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1993-04-09 第126回国会 衆議院 商工委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月九日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 井上 普方君    理事 新井 将敬君 理事 井出 正一君    理事 金子 一義君 理事 額賀福志郎君    理事 山本  拓君 理事 竹村 幸雄君    理事 安田  範君 理事 遠藤 乙彦君       甘利  明君    岩村卯一郎君       尾身 幸次君    古賀 一成君       古賀 正浩君    中島洋次郎君       真鍋 光広君    増岡 博之君       増田 敏男君    村田 吉隆君       江田 五月君    大畠 章宏君       後藤  茂君    鈴木  久君       安田 修三君    吉田 和子君       和田 貞夫君    長田 武士君       春田 重昭君    小沢 和秋君       川端 達夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  森  喜朗君  出席政府委員         通商産業大臣官 江崎  格君         房総務審議官         通商産業大臣官 白川  進君         房審議官         通商産業大臣官 石黒 正大君         房審議官         通商産業大臣官 清川 佑二君         房審議官         通商産業省通商 森清 圀生君         政策局次長         通商産業省貿易 渡辺  修君         局長         通商産業省貿易 坂本 吉弘君         情報産業局長         工業技術院長  石原 舜三君         資源エネルギー 黒田 直樹君         庁長官  委員外出席者         商工委員会調査 山下 弘文君         室長    ————————————— 四月九日  不正競争防止法案内閣提出第六七号)(参議  院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件保  貿易保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第一九号)      ————◇—————
  2. 井上普方

    井上委員長 これより会議を開きます。  内閣提出貿易保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。真鍋光広君。
  3. 真鍋光広

    真鍋委員 本日は貿易保険法改正法案審議をいたすわけでございますが、戦後、日本経済復興それから今日の発展に至るまで、貿易保険というものがそのときどきに応じて大変大きな役割を果たしてきたということは事実であり、そしてまた、それだけに大きな期待がかけられておるわけでございます。  ところで、貿易収支黒字年間千三百億ドルという数字は、その持つ意味は大変大きいものがあるわけでございます。つまり、我が国経済力というのが今や世界第一級の力を持っておる、こういうことを示す証左でございまして、それだけにまた、世界各国から各般期待そしてまた要望が寄せられるゆえんであるわけでございます。  私は、これにこたえるにはいろいろな形でこたえていかなければいかぬ、事実またいろいろな形で日本は苦労しながらこたえてきておるわけでございますが、第一番目に何といいましてもこの経済的に成功した我が国のみずからの市場、マーケットというものを全世界に開放していく、これは何としても責務であろうと思うわけでございます。自由貿易成果によって今日に至った日本自由貿易の旗手であるということをぜひとも示さなければならないと思いますし、また、その機能の一部でございます商社機能というものが全世界の財、富をチャネルする、チャネリングしていくという意味合いで大きな役割を果たしてもらいたい、こういったものが一つであろうと思うわけでございます。  その次は、貿易黒字で、国際収支黒字で得た資金、これを再び世界各国に対して還流していく、適正に配分していくということであろうと思うわけでございます。私は思い起こすのでございますが、昭和四十六年であったと思いますが、初めて東京国際資本市場、これが弧弧の声を上げて、アジア開銀債から始めたわけでございます。その当時担当していたので思い出深いわけでございますが、この東京国際金融資本市場というものを大いに発展をさせることを通じて集まった資金を全世界にチャネリングしながら配っていく、こういうことであろう。しかし、それでは途上国に対しては十分に金が回っていかないということもございますので、その一つ補完措置としてこの貿易保険制度というものがあるわけでございまして、これもしっかり内容を充実していかなければいかぬ、そういう時期に至っておると思います。  そして最後に、いわゆる自由貿易を通じて築き上げた富を貧しいところに配分していくということであろうと思うわけでございまして、日本みずからの富の中からODAとして各国に配っていく、こういう経済協力の分野があると思うわけでございます。  そこで、これは各般にわたっていろいろ進めていかなければいかぬわけでございますけれども、この中で今まで国際的に約束をして進めてきたものとして、ODA中期目標、第四次だと五カ年で五百億ドル、またアルシュ・サミットで約束をしました公的資金による資金還流措置、五カ年六百五十億ドル、これが一九九二年で終わったわけでございまして、昨今新聞で見てみますと、次期計画として途上国への資金協力計画千二百億ドルということが報ぜられておりました。その中身は、ODAで七百五十億ドル、日本輸出銀行のアンタイドローンで三百五十億ドル、貿易保険を通ずる途上国への流れということでしょうかね、百億ドル、こういうことが報ぜられておるわけでございます。  そうしたコンテクストの中でこの法案が上程されておると私は考えるわけでございますが、銀行商社等海外への長期事業資金貸し付け等に伴うリスクをこの保険によって軽減し、民間による資金還流を後押ししようというものでございまして、まことに時宜を得たものと考えるわけでございます。  そこで、御当局にお尋ね申し上げたいのでございますが、このてん補率を、これまで海外投資保険だと九〇%であったのを、このたび海外事業資金貸付保険を新設してこれを九五%にする、特に資金還流に資する場合は九七・五%まで引き上げる、こういうことでございますし、これまでの海外投資保険につきましても九〇%から九五%に引き上げる、こういうふうになっております。このわずか五%アップ、あるいは場合によっては七・五%とわずかなてん補率アップ、これによって果たしてどれほどの効果があるのか、その効果の意義はどうかということ。そしてまた、引受限度額が三千百億円というものを設定しておるようでございますが、利用の見込みでございますね、民間企業からの期待というのは一体どうなっておるのだろう。そしてまた貿易保険収支への影響というのはどうなるのか。そのあたりについて簡単にお伺いいたしたいと思います。簡単な答えで結構です。
  4. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答えを申し上げます。  先ほど来先生指摘ございましたように、現在の我が国の置かれている貿易収支大幅黒字という環境の中で今後の貿易政策をどういうふうに位置づけるか、その中で資金還流の重要さ、さらには貿易保険のそこでの位置づけと、大きな御指摘がございました。まことに私ども指摘のとおりだと考えております。そういうことで今回海外事業貸付保険につきましての新設、さらには海外投資保険てん補率引き上げ等に関する改正をお願いいたしておるわけでございます。  御承知のように、累積債務問題等八〇年代後半から投融資に関しましては世界的な大変厳しい環境がございまして、率直に申し上げまして不良資産を抱えるとかあるいは苦しい経営に陥っているというような銀行商社等状況でございます。そういうわけで、一たび八〇年代の後半に大変活発に動いておりました海外投資につきましては、九〇年に入りまして以降現在非常に減ってきておるわけでございます。それからもう一つの、投資保険の一部に入っておりました融資関係につきましても、現在の環境下におきまして甚だ出が悪いということで、一口で言いますと、我が国銀行商社等からの、民間部門からの海外投資あるいは海外融資につきましては非常に腰が重くなっておるというのが現状でございます。そういう情勢にかんがみまして、今回、今までの投資保険については九〇%でありましたのを九五%まで引き上げたということでございますし、海外事業貸付保険につきましては、御指摘のように新たな保険種にいたしまして、てん補率引き上げ並びに損害発生時における簡易な、動きやすい、スムーズに動くような体制にした、こういうことでございます。  これによりましてどれだけ今申し上げましたような腰の重い民間企業が腰を上げることができるかという点の御指摘でございますが、これは、必ずしもこの貿易保険だけが影響するものではございません。御承知のように、銀行商社寺我が国経済を取り巻きます経済、景気の問題もございましょうし、世界情勢もございまして、一概にどれだけということは申し上げられませんが、私どもが今までの保険を通じて感じておりますところは、特に海外事業貸付保険につきましては、損害発生の前後に、今までは簿価計算等というのは非常に長い手続をかけておったわけでございますが、これが簡便になることによって相当程度事業貸し付けが出てくるというのを商社銀行等が我々の方に申し出てきております。  初年度でございまして、しかもこの法律を通していただきました後できるだけ早く実施に移したいと思いますけれども、具体的な融資について初年度どれだけ出るかということでございますが、予算総則上は三千百億円ぐらいを予定いたしておりますけれども、それの実効が初年度は半分ぐらい、年度の半分でございますから三千百億に到達することはないと思いますけれども、ほどほどに出てくるのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  5. 真鍋光広

    真鍋委員 海外投融資といいますか、途上国資金貸し付けする人たちから考えてみましたら、今の貿易保険制度原則円建てであり、そしてまた固定金利でやっておるということでございまして、現行行われておる一般的な慣行である外貨建てであり、そしてまた変動金利融資をしておるということとの関係で、どうもそぐわないといいますか、使い勝手が悪い、こういう意見もあるわけでございますが、それに対しては今回の改正法の中で手当てがないようですが、何らかの形でそ  のあたりを手直しされる気持ちがあるのかどう  か、そのあたりをちょっと伺いたいと思います。
  6. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  円高等為替変動が非常に激しいときにこういう新たな新保険等を創設して果たしてうまくワークするのであろうか、こういう御指摘でございますが、今回の法律改正前提になりました貿易保険審議会中間報告というのが平成四年の十二月に出ておりまして、そこにおいて、現行貿易保険というのは円建て調達とか円建て貸し付け前提としたものであるけれども、今回の海外事業貸付保険につきましては、外貨建て調達あるいは貸し付け前提とするような形で、つまり具体的な保険料計算とか支払い金額算定等運用時において為替変動というのを計算上織り込むことによって、事実上外貨建て保険を掛けて運用していくのと結果的に同じような効果というのをつくれるのではないか、運用できるのではないか、こういう答申をいただいております。これを受けまして、現在我々具体的に、海外事業貸付保険というのは、保険制度そのものは従来と同じでございますが、運用面において今御指摘のあったようなことで被保険者の利便に供することができるのではないか、こういうことを今検討しておるところでございます。
  7. 真鍋光広

    真鍋委員 そこで、貿易保険の方の収支というのを見てみますと、同情に値するのですが、いろいろ国際政治の激動の中でそのあおりといいますかツケといいますか、受けておるわけでございます。平成年度では収支差が二千六百五十五億円出たということで、まことに気の毒というのですか、御苦労だなという気持ちを禁じ得ないわけでございます。  これまでの流れを見てみますと、一九八二年のメキシコ危機を契機として途上国の債務累積問題が表面化するまでは収支黒字基調であったということでございますが、メキシコやそういった中南米の中所得国に対する政治的判断でございますけれどもリスケをやるということで保険金支払いがふえてきて、そして一九八八年度では単年度赤字が一千億を超えて、そして平成三年では今のような数字だ、こういうことでございます。今では保険金支払いの八、九割がリスケに基づく支払いだということでございまして、財投借り入れがついに六千七百億円だ、これでは保険料収入が四百億円強でございますから、いわば財投借り入れ金利を賄うのがやっとというぐらいな、感じですが、そんな感じになる。これでは貿易保険に対する信頼というのは本当に確立されるのだろうか、維持されるのだろうかという心配がございます。また、例のIJPCの保険金支払い請求に際しましても結構時間がかかって、九百三十億請求したのに対して結論は七百七十七億円の支払いであった、こういうことで、そこらも一体保険を掛けておっても最終的に幾ら保険金がおりてくるのかわからない。わからないというのはどの保険でもわかりはしないのですけれども、しかし非常に難しい。これでは信頼性がどうだろうという話があります。また、伺ってみると、本年度中にも対ロシア債権のうちから七百五十億円ぐらいについて保険金支払い請求があって、それを支払わなければいかぬだろう、こんな話があるわけでございます、  これはいずれをとりましても、貿易保険制度にとっては、これまでの制度のままでいいのかどうかということを示唆するものでございますけれども、つまり抜本対策が必要じゃないか、こういうことを思わせるものでございますけれども欧米主要先進国日本と同じような制度があると思うわけでございます。同様にこうした国際政治の荒波を真っ正面から受けておると思うのですが、欧米諸国の同様の機関における取り組み、対処ぶり、ここらはどうなっておるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  8. 白川進

    白川政府委員 ただいま委員指摘のとおり、累積債務問題の顕在化を端緒といたしまして、我が国のみならず、我が国と同様の貿易保険制度を持っております欧米諸国保険制度も非常に事業収支が悪化しているという状況は全く我が国と同様でございます。  お尋ねのこういった事態に欧米外国がどういう対応をしているかということでございますが、まずアメリカにつきましては、特殊法人でありますところの米国輸銀貿易保険事業を行っておりますが、政府が毎年その翌年度事業収支損予測を立てまして、その相当額補助金として充当するという対応をとっております。  次にヨーロッパ諸国でございますが、フランスにおきましては半官半民のコファースという企業ドイツ国営企業ヘルメス、イタリアは国営企業のサッチェという機関がいずれも政府代理機関として貿易保険引受事務を受託いたしておりますけれども、これらの国々におきましては、保険勘定政府一般会計の中に組み入れられておりまして、事業収支損が発生いたしました場合にはその収支損相当額が自動的に毎年一般会計から繰り入れられるという仕組みになっております。  最後イギリスでございますが、これが我が国と非常に似ておりまして、政府部局そのものであるところのECGDが貿易保険事業を行っておりまして、保険勘定としては我が国同様特別会計運営をいたしております。事業収支損が発生いたしました場合には一般会計からの有利子の借り入れによって賄っているというのが実情でございます。
  9. 真鍋光広

