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1992-12-09 第125回国会 衆議院 安全保障委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日平成四年十月三十日)(金曜日) (午前零時現在)における本委員は、次のとおり である。   委員長 中山 利生君    理事 江口 一雄君 理事 大島 理森君    理事 亀井 善之君 理事 瓦   力君    理事 三原 朝彦君 理事 上田  哲君    理事 山中 邦紀君 理事 渡部 一郎君       石井  一君    石原 伸晃君       今井  勇君    今津  寛君       北川 正恭君    佐藤謙一郎君       塩崎  潤君    鈴木 宗男君       中馬 弘毅君    中尾 栄一君       中谷  元君    中山 成彬君       中山 正暉君    東   力君       保利 耕輔君    山下 元利君       池田 元久君   宇都宮真由美君       沢藤礼次郎君    渋沢 利久君       新村 勝雄君    土肥 隆一君       楢崎弥之助君    松原 脩雄君       元信  堯君    吉田 正雄君       北側 一雄君    山口那津男君       山田 英介君    東中 光雄君       神田  厚君 ――――――――――――――――――――― 平成四年十二月九日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 中山 利生君    理事 江口 一雄君 理事 大島 理森君    理事 亀井 善之君 理事 瓦   力君    理事 三原 朝彦君 理事 上田  哲君    理事 山中 邦紀君 理事 渡部 一郎君       石井  一君    石原 伸晃君       植竹 繁雄君    北川 正恭君       佐藤謙一郎君    鈴木 宗男君       中馬 弘毅君    中尾 栄一君       中谷  元君    中山 成彬君       中山 正暉君    鳩山由紀夫君       東   力君    前田  正君       森  英介君    山下 元利君       池田 元久君   宇都宮真由美君       沢藤礼次郎君    土肥 隆一君       楢崎弥之助君    松原 脩雄君       元信  堯君    吉田 正雄君       北側 一雄君    山口那津男君       山田 英介君    東中 光雄君       神田  厚君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 宮下 創平君  出席政府委員         国際平和協力本         部事務局次長  萩  次郎君         防衛庁参事官  高島 有終君         防衛庁参事官  河路 明夫君         防衛庁長官官房         長       村田 直昭君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         防衛施設庁総務         部長      竹下  昭君         防衛施設庁施設         部長      江間 清二君         外務大臣官房審         議官      橋本  宏君         外務省アジア局         長       池田  維君         外務省中近東ア         フリカ局長   小原  武君         外務省国際連合         局長      澁谷 治彦君  委員外出席者         安全保障委員会         調査室長    岩永 英一君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月十日  辞任         補欠選任   神田  厚君     大内 啓伍君 同日  辞任         補欠選任   大内 啓伍君     神田  厚君 同月十一日  辞任         補欠選任   神田  厚君     大内 啓伍君 同月二十日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     不破 哲三君 同月二十五日  辞任         補欠選任   石原 伸晃君     越智 伊平君   今津  寛君     倉成  正君   沢藤礼次郎君     井上 普方君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     石原 伸晃君   倉成  正君     今津  寛君   井上 普方君     沢藤礼次郎君 同月二十七日  辞任         補欠選任   石原 伸晃君     武藤 嘉文君   今津  寛君     倉成  正君   鈴木 宗男君     越智 伊平君   中馬 弘毅君     梶山 静六君   池田 元久君     後藤  茂君   山口那津男君     二見 伸明君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     鈴木 宗男君   梶山 静六君     中馬 弘毅君   倉成  正君     今津  寛君   武藤 嘉文君     石原 伸晃君   後藤  茂君     池田 元久君   二見 伸明君     山口那津男君 同月三十日  辞任         補欠選任   石原 伸晃君     倉成  正君   今津  寛君     武藤 嘉文君   北側 一雄君     市川 雄一君 同日  辞任         補欠選任   倉成  正君     石原 伸晃君   武藤 嘉文君     今津  寛君 十二月一日  辞任         補欠選任   宇都宮真由美君    早川  勝君   土肥 隆一君     菅  直人君   市川 雄一君     北側 一雄君   不破 哲三君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   菅  直人君     土肥 隆一君   早川  勝君     宇都宮真由美君 同月八日  辞任         補欠選任   大内 啓伍君     神田  厚君 同月九日  辞任         補欠選任   今井  勇君     森  英介君   今津  寛君     前田  正君   塩崎  潤君     植竹 繁雄君   保利 耕輔君     鳩山由紀夫君   山下 元利君     甘利  明君 同日  辞任         補欠選任   甘利  明君     山下 元利君   植竹 繁雄君     塩崎  潤君   鳩山由紀夫君     保利 耕輔君   前田  正君     今津  寛君   森  英介君     今井  勇君     ――――――――――――― 十月三十日  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出、第百十八回国会閣法第一八号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、  第百二十三回国会閣法第六一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月二日  防衛費予算削減に関する陳情書  (第二〇四号)  米軍基地総合的対策に関する陳情書外一件  (第二〇五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  閉会中審査に関する件  国の安全保障に関する件      ――――◇―――――
  2. 中山利生

    中山委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国政に関する調査を行うため、国の安全保障に関する事項について、衆議院規則第九十四条の規定により、議長に対して承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中山利生

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 中山利生

    中山委員長 次に、国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山中邦紀君。
  5. 山中邦紀

    山中(邦)委員 防衛大綱並びに中期防見直し、この関係お尋ねをしたいと思っております。  宮澤総理は本年の一月二十八日、衆議院の本会議におきまして、中期防修正にも前向に着手、それから防衛力あり方についても防衛庁内部検討を始めている、場合によっては大綱別表の変更にもつながり得る、こういうことを表明されました。さらに、二月四日の衆議院予算委員会で同じ件に関しまして、防衛計画大綱に定めている別表について、時間をかけてではあるが検討する必要があるのではないかという問題意識がある、こういうお話でございました。  かねて私どもが、冷戦の解消の状況を見て大綱中期防、そして予算につながる一連のあり方について根本的に見直しをすべきである、こういうふうに申し上げておったわけでありますが、この見直し作業状況、そしていつごろどういう形で結論が出され、公表されるか、この経過についてお伺いをいたしたいと思います。
  6. 宮下創平

    宮下国務大臣 お尋ねの点につきましては、ちょっと整理する意味で申し上げたいと存じますが、実は現在の中期防は、平成三年から七年までの五カ年間でございます。これが策定されたのはたしか一昨年の十二月の末でございまして、当時ソ連邦の解体というような趨勢が予見はされましたけれども、そこまで大きな変化はございませんでした。しかし、それ以前における国際情勢変化というのは極めて急激なものがございました。そこで現在の中期防衛力整備計画を策定するに当たりましても、国際情勢認識についてある程度きちっとした見方を示しつつも、しかし、今後どのように変化するかがはっきり予測できない事態もございましたので、中期防自体の中にこうした大きな変化等を頭に置きながら、まず第一は、御承知のように中期防は、平成二年度価格でございますが、二十二兆七千五百億円という枠組みでございます。そういうものをつくりましたが、その総額範囲内で必要に応じて修正をする。つまり、総額範囲内ということは増額修正はあり得ませんということで、そのことが今後の手順として書かれております。  それからもう一つは、防衛力整備についての今のお尋ねの後半の問題でございますけれども、これは人的資源制約等の見地から、つまり、これから高齢化社会を迎えまして、自衛隊が要望する年齢層、十八歳から二十六歳くらいまでの年齢層の割合が比較的少なくなっていくというような状況を踏まえまして、防衛力全体のあり方について検討をする、そして、それは平成七年度の次期防の策定までの間に一応検討をして次期防に反映させるべきもの、こうなっているのは御案内のとおりでございます。  前者の点についてまず申し上げますけれども、これは昨年の暮れの安全保障会議におきまして宮澤総理の方から、この中期防修正見直しについては、情勢もこのような大きな変化もあるし、基本的に考えなければならない問題もございますので、前向に、検討の前広という指示がございまして、私どもこの春以来、防衛庁内部に事務次官を長とする防衛力整備検討委員会を設けまして、これは前にあったものを引き続き改組といいますか内容を改めて、それによって検討をするということで鋭意検討を重ねてまいったところでございます。そして概算要求に当たりましては、この中期防修正見直しを念頭に置きながら概算要求をしてほしいという指示を私がいたしまして、今の平成四年度予算伸び率で申しますと三・八%の伸び率になっておりますが、現在のような三・六%の概算要求という格好で要求を提出したところでございます。  一方、いろいろ詰めなければならない問題等もございまして、前向に検討するばかりではなく、前倒しを実施したらどうかという意見もかなり強いものがございました。私も、平成五年度の予算中期防修正見直し整合性のあるものとして来年の概算要求要求しろということを言っておりますけれども検討がある程度進む段階においてはこの修正見直しはきちっとした方がよかろうという最終判断を固め、総理とも御相談を申し上げて、この予算編成が年末、いつに内示されるかわかりませんけれども、それ以前に中期防修正見直しを決定してまいりたい、そして、その上に立って整合性のある平成五年度予算編成を行うという手順にしたいと存じております。  なお、後の方の防衛力整備検討については、これは今申しましたように直ちに結論を得るようなものではございませんけれども、御案内のように、防衛計画大綱別表等には主要装備編成等の骨格が決められておりますが、防衛力整備検討の結果いかんによってはこの大綱別表編成につながり、あるいは場合によっては自衛隊の態勢にも影響を及ぼし得るものというような見解を申し上げておりまして、これは鋭意これからさらに濃密な検討をしなければならない、こういう段階でございます。
  7. 山中邦紀

    山中(邦)委員 前広かつ前倒し、こういうお話でございますけれども前倒しという意味はわかりますが、区別した意味での前広というのはどういう趣旨を含むか。当初、来年の夏ごろをめどに大綱見直しをするというような話も伺っておりまして、最近では、十二月の安全保障会議見直し結論が出るというようなことも聞いているわけでありますけれども、この辺はまだ予測が立っていないのか。大綱との関係中期防も位置づけ、内容が決まってくることでもありますし、ただいま長官お話では、概算要求中期防見直し前提考えている、こういうことであれば、整合性を保つ意味で全部一挙にというのが、しかも早くというのが筋ではないかと思いますが、どうでしょうか。
  8. 宮下創平

