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1993-05-26 第126回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年五月二十六日(水曜日)     午前九時三十二分開議 出席委員   委員長 伊藤 公介君    理事 小里 貞利君 理事 狩野  勝君    理事 古賀 一成君 理事 鈴木 宗男君    理事 上原 康助君 理事 土井たか子君    理事 東  祥三君       新井 将敬君    小渕 恵三君       奥田 敬和君    坂本三十次君       中山 正暉君    細田 博之君       松浦  昭君    宮里 松正君       山口 敏夫君    秋葉 忠利君       井上 一成君    遠藤  登君       川島  實君    高沢 寅男君       藤田 高敏君    遠藤 乙彦君       神崎 武法君    古堅 実吉君       和田 一仁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 武藤 嘉文君  出席政府委員         法務大臣官房審         議官      森脇  勝君         外務大臣官房審         議官      津守  滋君         外務大臣官房外         務参事官    小池 寛治君         外務大臣官房文         化交流部長   木村 崇之君         外務大臣官房領         事移住部長   荒  義尚君         外務省アジア局         長       池田  維君         外務省中南米局         長       寺田 輝介君         外務省経済局次         長       林   暘君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 丹波  實君         外務省国際連合         局長      澁谷 治彦君         文部省初等中等         教育局長    野崎  弘君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    成田 一郎君         法務大臣官房審         議官      古田 佑紀君         法務省刑事局刑         事法制課長   倉田 靖司君         外務大臣官房審         議官      小西 正樹君         外務大臣官房外         務参事官    上田 秀明君         文部省初等中等         教育局高等学校         課長      富岡 賢治君         文部省高等教育         局企画課長   喜多 祥旁君         文部省学術国際         局留学生課長  西澤 良之君         厚生省児童家庭         局母子福祉課長 冨岡  悟君         外務委員会調査         室長      黒河内久美君     ————————————— 委員の異動 五月二十六日  辞任         補欠選任   新村 勝雄君     遠藤  登君 同日  辞任         補欠選任   遠藤  登君     新村 勝雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  児童権利に関する条約締結について承認を  求めるの件(第百二十三回国会条約第九号)  みなみまぐろの保存のための条約締結につい  て承認を求めるの件(条約第一〇号)  児童権利条約に関する件      ————◇—————
  2. 伊藤公介

    伊藤委員長 これより会議を開きます。  児童権利に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。狩野勝君。
  3. 狩野勝

    狩野委員 児童権利条約の前に、カンボジア問題を一点だけ質問いたしたいと思います。  国連カンボジア暫定統治機構が組織し、二十八日までの日程で実施されているカンボジア制憲議会選挙は、二十五日、固定投票所での投票を完了したわけでありまして、あと移動投票でございますが、散発的な投票妨害がありましたものの、大きな混乱もなく大変安堵いたしておるわけでもございます。投票率も、明石UNTAC特別代表選挙成功ラインに挙げた七〇%を超える八五%台になったようでもあります。これはカンボジア人の、選挙を通じての平和や民主主義の希求のあらわれであると思います。  私も、かつて平和時にカンボジアを訪問したことがございますが、あのアンコール・ワットを中心としたクメール文化を目の当たりに見たわけでございますが、二十八日までの投票が最後まで混乱がなく、大きな紛争が生じることなく民主カンボジア国家が樹立されますことを、平和国家として歩み出すことを心から期待するものでございますが、選挙終盤を間近に控えての現時点での外務大臣の所感をまずお伺いをいたしたいと思います。
  4. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今お話しのとおりで、カンボジア皆さんは、二十一年ぶりに迎えた総選挙自分たちの手で非常に民主的なルールのもとに選挙を行い、そしてそれによって新しい国づくりができる、これに対して、国民のほとんどの方々が大変それに意欲を持って、多少情勢的には不安な情勢があっても投票所へ赴かれた。私はその姿を見て、同じ人間として、日本は非常に恵まれたる国でございます、民主的な国でございますが、同じアジアの、カンボジアの国の人たち民主国家を目指しておられるという姿を見て、本当に私どもは何か心を打たれるものがございました。今日まで御努力をなさいましたUNTAC皆さんあるいは日本ボランティア、あるいは協力隊員、また、世界協力をされている人たちに対して心から敬意を表したいと思います。  今後はどういう形でいくだろうか、こういうことでございますけれども、やはりせっかく民主的なルールで行われたわけでございますから、この選挙の結果が尊重されて、民主的なルールのもとに制憲議会が発足した後新しい政府がつくられていくことが非常に望ましいと私は思っております。  そのような形がうまくいくように、これからともUNTACがどういう形でそれをバックアップしていかれるのか。あるいはまた、これからのいろいろの国づくりがスムーズにいくためにどうしたらいいのか。国際的にお手伝いすることがあるのかどうか。あるいはまた、新政府が発足するまでにおきましても、ああいう形で内戦が長く続いたわけでございますから、相当民生部分では直さなければならないところがたくさんある、支援をしなければならないところがたくさんあると思います。そういう意味では、制憲議会が発足するころ、いわゆる新しい政府ができるまでの過程においても、場合によれば国際会議を開く必要があるのではなかろうか。この点は日本としても、そのような国際会議を開くかどうかについて関係国と今少しずつ話し合いを始めている、こういう状況でございます。
  5. 狩野勝

    狩野委員 日本人の私は、文民警察官あるいは選挙監視員は本当に不自由な中を耐えながら大変よくやっているなと頭の下がる思いであります。例えば選挙要員は、投票所学校やパゴダ、寺院に宿泊しながら、食べ物はレーションという軍用携行食糧を食べているということでもございます。どうか、その安全確保対策はもちろん、健康管理等に万全を期され、終了後の早期帰国を含めまして、また、今お話しのように復興援助策にもこれから最大の配慮をされますことを要望いたしたいと思います。  続きまして、児童権利に関する条約に関して質問いたします。  この審議は本委員会で既に二十数時間という長い時間をかけて真剣に討議、審議されてきたところであり、その重要性については全員異議のないところでもあります。こういう中で、問題は、議論過程をずっと聞いておりますと、要は、この解釈運用をぜひとも正しくPRしていただきたいなと私は思うわけでございます。その施策を強く求めたいと思いますが、その前に、私は前も実は質問したのですが、学校教育における国旗国歌取り扱いについて再度質問いたしたいと思うわけであります。  その第一点は、前にも質問したのですが、重ねて念を押したいのですが、この条約に関連して、子供意見表明権を明記しているんだから、日の丸・君が代の指導をすると書いてある新学習指導要領そのものに対して意見を言えるはずだという議論がいまだあるわけでございますし、きのう、二、三、幾つかのといいますか、ある政党の新聞等を見ますと、そういうことが書かれているわけでもございますが、私は、当然これは間違っておる、このように思いますので、重ねて御所見をお伺いいたします。  第二点は、この際、条約に直接関係と申しますか、新たな視点のもとであえて要望指導願いたいことは、学校教育における国旗国歌取り扱いについてより正しい理解と、これを尊重する態度を育てるよう質問要望をしたいわけでございます。  これからの国際社会の進展を考えるとき、二十一世紀を担う子供たちは、日本国民としての自覚と国を愛する心を持ち、将来国際社会において信頼され尊敬される日本人として成長していくことが期待されているのであります。そのために国旗国歌について正しい理解とこれを尊重する態度を育てることは極めて重要だと私は思うからであります。  かつて、財団法人日本青少年研究所による日米高校生意識調査によりますと、我が国高校生は、諸外国国旗国歌に対して敬意を表する態度が極めて乏しいとの報告がなされております。この調査結果を見ても、学校教育において、子供たち国旗国歌を尊重する心や態度をしっかり身につけさせることが必要であると考えるのであります。その意味から、新学習指導要領において入学式卒業式における国旗国歌取り扱いを明確にしたことを私は高く評価するものでありますが、国旗国歌学校で教える意義についてどのようにお考えか、御所見をお願いをいたしたいと思います。文部省
  6. 富岡賢治

    富岡(賢)説明員 最初の御質問の件、第一点でございますけれども条約の十二条一項は、その児童自己個人に関するすべての事項について自己意見を表明する権利を認め、その意見について相応に考慮されるべきとの理念を一般的に規定しているものでございまして、児童意見を無制限に認めるものではないところでございます。  また、国が、全国的に一定の教育水準を維持して教育機会均等を確保するため、学校教育法等に基づきまして定めます学習指導要領は、児童個人に関する事項とは言えないわけでございまして、条約の十二条一項に定める意見を表明する権利の対象となる事項ではないというふうに理解しているわけでございます。  それから第二点目の、国旗国歌の正しい理解と尊重する態度を教えるべきではないかとの御意見でございます。  文部省におきましては、従前から、学校教育におきまして国旗国歌に対します正しい認識を育てることは極めて重要であると考えて、国旗国歌の適正な取り扱いについて指導してきたところでございますが、特に平成元年告示学習指導要領におきましては、国際社会に生きる日本人を育成する観点から、国旗国歌指導の充実を図ったところでございます。また、入学式卒業式などにおきましては、「その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」ということで示したところでございます。  今後とも、さまざまな機会を通じまして、国旗国歌の適正な取り扱いについて一層指導してまいりたいというふうに考えております。
  7. 狩野勝

    狩野委員 一部でありますけれども国旗国歌を否定したり、例えば、国を愛するということは悪だと言わんばかりの教員がいたり、国を愛する心など学校で口にしますと、まさに四面楚歌というような教育環境が実は一部にあるやに聞いておるわけでございます。中には立派な教職員のいることも私も多数知っておりますけれども、最近、子ども権利条約ということで、その名称について多数はがきも参りますし、あるいはまた、小選挙制反対だというはがきがいっぱい来ますけれども、その中で、多いからというのじゃないですけれども切手を張らずに、自分の主張だけはよく聞け、国民の声に耳を傾けよ、国民の声を聞けなんて堂々と書いてありながら、しかし切手を張ってない、そういうのが実は最近、現実に幾つか来ている。私は、非常識も甚だしい。数が多ければ実は落ちたということでなくして、不注意と同時に、大変これ——見ると、それ、大体日教組、何とか教職員組合。そういうのがうちに数枚来ておりましたけれども、今もここに一つ持ってきておりますが、こんな非常識な先生もおるということです。そういうことは別といたしましても、ひとつ国旗国歌の正しい理解によって、世界の中の日本としての資質を子供たちが養うように一層努力を期待をいたしたいと思うわけであります。  もう一点だけ、時間がもう余りないのですけれども、今まで議論して、各種の団体等で出しておる出版物を見ますと、やはり前にも要望しましたように、解釈によっては、解釈というものが私は一番大きな問題だと思いますし、一番やはり心配するのは、学校現場での混乱であります。どうかそういう意味で、先般も質問いたしましたけれども文部省は、ひとつ重ねてその正しい普及なりPRに特段の善処をしていただきたいし、また、その趣旨広報に当たっては、関係機関が本当に連携を密にしてその運用に当たってほしいということを申し上げたいと思います。
  8. 富岡賢治

    富岡(賢)説明員 この条約の中には、教育に関しまして重要な規定が多く盛り込まれております。これは学校におきます教育活動にも深くかかわるものでございますので、条約が批准されました時点で、文部省といたしましても、学校関係者に対します指導通知の発出、広報紙等による広報など、外務省とも連携いたしまして、積極的に条約趣旨、内容についての周知を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  9. 狩野勝

    狩野委員 以上です。
  10. 伊藤公介

  11. 古賀一成

    古賀(一)委員 狩野先生に引き続きまして質問申し上げます。  きょうの新聞、きのうの新聞、きのうのテレビ、御承知のようにカンボジア選挙の推移を見守る記事等でいっぱいでございます。そういうことで、私も総選挙が始まる直前にこの委員会の場で質問する機会を得たわけでございますけれども、この三日間の選挙を踏まえまして、再度外務大臣ほか政府当局に御質問申し上げたいと思います。  まず第一点でございますけれども、もう御承知のとおり、二十五日までのいわゆる固定投票所での投票率というものが八五%を超えるのはもう確実、こうなったことは今狩野議員の方からお話があったとおりでございますけれども、よくよく考えますと、日本において、民主主義のこれだけの経験があり、しかも戦争もない、平和でしかも民族が一つであるこの国家においてすら選挙投票率が三〇%とか四〇%とか、そういうのも珍しくない昨今でございます。  しかしながら、カンボジアにおいては、いわゆる何十年にわたる戦争の傷跡まだいえぬ中、しかも、国連あるいは国連ボランティア等々の諸外国のいわゆる国際貢献の力を得て行われるという極めて異例な選挙であったわけでございますけれども、一説によれば九〇%に迫るのではないか、こういうことでもございます。私は、民主主義と平和を求める国民がこれだけいて、これだけ切実な気持ちを持っていたということがこれによって証明されたし、その国民気持ちとともに、選挙のやり方を教え、あるいは有権者の登録票を交付するああいうUNのボランティアとかUNTAC、そしてまた選挙妨害勢力と対峙するUNTAC、そしてその選挙環境を、インフラを整備する我が国PKO等があった、こういうことでなかったか、かように思うわけでございます。  そこで、外務大臣、そういう非常に困難な状況の中で、私自身は予想外であったわけでございますけれども、これだけの投票率がまず得られたということに関して、今後のいわゆるカンボジア問題の見通し、まだ不明な点たくさんございますけれども、今の時点でのカンボジア問題、そして総選挙、これからのカンボジア問題の展開についての御所見といいますか、御感想をまずお伺いしたいと思います。
  12. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、必ずしも日本のようなこういう安全といいますか、全く平和ではないそういう社会の中で、とにかく二十一年ぶりに迎える総選挙自分たちの手で自分たちの国をつくっていくんだ、その第一歩である総選挙に参加したい、こういう気持ちがあのような高い投票率にあらわれたのではなかろうかと思いまして、本当にカンボジア国民皆さんのお気持ちを考えますと、まことに私どもは感慨深いものがございます。  そして、このような形が行われるように、その間において危険を冒して努力をされてこられた、今お話しボランティア皆さんあるいは選挙監視要員皆さんあるいは文民警察皆さん、これは何も日本だけではございません。世界から参加されているその他の、いろいろ協力されている皆さん、またUNTAC皆さん、大変御努力なさったわけでございまして、心から敬意を表したいと思います。  今後はそれではどういう見通しか、こういうことでございますが、これも先ほどお答えをいたしましたように、これはそういう皆さん気持ちなんでございますから、民主国家をつくっていくというその国民気持ちが素直に反映されるような国家がつくられていくということが非常に必要だと思います。  その意味においてこれからUNTACがどういう、いわゆるUNTAC役割は、これから制憲議会、それからそれによって憲法が制定され、そして新しい政府が誕生するまでがUNTACの仕事でございますけれども、その中でどういう役割をしていくべきなのか。これまではとにかく選挙をやるということに集中してまいりましたけれども、その中でどういう役割をしていくのかということ。  あるいはまた、新政府が発足するまでの間においても、カンボジア国内内戦によっても非常に荒らされているわけでございますから、皆様方の、例えばこの間うち聞いていても、水がないとか何がないとかという地域も非常にあるわけでございます。民生の安定に役立つようなことに対して、我々ができるだけ協力をしていく必要があるのではないか。そんなようなことで、場合によれば国際的に会議を開くのも必要ではないかなと思っておりまして、その辺の必要性を含めて、今私ども関係国打診を始めたところでございます。  何とかいい方向で、本当に民主的な、そして平和な国家が、二度と内戦が起きないような平和な国家ができ上がることを心から願っておるわけでございます。
  13. 古賀一成

    古賀(一)委員 ただいま、今後関係諸国とも相談をしてカンボジア和平実現のために国際会議等も考えておる、あるいは打診もし始めているという答弁でございました。私は、これは本当に重要なことだと思います。  せんだって質問申し上げましたときに、カンボジア和平の発端で日本イニシアチブを一時とったわけでございまして、この目的、それは別に総選挙成功させるために我が国PKO法案を通しあるいはこれだけの論議をしたわけではなくて、やはりアジアの中でのインドシナ問題、インドシナの中でのカンボジア問題というのがあって、ここに繁栄と安定をもたらすことが、アジアひいては我が国の安全にも資するのだという一つの思想といいますか、戦略といいますか、そういうことでこの動きは始まったものだと思います。  したがいまして、総選挙成功、これはあくまでハードルの一つでございまして、この総選挙投票率が高かったからといって、先ほど申し上げましたカンボジア和平という究極の目標が達成されるというわけでもないと思うわけでありまして、今後、いわゆる経済協力あるいは時宜を得た国際会議の開催についてのイニシアチブをとるとか、そういう努力というものがカンボジア和平に関する東京会議等々の成果を具体に実りあるものにするのだと私は思います。その点、今の大臣答弁、ぜひ実現へ向けての御努力を精力的にお願い申し上げたいと要望を申し上げておきます。  時間も大変限られておりますので次でございますが、PKO撤収論というものが、現在も実は予算委員会で行われているわけでございます。  この問題、実は中田さんのいわゆる襲撃事件高田警視殉職事件、あるいは各国のキャンプヘの砲撃事件等々で、いろいろな論議がこの数カ月間出てまいりました。私は、こういう一つ出来事が起こるたびに我が国内で撤収論というものが論議されるということ、これは本当にいかがなものかということを、実は横で見ておりまして痛感をいたしました。  まだまだ今後カンボジア情勢というのは予断を許さない、どういう不測の事態が生ずるかもしれないという危険を依然はらんでおるわけでございますが、少なくとも今の段階では、国際社会各国があるいは国連が現地に残留をし、あと一歩のところまで来たこの総選挙実現のために選挙の下支えをする、そういう状況の中で、これは仮の話でございますけれども、いわば撤収論にあったような、その指摘を受けて撤収をしておったらではどうだったのだろうというところまで実は思うわけでございます。  これは恐らく、あの段階日本一つ出来事をきっかけに撤収をするという挙に万が一出ておれば、日本というものは信用ならないという不信感だけではなくて、むしろ嘲笑というか軽べつの極印を押されたのではないかと私は思うし、私だけではなくて、あるいは与野党を超えて、あるいは老若男女、国民皆様方もそれは容易に想像されると思うのです。  そして、その撤収論というのはなぜ出たかといいますと、それを一回分析し直してみますと、いわゆる予想しない事態が生じた、あるいは予想しなかった任務が明らかになった、こういうことがございました。また、予想し得たかもしれないけれどもあえてそれを表に出して論議をしなかったという任務事態もあったと思います。あるいは、予想すべきだったのに予想せずに議論し得なかった、気がつかなかった、こういうものもあったと思うのですね。それで、こういう問題というのは、これが出たからでは撤収ということになるのかというと、私はそうではないと思うわけであります。  重ねて申し上げますけれども、このカンボジアヘのPKO派遣というのは、まさに日本が戦後初めてこういう世界情勢、そして日本の地位の中で国際貢献に踏み出した第一歩でございまして、当然未経験、未知の分野があって当たり前でございまして、そういうことからしますと、こういう事態事件が、あるいは任務というものが明らかになった時点で、撤収論ではなくて、これにどう対応すべきか、どこまで許されるかというものを前向きに論議をしていくということが私は国としてあるべき対応だと思うわけでございます。  そういう意味で、もう長々と申し上げませんけれども、私は、こうしたこの数週間あるいは一月の世論というか国会での論議を踏まえて、こういう提言を申し上げたいと思います。  今回のカンボジア問題を一つ経験として、紛争地域の現状やPKO活動の予想される形態とか、あるいはひいては国際社会の常識や感情といったものを総合的にもう一回、再度検証した上で、PKOを初めとするいわゆる法制の再検討というものをする必要がないのかということを痛切に感ずるわけでございまして、その点につきましての大臣の御所見をこの外務委員会の場でお聞き申し上げたいと思います。
  14. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 PKOの法律をおつくりになるに当たりまして、今御指摘のありましたような例えば文民警察であるとかボランティアであるとか、こういう方々安全対策というのが必ずしも十分に議論されておられなかったやに承っております。そういう面において不幸な出来事が起きたわけでございますので、私どもとしては、あのような不幸な出来事が今後二度と起きないようにするためにはどうしたらいいのかというようなことは、これからいろいろと国会でも議論いただき、国民皆さんの中でもお考えをいただき、時間をかけて法律のあり方についていろいろと御議論いただいていくということは、私は大変大切なことであろうと思っております。  たまたま法律にも三年先には見直しと書いてあります。今日からいえばもう二年数カ月で見直しということになるわけでございます。また、自公民の三党では、見直しをするに当たってはその一年前に協議機関を発足する、こういう申し合わせもあるやに承っておりますので、その辺のところを踏まえて今後どういうあり方がいいのかということに対していろいろの御議論を、今申し上げましたように国会においても国民の中においても御議論いただいて、本当によりよい法制が将来でき上がることが望ましいと考えております。
  15. 古賀一成

