運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1993-04-23 第126回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月二十三日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 伊藤 公介君    理事 小里 貞利君 理事 狩野  勝君    理事 鈴木 宗男君 理事 長勢 甚遠君    理事 上原 康助君 理事 土井たか子君    理事 東  祥三君       新井 将敬君    松浦  昭君       山口 敏夫君    山本  拓君       秋葉 忠利君    井上 一成君       川島  實君    高沢 寅男君       藤田 高敏君    古堅 実吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 武藤 嘉文君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      須藤 隆也君         外務大臣官房審         議官      津守  滋君         外務大臣官房外         務参事官    小池 寛治君         外務省アジア局         長       池田  維君         外務省北米局長 佐藤 行雄君         外務省中南米局         長       寺田 輝介君         外務省欧亜局長 野村 一成君         外務省中近東ア         フリカ局長   小原  武君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 丹波  實君         外務省国際連合         局長      澁谷 治彦君 委員外出席者         警察庁刑事局保         安部生活保安課         長       瀬川 勝久君         警察庁刑事局暴         力団対策部暴力         団対策第二課長 上田 正文君         外務委員会調査         室長      黒河内久美君     ————————————— 委員の異動 四月二十三日  辞任         補欠選任   細田 博之君     山本  拓君 同日  辞任         補欠選任   山本  拓君     細田 博之君     ————————————— 本日の会議に付した案件  児童の権利に関する条約締結について承認を  求めるの件(第百二十三回国会条約第九号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 伊藤公介

    伊藤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木宗男君。
  3. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 外務大臣、きょう天皇陛下が初めて沖縄天皇陛下として訪問されます。極めて意義ある日ではないか、私はこう思っております。ついては、この件に関する大臣の感想、思いと、沖縄皆さん方が大変な御苦労をなされているということにかんがみましても、基地問題等沖縄は大変な課題を抱えておる、それに取り組む大臣の新たな心構えといいますか、お考えを示していただきたい。沖縄県民に対する配慮等もあわせてお尋ねをしたい、こう思います。
  4. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 沖縄というのは、第二次世界大戦において非常に激しい、世界戦争歴史の中にも残るような激しい戦いが行われたところで、しかも民間の人まで巻き込まれての状況であったということ、沖縄の方のことを考えれば非常に残念なことだと思います。しかも、戦争が終わりましてからも長い間米軍占領下にあったということ、これはやはり沖縄の方にとっては耐えられないことではなかったかと思います。その意味において、本当に我々本土の者としては、同じ同胞として、沖縄皆様方の受けられたいろいろのつらいことを考えますと、できるだけの協力をするというのは当然のことだと私は思っております。  しかも、現在まだまだ相当の部分が米軍基地によって占められているという現状を考えますと、これはこれなりに、日米安保体制考えれば、一方においては必要最小限のものはやむを得ないと思うのでございますけれども、現実にそのために御苦労なさっている方もいらっしゃる。特に、時たま残念ながら事件が起きている。こういうことを考えますと、何とか一日も早くそういう事件が起きないように米軍配慮を強く求めるとともに、政府といたしましては、沖縄皆様方のためにこれからともできる限りの温かい援助をしていかなければいけない。特に、沖縄は経済的には決して裕福ではございません。そういう面から考えますと、これからも沖縄の振興のためにはできるだけの努力政府としてはやっていくというのは当然であります。  今回の天皇陛下沖縄訪問というのは、そういう面において、たまたま皇太子のころにもいらしたのでございますけれども天皇陛下としていらっしゃるのは初めてでございまして、私は、我々本土人たち気持ち沖縄の方にわかっていただくという意味においても、天皇陛下の御訪問というのは大変意義のあることだというふうに考えております。
  5. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣もごらんになったかと思いますけれども沖縄に行きますと、海軍壕大田中将閣下の「沖縄県民かく戦えり、後世の皆さん沖縄県民に対し特別の御配慮賜らんことを……」ということが記されております。私は非常に感銘を受けているのでありますけれども大臣沖縄県民に対する思いやり、また施策面でのいろいろな配慮は今後ともぜひともお願いをしたい、こう思っております。  さて、大臣、先週十六日の本委員会で私は対ロ政策基本についてお伺いをいたしました。そのとき大臣は、政経不可分は放棄していない、その延長線上に拡大均衡があると述べられました。わかりやすく言いますと、私は政経不可分プラス拡大均衡と受けとめたのですけれども、二十日の参議院の外務委員会では、この点に関する統一見解を出されました。  私もこれを読ませていただきますと、政経不可分は事実上対ロ外交では使わない、こういう印象を受けたのでありますけれども政経不可分は使うのか使わないのか、私はもうこの際はっきりすべきではないか、こう思います。基本的な問題でありますから、領土にかかわる問題でありますので、私はしっかりした大臣の答えをいただきたい、こう思います。
  6. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 この間鈴木議員から御指摘をいただきまして、私が思い切った支援という表現を使ったものですから大変誤解を招いて、これは反省をしておるということを私は申し上げました。  その後、そういう反省の上に立って、今まで使ってまいりましたいわゆる政経不可分という表現と、それから最近外務省が使っております拡大均衡表現、私がこの間申し上げたとおり今それは延長線上にあるということであるわけでございますが、これは非常に微妙な問題でございますので、私は実は毎日これを持っているのですよ、このいわゆる外務省の中の統一見解を。何かあったらこれを読む、こういうことでやっておるわけでございます。  いずれにしても、ここに書いてある、非常にこれはわかりにくいのかもしれませんけれども、今鈴木委員の御指摘のとおりで、なかなかこの領土問題というのは非常に微妙な問題がございますし、とりわけ我々これから何とか一日も早くこの領土問題を解決をして、そして平和条約を結ぶということが非常に大切なのでございまして、その意味において、大変わかりにくいかと思うのでございますけれども、私としては、この統一見解で押し通させていただきたいという気持ちでいるわけでございます。
  7. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、この統一見解でいきますと、「いずれの国との関係においても、政治面での関係経済面での関係は不可分な形で関連しており、その意味で「政経不可分」は一般的な原則であると言える。」こう書いていますけれども、これを裏を返せば、これはもう政経不可分は事実上使いませんよと私はとれると思うのですよ。  今までこの政経不可分は、基本的な原則ということで外務省は来ているのです、政府も。「一般的な原則」、これは対ロシアといわず、アメリカでもあるいは隣の韓国でも中国でも、政経不可分はどこでも通用する話なんです。しかし対ロシア、旧ソ連との関係でのこの政経不可分というのは、政は領土問題であったわけでありますから、ですからここは大変な重い意味があったのですね。  この点、大臣、この際私は言葉つじつま合わせよりも、具体的に社会情勢も変わってきた、あるいは国際情勢も変わってきた、同時にロシアが旧ソ連から移行して、非常に前向きな姿勢だとか何か感じるものがあって私は拡大均衡と言っていると思うのです。しからば私は、つじつま合わせの議論はすべきでないと思っているのです。  それで大臣、この統一見解の三番目に「いずれにせよ、この考え方は、今後とも堅持して参りたい。」こう書いておりますよ。「いずれにせよ、この考え方」というのは、「この考え方」というのは拡大均衡なんですね、ここでの国語上の解釈をさせてもらうならば。ということは、一、二、三のこの三番目ではもう政経不可分はなくなっている話なんです。  今大臣はわかりづらいと言った。大臣がわかりづらいものは我々もわかりづらい。いわんや受けとめる国民はもっとわかりづらい。ですから、この点は私ははっきりした方がいいのではないかと言っているのです。  同時に、官房長官官房長官で、官房長官の個人的な見解を言う。しかし、それは政府のコメントとして出されているわけでありますから。また事務次官事務次官で、十九日ですか、都内の講演で明確に、政府として政経不可分は使わず拡大均衡基本とする考えを強調したとも言っているのですね。これはどうも私は、わかりづらいのを通り越えて、何となく対ロ基本政策においてばらばらな姿勢は否めない。しからば、この担当する外務委員会できちっとした政府見解、同時に外務省としての見解大臣としての基本方針というものを私は明確に言っていただきたい、こう思います。
  8. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ただいま言われました次官のお話とか官房長官お話とかその辺もいろいろありまして、その結果、私どもが、確かにわかりにくい表現ではございますけれども、その後このようなものをつくったというのは事実でございます。  しかし、おっしゃる意味はわかることはわかるわけでございまして、要は、政経不可分という表現は、ソ連邦が全く領土問題について存在さえ認めないという非常にかたくなな態度をとってきたときに用いられてきた表現でございます。領土問題の存在前提としてその解決への努力が払われている今日におきましては、政治経済両面での動きお互いに両々相まって、そしてよい影響を与えながらともに前進していくということを目指そうという観点から拡大均衡表現を使うようになったわけでございまして、そういう面ではこれからは、趣旨としては政経不可分延長にはございますけれども表現としては拡大均衡表現を使ってまいります。
  9. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、そうしますと、これからは、表現といいますか基本的な認識として、政経不可分言葉としては使わない、今まさに動いてきておる、ロシアも変わってきておる、ですから拡大均衡という言葉で統一していくのだ、こう受けとめてよろしいですか。
  10. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 表現としては、拡大均衡という表現でまいります。
  11. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 そうしますと、大臣表現としてはもう拡大均衡で統一していくとするならば、私はやはり対ロ外交あるいは対ロ政策における一つの大きな変更だと思うのですね。  同時に、大臣は二十一日の衆議院の安全保障委員会で、政経不可分考え方を変えてもいいのではないかという質問に対しましては、政経不可分を堅持するのだということもおとといの委員会では言っておられるのですよ。この点の整合性もありますので、今大臣の言われた、まさに時代は動いている、あるいはロシアも変わってきている、しからば政府としては、これからは統一して政経不可分は使わない、拡大均衡でいくのだということを鮮明にすべきだと私は思いますけれども、いかがですか。
  12. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、政経不可分原則は守りながら、表現としては、拡大均衡という表現でまいります。
  13. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 そこで大臣政経不可分原則は守りながら表現拡大均衡政経不可分原則は守りながらというのは、これはさっき言ったように、ロシアのみならずほかの国も、いずれの国にも該当する表現なんです、言ってみれば。ただ、ロシアには領土問題がありますね。  そこで、今私がこういう質問をして、表現拡大均衡でいくのだとなりますと、領土問題はどうなるかという心配を旧島民の人はもちろん、あるいは根室地域皆さん方、また心ある多くの日本人が棚上げされるのではないかという懸念を持ちますので、大臣拡大均衡でこれからいくのだ、しかし領土は一歩も譲らない、この明確な姿勢を私はぜひとも打ち出していただきたい。  特に、大臣のところにも行っているかと思いますけれども根室市長さんだとかあるいは返還運動関係者から、「「北方領土四島一括返還」の基本を堅持していただきたい。」あるいは「「政経不可分拡大均衡」については、領土問題を優先する従前の基本を堅持していただきたい。」、さらには、北方領土問題の今後における対ロ外交、特に領土問題の基本方針を明確にしてほしい、恐らく大臣のところにもきのうかおとといこの要望書が着いておると思うのですね。  この点に関しまして、誤解を受けられても困りますから、表現としてもこれからは拡大均衡だと言った以上は、領土問題はどうなるかという心配があるわけでありますから、これはやはり大臣として、外務省として、領土問題は棚上げしないんだ、これはきちっと取り組むんだという新たな決意を私はぜひともお聞かせをいただきたい、こう思います。
  14. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 この統一見解にもありますように、領土問題の存在前提にしてときちんと書いてあるわけでありまして、私どもは、領土問題についてはもう両国間における最重要懸案である、この問題の解決なくして平和条約締結はあり得ないわけでありますから、当然領土問題は今後とも平和条約締結するために最重要懸案として取り組んでいく、こういう決意は変わっておりません。
  15. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、この統一見解では、「ゴルバチョフ時代以降、ソ連邦側領土問題の存在を認めるようになって以来、この考え方延長として、政治経済両面での動きが相互に良い影響を与えながらともに前進して行くという意味で、「拡大均衡」という言葉を用いているところである。いずれにせよ、この考え方は、今後とも堅持して参りたい。」、「この考え方」というのは拡大均衡なわけですよ。  そこで、今大臣が言った表現とこの統一見解での表現というのはまた別になっているのです。統一見解での領土問題というのは、日本からはこうだということを書いていないのです、はっきり言って。「ソ連邦領土問題の存在を認めるようになって以来、」と書いているわけですよ。日本側も、領土問題があるということは明確に統一見解では言っていないのです。この点私はきちっと言っていただきたい、示していただきたいということなんです。
  16. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私はずっと答弁で、いつも領土問題はあるということを言ってきておるわけでございます。領土問題の解決なくして平和条約締結はあり得ない、日ロの完全な形での正常化関係を持つには、どうしてもこの領土問題の解決前提であるということは私はずっと言ってきているわけでございまして、その点は全く領土問題を我々は考えないということではなくて、領土問題は常に一番頭の中にある。領土問題を解決しなくて二国間の完全な正常関係はあり得ない、これはもう私ずっとそういう答弁をしてきておりますので、そのとおりでございます。
  17. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣日ロ間に領土問題があるのは当たり前のことで、これは議論する余地のない話なんですよ。  私が言っているのは、例えばこの前のコズイレフ大臣武藤大臣との会談の中でも、領土問題については、領土問題を解決して平和条約締結するプロセスを進展させ、両分野がよい影響を与えながら前進することだという話になっている。  今まで主権について外務省はうるさく言ってきたのです。主権を認めろ、主権を認めろということが対ロシア、旧ソ連に対するアプローチだったわけですよ。その主権存在という表現がなくなってきているものですから、何かしら後退したような印象というかイメージを与えているのですよ。領土問題があることはロシア関係にあって当たり前のことなんですから。ですから、平和条約も結ばれないわけなんですから。  今まで外務省が言ってきた、例えば主権存在を認めろと言ってきたその話なんかも、前回の外相会談でも出してないわけですよ、大臣は。その点を地元ではちょっと後退しているのではないかなという心配があるものですから、その点は厳しくやりますよということを私はお尋ねしたいのですよ。
  18. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 平和条約を結ぶときには、当然領土返還ということがなければ平和条約は結べないのですから、返還ということは、主権があるから返還ということであるのは当然だと思うのです。
  19. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 これは大臣言葉やりとりではなくて現実問題として、絶えず今まで日本領土問題があるということで言ってきている。その主張のフレーズといいますか文言がやわらかくなったら、何となく受ける側としては何かしら頼りないなというような感情で受けとめてもこれは仕方ないことだと私は思うのですよ。  ですから、領土問題があることは間違いない話。また、平和条約を結ぶときには、領土問題が解決されるから平和条約が結ばれるわけですから、その過程として、プロセスとして日本外交としてはこうやるんだ、拡大均衡という表現になったけれども実際はこうやっていくんだという基本的な取り組み方だとか、あるいは外務省としての方針を私はお尋ねしているのですよ。
  20. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 要は、北方四島の返還領土返還、これは主権がなければ返還なんて言えないのですから、その主権があるからこそ日本領土返還ということを主張している、こういうことでございますから、何ら今までと変わっていないと私は思っています。
  21. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 そこで大臣、その絡みとして私が言っているのは、例えばエリツィンさんが十四日クレムリンで記者会見している。このときは、領土支援は分離したから私は日本に行ってもいいんだみたいな記者会見なわけですよ。そこら辺もリンクしてくるものですから、私はしつこく言っているわけなんですよ。  エリツィン誤解して受けとめてもらったら、これは大変なんですよ。この点、間違ったシグナルで間違って日本に来られたら、これまた逆に冷めてしまう両国関係になってしまいますよ。ですから、この点、日本基本的姿勢はこうだということを明確に内外に鮮明にしておくことが大事じゃないか、私はこう思っている。ですから私はこの点をくどく言っているんですけれども、御理解をいただきたい、こう思っております。
  22. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、エリツィン大統領がどういう意味でそのようなことを言ったのかよくわかりませんが、私の推察では、いわゆるサミットヘの招請というものと何かそこで誤解をされてしまったのではないかなと私は思っているのでございます。  いずれにいたしましても、私は、コズイレフ外務大臣に対しては、領土問題を解決しなければ平和条約締結はできないのだから、この問題というのはきちんとひとつ二国間ではやらなきゃならないということを申しておるわけであります。
  23. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣エリツィン大統領記者会見の中で、日本への公式訪問可能性が生まれつつある、というのも、宮澤日本国総理大臣が、我々の経済協力の問題と領土問題という二つの問題が正面衝突しない旨明確に述べられたからだ、時期に関しては、全くのあり得る話し合いたたき台としては、これをもってコズイレフ問題協議のため東京に飛んだんだが、話し合いたたき台としては五月末である、こういう言い方をしているんですよ。ですから、今大臣の言ってきた話とエリツィンの受けとめている受けとめ方というのは、これはスタンスが違うんですよ。だから、この点を私は明確にしていただきたいということなんです。
  24. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 コズイレフに私が話をしたのは、エリツィン大統領が今おっしゃったような発言をした後でございまして、私はコズイレフ外務大臣には、日本領土問題というものがちゃんとあるということを主張しておりまして、この解決をしなければいけないということを言い、そして二国間ではぜひこの問題は取り上げる、こう言っているわけでございますから、それがエリツィン大統領コズイレフからどういう形でその後伝わったのかどうかは存じませんけれども、今のエリツィン発言はその前であるということであります。
  25. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、その十四日のエリツィン発言は、まさに大臣コズイレフ会談の前であります。ところがコズイレフさんは、大臣会談した後も共同通信記者会見でこの分離の話はしておりますよ。それは日本の報道にも入っておりますよ。これはどう思いますか。野村局長、それは資料はあるでしょう。
  26. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私の方からはきちんと話をしてあります。
  27. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ですから、大臣がきちんと言っても、向こうがそう受けとめないと、これまたお互い誤解の中で困ったことになるなと私は思っているのですよ。コズイレフさんの日本におけるあの共同通信との記者会見では一例えば北方領土の問題の早期解決考えない、日本政府から出された建設的なシグナルエリツィン大統領がこたえようとしたためだ、日ロの二国間問題と東京サミットは結びつけないとか、日ロの二国間問題では領土問題に固執しないという態度を見せた、というようなことをちゃんとコズイレフさんは言っているわけですよ。  ですから、大臣が何ぼ主張したとしても、受けとめた向こう側がそう受けとめないと困りますから、そこらは間違ったシグナルで受けとめてもらっては困りますよということをはっきりさせておいた方がいい、私はこれを言っているのです。
  28. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 実は、私とコズイレフ外務大臣との会談のときは、ロシア側も、法と正義の原則に基づき、領土問題解決を含め、平和条約締結により両国関係正常化のために努力したい、こういうことをコズイレフさんは私に言っているわけでありますから、彼が記者会見でどうこうされた、私はそこは立ち会ってもおりません。私とコズイレフ外務大臣との間では、きちんとこの問題は議論しているわけであります。
  29. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ですから大臣向こう会談の中でそう言ったといっても、向こうがまた別のことを帰って言ったらどうするのですか。外交にはよくあることですよ。  例えば日韓条約にしたって、大平さんが日本で言った話と当時金鍾泌さんが韓国で言った話は全然違うわけですから、歴史的考察をしましても。ですから、誤解を与える話はよくないということを私は言っているのです。  何ぼ大臣が二人の会談でやったと言っても、別のことを外へ向かって、あるいは国に帰って言われたらどうなりますか。ですから大臣、ここで大臣と自分がこう言ったということを言っても始まりませんから、向こうの、ロシア国民投票もありますけれども国民投票が終わったら速やかに大臣なりしかるべき人が行って、やはり日本の立場というものはきちっところですということを再度確認するなり、向こう誤解を与えないような方策はとるべきだと私は思いますけれども、どうでしょう。
  30. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 もしエリツィン大統領日本訪問する場合には、当然領土問題は私ども提起します。そのための今の誤解があるようでございますけれども、私とコズイレフ外務大臣との間にはそういうやりとりがあったことは事実でございますから、その点を確認をしながら、これからエリツィン大統領が来られるならば、その準備のため、当然外交ルートを通じて詰めなければならないことがたくさんございます。私は、その中に当然領土問題というのは一つの問題として取り上げますので、そのときは、新聞記者にどうこう言ったということじゃなくて、二人の間で話し合ったのがやはり外交でございますから、それをもとにしてこちらからは議論をしていく、こういうことで御理解をいただきたいと思うのです。
  31. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣大臣ももう既に経験されていると思いますけれども武藤大臣が外で言われたことは、これは武藤大臣個人の見解でなくて、日本国の見解として出てくるのです。ですから、コズイレフさんも向こうで、外で記者会見なんかで言ったことはやはりロシア外務大臣としての発言になってくるのですよ。  ですから大臣、この点、大臣自身が今までの大臣記者会見の中でもいろいろ指摘されたり、逆にこの委員会でも大臣が言っているように、ちょっとフライングがあっただとかということになるわけですから、私はやはり間違ったお互いの受けとめ方は避けた方がいい、そのためにもきちっと念入りに詰めるべきところは詰めていっていただきたい、こう思います。  時間もありませんから最後になりますけれども大臣、この七月に行われる東京サミットでもぜひともこの領土問題については言及すべきだと私は思っているのです。今まで大臣は、十二日の衆議院の決算委員会では、東京サミットではいわゆる領土問題は二国間問題だから扱えないというような言い方をしていますけれども、あのヒューストン・サミットで初めて議長宣言に北方領土問題があると入った。これは、第二次世界大戦の残滓だということで各国の理解を得て入れてもらったのです。そして、ロンドン・サミットでも入ったのです。去年のミュンヘンでは初めて政治宣言に入った。この流れを私は断つべきでない。きちっとやはり東京サミット、しかも日本で行われるわけですから、ここでは領土問題があるわけですから、しかもエリツィンを呼ぶとかという話があるわけですから、私はぜひともこれは取り上げるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  32. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まだサミットの議題は最終的に固まっているわけではございません。首脳会談ですから、宮澤総理とよく協議をしなければなりませんが、今の御意見は十分理解をできますので、宮澤総理と一度相談をするときにはこの問題を議論してみたいと思います。
  33. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 特に大臣、もうおわかりかと思いますけれども、ヒューストン・サミットで議長宣言に入れたときの海部総理の表現は、日本にとってこの際特に触れておきたいと考えた点は、ソ連日本との二国間問題としてではなく、第二次世界大戦が終了したときのソ連の膨張主義の結果としての北方領土問題がまだ残っている点である、これについては、サミット各国の首脳も理解を示してくれたことは云々と、こうなっているわけなんですよ。ですから、あのとき使われたのが第二次世界大戦の残滓という表現だったわけです。  その流れからいっても、これは二国間問題で基本的には解決すべき問題であっても、歴史的な経過から見ると、あのヤルタ会談におけるチャーチルだとかルーズベルトさん方の影響力、スターリンの考え方もあったわけでありますから、私はこの東京サミットではぜひとも、少なくとも議長宣言はホスト国の役得だとも思っておりますから、これはもう絶対切るべきでない、入れるべきだ、こう思いますので、いま一度大臣考え方を明確にしていただきたい、こう思います。
  34. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ミュンヘン・サミットのあのような表現で入れられたことは、私は大変高く評価をしております。しかし、ミュンヘン・サミットであの宣言がなされたことは今も生きているわけでありますから、それをもう一回繰り返して入れるかどうかという点について、私は宮澤総理とよく協議をしたい、こういうことを申し上げたわけであります。
  35. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今まで大臣は、サミットで取り扱うかどうかにつきましては消極的だったと思いますけれども、今総理と相談する、これは非常に明るい展望がありましたから、ぜひともその線でお願いしたい。  同時に、領土問題ということで、武藤外交を確立する上からも、ぜひともいま一度突っ込んで取り組んでいただきたい。このことを要望しまして、私の質問を終えます。
  36. 伊藤公介