    宮下国務大臣 これは、現在の中期防が二つに事柄を分けて考えてあるというのは、それなりに私は意味があると存じております。つまり、現在の中期防総額範囲内での修正は、一たん政府承認をいたしました中期防衛力整備計画の枠内における修正でございまして、鋭意各幕その他、現実的な配慮のもとに検討を重ね、そして結論を得られるものでございますけれども、一方、防衛力整備あり方につきましては、これは中期防でもいみじくもこの期間中に結論を得るようにと書いてございますように、国際情勢変化防衛技術変化あるいは財政事情、また効率的な正面後方バランスをどう考えるか、非常に広範多岐にわたる検討を要しますし、また私個人の考えでは、これからの防衛政策、日本の安全保障政策というものをもっと世界の、あるいはアジアの中でどう考えていくかというような視点も入れながら、効率的な節度のある防衛力専守防衛とかそういう防衛基本原則は守りつつもそういう視点も取り入れていくということになりますれば、これは広範な議論をいろいろ内部でもいたしますし、また外部の意見も聞く等々、かなり防衛政策基本にかかわることでございますから、全般にわたって検討をした上で結論を得たいということでございます。  理論上は先生のおっしゃるように連動はしておるということは、これは率直に防衛力あり方の問題と中期防とは関係していることは間違いございませんが、私ども結論を得る段階ではこれを区別して、事柄防衛力整備あり方をグローバルな、もっと抜本的な、いろいろの諸問題を検討すべきように私ども意識しておりますから、これを切り離して中期防でも決められておりますし、私どももさように扱うことが妥当であろうということで、そのような扱いにしておるわけでございます。
  9. 山中邦紀

    山中(邦)委員 もう少し率直に、現在どういうことが問題になっておるかというようなことをお伺いをしたいというふうに思うのです。  ことしの防衛白書によりますと、「冷戦終結」ということをはっきりうたっております。中期防作成段階にはまだ白書もそういう表現はしていない。終結の途中にあるというような意識はあったにせよ、なお米ソ対立が大きいという段階中期防作成されているというふうに思うわけであります。大綱に至りましては、これは作成のときはデタントというような状況はあったわけでありますけれども、なお米ソ対立段階にあった、こういう関係であります。慎重にということはあっても、慎重かつ急いでということではないのかというふうに思うのです。  今まで報道された議論の中では、見直しの時期については先ほど私が申し上げたようなことが言われております。また、中期防下方修正、一兆とも言い三千億とも言い、現在六千億から九千億の間で議論をされているということも言われております。結論が出るまでは詳細はあるいはお聞きできないかもしれませんけれども、どういう要素といいますかポイントを中心にどのような議論がなされているか、聞かせていただきたいと思います。
  10. 宮下創平

    宮下国務大臣 今、先生前段の問題は、冷戦構造終結しておるということは事実でありますし、白書にもそのように記述をされております。しかしながら、一方、冷戦構造が終わればすべてよしという状況でないことも記述をしておるのは御案内のとおりでございまして、特にアジアにおきましては、韓国ロシア、それから韓国中国との国交回復等々、また南北の対話も必ずしも十分な進展を見ておりませんけれども、その機運があるというようなこと、あるいはベトナム情勢中国ベトナムとの関係ロシアベトナム関係、そういった面で好ましい傾向のあることも事実でございますけれども、しかし世界全体として見ても、民族的なあるいは宗教的な、地域的なあるいはそれらが複合された形の紛争というものの生起する可能性が非常に高まっておりますし、アジアにおいても、依然としてヨーロッパと比べまして非常に情勢が多様化しております。そしてまた複雑でございます。一義的にヨーロッパみたいにCSCEというような形で枠組みがつくられ得る可能性も、模索すべきだと思いますけれども、今のところまだできてもおりません。  そのような状況でございますから、私どもは、国際情勢一つとってもそう一義的に削減削減と言うだけで済まされないいろいろ問題を持っておりますので、国際情勢変化については、注意深くかつ多少中期的に、安定的にこれを見て防衛力の問題との関連ではとらえていかないといけないのではないか、こう思っておるところが前段に対する回答でございます。  それから、下方修正につきましてお尋ねの大幅な削減が報道されてもおりますけれども、これは今内部の調整をしたり、あるいは財政当局等々の非公式折衝等を今まで重ねてまいったものでございまして、観測的なあるいは一面的な記事であるかもしれませんが、ただ、財政上の理由、非常に苦しい来年の予算編成になると私は思いますけれども、それだけによって中期防あり方自体を決定的な削減要因として考えるということは間違っていると思います。あくまで我が国の必要な防衛所要は確保しつつも、なお修正見直し趣旨に沿ってやることが必要でございまして、この額等については今後財政当局ともあるいは関係省庁とも詰めながら、正式には安全保障会議、これは年末の予算編成内示前に決着すべきものだと存じますが、そのような形でやってまいりたい、こう思っておるところでございます。
  11. 山中邦紀

    山中(邦)委員 前倒しかつ前広の見直し議論は去年の暮れまでは出ていなかったと思うのです。去年の暮れ、ことしの初めから政府の方では言ってきた、こういうことではないかと思います。それにしては先のタイムスケジュールとしてもはっきりしない。どういうところをポイント議論しているかというのもできるだけ明らかにしてもらいたいと思いますが、お話がないということは、どういうことでこういう見直しが言われるようになったかということについても疑念を持たざるを得ないと思います。財政問題あるいはマンパワーの問題、これらに迫られてお話が出てきたというような感じがするわけであります。やはりそうではなくて、国際情勢がこれだけ変われば見通しが不安定というようなことではないと思うのですね。今の大綱専守防衛ということにありますれば、グローバルなというのはどのように関係をしてくるのか問題ではないかというふうに思うのです。  既にマンパワーの問題、定員問題はこれまでも問題になってきているわけでありますけれども、特に陸上自衛隊では充足率の問題が定員に比べて不足をしているということから、実際縮小管理というような形で人員不足分が処理をされているというふうに伺っておりますけれども、これはどういう内容のものであるのか。有事即応ということであれば、現在既に定員を割っているわけでありますから、この縮小管理をもって対応できるということではないかと思うわけであります。これまでの編成前提縮小管理ということを突き抜けて、編成自体縮小管理考えの行き着く先には問題が出てくるはずでありまして、縮小の問題はさらに大綱別表関連をするというふうに考えます。そういう意味縮小管理内容、それから、現在定員不足である場合に、有事にこの縮小管理編成上どういうふうに影響していくか。幾つか問題点を挙げましたけれども、お聞かせを願いたいと思います。
  12. 宮下創平

    宮下国務大臣 言うまでもないことでございますけれども国際情勢との絡みで我が国脅威対抗論というような発想に立っておりませんで、基盤的防衛力構想に立っておることはしばしば御説明申し上げているとおりでございますから、国際情勢変化それ自体だけに着目してということではございません。あくまで私ども防衛計画大綱で定めた基本的考え方基本的な理念というものは尊重していかなければならないということでございますので、その点もあわせて補足させていただいておきます。  なお、マンパワーの点についてお触れになりました。特に陸上自衛隊等充足率の低下、縮小化ということでございますが、これは中期防の中におきましても、今防衛計画大綱では別表定員十八万人体制でございますけれども、既に十五万三千人を限度としてそれ以上充足を図らないということが中期防自体の中に明記してございます。これは今後の方向をある程度示唆するものであると私も思いますけれども中期防自体にそのようなことが書かれております。  なお、この充足率の問題は定数の問題とは意味を異にしておりまして、本来でございますと、慢性的な人員不足分はともかくとして、定数充足されておるという建前が本来の建前でございますけれども、これがいろいろ歴史的な経過的な問題もございまして、充足率というものを掛けて、定員それ自体法律上も認められておりますが、予算上の措置として、技術的な要因のほかにある程度の充足率を、特に陸上自衛隊等は八〇%の半ばというようなことで推移してきております。空それから海の方は、これは艦船の就役その他やむを得ない点がございますから、それよりさらに一〇%ぐらい高めた九〇%の半ばぐらいで今までずっと推移してきております。一時この充足率平成四年度の予算でも若干下げました。これはバブルの時代でございまして景気が非常によかったものですから、なかなか充足もままならぬという情勢もございましたものですから一時的に下げたものでありますが、本年度の概算要求におきましては、さらにそれをもとへ戻して引き上げを要求しております。  そんなことでございますので、私どもとしては、ただただこれは減らしていけばいい、それだけの方向であるという認識ではございませんで、全体として要するに防衛所要に即応した、バランスのとれた形でいろいろの諸問題を考えていきたいということでございます。  なお、先生中期防修正見直しについて、個々の具体的な問題についてもうちょっと明確に問題点を示したらどうか、こういう御疑問を呈しておられる。ごもっともな点であると思いますけれども、これはごく概略的に申しますと、私ども正面といわゆる後方というようなことで装備を大まかにくくっておりますけれども正面装備につきまして調整し得るものがあれば若干調整していきたい、しかし新規で重要なものはこれは防衛所要上必要でございますから導入していく、全体としては多少縮減を考えていきたい。  それから後方につきましても、隊舎、宿舎等自衛官の処遇の問題は絶対に欠かせない問題でございまして、民間の中堅企業等のいろいろな施設等に比べても非常に劣っておりますし、隊舎、宿舎等もまた古いものがございます。そういった面はひとつ充実していかなければいかぬ。しかし、同じ後方であっても例えば艦船の修理その他、五年でやるものを五年半にするとかということは場合によれば検討に値するかなというような、いろいろ細かな積み上げ等をやりました結果として中期防の姿をどうしていくかということが結論づけられるわけでございますので、今いろいろ検討項目について、非常に詳細にわたり、また広範にわたっておりますので一々申し上げませんけれども、要は正面後方バランスがとれて、効率的な、額は必ずしも多くなくても、ぴりっとした専守防衛の立場に立った防衛力をつくり上げていくということが必要だという視点に立ってやっておるわけであります。
  13. 山中邦紀

    山中(邦)委員 マンパワーの問題については、現在の四個中隊、四個普通科連隊、師団という定まったタイプ、訓練は定員を欠いてなおかつ同じ編成でやるとしても、有事即応ということになりますと定員を満たした上の編成だと思うわけであって、実員に合わせて三個中隊、三個連隊、あるいは師団を旅団にというようなことは検討をしておられるのではないかというふうに思うわけであります。  また、カンボジアに施設大隊が六百人行っている。これは全陸自の施設大隊のどれぐらいになりますか。これを六カ月交代で次々に送り出すということになりますと、カンボジアへ行くのは業務に支障のない限りというような前提ではありますけれども、今の陸自が考えている即応態勢でその部分が欠けてもなおやれるというような見方が十分可能だと思います。この点はどうでしょう。
  14. 宮下創平

    宮下国務大臣 いろいろマンパワーの点で充足率が低いということで、師団とか七千師団、九千師団等の構成、あるいは機甲師団あるいは旅団等もございますけれども、それがフルに人員が満たされている場合といろいろ欠けておる状況、これは充足率が低い場合は、組織をそのままにしておきますとそういう状況が起きてまいります。しかし、今我が国専守防衛有事即応態勢ではございますけれども、基幹的な、重要な点については重点配置をいたしておりますから、一律に全部その率で下げておるというものでもございません。これは十分それに対応する工夫をされているものと私も存じております。  なお、施設大隊の数は今ちょっと私つまびらかにいたしておりませんので、後で必要であれば政府委員の方からお答えさせていただきますが、今カンボジアにおける六百人は、これは伊丹に方面総監がございまして、中部方面総監の中国と四国に所在する施設大隊の一部を充てているわけでございまして、六カ月後には北海道の北部方面の方から六百人を交代要員として予定をいたしておりますから、これで出すというようなことでありまして、これによって有事即応態勢が欠けるとかなんとか、そういう問題ではないというように私は考えております。
  15. 山中邦紀