    古賀(一)委員 それでは質問を終わります。
  16. 伊藤公介

    伊藤委員長 上原康助君。
  17. 上原康助

    ○上原委員 子ども権利条約の審議が大詰めを迎えましたので、これまでの審議、質疑応答のやりとりなどもある程度参考にしながら、かつ、私たち社会党の立場もできるだけもう少し明確にしておきたい部門もありますので、勉強不足でなかなか自信はありませんが、質問をさせていただきたいと存じます。  まず、本条約の第七条に関してお尋ねをいたしますが、昨今、国際的にはボーダーレスとも言われており、日本も急速な勢いで国際化が進んでおり、外国とのかかわりがふえてきていることは御承知のとおりであります。特に人の移動については、我が国を問わず国際的な潮流となっております。国境を越えて人が移動するというのは日常茶飯事になされている。他方、そうした中では国籍という概念が最近ますます意識されるようになってきたのではないかとも思われます。  そこで、子供の国籍を取得する権利について、先ほど言いました本条約の第七条で規定をされているわけですが、私は、本条約趣旨は、どの子供にも国籍を与えていずれかの国の保護を受けることが大事であるという趣旨だと理解をいたします。  そこで、国籍を取得できないという場合、できないということは具体的にどのような不利益を受けるとお考えなのか、これは法務省かと思うのですが、まず御説明なり御見解を聞かせていただきたいと存じます。
  18. 森脇勝

    ○森脇政府委員 お答えいたします。  国籍を取得しておれば、その当該国によって、例えば外交保護権を受けられるといったような権利がございますが、いずれの国にも属しない、無国籍であるという場合には、そのような権利が享受できないということになろうかと思われます。
  19. 上原康助

    ○上原委員 それは当然そういうことがある。人間の生存権はもとよりですが、国籍がないということになると、実存権が無視されて、外交保護権あるいは国内的諸権利の確保あるいは保障が受けられないということは常識的に当然なんですね。だからこそ国籍問題は大変重要視をされて、かねがねこの国会でも国籍問題が議論をされた経緯があります。  そこで、現在無国籍とされている児童というか子供の実態について、法務省はどのように把握をしておられるのか、また、無国籍になる場合はどのようなケースがあるのか、具体的な事例でお示しをいただきたいと存じます。
  20. 森脇勝

    ○森脇政府委員 大変幅広い中での御質問でございますが、日本で生まれながら我が国の国籍法上日本国籍を受けられないあるいは無国籍となる場合というのを考えてみますと、外国人である父の本国が出生地主義をとっておるというような場合がございます。本国における居住条件等の一定要件を満たさないために父の本国の国籍を取得することができず、母の本国が父系血統主義の場合には、いずれの国籍も取得し得ないといったような事態が生ずるわけでございます。
  21. 上原康助

    ○上原委員 ですから、そのケースについては私もある程度わかっていますが、そのような境遇というか、状況下に置かれて無国籍となっている実態把握は、法務省なさっておるのですか。例えば、四歳以下の無国籍の子供というか児童はどのくらいいるのか、その実態掌握は、政府ではどこがやっているのですか。
  22. 森脇勝

    ○森脇政府委員 このような事案につきましては、市区町村長からの出生届の受理伺いがあった場合には、私ども法務省民事局としても当該事案の事実関係について把握することが可能でありますが、そのようなことがないということになりますと、把握することができないところでございます。このような事案について出生届がされない場合もあり、その実態を調査することはなかなか困難な実情にあるというのが実態でございます。
  23. 上原康助

    ○上原委員 実態把握が困難であるということは、これは出生届がないとなかなか掌握は難しいと思うのです。しかし、それを放置する、放置とは言わないまでも、実態把握の努力をしないということはいかがなものでしょうか。  マスコミなどの報道によると、一九九〇年末で四歳以下の無国籍児が七十四人いるという報道もなされているわけですね。こういう事実関係については調査しようとしないの、政府は。まずその点確かめておきたい。
  24. 森脇勝

    ○森脇政府委員 先ほど申し上げたとおりでございまして、その正確な実態を調査するということはなかなか困難な実情にあるわけでございますが、入国管理局の統計によりますと、四歳以下の全国の無国籍児の数が平成二年末で七十四人であるという統計が公表されております。
  25. 上原康助

    ○上原委員 こっちが指摘をしたら答える、そういう態度はどうかと思うのですが、そこで問題は、これは外務大臣もお聞き取り願いたいのですが、国際人権規約、いわゆる市民的及び政治的権利に関する国際規約にもあるように、児童権利に関する規定、第二十四条三項で「すべての児童は、国籍を取得する権利を有する。」となっているわけですね。加えて、本子ども権利条約でも、第七条二項で、締約国は、「国内法及びこの分野における関連する国際文書に基づく自国の義務に従い、」児童が国籍を取得する権利を確保するとして、これは締約国の義務までうたったものと解されるわけですよね。ですから、四歳以下の無国籍児が七十四人おるということが数字上も明らかになっておることは重大な問題です。  問題は、我が国は無国籍者をなくす方策をとろうとしているのか、国籍法に該当しない者は無国籍でもいい、こういう方策、方針なのか。ここは子ども権利条約と今指摘をした条文、国際人権規約との関係において非常に重要な点なのでぜひ明らかにしていただきたい。やはり無国籍であるということはいろいろな不利益が生ずるということを冒頭答弁なさったわけでしょう。私も指摘したわけでしょう。その点は政府のきちっとしたお考えをぜひお示しをいただきたい。
  26. 森脇勝

    ○森脇政府委員 お答えいたします。  まず本条約七条との関係でございますが、七条の一は、現在の国際社会では国籍を有しない児童の地位が不安定であることにかんがみまして、締約国が児童は国籍を取得する権利を有することを認める旨の原則を規定したものでありまして、締約国に対して、自国内で出生する場合を含めまして、自国内にいるすべての児童に対して自国の国籍を付与すべき義務まで課したものではないというふうに解されるところでございます。例えますと、血統主義をとる国の人が日本子供を出生した場合には当然に当該国の国籍を取得するわけでございまして、これについて我が国の国籍を付与するなどということは到底考えられないところでございます。  また、本条約の七条の2でございますが、締約国が国内法及び関連する国際文書に基づく自国の義務に従って今申しました同条1の権利実現を確保すべき旨を規定しているものでありまして、締約国に対して、自国内で出生する場合を含めまして、自国内にいるすべての児童が無国籍にならないようにする義務を負っている規定ではございません。また、権利条約につきましても同種の解釈がとられるものと考えております。  我が国の国籍法におきましては、先生承知のとおり、原則として血統主義をとっているわけでございまして、「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」はその子を日本国民とする、さらに、それの例外的な場合といたしまして、「日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。」はその子を日本人とする、こういう規定になっているわけでございます。
  27. 上原康助

    ○上原委員 条約とか人権規約の解釈論で今説明をしておられるわけですが、血統主義をとる、とらぬということも、これは国籍法の問題との関連でそういう見解というか主張も理解できないわけじゃない。  だが、私が問題にしたいことは、要するに日本は無国籍者をなくしていく、こういう国策というか国の方針として国籍問題、児童権利にかかわっていくのか、あくまで国籍法があるからそれは手続的にやっておればいいという消極的態度をとるのか。そうはいかぬという立場で私は質問をしているわけですが、外務大臣、どうなんですか。  この子ども権利条約とのかかわりにおいて無国籍者をできるだけ、救済と言うと妥当性を欠くかもしれませんが、なくしていく、国の方針としてできるだけ前向に子供権利を守る、保護していく、そういう姿勢をとるかどうかをここで明確にしておいていただかないと、これは単なる法務省の法律解釈上だけのことじゃないと思うのです。いかがですか。
  28. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今御指摘をいただいているこの条約の第七条を読んでおりまして、条約上義務ではないと思いますが、しかし、このような望ましい方向に対してはできる限り国内法においても努力をしていただくということは私は必要かと思っております。
  29. 上原康助

    ○上原委員 といいますことは、国としては、この子ども権利条約を採択するに当たって、無国籍者をできるだけなくする、今後そういう方針でいくと理解をしてよろしいですね。
  30. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これを読んでみまして、義務ではありませんが、そういう努力をしていただくというのはこの条文からは当然の方向だと思います。
  31. 上原康助

    ○上原委員 さっき申し上げましたように、法務省もぜひ実態の掌握ということをしていただきたい。  今義務かどうかということは、これはいろいろ法律を運用していく、適用していく立場と我々問題を指摘する側との価値観というか見解の若干の相違はあろうかと思うのですが、要するに血統主義の原則だけにこだわらずに、多様的というか多面的な運用あるいは措置によって子供の無国籍者をできるだけなくしていく、その統一認識というか統一見解でこれから国は子供に対する権利保障をやってもらいたい、そう強く要望を申し上げておきたいと思います。  今の件とも関連するのですが、これはマスコミなどでも大きく報道されたことですが、長野県の牧師さん御夫妻が無国籍の男の子を引き取って日本国籍の確認訴訟を起こして勝訴した判決がございましたね。これなども一つの例として、今後、今私が指摘をしたような点と関連づけてやっていく必要があると思うのですね。  そこで、もう一点は、冒頭にも言いましたように、最近、日本にも外国人労働者なり外国方々がいろいろと来ておられる。そうなりますと、当然そこには男女関係、あるいは婚姻外子というものも想定できるわけですね。ますますこれから国籍の問題であるとか子供の認知、そういう面では複雑多様になっていく。そこで、今指摘をしたようなケースが現在起きているのかどうか、そういった面を若干説明をしていただきたいと思います。
  32. 森脇勝

    ○森脇政府委員 先生指摘のとおり、最近我が国も非常に国際化いたしまして、外国人が日本に滞在する機会というのがふえております。そういったところから種々の身分上の問題も生じているように承知しているところでございまして、先生の取り上げられました国籍の問題もその一つであろうかと思われるわけでございます。  国籍の問題と申しますのは、国籍取得の要件があるかないかという点で、一つは厳しく、厳しくと申しますか厳格に規定すべきものという面がございます。さらに、帰化という制度がございまして、これによって無国籍者をなくする方向で機能させるといった面も考えられるわけでございます。基本的に無国籍者が出ないようにするというのは、我が国はもとより国際的にも各国でとられている施策でありまして、我が国においてもその方向で法律の運用をしていくべきものと考えているところでございます。
  33. 上原康助

    ○上原委員 そこで、労働省もおいでだと思うのですが、あるいはこれは法務省かもしれません。最近、出入国手続をとらずに、いわゆる一般的に言われている不法滞在者がどのくらいいるのか。これは後で資料として各国別に提出もしてもらいたいのですが、おおよその概要を説明していただきたいと思います。  その国籍取得の問題、日本国籍を取得する、あるいは国籍法で定められていることに該当すれば問題はないわけでしょうが、日本の法務省なり政府の見解として、胎児の認知による国籍取得ということが言われているわけです。この点について法務省はどのような見解をお持ちなのか。また、胎児認知の方法による国籍取得の事例はこれまであったのかどうか、その点もお示しをいただきたいと思います。
  34. 森脇勝

    ○森脇政府委員 胎児認知の場合についてでございますが、先ほど申しました出生による国籍の取得の要件といたしまして、「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」ということがございますので、日本人男性が胎児を認知するといった場合にはこれに該当して日本国籍を取得するというような形になっております。
  35. 上原康助

    ○上原委員 それは国籍法との関係じゃないでしょう。胎児のときに日本男性が認知をして、それに基づいて出生届をした場合は認める、認めた例はあるということですね。
  36. 森脇勝

    ○森脇政府委員 そういった実例もあるようでございます。また、胎児の場合に、認知の請求で後に認知が認められるという場合であっても、その効力がさかのぼりますので、やはり二条一号によって日本国籍を取得する、こういうように理解いたしております。
  37. 上原康助

    ○上原委員 その点はなかなか複雑といいますか、難しい面もあろうかと思うのですが、一応ケースとしてあって、それが既成の事例となって認知されているということであれば、法務省もそういう見解を了として今後やるというふうに理解してよろしいですね。
  38. 森脇勝

    ○森脇政府委員 今後ともそういう形で法を運用していく予定でございます。  なお、先ほど私ちょっと誤解いたしまして、出生後に認知の請求がなされた場合という例を出したわけでございますが、国籍法の規定は、専ら出生の時点で父または母であったかどうかという点の判断をするという形になっておりますので、日本人である父からの胎児認知がされた場合に日本国籍を取得するということのようでございますので、先ほどの発言を訂正させていただきます。
  39. 上原康助

    ○上原委員 では、逆の場合はどうなるのですか。胎児を父から認知された場合はやる、女性が認めた場合はどうなのですか。日本女性と外国女性の場合、どうなのですか。
  40. 森脇勝

    ○森脇政府委員 事例は日本人女性が出生した場合ということになるわけでしょうか。——その場合には二条一号そのままでございまして、母が日本国籍を有する場合ということで、子は日本国籍を取得する、こういうことになろうかと思います。
  41. 上原康助

    ○上原委員 そこで、せんだっても婚外子について、非嫡出子とか婚姻外結婚でできた子供さんのことについてのやりとりがあったわけですが、今もいろいろなケースを、いろいろなというか、二、三の事例を挙げながらお尋ねしたわけです。  国籍の取得についての外務省あるいは法務省の見解、特に法務省の見解は、どうも法務省は、人権擁護局というものをわざわざ置いて、文字どおり国民の基本的人権を守るという立場で国籍とか戸籍とか人権とか、そういうものをおやりになっているとは思うのだが、やりとりを聞いておっても、非常に消極的というか内向きの姿勢でやっているような感を否めないのですね。  ですから、本条約締結に当たって、先ほども指摘をしましたように、今後、無国籍の子供たちに対する実態調査、そうした子供の国籍取得のための相談窓口を設置するなり、地方法務局というか地方自治体とも連携をとりながら、もっと前向きな、無国籍をなくしていく、非常に困っている子供権利を保護するあるいは拡大していくという、オープンで民主的な窓口行政というものが必要じゃないかと私は思うのです。法務省のこの人権擁護局というのはどうも暗いイメージを受ける。むしろ逆の権力作用というのか、そういう面を取り締まるところへ重点が置かれているような感がしてなりませんが、今指摘をしたことに対する御見解、あるいは今後改善措置は必要でないのかどうか、お聞かせを願いたいと思います。
  42. 森脇勝

    ○森脇政府委員 ただいま先生から大変手厳しい御批判を受けたところでございますが、私どもといたしましては、種々の戸籍、国籍問題につきましても、各法務局あるいはその支局の窓口におきまして相談に乗るといったような業務をいたしておりまして、また、これについてのPR、そういったことが足りないというような実態があるとすれば、それについてもなお努力してまいりたいと考えております。決して後ろ向きと申しますか、規制的な方向でのみ行政を運用しているといったような印象を国民方々に持たれるようなことのないようにやってまいりたいと考えております。
  43. 上原康助

    ○上原委員 ですから、そのためには相談窓口を設置するなり、いろいろ前向きにひとつ政府全体としてやっていただきたい。  きのうも、本条約等の関連の特別決議について理事懇でいろいろ議論されたわけですが、これだけの重たい条約を実施していく、施行していくに当たっては、やはり連絡調整機関は必要なんだよ、これは後ほど触れますけれども。余りにも縦割りでばらばらでは、人権の本当の擁護、保障は難しいのじゃないかという感がしてなりません。これは外務省にも特に御留意を願いたい。  そこで、この際改めて伺っておきたいわけですが、本条約第二条には「その管轄の下にある児童に対し、」とある。例えば、我が国において国籍を持たない子供たちが四歳以下七十四人もいるという前提も一応ありますので、国籍を持たない子供たち、その他不法に、不法というか法律上手続をとってない、不法に滞在している子供たちにも本条約に掲げる権利の確保あるいは保障はなされるものと理解をしたい、認識したいわけですが、その面については、先ほども少し触れましたが、どのようにやっていくのか、これは外務省でしょうか、御見解を聞かせてください。
  44. 小西正樹

    ○小西説明員 お答え申し上げます。  先生が今お触れになられました第二条の「その管轄の下にある」という趣旨でございますが、「その管轄の下にある」という趣旨は、国家がその国内法を一定範囲の人、財産等に対しまして具体的に適用し行使する機能を意味すると考えられるわけでございます。したがいまして、「その管轄の下にある」というのは、締約国の領域内にある、その国の国籍を有すること、こういった理由によりまして、その国が自国の法令を適用し行使し得る対象となることをいうというふうに解されるわけでございます。したがいまして、こういったものについてはこの条約が適用されるというのが私どもの考えでございます。
  45. 上原康助

    ○上原委員 ちょっと全体的によく聞き取れませんでしたが、全部じゃなくして、部分的には適用されるというようにも受けとめられるわけですが、それではやはり相当不利益をこうむるということになるわけですね。  それでは、今の件とも関連するわけですが、そうした国籍を持たない子供たちがさっきの法務省の見解でもふえる傾向にある。また、まだ数は明らかにいたしませんが、不法就労者もふえている。当然その関係者の子供たちもおると思う。そういった子供たちの置かれている教育的あるいは福祉の状況は放置できない問題があると思うのですね、教育の面も福祉の面も。  私はこの間、沖縄にもかつて無国籍児童が相当いるということで、国際福祉相談事務所というのがあるので行って実態を聞いてみたわけですが、やはり無国籍の子供さんが今でも二、三人おって、一人は十四、五歳に達している、一人は七、八歳と言っていましたが、まだまだ教育も全然受けられない、学校にも行ってないというのですね。もちろん社会福祉とか児童手当とかそういうものもない。大変な不利益。それはアメリカとの関係、米人との関係においてはいろいろよくなっているけれども、その他の国々では、通信の問題とか相手との連絡がとれないといういろいろなハンディがあって、ケースとしては非常に少なくなっているけれども教育を受ける権利あるいは社会保障、福祉を受ける面においては国籍問題というのは非常に重要である、こういう話をちょっと聞いてきたのですよ。ですから、こういうケースは、これから国際化するにつれて新たな例として多くなると思う。そういうケースがあった場合は、教育上の問題、福祉の問題をどうなさるの。どういうふうに保護していくの。どういうふうに権利を保障していくの。お聞かせください。
  46. 野崎弘

    ○野崎政府委員 お答え申し上げます。  教育についてでございますけれども、これは従来からでございますが、在日外国人につきましても、希望する場合には公立の小中学校に受け入れているわけでございまして、その際には日本人と同一の教育を受ける機会を保障しているわけでございまして、今後ともそういう方針で臨んでいきたいと思っております。
  47. 上原康助

    ○上原委員 教育を受ける権利は無国籍でもあるの。今、そういう答弁ですか。
  48. 野崎弘

    ○野崎政府委員 これは、在日外国人につきましても希望する場合ということでございまして、権利というか、日本人と同一の教育を受ける機会を保障する。具体的には、例えば日本人について教科書無償という制度がございますから、公立の小中学校に行く場合に教科書について無償にするとか、そういうことを申し上げた次第でございます。
  49. 上原康助

