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1993-03-25 第126回国会 衆議院 科学技術委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年三月二十五日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 小澤  潔君    理事 光武  顕君 理事 宮路 和明君    理事 村井  仁君 理事 森  英介君    理事 山本 有二君 理事 川島  實君    理事 関  晴正君 理事 近江巳記夫君       赤城 徳彦君    岡島 正之君       古賀  誠君    佐藤 敬夫君       住  博司君    塚原 俊平君       秋葉 忠利君    新盛 辰雄君       竹内  猛君    辻  一彦君       斉藤  節君    吉井 英勝君       菅原喜重郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長 中島  衛君         官)  出席政府委員         科学技術庁長官 井田 勝久君         官房長         科学技術庁長官 笹谷  勇君         官房審議官         科学技術庁長官 興  直孝君         官房会計課長         科学技術庁科学 長田 英機君         技術政策局長         科学技術庁科学 島  弘志君         技術振興局長         科学技術庁研究 石井 敏弘君         開発局長         科学技術庁原子 石田 寛人君         力局長         科学技術庁原子 佐竹 宏文君         力安全局長  委員外出席者         総務庁行政監察 福田  実君         局監察官         環境庁企画調整         局地球環境部環 加藤 久和君         境保全対策課環         境協力室長         外務省経済協力 坂場 三男君         局技術協力課長         文部省高等教育 工藤 智規君         局大学課長         文部省学術国際 長谷川正明君         局学術課長         工業技術院総務 青木 信也君         部技術振興課長         工業技術院総務 深山 英房君         部技術企画課長         特許庁審査第二 清水 啓助君         部調整課長         参  考  人         (新技術事業団 赤羽 信久君         理事長)         科学技術委員会 松尾 光芳君         調査室長     ――――――――――――― 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   秋葉 忠利君     三野 優美君 同日  辞任         補欠選任   三野 優美君     秋葉 忠利君 同月二十五日  辞任         補欠選任   今井  勇君     住  博司君   小沢 一郎君     岡島 正之君   簗瀬  進君     赤城 徳彦君 同日  辞任         補欠選任   赤城 徳彦君     簗瀬  進君   岡島 正之君     小沢 一郎君   住  博司君     今井  勇君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  新技術事業団法の一部を改正する法律案内閣  提出第五号)      ――――◇―――――
  2. 小澤潔

    小澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出新技術事業団法の一部を改正する法律案議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として新技術事業団理事長赤羽信久君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小澤潔

    小澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 小澤潔

    小澤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川島實君。
  5. 川島實

    川島委員 私は、ただいま議題となっております科学技術の問題について、数点お尋ねをいたしたいと思います。  政府は、科学技術経済発展の原動力であり、社会の諸問題を解決する手段である。今後、国際社会人類全体に貢献するために、地球と調和した人類の共存、知的ストック拡大、安心して暮らせる潤いのある社会構築重点目標に挙げております。しかし、今日の不況財政事情により、計画が余り順調に進んでいるとは言えないと思います。一日も早い目標達成努力が問われておるところでございます。  政府は、今度の緊急景気対策一つとして、今日、不況を一日も早く脱するために、四月早々にも補正予算で十二兆円規模事業を検討していると言われております。大臣にお伺いをいたしますが、この中で、科学技術関係事業として何を要求しておるのか。特に学術部門として、小学校パソコン導入とか大学における大型電算機導入設備改修等が見込まれる予定と聞かされておりますが、その内容について、大臣初め、文部省にもあわせてお尋ねをいたしたいと思います。
  6. 中島衛

    中島国務大臣 現在、各方面におきまして景気対策に対する議論が行われておりますが、政府といたしましては、昨年八月に策定した総合経済対策の着実な実施を図るため、平成四年度補正予算早期実施など、各般施策を講じているところであります。さらに、平成五年度予算の一日も早い成立が最大の景気対策になると考えております。  平成四年度補正予算で講じられた当庁の附属試験研究機関における研究開発基盤整備や、当庁が従来より推進してきたさまざまな重要研究開発プロジェクト推進は、先生指摘景気対策として有効なものと考えております。いずれにしましても、景気の実態を見据えつつ、科学技術がこれまで経済発展と豊かな国民生活の実現に対し大いに貢献してきた実績を踏まえ、科学技術振興に対処してまいりたいと思います。  具体的に今先生指摘のありましたようなものの中から、私といたしましては、まず第一に、経済発展に不可欠な最新の研究成果を得るため、研究開発に係る施設のみならず設備高度化を図ること、二番目に、研究開発画期的進展効率化を図るため、研究現場における情報コンピューター処理を行うとともに、相互に情報流通させることが重要であり、研究開発情報化基盤整備を行うこと、三番目に、研究開発ビッグプロジェクトは、通常大規模施設設置、大量かつ先端の資材調達を伴うものであり、内需拡大効果が極ので大きいところから、大型放射光施設首都圏直下型地震予知広域深部観測施設等加速的推進を図ることが、現下の経済対策として効果的なものと考えておりますので、今事務当局に具体的な検討をさせているところでございます。
  7. 長谷川正明

    長谷川説明員 お答えいたします。  大学における施設設備老朽化あるいは狭隘化ということにつきましては、ここ両年来各般から指摘をされておりまして、文部省におきます施策の中でも最重点を置いております。  来年度、平成五年度の予算案におきましても、大学における施設設備あるいは研究費等の拡充に格段の努力を払っているところでございますけれども、御指摘の点につきましては、大型計算機等設備を含め大学研究環境の改善のためにあらゆる機会をとらえて最大限の努力を払ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  8. 川島實

    川島委員 新聞報道で一部出ましたところ、文部省関係者人たちは、みんな小学校パソコン等技術、そういう大型電算機等導入に非常に期待をいたしております。ただ、一般人たち、我が党の中にも小学校パソコン建設国債でいかなるものかという御意見もあります。しかし、今日電算機関係部門が非常に進展をいたしておりますので、小学校にぜひこの機会導入を図られるよう、ひとつ一段の大臣の御努力をいただきたいと思います。  次に、今日の日本における社会問題として、通勤地獄だとか交通渋滞廃棄物環境都市のアメニティーの低下、医療や教育問題など、多くの部門科学技術導入が叫ばれておるわけでございます。こうした中で、地方都市にもこういう科学技術交流センター必要性があちこちで叫ばれてきておるところでございます。  二〇〇五年に万国博覧会愛知県が誘致をするということで今運動が進められておるわけでございますが、愛知県がその万国博覧会予定地であるそばに学術研究ゾーン建設いたしまして、その中心施設となる科学技術交流センター建設財団設立と同時に準備に入っておるようでございますが、国としてどのような役割を担っていくのか、その点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  9. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 最近、各地域地域科学技術振興を図るという観点から大変積極的な取り組みが行われております。例えば科学技術会議を設置するとか、あるいは自治体の科学技術行政を確立するための組織を強化するとか、あるいは第三セクター方式研究開発支援したり研究交流支援したりする、そういった組織をつくっていくといったような動きがあるわけでございまして、私どもとしてはそれを大変歓迎して、また必要であれば私どもも積極的にその支援をする、こういうスタンスでいるわけでございます。  今御指摘科学技術交流センター愛知県のは、愛撫県によってまとめられた科学技術交流センター計画であると思いますけれども、私ども基本的な枠組みの段階で御説明を事務的に受けたと承知しておりますが、まだその詳細については承っている段階ではございません。ただ、先ほど申し上げましたように、私ども基本的なスタンスからして、御相談があれば極力御協力できることはやっていきたいということで対応してまいりたいと思っているところでございます。
  10. 川島實

    川島委員 ひとつぜひ、世界的な規模での万国博覧会誘致、こういう目的もございますので、御尽力をお願いしておきたいと思います。  次に、政府は、これまで中央省庁だけが利用していた法律、政令などのデータベースを有料で民間に開放するという報道がなされました。科学技術庁の所管をする公的機関におけるデータベース公開も従来から叫ばれておるところでございますが、思うように進んでいないと聞いております。情報公開に向けて今回のこの取り組み科学技術庁としてどのように対応されるおつもりか、お伺いしておきたいと思います。
  11. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 国立研究機関一般を念頭に置いて申し上げたいと思いますが、国研に関する、あるいは国研が持っている情報というのは大きく分けて三つございまして、研究論文研究レポート等文献情報、それから、どういうところでどういうことをやっているかといった研究課題などの案内情報と言っておりますが、そういったもの、それから研究データ実験データデータベースにまとめ上げる、ファクト情報と言っておりますが、そういう三種類のカテゴリーに大きく分けられるのではないかと思っております。  そのうちの文献情報案内情報につきましては、先生も御承知だと思いますが、日本科学技術情報センターにおきまして網羅的に収集してデータベース化をいたしまして、広く一般に提供するという形でその公開流通を図っているところでございます。また三番目に申し上げましたファクト情報なんですが、これにつきましては、それぞれの研究所によってはデータシートあるいはCD―ROM、テープ、あるいは場合によってはオンラインに乗っけるというような形で既に公開流通を図っておられるところもあるわけでございますけれども、なかなかその体制は、費用もかかる、人員も必要だというようなこともありまして、十分整っていないところが御指摘のように多いようでございます。ただ、そういったところの情報についても、データベース化をしてそれをきちっと公開流通せしめていくという御指摘はそのとおりでございまして、また行政監察でもそのような御指摘をいただいているところでございます。  私どもとしては、今までもJICSTで一部ファクト情報データベース化して、JICSTを通じて流すというようなこともやっておりましたし、あるいはそういうものをオンライン情報にする際の基本的な流通基準みたいなものをつくって、その基準を普及せしめることによってより広くファクト情報が流れていくといったような環境整備努力しておりましたけれども、そういうことをもうちょっと力を入れてやらなくちゃいけないというふうに思っております。  それから、行政監察が出ました以降、早速各省庁連絡会議を開催いたしまして、そこで意見交換をスタートしているところでございます。  それからさらに、国立研究所その他、公的な研究機関等について研究情報ネットワークに関する、あるいはデータベース保有状況とか、それの公開に対しての問題点とか、そういったようなことについてアンケート調査をいたしまして、これは昨年の十一月時点の状況でございますが、そういったような調査をいたしまして、問題点把握等に今努めているところでございます。  おっしゃるとおり、そういった情報公開せしめていくということ、ただこれはかけ声だけではなくて、なかなかいろいろ努力が必要なのでございますけれども、そういう各所の努力と相まって私ども努力をいたしまして成果が上がるようにやってまいりたい、このように思っているところでございます。
  12. 川島實

    川島委員 次に、地球規模環境問題が人類共通課題としてクローズアップされる。個人の生活に豊かさとゆとりを求められ、産業技術に対する国民要求も変化をし、従来の効率生産性重視技術から人と地球に優しい技術への転換を求められております。  環境庁として、最近における地球規模環境保全における研究成果企業は先取りをして、特許申請が後を絶たないと言われておりますが、環境庁はこの現象をどのように受けとめておるのか、まずお伺いをしておきたいと思います。
  13. 加藤久和

    加藤説明員 お答えいたします。  地球環境保全を図るためには、環境上健全な技術を積極的に開発途上国を初め移転していくことが極めて重要でありまして、昨年六月にブラジルのリオデジャネイロで開かれました地球サミットにおきまして合意されました行動計画、アジェンダ21等におきましても、その推進が強調されているところでございます。  技術移転におきましては、政府開発援助を通じた各種技術協力のみならず、直接投資あるいは合弁企業の展開といった行為を通じまして、民間企業も大きな役割を果たしていると私どもでは認識しております。このため、この分野における我が国の積極的な貢献への期待がますます高まっております中で、いかにして我が国官民による環境保全技術移転を進めていくかが大きな課題になっていると認識しております。  そこで、環境庁におきましては、我が国が有するすぐれた環境保全技術を円滑に途上国移転していくための方策を検討するため、今年度から二年計画で、インドネシア及び中国を対象といたしまして、環境保全技術移転促進調査実施しているところであります。また、昨年十月に我が国に設立されました、UNEP国連環境計画でございますが、UNEP国際環境技術移転センターに対しても、移転すべき技術データベース構築、あるいは我が国援助によりタイ、中国インドネシア等に設置されました環境センターとのネットワーク化推進等に対して支援を行っていくこととしているところでございます。
  14. 川島實

    川島委員 非常に大事なことでございますが、今民間部門はすぐ特許に走る、こういう傾向が新技術に対しては生まれてきている。ところが、特許庁状況を調べてみますと、一年間に約六十万件申請が出される。それが認可になるのがいろいろ審査をして二年か三年で、一年間に三万件ぐらいしか許可にならない。こういう現状の中で、環境問題に対してそれらのデータベースなりコンピューターにおける仕分けがまだしっかりできていない。  だから、地球規模環境問題で、そうした特許庁申請されたものが何件あって内容がどのようなものかということは、きちっと整理をして国際貢献役割を果たさなければいけない、こう思うわけでございますが、特許庁の現在のそういう状況改革がなされるのかどうか、このことについてお伺いをしておきたいと思います。
  15. 清水啓助