    山中(邦)委員 その辺の実情をもう少し知りたいと思います。ただいま伺っておりますと、大網や中期防見直し基盤的防衛力構想範囲考えておるというふうにうかがえるわけであります。しかしながら、七〇年代中期の米ソ対立があって、なおかつ冷戦の中休みというような状況における基盤的防衛力構想と、それから現在、白書にありますとおり冷戦の終えんという段階を迎えての構想は、その中身は違うはずだというふうに思います。ソ連の脅威というのも白書から消えました。八〇年代はむしろ脅威を強調しておったというふうに思います。  端的に伺いますけれども基盤的防衛力構想の上に立って現段階で限定的かつ小規模な侵略というのは、どういう形でどこからどこへ、どの程度の規模でということが予想されますか。
  16. 宮下創平

    宮下国務大臣 基盤的防衛力構想は、御案内のように五十一年の十月につくられたわけでございますけれども、当時、米ソ対立構造の中にはありましたけれども、非常に国際情勢が多様化し、そしてデタントの傾向が強かった時代でございまして、当時は、いわば平和時における防衛力の限界はいかんというような背景があったと存じます。そして、その基本的な考え方としては、我が国防衛力を持たないでおりますとかえって周初諸国に対して不安定要因になるというような、基本的な理念的なものを申し上げておるわけであります。そして基盤的防衛力でありますから、必要によってそれがエクスパンションできるというようなことも防衛計画の中にうたっておりますが、今私どもが進めております防衛力整備計画は、それに基づきまして、別表にもちろん主要編成あるいは装備の大まかな総枠というものは掲げられておりまして、それは超えるものではございません。しかし、軍事技術の発達その他がございますし、国際情勢変化等もありますから、そうした中で、量的にはおおむね達成された水準の中での近代化、合理化を図ってきておるものでございます。  なお、二番目の、有事即応で一体どこにどういう格好で防衛的な体制を考えておるのかという点でございますが、これは冷戦構造時代におきましては、率直に申しまして北海道等に重点配置しておったことは事実でありますし、駐屯地を再編、改編するにいたしましても、非常に地元の方々の歓迎を受けておりますし、それを移すというようなこと、あるいは減らすということもなかなか容易でないなと今感じておりますけれども、これは配置だけで問題を解決できるのか、機動力を持たせておいた方がいいのか、いろいろそういうことを含めて防衛力あり方検討したいということでございまして、今特定の国がどうであるからそちらに重点配置すべきであるとか、あるいは小規模、限定的なものは一体どうかという議論も、当院においては委員会で随分長いこと論争がございます。まあ、委員の中には大変詳しいお方もおられまして、その経緯は重々御承知の先生方もたくさん当委員会にもおられますけれども、私、一々その経過等について申し上げませんが、今直ちに脅威があるからどう対応していくんだというようなことは、基盤的防衛力構想の立場に立って、またアジア全体の情勢は申し上げましたけれども、特定、特化することは妥当でないし、まだこれからいろいろな意味検討もしていかなければならぬ、こう思っております。
  17. 山中邦紀

    山中(邦)委員 委員長、一言だけ。  要領を得ないお話だと思ってお伺いをいたしております。やはり小規模かつ限定的というのは、表現はとにかく確度を持って予想しなければ大綱中期防予算議論ができないのではないか。白書を見ますと、ソ連の状況が不安定だということを言っております。またアジア状況も不安定だと言っております。しかし、それらの地域の財政力あるいは軍事力から見て我が国専守防衛を侵すようなことは考えられない。むしろ、アジアの不安定がどのように我が国専守防衛体制に影響があるかということについては関係がないと言わざるを得ないと思います。そちらの不安定に関し、いろいろな形で努力をして安定させるべく非軍事の部分において協力をするというのがあり得ても、そういうものに根拠づけて大綱考える、中期防考える、あるいは予算の規模を考えるというのはおかしいのではないかというふうに思っております。  この委員会も常任委員会になりましたから、さらに次の機会においていろいろこの議論をさせていただきたいと思います。
  18. 中山利生

  19. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 日本社会党の宇都宮真由美です。よろしくお願いいたします。  防衛庁長官は九月十三日に陸上自衛隊伊丹駐屯地における記者会見で、自衛隊法三条を改正してPKOへの参加、協力を自衛隊の本来的任務に格上げする考えがある、もちろん将来的にではございますが、そういうお考えがあることをお示しなされました。そしてまた、十月二十六日にもプノンペン市内で毎日新聞との会見で同じような構想を話されたということでございますけれども、この点に関しまして、この構想といいますかシナリオといいますか、今どのような段階にあるのか、どのようなことが今防衛庁の方では検討されているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  20. 宮下創平

    宮下国務大臣 お答え申し上げます。  もう申し上げるまでもございませんが、自衛隊法の三条には、自衛隊の本来任務といたしまして、直接侵略、間接侵略に対して我が国防衛することが主たる任務であるということが明確に書かれております。一方、今回の国際平和協力業務の位置づけにつきましては、事柄の性質上は、これからの国際化社会の中で日本が自衛隊の平和的協力を行うという意味で非常に重要な任務であると私も思っておりますけれども、この法律の位置づけとしては、第八章雑則というところの百条の七で、自衛隊法に、国際平和協力法で一方はっきりした平和維持活動の規定がなされると同時に、これを自衛隊が担うことができる根拠規定が設けられているわけでございまして、私は、これによってこの国際平和協力業務が劣後するとか、そういう認識は全然持っておりません。  しかしながら自衛隊は、本来的には今三条に言われておりますように、専守防衛というような基本的な防衛政策に沿って我が国防衛するということが一義的に極めて重要なことでございます。したがって、今度設けられました自衛隊法百条の七でも、運用上差し支えない限りという限定条件がつけられておるわけですね。決めたら無条件で何が何でも自衛隊の勢力をそちらに割くという問題ではございません。自衛隊の任務遂行に支障のない限りにおいて派遣をする、これが法律で明定されておりますので、位置づけはそのようになっております。  それで、将来これをどう持っていくかということで、野党の先生方の中にも、また自民党の一部の先生方にも、これだけ重要な国際的な貢献業務を自衛隊が今後やる以上は、自衛隊の中に組織化をきちっとして、しかも三条の任務として並べたらどうか、こういう御意見がございます。私は、これに対しましては、現状では時期尚早だということを申し上げているわけです。もう少しPKOの実績を積み重ね、それから国民世論が、自衛隊とはどういうものであるべきか、一部の政党では自衛隊を解体して施設部隊にしたらいいだろうというようなことがかつて言われたこともございますね。それで、自衛隊とは何であるかということをもう少し理解を深めて、国民的な論議の中でこの国際的な貢献をどう位置づけするかということがあって初めて現実的な問題になるだろうと思います。  したがって、私が申し上げたのは、将来課題としてはそういうことも十分考えられる、しかし今直ちにそういうことは考えておりませんという趣意で申し上げたわけです。それがどちらを強調するかによって直ちに何か作業に従事したやにもおとりいただける、あるいは新聞記事があるのかもしれませんけれども、私の真意はそういうことでございます。したがって、将来課題としての問題指摘にとどめておりまして、現実に別個の組織にして、そして三条に入れて、自衛隊の中でPKO部隊とかなんとかいうようなものをきちっと位置づけするというようなことを、率直に申しましてまだ検討はいたしておりません。  今カンボジアに出しているのは中部方面隊でございますが、ローテーションによりまして出せば十分可能でございますし、それからまた、法律によって二千人という枠がございます。今度のカンボジアだけでも私が辞令を出したのは、海上自衛隊の輸送艦、補給艦それから航空自衛隊の130等々の要員を含めて千百十四名になっているわけですね、この六百名を出すのに。したがって、そう無制限に出し得る法律的な条件もございませんし、今直ちにこれをやるということは必要ないばかりか、むしろそういう運用の問題で、ローテーシーョンによって広くそういうものに参加した自衛隊員が自衛隊の国際的な感覚を持っていただけるのは非常にいいので、そういうような格好で運用したい、当面はそう思っております。
  21. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そうしますと、将来のビジョンとしては一応頭に置いている、けれども、今の段階では何ら検討はなされていないというふうにお聞きしてよろしいのでしょうか。
  22. 宮下創平

    宮下国務大臣 私は、将来三条に入れた方がいいと断定はいたしておりません。そのことを検討して、重要な任務でございますから国民世論の動向あるいは国会の論議その他を通じて、与野党がそのような姿にあるべきだということになればその方向を模索しなければなりませんが、今は三条に入れるとも入れないとも明確には言っておりません。しかし、入れることについては、本来任務として規定することについては、自衛隊の平和的な貢献という重要な任務でございますから、将来問題としては検討に値するということを申し上げているだけでございまして、今、将来ある一定の時間が来れば三条に必ず入れますということを申し上げているわけではございません。
  23. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 今入れますと言われてないのはわかるのですけれども検討に値するということは、PKOに参加するということがこれから多分もっともっと必要になってくる、重要な任務になってくるのではないかということは、今の世界情勢から将来的に推察できると思うのですよ。そういう意味で、この自衛隊のPKO参加という任務が今より少なくなることはないだろう、将来、より重要になるだろうということは考えられるわけなんです。そういう状況の中で、もちろん新聞報道ですからそれを全部うのみにするわけではございませんけれども、この三条を改正してPKO参加は自衛隊の本来的任務にする、そういうことが防衛庁内でひそかに検討されているとかいうふうな新聞報道もなされていますので、そしてもしそれが事実であれば、今までの自衛隊あり方あるいは日本の防衛政策といいますか、そのあり方と全然変わってくるわけですから、私たちにとっても国民にとっても非常に重要な問題だと思いますので、全国民的な議論としてしていかなければならないと思うのです。  そういう意味で、では、本当に今は防衛庁としてはこの点については何ら検討されてない、いわば白紙の状態であるというふうにお聞きしてよろしいのでしょうか。
  24. 宮下創平