    ○上原委員 ちょっとよく理解できないのです が、やはり学校に入学するには通知が、いろいろ戸籍上、国籍上も行くのでしょう。そういう手続がとられないわけですね、無国籍の子供がいる場合は。それを私は指摘をしている。  それと同時に、社会保障の面の権利はどうなるの。ですから、そういったことについては先ほどから、政府で実態調査をして、これは恐らく教育文部省でしょう、福祉面になると厚生になるでしょう、戸籍とかそういう人権的なものになるとまた法務省でしょう、しっかりした統一見解的なものを本当に持たないと、何か、教科書を無償で与えるとか、いや無国籍でも教育は受けられるんだ、これじゃどうだろうか。
  50. 野崎弘

    ○野崎政府委員 何回もお答えしておりますように、これは本人が希望する場合でございますから、当然本人からお話があるわけでございますので、その時点におきましては受け入れるということでございます。したがって、無国籍の場合におきましてもそういうことが、子供が確かにおるということが確認され、そして希望しているということがわかれば、それは当然受け入れるということでお話を申し上げているわけでございます。
  51. 上原康助

    ○上原委員 では、相手に通知とか、あなたは、希望であれば受けられますよと言うが、本人とのコンタクト、手続はどこの役所がやるのか。局長が答えている点は、そういう理解であればいいですよ。その手続はどうするのか。親御さんとかには担当者はどこでわかるのか。役所には窓口はあるけれども、そういうのを相手にしないわけです、もともと出生届もしていないのだから。戸籍がない、無国籍なのだから。それをはっきりさせてくださいよ。そういう取り扱いはどうするのか。厚生省、福祉の面はどうなっているのか。
  52. 野崎弘

    ○野崎政府委員 私どもとしては教育という立場でお話をさせていただいているわけでございますけれども平成三年一月に、公立の義務教育学校への入学を希望する在日韓国人及びそれ以外の日本国に居住する日本国籍を有しない者がそういう機会を逸することのないように、市町村教育委員会等から保護者に就学案内を発給するよう指導を行っているわけでございます。したがいまして、住所がわかれば当然この就学案内は届く、こういうシステムになっているわけでございます。
  53. 上原康助

    ○上原委員 ちょっと理解しにくいですね、これは。国籍問題というのがこれほど議論をされて、さっきの法務省の国籍法あるいは戸籍法、いろいろな手続を踏んでいなければ通常の義務教育とかそういう案内も通知も行かないわけです。しかし、もしあなたが言うようなケースで本当にカバーできるということであるならば、それはまた新たな見解として、我々は調査をするなり、実際にそういうことがあるのか実態を確かめますけれどもね。  では、社会保障の面はどうなっているのか。何で厚生省は答えない。いないのか。——厚生省はいない。それではいいです。後で聞きます。  文部省はさっきの局長答弁でいいのですね。もう一回確かめます。
  54. 野崎弘

    ○野崎政府委員 日本国民でありますと就学義務が課されておりますから、これは法令に基づきまして就学通知が行っておるわけでございます。そこは問題ないわけでございますが、それでは、それ以外の外国人についてどうかということが大変議論がございまして、私どもは、先ほど申し上げたように、希望すればそれを受け入れるという形でやっておるわけでございますけれども、しかし、そういう機会を逸してはならないということで、私どもが住所地などを少なくとも把握している限りにおきましては、就学案内等を出すように市町村教育委員会等を指導している、こういうことを申し上げた次第でございます。
  55. 上原康助

    ○上原委員 さっき韓国の方という表現か何かあったように思うのですが、韓国籍を持っておられる在日韓国人、そういうケースと、私が指摘をするのとは違っていますよ。その点ははっきり指摘をして、無国籍の子供さんの教育社会福祉はどうなっているかという立場から聞いておりますので、その点、もう一度政府でよく精査をして、後で土井先生あたりからまた御指摘があると思うから、それまで統一見解をまとめておいてください。  次に移りますが、本来、条約は国際的約束として、ある意味では多国間条約締結することになると思うのですね。ですから、その場合はできるだけ留保をしないで締結することが望ましいと私は考える。それが条約のあるべき姿を最大限に尊重していると思うのです。  その意味では、本来なら留保とか解釈宣言といったものなしで完全に批准するのが正当だと考えるのですが、なぜ留保や解釈宣言というものをあえて政府は持とうとするのか、決めようとするのか。このことについて、これまでもいろいろ議論が出ましたが、もう一度、私が指摘をしたこととあわせて、政府の見解をお示しをいただきたいと思います。
  56. 小西正樹

    ○小西説明員 お答えいたします。  一般論といたしましては、先生今御指摘のとおり、条約につきましては、留保あるいは解釈宣言等、そういったものを避けられるのであれば避けて批准するということが望ましいことは、これは御指摘のとおりでございます。  しからば、この条約にどういう理由で解釈宣言なり留保を付したのかということについてのお尋ねでございます。  まず留保につきましては、この条約の三十七条(c)というところがございますが、そこで「自由を奪われたすべての児童」、これは十八歳未満の者でございますけれども、それが成人、すなわち十八歳以上の者から分離されなければならないという趣旨を規定いたしております。しかし、日本におきましては、国内関係法令によりまして、このような自由を奪われた者は基本的には二十歳で分離することになっておるわけでございます。そういうことでこの規定に拘束されないという権利を留保するわけでございます。  それから解釈宣言でございます。二カ所ございますが、この条約の第九条の一というところで、締約国に対しまして、父母による児童権利の侵害または父母の別居等の特定の場合において、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として、児童の最善の利益のために必要であると決定する場合を除いて、児童がその父母の意思に反して父母から分離されないことを確保するように義務づけております。児童または父母の退去強制、抑留、拘禁、こういった、この条約の第九条の4において国がとり得る措置として認められている措置によって、結果的に親子の分離が生ずることは、これは妨げるものではない、わけでございます。  それから、同じ条約の第十条1でございますけれども、これは、出入国の申請を「締約国が積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱う。」ということを規定いたしております。この規定に言う「積極的」というのは、出入国の申請を原則的に拒否するといったような、消極的な取り扱いを禁じる趣旨でございます。また、「人道的」というのは、出入国に関する申請の受理から申請を通じた手続の中で、人道的配慮が必要と認める場合はこのような配慮を行うべきという趣旨でございます。また「迅速」というのは、この手続がいたずらに遅延しないように、取り扱いを適正に行うということを定めたというふうに考えられるわけでございます。  したがいまして、こういう「積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱う。」ということは、出入国の申請の審査の結果を予断し、拘束するものではないというふうに考えられるわけでございます。しかし、これらの点につきましては、文言上必ずしも一義的に明らかでないということから、将来解釈をめぐって問題が生ずることがないように、このような解釈を明らかにしておくこととしたものでございます。
  57. 上原康助

    ○上原委員 ですから、これは何回聞いても見解が大分違うので、あなたが言うように積極的、迅速的にやるということであるならば、留保や解釈宣言をしない方がむしろ子供権利は積極的に保障されるということに我々は理解をするわけで、そこが言っておられることとやっていることがちぐはぐなんだよな。その点は納得しがたい。本当に人権尊重というか、積極的に子供権利を保障していくという姿勢をお持ちなのか、どうも疑問なしとしない。  時間もだんだん少なくなりますので、次に、今のこととも関連しますが、本条約を批准するということは、我が国の人権尊重の歴史の中でも重要な出発点というか、あるいは経由点になるのではないかと私は思っております。私たちも、問題点は指摘をしますが、これを否定する立場はとっておりません。  そこで、今回、本条約締結に際して、条約実施のための国内措置については、新たな国内措置を必要としないとなっている。これも大変疑問であり、議論されましたね。しかしながら、行政や学校現場が、ますます複雑多様な状況にある子供たちの人格、人権を尊重しながら対応していこうとする場合を考えてみた場合は、やはり国内措置あるいは新たな法的措置というものは私たちは必要だと思うのですね。条約個々の細かい点を考えても、まだ国内法の整備が極めて不十分ではないかと思うのです。法律の裏づけが必要であるということは、この議論を通してもしばしば指摘をされてきたことなんですね、これは後で若干具体的に申し上げますが。  ですから外務大臣、そういう予算措置もしない、国内法の整備もしないということでこの権利条約が批准されても、施行されて、子供権利というものが十分に保障される、あるいはもっとよくなるということにはならない。これが、ただ国際的に、日本も批准しましたよ、仲間入りしたよというだけでは、私は物足りないし、非常に消極的な政府の姿勢だと言わざるを得ませんね。  もう一度、国内措置あるいは予算措置が伴わないで、この権利条約というものが十分に運用されていくという保障は、担保はどこにあるのですか。
  58. 小西正樹

    ○小西説明員 国内立法が必要なのではないかという御指摘でございますけれども、私ども、この児童権利条約上の権利というものは、我が国の憲法を初めとする現行の国内法制で既におおむね保障されているというものではありますけれども、この条約締結することにより、児童の基本的人権の尊重に対する国全体の意識を高め、一層その法的保護、福祉の向上等を図っていくという、そのきっかけとして我々として考えていきたいというふうに考えております。  また、予算措置につきましても、既に実施されている諸施策がございますけれども、こういった面についても、必要な予算については適宜確保していくということによって対応していくというのが我々の考え方でございます。
  59. 上原康助

    ○上原委員 今の件について外務大臣はどういう御見解ですか、改めて。これは単に役人が、既存の法的措置であるとか、あるいは予算を運用してというだけでは本当にできませんよ。これは政治の話だよ、外務大臣の。
  60. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今直接担当しておる事務当局が、現在の法体系でいいし、予算も何とか今の形でできるのではないか、こういう答弁であったわけでございます。これは、実際やっている人間がそう言っているのですからあれでございましょうけれども、しかし、実際条約ができ上がって、これでより児童権利が保護されていく中で、どうしても現在の予算ではまだ不十分である、実効性が上がらないというときには、当然政府としては考えなければいかぬと私は思っております。
  61. 上原康助

    ○上原委員 当然政府としては考えるということなんだが、釣った魚にはえさはやらぬという話もあるし、国際人権規約ができて十四年ですか、あのときも国内措置をやるということを盛んに言ったんだが、いまだに何もやっていない。これは後で土井先生がなさると思う。  そこで、少なくとも今後検討さるべき国内措置として、一つは、学校における子供意見表明権確保の徹底の問題。きのうも子供の声をテープで聞きました。本当にあれは氷山の一角だと思うのですね。どうしてああいういじめや、あるいは校則とか管理教育というものを徹底しようとするのか。大体、教育は明るくて民主的で朗らかでないといかぬですよ。じめじめしたところに民主主義も何もあるか。私は、これでも二十五年前に公選の教育委員を四年近くやったことがあるのです、本当に。だから、給食問題その他ある程度知っている。  大臣、やはり子供さんというのは締めつけちゃだめです、さっきいろいろな意見があったけれども。私は、基本は民主主義だと思うのですよ。なぜ復古主義をとろうとするの、教育のこういう権利の問題で。  だから、学校における子供意見表明権の確保の徹底、障害を持つ子供に対する教育権利、自由権などの確保と社会的援助、子供たちが豊かに暮らせる環境整備、教育環境あるいは住宅、公園などの生活環境。この問の参考人の保坂さんの意見なんか、まず子供はうんと泥んこで遊ばせなさい、そういう環境をつくるのが先決だと言っておったでしょう。朝から晩まで塾通いだ何だ、国歌や日の丸だなんてしょっちゅうがみがみやったんじゃ、あなた、個性も何もないですよ。この三つについてどうお考えなのか。  それから、国内法の関係は、先ほど来議論いたしましたように、婚姻外結婚による子供に対する差別の撤廃。法務省的に言うと、非嫡出子に対する差別の撤廃。それから、養子縁組における権限ある当局の許可制度。三番目に、児童虐待からの児童の保護のための立法措置。少なくともこういう面は、法的にも国内法を整備をするなり、あるいは新たな立法をつくるなり、そのための予算措置をやらないと、子ども権利条約を批准をしても、私は本当に子供さんの人権、人格を尊重しながら、個性豊かな教育環境とか人間育成というものは難しいと思うのですよ。  今指摘をしたことに対して、まとめて大臣の方からお答えを願いたいと思うし、先ほど必要があれば今後やるということでしたが、私たちは今必要性があると思うので、ぜひそれを早急に批准後は着手をしてもらいたい。
  62. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今お願いをしておる条約案が国会承認され、そして政府が批准をいたしました後、この精神が現在の法体系と整合しているのかどうかというのはチェックするのは当然だと思います。  そこで、これは外務省じゃないわけでございまして、今お話のあった三つの点、すべてそれぞれ役所が違うわけでございまして、その役所がこの条約に基づいて現法体系の中で十分であるというお考え方になるのか、あるいはこの条約に基づいて現在の法体制だけでは不備であるというのか、今上原さんは不備だ、こういうお立場でございますが、これはやはり現場を担当しておるそれぞれの行政当局がその辺は判断をし、必要とあれば法体系の整備をする、こういうことではなかろうかと思います。
  63. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  64. 伊藤公介

  65. 土井たか子

    ○土井委員 子ども権利条約について、今まで質問がずっと行われたわけですから、それを一つは整理をするということも念頭に置きながら、政府のお考え方、特に外務省を中心に、きょうは法務省それから総理府、文部省、御出席だと思いますので、お尋ねをしていきたいと思います。  まず最初に、外務大臣、だれでも子供時代はあるのですが、外務大臣子供の時代がおありになる。今、日本は大変物質的には豊かな国なのですが、その物質的に豊かな中でどういう価値判断というのが育成されていくかというのは、今の子供たちは二十一世紀になると大人になるわけですからね。二十一世紀のそのころを考えたときに、どういう人間像というのが考えられるか。私は、人権意識がしっかり身についた人であってほしいと心からこいねがっていますから、この条約に対して早く批准をということを言い続けてきたわけでもあります。  外務大臣は国際的視野をお持ちだし、いろいろなところにお出かけになりますから、外国子供たちもやはりごらんになる機会が多いと思いますが、日本子供たちについて、この条約締結してどういう方針で大臣としては臨んでいくことが大事だとお考えになっていらっしゃいますか。
  66. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 この条約は、人間の基本的人権を尊重する、当然児童もその享受の主体であるべきだというところから発足していると思います。  一体、二十一世紀はどういう人間を目指していくべきなのかということですけれども、私は正直、現在の日本の現状を見ておりますと、非常に価値観が多様化してきていると思います。これはこれなりに一つの方向かと私は思うのでございます。基本的人権というのはお互いに認められなければいけないけれども、同時にお互いが、自分だけの基本的人権ではなくて、やはり相手の基本的人権を認めるというのが私は社会の構成上必要だと思います。  そういう面において、これからどういう姿があるべき姿かといえば、お互いに、みずからの基本的人権も認められ、相手の基本的人権も認められ、その中から一つ国家観あるいは一つ世界観というものができ上がっていくのが私はやはり一番望ましい姿ではないかと思っております。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 教科書を読んでいるような感じが、ただいま承っていてするのですけれども、こういうのを口で説明するというのはなかなか難しい問題だろうと思うのですね。  私は先日、南アフリカに参りまして、あの南アフリカでは、子供たちが一本の鉛筆、一冊のノートについてもこれは非常に貴重なものだというのが行ってみてわかり、やはりぐっと胸に熱いものが込み上げるような思いがしたのですね。今日本が経済的には大国だということをしきりに言われるのですけれども、果たして人権という点からしたらどうだろうかということが常にこれは国際社会の中で、国際会議の中で問題になります。  例えば、私はお金の額が問題だとは思っておりません。しかし、ODA予算の中で子供にかかわる予算というのは一体どれくらい計上されているかというのをちょっと承ってみたい気がするのですが、いかがですか。
  68. 川上隆朗

    ○川上政府委員 ちょっとすぐ手元に数字はないのでございますが、私ども、例えば有償資金協力で小中学校の校舎の建設、それから病院の器材の整備といったようなことを当然やっておりますし、それから無償資金協力では小児病院、ネパールあるいはエジプトのカイロの小児病院あたりは有名でございますが、そのほかにも母子保健の分野等々、多岐にわたって無償資金協力をやってございます。  それから、技術協力におきましても、種々の技術協力をやっておりますし、最近、小規模無償ということで、例えばストリートチルドレン等々といった、これは金額的には多くございませんが、非常に草の根に行き渡る援助ということで相当いろいろ広範囲な援助をやっているつもりでございます。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 広範囲とおっしゃいますけれども、一体、どれくらいの額がどういう問題に充てられているかというのは、一回資料として出していただくことをここで要求いたします。うんとこの方面は考えていいと思うのです。これは考えていかなければいけないと思うのですね。  去年の六月にODAについての大綱が出ておりますけれども、あの中では具体的に子供ということが認識されていたかどうかということになってくると、ちょっとやはりその辺がもう一つ強く認識されていいのじゃないかと私自身は思っていますから、少額無償援助というのはあちこちでこれは非常に意義のある中身として感謝されているという実態も私は知っておりますけれども、ひとつ外務省としてはその辺、具体的にこれはODAの中で子供に対してということを念頭に置いて考えていただくということを計画としてきちっと持っていただきたい、これ、よろしゅうございますか。
  70. 川上隆朗

    ○川上政府委員 先生指摘の点でございますが、まずODA大綱につきましては、その中で「政府開発援助の効果的実施のための方策」という大項目があるわけでございますが、その十三項目目に「子供、障害者、高齢者等社会的弱者に十分配慮する。」という基本姿勢を打ち出させていただいております。これに基づきまして、先ほど申しましたような、今ちょっと若干の数字がございますが、子供ということで全般的にとらえた数字ではございませんが、例えば教育分野なんかにつきまして見ますと、無償資金協力では二百億弱程度の無償資金協力を毎年やっております。円借款は年によって数字に非常に振れがございますので必ずしも参考になりませんが、例えば元年度は百七十三億、二年度は三百八十九億といったような円借款が教育分野に出ております。  それから、子供関係で特に関係がございます保健・医療分野でございますが、無償資金協力につきましては、元年百二十一億、二年度百十三億、三年度百六十六億といったようなものが出てございます。そういうことで、子供を中心に据えた援助ということについては、先ほど申しましたODA大綱に基づきまして今後とも特段の努力をしてまいりたい、拡充の努力をしてまいりたい、かように考えております。
  71. 土井たか子

    ○土井委員 今は額をおっしゃいましたが、額を聞いているだけではもうひとつぴんと来ません。具体的に額の中身を明示したものを、先ほど申し上げたとおり資料として出していただきたい、そのことを要求いたします。  さて、本条約は、国会承認いたしますと批准手続をおとりになって、官報で公示されるわけです。官報に記載されるときに、「あらまし」ということでこの条約に対しての説明の文章の欄があると思いますが、どうですか。
  72. 小池寛治

    ○小池政府委員 土井先生指摘のとおり、条約を批准いたしますと公布いたします。その際、条約の正文と、日本語が正文でない場合には日本語の訳文を官報に掲載いたします。それでその際、「法令のあらまし」というのも先生指摘のとおりございます。
  73. 土井たか子

    ○土井委員 その「あらまし」というのは、この条約に対しての説明の部分だと思うのですが、私どもが手元にいただいておりますこの条約の説明書というのを見てまいりますと、一番最後のところに、先ほどの御質問にもありましたけれども、「条約の実施のための国内措置」とあって、「新たな国内立法措置を必要としない。」「予算措置は不要である。」こう書いてあるのです。  四十二条の、国民すべてに、特に子供に対してわかるように広報しなければならないという活動に対しては予算措置が必要です。それはお認めになっているのですから、説明のときにこの説明書のとおりお書きになるということは不適正だと私は思います。今までお答えになった答弁と違いますよ。この説明書にあるこの部分というのは訂正なさいますね。そうして、お答えのとおりに予算措置は必要だ、立法措置についても将来考えていく、そういう説明を「あらまし」という欄については官報で掲載されますね、これははっきり承っておきましょう。
  74. 小池寛治

