○下条進一郎君 本日は、
宮澤政権が誕生して一周年の記念すべき日であります。この日に当たり、私は、自由民主党を代表して、現下内外の緊急
課題について
宮澤総理に質問いたします。
かつてない未曾有の歴史的な転換期にあって、
総理は、
就任以来、
日米会談を初めとして韓国、
国連安保理、欧州及びサミットなど、国際国家
日本としての積極的な首脳
外交を
展開され、世界の平和と繁栄のために尽くされました。
一方、内政面では、冷戦後の
国連を中心とした国際協調のもとで、
日本の国際責務として懸案の
国際平和協力法案を成立に導き、その具体的な人的貢献が緒につきました。そして、今、
佐川急便
事件等
政治不信に対し、不退転の覚悟で
政治改革に取り組まれるとともに、
バブル経済の
崩壊による
景気後退に対処して、
総合経済対策を推進するための補正予算を
国会に提出されております。
まさに、この一年、だれが
総理になられても大変な難局でありながら、
総理はよく、国際社会における
我が国の責務や長く定着した
政治体制の
改革など極めて厳しい難題に立ち向かっておられ、これを高く評価するものであります。平和国家
日本の戦後
政治史の大きな流れに参画した
総理として、今後の対処すべき
方針につき忌憚のない所見をお述べ願いたいと存じます。
平和国家を築き上げ、世界のGNP一割五分を創出するまでになった善良で働き者の
日本国民が今最も慨嘆し憤りの極に達していることは、近時頻発する
政治家の不祥
事件が後を絶たないことであります。しかも、どの
事件もその究明が不十分で、
対応処理が必ずしも
国民の納得を得られていないことが怒りを増幅しております。また、
暴力団の介入など
国民感情から絶対に許し得ないことが発生し、その怒りに油を注いでいると言えましょう。
政治の任務は、
国民のために公正なルールにのっとり行うことにあることは申すまでもありません。また、
国民一人一人の意見をできるだけよく酌んで
政治を行っていくことが、民意を反映した民主主義の
原則なのであります。今日、
国民から糾弾されている不祥事は、
国民常識からかけ離れ、余りにも大きく、かつ暗く、そして深刻であります。今や
国民の
政治への
信頼が根底から揺さぶられていることはまことに残念至極であり、
政治に直接携わる者として
責任を痛感するものであります。
政治家は、常に
国民の
立場で見聞きし、謙虚に受けとめ、行動しなければなりません。それはまさに
政治家の倫理の自覚であります。今問われている
政治家と金との
関係の問題を真正面からしっかり受けとめて、
一つ一つを全力を挙げて解決すべきであります。今こそ、
国民の
政治への
信頼を回復するために、
政治改革を最優先して今
国会で解決への大きな前進を図らなければ
国民への
責任は果たせません。
総理は、国政を預かる者として
国民の皆様に対し深く深くおわびいたしますとまことに率直に言われましたが、最高
責任者として、今回の事態をいかに受けとめ、具体的にどのように対処しようとされるのか、
国民にわかりすくお聞かせ願いたいと存じます。
そこで、まず緊急に
措置すべきことは、
政治改革協議会において与野党間で既に
合意を見ております十八
項目及び九増十減の
定数是正など緊急
改革関連法案を速やかに成立させ、金権
政治の温床を一掃できるようにすることと
思います。
さらに、次の抜本
改革等について三つのことを特に配慮されたいと
思います。
その第一は、
国民が一番不信を抱いております
政治資金について、まず金のかからない
政治構造をつくり、その資金の透明性を確保することであります。
しからば、次々と
事件となる
政治資金はどうあるべきなのでありましょうか。まず、何よりも、
政治資金をめぐる動きを透明にして、
国民の目から見て一切の疑いをぬぐい去るようにすることであります。もとより、
政治資金は
政治に携わる者の
政治活動を
保障する大事な要素であることは自明の理であります。しかしながら、今日、通常の
政治活動を支えるためにはかなりの
政治資金を要し、およそ
国民の一般の感覚からほど遠いものがあるのであります。しかも、その資金がどこから入り何に使われたのか余りよくわからない、よく見えないことでは、
国民が疑念を持ち理解できないのではないかと存じます。
この点について、