    宮下国務大臣 私は、防衛庁の中でも基本的な防衛政策についての否定的な見解その他は、これはいけない、やるべからざることだと申し上げておりますが、しかし、いろいろの問題について隔意なき意見を自衛官の諸君がやられることは、かえって自衛隊の活性化のためとそれからシビリアンコントロール、逆に言えばみんな黙っていたら何をやるかわからないということもございますから、発表をどんどんやっていただいた方がいいと私は思うので、あるいはそういう部隊編成はどうだという議論があるかもしれません。これは私は確認しておりませんが、報道によってはそういうことを報道することもございますから。しかし、これは政策としてまだ決定したものではございませんから、そういう意味では検討は白紙であると言ってよろしいかと思います。  それから、国民的な論議が必要だというのは、私が申し上げたとおり、先生も異存ない点でありますが、自衛隊あり方の問題として確かに議論を要する点がございます。今回の国際平和協力法は自衛隊の武力集団としての貢献ではございません。あくまで自衛隊の組織とか能力とか経験とか自給、自活能力とか——私もカンボジアに行ってまいりましたけれども、貴党の言われるような、民間人だけを集めてああいう業務ができるかといえば、私は不可能だと思いますね、現実の問題として。非常に過酷な条件の中で、後方その他が重層な組織でないと自己完結的な活動はできないと思います。  それは、例えばNGOなんかで何人かで行かれて特殊なケースでやられることはあり得ても、ああいった形で組織的に道路の補修、橋等でありますけれども、これだけでも大変なことなんです。ただ日本の民間会社が行ってやればいいというような代物でないことを私は現地を見てよくわかっております。それだけに自衛隊の能力の活用なんですね。経験の活用、組織の活用なんです。武力を行使するために出しているわけではないわけですから、この点は武力行使を前提とした三条、これは武力行使といったって海外における武力行使じゃありませんよ、憲法の制約がありますから。あくまで専守防衛の立場の武力行使を前提とした三条、これと今度の国際平和協力法におけるこの貢献とは全く別個なものでございまして、言うならば、自衛隊のそういうものを活用するしかないということだろうと私は思いますね。  そういう意味ですから、これを将来どういうように位置づけるかという問題はそういう視点からもいろいろの議論を重ねていかなければならない、そういう意味も含めて申し上げておりますし、しかし一方、汗を流すということは非常に重要な国際的な貢献であります。自衛隊がそれだけ国際社会の中で平和的な貢献をやるということは重要なことである。いろいろな視点からひとつ総合的に検討してまいりたい、こういうことでございます。
  25. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 では、この問題について一応検討に値する問題だということを前提にいたしまして、私も検討していただきたいと思う点を言わしていただきたいと思うのです。  自衛隊というのは、要するに国土防衛をするために必要最小限度の防衛力あるいは実力、軍事力という言葉をお使いになっておりませんけれども、そういう力ということを前提にして憲法上認められているという立場を政府はとられていると思うのです。そういうふうに見ますと、今度新たにPKOに参加するという任務を主たる任務あるいは準主たる任務として二本立ての目的を持った存在としますと、今までの憲法上認められた自衛隊から、PKOに参加するという部分ははみ出しちゃうと思うのですよ。そういう意味で、自衛隊を今まで合憲としてきた前提が崩れるのではないか。自衛隊がいわばPKOに参加という目的まで主たる任務としましたら、自衛隊自衛隊ではなくなるのではないかというふうにも思われるわけで、それであるならば、むしろ自衛隊とは別個の組織として、PKO参加をするための人員の訓練をする組織をつくればいいのではないか。  そしてまた、国土防衛とPKOに参加というのであれば、組織とか装備とかもやはり変わってくると思うのですよ。そういう意味で今までとは違う装備ども備えないといけないと思うし、そしてまた、PKOに参加する、あるいはPKOに参加するための訓練等に費やす予算防衛予算と見るのも何か不自然な気がいたしますし、先ほど長官言われましたように、むしろ必要なのは自衛隊の経験とか組織とか訓練された人、そういう自衛隊の能力が必要なわけであって、何も自衛隊という身分が必ずしも必要ではないのではないかと思うのですけれども、そのあたりは、要するに自衛隊とは別組織にするということですね、検討に値することとお考えでしょうか、それとも検討する余地はないとお考えでしょうか。
  26. 宮下創平

    宮下国務大臣 事柄をわかりやすく御説明申し上げるために、PKOと並ぶ国内での、これは防衛任務ではございません災害派遣ですね。こういうものを大々的にやっているのは御案内のとおりですね。これは何も三条任務、直接侵略、間接侵略あるいは公共の秩序の維持ということではございません。しかし、自衛隊の能力を活用しての任務として自衛隊法に明記されておりまして、これは国内で多大な貢献をし、評価をされているところでございます。私は、非常にラフなあるいは大ざつぱな議論だとおしかりを受けるかもしれませんが、PKOも国際的な災害版だと思うのです。そう理解いただければ非常にわかりやすいのじゃないかと思うのですね。戦争に行くわけじゃありません。  したがって、もう一つの問題は、PKOのほかに国際緊急援助隊法の改正というのがございますね。これはまさにアジアを主体にして派遣したいと思っておりますが、大きな災害があったときに医療とか輸送とかあるいは給水とか、あるいはそれらの混合形態のもので自衛隊を活用する法律改正が既にできています。これは新しく法律をつくったわけではございませんで、既存の法律自衛隊が参加できる権限規定を設けたのが国際緊急援助隊法の改正でございますが、これはまさに文字どおり国際的な災害派遣でございます。  私は、PKOも言うならばそういう類型のものだと存じておりますから、別に別建てにしないで、せっかく訓練された能力があり、税金によってこれが維持されているわけでありますから、入国も伝統的なPKOのやり方というのは軍隊でもってやるというのは国際的な慣例でもございますから、我が自衛隊は国際法上は軍隊と見られるわけでありますから、当然私は自衛隊が付与された任務として行っていいのではないか、基本的にそのように考えております。
  27. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 今はまだ具体的なビジョンではなくて、将来検討に値するということでございますので、これから私たちもこの点につきましては御一緒に検討してまいりたいと思っております。  次に、ソマリア問題ですね。十二月三日に安保理が、ソマリアへ人道援助物資を確実に輸送することを目的とした多国籍軍を派遣するという決議をいたしました。このことについて少しお尋ねしたいと思うのですけれども、まず、このように国連がいわば多国籍軍の武力行使を容認する決議をすること、国連軍ではなくて多国籍軍の武力行使を容認するという決議を国連安保理がしたこと、このことを日本といたしましてはどのように評価しているか。国連軍ではなくて多国籍軍であるということ、武力行使を容認したというその二点についてどういう評価をするかということをお尋ねしたいと思います。
  28. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 我が国を初め国際社会におきましては、ソマリアにおける悲惨な状況をいかに救うかということについて議論が進められております。このような過程において今回安保理で決議案が採択されたわけでございますけれども、現下の深刻なソマリアの状況を、人道的見地からこれ以上放置し得ないという国際社会の総意に基づいた決議であるというぐあいに私ども考えております。この安保理決議に基づいてとられる具体的な人道救援措置が成功することを私どもとしては心から希望するとともに、可能な限りの協力を行いたいと思っております。
  29. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 ちょっとよくわからないのですけれども、まず、国連が武力行使を認めたこと、国連がこういう人道援助の目的で武力行使をするということは我が国としては是認しているわけでございましょうか。
  30. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 この安保理の決議は、人道的な見地及び地域の平和と安全という観点から、安全な人道支援のための環境を確立するために必要なあらゆる手段をとる権限を加盟国に付与することを決定いたしております。現在の深刻なソマリアの状況考えますと、こういった措置もやむを得ないものと考えております。
  31. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 ということは、今の国連は理想的な形の国連にはなっていないと思うのですけれども、その今の段階で国連が武力行使をするということ自体は認めていいというふうに考えられているととっていいわけですね、だと思うのです。そして、そういうことを前提にしましたら、こういう状況の中で武力行使をすることも国連の任務というか、仕事というか役割というか、ということとして是認するわけですから、それに対して日本はどのような対応で臨まれますか。
  32. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 今回の安保理決議は、あくまでも人道的な救援措置を可能たらしめるための決議でございます。我が国の協力の形態に関しましては、我が国の国際平和協力法に定められた諸要件に従って行わなければならないことは当然でございますけれども、安保理決議七九四に基づき関係各国が実施する予定の行動に対し要員を参加させるということは、国際、平和協力法の枠組みを超えるものというぐあいに判断しております。したがって、不可能というぐあいに考えております。
  33. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 PKO協力法のもとでソマリアに自衛隊を派遣できない、人員を派遣できないということはわかるのですけれども、それはこの協力法があるから派遣できないという態度でございますか。それとも、本来ならば日本もすべき、あるいはしたいけれどもこのPKO協力法があるからできない、そういう態度でしょうか。
  34. 萩次郎

    ○萩政府委員 この国際平和協力法というものは、国連平和維持活動あるいは人道上の国際救援活動等に対する人的協力を行うための国内体制整備のための法律でございまして、いわゆる多国籍軍への協力を内容としたものではないことは当然でございますので、この法律をもって多国籍軍に要員を参加させるということは同法の枠組みを超えるものだということでございます。
  35. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 それはわかっているのですけれども、湾岸戦争のときの多国籍軍はむしろ制裁措置といいますか、それに対しても我が国は金だけ出せばいいのかという問いかけを国民にして、人的貢献もすべきでないかということを国民の皆さんに訴えられたと思うのですよ。それで前の廃案になった法案も出されたと思うのです。それに対して今回の場合はむしろ人道的な立場からの多国籍軍なんですけれども、これに対してはPKO協力法が今あるからできないというのはわかるのですけれども、ちょっと湾岸危機の場合と対応の仕方が違うと思うのです。それはどういう理由なのでしょうか。
  36. 宮下創平

    宮下国務大臣 今委員が御指摘になりました点は、湾岸危機のときに、一昨年のたしか十月の初めに法案を出したと思いますが、今のはいわゆる国際平和協力法、非常に紛らわしいのですが、あのときは通称国連平和協力法という名前で呼ばれるものを提案いたしまして、一カ月の審議の後に廃案にしたことは事実でございます。この本質的な問題は、多国籍軍の行動であっても後方支援であれば、我が国は直接武力行使、戦闘行為に参加するわけでないのでその支援は可能であるという前提に立ってこの方向性がつくられていると存じます。しかるところ、当時の国民世論その他国会の論議等を踏まえて、なかなか合意に至りませんでこれは廃案となりました。今回の国際平和協力法は、五条件に示されておりますとおり停戦の合意、それから関係当事国の派遣に対する同意、こういうものが前提となっております。  一方、ソマリアにおきましては人道上の問題が起因で餓死寸前のああいう状況を見ると、私どもとして何とかしたいなという気持ちはもう十分持っております。しかしながら、自衛隊を使ってこれに参加するということは、あくまで国連の決議による多国籍軍の派遣でございまして、私どもは、今の平和協力法の建前が唯一のこういう国際貢献の場における自衛隊あり方としての規制措置でございますから、これによればできないということを今次長が申し上げたわけであります。
  37. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 時間があればもっとお尋ねしたいのですけれども、時間がございませんので、では最後にあと一点。  このソマリア問題につきまして、日本は資金極助中心の援助を行うというふうな報道がなされておりますけれども、今までにソマリアに関してした援助、あるいは今後することが決定されている援助、そしてその点は資金援助のみでしょうか、それで十分とお考えでしょうか。それともほかの援助、貢献を考えていらっしゃるのでしょうか。その点、教えていただきたいと思います。
  38. 小原武