    清水説明員 お答えいたします。  今先生の御指摘がありました年間三万件というのは、ちょっとデータが違っておりまして、大体特許庁審査を終えまして許可されるのは、年間十万件を超えております。  今御指摘地球環境関連技術でございますが、地球環境関連技術と申しますと、地球温暖化防止技術とか、オゾン層保護技術とか、熱帯雨林保護技術とか、非常にたくさんの分野に関係しております。さらにその内容を見ますと、オゾン層保護技術の中の一つをとりましても、その中のフロンをとりましても、フロンの代替の材料だとかフロンの放出を防止するとか回収するとか、その技術内容も非常に多岐にわたっております。  今、特許庁でやっております統計処理、これは地球環境、そういう断面で処理できるような形にはなっておりません。したがいまして、甚だ恐縮なのですが、御指摘の点については正確な数を申し上げることはできません。ただ、ちょっと地球環境の狭い概念になるのですが、公害防止ということで排ガスだとか排水、それからアスベストだとか、いろいろ公害問題が出ております。こういうものに関した技術につきましては、一応我々数をつかんでおりまして、これが審査を経て公告される数は、大体年間千件でございます。  それからもう一つ地球関連でいきますと、オゾン層保護技術については実は調べたことがございます。平成三年の調査でございますが、昭和五十年から平成二年までにオゾン層保護関連技術として申請がありましたものは、大体七百六十件ほどございました。  先生の御指摘の点なのですが、そういうニーズが出てきたときに、これはシステムも大変なことになるのですが、先ほど申し上げました公害関連技術というような形でのサービスもやっておりますので、どこまで地球環境等を含めていくか、いろいろな問題があると思いますが、前向きにひとつフィージビリティーを検討していきたい、こういうふうに考えております。
  16. 川島實

    川島委員 今お答えをいただきましたが、非常に問題解決にはなっていない。まず六十万件受けて、審査が長いのが十年かかる。三万件というのは、私は係員から聞いたわけでございまして、この違いがどこにあるのか、それも非常に明らかではございません。世界の約四〇%が日本で今特許申請が出されている、こういうふうな状況にも実はなっている。アメリカに対して日本は約三倍、非常な量。ところが、まだ特許庁データベースの、いろいろな形のデータコンピューターが設置されたばかりで、内容についての分析がまだ十分でない、こう言われているわけですが、従来型の各省庁のそういう形の分析じゃなくて、これから我が国国連中心主義地球規模のいろいろな環境問題に積極的に取り組む重点目標をつくっておるわけでございますから、そういうシステムに分類ができるようにコンピューター開発をやらざるを得ない時代になってきたと思われるわけでございますが、これらについてのお答えについてお伺いをしておきたいと思います。
  17. 清水啓助

    清水説明員 お答えいたします。  特許の情勢につきましてちょっと最初に御説明させていただきますと、まさに御指摘のとおり、今日本発明活動は大変なものがありまして、一分間に一件出ておりまして、これを合わせますと六十万件近い数が出ております。ただ、日本特許制度システムアメリカとはちょっと違いまして、日本システムはヨーロッパと非常に近いものでありまして、世界の水準をいくものだと思っておりますが、六十万件出ましても実際に審査に入ってくるものは、審査請求制度がございましてそのうち大体半分以下になります。  ちなみに昨年度を見てみますと、審査をしてくれと言ってきたものは約二十二、三万件でございます。したがいまして、六十万件とかっと来ているわけではない。二十二、三万件に対して、我々はちょっとそれを超える形で今処理を進めている。これも先生指摘のように、世の中動きに対してこたえていかなければいけないということで、特許法改正等を今国会にお願いしているところでございます。  それから、情報の点でございますが、我々大変立派なコンピューター設備導入いたしまして、我々が抱えている特許情報産業界にいかに有効に使っていただくかという形で、ペーパーレス計画というものを今展開しているところでございます。これにつきましては、各分野におきまして審査関連の資料を全部集めまして、産業界の方が検索しやすい形でいろいろデータベース等用意しているところでありまして、十年計画のほぼ最終段階に入ってきております。これがうまくできますれば、国レベルにおきましても産業界におきましても、特許情報をうまく使っていただけるスキームが完成するのではないか、このように思っております。
  18. 川島實

    川島委員 余り時間もございませんので、ひとつしっかりと世の中動きに見合った分析ができるようお願いをしておきたいと思います。  次に、文部省にお伺いをいたしますが、簡潔に申し上げます。  大学中心とする公的な基礎研究機関の一層の充実が今一番必要だということは皆さんが一致するところでございますが、基礎研究のあり方として、市場ニーズ生産現場要求に対応する従来型のやり方の研究開発管理システム改革が必要だというふうに叫ばれておるわけでございますが、これについてどのように御所見をお持ちか、お伺いをしていきたいと思います。
  19. 長谷川正明

    長谷川説明員 大学において行われます学術研究というものは、俗な言い方で申し上げますれば真理探求ということで、その成果はまさに人類共通知的財産という形で、我が国はもちろんのこと、世界発展貢献していくものだというふうに理解をしております。  他方、今先生話題になさいました地球環境問題を初めといたしまして、社会的な各種要請大学研究がこたえていく、あるいは地域発展のための地場産業振興という要請にも、大学が持っております研究能力あるいは研究の蓄積というものを発揮して連携をして協力していくことの必要性というものが、昭和五十九年の科学技術会議の十一号答申等指摘をされました。また同じ時期、五十九年の二月ですけれども学術審議会答申でも、大学研究者大学の外の研究者企業研究者とかそういう大学研究者とはちょっと発想の違う研究者と一緒に共同研究等を行うということは、大学研究にとっても非常に刺激になって有意義である。こういう角度からの御提言がございまして、大学民間等との共同研究制度というものを創設するなど、社会あるいは企業等要請大学研究をうまく結びつける制度創設努力したわけでございます。 ただ、この場合、大学学術研究基本は、先ほど申し上げました、まず研究者自発性、あるいは真理探求というものが基本でございまして、学術研究をより進展させることに有意義な、そういう企業等との研究協力が大事であるということは創設当時から言われております。それで、そういう企業共同研究等を行う場合にも、学内審査機構を整備して、そこで大学研究にとってその本分を逸脱することのないような審査が行われるよう指導したところでございます。  今先生指摘になりましたものは、過日の「科学技術に関する行政監察」の中でも指摘をされております。私ども昨年の八月に局長通知を出しまして、企業等との共同研究を含めて大学の本来の研究を逸脱するようなことのないように、そういう例は必ずしも多くはないと思いますけれども、そういう面については十分注意した学内審査等充実を図るように指導をしたところでございます。
  20. 川島實

    川島委員 最後に、通商産業省にお尋ねをいたします。  今、日本企業は海外に研究所をつくったり、技術開発拠点を海外へ求めて、デザインセンター等を設立して現地で研究者を雇用して、そういうものを運営している。こういう日本企業の海外での研究体制の実態をどのように把握しているのかお伺いをすると同時に、もう一つは、共同研究開発に参加をする加盟企業の選び方がいろいろと問題になっております。  例えば超エル・エス・アイ技術研究組合は、関連企業を選別的に加盟させまして、メンバー企業に対しては補助金その他の優遇措置を提供する形で運営がなされている。一部企業が得をするという問題も指摘をされている。また、加盟企業の市場支配やカルテル行為がとまらなくなる危険性も見逃せない。こういう指摘も受けているわけでございますが、これらに対してどのような対応をなされているのか、お伺いしておきたいと思います。
  21. 深山英房

    ○深山説明員 今の御質問の前半について、お答えを申し上げます。  海外における研究開発活動は、民間企業でも必要性をかなり認識しておるところでございまして、やはり進出する市場のニーズに合った製品の開発ということを意識しておるわけでございます。一九九〇年の海外投資統計総覧の調査によりますと、一九九〇年の三月末時点で、海外における日本企業研究所設置数が二百二十二、研究員数で約七千、研究開発投資額は六百五十億円に上っておるところでございます。
  22. 青木信也

    ○青木説明員 お答えいたします。  先生の御質問、後半でございますが、共同研究におきまして特定企業に寄与し過ぎているのではないかという御質問でございますけれども、例えば工技院が行っております官民連帯共同研究につきましては、各研究所民間企業の意向を聴取いたしまして、その社会的意義等を十分に勘案した上で申請されております。したがいまして、採択に当たりましても、あくまでもテーマの内容必要性民間企業研究能力等を判断材料といたしまして、特定の企業に偏ったことのないように運営しているわけでございます。  それからカルテルの問題でございますが、この共同研究におきましては、例えば複数の企業と筑波の研究所が行う場合には、複数の企業であっても研究所と個々の企業が契約しておりますので、カルテル的な問題はないかと承知しております。
  23. 川島實

    川島委員 いろいろ私どもの耳にまで入ってくるということは何か問題点があろうかと思いますが、そういうことがなきようひとつ十分な御指導をお願いをして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  24. 小澤潔

    小澤委員長 御苦労さまでした。  近江巳記夫君。
  25. 近江巳記夫

    ○近江委員 まず、十八号答申あるいはまた科学技術政策大綱で、いわゆる研究交流推進につきまして随所で触れられておるわけでございますけれども、前に行いました研究交流促進法で一応のそうした前進もあったわけでございますが、今回の一部改正によりまして、研究交流というものを総合的に促進するためのそういう体制というもの、それは完全に整備できたのかどうか。どういうお考えをお持ちか、政府理事長とお二人にお伺いしたいと思います。
  26. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 御指摘のように、研究交流法の制定と一部改正ということを通じて、一歩その研究交流のための隘路を取り除く努力は今進行中ということでございますが、しかし、日本のような割合に組織の壁が高い風土の中ではかなり意図的な努力、スキームを創設する、支援するためのスキームをつくる。例えばフェローシップとか海外派遣の事業のためのスキームをつくるといったようなこと、あるいはあっせんを積極的に行うといったようなこと、あるいは情報提供を積極的に行うといった意図的な努力が必要であろう、このように認識をいたしております。  そういうことで、今まで私どもがみずからやっておりましたことも含めて、しかも事業団が今まで研究成果企業化するためにいろいろノウハウを蓄積してきたといったような、そういうポテンシャルを考えまして事業団に幾つかの事業をやらせる、そういうことによって総合的に体制が整備できた。もちろん万全ではございませんが、そういった現時点で必要な芽はとりあえず出せたんではないか、こういうふうに考えているところでございます。
  27. 赤羽信久

    赤羽参考人 事業団設立以来、国内の研究を実用化するための開発を行い、最近では創造科学技術推進事業あるいは国際共同研究、こういった基礎研究をやってまいりました。こういう仕事を縦割りに示されておりますけれども、この業務の運営の実態は、まさに研究の交流のお手伝いをするということでこの仕事ができているわけでございます。こういった仕事を通しまして、だんだんにそういう仕事のやり方、それから人脈、情報のルート、そういうものを深めてまいってきておるわけでございます。  今回、さらに人の動きをお手伝いするという面も加わってまいりますと、ますます総合的な研究交流の仕事をちょうだいするということになるわけでございまして、その精神で国内の研究交流が一層円滑に進むような努力をしてまいりたいと考えております。
  28. 近江巳記夫

    ○近江委員 一応の法的なそういう面はできたと思いますが、問題はいわゆる人の動きでございますから、極めて難しいと思うんですね。ですから、これはよほど内面充実をしてやっていかないと、内局からこっちへ移管するわけでございますから、私は非常にそういう点を心配しております。まあ、それは何事も心配があるからだめだ、そんなこと言ったんじゃ前進がないわけですから、そういう点で科学技術庁も、移管はしたとしても本当に全面的な責任というものはあるわけでございますから、しっかりフォローアップをしていただいて、その所期の目的というものをしっかりと果たしていただきたい、このようにまず最初に申し上げておきたいと思います。  それから、一つは特別研究制度。これは平成二年度に創設されたわけでございますけれども、ここ大分、平成五年まで来ておるわけでございまして、当初は四十六人、予算額では一億七千万、今度は十一億三千万で百四十人ということを聞いておるわけでございますけれども研究員の方たちが過去数年のそうした実績といいますか活動状況をごらんになられておりまして、この制度は本当に効果があったと言えるのかどうか、またどういう点が問題であるのか、そういう点も忌憚のないところをひとつお聞きしたいと思うわけでございます。
  29. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 今回、新技術事業団に移管したいと考えております科学技術特別研究制度でございますけれども、これはいわゆるポストドク対策といいましょうか、ドクターを取ったけれども研究機会が与えられないということがある意味での一つ社会問題としても提起されたわけでございまして、これについて取り組まなきゃいけない、こういう認識のもとに、そういったいわゆるポストドクの方々に国立研究所研究機会を提供するという趣旨でつくられた制度でございます。  他方、国立研究所サイドからいえば、そういった優秀な若い血が仲間の一人として研究に加わってくるということで非常に活性化するという効果ももちろんあるわけでございまして、研究交流一つの典型的なケースではないかというふうに考えております。今までのところ、研究員の方々、それから受け入れている国立研究所双方から大変この制度は評価されているというふうに承知をしているわけでございます。
  30. 近江巳記夫