    ○小池政府委員 お答え申し上げます。  まず、先生の最後の御質問の「法令のあらまし」にどういうことを記載するかということですけれども、「法令のあらまし」には条約の概要というものを記載することにしております。基本的には、閣議に提出しました、すなわち国会にも提出しました条約の内容、表現に基づいて、それが正確に記述されているので、それをよりわかりやすいような形で掲載することになっております。その中には「条約の実施のための国内措置」というのは該当しませんから、ここは「法令のあらまし」には入らないからと思います。  それで、御質問の「予算措置は不要である。」それから「新たな国内立法措置を必要としない。」という点ですけれども、正確に申し上げますと、この条約を実施するためには予算措置は不要である、この意味は、条約を実施するために予算措置が必要というのは通常どういう場合かといいますと、例えば条約を批准することによって分担金を支払わなければいけない義務が生じるとか、あるいは資金拠出を条約上義務づけられるというような際に、この条約を実施するために予算措置が必要であるというような文言を用いております。したがいまして、四十二条との関係ですけれども、それは国内において広報する義務が出てくるわけですけれども、それは既に外務省も含めまして予算制度を持っておりますので、その予算制度の中で実施することができるという趣旨でここに書いてございます。  それから、「新たな国内立法措置を必要としない。」という趣旨は、その前に書いてございますように、「なお、この条約の実施のためには、新たな国内立法措置を必要としない。」すなわち、条約を実施できないような国内法令が存在していないという趣旨でございます。もっとも、立法政策の見地から、関連する国内立法について見直すとかあるいはそのまま維持するということは、この条約の実施とは別の次元の問題でございます。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 これは、そうするとこの説明書の方を訂正していただかなければならなくなってきます。この後に「条約の実施のための国内措置」とあって二つ書いてあるけれども国内措置としてはこれと違う御答弁になってきているのですから、そうするとこの説明書自身は訂正をしなければならない、このように理解しなければいけません。それでよろしゅうございますね。
  76. 小池寛治

    ○小池政府委員 私の説明がちょっと舌足らずな面があったのかもしれませんけれども、「条約の実施のための国内措置」、二つ書いてあります。「この条約の実施のためには、新たな国内立法措置を必要としない。」すなわち、現在の国内法制度と照らして条約を実施するのに矛盾があるということではない、すなわち条約上の義務は現行国内法で条約違反の状況にはないという趣旨でございます。  それから、第二の「なお、この条約を実施するためには、予算措置は不要である。」ということは、先ほど御答弁申し上げましたように、いわゆる分担金とか資金供与とかいう、国際的に日本国家として他国に対して義務を負うという趣旨ではないということでございます。したがいまして、例えば広報のために新しい施策を講ずるとか、そのために予算措置をつくるというのはいわば別の次元の問題といいますか、ここには全く触れていないというふうに御理解願いたいと思います。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 これは詭弁じゃないですか。こういうことをやっていたら、こればかりで時間が本当に必要になるのですが、四十二条というのはこれは条約の条文でしょう。四十二条を実施するというのは、条約を遵守する、実施するということでしょう。実施することのためには広報に必要な費用、予算措置というのが当然出てきますよ。だから、そういう点からすれば、それはお認めになった御答弁が既に出ている。それは大臣の方が首を縦に振って素直にそのことをお認めになっていらっしゃる。それは当然ですよ、こんなこと。だから、それはもうこの説明からしたら、ちょっとこれは終わりの方の記載というのを訂正いたしますぐらい素直におっしゃったらいいんですよ。  それから——小池さん、もうそれはいい、その次にいきますから。  私どもには条約締結について承認を求めるの件の提案理由の説明というのをいただくのですが、承認を求めるというのは、これについて承認を求めると従来外務省はおっしゃってきたのです。これを見ますと「留保を付することが適当であると認められます。」という留保の問題だけがここに書かれていて、解釈宣言に対しては何ら述べられていないのですね。解釈宣言のところはどうなっているのですか。全然これはここにありませんよ。
  78. 小池寛治

    ○小池政府委員 先生既によく御承知のことでございますけれども国会にお諮りしております児童権利に関する条約締結について承認を求めるの件、それの「別紙」といたしまして、日本政府の留保について、その留保とともにこの条約締結することを承認していただくということで上げておるわけです。  なぜ留保を上げているかということは、これも先生よく御承知のとおり、留保というのは条約の一部の適用排除もしくはその修正を図るわけです。したがいまして、承認を求めているのは、日本が国際法上拘束される内容が留保の限りにおきまして排除ないしは修正されるということで、そういう拘束される内容について国会の御承認をいただいているということでございます。  解釈宣言につきましては、解釈宣言というのは、その条約解釈の中で複数の解釈があるとかあるいは解釈に幅があるときに、どういう解釈をするかというのをあらかじめ表明することでございまして、それは条約運用の一部をなすものでございます。  したがいまして、国会承認の対象としましては、留保は、これは留保つきの条約締結ということで承認の対象になっております。他方、解釈宣言につきましては、条約運用のことでございますから国会承認の対象ではございませんけれども国会の御審議の際にいかなる解釈宣言をする予定であるかということを国会に対して御説明申し上げている次第でございます。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 ここの提案理由の説明には入らないのですね。御説明は申し上げるけれども、この説明の中には入らない。  今の御発言を承っていて、私は留保ということに対しての御説明というのはちょっと違っていると思っているのです。条約を一部変更させるとか変質させるじゃないのであって、留保というのはその部分に対しては日本は行いませんということじゃないですか。これは、だから変質とかその辺に対して質を変えるということではない。その部分に対しては行わない、日本は批准しないということを意思表示しているのが留保という問題じゃありませんか。こういうことをやっていたら条約条約みたいになっちゃいますから、これは条約条約のときにたんまりやったはずであります。  今、解釈宣言については御説明申し上げるにとどまる問題だというふうなことをおっしゃいましたけれども、私も議事録をひっくり返して見てみましたら、留保という問題と解釈宣言という問題について、今まで外務委員会でこれの取り扱い方を質問し、御答弁が出ているのです。解釈宣言というのはわざわざこれを説明の中に入れなくていいなんということを先ほどおっしゃいましたが、園田外務大臣当時に、質問者は私でございますが、質問をして、園田外務大臣がお答えになったのは「解釈宣言が変更になったら、国内国内法の変更によって消滅する」という形になる場合が多いが、「国際的にはやはり宣言するとか通告するとか、日本がこの解釈はこのように変えましたということをよくわかるようにアピールするつもりで手続をやった方がいいと考えておりますから、」どのような手続をやったらいいかというのはもうしばらく研究させていただきますとおっしゃったままになっているのです、これは。  国内では、この解釈宣言についてもこれを変更するとか解除するというふうなときには国会に報告するということになっているわけでありますけれども、単なる説明をすれば済む問題を、なぜ解釈宣言というのは国会に報告をしたり、国際間においては通告をする手続はどのようにしたらいいかというのを研究しなきゃならないのですか。  これは、条約の本体からすると、さっきの御質問にもございましたけれども、留保にしたって解釈宣言にしたって、本体は本来考えていないことを行うのですから、手続の上ではよほどこれは国会に対してきちっとやっていただかなきゃならぬと私は思います。  そういう点からすれば、この提案理由の説明というのはどうも不十分な説明なんです。私はけちをつけているわけじゃありませんよ。国会条約承認権というのは非常に大事と思っているからであります。承認するかしないかを審議する審議権というのは非常に大事だと思っているからであります。だからこれは言っているわけであって、私の意のあるところを理解していただけると思うのです。これはこれからの心得事として聞いておいていただきたい。よろしゅうございますね。
  80. 小池寛治

    ○小池政府委員 解釈宣言につきましては、私の記憶が正しければ戦後三回そういう例がございますけれども、そのときいずれも解釈宣言については、この児童権利に関する条約と同じように国会における御説明をしております。それは留保と異なりまして、その承認の対象といいますか、承認する際の「別紙」という形では提示いたしておりません。  それから、御指摘の園田大臣の御答弁というのは私も承知しておりますけれども、園田大臣の発言の趣旨というのは、仮に解釈宣言を将来、その解釈宣言をやるときに必要とした国内的事情が変更した場合に、解釈宣言を変更するための国際的な手続をとる必要があるか否かを研究するという趣旨をあのときに述べられたものでございます。  それで、先生先ほど御質問の、将来、解釈宣言の変更または撤回というのはどういうふうなことになるのだろうかということですけれども、我々研究し、かつ主要国に照会いたしましたけれども、国際法上一般的な手続が定まっていないというのが各国の考え方でございます。また、我が国につきましても、解釈宣言の変更あるいは撤回を行ったという例は今までございません。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 手続上の問題は、一番最後で時間がもしあれば、また触れることにいたします。  さて、この条約締結してそして遵守するということになってくると、あっちこっち、これはお伺いをして、どうなさるかということを確かめておかなきゃならない問題がございます。  まず、一番大きなところから申しましょう。  この条約が国際間において合意を見て採択をされた。それまでの経緯というのは、もう外務省皆さんの方がよく御存じでしょう。戦後幾多の人権に関する条約、宣言がございましたけれども、今度は言うまでもなく子供権利というところがこの条約の中身でございまして、子供の人権ということについて保障しているこの条約自身が、国際的にはこれは私どもがしつかり知らなければならない歴史的な経過をたどっての中身だということを私は言わなきゃいけないと思うのですね。  そういう重みのある条約からいたしますと、今回なぜその条約の名称が「児童」なのという声が一般でございます。チャイルドというのは子供じゃありませんか。そう言うと恐らく国内の現行法との整合性とおっしゃると思いますが、これは現行法制度の整合性もとれていないのですね、十八歳未満のすべての子供に対しての問題として考えていけば。  そこで、外務省にまずお尋ねしたいのですけれども外務省もこの条約を批准してから後はこの条約に対して広報の義務があるわけですから、あまねくすべての国民、そうして子供にわかるようにということがやはりこれは大事な必須要件です。そういうことからすると、文書を出されるでしょう、パンフレットを出されるでしょう、リーフレットを出されるでしょう。外務省が責任を持ってお出しになる。この条約についての名称を子ども権利条約となさるというのが私はこれは素直なことだと思いますが、どのようにお考えでいらっしゃいますか。
  82. 小西正樹

    ○小西説明員 この条約におきましては、土井先生指摘のとおり、四十二条で広報義務が明記され、児童に対しても行うようにということで特に特記してあるわけでございます。したがいまして、この条約の対象である児童がこの条約の中身を十分理解することが極めて重要であるということは先生指摘のとおりでございます。  したがいまして、私どもはそういう事情を踏まえまして、この点、わかりやすい小冊子をつくる、こういったことも含めまして、具体的なやり方について現在関係省庁と検討をしておるところでございます。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 中身をわかりやすくというのはもう大変結構、どうぞそれは連絡をとってよいものをつくってください。  私が今承ろうとしているのは名称のことなのです。名称を子ども権利条約とするのがこれはもう一般の通称ですよ。素直な表現で読めばこういうことになりますよ。これについて外務省は、これは無感覚ではいらっしゃらないはずだと私は思います。やはり広報活動の中ではわかりやすく、一般で通用する用語というのを用いるというのは、これは何より大事じゃないですか。どうでしょう、いかがですか。
  84. 小西正樹

    ○小西説明員 土井先生の今の御指摘の点につきましては、私どもは、今後具体的な広報措置を検討していく中で、そういった点も含めまして検討させていただきたいというふうに考えております。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 具体的にはそれは検討中ということなんですか。ある案があるんでしょう、もう既に。こうしていいじゃないかということをお考えになっていらっしゃるんじゃないですか。いかがですか。もうここまでこの条約についても審議してきたんだもの。この委員会でもこの問題について各議員が入れかわり立ちかわりそれは質問の中でも申し上げ、参考人もそういう意見を、それは参考人としてお述べになった。子ども権利条約というのがやはりネーミングとして使われるのがこれは素直だと思いますよ。いかがですか。
  86. 小西正樹

    ○小西説明員 ただいまの点でございますけれども、この条約は、適用上十八歳未満ということになっておりまして、仮にも小学生等のみにこれが、児童という言葉の連想からして限られるのではないかというような誤解があってはもちろん困るわけでございまして、そういった点がないように、私どもとしては精いっぱい工夫していきたいと思います。その工夫する過程におきまして、いろいろこの委員会の審議を通じましていただきました御意見等も検討させていただきたいと思います。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃ、意のあるところというのはにじんで出ておりますけれども、やはりネーミングの上では子ども権利条約ということを、それは通称とお書きになるのか、どういう書き方でその表示をなさるのか、これは私は楽しみにして待っています。それはある案をお持ちになって既に考えていらっしゃるに違いないと思うんですよ。だって、批准すればすなわち広報活動が始まるんですから。即刻これはやらなきゃいけないんですからね。  これは、総理府の方は恐らく新聞、テレビ等々も通じて政府広報活動をなさるんですけれども外務省との間で御連絡なすっていますか。いかがですか。
  88. 成田一郎

    ○成田説明員 先生承知のように、総理府が実施します広報関係省庁の御要請に基づいて実施するものでございまして、昨年度につきましてもテレビあるいは定期刊行物でこの条約に対する広報を実施してございます。  今後とも外務省初め関係省庁の御要請があれば、関係省庁と緊密な連絡をとり、適切に対応してまいりたいと思っております。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 ということになれば、やはり外務省がこれについては決断をし、このようにしたいということをお考えになるということが大事になってまいりますよね。これは括弧書きでお書きになったらどうですか、どうしても児童権利条約というのにこだわってどうにもならないとおっしゃるんだったら。いかがです。
  90. 小西正樹

    ○小西説明員 今の点も含めまして、外務省といたしまして、関係省庁と相談しまして、工夫して、子供にもわかりやすい広報をぜひとも積極的にやっていきたいというふうに考えます。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。子供にわかりやすいとおっしゃいました。わかりました。  いろいろこの条約についてこれから実施なさるその場面で国内の立法措置を必要としないとかいう点について私はお尋ねをしたい。さっき御答弁の中では、条約に明らかに矛盾する、違反するということはないのでということも何かお答えになっていらっしゃいましたから、私はその点をちょっとそれじゃお聞きしてみましょう。  条約から申しますと、二十一条の(a)、養子縁組について規定している部分がございます。「児童 の養子縁組が権限のある当局によってのみ認められることを確保する。」こうなっています。外務省訳です。現在、日本の現行民法七百九十八条に「自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。」というのがございまして、養子縁組は「権限のある当局によってのみ認められることを確保する。」これだけはっきり言っている条文からしたら現行民法七百九十八条というのは矛盾するんですが、どのように考えているんですか。
  92. 森脇勝

    ○森脇政府委員 お答えいたします。  本条約二十一条(a)は、御指摘のとおり、児童の養子縁組は「権限のある当局によってのみ認められることを」要求しているわけでございます。この点につきまして、我が国における未成年の養子縁組制度を見てまいりますと、まず家庭裁判所による縁組の許可、さらに戸籍事務管掌者による、法令に違反しないことを認めた上での縁組の届け出受理というのがあって初めて養子縁組が成立する、こういう法制をとっているわけでございます。  すなわち、「権限のある当局」として家庭裁判所及び戸籍事務管掌者が予定されているわけでございまして、家庭裁判所において、縁組が子の福祉を害しないかどうかという点を判断し、さらに「権限のある当局」である戸籍事務管掌者がそれ以外の縁組の成立要件の存否を審査する、こういう構えになっているわけでございます。したがいまして、この限度で本条約二十一条(a)に、児童の養子縁組、子供の、未成年者の養子縁組の制度は適合しているということになるわけでございます。  もっとも、民法七百九十八条ただし書き、御指摘の点でございますが、自己または配偶者の未成年の直系卑属を養子にする場合には家庭裁判所の許可を要しないということにしているわけでございます。これに当たります場合を具体的に考えてみますと、自分の直系卑属、すなわち例えば孫を養子にする場合、あるいは配偶者の実子、すなわち連れ子と言われるようなものでございますが、これを養子にする場合、さらに、配偶者の直系卑属である、例えば配偶者の孫といったようなものを養子にするという場合でございまして、このような場合には、養子の福祉を害することが定型的にあり得ないと解されますので、この場合には、簡易迅速に養子としての地位を与えることがかえって児童の福祉の確保に資することになるというところから、家庭裁判所の許可にかえて、戸籍事務管掌者が届け出を受理する際に、他の法令に違反しないこととあわせて、自己または配偶者の未成年の直系卑属を養子にする場合に当たること、すなわち、当該養子縁組が定型的に養子の福祉を害しない場合に該当することを認定させた上で受理することとしているものでございまして、この場合にも、権限ある当局によってのみ認められるものというふうに解することができると思われます。  ただ、これについての見直しの点でございますが、実はこの中に昭和六十二年に改正された点がございまして、配偶者の子を養子にする場合に、その配偶者の同意を要することにされたわけでございます。これが設けられました趣旨は、十五歳未満の場合ですと、代諾ということで、実質、配偶者の意思が確認されるわけですが、十五歳以上の子供の場合ですと、未成年者と、養子となろうとする者との合意によって縁組が成立してしまいますために、この点で子の福祉に欠ける場合があるのではないかという議論がございまして、既に昭和六十二年にこの点についての改正をいたしまして、決着を見たというところでございます。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 大変懇切丁寧に、私が承ろうと思っている質問以外のことまで御説明いただいたのですが、簡単明瞭なんです、民法七百九十八条というのは。「未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。但し、」これただし書きです。ここからですよ。「自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。」この書き方というのは、これは用語からしたら非常に古い用語ですが、卑属に対する尊属の立場から規定してある規定でしょう。  この養子縁組について問題にしている条約の二十一条(a)というのは児童権利なんです、外務省訳でいえば。私が言うときには子供の養子縁組についてですね。どう考えるかというときに、「権限のある当局によってのみ認められることを確保する。」こうなっているのですから、これはどういう説明を子供権利委員会でなすったのか知りませんけれども、条文からいったら明らかにこれは抵触しますよ、だれが見たって。  もう一つ言いましょう。条約の方を先に言います。条文でいえば四十条二項(b)、刑法に違反したと申し立てられ、または訴追された子供は次の保障を受けられるというので、無料で通訳の援助を受けられる権利というのが具体的に保障規定としてあるのですが、御存じのとおり、裁判を受けるようなときには、むしろ経済的に貧困であれば国が費用を払って弁護士を雇ってくれる制度、すなわち国選弁護人制度というのは既に現在各国に用意されているわけです。日本の憲法にも、第三十七条ですね、それに認められているわけですが、しかし、子供にはまずそれが認められておりません。そうして、しかも少年法三十一条一項、ここを見ますと、通訳などに要した費用の全部または一部を少年または扶養義務者から徴収できる、こうなっているのです。これは条約に明らかに矛盾しますが、いかがでございますか。これは正面切って矛盾していますよ。抵触すると申し上げなければいけない。
  94. 古田佑紀