    ○小原政府委員 お答え申し上げます。  ソマリアに対しましては、本年度に入りましてから既に総額約二千七百万ドル、約三十四億円の人道援助を行っております。その大宗としましては、この十一月に行いました世界食糧計画、WFPへの空輸計画のための拠出約千二百三十万ドル、あるいは各種の食糧援助などがございます。  今後どのような援助をするのかという点につきましては、この国連決議七百九十四号を受けまして、国際社会の一員として可能な範囲でできる限りの協力をするという見地から、現在、どのようなニーズがあるかというようなことを踏まえながら検討をしているところでございます。
  39. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 どうもありがとうございました。
  40. 中山利生

  41. 北側一雄

    北側委員 公明党の北側一雄でございます。今も同僚委員の方からソマリア支援の問題の質問がございました。私も、まずソマリアのこの支援の問題についてお聞きをさせていただきたいというふうに思っております。  御承知のように、このソマリアの今の状況は悲惨な状況になっておりまして、昨年の一月以来の部族間、種族間対立による内戦が激化をしておりまして、ことしに入ってからでも三十万人以上の人が飢えで死亡している。また、今二百万人ぐらいの人が現実に餓死の危機に直面している。特に、ソマリアの中南部が非常に厳しい状況であるようでございます。聞くところによりますと、このソマリアでは現在、五歳以下の人はほとんど残らないんじゃないか、失われた世代になってしまうんじゃないかとも言われております。国外難民も百万人を超えている。  この原因というのは当然内戦の激化にあるわけなんですが、それだけではなくて自然災害の干ばつ、それから、国連等が援助物資を輸送しましてもそれを略奪するというようなことが頻繁に行われる、難民に物資が届かない、こうした状況が原因であるようでございます。  国連もPKO派遣をしたりしておるわけでございます。先般、先ほどお話がございましたように十二月三日に国連安保理の七百九十四号の決議がございまして、それに基づきまして多国籍軍が形成される。どうもきょう、アメリカとフランス軍がソマリアの方に上陸をするとも報道をされております。この多国籍軍にはアメリカ、フランス以外にもカナダ、ベルギー、イタリアそれからロシア、その他近隣のアフリカ諸国も参加を意思表明している、こういう状況でございます。  これはもう日本としても国際社会の一員として一体何ができるのか、どのような支援ができるのか、しっかりと検討し、実施をしていかねばならないというふうに思うわけでございます。これまで日本が経済支援をされていることもよく承知をしておりますが、現時点で今後どのような支援を日本国として検討しておるのか、まず御答弁をお願いしたいと思います。
  42. 小原武

    ○小原政府委員 ソマリアの被災民の悲惨な状況につきましては、ただいま先生の御指摘のとおりでございます。それを受けましてこの決議七百九十四号が採択されたわけでございます。我が国としまして、このような状況のもとでこの決議を踏まえてどう対応していくかということを今真剣に検討しているわけでございまして、先ほども御答弁申し上げましたとおり、現地の必要性というものを踏まえながら、責任ある国際社会の一員としてどのような協力が可能か、できるだけ幅広い見地から検討したいということでただいま作業をしているところでございます。
  43. 北側一雄

    北側委員 この支援の内容として今経済支援のことを中心におっしゃったと思うのですが、多国籍軍が形成をされました。これに対する経費負担について例えば経済支援をしていかれる意思があるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  44. 小原武

    ○小原政府委員 決議七九四の中には、この協力を行い得る立場にあるすべての加盟国に対して、兵力を提供し、資金または現物によるそれ以外の貢献を行うよう要請するという項目もあるわけでございまして、御指摘の資金協力も含めまして検討しているところでございます。
  45. 北側一雄

    北側委員 いずれにしましても、こうした経済支援というのはその時期に適切な対応をしていかないと、後でやっても何の意味もないと私は思うのですね。必要なときにさっと出すということが非常に大事じゃないかなと思うのです。今現実に、きょう多国籍軍がソマリアに上陸をするというように報道をされているわけでございまして、もう少し明確な答弁があってもいいのじゃないかなというふうに思うのですが、いかがですか。
  46. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 アメリカは自軍の費用はみずから負担するということは言っておりますけれども、そのほかの国の要員の派遣関連の費用がどうなるかにつきましては、目下関係諸国と話し合いを行っております。この時点では具体的な対応の仕方を御報告できないのは残念でございますけれども、引き続き検討いたしてまいります。
  47. 北側一雄

    北側委員 次の質問にいきますが、既にECはもう決めているのですね。国会もあすで終わるわけですね。やはり非常に重要なことでございますので、そういう非常に不明確な答弁しか出ないというのはいかがなものかなというふうに私は思うわけでございます。  それで、このソマリア支援について経済的支援はもちろん重要でございます。重要でございますし、その重要性は私は認識をしておるつもりでございますが、それとともに、やはり人的な支援ということを検討しないといけないというふうに私は思うのです。  そこで、ちょっとこれから幾つか質問させていただくのですが、このソマリアの支援という意味でこれは確認したいのですが、国際緊急援助隊の派遣ということが検討できるのかどうか、まずこれの御答弁をお願いしたいと思います。
  48. 橋本宏

    ○橋本政府委員 お答えいたします。  先般の国際緊急援助隊派遣法の改正及び国際平和協力法の成立に伴いまして、政府としましては、国際緊急援助活動は自然災害及びガス爆発事故等の人為災害を対象として、また、国際平和協力法における人道的な国際救援活動は、直接、間接を問わず紛争に起因する災害を対象とするということできちんと仕分けをいたしました。  現在、ソマリアで生じている事態につきましては、先生が先ほど御指摘になったとおりでございまして、干ばつといったような自然災害もあるわけでございますけれども、現在、同国内の種族間の内戦を起因としている悲惨な状態ということでございまして、これは国際緊急援助隊法の対象とすることはできず、現段階では、ソマリアへ国際緊急援助隊を派遣することは不可能でございます。
  49. 北側一雄

    北側委員 今の御答弁は、ソマリアの今のこの悲惨な状況というのは主にこれは紛争に起因をしている、確かに干ばつという自然災害の側面もあるけれども、主に内戦の激化という紛争に起因するものだから、これは国際緊急援助隊の派遣というのはできないのですよ、これはやるとしたら国際緊急援助隊ではなくて、むしろPKO協力法による派遣の是非の問題になってくるのですよ、こういう御答弁なんですね。  それで、もう一度この国際緊急援助隊の件で確認をさせていただきたいのですが、かつて国際緊急援助隊の派遣の実例として、紛争に起因しているのだけれども二次的な災害、このようにたしか言われたと思うのです。紛争に起因はしているが、これをこのまま放置すると例えば疫病等の蔓延などが発生して二次災害が発生するおそれがある、このような場合には国際緊急援助隊は派遣できるのだということで幾つか実例があったと思います。いかがでしょうか。
  50. 橋本宏

    ○橋本政府委員 お答えいたします。  改正前の国際緊急援助隊法におきまして、いわゆる二次災害につきまして、政府は次のようなことを国会の場で答弁してまいりました。それは、二次災害といったものがその紛争と時間的または空間的に直接関連がないこと、それから紛争当事者の一方に加担することがないこと、それから要員の安全が確保し得ること等の要素を考慮いたしまして、新たな災害というか、今の災害が新しくできた災害で全く新たな災害だということがわかった場合に、国際緊急援助隊のもとで隊員を派遣していくということをやったわけでございまして、二次災害一般について派遣してきたというものではございません。  先生も御存じのように、八九年十二月にリベリアで内乱が勃発しまして、隣国象牙海岸に難民が出てまいりました。これに対しまして、九〇年二月に国際緊急援助隊の医療チームが出た経緯がございます。また、さきの湾岸危機の関連でございますけれども、クルド難民支援ということでごごいまして、九一年四月八日、イランからの要請に基づきまして、四月十二日以降、国際緊急援助勝法の適用によって医療チームを派遣した経緯がございます。  しかしながら、国際緊急援助隊法の改正及び国際平和協力法の成立ということによって双方の仕事の仕分けをきちんとしたということから、今後は、我が方はあくまでも自然及びガス爆発といったような人的災害にのみ国際緊急援助隊法を適用するということで、今までの象牙海岸及びクルド難民の例のようなことに対しては、今後は国際緊急援助隊法を適用しないというのが政府の立場でございます。
  51. 北側一雄

    北側委員 今の詳しい御答弁にあった通り、この国際緊急援助隊法の改正前であるならば、例えば今回のソマリアの問題でも、国外、ケニアとかエチオピアに百万人近い難民が移動してキャンプを張っているわけですね。例えばそういうところの医療活動等であれば日本も、かつての改正前の国際緊急援助隊であれば、これは派遣について検討する価値が十分にあったわけでございます。ところが改正後は、これは今お話あったように、もう緊急援助隊ではなくてPKO協力法による派遣の方として検討しないといけない。  そこでお聞きしますが、これは人道的な国際救援活動による派遣ということになると思うのですが、ソマリアの支援の問題について政府でどのように検討されたのか、御答弁をお願いしたいと思います。
  52. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 人道援助につきましても、現在の法律のもとでは、例えば紛争当事者の間の停戦合意、紛争当事者の受け入れといった条件が整っておりませんので、ソマリア内部に対して我が方から人道援助のための要員を派遣するということは難しいと思います。そのほか、周辺の地域につきましては目下検討はいたしております。
  53. 北側一雄

    北側委員 目下検討しておるところを聞かせていただきたいのです。私は今の答弁は、今後のことを考えると非常に大事なところだと思うのですね。  ソマリアの支援を考えましたら、ソマリアの国内に入って支援活動をするというのももちろんあるのですけれども、先ほど申し上げましたように、ケニアとかエチオピアの方の周辺国に百万人以上もの難民が今発生をしている。この国外にいる難民の救援活動をすることについては、ソマリア国内はPKO派遣のための五原則が今は当てはまらないとしても、国外にいる難民救援活動のためであれば、この五原則の問題というのはソマリア国内での活動に比べて該当をしてこないのじゃないか。国外難民については現時点でこの人道的な国際救援活動の派遣をしっかり検討する必要がある、私はそう思うのですね。いかがですか。
  54. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 周辺国における難民の救援につきましては、具体的に何ができるか、それから、我が国に対する要請等を踏まえまして法律の枠内で何ができるか、また法律とは関係なく何ができるか、今鋭意検討中でございます。
  55. 北側一雄

    北側委員 ちょっと念のために確認します。国外の難民支援をするとします。法律上、今この五原則がございますよね、人道的な国際救援活動においても五原則の要件があります。これがこの要件を満たしているのか満たしていないのか答えてください。
  56. 萩次郎

    ○萩政府委員 人道的な国際救援活動に対しても、今先生おっしゃられるようないわゆる五原則というのは基本的に反映されておりますけれども、周辺諸国の場合には、法律にもありますようにその当事国、例えばケニアとかそういった国の受け入れ同意があれば法律上は可能ということでございます。
  57. 北側一雄