政治資金はできるだけかからないように、まず、することであります。次いで、収入支出は公正明朗で透明度を高めることを目標にして、
法制度をさらに整える必要があると
考えます。そして、必要な
政治資金の流れをガラス張りにして、出入り
一つ一つがはっきりと
国民の目にもわかるようにすることが何よりも先決であると
考えます。この点、どうお
考えでしょうか。
政治資金規正法の
改正をどう進められるのか、所見を明らかに願いたいと存じます。
私が第二番目に申し上げたいのは、
派閥活動の自粛ないしは禁止であります。
この数カ月間、
新聞やテレビを通じて
国民の目の前に
派閥活動の実態が明らかにされましたが、厳しく
批判されても仕方がないことでありましょう。
派閥あって党なし、国なしで混乱している事態はとても理解できないことであり、
政治不信を強める結果となっていると言っても過言ではないと
思います。
総理、今こそ、勇気を持って率先して
派閥を
解消し、党を一枚岩にして難局に当たるべきではないでしょうか。
決断と実行を強く求めるものであります。
第三に、
選挙制度の
改革であります。
政界の浄化と
政権の
交代を容易にするためには、現行の衆参の
制度でできるのでしょうか。それができないならば、どのような
改革を期待しておられますか、その筋道を明らかにしていただきたい。
政治改革は、まさに天の声として重く受けとめなければなりません。私は、
政治家として、この場にいる重大さをひしひしと感じます。満堂の諸君とともに全力を挙げて
政治改革に取り組む
決意でありますし、
宮澤総理が
所信演説で
政治改革の実現に一身をささげて取り組んでまいる
決意であると述べられましたが、その御
決意を積極的に
支持いたします。
次に、
景気問題であります。
今、
日本の
経済は深刻な
不況の真りただ中にあります。
バブルの
崩壊とその調整という
経済変革の中にあって、その深刻さと、期間の長期にわたることについては前例を見ません。そのような環境にありながら、まことに奇異な現象として、私の郷里の長野県みそ工業界の売り上げが伸びております。
総理はその原因がおわかりでしょうか。業界に尋ねてみますと、不
景気で社用や外食が減ったかわりに自宅で食事をすることが多くなった結果、みその
消費量がふえたことによるのであります。
経済がまさにそこまで落ち込んでおるのであります。このみそ業界の話は、
日本経済が難しい局面にあることをうかがわせております。
実体
経済を見ると、
景気が調整過程にあり、
経済活動の減速が各部門に波及しております。また、
企業収益は引き続き減少しております。
企業の業況
判断は減速感が続いており、八七年の円高
不況時より悪化し、第二次石油危機の水準まで落ち込んでおります。
金融部門を見ますと、いわゆる
バブル崩壊により不良債権が累増し保有株式の評価損が拡大する中で、
金融機関の財務体質が悪化し
金融システムの安定性への懸念を引き起こすなど、厳しい
状況が続いております。
政府としてはその都度適切な
対応をされ
てこられたことは承知しておりますけれども、世界第二位の規模の
日本経済はそう小回りがきくわけではありません。
経済停滞の長期化は認めざるを得ません。
長引く
景気停滞脱出に、
宮澤内閣は、特に
総理御本人の勇気ある御
決断によりまして、かってなかった十兆七千億円の
思い切った大型の
総合経済対策を策定されました。
株式市場はこれを評価し、一万四千円台を底に、今日では一万七千円台前後で推移するまで回復しております。しかし、
経済全体は、前述いたしましたように底ばいに近い
状態を続けていると見られておりますが、今後の
経済の動向をいかに見ておられますか。
地方の問題について触れますが、
総合経済対策に盛り込まれた各種
措置の着実な実施について、国の果たすべき
役割が大きいことは当然でありますが、同時に、
地方公共
団体においてもその
役割を果たすことが期待されております。特に、道路、下水道、一般廃棄物処理施設等の住民に身近な社会資本の整備については、
生活大国の実現という観点からも、より積極的な
対応が求められているところであります。
本
対策において、総規模十兆七千億円に上る財政
措置のうち、
地方単独事業は一兆八千億円、
地方公共
団体等の公共
