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国務大臣(羽田孜君)
平成四年度
補正予算の御審議をお願いするに当たり、当面の
財政金融政策の
基本的な
考え方について
所信を申し述べますとともに、
補正予算の大要を御説明申し上げます。
まず、最近の経済情勢について申し述べます。
我が国経済は現在調整過程にありますが、
住宅投資には回復の動きが見られ、また
公共投資も順調に伸びております。今回の調整局面においては、従来と異なり、
資産価格の急激な低下を背景に、
金融システムの
安定性に問題が生じているのではないかとの懸念とその実体経済への影響が種々論議されており、私はこのような
状況を「複雑骨折」と申し上げてまいりました。
金利動向を見ますと、本年七月に行われた公定歩合の引き下げを含め、五次にわたる引き下げの効果などにより、市場金利は低下し、これを受けて
金融機関の貸出金利も低下してきております。
また、為替動向につきましては、先般、欧州市場を
中心として不安定な
状況となり、こうした中で円高の動きも見られましたが、為替相場が思惑等により不安定な動きを示すことは好ましくなく、今後とも為替相場の推移を注視しつつ、市場の安定を図ってまいりたいと
考えております。
政府は去る八月二十八日に、十兆七千億円に上る過去最大規模の
公共投資の
拡大等を
中心とする
内需拡大策や、
金融システムの
安定性の
確保のための施策及び証券市場の活性化等のための施策を含む
総合経済対策を決定いたしました。
この
対策のうち公共
事業関係費の追加等につきましては、今般御審議をお願いしております
平成四年度
補正予算に盛り込んでおりますが、その実行について
補正予算を必要としない諸施策につきましては、既に着実な
実施を図っておるところでございます。
すなわち、
財政投融資につきましては、
住宅金融公庫等に対し、弾力条項の発動による所要の追加
措置を行ったところであり、
中小企業対策としては、
国民金融公庫、
中小企業金融公庫等の貸付限度額を大幅に増加させるなど所要の
措置を講じたところであります。また、
民間設備投資の
促進に関する税制上の
措置につきましては、
省力化、合理化関連等の
民間設備投資を
促進するため、投資
促進税制の対象設備の追加を
実施いたしました。なお、公共
事業等の施行につきましては、その
促進に努め、既に所期の成果を上げているところでありますが、引き続き、
対策により新たに追加されることとなった分も含めて、全体として円滑に
実施されるよう下半期も含めた施行の
促進を図ることといたしております。
金融システムの
安定性の
確保につきましては、
金融機関の自助
努力を
基本としつつ、
政府としても
金融システムに対する
国民の
信頼が損なわれないよう
最大限の
努力を払っているところであります。
金融機関の不良資産につきましては、処理方針を早期に確定するとともに、
計画的、段階的な処理を図っていくことが重要であり、この観点から個別問題の早期処理が進められております。また、不良資産のディスクロージャーの充実を図り、不良資産についての税務上の取り扱いにかかわる所要の
措置を講じたほか、担保不動産の流動化を図るための仕組みについて民間
金融機関による検討が行われるなど、必要な
環境整備に努めているところであります。さらに、
対策に盛り込まれました新たな自己資本充実策も着実に
実施されており、経済
活動に必要な資金の円滑な供給が図られるような
金融機関の融資
対応力の
確保が図られております。
証券市場の活性化等のための施策につきましては、本年度における公的資金の簡易保険福祉
事業団等を通じる単独運用
指定金銭信託、いわゆる
指定単への運用に関して、株式組み入れ比率を制限しない新たな
指定単を設けることといたしました。そのうち、本年度
財政投融資
計画からの運用分につきましては、既に所要の貸し付けを
実施したところでありますが、さらに
財政投融資資金を新たに追加するため、
補正予算において所要の
措置を講じております。また、貸付信託の運用対象に株式を追加したほか、個人投資家の株式保有の
促進策等につきましても現在検討を行っているところでございます。
この
総合経済対策を着実に
実施していくことが、
我が国経済の
内需を
中心とする持続的な
成長の
実現に大きく
貢献するものと確信をいたしております。(
拍手)
次に、
財政改革について申し述べます。
我が国財政は、
平成四年度末の
公債残高が約百七十六兆円
程度にも達する見込みであり、国債費が
政策的経費を圧迫するなど、依然として構造的に厳しい
状況が続いております。このような
状況の
もとで、
財政運営の
基本的方向は、今後の
社会経済情勢の
変化に
財政が弾力的に
対応していくために、
高齢化社会に多大な負担を残さず、再び
特例公債を発行しないことを
基本とし、
公債残高が累増しないような
財政体質をつくり上げていくことであり、このため、今後ともたゆまぬ
努力を続けていく必要があろうかと
考えます。
海外におきましても、このように