    真鍋委員 今お伺いしましたら、イギリス政府直営日本と同じだ、その他アメリカドイツフランスというのは独立の別の組織でやっておる。別の組織でやっておるときには毎年度一般会計から収支差は補てんされる、こういう話であったと思うわけであります。  六千七百億の財投借入残高、これは六千七百億、そこでとまればいいのですけれども、このカントリーリスクというのはどんどん表面化してくる。決して好ましいことではございませんけれども現実現実であるわけでございまして、そういう中で、やはり財投借り入れがどんどん、どんどんとは言いませんが、何となくどんどん膨らんでいくような気がいたしてならないわけでございます。保険料収入を約四〇%引き上げたといっても百億円ぐらいの増しかないというときに、七百五十億円の保険金支払いが一国で出てくるとか、そういう話が、いわば原子爆弾みたいにぼんぼん落ちる中で、現行制度の中で果たして処理ができるのかどうかということをちょっと危惧いたすわけでございます。御当局は大変御苦労なさってやっておられることはよくわかるので、余り荒っぽいことを言ってはなにですが、単純な、素朴な疑問として、日本でもひとつこの際独立公的機関運営するということにして、必要なものはきちんと毎年度一般会計から繰り入れる、そういうことで対処をしていかなければ、ツケが重くなってからはちょうど林野特会みたいなことになりやせぬかという心配をいたしておるわけでございます。この点についてはいかがですか。
  10. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  今、先生指摘いただき、また御心配いただいておりますように、現在の貿易保険特会というのは六千億をも上回る大変な累積借り入れになっております。これの概要を見ますと、やはり一番大きな要因は八五年後半からのリスケでございまして、世界全体でリスケが行われて、約百十億ドル分ぐらいの影響というのを日本がこうむっておりまして、そのうちの約七割が貿易保険がかぶっておる、この影響が圧倒的でございます。それが、先ほど御指摘ありましたように昭和六十年以降急速な収支悪化になった、これが一つ。  それからもう一つは、やはり平成元年から二年、三年と起こってまいりました湾岸戦争でございまして、この二つの要因が圧倒的で、御指摘のようにこの二年、三年、四年というのはその両方が重なりまして、異常な保険支払いになっておるというのが現状でございます。  これに対しまして、私ども財政当局ともよく話をいたしまして、一つはいわゆる債務削減でございます。これは極めて高度な政治的な判断に基づきまして決定されるものでございますから、この債務削減に伴います保険金支払いに見合うものについては、一般会計からそれに合うような形で繰り入れを行うというようなことで今話が現実に決定し、そういうことで運用いたしております。  それから、あわせましてリスケ資金回収につきましても極めて強力な回収事業を行うといったようなことを行い、また保険料引き上げによる収入の確保も行いまして、このピークを越えますと、私どもはある程度の見通しを持っておるわけでございます。  ちなみに、平成二年、三年というピークを越えました今年度平成年度でございます。これはまだ見込みでございますけれども回収金回収というのを、債権回収で約一千億を超える回収をいたしまして、支払い保険金ピークでありました平成年度の半分ぐらいになったということで、単年度でフローを見ますと、恐らく六、七十億円ぐらいの黒字になってくるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。もちろん、今後ロシアに対するリスケ問題等、不確定要因があることは事実でございますけれども世界の累積債務問題というのは山を越えまして、これからは比較的スムーズな発展途上国工業化が進んでいくのではないかというのが、世界銀行を初めとして、輸出信用保険世界全体の共通の認識でございますので、御指摘のようにいろいろ難しい変動要素はございますが、我々は、これでピークを過ぎて、今後はしっかりした運営を行い、かつまた一般的な特別会計に対する財政基盤の強化につきまして、財政当局も深い理解をいただいておりますので、ケースに応じてタイアップして運営していければ、現行体制で十分やっていけるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  11. 真鍋光広

    真鍋委員 我々は前途に常に明るさを見ながらやっていかなければいかぬわけですから、ただいまの御答弁について、せっかくとにかく御努力されて、御尽力されて、またその成果が上がることを心から御期待申し上げておきます。  岩で、森大臣にお伺いいたしたいのですけれども、私は、ちょうど昭和四十三年の夏でしたか、大蔵省国際収支の仕事にかかりまして、約二年間おったのですが、たしか昭和四十四年の春先が外貨準備の一番少ない、もうぎりぎりのところでございまして、二十億、二十一億ドルぐらいであったかというような感じもいたしておるわけですが、その役とにかく日本経済は軌道に乗りまして、輸出はふえる、つまり国際収支はずっと順調にやってきた。もちろんオイルショックの二度にわたる問題は別といたしまして、基本的にはここ四半世紀ずっと国際収支は順調だ。それも輸出が主導する形でございまして、輸出がふえるからとにかくこの際輸入を大いにふやそうじゃないか、資本も外に出さなければいかぬ、そういう形で努力をしてきました。それが今日の日本の豊かさを導き出したわけでございますから、輸出主導日本経済のあり方というのは、日本にとってはそれでよかったことでございますけれども、ここ十年といいますか、本当に輸出がふえ過ぎて困る、悩む、こういう状態になっておることは恐らく同じお気持ちだろうと思うわけでございます。  そこで、とにかく日本企業の、あるいは日本国輸出意識について、輸出について意識改革をこの際しなければいかぬのじゃないかということをつくづく思うわけでございます。例えば、今の日本輸出は、例えばニューヨークだと日本の商品は日本で買うより安いという話がある。もしもこれが事実だとしたら、日本国民にとってはそれは不幸なことでございます。  そしてまた、それによって大幅黒字を得ます。ところが、日本企業はそこで大きなもうけがあるわけじゃないわけですから、結局そのもうけてきた金は、ドルは市場で売りまして、銀行に返さなければいかぬ。市場で売ったものはどうなるかというと、結局外貨準備当局大蔵省日銀に入ってしまう、外貨準備になる。外貨準備になってしまって、黒字がどんどんふえていきましたら、続いていきましたら、円が上がっていく。円が上がると、円を対価に外貨資産を得るわけですから、外貨資産が目減りするわけですね、円が上がっていくと。つまり、国損になっておるわけです。円が上がるということは、日銀大蔵省外貨準備当局においては国損になっておる。  そしてまた、大幅黒字ですから、諸外国からは、ODAをふやせ、何をせい、こういう話になる。しかし、企業はちっとももうけがあるわけじゃないですから、税収にははね返っていない。国民の税金の中からODAを払っていかなければいかぬ、こういうことになるわけでございます。外国からいっても、日本企業に侵略されるということであって困る。どこをとっても困る困る困るの話で今悪い面が出ておる、こう思うわけでございます。  逆にもうかる輸出に努めていただいたら、国民は相対的に安い品が手に入るし、あるいは企業所得だって上がってくるから、税収が上がる。税収が上がると、その真水でODAをどんどん出せる、こういうことなんです。企業自体内容も、財務も緩みますから、自力で海外に対して投資ができる、資金還流後進国にだってできる、こういうことになるわけです。そうすれば、この貿易保険制度の方がそのしわを受ける度合いも少なくなってくる、このようになると私は思うわけでございます。  そういう意味で、この際通産省もすっきり頭を切りかえて、輸出も量から質への、安売りではなくてもうかる輸出ということに、デイグニティーの高いもうかる輸出をやってもらいたい、こういうことで、経済界に対して輸出についての意識改革、こういうものを抜本的に変えていただく、こんなことを私は希望いたすわけでございますけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  12. 森喜朗

    ○森国務大臣 お答えする前に、真鍋委員せっかく御質疑にお立ちでございましたが、参議院の本会議で、そちらへ出席いたしておりまして大変失礼をいたしました。おわびを申し上げる次第でございます。  あなたは大蔵省では財政通であられるわけですから、もう私から見ればはるかに玄人さん、御質問というよりも、優しい、私ども通産省に対しましていろいろと御指導いただいたとありがたく拝聴をいたしておりました。  四十四年、そのころに外貨準備高が二十億ドルという、一番少なかったというお話で、ちょうど私はそのころ当選をしてきたわけでございます。ですから、そのころからずっと約二十四年間、確かに日本輸出振興策あるいはまた輸出輸入のバランス、いろいろ私どもも党の中でも議論をいたしました。考えてみますと、例えばジェトロなんというのは、日本輸出をどう伸ばしていくか、それからどういう投資があるだろうかということで、むしろ海外での拠点になっておったんですが、最近は逆なんですね。むしろ海外からどうやって日本投資をさせるか、あるいは諸外国を回って、まさにいいものがあったらどうぞ日本へ、日本にどうぞ入れてください、いろいろな便宜を図りましょう、こういうふうにジェトロの行動そのものが変わってきた。通産省の袋も、かつては「輸出を伸ばして」云々と書いてあったんですが、最近は「手を結べ。輸入で世界の国々と」、こういうふうに全く逆転してしまっているということから見て、ただいまの真鍋委員の御指摘はまさにそのとおりでありまして、我が国企業輸出についての物の考え方、やはり適正な利潤を確保した輸出を行うということについては、私はあるべき姿だと思いますし、また私も委員のお考え方に賛成でございます。ただ、最近の我が国輸出を見てまいりますと、数値的には輸出輸入それぞれ微減なんです。ただ、やはり金額的に輸出の金額が非常に膨らんでおります。そういう数字を見てまいりますと、最近輸出品の高付加価値化の進展というのが、輸出価格が上昇しておるということでございますので、委員指摘されますように、私も本来このような傾向が続くことがいいというふうに考えておりますので、産業界においても同じ認識のもとに行動していくことを私も希望したいと考えております。  今後とも、確かにおっしゃるとおり国損になるような考え方というのは一つの大きな問題点だろうと思いますし、十二分にこれから通産省としてもバランスのとれた貿易の体制に入りますようにさらに努力をしてまいりたい、こう考えております。またいろいろとアドバイスをお願い申し上げて、お答えにいたします。
  13. 真鍋光広

    真鍋委員 ありがとうございました。終わります。
  14. 井上普方

    井上委員長 大畠章宏君。
  15. 大畠章宏

    ○大畠委員 日本社会党の大畠章宏でございます。  貿易保険法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきますが、その質問に先立ちまして、ここ四月二日ぐらいからいろいろとロシアの放射性廃棄物の問題が新聞等で報道されておりますので、その件についてまず最初に、冒頭に御質問をさせていただいてから貿易保険法の質問に入らせていただきたいと思います。  各紙の報道によりますと、ロシアの原子力潜水艦の使用済み原子炉の不法投棄、さらには放射性の廃液、廃棄物等が海に投棄されているという報道がございます。  そこで、ちょっとお伺いしたいわけでありますが、一つは、いろいろ政府の方でも検討されたと思いますが、少なくとも日本においても原子力政策、原子力発電所等々の建設あるいは日本の電力を確保しようという形で各関係者の方々が大変な努力をして今日まで来ているわけであります。いわゆる自主、民主、公開、あるいは世界的な基準等をきちっと守りながら今日まで来ているわけでありますが、今回のロシアのずさんな対応というものは日本にも大変大きな影響を与えてくるのじゃないか。そういう意味からして、私は、日本政府として、ロシア政府に対して実態の公表を求めるとともに、ロンドン条約、いわゆる放射性物質等を海洋投棄しないようにという内容が入っているロンドン条約を守って、即これまでの行動というものを中止すべきであろう、そういう要請を行うとともに、さらには日本として原子力関係者の方々が大変努力をしながら技術者の方等々が今日まで積み重ねた経験や技術等があるわけでありますから、この処理、処分に非常に困っているという情報も来ておりますので、各国と共同してこの処理、処分技術の技術援助、さらには処理、処分に関する援助等を隣国である日本が率先して行っていく、こういうことも国際貢献の大きな一歩ではないか、あるいは大きな役割ではないかと私は思うわけでありますが、その件について、現在の状況についてお伺いをしたいと思います。
  16. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま大畠先生から御指摘のあった核関係の廃棄物め海洋投棄の件でございますけれども、昨年の十二月の末に、ロシア政府政府の中で委員会を設けている中間の作業結果というような形で、旧ソ連時代から北海及び極東地域におきまして放射性廃棄物を投棄していたという声明を発表したわけでございますけれども、それ以来、我が国といたしましては、外交ルートを通じまして事実関係についての情報提供を求めると同時に、繰り返し投棄の停止をロシア政府に求めてきたところでございます。それで、今先生お話ございましたが、つい先般、四月二日にロシア政府が白書という形でこの投棄の問題について公表いたしたわけでございますが、その中で、北海であるとかあるいは極東の海域におきまして投棄をしていたという事実が確認されたわけでございます。  もう先生おっしゃいましたとおり、こうした放射性廃棄物の海洋投棄というのは、ロンドン条約の中でも高レベルについても禁止されているわけでございますし、また低レベルの廃棄物につきましても、このロンドン条約締約国会議の決議という形で、モラトリアムと申しますか、中止、禁止になっているわけでございます。当然のことながら、我が国国民にも大きな不安を与えるものでございまして、極めて遺憾なものであるというふうに私どもも認識をいたしているところでございます。  そういうことで、従来からも繰り返しこの投棄の停止を求めてきたところでございますが、この四月二日に白書が公表されました際にも、在日の日本大使からロシアのコズイレフ外相に対しまして重ねて厳重に投棄の停止を要請いたしたところでございます。そういうことで、今後とも私ども関係省庁とも協力しながらまずこの投棄の停止についで求めてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。  それで、白書は公表されたわけでございますけれども、今分析をいたしているところでございまして、場合によってはこれはまだ白書だけでは必ずしもはっきりしないところも出てこようかと思います。概略は今先生おっしゃいましたように、潜水艦ないし砕氷船の原子炉あるいはその部品、あるいはその使用あるいは修理を通じて出てくる廃棄物というような形で言われておりますけれども、どういう形でとか、そういった点についてはさらにいろいろな情報を求めていく必要もあろうかと思います。したがいまして、この白書の分析を通じまして一層詳細な情報提供などを求めてまいりますと同時に、場合によっては、今先生がおっしゃいましたように何か我が国が、あるいはその他の関係各国も含めまして、協力していかなければならないケースも出てくるかもしれません。  いずれにいたしましても、そういった情報収集、分析をまず早急にやりまして、関係省庁とも協力しながら、場合によっては関係国とも協力しながら、何ができるか、どうしていったらいいのかを検討してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  17. 大畠章宏

