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1993-04-23 第126回国会 衆議院 環境委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月二十三日(金曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 原田昇左右君    理事 青木 正久君 理事 塩谷  立君    理事 高橋 一郎君 理事 持永 和見君    理事 斉藤 一雄君 理事 馬場  昇君    理事 大野由利子君       愛知 和男君    住  博司君       武村 正義君    谷津 義男君       柳本 卓治君    岩垂寿喜男君       小川 国彦君    岡崎トミ子君       田中 昭一君    草野  威君       寺前  巖君    中井  洽君  出席国務大臣         国 務 大 臣 林  大幹君         (環境庁長官)  出席政府委員         環境庁長官官房 森  仁美君         長         環境庁企画調整 八木橋惇夫君         局長         環境庁企画調整 加藤 三郎君         局地球環境部長         環境庁企画調整 松田  朗君         局環境保健部長         環境庁自然保護 大西 孝夫君         局長         環境庁大気保全 入山 文郎君         局長         環境庁水質保全 赤木  壯君         局長         通商産業大臣官 清川 佑二君         房審議官  委員外出席者         議     員 岩垂寿喜男君         経済企画庁総合 久米 重治君         計画局計画課長         国税庁課税部酒 二宮 茂明君         税課長         厚生省生活衛生         局水道環境部環 三本木 徹君         境整備課長         農林水産大臣官         房総務課環境対 坂野 雅敏君         策室長         農林水産省農蚕 木田 滋樹君         園芸局農産課長         農林水産省食品 井澤 俊正君         流通局企画課長         運輸省運輸政策         局環境海洋課 柴田 耕介君         長         運輸省港湾局管 和田 敬司君         理課長         建設省建設経済 澤井 英一君         局調整課長         環境委員会調査 西川 義昌君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十三日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     中井  洽君 同日  辞任         補欠選任   中井  洽君     塚本 三郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  委員派遣承認申請に関する件  参考人出頭要求に関する件  環境基本法案内閣提出第六二号)  環境基本法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出第六三号)  環境基本法案馬場昇君外二名提出衆法第四  号)      ――――◇―――――
  2. 原田昇左右

    原田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出環境基本法案環境基本法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及び馬場昇君外二名提出環境基本法案の各案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷津義男君。
  3. 谷津義男

    谷津委員 おはようございます。  きょうは、日本環境に対する歴史的な環境基本法案につきましての審議ができるということで、非常に光栄に存ずる次第でございます。環境庁にとりましても歴史上に名を残すこの法案でもありますので、ひとつ簡明なお答えをいただきたいと思います。  なお、基本法案につきましては、さきの委員会におきまして私は答申案をもとに質問をさせていただいておりますので、重複を避けまして質問したいと思います。そのために、各論に入りますが、ひとつよろしくお願いいたします。  まず、八木橋局長にお聞きしたいのでありますけれども、今回の環境基本法を作成するに当たりましで最も苦心したところはどこであるか、まずお答えをいただきたいと思います。
  4. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私ども、今回環境基本法を作成するに当たりましては、前回御答弁申し上げましたように、UNCEDに向けてここ二年間周密な議論をやってきたわけでございます。そこで現在における法体系の問題、これから我々が対処していかなければならない問題というのは非常に明らかになってきた。  そういうようなことから、私どもとしては、これからの新しい環境政策に盛り込むべき視点とかいうものはおよそ煮詰まってきたということは言えるかと思うのですが、このUNCEDにおける機運をミュンヘン・サミットにおいても確認された。その中で、できるだけプロンプトスタートをしなければならぬというようなことから、この機運をとらえて法案化と仕上げるために、短い時間の中で政府部内において一つ法案を取りまとめるという、時間的制約の中で闘ってきたというようなことが、私は印象として一番残っております。
  5. 谷津義男

    谷津委員 視点が煮詰まってきて、それがために時間的な制約の中でこの法案をつくるのに頑張ってこられたということで、本当に御苦労に対しましては多とするものでございます。  しかしながら、一方、新聞報道等によりますと、この法案をつくる過程の中で、何かアセスに対する覚書等が入ったような報道もされておるのですが、その辺のところはどうなっておるのでしょうか。
  6. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私どもは、今度の新しい法案におきましては、従来公害対策法考えておりました規制的な手法一本やりではどうもやはり問題が解決しないのではないか。これからの環境問題は、我々の事業活動、一般的な経済活動生活活動そのものから起因するものが非常に大きくなっている。そういたしますと、環境政策を計画的、総合的に進めなければならない、また、問題が起こってくるより起こる以前に進めなければならぬというようなことから、事前的に手を打つということが非常に重要であろうという認識を持っておったわけでございます。  そういう意味で、環境アセスメント、非常に重要であるという認識を私ども持ちました。これは、審議会におきましてもそういう御答申をいただいたわけでございます。しかし、実際に個々アセスメントをどういった制度のもとにやっていくかということにつきましては、実は審議会での議論というものはなかなか、いろいろな意見が出まして、結局議論大勢とするところは、アセスメントが重要であるということは法制的にきちっと位置づける必要がある、しかし個々法制につきましては、現在アセスメント閣議決定により行われている、また個別法によって行われている、地方公共団体においても条例要綱に基づきそれぞれきちっとやっている、そういった制度がいろいろ定着している中にあって、それを今直ちに変えるということは必ずしも適当でない、そういうことについては経済社会情勢推移等を見ながら見直していくべきである、こういうことが御答申の御意見大勢であったわけでございます。  そこで、そういう意見を踏まえまして、基本法にはどういう書き方をするのかということを私ども考えまして、一方においては、しかしこれからどういう事態が起こるかわからない、また二十一世紀を見据えて、法案としては私どもはなるべく一般的な書き方をしたいというようなことから、アセス推進するために必要な措置を講ずるというような一般的な規定を置いてもらうということで政府部内調整を図ったところでございます。  一方、答申趣旨から申しますと、先ほど申し上げたような事情がありますから、法制化は今すぐやるということではなしに、現在の措置の適正な推進を図りながら、経済社会情勢推移等に応じて見直しを行っていくというような態度を私ども政府部内における共通の認識としたものでございます。したがって、一部の新聞報道されましたように、将来の法制化を否定するというような覚書を結んだこともなければ、そのような合意をしたということもないわけでございます。
  7. 谷津義男

    谷津委員 確かに、これを詰めていく段階においてはいろいろな議論があったろうと思います。民間議論あるいはまたそういった審議会を通してのお話、また各省庁間の調整の問題、いろいろあったろうと思うのですけれども、この議論の中で一番厳しかったものはやはりアセスの問題だったのでしょうか。
  8. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私どもは、アセスメントについては、それはやらなければならぬ、未然防止のためにはそれが大事であるというようなことについては、政府部内においてどこからも異存がなかったというぐあいに承知しております。ただ、それをどういう格好でやるのかということにつきましていろいろな議論があったということは事実でございます。  それから、問題は、アセスメントだけではございませんで、やはり経済的措置、これにつきましては、まだ日本でそういう考え方、一般的には導入されておらない。したがって、それを法制的にどう位置づけるかということにつきましても、政府部内におきまして濃密な議論があったということも事実でございます。
  9. 谷津義男

    谷津委員 そこで、大臣にお聞きしたいのでありますが、この間、二十日の本会議総理は、私のメモが間違っておるとこれは失礼なのですが、こういうことを言ったと思うのです。現行措置の適正な推進に努めるとともに、社会経済情勢の変化を勘案しながら必要に応じて見直すんだということで、このアセス法制化を含む現行制度見直しを検討する考えを示した、私はそういうふうに聞いたわけなんですが、その辺は間違ってないでしょうか。
  10. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 谷津先生お答え申し上げます。  結論から申し上げますと、間違っていないと考えてよろしいと思います。つまり、必要な措置ということを基本法には明確に規定しておりますけれども、必要な措置とは何ぞやということになりますと、必要がある場合には法制化することも含まれ得るというように私ども理解しております。
  11. 谷津義男

    谷津委員 本案に対しましては社会党からも対案が出ております。その中にはこのアセスの問題もはっきりと明記されておるわけでありますけれども、この点については長官はどういうふうにお考えをお持ちでしょうか。
  12. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 今御提案申し上げております基本法案に示されておりますアセスの問題を、私どもは今までアセスの問題で閣議でいろいろ決めてきたり、またそれぞれの地方自治体条例をもってこれに対応したりしております過程の中で、今回基本法案をここに御提案申し上げたわけでございますので、基本法案で定めましたアセスに関係する条文は、これは今の私ども考える最善のものという受けとめ方をしております。
  13. 谷津義男

    谷津委員 これは、民間団体からもあるいはかなりの部分からもアセスの問題というのは強い要望がございまして、何とかアセスメント法をつくるべきだというふうな意見がかなり出ております。また一方、諸外国状況を見ますと、米国におきましても国家環境政策法あるいはカナダの環境アセスメント法といったことで、先進国の中ではかなりこのアセスに対する法案化というのが進んでおるわけであります。  そこで、長官にお聞きしたいのです。日本でこのアセス法をつくるということになった場合にはどういうときになったらば必要とするのか、この辺のところを、それでは局長の方からお答えいただけますか。
  14. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 アセスメント法が必要であるという場合はどういう場合か、こういう御質問だったかと存ずるわけでございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、私ども現在、閣議決定による要綱に基づきアセスメントをやっております。また、個別法に基づきそれぞれやっております用地方公共団体においては条例ないしは要綱によってそれぞれ行われている。そこで私どもは、アセスが今円滑に行われているという基本的な認識は持っているわけでございます。  しかし、アセスというものが国民ないし関係住民に信頼されるものでなければならぬ、そういうようなことから、現在やっておるアセスメントが今の格好のままで国民に定着していくのかどうかという問題、その点の状況を十分踏まえまして、もしそれに問題があるという、また、精度を高めるために現段階で不十分だということがありますならば、それらを解決するためには、要綱を改定するような方向ではできるのかできないのか、法律によらざるを得ないのかどうか、その辺を十分検討して、やはり法令によらなければこういう問題は解決できないという場合には、私ども法律によるべきであるというぐあいに考えております。
  15. 谷津義男

    谷津委員 局長にちょっとお尋ねするのですが、実はこの基本法案の十九条ですか、「環境影響評価推進」ということになっています。実はこの中で大事なことは、国の方の、環境庁の案によりますれば、この評価は、事業に係る環境については事業主が、実施に当たる者が適正な調査または予測または評価を行うんだということでしたね。これはもっと突っ込む必要があるのじゃないのかと私個人は思っておるのです。というのは、事業主自分自分のところを評価するということではなくして、やはり第三者がちゃんと見る必要があると私は考えるのですが、その辺のところはどういう認識をお持ちでしょうか。
  16. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 この環境アセスメントをだれがやるべきかということに関しましては、これは諸外国を見ましてもいずれも事業者がやるということが、すべての国でそうなっておりまして、それをほかの者がやるというような例は全くございません。  それでは、なぜそういうことになっているのかということでございますが、 一つは、環境を汚染、破壊させるおそれのある大規模な事業を行おうとする者が、事業実施に伴う環境への影響につきましてみずから責任を持つ必要があるということ、みずからの負担をもってやる必要があるということがなされなければならない。それは当然のことではなかろうか。ますますこれから経済環境というものを統合して両立するような格好でやらなければならぬ世の中になってくると、このことはますます要請されるのではなかろうかというぐあいに考えます。さらに、調査予測評価一体として事業主に行わせた方が、その結果を踏まえて事業者事業計画公害防止対策等にそれを織り込み、また手直しをしたりすることもスムーズになるのではなかろうかというようなことからであろうかと思います。  したがって、私どもは、環境影響評価事業者そのものがやるということは、これはそれでしかるべきじゃなかろうかというぐあいに、ただ、先生がおっしゃいましたように、事業者によって行われたアセスメント信頼性のあるものかどうかということに関しましては、私どもは、技術指針、またはどういった調査項目を織り込むべきであるか等々いろいろと改善をし、その信頼性を高めていくための工夫なり手だてというのは講ずる必要があるというぐあいに考えております。
  17. 谷津義男

    谷津委員 局長が今答えた後半の部分が大事なんですね。ですから、事業主がそれをやるにつきましても、それが信頼されるものであるかどうかを判断はだれがするのだということの問題なんですけれども、それは、事業主を信頼するということもさることながら、やはり第三者といいますか、あるいは環境庁といいますか、役所といいましょうか、その担当もきちっとその辺のところを掌握しながら、これで大丈夫なんだというふうなことにしないと、なかなか理解は得られないのではないかと思うのですけれども、もう一度その辺のところを確認しておきたいと思います。
  18. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほどお答えしたところでございますが、現在やっております環境影響評価は、事業者準備書面を作成いたしますけれども、具体の調査予測評価というのは、既に得られている科学的知見によりまして対象事業ごと技術方法を定めた指針に従って行われておりまして、そういうことで一応私ども客観性は保たれているというぐあいに見るわけでございます。また、作成された準備書を、住民意見関係都道府県知事等意見免許庁審査等手続を踏むことによりまして客観的な評価ができるように、またそういうようなことが是正されるようにというような手続もとっているところでございます。  先生が御指摘になりましたように、多くの地方公共団体におきましては、その準備書に対し知事意見を述べるに当たりまして、その意見をつくる場合に審査会等意見を聞くことができるというような例を設けている場合がございます。そこで、平成四年度中に、知事意見を形成するに当たりまして審査会意見を聞いた件数を調べてみましたところ、先生指摘になりましたように、百十二件のうち百五件がそういう手続を踏んでおるようでございます。  私どもは、そういう一種の公正さを求める手続が現に地方公共団体によって行われている、この方法というのはやはり尊重していかなければならぬというぐあいに考えますし、またさらに、環境庁におきます審査におきましても、私ども専門のスタッフを抱えておりまして、厳正かつ慎重にやっているところでございますが、必要な場合にはさらに、学問的専門性を要することもございますので、そういった学識経験者知見も活用するというようなことをやっているところでございます。私どもは、先生が御指摘になりました信頼性を高めるために、そういった手だては今後ともいろいろ工夫してまいりたいというぐあいに考えております。
  19. 谷津義男

    谷津委員 アセスにつきまして、最後に大臣に決意のほどをお聞かせ願いたいのですが、総理大臣が言っているように、アセスメント法はつくらなければならぬだろうというふうに私は考えるわけであります。ただ、その時期その他につきましては、いろいろな状況に応じてだろうというふうに考えるのですけれども、この辺については、長官として、アセス法を将来つくるというようなことについてはいかがなものでしょうか。この辺は少しはっきりと聞かせていただきたいと思います。
  20. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 法制化につきましては、先ほどお答えいたしましたとおりでございますが、現在直ちに単独法法制化するということよりも、現在の段階では、環境基本法の成立をお願いいたしまして、そういう中で、現在まで行われております閣議決定要綱や、あるいはそれぞれの地方自治体が定めた条例あるいは要綱などによって現在はアセスが進められておりますので、それを見守りながら、今後、現行措置のままでは不十分な点が出てきた場合、これも当然国民的な議論になると思いますので、それを十分に考慮に入れながら、これはアセス単独法の必要があると認識されるときには当然踏み切らなければならない、そのように考えております。
  21. 谷津義男

    谷津委員 その点についてはひとつ十分にしんしゅくをいただいて、ぜひその方向で進めていただきたいと私は考えておるわけであります。  ところで、環境そして開発、あるいは環境生活、あるいは環境経済、いろいろそういうものを考えると、環境問題と開発問題というのは相対立するという感じで受け取られがちでありますが、そうじゃなくて、やはり環境開発、あるいは国であれば公共事業等も含めまして、こういうものは一体となってやれるものであるというふうに私は認識をしているわけであります。  そこで、いろいろな省庁によりましてこの面について非常に熱心にお仕事をなされておるものがあるわけであります。私もよくわからないものでございますから、そういった面について、きょうは私の方でお願いして、建設農林運輸、厚生の皆さん方に来ていただいておるのです。おのおの各省で、自分たちはこういうことで環境公共事業調和をとりながらやっておるんだということをお聞かせいただきたいのですが、その前に、まず環境庁としてはそういうやり方をやられておるだろうというふうに考えておるわけでございます。これは自然保護局長になるのですか、環境庁は、ただいま申し上げました自然とあるいは環境と含めて、そういった開発も含めましていろいろな手だてをしながらやられると思いますけれども、その辺のところはどういうふうになさっておるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  22. 大西孝夫

    大西政府委員 お答えを申し上げます。  まず、自然保護開発調整の問題は非常に重要な問題であります。特に我が国のように国土が限られております中で、自然を大切にしながら、一方で国民生活レベルアップのために必要な開発を進めていくということにつきましては、その接点を求めるためにいろいろな努力が必要であろうと思っております。私どもの立場では、自然と触れ合う場を整備する形で、一方で自然を大切にしながら、その自然を財産として国民みんなが利用できるような体制をつくりたいという観点で、いろいろな整備を進めております。  一方、ハード面で申しますと、例えば自然公園に行って国民家族で自然を楽しめるような触れ合い拠点を設け、あるいは温泉地整備して家族連れで楽しめるような健全な環境づくりをするとか、あるいは長距離自然歩道を設けるというように、自然と国民触れ合いの場が健全に整備され、維持できるようにする反面、そういう活動を支えるソフト面でも、例えば自然観察指導員でありますとかパークボランティアでありますとか、公園あるいは自然を国民財産として活用できるようにする、その側面から支援していただく人々の整備も必要だと考えております。  そういう形で、言うならば自然と開発調和させる形で進められるような拠点整備体制整備を私どもは進めておりますが、今先生お尋ねのように、開発自然保護というように大きな問題につきましては、必ずしも環境庁、特に自然保護局だけの問題ではないケースが多いわけでありますが、いずれにしましても、一方で自然を大切にしながら、国民生活レベルアップのために必要な開発は進める、その両方が調和できるようないい知恵を出していくことが必要であろうと思いますし、私どもはそのように努めてまいっているつもりでございます。
  23. 谷津義男

    谷津委員 それでは、建設省農林省運輸省厚生省の順で、ひとつ、おのおのの省でやられておる公共事業環境の問題をお聞かせいただければありがたいと思います。
  24. 澤井英一

    澤井説明員 御説明申し上げます。  建設省といたしましても、環境基本法案にありますとおり、環境保全を図る上で社会資本整備というものが非常に重要な役割を担っていると考えております。こうした趣旨を踏まえまして、例えば下水道の整備河川浄化事業といったようなことによります水質改善、あるいは住宅建築物における省エネ、省資源化、さらには二酸化炭素排出の抑制にも必要なバイパスや環状道路整備、また都市公園整備とか都市緑地保全などによります都市における自然環境保全整備、こういった所管行政万般にわたりまして今後とも施策充実を図ってまいりたいと考えております。  なお、こうした事業を行います場合には、どうしても一方で自然に手を加える、これは不可避でございますので、そういったところの調和を万全を期して図ってまいるために、環境影響評価の的確な実施を初め、諸々の調和策を進めてまいりたいと考えております。  なお、御指摘環境開発調和といった点も含めまして、さらに今後当省施策充実強化を図るべく、現在、学識経験者意見も伺いながら、省内で検討を進めているという状況でございます。
  25. 坂野雅敏

    坂野説明員 本法案の第十三条の施策の策定に係る指針にも盛り込まれてますように、農林水産業農山漁村は、森林、農地、さらに干潟などの適切な管理を通じて環境保全に重要な役割を果たしているというふうに考えております。このような点を踏まえまして、農林省といたしましても、環境保全に関する関連事業として、漁港の堆積汚泥のしゅんせつ、集落排水排水施設、それから農業水路の親水施設、森林さらに遊歩道などの森林保健施設の整備を初め、各般の事業を積極的に推進してまいりたいと考えております。  以上でございます。
  26. 柴田耕介

    ○柴田説明員 運輸省といたしましても、これまでにも空港周辺における緩衝緑地の整備や港湾における緑地の整備、港湾における汚泥のしゅんせつ事業などのほか、環境負荷の低減に資する事業として、環境への負荷の少ない効率的な交通体系の形成を図るため、鉄道、港湾等の交通インフラの整備や鉄道、船舶、バス等の公共交通機関の整備、それらの利用の推進のための事業推進してきたところでございます。こういった交通インフラの整備に当たりましては、環境との調和を図ることが非常に必要でございます。運輸省といたしましても、今後ともこれらの事業をさらに適切かつ強力に推進していきたいというふうに考えております。
  27. 三本木徹

    ○三本木説明員 御説明申し上げます。  厚生省といたしましては、主に廃棄物処理法を所管している立場から、これの適正な処理に取り組んでいるわけでございます。特に減量化ということ、あるいはリサイクルということも必要でございますので、あわせて取り組んでいるところでございます。  具体的には、減量化あるいは廃棄物の資源化を進めていくための拠点整備ということで、リサイクルプラザあるいはリサイクルセンターを公共事業として整備を進めておりますし、また、これらのための体制整備や啓発活動の支援、さらにはごみ減量化、リサイクルに向けての国民会議等の実施によります意識啓発、こういったことでごみ減量化総合戦略を数十億円の国費を充当して現在進めているところでございます。さらに、重要な柱といたしまして、廃棄物処理施設の整備というのが生活環境保全あるいは公衆衛生の向上の上で極めて重要であるということで、施設整備についての緊急措置法を定めておりまして、五カ年計画に基づいて、市町村が行うごみ焼却施設とか処分場、あるいはし尿処理施設、合併処理浄化槽、こういったものに対して平成五年度予算では約一千百億円の国費を充当して施設建設を進めているところでございます。  さらに、産業公害という観点のこともございまして、産業廃棄物、これは工場、事業場から出てくる廃棄物の処理でございますが、この施設につきましても、昨年、施設整備のための特定施設整備法という産業廃棄物施設整備を進めていくための法律を制定いたしたところでございます。あるいはまた環境事業団におきましても、最終処分場等の建設譲渡事業というものも本年度から進めております。  こういったことで、できるだけ産業廃棄物の処理施設についても公共関与を進めていくという方向で、種々の措置を講じてきております。厚生省といたしましても、今後ともこれらの諸施策実施によりまして、環境保全に対する対策というものを鋭意進めてまいることとしております。
  28. 谷津義男

    谷津委員 農水省の坂野さんにお聞きしたいのですけれども、ただいまの説明の中に大事なことが一つ落っこっておる。それは、水田を涵養するということは環境保全には最も大事だというふうに私は考えているのですが、農林省、これを落っことすとはどういう考えなんですか。
  29. 坂野雅敏

    坂野説明員 御説明申し上げます。  ただいま私が御説明いたしました農地の適切な管理を通じて環境保全に重要な役割を果たしているというところでの内容に、当然今先生がお話しになりました、水田が、そこに人が住んで適切に維持管理されていることが、いろいろな洪水防止とかそういう面で非常に役割が大きいということでございます。当然我々農林水産省といたしましても、その辺の機能の役割は非常に重要だというふうに考えております。  以上でございます。
  30. 谷津義男

    谷津委員 ちょっと農林省、そこにいてください。環境問題とこの農林、特に水田、米作というのは、私は非常に大きなウエートを占めてくるだろうと思うのですね。これは何も関税化、ガットの問題を絡めているわけじゃないのです。そういう中で国土保全ということを考えたときに、私は、この水の果たす役割というのは非常に大きい。当然湖沼あるいは河川、こういうのもあるけれども日本で水を一番保有するといいますか、そういう面じゃ何といったって水田が最高であることは、これは間違いないわけでございます。  そこで、お聞きしたいのですけれども環境基本法をつくられる段階の中において、この辺についての議論というのは、農林省はどういうふうに環境庁調整したのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  31. 坂野雅敏

    坂野説明員 ただいまの点につきましては、この法案調整段階で、今先生のおっしゃったような森林とか水田の果たす役割ということを大分御議論しまして、結果として十三条の中に、森林、農地それから海岸、そういうのをちゃんと保全していくことが多様な自然の保全に非常に資するということをそちらに盛り込んでいるというふうになっております。
  32. 谷津義男

    谷津委員 厚生省にお聞きしますが、いろいろな各法の話まではいかなかったろうと思うのですけれども、この基本法案をつくる段階でいろいろな議論の中に、ぽい捨てみたいな、身の回りと言ってはなんですが、一番身近な問題が大きな問題になるだろうというふうに私は考えているのですが、このデポジットなんというようなものはいろいろと検討してみたことがありますか。
  33. 三本木徹

    ○三本木説明員 御説明申し上げます。  先生指摘のデポジットの問題は、実は現在私ども研究会を厚生省の中へ設けておりまして、ごみを減量化していく、あるいはリサイクルしていく上でデポジットというのも一つ方法として考えられるのではないか、あるいはまたごみの有料化とかごみ税の問題とか、そういういわゆる経済的手法を導入していくことによって減量化、リサイクルということが可能になるのではないかということで、現在検討しております。ただ、これはまだ結論が明確に出ていないということもございまして、具体的にそのよしあしあるいは政策としてどれが適当かということはまだ判断がつきかねている、こういう状況でございますので、御理解をいただければと思っております。
  34. 谷津義男

    谷津委員 確かに、私ども委員長の大変な御配慮によりましてこのデポジットの勉強会等もやらせてもらったのですけれども、なかなか難しいということについては認識をしておる一人でございます。しかし、何らかの方法をとっていかなければならないというふうにも考えております。  というのは、環境基本法の社会党の対案を見させていただきますと、何か加害者と被害者というふうな、そういう認識がかなり強い中で作成されたのかなという私なりの感じを持っておるのですけれども、加害者と被害者というのは、そこがまた被害者が加害者になる可能性も十分あるわけであります。そういうものを考えた場合に、この経済的な手法というようなお話が、これは後でまた聞きますけれども、その中でデポジットみたいなものも方法として大きく取り上げられるのじゃないか。しかし、これまたいろいろな問題があるであろうというふうに考えておりますから、これは要望でありますけれども、その辺のところをしっかりと踏まえた対応をできるだけ早くつくり上げることが大事ではなかろうかというふうに考えておるところであります。  そこで、ちょっと方向を変えさせていただきたいのですが、社会党さんが出された案によりますれば、環境権という問題につきまして、三条だったですか、書かれておるわけでありますけれども、この環境権という意義づけについて、長官、どういうふうに考えておりますか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  35. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 環境権につきましては、例えば国民が良好な環境を享受する必要性あるいは重要性を法律の上において明らかにすることが必要であるという考え方から主張されているものと理解したわけでございますけれども、ただ、その法的権利としての性格につきましては、プログラム的な権利として構成する考え方、あるいはまた具体的な請求権の根拠となる実体的な権利として構成する考え方など、いまだいろいろ考え方はございますけれども、定説としてこれだという、判例においても実体的な権利としての環境権の存在は認められていないというのが現状でございますので、そのためにまた、ストックホルム宣言あるいはリオ宣言においても、人間の福祉などにとって環境が基本的に重要であるという考え方、あるいはまた人間が健康で生産的な生活を送るためには良好な環境を欠くことができないのだという、そのような考え方がうたわれていることは、先生も御案内のとおりと思いますが、こういうことはうたわれてはおりましても、それは政策宣言と解釈した方がよろしいのではないのかなということでありまして、法律上の権利として定められるような性格のものではないと私は認識しております。  したがいまして、環境政策を進めていく上での最も基本的な理念という立場をとりますと、環境の中における人間の生活権あるいは生存権あるいはまた幸福や文化を追求する権利、そういうものは当然あるべきでありますけれども、それを一つの法的権利として定めるということまでは実は基本法では考えておりません。基本法においては、基本理念の冒頭に、第三条で示したような考え方を位置づけてはおりますけれども、これはあくまでも指導理念に従って環境政策を展開していきたい、こういう念願でございます。
  36. 谷津義男

    谷津委員 前に国連環境開発会議においで採択された中に、環境開発に対する問題があります。そして、リオデジャネイロの宣言の中でも確認されたのは、人類は、自然と調和した健康で生産的な生活を送る権利を有するというようなことだったろうというふうに私は思うのです。  局長にお聞きするわけですが、八木橋さん、この件について、今度の基本法、今の御説明を聞いて大体案の中の趣旨はわかりました。しかし、この問題というのは大変な議論になっただろうと思うのですね。いろいろな議論が出ただろうと思うのですけれども、その辺のところはどういうふうに整理していったのか、その過程をちょっとお聞かせいただきたい。
  37. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 この点に関しまして、リオデジャネイロ宣言には御指摘のような条項がございまして、これは英文ではビー・エンタイトルド・ツーということになっておりまして、そういう資格を持っているよということで、権利的な色彩でこれが議論されたという経緯は私ども承ってはおりません。環境庁が仮訳をしますときに、草々の間でそういう訳を一時やったことも事実でございますが、事柄の経緯はそういうことでございまして、その辺の経緯につきましては地球環境部長から御答弁申し上げます。
  38. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 ただいま局長から御答弁申し上げましたのと、私自身この作成に当たりましたので、少し補足をさせていただきたいと思います。  今先生がお触れになりましたリオ宣言、地球サミットに向けて、当初地球憲章という名のもとに準備されました。約二年間にわたる準備過程で憲章をつくるべく議論があったわけでございます。  お尋ねの現在リオ宣言となっております原則の一でございますが、それはもともと開発途上国のグループがむしろ開発を主張するという立場で最初議論がございました。すなわち、人類は、飢餓、病気、貧困のない健康な生活が保障されるべきであるという主張をその検討の出発点としておりまして、開発によりまして、人類の基礎的充足といいますか、そういったものを強調する意図を持っておったわけでございます。それに対しまして、先進国側といたしましては、こうした途上国案では人間中心の考え方に傾き過ぎるという懸念を感じまして、人間生活と自然との調和の観点を入れるべきことを主張いたしまして、修正が行われまして、先ほど触れましたような最終的な文案になったわけでございます。したがいまして、原則一としては、国内法や条約のような法的な効果を有する性格のものではないというふうに考えている次第でございます。
  39. 谷津義男

