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1992-05-14 第123回国会 参議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年五月十四日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  四月八日     辞任         補欠選任      石渡 清元君     大城 眞順君      合馬  敬君     谷川 寛三君  四月十日     辞任         補欠選任      谷川 寛三君     大島 友治君  四月十六日     辞任         補欠選任      三石 久江君     青木 薪次君      太田 淳夫君     矢原 秀男君  四月十七日     辞任         補欠選任      青木 薪次君     三石 久江君      矢原 秀男君     太田 淳夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         梶原  清君     理 事                 板垣  正君                 田村 秀昭君                 翫  正敏君                 吉川 春子君     委 員                 大島 友治君                 大城 眞順君                 岡田  広君                 高橋 清孝君                 永野 茂門君                 村上 正邦君                 小川 仁一君                 喜岡  淳君                 瀬谷 英行君                 谷畑  孝君                 三石 久江君                 太田 淳夫君                 磯村  修君                 田渕 哲也君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長官        )        加藤 紘一君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  岩崎 純三君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  宮下 創平君    政府委員        内閣参事官        兼内閣総理大臣        官房会計課長   荒田  建君        内閣官房内閣外        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房外政審議室        長        有馬 龍夫君        内閣審議官        兼内閣総理大臣        官房参事官    野村 一成君        内閣法制局第一        部長       大森 政輔君        人事院総裁    弥富啓之助君        人事院事務総局        給与局長     森園 幸男君        人事院事務総局        職員局長     山崎宏一郎君        内閣総理大臣官        房審議官     高岡 完治君        内閣総理大臣官        房管理室長    石倉 寛治君        総務庁長官官房        長        八木 俊道君        総務庁人事局長  山田 馨司君        総務庁行政管理        局長       増島 俊之君        総務庁行政監察        局長       鈴木 昭雄君        北方対策本部審        議官       麻植  貢君        防衛庁参事官   高島 有終君        防衛庁参事官   金森 仁作君        防衛庁参事官   三井 康有君        防衛庁参事官   上原 祥雄君        防衛庁長官官房        長        村田 直昭君        防衛庁防衛局長  畠山  蕃君        防衛庁教育訓練        局長       小池 清彦君        防衛庁人事局長  坪井 龍文君        防衛庁経理局長  宝珠山 昇君        防衛庁装備局長  関   收君        防衛施設庁長官  藤井 一夫君        防衛施設庁総務        部長       竹下  昭君        防衛施設庁施設        部長       大原 重信君        防衛施設庁建設        部長       新井 弘文君        防衛施設庁労務        部長       荻野 貴一君        外務大臣官房審        議官       津守  滋君        外務省アジア局        長        谷野作太郎君        外務省国際連合        局長       丹波  實君    事務局側        常任委員会専門        員        菅野  清君    国立国会図書館側        収 集 部 長  井門  寛君    説明員        総理府国立公文        書館次長     坂東眞理子君        外務大臣官房文        書課長      鏡   武君        外務省北米局安        全保障課長    小澤 俊朗君        文部大臣官房総        務課長      林田 英樹君     —————————————国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査並びに国防衛に関する調査  (防衛本庁移転問題に関する件)  (自衛隊と国連平和維持活動問題に関する件)  (官庁出版物等納本促進に関する件)  (東西冷戦後の我が国防衛政策に関する件)  (公益法人設立の在り方に関する件)     —————————————
  2. 梶原清

    委員長梶原清君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月八日、合馬敬君及び石渡清元君が委員辞任され、その補欠として谷川寛三君及び大城眞順君が選任されました。  また、去る四月十日、谷川寛三君が委員辞任され、その補欠として大島友治君が選任されました。     —————————————
  3. 梶原清

    委員長梶原清君) 国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国防衛に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 翫正敏

    翫正敏君 防衛庁長官に質問いたします。  数字の面とか、そういうもので事務的なところは事務方に答弁していただいて結構だと思うんです。  防衛本庁等移転計画の概要について御説明願います。
  5. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) お尋ね防衛庁本庁庁舎等移転計画は、防衛本庁等のいわゆる防衛中枢の所在いたします現在の檜町の周辺地区商業化がかなり進んでおるために、防衛中枢が所在する場所としては適当でなくなっているという判断がございます。一方、国有財産有効利用観点から申しましても、防衛中枢を檜町地区から市ケ谷地区移転させまして、これに伴いましてそれに関連する首都及びその近郊の防衛施設の再配置を図るものでございまして、御案内のとおり、本計画は大体六十年ごろから内々に検討いたしまして、六十一年、二年に調査を実施し、六十三年から基本設計等に着手いたしまして、本格的には平成二年度予算から建設費を計上しているものでございます。  なお、本計画は、特定国有財産整備特別会計、いわゆる特待会計によりまして実施いたします。すなわち、跡地財産の処分による財源収入によってこれを賄うものというものでございまして、このような措置によって整備を図っておるのが現実でございます。
  6. 翫正敏

    翫正敏君 国土有効利用観点というようなこと、檜町地区周辺商業化が進んでいるというようなことなどが原因である、こういうふうに承ってよろしいですか。
  7. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 大体そのとおりでございまして、当時この計画が進められた背景には何といいますか、中曽根内閣のころでございますけれども、公有地有効活用利用という点も背景にあったことも事実でございます。  一方、今申し上げましたように、防衛中枢機能が存在するにはあの地はちょっと不適格である。これは単に風俗とかそういう関係だけではございません。通信その他あらゆる面であそこがいろいろな面で障害もあることも事実でございまして、これを市ケ谷移転させよう、こういうもので両面の性格を持っているものと存じます。
  8. 翫正敏

    翫正敏君 防衛本庁には中央指揮所がありますけれども、この中央指揮所の主たる役割運用目的など、それから建設にいつ着工し、いつ完成をしたのか。これに要した費用及び完成したのはいつか。それから建物耐用年数はどれくらいか。これを説明してください。
  9. 三井康有

    政府委員三井康有君) お尋ね中央指揮所は、防衛出動等自衛隊行動等に関しまして情勢を把握し、適時所要決定を行い、部隊等に対して命令を下すまでの一連活動を迅速かつ的確に実施することを目的として建設されたものでございます。建設昭和五十六年度から五十八年度にかけて行われました。  整備経費でございますが、器材と合わせまして約八十六億円でございます。内訳といたしましては、建物分が約三十六億円、器材分が約四十九億円でございます。  本中央指揮所は、昭和五十九年三月から運用を開始いたしておりまして、現在運用九年目に入っているところでございます。  なお、最後の耐用年数というところでございますが、建物につきましてはコンクリート建設でございまして六十五年ということになっております。
  10. 翫正敏

    翫正敏君 五十九年に完成したと言われましたね。
  11. 三井康有

    政府委員三井康有君) 完成いたしましたのが五十八年度末でございまして、すなわち五十九年の三月から運用を開始いたしております。
  12. 翫正敏

    翫正敏君 五十九年に完成をしたこの中央指揮所耐用年数が六十五年、建物耐用年数が六十五年で、指揮所に要した費用だけで八十六億円、こういうことなんですけれども、それを昭和六十三年の時点でこの移転計画をまとめたということで、四年後になりますか。そのときの見積もりでは約三千億円ぐらいであって、この経費はすべてこの檜町の土地を売却してその経費に充ててこれをやる。  こういう計画だと思いますが、いわゆる帳じりが合っているかどうかの話は後でもう少し聞きたいと思っていますけれども、こういう重要な施設建設し、それを数年後に取り壊すということを決めるに当たって、取り壊すというより移転するといった方が正確ですか、安全保障会議においてどのような検討がなされたのか、説明してください。
  13. 三井康有

    政府委員三井康有君) 防衛中枢移転の問題につきましては、安全保障会議にお諮りをしたという事実はございません。
  14. 翫正敏

    翫正敏君 中央指揮所目的をもう一遍言ってください。
  15. 三井康有

    政府委員三井康有君) 中央指揮所目的は、防衛出動等自衛隊行動等に関しまして、情勢を把握し、適時所要決定を行い、部隊等に対して命令を下すまでの一連活動を迅速かつ的確に実施することを目的とするものでございます。
  16. 翫正敏

    翫正敏君 私は、自衛隊憲法違反陸海空軍であって、これは憲法上存在が許されないものであると考えておりますけれども、政府立場としてはもちろん合憲であるということで、それで自衛隊法というものによってこれはつくられてきておるわけであります。そのいわゆる頭脳防衛出動というのは自衛隊の最も重要な任務でありますが、そのときに頭脳としての役割を果たすのがこの中央指揮所である。  こういうところを、建設してわずか数年後に取り壊しなり別のところへ移転するなんというような、こういう重大な計画安全保障会議検討もせずに決められたというようなことになると、安全保障会議というのは一体何のために設置されたものなんですか、防衛庁長官、答えてください。
  17. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 安全保障会議には法律で具体的な項目が列挙してございます。防衛出動の可否でございますとか、治安出動あるいは装備体系その他防衛計画等々、そして包括的なクローズがございます。  しかし、これらに準ずる重要なものということでございますが、今御質問の中央指揮所は、機能的にはこれは中央指揮所のできる前からもそういう機能自衛隊は保有しておったわけでございますけれども、たまたま最近の技術革新影響等も考慮しながら、これを一元的に中央指揮所という形で統合して運用し、より効率的、効果的に対応する方がよかろうということでつくったものでございまして、中央指揮所設置それ自体によって新たに任務がつけ加わったとか、そういうことではないわけでございます。  先生も御指摘のように、防衛庁の重要な機能でございますから、あるいはかけろという御議論もまあ私もわからないわけではございません。しかし、この安全保障会議にかけるその他の案件につきましても、閣議決定等によりまして重要な装備その他の変更等々いろいろ閣議で列記されておりますが、これにはそれは入っておりません。  そういうようなこと等もあわせまして、もちろん政府部内で慎重な検討をやることは当然でございますが、形式的には安全保障会議にはかけなかった、このように理解をいたしております。
  18. 翫正敏

