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1993-04-27 第126回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月二十七日(火曜日)     午後二時四十九分開議 出席委員   委員長 上田 卓三君    理事 鈴木 宗男君 理事 関谷 勝嗣君    理事 松浦  昭君 理事 宮崎 茂一君    理事 宮里 松正君 理事 五十嵐広三君    理事 上原 康助君 理事 玉城 栄一君       今津  寛君    岡田 克也君       高橋 一郎君    中村正三郎君       池端 清一君    鉢呂 吉雄君       藤原 房雄君    古堅 実吉君       小平 忠正君  出席国務大臣         外 務 大 臣 武藤 嘉文君         国 務 大 臣 鹿野 道彦君         (総務庁長官)  出席政府委員         北方対策本部審 上村 知昭君         議官         沖縄開発庁総務 永山 喜緑君         局長         沖縄開発庁振興 渡辺  明君         局長         外務大臣官房審 津守  滋君         議官         外務大臣官房文 木村 崇之君         化交流部長         外務省北米局長 佐藤 行雄君         外務省経済協力 川上 隆朗君         局長         外務省条約局長 丹波  實君  委員外出席者         警察庁刑事局捜 南雲 明久君         査第一課長         警察庁刑事局国 谷口 清作君         際刑事課長         防衛施設庁総務 大島 利夫君         部調停官         文化庁文化財保         護部伝統文化課 吉澤富士夫君         長         農林水産省農蚕         園芸局植物防疫 大川 義清君         課長         特別委員会第一 吉田  稔君         調査室長     ――――――――――――― 四月十三日  沖縄戦強制疎開マラリア犠牲者国家補償に関す  る陳情書  (第一八一号)  北方領土返還要求に関する陳情書  (第一八二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  沖縄及び北方問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 上田卓三

    上田委員長 これより会議を開きます。  沖縄及び北方問題に関する件について調査を進めます。  まず、沖縄及び北方問題に関する政府の施策について、武藤外務大臣から説明を求めます。武藤外務大臣
  3. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 外務大臣に就任をいたしましたので、沖縄及び北方問題に関する特別委員会の開催に当たり、一言ごあいさつを申し上げます。  初めに、渡辺大臣の一日も早い御回復をお祈りいたします。  北方問題について申し述べます。  戦後四十七年が経過し、冷戦も終えんした今日、北方領土問題がなお未解決であることは日ロ両国にとりまことに遺憾な事態であります。  現在、ロシアは、改革に伴う多くの政治的、経済的問題に直面しておりますが、我が国は同国での改革が完遂されることを強く期待しており、国際社会とも協力して適切な支援を進めていく考えであります。同時に、法と正義に基づき北方領土問題が解決され、日ロ関係の完全な正常化が実現することは、日ロ両国にとってのみならず国際社会にとっての利益でもあると認識しております。  政府としては、このような考え方に基づき、また累次にわたる北方領土問題解決促進に関する本委員会の決議を踏まえて、一貫した方針のもと、日ロ関係均衡のとれた形で発展していくよう対ロ外交を進めていく考えであります。  次に、沖縄に関する事項について申し述べます。  今日の世界は、東西冷戦は終了したものの、民族や宗教に根差した対立の激化、ロシアを初めとする旧ソ連諸国の困難な情勢大量破壊兵器拡散懸念等に見られるような厳しい現実に直面しており、不透明で流動的な状況にあります。  このような国際情勢の中にあって、日米安保体制は、我が国が平和と繁栄を享受していくために必要な抑止力を提供するとともに、日米間の緊密な同盟、協力関係に安定した政治的基盤を与えております。また、この体制はアジア・太平洋地域安定要因となっている米国の存在を確保する上でも不可欠の手段となっております。先般の日米首脳会談においても、宮澤総理クリントン大統領の間で、冷戦後の時代においても日米安保条約が引き続き重要である旨確認されました。  政府としては、このような意義重要性を有する日米安保体制を今後とも堅持し、その円滑な運用と信頼性の向上のために、できる限りの努力を払っていく所存であります。  他方、沖縄においては米軍施設、区域の密度が高く、その整理統合について沖縄県民方々から強い要望があります。この点については、先日、宮澤総理が訪米した際にも、アスピン国防長官に対し、沖縄整理統合問題について改善を図ることが重要である旨指摘したところであります。  政府としては、安保条約目的達成地域住民要望との調和を図り、沖縄における諸問題の解決のため今後とも引き続き努力を払っていく考えであります。  最後に、本委員会委員の皆様より御協力、御助言を賜りますよう切にお願い申し上げまして、ごあいさつといたします。
  4. 上田卓三

    上田委員長 以上で説明の聴取は終わりました。
  5. 上田卓三

    上田委員長 次に、武藤外務大臣及び鹿野総務庁長官所信に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今津寛君。
  6. 今津寛

    今津委員 武藤外務大臣は、突然渡辺外務大臣が病床に倒れ、その後引き続き大役を引き受けられ、大変な御活躍でございますが、どうかさらに健康に留意をされて御活躍いただきたいと思うところであります。  また、鹿野総務庁長官は、武藤外務大臣もそうでありますが、私は必ず日本最高リーダーになる方と思っておりまして、大変大きな期待を感じておるわけであります。その点、大変大物の二人に質問をさせていただくことを私は光栄だと思うわけでございます。  上げてすぐ下げるわけではございませんが、ただいま外務大臣の方から所信表明がございました。これは外務省にはっきり申し上げておきたい と思うのですが、先般の渡辺美智雄外務大臣が三月二十六日に所信表明をされた。そのときの演説と、今大臣所信表明されたものと全く同じ。北方領土の分のところだけ出してみますと、四行目に大臣は、「渡辺大臣の一日も早い御回復をお祈り致します。」という字だけ入っております。あとはずっと最初から同じでございまして、二ページ三行目の、完遂されることを強く期待をするというところが、引き続き推進されるよう期待をするということだった。あと最初から最後まで同じなのであります。  短期間であっても世界状況は変わり、しかも日ロ関係はもう激変しているという状態の中で、私は担当大臣所信表明がいかにも国会軽視、いかにも国民を侮辱をしている、もう少し外務省はしっかりと腹を据えて、現状に応じた所信表明をつくっていただかなければならぬ、そんなことを最初に申し上げておきたいと思います。私の言っていることは、あなた方が後で読み返してみればよくわかることですから、最初に申し上げておきたいと思います。答弁は要りません。  北方領土の問題でございますけれども、何といっても我が国の最大の課題であるわけでございます。国民世論の啓発、返還運動の推進を所管とする総務庁として今後積極的に取り組んでいただきたいと思います。その返還署名運動も年々活発になりまして、先般も横路北海道知事を先頭にして署名の受け渡しが行われたところでございます。  そのような中で、領土問題の解決に資することを目的に、昨年からいわゆるビザなし交流が始まったわけでございますが、ビザなし交流国民レベル交流として相互理解が深められるなど相当成果を上げたと聞き及んでおり、私の地元北海道においても大きな評価を受けているところでございます。また今月の二十二日からは今年度の交流の第一陣が北海道を訪れ、昨日まで根室釧路地域地元方々と温かい交流が行われました。新聞記事を読んでみたいと思いますが、「二年目を迎えた北方領土とのビザなし交流の第一陣としてロシア人島民四十六人が二十二日午前、ロシアの客船で北海道根室市の花咲港に到着した。一行は国後、択捉、色丹三島農業、水産、行政関係者実業家舞踊家らで年齢は二十二−六十七歳。一般農業研修の二コースに分かれて北海道東部に五日間滞在する。」こういう新聞記事でございます。  領土問題の解決には当然政府間の強力な外交交渉が必要でありますが、同時にこのような国民レベルの地道な努力の積み重ねが必ずやロシア国民の意識を改革して領土問題を動かす原動力になるものと確信をしているわけでございます。今年度は関係者の御努力で国の方で予算措置が図られたわけでありますが、総務庁長官から、簡単で結構でございますが、ビザなし交流の昨年度の実績、そしてその評価、今年度事業に向けての方針を伺いたいと思います。
  7. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 北方領土北方四島との交流につきましては、昨年の四月におきまして北方四島側から最初訪問団が来訪されまして、昨年五月には日本からも訪問が行われるという、あるいは平成四年度におきましては日本側から二百六十八人、北方四島側から二百三十二人の相互訪問が行われました。そこで、今今津先生おっしゃられたとおりに率直なる話し合い等々が行われ、相互理解増進が図られるなど相当成果が上がったのではないか、このように考えております。きょうの新聞等にも世論調査の結果も出ておりましたが、色丹島における調査の結果、八三%が返還に賛成だ、このようなこともこのような交流事業成果が結びついているものと考えるわけであります。  北方領土解決には、とにかく今申し上げましたとおりに、ロシア連邦国民、とりわけ北方四島の在住のロシア人との相互理解をさらに進めていくことが不可欠であるわけであります。したがいまして、総務庁といたしましても一層の相互交流の場を提供するために、平成五年度予算事業増進に必要な経費を計上いたしたわけであります。平成五年度におきましては、昨年の北海道を中心とする事業に加えまして、新しく全国規模事業を展開することといたしておりまして、訪問、受け入れそれぞれ四百名、全体で八百名を超える規模で行われる見込みでございます。今後とも北方四島との交流の充実に努めてまいりたい、このように考えております。
  8. 今津寛

    今津委員 今大臣からお話がありましたとおり、大きな効果を上げているところであります。  その一例としまして、国後新聞がありますが、ナ・ルベジェという新聞であります。そのセルゲーエフという記者が昨年日本ビザなしで参りまして、日本現況等を見て、こういうふうに自分の書いた記事の中で言っております。「地理の授業で資本主義の国々について読まされた。しゃれたブルジョアの家と貧民街というコントラストを。札幌で、我々はそのコントラストを見ることが無かったいわば今まで本人がロシアで教育を受けていたことと現実と、自分たちが目で北海道あるいは日本資本主義社会というものを見たときに、大いに違っていたということでございます。また、「北海道南クリルの地図を背にして立ったが、それは一色で塗ってある。」日本においては北海道北方四島とは同じ色で塗ってあったということなどを率直に、実は自分の国で書いてもらっているわけであります。これは大きな効果であったと思います。  しかし、反面、問題がないわけではないわけでございます。ビザなし渡航お互い経済活動が許されておりません。さらに加えまして、外国人行動制限などの規制がございますから、自由に活動ができない、外出ができないという、そういう問題もあります。  もう一つは、これは鈴木代議士地元でありますが、始まってまだ二年目で、大いに盛り上がって歓迎などの式典があるかと思いましたが、多少盛り上がりに欠ける、そういう風評もあるわけでございます。  そして、決定的な問題は、例えばロシアの方から我が国船員手帳を持って上陸をする漁業従事者がいるわけでございます。この人たちが、四月半ばまでに北方領土から四十隻の運搬船が根室に入港し、一隻当たり平均十七人が乗っており、日本輸入業者から運送代として一人十万円ほどを日本円でもらう。このお金で中古車電化製品、果物などを買う。市内には船員目当て免税店もある。北方領土ロシア人島民の多くは、島を取り巻く政情が不透明なため、将来の生活設計を立てられないでいる。島では、根室に渡って外貨を稼げる漁業関係者ビザなし渡航以外に来る手段がない一般の人々との間で貧富の差が出ているという問題点があるわけでございます。  これは、我が国からロシアに渡る国民も同じでございまして、積極的に我が国の商社がサハリンでビザを取って北方領土に渡っている。我が国は、ロシアビザ取得不法占拠を追認するということで認めていないわけでありますが、そういう形で入っている、こういう問題があるわけでございます。  千島歯舞諸島居住者連盟支部長は「ビザなし渡航を続けるのはいいが、相互交流返還運動とをどう関連づけていいのか分からない。」という率直な疑問を実は投げかけているところであります。  非常に大きな成果と、あるいはこういう問題点も出てきたところでございまして、大臣の所感をお聞かせいただきたいと思います。
  9. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 ビザなし交流事業は昨年始まったばかりでございまして、今年度改めて正式な形で予算を計上して、さらに交流を深めていこうということでありまして、この目的は当然お互い相互理解ということがその趣旨になるわけであります。そういう意味で、ただいま申し上げましたとおりに相当成果も上げているところでございますが、この問題と、今先生が御紹介をされた、いわゆる船員手帳を持ってこられる方、そしてその人たちがいわゆる四島にお帰りになってからの 経済行為というのは私ども、どのような実態なのかということは定かでないわけでございます。  いずれにいたしましても、この北方四島とのビザなし交流につきましては、今日二年目を迎える中で、実質的にお互い理解相互理解という中で成果が上がっている今日でありますから、そのような趣旨に沿って、その目的に沿ってさらにどのような交流の内容にしていったらいいか等も含めて、これから全力を挙げて推進していくことが大事なことではないか、このように考えているところであります。
  10. 今津寛

    今津委員 問題点があったとしても、やはりその問題を一つ一つ解決をしてさらに前に進んでいくということでございまして、どうか大臣を初めとして御努力をお願い申し上げたいと思います。  外務大臣にお聞きをさせていただきたいと思います。  二十五日にロシア国民投票が行われまして、エリツィン大統領がその信任を受けるという形になりました。ただ、ゴルバチョフ大統領国民投票意義記者会見でこう言っております。「国民投票が好ましい結果をもたらすかどうか疑わしい。どの回答も法的裏付けを持たないからだ。私は棄権する。いま必要なのは大統領議会の選挙だ。」ということで、いわば大統領議会とのあつれきなどを心配をしながら、信任を受けたとしてもさらに非常に大きな問題点が残るということを実はゴルバチョフ大統領などが言っているわけでございます。その中で、五月末のエリツィン大統領訪日をするという手だてを、先般の外務大臣の御努力で着々と実現に向かって今、日程の調整などされていると思うわけでありますが、この五月のエリツィン大統領訪日の際、政府としてどのような態度で臨むのか。また、その際、北方領土の問題を議題とすると私は思っているわけでありますが、議題とするということで確認させていただいてよろしいかどうかお聞かせをいただきたいと思います。
  11. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ゴルバチョフさんはゴルバチョフさんの考えでおっしゃっているんだろうと思うのでございますが、私どもといたしましては、今回の国民投票は民主的な形で行われたわけでございまして、その結果、エリツィン大統領が今日まで推し進めてまいりました、政治の面においてはいわゆる自由主義民主主義社会をつくっていく、そしてまた経済面では市場経済原理を導入していく、やはりこの政策が受け入れられてあのような投票の結果になったと私は思っております。そういう面においては、ロシアのその方向で民主化努力をされていることに対しては、私ども今後ともできる限りの協力をしていかなければならないと思っております。  それから、エリツィン大統領訪日の問題でございますけれども、これはたまたまコズイレフ外務大臣が参りましたときに、総理に対してもまた私に対しても、一つ可能性として五月にエリツィン訪日することに対してはどうかというサジェスチョンがあったことはそのとおりでございます。しかしながら、その後まだ最終的に決定をしたわけでもございませんし、新聞報道がなされておりますように日にちまで決まったようなことは全くございません。いろいろと外交ルートを通じて、国民投票も終わりましたのでこれから詰めていくことになろうと思います。  そこで、もしエリツィン大統領訪日された場合、当然両国間の首脳会談が持たれるわけでございます。そこでこの北方領土の問題について議題とするかどうかということでございますが、日本側としては当然議題として取り上げたい、こういう考え方ております。
  12. 今津寛