    谷津委員 経過はわかっていますが、この法案をつくるときにどういう議論があったかと私は聞いているわけなので、今のリオデジャネイロの宣言の中身を聞いているんじゃなくて、この基本法をつくる段階の中においてかなり出てきたでしょう、環境権という問題についての議論が。全くなかったですか。その辺をちょっと聞かしてください。
  40. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 大変失礼いたしました。  リオ宣言では、先ほど申しましたように、途上国と先進国との思惑の相違というものがございまして、それをいわば両方合わせたような文案になっているわけでございますが、先ほどちょっと局長も触れられましたが、最終的にまとまった文章の中に「人類は、自然と調和しつつ健康で生産的な生活を送る資格を有する。」エンタイトルドというふうな表現になってございます。それを、先ほど局長申し上げましたように、私どもリオ宣言ができました直後に環境庁でとりあえず仮訳としてつくった場合には、権利を有するというような訳をつけたわけでございますが、外務省とこの文章、この部分も含めて全体を改めて慎重に政府としての文章を固めるに当たって審議した段階におきましては、これはエンタイトルドという英語の原文になってございますので、資格を有するというふうに訳す方が適当だということで、今そういうふうにさせていただいているわけでございます。  とりあえず経過だけ御説明申し上げます。
  41. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 ただいまリオ宣言の関連につきましては地球環境部長から御説明申し上げたのですが、環境基本法をつくるに当たりましてどういう議論が行われたかということに関しまして、私若干補足させていただきますと、これにつきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げたところに尽きるわけでございますが、環境権または環境を享受することを権利として確定するような学説及び判例というのは、まだそこまでいっておらない。しかし、そういった状況の中においても環境を享受するということは非常に大事である、また、環境を大切に守って次代に引き継いでいくということは非常に大事である。それは私ども先ほど大臣の御答弁の中にも申し上げましたように、憲法二十五条におきましては国民が健康で文化的な生活を送る、それを具体的に具現する上におきましても恵み豊かな環境の恵沢を享受するということが大事だろうということから、私ども政府がこれから環境保全するための基本的な理念としてはそれはしっかり踏まえ、それをもとにしてこれからの政策を進めていく必要があろうということから、私どもは、理念の第一理念、最も根幹的な理念としてそれは掲げる必要があるであろうというような議論から、基本法の第三条にそれを掲げさせていただいたということでございます。
  42. 谷津義男

    谷津委員 その辺のところはよくわかりました。確かに大事なことでありまして、時によっては訴訟問題にも発展しかねないような問題になりますものですから、そこははっきりとさせておかないと今後に大きな問題を残すだけでありますから、その理念をしっかりと踏襲していただきたいというふうに考えるところであります。  ところで、先ほど厚生省の答弁の中で経済的手法という話が出てまいりましたので、この経済的手法につきましては、さきの委員会におきましても私もかなり突っ込んで聞かしていただいたのですが、実はこの問題についても、総理は二十日の本会議におきまして答弁しております。税というのは取らなければ取らないで済めばいいんだというようなことをおっしゃっておりましたけれども、国会審議国民各層の論議の進展を注視しながら勉強していきたいということを申されまして、それで新税導入が必要かどうかの検討を進めるように私は印象として持ったわけでございますけれども環境庁長官としてこの点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  43. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 今日の環境問題に最も適切に対処する、あるいは環境保全上の支障を防止する、そのためには、従来の規制的手法だけでは十分でございませんので、それに加えまして市場メカニズムを通じた経済的手法が有効であるという、その有効性が期待されるということを実は表明しておりますけれども、今先生質問のように、環境税という単独の税制にその問題がすぐ結びつくかということになりますと、そこまでは結びつけてはおりません。ですから、市場メカニズムを通じた経済的手法の有効性は期待されるというその考え方は基本法の二十一条に位置づけておりますけれども、さらにその負担を課す措置として、これから環境税を含めた具体的なそのような措置の導入をどうするかということにつきましては、当然、国民的な議論を十分に行った上で、その措置にかかわる施策国民の理解と協力の中から生み出していくということを考えております。  ただ、先ほど総理が申されたようなことに触れた御質問でございますけれども総理御自身も、税というものは課さなければ課さないほどいいのだけれどもということで、その中に含みを残した御答弁とも受け取れる御答弁がございましたけれども、これにつきましては、私どもは否定いたしておりません。ただ、これからの経済的負担としてはやはり二つ考えられるのかなというのは、アメリカのクリントンなどもそのことを考えておるようでありますけれども、つまり、税収を得ること、それからもう一つは、環境保全上、それに対して、環境保全を破壊するような経済行為に対しては、何らかの措置をとってそれを軽減していくということが含まれるということを踏まえたこれからの課題になろうかと思っております。
  44. 谷津義男

    谷津委員 先ほど厚生省の環境整備課長さんの答弁によりますと、これにかかる費用というのは莫大である、予算も大きな予算を組んでいるというようなことでお話がございました。地方自治体におきましても、これにかかる費用というのは本当に莫大であります。私も県会議員をやらせていただいていたときに、いつも問題になるのは、これは県が持つのか、市町村が持つのかへあるいは事業主が持つのか、そういった面でいつも議論しておったわけでありますけれども環境税というふうなもの、あるいはそれに近い形のものがつくられるとすれば、そういった面で国民の負担の中でこれもやらなければならぬという面もあろうかと思いますが、まず現段階においては、これは国並びに自治体によって、かなりの部分、かなりというか、もうほとんどと言っていいぐらい使われているわけであります。  厚生省が今までやってこられた中で、この件については、厚生省としての考え方、これはどういうふうにお考えでしょうか。
  45. 三本木徹

    ○三本木説明員 御説明申し上げます。  廃棄物処理の主体といいましょうか、行政的な責任は、市民生活から出てくる廃棄物は、これは市町村の事務としてございます。したがいまして、これは市町村の一般会計から充当して実施する、こういう形になっておりまして、この点については今事業費が大変かさんでおります。あるいは収集業務とか大変かさんでおりますので、私ども、地方財政措置あるいは国費の充当、こういったことで努力しております。説とかいろいろな形で、ごみの有料化とか、いろいろ検討されておりますけれども、ごみの有料化ということになりますれば、これは市町村の一般会計の中で充当されていくといいましょうか入っていく、こういう形になっていく仕組みでございます。仮に税が導入されたといたしまして、どのような目的でその税が使われるのか、こういったことは私どももかなり関心を持ちながら対応してまいりたいというふうに考えております。
  46. 谷津義男

    谷津委員 この経済的手法については二つ考えられるわけで、先ほど長官のお話の中にありましたように、市場メカニズムのあれが必要で、それによって税として取る、それから一方では、いろいろ補助金を出すなり、そういった形でよいものをじゃんじゃん発展させていくというやり方、二つあるわけでありますけれども、特にこれから、今の厚生省のお話ではありませんけれども、相当の負担が国なり自治体にかかってくるであろうということは予測されます。これを少なくさせるためには、教育的な手法、いろいろなやり方で国民全体がこういったものを勉強していただく、あるいはまた協力していただいて、特に家庭からの廃棄物といいましょうか、生活上から出てくる廃棄物を出さないように、あるいはこれをコンパクトにうまく処理する、こういうものは国民の協力なくしてはとてもでき切れないというふうに考えているわけであります。  しかし、現実の問題としては、現在大変な問題として起こってきておりますし、極端な言い方をさせてもらいますと、例えばシンガポールなんかでは、たばこをぼっと捨てると五万円ぐらいの罰金を取るとか、何かそういった面も厳しくやっておるようでありますけれども、単に税という形ではなくして、各町村によっては、既に条例化しましてそういうものについての罰則みたいなものを設けている町村も実際出てきているわけであります。こういう面については長官としてはどういうふうにお考えになりますか。
  47. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、空き缶等をぽい捨てする場合に、それに一種の罰を加えることによってそれを抑制しようというような試みが我が国におきましても、私は少なくとも二つの地方公共団体においてそういう条例が制定されたということは承知しておるところでございます。また、先生がお触れになりましたシンガポールにおきましても、そのような措置がとられているところでございます。  私どもは、これからの環境問題は、先生が一番最初にお触れになりましたように、従来ですと、産業公害というような格好で我が国の環境問題は出発したわけでございますけれども、最近の環境問題ということになりますと、私どものやっております生活そのもの、また事業活動そのもの、経済活動そのものに起因しているところが非常に大きくなってきている。そういうことになりますと、やはりあらゆる手段を考えていかなければならない。例えば、先ほど先生がお触れになりました、市場メカニズムを通じまして、環境に悪いことをやった場合にはそれが高くつくよというような格好でそれを防止するということも一つの手法だと思います。ただ、その場合には、経済的な負担を伴うということになりますから、それについて国民的な合意が得られるかどうかということも必要になってこようかと思います。  しかし、また逆に申しますと、我々の日常生活からそういう行動が起こってくるとするならば、私どもは、そういうことに関して十分それを意識し、また、それを学習していくということも必要になってこようかと思います。そういう意味では、環境教育、環境学習ということも非常に大事だろうと思います。また、そういう活動をやってまいります民間団体がございますならば、そういう民間団体活動を助成していくということも大事であろうと思います。そういうことでもございますでしょうし、また、先ほど先生がお挙げになりました、条例に基づき注意を喚起していくというようなことも必要であろうかと思います。  私どもは、今日の環境問題はこういったような広がりを持った問題であるということを十分踏まえまして、それにどういう対策を講じていったらいいのかということをそれぞれの立場において考え、また、政府としてはそれを助長するような格好でこれから政策展開を図っていくべきではなかろうかというぐあいに考えております。
  48. 谷津義男

    谷津委員 時間がありませんので、長官に二点のことをお尋ねいたします。  一つは、この環境問題というのは地球的規模の問題であります。当然のこととして、日本だけではなくして世界的にこれはやっていかなければならない。そこで、私は、国連の中にこの理事会というのですか、安全保障理事会等もありますけれども、そういう形で一つのものをぴしっとつくって地球的な規模でやるべきであるというふうに考えておるのです。現在、国連では経済社会理事会でフォローアップしているというのが実情でございまして、私は非常に線が弱いのではなかろうかというふうに考えるわけであります。去年の六月にもリオでああいった地球環境サミットも行われたということもありますし、ちょうどよい時期に、実は日本で七月七日から先進国の首脳会議が行われるということでありますが、長官、これは総理にぜひ提言をしてもらって、この日本の首脳会議の中から、国連の中にこういった理事会を設けるようにひとつここでやってみたらどうかと思うのですが、長官のお考えはいかがでしょうか。
  49. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 私の方から御説明をさせていただきますが、先生指摘のように、国連内に環境問題に関しまして包括的に対処し得る強力な体制を形成することが重要というふうな御趣旨だと理解いたします。  先生御案内の、国連におきましては、例えば国連環境計画、UNEPと私ども呼びならわしておりますが、それが環境に関する諸活動の総合調整を行っており、我が国も従来よりこのUNEPを積極的に支援してきたところでございます。  また、先生もお触れになられましたように、国連におきまして、地球サミットの合意を着実に実施するために、閣僚クラスも参加するハイレベルの持続可能な開発委員会というものが新たに設立されたところでございます。我が国といたしましては、先生の御指摘趣旨も踏まえまして、当面この持続可能な開発委員会を中心に、環境に関する国際機関の機能の充実強化に協力してまいる所存でございます。  また、先生お触れになられました、七月のG7のサミットにおきまして、これは、現在国際政治もロシアを中心に極めて流動的でございまして、いまだにどういうものが中心的な議題になるかというのがはっきりしないというふうに私ども承知しておりますが、ここにおきまして、環境問題もそれなりに重要な議題の一つとして議論されることを期待をし、また、私どもとしてはそのように働きかけてまいりたいと考えている次第でございます。
  50. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 ただいま谷津先生のご質問、地球部長の答弁のとおりでございますけれども、願わくは今議会で御審議いただいております環境基本法案を成立させていただきまして、そしてサミットには、日本国の総理が改めて基本法を背景にしまして日本の立場を堂々と主張できますることが私は大事だろうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  51. 谷津義男

    谷津委員 時間が参りましたので、最後に長官に決意のほどをお聞かせいただきたいのですが、この法案は非常に大事な法案でございます。また、私どもとしましても、何としてもこの法案は今国会で成立を図っていきたいというふうに考えております。そこで、この法案に対する長官の決意のほどをひとつ最後に聞かせていただきたいと思います。これで私の質問を終わらせていただきます。
  52. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  環境基本法案は、これは実は現在の時点では世界に類例を見ないと言ってもいいくらいの、非常に内容的にも整った法案であると私は信じておりますので、最善の法案を議会に提出できたということに私は大変な責任と誇りを持っております。したがいまして、今谷津先生の御質問のとおり、これは万難を排してというよりも、先生方の全会一致の御賛同を得ましてこれを通過させていただくこと、あるいは決定させていただくことを心から念願いたしております。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕
  53. 谷津義男

    谷津委員 終わります。ありがとうございました。
  54. 持永和見

    ○持永委員長代理 小川国彦君。
  55. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ちょっと委員長がわられてあれなのですが、代理の委員長に申し上げたいのですが、平成二年六月七日に、私は日本社会党・護憲共同から、空き缶、空き瓶等の回収に関する法律案を衆議院に提出して、同二十二日、環境委員会において提案理由の説明を行ったわけであります。それから既に約三年経過しておりまして、本来なら本法案に対する質疑、討論が十分もう尽くされてしかるべきだ、こういうふうに考えるわけでありますが、いまだこの法案については継続審議のままになっているわけです。  御承知のように、今国会では、政治改革法案についても政府案に対して野党案、それから環境基本法に対しても政府案に対して野党案が出されて、それぞれ法案に対して与野党の質疑が行われている。しかるに、本委員会先ほど申し上げたように、私ども社会党・護憲共同三名からなる法案提出に対して今日まで全く質疑が行われないということは、私は大変残念なことだと思っているわけです。少なくとも、議会は立法府でありまして、国会議員は法律をつくるというのが本来的な任務だと思うわけです。それに基づいて私どもが議員立法として提出したものが審議されず、いたずらにではございませんけれども、政府から出された法案だけを審議し、チェックするだけの議会ではないはずだと思うのです。議員立法が活発に行われて、それが審議され、そしてそれが行政を動かしていく、そういう本来的な議会の任務があると思うわけです。そういう議員立法が今日まで審議、討論が行われずに過ぎているということは、非常に残念に私は思うわけでありまして、このことをまず第一点、環境委員長において速やかに善処願いたい、これが第一点でございます。  それから第二点、私は、社会党の提出した法案についで、これは一つ審議の素材としていただいて、そして各党が、今日の使い捨ての時代、大量生産、大量消費ではございませんが、そういう時代を変えていくためにはあらゆるものを再利用する、再資源化していく、こういうことが大切でありまして、そのためにはこの環境委員会の中にもぜひ飲料容器に関する小委員会をつくっていただきたいという要望もこの議会の当初からお願いしているわけでありますが、残念ながらいまだ結論が出ないわけであります。私は、この点についても早急に委員長中心に理事会で結論を出していただきたい。この二点を委員長質問いたしたいと思います。
  56. 持永和見

    ○持永委員長代理 小川先生の御意見につきましては、理事会においで、ひとつお互いに真剣に検討させていただきたいと思っております。
  57. 小川国彦

    ○小川(国)委員 早急な結論をお願いしたいと思います。  次に、環境庁長官にお伺いをしたいと思います。  環境基本法が提案されまして、この環境基本法の中では、環境をいかによくしていくかということであろうかと思いますが、私はその根本はやはりごみ問題ではないか、こういうふうに思うのです。大気を汚すごみあるいは水を汚すごみあるいは固型のごみ、こういうごみに対するところの対応というものが環境基本法の中でどういうふうに対処されていくのか、特に廃棄物問題、ごみ問題は環境問題の中でも緊急に対策を要する問題だ、このように考えるわけでありますが、環境基本法でこれはどのように取り扱われるのか、どのような位置づけになっているのか、この点をまず長官にお伺いしたいと思います。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生環境問題はごみ問題であるというふうにずばり一言でおっしゃったわけでございますが、まさに先生指摘のとおり、大気汚染にしろ、また水質汚濁にしろ、私ども生活した結果の残り物を大気なり水の中へ排出するというようなことから環境と私ども人間生活とのかかわり合いが出てくるというのは、まさに御指摘のとおりであろうかと思います。その中で、大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会経済活動が定着してきている中で、現在先生が御指摘になりました廃棄物の量の増大、またその質の変化の問題というようなことから、さまざまな環境への負荷が高まってきているというぐあいに私ども認識しているわけでございます。  こういった廃棄問題に関しましては、廃棄物の適正処理を推進するということだけではなしに、製品等の製造、販売、消費といった各段階における配慮、またリサイクルの促進といったような、廃棄物ができるだけ生じないようにするというようなこと、生産から廃棄までにおけるさまざまな環境への負荷が低減できるように社会経済システムのあり方、生活様式の見直しを図っていくということが重要であるというぐあいに考えているわけでございます。そのような視点から、今回の御提案申し上げております環境基本法案におきましては、基本理念を定め、それぞれの主体の責務を定め、それを受けて各施策を位置づけておるところでございまして、廃棄物に係る環境保全に係る施策も、この体系のもとに総合的、計画的にやっていこうというぐあいに考えております。各条文的に申し上げた方がよろしければ、また後ほどお答え申し上げます。
  59. 小川国彦

    ○小川(国)委員 今回の基本法の中では環境基本計画というものを策定することになっておりまして、この中でもこの廃棄物、ごみの問題をきちんと取り上げて、政府が一体となって対策に取り組む必要がある、こういうふうに考えるわけでありますが、この環境基本計画で廃棄物問題をどのように位置づけするお考えがあるのか、この点をお伺いいたします。
  60. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほど私御答弁申し上げましたように、現在の環境問題の中で廃棄物の量の増大、またその質的な変化に伴ってさまざまな環境への負荷が高まっているということに関しては、私ども認識を持っているわけでございます。そこで、この廃棄物問題に関して、その適正処理、また製品等の製造、販売、消費等の各段階における配慮、さらにはリサイクルの推進等、生産から廃棄に至るまでの段階環境への負荷が低減できるよう、私どもはやはりこれを重要な施策として取り上げていく必要があるというぐあいに考えておるわけでございます。  そこで、これからの環境保全に関する施策の全体像を示す環境基本計画におきましては、やはり環境問題の重要な課題といたしまして、廃棄物に係る施策についてもその重要性にかんがみまして適切に位置づけたい。具体的にはこれから中央環境審議会の議を経ていろいろ議論していくことになりますが、ぜひ位置づけたいというふうに考えております。
  61. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、この環境問題、特にごみ問題の解決にはいろいろな方法考えられて、環境税の問題もある、それからまた課徴金の問題もある、あるいはまたデポジットの方法もある。しかし、環境税ということになりますと、国民全体から、例えば消費税が新設される、こういうことで、また税金か、環境税、また税金か、こういう国民のイメージはぬぐえないと思うのですね。それから、環境税そのものが環境を汚染している原因者に対する責任を問うていることになるかどうか、あるいは消費者に対するところの責任を問うていることになるか、そこのところは、やはり私は環境税でもなかなか難しい点がある。そうすると、今の大量に排出されている廃棄物の問題をこれから環境基本法を踏まえて取り組んでいくには、その経済的手法というものをどう考えるのか。税金なのか、課徴金なのか、デポジットなのか。私は世界各国の状況を見ても、その三つの手法の中で各国が一番妥当な方策としてとっておるのがデポジット制度なのです。  これは実は私先般の委員会でもお示ししました。参考にお見えにならなかった方にごらんになっていただきたいと思いますが、これはスプライトライトというドイツのサイダー瓶です。いわばワンウエー容器といって、これは一回しか使わない容器なのですね。日本では一回使ってポイ捨てになる、ごみになる。ところが、ドイツではこれに〇・七マルク、日本円にして約五十円のお金をこの瓶を返しにくれば払う。ですから、この瓶がドイツでは五十回使われているわけですね。このワンウエーのPET容器が五十回使われる。そして、一回ごとにここに使用回数がマークされていて、五十回使われる。日本では、こういうものはたくさんできていますが、みんな一回でごみの山になっている。再利用ということはまず行われていない。  それからいま一つ、これはアメリカから取り寄せたのでありますが、オレゴン州ほか十州でこのデポジット制度実施している。これはペプシ・コーラの缶であり、同じような清涼飲料の缶です。いずれもこれには五セントと書いてありまして、カ・リデンプション・バリューと書いて、買い戻しの値打ちのあるもの、こういうことで、いわゆる買い戻しをするだけの値打ちのあるものということで、この缶を持っていくと五セントもらえる。こういうふうに清涼飲料から始まって、ビールからあらゆる飲料容器が、アメリカのオレゴン州等十州では実施されて、そしてこのデポジットのもとに、これをポイ捨てするのではなく、使用したらその回収所へ必ず持っていく、あるいは飲料用水で飲んだところ、そこへ持っていく。  ところが、残念ながら日本では、サイダーにしてもビールにしてもジュースにしても、この百円缶あるいは百五十円ぐらいまでの缶を飲んだら全部ポイ捨てですね。環境をきれいにしましょうと書いてあるのですが、ポイ捨てで野山に捨てて、自然の環境の中に放置していては全くだめなので、私どもはそういうことから、欧米でやっている経済的手法としては、例えば五十円とか五セントとか、それを戻しに行けばそれだけのお金が返ってくる、そういう価値を持たせることによってリサイクルのシステム、循環システムをつくり上げていくということは、もう日本では目前の急務に迫っているのではないか、こういうふうに思うのです。  しかし、そのデポジットについて、環境庁や通産省や農林水産省や厚生省や大蔵省は一体どう考えているのか。通産省は缶をつくったり瓶をつくったりするところを指導する役割を持っているはずですね。そういうところに、あなた方、これをつくるときに何回も利用するということを考えてつくりなさいよ、こういう指導はやっているのかどうか。それから、農林水産省は、そういうジュースや牛乳等の中身を指導する立場からやはり、それらの業界を集めているのだけれども、そういう人たちに、あなた方が使う容器は必ず何回もリサイクルして使えるものを使いなさいよ、こういう指導をやっているのかどうか・厚生省も大蔵省も同様ですが、私は、このデポジット制度に対して、日本の政府の各省庁は今それをどう考えているのか、この考えをそれぞれ今私が名前を挙げた省庁ごとにお答えをいただきたいと思います。
  62. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、これからの環境問題を考えます場合に、リサイクルが円滑に進むように我々の生活様式を変えていく、また事業活動を変えていくことは極めて重要だというぐあいに考えておるわけでございます。先生指摘になりましたデポジットというようなものも、そういった経済的手法を用いましてポイ捨て、使い捨て等に対してディスインセンティブを与え、またリサイクルすることに経済的な価値を認めるという経済的手法の一つだというぐあいに私ども考えているわけでございます。  そういうようなことから、私どもは、今回御提案申し上げました基本法の中におきまして、第二十一条第二項の中にこれからの環境政策考えていく上に当たっての経済的措置一つの手法として私どもは位置づけ、それについて十分調査研究を行うとともに、国民の理解と協力を得るように努めていくべきであるというようなことを規定したところでございます。  さらに、具体的なデポジット制度そのものについての環境庁における検討状況についてでございますが、これにつきましてはいろいろな問題がございますので、これについてはいろいろな角度から検討を加えていく必要があろうというぐあいに私ども考えまして、昨年来、学識経験者から成る検討会を設置いたしまして、リサイクルを促進するために各種の経済的手法のあり方について現在検討を進めているわけでございます。その中で、デポジット制度についても大きな課題として現在検討を進めている段階でございます。
  63. 清川佑二

    ○清川政府委員 先生指摘の廃棄物の問題、特に廃棄物にならないようにしなければならないという点は、まことに私ども重大な問題と認識をしているわけでございます。そのようなこともございまして、また同時に大変急を要するという問題もございまして、平成二年には、産業構造審議会の廃棄物処理・再資源化部会の答申におきまして、生産段階にさかのぼって再資源化しやすい製品づくりをしてリサイクルを進めるというガイドラインが取りまとめられておるところでございます。そしてまた、平成二年にはリサイクル法が制定されたわけでございますけれども、この法律におきましても、使用後に再生資源として有効に利用されるように各種の措置が講じられておりまして、現在、例えば紙につきましては、古紙の利用率もかつて平成元年度には五〇%程度でございましたものが五二・二%、あるいはガラス瓶につきましては、カレットの使用率が五〇%から五二%、あるいはスチール缶の回収、再資源化率につきましても、平成元年には四三%程度でありましたものが五〇%を超す。いずれもこれらにつきましては目標年次におきましてはさらに回収率を上げるというような形で目標を設定しているわけでございます。  このような形でリサイクル法、あるいは今般国会で成立を見ました省エネ・リサイクル支援法におきまして、再生資源として利用する、そしてリサイクルを進める、こういったことにつきまして、特に税制、金融面等での支援措置を含めましてさらにリサイクルをし、そしてこれに向けて製造事業者の自主的な取り組みを推進していく、このようなことで全力を挙げて取り組んでいるところでございます。
  64. 井澤俊正

    ○井澤説明員 お答えいたします。  先生指摘先ほどのごみ問題とかいろいろな食品関係の容器のリサイクルの問題、それぞれ大変重要な問題だと考えております。農林水産省といたしましても、これまで省内に食品産業環境対策プロジェクトチームの設置、それから対象事業といたしましては飲料容器リサイクルパイロット事業実施、これらによりましてデポジット制度についての調査研究も含めて総合的な環境対策に取り組んできたところでございます。  先ほど来お話もございましたが、デポジット制度につきましては、国内そしてまた海外の実施状況もいろいろございまして、それぞれにつきましていろいろな評価が行われていると聞いておるところでございます。具体的には、例えば容器の散乱防止等には効果があるという意見がございますが、その一方ではまた、食品につきましては一般的に単価が安くて腐敗しやすいという特性があるために容器の回収に係る保管場所の確保が難しいとか、それから人手の確保が難しいとか、こういったことから製品価格に比べましてコストが大変かかるというような問題、それからこのようなコストをだれが負担するのかといった問題があるといういろいろな意見もございます。  農林水産省としての今後の取り組みといたしましては、以上のような各方面の学識経験者等の御意見も踏まえまして、廃棄物減量化のための行動規範の策定、これは産業別、食品の種類別にこのような行動規範の策定とか、食品容器のリサイクル対策を具体的に調査検討していくといったことを内容といたします新規の事業といたしまして、食品産業環境対策総合推進事業実施することとして、その具体的な進め方に取り組んでいるところでございます。この事業の活用などによりまして、飲料メーカー、食品の流通業者、回収業者、さらには地方自治体住民といった方々、そういった方々の一体となった食品に係る廃棄物の減量化、再資源化、これらのためのシステムづくりといったことが行われるように指導してまいりたいと考えているところでございます。
  65. 三本木徹

    ○三本木説明員 昨年の五月に生活環境審議会から報告がありまして、廃棄物の減量化、リサイクルを進めるためには、先生指摘のデポジット制度であるとかごみ処理の有料化といった点についての検討が必要であるというふうな指摘をされております。これを受けまして厚生省では昨年の十二月に経済的手法の活用による廃棄物減量化研究会を設置いたしまして、現在、この経済的手法についての費用対効果あるいは制度的問題等、施策の有効性についての検討を行っていただいているところでございます。これまで四回にわたりましで有料化とかデポジット制度についての検討を行ってきていただいておるわけでありますが、本年の夏ごろを目途に検討結果をおまとめいただくように、現在お願いを申し上げているところでございます。
  66. 二宮茂明

    ○二宮説明員 国税庁といたしましては、従来から地球環境保全、廃棄物問題等に大変深い関心を持っておりまして、平成三年の二月には中央酒類審議会から、酒類容器のリサイクリングに関する中間報告をちょうだいいたしております。私どもといたしましては、それに基づきまして酒類容器のリサイクリングの促進につきまして関係業界を指導しておるところでございます。  具体的には、酒類製造業者に対しましては、瓶の規格の統一化の促進、あるいは缶の分別回収を容易にするための材質の表示等を行いまして、また酒販業界に対しましては、空容器の回収への協力、また回収運動の普及啓蒙、また酒造メーカーがつくりました規格統一瓶の消費者への周知、さらに、新たに酒類販売業の免許を与える場合には、免許者に対しまして酒類容器のリサイクリングに関する具体的対応策を提出させまして指導をしてきております。  こういった私どもの指導を受けまして、昨年の二月から日本酒造組合中央会におきまして、五百ミリリットルの規格統一瓶が導入されまして、酒販業界も含めて酒類業界で積極的に普及に取り組んでおるところでございます。  以上でございます。
  67. 小川国彦