    翫正敏君 当初の見積もりでは三千億円ほどで、これは全部土地を売却した費用で賄うと、こういうことなんですけれども、そしてその移転目的というものが檜町周辺商業化が進んでいる、国土有効利用観点からということが非常に大きいと、こういうふうに承ると、これは防衛庁設置目的である国土防衛ということについての観点、私は防衛庁政府の見解と違いますが、そういう観点ということではなくて、要するにお金の上の帳じりが合えばよい、税金を集めてやるということでさえなければよいと、こういう発想になってまいりまして、非常に不可思議な私は計画だというふうに思うので、もう一度安全保障会議等々で再検討をして、一からこれは出直すべきなのではないかというふうに思うんです。  こういうふうにして、こういう理由で移すということになりますと、言葉は非常に悪いのですけれども、土建屋さんという言葉はちょっと訂正しますが、取り消しますが、社会通念上こういうのを土地転がしというように言うんではないかというふうに思うんです。ここの土地を更地にして売って、そのお金でこっちへ物を建てるというような、そういうことでちゃんと帳じりだけ合っている。  そのことについて、防衛庁の主たる目的がどういうふうになるのか、また、莫大なお金をかけて建てられたものがわずか数年でもう取り壊しなり、移すなりというようなことが安全保障会議にもかけることなく安易に決定をされたということ、まことに不可思議なる計画であると思うので、強くこの移転計画の再検討要望したいわけなんですけれども、そういう立場に立ってもう一点の指摘をしておきたいんです。  それは、これで玉突き式にどんどんと動いていくことによりまして、市ケ谷に現在建っております建物、いわゆる旧の大本営施設東京裁判が行われた場所ですけれども、ここが取り壊しになるということなんです。私は、これは東京裁判についてどういうふうに見るかということはいろいろな意見があっても、やはりこれは歴史記念館として当然残すべきだ、こういうふうに思うんですが、その点について。  一応二点聞いていますので、まとめてお答えいただきたいのですが、それからさらに、その施設の下には大本営跡地下ごうがあるというふうに聞いていますので、その保存はどういうふうに考えておられるのか。この二点、大きく言ったら二点で、二点の二番目がまた二つに分かれるわけですが、まとめてお答えください。
  19. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、委員に御説明申し上げたのは、ただ単なる公有地活用ということだけでないことは私が最初に申し上げたとおり、防衛中枢機能があの檜町にあることがいろいろ諸種の障害がある、通信その他の障害があるということもございまして、不適切であるという判断一つございます。そして同時に、公有地活用ということもありますので、このようにしたということを申し上げさせていただきましたが、このことを再度でございますが、申し上げさせていただきます。  第二番目のいわば玉突きということでございますが、当然市ケ谷には今所要部隊配置されておりますので、全体としてそれらの配置適正化を考えつつ、これが数カ所に関連をしてくるわけでございます。  そこで、まずお尋ね市ケ谷における東京裁判の行われた一号館でございますが、これはかなり広大な講堂でございまして、陸軍士官学校予定地として建設され、陸軍省も戦時中にここを使ったりいたしました。旧軍の方々からも、あれはモニュメントであるからぜひ残してほしいという陳情が相当ございます。一方、今、先生のおっしゃられたように、戦後の東京裁判もあそこで行われたわけでございますので、そういった観点からもこれを保存すべきものという陳情がかなりきていることも事実でございます。  しかしながら、これが非常に広大なために、これがまた中心部にでんと座っているために、これをそのまま存置いたしましたならば、あそこへ防衛中枢機能を移す所要構築物の建築が不可能でございまして、私どもとしては、これをどうしても取り払わざるを得ないと考えております。そしてそういう計画にもなっております。  一方、あそこには過去の何といいますか、いろいろのモニュメント式なものがたくさんございますが、あとう限りそういうものは保存したいとは思っておりますが、この一号館につきましてはそのような事情にあります。  なお、一号館の前に地下ごうがございますが、地下ごうは一部存置することにいたしておりますが、基本的に一号館の取り壊しによって配置がえをするわけでございますので、これを全面的に残すというわけにもまいりません。  以上のとおりでございます。
  20. 翫正敏

    翫正敏君 市ケ谷台一号館は大本営設置をされ、また東京裁判が行われた場所でもあり、歴史記念館としてぜひ保存すべきであるということを強く主張したいわけでありますし、この地下ごうにつきましても、やはり一部保存するということではなくてすべてこれを残して、そして現在及び後世の人たちにかつての戦争の歴史を伝えるということが非常に重要だというふうに思います。  基本的に考え直してみるならば、どうして六本木から市ケ谷移転させなければならないのか。いわゆる商業化が問題であるとか、国土有効利用観点からなどというようなことを考えてみるならば、東京郊外へまとめてどんと移すとかということを、安全保障会議とかにかけて検討をいただいた上でということであるならば、それはそれで一つの見識がどば思うんです。六本木市ケ谷の方も私は何回も行きました。結局東京のど真ん中でありますので、何もここへ移って、商業化の問題が進んでいるからという檜町とどこが違うのか全然わからないわけであります。  そういうことから考えてみると、単に何か土地が三千億ほどで売れそうだと、これを売ってそのお金でひとつ事業をするかというような、そういう事業計画というような感じが前に出ているのではないか。もう根っこに返って、根本に返って議論をしておかなければならないのではないか。こういう積み上げが非常に不足をしておる、そういうことを痛感するわけであります。  地下ごうの問題、歴史館としてこれを保存する問題、そして本当に必要ならば東京郊外に移すというようなことまで検討し直すべきではないかという点、この三点をまとめてもう一度お答え願います。
  21. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 防衛庁本庁庁舎等移転計画についての理由は、私が先ほど申したとおりでございますから繰り返しをいたしません。  ただし、委員の御指摘のように、郊外に持っていくなら話はわかるというお言葉でありますが、この防衛本庁も各省庁一つとして国会等との関係あるいは各中央省庁等との連絡調整、その他この国会周辺配置されているのが、これが通例でありますし、機能的に私はそれは必要だと存じます。  国会移転問題等議論されておりますが、国会がここにある限りやっぱりこの周辺に置かれていることが必要でございまして、市ケ谷に移るこの機能は、まさに内局、統幕会議とか幕僚監部とか調達実施本部でありますとか、防衛施設庁等々いわゆる各省庁における本省業務といってよろしいかと存じますが、それを担当するセクションでございまして、これが郊外に離れたりするようなことがあれば、例えばどうか知りませんが、各省庁郊外へ移してもいいんではないかという議論にも及ぶような感じが私としては率直に申し上げてするわけでございます。  そういう意味で、防衛中枢を置く位置としては不適当であるが、市ケ谷であれば高台でもある、通信その他のいろいろの諸面で非常に有効、便利でありますし、また、国会等についてもそう遠くないというようなそういう立地条件がたまたまございますので、これを有効に活用させていただく、こういうことでございます。
  22. 翫正敏

    翫正敏君 一応この点は終わりますが、先ほど防衛庁長官の方から、旧軍の方とか、その他いろいろなさまざまな人から保存要望移転に反対する要望、我々の社会党系団体の方からも行っていると思いますが、そういうものが出ているというふうに今言われましたので、それを私の方に資料として、どういう要望がどういう団体から出ているのか、後刻提出していただきたいということを要望しまして、それを見て再度の機会にまたやりたいと思います。後でまとめてそれもお答えください。  次に、昨年の十二月十三日に、航空自衛隊千歳基地所属F15イーグルジェット戦闘機小松基地着陸寸前に墜落する事故が起こりましたけれども、この事故原因解明については、そのしばらく後に開かれた内閣委員会で私の方からも質問して、原因解明を急ぐというふうに防衛庁長官の方から答弁がありましたので、その後どういうふうに進捗しているのか、現状を御報告ください。
  23. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 御説明申し上げます。  まず、その落ちた場所が割合浅い海面でございましたので、機体を引き揚げたいと、こう考えたわけでございます。ところが、冬の日本海が大変荒れまして、業者の方がなかなか着手できない、こういう状況がございまして、ようやく二月二十九日に着手をいたしました。そして二月二十九日から三月十三日までの間、現場付近の海底から機体回収作業を行いました。そして、現在、回収いたしました機体残骸等製造業者でございます三菱重工に搬入いたしまして精密な検査を行っておる、こういう状況でございます。
  24. 翫正敏

    翫正敏君 引き揚げて精密に検査している上いうことで、事故原因はこれからということだと思いますが、いわゆる落ちた場所、引き揚げた場所と言った方が正確かもしれませんが、そのことによって既にいわゆる事故形態的状況といいますか、外見的状況というか、そういうようなことはわかったと思うんで、それをもう一度正確に御説明ください。
  25. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 現在までにわかっておる状況について御説明申し上げます。  操縦者から事故の際の状況を聴取したわけでございますが、それによりますと、この飛行機航法訓練及び要務のために、十二月十三日の午前八時五十分ごろ千歳基地を離陸いたしまして、小松基地に向けて飛行中であったわけでございますが、着陸進入中に燃料ゼロという指示が燃料計に出たわけでございます。その後、機体後方から異常な音が聞こえまして、背中のあたりに熱感、熱の感じ感じまして、同時に後方に炎を視認いたしましたので、やむなく脱出をしたということでございます。その際、この脱出をいたしました直後に飛行機のコックピットの後方付近から炎が延びていることを視認いたしております。  こういう証言等から見ますと、コックピット、すなわち厨房の後方燃料タンク付近で火災が発生したものと考えられます。  あと、私どもが今やっておりますのは、何が火種と申しますか、になって火災が発生したかということを現在鋭意調査しておるわけでございますが、正直申しまして、会社の精密調査というものは大変時間がかかるわけでございまして、現在会社の方で鋭意それをやっておるところでございます。  以上でございます。
  26. 翫正敏

    翫正敏君 ちょっと話が戻って恐縮ですが、さっき防衛庁長官の方にお願いしました移転反対とか保存とかの要望書等々の、私の方への資料提出について、それはどうですか。
  27. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 御要望に沿って、調整をいたしまして提出させていただきます。
  28. 翫正敏

    翫正敏君 それで、飛行機の墜落の方に戻りますが、三菱重工の方で組み立てたので、そこへ持っていって今事故原因調査中ということでありますが、この墜落機は一カ月前に配備をされた新しい機体であったということ。そしてこの部品の主なものはアメリカのダグラス社、米国製であるということ、それで三菱重工で組み立てたものであるということ、こういうことは明確になっておりますか。
  29. 関收

    政府委員(関收君) 先生指摘の点についてお答えを申し上げたいと思います。  まず、この飛行機防衛庁が領収いたしましたのが昨年の十一月の十四日でございます。  次に、生産関係について申し上げますと、今先生ほとんどの部品、あるいは大部分の部品とおっしゃいましたか、アメリカ製だとおっしゃいましたが、前回の内閣委員会でも御答弁申し上げましたが、このF15につきましては、マクダネル・ダグラスから三菱重工業がライセンスによって技術導入をいたしまして、それによって国内で組み立てておるものでございます。もちろん一〇〇%部品を国内でつくっているわけでございませんで、一部、特に非常に頻繁に取りかえが必要のあるものは、これは国内でつくらなきゃいかぬわけでございますが、そういう必要性が必ずしもなくて、またアメリカから輸入することによってコストの低減を図られるような部分、こういうものについてはアメリカから輸入をいたしておりますが、具体的なシェアとしては日本国内でつくるものが過半であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  30. 翫正敏

    翫正敏君 米国製の部品に欠陥があっての事故なのか、日本製の部品によっての事故なのかというようなことも含めて調査をしておる、原因究明をしていると理解してよいですか。  それからもう一点は、現在までで明らかになったことで、パイロットのいわゆるミス、こういうものが事故原因であるということはもう排除されたと考えてよいかどうか。この二点をお答えください。
  31. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 先ほど御説明いたしましたようなことでございますので、パイロットのミスということはなかった、そのように考えております。  それから、事故調査におきまして、特に米国製の部品がどう、日本製の部品がどうと、こういう事故調査の方法ではございませんで、要するに何が火種になって、どういうふうな経過をたどって火災が発生したか、もちろんそれには部品も皆関係してくるわけでございますが、そういう調査をいたしております。その結果といたしましてどこが悪かったかということによって、その部品はどういうふうに製造されたものであるかということが結果としてそれは出てくるだろうと思います。
  32. 翫正敏

    翫正敏君 パイロットが原因であるというのは排除されておる。しかし、米国製の部品によって事故が起きたのかもしれないというのは、まだそういう事故原因は排除されていない、こういうふうに理解していいですね。
  33. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) くどいようでございますが、特に米国製の部品とか日本製の部品とか、そういうことではございませんで、全く客観的に事故原因調査を進めておるということでございます。
  34. 翫正敏

    翫正敏君 新しい機体、納入後わずかしかたっていない機体が、パイロットのミスではなくて明らかに機体そのものの何らかの原因によって墜落事故を起こした。それも戦闘訓練中ではなくて着陸態勢に入ってからの墜落事故であるというふうなこと。非常にこの事故原因の究明は私は大事な問題だと思いますので、どの部品から火災が、火災かどうかもわかりませんけれども、火種になったのか、事故原因の引き金になったのかというふうなことを慎重に、ぜひ原因究明をされるように強く要望をしておきたいと思います。  それで、事故原因が明らかになれば、当然この委員会に報告していただけると、こういうことでよろしいですね、防衛庁長官
  35. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、教育訓練局長からお話ししたとおりでございまして、ただいま事故原因の究明をいたしております。  先生の御疑問、私も率直に同様な疑問を持ちました。就航間もない飛行機が、しかもパイロットのミスでないということになりますと、機体の何らかの意味の原因と考えざるを得ません。これは機体の一部が完全な形では回収ができておりません。しかし相当程度のものが回収をされておりますので、原因究明は徹底的に行うべきものだ、こう思っております。  なお、F15はほかにも事故はございますが、生存者が確認されている事故というのは非常に少ないわけでございますので、この問題はきちっとやっぱり調査をしていきたいと思っております。  なお、必要があれば報告は申し上げます。
  36. 翫正敏