    伊藤委員長 上原康助君。
  37. 上原康助

    ○上原委員 私はきょう、土井さんが一時間御質問する間に質問事項を考えようと思っておったら、先にやりなさいというものですから、ちょっと忙し過ぎて戸惑っているのです。  せんだっても、対ロ問題、あるいは、特に使用済みというか、核廃棄物の投棄問題等についてお尋ねをして、ある程度外務大臣なり外務省政府見解もわかったのですが、一、二点確かめておきたいことは、朝鮮民主主義人民共和国のNPT脱退宣言と関連して、北東アジアの非核化というのは私たち大変期待をしているわけで、関心の持たれるところであります。  そこで、いろいろ政治的背景もあってなかなか複雑困難な問題ではありますが、日本外交にとって、韓国との関係、朝鮮半島との関係というのは非常に重要な案件である、課題であることは間違いありません。最近の日朝交渉の状況あるいはこれからの見通しなど、一体日本側は今どのようにやろうとしておられるのか、外務大臣の今後の方針を含めてお聞かせをいただければと思います。
  38. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 事実関係は後ほど局長から答弁をさせます。  やはりすぐ海を挟んでの隣国でございますし、一日も早く北朝鮮が核拡散防止条約からの脱退を撤回をしていただいて、査察も受け入れ、そして、ひとつ民主的な、また平和を求める国家としてなってもらいたい、こういうことで日本は対処していかなければならないと思っております。
  39. 池田維

    ○池田政府委員 日朝交渉の事実関係でございますけれども、これまで約二年の間に八回にわたって国交正常化交渉を行ってまいりました。そして、第八回目が去年の十一月に北京で行われたわけでございますけれども、最終的には結論を見ないままに別れたという格好になっておりまして、この国交正常化交渉の次回をいつに行うかということについては現在めどは立っておりません。  他方、今回の北朝鮮側のNPT脱退の決定を踏まえまして、我が方としては、日本側がこのことについてどのような考え方を持っているかということを伝えるために北朝鮮側と接触しようということで、今月の初めに北京の我が方大使館と先方の大使館の間で接触を試みたわけでございますけれども向こうが接触を断ったという経緯がございます。
  40. 上原康助

    ○上原委員 断った背景には、日本側のこれまでの対朝鮮民主主義人民共和国への外交姿勢もいろいろ影響があると思うのです。ただ、これは表立っての交渉とかそういう面ではなかなかテーブルにのりにくい面もあると思うのですね。それこそ外務省得意の根回しとか環境、条件整備というものをいろいろ積極的にやるべきだと私は思うのです。  そこで、一言確かめておきたいことは、政府とは直接関係ないと言うかもしれませんけれども、朝鮮労働党と日本社会党そして自由民主党の三党の共同宣言というのは、恐らく政府としてもこれからの日朝関係、交渉等を進めていく上で尊重しなければいけない重要な宣言だと私たちは思っているわけですが、そのことに対する御見解はどうお持ちですか、これは外務大臣の方から。
  41. 池田維

    ○池田政府委員 三党間の宣言につきましては、私どももそのような事実があったということを尊重し、それを踏まえて別途政府間の交渉を進めるということでございます。
  42. 上原康助

    ○上原委員 いろいろ政治的な面では変化はありますけれども、やはり公党の重要な会談の上でなされた声明、宣言でありますので、ぜひそれを一つの基礎といいますか土台にしてこれからの日朝交渉に役立ててもらいたい、このことを申し上げておきたいと思います。  そこでもう一点は、日本側が交渉再開を申し入れたが相手側がそれを受け入れるところまできていないというところで途切れているようですが、今後の見通し。  もう一点は、やはりNPT脱退というものは、東アジアというか北東アジアの安全保障という観点、あるいは日朝の正常化、朝鮮半島の平和的統一という面からも、私たちはいい方向に解決していただきたい。  これは六月十二日ですか、期限があるわけで、そのこととの関連で目下米朝交渉が持たれているようであります。次官級クラスというか、政府高官の直接交渉を北朝鮮側が大変要望した。それを米側も、拒否する方向、拒否というか受けがたいということで相当固執しておったようですが、やはりいろいろな話し合いの中で、この二、三日、実現の状況にあると聞いております。そういう報道がなされている。  恐らく日本側もこのことには相当関心を持っておられると思うのですが、この米朝交渉の行方といいますか、これによる問題解決、NPT脱退あるいはその他の政治案件、課題というものがどう進展をしていくと見ておられるのか。  そういう二点についてひとつお聞かせを願いたいと思います。
  43. 池田維

    ○池田政府委員 ただいま先生が御指摘になられましたように、本件は、一つの核不拡散体制そのものに対する大きな問題でありますし、同時にこの地域の安全にとって大変重大な問題を提起しているわけでございます。したがいまして、私どもとしましても、この点につきましては、できるだけ話し合いを通じて円満に解決したいという感じでおりまして、これまでにもアメリカ、韓国と緊密に協議をしておりますし、それから北朝鮮と深い関係にあります中国ともいろいろなレベルで話し合いを続けてきております。  そして、ただいま御指摘になられましたようなアメリカと北側との間でどういうような話し合いが行われるかというようなことにつきましても、私どもの間で、日米間でもいろいろな協議がございますけれども、詳細、どういう内容になるかということにつきましては、この場で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにしましても、アメリカとしましても、そういう話し合いが今回の事態の解決に役立つのであればできるだけのことをしたいということかと思います。  しかしながら、同時に、本件にとって非常に重要なことは、やはり北朝鮮側の核疑惑が解消されるということでございまして、この点について北側がその解消のために努力するということが明確にならない限り、実質的な進展というのはなかなか期待できないということも現実でございます。しかしながら、まだ六月の中旬まで時間もございます。できるだけ説得の努力関係国が続けていくということでございますし、日本としてもその方向で努力していきたいというように考えております。
  44. 上原康助