用地先行取得の事業費が一兆円とされているほか、国の追加事業に見合う
地方公共
団体の予算
措置も行うこととされていることを
考えれば、
地方公共
団体に期待されている
役割は極めて大きいものであります。
私は、こうした施策に対する各
地方公共
団体の積極的な取り組みに大きな期待を寄せておりますが、同時に、
政府としても、
地方公共
団体の努力を積極的に支援し、その事業の推進が円滑に行われるようできるだけの
措置を講じることが必要でありますので、
政府としてどのような
態度で臨んでおられるのか、そして今後の見込みについてどのようなお
考えをお持ちですか、お伺いいたします。
諸般の難しい
政治課題も多い
国会ではありますが、
国民生活の安定、
景気回復のため、陣頭指揮に当たっていただくことを強く要望いたします。
バブルの
崩壊に伴って、私が耳にした教訓があります。
一つは、
東京都内のある有力
金融機関であります。
バブルの最中に得意先の優良
企業から、その本業にない新規事業を企画し、そのために借り入れの申し込みがあり、大変うまい話ではありましたが、これを断って、両者は一時、気まずい間柄になりました。しかし、
バブルが去った後、当の
企業家は夢から覚めた顔をしてその
金融機関を訪ね、借り入れを拒絶されたことが事業の失敗を免れたことになり、心からの感謝の礼を言われたとのことであります。しにせのその
金融機関は、右のような健全な貸し出しのしぶりで
バブルの影響は受けず、不良な貸し付けを行わず、極めて健全な経営を続けることができたのであります。要は健全経営哲学の遵守ということでありましょう。
もう
一つは、ドイツのシュツットガルトにあるべンツ社から聞いた経営
方針であります。同社の経営は、長期的健全性の見地から毎年の生産量を算出し、好
不況に
関係なく一定量の車の生産を維持し続けているとのことであります。
不況になっても減産の必要なく、好況になったからとて増産するわけでもなく、顧客に待ってもらう時間が長くなることでカバーするのですから、同社としては経営は常に安定であります。サイクル的に訪れる
不況にもたつくこともないそうであります。
日本において、高度
経済成長が続いたり
バブルの間は、まさに借り入れに依存して生産規模拡大や新規事業に進出した
企業のたくましさがありましたが、今や
バブル去って安定成長に移るに従って大いに反省されなければなりません。右二つの事例は、他山の石として、これからの
日本企業にとって堅実経営の指針になるのではないでしょうか。
確かに、
総合経済対策は、
公共事業費の追加や公共用地取得等の施策によって、財政
機能を活用してそれ相応の
効果を上げ得ることは間違いありません。しかし、その
効果を引き続いて
景気の恒常的回復を図るには個人
消費をどう力づけるかが重要であり、個人
消費に弾みをつけるために、一人一人がお金を手にして物を買うという気持ちをどうしたら引き出せるかにかかっております。中長期的には潜在成長力に見合った所得の増加が図られるべきでありますが、当面、
所得税の
減税を考慮すべきという声があります。
さらに、現在の税
構造を見ますと、
直間比率是正による税
構造改革を目指した
平成元年
消費税の
導入後も、その比率は約八対二のままに放置され、改善されずに推移しております。税制
構造改革の経緯を踏まえ、かつまた、その間に
所得税が
減税されないままにきた結果実質
増税となっておりますので、
所得税を含めた税
構造全体の
見直しが必要であるという意見があります。この点については、
総理はいかにお
考えでしようか。
さらに、その
減税については、給与からの年末調整
措置等ではなく、現金の
減税還付
制度がより
効果的でありましょう。納税者一人一人が確実にお金を手にすることによって
減税と、う臨時収入があった実感がわいて、これまで購入を差し控えていたものを買う気持ちになり、こうした目に見え手に触れる
減税方法がこの冷え切った個人
消費に活を入れることになるという
考え方がありますが、いかがでしょうか。
ただし、
所得税減につきましては、その
財源をどのように調達するかの問題があります。赤字国債発行で
減税財源を賄うことは、十五年かかったせっかくの財政再建が水泡に帰してしまうことになりますので、建設国債、赤字国債とは別の第三の短期国債とすべきだという
考えがあります。