    ○近江委員 今そういう点で評価されておる。確かに、ドクターを持っておりながら手をこまねいておった方々がそこで希望を持っていける、そういう場を提供したということは非常によかったと思います。しかし考えてみますと、今後これは事業団に移管されるわけでございまして、そうなってきますと、いわゆる待遇とかいろいろな実際の問題が出てくるわけでございます。そういう点につきましてはどういう前進をされようとお考えでございますか。
  31. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 今回の移管に伴いまして、給与とか退職金といった処遇面、それから研究の実態面については、何ら実態的な変更はないはずでございます。むしろ、今までの非常勤国家公務員という立場から新技術事業団の職員ということになりますことによって、やや事務的な話のようにも聞こえますけれども、非任用日というものを設定することなく継続して雇用できるということから、例えば年金とか保険について一カ月分個人負担が今までは必要であったわけでございますけれども、そういうことが必要でなくなるとか、年次有給休暇を増加する可能性もできてきたとか、それから事業団がこういった研究員の方々の日常的なお世話もしてさしあげられることができるとか、そういった面でプラスがあるのではないかというふうに考えておりまして、むしろ今度の移管によって大変喜んでいただけるのではないかな、このように考えているところでございます。
  32. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう点は十分バックアップができるような、伸び伸びと研究活動ができるような環境づくりといいますか、そういう点をさらに充実していただくことを強く要望いたしておきます。  次に、情報の提供業務でございますけれども、従来のいわゆる日本科学技術情報センターによる情報提供あるいは科学技術庁の内局で行われておりました情報提供、今回の法案によります情報提供との違い、どういうようになるわけですか。
  33. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 日本科学技術情報センターが専らやっております情報提供の業務は、いわゆる科学技術文献を抄録をして、それをオンライン情報として乗っけて広く公開、普及させていく、こういう仕事でございます。  今度事業団で国内の情報提供として考えておりますのは、共同研究というものをスムーズに成立させるための情報というようなことを一つの柱として考えております関係上、例えばそれぞれの国研にどういう施設があるかとか、どういう研究者がいるかといったような、文献ということじゃない、ややアクティブな情報といいましょうか、そういったものを提供するということを心がけていきたい、このように思っております。
  34. 近江巳記夫

    ○近江委員 理事長は、どういうようにお考えでございますか。
  35. 赤羽信久

    赤羽参考人 先ほど申し上げましたように、我々の仕事の実態は、足で情報を集め、また足で情報を提供するということで研究交流の実を上げてきたわけでございますが、そういう手づくりだけでなくて、今後ややシステム的に、できたらより網羅的に情報の収集と提供を行いたいと考えております。  ただいま局長が申し上げましたような、生きた情報ということでございます。既に今手をつけておりますのは、日本の国立研究機関の研究者が今どういう研究をして、どういう経歴、どういう業績を持っているかということの一覧冊子を英文でつくろうとしております。現在、各研究所の御協力を得まして、約四千人余りの原稿がちょうどできて印刷にかかろうとしておるところでございまして、これを出発点といたしまして、こういった仕事をより深めてまいりたいと考えております。
  36. 近江巳記夫

    ○近江委員 情報化時代でございまして、さきの委員会で私も申し上げたのですが、アメリカはクリントン政権が誕生しまして、特に科学技術の方の情報というもの、彼らは本当にアメリカを挙げて、言うならばその情報をどのように集約化して、それをまた大きな付加価値をそこで生んでいくか、そこに着目しているわけですね。  そういう点で、我が国は今日非常に高度な発達を遂げてきておるわけですが、情報のいわゆる一元化というか、お互いの交流といいますか、そういう点におきましてはそれぞれの分野では秀でたものがあるけれども、まだそういうかけ合わした価値というか、その辺が非常に弱いように思うのです。そういう点ではまだばらばらみたいな感じがあるのですけれども、これはひとつ政府を挙げて、しっかりと情報という面におきまして今後考えていただきたいと思うわけですけれども、この点はいかがですか。
  37. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 先ほど川島委員の御質問にもちょっと触れさせていただきましたが、研究情報ネットワークについて国の公的な研究機関にアンケートをしたわけでございますけれども、その結果を見ましても、研究者からは、今おっしゃいましたそれぞれに閉じた分野あるいは組織、そういうふうに閉じたネットワークではなくて、全国ベースで、しかもそれが国際的にも接続ができて、しかも容量が大きくて、双方向で、できればマルチメディアが乗っかっていく、そういったセクショナリズムを超えたネットワークを整備してほしいという声は非常に痛切なものがあるというふうに出ております。  私どもも、それにこたえていくべきではないかな、こういう認識を持っておりまして、そのために一歩一歩各省庁ともいろいろ御相談をしながら進めてまいりたい、こういう認識でございます。
  38. 近江巳記夫

    ○近江委員 地域におきますいわゆる科学技術水準のレベルアップといいますか、これは非常に大事な問題であります。地域研究交流促進事業、これを実施されているわけですけれども、さらにこれは大いに拡充を図るべきであると考えておりますが、今回の法改正でこの点につきましてはどのように力を入れていかれるのか、お聞きしたいと思います。
  39. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 先生から御指摘をいただきました地域研究交流促進事業でございますけれども、私ども近年の地域での取り組みというものをサポートするための一つの仕組みといいましょうか事業として、地域でいろいろな会議を聞きながら現地のニーズをくみ上げていくといったようなこととか、情報ネットワークを整備することを支援するとか、筑波の情報をそこの地域のネットワークに乗っけていくといったようなこと、あるいは事業団が現在やっております委託開発あるいは委託のあっせん、そういった諸事業地域成果を実用化するためにうまく結びつけていくといったような、そういったいろいろな事業を組み合わせながら総合的に試みているわけでございます。こういった体制は順次拡大をしつつございまして、来年度、平成五年度には北海道地域で整備をしたいというふうに考えているわけでございます。  今回の事業団法との絡みでございますが、こういう改正を踏まえますと、先ほどもお話が出ましたが、国研等の有する研究施設設備に関する情報、あるいは産学官の研究機関の共同研究ニーズといったことに対する情報提供というものも可能になりますし、また共同研究の積極的なあっせんということもできるわけでございます。こういった機能も加えて、さらに総合的に強力に地域研究交流促進事業というものを展開してまいりたい、こういうふうに思っております。
  40. 近江巳記夫

    ○近江委員 この研究協力者の海外派遣事業におきます相手国側のニーズにどういうものがあるか。いわゆる情報ですね、それはどのように収集をされるのか、あるいは募集の方法はどのようにされるのか、派遣の方法はどうなのか。特にアジア・太平洋地域から今どういうような要望、要請が来ておるか、こういう点につきましてお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、村井委員長代理着席〕
  41. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 この事業は、科学技術特別研究制度とか異分野フォーラムといった、今まで私どもがやっておりましたものを移管するということではなくて、いわば初めて創設する制度でございまして、この運営のありようについては今は内々に、これが成立させていただければ内々ではなく、表立っていろいろ検討をやっていきたいというふうに思っているわけでございます。  したがいまして、今御質問の幾つかの要素についてはまだ十分なお答えができる段階ではございませんけれども、ただ、私どもはアジア・太平洋諸国などを念頭に置きまして、そういった国々の広い意味での資源についてのテーマを現地の研究者、それから一緒にやってみたいという国内の研究者を募りまして、そういう共同研究をやっていただくということを想定しておるわけでございまして、これについては既に、まだ海外との正式の情報というのは出ておりませんけれども、国内の研究者についての希望や何かは幾つかの研究所についていただいているようなことがございまして、幾つか頭の中にはイメージができつつあると理解をしております。  それから、このスキームとは全然別でございますけれども、ASCAというアジア・太平洋関係の科学技術政策に関する責任者が集まる会合というものもございまして、つい先般も高級事務レベル会合をやったばかりでございますけれども、そういう中でもこういった事業に対する期待感というのは非常に強いように拝察をしたところでございます。
  42. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうした点、これも法案が成立しますともうすぐかからなければならぬわけでございますし、同じ点に関しまして理事長、特にお考えの点がありましたらお伺いしたいと思います。
  43. 赤羽信久

    赤羽参考人 これからの仕事でございますので、まだ突っ込んだ調査計画はいたしておりません。ただ、ほかの仕事を通しまして外国からの出入りも多いものですから、個人的な感じで恐縮でございますけれども、今環太平洋の国々はちょうど我が国が何十年か前にいたような状態に到達しつつあるようでございます。そうしますと、自分での根から掘り起こすような研究もだんだんしていきたい、それにしてはまだ人材に過不足があるという感じを受けますので、日本研究者がそこを埋めて共同研究するという形が成り立つのではないかという感想を持っております。特にその場合は、日本の総合的な経験を持ったベテラン研究員の方に期待が高いのかなとも思いますが、これはまたいろいろだと思います。
  44. 近江巳記夫

    ○近江委員 研究集会を今後なさっていかれるわけでございますが、政府としてもやっておられるわけでございますけれども、三月に箱根、岐阜、神戸、福岡等でやるということを聞いておりますが、確認したいと思います。  それから、参加する研究者への旅費はどうなっているのですか。
  45. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 お尋ねは、異分野フォーラムと我々が呼んでおります事業のことであろうかと思いますが、ことし初めて試みたわけでございまして、四つのテーマについてそれぞれ三十名から四十名程度の外国の研究者も含めた方々を一週間ほど缶詰にしまして、と言うのは言葉が悪いですが、そこでいろいろかんかんがくがく、しかも分野の異なる研究者に集まっていただいて議論をしていただく、こういう試みでございまして、箱根、福岡、神戸、それから岐阜、この四地域で開催をしておるところでございます。  旅費とかそういったことについては、全部当方で負担をさせていただいているものでございます。     〔村井委員長代理退席、委員長着席〕
  46. 近江巳記夫

    ○近江委員 負担しておりますと言っても恐らく、一人一人私は聞いたわけではありませんけれども、不足しておるという声がやはり出ておるわけですね。その辺はもう一度よくフォローされて、きちっとそういう点は手当てをして、十分な討議ができる、やはりそういう環境というものを充実する必要があると思います。その点、よく調査をしていただきたい。要望しておきます。よろしいですか。
  47. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 承りました。
  48. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、センター・オブ・エクセレンスの育成制度といたしまして十二億円を計上されるということになっておるわけでございますが、国際的に開かれた魅力ある研究環境づくり、これは極めて大事なことでございまして、十八号答申あるいは政府の政策大綱でもこれは相当大きく指摘されておるところでございます。今後どういうように取り組んでいかれるのか、この点をひとつお伺いしたいと思います。
  49. 長田英機

    ○長田政府委員 センター・オブ・エクセレンスの点でございますけれども我が国は現在基礎研究充実しなければいけないという状況に直面しておりますが、この基礎研究を早急に充実していくためには、センター・オブ・エクセレンスという考え方を導入いたしまして、国の内外の優秀な研究者を引きつけ、そしてまた立派な研究環境のもとにおきまして立派な研究成果を上げて世界に発信していく、こういうことをやっていきたいと考えております。  そういう考えのもとに、先生から今お話がございましたが、平成五年度は研究調整費の中に、このセンター・オブ・エクセレンスを育成していこうということで十二億円の予算を計上して現在の予算案に入っているわけでございます。私どもとしましては、これは単年度だけの事業ではもちろんございません。一つ研究機関につきまして五年間継続して助成を行うということでございます。ことしは三機関ということになっておりますが、まだ数年間こういう事業実施していく必要があるというふうに一生懸命取り組んでいきたいと思っております。
  50. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう場合、常に申し上げておりますが、評価をどうするのかということなんですね。要するに、アメリカの場合は御承知のようにその評価機関というものもきちっと定まっておるわけでございますし、我が国の場合非常にその辺がぼやけておるのですね。それにつきましては、どのようにされるのですか。
  51. 長田英機

    ○長田政府委員 このCOEを育成します場合には、当然のことでございますが、その研究機関のみずからの努力ということを前提にいたしまして、そして将来を展望してCOEに育成していくためのいろいろな助成を行うわけでございますけれども、その場合に非常に重要なことは、研究の評価をどうするか、先生指摘のとおりだと思います。  私どもが考えておりますのは、研究所内部の評価という点もあるわけでございますが、やはりその研究所研究活動を外から評価する、例えば国内や海外の一流の研究者、別な人ですが、そういうもので構成される委員会をつくりまして、そしてそこで一つの評価を行っていくというようなやり方をとったらどうかなというふうに考えておるわけでございまして、そういう意味においては助成対象になる研究機関におきまして客観的な評価が行われるような体制をつくっていきたい、こういうふうに考えております。
  52. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは非常にいいことだと思うのですね。これは私がもう何回も申し入れをし、あなた方の頭にしっかりと入っておると思います。例えば基礎研究支援機関、これは日本版のNSFをつくりなさい、またいわゆる研究評価機関、日本版OTAをつくりなさいという申し入れを何回もやってきておりますが、今局長がそういうような評価機関といいますか、それをつくりたい、非常に結構なことです。これは我が党のかねての提案でございますから、ぜひ実現をされて、きちっとした評価というものを充実させていただきたい。これは非常に結構なことでございますから、今後ひとつ努力をしていただくということを強く要望いたしておきます。  次に、今まで科学技術庁内局のそういう事業であったわけですね。これは事業団に渡されるわけでございますが、そうしますと、実際今まで内局がやっておったといいますけれども、当初は日本科学技術連盟、財団法人、現在は社団法人ですか、科学技術国際交流センター、こういうところもどんどんやっていましたね。あるいはまた財団法人全日本地域研究交流協会等、そういう外郭がありますね。内局ではこういうところも一生懸命やっていたわけでしょう。今度は事業団一本でやるのですか、これは。どういうようになりますか、そういう関係というのは。
  53. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 今度事業団に業務追加が図られるわけでございまして、当然組織面での体制整備といいましょうか、充実というものが必要かと思います。新技術事業団におきましては、平成五年度の予算案で現在の国際研究交流促進室、それを交流促進室というふうに改組いたしまして、新たに三名の増員をするという形で対応するということを考えているわけでございます。  それから、御指摘の財団法人等の活用ということでございますが、具体的な業務を実施するに当たりましては、今まで同様外部に依頼することが適当な業務については外部の力も適宜活用することが必要である、このように考えておりまして、そういった総合的な体制でこれらの事業の円滑かつ効率的な推進を図っていきたい、このように私どもは考えているところでございます。
  54. 近江巳記夫