    ○上原委員 もちろん、これは核疑惑、IAEAの査察というか、そういうのを含めて、受け入れ国北朝鮮の立場というものも尊重した上でしかこういうことはできないと思うのですが、疑惑を解明するということは、南北朝鮮にとっても中国にとっても日本にとってもロシアにとっても非常に重要な課題である、これは共通認識はあると思うのですね、一般論的に。  だが、この問題だけをお尋ねするわけにはいきませんので、外務大臣、朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮の国際的な孤立化というと言い過ぎがあるかもしれませんが、やはり国際舞台に、国連にも同時加盟をしてやっているわけですから、そういった制裁措置であるとか、あるいは大国意識を持って、どちらかというと力で追い込むというような外交姿勢であっては私は問題解決にはならないと思うのですね、あの独自性、主体性というものを非常に持つ国柄として。そういうところにNPT問題、いろいろ複雑に絡んで今日の硬直した状態を招く結果になったと思う。  だから、そこをもっと柔軟に日本側としても対応して、どう正常化をしていくかという努力がもっと必要ではないかと思うのですが、御承知のように、日本は従軍慰安婦問題、戦後処理問題、補償問題、いろいろ南北に絡んでおります。こういう課題について、新しい外務大臣としてどう対応していかれようとするのか、お考え決意を伺わせていただきたいと存じます。
  45. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、隣国との関係正常化するというのは望ましいことでございますから、そのような努力日本もしなければなりませんけれども、相手側も努力をしていただかなきゃならないことはいろいろあるわけでございまして、今も両国間の協議がストップしておるのは、こちらから申し入れていることに対して向こうが全くそれに応じないという姿勢で、向こう側が今日本との協議を、何というか、ストップしている、こういう状況にあるわけでございます。  私は、やはり国際協調の中で一つの国を追い込んでしまって孤立化させるようなことは外交としては感心しないと思うのでございますけれども、そのようなことはなるべくしないように、何でもすぐぱっと制裁を加えるというようなことはなるべく避けた方がいいと思うのでございますが、しかし、相手がいつまでも非協力的な態度ではこれはまた制裁をせざるを得ないということもあり得るのではないかというふうに考えております。
  46. 上原康助

    ○上原委員 相手の出方とか相手の姿勢をうかがうという消極的な態度じゃなくして、日本側からできる面、対中国あるいは韓国との関係日本は一応友好的にあるわけだから、そういうパイプも利用して、NPT問題を初め、今の日朝の交渉の行き詰まりというものを打開するように一層の努力をお願いをしておきたいと思います。特に、九五年に核拡散防止条約の改定期というか、期限の問題等も絡んで大きな外交案件になっていくと思うので、そういうことも見通した上で、ぜひひとつ早期の正常化に向けた御努力を重ねて要望しておきたいと思います。  そこで、次に、せんだって日米首脳会談が持たれたわけですが、これはいろいろありますね。円高問題等々あって、宮澤首相、アメリカまで行って本当に円高だけもたらしてきたのかと大変皮肉な日米首脳会談だったという見方もあるわけですが、時間がありませんのでそれはさておいて、この間も外務大臣にも少し聞いたし、沖特でもお尋ねをしたのですが、日米首脳会談で在日米軍基地の問題をぜひ取り上げてもらいたい、とりわけ沖縄の基地問題については、新大統領クリントンさんにも宮澤首相の方から言ってもらいたいということを話したのですが、余り表には出ていませんね。本当に日米安保条約は冷戦がなくなっても引き続き大事だ、安保体制を堅持して維持する、むしろ強化するというような、もういつ聞いても同じことしか、外務省とか今のこの日米首脳というのは、日米安保条約を堅持するということしか知らないのかなと思うほど不思議でたまらないのですがね。  今度の首脳会談で在日米軍基地の問題、特に私がかねがね指摘をしておりますように、日米安保というのは冷戦の申し子なんだよ、落とし子なんだよな。これだけ世の中が変わっても皆さんの頭の構造が変わらないというのは私はおかしいと思う。全く新しい視点からの会談にはならなかったのかどうか、・ひとつまずお答えをいただきたい。
  47. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  頭が古いというおしかりをいつも受けておるわけでありますが、今回の首脳会談、今回総理がお会いになられた方はクリントンさん及びその首脳会談に列席した国務長官、副大統領、その他経済閣僚もおりますし、それとは別にアスピン国防長官と会談されて、クリントンさんも会談後の共同記者会見でわざわざ、アスピンさんと会われることも大事だということを言っていた経緯がございます。そういう中で、首脳会談そのものでは、今おっしゃられたように日米安保の重要性ということに触れただけでございます。  全体の枠組みといたしましては、日米関係には三つの大きな分野がある。政治・安全保障の分野の協力、グローバルな問題についての協力、経済問題においての協力がある。この三つのバランスのとれた格好で発展させていこう。ただ、今世界経済の低迷、日米貿易黒字、赤字の問題がある中で、経済問題が特に弱いので、そこを強めていこうという流れの中で議論が行われたわけであります。  他方、アスピンさんとの会談では、総理は具体的に沖縄の例も挙げまして、基地の密度が非常に高いことが実態であると指摘された上で、この問題について基地の整理統合の一層の促進を図ることが重要だ、協力を得たいということを言われました。この点については、実は前回も外務大臣が訪米したときにも指摘したところでございまして、今回、首脳レベルでアスピンさんに指摘したわけであります。クリントンさん御本人に言ったわけではございませんが、全体の会談の一環で指摘したということで、高い政治レベルの日本側の関心を伝えたという意味はあったと思っております。
  48. 上原康助

    ○上原委員 密度が高い、一層の整理統合、あなたは相変わらず統合統合と言う。もっと少なくしなさいと言っているのです。コンセントレート、インテグレートして、統合して強化するようなことはだめなんだ。それだからいつまでも密度が高いのだ。  そうしますと、極めて儀礼的というか、外交辞令的なことしか言わなかったと。中身はなかったのですか。我々がかねがね指摘しているように、那覇軍港、普天間基地、読谷飛行場、嘉手納マリーナ、特に県道一〇四号線の実弾射撃演習、今ごろああいうことをやる基地なんてありますか、世の中のどこに。そういう具体的なケースを挙げてやらないと一向に進まないのではないですか。総理のそういう言い分に対して、アメリカ側の反応はどうだったのですか。
  49. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 いつも同じようなお答えをして申しわけないのでありますが、具体的な問題につきましては、昨年の五月十五日の沖縄返還二十周年のときに、我々として改めて残された基地問題についてアメリカ側と話し合いを進めて、返還の促進を図るということを外務大臣の名において明らかにしておりまして、その後、私のところでアメリカ側といろいろな形で話し合いを続けてきております。  ただ、お時間をとって恐縮なので簡単に申しますが、この間申し上げましたように、政権の交代がございまして私の相手になる人たちが皆かわったという状況がございます。ついきのうの新聞に出ておりましたように、国務次官補の議会の承認がやっと終わったというような状況でございますので、これから鋭意また議論していきたいと思います。  ただ、その際に、総理からも問題を指摘したということを背景にしてやれるということは、またひとつ意味が違うと思っております。
  50. 上原康助

    ○上原委員 その点は私も評価します。総理が渋々ながらも沖縄の基地問題についてアスピン国防長官にコメントをしたということは、それはそれなりのフォローをしていけば、これから皆さんが積極的にやっていけばのこと。ただ外交辞令で言ったとするならば、それはその場限りのもの。  そこで外務大臣、今北米局長は、それの意義はある、またあらしめなければいけない。恐らく連休に外遊もなさるということを聞いているのだが、アメリカはどうなるかよくわかりませんが、近々日米の外相会談等々いろいろ持たれると思う。これからまた機会はしばしばあるでしょう、外務大臣ですから。私は、皆さんと安保に対する見解というか立場は違うかもしらないが、しかし、日本の戦後の防衛問題にしても外交問題にしても、余りにも建前と本音が違い過ぎる。皆さんもその場限りにお茶を濁してきた面がある。それは野党は野党なりの立場や視点はあったにしても、それが平行線ではいかぬと思うのです。できるものは解決してもらわなければいけない、野党の言うことも。その面ではあなたの責任は大きいです、重いです。  改めて聞きたいのだが、この沖縄の基地問題、冷戦後の日米安保のあり方というか、在日米軍基地、日米関係というものに対してどうしていくのか。総理が沖縄米軍基地の縮小は必要だと言った手前、外務省外務大臣が率先してそれを実効あらしめる具体的なアクションを起こしてもらわなければいけないと思うのですが、そういう決意とこれからの見通しというか、ぜひ披歴していただきたいと思います。
  51. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 立場は違うとは思います。世界の情勢を見ても、また日本を取り巻く環境を見ても、やはりまだ日米安保条約が必要であるという立場だけは私どもは堅持していくつもりでございます。ただ、日米安保条約があるからといって、基地については、やはり時代の推移もあるわけでございますから、必要最小限のものであるべきだと思うのでございます。  その点については、特に沖縄県のまだ非常に大きな部分が基地で占められているという現状はよく認識をいたしておりますので、今総理からも縮小という提言をしていただいたということでございますから、私といたしましては、できる限り縮小できることは縮小してもらいたい。事実関係も私もう少しよく勉強させていただいて、今お話のありましたように県道を挟んでの演習をなぜしなければいけないのかというのは、私もいささか疑問に思っておりますので、例えばそういう具体的な問題も含めて、どうしてもそれが必要なのかどうか、こういう議論を私はしてみたいと思っております。
  52. 上原康助

    ○上原委員 もう北米局長はどこに問題があるかということは十分知っていらっしゃると思うので、今そういう御疑念を、やりとりを聞いて思うということですから、外務大臣も積極的にぜひひとつ御努力をいただいて、解決したあるいはよくなったという実績を本当に示していただきたい。そのことを改めて注文をつけておきたいと思います。  そこで、最後に、せんだっても金武町における米軍による殺人事件についてお尋ねをして、身柄問題を、即刻日本側に引き渡しということを私は強く主張して、警察庁もその方が捜査によいということをずばり御答弁しておられたのですが、外務大臣の指示で一日も早く身柄を引き渡すようにするということをおっしゃっておったのですが、あれからどうなっているのか、現況を含めて御答弁を願いたいと思います。
  53. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  あの後、大臣からの御指示がございまして、二十二日に、私はちょうどおりませんでしたが、北米局の審議官から在日米軍の参謀長に対しまして数点の申し入れを行っております。もちろん、一番のポイントは、先生御指摘のところでございまして、日本側の捜査が早く終了できて、そしてできるだけ早急に被疑者の身柄が日本側に引き渡されるように、アメリカ側の一層の協力を得たいということを申し入れてございます。  それとあわせまして、被疑者の段階ではありますけれども、県民の方々が持っておられる不安、懸念のこともございますので、重ねてアメリカ側にその点についての綱紀粛正の一層の徹底を求めたところでございます。先方側も、極めて遺憾であったということを述べておりますし、一層綱紀粛正の徹底に努める、それから捜査面での協力にも協力したい、地位協定に従ってとは言っておりますけれども協力したいということを言っております。
  54. 上原康助

    ○上原委員 警察庁もおいでと思いますが、その後の取り調べ、それから交渉する見通しは立っているのかどうか、現状をちょっとお聞かせください。
  55. 上田正文

    ○上田説明員 お答え申し上げます。  せっかくの御質問ではございますが、本日ここに参っています私とあともう一名の課長は、この問題につきましては所管外でございまして、その後の状況については承知しておりません。  以上でございます。
  56. 上原康助

    ○上原委員 あなた、それを聞くために来なさいと言ったのに、わからぬと言って、どうするんだ。後でそれは聞いて担当者に報告をしてくださいね。もう時間がないですからね。  それで外務大臣、まだ身柄はアメリカにあるんです。こんな調子ではいかぬですよ。申し入れはしても、聞いてくれなければ困るのですよ、それは。改めてこの問題の早期解決を図るように、早期解決というのは身柄を渡さぬとできないですよ。大臣の所見を聞いて終えたいと思います。
  57. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 私も現状は今伺って、まだ残っているということは今知りましたけれども、いずれにせよ、地位協定上の取り決め事がございますので、日本側の公訴が出るのを待って引き渡すということでありまして、そのために一刻も早く捜査を進めたい、そのための協力をしてもらおうということでございます。地位協定の枠の中でできるだけの協力を求めているというのが実態でございます。
  58. 上原康助

    ○上原委員 御答弁は極めて不満でありますし、納得いたしかねますが、時間ですから、きょうのところはこれで終えざるを得ませんが、警察庁ももっと積極的に努力をしてください。
  59. 伊藤公介

  60. 土井たか子

    ○土井委員 まず最初に、日ロ関係についてお尋ねをしたいと思うのですが、いよいよエリツィン大統領が四月二十五日の国民投票という機会を乗り切れるかどうかということが注目の的になっているのですよ。そのエリツィン大統領ロシア人民代議員大会との対立を、一体これは解消できるのかどうかですね。もしもエリツィン大統領が失脚するということになれば、どのような影響があるというふうに考えられるか。  特に、欧米諸国がエリツィン大統領に対して、大統領個人を全面的に支援するというそのわけはどういうことなのかという種々の疑問点がただいまあるわけですが、今申し上げたような事柄について、まず外務大臣の御所見というのをちょっと聞かしておいてくださいますか。
  61. 野村一成

    野村(一)政府委員 お答え申し上げます。  まず、エリツィン大統領個人を支援するか云々という議論でございますけれども、これは先般の閣僚合同会議の議長声明でもはっきりいたしておりますけれどもロシア国民に対する支援、そういう表現を使ってございます。あくまで行われている改革に対する支援ということでございますが、先生御案内のとおり、何分、今のロシアの中で大統領とそれから議会との対立があるわけでございますけれども、まさにそれが改革路線をめぐってでございまして、その改革路線を実行に移そうとしているのがエリツィン大統領及び改革主義者でございます。したがいまして、そういう意味で、現状においてはエリツィン大統領を支持するということが改革路線を支持するということにつながっている、そういう関連でのとらえ方であろうというふうに思っております。私どもは、その点誤解のないようきちんと、これは繰り返し述べておるわけでございますけれども、あくまでロシアで行われている改革路線を支持するということでございます。  それから、これからどういうふうに、エリツィン大統領がもし失脚したら云々という御質問でございますけれども、先生御指摘のとおり、四月二十五日の国民投票の結果というのは、そういう点からいたしましても非常に大きな関心を持って私どもも見守っておるところでございまして、この場で予断を申し上げるというのは若干難しい状況でございます。
  62. 土井たか子

    ○土井委員 局長の御答弁はそのようですけれども、アメリカのクリントン大統領などは非常にはっきり物を言われる方ですから、対ロ支援ということについては、もしもエリツィン大統領が失脚をするということにでもなれば軍国主義の復活につながるのであって、エリツィン大統領支援するということにロシア支援意味があるという向きを非常にはっきり述べられているのですね。アメリカも国内では、一方、キッシンジャー元国務長官などについて言うならば、これはその立場について批判的な発言もあるようでありますけれども、しかし現大統領は何といってもクリントン大統領ですから、クリントン大統領はそのような認識でもって対ロ支援ということを考えておられるということは非常にはっきりしているのですね。  さて、今度はいよいよエリツィン大統領が来日されるという意向が表明されているわけでありますが、エリツィン大統領自身はただいま非常に大きく政治基盤が揺らいでいるわけであって、その政治基盤が揺らいでいる中で、大統領自身が領土問題で話し合ったり、ましてや日本に対して理解を示していくというふうな余地があるのかないのか、これはだれしも考えるところであります。  エリツィン大統領自身は、報道によると、領土問題と対ロ支援を切り離すという宮澤首相発言で訪日の可能性が浮上したがごとき発言があるわけでありますが、この報道どおりであるのかどうか、その辺はひとつお答えをいただいた上で、このようなロシア側の認識についてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、その辺をお聞かせくださいませんか。
  63. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 エリツィン大統領日本へ来られるという確定はまだいたしておりませんが、先般コズイレフ外務大臣が参りましたときにそのような気持ちを伝えてこられたわけでありまして、私どもとしては、昨年の九月の訪日が突如として中止になったということに対しては、国民としてはもちろんのこと、このような外交面で受けるちょっと考えられないようなことに対しては政府自身も大変遺憾に思っておるわけでございまして、私どもは、その延長線上として今回訪日をされるのかなという面においては、来てほしいということを去年言っていたわけでございますから、私は歓迎すべきことだと思っております。  ただ、その中で、今お話しの、領土問題を分けているから来るのだというふうな発言があったということでございますけれども、私どもとしては、当然それは何かの誤解だというふうに理解をいたしております。  私の方からはコズイレフ外務大臣に対しまして、エリツィンさんが来られる場合は二国間の問題を協議するわけでございますから、その中には領土問題というのがこちらとしては当然あるという認識である、領土問題を解決をし、そして平和条約を結ぶという方向は、私どもとしては当然これは主張しなければならないことだということを申し上げてあるわけでございまして、コズイレフ外務大臣からその旨は、今は国民投票がぎりぎりのところでございますから、二十五日まで会っているのか打ち合わせているのか私はよくわかりませんけれども、いずれにしても、向こう側が訪日を決める、また日本側としてそれに対応して打ち合わせをするという中には領土問題があるよということは、当然私はコズイレフ外務大臣からエリツィン大統領に言ってもらえるもの、こう信じております。
  64. 土井たか子