すなわち、国債の期間を短縮し、
景気が回復したら最優先的に償還する
景気ワンサイクル国債発行
制度とも言うべきものでありましようか。国債発行が野方図に流れないよう、
国民一人一人がしっかり自覚した同世代償還の
負担つき
減税を実施するならば無用な懸念は
解消しますが、ただ、短期償還の国債といえどもその償還のための
財源がまた必要になってまいります。結局は従来の赤字国債と何ら変わらぬ問題を引き起こす懸念がなきにしもあらずであります。その点、どのようにお
考えでしようか。
景気対策と関連して、
金融政策で伺いたい。
異常なマネーサプライの推移を、資金需要が弱いからと楽観してよいでしょうか、大変疑問であります。
バブル時の後遺症の不良債権処理が難問題であることは承知しておりますが、仕事があり、人も場所も決まったのに、
金融機関の貸し渋りによって金の工面がつかないといった話を耳にいたします。あつものに懲りてなますを吹くということに陥ってはいないでしょうか。ニューマネーの供給が滞って
景気がよくなるはずはありません。
政府は積極的な
金融政策転換への指導をされるべきと
思いますが、いかがでございましょうか。
経済、
景気問題の
最後に、中長期的視点の質問を行います。
まず、
景気動向に対する
対応と、
対策の早期発動についてであります。
今回の
不況について、昨年秋ごろから、
景気は何かおかしい、変だとちまたで問題になっておりましたのに、経企庁や日銀は、
景気の基調は底がないものがあるなどと
判断をしたのではありませんか。もしあのときといった発想は後ろ向きと言われるかもしれませんけれども、当時的確な
判断と適切な施策がとられていれば、
景気をここまで悪化させ、
対策を後手後手にすることはなかったと言わざるを得ません。病気は早期発見、早期治療が決め手ですが、
経済も同じで、危険な兆候を早く発見し、肌で感じる
景気動向を大事にすること、特に、実体
経済の動きを早く的確につかんで
経済予測と
判断の中に生かす方策を真剣に
検討していただきたいのであります。今回の失敗は、
経済統計優先で、生きた
経済の動きから遊離した面がなかったかと
思います。
次に、
景気の底固め
機能を果たした
総合経済対策を踏まえ、ポスト総合
対策についてであります。
〔議長退席、副議長着席〕
宮澤総理は、
総裁選立候補に当たり資産倍増論を提唱され、先ごろ
生活大国五カ年
計画の新
経済計画を閣議でお決めになりました。
経済大国の
我が国が、地球社会との共存を目指し、ゆとりと豊かさの実感できる国づくりを進めることは大変時宜を得た政策であります。
不況脱出後の
我が国経済との関連で、五カ年
計画をどう位置づけ、どう推進されようと
考えておられますか、お伺いいたします。
以上、
経済の実体は総じて
不況のただ中にあり、
国民は一刻も早い回復を期待しております。よって、
景気対策に対する
総理の力強い御指導を期待するとともに、
国民が待ち望んでおります補正予算を、政争の駆け引きの具とせずに、ぜひ早期成立することを強く望むものであります。また、(発言する者あり)よく聞いてください。また、来月には
平成五年度の大蔵原案の編成が予定されておりますが、その中でも引き続き
景気対策についても十分な配慮を強く要望いたします。
そのことに関連して、これからどういう編成
方針をお持ちですか、お示しいただきたい。
次に、
外交問題であります。
今日、国際情勢は新たな段階を迎えております。すなわち、昨年の湾岸戦争終結、旧ソ連邦の
崩壊に象徴される世界新秩序づくりの動きは本格化し、
国連を中心にした世界全体の平和と繁栄をつくろうとする機運は確実なものとなってまいりました。しかし、旧ユーゴスラビアを初めカンボジア、中東等々、その結果として生まれている具体的な模索はいまだ続いております。このような
状況のもとで、
日本はいかなる
責任と
役割を担っていかねばならないのでしょうか。従来のように、事態の推移を見守っているだけではなりません。
日本の国際協調の
基本方針をお尋ねいたします。
ところで、現在世界がブロック化する動きにあるように見られます。米国、カナダ、メキシコによるNAFTA、マーストリヒト条約によるヨーロッパの
政治・
経済統合、ASEANに根強い対抗
措置としてのAFTA構想があり、
