運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1992-03-26 第123回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年三月二十六日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月二十五日     辞任         補欠選任      三重野栄子君     野別 隆俊君  三月二十六日     辞任         補欠選任      神谷信之助君     高崎 裕子君      井上  計君     田渕 哲也君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         中村 太郎君     理 事                 井上 吉夫君                 鹿熊 安正君                 前田 勲男君                 吉川 芳男君                 梶原 敬義君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 太田 淳夫君                 吉岡 吉典君     委 員                 石井 道子君                 石原健太郎君                 遠藤  要君                 大島 友治君                 合馬  敬君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 須藤良太郎君                 関口 恵造君                 田中 正巳君                 野末 陳平君                 小林  正君                 櫻井 規順君                 清水 澄子君                 種田  誠君                 野別 隆俊君                 細谷 昭雄君                 森  暢子君                 吉田 達男君                 白浜 一良君                 常松 克安君                 高崎 裕子君                 乾  晴美君                 高井 和伸君                 井上  計君                 田渕 哲也君                 寺崎 昭久君    政府委員        大蔵政務次官   青木 幹雄君        大蔵省主計局次  田波 耕治君        長    事務局側        常任委員会専門  宮下 忠安君        員    公述人        中央大学経済学  一河 秀洋君        部教授        創価大学経済学  岡野 行秀君        部教授        上智大学法学部  猪口 邦子君        教授        福岡県田川市長  滝井 義高君        日本労働組合総        連合会事務局  河口 博行君        長        国際政治学者   畑田 重夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○平成年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成年度特別会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     ―――――――――――――
  2. 中村太郎

    委員長中村太郎君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  本日は、平成年度一般会計予算平成年度特別会計予算及び平成年度政府関係機関予算につきまして、お手元の名簿の六名の公述人方々から項目別に御意見を伺います。  まず、午前は二名の公述人にお願いいたします。  この際、公述人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  お二方には、御多忙中のところ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日は、平成年度予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後で委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず財政・税制につきまして一河公述人からお願いいたします。一河公述人
  3. 一河秀洋

    公述人(一河秀洋君) 中央大学の一河でございます。  本日は、諸先生の前で平成年度予算について愚見を申し上げる機会をいただいたことを大変光栄に存じております。ありがとうございます。  さて、平成年度予算でございますが、私の印象といたしましては、端的に申しますと、第一に、短期的に見るときには、誤った景気予測に基づいた極めて不適切な規模収支バランスを持った予算であると言わざるを得ないかと思うのでございます。また第二に、長期的に見た場合には、財政運営方向と申しますか、財政運営の基本的な姿勢予算の数値の上からはっきり見えてこない、一体これから先財政をどのように運営すべきかの姿勢が明確にとらえられない、こういう予算であるという印象を持っております。  以下、その理由を申し述べます。  まず第一には、短期的な景気動向関連をしての問題でございますが、平成年度予算につきましては、経済の現在の状況から申しますと、何よりもまず重視すべきであるのは景気動向、これが予算とうまくかみ合ってくるかどうかということだろうと思うのでございます。この点でまさに平成年度は誤った見通しに基づいており、歳出予算歳入予算両方の面で景気後退に対する対応という極めて緊急の課題に対処できるものではなくなっている、こう申してよろしいのではなかろうかと存じます。  諸先生方御承知のとおり、昨年の夏ごろは、平成はイザナギを超えるかというようなことを申しましたし、かなり最近までは、政府見通しといたしましては景気動向経済見通しについてかなり楽観的であり、その楽観的な見通しに基づいて予算編成が行われてきていると言ってもよかろうかと思います。  ところが、実際問題といたしましては、既に昨年後半から景気後退が実質的には始まっておりまして、去る三月十九日の企画庁の国民所得速報を見ましても、昨年十-十二月期のGNP成長率が実質で年率にいたしますと〇・二%、わずかではありますけれども経済成長率マイナスを記録したというのは消費税のときの混乱以来のことでございまして、景気が非常に急激に悪化をしている。殊に内需が〇・五%と低下をしておりまして、この分では平成年度見通し三・七%は到底達成できないことはもちろんでございますし、平成年度予算見通しの根拠になっております三・五%の成長はこれも到底実現できない。したがって、年度の途中で大幅の歳入欠陥を生じざるを得ない誤った景気見通しに基づいて予算がつくられていると言ってよかろうかと思うのでございます。  殊に、昨年末から素材関係では在庫整理が大分進行してまいりましたが、しかし、生産を減少させてもこれに見合っただけの在庫の減少が起きているとは必ずしも言えませんし、殊に最近では製品在庫の増が目立ってきております。となりますと、もう一段素材在庫整理に波及するプロセスがあるはずでございまして、景気回復はかなりおくれると言ってよかろうかと思います。さらには最近の株価の低迷もございます、  このように、バブル崩壊による信用の不安、これとも重なりまして景気後退は極めて深刻な局面に入りつつある。したがって早期自律的回復を期待することは到底困難であると判断をせざるを得ないと思うのでございます。結果として平成年度予算において既に二兆八千億の歳入欠陥を発生したわけでございますが、四年度予算においてはこれを大幅に上回る規模歳入欠陥が発生せざるを得ないと想像されます。しかしその一方で、歳入欠陥が発生をした場合にもし歳出を抑制をすることによってこの歳入欠陥に対して処理を図ろうとした場合には、財政景気後退の足をさらに引っ張るということになりまして、望ましい財政運営とはこの場合到底言えなくなってくるだろうと思うのでございます。  この点につきまして、金利政策景気対策を行うのが望ましい、景気対策として金利政策が望ましいと、こういう声も随分と聞かれるようでございます。しかし、企業心理の冷え込みを考えて見。ますと、金利引き下げたところでそれか設備投資回復にすぐに結びついてくるとは到底考えられません。したがって金利政策景気対策としての有効性をどの程度持ち得分がは疑問だろうと思うのでございます。しかも、これに加えまして公定歩合引き下げるあるいは低金利政策に依存をするということは、景気政策の点では幾ばくなりかの効果はあるかもしれませんけれども、結局のところはバブル経済ツケ一般国民に回してしまうマイナス効果が生ずることを大いに懸念するものでございます。  一つには、金利引き下げによって企業金利負担を軽減をいたしますし、金利引き下げによって地価低下傾向にかなりの歯どめがかかってくる。そうなってまいりますと、バブル崩壊ツケ不動産業界金融機関が負うべきところが軽減されるということになると思うからでございます。また、いま一つには、金利低下をするということは、一般大衆の預金の金利収入が減るということでございますし、また第二には為替レート低下をする。既に、公定歩合引き下げを予感いたしましてこのところ円レートが大分下がって、おりますが、金利引き下げ為替レート低下させる。為替レート低下はしばらくたちますと消費者物価上昇にはね返ってまいります。これも一般大衆負担でございます。あるいは地価が高とまりになってしまうということになりますと、一般国民住宅取得困難性は軽減されないのでありまして、金利政策によって景気対策を行うということは効果に疑問があるだけではなくて、余りにもマイナスの作用が大きくなるのではなかろうかと考えております。  したがって、平成年度経済運営といたしましては、この財政運営に積極的な景気刺激政策としての意味を持たせる、積極的な財政政策を行うことによって景気後退にてこ入れをするということが極めて重要な財政課題であると考えるわけでございます。  しかしながら、もともと現在先生方審議中の平成年度予算案は、予算編成方針にも明らかに示されておりますように、景気後退を前提としたものでは決してございません。平成年度予算の背景にあります経済見通しは、平成年度に引き続いて財政収支バランス維持回復をする、この点に重点を置いて予算が編成されている、こう言ってよかろうかと思います。  したがって、歳出面では、一般歳出について言いますと対前年比で四・五%増、平成年度一般歳出で対前年比四・七%増でございましたから、これをさえも下回っております。あるいは歳入面では、財政収支バランスを維持するために法人特別税あるいは自動車消費税の四・五%での据え置き、財源対策としての増税が組み込まれているわけでございまして、経済バランスよりも財政バランスの方にウエートがある予算編成だと、こう言ってよかろうかと思うのでございます。現実に進行しております景気後退、この景気後退対応しているものではなくて誤った景気判断に基づいて編成された、現実経済動向対応していない予算だと言わなければならないだろうと思うのでございます。  もちろん経済見通しは極めて困難でございまして、半年あるいは一年も前に正しい経済見通しを持て、これは無理な話だろうと思うのでございます。したがって、私は財政当局景気判断についての誤りを犯した、これは必ずしも責められるべきことではないと思っております。ただ問題は、状況変化に応じていかにフレキシブルに対応し得るか、それによって平成年度財政運営をこれから先どのように性格づけていくか、これが大切だろうと思うのでございます。  具体的に申しますと、平成年度財政運営におきましては、第一に、まず、でき得る限り早期に成立させる、これが何よりも大切だろうと思うのでございます。  第二に、その上で積極的な公共事業前倒しを行う。年度後半における公共事業を縮小するおそれもこの場合出てまいります。そして、年度前半前倒しを行い、年度後半に縮小するということが予想されますと、せっかくの前倒し効果企業心理に水を浴びせることになってまいります。せっかくの前倒し効果は損なわれてしまうことになろうかと思われます。このため、例えば従来におきましても前倒しか行われた際には補正予算が組まれております。例えば前倒しか行われました昭和六十一年度、いわゆる円高不況のときでございます。この円高不況の際には、年度前半において非常に大幅の前倒しを行い、そのかわり年度後半におきましては公共事業費によって景気回復を支えるために補正予算事業規模としては一兆四千億円、当時としてはかなり大きな規模でありますが、一兆四千億円の公共事業費追加を行っております。したがいまして、平成年度におきましても同様の措置をとることが必要だと言いたいのでございます。  一つは、予算が成立をしたならば早速に補正予算を通じて公共事業費等追加を図り、年度全体としての平均的な公共事業の実施を確保すること、あるいはまた平成年度におきまして国庫債務負担行為で六千億円の公共事業を行っておりますが、ぜひ平成年度補正予算においてもいわゆるゼロ国債による実質的な事業費の増加を行うことで平成年度の当初予算平成年度補正予算平成年度の当初予算まで巻き込んで一本として考えて景気対策を行わないことには、現在の景気後退に対処することはできないと考えております。  あるいはまた、さらには積極的に所得減税をも含んだ減税を行いまして、経済に対するインセンティブを回復する、これが大切なことだと言わなければならないだろうと思うのです。  言うならば、好景気のときにも不景気のときにも全く同じようなスタンスで財政再建という路線に執着をいたしまして財政収支悪化を避ける財政運営を硬直的に続ける、これは経済バランスを崩しますし、長期的な財政収支バランス回復という観点から申しましても望ましくないことだと言ってよかろうかと存じます。  第二に、長期的な観点についてでございますが、予算内容につきまして拝見をいたしますと、平成年度予算内容からは長期的に財政がどのような方向重点を置いて動こうとしているか、言葉の上ではともかくとして数字の上でははっきりと見えてこないのでございます。高齢化社会の進行にいたしましても、ストック化社会に対する対応ということにいたしましても、国際社会に対する貢献ということにいたしましても、あるいは構造的な変化ということにいたしましても、その中でどうすべきかということの対応数字の面では少しも見えてこない。  例えば、予算編成その他で生活大国ということが盛んに言われております。しかし、一体何が生活大国なんだろうか、その裏づけは予算では見られないと言ってよかろうかと思うのでございます。例えば公共事業費の内訳を拝見いたしますと、この十年間公共事業費のさまざまな項目についての配分比率はほとんど変わっておりません。あるいは生活関連重点化枠二千億円という配分はございますが、金額としては二千億円にすぎませんし、これもある意味では日米構造協議落とし子であったと評価できる面があるのでございまして、必ずしも自発的に方向づけが行われたということではないと言ってよかろうと思うのでございます。  あるいはまた、国際情勢変化にもかかわらず、中期防見直しということはありますけれども、一体冷戦構造消滅後の防衛費はどのようにすべきと考えているのか、これも予算からは見えてこない。言葉の上ではいろいろございますが、歳出予算は基本的な将来の財政のあり方をうかがわせることのできないものだと言ってよかろうと思います。  第二に、歳入予算の方から見てまいりますと、一つは、先ほどもるる申し上げましたように本年度経済見通しは達成できそうもございませんし、歳入欠陥が発生してくる。しかし、だからといって増税によって歳入欠陥の穴埋めをするというのは恐らく正しくない態度でありまして、歳入の不足の中でも減税を行うことで景気を刺激するくらいの積極性財政運営には必要であろうかと存じます。  例えば、野党がパート減税を御主張なさいましたが、積極的なパート減税を行うというようなことも一つの方法であると考えます。パート減税につきましては、限度額を超えた所得を持つ本人に対しては配偶者手当がなくなるとか社会保険料本人負担になるからいけないんだというようなこともございますが、金額の点ではそういう面がございますけれども、もしこれでこの問題を処理するとしたならば、これは国の財政の苦しさのしわ寄せを民間の企業に押しつけることになるのでございまして、やはり減税減税としてはっきりと行うべきと考えております。  また、相続税の手直しも不十分であると存じますし、あるいは昨年の日米構造協議の後を受けた市街化区域内農地宅地並み課税相続税納税猶予制度、これを生産緑地法改正によって改定をしたわけですが、生産緑地法に従って農地として保存することを求めない農家が余りにも多い。やはり計画的な市街化政策、線引きの見直し、これがこれから先の課題ではなかろうかと思います。  以上、るる申し上げましたが、四年度予算、積極的な見直し補正予算において期待をしたいものでございます。  ありがとうございました。(拍手)
  4. 中村太郎

    委員長中村太郎君) ありがとうございました。  次に、生活大国につきまして岡野公述人にお願いいたします。岡野公述人
  5. 岡野行秀

    公述人岡野行秀君) ただいま御紹介にあずかりました岡野でございます。  平成年度予算審議のための公聴会に、公述人として、生活大国形成観点から特に社会資本整備について拙見を述べさせていただきたいと思います。  現在、経済審議会は、今後の経済運営の指針を明らかにするため新しい経済計画の策定に向けて審議をしております。その柱は生活大国づくりであります。私もこの経済審議会臨時委員としまして生活大国部会に所属しております。また、社会資本小委員会に所属しておりまして、今いろいろ検討しておりますが、まず問題になりますのはその生活大国という言葉についてであります。  一月でしたか、ある新聞の「長期経済計画に注文する」と題する社説の中で、一国生活大国主義につながってはならないと述べております。また、生活大国部会委員の中にも大国という表現に抵抗を感じる人が少なくございません。むしろ生活中庸国を目指すべきだという人もいらっしゃいます。そこでは生活大国という言葉が飽くなき物質的欲望を満たす社会というふうにイメージされているのではないかと思います。  しかし、国民誤解を招かなければ私はこの生活大国という表現でもよいのではないかと考えております。つまり、日本経済大国なのに生活者としての国民が豊かさを実感できないという意味生活小国であると批判されているので、これを改善して、国民一人一人が豊かさとゆとりを実感でき、多様な価値観実現できる社会生活大国として、その実現を目標とすることは適切なことだと思います。  私は、生活大国という言葉国民誤解を招かなければよいというふうに申し上げましたが、それは国民生活大国とは国が何から何まで国民の欲求を国民負担なしに満たしてくれるものと受け取りはしまいかと危惧したからであります。しかし、今では私は国民に対してこのような危惧を抱いたことについて多少恥ずかしく思っております。それは、経済企画庁が生活大国についての私のリクエストを手紙あるいはファクスで広く国民に求めましたところ、多数の意見が寄せられました。三月初め現在で三百近く、つい最近ではもう七百近く来ております。  この多数寄せられた意見を拝見しますと、多分バブルがはじけたことの影響もあると思いますが、極めて堅実で、生活大国経済大国を混同してはならない、国から与えられて実行できるものばかりではなく、国民の各自が心がける事柄もあるのではないだろうかとか、フローとしての所得は世界のトップクラスにあるが、生活環境悪化のため、また食料品サービス料金が割高のため豊かさが実感できないとの批判にこたえるため生活大国を掲げたように見えるが、生活基盤の充実という言葉の方がよいと思うというように、個人の物質的消費欲望の充足よりも、広い意味での生活環境の改善を求めたり、あるいは海外からの留学生をもっと受け入れ、寮、宿舎を完備して安心して学び生活できる場をつくり、国際交流を進めるべきだ、このように主張するような意見も数多く見られます。  また、日本公共物、建物であるとか道路であるとか公共物が貧弱である。人口の割に歩道が狭く整っていない。電柱がなくなれば町はすっきりするし災害時も安全になる。また高校生から、スポーツセンター料金が高い、せっかく五日制になっても一体どこでどうやって我々は生活を楽しんだらいいのであろうかとか、そういう意見もございます。また地方からでは、交通網は大部分の地域で整備されているが、同じ国でありながら、中心都市と町の中心から一車線で、バックしてすれ違うところもあるのが現状である。あるいは文化的、体育的な活動や催しは人口の多い市などで開催され、郡部に住む者は体育施設等の利用についても恵まれないといったような意見が寄せられております。  さて、生活大国実現に向けて国がなすべきことは、決して生活大国国民生活はかくあるべきであるというような画一的なビジョンを国民に押しつけるものではないと思います。個々の国民のそれぞれの個性、嗜好に基づく選択の結果、豊かさを実感できるような生活を営めるように生活基盤条件づくりをすることが国の役割だろうと思います。  この際注意しなければならないことは、大都市、とりわけ東京地方をはっきり分けて考えることであります。住宅問題、通勤地獄等の問題は、これは大都市特有の問題であります。もっと狭めて言いますと実は東京問題でありまして、例えば通勤混雑の問題はまさに東京の問題で、京阪神ですと東京に比べるとはるかにこの問題は軽減されております。また、地方では住宅問題は事実上ほとんど問題になりません。私は、地方に行きますと町の不動産屋さんのところへ行きまして、ここらは物件がどの程度のところで、どういう程度住宅で、どの程度のお金で手当てできるかというようなことを見てくるんですが、東京で見ますととても考えられないほど恵まれているわけであります。  社会資本整備をどこまでどのようにすべきかという問題は、少し立ち入って考えますと、一般に指摘されるほど実は簡単ではありません。特に今日、生活者としての国民にとって不満なのは社会資本の質の問題だからであります。  いろいろな数字で指標があらわされます。上下水道整備の場合には、上水道の場合は給水人口下水道の場合は人口あるいは世帯についての下水道整備率等数字で与えられますが、これはほぼ実態をあらわしているというふうに考えられます。もっとも、この場合でも水道の水質であるとかおいしさであるとかということまで考えに入れますと、給水人口ではとてもあらわすことができないわけであります。  それから道路整備道路延長舗装率整備率等数字であらわされておりますが、これも必ずしも我々の実感をそのままあらわすものではございません。高速道路延長が五千キロを超え、一般道路も舗装されました。一般国道は全国で約四万四千キロ、昨日の道路審議会で六千キロの追加がございますので、近く五万キロになりますが、実はこれだけの一般国道の中で四車線の道路は一〇%しかございません。したがって、延長距離であらわされた指標というものは決して我々生活者が使う場合の道路整備状況をあらわしているとはいえないわけであります。せっかく余暇時間がふえて一家で車でレクリエーションのために出かけても、道路渋滞で時間がむだに消費され、ただいらいらするだけだ。散歩に出れば歩道は狭く、電柱が美観を損ね、決して快適ではありません。  私は、一九七七年から七九年にかけて二年ほどイギリスのオックスフォードで研究生活をしておりましたが、ここは毎日外へ出て散歩することが極めて楽しい場所であります。日本でなかなか歩く気がしないのは、都会の中でそういう場所を探すのがむしろ大変である。そういう場所があっても、そこへ行くまでにはかなり不快な思いをしなければならないという状態であります。  公園は都市人口当たりの面積であらわされています。欧米諸国と比べて最も数字の上では貧弱になっていますが、実態は数字であらわされている以上に貧弱であると思います。近隣の子供の児童公園は狭く施設も貧弱で、ほとんど使われていない状態であります。続々と建つ民間のビルの立派さと比べますと、公共施設は極めて貧弱であります。公共のスポーツ施設になりますともっと貧弱でありまして、民間のスポーツ施設は大変充実した施設を提供しておりますが、大変高く、一部の人々しか使えません。  ロンドンのリージェントパークに参りますと、サッカー場とラグビー場があります。何面あるんでしょうか、ちょっと数えたことございませんけれども、見渡す限りサッカー場とラグビー場になっておりまして、休日に行きますと朝早くから百少年がそこでプレーをしている。そういうのを見ますと、財布の中のお金の額ではなくてどういうのが豊かな生活であるかということがわかるわりであります。この生活大国部会に所属しましてから、私自分、我々の年齢になって生活大国のビジョンを考えても若い人たちに通用しないのではないかということで、二年前まで勤めておりました大学でのゼミの卒業生が遊びに来ますので、年代を問わず、君らは生活大国と言われたら何をイメージするかねというふうに聞いてみたわけであります。  そうしますと若い三年ばかりだった卒業生は、まずゴルフをやらないと自分たちと同じ仲間の一員として相手にしてくれないようなことはやめてほしいと。つまり昔ですと、我々が学生あるいは卒業したころですと、遊ぶことについていえば極めて乏しい時代ですから、いろいろな趣味を多様化して持つということは不可能であったわけですが、現在の若者はそうでないわけであります。それと同時に、たくさんの我々が選択できる機会をふやしてほしい、そしてそれを自由に選択させてほしいと。自由に選択するというのは、先ほどのゴルフのケースではございませんけれども、自分はゴルフよりほかのことをやりたいけれども、何か社会的な制約のゆえにそれを選択しなければならないというのでは自由な選択にはならない。それから最後が、先ほどの話と通ずるわけですが、すべてこういういろいろなサービスがあるけれども、日本ではサービスは高級で高い、もっとサービスの質は低くでもいいから安く利用できるようなものが欲しいということを言っておりました。  戦後、営々として社会資本整備を進めてきましたが、それは先進工業国でこれほど道路整備を無視してきた国はないと言わしめた道路を典型にしまして量的な整備に追われてきたわけであります。しかし、国民所得が上昇し、家庭には物があふれ、経済的には豊かになってきたが、社会資本の質の向上は著しくおくれております。  そこで、今後の社会資本整備につきましては、何よりも第一に質を高めること、第二に従来重点が置かれてきた産業基盤の社会資本に加えて成人教育施設、手軽に安く利用できる運動公園など、国民の豊かな生活に資するものも重視すべきであろうと思います。  また、社会資本整備に関しては、各種の社会資本の間の補完関係を考えて整備を進める必要があります。この予算関連で言いますと、予算の費目には社会資本でもカテゴリーごとに数字が挙がってまいります。そして、例えば下水道整備すべきだとすれば、下水道予算をうんとふやすということが下水道整備になるというふうにお考えでしょうが、実はそれだけでは済まないわけであります。下水道や地下鉄の整備には道路整備が実は条件になっております。また図書館、美術館、コンサートホールあるいは公園を整備する場合には、それらへのアクセスを同時に整備しなければ実はこういうものが死物化してしまうわけであります。したがって社会資本整備に当たっては、こうした一つ社会資本整備するときにほかの社会資本整備も同時に必要である。いわば補完関係にある。この補完関係を考慮してプロジェクトを計画する必要があります。  実は、東京問題発生の原因は、経済活動の場、雇用の場であるオフィスは増大したけれども、そこで働く人の住宅あるいは通勤に必要な交通機関の整備経済活動に伴う物の輸送に必要な交通施設の整備が同時に考慮されてこなかった、そのツケが来ているわけであります。  その他、社会資本整備充実について考慮しなければならないこととして、新しく新設増強することももちろん重要でありますが、それをどうやって維持していくか、その維持管理が大変重要であります。  最近、ここ十年以上ですが、アメリカでは社会資本の復旧のために大変なお金をつぎ込まなければならなくなっております。現に、私が一九六〇年から三年ほどアメリカに留学していたときに行きましたニューヨークの町の中の例えば五番街とか、あの街路は鏡のように舗装されてきれいでありましたが、最近行ってみますと、もうでこぼこで、しかもひどいところは穴があいたところに鉄板を敷いてある、そういう状態になっております。これは社会資本の機能をちゃんと生かすためには常に維持管理に力を入れなければならないということであります。  それからもう一つは、社会資本の公共投資と景気対策の関係であります。公共投資は不況時には有効需要創出の手段として拡大され、好況時には有効需要削減の手段、インフレを避けるための有効需要削減の手段として使われてまいりました。このように景気対策の手段として使われるわけでありますが、しかし社会資本整備社会資本ストックの充実であります。好況だからといって削減しますとそれだけその充実がおくれます。その上、社会資本整備は時間がかかりますので着実に進めていかなければならないものであります。  東京問題につきましては午後の公聴会でお話があるようですので、私はむしろ地方のことについて多少お話ししようかと思います。  地方につきましては、広域経済圏、生活圏を確立する、そのための条件として地方のモビリティーを確保するということが重要だと思います。いろいろな地方に行きまして現地の人々とお話をしますと、地方中心都市へ行くのに大変時間がかかる、そのために生活の幅を広げるあるいは豊かさを拡大するということがなかなか難しいということもあります。また、それは職場の確保の上でもハンディキャップを負うということであります。  それから社会資本整備についての国と地方の役割分担について一言申し上げますと、最近地方単独事業による投資が大変ふえております。最近では行政投資の五〇%以上を地方単独が占めているわけでありますが、そのことはそれぞれの地方のニーズに合った整備が行われるということでいいと思うのですが、ただそれだけでは済まないというふうに思います。やはりそれの上位機関がある種の調整をいたしませんと社会資本として機能しないというケースが出てまいります。  一例を申し上げますと、これは私が住んでいるところでありますが、大船駅の柏尾川沿いに道路があります。この道路を通って実は一日三百本以上のバスが運行されております。たまたま大船駅に近いところは鎌倉市の外れになっております。そして、横浜市内の方は既に河川の改修とあわせまして道路が広がりました。しかし、駅に近いところの部分については、鎌倉市の部分ですが、ここでは相変わらず狭いままでありまして、今でも毎日三百本のバスがそこをすれ違うときには徐行してすれ違っているありさまであります。  こういう状況はかつてアメリカで連邦政府道路の建設に入っていったのと同じ理由でありまして、州にすべてを任せておきますと、州の中央部はすべてよく整備されるけれども、州の外れの方は整備を十分しない。そうしますと道路のネットワークとしては十分機能しない。それを改めるために連邦政府が直接道路整備に入っていきました。これと同じことが日本でもこういうところではあらわれてくるわけでありまして、やはりもう少し県であるとかあるいは国の上位機関がこういうものを調整しないと、既に投資した部分の機能が十分効果を発揮しないということになります。  あと官と民間の役割分担のことについてもお話ししようかと思いましたけれども、時間が参りましたのでこの程度で終わらせていただきますが、いずれにしましても、毎年これから先、社会資本整備に向けて社会資本のスナックを充実させ、そして国民がそれを利用して豊かな生活が営めるようにすべきである、そのように考えております。(拍手)
  6. 中村太郎

    委員長中村太郎君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 お許しをいただきまして、自民党を代表して、お出ましをいただきました一河先生岡野先生、それぞれお尋ねをさせていただきたいと存じます。  先ほど来御意見を拝聴しておりまして、大変示唆に富んだ御指導、御鞭撻をいただいたなと、このように思っておるわけでございますが、まず一河先生にかたい方の財政のお尋ねを先にさせていただきたい、このように思っております。  先生の御意見を聞いておりまして、実は私、個人的には全くそうだなと。今日の景気状況等を考えてみましても、私ども自民党の部内では、昨年の夏以来、とりわけ中小企業中心として景気に大きな陰りが出てきた、今ここで浮揚策を積極的に導入しないと今後落ち込んだときにもとに戻すのは大変骨折れるぞ、いや、いざなぎ景気に並ぶ並ぶ、このような宣伝はありましたが、本当にそうなのかなという疑問をそれぞれの方々が党内では論議をしてまいったところでございます。  したがいまして、先ほど先生のお言葉の中で、昭和六十一年円高不況を克服して、そして公共事業前倒し、そして後半に一兆六千億の補正を組んで積極的な財政運営をした、その結果内需が拡大をし、さらには産業構造の非常にうまい変化等々起きまして、そして今日の約五十七カ月前後の平成景気というんでしょうか、好況を持続して今日を迎えた。こういうような視点に立ってのお話は、もう先ほど来聞いておりまして、私ども全くそのとおり、このように思っておるところでございます。  そして同時に、大変示唆に富んだお話をいただいたのは、いわゆる単年度予算をいろいろ組んでいく今の仕組みのあり方について、それだけでは景気浮揚策には十分な効果を果たさない、あるいは平成年度ぐらいまでの見通しを持って今から、早くこの平成年度予算を成立させて、そのためには前段公共投資の前倒し、これは政府もいろいろ検討をいたしまして、約一兆五千億円、七三%前後の前倒し、そしてまた、電力、ガス、言うならNTT、公共事業の性格の高いそれぞれの業界にも前倒しをお願いする。電力関係は約八千億ぐらいあるようでありますが、そういうようなこと。あるいは地方自治体のさらに協力をちょうだいしてこれも一兆五、六千億前倒しをしてもらう。こんなようなことを考えますと、ここで前倒しか相当大きな約十兆円弱のものが出てくる。これによって非常に景気浮揚のカンフルになるのではないかと期待をいたしておるところであります。  しかしまた一方、それによって人手不足に、とりわけ建設業界は今日でも求人倍率三・八五倍、昨年までは四倍台でございましたから、大変いっとき人手不足の問題を生ずる。あるいはまた資材等の問題もタイトになって問題が出てくるか、こんなようなことも懸念はされますけれども、とにもかくにも今年度予算を通して、そういう前倒しをやったその中で、一体景気の今後の見通しというものは、何とか私たちも秋口から明るい見通しになり得るであろうと期待を持っておるところでありますが、その辺のお見通しはいかがでございましょうか。
  8. 一河秀洋

    公述人(一河秀洋君) ありがとうございました。いろいろと教えていただきました。  前倒し一般会計予算を通じてのものだけではなくて、政府の関係のある企業並びに地方自治体のものまで含めると十兆円の規模に達する、乗数効果を考えますと十二兆円から十五兆円GNPを持ち上げる効果があるということになりまして、成長率に換算をしますと恐らく二%弱くらいになるんじゃなかろうかと存じます。ただしかし、一つは果たしてその程度で十分なんだろうかなという感じがするのでございます。  それは、平成年度の三・七%の実績がもはや大幅に達成不可能になっているわけで、昔はよく足駄をはいているということを申しましたが、いわば逆足駄をはいて平成年度は出発をしていく状態でありますから、よほどの思い切った対応をしないことには平成年度見込みの三・五%は到底達成できない。したがいまして、さしあたって十兆円の総合的な前倒し効果を期待する。問題は、これが秋口以降の景気上昇につながっていくかどうかということでございます。もし年度の前半で今年度に予定していた事業の七割あるいは八割が行われてしまって、その後は民間にバトンタッチをするんだ、こういう意味で考えると、恐らくは秋口以降の景気回復は期待できないと言ってよかろうかと思います。  それは、一つはこの四半期あるいは半年、素材産業は製造量を大いに低下させまして、素材在庫は随分低下をしてまいりましたが、どうも生産低下に売れ行きの低下が間に合わないで在庫整理がなかなか進んでいないのが現状でございます。これに加えて、また最近は製品在庫の増加が非常に目立ってくる。製品在庫の増加に対応して製品産業。で生産低下させますと、これは素材を使わなくなるわけでございますから、素材産業の在庫増にまたつながって素材産業の生産低下させる。  ですから、景気の底の見通しは、そのように考えますとだんだん先へ延びていってしまう。これを食いとめるためにはやはり財政がもう少し力を振るう必要があると存じます。年度の後半に追加公共事業名することが必要だと思っております。
  9. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ありがとうございました。  先ほど先生のお話を拝聴しておりまして、半ばそうだなと思いながらも、現実に私たちは健全財政という建前のもとにいわゆる赤字国債を発行しない。これはある面におきましては財政の硬直化でもあるし、また御承知のように、平成年度末は公債費累積百七十兆円、その公債費の利払いあるいは償還について十六兆円、一般会計のパーセントで申し上げましても二二・八%。ある見方によれば極めて財政硬直化になっていますよ。特に欧米との比較の中で見ても余りにも公債費の負担日本の場合には高過ぎる、こういう意見があるわけです。  その中で我々は一生懸命努力をしてきたところでありますが、先生のお話を聞いておりますと、ゼロ国債を発行しても景気浮揚の積極財政策をとれ、こういうことでございますが、我々の今日の国会審議あるいはその他の制度上のプロセスもあるわけですから、打そば響くように個人企業ならそれができますけれども、国家財政というものは、先生のおっしゃることはごもっともと思いながらも、おっしゃられるようにはいかないんじゃないか。これ以上赤字をふやせば、御案内のように高齢化時代を迎え、そしてまた後年度ツケ回しをした、二十年三十年前の政治家は国民はと後世の人たちに指弾を受けないとも限らない。  こういうことを考えますと、その辺はどうお考えになっておられますか。
  10. 一河秀洋