    ○大畠委員 今いろいろな国際貢献というものが日本に求められているわけでありますが、今御答弁がございましたけれども、このような非常に高い技術レベルを要する分野の日本の技術というものは大変高い水準を維持しているわけであります。これを日本国内だけに生かすというよりも、いろいろな情報を伺いますと、廃棄するのに量が多くて非常に困っている、そういう情報も伝わってきています。これも冷戦構造の崩壊に伴う一つの言ってみれば喜ぶべき状況の一端なのかなと思うのですが、何となくソビエトとして非常に処理に困っているという状況がございますので、ぜひ通産省としても積極的にこの支援のためのリーダーシップをとって、国内での培われた技術、国内で積み上げたいろいろなノーハウ等を生かしながらの国際貢献の一環として行動していただけますよう、活動しでいただけますよう、お願い申し上げたいと思います。  それでは次に、貿易保険法の一部を改正する法律案に対する質問に入らせていただきます。  先ほど先輩議員からも御質問がございましたけれども、これまで日本のいろいろな関係法案というものはとにかく輸出促進を目的としたものが多かったわけでありますが、今回の貿易保険法改正はこれまでの流れとは大きく異なって、いわゆる千三百億ドルも日本は一年間の貿易黒字がたまってしまった、この千三百億ドルもの貿易黒字日本は一体何に使うのだろう、そういう状況世界に生まれていることも事実でありまして、そういうことで日本民間企業が安心して積極的に海外投資できる環境をつくるためにということが、この法改正の背景にあるのかなと思います。先ほどの質疑等を伺っておりましてもそういうふうに理解するところでありますけれども、改めてこの法改正の目的と背景等について、整理してお伺いしたいと思います。
  18. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  我が国貿易保険でございますが、先ほど先生指摘がありましたように、当初は輸出代金保険とかあるいは普通輸出保険とか、我が国輸出促進のための保険制度ということで発足したわけでございますが、その後投資保険が入り、さらには昭和六十二年には前払い式輸入保険が入りということで、輸出保険と呼んでおりましたのが貿易保険というふうに名称改正を行って、それぞれの時代に合うように変遷をたどってきておるわけでございます。  それで、今回のこの海外事業資金貸付保険につきましても、考え方は今先生指摘がありましたとおりでございまして、我が国から発展途上国への資金流れというものを眺め、また世界全体の資金流れというのを見でおりますと、八〇年代というのはいわゆる民間資金のウエートというのが非常に多うございまして約七割ぐらいを占めておりまして、あとODAとかあるいは公的なローンとか、そういったようなウエートというのは三割ぐらいだったわけでございます。当然のことながら、発展国支援ということで公的部門の金の流れというのが多くなってきておりますけれども、それに加えまして民間部門の金の流れというのが非常に衰えてきておるというのが最近の情勢でございまして、世界全体の発展途上国への流れを見ますと、公的部門の流れ民間部門流れがちょうど半分半分ぐちいになっておる、こんなような状況でございます。そういう観点から我々といたしましては、今御指摘がありましたように我が国黒字を抱えておるというような国際環境もございますけれども、そうした中で長期事業貸付保険を創設し、また、直接投資を行っておる海外投資保険がよりスムーズに進むようにということで、従来以上に国がそれらの事業資金流れリスクをよりテークすることにして、そうすることによってややもすると現下において腰が重くなりがちな民間部門資金発展途上国への還流というのを後押しじよう、こういうのが今回の改正の目的でございます。  全体の流れ、現在のこの位置づけというのは、先ほど先生が御指摘したとおりでございます。
  19. 大畠章宏

    ○大畠委員 今回の法改正に伴いまして、その影響等についてお伺いしたいと思います。  いわゆる輸出輸入、いろいろな企業があるし、またいろいろな産業があるわけでありますけれども、今回の法改正に伴いまして、輸入産業とか輸出産業、あるいは輸入企業輸出企業というのがありますが、そういう分野に対する影響というものはおおよそどういうふうに見ておられるのか、お伺いしたいと思います。
  20. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 今回の保険法の改正のポイントになります海外事業貸付保険というのは、我が国銀行とか商社から発展途上国政府関係機関あるいは企業等にお金を貸し付けまして、そこの企業が、つまり発展途上国企業がその資金を利用して工業化のために世界じゅうからいろいろな資材を購入してそれで事業を興していく、こういうための資金流れでございます。そういう意味で、我が国の輸入産業にとってみますと直接今回のこの保険創設によって影響があるというものではないと思いますし、それから輸出産業につきましても、いわゆるサプライヤーズクレジット、つまり物を輸出するに伴って輸出代金保険をつけるといったような保険ではございませんので、つまりひもがついていないわけでございますので、そういう意味では、我が国からの輸出を直接これで促進しようとかサポートしようといったようなものではございません。  しかしながら、そういったアンタイではございますけれども、この事業資金貸付保険によって民間の金が発展途上国に行きますと、当然のことながら、ASEAN諸国を初めとして発展途上国工業化がより一層促進されるわけでございます。その工業化に伴いましてそれらが花を闘いでいく過程で、我が国から機械とかあるいは資機材、そういったようなものの輸出もふえることもありましょうし、あるいは、最近の例で言いますとASEAN諸国というのが工業化に伴いまして、ASEANは従来から、例えばASEANからの日本の輸入を見てみますと主として資源関係が圧倒的なウエートを占めておったわけでございますが、ASEANの工業化に伴ってASEANからの資本財の輸入、つまり現地でジョイントベンチャーができ、あるいは工業化が興ったものが逆に日本に入ってくるという、資本財あるいは耐久消費財の輸入というのが最近非常に多くなっております。八五年で約三%ぐらいのウエートを占めておった、ASEANからの日本の輸入のわずか三%ぐらいだったものが今二〇%ぐらいのウエートを占めるというように、非常に変わってきております。そういうことで、今先生指摘ありましたようにこれによって発展途上国工業化が進みますと、当然のことながら非常に好ましい形で我が国にそういった国からの耐久消費財その他資本財の輸入がふえてくるのではないか、こういうような非常に間接的ではございますけれども長期的には影響が出てくると思います。
  21. 大畠章宏

    ○大畠委員 輸入産業、輸出産業等に対するおおよその影響等については今のお話でわかったわけでありますが、冒頭にお話がありましたとおり、日本にたまってしまった千三百億ドルというお金をどういう形で日本の将来のため、あるいは世界の国々と一緒に共存共栄のために使っていくか、そういうことをやはり日本政府として明確に示していくことが、ひいてはこの貿易保険法の一部を改正する趣旨には沿うのではないかと思うのです。そういうことから、私はそういう観点について何点かお伺いをしたいと思います。  一つは、先ほど漏れたのですが、民間企業海外資本投下をする。そういうことのためには、独自に考えてここに投下すればもうかるかもしれないといってやることも一つでしょうし、また政府の方で一つ大方針を出して、安心してここに投資をしよう。日本の今得た資金を諸外国投資をして、半分は諸外国のために半分は日本のために、そういう意味投資をしよう。幾つかの進出する企業の意思決定経路があると思うのですが、やはり何といっても政府がこういう形でやろうという方針を示すことが、民間企業にとっても政府が言うならば信用してやってみようじゃないかということになると思うのですね。  そういうことからすれば、冒頭にお話し申し上げましたロシアの核廃棄物等々の処理のための施設を日本として強力に推進しよう。例えば千三百億ドルのたまりたまった黒字の中から一部を割いてロシア国等に申し出をして、日本の技術力、あるいはヨーロッパと連携をとって困っている問題についで投資をしますよ、そのくらい本当はとんと発表すれば非常にロシア国のためにも、あるいは日本の技術が国際貢献として生かせるという意味でいいと思うのですが、なかなかそこまでいかないとしても、一つは、ロシア国が今経済的に非常に困窮をしているという意味では、ロシア経済の支援をどう進めるか、これが非常に世界の主要国の間でも大きな課題になっております。私もいろいろそこら辺の状況については十分承知しておりませんけれども、いずれにしても経済のベースはエネルギーである。エネルギーが非常に不安定になってくると非常に経済も不安定になってきます。  そういう意味では、最近いろいろなお話を伺っておりますと、ロシアからヨーロッパに向けての天然ガスのパイプライン等が非常に老朽化している。そういうものを何とかしてほしいという声も聞こえてきていると思います。そういう意味で、ロシア経済支援の一環としてエネルギー関連施設の整備事業、あるいはガスパイプラインの整備事業等について日本として積極的な支援をするという方針を打ち出すてともこの貿易保険法改正しようとすみ趣旨に大変合致するものだと思うのですけれども、その傍について、現在の通産省の方針につい保てお伺いしたいと思います。
  22. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  ロシアに対する各種の支援、中小企業あるいは技術面あるいは安全面等の各種支援につきましては、いろいろな場で従来からも工夫が行われておりますし、またこれからもいろいろ取り組んでいかなければならぬというのは先生指摘のとおりでございますが、その中で最も大宗を占めますのは、御指摘のとおり石油あるいは天然ガス等のエネルギー部門の今彼らが最も強い部門でございまして、外貨獲得部門、そこをサポートし、それをてこにしてロシア経済が再活性化していくのを助けていくのが対日支援の一番重要なところであろうという認識は我々も全く一致いたしております。  ちなみに、ロシアのいわゆる輸出によって外貨を稼いでおる分野で石油、天然ガスというのはどのぐらいウエートを占めているかと申しますと、このウエートがますます今ふえてきておりまして、例えば九二年のIMFの数字でいいますと、外貨獲得、約三百四十一億ドル獲得しでおります。そのうちの百七十億ドルというのがこの石油と天然ガス、さらに九三年の見通しですと、三百八十億ドルの全体の外貨獲得の中で二百十億ドルということで、五割をはるかに超えるような状況でこういった分野が外貨獲得産業の大宗を占めておるわけでございます。しかし、残念ながらこれらの産業はロシアの現下の経済状況で生産量が非常に落ちてきております。特に石油につきましては、急速に資機材の不足、パイプの不足あるいは技術的な問題もあるのでしょう。そういったようなことで落ちてきておりまして、一昨年我々が対日支援で発表いたしましたときにもそれらを中心に、つまり、そういう産業のリハビリを中心に貿易保険を付保しようということで約十八億ドルの枠を我々組みまして、積極的にこれら産業の支援に乗り出したわけでございます。  現状を御説明申し上げますと、まず石油・天然ガス産業の生産回復を支援するということで、ガスプロムという公団に対しまして積極的にコンタクトをしてまいった結果、昨年の夏でございますけれども、七億ドルの貿易保険を付保してこれらに資機材を供給するという契約、七億ドルの契約が成立いたしまして、そのうちの三億ドルにつきましで先般貿易保険を付保して、これの船積み手当てが今行われておる、こういうような状況でございます。残り四億ドル分についても、早晩船手当てができてきましたらこれについて資機材が供給される、そういう形で具体的に対日支援が進んでおるということでございます。  さらにもうあと七億ドル、今度は石油関係でございますけれども、これにつきましても現在ロシアとの間で非常に詳細な打ち合わせが進んでおりまして、もうしばらく詰めが進みますと具体的な返済、つまり、クレジットを与えた後の返済のスキームをどうするかといったようなところについてももう少し詳細な詰めが要りますけれども、これができ上がりました暁には石油産業についても七億ドルの支援を行うことになるのではないか、こういうものが中心でございます。  そのほかに、非常に額は小そうございますが各種の投資保険、これは相手の水産漁業関係のプロジェクトを振興する場合もありましょうし、あるいはウラジオストクその他のホテルその他通信施設を興そうとするものに対する支援でもございますが、そういう投資保険について約二十前後のプロジェクトに対して今引き合いを受けておりまして、そのうちの幾つかについては投資保険を付保しておる、そういうような形で今村口支援を行っておるわけでございます。
  23. 大畠章宏