    翫正敏君 次に、スクランブルのことについてお伺いをしたいんですが、いわゆる緊急発進の実施状況につきまして、最近五年間の各四つの方面隊に分けてのスクランブルの回数はどういうふうに変化をしてきているのか、説明を願いたいと思います。
  37. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 最近五年間の方面隊列の緊急発進の状況でございますが、数字を申し上げるということでよろしゅうございますか。
  38. 翫正敏

    翫正敏君 はい、そうです。
  39. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) まず、北の方面隊を六十二年度から年を追って申し上げます。二百十八件、六十三年度二百五十九件、元年度二百三十一件、二年度三百十七件、三年度二百九十一件ということで、これはそれほど減っていないということでございます。それから中空でございますが、六十二年度二百八件、六十三年度二百二十件、元年度百七十件、二年度百十二件、三年度八十件と、かなり減少してきているということでございます。西空でございますが 六十二年度三百四十九件、六十三年度三百四十六件、元年度三百五十四件、二年度百二十九件、三年度六十七件、これも相当減っている。南混でございますが、六十二年度七十三件、六十三年度五十四件、元年度五十七件、二年度四十六件、三年度五十件という状況でございます。
  40. 翫正敏

    翫正敏君 北部航空方面隊は緊急発進をしている基地は千歳基地と三沢基地、中部航空方面隊では小松基地と百里基地、西部航空方面隊では新田原基地と築城基地、南西航空混成団では那覇基地、こういうことでよろしいですか。
  41. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) おっしゃるとおりでございます。
  42. 翫正敏

    翫正敏君 今ほどの説明願った数字を見ますと、基地名で言えば小松基地、百里基地、新田原基地、築城基地、方面隊で言えば中部航空方面隊と西部航空方面隊、この減少が極めて著しいと言っていいと思うんですけれども、この原因について防衛庁としてはどのように考えておられますか。
  43. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) これは、減少しておりますのは、恐らく主として、例年行われておりましたチームスピリットという米韓の演習が平成二年度大幅に縮小され、平成三年度には中止されたということで、これに対応します旧ソ連機の活動が減少したということが一つあろうかと思います。  それからまた、例年ですと秋ごろに活発化いたします旧ソ連機のいわゆる接近飛行、日本のシーダーサイト等に接近してくる飛行が減少したということによるものと考えております。
  44. 翫正敏

    翫正敏君 チームスピリットの中止、ソ連は解体をしまして今は主にロシアかと思いますが、そういうところにおけるものの減少、それから日本に接近をして飛んできて、日本の防空体制の状況を調べるというような、こういう旧ソ連側の偵察飛行ですか、こういうものの減少、そういうものが三つ重なっている。こういうことだろうと思うんですけれども、これだけ急激に減少してまいりますと、特にその中でも中部と西部の方面隊におけるスクランブルの体制というものも見直すのが妥当ではないかというふうに思うんですが、それぞれの基地におけるスクランブルの体制はどのようになっているのか御説明を願った上で、この体制を減少傾向に応じて緩めるということが明らかに必要なのではないかと思うので、その点について御答弁願います。
  45. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 現在、各方面隊におきますスクランブルの体制がどうなっているかという点でございますけれども、これは実は我が方の防空体制の詳細の話でございますので、これについては御説明を控えさせていただきたいと存じます。  ただ、これは抽象的に申しますれば、五分待機と八うようなことと、それからもう少し長い時間の待機と合わせまして、即応態勢を常に確保するという形にしているということでございます。  第二点の、それではスクランブルの回数が減少しているということに見合って、その体制を変更すべきだという点でございますけれども、ただいま申しましたように、我が国の主権の侵害でありますところの領空侵犯の防止を目的といたしまして、一日二十四時間体制でレーダーによる警戒監視、それから戦闘機による待機ということを行っているわけでございまして、件数が少なくとも、ある限り、とにかく一日二十四時間体制で警戒監視を怠れない。一日二十四時間体制を維持するということ自体については、やはりこれを維持せざるを得ないということでございまして、回数の減少に伴ってその体制を今直ちに変更する、近い将来変更するということは考えておらないということでございます。
  46. 翫正敏

    翫正敏君 防衛庁長官に次にお答え願いたいんですけれども、大体五分間で発進できる体制は二機だと思うんです。それであと二機が、その点について答えられないなら答えなくていいんですが、少し長い時間で発進できる体制のが二機、こういうことだろうと思うんですが、そういう体制で現在まで来たわけでありますけれども、これだけ中部と西部、私のほんの近くには小松基地があるんですけれども、だから、小松基地の方で見ているとそういう体制であることがわかるんで今申し上げているんですが、そういうことでありますと、例えば一機ずつにするとか、長い方のをさらに緩めるとか、そういう緊急発進の状況がこれだけ急激に、例えば中部でいいますと、六十二年には二百回以上であったものが平成三年には八十回ということであります。  先ほどの畠山防衛局長のお話ですと、減っておっても数がある限りは変えられぬのやと、こういう硬直したお答えでありましたけれども、これだけ急激に減ってきていて、その原因がすべて構造的なものです。旧ソ連軍の解体によってロシアの方の軍事的動向が変化してきているということ、そして、そのことに対応してチームスピリットが中止をされたし、朝鮮半島においての南北対話が進んでいることがもちろんチームスピリット中止の原因一つでありますけれども。構造的な変化がこうして起こってくることによって、たまたま減っているということじゃなくて、だんだん減ってきていて、それが構造的に減ってきているという、こういうことから考えるならば、防衛庁長官、大臣という責任ある立場から、これはやはり検討課題である、減らすべきだと私思うんです。  その点について政治的にどういうふうに考えておられるのか。事務方の今の答弁では、とにかく減っておっても、幾ら減っておっても数がある以上はそのままたなければいかぬのやと、こういうお答えなんですけれども、ぜひひとつ。
  47. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、委員の御指摘のように、構造的に将来ともずっとそういう傾向が確実に予期されるというような場合は、当然そういう考え方に立つべきものであろうかと存じますけれども、今、防衛局長の方でチームスピリットの問題と旧ソビエト連邦の崩壊の問題を理由の有力な原因として説明申し上げました。  これは、チームスピリットにつきましては本年度はやめるということを決めただけでございまして、恒久的にやめるかどうかはこれはわかっておりません。あるいはまた状況によっては再開する可能性を秘めておるものと私は理解しております。また、ロシア連邦の感じも、今CIS等で軍の再編その他が進んでおりますが、かなり難渋している模様でもあるように私ども承知しております。  したがいまして、一体本当にそのようになるのかどうか。例えば月別に見ましても、例の八月十九日の革命の後は急激に月別に減っております。これは国内事情です。しかしその後またふえておるんですね。したがいまして、やっぱり防衛のこういう問題というのは、私はかねてから申し上げておるんですが、ある程度トレンドその他を安定的に見た上で対応していきませんと、そうだと思ってやったところがまたそうでなかった場合もあり得ることでございますから、そこらをひとつ慎重に考えていかなければなりませんが、先生の言うように本当に構造的に定着するというようなことであればいろいろの問題を、再編その他考えることは当然だと思います。
  48. 翫正敏

    翫正敏君 わかりました。そういうことでよろしくお願いいたします。  次に、外務省の方に最初にお伺いしながら防衛庁長官の御所見を承りたいと思うんですけれども、極東各地における駐留米軍の兵員数の近年の動向、及び今後の増減計画について外務省が把握している数字を御説明いただきたいと思います。
  49. 小澤俊朗

    説明員(小澤俊朗君) 米軍は、EASIと言われる東アジア兵力削減計画に基づきまして、アジア・太平洋地域の米軍の削減を行っているところでございます。一九九〇年からの十年間を三段階、すなわち九〇年から九二年の末、九三年から九四年の末及び九五年から九九年の末の三段階に区分いたしまして、現在その第一段階の兵力削減を行っているところでございます。  第一段階におきましては約一万五千名、国別で申し上げますと、日本については約四千八百名、韓国におきましては約七千名、フィリピンにおきましては当初約三千五百名ということで計画を進めているわけでございます。  その後、フィリピンにつきましては、九一年六月のピナツボ山の噴火によりましてクラーク基地が使用不能となって、同年十一月にこの基地が返還済みとなったわけです。また、基地協定が不調に終わったため、スビック海軍基地につきましても今年末までに全面返還される、こういう予定となったわけです。その結果、当初第一段階の兵力削減計画約一万五千名は、フィリピンから在比米軍が全面的に撤退することになりますので、約二万五千名がこの地域から削減されるということに修正されるようになったと承知しております。
  50. 翫正敏

    翫正敏君 フィリピンから撤退する米軍が玉突き式に日本に移ってくるということはない、こういうふうに理解してよろしいですか。
  51. 小澤俊朗

    説明員(小澤俊朗君) フィリピンにつきましては、ピナツボ山の噴火時点で約一万一千名の実員が駐留していたと承知しております。  クラーク基地とスビック基地の両方について御説明いたします。  ことし一月末の米側の発表によりますと、クラーク基地から退避したほとんどの部隊はグアム、ハワイ、米国本土に移動しております。緊急避難的に沖縄に移動していたクラーク基地所属の約七百四十名が他の基地が見つかるまでの間、沖縄の嘉手納基地に一時的にとどまることになったということがことしの一月の末に発表されております。また、米軍の発表では、ことしの十月から嘉手納の第十八航空団のF15の十八機の削減が始まりますので、これに伴いまして行われる再編成によって約七百二十名が削減される。したがって、これらの移動と削減の結果、沖縄における米軍の一時的増加はごくわずか、すなわち約二十名程度のものにとどまるものと承知しております。  続きまして、スビック基地からの撤退状況につきましては、これは本年末までに完了するものと承知しておりますけれども、現時点での撤退状況については順調に行われているということは聞いておりますけれども、その具体的中身は私どもは承知しておりません。  いずれにせよ、我が国との関係におきましては部隊の移動を含む大きな影響があるとは予想しておりません。なお、大半の部隊は米本土に引き揚げるということはクラークの場合と同様でありますし、また一部の部隊がシンガポールに移駐したということは先生御案内のとおりであろうかと存じます。
  52. 翫正敏

    翫正敏君 フィリピンや韓国から撤退する部分が日本の方に玉突き的に移ってくるということは、その一部分が一時的にということはあっても、まあ一時的というのはどれくらいかもちょっと明確にしておいていただきたいと思いますが、そういうことはあっても長期的にふえるということはない、当初の米国が発表した削減計画に基づいて削減されていくというふうに外務省としては把握している、こういうふうに理解してよろしいですか。
  53. 小澤俊朗

    説明員(小澤俊朗君) 一時的の期間につきましては私どもは承知しておりません。米国のEASIに基づきます削減計画は順調にいっているものと理解しております。
  54. 翫正敏

    翫正敏君 フィリピン、韓国、日本におのおの米軍が駐留してきているわけですけれども、それぞれの国における駐留の存在理由というものですね、メリットというふうにいいますか、存在理由、これは何であると外務省は把握しておられますか。
  55. 小澤俊朗

