどということで政治家はやっておられないのであります。  それから、今いろいろお話をいただきましたが、その前に私はけげんな感じがいたしますのは、共産党の方々の議論を聞いていますとますます、自民党案に賛成なさるのでないならば社公案に賛成するために、これは全部丁寧に聞いておられるんじゃないかなという感じをして伺っておったわけであります。といいますのは、確かに御説明といたしましては、中選挙区を改良するということをまずこの委員会で説明されたのでございますが、その委員会の席上、長年にわたって、二十年ぐらい前からですか、比例代表制について研究をしておって、党の方針であると述べられました。  私は、この委員会で発言されるのは御自由でございますが、党で長いこと研究しているのが比例代表制で、ここへ持ち出したのが中選挙区制だというのはまことにうなずけない。党の方針が二つあるのか、むしろお尋ねしなければならない。それをどなたもお聞きになりませんので、ちょっと反論権を行使して、お尋ねしなきゃならぬわけであります。といいますのは、自分立場が明快でないのに、人に質問するというのは奇妙なことになってしまうからであります。
  186. 木島日出夫

    ○木島委員 ちょっと短くしてください。
  187. 田邉國男

    田邉委員長 短く発言してください。
  188. 木島日出夫

    ○木島委員 質問時間がもうないんですよ、私。反論権を使われても困りますよ。質問時間がないんです、私、三十分しか。もっと、一時間も質問時間を与えてくれればしゃべれる……
  189. 渡部一郎

    渡部(一)議員 いや、反論権は自由ですよ。あなたは何をおっしゃるんですか。あなたは私が反論しそうなことを言うから、私は反論しているのであって、自分立場が不明瞭な人にどう返事をしたらいいのですか。
  190. 木島日出夫

    ○木島委員 聞かれたことと違うことを答弁して、時間をとらないでくださいよ。
  191. 渡部一郎

    渡部(一)議員 だから私は、ほかの皆様方に、みんなが奇妙な感じをしてこの議論をしようとしているから、私は伺ったのであります。
  192. 木島日出夫

    ○木島委員 委員長、ちょっと短くしてくださいよ。私まだ質問することがたくさん残っているわけですから、時間がもうないんですから。これは不公正ですよ、三十分しか、短い時間しかないのに。
  193. 渡部一郎

    渡部(一)議員 そして、小選挙併用型比例代表制というのに、どういうわけだか知らないけれども、それを小選挙区制だ、比例制だというふうに決めつけるというのは、私はそれはおかしいと思う。それは決めつけのたぐいであって、議論ではない、そこもひとつお気をつけいただきたいと思います。
  194. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、小選挙比例代表併用制なる案が持っている問題点を一つ一つ、きちっきちっと聞こうとしているわけでありますので、御理解いただきたい。  この併用制は、今言った、いわゆる小選挙区制効果という政治過程で発生する問題によって事実上少数政党が排除されていくだけではなく、制度そのものの中に二つ避けられない欠陥、比例代表の原則が排除される問題がある。一つは、超過議席の問題であります。一つは、私も本会議質問し、きょうも同僚議員が取り上げておりました無所属候補の当選の場合、そして無所属候補の無投票当選の場合の、第一義的であるはずの比例代表選挙の投票の抹殺、排除の問題であります。  小選挙区二百ということは、比例代表選挙で比較第一党が四割の得票を得られなくなった場合、得られなくなったけれども比較第一党として小選挙区では全部の議席を独占するような場合には、必ず理論的に超過議席が発生するものであります。超過議席が発生すること自体比例代表による議席配分でなくなるわけでありますが、社公案で小選挙を二百とした根拠、これは何か。  現在比較第一党の自民党が四十数%台の得票だから、それより少な目に線を引いたということでしょうか。そうだとすれば、将来比較第一党の得票率がだんだん低下した場合には、その低下に応じて超過議席を避けるためには、この配分数を減らさなければならないことになる。政党のそのときどきの力関係によって小選挙区の配分議席数が変動するというのでは、制度としては全くおかしなことじゃないかと思うわけです。その根拠は、二百という根拠は何か。
  195. 小澤克介