    ○小川(国)委員 各省庁からそれぞれお答えをいただいたわけでありますが、それぞれの省庁で取り組みをなさっている。いろいろな審議会をつくったり、いろいろな対策会議をつくったり、いろいろな委員会をつくっていらっしゃる。しかし、ごみとして、廃棄物として出てくる最後は同じなんですね。再利用する、再資源化する、そこの一番最後のところはどの省庁でも同じようにそこを何とかデポジットなりでやっていこうという考え方は持っていらっしゃるのですが、今の環境行政の動きを見ていますと、残念ながら各省庁がばらばらに、個々に対応されているというふうに思うわけなのです。  環境基本計画というものをつくってやっていこうという環境基本法ができて、そこに仏つくって魂入れずではやはり困るわけでありまして、立派な環境基本法、私どもから言わせればまだいろいろ問題点はあるわけでありますが、環境庁を中心にして国の環境基本法というものをつくった、そして今度は基本計画をつくっていく、そのときに、今各省庁お答えになったようにそれぞれがばらばらに対応していたのでは、いつまでたってもドイツのような、アメリカのようなこういうリサイクルシステムというものは生まれてこないのではないか。それぞれの省庁がいろいろな審議会をつくって、いろいろな学者や専門家をメンバーに頼んで、そしてまた、いろいろな生活者の人たちも入れて御意見を伺って、同じような答えをもらって、そして省庁ごとに対応していくというのでは、私は、これは根本的な解決にはならない。  やはり、これから日本環境行政というものを環境庁を中心に各省庁が協力体制をつくって、一つ一つ環境の問題、まあ私は環境問題は廃棄物問題だという一つ考え方を持っていますが、それはいわばごみなんだ、いろいろな生活から出る、産業から出るごみ、それからさっき申し上げたように大気を汚すごみあるいは水や河川を汚すごみ、固体となってくるごみ、そういうようなごみをいかにして減らして、つくる段階からそれを再利用させるということを考えるのには、日本の今の環境基本法の論議の中で、先般も本会議の中では環境税ということが議論されました。しかし、大蔵省当局もこれに対して非常に慎重な姿勢をとられております。ですから、環境税によってこれらの施策を、ごみを減らす、リサイクルさせる施策はすぐできない。  そうしたら、ではワンウエー容器、一回しか使えないものをつくっている業者に、ヨーロッパのようにそこに課徴金をかけて、最初から一回しか使えないものをつくった人はごみ料金を負担しなさいではないけれども、課徴金をかけるというやり方もあるけれども、なかなか日本の産業界に対する指導ではそこまでできない。そうすれば、あらゆる製品に上乗せ料金を乗せて、リサイクルをしてくればその者に対して上乗せ料金を払う、こういうシステムをやはり早急に実現した方がいいのではないか。  そういうときには、これから環境庁を総合調整官庁というような位置づけをしっかりさせて、環境庁を中心に各省庁が、例えばこういう飲料容器なら飲料容器に限ってこれをリサイクルさせるデポジット制度を導入するということについては、環境庁を総合調整官庁として各省庁が協力し、今取り組んでいるような審議会なりそれぞれの対応策なりを一緒にまとめてやったら、日本の国としていい知恵が出ると思うのですね。各省庁立派な知恵を持っているけれども省庁ばらばらにやっていたら、いつまでたってもごもっとも、いい意見で終わってしまうので、実行していくのには環境庁を中心として実行していく体制がなければならないのではないか。  環境基本法ができたら、それを実行していくところの体制一体どう組めるのか、この辺を私は、きょうは各省庁を代表する方が来ているわけでありますから、その点で各省庁として、この私の今質問申し上げた、環境庁を中心に一つ一つ環境の課題に取り組んでいく、そういうシステムづくりができるかどうか、その点を各省庁ごとにひとつ伺いたい。これはまた通産、農水、大蔵と順次伺って、最後に環境庁の御意見も伺いたいと思うのです。
  68. 清川佑二

    ○清川政府委員 お答え申し上げます。  環境基本法が今後具体化されていくという段階でございます。各省庁足並みをそろえていくことは必要であるという先生の御指摘のとおりでございます。ごみに限らず、環境基本法に盛り込まれております施策実施するに当たりまして、政府一体となった取り組みが重要でございます。通産省といたしましても、今後とも環境庁を初め関係省庁と緊密な連絡調整を図りながら、積極的に環境施策に取り組んでいくということは大切だと考えるわけでございます。  この場合に、私ども通産省の考えておりますことは、それぞれの役所にそれぞれの責務がございます。そしてまた、経済の実態におきまして、例えばごみの問題につきましても、その製品の原料から加工されて製品となり、それが使用され、廃棄され、そしてまたリサイクルされ、また製品に戻っていく、その間に販売あるいは技術開発、流通チャネル、多くの問題がございます。その中の一つとしてそれぞれ積極的に取り組むということもございますので、先生お話がありましたように、通産省は関係ないのかといいますと、実はそれぞれのつかさつかさの業務の中で連携しながら、一つ一つの目的につきまして、環境庁を中心として緊密な連絡調整を図りながら、それぞれの所掌の事務に邁進するということが最も適切な方法であると考えております。
  69. 井澤俊正

    ○井澤説明員 お答えいたします。  事例にありましたのは飲料のリサイクルが中心でございましたが、それだけではございませんで、農林水産省の関係は、環境基本法に盛り込まれております各般の施策の具体化に当たって、農林水産それから食品工業、それぞれが関連してまいりまして、こういった施策が効果的に実施されることが極めて重要であると考えておりますので、農林水産省といたしましても、今後とも環境庁を初め関係省庁と十分連携協力を図ってまいる考えでございます。  なお、先ほど例示で出ました飲料のリサイクルの問題、これにつきましては各省ごとで取り組んでおられますが、我々としましては、飲料というものの製造、流通を所管するという立場から、それぞれの検討会に、参画といいますか、連携をとらせていただいております。それから、東京都でも取り組んでおられますので、それにつきましてもいろいろ傍聴させていただいたり、連携はとらせていただいているところでございます。
  70. 三本木徹

    ○三本木説明員 厚生省におきましては、生活環境保全とか公衆衛生の向上ということを目的にした廃棄物処理法、こういったものに基づきまして行政を推進しているわけでありますが、環境保全に関するこういった施策は広範多岐にわたるものでございまして、したがいまして、環境基本法趣旨に沿って、廃棄物対策など厚生省所管の環境政策については、今後とも環境庁ともよく相談しながら、また関係省庁とも関係がございますので、相互に密接な連携を図りながら、一層積極的な推進を図ってまいることとしております。
  71. 二宮茂明

    ○二宮説明員 本法案におきまして、国は、環境保全に関する施策を講じていく責務を有することが規定されておりまして、環境庁を初め関係省庁が連携協力を密接に行っていくことが重要であると考えております。国税庁といたしましても、このような考え方で私どもの分野での行政を推進していきたいと考えております。
  72. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 ただいま関係各省から御答弁いただいたわけでございますが、環境への負荷の少ない社会を形成していく上におきまして、これまでの生産と消費のあり方を見直し、廃棄物の量を抑制しながらリサイクルを促進する施策充実するということは極めて重要でございます。このため、環境保全に関する基本的な施策を私ども環境庁としては企画立案、推進をするという役割を負っていると同時に、関係行政機関の環境保全に関する事務を総合調整するという役割を担っているわけでございます。私どもは、今後この環境基本法のもとにおきましてこの任務はますます重要になってくるというぐあいに考えております。私どもは、その任務を推進すべく努力してまいりたいというぐあいに考えます。
  73. 小川国彦

    ○小川(国)委員 各省庁から積極的に、前向きに、環境庁を中心にして個別の課題に取り組んでいく、こういう御答弁をいただいたわけでありますが、ひとつ通産省の方に重ねて承りたいのでありますが、廃棄物処理法という法律を見ますと、廃棄物の排出の抑制というふうに書いてあるわけなんですね。しかし、出るごみをどうするかという問題ではなくて、我々はこのごみの発生の抑制をどうするかという、この法律厚生省所管であるわけですが、出てくるのを、ごみが排出されるのを抑制するのじゃなくて、発生するのを抑制する、こういう考え方というものがこれから環境基本計画の中で位置づけられなきゃならない。ドイツでは廃棄物の回避及び管理というふうに書いてあるのですね。これは、結局廃棄物は出ないようにする、回避というのは出ないようにする、こういう意味だというふうに考えているわけです。  通産省の行政の考え方を見てみますと、どうもこの辺の、発生の抑制という考え方について、ごみ処理をやっている厚生省とは別ですが、物をつくらせる、物をつくる側を監督指導する通産省の方は、ごみにしないということ、そしてどうしても使う必要があるものはそのままの形で再使用させる、それから、そのままの形で再使用できないときにはリサイクルをさせる、そしてそのままの形で再使用できないときは適正に処理をする、こういうふうに、並列ではなくて一つ一つ段階を追って、ともかくごみを発生させないということを前提にした通産行政というものが考えられなきゃいけないんじゃないか。大量生産して大量消費して、そして大量リサイクルすればいいということではリサイクルは生きてこないんではないか。この辺、通産省は大量生産されて大量消費して大量リサイクルさせればいいじゃないかというふうに、どうも私どもは思えてならないのですが、この点をこれからの環境基本計画の中で通産省はどう位置づけるという考え方を持っておられるか、この辺を伺いたい。
  74. 清川佑二

    ○清川政府委員 お答え申し上げます。  廃棄物とならないようにまず極力再使用する、あるいはまた廃棄物になる場合にリサイクルをすることが必要ではないか、どうしようもないものが処理されるという形になるべきではないかと先生のお考えを承ったわけでございます。そしてまた、これは実に環境基本法に言っている環境調和型の経済社会の考え方に全く即したものと私も伺ったところでございます。  繰り返しになりますけれども、私ども通産省におきましては、大量廃棄、廃棄物の増加ということを極力抑えなければいけない、そのためには再資源化を次々としていって、処理の段階までいかないようにすることが必要である、このように考えているわけでございます。  リサイクル法の制定を平成三年に見たわけでございますが、ここにおきましても、第一種指定製品、第二種指定製品というような形でリサイクルが推進しやすいようにという措置を講じ、かつ産業界に要請を続けてきているわけでございます。そしてまたさらにこのリサイクルの問題、廃棄物の減少となることになりますように、結果となりますように、リサイクルを進めることをさらに一層積極的に行いまして環境調和した経済社会にしていくという念願を込めまして、省エネ・リサイクル支援法を今国会において成立を見たわけでございます。  このようなことで、さらにその省エネ・リサイクル支援法におきましては、再生資源として利用することが容易な原材料を使用した製品の製造に関する設備、例えば包装用のパルプモールドの製造設備のようなものについての導入につきまして日本開発銀行からの低利融資ですとか、リサイクルが容易なものとなるような製造技術、技術開発につきまして低利融資、あるいは産業基盤整備基金の債務保証の支援策というようなことを講じまして、再生資源の利用の促進を図るということに積極的に取り組んでいるわけでございます。  このような形でやっているわけでございますが、同時に、このリサイクルの問題の中で大きな問題として、私どもは、市場経済、消費者が製品を選択する、消費者が購入する、この関係を常に念頭に置いているわけでございます。そのようなマーケットメカニズムにおいて同時にこのようなリサイクルが促進される。そのためには、リサイクルのためにいろいろなコストがかかるというようなものにつきまして積極的な助成をするというような形で取り組んでいるわけでございます。  なお、おわびでございますが、先ほどデポジット制度について通産省は勉強をしておるかということで答弁漏れがございましたので、一言つけ加えさせていただきますと、デポジット制度につきまして、先生の御指摘、あるいはまた同時に第三次行革審の答申、あるいは新経済計画におきましての御議論もございます。このようなことも含めまして、また当面の急務であるということも含めまして、内外で導入されているデポジット制度の実態等につきまして、特定の方向ということをあらかじめ頭に置くことなく、そういったことを前提とすることなく、虚心坦懐な気持ちで今調査研究を行っているところでございまして、具体的にはクリーン・ジャパン・センターに委員会を設けまして実態の分析、検討を行っているところでございます。
  75. 小川国彦

    ○小川(国)委員 通産省が省エネのリサイクル支援法をつくって資源の再利用についてそういう努力をされてきている、その点は私どもも認めるわけでありますが、最近の円高でまた安価な原材料が輸入される、こういうふうになってまいりまして、再生資源価格が非常に下がってしまっている。この状況について通産省は把握しておられるかどうか。  私ども社会党は、かつてリサイクル法の審議過程において、この法律にはリサイクルを実質的に促進する経済的手法が抜け落ちているということを主張させていただいたわけです。それに対して通産省のお答えは、業界に自主的ガイドラインを定めさせ、その指導を十分に行うから何ら問題はない、こういうことでございました。しかし今、リターナブル容器から使い捨て容器へのシフト、スチール缶の逆有償、古紙とカレット価格の大暴落、それから資源の滞貨、こういう現在の状態を見ますと、通産省の従来の考え方というものを一変させなきゃならない状況が来ているんじゃないか。  環境庁はこうした点について積極的に考えておられるようでありますが、平成四年一月の通産省の産業構造審議会の合同審議会答申では、今後のエネルギー、環境対策のあり方について、廃棄物問題についてはリサイクル推進一つの方策としてデポジット制度等について検討がなされている、こういうふうに書かれているわけですね。私が先ほど指摘したような問題点を通産省としてもお感じになって、経済的手法として何が有効であるか考えておられると思うのでありますが、今の資源価格の暴落の状態、滞貨の状態、そういうものを果たして現行法の中で対処できるのか、解決できるのか、この点を伺いたいと思います。
  76. 清川佑二

    ○清川政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘の最近の円高あるいは再生資源の価格の低落の問題、大変大きな問題であるというふうに私ども認識しております。最近時点でございますと、例えば鉄くずなどにつきましては、一月にトン当たり一万五千三百円あるいは二月に一万五千八百円、三月には一万三千二百円というようなことで、これは社団法人鉄源協会の調査でございますが、このような形で調査はし、かつずっと注視をいたしてきているわけでございます。  そこで、この価格の問題とリサイクルの問題でございますが、先生指摘の価格の低落あるいはリサイクルの進捗の問題につきまして非常に大きな問題となっておりますのは、やはり価格に関係いたしますのは、景気の低迷、これに基づきます需要の減退というところが大変大きな問題でございます。リサイクルにつきましては、再資源のもととなる原料を集めるということはもちろん大切でございますけれども、このリサイクルが完全に、次々と成功裏に進んでいくためには、そのリサイクル化された製品を消費者に買っていただくということが完成する一つの大きな前提になっているわけでございます。  ところが、この景気の低迷によりまして、例えば紙の需要、鉄の需要、大変減退をいたしております。日本の市場原理に基づく経済におきまして、価格の低迷ということはやはり需要の低迷からくるということでございます。政府は経済対策を講じ、あるいはまた個別の業種ごとに、例えば古紙につきましては政府あるいは地方自治体におきましても再生紙を使っていただくように全力を挙げてお願いしておる、そしてまた、再資源化製品の利用を促進していただけますように、十月をリサイクル促進月間といたしましてリサイクルの重要性を認識していただくと同時に、リサイクル製品の使用をお願いする、このようなことに今全力を挙げているわけでございます。そして、このような需要の拡大ということを通じまして、リサイクルが経済的に安定した形で回っていくということを願っており、かつ推進しているところでございます。
  77. 小川国彦

    ○小川(国)委員 リサイクル製品の需要の拡大ということに御努力されていることは、またそれは一つの御努力であると思うのですが、問題は、回収されたものの再資源としての利用率というのですか、それを法制化して、紙にしても缶にしてもカレットにしても、集められたものを各企業が製造業の段階においで、こういう回収してきたものを再利用する再利用率というものを一定の割合各企業の責任として果たしてもらう。それは環境、社会を守っていく上の大きな企業の責務であり、そしてそれが若干コスト高になっているとしても、消費者は環境を守るためにそういうものを利用していく、こういうことが必要だと思うのでありますが、今の段階では、これだけ低迷し、滞貨している資源を利用させていくのには、各企業におけるこうしたものの利用率というものを法制化して考えていく必要があるのではないか、こういうことが問われているわけでありますが、この点はいかがでございますか。
  78. 清川佑二

    ○清川政府委員 お答え申し上げます。  現時点でリサイクルの度合いを見ますと、例えば紙、古紙の利用率につきましては、平成元年度五〇・三%でありましたのが、平成三年度には五二・三%というように上がってきております。そして、これにつきましては、平成六年度には五五%にまで上げようということで、全力を挙げて取り組んでいるわけでございます。  これは、一つの例示として申し上げたわけでございますけれども、例えば紙につきまして、各企業にもお願いをし、政府全体でもお願いをし、そしてまた消費者の段階でも極力お願いをしているわけでございます。例えばトイレットペーパーなどにおきましても、どうしてもパージン原料のものが市場で好評を博しているというようなことを実は報告を受けているわけでございます。私どもは、やはり国民お一人お一人が、企業に限らず国民も、そしてまた中央政府、地方政府も、このリサイクルの問題が極めて大切である、そしてそのためには再生資源を積極的に使うという心構えになってこれが初めて完全にうまくいく、こういうふうに考えるわけでございます。そのようなわけで、極力自主的な行動、そしてまた同時にユーザーに、それぞれ技術的な問題あるいはコスト的な問題がございますので、極力再使用製品を使っていただくということをさらに積極的に要請してまいりたいと思うわけでございます。
  79. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この問題については、利用率を高めることをお願いするという形から、やはり国の制度化をしていく必要があるのではないか、そうしないと滞貨の一掃や、これからリサイクル社会で、缶にしても瓶にしても紙にしても、いろいろなものを町内会で住民団体が回収の努力を一生懸命してきても、それを引き取ってもらうのに値段も出ないという状況になっては、リサイクル社会に取り組む市民社会の熱意も失わせてしまうことになってしまうのではないか、こういうふうに考えますので、この点は、通産省のなお一段の努力を私は望みたいと思います。  最後に、環境基本法が成立してまいりますと、それに対する行政の対応が急務になってまいります。その点で、私、今まで例えば飲料容器のデポジットの問題について、環境庁から声をかけられて各省庁が集まって会議を開いたというようなことはまだなかった、こういうふうに伺っているわけであります。さっき申し上げたように、これから経済的手法として環境税の問題があり、課徴金の問題があり、デポジット制度の問題がある。この三つを考えたときに、一番導入しやすい経済的手法はデポジットなのじゃないか。そういう点では、まずその手始めに、例えば飲料容器なら飲料容器のデポジット制度の問題について環境庁からまず声をかけていただく、それには各省庁も応じていただく、それてそれぞれの持っているこれまでの討議の内容、ノウハウ、そういうものを環境庁に集めて、そしてこれを制度化していく、こういうような取り組みを、この環境基本法ができた中で行政の対応としてぜひ着手していただきたい、こういうふうに私は考えるわけであります。  この点について、環境庁経済的手法の中でこれからどういうものを取り入れていかれるのか、大臣自身においても、今申し上げた環境税と課徴金とデポジットシステム、この三つの方法しか今の段階では私ども考えられないわけでありますが、この中でどういう手法を取り入れていくことがこの環境基本法の問題を一つ一つ具体的に解決していく手法として適切なのか、最後に環境庁長官あるいは環境庁から、基本法を踏まえての今後の行政の対応ということについて明快な御答弁をいただきたいと思います。
  80. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生、この問題に関しまして非常にお詳しいことから、この問題に関する各面からの御質問があったわけでございます。  この問題に対する検討課題の広がりというのは確かに非常に広うございます。先生指摘になりましたように、製品製造の段階から消費後の不用物の発生をどうやって抑制していくかという問題、二番目に、消費後の廃棄物としての排出を抑制する方策はどういうことか、第三に、消費後の再生可能な不用物の回収の促進としてどういう策があるのか、第四番目に、回収された再資源を今度はさらに利用していくための促進策はどういうことであろうか、大きく分けましてもこの四面にわたっているというぐあいに先生ただいま御指摘になったわけでございます。  私どもといたしましては、四つの問題はいずれもこの問題を解決するためには重要な問題であろうかと思います。この中で、経済的措置が有効であるものについてはそれを使っていくべきだというぐあいに私ども考えますが、それをやる前に、これにまつわる問題はいろいろございます。デポジット制度、課徴金の問題、いろいろございますが、私どもは問題点をこれから鋭意煮詰めまして、先ほど申し上げましたように環境庁環境行政の中枢といたしまして重要な役割を担っております。関係省庁ともども連携しながら、この問題につきましては鋭意勉強を重ねまして、環境基本法二十一条にございますように、その効果が経済に与える影響等を勉強し、さらに国民の理解を得て、しかるべく政策として結実するように私どもは十分努力してまいりたい、かように考えます。
  81. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 先刻来より小川先生の大変すばらしい御質問をいただいておるわけでございまして、特に先生が、環境行政そのもののあり方についても、ごみ問題を考えない環境行政というのはナンセンスであると言ってもいいような御意見をいただきまして、私も全く同様の認識を持つものであります。  今、局長から答弁されましたように、これからの経済的手法としてのあり方、これは環境基本法にも、税の問題それから課徴金の問題そしてデポジットの問題がとりあえず具体的な課題として浮上しておりますけれども、ただ、その中でどれを選ぶかということになりますと、いろいろな選び方とそのときの時代的背景もありますので、慎重にこれは、国民に受けとめていかれる、そういうことに決めていかなきゃなりませんけれども一つここで問題なのは、そのような、先生が御心配になるような大量の廃棄物が生まれてきているという背景には、やはり自然に対するあるいは物質に対する人間の傲慢さがそのようにさせているのではないかな。そうすれば、そこにやはり人間の新しい教育といいますか、それも加えていかなきゃならぬ。それは基本法の中にもうたってございます。したがって、人間の傲慢さといいますか、自然に対する謙虚さといいますか、物に対する謙虚さといいますか、それを助長していくためにも、それを伸ばしていくためにも、デポジットという制度一つの有力な手段ではないのかなという感じを持っておりますが、果たして、しかし、政府、環境庁が何を選ぶかということになりますと、まず環境基本法の成立をさしていただきまして、その運用の中でそのときの時代に即したどり方をしていきたいと思っております。
  82. 小川国彦

    ○小川(国)委員 最後に、さっき原田委員長ちょっと席を立たれたときに代理の方に質問をいたしたわけでありますが、今各省庁環境庁を初め御意見を伺いました中で、デポジット制度の有効性といいますか必要性というものについては、各省庁それぞれお考えを持って対応されている状況にあろうかと思います。したがって、当委員会の中にも、飲料容器に関する小委員会あるいはリサイクルの小委員会でも結構でございますので、委員長のもとでぜひそうした小委員会を設置していただき、議会としてもこれに対して取り組んでいく、そういう方向ができますように、これは委員長に特にお願いをしたいと思います。
  83. 原田昇左右

    原田委員長 小川君の御提案は、理事会において検討することにいたします。
  84. 小川国彦

    ○小川(国)委員 以上で終わります。
  85. 原田昇左右

    原田委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  86. 原田昇左右

    原田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております各案につきまして、議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。  なお、公聴会は来る五月十三日に開会することとし、公述人の選定その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ―――――――――――――
  89. 原田昇左右

    原田委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております各案につき、来る五月十一日火曜日、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。  なお、参考人の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ―――――――――――――
  92. 原田昇左右

    原田委員長 次に、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題としております各案につきまして、審査の参考に資するため、委員を派遣いたしたいと存じます。  つきましては、議長に対し、委員派遣承認の申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。  なお、派遣地、派遣日時、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ―――――――――――――
  95. 原田昇左右

    原田委員長 質疑を続行いたします。岡崎トミ子君。
  96. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 環境庁ができてから二十一年になります。五〇年代後半に始まる経済優先の社会の中で生じたさまざまな産業公害と、それに伴う水俣病を初めとしたたくさんの公害被害者が発生しました。そして、いまだにこの苦しみから解放されない人々がいるという現実をしっかりと見据え、二十日に上程された環境基本法案について審議をしていきたいと思います。  また、今までの歴史への反省として、環境を守ろう、限りある地球を次の世代に引き継いでいこうとの共通認識に立ち、さまざまな市民の運動が行われてきました。この環境基本法についても、日弁連を初め幾つかのNGOの手による独自の法案の作成がなされております。  きょう私が手元に持ってまいりましたこの三つも、公害・地球環境問題懇談会編の「環境基本法ってなあに」、これは日弁連、そして環境法制検討市民委員会の「環境基本法市民草案一九九三」という、こんな立派なものができております。そして、きょうは傍聴席にも大気汚染関係の公害の被害者あるいは水俣関係の皆さんも大勢いらっしゃいます。こういった皆さんの熱い期待が寄せられてきたもの、この状況にありまして、私どもは世界に恥じることのない法律にするためにも、その役割をしっかり認識してまいります。長官におかれましても、ぜひこのような見地に立ち、御答弁を誠実にお願いしたいと思います。  まず、長官趣旨説明を受けまして、第一の理念、環境権について伺います。  「環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること」と第三条にありますが、これは「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という憲法二十五条との関係でどのようにとらえるのでしょうか。また、このことは基本的人権として保障されていくのでしょうか。基本的人権として保障されるのであれば、これは環境権を明記することによって権利が保障され、強化されていくのではないかと考えますが、なぜ環境権を明記しなかったのでしょうか。お願いいたします。
  97. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 ただいまの岡崎先生質問お答えいたします。  先生の御質問の中の、憲法二十五条に基づく基本的人権としての、良好な環境のもとで健康で文化的な生活を送ることが保障されるというこのことは憲法二十五条に基づくものと解釈していいのか、一つはこういう御質問でございますが、これはそのように御解釈いただいて結構でございます。健全で恵み豊かな環境が人間の健康で文化的な生活に欠くことができないということは、これは当然のことでございますので、そのように御理解いただきたいと思います。それからまた、現在及び将来にわたってその世代が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するようにすべきであるということも当然含まれることでございます。  そこで、そのために基本法の中に環境権というものをはっきりうたっていいじゃないのかという御質問でございますけれども、これは午前中にも申し上げましたように、環境権という権利のとらえ方が、まだ学説でもあるいはまた法廷の中においても確定されたことではないということから、今回はその理念を実現していく、つまり、今申し上げましたような憲法に規定されておる、人間が、日本人が享受すべき理念をいかに実現するかということに中心を置いてございます。
  98. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 川崎市や東京都の条例においては、環境権がはっきりとうたわれていますね。自治体の中でも環境条例をつくる動きが活発になっております。したがって、この基本法によって明確に住民の権利を認める自治体の条例に対してはどのようにお考えになりますでしょうか。
  99. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほど大臣からお答えいたしましたように、この基本法の第三条におきましては、基本理念の冒頭に「環境の恵沢の享受と継承」と位置づけまして、「環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること」ということと、「現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受する」ことができるようにしなければならないということを明定したところでございます。  これは大臣お答えいたしましたように、憲法第二十五条において「国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とされていることから、国は、国民が健康で文化的な最低限度の生活ができるようにするためには環境保全のための諸施策実施する責務がある、そして、このような責務を果たすことに関する基本理念として定めたものであるというぐあいに言えるわけでございます。  先生指摘になりましたように、東京都の公害防止条例や川崎市の環境基本条例におきましては、「すべて都民は、健康で安全かつ快適な生活を営む権利を有するのであって、この権利は、公害によってみだりに侵されてはならない。」とか、川崎市の場合に「市民が安全で健康かつ快適な環境を享受する権利の実現を図るとともに、良好な環境を将来の世代に引き継ぐことを目的として展開するものとする。」という表現が見られているところでございます。  大臣から先ほどお答えいたしましたように、環境権につきましては具体的な権利内容や法的性格等についていまだ定説があるという段階には至っておらず、また判例においても認められておらないということから、権利として位置づけることは困難でありますけれども地方公共団体においてこのような権利という表現を使って書いてございますが、この中身を見ますと、その地域における環境施策を進めていく上での理念として位置づけているというようなことが、表現上うかがわれるわけでございます。  このように、各地方公共団体環境施策を進めていく上で、基本的理念を、このような住民が良好な環境を享受することや安全で健康で快適な生活を送るという重要性を位置づけているということは、それなりに私ども評価しているわけでございます。
  100. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 そうしますと、自治体の条例を狭めるものではないということを確認してよろしいですね。  次に、理念としての基本法のあり方についてお伺いいたします。  戦争ほど大きな環境破壊はないと私は考えております。これは命をはぐくむ性を持つ者として、女性だれもが持つ共通の気持ちだと思います。また、女性だけでなく、あの湾岸戦争の悲惨な場面、資源が大量に浪費されていく現実を見て、だれもがそう感じたことと思います。  そこで、社会党案に軍縮と平和の実現という目的を盛り込んだことは評価をしています。しかし一方、環境行政にはなじまないのではという疑問を持つ声もあります。そこで、この趣旨について、御提案者に御説明をいただきたいと思います。
  101. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほどどもに対して、狭めるものではないかという御質問があったものですから、その部分についてお答え申し上げますが、先ほど指摘に対して御答弁申し上げたことで大体御理解いただいたと思うわけでございますが、地方公共団体がこうした基本理念を地方の条例等において位置づけること自体は非常に意味がある、それを後退させるという気持ちは私どもは全くございません。  ただ、基本法において権利として書きます場合には、先ほども申し上げましたように、まだ定説もない、判例においでもそこまでまだいっておらないということから、権利という表現を用いますとかえって混乱を生ずるおそれがあるということから用いなかったところでございます。
  102. 岩垂寿喜男

