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1993-04-27 第126回国会 衆議院 環境委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月二十七日(火曜日)     午前十時九分開議 出席委員   委員長 原田昇左右君    理事 青木 正久君 理事 塩谷  立君    理事 高橋 一郎君 理事 細田 博之君    理事 持永 和見君 理事 斉藤 一雄君    理事 馬場  昇君 理事 大野由利子君       住  博司君    前田 武志君       増岡 博之君    谷津 義男君       柳本 卓治君    山下 徳夫君       岩垂寿喜男君    小川 国彦君       岡崎トミ子君    田中 昭一君       時崎 雄司君    草野  威君       寺前  巖君    中井  洽君  出席国務大臣         国 務 大 臣 林  大幹君         (環境庁長官)  出席政府委員         環境庁長官官房 森  仁美君         長         環境庁企画調整 八木橋惇夫君         局長         環境庁企画調整 加藤 三郎君         局地球環境部長         環境庁企画調整 松田  朗君         局環境保健部長         環境庁自然保護 大西 孝夫君         局長         環境庁大気保全 入山 文郎君         局長         環境庁水質保全 赤木  壯君         局長         通商産業大臣官 清川 佑二君         房審議官  委員外出席者         議     員 岩垂寿喜男君         経済企画庁調整         局経済協力第一 飯塚 和憲君         課長         経済企画庁経済 大来 洋一君         研究所次長         外務省経済協力 上田 秀明君         局外務参事官         文部省初等中等         教育局中学校課 河上 恭雄君         長         厚生省生活衛生         局水道環境部水 浜田 康敬君         道整備課長         農林水産大臣官 井上 隆昭君         房参事官         林野庁業務部経 弘中 義夫君         営企画課長         通商産業省基礎         産業局基礎化学 古田  肇君         品課長         資源エネルギー         庁公益事業部開 天野 正義君         発課長         建設省建設経済 澤井 英一君         局調整課長         環境委員会調査 西川 義昌君         室長     ————————————— 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   草野  威君     東  順治君   塚本 三郎君     中井  洽君 同日  辞任         補欠選任   中井  洽君     塚本 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  環境基本法案内閣提出第六二号)  環境基本法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出第六三号)  環境基本法案馬場昇君外二名提出衆法第四  号)      ————◇—————
  2. 原田昇左右

    ○原田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出環境基本法案内閣提出環境基本法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及び馬場昇君外二名提出環境基本法案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。時崎雄司君。
  3. 時崎雄司

    時崎委員 皆さん、おはようございます。約六十分、環境基本法のうち、特に環境アセスメントを中心にお尋ねをいたしたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。  質問に入る前に、もう既に、再三にわたって私ども日本社会党同僚議員からも御指摘があったと思いますが、水俣病問題の早期解決について、環境庁長官に積極的に活躍をされたい、こういう気持ちでいっぱいでございまして、ぜひ水俣病問題の早期解決のために御努力されるよう、冒頭お願いをいたしておきたいと思います。  さて、環境問題について、先般去る四月二十日、基本法提案説明の際に、総理大臣を初め環境庁長官関係大臣お尋ねをいたしましたが、時間の関係もあって、なかなか答弁、私も十分理解しにくいところもございますので、きょうは再度お尋ねをしたいと思います。  まず最初に、去る三月二十九日に新聞報道によって、環境アセス法制化をしない、当面ということではございましたが、環境庁が各省庁との協議の中で合意をされた、そして文書でその覚書が締結されている、こういう報道がされました。実は、決算委員会建設大臣においでいただいて審査をしたときも同じようにお尋ねをしたのですが、どうも十分な回答をいただいておりません。したがって、きょうは、直接環境庁からそういう合意文書が取り交わされたのかどうか、この点についてまず最初にお聞きをしておきます。
  4. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 端的に申し上げますが、アセスメント法を当面つくることは考えていないという、将来におけるアセスメント法の制定に向けての動きを否定するような覚書は、私どもは結んでおりません。
  5. 時崎雄司

    時崎委員 覚書は結んでいないということですが、口頭での確認とか、覚書というタイトルではなくても何かメモのようなものを取り交わしたり、口頭確認をしている、こういうことがあるのかどうか。
  6. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 この点につきましての重ねての御質問でございます。  環境基本法案につきましては、環境アセスメントを含めまして、法案解釈等につきまして共通の理解を得る必要がありますことから、想定問答等所要の検討を行ったということは事実でございますが、環境アセスメントにつきまして、将来の法制化否定するような合意をしたこともございませんし、したがって、そういった覚書も結んでおらないということでございます。
  7. 時崎雄司

    時崎委員 私の手元に三月二十九日の報道、これは読売新聞ですが、こういうふうになっているのです。相当のスペースで報道されているのです。これが事実に反する報道だというと、これは誤報ということになりますから、当然読売新聞に対して抗議をするか訂正を求めるか、何かされたのですね。
  8. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私ども読売新聞社に対して、記事をよく見ますと、そういったような事実というものを断定的に書いておらないということから、正式の抗議という格好で申し入れておりませんが、この記事に関しては問題があるという旨の指摘は行っております。
  9. 時崎雄司

    時崎委員 この読売新聞の切り抜き、ここへ持ってきていますが、今のような答弁でよろしいのですか。「法制化見送りの「覚書環境庁 関係省庁合意 基本法成立へ妥協 本社入手」と書いてあるのですよ。  この新聞をずっと読んでいって、あなたのように覚書の存在があいまいだとかどうだとかということはどこから考えられるのですか。
  10. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 この記事に関しましては、この新聞が出ましたその当日におきまして、参議院環境特委員会において早速、私ども記事が出ました善後処置をとる間もなく、それに対しまして明確に否定する答弁の機会を与えられたということでございますので、正式の公式の場でございます国会の場におきまして、これを明確に否定したところでございます。
  11. 時崎雄司

    時崎委員 参議院環境委員会で明確に否定をされたというのは、実は去る二十日の代表質問をやった際にも私の方も明確にその部分は認めているのです。  今私が問題にしたのは、この読売新聞覚書が結ばれているということについて報道した、しかしそれについてはそうは読めない、そこまで断定していないとあなたがおっしゃるので、読んでみますか。「環境庁と一部の事業所管官庁が、「法制化は、当面行わない」とする「覚書」を結ぶことで合意していることが二十八日、明らかになった。」こうきているのですよ。どうして読めないのですか。
  12. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 失礼いたしました。覚書を結んだという表現になっておらないということでございます。それで、覚書を結ぶことで合意したということで書いてありますが、そういうことでは、私先ほど御答弁したように、合意した事実はございません。
  13. 時崎雄司

    時崎委員 国会で明確に否定をされたからもうそれでいいということのようですけれども、少なくとも新聞社がこれだけのものを書くわけですから、それ相当の資料を入手した上で報道されているものと思うわけです。だから、単に国会でそれを否定したというだけではなくて、こういう誤った報道をするならば、当然訂正報道をさせるような申し入れぐらいやるのは当然じゃないですか、違いますか。
  14. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 このことに関しては、私どもとしましてはいろいろな対応の仕方はあったと思います。ただ、これにつきましては、私ども明確にこれを国会否定しましたし、また、記者クラブにおきましてもこれは否定しておりますので、私どもとしてはしかるべく対応はしたというぐあいに考えております。
  15. 時崎雄司

    時崎委員 それでは内容についてお尋ねをいたします。  それでは、この提案されています基本法の第十九条「必要な措置を講ずるものとする。」現段階環境庁長官は、必要な措置というのは何によって行おうとしているのか、法律によるのか、従来からあるような閣議決定要綱で行おうとするのか、どう考えておられるのですか。
  16. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  基本法における十九条の必要な措置でございますけれども、これは法制化という問題が一応前段に考えられるわけでありますので、基本法の必要な措置というのは、その段階において基本法が公布、施行されて、そして環境アセスの問題、その時点でいろいろ具体的に出てくると思います。そのときに必要な場合には法制化することが含まれておる、そのように私ども理解しながら、この案文をつくりました。
  17. 時崎雄司

    時崎委員 必要な措置を講ずるという中に法制化も含まれているということで、この案文をつくって国会へ出したということは、これはそのとおりだと思うのですが、この法律が通った段階で、この十九条に基づいて環境アセスメントについては法律によるのか、それじゃ現行どおり今までのような閣議決定でいくのか、どちらかと尋ねているわけです。それが今の段階で決まっていれば決まっている、決まっていなければ決まっていない、そういう考え方を出してもらいたいのです。
  18. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 現段階におきましては、閣議決定事項もとにして、あるいはまたそれを受けてそれぞれの自治体条例を定めて進めておるところでございますので、現段階においてはこのとおりでございますが、その中で、運営の中で法制化必要性が認められる段階になってきたときには法制化をすることについては当然考えなければならない、そういう意味でございます。
  19. 時崎雄司

    時崎委員 どうも長官の言っていることがよくわからないのですが、地方自治体条例化しているところもあるというのは現状としてわかっているのですが、ここで言う必要な措置というのは、自治体条例化するとかどうとかということを念頭に置いているわけではなくて、国として何をやるのだということですね。ここの必要な措置は、自治体条例化することを必要な措置だと考えているわけじゃないでしょう。閣議決定で行うか法律で行うかということは一つ中に入るとしても、これは地方自治体条例化まで含んだ「必要な措置」なのですか。
  20. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 当然、閣議決定もとにして、国の大きなアセスにつきましてはやっておりますが、この基本法が制定されまして、その後は運営した中で、現実の面でアセスメント法法制化が必要である、そのような事態が認識されれば当然法制化に踏み切る。つまり、今の基本法とは別個にアセスメント法というものの必要性が認められたときにはアセスメント法に踏み切ることも、これは今度の法律の中では含まっている、そのように解釈しております。
  21. 時崎雄司

    時崎委員 どうも聞いていることと答えが大分違ったのが返ってきてしまうので、よく理解できないのですが、その部分は結構です。条例部分は結構です。  ところで、少し細かくなりますので、局長の方で、政府委員の方で答弁していただきたい、こう思いますが、昭和五十六年に、政府は一度国会にこの環境影響評価に関する法律を提案されていますね。それが五十八年に廃案になっているわけですね。その後昭和五十九年に「環境影響評価実施について」という閣議決定がなされ、今日に至っている、こういうことですね。  そこで、政府が一度出したこの過去の法律案と今の閣議決定内容との間に、私は相当開きがあるように考えているのですが、実質やってみて、当時の法律案と今の閣議決定との間で、内容にどの程度の違いがあるのか教えていただきたいのです。
  22. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 御指摘のように、閣議決定要綱法案によります場合、その根拠が違いますことから、形式上違いが生ずることは当然あるわけでございます。  しかし、内容的に申しますと、私どもといたしましては、法案として描かれた事柄を政府として最も権威ある閣議決定というベースに置きかえるということでやりましたことから、実質的にはかなり法案に沿ったものによって閣議決定アセスが行われているということは言えるわけでございますが、御指摘でございますので、違いという観点から申し上げますれば、一つは国以外の事業者に対する拘束力の違いはどうしても出てまいります。  行政部内におきましては、法律であれ閣議決定であれ、それは決定事項でございますから、事項といたしましては政府部内におきましては同じなわけでございますが、政府以外の事業者に対しましては、閣議決定要綱でございますれば、事業者に対する指導通達という格好で、行政措置として実施に移されるということになりますので、事業者の側の理解協力が前提になるということが一点ございます。  第二に、行政指導であるがゆえに、主務省庁事業者を指導する立場に立つということが主になるために、法案に比べますと、そこのところはニュアンスとして主務省庁の判断にゆだねられる分野はどうしても大きくなるということが第二点に挙げ得るかと存じます。  それから第三点、これはやはり閣議決定政府部内のものでございますので、地方公共団体を直接拘束することはできないという点がございます。したがって、準備書の公告・縦覧等環境影響評価の諸手続も事業者が行うこととなっているところでございます。  それから第四に、閣議決定要綱では、環境配慮は関連する免許法等に基づく行政処分に認められた裁量の範囲内でしか行われないという点が挙げられます。  第五に、地方条例等との関係相違があるわけでございますが、法律であれば条例との関係を制度的に整理できますが、閣議決定であれば、法律条例というような格好の整理はできないという点が挙げ得るわけでございます。  しかし、一番冒頭に申し上げましたように、現行閣議決定要綱法律に基づく環境影響評価実施する場合では、こういった事実があることは事実でございますが、実際の運用の実績を見ますと、環境影響評価本来の目的でございます環境汚染自然破壊未然防止するという観点からは、行政ベースのものといえども実質的におきまして柔軟に取り扱うことによりまして、これらの相違点をカバーすべく、私どもとしては努力してまいっているところでございます。
  23. 時崎雄司

    時崎委員 どうもよく理解できないのです。国以外の事業については拘束できないという点が一つ閣議決定と過去に政府で出した法律案との間には違いがある、これはそのとおりであろうと思うのですね。しかし、その法律で当時想定した、国会に出した内容については実質はやっている、こういうふうに理解していいわけですか。
  24. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 そこの点、若干私、実質的にはそれをカバーすべく運営上努力しているという概括的な言い方で申し上げたのですが、もう少し詳しく申し上げますならば、国以外の事業者に対する拘束力という点につきましては、実際の運用の仕方としては、一つ対象事業民間事業が少ないことという事情が背景にありますのと、もう一つは、主務大臣が許認可の際の配慮事項といたしまして、実際的に必要な措置を担保しているということ等から、今までのところ大きな問題にはなっていないという事情があるということが第一点に挙げられます。  それから第二点の、主務省庁にゆだねられる部分が多くなるという点につきましては、主務省庁間の調整を通じまして、自然環境調査といったような細部を除きましては主務省庁間の相違はなく、実質上問題になることは少ないという点がございます。  それから第三に、地方公共団体に対する拘束力の問題でございますが、これにつきましては、現在知事や市町村長理解協力を十分得ているところでございます。これはアセスをやるという趣旨において十分御理解協力が得られておりますことから、これについては特段の問題は生じておらないという問題があるわけでございます。  それから第四に、環境配慮の位置づけの問題につきましては、これは事業者理解協力もございまして、具体的対策について個別に柔軟に対応されてきているところでございます。  それから第五の、地方条例等関係でございますが、これは地方条例等は、一般に国等が行う事業について特例を設け、国の要綱との整合に配慮しているというようなこと、及び、九年余りにわたる運用面における経験を蓄積しましたことによりましてそれらが整理されておるというようなことから、実際の運用上は的確に行われているのではないかというぐあいに考えているところでございます。
  25. 時崎雄司

    時崎委員 それでは、一、二具体的な例を申し上げて、果たしてそんなふうに、今局長が言われるように実際の運用上はうまくいっているということになるのかどうか。  本委員会でも、過去に再三私は質問をしたことがあるのですが、私の選挙区内で今猛然と工事しているのが、霞ケ浦導水事業というのをやっています。きょう建設省を呼んでおりませんので私の方から若干説明しておきますと、利根川から霞ケ浦に水を毎秒二十五トン送水のできる導水管が既に完成をいたしました。これは二年ほど前です。ことしから通水の試験を行っています。それから、私が住んでいますところの、これは栃木県から茨城県にかけて流れております一級河川那珂川、そこから霞ケ浦まで四十一キロ幾らですか、これは毎秒三十五トン、送水管を今猛然と工事をしておる。  その第一の目的が何かというと、霞ケ浦の水が大変汚染をされている。もう環境庁でつくった基準などははるかに守れないし、途中からつくった暫定指針すらクリアできないという状況です。今から三年前、私が初当選してきたときのこの環境委員会最初調査、これは霞ケ浦でした。その霞ケ浦汚染された水を少しでも浄化しよう、それには那珂川のきれいな水を持ってこよう、そうすれば、まあコップでいえば、これだけ汚い水が入ったところにあと少しきれいな水を入れれば汚染が薄まるだろう、こういう発想になりますね。もちろん、そのほかにも茨城県や千葉県や東京都の水資源の開発という目的もあるようです。  これが完成した暁には、もう一つ目的は、那珂川霞ケ浦利根川、この三つの川と湖を、総合的に水の交流をしていこう、すなわち利根川に水がないときには霞ケ浦から水を落とす、もしくは那珂川に水を落とす、そしてその河川の水をふやす、こういうことなんです。  どうもこの事業を考えてみますと理屈に合わないのですね。そうでしょう。那珂川のきれない水を持ってきて霞ケ浦の水を少しは浄化しようというのです。ということは、霞ケ浦の水よりも那珂川の水がきれいでなければその論理は成り立たないのですね。次に、今度は渇水になったといって霞ケ浦の水を那珂川へ持っていった場合にはどうなるかというと、きれいな水のところに汚い水を持っていくということになるのですね。これは理屈上は絶対そうならなければおかしいのです。  そうしますと、水をふやすために汚い水をきれいなところに持っていくわけですから、この事業が完成すれば当然そこの生態系に大きな影響がある。今から導水工事をやろうというときに、環境庁がいうところのこの閣議決定は、今から四年近く前に既に決定されているわけですから、当然そういうことが、事前影響評価のための調査が行われてしかるべきだと思うのですね。これは聞いたことがないのです。だから、この工事について今でも漁業協同組合との合意ができないわけですね。しかし工事はどんどん進めている、これが一つの例です。  もう一つの例を挙げましょうか。同じように霞ケ浦用水事業というのです。これは筑波山中腹地下を通って水を上げて、大きいトンネルを掘ったのです。そして、この落差を利用して茨城県の西部と南部に流して利用しようということです。これは水資源開発公団がやっているのです。既に完成しました。その水が最終的に小貝川という川に流れて、そこから二十数キロ下の水海道というところで、その流した水を今度は引き上げて浄水にして、工業用水水道水に使おうという計画であります。つくったのは水資源開発公団、これは二十年かけて多額費用をかけてつくったのです。  ところが、水を管理している建設省小員川に流すことを禁止しておられる。できないのです。どうなるのです、これは。その水をいただいて工場をつくったところがあるのです。計画としては何年ごろにこれだけの水が給水できるということですから、どんどん工場も立ちました。その一番大きいのはアサヒビール守谷工場というものです。ビール会社は水が来なかったらどうする、これは商売になりませんわ。  そこで困ってどんなことをしているかというと、どんどん深井戸を掘り始めたのです。地下水をくみ上げる。約束どおり水をくれないのですもの。これは何が原因がというと、霞ケ浦の水が、筑波山中腹まで持っていって流してやったけれども汚れている。小貝川という川へ入れたら川が汚れてしまうからだめだと建設省が言うのです。水資源開発公団というのはどこの団体なの。あれは一般的に言えば建設省外郭団体じゃないですか。多額費用をかけて工事をやって、さあ完成したはいいが予定どおり河川に水が放流できないということになるのですね。  これだって事前調査をしていればこんなことにならないはずでしょう。小貝川の水と霞ケ浦の水の汚染度を調べてみて、これはいかぬなといったら途中で小貝川の水より少しはきれいなものを流そうと努力すればこんなことは簡単にできるのですよ。毎秒〇・五トンですからね、こっちは。これですらそうなのです。これであなた方は、環境影響に関する閣議決定が守られていて十分だと言うのですか。  ちょっと今の具体例について、局長
  26. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生、ただいま二つ事業例をお挙げになったわけでございます。霞ケ浦導水事業、それから霞ケ浦用水事業でございますか、この二つ事業について御指摘になったわけでございます。  この事業につきましては先生の方がお詳しいことですから、事業につきまして触れますのは適当じゃないと私思いますが、この霞ケ浦導水事業につきましては、開始されましたのが昭和五十一年度ということで、御指摘のように、導水事業につきまして閣議決定要綱に基づく対象事業になっておらないところでございます。したがって、閣議決定要綱に基づく環境影響評価は行われていない。また、茨城県における環境影響評価要綱においても、対象事業にはなっておらないようでございます。また、霞ケ浦用水事業につきましても、そのようになっておらないようでございます。  そこで、まさに先生が御指摘し、我々も考えておるわけでございますが、環境影響評価というものを本来環境汚染未然防止目的とする事業実施に先立って行うというようなことが、我が国においてこの五十年、五十一年当時に一般化されておりますならば、このようなことは起こらない。したがって、私どもは、まさに環境基本法におきまして環境影響評価というのを法制的にきちっと位置づけて、事業者によって環境影響評価をきちっとこれからはやっていくんだというような格好にするということが大事だということで、基本法案に環境影響評価の重要性を位置づけるということをきちっとやったわけでございます。  先生の御指摘は、これが閣議決定アセスで行われていないということの欠点ではなしに、五十年当時にはそういったことが一般化されていない、むしろ環境影響評価を行われない時代にやりました事業について、それが対象としておらないということが問題になった事例ではないかというぐあいに私ども理解しておるわけでございます。  なお、ついでにつけ加えて言いますならば、こういうぐあいに建設中の事業につきましては、事柄の整理としましては、環境影響評価ということで整理するということになりますと、環境影響評価は諸外国におきましても、また我が国におきましても、あらかじめ事業実施に当たってというようなことで事前評価ということ、概念的にはそれで統制されておりますから、そういった整理にはならぬと思いますが、実施上の事業に関しても、今後は環境保全上の問題が生じた場合には、事業者におきまして必要な措置を講ずべきだというようなことを、基本法では第八条に位置づけたところでございます。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕
  27. 時崎雄司

    時崎委員 今私が二つの例を挙げて、後段の例はもう既に完成したということですから、まあ完成というのか概成というのか、実際に送水ができないで困っているという例を申し上げた。よって、それは始まったときは二十年も前のことでしょうから、政府昭和五十六年に国会に提案をしたあの法律、これは結果として廃案になりましたが、それより以前のことでもあり、また、五十九年に閣議決定ということを行った、それよりもずっと以前ですから、これは今の答弁、わかるのです。  しかし、実際に前段のその導水事業に関する計画は、確かに昭和五十一年のころ計画されたけれども、着工され、そして実際に導水の工事をやるというのは、これは最近なんです。利根川との間にはもう二年ほど前に完成したけれども、那珂導水事業は去年からですから、そんなこと言っても。そうすると、あなたのおっしゃるのはずっと昔に計画されて、もう十数年前に計画された。しかし、具体的に工事をやろうというのは今なんですね。  閣議決定は五十九年ですから、約八、九年前ですね。今やろうとするのにも適用できないのですか。不思議ですね、これ。十年、二十年前にやったときは、霞ケ浦、海水浴ができたんですよ。わかるでしょう。ところが、今になったらアオコが発生して飲み水にも大変だと大騒ぎしているのですね。これ、そんなに時代が変わるのですよ。これは何も水だけではなくて、いろいろなものが変わっていくでしょう。そのときに、ずっと古いころに計画されたからもうそれはそれでいいんだ、こうはならないと私は思うのですね、途中途中変わっていかなければならないわけですから。  だから、実際上あなた方が言われるのは、昔に計画されたから、それで、いや、これは該当しないということではないと私は思うのです。では、具体的に送水管を、トンネルを始めようというようなときには、やはりやらなければならぬだろうと思うのですよ。そうしないと、何とか計画なんという、昔につくったからこれはもうどんな工事をやってもいいんだということにはならぬと思うのです。それがこの閣議決定の趣旨ではないと私は思うのです。  そこで、あなたにちょっとお尋ねをしておきたいのですが、どうもさっきの幾つか、四点、五点ほど挙げた中で、私は疑問に思っているところがあるのです。  閣議決定事項の第三の3にこう書いてありますね。「公害の防止及び自然環境の保全の配慮についての審査等 (1)対象事業の免許等を行う者は、免許等に際し、当該免許等に係る法律の規定に反しない限りにおいて、」と、「当該免許等に係る法律の規定に反しない限りにおいて、」こう言っているのですね。間違いないですね。これが閣議決定なんです。  ところが、昭和五十六年に出した法律、これは百八十度違うのですよ。いいですか。当時の昭和五十六年に出した法律案の第二十条、ほぼ同じタイトルですね。「対象事業実施に係る免許等を行う者は、当該免許等の審査に際し、評価書の記載事項につき、当該対象事業実施において公害の防止等についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない。」さて、次だ。「この場合においては、当該免許等に係る法律の規定にかかわらず、」ということなんです。  これは、重大なんですよ、違いは。あなたは一緒のようなことを言っているのです。法律に違反しない限りというのは閣議決定なんです。当該免許等に係る法律の規定にかかわらず、というのは法律なんです。これだけの違いがある。これは百八十度違うでしょう。  それはそうですよ。法律でつくればこういうことができるのです。他の法律にかかわらず、これでいけ、こう言えるんだ。閣議決定だから、他の法律には違反しない範囲でやりなさい、こう言うしかないのです。違いますか。ここの法律論争だけちょっと答えてください。
  28. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 この問題に関しては、先生指摘のとおりでございます。旧環境影響評価法につきましては、いわゆる横断条項というものがございまして、免許等に係る法律の規定にかかわらず、公害の防止等について適正な配慮がなされるものであるかどうか、審査の結果をあわせて判断して、免許等に関する処分を行うこととしていたところでございますが、閣議決定は免許等に係る法律が優先することになりますので、その免許法等に基づく行政処分に認められた裁量の範囲内で環境配慮が行われることとなっているということでございまして、これは、法律上、行政処分上では明らかな概念的な違いはあるわけでございます。  そこで、私が先ほど申し上げましたのは、現実には、事業者環境影響評価要綱への理解協力という実際上の運用におきまして、十分な環境配慮に必要な具体的対策について、個々の事業ごとに極めて柔軟に対処されてきたという実態があります。そこで要綱による環境影響評価であっても、環境配慮が不十分で特段の問題が生じたような事例はないというぐあいに承知しているというふうに申し上げましたのは運用上の問題でございまして、概念的には明らかに差がございます。  したがいまして、実際にそうやって運用上問題が生ずるということになりますれば、それはやはり見直し条項等によりまして、法制化が必要であるかどうかということを検討しなければならぬという問題になるわけでございます。
  29. 時崎雄司

    時崎委員 今局長がそこまでずばりと言っていただいたので私はほっとしておりますが、実は先般決算委員会で、これは建設省関係の審査のときに、建設大臣に随分尋ねたのですよ。そうしたら建設省の考えとしては、閣議決定という今のやり方がいいか、法律によるのがいいか、または別に政令で定めるのがいいか、どれかと聞いたところ、余りそれは関係がない、そこは重要じゃないんだ、中身だと。今やっている閣議決定のやり方での中身を少しいいものにし直していけば、その中身の方をどうするかが重要であって、法律によるか、政令によるか、閣議決定によるか、そういう手続は大したことはないんだという答弁でした。建設省はそう考えている。後で私の議事録読んでください、そういうようになっておりますから。  しかし、今局長が言われるように、法律によることと政令によることの差が歴然としましたね。政令でやっている以上、法律に違反してはならないんですから、法律の範囲内でと、こうなるわけですね。しかし、新たに法律をつくろうとすれば、昭和五十六年に出したこの政府提案の内容のように、当該免許等に係る法律の規定にかかわらずこれでいけと、こうなるわけですからね。これは大分強制力が違うのです。  それはそうですよね。閣議決定で行っても法律で行っても大して変わらぬというのであれば、国会なんかやめちゃって全部政令で、閣議決定で世の中動かせばいいんだよ。法律というのは国会で決めるのですから。法律で決めようと閣議で決めようと大した変わりはないんだと言っているなら、国会なんかこの世の中に要らないんですよ。違いますか。違うんですよ、法律閣議決定では。おのずと閣議決定は限界があるの。これは、皆さん私から言わなくてもわかっている。百も承知。ところが、閣議決定で十年間やってきた、実態は、ほぼ法律で当時想定したものと同じだと言うから、私先ほど例を出したのですよ。  昭和五十一年に計画ができた霞ケ浦導水事業、今何年ですか。昭和でいけば六十八年ぐらいになりますね。先ほどあなたは五十一年と言いましたよね。十七年たっている。ようやく今、建築物が建ったり、水を上げたところにためをつくって地下に大きい水だめをつくったり、それを四十数キロ先まで持っていくための送水管のトンネル工事が始まろうとしているわけです。この建築確認とかいろいろなものをやるときに、それは昭和五十一年にやっているわけじゃないでしょう、どう考えたって。場所を選定し、どこへどういう規格の建物を建てるかということがわかってから建築確認とかという命令等の諸手続がとられるわけでしょう。何ですか。五十一年のころ計画を立てたらもうそれは環境アセスとは関係がございません、違うんじゃないですか。それはやはり環境アセスは常識から考えればやるべきなんですよ、これでいったって。閣議決定だって。あなたはやってないと言うけれども、やっているかもしれないでしょう。これはわからぬですよ。ただ我々が知り得てないというだけですから。  だから、二例を挙げたのですが、実態としてあなたがおっしゃるように、当時昭和五十六年に国会に出したこの法律、これは廃案になりましたが、この法律と、今閣議決定でやっている、手続上はこれは雲泥の差があるが、実態は変わらないよ、こういうのはちょっと私は実態を知らない方の発言だと思うのです。実態は大変違っているんですよ。  じゃ、アセス何回やったのですか。政府だけでやって。この十年間近くの中に、政府事業だけでいいですよ、国の事業だけで何回ぐらいやったの。百七十回、違いますか。
  30. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 平成四年度末現在までに手続を終了した件数は、道路事業百五十八件、埋立及び廃棄物処分場事業十九件等、合わせまして二百十二件になっております。
  31. 時崎雄司