    説明員(小澤俊朗君) 在日米軍につきましては、日米安保条約に基づきまして我が国の安全及び極東における国際の平和と安全の維持に寄与するという日米安保条約の目的を確保するために日本にいるものでございます。  在韓米軍につきましては、朝鮮半島の平和と安定に対する脅威に対抗するために韓国に駐留しているものと承知しております。この点につきましては、例えばチェイニー国防長官は、昨年十一月に訪日した際に、米国は侵略と威嚇の脅威に対抗するため、米国の同盟国である韓国を支持し続ける、米国は、米国が駐留を求められている限り、また朝鮮半島の平和と安定に対する脅威がある限り韓国から撤退する意図はないということを述べております。  在比米軍につきましては、米比間の基地に関する取り決めが解消されることによりまして、米国は本年末までに在比米軍を全面的に撤退することになっていると承知しております。ただし、米比安全保障条約は有効なものとして残ると理解しております。
  56. 翫正敏

    翫正敏君 フィリピンに米軍が駐留しているのはフィリピンの安全のためとフィリピン周辺の極東の安全のため、韓国は朝鮮半島の安全のため、日本はちょっと後でやります。こういうことであって、フィリピンの方はその必要性がなくなって撤退をしていく、韓国の米軍も朝鮮半島の状況が今後対話と共存共栄に向かって進んでいくならば大きな変化が見られるに違いないと私は思うんですけれども、そういうことに対して、日本に駐留している米軍の存在理由だけは特段にこのフィリピン、韓国とは違う、違う別の存在理由がある、特別な、こういうふうに理解していいですか。
  57. 小澤俊朗

    説明員(小澤俊朗君) 質問の御趣旨必ずしもよく理解しておらないかもしれませんけれども、米国はアジア・太平洋地域の平和と安定のために、この地域における米国のコミットメントが引き続き維持されることが重要であるという考えでございます。在比米軍の撤退後も引き続きこの地域において兵力の前方展開、そして域内諸国との二国間の防衛取り決めによって軍事プレゼンスを維持し続ける方針でありまして、我が国もこういう米国の方針を歓迎しております。
  58. 翫正敏

    翫正敏君 外務省から前に説明をいただきましたときに、在日米軍の存在理由の中に、きょうお述べにならなかった点が一点ありますので、それを聞きたかったので言いますがね、私の方から指摘しますが、フィリピンや韓周に駐留している米軍の存在理由と際立って違う在日米軍の存在理由について、日米安保に基づく在日米軍の存在理由について、日本が軍事大国にならないための安心感をアジア各国へ与える、こういう役割があるんだというふうな説明を外交・安保の調査会の席で承りました。そのことが非常に特殊日本的な、米軍が駐留するこの三国を比較したときの特別な理由である、こういうふうに理解してよろしいかと聞いているわけです。
  59. 小澤俊朗

    説明員(小澤俊朗君) ただいま御指摘の色彩は否めないと思いますが、主たる駐留の目的はこの地域の平和と安全を確保するという点にあることは先生御案内のとおりと存じます。
  60. 翫正敏

    翫正敏君 そこで、ちょっと防衛庁長官にお伺いしたいんですが、日本に米軍が安保条約に基づいて駐留しているわけですが、これは他の極東の二国に比べて際立った特徴があるんです。それは日本が軍事大国にならないという安心感をアジア各国に与えるという、まあ俗っぽく言えば瓶のふたのおもしの役割を果たしておるという、こういうことになるのではないかと思いますが、それを瓶の方からいいますと、おもしが乗っているおかげでぽんとならない。そういうようなことが、直接的な理由ではないかもしれないけれども、少なくとも結果としてそういう効果を持っているという、こういう説明が外務省から再三行われているわけです。  我が国が軍事大国になるかならないか、そしてそのことをアジアの人たちにどのように理解してもらうかどうかというような問題は、これは我が国日本の外交防衛政策、日本の国家政策そのものですね。シビリアンコントロールなどというふうな言い方もできるかもしれませんが、国家政策そのもののトータルな問題なのであって、米軍に上から抑えてもらって、おもしとして抑えてもらっているおかげで、そういうことになるというのは非常に私は理解しがたい考え方なのでありますけれども、防衛庁長官は、日本の防衛を担当する最高責任者としてこのことについてどういうふうな見解をお持ちですか。一度お聞きしたいと思っておったんでお願いします。
  61. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 先ほど来、外務省から事実関係の御説明がございましたけれども、まず第一に、アジアにおいてはやっぱりヨーロッパ正面と違いまして、米国と日本、あるいは米国と韓国、あるいは米国とフィリピン、あるいは米国とANZUSというように二国間のバイの安全保障体制になっております。そして、今それぞれの駐留軍兵力について説明がございました。したがって、個々にセパレートして存在するようには見えますが、まず第一は、全体として米軍のアジアにおける前方展開という問題は、これはアジアにおける安全保障に寄与するものであるという点がまず第一にございます。私はこのことをはっきり申し上げさせていただきます。日本の駐留米軍も同じであります、機能的には。  ただし、日本の場合は防衛政策が各国とちょっと趣を異にいたしております。専守防衛、基盤的防衛整備ということで必要最小限度の自衛力を持つということで、日米の安保条約によって、これは国防の基本方針にも述べられておりますとおり、大規模な侵攻に対して我が国が独力をもって排除し得ない場合は米軍の援助を期待するということになっておりまして、決して米軍が日本の軍事大国化を阻止するために存在するというものではございません。  日米安保条約と我が国の基盤的防衛力の基本理念による防衛力の整備と相まって、日本の安全それからひいては日本に関係する極東の安全が確保されるもの、このように思っておりますことをまずしっかりと申し上げておかなければならないと思うんです。  その上で、今、外務省の方からいろいろ見解が述べられておるという先生の御指摘でありますけれども、結果として私はそういう見方があることはこれは否定はできないと存じます。つまり、我が国にとって米軍の展開、これは我が国の防衛上ぜひ必要でございますけれども、実は、卑近な例を申し上げますと、私、ちょっとここで手元に正確な出典を明らかにしておりませんが、中国におきましても準政府的な刊行物におきまして最近、米軍の駐留、前方展開がこれは日本の軍事的な増大を抑止する効果を持っているんではないかと思われるような論文が発表されていることを承知いたしております。これは先生あるいは御存じかもしれません。  そういうことでございまして、アジアの方から見ますと、米軍が駐留しておること、このことがやっぱり日本の軍事大国化を防いでいるんだなという感じを持っておるのは、そういう論文等にもあらわれておりますように、実際国によっていろいろ見方は違うと思いますけれども、一般論として言えばそういうことがあり得るのかなという感じはいたします。  同時に、我が国の立場から考えましても、もしもアメリカのこの前方展開、アジアにおけるあるいは日本における駐留米軍の撤収というようなことが、今EASIの議論が行われましたけれども、アメリカは基本的には前方展開能力というのは維持するということを明確にチェイニーさんも昨年会ったときも申しておりましたし、国防白書等においてもそのことはきちっとされております。  我が国としては、その体制なくして、日米安保条約に基づく米軍の駐留というものがなければやっぱり自分自身の国を自分たちの専守防衛の原則で守らざるを得ません。それは独力だけでなかなかできない。私も委員会で答弁したことがございますけれども、もしもそういう事態になれば自主防衛論というのも台頭してくるでしょう、それも主権国家を守る一つの考え方として私は正しい考え方だと思います。そして今の防衛費をもってすれば、到底ストックの兵力としては我が国はそう大きいものじゃございませんから、そういう主権国家を守るために今の防衛費ではとても足らぬということになるのではないかという趣意のことを衆議院の予算委員会等でも申し上げたことがございます。  私はそう考えておりますので、どうかその辺は、ただおもしで瓶のふたをしておくために安全保障条約があり、米軍が存在するんだという判断だけ、そういう見方は。ちょっと逆立ちした見方ではないかなということを申し上げておきます。
  62. 翫正敏

    翫正敏君 いや、それは逆立ちした見方という、私がそういうふうに見ているというのではなくて、外務省からいただいた外交・安全保障の調査会の資料に四つ理由が書いてあって、一、二、三、四とあって、一、二、三はいわゆる日本への侵略防止とか、極東の安全が云々とかということが三つに分けて書いてあって、四番目のところに今ほど申し上げたような、日本が軍事大国にならないようなおもしの役割、表現はそういう表現じゃないですけれども、非常に役所流の表現ではありますが、俗っぽく言えばおもしでずうんと乗っていてもらったおかげで大きくならぬのやというような、そういうようなことが書いてあったので、なかなか日本に駐留する米軍だけは特別にユニークな役割を持っているんだなというふうに思ったもので質問したんです。  また、このことは、きょうはもうこれで時間がないので終わりますが、米軍が日本において国内法を無視してどんどん低空飛行などをやって被害を与えている問題などとも絡めながら、再度また機会があったら議論をしたいと思いますので、よろしくお願いします。  以上で終わります。答えは要りません。
  63. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 まず最初に、総務庁長官にお伺いしたいんですけれども、先般、北方領土と北海道側の住民との間にビザなしでもって渡航するということがお互いに行われましたね。これは今後もずっと継続をしていくというふうに考えてよろしいのか。  これは、外務省と総理府と両方関係のあることかもしれませんが、一つの突破口としてお互いの渡航ということを試験的にやったというふうに考えていいのか、その点はどういうことなのか、まず見解をお伺いしたいと思います。
  64. 岩崎純三

    国務大臣(岩崎純三君) 先生お話のございました北方四島との交流の枠組み、すなわちビザなし渡航でございますね。この件につきましては、日本の国民と北方領土に居住するロシア連邦国民とが相互に交流することによりましてお互いに理解が深まり、それが北方領土問題解決の役に立つ、寄与する、きっかけになるという期待の中で、昨年の十月に新たに定められたものでございまして、今年四月に北方領土側から初めて日本を訪問し、今我が国の第一陣が五月十一日に北方四島を訪問いたしておるさなかでございます。  これからもその北方四島との交流、相互理解が深まり北方領土問題解決につながる、こういう願いを込めながら、さらに円滑にその交流、ビザなし渡航の問題が前進することを私ども期待いたしておるわけでございまして、先生指摘のように、第一回で終わるものではなくして、これからもさらに交流を深め理解が深まる、そのためにこのビザなし渡航、北方四島との交流の事業を進めてまいりたい、このように考えております。
  65. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 ビザなしでお互いに交流ができるということは、交流する人たちにとっても非常にいいことだと思うんですね。しかし、これが単に一時的なものであれば余り意味がないと思いますけれども、継続的に行われる、しかもその範囲を拡大していくことができるということになれば、両国の友好関係にとってもプラスになるというふうに思われます。しかし、この北方領土ということでありますけれども、一体範囲は限定をされているのかどうか。  そこで、さかのぼってお伺いしたいんですけれども、じゃ北方領土というのはいつからこういう言葉が出たのかということなんですね。かつて戦争中あるいは戦前に北方領土という言葉は聞いたことがない。これは戦後にできた言葉だと。しかも、サンフランシスコ条約のときにおいてすら北方領土という言葉は使われていなかった。だから、どういう範囲が北方領土ということになるのか、いつからこういう言葉を使うようになったのか、その点を参考にお伺いしたいと思います。
  66. 麻植貢

    政府委員(麻植貢君) お答え申し上げます。  北方領土という言葉がいつから使用されたのかということにつきましては定かではございませんが、ただ、既に昭和三十五、六年ごろに国会におきまして政府側が使用しておるというふうな事実がございます。政府として北方領土は、日本が返還を求めております歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島の四島を指す言葉として使用しているところでございます。  以上でございます。
  67. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 定かでないというのは困るんですね。言葉というのは起源があるんですよ。何となくというのは、これは人のうわさ話と違うんだから、やっぱり外務省なら外務省がそういう言葉を使い始めたというのはそれなりの根拠なり理由があってのことだろうと思うんです。それがわからないということなんですか、定かでないというのは。サンフランシスコ条約のときでも北方領土という言葉は使われていないんです。しからば外務省が一つの方針として出したのはいつごろなのか。その点ぐらいは明らかにできなければいかぬと思うんですが、どうですか。
  68. 津守滋