    ○岩垂議員 御質問をいただきましたが、社会党案は第四十七条で、「国は、戦争による環境の破壊を防止するため、国際的な軍備縮小及び軍備規制を推進するとともに、核兵器、生物兵器、毒素兵器、化学兵器等の解体等に協力するように努めるものとする。」というふうに書いてございます。  御案内のように、先進国全体で軍事にかかわるエネルギーの使用量が総エネルギー使用量の一五%に達するという推計もございます。そういう状況のもとで、軍備に関連する経済的費用を軽減して環境保全に充てるという姿勢の確立が急務であると私ども考えております。結果的に、軍事の抑制という国の施策を明らかにし、環境行政と平和実現へ向けて、平和憲法を持っている日本が世界のリーダーシップをとるというふうに考えまして、この法案に明記いたしました。  ちなみに、ブラジルのサミットに先立つ女性の行動アジェンダ21では、軍事活動が与える環境への破壊的な影響認識し、軍事支出を即時五〇%削減し、核兵器の廃棄を要求するという決議が行われたことは御案内のとおりでございましで、そういう国内、国際の条件の中でそういう規定を盛り込んだというふうに御理解をいただきたいと思います。
  103. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 ありがとうございました。  理念のうち、四条についてお伺いいたします。  「環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら」とあります。ここに一九七〇年、第六十四国会における公害対策基本法の一部を改正する法律案趣旨説明があります。「第一に、憲法にいう国民の健康で文化的な生活を確保する上において公害の防止がきわめて重要であることを目的の中で明確にするとともに、経済の健全な発展との調和規定を削除したことであります。」このようにあるのですが、このような理由で経済の発展との調和条項が削除されたにもかかわらず、今回復活したのはなぜでしょうか。
  104. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生ただいま健全な経済の発展との調和条項を復活したという御表現をとられましたが、私どもはそのようには理解しておりません。  環境経済の関係につきましては、昨年六月の地球サミットにおきましても、環境経済の統合という表現を用いたり、あるいは持続可能な開発の達成という考え方が示されたところでございます。  こういう考え方が、ある程度環境問題を考える場合の世界の共通の認識になっていると私ども理解しておるわけでございますが、昨年十月の中公審、自環審の答申におきましても、先進国である我が国といたしましては、「これまでの生産と消費のパターンを見直し、」「その内容の変化を伴う健全な経済の発展を図り、環境負荷の少ない経済社会を構築していく」ということが重要であるということが示されたところでございます。  環境基本法におきましては、こういった事情を踏まえまして、環境経済が対立するものであるという考え方はとっておらずに、第四条におきまして、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築ということを規定したところでございまして、生活環境保全については経済を独立させて、昔は「経済の健全な発展」という表現になっておりますが、発展との調和が図れるようにするという、いわゆる経済調和条項とは、その趣旨、内容は全く異なるというぐあいに私は理解しております。
  105. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 私は、リオ宣言にあります持続可能な開発日本にそっくり持ってくることには疑問を感じるわけなのです。  我が国は、世界の中でも経済先進国と言われまして、その点で経済優先主義による環境破壊を長い間行ってきているわけです。その反省に立ち、まず公害をもたらした社会を反省し、ライフスタイルを含めて国民全体で考え直そうではないかという視点に立ったわけです。にもかかわらず、「健全な経済の発展を図りながら」という言葉を入れた理念では、法の中では、せっかく進んだ環境行政の後退を意味するのではないでしょうか。  リオ宣言は、開発途上国とのバランスを考え、資源の配分という点でもある種の合理性があると思います。長い間環境破壊をして資源を先取りしてきた日本は、もう経済優先ではいけないと思います。ぜひ私ども社会党案のように、格調高く環境優先の理念を貫いてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
  106. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生の御指摘ではございますが、持続可能性のある発展ということそのものは、開発途上国のみならず先進国におきましても私どもは達成すべき理念ではないかというぐあいに考えでいるわけでございます。昨年六月の地球サミットの「環境開発に関するリオ宣言」におきましても、その中で、原則七及び八で「先進国は、自らの社会が地球環境に与えた負担及び自ら有する技術と資金に鑑み、持続可能な開発の国際的追求において、自らが有する責任を認め」という表現があり、また、各国は、生産と消費の非持続的なパターンを減少及び除去するという考え方が示されたところでございます。  こういう考え方と軌を一にするわけですが、先ほど引用しました答申におきましても、「先進国にとっては、これまでの生産と消費のパターンを見直し、持続可能で環境負荷の少ない経済発展を目指すことが必要」ということが言われているところでございまして、そこで我が国といたしましては、資源やエネルギー等の面においてはより一層の効率化を進め、物の再利用とか再生利用をさらに組み込みながら、また、浪費的な使い捨ての生活習慣を見直していくとか、その内容の変化を伴う健全な経済の発展を図るということが重要ではないか、そうすることによって環境負荷の少ない経済社会を構築していくことが重要であるということが大事ではなかろうかと思うのでございます。  私先ほど、前の法律にはございました経済の健全な発展という、経済は独立した表現としております。今回の法律では、環境に対して負荷の少ない健全な経済の発展という表現をしているのもそういう趣旨であるわけでございます。環境経済を対立したものとはとらえませんで、健全で恵み豊かな環境を維持しながら、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図っていく、こういう趣旨でございます。
  107. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 わかりました。  それでは次に、事業者の責務について伺います。  国内の事業者が海外で行う経済活動について、民間が行う事業、またODAについてはどのような考えをお持ちでしょうか、そして、それはどのような形で法案に盛り込まれていますでしょうか。
  108. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘になりましたことは非常に重要なことでございます。事業者が海外で行う事業活動におきましても、環境配慮ということは当然していただかなければならぬという趣旨で、その規定が一体どこにあるのか、こういう御指摘が第一点かと存じます。  事業者の海外活動に関しましても、当該地域におきまして環境保全上の支障を来さないよう努力がなされるべきことは、これは先生が御指摘のとおりでございます。そこは、私どもこの基本法におきましては、第八条に「事業者の責務」ということを掲げたところでございますが、その第四項におきまして、「事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境保全に自ら努める」ということの中に、当然海外における事業活動も含んでその責務を書いたということでございます。  第二に、ODAに関する環境配慮についてでございますが、国際協力の実施に当たりまして、その国際協力に係る事業が、その地域におきまして環境保全上の支障をもたらすことがないように適切な配慮を行うことが必要であるということは御指摘のとおりでございまして、その見地から、この法案では第三十四条第一項でございますが、「国は、国際協力の実施に当たっては、その国際協力の実施に関する地域に係る地球環境保全等について配慮するように努めなければならない。」という規定を設けたところでございまして、御指摘のODAに関する環境配慮は、この条項に位置づけたものでございます。
  109. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 八条四項において、海外の事業についても事業者の責務は含まれると解釈されるというわけですね。日本の企業が海外で環境破壊を起こしているという訴えがたくさん出てきておりますので、それを聞いて安心いたしました。  次に、環境基本計画についてお尋ねいたします。  この十四条の環境基本計画は、十三条にある基本的理念の実現のために策定されるべきものであると位置づけてよろしいでしょうか。また、その内容ですが、白書に書かれているものとどう違うでしょうか。
  110. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 御指摘のように、環境基本計画は環境に関する基本理念にのっとりまして、環境保全に関する施策を政府全体が一体となって、総合的かつ計画的に推進を図っていくために位置づけたところでございます。したがって、その内容としては、当然第十三条における施策指針といたしまして、こういった条項が達成され得るような格好で策定されるべきであるということは御趣旨のとおりでございます。  なお、環境白書とどのように違うかということでございますが、環境基本計画は望ましい環境のあり方を描くとともに、長期的な観点から、環境保全に関しまして計画期間を置いて講ずるべき施策の大綱を定めることを予定するものでございます。  そこで、この基本計画に定められたところに従いまして、関係省庁においては有機的な連携を図りながら、その基本的な方向に沿って施策を講じていくということになるわけでございます。  一方、これに対しまして環境白書は、毎年環境状況及び前年度に政府が環境保全に関して講じた施策、当該年度に講じようとする施策について国会に報告するものでございます。そこで、基本計画と環境白書はおのずから役割、位置づけが異なってまいりますし、その内容も当然異なってくることになろうかと思います。  ただ、こういう関係から申し上げますと、環境基本計画に定めたものを政府がどのように実行していったかというそのフォローアップの見方は、ある程度環境白書に記述することになるかと思います。それは、先生が御指摘あるいは御質問になったところであろうかと思います。
  111. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 環境についての憲法ですから、毎年毎年の白書にその成果も記されていくべきではないかというふうに思います。その点よろしくお願いしたいと思います。  この環境基本計画が十四条で明記されることによって、他の環境保全策との関係はどのような位置づけになりますでしょうか。
  112. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境基本計画は、環境政策が非常に広範多岐にわたっているということから、政府全体を通じまして環境政策が有機的連携を保ちながら、すべての主体のもとにそれらが公平な役割分担を担って、長期的な観点から総合的、計画的に推進するためにつくられるものでございましで、政府としての環境政策の全体像を示すとともに、地方公共団体事業者及び国民に期待する取り組みを位置づけるということになるわけでございます。  したがって、国の作成する各種の計画との関係について申し上げますならば、環境基本計画は、環境保全に関し、その基本的な方向を示すものということになるわけでございますし、そのように位置づけられるわけでございます。この環境基本計画が閣議の決定を経まして政府全体の合意の上に策定されることになりますから、国の策定する各種の計画は、環境保全に関してはこの環境基本計画が基本になる、この基本的な方向に沿って環境政策が行われるということになるという関係にあるわけでございます。
  113. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 ただいまのお話にありました、閣議決定を求めるとありますが、その閣議決定の重さというのはどのぐらいなんでしょうか。すべての基本計画の上位にあるものなんでしょうか。
  114. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私、環境基本計画は閣議決定によってなされるということを申し上げたわけでございますが、この基本計画は、より詳しく申し上げますならば、中央環境審議会意見を聞きまして、閣議の決定を経て、政府全体の合意の上で定められるということになります。したがって、この閣議決定は内閣の方針を定めるものでございまして、その効果は非常に重いものでございます。政府における環境保全に関する施策は、この環境基本計画の示す基本的な方向に沿って推進されるということになるわけでございます。  そこで、これが上位となるかどうかということでございますが、環境施策につきましては、この基本計画が基本的な方向を示すもの、そういう意味におきましては上位という表現をおとりになってよろしいかと思います。
  115. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 すると、他の省庁はこの基本計画に整合するような計画でなければならないことになりますね。
  116. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 政府におきましては、関係各省におきましていろいろ事業計画をつくりましたり、またいろいろな計画があるわけでございます。それらの計画におきましては、当然環境保全に関しましてはこの基本計画と整合性のとれた格好で策定されることが予定されることになり、また、それらは閣議決定を経ることという手続を通ずることによって、それが担保されるということになるわけでございます。
  117. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 それを聞いて安心いたしました。  それでは、せっかくつくられた環境基本計画が絵にかいたもちにならないように、そして実体あるものにするためにも、自治体レベルに何らかの形で浸透する必要があると思いますが、その点についての配慮はどのようになされているでしょうか。
  118. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境基本法案におきましては、地方公共団体施策につきましても、その総合的かつ計画的な推進を図りつつ実施すべきことを規定しているわけでございます。したがって、地域の環境保全に関しましても、地方公共団体におきまして環境保全に関する計画を作成することもその一つの手段になろうかと考えております。  環境基本計画におきましては、地方公共団体に期待する役割についても記述することを予定しているところでございまして、地方公共団体においで環境保全に関する計画が策定される場合におきましては、国の環境基本計画と地方公共団体環境保全に関する計画とが相まって、環境保全に関する施策が総合的かつ計画的に推進されることに資するものというぐあいに考えております。
  119. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 そうしますと、この三十五条ですが、自治体の環境管理計画や施策についで、地域の実情、特性に応じた独自性を認める趣旨が含まれていると解釈してよろしいでしょうか。
  120. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 三十五条におきまして地方公共団体施策が書かれているわけでございますが、地方が環境保全計画をつくったり、また環境管理計画をつくること自体は、これは地方の固有事務として行うことになります。それぞれの地域の社会的、経済的条件に応じ、また、国の施策に準じてそれらは行われることになるわけでございます。  そういう意味で、独自性が尊重されることは当然でございますが、なお広い意味の法令関係で申すならば、憲法秩序、地方自治法における秩序の中でそれらは生かされてくるということでございます。
  121. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 それでは、地方公共団体施策環境保全上進んでいた場合、条例化された規制措置が国よりも厳しかった場合、それにブレーキをかけたり、結果として骨抜きになってしまうことはないですね。
  122. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私今、我が国の憲法秩序、地方自治法の秩序の中で、それらは尊重されるべきことであるというぐあいにお答えしたところでございます。  先生が今御指摘になっているのは、環境面において、俗に上乗せ条例とか横出し条例とか言われている現象がある、それらについてこの基本法ではどういう態度をとっているのか、こういう御質問であろうかと存じます。  国が基本的な施策の枠組みを策定、実施する場合において、それのみによって地域の環境保全を図る上で十分でないときや、住民の健康の保護や生活環境自然環境保全を全うする上で、そういったものが従来重大な役割を果たしできたということは、私は一般的に認められているところではなかろうかと思うわけでございます。  環境基本法の七条、それから三十五条におきまして、地方公共団体の責務、または施策といたしまして、国の施策に準じた施策、またはその他の地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策実施することを規定しておりますが、いわゆる上乗せ、横出し条例の制定につきましては、国の施策に準じた施策として概念的には整理されることになり、各地方公共団体において、今後とも必要に応じて実施されていくことになるかというぐあいに考えるわけでございます。  この場合に、それではいかなる上乗せ条例、横出し条例を制定することが可能かということにつきましては、この基本法で新たに定めるということではなく、先ほども申し上げましたように、憲法、地方自治法において一つの秩序ができ上がっておりまして、法令に違反しない限りにおいて制定ができるというぐあいに整理されております。しかも、これは最高裁判所の判例におきましても、国の法令と条例趣旨、目的、内容及び効果等総合的に勘案しながら、個別に判断するということが、既に決まった解釈として行われているところでございます。  こういう趣旨に沿って適切に運用されることによりまして、環境保全が図られるよう私どもは期待し、また、これからもそのように進めていくべきだというぐあいに考えるわけでございます。
  123. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 わかりました。  それでは、この法案の中で最も問題になっております環境アセスメント、十九条について順次伺ってまいります。  この中で、アセスメント事業者がみずから行うこととなっていますが、なぜ事業者が行うのか、被害者、地域社会、自然がこうむる環境破壊についてはどのように保障されていくのでしょうか。
  124. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私、午前中の御質問の中でもお答えしたわけでございますが、第十九条で事業者アセスメント実施することとしていることは、これは世界的に見ましでも、この例外をとっている国はございません。いずれの国におきましても事業者実施するということになっているところでございます。  それでは、なぜ事業者アセスメントをやることが適当であるかということに関しましては、環境を汚染、破壊させるおそれのある大規模事業を行おうとする者は、その人が、事業実施に伴う環境への影響についてみずからの責任と負担で配慮するというのは、言ってみれば環境を使うわけですからそれは当然のことであるということが一つ。それからもう一つは、調査予測評価一体として事業者に行わせました方が、その結果を踏まえて事業者事業計画や公害防止等の手直しもできるという点に利点があるからでございます。  なお、これにつけ加えまして、午前中にも御答弁申し上げたのですが、事業者アセスメントをやることによってそのアセスに関する信頼性が失われることのないよう、技術的な向上、また信頼度を高めるためのいろいろな手だてというものは同時に考えていかなければならぬというぐあいには考えております。
  125. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 確かに今おっしゃったように、結果を踏まえて事業者自身が手直しができる、そういうような利点があればよろしいわけですけれども、そして信頼性が失われないようにということならばいいわけですけれども、これまでがそうでなかったということも考えますと、やはり事業者が行う場合に何らかのチェック機能が働かない限り、その客観性、公平性が保てないと思いますが、その点についてはどうお考えでしょうか。
  126. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 現在やっております環境影響評価では、事業者準備書等を作成することとしておるわけでございますが、具体の調査予測評価は、既に得られております最新の科学的知見をもとにいたしまして対象事業ごとに技術的方法を定めた指針に従って行われておることでございまして、客観性は保たれているというぐあいに見ているわけでございます。  また、作成された準備書というものは、住民意見や関係都道府県知事意見、さらには免許省庁審査等手続を踏むことによりまして客観的な評価ができる仕組みにはなっているわけでございます。  さらに加えまして、多くの地方公共団体においては、準備書に対しまして知事意見を述べる場合に、その意見をつくるに当たりまして審査会等意見を聞くことができるという例が多うございます。平成四年度におきまして、そういう形で知事意見を形成するに当たり、審査会等意見を聞いた件数が、百十二件中百五件あったわけでございます。  さらに、環境庁における審査におきましても、専門のスタッフによりまして厳正かつ慎重に行っているところでございましで、必要な場合には文献調査や聞き取りを行うなど、学識経験者知見をも活用しているところでございます。  私どもとしては、こういうことによりましてアセス信頼性を高めるというようなことにつきましては、今後とも努力してまいりたいというぐあいに考えます。
  127. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 それでは、この条文での最も問題点であります法制化が明記されなかった点についてお伺いします。  二十日の宮澤総理の本会議での答弁の中に、「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて見直しを行っていく」とありました。この経済社会情勢の変化とは具体的にどのようなことを意味するのでしょうか。
  128. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 宮澤総理が本会議で、経済社会情勢の変化等を勘案しながら、必要に応じて現行措置見直していくという趣旨の御答弁をなさったということでございます。  それでは一体どういうふうにして見直しをしていくのか、経済社会情勢の推移とはどういうことかということでございますが、具体的には、現行制度実施状況、また地方公共団体民間における取り組みの状況やその進展ぐあい、環境影響評価に関する技術の動向、それから国土利用の動向、それから諸外国における制度の運用、その効果の状況等々、社会経済情勢の変化に関連する事柄を総合的に見ながら現行措置について検討し、必要に応じてこれを見直していくということに相なろうかと存じます。
  129. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 どうもはっきりしないわけなんですが、私は、今すぐにでも法制化は必要だというふうに考えています。そこで、現実に行われる点について質問いたします。  建設省に伺いたいのですが、現行閣議決定アセスのおよそ八割が建設省の行う事業ということですが、現状の問題点を幾つか指摘いたします。  調査条項が不備であること、評価が十分慎重に行われていないこと、調査地点の選択方法が明らかでなく合理性がない、単一の事業アセスメントでは地域の環境影響がわからない、ゆえに複合、統合アセスの必要性が言われております。また、住民参加の手続の保障が不十分であり公聴会もない、評価意見があいまいであって、結果として免罪符的アセスになっているという批判があります。  まだたくさんの問題点があることを、建設省も各地での住民意見書の中で十分御存じだと思いますが、それらについてどうお考えでしょうか。
  130. 澤井英一

    澤井説明員 御説明申し上げます。  幾つかの点、今御指摘ございましたが、総括的に申しまして、私ども環境調和して社会資本整備を進めていくという上で、環境影響評価は極めて重要な役割を果たすべきものだと考えております。  御承知の閣議決定要綱に基づきまして、私ども、これまで相当数の環境影響評価を既に実施しできておりますが、こうした実施例を積み重ねていく中で、これまでも予測技術とか対策手法にいろいろな工夫を加えてきております。こうした結果、アセスメント事業実施手続の重要な一環として現在機能し、また定着している。  ちなみに、例えばということで申しますと、最近の例では、アセスメント手続だけに、期間的には大体一年程度を要するものが多うございます。また、公聴会の御指摘がございましたが、公聴会に相当するものとして、要綱の中でも説明会というものを仕組んでおりまして、例によっていろいろございますが、中には、延べでございますけれども、一万人以上の方に説明会を開いたり、数千通に及ぶ意見書をいただいたり、そういう例もございます。  今後とも、御指摘のようにアセスメントを実際にたくさんやる立場といたしまして、今申しました対策手法の開発を初めといたしまして、実施方策の改善に引き続き努めてまいりたい、こう考えております。
  131. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 住民の圧力があってやっとという感じもいたしますし、また、これまでも機能しているという表現がありますと、私どもは納得がいかないわけでありますが、少し具体例を挙げます。  圏央道のアセスメントについてですが、かつて高尾地区でも指摘されました逆転層への配慮が全くなされていません。これは横浜の住民ですが、意見書が十万通近くも寄せられて、環境が悪化するということで住民の猛反対に遭っています。  そこで、この逆転層の実験が過去二回行われました。八九年に一回、ことしの二月にもう一回、その経過が、私が持っておりますこのビデオにあって、よろしければいつでもごらんいただきたいというふうに思っておりますけれども、煙をたいて刻々とその煙の流れを追っております。その結果、逆転層が存在する、温度の高い空気は上空へ、低い空気は下方に流れる。しかし、高度四十メートルから五十メートルより上空になりますと、気温が下がり始めますね。したがって、煙が拡散しない。四十メートルから五十メートルの間の中に滞留してしまう。排気ガスも同じことだというふうに思います。まして、起伏のある地形に住宅が存在する地域では、どんどん濃度が濃くなります。横浜は、まさにその地域に横浜環状道路が通るわけなんですが、それがアセス評価の中では全く考慮されていない。平地と同じ条件にしているわけです。  このように、たくさんの住民が参加し、大々的に実験をして証明しても、まだアセスをやり直さない。また、現行技術指針には、浮遊粒子状物質にも評価が入っておりません。かつて、アセスに問題があって、事業の大幅な変更や計画中止になった例がありますでしょうか。これまでは、現行では不備ではないかという考えが私どもにはありますけれどもお答えをお願いいたします。
  132. 澤井英一

    澤井説明員 ただいま、アセスの結果、計画を中止した等の例があるかという御質問でございますが、私どもは、事業実施に当たりましては、閣議決定要綱に基づきますアセスメント手続に入ります前の段階、すなわち事業の構想、計画の段階から、環境面を含めまして十分に調査を行っております。  その過程で、最適なルートの選定あるいは環境への影響の防止のための対策、そういったものをその段階から検討しているわけでございます。いわば事業実施に責任を有する事業者という立場で、極力確度の高い案をまず選ぶ、作成するという努力が前段で極めて大事ではないかと考えております。  こうしたプロセスを経た上で、閣議決定要綱に基づきますアセスメントを行っているというのが現状でございまして、この結果、これまで百六十件近くのアセスメントをやっておりますけれども、この中で大幅に計画を直したり中止が必要になったという事例はございませんが、手続過程で出されます住民意見を反映いたしまして、環境保全上の追加的な対策を講じるなどの対応を行ってきているところでございます。今後とも、アセスメント手続に従って出されました住民の皆様方の御意見を真摯に受けとめまして、環境保全に万全を期してまいりたいというふうに考えております。
  133. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 現在でも住民からの意見書が届いていたり、住民の反対運動が各地で行われているということを建設省は多分御存じだと思いますけれども……。  環境庁にお伺いします。このように建設省は、はっきり言いまして、今までは住民の立場に立っていないというふうに私は思います。開発環境がといいましたら、やはり開発が優先されてきたというふうに思います。  ところで、四月六日の環境事業団法の審議の際、長官はこう述べておいでです。「人間はどうしても我が身を大事にしたいというエゴがありますね。このエゴの生活の姿が時に環境を破壊しても、それはもう気がつかない、あるいは環境を破壊することに対しての責任も感じない、」こういうふうなことが会議録にもきちんと残されているわけなんです。私は建設省がそうだとは断言はいたしませんが、しかし、長官のこのようにみずからに対して真摯な態度は、環境行政のトップに立つ者として非常にすぐれているというふうに思います。  そこで、この現行アセスの問題について、その真摯な態度で見直しを進め、法制化への橋渡しをしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  134. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  エゴということについて誤解があるといけませんので申し上げますが、これは人間の業と言ってもいいのですね、あるいは生きるものの、生物の業であるかもしれません、自分の体を養っていくということは。  ですから、そういう中で、ただ自分だけのことを考えて、周りの環境のことまで配慮できないようでは、これは人間の姿でありませんので、人間である以上、周りのことも、その環境も十分に考慮できるような、やはりそういう精神的な成長というものは必要であるという意味を込めて申し上げたわけでございますが、しかし、そのアセスメントにつきましては、当然これはその地域の住民のためにも十分な施策をしなければいけない。ただ、アセスメント法というところまでは今回の基本法では踏み込んでおりません。  これにはそれなりの理由がございまして、必要があれば、後ほどまた所管の局長の方からも詳細に答弁させます。
  135. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 次に、総理の答弁ですが、「必要に応じて見直しを行っていく」とありますが、これは予算、人員の面、そのほかについて特別な体制として取り組む用意があるということでしょうか。
  136. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境庁におきましては、アセスメントを担当する課を二課持っております。これらが常時、現在アセスメントに従事しておるわけでございます。  現行制度を適正に運用するためにはどういうことが必要なのかというようなことで絶えず仕事をしているわけでございますし、また、これから現在のアセスメントの運用に当たりまして問題点なりなんなりが生じましたならば、それに基づきまして、また関係各省と話し合いながら、いかなる改善策を講じていくべきかということについて常時考えていく体制はとれているわけでございます。
  137. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 ぜひ前向きにやっていただきたいと思いますけれども、大手のゼネコンに私たちの税金をむだに使うということではなくて、国民の必要があるところに税金を向ける姿勢を持っていただきたいという希望がございます。それで、私ども社会党案は住民の切実な要望を受けて法制化を明記しました。したがって、より住民に密着した法律案であることをつけ加えておきたいというふうに思います。  次に、情報の提供、二十六条について伺います。  まず、事業者の権利利益の保護とあります。権利利益の保護されない場合とはどのような場合でしょうか。また、住民の利益と事業者の権利がぶつかる場合、どのようなお考えになるでしょうか。
  138. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 二十六条についての御質問でございます。  二十六条にございます個人及び法人の権利利益が保護されない場合といたしましては、例えば個人情報の流出等によりまして個人のプライバシーが侵害される場合とか、または企業の営業秘密が保護されない場合などが想定されるわけでございます。  次に、住民の権利利益と事業者の権利利益が衝突するような場合という御指摘でございました。  具体的にどのような情報が提供できるかにつきましては、政府におきまして平成三年に申し合わせをしました行政情報公開基準というものがございます。これを踏まえまして、個々のケースごとに判断していく必要があるというぐあいに考えております。
  139. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 続いて、提供に努めるということですけれども環境庁の意思にゆだねることになるのでしょうか。その判断の基準は明らかにされなければならないと考えますが、いかがでしょうか。
  140. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 提供することが必要な情報であるが、そもそもそれを持っていないような場合、また、個人または法人の権利利益の保護に配慮した結果、提供することが適切でないというぐあいに判断される場合、また、その他行政情報公開基準、先ほどのものでございますが、これに照らして、開示することが適切でない場合を除きまして、それぞれの主体が環境に関する理解を深め、環境保全のための望ましい行動をとるために、関連する情報を積極的に提供してまいる必要があるというぐあいに私ども考えているわけでございます。  そういうことで、基本法にこの二十六条を置かせていただいたわけでございまして、私ども環境保全に関する情報をやはり的確に、適切に提供することが、今後の環境保全上、重要であるということでございますので、その趣旨に従って、これは努めてまいりたいというぐあいに考えます。
  141. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 非常にわかりにくい表現なのですけれども、その情報公開には、まずプライバシーの保護、それから営業上の秘密の保護が前提とされております。そのことからしますと、この二十六条は公開としても何ら差し支えがないというように思いますが、なぜ情報の提供となったのか、伺いたいと思います。
  142. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 なぜ公開という表現を使わなかったかという御指摘でございます。  私どもといたしましては、先ほど趣旨で、環境に関する情報というのは環境保全上非常に重要な事柄なので適切に提供してまいりたいというぐあいに考えるわけでございますが、一方、法律に情報の公開という用語を用いるかどうかにつきましては、知る権利というものが片方にございまして、それとの関係などで、その意味、内容が明確になっておらないというようなところから、この環境基本法案においては用いなかったところでございます。  しかし、いずれにいたしましても、環境に関する情報を提供していくことの重要性をこの法案に位置づけたところでございまして、私どもといたしましては積極的に情報の提供に努めてまいりたいと考えております。
  143. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 私は、この基本法の理念を実体化させるためには、住民の守られるべき権利と一体のものとして、情報公開は絶対に必要と考えます。四月六日の長官の答弁でも、開かれた環境行政、先ほどエゴの話をちょっとおっしゃってくださいましたけれども、その次のところに、開かれた環境行政を目指すというふうに約束してくださっているのですね。これについては、長官、ぜひ公開の原則で貫いていただきたいと思います。  次に、公害被害の救済、紛争の処理、三十条について伺います。  ここで、国は公害被害の救済を二項で述べておられますが、まさに足元の公害であります水俣病の被害者救済の解決が急務であると考えます。どんな立派な法案をつくっても実態として機能していないのでは、国に対する国民の信頼もなくなってしまいます。  そこで、この基本法制定に当たりまして、水俣病の全面解決に向けてエネルギーを注いでいただかなければなりません。その点について長官の決断をぜひお願いしたいと思いますし、また、我が国の環境行政が公害への反省と経済優先社会への反省の歴史から進んできたことを考えますと、水俣病の解決なくして基本法の実体はなしということを強く主張して、何が何でも解決する姿勢を持つべきだというふうに私は思います。きょう現在でも苦しんでいる被害者がいるということを忘れないでいただきたいと思いますが、長官いかがでしょうか。
  144. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  先生指摘の三十条の規定でございますが、これは公害に係る紛争の処理及び被害の救済について定められたものでございます。これと同様の規定が、現在ございます公害対策基本法の中に設けられておりまして、その重要性にかんがみまして、このたびの環境基本法案の中にも本条を置くものとしたものでございます。したがいまして、この精神にのっとりまして、従来どおりやはり公健法等に基づきまして、医学を基礎として、迅速かつ公正な救済に最大限努力をしてまいりたいと思います。
  145. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 水俣病に対する解決の決意を述べなさい、こういう岡崎先生の御質問でございます。  これは私は、実は基本法案を提案する前から、この問題はもう基本法案のいかんにかかわらず、水俣病の問題は解決しなければならない、そういう厳しさを自分の心に言い聞かせております。もちろん基本法を成立させていただいた暁においで、なおかつこの問題については基本法の成立と同じ日に解決できるということはできません、これは。しかし、少なくとも基本法にとらわれないで人道的見地からも、ぜひ解決しなければならない、そういう決意はいつも抱いております。
  146. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 長官、きょうは傍聴席にも水俣からお越しの方がおいででございますので、その基本法ということ、それから政治的な解決をしなければならないということも含めて、一言、傍聴席に向かっておっしゃってはいただけないでしょうか。
  147. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 私、せっかく傍聴に来てくださった方々のお顔が、どの方が水俣病の関係がということはわかりませんけれども、少なくとも、これは傍聴席に皆さんがおいでになる、ならないにかかわらず、環境庁といたしましては鋭意この問題を、一日も早く皆さんに御安心願いたいという取り組みをしておることをお見受けいただきたいと思っております。
  148. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 私ども会議員はパスをいただいているわけですから、乗りたいときに汽車に乗って九州でもどこでも大体出かけてまいりますが、九州熊本、水俣からここにお出かけになるというのは、経済的にもなかなか大変なことだと思います。何回も何回も繰り返しこの国会においでいただいているということだというふうに思っておりますので、そのことを、ぜひとも早い政治上の解決をお願いしたいと心からお願いします。  きょうは、全条について本当はお伺いしたいという気持ちがございました。しかし、これだけで十分聞けないところ、問題点がたくさん残っております。そして、私どもは本当に基本的に人々の命が、そして地球環境が救われる、この基本法が本当にすべての人たちにとってのすばらしい基本法でなければいけない、環境の基本的な憲法であるということを踏まえまして、今回だけではなくて、長い間市民が待ち望んで、そして新しい環境保全型社会の構築への第一歩となるために、十分な議論を尽くさなければならないというふうに思っております。  本当にまだまだ納得できない点、お聞きしたい点、たくさんございます。  それで、本当はきょうは農水の方にも農薬の空散の問題について、そしてまた、その環境基本計画のところについては環境庁についても十分にお話を伺いたい。私ども社会党は、農薬依存型の農林業から脱却すべきであるということをきっちり明記した、そのような条文もございますけれども、そういうようなことについては次回にいたします。次回は、総理にぜひ質問をしたいというふうに思っておりますので、環境庁の皆様方にもお取り計らいをお願いしたいと思います。そういったことは次回に譲ることといたします。  農水省の方、大変申しわけございませんでした。環境庁の方も丁寧にお答えくださいましたので、そろそろ時間になってしまいましたので、今回はこれで、ありがとうございました。
  149. 原田昇左右