    公述人(一河秀洋君) 全く先生のおっしゃるとおりでございまして赤字公債の発行が財政運営の規律を太いに損なったということは注目すべきことだろうかと存じます。  ただしかし、その反面でここのところ数年間の歳出増、殊に一般歳出の増を見てみますと、昭和六十二年度は実質的に前年度並み横ばい、ところが六十三年度には対前年比四・八%増、平成年度に六・六%増、二年度には九・六%増、三年度には六・二%増。いわゆるひところ財政再建ということが言われていた時期に比較をして平成景気のさなかには、一方では歳出の増加が実現されるあるいは復活をする、一方では減税が行われる。これは政治的にはやむを得ないもっともなことであろうとは考えますが、このような好景気で比較的に財源のゆとりのあるときにこそ本来は歳出を抑制して、そのため余った資金を景気調整基金に累積するような努力が必要で、これは過ぎ去ったことについてとやかく言っても始まりませんけれども、今後においてはそのような財政運営態度を心がけるのが必要であると考えてあえて赤字国債というようなことを申しました。
  11. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 その辺が現実論、今まで私どももまた野党の皆さんも、赤字国債を一体いつになったらなくすんだ。我々は行革を通じいろいろな角度から赤字国債発行を何とか抑えたい、こうやってきておるところでございましたが、それはそのときの時代でやむを得ない、発行せざるを得ない事態が来れば、これは補正でも何でも組む場合に財源がなければそういう形にもなろうかと思っておりますが、なかなか実は今日、景気に即応できる国家予算をということになりますと、弾力性の失われた今日の国家財政の中で非常に厳しいなと。これは本当に言うはやすく行うはかたい、つくづくそれを感じているきょうこのごろでございます。  さて、時間が余りありませんのでもう二つほど先生にお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず、先ほどあるいは積極的な所得減税パート減税等もやるべきではないか、こういう御提言がございました。私どももすべて反対というわけではありませんが、やっぱり出と入りのバランスというものと、とりわけ宮澤総理も先般この予算委員会で答弁をしておられましたが、税制の抜本改正のときに五兆五千億、言うなら史上始まって以来の大幅減税を実行したところでございます。その効果が今日まで二年の間に私ははっきり出てきているんじゃないか。  例えば勤労者の可処分所得をとりましても、今日平成年度においても改正以前よりは十分メリットが出てきております。ただ、減税によって歳入の欠陥が懸念されるという状況の中で、一段と歳入に厳しい状況をつくるのが足か。あるいはまた今日、例えば法人特別税も据え置いていただきました。あるいは自動車税も、公約であれば本来三%にしなければならないのを一・五%減税させていただいて四・五%でやむなく御協力をいただく体制になったところでございます。それやこれや何とか、それは取れるところから取るというのが税だと私たちも陰では悪口を言っておるのでありますが、そのパート減税は特に共稼ぎの方々あるいは片稼ぎの方とのバランスを損なうんじゃないだろうか。  いろいろ考えてみますと、税の公平という観点から見まして、百十万までと仮に御要望のある線まで上げますと、最低保障額を今の六十五万から七十五万に上げることになります。そうなりますと、四〇%の適用をしている百六十二万五千円から百六十五万円、百六十五万円から三百三十万円は三〇%適用でありますが、この七十五万に上げることによって百六十五万までの四〇%適用の意味がなくなる。そうしますと、また三百万ぐらいまでそのフラットを延ばしていかなきゃいけない。そうなると、日本所得税の全体的な体系を大きく変えていくという必要が出てくる。矛盾があるのみならず、公平さを欠く面があるのみならず、一方においてまた根本的に変えなきゃいかぬ。  一河先生のお出しになられた本を実はちょっと見てみました。特に所得税等について外国との対比がいろいろグラフで載っておりまして、私どもは、日本の税制が大改革されてから諸外国と比較をして極めて低い立場に所得税はある、あるいは法人税にしてもまだまだ外国と対比して高い、こういうような考えを持っておるところでございますけれども、その辺を含めてひとつパート減税あるいは積極的減税による景気浮揚策、この問題について御所見をお聞かせいただきたい。とりわけ国際的な対比の中で御説明をいただければありがたいと思います。
  12. 一河秀洋

    公述人(一河秀洋君) 非常に広範囲の問題を出されまして時間のないのに苦しんでいる受験生の心境でございます。  確かに、最近の国際的な税制改革の動向と申しますのは、一方においては所得税率あるいは法人税率、所得課税を軽減する、他方においてはその穴埋めを消費課税や資産課税で行うというのが一つ方向であろうかと存じます。ですから、アメリカにしてもイギリスにいたしましても、所得税は二段階税率になっておりますことは御承知のとおりでございます。  ただ、我が国の場合を考えた場合に、このパートの問題とも関連をしてくるわけでございますが、高所得者は必ずしも豊かな生活階層ではないという点を配慮しなければならないと思っております。殊に、源泉徴収の大半を占めておりますサラリーマン階層にとりましては、建前といいますか、基本的にはいまだに年功序列給与制度でございますから、中高所得層というのは実際の内容としては中高年齢層でございまして、確かに年間所得こそ数百万あるいは一千万あるいはそれを超える。高くなりましても生活のゆとりは四十代から五十代の初めは逆に圧縮をされて、むしろ低所得者の方が生活のゆとりとしては持っている、あるいは高齢者の方が生活のゆとりとしては大きい。一番苦しいのは所得が大きい働き盛りの四十代から五十代初め、こういう状況だろうと思います。その中で子供さんが幼稚園、小学校から手を離れてパートに働きに行く、こういうお母さんの方がふえているんだろうと思うのでございます。  先生は専業主婦あるいは片働きとのバランスということをおっしゃいましたが、私は根が怠け者のせいか、好きこのんで働きに行くわけではなくて、やはり生活のために働きに行くというのが大多数の層であるように思われまして、一千万の所得制限も考えなければいけないと思いますし、あるいは財源面で多少無理なことがあったとしてもパート減税を引き上げることが妥当であろうと存じております。
  13. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 先生にもう一点お尋ねをいたします。  私は神奈川県議会におりまして、非常に健全収入が多いときに財政調整積立金というものをつくらせた本人でございます。先生の御本を読んでいますと、やはりそういう景気対応景気調整準備金というようなものが財政運営の中では必要だと。私も全くそのとおりと思うんです。ですけれども、今の場合、国は赤字国債をなくすことにもう精いっぱい努力をしてきた。そして、見通しその他に甘い点も確かにあった。これも私は指摘をしているところでありますけれども、しかし今ここで余力のない財政からとても調整金的なあるいは準備金のようなものが出せない、こういう状況であると先生も御理解いただけると思うんです。  しかし、本当にこの政策を実施するまでのタイムラグというものも、先ほどちょっと触れましたが、打ては響くようにいかない。これも制度上やむを得ない。しかし、景気のこの陰りの中で、国民はぜひ景気浮揚策をと。それは金利だけですべてが解決するわけではありませんが、私どもは総合的な角度からありとあらゆる手を打ってみる。そして、来年度はどういう状況になるか。景気浮揚してほしいと念願をしておるところでありますけれども、ゼロ国債を出していいのか、あるいはまた力のあるときにこそ都市というものは世界の歴史の中でも建設をされているわけですから、多少無理しても、調整金をつくらなくても前向きで予算執行をしていくのか、その辺でそれぞれ取捨選択が難しいところであります。  とりわけ、先生の御本を読んで、ああ調整金、なるほどな、我々もやったなという感があったものですから、所感があれば一言お述べをいただきたい。
  14. 一河秀洋

    公述人(一河秀洋君) ありがとうございました。  政治の上でいろいろ難しさを教えられまして、なるほどと痛感をしております。今後、一層勉強させていただきたいと存じております。
  15. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ありがとうございました。  岡野先生にお尋ねをさせていただきます。  先生は特に交通経済学の大家でいらっしゃいまして、先ほど我が神奈川県の戸塚と大船の例をお引きいただきまして、広域的な調整というのが本当に必要だなと、私も日ごろあの付近を走っておりましてつくづくと痛感をいたしておるところでございます。  特に、宮澤内閣は生活大国を標榜して、ここで具体的な構想をお打ち出しになってくるところでございます。いろいろ御指摘がお話にもございましたが、私どもは今まで欧米に追いつけ追い越せ、言うなら企業社会で来ました。これからは質量ともに社会資本を充実したり労働時間を短縮したり、あるいは大都市圏の住宅、交通事情、さらに高齢化対応、内外格差の是正等々の中で国民の豊かさを求めていかなければならない。言うなら個人型社会への量質の変換だと、このように思っておるところでございます。  先生の御意見も大方そういうところにあったろうかと思っておるところでございますけれども、たまたま日本古来の話で、衣食足って礼節を知ると。人間、生活の中でそれに住を加えれば、いわゆる衣食住が豊かであれば、国民の皆様方は物質的な面の欲望といいましょうか、豊かだなという感じは納得していただけるだろう。ところが、今の時代、その質という問題から考えますと、物ばかりの豊かさではなくて心の豊かさということもこれまた非常に重要な分野を占めるんじゃないのかなと。生活大国への入り口は物と心のバランスのとれた豊かな社会、豊かな国民性づくりにある、このように思っておりますが、いかがでございましょうか。
  16. 岡野行秀

    公述人岡野行秀君) おっしゃるとおりでございます。  先ほど申し上げることができませんでしたけれども、現在の日本では、もちろんまだ今でも恵まれない方はたくさんいらっしゃるわけですけれども、全般的に言いますと非常に今豊かになりました。特にバブルの時代には何か高級品を買いあさり高価な物を食べに出る、そういう生活を送ってきたわけであります。それだけ衣食足りて礼節を知るはずなんですが、実は私はむしろ礼節は下がっているというふうに考えておりまして、この点を国民はもっとやはり自己責任を持たなければならないということを痛切に感じております。それは社会資本につきましてもいろいろ求めてくる国民はたくさんいますけれども、実はそれを使う国民社会資本を大事に扱っているかといいますと、極めて粗末に扱っております。  私が見た例でございますけれども、道路の中央分離帯に植樹をされておりまして、たまたま私が朝早く通りましたときに地元の人たちがボランティアで掃除をしてきれい仁しておりました。しばらくたってから行きますと、全部金網で囲ってありました。それはごみを捨てる者がいるから金網をつくったわけですが、実はその金網にごみの袋をぶら下げてくる、こういう国民がいるわけであります。我々がきれいな生活環境というようなものを求めても国民がこれではどうしようもないわけであります。  政府があるいは国がやらなければならないのはそうした社会資本整備をすることであるけれども、これを使う側の国民がそれを大事に使っていかなければ本当の豊かな生活大国にはならないというふうに思います。
  17. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 もう時間がございません。住宅のことで、そしてそれに伴う交通事情のことで最後にちょっとお尋ねをいたします。  ウサギ小屋と指摘された日本住宅も最近非常に改善をされまして、アメリカには及びませんが、言うならヨーロッパ並みになってきました。そして、住宅は何とか自前の家へ住みたいというのが日本人特有の要望でございまして、年収の五倍を目標として、これはなるほど土地の問題もありまして首都圏では現在八・五倍、こういうような状況ですから欧米並みの四倍前後にはまだほど遠いわけですが、何とか地価を下げたりあるいは収入を上げたり、一極集中排除をいろんなことでやりたいと思っておるところであります。  特に私が一番懸念するのは交通事情で、アクセスを完備しなきゃいけませんが、日本の場合には驚くなかれ六十分以上の通勤圏におる方が非常に多い。外国ではこれがもう軒並みほんのわずか。この違いの余りの大きさに驚いているところでございますが、いかがでございましょうか。
  18. 岡野行秀

    公述人岡野行秀君) 私は、住宅問題というのはもう東京特有の問題だというふうに考えております。といいますのは、イギリスあたりでもオックスフォードからロンドンへ通っている人がおります。大体バスで一時間ぐらいかかりますが、そのかわりバスは始発で常に座って行けます。したがって、時間的にはそうなんですが、日本の場合にはその時間帯を超混雑の状態で行かなければならないということに問題があるわけです。そして、しかもそういうところですら住宅は非常に高い値段でなかなか手が届かない。  私は、基本的にはやはりもう東京の今のような一極集中を根本的に改善する以外にその解決の道はないというふうに考えております。
  19. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ありがとうございました。大変両先生の御指導をいただいて、また我々よく勉強して頑張っていきたいと存じております。  まことにありがとうございました。
  20. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 社会党の梶原でございますが、先ほど一河公述人岡野公述人におかれましては本当に適切な公述をしていただきまして、今感激をしているところでございます。  幾つかお尋ねいたしますが、最初に一河公述人の公述されたことにつきまして関連してお尋ねいたしたいと思います。  今、平成年度予算審議をしておりますが、先生から先ほど言われましたように、本当にこれは三・五%の経済成長達成は不可能、それに基づいた税収の見積もりというのは恐らく相当欠陥を生ずるだろうという判断は私も同じでございます。  そこで、済んだ話でございますが、いつもこういうことをやっぱり日本の戦後の経済というのは繰り返しておると思うんです。それは、あるときは何かの条件によりまして景気を抑える。そのために急ブレーキを踏む。悪くなると今度はまたアクセルを吹かしてどんどん上っていく。今度のバブルがまさにそうだったと思うんです。このバブルから経済の調整局面に移るその移り方の経済なり金融政策の運営の仕方というのが、私はやっぱりそこに急激にこういう状態が来るところに問題があったと見ておるんですが、先生の方ではその点はどのようにすればよかったのだろうかと、そのことを一つはお尋ねをしたいと思います。  それからもう一つ、我が国は、斎藤委員が今言われましたように、百七十兆円を超える財政赤字があります。しかし一方では、国際収支は貿易黒字が大幅に続いている。海外の皆さんは、貿易収支の面で非常に日本というのは豊かな国だ、こう見ておると思いますが、一万財政赤字、国の財政というのは非常に大変な状態になっている。したがって、貿易収支の問題にやっぱり負い目がありますから、国際貢献をするとか、あるいは湾岸戦争の場合にはもう九十億ドルをぽっと持っていくとか、カンボジアの問題でも相当大幅な財政資金を充てる。ODAしかりですが、こういうことを次々にやらなきゃならない。  貿易収支というのは、これは民間取引が中心ですからそこに金が集まるわけです。政府に貿易収支の黒字がどんどん集まるあるいはそういうところの企業から税金が余分に入るというような状態では全くないわけですから、その辺の関係、関連を一体どのように整理をして考えていけばいいのか、この点についてお尋ねをします。  以上、とりあえず二点。
  21. 一河秀洋

    公述人(一河秀洋君) まず、平成年度においては政府成長見込み三・五%は達成できない、したがって歳入欠陥が生ずる。ところで、この不況の原因は一体何であったのかということがまず第一の問題でございました。  不況になるからにはやはりその前に好景気の時期があったわけでございまして、平成景気と呼ばれる景気の前提、あるいはそのさなかにおきましては世界的に景気状況がかなり高水準にあったということが一つはその理由になろうかと思います。アメリカの経済もかなり活況を呈しておりましたし、ヨーロッパはEC統合を控えての各国間の言うならばスタートラインに並ぶ競争で景気がよかった。その中で我が国の景気もこれに支えられて好調であったということが一つの理由として言えようかと思います。  また、いま一つ先生御指摘のバブル経済でございまして、株の値段が非常に高いあるいは土地の値段が非常に高い上に非常に割り増しの担保率で金融機関から低金利融資を受けることができる。このような非常に安い金利の資金供給が設備投資を過度に膨らませたという傾向はあろうかと思うのでございます。  したがって、バブル経済が消滅をする、そのこと自体がすぐに実体の経済に大きな影響を与えるものとは考えられませんが、バブル経済に至るプロセスで膨らんだ設備投資、この設備投資によって増大をした生産能力が適度の水準にまで回復をしない渡りと申しますか、生産能力の過剰が消滅をしない限りは本格的な景気回復に入っていくことは困難でありまして、現在の日本経済状態は、昭和三十年代後半の転型期と呼ばれた時期にある程度は似ているということを言ってよかろうかと存じます。
  22. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 あとの財政赤字と……。
  23. 一河秀洋

    公述人(一河秀洋君) 財政赤字と何でしたが。
  24. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 財政赤字がありますね。大変な財政赤字がありますが、しかし貿易収支は大きな黒字で国際的に批判を浴びているような状況が一方にある。しかし、何も財政にその貿易収支の黒字の部分というのが入ってくるわけではない。  そういう状況の中で、やはり国際貢献にはどんどんお金を使わなきゃ、財政を投じていかなきゃならない。一方では貿易黒字が大きい。財政は赤字。そういうものに対してどのように考えたらいいのか。
  25. 一河秀洋

    公述人(一河秀洋君) 非常に難しい問題だろうと思うんです。  といいますのは、少なくともメカニズムといたしましては財政の赤字と貿易の黒字は全く無関係でありまして、財政の赤字は国の負債でございますが、貿易の黒字は実体的には民間企業の資産でございます。したがって、貿易の黒字があるからそれを使って国際的な援助をしろということはこれは無理な話なのでございまして、貿易の黒字を国際的な援助に使うとすれば、それを国が買い上げるだけの財政の支出を行わなくちゃいけないことで財政の赤字はさらに大きくなってしまう。それを避けるとしたら、国際的な援助のために必要だということで国民負担増を求めるということしかなかろうと存じます。
  26. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 わかりました。  次に、斎藤委員からも質問がありましたが、とにかく先生が言われますように、公共投資もやる、減税もやる一そうすると一体財源をどうするのかという議論になるわけですね。私どもは、とりあえずこのパート減税はこういうときだからこそやろうじゃないか、こう言っている。これに対して財源をどうするのか。パート減税十万円上げるのに二千八百億とも三千億とも言っておりますが、この点についてどうするのかという議論なんです。  この点について少し変わった観点から見てみますと、このパート減税と非常に関係があります。六十歳以上の厚生年金をもらっている皆さんが働いておると、所得がありますと今度は八段階に分けて厚生年金をカットされるわけですね。したがって、もうばからしいからパートの上限のところまで働いてあとは仕事せぬのだと。非常に社会的にも損失が大きいし、また仕事をすることによって生きがいもあるだろうし、こんな矛盾はどうしても納得ができない、こう言っているんですね。これから二十一世紀に向けまして労働力不足に対応するためには、六十歳から六十五歳にかけての高齢者がどう仕事をするようになるかという面もあるんです。だから、それはパート減税とは直接関係ないんですが、そういう矛盾があるわけですね。  とりあえずパート減税について、先生の先ほどのお考えを財源との関係でお伺いしたいと思います。
  27. 一河秀洋

    公述人(一河秀洋君) パート減税の必要性というのは、先生御指摘のとおりに二つの面があると存じます。  一つは、パート減税で恩恵を受ける階層は、現在の経済状態と税負担の中で一番生活のしわ寄せ、逼迫を受けている階層だと言いたいのでございます。したがって、財源的にはかなりの無理がありましても早急に実施するのが妥当であり、あるいは場合によってはそのために時限的な特例国債ということが考えられてもやむを得ないだろう、このように考えております。  また、第二の視点は、いわばパート所得限度額が設定されるということで、家庭の奥様方とかあるいは非常にまだ元気なお年寄り方が仕事をするのをやめてしまう。これはもう先生御指摘のとおり、社会的には非常にもったいない話でございまして、むしろその人たちにとっては、殊にお年寄り方にとっては働くことが生きがいであって、ナーシングホームをつくったりお年寄りのゲートボール場をつくるよりも以上にお年寄りに働く場を与えるということがお年寄りにとっては本当の福祉対策になるという感じがしております。  また、ILOの千八百労働時間、これの達成のためにも何とか現在の日本の国内で労働力を引っ張り出してくるためには、パート減税の枠の引き上げ、これは非常に苦しいことではあってもぜひとも実行していただきたいことだと考えております。
  28. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ありがとうございました。  それでは、岡野公述人生活大国についてお尋ねいたしますが、私は生活大国という表現には非常に抵抗があるんです。どうも最近、一般の風潮とすれば、どんどん宣伝が行き渡るものですから、本当に日本経済も何もすべての面が豊かで大国だなというような世論が形成されつつあると思うんですね。その点、やっぱり日本人というのは思い上がりの何かがあるんではないかと思うんです。思い上がる傾向があるんではないか。だから、そういう国民に対して生活大国という表現を振りまいていくということはどうもミスリードじゃないか、このような感じを私はいたします。それが第一点。  それから第二点としまして、数年前にフランスに国会から調査団を派遣して、非常にわずかな時間ですが行きました。日本から進出している企業をずっと見て回りまして、そこでいろんな話を聞いたんですが、フランスの労働者というのは何のために仕事をするのか、こう言ったら、年一度の家族ぐるみのバカンスが目的だと。バカンスに仕事の目的を置いたって、子供の学費、結婚それから住宅、老後の心配、こういうところに金が要るだろうと言ったら、いやそんなものはフランスではそんなに心配ないということで、逆に向こうの方が唖然としているんですね、そういう質問をすることに。そういう点から私ははっと、これは日本は格好いいことを言っているがおくれている、このようにそのとき本当に思い知らされました。  それから先ほど斎藤委員からいろいろお話がありましたが、斎藤委員とも一緒にスウェーデンや西ドイツを見てきました。西ドイツに行ったときに大使館の皆さんが言っているのは、もう金曜の午後、公的な話をするといったってセットすること自体が難しい、こういう状態だというんですね。それは二年半前ですか、そういう話を聞きました。それから、スウェーデンヘ行ったら湖にたくさんヨットが浮かんでおる。私が私的な調査でアメリカに行ったときに、サンフランシスコ湾にヨットがずらっと浮かぶ。日本の場合あと何年したらそういう時代が来るのか。しかし、永遠に来ないんじゃないかと最近思うんです。  先ほど東京地方の話を聞きました。私は地方の出身ですが、東京の人が年一回バカンスにキャンピングカーを持っていくといったって、キャンピングカーを置く場所がないんですね。したがって、東京周辺の約三千万近いうちの二千万ぐらいの人というのは永遠にキャンピングカーを持てない。休みはとれたとしても、キャンピングカーを持って出かけて一カ月も休むことは永遠にできないような状況でしょう。こういうような状況を一体どうすればいいのか真剣に考えなければいけないと思います。  この点について一体どうすればいいのか、その辺をお伺いをしたいと思います。
  29. 岡野行秀

    公述人岡野行秀君) 大変おもしろい点を指摘していただきました。  おっしゃるとおりでありまして、第一番目の生活大国という表現がどうかということにつきましては、先ほど陳述いたしましたときに申し上げましたように、私自身も危惧を抱いておりました。要するに、個人的な満足を高めるための用意を全部やってくれるのじゃないか、飽くなき欲望をますます満たしてくれるようにするのじゃないか、そういうようにとられやしないかと実は思ったわけでありますが、先ほど御紹介しましたように、国民から寄せられたファクスや手紙を見ますと、もちろんそれにちょっと近いような人もいないことはありませんが、かなり多くの人から、生活のスタイルを変えるべきだとか、もっと自分たちの生活環境あるいは町並みをきれいにすべきだとか、そういう意見が大変大きくなっておりまして、その点ではもう思い上がる傾向というのは多少バブルの教訓があったのではないかというふうに思っております。  バブルの時代には大変我々の所得もふえて景気もよかったわけですけれども、実はバブルの時代ほど国民の中に不満も大きかったわけであります。それはなぜかといいますと、自分たちもバブルで大変もうけている人と同じようにもうからないのはおかしいじゃないか、そういう不公平感を感じたわけでありますが、はじけてみますと、やはり無理はだめだということもわかりまして、もう少し地道な形の生活で豊かさを味わえないかというふうになってきたように思っております。したがって、これは生活大国という言葉の定義について、その内容をこれから経済審議会が詰めていくわけですけれども、その点を注意していくべきかというふうに思っております。  それから、第二のフランス、第三番目のスウェーデン、西ドイツのお話ございましたけれども、私もアメリカへ留学しまして三年近くおりました。それから、先ほど申し上げましたように、オックスフォードで二年生活いたしました。どこか違うわけでありますが、それはやはり我々の生活についての物の考え方あるいは生活のスタイル自体が違うわけであります。  そして、例えばフランスの労働者はバカンスを生きがいにしていると、まさにそのとおりであります。しかし、日本の場合には、どう言ったらいいのでしょうか、すべてが高くっくわけであります。これが実は問題だと思うわけです。そして、余りお金がなくてもみんなが高いものを購入すれば自分も高いもの、いいホテルに入りたいとかそういうことになるものですから、実はすべてバカンスをするについても、フランスやイギリスあたりでバカンスを過ごすのと比べますと非常に高くつきます。そうしますと、今度はそのために収入を稼がなければならないというような悪循環になっておりまして、私はこの点については物の考え方次第であるというふうに思います。  私もスウェーデンに行きましたときに、友達が郊外に持っています別荘などというと大げさですが、単なる小屋に近いものですけれども、そこに行きますとちゃんと水辺に小さなボートがあって、そこで一緒にお茶を飲み、ボートで遊んでくる、こういう生活ができるわけであります。それから、アメリカヘ行きますと、特に六十歳代あたりですと、老齢者が夫婦でキャンピングカーでゆっくり旅行をしているという生活をたくさん見ます。こういうことについて日本でも私は意外と早く普及するのではないかなというふうに考えております。  ただ、これについてはほかの制約がありまして、例えばキャンピングカーの問題で言いますと、キャンピングカーのとめるべき場所がちゃんと整備されていない、最低、トイレと水だけは必要なわけであります。これはアメリカあたりへ行きますと、ほとんど冬は人が行かないようなところにもちゃんとこういう施設ができております。もう一つは、日本の場合にはキャンピングカーを引くことについて牽引の免許がないとできませんので、一般の人が簡単にやるということができない、そういう制約条件がございます。  それから、ヨットのようなものについても全く同じでありまして、私の友人で小さいヨットを持って楽しんでいる人がいますけれども、日本でもし国民のある年齢層の人がヨットを持つとしたら、それを日本全国の海岸線に並べても足りないそうであります。したがって、こういうヨットの場合には、一つには共同して使えるようなサービスが生まれるというようなことがあればそれもできるだろうと思いますが、いずれにしましても、楽しみ方というものについてのライフスタイルを変えるということが第一であります。こういうことは私どもが国民に押しつけるべきものではないわけでございまして、ただこういう生活の仕方があるよということを我々実践してみせる以外にないと思います。  この点につきましては、先ほども申し上げましたように、若い人たちは、例えば先ほどゴルフをやらないと自分たちの仲間とみなしてくれないような風潮があるというようなことを言いましたけれども、その中のうち二人はやりたくないと言うのですね、やりたくないと。自分は実は大学時代からオーケストラのメンバーだったので、卒業してからもほかの大学でやっているオーケストラのOBのオーケストラで練習をしている。ところが、君、週末ゴルフ行かないかいと言われたときに、私はオーケストラの練習に行きますからと言いますと、エイリアンを見るような目で上役が見る。したがって、こういうところからまず直さないと日本の人たちがそれぞれ個性を持った楽しみ方というのができないのではないか。  こういう話をいたしましたら、ある企業の役員の方が、実はゴルフは交際費で認められるのです。魚釣りが好きだとかあるいは音楽会が好きだとかいう人たちをそういうところへ招待しようとすると、それは交際費では認められないのですと。いかに日本がゴルフに根差した社会になっているかということをつくづく痛感したわけでありますが、そういう点を改めないとなかなか豊かな生活大国はできないのではないか、このように思います。
  30. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 もう時間がありませんから終わりますが、日本の今のゴルフにしてもレジャーの関係にしても、奥さんは家へ置いておって自分だけ出ていくようなそういう傾向が非常に強いですね。だから、やはり家族で行けるような、金もかからないでやれるような、そういうものが終局の一つの生きがいを取り戻す、そういうことに通ずるのではないか、このように思いますが、その点はいかがでしょうか。
  31. 岡野行秀

    公述人岡野行秀君) おっしゃるとおりでありまして、これは日本の男性に問題があると、一言で言えば言えるわけであります。  私は、家内も働いているものですから、料理もやりますし、洗濯もいたしますし、掃除もいたします。こういうのが、大体男性ではおまえはおかしいというのが私に対する評価でございますが、実は男性は家にいないで日曜日でもゴルフに行った方がやはり楽しいわけです。そこが間違っているわけであります。私は家庭の仕事をすることも大変好きですし、時間があればDIYで木工をすることも好きであります。  したがって、そういう家族の中で一緒に生活をしますと、実は私的なことになりますけれども、私の息子たちはもう大学あるいは大学院におりますけれども、たまには家族で一緒に旅行しようよというふうに子供が申します。それはやはり、親が子供の家庭の中での教育をもう少しちゃんとするということによって、今おっしゃったような問題は解決されていくと思いますし、多分若い人たちはそういう傾向を既に持っておりまして、それを妨げているのは我々中年以上の男性であるというふうに考えます。
  32. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 もう時間ですが、最後に中央と地方の問題で、地方においても県庁の所在地とまた離れたところと違いがあるという御指摘がありました。そのとおりだと思うんです。  問題は、その県庁なら県庁の近くまで来るのは来るんです。そうすると、私は大分市で、大分市の周辺に来ると物すごく込むんです。それでどうしようもない、便利が悪い。そして、高齢化社会地方ではずっと訪れている。高齢化率二〇%超えているという市町村はたくさんある。ですから、川が流れますように地方都市でも都心に近くなればなるほど道路は本当は川のように広くならなければいかぬ。それが一車線なら一車線、二車線なら二車線でずっと行くものですから、それは込むのは当たり前です。審議会なんかでそこら辺をひとつ反映させていただきたいと思います。  ありがとうございました、
  33. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 両先生には先ほどからいろんな問題につきまして御教示賜りまして本当にありがとうございます。何点か質問させていただきますが、要点だけ申し上げたいと思います。  一河先生にお尋ねいたしますが、先ほど低金利政策についてその必要性がないというお話をちょっと承ったわけでございますが、金利政策だけでは今後の景気浮揚につきましては既に限界に達している、このようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか、今までの金利引き下げで十分どお考えになっていらっしゃるのか。それに対して財政の方ではこれから景気対策をいろいろと考えていくようでございますが、それに対するお考えを、私たちは政府景気対策だけでは不十分ではないか、こう考えておりますが、御意見を賜りたいと思います。  それから、所得減税につきましても私たちは景気浮揚のために必要である、中でも消費の浮揚のためにはぜひともこれは実現していかなければいけないんではないかと思っております。そして、せんだっての予算委員会でも私たちの代表は子育て減税ということを主張したわけでございますが、政府側ではなかなか財源の問題等がということで非常にかたい態度でございます。そういった財源についてどのようにお考えになっていらっしゃるかお聞きしたいと思いますし、また時間がございましたら、消費税についての先生のお考えをお聞きさせていただきたいと思います。  それから、岡野先生にお伺いしたいことは、先ほど一河先生の方からお話がございました生活大国という主張の中で、毎年度予算を見るとその裏づけが少しもない、例えば公共事業費配分比率というのはここ十年以上ほとんど変わっていないというお話がございました。そのように眺めてみますと、確かに一般会計公共事業関連費の推移などを見ましても、治山治水、道路整備あるいは港湾、住宅下水道、農業、林業いろいろございますけれども、ほとんどその比率というのは変わっていない、構成比卒が変わってきておりません。  生活大国を目指す場合には、先生もいろいろとお話がございましたけれども、やはりめり張りのある、あるいは一番こういうところがポイントではないかと思われるところには重点的に、硬直した配分法でなくて進めていくべきではないかと私たちは思っているわけですが、先生のお考えをお聞かせいただきたいと思いますし、今こういうような日本生活大国をつくる上でどういうところに重点的に配分を考えたらよろしいのか、その点ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  34. 一河秀洋