    ○大畠委員 今お話を伺いましたけれども貿易保険法による支援策等も重要だと思うのですが、やはり何といっても日本政府がそういう方針をきちっと打ち出すということが一番、これは精神的なものになるかどうかわかりませんが、民間企業としても、ああ日本政府がそういう方向でやろうとしているんだな、よし、うちの企業も多少のリスクはあるけれども、そういう国際貢献あるいは日本の国の支援策の方針に沿っでやってみよう、そういう意味では、今お話がありましたとおりの政策をより明らかにしながら民間企業に協力を求めていく、こういうことが大変重要だと思いますので、ぜひなお一層の御努力をお願いしたいと思います。  それから、アジア諸国の経済支援計画等についてお伺いしたいと思うのですが、今いろいろアジア諸国の中で電力不足ということが言われています。ある国では電気を使用する器具等の制限等も行わなければならないという状況も伺っていますし、停電等が非常に頻繁に起こっている国等もございます。そういう意味では、政府としてこのアジア諸国の経済基盤の整備のために電力の建設促進等の方針を出して、例えばODAとセットにしたそういう方針等も打ち出すことが大変重要じゃないかと思うところでございます。特に、人口問題、環境問題、エネルギー問題という非常に大きな世界全体を包む課題があるわけでありますが、このエネルギー問題も大変重要な課題でございまして、ぜひそこら辺、アジア諸国の経済基盤確立のための電力の供給施設等の支援計画といいますか、そういうものをもしも通産省として考えておられましたら、おおよその状況についてお伺いしたいと思います。
  24. 森清圀生

    森清政府委員 アジア諸国の経済発展あるいは民生の安定あるいは民生の向上、そういったことのために、電力を初めといたしますインフラ等の基盤整備が大変重要だということは、もう先生指摘のとおりでございます。このため、我が国といたしましては、電力関係に対する支援に従来から大変力を入れてきておりまして、例えば、九一年度の円借款供与総額で見ますと、千五百億円、円借款の総供与額の約一三%を、先生指摘のアジア地域向けの電力基盤整備事業、電力プロジェクトに供与いたしております。特にアジア詰国のインフラ整備につきましては、電力のみならず万般について最も基礎的な援助に、必要分野でもございますので、大変力を入れてきておるところでございます。  アジア諸国におきます電力等のインフラ整備の重要性は今さら申し上げるまでもないことでございますので、今後とも円借款供与等を通じまして積極的に支援を行ってまいりたい、かように存じております。
  25. 大畠章宏

    ○大畠委員 もう一つ、細かな話じゃなくて大まかな話になりますが、私自身も東欧諸国に行った経験がございます。特にポーランドの経済復興のために大変情報を、私の聞いたところでは二軒に一軒がパラボラアンテナをつけて世界の情報を入手していた。したがって、市場経済に移行したときに確かに二〇〇〇%ぐらい物価が上昇したけれども、いずれ電波でとった西側諸国と同じような社会に移行できるのだ、そういう市民の間で安心感といいますか、ちょっと今は混乱するけれども我慢しよう、そういうものもあって、いろいろ関係の方々が努力をされて今日に至っているわけであります。  そういう意味ではこの情報化の社会、情報網の整備というのは、経済のバックアップのためのエネルギーの施設の支援とともに、情報通信網の整備というのが、私は大変重要な経済支援といいますか、日本としての支援策の一つになるのじゃないかと思うのですけれども、アジアの共通した情報通信網なんかを推進しよう、そういうことを日本が提唱しながら、アジア地域の各国の方々と話し合って、日本にたまりたまった黒字を、お金を投資するんだ、そういう大規模な姿勢を示すことも、この今回の法案の背景にある問題解決のためには大変重要じゃないかと思うのですが、そこら辺どういうふうに考えておられるのか、お伺いしたいと思うのです。
  26. 坂本吉弘

    ○坂本(吉)政府委員 ただいま大畠委員指摘のように、世界がいわば高度情報化社会に向けてアメリカを初めとして大変情報の交流というのが進む時代を我々は迎えつつあるわけでございまして、その点に関しましては、我が国ももちろんのこと、アジア諸国につきましても大変今発展しております経済のインフラ整備の一環といたしまして、御指摘のように情報通信網の整備されることが大変重要なことであるという認識を私どもも持っておるところでございます。  具体的には、御承知のとおりAPEC、アジア・太平洋経済協力機構というのがございますけれども、この場において、この協力機構に加盟しております諸国間の共通の情報通信の問題に対処しようということで、これは郵政省が主として取り組まれる問題でございますけれども、通産省といたしましてもこれに参加をさせてもらいまして、いわゆるテレコミ・ワーキング・グループというところで情報通信に関するデータの収集体制あるいは人材の養成、さらに具体的には電子データ交換、EDIと言われるものでございますけれども、これのパイロットプロジェクトの開発、さらには広く情報通信インフラの整備といったものを今共通の作業として取り組み始めているところでございまして、将来に向けてアジアの情報通信網の整備さらにそれが我が国や米国あるいはヨーロッパその他の先進諸国とグローバルにつながっていく、そういう体制が整備されることが大変重要なことだ、そういう認識を持っているところでございます。
  27. 大畠章宏

    ○大畠委員 さきの商工委員会の席上いアメリカの情報スーパーハイウエー構想の日本版みたいなものを日本でも推進する必要があるのじゃないかという御提言をし、また通産省としてもそういう情報通信網の整備、国内のものはやっていきたいという御答弁がございました。NTTが四十五兆円の何か計画を発表しておられましたけれども、私は、情報というのは、情報を共有化することによって、まさに今お話がありましたとおり、国と国との間の壁がとれ、というのですか、心の壁がとれ、お互いの信頼感も増す。なぜ戦争が起こるか、いろいろ経済的なものもあるでしょうけれども、情報が偏ってお互いの国が誤解を持っているということも大変大きな因子になっていると思うのですね。したがって、日本国内の情報通信網、政治、経済、社会、企業や地方自治体等々の間でお互いの持っている情報をできるだけオープンにして、広く一億二千万の国民がみんな共有できる、そういう体制をとることは非常に日本国内の安定化につながると思うのです。  同じように今お話もありましたとおり、アジア諸国でも、けさ非常に痛ましい報道もあったわけでありますが、このアジア諸国のいろいろな混乱の中で日本がどういう形で貢献していけるか、いわゆる自衛隊を派遣することだけが、あるいはいろいろな民間の方も努力されておりますが、それが国際貢献であるということではなくて、まさに情報通信網をきちっと整備をする、まさに日本国内の技術あるいは蓄積したものがございますので、そういうものを生かしながら大いにアジア地域の共通した情報網を整備するということが、ひいてはアジア地域の各国経済発展やあるいは安定化あるいは国と国との間のいざこざも、そう簡単なものじゃないと思いますが、大変大きな私は貢献をするものと考えておるのですが、ぜひ通産省としてもそういうところを考えながら、日本の通産省というよりもアジア諸国が安定するためにどう貢献したらいいか、そういう視点も取り入れながらのこれからの活動というものをお願い申し上げたいと思います。  もう一つ、具体的な問題についてお伺いしますが、海外にいろいろな施設あるいは対外投資をしようというときに、企業として非常に困ることの一つは、大規模なそういうものを海外投資する場合に、契約は結ぶのですが、途中で国内の事情が変わったからこれはなかったことにしてほしいというような話が来た場合、大型プラントの場合には設計だけでも大変なコストがかさみます。そういうリスクがあるのでなかなか決断しにくい、ある国とは決断しにくいとかそういう国情等々もあって、企業の方で二の足を踏むようなことも聞いておるのです。ちょっと貿易保険法に入りますけれども貿易保険法現状では、この大型ブラント等の、そういう設計段階で契約が中止されたというときの設計費等のリスク、これも大変巨大なプラントの場合には巨大な額になっているのですが、今回の貿易保険法では、ソフト費用、設計費用とかそういうものに対してはどういうような保険が適用されるのか、お伺いしたいと思います。
  28. 白川進

    白川政府委員 ただいま委員お尋ねの点は、私ども保険の用語では船積み前リスクと申しておりまして、大型のプラント輸出契約を行い、その船積みを行うべくいろいろな輸出の準備作業を国内で着手する、その中には今委員指摘のような設計その他、場合によってはハードそのものも製造に着手するといったようなことで、非常に大きな費用が発生する、発生した上でそのキャンセルに遭った場合に多額の損が出るわけでございますが、今回の法律に直接関連するものではございませんけれども、かねてより貿易保険制度の中に普通保険制度というものがございます。これはまさに船積みに至る前に、相手国、特に相手方が外国政府ないしは政府関係機関であって、一方的にキャンセルに遭った、あるいは輸出者側がどうしても受け入れがたいような強引な値引き要求とか、そういったこちら側からどうしてもキャンセルせざるを得ないような事態になった場合に、既に投下された費用を補てんするために設けられたものがこの普通輸出保険という制度でございます。  ただいま委員の御指摘になったような危険をカバーするには、この普通輸出保険というのが大いに活用できるのじゃないかと思います。
  29. 大畠章宏

    ○大畠委員 今の御答弁の趣旨はわかりますが、例えば情報通信網の整備等については、物というよりもソフトそのものだと思うのですね。そういう意味では、いろいろなものの輸出やあるいは海外投資がありますが、それが物という形じゃなくて、情報だとかソフトだとかそういうふうなものの割合がこれから非常に高まってくると思うのですね。  そういう意味では、これまでの船積み前という、物を船に積むという観点があったと思うのですが、もう少しブレークダウンしていただきまして、品物という形にならないけれども、その品物の段階に入ってきたときには中身がもうあと後半三分の一ぐらいになったという状況で、三分の二はソフト作業が多いという、そういう海外に対する投資等もこれからふえてくると思うのですが、そこら辺について、再度もうちょっと細分化して検討していただきたいと思うのです。そこら辺の現在の、何といいますか、産業構造あるいはいろいろな投資の実態を再調査して、貿易保険法の実態等と比較しながら、即した形での内容にすべきと思うのですが、そこらの点、どうでしょうか。
  30. 白川進

    白川政府委員 確かにただいまの制度、私どもの言葉で船積み前リスクと申しておりますが、委員指摘のように一つ輸出契約の中に占めるいわゆるソフトの部分が非常に多くなっているという認識は私ども持っておりまして、現在の普通保険制度でも、そのようなソフトの部分について一方的なキャンセルで相手から対価が支払われないということはかなりの程度対応できると思いますけれども、なお、この海外取引の態様というのは時々刻々いろいろな発展を遂げていくわけでございますし、私ども貿易保険もできるだけ我が国の対外活動のニーズに即した形で発展させていくべきだと思いますので、今委員指摘のラインに沿いまして検討を深めてまいりたいと存じます。
  31. 大畠章宏

    ○大畠委員 それから、海外投資という観点からお伺いしたいと思うのですが、民間資金融資環境を整えるという意味で、いろいろ専門家の方々からも指摘されていますが、いわゆる銀行のBIS規制、八%条項というのが非常に大きな、これは世界的な取り決めですから仕方がないのかもしれませんけれども、足かせになっているという話も伺っておるのです。ここら辺、通産省として、この銀行のBIS規制等々の対策といいますか、それに対してどういう姿勢でこれからそういう民間資金融資環境をできるだけ整備しょうと努めておられるのか、基本的な考えについてお伺いしたいと思います。
  32. 白川進

    白川政府委員 確かに現在、金融機関はBIS規制によりまして、与信に対して資本金の一定割合以上の融資残高を持ちますと、そのBIS規制の基準が達成できないということで、そのままの状態では海外投資その他の融資が必要なだけ行われないという事態も大いに考えられます。私ども貿易保険海外投資保険というのがございまして、相手の個々の政府の保証などが、つまり返済の確実性がかなり見通せます場合に貿易保険が付保されますと、それはリスク性の低い貸し付けという扱いになりまして、BIS規制上もリスク資産の掛け率がございまして、一定額の融資をいたしましても、例えば十をやりましてもそれが五にカウントされるというようなことで、BIS規制をクリアする上で私ども貿易保険が一定の有効な手だてということになっておりまして、現在そういった観点からの活用も、今回の海外事業資金貸付保険、これで御活用いただけるのではないかというふうに考えております。     〔委員長退席、安田(範)委員長代理着席〕
  33. 大畠章宏