    ○近江委員 この新技術審議会は、国際研究交流に関する審議を今までされてきておるわけですけれども、どういう審議の実績があったか。また、この改正後に想定されております、どういうことを具体的に審議されていくのか。その辺につきましてお伺いをしておきたいと思います。
  55. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 新技術事業団に置かれております新技術審議会は、大変重要な事項について審議をいただくということになっているわけでございまして、現在までは御指摘のように国際研究交流の促進に関する重要事項を審議するということになっているわけでございます。  今回の業務追加に伴いまして、審議事項に研究交流の促進に関する重要事項を追加した次第でございまして、これについては例えば科学技術特別研究事業の運営方策でございますとか、研究協力者の海外派遣事業の運営方策、それから共同研究支援基本的なあり方、研究集会の開催業務の運営方法といった重要な基本的な方針についていろいろ検討、審議を行うこととしたいと思っているところでございます。  それから新技術審議会は、前にもちょっと申し上げたことがございますが、新技術開発部会、創造科学技術部会、国際交流部会に分かれて活動を行っているわけでございまして、こういった活動も含めて新技術審議会の全体ではおおむね月に一回程度の割合で開催されている、このように承知をいたしております。
  56. 近江巳記夫

    ○近江委員 審議会も、非常に重要なそういう審議会になろうかと思いますし、この審議会のメンバーだけではなく、いわゆる現場の研究者の声とか、いろいろなことを本当に十分聞いていただかないと、これはいわゆる人ですからね。ですから、それを十分生かされるように、今後はどんどんひとつ声を聞いていただくということを強く要望しておきます。そのようにやっていただけますか。要望だけじゃだめだから、どうですか。
  57. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 これは参考人からお答えいただいた方がもしかしたら適切かもしれませんが、先ほども理事長がおっしゃいましたように、私は、いろいろな特殊法人がある中で新技術事業団ほどいろいろな内外の研究現場と密着して仕事をしている、組織を超えた研究機関と仕事をしている機関はないし、それからこれほど多くの人脈をつくっておられる機関もない、このように思っておりまして、むしろそういった現場からのいろいろなニーズ、シーズをうまく発掘していく、そういうことにかけては多分理事長は非常にみずからの機関を誇りに思っておられるのではないかというふうに拝察をいたします。  私ども指導いたします立場の者におきましても、例えば国立研究所の実態とか、そういったことについては十分努力をしたいと思いますが、事業団の方でもその辺は十分心得て対応してくれるものと、このように期待をいたしております。
  58. 近江巳記夫

    ○近江委員 法制面では今後前進していただける、そういう体制がこれで一応できると思うわけです。ですから、そういう点で人材育成といいますか、本当に居城ともなるべき拠点になると、私はこのように思うのです。そういう点では何といいましてもやはり人と人との触れ合い、人のいわゆる育成の場でございますから、その育成の場において声が上がってこない。どこの組織でもある権威だとかそういうことで、ともすれば官庁機構というのはそういうことに走りがちでございますが、そうであってはならぬ。自由、伸び伸びとした、いろいろな意見も言い合う、そういう事業団であってもらいたい、そのように要望しておきます。理事長は、そういう理想といいますか、運営のその辺の考え方につきましてお伺いしたいと思います。
  59. 赤羽信久

    赤羽参考人 事業団法には前から、研究のための施設を特に持たないように努めなければいけないというようなことが記載されておったと思います。かつて自分の恒常的な研究室を持たないでよそ様の人、情報だけを頼りに研究開発を行うというのは私ども事業団だけだったと思います。最近では類似のものもふえてまいりました。局長から過分な御期待をいただいて恐縮なんでございますけれども、そういう施設を持たないために、世の中の人と人を結びつけ、情報を結びつけるという仕事で一貫してやってきたわけでございます。  そういう意味で、今局長のおっしゃるような力、ノウハウを現在蓄えたわけでございますが、まだまだ規模は小そうございますので、より広く、より深く今までの蓄積を生かして進めていきたいと考えております。
  60. 近江巳記夫

    ○近江委員 このフェローシップ制度は、初年度、昭和六十三年、とりあえず百名ということでスタートされているのですけれども、これで五年がたってきたわけですね。それで、この五年度の予算案におきましては新規二百十人、平成四年度は百八十五人と、これは当初から考えますと非常に伸びてきておるのです。  そういうことから考えますと、外国人の場合に、家具つきの宿舎が欲しいとか、そういういろいろな要望がありますね。今申し上げた宿舎の整備、日本語の研修、生活相談、住居の生活環境のより一層の充実等、たくさんあるわけでございます。今そういう要望に沿ってその点がきちっと整備できているのかどうか、この現状についてひとつ率直な御答弁をいただきたいと思います。
  61. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 私どものやっております、事業団がやっておりますフェローシップに限らず、外国からの研究者日本でお迎えする場合に、宿舎を初めとする、あるいは言語の研修、そういった環境整備というのが大変重要な課題であるということは、痛いほど認識をしているわけでございます。  フェローシップにつきましては、住居等の生活環境充実を図るべく、新技術事業団において外国の研究者のための宿舎の整備、日本語研修、生活相談等をやってまいってきております。それから、フェローシップに限らず、ほかの省庁でもそういったことを試みておられます。ただ、じゃこういったことで十分こたえ切っているかといえばそうも言えないだろう、こういうふうに認識をしておりまして、今後とも外国の研究者のための生活支援業務を一層充実していくように努力すべきではないか、かように認識をいたしております。
  62. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、この事業団は今後、国研のそういう迎え入れの研究者だとかの窓口になられるわけですね。そうしますと、各省庁の横断的なそういう役割を果たしていかなきゃならぬ。力を持っていかなきゃならぬ。それに対して、外国の研究者ですから、それは大きなかけ橋になる人でございます。絶えずこの充実ということはお訴えしてきたわけでございますが、理事長、確認しておきますが、その点は自信を持ってやれるのですね。
  63. 赤羽信久

    赤羽参考人 外国人を扱うというのは、なかなか難しい面がございますことは確かなんでございますけれども、受け入れの研究機関も、このフェローシップ制度を通しまして外国人の扱いにだんだんなれてきていただいた感じがございます。それから、実際的な個人個人の面倒を見るきめの細かい応対は国際交流センター、社団法人に委託してやっております。  そういうことを総合いたしますと、日本に来て研究生活両面でよかったという研究者と一部不満を残した研究者と、実績上確かに両方がございまして、その不満をより拾い上げて対応していきたいと考えておりますが、大勢的には今まで日本研究所へ行ってもどうかなという感じが数年前はあったようでございますけれども、最近めっきり日本に行く値打ちが高いという結果が、外国の政府機関といいますか、私どもが相手にしております政府機関の人たちの感想から言われるようになりまして、それをくみ上げて、より積極的な努力をしていきたいと存じます。
  64. 近江巳記夫

    ○近江委員 科学技術庁におきましても、国際交流ということは非常に大きなかぎになると思います。そういう点では、しっかりと充実したものにしていただきたい。  もう時間がありませんから、あと一問だけ。国の行政機関等の移転に関する閣議決定、これは昭和六十三年七月十九日でございますが、これによりまして今回、科学技術庁所管の新技術事業団が彩られることになったわけでございますけれども一つは彩られて業務上の支障はあるのかないのか、また、職員の生活環境保障は十分していただいているのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。それが一つ。  それから、あと移転対象として動燃だとか原研だとか宇宙開発事業団とか、これは政府の一覧表に出ているわけですけれども、これについてはどうなっておるのかということをお伺いして、終わりたいと思います。
  65. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 新技術事業団は、移転先を決定するに当たりまして、今おっしゃいましたような業務に支障を来さないかとか、あるいは職員の生活面で大変なふぐあいを発生せしめないかといったことも十分考慮しながら移転先を埼玉県川口に決めたということでございまして、全く不便ではないと言うのも少し言い過ぎだとは思いますけれども、大した支障もなく仕事を積極的にやっていただけるものと期待をしているところでございます。
  66. 近江巳記夫

    ○近江委員 あとの動燃だとか、いろいろ聞きましたけれども、それは今の時点では答弁出るのですか。出ないのでしょう。それじゃ、一言。
  67. 井田勝久

    ○井田政府委員 新技術事業団以外の宇宙開発事業団とか日本原子力研究所、動力炉・核燃料開発事業団、今それぞれの法人におきまして中で検討委員会をつくって移転の条件等を詰めております。職員の要望もございます。そういうものを詰めまして、科学技術庁としてそういうものを加えて対応していきたいということで、そういう段階にあるということを今申し上げたいと思います。
  68. 近江巳記夫

    ○近江委員 最後に、大臣。これだけの体制が一つはできるわけでございますし、今後、創造性が大事であり、基礎研究の活発な展開を図らなければならぬ。これは私も終始一貫申し上げてきたことでございまして、政府としても総力を挙げて力を入れてもらわないといけません。最後に大臣の決意をお聞きして、終わりたいと思います。
  69. 中島衛

    中島国務大臣 今、近江先生の質問、また答弁を聞いておりました。これから科学技術振興を図っていくことが我が国にとりまして非常に大事なことであります。その中で、外国との研究交流とか、また国内におきましても産官学の交流とか研究開発、またCOEの育成とか、いろいろ重要な問題があるわけであります。  そういう意味で、今回の新技術事業団法の改正によりまして、そういうことが一つでも前進するように努めてまいりたいと思いますし、これからも科学技術庁としても全力を挙げて努力していきたいと思っております。
  70. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  71. 小澤潔

    小澤委員長 御苦労さまでした。  斉藤節君。
  72. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 初めに、「新世紀に向けてとるべき科学技術の総合的基本方策について」という諮問に対する第十八号答申、これは平成四年一月二十四日でございますけれども、これについて以下少し質問を申し上げたいと思います。  まず大臣にお伺いいたしますけれども科学技術振興に対する政府基本的な理念は何かについてお尋ねしたいと思います。
  73. 中島衛

    中島国務大臣 科学技術は、自然観や世界観の形成に貢献し、文明の発展を支え、人類の活動範囲の拡大に大きく寄与してきたところであります。今後安定し、充実した二十一世紀を築いていくためには、人間・社会及び環境との調和に配慮しながら、科学技術の一層の発展を図っていくことが必要であると考えております。  このような基本的な考え方が昨年一月の科学技術会議第十八号答申において示されたところでありますが、これを受け、政府は昨年四月に、お話のありましたように、今後の科学技術政策の基本を示すものとして新しい科学技術政策大綱を閣議決定をいたしました。この大綱では、「地球と調和した人類の共存」「知的ストック拡大」「安心して暮らせる潤いのある社会構築」の三つの目標を掲げて、積極的かつ総合的な科学技術政策を展開していくべきとの方針を示しております。  当庁としては、今後ともこのような方針に基づき、関係省庁との連携を図りつつ、科学技術政策を積極的に進めてまいりたいと思っております。
  74. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 また大臣に御質問を申し上げますけれども、では本答申科学技術政策大綱で指摘されました研究交流推進についての事項はクリアされ、研究交流促進法での法制度面の整備などとあわせて、研究交流を総合的に促進する体制は整備されたと考えてよろしいか、お伺いしたいと思います。
  75. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 十八号答申とそれを受けた政策大綱で、研究交流に関して制度改善等を行うべし、あるいは環境整備を行うべしという指摘があるわけでございます。  これに対応するために、一方では研究交流を促進するための隘路を除去するという意味での研究交流法の制定、それから昨年の改正によって、これは前も御説明いたしましたけれども、これでピリオドを打つのではなくて、宿題を残しつつも一歩前進した、こういうふうに理解をしているところでございます。  ところが、こういった船路を除去するだけで物事は自然に進むかといえば、やはり日本の実態はそういうことではないということで、制度改善あるいは環境整備を行うべしという御指摘があるものと理解をしております。そういうことで事業団にこのたび業務追加をいたします事業は、いずれもこういった趣旨にのっとったものではないかというふうに私どもは思っておりまして、ただ、無論これで万全かといえばそうも言い切れないと思いますが、とりあえず現時点で必要と考えるものについて私どもは芽を出した、こういうふうに理解をしているところでございます。
  76. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 では、さらにお伺い申し上げますけれども我が国科学技術のRアンドDを飛躍的に発展させるためには、各省庁の縄張りや縦割りを超越した統括的企画を立案する機関をつく力、その機関の中にこれまで持っている各省庁研究機関の研究企画調整部門を包括、吸収し、全体観に立った計画を行うことが二十一世紀に向けての研究のあり方として最も効果的と私は思うわけであります。そのようなお考えはおありかどうか、まずお尋ねしたいと思うわけでございます。  と申しますのは、例えば科学技術の面でですが、文部省、通産省、厚生省、農水省、科学技術庁環境庁とこれらの各省庁で持っている研究機関で、共通する研究課題についてはそれぞれ連絡会議などがあると私は思いますけれども、各省庁縦割りのためになかなかスムーズにいかない点もあるのではないかと私は思うわけでございます。予算の獲得にもやはり分捕り合戦などもあるようにも思いますし、また細切れになってしまうということも憂慮されるわけです。そのような欠点を排除するためにも、今申し上げましたようなそういう機関を必要とするのではないかと思うわけでありますけれども、御見解を伺いたいと思います。
  77. 中島衛