    政府委員(津守滋君) お答えいたします。  ただいまの御質問に対する、北方領土という用語をいつから使い始めたかということでございますが、今、総務庁の方から答弁がございましたように定かではございません。ただ、昭和三十五年ごろから国会答弁としてこの言葉を使っておりまして、内容的には、この歯舞群島、色丹、国後、択捉、慣例的にこの四島を指す言葉として使い始めたということでございます。
  69. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 交渉をする場合に、この北方領土という言葉はいつごろからどういう根拠に基づいて使うようになったのかということがはっきりしないで、大体昭和三十五、六年ごろから慣例的に使われるようになったというんでは、外交交渉の際にやっぱりその重みがなくなると思うんですよ。  サンフランシスコ条約のときにはいろんなことが決まっていますね。その中で、例えばあのときの条約局長の答弁なんかでは、この国後、択捉島についてははっきりしていなかった。吉田首相が発言をしているけれども、この当事国の間でその境界を明確にしていなかったということがあります。それやこれやでもって、後になってからこういう言葉を使ったという意味合いです。しかし、そのことは定かでなければ定かでないで、国会答弁としてはそれ以上追及のしょうがないから、くどく申し上げません。  そこで、こういうふうに交流するようになったということは、かつて日本の防衛政策というものが北方にかなり重点を置いていた。日本の防衛白書というのがありますけれども、毎年これ出ていますね。最近だんだん変わってきた。過去においてはやはり日本の防衛というのは北の方、対象をソビエトに置いていたというふうに言わざるを得ない。だから北海道でもっていろんな訓練をやっていますね。雪の中で白い服を着て演習をやっています。あれはどう考えてみてもソビエトを対象にして、北からの侵攻ということを意識してああいう訓練をやったんだというふうに思いますよ。まさかべトナムとかカンボジアでもって戦闘をする場合、雪の中でああいう白い服着て訓練する必要ないわけですからね。そうすると、今までの方針というのは米ソの対立ということを受けて、日本もソビエトということを意識してやってきたというふうに思わざるを得ない。  そこで、いわゆる北方領土にもソビエト軍の配置がある。具体的には択捉島にどれだけとか、国後島にどれだけとかというようなことが言われた時代もあった。ところが、今、総務庁長官からもお話がありましたが、ともかくこの島々、これらの島との間に相互交流が行われるようになった、これからも継続して行っていきたいということでありますけれども、ということは、それらの島々におけるソビエトの軍隊の配置というものが変化をしてきたというふうに考えてもいいのではないかというふうに思われますが、その点とういうふうに理解をされておられますか、お伺いしたいと思います。
  70. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) いわゆる北方領土におきますソ連軍の配置につきましては、陸上兵力として約一個師団程度、それから航空兵力としても四十四、五機でございますから、二スコードロン程度ということになりましょう。その他の部隊等含めて、現在配置されていることは御指摘のとおりでございます。  実は、昨年の四月にゴルバチョフ大統領が参りました際にも、北方四島における兵力の削減ないし撤退を求めるという趣意のお話があったわけでございまして、三〇%程度の縮減を図るということが、当時ゴルバチョフさんの方から言われたことも御案内のとおりだと思います。  なお、最近において、これは外務省の方から正確にお答えいただくのが適当かと存じますが、渡辺外務大臣も北方四島に配置された兵力の撤退、これを求めていくという姿勢でございまして、私どもは北方四島に関する限りは我が国の固有領土でございますし、またこの返還は我が国国家、民族の悲願でもございますから、ぜひともそういった方向でありたいものだなと私も考えております。
  71. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それならば、対ソ協議というものが、昔に比べると変化をしてきた、ゴルバチョフさんも約束をしてくれた、しかしソビエトという国がああいうふうに急激に変化をしました。ロシア共和国というものができて、今度はロシア共和国の主権のもとにあって、じゃ北方領土はどういうことになるのか、あるいはソビエトの軍の配置がどうなるのか、それはあの島々だけではなくて、サハリンのような日本に近接した地域についても我々は相当関心を持たなければならないと思うんです。  そして、両国の友好と平和ということを考える場合には、お互いを敵視するという関係をやはり過去のものにしていく必要があると思う。それならば、やはりサハリンにおいても交流を進める、それから軍の配置というものを縮小していく、こういう姿が期待できるのかどうかということも考えたわけですね。  私は、やはり限られた人たちが北方領土との間に交流するだけじゃなくて、サハリンのように北海道と同じ面積を持っている、しかも資源の豊富な地域と交流をするということは必要なことだろうと思うし、両国の利益にかなうだろうというふうに考えますので、その点の見解はどうなのかということも、この機会にお伺いしたいと思います。
  72. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 極東ロシア、極東地域における旧ソ連邦の軍事力がどのようなものであるかということは、しばしば議論されるところでもございますが、私どもは総体として申し上げるならば、今なお数量的にはあるいは若干減少しているかもしれませんが、量的にはかなりな兵力が存在しているという認識を持っております。例えば、欧州のCFE、通常兵力削減交渉の前に諸種の通常兵器が売られたり、移転したとも伝えられております。これは私どもの観測だけではございませんで、ミリタリー・バランスその他でも報告されているとおりでございます。  そういう現状にございますが、一方、今、先生の御指摘のように、CISがどうなるか、ロシアの軍事体制がどうなるかという問題がまだ最終的な決着を見ていない状況ではございますけれども、しかし、ロシア共和国というものが独立国として存在すれば、極東地域を支配圏内に持つことはこれはもう常識的に当然だと考えられます。  したがいまして、今まで委員が御指摘のように、北海道にかなり重点的に配備されておったのではないか。そして、それはソ連を目的とした配置ではなかったのかという点につきましては、これは私どもそれと無関係であるということは申し上げるつもりはございませんが、我が国の防衛力というのは、これはもう脅威対抗論をとっておりません。基本的にはそういう考え方には立っておりません。しかし、専守防衛立場といえども、蓋然性の高い地域に対してはある程度の防備をしておく。そして同時に機動力を持たせておくということも必要なわけでございます。  しかし、最近における状況、これを見ますと、今、委員の御指摘のような傾向も一面否定できないところであります。サハリンにおける交流等もあるいはさらにシベリア等の交流もこれから正常化いたしますならば行われるでありましょう。そうした場合において、やはり私どもは安全保障面においては少なくとも相互信頼関係が打ち立てられることが必要だと思います。その基礎には政治的な信頼関係が必要でありましょう。そういった全体的な中でこの問題を考えていくべきものというように考えておる次第でございます。  私ども、この世界の激動する大きな変化の動きを冷静に客観的に、そしてかなり安定的にこれを直視して分析してこれに対応していかなければならない、このように思っておるところでございます。
  73. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 このPKO問題について、特別委員会におけるやりとりいろいろと拝聴しておりましても抽象論が多いわけですよ。だから、抽象論と抽象論だとなかなかかみ合わないんですね。指図だの指揮だの、こういう言葉がやたらと出てくる。指図と指揮とどう違うんだというような話になりますと、これは非常にもう言葉言葉のやりとりなんです。だけれども、率直に言って、私ら聞いていまして、指揮と指図は違うわけですよ。指揮というのは、軍隊の上下関係、指揮命令ということになるわけでしょう。  一方において、それを多少緩和させようと思うから指図なんという言葉が出てくる。指図なんというのは軍隊の上下関係にはないわけですね。指図をしていたんじゃ戦争はできません。指図というのは、大体引っ越しの手伝いのときに、たんすをどこに置いてくれとか、本棚はここに置いてくれとか、そういうのが指図なんです。それ式でもって戦争をやっていたんじゃこれは戦にならないですね。だから、全然そこのところが違うわけですよ。ところが、そういう言葉言葉のやりとりを抽象的にやり合っているとなかなか現実の問題がぴんとこない。そこで、私はなるべく具体的に話を進めてみたいと思うんです。  さっき言った北方領土との間に交流をすることができるようになった。だからこれを一つの突破口にしたらどうかということを言いたいんですよ。サハリンとの間は、例えば昔は稚内と大泊の間に連絡船が通っていました。連絡船が通っていて、列車をそのまま航送をして大泊から昔の樺太、サハリンに列車が入っていけるようになっていた。北海道の野菜などはこの連絡船を利用して樺太の方へ運び込まれたという歴史があります。  また、当時の樺太鉄道というのは、日本の国有鉄道の前身でありますからレールの幅が同じなんです。レールの幅が同じですから連絡船で運んだ列車はそのまま樺太の中に走り込めるようになっている。今でもレールの幅は同じです。それを考えるならば、この稚泊連絡船というものを再開をすれば両国の交流というものもスムーズに行い得るんですよ。その点もやっぱり外交上の問題として着目する価値があると思うんです。  さらに、野菜とかあるいは木材とか、相互の貿易の交流ということも私はやっていいと思う。最近の旅行のプランを見てみますと、サハリンを一巡するツアーも出てきて募集をしています。かつては大泊なんていう所は軍港だったから日本人が入れなかったんですね。ところが、最近はそういうことが撤廃をされて、旅行の計画が行われるようになってきた。それを見ただけでも、そういう点から推察すると、向こうの軍事的な配置ということも緩和されてきているんじゃないか、かつての軍港がそういうふうに開放されてきているということを見ても、やはり私は、この北方領土との交流ということをひとつの契機としてサハリンとも交流を進める。  さらにあわせて、ゴルバチョフさんの後、ロシア共和国に変わったならばエリツィンさんとも話し合いをして、日本はあそこを攻めるという気はないんだから何もあそこに軍隊をいつまでも配置しておく必要はない、北方領土のみならずサハリンからも撤去してもらう、軍備を縮小してもらうということを推し進めるということはできると思うんです。そうすれば、日本だって余分な神経を北海道に注ぐ必要がなくなってくる。日本の自衛隊もあそこに大勢出かけていって月を光らせる必要も理由もなくなってくる。こういうふうになると思うんですね。  そういうところから外交関係を進めていくということはお互いのために得策ではないかなと、こういう気がいたしますから、それらの点についての見解をお伺いしたいと思います。
  74. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 事実関係でございますと、外務省から御答弁いただくのが適当かと思いますが、その前に私の方から基本的な今委員の御指摘の提案について、感想と言っては申しわけございませんけれども、外交上の問題もございますので、そういったことで私としての意見をちょっと申し上げさせていただきます。  基本的に先生のおっしゃられるような方向に行くことが極めて望ましいものと私も思います。そして、それにはやはり粘り強く交渉していかなければなりません。しかしその場合に非常に基本的に重要なことは、恐らくロシア共和国の支配圏に入るでしょうが、その場合にロシアの国が本当に民主的な、自由あるいは市場経済等々、我々と価値観を同じくするような完全な、同質的と申してはあるいはちょっと言葉が適当であるかどうかはわかりませんが、そういった同じ価値観を持つような国家として本当に再生することを私は望んでおります。  そういうことによって、先ほど申しましたような安全保障面においても政治的な面においても相互信頼関係があれば、経済関係もまたそれに相即応してまいりましょう。そういうことでこのサハリン問題も具体的な展開が基本的には見られると存じます。  そういう意味で、委員の御指摘は大変今後のあるべき一つの方向を示唆するもので重要な視点であると考えます。私どもはロシア共和国がそのような事態になり、それでは具体的に相互の信頼関係をどうするかということになりますと、お互いに知り合うこと、そして知り合った上で縮減していくこと、それが必要だと存じます。  最近のテレビ等を見ましても、ウラジオストクの軍港内の撮影がどんどんできて放映されてきておりますね。私はもう画期的なことだと思います、これは。今まで軍港内に外人すら立ち入ることを禁止されていた地域がそのような変化を示してきております。私はこういう機会をとらまえてさらにさらに我が国としても強力なやっぱりそういう手を打っていくべきではないかなと。そして、ロシア共和国も我々と価値観を同じくするような健全な民主的な国家として成功することを特に望んでおる、そういうことでございます。  必要があれば外務省の方から。
  75. 津守滋