    ○大畠委員 この今回の貿易保険法の一部を改正する法律案も、言ってみれば、日本と諸外国との間の貿易の不均衡というものが大きな因子になっていると思います。したがいまして、先ほど先輩委員からも指摘がございましたけれども日本経済活動等に対する通産省としての基本的な認識といいますか、一体どういう姿勢でこれからの日本経済を引っ張っていこうか、そういうことをぜひ明確な形で、いわゆる共存共栄という段階にもう既に入った、そういうことで経済界を指導することも大変重要だと思います。  そういう中で、ドイツの方では貿易の不均衡を是正するために住宅産業を活発にして、そしてなるべく輸入をふやすという政策をとった、土地対策や住宅関連の整備を進めて国内の住宅需要が伸びるように、政府としても不均衡な貿易黒字が発生しないような対策をとったということを私自身伺っているのですが、国内の内需拡大を図るためのいろいろな施策がこれからも必要になってくると思います。  そこで、何点かお伺いしたいと思うのですが、先ほども情報スーパーハイウェーのお話も申し上げましたけれども、その他にももっとここら辺は手を打ってもいいじゃないかというものが何件かございます。例えば、前回スーパーハイウェーの構想の質問のときに、行政の情報通信システム等については整備していきたいというような話もございましたし、また、医療問題、医学が大変進歩してきまして、優秀な先生もおいででありますが、そういう先生のノウハウというものを、地域の病院等でその先生のアドバイスを受けながら総合判断していく、そういうためにも医療の情報通信網を整備する。あるいは緊急時の情報通信網を整備したり、さらには地球の環境問題というのがいろいろ叫ばれておるのですけれども、地球規模での環境の情報を一括管理する、通信衛星を使った形での、地球環境を集約してどういう対策をとっていくか、そういうものを判断する情報を集めるシステム等々もいろいろ考えられると思うのです。特に、今アジア諸国で経済発展を遂げようとする、そのためにエネルギーが必要だということで、中国等でも石炭火力発電所を大増設しようという計画もありますし、また一方では石炭が自然発火をして大変な量が燃えている、そういう実態も伺っております。  とにかくそういう内需拡大もあるいはまた世界に貢献するためのものということで、大規模な、日本国内の内需も拡大しながら、かつ、世界にも貢献できる、そういう幾つかの施策を通産省としてもっと大胆に鮮明に打ち出すことが必要ではないか。さらには、廃棄物のリサイクル問題もいろいろあります。資源がない国あるいはエネルギーがない国としてあらゆるものを輸入に依存しているわけでありますが、そういう資源やエネルギーのリサイクルのための各種情報を一元化して行政や民間企業あるいは国民に対して周知徹底を図る、そういうものを通産省としてもリーダーシップをとってやる。あるいは大学とかの研究施設の充実だとか、また、産業界のベースはやはり人材でありますが、大学の研究施設が非常に貧弱だという話も聞いている。さらには、通産省関係の大規模な最先端の技術がなかなか研究対象になっていない、そういう話も伺っています。そういうものを総ざらいしながら、通産省としても、内需拡大にも努め、かつ、これまで蓄積した技術を世界に貢献していく、そういうことを鮮明に千三百億ドルの貿易黒字対策として打ち出すべきだと思いますが、この件についてわかりましたら現状を、ちょっと多岐に富んでいますが、総合してお伺いをしたいと思います。
  34. 坂本吉弘

    ○坂本(吉)政府委員 ただいまの御質問は大変多岐にわたり、かつ、深い将来に対する展望をお尋ねでございます。私どもも、情報化社会というものをこれからつくり上げていく必要がある、我が国としては、いわば工業化社会として世界の最高水準のものを今日まで形成をしてきたわけでございますけれども、次に来るいわゆる情報化社会というものの内容もまたこれを立派なものにしたい、こういうふうに考えておるところでございまして、ただいま御指摘各般の情報化というのは我々がこれから積極的に、かつ真剣に取り組まねばならない分野であると考えておるところでございます。  こういった基本的な各分野の情報化をどう進めていくかということにつきまして、通産省におきましても、産業構造審議会の情報産業部会というのがございまして、ただいまちょうど基本政策小委員会というのを開催してもらっているところでございます。これは、それぞれの分野の情報化を個別に進めるのみならず、もっと基本的に、言ってみれば、情報化社会というものがいかなる価値観に基づいて形成されるべきものであるか、例えば、ハードの価値よりはソフトウェアというものの価値を高くとらえる、こういったことも情報化社会の一つの特有の現象でございますけれども、そういったことも含めまして、情報化社会というものを将来に向けてどう形づくっていくかということを今最大のテーマとして考えているところでございます。特に、今先生指摘の各分野はアメリカイギリスに比べて正直言って大変立ちおくれているところでございまして、我が国としても、これから、いわば新社会資本と申しますか、新しい公共投資概念としてこの情報化を進める。そのためには、スーパーコンピューターあるいはパーソナルコンピューター、さらにそれらをつなぐネットワーク、将来は高速大容量の光ファイバーなどを活用いたしましたそういうネットワークを形成したいということで、関係各省とともにこれを進めてまいりたいということで、いろいろ各省にも問題を提起し、また、我々としても協力しながら、リーダーシップと言うと大変おこがましいのですけれども、少なくともそういう問題提起を積極的にやってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  35. 大畠章宏

    ○大畠委員 ありがとうございました。  最後に森通産大臣にお伺いしますが、これまでいろいろな質疑をしてまいりました。冒頭には、日本の技術を生かしたロシアの核廃棄物等の処理についてもっと大胆な支援策を、やはり困っているときにきちっと支援を、策を出していくというのは一番有効な国際貢献につながると思いますので、そういう提言も申し上げました。さらには、今の御答弁にもありましたけれども、千三百億ドルという貿易黒字がたまってしまった。アメリカの友人の話では、ミスター大畠、千三百億ドルという金が日本に集まったということは、通常だったらもう第三次世界大戦に入ってもおかしくない膨大なものですよ、不均衡の現状をもっと日本は強く認識しなければならないのじゃないか、フリートレードだから戦争には至らないけれども、それぐらい大変な実態があるんだよということも言われました。したがって、この貿易黒字の解消のために、日本国内の内需拡大、あるいは、そのたまってしまったお金を世界各国のために、国際貢献のために一体どういうふうに使うのか。あるいは、先ほどからいろいろ申し上げましたけれども、そういう大規模な、日本の国のためだけじゃなくて、逆に言えばアジア諸国の平和、安定、経済発展につながるものを日本政府としてどんと打ち出す、そういう方向性を示すことによって日本の顔が見える、日本の政治、政府の顔が見える、日本がどういう行動をとろうとしているのか見える、そういうことに私はつながってくるのではないかと思います。そういう意味で、私は、森通産大臣に大きなリーダーシップをとっていただきたい、さらに、それをしなければならない時代にまさに入ったと思います。  そういう意味で幾つかの御質問をさせていただきましたけれども、これらのことについての森通産大臣としての御見解をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  36. 森喜朗

    ○森国務大臣 法案審議を通じまして委員からいろいろ建設的な御意見をちょうだいをいたしました。その中にも、既に私どもとしても、事務当局から申し上げましたように、まさに委員のお考えどおりということで進めてまいりましたものもございますし、これからまた積極的にそのお考えなども十二分に駆使をして対応していかなければならぬということを、まず冒頭に申し上げておきたいと思います。  御指摘のとおり、大変な黒字我が国としては有しておるわけでございまして、この大幅な経常黒字を、まず基本的には、今新しい国内のいろいろな施策についてもお述べになりましたけれども、内需拡大を進める、そしてそれに伴って輸入促進に努めていくということが、これはまず重要なことであろうというふうに思っております。そしてさらに、発展途上国に対しまして円滑な資金流れの確保を通じまして国際貢献を果たしていくということが、極めて重要であると考えております。  このため、通産省といたしましては、総理からも指示を受けまして、途上国への資金流れを確保するための方策につきまして検討いたしておるところでございまして、また、関係省庁におきましても今検討が進められているところでございます。この一環として、海外におきます事業に対する我が国民間企業によります資金貸し付け及び出資等、いわゆる民間資金の還流の促進を図るとの観点から、本日この貿易保険法の一部を改正する法律案を御審議をいただいておるところでございまして、今後速やかに可決されることを期待をいたしておるわけでございます。  また、政府開発援助及び民間資金を含めた資金流れにつきましては、発展途上国の自立的な発展に資するという観点から、どのような分野に置くべきか。例えば、私どもも常々申し上げておりますが、部品などすそ野産業を育成するとか、あるいは環境分野等、また我が国の国際社会に対する積極的な貢献としてどのようなものが適当か、また可能なのかということについて、今鋭意検討をいたしておるところでございまして、また、委員からいろいろとお話ございましたことなども十二分に参考にさせていただきたい、このように思う次第でございます。  ロシア支援につきましても、来週外相・蔵相会議も開かれるわけでございますが、そうした会合はもちろん重要なことでございますけれども、通産省といたしましては、これまでは原子力安全あるいは軍民転換、中小企業、あるいは環境問題につきまして、それぞれ既に多くの人々を招いて勉強させたり、またこちらからミッションを派遣をいたしましたりして、具体的に既にロシアとの二国間におきます支援活動も積極的に展開をしておるということも、委員も十分御承知のとおりだろう、こう思っております。  今後とも、今委員からいろいろ御指摘ございましたことにつきまして、我が国もこれからまさに、先ほどお話ございました、成熟した工業化社会を完成したわけでございまして、同時にこれから新しい世界秩序をつくり上げていくということは、それぞれそうしたことにおくれている国に対しても、同じようなやはり文化や科学や、あるいは環境や教育や、いろいろな意味で同じような条件が享受されていくような、そうした環境をつくり上げていくことに日本が積極的にお手伝いをすることが、国際貢献の最もふさわしい日本役割であろう、このように考え、通産省としてもそのイニシアチブをとっていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  37. 大畠章宏

    ○大畠委員 ありがとうございました。以上で終わります。
  38. 安田範

    安田(範)委員長 代理 遠藤乙彦君。
  39. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、まず最初に大臣にお伺いをしたいと思います。  対ロ支援問題でございますが、この十四、十五日、対ロ支援会議が行われ、また、七月のサミットでも大きな課題になることになるわけでございますけれども、この対ロ支援問題、ある意味ではなかなか難しい問題ではないかと思っております。  冷戦後の世界において平和秩序をつくる上で、日本は大きな責任を有しておりますし、その関連で、このエリツィン政権の進める民主化、市場経済化を支援することは大変大事なわけでありますけれども、また、国際的にも日本に対して、もっと積極的な姿勢をとれという強い要求があることは、大臣も御高承のとおりでございます。他方、我が国の問題として、二国間のいわゆる北方領土問題があるわけでございますし、また、ロシア側においても、外国の援助を十分に活用していけるだけの体制あるいはノウハウが十分でないといった問題もございまして、なかなかこれは難しい課題ではないかと思っております。  そこで、大臣に、この対ロ支援の基本的な考え方、特に我が国としての二国間の援助のあり方及びセクター別の重点の置き方、こういった問題を含めまして、大臣の基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
  40. 森喜朗

    ○森国務大臣 ロシアにおきます民主化、市場経済化に向けた改革の円滑な推進は、グローバルな課題でございまして、かかる課題に、関係の国々と十二分に協力をして進めていくということが重要であろうとまず確認をいたしております。  通産省といたしましては、従来から、貿易経済活動の円滑化のための貿易保険の活用、エネルギー分野を初めといたしまして原子力安全、中小企業育成、生産性向上等、幅広いセクターでの支援を実施をしてきたところでございます。  先ほど大畠委員のときにも少し触れましたけれども、これまで貿易保険におきましては、たびたび事務方からも説明いたしておりますように、十八億ドルの引受枠を設定をいたしております。これまでの実績といたしましても、ロシアの天然ガス産業向けの資材供給案件につきましては、日ロの当事者間で七億ドルの与信契約が合意されておりますし、このうち三億ドルにつきましては保険引き受けを行ったほか、さらにロシアの石油産業向けの七億ドルの資機材供給案件についても、両国当事者間で今協議が続けられておるところでございます。また、ロシアヘの投資案件につきましても、これまで十九件、約二十五億円になりますが、日ロ合弁事業に対しましての投資保険の引き受けを実施をいたしております。  原子力安全につきましては、ロシアの原子力発電所の管理者、運転員等を対象として、原子力発電の安全管理に関する研修を昨年度から実施をいたしておりまして、昨年度ロシアから二十三名受け入れております。東欧の国も、途上国の国も含めまして、今十年間で約一千人という研修生の受け入れを計画をいたしておるところでございます。また、原子炉を操作いたします運転員の訓練のためのロシア国内におきます原子力発電運転技術センターを、我が国の支援によりましてこれも整備をすることにいたしております。  中小企業分野につきましては、中小企業関係の専門家及びミッションのロシアヘの派遣、あるいはロシアからの研究生の受け入れ等も実施をいたしておりまして、今後、特に昨年十一月にウラジオストクに設立をいたしました極東中小企業国際センターに対しまして専門家の派遣等の支援も強化していきたいと考えております。  以上も含めまして、通産省といたしまして、ロシアに対する技術的な支援といたしまして、昨年度は約四十人の専門家を派遣をいたしておりますし、ロシア側からも二百人の研修生を受け入れているということでございまして、現在もまた、通産省から派遣いたしました者が、ロシアでいろいろな角度で縦横無尽に活躍をいたしておるということを申し上げておきたいと思います。  今後のロシアへの支援につきましては、これも関係省庁とも十分連絡をとりながら、ロシアの改革の進展状況、他のG7諸国等の動向も十分勘案しながら検討していかなければならぬと思っております。  不幸な海洋投棄というような事件も起きますと、即刻海を伝わって我が国との隣接という関係、それだけに深い関係もございますし、また、シベリア、極東地域、また日本海沿岸のそれぞれの地域などでも、人間的なあるいはまたいろいろな深い関係がこれまで十分民間関係でできつつあるわけでございますから、そういうものに対しましても、我が国としましては、やはり十二分に慎重に行政の立場から環境を整えていくということが極めて大事だと思います。日本との間には政治的に生じた問題がございますけれども、やはりロシアが我々と共通の認識を持って、これからさらに国の再建をしようということについては、隣国としての日本は十二分にそのことについて協力をしていくことが私は基本的には大事な姿勢だ、このように考えておるところでございます。
  41. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 もう一点、資金還流の問題を聞きたいのですが、千三百億ドルを超える貿易黒字ということで、これは世界から見ると非常にゆゆしき事態であるという認識があるかと思います。大臣は先般、この大規模な還流計画ということをおっしゃったわけでございますけれども、その後の検討状況、この全体像につきまして御説明いただければと思います。
  42. 森喜朗