財政に厳しい節度を求めることが重要であるという
認識が高まってまいりました。先般ワシントンにおいて開催されましたIMF・世銀総会など一連の国際
会議の場におきましても、
我が国が、現下の困難な
財政事情にもかかわらず、過去最大規模の
経済対策を策定したことに対し高い評価が与えられるとともに、これとの関連において、
我が国が長年にわたり行ってきた真剣な
財政改革努力が評価されたところであります。
ところで、先ほど申し上げましたような
財政構造の問題に加えまして、最近の経済情勢を反映し
平成四年度の税収は当初見積もりに比べ大幅な減収を生ずるものと見込まれ、また、
平成五年度の税収も引き続き厳しい
状況が継続するものと
考えられるなど、
我が国財政は近年になく容易ならざる
状況に立ち至っております。しかしながら、このような
状況の
もとにあっても、
財政運営の
基本的方向を踏まえ、
特例公債を再び発行するような
事態は厳にこれを回避しなければなりません。このため、
平成五年度の予算編成に当たりましても、引き続き、徹底した
制度、施策の
見直しゃ歳出の節減合理化を図るなど
財政改革を強力に
推進していく必要があろうと
考えます。
次に、今
国会に提出いたしました
平成四年度
補正予算の大要について御説明申し上げます。
平成四年度一般会計
補正予算におきましては、さきに御説明いたしました
総合経済対策を
実施するために必要な公共
事業関係費等の追加、
人事院勧告の
実施に伴う国家公務員等の給与の改善に要する経費等を計上するとともに、税収の大幅な減収に対処するための
措置を講ずることといたしております。
今回の一般会計
補正予算につきましては、歳出面において、
総合経済対策における各般の施策を
実施するため、公共
事業関係費の追加として、一般公共
事業関係費一兆三千億円、災害復旧等
事業費三千七百二十二億円を計上するとともに、一般公共
事業にかかわる所要の国庫債務負担行為の追加を行い、また、文教施設、研究施設等を初めとする各種の施設
整備費等の追加として二千九百億円を計上することといたしております。さらに、
中小企業等
特別対策費八百八十五億円等を計上いたしております。このほか、給与改善費、義務的経費の追加など特に緊要となったやむを得ない事項について
措置を講ずることといたしております。
他方、歳入面におきましては、税収が、最近までの収入実績等を勘案すると、当初予算に対し、四兆八千七百三十億円の大幅な減収となることが避けられない見通しとなりました。このような異例の
事態に対処するため、まず、既定経費の徹底した節減、予備費の減額、税外収入の
確保及び追加
財政需要の圧縮を行ったところであります。また、所得税及び法人税の収入見込み額が減少すること等に伴い地方交付税交付金を一兆五千六百八十二億円減額するとともに、建設公債につきましては、やむを得ざる
措置として公共
事業関係費の追加に
対応するもの等について追加発行することといたしております。
しかしながら、これらをもってしてもなお財源が不足することから、臨時異例の
措置ではありますが、前年度の決算上の純剰余金一兆五千三百十八億円につきまして、その全額を不足財源に充当するとともに、一般会計において承継した債務等の資金運用部に対する償還を延期することにより、当該債務の償還財源の予算繰り入れ五千五百八十六億円を行わないことといたしました。なお、この剰余金の処理等につきましては、別途
平成三年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例等に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
これらの結果、
平成四年度一般会計補正後予算の総額は、歳入歳出とも当初予算に対し、七千二百八十三億円減少して、七十一兆四千八百九十七億円となっております。
地方
財政につきましては、一般会計からの地方交付税交付金が減額されますが、地方団体の円滑な
財政運営を
確保するため、交付税及び譲与税配付金
特別会計におきまして所要の借り入れを行うことにより、当初予算額どおりの地方交付税総額を
確保することといたしております。
以上の一般会計予箕補正等に関連して、
特別会計予算及び
政府関係機関予算につきましても所要の補正を行うことといたしております。
財政投融資
計画につきましては、
総合経済対策の
実施等のため、今回の
補正予算におきましても、
日本開発銀行、
国民金融公庫等に対し所要の追加を行うことといたしております。これに伴い、
日本開発銀行につきましては、
日本開発銀行法の一部を改正する法律案を提出し御審議をお願いすることといたしております。
以上、
平成四年度の
補正予算の大要について御説明いたしました。何とぞ、
関係の法律案とともに、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願いを申し上げます。(
拍手)
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