    政府委員(津守滋君) 今、先生から御指摘のございましたように、ロシアとの間の交流、これは基本的には活発化する方向で種々の努力を払っていくべきだろうと考えております。特にこれまでの日ソ関係、日ロ関係を見てみますと、政府間の関係もさることながら、グラスルーツといいますか、草の根レベルの交流が非常に少なかったというふうに今感じているわけであります。そういうことを改善する一助として、八六年に当時の安倍大臣がモスクワを訪問しまして文化協定を締結したわけであります。その後、ゴルバチョフが登場しまして、いわゆるグラスノスチ政策で先方サイドにおきましてはいろいろなことが自由にしゃべれるようになったし、また国外への旅行に対する制約もだんだんと除去されていくという状況であります。特に御指摘のサハリンその他極東地域との人的交流その他につきましては、これを活発化さすということについては外務省としてもこれを支持している次第でございます。  ただ、ビザなし交流につきましては、これは先ほど総務庁長官からの答弁にもございましたように、こういう形での相互渡航を認めることによって領土問題の解決、平和条約の締結に資するということを一つの大きな目的にしておるわけでございまして、昨年の決定も当分の間北方領土を対象にしてこれを進めるということに決定したわけでございまして、当面ほかの地域にこの形式での渡航を広げるということは特に考えておりません。  さらに、定期航路につきましては、先般渡辺外務大臣がモスクワでのコズイレフ外務大臣との会談の際に、渡辺外務大臣の方からこの問題を提起いたしました。これはいろいろロシア側に障害があるわけです。これは基本的には民間の採算レベルで行う問題でございますが、ロシア側にも種々問題がある。定期航路のフェリー、こういうものを運航できるようにロシア側の配慮を願いたいという発言をいたした次第でございます。
  76. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 昨年の六月に、今名前は変わりましたけれども、日ソ議連の代表として、櫻内衆議院議長が団長で、私もその一人としてソビエトを訪問しました。その際に、ヤナーエフ副大統領とかルキヤノフ最高会議議長さんとお話をしたんですよ。いろいろと日ソ間の懸案問題について話し合いをして、そして櫻内議長さんが、ぜひ秋には日本へと、こういう話をしたんです。それで、帰ってきたらあのクーデターで御両所はどこかへわけがわからなくなってしまった、失脚してしまった。その後どうなったかわかりません。話は立ち消えになっちゃった。  しかし、その際に、極東関係人たちとも帰りに話をする機会がありました。極東関係人たちの意向は、日本との交流というものを積極的に望んでいるというふうに感じたわけなんです。何といったって極東は日本に近いわけです。最近の変化としてはハバロフスクだけじゃなくて、ウラジオストクが今まで我々に対して閉鎖されていたのが開放された。サハリンのコルサコフですか、ここも今までと違って開放されるようになってきた。こういう変化が出てきた。それから、ルーブル自体の価値というものが下落をしてしまっている、だからソビエトというのは、余り大き過ぎて総身に知恵が回りかねているかどうかわかりませんけれども、そういう傾向があるわけですよ。  日本との経済交流というものを望んでいることは間違いない。だから、そこのところは、そういうところがチャンスだと言っては悪いけれども、向こうの利害とこちらの利害とが一致するような場合には、そこを一つの突破口としていろいろな問題をこれからも進展させていくということが必要だろうと思うし、その好機でもあるというふうに思われます。  しかし、軍事的に言うと、恐らくソビエトにとって膨大な軍備というのは、今の経済状況の中では相当以上に重い負担になっているはずなんですよ。軍備というのは経済的にはメリットはないんです。だから、何とかしてこの軍備を縮小したいという気持ちは腹の中にあるわけですね。そこのところはやはりこちらも推察をして、軍備の縮小というものを求めていくということと、それから交流というものを広めていくというこれは非常にいい機会じゃないか、こういう気がいたします。だから、日本の防衛政策自体もこれに対応できるように変化を考える必要があるんじゃないか、こういう気がいたします。  かつて日本の軍隊は、私自身経験したんでありますけれども、ソビエトが仮想敵だった。私どもは、アメリカと戦争している最中に何で耐寒訓練をやらなきゃいけないのかという疑問を持ったんです。なぜこういうことをするのかと聞いたら、ソビエトが対象であって、我々の任務目的は北樺太に対する敵前上陸だと言われたことがあるんですよ。びっくりしたんですね。これは正気のさたじゃないと思った。南方じゃどんどん撤退をしてきているときに、ソビエトを相手にして戦争をするなんてことを上官がまじめな顔をして言うわけですね。一体何を考えているんだろうという疑問を持ちました。  それから、北方領土というふうに言われている択捉島には、日本の陸軍の軍司令部があったし、海軍の根拠地が単冠湾というところにあったわけですね。だから、軍事的にはかなりあの近辺は重要な地域であった。それから考えると、ソビエトがやはり軍事的にこの択捉島等を重視するということも十分に考えられる。  しかし、この冷戦構造というものが変わってきているということを考えるならば、この冷戦構造の変化に伴う相互のやはり対応もおのずから変化をしなきゃならぬというふうに思うんです。それから、防衛政策自体もその点を十分に考えるべきだと私は思うんですね。  だから、これはこの点を防衛庁長官にも十分に理解してもらいたいと思うし、はっきりとした見解を打ち出すべきであるというふうに思いますので、その点お伺いしたいと思います。
  77. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 委員が今述べられましたように、世界のこの劇的な変化を受けまして、ソビエト、旧ソ連邦もいろいろの共和国に解体をいたしまして、そして国内経済問題等々で大変再建に苦慮していることは、これはもう事実でございまして、軍事費にそう資金配分をするということは、私も不可能だと思っております。  しかしながら、先ほど申しましたように、現実にはそういう兵力量というものが存置をいたしておりますし、私が先ほど申しましたように、中長期的な視点でこれをよく見定めて、注意をしていく必要があることは、これはもう当然だと思います。  一方、今、軍備縮小についてお互いにやるべきであるという御指摘でございますけれども、ここで一つ申し上げておかなければならない点は、我が国の自衛隊防衛力の水準、量質ともいわば基盤的防衛力構想に立っておりまして、ソ連に対抗すべき力は私はなかったと思います。つまり、脅威対抗論でなかったということでございます。この点は安保条約によって東西冷戦時代はいろんなギャランティーを確保してきたわけでございますからよかったわけでありますが、今日相互に、お互いに防衛力を減らせという考え方としては私もうなずける点はございますけれども、我が国の防衛力というのは、そもそも基盤的な防衛力構想に立っておりまして、もちろんソビエトのような戦略核兵器あるいは戦術核兵器等々、また、量においても大量なものを保有しているわけではございません。  したがいまして、これはお互いに平等な立場で、お互いに量的に同じようにどんどん減らしていくべきだということにはならないと思います。  しかしながら、こういう世界の大勢でもございますので、私どもは、五十一年に策定されました防衛計画の大綱の基本的な考え方、つまり、我が国は必要最小限度の防衛力を持たないと不安定要因を増すというようなことで、平時においても持つべき防衛力という考え方の基本理念はこれは堅持しつつも、やっぱり背景としてこういう大きな変化がございますから、我が国の今の防衛整備につきましてのあり方についても、現在の中期防それ自体が前期防に比べてかなり抑制的なものになっておりますし、また、予算等も、御承知のように、伸び率も三十二年ぶりの低い伸び率になっておりまするるこれを申し上げるつもりはございませんけれども、しかしながら、さらにその後、中期防が策定されて、ソ連邦の消滅その他もございます。これから大きな好ましい方向の変化も十分予想されることでもございます。  そうした意味で、中期防のこの二十二兆七千五百億円の範囲内における修正見直し、これはやりますということを明言いたしております。  そして同時に、この中期防期間中に、今後の日本の専守防衛立場に立った防衛力、効率的な防衛力をどうやって維持、整備していくかという視点に立ちまして、人数の点等はなかなか所要数を満たすことができない点もございますので、それらの人的資源の制約等も考慮しつつ、今後の防衛力のあり方をきちっと考えていきたい。これは増大では決してございません。  そういう意味で、方向としては、世界の大勢をよく見きわめながら、基盤的防衛力構想であるだけにその特質に即して私ども堅実な防衛構想の防衛整備計画のもとでやってまいりたい、このように思っておるところでございます。
  78. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 防衛問題についてのいわゆる公式的あるいは抽象的な話はなかなかかみ合わないかもしれません。  私は、今度はまた具体的な問題について触れてみたいと思います。  PKOの問題でいろいろと議論が特別委員会で行われています。宮澤総理の答弁を聞いておりますと、自衛隊でなきゃだめだということを力説しているわけです。自衛隊でなければ役に立たないと言うんですね、その訓練なり今までの教育訓練といったようなことを考えてみて。ということを総合的に推察すると、自衛隊を軍隊として、武装集団である軍隊として海外に派遣をするという実績を何とかしてつくりたいというふうに聞き取れるんです、これは。  そうすると、どこが対象なのか。どこかの国じゃこれはやっぱり話が抽象的になるだろう。私は、さしあたってカンボジアだろうと思うんですね。世界じゅういろんな国で紛争ありますけれども、ユーゴだとかソビエトの向こうの方だとか、こういうところへ日本から自衛隊が出かけていくということはまずないだろう。もっとも海上自衛隊があの中近東に機雷の処理に行きましたけれども、そんなことだって本当は日本がやらなきゃならない問題じゃないと思います。  こういうのは当事国が当然やるべきです。機雷だって地雷だってそうですよ。埋めた連中、敷設した連中がこれを処理するのは当たり前ですよ。遠くの方から全然関係のない国の軍隊が出かけていって、それでそういう物騒なものを処理する義務はないんですよ。機雷だってはるばる出かけていって三十何個処理したなんと言うけれども、何万個敷設されたかわからないやつをですね、ほんのつめのあか程度のものをさらってきただけで、それで何か非常に恩着せがましいことを言って、感謝されているとかなんとか言っていますけれども、それは感謝はするでしょうよ。だけれども、遠い他人のうちの庭掃除に出かけていくようなものでね、それは行けば感謝されるに違いないけれども、そこまでやる必要は私はないと思うんですよ。カンボジアはペルシャ湾に比べれば近いですけれどもね。近いだけに現実的な問題として考えなきゃいけない。  そこで、カンボジアの問題なんですけれども、これはNHKの編集による「謎の国・カンボジア」、こういう本がある。これは一九七八年十二月に発行されているんですね。当時の首相はポル・ポト首相なんです。ポル・ポト政権のもとにおけるカンボジアの移り変わりといいますか、そういうものを写真でもって編集しているんですよ。それにどういうことが書いてあるかというと、   首都プノンペンの中心街は、まさに音のない世界であった。かつての町名も通りの名前もなくなっていた。二百万人がひしめき合い、喧噪に満ちていた街角から人々は姿を消し、商店にも、ホテルにも、映画館にも、固くシャッターが降ろされていた。  こういうことでカンボジアの繁華街の写真が載っています。がらんとしているんですよ、人けがない。かつて二百万の人が住んでいたころのカンボジア、これは七三年のプノンペン市内の雑踏がここへ出ている、二百万人の。上の方はポル・ポト政権になってから人けがなくなったプノンペン。まさにゴーストタウン、こういうふうになっている。そのポル・ポト政権のもとにおいて多数の虐殺が行われたということは我々も聞いております。  なぜ、自分の国の国民をそうやって大勢殺したのかわけがわかりません。わけがわかりませんけれども、このポル・ポト政権が今日もやはり野に下った格好で残っているわけでしょう。しかもシアヌーク殿下なんという人は北京かどこかにいて、それで帰ってきたけれども、じゃ政情が安定しているのかどうか、そういう自分の国の国民を大量に殺すような政権が、よその国の軍隊が入ってきた場合にどういうことになるのか、快く温かく迎える可能性があるのかどうか。こういう点も考えなきゃいかぬと思うんです。  もし、自衛隊を派遣したい、カンボジアがごたごたしている、あそこに行って何とかしたらどうか、国際貢献だと、名目は国際貢献で体裁がいいかもしれないけれども、言ってみればこれはよその国の内戦ですからね。俗な言い方をすると、人のけんかに割って入って、そしてうまくなだめることができりゃいいけど、両方からぶん殴られたりするとばか見てしまうんですよ。こういう危ないことをあえてやるということはやっぱり慎重に考えなきゃいけない。しかもこの抽象的な論議の中では武器の使用は一体どうなんだということのやりとりが特別委員会で行われましたね。  その抽象的なやりとりは、例えばどういうときに武器を使うんだというような論議がありました。だから、抽象的な論議ではこれはわからない。内閣法制局長官が、相手が山賊や匪賊のたぐいのときはこれは発砲してもいいと、こう言うんですよね。発砲してもいいけれども、山賊や匪賊をどうやって見分けるんですかね。プラカードを持って山賊と書いてあるんならこれはわかるかもしれない。そういうわけにいかないでしょう。昔の赤穂浪士の討ち入りみたいに、ちゃんと名前を書いて、私は匪賊でございますと言うんならこれはわかるかもしれない。  そんなものじゃない。わからないときはまず説得をしろと。説得をするといったって日本語じゃ通じないですよね。通訳だって英語の通訳じゃ間に合わないでしょう。現地の通訳を連れていかなきゃいかぬ。そうやって説得をしてなお聞かない場合は空砲を撃て。空砲を撃ってもだめだったら実弾を撃て。そんなことをやればこっちが殺されちゃうんですね。  だから、そういう悠長な話は現実の問題としては間に合わないんですよ、これは。現実の問題として間に合わないことを、何とかして実績をつくろうとしてカンボジアにも自衛隊を送りたいと。それは偉い人と偉い人との間の中ではぜひお願いしたいという話があったかもしれないけれども、実際の問題としてやられる自衛隊の身になってみなきゃいかぬ。何のために、それこそ今までは北海道あたりで一生懸命訓練をやっていたのが、カンボジアのような暑いところに行って、そしてわけのわからない戦闘に巻き込まれる。そこで命でも落とすなんていうことになると、これは取り返しのつかないことになるでしょう。そういう点やっぱり考えなきゃいかぬと思うんです。私は具体的な問題として、あえてこの問題を指摘したいと思うんです。  だから、このPKF、これはやっぱり必要だと、こういうふうにおっしゃいますけれども、じゃ武器は最小限度限られた武器だというふうに言われておりますけれども、その武器としてはどんなものがあるのか。前にもちょっと特別委員会でお聞きしましたけれども、改めてこの武器の範囲というものを聞かせてもらいたいと思うんです。