自由貿易体制を脅かしかねません。こうした動きをどう見ればよいのか、そして
日本はそれらにどう
対応するのでありましょうか、お尋ねいたします。
こうした国際潮流の中で何よりも大切なことは
日米関係であります。
去る三日の米国
大統領選挙の結果、冷戦終結後の
最初の
大統領として民主党の
クリントン氏が選出されました。明年一月に発足する
クリントン政権が、米国及び世界の人々に対し二十一世紀に向けてどのような展望を示すのか。また、国内
経済の立て直しゃ競争力の強化に向けての方策が注目されるところであります。
日米両国は、自由、民主主義、市場
経済原理といった基本的価値観を共有しており、これを基盤に、強固な
日米安保体制と
経済面を中心とした緊密な相互依存
関係を維持してきております。さらに、
日米の
経済が世界の生産高の約四割を占めることからもわかるように、両国は世界の平和と繁栄のために大きな
責任を有しております。このように見てまいりますと、新
政権のもとでも
日米間の協力の重要性はいささかも変わるものではありません。
日米関係の維持と強化が、冷戦後の今日にあっても
我が国外交の基軸であるべきであります。
今次
選挙戦を通じて米国の国内問題について多くの議論がなされたこともあり、一部には米国が内向きになるのではないかと懸念する向きもありますが、米国の国際的なリーダーシップは冷戦後の国際社会におしても引き続き必要とされており、米国がその責務をいかに果たしていくか注目したいと
考えます。そのためには、
我が国としても米国の国際的
関与を支援し協力していくことが重要でありますが、
総理は新
政権をどう評価され、また、今後
日米関係をどのように進展させていこうとしておられますか。また、今後の
日米安保体制の意義をお伺いいたします。
また、
経済問題の相対的重要性が高まっており、
日米二国間の貿易不均衡が拡大する中で、米国
経済の
景気動向いかんでは保護主義の圧力が高まり、米国の対日貿易政策が厳しくなるとの指摘もあります。今後、
我が国としては
日米経済関係をいかに維持していくか伺いたい。
特に、来年度には先進国首脳
会議が
東京で開催される運びになっているだけに、
日米間の意見調整が最重要になってまいりました。そこで、
日米の首脳会談を早期に持たれることを大いに期待申し上げます。
なお、サミット開催地は、いつも
東京ということではなく、
日本には
地方のよいところもたくさんありますので、来年ではなく、その次の次、今から準備しておかれてはいかがでございましょうか。
次に、
アジアに目を向けると、中国、ロシアの動きが各国の注目を集めております。特に、中国の活発な動きは
日本としても軽視できません。本年は日中国交正常化二十周年に当たり、中国側から江沢民総書記、万里全人代委員長の訪日があり、また
我が国からはさきの天皇御訪中があり、両国の友好親善
関係を促進するのに大きく役立ちました。新たな両国
関係をつくる礎となりますよう、
政治、
経済、文化にわたってさらに
関係促進を図るよう要望いたします。
アジア各国の中国に対する目は決して生易しいものではありません。各国を安心させ、この地域の平和と安定を図るためには、
日本は積極的に働きかけねばならないのではないかと
思います。
中国との
関係において見逃せないのは、韓国との国交樹立てはないでしょうか。そのことが、台湾、ロシア、北朝鮮等の
周辺国ばかりでなく、
アジア全体を揺さぶっております。
経済関係が
重視されておりますが、それだけではなく、朝鮮半島の平和と安定という観点からどうとらえ、いかに
対応していくか、御所存を伺います。
来る十一月八日の日韓首脳会談において、いかなる点をただされようとしておられますか。
我が国が、
アジア全体の動きをにらみつつ、韓国の
外交関係が円滑にいくように祈ってやみません。これに関連して、ロシアのエリツィン
大統領の訪韓についても無
関係ではいられない点を率直に伝えていただきたいと存じます。
次に、日ロ
関係でありますが、現在、日ロ間には二つの大きな
課題があります。
一つは、言うまでもなく、北方領土問題を解決し平和条約を締結して日ロ
関係を完全に正常化することであり、もう
一つは、現在、民主化、市場
経済化を目指して
改革努力を行っているエリツィン
政権に対していかに支援を行っていくかということであります。