    北側委員 そういうことなんですよね。ソマリアじゃなくても、ケニアとかエチオピアの受け入れ同意があればこのPKO法に基づく人道的な国際救援活動の派遣ができるわけなんですよ。それを今検討しないといけないわけでございまして、改正前の国際緊急援助隊であれば当然外務省内部でやっているわけなんです。ところが、このソマリアについては人道的な国際救援活動派遣についてほとんど何も検討してないんじゃないか、私はそのように思うのですけれども、どうですか。
  58. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 繰り返しになりますけれども、私ども何ができるか今検討中でございます。私どもといたしましては、できるだけのことは誠意をもってやりたいと思っております。
  59. 北側一雄

    北側委員 こういう支援というのは時期をおくらしたら何の意味もないわけなんですよ。それをいまだに検討しますというふうな御答弁では……。  この数年の間の一番の論点は、今まさしく日本というのは経済支援だけでいいのか、やはり人的な貢献をしないといけないんじゃないか、これがこの数年の最大の論点でございまして、現実にソマリアという問題が国際社会の中で今非常に大きな注目された問題になっている。それに対して経済支援だけじゃなくて、日本が今の法律の枠の中で人的にどのような貢献ができるのかということを真剣に検討しないといけないというふうに私は思うんですよ。これは時間がたったらもう何の意味もないですよ。  ちょっと質問を変えます。ちょっと違う面から聞きたいと思うのです。  国際緊急援助隊の場合であれば、災害の場合はもう緊急性を要しますので、いつでもさっと派遣できるようにその人の確保のために、例えば民間の方であれば登録制をとっているのですね。また官の方であれば、警察とか消防の方であればローテーションを組んでいるんですよ。何月から何月までの派遣ということが仮にあったとしたならば、あなたのところが担当してくださいよというふうなローテーションがきちんと決まっているんですね。そういう人の確保のための体制がこの人道的な国際救援活動について今なされているのかどうか、具体的に答弁をいただきたいと思います。
  60. 萩次郎

    ○萩政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたように、緊急援助隊におきましてはいわゆる登録制、ローテーション制度がとられていることは承知をしております。他方、国際平和協力法におきます人道的な国際救援活動、これのためには、今おっしゃいましたような登録制あるいはローテーションというものは現在のところ特にとられてはおりませんが、もしそのような事態が発生して国連からの派遣要請というようなものがありましたらできるだけ迅速に行うことができるように努めてまいりたいと思っておりますが、今お話がありましたようないわゆる登録制といったようなものについても、私ども検討を進めてまいりたいと思っておるところでございます。
  61. 北側一雄

    北側委員 大臣、この間の改正で自衛隊の方もこの国際緊急援助隊に参加できるし、また、人道的な国際救援活動についても自衛隊の方が参加する必要性がある場合も当然出てくると思うんですね。  で、大臣にちょっとお聞きしたいんですが、自衛隊内部では、防衛庁内部ではと言った方がいいかもしれませんが、緊急の災害があってそれに対する救援活動の人の確保、国内での災害についてはもうきちんとローテーションを組んでおられますが、こういう国際緊急援助隊とかそれから人道的な国際救援活動、これに適切に対応できるようなローテーションづくりというものをしておられますか。
  62. 宮下創平

    宮下国務大臣 国際緊急援助隊法の改正によりまして、自然災害等の場合に、外務大臣の要請によって自衛隊を派遣することが十分考えられるわけでございまして、私どもとしては、一つのシミュレーションのもとに即応態勢をできるように準備はいたしております。  他方、平和協力法によりますところの人道援助につきましては、これは今直ちに、まあカンボジアの問題がございましたけれども、これは要請バございませんので今施設部隊の派遣だけにとどめておるわけでございますけれども、ソマリアでいのような事態が要請され、どのような態様になるかというようなことがまだはっきりいたしておりませんし、自衛隊としてこれはもう可及的にできるような態勢自体は整え得るものと私は思いますけれども、いずれにいたしましても、今先生のおっしゃられるように、ソマリア自体における活動は五原則あるいは定員制約等もございます。  しかし、周辺国の問題は、それは定員制約等ももちろんございますけれども政府全体としてどのような対応をとるかということが先決でございまして、それの中でもしもそのような自衛隊というようなことになれば、これは今までと違って、国際緊急援助隊法それから国際平和協力法、こういうもとでのいろいろ修練をしておりますので、私は対応力というのは非常にスピーディーにいって可能だとは思いますが、しかし、このことと周辺国に自衛隊を派遣して何がしかをやることとは別問題でございますから、これは別個に判断すべきものだと思います。
  63. 北側一雄

    北側委員 いずれにしましても、今の議論の中で、ソマリア国内については厳しいけれども国外難民の支援については、ケニアとかエチオピア等の受け入れ国の同意さえあれば法律上十分可能なわけですね。もちろん、現地のニーズとか安全性がどうなのかとか、そういう検討は当然必要なんですけれども、現実に危機に直面しているわけですから、時期におくれたらだめなわけですから、政府は速急にこれを検討していただきたいということをお願い申し上げる次第でございます。  同じくこのソマリア支援について、日本のNGOがソマリア支援でどのような活動をしているのか、していないのか、その辺、外務省でどのように認識されておられるか答弁をお願いしたいと思います。
  64. 橋本宏

    ○橋本政府委員 お答えいたします。  ソマリア国内では、現在日本のNGOは活動していないと承知しております。他方、隣国ケニアにおきましては、幾つかの我が国NGOが、ソマリアからの流国難民に対していかなる協力が可能か、具体的な検討を鋭意行っていると承知しております。
  65. 北側一雄

    北側委員 時間がないので私の方からお話ししますが、大臣もぜひちょっとこれを聞いていただきたいのですが、人的支援が重要である、その人的支援というのは、何もPKOとか緊急援助隊だけじゃないのですよね。例えば、私が聞いている情報でも、このソマリア支援の問題で日本の国内のNGOが、何とか支援できないかということで必死になって考えているのです、検討しているのです。アジア医師連絡協議会というのがあります。日本のNGOです。それからアフリカ教育基金の会という二つのNGOが協力し合って来年の二月にソマリアとケニアとの国境付近に診療所をつくるということで、一生懸命今具体的な行動をしているわけなんですよ。これは外務省は御存じですか。
  66. 橋本宏

    ○橋本政府委員 私どもの承知しているところによりますと、まずアフリカ教育基金の会につきましては、ソマリア難民を支援するためにケニア北東部、マンデラ県のエルワクというところに難民サイトを設けるということについて、十一月の二十九日にこの基金の会とケニア側と合意ができたと聞いております。それに従いまして明年の一月に二名、三月に一名の医師、看護婦を派遣予定と聞いております。また、アジア医師連絡協議会につきましては、明年一月二十三日に二名の医師を派遣予定と聞いております。
  67. 北側一雄

    北側委員 というふうに、今一つの例ですよ、日本のNGOもソマリア支援でやろうとしているわけですよ。こういうNGOをしっかり政府としてバックアップをしてあげることが私は非常に重要であると思うのです。  去年、バングラデシュで台風がありました。私、その後に現地に行きました。実際現地で活動しているのはNGOですよ。多くのNGOが活躍をしています。もちろん日本からも緊急援助隊が行きました。高く評価されていました。海外からもイギリスとかアメリカとかインドとかパキスタンとか、軍が派遣されていろいろなものを輸送しておりました。ところが、輸送されたものをそういう被災民に適切に配付するのはNGOが中心になってやっておるわけですね。イギリス大使館などに寄りましたら、自分たちの国内のNGOをバックアップできる体制というのがきちんとできているわけなんです。大使館の判断で自分たちのNGOに対して緊急のお金、緊急救援のためのお金を上げている。そういうことができるような仕組みになっているわけですね。  私は、このソマリアの問題についてもこのようにNGOで頑張っているというのは、今のは一例でございます。ほかにもやろうとしているところがたくさんあります、私が聞いている限りでは。このNGOに対する緊急の支援というのをしてあげる、これも日本の人的貢献という意味では一つの重要な柱だというように思うのです。外務省、いかがでしょうか。
  68. 橋本宏

    ○橋本政府委員 我が方のケニア大使館からの意見具申に基づきまして、平成三年度におきましては、ケニアで活動している外国のNGOに小規模無償という制度を適用いたしました。これはアメリカのケア・インターナショナルでございます。それから平成四年度につきましては、同じく我が方の大使館からの意見具申に基づきまして、このケア・インターナショナル及びフランスの国境なき医師団に対しても小規模無償の協力をやっております。これらの二つの団体は、いずれもソマリアに近いケニアの北東部でソマリア難民に対する食糧、医薬品配付などの支援を展開しているNGOでございまして、我々もそこに小規模無償の制度を適用したわけでございます。  今、先生御指摘の日本のNGOにつきましては、いろいろ動きが出ているということでございますので、我が方が持っておりますNGO事業補助金制度及び小規模無償資金協力などを通じてこれらの活動を積極的に支援していきたいという方向で、今後具体的にいかなる協力が可能か検討に入りたいと思います。
  69. 北側一雄

    北側委員 時間が来ましたので質問を終わりますが、大臣も政府の一員として、ぜひこのNGOへの支援というのを検討していただきたいのです。今御答弁あったのですけれども、実を言うと緊急性には対応できないような制度ばかりなんですよ、二つとも。こういう緊急の場合に、そういう日本の国内NGOに対してすぐ支援できるような制度ではないのです。そういう制度が今現実にはないのです。私は、ぜひこれを政府部内で検討していただきたいというふうにお願いをいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  70. 中山利生

  71. 東中光雄

    東中委員 最初に、カンボジアのPKO活動について聞くのですが、昨日の内閣委員会での官房長官の「国際平和協力業務の実施状況について」という文書によりますと、停戦監視要員八名の自衛隊員は「九月二十日プノンペンに到着し、現在、武装解除兵士を収容するカントンメントや」その他の「地域に配置されており、各国の停戦監視要員とともに、武装解除兵士の監視、停戦状の監視等を行っております。」ということになっております。  それでカントンメントの状態ですが、ポル・ポト派を除く三派で約五万五千人の宿営入りが行われたということになって、そこで武装解除をやっている。それを監視している、こういうことになるわけでありますが、十一月三日にプノンペン政権は、四万五千のカントンメント入りした武装解除の兵士を原隊に復帰させるという声明を出していますね。十一月三日ですから一月以上になります。武装解除の監視をやっておるUNTACの監視員、その状態は今どうなっていますか。約五万五千と言われているうちの四万五千は公式にもう原隊復帰と言っているのですが、どうなっているのか、ちょっとお聞きしたい。
  72. 萩次郎

    ○萩政府委員 確かに先生おっしゃいましたように、ポル・ポト派の武装解除が行われていないということで、その他三派の武装解除につきましても滞りができているということは事実であり、また三派のうちの一派のプノンペン政権が、武装解除をやめたらどうかということで議論があるということは承知しております。数多くのカントンメントに収容されております収容兵士がどの程度もう一度現役に復帰するというようなことが実行に移されているか、まだ正確なところを把握しておりませんが、プノンペン政権にそういう意向がありますことはある意味では当然でありますけれども、UNTAC自体がそれをどの程度最終的に実行するかというところはまだ確認をいたしておりません。  それで、これらのカントンメントはたくさんあるわけでございますが、我が方の停戦監視員八名のうちカントンメントに勤務しておる者は、カンダル州にありますカントンメント九五六、この一名だけでございまして、そのほかはセクターモニターとか国境のチェックポイントに勤務をしてございます。
  73. 東中光雄