    ○小澤(克)議員 この点については既に何度か御説明しておりますけれども、基本は比例選挙でございます。そして、その中に人の要素、人の顔が見える要素を盛り込もう、こういう趣旨から小選挙区制を併用という形で盛り込んだわけでございます。そして、あくまでも比例代表が基本でございますので、どの程度小選挙区の数を設けるかというのは一つの問題点でございますが、比例重視という観点から、四割程度が妥当な数字ではないか。それからもう一つ、御指摘のように、超過議席が余り多数生ずることは、比例制の原則からすれば好ましくないことは言うまでもないことでございますので、余り多数の超過議席が生じないという実際的な観点も含めて、四割の二百というふうに決めたわけでございます。  今御指摘の中で、それじゃ自民党の得票率がどんどん下がっていったら小選挙区の数も減らさなければ不合理ではないかという御指摘ですが、私はそうは思わない。というのは、得票率が下がっていけば、その分小選挙区で自民党以外の党が第一位になって当選するという数もふえてくるわけでございますから、超過議席はおのずと逆に生じなくなる、かように考えております。
  196. 木島日出夫

    ○木島委員 私の仮定は、比較第一党の地位は譲らないまま四〇%が三〇%になった、そういう場合を想定しているわけであります。  併用制考える場合に決定的に大事なのは、やはり小選挙区制部分が何議席とるかだと思うのです。これが三百だったら決定的に制度の中身は変わるわけです。二百五十対二百五十、ドイツでやっているように半々だったら全く質的に変わってくるわけです。小選挙区制部分を何割にするかによって、この根本的な制度の本質が変わるような重大な問題ですね。その重大な割には、今の御説明では、二百にする論理的根拠が非常に私は不十分だと思わざるを得ない。  もう一つ、無所属候補当選の場合、無所属候補無投票当選の場合に、肝心かなめの比例代表の票がなくなってしまう。投票そのものができなくなってくるということは、先ほど同僚委員から憲法違反という指摘が、同じ委員として委員からありました。結局、これはどこから出てくるか。超過議席は、これはなくさないというわけですね。無所属でも当選したら議席を与えてしまう。そして憲法上の要請、無所属候補立候補要請、そして比例代表を何とか守り抜きたい、そういうやはり一致できない矛盾があって、解決できない矛盾だろうと私は思うわけです。要するに、私は、これは本当に、先ほども憲法違反じゃないかという問題に対して説得力ある答弁が法制局からもできませんでしたが、欠陥だと思うのです。  時間が来ましたので、私は最後に一つだけ事実を披露して終わります。  今、実はイギリスの小選挙区制が事実上もう制度疲労しておる、これは変えなければいかぬ、イギリスではこの小選挙区制を何としても変えなければいかぬという世論が物すごく高まっております。どこからその欠陥が出たかというと、先ほど配付されたイギリスの選挙結果、一九八三年の選挙結果、保守党が四二・四%、第二党労働党が二七・六%、第三党の自由党が二五・四%、労働党と自由党の差はわずかに二・二%しか差がない。しかし議席が、労働党が二百九、自由党が二十三、ここから、この制度疲労はもう耐えられないということで改革が出ているわけであります。  それで、今イギリスでは、確かに、ドイツの併用制を取り入れたらどうかとか、日本の中選挙区制に非常に近い単記委譲制ということや、いろんな研究が始まっているわけでありますが、そういう研究の中で一番権威のある団体が、一八八四年に比例代表協会として……
  197. 田邉國男

    田邉委員長 質疑時間が参りました。
  198. 木島日出夫

    ○木島委員 はい。  発足して、今選挙改革協会ということで、大変国連NGOとして権威のある団体がこう言っているのを紹介して、終わります。  小選挙比例代表併用制は、小選挙区制が持っている最悪の問題と拘束名簿式比例代表が持っている最悪の問題を解決することなくそれを結合してしまったという意味で世界で最悪の選挙制度だということを述べていることを御披露しまして、質問を終わります。
  199. 田邉國男