    ○森国務大臣 通産省といたしましては、世界経済におきまして枢要な地位を占めるに至りました我が国が、世界経済の持続的な発展を図るために、発展途上国への資金流れの確保を通じて国際貢献を果たしていくことが重要であるという認識は、たびたび申し上げておるところでございます。このため、現在、総理からも指示がございまして、その具体的な方策について検討いたしておるところでございまして、関係省庁におきましても、今検討が進められているところでございます。具体的には、政府開発援助及び民間資金を含めたその他の資金流れについて、発展途上国の自律的な発展に資するという観点から、どのような分野に重点を置くべきか、また、我が国の国際社会に対する積極的な貢献としてどのようなものが適当なのか、かつ可能なのか、今、鋭意検討をいたしておるところでございます。  また、貿易保険につきましては、本日御審議をいただいておりますこの法案をお認めいただければ、相当程度の民間資金の還流が促進されると考えておりまして、新たな計画に含めることが適当かと考えておるところでございます。  今委員からもお話しのとおり、よくどの程度のものがいいのかというお尋ねもございますし、規模についても十二分に検討いたしておるところでございますが、ちょうどアルシュ・サミットのときの資金還流計画あるいはODAの五カ年計画、それぞれちょうど五カ年の計画を遂行したときでございますだけに、世界がやはり日本のこうしたとるべき立場を注目いたしておるだろう、このように我々も十分考えておりまして、規模につきましては、我が国経済規模にふさわしいものであるべきだというふうに私は考えておるところでございます。  今、委員から私が発表したというようなことの御指摘ございましたが、たまたまブラッセルで日本・EC閣僚会議に出席をいたしておりましたときに私が申し上げたわけでございますが、やはり長い世界の歴史を我々振り返ってみて、かつて大英帝国が大きな黒字を持って、百年間世界の植民地政策というものを進めてきた。あるいはその後はアメリカが、途中の空間がございますけれどもアメリカが約七十年近い黒字を持って、そして今日の経済力あるいは軍事的なプレゼンスといいましょうか、世界の国のリーダーとしての役割アメリカが果たしてきた。今回私どもは今おおむね十二年間ぐらい黒字を続けているわけでございますけれども、今後も堅実に行けばこういう状況が続いていくということになれば、我が国のとるべき立場は、かつての大英帝国やまた軍事力を持つアメリカのような力を持つということであってはならぬわけでありまして、また、日本がその黒字をどのように国際的に駆使していくかということが、これからの二十一世紀につなげる日本の最も大事なとるべき国際展開であろうというふうに私は考えておりまして、そういうふうなこともございまして、資金還流計画について、十二分に我が国の今置かれておる立場にふさわしいものをっくり上げるべきだということを私は発言をいたしたわけでございます。     〔安田(範)委員長代理退席、委員長着席〕
  43. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 対日支援問題、そしてこの資金還流計画、いずれも大変重大な問題でございまして、政策的見識に富み、かつ、実行力に富んだ森大臣のリーダーシップを強く期待するところでございます。  続いて、貿易保険法案につきましてお尋ねをいたします。  まず、海外事業資金貸付保険の問題でございますけれども、この信用リスクカバーの基本方針をどうするのかという点でございます。法案を拝見しますと、この貿易保険が非常危険のみならず信用危険を広くカバーするように読めるわけでございますけれども、これをそのまま運用することにはいろいろ問題があるのではないかという気がいたします。  まず、信用危険を広くカバーするということになりますと、貸し付けの相手の経営状況保険当局が詳細に把握することが必要になるわけですけれども、これは現在の体制からいって非常に難しいのではないかという印象をまず持っております。特に、海外での調査能力、それからまた手形保険に比べまして案件が非常に規模も大きく、長期化するという問題、あるいは担当職員の方々の規模とか経験等もありまして、果たして十分この法案の趣旨に沿った運用ができるのかどうか、体制が十分なのかどうかといった点が疑問があるわけでございまして、こういった点につきましてお答えをいただきたいと思います。
  44. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘がございましたように、今回新設する海外事業貸付保険に関しまして、その信用危険についての条文でございますが、四十七条の第二項第四号、第五号というところに信用危険についての条文の表現がございます。これは御指摘のとおり一般的な書き方になっておりますけれども、この書き方というのは、現在既に存在しております輸出代金保険の場合と同様な法律上の表現でございまして、これは貸付金の償還リスクをカバーする保険の性格からこういう書き方になる、ここは先生御理解いただけるものと思います。  ただ、実際の運用に当たりましては、信用危険というのは、現在の輸出代金保険におきましてもそうでございますが、信用力のある政府あるいは中央銀行の保証状が発出されている、特にLGというものでございますけれども、これが発出されている等、返済スキームが非常に確実であるというような、その確実性に着目いたしまして、慎重に審査し引き受けを行っておる、こういうのが現状でございまして、この基本的な考え方で新しい海外事業貸付保険についても同様に慎重に対処していきたい、かように考えているわけでございます。  あわせて、今先生から御指摘ございましたのは、非常危険、信用危険含めて、新保険の創設に伴って審査体制を充実させる必要があるのではないかという御指摘でございます。そのとおりでございまして、現在我々は二百十人の職員でトータルでいいますと約二十一兆円の保険を付保する事務処理をいたしておるわけでございまして、一人当たりの保険金額ということから見ましても、他の類似の各国の信用保険機関に対しまして圧倒的に日本の方が効率よく運用しておる、こういうことでございますが、さらに、当然のことではございますが、職員の資質の向上を図っていく、あるいは人数も必要に応じてふやしていく、これは現下のような環境下でございますので大幅にふやせませんが、ポイント、ポイントを過去においてもふやしてきておるわけでございます。  そういったベーシックなものに加えまして、やはり保険事務、審査を的確に行うためのシステムを拡充しなければいかぬということで、昭和六十三年から貿易保険情報システム開発推進委員会というのをつくりまして、足かけ五年間、いろいろな識者の知恵をかりながら、コンピューターを導入しまして非常に近代的な、それでもって各種の保険の管理、マネージングをうまくするとかあるいは各国のいろいろなデータをこれに入れ込むとかいったような画期的なシステムを開発したわけでございまして、こういったようなものもさらに改善しながら、御指摘のような体制の整備に日々これ向上を目指していきたい、かように考えております。
  45. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 次に、国別リスク管理の問題でございますけれども、既に膨大な保険事故、リスケで一兆三千億に達する保険事故を経験をしておりまして、今後さらにこの新保険で特定の国のリスクをまた引き受けていくというわけでございますけれども、やはりそういった以上は、どういう明確な考え方で国別のリスク引き受けを管理していくかという問題があるかと思いますので、この点につきまして御説明を得たいと思います。  また、この貸付金はリスケの対象にならないという見通しがあるかと思いますけれども、将来的には保証は何もないわけでございまして、例えば、ブレイディ・プランなどの場合には貸付金の削減ということになったわけでございますし、こういったことが生じた場合には保険の出動ということにもなるでしょうし、保険でカバーされているということになればリスケの対象に加えるべしとの議論も出てくる可能性がありまして、最悪の事態を迎える可能性もあるわけでございまして、こういった点も含めて、国別リスク管理をどう進めていくのか、お答えをいただきたいと思います。
  46. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  先生承知のように、貿易保険といいますのは、収支相償の原則に基づきまして従来運営いたしてきておりまして、当然のことでございますが、危険の高い国に対してはリスクに見合った保険料率の設定を行う。これは現在その程度に応じて八段階ぐらいに分けて運営いたしておりますけれども、そういった設定をして引き受けの制限等を行うといったようなこともいたしておりますし、今回の海外事業貸付保険につきましても、同じような、国ごとのリスクの度合いに応じてこういう考え方を導入しようと考えておるわけでございます。  それからまた、実際の引き受けに当たりましては、個別案件ごとに借入国のカントリーリスク、今申し上げましたリスクあるいは返済保証措置の内容等を十分吟味いたしまして、例えば先ほども申し上げましたように、LGが出ておるかどうかとか、あるいは貸し付けの相手方企業の製品の販売、それに対する代金回収というのがどういうふうにこのプロジェクトに組み込まれているかとか、そういった返済保証の確実性の問題とか、そういったようなものを慎重に審査いたしまして、それによって保険料の高低を考える。あるいは、てん補率で国がどこまでリスクをかぶるべきかといったようなものをあらかじめ我々幾つか基準をつくっております。これは我々内部での運用基準でございますが、それに一つ一つを照らし合わせながら慎重な引き受けをやっていきたいというのが現在の新種保険を創設いたしますときに我々考えております考え方でございます。  当然のことながら、そういった我々の持っております基準というのは、日々これ世界情勢に応じて見直しを進めていかなければいかぬわけでございまして、貿易保険当局、我々自身の調査やジェトロ等の専門機関による調査、あるいは在外公館から最近非常に貴重な情報をたくさんいただいておりますし、あるいは日本と同じような、これはベルン・ユニオンと呼んでおりますけれども各国輸出保険担当機関がございます、そことの緊密な情報交換等も行っております。そういったものを総合的に判断いたしまして、我々慎重に対応していきたい、かように考えておるわけでございます。  それからもう一つ、新保険リスケの対象にならないかという御懸念でございます。大変ポイントを得た御指摘だと思います。  実は、リスケというのは、パリ・クラブのリスケというのがその御指摘の点でございますが、このパリ・クラブのリスケの対象になるのは輸出信用に関するものということになっておりまして、一九八五年のパリ・クラブの会合において投融資債権というのはリスケ対象にはしない、こういうことになっておりまして、現に、昭和三十一年に創設しました海外投資保険も、創設以来もう三十数年たちますけれども、対象債権がリスケ対象になったということはございませんし、先生御案内の輸出銀行のアンタイドローンの保証債権等もそういうリスケ対象にはなっておりません。  そういうことで、今般創設いたします海外事業貸付保険も今まで同様リスケ対象にはならないと思っておりますし、パリ・クラブの関係者にもその旨確認いたしておるところでございます。
  47. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今度はこの保険資金還流促進への効果ということなんですけれども、やはり今回の保険も、保険システムである以上当然今御説明があったような原則があり、また慎重な運用が求められるわけでございまして、余り資金還流への貢献といったような名分で政治的な観点から危険の高い国への貸し付けを安易に引き受けるべきではないということではないかと思います。他方、こういった支援を要する国としては、商業ベースの金利資金では余り役立たないわけであって、本来円借款のようなグラントエレメントの高いものが必要であるということではないかと思います。そういった意味で、この新しい保険資金還流という面で余りにもPRし過ぎることは、過大な期待を招くし、またミスリードする点もあるかと思うわけでございまして、こういった点については慎重を期すべきであると考えるわけでございますけれども、この点、いかがでございましょうか。
  48. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 我が国から発展途上国への資金の拡大に当たりましては、これらの国における膨大な資金需要あるいは対象事業の性格、相手国の経済発展段階の相違等々総合的な考慮をいたしまして、今先生指摘ありましたように、円借款とODAとか公的資金あるいは民間資金といったようなものが適切にそれぞれ役割分担を果たしていくというのが実態であろうと思います。そういう意味で、先ほど御指摘のありましたように、例えば病院とか学校とか下水道といったような社会インフラというのは、これはODAの分野が比較的なじみやすい分野であろうと思いますし、さらにより事業的なものになって、電力とか通信網とかの産業基盤インフラということになりますと、これは相手国の所得水準、つまり最貧国か中所得かといったようなことに応じまして、ODAでいく場合もありましょうし、あるいは我々の民間部門でいく場合もありましょうし、そういったようなものを適宜組み合わせていくことになりましょう。あるいは、さらにそれが生産事業になりますと、これはもう民間部門のお金が中心になっていくことになりましょう。そういうようなことで、相手国の経済発展度合い、それからそれぞれのプロジェクトの中身、そういったものをよく総合的に勘案して適切にこれを見定めていくというのが現在の発展途上国に対する我々の政府の基本的な考え方でございます。  それで、今回の貿易保険でございますが、これは当然のことながら、今回てん補率引き上げたとはいいながら、基本的には民間が行うことでございますし、かつ、例えば海外事業貸付保険でいえば、九五%までてん補しましても、五%というものは民間がみずからリスクをかぶるわけでございますから、当然のことながら銀行とか商社という実施者にとりましては慎重に審査した上でこれを申し出てくるわけでございますから、結果的には比較的、カントリーリスクの著しく悪いというところではなくて、例えば工業化が目指されようとしている中進国等を中心にこういうものがプロジェクトを見出されていく場合が多いのではなかろうかというふうに我々思っております。  先般、経団連がASEAN諸国をミッションが訪問いたしまして、各地を回って、報告を伺いますと、彼らは今工業化に根差した、新しい工業化のためのソフトローンを大変欲しがっておりまして、そういう意味で今回の海外事業貸付保険改正というのは彼らは非常に期待のまなざしで眺めておる、こういったような話も聞いておりますので、そういったこともよく勘案しながら、かつ先生の御指摘も頭に置きながら対応していきたいと思います。
  49. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、個別案件の処理の問題なんですけれどもてん補率や料率を個別案件ごとにいじるということになっておりますけれども、そうなると、やはり非常に恣意性に流れる危険もあり得るわけでございまして、公平性という観点からまた問題を生ずるかという懸念もあるわけでございまして、もしそういう個別案件ごとにいじるというのであれば、明確なルールが必要なのではないかと思うわけでございますけれども、そういった明確なルールがあるのかどうか。もしなければやはりこの恣意性の危険性というのは非常にあるのではないかということなんですけれども、この点につきましてお答えを得たいと思います。
  50. 白川進