    中島国務大臣 我が国における科学技術に関する行政を国全体として整合性を保ちつつ、効果的、効率的に推進していくことが必要であることは、今先生指摘のとおりだと思います。  このため、科学技術会議における審議を踏まえ、科学技術政策大綱を閣議において決定し、政府全体としての科学技術政策の推進に当たっての基本的な考え方を明らかにするとともに、各種研究開発基本計画等の策定により、今後推進すべき研究開発課題等を明らかにしてまいりたいと思っております。  また、科学技術庁においては、関係行政機関の科学技術に関する経費の見積もりの方針の調整を実施し、各省庁研究課題間の不必要な重複の排除、関連研究間の有機的連携の強化等の調整を行っております。さらに、主要な研究開発を総合的に推進するため、科学技術振興調整費を用いて、各省庁の有機的連携のもとに先端的、基礎的な研究に取り組んでいるところであります。  このような措置により、我が国科学技術行政は、国全体としての整合性を保ちつつ、効果的、効率的に進められておるものと考えております。今後とも科学技術振興方策の企画立案機能や総合調整機能の強化を図るよう、勉強を続けてまいりたいと思っております。
  78. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 平成五年度の科学技術予算についての中で述べておられますように、「創造科学技術推進制度等の重要な基礎研究推進制度充実に必要な経費として百二十八億六百万円を計上いたしました。」このようにあるわけでありますけれども、この創造科学技術推進制度とはどのような制度なのか、まずお尋ねしたいと思います。また、この予算額で重要な基礎研究推進がどの程度達成される見通しか、あわせてお尋ねしたいと思います。
  79. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 創造科学技術推進制度は、新技術事業団実施母体として昭和五十六年度にスタートした、先ほども理事長がおっしゃっておりましたが、大変ユニークな制度でございます。ユニークというよりも、むしろ研究の論理に非常に忠実な制度システムではないかというふうに私どもは理解をしております。  この内容は、御案内だと思いますが、卓越したプロジェクトリーダーという者とテーマというのが決まりまして、そのリーダーのもとにいろいろな組織におられる研究者をいわばスカウトしてまいりまして、一定期間組織化する。そういった形で研究を、しかも五年という年限を、これは長過ぎる短過ぎる、いろいろな議論はあるのですが、一つの割り切りだと私は思っておりますが、五年ということに限って実施するということでございます。  こういうことをずっと今までやってきておりまして、私どもから見ても、名前が難しいし中身もなかなか難しいのですが、非常にピュアなべーシックな研究、それから技術、その中間の基礎的な技術のシーズというものをあれするために大変すぐれた運営がなされてきたのではないかなというふうに思います。これは内外、海外からも大変評価をされておりまして、私どもは、ある意味では姿なき、つまり研究現場を持っておりませんから姿なきCOEとでも言っていいのではないかというふうに思っているぐらいでございます。
  80. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 次に、センター・オブ・エクセレンス、これについてお尋ねしますけれども、これは全世界から優秀な頭脳を自然に引きつける研究機関、このように定義されているわけでありますけれども、この構想についてまずお尋ねしたいと思います。  調査室からいただきました資料がここにございますが、これによりますと、世界の、特にベル研だとかあるいはNIH、こういったようなところ、特に資料が「世界の主なCOEの概要」ということで、研究機関として国立保健研究所、NIH、これは米国でありますけれども、これが研究費が一ドル百二十円としまして千五百六十億円という一九九一年度の大変な予算であります。総人員も一万七千五百五十人、そのうち研究者が五千六百五人いる、大変なすばらしい大研究機関でございます。また、ドイツのマックス・プランク固体研究所でありますけれども、これは一マルク七十五円としまして約五十億円、総人数四百九十人、うち研究者、客員を含めまして二百二名というような膨大な研究機関であるわけでございます。  そのほかにも、まだベル研とかなんとか非常に多いわけでありますけれども、その点我が国のセンター・オブ・エクセレンスの候補と目される研究機関とはかなりの差があるように思うわけでございます。ノーベル科学者の養成等、優秀な人材を海外に流出させないためにも、また海外から優秀な人材を集めるためにも、政府はどのように援助して育てようとしているのか、その構想についてお尋ねしたいと思うわけであります。
  81. 長田英機

    ○長田政府委員 先生が今御指摘なされましたように、この基礎研究振興のためにセンター・オブ・エクセレンス育成ということに我々としては大いに取り組んでいきたいと考えておるわけでございまして、平成五年度に科学技術振興調整費に十二億円の予算を計上いたしました。この予算によりまして、非常に意欲的に研究環境をよくしていこうというようなことに取り組む研究機関を厳選いたしまして、それに対して助成を行いまして、みずからの努力、みずからの予算、それから今回新たな十二億円の予算と相まって、なるべく早くCOEとして発展していくということを期待しているわけでございます。  なお、先生指摘の諸外国の研究機関でございますが、今御指摘のように大きいものがNIH、比較的小さいものが今のマックス・プランクの研究所ということで、大小いろいろありますけれども、これからこの制度の運用に当たりましては、諸外国の状況もよく調べまして、そしてまた諸外国に劣らないような機関にするように、一生懸命その運用を工夫していきたい、こう思うわけでございます。
  82. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 続けて質問しますけれども我が国のどういうところ、どういう研究機関を候補として考えておられますか。
  83. 長田英機

    ○長田政府委員 具体的な研究機関ということになりますと、なかなかここだということは、これからの検討課題でございますので、現在は非常に難しいわけでございますが、要は、国立の研究所がたくさんございますけれども、その国立の研究所が自分の努力でCOEを目指すために、こういう努力をやっていく。例えば研究環境はこういうふうによくしていく、あるいは外国人の受け入れはこういうふうにする。それから先ほど近江先生の御質問にございましたが、研究評価というものを外から評価できるような体制を整える、そういうようなことでございまして、いろいろ私どもとして、今申し上げましたのは一例でございますが、幾つかのクリアすべき要件を考えまして、その要件をクリアするかどうか、各研究所からのCOEになるという構想を承りまして、それから特定の研究所を決めていく、こういうような運用をしていくということを今考えております。  そういうことで、どこの研究所ということは今まだ申し上げられませんので、そういうようなことでございます。
  84. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 今国立研究機関が主に候補に挙がるような感じを受けましたけれども民間の場合はどうなんですか。ありますか。
  85. 長田英機

    ○長田政府委員 これは、この制度をつくりましたときにどの範囲でやるかということでございますが、平成五年度につきましては、やはり国立の研究所のみを対象にするというふうに考えております。
  86. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 民間もかなり頑張っているところがあるようでありますので、その辺、民間の方にも援助してもらいたいものだな、そんなふうに思うわけでございます。  では次に、答申の中の「研究者の流動化の促進」の項で述べておりますけれども、「大学院と国立試験研究機関等との間の流動化にも資するため、国立試験研究機関等と連携した研究指導等による大学院教育の推進を図る。」このようにありますけれども、私は、大学院教育は大変重要だなと思っている者の一人でございます。最近ようやく大学院教育も充実してきたように見受けられますけれども、それでも教授のお手伝いだったり、あるいは学部学生の実験助手的なことをやっていたり、そんなようなことで、まだまだこれからではないかという点も見受けられるわけでございます。  また、もう御案内だと思いますけれども、最近の新聞に大変残念な記事が出たわけでございます。ここにありますけれども、これは一月三十日の朝日新聞でございます。「泣いてます「博士」の肩書」ということなんですが、「企業は「博士」が「修士」に比べてとくに優秀とは思っていないため優遇せず、学生は、博士の肩書は実社会ではむしろ損だと考えている」、こんなようなことを書いているわけでございます。これはどこでやりましたかと申しますと、科学技術政策研の調査なんです。したがって、大学院のドクターコースに行くことは損だというふうに考えているということなんです。  それから、同じ一月三十日の日経でございますけれども、これは「博士、企業期待とズレ」というようなことで出ておりまして、企業側からいいますと、「企業から期待を担う博士だが、産業界期待にこたえているとはいえない。民間研究所長の四七%は「人材は不十分」とみている。企業の目からみると、トップの人材が博士課程に進学しておらず、狭い分野には強くても企業で必要とする研究の統合力に欠く人が多い」、このように見ているというのですね。これは注目点だと私は思うのですね。つまり、「狭い分野には強くても企業で必要とする研究の統合力に欠く人が多い」、こう言っているのですね。  それから、大学側の方でありますけれども、「必ずしも最優秀な人材が博士課程に進んでいない実情は、大学側(工学部系)にも指摘する声がある。大学院の予算が乏しいため、博士課程の学生が教授のアシスタントとして学部学生の教育や雑用に追われることが多く、研究に十分な時間を割けない。」このようなことになっているわけでございます。「また博士課程を終えても教授になれる人数は少なくこれはもう定員制がありますから仕方ないわけでありますけれども、「就職後に修士修了者と比べて賃金面で特に優遇されることもないため、優秀な学生が博士課程に進むインセンティブがない」、このような現実だというのです。「現在の博士課程は大学の教官育成を目的にしており、産業界がどんな人材を望んでいるかあまり考えていない。企業側もこれまで博士養成に無関心すぎた」、こんなようなことを書いているわけでございます。  そこで、この「報告書では、大学への研究助成増額とともに①博士課程を対象にした奨学金の充実②博士課程の学費を二正期間免除③教授が企業で通用する博士像を描いて教育指導をする④博士課程にあこがれをもたせるようなシンボルタワーを建設する」。今考えてみますと、どこの大学を見ましても、これが大学院だという建物がないですね。シンボルタワーがないですよ。そういう点で、やはり大学も学部も大学院も全く同じにしか見えませんし、大学院がどこにあるのかわからぬというようなことで、希望も失われるかもしれないですね。  こういったことなど、「制度面の「ハード」と大学院生の待遇改善、養成プログラム作りなど「ソフト」の両面から博士課程の魅力作り策を提言している。」こういうわけでございます。「基礎研究の活発な米国と比較すると、年間百人以上の博士を育成する大学数(理、工学)は米国が四十七校に対し日本はわずか三校と少ない。博士課程修了後に民間に就職する割合は、米国で四五%に達しているのに対し日本は三八%にとどまり、産業界が博士を活用する点では米国が先んじている。」確かにアメリカは、特にドクターを持っている者と持っていない者の差がかなりありまして、そういう点ではやはり優遇されている、そんなふうに思うわけでございますけれども日本の場合は、ドクターがあってもなくても余り関係ないような状況にあるのではないかなと私は思うわけです。  そこで、大学院の博士課程を修了して博士号を取得したいわゆる課程博士ですね、論文博士と課程博士がありますけれども、課程博士については、一応研究者として研究していけるという資格と考えた方がよいというふうに思うわけです。したがいまして、もう完成された研究者というのではないというようなことだと思うわけでありまして、大学院学生の生活面も考えた待遇を大いに改善することは大事だと私は思いますが、アメリカのように我が国にもポストドクの制度はありますけれども、これをもっと充実さしていくべきであるというふうに考えるわけです。それには、特に生活費も十分支給され、しかも伸び伸びと自由な発想のもとで研究できる、そのような制度をぜひつくっていくべきであろうというふうに考えているわけでありますけれども、御答弁願いたいと思うわけでございます。
  87. 長谷川正明