    時崎委員 もう一回言ってください。
  32. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 道路事業百五十八件、埋立及び廃棄物処分場事業等合わせまして十九件、その他合わせまして全体では二百十二件になっております。
  33. 時崎雄司

    時崎委員 十年間で政府でやる事業二百十二件ぐらいでしょう。いろいろなものを限定して今の環境影響評価実施要綱対象事業一覧、ここに持っているのだけれども、その他含めれば、これ、「(1)〜(11)に準ずるもの」なんというのが十二番に来ていますが、項目として十一項目ですよ。ここでわざわざあなたに政府閣議決定に基づく実施要綱対象事業一覧を読む必要もないとは思うんですよ。この六番以下見て、どうです。百ヘクタール以上なんですよ。  百ヘクタールといったらどのぐらいですか。国会議事堂すっぽり入ってもまだ足らぬでしょう。違いますか。百ヘクタール、昔流に言えば百町歩、これ以上のものでなければだめなんでしょう、これは対象が。東京都庁舎つくったって必要ないでしょう。あれは上にだけびゅうっと大きいから。あそこは土地は三ヘクタールぐらいじゃないですか。まあ三か四でしょう、建てているところは。百ヘクタール、全部これはそう。六番、七番、八番、九番、十番、ひどいのは十一番は五百ヘクタール以上なんというのがあるんですよ。これだもの、十年間やって二百十二カ所しかないのに決まっていますよ。一年間に二十件ぐらいでしょう。これで実態として、いやあの法律に比較して実態の方はちゃんとやっていますと言うのですか。私、そういう点がどうもやはり実態を見てないんじゃないか。  そこで、ぜひこれは大臣にお願いしたいのです。今お話ししたように、法律閣議決定との間には強制力を含めてこんなに差があるのです。これはもう当たり前のことです。あってしかるべきです。大体、政府閣議決定でやろうという方が無理なんですよ。法律があって、具体的にその法律政府に委任をするような場合に、それは政府でもって決定してその委任された部分についてやろうというのは、これはいいことです。全く法律がないのにやろうとしたって、それは限界があるのです。だから、先ほど言いましたように法律に違反しない範囲でやりなさいと言っているんですよ。いろいろな法律があるだろうから、その法律に違反しないという前提でやりなさい。これしかできないですよ。もし、法律に違反しでもいいから、あっちの法律が悪かったらば、この閣議決定の方が上からどんどんあの法律を破ってでもやれなんといったら、国会要らなくなっちゃうのですから。だから、形式的にもそういう大きな差がある。  さて、今聞いたように実態的にもこれだけ、十一項目も限定されて、そして百ヘクタール以上、百ヘクタール以上とつけられたら、これは面積でしか聞いてないところが多いんですね。そういう点でぜひ、もう閣議決定では限界だ、よって法律でやろう、こう答弁していただきたいのです。
  34. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 時崎先生にお答え申し上げますが、当然閣議決定法律を拘束できないということはそのとおりでございます。  そこで、今度の基本法におきましても、環境アセス問題は非常に重要な、最重要な柱として基本法では取り扱っております。したがいまして、それなりに現在のアセスを常に見直して適切な措置を講じなければなりませんので、その見直しを踏まえまして、これはアセス法という単独法の必要が生まれれば単独法をつくるということは、環境基本法案にも当然その余地を残してございますので、この一番重要な問題については、先生の御指摘も踏まえまして、鋭意ゆるがせにしない問題として取り扱っていきたいと思っております。
  35. 時崎雄司

    時崎委員 もう既に閣議決定は限界だ、私はこういうことを申し上げておるわけです。  もう一つお尋ねしたいのですが、ここに当時の法律の主要な部分について持っているわけですが、昭和五十六年に一たん出して廃案になった。これはいろいろな事情があったでしょう。こういう内容のもので今回もう一度出し直そうか、もちろん五十六年から十年以上経過していますから、時代に合うように直してもう一度国会へ出そう、こういう気はないですか。
  36. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 法律の制定、これはやはりそれなりの国民の秩序を保持する上からも非常に重大でございますし、大事なことでございますので、必要があればこれはそれなりにつくらなければなりません。  ただ、今政府といたしましては環境基本法の制定を諸先生の御審議をお願いしているわけでございますので、まず基本法の制定をお願いいたしまして、そしてその後の運営の中において、単独法としてのアセスの問題が必要ということであれば、当然これは取り組まなければなりません。その点につきましては、またそのときの先生方の御信念、あるいはお力添えをいただいて、それこそ国家国民のために大事な法律をつくっていかなければならないと思っております。
  37. 時崎雄司

    時崎委員 ぜひ一日も早く、閣議決定などという法律に根拠のないようなことではなくて、独立した法律をつくっていただきたい、このことを要望して、この件は終わりにさせていただきたいと思います。  さて、先般の本会議で、さらにはまたこれは二月二十六日の当環境委員会で、私が環境庁長官に尋ねたことがございますが、持続可能な社会、提案されています法律の中では「環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会」というところが基本理念の中にあるのです。去る二十日の本会議代表質問を聞いておりましたら、これは特定するつもりはありませんが、ある党の代表の方は、持続的発展可能な経済社会というものを、私が心配していたような理解もとにどうも発言されているのですね。  二月の議事録をずっと見ると、長官の言葉も出ておりますけれども、これまで環境に余りにも負荷をかけ過ぎてきてしまった、また資源を大量に消費し過ぎてしまった、大量生産、大量消費、大量廃棄という社会をどう変えていくか。そういう意味で持続可能なというのが、さきのブラジルの会合等でも出てきたわけですし、経済との調和をどうするかというのが大変重要な課題だったようですから、ここでいま一度、環境への負荷の少ない、持続的発展が可能な社会とはどういう社会を目指そうとするのがこの間の本会議での答弁はちょっと短かったですから、率直な気持ちをお聞かせをいただきたい、こう思います。
  38. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 御指摘なさる時崎先生は当然お考えになっておられて、その上で御指摘なさると思うのでありますけれども、例えば自動車、国民が自動車が便利だとこれをどんどん使って、その結果が今度はNOxの被害が出てくる、そのNOxの被害をそのままにしておきながら、そのまま自動車をどんどん生産していくことは持続可能ではないわけでございますね。持続可能というのは、そのときに国民生活あるいは社会生活が継続できるだけのものを持たなければ持続できないわけでございます。  したがいまして、現在環境問題が起こっているのは、持続できない問題を、ある部門の必要性といいますかあるいはある面の欲求といいますか、それから生まれたことが環境を阻害しているあるいは環境を汚染している、破壊しているといったようなことが目に見えてきたものですから、日本においても持続可能ということが言われるようになりましたのですけれども、当然我々もそれを考えております。  したがいまして、生産と消費とのパターンを考えますと、消費の欲求があって初めて生産に乗ってくるということが、順調にいけば、そこで情報が統合されていくならば、常に環境への負荷の少ないものがどんどん持続可能な形になってくる。ところが、そうではなくて消費のパターン、消費の欲求につられて生産がどんどん過剰になっていきますと、今度は環境に対する大変な重荷になってくる。それで、重荷になってくれば、やがては持続できなくなってくる。それが社会生活、国民生活に長く持続されていくためには、環境に影響の少ない、負荷の少ないものに切りかえていかなければならない。  そういう意味において、基本法においては、そういう社会、環境負荷の少ない経済社会を構築していくことを重要に考えた中公審あるいは自環審の答申を踏まえて、実は今回も盛り込んでございます。
  39. 時崎雄司

    時崎委員 それでは、最後に環境基本計画についてお尋ねをいたしたいと思うのです。  政府は環境基本計画をつくることを明記しておるのですが、計画がつくられればその計画をどのように実施するか、実施計画というものが当然必要になってくるだろうと思うのですね。これについては、この法律案の中では一切触れておりませんので、具体的に、基本計画ができた後実施計画なるものが予定されているのかどうか、これは局長お尋ねをします。
  40. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 御指摘のように、環境基本法におきましては実施計画という骨組みはつくっておりません。  環境基本計画につきましては、政府全体の環境の保全に関する施策の基本的な方向を示すという一種のマスタープランをつくることを予定しておりまして、個別の施策の実施に関しましては、環境の保全に関しては個別の法律等によりましてそれぞれ各種の計画や基本方針が定められ、また、個別の施策の実施に関しましては問題の特質に応じまして、それぞれ個別の法律等によりまして適切な計画を定めるといった対応をとることが効果的であると考えられますことから、基本法案におきましては、実施に関する計画につきまして特段の規定を置かなかったところでございます。  しかし、この基本計画の示す基本的な方向に沿いまして施策を実施する上におきまして、その遂行上必要があると認められる場合には、例えば大気汚染防止法に基づく総量削減計画とか地球環境保全関係閣僚会議の決定による地球温暖化防止行動計画のようなものが、個別の法律または予算措置等に基づきまして適切な内容のものがつくられるということが考えられ、それにより実効性は担保できる。この基本計画をつくることで、政府全体として環境保全に関する基本的な方向性を示すということに大きい意義があり、このもと政府全体としては整合性のとれたものがそれぞれの問題ごとに応じてつくられていくというぐあいに私どもは考えております。
  41. 時崎雄司

    時崎委員 もう時間が参りましたので終わりにいたしますが、総体として見て、この政府提案の環境基本法、どうもお題目がたくさん並んでいるのですが、実際それがどう実現されていくのか、そういうものがよく見えない。今の、時間をほとんど費やした環境のアセス法制化の問題を含めて、どうも漢としている気がしてなりません。したがって、社会党提案の基本法とも十分比較検討していただいて、この環境基本法が国民にとってより有意義なものである、こういうふうに大胆にひとつ修正などに応じていただくとか、そういう気がございますか大臣。
  42. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 時崎先生から単刀直入な御質問を賜ったわけでございますが、実は政府といたしましても、いろいろ問題はあろうかもしれませんが、今日出し得る環境基本法としては最善のものであるということで、諸先生の議会の御審議をお願いしておりますので、修正する意思はございません。
  43. 時崎雄司

    時崎委員 今日出し得る最善のもの、こう言うのは、官庁間の縄張りで今日出し得る最善のものだということにならないように、大胆にひとつこの国会での審議を通じて立派なものをつくっていただくよう、私どもも努力いたしますが、長官においても努力されますことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  44. 持永和見

    ○持永委員長代理 馬場昇君。
  45. 馬場昇

    馬場委員 長官にまず質問いたしますが、この環境基本法の制定の前提として、水俣病問題について一言二言質問を申し上げておきたいと思います。  水俣病は世界の公害の原点と言われておるわけですが、公式発見以来三十八年たっている現在でも、まだ解決されていないわけですね。この世界の公害の原点である水俣病を解決できずして、国内外に向かって地球環境を声高く叫ぶことができるだろうか、こういうぐあいに私は思うのですよ。だから、この環境基本法を制定する前提として、国の内外に対して、この環境基本法制定を機にして水俣病を早期に全面解決をします、こういう決意を新たにされる必要があるのではないか、こういうぐあいに思うのですが、大臣、どうですか。
  46. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 水俣病の問題につきましては、これはやはり大変重大な公害としての位置を持っておることでございますので、率直に言いまして、基本法のいかんにかかわらず一日も早く解決したいというのが私の念願でございます。したがいまして、しかしそれにも、それはそれとして、やはり基本法基本法として、諸先生の議会の御審議を今お願いしておるところでございますが、基本法の前提という形で、あるいは前段という形で水俣病を考えるということをせずに、水俣病はやはり三十八年前から発生した公害問題としては非常に重要な課題であるということで取り組みをやってきておりますので、それを御理解賜りたいと思います。
  47. 馬場昇

    馬場委員 私は、水俣病を解決しないからこの環境基本法をつくるなどいう質問じゃないのですよ。せっかく国の内外に向かって環境基本法を制定して地球環境を守るんだということを宣言するような法律でしょう、これは基本法だから。そういうときには、やはり公害の原点である水俣病なんかは早期全面に解決をするという決意を含めて言わなければ、そういうことを全然やらぬでおいてこういう基本法を内外に言ったって信用されぬでしょう。だから、これをつくるなというのじゃなしに、この機会に早期全面解決をさらに全力を挙げて頑張りますという決意を新たにしなさいと言っているのです。どうですか。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  48. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 馬場先生の仰せのとお力でございます。これはもう、水俣病解決には全力を挙げて、環境庁総力を挙げて取り組んでございます。またいずれ、先生方のいろいろなお知恵もいただきながら解決をしたいと思って念願いたしております。
  49. 馬場昇

    馬場委員 早期全面解決に環境庁挙げて努力をすると今言っておられますが、実は、その努力をしなきゃならぬけれども、水俣病を解決するのに非常に隆路が今あるわけですね。  それはもう大臣も御承知のとおりに、とにかく現在、原因者であるチッソの経営が非常に危機的状況にあるわけです。いつも質問しますけれども、現在認定されております患者に、いわゆる年金だとか医療費とか、年に三十五億円程度ずっと協定書に従って支払っていくわけです。それから、認定された人に対して補償をするために熊本が県債を出して、それをチッソに貸し付けておる、その額が八百億以上に今なっているわけですね。それを、元利の返済が今行われつつありますから、年に六十五億円前後の県債の返済をしなきゃならぬ。そうすると、三十五億円程度の認定者に対する補償と、県債の返済が六十五億円程度ある。年に百億円程度を今払っていかなきゃならぬ。  それに、三月期の決算を見てみますと、大体経常利益が二十億くらいしかない。二十億ぐらいしか利益がないのに千三百十億円の累積赤字を持っているわけですから、そのほかに百億ぐらい払っていかなきゃならぬ。どうにもならぬという経営危機で、大臣も努力していただいたわけですけれども、この三月期は倒産するんじゃないかというような危険さえあって、皆さんが全力を挙げて支援していただいて三月危機は乗り切ったのですけれども、そういう状況がある。  こういう状況の中で、さっき早期全面解決に全力を挙げて努力すると言われたのは、まず、その経営危機を何とかしてやらなければ、後は、和解でしょうが、裁判の判決が出ようが、自主交渉で出ようが、一時金なんか約二百億円ぐらい要るんじゃないかと言われておるのです。これも出せない。  そこで、チッソの経営危機というものに対してどう対処していくかということを質問するわけですけれども、その前に、通産省来ていますならば、チッソの経営状況はどうかということを簡単に報告してください。
  50. 古田肇

    ○古田説明員 御説明申し上げます。  最近、設備投資の冷え込みとか個人消費の低迷によりまして大変景気が後退している中で、化学業界の経営状況は大変悪うございます。今般、十三・二兆円の景気対策を出したわけでございますが、これが景気全体から化学業界にも稗益することを私ども期待しておるわけでございます。  御質問のチッソの経営状況でございますが、大変厳しゅうございまして、懸命の経営努力をしておられるわけでございますが、平成四年度の上期売上高七百四十億円ということで、前年同期に比べまして八十二億円減少いたしております。それから、経営利益で見ますと十一億円ということで、対前年同期比で二十二億円の減少、この下期につきましては、五月下旬に決算の発表があるわけでございまして、まだ数字は算定されておりませんけれども、上期に比べてもさらに厳しい状況になっておるんじゃないかというふうに認識いたしております。
  51. 馬場昇

    馬場委員 今説明ありましたように、上期が十一億円、下期はさらにそれよりも厳しいといいますと、二十億円の経常利益が出るか出ないか。そういう状況の中で、さっき言った、現在認定されておる人たちに払う三十五億円、県債の返済をするという六十五億円、そしてもう一つ、今、和解でしょうが裁判の判決が出ようが自主交渉しようが、一時金というのが大体二百億円要るんじゃないだろうかと言われているのですが、そういうものを支払う能力があると考えておるのかどうか、環境庁からお答えを願いたい。
  52. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 ただいま通産省の方から御答弁申し上げましたように、チッソの経営状況が厳しい状況にあるわけでございます。そういうことのほかに、先生が御指摘になりましたように、仮に成績がよかったとして五、六十億の収益金が上がるというぐあいに考えたといたしましても、年々の認定患者に対する年金等の支払い、医療費の支払い等で三十数億が予定されている。そのほかに、今まで患者に対しました支払いの県債の元利償還金がこれから本格化してくる。それに公害防止事業事業者負担法に基づきまして、水俣湾における埋立処理をしましたヘドロの処理、埋立事業に関するチッソの負担分というものがございます。そういたしますと、合わせまして、年々百億を超える金額というものが水俣病に関連して今後金繰りをつけていかなければならぬということも見込まれる。  一方で、最近の経営の一般的な不況状況から見まして収益が極端に落ちているわけでございますが、好況期になったといたしましても、かなりそういった支払い状況が苦しくなってくる、そういった状況にあるということは、先生指摘のとおりでございます。
  53. 馬場昇

    馬場委員 そういうときに、早期に全面解決するといったって、原因者がそういう状況じゃちょっと打つ手がないのですよね。原因者がどうにも動けない。  そうなってくると、昭和五十三年度の閣議了解事項というのがあるわけです。これは、チッソは原因者として患者に対する補償責任を遂行できるようにするということが第一。第二は、もしチッソに万一のことがあったら、熊本県、水俣、非常に経済的にも社会的にも大混乱を起こすわけですから、当該地域の経済社会の安定に資するという意味で、チッソが支払い能力がなくなったから、国が熊本県に県債を起こさせてそれを貸して支払ってきたわけですね。  そのことを、また今新しい県債方式をやらなければ、その県債を出したのが積もり積もって経営危機にもなっているわけですから、同じことをやったらますます経営危機が増大していくわけですから、新しい金融支援というものをチッソに対してどうするかということを今考えなきゃならぬ時期に来ておるのではないか。新しい金融支援というのをしなければこれはもうどうにもならぬところに来ておる、そういうぐあいに私は思うのです。  この前も質問いたしました、答弁もありましたけれども、新しい金融支援をしなきゃどうにもならぬ状況だという認識がおありですか。
  54. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘になりましたように、認定患者に対する補償義務の完遂ということは非常に大事なことでございますし、さらにチッソ株式会社、あの地域における状況から見まして、地域の安定、地域の振興という観点からも、チッソの企業努力を前提といたしまして、あの会社がそういった目的を達成し得るようにするということは極めて重要であるという認識を持っているところでございます。  この認識は、私ども、先ほど先生がお触れになりました関係閣僚会議もとにおきまして幹事会等を持っておるわけでございますが、そこにおける各省の認識も、私は同一であるというぐあいに考えているわけでございます。  そこで、チッソのこの問題につきまして、認定患者の方々への補償責任を全うしていただく、また地域の振興を図る観点から、今後、ただいまの厳しい状況をも踏まえながら関係省庁とも所要の協議をして、今後どうするかということについては真剣に検討していく必要があるという認識を持って、今そういうことの段階を踏んでいるところでございます。
  55. 馬場昇

    馬場委員 これは急がなければ、とにかく三月は危なかったわけですから、それを皆さんの努力で四月に繰り延べただけですよね。それを、五月にもずっと経営危機が続いておる。先ほども言いましたようにますます悪くなる可能性もあるわけです。  今までの県債方式でいきますと、資金運用部資金なんかから金を借りるものですから利子が非常に高い。だから元金と利子の支払いでこういう状況にもなっているわけですから、そういうことでないような新しい金融支援を今度考えなければならぬ。  熊本県なんかでもいろいろ言っているわけですけれども、例えば利子のかからないような金を県債か何かでいろいろして貸してやるとか、あるいは利子がつく金でも利子補給をどこからかしてやるとか、あるいは交付税の中でどういうぐあいにしてやっていくとか、特別交付税なんかやっていくとか、あるいは私が言っておりますように、水俣病基金というものを、あらゆるところから集めてそして基金をつくって救援していくとか、そういういろいろなことが検討されていると思うのですけれども、これを検討しておったら、この四月中に倒産するかもしれない、五月中にも倒産するかもしれない、こういう状況もございます。  それから、熊本県は六月県議会がありますけれども政府が動かない、はっきりした方針を出してくれない。熊本県民はいらいらしているわけでして、大問題にもなる可能性もあるんだ。  だから、このことは、新しい金融支援というのは一日も早く、私は少なくともこの場で、大臣、熊本が六月県会あるんだったら六月県会ぐらいまでは、各省庁で今お話ししていると言っているわけですから、結論を出すように努力をしたい、そういう誠意とか、誠意というよりも当たり前の話ですけれども、これを今政府は出す必要があろうということで、いつまでぐらいにはこの新しい支援方針を出しますということを明示して、熊本県なり患者その他に安心感を与える。チッソにもそのことは安心感を与えることになるわけですから。期限を明示して、いつごろまでに出すということはどう考えておられますか。
  56. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 たまたま先生指摘の中で、この問題の難しさを幾つも御指摘になったわけでございます。先生指摘になりましたような事項をめぐってそれをどう解決していくかということで、PPPの原則とそれから公的役割、また公的役割としてどの程度まで、どのぐらいできるかということをめぐって、今いろいろな議論をしている最中でございます。  そこで、私どもとしては、この三月におきましても極めて金繰り上難しいということがございましたことから、チッソにおける懸命の企業努力を見守ってまいったわけでございますが、おかげさまで企業の努力によりまして、三月は乗り切れた。今後とも問題を起こしてはならぬということで、一方で慎重に見守りつつ私どもは検討しておるわけでございますが、この検討することによって、肝心なことを忘れてしまって検討に時間を費やしているということでは決してございませんで、私どもは本来の目的を達成するために検討をやっておるわけでございますから、しかるべき結論を早々に出したいとは思っておりますが、現段階でまだ明確なことを申し上げる時期には達しておらないわけでございます。  しかし、いずれにしましても、先ほども申し上げましたように、認定患者に対します補償の完遂、地域の振興安定というようなこの二つ目的をにらみながら、今年は県債の発行問題につきましても見直しの時期が来ているわけでございます。そういうこともございます。熊本県におきましてもいろいろそういう事情がございます。そういうことを念頭に入れながら、早晩結論を出すべく私どもは鋭意努力中であるということで、御理解を賜りたいと思います。
  57. 馬場昇

    馬場委員 長官、長く努力されておることは私も知っているんですよ。各省庁の幹事会、各省庁の協議会、局長クラスとかいろいろ担当者が集まってやっていると思うのですよ。だからぜひ、長官、少なくとも私が言った六月というのは熊本県にとっては一つの区切りなんですよ。また、返済なんか九月に来るわけですけれども。だから、そういうことを頭に置いて、なるべく早く結論を出して、新しい金融支援の方針を打ち立てるというぐらいに最大限努力をするということを表明していただきたいと思います。
  58. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 馬場先生にお答え申し上げますが、この問題は、まずチッソ自体の経営状態の問題、非常に厳しい。それからまたPPPの原則からいきましても、認定患者に対する手の差し伸べ方、これはもうどうしてもチッソにやっていただかなければならない。なお、地域のために、企業活動が地域から離れるわけにいきませんので、その点もございます。それはもうすべて先生の御指摘内容でございます。特に、六月県会を控えた熊本県の立場もございます。それらのことを全部、実は環境庁としても存じております。  したがって、それを知っているなら一日も早く結論を出せ、こういう先生のお言葉でございますが、本当はそのとおりにしたいのでありますけれども、今いついつまでにこうしますということの言えるほど内容が熟してない。機はもう熟し過ぎていますけれども内容的にはまだ熟しておりません。しかし、チッソもつぶすわけにいかない、それから地域振興のことも、これも手をこまねくわけにいかない、熊本県議会の乗り切りも考えなきゃいけない、いろいろございますね。これらを踏まえながら、その時期を失しないように、これはもう最大の努力を申し上げるということで答弁にかえたいと思います。
  59. 馬場昇

    馬場委員 次に、環境基本法について御質問を申し上げたいと思うのですが、実は私ごとにかかわりますけれども長官、僕は昭和二十二年に学校を出て教員になったんですよ。教育基本法という法律がありますね。これが昭和二十二年に制定されておる。僕は教員になったときに初めてその教育基本法を読んだわけです。そのとき非常に強い印象を受けて、こういう世の中があるのかなと思って感激したことを覚えているのです。  教育基本法には前文があるんですね。だから、私は環境基本法というときには常にその教育基本法を思い出すわけなんです。そこで、この教育基本法の前文にはこう書いてある。「日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。」こういう前文がついているんですよ。  私は、今度の環境基本法というのは、今の国内外の状況、地球環境を思いますと、まさにこういうような状況の中の環境基本法の制定ではなかろうかと非常に期待も持っているわけです。そこで、環境基本法の性格について、できれば前文にこういうことを書いてもらいたかったわけですけれども、書いてないわけです。  日本の環境問題の基本を確立するためにこの法律を出すんだ、あるいは日本の環境法令上の基本法あるいは根本法としての性格をこの法律は持っておるんだ、あるいは、これは「目的」にも書いていますけれども、我が国の環境の基本理念を宣言するんだ、こういう今言ったような性格を持っておる。言うならば、環境でいいますと、憲法に環境問題というのは余り、本当はこのとき一章ぐらいなんて思うのですけれども、それは別として、環境憲法という位置づけをして、こういう法律を私はつくるべきじゃないかというような気がするわけでございますので、今私が言いましたような、こういう環境基本法の性格について、私が言ったとおりそうだとおっしゃっていただければ、もう繰り返していただく必要もないのですけれども、どういうぐあいに考えておられるのか。
  60. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 立法につきまして御質問がございましたので、私からお答えさせていただきますが、おっしゃるように教育基本法には前文がございます。私どもも前文でそういうことを考えるかどうかということにつきましては、相当検討いたしました。しかし、やはり考えまして、これからの環境問題に関するいわば根幹となる法律といたしまして、その理念というものを前文で書くのか、または条文で書くのかということになりますと、法的規範性といたしましては、やはり条文そのものに落とした方が法律の構成上としては規範性が高まるということがございますので、私どもはあえて前文とはせずに、条項そのものに基本理念を三条、四条、五条ということで書かせていただいたわけでございます。  基本法の性格につきましては、先生指摘のように、言ってみますれば法形式といたしましては一般法ではございますが、環境に関する根幹的な理念を定める法律でございますから、そういう意味におきましては環境に関する憲法的な性格を持つというぐあいに、先生指摘のとおりと理解してよろしいかと存じます。
  61. 馬場昇