  200. 小平忠正

    小平委員 私は、民社党の小平忠正であります。  本委員会で、各党提案者の皆さんを含めて各委員におかれても、この真摯な議論の展開、まことに御苦労さんでございます。民社党、少数政党で、この中見回してもたしか私だけだと思います。しかし、発言する機会が与えられましたので、私からも、与えられた時間、何点かについてお伺いいたします。  今この問題に関して、いろいろと国民世論、いろいろな意見がございます。私も、選挙区に帰ったり、いろいろなところでこの話も私からもし、また皆さんからもお話をお伺いいたしますが、多くの方がこう言われます。何だかんだ言っても、結局各党自分の党に都合のいい、そういうことを主張しているだけじゃないか。結局、きれいごとというか、いろいろ言われていますけれども、それの裏に隠されたものは、いわゆる皆さん政治家の本音はもう見抜いている、こんなふうにも批判を受けています。私は、こういう話を聞きますと、そんな不信があるうちはいいんですけれども、それを通り越して、政治否定というか、白けムードが蔓延しできますと、これはいわゆる政治国民と乖離してしまう、ゆゆしきことである、こんなふうに危惧をする一人でございます。  そういうところで、今回、自民党社会党公明党三党の皆さんから出された政治改革法案なんですが、それぞれ一括処理を主張されております。しかし私は、この両者の案というものは、基本的に機能そのものについて、認識に関し根本的な違いがあり、いわゆる水と油である、こんなふうに思うんであります。言うならば、これがどちらかの案でまとまることは、皆さんも既に心底にはもう十分お持ちだと思います、これは無理であると。言うならば、与野党逆転という構図の中で、これが激突していったら、最後は、これは皆さんが一歩も引かなければ、これはいわゆる空中分解すると。だから、どこかで妥協案が出てくるならば、これは別ですよね。それが第三案ではないかと思います。  私は、今冒頭にも申し上げたんでありますけれども、民社党に籍を置いております。いわゆる小党の悲哀というものを十二分に味わっております。したがって、その中においてやはり政治は妥協であるということ、だから我々は是々非々ということを先達がつくってきました。お互い主張し合う、ぶつかって前に進まない、でもどこか落としどころを決めて決めなきゃならないという、もちろん国民生活に関連するいろいろな法案がありましたよね、そういうことを考えて、私どもは、悪い言葉で言うと、どっちつかずと言われましたけれども、そういう是々非々の路線で事に当たってまいりました。そういうことを考えますと、今回のこの問題の処理は、皆さんは答弁席に座っておられますよね、そういう中で本当にこれができるのか、まずそこにあると思います。  そのときに、今声もありましたけれども、じゃ一体どこが譲れない部分なのか、あるいはどこが譲っでもいわゆる柔軟に対応できるのか、そこのところをまず最初に、自民党社公案それぞれから、この譲れない部分あるいは譲れる部分、これについてまずお伺いをしたいと思います。
  201. 石井一

    石井(一)議員 仰せのとおり、水と油と申されますと、そういう一面もございます。しかし、同時に、議論を進めております中に、やや、遠い遠いトンネルの先に光が見えつつあるというような部分もあるのではないかと思うわけでございますが、私たちといたしましては、今回の事態、深い反省のもとにここで抜本的な改革をしていきたい、そして、自民党の単独政権に終止符を打ち、でき得れば新しい政界の展開をしていきたい。したがって、その場合にいろいろなものがあると思います。  同じことを繰り返したくございませんので、少し議論を活発にするためにも申し上げたいと思いますが、野党の皆さんがここでそういう考え方のもとに奮起され、そして国民の期待にこたえられますと、野党の連合と与党が交代するということの中の政権交代の余地もできるでありましょう。しかしながら、同時に、その反面、野党にそれだけの国民的な魅力、自民党の支持も下がっておりますが、野党に期待するというのも少ないわけでございまして、そういう中でそういうふうなことが今後も続いていくということになりますと、まあ大変な政界再編成、自民党も分裂をする中に新しい形のものをつくっていく。いずれにいたしましても、現状を固定化しそれを追認するのでなく、この機会には、やはりすべての問題においての一つの抜本的な改革をなし遂げたいというのが、その底にございます一つの基本的な哲学でございます。
  202. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 今石井委員の御発言、恐らく自民党の一党政権は終わりにしたいと言われたのは初めてではないかと私は思うわけであります。  それならば、ひとつ直ちに私たちが用意しております小選挙併用型の比例代表にすれば、そのまま民意反映をするわけでありますから、自民党さんは一党政権ではなくなる、どこかと連立をしなければならぬ、こういうことになるわけでありまして、こうやって議論をしていく中に新しい展開ができていくのでありまして、小平委員御指摘のように、私たちもいろいろ公明党さんともずっと論議をする中で、例えばなぜ十二ブロックにするのかとか、いろいろなことを仕組んできたわけでございまして、私たちは今二週間目の議論の中に入って、こういった議論国民皆さん方に聞いていただき、また国民皆さん方のいろいろな反応があって、そして一定の方向に私たちは行くものだと思っておりますので、譲れる部分、譲れない部分といいましても、私たちはいろいろな理由があってこの法案のいろいろな部分を、こういう制度提案しておるわけでございますので、なお一層論議を進めることが小平委員が求められているものに近づいていくことになるのではないかと思います。
  203. 渡部一郎