    公述人(一河秀洋君) 大分いろいろ御質問いただきました。  まず第一は、金利政策の影響あるいは効果、限界ありと考えるかということでございます。  私は、現在の段階で〇・五%とかあるいは〇・七五%とか言われておりますけれども、金利引き下げることのプラスの効果はそれほどなくて、マイナス効果が非常に大きいと考えております。プラスの効果と申しますのは、やはり金利引き下げによって証券会社でありますとか不動産業界でありますとかあるいは銀行でありますとか、こういうところは非常に大きな恩恵を受けるかと存じますが、一般国民にとっては、金利が下がることによって土地の値段が下がるのが抑えられてまいりますし、あるいは金利が低くなってまいりますと円安が進行いたします。円安が進行いたしますと、多少のタイムラグを置きまして国内の物価上昇が起こってまいります。さまざまの理由で、低金利政策はメリットよりもデメリットの方が大きい。したがって、金融政策以外の政策で積極的な景気刺激政策を行うべきというふうに考えております。  第二に、所得減税でございますが、所得減税につきましては短期的な側面と長期的な側面と二つの面があると思っております。  我が国の租税構造は、国税にいたしましてもあるいは地方税にいたしましても所得課税中心の税構造でありまして、国税の場合でありますと所得課税のみで、所得税、法人税で税収のほぼ七割。表面的に考えれば、所得が多いところに課税をするのはいかにも公平のようでございますけれども、サラリーマンの世界に限ってみますと、所得が多い人は中高年齢層で生活費のかかる階層、いわば豊かな階層というのはむしろ所得水準の低い若年層という傾向もあろうかと思います。その意味所得税の負担構造の全体としての見直しが求められる。といいましても、増税をして見直すというと実現できませんから、所得税の減税の中で所得税の負担構造の見直しを図ることが長期的には必要である。短期的には、インセンティブをつけていくためにはやはり時間を限った所得減税を行う。その財源といたしましては、湾岸支援対策のための資金調達で行ったような財源調達も一つの方法だと考えてよかろうと思います。  それから第三に、消費税でございますが、昨年消費税の手直しか行われまして、殊に簡易課税制度についてはかなりの進歩があったと考えます。ただ、国際的に比較をしてみますと、これから先経済の国際化が進行する中で、我が国だけが非常に特異な形の消費課税を実施しているということはいろいろ問題が出てくるという点があろうかと思います。  例えば、ヨーロッパ共同体はその統合に際しまして、従来それぞれの国の中でインボイス方式を行い、国外に輸出をする場合にはゼロ税率を適用しておりましたが、EC統合後においては国境での税関検査が廃止されるのに伴いまして輸出が確認できない。そこで、EC共同体全体を通じて統一的なインボイス方式を導入いたしまして、ドイツで払われた消費税がフランスで払い戻しを受ける、こういうケースが出てくるような改正が行われる予定でございます。国際化に伴ってほかの国の税制とすり合わせのきくような税制にしていくということも必要ではないかと思っております。
  35. 岡野行秀

    公述人岡野行秀君) 御指摘ありましたように、公共投資関係の予算配分については、数字を見ますと極めて硬直的であることは事実であります。この構成比率をどういうふうに考え、めり張りあるいはプライオリティーをどう置くかということにつきましては実は大変難しい問題もございますけれども、私はもっと柔軟に考えてしかるべきであろうというふうに基本的には思います。  それから、ただこの場合にも政府の支出でありますから、一方ではその費用負担をどうするかという問題と切って離すことができないわけでありまして、社会資本の性格によってはやはり受益者負担を導入して、それとあわせて政府の支出を使うという形にすれば、これはまたそこで政府が支出すべき額と同時にリンクされた格好になると思います。例えば治山治水のようなものにつきましては、これは受益者負担というものは大変難しいものであります。道路になりますと、高速道路のようなものであれば有料制をとることもできますし、一般の街路であればガソリン税のようないわば代替するような税でそれを扱うこともできます。  そういう意味では、政府が供給する社会資本につきましても、それぞれの社会資本の性格について適当な費用負担のあり方、私はできるだけ受益者負担で目的税化するのが本当は望ましいと思いますし、そうでないとただ乗りをする国民も出てくるわけで、受益者負担でそれを目的税ということになれば、自分たちが負担をすればそういうサービスあるいは社会資本整備される、そういうリンクをつけるべきであろうと思います。そうしますと、つくる方の側でもそういうリンクでつくらなければならないわけですから、支払ってくれる国民に対してそれにふさわしい社会資本整備するというインセンティブにもなるかと思います。  ただし、このように目的税化することについては財政当局は大変お嫌いでありまして、なかなかうまくいかないとは思います。しかし、その受益者負担の額も、先ほど申しましたように、治山治水等はゼロ、より個人的な色彩を持つものについてあるいは消費をする消費の量が個人間で違うようなものにについては受益者負担を導入する。そういう形で、予算規模自体についても受益者負担による費用負担を含めてもう少し額を大きくすることができれば、それだけ社会資本整備が余計進むように考えます。  それから、先ほど申し上げましたように、ある種の社会資本、例えば下水道のような場合には、下水道の投資を未来永劫たくさんやる必要はないわけでありまして、これがストックの特徴であります。ある時期にたくさんやって相当完備しますと、その後は減らすことができるという性格のものでありますから、したがってプライオリティーの置き方としては、一年ごとの額よりはむしろある期間を見てどのぐらいなされるか、どのくらい割り当てられるかということで見ないと、本当のプライオリティーを考えた投資配分というものができないというふうに思います。  以上でございます。
  36. 高崎裕子

    高崎裕子君 日本共産党の高崎です。  一河公述人にお伺いしたいと思います。  私は、予算編成方向として、八〇年代以降続いてきた臨調行革による福祉、教育の切り捨て、あるいは民活の名による大企業の利益第一主義の放任、そして軍事費を優先して進めてきた政策を根本的に改めて、政治の軌道を国民生活優先、大企業の民主的な規制、思い切った軍縮の方向に転換させる必要があると考えているわけです。  私どもは、昨年来、全国の十四の大学の実態調査を行ってまいりました。この中で、臨調行革十年の結果、日本の高等教育とりわけ大学が危機的な事態に陥っているという状況をつぶさに見てまいりました。そこでは、私たちは貧しいけれども頑張っています、しかしこのまま放置すれば日本の学術研究と文化は重大な危機を迎えざるを得ない、それは我が国の民主主義的発展にとっての危機でもあり日本経済発展の土台を失うことにもならざるを得ないのだということが異口同音に切実に出されました。  この点で、有馬東大総長あるいは石川慶応義塾塾長、近藤日本学術会議会長らは、このような事態を招来した制度的要因は昭和五十七年以降画一的に適用されてきた厳しいマイナスシーリングにあると、こう端的に述べられています。これは、教育だけではなくて福祉などを切り捨てるときのシーリング枠、これが国民各層に耐えがたい負担と犠牲を与えているわけで、私どもはこうした予算編成方向を根本から改める時期に来ているのではないかというふうに考えているわけですけれども、この点で一河公述人のお考えをお伺いしたいと思います。
  37. 一河秀洋

    公述人(一河秀洋君) 非常に本質的なところをつかれまして、どういうふうにお答えをしていいか迷うのでございます。  確かに、行政改革がいろいろな面で圧迫を加えているということは確かだろうと思います。ただ、私は幸いにして私学におりまして、直接に大学の危機をそれによって感じるというようなことは特にございません。  そこで、これは別にして、第二の大企業に対する規制強化。むしろ日本経済の活力というのは余り規制を強化しなかったところにあるので、規制が行われているところほどいろいろ問題を持っていると思っております。例えば日米構造協議で内外価格差が問題になりましたが、あの内外価格差が基本的に存在をしているのは公共的な規制の行われている分野でございまして、規制が行われていないところではほとんど実体的な内外格差はないと言ってよかろうかと思っております。ですから、基本的には私は規制をすることには余り御同意しがたいのでございます。  ただ、また状況変化に伴って防衛を見直し、削減をする、基本的には全くそのとおりだろうと、先生おっしゃるとおりだろうと思います。  そして最後に、いろいろと今問題があるのはマイナスシーリングによるいわば論理のない財政赤字削減が無理やり行われたことがひずみを生じさせているんだとおっしゃいましたが、この点も全くそう思っております。やはりよほど行き詰まったところへ行かないことには論理的な財政再建というものは出てこないだろうという感じがいたしております。
  38. 高崎裕子

    高崎裕子君 どうもありがとうございました。
  39. 高井和伸

    ○高井和伸君 連合参議院の高井和伸でございます。  まず、一河先生にお尋ねいたしますけれども、日本財政あるいは景気というものが平成年度予算で三・五%という数字でセットされました。日本経済は、ある意味では前年比プラスでいかないともたない経済だと言われている。この状況をどのようにお考えなのか。  それからもう一点は、バブルがはじけたことに対する責任を金融機関は持ってもらわなければいけないのに、そのツケ回しか市民レベルにおりてくると、こうおっしゃいます。今までの景気のよさは、ある意味ではバブル効果が太いにあった。それが金利政策によって今冷えてきた。金利政策が今大変中心的な課題になっている。こういった中で、このバブルをうまくコントロールする上でのよき財政運営あるいは税制というものはどうあるべきか。現実的にこれまでの経済の流れの中のバブルをどう終えんさせていったらいいか。  その二点についてお尋ねしたいと思います。
  40. 一河秀洋

    公述人(一河秀洋君) 一つは、経済が拡大を続けなければ倒れてしまう。言うならば、歩いているから倒れないんだと、こういうことでございます。  確かに、四年度政府見通し三・五%というのは多少異常な感じもいたします。例年、非常にたくさんの民間の金融機関景気見通しについて正月の年中行事として発表いたしますが、政府の出す見通しというのはおくれて出てくるせいもあるかもしれませんけれども、大体中間的な数字になってくるのが従来普通だったと思うのでございます。これが、四年度について見ますと、民間の研究所のシンクタンクの経済予測は二・七から三・三ぐらいの幅のところに大体八割方落ちついてくる。そしてまた、昨年出た見通し一つの特徴は、後から見通しを出したところほど見通しが低目に出てきている。ところが、政府は後から出したけれども、非常に高い見通しを出した。むしろ何か見通しを高目にすることによって歳出入のバランスのつじつま合わせを行った、こういう印象をむしろぬぐえないのでございます。  こういう拡大を続けなければ倒れてしまうということでございますが、拡大を続けることの必要性というのは幾つかの側面があろうかと思います。一つは、拡大の続いている経済というのは設備投資の対GNP比率等の高い経済でありまして、生産能力の増加が著しい。この生産能力の増加に見合った総需要があり、これによって経済の拡大が実現をしていく。そのプロセスの中で総需要だけを抑えたら、やはり操業度の低下、失業、倒産の問題が避けがたいのであって、経済の潜在的な成長力を十分に評価した上で拡大を考えるということが重要な態度だと言わなければならないだろうと思います。  ただ、バブルによる拡大というのはこれは別でございまして、バブルの拡大、結局は低金利、税制上の優遇、あるいは土地神話等々いろいろな実態あるいは幻想的な要因によって生じたものがバブルでございますから、この条件の一つ一つが崩れてしまえばバブルが崩れるのは当たり前である。ただ問題は、そのバブルを力いっぱいつぶしてしまうか、そっと押しつぶすか。しかし、そっと押しつぶしたのではバブルの芽はやっぱり残るのでございまして、バブルをつぶすためには私自身はある程度の犠牲は覚悟をしなくちゃいけないんじゃないだろうかと、これは全くの個人的な考えでございます。
  41. 高井和伸

    ○高井和伸君 岡野先生にお尋ねしますが、生活大国という場面において私が非常に実感しているのは、お話の中身はみんな同意できることばかりでございますけれども、端的に生活感覚から言いますと、子供の数が少なくなってしまって、一粒一粒の子供を大きく育てよう、そしてしかも高度の教育を与えようということになりまして、必然的に子供の数が少なくなってきた。生活大国といえども、個人の娯楽はふえるかもしれないけれども、ある意味では社会の活性のなくなってしまった生活大国になる方向に今突き進んでいる。もう少しふくよかな、子供の数が多い、人間の心を豊かにする。個性の尊重もいいでしょうが、人間と人間の触れ合い的な側面が欠落していく方向に今あるように私は考えております。先生のお考えはいかがでございましょうか。
  42. 岡野行秀

    公述人岡野行秀君) その点についても私、全く賛意を表したいと思います。  子供の数が大変少なくなりました。私自身は七人兄弟であります、産めよふやせよの時代だったからかもしれませんが。でも、私は二人しか持っておりません。最近、いじめとかなんとかこういう問題が起きているのは、実は根本的には家庭で子供の数が少ないということによると私は思っております。私も子供のころしょっちゅう弟やなんかとけんかばかりしてしまったけれども、家族の中でけんかをすることでけんかのルールを学んでいくということができるわけであります。したがって、いろいろ子供の数が多いと一人当たりの小遣いが小さくなるというような不満もありますけれども、それにまさる喜びがあるわけであります。  子供の数が今後どうなるかということは、これは人口問題にはなるわけですけれども、私は多少楽観しておりまして、多分現在が一番低いんではないか。私の先生であったミルトン・フリードマンが仮説を言いました。世界大不況時代に少年、青年時代を経験した年代は子供の数が少ないそうであります。それは、大不況のときに大変生活苦にあえいだ経験があるので子供の数が少なかった。経済の発展段階で、まず最初は子供の数を多くする。これは労働力としての子供であります。そのうちにだんだん所得が上がってきますと、子供一人一人にある程度お金をかけてもう少しいい生活もしたい、それが子供の数を減らす。しかし、そのうちに今度はさらに豊かになりますと、ペットを飼っても楽しいけれども、やっぱりペットじゃおもしろくない。人間を育てるということ自体に大変おもしろいといいますか、楽しみを感じる。私はそういう時代が日本でも来るのではないか。したがって、子供の数が現在のような水準、出生率であるのは当面であって、しばらくするとまたもう少しふえるのではないか、そのように予想しておりまして、そう期待しております。
  43. 高井和伸

    ○高井和伸君 どうもありがとうございました。
  44. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表しまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  午後一時まで公聴会を休憩いたします。    午後零時六分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  45. 中村太郎

    委員長中村太郎君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  平成年度一般会計予算平成年度特別会計予算及び平成年度政府関係機関予算につきまして、一休憩前に引き続き、四名の公述人方々から項目別に御意見を伺います。  まず初めに、二名の公述人にお願いいたします。  この際、公述人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  お二方には、御多忙の中を本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日は、平成年度予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後で委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず環境につきまして猪口公述人からお願いをいたします。猪口公述人
  46. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。  きょうはこのような責任ある場で意見を申し上げる機会に恵まれまして、大変光栄に存じます。  まず初めに申し上げなげればなりませんのは、私の専門は国際政治学でありまして、環境問題とか環境学というものの専門家ではないということであります。しかしながら、今日、環境問題は広く国際的に重要な課題として取り組む必要があるというふうに言われるようになりました。国際政治の中でも極めて重要な分野となりつつありますので、きょうの私の話は、環境問題に触れつつ、転換期の世界の中における日本の役割というところで意見を述べさせていただきたいと思います。  まず最初に申し上げたいことは、国際社会は今新しい世界秩序のあり方といいますか、冷戦終えん後の世界秩序のあり方というものを模索しているところであるということであります。冷戦は米ソ両超大国といいますか、その国々を直接戦火にさらすことはなく終わりました。しかしながら、この長く非常に不安に満ちた政治対立というものは、両国においてはかり知れないコストをもたらしたというふうに考えることができると思います。米ソいずれも長年の軍拡競争あるいは局地戦争介入の経済負担からかなり疲弊し、とりわけ旧ソ連邦における国民経済の弱体化ということは周知のとおりであると思います。他方でアメリカの方も、長年にわたりますパックス・アメリカーナ、つまりアメリカ主導の国際秩序の負担からかなり経済的にも疲れてきているということが言えると思います。アメリカが単独で万能な世界の世話役であり得るということは難しい局面に来たというふうに言えるのではないかと思います。  そこで今、結局世界はそのようなパックス・アメリカーナの構造から主要国が共同で国際秩序の運営に責任を持って当たるという、そういう新しい時代に移り変わりつつあると言えると思います。つまり、一強国が単独で世界秩序の供給者であるという時代ではなく、むしろ主要国が、責任ある複数国がといいますか、その国々が共同作業を行っていくという、そういう時代であります。専門的にはよくヘゲモニックなシステムからコンソーシアム型のシステムに転換しつつあるとも言われますし、このような方向性をバックス・アメリカーナではなく、むしろ新しい時代はパックス・コンソルティス、コンソーシアム型の共同管理体制というふうに呼ぶこともございます。  そのような中にあって、日本はやはり責任国あるいは主要国の一国としてさまざまな問題領域におきます共国運営体制というところに参画していく責任があろうというふうに考えます。それが最近の日本流の言い方をすれば国際貢献を果たすということになるかと思いますけれども、ここで認識しなければなりませんのは、単に日本経済力豊かになったから国際貢献を行うということではなく、今御説明申し上げましたような世界の側における構造変容がありまして、アメリカが単独で世界の世話役としての役割を果たし切ることはなかなか今後は難しいであろう、したがって共同で複数の責任国家が責任をとる形で、積極的に共同作業で世界のさまざまな公共財、国際公共財を提供していく必要があろうということであります。  したがって、日本の国際貢献へのコミットメントというものは日本側の理由だけによるものではないので、自分の方の経済状態の浮き沈みにかかわらず、かなり長期的かつ構造的なものである必要があるということであります。  では、どういう問題領域においてそのような責任を日本が果たすのか、日本はどういう問題領域のコンソーシアムの一翼を担うべきか、つまりどういう秩序の世話役となるべきかというようなことについては、当然ながら日本がたけている分野、強い分野においてこそその秩序の世話役となることができるでありましょうということが言えると思います。  言うまでもなく、日本の国力の源泉は経済、技術力でありますから、今後日本が積極的な役割を果たす分野としては、例えば安定した通貨体制であるとか開かれた貿易体制であるとか、あるいは債務救済ないし債務管理の体制であるとか、そういう分野が挙げられますし、あるいは途上国援助の分野というようなところにおいても日本が積極的な役割を果たすべきであろうと思います。  このように既に重要性が十分に認められている分野に加えて、地球的規模の環境問題というような新たに問題が認識されているような分野においても日本が積極的に貢献して責任国家になっていくべきであるというふうに考えます。  地球的規模の環境問題は、御存じのとおり、オゾン層の破壊、熱帯雨林の減少あるいは砂漠化の問題、温室効果の問題、さまざまな問題を含むわけです。このような問題に対しては長期的かつ持続的な国際協力が必要であるというふうに今日では考えられるようになりました。最近ではこういう問題について認識と危機感が非常に高まってきている。このような問題は最近起こった問題ではなく、かなり昔からあった問題であると思いますけれども、その危機感は最近国際的に急速に高まりつつありまして、国際的な管理あるいは調査の枠組みづくりということに各国が非常に熱心になっておりますので、我が国もぜひ積極的にそのような努力に参画していきたいというふうに思います。  日本もことしリオデジャネイロで開催されます環境と開発に関する国連会議、いわゆる地球サミットでありますとか、そういう方向に向けて非常に精力的に準備を重ねているようでありますし、各国との調整や協議をかなり積み上げてきているようであります。日本の国際的対応といいますと最近多方面でおくれが指摘されていますけれども、しかし環境面での国際協力ということについてはかなり早めの積極的な対応が心がけられているというふうに考えます。しかし、日本だけでなくて北米諸国あるいは欧米諸国、それから一部の途上国もかなり熱心にこの問題に対応しておりますので、日本のコミットメントないしリーダーシップが非常に世界にとって意味あるものになるためには一層の積極性が必要であると思います。予算審議の過程におきましても、十分にその点に配慮していただくことが重要であろうというふうに思います。  国際的な環境協力という分野、これは日本が力を入れるのに非常に適切な分野ではないかというふうに私考えます。それは以下のような理由によるものであります。  まず第一に、元来日本には自然と調和して生きるという生活思想や美意識があったというふうに思います。ともすれば、欧米では自然を支配するあるいは克服するという考え方が非常に強く出ることが多いようでありますが、日本はその自然を支配するというよりもむしろ人が自然に合わせて生きる、そういう考え方になじんできたと思います。ですから、自然を愛し大切にするという文化は私たちの文化の中に内在的にあるものでありまして、決してなじみのないことではない。ただ、戦後復興や高度成長それから経済大国への道の中で、その優先順位が揺らいだときもあったと思います。ですから、ここで改めて私たちの文化の中に内在的にある環境への配慮、環境保全型の思想というものに気がつくべきである。したがって、これは極めて日本が積極的な役割を果たす分野としてふさわしいものであるという認識が必要ではないでしょうか。  第二に、日本がなぜ国際的な環境協力に積極的であるべきかということの理由として、日本は国内において公害問題のつらい体験をしてまいりました。その反省から、ぜひ環境問題については国境を越えて積極的でありたいというふうに思います。とりわけ途上国などに同様の公害問題の悲劇が繰り返されないように目を光らせていくということは、当然ながら先に経済成長を遂げた国の任務であると考えます。  それから第三に、当然言うまでもなく、環境問題自体が近年地球的規模悪化していますので、それは科学的な資料によってもかなり裏づけることができるようになりましたので、主要国の一国としてこの問題に積極的に対処するのは当然の責務ということであります。  それから第四に、環境問題というのは持続的成長と両立するような形で答えを出さなければならないと思います。そのためには、例えば生活態度を改めたり、ごみを出さないように節約したりとかという日常的な努力も必要ですけれども、やはり非常に大規模な省エネルギー技術の開発とかあるいは有害物質の代替物質を開発するとかといった技術による突破口を探し出すことも必要であります。そう考えますと、先ほど申し上げましたように、日本は技術立国の国でありますので、そういう生産技術に強い日本こそこの分野で積極的な貢献ができるのではないか、そういう貢献ができるような取り組みが必要ではないかというふうに考えます。  以上の理由から、ぜひ日本はこの分野で積極的な国際的なリーダーシップを発揮するべきであるというふうに考えますが、ではいかに具体的に環境問題に対応していくかという点について若干触れさせていただきます。  まず第一に申し上げるべきことは、みずからが行っていない善について人に説くことはできないというふうに思います。日本社会みずからが公害のない、省エネルギー型の自然に優しい人に優しい社会へと成長していくこと、これがまず第一に重要であると思います。みずからが環境先進国の模範となるような努力を積まなければなりません。国際協力というと、どこか日常からかけ離れたような感じがする場合も多いわけですけれども、しかしこの場合は、みずからの生活の現場において実現して初めて地球的規模の環境を救うことができるということであると思います。  それから第二に、先ほど申し上げましたように、日本は環境保全型の技術を提供する立場にあると思いますが、そういう技術については早い時期に他の国々に技術移転を行う必要があろうと思います。とりわけそのような技術をみずからは開発できない国々、あるいはその調達をファイナンスできない国々、そういう国々への技術移転を積極的に行うこと、これが日本の大きな国際貢献になろうと思います。  環境保全型の技術というのは、今後は一種の国際公共財、公共財というのは、御存じのとおり、だれかがコストを負担することによってその他の人々はコストなく財を享受できるという、そういう性格のものでありますけれども、国際的な公共財として位置づけることができるかもしれません。とりわけ技術に強い日本としては、環境保全型の技術を早く世界に移転してあげる、そしてみずからも積極的にそのような技術を開発していくということを目指さなければならず、十分にそういう点について配慮していただきたいと思います。  第三に、このような具体的な技術と並んで重要なのは、非常に地味ではありますけれども、やはり科学的な調査、観測あるいは研究の蓄積であると思います。  地球的規模の環境問題は非常に複雑でありますので、やはり非常に地道な科学的な観測や調査なくして的確に対応することはできないと思います。例えば、日本は海洋国でありますから海洋観測に力を入れるのは極めて当然でありますし、海洋は地球全体の七割ぐらいの部分を占めますので、その部分におきます環境の保全ということは地球全体の環境を良好なものにしていくために不可欠であると考えます。また、例えば宇宙からの観測というようなことについても、日本の宇宙開発技術の向上を図る目的とあわせてもこれは重要ではないかと思いますし、宇宙からの観測は全地球を短期間でカバーでき、かつ持続的長期的にカバーできる、そういう観測ができる方法であろうというふうに考えます。そのような科学的な調査研究についてもぜひ積極的に今後は体制づくりに取り組んでいただきたいと思いますし、そのような知見の集積はこれもまた国際公共財として世界に発表していくべきであろうというふうに思います。  日本は基礎科学の分野において弱いというふうに言われてきましたけれども、このような環境問題に対応するというような観点からも、基礎的な研究体制を拡充していくということが適切ではないかというふうに考えます。  それから第四に、途上国に援助を日本はかなり大きな規模で行う国になりましたけれども、そのような際に環境に対する配慮ということを十分行うということではないかと思います。環境保全と両立できるような開発のモデルを途上国とともに模索していく。その際に、日本の関心が環境保全にあるということをためらうことなくしっかりと提示していくということが重要ではないかと思います。それは健全な意味でのリーダーシップの発揮であるというふうに思います。  環境とあわせて、例えば援助においては人道、人権というようなところも重要でありまして、環境、人権に国境はない、そういうことについて発言することをためらうべきではないというふうに考えます。  それから第五番目に、冷戦後の世界においては国連の役割というものがとりわけ重要になるかと思いますので、環境問題の取り組みというときも国連の枠組みということを積極的に活用していただきたいというふうに思います。地球的規模の環境問題への対応というようなテーマは、一国でも多くの国が賛同してくれなければ実効性がないということであると思います。どういう政策を打とうと実効性がないということになりかねませんので、国連のように普遍的なメンバーシップを持つ国際機関を活用するというのが重要かと思います。  それから最後に、このような問題についてNGOあるいは市民団体の参加ということも必要ですし、また従来日本の意思決定過程にはなかなか女性の参画ということが進みにくい構造があったように思いますけれども、環境保全ということについてはぜひ女性の参画ということについてもとりわけ配慮していただきたいというふうに思います。  以上のような理由により、また以上のような方法でぜひ環境における国際貢献ということに積極的に取り組んでいただきたいと思います。  これからは国際貢献の時代というふうにも考えられますが、ここで最後に申し上げたいのは、今後日本が積極的に国際貢献を行っていくにしても、本当に世界に優しい日本というのは実は日本人に優しい日本からしか生まれ得ないのではないかというふうに思います。つまり、今後国際貢献に非常に積極的になっていくということを考えますと、当然ながら国内におけるいろいろな負担がふえることになります。また、市民的な合意、賛同が必要であるということにもなります。  その際に、日本の市民が自分の生活を顧みて、なかなか生活の方は楽にならず、豊かな国と言われても生活の現場ではそれが実感できないというようなことを思うようになれば、いっかどこかで国際的な貢献よりもまず自分の方が重要じゃないかというような意見が出てくる可能性も十分にあります。また、みずからが救われていないときになかなかほかの人を救うことは難しい。自分の国が救われていないときにほかの国を救うことはなかなかできない。ましてや世界を救うことはできない。  ですから、健全な国際貢献の時代というのは、やはり日本の市民がしっかりと救われている時代でなければならないというふうに思います。そう思いますと、先ほど申し上げましたように、世界に優しい国をつくるためにはやはり日本人に優しい日本をつくっていただきたい。  私ごとで恐縮ですが、私、つい数カ月前に双子の女の子に恵まれまして育児と主婦業の真っただ中にもある立場でございますが、改めて生活者の立場という観点から日本を考えますと、日本の今の状況というのは、赤ちゃんを抱えてしっかりと頑張っていきたい、そういう女性たちに必ずしも優しくはないし、いろいろな意味での社会的なインフラストラクチャーは不十分でありますし、育児を支援するようなサポートシステムというものも不十分であります。  そういうところからもし日本の女性が疲れ果てていくということであれば、それは決して明るい二十一世紀の日本につながらないし、今まで私は世界各国いろいろなところで勉強してまいりましたけれども、基本的に女性がほほ笑めない社会というのにあすはないという気がいたします。  ですから、ぜひ国際的な貢献を行える日本を築く大前提として、日本の市民が希望を持って豊かで実りある生活を自分の生活の現場において実現でき、そして日本の国内でも十分に環境が保全され、社会的なさまざまなインフラストラクチャーが拡充される、そういう時代を迎えたいと思います。  今回の予算審議におきましては、そのように国際的な日本の役割というのは日本の国内をよりよいものにしていくということと不可分であるという認識に立って考えていただきたいと思いますし、そのように国内が充実していくことによって初めて世界のために何か役立とうという、そういう気力も余裕も生まれてくるものであると思います。  どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
  47. 中村太郎