    今津委員 その議題中身だと思うわけでございます。新聞のことを挙げて申し上げるのは大変恐縮でございますけれども、例えば本日の朝の新聞には、ある新聞でありますが、「政府内には大統領国内的立場に配慮して領土問題を前面に出すことを避けたい空気もあるが、その一方で、日本国内の厳しい対露感情を考慮すれば主権要求の旗は降ろせないという「二律背反」があり、厳しい判断を迫られるのは必至だ。」ということで、外務省も今非常に困った立場といいましょうか、揺れ動く気持ちといいましょうか、模索している状態といいましょうか、そういうことが実はこの記事にあらわれているわけでございますが、当然、その会談の中では、従来私どもが主張いたしておりました二島返還を明記をした一九五六年の日ソ共同宣言確認を求めるというのが第一点、それからもう一点は、北方四島の主権確認、これを求めるのか、この二つについて大臣のお気持ちをお聞かせ願いたいと思います。
  13. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まだ具体的に、今申し上げましたようにエリツィン大統領訪日も決まったわけではございませんし、当然、領土問題を議題とすることだけは私ども決めておりますが、これからどういう形で交渉、結果的にいわゆる交渉になるわけでございまして、どういう形で北方領土問題を議論していくのか今のところ決めておりませんが、従来の日本方針というものは十分わかっておりますので、その趣旨を体してやってまいりたいと思います。
  14. 今津寛

    今津委員 まだその二点については議題中身に入れるかどうか、今検討している最中だが、今までの立場というものを貫いていきたいということでありますから、私ども、当然このことは大臣の口から、宮澤総理の口からエリツィン大統領に言っていただけるというふうに確信しているところでございます。この二点の確認を求めなければ領土は棚上げということを認めたことになりますし、これを要求しないということであれば、領土はもう返さなくていいのではないかとロシア側は思うという心配が随分あるのであります。  例えば政経不可分拡大均衡の問題でありますが、我が国のとっている態度サミット招聘領土問題はリンクさせないということでありますから、二国間の領土問題と経済支援とは、これは当然、今までは政経不可分ということを使っていたわけでありまして、何ら基本的に変わるわけがないわけであります。今大臣が基本的に変わらないということはそういうことをおっしゃっているわけでありますが、アメリカクリストファー国務長官は、「日本政府が大いなる意志を持って、領土援助をリンクさせない決定をしたことにも満足している。」すなわち、今度のG7のロシア支援、これは多国籍ということで日本援助の十八億二千万ドルを出したということですが、アメリカではそう受け取っていなくて、従来の方針を変更して「大いなる意志を持って、領土援助をリンクさせない決定をしたことにも満足している。」こういうことを言っています。あるいはドイツワイゲル大蔵大臣は、「日本北方領土問題を切り離し、ロシア支援への障害をなくしたことは評価できる」こういうことを言っているわけでございます。誤解するアメリカドイツが悪いのか、あるいはそのことをきちっと説明していない日本外務省が悪いのか、そのところは別の問題といたしますけれども、こういうふうに外国からも誤解されているということについて、外務大臣、どういうふうに思いますでしょうか。
  15. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 鈴木宗男議員からもこの間御指摘をいただきました。大変わかりにくいということでございますが、私どもといたしましては、一般論としても政治経済とは切り離せないものでございますから、やはり政経不可分という考え方は今後とも続けてまいります。ただ、たまたま過去において、拡大均衡というのは宇野外務大臣のころからかそういう表現外務省でするようになったと思うのでございますけれども、私もなぜそういう表現を使うようになったのかということを事務当局に聞きますと、結局、政治経済は分離できないことは当然でございますから、その一般論は今後も続けていくけれども、たまたまそれ以前まで、いわゆるゴルバチョフ以前のソ連時代というのは、領土問題というのが全く存在しないという姿勢であったので、政治の面を強調して、そういう場合には経済的にも一切応じられない、こういう姿勢できた。  ところが、ゴルバチョフ時代になってからは、 やはり領土問題というものが両国間にあるという認識向こうが示してくれるようになったので、こちらも余りにかたくなな態度ばかり続けていったのではかえってそれがうまく解決していかないのじゃないだろうか、向こうがせっかくそういう認識をしてくれたならば、それをうまく解決をする上においても、その問題はその問題として当然あるけれども、一方それと並行してかみ合わせながら、ある程度経済的な支援もしていくことによって領土問題が解決できればいいだろう、こういうことが拡大均衡という言葉を使うようになった事情だということが私もわかってまいりました。ですから、政経不可分の延長線といいますか、その先に拡大均衡というものが出てきたわけでございますので最近は拡大均衡という表現を使っておりますが、政経不可分というのは一般論としても当然のことでございまして、それを頭に入れながら拡大均衡という表現を用いて、今後とも日本ロシアとの間の領土問題の解決にぜひ積極的に取り組んでまいりたい、こう考えているわけでございます。
  16. 今津寛

    今津委員 それでは、今後、対外交渉の公式の場で政経不可分という言葉は使うのですか、使わないのですか。
  17. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ですから、表現としては今は拡大均衡という表現でやっておるわけでございます。
  18. 今津寛

    今津委員 では、使わないということですか。  我が国国民としては、まさにその辺のところが納得いかないところであるわけでございます。言葉を変えて中身は同じだと言っても、言葉が変わるそれだけの理由があるわけですから、大臣からも今その理由は述べられましたけれども、私ども領土と対日支援は全く切り離せない問題だということで政経不可分という言葉を使い続けてきたわけですから、その言葉拡大均衡という言葉に変わった、じゃ政府方針が変わったのだなということでどうしても受けとめる、そういう心配があるということでございまして、そこのところは国民が誤解をしないようにきちっと御説明いただきたいと私は思うわけでございます。  時間がないので、最後に、東京サミットにおける二国間問題を伺わせていただきたいと思います。  これも大臣のインタビューの中に、「東京サミットでは、二国間の問題は取り上げない」ということをおっしゃっているわけでございますが、そういうことですか。
  19. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 やはりサミットの場では、二国間の問題は常識的に取り上げないということだと思うのでございます。
  20. 今津寛

    今津委員 そこにおられる総務庁長官ども、それじゃちょっと弱いのじゃないかということを当然一番先頭におっしゃる方ではないかと私は思っているわけでございますが……。  過去の例を申し上げたいと思うのですが、一九九〇年七月のヒューストン・サミット、一九九一年七月のロンドン・サミット、一九九二年七月のミュンヘン・サミット。最初のヒューストンは議長総括あるいは経済宣言という形、その次の年は議長声明、そしてその次の年は政治宣言と、大臣御案内のとおりサミットでは二国間問題は三年間にわたって毎年取り上げられて、しかも議長総括、経済宣言、それが議長声明そして政治宣言と、扱いも表現もともに高くなっていますね。今まで、よその国で行っているサミットでも二国間問題というのは行われてきているわけですから、しかも声明に盛り込まれてきた。それが、我が日本でやるサミットにおいてその問題を議題にしないとか話さないとかいうことは国民としては納得できないわけです。こういう国民は非常に多いと私は思うわけでございます。ですから、七月のサミットに向けて方針を大転換されて、日本で行うサミットだからこそこの問題を、日本立場ロシアにきちっと申し上げる、そして参加国に理解していただく、世論の喚起を促すということで方針転換をしていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  21. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 従来、私の承知しているのでは、初めから正式な議題として二国間の問題を出していくということはなかったと思うのでございます。ただ、話題としていろいろと首脳間で話をいたします。そういうときには、当然二国間の問題というのは話題としてはあったと思うのでございます。多分、今までの宣言あるいは声明、こういうものにそういうものが出てきたというのも、最初から議題に出ていたのではなくて、いろいろ話題が出ていて、その中で、これはこういうコミュニケをつくろうということで、私も一回参加いたしましたけれども、そういうことでコミュニケの中に入ってきたというものはいろいろあったと思っております。  私が先ほど常識的と、こう申し上げました。一般常識として、最初から議題にそういうものを入れていくということは余りないのじゃないか。しかし、話題として出てきて、それがどういう形で発展していくか、これはいろいろのケースが私はあると思うのでございます。
  22. 今津寛

    今津委員 ありがとうございます。  議題として取り上げないのは今までもそうですが、しかし日本におけるサミットだからこそ、なおさら国民政府はよくやっているという形をぜひ見せていただいて、ひとつ共同声明以上の形をとっていただきたいと思います。  最近、トムスク7の事故があったり、あるいは原子炉二基など大量投棄されたり、こういう物騒な問題も出てきておりまして、ぜひこのことについても強くロシア側にきちっとした対処をするように要望いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  23. 上田卓三

    上田委員長 宮里松正君。
  24. 宮里松正

    ○宮里委員 私は、武藤外務大臣所信表明に関連をいたしまして、沖縄の基地問題について、大臣並びに政府関係機関に御質問いたしたいと思います。  まず最初に、最近発生いたしました米兵による住民殺害事件についてお尋ねをいたしまして、その後で、時間がございましたら基地の整理縮小問題についてお伺いをいたしたいと思います。大臣には一番最後に締めの答弁をお願いするつもりでございますから、しばらくお聞きをいただきたいと思います。  去る四月十一日午前四時ごろ、金武町の新開地と呼ばれる飲食街で、近くに住む與古田清祐さんという方が、キャンプ・ハンセン所属の十八歳の少年兵にセメントブロックや植木鉢で殴り殺されるという悲惨な事件が発生いたしました。当然のことながら、そのことは地域の人々に大変な衝撃を与え、今金武町では町当局や町議会はもちろん、町民のすべてがやり場のない怒りに燃えて、米軍に対する抗議行動に立ち上がっております。我々自民党所属の国会議員は、国の安全保障政策としては必要最小限度の自衛力の整備と日米安保体制の堅持を主張し、その健全かつ適切な運用を望んできたのでありますが、しかしだからといって、米兵のこのような野蛮な行為によって住民がいつまでも犠牲になることを断じて許すわけにはまいりません。  沖縄は、御承知のように戦後二十七年間にわたって米軍の占領支配や対日平和条約第三条に基づく異民族支配に服してまいりましたが、その間に数多くの米軍人軍属の犯罪や事故が発生し、県民の多くがその犠牲になりました。私は、今ここにそのほとんどの記録を持っているのでありますが、時間がございませんのでこれは省略をいたします。  中でも、昭和三十年九月三日に発生した、六歳の幼女が米兵に暴行された上で殺害されるという、いわゆる由美子ちゃん殺害事件や、昭和三十四年六月三十日に発生した、米軍のジェット機が授業中の小学校に墜落して一瞬にして大勢の子供たちの生命を奪った石川市の宮森小学校のジェット機墜落事件などは、その象徴的な例として今でも忘れることのできない悪夢となって私どもの記憶によみがえってくるのであります。  復帰後は、沖縄県全体としては確かに米軍人軍 属の犯罪が減りました。しかし、今回事件が起こりました金武町では、昭和三十四年十二月に後蔵根カツさんがイノシシと間違えられて射殺された。これは復帰前でございます。復帰後の昭和四十七年九月には、栄野川盛勇さんが勤務先のキャンプ・ハンセン内でライフルで射殺され、昭和五十七年三月には城間孝栄さんが町内の墓地で今回と同じくセメントブロックで撲殺され、昭和五十八年二月には、タクシー運転手の目取真興栄さんがキャンプ・ハンセンの基地内でナイフで刺殺され、さらに昭和六十年一月には、前泊寛一さんが自宅で殺害されるという事件が発生しているのであります。もとより、いずれもキャンプ・ハンセンなどに所属する米兵の犯行であります。  金武町の人々は、その都度怒りを込めた町民大会などを開催し、米軍当局にそのような野蛮な事件の再発防止や軍紀の粛正などを要請してまいりました。そして、昭和六十年一月の前泊寛一さん殺害事件以来この種の犯罪がなくなってまいりました。米軍もこのごろは過去のことを反省して、そして米兵に対する教育や軍紀の粛正に力を入れているのか、そう思ってほっとしておったやさきに今回の事件がまた発生をしたわけであります。金武町の人々が、もうこれ以上我慢することはできないと考えて怒りをあらわにしているのもこれは無理もないことであります。犯人の少年兵は、犯行後キャンプ・ハンセンに逃げ込んでいたところを米軍の捜査当局に逮捕され、最近は捜査本部の置かれております石川署の警察官が取り調べに当たっていると新聞などで報じられておりますが、犯人の身柄は今、日米のいずれが確保しているのか、まずそのことから明らかにしていただきたいと思います。
  25. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  この事件では、米側がまだ持っていると承知しております。
  26. 宮里松正

    ○宮里委員 犯人の身柄は依然として米軍当局の確保しているところだという御答弁でございましたが、それならばいつそれが日本側に移されるのか。たしか地位協定十七条では日本側に裁判権があり、かつ日本側が公訴を提起するまでは米軍側が押さえている身柄はそのまま米軍側において拘束する、そのような規定になっていると思いますが、それはいつごろ日本側で公訴されるのか、明らかにしておいていただきたいと思います。
  27. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 身柄の日本側への引き渡し請求は、委員御指摘のとおり公訴のときに行うわけでございます。したがって、公訴をできるだけ早くすることが一つのポイントだと思います。  実は、先般、大臣からの御指示もございまして、アメリカ側に対して、公訴を早めるための日本側の捜査に地位協定の範囲内で最大限の協力をしてもらうように申し入れたところでございます。そういう意味で、我々としても捜査が早く進むことを期待しているわけであります。  もう一つ、先ほどお触れになられました。金武町の過去二十年の間に、金武町の人口一万というところで、私の承知している限りでも復帰後に六回も犯罪が起きたということで、米軍人の犯罪に対して金武町の方が大変な心配を持ち、また今回怒りも感じておられるということは我々よく承知しておりますので、大臣の御指示のもとで、アメリカ側に対して、これを契機にもう一遍綱紀の粛正を図るようにあわせて申し入れたところでございます。
  28. 宮里松正

    ○宮里委員 今回の事件は、午前四時という深夜に飲食街で起こった事件でございますから明らかに公務外の事件であります。したがって、地位協定によってその一次的な裁判権は我が方、つまり日本側にあると考えますが、その点はいかがでございましょうか。
  29. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  まだ捜査中ですから断定的に申し上げるのは私の立場としてしかねるわけでありますが、当然、当時の状況から想像して、公訴を求めるときには我々の方に身柄の引き渡しを求める方向で処理がされるものと考えております。
  30. 宮里松正

    ○宮里委員 次に、警察当局にお尋ねいたしますが、新聞の報ずるところによると、今、石川署の署員が、米軍側の護送のもとに出頭を求めて石川署で取り調べに当たっていると聞いておりますが、取り調べの状況はどうなっておりますか。あるいはまた、米軍側は地位協定上も捜査に全面的な協力をしなければならぬことになっているはずでありますが、その点はどうなっておるか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  31. 谷口清作

    ○谷口説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、被疑者につきましては、現在石川警察署に連日護送しまして取り調べを行っておるところでございます。この点につきましては、地位協定上にもありますように、この種の犯罪につきましては日米両当局が相互援助しなければならないという規定がございますので、外務省からの申し入れ等もございまして現在のところは米側からの十分な協力を得ており、捜査は順調に進んでおるという報告を受けております。
  32. 宮里松正