    渡部(一)議員 お答えいたします。  民社党の多年の見解であろうと存じますが、政治において妥協が必要だということを論理の上で言われるだけでなく、実際の行動においても、国会においてしばしば難局というか意見の衝突の際に示されまして、私どもも多く示唆を与えられたことがございます。時にはひどく反発をしたことも実はあることは事実でございます。  今、自民党石井議員からお話がありましたように、私どもは、この法案をどうしても成立させるとなりますと、今御提言のように、何とかして妥協の道を探さなければならない。妥協という言葉は極めて嫌な言葉でありまして、みずからの論理を破壊し、みずからの正しいと信ずるものに対してまで一歩下がらなきゃならぬことを意味する言葉であって、私は使いたくない。私のような直情径行型の人間としてはもうとてもじゃないけれども耐えられない発言であります。しかし、これは国会が要請し、国民が要請するという事実の前には、あらゆるものについて私どもお互いに耐え忍び、そして話し合いを詰めていかなきゃならない。相互の議論の中に信頼を次第次第に増していくような形にしていかなければならないと信ずるものであります。  ただ、自民党議員の方が、重ねて言って恐縮でございますが、単純小選挙区制というお言葉を発せられるたびに、もう妥協は終わり、話し合いはお断り、我々はこれだけ、おまえらは出ていけと言われているような感じがするわけでございまして、あの言葉はやめていただかなきゃならない。あれを言われた瞬間に、こちらも心の扉がばたんと閉じるわけでありまして、もう終わりなのか、さようなら、こういう感じになるわけであります。ですから、そこはやめていただきまして、あといろいろな御提言なり御意見なり質疑なりをさせていただきたいとまず思っているわけであります。
  204. 小平忠正

    小平委員 今それぞれ御三方からお伺いいたしましたが、私も正直言って、今私の問いに対して的確なるお答えがいただけるとは期待しておりませんでした。これはできないと思います。しかし、こういう議論を通じて、本会議から始まりまして、時には攻撃し合いながら、また示唆に富んだウイットも含めて、そういう質疑の中でどこかに落としどころをつくっていこうという、そういうお気持ちが皆さんにもあると思います。それを私は期待いたします。  しかし、そういう中でも私は幾つかの問題点があると思うのですけれども、時間も限られておりますので、非常に基本的な疑問なんですが、これは既にもう前にやりとりがあったとは思いますけれども、私からまず自民党さんにお伺いをしてみたいのですが、私は、単純小選挙区制というものは、よく主張の中で一番大きな理由として、国民政権政党を選択できるということを挙げられていますよね。それは確かにそうでしょう。しかし私は、大きな問題というのは、議席の固定化がどうしても避けられないと思うのです。これはやはり大きな問題があると思います。既にこのことは我が党の同僚議員からも前にも質問があったわけですけれども、こんな例がございます。  例えばアメリカの場合ですと、現職議員の過去十年間における再当選率は九〇%を超えている。それからイギリスにおきましては、常に当選者がもう決まっている安定選挙区ですか、これが一九五五年には七六%もある。それが年々高まって、一九八七年には八七%にも上がってしまった、そういう事例がございますよね。それから翻って、我が国のことを眺めてみますと、これは都道府県会議員、そこの選挙区を眺めてみますと、一人区という選挙区がございます。これがたしか全部で四百六十三ですか選挙区がございますが、実にそのうち約四八%に当たる二百二十一選挙区が無投票なんですよ。要するに、投票は行われないのですね。これがいわゆる議席が固定化してしまう、そういう例だと思います。  私はこの場合に、イギリスに今戻って話をしますと、イギリスの場合には保守党、労働党というものに議席が分かれておりますので、その固定議席以外の流動議席においては、どちらかに行けば政権交代があり得るという、そういう図式が今までも行われてきました。しかし、ここ二十年ぐらいですか、政権交代ございませんよね。そういう歴史もございますが、しかし我が国においては、言ってみたら超中央集権スタイルの国ですね。そういう国においては、政治家は地方と国とのパイプ、特に与党議員にあってはこれになってしまって、政権与党のみで全国で独裁的に固定議席を有することになってしまう、この弊害が間違いなくあると思います。  しかも、これによってまた問題は、地方分権、いわゆる地方分散というものが阻害されて、ますます中央集権化が進んでしまう。自民党の皆さんも、総理を初めとしていわゆる一極集中を是正するということを言われていますよね。しかし、実際にはこのことによってますますその中央集権化が進んでしまう。これは私はどうかなと思うのですね。言うならば、皆さんが主張する単純小選挙区制ということは、流動的な選挙区においては熾烈な闘いが行われる、しかしほとんどの選挙区においては無風であって、これがいわゆる有権者の選挙に対する沈滞化というか白けにつながってしまう、こんなふうに思うのでありますが、これについてどのように反論をされるでしょうか。
  205. 石井一