    委員長中村太郎君) ありがとうございました。  次に、東京集中と地域開発につきまして滝井公述人にお願いをいたします。滝井公述人
  48. 滝井義高

    公述人(滝井義高君) ただいま御紹介いただきました田川市長の滝井義高でございます。  本日、参議院の予算委員会におきまして、平成年度一般会計予算並びに特別会計あるいは政府関連予算審議に当たって公述人としての栄を得させていただきましたことを心からお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。  方丈記に、古都既に荒れ果てたり、新都いまだ成らず、生きとし生ける人の心は浮雲の思いをいたせりというのがあるんですが、今我々地方自治体から見るとそういう感じがするわけでございます。  東京というのをごらんいただきますと、実に華麗でございます。まず、東京にどんなものが集まっておるだろうかというと、人も金も物も情報も文化も集まっております。最近は御存じのようにエビが集まるわけです。エビは金のうんと集まるところに集まります。かつてロンドン、ニューヨーク、そして今や東京でございます。  最近はさらにもう一つ東京に集まるものができました。それはカラスでございます。なぜカラスが東京に集まるだろうと調べてみましたら、我々は飽食の時代でございまして、ホテルその他でもう五千円も一万円もするビフテキをほとんど食わずに捨ててしまう。ホテルのボーイさんがそれを明け方になると全部ビニールの袋に入れてごみ捨ての方に持っていく。そうすると先にだれかが来てそれを失敬して食べるわけですが、そのビニールの袋を開いた後にカラスが来てそれを食べるわけです。したがって、代々木の森には何千羽というカラスがやってきております。私は九州でございますが、九州のカラスは来ていないようですが、この近郊の千葉県や埼玉県や神奈川県のカラスは東京に者やってきてそして悠々と生活をする、そういう姿が出てきているわけです。  そういうように物が東京に集まった結果、東京は一体どんな姿になっておるかというと、東京はごみの山になったわけです。今、猪口先生もお話しになりましたが、ごみの山になって処理の方法がない、一体これをどうするんだという問題がまだ未解決でございます。  そして同時に、水が不足をし始めた。電力は夏場でも御存じのようにうんと使うわけですから、ピークはむしろ夏場に来る。冬に来るんじゃなくて夏場に来るというような状態になりまして、そして交通が渋滞をします。まだ基本的な統制も行われない。交通が渋滞をする。通勤ラッシュのときには電車に押し込まれなければならぬ。こういう状態が出てきました。したがって、交通が渋滞をし遠方から通ってくるんですが、東京の中に住宅を求めようとしても住宅がない。そして地価が上がっておる。給料の一年分ところじゃない、十倍も二十倍もしないと土地が家が買えないという状態になってまいりました。  最近顕著にあらわれたのは、東京が非常に乾燥し始めました。東京が乾燥すると一番先に被害を受けるのは、隣にいらっしゃるんですけれども、女性の肌が荒れるわけです。だからクリームが余計に売れるわけです。こういうようになりました。それで、最近は東京の杉の木がどんどん枯れていくわけです。何で枯れるだろうと学者が調べてみたんです。それは酸性雨があるいは何かほかの大気汚染であろうかと思ったら、そうじゃない。東京湾を埋め立てて東京湾の方向にビルが林立をするから、東京湾から湿気のある空気が東京に入ってこなくなったわけです。したがって木が枯れました。木が枯れて緑がなくなると人間の心に砂漠ができます。砂漠ができると非行が始まってくるわけです。そういう姿に東京がなってしまったわけです。  もう少し東京の姿というのをごらんいただきますと、どういう形になっているかというと、金融とか文化とかあるいは高度な技術の開発、商品開発、そしてその販売の経路あるいはアフターサービス、マーケティング、こういうようないわば頭脳に属するところが全部東京に来ております。したがって、東京というのは頭脳でございます。頭脳である。それじゃ具体的に生産する手足はどこかというと、我々田舎に生産が展開をされているわけです。東京におけるそういうものは、付加価値が非常に高いものが東京に集まります。そして、付加価値が安い三Kに属するようなところが田舎に展開をされておる、こういうのが東京と田舎との関係になってまいりました。  そうしますと東京というのはどういう形になったかというと、どんどん東京は繁栄をするけれども、人間が非常に住みにくい町になりつつある。我々田舎というのはどういうようになってきておるかというと、主体性を持ちたい、自主性を持って地域の幸せをつくりたいと一生懸命に考えておるけれども、なかなかうまくいかない。苦悩のみがあって地方は多くの悩みを抱えておる、こういう状態です。  そこで、中曽根政権のときに、こういう状態ではいかぬと。初めは東京一極集中主義を強化するということであったんですが、それではいけないというので多極分散型の国土政策をとることにしていただいて法律をつくっていただきました。しかし、時既に遅し。佐渡へ佐渡へと草木がなびくように東京東京へと全部、人も金も物も情報もカラスもエビも東京になびくことになってしまったわけです。  こういう状態になった東京を一体どうするんだ、なぜこういう状態になったかをもう少し根本的に分析してみる必要があるんじゃないか。いろいろたくさん理由はあるんですけれども、大きな柱で言うと三つあると思っております。  一つは、日本の産業構造が急速に変わってまいったということです。特に高度成長以来変わってまいったということです。  どういうように変わってきたかというと、例えば私の方の九州で、ちょっと名前を挙げるのはぐあい悪いかと思いますけれども、まあ大きな会社ですから名前を挙げてもいいのかもしれませんが、産業構造がどういうように変わったかというと、九州で言えば一番よくわかるんですけれども、かつてトンの産業が発達しておりました。トンとは何か。鉄、石炭、造船、セメント、みんなトンでございます。このトンの産業と農業でもっておったわけです。ところが、御存じのようにだんだん高度成長になって、サービス産業、いわゆる情報化、国際化というような形がぐっと出てまいりました。サービス産業がどんどんふえてくるということになりますと、サービスとかあるいは情報とかというのは田舎におってはうまくいかないわけです。どうするか。  例えば、怒られるかもしれませんけれども、八幡製鉄というのは新日鉄のまさに支柱的な会社でございました。しかし、それが九州の果ての八幡におって東京から遠く離れておると世界の新日鉄たり得なくなる。なぜならば、情報、技術革新というのが入ってこない。どうしても情報が集まる東京に行かざるを得ない。こういう形で、君津の横の富津に頭脳は全部移ることになります。そうなりますと、名前を挙げるとまたぐあいが悪いんですけれども、釜石と同じような地方の製鉄に八幡製鉄は下がってしまうことになるわけです。  八幡製鉄というのはそういう状態ですけれども、これは技術革新をしなきゃいかぬから、シームレスパイプをつくるのには電算機を用いて高度の技術を用いてつくることになるから、それは製鉄は製鉄なりに技術は革新しております。それはどうしてかというと、プラントを韓国その他に送るから悪い鉄の製品は向こうから入ってくる、それをより高度のものにしないと負けてしまうから高度のものにしていく。これは賃金の格差があるからなかなかうまくいかぬところがあるんですが、そういう形になってきました。  石炭は、御存じのように、石油に負けてつぶされました。そうすると、韓国のセメントはトン当たり一万円、我々の内陸部でつくるセメントは一万二千円、二千円の格差があるから、内陸部のセメント会社は調整会社になって海岸のセメント会社がフルに運転をする、こういう形になってきた。したがって、だんだんそういうトンの産業は衰退してきました。そして、半導体とか自動車とかそういうものが都市にだんだん集まってくるという形、特に東京近郊、関東にそれが集中することになります。  私の方で企業誘致戦略を組んでおります。これはノウハウだからよそに言っちゃいけませんよと言われて組んでもらった。どういうようにノウハウを組んだかというと、我々は九州ですから、会社が本社を東京に持っておって、全国的シェアの製品をつくる工場がたった一つだけ東京の南部にある、こういう会社に目をつけなさい、それを全部訪問してその会社に、もし大震災が起こったらあなたのシェアはなくなってしまうよ、だからあなたはどうぞ九州にいらっしゃい、我々は土地を安く提供しますよ、こういう誘致の方針をとりなさい、これは一つのノウハウとして日本の一流のコンサルタントに教えてもらったんですが、そういうことでやってみました。十五社ぐらいがその網にひっかかったんですが、最終的にはなかなかうまく話がつきませんでしたけれども、トンがだんだんなくなればそういう形になってくることになるわけです。  ところが、最近はちょっと情勢が違ってきた。それはどうしてかというと、関東と名古屋あたりでは、自動車産業でごらんいただきましても、もう労働力と地価が高くなって工場を拡張する余地がなくなってしまった。だから、それならば東北とか北海道とか九州の労働力があって地価の安いところに行こうかということで、トン以外の産業が徐々に地方に来始めておるというのが現状でございます。したがって、そういう日本の産業構造というのががらっと変わってきて、そしてそれが東京一極集中主義、あるいは関東圏、東京圏というものを形成することになったというのが一つでございます。  それは国内的な事情ですが、もう一つは国際的な事情でございます。日本は貿易大国でございますが、今お話がありましたけれども、人権小国でございます。貿易がどんどん拡大していきますと債権国になってしまうわけです。日本は世界第一の債権国になりました。債権国になると、当然借金をしている国々は東京に来て商売をする、東京企業を持ってくる、あるいは金融で東京と交際しなきゃならぬ、こういう形になるので金融とか企業の本社が全部東京東京へと集まってくることになったわけです。すなわち、日本の債権国としての力というのが東京に物を集める、いわゆる吸引する形になってきました。これが大変重要な第二の点です。  第三の点は何かというと、日本は昭和十六年に戦時体制に入りました。戦時体制に入って以来、日本の機構というものは統制経済になって官僚機構が非常に強くなりました。いわば、ほとんど重要な政策の立案その他というのは、国会ももちろん審議をいたしたわけですけれども、もとをつくる体制というのは官僚機構が持ってきた。それが非常に根をおろしました。むしろ外国から言わせれば、日本の官僚機構というのは大したものだ、世界一だ、優秀な人材がおる、こう言われるぐらいになった。  この官僚機構というのがどういう形が出てきたかというと、御存じのように、製品の画一化を図ったわけです。教育の画一化を図ったわけです。そして、東京は頭脳で田舎は生産をするという形、そして新しい近代的な文化の創造というのは東京で全部やる、こういう形になってきました。  こういうように、日本における産業構造の変化、すなわち長大重厚型から短小軽薄型に移行する過程の中でどうしても大都市に物が集まる、特に東京に集まる。かつては東京、名古屋、大阪と三つの圏域に集まっておりました。しかし、最近は名古屋、大阪というのはずっと地盤沈下して、はるかに東京の方がすぐれてきたわけです。そういうように、国際的な理由国内的な理由日本の官僚行政機構というもの、こういうものがきちっと東京体制を整えているわけです。  それならば、一体どのようにごれに対応していくかということが問題でございます。これは対応の仕方はいろいろあるんですけれども、まず国会の先生方が今おやりいただいておるのは東京自身がどうみずからを変えていくかという問題、いわゆる遷都論でございます。東京をどっかに移転する。展都、分都、一遷都といろいろありましたが、一番代表的なのは、もう東京をどっかに移すという、これは国土庁長官の首都移転問題懇談会が初めて極めて具体的に出していただいたわけです。  それは、東京から六十キロ以遠に首都を移す、しかもそれは九千町歩である、そして人口六十万、それに要する予算は十四兆である、こういうように打ち出しました。これは何を意味するかというと、結局行政と政治をよそに移そう、そして同時に商業機能は東京に残しておく、経済機能は東京に残しておく、こういう政治と行政と経済というのを分離するのが恐らくその底流にあるんじゃないかなと推定をしたわけです。  今まで三十年代から首都移転論というのは随分いろいろ起こりましたけれども、うたかたのように消えてしまったわけです。しかし、今度のこの案というのは割合迫真力を持っている感じがします。竹下さんのときに、各省が一機関をよそに移すと。なるほど幾つか移ったんですけれども、これは移すといってもやっぱり東京圏の中で移ってしまって、東京圏を緩和することにはならなかったわけです。そういう意味では、今度の国土庁長官の私的諮問機関におけるこの案というのは、今までは夢のまた夢でしたが、比較的可能性のある案じゃないか。これは国会の諸先生方が特別委員会もおつくりになっているから、本腰にこれをおやりになっていただくかどうか。  これは、まず第一に国会を移しましょう、それから官庁を移しましょう、こうなっておる。それに大学を半分ぐらい、東大の二千人なら二千人の定員を千人にして、千人をどっかに移してもらえばなおいいんじゃないかと私は思っているんですけれども、そういう意味でこれはぜひひとつ国会で真剣に御検討いただきまして東京の内部から改革をしていく、そういうものが必要だと思います。  それから、今度は我々地方から言う分でございますが、まず地方から言う分はどういうことになるかというと、最近いろいろなものが書かれておりますが、一番大事なものは何かというと、今まで私たちがもう昭和の初めごろから地方に権限を渡してください、事務事業の再配分地方にやってください、あるいは臨調の土光会長はイワシを食べながら貧しい生活をして、おれは行政改革に生命をかけてやると言ったんですけれども、あの土光さんの臨調もほとんど実現しないままにきております。補助金は依然として十四兆ありますし、そしてそのほかの権限も全部中央に残ってわずかなものが我々に来る、こういう形ですから地方は自主性を持とうとしても悩み多き地方になってしまっている。  そこで、どういうのが今出てきておるか、どういうことを我々が志向するかというと、まず第一に道州制でございます。やはりこの際、東京一つ地方と見る。東京を中央と言うから役人が地方に行くとどさ回り、田舎に左遷された、こうなるわけです。東京地方、我々も地方東京と我々とを対等に物を見る習慣を一遍我々はつけてみる必要があると思うんです。  例えば道州制にすると、北海道は六百万の人口があります。六百万というとスイスに等しいわけです。しかも、北海道というのはアメリカに近いわけです。羽田から行くよりすっとアラスカにすぐに行けるわけです。そして、北方領土問題を解決するのにも、あそこが道州制である程度主体性を持つと案外早くいくかもしれないというようなこういう形でして、そこに札幌府なら札幌府、北海道なら北海道の府を置いて、そして学識経験者の何人かが行って討議をしてその方針を決めていく。もう県会は廃止して、できれば自治体と府が直接結びつくということになればなおいいかもしれぬ。中間のものがなければないほど民主主義は直通をしていくわけですから、いいかもしれません。そういうものが一つ出てきたわけです。  ところが、最近新聞を読んでいましたら、九州は独立してみませんかというような記事が出てき始めたわけです。独立しなさいという論が出た。九州は千三百三十万おるわけです。これは世界で人口でいったらどのぐらいになるでしょうか、五十五、六番ぐらいになると思います。そういう形になってきた。  どうして九州が独立したらいいという論が出るかというと、まず一つの問題として九州は一本の高速道路もできていないんです。博多から鹿児島に行くのも未完成でございます。人吉からえびのはまだ未完成。太陽は東から上っできます。東から上ってくるけれども、御存じのように、東の方は高速道路は未完成です。横断道路も未完成でございます。新幹線もありません。十年先ぐらいしかないんです。十年先にできるかどうかわからないわけです。そして、国際空港がまだ地域が決まらないんです。  こういう状態の中で、九州の産業構造はトンからリゾート、そして自動車産業のようなもの、いわゆるハイテクに変わってきつつある。あるいはシリコンアイランド、こういうように高度の半導体をつくる企業に変わってきた。産業構造がどんどん変わるのに昔ながらの過疎の姿で、鉄道もできなければ新幹線もできない、空港もできない。そして、一生懸命に研さんしておったリニアモーターカーはいつの間にか山梨県に持っていかれてしまって、九州は一体どうなるんだ、こういう形で九州の人たちは、これはなるほどな、独立してみたらおもしろいかもしれぬぞ、こういう論が一つあるわけです。  しかし、独立論というよりかもう少し東京対応するような力をどうやってつけるかという一つの提案としてあるのが、中国と四国と九州との三つが、毛利元就の三本柱じゃないけれども、手を握る必要がある。そして、関門の架橋がある、本四架橋がある。架橋がないのはあるいはトンネルがないのはどこかというと、伊予の国と豊後の国がない。この伊予と豊後をつなげばちょうど三つの島がきちっと一つのものになってくる。それにNIESを加える。韓国、台湾、香港、シンガポール、あるいはASEANを加えると、これならば東京に対抗できるであろう。  すなわち、東京地方、我々も地方、そういう形のものを考えないと今までのマンネリ的な考え方では地方の発展はない、地方には望みがない、夢とロマンがない、こういうことが既に学者の中にも言われ始めましたし、週刊誌や本やあるいは新聞の中にもそういうものが出始めたわけです。これはやはり政治というのは先手必勝ですから、できるだけ先を見て、そしてそれを推進していただくのが国会の仕事じゃないかなと思っているわけです。  さらにもう一つ具体的に申し上げたいんですけれども、それは何かというと過疎でございます。  御存じのように、三千三百の自治体の中で千百六十五だったと思いますが、過疎地があるわけです。これはもうどんどん過疎が最近また進み始めておるわけです。御存じのように、どんどん若者が出ていきます。若者が出ないようにしよう、企業を誘致しようというときはだめです。なぜだめかというと、過疎地には道路ができないんです。道路があればうまくいくわけです。この道路、アクセスがないところに半身不随が起こってしまう。今いろいろな人が言うんですけれども、これはもう後継ぎがないとかなんとかじゃない。この際、過疎地に道路を思い切って投資をやってつける。そして、農業と地域の分化をどうやるかということを考える必要があると、もう今九州の有識者でそういうことを言う人がたくさん出てきました。  今、過疎は多分二千三百億ぐらいの過疎債と、それから辺地積が七百二十億ぐらいあると思います。こういうものをもう少し有効に使って道路を、過疎地から熊本なら熊本に一時間で行ける、北海道の札幌に三十分で行ける、そういう形にできると過疎というのはぐっとよくなる。ところが今、青年が出ていく、子供がいない、そしておじいちゃんもおばあちゃんも山からおりなきゃならぬという時代になっている。日本大都市の近郊だけにミニ東京と同じような集中が起こって、周辺は全部過疎になりつつある。  九州に人口五万の都市が五十あります。そのうちの四割の二十二は人口が減りつつあるわけです。九州の中で人口が、六十年と六十五年の国勢では熊本県が○・八か九、福岡県が一・二、わずかしかふえていないです。こういう形の国土政策というものをそのままにしておったのでは日本の未来はないんじゃないか。頭でっかちになって足腰はみんな弱くなってしまう。やはり我々は頭を使い足腰を使うところに有機体としての人間が生きていくことができる、こう思うわけでございます。  ぜひひとつそういう点で大所高所から日本全体の国土政策をお考えいただきまして、田舎に住む人も心優しき幸せが持てる体制をつくっていただくことを祈念いたしまして、終わります。(拍手)
  49. 中村太郎

    委員長中村太郎君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  50. 石原健太郎

    石原健太郎君 両先生には、ただいまは大変参考になるお話、ありがとうございました。また、猪口先生には、かわいい赤ちゃん、おめでとうございました。  これからの日本の国づくりについてのお話もありました。優しい社会、優しい日本をつくらなくてはならない。また、世間でも最近、経済社会を循環型の社会にしなくてはとか、環境保護型社会にしなくては、またライフスタイルを変更する必要もあるというようなお話がありましたり、そのために環境基本法の制定という話もありまして、先般この委員会でも総理から前向きの御答弁もあったところであります。  今、先生お話しされたようなお考えに基づきまして環境基本法というものが考えられていくとすれば、どんなことが基本的に盛り込まれることが大切とお考えになっていらっしゃるか、お聞かせいただければと思います。
  51. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 法の整備というのは極めて重要な基本的なところでございますので、まず第一に、このような分野でほかの先進国がどのような内容で法律を進めているかということを十分に調査、勉強していただくということが基本だと思います。これからは制度の国際的な連動性といいますか、仕組みの国際的な協調性といいますか、そういうものが重要になると思いますので、ほかの先進国と必ずしも完全に同様のものになる必要はありませんが、参考にするということは必要であろうと思います。  法律の整備におきましては、私の意見の中で申し上げましたような点に十分に配慮をしていただきまして、環境保全のための基本的な考え方をうたい、それから技術による解決をどういうふうに模索するかというようなことについても積極的な考え方を盛り込んでいただく必要があろうと思います。  それから環境弱者というような概念が可能かどうかわかりませんけれども、とりわけ公害にさらされやすいところに居住している方々への特別な配慮とか、あるいは今過疎のお話が出ましたけれども、日本の産業構造のかなり大変な部分を支えているような地域への配慮とか、そういうことについても十分な注意を払う必要があろうと思います。  さらに、私は国際的なところが専門ですので、日本の法律の中でどこまでそのような国際協力におけることを規定するべきかということについてはいろいろ議論があろうかと思いますけれども、しかし先ほど申し上げましたような援助等について、少なくとも自分の国で行わないような生産の方法とかそういうことは外国でも行うべきではないとか、日本の国内で許されないような基準についてはたとえ外国の政府が甘い基準を設けていたとしても、技術供与国あるいは協力国としてはむしろ厳しい基準で少なくとも自分のワークプロジェクトについては臨むとか、そういう国内基準準拠ということをある程度義務づけるというのも一つ方向性であろうと思います。  法律でどこまで規定するべきか、それから具体的な施策の中でどういう申し合わせといいますか合意内容で行っていくかということを区別していくということも重要かと思います。国際的な部分はその後者の方法でカバーしていくということもかなりあるかと思いますが、何よりも国内的に、先ほども申し上げましたように、環境先進国として世界で胸を張れるような国家になるというところを目指したいと思いますので、国内での環境保全、それから生活のあり方、あるいは生産方法のあり方ということについて、やはり二十一世紀を見通したようなきちっとした基準をつくっていただく。  とりわけ、今まではどちらかというと生産中心といいますか、そういう社会の性格が強かったと思います。それも戦後復興から今日に至るまでのある歴史的な役割を十分そういう考え方は、パラダイムは果たしたと思いますが、ここにきて生産者ばかりでなく生活者にとっても過ごしやすい社会ということを考えますと、今後は生産者に対してどういうふうに環境保全型の生産方式ということを編み出してもらえるのか。そういうことを積極的に行うような生産者を奨励し、そういうことに無関心なところについてはいろいろと修正を促していくというような、そういう内容にぜひしていただきたいと思います。  家庭の現場での環境保全の努力というものも、先ほど申し上げましたように重要ですが、例えば東京圏のごみの問題にいたしましても、実際にはやはり企業の努力がなければ非常に大きな部分は解決できないと思います。ですから、もし法律で積極的にこの問題に前向きに取り組むのであれば、そういう努力に対しては報いるようなシステムということが必要ではないかと思います。  ただ、最後に一言つけ加えるならば、環境保全といいましても、例えば原始共産制のような社会に戻ることは答えではない、やはり先進社会としての生活水準それから生産水準というものとどう両立させるかということが重要ですので、今後そういう方向で技術による答えを出していくというところに力点を置いていただきたいと思います。  以上です。
  52. 石原健太郎

    石原健太郎君 環境問題に関しましては、世界各国のいろいろ利害が対立したりして、きのうもブッシュ大統領が二酸化炭素の排出基準枠は自分の国だけで考えたいというようなことも表明したようであります。一方、オランダとかスウェーデンなんかでは既に炭素税というんですか一そういうものを実行しているようであります。また、我が国といたしましては、今度のブラジルでの会議の結果を見てそれから決めていくべき問題かもしれませんけれども、みずから実行していくことが大切だということであります。  環境税というような考え方に対しまして、先生のお考えをお聞かせいただければと思います。
  53. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 最近、環境税でありますとかあるいは国際貢献税でありますとか、いろいろな名前のついた税金のアイデアが出ておりますが、私はまた財政の専門家でもないので恐縮なんですが、目的税的なたぐいのものはなかなか、長期的な問題への対応としてはちょっと難しい面があるかもしれないと思います。  つまり、人間社会には常に新しい問題が出てくる可能性がありまして、その都度その問題に対応するために何とか税というのをつくっていきますと、しばらくたちますとたくさんのたぐいの税金、そうでなくても複雑な日本の税システムの中で一層複雑になるという可能性があります。ただ、そのようなたぐいの税金はその時代の問題の重要性を万人に知らしめるというような意味合いはあるかと思いますが、そのようなことはもう少しほかの手段で積極的に行うということも考えられると思います。  長期的にいろいろな国際的協力をしていくと結果的には増税になるようなことがあるかもしれないと思いますが、もしその目的とか効果というものが十分に市民に納得されれば即反対というような声が必ずしも出てくるとは限らないと思います。もし日本社会で、例えば環境という言葉をつけなければ合意が得られないというようなことであれば、もう少しほかの手段によってその時代の問題について市民に知ってもらうという努力が不足しているというふうにも考えられると思います。  私は、環境税については特に強い意見はないんですけれども、一般的な考え方としては、そういう目的税的な方法というのは余りうまくいく例が先進国の場合はないのではないかと聞いておりますし、具体的な例としてうまくいっている例は余り多くは知りません。ですから、環境問題に対応するためにはやはり総予算の中できちっと優先順位を理解してもらってそれで対応するというのが本来のあり方ではないかと思います。特別な財源をそのためだけにさらに設けてというような方法よりも、やはり日本国全体の中の優先順位の中で、政治家の先生方にも、あるいは行政サイドにも、そして市民の皆さんにも理解してもらうということではないでしょうか。
  54. 石原健太郎

    石原健太郎君 持続可能な成長を維持していくためには、最終的にはもう世界じゅうの人一人一人が、企業の責任者も企業の末端で働く人も家庭の主婦もみんなが環境問題を正しく認識し理解することが大切なことだと考えます。まだまだ日本の国内とかあるいは南方の方の国とか、まあそういうところに限らず世界のいろいろな部分で熱帯林の伐採とか象牙の問題とかありましたけれども、また経済発展至上主義のような意見を述べる方も今でもおいでになるわけでありますが、環境問題の重要性をもっと訴えることが必要なのではないかなと思うんです。海外経済協力なんかでもそうした分野での活動のためにやってみるなんという方法もあるんじゃないかなという気もいたします。  それから、直接的に環境を守るために投資するというやり方も今既にあるようですけれども、日本のそうした面での活動について先生の御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
  55. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 日本を初め先進国は、もう既に自分たちがある程度経済成長を遂げてしまいましたので、そこで環境保全ということを強く言いますと、これから大規模な開発に乗り出そうとする途上国が必ずしもそういう考え方に賛成してくれないというときもあります。他方で、途上国の多くの国は実際に公害問題に病んでいますので、先進国が責任を持って地球的規模での環境問題に対応してくれるんだったらそれを支持しようという考え方も随分あります。  ですから、この問題については世界各国がまだはっきりした態度を固め切っていない。いい政策があれば、あるいは途上国に対するいい支援の仕方があれば途上国の側も喜んでそれを受け入れようというそういうことであると思いますね。ですから、何か非常に深い対立が既にできてしまっているとか、イデオロギー的に何か非常に固まってしまっているとか、考え方の対立があるとかということでは必ずしもなく、具体的に炭素税とかということが出てきますとまたそこでいろいろな対立も出てきますけれども、しかし基本的には余り大きな対立をいまだ、今の段階ては固定化してしまってはいない分野であると思いますので、このような時点、早い時期に途上国に対しても、例えば一九七〇年代の激しい南北対立というような形にならないような形で積極的な支援を行うということが必要だと思います。  日本としては、例えば海外経済協力基金、OECFなどを通じて積極的にいろいろと開発型の経済援助を行っていますね。その場合に環境ガイドラインというものをOECFは策定して公表して、それにのっとって環境に配慮した援助を行うということを既に表明しています。ですから、そういう方向性でもう第一歩が踏み出されていますので、さらにそれを強化するということでよいと思います。  ただ、環境に配慮すると一言で言いましても、その環境アセスメントをするマンパワーの確保とか、環境アセスメントというのは非常に地味な仕事ですから、かなり資金がかかる割にはそれで何か非常に大きな成果が見えるというわけでもなく、非常に細かい対応が必要なところでありますから、そういう面での予算の配慮ということも必要かもしれません。なかなか一気にある分野での行政的な拡充というのは日本はしにくいというふうに伺っていますけれども、今世界で一気に新しい問題に精力的に対応するという方向性が出ていますので、ぜひ日本も、とりわけ途上国への支援というときに、先ほど申し上げましたように、彼らに環境保全と両立するような開発のあり方ということを示すといいますか、むしろ途上国の国々と一緒にそれを模索していくという段階にあると思います。  ただ、今までは日本は、先ほど申し上げたように、人権の問題とかあるいは環境の問題ということについて積極的に発言するということを控える。それは、援助受け入れ国の側に配慮してちょっと控えるというような配慮が強かったと思いますが、環境あるいは人権問題に国境はなく、積極的に発言してもこの段階では構わないのではないか。そういうところに日本の関心が強くあるということを表明するだけで、途上国の側の政府もそれに十分にまた配慮してくれるというようなところもあります。そういう中からある納得のいく合意点を援助提供国、受け入れ国両方が探っていくと、そこに開発と両立可能な環境保全のあり方という答えも出てくるというふうに思います。
  56. 石原健太郎

    石原健太郎君 二十年前、ストックホルムで国連人間環境会議が開かれまして環境計画というのが採択されました。それからずっといろいろみんな心配したり議論はうんと多いように思うんですね。フロンに対する規制というのは実行に移されたわけでありますけれども、いまだに毎年六百万ヘクタールですか、砂漠化していくとか、熱帯雨林の残っているものが二%近くずつなくなっていく、そういう状況が二十年たっても続いているわけです。  今度のブラジルでの会議というのは、世界的な環境問題に対する合意をつくる非常に大切な会議だというふうに聞いておるんですけれども、先生は、比較的各国間にそういう意見の対立がないというか、ある程度理解し会えているというようなお話でしたけれども、今度のブラジルの会議にどういうことを期待されておられるか、見通し等についてお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  57. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 国連を中心にこの環境問題は国際的に取り組んできてしばらくの年月がたったわけですけれども、改めてリオデジャネイロでは、基本的な環境に対する世界各国のスタンスの合意ということを見る必要があると思います。  日本としては、環境に対するベーシックなフィロンフィーを表明するものとして、例えば地球環境のための憲章のようなものを提案したいというふうに考えていると思いますし、各国との合意の中でそういうある基本的な認識を宣言として書き上げるというような、その作業に成功すればよいなというふうに私は個人的には期待しております。  例えば、民主主義を推進するときにマグナカルタのようなそういうチャーターができた。具体的な方法論はまた後の世界でいろいろと模索されるとしても、ここ国際環境元年となるかどうかはちょっとわかりません、もっと昔にその元年を求めた方がいいのかもしれませんけれども、何か新しい課題に国際的に合意して取り組んでいくときに、そのベーシックとなる環境憲章のようなもの、ぜひそういうものに合意して、それをスタートラインとし、何か問題があったときにはそこに常に立ち戻って基本的な自分だちの認識というものを改めて考えるというそういうべーシックなところを固めるのが、まずこの会議の第一の目的ではないかと思います。  それから、具体的にオゾン層の破壊とか砂漠化とか熱帯雨林云々の問題が出てきていますので、個々の分野について具体的な取り決めをいろいろする必要があるんでしょうけれども、炭素税の行方がどうなるかというようなことについては、そういう具体的な課題が出てくるにつれ、各国の思惑も随分違うことになりますので難しいと思います。少なくとも、今いろいろ出ている、各国がその持ち分を持って、それを途上国の場合先進国に売るといいますか、枠を譲ってあげるというようなことを可能にするとかということ、必ずしもそういう制度に合意してしまうことがこの時期で適切かどうかということについてはやや疑問があると思いますし、国際的な協力はやはり主要国の合意がないとうまくいかないところがあると思います。  ですから、主要国であります。アメリカが反対していることを強引に行ってもなかなか長期的にうまくいかないというところがあると思います。それはやはり政治の現実ではないかと思います。力強い国が強く反対していることを推進しようとしても結局そういう会議からその国が抜け出してしまうという可能性も生むことになりますし、実効性がない結果になる、自分たちの満足にしかならないような結果になる危険性がありますので、今後その失敗の許されない課題というものとしてこの環境問題をとらえる必要があると思います。  とすれば、少なくともそういう環境問題に今まで積極的に取り組みたいという態度を表明してきました国々が、主要国を含む国々が何らかの形で合意できる答えを見出す。それがかなり時間がかかったとしても仕方がないと思います。今度のリオで直ちに何か大きな規制を世界にかけるというわけにはいかないというふうに私は考えますけれども、ただ、こういう具体的な案が出ることによって世界各国の考えが一気に活性化しまして、いや自分としては反対だとか、いやそれもいい案じゃないかという形で考えが出てきますので、そういう意味でも具体的な政策について議論することが重要であろうというふうに思います。  それから、熱帯雨林の減少問題については、もっと途上国へのそういう方面での支援ということについては具体的に合意してもらいたいと思います。熱帯雨林の破壊の最大の理由というのは焼き畑農業で、これは先進国がこれだけ途上国に対して援助しているにもかかわらず、彼らにとって必要な基本的な農業技術についての移転を怠った結果であるというふうに理解してもいいと思います。彼らが旧態依然とした農法に依存せざるを得ないような形に放置してしまった先進国側の責任とも言えるわけでありますから、こういうさまざまな援助を行っているこの時代において、何でそういう基本的な農法についてのきちっとした技術移転ができなかったのかということを反省しつつ、そういう方面での援助を強化するとか、あるいは植林という方法についてはぜひ積極的な合意を国際的に見たいものであると思いますし、こういう面で日本がぜひ具体的な提案とリーダーシップをとってもらいたいというふうに思います。
  58. 石原健太郎

    石原健太郎君 どうもありがとうございます。  滝井公述人にお尋ねをいたします。  地方がだんだん衰退してきたその理由の一つに、さっき農林業の落ち込みということをおっしゃられました。私もやっぱり農林業の衰退というのが一番大きい理由の一つじゃないかと考えておるんです。幾ら地方活性化だ何だかんだかけ声は言いましても、実際そこで生活していけるだけの所得が上がらなければ十分な所得が得られるところに移転せざるを得ないというのが一般社会だと思うんです。それで、ヨーロッパなんかでは農業の重要性というものをきちんと認識して、農家に農地保全管理費というんですか、そういうようなものを直接支払って農家がそこで定住していけるような仕組みもやっているということも聞いているわけであります。  日本の場合にも、圧倒的に海外の材木に押し込まれてしまって本当に今林業も立つ瀬がないような状況じゃないかと思うんですけれども、これからの日本の国が農業とか林業というものをどういうふうに位置づけていくべきか。特に今焼き畑のお話があって、一方で熱帯雨林がどんどん減っているのに、日本では畑を減反して遊ばせているなんというのは、世界的な目で見ればちょっと矛盾していると思うんですよね。そういうところについてお話をいただければと思います。
  59. 滝井義高