    ○宮里委員 私も捜査当局から逐一話を聞いたわけじゃございませんので、断定的なところは申し上げにくいのでありますが、少なくとも新聞の報ずるところによると、午前四時という深夜に飲食街で起こった事件であります。したがって、これまた新聞の報道から得た知識でございますが、凶器に使われたコンクリートブロックでありますとか植木鉢などには被害者の血液が付着をし、犯人が逮捕されたとき着ておった着衣からは血痕が出てきた。したがって、犯罪と本人を結びつける証拠はかなりそろっているというふうに聞いております。  ただ、ここで問題になりますのは、犯行を直接目撃した人は恐らくいないだろうと思います。このような微妙な事件になりますと、初動捜査がしっかりしているかどうかによって犯罪の成否あるいは犯罪の位置づけ等々が微妙に変わってくるわけであります。地位協定によって身柄が依然として米側に押さえられる、米側の協力を得て石川署で十分取り調べをしているとはいえ、これは事案の真相を解明する上では捜査当局としてかなり支障があるのではないだろうかと私は思います。  ちなみに日本人同士のこのような事件が起こりますと、恐らく検察官は弁護人との接見交通権も制限をして厳重にその事案の真相の解明に当たる、そういうことだと思います。その点捜査当局としてどのように考えておられますか、お答えを願いたいと思います。
  33. 谷口清作

    ○谷口説明員 お答えを申し上げます。  事件の捜査状況でございますが、先生がおっしゃいましたように、いろいろの情況証拠というのですか、そういうものがありますので、鋭意米軍側の協力を得て捜査を続けておるところでございます。  先ほど申し上げましたように地位協定十七条等にございます日米両当局が相互援助しなければならないという規定につきまして、我々捜査当局といたしましてはこれを最大限に活用するということで、こういった毎日の護送という中での捜査ということをやっております。先ほど申し上げましたように、今までのところ捜査は順調に進んでおりまして、来月早々には事件送致ができるという報告を受けておるところでございます。
  34. 宮里松正

    ○宮里委員 地位協定ができたのほかなり以前のことでございまして、私はそろそろこれも見直す時期に来たのではないだろうかと思います。日本の刑事訴訟法上、弁護人との接見交通権を厳しく規制することがいいか悪いかは議論の分かれるところであります。しかし、現に日本の刑事訴訟法上はそのような運用の仕方をしておる。日本の国内で、米軍に対してはいわば被疑者の仲間に身柄を預けておって、そしてその護送のもとで、それらの監視のもとで取り調べをしなければならぬということは、これはいささか日本国民の間では納得しがたいところであります。捜査当局にきょうのところは答弁を求めませんが、もしそのようなことで支障があるならば、外務省にも相談をされて見直しの方向を検討していただきたいと思います。  ところで、犯人の少年兵は、新聞の報ずるとこ ろによりますと、與古田さんかいきなり殴りつけてきたのでセメントブロックで與古田さんの顔面を殴打したなどとあたかも正当防衛らしき弁明をしていると報道をされておりますが、その点、捜査の今の状況で事案の内容がどのようになってきているのか。これは事件が立件され、訴訟になって、捜査上の秘密とも若干関係が出てきますけれども、差し支えない範囲でお答えを願いたい、こう思います。
  35. 南雲明久

    ○南雲説明員 お答えいたします。  捜査の具体的内容につきましては、現在捜査中でありますので答弁は差し控えさせていただきますけれども、捜査は先ほど答弁にありましたように順調に進んでおるように報告を聞いております。
  36. 宮里松正

    ○宮里委員 大体そういう答弁になるだろうと思いました。  犯人の少年兵はセメントブロックで顔面を殴りつけ、與古田さんが倒れたところをさらに植木鉢で殴打したと供述しているようであります。そしてまた、與古田さんの死因がこれらの暴行による出血性のショック死であるということも報道をされております。したがって、これらの事実から考えますと、犯人の少年兵には明らかに殺害の意図、意思、つまり殺意があったと認定しても差し支えないだろうと思います。その上、もし少年兵が與古田さんの所持品を奪った事実でもあるならば、これは明らかに強盗殺人になるわけであります。  そこで、捜査の内容については明らかにできないということでございましたので、事実だけをお尋ねいたしますが、日本の警察当局はどのような罪名でこの少年兵に対する逮捕状を得ておりますか。そして、どのような形で、どのような罪名で取り調べをするのですか。そのことだけは明らかにしておいていただきたい。
  37. 南雲明久

    ○南雲説明員 お答えいたします。  現在、捜査は殺人罪で取り調べをしていると報告を受けております。
  38. 宮里松正

    ○宮里委員 しっかりとした捜査を続けて、証拠固めをされて、しっかりとした事件の立件をしていただきたい。金武町の人々にとっては、今捜査当局の捜査の進捗状況、そしてまた立件の仕方を恐らく注目をしていると思います。  次に、防衛施設庁にお尋ねをいたします。  金武町の人々は、この種の事件が絶対に今後起こることのないように、米軍当局に対しまして、部下将兵の教育の徹底や綱紀の粛正、そして身柄の早期引き渡しと日本刑法による処罰、さらには遺族に対する完全な補償などを要求しております。その点について、捜査の仕方などにつきましては今外務省と警察庁からお聞きいたしましたが、損害賠償の問題については、これは十八歳の少年兵でありますから、一般的に言って支払い能力は全くないと見ていいでありましょう。その場合に、補償措置の手続をとるのは防衛施設庁が所管されると思いますが、その点どのように対応されるおつもりか、お聞かせを願いたいと思います。
  39. 大島利夫

    ○大島説明員 お答えいたします。  米軍人等が公務外において違法に損害を与えた場合、これは原則として加害者が賠償責任を負いまして、当事者間の示談で解決を図るというのが原則になっております。しかしながら、加害者に支払い能力がない場合には、地位協定十八条第六項によりまして、当庁が被害者からの請求を受けまして請求額を算定し米側に送付いたしまして、米側が慰謝料として支払う、こういうことになっております。  本件の場合の御遺族に対する補償につきましては、那覇局と防衛本庁から、適正迅速な補償を行うよう既に米側に対して申し入れを行っております。  先生御指摘のように、本件加害者が補償能力がない、そういう場合は地位協定十八条第六項事案に該当することになるわけでございますが、その場合は防衛施設庁といたしましては適正迅速に補償がなされるように鋭意努力してまいりたい、こう思っております。
  40. 宮里松正

    ○宮里委員 そこで、最後武藤外務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  今回のこの事件は、金武町当局が求めておりますように、また金武町の町民が求めておりますように、再発防止のための最善の策をこの際米軍側にしっかりとっていただきたい。そして、二度とこのようなことが起こらぬようにしていただきたい。そのことはまた外務省から米軍当局に、あるいは米軍外交機関を通しましてしっかりと申し入れをしていただきたいと思うのであります。  私は、従来のように単に再発防止でありますとか綱紀の粛正でありますとか損害の完全補償でありますとか、こういうことだけでは済まされない問題を含んでいると思います。事件を起こした犯人は十八歳の少年兵でありまして、しかもキャンプを出て飲食街で朝の四時まで酒を飲んで遊んで、そのあげくに住民を殺害しているわけであります。ここに米軍側に、その少年兵の指揮監督、基地の管理について私は重大な過失があると思います。  思い起こしていただきたい。これがもし日本の自衛隊だったらどうなりますか。前に潜水艦「なだしお」が漁船の富士丸に東京湾で衝突したときに、これは過失でありますが、当時の瓦防衛庁長官が引責辞任をされました。しかし、米軍は、このような事件を起こして、指揮監督権を持つ上司が責任を負っだということは今までに一度もないわけであります。そのために、これまでしばしばこの種の事件を起こしてきた。私は、この際、そのことを含めて、外務省は米側に対しまして毅然たる態度で申し入れをすべきだと思いますが、大臣いかがでございましょうか。
  41. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 この事件は私も承知をいたしましたので、早速米側に対して、捜査の協力と今お話ありました綱紀の粛正について厳重に申し入れをさせたわけでございますが、今また一つのアイデアをちょうだいいたしました。私として十分検討させていただきたいと思います。
  42. 宮里松正

    ○宮里委員 きょうは外務大臣に、ちょうど先般の日米首脳会談の折に、宮澤総理からアメリカの国防長官にも沖縄の米軍基地の整理縮小などについて申し入れをされたということも聞きました。そして、アメリカの国防省からしかるべき回答もあったということを仄聞しておりましたので、そのことについてもゆっくりお伺いをしたかったのでありますが、時間がございませんので、そのことはいずれまた外務委員会などに譲りまして、きょうはこれで私の質問を終わります。ありがとうございました。
  43. 上田卓三

  44. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 鹿野総務長官がお時間の都合がおありだというふうにお伺いいたしましたので、総務庁長官にお聞きしたい面を先に聞かせていただいて、あとはどうぞお出かけいただいて結構でございます。  先ほどもちょっと話が出ていましたが、二十六日のソビエツキー・サハリン紙によると、色丹島などで行われた世論調査で、日ソ共同宣言を支持するかという設問に対して、投票者のうち八三%が宣言に賛成をして一三%が反対であった。この世論調査の結果を見て、私どもは本当にびっくりするぐらいの思いでうれしく存じたわけでありますが、やはりこれまでの各機関の一生懸命な努力が少しずつ浸透しているんだなというふうに思います。殊に、昨年から実施をしているビザなし交流等が非常な成果を上げているというふうにも思うわけであります。  そこで、まず一点、ビザなし交流の去年の経験等を見て私どもが思いますのは、一つはもう少し対象を広げていいのではないかな、例えば文化団体であるとかあるいはスポーツ団体であるとか。ことしはまた子供を本島側からやろうという考え等もあって、御苦労いただいているなとは思いますが、もう少し対象を広げでいいのではないか。  それからもう一点は、あれは半年前から六カ月かけて手続をやらなければいかぬものですから、それはそれなりに向こう側のさまざまの事情もあ るとは思うけれども、もっと簡素化、迅速化していいのではないかというふうにも思いますが、これらについて、まず御意見を伺いたいと思います。
  45. 鹿野道彦

    鹿野国務大臣 ただいま先生から、対象範囲をもっと広げていったらどうか、手続の簡素化、迅速化というふうなことができないのか、こういうことでございますが、この点につきましては、もともと北方四島との交流の枠組みというものは、北方領土問題の解決に寄与することを目的としてつくられたものであることは先生御案内のとおりであります。したがいまして、この交流が法的にもまた政治的にも複雑な問題を生じさせないということにもやはり配慮をしていかなければならない。そういうことを考えると、無原則な自由往来ということではなく、ある程度対象範囲なり手続についても限定されたものにならざるを得ないのではないかな、こんなふうに考えておるところであります。そのために、平成三年十月に閣議了解におきましてその訪問対象者を元居住者とか領土返還の運動関係者の方、報道関係者というふうなことにしておるわけでございますが、その手続につきましても、その趣旨目的に合致しているのかどうかということも判断するために必要な手続というふうに考えるわけであります。  しかし、今先生からの御指摘等もございまして、またそのようないろいろな考え方、今日いろいろな方面におきまして要請、要望等々が出てきておるということも踏まえ、何らかの措置をしなければならないなということは考えておりますが、基本的にこの手続の見直しなり対象範囲の拡大を行うということは現時点ではなかなか難しいのではないかと思います。しかし、現行の枠内で可能な点につきましては、今五十嵐先生から御指摘の点等につきまして何とか弾力的な対応ということにもなりますでしょうか、改善を進めますとともに、また同時に制度そのものの改正につきましては、今後の状況等を見ながらその必要性がありますならば検討してまいりたい、このように考えているところであります。
  46. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 委員長とうですか。我々理事会なんかでも時々話題になるわけでありますが、本委員会領土返還運動を行っている政治的な一つの中心の運動体でもありますから、これは四島の視察等もそろそろ行うべきではないかと思うのですね。聞きますと、今年の夏、横路知事も計画なされているようでありますが、これは委員長の所見をちょっと伺っておきたいと思います。
  47. 上田卓三

    上田委員長 私も、ぜひとも北方四島は当委員会として視察すべきではないか、そういうふうに思っていますが、後日理事会で御相談申し上げてと、このように思っております。
  48. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そういうようなことなんですが、政府側は、そういうことであれば一応それなりに御検討いただけますかな。
  49. 上村知昭

    ○上村政府委員 ただいま先生からそういうお話を承ったわけでございますが、先ほども大臣から御答弁申し上げましたように、北方領土への派遣をされる対象の中には国会の先生方も当然含まれている、お入りになっておられるわけでございます。ただ、私どもといたしましては、現時点におきましては元島民の方、そしてまたことしから返還運動関係者、全国レベルでの返還運動関係者ということで当面の交流を進めたいということで、また外務省を通じましてロシア側とも調整をさせていただいているところでございます。ただいまお話がございましたところですが、私どもといたしましては、先生方がいらっしゃるということは、大変に大きな影響をお持ちの方々でいらっしゃいますので、いらっしゃっていただくことが日ロ関係等にどういう影響といいますか、そういうものがあるかということもあろうかとは存じます。ただ、ただいまの、そういう委員長また先生のお話でございますので、今後お話がございましたときにいろいろ外務省とも御相談をさせていただきながら、いろいろとまた検討させていただくということにさせていただきたいと存じます。
  50. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それから、四島でのいろいろな経済的な、あるいは島民の生活なんかでも、殊に交流の中でいろいろうかがえる面があるわけであります。  そこで、これはもちろん一般的な対日支援ということでもありますが、特に四島に関して一億ドルの対日支援の中で、お伺いすると平成五年度として種芋の支援が六百万円、これはもうきのうかおとといぐらいに受け渡しになったんじゃないですかね。それから例の、この前から問題になっているディーゼル燃料の支援で千五百トンぐらい当面支援しようということで入札手続中というふうに伺っております。これも来月は行われることになるのでしょう。これらのほか、一億ドルの枠内で一般的な支援も四島について行われるのであろうというふうに思いますが、この辺の考え方で今年の方針として何かございましたら伺いたいと思います。  それと同時に、よく我々北海道で耳にするのですが、人的な交流はもちろん結構だし、これも拡大していかなきゃいかぬ。同時に、北海道だとか道内の各市町村等でいろいろな面で協力したい。例えば去年はあそこは大雨で河川がはんらんして災害があったんですね。そんなときには隣としてやはり何か応援してやりたいなという声も随分あるのです。しかし、一定の制約もあるわけだろう。一定の制約の中で、もしそういうことでお互い協力し合うという意味で可能な道があるのならば、それはどういう形態なんだろうかというようなことを我々は実は感じているのでありますが、この面なんかでも御意見があればお教え願いたいと思います。
  51. 津守滋