    長谷川説明員 大学研究環境につきまして、施設とか設備あるいは研究費、これが不十分であるということが指摘されておりまして、その拡充に努力しているところでございますけれども、特に人の問題というのは先生御案内のように、まさに研究というのは人によって支えられるものでございます。したがって、文部省におきましても、研究後継者あるいは若い研究者、優秀な研究者を育て、また大学世界に確保していくということが将来のことを考えると極めて大事な問題だというふうに考えております。  それで、今先生指摘のポストドクの制度でございますけれどもアメリカ制度とは若干違う面がありますけれども我が国におきましては日本学術振興会の特別研究制度という制度昭和六十年につくられまして、これはまさに先生が今お話しになりましたとおり、研究生活の若い段階で、独立した自由な立場で、生活に不安なしに自分の研究を伸ばすために最も適当なところを選んで研究を続けていただく、こういうねらいでスタートしている制度でございます。これはポストドク、つまり学位を取得した後の方々、それから今御指摘のございましたとおり、優秀な研究者が博士課程になかなか進まないということもございますので、博士課程に進学する非常に優秀な方々、こういう方々に研究奨励金と申します、いわゆる生活が支えられるだけの経費を支給し、さらに科学研究費の中から自由にお使いいただける研究費を支給する、こういう形で優遇をしている制度でございます。  これは、来年度の予算の中でも最も重点を置いた経費でございまして、ことし千三百人の採用人数ですが、これを四百人拡充をして来年度からは千七百人ということで、その点先生も御指摘のように、最も大事な学術振興施策の柱として今後とも充実を図ってまいりたい、こんなふうに考えております。
  88. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 ポストドク対策に関しては、もしかしますと私ども科技庁は別に主役ではないのかもしれませんけれども、ただ、私どもでもやれることがあるのではないかということで直接的にポストドク対策というものをイメージしておりますのは、御案内のとおりこのたび新技術事業団に移管しようとしております科学技術特別研究制度、それから理化学研究所研究機会を与えるということでやっております制度、この二つで二百名を超えるキャパシティーを予算上は持っているわけでございます。  それ以外にも、御案内のとおり科学技術庁が提供しておりますいろいろな基礎研究のスキームがございまして、例えば先ほども話が出ましたが、創造科学技術推進制度あるいは「さきがけ」、それから理研のフロンティア制度、それから国研をサポートするためのスキームがございます。そういったもろもろの制度はすべてポストドクも受け入れ可能であるというように措置してございまして、現実にここで百名程度のポストドクが研究に従事しておられると承知をいたしております。  これで十分かどうか、応募状況その他いろいろ考えながら、私どももそれなりの役割を果たしていきたい、かように思います。
  89. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 ぜひともポストドクの制度充実していただきたい、こうお願い申し上げたいと思うわけでございます。  さらに、ちょっとつけ加えさせていただきますけれども、筑波大学学長の江崎玲於奈先生が、一九九二年十月七日に日本原子力文化振興財団主催の「エネルギーと環境―教育を考える―」シンポジウムがございまして、この中で講演しておられますけれども、この講演の中で、アメリカ日本大学教育のあり方について、スケールの大きな人間を育てることの違いについて次のように述べております。  ちょっと要約して申し上げますと、まず四つぐらいになると私は思うのですけれども、まず一つは、アメリカでの教育を見ると、普通の学部は一般教養、いわゆる自由教育ですね。これは学部ですよ。これを重視して、専門は大学院でやるという体制になっている。ですから、学部が一般教養課程と同じような教養をやるということ。それから二番目は、アメリカの方が教育に時間をかけている。多分教育の影響だと思いますけれども、スケールの大きな人が相対的な意味で日本は少ない。スケールがみんな小さいというのです。それが日本の将来の一番の問題ではないか、このように言っております。それから三つ目は、日本基礎研究には創造性が乏しいと言われるが、日本人全員が基礎研究をするわけではなく、創造的研究者があればできるのだ。しかし、我が国にはスケールの大きな人材が出てこない。そういう点が問題だ。それから四つ目は、我が国の教育では、公的な人材の養成を余りにも強調し過ぎて、没個性的な人間ができてしまう。要するに、置きかえ可能な人間がつくられている。だれでもそのことはやっていける置きかえ可能な人間ができている。そうではなくて、いわゆる個性教育というのは、置きかえのできないような個性的人間をつくること。すなわち、独立人間を育てるということが大切だというようなことを言っているわけです。  このように、要約すると四つぐらいになると思うのですけれども、いわゆるスケールの大きな人、人材をつくるということが我が国の教育に欠けているのではないか、このように述べているわけでございます。この講演は今後の我が国大学教育に大変重要な示唆を与えていると私は思うわけです。  最近の我が国大学は、教養課程を廃止する方向に行っております。最近、いろいろな国立大学は教養学部というのはもう全部なくしている。東京大学は教養学部はありますけれども、なくしてしまっている。このように各国立大学とも進んでおります。このことは、いわゆる学部教育を江崎玲於奈先生の言うようなアメリカ的教育、つまり学部を一般教養、自由教育の方向に進んで、そして大学院教育で専門教育をするというようなことならばよいと思うわけでありますけれども、学部学生に対して単なる狭い範囲の専門教育のみを行うのであれば、それは逆行というほかはないと私は思うわけです。その点、特に文部省科学技術庁にお願いしておきたいと思うわけでありますが、いかがですか。
  90. 工藤智規

    ○工藤説明員 いろいろ御示唆に富む御意見を拝聴したわけでございますが、それぞれの国での高等教育の内容、位置づけは若干ずつ違っておるわけでございますが、アメリカの場合、非常に多様でございますけれども一般的に言いますと、私ども承知している限りでは、日本以上に学部段階でいわゆるリベラルアーツと言われる教養教育が多うございまして、それが大学院レベルで、プロフェッショナルスクールとして専門を学ばれるという大学が多いそうでございます。  日本の場合にも、御承知のように戦後の新制大学にありまして、学校教育法の五十二条にございますけれども、広い学識教養と深い専門、幅広い教養と専門と両方を兼ね備えた人格形成ということを目標にしているわけでございます。目下進んでおります大学改革の方向もその基本にもとるものでは決してございませんで、従来ややもすれば教養部という形で学部のカリキュラムとの連携が薄いとか、あるいは学内で若干ギャップが生じるとか、あるいは教養教育の中身そのものが若干細切れ過ぎていかがなものであったかとか、いろいろな反省に立ちましていわゆる一般教育科目、専門教育科目というような画一的な科目区分は廃止いたしまして、四年間あるいは医学部等の場合六年間でございますが、そういう四年間を通じまして、教養と専門を両方修めるような形でのカリキュラム編成を施行しているところでございまして、決して教養教育をやめましょうということではございません。その辺は御理解いただきたいと思うわけでございます。  それから、先ほど江崎先生の御提言ということで御紹介がありましたような方向というのは、いろいろな見方があろうかと思いますので、日本にもこれまでも創造的で個性的な方もたくさんいらっしゃるとは思うわけでございますが、今の教育制度一つの御批判点ではあろうかと私どもも受けとめておるわけでございます。  それで、既に御承知かと思いますけれども、義務教育段階における学習指導要領も先般来順次学年進行で改定しておりまして、そこでもゆとりある教育の中で、特に子供たちの個性を重視して創造性を高めていくような教育をしていこう。義務教育段階から大学を通じまして、そういう方向での――単に教育というのが知識の伝達ではございませんで、問題を解決し、あるいはディベートをしたりしながら、創造性のある能力を培っていくということは非常に大事なポイントでございますので、私どももそういう方向で努力をしているつもりでございますけれども、他方で、ややもすれば社会的風潮として特定校への受験志向でございますとか、それに伴う過激な、過度の塾通いでございますとか、そういうそれぞれの御家庭なり社会なり全体で、あちこちでいろいろ改善なり意識の転換を図らなければいけない部分もありますので、なかなか一朝一夕に直る部分ではございませんけれども、少なくとも目標を見据えながら各般施策を講じてまいりたいと思うわけでございます。またよろしくお願いしたいと思います。
  91. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 ひとつよろしくお願いしたいと思うわけでございます。  次に、また答申の方に入りますけれども答申で次のように言っておるわけです。すなわち、「大学研究機関、企業等に常勤しない若手の研究者を含め、独創的な発想を有する研究者に対しては、自己のアイデアに基づいた独創的な研究に挑戦する機会が与えられ、また、その研究の評価に応じて希望する研究環境・処遇が与えられるような、競争的・流動的な研究環境を整備する。」このように述べているわけであります。  では御質問いたしますけれども、どのようにしてこのような機会を与えるのか、具体的に御答弁願いたいと思います。
  92. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 先ほどのポストドク対策とほぼ重複したようなお答えになるかもしれませんが、若手研究者、ポストドクを含む若手研究者が伸び伸びと研究をやっていただけるような、そういう環境をつくっていくというのが確かに大事なことでございまして、そのために私どもとしては、効果の大きいような制度をつくり上げて、それで成果を上げて、その効果を各般に影響を、インパクトを与えていくというような形を通じていろいろやらしていただいているということでございまして、その例としては、先ほど申し上げました創造科学制度とか、あるいは理研と外部の人材とをドッキングした理研フロンティアの制度でございますとか、あるいは個人の研究者を対象とするさきがけ研究でございますとか、あるいは国立研究所基礎研究に従事できるような、そういうスキームを提供するといったような形で私どもなりに努力はしているところでございます。
  93. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 いや、私どもがお聞きしたいのは、どうやって人を選ぶかということです。つまり、ドクター取得者を対象にテーマごとの論文募集をやったり、あるいは国家試験的なものなども行って、人材発掘制度のようなものをつくってはどうかなと私は考えるわけです。先ほどのポストドクの制度と関連しているわけでありますけれども、そういうような制度をつくって人材を発掘する。  答申の中で言っております「研究者の能力発揮条件の整備」の中で、「創造性豊かな人材を見出し、その発想と主体性を伸ばすとともに、研究機関を活性化していくような研究運営が重要である。」このように言っておるわけでありますけれども、言葉だけじゃなくて、具体的にもっとどうやって人を選んで、例えば科研に入れるかとか何かそういう受け入れ態勢はいいのですけれども、選ぶ方法、これをどうやってやるのかな、私はそれを具体的にお聞きしたかったわけであります。
  94. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 御指摘のような、ある種のそれだけを担うような組織が今あるわけではございませんけれども、いろんな制度の運営を通じて、例えば公募をするとか、あるいは審査に当たられるいろいろな先生方、そういうところの先生方のいわば人脈を通じて発掘してくるとか、まあいろんな多様なルートで現在発掘されているものだというふうに理解をしておりますが、ただこれで本当にいい人がいいところにうまく発掘し切れているかどうか、これは確かに考えてみる必要があるのじゃないか。新技術事業団に移管いたしまして、先ほども理事長が申し上げておりましたけれども、そういった人脈や研究現場をより知り尽くした専門機関がそういう意味では積極的な貢献もできるのではないかという気もいたしますし、考えなければいけないポイントだとは思います。
  95. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 もう時間がなくなってきましたので、大変残念なのですが、残りの質問はまた次の機会にやらせていただきますけれども、まず時間のある限り質問させていただきます。  国立の試験研究機関全般で、外国人研究者のための宿舎の整備及び利用状況、さらには外国人研究者の宿舎等の生活環境に対する要望があるかと思うわけでありますけれども、どのようなものがありますか。
  96. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 国立研究機関に招聘されました外国人研究者のための宿舎は、筑波地区で私ども科学技術庁、農林水産省あるいは通産省といったところで、あるいはそれぞれの所管しております特殊法人が一部整備していると承知をいたしております。当庁では六十二年度から筑波で松代住宅、それから新技術事業団で竹園住宅をオープンいたしまして利用に供しているところでございますけれども、確かめてみますとほぼ全戸入居ということで、入居の要望は大変大きいのではないかというふうに認識をいたしております。さらなる努力が必要であろうと思います。
  97. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 ひとつよろしく外国人もお願いしたいと思うわけでございます。  次に、ちょっと話は変わりますけれども、総理大臣官邸の整備についての閣議了解というのが昭和六十二年五月十五日にあったわけでありますけれども、これに基づきまして日本科学技術情報センター、JICST、これも新技術事業団と同様に移転することになると思うわけでありますけれども、その状況と今後についてお尋ねしたいと思います。
  98. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 総理官邸の横にございますサイエンスビルには、新技術事業団とそれから日本科学技術情報センターの二つが入っておりまして、新技術事業団は御承知のように埼玉県の川口に移転をいたします。  日本科学技術情報センターでございますが、六十三年度の閣議決定の際の、移転要請される特殊法人、あるいは移転の方向で検討しなければいけない特殊法人、こういうリストがあるわけでございますが、そのいずれの対象でもないわけでございます。したがって、日本科学技術情報センターは千代田区の四番町の方に移転をすべく、現在準備中というところでございます。
  99. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 もう時間がなくなってしまったわけでありますけれども平成四年四月二十四日閣議決定の科学技術政策大綱と実際のプロジェクトとの関係についてお尋ねしたいと思うわけであります。  「我が国の国際的な立場を踏まえ、国内において、基礎研究の強化、研究開発基盤の整備等を進めながら、国際的な科学技術活動を強化する。」このようにあるわけでありますけれども、この大綱にのっとって進められておりますプロジェクトにはどのようなものがあるか、お尋ねしたいと思うわけであります。
  100. 長田英機