    原田委員長 次に、田中昭一君。
  150. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 今も、最後に水俣病の問題についてのやりとりがあったわけですが、長官もきょうは環境庁からこちらに来たと思いますけれども、きのうもきょうも、春とはいえまだ肌寒い風の吹く中で、環境庁の前に水俣病の患者の皆さん、お年寄りばかりです、座り込みをして、何としても生きているうちに救済をということを訴えているわけです。  私は、三十数年もたってまだ水俣病の問題が解決をしない、こういう問題を解決せずして環境基本法などという極めて壮大な法律議論をする資格が自分にあるのかないのか、そういうじくじたる気持ちを実は持っています。今度制定される環境基本法は、こういう悲劇が二度と起こらない、そういう実効ある法律にしなければ、きれいな文章で絵にかいたようなものであっては絶対にいけない、こういう気持ちを私は率直に持っているわけでございまして、そういう立場から、きょうは第一回の議論ですから、提案者である環境庁長官のお考え方などについて、幾つかについて少しお聞きをしたい、こういうふうに思っております。     〔委員長退席、高橋委員長代理着席〕  私は、環境基本法を制定するに当たって、その前提といいますか基本的な柱として、最低三つのことが必要ではないか、こう思っております。  その第一は、基本法でありまして、一般的な、単純な政策法でないわけですから、これはやはり憲法上の視点を明確にすることが必要だということが第一点であります。  それから第二は、国際的な視野に立った法律でなければいけないと思います。昨年、地球環境が確実に変化してきている、悪化してきている、そういう実態からの脱却策として国際的な合意が必要だ、そういう意味で地球サミットが開催をされまして、我が国もこれに参加をしているわけでありまして、この中で国際的に合意した内容については最大限尊重しなければいけない、二つ目、こういう視点が必要であろう、こう思っております。  それから三つ目は、もう御存じのとおり、我が国において高度成長政策の中で、今も申し上げましたけれども、水俣病を初めとする公害が激発をして以来、今日に至るまでの我が国の公害環境行政の歴史の総括、その反省、それが議論のスタートでなければいけないだろう、こういうふうに思います。そして、先ほど申し上げましたように、でき上がった環境基本法というのは、絵にかいたものでなくて、実効あるものでなければいけない、こういうことを明確にしなければいけない、こういうふうに考えております。  そこで、若干御意見を申し上げたいわけでありますけれども、憲法上の視点について、私の意見を申し上げたいと思います。そして、長官の御意見もいただきたいと思います。  憲法には、確かに環境権などについて直接的には文字として触れていません。しかし、憲法の精神というのは、国民が健康で豊かな環境の中で生活するということ、良好なる環境、自然の恵沢を享受するということ、このことは当然実現されるべき目標として、国民全体に課せられた課題であるということが明確になっておると私は思います。そして、政府、国、地方自治体は、この実現のために努力する任務と責任がある、国民がこれを要求するのは国民の基本的人権として国民の権利であるということ、このことも憲法の精神として明確であろう、私はこう思っております。  憲法十三条では、すべての国民は、生命、自由及び幸福追求に対する権利が保障されています。そして、この権利は、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限尊重する、これも非常に重要なことだと思います。明確になっております。また、二十五条では、すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利があるということも明確に定められておるわけです。  公害の防止、公害、環境破壊の根絶を怠ったがために、そういう対応がきちんとできなかったために、その被害者は、まさに今申し上げましたこれらの憲法上保障されている権利が生涯を通じて踏みにじられていくことになるわけです。水俣病の皆さんの実態をごらんになればおわかりのとおりであります。  このことを考えるとき、私は、今回の環境基本法の中には、憲法の精神に忠実な正しい原則、権利、そして法案というのは抽象論で終わるのでなく具体化できる、そのための制度施策がきちんと定められなければ、抽象的であってはいけない、私は、こういうことを、まず第一に憲法上の視点として明確にすることが必要ではないか、このことについて意見の不一致があるのかないのか、このことをまず第一に、視点としてお聞きをしたいと思います。  それから、二つ目に申し上げました国際的な視野に立つべきであるという視点でございますが、先ほども申し上げましたように、地球環境保全についての国際的合意を図るため、昨年地球サミットが開催をされまして、百八十の参加国の一員として、我が日本政府も参加をしたと思います。  この中で、具体的な国際協定としては、地球環境憲章的文書として「環境開発に関するリオ宣言」、行動計画としてアジェンダ21などが締結をされたと思います。  この中で、アメリカや日本などの経済大国と多国籍企業の活動が引き起こしている地球環境破壊の行為に対して、活動を規制し、新たな経済社会活動の概念として、持続可能な開発という考え方を確立させた。反対に言いますと、持続不可能な経済開発はやらない、こういう考え方が確立したと私は思っております。そして、人類は自然と調和しつつ健康で生産的な生活を送る権利があるということを確認し合ったと思います。この考え方は国内にとどまらず、国際的、地球規模での積極的な取り組みが必要であることを、確実に今回の基本法の中に生かし切ることが必要だ、私はこういうふうに思っております。とりわけ、先進国日本として環境保全や公害防止については国際的視野での対応が極めて必要だということも、この基本法の中で明確にすることが必要ではないか、このことを二つ目に基本的な考え方として申し上げまして、この点についても御意見をいただきたい、こう思います。  それから、基本的な三つ目の視点ですけれども、私はここを大変重視をしたいと思っています。先ほども申し上げましたけれども、我が国における今日までの公害環境行政の歴史と総括とその反省が、今回の環境基本法論議のスタートでなければいけない、こう実は思うわけです。  公害の原点と言われ、世界最大の公害と言われる水俣病は、御承知のとおり、チッソの企業活動が生み出した歴史上類例のない大規模な環境汚染による悲惨な公害であります。御承知のとおりであります。しかも、先進国を自称して地球環境問題のリード役たらんとしている我が国において、三十八年間も未解決で、今日まだ紛争状態が続いておって、国際的にも注目されている公害事件である、このことはもうおわかりのとおりであります。そして、この水俣病は、その発生、拡大の構造、企業や行政の対応、被害者の置かれている状況などから見て公害事件の典型だ、私はこう思うわけです。  したがって、水俣病がなぜ発生し、拡大し続けたのか、行政はなぜこれをきちんと規制しなかったのか、なぜ大量の被害者が三十八年間救済されずに放置されて、そして悲劇を繰り返しているのか、世界各地でなぜ同じような有機水銀中毒事件が続出するのか、これらの疑問点を明確にしながら、その反省と教訓を基本法の中にきちんと生かし切ることが極めて必要だ、こう私は思います。  環境基本法とは、水俣病のような公害を未然に防止をして、完全に環境保全を図るための実効ある法律でなければ意味がない、こういうことを私は申し上げたいわけであります。  御承知のように、今和解に積極的に参加をして何とかこれを解決しようとしている熊本県の場合、御承知のように熊本県環境基本条例というのがございます。この前文の中にこういうことが言われております。「私たちは、水俣病という世界にも例のない悲惨な体験を持ち、環境破壊の恐ろしさと、その復元の困難さを深く認識するものとして、この様な深刻な事態を防止し、ひたむきに快適な環境を創造する責務があると信ずる。」  こう熊本県の環境基本条例の前文には書かれておるわけでありますけれども、国にはこのような考え方があるのかないのか、そのことを明確に自覚をしておられるのか、このことをはっきりしなければ、環境基本法制定の意味がないと私は思っているわけです。今基本的な考え方、このことがはっきりすれば、私は、個々の各論についてはお互いに議論をしていけばまとまる内容であろう、こう思っております。  以上申し上げました三つの基本的な考え方についてどういうふうにお考えになっておられるのか、このことについて認識が合うのかどうなのか、この点について、まず長官の方から明確にお答えをいただきたい、私はこう思います。
  151. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 田中先生の御質問、大きく三点でございますが、お答え申し上げたいと思います。  まず第一点は、良好な環境の恵沢を享受することは基本的人権であるという御指摘に間違いないかどうか、こういうことでございますが、率直に申し上げまして、環境基本法におきましてはその第三条の基本理念に、「環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものである」という、憲法二十五条に照応する考え方を入れております。そして「現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受する」ことができるようにしなければならないということを明定したところでございます。これによりまして、国民が良好な環境を維持することの必要性、その重要性は、環境基本法に的確に位置づけられたものと考えております。  第二に、環境問題の国際的視点についての対応が必要ではないかという御指摘でございます。この点につきましては、地球環境保全は人類共通の課題であり、我が国といたしましては、これまで培ってきた我が国の経験、技術などを生かしまして、国際社会における地位に応じて、世界各国と、それぞれの国々と手を携えながら積極的に取り組む必要があるという視点を基本理念として盛り込んだところでございます。  また、国は地球環境保全のための国際協力の推進に努めるなど、国際協力に関する我が国の基本的な取り組みの方向をも、特に一節を設けて明らかにしたところでございます。  現在、OECDの環境政策レビューが行われておりますけれども、OECDの調査団からも、環境基本法の制定の動きにつきましては大きく評価されておるところでございます。  第三に、水俣病の問題を軸にした御質問でございますが、水俣病問題を初めとする公害、それから環境行政の歴史と総括、その反省というものを基本に据える、そのような視点が重要であるとの御指摘については、今度の基本法におきましても、かつて生じたような激甚な公害問題を再び引き起こしてはならないという強い決意が法案の作成の中に盛り込まれております。環境基本法案の第四条におきましても、「環境保全は、」「科学的知見充実の下に環境保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行われなければならない。」ということを明記してあるところでございます。
  152. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 簡単な御答弁なんですが、私が申し上げました三点については、基本的な考え方については長官とは大きな意思の不統一はないと確認しでようございますね。  では、そのことを前提にいたしまして、具体的な問題について少し御質問を申し上げていきたいと思います。  その第一は、環境保全経済発展といいますか、開発の問題について少しお聞きしたいと思います。  環境保全に関して、環境基本計画はすべての開発、産業計画に優先することが明確でなければいけない、私はこう思っております。開発とか産業計画というのはたくさんございます。経済計画であるとか総合開発計画であるとか公共投資基本計画などなどですが、これらは環境基本計画ないしは基本計画に基づく実施計画に基づいて、それが優先をするということをこの基本法の中では明確にしておくことが私は必要だと思います。その点やや不明確ではないかなという受けとめ方をしているのですが、そこをお聞きしたいわけです。  これも私は具体的に申し上げたいのですが、水俣病は、熊本においてはチッソ、新潟においては昭和電工が加害企業でありまして、その責任は極めて重大だ、私はこう思っています。しかし、水俣病という大公害を引き起こした背景には、企業活動だけじゃなくて政府の経済計画であるとか産業政策が深く関与している、私はこういうふうに思っておるわけです。したがって、今裁判では、企業のほかに国の賠償責任が争われているのもそこにあると思っております。  国は、戦前は国策として、戦後は経済復興であるとか産業の発展であるとか産業政策の名目で、チッソや昭和電工などの化学企業の保護育成を行ったと思っております。しかし、この国の産業政策というのは、化学企業が本来持っている環境や人間に対する危険な側面をどう排除するのかなと、安全性については全く施策考えられてなかった、私はこう思います。水俣病が発生をしてその原因がわかっても、何らの規制もしなかったわけです。これはもう御存じのとおりであります。逆に公害企業を擁護する、秘密を公にしない、そういうことさえ国は行ったという歴史がございます。その結果、チッソや昭和電工は、原因が究明された後もアセトアルデヒドの生産を増大して、被害者を拡大させるばかりか、新潟で再び第二の水俣病が発生をした、こういう経過がございます。  この経過と反省の上に立って、先ほど申し上げましたように、環境基本計画以外の国の計画については、環境保全に関しては環境基本計画を基本とすること、さらに、政府は環境基本計画に基づいて実施計画を作成する、この考え方を社会党の案として提起いたしておりまして、このことをやはり明確にしなければ、私は先ほど言ったように絵にかいたものに終わるのじゃないかな、こういうふうに思います。  また、基本計画などをつくる場合の中心的な目標になる環境基準の問題、これは第十五条で明確にされておるようですけれども、単にこれも行政の努力目標でなくてもっと責任を伴うものでなければならない、このことをやはり法案として明確にすることが必要ではないかな、こう思っておりますので、これも具体的には今後議論したいと思いますが、この点についての基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  153. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、環境経済の関係につきまして、私どもは過去の痛い経験を踏まえまして、その反省に立って、今世界的に議論されております、環境経済は別々であってはならぬ、また対立するものであってはならぬ、持続可能な開発を達成しでいかなければならぬという考え方に基づいて、この基本法における基本理念が構成されたところでございます。  先進国におきまして、これまでの生産と消費のパターンを見直し、持続可能で環境に対する負荷の少ない経済社会を目指すことが必要だ、我が国としては、資源やエネルギー等の面においてより一層の効率化を進め、物の再使用、再生利用をさらに組み込みながら、浪費的な使い捨ての生活慣習を見直し、その内容の変化を伴う健全な経済の発展を図り、環境負荷の少ない経済社会を構築していくことが重要だというぐあいに、中公審等の答申についても述べられたところでございます。  このような答申の基本的な考え方に基づき、それを踏まえまして、環境経済を対立したものとはとらえず、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら、持続的に発展することができる社会というものを構築することを旨としているところでございます。  そこで、そういう理念のもとにつくられます環境基本計画と他の国の計画との関係についてでございますが、環境基本計画は、環境保全に関する政府全体の基本的な計画でございます。政府部内において調整をし、閣議決定を経て策定されることになるものですから、国の策定する各種の計画におきましては、環境保全に関してはこの環境基本計画の基本的な方向に沿った内容となるものが担保されているというぐあいに私ども考えております。  さらに申し上げますならば、環境基本法第十八条におきましては、「国は、環境影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境保全について配慮しなければならない。」ということをはっきりと規定しているところでございます。  このような内容を持つ環境基本法案に示される基本的な方向に沿って、国が環境保全に関する諸施策を講ずるとともに、すべてのものが公平な役割分担のもとに自主的、積極的な取り組みを行うことになるわけでございますので、環境への負荷の少ない、持続的発展の可能な社会の構築というものは、この環境基本法を制定されることによって一層の弾みが生まれ、私どもはそれに従って施策を進めていくことができるというぐあいに考えられるわけでございます。  さらにもう一つ先生十五条の点をお触れになりましたが、環境基準は、人の健康を保護し、生活環境保全する上で維持されることが望ましい基準として規定されております。公害の防止に関する施策を総合的かつ有効適切に講じていく上での行政上の目標として設定されております。  政府といたしましては、公害防止に関する施策を総合的かつ有効適切に講じていくための目標といたしましては、やはり最大許容限度や受忍限度といった消極的な目標ではなく、将来に向かっての行政上の政策目標として維持されることが望ましい基準を設定いたしまして、その達成に向けて努力することが公害対策基本法において設けられた精神でございまして、この精神は、基本法においてもはっきり、またしっかりと引き継いでおくことが適当であるというぐあいに考えているわけでございます。  この環境基準は、過去の著しい公害を克服し、それを是正する上において有効に機能してきましたし、また、今後の公害対策の推進においてもぜひともこれを有効に活用していかなければならぬというぐあいに考えております。
  154. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 長々とお答えをいただいたのですが、私が申し上げたことと基本的にはそんなに大きなずれはないというふうに確認していいですね。  それはそれでいいのです。今後議論をしていきますけれども、例えば、「維持されることが望ましい」とか「配慮しなければならない」とか、そういう言葉の意味合いは、今後具体的な問題が出てきた場合にはぼけてくる、私はこう思います。ですから、提案をされている環境庁の方はそのことについてきちんとした考え方をお持ちかもしれませんけれども、これはひとり歩きしていくわけですから、そういう意味では、基本的な考え方についてはそんなに相違がないということを今確認させていただきましたから、具体的な文言の上での問題につきましては、今後改めて議論をさせでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。  そこで、時間もございませんので次に進みたいと思うのですが、いわゆる環境影響評価環境アセスメントについてお考え方を少しお聞きしたい、こう思っております。  私は、すべての環境に関する計画については事業者に実効ある環境アセスメント実施を義務づけなければいけない、そしてその結果を住民に知らせる、住民意見を尊重するという手続を定めることが極めて必要だ、こう思っております。第十九条の「環境影響評価推進」の項で、これも「必要な措置を講ずる」ということになっているわけです。私は、必要な措置を講ずるということが、私が今申し上げましたことであるとすれば何も言う必要がないのですけれども、この考え方をもう少し具体的にお聞きをしたいと思います。  昭和五十六年に国会に提案されながら廃案になった環境アセスメント法について、政府は改めて今回の環境基本法とあわせて別途提案をされるような考え方に立っておられるのかどうなのかを含めまして、少し御回答をいただきたいというふうに思います。  環境開発の接点には多くの法律が存在をいたします。その中で、法の目的、条文に環境保全を図るという記述があって、その意見を聞くなど環境庁長官の関与が明記されているのは非常に少ないわけです。私も勉強不足ですけれども、例えば工場立地法とか農薬取締法だとか、そんなものにはそのことがきちんと整理されていると思っておりますけれども、例えば道路法であるとか都市開発法であるとか河川法とか、そういう法律からはいずれもそのことが抜けていると私は思います。そして今申し上げました、これは例でございますけれども、この三つの法律による開発事業は、各地で住民から環境破壊の非難を受けているのが実態であると私は思っております。さらに国土利用計画法などの法律は、長官が関与することさえ認めていないと思います。  こういうことを考えますと、これでは、環境庁設置法において環境庁長官は他省庁大臣に対し環境保全に関する事項について勧告することができるとなっておるわけで、したがって、これはもうこういう環境保全の意味では環境庁長官が一番権限を持つというふうに解釈していいと私は思います。そのために環境庁が設置をされたと思っているのですが、法律上の根拠に欠けているわけで、そういう意味では長官勧告の実効は期待できないのではないかな、こういう疑義を持つわけです。  したがって、この基本法環境の憲法であるとするならば、この環境アセスメントの問題については環境庁はもっと毅然とした態度を法案の中で明確にすべきではないかなというふうに考えますので、この点についての環境庁のお考えをお聞きをしたいと思います。
  155. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 これからの社会を運営していく上に当たりまして、環境保全を進めていく視点から、それを未然に防止するためには、環境アセスメントというものは非常に重要であるということは先生指摘のとおりでございます。  この点に関しましては、中央公害対策審議会自然環境保全審議会、この二つの審議会から環境基本法制のあり方について私ども審議していただき、その御答申をいただいたところでございます。  その答申に基づきまして、この答申では、環境基本法制に「環境影響評価の重要性・考え方を盛り込むことが重要である。」というぐあいに御指摘になったということが一つございます。それと同時に、個別具体の制度のあり方についてはどのような個別の措置が適当であるか、「この点に関しては、経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて現行措置見直していくことが適当」であるという御答申だったわけでございます。  そこで、環境基本法案をつくるに当たりましては、環境影響評価の重要性、考え方を法制的にきちっと位置づけるということが必要であるということから、国は、環境影響評価推進するため必要な措置を講ずると明確に規定したところでございます。  それと同時に、環境影響評価の具体的な実施に関しましてどのような措置が必要であるかということにつきましては、この中公審の答申におきましては、直ちに法制化を必要とするという答申ではなしに、「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて現行措置見直していくことが適当」というふうになされたところでございましで、日本における有識者の見解は今こういうところであるということを踏まえまして、私どもは、現行措置をまず適正に推進していく、それと同時に、現行措置を適正な推進を図っていく上においていろいろな問題点を見ながら、必要に応じて見直しをし、必要な措置というものがどういうものであるか、改善をすると同時に、必要ならば法制化も含めて検討していくというスタンスになっているものでございます。
  156. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 言われていることはいいのですが、法制化の問題についで、有識者の考え方が答申の中にまとめられておる、こういう意味の御答弁であったと思うのです。これは、有識者の知恵が集まって、これが今一番べターだ、こういうことでなくて、先ほどもちょっと質問しましたけれども経済とか開発環境との関係の中で、これは環境という面が一歩後退をしているというふうに最終的にまとめられた、私はそういうふうに思っているわけです。ですから、ここはやはり経済開発であるとかそういうものよりも環境が優先するという立場に立つ環境庁としては、このアセスの問題については法制化の問題に踏み込んでいくべきであると私は思います。そうしなければ、私は先ほどから何回も言うように、実効ある法律として今後生きていくのかどうなのかということについては疑問があるわけで、そこらの点はきょうの時点では食い違いがあるということで、今後議論をさせていただきたい、こういうふうに思います。
  157. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生の御意見、私ただいま伺ったわけでございますが、この環境経済を統合し持続的な発展を図っていくという観点から、環境アセスメントを行いまして、事前に環境に対する影響、配慮をしっかりと位置づけておくということは、我が国の基本法制の中にきちっと位置づけられたわけでございます。したがって、私どもといたしましては、後退したという考え方はとっておりません。きちっと法制的に位置づけしたことによりまして、それではこれから具体的にどういう措置制度として充実させていくかという次のステップとして、私どもはこの基本法のフレームワークの中で考えてまいりたいというぐあいに考えております。
  158. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 わかりました。それでは、そんなに大きな食い違いはありませんから、今後法制化とかいう問題については、いつの時点でどういうテンポでそういうことをやっていかれようとするかということなどについては、今後議論をさせていただきたいと思います。  次に申し上げたいのは、情報公開の問題です。これは二十六条との関連だと思います。  基本法の第二十六条で情報の提供が提起されておりますが、その内容を見ますと、極めて限定的であって、努力義務に終わっていると思います。これでは私は極めで不十分だと思います。情報公開制度は知る権利に基づくものであって、民主主義社会においては当然のことであると私は考えております。なぜ二十六条では限定をして単なる努力目標にするのか、限定するのでなくて、国としての情報公開義務を明確にするとともに、事業者に対して情報を公開するよう、国としてはきちんと指導すべきではないかなというふうに思います。  これも実は例を挙げて申し上げたいわけですけれども、水俣病の問題についても、情報公開というものがきちんとされて、必要な要求される資料が提出されておったならば、水俣病の拡大というのは私は防止された。その際も、情報の公開について、国はこれをなるべく隠そう隠そうという態度に出てきたために、今日のような水俣病の悲劇ができ上がった、こういうふうに思っております。公害とか環境に関する情報の公開というものは、公害被害を発生、拡大させないだけでなく、公害や環境そのものを食いとめることになるということは水俣病の歴史が如実に物語っている、私はこう思っております。  そういう意味では、情報公開の問題についても、これは単に限定的に努力義務とするのでなくで、もう少し積極的に環境、公害の問題などについては情報を公開する、そして多くの人たちの意見を聞く、こういう基本的な考え方をこの基本法の中では明確にすべきではないかな、このことを申し上げたいと思います。この点についての御見解をいただきたいと思います。
  159. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境状況及び政府が環境保全に関して講じている施策を一般的な情報といたしまして提供することにつきましては、環境白書等を通じて提供しているところでございます。  また、環境影響評価につきましても、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業実施に関しまして、その環境影響についての調査予測評価についての結果を公表し、地域住民意見を聞いているところでございますが、法案の第二十六条は、民間の主体がみずから学習を進め、みずからの発議に基づき環境保全に関する活動を進めるために必要な情報が適切に提供されるようになることが不可欠である、こういう認識に立って、特に環境保全に関する教育、学習の振興及び民間団体等の自発的な活動の促進に資するということから、情報の提供を規定したものでございます。  先生がおっしゃいました情報一般を公開するという表現を用いておらなかったことにつきましては、法令用語といたしましてまだ定着しておらず、また、意味の内容も明確でないということから、情報の公開という表現は用いておらないところでございます。仮に、情報の公開という表現によりまして、環境情報の公表を行政機関に原則的に義務づけたり、また、国民環境情報について開示を請求する権利を付与するというところまで意味するということでございますならば、そのようなことにつきましては、まだいろいろ検討すべき困難な問題があって、慎重に処理すべき問題があるからでございます。  しかし、先ほど申し上げましたように、環境保全に関する情報を積極的、適切に提供していくことはやはり環境保全上重要であるということから、国が環境保全に関する必要な情報を適切に提供するように努める旨の趣旨の規定を置いたところでございます。
  160. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 最後の情報公開の問題は、この提案された基本法の中にははっきりしてないから、二十六条を例にとって問題提起をしたわけです。今局長言われた最後の方のくだりはどこにどう書いてあるのですか。
  161. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 お答え申し上げます。  この基本法案では、情報の公開という表現を使いますことについては、これは意味内容が明確でないことから、情報公開という表現は用いないということとしておりますが、第二十六条におきまして、国は、「環境保全に関する教育及び学習の振興並びに前条の民間団体等が自発的に行う環境保全に関する活動の促進に資するため、個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ環境状況その他の環境保全に関する必要な情報を適切に提供するように努めるものとする。」というぐあいに規定をしたところでございます。
  162. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 時間がありませんから申し上げませんけれども、やはりこの二十六条で、この問題については整理をしたいということであれば、私は極めて不十分だと思います。ですから、そこは完全に意見が対立をいたしますから、これは改めて、社会党案を含めまして、今後議論させていただきたい、こう思います。  次に、これは三十五条などに関係があると思いますけれども住民参加の問題について問題提起をさせていただきたいと思います。  環境破壊とかあるいは環境汚染による直接かつ最大の被害者は、私は住民である、こう思います。環境汚染の進行や異常をいち早く感知するのも、私はその周辺の住民である、こう思います。水俣においても、早くからチッソが汚染の元凶であるということは、住民としては自明の事実であったわけです。もうこれも御承知と思いますけれども、水俣周辺の漁師の皆さんは、大正時代からチッソに、チッソが流す排水によっていろいろ問題があるという立場から漁業補償を要求をしていたという事実があります。早くから住民はそのことを感知していたわけです。  水俣病が発生した段階では、排水の中止やあるいは浄化設備などの被害防止策を住民は早くから要求をしているわけです。当時、住民の要求に基づいて防止対策がとられておったならば、水俣病の拡大は防止できたということは、これは裁判の中でも明らかになっているわけです。しかし、住民の要求に耳をかさずに、企業の利益が優先をされて、国、県の行政も事実を知りながら経済成長の代償として水俣病の発生に目をつぶって患者の拡大を招いたことは、これは歴史工事実であると私は思っております。  水俣病の悲劇を繰り返さないためにも、環境保全、公害防止に関する施策というのは、住民の意思を反映させるための住民参加が保証されなければならないと思います。そしてそのことを察知する、そういう立場にある地方公共団体施策の尊重、こういうことを極めて重視しなければならない、こう思っています。そういう意味では、環境とか公害の問題についてこれを実効あらしめるという立場に立つならば、私は、これらの問題については住民が積極的に参加をする、住民意見をよく聞く、住民意見をまず尊重する、その上で対応しなければいけない。このことが環境基本法の中で明確にされなければ、何回も言うようですけれども、絵にかいた法律に終わってしまう、こういうように私は思います。  この点についても不明確でありますから、見解をお聞きをしたいと思います。
  163. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 国、地方公共団体施策の策定に際しまして住民参加ということに関する御質問でございますが、一般的な方法としましては、憲法上請願権が規定されているとか、個別の施策につきましては、それぞれの法律において必要に応じ関係者の意見を聞くことや審議会意見を聞くという措置が既に講じられているところでございます。  環境保全に関する施策につきましても、国民住民の意向をくみ取っていくことは非常に重要なことであるというふうに考えますが、それらは個別の施策の内容等に応じて検討されていくことが必要であろうかと思います。例えば、現在やっておりますアセス手続におきましても、住民の意向を聞くというようなことをやっておりますし、そういったことは個別の施策に応じて検討していく必要がある、こういうぐあいに私ども考えます。  また、地方公共団体施策についての尊重でございますが、これも憲法、地方自治法の体系によりまして、既に私どもの国法体系の中において、地方自治の尊重ということからその体系ができているところでございます。この地方自治の本旨に基づいてそれらは運用されるべきであるということは、この基本法においても当然のことでございます。
  164. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 これはもうまさに官僚的な御答弁で、そういう発想では環境基本法をつくっても、私は本当にそれがその公害や環境で悩む住民の人たちのための法律として生かされていくのかということについてはかなり大きく疑問を持ちます。やはり住民国民を大事にする。環境を守るためには、そういう住民との対話を十分に生かして、それを施策の中に生かしていくというもう少し基本的な考え方に立たなければ、今いろいろと述べられたような、審議会がどうのこうのという話では、私は具体的な公害とか環境問題に対応することはやはりできない、こう思います。この点についても、今後議論させていただきたい、こう思います。  次に、規制権限の問題について、時間がございませんから簡単に申し上げたいと思います。  第二十条ですか、環境保全上の支障を防止するための規制の項目がございます。私は、この規制の権限を明確にする、これは極めて重要だと思います。これが今後の公害の防止、環境保全の立場から極めで重要だ、こう思っております。  水俣病問題の紛争の一つの柱である国、県の責任の問題についても、ここに原因があるわけです。先般出されました三月二十五日の熊本地裁の、国、県に責任があるという判決もここに問題を指摘しておるわけでありまして、この点について、もう少し私は国としての考え方をきちんとしなければいけないだろう、こういうふうに思います。これも水俣病の問題を例にとっていろいろ申し上げたいわけですけれども、規制権限をきちんと発動する、こういう立場について、もう少しきちんとした国の考え方を明らかにすべきではないかな、こういうふうに思います。  時間がございませんので、例を出すのはやめますけれども、この点についてのお考え方を明らかにしていただきたいと思います。     〔高橋委員長代理退席、委員長着席〕、
  165. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境保全につきまして、科学的知見充実のもとに環境保全上の支障を未然に防止するということは非常に大切なことでございます。それと同時に、問題が生じた場合には緊急、適切に対処するとともに、必要に応じまして規制等の措置を講じまして、問題の解決を図っていくことも重要でございます。  特に、人の健康または生活環境に直接被害を及ぼす公害問題については、御指摘のように的確な対応を必要とすることが重要なわけでございます。  そこで、環境基本法におきましては、第二十条に規制措置を位置づけまして「国は、環境保全上の支障を防止するため、次に掲げる規制の措置を講じなければならない。」というぐあいに規定したところでございます。
  166. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 時間がないからもうやめますけれども、今お答えになった規制権限をきちんと講じる、こういうことについては確認をさせていただきたいと思います。  ただ、局長も十分御承知のように、水俣病の問題の発生の第一の要因は、国がきちんとした規制権限を行使しなかったところから起きているわけで、ここのところが、じゃ、当時の水俣病発生の時代と比べて、今日法律的にきちんと整理されて、二度と再びああいうことにはならないということが保証できるのかどうなのかということになりますと、私はそんなに変わっていないのじゃないかな、こう実は思っているわけであります。しかし、今の局長の話を聞きますと、それは大丈夫だというふうにも聞き取れるわけで、この点は今後の議論の中できちんと明らかにしていきたいと思います。  あと五分しかございませんから、もうそろそろ締めに入らなければいけないと思います。  最後でございますが、私は縦割り行政の問題点、総合的規制の必要性、そして環境庁の責務について申し上げたいと思います。  縦割り行政で、環境や公害の問題についてきちんとした対応が実態上可能なのかどうなのか、これについて私は大きな疑問を持っております。これも水俣病を例にとりますと、工場の生成から工場排水口までは通産省の行政指導、こうなっていますね。排水口から公共用水区域は当時は経済企画庁、水質二法、それから湾内とか海域等魚介類については農水省の水産庁、これは水産資源保護法、漁業法、食品としての市場流通のところでは厚生省で食品衛生法、それから法令違反による犯罪予防では自治省に、警察官職務執行法、それぞれが所管の官庁としての責任を有していたわけです。政府も、いろいろ記録を見てみますと、各省連絡会議を設置して対策を検討はしたようですが、各省庁の規制権限が縦割り行政のもとにあって分散しておったがために、統一的に水俣病を防止するという政策というものがばらばらで貫くことができなかった。私は、このことは現在もそうなっているのじゃないかな、こういう心配を持っております。  縦割り行政というのは、今も申し上げましたように、各省庁が無責任になって、これだけ大きい、最大の人道上の問題である水俣病においてすら効果的な対策が立てられなかった。今日、水俣病問題については、御存じのように司法も全部、皆さん方が喜んだ東京地裁の判決でも、解決責任は指摘をしているわけで、したがって私は、司法の側は水俣病問題については解決をしなければいけないという立場に全部立っていると思います。マスコミも世論もすべて早期解決の声があるにもかかわらず、この水俣病の紛争の収拾ができないというのは一体どこに原因があるのか。私は、縦割り行政で、どこか責任を持ってきちんとまとめて、この世界にも例のない恥ずかしい紛争状況を何とかする、こういう立場に立てないというのはそこに原因があるだろう、こう思っております。  水俣病の悲劇的な痛恨の歴史を生み出した大きな原因の一つが、先ほども言いましたように、縦割り行政による規制権限の分散化とその無責任性にあると言っても私はおかしくないだろうと思います。したがって、この教訓からして、例えば原因物質を工場外に排出をさせない、魚介類を捕獲させない、住民がこれを食べるようなことはさせないという施策を一元的に定立して、関係省庁が全体として総合的に規制することが必要であった、こう私は思います。環境庁水質汚染防止の立場に立って、水産庁が水産資源保護の立場で、厚生省が食品の安全性を確保するという立場で、特定の毒物から国民の生命と健康を守るという一元的な施策をつくり上げて関係省庁が総合的に規制をする、このことが今後絶対に必要だ、私はそういうふうに思っております。そのための関係各省庁の協議手続を厳密に規定すべきである、こういうふうに私は思っております。  先ほど申し上げましたように、今までの公害環境行政の反省の上に立って、二度と再びこういう悲劇を繰り返さない、このことがなければ基本法をつくる意味がない、こう申し上げたわけですけれども、この基本法が成立する、その後はこういう問題についてはきちんと整理がされることになるのかどうなのか、このところがポイントでなかろうか、こう私は思っております。  水俣病の発生のあの時点では、環境庁は設置されていなかったわけです。今環境問題や公害問題を専門的に統括する環境庁が設置されているわけです。そして、環境基本法が今まさに制定されようとしているわけです。したがって、このことを重く受けとめまして、環境庁としては、いろいろな差しさわりが出てくることについてはそれは私なりに理解をいたしておりますけれども、せっかく環境基本法をつくってもそれぞれの省庁がばらばらで、それを全体としてまとめて一つ環境問題や公害問題にきちんと、経済よりも開発よりも環境が優先だ、こういう立場で対応できるように、環境庁の皆さんの御検討、とりわけ水俣病の解決を含めまして、今回この環境基本法をきちんとしたものにつくり上げるように努力をしていただきたいということを申し上げまして、最後に若干長官のお気持ちをお聞きいたしまして、終わらせていただきたいと思います。
  167. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 田中先生の御質問お答えいたします。  先生が今御指摘になりましたいわゆる縦割り行政の一面がこういう問題で露呈されてきておる、それが問題の解決に大変邪魔になってきているという御見識でございます。したがって、環境基本法が成立した後は、今度運営の面において関係各省庁がもっと緊密に連絡をとり合って、そして目的はそれぞれの問題に対して一つでございますので、その目的達成のために各省庁がお互いに協力し合えるという体制を強力に進めるべきではないかというお説でございますが、全く同感でございます。
  168. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 終わります。ありがとうございました。
  169. 原田昇左右