    公述人(滝井義高君) 私、今から五十年ぐらい前にアンドレ・モーロアというフランスの人が書いた「フランス敗れたり」という本を読んだことがあるんです、青年のときに。当時パリは、フランスの政界というのはダラジエ、レイノーというような人が支配をしておった。ところが、それは非常に堕落をしておったわけです。その堕落しておるフランスのパリに第一次大戦でドイツ軍が攻め入ってきまして、一挙にフランスのバリは落城してしまいました。その後、その占拠したドイツ軍を追っ払うときが来たわけです。だれが立ち上がって追っ払ったかというと、パリの近郊で黙々とフランスの大地にくわをおろしておった農民たちが立ち上がって、これを追っ払ったわけです。  そこで、私は青年のときから、私医者ですけれども、これはもう農業非常に大事だというので、農業政策その他那須先生たちの本を読んで勉強したことを覚えておるわけです。  今、市長になりまして、やはり農業をしっかりやる必要があるということで一生懸命にやっておるんですが、まず土地の改良をやる、それから同時に技術革新が、今御存じのように高度の技術を用いてやりますから、そういうバイオ等の技術をやらせなきゃいかぬ。ところが、農業高校に偏差値で来るもんですから優秀な子供がやってこないわけです。それで、卒業しましたら農業につかない。御存じのように、医者は一年に八千人なるんです。農民は、今は五百万、六百万と高等学校、大学を青年が出るんですが、千八百人しか農業につかないわけです。だから一農業というのはそういう意味で嫁が来ないし後継ぎがないというので未来がなくなってしまっておる。しかし、そうたからといって捨てるわけにはいきませんので、今技術革新をやらなきゃいかぬという主張を市政の中でしておるわけです。  それから同時に、内発的地域開発、その地域でできるものは地域で使おうじゃないか、そして余ったら一・五の産業を興して、タケノコが余れば缶詰にする、イチゴが余ればジャムにする、こういうようにして一・五の産業を興してそこに雇用をつくろうじゃないか、こういう形でやっているんです。  農業は何とかそういう形でいくんですが、林業はもう全く林業を支える労働力がなくて困っている。今回九州は十七号、十九号台風が起こりまして、我々のところの山々は全部木が倒れてしまった。大きい本ほど倒れちゃったわけです。その後始末ができずに困っておるというような状態です。  だから、田園まさに荒れなんとすで、千昌夫のときは我がふるさとに帰るかなという歌がありました。ところが、最近は吉幾三が出たら、おら東京さ行くだと、こういう形になってしまったわけです。だから、歌は世につれ世は歌につれと言いますが、そういう形に歌はもうテレビ、ラジオを通じて全国津々浦々に広まりますものですから、やっぱり東京の方がいいかと、山を捨てても農業を捨ててもという。  しかし、私はそれはだめじゃないか。国土の根幹を耕すというのは、最前私が申しましたように、やはりこの際国はある程度農業に投資をやるべきだ。そして、農村にある程度道路をつけると住みよくなるし、出荷もしやすくなる、じゃ売ろうかと。それから材木も切ったら売れるじゃないか、こういう形が出ると思うんです。その投資が少ないんじゃないか、農業に対する。それで過疎地に対する道路もうまくいかない、だからうまくいかないうまくいかないと、過疎法が十年延びた、市長、十年延ばしてもまだおまえたちはできぬかと言われても、そういう投資がないところに人材が集まらない。東京は投資があって食えるから人材が集まってしまうわけです。  だから、やはり農村に少し国が、七十二兆も金があるんですから、ひとつ投資を思い切ってやっていただいて、道路をつくって、農業改革をやらせる。そうしたら、そこに地域の古い文化がある、その文化をやはり興すということが大事です。今人間の心に文化がなくなった。だから異常な宗教が入ってきたりしてだめになってし、まった。だからそういう意味で、やっぱり文化を興すということが一つ。それにはある程度投資をして、そこに文化ができる素地をつくってやる必要があるんですね。  そういう意味で頑張っておりますから、よろしくお願いします。
  60. 石原健太郎

    石原健太郎君 ありがとうございました。
  61. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 両先生には、きょうわざわざお忙しい中をおいでいただきましてどうもありがとうございました。特に滝井市長さん、九州からわざわざおいでいただきましてありがとうございました。  まず、猪口先生にお伺いしたいと思うんですが、先生がおっしゃるように、私は、環境問題というのは、まずやっぱり日本自体が言うならば環境の先進国になるというか、美しい自然に調和した国をつくっていくというか、そしてまた、豊かさを通してそういうところに目を向ける余裕のある社会をつくっていくとか、特に女性のほほ笑みの絶えないような社会が大事だという御説明は全く同感なんでございますが、そうした場合に、専門的な立場から見まして何が日本の場合に壁になっておるのか。どこら辺に壁というか問題があるのか、当然そこら辺はお気づきのことじゃないかと思うんですが、そこら辺についてまず先生の方から、もしお持ちであればお伺いしたいと思うんです。
  62. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) まず第一に、歴史的に考えますと、とにかく日本は大変な中ここまで一生懸命来た。そういう中で、国としても社会としてもいろんな優先順位をつけて対処しなければならず、ある程度生産者優先の社会になったということはやむを得なかった時代はあったと思うんですね。何よりもやはり余裕がなければ生活者に優しい社会というものもできませんし、全体のバイが広がるということが最優先であった時代があった。ですから、それは壁とかなんとかというよりも、あるやむを得ない制限の、拘束の中でそういう社会の選択になった、あるいは配分になった上いうところです。  ただ、ここで重要なのは、転換期をきちっとつかむことで、既にパイが十分に広がったときその優先順位をきちっと組みかえることができるかというところで、先ほど申し上げたように、今度は生活者をかなり中心に据えたような社会パラダイムというものを考えてほしいということが第一点です。  それから第二点は、これは壁であったかどうかはよくわからないんですが、やはり日本の政策決定のプロセスといいますか意思決定、ディシジョンメーキングのプロセスの中には、議員の先生方の中には女性の先生方がふえてきてくれまして私は女性の市民として非常に心強く思うんですが、しかしやはりほかの先進国と比べますと非常に数も少ない。したがって、生活の面あるいは環境に配慮するようなそういう視点というのがともすれば十分に出にくかったかなという気がいたします。男女ともに環境問題については責任がございますが、しかし女性は生命の安全により直接にかかわるというような特殊性もございますし、女性の視点が入るということで随分また違った行政も可能ではないか、あるいは政治の判断というものも可能ではないかというふうに思います。  ですから、これから生活者に優しい社会をつくるということであれば、生活の半分を少なくとも担っている女性の立場というものが意思決定に十分に反映されるということが重要であると思いますし、また環境に配慮するということで考えれば、やはり女性の視点というものが政策の中に十分に生かされるべきではないかというふうに思います。  それで、具体的に日ごろ考えていますことをこういう場で申し上げていいのかどうかわからないんですが、例えば日本道路ということを考えます。道路は、大きな道路を過疎地にもつくるということも重要な課題であると思いますが、普通の生活道路が街路樹に十分に守られて、歩道もあって散歩もできる快適なものであるというようなアメニティーのある道路づくりというものも重要であると思いますね。しかし、日本道路の大半は産業用道路といった考え方からつくられている。仕事用の道路ですから歩道もないところが圧倒的に多い。どういうところに街路樹と歩道のある道路があるかといいますと、人の住んでいないところ、つまりこの周辺でありますとかそういうところでありまして、人が住んでいるところに行くと街路樹も歩道もないということになります。これは一種のパラドックスであると思いますね。例えば、最も交通事故に遭いやすい老人とか子供がいるところには歩道がない。それから、どちらかというとゴルフだ、ジョギングだというようなことよりも、ぶらぶらと日々散歩するというようなことで体力を養いたいと思う、そういう老人が住んでいるところには安全に散歩できるような歩道がないという、こういう矛盾がありますね。  ですから、どういう道路をつくるかということ一つ考えても、やはりそういう生活者の立場というものが十分に反映されていれば、もう少しそういう道路づくりというものがなされ、そして町の中の環境もよりよくなり、緑がより豊かになってくる。町の中の環境といいますと、すぐ公園面積をどう、一人当たり公園面積が世界の主要都市に比べて少ないというような統計的な議論に終始しからなんですけれども、そういうふうに何か決まった形で考えずに、道に一つ街路樹を植えることを可能にすることによって都市の環境というものはずっとよくなる。街路樹があるためには歩道もなきゃだめで、そうすると歩道を散歩道にもすることができるようになる。歩道もないようなところでは、要するにやはり交通事故の危険というのは常にありますから、例えばおばあちゃん危ないから余り外へ出ないでということになって何となく動きにくい町になる。そうすると寝たきりになるような、そういう可能性だってやっぱり出てきてしまうかもしれない。  ですから、この際、本当に生活者に動きやすい、そういう町づくりをすることによって長期的には日本の寝たきり人口というものを減らすことができるとすれば、むしろ非常に積極的に財政負担を減らすことになるかもしれない。ですから、何がそういう発想の転換といいますか、生活者生活しやすいような町づくりというような発想も必要かもしれない。そのためには、男性の方も十分にそういうことを考えてくださる立場にあると思いますけれども、多様な意見をくみ取り、くみ上げるシステムが必要だということで、ぜひ意思決定過程にもう少し女性の参加をというふうにお願いしたいと思います。
  63. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 どうもありがとうございました。  私もいわゆる発想の転換というか、優先順位の新たな転換をやっていく時期に来ておるというような感じがします。ただ問題は、大企業が優先されるこの日本の現状なり、それから後ほどの滝井先生とも関連するんですが、官僚が支配しておるこの社会というのはなかなか私は思い切ってやらないと変わらないんじゃないかと思うんで、今申し上げたような方向でいくなら思い切ってひとつ、例えば通産省などをなくすとか、そういう一つの発想の転換なり、同時に変えていく。そういう意味で私は、先生はそういう思いもあるんじゃないかと思うんです。そこら辺をお聞きするとまたいろいろ差しさわりがあるでしょうから、私どもも努力してまいりますけれども、どうぞひとつ先生も専門的な立場からずばりずばり御指摘をして、今御説のような環境への優しさですね、そういう役割と日本をつくるための御努力をぜひお願いしたいなというふうに思っております。  そこで、滝井先生にお聞きしたいんですが、三本の問題がやっぱり今問題だという御指摘で、一つはやっぱり産業の再編成、それから官僚機構の問題、それから国際的な意味での再建策としての日本とかいうことで御指摘ございました。私はそこら辺も同感なんですが、その中で先生おっしゃったのは、この際ひとつ東京集中に対抗する唯一の方法として道州制をやって、九州は九州として独立国としてやるんだというような思い切った発想をお聞きしました。  私も率直に言って、もう今この国際情勢から見ても国境の垣根をどんどん下げるべきだ、そして九州は九州、北海道は北海道でそういった国際的な役割を果たす時期に来ておるんではないかと思うんですが、地方の、田川の市長さんとしてやられてみて、独立国をつくる発想もいいんですが、そのために今何が一番障害物なのか、もしくはそれを除去しなきゃならぬのか、そういったものについて端的な問題があればひとつ御指摘いただきたいと思うんです。
  64. 滝井義高

    公述人(滝井義高君) 御存じのように、道路一つっくるのにもストップウォッチでやるわけですね。道路の交通量の多いところから予算がついてくるわけです。それから、道路をつくろうとすれば都市計画をきちっとやっておかなきゃならない。田舎に行きましたら、私の方に十カ市町村あるけれども、三つしか都市計画はやってないんです。道路をつくろうとすれば用途地区の指定をやるから都市計画をきちっとやらなきゃならない。田舎はそんなものがないから予算がつかないわけです、それをやっていなければ。そういうちゃんと法律があってやっておるわけですね。  だから、最前、私は、過疎地を都市に近づけようとすれば、やはり過疎地に道路をつくってくださいということになると、これはなかなかそれができてこないことになるわけです。それはどうしてかというと、これは佐藤先生御存じのとおり、全部権限が中央にあり、財源が中央にあるわけです。そして、それは交付税で調整をされておるわけですが、交付税はこれは三税で三二%、酒税、所得税、法人税三二%と、それから消費税の五分の四の二四%ですか、それからもう一つたばこ税の二五%、これを合わせたものでいくわけです。これがだんだん大きくなると、国はそれから金を貸してくれということで、地方に金が行くことをだんだんチェックする形になってくる。そういうように全部コントロールは中央が握っておるわけです。そしてそれは中央集権であり、そして生産者優先の政治と経済の体制になってきているわけです。したがって、我々のところは、最前申しますように頭脳じゃなくて足ですから、もう本当に付加価値の弱い生産をやるから、したがって生活というのは貧しい。東京が非常にそういう点では便利で豊かである。ただ、自然やその他が非常に悪くなってどうにもならぬという矛盾がきているわけですね。  そういう点では、最前からお話がありましたように、経済成長と環境問題というものはどう解決するかというのが最高の課題になってきたわけです。もう一つ問題が出てくるのは、我々が能率を上げようとすれば人間に過労死が出てくるわけなんです。いわゆる人間性の追求というのが問題になってくる。もう一つ、我々がボーダーレスで自由になろうとするとブロック化が出てくるわけです。この三つが今最大の世界的な私は課題じゃないかと思っているわけです。我々が自由経済をやろうとすると、御存じのようにECは一つのブロックをつくる、あるいはアメリカもカナダとつくる、あるいは我々ももうアジアNIESとつくるというような、そういう関係が出てくる。この三つはこれから、二十世紀から二十一世紀にかけて日本が解決しなきゃならぬ一番の問題です。  それに、日本独特の東京に投資が集中してしまう。例えば、千葉県の木更津から川崎に十五キロのトンネルと架橋をつくる、そんなものが一体必要なんだろうか。一兆何千億かかる。このごろ私ある人と話しておったら、新橋から虎ノ門まで一キロある。初めこれは私二千億というのをちょっと読んだんです。あれが二千億もかかる。なら、じゃ土地の買収費と補償費が幾らかかるのかといったら千八百億。二百億が工事費。最近、あの道路は二千億とされておったが、市長はあれ二千億じゃない、一兆円はかかるよと、こういうことですよね。千メートルつくるのに七十二分の一の予算東京の新橋とあれの間にどんどんつぎ込まれてしまう、あるいは東京湾にかけられている。何でそんなに東京にみんな集まらなきゃならぬのかという、こういう疑問というのは、今言われるように、逆転の発想でいかないと解決できないんですね。  だから、そういう点がありますから、思い切って内科の対症療法じゃだめだと、ラジカルオペレーションいわゆる根治療法をやって一遍日本を、だって独立したらまたそれが連合して国をつくれば、別に日本列島が分裂するわけでも何でもないんですから、そのくらいの思い切った政策をやらないと、今島々は壊れる状態です。  御存じのように国鉄が分割しました。それならば九州のJRはうまくいっておるかというと、三千二百億の基金を積み立ててやっております。そうしたら、それが六分か七分で運用すると二百八十億の利子がつきます。それで九州は十億か二十億の黒字になった。しかし、日本の真ん中にあるところは、これは新幹線その他があって乗り手が多いからうまくいくわけですよね。北海道、四国というのはなかなかうまくいかない。そういう基金を積むなら、そういう四国や北海道にもぼんと国債で百兆ぐらいの基金をやってこれでひとつやってみろと、こういうぐらいの思い切った発想が必要じゃないかと思うんです。そうでないと、今もう中央ががちっと握ってしまってどうにもならないという状態、いわゆる行政と政治と財界が一体になってこの中央集権を守っているというのが今の状態じゃないか。それを切り離す必要があるんじゃないか、セパレートしてみる、そうするとちょっと発想が違ってくるんじゃないかな、こう思っております。
  65. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 どうもありがとうございました。
  66. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 今の佐藤先生のコメントにちょっと一言私申し上げたいと思いまして、御質問ではなかったんですが、恐縮です。  先生、官僚が支配しているというふうにはっきりおっしゃいましたが、私は、先生のような国民の代表の立場にある方からそういう言葉は聞きたくないというふうに思います。先生方はやはり民主主義のもとで選ばれました国民の代表でいらっしゃいますから、官僚が支配しているというふうにみずからお認めになるようなことはどうかなさらないでいただきたい。そして、それがもし現実であるというような認識が強いといたしましたら、ぜひそれに拮抗するような力を政治家の先生方が持つという、そういう決意こそが重要であり、官僚が支配しているんだからという開き直りは私は先生方からは伺いたくないというふうに一市民として思いました。  それから、通産省云々のことについては、もちろん通産省を解体することは何の答えにもならず、私はそういう考え方には全く賛成しかねると思います。日本は、基本的に資源がない国、それから軍事力を政治力として使うことはしないと決めている国でありますから、やはり産業が強くなければならない。全体のパイはやはり維持していかなければ、それは生活者に対する優しい社会というのもできないだろうというふうに思います。産業と両立するということの環境保全の考え方とか、環境保全の重要性ということは通産省の方々にも十分に理解してもらうという、そういう努力こそが重要でありまして、ぜひ、日本はコンセンシュアルソサエティーといいますか、合意形成型の社会と言われていますので、そういう情報交換、ネットワーキング、ネットワーキングというか、情報交換とかお互いのそういう面での意思表明ということをしっかりやってくださって、ある合意点に達していただきたいというふうに思います。  それから、私つくづく思うんですけれども、日本というのは出るくいを打つといいますか、何か強い勢力に対してそれを砕こうというような考え方というのが常にあると思いますね。しかし、出るくいを打つというのは非常にあしき伝統であると思います。強い勢力に対しては自分の側においてもそれに拮抗するだけの強さを持つというのがこれからの日本国際社会と伍していく、世界の諸国家と伍していくための基本的な考え方ではないかと思いますね。  今、東京圏の問題もありますけれども、東京は世界都市として初めて世界で重要な役割を果たすような立場になってきたということでありますが、その東京の機能をそぐというのではなく、いかに地方がそれに拮抗するような力を持つかという、そういう発想が重要かもしれないと思います。  ですから、もし日本でこの産業分野では通産省とかそういう官僚の組織が非常に強いということであれば、政治の力というものもそれに拮抗して強くなるんだということで初めてダイナミックな政治発展というのがこの国でも可能になるというわけですから、ぜひ官僚に支配されているということをお認めにならないようにお願いいたします。
  67. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 現実論として、今の実態を先生の方でお話しになって、その上で優先順位を変えるときが来た、そして、やっぱりそうしなければ環境問題というものについては前進はないんだというようなお話があったように記憶したものですから、それは具体的にどういうことでしょうということでお聞きしたんです。  決して、私が言うんじゃなくて、今、滝井先生もおっしゃったように、また今、何というんですか、熊本の知事をやっておった細川さんが行革審の中でも言っておりますように、霞が関の中でやっぱり行政の中では機関委任事務で県が八割、市町村が四割という、国のまさに出先機関に化しておる。これを改めぬ限り云々という、強靱な官僚機構の問題について指摘なさっておるわけですから、何も私自身が個人で言っているわけじゃない。その点はひとつ誤解しないようにしていただきたいと思うんです。  ただ美しい言葉だけでは私はやっぱり美しい現実は生まれてこないと思うんです。やっぱり醜いところもあろうし、問題点をきちっとつかまえて、これにやっぱり対応していかないと変わってこない、そういう意味で先ほど申し上げたんですから、もしそこら辺に誤解があるならひとつ先生の方で誤解を解いておいてほしいと思います。  それから、時間がございませんから滝井先生、もう一つお聞きしたいんですが、今言ったように、細川さんはそういうふうな点を強調なさって、そしてどうもやっぱり霞が関がすべて補助金の問題もあろうし、利益誘導型の仕組みもある、こういうことで日本の政治が東京東京へと集中する仕組みになっておる、ここをやっぱり変えていかなきゃならぬということで、いわゆるパイロット自治体というのを提起なさって、ここにはもうすべての権限と金を全部中央と断ち切って、そしてそこに一つの自治区をつくるべきだということを強調なさっておるわけですが、これはかなり官僚の抵抗があったらしい。けれどもぼろぼろになりながらも一つの発想を出したんだということを盛んに力説なさっておるわけですが、これについては自治体の現実の長としてどういう受けとめ方をなさっておられますか。
  68. 滝井義高

    公述人(滝井義高君) 細川前知事の考え方と我々の考え方とは一致しておるんですが、これは形は変わっても、土光臨調でもそういう形が出ておったんですけれども、現実の問題として非常に役所の力が強いわけですから、あるいは悪い言葉ですけれども族議員という方もいらっしゃるし、したがって、巻き返されてしまって、実際にそれが現実の問題になる可能性は非常に薄いという形だと思います。  そういういい提案が薄いということになると、どこからやるかということで、私が最初に申しましたように、事務、事業、権限、財源を我々のところにもらうということはもう随分長い間言ってきたけれどもなかなかうまくいかない。国が困ると補助金は今度はカットして取り上げてしまう、そしてそれをなし崩しに少しずつ返してくる。生活保護は八割だったのが七割になって、そして返すぞ返すぞということで七五%にして我々が二五%負担する。こういうようにわっと取り上げておいては少しずつ返していくという、こういうやり方をしょっちゅうやられていっておるわけです。これはもうしょっちゅうやられておる。  だからそういう形のものをするためには、最前私が申しましたように、極めて現実的なものからいえば農業投資をやってもらいたい、そして同時に過疎地に道路をつくってもらいたい、これらは非常に現実的。今のガットのウルグアイ・ラウンドで白紙答案しか出ないというときですから、案外いいかもしれないということで、私らもそれを提案する。  で、自治省に聞いてみると、それはいいことだと。市長、今十四兆ぐらいの単独事業がある、これから地方自治体は単独事業をうんとやる、こういう要求をすべきだと。それは私らの主張する過疎地を活性化するのに合っている。だから、今単独事業をこれからやりなさい、そうすると、それを五割か二分の一程度の交付税で見てやろう。こういう単独事業で国に顔を向かずに、地方自治体がみずからのふるさとに顔を向けてやる。ふるさと創生というのは一つのそれの刺激にはなったことは事実ですが、そういう形になってくると、自治省はそれ賛成ですから、役所の中が分かれてくる、大蔵と分かれる形になる。そうなると、我々は非常に一つの望みが極めて現実的に出る。そういうことがだめなら、もういっそのこと道州制か独立にしてみたらどうだ、こういう発想になるわけですね。  最近そういうことが新聞や評論に書かれるということは、もう多くの人々の、知的水準の高い人たちが、これ日本のやり方というのはもうちょっと変えなきゃいかぬかなという、そういう兆しか見えている。我々、政治というのは先手必勝ですから、そういう萌芽が出たら萌芽を伸ばす方向を考える、自治体の長としては考える必要がある。  それからもう一つ、我々が大変困るのは、私、産炭地ですけれども、産炭法の一条に、鉱工業さえ持ってくれば地域はうまくいく、炭鉱がつぶれた後鉱工業を持ってくればいい、そういう発想です、産炭法は。ところが私もその当時議員だったから責任があるんですけれども、その発想だけではだめだったわけです。どうしてかというと、炭鉱がつぶれたら人間が荒廃していくわけです。人間がスクラップになったといったらおかしいが、炭鉱がスクラップになったら人間の精神が荒廃する。そうすると企業は来ないんですよ。なぜならば企業は人なり、企業は製品です。だから企業は来ない。そうすると、ここでは何をやるかというと社会開発をやらなさやいかぬわけです。教育、文化、医療、福祉というようなものをやらなきゃいかぬわけです。それをやらなかったわけです。そして企業だけ持ってくればいい。ところが企業は来なかった。したがって、企業が来ないから今度は道路をつくってくれといって道路をつくる。国道一本三十年。滝井君、三十年かかっておまえたちはまだ産炭地の振興をし切らぬかと言うから、私は国は三十年かかって一本の国道もつくってくれないじゃないですか、こういう形です。  だから、そうすると、企業が新しく来ようとすると技術的水準が要るんです。今までは長大重厚型の労働であったんですが、今度はコンピューターを操りあるいは近代的なベンチャービジネスにすると技術的水準が要る。そういう技術的水準が全然ないんです。だから我々はしょうがないから小学校、中学校からコンピューターを入れて、そしてやるというそういう近代的な人間を今から少し長期展望に立ってつくる以外にないわけです。  社会開発がない、道路ができない、技術的基礎がない。だからいっても財政力指数は十五年も〇・三、甚だしいところは〇・一五、これです。財政力指数はちっとも上がらないです。こういう点が大きな隆路になっているのは根本的にどこか政治が間違っているところがあるわけです。間違っているところにメスを入れてもらわなきゃならぬと、こう思っております。
  69. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 どうもありがとうございました。
  70. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 猪口先生、滝井先生、大変にありがとうございました。  時間がございませんので、ざっと入らせていただきますが、最初に猪口先生にお伺いしたいと思いますが、先ほど先生の具体策の中に、国連の役割ということでお話がございました。六月にブラジルで環境サミットが開かれますが、その準備に当たっております事務局の試算によりますと、一九九三年から二〇〇〇年までの八年間を対象にして、環境保全に必要な経費を算出をされたそうでございますが、年間約千二百五十億ドル、八年間ですと約一兆ドル近いそういった経費が必要になるということでございます。  豊かな地球を守り、後世の子孫に美しい地球を残さなきゃなりません。そういった意味で私たちは人類益という立場で、最近は冷戦も解消いたしまして軍備費の節約もそれぞれの国が進められておるわけでございますから、その一部を拠出し合いまして例えば国連軍縮基金などというのをつくり、国連を中心として地球的な規模で先ほど先生がおっしゃったような温暖化の防止あるいはオゾンの研究等に使われていくように、これは本格的な取り組みが必要なときではないかと私は思っておりますが、そういうものに対する先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  71. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 軍縮をすることによってその資金で環境保全を行うという考え方は、アメリカの側からも出ていますし、この際非常にいいチャンスであろうというふうに思います。  それから今御指摘の国連軍縮基金というような考え方も非常に前向きで積極的で具体的で、提案してみて世界がどこまで受け入れてくれるかわかりませんが、日本から提案してみる考え方としては非常に結構ではないかと思います。  ただ、国連の場でいろいろなそういうファンドをつくろうという考え方は、いろいろな局面でございます。この環境問題にかかわらず、例えば途上国で一次産品の価格が乱高下するので、それを安定化するためにファンドをつくろうとかという考え方はいろいろあったんですが、結局なかなかうまくいくことは珍しいという感じになることが多いように思いますね。  資金を提供する国がどういう国なのか、どの国がどこまで責任を持つのかということ、最終的に合意するのが非常に困難なことが、少なくとも今までの国連の事情の中にはあったように思います。それは一つには、国連という場が今まで安保理は冷戦の対立の中で拒否権が出たりしてうまく機能していなかった。したがって大国が本格的に国連で何か大きな仕事をできるという場に国連がなっていなかった。ですから、どちらかというと途上国の意見表明の場というようなニュアンスが強くて、いざそういうお金のかかる仕事を国連がやろうとすると、先進国の協力といいますか、大国の協力が必要になるわけですけれども、そのときになって大国の協力を取りつけることができない。したがって、そういう基金がうまくいかないというような事情があったと思いますね。  ですから、これからこういう考え方あるいはアイデアを成功させていくには、先ほど申し上げたように、やはりできるだけ主要国の合意が得られるような形で協議を進める。途上国にとっても納得のいくような結果を出していくというその辺の協議の進め方、折衷案というのが必要であろうと思います。  何か非常に極端な案を出しても、結局資金提供国が同意しなければそれで立ち消えになってしまいますので、御指摘の国連軍縮基金のような提案についても、アメリカを中心に合意が形成できるような形で行っていく。そしてもしこういうアイデアを日本みずから出すことができれば、それは非常に結構なことで、国連というのは何といいますか、結局戦後戦勝国がつくった国際機関ということになってしまいますので、なかなか日本が積極的な役割を果たしにくかったという面があると思います。  今回、こういう環境保全とか比較的新しい分野で、しかもそういうファンドを新しくつくるというようなときは、日本が大きな積極的な役割を果たすチャンスであると思いますね。既にある組織とかそういうところに日本がかなり深く、大きな力を持って食い込んでいこうとするとうまくいかないことも多いんですが、新しい組織をつくったり、そういう基金をつくったりするときに日本が積極的に役割を果たすということであれば、それが内容的に先進国、途上国、多くの合意するところであれば大きな力を貢献するというチャンスになると思いますので、軍縮の基金によって環境保全に充てるというような考え方、これは主として軍縮を行わなければならない国々の賛同を得て進める必要があろうというふうに思います。  以上です。
  72. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ありがとうございました。  それでは滝井先生にお伺いしたいと思います。  先ほどから道州制の問題であるとか、あるいは過疎地で大変に御苦労されたお話をお聞きして大変に参考になったわけでございますが、やはり私たちも、最近の都市化に伴いまして住宅あるいは上下水道あるいはごみの問題、道路、医療と、非常に市町村間に限らず府県間の問題が拡大していることはよく承知しておりますし、そういう問題に対処するためには広域的な行政体制の整備ということが今求められてきていると思います。そういった意味で、先生の先ほどのお話も非常に参考に聞かしていただいたわけでございます。  そこで先生と同じように、最近は議員であってそういう地方自治体の長になられる方々、あるいは一般の市民から長になられる方々がいらっしゃるわけです。最近、ある市の市長さんから私たちもお聞きしたわけでございますが、地方自治体、いろんな難しい問題があるけれども、住民サービスに徹して本当に市民と共同して、市民のアイデアをいろいろと取り入れながら問題解決に当たっていくということで、例えば医療の問題ですと健康カードを取り入れてその実施をやってきているとか、あるいはごみの問題につきましても市民の意見を取り入れながらいろんな施策をやってきたということのお話をお聞きしているわけでございます。  滝井先生の市といたしましても、私の市としてはこういうことをやってきたと、健康カードの問題あるいはごみの問題いろいろありますけれども、何かそういう点で御意見がございましたらお聞かせいただきたいと思うんですが。
  73. 滝井義高

    公述人(滝井義高君) 私は、産炭地でございますから、炭鉱がつぶれましたら、悪い言葉ですけれども日本一失業の多い町になりました。日本生活保護の多い町になりました。日本一お年寄りの多い町になりました。日本一非行の多い町になりました。日本一赤ちゃんが生まれない町になりました。日本一青年がふるさとを捨てて流出する町になったわけです。そして、同時にそれは人の問題である。物の側面をごらんいただきますと、町の真ん中に炭鉱のボタ山が残ったわけです。ボタ山の下には閉山炭柱が日本一で六千五百月残りました。そして閉山炭柱とボタ山の下は全部空洞で、石炭を掘った跡が空洞になり、そこに水がたまっております。  この両面にわたって同和問題があるわけです。同和問題と人と物とを抱きかかえる地方自治体は真っ赤な赤字でございます。その自治体を支えるのは時限立法です、八本の時限立法。過疎法、石炭六法、同和対策と、こういうものが支えているわけです。  したがって、今の人の面、物の面のどれを見ても非常に難しいわけです。一体どこから手をつけるか。結局、私たち六万の市民が田川をつくり、同時にその六万の市民は田川でつくられるわけです。私も田川をつくり、私の子供も孫もつくっているが、同時に、私も子供も孫も田川でつくられる。つくりつつつくられる関係にあるときに町を変えようとすればどうするかというと、つくっている人の意識を変える以外にないわけです。つくっている人の意識を変えるものは何かというと、それは教育でございます。  だから、最大限教育に力を入れよう。教育に力を入れるためには田川の人間の実態を調査する必要があるから教育研究所をつくって、そして人間の実態調査をしました。そしたら、子供の実像というのは夢遊病と出たわけです。そして母親は無意識放任性の過保護と出たわけです。お父さんは何もしないで出番がない。こういうふうに出てきたわけです。  そこで、そういうのが出て、同時に人間の基本的な生活行動、すなわち人間、人生というのは朝起きることから始まる。起きるのは自分で起きるか人から起こされるか。そして、朝起きたらトイレに行って、顔を洗って、朝御飯を食べてそして学校に出てくる。きちっと全部が終わった子供は注意力があって学校の成績がいい。ところが、起こされて御飯も食べるが食べぬですっ飛んできた子供はもう授業が始まるとうんちに行きたくなる、落ちつきがない、成績が悪いわけです。こういう基本的な行動をきちっと態勢を整えてそして人づくりをやろう、こういう形でやりました。大体、学校も全部つくってしまいましたし、それから社会教育施設も二十万人ぐらいの都市に匹敵するぐらいのをつくりました。  最近は、御存じのように文化というのが非常に大事になってきました。どういう点で大事になったかというと、まず第一に、飽食の時代でございますから腹いっぱいに食べるけれども、人間の心はうつろになったわけです。すなわち人間の心が非常に人間性を失ってしまったわけです。しかし、人間性を失ったけれども、競争心だけは研ぎ澄まされております。隣は何をする人ぞ。隣のことはちっとも構わぬけれども、隣がテレビを買えば買う、自動車を買えば自動車を買う、隣が塀、壁をすると塀、壁をする。いわゆる模倣の瀑布でございます。隣と同じことをやる。そういう競争心だけが研ぎ澄まされて共同と連帯の意識のない社会ができた。特に大都市はそれが激しくなってきた。隣のおじいちゃんが亡くなっておったってみんな知らぬ顔です。こういう形になってきました。  そしてもう一つは、その研ぎ澄まされた競争心が激しくて共同と連帯の意識がないですから、その住んでおる社会は非常にもろいわけです。どこか一カ所電線の火災が起こると何万戸という住宅が不通になっちゃうわけです。このごろ私の方に台風十九号が来て全部屋根がつぶれてしまいました、多くの家が。そしたら、市民はろうそくも用意していなければ懐中電灯もない。もうまるっきり何にもうまくいかなくなった。電話もみんなかからなくなっちゃった、台風十九号、十七号で。こういう世の中になっておりますから、やはり政治の根本というのは人間の意識を変えながら時代の変化対応する人間をつくる。これは非常に地味ですけれども、これには時間がかかる。人間の意識を変えるには時間がかかる。ローマは一日にしてならず、時間がかかるが、これを今やっております。そして最前申しましたように、心がうつろになったときには、そこに必要とするのは文化でございます。  それからもう一つ、我々が地域の魅力をつくる、地域を改革していくというときには何が必要かというと、地域の活性化というときには心がないといかぬわけです。やっぱり文化が要るわけです。こういうように人間の心がうつろになったら文化が要る、活性化が要る。だから、したがって教育、文化というのが最大のものだというので、なけなしの金を振るって最近、昨年の十一月に六万の市として美術館をつくりました。そして今、郷土の美術館をやりながらみんなに情操教育をやる、感性を高める、生涯教育をやろう、こういうことをやっているのが私の方のソフトの側面です。
  74. 高崎裕子