    ○長田政府委員 この科学技術政策大綱におきましては、国際化、国際協力ということが非常に重要だというふうに強調されているわけでございまして、先生指摘の具体的なテーマということになりますと、いろいろな共同研究アメリカ、ヨーロッパとその後行われております。これはもう無数にと言って……。特にそういうものにおきましては、通常の場合科学技術協力協定というのがございまして、その傘のもとでそれぞれの研究機関が話し合って、こういうことを共同研究しようというようなことを取り決めまして、それで彼ら同士がそういう共同研究を実行しているということで、非常に多くのテーマが行われております。
  101. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 本当はこのプロジェクトの中のSPring8の問題についてちょっとお聞きしたかったのですけれども、もう時間がなくなりましたので次の機会にさせていただくことにしまして、これで質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  102. 小澤潔

    小澤委員長 御苦労さまでした。  吉井英勝君。
  103. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 私は、まずセンター・オブ・エクセレンスの関係から伺いたいと思うのです。  今回の法案というのは、昨年四月の科学技術大綱に基づいて提案されたとありますが、大綱で初めてセンター・オブ・エクセレンス、COEの育成ということがうたわれております。近ごろ横文字や略字が多いものですから、まずこのCOEとは何かということですね。どのように定義をしておられるか、ここのところを最初に伺っておきたいと思うのです。
  104. 長田英機

    ○長田政府委員 COEの定義でございますが、これは法律用語みたいに厳密な定義をするということはなかなか難しいと思うわけでございまして、要は、非常に立派な研究環境を有して、内外の研究者を引きつけ、そして立派な研究成果を上げて、海外、国際的にその情報を発信していくというような機能と申しますか、それをいわゆるCOEと、こう私たちは言っているわけでございます。
  105. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 科学技術大綱でも少し長い説明が入っておりますが、これは日本と諸外国との間でCOEについて概念が違っておってはいけませんから、訳語でまず一致していなければおかしいと思うのですね。このCOEについて、我が国は二国間の科学技術協力協定などの中でセンター・オブ・エクセレンスという用語、概念を用いたそういう協定はありますか。
  106. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 承知している限り、ないと思います。
  107. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 これはないのじゃなくて、日米科学技術協力協定にあるわけですね。第二条四項A。それで、私は英文と日本語と両方を持ってきておりますけれども、このアメリカとの国際法上の取り決めの中では、COEというのは「優れた研究施設」、こういうふうに訳しておりますから、大綱の方ではいろいろ説明書きはついているのですけれども日本とよその国とでまずこの訳語が違っておったらややこしいことになりますから、まず「優れた研究施設」ということで今後通されるのだろうと思うのですが、今もおっしゃったように、実は二国間協定の中で他には例を見ないわけですね。一九八八年に改定された日米科学技術協力協定第二条四項において初めてこれが出てきたわけですね。  こういう点では、今このCOEというのはなぜこの法律の中で出てきているのか。これは大綱を受けてということにはなっておりますが、結局これは日米協定を受けて、今のところはそれだけということになりますから。  日米間の科学技術協力のあり方については、私は既に予算委員会でも取り上げましたから、きょうここでは蒸し返しをする意思は全くありませんが、宇宙基地にしてもSSCにしても、アメリカから非常に求められると受け皿を考えたりする。そういうところが日本の場合は非常に強いわけですが、今回この協定を受けて、アメリカ側からやはりこのCOEについての受け皿を求められた、このことが一つ法律として整備していく上で出てきたのじゃないですか。
  108. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 法律とおっしゃっておりますのは、新技術事業団法の改正を指しておられるのだと思っておりますが、私ども新技術事業団法の改正に絡んで業務の追加することをお願いしておりますけれども、特段、そのCOEという言葉は多分ないはずでございまして、また日米協定とか、そういった絡みでこれがダイレクトに構想されてきたというものでも必ずしもない、このように認識をしております。
  109. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 参考資料をいただいておりますが、改正案提出の背景、それからその資料の中で大綱、またその中でCOEがあり、この法案審査の中でCOEに関係する議論は随分あったわけです。ですから、私は、このCOEという言葉が直接法律に持ち込まれているという、そんな話をしているのじゃないのです。背景としてやはりそういう一連の流れがあった中でのものだということを指摘して、余り時間がないものですから、次に移りたいと思うのです。  国際交流の問題について、法二十八条では、この大綱を受けて、開発途上国への科学技術協力の強化を目指しているわけです。これまでの例を見ると、ODAの一環として技術援助技術協力技術交流に、例えば著名な日本のナシの研究者がケニアの方へ行って、マカダミアというのですか何というのですか、向こうの方の果実の研究をするということになり、一方、ケニアから来た人は日本でナシの研究をする。気候、風土が全然違って、これはそれぞれに余り役に立たない。そういう実例などもやはりあるわけですね。それからまた、日本へ来た留学生の方が先端技術研究に携わりたいという気持ちは、当然よくわかるわけです。それもいいことなんですが、せっかくそれを身につけられても、帰国してからその国の技術全体の水準からして留学の成果が必ずしも生かし切れないという場合なんかがあります。これらについては、我々の方も内政干渉に及んではいけませんから、ここのところが非常に難しいところなんですが、相手の実情に即して、本当にその国の科学技術の水準を全体として引き上げて、自主的な発展に役立つものになっていくということが国際交流、協力という点では非常に大事な点の一つだと思うのです。  外務省の方に来ていただいていると思うのですが、一つ一つ研究交流の実績、一人一人の留学生や研修生、研究生の帰国後の活躍について何かフォローされたようなものが、まとまったものがあれば、これは後ほどでいいですからいただきたいと思うのですが、この点はどうでしょうか。
  110. 坂場三男

    ○坂場説明員 私ども、国際協力事業団を通じまして、開発途上国への技術移転に関する事業を展開しているわけでございますけれども、ただいまも御指摘ありましたように、専門家の派遣あるいは研修員の受け入れということで、科学技術にかかわるような分野事業の中には入っているわけでございますが、ただいまお求めのありました資料につきまして、今ここにございませんので、用意いたしましてお届けいたしたいと思います。
  111. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 東南アジアヘ出かけていく日本研究者については、問題によってはまたいろいろな矛盾が出ております。これは研究テーマとか水準がかなり大きくかけ離れている場合が多いものですから、一年間とか三年間とかいう単位で、今度も国研の職員、研究者が十四人ほどですか事業団職員へ移管して、そして海外へということがあるわけですね。一億五百万円ほど組んでですか、こういう場合に、この研究者にとって一年から三年海外へ行くということは、帰ってきたときにはもう日本研究者としてなかなかやっていけないという事態に遭遇する。非常に短い期間ですと、リハビリというのですか、リハビリ期間を設けて日本でまた研究者としてやっていけるようになるということもあるようなんですが、しかし一年から三年となると、非常に大変だ。  ですから、研究所の方でも、外務省から何人出せとかとやられると、しかしそうは言ったって若手の研究者はなかなか確保しにくいということで、結局、悪いけれども年間際の人に頼み込んで、若手の人が行かなくてもいいようにするなど随分苦しいやりくりをやっておるわけですが、外務省の方ではこういう実態をつかんでいらっしゃるのですか。
  112. 坂場三男

    ○坂場説明員 特に長期の専門家の方の帰国後、あるいは帰国の際の問題でございますが、制度的には派遣法という制度のもとで職場復帰が確保されているわけですけれども、一番の問題は技術レベルの問題で、特に技術の進歩の非常に激しい分野の専門家の方は、途上国に行きますと必ずしもその進歩のレベルに帰国後追いついていけないという問題があるということは私ども聞いておりまして、できるだけ、私どもの用語で後方支援と呼んでおるのでございますが、国内の技術の進歩状況に関するいろいろな雑誌を送るとか、あるいは国内の専門家の方が随時いろいろな情報を派遣されている専門家に送るようにと努力しておるわけでございますが、確かに途上国に特に三年、四年ということになりますと技術レベルのギャップに苦しむというお話は、時々承っております。
  113. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 帰国後の身分保障といいますか、給与面その他は段取りされても、研究面では非常に大変な問題を抱えたり矛盾が生まれております。だからこういう点では、研究者の希望とか意見を余り考えないでやっていく計画というのはうまくないのだ、このことを私は指摘しておきたいと思うのです。  ところで、国立試験研究機関の現場へ訪ねていきますと、最近、研究テーマを提出するときに、文書のどこかに国際化という言葉を使ってくれとか、研究地域共同研究の相手として欧米はもういいからアジアの方にしてくれと言われるという声がふえております。グローバルという言葉を使いながら、結局グローバルが一アジア地域に限定されてきているのですが、こういうふうに地域を限定しないということとか、いずれにしろ国際化という言葉を盛り込まないとうまくないということじゃなしに、これは研究者の自主性を損なわないようにすべきだという点は、非常に大事な点だと思うのです。この点は科学技術庁の方の見解を伺っておきたいと思います。
  114. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 国際協力を進める上で先ほど御指摘のようないろいろな問題があることは、私も仲間の研究者がこぼしておったというようなことを知っておりますからあるわけでございますけれども基本的に研究者の意向を尊重すべきものというふうに思いますし、現実にそのようにまず研究者間でいろいろなコンタクトが行われて、それがだんだんレベルアップしてエスカレートされていくという形をとるのが通常ではないかというふうに思っておりますし、また、そういうふうに今後ともやっていくべきだ、こういうふうに私どもは考えております。
  115. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 いずれにしろ、特に外務省の方は、その辺を考えないでやってもらうと、頭数合わせになってくると、結局これは国研の現場で非常に大きな矛盾を来していっているというのは事実ですから、この点は根本的に考え直していただきたいと思うのです。  ところで、国際交流とか科学の国際協力のあり方については、日本学術会議が見解を示しております。五点挙げておりますが、科学に関する国際協力は平和目的に限るべきだ。科学の国際協力は全世界的であるべきだ。国際協力に際しては自主性を重んずるべきである。それから、科学の国際協力は科学者の間で対等に行われるべきである。国際協力は、各国が自主性を持って対等の立場に立って行われるのが原則だという指摘。五番目に、国際協力の成果公開されるべきである。  こういうことをかつて学術会議の方が基本原則として出しております。その後もこういう立場に立ってそのときどきにいろいろな見解、声明その他出されておりますが、私は、三十四回総会の日本学術会議のこの見解、この声明、この立場は、やはり今国際交流等を進める上で極めて大事な立場だと思いますし、この点については、特に大臣がこういう立場に立って進めていくという、そういうことが求められると思うのですが、この点は大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  116. 中島衛

    中島国務大臣 今、吉井先生から学術会議の五項目のことについてお話がありました。私どもも、そのとおりだと思っております。
  117. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 次に、委託開発制度の方についてひとつ聞いておきたいのですが、中小企業技術力を高めていくとか、その基礎的な研究を中小企業の方じゃなかなか開発できないということで国が支援していくということなどはよくわかるわけです。ところが、今やられておる成功払いというこの委託開発制度の委託を受けているのは、資本金一億円未満の中小企業の場合には実際上は一六%くらいにしか満たない。これが現状じゃないかと思うのですが、実態はどうですか。
  118. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 御指摘のとおりだと思います。
  119. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 次に、創造科学技術推進制度についても伺っておきたいと思うのですが、九二年四月一日現在、十七プロジェクトがこの制度でやられているようであります。これで研究者の派遣死別の対応というものはどういうふうになっておりますか。
  120. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 例えば企業からとか大学からとか、そういう意味でございましょうか。(吉井(英)委員「そうですね」と呼ぶ)私ども承知しておりますのは、ことしの三月一日現在で、企業からは五十企業、約六十七名の方が創造科学技術推進制度に御参加いただいている、このように承知しております。
  121. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 科学技術庁からいただいたところでは、三月一日現在で、企業六十七社で全体の三分の一と、やはりこの中で産学官共同ということで企業の割合が非常に高くなってきておるわけですね。それで、創造科学技術推進制度で六十八億六千百万円、この金でプロジェクトリーダーに日立とか味の素の主管研究室長とか主任研究員の方たちも入ってきて、こういう産学官共同というのがふえているわけでありますが、これは今大学の方でもそれが進んでおります。  きょうは総務庁の方に一言伺っておきたいのですが、「科学技術に関する行政監察」で、この連携のあり方というのを報告したのが、昨年六月に出されたものの百八十四ページに載っておりますが、特定企業の製品化に寄与しているものがあるとした後、当庁が行った民間企業等のアンケート調査の自由記述意見の中には、企業の側から「基礎的学術研究中心とする大学の使命からみて懸念を抱く」という意見もあったと指摘しているようでありますが、これは間違いないですね。
  122. 福田実

