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土肥委員 それではお配りくださいますように。
質問をさせていただきます。
一九八四年、例の宇都宮病院事件が起きました。そして前回、二十二年ぶりに
精神保健法の改正が行われまして、五年後の見直しをするべく今
精神保健法の改正を審議しているところでございます。
昨年、
平成四年六月の厚生省の
調査では、いわゆる任意
入院、これは自発的な
入院でありますけれども、六〇・三%となったと報告されております。大変この率が高くなることは精神保健上好ましいことと考えますが、一方で、病院の閉鎖病棟は依然として五八・二%。前回決められました閉鎖病棟の中に公衆電話を置くということですけれども、まだ八七・八%しか置いていない。それから、任意
入院でありますからほぼ自由に開放病棟で移動ができるはずなのに、現在任意
入院の患者さんが五五%も閉鎖病棟に入っているというふうな統計が出ています。
私は、宇都宮病院事件以来、日本の精神病院は処遇やらあるいは治療が今日どの程度
改善、改良されたのかということに興味があるわけであります。しかしながら、どうも今日でもなお通信とか面会の自由が十分でなく、また
入院時に当然行われなければならない告知のあり方、あるいは指定医が少のうございまして、任意
入院の患者さんが保護室に入れられるというようなときも指定医が診ないで、とりあえず任意
入院で入れておいて後で
医療保護
入院に切りかえるなど、さまざまな具体例、問題があるようでございます。
そういう観点から、私はある大阪の病院を訪れたわけでございます。それを少し
紹介させていただきますけれども、期日はことし一九九三年五月八日の土曜日でございました。大阪に大阪
精神医療人権センターというのがございまして、これは弁護士さんたちが中心にやっております、任意の精神病の患者さんたちの
人権を守るセンターでございますけれども、そこに所属する弁護士さん三名、それからこのセンターに出入りしていらっしゃるその病院以外の精神科の医者二名、その他数名と、それに参議院議員の三石久江先生、そして私、
土肥隆一が同行いたしました。
そして、五名の患者さんの面会を申し入れたわけでございます。この
人権センターに事前に電話で、あるいは友達を介して、この
人権センターの訪問を受けたいという申し出がございましたので、
人権センターでは面会申入書という書面をつくりまして、
昭和六十三年四月厚生省告示第百二十八号第三号規定に基づく代理人であるというふうに言いまして、弁護士の名前を挙げ、そして所属は大阪弁護士会である、患者名はかくかくである、患者本人に会いたい、そして五月八日の日付を入れて病院の窓口に提出をいたしました。
病院では女の方がいらっしゃいまして、その患者さんの名前をメモに控えまして、そして、ちょっとお待ちくださいと言って裏の方へ行ったわけであります。しばらく待っておりましたら、大体それが十三時二十分ごろでありますけれども、二十分ほどしましたら、ここの川井院長、それから春日医
局長がちょうどそのあたりを歩いていらして、たまたま外来の診察室に入られるのを見ましたので、私は名刺を差し出してごあいさつをしたわけであります。そして、一緒に参りました者がその外来の診察室に入りまして、いろいろとやりとりを始めたわけであります。
それは、まずは面会に来たわけでありますから、面会の手続をしてもらっている間だけ少しお話を聞かせてくださいと申しまして、特にその中では、実は二月二十二日にこの病院である事故が起きまして、患者さんが救急病院に入って、そこで亡くなられるという事件がございました。そのことについて、これも後で少し申し上げますけれども、いろいろとお聞きをしたわけであります。
新聞報道等あるいはこの
人権センターが調べた範囲ではいろいろと問題点があるので、その点を主治医であります川井院長、ここでは名前を挙げさせていただきますけれども、そして内科の先生である春日医
局長、このお二人と私の三者が座りまして、その周りで連れの者が話を聞くということになりました。そして、いろいろその患者さんの死亡事件について聞いていったわけであります。
この事件の
内容についてはいろいろと疑問がございますので、その当時の実情がどうだったのかということをいろいろお聞きいたしました。しかし、これはもう既に告訴されておりまして、刑事事件として警察が入っておりますので、その
内容について多くを申し上げる必要、また申し上げることもできないというふうに思いますが、その面会をしている間にいろいろお聞きして、なかなか面会の手続が進まないわけですね。まあかれこれ二時間ぐらい、そこでその二人のお医者さんと話をしていたわけです。