    高崎裕子君 日本共産党の高崎です。  猪口公述人にお尋ねいたします。  地球環境に優しい社会への転換ということでお尋ねしたいと思いますが、一昨年、地球環境を守る一九九〇年四・二二アースデーに向けた取り組みとして、私どもは超党派の女性国会議員有志で、オゾン層破壊のフロンガス禁止、地球温暖化のCO2の段階的削減への努力、あるいは地球砂漠化を招く無秩序な森林伐採を防止し、水資源を極養する水田を守るなど十項目について当時の海部首相にも提言するなどしてまいりました。そのときから約二年たったんですけれども、それでもなお人類にとってかけがえのない地球環境が破壊されているという現実を目の当たりにして、この地球環境を守るということは将来の世代に対する私たちの大切な責務であるというふうな思いをいよいよ強くしているわけです。  そういう観点から、世界有数のCO2の大量排出国であるこの日本が国際的な責任を果たすという点で、その意義は非常に大きくなってくると思うんですが、事態を解決していく障害になっている問題として、私は日本が従来からとっている経済と環境との両立という問題があるのではないか、こういうふうに思うわけです。積極的な経済発展をまず確保した上で、そして環境との両立を図るということがどんな状況を生み出すかというのは、もう六〇年代から七〇年代にかけての公害問題の顕在化で明確になっているというふうに思うわけです。  そこで、仮に経済と環境との二者択一的な選択が迫られるというようなシビアな局面があるとすれば、そのときにはためらわずに経済成長の鈍化を受け入れるような立場に立つ必要があるというふうに私は思うわけですけれども、この点、そうすると日本の政治の根本的な転換も迫られるということになると思うんですが、諸外国の事情等も含めていろいろ御承知されている立場からぜひ御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  75. 猪口邦子

    公述人(猪口邦子君) 経済成長卒は、今後必然的にさまざまな要因から鈍化していく可能性は十分にあるわけですので、改めて鈍化への選択ということをしなくてもいいのではないか。先ほど申し上げたように、日本は資源もなく、あるいは軍事力を政治力として使うということもしないという国でありますから、今後世界に役立つというときも基本的に何の力をもって役立つのか。余裕がなければ分かち合うものがないということになりますね。そうしますと、先ほど市長がおっしゃった教育、やはり人材育成、そしてその人材が生み出すところのいろいろなアイデアであるとかあるいは産品であるとか、そういうものをやはり大事にしていく必要があろうというふうに思います。  ですから、私はいろいろな社会問題について考えるときに、二者択一的なところにみずからが追い込まれないような、何か積極的かつ建設的な対応を事前にしておくということが重要ではないかというふうに思います。環境か経済がというようなところに追い込まれないように、十分に早期にこういう問題をまず知り、それに対応していくということでしか答えを出すことはできないのではないかと考えたいというふうに思います。  超党派のそういう女性議員の方々の協力体制をつくったというような御指摘をいただきまして、私もそれいろいろと報道で存じておりますが、大変建設的であると思いますし、先ほど申し上げたような、やはり女性の視点ということを日本の政策の中に今後も十分に生かしていただくという目的を持って積極的にそういう方向に努力していただきたいと思います。  現実にはなかなか難しい局面が今後あるかと思うんですけれども、世界各国がそういう二者択一の立場に追い込まれていきましたときには、やはりまた答えのないところに、泥沼にはまってしまい、結局その中から本当に生活者に優しい社会というのを築けるかということを考えますと、なかなか難しいように思うんですね。環境に優しい技術の開発を先進国が責任を持って行うというところにしか、例えば途上国の発展していく答えを出しにくいというようなところもあると思うんです。  たとえ先進国では環境の方が経済成長よりはるかに重要だという答えを出してしまったとしても、それは世界の大半の人口を抱える南の諸国には決して受け入れられない答えであろうと思うんですね。彼らにはやはり発展していく権利があると言われたときに、私たちとしてはどう答えるのか。彼らが環境を保全しながら開発していくという答えをみずからの力でいまだ出せない立場にあるときに、余裕のある国がそういう答えをある程度出す努力をしていく、それを分かち合っていくというところにしか答えがない。こういう問題については完全に美しい答えというのはないんです。いろいろな妥協と最適、オプティマムといいますか、最適なところに答えを求めていくということしかない。その場その場でのいろいろな最良の判断ということを考えざるを得ない。これからの経済成長において、環境を破壊するような成長というのは結局は産業社会に報いないということを経済人に理解してもらう必要があるということではないかと思います。
  76. 高崎裕子

    高崎裕子君 ありがとうございました。
  77. 乾晴美

    ○乾晴美君 連合参議院の乾でございます、よろしくお願いいたします。  滝井先生にお伺いしたいと思います。  先ほどからずっと滝井先生のお話を聞かせていただきまして、徳島県と福岡県とはある意味ではよく似ているなというように感じさせていただいております。ただしかし、アクセス、道路が大事ですよというお話になりますと、徳島県は全国唯一の高速道路ゼロメートル県ということでございますので、悩みがもっと深刻がなというように思います。やっと鳴門の橋がかかりまして、今度は明石の大橋がかかろうか、こういうところでございますけれども、私たちが心配しているのは、むしろその橋がかかることによってストロー現象で、せっかくたくさんのお金をつぎ込んで高等学校まで教育したのに、その教育費もいっぱい要ったのに、全部中央の方へ吸い上げられてしまうんじゃないかというような心配があるわけですね。  それで、徳島県としては淡路にコンパスの針を立てまして、徳島県がすっぽり入るような、いわゆる関西圏といいましょうか、関西圏の中の一員として中央的な役割としてやっていこうかというような発想があるんですが、先生のお話を聞かせていただいて、いやそうじゃないですよ、中国と九州と四国が一つのブロックになりましょうやというような発想の御提言を伺わせていただきまして、あっそうだな、そういうブロックの組み方もあるんだなということで、いろいろ問題点とかこれからやっていかなきゃいけないというような、るる聞かせていただきましたけれども、こういう青写真がありますよと、ブロック組んで、四国そして中国、九州が組んでこういうこと、こうやりませんかというような青写真がありましたら、お聞かせいただきましたら、今後の四国というか徳島のあり方も参考にさせていただきたいというように思いますので、よろしくお願いいたします。
  78. 滝井義高

    公述人(滝井義高君) 東京があんまり強大で、超横綱で、我々は十両ぐらいでなかなか太刀打ちができない。四国は四国、中国は中国、九州は九州だけでは太刀打ちができない。そこで、やはり四国と中国と九州が一体になって、それにアジアの諸国を加えていくと一つの大きな力になるであろう。これは私がそう言うばかりでなくて、大分県の平松知事も同じ意見です。やっぱりそう言ったんです。大分とやっぱり意をつなぐ必要があろうと。そうすると、四国と中国と我々とは共通の圏域になっていくわけです。そうすると、四国は関西という非常にいい市場を近くに持つわけですから、そこで農産物その他をつくったらそれを売り出す。あるいは余ったら加工して、内発的地域開発で、地元でも使うがいいものは出していく、余ったものは加工する、そういう形でやっていく以外になかなかいい知恵がないものですから、そういう知恵を出してひとつ固まってみようじゃないかと。  最近は、御存じのように瀬戸内海は瀬戸内海の知事が集まってやる。九州は九州で集まる。それでは今度は瀬戸内海と九州が全部知事が集まって一遍やってみる。そうすると、細川さんの言うような問題は一つの強力な力で政府に迫っていくことができる。政府が聞かなければ、じゃ我々がひとつ単独事業でやろうと言うと、自治。省は割合こっちを向いていますから、今十四兆あるんですが、これは補助金が十四兆と同じです。これがもし二十兆、二十五兆とふえていくと中央に余り行かなくても単独で我々が仕事ができるという形ができるわけですね。  それはやっぱり役割分担をやって、四国は四国の役割分担、九州は九州の役割分担、中国は中国の役割分担、それぞれ歴史と文化と特殊性を持っているから、そういう形のものでいく。そうすると、中央一極の生産優先型の低開発国を見おろしたような政治経済体制というのが、今度は我々だけで生活者、消費者を中心とした体制をひとつつくろうじゃないか、東南アジアとも一緒に手を握ろう、こういう形になると。一番近いのは四国と中国と我々が一番近いししますから、そういう点では少し知恵を出せばうまくいく形ができるんではないかなということが私の方の発想でございます。答弁にならぬかもしれません。
  79. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 滝井公述人にお伺いいたします。  民社党はかねがね地方の自主財源を確立するという観点から第二交付税を設けるべしという主張をしておりますが、現実は三割自治とか四割自治という言葉もあるようなのが実態だと思います。  そういう中で、もう三年近くなりますか、竹下内閣のときにふるさと創生一億円というのが設けられました。田川市の場合に、この意義をどのように受けとめられ、これを何に使われたのか、これが第一点。  それからもう一点は、この一億円というのが全国レベルで見るとどういう効果をもたらしたか、あるいは問題点を残したか、その点について見解をお伺いいたしたいと思います。よろしくお願いします。
  80. 滝井義高

    公述人(滝井義高君) まず、いただいた一億円に市の一億円を加えまして二億円にいたしました。そして、その中の二千万円でとりあえず、市が美術館をつくりましたから、美術館のモニュメントをつくりました。このモニュメントは独特のもので、高い塔を建てまして、大理石を薄くして中から明かりをともすとぼんぼりみたいに見えるようなものをつくりました。いわゆる文化エリア、美術館、図書館のところにそれをつくりました。  残りの一億八千万円を基金にしまして、利子で四つのことをやることにしました。一番目は人材養成、二番目は文化振興、三番目はスポーツ振興、四番目はボランティア育成、この四つを今やっております。その四つで、例えば福岡県から甲子園に出た野球の高等学校のチームと、私のふるさとに七つぐらい高等学校があるんですが、その高等学校が試合をやって優勝したチームとやらせる、あるいは子供たちに野球の手法を選手に来て教えてもらう。あるいは有名人に来て講演をしてもらう、あるいはボランティアを養うというような、そういう形に使いました。現在、利子が大体千二百万ぐらいつきますから、それを基礎に今の四つのことをやっております。  それから第二番目の、ふるさと創生がどういう効果を及ぼしたかというのは、最前からもちょっと申しておりましたけれども、今までは一億も持ったこともないし使ったこともないような小さな自治体でも、これを何か自分で考えて、自分でひとつやってみようじゃないかと。今まではいつも中央に向いて中央の意見を聞いてやっておったのが、とにかく自分の頭で考えて、自分の足でふるさとに立って、自分の手で物をつくろうという、こういう創造的な精神をある程度植えづけたことは確実でございます。その点においては竹下さんに私は感謝しなきゃならぬと思っております。  それから二番目は、最前申したように、そういう形で自分で何か物をやると、やはりこれは我々も自分で一遍発想の転換でやってみる必要があるなどいう考えがいつの間にか出てくるわけです。そうなりますと、最前申しましたように、自治省がじゃ単独事業でやれとか、あるいはまちづくり特別対策事業というのをくれまして、今までは補助金でくれるんですが、これは起債でくれるわけです。これをもらって自分でやる。そうすると、交付税でそのうちの半分の半分をくれる。こういう自主性があれを契機にして徐々に地方自治体にできてきっつある。この精神というのは大変大事な精神である。これを一粒の変死なずば、やがてたくさんな麦の実をならせる形にもっていく必要があるな、こう思っております。
  81. 中村太郎

    委員長中村太郎君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼申し上げます。  本日は、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。拍手)  速記をとめて。    〔速記中止〕    〔委員長退席、理事井上吉夫君着席〕
  82. 井上吉夫

    ○理事(井上吉夫君) 速記を起こして。     ―――――――――――――
  83. 井上吉夫

    ○理事(井上吉夫君) それでは、引き続き二名の公述人方々から項目別に御意見を伺います。  この際、公述人方々に二言ごあいさつ申し上げます。  お二方には、御多忙中のところ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日は、平成年度予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まずお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後で委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず経済景気につきまして河口公述人からお願いいたします。河口公述人
  84. 河口博行

    公述人(河口博行君) 御紹介いただきました河口でございます。  公述に当たりまして少し立場を申し上げさせていただいて、あと中身に入ってまいりたいと存じます。  この経済なりあるいは景気対策なりをするに当たって、政府なりあるいは国会としてトップダウン的に展開されることが一つございますが、私どもは勤労者の立場で、ボトムアップ的な立場で経済なり景気なりというものをどう見るのか、こういう立場に立っていると思っております。  御承知のとおり、今労使で賃金なり労働時間なりの交渉の真っただ中でございますが、それが経済にもあるいは景気にもかなり直接、間接に影響を持っていると思いますので、そういった視点も加えながら公述をさせていただきたいと存じます。  特に、労働組合の立場で今日の日本経済の調整局面についてどのように認識をしているのかということについて最初に申し上げたいと存じます。  八五年のプラザ合意で円高が急速に進んだ後の円高大型景気が四年にわたって、今日調整局面の真っただ中でございますけれども、この調整局面をどのように乗り切っていくのかということが、勤労者の立場にとりましてもあるいはこの国にとりましても極めて大事であるというふうに考えておりまして、二十一世紀に向けて今後の日本の姿を左右するという視点で考えております。  そこで、時間を節約する意味もありまして、恐縮でございますが資料を使わしていただきたいと存じます。  資料の二ページ目の方を少し参照していただければ幸いでございますが、これは連合の附属機関であります連合総合研究所が日本経済の今後のあり方についてのシミュレーションをしたものでありまして、三つのタイプをシミュレーションしたものであります。ケースAというのは、端的に申し上げますれば低賃上げ型低成長型のパターンでございます。真ん中のケースCというのが、適正な賃上げと今日的な課題であります労働時間の短縮を積極的に促進していく、賃上げで言えばおおむね七%程度の賃上げをするという視点でございます。ケースBというのは大幅な賃上げをして高度成長型のパターン、こう三つのパターンを出してみているわけでありますが、望ましい姿は真ん中のケースの賃上げ時短促進型、こういうものであります。  まず、九一年の経済見通しにつきましては、連合の立場ではおおむね三・五%の実質成長をするであろう、この前提になっている条件は政府経済見通しの前提条件とほぼ同じであります。違う点は、民間の設備投資の見方が、政府は現在で四・七と見ていますが連合は四・回ないしもう少し現在悪くなりつつあるかという状況でございますが、そういう前提に立っております。そして、その上で積極的な政策を推進していく必要あり、こういう立場でございまして、現下の状況を申し上げれば、賃上げは七%程度が望ましい、こういうことを目標にして現在取り組んでおりますが、現在の十二時時点での日本の賃上げ状況は四・九%でございますが、これからまだずっと交渉は続いていきますけれども、できれば経済の安定成長のためにも五%以上の平均賃上げに持ち上げていきたい、このように考えております。  なお、労働時間の短縮については後ほど申し上げますが、画期的な前進をする、時代を画する前進をするというふうに思っております。そういった面で大きく前進しつつありますが、ケースCの真ん中のところまでには少しまだ足りない、このように考えております。  それから、経済とのかかわりで今時に重視をしておりますのは、これからの景気対策も関係をいたしまして、あるいは二十一世紀に向けての今政府でも審議されております新五カ年計画等にも関係をいたしますけれども、生活の重視型、生活関連資本の充実、こういったところに重点を置いていくことが大事であるし、また経済の安定需要のためにも適正な賃上げと時間短縮が重要である、このように考えておりますが、ある面で経済の改革が必要である、このように考えております。  そこで、幾つかの点で現在労使間で論点になっている問題について少し御紹介をしておきたいと思います。  一つは、この景気をどのように見るのかということが最大の焦点でありますが、平均的に言えば年央に反転して年末には景気回復していく、このような視点に立っておりますが、状況は必ずしもそのように動いてないということでございます。  二番目に、ことしの大きな論議でございますけれども、賃金、労働時間等がただ単に労使間の問題であるだけではなくて、国の経済社会あるいはさらには国際関係も含めた非常に幅広い論議が行われ出した。政府生活大国論も絡んできますが、経営者側からも、話題を呼びました盛田さんの論というようなことで、日本の産業のあり方の改善、特に過当競争の改善というようなことが提起されたり、また労働組合でも、一つの例でございますけれども、自動車産業の方が産業のあり方の改善ということで三重苦からの脱出ということを提起しております。若干御紹介をさせていただきますれば、現在の状況であれば、従業員はくたくた、会社はもうかってない、国際的にはたたかれっ放し、この三重苦から脱出をしなければならない、こういう形で産業のあり方、働き方の転換というものが提起されたのが今回の焦点でございまして、それが解決していくのは、一つは労働時間の短縮等国際的な強制とまた社会の中における強制ということが一つのキーワードになっております。  さらには、もう一つことしの特徴は、非常に国際化をしたというのが特徴でございまして、私どもの連合の本部の事務所にも、ニューヨーク・タイムズは来るわ、ヘラルド・トリビューンは来るわ、フランスからリベラシオンは来るわで、日本の賃金及び労働時間の短縮を具体的に取材していく、さらにはCNNはカメラを担いでくるわという形で、日本経済あるいは賃金なり労働時間の問題が非常に大きな課題になってきたというのが特徴でございまして、さらには生活大国の場合も倫理に裏づけられたものでなければならないということも一つの焦点であります。総じて申し上げれば、八五年のプラザ合意以降内需拡大は進んできましたけれども、当時提起されました前川リポート等の改革が進められなかった、したがって改めて今日それが課題になっておりますが、そういった面で提起されました労働時間の短縮、内外価格差の是正、さらには土地・住宅対策ということが改めて国民的な課題になりますし、新五カ年計画にもかかわっていく点であろうと考えております。  もう一つ、改革が必要ということを先ほど来申し上げておりますが、全体を通じましていろいろな面での決定の考え方、物事を決定していくに当たっての考え方、そしてシステムの転換が進みつつあるというのが特徴だと思っております。  例えば、賃金交渉等あるいは時間短縮等についても、八〇年代の間はやや、従来で言えば政府あるいは行政そして経済界が一致した形で、俗に言う政官財が一致する形で賃金等抑制型でありましたけれども、今は少し様子が変わって、政府生活大国論を述べ、また労働大臣が生活大国春闘を期待する、こういう形で変わってきておりまして、ある面で政労使が協議をして新しい経済運営のあり方を追求していくというようなことにもなっておりますし、先ほど来申し上げましたように、産業としての働き方の問題も大きく変わりつつある。さらには賃金のミクロレベルの決定も変わりつつある。従来、年功賃金型で、どちらかというと賃金の配分等につきましても中高年重視型でございましたけれども、今は明らかに若齢者重視型に変わっておりまして、そういった面では日本企業あるいは産業社会の秩序も緩やかに変わりつつある過程にあるということでございまして、これからそういった面でトップダウン的な政策とボトムアップ的な政策と協議というものが非常に大事になっていく、このように考えております。  その次に、これからのあり方について、また参議院に御期待申し上げる点について少し申し上げておきたいと思います。  本日の新聞でも紹介をされておりますが、経済審議会が新経済五カ年計画の策定ということを出しておられますけれども、そういったものに対して政府として当然そういったことは行われるべきでありますが、同時に国会の場におきましてもその内容について同時並行的な論議が必要であるというように考えております。また、労働組合あるいは経営者を含めて民間の国民としてもそこへ積極的な参加をして追求していくということがなされなければ改革が進まない。ある面でトップダウン的な改革とボトムアップ的な改革論が同時に進んでいって、初めて改革が進むというのが八五年以来今日までの経験なり学習であったと思いますが、そういった面でぜひとも今後の景気対策に向けてそういった積極的な施策と討議をお願い申し上げたいと考えております。  それから、その次に景気のことについて少し具体的に、労使交渉等でまさに進めてきた内容を少し実感を持って申し上げたいと思います。  現在、政府におかれましても関係閣僚会議等を開かれて積極的な経済政策の発動ということを御検討でございますが、さらに公定歩合引き下げ公共事業費前倒しなり、あるいは電力、ガスなどの公益事業についての対策なり、非常に施策がとられておりますが、こういったことは当然行われなければならないし、早期に実行されることが望ましい。しかし、現在の状況で申し上げれば、これだけの景気対策だけでは少し不十分ではなかろうか、もっと積極的な生活重視型の政策実行というものが早期に求められるというように思います。  政府から提案されました予算案は、いずれにしても、いずれかの時点で結論が出るわけでございましょうが、さらなる対策というものについても並行的な論議を続けられることが望ましい、このように考えております。その意味では、会期末が六月二十一日でございますか、少なくともそれまでの間経済運営あるいは新たなる緊急政策の発動等に関しましても論議がされていってしかるべきである、夏場以降であれば遅い、このように思っております。そのための財源等につきましては、いろいろございましょうけれども、必要な施策がとられてしかるべきであると思っております。  さらに、経済大国に向けての実行計画の早期策定ということが極めて重要である、いかなる実行をとられるのかということが大事であると思っております。その面で、先ほど申し上げましたような政府と国権の最高府が並行審議して実行体制を強化されることが今一番望ましい、景気の先行きについては決して楽観をいたしておりませんということを申し添えておきたいと存じます。  それで、一ページの方に返って恐縮でございますが、右に挙げておりますようなことを政府としてぜひ示していただきたい。例えば、宮澤内閣として生活大国ということを打ち出しておられますが、内閣にゆとり豊かさ推進本部というような形で政府みずからが示していくということを通じて、地方自治体にしましても、産業界あるいは民間労使におきましてもそういう方向へ動き出すというように考えております。  それから二番目に、労働時間の短縮のことが国民課題になっておりますので、これを一つの例として申し上げさせていただきますが、資料の四ページのところをちょっと参照していただきたいんですが、全体の流れは、日本の労働時間の短縮の経過でありますが、第一次オイルショック以降八〇年代までずっと並行した状態で労働時間の短縮が進みませんでしたけれども、現在急速に進む状態になっております。昨年末の政府統計でいえば二千十六時間ということでございますが、先ほど申し上げましたように画期的に前進する状況にあります。  ただ、ここでぜひ重視していただきたいのは、ここに、資料の上の方に挙げておりますように、欧米との比較が二百時間、五百時間ということは指摘されておりますが、今産業間の実績で申し上げますと、連合の中だけにおきましても上は千八百時間から二千六百時間という形で上下差が七百六十時間からの差を持っております。この格差を是正していくのは、今日法案が既に提起されておりますけれども、制度的な改革を必要とするときに来ているということでございまして、そういった改革を国民的に改革していくということが今最も重要なことでございますので、政府及び関係のところの施策を一層に強化していくことが大事であるというふうに考えております。  また、きょうの今までの中期運営計画でも労働時間それから土地、住宅そして内外価格差と出ておりますが、この土地、住宅のことについてもう少し触れさせていただきまするが、基本的には既にさきの国会で地価税が決定をいたしましたけれども、本年度予算の中では一般財源化されておりますけれども、当初から政府増税ではないし土地対策のためであるということで提起がございましたし、国会決議がございますから、この考え方とおり、原則どおり実行をいただきたい。ことしのことについてはともかくとして、この原則をぜひとも守っていくことが土地問題あるいは住宅問題を解決する基本であるというように考えております。  同時に、今後の経済の質の向上でも、きょうの経済審議会でも住宅の問題が非常に大きく取り上げられておりますが、ある面で持ち家政策として年収の五倍ということも一つ課題でございますし、既に合意されているところでございますが、同時に、持ち家政策だけではなくて借家政策ということも今日必要である。持ち家で生涯を過ごすのも一つ、借家で生涯を過ごすのも一つ、どちらにしてもそういった施策が必要でありますし、新たな視点での公共住宅政策並びに全体の取り組みが必要である、このように考えております。  それから、民間にいたしましても、今、連合と日経連とそして全中、農協中央会でこういった問題についても三者協議をして、都市の勤労者と農村、漁村とが連携して取り組むということで具体的に取り組んでおりますが、そういった改革の取り組みをトップダウン的なこととボトムアップ的なものと両方推進して国民生活の質の向上に転換をさせていくことが大事である、このように考えております。  最後に申し添えておきたいことは、ある面で今日の日本経済成長と効率と競争ということを軸にして、それを軸にすべてを優先したシステムでございますけれども、ある面で政府が提起しておられますように、ゆとり、豊かさ、社会的公正というもう一本の軸立てをしてシステムの転換を図っていくときであるということを申し添えまして、私の方の公述にさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)。
  85. 井上吉夫

    ○理事(井上吉夫君) ありがとうございました。  次に、国際問題につきまして畑田公述人にお願いいたします。畑田公述人
  86. 畑田重夫

    公述人(畑田重夫君) 畑田重夫でございます。  国際問題という抽象的な主題を与えられておりますけれども、予算委員会ということでもありますので、今日の国際情勢のもとにおける日本政府の九二年度予算案中心に、日ごろ一人の国際問題の研究者としての立場から考えていますこと、この一端を述べさせていただきたいと思います。  御承知のように、ソ連、東欧の解体、崩壊、すなわち冷戦の終結と言ってもよろしいかと思いますが、そういう事態は世界の主要国間に軍事費の削減、兵力の縮小、こういう流れをつくり出しております。言うまでもなく、ソ連の解体と申しますのは第二次世界大戦後の米ソ二つの大国中心として推進されてきました軍事ブロックの対峙及びそれぞれの加盟国の核軍拡を含む軍備増強の大前提がなくなったということを意味するわけでございます。事実ワルシャワ条約機構はもう解体されておりますし、東西軍事ブロックの関係各国とも軍事費を削減しつつあります。SIPRI、有名なストックホルムの国際平和研究所でございますが、この研究所の九一年版の年鑑によりますと、NATOの加盟国、これは我が国も参加しています、サミットメンバー国と言いかえてもいいのでありますが、ほとんどすべて軍事費削減の方向に向かっております。  八九年から九〇年にかけての数字でございますが、アメリカがマイナス七・三%、イギリスがマイナス五・三%、フランスがマイナス〇・三%、フランスは一九六六年に既にNATOの軍事機構から脱退をしておりますけれども、さらにイタリア、これがマイナス一・九%ということになっています。ところが、同じように先進国首脳会議、つまりサミットメンバー国でありますが、我が国だけはプラス三・四%ということになっているのであります。  このSIPRIの統計数字を離れまして、ごく最近の流れを具体的に見ましても、アメリカは深刻な財政赤字のもとで、九五年までに軍事費二五%削減計画を進めております。さらに、ブッシュ大統領は去る一月二十八日の予算教書演説で、戦略兵器犬幅削減と五年間で五百億ドルの軍事費削減計画を発表しております。それからイギリスは国防予算と兵員の約二〇%削減計画を発表しております。ドイツも一九九三年から二〇〇五年までの国防計画の予算を当初予算から二五%削減する方針を打ち出しているのであります。一方、ロシアも武器の買い付けを前年比七二%削減などの軍事を中心とした歳出削減による緊縮予算財政赤字をGNPの三・六%に抑えることを目指しております。  既に御承知のように、一九八七年のINF全廃条約、中距離核戦力でありますが、このINF全廃条約に続いて昨年の七月に米ソ両国間でSTART、例の戦略核兵器削減条約でありますが、このSTARTが調印されました。さらに、続いてブッシュ大統領が昨年の九月に、そしてその翌月十月には当時のゴルバチョフ大統領がそれぞれ核兵器削減計画を発表いたしました。そして、ことしに入りまして一月二十八日にもまたブッシュ米大統領が戦略核兵器の削減計画を発表し、そのすぐ翌日二十九日にはエリツィン・ロシア大統領も新たに戦略核兵器削減を提案しているのであります。  ところで本日、私、参議院事務局からの資料をちょうだいしているわけですけれども、この日本政府の九二年度政府予算案を拝見しますと、軍事費、いわゆる防衛関係費というふうになっておりますが、この軍事費は総額で四兆五千五百十八億三千九百万円、これは前年比で伸び率にしますと三。八%増ということになっています。この伸び率は一般会計歳出の伸び率二・七%を上回っておりますし、また、一般会計歳出に占める割合も六・三%ということで、ここ数年間ほぼ同規模であります。宮澤首相もしばしば抑制に努めたという発言をなさっているわけでありますけれども、これはどうも実際数字の裏づけができないんです。決して削減もされていませんし、抑制もされていないんですね。  さらに、前年比で七・八%増となっておりますODA予算です。これにつきましても、私は私なりの見解を持ち合わせておりますけれども、ここでは時間の関係もありますし、これについて詳しく掘り下げて申し上げることは省略させていただきます。  とにかく、このような全世界的な、いわばとうとうとして流れる削減の方向、軍縮の方向、これはどなたも否定できない事実だと思いますけれども、こういうような流れを認めた上で、現在の宮下防衛庁長官が次のように去る二月四日の衆議院の予算委員会での答弁をなさっているわけです。不安定性を持つアジアでは、中国、韓国、ASEANなど軍事費を削減している国はないと、こういうふうに述べておられるのであります。しかし、日本の軍事費、これはドルで申しますと約三百二十九億ドルでございますが、これは、一応権威を認められています「ミリタリー・バランス」の九一年-九二年によりますと、中国それから韓国、ASEAN六カ国の軍事費の総合計、これらを全部合わせたもの、これは約二百七十五億ドルでございますけれども、これを日本一国で上回っているのであります。  したがって、中山外務大臣が、これは当時でありますけれども、昨年の七月の恒例の自民党軽井沢セミナー、ここで、アジア周辺諸国にとっては考えようによっては大変な脅威である、このように述べられたというのも十分に根拠のあるところだろうと私は思います。だからこそ、今問題になっています、これは特にカンボジアのフン・セン首相の日本に対するPKOとの関連における自衛隊の派遣要請との関連で非常にホットな問題になっているわけでありますが、日本の自衛隊の海外派兵、派遣について、私の承知しているところでは、韓国、フィリピン、中国、べトナムそれからインドネシアなどのアジア諸国は、これは政府筋の要人の発言もしくは主たる新聞その他の報道等ですけれども、国連の名をかりた自衛隊の派兵にも強い警戒心を抱き、批判的見解を表明しているのだと思います。  ここでどうしても私として触れておきたいと思いますのは、つい先ごろのブッシュ米大統領の来日と日米首脳会談にかかわる事柄であります。  あのときの東京宣言は、日米安保条約を日米軍事同盟関係の中核であるというふうにしておりますし、さらに、両国がグローバルパートナーシップのもとで世界の平和及び安定を確保するために、おのおのの役割と責任を担うべく協力していく上での政治的基盤であるというふうに位置づけて、冷戦後の時代に日米安保条約を軸に地球的規模で日米軍事同盟関係を拡大強化する方向を鮮明にしたのであります。さらに、アクションプラン、行動計画では米軍の前方展開の適切な水準の維持が必要であるということを確認し合いました。  このように、日米両国は日米安保条約を地球的規模で発動する軍事同盟へと強化することなどで同意しまして、在日米軍へのいわゆる思いやり予算についてもより高い負担率をもって負担するというふうにしているのであります。日本は、このように世界的な軍縮の流れに逆行して、新たな軍事費拡大と安保強化の対米公約をしたわけであります。さらにここでつけ加えておきますと、日米両国は、自衛隊と米軍との協力を拡大し、双方の防衛技術交流を推進するための措置をとるということも約束し合ったのであります。  これは一般論として申し上げるわけですが、そもそも防衛費というものの中身を見ますと、これは何といっても兵器購入費が最大部分を占めるものであることに改めて私たちは注意を払っておく必要があるんではないかと思います。ところが、およそ兵器というものは煮ても焼いても食えない、そういう代物でありまして、相手に対する恫喝と人殺し以外には役に立たないものなのであります。すなわち、これを少し経済学的な用語で申しますと、兵器は生産手段にも生活手段にもならないものなのであります。だからこそ、主権者である国民、同時に納税者でもある国民の立場に立って考えますときに、その生活水準の維持向上の見地から、私たちは防衛費、いわゆる軍事費に重大な関心を払わざるを得ないのであります。  先ほど私は、いわゆる思いやり予算のことに触れました。この思いやり予算は七八年から始まっているわけです。金丸防衛庁長官の当時でありますが、これはそこから始まりまして、八七年の特別協定、さらに九一年の新特別協定を経て今日に至っているのでありますけれども、七八年の開始のときに比べますと、今度の予算、九二年度のそれは何と三十二倍にも膨れ上がっているのであります。  ところで、その思いやり予算が始まりました七八年という年はどういう年であったのかを振り返ってみますと、実はこの年に事実上の安保条約の再改定とも言われたあの日米防衛協力のための指針、ガイドライン、これが日米両国政府間で合意を見た年であります。このガイドラインには、前提条件として次の三つ、すなわち事前協議と日本国憲法の原則、それから非核三原則、この三つは日米間では研究協議の対象としないとなっているのであります。さらに八四年の、これは中曽根内閣時代でありますけれども、日米諮問委員会報告書、これでございますが、日本語で日本政府に出され、英語でアメリカ合衆国大統領に出されたものでありますけれども、この諮問委員会報告書には次のように書いてあります。日本国際社会の要請に対する政策対応の阻害要因として国の特異性を挙げることをやめるべきであると、このように書いてあるのであります。つまり、日本の国の特異性を挙げるのをやめるべきだと。  私は、決して日本政府が今この日本の特異性を完全に無視したり軽視していると言っているのではございません。なぜなら、ガイドラインはただ対象としない、研究協議の対象としないと書いているだけでありますし、あくまでもこれは報告書にすぎないからであります。したがって、ここでは、日本政府日本の特異性を無視したり軽視することが今後ともないようにという私の希望の表明にとどめたいと思うのでありますが、あえて一人の現代国際政治学研究者の立場からの提言をするとすれば、日本は戦争における世界唯一の被爆体験国であります。これは実験その他の被害国はありますけれども、戦争における世界ただ一つの被爆体験国であります。同時に、国連憲章の精神をさらに徹底させた平和憲法を持っている国であるという日本の特異性、これを大いに尊重しながら国際的に対応してほしいということでございます。  さて、冷戦後の日本がその予算編成の過程で学ぶべきことは、昨年九月のフィリピン上院の決議だろうと私は思います。フィリピン上院決議が外国の軍事基地を拒否したこと自体、私は今の国際情勢の流れのもとでは当然のことだと思うと同時に、その決断に敬意を払ってよいことだと思いますけれども、そのことよりも、よくその中身を読んでみますと、その決議の内容の質の高さに謙虚に学ぶべきだろうということでございます。  その決議は、まず敏感な情勢認識を前提にしています。次のように書いてあります。フィリピンにおけるアメリカの軍事施設の保持は、冷戦構造の解体、漸進的な軍縮、非軍事化を特徴とする今日の国際情勢にあって時代錯誤であるという言葉を使っています、時代錯誤と。また、自国の憲法の関連条文を引き合いに出しながら、アメリカとフィリピン間で調印されて上院に提出された米比新基地条約とその附属協定がフィリピン憲法の条文とその精神の尊重を完全に欠いていると、こういう文面になっているのであります。  私は、日本国憲法の平和原則並びに国連憲章の基本精神という原点に立ち返り、第一には日本国憲法と自衛隊との関係、第二にはその自衛隊の海外派兵と憲法の平和原則との関係、第三には敵対的軍事同盟の一種であります日米安保条約と日本国憲法及び国連憲章との関係などについて、国権の最高機関であるこの国会において深く掘り下げた本格的な討議が今こそなされるべきであるというふうに思いますし、そのことを特に切望いたしまして、本日の私の公述を終わりたいというふうに思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  87. 井上吉夫