  79. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 最後の御質問だけにお答えすればよろしいわけかとも存じますが、基本的な事柄についてでありますので、簡単にちょっと申し上げておきたいと思います。  我々は何が何でも自衛隊を海外に出すつもりで今回のPKO法案を出しているものではございません。たびたび申し上げているように国際的な、人的な貢献の必要性からこれを行おうとするものでございまして、これは我が国の私は国益にも合致するものと、このように思っております。  それから、武装集団として海外に派兵するものではございません。まあ言うならば戦争後の、要するに停戦の合意という言葉を使っておりますが、戦争が終わった後、つまりカンボジアで言えばパリの包括和平会議で昨秋決定されまして、今御指摘の四派もそれに一応服してSNCという機構が一応できたわけですね。しかし、それだけではこの平和は保たれないということからして、国際連合が重大な関心を持ち、UNTACという暫定機構を、民主的な選挙が行われるまでの間、原則としてこれによって機能を果たすということでございます。  あくまで国際的な枠組みの中における日本の参加でございますから、日本が単独でどうしても海外に出ようという意図では決してないわけでありますし、戦争に参加するものではなくて、停戦が行われた後の後始末と申しますか、そういった平和的な復興、貢献に寄与するものということでございます。  また、PKOの派遣が、よその国の内戦に参加するというような私ども考え方は決して持っておりません。今現に戦っておるわけではなくて、ただいま申しましたように包括和平協定によって停戦の合意が一応できて、それを確認して国連からの要請があった場合に日本が我が国として主体的に判断をいたしまして、限られた人数を派遣するわけでございます。  その場合に、停戦監視団のようなものは武器を携行しないというのが各国の例でございます。これは高級将校で二人とか三人で組んで、しょっちゅう忍耐強く停戦の監視を行うという業務でございまして、今までのPKO活動の中でももう定型化されているような業務でございます。しかしながら、部隊として自衛隊を出すということになるわけでございまして、これは戦争をやりに行くわけではございません。  その場合に、それじゃ手ぶらで行けばいいかということになりますと、やはり自己の生命、身体を守る自衛隊の安全性の問題、これはどうしても考えておかなければならないことでございます。そういう意味で、武器の携行を認めております。これは実は法律、先生も御承知のとおりだと存じますけれども、事務総長の定めた範囲内において装備を決めることになっておりますが、装備というのは、武器とそれから輸送手段その他のいわゆる直接的な殺傷兵器でないもの、こういうものを含めて国連の事務総長と調整をしてこれを携行していくわけでございますが、具体的に今まで申し上げている武器の範囲は、いわゆるピストル、けん銃ですね、それから小銃あるいは機関銃等が大体各国で持参しておる武器でございます。  また、場合によりますと装甲車等も持ってまいりますが、これは戦闘行動のためではございませんで、まあ地雷等がカンボジアの場合にはかなりございますし、兵員輸送の場合の安全度を考慮して、機能的には兵員輸送車と言うべきもので、そういうものを持っていく場合もあるいはあるかもしれません。  各国の今までの例によりますと、その程度のものでございまして、これは具体的に何を携行していくかということは、国連から要請があったときに我が国と相談をいたしまして実施計画、実施要領をつくったときに、どういうところにどれだけの人数を、どういう武器を持っていくというようなことを決めて、そしてコントロールをしながら派遣をするわけでございまして、決して我が国が戦前のイメージのような我が国だけの政策遂行手段として自衛隊を派遣するというようなものではございません。  私も委員会でたびたび申し上げておりますように、自衛隊は本来は直接侵略、間接侵略に対して我が国を専守防衛立場に立って守るということがこれは主たる任務でありますけれども、同時にこれからの国際化時代に、自衛隊の能力集団としての、戦闘集団というよりも組織的な訓練された能力、ノウハウを持った集団を出していくということが非常に必要ではないかという視点に立っておるわけでございまして、各国ともPKOに出されているのは、軍隊を主体に出しております。この意味で、我が国の自衛隊をそういう平和目的のために本来の任務とは全く違った機能を持つものとして派遣をしたいというわけであります。  なお、ちなみに、最後にちょっとつけ加えさせていただきますと、このPKO法案は自衛隊のみを派遣するものではございません。これはもう指摘するまでもありません。これは各省庁から専門家を集めたりあるいは選挙監視その他の問題についても、文民、いわゆるユニホームでない方々を集めてそして行く、そしてその総勢は二千人を限度とするということが法律にも明記されております。  長くなりまして恐縮ですが、そういうことをちょっと付言させていただきます。
  80. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 何が何でも自衛隊の派遣を考えているわけじゃないというようにさっき御答弁がありましたけれども、それなら何もそんなに急いで、今度の国会でPKO法案を成立させなきゃならぬというふうに慌てることはないのであります。  さっきの大臣の答弁でもありましたけれども、かなり念入りにいろんなことを考えてやらなきゃいかぬということを言われておる。二千人と言われるけれども、もし派遣をする場合に、土木工事や何かと違うんですから、二千人とか大ざっぱにやるわけにいかぬでしょう。自衛隊の場合はやはり単位があるわけです、何個大隊とか何個連隊とか。  例えば普通科連隊の編成を見ますと、第一中隊から第四中隊まであるけれども、その中隊の下には小銃の小隊もあるし無反動砲もあるし迫撃砲もあるわけですね。こういう装備をその中から重いものだけ取り除いていくというわけにはいかないでしょう。しかも、今までの委員会の中では迫撃砲もその中に入っておりました。迫撃砲というのは、今の陸上自衛隊の迫撃砲では64式迫撃砲は射程が三千五百メートル、それから百七ミリの迫撃砲では射程が四千メートル、三千メートルや四千メートルの遠隔まで弾が届くんです。しかも、迫撃砲は筒を直接真っすぐ向けて撃つわけじゃない、上の方へ向けて弧を描いていくわけでしょう。見えないところの敵を攻撃をする。山の陰とか物陰とか見えないところの敵を、遠いところの敵を攻撃する道具なんですよ。  自衛のためと言うけれども、四千メートルも三千メートルも離れたところの相手を自衛のために迫撃砲で攻撃をするということはあり得ないと思うんですよ。だから理屈からいってもどうもこれは説得力がないです。機関銃だってそうです。ごく内輪にと言うけれども、機関銃なんというのは引き金を引くと引いている間じゅう弾がみんな出てしまう。長官も御存じだろうと思うんです。遠慮しながら使うわけにいかないんですこれは、一度発砲してしまうと。しかも飛び出した弾は空砲じゃないんですから当たれば相手が死ぬんです。  こういうものを軽々しく使うなどということはこれは絶対にやっちゃいけないことだし、憲法から明らかにはみ出しています。大いにはみ出しちゃっているんです。だからこういうふうに憲法からはみ出した武装集団を外国へ派遣するということは非常に危険だ。それは理屈は国連平和の維持のためならということがあるかもしれぬ。  そんなに国連に忠節を尽くすんならば、今までの委員会において自民党の方からもありましたけれども、敵国条項も外せないでいて、それで人的あるいは資源の面でだけ協力をしろなんというのは虫がよ過ぎます。もし本当に国連が日本に協力をしてくれと言うなら敵国条項をまずとる。それができないうちは財政的援助も、いわんや人的援助もそう簡単にはできない。今まではお願いしていたから言うことを聞かなかった。お願いじゃだめなんです。これ要求しなきゃいかぬ、敵国条項はとれと。下手に出ないで高飛車にとれと、遠慮しないで。今まで遠慮していたから何回やってもこの敵国条項とれなかった。まず敵国条項もとらせる。それから貢献の方法も憲法の範囲内でやる。これが筋です。どうしても武装した軍隊を派遣したけりゃ憲法改正を先にやってからそれからやらなきゃいかぬ、こういうふうに思います。  その点、時間の関係もございますからこの程度にしておきますが、最後に長官の見解を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  81. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 大変問題の指摘が広範にわたっておりますので、簡潔にちょっと申し上げたいのです。  第一点はPKOは平和目的である。これはもう説明を要しません。そして同時に、部隊として出す場合は既存の部隊そのままの編成で出すわけではございません。私どもは二千人全部自衛隊で行くというようにも考えておりません。したがって、ある程度素質のいいしかもきちっとした忍耐力のあるそういう隊員を選定して編成してまいります。  その場合の携行武器がさような、先ほど申し上げたようなことになるということでございまして、我が国の今直接侵略に対応する部隊編成、それをそのままある一部分だけを派遣するというものでないことは、これはもう申し上げるまでもございませんが念のために申し上げておきます。  なお、装備の中の迫撃砲、確かに過去の例で、国によって持っていった例がございます。しかし、これは先生が言われたように武器として殺傷力としてこれを使用するものではないようでございます。これは夜間照明等でそれは併用できるようでございますから、そのために使っておるということでございまして、私どもは迫撃砲を持っていってどうだと言われても武器としてこれを使用することは絶対に考えておりません。これは先生のおっしゃるとおりです。目に見えない敵に対して迫撃砲を撃って自己の生命、身体を守るなんということは普通は考えられません。  今度の法律によりましても、二十四条で厳格な正当防衛とか緊急避難に該当する場合にのみいわゆる小型的な兵器で自己の生命、身体を守ること、これを許容しているだけでございまして、武器の使用については極めて制限的にやっております。  憲法との関係の御指摘もございました。これも特別委員会における重要な視点のポイントの一つでございます。簡単に申しますと、私どもはいわゆる武力行使のための海外派兵ではない、これはあくまでも平和目的のための派遣でありまして、その派遣のための歯どめをいわゆる五条件とかいろいろ申し上げておりますが、そういう厳格な意味で武力行使を目的としていないことを法文上も明らかにし、実効上も我々はそう考えております。  なお、最後の敵国条項の問題でございますが、これは国連総会におきましても我が国の責任者が、すなわち外相がこれについて言及し、また中山大臣等もこの撤廃を要求をいたしております。また、今の総理もその点では全く同感でございます。ただし、この敵国条項は我が国ばかりでございませんで、旧敗戦国、ドイツ等もそうでございますが、これはいわば死文化しておりまして、これが存置されることは私どもとしては好ましいことではございませんから、きっぱりとこれの廃止を要求しております、すべきものだと存じますけれども、実際の運用上は死文化しております。  これが死文化しでなかったら大変です。そうして国連協力するなどということは先生指摘のように全く常識に反します。しかし死文化いたしておりまして、国連の全体の機能強化については総理も非常に意欲を示しておられますので、各国の合意が得られる際にこれが落ちていくということになるのではないかとは思います。これは総理もそんな趣意の答弁をされておられます。  したがいまして、もうこの点は、先生の御指摘のとおり、言うべきことはきっぱりと言い、なすべきことはきちっとなしていくということがこれからの日本外交の姿勢だと存じます。
  82. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大臣の答弁の中で、迫撃砲は遠いところの敵を攻撃するということよりも照明弾として使うんだというふうに言われましたけれども、照明弾なんというのはあんな大きな筒の迫撃砲使わなくたってあるんですよ。これ私たちが半世紀前に軍隊でもって経験しましたけれども、このくらいの筒でもって針金がついていて、土の中にそれを埋めて、ちょっと導火線を引くとポンと飛び出す。そうするとあたり一面昼間のように明るくなる。そういう道具があったんです。我々のころだってあったんです、今だってあるでしょう。だから照明弾にこの迫撃砲を使う必要ないんです。あたかも信号弾、照明弾に使うために迫撃砲を持っていくようなことを言ったら、これは間違いです。ごまかしになりますね。  それから、明るくするだけなら花火がなんか使ったって十分明るくなる。今、花火大会があっちこっちでありますけれども、迫撃砲でもって花火を打つということは聞いたことはないです。その点はちょっと間違いのないように。
  83. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 委員の御指摘のとおりでございまして、私どもは迫撃砲を具体的に持っていくということは考えておりません。ただし、各国の例がございましたから、これを調べましたところ、そういう使用目的であったということを申し上げたわけでございまして、私どもは基本的に迫撃砲が必要であるというような事態は、照明弾としても、今、先生指摘のようにもっと簡易な方法もあり得るでしょう、そういう必要があればそんな大型のものを持っていく必要がないわけでございまして、これはおっしゃるとおりだと存じます。決して武器としての使用を考えているものでないことだけは明確に申し上げておきます。
  84. 梶原清