そして、いよいよ面会が成るのかなと思いましたら、この春日という内科の先生ですけれども、今現在、私どもが訪問した直後にこの院長がかわりまして、この春日医
局長が院長にかわっておりますので、ある意味では更迭人事がなというふうにも思ったわけでありますけれども、この春日医師がやってまいりまして、面会は保護義務者の依頼でしかできない、保護義務者あるいは本人の承諾書があれば面会できます、こういうふうに言って、我々の面会はできないということを言ってきたわけです。
御承知のように、この
精神保健法では、弁護士の面会はあらゆる場合を通じて制限されないというのが原則でございまして、我々は面会をする権利があるし、また患者さんも面会を受けていいはずだというふうなやりとりをいたしました。それでもだめだと、こう言うわけです。
この春日医師はこの外来の診察室からしきりに入ったり出たり入ったり出たりするわけでありまして、何をするのかなと思いましたら、どうやら某所、どこかわからないのですが、私ども大体推測はっきますけれども電話をいたしまして、一々どうしたらいいかということを聞いているようであります。三度ほど電話を入れておりました。そして、その都度何かを言ってくるわけです。
最初にやりましたのは、面会を申し入れた患者さんのメモ書きを持ってまいりました。そして、メモ書きは何が書いてあるかというと、患者さん自体が会いたくないと言っているからあなたたちは会えません、こういうふうに言うわけです。それはここに写しを持っております。この春日医師が自分でも言いましたけれども、私が指揮して書かせた、例文を出して書かせた、こういうふうにおっしゃいましたので、これはもう間違いないことでありまして、面会人に会いたくない、こういうふうに患者が言っていますよと、ちらちらしながら持ってきまして、そして私どもにそれをくれたのですね。
こう書いてあります。患者名は伏せます。「大和川病院長どの
平成五年五月八日」名前が書いてありまして、「今後
入院ちりょうについてはそうき退院をお願いします つきましては弁ごし等に一切いらいしません」拇印が押してあるのです。もう一人の方は「今後の
入院退院に付いては病院側の指示にしたがい弁護士等いらいは一切致しません」「こんどのりょうようおよびたいいんについてはいっさい病院がわのちりょうにしたがいます べんごしはりよういたしません」「今后、早期の転院をお願い致します。つきましては今后弁護士等いらい面会することはありません。よろしくお願い致します。」こうなっております。こんなものをなぜ書かせるんだということでまた一悶着あったわけであります。
しかし、後にこの春日ドクターが報告書というのを書いておりまして、だれにあてた報告書がわからないのですが、そのファクスの写しが私の方にも回ってまいりまして、とにかく
人権センターと国
会議員がやってきて、脅迫をもって面会を強要したというふうに書いてありますので、もし議員の皆さんや厚生省当局にそういう文書が入りましたら、いつでも私の面会の記録と照らし合わせて読んでいただきたいと思うのであります。
そして、こういうことを書かせるというのは、これはもうまさに医者としての越権行為である、こういうことをやるべきではない、面会をさせてほしいということをたびたび申し上げました。
それで、電話で何度もまた連絡をいたしまして、やっぱりだめだと。例えば二名だけ、一人退院してもらいましたから四名残っているのですが、そのうちの二名だけでいいから会わせてくれと、私が政治家みたいな交渉を始めたわけでありますが、そうしたらまた電話をするわけです。それで、だめだと。では一名だけということで依頼いたしましたら、この春日ドクターもさすがに、まあそれくらいしょうがないだろうなというような気分になってきたので、やれやれと思っておりましたら、またもやまずい、だめだ、こういうふうに言うわけです。
三回目の電話の後でこういうふうに言いました。僕が言ったんじゃないぞ、これは僕が言ったんじゃないけれども、僕にとってはちょっとなと。私が、これは管理上の問題ですから、あなたが責任者であるから、あなたの権限で判断したらどうですかと言ったら、それはできないんだ、私には権限がないんだ、こういうふうに言いまして、とうとうその場を我々は引き下がらざるを得なかったというのが実態でございます。この病院の面会を私、経験いたしまして、まだこんな病院があるのかということを痛切に感じました。
そこで、少しこの病院の中身に入ってお聞きしたいのですが、まず、どうでしょうか、厚生省当局の方の見解として、この弁護士が持参しました面会申入書は、
精神保健法的にもあるいは面接の通知や告知上も適切なものであるのかどうか、お答えいただきたいと思います。