    馬場委員 大臣もそう考えておられると思いますので、もう答弁は求めません。  次に、環境権という言葉がよくうたわれるし、そういう主張もあります。ところが、この法律を見てみますと、環境権というのは、一つもそういう言葉は出ておりません。そこで大臣、これは一般的に言って、きれいな空気とか、きれいな水とか日照とか、また静穏な暮らしをするとか、きれいな景観とか、自然環境、海浜とか森林とか、私はさらに歴史的環境も含めて人間の生存に重要な良好な環境、こういうものを人間は享受する権利を持っておるということが、憲法の二十五条生存権から十三条の幸福追求権と言われております。こういうことを考えて、そういう中からこの法律もあると思うものですから、そういう人間の生存に重要な良好な環境を享受することは、人間は権利を持っているんだ、こういうことについての御見解をお聞きしておきたいと思います。
  62. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 先生のおっしゃることと、私も同感でございます。特に、人間は健康で文化的な生活を営む権利を持っている、そのために良好な環境は欠くことのできない条件であるということもそのとおりと思います。  ただ、基本法の中において、それらを理念として、例えば健全で恵み豊かなものとして維持することが欠くことのできない大事なことであるというようなことを初めとして幾つかったってございますし、環境のそういう恵みを受けることの人間としての当然の人権といいますか、そういうことがあるわけでありますけれども、これを基本法の中に一つの権利ということでうたわなかったのは、とかくすると、権利になりますと、権利ということに対する学説あるいはまた判例、そういうものでまだきちっとしてない面も十分ございますので、こちらは一つの憲法に次ぐ基本法でございますから、それなりに何らかのときに判例にも十分熟していない言葉を入れることはいかがなものかということもありまして、環境権ということは改めて使ってはおりませんけれども、その願うところの人間が健康で文化的な生活を営むためにそれぞれ与えられておる人間の立場というものについては、十分理解して組み込まれております。
  63. 馬場昇

    馬場委員 環境権について、今言われたようにいろいろな説がありまして、はっきり言って定説がないという状況もわからぬわけではないわけです。しかし、少なくとも環境庁はこの環境権の確立というものをやはり志向していくべきじゃないか。私たちの法律も、基本的人権として、やはり環境権というものを確立する布石みたいな文章にしておるのです。  だから私は、ここで今環境権をこの中に入れなさいということもですけれども、それよりも、環境庁はやはり環境権を確立するということに向かって環境庁の中にプロジェクトチームでもつくって、環境権というものを確立する。例えば環境権の概念はこういうことだとか、そしてそれをどういうぐあいに確立するというので法律にうたっていくのかどうか、こういうことで、環境権を確立するということに向かってプロジェクトチームでもつくって環境庁内で勉強をすべきじゃないかそういうことを思うのですが、これはどうですか。
  64. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生がおっしゃりたい趣旨については理解できるわけですが、今回環境基本法におきましては、先ほど大臣がお答えいたしました、人間が健康で文化的な生活を送る上においてということで、憲法二十五条の趣旨を全うするために「環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないもの」ということで、明確な認識を法律上理念として掲げたところでございますし、それは同時に「現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受する」ことができるようにということで、明確に法制上は位置づけたというぐあいに私どもは考えているわけでございます。  ところが一方、権利ということになりますと、先生指摘になったような事情もございます。これにつきましては、まず実社会においてその内容が一般的に認められ、また裁判所等においてもその有効性が認められて、初めて法律上の権利として位置づけられることになるというぐあいに私ども理解しておるわけでございます。  そこで、御指摘の環境権につきまして、判例において現在認められているものでもなく、検討会において、これを設けたから権利としてどうのこうのというようなものになるわけではございませんが、しかし、引き続きこういったものについての学説、判例の動向等を見守っていく必要があるというぐあいに考えるわけでございます。
  65. 馬場昇

    馬場委員 私は、勉強しろと言ったのです。見守れと言っていないんですが、勉強しないんですか。
  66. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私どもは、そういう意味におきまして勉強するということはやぶさかでないし、判例、学説等がどのような動向にあるかということについて勉強していく必要があるということは、それは当然だというぐあいに考えております。
  67. 馬場昇

    馬場委員 次に、今時崎委員からも出ました環境アセスメントについて、少し重複することがあるかもしれませんが、質問いたしたいと思います。  大臣、環境アセスメント法という法律、これを法制化をするということについてどう大臣は考えておられますか。この法律がどうだこうだという法律質問じゃないんですよ。アセスメント法を制定しなければならぬ、あるいはする必要はない、その大臣のアセスメント法の制定についての見解を聞きたい。
  68. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 馬場先生御案内のように、現在の日本にアセスメント法はございませんね。大きな規模の事業につきましては閣議決定事項でやっていますが、先ほどの時崎先生の御質問にもございましたように、閣議決定、それから閣議決定そのものは法律を拘束することはできないという事実もございまして、いろいろな点が論じられるあるいは議論されるわけでございます。したがいまして、この環境基本法関係なしにアセスメント法という法律が必要ではないのか、それに対して大臣はどう思うか、こういう御質問だと私は理解しますが、今この時期に基本法関係なしにとおっしゃられても、これはまたいろいろな理解の仕方がございます。  したがいまして、基本法の命ずる姿からいきますと、運営上あるいは実態上においてどうしても、今の基本法では法制化までこれは禁止しておりませんので、法制化の道を開いておりますので、そのときには当然必要な法制に踏み込むということも考えなければならない、見直しがあるというように申し上げたいと思います。
  69. 馬場昇

    馬場委員 実は、先ほど時崎委員からもお話がありましたが、環境アセスメント法を昭和五十六年の国会提出されました。私はこの環境委員会理事だったから、もう直接タッチしたからよく知っている。そして、五十八年についに廃案になったのですね。廃案になった後、五十九年にこの環境委員会でこの問題がまた相当議論されたわけですよ。  そのときの環境庁長官は上田さんでしたけれども、我々の質問に対して上田さんは、こういう答弁をしているのです。環境影響評価法の制定による環境汚染未然防止の徹底は、我が国環境行政の根幹であり、その法律の早期制定は環境行政の最重要課題であります、そして、国民の中にもこの法制定の考え方が定着しておる、だから、法律制定をやりますというような答弁が、廃案になった後出ているのです。このときの上田長官は、環境行政の最重要課題、法を制定しなければならぬ、国民もそれを望んでいる、定着していると言っているわけです。  ところが、今の大臣の答弁を聞きますと、それからもう十年たっておる。そして今の閣議アセスがいかにずさんか、言うならば非常に公平性も欠いているし、客観性も欠いておって、本当に十分な機能を果たしていない。しかも、それも閣議アセスが十年たっているのです。そして、問題がある、ずさんだということもわかっている。そういうときにこそやはり環境アセスメント法を、あなた方は法律を一回出したのだから、廃案になった後もまた出すと言っているのだから、最重要課題と言っているのだから。少なくとも、この基本法の中に、法律を制定する、こう書くべきだと私は思うのです。ところが、そう書いてないけれども、それを否定しているわけじゃないし必要があればやるんだとおっしゃる点はわかるのですけれども、少なくとも大臣の、十年前の上田長官答弁よりもずっと後退しているというような答弁じゃ、ちょっとアセスメントに対する環境庁の最重要課題が最重要課題じゃなくなっているし、地球環境を守るとか、いろいろ後退していると思うのですが、その辺は、やはりそういう前へ出したという考え方、そして廃案になったときもまた出そう、出すという決意、そういう決意というのは後退させないのだということくらいはやはり言ってもらいたいですね、大臣。どうですか。
  70. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 実は、今御審議をいただいております基本法の中で、アセスというのは大変大事なこととしてもちろん取り上げでございます。アセスがなぜ大事かといえば、つまり、我々の日常生活の中で環境への負荷が重過ぎる、そうなりますと環境破壊につながる。それが今度は我々の生活に、経済と環境との統合ということがどうしても欠くことのできないこれからの重要な環境問題のテーマでありますので、そのためには、アセスがでたらめであれば、経済活動もこれは持続可能なこともできなくなるわけですね。  それから、環境に対するどんな負荷がありましてもそれを取り払うことができない、そういうことになればこれは重大なことでありますので、そういう意味で、今回の環境基本法の目指す、環境への負荷をどうするかの問題、あるいは持続可能をどうするかの問題、それによって人間の生活が幸せになるし、文化的になっていくということが満たされていかなければならないということがもとでありますので、そのための一つの手段としてアセスが必要なわけでありますね。  ですから、そのことは環境基本法において十分道を開いてございますので、その後で、まず環境基本法を今度施行する中において、法制化が必要になってくるかあるいはどうするかという問題が、これから我々の対策の中で当然生まれてこなければならないはずであります。  その目標は、先ほど言いましたように、我々の生活を絶えず持続可能な状態に置くということ、環境に対する極度の負荷を軽減させていくということ、この二つが満たされなければ意味がないわけでありますので、その満たすための手段としてはアセスは欠くことのできない重要な柱であるという認識を持ちながら、今度の法案もつくられたわけでございます。
  71. 馬場昇

    馬場委員 法律の条文の解釈はもういいとして、少なくとも今の閣議アセスはだめなのだということは、もう国民の共通の認識ですよ。そして、やはり環境アセス法という法律をつくらなければいかぬということも国民は認めていると私は思うのですよ。そして、先進諸外国の中でこの環境アセス法がないのは、ほとんど日本だけではないですか。外国にもあるわけです。  だから、少なくとも私は、この法律の解釈を聞くのでなしに、環境庁長官として、もう環境アセス法をつくらなければならぬ。だから、今私が言ったような状況の中で、例えば検討して一年後にはつくりたいとか、あるいは二年後にはつくりたいとか、そういう方向で取り組む、それが現在の国民の願いでしょう。それから、世界の常識でしょう。そういう決意を聞いておるのですが、どうですか。
  72. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 同じことを繰り返して大変恐縮でございますけれども、その信念においては先生と同様であります。ただ、我々は、今環境基本法案を御審議願っている過程において、環境に取り組む理念の問題とか、あるいはまたこれに対するそれぞれの立場の責務の問題とかございます。  そういう中で、環境基本法の示すところを果たしていくためには、手段としては環境アセスということは欠くことのできない最重要課題の一つであるということも十分認識いたしておりますので、それをまず進めて、そしてそのためにアセス法が必要であるとなれば、これは当然皆さんに、また国会に御提案させていただくことになるでありましょう。  しかし、その時期は明示できないのかということになりますと、まず基本法をこれで御成立いただきまして、その後で基本法の運営をさせていただきまして、そしてやはりその基本法の運営の中において、基本法目的、精神、理念というものがいかにして果たされているかということも十分踏まえて、そういう中で一つの答えが出てくる。つまり、アセスならアセスの単独法が必要であるかどうかという答えも出てくる。当然私は、もうこれからの時期は、先生の胸に抱いておる時期が、私も十分それは理解できる時期でございます。
  73. 馬場昇

    馬場委員 私ども法律でも、法制化するとなっておって、法制化は次に研究して出すわけですから、今の大臣の答弁も、これをやってみて、時期は私が思っているのと大体というような話も出ましたから、ぜひひとつ、法を制定しなければ、先ほど時崎さんの話もありますように、やはり閣議アセスでは問題があるということをぜひ主張しておきたいと思います。  次に、農林漁業の問題について、農林漁業の環境保全に果たす役割というのは非常に大きい、効果も大きい、こういうぐあいに私は思うわけでございますし、農水省も昨年の六月の新政策で、環境保全型農業の確立を政策目標として提出しておるわけです。だから、そういうことも含めて、まず農水省にお尋ねしたいと思うのです。  農林漁業というのは、先ほども言っていますように、環境保全に効果が非常にあるわけですから、環境保全という立場で農林漁業を国は育成すべきであると私は考えております。  例えば中山間地が今過疎や高齢化になりまして、耕作地が放棄されておるところが非常に多いわけです。放棄されれば農業の環境保全機能が失われていくわけでございますから、こういうことがあってはならない。  例えば今、米の輸入自由化の問題が出ておりますけれども、水田農業は国土保全や環境改善に非常な役割を果たしているわけですから、例えば米の輸入自由化で安い米がどんどん入ってきて、日本の水田農業が寂れてしまっていく、そうなってくるとまた環境保全の機能が低下していくわけでございますから、そういうことのないように国は助成をすべきであろう、こういうぐあいに思うのですが、農水省はどう考えていますか。
  74. 井上隆昭

    ○井上説明員 お答えいたします。  農林業、農村が果たしている国土の保全、環境保全といった公益機能、これについては大変重要なことであるというふうに認識しております。そのためには、今後とも適切な農林業活動を通じてこれらの機能が維持増進されるということが重要であろうというふうに思っております。  このため、農林業の担い手の育成確保、基盤整備の推進等によりまして、必要な条件整備、これに強力に取り組みながら、農林地の適切な利用管理を進めてきたところでございます。  中山間地域の振興と公益機能の維持増進ということにつきましては、地域の自主性と創意工夫を基本にしながら、これらを支援するということを基本に置きながら進めることが適切であるというふうに考えておるところでございます。  このため、従来から、有利な補助率の設定でございますとか、採択基準の緩和でございますとか、多様な措置を講じてきているところでございますが、今後これらの施策に加えまして、地域の特性を生かした農林業の振興、集落機能の再編強化、農林地の利活用の促進といった新たなる制度の創設ということを図りまして、対策を強化してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  75. 馬場昇

    馬場委員 新政策に環境保全型農業の施策を出しておられるのに、今そういう説明は余りなかったわけですけれども、ではもう少し、例えば林業を例にとって申し上げてみたいと思うのです。  この間、本会議での我が党の提案理由のときにも私が申し上げたのですが、九二年の林業白書によりますと、日本の森林の公益機能を金額に換算いたしますと、国の予算の約半分、三十九兆円の公益機能を森林は果たしておるということが農水省の林業白書にも出ておるわけでございます。こういう機能が、今もう山は荒れほうだいですよね。その荒れた原因というのは、外材が今七〇%以上、日本の使用する材木の中で七〇%以上が輸入でしょう。だから、安い外材がどんどん輸入されてきて、相手の国の自然を破壊しておるだけでなしに、日本の国の林業を破壊しておるわけですよね。こういうやり方というのは環境保全の上からまことに問題である。  私は、助成とか言ったが、補助をすべきではないかと思うのは、例えば国有林をとってみても、特別会計でやっているのですよね。それが今二兆円ぐらいの赤字を持っている。林野庁の職員というのはその二兆円の赤字の利子を払うために毎日毎日働いているというような状況にもなっているわけです。それが日本の山を荒らして、公益機能を失わせつつある、こういう状況にもなっているわけでございまして、例えば具体的に言うと、特別会計制度というのはおかしい。それを残すならば、二兆円というのは、公益機能からいいまして全部一般会計から出してやるとか、そういうこと。あるいは外材なんかどんどん輸入してはならぬ、相手の国の自然を破壊しているじゃないかとか。そういうことをやることが自然環境を守る環境保全型の農業、林業だ、私はこう思うのですが、そういう具体的なことを、環境保全型農業とか林業にすると新政策を出しているのですから、そういう中身がついておるわけですか。
  76. 弘中義夫

    ○弘中説明員 御説明申し上げます。  一応林業の問題ということで御説明さしていただきますが、先生指摘のとおり、今回の林業白書で森林の公益的機能、ある一定の前提を置きますと三十九兆円あるということで、それを白書の中でうたってございます。  民有林につきましても、これまでの林業施策を進めると同時に、自治省や国土庁との勉強会の成果といたしまして、地方財政措置によって森林の公有林化、地方自治体所有の森林にするとか、あるいはそれの整備のための制度もできたところでございます。  国有林につきましても、先生指摘のとおり、二兆円有余の赤字がございまして、累積債務がございまして、これの解消のために現在新たな改善計画に沿って改善を進めているところでございます。  その改善に当たりましては、一つは自主的改善努力を尽くすということが根幹でございますけれども、あわせまして民有林助成との均衡に配慮しつつ所要の財政措置を講ずるということで、国有林野事業の改善計画を進めているところでございます。  平成五年度の予算におきましても、森林の有する公益的機能の発揮等の観点から、造林・林道事業等の経費及び一般行政的経費並びに二兆円有余の債務対策費といたしまして、一般会計からの繰り入れを前年度に比べ約二〇%増を計上しているところでございます。  今後とも、自主的改善努力を図りつつ所要の予算の措置を図り、国有林の公益的機能を果たすという使命達成に努めてまいりたいと思っております。
  77. 馬場昇

    馬場委員 余り時間がないわけですけれども、大臣に結論的にお尋ねしておきたいと思うのです。  先ほどから議論しておりますが、やはりこの環境政策という政策と農林漁業政策という政策の一体化というものを政府においては図る必要があろうと私は思うのですよ。環境保全ということから考えて、環境政策と農林漁業政策の一体化、そういう一体化に向けて、ぜひ政府は総合的、有機的に政策を進めるようにやるべきだと私は思うのですが、いかがですか。
  78. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 農林業は環境の保全に非常に大事な要素を持っている、これは先生の御指摘のとおりでありまして、環境の保全に配慮した形で農林業が健全に維持されていくということは、これは極めて重要なことでもございますし、また農林業の持つ使命といいますか、自然環境に与える大変なかかわりといいますかこれをますます発展させなければならないという点も私は全く同感でございますので、こうした各種の観点から、これからも一生懸命努力してまいりたいと思っております。
  79. 馬場昇

    馬場委員 やはり環境庁が音頭を取るのか、これはやはり総理大臣なんかにも聞いてみたいと思うんですけれども政府の中で環境行政とか農林水産行政との一体化をどうやって図っていくかということを真剣に、重要な問題としてこれを考えなければ、農林水産業も廃っていくしあるいは環境行政もうまくいかないというようなことで、ばらばらになっていくんじゃないかという意味で、この一体化についての努力をぜひ大臣に要請しておきたいと思います。  それでは、これは先ほどもちょっと質問が出ましたが、環境基本計画で一言質問しておきます。  環境保全に関しては国の他のいろいろな計画がございますが、環境基本計画が国の他の計画に優先すべきであると私は思うんですが、そう考えておられますか。
  80. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境基本計画は、国が作成する各種の計画との関係において申し上げますならば、環境保全に関してはやはりその基本的な方向を示すものとして位置づけられるものでございまして、環境基本計画は閣議の決定を経まして、政府全体の合意の工作成されるということになるわけでございます。  そこで、国の各種計画は、環境の保全に関しましては環境基本計画の基本的な方向に沿って策定等がなされることになるというふうに理解できるものでございまして、そういう意味におきまして、先生が御指摘のとおりでございます。
  81. 馬場昇

    馬場委員 次に、情報公開の問題ですけれども政府の案を見てみますと、これは努力義務になっておりますよね。提供するといって、情報を持っておる者が何を提供するのかしないのかと自分で判断して提供するという。それも努力義務。私たちの法案は、情報を欲しい人が要求すると公開しなければならないという、公開義務を出しておるわけでありますが、これについて、私たちの言う趣旨で、この法律以外に別途情報公開法という法律政府で考えてつくる必要があるんじゃないか、こういうことについてはどうですか。
  82. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生が御指摘の問題に対しまして、私が政府を代表して答弁するわけにはまいらないわけでございますが、情報が適切に提供されるということは非常に重要なことであり、そういう意味で、行政手続として政府として統一的にそういう取り組みをするということは、私は意義があるものだというぐあいに考えております。
  83. 馬場昇

    馬場委員 議論あるんですけれども、時間がありませんから。  次は、いわゆるグリーンGNPです。  環境保全を優先させる社会に転換するためには、こういういわゆるグリーンGNPという新たな指標というのをつくる必要がある、国民もそれを求めておると思うのですが、このグリーンGNPの開発について、どんな手順でいつごろまでにこういうものを開発するという手順で進めておるのか、まず経済企画庁に質問します。
  84. 大来洋一

    ○大来説明員 御説明申し上げます。  グリーンGNPという言葉は使っておりませんけれども、現在、国連におきまして国民経済計算体系の見直しを行っております中で、環境・経済統合勘定というものを開発するように勧告するということが予定されております。  これは、現在のGNP統計は国連のSNA、国民経済計算体系に基づいてつくっておりますが、この大もとでありますSNAにつきまして、国連が国際基準を本年央に改定するという予定になっておりまして、その中で環境・経済統合勘定の開発ということも勧告をするという予定になっております。既に経済社会理事会の統計委員会では、経済社会理事会で勧告をするようにということで決議がされております。  我が国では、こうした状況を踏まえまして、平成三年度から、既に環境・経済統合勘定の研究については行っております。過去におきましては主に理論面での研究を行ってまいりましたけれども、平成四年度以降三年計画で、四、五、六年度におきまして、我が国の環境・経済統合勘定の開発、それから試算を行うということを考えております。この間で一応の試算を行いたいと思っておりますが、試算でございますので、どの程度完成するかわかりません。その完成度に応じまして、それ以降また検討を続けていきたいというふうに考えております。
  85. 馬場昇

    馬場委員 これは、環境庁もぜひひとつ、何としてもこのグリーンGNPの開発について、経済企画庁とかまたほかの省庁とも連携をとりながら、環境保全という立場からぜひ環境庁もひとつかんで、大いに主張をしていただきたいと思っております。  次に、時間がありませんが、二つだけ要望しておきたいと思うのであります。  生命の源であります水道水源の水質保全はもう本当に緊急な課題でございますから、これを立法化するという方向で検討なさっておるようでございますが、環境庁、厚生省が何か縄張り争いをしているなどという話も聞きますけれども、とにかく話し合いをして、水道水源の水質保全のための立法化を努力していただきたいということが一つ。  もう一つは、大量消費、大量廃棄の社会を変革する一助として、国内で発生した廃棄物は国内で処理する、それができなければ生産をしない、こういう社会の仕組みをつくる、こういうことについても、ぜひ環境庁が、厚生省、通産省、こういうところと打ち合わせていただいて、そういう社会のシステム、仕組みをつくるんだということをぜひ研究して努力していただきたいということを、答弁はもう時間がありませんから求めませんけれども、以上要求して、私の質問を終わります。
  86. 原田昇左右

    ○原田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ————◇—————     午後二時四十六分開議
  87. 原田昇左右

    ○原田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。斉藤一雄君。
  88. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 「環境基本法制のあり方について」の答申では、「環境影響評価の重要性・考え方を盛り込むことが重要」としながらも、「必要に応じて現行措置を見直していくことが適当との意見が大勢であった。」と述べています。そのことは当然法制化も含んでいると解釈していいですか。
  89. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  そのように解釈していただいて結構でございます。
  90. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 次に、情報公開について、第二十六条では「個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ」「必要な情報を適切に提供するように努めるものとする。」となっておりますが、何ゆえに公開するものとするとしなかったのですか。
  91. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、今日の環境問題を解決していくためには、環境保全に関する情報を積極的に提供していくことが極めて大切であるというぐあいに考えます。このため、従来から各資料の一般への提供、文書閲覧窓口の整備充実等々の措置を講じてきたところでございます。  環境基本法案には、こういった事情を踏まえつつ、それぞれの主体が環境に関する理解を深め、環境保全のため望ましい行動をとるためには、やはり正確な情報が提供されることが不可欠であるという認識に立って、特に国が環境の保全に関する必要な情報を適切に提供するように努める旨の規定を置いたところでございます。  そこで、先生指摘のように、情報の公開という表現をなぜ用いなかったのかという理由でございますが、法令に用いる用語としてはいまだ定着しておらず、意味、その内容も明確にはなっておらないという事情があるわけでございます。このため情報の公開という表現は用いてはおらないわけでございますが、先ほど申し上げましたような趣旨で、適切に情報を提供するという側面からそういう記述をさせていただいたところでございます。  なお、情報の公開一般ということでございますれば、去年出されました行革大綱におきましても、情報公開に関する一般的な制度化については、これまでに整理された検討課題を踏まえつつ引き続き調査研究等を進めるということでございまして、まだ政府全体としては調査研究の段階だというぐあいに私ども理解しておるところでございます。
  92. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 地方公共団体がそれぞれ情報公開についての条例を制定していると思いますけれども、この法案とどういう整合性を持つのか、その点、関連してお聞きをいたします。
  93. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 それぞれの地方公共団体で、適切に情報を住民等に開示していくということが適当であるというようなことから、条例を定めている例があることは私も承知しております。それは地方公共団体の施策として尊重されてしかるべきだというぐあいに考えますが、権利ということになりますと若干の問題が生ずるおそれはあろうかと存じます。
  94. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 何事も地方公共団体の行政からは後退していると言わざるを得ません。  それでは次に、地方公共団体のいわゆる上乗せ、横出し条例の制定については、法令に別段の定めがある場合を除き、自主性を尊重すべきではないか。
  95. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、日本の環境行政、公害行政におきましては、地方公共団体において独自の条例を設け、それによって日本の環境行政が進展してきたということは、私もそのとおりだと思うわけでございます。  そういう意味で、地方公共団体がどういういわゆる上乗せ条例、横出し条例ができるかということにつきましては、これは先生専ら専門でございますので、私からお答えするのもちょっとはばかるわけでございますが、地方公共団体がいかなる上乗せ、横出し条例を制定できるかにつきましては、憲法における地方自治の本旨、また地方自治法におきまして既に一つの体系ができ上がっておりまして、法令に違反しない限りにおいて制定できる旨、これらの法令で規定されておるところでございます。また、最高裁判所の判例におきましても、国の法令と条例の趣旨、目的内容及び効果等を総合的に勘案して個別に判断すべきものというぐあいにされているところでございます。このように、憲法、地方自治法、最高裁判所の判例によってこういった考え方は確立しているというぐあいに私ども考えております。  今後とも、こういった考え方に沿いまして、各地方公共団体において、必要に応じ自主的にこれらが適切に実施されていくということができるし、そうあるべきものというぐあいに考えております。
  96. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 今回の法案において最大の問題といいますか欠陥は、住民の意思と役割が、私から言わせれば故意に無視され軽視されている点であります。一体どういうつもりなんですか。
  97. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生の御質問の趣旨は法案策定過程における問題であるというぐあいに理解してお答えさせていただきますと、地球化時代にふさわしい環境政策のあり方ということにつきまして、昨年六月の地球サミットの開催に向けまして国内外でいろいろな議論が行われたわけでございます。  政府におきましてもかねて検討を進めてきたところでございまして、地球環境日本委員会その他いろいろな場所において、地方公共団体を初め各民間団体の御意見も徴してきたところでございます。そういった議論の成果というものを中央公害対策審議会及び自然環境保全審議会の審議に投入をいたしまして、それらの意見が十分反映されるように私どもとしては取り扱ったつもりでございます。  中央公害対策審議会、自然環境保全審議会におきましても、合計二十回以上にも上る濃密な会合を開いて今回の御答申をいただき、その御答申に基づき今回法案を作成いたしたわけでございまして、私どもといたしましては、さまざまなレベルにおける議論を背景といたしまして、広く国民各界各層の意見を審議に反映させていただき、その結果をこの法案に盛り込んだというぐあいに考えておるわけでございます。  ただ、この過程におきましていろいろ御批判があったことは私どもも承知しておりますが、私どもとしては、環境行政を進めるに当たりましては、広く住民一般の意見を徴していくということは非常に重要なことだと考えております。今後ともその方向に向かって私どもは努力してまいりたいというぐあいに考えます。
  98. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 基本法第二条、第三条に「人間の健康で文化的な生活」とありますが、これは憲法第二十五条の趣旨と同じですか。
  99. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私ども、今回の基本法案の二条、三条に御指摘の表現を使っておるわけでございまして、その趣旨は、憲法第二十五条における「健康で文化的な」というのと同じ趣旨でそれを考えておるわけでございます。
  100. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 大臣、一言。
  101. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 斉藤先生の御質問にお答えしますが、「健康で文化的な生活」というのは憲法二十五条と同趣旨でございます。
  102. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 そこでお伺いいたしますが、人間の健康にとって日照は欠くことのできないものであります。この日照について基本法ではどのように位置づけていますか。
  103. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境基本法案の対象とする範囲でございますが、これは、公害にとどまらず、大気、水、土壌といったような環境の自然的構成要素、またはこれらによって構成されるシステムに着目いたしまして、これを人にとって良好な状態に保持するということを中心的な内容とすることといたしております。この観点から、広範な日照の阻害というものも当然環境基本法の対象になるというぐあいに私ども考えておるところでございます。  具体的には、十三条の「施策の策定等に係る指針」におきまして、「人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。」とされておるところでございまして、この自然的構成要素の中には日光も含めて考えることができるというぐあいに考えているわけでございます。  また、二十条の第二項の規制措置におきましても、いわゆる公害以外のものでありましても、人の健康または生活環境に係る環境の保全上の支障が生じる場合には、その防止を図るよう努めることとしているところでございまして、仮に広範な日照の障害が生ずればこの条項を使うことができるというぐあいに考えているところでございます。
  104. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 それでよろしいと思うのです。ただ、基本法ではそのように位置づけておりますけれども、実際の法律では極めてこの点が軽視をされております。したがって、今後この基本法に基づいて法律の中にきちんと位置づける必要がありますので、今後ともこの点はお願いをしていきたいというふうに思います。  それでは、ただいまの日照ですが、これは私どもは一般的に環境権の一つというふうに位置づけておりますけれども、それは一応別として、憲法の精神からいっても、あるいは基本法目的からいっても、極めて重要なわけであります。今、別としてと言ったのは、先般来、環境権の論議が行われてきておりますからそういうふうに申し上げたいのですが、今私が申し上げた憲法あるいは基本法目的から見て、日照権とは言いませんけれども、さらにこういう点を明確にしていく必要があるのではないかという気がするわけですが、その点どう思いますか。
  105. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 御指摘のように、先日来私どもお答えしているところでございまして、環境権として位置づけることに関しましては、その内容、法的性格等について定説がなく、また判例においても認められないということから、そういう位置づけは困難であるということではございます。  一方、この環境基本法におきましては、第三条の環境の恵沢の享受と継承ということは、憲法二十五条に由来する人間の生存権につきまして、それを具現化していく上においては非常に重要なことであるというぐあいに、重要性をこの基本法もとに位置づけたわけでございます。したがって、その内容の実現に向かって政府及び国の施策というものが具体化され、そういった趣旨に沿って今後の環境政策は進められていくべきであるというぐあいに考えるところでございます。
  106. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 さらに具体化するようにお願いをしておきたいというふうに思います。  次は、各省庁関係法律の中にその目的、理念というものが書かれておりますけれども、そこでは環境の保全を図るという明確な規定のない法律があるわけであります。その点で、この環境基本法との整合性についてお尋ねしたいと思います。そういう法律が余りにも多いので残念なわけでありますが、今後整合性を図るように法改正を望んでおきたいと思います。  一々やっておりましても時間がありませんので、特にここでは都市計画法、都市再開発法、この点について、環境庁並びに建設省お尋ねをしておきたいというふうに思います。
  107. 澤井英一