    ○古田説明員 ただいま委員指摘条約の条項で、無料で通訳を受けることができるというふうな規定があることは御指摘のとおりでございます。この点につきましては、条約で無料で通訳を受けることができると申しますのは、実際にいろいろな手続が行われている過程で、自分の費用を払って通訳を用意しなければならないというふうなことになりますと、本人の防御等について大変支障が生ずるということから、当該手続の中で自分が費用を出して通訳を用意するというふうなことをさせてはいけないという趣旨であるように理解しております。  そして、ただしその後におきまして、その手続が終わった後に、全体としての費用をどういうふうに負担させるかということにつきましては、この条約自体は特段規定していないというふうに私ども理解しております。その意味におきまして、事後的に費用を負担させることがあり得るというふうな法制がこの条約に明らかに反するというふうには私どもとしては考えていない次第でございます。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 非常に苦しい答弁ですね、みんな。これは条文から見れば明らかに抵触するのですから、素直に解釈すれば。担当者の皆さんの方が御存じでいらっしゃると思いますよ。だから、これはどう答えるかというのでいろいろ悩んだ末で、こう言っておこうという御答弁を御用意なすって出てこられたに違いないと私は思っているんだけれども、これは国際社会では、条文を見た場合にきっと通用しません。  民法の七百六十六条、協議離婚の際に、子供の監護者を決定する場合、子供意見聴取を要件としていないのです。  学校が懲戒処分をするような場合、今回の条約子供意見表明権というのは非常に私は大事だと思っているのですが、これは保障するということが大事だと思われますけれども、この民法の七百六十六条、学校の問題、文部省に聞きたいと思いますけれども学校に対して、これはやはり子供意見表明権の確保についての通達等々はお出しになる御用意がおありになりますか、どうですか。
  96. 野崎弘

    ○野崎政府委員 お答え申し上げます。  今先生指摘の点は、条約の十二条二項の関係かと思いますけれども、ここでは、一定の行政上の手続につきまして、児童は聴取される機会が与えられる旨規定しているわけでございますけれども、これは、個々の児童に直接影響を及ぼすような行政上の手続、例えば教育関係でいいますと、 停学とか退学等におきまして、当該児童意見が聴取される機会が与えられるという意味と考えられるわけでございます。  退学、停学処分につきましては、児童に懲戒処分を行うに際しまして教育上必要な配慮をする、こういう学校教育法施行規則の規定がございます。そういうことで、また、個々の生徒の状況に即しまして生徒からよく事情を聞くなど適切な対応を行うよう指導してきたところでございまして、今後、条約締結後におきましても、本条約趣旨を踏まえまして指導をしてまいりたい、このように思っております。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 もう再三再四これは取り上げられてまいりましたけれども、この条約の二条の条文からいたしましたら、婚外子の問題について、これは法文用語では、現行で非嫡出子というんですが、民法の九百条、これについてはもう当委員会の審議の中でも出たところですけれども、一九七九年、法制審議会の答申を得て法務省の提出された相続に関する民法改正要綱試案の中では、配偶者の相続分の増加と、それに非嫡出子の相続分を嫡出子と同等という一項が併記されていたはずなんです。  ところが、一九八〇年、七九年から一年たって、あけて八〇年の国際児童年のスタートの年でもあった、その年の国会提出時には、非嫡出子の改正だけが削られていたという経過があるんです。なぜですかという質問に対しては、世論がそこまでいっておりません、調査の結果、世論ではそこまでいっていないという問題でありましたと言われるんですが、ただいまは、国際世論は、二条のこの条文どおり、いかなる理由があっても差別してはいかぬという中にこれはかっちり入るのです。国際世論はもうそうなっていますよ。条約がそれに従ってきちっと条文化されているんですから。  これからすれば、この婚外子に対して差別的な取り扱いというのは、この節、この条文を改めなければなりません。そして、その差別的な取り扱いというのは、単に法定相続分の差別の問題だけではなくて、出生届から始まります。これは外務大臣にお見せしたいと思います。委員長、よろしゅうございますか。
  98. 伊藤公介

    伊藤委員長 どうぞ。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 その出生届の記載すべき欄のところをごらんいただきたいのです。嫡出子、非嫡出子と区別して、嫡出子の場合は長女、次女、長男、次男と書くようになっていますが、非嫡出子の場合は男、女ですよ。そして、しかも戸籍の点からも、住民票の点からも、差別表記というのが引き続きあるんです。入学の問題も、就職の問題も、全部これはひっかかりますよ。子供は親を選んで生まれてきたわけじゃない。その子供に対してこういう差別的取り扱いをするということは、大臣条約の二条からするとおかしいとお思いになりませんか。  そういうことを考えれば、この説明の中にある、この条約を批准してから後、国内で立法措置を、新たなものを必要としないと今まで言われてきたことに対して、必要だということがいよいよいろいろ出てくるんです。法務省も文部省も、この条約批准後は、問題点はほかにもたくさんありますけれども、この立法措置に対してひとつ御努力方をお願いしなければなりません。また、行政措置に対して御努力方をお願いしなければなりません。それはよろしゅうございますね。これは必要になってきますよ。  そして、申し上げておきたい。今の婚外子の問題については、スウェーデン、アメリカ、中国、フランス、みんな法律婚主義を採用しているんです。みんな法律婚を保護するという建前をとっている。そこでも、それであって、しかも婚外子差別というのは撤廃されていっていますよ。そういうことを考えれば、それ自身は国際的にはもう世論であると考えなければいけません。これは外務大臣条約を批准してから後、国内措置としてはかなりの努力をしていかなければならない問題がありますが、民法にしても刑法にしても、今まで挙げたのはその代表的な例にしかすぎない。ほかにたくさんあります。  私は今まで法学を勉強しながら思ったことがあるのです。大人の立場、親の立場で今まで民法、刑法は考えられてきたのです。民法というのは人権保障の法律ですから、最も斬新的であり、近代的だと言われている法律でありますけれども、それでも親の立場、大人の立場を考えた法律なんです。今回は、この条約を批准をしたら、子供の立場を考えなければいけないのですよ。刑法もそうです。民法もそうです。その他の法律全部そうですよ。行政措置もそうです。そのことを外務大臣に申し上げさせていただいて、これは本当に努力が必要ですよね。日本は先進国ですから、先進国の名に恥じぬ努力をしなければ、これは人権問題です。どうお考えになります。
  100. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど上原議員にもお答えをいたしましたけれども、この条約案が国会承認をされまして批准をいたしました後、今御指摘の点は、外務省というよりそれぞれ各担当の官庁があるわけでございますが、この条約との整合性において現在の国内法がそれで十分対応できるのかどうか、今までの法律体系は、どちらかといえば民法も刑法もいわゆる大人の立場から考えているという御指摘でございました。今度は、児童権利を擁護するという立場からの条約でございます。そういう意味において、現場のそれぞれの行政当局が、この条約との整合性においてこれはどうしても法体系をもう一回考え直さなければならないということになれば、私はそのときは考え直していただかなければならないと思っております。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 憲法の九十八条からすれば、条約を遵守していかなければいけませんから、締結して遵守していくという義務がありますから、外務省とされては、そういうことになればではなくて、努力されることは、外務省がまず率先してそういう問題に対して各省と連絡をとってやっていただく必要があると私は思います。  決議を当委員会では、幸いにして与党の諸先生も賛成をされて実現できたわけでありますけれども、その中で私が考えることは、今の縦割り行政の中で、これから批准をして子供権利という問題に対して担当していかれるその部局というのはどこになるのだろうか。縦割りでそれぞれが縄張りの中であっちはあっち、こっちはこっちということでなくて、やはり全体を調整し総括するというところがどうしても必要です。  もう外務大臣御存じだと思いますが、フランスでは、条約運用することに対して政府の活動を調整する担当官が置かれまして、この担当官を中心に子供権利に関する部会が開かれているのですね。条約の普及と意見の集約というのをずんずんしていっているようです。ノルウェーの場合は、調査権限を持つオンブズマンパーソンが任命されて、条約実施に関する政策チェックをしているようです。また、このノルウェーの場合ですが、七億円相当の予算をNGOに提供して、条約重要性を広く国民に知らせる努力をスウェーデンとともにしているようです。そういう例があっちこっちにありますから、日本もひとつ、これから政府挙げてやはり努力していただくことに対して、外務省がそれは調整機能や統括機能というのをお持ちになるのですか。特にそういうのを特設されるのですか。いかがでございますか。
  102. 小西正樹

    ○小西説明員 この条約は、児童権利に関して非常に広範囲にわたる権利等を規定しておりまして、もとより関係省庁は非常に多うございます。その関係省庁がばらばらな施策をとっていては、やはり統一的あるいは整合性のとれた施策というものが効果的に実施し得ないわけでございますので、私どもは、その点はぜひとも十分な手当てそする必要があると考えております。  この条約の締約国は、児童権利に関する委員会という委員会を組織いたしまして、ここに報告を各国から提出することが義務づけられておるわけでございます。したがいまして、我が国に関しましては、この報告書を提出するという過程におきまして、関係の行政機関、関係省庁が緊密に連絡し合いまして、この条約の履行に関する事実関係を十分に把握するとともに、政策面でどうするかといったことにつきましても政府部内で連絡調整を十分に実現しまして、報告を作成してこの委員会に提出していくということを考えておるわけでございます。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。  それで、報告書を二年以内に子供権利委員会にお出しになりますね、国連に。その報告書をお出しになる際、それに先立って当外務委員会に提出をしていただきたいのです。これは、女性に対するあらゆる形態における差別撤廃条約のときにも、行動計画というのを組むに当たっていろいろ報告ということを求め、しかもあのとき、関係するILO条約を速やかに批准するという約束事があるのですよ。特に百五十六号なんというのは、あの女性の差別撤廃条約に対して一番密接に近いところにあるILO条約なんですが、約束したことはやはり履行してもらわなければならぬのですね。  外務省、いかがです。報告書を二年以内にまず提出されるでしょう。当外務委員会にもその報告書を提出するということ、これは要求したいと思います。出してしまって大分たってからではだめですよ。本来は出す前に当外務委員会に提出されるというのが私は当たり前ではないかと思います。
  104. 小西正樹

    ○小西説明員 この条約の実施に当たりましては、私ども外務省が、条約の実施という観点から調整あるいは連絡の中心になってこの条約の実施に当たっていきたいというふうに考えておりますが、何分実際の施策に当たりましては関係省庁が御担当の分野も多いわけでございまして、こういったことにつきまして、土井先生が今御指摘になったその報告をこの委員会に対して行うということにつきましても、関係省庁とお諮りしまして検討させていただきたいというふうに思います。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 それは満足しませんよ、今のは。ぜひ提出できるように努力してください。それは当然のことですから。  終わります。
  106. 伊藤公介

    伊藤委員長 午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後零時三十四分開議
  107. 伊藤公介

    伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。東祥三君。
  108. 東祥三

    ○東(祥)委員 前回の質問で取り残した問題から入らせていただきます。ちょっと大きな問題でございますが、外務大臣にお聞きしたいと思います。  言うまでもなく、ボスニア・ヘルツェゴビナあるいはソマリアを引き合いに出すまでもなく、毎日世界じゅうで数え切れないほどの多くの子供たちが生命と成長の危機にさらされております。冷戦後の国際情勢の新たな動きというものは、必ずしも子供たちに対しての安全と保護を約束したわけではありません。  孤児あるいはストリートチルドレンあるいは難民、そして劣悪な環境下で虐待に苦しんでいる子供たち、あるいはまた戦争、内乱の犠牲者となっている子供たちが、幸か不幸か、私たちのこの日本という中には散見することができないわけですが、テレビを通じてそういった姿を見るたびに、何とも言えない、胸に突き刺さるような、そういう思いに駆られます。ともするとテレビの中の絵そらごとと思ってしまう方もいらっしゃるかわからない。しかし、そういうものを無視しているとするならば、まさに我々、こういった問題に対して一生懸命やっていこうと言っている国の恥になるのではないのか。  そういう意味で、この条約が対象としている子供たちは、日本子供たちのみならず、先進諸国の子供たちのみならず、さらにまた開発途上国における子供たちのみならず、世界じゅうの子供たちが対象である、このように確信いたしております。こういった世界じゅうで貧困あるいは飢餓あるいはまた不衛生な環境下で生活している子供たち、また貧困であるがゆえに教育機会も得られない、そういった子供たちへの取り組みは、大げさに言えば地球、そしてまた人類の大きな課題なんだろうというふうに思います。  そういう意味で、こういう問題に取り組んでいくことこそが我が国が目指していかなければならない国際協力の核中の核になるのではないか、このように思っている次第です。こういう問題に対して、政府は具体的にどのような協力をされていこうとしているのか、この点について説明していただきたい、このように思います。
  109. 小西正樹

    ○小西説明員 お答え申し上げます。  国際協力重要性につきましては、この条約の前文及び第四条にも触れてございます。我が国といたしましても、昨年六月に閣議決定いたしましたODAの大綱におきまして、ODAの効果的実施のための方策の一つとして、子供社会的弱者にも十分配慮するということを掲げております。  このような考え方のもとに、これまでも開発途上国の子供等の生活条件を改善するために、例えば二国間援助により小中学校の校舎を建設するとか教材を供与するとか、母子保健について、あるいは幼児用の病院等のプロジェクトへの協力を行っているわけでございます。また、国連児童基金、ユニセフ、WHO、国連世界保健機関、ユネスコ、こういった国際機関を通じまして資金協力等を行ってきている次第でございまして、今後ともこういう協力を充実させていきたいというふうに考えております。
  110. 東祥三

    ○東(祥)委員 本日は、今の大きな国際協力という枠組みの中で、教育・文化交流という側面、余り議論されてこなかったと思いますので、この点に焦点を絞って質問させていただきたい、このように思います。  この条約趣旨を周知徹底させることは、ただ単に国内問題のみならず、外国における子供についても日本人日本子供と同様な権利を保障する、こういうことを意味するのだろうというふうに思っております。そういう意味で、異文化の問題あるいは異文化交流、あるいはまた国をまたがった教育交流というのは極めて大切なことである、このように思います。そういった意味で、人的交流、情報交換というものをもっと拡充していかなければならないのではないか、このように思っておりますが、諸外国との相互理解の促進と友好親善関係の維持発展というのは、我が国にとっての基本中の基本であると考えます。  そういった意味において、我が国についての諸外国の認識あるいは理解を深めていく海外啓蒙活動というふうに言ったらいいのでしょうか、こういうことを強化していくと同時に、教育、芸術、スポーツ、あるいはまた文化の重要な要素である日本語の普及等の交流や協力について、特に将来を担う子供たちを中心とした人的交流あるいは情報交換を拡充していくべきなんだろうというふうに思いますが、外務省文部省のこの点に対しての見解をお伺いしたいと思います。
  111. 木村崇之

    ○木村(崇)政府委員 先生おっしゃるとおり、文化交流、人的交流ということが今後の日本外国との関係においても、またそこに携わる人たち及び今回の御議論の中心でございます子供にとっても大変重要なことだというふうに考えております。そういう観点から、私どもとしては文化交流について今後ともさらに拡大していきたいというふうに考えております。  特に重点を置くべきものの一つ教育交流ということがございます。また、日本における外国人の受け入れについての充実及び外国における日本人教育の充実ないし外国における日本に関する教育の充実、こういうような点についても配慮していきたいというふうに考えております。
  112. 西澤良之

    ○西澤説明員 教育、文化、スポーツの国際交流の推進につきましては、我が国や相手国におきますこれらの諸分野の活動の発展に資するものでございまして、国際的な相互理解を促進し、真に友好関係を築いていく、そういう上でも極めて重要な意義を有するものであるというふうに考えております。  そういう観点から、従来から文部省におきましては、教育交流、文化・スポーツ交流などさまざまな国際交流事業を広範に実施してきているわけでございまして、諸外国との交流の推進に努めているところでございます。特に、子供を中心としたものといたしましては、関係団体が行います青少年交流、スポーツ交流につきまして、海外派遣・受け入れ事業等につきまして補助を行ってきているところでございます。  具体的には、子供の国際交流等につきまして、これは平成三年度の事業でございますけれども、派遣が五団体、十二事業で、三千百四十八名、受け入れが八団体、十事業、三百六十一名というようなことに対して補助事業として行っておりますし、スポーツ交流につきましては、アジア地域のジュニア交流事業によりまして、平成四年度におきまして百二十七名を海外に派遣いたしましたし、また二十九名を受け入れる等の実績を有しているわけでございます。  これ以外にも子供によります国際交流活動というのは民間ベースでかなりたくさんのものが行われているというふうに私どもとしては理解しておりまして、子供の参加によります国際交流につきましては、国際的な相互理解を促進する観点からも極めて重要であるというふうに認識しておりますので、外務省協力しながら今後とも積極的に推進してまいりたい、このように考えております。
  113. 東祥三

    ○東(祥)委員 具体的に聞いていきます。  まず、我が国の留学生の受け入れ体制についてお伺いいたしたいと思いますが、留学生は現在どれくらいいるのか、さらにまた高校生の留学生はどれくらいなのか、この点について御答弁願いたいと思います。
  114. 西澤良之

    ○西澤説明員 まず我が国の大学等で学ぶ留学生数でございますけれども平成四年五月一日現在で四万八千五百六十一人に上っているところでございます。  また、平成二年度に、これはちょっと年度が古うございますけれども調査関係平成二年度ということでございますけれども我が国の高等学校で受け入れました外国人の生徒数は千二十二名というふうになっております。また、我が国から諸外国への留学生数、これはなかなか把握が難しいわけでございますけれども、法務省の出入国管理統計で留学、研修、技術修得等を目的に海外に渡航しました日本人の数は十三万人を超えるというふうに認識しております。
  115. 東祥三

    ○東(祥)委員 私費留学生、国費留学生の割合はどうなっていますか。さらにまた、主要諸国と比べた場合、我が国における留学生の受け入れ状況というのはどうなっているのか、この点についてお願いします。
  116. 西澤良之

    ○西澤説明員 先ほど申し上げました四万八千五百六十一人の留学生のうち、私費、自分の費用あるいは母国政府の派遣等も含んでおりますけれども、そういうものを含みます私費留学生数、四万二千八百六十二名、八八・三%でございます。国費留学生数は五千六百九十九人、一一・七%というふうになっておるわけでございます。  これを諸外国におきます留学生受け入れの状況と比較した場合でございますけれども世界全体で百十六万人ほどが留学をしているというふうに言われておりまして、このうち、アメリカ合衆国が多うございまして四十万七千余人、イギリスが七万余人、それから旧西ドイツ、現在のドイツでございますけれども、九万七千九百八十五人、フランスが十三万六千人というような数になっております。日本は四万八千五百六十一人ということで、まだまだ先進諸外国と比較して必ずしも多いというふうなことは言えないような状況にございます。
  117. 東祥三

    ○東(祥)委員 この外国のデータは、国費、私費含めたというふうに理解してよろしいですか。
  118. 西澤良之

    ○西澤説明員 先生おっしゃるとおりでございまして、国費という区分がなかなか外国政府の場合難しい面もございまして、数が把握しにくいわけでございますけれども、今申し上げました数字のうち、いわゆる公費あるいは国費等で受け入れております留学生の割合を、これはいろいろどういうふうにとるかということによって若干異なってきますけれども、参考までに申し上げますと、アメリカが一・四六%、五千九百人くらいが米国政府の経費で勉強している。それから、イギリスの場合が三・六%、二千五百人程度が英国政府の資金で勉強している。ドイツが四・六%、フランスが六・〇%というようなことになっておりまして、日本が一一・七五%ということで、日本の場合、この国費の割合はかなり高いような状況になっております。
  119. 東祥三

    ○東(祥)委員 先ほど御指摘ありましたが、受け入れの数という側面から見ますと、諸外国、主要先進国に比べますと日本は相対的に低い。この低い理由はどのように把握されておりますか。
  120. 西澤良之

    ○西澤説明員 留学生数が必ずしも諸外国と比べて多くないということの理由、いろいろ考えられるわけでございますけれども一つは、物的な事情といたしまして、円高、物価高等の影響によりまして、なかなか発展途上国からの留学生が日本には来にくいというような状況もございます。それから、日本語という言葉が、やはり英語等の国際性の高い言語と比べますと、諸外国においてはまだまだ十分な普及を見ていないというような状況もございます。また、高等教育機関におきます外国人留学生の受け入れに対します姿勢等の問題もあろうかというふうに考えているところでございます。
  121. 東祥三