    東中委員 五万五千しか第二段階ではカントンメントに収容できなかった。そのうちの四万五千といえば大部分ですよ。それが一月も前に武装解除をやめて原隊復帰ということを出しているのですから、その状態がどうなっているのかわからない、それで武装解除兵士の監視を任務で派遣しているのだとよく言えたものだと思います。  それで、きょうの新聞によりますと、UNTAC主宰のもとに紛争四派軍事代表が参加する混成軍事件業グループ、MMWGが、情勢が非常に不穏だということできよう九日に何か会合をやるそうです。それについて八日に時事通信が入手したMMWGのUNTAC作業文書によると、現在のカンボジアの軍事情勢の現状は「一九一四年の第一次世界大戦前夜と同じだ」「プノンペン政府軍とポル・ポト派が互いに「防衛的措置」と称して兵力を臨戦態勢に置いている結果、「小さな事件といえども、戦争のぼっ発を引き起こす可能性がある」」ということで、プノンペン政府とポル・ポト派が兵力をいずれも攻撃用に再編をして戦いの準備をやっておるということで、一触即発の状態になっているというのがUNTACの作業文書の中にあると報道されています。  その他、調べればいろいろあります。プノンペン政権のパンタイ大将が十二月一日に記者会見をやって、ポル・ポト派が中部の要衝のコンポントムやストウン、そういう地域を占領しようとしておるということで非常に警戒していますね。UNTACは非常に甘いと言っていますよ。部分的にどんどん紛争が起こっておりますけれども、こういうUNTACの文書の中で第一次大戦の前夜のような状態と言っているのですが、それで停戦協定が守られているといって自衛隊はそういう状況について何もわからない、武装解除した部隊が原隊復帰したかどうかもわからないという状態のままで行っているということはどうも解せないのですが、長官どうですか、こういう状態は。
  74. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員御指摘のUNTACの文書は、私もちょっとまだ了知しておりませんけれども、私が過般カンボジアに参りましてサンダーソン司令官との対談を持ちまして、かなりの時間を費やして現地の今後の見通し等についてもお伺いした印象を申し上げますけれども、局地的、散発的な紛争は、乾季に入りますとあるいはより頻繁に起こるかもしれないというような感想を言われたように私は思います。しかし、継続的、全面的な紛争はなかなか生起する可能性は少ないと思う、ないとは言っておりませんけれども少ないと思うというようなことでございましたし、国連としては、プノンペン政府側とポル・ポト派とのそういう紛争が生じても、あくまでも公正中立な立場における伝統的なPKOで対処していくということも明確に言っておられます。  そういうことで私も、今の状況あるいは今後五月に向けての状況というのは、私ども自衛隊を派遣している者として大変注目し注視していかなければなりませんけれども、今直ちに、委員の御指摘のような停戦の合意が崩れておるという認識は持っておりません。全体として予定どおりの、武装解除その他は進行はいたしておりませんけれども、停戦の基本的な枠組みは崩れておりませんし、それからUNTAC自身も来年の五月に向けて、ポル・ポト派に対して門戸を開放し、民主的カンボジア政府の選挙を実施すると明確に言っておりますから、外務省等を通じてポル・ポト派に対するいろいろな働きかけもされておりますし、国連の決議等もございますが、私どもは、ぜひともそういう方向で解決が図られることを望んでおります。十分注目をしていかなければいけない、こう思っております。
  75. 東中光雄

    東中委員 私は主観的な判断を言っているのじゃなしに、国連の側でそういう文書を発表している、あるいはプノンペン政権がそういうことを公式に言っているということを前提にして言っている。しかも、四万五千が原隊へ復帰したかどうかも全然わからない。こんな無責任なことがありますか。  続いてもう一つ聞きます。  施設部隊六百名は、十月二十八日からカンボジアの国道三号線の道路の補修等を行っている。今後、国道二号線タケオープノンペン間の道路、橋の補修に着手する予定、こういうことで今作業をやっていますね。ところで、十一月四日にポル・ポト派の放送は、自衛隊が手がけている道路の補修はプノンペン政権だけを利するものだ、だから中立性を欠いておるという放送をやって、タケオ山中でのゲリラ活動を続けているポル・ポト派の兵士は、プノンペン政府寄りの姿勢を続けるならば自衛隊の安全は保証せぬということを公言しているという、そういう現地からの報道もあります。  それでお伺いしたいのですが、自衛隊はポル・ポト派の反発を恐れて、タケオに近い国道二号線などの補修を見合わせたらどうかというふうな意見も出ておるやに聞いておるのですが、ポル・ポト派がタケオの山中で、これはポル・ポト派の支配地域ですからね。そしてその道路、一方のプノンペンだけを利するものだということを公式に言っておるわけですから攻撃してくる可能性はありますね。それでも来るなら来いと言って補修をやるのか。中立というのはあの三原則の中立ですね、紛争当事者間の中立ということのように法律ではなっていますね。この場合はポル・ポト派はむちゃくちゃやってきた大変な代物です。それを日本政府はずっと承認してきたのですが、私たちはそれはとんでもないと言ってきたのですけれども、そのポル・ポト派が今そういう実力を持ってゲリラをやっておってそういうことを言っておる。補修はそれでも続けていくということなのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  76. 宮下創平

    宮下国務大臣 御承知のように、今国道三号線のタケオに近い地点で約五キロ強の作業は実施しております。なお、国道三号線については、事業実施についてはサンダーソンのコマンドのもとにあるわけでございますが、一応予定をいたしておりますからこれを続けさせていただきますし、国道二号線もそういう意味ではこれからの細部のUNTACとの詰めを行った上で実施していくわけであります。  一方、委員の御指摘のあのポル・ポト派のこれは恐らくラジオ放送だと思います、私の行ったときもラジオ放送がなされておりましたから。しかし、これは真偽のほどはなかなか客観的に確かめようもございませんし、まあ、私どもはそれをストレートに受けるということもいかがかと思いますので、よくそこいらの辺は、UNTACの見解、プノンペン、SNCその他がどう考えているか、そして現実がどうかというような点を総合判断して、停戦の合意が崩れるかどうかはそういった諸機関の見解あるいは客観的な事実、そういうものを総合判断して決めるべきものでございますので、今直ちに二号線の補修を、ポル・ポト派が仮に、それは確認しておりませんけれども、ラジオ放送でそのようなことを言ったとしても、直ちにこれをどうのと云々するというようなことは今のところ考えておりません。
  77. 東中光雄

    東中委員 停戦の合意が崩れたかどうかということだけではなくて、中立の問題、それから紛争当事国の受け入れ同意、この三要件があるわけでしょう。ポル・ポト派の占領地域は受け入れしない、やってきたら攻撃するぞということまで言っている。そして今、中立が欠けているということも具体的に向こうから指摘している。しかし停戦の合意が崩れたとは思わないから行くんだ、これはちょっとかみ合わない。PKO五原則とか三原則とかいったことからいっても、私は極めて正確でない態度ではないかというふうに思います。  最後に一つだけお聞きしておきたいのですが、今冷戦終結したという状態で、世界の大勢というのは全部軍縮の方向へ行っていますね。  アメリカでいえば、ブッシュ政権で、九五年までに兵力は二五%削減という方向を出した。九二年の予算教書では、五年間で五百億円の軍事費削減計画を発表した。そして今度はクリントン氏は、九七年までの計画からさらに六百億ドル、日本の金にして七兆円余りを削減するということで計画を出していますね。そして、九七年までに国防費を三分の一以上削減することができるということを十二月十二日にクリントン氏が発言をしておる。アメリカがそうです。ヨーロッパでも、フランスを除いて、ドイツは一九九三年から二〇〇五年の国防計画の予算を当初計画から三五%削減ということを言っています。イギリスも、五年間に兵力の一八%削減の方針を発表していますね。ソ連はもうなくなってロシアという状態だ。  そういうときに、日本は現在の中期防二十二兆七千五百億、これはまだことしも来年の予算もふやす方向ですね。三・八%を今度は三・六%の要求をされている。世界の大勢にまるっきり逆行しているというふうに思うのですが、そういう点、まあ私たちは憲法のもとで自衛隊はあってはならぬと思っていますけれども、自民党政府の立場に立っても、それはあなた、アメリカ並みの三分の一ぐらいにしたらどうですか。  そのことをお伺いして、時間ですので終わります。
  78. 宮下創平

    宮下国務大臣 冷戦後の状況が、大変好ましい米ソの軍事超大国にとって軍縮、まあ戦略的な立場にありますからこれを行う。我が国と全く規模が違います国でございますから、これは当然核軍縮を初め、クリントン政権になっても今仰せのとおり、クリントンがどのような政策をとるか明確ではございませんが、今までの選挙中の発言その他によって十分推測されます。  しかしながら、今御指摘になった国だけを見ましても、フランスは特別なWEUの関係もございますし、これはまた独自な国防政策もとりつつございまして仰せのとおりですが、ただドイツは、東西ドイツの統一によりましてやはり兵力を削減していくということをやらざるを得ないし、また約束もしておって削減をしておるわけです。それからイギリスにおきましては、今御指摘がございましたけれども、イギリスはヨーロッパにおける駐留英軍の削減等を中心にして考えているものでございまして、これはNATOのあり方その他とも関連していると思いますね。  そんな中でございますが、一方、今アジアの問題は全然御指摘がございませんでしたけれども、フィリピンも昨年までは一〇%以上で、ことし初めてアジアの国としてはたしかマイナスの二、三%だったと存じます。これはまた特殊な事情があろうかと思いますが、それ以外の国は一〇%以上みんな国防費を伸ばしておりますね。これは我が国だけということではございません。  そういう客観的な情勢がございますが、一方、我が国自衛隊、自衛力というのは基盤的防衛力構想に立っておりますから、必ずしも冷戦構造が終わったから全く同様な考え方で軍縮をすべきであると私は思いません。平和時における防衛力構想という理念のもとに現在の水準が定められておるわけでございますから、そのような大国の軍縮と同列に論じ得ないと思いますけれども、しかしながら、一方において世界の激変していることも事実でございますし、国際情勢財政事情あるいは軍事技術の変化等を踏まえながら、量的にはもうある水準に達しておりますからこれを拡張しようと思いませんけれども、しかし技術的、軍事能力その他、抑止力としてもやはりきちっとしたものを持つ必要がございますから、そういった点から検討し、なお中期防下方修正も明言をいたしておるところでございまして、安定的な効率的な防衛力整備というもの、節度のある防衛力整備というものは、今後引き続き、まあ貴党の立場とは違いますけれども、これは進めていかなければならぬものだ、こう思っております。
  79. 東中光雄