    ○理事(井上吉夫君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  88. 合馬敬

    ○合馬敬君 きょうはお忙しいところを日本労働組合総連合会事務局長河口先生、それから国際政治学者の畑田先生、どうもありがとうございました。  最初に、河口公述人に三間ほどお伺いいたしたいと思いますが、一つは最近の景気動向でございますけれども、昨年来我が国の経済は、住宅着工が大幅に減少する、設備投資も下方修正が相次いでおる、消費も鈍化する、九一年度の十月から十二月までのGNPの成長率は二年半ぶりにマイナス〇・二%。この調子でいくと三・七%の実質成長率の達成も困難ではないか、こういったようなことが一方であるわけでございまして、景気の落ち込みは非常に顕著になっておる。しかしながら、一方で生産活動というのもそんなにある意味では落ち込んでいない。人手不足の状態も続いておる。従来の景気のパターンとは異なる状況があらわれておるのじゃないか、そういう意味では新型の不況であるという意見もあるわけでございます。  これにつきましては、日本経済がある意味で成熟化の段階を迎えだからではないか。つまり、企業も個人もかつてないほど資産の蓄積が進んでおる、懐が深くなった。こういったような結果一景気が下向きになりましてもすぐに経済活動が大きく冷え込むということがなくなって、景気に対して従来の物差しではかるということが難しくなってきておるのではないか、そういう見方もあるわけでございますが、河口公述人、これにつきましてどのような見方をされておるのか、御意見をお伺いいたしたいと思います。
  89. 河口博行

    公述人(河口博行君) まず、長期的な視点で申し上げれば、今後長期的に日本経済全体が新たなる発展をする、特に内需型経済中心にして生活重視型で発展をしていくというふうに確信をしていると申し上げてよいと思っております。ある面で、今までの理想としたことが実現される時代になると思っております。  しかしながら、そこへの移行の過程の中でなすべきことがある。ある面で新型不況というふうにマスコミ等触れておりますが、明らかに人手不足時代に入っている。労働市場が大きく変わりつつある。しかしながら、現在の労働のシステムというのは人生六十年を前提とした労働システムになっておりますから、人生八十年を前提とした労働システムに全体を変えていくということが必要であると思っております。  そして、そこへ移行する過程の中で、現局面ということで申し上げれば、先ほども申し上げましたように新しい型に入っておりますけれども、現局面の移行過程の中では、もう少し積極的な対策を早い時期に打つ必要ありと、このように考えておりますのでなければ、結果的に今言われているようなマイナス方向に入っていく可能性を持っているというように考えておりますので、賃金も労働時間短縮も、あるいは積極的な設備投資も、新しい時代に向けた投資なり、あるいは生活改善なり、公共投資なりが必要であるというように考えております。
  90. 合馬敬

    ○合馬敬君 次に、労働時間の短縮の問題でございますが、ゆとりのある生活に向けて労働時間の短縮促進のムードというのが非常に高まっておるわけでございまして、春闘でも時短が大きな焦点となっておるということは先ほど公述人がおっしゃったとおりでございます。統計を見ましても、三十五年に二千四百二十六時間でございますか、平成三年には二千十六時間まで短縮しておる。さらに画期的な対策を講じてこれを何とかしたい、こういうことでございます。  政府におきましても、これまで労働時間の短縮というものを進めるのが非常に難しかった中小企業中心にいたしまして、時短促進に向けた環境整備を進めるために、労働時間短縮促進法案というのを今国会に提出させていただいておりますが、平成年度よりスタートいたしました中小企業労働環境整備貸付制度、いわゆる時短融資、こういった制度の拡充についてもさまざまな検討に入るというように報ぜられております。  こうした制度面からの諸施策によりまして、労働時間の短縮の着実な進展というのが期待されるわけでございますが、私は制度面からの環境づくりと同時に、労使双方がそれぞれの職場に適したやり方で仕事の効率化、合理化を進めるために、積極的にアイデアを出し合っていくことが大切ではないか。そして、よいアイデアがあれば政府としてもこれを採用しまして、モデルとして積極的にPRしていくということが必要であると考えておられるわけでございます。実際に労使交渉の場に接しておられます河口公述人から見まして、労使がそれぞれの職場に合った形でアイデアを出し合っていくという手法についてどうお考えでしょうか。労使交渉の場におきます時短促進に関する主要課題につきまして、御意見をお伺いいたしたいと思うわけでございます。  それから、労働意識の問題もございまして、私も長いこと国家公務員をやっておったわけでございますけれども、やはり我々は国のために忠実、無定量で働くという意識がございまして、土曜、日曜なしと。私が一番長く働いたのは、二週間ぶっ続けで睡眠時間三時間で頑張った覚えがありますが、それによって残業手当をもらおう、そういったような意思もないわけでございまして、どうもやはり日本人というのは仕事が人生である、そういう考えもございます。  どこの国とは申しませんけれども、例えば私がおりました国では、せっかく農作業で収穫をいたしましても、もう時間が来ればそれで終わり、次の日は雨が降りそうだからそのままでは雨に打たれて腐ってしまうと言っても、時間が来ればもう働かない。した分って、穀物のロスも多くなる。そういったような意識があるわけでございます。ベルトコンベヤーにいたしましても、もう時間が来ればつくりかけでも終わり、そういったようなことがあるわけでございますが、少なくともこれまでの我々日本人は金だけではない、やはり仕事でともかく自分を表現するんだ、そういったような意識もありますので、なかなか時短を取り上げて現実にこれを実行していくというのもある意味では非常に難しい面もあると思いますが、そういう面も含めまして御意見をお伺いいたしたいと思います。
  91. 河口博行

    公述人(河口博行君) 問題意識及び指摘されました諸点については基本的に同感であることをまず申し上げておきたいと存じます。  先ほど使いました資料をもう一度参照していただければと思いますが、まず八五年のプラザ合意以降、前川リポートが出て、そして政府としても時間短縮、九二年、本年度千八百時間という目標を出されました。本来であれば、あの時点から今日までソフトにランディングしていくという形で進んでいくのが最も望ましいのでありますが、状況で言えば、ことし画期的前進すると申しましたように、ある面で労使交渉あるいは制度的にも割とハードランディングすることになると見ております。円高が二百円から百五十円に上がったように、労働時間も二千百時間から千八百時間に一挙におりていく、ある面で日本的特質なのかもしれません。しかし、今それをやることが大事である、このように考えております。  少し状況を申し上げますと、九二年に千八百時間、ことしいきますのはNTTを初めとするところが交渉で完全にいきます。それから、九三年に千八古時間のところは、電力並びに電機も大手の企業で出しましたように、全体進んでまいります。それから、九〇年代半ばまでというのは大勢進んでまいります。昨年、鉄鋼労使が協定をいたしましたけれども、繊維も化学もそのほかの産業、大勢進んでいきます。したがいまして、残る課題と申しますのは、御指摘のように中小企業全般もございますが、運輸産業であるとかコンピューターソフトウエアであるとか、あるいは建設一部とか、こういう困難職種について全体が支援をしていく、政策的にも政府的にも支援されると同時に、民間労使におきましても特に大企業労使が全力を挙げて支援していくということが必要であると思っております。  それからまた、政策的な面で、例えば運輸等は連合の中で最も労働時間が長い産業でございますが、ある面で今日の軽薄短小時代と消費者を重視した運輸政策の中で非常に貢献した産業だと思いますけれども、一方において労働時間が非常に長いという形で負担を持っておりますから、いろいろ論議されておりますように、トラックから鉄道へ、あるいは海上輸送へといろいろな形でのモーダルシフトということが言われておりますが、あるいは発注側と受ける側との相互の協議というような形で全体的な協議システム、そういった取り組みが必要だと思っております。  それと同時に、学校の五日制の問題が国民課題にこれからなっていくと思いますが、既に政府の方も二学期から一日だけ五日制に入るということになっておりまして、ある面で非常に大きな課題になっていくと考えております。基本的な考え方だけ申し上げれば、社会とともに進んでいく必要があるし、アメリカもヨーロッパも五日制に入っておりますから、同じ方向に同じテンポで入っていくことが望ましいと思います。  少しだけ理屈を申し上げさせていただければ、先ほど申し上げましたように、人生八十年を前提としたシステムに変えていく必要がある。千八百時間で計算をいたしますれば、人生時間が七十万時間、そして千八百時間を前提とした生涯労働時間が七万時間、自由時間が二十一万時間、こういう計算になるわけでございますけれども、それを前提とした生涯教育というような形のものが必要になってくるということも関係した課題になっていくであろうと思っておりますが、そういった問題が今後の課題になっていくというように考えております。  それから、今御指摘になりましたアイデアの点等についてでございますけれども、これは非常にたくさんのものが出てまいっておりまして、非常にいいことでございまして、その中からいろいろな改革を進めていく。また先ほども少し御紹介しましたように、産業のあり方自体も変えていくこと、働き方を変えていくことが必要ということで、制度だけではなくて全体の参加が必要であると思っております。  それから最後に、明らかに意識の問題でございまして、また先生みずからの御例を引かれましたけれども同感でございまして、この場を例にさせていただいて恐縮でございますけれども、例えば国会が開かれておれば霞が関の役所はもうこうこうと夜中まで電気がついている、特に大蔵省はもう十二時ごろまで全館ついているというような状態で、私どももチェックに入っておりますけれども、その面を解決していこうと思えば、これは何も国会をどうこう申し上げるつもりはありませんが、例えば霞が関をそういうふうにしようと思えば並行審議が必要である。審議会で審議する、省庁で審議されている内容と同じレベルの情報が国会に提供されて同じように論議されていけば、国会の場になっていろいろな質問をしなきゃならぬとかいうことはなくなっていくというふうに思っております。  そういった双方の取り組みが必要であるというふうに考えておりまして、しかし、今は時短先にありきで進んでいくことが時代の改革に有効である、このように考えております。  長くなって恐縮でございます。
  92. 合馬敬

    ○合馬敬君 どうもありがとうございました。  それから、おっしゃられるとおり、労使ともに時短を進めるということでは一致しておるわけでございますけれども、現実問題としてなかなかそうトラスチックに進まないということについて、もちろん経営側にも問題はあると思いますが、労働側にも、例えば時間外の労働手当を生活費の一部、こう見る考えがあるわけでございます。そうしますと、経営者側からいたしますと、時間外手当を含めた現行給与水準の維持を前提に時短を進める、こういうことになりますとやはり生産性を向上しないとこれに対応できないわけでございますが、生産量、販売量といったようなものも当然減ってくるわけでございまして一利益も減少するという意味で時短を進めるということに一つ大きな難しい問題があるんじゃないか、こう思います。  それから、年次有給休暇につきましても、先ほどの意識の問題もありますが、現在使い残しか多い。現実に私も有給休暇を十分の一もとった記憶がございませんで、もったいないことをしたと今でも思っておるわけでございますが、労働者自身が進んでこの時短を進めていくんだという意識改革というものも必要になってきておるというのは事実でございます。  そういうことで、河口公述人、時短を進めるに際しまして労働側の課題についてこういったものをどう考えておられるか、その対応、意識改革は難しい問題でございましょうが、御意見があればお伺いいたしたいと思います。
  93. 河口博行

    公述人(河口博行君) 御指摘の問題点を持っておりますことを率直に申し上げておきます。  まず、基本的なことは意識改革が必要であるということは全く賛成でございまして、あるときには徹底して残業を規制していく、あるいは年休を完全に取得するということが大事であるというふうに考えております。それに伴っていろいろな課題の諸改革が進んでいくと思っております。  それで、少し具体的なことで、時間外労働手当が生活費の一部になっているということにつきまして率直にそれは認めますし、またそのとおりであろうと思います労、しかしある面では意識を改革して総残業量を減らしていくということが必要である。それに伴って、問題は住宅費等のローンの支払い等にそれが組み込まれているという状況の中で極めて切実な問題を持っておりますが、それはそれで住宅対策を進めると同時に、企業内での取り組みについて突っ込んだ対策、また当面の対策ということもいろいろ工夫してやるべきことはあると思います。そのあたりは私どもの課題だと思っておりますが、住宅の方はまた国会の場で対策をとっていく必要があると思っております。  それから、生産性の問題について少しだけ触れさせていただきたいと思いますが、時間短縮をすることによって新たなる短縮のための設備投資というものは確実に進んでいくと思います。日本企業のたくましさというのはその面では劣らない。だから、時短を進めれば企業の改革は確実に進んでいくというように考えております。同時に、産業のあり方が変わっていく。先ほど自動車産業のことを少し御紹介申し上げましたが、ある面で非常にすぐれたリポートが出ておりますけれども、日本の産業のあり方、働き方のあり方を変えていくきっかけになっていく。そしてある面で言えば、ことしは二千百時間社会から千八百時間社会に決定的に移行する時代に入っているというように考えておりますので、意識の改革は必要であると申し上げておきたいと存じます。  以上です。
  94. 合馬敬

    ○合馬敬君 どうもありがとうございました。  それでは次に、畑田公述人にお伺いいたします。  PKOの問題でございますが、去る三月二十二日に渡辺外務大臣とカンボジアのプノンペン政府のフン・セン首相が会見いたしまして、その折にフン・セン首相が、カンボジアでUNTAC、国連カンボジア暫定統治機構による活動が本格化しておる、我が国に対しましても一層大幅な資金拠出と自衛隊の派遣を要請いたしたわけでございます。  御承知のように、カンボジアはこれまでポル・ポト、それからシアヌーク、それからソン・サンですか、それにプノンペン政権と四派が入り乱れて、民族虐殺を含めて大変な内戦をやってきたわけでございますが、やっと停戦協定ができた。しかし、まだなかなか治安も悪いそうでございまして、時々反乱が起こったり非常に危ない。地雷も山のように、何か全土の五%ぐらいしか安全でないといった説まであるそうでございますが、そういった中で三十五万人に上る難民を自国に帰して、そして選挙まで行うと。そのためには停戦協定が守られるというのが一番大事なことであると私は思っております。  やはりカンボジアの平和というのはアジアの平和につながるわけでございまして、そういうことでフン・セン首相は、とりわけカンボジアのPKOにつきまして、二十カ国の兵士が来ている中で日本の兵士の姿が見えない、自衛隊派遣に後ろ向きの人がいるのは承知しているが時代おくれの考え方だと思う、自衛隊、警察官、文民の三拍子そろった貢献をお願いしたい、こういうことを率直に言っておられるわけでございます。  それから、この前UNTACの明石代表が日本に来られましたときに私が直接お伺いいたしましたときも、私見であるがと断りまして、PKOというのは戦わない軍隊である、あつものに懲りてなますを吹くようなことをしてもらいたくない、そういったようなことでこの問題については御配慮をお願いしたい、こういうような意見を述べられたわけでございます。  昨年の湾岸戦争以降、激動する国際情勢の中で我が国に求められておりますのは、国際社会からの期待ということは、単に資金面でなくて額に汗を流して働く人的貢献の分野にも及んでいるということはこれはもう率直な事実でありまして、真っ正面から私どもとしては誠実にこれにこたえていく必要があるわけでございます。  そういうことで、私ども自由民主党は、日本国憲法のもとでこのような国際社会からの期待にこたえて国際貢献を実施していくということでPKO法案の速やかな成立を訴えておるものでございますが、このような私どもの考え方につきまして畑田先生の御見解を賜りたいと思います。
  95. 畑田重夫

    公述人(畑田重夫君) 先ほど大変ホットな問題になっているというふうに私も言及いたしましたことでございますけれども、ただいま自由民主党としてはという立場から私の見解を求められているわけでございます。  結論から申しますと、時代おくれというのは、先ほど私はフィリピンの決議の一部を御紹介しましたが、あそこで時代錯誤という言葉を使っているということを申し上げましたけれども、現実の全世界の特に冷戦終結後の動向からしまして、例えば日本国憲法の原理原則というのはまさに、四十数年間の紆余曲折はありましたけれども、今これが最も新鮮なものである、第二次世界大戦後の国連憲章、国連とともに。あの十五年戦争の結果、大変大きな犠牲、わだつみの声という遺書を残しまして私の同期のクラス連中が亡くなりましたけれども、私もわだっみの世代の一人なんですけれども、あの多大の犠牲、日本国民だけでなくてアジア諸国民がその犠牲の上にから得た非常に気高い内客を持った憲法の原理原則は、今こそこれは最も時宜にかなっているものであります。  したがって、ただいま私にお尋ねございましたけれども、例えばフン・セン首相の要請、これが実は正しいのかどうか。つまり、無条件にその相手国の責任ある立場の首相からの要請なんだ、だからこれは素直に受けるのが国際的な協力なんだという考え方ではなくて、これ自体はどうなのかということと、我が国における、つまり先ほど私は我が国の特異性という言葉、日米諮問委員会の中でよく使われているんですが、この立場に照らしてどうなのかと。  フィリピンでもわざわざ憲法の原則を決議文には引用しているんですね。これはフィリピン憲法の第二条第二節、あるいは第二条第七節、第二条第八節というふうに具体的にこれを引き合いに出しているんですが、我が国の場合は、主として憲法の前文とそれから第九条、この中を貫いている原理原則というのは、そして現在本当に国際社会において名誉ある地位を占めるというのは、日本が平和の原則に徹してこそ、これはアジア諸国を初め多くの国々から信頼され、尊敬をされるわけであります。  それにつけ加えて申しますと、実は本日私が受けましたニューヨーク発の時事の電報でございますけれども、国連筋がフン・セン首相の日本における発言に対して疑問を提起しています、なぜじかに日本に要請したのか真意がわからないと。というのは、本来国連の場合は、これはPKOは決して国連憲章にはないんです。国連憲章ではなくて、スエズの五六年ぐらいから事実上PKOは組織されてきているんですけれども、実は本来国連としてはその国と、つまり日本でいいますと、日本との間でちゃんとこれは国連の方が提起して、それに対してその国の実情を踏まえての意向を聞いて、それから特別の協定を結ぶべきだと。それをじかに日本にフン・セン首相が要請したというのは、これは真意がわからないと。これはニューヨーク発二十四日の時事の電報であります。すべての新聞をごらんになっている方にはかかると思いますけれども、これは私もそうだと思います。  つまり、日本が今国際的に貢献する道というのは、例えば憲法の原理原則に反するので自衛隊の派遣というのは慎むべきだというのは、私はこれはまだ消極的だと思うんですね。それは消極的な考え方なんですね。そうじゃなくて、憲法の原理原則に従って、積極的に今のこの新しい情勢のもとで日本としてできることは何か、これは幾らでもございます。ただいま難民についての御言及もございましたが、これはカンボジアだけじゃなくて、全世界、難民救済のためにとか、あるいは二秒に一人の割合で今子供たちが死亡しているんですけれども、こういう子供たちが飢餓で死ぬ場合、それからほんの少しワクチンその他でもあれば命を救うことができるという状況なんですけれども、そういう者を救うための貢献であるとか、あるいは何よりも日本国憲法そのものを積極的に輸出するという、この姿勢と精神が今こそ日本に求められているんだろうと私は思います。
  96. 合馬敬

    ○合馬敬君 ありがとうございました。  次に、時間がありませんので、今後の日ロ関係についてお伺いしたいと思います。  昨年末にソ連邦が崩壊したわけでございますが、第二次世界大戦後の四十数年間に及ぶ冷戦体制に終えんをもたらして、国際社会の構図が大きく転換した。これは当然なことでございますが、ソ連邦の崩壊というのは、私、ソ連に外交官として三年間滞在しておったわけでございますが、基本的にはソ連自体の経済がこれは成長に適していなかったといった問題がありますが、大体経済の混乱が起こった場合には、それを解決するのは軍事で外国に訴えるわけでございますけれども、これがアメリカの核の力、それから日本におきましては日米安保条約、自衛隊、それからヨーロッパにおきましてはNATO、この存在で外国に対して手が出せなかった、こういう大きな問題があると思います。  しかしながら、日米安保条約につきましては、この前来ましたソ連のコズイレフ外相も日米安保条約は容認する、そういうようにはっきり言っておるわけでございます。そういうことで、これからの我が国との、ペレストロイカ以降の日ソ関係というのはだんだん変化してきたわけでございまして、最近ではエリツィン大統領は、日本はパートナーであり、潜在的同盟国である、そう言うようになったわけでございます。そういう意味で、我々としましてはCIS、ロシアを含めました独立国家共同体との新たな関係を構築すべきときに来ておるわけでございます。  ただ、御承知のようにロシア自体、CIS自体が命どのような方向に落ちつくのか、全くこれが不透明でございまして、この前、中曽根元首相が帰ってまいりましたが、この前の食糧価格の自由化、これで非常に暴動が起こるのを心配していたけれども、今度はエネルギーの自由化、これが春先の暴動につながるんじゃないか。寒いときには外に出ていきませんのでソ連では暴動が起こせないわけでございますが、春になって暖かくなりますとみんなが外に出られますので、非常に危ないことになるんじゃないかと。  私は、ロシアがこれから一遍に今までの体制から、私有財産制だ、市場経済化だ、それを民主主義で実行するのはなかなか無理だと思います。極端に言いますと、私は、最初のうちは国家資本主義プラス民族主義ぐらいでいかぬとソ連はまとまらないんじゃないかとさえ思っておるわけでございますが、そういったようなロシア、これからエリツィン大統領が果たして本当に訪日されるまで政権がもつのかどうか、これだって実は非常に問題だと思います。  そういう中で、今から日ロ関係というのを構築していく、非常に難しい問題があるわけでございまして……
  97. 井上吉夫

    ○理事(井上吉夫君) 合馬君、手短かに願います。
  98. 合馬敬

    ○合馬敬君 はい。そういうことで、これからの日ロ関係、また私たちは心して取り組んでいきたい、こう思っておりますので。
  99. 井上吉夫

    ○理事(井上吉夫君) 答えてもらいますか。
  100. 合馬敬

    ○合馬敬君 いいです。時間ですから結構でございます。
  101. 吉田達男

    ○吉田達男君 社会党でございますが、河口公述人、畑田公述人、おいでくださいましてありがとうございます。若干の質問を申し上げまして、私どもの重要な予算審議にお知恵を拝借いたしたいと思いましてお伺いいたしますが、初めに河口公述人にお伺いいたします。  今ちょうど国民所得構成の六五%ぐらいが雇用所得、つまり給与になっているんですが、それの基本的なところが決まるという今日の時期に、労働組合の一番大きなナショナルセンターとしての仕事をされ、シミュレーションが出ておりますが、賃上げ七%がまずまずのケースということで出されました。昨今、電機労連あるいは鉄鋼労連等々、組合と会社の妥結が成りまして、四・六とかそういうシミュレーションよりも低い状況になっております。片や景気の方は、政府経済チェックのおくれといいますか、あわせて対応のおくれといいますか、ついにマイナスになるというような状況もあって、このシミュレーションを参考にいたしますと、大変大きいてこ入れをしなければ三・五%の実質成長率を経済の中に見通すことが難しくなった、こういう印象を受けるのでございます。  したがって、今、政府生活大国と言い、またゆとりある生活を求めて運動をなさっていらっしゃる連合とされましては、このシミュレーションを持っていくと大変に国民所得の大きいウエートを占める雇用所得が減ってしまうということになると、景気が思惑どおり膨れてこないんじゃないかという心配をするんですが、先の見通しとあわせましてどういう御見解に相なりましょうか、お尋ねをいたします。
  102. 河口博行

    公述人(河口博行君) 先ほど提起をいたしました中成長型の分については一つの目標にすべきものとして出しているわけではございますが、現在の状況で申し上げますと、先ほど申しましたように、現在だけで平均すれば四・九%の賃上げ上昇率でございます、これは現在時点でございますが。例年の見込みで申し上げますと、当面連合として期待をし、また督励をしておりますことは、全体平均を通じて五%以上に持っていきたい、このように考えております。  それで、昨年の実績で申し上げますと、五月時点で五・六六%の賃上げ上昇率でございましたが、秋時点で中労委なり労働省が実態調査を行った内容で申し上げますと、五・八%ないし九%の上昇率という結果が出ます。なぜ出るかといいますと、賃上げ後いろいろな若年者是正等を含めまして是正を行っているのが一つでございますが、あわせまして中小企業が大体〇・五%ぐらい多く賃上げする傾向を持ってきておりまして、全体を通じましてもう少し上がっていく、このように見ております。  そこで、御指摘の景気見通しと賃金等だけでのかかわりで申し上げますれば、ここに出しておりますようなシミュレーションに到達するのが少し難しくなってくる、このように考えております。  したがいまして、私どもも積極的な賃金の引き上げと申しますか、経済的に申し上げれば、国民的な安定需要の拡大ということに努めますと同時に、政府全体としての施策というものが必要である、先ほども申し上げましたが特に六月までの対策が重要である、このように考えております。
  103. 吉田達男

    ○吉田達男君 経済対策の一番大きい柱は内需拡大ということで、輸出ということで景気を引っ張るのは困難な世界情勢ですから、こういう内需拡大ということになると、GNPの中で国民消費支出が五七、八ありますから、そこのところに思いをいたさなければならない。ということになると、やっぱりさっきの話で所得構成の中の給与所得というものが国民消費支出を一番大きいファクターとして引っ張る、こういうことになればその辺のところも経済効果というものを横目に見ながら、組合はもちろんそうでありましょうが、働く者ですから。しかし、労使の分配ということでは経営者の方も分配率をもっと考えて、そのことによって日本経済が回っていくんだ、こういう視点を持つべきだと思うのでございますが、この点について、介さなかでございますから、御見解を聞かせていただきたいと思います。
  104. 河口博行

    公述人(河口博行君) 御指摘のとおりだと思っておりますが、経営者のことについて少し論及をさせていただきたいと存じます。  ことし労使間でかつてなく労働分配率の論議が具体的に行われたわけでございますが、また御承知のとおり、経団連の副会長をしておられる盛田さんが日本経営のあり方ということで分配率を高めていく必要性あり、こういう論文を提起されて非常に話題を呼びました。あの論文は経団連の、ある面で代弁された気持ちかなと好意的に私は受け取っておりますけれども、そういった転換が経営者としても必要である、このように考えております。  労働時間の短縮ということに関して現在の状況で申し上げれば、一歩踏み込んだ状態になっているということで、その面に関しては期待できるところでございます。しかし、事賃金ということで申し上げれば、生産性基準原理を貫徹して抑制していくということが続いていると思っておりますが、もう少し賃金等においても配分が必要であるというふうに考えております。  そこで、若干資料を使わせていただきますけれども、先ほどの資料の中で、日本の賃金がどうなっているかということを少し説明をさせていただきたいと存じます。  資料5というところをちょっと御参照いただけますでしょうか。この資料5というのは、日本の賃金の基本問題と最近の賃金の個別の勤労者の賃金決定の課題を出しているものでございます。上の方の資料は、これは労働省の賃金構造基本統計調査からでございます。下の資料も労働省の調査でございます。  それで、一つの例でございますけれども、高校卒男子の標準労働者の所定内賃金と実質伸びがどれだけ伸びてきたかということでございますが、ここの表にございますように、十年間の伸び方、年率の伸び方と実質というものを年齢ポイントで見た場合にはこのような図になります。特に中堅どころの三十代、四十代というのは年率で申しますと〇・一%ないし二%しか上がっておりません。十年間の実質倍率についてもこのような状況になっているわけでございます。  そういった面で、賃金の場合も名目上の賃金から物価上昇を引いて、定期昇給等を引いて、最後に残る生活向上分という考え方、労働組合として要求するのはその視点があるわけでございますが、もう少し実質賃金を上げていかなければならないというように考えております。  それからもう一つ、あえてつけ加えさせていただきますけれども、下の表にありますように、七〇年代から八〇年代までは中高年を重視した賃金政策でございましたけれども、ここに出ておりますように、九〇年代に入りまして急速に若年者優先ということで、いわば内容的なものがそちらに配分が向かっていきます。したがいまして、あえて申し上げれば、生活向上に向けて中高年安心、若者満足というような賃金に引き上げていくということが必要でございまして、そのためには実質で年率二%強の賃金を引き上げていくことが、この国が安心して、しかも、秩序立って改革していくためには必要であると、このように考えておりまして、そういったときに来ている。今大事なことは、マクロ的な視点と同時にミクロ的な視点も両方の決定システムが変わりつつあるという過程でございますので、そういった実質賃金の二%以上の上昇が必要と、このように判断しております。
  105. 吉田達男