    白川政府委員 個別案件ごとのてん補率それから保険料率にルールがあるかというお尋ねでございますが、原則として、相手国のカントリーリスクの度合等々を勘案した国ごとに定めている基準、これに照らしててん補率及び保険料率を決めているところでございます。  ただそれは、金額が一定金額以下とか、あるいは相手国の政府の保証がついているとか、そういった定型的な案件の場合についてでございまして、もしこれが非常に大きな金額になる、あるいは相手国の政府保証が得られないというようなことになりますと、あらかじめ国ごとに定めたルールにそのまま当てはめますと、保険運営上、あるいは保険を掛けたいという相手方においても、かえっていろいろな問題が出てこようかと思いますので、このような定型的な類型に当てはまらないようなものにつきましては、個別案件ごとに十分審査をいたし良して、被保険者との適切なリスクシェアを図るという観点からてん補率あるいは保険料率を決めているというのが実態でございます。
  51. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、特別会計収支の問題をお聞きしたいわけですが、この資金繰りを拝見しますと、大幅な借り入れ増加になっているわけでございまして、保険料収入と等しいぐらいの利払いで、回収金が順調に戻らないとますます悪化しかねないという懸念があるわけでございます。今後さらにリスケ国が出てきた場合、どの程度まで保険責任を果たし得るのかという点につきましてまずお聞きしたいと思います。
  52. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  貿易保険特別会計収支につきまして、先生に大変御心配をおかけしております。先ほど来も各先生から御指摘がございました。  一言で申し上げますと、八五年以降の累積債務問題に伴いますリスク、これが最大の要因でございまして、それが昭和六十年代に入りまして具体的に影響が出てきておるというのが一つ。それからもう一つは、平成二年、三年あたりに一番大きくきましたのが湾岸戦争に伴います思いがけない保険事故でございまして、この二つがダブルに効いて収支が急速に悪化した。特に六十三年度以降、一千億円を超えるような大きな赤が出始めたわけでございます。これにつきましては、今御指摘のように、財投資金から借り入れをして今しのいでおるわけでございます。  ただ、世界的に、我々も含めまして、輸出信用機関あるいは世銀等共通の認識は、累積債務問題は峠を越した、したがいまして、これからはこのリスケというのがそんなに大きくは起こらなくなるであろうというのが一つ。それからもう一つは、我々リスケに伴います回収についで非常に力を入れておりまして、かつまた、累積債務国のそれぞれの経済のリバイタライゼーションによりまして、その分野においても実績が上がってきております。  こういったようなことで、ちなみに平成年度を申し上げますと、保険料収入回収金というのは、特に回収金が一千億円以上出まして、かつまた、先ほど申し上げましたように保険事故が、平成年度には三千四百億円ぐらいの支払い保険金があったわけでございますが、こういう二つのダブルに効いておったのが峠を越しましたために一千五百億円ぐらいの支払い保険金になったということもございまして、フローでございますが、単年度収支で見ると五十億円を超える黒字になった、こういうことでございます。そういう意味で、私、明るい展望を持っておるわけでございます。ただ、これからロシアリスケ問題とか出てまいります。そういうことで、我々は決して楽観はいたしておりません。  また、そういうリスケ問題、将来のリスケをどうするかということでございますが、これは、パリ・クラブを通じます先進諸国の一つのソサエティーがございまして、大きな政治目的あるいは経済目的のためにみんなで話し合って、ルールをつくって対処していくわけでございますから、我々これだけのGNPの大国でございますから、これはこれでつき合っていかなければいけないと思っております。  そういう意味では、非常に苦しい懐ぐあいではございますが、財政当局ともよく話し合いながら、かつまた、債務削減が行われた場合には、これについてそれに見合う繰り入れを行うといったようなことも既にお互いに合意ができておりますし、さらに、一般的な財政基盤強化のための繰り入れを毎年度行ってきております。そういったことで対処していきたい、かように考えておるわけでございます。
  53. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 この収支状況の悪化につきましては、今御説明があったように、グローバルな要因が非常に大きな原因であったと理解するわけですが、ただ、世界経済の動向とか湾岸戦争といったグローバルな要因以外にも、制度運用の面でやはり改善すべき点があるのではないかという気もいたすわけでございます。保険種別に見ても、最近軒並み赤字になってしまっているということを拝見しますと、やはり制度運用面でも何か問題があるのではないかという気がいたしますので、この点につきまして、どういうお考えがお聞かせ願いたいと思います。
  54. 白川進

    白川政府委員 これまで御説明いたしておりますように、今御指摘のとおり、保険会計の収支状況は悪化しておりますが、基本的にはリスケジュール等に伴いますところの国際的な環境変化が保険会計への負担となってきているというところでございますけれども、ただ、そのせいだけにして、みずからの努力が不要であるかといいますと、それはそういうことではございません。私どもそれを強く認識いたしておりまして、幾つかの努力の措置を講じてきているところでございます。  その一つは、従来は、保険事故が起こって保険金を支払った場合に、被保険者回収義務を課しまして、被保険者回収をいたしましてから保険会計に保険相当部分を償還させるということでやっておりましたけれども、なかなか回収がはかばかしくないということで、平成元年から制度を変えまして、国つまり通産省が債権を代位いたしまして、国みずから回収に努める。そのために財務室という特別の機構も設けたということでございまして、先ほど御説明いたしましたように、平成四年にはその回収の実が上がってきているところでございます。  第二に、平成年度から保険料収入の増を図るべく保険料引き上げを行っております。いろいろな保険種がございますが、全保険種平均いたしまして約三割の引き上げをやりまして、これも保険会計への増収ということで実を結びつつあるという状況でございます。
  55. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 グローバルな要因は確かにあると思いますけれども、ただ、制度運用の面で基本的な点として考慮すべきは、輸出振興の時代ではもはやありませんので、無理な引き受けはしないということが非常に大事なポイントではないかと思いますが、この点は指摘しておくにとどめたいと思っております。  続いて、一般会計繰り入れの点でございますけれども、このところ毎年かなりの額の繰り入れがあるわけでございまして、どういう考え方でこの額を決定しておるのか、この点につきましてお伺いしたいと思います。
  56. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、貿易保険特別会計への一般会計からの資本の繰り入れでございますが、昭和六十二年度では特別会計資本総額が七十億円という金額だったわけでございますが、これを六十三年度から毎年大幅に繰り入れをいたしまして、平成年度現在で千九百六十四億円という資本金になっております。平成年度にはこれに二百二十八億でございますか、さらに繰り入れるということになっておりまして、二千億を超える資本金になる、こういうことでございます。  この貿易保険、近年におきます資本金繰り入れの基本的な考え方は、第一点は、例えばポーランドあるいはエジプトといったような例があります。あるいは八八年のトロント・サミットの場合もそうでございました。最貧国に対する債務削減負担というようなことで、極めて高度な政治的判断によりまして、最貧国あるいはポーランド、エジプト等に対する債務削減を先進国が共通に行ったわけでございます。  こういった債務削減を行いましたときには、当然のことながら債務が返ってこないわけでございますから保険事故になりまして、当然保険金支払いが出てまいります。これにつきましては、一種の国際社会の貢献料といいますかそういうものでございますから、財政当局ともよく話し合いをいたしまして、それに見合う財政基盤の強化というのは、やり方はいろいろケースによってございますけれども、十分それを入れていこう、こういう話ができ上がっておりまして、これが一つでございます。  それからもう一つは、先ほど来繰り返しておりますが、債務累積問題でリスケが八〇年代後半から急増いたしまして、御承知のようにリスケというのは返済を繰り延べるわけでございますから、帳簿上は当然のことながら将来入ってくるということにはなっておりますけれども、その問保険事故になることは間違いないわけで、先ほど申し上げているように、財投からお金を借り入れて払っているわけですけれども、その間の累積債務、累積借り入れあるいはそれに伴う金利負担と、特別会計は大変苦しい状態になります。その辺も十分財政当局等も御理解いただきまして、当然のことでございますが、保険料引き上げ等の自助努力に加えて、一般的なそういう財政の基盤を強化するということで、資本金を繰り入れるということで約五年間で七十億円から二千億円を超える額にまで繰り入れてきた、こういうのが現状でございます。
  57. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 最近かなりの額の繰り入れが行われているわけですけれども一つの懸念は、こういったことが他の国から輸出補助金と見られているおそれはないかということでございます。  この輸出補助金あるいはこの輸出信用の問題は、OECDの場等でかなり詳しく議論をされてきて厳格なルールがあるというふうに理解をしておりますけれども、特に、日本輸出に対しては国際的には常に懸念といいますか、日本輸出ドライブをかけるのではないかという懸念が常にあるわけですし、特に最近のバブルの時代、八五年から九一年にかけまして合計四百兆を超える設備投資が行われて、膨大な生産能力が伸びた。ところが、国内で消化し切れないので、日本はまたぞろ輸出ドライブをかけるのではないかという懸念が国際的にはあるものと承知しておりまして、そういった背景においてこういった一般会計繰り入れがかなり目立った形で伸びできますと、やはり輸出補助金と見られるおそれが非常に強いという点が懸念されるわけでございます。  こういった点について、十分国際的に説得し得る説明があるのかどうか、その対応をしているのかどうか、その点につきまして、お聞きしたいと思います。
  58. 白川進

    白川政府委員 委員指摘のように、貿易保険を保護することによりまして民間輸出者のリスクが軽減されるということで、その限りでは輸出をしやすくするという効果がございますので、一般会計から保険特会への繰り入れが輸出補助金と見られる懸念がないかという御指摘だと存じます。  確かに、我が国だけがこの種の保険運営におきまして国費をつぎ込んでおるということでございますと、御指摘のとおりの心配が出てくるわけでございますけれども、いずれの国も我が国と同様の貿易保険制度運用いたしておりまして、例えばアメリカの例をとりますと、アメリカはこの保険特殊法人によって運営されておりますけれども輸出銀行でございます。毎年、翌年の収支損見通しを立てまして、その収支損が見込まれる額につきましては補助金を充当するということが行われておりますし、ヨーロッパのドイツあるいはフランスといったようなところの国営企業運営いたしております保険制度におきましては、これはそれぞれの国の一般会計の中に保険勘定が組み入れられておりまして、収支損が発生いたしますと毎年その収支損見合いの額が一般会計から繰り入れられるという状態でございます。  確かに、我が国一般会計からの繰り入れがふえておりますけれども、先ほど来るる御説明いたしておりますリスケに伴って保険収支が悪化しておりますのは、ひとり我が国のみならず欧米保険制度も同様でございまして、それらの国々の国費による支援額もふえている、こういう情勢を勘案いたしますと、一般会計からの繰り入れが輸出補助金であるという批判を招くおそれはないと存じますし、現にこれまでにそういった批判を受けたことはないという状況でございます。
  59. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 おそれはない、また今までもないということだそうでございますけれども、この点は、非常に今後懸念される点でもありますので、ぜひ注意をしておいていただければと思っております。  それから、今度は料率の点ですけれども保険種別に料率を拝見しますと、日本の国内の利用者がら高いという意見が一部聞かれるようでございますが、他の主要国と比較してこの料率の水準はどうなのかという点につきまして、お聞きしたいと思います。
  60. 白川進