    ○土井委員 誤解であるということを、今外務大臣がおっしゃるような立場でコズイレフ外務大臣からエリツィン大統領に対して意を伝えてもらえるであろうと信じておりますと言われるのだけれども外交の問題でありまして、やはり直接、誤解があるならば誤解をそれまでにしっかり解いておく、ぎくしゃくしないような状況で訪日という時期をつくるということが非常に大事じゃないかなと思われるのですが、さらにそういう問題についてはどういう努力をお考えになっていらっしゃいますか。
  65. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いずれにしても、二十五日の国民投票が終わらないと向こう側もなかなか大変ですから、もう少し、それが終わってからの時点で、どういうレベルで協議をするかはともかくといたしまして、いずれにしても、本当に来日ということになれば外交ルートを通じていろいろ詰めていかなければなりません。私は、当然その中には領土問題も含めて詰めてまいるという考えであります。
  66. 土井たか子

    ○土井委員 外交ルートで詰めていくとおっしゃるのですが、これは問題が非常に懸案であって、わかり切った話がどうも誤解を持たれたままで、しかも大事なサミットの場所にお互いが席を同じゅうするということになると、これはなかなかうまくいくこともうまくいかないということにもなりかねないのです。  したがって、こういう問題について、やはり誤解を解くための努力というのは避けて通れない非常に大事な問題であろうと思うのですよ。ぎくしゃくしてしまってからじゃ、もう一度ほぐすというのはなかなか難しい問題ですから、ただいま誤解がある段階でいかにして誤解を解くかという努力こそ、大事な機会であろうと思いますし、大事な問題だと思うのですが、外務大臣は、外交ルートを通じてとおっしゃるのは具体的にはどういうことでございますか。
  67. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 具体的には、二国間の問題を協議をするためにエリツィン大統領が来られるのでしょうから、当然領土問題というものの解決ということをきちんと議題の中で言うということを私どもからは提起したいと思っています。
  68. 土井たか子

    ○土井委員 どこの場所でですか。
  69. 野村一成

    野村(一)政府委員 ただいま大臣の方から、外交ルートを通じて具体的準備、これから協議を進めるということを申しました。先生御案内のとおり、外交ルートを通じということで、両国政府、これは、東京あるいはモスクワにおきましてそれぞれの大使館あるいは政府外務省存在しているわけでございますので、そういうルートを通じましてきちんとしかるべきレベルで先方との間で準備を詰めていきたい、そういう趣旨でございます。
  70. 土井たか子

    ○土井委員 それは通常のことじゃありませんか。サミットというのはもう待ったなしですよ。それに向けて向こうは来日の意思表示をされているという段階なんです。しかも、誤解がその間にあるという問題も具体的にある。外交ルートを通じて、今局長の御答弁というのは常時これは行われている問題じゃないですか。  特にこのことについてやはり努力が必要なんじゃありませんかということを私は申し上げたら、外務大臣はそういう趣のことをお答えになっていらっしゃるので、外務大臣、いかがですか、具体的にはどういう努力外務大臣はお考えになりますか。
  71. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私お答えしたと思うのですけれども、訪日という方向が確定してくれば外交ルートを通じて詰めていかなければならぬわけでございますが、その中で当然議題というものも議論になると思うのです。その議題の中に日本側としては領土問題の解決という問題が当然ありますということをその中で申し上げていこう、こういう考え方だということを私は申し上げたわけであります。
  72. 土井たか子

    ○土井委員 それは外務大臣が直接なさるのですね。
  73. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私が指示をいたしまして、その指示を受けた者がいわゆるこれから協議をするわけでございます。
  74. 土井たか子

    ○土井委員 それは実務者レベルの交渉でしょう、また連絡でしょう。外務大臣御自身はどうなさるのですか。
  75. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 なかなからちが明かないとか、私が出かけていった方が非常に有利になるというようなときは飛んででも参りますけれども、私は、先ほど申し上げたように、エリツィン大統領日本訪問が突如として昨年の九月に中止をされた、それが今回、その延長線上に訪日の意思を表明されたということでありますから、ちょうどエリツィン大統領の昨年の九月の訪日を前にして渡辺前大臣ロシアへ行かれたわけでありますから、今は、私が今また特に行くという必要はないという私の判断でいるわけであります。
  76. 土井たか子

    ○土井委員 このことばかりを繰り返し繰り返しやっていたってらちが明かないような感じがするのですが、この前エリツィン大統領の突然の訪日中止はどういうわけなんですか。それは、今問題にしていることと無関係じゃないと思うのですよ。  そうすると、今度は訪日の用意があると意思表示をされるのはどういうわけですか。ただいま申し上げていることと無関係じゃないと思うのですよ。しかも、日本側がそれに対して、ロシア側が意思表示をしていることと理解にそごがあるということになったら、このそごを解消しておかなければいけないじゃないですか。
  77. 野村一成

    野村(一)政府委員 昨年九月の突然の来日延期というのは極めて遺憾なことでございましたけれども、その際、先方エリツィン大統領が宮澤総理に対して電話で申したこと、それは国内事情ということを理由にしまして延期ということでございました。  なぜ突然今回こういうことを表明したのかということでございますけれども基本的には私ども、その際にも申しましたけれども、やはりエリツィン大統領日本訪問というのが日ロ関係の改善のために基本的にプラスになる、当然領土問題の解決を含めまして両国間の完全な正常化のために必要である、そういう考え方については双方の認識は一致しておるわけでございます。したがいまして、そういった基本的な認識を踏まえての今回の訪日の意向の表明である、そういうふうに受けとめております。
  78. 土井たか子

    ○土井委員 どうも御答弁の中身がよくわかりません。これは詰めていったら、恐らくは外務省自身も整理をまだまだなすっている段階であって、確とした結論と確とした姿勢というのはまだないのだろうと私は思う。外務大臣もそうです。最近のこの一連の動きを見ておりまして、どうもそういうふうな感じがしてしようがないんですよ。  外務大臣、ちょっとお尋ねしたいのですが、ごくごく最近あったG7の外相・蔵相会議ロシアに対する支援の対象は、あのG7の中での認識は、エリツィン大統領に対しての支援なのか、それともロシア政府国民に対しての支援なのか、どういう認識なんですか。  そして、日本の対ロ支援というのは、エリツィン大統領に対する支援なんですか、それともロシア政府国民に対する支援なんですか、何でございますか。大臣答弁してください。
  79. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 この間のG7閣僚合同会議におきましては、今エリツィン大統領が中心となって進めてはおりますが、ロシア政治の面における民主化体制の確立、経済面における市場経済原理の導入、外交面における法と正義に基づく外交方針をつくろう、このいわゆる民主化の方向は、私どもと同じ自由主義社会になってもらえるということでありまして、この方向が万が一にも後退をして、いま一度あそこに全体主義の国家が誕生するようなことは避けなきゃいけない、こういう考え方に立ってG7で私は支援を決めたつもりでございます。  日本支援につきましても、あくまでその国際協調の枠内で決めたわけでございますし、しかも従来の経緯からいって、みんな反省をしておりまして、ロシア国民のためになる目に見える支援をしよう、こういうことで合意を得られたと私は承知をいたしております。
  80. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、日本支援としては、エリツィン大統領自身に対するということでもなくて、ロシアの民主化そして経済の改革、総じて、私はロシアの改革という表現で申し上げさせていただいて間違っていないと思うんですが、それの進展を支援することのための対ロ支援である。  これはG7もそうなんですか。そして、日本の認識は今外務大臣はお述べになりましたが、G7もそのように考えているのですか、どうなんですか。
  81. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 あくまでロシアの民主化の改革路線を応援するための支援である、たまたまそれをやっているのがエリツィンであるというふうに私は理解をしているわけであります。
  82. 土井たか子

    ○土井委員 主体はロシア国民、特にロシアの改革というところにある、そうなんですね。  そうすると、今回はロシアに対して日本支援というのは十八億二千万ドル、これは発表された額でありますが、これを決定するのに当たって、あとどこまで効果があるか等々の問題も少しはお尋ねしたいなと思いますが、それに先立って、領土問題とは切り離して支援考えるとか、そこは超越して考えなければいけないとかいうふうな発言が相次いだために、非常にそれに対してまた、それはおかしいというふうな揺り返しがあって、これは発言が二転、三転してきたわけです。  そうして、先日の参議院の外務委員会において、外務大臣統一見解なるものを出されているのですが、先ほど来そのことについても質問がありましたけれども、「ソ連日本の間の関係においては、かつて領土問題の存在すらソ連邦に否定された時代が長く続き、その中で領土問題で全く動きがないのに経済問題だけが進展するというのは、国と国との関係としておかしいという意味で、「政経不可分」の原則が強調された次第である。」これは二という項目の中で述べられております。それはそのとおりなんですね。  そしてその次に、拡大均衡について三で述べられておりまして「しかるに、ゴルバチョフ時代以降、ソ連邦側領土問題の存在を認めるようになって以来、この考え方延長として、政治経済両面での動きが相互に良い影響を与えながらともに前進して行くという意味で、「拡大均衡」という言葉を用いているところである。」  この二と三の関係なんですが、簡単に言うと、「政経不可分」というのは原則であって、そしてこの「拡大均衡」というのは原則を行っていく手法というふうに考えられる。こういう考え方というのは間違っていませんか、間違っていますか、どうですか。外務大臣、どうお考えになりますか。
  83. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、政治と経済というのは全く分離できるものではありません。鈴木委員にもこの間から申し上げましたけれども、私は思い切ったという表現をしたものですから、どうもロシア政治と経済と分離であるかのように受け取られてしまって、また私はそれを反省いたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、政治と経済というのは分離するわけにはまいりません。  そこで、いわゆる領土問題、そういうものを全然問題にしないというようなときには、全く経済も動くわけにはいかないのじゃないかということで、政経不可分原則というのは非常に強調されてきた。しかし、ゴルバチョフ以降、領土問題の存在を相手側も認めるようになってきた。そういう中にあって、それならそれを解決するためには経済もある程度許される範囲で支援をしていく、それが結果的に領土問題が解決する手段になればいいのじゃないかということで、拡大均衡というのがとられてきたと私は思うのです。
  84. 土井たか子

    ○土井委員 したがって、私の言っていることと矛盾しないのです。  拡大均衡というのは今手段とおっしゃいました、外務大臣のおとりになった表現をとれば。だから、政経不可分ということを具体的に実現していこうとすると、こういう拡大均衡という手段を日本としては認識しているということになるであろうと思うのです。それはそのとおりでしょう。  さて、それで、この「政経不可分」というところの政、政というのは政治でしょうが。政治というのは、本来ここで認識されているのは領土問題なんです。領土問題と経済というのは不可分ですよ。このことをこの政経不可分ということの中では強調して強調して強調し続けて、これを原理としてきた。そうですね。そして、そのことのために、手段として拡大均衡というのは考えられている、こういう関係にある。  今回ロシアに対しての支援日本は決めた。決めることについて、再度「「政経不可分」と「拡大均衡」の関係」というのは政府統一見解としてここに述べられているんだけれども、今、先ほどから、支援というのはエリツィン大統領に対する支援なんですか、ロシア政府国民に対する支援なんですかというお尋ねをしたら、お答えは、ロシアの改革、ロシアの民主化ということに対する支援だ、こうおっしゃる。  ここに言う「政経不可分」の政という、政治という中身は、今まで領土のはずだったんですが、今回の経済支援に対しては、ロシアの改革ということが政治の政の中に認識されている、こう言わなければいけないんじゃありませんか。いかがですか。
  85. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今回の支援というのはあくまで国際協調の範囲内で、ということは、要は、民主化の方向が後退しないようにするべきであるという国際協調の範囲内で、日本としては許される範囲の——日本領土問題が片っ方にあることは私ども常に頭にあるわけであります。決してそれを分離しているとは考えておりません。その範囲内で努力をし、そしてそれぞれ個別に会うときには、日本領土問題があるからその問題も解決をしていかなければならない、そして支援もしていかなければならない、この両輪があるということ、これがかみ合っていかなければいけないということは常に私どもは主張してきているわけであります。
  86. 土井たか子

    ○土井委員 今御説明のようなことならば、二国間支援であっても、G7の枠組みで行う、つまり国際協調の枠組みの中で行うというふうな場合は領土問題とは別個でありまして、それはロシアの民主化とかロシアの改革ということを念頭に置いた支援であるということで、拡大均衡の枠内ということを言いつつも、このアプローチの中身というのは、拡大均衡とは別の新しい概念というのを打ち出さないとわからないですよ。だから、参議院で統一見解を出された中身を見て、対ロ支援についてこれはいよいよわけがわからなくなっているのです。  今回はどういうことを認識し、何を意図して対ロ支援ということに日本は臨んだか。G7の中での話し合いの中で日本は決定した額なんですから、しかも支援の枠組みは、今外務大臣が言われるとおりにG7の枠組みで行うというふうなことを認識されているわけですから、その点もっと、政経不可分拡大均衡関係という説明、これと同時に今回の対ロ支援についてはこういうふうな意味があるということを明確に述べられるべきです。  従来どおりの政経不可分拡大均衡の枠組みの中じゃないじゃないですか。だから新たな、拡大均衡と言っていることの枠組みはこういうことだという新しい概念というのを打ち出されるべきだと思う。私はそう思いますよ。その点がはっきりしないとこれはわからない。いかがですか。
  87. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 あくまで拡大均衡という中で、国際協調の中においても全くそれは拡大均衡、あるいは政経不可分延長拡大均衡があるわけでございますが、私どもは、そういう従来の考え方とは全く別の観点から国際協調の場でやっているわけではございません。国際協調の中でやれる範囲というのは、日本にはそういう特殊の問題があるという観点から、できる範囲の国際協調をやっていく、こういう考え方であります。
  88. 土井たか子