    ○東(祥)委員 ある意味で質的な側面から御答弁いただいたのですが、これは物理的に支援体制あるいは受け入れ体制に日本の場合問題があるんじゃないのかと私は思っているわけですが、それはある意味日本に対して十分な理解あるいは好感を持って帰国できるような配慮が足りないんじゃないのかという視点でございます。  例えば、急激な地価や家賃の高騰で住宅あるいは寄宿舎の確保が、日本の場合、特に東京の場合、極めて困難なわけですね。どのような情熱を持って日本に来たとしても、結局経済的な側面からどうしても勉強をし続けることがなかなか難しくなる。こういう側面が一つあるんじゃないのか。さらにまた、滞在費用や学費を得るために、これもまた経済的な負担からどうしてもアルバイトをしなければならない、こういう状況もあるのじゃないのか。  さらにまた、これは留学生ではなくて留学生予備軍と言ってよろしいかどうかわかりませんが、いわゆる就学生が急増して、不法就労問題と絡んで極めて複雑化しているという状況がある。不法就労問題に関しては、ある意味日本の恥部だと思っておりますが、何ら抜本的な解決策が今日まで出されていない。こういう問題と相まってしまって、結局、将来本国に帰ってあるいは国際社会の中で自分自身が学んだ能力を何らかの形で生かしていきたい、こういう有為な人々が日本に来たとしても、その志を半ばにして帰国していかざるを得ない人もいるのではないのか。こういう問題点が指摘されると思うのですが、政府としてはこういった問題に対してどれほどの実態把握をされておるのか、認識程度はどれぐらいなのか。さらにまた、これらの問題に対していかなる対応をとられているのか、またとられようとしているのか、この点について御答弁願いたいと思います。
  122. 西澤良之

    ○西澤説明員 ただいま先生からも御指摘ございましたように、我が国に受け入れております留学生が我が国のよき理解者として帰っていただくということは、留学生交流の理念、目的等から考えましても極めて重要なことだと私ども認識しているわけでございます。  昭和五十八年に、二十一世紀初頭における十万人の留学生受け入れということを目途にいわゆる留学生受け入れ十万人計画が始まったわけでございますけれども、その際、十万人計画を提唱する形で公表されました報告におきましても、「留学生政策を展開する基盤として重要なことは、国民が、全体として、国際的に開かれた心の持ち主と行動の人となること」が必要であるというふうな指摘がございまして、留学生交流に即して申し上げれば、我が国とは異なる多様な文化的、歴史的な背景を持つさまざまな国からの留学生を心広く受け入れ、我が国での勉学、日常生活、クラブ活動、課外活動等により、喜び、悲しみ等を分かち合うことを通じて人間としての共通性を認め合っていくということが重要であろうと理解しているわけでございますけれども、今先生指摘のように、留学生の中に、我が国におきまして宿舎を探す際にいろいろな問題がある、あるいは宿舎を探すことそのものが非常に難しいというようなこともございます。それから、日本人学生あるいは住民との交流が非常に少ないということが不満であるというような調査結果等もあるわけでございます。  そういうことで、私ども文部省といたしましては、留学生十万人受け入れ計画を推進するに当たりまして、留学生の渡日前、それから日本に来てからのさまざまな世話、それから帰ってからのアフターケア等を通じまして、長期的な観点からきめ細かな施策を講じてきているところでございます。  特に、そういう留学生との理解を進めるという観点におきましては、各都道府県におきまして、大学、地方公共団体、企業、ボランティア団体等で構成されます留学生交流推進会議を設置いたしまして、これらを通じまして住民の相互連携によります草の根レベルの留学生受け入れ事業の促進を図っている。あるいは大学におきましては、留学生のための宿舎確保に関しますさまざまな方策あるいは奨学金の充実、留学生としての特性に配慮いたしました日本語・日本事情等の授業科目の開設等を初めとする教育指導上の工夫改善、きめ細かな留学生の世話体制の整備など、大学等におきます受け入れ体制の整備充実にも努力しているところでございます。  このようなことを通じまして、今後とも留学生が充実した留学生活を送りまして、我が国のよき理解者として満足して帰国できるように留学環境の整備に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。
  123. 東祥三

    ○東(祥)委員 日本には今御説明がありました十万人受け入れ政策が存在することは知っておりますし、かなりの速いスピードでそれが達成されつつあるということも理解をいたしております。  ただ、問題は、日本学校に行ったその数が基本的な問題ではなくて、日本に来られた留学生の方々日本についてどういう理解を示したのか、あるいはまた日本の人々とどのような相互理解を深めることができたのか、これがより重要な角度なんだろうと思いますが、そういう意味で国費あるいは私費を問わず、例えば文部省が現在日本にいらっしゃる留学生の方々意見交換をするなり、あるいはまた留学生が直面している諸問題に関しての苦情を聞いてあげたり、そういうことはやられていると確信しますけれども、やられておりますか。
  124. 西澤良之

    ○西澤説明員 留学生に関しますさまざまな世話事業、今先生がおっしゃいましたような留学生のいろいろな希望、意見等を聞くような機会等につきましては、文部省が留学生交流推進の中心団体ということで設置しております財団法人の日本国際教育協会におきます留学生世話事業を通じまして、あるいは内外学生センターにおきます学生相談事業等を通じましていろいろ聞いておるところでございますし、先ほど御説明申し上げました各地域におきます推進会議あるいは各大学等におきまして留学生担当の専門教育教官等を配置する、カウンセラー等を配置することを通じましてきめ細かに留学生のいろいろな意見等については聞いているところでございます。
  125. 東祥三

    ○東(祥)委員 次に、我が国から海外へ留学する高校生、大学生も年々増加していると聞いております。異文化の社会で勉強し、またそこで多くの方々と触れ合い、そしていろいろなことを学ぶということは極めて日本人及び日本国にとっての国際化に役立つのだろうと思いますが、問題は、留学される人の数が多くなってきますと種々のいろいろなトラブルが発生してきている。  皆さん御案内のとおり、服部君の例に見られますように、想像していないようなことが起こってきている。裁判が行われて、あの裁判に関して釈然としない気持ちが私自身多々あります。陪審員の全員が無罪を宣告しているというのはどういうことなんだろう。ピストル社会である、ピストルあるいは銃砲に対しての概念が日本とは全く違うアメリカ社会であるということは、頭でも理解しているし、また現場においても理解しておりました。ましてやハロウィーンというお祭りのときに子供に対して銃を向ける、こういう社会があるんだということは、私にとっては驚愕すべきことで、かつてはそういうことはなかったのじゃないのか、アメリカの社会においても大きな変質が、何か変化してきているのではないのか、このように思えてならないわけですが、そういったきめ細かい情報を留学する前に、事前にちゃんと留学される人々に情報として提供するところがあるのかないのか、多分ないのだろうと思いますし、また非常に難しい問題を抱えているわけでございます。  ここに多分一つの問題点として指摘されるのは、留学あっせん業者の問題が出てくるのではないのかと思うわけです。この留学あっせん業者の問題に入る前に、今話の途中でございますが、外務大臣、この服部君の例、済みません、質問通告はしておらないわけですけれども、周知の問題でございますし、この問題に対して外務大臣はどのような御所見をお持ちなのか、その辺についてぜひ聞きたいと思うのです。
  126. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 たまたまロサンゼルスで警官が黒人を殴り殺したといいますか、暴行した結果亡くなった問題についての裁判がありまして、一回は無罪になったものが改めて人権擁護の立場からいわゆる裁判のやり直しということになりまして、この間二人が有罪になったと私は承知をいたしております。  今度の問題は、確かに州法では、州法で裁判が行われ、陪審員全員が無罪を主張した場合は控訴することもできないというような結果になっておることは大変私は残念に思っております。今お話しのように、確かに正当防衛という考え方もあるのかもしれませんけれども、全くああいう若い、言ってみれば成人に達していないような人、子供というか児童というか、いずれにしても、そういう人がお祭りの中でああいう形で不幸なことに遭ったということは、私は非常に残念に思っております。  今、アメリカの国内においても、この裁判の結果に対してはいろいろの議論が起きてきておると承知をいたしておりまして、私といたしましても、何らかの形でこれはもう少し考える余地はないんだろうかということで、アメリカ政府に対しても、少しその辺の打診をしてみたいと実は思っておるところでございます。
  127. 東祥三

    ○東(祥)委員 特に、一つは銃砲社会であるという文化の違いがある。そしてまた、あそこでの言葉の問題ですね。フリーズが、僕も長いこと外国に行っていますけれども、突然ああいう言葉を聞いたときに、間違いなくやはりプリーズだというふうに私なんか完全に理解してしまうな。極めて口語的で、あるいはまた警察用語で使われる。秋葉さんは御存じだったかもわかりませんけれども、これはそういう二つの問題を抱えていたんではないのか。  こういう問題に対して、まだ頭の中がまとまっていないわけですけれども、やはり深く考えなければならない問題があるんじゃないのか。まして十六歳の少年であった。これをあっせんした留学あっせん業者というのは、極めて有名なところだというふうに私は聞いております。また、それなりに格式の高いものであるということも理解しております。しかしながら、こういう問題が起こってしまう。事前の情報をどれだけ与えられるのか、また、提供者の能力にも依存してきます。  ただ、ここで取り上げたい問題は、そういう留学あっせん業者というのは、基本的に民間なんじゃないのか。国際化がますます激しくなっていくこういう時代状況において、ともすれば今までとは違った状況が新しく起こってきているんじゃないのか。そこで、もし民間のあっせん業者で対応することができないものが出てくるとするならば、やはり公的機関からそれなりの対処をする必要があるんではないのかというのが私の基本的な論点なわけですが、この点についてどのようにお考えですか。
  128. 西澤良之

    ○西澤説明員 まず、先生お尋ねの、海外へ留学する場合、留学希望者の相談体制等の問題でございますけれども、御承知のような国際化の進展に伴いまして、海外留学等を行う者がふえている、こういうことに伴いましてトラブル等を経験する日本人留学生もふえているわけでございまして、こういう状況に対応するために、海外への留学希望者でございますとか、海外に現に行っている人たちに対して、安全で教育上有益な留学の推進のために、現地の学校あるいは地域等に関する情報提供、相談受け付け等の対応が求められているわけでございます。  このため、文部省におきましては、日本国際教育協会に留学情報センターというのがあるわけでございますけれども、こちらの方でも一般的な情報は従来から提供をしてきたわけでございますが、ここに平成三年度からは、日本人高校生、大学生等の海外留学希望者に対します留学希望先の教育機関の選択の問題でございますとか、生活上のアドバイス等を行い得る専門的な知識を持った留学相談員を設置するとともに、平成四年度からは、実際にトラブル等に遭った場合に、どんなふうに解決していったらいいのかというようなことについて、電話、面談、手紙等による相談に応じる体制というものを整備しているところでございます。  それから、今先生指摘の、いわゆる留学プログラムあっせん業者の問題でございますけれども、これにつきましても、そういうようなことでいろいろな問題やトラブル等が指摘されておりまして、私ども調査でも、およそ四人に一人くらいが何らかのトラブルに海外で遭っている。その中で、そのあっせんプログラムあるいはあっせん業者によるものも散見されるわけでございまして、こういう問題を解決するために、平成四年四月に「海外留学等斡旋プログラムの望ましい内容等について」という専門家会議の報告をちょうだいいたしまして、この中で、三カ月以上の、いわゆる留学というふうに定義されるわけでございますけれども、長期にわたって海外で高校生が勉強する場合のあっせんプログラムのガイドラインの原案みたいなものを、ある一定の尺度を決めていただきまして、また、本人が行く場合にどういうことに注意して行ったらいいかというチェックリスト等も示していただきまして、御報告をちょうだいいたしたわけでございます。そういう報告につきまして、教育委員会あるいはその他の関係方面等につきましても通知いたしまして、安全で教育上有益な留学の実施につきまして協力を求めたところでございます。  また、同じ報告の中で、今先生もおっしゃいますように、ほとんどの業者が民間団体、一部の業者だけが公益法人としての認可を受けているというような状況でございまして、そういう団体によります、特に優良な団体によりまして、全国高校生留学・交流団体連絡協議会というものを設置していただきまして、そこで具体的なガイドラインの基準及びそのガイドラインに適合しているあっせんプログラム等につきましての認定事業というようなことを開始して、取り組んでいただいている最中、こういう状況でございます。
  129. 東祥三

    ○東(祥)委員 こういうあっせん業に関連した公の機関というのはないわけですね。民間のあっせん業者に依存せざるを得ないというのが現状だと理解してよろしいですか。もしそうであるとすれば、なぜ公的な機関がないのか。つくったらいいのじゃないかというふうに思うのですけれども、いかがですか。
  130. 西澤良之

    ○西澤説明員 高校生レベルの留学につきましては、やはりその受け入れ側におきまして、ホームステイ等の形で親身になって受け入れていただく体制というのがどうしても必要でございまして、そういう意味で、ボランティア活動等に依存せざるを得ないという側面があるわけでございます。そういうことで、先生お話しのAFSでございますとかYFUでございますとか、伝統的に戦後早くから米国等を中心にいたしまして民間団体が発達し、そういうところを中心に留学生、特に高校レベルでの留学交流というものが行われてきたというような歴史的事情にかんがみまして、現在のところは公的な機関で高校レベルの留学を行うというところはございません。ただ、そういう団体に都道府県等がその事業の実施等を委託しているというような実例はあるわけでございます。
  131. 東祥三

    ○東(祥)委員 公的機関をおつくりになろうとする意思はありますか。
  132. 西澤良之

    ○西澤説明員 ただいま申し上げましたように、歴史的な伝統背景として各種事業が実施されているということにもかんがみまして、またそのボランティア等の組織化を必要とするというようなことにかんがみまして、そうした公的な形でのあっせん事業を行うということは、現段階では考えておらないところでございます。
  133. 東祥三

    ○東(祥)委員 冷戦構造が崩壊したというのは、いろいろなところにいろいろ波及しているのだろうというふうに僕は思うのですね。先ほどもありましたけれども、人的交流というのは基本的にますます深まってくるのだろう。深まってこない、あるいは現状が維持されていく、そういうことであるならば、今まで積み上げてきたものを微調整していけばいいのだろうというふうに思うのですが、基本的にはその交流というものがますます深まっていく。深まっていくことによって社会も変質してくる。余り絶対的なことというのはないわけですが、社会というのは絶対に変わるものなわけですね。  そういう意味では、その変化していく社会にどのように対応していくのかということは常に考えておかなければならないことだし、お考えになっていることだろうというふうに思うわけですが、ここ数年来いろいろな留学生のトラブルというのが出てきている。日本のみならず、例えば当該関係国であるアメリカにおいても、同じような問題が生じているのだろうというふうに思うのですね。そういう問題というものが、今まで従来の問題と同じことなのか違うことなのか、もし違うものであるとするならば、今まで積み上げてきたものとは違った形でのアプローチというのはどうしても必要なんだろうというふうに思うのですけれども、その点についての認識はどうなんでしょうか。
  134. 西澤良之

    ○西澤説明員 ただいま申し上げましたように、昨年の報告書の中でも指摘されておりますとおり、全体としての守るべきガイドライン等につきまして整備をし、それに従って各団体がやっていくということは必要であり、先生おっしゃいましたように、新しい時代に対応した体制ということを考えていく必要があるということは、私どもとしても認識しているわけでございますけれども、現在のところ、今までのトラブル等の実例を見てまいりますといろいろな問題があるわけでございまして、法律等の規制あるいは公的機関による実施ということになじまない面、あるいはそういうことを通じて、ある意味では海外留学等に抑制的な効果を持ちかねないような問題もあるわけでございまして、当面は、こういう優良な留学あっせん業者の自主的な活動というものを側面から支援する形によって新しい時代に対応してまいりたいと考えておるところでございます。
  135. 東祥三

    ○東(祥)委員 今度は、海外、特にアメリカの大学が日本各地に分校を開設する動きが相次いできた。ある資料によりますと、バブルが崩壊して経営難に陥って、かなりの数が日本に進出していたにもかかわらず、それが閉鎖されざるを得ない状況に追い込まれているケースも何件か出てきているようでございます。  アメリカの大学が日本各地に分校を開設する動きについて、我が国においてその大学の分校は教育制度上どのような位置づけがなされているのか、あるいはどのような取り扱いを受けているのか。こういう前情報がないままに、アメリカの大学の分校がどこどこに設立されましたよ、こういう例が多々ある。その結果、多くの日本人子供たちに正確な情報が伝わらないで、その存在だけを情報として入ってきてしまって、最終的に子供混乱させている、こういう面もあるわけでございます。  日本における外国大学の分校の教育制度上の位置づけというのはどうなっているのですか、大学とみなされるのですか。
  136. 喜多祥旁

    ○喜多説明員 お答えいたします。  現在日本に進出しております外国大学の日本分校でございますが、専修学校として知事の認可を受けておりますのが五校ございます。そのほかに、学校教育法上の認可を受けていない教育施設として二十校ほど存在するというふうに聞いております。  これらには、語学教育を主体とするもの、語学教育と一般教育を行い、その後本校に進学するものなどさまざまな形態がございます。また、施設面、教員の数等につきましてもさまざまであると承知いたしております。生徒数についてでございますけれども平成三年度時点で九千人ほど在学していたのではないかというふうに承知いたしております。  教育制度上の位置づけでございますが、制度上外国の大学の分校でございましても、文部大臣に対し設置認可申請を行い、認可を受けますと日本の大学となる道は開かれているわけでございますし、知事に申請し各種学校あるいは専修学校となるという道は開かれておるところでございますが、現在、大学として認可を受けているものはございません。そして、先ほど申し上げましたように、五校が専修学校として知事の認可を受けておるという実態でございます。五校以外の学校につきましては、学校教育法上の認可を受けない事実上の教育施設という位置づけでございます。
  137. 東祥三

    ○東(祥)委員 五校以外は基本的な認可を受けていないということですが、例えばAという大学の本校がアメリカにあるとします。そして、その分校が日本につくられる。しかし、それは認可されていないとする。その日本における分校で勉強していって、学校内にある制度を使って本校に留学して、そこで学位を取ったとする。その場合は日本として認めるのですか、認めないのですか。
  138. 喜多祥旁

    ○喜多説明員 アメリカにおきまして学位を取得した場合には、学位として認められます。
  139. 東祥三

    ○東(祥)委員 留学しないで、その分校で四年間なら四年間における義務をすべて果たして、単位を修得して、そこで卒業するとする。この場合は、認められていないので、その学位は日本においては正式なものにはならない、そういうことですか。
  140. 喜多祥旁

    ○喜多説明員 先ほどお答えいたしましたように、日本におきましては学校教育法上の大学ではございません。したがいまして、日本で修了いたしましても、日本での学位は取得できません。
  141. 東祥三

    ○東(祥)委員 頭の中が混乱してきてしまうわけですけれども、そうしますと、海外の大学の日本校開設に当たって、政府としてはどのようなかかわり合い方を持っているのですか。
  142. 喜多祥旁

    ○喜多説明員 先ほどお答えいたしましたように、五校につきましては知事の認可を受けて専修学校になっております。そのうち三枚につきましては地方公共団体が誘致したと聞いておるところでございますが、それ以外につきましては地方公共団体はほとんど関与していないというふうに承知いたしております。  文部省といたしましては、これらの分校が我が国の大学制度の枠外で自由に教育を行いたいということでございまして、一部相談等はございましたが、格別なかかわり合いはございません。
  143. 東祥三