    ○澤井説明員 都市計画法、都市再開発法について、環境基本法とどう整合しているかという御質問でございます。  都市計画法体系、これは都市の再開発も含みます。スプロールあるいは住工混在といった劣悪な都市環境の解消を初めといたしまして、健康で文化的な都市生活の確保を図るということを都市計画法の理念に掲げてございます。いわば総合的な都市環境の改善を目的とする法体系というふうに考えております。  特にこの中で、環境の保全という側面につきましても、例えば都市計画全体が公害防止計画に適合しなければいけないという定めがございます。また、市街化区域に関する都市計画の決定、認可に際して建設大臣から環境庁長官に意見を聞くべき旨の規定もございます。また、公害の防止などの観点を含めて、用途地域などを的確に定めるべきであるという定め、さらには市街化区域におきましては、都市公園あるいは下水道といったような都市施設を必要な都市施設として都市計画決定すべきであるというような規定が都市計画法体系の中に定められております。  したがって、私どもといたしましては、都市計画に関する法体系は環境の保全につきまして環境基本法案の趣旨と十分に整合していると考えておりますが、今後とも環境基本法案の趣旨を踏まえまして適正な運用を図ってまいりたいと考えております。
  108. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、個別の法律目的等におきまして、環境の保全を規定しておらないケースがあることは、これは事実でございます。  そこで、今回環境基本法が制定されることによりまして、これらとの関係はどうなるかということでございますが、この環境基本法は、まさにこれからの我が国が取り組むべき環境問題につきまして基本理念を定め、国、地方公共団体事業者、国民のそれぞれの責務を書き、それに従って政策展開を行っていくべき一種の基本的なフレームワークを定めた法律であるわけでございます。  具体的には、この法案の第十八条に基づきまして、「国は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全について配慮しなければならない。」という条項を設けたところでございますし、またさらに、政府は環境基本計画に沿って、それに基づき国の環境保全に関する施策の基本的方向を定めるということを決めているところでございます。この基本法ができることによりまして、環境保全に関する基本的な事項はこの法律の趣旨に従って今後展開されていくということになるものと私ども理解しているわけでございます。
  109. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 基本法では不十分でありますけれども、今環境庁からの説明がございました。しかしながら、建設省の都市計画法、都市再開発法に対する基本的な認識が私は大変問題だというふうに指摘をせざるを得ないわけであります。今の御答弁でも、この基本法と十分に整合しているというふうにおっしゃいました。これでは基本法を何のためにつくるのか意味がなくなってしまうと思うのです。  抽象的でわからないとおっしゃるならば、お聞きいたしますけれども、都市計画法で言う環境の保全とは、では具体的にどこを指しておられるのですか。
  110. 澤井英一

    ○澤井説明員 御説明申し上げます。  先ほども申し上げたところでございますが、例えば、規定にもございますけれども、用途地域などを含みます地域地区の都市計画を定めます場合に、公害の防止ということをその一つ観点に位置づけているということ、あるいは、順番が前後いたしますけれども、公害防止計画が定められている場合には、都市計画全体として公害防止計画に適合していなければいけない、こういった明文規定が都市計画法の中にもあるわけでございまして、その辺のことを先ほど御説明申し上げた次第でございます。  都市計画に限りませず、建設行政全体にとりましてこの環境問題は非常に重要な課題であるというふうに私ども認識しておりまして、基本法に示されております諸課題につきましても、私ども自身の課題として積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。このため、現在有識者の御意見もいただきながら、所管行政全体につきまして、今後の環境行政のあり方について検討を進めている次第でございます。こういったことも踏まえまして、建設行政におきます環境対策への取り組みをさらに充実してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  111. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 用途地域、地域地区の問題もありますし、それから公害防止計画もあります。わかりやすく言いますと、東京に一極集中、国会の移転までしなければならないというようなことになってきているわけであります。そして過密都市、日照がほとんど奪われてきている、緑が減少してきている、水が汚れてきている、空気が汚くなってきている、騒音がひどくなってきている。これらは、すべてとは言いませんけれども、都市計画法なりあるいは今お話がありました公害防止計画にしろ地域地区の変更にしろ、かかわっている問題なんです。  そういう意味で、根本的に都市計画法を環境保全のためのためのと言うと語弊があるかもしれませんけれども、私は少なくともこの基本法に整合するように早急に改正をすべきであるというふうに思いますので、その点をお願いをしておきたい。  それでは次に、水道水源の水質を保全するためには、公害対策基本法、水質汚濁防止法、下水道法、河川法、いろいろ数多くの法律関係してくるわけであります。したがって、所管官庁も環境、厚生、建設など多岐にわたっているわけであります。新たに水道水源の水質保全に関する法律案をつくろうというふうになってきているわけでありますけれども、その場合の各省庁が担う分担、役割について説明をお願いをしたい。環境庁、厚生省、建設省、それぞれお願いします。
  112. 浜田康敬

    ○浜田説明員 お答えいたします。  安全で良質な水道水の確保のためには、水道水源に着目した総合的な水質保全対策が極めて重要であるというふうに厚生省として認識しております。  この問題につきましては、去る二月四日に、厚生省に設けました水道水源の水質保全に関する有識者懇談会より報告書をいただいたところでございます。この報告書におきましては、さまざまな規制的措置あるいは生活排水処理施設の整備などの事業の一体的かつ計画的な実施、あるいは水質汚染事故発生時の対応等の幅広い内容にわたります貴重な政策提言が盛り込まれております。  こうした政策提言に沿いまして対策を実現していくためには、大変幅広い関係省庁協力をしていく必要があるだろうというふうに思っておりますが、厚生省といたしましては、水道事業を保護し、将来にわたり安全でおいしい水を確保するという立場から、環境庁を初めとした関係省庁の御協力を得ながら、実効性のある総合的な水道水源水質保全対策の確立のために、所要の法案国会提出に向けまして努力をしたいというふうに考えているところでございます。
  113. 赤木壯

    ○赤木政府委員 お答えいたします。  環境庁は、環境庁設置法で、環境の保全に関する基本的な政策の企画、立案、推進あるいは関係行政機関の環境保全に関する事務の総合調整及び水質汚濁防止法の施行に関する事務等の公害の防止に関する事務を実施すること等を所掌事務といたしまして、環境の保全に関する行政を総合的に推進することを任務といたしてございます。  お話しの水道水源の水質保全の問題につきましても、これまでも水質保全行政の重要な課題と認識しておりまして、環境庁の任務及び所掌に基づきまして、水道水源を含むすべての公共用水域を対象に公害対策基本法に基づきまして水質の環境基準を設定しておりますし、また、その確保に向けて水質汚濁防止法等に基づきます工場事業場の排水規制等を実施してございますし、さらに、各種事業あるいは普及啓発等の総合調整あるいはその計画的な推進に努めてきているところでございます。  今後とも、こういうふうに環境庁の任務を全うする観点から、水道水源の水質保全のために必要となる施策につきましても十分検討いたしまして、現行の対策の運用上改善を図る必要があるものについては的確に対応していくということにいたしたいと思っておりますが、同時に、必要があれば制度の検討、見直しについても前向きに対応していきたいというふうに考えてございます。
  114. 澤井英一

    ○澤井説明員 水道水源の保全につきましては、下水道行政あるいは河川行政を所管する建設省といたしましても、重要な課題と認識しております。  建設省では、これまで公共用水域の水質の保全のために、窒素や燐を除去するなどの高度処理の実施を含めまして、下水道の整備を着実に進めてまいっております。また、一級河川あるいは地下水の水質の観測、河川の汚泥のしゅんせつ、浄化用水の導入、また、場合によりましては河川の清浄水に汚濁水が流れ込むことを避けるためにあえて分離するための流水保全水路をつくるというようなこと、また、水を蓄えておきますダムの貯水池の富栄養化対策、こういったような施策を推進しているところでございます。水道水源をめぐります最近の問題の状況といったものを踏まえまして、今後ともこれらの施策の積極的な推進を図ってまいりたいと考えております。  なお、今御指摘の新規立法につきましては、政府部分の議論となった段階で、必要性を含めまして十分に検討してまいりたいと考えております。
  115. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 ぜひ今御答弁ありました方向で前向きに取り組んでいただきたいということを申し上げておきます。  こうした問題について、基本法案ではどのように位置づけていますか。
  116. 赤木壯

    ○赤木政府委員 お答えいたします。  政府提出環境基本法案では、環境の保全を図るために、環境基準の設定、これは第十五条でございます。それから、環境の保全上の支障を防止するための規制措置、これは二十条でございます。それから、環境保全に関する施設整備等事業の推進、これは二十二条でございます。そのほか、環境の保全に関する教育、学習等あるいは民間団体の自発的な活動促進、これは二十四条、二十五条というようなところに書いてございますが、こういう施策を相互有機的な連携を図りつつ総合的、計画的に講じなければならないというふうな規定になってございます。  こういうことで、水道水源の水質保全についても、こうした環境基本法の規定を受けまして、それぞれの地域の特性を十分勘案して、水道水源を含むすべての公共用水域に環境基準を設定し、それから、その達成に向けた工場事業場等の排水規制を行い、また、下水道等の施設整備あるいは住民の意識啓発、普及等、そういう各般の施策を総合的に講ずるようにいたしていきたいというふうに考えてございます。
  117. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 次に、公害の原点とも言われる水俣病は、公式見解から既に三十七年を経過しているにもかかわらず、いまだに解決しないというのは、まさしく歴代環境庁長官の責任であります。福岡高裁の和解案や熊本地裁判決を初め、熊本県議会、東京都議会などの水俣病問題についての早期解決決議をどのように受けとめておりますか。
  118. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 先生から御指摘のございました福岡高裁が示しました和解案あるいは熊本県議会、東京都議会の水俣病問題の早期解決を求める意見書、これは私も承知いたしております。  水俣病の解決についての重みというものを、私は全身に受けとめてそれを感じておりまして、一日も早く解決したいということで、実は率直に言いまして、日夜解決の道を求めておりますけれども、何しろ三十八年にわたる問題でございますので、一朝一夕には、一刀両断のような解決策が生まれないということに実は苦慮いたしております。
  119. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 東京都議会を初め各地方議会の決議というものを重く受けとめていただいて、これらすべて早期解決ということを要求しておりますので、ぜひこたえていただきたいというように思います。  関連いたしますが、東京都議会の意見書の中では、「水俣病問題の早期解決を求める声は、国内世論にとどまらず国際的世論にまで高まっている。」そのとおりだと思います。そういうことであれば、この環境基本法案の中にそうした観点を盛り込む必要があるのではないか、こう思いますが、いかがですか。
  120. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  水俣病の患者さんを含めまして、公害健康被害者の救済につきましては、このたびの環境基本法もとにおきましても引き続き重要な課題であると認識しておるわけでございます。本法案におきましても、第三十条の第二項におきまして、公害に係る被害の救済の円滑な実施を図るための措置について規定しているところでございます。  水俣病問題につきましては、これまでもたびたび御説明申してまいりましたが、環境庁といたしましては、これまでにも公健法に基づきまして二千九百四十五名の患者さん方を認定してまいりました。医学を基礎として公正な救済に努めてまいったところでございますし、また、中公審の答申を受けまして、平成四年度から、水俣病とは認定されていない方々に対しましても、あるいはそういう方々を含めた水俣病総合対策事業というものを進めておりまして、こういう方々約三千名の方々に対しましても医療費あるいは医療手当の支給をしてまいっているところでございます。  先生指摘のように、環境基本法もとにおきましても、環境庁といたしましては、引き続きこれらの行政施策の推進に努めまして、水俣病問題の早期解決に一層努力を図ってまいりたいと思うわけでございます。
  121. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 また、東京においては、私がたびたび指摘しておりますように、大気汚染による公害病の認定患者は六万人を超えているわけです。にもかかわらず、政府は第一種地域の指定を解除してしまった。こういうような環境行政の後退を前提とした環境基本法案、国民が見ても、熊本県民が見ても、東京都民が見ても、全く内容実質を伴わないものだ、こういう認識に立つだろうと思うのですね。  そうであってはならない。これまでのそうした患者に対する、あるいは行政の後退、そういう反省の上に立って、せっかく基本法をつくる以上は、そうしたものに対しても今後十分手当てをしていくんだ、あるいは解決をしていくんだ、公害をなくしていくんだ、二度と水俣病を発生させてはならないんだ、こういう観点一つ基本法の中に入ってないじゃないですか。これでは、先ほど申し上げたように、東京都議会からせっかく都民を代表した意見書が出ても信用されないですよ。  いま一度、この点は大臣にお答えいただきたいと思います。こんな環境基本法案で、信用されないですよ、このままでは。どう思いますか。
  122. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、我が国の環境行政の歴史からいたしますと、日本の公害問題は、国民の健康問題に被害を及ぼすという激甚な公害を引き起こしたということから出発したわけでございます。そういう意味におきまして、この教訓というのは非常に厳しい教訓であったというぐあいに私どもは認識しておるわけでございます。  こういう厳しい公害を国民の間にもたらすようなことのないようにということから、環境問題を事前に総合的、計画的に解決していかなきゃならぬという趣旨から、私どもは、これからの環境問題に対応する考え方といたしまして三つの基本理念を定めたところでございます。その第二番目の理念におきましては、科学的知見の充実を踏まえまして、事後的ではなしに事前的に手を打っていくという、事前的に手を打つ、予防を旨としてやっていくということを理念として掲げているところでございますし、また、二十六条だったかと思いますが、一たん不幸にして起こしてしまった公害による健康被害者に対しては、その公正な救済ということをやっていくということをうたっているところでございます。  そういうことで、この環境基本法は我が国における厳しい公害を起こしたという反省に立ってつくられた法律であるというぐあいに私どもは認識しておりますし、そういったような国民の期待と要望にこたえて私どもは対処していかなければならぬというぐあいに考えております。  先ほど二十六条と申しましたが、三十条の間違いのようでございます。三十条に規定しております。
  123. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 言葉の上ではそういうことになるわけですよね。したがって、この法案の中に盛り込まれないからどうこうと言っているわけではありません。水俣病問題の解決、そして大気汚染等による公害病患者の救済という点を国の責任において早急に解決をしてもらいたい。  それでは次に、我が国の政府開発援助や民間企業の海外投資に関連して、環境庁、国際協力事業団、海外経済協力基金は、具体的にどのような環境配慮、例えばガイドラインを定めていますか。
  124. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 まず、環境庁の方から御答弁申し上げますが、政府開発援助、いわゆるODAに関します環境配慮につきましては、本基本法案におきましては三十四条で規定をいたしております。この環境配慮につきましては、その実施機関、後で御答弁があろうかと思いますが、国際協力事業団あるいは海外経済協力基金といった実施機関におきまして環境配慮のためのガイドラインの策定を行っておりますし、またその審査体制の充実などを図っておられるところでございます。  それから、民間企業の海外事業活動につきましても三十四条で規定をいたしてございますが、民間企業が海外で事業をする場合にありましても、まず八条の第四項の規定で「事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努める」という責務を事業者が負っているわけでございますけれども、また現に、例えば経団連などにおきまして、地球環境憲章を定めて民間として独自に自主的に海外で環境問題を引き起こさないような取り組みを進めつつあるわけでございます。国としては、そのような民間におきます環境配慮が適正に行われるよう、情報の提供その他一層の督励を行っていくということを、先ほど申しました三十四条で規定しているわけでございます。
  125. 上田秀明

    ○上田説明員 政府開発援助に関連いたしまして御説明いたします。  昨年の六月に政府の決定で定められましたODAの大綱におきましても環境の保全ということを基本理念の一つに挙げておりまして、続きまして環境と開発の両立ということを原則の第一に挙げ、かつ援助の実施に当たりまして環境の分野を重視するということを重点事項に挙げているところでございます。  具体的には、援助の実施に当たりまして二国間の協議その他の場で相手国にこういう考えを伝えておるわけでございますけれども実施機関たる国際協力事業団におきましては、まずプロジェクトを形成して計画をする段階から環境配慮のための専門家を加えた形で調査チームなどを出しておりまして、環境面での影響に十分配慮してつくることとしております。  それから、平成五年度からは、過去に実施いたしました開発計画調査で今後事業化が予定されているものにつきまして、その後の環境関連の変化等を踏まえまして、再度環境影響評価調査実施するための予算措置をとったところでございます。  国際協力事業団では分野別に環境配慮ガイドラインを順次作成中でございまして、ダム建設、農業開発、経済社会インフラに係るガイドラインについては作成済みでございます。目下、鉱工業一般及び林業開発についてガイドラインを作成しつつございます。それから、海外経済協力基金におきましては、道路、鉄道、空港、港湾その他の十六セクターを含みます環境配慮のための経済協力基金ガイドラインを八九年十月に策定済みでございます。
  126. 飯塚和憲

    ○飯塚説明員 お答えいたします。  ただいま外務省の方から一部御紹介ございました、私どもが所管をしております海外経済協力基金、これは円借款を具体的に供与しておりますけれども、相手国が借款の申請をする前に、相手国に注意を喚起するために、その案件の計画準備段階において当該国が配慮すべき環境面の諸事項、これは十六の項目それぞれについて細かい規定になっておりますが、そういったガイドラインを策定しまして、実際にプロジェクトの採用等に適用しているところでございます。  私どもとしましては、このガイドラインを逐次充実するとともに、今後とも途上国援助の実施に際しまして住民の生活や環境に対する影響への配慮を一層強化するように努力してまいりたいと思っております。
  127. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 海外における事業活動については投資先国の環境基準ほかいろいろな問題があると思いますけれども、第五条で「地球環境保全は、我が国の能力を生かして、及び国際社会において我が国の占める地位に応じて、国際的協調の下に積極的に推進されなければならない。」とあるわけであります。  そこで具体的にお伺いいたしますが、途上国と我が国との間で環境影響評価の基準、環境基準あるいはさまざまな規制について大きなギャップが存在していると思います。その場合、どういうふうに対応されているのですか。
  128. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 各国ともどういう項目をどういうふうにして規制するかどういう法律をつくってどういうふうに規制していくか、その規制のレベルはどのくらいにするか先生お触れになりました例えば環境影響評価の基準とか環境基準とか規制値とかそういったものは、それぞれの国の自然的、社会的条件といいますか、その国で過去にどういう環境問題を経験してきたかとか、そういったいろいろな諸条件に応じて決まるべきものでありまして、いわばすぐれてその国の主権に関係するものだと考えでございます。したがいまして、相手国が途上国であれ先進国であれ、相手国が持っております基準が我が国の基準と必ずしも一致しないというのはむしろ自然だと思っておるわけでございます。  ただ、特に途上国で我が国がODAなどで関与している、あるいは我が国の企業がそこでいろいろな活動をしているときに、私どもから見て環境上いろいろ問題があるのではないかというような事例があった場合には、具体の事案に応じまして相手国との協議、例えば日本ではこういう経験をしている、日本ではこういう規制をしているといった情報を相手方に伝えるとか、そういったようなことで相手側の環境配慮の努力を、その国と一緒になって協議を重ねていく努力をしてまいりたいと思っております。また、もし相手側で環境保全に対する対処能力に多少問題があるということで日本に技術協力お願いをしたいというような場合には、これはそういった御要請に応じて我が国が持っている技術あるいは経験を積極的に相手方に伝えていく、そういう努力を重ねてまいりたいと思っている次第でございます。
  129. 上田秀明

    ○上田説明員 今お答えがございましたとおりでございますけれども、OECDの理事会の勧告等におきましても、第一義的には事業主体となる途上国がその実情に応じてみずからの環境を管理する責任を有するというふうになっております。したがいまして、具体的なプロジェクトごとにケース・バイ・ケースで、私どもといたしまして多少十分でないのではないかというような点があるような場合には、十分協議して対応を重ねて、理解を得つつ進めていくという配慮を図っているところでございます。  それから、昨今では、環境問題に取り組むための例えば環境センターの設立、あるいはそれに伴う技術者の派遣等におきます面で、いわゆる環境面での協力を行っているところでございます。
  130. 飯塚和憲

    ○飯塚説明員 お答えいたします。  開発途上国におきます環境基準、規制というのは、一般的には、他の先進国等の例を参考にしつつ、各国の状況に応じて設定されているというふうに私ども認識をしております。具体的にいかなる環境基準、規制が設けられるべきかという点につきましては、これまでのお話にもありますように、基本的には当該国の状況に応じて当該国の政府が決定すべきものというふうに考えております。  ただ、具体的なガイドラインの適用、先ほど申し上げました海外経済協力基金の運用例で申しますと、仮に相手国にそうした基準がない場合、あるいは存在しても極めて緩い場合、そういう場合には、例えば世銀、WHOといった国際機関の有しますがイドラインあるいは我が国における基準等も参考にいたしまして、適切な環境配慮がなされますように相手側と協議するということとしております。  また、我が国としましては、いわゆる政策対話等を通じまして、途上国側の環境問題に対する認識を高める、途上国の環境保全に対する認識のさらなる向上という点について努力をしておりますし、今後とも努力をしていきたいと思っております。
  131. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 だから、この基本法案が言葉だけに終わっていると言わざるを得ないのですよ。  先ほども申し上げたように、地球環境保全、これは大変立派な目標ですよ。そして我が国はどうするのか。我が国の能力を生かしていく、我が国の占める地位に応じていくんだ、そして国際的協調のもとに積極的に推進していくんだ、こう立派に掲げているわけですね。  ところが、今それぞれからお話がありましたように、やっていることは何か。途上国を例にとっておりますけれども、途上国には環境アセスメント制度あるいは環境基準、規制基準、それこそ用途地域もないでしょう。さまざまな問題を抱えているわけですね。ところが、日本の企業が海外に進出していった場合に、日本では公害の垂れ流しができない企業が、途上国ではできるようになっているじゃないですか。その国の基準に従う、その国に基準がなければ、参考にいたします程度のことでしょう。それは言葉だけです。途上国であれ先進国であれ、人類、人間の健康、暮らし、私は同じだと思うんですよ。だからこそ地球環境が叫ばれ、人類の繁栄がうたわれているんだと思うんですよ。こういうことをやっているから、海外でいろいろな問題を起こしているわけですね。  これは私は予算の分科会でも各省庁にいろいろ質問いたしましたけれども、全くお答えがなってないんですよ。そんなことで地球環境云々なんて言えますか。国内では公害の垂れ流しができない企業が、外地へ行けばどんどん垂れ流しができるんだ。これが、この法案の条文上にはあるけれども、実際やっていることは今言ったようなことでしょう。違いますか。     〔委員長退席、高橋委員長代理着席〕
  132. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 先ほど申し上げたことの繰り返しで大変恐縮でございますけれども、各国とも国会も持ち、そして法律も持っておるわけでございます。そして各国とも、どういう規制をするか、環境に限らずでございますけれども、例えば環境について言えば、どういう項目についてどのようなレベルの規制をするか、またどういう方法でそれを実施させるかというのは、すぐれてその国の主権の問題でございます。  ちょうど外国の企業が日本で操業する、それがアメリカの企業であれドイツの企業であれ、日本で操業すればそれは日本の法律がかかると同じように、日本の企業が外国に出かけていって、合弁会社をつくったりなんかして海外で事業活動をされるときには、それはまず第一義的にはその国の法規制に従うというのが原則だというふうに考えているわけでございます。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、特に途上国の場合に、それで果たして十分なのかという問題が発生します。それに関しましては、政府といたしましては、まず進出する民間企業が自主的に対応がとれるように、場合によっては、経団連の憲章が言っておりますように、有害物質に関する場合には国内並みの基準を自主努力としてやろうということを申し合わせているわけでございますけれども、そういう申し合わせを実効あらしめるように、そういった民間企業に情報を提供する、あるいはそういった努力を推奨するようなさまざまなことをしていく。  それから一方、途上国で途上国政府が環境に対する配慮が必ずしも十分でない場合には、先ほど来私ども、あるいは外務省、経済企画庁の方からも御答弁ございましたように、政策対話を重ねながら相手国政府に促していくといいますか、そういう努力をしながら、一方で現実の対処能力がとれますように、例えば専門家を日本から派遣してあげて、政府機関の対処能力の向上を図る、あるいは途上国の政府機関で公害対策に当たっている者を日本で研修させる、そして対処能力を強める、そういう間接的な方法ではございますので先生十分でないじゃないかという御批判でございますけれども、やはり相手国の主権というものを尊重せざるを得ないという立場からは、間接的ながら最大限のことをしてまいりたいというのがこの基本法の趣旨でございます。
  133. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 それだったら、地球環境保全はそれぞれの国の努力に依存すると言ったらいいじゃないですか、大げさなことを言わないで。今お話がありました、経団連は一定の申し合わせをしている。国の方には何らの基準がないじゃないですか、私が言ったことに対しては。その国の主権に従う、その国の基準に従うというだけでしょう、一言で言えば。そして、それだけではまずいんで、問題があれば事情に応じていろいろな日本の能力、技術、そういうものを提供しますよ、お話し合いをしますよ、参考にはさせていますよ、こう言っているだけなんですね。  これは何回質問しても同じ答弁しか出ません。今後の問題としてぜひ検討していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  134. 高橋一郎