    ○土井委員 拡大均衡との関係での説明を幾ら受けても、この統一見解を見た限りでは、G7の枠組みの中で巨額の新規援助を行うことについての意味が生きてこないのです、繰り返し言っておりますが。  先ほど少しお尋ねをすれば、外務大臣がおっしゃった、具体的に言えばエリツィン大統領に対しての支援じゃないのだ、ロシアの民主化、ロシアの改革に対しての支援なんだ。ならば、ここで言うところの政治という、政経不可分の政という字の中身は、今回はロシアの民主化やロシアの改革に対して役立つ経済協力でありまして、そのことが政経不可分の政の中になければ困るのです。そうでしょう。  だから、その政経不可分と言っている政の中身をそう認識するなら、それを具体的に実現するための手段としてある拡大均衡という、この拡大均衡の中身も勢い領土問題を政治の政の字に意識していく、それで問題にしてきたこととは違った意味を持っているということを新しく打ち出すべきじゃないかと私は繰り返し言っている。これをはっきりしないと、どうもこの点は納得できないですよ。いかがですか。
  89. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、国際協調の中にあっても領土問題というものを常に頭に入れて、これをまとめるにはいろいろ交渉があったわけでございますが、当然日本政府としては領土問題というのを頭に入れながらまとめたわけであります。
  90. 土井たか子

    ○土井委員 おっしゃるとおり、この領土問題というのは二国間の問題なんです。今回、さっきおっしゃったのは、G7の枠組みで行う経済支援なんでしょう。だから、G7の枠組みで行う立場で日本は対ロ支援を行うときには二国間問題というのは避けて通れることではないけれども、今回の支援意味はどういうところにあるかといったら、相変わらず政経不可分拡大均衡と言ったんじゃ、G7の枠組みそれ自身に対して日本は何を考えているかと言われますよ。その点をひとつはっきりしていただかなければならぬと、私はまず思います。  それから、G7の枠組みの中で巨額の新規援助を行うことについて、拡大均衡との関係で、今までずっと私は御質問なさる方々の御答弁を聞いておりましたけれども、どうも明確な説明がいまだに聞こえてこない。今申し上げた点についてもしかり、何かつじつま合わせを一生懸命その場その場で行っていらっしゃるにすぎないような感じがしてなりません。どうも新規援助というのを今までどおりの二国間の拡大均衡だけで説明するというのは、整合性を失っているということを私は繰り返し申し上げたいと思うのです。  ところで、今回支援内容として認めているこの中身というのは、ロシアの経済事情が好転しない中でいつまで支援を続けるのかという声も一方であるのですよ。現に百億ドルを超える援助・貿易代金というのは西側銀行にロシア企業、合弁会社などもろもろの名義で還流しているというふうな実態も伝わってまいります。追加援助の数字を考える前に、やはり政権側のきちんとした対応というのを求めるのが順序だろうと思うのですが、この辺は外務大臣とされてはそごなく、そういうこともあわせてきちっとおっしゃっていると思われるのですけれども、いかがでございますか。
  91. 野村一成

    野村(一)政府委員 お答え申し上げます。  今回の日本としての二国間支援を宮澤総理が会合の冒頭で発表するに当たりまして基本的な考え方を述べておるわけでございますが、その中で次のようなことを言っておられます。  要するに、ロシアがみずからの改革を実効性のあるものとすることができるのはロシア国民自身なのだ、国際社会は、自助努力のための支援を供与することによって、ロシア国民にとって時に痛みを伴う転換を容易にするよう支援していくとの役割を担っている、そういう考え方でございまして、あくまで支援ということの意味は自助努力基本にある、それに対する支援ということでございます。
  92. 土井たか子

    ○土井委員 それは教科書の答弁なんです。外務大臣とされては、やはり外交の場所で相手方に対しておっしゃるべきことがおありになるだろうと思います。どういうことをおっしゃいました。
  93. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 やはり、我々が支援をする以上はそのお金がむだになってはいけないということで、自助努力をし、そのような方向をきちんとやっていただくということで我々は支援をしようということでありますし、十八億二千万ドルの細かいことで、例えば無償の関係は、これはもう人道的といいますか、食糧あるいは医療、こういうものが中心になっているわけでございまして、その他のもの、輸銀とか貿易保険というのは、今の自助努力がなければ結果的には出さないということになるのじゃないかと私は思っております。
  94. 土井たか子

    ○土井委員 アメリカは、ロシア支援のために核解体基金創設を提唱していますね。G7にも拠出を求められたようでありますが、これは考えてみれば、本来核兵器解体というのは核保有国同士の間の責任で行うのが当然だと私は思うのですが、これは外務大臣、どうお考えですか。
  95. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 核廃棄というのは、やはり世界の東西の対立がなくなり、冷戦構造がなくなった中で一つの大きな問題だと思うのですね。正直、それは旧ソ連時代のものでありまして、独立をしたロシアなりあるいはウクライナなり、そういうところがやるべきものでございましょうけれども、現実に相当の金がかかることは事実のようでございまして、あるいは技術的にもなかなか大変なようでございまして、そういう点、日本としては、やはりこれは世界の平和につながることでございますから、できる限りの範囲の、一方に私どもはどうしても領土問題という制約がございますので、その範囲内で我々のできる範囲を考え支援をしようということにしたわけであります。
  96. 土井たか子

    ○土井委員 支援は、それは結果として拠出金を負担するということになるかもしれません。しかし、そこに至るまでに、当然のことだから出そうではこれはないのでありまして、非核保有国である日本とすれば、核保有国の責任というのは、みずから核をなくしていくという努力というのがNPTの条約上の義務ですよ。  今まで核に物を言わせて、その力で対決をという中で、私たちは非核保有国として、核大国に対して核をなくす努力というのを問いかけてきたのです。核の力で、その力をほしいままにしてきたそれぞれの国が、今度は経済的に疲弊してどうにもこうにもならなくなったら、核解体自身もみずからできない。しかも、海洋投棄というのを当然のことのようにやる。これは不法もいいところでありまして、条約を幾らつくったって、これは条約の遵守の義務がお互いの国にあるのだけれども、それを説いても耳に入らない。これはまさしく大国主義というのか、覇権主義というのか。  こういう問題に対して日本としたら、黙って拠出金を出しなさいと言われたら、これは世界平和のためだ。出すだけが能じゃないと思うのですよ。はっきりこういう問題に対して日本として言うべきことがあろうと思うのですが、外務大臣としてはどういうことをそういう場所ではお述べになりますか、ちょっと聞かしていただきたい。
  97. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ロシアが法と正義に基づく外交をやっていく、こう言っているわけですから、当然その中には、国際条約を守るのは当たり前の話だと私は思うのです。それで、ロンドン条約でこういう海洋投棄、放射性廃棄物の海洋投棄はしな いということになっているわけでございますから、当然あなたの方はロンドン条約に違反をしているのだから、これは即刻やめるべきだということを私はコズイレフにも厳重に申し入れたわけであります。
  98. 土井たか子

    ○土井委員 ロシア外務大臣に申し入れるだけで事済む話ではなかろうと私は思う。国際的に日本としては日本の立場において主張すべきことがあると思うのですよ。いかがですか。
  99. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 コズイレフとのことだけを申し上げましたが、G7の会議においても、これは日本側から主張いたしまして、議長声明の中にも入れたわけであります。
  100. 土井たか子

    ○土井委員 そういうのは議長宣言に入れればいいというものではないとも思いますけれども、それは入れないより入れた方がいいですよ。だけれども日本の立場というのは、非核保有国であると同時に非核三原則の国なのですから、やはりその点を国際社会において明確にしながら、こういう問題に対しては核保有国の責任というのをもっと強くはっきり日本としたら主張すべきです。  そのことを申し上げた上で、今文書に明記されたという努力日本努力としてあったとおっしゃいますが、さっきも質問の中で少し出たのですけれども、昨年のあのミュンヘン・サミットのときに、例の北方領土問題というのが政治宣言の中に明記されたことについて、努力をして努力をして、当時外務省は鬼の首をとったように非常にこのことを宣伝されました。宮澤首相もこの北方領土問題の政治宣言明記に対して非常に評価をされた会見をされたわけでありますが、帰ってこられてすぐのあの参議院選挙の真つただ中にも、幾たびとなくこのことに対して非常によかったよかったということを宣伝されていたのを私は鮮明に覚えているのですが、その後あれはプラスになったのですか。あの政治宣言に明記されたということはプラスになったとお思いなのですか、いかがですか。これは、さっきは評価しているとおっしゃいましたけれども、プラスになったのかどうか、ここをちょっと聞かしてください。
  101. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は先ほども鈴木議員にお答えをしましたように、やはりそういうG7の合意のもとにそのような政治宣言の中に入れられたということに対しては評価をいたしておるわけであります。
  102. 土井たか子

    ○土井委員 G7の合意のもとに政治宣言の中に入れられたということに対しては評価される。  私の聞いているのは、その後あれはプラスになったのでしょうかと聞いているのです。
  103. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 やはりああいう形で入れていただいたことは、例えばクリントン大統領が、北方領土返還に対しては日本の立場を支持するということを言ってくれたり、私自身もこの間フランスの外務大臣とバイの会談をやりましたときにこの問題を取り上げたら、それはもうよくわかる、こういうことでやはり日本協力的な姿勢をとってくれましたし、そういう面からいけば、やはりあそこへ入れていただけたということは、国際的に日本にそういう問題がある、日本ロシアとの間にはそういう問題があるという認識をそれぞれ持ってくれたということにおいては大いに評価すべきことだと私は思っております。
  104. 土井たか子

    ○土井委員 そうですが。  では、今回のG7では、むしろその問題と切り離して対ロ支援日本考えたことが評価されたのではないですか。G7、いかがですか。
  105. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 G7では日本に対してはもっと大きな要求が出ていたわけでありまして、やはり私どもの方としては、いや、日本はこういう問題があるんだよということを私どもは認識をさせながらいろいろ交渉したわけであります。  そういう面で、私は先ほど申し上げたように、そういう問題がある日本として、しかし一方、国際協調という立場もありますので、その許される範囲ということであのような形のものを、支援策を日本は決めたということを申し上げているわけであります。
  106. 土井たか子

    ○土井委員 いや、それは日本の決めた決めないのことだけを外務大臣はおっしゃるんだけれども、先ほどはG7に、日本領土問題に対してどう考えているかという認識を持ってもらえたことに対する評価をおっしゃったわけですから、今回のG7ではむしろ、領土問題と切り離して対ロ支援日本考え姿勢をG7の日本以外の国々は評価をしたという点が非常に今回のG7の特徴だと伝えられております。  それで、昨年のミュンヘン・サミットの政治宣言に盛り込んだということがよかったというふうに外務大臣はおっしゃるのですから、評価しているとおっしゃるのですから、七月の東京サミットでは、そういうメリットがあったということなら、またこれは宣言の中にも入れることを御配慮になるであろうと思われるのですが、いかがですか。
  107. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まず、先ほども申し上げましたように、各国はやはり十分日本に対しては理解をしているというふうに私は判断しておりますので、どうもその辺は考え方、見方が違うのかもしれませんが、私は理解をしてくれておると判断をいたしております。  それから、今度の東京サミットで議題にするかどうかは、これは先ほども答弁をいたしましたが、まだ全体の議題が固まっておりません。私としては、首脳会談でございますから、宮澤総理がおやりになることでありますし、また今度は宮澤総理が議長という立場でもございます。この問題について宮澤総理とよく協議をしたいと思っております。
  108. 土井たか子

    ○土井委員 このロシア問題について、国連憲章の例の旧敵国条項、これをロシアは無効にしたいというふうな提案をするという報道がございますけれども、これは事実ですか、どうですか。もし事実とするなら、このことのねらいと申しますか、こういう考え方は那辺にあるというふうに考えておいたらいいのでしょうか、いかがですか。
  109. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 この点につきましては、若干各方面に誤解があったのではないかと思われます。ロシア側は我が方に正式にも非公式にも提案してきておりません。
  110. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。それじゃそれは、報道は誤解に基づく報道というふうに認識してよろしいのですね。
  111. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 そういうことでございます。今の時点においてはそういう提案はございません。
  112. 土井たか子

    ○土井委員 まあ、最後の方は含みのある御発言であるというふうにこちらは受けとめます。  片や、非常に気になるのはカンボジア情勢なのですが、カンボジアの紛争を解決する基礎というのは、そもそもはパリ和平協定にあるというふうに考えてよろしゅうございますね。いかがですか。
  113. 池田維

    ○池田政府委員 そのとおりでございます。
  114. 土井たか子

    ○土井委員 五月の二十三日から二十八日までだと思いますが、実施される予定のカンボジアの総選挙に、既にポル・ポト派は選挙のボイコットを宣言しておりますね。パリ和平協定が目指すところというのは、四派がすべて参加する自由な選挙を通じて民主的な新政府を樹立して、国民和解の一つのカンボジアを誕生させることだと思うのです。ポル・ポト派抜きの選挙はこの目標からほど遠く、和平の枠組みそのものが崩れてしまっていると言えると思うのですが、いかがですか。
  115. 池田維

    ○池田政府委員 カンボジアの選挙につきまして、四派ともに参加できるような形ができましたらこれはもちろんよいわけでございますけれども、実際には、ただいま御指摘のありましたように、最近ポル・ポト派は選挙に出ないということを表明しておりますし、しかし、このポル・ポト派の参加、不参加にかかわらず選挙を予定どおりに実施して和平プロセスを進めていこう、そういう合意は、既にSNC、それからそれを踏まえて安保理等で存在するわけでございます。  つまり、ことしの一月二十八日に北京で行われましたSNCの会合では、これはポル・ポト派のキュー・サムファン代表も出席しておりましたけれども、選挙を五月の二十三日から行うということについて反対はいたしておりません。そして、このSNCの決定を受けて国連において安保理決議が出されたということでございます。したがいまして、そういった意味で国際的合意が存在しております。  それから、これは実際の選挙準備でございますけれども、三十七万人の難民がタイから帰還しておりますし、それから有権者登録としましては、既に四百七十万人の人、つまり有権者の九割以上の人たちがその登録を行っているというのが現状でございますし、そういう事実から判断いたしますと、パリ和平協定の基本的な枠組みというのは大筋において維持されているというように認識できるわけでございます。
  116. 土井たか子

    ○土井委員 パリ協定のおおむねにおいて実施されているとおっしゃる。  それじゃ、選挙までに軍の七割を動員解除することに協定ではなっていますよ、条文でちゃんと。現状どうですか。動員解除されたのは四派平均で約二七%、ポル・ポト派はゼロですよ。このことは、ポル・ポト派を和平に導き入れられず国民和解に失敗したということを示しているのじゃないですか。武器が全くない状況を創造する、つくっていくということが中立的政治環境の保障というふうにパリ協定では認識しているのじゃありませんか。
  117. 池田維