    東中委員 終わります。
  80. 中山利生

    中山委員長 神田厚君。
  81. 神田厚

    神田委員 前の質問に多少関連がありますが、まず、アジア諸国の動向と我が国防衛力整備という問題についてお聞きをいたしたいと思っています。  欧米においては軍縮の方向が明確にされておりまして、クリントン政権は、お話がありましたように九七年までの五年間で国防費を六百億ドル、兵力を五十万人、在欧米軍を五万から七万五千人削減をすると公約をしております。またイギリス、フランスも、陸軍を中心に人員削減を提案しております。  しかし、これに対しましてアジアでは、韓ソ国交正常化や韓国、北朝鮮国連同時加盟など一部に緊張緩和の傾向が見られておりますが、軍事力に関する限り軍備拡大の動きが進んでおります。中国、タイ、シンガポール、フィリピン、マレーシア、インドネシア、インド、いずれも国防費をふやすなど軍拡を続けております。こうしたアジアの軍拡に向けての動きを防衛庁はどういうふうに認識をしておりますか。
  82. 宮下創平

    宮下国務大臣 基本的には神田先生の今おっしゃられたような状況だと認識いたしておりますが、冷戦構造終結後のアジア・太平洋地域の状況というものは、軍事構造は非常に複雑で、対立の図式も確かに多様性を持っております。そうしてまた、朝鮮半島の問題とかあるいは南沙群島の問題等、一部中国ベトナムとのこの間の交渉等も持たれたようでございますが、依然として未解決の政治問題が存置しております。  そういう状況の中で、今御指摘のように中国韓国、ASEAN諸国などアジア諸国は、それぞれ国防力の増強に努力していることは事実でございます。特に中国につきましては、一九八九年以来一〇%台の高い伸び率装備の近代化、海軍力の近代化に非常に重点を置いてこれを推進しております。それから韓国もここ数年は一〇%前後の国防費の増額を行いまして、初の国産戦車である八八式戦車の実戦配備でございますとか、あるいは対潜哨戒機P3Cの導入などを決定いたし、防衛力を強化しているのも事実でございます。また北朝鮮は、これはGDPの二〇%から二五%くらいを国防費に投入すると見られておりますが、軍事力を近代化、強化しており、特に最近では、核関連施設の開発とスカッドミサイル等の長射程距離化、これが非常に懸念をされております。ASEAN諸国も、近年高い伸び率を国防費について示しておるというのもこれは実態でございます。ちなみに、私も先ほど申しましたのですが、フィリピンだけは、昨年は一三・九%伸ばしましたが、九二年度におきましては一・五%の減ということでございますが、ほかはほとんどの国が一〇%以上の伸び率アジア全体で示しておるというのは現実でございまして、私どもはこうした持つ意味をきちっとやはり注視していかなければいけない、こう思っております。
  83. 神田厚

    神田委員 こうした動きに呼応するかのように、大国はアジアを舞台に武器の値引き競争を活発化しております。売り込みが非常に激しいわけでありますが、売り手は米国、ロシア、フランス、オランダ、英国など、買い手は中国、台湾、マレーシア、インドネシア、インド、フィリピンなどでF16、ミグ21、ミグ29、31、ミラージュ、ホーク、スホーイ27などの戦闘機、爆撃機、ミサイル、戦車、潜水艦、対艦砲システム、ミサイルシステムなどの契約を進めておると言われております。このようなアジア諸国における武器移転の実情を防衛庁はどういうように把握をしておりますか。
  84. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員の御指摘のように、最近アジア各国は経済力も充実拡大しておりまして、そんなことも背景にあるだろうと存じますけれどもロシアから中国へ今御指摘のSU27、それから米国やフランス等から台湾へのF16あるいはミラージュ、こういう売却の動きなど、武器輸出や一部の諸国における高性能兵器購入の動きが非常に目立って行われておるように思います。これは一面、今申しました経済開発とか産業近代化の進展に伴って国防も近代化していくという要請、各国の方針を反映するとも思われますが、他方、アジアにおきましては、先ほど申しましたように朝鮮半島、南沙群島など未解決な問題が非常に多く、潜在する紛争要因があり得るだろう、非常に多様性に富んで複雑であるという事実認識をいたしております。  防衛庁としては、このような状況にかんがみまして、アジア地域への特に武器の移転、輸出などが地域の不安定化につながらないように、これは十分注目してやっていかなければならぬ問題だ、このように考えておるところでございます。今先生がいろいろ兵器の種類について、国別の主要兵器の状況についてお示しになりましたが、そのとおりでございまして、これはもっと詳しくはいろいろの情報も私どもも得ておりますけれども、十分注意をしなければならぬ状況だな、こう思っております。
  85. 神田厚

    神田委員 昨年のサミットで、日本の提唱によりまして通常兵器輸出入の国連への登録制の導入が宣言に盛られまして、その早期採択への努力が明記されましたが、その実現に向け我が国も積極的に努力する必要があります。国際的な武器管理体制の確立、武器貿易総額削減、武器無償供与の抑制、核・化学・生物兵器の貿易、移転の禁止、国際監視委員会の設置などを規定した武器禁輸条約策定と締結を各国に働きかけるべきではないかと考えておりますが、外務省の見解をお聞きいたします。
  86. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 大量破壊兵器の不拡散は、現在の国際社会の主要関心事でございます。我が国といたしましても、核兵器不拡散条約及び生物兵器禁止条約体制の強化に取り組むとともに、化学兵器禁止条約交渉の成立にも積極的な貢献を行ってまいりました。また、大量破壊兵器の製造に資するような原材料、装置の移転を規制するため、核兵器については、ロンドン・ガイドライン及び原子力関連品目輸出規制制度、化学・生物兵器については、オーストラリア・グループ等国際的な輸出規制の枠組みづくりやその運用に積極的に参加しております。他方、通常兵器移転の規制に関する問題につきましては、我が国が自衛のために必要な範囲内で行う調達、各地域における軍事バランスの確保といった複雑な要素が絡んでおり、多くの国が安全保障の観点から慎重に対応をいたしております。  かかる現状を踏まえた場合、御指摘の条約につきましては、当面広範な支持が得がたいと考えられます。まず、国連軍備登録制度の円滑な実施を通じて兵器移転の透明性を促進するとともに、関係各国による兵器供給の自主規制がまず重要かつ現実的な考えだと判断いたしております。
  87. 神田厚

    神田委員 なお一層の努力をお願いをしておきたいと思っております。  それでは、南沙諸島等々の問題につきましてお聞きをいたしますが、最近、ポスト・カンボジアの、まだカンボジアは終わっておりませんが、この最大の火種と言われてきました南沙諸島を中心にいろんな動きが報道されております。フィリピンのマングラプス外相は、中国は長い眠りの中にあったが今起き出しつつあると発言をしたと伝えられておりますが、本年二月に、中国は南シナ海のほぼ全域を領海と定めた領海法を制定し、南沙、西沙、尖閣諸島の主権を主張し、七月には南シナ海の南沙群島ダラク礁を武力占領いたしました。また、九月になってベトナム領海・経済水域内のトンキン湾で石油探査を開始しております。  このような南沙諸島をめぐる中国を中心とする各国の動きについて、防衛庁はどのような分析をしておりますか、お聞かせいただきます。
  88. 宮下創平

    宮下国務大臣 南シナ海に位置して約百ぐらいの小さな島、サンゴ礁から成る南沙群島でございますが、この地域は海上交通の要衝に位置いたしておりますし、今御指摘のように、有望な海底の資源、石油資源や豊富な漁業資源が存在している地域でもございます。南沙群島につきましては、現在、御承知のように中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ等が領有権を主張いたしまして、ブルネイを除く今申し上げた国では、一部の島嶼等を実効支配をしておる等の実態でございます。先般の中越首相会談で平和的手段で解決されることが一応合意されるなど、解決へ向けた話し合いの模索も行われているものの、本年二月に中国が領海法を制定いたしまして、これは一方的に中国の領有であるということを法律によって制定したわけで、各国が反対するなどさまざまな利害対立が生じた状況がまだ続行しておると思っております。  南沙群島を含む南シナ海は、太平洋とインド洋を結ぶ海上交通の要衝でございますから、我が国を含む多くの国々の船舶の運航にとって極めて重要な地域でございます。したがって、我が国としては当然これについても関心を有さざるを得ないところでございまして、南沙群島問題が関係国で平和的に解決されることが何よりも重要であるという強い認識を持っております。
  89. 神田厚

    神田委員 関係諸国で平和的にといっても、具体的な動きは進めなければならないわけでありますが、日本としても、これらの問題について十二分に対応を考えながら進めていただきたいと思っております。  それでは、欧米に比べましてアジアの緊張緩和の動きが進んでいないというような状況でありますが、防衛庁といたしましては、今後アジアの軍縮に積極的に取り組むべきではないかと考えております。長官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  90. 宮下創平

    宮下国務大臣 ただいままでに申し上げましたように、アジア地域は複雑な多様性に富む、安全保障上の見地から見てもいろいろ問題のある地域でございまして、未解決の政治問題もあるということを申し上げてまいりましたけれども、何よりもこのアジアにおける地域的な信頼関係を強化していくことがぜひとも必要でございまして、そうした努力を通じてこの地域の一層の緊張緩和を図っていくことが非常に重要であると思っております。各国にとりまして、それぞれの安全保障環境に応じました自衛のための防衛力整備は当然でございますけれども、過度の軍備の増強によりまして地域の不安定化を招かないように努めることも必要であろうかと存じております。  防衛庁として、アジア地域の平和と安定のために、この地域における軍備管理、軍縮に向けて我が国が可能な限り努力していくことは当然だと思いますし、同時に、我が国我が国としての防衛上の基本原則がございますけれども、対話を通じ、安全保障に対する信頼関係、また政治的な信頼醸成関係を通じて、アジア地域における安全保障の環境を、私個人としては、CSCEはヨーロッパで行われておりますけれどもアジアにはそういう枠組み等も全然ございませんから、CSCAとも呼ぶべきもの等が模索され、真の意味安全保障の環境を整えることが非常に重要だと考えておる次第であります。
  91. 神田厚

    神田委員 終わります。      ————◇—————
  92. 中山利生

    中山委員長 この際、御報告申し上げます。  今国会、本委員会に参考送付されました陳情書は、お手元に配付してありますとおり二件であります。念のため御報告申し上げます。      ————◇—————
  93. 中山利生

    中山委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  第百十八回国会、内閣提出防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  94. 中山利生

    中山委員長 起立多数。よって、本案につきましては、閉会中審査の申し出をすることに決しました。  次に、第百二十三回国会、内閣提出自衛隊法の一部を改正する法律案につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  95. 中山利生

    中山委員長 起立多数。よって、本案につきましては、閉会中審査の申し出をすることに決しました。  次に、国の安全保障に関する件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 中山利生

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、閉会中審査案件が付託になり、閉会中、委員派遣を行う必要が生じました場合には、委員長において、議長に対し、委員派遣の承認申請を行うこととし、その派遣の日時、派遣地及び派遣委員の人選等所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 中山利生

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時十七分散会