    石井(一)議員 基本的には、小選挙区制は議席が固定化するという傾向はまずあるということを私率直に認めさせていただきたいと思いますが、ただこれにも、果たして制度そのものかどうか。  今地方の選挙のいろいろのパーセント等も申されたわけでございますけれども、私が認識しております感覚では、現在の中選挙区、三分の一ぐらいかわるとはいいますけれども、かといって、例えば本院にあります二十五年の表彰の額なんというものは恐らくどこにもない姿で、非常に少ない各国での姿でございまして、二十五年間続けて継続して議員に出れるというふうなのは、これはもっとさらに強い固定化の姿ではないか。  私、アメリカにもたくさん議員の知り合いがございますけれども、おおむね議員の任期等は十二年程度であり、それからさっとビジネスヘかわり、あるいはまた学界へ戻りする中に、非常に流動化というふうなものをやっております。だから、選挙制度自体にはそういう一面はございますけれども、これはやはり運用の問題というふうなこともあり得るのであって、固定化が非常に強いのはなお我が国の制度だというふうなことを私は痛感する次第でございます。  併用制の場合に、選挙区で当選しないのに比例のリストで上がってまいる。ドイツの首相などは繰り返しそうした。こういう方の方がよほど固定化は比較的楽に継続するというふうな一面もあるわけでございまして、あらゆる角度からいろんなプラス面、マイナス面というものが存在しておる、私はそう思います。
  206. 西岡武夫

    ○西岡議員 小平議員の御質問に対しまして、私ども自民党といたしましては、単純小選挙区の導入に伴いまして党の組織、党の規約、これは党内問題でございますけれども、抜本的にこれを改正する準備を進めているところでございます。  その要点は、ただいま議員御指摘のとおりに、小選挙区になった場合の議席の固定化ということは党にとりましてもこれは老化現象を起こすということになるわけでございますから、積極的に新人を登用する方策を講じなければいけないということが我が党内の強い意見でございまして、この問題につきましては、これは党内の問題でございますけれども、十分な対応を今準備しつつあるということを申し添えておきます。
  207. 小平忠正