  170. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最初に、環境基本法の成案までのプロセスについて少しお尋ねをしておきたいと思います。  それは、前の長官がこの課題を中公審と自環審に諮問された、一九九二年十二月ですか、そしてその二つの委員会が中心になって審議を進めてきたわけでございますけれども、これは揚げ足をとる議論をするつもりはないのですけれども、公害対策基本法の二十七条で、中公審に諮問されたのは、「内閣総理大臣の諮問に応じ、公害対策に関する基本的事項を調査審議すること。」という項目から外れて、二項目の「環境庁長官又は関係大臣の諮問に応じ、公害対策に関する重要事項を調査審議すること。」という項目が中公審、それから恐らく自環審は自環法の十三条、「自然公園法、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律、及び絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の規定によりその権限に属さまられた事項を調査審議するほか、環境庁長官又は関係大臣の諮問に応じ、自然環境保全に関する重要事項を調査審議する。」という項目に当てはめて御答申をなすったのだろうと思うのです。  実は、環境基本法なんというのはまさに公害対策の基本事項であって、いずれもこれは内閣総理大臣がきちんと諮問してしかるべきではないか。これは手続の問題です。つまり、それは別に基本法の重さ、軽さを言っているのじゃなくで、やはりこういう制度を新しくつくっていくためにはそういう重さがあっていいのじゃないかなという感じがいたします。時間的に急いだということは、私もわからぬではありません。しかし、その手続の基本的な部分でこういう形の審議になった経過、それからその考え方をお答えいただきたいと思います。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕
  171. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生の御指摘になることは、実にごもっともな御指摘でございます。  私どもといたしましては、環境庁、二十年たちまして、現在私どもが抱えている環境問題、それからこの委員会におきましていろいろ環境問題の新たな課題というものを提起を受け、いろいろ検討してまいりました。  そういうことから、果たして今の体制のままでいいのかどうか、これからの時代にふさわしい環境政策のあり方につきましてはここで見直しをする必要があるというようなことから、一昨年の十二月に環境庁長官の名前で、今後の環境政策のあり方についてという諮問を申し上げたところでございます。そういう中で、今までの法体系でいいのかどうかという問題点が出てきた。それで、たまたま昨年の四月に総理からも検討するようにという指示を受けたところでございます。  そういう中で、現実には既に先ほど申し上げました諮問を一昨年の十二月にしておるところであったものですから、基本的にはこの諮問を受けた格好で、しかし実質的には総理のそういう御指示のもとに、こういう御検討をしていただきたいということを審議会の方にもお願いいたしまして、そのままやってまいったわけでございます。  しかし、この問題につきましては、先生指摘になりますように、公害対策基本法を廃止し環境基本法を制定するということは、我が国における公害対策、また環境政策の基本的事項にわたる問題でございます。したがって、これは実質的に総理の諮問によるところであったとしても、形式的にもやはり総理からきちっと諮問した格好にする方が適当であるということから、実際に法案をつくるに当たっては総理大臣の諮問に切りかえまして、法案の大綱という格好総理大臣の諮問に切りかえまして御答申をいただき、この法案を作成したという経緯にしたところでございます。
  172. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今八木橋さんからるる御説明がありましたけれども、やはりこういう基本的な課題というのは最初からそういう認識に立って、まあそれは今までやってきたよ、一昨年からやってきたよと言われればそれまでだけれども手続もその辺きちんとしておいてほしかったなということを私は痛感いたします。  このプロセスを通して民意の反映が公平適切になされたかということについても、やはり申し上げておかなければなりません。審議会というものは、私はかねて中公審の委員構成に関連をして、例えば公害によるところの被害者あるいはそれを代理できるような人をきちんと中公審のメンバーに入れなさいと言ってまいりましたけれども、それはまだ実現を見ていません。それだけではなくて、例えば審議会環境NGO、これはリオ宣言やアジェンダ21の中でも強調されている問題です。あるいは公害病患者などの意見を率直に受けとめるための努力がどれだけなされたのだろうか。あるいはこの法案をつくっていくプロセスで地域住民の、例えば公聴会などを含めたやりとりというものがとても必要ではないかということは私はかねてから主張してきたことでございます。残念ながらこれも決して十分ではなかったと思います。  各界から環境庁がヒアリングを受けたということは伺いました。伺いましたが、やはりもう少しオープンに、まあそれがオープンでなかったと言うつもりはありませんが、例えば環境NGOとか地方自治体とか被害者とか、あるいは地域住民の具体的な意見の反映を受けとめるための努力が必要であったにもかかわらず、その点が十分でなかったように思います。その点について、これは反省の弁を含めてお言葉を聞かなければなりませんが、各界各層から出された意見というものがどんな形で、陳情、請願を含めて反映しているかということを簡単にお述べいただきたいと思います。
  173. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 この成案に至るまでのプロセスにおきまして、民意を反映させる方法が不十分だったのではないかという御叱正でございます。  私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、地球化時代にふさわしい環境政策のあり方についてということで、UNCEDへ向ける国民の民意の集結というようなことで、私どもは、例えば地球環境日本委員会でございますとか環境と文化に関する懇談会とかいろいろな場で、皆さんの意見を聞いてまいりました。NGOの方の意見も聞きました。主婦団体の意見も聞いてまいりました。そういったようなことを踏まえて、まずUNCEDに臨んだ。その段階において各界各層の意見はかなり聞き得たなという印象を持っていたということも、私どもの気持ちとしてはあったということも事実でございます。  それから、実際にこの中公審と自然環境保全審議会審議する過程におきまして、おっしゃるように、この審議会自体は学識経験者から構成するという構成になっておりますけれども、この審議会を構成するに当たっては、学識経験者ということで限られた見識になってもやはりそこは問題だろうということから、学識経験者の方々に、御議論する過程に当たりましてはさらに意見を徴する必要はあるだろうということで、環境保全に関連する労働界、経済界、自然保護団体、地方公共団体、さらに先生指摘のような患者団体、さらに関係省庁から直接意見を聞く機会を設けると同時に、文書による意見が各界から寄せられております。これらの文書をすべてこの審議界に提供し参考に供しでいただくということで、私どもといたしましてはできるだけの措置を講じたつもりではございますが、今から考えまして、それで十分であったかと申しますと、岩垂先生のような御議論を私どもはお聞きしますし、またジャーナリズム等からそういう御意見も私どもいただいたところでございます。  今後、こういうことに当たっては、私ども十分に反省しながら、環境問題というのは、この法律案にもございますように、国民一人一人の関与というものがこれからの環境問題に非常に強くなっていく。そういうことから教育、学習というような条項も置かざるを得ないような法律構成になるわけでございますから、プロセスにおいてももう少しそういう機会をとるべきだったという御批判に関しては、私ども謙虚に耳を傾けるべきだというぐあいに考えております。
  174. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 率直な御答弁をいただいたわけですが、それならばお願いしたいのは、この基本法を今度はフォローアップするためには中央、地方の環境審議会が設置されるわけですね。この環境審議会に対する委員構成の面でも、今私が申し上げましたようなNGOとか患者の皆さん、あるいはその代理人、代理というかそういう立場を代弁できる人などを含めてきちんと配慮していく、この点は申すまでもないのですけれども、念には念を入れてお尋ねをしておきたいと思います。
  175. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 中央環境審議会委員構成等について十分配慮すべきであるというようなことでございます。  環境保全に関し学識経験のある者からということになっているわけでございますが、国民各界各層の意見が幅広く審議に反映するような格好での構成にする必要があろうかと思います。人選はこれから行われるものでございますが、今後、御意見は十分体してまいりたいというぐあいに考えております。
  176. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この基本法はかなり、アジェンダ21やリオ宣言の立場というものを生かそう、そういう努力をなさっている足跡を私は確かめることができます。  ただ、例えば市民参加とか情報公開、こういう点について弱点が、弱点というか十分でないのではないかな、少なくとも国際的な合意という立場からというと問題があるなというふうに思います。  それで私ども、そうはいっても国政全体の問題ですから、情報公開法ということになれば官公庁だけの問題で始末がつく問題ではないのですけれども、この際ですから情報公開法の制定などを含めて、環境庁もこの基本法の規定を生かしていくためには、あるいは国際的な合意というものを生かしていくためには、そういうすべ、立場が必要だなということをお認めいただけますか。
  177. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、政府なりまた行政一般を通ずる手続といたしまして、情報をどのように取り扱っていくかということに関して、政府全体として議論していくべきことだとは思います。  ただ、環境に関する情報に関して申し上げますならば、それが適切に提供されるという趣旨から、そういった手続に関しましては環境庁としても前向きに取り組んでいくべきであるというふうに考えております。
  178. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 先ほどから、環境権についていろいろ意見がございます。そこで確めておきたいのですけれども、リオ宣言には、人類は自然と調和した健康で生産的な生活を送る権利を有するという点が挙げられていますけれども、この点は環境庁、問題ないわけですね。
  179. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 午前中、実は同じような御質問を受けまして、そのとき少し詳しく説明させていただきましたが、簡単に申し上げますと、リオ宣言の第一原則におきまして、今先生の触れられたようなことが書いてございますが、当初、地球サミット直後に、これが採択されました直後に環境庁がとりあえず国民の皆様方に知ってもらうという意味で仮訳として訳したものの中には、今言ったように、先生がお触れになりましたように「権利がある。」という訳をつけておりますが、これは原文が、英語で恐縮でございますがエンタイトルドということでございまして、その後私ども政府部内で、特に外務省等を中心に全体を訳をもう一度精査いたしましたときには、これは「資格を有する」というふうな訳が適当であろうというふうに考えておるわけでございます。
  180. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 仮訳をしておいて後で解釈をしてもそれはちょっと間に合わないけれども、しかし考え方は、私はそういう国際的な合意というふうに見たいと思います。  じゃ伺いますけれども、これは大臣がいいのかな、私ども社会党の案は、第三条で「環境の恵沢を等しく分かち合うことは、現在及び将来におけるすべての人間にとっての基本的人権であること。」というふうに書き込みました。これは環境庁も、先ほどからのやりとりを聞いていてもそういうことだろうというふうに受けとめますが、よろしいですか。
  181. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私どもといたしましては、そのこと自体を権利として書くまでにはまだ定説になっておらない、また判例になってもそこまでは至っておらない。しかし、憲法二十五条に、国民が「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とされておりますことから、それを実現していくためには、国が責務として環境政策の観点から環境配慮をしていくということは大事である、そういう視点から理念として掲げさせていただいたということでございます。
  182. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 二十五条の「国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」、これは、申すまでもなく環境ということも非常に深いかかわりを持っている、場合によってはそのものであるというケースもあるわけですね。そのことはお認めになりますね。
  183. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私どもといたしましては、この理念を実現していくことによりまして国民の健康で文化的な生活の確保に寄与し、憲法で保障された基本的人権も確保されていくことになる、そういう関係で書いているわけでございます。
  184. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうもよくわからないのですけれども、私ども環境権そのものを修正案の中で書き込むことについていろいろ苦労しました。また、ごらんをいただいたとおりです。  しかし、やはり判例なり学説なりというところがだんだん集積されつつあるという状況を国際的に見ることもできるし、国内的にもそういう認識が広がってきているように私は思う。私たちは努力をしなければ権利というものは保障されないわけですけれども、だから「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」ということの中に、きちんと環境というのはあるんだよということを確かめておきたかったというわけでございます。大体似たようなお答えが返ってきましたから、それ以上申し上げるつもりはございません。  基本法が成立をすることによって、従来の環境行政と比べてどんな領域で施策が広がるかということをちょっと例示してくれませんか。
  185. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境基本法を制定することによって、どういった新たな施策が展開されることになるのかという御質問だったかと存じます。  私どもといたしましては、現在持っております環境問題の特質から、やはり環境政策というのは計画的、総合的に推進していく必要があるというぐあいに考えているわけでございます。  そこで、基本法でございますから一般的な政策のフレームワークしか書いておらないわけでございまして、このフレームワークのもとに今後個別の政策が進展されるということになるわけでございますが、少なくともこの基本法におきましては、政府の環境に関する基本的な計画として環境基本計画を位置づけ、そのもとに政府全体が整合性のある格好で各般の施策をとっていくということになりますことから、私どもとしては、従来と違って、やはり環境政策につきましては計画的な推進が図られるというぐあいに考えております。
  186. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 基本法が上位法で個別法が下位法というのはちょっと言い方が変なのですが、そのもとに個別法があるという関係は成り立つというふうに理解してよろしいですか。
  187. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生が法学的な観点からおっしゃっているのか実態上からおっしゃっているのか、なかなか難しい御質問だと思いますが、憲法体制のもとにおきましては、基本法であれ普通の法であれ、一般的な法であることには間違いないわけでございますが、基本法というふうに名づけます以上、やはりこれはその分野における政策の基本的な考え方、基本的な政策理念というものを掲げまして、そのもとに各般の施策を展開していくことになるわけでございますから、実質的な議論で申し上げますと、その対象分野においては他の法律に、言ってみれば優越する性格を持ち、他の法律がこれにもって誘導されるという関係に立つというぐあいに考えております。
  188. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 基本法と地方の環境行政との関係もやはり問題になるわけですが、基本法条例との関係とでもいいましょうか、上乗せ、横出しというような議論がやはり出てくるわけですが、これはさっきもちょっと御答弁をいただいていましたが、そこは別に大して問題がない、地方自治体が自主的にきちんと条例を定めることについて制約をするものではない、これははっきり言えますね。
  189. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 大略におきまして、従来の考え方をここで改めるということではございません。  環境政策、また公害、環境分野におきまして、これまで地方公共団体が果たしてきた役割というのは非常に大きいものがございます。私どもはそれを十分認識しているわけでございまして、住民の健康の保護や生活環境自然環境保全に、今後も地方公共団体の果たす役割というのは非常に大きいというぐあいに認識しているわけでございます。  そこで、この場合にいかなる上乗せ条例、横出し条例というものを制定することが可能かにつきましては、もう既に憲法、地方自治法の体系ができておりまして、法令に違反しない限りにおいてそれは制定できるということになっており、また、最高裁判所の判例におきましても、国の法令と条例趣旨、目的、内容、効果等を総合的に勘案して個別に判断されるということになっております。私どもは、基本法ができました場合でも、こういった考え方に従って適切に処理されるべきだというぐあいに考えております。
  190. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 現行の公害関係あるいは自然保護関係の制度はどんな格好で見直されていくのでしょうか、基本法ができることによって。
  191. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 現行の各公害対策関係、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、いろいろございます。これらにつきましては、私どもは、公害対策というものが従来我が国において果たしてきた機能というものは、今後ともそれは十分守っていかなければならぬという考え方に立っております。  そういうことから、従来の考え方を引き継ぎ、それを充実させていくという考えに立って、ただ、公害と申しましてもその態様がいろいろ変わってきております。したがって、とるべき対策というものを従来以上に他の政策を加味しながらやっていかなきゃならぬという局面になっているというぐあいに認識できるわけでございます。  いずれにしましても、人の健康や生活環境にかかわる問題でございますので、これについてはきちっと公害対策基本法の精神を受け継ぎ、充実してまいりたいというぐあいに考えております。
  192. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私から言うまでもございませんけれども、一九七〇年から七一年ごろにかけてのいわば公害国会を開く状況、つまり被害が拡大をして患者が非常な苦しみを持っている、それがやはり運動の中心になって、それをマスコミや市民が支えて、そして世論をつくって、そしてこういう公害関係のいろいろな法律を制定をした、させてきたわけですね。つまり、ある種の、運動と行政と言っていいか悪いかは別として、ある種の緊張状態、それがぎりぎり今日の公害立法というものを保障しているだろうと私は思うのです。だから、その原則はきちんと守っていってほしいなということを申し上げたかったからであります。今の御答弁のままで結構だと思います。  では、新しく盛り込まれた措置はどんなプロセスで具体化するつもりですか。いろいろなことあるのですよ、これで。
  193. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 今日の環境問題が、都市型、生活型公害というものが前面に出てきた、また、廃棄物問題というのをかなり重視していかなければならなくなった、さらには、地球環境問題というものを視野に入れてやっていかなければならなくなった、そのために、私どもが従来やってまいりました規制以外にいろいろな政策というものを動員してやっていかなければならないんではないかという局面に立っているわけでございます。  先ほど質問がございましたような経済的措置というものも、その一つの大きい分野であろうかと思います。課徴金、デポジット制度それから環境税、そういったような議論一つあるわけでございますが、これらにつきましては、やはり国民の具体的な負担に関する問題でございますことから、やはりその効果、経済に与える影響等につきましては、十分慎重に研究しながら国民の理解と協力を得る必要があるということもございます。  それから、そのほか、やはりこれからの問題は、国民それから事業者地方公共団体、国、それぞれがそれぞれの立場でいろいろな施策を講じ、また、環境に対する影響を少なくするための努力をしていかなければならぬというようなことから、情報の提供でございますとか環境教育とか、いろいろ新たなメニューを用意しているわけでございます。これらにつきましては、やはりそれに携わっている人々の意見を聞きながら、私どもはこういう施策というものを動員してまいりたいというぐあいに考えておるわけでございます。
  194. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 当初、環境庁は、環境基本計画と都道府県における地域環境計画という法定計画を予定--予定というか考えて努力なすったというふうに思うのですけれども、もう私から指摘するまでもなく、法案環境基本計画ということに絞られてしまいまして、地域の方の環境計画というのは消えてしまいました。これには恐らく各省庁間のいろいろやりとりがあったのだろうというふうに私も想像をいたします。それ以上いろいろ申し上げるつもりはございませんが、私はやはり地方の法定計画みたいなものを何らかの形で担保してくれないことには、地方が自主的にそういうものをつくっていくということが大変難しいのではないだろうか、そんな感じがしますが、この点についてはどんなふうにお考えですか。
  195. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私ども法案を策定する段階に当たりましていろいろなことを検討いたしました。御指摘のような議論環境庁内で議論されているということが報道されておったことも私どもは承知しておるわけでございますが、いろいろなことを考えている中で、最終的には、この三十五条におけるような条文でお願いしているわけでございます。  地方が持っております環境計画というものを法制的にどう位置づけるか、従来から地方公共団体環境管理計画なりなんなりというものをきちっとつくった上で、それぞれの団体で自主的におやりになっている動きというものは私どもは十分承知しておるわけでございますし、そのような動きというのは、私どもといたしましてお手伝いをしなければならぬというぐあいには考えておるわけでございますが、法制的に位置づけるということになりますと、現在そういう仕事はやはり地方団体の固有事務として行われているものであり、また、地方団体の固有事務としてそれは行われるべきものであるということから、これを基本法の中に形として位置づけるということは非常に困難である。ただ、そういう趣旨というものは、この条文上から「総合的かつ計画的な推進を図りつつ実施する」ようにということで、地方公共団体がそういう動きをなさるということに対しましては、私どもはそれは適当であるというようなことで、こういう表現で書かせていただいているというところでございます。
  196. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 八木橋さん、そう答えざるを得ないだろうと思うけれども、法定計画でなければ、それは余り権威のあるものでないとは言わないが、しかし、重さからいえばこの法律できちんと裏づけたものであってほしかったな、こういう感じはするのですよ。だって、つくるのは自主的に地方自治体がつくるのですから、計画それ自体の位置づけを考えていただきたかったなということを申し上げておきます。  三十五条を見ますと書いてありますよ。しかし、それは悪いけれども、「計画的な推進を図りつつ実施するものとする。」というような調子で、当初の計画というものから比べると、どこかへ姿が見えなくなってしまったという感じが否めない。もうそれ以上のことは私言いません。恐らくいろいろな抵抗があったと思う。なぜかといえば、地方で管理計画というものを法定化すると、いろいろやりにくくなるよという動きもないとは私は言えない、それは現実問題として。そういういろいろなやりとりがあってそうなったと思うが、しかし、やはりそういう地方の取り組みというものはぜひ積極的にバックアップしてほしいということを強調しておきたいと思います。今御答弁をいただきましたから、それで結構です。  それで、今御答弁いただいたのですが、環境基本計画は確かに閣議決定で決まりますよ、環境審議会答申を経て。それはそれでいいのですが、決定をすることあるいは追加することあるいは修正を、改正をすることにやはり国会が何らかの形でかかわる、承認を得るものとするというような形にきちんと権威づけることはできないものでしょうか。その点を、そういう議論があったかどうかということを含めてお尋ねしたいと思います。
  197. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境基本計画につきまして、国会の意向をそれにかかわらしめるような手だてはなかったのかということでございますが、環境基本計画につきましては、内閣の責任において内閣が政策を遂行する責任体制との関係から、やはりこれは閣議決定においてやることが適当だろうという結論になったわけでございます。  もちろん立法府として、これに対していろいろな議論で御批判なり、またいろいろあろうかと思うわけです。それは年々講ずる施策として、やった施策については国会に御報告することになりますし、また、基本計画そのものにつきましての御議論も私どもは謙虚にお伺いをしながら、それは改定なりなんなりのプロセスを通じて反映させていくことになろうかと存じます。
  198. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 年次計画という項目があるわけで、それをやっていこうということなんですから、あれは何条か私は正確に覚えてないのですが、公害防止計画がある種の進行管理計画みたいなものを規定している項目はなかったかなという感じなんです。やはり白書とプログラム、つまりどういう目標に向かってどういうふうにやっていくという進行管理計画は僕は必要だと思うのです。そういう意味で、そんなことの議論はなかったかなということもちょっとお尋ねしたいと思います。
  199. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境基本計画につきましては、もう少し基本的なところで議論がございまして、環境に関する基本計画的なものが一体つくられるのかどうか、そのプログラミングを持つような計画性というのですか、要するにプランからプログラミングにつなぎ得るような性格たり得るものかどうかというような議論があったということは事実でございます。  その点に関しましてはいろいろ懐疑的な意見もあったことも事実でございますが、私どもとしては、これからの環境政策というものを政府全体として整合性のとれた格好で展望していくためには、やはり計画という格好で一覧性を持ったものでやっていく必要があるというようなことから、環境基本計画として今回法案に盛り込んでお願いしているところでございます。  現実にどういう性格の計画を策定していくかということは、中央環境審議会意見を聞きながらこれから検討してまいることになろうかと思いますが、この環境基本計画というようなたぐいのものにつきましては、諸外国でもまだそれほど例はございません。私どもはこれから大いに勉強してまいりまして、先ほどから御議論がございましたように、なるべくそれらが政策として実効性のあるものに結びついていく橋渡しになるようなものになっていけばよろしいなという願いを込めつつ、これから大いに勉強してまいりたいと思っております。
  200. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 上位法というふうな位置づけでなくても、他の法律との関係ではやはり優位というか、そういう性格のものが基本法なんだという解説もいただきました。  そこで、各省庁きょうお越してございますので、実は先ほども御質問をなさった方がいらっしゃいますから、できるだけ繰り返しにならないように簡単に申し上げたいと思うのですが、私、環境調査室にお願いをして、「現行法における環境保全のための措置の規定例」というのを大変御苦労をいただいてまとめでいただきました。  一般的に言いますと、最近の法律は確かに環境問題に配慮があります。それから環境庁長官の関与というようなこともありますよ。だけれども、古い法律というのは環境のカの字もありませんよね。恐らく何千何万とある法律でしょうけれども、調べてみましておもしろい整理をしたのです。その中で、例えば道路法、都市開発法、河川法なんというのは条文の中に環境のカの字もないのです。そういうのをずっと拾っていきますと、今どこでどうということを言うつもりはございませんけれども、しかし広い意味で基本法というものが制定をされた以上は、そういう社会をつくっていく目標に向かって、例えば経済政策、エネルギー政策あるいは国土利用政策、そういうものが全体として整合性を持たないと、これはどうもならぬのではないだろうかなという感じがするわけです。  そこで、経済企画庁、それから建設省運輸省、国土庁にお越しをいただいているので、例えばの話ですけれども経済社会基本計画、あるいはもっとはっきり言うと経済成長率まで含めて検討を始める準備をしないといけないだろうというふうに思いますが、その点についてどんなふうにお考えか。  それからグリーンGNPですか、それに対する考え方についてもし御答弁をいただけるならば、簡単で結構ですからお答えをいただきたいと思います。
  201. 久米重治