    ○高橋委員長代理 草野威君。
  135. 草野威

    草野委員 私は、まず環境基本法の性格と理念、こういう点につきまして初めにお尋ねをしたいと思います。  昨年開かれました地球サミットにおきまして、効果的な環境法を制定するよう参加各国は合意をしておりまして、我が国としても、環境憲法にふさわしい基本法の制定が急がれているわけでございます。今回政府環境基本法案国会提出されましたことは、私は高く評価をするものでございますが、政府案がどこまで実効性を持つか、この点につきましては若干疑問があるわけでございます。当初の環境庁案が、関係省庁との協議の過程で重要な部分が欠落したり、また、国益より省益が優先された妥協の産物と化してしまった、こういうような指摘も一部あるわけでございまして、この点は残念なことだと思っております。  本来、環境の憲法であります崇高な理念を持つ基本法が、理念と現実の運用面で変節をしてしまうようなことが絶対あってはならない、このように思うわけでございます。現在、我が国の基本法、合わせて十二本ございますけれども、教育基本法を初め、農業とか土地、交通安全対策、その他いろいろございますが、それぞれがいろいろな性格を持っておるわけでございます。今回のこの環境基本法は、例えば理念法型か実施法型か、いろいろ区分けされると思いますけれども、どのような性格を持った基本法であるか、まず初めにお尋ねをしたいと思います。
  136. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、我が国におきまして基本法という名称を有する法律は現在十二本ございます。こういった法律の中には、教育基本法のように主として理念をうたった法律もございますが、災害対策基本法や公害対策基本法を初めといたしまして、ほとんどの基本法は主として対策の枠組みを規定するものとなっております。  これに対しまして、環境基本法は、今日の環境問題に適切に対処していくためには、やはり社会経済活動や国民の生活様式のあり方を含めまして、社会全体を環境への負荷の少ない持続的発展が可能なものに変えていくことが必要であり、そのもとですべての主体が自主的、積極的に環境保全に取り組むことが求められるという認識を持ちまして、各主体の行動原則として理念をうたうとともに、具体的な施策の枠組みを規定したものとなっているところでございます。  そういうことから申し上げますと、この環境基本法は、理念の定立と政策の枠組みの両方に目配りをした法律となっているところに特色があるというぐあいに考えまして、そういう意味では、理念法と政策枠組み法の両方の性格を持っている法律だと申し上げてよろしいかと存じます。
  137. 草野威

    草野委員 ということで、一口で言いますと中間型、このようにも言えるような基本法案ではないかと思います。  そこで、第三条、第四条、第五条で理念というものが述べられているわけでございますけれども、非常に崇高な理念、こういう感じが私もいたしました。例えば時間的な広がり、また地球規模という空間的な広がり、二十一世紀へ向かって地球規模という一面でとらえておりますし、また、持続的発展が可能な社会、さらに国際的協調による地球環境保全の積極的推進、これなどは、あえて外交にかかわる分野まで踏み込んだ意図を感じるような内容がございますけれども、まず、このことにつきまして御説明をいただきたいと思います。  一つは、持続的発展が可能な社会ということ、もう一点は、あえて外交分野まで踏み込んでいったというその意図につきまして、御説明いただきたいと思います。
  138. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 第一の問題でございますが、「環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会」というものは、二十年前のストックホルムにおける会議以来、国際社会でいろいろ議論を行ってきました結果、昨年の地球サミットで、環境と経済の統合あるいは持続可能な開発の達成という考え方を踏まえて、第四条に規定させていただいたところでございます。  この持続可能な開発は、我が国の提唱により国連に設置されました通称ブルントラント委員会、環境と開発に関する世界委員会と正式には称しておりますが、この報告におきまして、将来の世代がみずからの欲求を充足する能力を損うことなく、今日の世代の欲求を満たすことということで、現在の世代で使い切ってしまうのではなく、将来の世代のことも考えながら我々は行動していく、こういう概念であろうかと思います。  具体的には、我が国におきましてこれを具現する場合にどう考えるべきかということで御議論いただいたところでございますが、中央公害対策審議会、自環審におきまして、その答申にもございますように、国民生活や事業活動につきまして、今までの大量生産、大量消費、大量廃棄といったような生産と消費のパターンを見直していく必要がある、それによりまして、資源エネルギー等のより一層の効率化を図った社会をつくっていく必要がある、また、物の再使用や再生利用をさらに進める必要がある、また、浪費的な使い捨てといった生活慣習を見直すことによりまして、環境に対する負荷を少なくするような、持続的発展が可能な社会を構築するべきである、こういう理念をうたったわけでございまして、そういうことから、これからの環境政策の理念といたしましては、こういった国民生活、また事業活動そのものについてまで反省を求めながらやっていく必要があると考えているところでございます。  次に、第五条に、従来いわば外交面における分野ということで、法律の分野としてはなじみにくいと言われた国際協調の面についてまで法律に取り込んできた思想についてどう考えるのかということでございますが、第五条におきまして、地球環境保全の理念といたしまして、地球環境保全が人類共通の課題であるということ、また国民的課題であること、それから、我が国が国際社会と密接な相互依存関係にあること、さらには、我が国の能力と地位を踏まえること、そういう重要な観点を示した上で、「地球環境保全は、」「国際的協調の下に積極的に推進されなければならない。」と規定しまして、我が国といたしまして、世界各国と手を携えながら地球環境保全に積極的に取り組むという基本的姿勢を明らかにしたものでございます。  この五条は地球環境保全の理念を規定するものでございますが、これは、先ほどの答申に盛り込まれました内容を踏まえまして、地球環境保全のための国際的取組みを、国際的協調を図りつつ率先して推進していくことが我が国の基本的施策であり、これを内外に明らかにする必要があるということでございまして、今までとかく我が国の姿勢というものが対外的には明らかにされておらない、今後の地球環境問題に取り組む場合には、やはり世界的に取り組んでいかなければならない、そういう場合に、日本の姿勢というものを、国会で成立していただく法律もとにおいてそういうことを明らかにしたいということで、今回御提案しているものでございます。
  139. 草野威

    草野委員 いろいろお話を伺いまして、理念を支える骨格、また具体的な政策になりますとちょっと歯切れが悪いような感じもいたしますけれども、理念だけでは現実に何も見えませんし、大切なことは環境政策を具体的にどう進めるかという、はっきり見える方向を示していただきたいと思うわけでございます。国際協調の問題についても御説明いただきましたけれども長官の提案理由の御説明の中にも、地球環境問題につきまして、「我が国としても、積極的に取り組んでいく必要があります。」このように意欲的な長官の決意を述べておられますので、我々も期待を申し上げておるところでございます。  次に移りますけれども、環境行政機能の見直しという問題について、長官お尋ねをさせていただきたいと思います。  臨時行政改革推進審議会の第二次答申におきまして、地球環境保全に関して、「環境庁の企画・立案機能、総合調整機能を充実し関係省庁における環境担当部局の体制を整備することにより、政府全体として地球環境問題への取組体制を強化する必要がある。」このように述べております。また、地球環境保全についても、「環境行政については、各省庁の関連行政を含め、総合的かつ抜本的な推進を図る必要がある。」と指摘されております。しかし、機構や行政機能の見直しにつきまして、法案では欠落をしていると思います。  そこで、二点お尋ねをしたいと思います。  第一点は、過日の代表質問の中で、環境保全行政に関して宮澤総理は、環境庁が軸になって総合調整機能を十分発揮していくよう注意をしてまいりたい、このような趣旨を答弁されましたけれども、今日指摘されている環境問題は、縦割り行政の状況下では解決が導き出せない問題も多くあります。事実、環境庁設置法第五条、この中には「環境庁長官は、環境の保全を図るため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し」、まず一つは「資料の提出及び説明」、二番目は「重要事項について勧告」、三番目は「勧告に基づいてとった措置について報告」などが規定されておりまして、長官は積極的にこれらの権限を行使すべきである、このように思いますけれども、まず長官の御見解を承りたいと思います。
  140. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 草野先生の御質問にお答え申し上げます。  先般の趣旨説明に伴う質疑におきまして総理の申されたことは、全くそのとおりと私も理解しておりますが、特に、内外に環境問題が非常に広範になってきておりますので、これに的確に対応していくためには、どうしても政府が一体となって環境行政そのものの取り組み体制を充実強化していくことが必要であります。そのためにこそ今度の基本法の御提案もしたわけでございますが、その中で、環境庁としましては、総理も申されましたように、政府全体の環境行政の中枢としての機能が十分に発揮されるよう対応してまいることがまず何よりも大事でございます。  そういう意味で、環境行政の進め方については、十分にその責任を感じて対処していきたいと思っております。特に、複雑の形が日一日と濃くなっていく、また多様化していく、そのような環境問題に的確に対応するためには、申すまでもないことでありますが、関係省庁との連携調整を図り、そして施策を総合的に推進することが必要でありまして、環境庁はこのために各種の計画あるいは協議、また閣議、審議会、さまざまな機会を通じまして、積極的に関係省庁に対して意見を申し述べるなど、関係省庁間の連絡、連携調整が十分に図られるよう、これからも一層努めてまいりたいと思っております。     〔高橋委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 草野威

    草野委員 長官から力強い御発言がございましたけれども、ぜひこの設置法の中に述べられておりますように、長官は積極的にこれらの権限を行使していただきたい、お願いをいたしたいと思います。  長官にもう一点お尋ねをしたいと思いますが、今後環境保全行政については、国のみならず、地方公共団体と緊密に連絡をとり、協力しながら総合的かつ効果的に進めていくことが重要であり、政府は行政組織の整備並びに行政運営の適切な見直しを講じていくべきではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。
  142. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 草野先生の御意見はまことにごもっともだと思います。特に、環境行政を進めるに当たりましては、環境行政の中枢の立場から企画立案あるいはまた調整機能、これを十分発揮することが一番肝要でございまして、そういう意味におきましては、現在の国家行政組織法の機構の中で、環境庁としては最大限の努力をして、その調整機能を十分に発揮したいと思っております。
  143. 草野威

    草野委員 それでは次に、環境教育の問題についてお尋ねをしたいと思います。  今日の環境問題は広範、多様化しておりますけれども、国民の環境に対する関心は、昨年のサミットと前後して急速に高まってきていると思います。  「環境保全活動への参加意向」というアンケートの調査結果によりますと、こういうような状況が出ております。環境保全活動へ参加しているかどうか、こういうアンケートでございますけれども一つは、「現在行っており、今後も続けたい」、このように言っている方が四五・六%、「現在は行っていないが、今後は始めたい」、このように言っている方が三九・九%、合わせて八五%にも上っている、こういう数字が出ているわけでございます。  それで環境庁は、今回の基本法の第二十四条の中で非常に意欲的に書かれておりますけれども、この環境基本法で環境教育をあえて定めた意義というものはどういうものなのか、また今後どのような考え方で環境教育、環境学習、こういうものを進めていこうとされているのか、説明をいただきたいと思います。
  144. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、今日の環境問題の多くは、国民生活や社会経済活動一般に起因する部分が非常に多くなってきております。そういった環境問題の性格上、それを解決するためには、やはり国民一人一人が環境保全のための取り組みを自主的かつ積極的に行うということが不可欠になってきているわけでございます。  そこで、このためには、国民一人一人が人と環境のかかわりなど環境保全の重要性について理解を深めるとともに、環境保全のための望ましい活動がとられるようにしていくために環境教育の推進を図ることが重要だという視点に立ちまして、今回御提案申し上げております環境基本法案におきまして、施策の重要な柱の一つとして環境保全に関する教育及び学習の振興を位置づけているところでございます。私どもは、この条文は極めて大切な条文になるというぐあいに考えております。  そこで、今後どういった施策を推進していく考えかという御質問でございます。  環境教育の推進のために、私どもといたしましては、先生指摘になりました環境モニターによるアンケート調査をやったところでございます。  そこで問題点として指摘されておりますのは、環境問題が内外の重要課題としてクローズアップされる中で、国民の中ではリサイクル、生活排水等を中心として環境保全に対する関心が高まっているということが一つ挙げられます。  二番目に、国民の間では環境保全のため積極的に活動を行う人々がふえているけれども、なお具体的な活動を行うに至っていない人々も相当数に及んでいるという事実が挙げられます。  それから第三点目に、広く国民が環境保全のための活動を行う上で障害となっている理由としましては、環境保全活動についての情報がないという点が一点、それからもう一つは活動を行うときに仲間がいない、この二つが主な障害として挙げられているところでございます。  こういう状況を踏まえますと、やはり環境教育の推進上、必要なきめ細かい情報や教材を提供しなければならぬということが一つでございます。二番目に、さきにこの委員会でも御審議いただきました地球環境基金等による民間主導の環境保全活動に対して適切な支援を行うこと等によりまして、環境教育に関する施策の充実強化に努めていく必要があるというぐあいに考えているところでございます。
  145. 草野威

    草野委員 今御答弁いただいたとおりでございますけれども、確かに環境保全活動を行う場合の障害というものはいろいろあるようでございます。今、情報だとか仲間がない、こういうようなお話でございましたけれども、そのほかに、資金がないとか時間がないとか、場所が確保できないとか、いろいろな問題があろうかと思いますけれども、こういう問題につきましてもぜひとも積極的に取り組んで解決をしていっていただきたい、このようにお願いをしたいと思います。  そこで、文部省に一点お尋ねをしたいと思います。  やはり環境教育の問題でございますけれども、これは既に学校教育の中で取り上げられておりまして、このような立派な本も出されておるわけでございまして、私も読ませていただきました。非常によく書かれているのじゃないか、このように思っておりますけれども、まず第一点は、学校教育における環境教育の目的、それから基本的な考え方、この点についてお願いしたいと思います。
  146. 河上恭雄

    ○河上説明員 環境問題は、人類のこれから将来の生存あるいは繁栄にとりまして大変重要な課題でございます。したがいまして、これからの二十一世紀に生きる児童生徒に対しまして、こういった問題について正確な理解を深めるということ、そして責任のある行動がとれるようにするということは極めて重要でございます。そういう観点に立ちまして、学校教育におきましては、従来から、社会科とか理科といった教科を中心にしまして、また小中高等学校、発達段階を通じまして指導をしているところでございます。  学校教育の枠組みとしまして学習指導要領というものがございまして、この学習指導要領が平成元年の三月に改定されております。そして、昨年から小学校、ことしから中学校、来年から高等学校というふうに順次実施されているわけでございますが、この環境問題の重要性にかんがみまして、さらに各教科等で環境にかかわる内容の充実を図っているところでございます。  例えば、幾つか例を申し上げますと、小学校の社会科の五年生の段階では、「国土の保全や水資源の涵(かん)養などのために森林資源が大切であることに気付くようにする。」とともに「環境保全のための国民一人一人の協力必要性に気付かせるよう配慮する必要がある。」という新しい記述が入っております。また、中学校の理科では、「自然環境を保全することの重要性について認識すること。」とともに、新たに「自然環境の保全に関する態度が育成されるようにすること。」というふうに、単に知識を与えるだけではなくて態度として身につけるということも配慮しているわけでございます。また、高等学校におきましては、公民科の「現代社会」というところで、「環境と人間生活」という新しい項目を設けまして、「環境と人間生活とのかかわりについて理解させるとともに、環境にどうかかわって生きるかについて考えさせる。」というふうになっております。  こうした指導要領の記述をもとにいたしまして教科書が編集されまして、実際の授業で指導が行われているというところでございます。
  147. 草野威

    草野委員 どうもありがとうございました。教師の体制だとかマニュアル、また今後改善すべき点など、いろいろあろうと思いますけれども、自然との触れ合いが非常に重要だと私は思いますけれども、学校教育の中では、現場ではどのように実施されているでしょうか。
  148. 河上恭雄

    ○河上説明員 御指摘のように、近年の子供たちが自然と触れ合う機会が非常に少なくなっておるということで、あわせて環境学習という観点も含めまして、自然環境の中で体験的な活動が行われ、そして自然との触れ合いを深める、そして自然を愛護することの大切さを理解させる、そういう目的で自然教室という授業を文部省では従来から行っております。少年自然の家とかそういった施設を活用しまして、豊かな自然の中で何泊か生徒全員が参加していろいろな活動を行う、そういう授業を行っているところでございます。
  149. 草野威

    草野委員 では次に、環境保全活動の促進という問題につきましてお尋ねをしたいと思います。  政府にしても、地方公共団体にいたしましても、また事業者それから我々国民にしても、環境を守る意識というものは最近は非常に高まってきたのではないかと思いますが、これにつきまして、私は、さらに環境を守る上の思想の定着あるいは環境に配慮した行動、環境保全型のライフスタイルに転換していくことが環境基本法案で提起をしている基本理念を実現していく重要な観点ではなかろうか、このように思っております。  そこで、お尋ねしたいわけでございますけれども、従来、当委員会におきまして同僚委員からも御発言があったと伺っておりますけれども、環境に対する国民の意識を高め、自発的な行動に結びつけていくために、例えば世界環境デーである六月五日を環境の日として国民的な環境保全活動を一層促進させるべきという意見に対しまして、私ども公明党も強く意を同じくするものでございますが、この世界環境デーである六月五日を環境の日と定めることにつきまして、長官の御見解を承りたいと思います。
  150. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、国連におきましては毎年六月五日を世界環境デーとしているところでございます。これは、昭和四十七年のストックホルムで開かれました国連人間環境会議におきまして我が国が提案したことによりまして設けられたものでございます。我が国では、その翌年から六月五日からの一週間を環境週間に、また一昨年からは六月を環境月間といたしまして、各種の普及啓発事業を行っているところでございます。  御指摘の環境の日につきましては、私ども、自民党の中においてもそういう議論があるということは承知しておりますし、また昨年、地球サミット期間中にリオで開催されました会合の一環といたしましてジャパン・デーというものが開かれ、世界環境デーを提唱された、当時青木ジャパン・デー実行委員会委員長からそういう御提唱があったということも承知しているわけでございます。  そこで、御指摘の環境の日というようなもの、これは国連においては六月五日ということで決めていることでございますが、これを我が国の法制上も明らかにすべきではないか、こういう御質問のようにお伺いしたのですが、これにつきましても私ども検討させていただいたのですが、過去の例を見ますと、老人の日が老人福祉法に、スポーツの日がスポーツ振興法に定められておるというように、基本法のレベルというよりはむしろ個別の法律、例えば環境保全活動推進法とかそういったようなレベルの法律に規定されているということを踏まえまして、今回の法案には盛り込まなかったところでございます。  しかし、環境保全についての国民の理解と関心を深めまして、積極的に環境の保全に関する活動を行う意欲を高めるという観点からは、そのようなことはやはり意義があることであるというふうには考えておるわけでございます。これは、環境の保全に関する国民的な活動を促進する観点から適切に考慮していく必要がある問題だろうというぐあいに考えております。
  151. 草野威

    草野委員 考慮していきたいということでございますけれども、ぜひとも積極的に御検討いただきたい、お願いを申し上げたいと思います。  長官の方から何か、よろしくお願いいたします。
  152. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 環境の日の問題につきましては、今度の法案にそれを盛り込まなかった理由、また環境の日の意義というようなものにつきましては、今政府委員から答弁させたとおりでございます。  しかし、先生指摘のように、国民が環境ということを強く意識していく、あるいは自覚していく、そのためにも環境の日というような設定も非常に大事であるということは、私も痛切に感じております。
  153. 草野威

    草野委員 ぜひお願いしたいと思います。  次に、環境アセスメントにつきまして簡単にお尋ねをしたいと思います。  環境アセスメントで一番重要なのは、公正な環境評価を行うことであろうと思います。特に閣議アセスでは国の公共事業がほとんどでありまして、その事業計画自体、国が策定し、それにのっとって事業者準備書、評価書を作成させ、最終的にこれに対して国が免許を与える、こういう制度であろうと思います。これでは、自分で計画を立てて、自分で評価をして、自分で免許を与えるのと全く同じでありまして、これがいわゆる免罪符、このように批判されてもやむを得ないのじゃないかと思います。これは地方公共団体でも同じことが言えるのではないかと思います。いわゆるお手盛りアセス、これであってはいけないと思います。  そこで、総理府に審査機関として中央環境影響審査会、それから都道府県に地方環境影響審査会、このような第三者によるアセスメントを審査する機関をぜひとも設置するようにすべきであろうと私は思います。そして、住民が納得する公正なアセスメントをぜひとも行うべきであると思いますが、この点についての御意見をいただきたいと思います。
  154. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生今御指摘になりました論点は二つあろうかと思います。一つは、アセスメントを事業者がやることについて適切であるのかどうかという問題でございます。それからもう一つは、信頼性を高めるために第三者機関によるアセスメント評価機関といったものを設けるべきではなかろうかこういう二つの側面からの御指摘であったと存じます。  第一の点でございますが、環境影響評価事業者実施することにつきましては、一つは、環境を汚染したり、また破壊させるおそれのある大規模事業を行おうとする者が、事業実施に伴う環境への影響について、みずからの責任と負担で環境に対する配慮を行っていくことは当然だろうというぐあいに考えられる点が一点。  第二点に、調査、予測、評価を一体といたしまして事業者に行わせた方が、その結果を踏まえて事業者事業計画や公害防止措置等を手直しすることができるという点から事業者に行わせるということになっているところでございまして、これはほとんどの諸外国におきましてもこういった格好事業者実施をしているところでございます。  そこで、個別事業環境影響評価は、対象事業ごとに、既に得られている科学的知見に基づきまして定められた技術指針に基づいて客観的なものとして実施され、さらに、調査等に基づき作成された準備書は、住民の意見や関係地方自治体の意見、また許認可を行う行政庁の審査等の手続を踏むということになっているわけでございます。  そういうことで、例えば公共事業の場合、事業者と審査者が同じ知事であるといった場合に、同一人が同じことをやっているじゃないかという御指摘があったわけでございますが、この場合におきましても、一般的に担当部局が異なっていることによりまして、事業部局、例えば土木部がやりました事業を環境部局によってチェックをするというようなことによりまして客観性は保たれているというぐあいに考えているわけでございます。しかしながら、同時に、先生がおっしゃるように、都道府県知事の意見書をつくる際に、その意見形成に当たりましては審査会等の意見を聞くことができるというぐあいに、その地方公共団体で工夫をしているという例があることも事実でございます。  先生の御趣旨は、環境アセスメントに対する、事業者がこれを行うということは、ともすれば免罪符になってしまうのではないかというような御指摘であろうと思います。  私どもは、アセスメントの信頼性を高めるためにはそれなりの工夫をしていくべきだというぐあいに考えておりますし、環境庁における審査も、専門スタッフを設けながら厳正かつ慎重にやっていると存じておるし、理解しているわけでございますが、必要な場合にはさらに文献調査、聞き取りを行う、また適切な学識経験者の知見を活用する等、そういった手だてについては考えてまいりたいというぐあいに考えております。
  155. 草野威

    草野委員 局長の御答弁を伺っておりますと、まあまあいろいろありますけれども、現在の制度で十分であろう、このようにおっしゃっておられるように聞こえてならないのです。  それはそれとして、現在のこのアセス法案閣議決定相違点、これもいろいろ指摘をされておりますけれども、主なものを一つ二つ挙げてみますと、閣議決定では事業者に対する拘束力というものに欠けている、それから事業者理解と自主協力が制度の運用の大前提とならざるを得ない。もう一点は、閣議決定では現行諸法令が優先され、現行法令に反しない範囲で環境配慮が行われる。私はこの二点を指摘させていただきたいと思います。  さらにもう一つは、環境庁長官の意見ということでございますけれども、これは法案と閣議は百八十度違うわけですね。この点についてひとつ御見解を賜りたいと思います。  例えば廃案になった環境アセス法案、昔の第十九条です。「環境庁長官の意見」というところです。「環境庁長官は、必要に応じ、」「当該評価書を送付した者に対し、公害の防止等の見地からの意見を述べることができる。」こういうふうになっているわけですね。五十九年の閣議アセスにおきましては、「主務大臣は、」「環境庁長官に評価書が送付された対象事業のうち、」「特に配慮する必要があると認められる事項があるときは、」「公害の防止及び自然環境の保全の見地からの環境庁長官の意見を求めること。」これは百八十度違うわけですね。  ですから、前のアセス法案法律では、環境庁長官は必要に応じて意見を述べることができる、このようになっていた。今度の閣議アセスにおきましては、主務大臣は、必要があると認められる事項があるときは、環境庁長官の意見を求めること。全然変わってきているわけですね。この点は、やはり強く指摘をさせていただきたいと思います。  そこで、現在までに環境庁長官に対して評価書が送付されてきた件数はどのくらいありますか。また、そのうち環境庁長官が意見を述べられた件数はどのくらいありますか。−−結構です。私も最近の数字がわからないからお聞きしたのですけれども、その前の資料によりますと、たしか全体で百二十五件ぐらいだったですか。そのうち長官に意見を求めた件数はわずか三件である。こういう数字は聞いておりますけれども、その後、少し変わったんじゃないかと思って今伺ったわけなんですが、結構です。やはりこういうことは、私はぜひ御指摘をさせていただきたいと思います。  いずれにしても、多くの先進国はアセスメント法というものをきちっと持っている。そうですね。だけれども、環境先進国を自負するこの日本がこれでは、もう海外から非難をされてもこれは無理はない、このように私は思います。ぜひともこの現行制度を見直して環境アセスメント法制化を保実現させてもらいたい。いかがでしょうか。
  156. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 大変、数字を探すのが遅くなりまして失礼いたしました。  今まで評価書を作成されましたのは二百十二件、うち環境庁意見を求められたのは十一件でございます。  そこで、先生指摘になりましたように、閣議決定によるアセスとそれから法制のもとにおけるアセスということでは行政手続上違いがあるということは事実でございます。ただ、私どもは、関係者の理解を得ながらその実情を、閣議決定アセスとそれから法制化によるアセスとの実態が変わらないように努力すべく、関係者の理解協力を得ながらこの運用に努めてきたところでございますが、一方、先生指摘の、拘束力等において違いがあるんだから、やはり早期法制化に努めるべきではないか、こういう御議論でございます。  この点に関しましては、私ども、中公審、自環審の答申をいただきました際に、環境基本法制にはアセスが重要であるということを法制的にきっちりと位置づけろというような答申をいただきましたことから、今回御提案申し上げている法案におきましては、国は環境影響評価を推進するため「必要な措置を講ずる」ということに明確に規定したところでございます。この必要な措置には、必要な場合に法制化をすることも当然含まれているわけでございます。  そこで、それでは具体的にすぐアセスメント法をつくるべきではないかという御質問でございました。これにつきましては、同じく先ほど申し上げました答申におきまして、将来どのような個別の措置が適当であるかという点につきましては、昨年十月の答申において「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて現行措置を見直していくことが適当」という答申であったわけでございます。この答申を踏まえますと、現行措置の適正な推進に努めると同時に、必要に応じて見直しを行うということになるわけでございます。  私どもといたしましては、現在、関係者、関係省庁事業者理解協力を得ながらアセスメントの適正な運営に意を用いているところでございますが、それが所期の目的を達成しなかったような場合には、やはり法制化というものを考えていかなければならぬ、そういったことも視野に入れながら、今後適正な推進に努めると同時に、必要に応じて見直しをしていくというスタンスで、この基本法もとに私どもはやってまいりたいというぐあいに考えております。
  157. 草野威

    草野委員 長官に申し上げます。  今局長からいろいろ御答弁いただきましたけれども、要するに、法制化はできない、こういうことなんですね。国民の声というのは、やはりアセスメント法については法制化をぜひともすべしという声が非常に大きい、長官も御存じのとおりだと思うのですね。反対の声は何かと言うと、今の閣議アセスで十分じゃないか、何が問題があるんだ、またそんなものをやったら時間がかかる、裁判がうるさい、こんな意見じゃありませんか。私は、ぜひともこれは法制化を実現すべきであろうと思いますので、長官に対して強く御要望を申し上げたいと思います。  次に、CO2の問題につきまして通産省さんにお尋ねをしたいと思います。  この地球温暖化問題につきましてCO2の問題がいろいろと今関心を持たれてきておりますけれども、日本の業界別のCO2の排出量対策、もしこういうものがあればお尋ねをしたいと思うのです。  八六年以降四年数カ月に及ぶ好景気を背景にしまして増加を続けてきたエネルギー供給は、結果的に二酸化炭素の排出増、こういうような形になったわけでございます。そして、現在の日本の業界別のCO2の排出量を見てみますと、全体で、これは八九年の数字でございますけれども、CO2の我が国の総排出量二億八千三百万トン、こういう数字が出ております。これを業界別に見てみますと、電気・ガス業界がこのうち三四・五%、鉄鋼が三二・一%、自動車が一八・九%、それから家庭・民生が一一・八%、その他が二・七%ということで、電気、鉄鋼、自動車、この三業界におきまして実に全体の八六%を占めておる、こういうような数字が報告されております。  そこで、お尋ねしたい第一点は、各業界の取り組み状況、CO2排出対策は具体的にどうなっておるか、まず電気業界からお伺いをしたいと思います。  この電気業界というのは約七割が火力発電と聞いておりますが、例えば亜硫酸ガスそれから窒素酸化物、こういうものは脱硫装置、脱硝装置で現在対応がされております。ただ問題は、このCO2の取り組みというものは非常におくれているのではないかと思いますが、どういう方法で今改善に取り組んでいるのか、電気業界についてお伺いをいたします。
  158. 天野正義