    ○津守政府委員 お答えいたします。  昨年、六十五億円計上いただきました。昨年の初めでございます。そして昨年の秋に補正予算で一億ドル計上いたしました。この計上いただきました人道支援に関する予算をどういうふうに配分するかということを考える際に、やはり極東、さらに北方四島についてはこれを重点的に考えていくという方針で対処してまいっております。  具体的な数字を申し上げますと、今先生部分的におっしゃられましたが、昨年、今御指摘の種芋とディーゼル燃料を除きまして一億三千万円相当支援を行っております。それからさらに一億ドルの予算のうち、これはおおよその数字としまして約五%、六・二五、六億円強の支援北方領土に行うことを考えております。  北方領土に対する支援につきましては、先ほど先生から御指摘もございましたように、領土返還を支持する住民のパーセントが大変上がっておりますが、これはやはりビザなし交流とか、こういった支援効果が出てきているのではないかというふうに考えております。そういう観点からも北方領土に対する支援を重視してまいりたいと思っています。  それから、後段の御質問の、自治体レベルの支援可能性でございますが、この問題につきましては、北方領土問題という政治問題の絡んだ地域でございますので、政府と密接に協議していただければケース・バイ・ケースで検討していきたい、こういうふうに考えております。
  52. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 どうかケース・バイ・ケースでひとつ自治体の相談にも乗って善意を生かすようにしてほしい。殊に細々したことなんか、向こうから交流で来ている現島民の話なんか聞くと、飼料が不足して養鶏場で鳥が全滅したなんという話などが出ているのですね。そういういろいろなことがあったときには少し助けようじゃないかという、お互いの人間の好意を生かしながらやっていくなんということは、これは細々した話ですが、また随分人を感動させる話題ですから、そういうことはやはり自治体レベルの仕事ではないかと僕は思うのです。よくそこは話し合いながら、善意を生かすようにお願いを申し上げたいと思います。  もう一つは、北方領土関係の問題で、今度エリツィン大統領が来ることになるのでしょうが、それに関連して私はお願いをしておきたいと思うのです。  それは、かねがね問題であって、我々も非常に心配していることでありますが、去年の十二月にロシアエリツィン大統領が最高会議に提出した大統領令、これは北方領土を含むクリル諸島の地元議会に対して、外国の投資家などへの九十九年間の賃貸を認めることができるという特別な権限を付与するという問題なのです。これは、題名といいますか案の——今は案ではなくなったわけですが、その大統領令の名前は、クリル諸島の社会経済複合開発計画というのでありますが、これが最高会議の承認を得て大統領令が発効したということです。これは非常に問題だ。ロシアが四島に対する固有の権限を持っているようなことを前提としてこういう契約を結ぶということは、我が国としては大変重大な関心を持たざるを得ない、容認できるものではない、こういうぐあいに私も思うわけです。  しかも、御承知のように、今度、従前のサハリン州のフョードロフ知事にかわってクラスノヤロフという知事になったのです。その新知事が就任して、四月二日に議会で承認を得た後記者会見をしている。その記者会見の中で、これも問題だと思うわけで、殊に大臣はそういう点も頭に入れながらサハリンを重視していかなきゃいかぬと思うのですが、発言の中の一つに、日本との間の領土問題の解決には日ロ両国の生活水準がほぼ等しくなる必要があり、それには五十年ないし百年かかる、こういうことも言っております。我々も、サハリンとの積極的な交流の中で理解を深めていく努力がもっと必要だなというふうにも思うのですが、その記者会見の中の一つに、クリル諸島の経済特区化には賛成するということがございまして、実は我々もこれを非常に心配しているところであります。  問題は、その大統領令に署名し、これを提案し、政令化したエリツィン大統領自身がおいでになるわけでありますが、どうかここのところをしっかり大統領理解してもらわなきゃいかぬと私は思うのです。こういう状況を残しておくということは決してよくない。去年いろいろとごたごたした香港の企業に関しては、外務省等の非常な努力解決を見たようでありますが、今のような大統領令については問題があると思うので、これについての外務大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  53. 津守滋

    ○津守政府委員 御指摘のクリル開発大統領令、これは昨年の十二月だったと思いますが、エリツィン大統領が発出したわけでございますが、これに対しまして、昨年十二月十二日に枝村大使よりクナーゼ外務次官に対しまして申し入れを行っております。  我が国政府の基本的な立場は、固有の領土であります北方四島におきまして、これらの島がロシア連邦に帰属することを前提とするような契約その他の行為が行われることは、それが日本国民によるとあるいは外国人によるとを問わず我が国政府としては絶対に受け入れられない、こういう立場をクナーゼ外務次官に申し入れたわけでございます。この点につきましては、今後も随時ロシア側にこの問題を指摘し、申し入れを行っていきたいと考えております。
  54. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 つまり、せっかく五月の末にお見えになるわけですから、さまざまな協議の中で、大臣、これはやっぱりよく大統領認識してもらわにゃいかぬというふうに思いますが、いかがですか。
  55. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 領土問題について、大統領が来られれば、そのときには宮澤総理からいろいろな角度から議論をしていただきたいと思っております。
  56. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いろいろな角度というのは、つまり今のことも含めて、こういうぐあいに考えてよろしいですか。
  57. 津守滋

    ○津守政府委員 そもそもまだエリツィン大統領訪日は決まっておりませんが、訪日が実現した場合には、当然のことながら領土問題が最も重要な議題になるわけでございます。その際に、この領土問題、直接その問題そのもの、それからさらに関連した問題等について当然日本側から問題を提起することになるわけであります。具体的にどういう問題を提起することになるかにつきましては、さらに今後エリツィン訪日の日程が確定することと並行いたしまして考えていきたいと思っております。
  58. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それでは、あるいは大臣も御認識が十分になかったかもしれませんが、少なくともこういう事実があることについて、やはり我が国として非常に問題がある、許せるようなものでないということ、そう思いますか。
  59. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 それは、我が国としては、北方領土の主権は日本の方にあるという姿勢で今日まで来ているわけでございますから、そこに外国のいかなる資本であろうとも投下されていくことに対してロシア政府が認めるというような方向は望ましくないというのは当然だと思います。
  60. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そういうような大統領認識を変えるようにぜひひとつ努力をしていただきたい、こういうぐあいに思います。  さて、それからもう一つ大統領にこれもがっちり言ってほしいということで、もちろん外務省もそうお思いだろうと思いますが、例の放射性廃棄物の海洋投棄の問題で、これはヤブロコフ大統領環境保健問題担当顧問が今年の二月に大統領に提出されたというのであります。これによると、一九五九年から九二年にかけて日本海、オホーツク海、北太平洋、バレンツ海などが核のごみ捨て場として継続的に使われてきた。日本海など極東海域では十カ所の投棄海域が指定されて、六六年から大量の放射性廃棄物の投棄が続いた。日本海では、原子力潜水艦の廃炉が二基捨てられたほか、液体廃棄物、中レベル固体廃棄物などが投棄された。今月六日の今のヤブロコフ大統領顧問の発言によると、現在も投棄が続けられていて今後も中止する考えはない、こういうことを言っているのですね。今ロシア海軍は六十隻以上の原潜を保有していて、処分に頭を悩めているという話も聞いたりもするのですが、我々としても非常に心配だ。この前、横路北海道知事も、道民のそういう心配を体して、政府にもいろいろ要請をしたりアピールをしていたようであります。  言うまでもなく、これら廃炉などの高いレベルの放射性廃棄物の海洋投棄は一九七二年の海洋投棄規制条約で禁止されていて、その条約違反であることはもう明確なことであります。これについて、既に政府もいろいろ抗議等もしているようでありますが、科学技術庁等を中心にして今調査を進めているようであります。  そこで、お聞きしますと、ロシア側との共同調査の申し入れ等もしているようでありますが、その辺がどういうことになっているのか。これはやはり向こう側の海域で、なかなかこっちで勝手に調べられないという点もあるようでありますから、その辺のところ、向こうの回答がどうなって、これから共同調査等が可能な状況になっているのかどうか、そんなこともお聞き申し上げたい。あるいは、科学技術庁のことですから、これら放射性廃棄物の処理処分に関しては、我が国の場合はかなり技術的に検討しているわけでありますが、技術的な協力等についてもお考えになっていると思います。それらについてお聞きしたいのと、それから、当然ながら五月の末に大統領訪日されるということになれば、このことも含めて強くお話しするものであろうと思いますが、いかがですか。
  61. 津守滋

    ○津守政府委員 旧ソ連及びロシアによります放射性廃棄物の海洋投棄問題につきましては、当然のことながら我が国としまして重大な関心を持っておりまして、昨年十二月にその報道がロシア新聞でなされて以来たび重ねて、しばしば機会をとらえてロシア側に即時中止を申し入れておるわけでございます。  御指摘のように、今月中旬コズイレフ外務大臣訪日した際に、日ロ外相会談武藤大臣より、海洋投棄の即時中止を申し入れるとともに、日ロ間の合同作業部会の設置それから共同での海洋調査の実施を申し入れた、提案したわけでございま す。これに対しましてコズイレフ外務大臣から前向きの回答がありまして、現在ロシア側に対しましてできるだけ早く合同作業部会を開くよう申し入れておるところでございます。  この問題、非常に重要な問題でございますので、当然あらゆる機会を通じてロシア側に申し入れ、話し合っていく必要がございます。もしエリ・ツイン大統領が来た場合にこの問題を取り上げるべきだという御指摘でございますが、その点につきましても、仮にエリツィン大統領訪日が確定した場合には、何をロシア側との間の話し合いの議題にするか、この点をも含めて考えていきたいと思っております。
  62. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 この点をもう少し聞きたいのでありますけれども、時間がありませんので次の問題に入りたいと思うのであります。  これも先ほどいろいろ議論があったところであります。いわゆる政経不可分拡大均衡の問題でありますが、いろいろ聞きましても、どうもやはりぴんとこないですね。これはどう違うのですか。同じものではないですか、政経不可分と申しましても拡大均衡といっても。拡大均衡といったって、片側だけ行ってしまうということは均衡でないわけでしょうから、要するに不可分的に発展させていくということなのか。ちょっとそこが、まあ別に違いやしないんじゃないか。違いやしないし、あるいは先ほどもちょっとお話があったように、宇野さんが行かれたときのお話でありますから、あれは八九年のときですね。あのとき以来そういう表現になっているわけでありますから、今のロシアの新しい危機的な状態、それは本当に世界じゅうが支援しなければだめだということになって、我が国が、よし、それでは領土のことばかり固執しているのではなくて、そのことにも力を入れていかなければいかぬということになって今政策を変えるということであるとすれば、今の拡大均衡なんといったって、もう何年も前から言っていることを、改めて政経不可分というのはもう使わないことになった、そこで拡大均衡でございますと今ごろ言ったって、何も格別それはかわりばえのするような話ではない。率直にぶちまけた話で言うと、そんなぐあいに思うのです。だから、もう少し思い切って何か言い方を考えていっていいのではないかと私は思いますね。  ただ、この前の武藤大臣の発言は、これはかなり思い切っているなというふうに思った。その後少しくニュアンスが変わってきたようでありますが、四月十三日の発言、あれは、すべてを超越して支援するのは当然だ、その前後もあるでしょうけれども、私はおっと思ったですね。こういうぐあいに言い通すということも、それは国内の状況からいくとなかなかそうもいかないのでしょうが、しかし、やはりここはもう少し踏み込んだ言い方があっていいのではないかと思う。  それは基本的に、領土の問題というのは我が国にとっては絶対譲ることのできない大方針であります。そこはそういうぐあいにがっちり踏まえながら、しかし今のロシア状況であれば、この際やはり経済支援を優先してやろうじゃないかということぐらい国民に率直に言って、そしてそういう方向でやっていく。だから、拡大均衡といっても、拡大均衡の場合に二つの要素がいつでも真っすぐ並んでいくというものではなくて、相手があることなんだから、周辺の状況があることなのだから、こっちの事情もあることなのだから、やはり二つの政治経済というものが、あるときには前後しつつ、ある期間の中で総体としては発展的に拡大均衡していくということを考えるべきであって、今まさに、この際、経済を重点に考えるべきだというふうに私は思うのですが、大臣いかがですか。
  63. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 あのときに私は、すべてを超越してということを表現したのか思い切ってと言ったのか、ちょっとその辺が自分でも、記者会見で話したことでございまして、いずれにしても私の表現が少し誤解をされておったということで、私は釈明をして、今反省をいたしておるわけでございまして、そこまで思い切った発言を今はいたしておりません。  そこで、拡大均衡という表現で今通しているわけでございますが、どうもわかりにくいということをいつも言われるわけでございます。ただ、今御指摘のとおりで、国民の感情からいたしますと、やはり領土問題というのがあるわけでございまして、この領土問題の解決なくして平和条約の締結もない、両国の完全な正常化もないということを考えますと、それはそれでわかるけれども、思い切って経済支援をしろと言われてもなかなか二国間ではそこまで踏み込めない、やはり拡大均衡という一つのしがらみの中でいかなければならないという日本の宿命ではなかろうかと思うのでございます。  ただ、これもわかりにくいと言われるのでございますが、国際的な立場に立ちますと、日本の置かれている立場というのは経済大国となってしまいまして、また経済状態も、他の先進国と比べても、景気は悪いとは言いながら、比較をすれば日本経済状態はまだいい方でございます。そういう面からも、非常に日本期待がかかっているものでございますから、その面においては、この間のG7合同閣僚会議においては、片方のそういう拡大均衡というしがらみの中でどこまで国際協調の中でいけるかというぎりぎりの線がこの間の二国間の支援であったというふうに一応自分としては、何といいますか、そういう形で意義づけているということでございます。
  64. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 時間が来ましたので、最後に、東京サミットでは二国間問題は取り上げない、先ほども少しお話があったところであります。あらかじめは取り上げる用意はない。しかし、協議でありますから、その中で当然出てくる話題としては予想されるわけで、その場合には、当然、自然にそういう討議が出てくるであろう。政治宣言に我が国の方は積極的にこの前のように意図することにならないのかもしれませんが、全体の議論の中でそういう状況になればそういうこともあり得るのか、あるいは五月の末ごろに大統領が来たときの話題等も判断しながらサミットにおける性格が固まってくるのか、その辺については大臣の見解としてはいかがですか。
  65. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 当然、エリツィン大統領が五月に来られるということになれば、そこではこの二国間の問題が中心でございますから、領土問題を解決して平和条約を締結しようという話を出すことは当然でございます。  東京サミットにおいては、これはまだ最終的に議題が全部固まったわけではございませんが、今いろいろと各国の事務当局同士で詰めている段階では、開発途上国の問題、ロシア支援の問題、それからマルチの立場での大きな世界的な経済問題という形で、その辺のところが今固まりつつある議題だろうと思うのでございます。ですから、議題にのせるかどうかというのは決まってない。私は先ほども申し上げておりますように、こういう二国間の問題を初めから議題にのせるということは、少なくとも常識的にはあり得ないのではないか。しかし、首脳間で話し合っていろいろ話が出ますから、そこで、いやこれはコミュニケの中に入れようじゃないかというようなこともないとは言えないのではないかと私は思っておるわけでございます。
  66. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 どうもありがとうございました。
  67. 上田卓三