    ○久米説明員 お答えいたします。  昨年の六月に閣議決定されました「生活大国五か年計画」、これは我が国の中長期的な経済の姿を描いておるわけでございますが、この計画の中におきましても、環境調和した経済社会の構築ということを大きな課題にしております。また、エネルギー政策の総合的推進ということもこの中に入っておりまして、これらを通じまして、地球社会と共存する生活大国の基礎となる二十一世紀に向けた我が国経済社会の発展基盤を、この計画の期間中に着実に実施することとしております。  こういった環境調和した経済社会の構築を内に含みまして、経済成長率も見込まれております。そういうことでございます。
  202. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ちょっといろいろ聞いていると長くなっちゃいますから、各省庁お越しですので建設省にお尋ねいたしますが、河川法には環境のカの字もない、道路法もない。法律は古かったけれども、しかし今日の状況考えると、長良川に見られるように、やはりそういう配慮というものが絶対必要だというふうに思いますが、建設省の所管に関してこの問題をどうクリアなさろうとしていらっしゃるか、御答弁いただきたいと思います。
  203. 澤井英一

    澤井説明員 私どもといたしましても、環境基本法案、非常に役割と位置づけを重く受けとめております。基本法に示された諸課題を、我々自身の課題ということで今後さらに積極的、主体的に取り組んでいきたいということで、現在有識者による御議論も含めまして、我々の所管します法令や計画を含めて、所管行政全体につきまして、今後の環境対策のあり方について議論、検討を進めております。これを踏まえまして、一層取り組みの充実強化に努力していきたいと考えております。  なお、法律の規定のしぶりの御指摘がございましたが、実態面では少なくとも都市、道路、河川を通じまして、環境保全のための新たな取り組みというものもさまざま始めているところでございます。
  204. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それは、環境のカの字もないというのが困るわけでして、実態はなさっていらっしゃるかもしれない。しかし、法律にきちんと位置づけてくれないと困るわけで、あなたが今前段で検討したことの中には、河川法やあるいは道路法も含まれているというふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  205. 澤井英一

    澤井説明員 御指摘の点を含めて、検討してまいりたいと思っております。
  206. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。  じゃ運輸省、これは港湾法の問題なんですけれども、確かに環境のことも書いてありますが、「港湾の環境整備及び保全に関する事項その他の」云々という言葉でございまして、これは港湾の環境整備というのは、この港湾を取り巻く環境とは必ずしもとれない。何か言い方としても変だと思うのですが、その辺のところを含めて、公有水面埋立法との関連も含めて御答弁をしていただければと思います。
  207. 和田敬司

    ○和田説明員 お答えします。  港湾法と公有水面埋立法が港湾の事業関係で二つの大きな法律になっておるわけですが、この法体系について御説明させていただきたいと思います。  港湾法におきましては、同法第三条の三におきまして、港湾管理者が港湾計画を策定する際には、運輸大臣が定めております港湾の開発、利用及び保全等に関する基本方針に基づきまして、港湾の開発、利用に伴う周辺環境への影響を事前に評価する等、環境への配慮を十分に行うということになっております。  また、公有水面埋立法におきましては、埋め立ての法律でございます。同法第二条におきまして、埋立免許の願書には埋め立ての実施等に伴う環境影響評価に関する資料を含めました環境保全措置を記載した図書を添付することが義務づけられておりまして、第四条に基づいて免許を行う際には、その埋め立てが環境保全に十分配慮された埋め立てであるかどうか等の観点から審査することとなっております。また、同法の第四十七条におきましては、大規模な埋め立てとか一定の要件に該当する埋め立てにつきましては、主務大臣が認可するに際しまして環境庁長官意見を求めなければならないということになっております。  以上でございます。
  208. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そういうことを含めて申し上げますと、例えば三番瀬の問題とか、あるいはこれから横須賀の地先で百七十から百八十ヘクタール埋め立てるというような計画が出されています。これは環境庁もこういうところを守らなければならぬという立場に今日まで立ってきたわけですから、基本法が通る暁には、そこらのところも含めた環境への配慮というものを進めてほしいと思いますが、いかがですか。
  209. 和田敬司

    ○和田説明員 お答えします。  ただいま二カ所ほど、具体的な計画につきまして御質問があったと思います。  まず東京湾の三番瀬の埋め立てについてですが、これにつきましては、千葉県の方でも計画をつくる上で漁業者等との間でいろいろな意見調整を図り、三番瀬に対する影響を小さくするというような構造等を検討しているやに聞いております。具体的な配慮事項につきましては、県の中で学識経験者第三者を含めましていろいろ検討しているやに聞いております。そうした中で、環境への影響への考慮というのが十分なされると期待しておるところでございます。  それから第二点の方でございますが、横須賀港についてでございます。横須賀市が港湾管理者として、埋立計画を含めました港湾計画の改定の作業中であるというふうに聞いております。近く地方港湾審議会審議を経た上で、運輸大臣に対して港湾計画の提出があるということが予定されております。  したがいまして、現時点では運輸省としましては、その計画改定の内容自体の詳細は存じてないわけでございますが、先ほど説明しましたように、港湾法に基づきましで港湾計画を策定する際には、運輸大臣の定めた基本方針それから計画基準等に適合した計画にする必要がございます。したがいまして、当然のことながら環境への影響への評価ということも十分考え環境に配慮した計画となってくると思われると考えている次第でございます。  以上でございます。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  210. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 次に、最後の質問に移りたいと思うのですが、環境庁の企画調整局の環境管理課と環境影響審査課が監修をいたしまして、環境アセスメント実施についての閣議決定についての解説が書いてございます。当時の環境庁長官の談話もございます。  ここで、やはり立派なことを書いてあるのですよ。つまり閣議決定の性格、特に法律との相違点を十分踏まえてアセスをスタートさせなければいかぬ。法律閣議決定とは制度的に見れば本質的に違うということを明らかにいたしまして、第一に、事業者に対する拘束力の差、もうここでは細かく言いません。第二に、行政指導である以上、主務官庁が事業者を指導する立場が主になるため、閣議決定の全体の構成等も、主務省庁の判断に委ねられる分野が大きくならざるをえない。したがって、政府としてのルールの統一性も必ずしも担保されないこととなる。第三に、地方自治体に直接義務づけすることができないというふうなこと。あるいは第四に、行政指導という性格だから、横断的条項によって、免許などに係る法律の規定にかかわらず、公害の防止などについて適正な配慮がなされるものであるかどうかの審査の結果をあわせて判断して免許などに関する処分を行うとしているけれども法律ゆえにこれができるのであって、閣議決定では難しい。第五に、条例などの地方の制度との関連があるということを挙げています。私はもっともだと思うのです。  環境庁、この立場は今も変わっていませんね。
  211. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私どもの執行するときの執務用の参考資料にそういった分析を行ったことは事実でございます。  閣議決定要綱は、昭和五十六年に国会に提出されました環境影響評価法案の国会への再提出を見送りしたのに伴いまして、その法案とほぼ同様の内容を、政府として最も権威ある閣議決定という方式で決定し、行政ベースで実効ある措置を講じようとしたことからやったものでございますが、法制でやることと行政決定ベースでやることの法的な違いはそのようにあるという認識を私どもは持っているわけでございます。先生先ほど挙げられました五点というものは、その主なものでございます。  そこで、それを行政決定ベースでやった場合に、この五つの主要な相違点をそれじゃどのように克服していくかということも同時に、我々は今度は法制ということを与えられていない以上は、それに従って充実するべく努力してきたわけでございますが、この五つにつきましてその後の運用状況を見てみますと、第一の、国以外の事業者に対する拘束力につきましては、これは何ともいかんともしがたいわけでございますが、対象事業にまだ民間事業が少ないというようなこと、また、主務大臣の許認可等の際に、配慮事項といたしまして実際的に必要な措置を担保しているというようなことから、今まで大きく問題になっているところは幸いにはございませんでした。  第二に……(岩垂委員「説明はいいよ」と呼ぶ)いいですか。--法的なところと行政決定ベースによるところの違いは確かにございます。ただ、私どもは、運用としてそれらを克服すべく努力し、また、それなりの改善措置を講じているところでございます。
  212. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大体、そこでごまかしてはいけないんだよ。改善をしていく努力というのは、それはそれで、ないとは言わぬよ。言わぬけれども、ここに極めて明確に書いてあるのは、残念ながら本質的なことなんですよ。基本的なことなんです。いい、これは名文ですよ。前の企画調整局長の、だれが書いたか知らぬけれども、企画調整局のこの名文を今や褒めるべきですよ。これが大事なんです。これをむしろてこにしなければいけないのです。  そこで、そうは言いながら、昭和五十四年のアセスに対する中公審の答申というのは、「速やかに法制度化を図られたい」と書いてある。これで法律が出てきた。私は、そのときに公害対策特別委員ですから、そのいきさつはよく知っています。いろいろないきさつがあったこともよく知っています。きょうここで、そのことを申し上げるつもりはありません。ただ、速やかに法制化しろと書いてある、それに基づいてやった、挫折した、したがって、閣議決定ということにならざるを得なかった。それは最善ではないのです。やはり法制化が必要なんです。だから、ここで法制化ということについて真剣な検討をしてほしいなということを私は伺いたいと思うのです。  そこで、基本法の検討過程で恐らく、アセスメント法の問題についていろいろな意見があったというふうに私も漏れ承っています。だから、それはもうそれ以上聞きません。しかし、少なくともその議論の中で、計画段階での環境配慮あるいは事業実施段階でのアセスあるいは製品アセスあるいは廃棄物などに対する措置などそれぞれについて、中公審なりあるいは議論の中で、ある程度の整理が行われたというふうに私は承っている。あるいは住民手続の規定がそれぞれどうなるのかというようなことについても、いろいろな議論が行われたということを漏れ承っています。  これらを私はきょう、今ここで聞いていたのじゃ時間がなくなるので申し上げませんけれども、できれば中公審のアセスに対するやりとりというものの大ざっぱなものでいいですから、議事録そのものとは言いませんから、私らに見せてくれませんか、それはだめですか。
  213. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生審議会における議論の模様を議事録で示してくれないかということでございますが、審議会におきましては議事録は実はとっておりません。  そこで、私から議論のあらましをここで申し上げますれば、「環境基本法制のあり方について」の審議会答申では、先生先ほどお答えしたとおりの重要性、考え方を盛り込むことが重要ということと同時に、個別の措置については法制化を含めていろいろな議論が行われまして、答申においては「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じで現行措置見直していくことが適当との意見大勢であった。」というぐあいに、これは委員会として締めくくられたところでございます。  また、答申におきまして、「事業者にあっては、事業活動段階に応じて、その特性・具体性の程度を勘案しつつ、環境に与える影響について調査を行うなど適切な方法により環境保全のための配慮を行うという考え方が重要である。」というぐあいに述べられておるところでございまして、計画段階を含めて、その特性に応じた環境影響評価を行うことが重要であるということも議論されたところでございます。この趣旨につきましては、法案を策定するに当たりましては、十九条におきまして「その事業実施に当たり」と、「当たり」という幅の広い表現でそれを表現したところでございます。  さらに、いわゆる製品アセスについても議論されておりまして、答申におきましては「製品等の使用又は廃棄が環境に与える影響については、その研究開発、設計段階において自ら評価を行うことにより、環境保全のための配慮を行うという考え方が重要である。国は、民間事業者の自主的・積極的な環境影響評価の取組を推進するため、技術的な支援等の措置を講じていくことが必要である。」というぐあいに議論が行われたところでございます。この辺に関しましては、第二十三条に私どもでは法文化したところでございます。
  214. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 率直に言って、私は、基本法ができてくる過程でいろいろな綱引きがあったことはそれなりに承っているし、理解ができないわけではありません。ただ、基本法アセスのこと、それから情報公開、そして地方自治体の上乗せ、横出しを含めた自主的な環境行政への対応、それから市民参加、そういうものが本当に担保されることを心から願ってきました。私は、個人的にも何回かお願いしてきたこともございます。  そこで、社会経済情勢の変化を勘案してということの意味ですけれども、地球サミットだって一つの変化の重要な要素だ、OECDの方針提起だってアセスに対する非常に重要な問題提起だというふうに私は思うのです。  そこでお願いしたいのは、この基本法が成立するかどうかまだわからないのにこんなことを申し上げるのは変ですけれども一つの区切りをつけた暁には、アセスの問題を環境庁として全力を挙げて取り組んでほしいものだ。宮澤総理の答弁もあります。それはいろいろな受けとめ方もあるでしょう。しかし、この問題に魂を入れるのは、アセスのことをどうなさるのか、方向性をお示しいただくことだ、そして具体的な段取りを進めていただくことだと私は思うのです。だから、この法案一つの区切りをつけた上で、環境庁としては、各省庁あるいは閣内を含めて、アセスに対して具体的な結論を急ぐために検討を始める、そのための予算措置を確保する、そういうふうなことについて一歩踏み込んだ御努力をいただきたいな、こんなふうに思うのです。  そうでないと、今までいろいろ日本環境先進国評価をされてきたけれども、その部分について、俗に言って日本環境のコストを払ってないみたいなことも言われかねない。そういう点で、ぜひ積極的な御答弁をいただきたいと思います。
  215. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほど答弁いたしました中で、一つ間違いがあったようでございますので、一訂正させていただきます。  審議会の議事につきましては、議事録をつくることにはなっておるようでございます。ただ、その議事録につきましては、活発な議論をお願いするということから、従来それを公表しないということになっているようでございますので、これにつきましては、先ほどの私の答弁は訂正させていただきます。  それにもう一つ環境アセスメントのことにつきましては、審議会答申はああいった答申をいただいたわけでございます。私どもといたしましては、環境保全環境破壊を未然に防止するということから、アセスメントということは極めて重要であるということでございます。そういう趣旨に沿って、この答申を踏まえながら見直しをしていくということについて、私どもは努力してまいりたいというぐあいに考えます。
  216. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうも、見直しを続けていきますというようなやりとりでどうにもならぬのだが、やはり何らかの一歩踏み出す努力はしてもらわないと、一体どういうことなのだということにならざるを得ないと私は思います。だから、ぜひ法制化についで、それは一遍環境庁は出したのですから、国会に。だから、その当時の法律考えたって、各省庁歩み寄っているのですから、合意に至っているのですから、できているのですから、それを途中で変えた事情というのはいろいろあるのだけれども、一遍決まったのだから、それは環境庁が、この節、時間もたっていることでございますから、環境もまさに整備されてきているときですから前進を図ってほしいと思いますが、長官の御答弁をいただきたいと思います。
  217. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 岩垂先生の、特にこの基本法の成立に向けての御指摘の中で、アセスの問題について極めて現実的な、そしてまた大変強烈な御意見が提示されたということを十分受けとめでおります。
  218. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 終わります。
  219. 原田昇左右

  220. 大野由利子

    ○大野(由)委員 我が党は、昭和四十八年に環境保全基本法案を国会に提出して、それ以来、現行の公害対策基本法及び自然環境保全法を改正し、また強化して、トータルな環境保全のための法案が必要であろうということで、一貫して主張をしてきたわけでございます。  昨年の地球サミットにおきましても、合意されました環境開発のためのリオ宣言の第十一原則にも、各国は効果的な環境保護法を制定しなければならない、このようにされておりまして、早い時期の基本法の制定が期待されていたわけでございますが、環境問題が今の公害対策基本法また自然環境保全法の枠内では到底対処できないということはもう明白な事実でございまして、そういう意味では、今回の法案提出はむしろ遅過ぎたのじゃないか、そういうふうな感じがするわけでございます。  ともあれ、従来の公害防止をメーンとします対症療法的なそういう受け身型の環境対策から、地球環境問題全般にわたりまして、先取り的といいますか、予防的なこういう環境基本法を制定して、そういう施策をやっていこう、今回そういう法案提出されたということは、基本法の提案そのものはこれは非常に評価できるのではないか、私はそのように思っているわけでございます。  ただ問題は、一つはこれをどこまで実効性のあるものにしていくことができるのかどうか。環境の憲法と言われて、環境基本法は目指すべき理念は高らかにうたいとげているわけですが、基本法ですから多少抽象的な表現はやむを得ないにいたしましても、これからどういうものを目指すのかということがはっきり見えてこないと、ある面では実効性が非常に乏しい、そのように思っているわけでございます。  今回、各省庁の妥協の産物と言われておりますが、この環境基本法のできばえというか、どのように評価をしていらっしゃるかについて、初めに伺いたいと思います。
  221. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 大野先生の御質問お答えいたします。  大野先生、大変環境基本法案評価していただいておりまして、私も意を強くいたしておりますが、妥協の産物じゃないかという御質問がその中にございますけれども、そういうことはないと私は信じております。つまり、一つのものが生まれるためにはいろいろな議論が関係者から出されると思います。その議論の中で、やはり各般の整合性も考えながら、一番それに適した議論に集約していくということは、これはやはり民主社会における一つの形態でございますので、そういう意味からいきまして、妥協の産物という考え方をとらずに、これは今日日本環境政策というものを展開する基礎となるものであるという認識のもとに、むしろ日本がいかに環境政策を重視しているか、その環境政策のあり方はどうなのかという、日本の顔ともいうべきものを世界に向けて開くということを含めた、そういう内容を踏まえたものであるということで十分評価できるものと私自身は考えております。  なお、現在OECDの環境政策レビューが日本に参りましたけれども、この人たちも、日本環境基本法案が今国会で論議されているということに対して高く評価してくださっております。
  222. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今回の基本法をもとにいたしましてこれからどのような各論をつくり上げていくか、これが非常に問われるわけではないか、そのように思うわけでございますが、今後の方向と申しますか、今後の長官の御決意を伺いたいと思います。
  223. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答えいたします。  私の決意ということになりますと、これはぜひ今国会で成立さしていただきたい願いを深く込めておりますが、その暁には、私はこの基本法の条文に忠実に、これを一つ一つ実現に向けて取り組みたいと思っております。
  224. 大野由利子

    ○大野(由)委員 けさの記者会見で環境庁長官が、今後の経済対策に環境の面からの視点というのでしょうか、配慮が非常に大切であるというような意味での御発言があったということを聞いているわけでございますが、この辺、どういう発言をなさったのか、もう一度確認をさせていただきたいと思います。
  225. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 今の先生の申されましたような発言を、実は私記憶しておりません。
  226. 大野由利子

    ○大野(由)委員 済みません。ちょっと私の聞き違いであったかと思います。  今回の基本法の必要性についで、今回この法案の中にも、いろいろ法案の提案理由等々にも出ているわけでございますが、その中で都市型公害、生活型公害ということが書かれておりますが、これはどういうものを想定していらっしゃるか、挙げていただきたいと思います。
  227. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私ども、今回環境基本法が必要だという理由の一つとして、公害の態様が変わってきて、都市生活型公害に対処する必要があるというようなことを申し上げたわけでございますが、その場合どういうことを想定しておるのかという御質問でございます。  都市生活公害といたしましては、一つの典型的なものは、大都市交通による大気汚染の問題、これは、都市に人口、経済活動が集中したことによりまして、自動車交通がかなりふくそうしております。それによりましてNOxの改善がはかばかしくないといったような公害現象があるというのが一つ挙げられるかと思います。  また、生活排水による水質汚濁という問題が挙げられようかと思います。産業活動によるところの汚濁物質の改善というものは著しいものがあるわけでございますが、一方、家庭の排水によるところのCOD、BODの改善というものは、特に東京湾、瀬戸内海、伊勢湾を中心といたしまして改善がはかばかしくないといったような状況がございます。  こういった現象は、大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会活動の定着、また、人口、社会経済活動都市に集中しているということを背景にいたしまして、通常の事業活動や人の日常的な活動、もっとわかりやすく申し上げますならば、自動車利用、炊事、洗濯などに伴い排出される負荷が集積するということが主な原因がというわけでございます。  そこで、こういったことを解決するために、今回、従来の規制的な手法に加えまして、国民一人一人の理解と協力を得ながら、社会経済活動国民生活様式のあり方を含めまして、社会全体が環境負荷の少ない持続的発展が可能なものに変えていくようなことが必要になるというようなことから、今回基本法におきましては、二十条で環境保全上の支障を防止するための規制でございますとか、二十一条で環境保全上の支障を防止するための経済措置、また、二十二条で環境保全に関する施設の整備その他の事業推進、また、二十三条で環境への負荷の低減に資する製品等の利用の促進、二十四条で環境保全に関する教育、学習、二十五条で民間団体等の自発的な活動を促進するための措置等を設けさせでいただいたところでございます。
  228. 大野由利子

    ○大野(由)委員 次世代に引き継ぐ環境というものはどのような環境なのかについて、伺いたいと思います。
  229. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私ども、この次世代に引き継いでいく環境ということは、私ども現在の人間が使っているだけで環境というものを使い切ってしまうのはやはり問題であり、人間の生命というものは子々孫々代々引き継がれていくということからいたしますと、環境も、我々がそれを享受したと同じように次世代の人にも享受していただきたいということから、次世代に引き継いでいく環境といたしまして、第三条で規定いたしましたところでございますように、人間の健康で文化的な生活に欠くことのできない、健全で恵み豊かな環境ということを指すと思っておりますし、それはまた同時に、生態系が微妙な均衡によって成り立っている人類の存続の基盤としての限りある環境、これをしっかりと引き継いでいかなければならぬというぐあいに考えているわけでございます。
  230. 大野由利子

    ○大野(由)委員 環境アセスメントについて伺いたいと思います。  政府の法案では、第十九条で「必要な措置を講ずる」、そのように記載されただけでございまして、法制化に踏み込んでいないわけでございますが、去る二十日でございましたか、宮澤総理は、社会情勢の変化などを考え、必要に応じて見直したい、環境アセスについて見直したいとの、そのようなあいまいな答弁に終始されていらっしゃるわけでございます。  昭和四十七年に公共事業に対するアセス閣議了解によって定められて以来、我が国のアセスは歴史二十年になるわけでございます。また、昭和五十六年に環境庁が国会に環境アセス法案を提出し、開発官庁や産業界の強い反対があって、この環境アセス法案は廃案になったわけでございます。そして現行閣議アセスで対応している現状でございますが、その二十年前と今日と、社会状況というのは余り変わっていない、そのように認識をしていらっしゃるのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  231. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 今回の基本法案におきましては、環境影響評価につきまして法制的にこれをきちっと位置づける必要があるということから、国は、環境影響評価推進するため、必要な措置を講ずるということで、アセスが大事である、それを法制的に位置づける必要があるということから、「必要な措置を講ずる」ということで明確に規定したところでございます。そうして、この必要な措置の中には、当然法制化をすることも含まれ得るというぐあいに、私どもは理解しているところでございます。  そこで、総理が先日、本会議で御答弁になりましたように、それでは実際に、環境基本法におきまして法制的にアセスメントを位置づけたわけでございますが、具体的にそれをどうやっていくかということに関しましては、それは昨年十月の答申におきまして、「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて現行措置見直していくことが適当」というぐあいにされているところを踏まえまして、現行措置を適正に推進すると同時に、やはり必要に応じて見直していきたいという前向きの態度を御表明なさったというぐあいに、私ども理解しておるわけでございます。  そこで、七二年に閣議アセスで対応することになったわけでございますが、政府は、当時と社会状況は変化していないという認識なのかどうかという御質問でございました。  開発事業実施に際しまして、事前に環境影響評価を行うということは、環境汚染の未然防止を図る上で極めて重要であるということは言うをまたないというところまでの認識は、私ども、やってきたというぐあいに考えられるわけでございます。政府では、先生指摘になりましたように、四十七年の閣議了解によりまして、公共事業環境への影響等を調査し、それに基づき所要の措置を講ずることとし、さらには五十九年に閣議決定要綱によりまして、国の関与する大規模な事業については統一的な環境影響評価実施することとしたところでございます。  そこで、環境庁としては、まずは環境影響評価の定着が重要だと考えまして、この閣議決定要綱に基づく環境影響評価の適切かつ円滑な実施に努めてきたところでございます。また、この間地方公共団体におきましても、条例または要綱によりまして、この環境影響評価推進が図られてきたということは、先生も御指摘になり、御承知のところでございます。  このように、現在、七二年の当時と比べますと、一定規模以上の開発事業実施に関しましては、事前に環境影響評価を行う仕組みが既にできておりまして、環境汚染の未然防止という環境影響評価考え方の重要性の認識というものは、我が国において広く定着してきているというぐあいに考えるわけでございます。今回の御答申は、そういう状況を踏まえていただけたというぐあいに考えているわけでございます  この考え方が法制的にも位置づけられたことによりまして、この重要性はますます浸透してくるというぐあいに考えられるわけでございまして、私どもといたしましては、この基本法が制定されました場合に、現行におけるアセスメント措置を一層適正に推進するとともに、やはり答申に盛り込まれておりますように、社会経済情勢を見ながら見直しをしていく必要があるというぐあいに考えでおるところでございます。
  232. 大野由利子