    ○天野説明員 電気事業者におきますCO2問題を含む環境問題への取り組みについてお答えさせていただきます。  電力部門におきます地球温暖化防止行動計画の達成に向けての目標は、平成二年度に作成されました電気事業審議会需給部会の中間報告にある、まず電源のベストミックス、これがすなわちCO2を発生しない、原子力を中心とする電源を開発しようということでございます。これが第一の目標かと思います。  さらに、先ほど御指摘ございました火力発電でございますけれども、従来型の公害防止対策につきましては、脱硝装置等々を確実につけるということで対応しておるわけでございますが、CO2問題に対しましては、改良型コンバインドサイクル、リパワリング、加圧流動床燃焼等々の高効率の発電方式を採用してCO2排出量の抑制に努めているということでございます。  さらに、電力各社におきましては、地球環境保全のためのいわゆるボランタリープランを作成いたしまして、具体的行動指針として取り組んでおるところでございます。  いずれにいたしましても、電力部門、先生の御指摘にもございましたように、相応の部分の原因者であるわけでございますので、地球温暖化防止行動計画目標の達成に向けて、引き続き最大限の努力を行ってまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  159. 草野威

    草野委員 大変難しい問題はいろいろあろうと思います。例えば自動車業界の場合は、新しい高速道路もどんどん建設をされる、道路の整備また道路の延長という中で、自動車の保有台数はこれからも年々増加を続けていくであろうと思いますが、二〇〇〇年までにCO2排出量を三〇%程度増加をさせるのではないか、自動車業界はこのように予測をされているようでございますけれども、これは事実でしょうか。また、これを減少するための方策というのは何かございますか。
  160. 清川佑二

    ○清川政府委員 お答えいたします。  自動車の担当の者がちょっと不在でございますので、かわりに一言御説明させていただきます。  自動車につきまして、二酸化炭素の排出の抑制という問題でまず最初に起こってまいります問題は燃費の改善ということで、これをどのように改善していくかということが極めて大きなウエートを占めております。先ほど先生指摘のありましたように台数あるいは走行距離等々ございますので、将来どうなるかということを必ずしも一概に言うことはできないわけですが、にもかかわらず、CO2の排出についてウエートの非常に大きいものであるということで、これに何とか対応していくことが必要であるという判断に導かれるわけでございます。燃費の改善につきましては、平均八・五%程度の改善をするということで現在これに取りかかっているところでございます。  また、低公害車をさらに一層推進をしていく必要があるということで、現在低公害車の普及に取り組んでいるところでございます。低公害車の問題、価格の問題もございます。あるいは技術的な意味で航続距離が短い、特に電気自動車の場合にはこういった問題がある。あるいはスタンドの整備を図る必要があるというようなことを含めて、先々の低公害車、特に電気自動車の普及を考えているわけでございますが、コストにつきましては、税制の問題、リース等を行う問題、あるいは量産可能な形に何とかなっていけないかという工夫の問題、このようなことに取り組んでおります。  また、電気自動車の場合には特に高性能電池の研究が必要でございますので、ニューサンシャイン計画等によりまして鋭意計画を進めているところでございます。また、スタンドの整備につきましても、エコ・ステーション二〇〇〇計画という名称でございますけれども、モデル事業を推進いたしまして、充電スタンドあるいはガスの充てんスタンド、メタノールスタンドなどにつきまして普及を図る方法を今鋭意工夫をしている最中でございます。
  161. 草野威

    草野委員 低公害車の問題につきましては、また改めてお尋ねをしたいと思うのです。  要するに燃費を改善する。燃費を改善すればCO2は確かに下がります。しかし、自動車はどんどんふえていっている。燃費を改善して自動車の生産をこのまま続けていけば、業界では、CO2が二〇〇〇年には今より三〇%程度増加する、だから低公害車もこれからどんどんつくっていくんだ、こういうふうに今おっしゃっているわけなんです。  御存じのように低公害車はなかなか離しい。そうしますと、現実的な問題として、この十年間で例えば一〇%自動車業界がCO2を減らすことは可能でしょうか。これはイエスかノーかでいいです。
  162. 清川佑二

    ○清川政府委員 お答え申し上げます。  個別の業界の話になるわけでございますが、その前提といたしまして地球温暖化防止行動計画があるわけでございます。地球温暖化防止行動計画で、二〇〇〇年時点の中間時点での目標ということも定められているわけでございますが、ここで御説明を申し上げる必要がありますのは、温暖化防止行動計画などには業種別目標を定められているということではなくて、マクロの目標を達成するために事業者、国民、政府、各主体が可能な限りの対策を講じていくということを基本といたしております。  御指摘のとおり、しかしながら自動車、電気、鉄鋼、ガスといったような業種につきましては大変ウエートが大きいわけでございますから、それぞれの業種について一層の努力をしていただく、そのような意味で燃費の向上等を含めて鋭意努力をするよう要請しているわけでございます。
  163. 草野威

    草野委員 環境庁に申し上げたいと思うのですけれども、今の通産省さんのお話ですと、我々はそういう業界ですとかミクロの問題ではなくてマクロの方の数字が求められているのだ、このようにおっしゃるのですね。しかし、考えてもらいたいのです。さっき僕が挙げましたけれども、全体のうち、二億八千三百万トンのうちの八六%はこの電力と鉄鋼と自動車業界で占めている。ミクロのことはどうでもいいということではないと思うのです。だけれども、マクロというお話をおっしゃいましたので、それではマクロのことについて伺います。  地球温暖化防止行動計画、この中ではCO2の排出量抑制目標、二〇〇〇年以降おおむね一九九〇年レベルでの安定化をする、こういうことですね。この問題について聞きますけれども、通産省におきましても当然その目標に向かって進んでおられると思いますが、本当に二〇〇〇年の時点で安定化の目標を達成できるのかどうか、これをお尋ねしたいと思います。  もしできるということであれば、できなくてもいいのですけれども、できるということであれば、いろいろな試算をされたと思います。そのときの経済成長率、それからCO2の排出量は年率何%ぐらいずつ伸びていくか、そういうものもあろうかと思いますし、またその他の要素もあると思いますが、これらと二〇〇〇年で安定化する、この説明をちょっといただきたいと思うのです。
  164. 清川佑二

    ○清川政府委員 まず通産省の方から御説明をさせていただきます。  温暖化防止行動計画の二〇〇〇年の目標、先生指摘のとおり二〇〇〇年において達成すべき目標といたしまして、「官民挙げての最大限の努力」ということで、極力実施可能なものを着実に推進することによって「一人当たり二酸化炭素排出量について二〇〇〇年以降概ね一九九〇年レベルでの安定化を図る。」先生のおっしゃるとおりこのような形で決まっているわけでございます。このために計画の中でも、二酸化炭素の排出の少ない都市・地域構造を形成するとか、交通体系の形成をするとか、あるいは生産構造の形成をする、あるいはまたエネルギー供給構造の形成をする、あるいはまたライフスタイルの変化を実現する、このような総合的なもので実行されていくと同時に、第二の目標として、太陽光、水素などのエネルギー、二酸化炭素の固定化などの革新的な技術開発、これの大幅な進展によりまして、二酸化炭素排出総量が一九九〇年レベルで安定化するように努める、このような目標になっているわけでございます。  通産省におきましては、この目標達成に向けまして、太陽光、水素などの新エネルギー、二酸化炭素の固定化などの革新的な技術開発、私どもはニューサンシャイン計画と言っておりますけれども、省エネルギー、代替エネルギー、そしてまた地球環境関連の技術開発を積極的に推進する、そしてまたエネルギー問題の関係では、省エネルギー、リサイクルの抜本的な対策を講じていく、このためにこの国会におきましても、エネルギー需給構造高度化法及び省エネ・リサイクル支援法を提出させていただきまして、成立を見たところでございます。このような形で事業者、国民、政府、各主体があらゆる分野で総合的な取り組みを段階的に、そしてまた継続的に実施していくことが必要であり、これによって何とかしてこの目標を達成していくということに取り組んでいるところでございます。
  165. 草野威

    草野委員 時間が参りましたので、これで終わりにしたいと思いますけれども、通産省さんのお話を伺っておりまして、いろいろ努力をされておることは私も歩といたしますけれども、通産省の内部の試算によりますと、いろいろな努力をしても結果的にあと一六%は伸びる、こういう数字が出ているのではないですか。これはもう後で聞きますけれども、そういうことなのですね。  それから、環境庁−−いいです、もう答弁は。時間がないからいいです。僕が申し上げたいことは、冒頭で立派な、崇高な理念をいろいろと伺いましたけれども、やはり具体的な方向というものをきちっと示していかなければならないと思うのですね。それと、環境庁はマクロのことばかりおっしゃっておりますけれども、二〇〇〇年になってからできませんでしたではだめなのです、これは。だから、やはり進捗状況というようなもの、進捗状況という言葉が当たるかどうかわかりませんけれども、こういうものにつきまして毎年きちんと調査して把握する、こういうことが大事ではないかと思いますけれども、そのことを申し上げて、私の方は終わりにしたいと思います。
  166. 原田昇左右

    ○原田委員長 寺前巖君。
  167. 寺前巖

    ○寺前委員 聞きたいことはいろいろありますのですが、きょうだけではないようでございますので、次の機会にもやらせていただくということにして、とりあえずきょうは二つのことを聞きたいと思うのです。  まず第一に、環境基本法法案で、環境影響評価制度の法制化という問題が見送られた。これは随分世間で話題になっていますから、この分野の問題と、それからもう一つは、去年の六月に国連環境開発会議が行われて、リオ宣言等を出しているが、そのリオ宣言の中に、情報の公開、市民参加の保障の原則というのが原則十に出てきますが、この問題、この二つの問題をめぐって、せっかくつくる基本法が値打ちのあるものになるのかな、要するに、実効性のある、そういう法律として生きてくるのだろうか、そういう立場から、きょうは二つの問題について聞きたいと思います。  去年の十月に中央公害対策審議会と自然環境保全審議会が行われていますが、「環境基本法制のあり方について」という諮問を受けて、法制化作業に入る。この中で、七月二十八日の両審議会合同部会の意見聴取で、経団連の内田常務理事は、「閣議決定に基づき企業は実際的なアセス実施しており、十分な成果を上げている。現在のアセスで問題が起きていることはないのに、今回改めて議論する必要があるだろうか」、こういうことを発言をしています。  環境庁は、もっともなことだとこれを受けとめられていますか、それとも、そんな考えは間違いだとおっしゃいますか、いかがなものでございましょう。
  168. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 審議会におきまして、アセスメントをめぐってもいろいろな議論があったことは事実でございます。先生指摘になっておるような事実につきまして、審議会の内容につきましては公開しないということが原則になっておりますので、直接のメンションは私は避けさせていただきますが、とにかく審議会の過程では、自由にいろいろな意見を開陳してもらったことは事実でございます。その結果として審議会がおまとめいただきましたのが公表されたところの答申でございます。  環境庁といたしましても、政府の一員といたしまして、この公開された答申の趣旨に従って私どもは判断していくべきであるというぐあいに考えておるところでございます。
  169. 寺前巖

    ○寺前委員 ちょっと聞いていることが違うんだな。  法案閣議決定される直前の三月三日に経団連がこういうことを言っていますよ。環境アセスメント現行制度のもとで自主的、積極的な取り組みが進められ、十分実績を上げている。だから、法制化などというのは要らぬのだ。相変わらず、恐らく内部で言っておられたことと外で言っておるこれと同じだと思うのですよ。だから、こういう考え方に対して、考え方だからね、基本法なんだから、大臣はいかがお考えになりますか。
  170. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  経団連のどなたがどういうことを言ったか私は関知しておりません。それよりも私は、環境行政を進める上でアセスメントという、環境影響評価ということがどんなに重要なものであり、大事なものであるかということは十分に自覚いたしておりますので、その意味からも、環境影響評価についてはその目的が十分達せられるだけのことがなければならないわけでありまして、従来までは、先生御案内のように、閣議決定に基づいた影響評価の基準で進めてきておりますけれども、もしそれが十分でないということがはっきりすれば、今度の基本法では法制化もあり得るということまで実は述べておるわけでございます。
  171. 寺前巖

    ○寺前委員 ちょっと局長さんに聞きますが、閣議の環境アセス法制化するのとどんな違いが生まれますか。
  172. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 お答え申し上げます。  閣議決定要綱は、一たん政府提出いたしました環境影響評価法案国会の再提出の見送りに伴いまして、五十九年にその法案とほぼ同様の内容政府として最も権威ある閣議決定という方式で決定し、行政ベースで実効ある措置を早急に講じようとすることから、閣議決定で、要綱でもってアセスメントを実行しようということで行われたものでございますが、閣議決定は行政決定でございますし、法律は法規範として規範性、拘束性のあるものでございますから、形式的意義におきましてそれは当然違いはあるわけでございます。  その主な違いといたしまして、先ほどからお求めに従って五つほど私ども挙げておるわけでございますが、さらにお答えさせていただきますと、第一には、法律と行政決定では拘束力に違いがございます。国以外の事業者に対しましては拘束の差が出てくるということでございまして、法律であれば、これは法律の義務として事業者に直接課されることになるわけでございますが、閣議決定要綱になりますと、事業者に対する指導通達という行政措置として実施に移されるということでございますから、実施をする際に事業者理解協力が前提になってくるという違いがございます。それが第一点でございます。ただ、事業者政府部内であります場合は同一の効果を持つことになります。  第二に、行政指導でありますがゆえに、主務省庁事業者を指導する立場が主になるために、法案に比べますとやはり主務省庁の判断にゆだねられる部分が大きくなる点がございます。これが第二点目に挙げ得るかと思います。  第三に、閣議決定政府部内のものでございますので、第三者としての地方公共団体を直接拘束することはできないという点に違いがございます。したがって、準備書の公告・縦覧等環境影響評価の諸手続も事業者が行うということになっているところでございます。  第四に、閣議決定要綱では、環境配慮は関連する免許法等に基づく行政処分に認められた裁量の範囲内でしか行われないという点がございます。  それから第五に、地方条例との関係相違があるわけでございますが、法律であれば条例との関係も制度的に整理できるわけですが、閣議決定ではそのような整理はできない、こういった違いがございます。  対象とする事業等は法案に盛り込まれた内容と同じものを対象としておるわけでございますが、法律と行政決定によるベースではただいま申し上げたような点が主な点として挙げられます。  ただ、私どもといたしましては、これを実際に運用するに当たりましては、やはり関係者の理解協力を得ながら、できるだけ支障がないように私どもは工夫をしてまいったということが挙げられ、第一点の拘束力の問題といたしましては、対象事業民間事業が少ないということ、また主務大臣の許認可の際の配慮事項といたしまして、実際的に必要な措置を担保しているというところから、これは現在では大きな問題とはなっておらないのではないか。  第二に、主務省庁にゆだねられる部分が多くなるという点につきましては、これは主務省庁間の調整を通じまして、主務省庁間の相違はそれほど大きくなく、実質上問題になることはございませんし、第三の地方公共団体に対する拘束力の問題の点につきましては、現段階で知事や市町村長理解協力が十分得られているところでございます。  第四の環境配慮の位置づけの問題につきましては、これは事業者理解協力もあって、具体的対策について個別に柔軟に対応してきているところでございます。  第五の条例との関係につきましては、一般的に国等の行う事業について特例を設けていただき、国の要綱との整合性に配慮しているということで、私どもは九年間にわたる実績を積み重ねることによりまして、現在閣議決定でやっております環境影響評価法律に基づくアセスに近づけるべく、運用上私どもは努力してまいってきているところでございます。
  173. 寺前巖

    ○寺前委員 そんなあなた、別に問題は起こってきてへん、しかし拘束力が違うんだ、値打ちがあるんだ、こうなったら、それやったらええのに、何でやらへんやろな。わし聞きたいのはそこなんや。そこまでみんな合意をしてきておるのに、新聞見たら、やらへん、覚書があったと言ってみたり、いや覚書は結んでへんと言ってみたり。ごちゃごちゃすること一つもないという事態になっているんじゃないのかな。そうしたら何も配慮せんかて、すかっと法律環境アセスをやりますんや、環境庁長官はそういう方向を目指してますんやということをさっきもおっしゃったんだから、そういう法律でぽんと出したらどうなんじゃろかなと私は思いますよ。  そこで、ちょっとあわせて聞きたいのですが、そうすると、法律の十九条に載っている「必要な措置を講ずるものとする。」というのは、今環境庁長官がおっしゃったように、法制化の方向というのを考えているというふうに読んでよろしいんやな、これ。そういうふうに読ましてもらってよろしいんやな。
  174. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 法制化を考えているということで読みたいという先生のお気持ちは十分わかりますけれども法制化の余地があるということであります。つまり、法制化必要性があれば当然法制化に踏み切る。だから、法制化できないということじゃありませんで、その必要性によって踏み切るという、そのような表現でございます。
  175. 寺前巖

    ○寺前委員 さっきからの話聞いておったら、拘束力があるという点では違うんじゃ、理解を得なかったらできぬという話じゃなくして、今やこの九年の間に理解を得るところまで来ている、こうおっしゃるんだったら、ちゃんと法制化したらどうなんですか。この十九条というのはそういうふうに読みますんやなと聞いたら、いや、気持ちはわかりますけれども、すぐに法制化する方向じゃございませんと言われると、何のためにこの法律つくるんじゃいなということになるでしょう。だから、私はこういうのはすっきりしておいた方がええと思う。  それで、次に、その十九条に関連してお聞きいたします。「適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮する」、こういうふうに書いてある。それじゃ、これで環境庁の姿勢が変わるのかなということで、私は具体的に聞いてみますわ。  私の住んでいます京都市に、この間建設委員会法律が通りました阪神高速自動車道路を京都に設置するんだ。そうすると、だれだって気になるのは、京都は盆地ですわな。だから、あそこは光化学スモッグが物すごく発生するところですよ。盆地に自動車を高速道路でだっと集中させていくということをやったら、今のここの環境と一緒で空気は悪くなりますわ。だから、空気を悪くするような高速道路を京都みたいなあんな狭い盆地に何で入れるんかいなということになるじゃありませんか。私は気になる。  そこで、京都市が環境影響評価を行い、大気汚染環境影響調査では、二酸化窒素濃度の予測値が〇・〇四六から〇・〇五四ppm、こういう数字が出てきた。そうすると、かつての時代だったら、〇・〇四も〇・〇五も出てきたら、そんなもの今の環境でも大変なこっちゃ、やめておけという話になったと思う。ところが、七八年の環境庁の環境基準からいうと、これはクリアしていますということになると言うんや。  そうすると、私たちは環境を見る場合には、現時点よりもよくしていきたい、現時点よりも悪くなるようなことになったらあかん、こう思うのね。〇・〇四、ここまで来ておるんじゃったら、かつてやったらあかんさかいに、これはちょっと考えなあかんでという話になるんかいなと思って、私、何の委員会だったろう、予算委員会の分科会じゃないだろうか、局長さんに聞きましたよ。何を聞いたかというと、京都市には公害対策審議会というのがあって、環境保全基準というのがつくられているんだ。その京都市告示第一号に何と書いてあるかというと、一時間値の一日平均値〇・〇二ppm以下、ただし、当分の間は〇・〇四ppmと書いてある。これをつくった時期というのは八五年ですんや。環境庁が決めた時期は七八年ですから、環境庁の基準では京都のあの盆地の中ではあきませんで、もうちょっとちゃんとしなかったら古都京都を保存することができないといって、京都市のこういう告示第一号というのが出て、すぐにというわけにはいくまいから、〇・〇四ppmから始まって〇・〇二ppmへと、こういうのをわざわざおつくりになっている。  私が聞きたいのは、その場合に、環境庁が、それはそうや、ええことを考えてくれている、健康な文化的な生活を営んでいく上において環境の占める位置は大きい、環境アセスをそういうふうに京都市考えてくれているのかよろしいその方向で、それじゃ今図るのはちょっと問題だな、この数字では問題だなというふうに何で言わぬのだろうか。これを言わないのだったら何のためにこの基本法は出てきたのだろうか。文章面だけ格好よう言っているだけの話にならないのだろうか。実効性のあるものということになったら、そこの自治体の皆さんが、それぞれの自治体の置かれている環境条件というのは違うのですから、その自治体がお決めになったそれは尊重しますという態度をとられるならばこの基本法は値打ちがあるなと思うのだけれども、どうでしょう。大臣はどうお思いになりますか。
  176. 入山文郎

    ○入山政府委員 私の方からは、国の環境基準について私どもはどのような考え方をしているかということを説明させていただきたいと思います。  京都市が御指摘のようにそういう環境保全基準を独自におつくりになっていることにつきましては私ども承知をいたしておりますが、国の環境基準は人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準として設定しているわけでございまして、これは、いろいろな疫学調査の結果でございますとかあるいはWHOや諸外国の基準を踏まえましても、今日までこの基準の妥当性は否定されておりません。そのようなことから、国といたしましてはこの環境基準によって行政を進めていきたい、こういう立場でございます。
  177. 寺前巖

    ○寺前委員 何にも僕の答えにならないのと違うか。こういうふうにやっておられるけれども、京都市告示の一号でこういうふうになっているのだ、だから盆地の中につくるときには、そういう自主的に、しかもわざわざ基準は国が決められた後大分たってからお決めになっているんだから、非常に自発性に基づくものだ。自発性に基づくものを尊重してやっていかなかったら前進しないじゃないか、当然それは考えるべきではございませんかということを聞いているのであって、国はこうですという話を聞いておるのとは違うのだ。質問すらわからぬようでは思いやられるな、正直言って。大臣、いかがでしょうか。
  178. 原田昇左右

    ○原田委員長 補足答弁してください。
  179. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 京都における高速道路の環境影響評価を行う際にどういった環境基準を使うかという問題でございますが、御指摘の京都高速道路の事業につきましては、これは、環境影響評価実施者は、都市計画事業でありますことから京都府知事が行うことになっております。  この事業につきましては、閣議決定要綱に該当いたしますことから閣議決定による環境影響評価が行われることになるわけでございますが、先ほど大気保全局長から御説明申し上げましたように、現在の環境基準は国民の健康を保護する上で適切なものというぐあいに考えられることから、これに基づき閣議決定による環境影響評価は行われることになっておりまして、二酸化窒素につきましては、環境基準を環境保全目標として、これに照らして評価を行うこととしているところでございます。  したがって、先ほども申し上げましたように、この京都高速道路の環境影響評価については、この閣議決定環境影響評価実施要綱に基づき実施されているということで、評価は適切になされているというぐあいに理解しております。
  180. 寺前巖

    ○寺前委員 何にも答えにならへんのや、それは。私はそんな解釈を聞いているのと違うと言っているんだ。国が決められた環境基準をちゃんと言ってあげているんだ、これですよと。だけれども、それを決められたよりも後に京都市が告示一号で出した環境基準がありますよ。それは、京都という盆地の中に車を入れるという場合にこれでは大変だ。こういう自主性をつぶすようなことをやる、そういう国の基準だったら言うこととやることは違うなということになりますよ。だから質問は、京都市のせっかくお決めになりましたものを尊重いたしますと言うのか言わぬのかだけなんだ。そんな難しい話はだれも聞いてない。  大臣、私は行政当局の見解はわかりました。答弁能力がないということ。だから大臣からどうですかということだけなんです。
  181. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私が申し上げましたこの環境基準でございますが、これは健康項目にかかわるものでございます。したがって、これは地域的な差はないと見てよろしいものでございまして、したがって国の基準を用いて行うということが適切なものであるというぐあいに考えるものでございます。
  182. 寺前巖

    ○寺前委員 これは横着だね。自治体が自主的に考えて、国の基準ではちょっとあかんでといってそれから後に決めているのです。これは八五年でしょう。国のやったのは七八年と違いますか。わざわざ自主的に決めているのに、この自主性を尊重しないのですか。私が聞いているのはそれだけのことだ。やはり尊重してこそ環境保全することができる。
  183. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 要するに寺前先生のお説は、国の基準よりも、地元の京都の条例か何か知りませんけれども、それの基準としたものが環境基準としては適正である、その場合にはそれをとるべきではないか、こういうお話でございますね。  そこで、環境庁としましても、今そういう問題で大臣が答弁するよりも、企調局長答弁の方が実際にかなっておりますので、企調局長にもう一度答弁させます。
  184. 寺前巖

    ○寺前委員 もうそれはさっき聞いた。局長はもうそんなもの無視するんだということを宣言されたのですよ。だから、それでは私は無視することの方がおかしいのと違うかと。それぞれの環境があるのだ。だから、それぞれの環境に見合ったようにやろうと自治体がお決めになることを尊重するという態度が欲しいなと思ったけれども、さて、基本法の提案者は具体的になったらそういうことを無視するということでは、私は理解ができないなというふうに思うのです。
  185. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 委員長の御指名がございましたので、お答えさせていただきます。  この問題に関しましては、地域の特性に伴って状況の変わってくるものと科学的知見に基づいて客観性が保ち得るものと、両方あろうかと思います。この問題は、生活環境に関する基準ではなしに健康にかかわる基準でございますので、それは最新の科学的知見に基づいて全国的に定め得るものでございまして、そういうことから国の基準は定められる、したがって、それに基づいて環境影響評価を行うことも適切である、こういうふうにお答えを申し上げているわけでございます。
  186. 寺前巖

    ○寺前委員 だから、私はあなたの説明は要らぬと言っているんだ。あなたはさっきから同じことを言っている。私が聞いているのはそうじゃない。わざわざ自主的にお決めになること一切まかりならぬという宣言をやったわけだ、そのことは。だから僕は、そんなことではあかんのと違うか、本当に環境を守っていく、みんなそれぞれの自治体の自発性を尊重するということが大切な態度じゃないだろうかということをあえて大臣に聞いてみただけなんです。このこと自身を言っておるんじゃないので、具体例として挙げてみただけの話。  それで、ちょっとその次に聞きます。けれども法案の十九条の条文について「事業者が、その事業実施に当たりあらかじめ」とあるが、これは実施段階環境影響評価しか位置づけられていないように読み取れるけれども、広域計画事業計画段階からアセスというのはやはり考えていかなければならないんじゃないだろうか。計画している段階アセスをやって、現状でこの計画でやっておったらいかぬ、計画そのものを変えなければいかぬというふうに私は位置づけるべきだと思うのですけれども、どうも事業を進めるためにその環境アセスがあって、実施段階になってのアセスをやるということになってくると、何のためのアセスだろうか。将来にわたって責任を持つということになるならば、そういうふうに計画段階から、あるいは埋め立てやったら埋め立てという部分だけじゃなくして、埋め立てを取り込むところの広範な、海の場合やったら海域だとか、ちょっとやはり総合的、広域的に、計画を立てる段階からアセスというのはやっていく必要があるのじゃないだろうかと思うのですが、この読み方はどういうふうに読んだらいいのでしょうか。
  187. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 十九条における書き方の問題の御質問でございます。  環境影響評価は「事業実施に当たりあらかじめ」ということになっておりまして、十九条におきましては、計画段階で個別の事業に係る環境影響評価を行うことも含む規定とさせていただいているところでございます。しかし、環境影響評価を実際に具体的にどの段階実施するかということは、個別の措置におきまして事業の特性に応じて定められるものであるというぐあいに考えております。
  188. 寺前巖