    ○福田説明員 間違いございません。
  123. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 今、これは大学にしても国研にしても、産官学ということでよく話になります。しかし、この点については、大学大学の自主性、国研国研の自主性というものが、あるいは独自の基礎研究分野での研究計画というものが、こういう総務庁の指摘しているような懸念が生まれてこないように、この点は厳しく今考えるべきときだというふうに思います。  さて、次に基礎研究の問題について伺っておきたいのですが、非常に厳しいマイナスシーリングが続いて研究予算が削られ、研究支援者など人員削減が進められる中で、産学官共同を逆に大学国研の方から働きかける事態が出てきております。そういうふうにしないとなかなかこの予算がとれないのだとか、苦肉の策ですね。それがまた総務庁が指摘しているような問題を生み出してくるという、そういう事態が現場へ行ってきて出ております。  それから、先ほども少しお話に出ておりましたが、博士課程に進学しないで企業に入った方が研究条件がよくて早くドクターが取れると考える人たちも多くなってきているわけですね。そういう中で大学の荒廃、危機と言われるような、こういう事態を招いてきました。日本科学技術のすそ野の広い発展を保障するためには、大学国研での基礎研究費を重視して、研究予算の飛躍的増額を図っていく。私は、この点で、いろいろな制度とか法律とかお考えになられるけれども、今の日本科学技術のことを考えたときには、この分野でまさに大臣として一番力を入れてほしいところだと思うのです。大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  124. 長田英機

    ○長田政府委員 基礎研究充実していくためには、大学とか国研の機能を強化していかなければならないのは当然のことだと思います。そういう点から科学技術政策大綱におきましても、国の研究開発投資額をできるだけ早期に倍増するように努めるというような方針が掲げられておりまして、この大綱ができました後の平成五年度の政府予算案、現在国会に出ているものでございますが、これにおきまして科学技術振興費は対前年度比八・五%の増になっております。これは八・五%ではまだ不十分だという御意見もあろうかと思いますけれども一般歳出全体の対前年度比の伸び率が三・一%ということと比べますと格段の配慮がなされているということでございます。もちろんこれは五年度のことでございますので、今後の点につきましても予算充実に努めていくことは当然必要なことだというふうに考えております。
  125. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 留学生の受け入れ問題が絡んでくるわけですけれども、せんだって二月二十五日に学術会議の方が、「大学研究室における安全確保と実験環境の改善について」という調査の報告をまとめて出しました。ここは文教委員会ではありませんから、これは大学の場合もそうなんですが、実は私、国研を見てまいりまして、国研の方でも今かなり考えなければいけないということを痛感しました。  こういうことを指摘しておりますね。日本大学研究実験室における研究環境について見ると、研究者一人当たりの面積が、欧米各国の大学に比較して、実質的に三分の一から四分の一しかない。これが実験室が狭隘で、実験室の換気など衛生、安全面から、災害面から、非常に望ましくない状態がある。こういう一連の問題を指摘して、国際的研究協力推進や留学生の受け入れ数の増加を計画することには、このままだったら大きな問題がある、早急に改善しなければならない、これを指摘しているわけですね。ですから、先ほど三%伸ばしたとかなんとかというお話がありましたけれども、それぐらいではとてもじゃないけれども追っつかないわけです。  それで、私せんだって筑波の研究所へ行って見てまいりましたけれども国研の方でも、留学生を受け入れても留学生の机の置き場もないような状態に置かれているところがありますね。廊下まで資料があふれている。廊下で実験という事態を解消するということは、大学はもとより国研なんかでもかなり深刻な事態です。電総研の分子機能研究室では、イギリスからやってきた研究者もびっくりという状態ですね。それから地質調査所へ行ったのですが、廊下に資料その他がはみ出しているのですね。  もちろん、これらはどこでも見ることができるのですが、私は、まず大臣が真剣に予算を本当にふやすという点で先頭を切って、文部大臣科学技術庁長官は他の大臣に率先して担当頑張ってもらわなければいかぬと思うのです。それには、まず大臣自身が現場をたくさん見てほしいと思うのです。大臣、この点、これも大名行列ではだめですよ。大臣が行かれてもそうだし、我々国会議員が行っても気を使い過ぎてくれて大名行列になるから、僕はこっそりよく行くのですけれども、そして本当に抜き打ち的に行って、事前に掃除なんかしないように、大臣、本当にそれぐらいのことで見てほしいと思う。どうですか。
  126. 中島衛

    中島国務大臣 今、吉井先生から重要な指摘をいただいたと思います。私も同じ考え方であります。  国の研究機関とか大学とか設備その他不十分なところが多いと聞いております。できるだけ現場を見せていただきたいと思っておりますし、これから文部省とも連携をとって強化充実に努めてまいりたいと思っております。
  127. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 実は、この点では昨年の秋ですが、十月二十二日の日本学術会議の総会でも、約二時間時間をとって、討議資料をもとに二十人の会員の方が意見を出しておられるのですね、学術の国際貢献の問題について。討論の中でやはり大きな一つは、日本が最大の貢献をするというのは、留学生を受け入れて人づくりに協力することだ。日本も戦後、多くの学生や研究者アメリカなどへ留学して そして日本科学技術力進人だ。日本自身がそういう経験をしてきたことも含めて、その上に立って留学生を受け入れて人づくりに協力することなんだが、日本へ行ってよかったと言われるような大学等の受け入れ体制、環境整備、その充実を第一にしなければいけない。これは昨年の学術会議の総会でうんと議論されたことなんです。私は、本当に今はそのことがすごく大事だと思うわけです。  こういう点で実は非常に寂しく思うのは、COEについて科学技術政策大綱の方で、要員、資金等の研究資源の重点的投入により育成するというふうに言っているわけですが、基礎研究費そのものを全体として大幅に引き上げることをしないでCOEに資金の重点投入をすれば、今の日本の財政の仕組みの中では、これは結局その他の研究分野が圧迫されるという深刻な矛盾をまた招いてしまうわけです。  実際、科学技術庁所管の国立試験研究機関、千五百八十二人の人頭研究費は、一人頭約百万冊ぐらいですから十五億六百万円ですか。新技術事業団の国支出金の方は、百三十九億七千五百万円。これは国立試験研究機関の人頭研究費の九倍に当たるのですね。これはもちろん原研その他を加えて計算し直しますと、特殊法人を入れると六十六億ぐらいになります。それにしても、それらの人頭研究費、これの二倍にふやしてようやく今度の新技術事業団の国支出金百三十九億七千五百万円に匹敵する。新技術事業団だということで今一生懸命言っていらっしゃるけれども、肝心の国研等が予算面でどんなに深刻な事態に置かれているか。  私は、これは数字的に見ますと、この十年間で、一九八三年から九三年、これは予算案の方になりますが、国研の方は人頭研究費一〇六%の伸びです。それで、新技術事業団への国庫支出金の総額は三三四%伸びているのですね。絶対額もけた違い、伸び率も三倍を超えるすごい伸びです。三倍どころじゃないな、三三四%です。これは本当に根本的にこのあり方を考えてもらわなければいかぬと思うのです。いかにこの基礎研究を軽視しているかということが明瞭にこの辺に出ていると、私は思うのです。この抜本的な是正のためにどうするか、この辺のところを最後に大臣に伺って、質問を終わりたいと思います。
  128. 中島衛

    中島国務大臣 科学技術振興は国にとって一番大事な問題だと思っておりますし、それから基礎研究が弱いと今まで日本は言われておりました。基礎研究充実強化を図ってまいらなければならないと思っております。これから来年また予算編成もあるわけでありますから、政府としてもそれらの問題に対してしっかり取り組んでまいりたいと思っております。
  129. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 終わります。
  130. 小澤潔

    小澤委員長 御苦労さまでした。  これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
  131. 小澤潔

    小澤委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。近江巳記夫君。
  132. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合及び公明党・国民会議を代表いたしまして、新技術事業団法の一部を改正する法律案について賛成の討論をいたします。  科学技術は、経済社会の活力の源泉であり、今後とも我が国及び世界が安定的な発展を遂げ、平和で豊かな社会を切り開いていくためには、知的創造力を生かして科学技術振興を図っていくことが必要であることは言うまでもありません。  国民の知的創造力が最大の資源である我が国は、将来を科学技術発展に託するところが大きく、国全体としての総合的な研究開発能力の涵養を図っていく必要があります。  特に、科学技術分野における我が国国際貢献必要性が高まるとともに、科学技術の一層の高度化、複合領域化等が急速に進んでいる今日においては、基礎的・創造的研究充実強化を積極的に推進していくことが極めて重要となっております。  基礎研究中心とする科学技術振興が創造性豊かな研究者の自由な発想によることは言うまでもありませんが、研究者がその創造性を最大限に発揮できるようにするためには、研究組織研究分野等の枠を超えた研究者間の交流等による知的触発が極めて有効であり、産学官及び外国との研究交流を積極的に促進していくことが、まさに喫緊の課題であると思われます。  本法律案は、こうした現下の要請にこたえるものであり、我々は、この法律の成立により、国の内外を問わず総合的に研究交流を促進するための実施体制の整備が図られ、我が国研究交流がより一層促進されるものと期待するところであります。  以上の点から、本案に賛成の意を表明し、討論を終わります。(拍手)
  133. 小澤潔

    小澤委員長 吉井英勝君。
  134. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 私は、官本共産党を代表して、新技術事業団法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  政府の提案理由によれば、本改正案は科学技術分野における国際貢献研究交流の促進を目的にしたものであるといいますが、それは真の国際貢献とも国民本位の研究交流にも逆行する内容のものであります。  まず第一に、本法案は産官軍学の研究交流と大企業奉仕の共同研究推進する研究交流促進法を推進するために、新技術事業団をその実行機関の一つに位置づけて同法を補完するためのものであるからであります。  一九八六年制定の研究交流促進法は、昨春の改悪とも相まって、国民全体の奉仕者である研究公務員制度に穴をあけ、無原則的に民間企業研究者を期限つき任用することなどによって産官学の交流を促進したり、あるいは国有特許権など国有財産の無償、廉価での供与や国立試験研究機関の設備の廉価使用を認めるなど国民全体の財産である人材、資金、資源を実際上は大企業に分け与えるための内容法律であります。  今回、新技術事業団の目的に新たに研究交流の促進を加えることによって、この研究交流促進法との一体化を図り、共同研究等の促進と研究者の派遣事業などによってその実施のための体制を整備するものであり、反対であります。  第二に、今日の大学、国立研究機関等の荒廃と貧困を放置したまま、産官学の共同研究推進することになる本法案は、国民と学者、研究者の求める我が国科学技術の自主的、民主的な発展をゆがめるものであるからであります。  今日、大学における実験施設設備老朽化国立研究所の人不足を初めとする貧困と荒廃は、今や国民的な共通認識になってきました。そして、その原因が政府が進めてきた八○年代の臨調行革路線にあることは、大学関係者、研究者を初め国民多数の認めるところであります。  そして、その臨調行革が追求した産官学連携が今日何をもたらしたかは歴然としております。例えば昨年六月、政府自身が総務庁の行政監察において、産官学連携の実態について、特定の企業の製品化に大学が結果として相当寄与し、基礎的学術研究中心とする大学の使命から見て懸念を抱く事例が生まれているとまで報告しましたが、大学研究現場では、我が党が危惧したとおりの深刻な事態が進行しているのであります。  政府は、手直しを余儀なくされ、来年度は科学研究費補助金、国立研究機関の経常研究費の一定の増額措置をとろうとしておりますが、小手先のびぼう策と言わざるを得ません。我が国基礎研究中心である大学と国立研究機関の施設、人材等の基盤を抜本的に改善することなく、本法案によって、新技術事業団を人材派遣のトンネル機関として産官学の研究交流共同研究推進する方策は、結局は研究者が、営利を目的とする大企業に対する依存傾向を強めるだけのものとなります。  第三に、今回の法案にある研究協力者の発展途上国等に対する派遣事業が、真の科学技術国際貢献となる保証は全くありません。  さらに、本来、科学技術の国際協力については、平和の目的に限り、対等、平等、互恵の原則を確立して実行するべきであります。それこそが真の国際貢献となるものでありますが、政府の言う国際貢献は、宇宙ステーション計画、SSCなどに見られるように、アメリカの意向に唯々諾々とするアメリカ貢献であり、他方、発展途上国に対しては、既に一兆円を超えた我が国のODA、政府開発援助における技術協力に見られるとおり、経済大国、科学技術大国を背景とした、相手国の実情や派遣側の研究者の立場を無視した科学技術協力となっており、本法案によってこうした危険性が拡大される危惧を払拭できないのであります。  以上申し述べまして、反対討論を終わります。
  135. 小澤潔

    小澤委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  136. 小澤潔

    小澤委員長 これより採決に入ります。  内閣提出新技術事業団法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  137. 小澤潔

    小澤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  138. 小澤潔

    小澤委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、村井仁君外二名より、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合及び公明党・国民会議の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。川島實君。
  139. 川島實

    川島委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提案者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     新技術事業団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に関し、次の諸点について、十分配慮すべきである。  一 創造的・基礎的研究の一層の充実を図ること。  一 研究者研究補助者や研究施設等の研究環境の一層の整備に努めること。  一 若い研究者の能力を伸ばし、活かすよう努めること。 以上であります。  各事項の内容、趣旨につきましては、案文及び委員会の審査を通じ十分御理解いただけることと存じますので、詳細の説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  140. 小澤潔

    小澤委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  村井仁君外二名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  141. 小澤潔

    小澤委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、中島国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中島国務大臣
  142. 中島衛

    中島国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、政府といたしましても、遺漏のないよう配意してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  143. 小澤潔

    小澤委員長 お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 小澤潔

    小澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  145. 小澤潔

    小澤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十八分散会