    ○大野(由)委員 この閣議アセスで二十年対応していらっしゃるわけでございますが、行政や事業者に、この閣議アセスというのは拘束力を持つかどうか、伺いたいと思います。
  233. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 閣議決定は、あくまでも行政決定ベースのことでございますから、先生指摘になるように、政府以外のものに対する拘束力はないわけでございます。  しかしながら、政府部内でやります事業については、閣議決定といえども政府の最高決定機関の決定でございますから、当然拘束力はございます。
  234. 大野由利子

    ○大野(由)委員 そういう意味では法制化に比べると、今の閣議アセスは非常に拘束力の弱いものになっているという現状である、そのように思うのです。  それから、地方の条例等で行われている地方公共団体アセスについて、先ほどちょっと局長もお触れになりましたけれども、現在、地方公共団体アセス実施しているところがどれぐらいあるか、伺いたいと思います。
  235. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 現在、地方公共団体で、条例または要綱に基づきアセス実施している団体は、都道府県レベル、政令指定市レベル、合わせまして四十二でございます。
  236. 大野由利子

    ○大野(由)委員 条例によって実施しているところが四、それから要綱によってやっているところが三十八という状況ではないか、そのように思います。このように地方公共団体で行っておりますアセスについても、非常に徹底された整合性のあるものにはなっていない、そういう現状がございます。  閣議アセス、また個別法によりますアセス、また地方公共団体によりますアセス、行われておるところ、そうじゃないところ、いろいろあるわけですが、大変錯綜しておりまして、手続にも大変差がある。対象事業の種別、規模、また環境の項目、評価基準とか、そういったものにも大変差がございまして混乱を起こしている現状でございます。  例えば、大規模な事業に関する国のアセスが規模の小さい事業を対象にする地方公共団体アセスよりもなまぬるい、そういう矛盾も生じております。条例段階で計画アセスを行っております川崎市などもあり、法制化によるアセスの体系を確立すべきである、そうような意見に対して御意見を伺いたいと思います。
  237. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 御指摘になられましたように、我が国では現在どういう格好で行われているかということでございますが、昭和五十九年、国におきましては閣議決定、またそのほか公有水面埋立法等の個別法に基づきましてアセスをやっておるところでございますし、地方公共団体におきましては条例要綱に基づき推進しておりますことは、先生指摘のところでございます。  そこで、その円滑な実施のためには、国・地方を通じてある程度手続等が整合性がとれたように行われることが大事ではないかという御指摘でございました。同一の事業閣議決定要綱条例等がございまして、それが二重に課されるということは不合理でございますし、また、両者の手続が大きく異なっていることも均衡を失することになるわけでございます。  そこで、この閣議決定要綱では、地方公共団体に、閣議決定要綱趣旨を尊重いたしましてこれとの整合性を配慮するように要請しているところでございますし、一方、地方公共団体が定めた環境影響評価条例要綱におきましても、国等が実施する対象事業についてはその取り扱いについて国との協議によることとするなど、国の要請に適切に対応しているというのが一般的でございます。  そこで、国及び地方の環境影響評価の運用につきましては、このように両者間で調整を図りながらやってきているということで、今のところ整合性は図られているというぐあいに考えますけれども、それが法制的に具備されているのかどうかという先生の御指摘もあろうかと思います。今後とも、この運用、またやり方等を含めまして十分配慮していく必要のある問題だというぐあいに考えております。
  238. 大野由利子

    ○大野(由)委員 整合性があるなどということは、これはもう断じて言えないのではないか、そのように思うわけでございます。  それから、アセスの三原則、一応この三つが必要じゃないか、そのように言われでいるわけですが、一つは学術性、また中立性、透明性、公開性とも言えると思いますが、こうしたものがなければ本当に信頼されるアセスと言えないのではないか、そのように思うわけでございます。  現在行われている環境アセスに、こうした面が確立されていると自信を持っていらっしゃるかどうか、長官の御意見を伺いたいと思います。
  239. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生今三つの原則、学術性、中立性、透明性ということをおっしゃいました。  この用語については、人によってあるいは使い方が変わってくるかと思いますが、先生の御指摘になりました。語を使わせていただきますれば、学術性、中立性につきましては、これは要するに信頼性の高い環境影響評価実施を確保しなければならないということを意味しているのだというぐあいに理解できるわけでございます。  そのため、現行環境影響評価信頼性を確保するための措置といたしましては、環境影響評価に係ります調査予測評価は、既に得られている科学的知見をもとにいたしまして、対象事業ごとに技術的方法を定めた指針に従い、客観的に実施していることがまず挙げられるわけでございます。また、指針に基づき作成されました準備書評価書は、関係都道府県知事、また免許権者による厳正な審査によりまして、個々にその信頼性をチェックすることになっているわけでございます。  三つ目の透明性につきましては、これは住民関与手続を通じて図られるというぐあいに考えておるわけでございまして、住民関与手続につきましては、現行環境影響評価制度におきましては、準備書の公告・縦覧、説明会の開催、関係住民による意見書の提出、それから評価書の公告・縦覧というものを決めておりまして、関係住民環境影響評価手続に参加するとともに、環境影響評価に関する情報が提供されているというぐあいに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、環境影響評価を適正に推進するためには、こういった信頼性を確保していくこと、また住民関与手続の円滑な進行も極めて重要であると考えているわけでございます。手続的にこういうことを用意しているわけでございますが、その内容の充実を図っていくことも大事だというぐあいに考えております。その方向に向かって努力してまいります。
  240. 大野由利子

    ○大野(由)委員 内容の充実が問題ではないか、そのように思うわけでございます。  事業環境に対する影響調査評価する学術的、科学的な手法そのものの確立もございます。それから調査評価手続のあり方というものを形づくっていくこと、また、一体だれが調査評価をするのか、調査評価した結果、事業にどう反映させていくことができるのか、事業の決定等に反映させていくことができるのかどうか、この辺についてのルールが必要ではないか、そのように思うわけですが、この点についていかがでございましょうか。
  241. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 アセスを行うに当たって、事業者準備書等を書面にすることになっているわけでございますが、具体の調査予測評価につきましては、先生指摘になりましたように、既に得られている科学的知見によりまして、対象事業ごとに技術的方法を定めた指針に従い、行われていることでございまして、客観性は保たれているというぐあいに考えるところでございます。  また、作成された準備書は、関係地方公共団体及び免許庁審査を受けているところでございます。国における審査は、専門のスタッフにより厳正かつ慎重に行われていると理解しておりまして、必要な場合には文献調査や聞き取り調査を行うなど、学識経験者知見を活用することにしているわけでございます。  先生の御指摘になりましたのは、地方公共団体におきまして知事がそれを審査するに当たって、第三者機関の意見等を聞くというような手続をとっていることを指しているかと思います。そういうことをやりますことも一つの工夫であると思いますし、また私どもも、そういう科学的知見を持った人間また専門のスタッフにより、それらを審査するというようなこともその一つだと思いますが、いずれにしても、先生おっしゃるように透明性、中立性に関すること、また信頼性を高めていくことは重要なことだと思っておりますので、その面に関する施策充実というものは図っていく必要があるというぐあいに考えております。
  242. 大野由利子

    ○大野(由)委員 現行アセス事業者事業に取りかかる直前に行われているという実情がございます。また、アセス実施する側とまたそれをチェックする側、それが同じ自治体がやっている、事業の主体者とアセスする側、全く同じところがやっている、こういうことで、とてもじゃありませんけれどもチェック機能など働くはずがないじゃないか、そういうことでございます。  また、もっとひどいのは、建設事業を続けながらアセスを行っている、そういう実例もございます。このような実情を放置しておいて、環境基本法の理念を実現できるのかどうかということについて伺いたいと思います。
  243. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘になりました地方公共団体の例では、事業者ということになると県知事ということになって、事業をやる人間と審査をする人間とが同じになってしまうじゃないかという御指摘もあったかと思います。  この点に関しましては、先ほども御説明申し上げましたように、県におきまして環境影響評価を行うのは確かに事業部局でございますが、その調査等に当たりましで作成された準備書は、県におきましては環境部局がそれを審査するということをやりまして、私どもも時に応じて御相談がございますれば、そういうことで助言をしたりなにしたりしているところでございまして、その客観性につきましては県当局でも非常にそれは苦労して、適正にチェックをしながら環境アセスメントをやっているというぐあいに私どもは理解しているところでございます。  さらに、現在の環境基本法における考え方で本当にアセスがうまくやっていけるのか、本当に環境基本法はそれらに対応できるのかというような御指摘でございました。  第十九条におきましては、「事業実施に当たり」ということで、それは事業の特質にかんがみまして、アセスをやるいろいろな段階というのはあろうかと存じますが、それに対応できるように十九条は法文を作成したところでございます。  さらに、一般的に事業を行うに当たりましては、事業者等が環境配慮を十分行うというようなことは責務として規定したところでございますし、さらに、国が環境影響を及ぼす政策を策定したり実施をしたりする場合には、環境配慮を行わなければならないということをはっきり書いたところでございます。  そういうフレームワークに従いましで、これから環境基本法のもとに政府の施策というものは構成されていくわけでございますから、私どもといたしましては、環境配慮はこの基本法のもとにおきましては従前よりはるかに充実した格好でこれから行われるようになるし、また、ならねばならぬということで、大いに努力したいというぐあいに思っているわけでございます。
  244. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今おっしゃったような努力規定で、果たして実効力が発揮できるのかどうかということが大変大きな課題ではないかと思います。国の手続では、アセスの作業を終わり準備書を作成した時点で初めてその事業計画を公表されているわけでございますが、これではもう一回戻ってやり直すということが困難につながるだけではありませんで、透明性、公開性というものに非常に問題がございます。  自治体では、もっと進んだアセスをやっているところがございます。初めにも申し上げましたけれども、昭和五十一年に地方公共団体で初めてアセス条例を制定いたしました川崎市では、一昨年環境基本条例をつくり、計画アセスを行うようになりました。計画段階で市の開発部局が環境面への影響などについて調査を行い、代替案も含めた資料をつくる、市役所の各部局でつくります環境調整会議に諮って妥当性を検討する、事業計画が決まると正式のアセスが始まる、こういうシステムをとっているわけでございますが、現在国でやっていらっしゃるアセス制度見直しについても必要ではないか、このことについて御意見を伺いたいと思います。
  245. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 御指摘の、いわゆる計画段階環境配慮についてどうするかということでございます。  これは事業実施段階での現行環境影響評価に対応するために、従来から事業者において適切に行うよう努力がなされてきたというぐあいに理解しているわけでございますが、環境基本法案におきましては、第八条第一項におきまして、事業者事業活動を行うに当たっての環境配慮のための必要な措置を講ずる責務を規定したところでございます。この規定に従って、今後事業者による計画段階での自主的な環境配慮がさらに充実される。これに基づきまして事業実施する段階になりますと、今度はアセスメントということになるわけでございまして、そういう意味では、二段階にわたってそういう配慮が行われるというぐあいに理解してよろしいかと思うわけでございます。  御指摘の、代替案を検討するようなためには、やはり計画アセスということが合理的ではないかという御議論でございます。環境保全対策のための代替案検討ということと、事業実施するに当たってそれの位置等を決める事業計画をつくるに当たっての代替案を検討する、この二段階があろうかと思います。  環境保全対策の代替案を検討するということにつきましては、現在の環境影響評価におきましても、予測評価を繰り返し環境保全対策の検討を行っているところでございまして、それは現行制度においても位置づけられているというぐあいに私ども考えております。  もう一つの、事業計画の代替案が検討される際の環境配慮につきましては、これは先ほど申し上げましたように、事業者の責務が位置づけられているところでございまして、今後この規定に従って自主的努力がさらに充実されることになる、その機運がこの基本法をつくることによって生まれ、それが充実されていくというぐあいに私ども考えているところでございます。
  246. 大野由利子

    ○大野(由)委員 現行では環境アセスは、実質的に提出された計画を一部部分修正をする、そういう状況にとどまっておりまして、全面的な計画の見直しというようには非常になりにくい、そういう現状がございます。持続可能な発展という環境基本法の理念に即しまして、環境影響を与えないような事業実施していくという、環境アセスがぜひ前に、一歩二歩大きく前進ができるような努力が必要ではないか、そのように思っております。  ところで、閣議決定によりますこれまでの、百八十二件ですか、そのように伺っておりますが、この中で環境庁長官意見を求められたのがどれぐらいあったか、御意見を伺いたいと思います。
  247. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 平成四年度末現在までに、先生指摘になりました、閣議決定要綱に基づきましで環境影響評価手続を終了しました件。数は、全体で二百十二件になっております。  平成四年度末現在で、環境庁長官意見を述べた事業は、このうち、東京湾横断道路、都市高速道路中央環状新宿線、川崎縦貫道路、第二東名・名神高速道路七区間、京都高速道路の計十一件でございます。  なお、環境庁といたしましては、意見を述べるというものではございませんけれども環境影響評価手続におきまして、知事意見を述べるに当たりまして環境庁に対し指導助言を求めてまいりますことから、その求めがあった場合においても、これに積極的に応ずることとしているところでございます。
  248. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今お話を伺っていまして、全体の五%ぐらいという状況でしょうか。  本当に今アセスメントが非常に、途上国を含めまして世界の常識という状況になっているわけでございますが、環境庁には、各省庁が所管する環境保企業務について強力な総合調整権が付与されておる。環境庁設置法の四条の二号にあるわけでございまして、環境庁長官には重要事項について関係閣僚に対する勧告権がある。また首相の指揮監督権を発動できる、そのような非常に大きな権限があるわけでございますが、実質的には非常にそれが十分に発揮をされていない。  何というのでしょうか、各省庁のいろいろなやりとりの中で、環境庁は御苦労をしていらっしゃるわけでございますが、ぜひ権限の強化とともに、また環境庁は権力の中で唯一反権力の役所である、これは三木武夫さんが田中内閣の副総理環境庁長官を務めていられたときにこのように発言をされているわけでございますが、環境庁は唯一反権力の役所なんだ、反権力というのは国家権力を内からチェックするところなんだということで、ぜひもっともっと大きな力を発揮していただきたいと思うわけでございますが、御意見を伺いたいと思います。
  249. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私ども環境問題の企画調整権限を持っている役所でございます。今回環境基本法を制定させていただきますと、環境行政全般にわたって、しかも基本計画を策定しながら、政府全体の環境政策につきましてより一層重要な役割を持たなければならない。私どもはそういうことを十分自覚しながら、先生指摘になりましたように、環境行政に携わる中枢にある役所といたしまして、国民の期待にこたえながら、環境政策の円滑、適切な運営のために十分努力していかなければならぬということを、ひしひしと私どもは感じているところでございます。
  250. 大野由利子

    ○大野(由)委員 先ほどもちょっと触れましたけれども環境アセスの結果として、実際事業が撤回になったという事態はほとんど例がないわけでございまして、特に国のアセス事業が撤回されたということは全くと言っていいほどない。その結果、アセスというのはまさに儀式化している、免罪符だ、アセスではなくて合わせメントだ、そのように批判をされている実態がございますが、このことについて御意見を伺いたいと思います。
  251. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境アセスメントが儀式化しているという御批判があるという御指摘でございます。  私どもは、絶えず謙虚に国民の声には耳を傾けながら、行政についての執行また改善に努力していくべきだというぐあいに考えておるわけでございますが、少なくともこの環境アセスメントというものは、環境に対する破壊ないし環境に対する支障を未然に防止する見地から行われるものでございますので、そのような機能が損なわれるような運営の仕方はやはり問題があるというぐあいに考えておるわけでございます。その意味からも、環境庁長官意見を述べるという制度があるところでございます。要綱におきましては、特に配慮する必要があると認められる事項があるときには環境庁長官意見を求めるということにされているところでございまして、認められるかどうかということは客観的な要件によるというぐあいに解釈されているところでございます。  そういうことも踏まえまして、私ども環境アセスメントが適切、的確に運営されるよう努力してまいりたいと存じでおります。
  252. 大野由利子

    ○大野(由)委員 条例とか要綱によりまして地方公共団体環境アセス実施しているというところは、先ほど四十二自治体しかないというわけでございますが、今こういう要綱なり条例を持っていない地方自治体に対しても、国は大変いろいろ開発事業に補助金を出したりしている実情があるわけですね。国が補助金を出しで、アセスが行われないで行われて、結果として大変地方の大きな環境破壊が行われている、そういう事業も実際には起こり得るわけでありますけれども、これについて御見解を伺いたいと思います。
  253. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 開発事業が国の補助事業である一定の要件に該当すれば、閣議決定要綱アセスをやらなければならぬということは当然のことでございます。ただ、先生が御指摘になりましたのは、それ以外のものであっても、環境に密接な影響、また、環境影響を及ぼすことがある事業であって、そういったような要綱ないし条例のないところにおいては環境破壊が行われることになってしまうのではないかという御懸念であろうかと存じます。  環境影響評価というものが環境未然防止する上におきまして非常に重要なものであるということの認識を、今回基本法におきまして、それははっきり書くことになったわけでございます。この基本法が成立することによりまして、やはりアセスが大事だというような機運地方公共団体におきましても一段と強くなってくるというぐあいに期待しておるわけでございまして、地方公共団体からそういうことが求められれば、私どもとしても大いに相談にあずかったり、また御助言等に努力してまいる所存でございます。
  254. 大野由利子

    ○大野(由)委員 アセスが重要であるということが位置づけられたとおっしゃるわけですが、確かにそのとおりだと思いますが、この法案のどこを読んでも、アセスをやらなければいけないんだなというふうには地方公共団体もとても読めないのじゃないか、そのように思うわけでございまして、ここで本当にアセス実施する方向に一歩踏み出すべき、もう少し明快なものがなければ、何のための基本法をつくるのか、つくっても本当に意味がないというと言い過ぎかもしれませんが、アセスが重要であるということを書いたからそれでいいだろうというのは、本当に今これからの環境の憲法と言われるような基本法をつくろうというときに、余りにもこれじゃ弱腰というか、どうしようもないのじゃないか。環境庁としてはここはもっと頑張って、ぜひもう一歩確実に前に進むという担保がとれる、そういうふうな法案にしていかなければ意味がないのじゃないかな。まさに今全世界的に見ましても、環境アセスメント法制化をやってない先進国というのは非常にわずか、日本は例外的な国になっているわけでございまして、基本法案の理念を実現するためにも、開発環境保全の面からきちっとコントロールする最低限が環境アセスではないか、そのように思いますので、アセスの重要性をうたったというだけでは、何ら持続可能な環境というものをここからは担保できないのじゃないか、そのように訴えさせていただきたいと思います。・  それからもう一点、アセス手続事業者に行わせる場合ですが、第三者機関による審査手続を行う必要があると思います。地方公共団体の多くは審査会を持っているわけですが、国は第三者による審査がない、内部審査にとどまっているということでございますが、透明性、中立性に問題があるのじゃないか、このことについて伺いたいと思います。
  255. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほどお答えしたところでございますが、おっしゃるように、環境影響評価につきましての評価が客観的に行われるということは非常に重要なことでございます。  そこで、科学的知見にまず基づいているというようなこと、それが的確に反映するように技術的方法を定めた指針に従って行われると同時に、さらに準備書が関係地方公共団体及び免許権者の審査を受けているというところをやっているわけでございます。国における審査は専門のスタッフによって厳正かつ慎重に行っているところでございますし、また、必要な場合に文献調査、聞き取りを行うなど、学識経験者知見を活用しているところでございまして、私どもはそういったような事柄を通ずることによりまして、やはり審査手続等につきましては客観性を向上させるための手だてというものをいろいろやってまいらなければならぬというぐあいに考えているところでございます。
  256. 大野由利子

    ○大野(由)委員 環境アセスメントと国際協力について伺いたいと思うのですが、日本の工場の進出、これがしばしば公害の輸出になっている、そのように指摘をされております。ODAは環境保全に資する援助であるということが求められているわけですが、国内の環境保全はもとより、海外取引を初めとする国際的な経済活動、特に途上国の環境破壊につながらないようにするということが我が国の大変大事な責務ではないか、そのように思うわけでございます。  バーゼル条約の締結によって有害廃棄物の越境移動を防止するという大変厳しい制限が課せられるようになりまして、国際的にも他国の環境破壊を戒めていこう、そういう制度が確立されたわけでございますが、日本は今、途上国に工場を設置したり大規模な開発事業をやる場合、どのようなアセスが行われているか伺いたいと思います。
  257. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 先生指摘のように、我が国のODAに基づく事業であれあるいは我が国の民間企業が関与する事業であれ、海外において事業活動をする場合にその地域の環境保全上の支障を生じないようにするということは極めて重要だというふうに私ども考えております。  そこで、今回の環境基本法案におきましては、その三十四条におきまして、我が国が実施します国際協力に当たっての環境配慮、それから海外における事業活動に関するいわゆる環境配慮につきまして所要の規定を定めたところでございます。  先生先ほどちょっと環境アセスメントというふうなことを言われたように思いますが、先生の御指摘がもし海外で行われる事業について環境アセスメントというような制度実施を直接義務づけるような制度を設けるべきだという御趣旨であるとすれば、そのような制度を我が国の法律に規定することは相手国の主権を尊重する見地から適切でないと考えますが、今回の基本法案におきましては、先ほど申し上げましたように、三十四条において海外での環境保全するような配慮の強化を期して規定をしたものでございます。
  258. 大野由利子

    ○大野(由)委員 おっしゃったように、三十四条の中に、「地球環境保全等について配慮するように努めなければならない。」このように今回の基本法の中にございます。非常に弱いというのでしょうか、消極的というのでしょうか、こういう条文であってはならない。一応の努力を、配慮するようというのじゃもう無責任きわまりないのじゃないか、そのように私は思うわけです。地球環境保全に本当に責任を持つという、もっと積極的な、そういうものがこの条文からはとても読み取ることができないわけです。  それともう一つ、海外ではその国の主権の問題にかかわる云々みたいなお話がございました。日本は、我が国国内でさえ環境アセスメント法制化がまだできていない国でございますから、まして海外へできない状況であるということは当然でございます。しかし、日本の国内で今閣議アセス、また、いろいろ個別法アセス、また、それぞれ条例等によって行っているアセスと同様、海外でも本当に日本の国内と同様に、その国の環境に配慮した開発というものが一定の枠組みの中で行われなければならない、それがどうして主権を損なうことになるのか、ちょっとおかしいのじゃないか、そのように思いますが……。
  259. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 先ほど申し上げましたことをさらに敷衍して申し上げたいと思うわけでございますが、我が国のODAであれ、あるいは先ほど申しましたように、我が国の企業が関与して外に事業をするにいたしましても、その仕事はすべて主権国家であるよその国の中でやっておるわけでございます。そのよその国はよその国なりの法制がありますし、いろいろな制度があるわけでございます。その制度の中にのっとって、私ども日本の政府の資金ないしは民間の資金、民間が関与する事業がなされているわけでございます。  そういう中で事業が行われますので、私どもそういう進出先での国の主権というものを尊重しまして、努めるということにしたわけでございまして、これは決して、私どもが何か後退をしたとかそういうことではないというふうに考えているわけでございます。
  260. 大野由利子

    ○大野(由)委員 いずれにいたしましても、この三十四条のような「地球環境保全等について配慮するように努めなければならない。」このような弱い条文では、日本が地球環境保全のために本当に責任を持って、これから環境立国として頑張っていくんだ、そういう姿勢はとてもうかがうことができない、そのように思うものですから、ぜひ、この点についても責任を持った対応ができるようにお願いをしたいと思います。  時間がございませんので、もうちょっと伺いたいところがほかにもあるのですが、最後に一言だけ、経済的手法の件でございますが、今回環境税につきましても、ECとかOECDにおいて、いろいろ考え方について述べられているところでございますが、このことについてちょっと伺いたいと思います。
  261. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生御説明になりました、OECDから経済的手法に関する報告書がことしの三月に出されております。  これにつきまして若干御説明申し上げますと、OECDは一九九一年に環境委員会閣僚レベル会合におきまして、種々の経済的手法について分析を加えたガイドラインを含む経済的手法の利用に関する勧告というものを採択しておりまして、こうした中で一昨年から環境税に関する検討が進められておりまして、ことしの三月に報告書が公表されたところでございます。  報告書の内容は、直接加盟国に対し何らかの義務を課すというものではございません。しかし、各種環境税の考え方、各国における経験または導入の方法、論点といったものについて広く整理を行ってレビューをしているところでございます。我が国を含めましたOECD諸国における環境税に関する今後の作業に有益な資料になるのではないかというぐあいに私ども考えております。  また、ECにおきましても、二酸化炭素排出削減のための炭素エネルギー税導入の検討が進められていることは聞いておるわけでございますが、経済的手法に関する特段の報告はまとめられたということは承知しておりません。  環境庁におきましては、これから個々の分野における具体的な環境税とか課徴金とかいった経済的手段の活用につきましては、それぞれの分野についての多様な対策を検討する中で、経済的措置についても検討していくことになるというふうに考えるわけでございますが、そういった際には、OECDの報告書も一つの重要な参考資料になるというぐあいに考えておりまして、これについては精密な勉強をしていく必要があるというぐあいに考えでおるところでございます。
  262. 大野由利子

    ○大野(由)委員 二十一条に経済的措置についてるる書かれているわけでございますが、まずこの第一項では、助成措置が書かれております。あめとむちのあめの部分が先に書かれておるわけでございますが、第二項で「環境への負荷の低減に努めることとなるように誘導することを目的とする施策」、こうありますが、これは環境保全対策の財源確保というよりも、汚染活動の抑制に重きが置かれている、そのように読めるかどうか、それでいいのかどうか、伺いたいと思います。
  263. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 二十一条第二項の経済的措置といたしましては、環境に対する負荷を与える活動を行う者に対しまして、経済的にそれをディスインセンティブを与えますことによりまして、そういう活動というものを減らしていくという施策を規定したものでございます。したがって、それはやはり環境に悪い活動を減らしていくという、先生の表現をかりますれば環境への負荷の抑制を目的とする措置について、この条項では規定したものでございます。  そこで、個別措置につきましては、先生指摘のようなもののほかに課徴金、デポジットも含まれることになりますし、例えば環境税というものが議論されます場合も、この規定そのものといたしましてはやはり環境への負荷の抑制を目的とする視点から考えておる規定である、こう申し上げることができようかと思います。
  264. 大野由利子

    ○大野(由)委員 私は、安易な大衆課税は絶対やるべきではない、しかし、汚染を抑制することを目的とするという意味での国民の皆さんのコンセンサスを得られるために、やはりいろいろ幅広く議論をしていくということは大変大事なことではないか、汚染者負担というものを明確にしながらこれを幅広く議論をしていく必要があるのではないかと思いますが、環境庁の今後の方向について伺って、最後の質問とさせていただきます。
  265. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生まさに御指摘のとおりでございまして、経済的措置に関しまして負担を課す措置につきましては、これはやはり国民の負担に関する問題でございます。したがって、そのような政策をとるかどうかということにつきましては、それが意図する目的に比べて効果の達成ぐあいはどうであるかとか、それが経済に与える影響、また国民各層の所得に与える影響等というものを十分研究する必要があると同時に、いわゆる負担の問題でございますから、それは国民的に理解と協力が得られる形でなければそういう政策というのは導入できないわけでございます。そういうことにつきましては、十分慎重に議論した上で、導入するかしないかということを国民的な議論の中で議論し、判断していくべき問題であるというぐあいに私ども考えておるわけでございます。  なお、その際に、経済的措置でございますから、歳入が付随するという問題があるわけでございます。これについては、歳入還元をするとか、そうではなしに環境目的に使っていくべきかという議論もあろうかと思いますが、そういう議論につきましては、やはり財政的な議論というものを同時に行わなければならない問題を含んでいる課題であるということもあろうかと存じます。
  266. 大野由利子

    ○大野(由)委員 以上で終わります。
  267. 原田昇左右

    原田委員長 次回は、来る二十七日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四分散会