    ○東(祥)委員 そうしますと、自由に行われているところもある。しかし、それは情報として、そこで学ぶ学生たちに事前にちゃんと提供される可能性もない。そこで勉強する。そして、たまたまその学校内にある制度を使って本校があるアメリカで勉強して学位を取得すれば、日本に帰ってきたとしてもその学位は認められる。しかし、留学しなくて、日本で認められていないその分校で学位を取得したとしても、何ら有効性を持たない。結局、子供が自主的にその情報をキャッチできるのかどうなのかというところに依存してきてしまう。  たとえ自由に分校を開設しているところであり、かつ、政府から認可を受けていない活動があったとしても、何らかの形で海外の分校に通っている学生たちに事前に情報を提供するサービスがあっていいのではないのかと私は思うのですが、この点についてはいかがですか。
  144. 喜多祥旁

    ○喜多説明員 我が国におきまして教育事業を行うことにつきましては格別の規制はございません。だれでも自由に教育事業を行うことができるというのが基本的な考え方でございまして、事実上の教育事業、教育施設というものに対しまして何らかの調査をする、あるいは何らかの資料の提出を求めるということにつきましては、教育事業はだれでも自由にできるということに対してどうか、問題があるのじゃないかというのが私どもの認識でございます。
  145. 東祥三

    ○東(祥)委員 この点極めて重要なことだと思いますので、また別の機会で取り上げたいと思います。  時間が五分になってしまいましたので、きょうは中南米局長にも来ていただいておりますが、日本の国際化の一つの具体的な例として、日本から海外に勤務する日本人もかなりふえてきている。したがって、その両親の勤務に随行していく日本子供たちもふえてきている。当然、自分たち子供をできるならば日本学校教育させたい。したがって、いろいろな国々において日本人学校というのがあるわけでございます。  しかしながら、ともすると、私もいろいろなところで散見させていただいておりますが、どうしても日本人の集団をつくって交際してしまって、なかなか現地の人々との交流というのが想像していた以上にままならない。したがって、二年あるいは三年外国に生活していたとしても、その国の言葉すらマスターできない、日本語だけという子供たちもかなり多いということを理解いたしております。これは、ある意味日本人学校のつくり方に問題があるのではないのかというふうに私は思っているのですが、そういう中でも一つ特異な例が存在します。  それは、メキシコに日本メキシコ学院というのがあって、日本人コースとメキシコ人コースという二つのコースを併設して、一つ日本人学校の中に存在する。これは十五年ぐらいたっていると思うのですけれども、まずこの日本メキシコ学院の特徴、そしてその後に、なぜこういうものが他の国にできないのかということについて質問をしたいと思います。
  146. 寺田輝介

    ○寺田政府委員 御質問の件でございますが、私の方から最初に、日墨学院の現状といいますか、設立された特性等事実関係を御説明いたしたいと思います。  既に委員におかれて御案内のとおり、昭和五十二年の九月に設立されたわけでございます。そもそもこの日墨学院が設立されました趣旨でございますが、三つの目的がございました。一つは日系子弟の日本語、日本文化の継承及びメキシコ教育の水準の向上に貢献すること。第二の目的でございますが、在留邦人子弟の教育水準の維持向上に当たる。三番目、この三番目がまさにこの学校の特性をあらわしておりますけれども、日墨両国の友好親善、国際社会への貢献に資する人材を育成する、こういうことでございます。  そういうわけでございますので、既に御質問の中で言及がございましたように、この学院といいますのは二つのコースから成っておる。メキシココース、これはメキシコの教育、メキシコの学校制度に準じてできておりまして、小学校、中学校、高校から成る。私の手元の新しい数字でまいりますと、既にこのメキシココースには生徒数が千百六十名もいる、その中で日系人生徒は約三割を占めている。二番目の日本コースでございますが、これはいわゆる海外子女のための日本人学校で、小学校と中学校の課程があるわけでございますが、現在三百二十一名在籍している、このうち日系人生徒は十数名である、こういうことでございます。  この学院の最大の特徴でございますが、日墨両方のコースの交流授業がある、それからお互いのコースでそれぞれの言葉を勉強しているということ、それからもちろん合同の文化行事あるいは体育の行事などをともに行う、こういう特性があるわけでございます。現在メキシコシティーでは、この日墨学院はメキシコシティーにおきます名門校の一つになっている、そういうことでございますから、サリナス現大統領のお子さんもこの学校で勉強したということもむべなるかなと思っております。     〔委員長退席、狩野委員長代理着席〕
  147. 荒義尚

    ○荒政府委員 私の方から、ただいま先生指摘の、この日墨学院のような非常に開かれた学校の運営体系というのが世界各地になぜもっとできないのかという点でございますけれども、私どもとしましても、もちろんそういう日墨学院のような非常にすぐれて立派な開かれた学校というケースがふえることは願っておるわけでございます。ただ、なかなか一挙にそこまで行かないという点もございます。相手国の事情、教育制度もございます。  私どもとしましては、現在全世界に八十七校日本人学校がございますけれども、一般的に日本の国際化、開かれた日本人学校、国際人としての子供教育ということをよく考えて、例えば国際学級、シドニーなんかでは非常にうまくいっておりますし、それ以外の地域におきましても、地元の子供たちとの交流を積極的にやるようにいろいろ指導しておりまして、今幾つか進歩しつつあるという状況でございます。
  148. 東祥三

    ○東(祥)委員 開かれた日本人学校をさらにつくっていただくために一層の御尽力をしていただくことを要求させていただきまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  149. 狩野勝

    狩野委員長代理 古堅実吉君。
  150. 古堅実吉

    ○古堅委員 子ども権利条約の本委員会における審議も、きょうで最終日を迎えました。わずかな時間しかございませんので、急ぎ数点について伺わせていただきます。  最初に、子供の最善の利益という点から、一例として保育所の措置費に対する予算を取り上げて政府の施策の改善を求めたいと考えています。  政府は、一九七九年に国際人権規約を締結いたしました。ところが、子供の保護される内容は、その後の十年余の措置費予算を見れば、後退しているというのが実態です。一九八〇年の国の措置費は二千八百六十億円でした。それが、一九八六年には千八百五十三億円、一九九二年が二千二百九十五億円で、国際人権規約締結の翌年の一九八〇年の予算にもほど遠い予算となっております。今年度も二千六百二十三億円でしかなく、一九八〇年度と比較すればマイナス八・二九%です。  一九九〇年には子供のための世界サミットも開かれ、ことしは間もなくこの子ども権利条約の批准もされようとしております。こういうときに国の保育所措置費予算がこのように後退を続けるということは、どう見ても子供の保護される権利が重視され、その保障施策が充実されているというふうに理解するわけにはいきません。事は重大だと申さねばならないのであります。厚生省と外務大臣からそれぞれ御所見を最初に伺いたい。
  151. 冨岡悟

    ○冨岡(悟)説明員 御説明申し上げます。  保育所は昭和二十三年に制度創設されまして以来、市町村がその事務を行っておりますが、その運営に要します費用につきましては、現在一兆円を超す規模になっております。その負担の内訳は、親が平均いたしまして全体の約半分を負担し、残りを国と地方団体が負担いたしております。  国と地方の負担割合につきましては、従前は他の社会福祉施設も同じでございますけれども、国と地方の割合は八対二の負担割合でございました。昭和六十年度予算の高率補助金の見直しの中におきまして、六十年度の暫定措置といたしまして国と地方の負担割合が七対三とされたところでございます。  その後、政府の中に補助金問題検討会が設置されまして、その検討結果を踏まえまして、地域の実情に合った総合的、効率的な行政の実現及び事務運営の簡素化を図る観点から、この保育所の事務の団体事務化が行われたところでございます。  同時に、たばこ税を交付税の対象とする等、地方財源措置を講じるなど必要な措置を行った上で、昭和六十一年から六十三年度までの暫定措置として、国と地方の割合を五、五といたしております。このような経緯を踏まえまして、平成元年度から措置費に係ります補助率は、法律改正によりまして二分の一で恒久化されたところでございます。  こういった経緯を経まして、保育所の運営費、すなわち保育所措置費に係ります国と地方公共団体で負担しますいわゆる公費の負担は、昭和五十五年、一九八〇年でございますが、三千五百七十五億円でありましたものが、昭和六十一年、一九八六年には三千七百五億円になっておりますが、平成五年度、本年度におきましては五千二百四十七億円になっております。子供の数が減少している中でこのような公費の支出をふやしておりまして、入所児童一人当たりの費用も着実に増額しておるところでございます。  以上でございます。
  152. 小西正樹

    ○小西説明員 事実関係についてはただいま厚生省の方から御答弁をされたとおりでございます。  私ども外務省といたしましては、条約との関係でございますが、先生既に御承知のとおり、この条約の十八条には「児童の養護のための施設、設備及び役務の提供の発展を確保する。」ということが規定されておるわけでございます。ただ、この規定も、その個々の保育所の予算についてどうこうするといった具体的な規定があるわけではございません。  また、事実関係については、厚生省から今御説明のあったとおり、むしろ増額になっているという事実がございますので、私ども条約との関係においては問題はないのではないかというふうに理解しております。
  153. 古堅実吉

    ○古堅委員 保育所に対する措置費を言っておるのですがね。予算の問題を持ち出したり、あるいは児童が減っておって一人当たりは云々とかいう形で後退させることは許されないと思うので、重ねて、指摘できる点から申し上げますが、児童の数は一九八〇年が百九十九万三千人で、一九八六年が百八十一万四千人、一九九二年は百六十一万七千人ですから、確かに減っています。一人当たりの額で見ますと、一九八〇年が十四万三千円で、一九九二年は十五万四千円ですから、この十二カ年で七・七%の伸び率です。そこに今言われるようなごまかしが出るのです。ところが一方、この間の消費者物価指数は二七%の伸び率ですから、実態としてはいかに後退したものとなっているか明白です。  政府の臨調路線は、子ども権利条約が求めている子供の最善の利益をこのように損なう状況をつくってきたと思いますが、求められている重要な点は、保障措置の充実強化の方向に思い切って見直していく、それが求められておると思います。  保育所に対する措置費にかかわって、条約の所管大臣として、その件でもう一度大臣から御意見をいただきたい。
  154. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今事務当局から答弁がありましたように、この条約におきまして措置費の増額まで義務づけているものではないと私も考えております。
  155. 古堅実吉

    ○古堅委員 大変中身のない、つれない返事のように思いますが、問題はそう簡単なものじゃないのですね。  海部総理が出席された子供のための世界サミットで採択された宣言は、その「決意」の項で「子どもの福祉には最高レベルの政治行動が必要である。我々は断固としてこの行動を取る決意である。」と高らかに表明しています。知らぬとはおっしゃいますまい。大臣、この世界宣言とそれを実施するための行動計画は世界に向けた約束であり、その実施のための最善の努力が求められているものであります。この立場を踏まえて、厚生大臣とも相談されるなど、保育所措置費の拡大、子供の最善の利益確保のために働きかけられるおつつもりはございませんか。
  156. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 もちろん今の政府は、海部総理のそのような世界会議での発言も踏まえて、厚生省は措置費を考えていると私は思っております。
  157. 古堅実吉

    ○古堅委員 次に進みます。  条約三十七条以下の少年司法に関連して伺います。  警察での少年の取り調べについては、これまでいろいろと問題だと指摘されてきたところがございます。日弁連の「少年警察活動と子供の人権」でも、警察署内でける、殴るの暴行を受けたり、犯罪を認めなければ少年院送りだといった脅迫あるいは虚偽の供述書がつくられる、こういうことなどの指摘もございます。条約は、こうしたことを防止することを含め、子供の人権が不当に侵害されないように積極的な規定となっています。  そこで、時間の制約もありますので、次の二点だけを伺います。  一つ、少年に対する取り調べに際しては、弁護士か家族が立ち会うように保障すること。二つ、捜査段階及び審判段階を通じて必要国選付添人制度を確立すること。その二点について、この条約趣旨を積極的に生かしていくためにもぜひ検討してほしいと思いますが、それについては、法務省、警察庁、外務省からもそれぞれ御見解を願いたいと思います。
  158. 倉田靖司

    ○倉田説明員 法務省から申し上げます。  第一点の、取り調べに家族の立ち会いを認めるべしという御提言でございますが、現在でも少年被疑者の場合には、少年の特性及び少年の健全な育成を期するという少年法の観点から、その必要に応じて保護者等を立ち会わせることもあるというふうに承知しております。  第二の、国選付添人制度のことでございますが、御案内のとおり、昭和五十二年に法制審議会は少年法の改正に関する中間答申をしたわけでございまして、その中におきましても、少年の権利保障の強化及び一定の限度内における検察官関与の両面から少年審判手続の改善を図ることが望ましいという立場をとりまして、その中の一つとして、弁護士である国選付添人の制度を設けるということも提言したのでございますが、御案内のとおり、やはり国親思想に基づく少年審判の基本的なあるべき姿いかにというところで、なかなか基本的な御賛同を得られない面も多々あり、いまだに立法に着手するということができない状態になっておるのでございますが、これは少年法の基本にかかわる深い問題を抱えておりますので、少年法全体の改正について大方の合意が得られるようになるべく努力しているわけでございますけれども、そうなったときに、じっくりと検討しなければならない大事な問題であるというふうに認識しております。
  159. 小西正樹

    ○小西説明員 第一の御質問でございますけれども、この条約は警察の取り調べの段階におきます弁護士の立ち会いを求めておらず、児童が弁護人等を求めた場合に、締約国がこれを妨げてはならないということを規定しておりまして、この点については我が国において確保されているというふうに承知いたしております。  また、第二の御質問に関しましては、これらの国選弁護人、付添人を義務づけているのではないかという点につきましては、児童が弁護人その他の適当な援助を行う者を求めた際に締約国がこれを妨げてはならないという趣旨でありまして、国選弁護人を児童に付与するということを締約国に対して義務づけたものというふうには解されないところでございます。
  160. 古堅実吉

    ○古堅委員 どういう立場でこの権利条約を実施していくかという姿勢の問われる問題なんですよね。ですから、その条約趣旨を生かして積極的に、今挙げました二点、法務省も言っておりますように、少年法の基本にかかわる重要な点という面で受けとめられるこういうものについても、保障として必要な法の改正なども含めて検討していかなくてはいかぬじゃないかということについてお尋ねしているわけです。時間がないのでそれ以上突っ込んでさらに質問を続けるわけにはいきませんから、その趣旨だけを重ねて申し上げて、次に進めさせていただきます。  五月十一日の審議の際、山形県寒河江市陵東中学校の文化祭で学校側が生徒の演劇を中止させた件を取り上げて質問をいたしました。質疑の趣旨は、生徒会が上演しようとした「ブナの森に生きる」と題する演劇を、営林暑や警察などの介入を受けて、学校側が子供たち意見も聞かずに一方的に中止決定して押しつけたのは、この条約意見表明権、表現の自由、教育の目的条項に照らしても許されない、子供権利侵害の事例だと考えるがどうかということでありました。  調査の結果はどうだったか、伺います。
  161. 富岡賢治

    富岡(賢)説明員 主管省庁でございますので、文部省からお答えさせていただきます。  過日、先生から御指摘がございました山形県の寒河江市立の陵東中学校の文化祭の演劇中止問題でございます。  山形県の教育委員会に問い合わせまして報告を得たところでございますが、昭和六十三年に同中学校の文化祭で、地元のブナの林の保護をテーマといたした演劇を教諭の指導のもとに生徒会で企画いたした。しかしその後、新聞記事によりましてブナ伐採につきましての問題が係争中ということを知りまして、学校内部で慎重に検討した結果、素材が係争中のものであることを理由として上演中止を決定したものという報告を教育委員会から受けているわけでございます。本件の上演中止決定につきまして、あくまで学校の主体的な判断によりなされたものであるというふうに承知しておるわけでございます。  先生にはもう御案内かと思いますけれども、文化祭は生徒会活動、学校教育活動の一環で行うものでございまして、生徒会が企画したものでございましても、学校が係争中である等の理由で内容が適切でないと考えて中止することについては、条約上何ら抵触するものではございませんし、直接関係のないものというふうに理解しております。
  162. 古堅実吉

    ○古堅委員 この問題について山形弁護士会が調査をして、関係団体に対する警告や勧告も出された問題です。法律専門家が、係争中のものについては今言ったような説明の方向に問題が持っていかれるというふうなことではない結論を出して、そのようなこともしています。しかも、今の答弁の範囲内においても、学校当局が一方的に中止を決定したというだけで、子供意見を何一つ聞かずにやったということについては、答弁の中からもはっきりしているじゃありませんか。こういうところを指摘しておるのです。  ですから、条約の立場に立ってもう一度この問題についてしっかり調査をするなどして、皆さんなりの正確な受けとめ、それが求められている、そういうことを厳しく指摘しておきたい、そう思います。  次に進みます。  条約四十二条の広報義務は大変重要な、意義のある規定だと考えています。  ここにリーフレットがございます。大臣、見てください。こんな小さいミニのリーフレットなのですが、国連「子ども権利条約」批准促進国民運動実行委員会がつくったもので、民間団体でもそういうふうな努力が既に昨年から展開されています。そういうことに見られるように、例えば小学生や中学生向けのわかりやすいリーフやパンフレットあるいは一般成人向けのもの、あるいはまた学校や警察や司法、福祉など日常的に子供関係の深い職場を持つ公務員等に向けた広報資料なども重視さるべきではないか、そのように考えています。  どのような広報努力をされるか、具体的な内容を含めて、簡単に御説明いただきたい。
  163. 小西正樹

    ○小西説明員 簡単に御説明申し上げます。  広報に当たりましては、国民一般に対するもののみならず、児童、親、学校等への広報も重要でございまして、外務省としては、児童に対する広報としてわかりやすい小冊子を用いることを含めまして、具体案について関係省庁ともお諮りして検討しているところでございます。
  164. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間が来ましたから終わりますが、この条約の審議を通じて数回にわたる質問をしてまいりました。残念ながら政府態度は、条約を積極的に、その趣旨に見合うような形で実施していくという面に照らせば極めて問題が多かった、このように考えています。これから解明しなくちゃいかぬ具体的な問題もたくさん残された、このように思いますので、我が党として、参議院における審議をも通じて引き続き真剣に解明のための努力をしていくということを表明して、終わらしていただきます。
  165. 狩野勝