    小平委員 これについては私ももう少しお話ししたいのですが、余り自民党さんだけに申し上げますと偏ってしまいますので、社公の皆さんにも、小選挙比例代表併用制、これについてのことでこんな問題点を実は私考えていますのでちょっとお聞きいたします。  今度は、いわゆる小選挙区と比例制との併用の場合の中で、これも既に指摘があったことなんですけれども、まず第一に、小選挙区の当選者が決まります、そして落選者が言うならば比例区で救済される、こういう制度ですね。それは制度ですから、それは制度ですけれども、しかし議員というのは、皆さんも非常にプライドを持って、自意識が強い方が私は議員だと思うのです。またそうでなければ議員なんてやっていないと思うのですよ。やはりおれがおれがというものがあって、それで国民をリードしていけると思うのですよね。そういうのが議員であって、やはり同じレベルでスタートしなければいかぬと思うのです。そういうときに、まず一人決まるでしょう、小選挙区制でね、あとが比例区で。となると、何かランクができてしまうような気がするのですね、議員の意識の問題としてですよ。  それからあとは、今度は選挙区に戻った場合のことなんですが、これは既に現在の参議院の中でも事実見受けられるのですけれども、ある地方自治体とかあるいはその地域の、県とかなんかで何かのそういう会合なり式典があるときに、大体その選挙区選出の議員が案内を受けるのですよ、その地域の議員として。しかし、そのところに比例区代表の議員の方も、住居を構えて本拠地にしている方もおられるのですよね。でも、どっちかといったら案内が来ないことが往々にしてあるのですよ。  さあそうなると、今の皆さんの案ができますと、衆議院議員という形において、いわゆる小選挙区制で選ばれた人のみがそういうところに出席をする、そしてまた関係者も、その人がおらが地域の代表だ、そんなふうになっていく、そして比例区の方は別な形で、大きく言ったらば、国全体という形で仕事を、政治をすることもおありでしょう。しかし議員の形が変わってしまうような気がするのですよね。  こういう問題については、私は、既にドイツも、一九九〇年の選挙ですか、これにおいても比例区当選の三百二十四人中九〇%に当たる三百二人が小選挙区の落選者、そういう事態が出ているそうであります。そういう外国の例もあるのですが、ドイツはそういう意識が、ドイツの国会議員の皆さんは意識が我が国と違うかもしれないけれども、私は、そういう問題、特に社会党公明党の皆さんどういうふうにとらえておられるのか、ぜひ率直な御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  208. 小澤克介

    ○小澤(克)議員 御指摘は、要するに小選挙区で比較第一党になって当選した人、まあ自力当選組といいますか、それから比例名簿で当選した人、なかんずく、いわゆる重複立候補で小選挙区では惜しくも落ちたけれども比例名簿の登載の順位が高くて当選した方との間に意識のずれがありはしないか、あるいは世間の方の受けとめ方もやや違った扱いをするのではないか、議会の中に自力当選組とそれ以外の議員という二つの種類が出るのではないだろうかこの点についての御心配だろうと思います。  そういう要素が全くないとは私も思いません。全面的に否定はいたしませんけれども、そのことが果たしてどれだけの欠点になるだろうか。それぞれ議会に当選した以上は、まさに政策立案等について民意を代表して切磋琢磨するわけでございますし、次は自力当選してやろうとファイトを燃やす方もいらっしゃいましょうし、そのことがそれほど重要な決定的な意識の差になって議会運営の中で何らかの障害を生ずるというようなことはちょっと想像つかないのではないかな、かように考えております。
  209. 北側一雄

    北側議員 例えば参議院比例区の参議院議員の方とちょっと比べられないのかなと私は思っておりまして、参議院比例区の方は、あれは並立制でございますので、選挙区での選挙活動はしておられないわけですね。選挙区の候補者にはなっておらないわけなんです。ところが、我々の併用制は重複立候補を認めておりますし、事実上名簿登載者の多くの方が小選挙区の方へ立候補するわけですね。当選また当選しないにかかわらずその選挙区で選挙運動をし戦うわけですね。だから、そういう意味では参議院比例区の当選者の方々とちょっと違うのかなというふうに思っております。
  210. 小平忠正

    小平委員 社会党さん、公明党さんのお考えは、そういうことをお聞きいたしました。  それで、私はこれは自民党社会党公明党、皆さんにお聞きしたいのですけれども選挙制度改革ということは、やはり究極的には衆議院だけじゃだめだと思うのですね。参議院から、それから地方議会まで含めてしていかなきゃいかぬと思うのです。そうでなきゃ私は有終の美は飾れないと思うのですよね。そういうところで、もちろんこれは今我々は衆議院の土俵でやっているのですから、それは参議院、地方議会でやっていただくということもそれもわかりますけれども、一応お考えとして、皆さんのお考えとしてこの問題はどうされていくのかということがあると思うのです。そこについて、私は私なりのちょっと意見もあるのですけれども、お考えをお聞きしたいものですから、これはちょっと簡潔で結構ですから、それぞれこれについて今後どういうふうにしていくお考えなのか、お聞きしておきたいと思います。
  211. 小渕恵三