    上田委員長 上原康助君。
  68. 上原康助

    ○上原委員 非常に短い時間で、私は余り機会もございませんので、沖縄の問題についてお尋ねさせていただきたいと思います。  けさの外務委員会の審議とも若干継続というか関連するわけで、あそこでも時間がありませんでしたので、改めて外務省沖縄開発庁、また多分農水省もいらしていると思うのでお尋ねしますが、私は、委員会等で取り上げてきた重要課題について中途半端にしたくないという気持ちが強いので、それぞれの課題、要望を兼ねて重ねてお尋ねをしておきたいのです。  ことし十一月に八重山群島のウリミバエが完全に根絶される、沖縄群島というか琉球列島、南西 諸島全域からウリミバエがなくなるということは画期的な出来事なので、大変喜ばしいことです。そこで、沖縄県はこれまでの実績を踏まえて、政府協力と助言もいただきながら、東南アジアあるいはアジア近隣諸国に国際協力ないしは国際貢献という立場から、復帰後できたウリミバエの施設と技術あるいはその関係する諸方法を活用したい、こういう強い希望を持っておるようであります。  そこで、せんだって植樹祭がようやく無事に終了したこともあって、来る十一月に沖縄でウリミバエの撲滅のための国際シンポジウムを開催したいという強い意向を大田知事、関係団体がお持ちのようであります。目下その準備を進めつつあるようですが、私はこの件について二、三回予算委員会の分科会あるいは沖特等でも取り上げて、田名部農水大臣初め関係者の非常に前向きな御答弁もいただいてきたところでありますが、この件について沖縄県から何か具体的というか、御相談などこれまであったのかどうか、それが一つ。いろいろ他のイベントなどであるいはまだそこまでいってないかもしれませんが、もし具体的にシンポジウムを含め前段で私が述べたことなども沖縄県がこれから具体的事業というか計画として進めていきたいという場合に、外務省、農水省、沖縄開発庁はどう対応していかれるのか、お答えをいただければありがたいと存じます。
  69. 大川義清

    ○大川説明員 お答えいたします。  去る二月二十七日付の琉球新報によりますと、沖縄県知事は「ウリミバエの国際シンポジウムを国の関係機関と調整し、開催できるよう検討している」と述べたとされております。過去におきまして、平成三年九月に、世界のミバエ学者が集まりまして沖縄県などの主催でミバエ類の生態と防除に関する国際シンポジウムが開催されたこともございます。今回、国際シンポジウムの開催につきましては、農林水産省としてはいまだ聞いておりませんけれども沖縄県から協議または相談がありますれば、東南アジア諸国の意向も踏まえ、国際シンポジウムの開催に協力できるかどうか検討していきたいと思っております。
  70. 川上隆朗

    ○川上政府委員 先生御指摘のミバエの殺虫技術に関する国際協力に関しましては、まず一般論として、途上国からの要請が非常に多い、農業分野への技術協力として我々として非常に重要であると考えております。  本分野の協力といたしましては、JICAを通じまして、従来アジア地域、中南米地域等におきまして、まず昭和六十三年から今日に至るまで五、六年でございますが、毎年五、六名の研修員を受け入れておりまして、これはJICAの沖縄センターで研修を開いております。それから、中国、タイ、マレーシアに対しましては専門家を派遣した経緯がございますし、フィリピン、タイ、中国、マレーシア、コロンビア等に対しまして、機材の供与、これは蒸熱処理という熱を使って殺すというやり方でございますが、その面での機材供与も行っております。それから、沖縄でこのたび開発されたいわゆる不妊虫放飼法、メスにコバルトを当てて卵を産まないようにするという基本的なやり方につきましては、既に先ほど申しました沖縄の国際研修センターで一部研修事業で取り上げているという経緯はございます。しかしながら、まだ一般化しているというところまではいっておりません。  今後、この根絶技術等を東南アジア諸国に対しまして、彼らのニーズに基づきまして、どのような形で技術移転できるかにつきましては、これは技術的な点を伴いますものですから、農水省、沖縄県等関係機関とよく協議しながら検討してまいりたいというふうに思っております。
  71. 上原康助

    ○上原委員 沖縄開発庁も局長おいでですが、これはもちろん復帰後の第一次、第二次、今も進められている第三次の振興計画、特に農産物、農業振興という立場からも、このウリミバエの撲滅事業沖縄開発庁としては非常に力を入れてこられたことですね。開発庁は、この件については今それぞれ御答弁があったのですが、どういう御認識で、また、恐らくある程度県側とも認識、すり合わせというか、相互理解を深めてこられたと思うのですが、御見解を聞かせていただきたいと思います。
  72. 渡辺明

    渡辺(明)政府委員 御質問のウリミバエにかかわります国際シンポジウムにつきましては、沖縄県において検討がなされておるという報道等がございましたことは承知しておるところでございます。ただ、このシンポジウム開催につきましては、沖縄開発庁といたしまして、県から聞いておりませんので、具体的に県から相談等がございますれば、農林水産省等と十分連絡をとりながら、このシンポジウム開催に協力できることがあるかどうか十分検討をさせていただきたい、このように考えておるところでございます。
  73. 上原康助

    ○上原委員 遠からずそういう要請が県側から出されるものと私は思いますので、それぞれぜひ御検討いただいて、成功するように一層の御配慮を願いたいと思います。  そこで、外務大臣にも御所見をお伺いしておきますが、通商産業大臣とたしか農林大臣もやったんじゃなかったかな。こういうものに非常にお詳しい。今外務省経済協力局からも御答弁がありましたように、沖縄には御承知のように国際センターがある。そこでも一定のそういった技術習得というか勉強をしている、研究しておられる。あの機能も生かしながら、せっかくこれだけの成果と、内外から相当高くこの技術なり施設は評価をされているわけですから、今後日本の国際協力というか、このアジア近隣諸国に対していろいろと人的あるいは物的、技術的支援という面で、これは非常に意義ある一つ事業でありテーマだと私は思うのです。そういう意味で外務大臣として、また国務大臣として積極的にこの点について御検討いただいて進めてもらいたいと思うのですが、いかがでしょう。
  74. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど局長の答弁を聞いておりましても、既にある程度協力外国に対して、タイその他に対してやっているようでございますし、このミバエの問題というのは、私が農林大臣をやりましたのはもう十三年前でございますが、あのころから本当にいろいろ言われていて、沖縄もおかげでチチュウカイミバエを克服していただいたわけでございます。そういう沖縄の克服された大変すばらしい実績というのは私はよく承知をいたしております。そういう技術というものが、できるだけ東南アジアを初め各地に協力をしていくという形で提供されていくことは大変いいことだと私は思っており、進めていきたいと思っております。
  75. 上原康助

    ○上原委員 ぜひひとつ各関係省庁と、縦割りじゃなくして横の連携をとりながらこの計画が成功をする方向で御検討いただきますことを改めて御要望申し上げておきます。  あと、今非常に平和的な話をしたんだが、今度はまた難しい基地問題を少しお尋ねさせていただきたいのです。  きょうは時間がありませんので改めて外務大臣の基本的な御認識をお伺いをしておきたいのですが、この所信表明を一読して、大変残念ながら依然として冷戦志向型の日米安保体制を最優先する立場でしか沖縄の基地問題を見ておられない、こういう感をぬぐえません。だが、せんだって私が二十三日でしたか外務委員会で取り上げたときにも、それなりの外務大臣の意欲というものを例えたので、この所信表明とは別にするというか、ただ安保優先の立場でやるとは思いませんが、少なくとももう少し、これだけ国際情勢が変化をしたならば、新たな視点で沖縄のあの過密な、濃密な基地の整理縮小、返還というものをやっていただかなければいかないと思うのですが、改めて決意を伺いたいということが一つ。  もう一つは、歴代の外務大臣は、沖縄の基地視察をやったことがないのですよ。伊東正義さんが大平内閣のときに外務大臣をして、沖縄に行くという日程まで組んでおられた。ハプニングが起こってとうとう実現しなかったのですね。私に直接お電話があった。私はあのころから内閣とかい ろいろ予算委員会などやっていましたので、伊東さんからわざわざ行けなくなったので済まぬと。その後、中山太郎さんが外務大臣になったり、倉成さんあるいは安倍大臣も行きたいというお気持ちを申されたかもしれませんが、それぞれ視察していないのです。北米局長だって、復帰前か復帰直後は行ったがこのところ行っていないというのだから、これでは推して知るべしなんだ。そろってこの五月十五日前後の沖縄の基地をまず見ていただいて、やはりこれでは上原がいつも口を酸っぱくして言うのも無理がないという御認識をまず持っていただかないといかないのじゃないかと思うので、この二点、きょうはお聞かせをいただきたいと思います。
  76. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、幾ら冷戦が終結をしてもまだまだ日本を取り巻く環境は、北朝鮮を初め不安定要素がやはり残っているわけでございまして、そういう面からは日米安保条約は堅持をしていかなければならない、そのための必要最小限の基地だけは残しておかなければいけないという考え方を持っております。その意味において、沖縄の基地というのは、今御指摘のとおりで密度が高いと私は思っているわけでございまして、ぜひこの施設、区域の整理統合は図っていかなければならないと思っております。幸い、前大臣も国防長官に言ってくれたようでございますし、宮澤総理もこの間おっしゃったようでございます。私もその方向で今後とも強い決意でアメリカ側と話をしていきたいと思っております。  そこで、沖縄はそういう面でいけば、アメリカと話をするにも自分の目で見て判断をするということは大変大切だと思います。私は突然なったものでございますから、大変な今スケジュールでなかなか余裕が、まあ今度もゴールデンウイークの間私は日本におられれば非常によかったのでございますが、外務大臣という立場からいくとどうしても一国でも多くの国を訪問しなければいけないそうでございまして、行かざるを得ないものでございますから、ひとつ近いうちに、少なくとも五月は無理だと思いますけれども、六月か七月か、その辺には一度ぜひ機会を見て、日帰りでも行けるわけでございますから、基地だけはちょっと見せていただきたい、こう私は思っております。
  77. 上原康助

    ○上原委員 ぜひそうしていただきたい。もちろんお忙しいのもよくわかるし、大変だと思うのですが、五月じゅうに無理であるなら六月二十日まで国会がありますし、六月二十三日は沖縄慰霊の日でもある、そういう節目に、日帰りでも気持ちが動けば無理はあっても不可能ではない、今そういうお答えがありましたので、それを我々も大臣の誠意と受けとめて、これからまた基地問題の解決のために努力をしていきたいと思います。  そこで、具体的に、県道一〇四号線封鎖の実弾砲撃演習というのは本当に疑問です。どう考えても、植樹祭をしてどんどん木を植えたって、一方では山を焼いたり爆弾を撃ち込んではげ山にするということは、これは矛盾しますよ。そのことは別としても、やはりああいうことは戦後五十年近く続いてきているわけですから、何らかの形で解決をしてもらいたい。  あとは、この間もお尋ねしましたように、総理アメリカの高官に対して沖縄の基地問題にコメントしたというのは、私はそれなりに評価します。しかし、それを受けて事務当局というか、政府間レベルで具体的に進めていかなければいかないわけですから、その場限りにしてはいかないと思います。私はいつも言うのですが、一〇四号線とか読谷のパラドラ訓練の中止あるいはその移転、那覇軍港、普天間基地、私の住んでいる嘉手納町のマリーナ、日本人は海で泳げないのに、アメリカ人はたくさんの基地も使って憩いの場も自分勝手に排他的に使う。今はそういう社会構造ではないですよ、米軍基地といえども。ですから、こういうことについては、今後具体的にこれまでの懸案事項を含めて進めていかなければいかない課題だと思うのですが、改めて政府のこれからの対処の仕方をお答え願いたいと存じます。
  78. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  お時間もないようですから簡単に申し上げますが、従来からの懸案についてこの間から繰り返し申し上げておりますように、二十三事案に限らず、昨年の五月十五日のときに、もう一度見直した那覇の軍港の港湾施設の問題も含めて、なるべく早く一つでも多くの整理縮小を進めたいと思っております。いつも弁解がましい話に聞こえて恐縮でございますが、政権の交代ということで、例えば国務次官補は決まりましたけれども国防次官補のうちの地域の担当のが、人の名前は出ているのですがまだ確定していないような状況でございます。そういう意味で、この問題には国務省、国防省、ホワイトハウスもそうですし、太平洋軍司令部、在日米軍、大使館、沖縄の現地米軍の問題、いろいろな方面を巻き込んでみんなの意思を引っ張っていかなければいけないことでございますので、少し話がおくれているのは心苦しいのでございますが、この間も申し上げましたように、総理のレベルで問題を提起していただいたということも、また外務大臣レベルでも前の大臣からもなさいましたし、今武藤大臣もそうおっしゃっておられますので、そういうことを背景にしてなるべく早く事が進むようにまた努力をしてみたいと思っております。
  79. 上原康助

    ○上原委員 もう時間ですので、県民が非常に期待をしております、関心を寄せている課題でありますから、ぜひ積極的に御努力を願いたいと思います。終わります。
  80. 上田卓三

    上田委員長 玉城栄一君。
  81. 玉城栄一

    ○玉城委員 外務大臣に二点ほどお伺いをいたします。  第四十四回全国植樹祭が一昨日、天皇皇后両陛下をお迎えして、さらに衆議院議長それから農水大臣、文部大臣、郵政大臣沖縄開発庁長官等の閣僚の方も多数出席をされて、盛大かつ大成功のうちに開催をされたわけであります。  そこでお伺いしたいのは、外務大臣沖縄とは日米安保条約で非常に密接な関係がありますが、テーマは「育てよう地球の緑そして豊かな未来」ということになっているわけです。このテーマと逆行するようなことが米軍基地はされているわけです。そういうことも含めまして、外務大臣の所感をお伺いいたします。
  82. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今の日本を取り巻く情勢は、先ほど申し上げましたが、まだまだ不安定要因が残っておりますので、私どもとしては日米安保条約は今後も堅持していくという考え方でございます。その中で、米軍基地というのは必要最小限であるべきだ。しかしながら、沖縄においては密度の高い形で依然として基地が残っておる。今御指摘のように、一方においては緑をふやしていかなければいけないときに、一方においては緑が少なくなるようなことではいけないのじゃないかというのはよくわかるわけでございまして、今後米軍の施設、区域について、特に沖縄米軍施設、区域について整理統合を進めていくように、できるだけ早い機会に私自身もアメリカ側と話をしてみたいと思っております。
  83. 玉城栄一

    ○玉城委員 十分しか時間がありませんので端的にお伺いします。  外務委員会あるいはこの沖縄委員会でもずっとこの件も取り上げてまいりましたけれども、いわゆる那覇港湾施設、那覇軍港と我々言っております。大臣も御存じだと思いますが、これは昭和四十九年に第十五回日本安全保障協議委員会で全面返還をするというもとに合意がされたわけです。ただ、その条件といいますか、代替地を条件とする、以来十九年間そういう状態で来た。御存じのとおり、小さい沖縄県で代替地を求めることは非常に難しい、そういう理由で今日までこれが返されない、沖縄の振興開発に非常な障害になっているわけです。ですから、新大臣がこの辺でこの点を何とか前進させるということをひとつお願いしたいわけですが、いかがでしょうか。
  84. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 この問題は、昨年来私もやっておりましたものですから、現状について御報告させていただきたいと思います。  御承知のように、当初の合意が代替地を見つけ て移転するということで、私も、委員のおっしゃるように今代替地を見つけるということが大変難しいことはよく承知しておりますし、この難しさはまさにこれまでの時の流れが示しているんだろうと思います。他方、この港湾施設そのまま全部がどうかという問題は別といたしまして、アメリカにとっても、これはまたどうしても必要な施設だということも私たちはわかります。そこで、そこの間をどういうふうにとるかということで、今議論を行きつ戻りつやっているというのが実態でございます。  この問題につきましては、そういった米軍の要請との調和ということに加えまして、沖縄地元方々の御要望の中に、また私の承知している限りでは、取り扱いについて必ずしも一様ではないというふうに聞いております。そういう意味で、その間でどこに妥協点を見出すのか。今おっしゃられたように、もう代替地は無理なんだから代替地をあきらめて全面返還でというのは、一つの理論的な可能性としては考えられるのだろうと思うのですが、これはアメリカ側との調整のつかない選択の道と言わざるを得ません。そこで、その間をとって、地元の要請と安保条約上の米軍、アメリカ側の要請といかに調和させるか、ここを今施設庁とも、米軍ともいろいろ議論をしているということでございます。  歯切れの悪い中間報告的なことでございますが、今そこで苦慮しているというのが実態でございます。
  85. 玉城栄一