    狩野委員長代理 和田一仁君。
  166. 和田一仁

    ○和田(一)委員 初めに、大臣に二、三お尋ねいたしたいと思います。  カンボジア選挙が今行われておりますが、当初、選挙になると大変混乱が起きるのではないか、こういう予想をしておりましたが、そういった予想とは異なって極めて順調に実施されつつあるというふうに思っております。これは、現地における関係者の努力、それから事前に選挙を妨害しようという行動がしきりにありましたけれども、これに対して、UNTACが極めて毅然とした姿勢で予定どおり行うんだということと、それと各国のそれに対する協力のたまものではないか、こういうふうに思っておりますが、八〇%あるいは八五%と予想される選挙の実施に対して、大臣のどういう評価があるのかをお尋ねしたいのがまず第一。  それから、きょうから三日間、固定の投票所は終わって移動投票が始まる、こういうことでございまして、これは大変な御苦労だろうと思うのです。固定しておけないので、日時や場所を決めて投票箱を持って投票をさせるということだろうと思うのですが、これは、明石UNTAC代表も、我々は最後のチームが最後の投票箱を持って戻ってくるまではリラックスできない、こう言っておられますが、全くそのとおりではないかと思います。  このチームがどれぐらい出るのかよくわかりませんが、どれぐらいなんでしょうか。それと、そこへ参加する日本の人も五名ほどおるというふうに聞いておりますが、かえって今までのよりは妨害行動が起きそうな、こういう移動の投票に対しての安全対策というのはどんなふうになさっておるのか。これが二つ目でございます。  それからもう一つ、まとめてお聞きいたしますけれども選挙が終わった後どういう政権ができるか。これはちょっと終わってみないとわからないと思うのですけれども、この政権ができてからかあるいはできる前か、やはりカンボジアの復興に対して一番最大の課題は、経済的な援助がどこからかなければならない、こういうことだろうと思うのです。この援助を、カンボジア復興国際会議ですか、ああいうところで昨年決めてはおりますが、それとは別に何か新しく支援体制をとらなければならないのではないかというようなお考えが出ているように伺っておるのです。その点はいかがなことなのか、お伺いしたいと思います。
  167. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 第一点の、この選挙に対する評価ということでございますが、けさほども申し上げましたけれども、必ずしも日本などのような社会と違って、全く平和な安定した社会ではない、そういう中であのような高い投票率を示しているというのは、いかにカンボジア国民が、長い間続いた内戦から、ぜひ平和な国家になりたい、また、せっかくこのような形で、開かれたといいますか民主的なルールに基づく選挙が行われる、自分たちの手で国家をつくることができるのだ、こういう意欲のあらわれがあのような形になってきた、あのような選挙の結果になってきたのではないか、そういう点では、カンボジア国民皆様方は、ひとしく平和で民主的な国家を望んでおられる結果ではなかろうかと私は評価をいたしております。  二番目の、きょうから始まります移動投票所でございますが、私が事務当局から報告を受けておるところでは、大体、日本選挙監視要員は五名参加されると聞いておりまして、これにはフランスの部隊が警護に当たられるというふうに聞いております。そして、その監視要員に対しては、よく事前の研修が行われ、また、防弾チョッキを初め、日本から受信用のラジオを持っていってタケオ州にあるインマルサットと常に連絡をとれるようにしておるということでございます。  それから三番目は、今御指摘のありましたカンボジア復興国際委員会がございますが、これを開くというのも一つの方法かと思います。その辺はまだ詰めてはおりませんが、今関係国と少しずつ話を始めておりますのは、何にしても社会的、経済的に、あるいは民主的と申しますか、一日も早く安定をさせてあげることが必要でございますので、新政権が発足する前においても何らかの形での支援をやっていく必要はあるのではないか、そのために、場合によればカンボジア復興国際委員会も活用してもよろしゅうございますし、場合によれば、これは内政干渉にならないようなことでシアヌーク殿下その他の御理解も得ながら、何らかの形の関係国による会議といいますか協議を開くということもあっていいのではないかということで、今外交ルートを通じて少しずつ話を進めておるところでございます。
  168. 和田一仁

    ○和田(一)委員 今の大臣のお話ですと、新政権樹立前にも関係各国と話し合ってそういった援助をしてもよろしいのではないか、今話を進めておられるということでございます。新政権、どんなものができるかわかりませんが、政権樹立前にも援助をした方がいいというのは、やはりこれは相当重要だし、急がなければいかぬという判断だと思うのです。  最後に一つだけ、大臣、新政権はポル・ポト派を取り込んだ政権の方がいいとお考えになっているのかどうか、大臣の御見解をお聞かせください。
  169. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは大変難しい御質問でございまして、私は、やはり今度の選挙は、先ほど申し上げましたように、カンボジア国民の大半がとにかく民主的なルール自分たち国づくりをするのだ、こういうお気持ち投票なさったわけでございますから、選挙の結果がどういう形で出てくるか承知をいたしておりませんけれども、その選挙の結果を尊重して、民主的なルールのもとに政権ができ上がっていくというのが、私は望ましい姿だと思っております。     〔狩野委員長代理退席、委員長着席〕
  170. 和田一仁

    ○和田(一)委員 新政権ができて、経済援助をしてまた再び騒乱が起きるようなことがあったのでは援助も役に立たないので、安定した政権ができることが望ましいわけですが、これは選挙の結果を見ないと何とも言えないと思うので、またの機会にいたします。  きょうは、条約についてはもうきようでおしまいということでずっと続けてまいりましたので、私にとりましても最後の質問機会に、確認しておきたい点を何点か御質問させていただきます。  現在、児童の人権は、世界人権宣言であるとか国際人権規約等によって規定され、守られているわけでございますけれども、実態としては大人の権利の陰に隠れた状態になっているのではないかと思います。我々大人の社会が引き起こす戦争紛争、こういった混乱や、あるいは経済的政策、施策の失敗、こういうものによって、一番被害を受けてしまうのが、社会的に弱い立場にあります年寄りや女性あるいは児童子供であるというふうに思います。特に、ソマリアとかボスニア等において子供たちが置かれている現状というものは極めて悲惨な状況である、こういうふうに思うのでございます。  一部発展途上国にあって恒常化している飢餓の問題、内戦がある国における難民の問題、子供戦争に駆り出す少年兵の問題、親による子供への暴力、性的虐待、それから識字率がない、低い、あるいはストリートチルドレンが出る、子供をめぐる人身売買や麻薬その他の薬物による健康の阻害であるとか、世界全体の児童子供を取り巻くこういったような状況というものは相当深刻なものがあると思っております。一方、人口は急激にふえつつある、それもやはりそういった国々において急速にふえている、こういう実態ではないかと思います。  そういうことを考えますと、翻ってみて、我が国子供の置かれている状況というものは、生存が侵されるというようなことは極めてまれではないか、ほとんどないと言ってもいいように、そういった国々と比較すれば極めて恵まれているというふうに感じます。しかし、恵まれた社会の中にあっても、子供をめぐる問題というのは絶無ではありません。いろいろな問題がございまして、この審議の過程でそれらのことが一つ一つ指摘されてきたわけでございます。いじめの問題、体罰の問題、あるいは学校へ行きたくないという子供、非行の子供等々、教育関係だけでもたくさんの問題がございました。  私は、家庭環境や自然環境の改善や、子供を取り巻くいろいろな課題について、やはり解決していくべき問題があると思うのでございます。こういった観点から、国際的な協力によって、困難な状況にある子供たちの生存権であるとか人格権、こういったものを大事にしようという条約趣旨を評価して、やはり早く批准しておく必要がある、こういう立場でおるわけでございますが、その立場にあって、以下幾つかお聞きしたいと思います。  第一に、十二条の児童の意思表明権についてお尋ねを申し上げます。  この条約で画期的なのが十二条に書かれております児童意見表明権の問題であろうと思いますが、この意思表明権についての政府解釈について、改めて確認を込めて御質問したいわけです。  今の行き過ぎた管理教育であるとか、それから派生すると言われているいろいろな不合理な校則や学校運営上の問題、こういう問題を指摘して、それを是正する手段として児童あるいは生徒に権利として発言の場を与えるものだ、こういう決めつけの解釈ではないのではないか、こう私は思うのですね。原則として、この条文が規定するように、自分意見を形成する能力のある子供意見は、その年齢や成熟度に応じて配慮されればよい。その権利だけを大きく取り上げて前面に押し出すということではないと思います。例えば学校教育の場を考えてみましても、学校には学校運営上のルールがあり、校則もあり、それは改善の余地があれば、それなりの手続を通して当事者が次第次第に不断の努力によって改善すればよい、また、改善するのが当然だと思います。  学校児童生徒の関係というのは、一般社会における契約関係、いわゆる対等の契約関係権利義務の関係とは違う、こう私は思っております。児童生徒というものは社会的には当然まだ未熟ではございまして、同時に教育を受けるという立場にあるわけでございまして、教育を受ける者にしては、よりよい教育効果を上げるためには懲戒する場合もある、こういうことを念頭に置くことは十分必要ではないか、こう思います。いたずらに児童権利だけを強調してはいけないのではないかと思うのであります。  この点について、我々一般社会における法律的な権利義務関係と同じようなものであるというふうに割り切れないと考えておりますけれども、十二条のこの児童意見表明権についての政府の見解、そしてそれをどう広報していくか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
  171. 小西正樹

    ○小西説明員 お答えいたします。  十二条の意見表明権についてのお尋ねでございますが、この条約十二条の一は、児童がみずからの意見を形成し得るようになれば、児童といえども、だれと結婚するか、どのような職業につくかなど、その児童個人に関するすべての事項についてみずからの意見を述べることが認められるべきであるという理念を規定したものと考えております。  この規定は、表明された児童意見が必ず反映されることを求めているものではなく、先生指摘のとおり、児童意見がその年齢や成熟の度合いによって相応に考慮されることを求めているものでございます。仮にこういう点につきまして解釈上疑義が生じるというようなことでございましたら、私ども、この条約広報の一環といたしまして、この点に対する正しい理解が促進されるよう、外務省を初めといたしまして関係の省庁ともお諮りして、正しい解釈趣旨について理解が進むように努力していきたいというふうに考えております。
  172. 和田一仁

    ○和田(一)委員 この条約の批准に際して、国内法も予算措置も法改正の必要はない、こういう立場でございますけれども、いろいろ質問をしてまいりました中で、やはり各省庁との連携を密にしてより確実なものに改善していく努力は当然なされなければならないと思っておりますので、その点については念を押しておきたいと思います。  それから、批准した後、この児童権利をもっと進めていくために、完全に保障しようとするためには、児童権利に関するまだほかの条約もあるわけなんですが、そういった条約の批准がなぜおくれているのか、この点について御質問をしたいと思っておるのですが、余り時間がなくなりました。  国連または国際機関において児童権利に関して規定している条約が一体どれぐらいあるのか。また、それらの条約の批准状況はどうなっているのか。おくれている我が国国内事情というのはどういうことなのか。  例えばILO関係だけでも、児童、年少者に関する条約というのは、まだ批准されておらないのが何本かあろう、こういうふうに思います。保護に関する五十九号あるいは百三十八号、健康の診断ですか、健康に関する七十七号、七十八号、百二十四号、それから夜の仕事、夜業に関する七十九号、九十号ですか、こういったものがまだという点について、まだこのほかにもあるのかもしれませんが、どういう状況になっているのかをお尋ねいたします。
  173. 小西正樹

    ○小西説明員 子供に関する条約、特にILOの条約についての御質問でございますが、先生が今お述べになられました条約はまだ未締結でございます。また、お触れにならなかった条約のうち、就業の最低年齢に関する条約、ILOの百三十八号でございますが、これが未締結でございます。  我が国がこういった未締結子供関係するILOの条約をどういうふうに今後考えていくべきかということでございますが、私どもは、児童及び少年者に関するものを含めまして、ILO条約につきましては内容をよく吟味して批准するということで、国内法制との関係について問題のないという結論が得られたものからできるだけ早く批准のための手続を進めていく所存でございます。また、国内法制との関係で問題があるようなものにつきましては、その問題を所掌しておられます関係省庁における積極的な検討を今後とも促してまいりたいというふうに考えております。
  174. 和田一仁

    ○和田(一)委員 大臣は近々OECDの会議にもお出になるというふうに伺っておりますが、参加国は既にこういったものをどんどん批准している、平均の批准数から見ても我が国はまだ低い、こういうことなので、できるだけ急いでいただけないかな、こういうふうに思います。  最後に、時間がまいりましたけれども一つだけお聞きして終わりたいと思います。  この条約を批准することによって日本の体制をきちっとするのと同時に、国際的に、先ほど申し上げたような環境にある子供たちのためにもこれは協力するという趣旨がございます。そういう意味で、私は、ODAをこういった国々にこういう観点からぜひお使い願いたいというふうに思うのですが、これに対する政府の今の方針、これからこういった条約批准の上でどう対処していかれようとしているかをお聞きしたいと思います。
  175. 上田秀明

    ○上田説明員 お答えいたします。  御指摘のとおり、経済協力の実施に当たりまして、いわゆる社会的弱者に対する配慮をしていくべきということは当然でございまして、政府といたしましても、昨年の六月に閣議決定をいたしました政府開発援助大綱、そこの「効果的実施のための方策」というところで、第十三項でございますけれども、「子供、障害者、高齢者等社会的弱者に十分配慮する。」ということを方策として定めてございます。  こういうことに基づきまして、例えば今まででも二国間援助によりまして、小学校、中学校の校舎の建設とかあるいは教材の供与、それから母子保健の関係、小児病院のプロジェクトのような協力を行ってきております。また、国際機関を通じましては、国連児童基金(ユニセフ)それからWHO、ユネスコ等を通じた資金協力も行ってきております。  今後とも、先ほど述べました政府開発援助大綱の精神あるいは方策にのっとりまして、このような方向での協力の充実に努めてまいる所存でございます。
  176. 和田一仁

    ○和田(一)委員 時間になりました。これで終わります。
  177. 伊藤公介

    伊藤委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  178. 伊藤公介

    伊藤委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。土井たか子君。
  179. 土井たか子

    ○土井委員 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表いたしまして、ただいま議題となっております児童権利に関する条約締結に対し、賛成の討論を行います。  本条約は、申し上げるまでもなく、子供を保護、管理の対象としてのみとらえていた従来の視点から、子供権利行使の主体と認め、その権利を保障しようとするものであります。  この条約は、人間のだれもが必ず通過する子供権利を保障するという意味で、人権史上画期的な意義を有するものと言えましょう。子供権利の確保と保障に向けての国際的努力が結集した本条約締結を私たちは待ち望んでおり、本日採決できることに喜びを覚えます。  しかしながら、本条約締結に際しての我が国政府の取り組みや、委員会審議における政府側の答弁には、はぐらかし、すりかえが目立ち、遺憾ながら満足できるものとは言えません。  私は、本条約承認に際して、政府の姿勢について、以下の問題点を明らかにして、その善処を強く求めるものであります。  第一に、本条約政府訳には、「子供」と訳すべきところを「児童」と訳したことに代表されるように、条約趣旨を十分にあらわさないばかりか、子供権利を、我が国現行法制度で事足りると、制限する方向で訳していると思われる点があります。  第二に、本条約の実施のための国内措置について、新たな立法措置、予算措置は不要としている点であります。  本条約国内法の間には、非嫡出子に対する差別や、少年法における通訳費用徴収の規定、養子縁組における許可制度の差がそのままにされるなど、明らかなそごがあるにもかかわらず、それらは放置されたままであります。  また、高校の無償制や学校懲戒や裁判における聴聞などが考えられなければなりません。  本条約子供たちへの広報予算が明示されていないことも、条約締結後の国内実施に対する政府の消極的な姿勢を露呈したものと言えます。  第三に、条約に付した留保、解釈宣言でありますが、これらについては、我が国国内法上必ずしも必要とは言えないものであり、撤回を検討すべきであります。  第四に、政府は、国連子供権利委員会に報告書を提出し検討する機会に、政府代表のみでなく、国会議員、さらに民間からの代表者をも派遣することが適切な広報に役立つと思うので、この実現努力していただきたい。  政府は、国民からの意見、提言を踏まえ、訳文を再検討するとともに、国内法制の整備、予算措置の確保等、本条約の実施に際しては誠意を持って実行されることを約束していただきたい。  第五に、貧困、飢餓などの状況の中で、発展途上国の子供たちにより大きな犠牲が集中していることは種々の報告書等で明らかであり、本条約は、このような子供たちに対する支援を求めております。国際社会の一員としての我が国は、今こそこれらの子供たちに直接かつ具体的な援助を行う方策を計画し、実行すべきであります。  本条約は、子供の人権を人間の尊厳として確立する方向へ大きく踏み出したものであり、子供を含んだ人類の基本的人権をもさらに発展充実させる契機とも言えましょう。  すべての子供が健やかに生まれ、育つことは、全人類の希望であり、責任であります。国際社会がその崇高な理想へ向けた第一歩であるこの条約趣旨を歪曲し、狭窄することなく、我が国として最善を尽くしてそれにこたえるべきであることを訴えて、私の賛成討論を終わります。
  180. 伊藤公介

    伊藤委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  181. 伊藤公介

    伊藤委員長 採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  182. 伊藤公介

    伊藤委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 伊藤公介

    伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  184. 伊藤公介

    伊藤委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  ただいま委員長の手元に、小里貞利君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議日本共産党及び民社党の五派共同提案による、児童権利条約に関する件について決議されたいとの動議が提出されております。  この際、本動議を議題とし、提出者から趣旨の説明を聴取いたします。上原康助君。
  185. 上原康助

    ○上原委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議日本共産党及び民社党を代表して、ただいま議題となりました動議につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文の朗読をもって趣旨の説明にかえさせていただきます。     児童権利条約に関する件(案)   国際社会においては、国連を中心として世界人権宣言以降、幾多の人権に関わる条約等を通じ人権保障が確保され、進展してきた。特に未来を担う子ども権利の尊重及び保護の確保を保障する本条約意義は大きく、このことは、基本的人権尊重の理念に基づいている我が国の憲法が目指すものでもある。   政府は、児童権利に関する条約を批准するに当たり、左記の事項につき誠実に努力すべきである。      記  一 今日、世界の多くの子どもが、紛争、飢餓及び貧困等の中で極めて困難な状況におかれていることに留意し、子どもの生命及び人権の尊重の確保のために、一層国際協力を推進すること。  一 本条約が締約国に義務付けている広報に当たっては、関係行政機関、地方公共団体、教育現場を含め国民全体に幅広くこの条約趣旨、目的及び規定の周知徹底に努めるものとし、特に子ども条約理解し得るように配慮すること。  一 我が国における子ども権利の尊重及び保護の一層の確保に努めること。  一 そのため政府部内において、関係行政機関が緊密な連絡に努め、その運用については十分配慮すること。  一 本条約の義務に基づき児童権利に関する委員会に対して報告書を提出した場合には、当外務委員会に対しても同報告書を提出すること。   右決議する。  以上であります。
  186. 伊藤公介

    伊藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  小里貞利君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  187. 伊藤公介

    伊藤委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。  この際、外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣武藤嘉文君。
  188. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 政府といたしましては、ただいま採択されました御決議の趣旨を十分尊重いたしまして、この条約を誠実に履行してまいります。     —————————————
  189. 伊藤公介

    伊藤委員長 お諮りいたします。  ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  190. 伊藤公介

    伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  191. 伊藤公介

    伊藤委員長 次に、みなみまぐろの保存のための条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  政府より提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣武藤嘉文君。     —————————————  みなみまぐろの保存のための条約締結について承認を求めるの件    〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  192. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ただいま議題となりましたみなみまぐろの保存のための条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  我が国は、昭和五十七年以来毎年オーストラリア及びニュージーランドとの間でみなみまぐろ三国間協議を開催し、毎漁期の三カ国によるみなみまぐろの総漁獲可能量及びその各国別割り当て量につき協議することを通じてみなみまぐろの保存及び管理を図ってきましたが、近年の漁業資源の保存に対する国際的な関心の高まりを背景として、みなみまぐろの保存及び管理に係る枠組みを一層整備することが必要であると認識されるに至りました。このような状況のもとで、昭和六十三年四月以降三国間で協議を重ねてきました結果、みなみまぐろの保存及び管理に係る国際的な法的枠組みを設定することで意見が一致し、条約案文についても最終的合意を見るに至りましたので、平成五年五月十日にキャンベラにおいて、この条約に署名を行うに至った次第であります。  この条約は、みなみまぐろの保存及び最適利用を適当な管理を通じて確保することを目的としており、そのため、みなみまぐろ保存委員会を設置し、みなみまぐろの保存、管理等に係る措置を決定することを定めております。また、締約国は、この条約の目的の達成を促進するため、他国のこの条約への加入を奨励することにつき協力するほか、この条約の締約国でない国等のみなみまぐろの漁獲活動がこの条約の目的の達成に不利な影響を与える可能性がある場合には、そのような活動を抑止するための適切な手段をとることについても協力すること等を定めております。  この条約締結によりまして、みなみまぐろの保存及び最適利用が関係国による国際的な管理体制の下で一層効果的に確保されることが期待されるほか、漁業資源の保存に対し国際的な関心が高まりつつある中で、この条約を通じてみなみまぐろの科学的かつ合理的な資源管理を行っていることを示すことは、我が国漁業者によるみなみまぐろ漁業の安定的操業の維持を図る上でも重要なことと考えられます。  よって、ここに、この条約締結につき御承認を求める次第であります。  何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことをお願いいたします。
  193. 伊藤公介

    伊藤委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時二十二分散会      ————◇—————