    ○小渕議員 私、代表質問でも申し上げましたが、まさにその点で、参議院制度あるいは地方政治のあり方、こういうものを一括して成案を得て、本来的にいえば、ある意味では国民の信を問うて、立派な判断をすべきところではなかろうかというのを申し上げたわけです。しかしながら、現下の政治不信その他考えますと、この際はとにもかくにも衆議院制度改革を率先すべきではないかということで、我が党としては衆議院制度改革を先行させだということですが、御指摘の点は私も十分考えなきゃならぬ点だろうと思っております。
  212. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 御指摘のように、本来ですと、二院制なんですから、衆議院意味参議院意味というのを考え、そのための選挙制度はどうあるべきかという、全部陣立てをして、本来議論を進めていくべきものだと思いますが、御承知のように、大変な腐敗が進んで今大変な事態になっているということで、まずひとつ衆議院をこういう制度に変えましょう、それに伴って、あわせて第一義的にはまた参議院の方でも考えていただき、また皆さんで一緒に考えるということでいくべきではないかというふうに思っております。  それから、地方選挙のあり方につきましては、我々、我が党も今いろいろ討議中でございまして、今しかりこうすべきだというところまでいっていないということでございます。
  213. 井上義久

    ○井上(義)議員 小平委員御指摘のように、衆参一体で考えるべき筋合いのものであろう、こういうふうに認識はしております。  私どもとしては、衆議院につきましては比例代表で、やっぱり政党政治ということが中心で、参議院はやはり選出方法というものを、衆議院とは異なるものにすることが必要である。特に今、参議院の政党化ということが非常に問題になっているわけでございまして、衆議院のカーボンコピー、このようにまで言われている現状改革しなければいけないということで、私どもとしてはやはり個人を選ぶ選挙制度に変えるべきではないか。しかも、かなり広い範囲で、具体的にはブロックというふうに考えて、いますけれども、広い範囲で個人を選ぶ選挙にしてはいかがか。そして、選ばれた人たちは、良識の府として、それを担うにふさわしい人ということで、党議拘束も外す、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、地方選挙につきましては、まだ検討中でございますけれども、地方政治とそれから国会と大きな違いは、国会が議院内閣制であるのに対して、地方は行政官を直接選挙する、こういう仕組みになっておりますので、そのもとにおける議会のありようというものもこれはおのずと違ってくるのではないか、こういうふうに考えておりまして、そういうことを含めて検討しなければいけない。  さらに、地方分権ということを当然考えていかなければいけません。私どもは、今の日本の地方自治というものを、基礎的自治体、広域的自治体、そして国、こういうふうに役割を明確に分担して、国はやっぱり国としてやるべきこと、国民生活の身近な問題については広域的自治体それから基礎的自治体で行うべきである。そういうもとにおけるまた議会のあり方というものも考えていかなければいけない、そういうふうに考えておる次第であります。
  214. 小平忠正

    小平委員 最後に、今お答えいただいたのですけれども、私は今、佐藤先生お話あったように、やっぱりこれは二院制ですし、ワンセットだという、また地方議会の特殊性もございます。しかし、世論も多い中で、衆議院だけということを言われました。でも私は、これについてはどちらかというと自民党佐藤総務会長、私はちょっと近い主張考えがちょっと近いところがあるのですけれども、この政治改革というのは選挙制度じゃない、やっぱり政治資金も含めてお金ということも一緒にせんきゃならぬ、こんなふうに常日ごろ思っているのですけれども、どうも最近選挙制度が先行している感があります。  そして、国民の皆さんに一番大事なことは、選挙制度改革をしたらそれで改革が終わりだ、そんなふうな考えを持たしちゃいかぬと私は思うのですね。事の本質は何かと言ったら、やはり国民の皆さんは、選挙制度がということじゃなくて、やっぱり政治家とお金、選挙とお金、これについての批判が第一だと思うのですね。そこのところをしっかり念頭に置きながら進めていってもらいたいと思うのです。  最後に、これは御答弁は結構ですが、十七日ですか、いわゆる民間政治臨調の案が出ましたよね。これは、確かに民間の方が非常に心配していただいて、こういう案を出していただいた。本当にありがたいことだと思うのですよね。でも、裏返して言うと、国会は何をやっているんだということだと思うのですよね。そして、先をもう見越していると、これはもうまとまらないと、だからというあれもあるんではないかという、そんなような意見も実際に聞こえます。したがって、そういう意見がある中で、やはり我々も含めてこのことは真剣に受けとめてしていかんきゃならぬ、こんなことを申し上げながら、時間が来ましたので、終わります。  ありがとうございました。
  215. 田邉國男

    田邉委員長 次回は、明二十一日水曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時四十四分散会