    ○玉城委員 苦慮していらっしゃることは、この十九年間も放置している状態ですからわかりますけれども、この港湾施設というのは自由貿易地域があるわけです。それは那覇の飛行場のそばでもあります。海の入り口といいますか玄関口、この沖縄のこれから、振興開発の第一次、第二次そして今第三次に入っているわけですけれども、それだけに非常に大事なものなんですね。ですから、これを何とかめどづけをしたい、しかし代替地がない、こういうことの繰り返しては、いつまでたっても解決しないと思うのです。  ですから武藤大臣、これは沖縄の発展に、これから二十一世紀に向けて沖縄県民総力を挙げて、一昨日の陛下を迎えての植樹祭にもそういう決意をしているわけですから、そういうことができるような状態をぜひつくっていただきたい、お願いするわけです。よろしくお願いします。
  86. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 二十年前に合意したことが今なお実現していないというのは本当にいろいろ問題があるというふうに私は推察するわけでございますが、いずれにしても、先ほど申し上げましたように、沖縄の基地全体の施設、区域についてどういう形で整理統合していくべきか、私自身も考え方を固めて、そしてアメリカ側と私自身も機会を見て話をしてみたいと思っております。この問題も含めて話をしてみたいと思います。
  87. 玉城栄一

    ○玉城委員 終わります。
  88. 上田卓三

    上田委員長 藤原房雄君。
  89. 藤原房雄

    ○藤原委員 先ほど同僚委員からもお話があったのですけれども、本日の武藤外務大臣所信表明渡辺外務大臣、前の外務大臣と一言一句変わらぬというお話でありますが、外務省は非常に忠実に初心を貫き通しておるということで、大変に評価いたしたいと思うのであります。  それはそれとしまして、ここのところ、私ども政経不可分それから拡大均衡原則、こういう新しい言葉が出て、どうも今まで国民の大きな世論を受け、ことしはもう六千万からの北方領土返還の声を結集した。こういうことで、運動に携わる方々は全国に広がり、そしてまた大きなうねりになっておる。  こういう中にありまして、国際情勢が変わり、ソ連の現状が変わったというのはみんな百も承知でありますけれども、しかしながら、その奥底には、要所要所にはきちっとした日本の姿勢というものが浮かび出ていなければならぬと思いますし、訴え出なければならぬと思うわけであります。こういうことからこの最近の一連の推移を見ますと、どうも日本の出番がないといいますか、日本の主張する場がなかったのか、どういうことなのかと思わざるを得ない、そういう場面が非常にあるわけであります。  その一つは、過日米ソで首脳会談を行いました。その米ソの首脳会談で、多国間、二国間、いろいろ支援をいたしましょう、いろいろなお話し合いが決まったというところから出発をいたしまして、この過日の支援策、こういうことが決まり、それは当然国際情勢の中でせざるを得ないということであるかもしれませんけれども日本のその基本的な主張というものを明記する、主張する場、そういうものがないままに推移をしておる。こういうことに対しまして、今日まで運動してきた方々にとりましては、一体これはいかなるものか、こういう気持ちを持つのは当然のことだと思うのであります。  だれしもロシアのこの経済の混乱状況は知っておりますから、「ロシアは、改革に伴う多くの政治的、経済的問題に直面しておりますが、我が国は同国での改革が完遂されることを強く期待しており、国際社会とも協力して適切な支援を進めていく考えであります。」ということに対して、そんな必要ないなんという方はどなたもおりません。「同時に、法と正義に基づき北方領土問題が解決され、日ロ関係の完全な正常化が実現することは、日ロ両国にとってのみならず国際社会にとっての利益でもあると認識しております。」これもまたそのとおりであります。  この両方をどうバランスといいますか、そのときどきに応じて進めるかということだろうと思うのでありますけれども、ここのところは前半の部分に非常にウエートが置かれた対応であり、今日まで営々と北方領土返還の運動に携わってきた方々からいたしますと、何か政府方針が変わったのではないか。大臣もさっきみずからおっしゃっておりましたけれども拡大均衡というのは一体どういうことか。私もよくわからぬでいろいろ説明を聞きましたなどと言いますが、大臣経験の豊富な武藤外務大臣でさえも何かお勉強しなければちょっとわからぬということでありますから、いわんや国民方々は、そしてまたシビアにお考えになっていらっしゃる方々にとりましては、ここのところはやはりきちっとした国民に対する納得といいますか、御説明、またその考え方というものを明確にすることが大事ではないか、こういう気がしてならないわけでありますが、いかがでしょうか。
  90. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 拡大均衡というのは何も私になってから出した言葉ではないわけでございまして、先ほども申し上げましたように宇野外務大臣のころから外務省が使い出した表現でございます。  そこで、先ほど来繰り返すようでございますが、要は、政経不可分拡大均衡というその結びつきをどう見るのかということで、省内で私は議論したわけでございますが、要は政治経済というのは不可分である、一般原則としては当然だ、これはだれでもわかることでございます。  その中で、過去においては、いわゆるゴルバチョフ以前の状況においては、ソ連側が領土問題に対しては、一切そういうものはないという非常にかたくなな姿勢であった。だから、そのころは政経不可分という表現が、あたかもただ政治経済とは一体であるという考え方以上に、それが領土問題と非常に密接に結びついている、こういうふうに表現がなされてきた、言葉が使われてきたと私は見ておるわけであります。そして、それに対して拡大均衡はどうかと言えば、ゴルバチョフ以降は領土問題が二国間に存在するということをソ連側も認めるようになってきた。そこで、そういう認めるようになってきたら、経済面においてもある程度許される範囲で協力をしていくことによって領土問題が解決をされるのじゃないだろうか、領土問題と経済支援というものをそこで絡み合わすというか、並行して進めていこう、こういう考え方に変わったのが今日までの日本政府の姿勢であったと私は思うのでございます。  ただ、最近この問題が大きくなってまいりまし たのは、たまたまG7全体閣僚会議日本で行われ、対日支援の問題が大きく取り上げられたものでございますからこの問題とその問題とが結びつけられてきたわけでございますが、この拡大均衡考え方はあくまで二国間の問題として私は考えておるわけでございます。しかし、二国間の問題とはいえ、では多国間で話をするときはそれは一切無視するというわけにはまいりませんので、多国間で話をするときにもその問題を常に頭に描きながら、あるいは個別には日本にこういう領土問題があるよという話をしながらG7はまとめてきた、こういうことでございまして、今後も拡大均衡考え方を推し進めていくつもりでございます。
  91. 藤原房雄

    ○藤原委員 バンクーバーでの米日首脳会談、その後宮澤首相がクリントンにお会いする、G7でも全体会議でのいろいろな取り決め、支援策、こういう一連のことの中で、私、何も拡大均衡という言葉じりにこだわっているわけでは決してないのですけれども日米首脳会談でも宮澤総理が、北方領土を深追いすることは得策ではないということを明言した、こんなこと等も報道されております。そういうこと等を考え合わせますと、国民としては、今日までこれほど燃え上がってまいりまして活動を続けてきたこれが、外交方針が一体変わったのかという危惧を抱くのは当然のことだろうと思います。  今、大臣、いろいろな機会をとらえてということでありますが、これはサミットのどういう場でどういう形になるのか、また来月、五月の末にエリツィンが来るかもしれないということでありますけれども、幸いなことに大統領の支持は予想どおり基盤が揺るがなかったということでありますから、来るか来ないかはまだわからないかもしれませんけれども、来る可能性は非常に強くなったのだろうと思います。ただ、国内的には経済的な混乱もあり、また保守派の動きもあり、今までとそう大きく国内情勢が変わったわけではないだろうと思います。  そういうことからいいますと慎重な態度が要求されるのかもしれません。しかし、それはエリツィン立場としてはどこまでどう発言できるかということでありますけれども外務大臣は、外交交渉で二国間、多国間交渉をするということももちろんありますが、国内に対してはきちっと表明がなければならぬだろうと思います。報道等を見ますと、宮澤総理アメリカへ行く、アメリカでいろいろなことを言う、言ったことに対して指摘をされる、それで後追いといいますか弁解といいますか、そんなことで、それはこういう趣旨でありましたというようなことを後から言うケースが非常に多い。そういうことからしまして、今までの活動に水を差すことのないような毅然とした態度で、そしてまた大事なときにはきちっと、今日までの活動を踏まえまして、変わったのか変わらないのか、どういう趣旨でこういうことが行われたのかということ等については疑問を抱くことのないように、国民一丸となって、この大きな領土問題についての盛り上がりができ、北方領土の日も設け、そして今日まで参りましたものがいささかなりとも疑念を抱くことのないような今後の外務省の対応をぜひお願い申し上げたいと思います。その決意のほどをお伺いしておきます。
  92. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 日本国民北方領土に対する考え方、私どもよくわかっておるつもりでございます。いわゆる政経不可分の延長線上に拡大均衡というのが出てきたわけでございまして、その拡大均衡考え方も今後とも堅持をしてまいりたいと思っております。
  93. 藤原房雄

    ○藤原委員 エリツィンが来るのか来ないのか、そしてまた来たらどういうことになるか、議題は何なのか、こういういろいろな問題については、まだ不透明な問題でありますから当委員会で云々する段階ではないだろうと思うのであります。時間も限られておりますので、それらのことについてはまた後日お話しいただくとしまして、今日まで続けてまいりましたビザなし渡航、これは二年目に入るわけですね。こういうことは、一年間の反省の上に立ちましてことしはどうするか、より効果的な方法を、大臣が参議院の内閣委員会の方でお忙しいようでございますから事務当局で結構ですが、要所要所は国務大臣である外務大臣にお答えできるところはお答えいただきたいと思います。  これは、先ほど同僚委員からもお話がございましたが、ことしは昨年と違いまして国の予算もつきました。そういうことから全国規模交流推進会議ができまして拡大するということであります。昨年までは、受け入れ先は道内に限るとか、出る方も道内関係者ということでありましたけれども、そういう点では拡大することになるわけであります。さらにまた、実質的な回数それから人員、これもまた、大幅とは言えませんけれども相互交流が盛んになるということであります。昨年一年間を見ましても、相互交流によりまして、日本の主張やいろいろな交歓の場とともに日本考え方等も話し合う場があって随分理解させた、いろいろな世論調査の結果等を見ますとそういうものが出ておるように思うわけであります。  最近、この二十二日ですか、参りましたものを見ますと、今までとは違いまして、確かに日ロ合同でいろいろなことをなさることや家庭訪問等もございますけれども農業研修とか医療とか農業事情の情報交換とか、こういう技術的なことに非常に興味を持っていらっしゃる方々もいらっしゃる、こういうことで、昨年とは違った形のものが要求されつつある。やはり経済ということを最優先というか考えていらっしゃるだけに、これから何度か繰り返す中で順次また考えていくことなのかもしれませんが、ビザなし渡航につきましてのいろいろな状況を見て、その状況に応じて今後対応していく、こういうこと等も念頭にはあるのですか。決まったことを当たり前にやっているということじゃなくて、いろいろな状況に応じて、年の内でありましてもこれを変更する可能性、変更といいますか、対応できる形に変えていく、またいろいろなものを導入していく、こういう余地はおありなのかどうか、その辺ちょっとお伺いしておきます。
  94. 上村知昭

    ○上村政府委員 お答えいたします。  先生、最初一つお断りをさせていただきたいのでございますが、私ども総務庁は派遣の方の担当でございますので、そちらの方につきましてちょっと述べさせていただきたいと存じます。  先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、このビザなし交流そのものが北方領土問題の解決に寄与することを目的にして設けられたものである、こういうことでございまして、あくまでもそこは、現在の時点におきましては人的な交流といいますか、そういうことで行われているものでございます。そういうものではございますが、確かに今先生御指摘ございましたように、住民レベルといいますか、まさに草の根レベルでの相互交流理解、率直な対話、そういうことが非常に大事であると思うわけでございます。その点につきましては、昨年一年間元島民の方を中心として道で行われましたビザなし交流、こういうものも十分参考にさせていただきまして、昨年の十一月でございますか、北方四島、ロシア人の皆さんが居住しておられる三島からの行政と立法の代表者もこちらに来られたわけでございます。その際にもいろいろ御相談をいたしまして、今後の交流におきましては、まさにいろいろな住民レベルでの対話、その中には、先生先ほど御指摘ございましたが、そういうこともございましょうし、それからホームステイあるいはスポーツ交流、それから住民同士の非常に率直な、親密な対話というものをやっていきたいというようなことを話し合っておりまして、今後とも可能な限りそういう方向で交流を有意義なものにしていきたいと考えているところでございます。
  95. 藤原房雄

    ○藤原委員 二国間にしろ多国間にしろ、日本が今後いろいろな支援の中では大きな役割を担わなければならないことになるだろうと思います。今回のこれをスタートとしまして、世界じゅうで支援のできる国力といいますか経済力を持っておる のはアメリカとか日本とか、これは当然大きなウエートを占めるでしょう。私は、そういう支援をしているからどうこうということではないのですけれども、それだけのいろいろな形で支援しなければならない立場にある日本の国が、言うことも言えないようなことではならぬだろうと思います。そういうことで、今後いろいろな問題についてはぜひひとつ的確にとらえて、そしてまた有機的に進めていただきたい。  それから、ビザなし渡航もだんだん変質しつつある。日本に漁船員を初めとする方々がいらっしゃるということで、限られた人しかいらっしゃらないということであればそれなりにもまた効果があったのかもしれませんが、だんだん変質しつつあるという中で、より有効な道は何か、絶えずそういうことに注目しつつ、適宜適切にそれに対応することが大事なことだろうと思います。  やはりソ連も経済的に何とか発展させる方途ということで日本にいろいろな技術面の要請があるのと同じように、日本から見ましても、根室を中心としますあの地域の産業の発展の状況ということを見ますと、これは十二省庁で開発庁が中心になっていろいろなことをしておるのですけれども、漁業はどんどん公海から締め出される、酪農業を初めとします農業も行き詰まりといいますか、非常に厳しい状況の中にある。こういう中で、元島民の方々を中心としましてそこにお住まいになっている方々が、根釧のあの地方を中心にしたところに大きな安定的な産業がないということは一つの大きな問題だろうと思います。せっかく十二省庁統括してその振興策をということを決めたのですけれども、実質的にまだまだ、緒についたといいますか実が上がってないのが現状です。  特に、ここに住んでいる方々のために、北方領土問題対策協会の融資制度、元島民、旧漁業権者、これらの方々に対する融資の制度があるわけであります。私も評議員の一員ですからいろいろな事情わかっている。きょうは時間がありませんから詳しいことを申し述べることはできませんけれども、これは最近は非常に需要が多いのです。それは家を建築するとかいろいろなことですが、この地域の産業振興ということを、総務庁が担当かもしれません、また北海道開発庁長官かもしれませんけれども外務大臣、閣僚の一人としてぜひひとつ念頭に置いていただきたいと思います。  それから、貸付制度につきましても、これは年来申し上げておるのですけれども、旧島民の方というのはもう六十、当時お生まれになった方でももう五十です。そういうことからいいますと、次の世代の方、二世、三世の方々に対する融資ということもぜひ考えてもらいたい。そのためには、旧島民の方々の現状、今どういう状況にあるのかということを初めとしまして、いろいろ調査をしたいということでありますけれども、三年たっても四年たってもなかなか実態が出てこない。いろいろお聞きしますと、調査費というのはなかなか難しいようでございますし、また自分のところで調査するわけじゃありませんから、委託をするというようなこともありまして、これは実態の把握と、そしてそれに対してどう対応するかということ等あわせまして、毎回同じことを言って申しわけないのですけれども、これは地元方々また旧島民の方々の強い願いであり、そして地域に安定的な産業がまだない、また非常に揺れ動く農林漁業の中でのあの地域の状況を見ますと、これは是が非でも考えなければならないことだ、決して北方四島のことではなくして、我が国のあの地域のためにも発展させなければならない、力を入れなければならない大事なことだ、こう私は思うのです。  総務庁、きょうは大臣いないというのだけれども大臣に成りかわって、与えられたわずかな時間ですけれどもひとつ御答弁いただきたいし、最後外務大臣からも、この点については閣僚の一員としてぜひ深い関心を持っていただいて、その辺のことについてお考えがあったらお聞きしたいと思うのです。
  96. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 所管外のことではございますが、島民の方の実情というものを私もこれからより正確に把握をし、できるだけお手伝いをしていきたいと思っております。
  97. 上村知昭