    白川政府委員 諸外国保険種別の保険料率、この詳細につきましては、私どもも詳細には把握をいたしておりません。  これは、それぞれの保険料率が相手国のカントリーリスクの度合い等々によって変わっておりまして、我が国以外の国々も同様でございますけれども、これを公表いたしますとそれぞれの国の経済的信用度、政治的信用度などがわかってしまうということで「内部の基準として持っているというのが各国共通の現象でございます。ただ、一つの例示といたしまして、OECDの輸出信用保証会合事務局がそれぞれ、対象国、金額、期間、金利などで類似の例、複数例について、各国の比較をしたデータがございます。  それで見ますと、各国の料率水準が四分類されておりまして、非常に低いというグルーピングに該当いたしますのがアメリカでございます。それから、若干低いと言われているのが日本フランス、イタリア、スイスなどでございます。それから、若干高いという分類がございまして、これがイギリス、ノルウェー。それから、非常に高いと言われておりますのがアイルランドということになっております。  非常に抽象的で恐縮でございますが、この調査の結果を見ましても、我が国の料率水準は国際的に見ておおむね平均的な水準の範囲内、やや低目かなということではなかろうかと存じます。
  61. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、この回収体制の点ですが、未回収債権につきましては回収漏れがないように最大限の努力をすべきと思いますけれども、そういう体制はできているのかどうか、この点につきましてお伺いします。
  62. 白川進

    白川政府委員 回収漏れという事態をぜひとも回避したいというのが私どもの強い希望でございまして、特に、保険事故が発生し、かつ保険金を支払うという事態の大宗を占めておりますのは、委員承知のとおり、パリ・クラブのリスケジュールに基づく保険金支払いでございますが、こういったものにつきましては、政府間の国際約束でございますところの二国間協定を結びまして、この協定に基づいて回収をしていただくというのが基本的な仕組みでございます。  それから、その際の対象債権の額自体も政府間で協議をいたしまして確定をしております。  それから、パリ・クラブのリスケによらない保険事故につきまして保険金を支払った場合におきましても、これは政府間ベースで対象債権の額をきちんと確定いたしまして、かつ私ども保険の担当官を相手国に派遣するなどいたしまして、粘り強く返済の交渉を行っているところでございます。  したがいまして、回収漏れということは極力生じないように努力を傾注いたしておるという状態でございます。
  63. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、再保険の問題ですね。  この再保険の利用状況、MIGAという体制があると理解をしておりますけれども、そういったものを含めた再保険の利用状況、また制度の評価についてお伺いをしたいと思います。
  64. 白川進

    白川政府委員 ただいまお尋ねの再保険制度につきましては、昭和六十二年度にお認めいただきました法改正によりまして創設をいたしたものでございますが、現在までのところ、その再保険制度を利用したという実績はございません。  ただ現在、今御指摘のありましたMIGA、多数国間投資保証機関に対しまして再保険の申し込みを一件行っているところでございまして、近くMIGAの審査が終了するものと期待をいたしております。  この再保険制度の私どもの評価でございますが、再保険制度のもとでMIGAを含めた各保険機関リスクをシェアするということによって保険事業運営の安定性、健全性が確保できるということになるわけでございますので、この制度は大変有意義なものであるという理解でございます。  今後とも極力適当な案件を発掘をし、この再保険制度の活用に努めてまいりたいと存じております。
  65. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、各種保険運用についてお伺いをしたいのです。  この実績を拝見をしますと、非常に利用度の高いものもあれば、他方、大数原則が適用できないような利用しかないものもあるわけでございまして、本来こういったものは保険の趣旨からいってどうなのかということが言われるわけでございまして、そういった利用度の低いものについては廃止を含めて再検討、見直しをする必要があるのではないかと考えますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  66. 白川進

    白川政府委員 御指摘のとおり、保険運営の実態に即しつつ、かつ情勢の変化に応じたニーズに即して保険制度そのものの見直しを行うべきことは当然でございます。かつ、今御指摘いただいたように、引受件数が少ない保険種がございますことも事実でございますが、これらのそれぞれの保険種につきましては、それぞれの切り口でその必要性が完全に消え去ったということではなく、むしろいろいろな経済的な実態の動きによって件数が伸びない、あるいは減っているということであろうかと思います。私どもといたしましては、むしろ制度の有効活用を図るという観点からいろいろな努力をいたしまして、利用の増加を図ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  なお、今御指摘のございました大数の法則についてでございますけれども、これは委員指摘のとおり、保険につきましては、多数の集団について統計的に事故発生率を安定化させていくというのが基本的に保険制度に求められる、あるいは基本的な視点であろうかと思います。  ただ、貿易保険の場合につきましては、これは我が国のみならず諸外国におきましても、特に非常危険の対象となりますリスク集団、つまり相手国の数が二百カ国程度でございまして、どの保険種でありましてもいわゆる大数法則のなかなか働きにくい側面があるということも、これまた事実でございます。  したがいまして、そういった制約の中ではございますけれども保険事業がより健全に運営されますように、適切なリスク管理を行いながら、かついろいろな各種の保険種の活用方法などのPRの充実をしていく、あるいはユーザーたる利用者の声を十分反映した制度運営を行うといったようなことで利用の増加に努めてまいりたいと存じております。
  67. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、引受審査の事務処理の点ですけれども、この事務処理は円滑に行われておりますか、この点につきまして御説明いただきたいと思います。
  68. 白川進

    白川政府委員 事務処理の円滑化、迅速化ということは非常に重要な課題であると認識をいたしております。先ほども御説明ありましたが、昭和六十三年からシステム開発推進委員会というのを設置いたしまして、有識者の意見も徴しながら、約四十億円のコストをかけましてシステム開発を進めてまいりました。足かけ五年たちまして、このシステム、新貿易保険情報システムと申しますが、開発を終えまして、昨年十月から稼働をいたしております。これによりまして引き受けの審査事務が格段に機械化、合理化されたところでございまして、今後このシステムの一層の改善を通じまして審査事務の円滑化を図ってまいりたいと思います。  それから、人的な側面につきましても、種々の研修によりまして個々の職員の審査能力その他の資質の向上に努めてまいっておりますし、また、複雑かつ高度な案件の審査に的確に対応できるように、定員の拡充、これは全体的には非常に厳しい状況でございますけれども、着実に図ってきておりますし、今後ともその円滑な充実に努めてまいりたいと存じております。
  69. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、共同引き受けの点でございますが、アメリカの輸銀との間で共同引き受けのスキームがあると承知しておりますけれども、その引き受けの実績あるいはこの評価につきましてお伺いをしたいと思います。
  70. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  発展途上国等に対する資金還流を図るとともにアメリカ輸出促進を支援する、こういう目的で、一昨年の五月でございますが、発展途上国向けプロジェクトに対して米国の輸出銀行と通産省の貿易保険が協調して信用供与を行う、こういう合意ができ上がったわけでございます。  具体例で言うと、例えばASEAN諸国のある国が発電プラントを建設しようという場合に、アメリカから非常に強い部門であるタービンが輸出される、それをアメリカ輸出銀行が信用保証する、我が国からはボイラーその他周辺機器が行くのを我が国輸出保険で付保する。両保険当局がよく話し合って連携しながら一つのプロジェクトを完成させる、こういうことでございます。ボーダーレス経済に見合った、非常に時宜を得たものというふうに我々考えておるわけでございますが、昨年一月、ブッシュ大統領が訪日いたしましたときに、アメリカとの間でさらにこれを今後数年間で約五十億ドルの保険引き受けを行う用意がある旨を表明いたしまして、これによって総額百億ドル以上のプロジェクトを実現しよう、こういう意気込みで現在両国の当事者が意思疎通を図っておるところでございます。  これまでの実績でございますが、アジア、中南米等のプロジェクトを中心に二十件、総額約六十二億ドルのプロジェクトに対して内諾を行っているところでございまして、私ども、本協調プロジェクトというのは非常に円滑に動いておる、こういうふうに考えております。また、米国におきましても、これを利用しておる人はもちろんでございますが、米国議会等の場でも関係者が高く評価しているというふうに我々伺っております。  当省におきましても、かかる成果を踏まえまして、今後とも本協調プロジェクトを積極的に推進してまいる所存でございます。
  71. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 こういう共同プロジェクトは摩擦を解消する上でも非常に効果があると思いますし、ぜひ積極的に推進をしたらどうかと考えるわけでございます。  続いて、IJPCの件でございますね。非常に大きな保険事故で七百七十七億円を払ったというわけでございますけれども、このケースを経験してどういった形で制度運営の改善が図られたか、また今回の法案にも反映されているかどうか、こういった点につきましてお聞きしたいと思います。
  72. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 御指摘のIJPCプロジェクトでございますが、これは大変大きな投資プロジェクトでございまして、かつまた合計十二件の海外投資保険保険契約が締結されまして、保険金額上は合計額で千六百六十三億円という巨額な額でございました。平成三年三月十九日に被保険者から九百三十億円の保険金請求がなされまして、同年七月三十一日に七百七十七億円の保険金支払いを行ったということでございます。これは我々保険当局といたしましては、公正かつ厳正な査定を確保する観点から専門機関に委託して現地調査を実施すること等によりまして現地の被害状況の的確な把握を行う、さらには法律、会計、その他専門事項の分野の有識者による非常に慎重な審議を行ったというのが実態でございます。  海外投資保険を含みます貿易保険全般については、今後とも保険利用者等の要望があればいろいろな制度運営その他の見直し等を行う上で意見を聞いてまいらなければなりませんが、IJPC、これは初めての経験で、かつまた複雑で金額も大きく時間が長かったということは事実でございますけれども、これの一連の査定及び仕上がりに至ります一連の我々の過程というのは厳正的確に物がてきたのではないか、かように考えておるわけでございまして、特に時間を要しましたのは、これは投資を行いまして実質的に経営権を支配している現地合弁企業に対してするわけでございまして、これの事故が起こりましたときには、保険金額を算定する上で、その事故が起こります直前直後の資産評価額を当然的確に計算しなければいかぬ、ここで一番時間がかかったわけでございます。これは投資保険という、実質的に経営権を持っておる現地合弁企業の場合には当然やらなければいかぬことでございますので、この点については今後とも投資保険については同じような考え方を踏襲せざるを得ないし、それが妥当であろうと考えております。  ただ、今回新設いたしました海外事業資金貸付保険につきましては、これは経営支配権を持っておりませんので、一定の期間が来ましたその時期に返還がなければ直ちに保険事故になる、そういう形に今度新保険種はそういうことになるものですから、この点については利用者の方々にとりましては投資保険とは違った、非常にスムーズな保険金支払いを受けられる、こういうことになると思います。
  73. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、最後の質問といたしまして、対ロシア協力につきましては、この貿易保険の例につきましては、るる御説明が既にありましたけれどもロシアヘの協力を進めるに当たって、非常にリスクが高いことが非常に懸念されるわけでございまして、事故になった場合どうするかということ。  いずれにいたしましても、この返済保証措置をしっかりと固めておくことが対日協力を進めるに当たって大事な点だと思いますけれども、この点につきまして、具体的な御説明をお願いしたいと思います。
  74. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 ロシアの支援が重要であることと同時に、現在のロシア経済環境下を考えますと、信用供与をして、それが的確に返済されるのかという点について非常に危惧が残る、その二つの要請をどういうふうに調和していくかというのは、御指摘のように今大変我々頭を悩めるところでございますし、ひとえに我々だけではなくて、各国輸出信用機関が一致して悩んでおる問題であろうと思います。  そういう意味で、我々も本件、先般お話し申し上げましたように、七億ドルの天然ガスの輸出信用供与をいたしました。そのうちの三億ドルについては既に保険を付保したわけでございますが、これの具体的なやり方は、相手国、これは天然ガスを生産しておるわけでございます。販売しておりますから、当然外貨収入がございます。その外貨収入ロシアの非常に信用のある銀行にアカウントをつくりまして、かつそこに、そのアカウントというのは一定支払い期日が来る一定前には一定の必要な額まで必ずそこに払い込んでおく、さらにそれを海外から我々がモニターできる、かつそういうスキームをロシア政府が保証する、こういうふうな、我々ブロッキングアカウントと呼んでおるわけでございます。非常に複雑なスキームで返済の確実性を担保するような方途をとり、それを前提保険を付保したわけでございます。  その後、天然ガスが終わりました後、石油についても同じような議論を今しておりますけれども世界全体について、我々だけじゃなくて、アメリカを含めて、各国同じ問題意識を持っておりまして、そういう意味では、つい先般、三月の末でございますけれども、世銀におきまして、各輸出信用機関の人間が集まりまして、世銀ともよく話し合った結果、ロシアにつきましては、一定のエネルギー関係について信用供与をして、それに伴ってロシアのエネルギー産業が外貨を獲得いたしますけれども、それを海外の一定の銀行に、いわゆる専門語で言うとエスクロアカウントというのを一定の条件のもとに開設しまして、そこにお金をためて、それを信用供与した国が、機関が、それぞれ返済をそこから受ける、そういうことを一定の条件のもとに認めよう、こういう合意が実は成立したわけでございます。  これはある意味で今までの我々のブロッキングアカウントにまさるとも劣らない非常に安全な一つの返済スキームでございまして、ロシアもそれについて応じてくる形になると思います。そうすればさらに必要なエネルギー産業リハビリのための金が流れるという、私は非常に時宜を得た対策だと思います。こういったものをフルに活用いたしまして、これからもロシアについてエネルギー産業を中心に支援をし、かつまた保険特別会計に支障を来さないように細心の注意を払っていきたいと思っております。
  75. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 以上で終わります。
  76. 井上普方

    井上委員長 次回は、来る十三日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十九分散会