日本政府が、従来、この二つの
課題に対処するに当たり、拡大均衡という基本的
考え方に基づいて種々の
外交努力を行ってきていることは私もよく承知しております。
しかるに、先々月、ロシアのエリツィン
大統領の訪日が直前になって突然延期されましたことは、この訪日が、戦後四十七年間いまだ平和条約すら結ばれていないという不自然な
状態にある日ロ両国
関係の完全な正常化に向けて大きな弾みとなり得る機会と
考えていただけに、極めて遺憾なことであったと
思います。しかし、これに過剰に反応せずに、あくまでも慎重に、
我が国の国益をいかに貫くかの観点から
対応してもらいたいと
思いますが、お
考えを以下お尋ねいたします。
ロシアの
経済立て直し、自由市場
経済への移行が円滑にいくように、
我が国独自の
対応をどのように用意されますか。去る十月末の旧ソ支援の
東京会議の成果を踏まえての展望をお示しいただきたいと
思います。
北方領土問題は、
国民の関心が極めて高い問題であります。外務省は従前からの政経不可分の
原則をあくまで貫くとしておりますけれども、世界全体の流れ、ロシア国内の動きを見てどうとらえ、いかに活用していくかを忘れてはならないと
思います。御
判断をお聞かせ願います。エリツィン
大統領が早期に来日し、
交渉が進展する
見通しがありましょうか、お伺いいたします。
北方領土をめぐって最近無視できないのは、部外国
企業が勝手に契約を結び、漁業、観光、地下資源活用などのビジネスを始めようと伝えられていることであります。一体、この事態をどうとらえ、いかに対処しているのでしょうか。少なくとも、各国に対して北方領土が
我が国固有の領土であることを機会あるごとに表明し、協力を求めるべきではありませんか。また、いやしくも、
我が国の
企業が、たとえ一部といえども、そうした行為に走らないよう厳重に
措置すべきだと
思います。
世界
経済の現状を守っていくために何よりも大切なのは、さきに触れましたように
自由貿易体制を守っていくことであります。ブロック化がこれから強まることがあっても、弱まることはないだろうと
考えます。その点で最も大切なのは、
ガット・ウルグアイ・ラウンド
交渉を、当初の
計画どおり、できるだけ早く決着させることだと
思います。米国と
ECはいまだ
合意に達しておりませんけれども、現状と
見通しはいかがでしょうか。
我が国としては、
農業問題に対してその関連でどう取り組むつもりでありますか、
総理の御意見を承りたいと存じます。
冷戦
構造の
崩壊後、今日の国際情勢は、世界の新秩序の形成に向けて模索している時期にあると言えましょう。世界のGNPの約一五%を占め、
自由貿易体制の恩恵にあずかる
我が国は、これまで以上に世界の平和と安定に貢献することが求められております。
宮澤総理は、
就任後初の
所信表明演説の中で、世界情勢について「新しい世界平和の秩序を構築する
時代の始まり」であるとの認識を示され、
国連の
役割が増大しつつあり、
我が国としても
国連に対して「
最大限の貢献をしなければならない」と述べられました。私も同様の
見解を持つものであります。
さて、重要なことは、
国連中心の平和維持活動に対して
我が国がどこまで貢献できるかであります。幸い、さきの
国会でPKO協力法が成立したことは記憶に新しいところであります。このPKO協力法の成立によって、初めて本格的な人的貢献、いわゆる汗を流す国際貢献が可能になったと言っても過言ではありません。私も、
国際平和協力特別委員会の委員長の任にあった者としていささかの自負を覚えるものであります。ただ、残念ながら全治三週間のけがをいたしまして、それを
考えると、むしろカンボジアより院内の方が何か危険なような感じがいたします。
我が国のPKOへの参加は国際的に評価され、カンボジア国内にも快く受け入れられていることは、各種報道を通じて明らかになっております。ただ、残念なのは、この
国連中心の平和主義というものが、
我が国民の間で必ずしも十分にまだ理解されていない向きがあります。PKO活動は、
憲法九条に反しないばかりか、
憲法に定められている
我が国の国際平和に寄与するものであるということを、この際、
総理からもう一度鮮明にしていただき、
我が国が世界にあって平和を求める国であることを内外に高らかに宣言していただきたいと