    ○池田政府委員 パリ和平協定では、確かに各派とも七〇%の武装解除を行うということに合意いたしております。したがって、それが行われるということがもちろんパリ和平協定を実施する上で最も望ましいことでございますけれども、現実はそういう形にいかなかったわけでございます。  しかしながら、これは既に先生の方よく御案内のとおりでございますけれども、一派が抵抗したためにすべての和平のプロセスをおくらせることはできないという合意が国際的にでき上がったわけでございまして、しかも、その国際的合意に至ります前には、関係各国が多大の努力を行ったということがございます。  その中では、日本もタイと一緒になって、去年の夏から秋にかけまして四回にわたってキュー・サムファン代表と話し合いを行いまして、武装解除の条件は何か、つまり停戦第二段階に入る条件は何かということをぎりぎりまで話し合ったわけでございますけれども、結局その話し合いはうまくいかなかったわけでございまして、その根拠になっておりますのがいわゆるベトナム兵の存在でございます。  しかし、それではベトナム兵の存在というのは実際に彼らがそれを実証したのかというと、これはできなかったわけでございまして、そういう過程を経まして国際社会全体が、ポル・ポト派が無理難題を言っているのではないかということがわかってきたわけでございまして、それでは、和平のプロセスとして選挙は予定どおり行う以外ないのではないかということになったわけでございます。したがって、先ほど申しましたように、SNCの会合において選挙が決められ、そしてそれを国際社会として安保理が認知するという格好になったわけでございます。
  118. 土井たか子

    ○土井委員 今それでもなおかつ選挙は行われるという、結論からいえばそういう御答弁なのですが、四月四日のカンボジア最高国民評議会、あのSNCの会合で確かにポル・ポト派のキュー・サムファン議長は、総選挙は安全な状態では実施されないだろうということを宣言しております。選挙に対して、私たちは参加しない、意思表示と同時に、安全な状態では実施されないだろうということを言われている。また、四月の十三日に、SNC議長にプノンペン事務所の閉鎖を通告してきています。こういう一連の動きを見ると、ポル・ポト派がパリ和平協定の和平の枠組みから一層距離を置く姿勢を内外に示したものというふうに考えられますが、どうですか。
  119. 池田維

    ○池田政府委員 確かにポル・ポト派はプノンペンの事務所を閉鎖いたしました。これは私どもとしても一つの憂慮すべきことだというように考えておりまして、非常に残念でございます。しかしながら、その後ポル・ポト派のスポークスマンが正式に報道いたしておりますけれども、自分たちも、SNCから脱退する考えはない、それからパリ和平協定を遵守するということを言っているわけでございます。  したがいまして、そういう状況を踏まえますと、残念な状況はございますけれども、全体的には総選挙に向かって事態は進みつつあるということでございます。
  120. 土井たか子

    ○土井委員 残念なことではありますけれども、総選挙を行うとおっしゃいますが、この選挙について規定している十二条を見ますと、「協定第十二条の選挙は、カンボディアの全地域にわたって、州を基礎として、及び政党が提出する候補者の名簿に基づく比例代表制に従って行う。」となっています。全地域でなければならぬのですよ。  今回、この選挙に対してボイコットをしているポル・ポト派が支配している地域、国土の約一五%、住民からしたら約一〇%、これは選挙に対して不参加なんですが、それでもこれは正当な選挙というふうに認知するのですか。いかがですか。パリ協定からしたらそれは認められないですよ、十二条違反ですから。
  121. 池田維

    ○池田政府委員 パリ協定の附属書によりますと、確かに全地域において選挙を行うということが合意されているわけでございますけれども、このカンボジア和平の過程でいろいろな話し合いとかあるいはやりとりというものがございまして、結局国民大多数の、有権者の九割以上が選挙に熱意を持っているということでありますし、ポル・ポト派は支配地域が、恐らく昼と夜とちょっと違うかと思いますが、例えば夜が一五%で昼が一〇%にいたしまして、その他の三派側のシアヌーク派とかあるいはソン・サン派の支配地域というのもございます。  したがいまして、恐らくプノンペン地域等を入れましても、まあ八五%から九〇%というのは有効に支配されている地域である。そして、ここの大多数の国民がやはり早く和平が来ることを望んでいるという前提を踏まえて、先ほど申しましたように、SNCなりあるいは安保理がそういう決定を行ったということでございまして、そういう意味ではパリ和平協定の精神は依然として保持されているというように考えております。
  122. 土井たか子

    ○土井委員 これはもう明らかに協定破りですよ。もう協定は破られてしまっていると考えなきゃならないと思いますね。  本来、公正で中立な選挙を実現するということがUNTACの至上の命題だったのですけれども、こうなってくると、客観的に公正で中立な選挙ということの実現は非常に難しい状況だということがだれの目にもはっきりしています。しかも、パリ協定で決められたことを勝手に国連やUNTACがつくりかえるわけにはいかない。パリ協定の実現を実施をするということが役割としては非常に大事な任務じゃないですか。  そういうことからすると、今おっしゃっているような、一日も早い安定をとか和平をとおっしゃることからしたら、ポル・ポト派が不参加のまま総選挙が行われて、その結果として新国家が誕生する。当然正統性のある政府として認知を受ける努力を新政府はされるでしょう。しかしながら、選挙に参加しなかったポル・ポト派というのはこの新政権を認めませんよ、きっと。自派の支配地域、住民を新政権の支配下には置かないだろうと思うのです。  そういう事態になったときに、カンボジアの混乱というのは選挙後一層懸念されるわけでありまして、内戦も予想されると最近言われていますよ、内紛は言うまでもなく。こういうことに対して、アンゴラの二の舞をしてはならないというのはお互いの認識じゃないでしょうか。カンボジアをそういう状況に持っていってはいけないというのがお互いの認識じゃないでしょうか。  そうすると、あれこれ、今のカンボジアをUNTACが考えるからとか国連が認知したからというので、この基本に——最初にだから私は聞いたのです、パリ和平協定。これがそもそもカンボジア紛争を解決する基礎ですねと言った。この基礎に反するようなことを平然と、どんどんどんどん認めてエスカレートさせていくというふうなことに日本は加担したらだめですよ。どうですか。
  123. 池田維

    ○池田政府委員 ただいま御指摘になりましたように、確かに、選挙は全土にわたって行われるということがもちろん理想的なわけでございますが、この附属書の「カンボディアの全地域にわたって、州を基礎として、及び政党が提出する候補者の名簿に基づく比例代表制に従って行う。」こういう規定がございますが、この規定の精神に照らして、現在の状況がこれに違反しているかどうかということにつきましては、基本的に、UNTAC、それからSNC、それから関係諸国、それから特にこのパリ和平協定をつくった主要国、すべてがどういうように見るかということが重要だったわけでございまして、単にUNTACのみならず、ポル・ポト派を含めましたことしの一月二十八日のSNCの会合において、選挙を行うということについて合意ができ上がっているわけでございまして、そういう背景を踏まえますと、やはり基本的にこの和平協定の枠組みというものは維持されているというように考えております。  それから、ポル・ポト派につきましては、こういう選挙は行うけれども、そしてその選挙に参加しない可能性はもともと常にありましたけれども、いつもドアはあけられている、したがって、ポル・ポト派を国際社会から排除するものではないということは現在においても貫かれているわけでございます。したがいまして、ポル・ポト派が自分で参加しないからといって、それですべてのパリ和平協定の枠組みが崩れたというようには判断しがたいと思います。
  124. 土井たか子

    ○土井委員 私の質問についてなおかつお答えが十分に聞かしていただいてない段階なんですけれども、さらにこの問題を続行して私は聞いていくことにします。  それで外務大臣、今のパリ和平協定で言っている中身というのは比例代表制なんですが、日本でも政治改革、これはぜひともやらなきゃいけない中身ですけれども、最近外務大臣は、恐らく地元での講演会での御講演だったのでしょう、政治改革は、選挙制度も大事だけれども、選挙制度よりも政治家が原点に返る気持ちを持つことが大事だというふうなことをお述べになった上で、今の単純小選挙区制という考え方というのは、「小さい地域のことを考え政治家の集まりになったら、日本はおしまいだ。国全体のことをだれも考えなくなったら、将来はあるのか」というふうな趣旨のことをお話しになったという報道が各紙に一斉に掲載されていました。私は全くこれ同感なんですが、外務大臣のお考えはそのとおりだと思っていいですね。
  125. 伊藤公介

    伊藤委員長 時間が来ましたので、ひとつ端的に答弁してください。
  126. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 それは必ずしも正確ではございません。ただ私は、その前段の、選挙制度はいろいろあるけれども、どんな選挙制度であっても、やはり政治家が倫理観を持ってやらなかったら結局いい政治はできない、選挙制度は、それはいろいろ考え方は、単純小選挙区、比例代表いろいろあるけれども、とにかく一番問題は、政治家一人一人がやはり倫理観を持ってやることだということを私は強調したわけでありまして、それだけがゆがめられております。あとは、私はいろいろの制度の解説をやったわけです。
  127. 土井たか子

    ○土井委員 解説をおやりになった中でも、特に意識されるのはやはり自民党が提案されている中身であろうと思うので、小さな政治家をふやしていくという選挙制度のあり方であっては困るというふうなお気持ちが大変お強くおありになるであろうと私は察知しているわけであります。そのように思っておいていいでしょう。
  128. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、単純小選挙区制のときにも、これは自民党の党議で決定をしているので、私は今自民党員であるから、自民党の議員だから党議に従わなければいけないけれども、この制度にはこういういわゆる問題点はありますよ、比例代表にはこういう問題点がある、いろいろとこういうことを申し上げたその一つの例であります。
  129. 土井たか子

    ○土井委員 時間が来ましたので、委員長に申し上げさせていただいて、理事会でぜひお諮りいただきたい。  さっきはG7を通じての対ロ支援についての日本の立場ということが、るる御説明が御答弁の形であったのですが、承れば承るほど、先日参議院にお出しになった「「政経不可分」と「拡大均衡」の関係」という中身でこれは事足りているんじゃないのです。そればかりじゃなく、ニュアンスが違う。  改めてこれは当衆議院の外務委員会に対して、G7で日本が対ロ支援をお考えになったこの立場ということを、どういうふうなことを認識し、どういう立場で対ロ支援ということを考えて今回はその額をお決めになったかということについて、しっかりした統一見解を出していただきたい。  これは、「「政経不可分」と「拡大均衡」の関係」ということに関係して、私はこうじゃないと思っていますから、ひとつ再度検討していただいて、統一見解なるものをお出しいただきたいと思うのであります。
  130. 伊藤公介

    伊藤委員長 理事会で協議させていただきます。
  131. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  132. 伊藤公介

    伊藤委員長 東祥三君。
  133. 東祥三

    ○東(祥)委員 本日は、中南米全般に関して質問させていただきたいと思います。  まず初めに、今月の末から外務大臣はメキシコ及びベネズエラを訪問されるということを知っております。外務大臣は、議員として多分珍しいんだろうと思うのですが、中南米のことに関して大変関心を持たれているということをよく存じ上げております。日本エクアドル友好議員連盟の会長でもありますし、コロンビアとの友好議員連盟の会長でもあります。  そういうことを踏まえた上で質問させていただきますが、今回、他の地域を見てもいろいろな問題が山積いたしております。そういう状況の中でラ米を選ばれ、そしてその中でもメキシコ及びベネズエラを選ばれた積極的な理由は何だったのか、この点についてまず初めにお伺いしたいと思います。
  134. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 せっかく休みが続きますので、この機会に、外務大臣に就任いたしましてからまだ外国へも行っておりませんし、どこかの外国を訪問し、とにかく日本としてどこか一つでも多くの国との理解を深めてもらいたいという事務当局の要望もございました。それで、いろいろ考えたのでございますけれども、やはり中南米というのは、どうも総理大臣外務大臣もここ二、三年余り行ってないようでございます。  私は、かつての中南米というのは、先生も大変よく御承知いただいているわけですけれども、インフレ、失業、治安の悪化、大変悪い状況が続いたと思うのです。しかし最近は、それぞれ各国の首脳が非常に反省をされ、国民反省したと思うのでございますけれども、インフレを抑え、そして自主的な努力でしっかりした独立国として民主的国家をつくっていこう、こういう気持ちが非常に各国とも強くなってきておると私は認識をいたしております。  日本も、そのようないわゆる健全な方向ヘラ米の国々が努力をしておるということは承知をいたしておりますものでございますから、ひとつそういうところへ激励に行くというのも一つの方法じゃないだろうか。しかも、今まで余り日本の首脳が、総理あるいは外務大臣訪問していないということでございますから、ひとつそういうところへ行くというのも一つの方法かと思いまして、それで、じゃどこの国を訪問しようかとしたのでございますけれども、当然私はブラジルを頭に描いたのでございますが、ブラジル、アルゼンチン、チリは、五月に日本へ参りまして私ども会議を開くことになっておるわけでございます。  そうすると、それに次いでの主要国となりますと、メキシコであり、ベネズエラであり、コロンビアであるというふうに判断をいたしました。ところが、日程的に余り無理もできません、一週間ぐらいの旅でございますから。コロンビアは、今御指摘いただきましたように私が会長をやっておるものでございますから、今の大統領も外務大臣も私大変親しくおつき合いをさせていただいておりますので、この国は私からメッセージを差し上げるということでエクスキューズできるのではなかろうか、それで残りの二国を訪問しようということにしたわけでございます。  それからもう一つ、言い忘れましたけれども、やはりラ米の各国には、かつて日本から移民をされて定住しておられる方が結構いらっしゃいます。二世、三世を加えれば相当の数に上ってきておりまして、この方々がまた非常にまじめな考え方でそれぞれの国で努力をしてこられました。それがやはりその周囲にいい影響を及ぼして、先ほど申し上げたようないい、堅実な国づくりに励んでおられるんじゃないだろうか、こんなことを考えますと、そういう地域にいらっしゃる日系の方々にも私はできればお目にかかって感謝を申し上げてきたい、こう思っておるわけでございます。
  135. 東祥三

    ○東(祥)委員 冷戦構造が崩壊した。そして旧ソ連に見られる、あるいはまた旧ユーゴに見られるような形での、冷戦構造崩壊後に種々の混乱した状況が見られる。民族紛争という言葉で言っていいのかもわかりません。  他方、冷戦構造下においては、例えばニカラグアあるいはエルサルバドルといった、十年以上続く内乱、紛争というのがあった。犠牲者も、例えばエルサルバドル、ニカラグアにおいては十分の一ぐらいが犠牲者としてお亡くなりになっている。傷を受けた方々を含めると、これは大変な数になる。冷戦構造が崩壊して、失われていた秩序がこの中南米地域においては回復してきている。ある意味で両極端を示す極めておもしろい事象なんだろうというふうに思います。  また、その上でラテンアメリカ各国を見ていくと、例えば今回訪問されるメキシコという国においては、NAFTAに見られるように、今まではう米諸国とのきずなをもっと深めていこう、経済政治的緊密度を深めていこうとする、それとは違ったアプローチが出てきている。そしてまた、外務大臣指摘になりました、債務問題に一定の曙光が見えてきている。そういう意味では、他の地域とは違った意味での、冷戦構造崩壊後の一つの事象として出てきている極めておもしろい、また日本との文化、歴史上のかかわり合いから見ても極めて特異な地域なんだろう。ある意味日本は、もっともっとそういうところに目を向けていかなければならないんじゃないのかと常に思っております。  そういう視点から質問させていただきたいんですが、もう既にことしの三月に中米七カ国を支援するためのPDD、民主開発パートナーシップの東京特別総会も開かれている。そして今回外務大臣がメキシコとベネズエラに行かれる。そしてまた、新聞報道によりますと、来月の中旬になれば、中南米、ラ米十二カ国の政策協議機構であるリオ・グループの代表、三名の外相がアルゼンチン、チリ、そしてブラジルから来られる。ある意味で一九九三年というのは、日本外交においても、中南米、ラ米に対して積極的に働きかけていくのかな、そういう機運を感じさせる年であるのです。  冷戦構造が崩壊した。当然今までの日本外交政策というのは変わってこなければならないんだろうというふうに思うのですね。そういう意味で、冷戦構造を一つの分岐点に見て、これからの日本外交戦略、まずそれを教えていただいて、その上で対ラテンアメリカ外交、これをどのように位置づけられるのか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  136. 寺田輝介