    ○寺前委員 僕は、そういうことをきちっとやっていかなければあかんということから考えると、やはりきちんとした法制化をやるべきだというふうに思いますね、この問題について。  次に行きます。  この環境基本法の基本理念が書いてありますが、「環境の保全は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものである」というふうに規定があります。気になるのは、公害国会と言われたときに問題になった内容ですね。その基本理念の「環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等」で、「健全な経済の発展を図りながら」という文章が出てくるわけです。かつて公害国会のときに問題になりました、経済の発展なくして福祉なし、だから経済の発展が先なんだという考え方が出ました。それで、その考え方に対して、公害国会では、そのために公害が事実上野放しのような姿になって公害患者がいっぱい出たんだ、だからこの考え方はつぶさないかぬのやといって、あのときに基本法を変えたと思うのです。私は、今度出されてきている言葉が、これまた何か調和条項が入っているような入っていないようなわかりにくにものだから、大臣にお聞きしたいと思うのです。  その公害国会の到達した点、要するに経済との調和条項というのは外してしまったわけだけれども、それはそのまま、この条文からは生きているのですか、いかがですか。
  189. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 経済と調和の条項でございますけれども、これは生きているということはありません。経済と調和の条項ですね。経済と環境の調和ということでございましょう。この今度の法案にはそのことは生きておりません。あくまでも経済と環境との統合という形でもって説明しております。
  190. 寺前巖

    ○寺前委員 七〇年の十一月に公害問題が問題になったときに、当時、佐藤総理は、国民生活優先の見地から法改正を提案する、こう言っているのです。経済発展との調和という条項がそのときに削られたのです。経済の発展なくして福祉なし、この考え方のために経済発展ということを前提に置いたものだから、だからこれだけの公害を生んだ、それを外しますのや、国民生活優先の見地からこうさせていただきますのやと当時総理大臣は言っているのです。それがあの公害国会の到達点、公害基本法の到達点です。  その到達点がこの文章の中からは消えていっているのですか、それはそのまま残っているのですか。どういうふうに読んだらいいのかここの文章面が読みにくくてわかりにくいものだから、その点は公害基本法のときの精神はそのまま残っていますとおっしゃるのかおっしゃらないのかということだけなのです。
  191. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、公害対策基本法では、健康保護を優先すべき課題だとする一方で、生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和を図ると規定されておったところがあったものでございますから、この調和条項の存在が経済発展を優先するという誤解を与えがちであったことから、四十五年の公害国会において削除されたという経緯のあるところでございます。  それに対しまして、今回提案されております基本法におきましては、これまでの生産と消費のパターンを見直して、持続可能で環境負荷の少ない経済発展を目指すことが必要であるというようなことで、環境と経済との対立したものとはとらえないで、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を構築するということでございまして、「環境への負荷の少ない健全な経済の発展」という表現をとっております。従来ありました公害対策基本法では、「経済の健全な発展」と表現をしております。ここでは全く思想の異なったものでございまして、この条文は公害対策基本法にございました概念を復活させるということでは毛頭ございません。
  192. 寺前巖

    ○寺前委員 時間ですので先に行きますけれども、一番基本問題で歴史の到達点だから、これより後退するようなことになると困るから、この法律が何か読みづらくて、だからそういう点はひとつきちっと確認をしてみたいと思うのです。  そこで、次に、昨年の六月の地球サミットのリオ宣言の原則十にこう書いてある。   環境問題は、あらゆる関係者が、それぞれの  レベルで参加することによって、最適な対処を  行うことができる。国内レベルにおいては、各  個人が、有害物質や社会における活動に関する  情報を含む、行政機関の有する環境に関する情  報への適切なアクセスを有するべきであり、政  策決定過程への参加の機会を与えられなければ  ならない。各国は、情報を広く利用可能な状態  にすることにより、公衆の自覚と参加を促進  し、奨励しなければならない。賠償及び救済を  含む司法及び行政手続への効果的なアクセスが  与えられなければならない。と、情報の公開と市民参加の保障がここでは強く訴えられている。私はこれは非常に大事な問題提起だと思うのですが、今度の法律にはこのリオ宣言がどこに書かれて取り入れられているのですか。条文で言うと第何条に取り入れられておりますか。
  193. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生お読みになりましたリオ宣言の原則十の考え方は、結論から申し上げますと、基本法案に位置づけているところでございます。  このリオ宣言の第十原則におきましては、環境関連情報の入手機会の確保と国民の参加の促進とを述べているところでございます。このうちの第一の環境関連情報の適切なアクセスの問題につきましては、従来から、各資料の一般への提供、文書閲覧窓口の整備充実等の措置を講じてきたところでございますが、基本法案におきましては、それぞれの主体が環境に関する理解を深め、環境保全のための望ましい行動をとることができるように、正確な情報が提供されることが不可欠であるとの認識に立ちまして、特に国が献境の保全に関する必要な情報を適切に提供するように努める旨の規定を置いたところでございます。  また、参加の促進のための措置につきましても、すべての者が環境保全に関する活動に参加することができるようになることが必要であるという認識のもとに、第二十四条におきまして、環境の保全に関する活動を行う意欲を増進するための教育や学習などを振興するための措置を規定いたしましたし、二十五条において民間団体等の自発的な活動を促進するための支援措置を規定し、さらに二十六条におきましてこれらのための情報の提供の措置を規定したところでございます。
  194. 寺前巖

    ○寺前委員 もう簡単にお答えいただいたらいいのですけれども、ここで情報の公開とか市民の参加というのは、この法律で見ますと、書いてあることは書いてあるのですが、それではこれは改善されることになるのかなという気になる。だから私、具体的例でこれも聞いてみたいと思う。  今いろいろな形で話題になっているのは、先ほどからここでも問題になりました水俣病、あれが本当に情報の公開があったならばあれだけの被害を生まなくても済んだものをと私は痛感をするのです。そこで、この法案をつくるに当たって、あの水俣の経過について本当に反省があってこの法律になってきているのだろうか。そうしたらこれは値打ちのある基本法になるだろうと思うので、ここで通産省に聞きたいと思う。お見えになっていますか。  一九五九年当時、水俣病の原因物質についての調査研究が進んで、同年の七月に熊大の研究班が有機水銀説を公表しました。ところが、これに対してチッソ水俣工場は、工場で使用しているのは無機水銀であって有機水銀を排出したわけではない、責任はないと反論した。そこで当時問題になったのは、水俣湾で魚介類を汚染している有機水銀はそれでは一体どこから出てきたのか。熊大の研究班の科学者がチッソに対してその資料の要請をしたところ、拒否されるという問題がある。  当時、チッソ水俣工場での水銀の使用量、損失量をチッソから報告を受け、アセトアルデヒド製造工程や塩化ビニールモノマー工程で多量の水銀を使用し、排水に有機水銀が含まれていることを通産省は確認をしていたのじゃなかったのでしょうか。私は、正直にあの当時のことを言わなかったら、反省の上にこれができたということにならぬと思うのですが、これはどうですか。
  195. 清川佑二

    ○清川政府委員 お答え申し上げます。  昭和三十四年当時にチッソの水俣工場における水銀の使用状況について通産省は知っていたのではないかというお尋ねでございます。昭和三十四年十月に新日本窒素肥料株式会社から、水俣工場における塩化ビニール樹脂及びアセトアルデヒド製造用水銀使用量について報告があったものと承知をいたしております。
  196. 寺前巖

    ○寺前委員 知っておったということですね。知っておったけれども、これは公表はしなかった、そういうふうに理解してよろしいですね。
  197. 清川佑二

    ○清川政府委員 まず、知っていたかどうかということでございますが、報告があったというふうに承知をしております。  それから、それを公表していたのかどうかというお尋ねでございます。何分にも昭和三十四年でございますから、約三十年以上も前で資料もございませんが、公表をした、こういう資料が特にございません。公表はしなかった、特段に公表はしていないのではないかとも思われますが、公表したという資料も残念ながらございません。
  198. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、裁判に出ている問題ですから、それは言わざるを得ないのだろうと思うのですが、五九年七月二十二日に熊大の研究班が有機水銀説を公表した同じ時期の七月二十一日、チッソの工場内部では、附属病院の細川博士がアセトアルデヒド製造工程の排水を基礎食とまぜて猫に与えるという問題がありました。七十九日後の同年十月七日に猫四〇〇号は水俣病の症状を出して、そして十月二十四日に殺されるという事態がずっとあります。  この情報について、通産省は実験結果を当時知っていたのか知らなかったのかどうなんですか。
  199. 清川佑二

    ○清川政府委員 お答えいたします。  通産省はチッソの水俣工場の排水のえさを猫に食べさせていた結果を知っているのかということでございますが、御指摘のこの実験結果は、当時チッソから外部に一切公表されなかったというふうに伺っております。したがいまして、当時、実験の存在そのものも通産省にとっては知る由もなかったものと思うわけでございます。
  200. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、なぜ同年十一月十日に工場排水の水質調査報告依頼という通達を出して、極秘で全国の工場に対して、水銀の使用、損失、工場排水での水銀含有量などの調査報告を求めたのか。これはちゃんと文書があるからね。私、ここに持ってますよ。そういう通達をちゃんと出していますよ。決裁は十一月七日、起案は十月二十八日。ちゃんと名前も全部書いてある。排水班長、総括班長、工業用水課長、何たかと書いてある。その通達で、「この調査は、水俣奇病問題が政治問題化しつつある現状に鑑み、秘扱いで行うこととしていますので、この旨御了知の上、社外に対しては勿論、社内における取扱についても充分注意して実施されるよう希望致します」、そんなことまで書いてある。これは、アセトアルデヒド製造工程の排水に有機水銀が含まれている疑いがあるから全国調査をやった、そうではなかったのですか。これはいかがですか。
  201. 古田肇

    ○古田説明員 お答え申し上げます。  御指摘の点でございますが、通産省といたしましては、昭和三十四年十一月十日付でアセトアルデヒド及び塩化ビニールモノマーを製造しております全国の各工場に対しまして、工場排水処理の状況、工場排水の水質、排水口付近の水底の泥土中の水銀含有量、水銀の状況といったことにつきまして調査依頼を行っております。
  202. 寺前巖

    ○寺前委員 だから、知っておったからこういうことをやったのでしょうと私言っているのです。  それで、十一月十二日には、厚生省の食品衛生調査会水俣食中毒部会の答申が出ています。その答申を見ると、「水俣病は魚介類を多量に摂取することによっておこる中毒性疾患であり、その主因をなすものはある種の有機水銀化合物」と書いてあるのですね。  なぜ工場排水の水銀含有量などの全国調査の結果を即公表しなかったのですか。これは公表しておったら事態はうんと違っただろうと私は思う。まして新潟の水俣の場合はここの水俣より後ですからね、事が問題になってくるのは。そう考えてみたとき、なぜ公表しなかったのかという問題は非常に重要な位置を占めていた、そういう反省の上にこの法律を出してきたのだろうかどうか。  七三年の熊本地裁の判決を読んでごらんなさい。こう書いてある。「ネコ四〇〇号実験結果が公表されるに至らなかったことが熊本大学研究班の水俣病原因究明のための研究方向を誤らせ、またアセトアルデヒド廃水による直接投与実験が中断されたことが水俣病の原因究明を遅延させる要因となったことは否定し難いところである」、判決でこう書いてある。細川博士の猫四〇〇号実験の結果や通産省が全国調査をやったその情報を即座に公表しておったら、悲惨な水俣病の発生の拡大などというようなことは免れることができて、被害者の大半は深刻な事態に置かれなくて済んだのじゃないだろうか。通産省、そういうふうにお思いになりませんか。
  203. 清川佑二

    ○清川政府委員 三十四年当時の問題ではございますけれども、そしてまた同時に、各種の発表について先生の方からいろいろ御指摘があったわけでございますが、ただ、実際上、経過を考えますと、政府として水俣病の原因がチッソ水俣工場の排水中の有機水銀であるという統一見解にたどり着き、発表したのは四十三年九月でございます。三十四年当時、このような統一見解はなく、さまざまな説はあったというふうに認識しているところでございますけれども、このような状況にあったということを前提にして考えてみなければならないものと思うわけでございます。
  204. 寺前巖

    ○寺前委員 私、環境基本法を出すときぐらいは、長い裁判もやってきたのだから、せめて一定の到達をして当たり前じゃないだろうか。私がちょっと見ただけで、たんたん、たんたんと並べただけでも、ああ情報公開をしておったらどれだけたくさんの人が助かったかしれぬじゃないかとみんな思うのじゃないでしょうか。大臣、私は素直に言っているのですけれども、私は、この素直さがなかったならば、この基本法が本当に値打ちのないものになるなということをつくづく感ずるのです。  ところで、もう時間も終わりに近づいていますからお聞きしたいのですが、アメリカには、環境情報公開制度の一つに、有毒物放出一覧、TRIという制度があります。環境保護庁が急性健康影響、慢性影響、毒性、蓄積性に基づいて指定した約三百以上の有毒化学物質について、大気、河川、土地、施設外処理への年間放出量を環境保護庁と州に報告し、公表する。こういうことをやることによって、情報公開によって有害物質が随分削減され、人の健康が守られていくというふうに関係者の間では見ているようです。  せっかく基本法がここまで来たのだから、こういう法制度をきちんとやって、拘束力を持たせるようにしたらどうなんだろうかと私は感ずるのです。  そこでお聞きしたいのですが、今環境庁では環境基準というのをおつくりになっていますね。水質については何種類あるのですか、二十九くらいあるのですか。大気についても五つくらいですかな。正確でないので、ちょっと教えてもらいたいと思いますが、その環境基準の設定と、法制化の問題、制度化するという問題とでは、さっきのと同じように拘束力を持つのだという意味においては非常に大きなものがあると私は思うのです。だから、せっかくここまで来たのだから、今やられている環境基準ではなくして、環境情報公開制度というものをアメリカのようにおつくりになったらいかがでしょうか、お聞きしたいと思います。
  205. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、環境に関する情報を適切に提供することは今後の環境保全を図っていく上から極めて重要なことだと考えております。  また、アメリカにおきましては、TRIということで、一定の物質につきまして有害物質の放出量等を政府に報告させ、それを住民がアクセスできるような法律があるということも私どもは聞いております。この制度につきまして、私どもも十分勉強する必要があるというぐあいに考えております。  しかし、基本法段階で情報の公開ということを一般的に位置づけるに当たりましては、その意味が現段階において必ずしも明確でないというようなことから、一般的な制度化の問題については、行革大綱におきましても、引き続き調査研究等を進めるという段階にあるところでございます。情報の公開等につきましては、現段階では個別法において、例えば化審法等に基づきまして一部できているところでございます。  私どもは、情報の適切な提供ということにつきましては今回基本法に規定したところでございまして、この規定に基づきまして適切に運用することを考えてまいります。その一方、情報公開ということにつきましては、それぞれの個別にある問題等を明らかにしつつ、個別法等において対応し、勉強していく必要があるというぐあいに考えております。
  206. 寺前巖

    ○寺前委員 いいのですよ、研究してもらったら。研究せぬより研究してもらう方がいいのだから。  それで、例えばこれについても具体的にお聞きしましょう。  千葉県の富津というところ、ありましたかいな。いつやら私、行きました。何でかというと、トリクロの問題、あれはもう原因が明確になりました。随分離れたところまで地下水を通じて影響を与えて、コイが死んだりしておりました。その関係のところの途中で、学校などのプールに水が使われている。これ大丈夫かいなというので、何年前でしたか私、行ったことがあるのです。  私はつくづく思うのですが、トリクロについて、それぞれの地方ではどういうふうに工場で取り扱われているだろうか。私の京都でも、環境庁調査だったか、トリクロを使っている調査が、大きな数値が出ている、数字やらいろいろ出ておる。それで、その大きな数字はどの辺で出ているのや。これ、言わない。言わなかったならば、住民の問題なのに、住民は知らないで地下水をそのまま使っておるということにもなっていく。だから私は、現実には、いろいろな調査をやったって資料は公開されていない。住民の監視がないから、さきのリオ宣言じゃないけれども、市民が参加するという環境保全の役割に立とうにも、情報公開がない以上は立たせられないという問題に直面しているのです。生きた現実の姿ですよ。  私は、本当にこの機会に、局長さん、調査研究するとおっしゃったのだから大いに研究してもらったらいいけれども、そんなにとやかく言わなくたって、まずは情報を公開して全都市民の監視のもとに置かすのだ、そういうことになったら、企業自身も本当にその気になって、環境保全のために姿勢を変えることになるだろう。情報の公開、市民の参加が決定的に重要な意味をもたらすことになる。それにはやはり、拘束力を持たす法制度を考えるということが大事なことや。  そこで、もう最後になりましたので、大臣にお聞きしたいと思います。  水俣の問題についてむにゃむにゃおっしゃったけれども、事の経過、情報を公開しておったならばあそこまでいかなくてもと思った問題について、大臣はどういうふうにお感じになりましたか。もう一つは、情報公開の法制化の問題について、大臣はどういうふうにお感じになったでしょうか。  私は、この法律を読んでいる限り、二十六条に「情報の提供」とあるけれども、教育及び学習の振興など、情報提供の目的を限定しているようにしか読めない。情報公開というのはもっと広く位置づけるようにしていった方がいいのではないだろうかと思いましたので、大臣の御意見を聞いて終わりにしたいと思います。
  207. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 基本法には「情報の提供」ということで表現しておりますけれども、寺前先生からのいろいろなお説を拝聴しておりまして感ずるところも多うございますが、ただ、従来と違いまして、これからは地球環境という大きな枠組みで取り組んでいかなければならない環境行政の中でございますから、私は、情報公開という公開そのものは、先生のおっしゃっている公開ということと、それから、これを法文の中で公開という言葉を使わなかったというのにはそれなりの意味がございまして、情報公開という表現がまだ法令に用いる用語としては定着しているとは思えない面がございますので、そういう面からも公開という言葉を用いずに「情報の提供」ということで表現したわけであります。  ただ、提供ということは弱い、それよりはもっと情報公開法のようなものでもつくって公開したらいかがかという、恐らくそういう気持ちも先生お持ちかもしれませんが、ただ、これからの国際的な面で日本が環境行政を進めていくについては、その辺は私は、提供するということを十分に活用できることで考えてもいいのじゃないかなと思います。  したがいまして、情報を秘匿するとか情報を知らせないとかという意味じゃありませんで、広くこれを知らせる、しかも、これに対して住民参加ということはこれからの国際社会における当然の姿になろうと思います。したがって、日本においても大いに住民参加の形で環境政策が進められるという時代がもう目の前に来ていると私は信じておりますので、そういう意味においては、運営上、先生の御心配になっておられるようなことのないように情報提供の中で十分に運営をさせていただきたいと思っております。(寺前委員「水俣の話をちょっと」と呼ぶ)  水俣につきましては、これは情報が皆さんに知れ渡らなかったということも大きな原因の一つであるかもしれません。しかし、水俣の問題から発生しまして、いろいろ水俣病と名づけられるような大変お気の毒な症状に見舞われている方々のことも考えて、それに対しては政府としても、二千九百四十五人という認定患者を救済しながら、三千人に及ぶ総合対策の枠内でも救済の手を差し伸べるということをやっておりますけれども、そこまでに至る前にもっと情報公開があれば範囲をもっと狭められたのではないか、被害も最小限に食いとめられたのではないかという先生のお気持ちもわかります。しかし、情報公開ということの必要性、あるいは情報提供の必要性というのはこれからも続くことでありますので、水俣の問題を一つの教訓として受けとめて、情報をみんなに知らせることは十分に手を尽くしたいと思っております。
  208. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が来ましたので終わります。どうもありがとうございました。
  209. 原田昇左右

    ○原田委員長 中井洽君。
  210. 中井洽

    中井委員 環境庁基本法について順次お尋ねをいたします。  最初に、大変な御努力をいただいてこの法案をまとめられたことに対しまして、大臣初め環境庁の皆さんに心から敬意を表します。同時に、各党の皆さん方からそれぞれ質疑がありましたように、もう少し法案のあり方としてよりよいものが出たのではないかという思いもございます。片一方では、基本法だから今の国の政府の行政の仕組みの中ではこういうところが精いっぱいかという思いもございます。  法案をざっと見ました一番最初の感じは、従来の法律、公害に関するいろいろな法律を環境という面で一本化をした、同時に、地球環境保全、これに対する日本の取り組む姿勢というものを多く取り入れている、それから同時に、アセスメント法制化やあるいは環境税については今後の課題というところで、議論のあったところを最大的に集約をしてあるのかな、こんなふうに感じた法律でありますが、大臣としては、この理念を含めまして環境基本法というものをどういうふうに一般国民に説明をしたら簡単におわかりいただけるとお思いになっていらっしゃるか、その基本的なところをお聞かせをいただきたいと思います。
  211. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 中井先生にお答え申し上げます。  先生の御質問の中に従来の公対法あるいは自環法、そういうことが御念頭にあられまして、今度の基本法と対照しておられるというふうに承るわけでありますが、環境基本法は、公害対策基本法自然環境保全法のような問題対処型の、つまり、問題が起こったからその問題に対処するという意味の問題対処型の法的枠組みということではなくて、社会経済活動や国民の生活様式、これが非常にリオ宣言に見るまでもなく変化しておりますので、そういう社会全体の変化を踏まえて、環境への負荷を少なくする、あるいは持続的な発展が可能な問題に変えていくという、そういう新しい角度から環境問題に取り組まなければならない、そういう時代の要請にこたえまして今度の環境基本法案を策定いたしたわけでございます。  したがいまして、環境影響評価やあるいは経済的措置を含めました多様な手法を、やり方ですね、その方法を位置づけるということによって、問題ごとに適切に対応できるようにあるいは活用できるように、積極的な取り組みを進めるために、そういう意味からいくと、従来の環境問題に取り組んできた自環法とは違った意味の枠組みを持っておるわけでありますから、そういうことを踏まえて、特に今度の環境基本法の特徴というのは、先生も御案内のように、一つの理念をきちっとさせておるということ、それからもう一つは、それぞれの分野に応じて責務というものを、責任体制というものをはっきり自覚してもらうということを特に打ち出しまして、それらをもとにして非常に広い分野で環境保全に関する施策ができるように、総合的、計画的な問題対処をすることができる体系をとろうということでございます。
  212. 中井洽

    中井委員 この法案の基本理念のところの二項であります。先ほど共産党の寺前議員からも御質疑がありました。めったに共産党さんと一緒になることはないのでありますが、同じような質問になってしまいますが、いわゆる経済発展との調和条項というものを削った。同時に、公害基本法において、不特定多数の者が特定多数の者に害を与えるのを公害だ、こうしたのを、従来の発想を、特定多数の者が不特定多数の者に害を与えるのが公害だと変えた。この二つが大きな転換であったわけであります。  その転換を遂げてさらに今回、地球環境ということを含めて大きな理念を打ち出したにもかかわらず、こういう法案の中に、「環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら」という字句を入れた理由、これがどうしても先ほどの御答弁を聞いておって、また一つぴんとこない。「環境への負荷の少ない」ということを入れたから「健全な経済の発展を図りながら」と入れてもいいんだ、こういうことですか。そこのところを大臣にお尋ねをしたいと思います。
  213. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 御質問の「環境への負荷の少ない健全な経済の発展」ということでございますが、これにつきましては、環境と経済というものを、対立する概念ではなしに、経済の発展そのものが環境に対する負荷の少ない格好で行われていく必要があるんだという趣旨を明確にするために「環境への負荷の少ない健全な経済の発展」という表現をさせてもらったところでございます。  従来の公害対策基本法にございました規定、いわゆる調和条項の規定は「生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにする」ということで、生活環境の保全を図っていくのに経済の健全な発展について若干遠慮しながらやっていくというようなニュアンスの規定に受け取られかねない、このような考え方とは全く逆転している、思想は全く変わっておりまして、環境と経済というものは対立しない、経済の運営そのものが環境に対する負荷の少ないような格好、それがいわゆる健全な経済の発展ということになるんだと思います。そういう意味では先生おっしゃるように、環境負荷の少ないというのと健全なということは同義語として私ども理解しておるわけでございます。
  214. 中井洽

    中井委員 大臣に少ない質問でありますので、せいぜい大臣と言ったときには大臣にお答えを賜りたいと思います。  そうしますと、昨年ブラジルで地球サミットが行われました。私も出席をさしていただいたわけでございますが、このときにキーワードになった持続可能な開発、この法案の文章でいけば「持続的に発展することができる社会」、こういうのをどういうイメージとして、あるいはどういう理念として大臣はお受け取りになっていらっしゃいますか。
  215. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 持続可能ということは、リオ宣言で中心的な問題だろうと私は思います。  それは今までの行き方と違いまして、人類そのものが経済活動をしていくために、その経済活動そのものは特定の人々、あるいは企業でもいいし、特定の人と言ってもいいと思いますが、その特定の者のために役立つ経済発展ということであれば、これはそれが環境を破壊すれば当然持続できなくなりますね。そういうことはやはり人間社会から指弾されますから、自分だけよければいいという経済の発展であれば持続できなくなります。しかし、少なくとも環境を支えていこう、環境と対立しないで環境を支えていこうということになれば、それは環境のためにも大事な面でありますから持続可能になります。そういう意味に私は解釈いたしておりました。今までの生産と消費のパターンを考えましても、そのことが同じように言えると思います。  そこで、持続可能でないとこれからの経済は発展しない。だから、環境に重荷を負わせないで、そして環境をつくる一面を協力しながらともに経済も繁栄していくという行き方でないと、これは持続できないし、それから環境への負荷も、環境への重荷をかけるだけで、負担をかけるだけになってしまうということであれば、その経済そのものはもう長続きしないわけでありますから、これからの環境と経済というものは、これは絶えず人間が生きている限りゆるがせにできない一つの姿でありますから、そのためにもそれだけの自覚を持つように、長く長く持続きして次の世代まで続けていくということでないと持続可能にならないわけでありますから、私はそういう意味で受けとめております。
  216. 中井洽

    中井委員 日本を含めて幾つかの国が、環境という面では経済発展との調和条項というのをとっくの間に乗り切って、そして公害環境問題に取り組んできた。しかし、昨年のサミットはたくさんの国が参加なすった。特に発展途上国の側から見ると、この経済発展との調和というものがまだまだ出てきたのじゃないか。そこら辺で大変苦労して持続可能な発展というキーワードがつくられたという面もあるかと私は思います。そういう面が出てきたのに乗じて「健全な経済の発展」というのが出てきたのじゃないかなという、逆におかしな読み方を、また心配をいたしているわけであります。どうぞ、こういう書かれた文言で逆戻り、こういうことのないように身を引き締めておやりをいただきたい、このように考えます。  そういう意味で、社会党さんにお尋ねをいたします。  このブラジルの地球サミットでキーワードとなりました持続可能な開発、こういう面が社会党さんの法案をざっと見させていただいて一切出てこない。環境を最優先にするんだ、こういう形での立派な、超理想的な法案であります。しかし、一方でやはりこの持続可能な発展ということも十分考えていかないと国も成り立たない、何もできないということもお互いがわかっていることだと思うのですね。社会党さんがあえてこの持続可能な発展という言葉を無視されたというか、載せずに法律をおつくりになった根本的なお考えをお聞きしたいと思います。
  217. 岩垂寿喜男

    ○岩垂議員 昨年、中井さんにお供をして私もブラジルに行ってまいりましたけれども、先進諸国の多くはやはり環境を優先させる成長というようなことを強調していました。そこでは開発の抑制もやむを得ないという考え方も述べられてきたと思います。これに対して途上国のほとんどは大変批判的でありまして、これらの国々が経済成長も開発もこれからやるんだという願望を示していたことは、御案内のとおりであります。  持続可能な開発とか持続可能な経済発展といった言葉というのは、私は大づかみに言えば、先生の今のお言葉の中にもありましたけれども、ある種の両論の妥協的な表現ではなかったかなというふうに思うわけでありまして、どちら側からも都合よく解釈し、説明できる漠然とした考え方であるというふうにも受けとめるわけであります。だから、確かにサミットのキーワードになったわけだけれども法律の言葉の中にこれを書き込むことにはいささからゅうちょがございまして、私ども、これにどう対応しようかと悩みました。  そこで、苦労した結果として、私たちの社会党の目指す環境保全型社会への転換というのは、環境への負荷を可能な限り小さくすることを優先的に考える、そして工夫していく社会だ、こういうふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  218. 中井洽