考え、ぜひお願いいたします。
自衛隊諸君の現地での活躍には目覚ましいものがあります。その陰にあって支えている家族の御協力と御理解に対して、心から感謝と敬意を表するものであります。また、カンボジアの人々も喜んでいると聞くたびに胸が熱くなります。隊員の諸君がけがをせず健康で無事に任務を終えられることを祈念し、かつ、カンボジアに真の平和が一日も早く
確立されることを祈ってやみません。
UNTACの活動において、
ポル・ポト派の
武装解除が緊急のテーマになっております。このことについて、
政府がタイ国と協力して、パリ協定の実施についてたび重なる
交渉を通じて大変な努力をしておられることは心強いと存じます。今後もぜひ円滑に妥結するよう一層の努力を期待いたします。
総理、
国連における
我が国の責務についてどうお
考えでありましょうか。分担金は米国に次いで二位と世界有数の地位を占めるようになり、今は非
常任理事国にはなっておりますけれども、依然として敵国条項は残っております。一方、加盟国の中には、分担金の支払いにおいて延滞が多く、必ずしも
日本のようにまじめに取り組んでいるところばかりではないと伝えられております。
国連の
役割はますます高まっていく以上、
我が国としても、こうした問題点を率直に指摘し、改善を呼びかけ、真に世界平和を実現できる体制をつくっていくべきではありませんか。
また、
国連における
日本人職員の数も必ずしも十分とは言えません。適材適所で世界に通用する優秀な人材をどしどし送り込むよう配慮すべきではありませんか、お
考えを伺います。
外交における情報活動というものについてお尋ねいたします。
ロシアのエリツィン
大統領訪日延期が直前になってわかったというようなことは、あり得べからざることではないでしょうか。外務省は、来年度、機構を
改革して対処するといいますが、本当にそれによって
国民の期待にこたえることができるのでしょうか。また、世界の主要国の
外交官の数と比較した場合、
日本はかなり少なく、ちなみに、在外勤務者を含めた職員総数を調べてみますと、
日本の四千四百人に対して、何と米国は一万六千人で約四倍、英国、フランスは約八千人と二倍となっておりまして、早急に増員の必要があると
思います。
過去をあげつらっても仕方がありませんけれども、古くはインドネシアのスカルノ
大統領失脚、中国の
国連加盟、米中頭越し
外交、中韓国交樹立など、情報不足についても反省させられることが相次いだのはまことに遺憾であります。問題は、外務省にあって余りにも純血主義的人事が行われ過ぎているのではありませんか。今こそ、国際社会に通用するすぐれた人材を
外交の第一線に積極的に登用すべきではないでしょうか。
同時に、
我が国大使は、相手国にじっくりと腰を落ちつけて仕事に取り組む期間が比較的短いようであります。しかも、英仏独語以外の言葉は十分ではないと言われております。わずか短期間で
交代したり、通訳を通じてしか
交渉できないといったような
状態を一刻も早く
解消すべきではありませんか。
外交に力をかけようとする
総理の
決意を伺います。
以上、私は、
宮澤内閣が当面する緊急
課題を中心として、
総理の確固たる
信念を伺いました。
今、我々は、相次ぐ不祥事により
国民の
政治不信を招いたことを厳粛に受けとめ、二度とかかることのないようみずからを厳しく律し、
政治倫理に徹するとともに、金権的
政治体質の仕組み、根源を一掃し、
信頼の
政治を回復するために、たとえ痛みの伴う
改革であっても全党一致し
てこれを克服し、実効ある
政治改革を断行しなければなりません。
また、補正予算は、
総合経済対策の裏づけとなる財政
措置のみならず、内需主導型の
経済により対外不均衡を
是正して世界
経済回復の
役割を負うものであります。その意味から、補正予算の早期成立は今や国際的要請であります。
以上二つの命題を帯びた今
国会の
使命はまことに重かつ大であります。
総理、どうかこの目標達成と、同時に一億二千四百万人の
日本人に明るい夢ある
生活大国の実現に向けて身を挺してのリーダーシップを発揮されることを強く期待して、私の質問を終わります。(拍手)
〔
国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