    ○寺田政府委員 お答え申し上げます。  先生の御指摘になりましたように、中南米におきましても冷戦の終結というのは大きなインパクトを持ったということ、同じ認識を有しております。  私ども、やはり二つの要素を常々考えておりまして、冷戦構造の崩壊というのがどういうふうに中南米に影響を及ぼし、我々がそれに対してどう対応していくべきかという点が一つ。第二の点は、やはり八〇年代、俗に失われた十年と言っておりますが、そこから何が出てきたか。この二つを常に考えておるわけでございます。  第一の冷戦構造の崩壊、実はこの冷戦の対象になりました中南米地域といいますのは中米が主たる対象地域であったことは、これはまさに先生も御指摘になったとおりでございます。かつまた、この冷戦の終結とともに一番最初に平和が戻ってきましたのはニカラグアでございます。これは、当時のサンディニスタ政権が民主的な手続によって政権を移譲することを明らかにした結果、御案内のとおりチャモロさんが大統領になった。一九九〇年四月からニカラグアにおきまして民主的な政権ができた。最後に残りましたのはエルサルバドルでございました。昨年の一月十六日にようやく和平協定が締結された。それでエルサルバドルにおきましても、国連の監視のもとに和平のプロセスが始まったわけでございます。  したがいまして、私どもの対中南米外交、なかんずく中米地域につきましては、一つはマルチラテラルな形で援助をしていく。これはまさに先生の御質問の中にございましたPDDの枠内における援助でございます。日本のみならず、他の工業先進国と力を合わせてこの中米の平和と安定のために協力するということでございます。  もう一つ、これは日本がより主体的に動いておるわけでございますけれども、まずニカラグアに対する援助から始まりまして、先ほど申し上げましたように、エルサルバドルにつきましても平和が訪れましたので、エルサルバドルについても積極的に援助する。具体的に申し上げますと、今までエルサルバドルにつきましては、ゲリラ戦といいますか、内戦状況にございましたので、八〇年の初めから大使館を一時閉鎖を余儀なくされておりました。それを昨年の五月に再開する。それから、初めてでございますけれども政府レベルの経済協力調査団というものを昨年の七月、エルサルバドルそれからニカラグアに対しても派遣いたしました。  そういう手続を経まして我々やっておりますことは、約一億ドルに近い経済協力というものを、先般のPDD東京会議にエルサルバドルのパカス外務大臣が来日された際に日本政府として発表したわけでございます。  私ども基本的な考え方は、こういうふうに冷戦構造が終結して中米に平和が来た、平和が来たときには経済協力を最大限使うことによってこの平和のプロセスに寄与する、こういうことでございます。その点は中米においても大変高く評価されておりますし、私どもといたしましては、そういった中米諸国の期待に沿うように、今後もマルチ、バイ、両方組み合わせて協力していくということでございまして、これはまさに冷戦構造が終わった後の我々の新しい対中米外交政策の展開と思っております。  次に、第二の側面でございます。  これは大臣の御発言の中にございました、一九八〇年代というのは大変難しい時代であったわけでございます。基本的に申し上げますと、一九八二年の八月にメキシコが債務支払いが困難であるということを宣言した。この結果、まさに先生の御案内のとおりでございますけれども、中南米全般に債務危機というのが訪れた。その結果、経済問題というのがある意味では大変大きな比重を持つ問題になってしまった。そういう意味で、インフレの問題も出ました。それから債務の不払いの動きも一部に出ました。そういうことの結果としまして、日本の中南米に対する経済協力もテンポがかなり落ちてしまったというのは事実でございます。  しかし、こういった苦しい時代におきまして新しい動きが出てきましたのが、まさにこの民主化の動きでございます。八〇年代にまず最初にペルーから始まるわけでございますが、この十年間を通じて今までの軍事政権が民主化政権にかわってきたということでございます。  そこで、八〇年代について出てきましたことは、一つは、この債務危機を乗り越えて新しい経済改革を実施しようとする国々が中南米の主流を占めた。同時に、それと並行的に、まさに民主化のプロセスを進めていく、こういうことでございます。  したがいまして、九〇年代になりまして、私どもの対中南米外交の柱というのは二つございまして、一つは、こういった時代の背景に進んでいます中南米の経済開発、あるいは市場経済を目指す彼らの努力支援してあげるということ、それから同時に、民主化へ向けての努力支援する、こういうことが我々の外交の柱になったわけでございます。  そういうコンテクストにおきまして、昨年の我々がペルーにおきましていろいろと、マルチ、バイの形で行いました外交努力もそのあらわれでございます。また、この中南米地域、大臣の御発言にございましたように、もう一つの要素でございますが、やはり百三十万の日系社会を抱えているということ、これはまさに常に我々の念頭にあるわけでございます。  私どもとしましては、今申し上げたような新しい国際環境の変化に対応し、今までにないより主体的な、自発的な外交を行っていく、こういうことでございます。
  137. 東祥三

    ○東(祥)委員 寺田局長お話、よくわかるんですが、冷戦構造が崩壊して旧ソ連、旧ユーゴに起きているのも、あれは民主化ととらえられなくもないわけですね。ただ、現象を見た場合、それが紛争という形でもってあらわれている。他方、中南米の場合は、冷戦構造下で、ある意味で代理戦争的な形でもって種々の紛争、内乱というのは起こっていた。そして、冷戦構造が崩壊する。そして民主化、今局長が言われた民主化という言葉でもってあらわされるそういう現象が出てきている。  そうすると、民主化プロセスに対して貢献していくということに関しては、他の地域においても基本的に同じなんじゃないのか。全体構造をどういうふうにとらえたらいいのか。現象面は違うんですね。でも言葉は、民主化という言葉はどこにでも使われる。私はよく頭の中の整理ができないのですけれども、その点についてはどういうふうにお考えになりますか。  常にラテンアメリカというのは民主化を志向してきたんだろうというふうに僕は思うのですね。しかし、冷戦構造が崩壊される前というのはそれがうっくつしていた。しかし、芽がなかったのかといったら、現実に動いていたわけですね。グアテマラでもそうです。他の中南米においてもそういうものが散見できる。  そうすると、冷戦構造が崩壊した後に民主化プロセスヘの強化が出てきたとするならば、それを支えている要件は一体何なのか。アメリカ合衆国の対中南米政策も変わってきています。そういう流れの中で、多分日本の対ラ米政策もとらえ直さなくてはいけないのだろうと思うのですが、その辺のことをもうちょっとわかりやすく教えていただけますか。
  138. 寺田輝介

    ○寺田政府委員 大変難しい質問でございます。ただ、一つ私どもが認識しております点は、米ソ間の関係の対立、先生のお言葉を拝借いたしますといわゆる冷戦構造、これが現実的に中米地域に集中的に出たわけでございます。なかんずくエルサルバドルとニカラグアでございました。ただし、他の地域のいわゆる冷戦構造と違いますことは、今申し上げた二つの国が特に具体的な例でございますが、ただ単に米ソが対立し、これまた先生のお言葉でございますが、いわば代理戦争が行われたという問題のみでとどまる話ではございません。  これはまさに、先生かつて中米に勤務されたと承知しておりますので、現場でお感じになったところだと思いますが、社会問題があったわけでございます。エルサルバドルにしてもニカラグアにしても、いわば独裁者と言うべき人たち、政権に独裁者がいますと、今度はプライベートセクターにはオリガルキーがいた、こういう中でいわば富と政治権力を集中的に握っていた、そういう社会的な矛盾があった中に米ソの対立が持ち込まれた。要するに、複合的なものととらえているわけでございます。  この問題はまさに中米の問題でございます。といいますのは、冷戦構造がまず中米で集中的にあらわれた。他の中南米、まさに三十三の中南米の国があるわけでございますけれども、これは私は問題が非常に違うと見ております。ただし、現在全世界的に見ますと、先生御指摘のとおり、例えばチリのケースをとってみますと、独立以降確かに民主的な政府はできました。しかし、それがまた歴史の一つの流れといいましょうか、アジェンデ政権が民主的な手続で出てくる、それに対して一九七三年に軍事クーデターが起きてくる。  そこで、チリのケースで一般的に申し上げることはやや正鵠を得てないと思いますが、一つ言えますことは、中南米、中米を除きます南米におきましては、いわば経済的な問題、大体輸入産業が中心になっておりますので経済政策の行き詰まりがあるわけでございますが、そういうところから軍事政権が出てくる芽があったと思います。経済的な問題点をむしろ軍事政権が政治力を集中することによって乗り越えようとした、いわば民主的な政権が軍事政権にかわっていく、これが一九六〇年代、七〇年代における中南米の現象であったわけでございます。  八〇年になって経済が非常にうまくいかない、軍事政権になっても経済がうまくいかなかったわけです。それは若干の例外を除きまして当然予見できたところでございます。  そこで、逆に経済が極めて困難になったがゆえに、軍事政権もむしろそんな難しい経済の運営はシビリアンに任せた方がいいということで、かつまた全般的な中南米国民の民主化の復活を求める声もございました。そういうところに合いまして徐々に八〇年代に軍事政権から民主政権に戻ってきた。それが、若干の例外を除きまして、九〇年の初めにはほぼ民主化を目指す、民主化を定着させようとする政権に取ってかわったわけでございます。  こういう事情でございますから、大事なポイントといいますのは、常に経済と民主主義の維持運営と裏腹の関係にあるということでございます。しかし非常に残念なケースでございますが、昨年の二月四日あるいは十一月にベネズエラでクーデターの未遂事件がございました。これはまさに、どんなに経済的にうまくいきましても、やはり一般大衆までしみ通るような経済を運営していかないと必ず政治的な不満が出てくるということでございます。  でございますので、我々の九〇年代における対中南米政策といいますのも、そういった民主主義を定着させることを援助するとともに、あわせてその基盤となる経済を充実させる、そのためには経済協力、技術協力を十分使うという政策になっておるわけでございます。
  139. 東祥三

    ○東(祥)委員 またはしょりまして、今経済技術協力の重要性について御指摘がありましたので、その点に入らせていただきます。  まさに民主化を支援していく、さらにまたそれを支える一つのツールとして経済開発に着目されていることに関しては全く同意いたします。そういう意味で、例えばラ米の中を見た場合、今回外務大臣は行かれませんけれども、会長をやられているコロンビアに先日行ってまいりました。世間ではテロ、麻薬ということで、ある意味でなかなか要人も来ない、あるいはまた経済ミッションもなかなか来ない、そういう中で日本も技術協力を推進されている。そこで、技術協力の現場も行かせていただきました。  ボゴタから車で約一時間ぐらい行ったところにモスケーラという場所があります。ここは、コロンビアが将来トロピカルフルーツ、熱帯果物を世界各国に輸出したい、そのうちの一つを日本にも輸出したい。ところが、わかったことは、その果物の中にチチュウカイミバエが入っていた。その問題を克服するために日本が技術協力し、日本でコロンビア側の専門家を養成する訓練もした。と同時に、チチュウカイミバエを駆除する装置もコロンビアに無償供与された。技術者は日本で訓練を受けて本国に帰った。さらにまた、それに必要な機械もコロンビアで設置された。それが昨年の十一月でございました。そして、あとは日本からの専門家を待つだけという状況でございました。  なぜ日本から専門家が来ないのかと言えば、コロンビア全体がテロでしょっちゅう自動車が爆破されている。それに、ある意味で当然ですけれども、危機管理しなければなりません。安全の問題を考えなければなりません。そこで日本は足踏みをしてしまった。あちらではいつ来るのかということで楽しみにされている方々が現実にいた。そして、現場を見てくれば、コロンビア全体で戦争が行われているわけじゃありませんので、あるところは危ないと言われる地域もあります。他の地域を見るならば極めて安全である。また、まして国民が住んでいるわけですから、日常茶飯殺傷事があるわけではありません。  そういう意味で、多分事情調査をしてくださっていると思うのですが、地域ごとに危険度をはかりつつ、そして安全な地域であると判断されるならば積極的に技術協力をしていかなければ、今寺田局長からお話がありましたが、本当に日本は民主化を積極的に支援しようとしているんですか、さらにまた、自分たちの民主化を支える経済開発を推進していく上で日本の技術、また資金が必要ですよ、それに対してこたえてあげていないのじゃないのか。まさに絶好の機会が訪れているにもかかわらず、いざというタイミングを失してしまうと、結局技術協力あるいは経済協力をやっていたとしても、水は飲みたいときに飲ましてもらうのが一番よろしいわけですね。しかし、すべて日本の一貫して見える印象ですけれども、一生懸命頑張られているのはわかるのですけれども、そのタイミングを失ってしまって、いろいろな支援をしていたとしてもそれが正当に評価されない。そういう問題点を見出したわけですが、もう既に五カ月以上経過しているのですが、この点に関しては現在どうなっているのでしょうか。それで質問を終わります。
  140. 川上隆朗

    ○川上政府委員 コロンビアのチチュウカイミバエの除去の技術協力に関するお尋ねでございます。  御案内のように、九二年三月に、緊急の措置といたしまして、コロンビアの事態にかんがみまして技術協力をとりあえず見合わせるという措置をとったわけでございますが、昨年の十一月の段階で、その後の治安状況及びJICA関係者の安全確認のための安全対策の調査団というものを現地に派遣いたしまして確認を行ったわけでございます。  こういう調査の結果及び大使館等からの情報を総合いたしました結果、今先生からも御指摘がございましたように、技術協力関係者を派遣する上で一部の地域はまだもちろん問題があるわけでございますが、一部の地域を除くボゴタ市同様、カリ市、シルバニア市等比較的安全な地域もあるということが確認されましたものですから、このような地域における個々の案件につきましては、それぞれケース・バイ・ケースで十分検討して派遣をしようという決定を行っております。  そこで、本件のチチュウカイミバエにつきましては、御指摘のようなことで、援助が今まで研修それから機材供与ということで行われてまいりました。今度は専門家を派遣してこれをコンプリートにするというところでございますが、実はボゴタ市北部の安全の確認ということは一応できているわけでございますけれども、専門家の数がチチュウカイミバエにつきましては極めて限られているということがございまして、派遣がおくれているという状況がございました。しかしながら、現在派遣の方向で農林水産省と鋭意協議しているところでございます。
  141. 東祥三