    中井委員 先生、ありがとうございました。  それでは、法案について順次お尋ねを申し上げます。  法案の中で幾つか気になることをまず最初お尋ねをいたしますが、例えば第三条で「環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており」、こういう字句があります。また、十三条には「生態系の多様性の確保、」「多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。」「人と自然との豊かな触れ合いが保たれること。」こういうことで大変美辞麗句が載せられているわけであります。これらのことをどういうふうに解釈をするのか、あるいはどういうふうにこの言葉をもと法律として施行していくのか、ここらを御説明いただきます。
  219. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、この法律におきましては、普通の法律よりは考え方なるものを豊富に取り入れさせていただいております。これにつきましては、基本的には、これからの環境政策をつくる上に当たって基本的な考え方をもとにいたしまして、そういう共通の認識をもとにして、これから各主体がそれぞれ責任分担を行いながら未来へ向かって行動をしていこうということから、かなり理念法的な性格を色濃くするためにこういう規定を書かせていただいたということで、内閣法制局が審査いたしました法律の中では、かなりそういう意味では異例の法律になっているかと存じます。  そこで、先生のお触れになりました文言を若干御説明してまいりたいと思うわけでございますが、健全で恵み豊かな環境ということにおきましては、公害がなく、清浄な大気や水といった環境の持つ恵沢や、自然と触れて得られる人間性の回復や、保健、休養としての効用等の恵沢が豊かに存在している状態の環境のことをいうというぐあいに私ども理解しているわけでございます。  次に、生態系が微妙な均衡を保つことにより成り立つという表現をさせていただいております。環境はもともと生態系を基盤として成り立っているという基本的な認識をあらわしたものでございますが、また、その生態系そのもののシステムが微妙なバランス関係ができ上がって成り立っているということも同時に表現したかったからでございます。  このうち、微妙な均衡と申しますのは、生態系が持っております動的な作用関係の複雑性、精密性をあらわす必要があるということからこのような表現をとらせていただきまして、生態系に加えられる人間の影響というものが、全体から見れば大したことはない、ごくわずかなものだというような御指摘があったといたしましても、複雑な因果関係のプロセスを経て生態系のバランスを崩すことがあり得るということを我々は厳粛に受けとめなければならないという気持ちを実は込めておりまして、具体的には、例えばフロンという人体に無害と思われていた物質、そのものは無害であると思われているわけでございますが、それがオゾン層においてオゾンと反応を起こすことによりオゾン層が破壊され、その結果、紫外線量が増加することによって人にまた影響を引き起こすといったようなことがあるからでございます。  また、自然との触れ合いという表現を使わせていただいております。自然環境の恵沢を享受するための基本的かつ具体的な行動であり、自然の豊かな地域に出かけていったり、また、町の中におきましても、街路樹の緑や水辺地の自然が目に入って安らぎを覚えたりするということなどによりまして、人間性の回復とか保健、休養としての効用を享受しようというものでございます。また、自然と触れ合うことによって、自然の持っているモラル、また、自然が我々に与えてくれる愛情というものを受け取り、それに対してまた逆に自然に対する愛情をはぐくむことができるということによりまして、環境教育としての効果が期待されるということを考えていることでございます。  当初申し上げましたように、理念法としての性格から一つこういうことを書かせていただいたところでございます。
  220. 中井洽

    中井委員 美辞麗句を美辞麗句でもって御説明を賜りましたが、人それぞれ自然に対しても感じ方が違う、また、時代時代によって違うと僕は思うのです。まあ、それを規制しろとは言いません、決めるとは言いませんが、何らかの基準が必要だ、そういうことについて少しずつお考えをいただいて、実効あるものにしていただきたい、このことを御要望申し上げておきます。  次に、もう一つ全体を通じてお尋ねをしたいと思うのですが、この法律案を見させていただきますと、「措置を講じなければならない。」「必要な措置を講じなければならない。」「講ずるものとする。」あるいは「措置を講ずるように努めなければならない。」「配慮するように努めなければならない。」「提供するように努めるものとする。」「整備に努めるものとする。」「推進するように努めるものとする。」「連携に配慮するものとする。」等々、さっぱりどう読んでいいかわからぬ用語が微妙に使い分けられているのであります。これらの言葉がどう違うのか御説明ください。
  221. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境基本法におきましては、先ほど申しましたように、理念と、それに基づいて各主体の責務、それに国等が行う施策のフレームワークを定める法律としたところでございます。  そこで、環境基本法におきまして、原則としては「講じなければならない。」「講ずるものとする。」という表現をしたところでございますが、場合によりまして、意味がございますことによって、おっしゃるように使い分けをいたしております。「努めなければならない。」あるいは「努めるものとする。」という規定は、何らかのことを実行し、実現することに努力することを義務づけているものであって、「しなければならない。」がその実行、実現そのものを義務づけていることに比較すれば、義務づけの内容は緩和されたものになっているということが言えるかと思います。  そういった場合といたしまして、一つには、施策に関する規定におきまして財政上の制約を考慮する必要性が高い場合が一つ、二番目に、国際協力に係るものでございまして、相手国の主権を尊重する必要がある場合、これが第二の範疇、それから第三に、その他の事情によって義務づけの内容を特に緩和する必要がある場合には「努めなければならない。」「努めるものとする。」という規定ぶりをしたものでございます。  具体的に申し上げますれば、財政上の考慮によるものといたしまして、二十一条の第一項、二十八条、三十八条が第一の範疇に属するものでございまして、第二の範疇に属するものといたしましては、第六節の「地球環境保全等に関する国際協力等」の規定でございます。第三に、その他の事情によるものとしまして、第十五条の四項、十七条、二十条の第二項等がございます。  それから、責務の規定にありましては、その主体の責任の程度は比較的軽く、「講ずる責務を有する。」とするほど強い責務を課すことが適当でない場合に限りまして「努めなければならない。」というぐあいにしたところでございます。  なお、「配慮」という表現を用いた理由につきましては、環境保全への配慮ということのように、他の分野の施策や行為を行うに当たって、その行為そのものを行う場合において環境保全にも意を配る必要があるという場合において配慮という表現を用いさせているところでございます。
  222. 中井洽

    中井委員 今お答えをいただきましたのを、ちょっと一覧表にしてお届けいただけますか。
  223. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 承知いたしました。
  224. 中井洽

    中井委員 次に、環境の基本計画についてお尋ねをいたします。  この政策の大綱を決めて、施策を総合的に、計画的に推進するために必要な事項を定めておられるわけでありますが、その目標、具体的な内容、予算あるいは達成年次、こういったものまで含めてお決めになっていくのか、そういった点でお答えをいただきます。
  225. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 基本的には、国における総合調整官庁といたしまして、経済企画庁は経済面から経済計画、現在ですと「生活大国五か年計画」を持っておりますし、国土庁は全国総合開発計画という格好でそれぞれの行政分野におけるマスタープランを持っております。環境基本計画につきましては、従来は、こういった全体を通ずる環境保全について総合的な見地から政府の行くべき方向というものを定めた計画を持っておりません。そういったものがこれからは、事前的、総合的、計画的に実施していく場合にやはりどうしても必要だろうということで、私ども環境基本計画をつくるということで今回基本法に盛り込みまして、これをお願いしているわけでございます。  この基本計画には、望ましい環境のあり方と環境の保全に関する国の施策の全体像を記述するほか、地方公共団体事業者、国民といった各主体に期待する取り組みを記述することとしておるところでございます。そこで、この環境基本計画に掲げられた施策の実施につきましては、この計画に盛り込まれた基本的な方向に沿ってそれぞれ有機的な連携を保ちながら、環境庁を初めとする関係各省におきまして、あるいは個別法に基づき、あるいは予算措置等を通じまして施策が講じられることになるというぐあいに考えております。  いろいろ御質問がございました。まず最初に本計画計画期間でございます。環境の保全につきましては、長期的な取り組みを必要とするものであるということにかんがみまして、国の各種の長期計画のあり方を参考にしながら設定したいと考えておりますが、五年、十年というような考え方につきましてはこれから詰めていく必要があると考えますが、余り短い期間を設定することは必ずしも適当ではないのではないかというぐあいに考えているところでございます。  基本計画の具体的内容につきましては、そのほか望ましい環境像として目標設定をどうするかという目標設定のあり方を含めまして、いろいろあるわけでございます。具体的な内容につきまして、現段階でこれといって固まっているわけではございません。中央環境審議会の意見を聞きながら、またこの国会における御審議を踏まえながら、今後私どもは環境審議会の意見を聞きながら、閣議で決定してまいりたいというふうに考えております。  いずれにいたしましても、環境政策の総合的、計画的推進に効果のあるような指標をできるだけとりまして、それをもとにいたしまして、政府のとるべき政策目標を明らかにするように、この基本計画を実効性のあるようなものとして機能するように、私どもはこれから十分勉強してまいりたいというぐあいに考えております。
  226. 中井洽

    中井委員 十分勉強していただくのは結構ですが、結局各省庁がそれぞれの施策の一覧表を出して、それを環境庁が一括して出して終わりということのないように御努力を賜り、書かれた目的が達成できるように頑張っていただきたい、このように要望をいたしておきます。  過日、林業白書というのが出されまして、その中で環境保全への効用というものが平成三年の時点で三十九兆円ある、こういう試算が出されたわけでございます。この法案の中で、いわゆるグリーンGNPというのが二十九条の第一項で盛られている、このように言われております。その中で、「環境の保全に関する科学技術の振興を図る」、このように述べられておりますが、この具体的な手法としてどういうものをお考えになっているのか、あるいはまた今後そういう手法の中で、先ほど申し上げたような林野庁が三十九兆円の環境保全に関する費用効果があると発表したのを、環境庁なんかがこれを発表するというような形に持っていくのかあるいは環境の基本計画の中で各省庁のやっていらっしゃることがこういう効果があるよというようなことも含めてお書きになる、そういうこともお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねをいたします。
  227. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私どもの今度の基本法におきましては、「科学技術の振興」のところにおきまして、「環境が経済から受ける影響及び経済に与える恵沢を総合的に評価するための方法」ということで、通常グリーンGNPというふうに言われているものを研究開発するということを具体的な例示として挙げているわけでございます。  これにつきましては、これからの政策を立案するに当たって環境と経済を総合的に評価し、経済の中に環境を織り込み、また環境政策と経済政策を統合されたような格好で進めなければならないという趣旨から、こういう規定を置かせていただいたところでございます。  この具体的な中身といたしましては、先ほど経済企画庁の方から御説明があったところでございますが、これにつきましては、OECDまたは国連で今その勉強が行われている最中でございます。その研究開発作業と私どもは連携しながら、現在環境庁、経済企画庁、農林水産省が合同で、私どものところで計上されております地球環境研究総合推進費の中で勉強をしているところでございます。そういう意味で、三省共同の作業をやっているところでございます。三省庁が意見を合わせるような格好で今後この研究開発を進めてまいりたいというぐあいに考えております。  なお、本年度の林業白書におきまして、環境に与える森林の効用が平成三年度時点で年間三十九兆円と試算されていることにつきましては、私どもはこれを承知しているわけでございます。先ほど申し上げましたように、環境庁は農林水産省と共同で環境勘定体系の確立に関する研究ということでグリーンGNPを研究開発する作業としてやっているわけでございまして、森林の効用につきましては、森林資源勘定の作成を農林水産省が分担するということから、その途中経過における研究成果を今回林業白書で御発表になったというぐあいに承知しているわけでございます。  環境勘定体系の具体的な手法につきましては、まだ現在研究中でございます。今後とも関係省庁と連携をとりながら、私どもは今後の、先ほどちょっとわかりづらいと御指摘いただいたわけでございますが、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会を構築するためには、やはりこういった指標というものを私どもは開発し、それを施策に活用していくことが重要であると考えまして、その方向に向かって努力をしたいというぐあいに考えているところでございます。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕
  228. 中井洽

    中井委員 環境影響評価についてお尋ねをいたします。  十九条において盛り込まれ、いろいろな議論が先ほどからも行われてまいりました。私はそういう議論を聞いていますと、かつて出されましたアセスメント法国会が二年にわたって私ども野党がいろいろな立場から反対をして、審議をせずに葬ってしまった、このことをいろいろな思いで思い返すものであります。国会での法制化が難しいということで、閣議決定要綱でもって現在行われているわけであります。  今回、答申どおりの中身でこういう十九条がつくられてまいりました。御答弁を聞いておりますと、法制化も含めてやるのだ、こういうお話でありましたが、法制化ということになれば、この閣議要綱というものから、あるいは前に葬り去られた法案から、かなり時間を経過をして世の中の情勢に合わせたものになるのかどうか、そこまでお考えになって法制化も含めとおっしゃっておられるのか。環境庁のおっしゃる法制化というのは、この閣議決定要綱を、今行われているものを一番現状に合っていると考えて、それを中心に法制化ということをおっしゃっておられるのか。どちらですか。
  229. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私どもといたしましては、中公審、自然環境保全審議会の答申におきまして、ともかく環境基本法制の中に、アセスメントがこれからの環境保全対策、環境汚染を未然に防止するための道具立てとして重要であるということを法制的に位置づける必要がある、そこのところはきっちり踏まえる必要があるということで、まずその重要性を位置づけるという趣旨に従ってこの規定を置かせていただいたわけでございます。その際にどういう規定を置くかということでございますが、「必要な措置を講ずるものとする。」という一般的な規定をすることとしてこれは置かせていただいたわけでございます。  そこで、必要な措置ということになりますれば、現在は環境アセスメント閣議決定要綱に基づきやり、また個別法に基づきやっているところでございますが、それが不十分であったというぐあいに認識される場合には、法制化も含み得る規定といたしまして、一般的な規定で「必要な措置を講ずる」というぐあいに規定させていただいたところでございます。  そこで、次からが先生の御質問にわたるところになるわけでございますが、それでは環境影響評価をこれから個別措置としてどういう措置が必要であるかということに関しましては、これも、中公審の答申におきましては、社会経済情勢の変化等を見ながら必要に応じて現行措置を見直していくことが適当というぐあいにされているところでございます。  こういうことが答申の趣旨でありますれば、それは当然のことながら、現行措置が適正に運用されるかどうかをまず努めなさいということと同時に、それで十分かどうかということを、現在やっておりますアセスメントを一方で見据えながら、片方では社会経済が要求している要求水準とそれが見合っているかどうかということを、両面からそこは検討していくべきであるという御趣旨だというぐあいに私ども理解しているわけでございます。そういう両面から現行措置が十分でないということになりますれば、それは必要に応じて見直しを行うことになるというぐあいに私ども理解しているわけでございます。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  230. 中井洽

    中井委員 今の要綱や各種法律で、あるいは地方自治体条例等でおやりをいただいているわけです。その中で私は一つお考えをいただきたいことがある。  それは、当委員会でもたびたび議論になりました長良川の河口堰、これは伊勢湾台風の最後の後始末として計画されて、今完成に近づきつつあるわけです。ところが、伊勢湾台風は昭和三十四年でございますから三十五年前、当時はアセスメントも何にもなかった。そこへああいう反対運動というか問題提起が行われた。それで、環境庁アセスメントをおやりいただいたわけでありますが、現行やっておるアセスメントでも、公共事業が十五年、二十年とかかって、時代を経て、やったアセスメントそのものが古くなる、こういう可能性がある。そういうものに対応できる体制というのも少しお考えになればいいじゃないか。  私どもは公共事業が早くできるようにすればいいと思いますが、現実に政府のおやりになっていらっしゃる各種公共事業を見ますと、随分年月がかかる。その間に環境に対する思いあるいは住民の発想の転換、そういったものも出てくる。これに対応できるかどうか、そういったことをひとつお考えいただいたらどうかと思いますが、いかがですか。
  231. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘の問題点はよく理解できるわけでございまして、片方で、アセスメントというものは、事業等を行うに当たりまして事前環境影響の評価を行い、環境汚染未然防止を図っていくというところに主眼があるわけでございます。しかし、その事業そのものが継続されまして実施をする間に社会経済情勢が変わってきてしまう、そういったような場合に、事前評価というものが事態の変化をどのぐらい的確に事前に掌握し得ておったのかどうかという問題があるわけでございます。現在、アセスメントをやります際に環境庁意見を求められることがあります場合に、私どもとしては、工事実施の最中における環境に対する配慮の問題、また状況の変化に伴って環境配慮を行っていく場合の意見等も加えながら意見を書いていることがよくございます。  先生のおっしゃるように、事業期間が長期にわたるものにつきましての事前評価、またその事業がその最中においてどのぐらいうまく社会経済情勢を反映しているかということについては、私どもは十分勉強していく必要があるというぐあいに考えております。それをこの十九条におけるアセスメントのところで処理しようとするのか、またもう一つは、十八条における国の環境配慮に対する条項の具体化としてそこを処理するというぐあいに考えていくべきなのか。私どもといたしましては、いずれにしましてもそういった事態に対応するようにしていくべきであるということを考えておるわけでございます。  また、第八条に「事業者の責務」として環境配慮というものを一般的な責務として書かせていただいているところでございます。そういう責務に従って、一たん手をつけてしまったからそのままでいいということにはならぬ。やはり環境に対する配慮というものは、事業実施段階、また事業が行われてその後それが供用されている期間におきましても、その施設なり事業なりが環境に対する配慮が十分行われていくべきであるという視野も含めて、第八条ということは今後運用されていくべきではないかというぐあいにも考えているところでございます。
  232. 中井洽

    中井委員 お話の出ました第八条でありますが、第八条の二項には、事業者は、環境の保全上の支障を防止するため、「必要な措置を講ずる責務を有する。」このように書かれております。一方、第二十三条第一項に、事業者は、その事業活動に係る「環境への負荷の低減について適正に配慮すること」、こうなっております。「必要な措置を講ずる責務」と「適正に配慮すること」、ここの違いはどういうふうになるのですか。
  233. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘の第八条におきましては、事業者は、環境の保全上の支障を防止するため、「必要な措置を講ずる責務を有する。」というふうに書かれているわけでございます。それに基づきまして、一方、二十三条では、事業者は、「環境への負荷の低減について適正に配慮すること」という規定がございますが、私どもとしましては、この八条の規定は事業者の責務を規定したというぐあいに考えておりまして、一方、二十二条の第一項の規定は、事業者が第八条第二項及び同条の第三項の責務を受けまして、みずからの製造等に係る製品等が使用され、廃棄された後の環境への負荷につきまして評価し、その低減についてみずから適正に配慮することができるよう、それを国の側から必要な措置を講ずることを規定したということでございまして、第八条に書かれている責務を果たしてもらうために国は必要な措置を二十三条に基づいて講じていくという関係にあるということでございます。
  234. 中井洽

    中井委員 そうしますと、第八条というのは、事業者が責務を負うんじゃなしに、国が有する、こういうことだということですか。おっしゃることはそういうことですか。
  235. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 そうではございません。第八条に基づきまして事業者がそういう責務を持っている、その事業者がその責務を果たしていく上において国が何らかの支援措置を講じてやりたいというのが二十三条でございます。
  236. 中井洽

    中井委員 そうすると、二十三条の方の「適正に配慮する」ということは、国が配慮するということですか。お答えはそういうことだという意味ですか。そうですね。
  237. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 二十三条におきまして、この規定は国のサイドから書いておりますが、これは事業者が物を加工したり、製造したり、販売したりする事業活動を行うわけでございますが、そういった活動を行うに際しまして、その製品というものが消費者に渡って使われたり、また消費者が捨てたりするということがあるわけです。そういうことが行われることによって環境に対する負荷がどうなるかということを、事業者がまずそこはいわゆる技術アセスをやっていただく。そうすることによって環境への負荷の低減が、「適正に配慮することができる」ということは、事業者がそういう配慮をする必要があるわけですから、そういう配慮が適正に行われるような支援を国がやっていくという趣旨で、配慮する主体は事業者でございます。  なぜ配慮をするという書きぶりをしたかということに関しましては、事業者そのものがそれを使用したり廃棄したりするわけではございません。その間には消費者の行為というものが介在するという関係になりますので、事業者が十分の十の責任を持ってそこまでやるわけにはいかぬということから、配慮するという規定になっているわけでございます。
  238. 中井洽

    中井委員 ちょっとさっきのお答えと今のお答えが違うんじゃないかな。おわかりになっていらっしゃらないのじゃないかな。「適正に配慮することができるように技術的支援等を行うため、必要な措置を講ずるものとする。」と書いてある。これは政府でしょう。しかし、私の聞きましたのは、「適正に配慮すること」とそれから「必要な措置を講ずる責務を有する。」というのはどうなんだ、違うんじゃないか、どう違うんだ、こう聞いているのです。あなたの一番最初の説明は、片方は国でどうだこうだと言って聞いたら、いや違う、両方事業者だとおっしゃっておるのです。ちょっと混乱がありませんか。私が混乱していますか。
  239. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私、別に混乱しているつもりはないわけでございますが、第八条におきましては、第二項、第三項ともこれは事業者の責務として書いたわけでございます。第二十三条は、そういった責務を実現するに当たって国は何らかの支援措置を講じていかなければならぬという政策を実施する観点から構成されております。  この二十三条において国がやりますことは、「技術的支援等を行うため、必要な措置を講ずるものとする。」ところが国のやることでございます。
  240. 中井洽

    中井委員 だから、わかっていますから、「適正に配慮する」というのとそれから「必要な措置を講ずる責務」というのはどう違うんだと聞いておるのです、事業者が。
  241. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 そこで、第八条は「必要な措置を講ずる責務を有する。」ということ、それから第三項におきましては「環境への負荷の低減に資するように努める」という規定を置いております。  この第八条の第二項は、事業者が直接その廃棄まで責任を持つ場合についての規定でございますので、これは「必要な措置を講ずる責務を有する。」ということにしまして……
  242. 中井洽

    中井委員 ちょっといいですか。そんなにめちゃくちゃな質問をしているように思っていないのですがね。  「必要な措置を講ずる責務を有する。」こうあるのですね、事業者が。ところが、その同じ事業者が、その事業活動にかかわる環境への負荷の低減について責務を有するならいいけれども、「適正に配慮すること」、こうなっているのはどう違うんだと聞いておるのです。それだけ説明してもらったらいいのです。
  243. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 それでは、もう少し端的に御答弁申し上げます。  第二十三条は、第二項に対応するというよりは、むしろ第三項に対応する規定でございまして、事業者がつくった製品その他のものが消費者の手を通じて使用され、廃棄されるようになるということは、第三者の手が間に介在するわけでございます。そういう場合には「環境への負荷の低減に資するように努める」ものとするという規定がございまして、この規定に対応するものが二十三条でございまして、直接廃棄のところまで事業者が責任を持っておらない、その間に消費者等が介在することがございますので、そういったものが消費者によって使われ、また捨てられるという場合に、それが環境に対する負荷が大きくないよう、低減に資するよう配慮をするようにしてその製品なり物なりをつくっていかなければならないという関係になるわけでございます。そういう関係を国が支援するということで、この配慮というのはそういう意味で、事業者が、消費者の手に渡ってそれが使用され、捨てられる場合でも、それが環境に対する負荷の少ないように配慮しなさいという意味での配慮でございます。
  244. 中井洽

    中井委員 時間がなくなってまいりまして、私、運休後の一週間、質疑に参加できませんので、次に進みます。  二十一条の第一項に「その負荷活動を行う者」というところがありますが、負荷活動を行う者の対象範囲をお聞かせをいただきたいと思います。  それから、同じく第二項に「適切に調査し及び研究する」、これは具体的にはどういうふうにおやりになるのか。また同じ項に「国民の理解協力を得るように努める」、このように書いてあります。この二項はいわゆる環境税だと言われておりますが、国民の理解協力を得るように努める、得られなかったからやらないということで解釈をするのか、同時に、どういう形で協力を得られるように努める方法をおとりになるのか、お聞かせをいただきます。
  245. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 まず最初に、第二十一条第一項の助成措置の規定でございますが、負荷活動を行う者の対象範囲の問題でございます。  これにつきましては、公害防止のための施設の整備その他のみずからの環境への負荷を低減するための措置に対しまして、経済的な助成を行うということでございます。これは具体的には、事業者のみではなく自動車の運行、廃棄物の排出などの負荷活動を含む国民一般もこれには該当することになるというぐあいに考えております。  それから、第二項の経済的手法の問題でございますが、ここで考えておりますディスインセンティブの施策といたしましては、経済的手法としまして、環境税のほかに課徴金、デポジットなど、また場合によっては排出権売買等につきましてもそういったものの中に入り得るというぐあいに考えております。  ここにおきまして、経済的負担の負担者は負荷活動を行う者ということでございますので、事業活動に伴って負荷を出す者のほかに、製品、サービス等を消費することを通じて負荷の原因となる者も入るということでございますが、これについてどういう調査研究を行うかということでございます。これは国際機関におきましていろいろな調査研究が行われているということも踏まえると同時に、政府それ自体が調査研究を行うということもございますれば、私ども、中央公害対策審議会等において御議論をいただくこともあろうかと思います。また、それが税ということになりますれば、税制調査会等において調査審議を行うということもあろうかと思います。  それからもう一つは、国民の理解協力が得られなければそれはやらないのかということでございますが、それは当然、国民の負担に関するものにつきましては、個別実定法が要る問題でございます。国民の理解協力、それをどういう格好で実現していくかということに関しましては、国民の理解協力を得るためにいろいろな広報活動、普及活動を行うということはもちろんございますが、そのほかに国会における法律提出作業ということもあるわけでございます。そういう理解が得られなければそういう政策はとれないということになるわけでございます。  ただ、その前提といたしまして、そういう経済的措置が有効であり、国際的にもそれが推奨されているということがございますので、政府また環境当局としては、そういうことに対する理解が得られるように努力していくべきことは、やはりこれは当然のことではなかろうかというぐあいに考えます。
  246. 中井洽

    中井委員 最後に、第二十二条二項「国は、下水道、廃棄物の公共的な処理施設、環境への負荷の低減に資する交通施設その他の」、こういう条項がございます。ここへわざわざ「交通施設」というのを入れた理由、お聞かせを賜りたい。  同時に、私は逓信委員をしていますが、郵政省がこのごろ環境問題ということを熱心に言い出しておりまして、その中で、今度の景気対策で組まれる補正予算等でも、電波通信を使った環境対策、こういう発想を打ち出そうといたしております。この条文の中に、そういう郵政省が取り組もうとしておる電波通信をも使った省エネルギー、ひいては環境対策、そういったことも当然含んでおると理解をしていいのかどうか。二つの点でお答えいただきます。
  247. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 御質問二つございました。  「環境への負荷の低減に資する交通施設」というものをなぜ書いたのかということでございます。これにつきましては、交通渋滞を解消し、円滑な交通流を確保する効果のあるバイパス道路とか、自動車輸送から鉄道、内航海運への転換によって輸送効率を上げるといったような鉄道、港湾施設並びに車両、船舶等の移動施設などが挙げられるわけですが、これを書きました理由といたしましては、地球温暖化防止行動計画におきまして、こういった事業は炭酸ガスを抑制するために非常に効果があるということが一つ挙げられますほか、そのほかNOx対策等につきましてもこういう事業というものは有効であるということからいたしますと、これからの地球環境保全問題、また都市・生活型公害に対処するためにも有益な事業の例として挙げ得るというぐあいに考えられるわけでございます。  二番目の通信施設についてでございます。通信施設を活用することによりまして物や人の移動の削減が図られるということになりますと、それはエネルギーの消費量が少ないということによりまして、これまた地球環境保全に役立つじゃないかという御議論があるわけでございます。そういったことで環境の保全上の支障の防止に資するという意見が有力であるということは私ども承知しておりまして、そういうもののうち、公共的なもの、公益的なものがございまして、その施設を整備するということになりますれば、それは二十二条の第二項に該当するというぐあいに考えております。
  248. 中井洽

    中井委員 時間ですので、残りは他の機会に譲りまして、質問を終わります。
  249. 原田昇左右

    ○原田委員長 次回は、来る五月十一日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時五十六分散会