    ○上村政府委員 お答えいたします。  北方領土返還がまだ実現しない状況におきまして、北方領土問題対策協会が行っております融資事業の対象につきまして、元居住者の方々が、その子や孫まで拡大すべきであるという強い御要望をお持ちということはよく承知をいたしているところでございます。  先生御案内のとおり、現行法におきましては、単に世帯主だけではございませんで、六カ月間の居住要件を満たします限り、生まれたての赤ん坊でおられた方も含めましてその配偶者、子を含む世帯のすべての方が融資の対象者というふうになっているわけでございます。また、この融資制度の趣旨が元居住者の生活の安定を図るということで設けられてあるわけでございまして、この問題につきましては引き続き慎重に検討する必要があるというふうに考えているところでございます。  それからまた、先ほどお話ございました調査のことでございますが、関係団体の御協力も得まして、平成三年三月末現在での元居住者等の年齢別や居住地域別の基礎データ等を取りまとめました北方地域元居住者後継者調査というものをやっていただいたわけでございますけれども、今後はこれらの結果も活用しつつ問題点の整理等についてさらに研究してまいりたいというふうに考えております。
  98. 藤原房雄

    ○藤原委員 では終わります。
  99. 上田卓三

    上田委員長 古堅実吉君。
  100. 古堅実吉

    ○古堅委員 大臣、先ほど所信を聞かせていただきました。私はきょうはその所信に対する質問をするつもりはありませんが、しかし一言、どうしても言っておかざるを得ない気持ちになっています。先ほど来千島・ロシア問題についてはいろいろと指摘されながらも、先ほどの所信を見ますと、戦後四十七年が経過したのにとか、あるいは法と正義に基づき云々など、幾らか我が国の主体的な、主張したいような言葉の片りんがございます。しかし、続いて沖縄のくだりになったら、まるで日米安保体制堅持のために沖縄があるかのような、アメリカが必要とする基地を提供するために沖縄が存在しているかのごとき流れです。こんな所信表明をそのまま許すわけにはいかない、そういう衝動的な気持ちになりました。これは私の怒りの表明です、抗議の表明です。一言指摘して、予定しておる質問に入ります。  沖縄の流出文化財の調査収集問題についてきょうは質問させていただきます。後で外務大臣からも御見解を願いたいと思いますが、まず最初沖縄開発庁に伺います。  三次振計に向けた沖縄振興開発総合調査の中で、一九九一年三月に「沖縄文化の振興のための課題調査報告書」なるものが出されています。この中で、沖縄戦後、米軍占領時代を通じて沖縄県外、国外に流出した文化財について組織的、体系的な調査及び収集が早急に行われる必要があるという報告の部分がございます。この調査の結論的なことについては報告書の百七十九ページに手際よくまとめられています。その点について概要を御説明ください。
  101. 永山喜緑

    ○永山政府委員 お答えいたします。  委員御案内のとおり、沖縄経済社会は第一次、第二次沖縄振興開発計画期間を通じまして着実な発展を遂げてまいりました。その中にありまして、沖縄の文化は地域社会や生活環境の急激な変化や県民の文化意識の変化等々に伴いまして極めて多様化しているものと思われます。第二次沖縄振興開発計画におきましては、伝統文化を積極的に生かしつつ産業と文化振興を図ることとしてまいっておりまして、地域性豊かな文化振興を地域振興の一つの柱として位置づけてございます。  御指摘の沖縄文化の振興のための課題調査につきましては、沖縄の文化について県民の文化意識や文化ストックの現状等について調査をしまし て、沖縄文化の振興のための課題を検討することを目的平成二年度に実施されたものでございます。また、この調査は、第三次沖縄振興開発計画を策定するに当たりまして、沖縄の振興開発の現状、諸施策の効果と今後の課題を明らかにして、その上に立って今後の沖縄振興開発のあり方について検討するための参考資料としての性格もございます。  本調査報告におきましては、先生先ほど御指摘の「流出文化財情報の収集と活用」というところがございます。その項では次のように述べでございます。   明治以降の近代化にともなう社会変動のなか  で、王朝文化の粋を示す幾多の文化財が県外に  流出した。とくに、沖縄戦の戦火でかけがえの  ない文化遺産が散逸し、終戦直後には米兵等に  より焼け残った文化財が持ち去られている。そ  のごく一部については返還されたが、大半はい  まだに県外・国外に放置されたままである。少  数の研究者がその状況を憂え、調査・収集の努  力を行っているが、組織的・財政的支援をもた  ないため、その活動にはおのずから限界があ  る。   県外・国外に流出した文化財について、体系  的・組織的な調査を早急に行う必要がある。そ  して、可能なものについては返還・購入等の方  法を通じて収集し、広く県民・国民に公開する  必要がある。そのことによって、沖縄文化の全  体像が明らかとなり、伝統文化の継承が図られ  ることとなろう。ことに、終戦直後に米兵等に  より持ち出された文化財については、当の米兵  等が高齢化していることから、調査・収集を急  ぐ必要がある。このように記述されているところでございます。  以上でございます。
  102. 古堅実吉

    ○古堅委員 局長沖縄にも赴任されて、沖縄文化にも大変造詣が深い、このように私も敬意を表していますが、今の結論部分、局長にとってもそのとおりだというふうに受けとめていただけるような問題指摘と必要な対策の基本が述べられていると私も考えます。この調査の結論は昨年決定された三次振計に反映され、取り入れられていると思いますが、その点はいかがですか。
  103. 永山喜緑

    ○永山政府委員 お答えいたします。  今御指摘の第三次沖縄振興開発計画では、沖縄文化の振興のための課題調査を含めた沖縄振興開発総合調査等各種の調査結果等も参考としながら、沖縄振興開発審議会の審議を経て、先生御案内のとおり昨年、平成四年九月に決定されたところでございます。この第三次沖縄振興開発計画におきましては、「第三章部門別の推進方針」の「教育及び学術・文化の振興」という項がございますが、この項目において、「文化財の保護及び学術・文化の振興」として「首里城正殿、城郭等失われた文化遺産の復元・整備を図るとともに、流出文化財の調査収集を推進し、県民アイデンティティーの醸成に資する。」と記されているところでございます。  以上でございます。
  104. 古堅実吉

    ○古堅委員 そのような調査をされ、三次振計のしかるべきところにも反映され、位置づけられたということになりますと、総合事務局を中心にして出されたこの報告書なるものは大変重要な意味を持たされているようにも思います。  それで、この方針の実際の推進は文化庁の方が担当されると伺っておりますけれども、それは開発庁とも不可分の関係にあると思いますので、まず開発庁に伺います。開発庁としては、三次振計推進の立場から必要な協力を得るためにも、文化庁など関係省庁と協議を行い、報告書の具体的内容の取り扱いなどについても意思統一を図るよう努力すべき立場にあられると思いますが、その点についてはどのような展開がなされてきたか、お聞かせください。
  105. 永山喜緑

    ○永山政府委員 お答えします。  この調査は、沖縄文化の振興のための課題を検討することを目的として実施されたものでございまして、いわば行政上の一つの参考資料的な性格を有するものでございます。また、先ほど申し上げましたように、この調査は、第三次沖縄振興開発計画を策定するに当たって、沖縄の振興開発の現状、諸施策の効果と今後の課題を明らかにしまして、その上に立って今後の沖縄振興開発のあり方について検討するための総合調査一つとして行ったものでございます。この調査結果を参考としつつ、先ほど申し述べましたような記述がなされているところでございます。  散逸文化財等の収集につきましては、沖縄開発庁としては直接の所管ではございませんが、文化財の重要性にかんがみまして大変関心を持っているところでございます。今後、関係省庁とも連絡をとりながら前向きに進めてまいりたい、かように思っているところでございます。
  106. 古堅実吉

    ○古堅委員 今、局長は余り突っ込んだことをおっしゃいませんでしたが、報告書の発表は一昨年の三月なんですね。三次振計は昨年から開始されておりまして、その三次振計の推進に直接責任を持たれる開発庁としては、参考のための報告書だったにしても、みずから出して問題の所在を明らかにし、解決の方向を明確にした内容を持っているこの推進については、やはり積極的にかかわりを持っていかなくちゃいかぬのじゃないか。ただ三次振計を出す前提としてそういうこともつくりましたということで寝かしておくということになったんじゃ、ほとんど意味がないと言っても過言ではないような気もいたします。  あえて重ねてお聞きしますけれども、これまでどういう他省庁とのかかわりを持たれたか、これからこの問題について担当の省庁として、開発庁として真剣に、報告書が言っているような内容の方向で努力をされるというお考えがおありか、そこらあたりも含めてお聞かせください。
  107. 永山喜緑

    ○永山政府委員 お答えいたします。  ただいまの御指摘に対しまして、文化庁とはその三次振計の取りまとめ等に当たり連絡協議を行ってきているところでございます。先ほど申し上げましたように、沖縄の文化財は極めて貴重なものでありまして、この貴重な文化遺産を継承して保護していくことは重要な課題である、開発庁もかように考えて、また認識しているところでございます。沖縄開発庁といたしましても、沖縄の文化財の保護について協力できることがあれば協力をして、積極的に対応してまいりたい、かように思っているところでございます。
  108. 古堅実吉

    ○古堅委員 今度は文化庁の方に伺いたいと思います。  三次振計の「文化財の保護及び学術・文化の振興」の中で、「流出文化財の調査収集を推進しこということについての記述がございます。先ほど局長からもございましたが、その部分にかかわって担当の文化庁としてどのような対策をこれまでとってこられたか、またこれからどういうことをなさろうとするのかについてお聞かせください。
  109. 吉澤富士夫

    ○吉澤説明員 我が国の美術品は桃山時代からヨーロッパへ輸出されておりますけれども、明治時代から第二次世界大戦後にかけては一層多様な古美術品が海を渡っております。それらの美術品は大変膨大な数に上ると見られております。このため、文化庁の指導によりまして、平成二年度から芸術文化振興基金の助成を得まして、専門家を中心として欧米諸国を中心とする諸外国の博物館等が所蔵する日本古美術品について実態調査調査活動に入っているというところでございます。
  110. 古堅実吉

    ○古堅委員 今の御説明は、特に沖縄にかかわって、三次振計のその記述の項にかかわっておっしゃったということではなく、全国一般のことをおっしゃっておるのですか。私が聞いていますのは、先ほど来の質疑をお聞きのことですからくどくど申し上げるまでもないと思うのですが、そういうふうにして絞って今お聞きしておるのですよ。
  111. 吉澤富士夫

    ○吉澤説明員 ただいま調査をしております欧米諸国を中心とする諸外国の博物館等が所蔵する日本古美術品につきましては、沖縄の美術品なども含めて調査をしております。これらの調査が進めば、在外の沖縄の文化財の実態も明らかになって くるというふうに考えております。
  112. 古堅実吉

    ○古堅委員 くどいようですが、重ねてもう一度聞かせてください。この三次振計の、特に流出文化財の状況について調査をする、収集をするなどというくだりがございます。この三次振計は何も沖縄県が独自に県だけでどうこうなどというふうなものではございません。これは閣議決定に基づいて特別に沖縄ということでつくられた振興開発の大事な基本方針なわけで、そのかかわる部分については各省庁としても開発庁と相提携しながらその推進に努力しなくちゃいかぬ当然の責務があると思います。そういう面から、文化庁として特に個々のその部分を意識してこれから努力をし、しかるべき対策をとっていくというおつもりもございますか。
  113. 吉澤富士夫

    ○吉澤説明員 我が国の美術品は相当の数が海外に流れております。沖縄に関する文化財だけではございません。そうした文化財についても調査をしなければならないということでございますので、沖縄の美術品を含めて我が国の文化財が在外にどの程度流れているかということについて調査をしたいと思っております。また、沖縄県においても平成二年度より、主としてアメリカ合衆国に所在する沖縄の文化財の所在調査を行っているというふうに聞いておりますので、沖縄県につきましては十分な指導をしていきたいというふうに思っております。
  114. 古堅実吉

    ○古堅委員 言わんとするところは御存じだと思いますから、時間もありませんしこれ以上申し上げませんが、いろいろなかかわりのあるところについてはぜひ開発庁とも相提携しながら努力をしてほしいと強く要望を申し上げておきたいと思います。  報告書によりますと、ドイツのクライナー・ヨーゼフ博士がドイツ学術文化振興会の援助でヨーロッパの、ソ連、スペイン、ポルトガルを除く十九カ国、百三十カ所以上の施設にアンケートを送付し回答してもらった結果、十三カ国、三十六カ所の館に目録上で千六百八十九点、現在千百八十八点の沖縄関係コレクションが存在することが判明したとされています。また、「ハワイ大学のフランク・ホーレー文庫、ワシントンDCの国立公文書館等が所蔵する沖縄戦、戦後行政に関する膨大な沖縄関係コレクションなど、本格的な調査・研究を待つ重要資料がアメリカ国内に眠っている。」とも述べられています。  開発庁は、国外に散在している文化財についての調査研究さらに収集など、これから大変重要な位置づけを持って進めていかなくちゃいかぬと思いますし、それについて努力しますとか、今の質問に対して、そう答えておきましょうとかいうふうな上っぺらなものでなしに、ぜひ決意のほどをお聞かせいただきたいと思いますし、さらには開発庁が進めるとなれば、文化庁や外務省とも相提携をするということでないとなかなか進めにくい面もあるんじゃないかと思いますが、そこらあたりも含めて、御所見を願いたいと思います。
  115. 永山喜緑