    ○東(祥)委員 ありがとうございました。
  142. 伊藤公介

    伊藤委員長 古堅実吉君。
  143. 古堅実吉

    ○古堅委員 この四月二十五日、沖縄県で実施される全国植樹祭に出席のため、本日、戦前戦後を通じて天皇が初めてのものとして沖縄訪問します。  沖縄は、あの十五年にわたる侵略戦争の結末として、沖縄戦の戦場とされ、悲惨きわまりない事態となっただけではなしに、戦後二十七年にも及んでアメリカの軍事的、植民地的支配に置かれました。この過酷な沖縄歴史的受難と昭和天皇の責任とは切り離すことのできないものがあります。その昭和天皇は、戦後もついに沖縄訪問をしませんでした。  今回の天皇の沖縄訪問について、現地沖縄ではさまざまな、複雑な県民の思いが漂っています。今回の植樹祭の場所が沖縄戦終えんの地、糸満市に選定されたのも、その県民の気持ちとの深いかかわりがあります。  私は、今回の天皇の沖縄訪問問題を通じて、改めて沖縄の戦後処理問題をあいまいにされてはならぬなというふうな感慨を強くしますと同時に、今大きな問題となっております南朝鮮やフィリピンなどの、同胞にかかわる従軍慰安婦問題なども含め、その根底には、日本が引き起こした十五年にわたる侵略戦争に対する真摯な反省態度が強く問われているなというふうなことを痛感いたします。断じて、二度と戦争の世の中を引き起こしてはなりません。  大臣は、あの侵略戦争と悲惨な犠牲に対して素直な反省気持ちをお持ちですか、お伺いします。
  144. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 侵略戦争という表現が出ましたけれども、確かに侵略的事実はございます。私は歴史家ではございませんし、いっか第二次世界大戦に対する歴史の判断というのはなされるのではないかと思うのでございますが、いずれにいたしましても、日本が近隣諸国、特にアジア地域の皆様方に大変御迷惑をおかけをし、また沖縄県民皆様方にも大変な苦難な生活を強い、そしてまた、たくさんの戦争犠牲者をお出ししたということに対しては、本当に遺憾なことであったと思っております。
  145. 古堅実吉

    ○古堅委員 外務大臣、これだけ大きな国際問題ともなりつつある中で、かつての田中総理並みのことを今こういうところでもおっしゃる。  改めて念を押してお聞きしますけれども大臣は、日本のアジア諸国に対する十五年戦争は侵略戦争であったと認識することは、今日に至ってもできていないということですか。
  146. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 侵略的事実があったことは認めますが、戦争に対する評価といいますか、判断といいますか、これはやはり歴史が判断するものと私は思っております。それぞれの立場、考え方があるようでございまして、私は侵略という事実は認めますが、それじゃ、これは侵略戦争であったかどうかということに対して私が申し上げることは差し控えたいと思います。  それよりも、とにかく二度とこのような戦争があってはいけないということで、日本として世界の平和と安定のために努力をしていくということを続けていかなければならないという決意はしっかりと持っておるつもりでございます。
  147. 古堅実吉

    ○古堅委員 侵略戦争であったということさえも明確に言えないという問題は、極めて重大な問題ですね。これは許される問題じゃないのですよ。世界各国で、あなたや日本政府の立場を除いて、あの十五年にわたるアジア諸国への戦争が侵略戦争ではなかった、このような認識に立っているところがありますか。あれば、挙げてください。
  148. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、侵略的事実はあったということは申し上げておるわけであります。
  149. 古堅実吉

    ○古堅委員 侵略的事実ではあった、しかし侵略戦争、このようには言えないということは、侵略的事実はあったのだが、あの十五年にわたるところの侵略戦争にも正義の主張ができるような部分があったとでもお考えですか。
  150. 丹波實

    ○丹波政府委員 大臣の方から申し上げておりますことは、最近の、例えば一昨年の宮澤総理のお答えあるいはその前の竹下総理のお答えでもそのような表現を使っておるわけですが、その理由の一つは、国際法上、この侵略というものの定義につきましていろいろな議論が行われておりまして、現時点で確立した法的概念としての定義が存在していないというところにあるわけでございます。  例えば、国連の歴史を見ましても、先生ももう御承知のとおりと思いますけれども、随分以前から侵略の定義ということが議論されてきましたけれども、結局一九七四年に国連総会が採択したその侵略の定義というものも法的な確立した概念としてのものではございませんで、あくまでも安保理事会が国連憲章第七章を運用するに当たってのガイドラインであるということを言っておりますのも、やはりそういう背景があって言っておるということでございます。
  151. 古堅実吉

    ○古堅委員 まあ驚いた解釈ですよ。あの十五年にわたる侵略戦争を解釈の問題などと言って、まだ国連でもそういう解釈に立って侵略戦争と言い切るようなものであったかどうかということを明確にさせられないでいるかのごとく言おうとするのは、言語道断の話です。  外務大臣、お尋ねしますけれども、あのイラクのフセイン政権のクウェートへの侵略行為、あれは侵略戦争、侵略行為であったというふうにお考えですか。
  152. 丹波實

    ○丹波政府委員 イラクのクウェート侵攻でございますけれども、これに対しまして安保理が最初に六百六十号以下たくさんの決議を出しておりますけれども、これは国連憲章第七章のもとで、具体的には三十九条でございますけれども、安保理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為の存在というものを認定し、自後、累次の決議を採択したということでございます。
  153. 古堅実吉

    ○古堅委員 大臣、どういう御見解ですか。
  154. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、今の局長答弁のとおりだというふうに思っております。
  155. 古堅実吉

    ○古堅委員 イラクのフセイン政権のクウェートへの侵略行為なるものは、クウェート一国を対象にしたものでした。  ところで、あの十五年にわたる、今の中国の東北部、旧満州と言っておった、そこを初めとしてアジア諸国に広げたあの戦争、イラクのあの侵略戦争、侵略行為、それとは比較にならない、だれが見ても疑問の余地のない無謀極まりない侵略行為であった。この間のイラクの許せないそういうものに照らしても、日本の十五年にわたる侵略戦争、侵略行為であったということについては明確なことが言えなければならないと思います。  こういう日本の侵略戦争に対しての根本的な反省に立ち、アジア諸国に対しても本当に真摯な態度で謝罪の立場を表明してこそアジア諸国との信頼関係も真に打ち立てられるものではないか、このように心底考えます。どうですか、大臣
  156. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 侵略的な事実は私ども認めているわけでございまして、そのような面において申しわけがないという気持ちを持っており、いろいろとそれは、表現はいろいろございますけれども韓国に対しても、中国に対しても行われておると私は理解をいたしております。
  157. 古堅実吉

    ○古堅委員 あれだけの歴史上未曾有の許しがたいことを起こして、その責任にかかわる問題、国際的な意味合いにおいては、侵略戦争であったという以外の評価を受けるものがないこの期に及んで、あくまでもああいうあいまいな態度をとるというところにこそ、慰安婦問題などを含め国際問題でも日本態度というものが厳しく指弾される、その根本原因があると思うのです。許せません。  時間がありませんので、次に進みます。  次は、旧ソ連及びロシアの核廃棄物海洋投棄問題についてであります。先ほども土井先生から御質問がございました。  ヤブロコフ・ロシア大統領顧問は、液体核廃棄物の海洋投棄をまだこれからも続けるというふうなことを表明しておりますけれども、これはロシア政府の公式の見解ですか。
  158. 津守滋

    ○津守政府委員 御指摘のように、ヤブロコフ委員長はそのような発言を行っております。  この委員会は、エリツィン大統領が任命した委員により構成されている公式の政府委員会でございます。その意味におきまして、ヤブロコフ委員長発言ロシア政府見解であるというふうに承知いたしております。
  159. 古堅実吉

    ○古堅委員 政府の公式な態度であれば、一層まことにもって許すことのできない言語道断の国際世論への挑戦だというふうに思いますね。  旧ソ連ないしロシアの原潜の原子炉や核廃棄物の海洋投棄というのは、一九八〇年に日本も批准した廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約、いわゆるロンドン条約ですが、それに明確に違反するということは政府態度としてはっきりさせられますか。
  160. 須藤隆也

    ○須藤(隆)政府委員 ロンドン条約は、御案内のとおり、放射性廃棄物を含む放射性物質をいわゆる高レベルの放射性物質とそれ以外のいわゆる低レベルの放射性物質とに分けて、前者の高レベルにつきましては海洋投棄を禁止しております。それから、後者の低レベルの放射性物質につきましては、事前の申請に基づいて個別的に付与される特別許可にかからしめるということにしております。  したがいまして、低レベルの放射性物質の海洋投棄は、ロンドン条約上禁止されているものではありませんが、他方、一九八三年に開かれました同条約の締約国協議会議及び同様に八五年に開かれました締約国会議におきまして、放射性物質の海洋投棄に関する問題の検討が終了するまで高レベル、低レベルを問わずすべての放射性物質の海洋投棄を停止することが決議されております。したがいまして、事実上締約国は低レベルの放射性物質の海洋投棄も行わないということになっているわけでございます。  したがいまして、旧ソ連が高レベルの放射性物質を海洋投棄したという事実があれば、これはロンドン条約違反でありますし、また低レベルの放射性物質につきまして、その海洋投棄が条約上の手続を経た特別許可を得ずに行われていたのであれば同様に同条約違反となりますし、また、いずれにしても先ほど申し上げました決議には反するものであるということが言えるかと思います。
  161. 古堅実吉

    ○古堅委員 この廃棄物投棄防止条約、それに基づいて機関への通告、そういうものがなされていますか。
  162. 須藤隆也

    ○須藤(隆)政府委員 お尋ねの趣旨の、旧ソ連から廃棄物投棄について機関への報告がなされているかどうかということにつきましては、なされていないということをたしか白書にも書いてあったと思います。
  163. 古堅実吉

    ○古堅委員 それなれば、この投棄防止条約にも明確に反しているというふうに言えるのではないですか。この条約の条項に照らしてもそうなるのではないのですか。
  164. 須藤隆也

    ○須藤(隆)政府委員 条約に基づいた特別許可なしに低レベルの廃棄物を捨てたということであれば、条約違反ということは言えるかと思います。
  165. 古堅実吉

    ○古堅委員 条約には、そのように許される範囲のものであるにしても、機関への通告というそのかかわりがちゃんとされていますよ。それがないというのであれば、そういう限りにおいてにしろ、条約違反であるということはもう明確です。その隠し立てもしてきたということをロシア自身も表明しているわけなので、ロシア自身、その条約違反だということについては認めていますか。
  166. 須藤隆也

    ○須藤(隆)政府委員 ロシア政府が公表いたしました白書の中に次のような文章がありまして、「ソ連時代から維持されロシア領土内で有効な、放射性廃棄物の海洋投棄に関する法規及び省令は、ロシア連邦の認めたロンドン条約その他当該分野の国際協定並びに一九九一年の環境保護に関するロシア連邦法に合致していないか又は完全に矛盾している。」という記述がございまして、これは、旧ソ連による放射性廃棄物の海洋投棄がロンドン条約に違反して行われた例があるということを認めたものと解釈していいのではないかと思います。
  167. 古堅実吉

    ○古堅委員 ちょっとはっきりしなかったのですが、ロンドン条約に違反した事実があったとは認めたのですか。
  168. 須藤隆也

    ○須藤(隆)政府委員 白書の中で幾つか引いておりますが、そのうち、ロンドン条約も含めまして、「その他当該分野の国際協定並びに」「ロシア連邦法に合致していないか又は完全に矛盾している。」という表現はしておりますので、すべての海洋投棄がロンドン条約そのものの違反であるかどうかということはこの白書の表現からだけでは判断しかねると思いますが、ロンドン条約に違反した事例があるということは認めているものと解釈してよいのではないかと考えております。
  169. 古堅実吉

    ○古堅委員 このやりとりなどで明らかなように、国際条約にも反し、国際世論にも挑戦するような、こういう態度などというものは言語道断な話ですが、ロシアとても胸を張ってそういうことがずっと主張し切れる、何ら問題にされないことだなどというふうな立場には立っていないように思います。世界で唯一の被爆国日本からしますというと、こういう言語道断のロシア態度などというものはいささかも許してはなりませんし、厳しくそういうものについての対処をしなければいかぬと思います。  このロンドン条約その他に照らして、国際会議などに持ち込んで、この問題についての対処をきちっとやる、そういうことなどを含めて考えていかなければいかぬと思うのですが、大臣、どうお考えですか。
  170. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先日のG7合同閣僚会議でも、私どもは強くこれを国際会議の場で主張いたしまして、議長声明にこれを盛り込むこと、いわゆるロシアの放射性廃棄物の海洋投棄を即刻停止すべきであるという表現を入れることには、正直、なかなか苦労いたしましたけれども、結果的にはそれは入れることに成功いたしました。これは日本としての大変強い主張が通ったというふうに私は理解をいたしております。  また、コズイレフ外務大臣にも即刻中止をするよう厳重に申し入れをいたしまして、この問題について、海洋調査全般にわたっての調査をするということについて作業部会を設けることも合意をしたわけであります。
  171. 古堅実吉

    ○古堅委員 この投棄防止条約の第十四条三項(a)によりますというと、少なくとも二年に一回締約国協議会議を開かなくてはいかぬようになっていますよね。それの一番近い会議はいつごろ予定され、そしてその会議との関係日本が何かとり得る、そういうことについての検討などもあるのかどうか。
  172. 伊藤公介

    伊藤委員長 須藤審議官、時間が来ましたので、端的に御答弁ください。
  173. 須藤隆也

    ○須藤(隆)政府委員 御指摘のロンドン条約の締約国会議というものが何回か開かれておりますが、次の会議は本年の十一月に、第十六回になるかと思いますが、締約国会議が開かれることが予定されております。  この放射性廃棄物の投棄の問題は、我が国とロシアとの二国間の問題に限られる問題ではなく、原子力の安全利用、ひいては海洋汚染という地球環境問題全体にかかわる問題でありますし、国際社会共通の重要問題であるという認識に立ちまして、我が国といたしましても、ロンドン条約の締約国会議等の場におきまして、このロシアによります廃棄物の海洋投棄がロンドン条約の目的に沿った運用を行うように、関係国とともに働きかけてまいりたいと考えております。  具体的な働きかけ方につきましてはこれから検討していきたいと考えております。
  174. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間が来ましたから、終わりますが、G7その他あらゆる機会をとらえて、この問題について二国間でもやらなければいかぬし、幾つかの国々との関係でも重視して取り上げていかなければいかぬことは言うまでもありません。  今ありましたように、ロンドン条約関係協議機関にあっても正規にこの問題をとらえて、ロシアの今表明されているような、国際世論にも挑戦する言語道断の態度というものを断固として許さぬ、そういう立場で奮闘すべきことを強く要望して、終わります。      ————◇—————
  175. 伊藤公介

    伊藤委員長 次に、第百二十三回国会から継続になっております児童の権利に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  政府より提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣武藤嘉文君。     —————————————  児童の権利に関する条約締結について承認を  求めるの件    〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  176. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ただいま議題となりました児童の権利に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、平成元年十一月二十日に第四十四回国際連合総会において採択されたものであります。  この条約は、生命に対する固有の権利、思想の自由、社会保障についての権利、教育についての権利等の児童の権利を定め、これらの権利がいかなる差別もなしに尊重され及び確保されるように、締約国がすべての適当な立法措置、行政措置その他の措置を講ずることを定めております。  我が国がこの条約締結することは、児童に対する人権の保障に関する我が国の姿勢を内外に示すものとして望ましいと考えられます。さらに、この条約締結は国際社会における児童の人権の尊重の一層の普遍化に貢献するという意味からも極めて有意義なものと考えます。  なお、我が国としては、この条約中の自由を奪われた児童の成人からの分離についての規定に関しては、その内容にかんがみ、留保を付することが適当であると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願いいたします。
  177. 伊藤公介

    伊藤委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る二十七日火曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時十分散会      ————◇—————