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政府委員(
清水湛君) お尋ねのように、
昭和三十二年に一九二四年
船荷証券統一条約を批准しまして、現在の
国際海上物品運送法が制定されたわけでございます。
もともと、一九二四年
条約というのは、それまで
船荷証券に記載されていた過度の
免責約款と申しますか、
運送人の方に一方的に有利な
免責約款を
船荷証券に付してこれで契約をするというような、そういうようなものをチェックする必要がある、
免責約款を制限する必要があるということと、それから、各国においてまちまちであった
国際海上物品運送の私法的な側面に関する法制を
国際的に
統一する必要があるということで作成されたものでございます。これは大正十三年でございます。
我が国におきましても、そのころそういう
条約が作成されたという経緯を踏まえまして、
昭和の初期にこの検討を行ったわけでございますけれ
ども、間もなく戦争状態になりまして、そういうよつな
国際的な海
商法を
統一するというようなムードではもう完全になくなってしまったということが起こったわけでございます。その後、戦後平和
条約が発効しまして、
我が国が本格的な
国際社会に復帰をするというようなことになりまして、一九二四年
条約の批准ということが問題になったわけでございます。ところで、一九二四年
条約が制定されました後、もう既に相当の年数が経過しているわけでございまして、このようなことから一九六八年
議定書、さらに一九七九年
議定書というものが作成されたわけでございます。これらの
議定書は、いずれもその後における社会経済情勢の変化に応じて
国際海上物品運送の実情に適合するように改めるという
趣旨でされたものでございます。
ところで、一九六八年
議定書におきましては、貨幣価値の変動に応じて
運送人の
責任限度額を引き上げる、限度額の単位の変更ということもございますけれ
ども限度額自体を引き上げるということ。それから、
船荷証券の効力を強化するということ。それから、
運送人及びその使用する者の不法行為
責任について、
運送人の契約
責任と同様の免除及び軽減を認めるなどの
改正が行われたわけでございます。
我が国におきましては、当時、一九六八年
議定書に入るかどうかということが問題にはなったわけでございますけれ
ども、当時の
状況からいたしますと、現在のように円高等の
状況ではございませんので、これに入りますと相当の額の
責任限度額の引き上げになるというようなこともございまして、一九六八年
議定書に入るかどうかというようなことについて関係方面において慎重な検討がされてきたわけでございます。
しかしながら、一九七九年
議定書がさらに作成され、これは
責任限度額の計算単位をSDRに改めるという
趣旨のものでございますけれ
ども、この
議定書が作成されまして
昭和五十九年に効力が生ずるというようなことになりました。こういうような
状況を踏まえまして、関係団体と申しますとこれは
日本では
船主の団体とそれから
荷主団体、
荷主の団体といたしましては
荷主協会という社団法人がございまして、これは
我が国の大手商社、大手メーカーあるいは輸出組合というようなほとんどの
荷主グループが参加している団体でございますけれ
ども、そういうような
荷主の団体あるいは
船主の団体におきましても、
我が国の
国際的な地位というものを踏まえましてこのような
条約に早く参加する必要があるというようなことになったわけでございます。そういうようなことから、関係団体あるいは関係方面との調整を経まして今回この
議定書の批准ということになったわけでございます。
そういう背景でございまして、一九六八年
議定書あるいは一九七九年
議定書ともに
国際海上物品運送の実情に適合するための合理的な
改正であるというふうに
考えられるものでございます。
その次に、一九二四年
条約を
改正する
議定書が二本あるのに一九七九年
議定書だけを批准する理由は何かというお尋ねでございます。これは
条約の方の論理でございますけれ
ども、まず一九二四年
条約というのはまだ現在厳然として効力が存する形で存在しているわけでございます。一九六八年
議定書というのは一九二四年
条約を改めた中身で一九六八年
条約として独自に存在する、こういうことになります。それから、一九七九年
議定書というのはそういうふうに改められた一九六八年
議定書の中身自体をみずからの中身として独立して一九七九年
議定書として存在する、こういう形になるわけでございます。したがいまして、
国際海上物品運送に関する
条約は現在三つ存在する、こういう形になるわけでございますから、私
どもといたしましてはその最後の一九七九年
議定書を批准すれば足りる。つまり、一九六八年
議定書の中身を持った
内容の一九七九年
議定書を批准すれば当然一九六八年
議定書を批准したことになる、こういうことになるわけでございます。
そういうようなことから、これは
外務省の方で御答弁すべき性格の問題かもしれませんけれ
ども、今回一九七九年
議定書だけの批准を
外務省においては国会にお願いをしておるというふうに承知しているわけでございます。もし、これは別に一九六八年
議定書も批准するということになりますと、
我が国といたしましては
二つの制度を持つということになりまして、それぞれについて
国内法が必要になるというような難しい問題も出てくるわけでございまして、そういうようなことからも一九七九年
議定書だけを批准するべきものである、このように
考えている次第でございます。