    ○永山政府委員 お答えいたします。  先ほど来出ております沖縄振興開発計画、これにつきましては、御案内のとおり沖縄振興開発特別措置法に基づきまして策定された総合的な振興開発計画ということでございまして、今後の沖縄の振興開発の向かうべき方向とその基本施策、これを明らかにしているものでございます。したがいまして、政府公共部門におきましてはその施策の基本となるものでありまして、また、民間部門においてはその自発的活動の指針となるものでございます。これが三次振計の基本的な性格でございます。  そういう中にあって、振興開発計画の推進に当たりましては、政府として決めた計画ということでございますので、各省庁それぞれの所管に応じて分担処理する、また所管関係省庁といろいろ連携を密にしながら協力して進める、こういうものでございまして、先ほど申し上げましたように、沖縄県の散逸文化財等については、貴重な資料であるという認識のもとで、大変重要な関心を持って見ているところでございます。
  116. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間が参りましたからまとめを言わせていただきます。  昨年二月、上野公園の東京国立博物館で開催された復帰二十周年記念特別展、「海上の道」と題するものでありましたが、その内容は沖縄の歴史と文化そのものでありました。私はその特別展を見る機会に恵まれまして、本当に文字どおり感動いたしました。そして、そのような企画が現地沖縄でできたらどんなにすばらしいことか、沖縄から東京まで出てきて見るわけにはいかないんだが、現地で行われれば県民が広く見れる、ぜひそういうことも実現したいものだという衝動的な気持ちに駆られた思いがついこの間のようによみがえってまいります。ことしの一月、二月にかけてその一部の展示が沖縄の県立博物館で実施され、大きな反響を呼びました。  沖縄は琉球王朝時代の昔から戦前、戦中、戦後の歴史を通じて特殊なものがありました。そういう歴史であったから、一面では独特の文化がはぐくまれたし、貴重な文化遺産も残すものとなった、このように考えております。しかし、それらの多くが戦災でなくなり、その他の原因によって失われてきました。あるいはまた海外にあるものについても、先ほどいろいろと報告書などを引用されて明らかなように大変憂慮すべき状況下に置かれています。ですから、今のうちに緊急に対処策を考えていかなければならない重大な理由がございます。そういう意味で開発庁も努力してほしい、文化庁もぜひ御理解を持って努力を展開してほしい、このような立場から要望申し上げた次第です。それらを展開するにはどうしても、国外とのかかわりもありますから、外務省のそれなりの気持ちの通う協力体制というものも必要であろうと思います。そういう意味から、大臣外務省としてもしかるべき協力努力体制を展開していく、そういうことについての御所見、御決意を聞かせていただきたいと思います。
  117. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 従来も協力をしてきたわけでございますけれども、今後も一層協力をしてまいります。
  118. 古堅実吉

    ○古堅委員 終わります。
  119. 上田卓三

    上田委員長 小平忠正君。
  120. 小平忠正

    ○小平委員 武藤大臣には御就任おめでとうございます。私が最後の質問になりますので、大分お疲れのようでありますが、ひとつよろしくお願いします。  特に、現下の国際情勢は変転きわまりないといいますか、至るところで紛争なり問題点を多々抱えております。特に、ロシアの問題もさることながら、カンボジアやアフリカのソマリア、また東欧にしても、至るところで、本当にお忙しいお立場になったと思いますが、ひとつしっかりと御健闘を期待するものであります。  また、私は、我が国議会民主主義の中にありまして、このルールでやっておりますけれども、しかし外務大臣、私の考えは、外務大臣という職員はちょっとほかの大臣と違う、言うならば一年こっきりで交代するのじゃなくてもっと長期にわたって、言うならば時の首相と同じサイクルでしっかりと腰を据えてやっていかなければ、外交というのは違うと思うのですね。なぜならば、我が国の外交はどうも外務省、外交官にスタンスが置かれて、ちょっと我が国は一種独特なものを私は感じます。  そういう中で、例えば端的に言うと日本外交は物わかりがいい。私は外交というのは、いわゆるよい悪いじゃなくて、いかに我が国の国益を守るために主張するかということでしょう。例えばほかのものに当てはめて言いますと、ボクシングに置きかえて言いますと、ボクシングをやると相手の弱いところ、嫌なところをねらいますね。例えば相手がもしあごが弱いとなったらあごをねらうでしょう、アッパーカット、ノックアウトをねらって。外交も同じことで、相手の弱いところ、嫌なところを突くのが基本的な鉄則であって、そういう意味からいうと、どうも私は日本の外交というのは物わかりがよ過ぎる。悪い比較を出してなんなのですけれども、かつてのソ連は国連の安 保理の場で、ニエット、ニエットを連発して拒否をしましたね、拒否権発動。言うならば我が国もそういう毅然たる姿勢が見えていいと思うのです。それが逆に日本は手ごわいぞという感じを諸外国に持たして、我が国の主張を貫いていけると思うのですよ。それがどうも今欠落している。それも一つは、外務大臣という重責の方が腰を据えてやっていけないというところに問題があるような気がするのです。少し前置きが長くなりました。  そういうところで、今まで大変長くかかりました、この北方領土の問題。ですから、そうそうそんな一朝一夕にはいかぬと思います。しかし、それと同時に、私は北海道の人間です。かつて北海道における北方領土返還運動も昔はもっと活気がありました、熱気がありました。いろいろな方が活動しまして、特に時期を定めて根室に、納沙布岬に集結をして、やはりそういう示威行動があった。中には過激過ぎる行動もありましたけれども、最近はそれがちょっとトーンダウンしている。それは、言うならばロシアのことをおもんぱかっているのですよ、エリツィン氏のことを、あの人が大変だろうと。今は基盤が脆弱だ、不安定だ、今余り言ったらかわいそうだって。それは向こうさんが心配することであって、何で我が国の方が心配する必要があるのですか、そんなことを。私は、物わかりがよ過ぎると思うのですよ。ですから、援助はしてあげます、あげるけれども我が国の主張はするという、それは堂々とやっていいと思うのです。それがどうも相手の立場を思い過ぎるのが私は強いような気がするのです。どうも納得がいきませんね。  それで、いろいろな方から話が出ます。特に、エリツィン大統領が近々来日するという。私は、国民の多くの皆さんは、もう正直に言って内心は余りいい気持ちは持っていないと思いますよ。これは外交上こんな変なことはないでしょう、来ると言って来なかったのですから。で、また来ると。本当に来るんですかね。そこのところがまるっきり向こうのペースに乗っているじゃないですか。おもしろくないですね、こんなの。私は、そういう意味において、かつてソ連は我が国に対して無理難題をそれこそやってきましたよ。当時の我が国はそれを一生懸命受けていました。でも我が国は今、国民の皆さんの努力によって、勤勉さによってこれだけになってきた、堂々とやっていいじゃないですか。そんな意味を込めて、私は、今回のエリツィン大統領の来日を含めて、また、今のロシアに対する支援策、それは確かに隣国のロシアに対して助けてあげるという気持ち、それはわかります、必要なことも。しかし、どこか一本柱が欠落しているような気がしてならないのです。  そんな意味で、まず大臣にお伺いいたしますが、これについて今いろいろと各党の皆さんから質問ありましたが、我が国対ロ外交基本方針が転換してきましたね、このことはロシア側に、特にエリツィン氏にどういうふうに伝えているのですか、そこのところをお答えいただきたいと思います。
  121. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 対ロシア外交の方針でございますけれどもロシアという国が今、御承知のとおり、これは何遍も申し上げていることでございますが、政治の面においていわゆる自由主義民主主義社会をつくっていこう、経済の面においては市場経済原理、競争原理を導入していこう、そして外交面では法と正義に基づく外交を展開していこう、こういうことを言っているわけでございまして、言ってみれば我々と同じ国家、社会を形成しようとしているわけでございますから、これはやはり我々として支援をしていかなければならない。万が一これが逆に失敗をいたしまして後退して、また共産主義の社会に逆戻りするようなことは、我々としては望むべきことではないと思うのでございます。日本の国益から考えても、そのようなロシアの方向というのは、私は支援すべきだと思っております。  ただ、残念ながら両国間には北方領土という問題が厳然として残っておるわけでございまして、この問題を解決せずして日本ロシアとのいわゆる完全な形での正常な国交というのは回復しないわけでございますから、そういう面においてそういう支援はしていかなきゃならないけれども、同時に、そのような領土問題も解決していかなきゃならない。この二つの問題をいかにうまく絡み合わせながらやっていくかがこれからの問題でございますが、幸い、先ほど申し上げたように、法と正義に基づく外交ということを言っているわけでございます。そうなると、少なくとも北方領土の問題は、法と正義に照らせば、あくまで日本の固有の領土である北方領土というものがああいう形で不法に占拠されたことに対しては、我々は、これはスターリンの遺産として、新しいロシアの国になったのだからぜひひとつ解決してもらいたい、こういう姿勢で臨んでいきたいと思っているわけであります。
  122. 小平忠正

    ○小平委員 大臣の御答弁はまさしく模範的な御答弁で、おっしゃることはよくわかります。それが相手を怒らせないで穏やかにという、いわゆる度量の広い、それは大した立場ですよ。でも、それでもって、我々が誠意を尽くしていって、果たして北方領土は返ってくるのですか。私は、今大臣がおっしゃった、また再び共産主義が復活してというその問題、それから、特にヨーロッパ諸国が心配している多くの難民が流入するという、あるいは核放射能廃棄物の問題とか、それは確かにあの国がしっかりとしていってくれなければ困ります。でも、ロシアが共産主義に戻るとかなんとか、そんなことはロシア国民が決めることでしょう。彼らは共産主義でもう挫折したわけでしょう。それを、過去のあのことを思い起こして、それは心配し過ぎですよ。  また、私は、そんなことよりは、そういう論理というか尺度というか、欧米の見ているロシアに対する見方、論理構造がございますが、でも我が国は違うのですよ。言うならば、我が国北方領土という固有の領土を今一時的に向こうにお貸ししているのですから。そういう意味において、もっと毅然と強く言ってもいいのです。言って、しかし協力は、支援はしてあげましょうと。でも、言うことはしっかり言った方がいいと私は思うのです。  今回も、特に今お話があった支援問題と領土問題で、これを切り離していく、今回何かそういうような方針になっていますね。でも、そのことはきちんとロシア側に、特にエリツィン大統領訪日に結びつけて、きちんと向こうに伝わっていますか。今、日本国民の多くの方は、エリツィン氏が来日したら北方領土問題が何かテーブルへ上がるだろうと期待していますよ。ところが、外務省を通じての事前の打ち合わせの中で、今回それを棚上げじよう、横に置いておこう、そういうふうになっているのでしょう、領土問題と今回切り離そうと。外務省ロシア政府に言ったことと我が国において国民がとらえている見方、これがきっちりと合っていないと、乖離していると、このエリツィン来日が日本ロシア両国にとって決していい方向に進んでいかないと私は思うのです。これについてはどうなんですか。
  123. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 領土問題を切り離しているなんというようなことは全くございません。切り離して考えてはおりません。  それから、エリツィン大統領が来るか来ないか、まだわからないのでございますけれども、いずれにしても、来る場合には、当然、領土問題というものが二国間には存在し、この領土問題の解決なくして平和条約の締結はあり得ないということは相手にはっきりと伝えでございます。
  124. 小平忠正

    ○小平委員 そうしますと、今回はまだ確かにエリツィン来日は正式にはおっしゃるとおりでありますけれども、先般のG7においても、今の総理の姿勢としてもそういう方向にありますね。ということは、この機会をとらえて領土問題をしっかりとテーブルにのせて、これについてロシアと大いに主張し合うということですか。
  125. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 当然、二国間には領土問題があ ることを相手側にはっきり言ってあるわけでございますし、エリツィン大統領がもし来られれば、そのときは日本側としては領土問題を提起するということは伝えであるということを申し上げたわけであります。
  126. 小平忠正

    ○小平委員 大臣、私は困らせようと思って言っているのでは決してないのですよ。大事なことは、今の政府方針国民に正しく伝わっているかどうかということを心配しているのです。ですから、こういう今のロシア情勢ですから、それだったらそういうことでやり方を少し変えよう、これも一つの外交ですね。特に今回、G7の蔵相・外相会議等で我が国が多額の支援をするという方向で決まりました。このことは、今の問題が背景にあるから、またロシアが一日も早くきちんとというか、今の混乱状態から脱却して、経済的にも政治的にも安定してもらいたい、その上で領土返還が一日も早く成るようにという願いがあるから支援もするんだということ、それもわかります。そういうことをもう少し国民にPRというか、要するに国民の多くの方が納得してもらえるような説明をすることが今大事だと私は思うのです。そのことを国民の前に明確に示さないと、特にこの多額の支援というのは、国民のいわゆる大きな負担によって成り立っているのですから、そこのところがどうなのかなということが懸念されますのでお聞きしているのです。外務省としてはどうですか、そういう作業の方は。
  127. 津守滋

    ○津守政府委員 我が国の対日支援及び対日二国間問題、なかんずく領土問題を解決して平和条約を締結するというこの基本的な方針については、今まで大臣から何回も御説明しているところでございますが、こういう基本的な方針につきましては、外務省としましてもこれまで日本のみならずモスクワにおきましてもパンフレット等を通じて広報活動を行っておるわけでございます。モスクワでそういう広報活動が行われるということ自体が、世の中が変わったといいますか、ロシアの事情が変わったということでございますけれども、今回のG7合同閣僚会議で御指摘のように十八・二億ドルの対日支援を決めましたが、これにつきましても、当然こういう対日支援といった問題は国民の総意に基づいて行われるべきものであるわけでございますから、あらゆる機会をとらえまして国民理解が得られるように説明に努めてまいる所存でございます。
  128. 小平忠正

    ○小平委員 国内のそういう啓発運動というのは、総務庁が所管でもあるでしょう。今津守審議官お答えいただいた。モスクワでもそういうことをされていると今言われましたね。確かにそれは私も伺っております。しかし、同時に聞こえできますことは、今回の支援策に対して、ロシアにおいても保守派や中間派等の反エリツィングループは、エリツィン氏個人を支援する、そんなふうにとらえているのです。結果的にはロシアに対する支援なのだけれども、これはエリツィン個人に対する支援だ、エリツィン立場をいわゆる安定化するための支援だ、そうとらえている意見もありますよ。同時にまた、エリツィン大統領も、どうも日本という国はアメリカやそういうところから押してもらえば何となくそれに歩調を合わせてしまう、そんなようなとらえ方もされているような感じもします。そういうことがありますと、向こうロシア国民がとらえている北方領土返還問題と我が国の中におけるとらえ方、いわゆるこれからの希望的な見方、これが乖離したままだと思うのです。そんな意味で、このことはやはり一本きちんと筋を通して、この北方領土返還に向かって着々と積み重ねていってもらいたい、そんなふうに思うのですが、それについてはいかがでしょうか。
  129. 津守滋

    ○津守政府委員 ロシア政府との関係におきましては、やや日本政府立場について誤解があるやに見られる報道もございましたので、これは我がモスクワ大使館を通じて日本立場を正確に伝えておりますし、さらに今月中旬コズイレフ外務大臣が来た際の日ロ外相会談の際に、武藤大臣から日本の対日政策の基本方針である拡大原則、これにつきまして明確にコズイレフ外務大臣説明したところでございます。その際、コズイレフ外務大臣の方から、いろいろな言い方はございましたが、趣旨としましては、領土問題を解決して平和条約を締結して日ロ関係正常化する必要があるという点については同様の見解であるという表明があったわけでございます。
  130. 小平忠正

    ○小平委員 時間が来ましたので、終わりますが、大臣期待をしていますので、ひとつしっかりと頑張ってください。終わります。
  131. 上田卓三

    上田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時六分散会