    ○吉田達男君 実情をお伺いいたしますと、やっぱり時代の変化とともに賃金体系等にも触れて、いわばそういう転換すべき時期に来ておると思います。  さきの労働生産性のこともあって、総理大臣が特に日本人の労働者の質とアメリカの労働者の質と対比された発言で誤解を招きましたが、率直に言いますと、労働生産性というものの理屈と物価の値上がりというものとの、そこの有機的な関係を労使交渉の中でされませんと、いわば変な丸め込みになってしまうという圧迫がありますので。  ちょっと一言言いますと、この労働生産性というものは、労働者の勤労意欲と勤労の質ということとどの程度かかわり合いがあるかということです。労働生産性というものは割り算しますと、生産高を労働者の数で割るあるいは労働時間で割れば労働生産性が出ますね。だからそれをもう一つ、資本という式を入れると、つまり労働者分の生産高イコール資本分の生産高掛ける労働者分の資本ということになると、資本と資本は殺し合いますからね。  数式で言うと、生産高を資本で割ったもの、これは資本の回転率ですね。それから、資本を労働者の数で割ったもの、これ掛けたら労働生産性になるわけですね。だから、逆に言うと労働者分の資本というのは一人当たりの労働者の資本の装備率ですからね。早い話が、工場労働者が流れ作業の中にありまして、その中で与えられたセクションで標準化された資材を標準化された作業としてやる。その中に労働者の質、労働者の意欲が、個人差というものはもう吸収されておって、それは一つの流れの中でいくわけですから、そういう仕事をさせて労働生産性を上げるのは、これは労働者の責任なのか、経営者の責任なのかと、こういうことになりますが、この点についてはどういう見解をお持ちですか。
  106. 河口博行

    公述人(河口博行君) 労働者の質の問題と総理の発言の問題が少しありましたので、先にそのことをちょっと触れさせていただきたいと思っております。  基本的には、世界各国ともに労働者と申しますか勤労者の場合は、どの国にとりましても大変まじめであるというふうに思っております。また、私どもの労働組合で調査したヨーロッパ十カ国での意識調査、アメリカでの意識調査につきましても、例えば会社の発展のために全力を尽くしたいと思うかと、こういう質問には、各国とも日本以上の高い数値を示しておりますから、どこの国の勤労者も極めてまじめであるということを申し上げておきたいと思います。  その上に立ちまして、この労働生産性の点についてでございますけれども、通常言われる生産性の低い分野ということを言う場合に、計算式だけで出せば先生の御指摘のような点が出てくると思っておりますが、今後の課題として申し上げたいことは、その産業の関係、私どもの産業で言えば、労使ということで申し上げれば、一つの具体的例で申し上げた方が早いと思います。  例えば運輸産業、トラック産業というものは非常に今日焦点になって大事な産業でございますが、この場合に労働生産性を上げていくということについては、運輸産業なら運輸産業の労使の努力というものが極めて大事でございますけれども、それだけで生産性は上がるというふうには思っておりません。プラス関係する産業の努力と国民的な協力というものが必要である。例えば発注する側の発注のあり方というものが、相互の努力が必要である、同時に社会的にも協力が必要である、このように考えておりますので、総合的な対策が必要ということを申し添えておきたいと思います。
  107. 吉田達男

    ○吉田達男君 今の延長としまして、労働時間の短縮の問題でお尋ねいたしたいと思います。  労働時間の短縮というものは世界的な趨勢の中で、日本国際社会の中で迫られている重大な課題でございますし、また、かねてから労働者の方では時間の短縮については強いアピールをしておったところです。今の式でいってブルーカラー労働生産性ということになると、これは工場で働きますから、コンベヤーがとまれば、個人差の問題じゃなくてとまるんです。だから、守るということで会社が合意し、行政的な環境づくりができればとまると思うんです。  今問題にむしろなっているのは、ホワイトカラー労働生産性で物すごい差があると。物すごい差があるものですから働き過ぎをやる、それでサービス残業をやる、あるいは家に持ち帰って過労死する、こういうようなことになりまして、このものを解決するためにはどうしたらいいのか、どういうふうにいわば合意を得ていくか。中小企業と大きい企業の差についてさっき御説明ちょっとされましたけれども、その点どうなのか。  今おっしゃいました業種間の、運輸関係は大変おくれて千八百を目指してやるし、電機、自動車なんかは比較的早くやろうと、こういうことになりますが、労働界全体としてはなるべく早く同じ条件になりたいと、こういうことに相なろうかと思います。そのことについて、行政がすべきこと、あるいは経営者として考えなければならぬことはこうだとずばりおっしゃっていただきたいと思うんです。
  108. 河口博行

    公述人(河口博行君) 労働生産性の問題でホワイトカラー等の点が出ましたので、少し質問の域を出るかと思いますが、現在銀行等のサービス残業が問題になっておりますが、この問題についてはきちっとただすということがもう大前提である。それを前提にした上で仕事の進め方、あり方というものをこれから考え直していかなきゃならないということが労使間の課題になっていく。ある面で、昔随分論議されましたけれども、労使協議制なり労働の経営に対する参加制度であるとか、あるいは労働のあり方についての自主管理のあり方とか、こういった問題が入っていって、労働の質の問題を論議していくようになっていると思っておりまして、これからの課題であると思っております。この国会にも労働関係法だけで八本から出ておりますけれども、そういった関係の中で、そういったものが具体的に改善される施策が論議されていくべきだと思っております。  それから、中小企業を含めて、全体の施策を含めての対策についてでございますが、この国会に労働時間短縮促進法が出ます。時限立法でございますけれども、これをぜひ成立させて、さらに強化をしていくということが必要でございますし、また労働基準法の労働時間の部分について、特に改正がことしないし来年、遅くとも通常国会で成立が図られなければならないということが国民課題である。やはり制度の底上げをし、七百時間から千時間の差があるものは制度的に改正して国民的公平を図るべきであると、このように考えております。  以上です。
  109. 吉田達男

    ○吉田達男君 時間がありませんから、もう一問だけ。  ゆとりある生活ということでは時間の問題、それから家が持ちたい、それが人生の一つの目安であったのに持てなくなった、死ぬまで働いても持ち家がないというのが寂しいと、こういう逆の面がゆとりある生活を求めるという声にもなったと思う。さっき住宅の問題にお触れになりまして、持ち家住宅というものが今ちょっと赤信号で、かえって公団住宅政策というものに切りかえて、働く環境、生活環境もつくったらいいんじゃないかという考え方をお示しになりました。これは大変住宅政策としては大きいポイントだと思います。住宅基本法というのをやろうということで連合さんもたしか御賛同だったと思いますが、我々も考えておりますが、そういう方向でどうか。  それからもう一つは、景気回復するためにいろいろ金利政策とか公共事業前倒しを提言されましたが、それだけじゃ不十分で、生活重視型のものをもっとやれと。こういうことは、つまり福祉施策をもっとやって、その安心した気持ちの中でもらった給与所得の中の可処分所得をなるべくふやして、もう貯蓄して老後に備えなくても大丈夫だと、こういうふうにさせるための福祉施策を積極的にやれと、こういうことでございましょうか。時間がございませんからずばり。
  110. 河口博行

    公述人(河口博行君) 住宅については、基本的に同じ考え方でございます。  それから、生活重視型の景気対策につきましても基本的に同じであるということを申し添えておきます。
  111. 吉田達男

    ○吉田達男君 畑田先生にお尋ねいたしますが、今時事的に問題になっておりますPKO、象徴的な問題として憲法にかかわって海外派遣の問題が出ておりますが、これについては政党の中でいろいろ見解がございます。私ども反対をしておりますが、その中で当面しているカンボジアの問題がいわば背景になって急がれた話が出ておるわけです。  先ほどのお話を集約いたしますと、憲法上の問題、それからアジアの周囲のコンセンサスが、プノンペンのフン・セン首相のおっしゃったことに同調しないじゃないか、それから国連等々が手続的に見ても、どうもあのフン・セン首相の御発言は手続的に若干の問題があるじゃないか、国連だけじゃなくて国内にも経由すべき幾らかの、組織的な体系の中での日本における発言なのかどうかについても、若干の御疑念があるということを御指摘になられましたが、そういうことを通してPKOに、カンボジアにそれを派遣するのは、ずばり言えば畑田公述人としては反対であると、こういうお考えになりましょうか。
  112. 畑田重夫

    公述人(畑田重夫君) ずばり言えばおっしゃるとおり反対だと、反対すべきだと私はそう思いますし、日本政府としてもこれは受け入れるべきではない。時間が余りありませんが、私は、そもそも自衛隊そのものが憲法違反であるという見地に立っているわけです。ところが、その自衛隊をいかなる理由があろうとも、例えば湾岸戦争を利用するとか国連を利用するとか、あらゆる名目で何とかして海外へ派兵するという立場からいろいろなことが今画策されていると私は見ているんですけれども、自衛隊は合憲かどうかということを今ここであえて私が問題提起しようとは思わないんです。  だから、先ほどもそれは触れませんでしたけれども、しかしそのことで、例えば私のようにずっと戦後四十数年間、現代国際政治論、これを中心に研究に取り組んできた者としては、しかもあえて個人的なことを申させていただきますと、私も国家公務員、三カ月でありましたが、大学の教職は十三年しか続かなかったんです。これは健康上の理由だったんですけれども、本当に深刻な戦争体験を経た一人の人間であり、しかも私の生涯の研究テーマに戦争とか平和に関する問題を据えたい。国際政治学というふうに大学なんかの法学部では、講座名、戦前は外交史と言っておったんですが、それをやった人間といたしまして、本当ならば、先ほど私が公述人の立場から願望を申し上げたのは、やはり自衛隊と日本国憲法の関係についても本格的な掘り下げた御討議をお願いしたいと、もうすがるような思いでこの参議院の予算委員会先生方に私、申し上げたいわけなんです。  それはどういうことかといいますと、これはアメリカでは出版されない本で、御承知だと思いますけれどもサイマル出版会から「日本再軍備」というのが出ていますね。これは当時アメリカのフランク・コワルスキーが秘録的に日記のような形でまとめたものですが、これは日本語しか出てないんです。本当にこれが憲法違反だと自分で言っていますでしょう。だから憲法の原理をきちっと守る、この立場で国会で御審議いただきたいというふうに思うわけです。
  113. 吉田達男

    ○吉田達男君 軍縮のことについてお触れになりまして、私どもも軍縮すべきだと思います。自衛隊の位置づけについても、各党間でそれぞれ若干の違いがありますが、軍縮しようということについては間違いありません。  そこで、今の防衛予算の中あるいは防衛計画の中で、どこから軍縮すべきじゃないかという公述人としての御見解というものを御指摘いただければありがたい。  もう一つ、ODAのことで、国際貢献をしようという日本の立場から大変にふやして海外経済協力援助をやっております。ところが、そんなに貢献をしようとしてふやしているのに、必ずしも外国の方が、国際貢献という名前はともかく、日本のそういう状況に対して好意的なことばかりでもない。  これはODAの執行の仕方に問題があるのか、額が少ないのか、あるいは外交にかかわる日本の感覚が外国の方々の感覚と本当は合っていないのか。私どもも、せっかく税金を海外の人に貢献をして世界友好のために役立ちたい、発展のために役立ちたいと思いますのに、そういう状況なんです。その辺について御見解をお伺いいたしたい。
  114. 井上吉夫

    ○理事(井上吉夫君) 時間が余りありませんので、手短にお願いしたいと思います。
  115. 畑田重夫

    公述人(畑田重夫君) そのものずばり申し上げますと、例えば日米安保条約の地位協定、これの二十四条に反している思いやり予算、これはもう全部削ってしまって一もいいと思います。それから、例えばP3CであるとかそれからF15などの、これは全部ソ連を意識したものです。P3Cというと対潜哨戒機でしょう、ソ連に対しての。それからF15もそうですね、これはミグ戦闘機でありますが。もう端的にこれらは、つまりソ連があるということを前提にして、これに対応するための兵器なんですね、明白に。だからそういうものも順次、思い切って削ることができるというふうに思いますね。さらに細かいことについては、それをどこに充てるべきかとか、こういうことについても本当は申し上げなきゃいけないんですけれども。  それから二つ目の問題でありますが、ODAにつきまして、おっしゃるとおり必ずしも喜ばれていないわけであります。額が少ないのかどうかじゃなくて、額は決して少ないとは思いません。日本はODA援助大国であります。ところが、実際にこれは最近の世界自然保護基金の提言もございます。日本に対してここから十項目の提言がなされておりますけれども、例えば日本は熱帯雨林を破壊する大規模なダム建設、これに対する支出はやめてほしい、拒否すべきだと。さらに、本当に貧しい人々の要求に基づいた援助をするようにODA憲章を日本でつくってほしい、日本の国内でODA憲章。あるいは三つ目に、国民にすべての情報公開をすべきだ、ODA関連の情報公開ですね。これはフィリピンなんかも火力発電なんかでいろいろな問題、公害その他の問題を起こしていますでしょう。だからそういうことをきちっとすべきだと。  つまり、援助大国でありながら必ずしも喜ばれていない。どちらかといえば軍事戦略的な、これは私は先ほどあえて意見具申しませんでしたが、アメリカの要望があるんですね。これは諮問委員会の報告書にも出ています、もっと日本は軍事的な面を考慮しろと。だから、そういうものに言いなりになるべきではないという考え方であります。
  116. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、畑田先生に最初に御質問させていただきますが、非常に御高名な先生に対しまして私ども若輩でございます。いろいろと御教示を賜らなきゃならない立場でございます。  最初に、先ほどお話ありましたように、国際的には動乱のときを経まして統合あるいは自立、そういう時代を迎えようと今しております。日本の周辺でも、アジアではカンボジアの問題等が今言われましたけれども、やはり多少の混沌とした中にあろうかと思います。世界はしかし、今年度はECが統合される、あるいはアメリカを中心とする自由経済圏が確立されてくる。世界がまたかつてのように、大国の中で分割をされてくるような感じもしないではありません。  その中で日本が、経済大国として世界にいろいろと貢献をしていかなきゃならない。またアジアの中でも、やはり歴史的にはかってはつながっていたといういろんな深みもあります。文化的にも経済的にもあります。そういう中で、アジアの中でも日本は重要な立場を果たしていかなきゃならない。先生のお話の中で、私どもいろいろ考えて聞いておったわけでございますが、なかなか、今後日本が世界の平和やそういった文化の交流、いろんな面に貢献をしていかなきゃならないんであるけれども、具体的にどういうふうに日本は貢献していったらいいんだろうか悩んでおるところでございます。その点についての御教示を最初に賜れば幸いでございます。
  117. 畑田重夫

    公述人(畑田重夫君) 先ほど申し上げましたように、日本は積極的に国際貢献をすべきだと私は考えております。その場合に貢献する方法とか手だてとか、これはもう本当に余りにもたくさんあるんではないかというふうに考えているわけであります。  例えば、日本は金だけ出しているだけではないかと。ところが、やはり汗も流すべきだし血も流すべきだという言い方がよくございますけれども、決して血を流すことが、自衛隊を派遣するというようなことが国際貢献の道では絶対にない、これは逆行だと思います。そういうことをすれば、ちょうどドイツのワイツゼッカー大統領が、当時西ドイツでありますが、第二次世界大戦終結四十周年のときに、やはり過去を忘れてはならないと。実は、日本は今度のいわゆる従軍慰安婦問題などを含めても、とにかく情況証拠といたしましては本当にあの第二次世界大戦の反省があるのかと、これが諸国民からの目です。  つまり、例えばジェノサイド条約にもまだ批准していない。アパルトヘイト条約にも批准していない。それから戦犯には時効がないというこの条約にも批准していない。ところが、ABCのAランクの戦争犯罪人、戦犯だった岸信介氏が戦後日本の総理大臣になっているんですね。これはもう西ドイツあたりからは絶対に信じられないことなんです。ですから、そういうことがちゃんとやってあるならば諸外国のそういう疑念はないと思いますが、もうあらゆることが、しかも歴代首相が侵略戦争をやったというふうにはなかなかこれが断定できないわけでしょう。そういう状況が続いておりますから、決してこれは自衛隊派遣などということではなくてもっと積極的に、例えば先ほども幾つがちょっと触れましたけれども、日本にもしも財政的なゆとりがあるんだったら、これは現在世界諸国民が求めていること、切実に求めていることはたくさんございます。難民の救済も申しましたけれども、児童を救う問題であるとか、地球環境破壊防止に積極的にかかわっていく支出であるとか、そういうことも可能ですし、それから何よりも非核三原則を初めとして日本でなければ、例えば日本政府が国際場裏で発言するならば大変な重みと説得力があるだろう、こういうことをどんどんやるべきだと思います、自発的に国連の場に出てあるいはその他国際会議の場で。  そういうふうにあるのはこれは決して私は難しいことではなくて、現に実現可能なことだと思いますし、決してそういう憲法違反だから自衛隊は派遣できないという消極的な考え方ではなくて、やっぱり憲法の原則で積極的に、創造的に、先ほど私が申した言葉で言えば、憲法を輸出する構え、それくらいの、これが本当に誠実な第二次世界大戦の真に反省した立場と諸国民からも認められ、おのずから自然に信頼と尊敬の集まる道だろうというふうに考えております。
  118. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ありがとうございました。  私どもは、先ほどから問題になっておりましたPKO法案につきましてはまた別な機会に論議したいと思うんですが、今先生がいろいろとおっしゃいましたやはり日本国憲法を尊重すること、あるいは戦争に対する反省という立場に立ってPKO法案については賛成しているわけでございます。  この間、フン・セン首相が見えまして確かに自衛隊の出動を要請されましたが、それに対して出動するような御意見の方もいろいろとお見えになりましたけれども、私たちはそれには反対です。  あのPKO法案の中にはいろんな原則がありまして、その中に、やはりきちっと戦争当事者が平和の協定を結ぶ。そして、国連にそれを報告する。そして、PKOが派遣されることを要請する。その中で国連がそれを受けて協議をして、それぞれの国がそれぞれの国に対して出動を要請する。それが日本に来れば日本がPKOとして出動する。こういうことになっているわけでございますから、あのPKO法案の中にしっかりとしたそういう歯どめがある以上は、フン・セン首相が来て要請したとしても決してそんなおいそれと自衛隊というものを出すわけはないわけでございますから、これからこの法案の審議も、私たちもやはり平和憲法を守りたいというそういう気持ちでやっておりますことを御承知願いたいと思います。  それから河口先生、ちょっと時間がなくなってまことに申しわけないんですが、先ほどお話がありましたこのシミュレーションで吉田議員から今お話しいただきました。私も同じようなことを質問しようと思っておったんですが、この四%の賃上げですと低賃上げということでシミュレーションをつくってあります。今回いろいろと報道を聞いておりますと、大変皆さん方が春闘で御苦労されまして交渉された結果、一応四・七%ぐらいということでございますが、そうしますとこれは賃上げと見たらいいのか、低賃上げという、皆さん方のシミュレーションで見ますと低賃上げ、この部類に入るんでございましょうか。  私たちも景気の問題につきましては非常に深刻に考えておりますが、春闘でどれだけの成果を出されるかということはやはり国民の皆さん方にも心理的にいろんな影響を及ぼしまして、消費の面でも今非常に落ち込んでいるということが聞かれるわけでございます。私たちは、春闘にはそういう国民の皆さん方のいろんな思いを払拭するような結果というのを期待しておったわけでございますが、その点非常に残念とは申しませんけれども、まだこれからの状況もいろいろ変わってくると思います。また、経済評論家によっては、七月か八月ごろには在庫調整、終わって相当景気回復するぞという評論もあるようでございますが、その点について御意見を承って、終わりたいと思います。
  119. 河口博行

    公述人(河口博行君) 激励もいただきましてありがとうございます。  ケースCで挙げています賃上げ七%、時短促進ということで申し上げれば、時間短縮も含めて総合的に申し上げれば、そちらに近づいていると思っております。ただ、賃上げにつきましては御指摘の点がありますので、この春の交渉を含めて国民的な立場を含めてさらに引き上げていきたいというふうに思っております。  景気につきましても積極的対応を望みたいと申し添えまして、公述にかえさせていただきます。
  120. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 畑田先生に端的にお伺いします。  公述の中にも、PKOで自衛隊が海外に派遣されることに韓国を初めアジア諸国から強い批判が出ているということが述べられました。この問題をめぐっての幾つかの質問応答もございましたけれども、この問題についての日本政府の説明というのは、理解を得る努力をやるということになっています。言いかえれば、理解がないから不安を持っているんだというのが日本政府の認識のようです。  それじゃアジア諸国の批判、これは本当にPKOについて理解がないところから出ているのか。こういう言い方は私は大変相手国に対する非礼な言い方でもあると思いますし、そういう認識で話し合いをやってもアジア諸国の理解が得られるという性質のものではないと思っているわけです。その点についてお伺いしたいと思います。
  121. 畑田重夫

    公述人(畑田重夫君) まず、実際の批判がどういう形でなされているかということをちょっと御紹介しておきますと、これは必ずしも今、きょう現在ではなくて湾岸危機、湾岸戦争のときの日本で、国連平和協力法案、これは廃案になりましたけれども、あれが日本の国会で問題になり始めたころからずっとこれはもうたくさんこういう批判的な材料というのはあるんです。  例えば、これは昨年の八月十七日でありますが、韓国の外務大臣、このように述べています。これは記者会見で述べたことなんですけれども、日本の軍事的役割増大に対するアジア諸国の深い関心や懸念を念頭に置き、日本政府が慎重に行動することを期待する。また、同じその中で、日本は軍事的な役割よりも外交活動や経済力に見合う方法を通して国連の平和維持活動に効果的に貢献できると思う、このように韓国の外相は述べました。  フィリピンでは、これはちょうど日本のPKO協力法案の反対決議案を出したんですね、あのフィリピンで。これは去年の十二月四日の上院であります。それを提起したタニャーダという議員でありますが、東南アジアの平和を追求するがゆえに、現在日本の国会で審議中の国連平和維持活動協力法案は、アジア・太平洋地域の平和、自由、中立地帯化を目指すASEAN諸国民の努力に逆行するものであるとの所感をフィリピン上院は決議する。こういうふうに提案したんですね。  さらに、つい最近、二、三日前だと私は記憶しますが、皆さんもこれはほとんどの日本の新聞に出ましたから御存じだと思います。インドネシアですね、これはスパルジョ調整大臣でありますが、共同通信とのインタビューであります。五十年前、日本軍に侵略された心理的。なしこりがあり、憲法との整合性が明確にされない限り強い懸念がある、日本経済力でアジアの平和と福祉に貢献すべきであると。  あと中国もあります。これは時間の関係で省略しますが、例えば殴った者は忘れるけれども殴られた者はもうこれはずっと生涯忘れないという例えがよくございますけれども、日本のあの十五年戦争の被害を受けた、つまり侵略された側の立場からしますと、これは時効はないんですね。侵略に時効はないわけです。したがって、戦争犯罪人にも時効はないのであります。  だから、日本の例えばPKO法案の理解が不十分なんだろうというんじゃなくて、これはいついかなる形にしろ日本は憲法の立場からいって軍事力を持たないと言っているわけですから、軍隊を、自衛隊を海外に出すということについては、これは理解云々ではなくて日本の方が本当に反省のあかしとしてこれはやるべきでないわけで、そういう意味で私はフン・セン首相の発言と行動に対して、今起こっているというふうには今申し上げておりませんけれども、恐らくここしばらくの間外電その他注意しておればやっぱり反応があらわれるだろうと思います。教科書問題があろうと何があろうと、今までもう全部韓国を初め批判、反応がありましたから、恐らくあれだけ明確に、しかもかなり世界的にあれを報道されていますから、これについてはさまざまな反応があり得るだろうというふうに予測しております。
  122. 高井和伸

    ○高井和伸君 河口公述人にお尋ねします。  土地・住宅政策の問題でございますけれども、土地の値段の高騰により年収五年分での住宅取得が難しくなったと言われております。そういった計数を今度の春闘などに入れた場合どんなことになっていくのかということなんでございますけれども、要するにここで今まで述べられた中身において土地あるいは住宅取得という持ち家を原則的に考えた勤労者の立場から見た場合、従前の春闘の方式、労使において交渉するあるいは団結権を与える、争議権を与えるという枠組みを超えた世界に土地の高騰というものがあるんじゃなかろうか。  そういったときに、すべての人が家を取得するわけでもない。また、東京だとか近畿、東海という大都市圏だけの地域的な問題でもあったりするということを考えるときに、こういった住宅政策というような側面、持ち家というポイントからでございますけれども、春闘という方式は適正に機能しているのかどうか。またあるいは、そういった交渉の中で地域的なもののバランスをとっていくという考えが労使の間でどのぐらい敷衍しているのか。要するに、住宅政策の中の持ち家制度は春闘の中でどんなように扱われているかという質問でございます。よろしくお願いします。
  123. 河口博行

    公述人(河口博行君) 春季生活闘争といいますか交渉の中では、大きい問題では先生の御指摘のように枠組みを超えた問題でありますしからばといって現実の問題でありますから、労使として当然課題にすべき問題でございまして、住宅対策なり、あるいは組合によっては首都圏の手当を求めておるところもございますが、そういうミクロの対策と二つがございます。しかしながら、全体的には枠組みを超えた問題でございますし、労使で一緒に努力していくという意味で少しこの点について公述をさせていただきたいと思っております。  基本問題は、政府も時間短縮と住宅問題を最大限に挙げておられるとおりでございますが、私はこういう認識をしております。  今、農地の減反が七十万ヘクタール上いいますか、全国の住宅面積に匹敵する減反地があるというふうにお聞きしておりますが、都市でサラリーマンが持ち家で泣いて農家が減反で泣いている、こういう基本問題が一つあると思っております。  それからもう一つは、戦後来、持ち家という形で土地を分配の一つの手法として使ってきた経過が国民的にはございますけれども、それに伴って今二つの国民的な課題を持っていると思います。  資産を持って何らか相続できる人と勤労の所得だけで生涯を過ごさなきゃならない方との非常に大きな所得格差が出てまいります。大学卒の生涯給与が約三億というふうにされておりますが、五千万の住宅を購入したとしても利息込みでいえば一億を超えるわけでございますから、三分の一以上の生涯所得を投入しなければならないということになりますから、先ほどの残業問題というようなことも身に迫った問題として出てくるわけでございますし、さらには出生率の低下まで及んでいくわけでございますが、それとあわせて、持ち家を持つ場合も世代間の負担格差というものがさらに大きくなる。昔持った者は楽であるが、これから持つ者は大変であるという基本的な格差問題というものをこの住宅問題の中に含んでおります。  したがいまして、今なすべきことは、持ち家政策というものの持続も必要でございますけれども、あわせまして住宅に対する基本的な政策を変えるときに来ている。既に土地基本法が出て基本的な方向は明示されておりますが、あれと同じように既に野党で住宅基本法の提案がされるやに聞いておりますけれども、政府・与党とも一緒になって住宅の基本方向を示すべきである。持ち家も借家も生涯ともに共通して住める条件というものが前提であると思っております。  あわせまして、土地の利用計画とかあるいは住宅供給計画の促進、さらには先ほど税制の点で地価税のことを申し上げましたけれども、もともとそういう不公正なりを正すというところにございますから、家賃控除等を含めたところの政策というものは極めて重要である、このように思っております。  以上でございます。
  124. 田渕哲也

    田渕哲也君 時間が少ないので、私は河口公述人に対してまとめて質問をします。三点ほどお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いします。  まず、ことしの賃上げですが、大体最終的にも五%の台に乗るかどうかというふうに見通されておるようであります。昨年度に比べると若干低くなるわけでありまして、極めて厳しい経済情勢の中ですから交渉ではいろいろ御苦労されたと思います。  ただ、これが今の景気、特に個人消費にどういう影響を与えるか。新聞等では、若干賃上げのパーセントは落ちたけれども、消費者物価が少し下がるから余り個人消費には影響を与えないだろうというふうな見方もされておりますけれども、私はそれはちょっと楽観的過ぎるのではないかという気がします。  といいますのも、やっぱり不況で残業が減る、これは労働時間を縮めるという意味ではいいことかもしれませんけれども、所得はやっぱり減っていくわけです。それから一時金も厳しくなっていくということを考えなければなりません。さらに、この不況が与える心理的な影響も考えますと、やっぱり個人消費に与える影響というのは余り楽観できないのではないか。この点について現在の実際に働いておられる方の実感というのはどうなのか、お伺いしたいと思います。  それから第二点は、やはり金利のみならず大型の景気対策が必要だという御意見は私も同感であります。その中に、生活重視型景気対策と言われましたけれども、これは先ほども質問の中で出てまいりました。私は、福祉政策も当然含まれると思いますが、やはり生活基盤整備の公共投資も当然含まれることになろうかど思います。  ただ、問題はこれに対する財源をどうするかということで、これからの財源というものは、国の収支というのは極めて厳しくなるわけで、既にもう税収がかなり落ち込むだろうということが想定されております。そうすると、勢いこれはやはり国債に頼らざるを得なくなる。公共投資の場合は建設国債でいいわけですけれども、福祉政策となりますと赤字国債も考えざるを得なくなるのではないかという気がするわけですけれども、この点についてどういうお考えがあるか、お伺いしたいと思います。  第三点は地価対策でありまして、これはやはり国民生活を向上させるために欠くことのできない問題だと思います。適正な地価というのはなかなか難しいわけですけれども、連合としては、大体年収何年分で家が持てるということを目指しておられるのか、お伺いをしたいと思います。  以上です。
  125. 河口博行

    公述人(河口博行君) 時間の制約がございますので少し粗っぽくなって恐縮でございますが、賃上げについては五%台に乗せたいというごとで、また乗ると現在見ております、最終段階で。  個人消費への影響について楽観できないものがあるということについては、率直にそういう問題意識を持っております。しかしながら、最後の後ろのところで可処分所得の表をつけておりますけれども、これからの物価動向を含めて可処分所得が上がっていくならば対策は進んでいくと思っております。同時に、労働力不足が続いている今日の状況の中で、ことし労働関係法、パート法等が野党から出されておりますが、そういった雇用対策をきちっと今の時点でやっておく必要がある。そうすることを通じて全体の所得が上がっていく状態になっていく、このように考えております。  それから、先行きの景気についての関係でございますけれども、金融政策の段階から財政出動の段階にもう事実上移っているというふうに見ておりまして、そういった面であえて申し上げれば、私どもが国債のことまで触れるのはいささか過ぎますけれども、状況はそこまで来ているという状況ではないであろうかと思っております。  それから、そのために地域の生活型の場合には、御承知のとおり、福祉のことももちろんございますし、生活関連を含めてあるいは制度全体が変わっておりますので、生きた形でいく、特に政府首脳部が変えていくという姿勢を示せば地方企業も変わっていけると思っております。  地価対策については、年収分とれだけというふうな今の状況ではなくて、もうそれの五倍というのを都市部では、特に首都圏を初めとする大都市部では目標にして動くしかないと思っております。  以上でございます。
  126. 井上吉夫

    ○理事(井上吉夫君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼申し上げます。  本日は、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  次回は来る三十一日午前十時に委員会を開会することとし、これをもって公聴会を散会いたします。    午後五時二十四分散会