    委員長梶原清君) 午後一時に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時四分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  85. 梶原清

    委員長梶原清君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国防衛に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  86. 小川仁一

    ○小川仁一君 私が何かここで急に問題を提出して、急遽理事会をお願いしたときに、理事会は開けますか。そういう状況の中でも、委員長としておやりになるのかどうか、委員長の見解をまず最初に聞きたい。
  87. 梶原清

    委員長梶原清君) 本日は他の委員会の理事会が開かれておりまして、全部そろわない状態でございますが、今、過半数でございますので始めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
  88. 小川仁一

    ○小川仁一君 私は理事だけのことを言っているんです。  やめよと言うつもりはありませんけれども、他の委員会が開かれておっても、ここの理事の人はここの理事会に責任があるはずでございます。私も時々サボることがありますから、別に文句言いませんが、やっぱり委員長、もう少ししっかりしてくださいよ。理事ぐらいそろえてくださいよ。要望しておきます。  こういうことを申し上げてから、国立公文書館のあり方について質問いたします。  まず初めに、公文書の保存、公開についてお伺いいたしますが、旧陸軍の細菌戦部隊であった七三一部隊に関する資料について。この資料は一九五〇年代にアメリカから返還されたと言われています。どこの官庁がこれを収蔵しておられるんでしょうか。外務省ですか、防衛庁ですか、国会図書館ですか、あるいは国立公文書館ですか。それぞれ御回答願います。
  89. 坂東眞理子

    説明員坂東眞理子君) お答え申し上げます。  七三一部隊に関するGHQからの返還資料につきましては、当館所蔵の資料の中に、満州第七三一部隊陸軍医師吉村寿人氏によって著されました「凍傷について」という資料がございます。
  90. 小川仁一

    ○小川仁一君 私の聞いた資料と違うでしょう。
  91. 鏡武

    説明員(鏡武君) 御指摘の資料は外務省にはございません。
  92. 井門寛

    ○国立国会図書館参事(井門寛君) 国立国会図書館では、先生お尋ねの七三一部隊に関する資料の返還は受けておりません。
  93. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 昭和三十三年四月、防衛庁は米国が押収しました旧軍資料の返還を受けておりまして、現在、戦史に関する調査研究に資するために防衛研究所におきまして約四万件の資料を保管しておりますが、その中には、御指摘にございました、いわゆる七三一部隊活動状況を示すような資料はございません。  ただそれとは別に、正式に関東軍防疫給水部にかかわる記述というものが、関東軍の部隊改編等を示す資料の中にはございます。
  94. 小川仁一

    ○小川仁一君 そうすると、いろいろ今、戦前戦中の問題が問題になっているんですが、例えば、従軍慰安婦についても次々防衛庁で見つかったり、国立公文書館から見つかったり、あるいは民間の研究者が見つけてきたりしている。本来、こういうふうな種類の文書は、特にアメリカから返還された文書等はどこかが責任を持って保存すべきものではないかと考えているんです。この問題については内閣官房の方で御答弁願いたいと思います。
  95. 高岡完治

    政府委員(高岡完治君) 必ずしも私が自分の立場でお答えするのが適当であるかどうか自信はございませんけれども、本日当委員会には内閣官房の者が参っておりませんので、かわりまして、私総理府でございますが、内閣総理大臣官房の審議官といたしまして、ただいまの先生の御意見を持ち帰りまして内閣官房の方に伝えると同時に、私どもも公文書館を所管いたしておるものでございますから、その立場も踏まえまして政府部内で関係省庁と十分検討させていただきたいと存じます。
  96. 小川仁一

    ○小川仁一君 官房長官が所用があっておられないということについては、外交上の問題で了解いたしましたが、答弁に該当する人が来ないということを了解したつもりはございませんから、その点ははっきりしておいてください。  なお、今のお答えではっきりしておきたいことは、旧軍関係の資料、アメリカから返還されたこういう資料は、これは総理府ですか官房ですか。  いずれにしても、保存する場所をきちんとして整理して保存する、こういう方式をとらなければならないと思いますから、それぞれ御協議の上決定をし、後で御報告を願いたいと思います。  続きまして、私は前回のこの委員会で、省庁の行っている委託研究の保存と公開について各省庁に幾つかの御質問を申し上げました。そしてまた、具体的な提案も申し上げたつもりであります。その後、委託研究について各省庁国会図書館との間で具体的なお話がありましたか。あるいは、そういう種類のものが納入されておりますか。
  97. 井門寛

    ○国立国会図書館参事(井門寛君) 委託研究資料の納入促進方について、各省庁に対して個別にお願いするまでにはまだ至っておりません。  ただ、過日、本委員会において、先生から御指摘を受けました点を踏まえまして、去る五月六日、総理府で開催されました各省庁広報担当者連絡会議の中で、改めて官庁出版物の納入促進方についてはお願いをしてまいりました。また、内閣総理大臣官房の広報室長を通じまして、各省庁に対しまして文書でもって官庁刊行物の納入促進方をお願いしているところでございます。  それから、委託研究資料の納入の状況でございますが、総務庁、文部省、それから厚生省、労働省、通産省等の各省庁からは従来からも、部分的でございますが委託研究資料の納本はございます。
  98. 小川仁一

    ○小川仁一君 今、省庁をお聞きしましたが、防衛庁、総務庁、総理府という言葉が聞こえなかったんですが、この三つの省はこういう種類のものを納入しておられますかどうですか。それぞれお答え願いたい。
  99. 高岡完治

    政府委員(高岡完治君) 総理府といたしましては、国立国会図書館法の規定に基づきまして、その基準に合うものについては従来から納本をやってきたところでございますが、先般当委員会におきます先生の御指摘もございまして、先生の御指摘を踏まえまして早速部内で会議を開きまして、その趣旨の徹底を図りますと同時に、先ほど国会図書館の方からも御答弁がございましたように、私どもの広報室におきまして各省の広報担当官で構成されております会議を開きまして、そこでさらに国会図書館の方からの御要請を踏まえまして、その趣旨の徹底を各省庁にお願いしたところでございます。  なお、総理府本府といたしましては、従来委託研究のもので国立国会図書館の基準に合致したものとして納本をしてまいっておりますものは一種類従来から長年にわたって納本をしてきております。
  100. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) お答え申し上げます。  当庁における委託研究の報告書でございますが、先般も答弁いたしましたように、部内の業務の参考に資する資料として少数作成されている部内資料でございまして、中には三部というようなものもございます。したがいまして、いわゆる図書館法第二十四条に規定する出版物に該当しないものとして取り扱っております。  なお、今後とも国会図書館への納本につきましては、この二十四条の趣旨に照らして納本をしてまいりたいと考えております。
  101. 八木俊道

    政府委員(八木俊道君) 総務庁におきましては、前回の当委員会の御審議でも御報告を申し上げたとおりでございますが、国会図書館法二十四条にのっとりまして所要の部数を、広く部外に対して提供しているものにつきましては国会図書館に納本しているところでございます。
  102. 小川仁一

    ○小川仁一君 この二十四条の趣旨で、部内資料ということでお出しになっていないようでございますが、これは機密にも何にも属しません、部内資料でございますから。当然のことながら一部や二部の余裕はあるわけでございますから、今後趣旨、精神にのっとればこういうものも当然国会図書館に納本してしかるべきと考えますから、その点を、機械的な解釈だけじゃなしに、本当に後世にいろんな資料を残すという立場から御検討を再度お願いしておきます。  さて、前回防衛庁の「海外国防資料」が昭和五十七年度以降納入されていない理由についてお尋ねをいたしました。よくわからないので調べさせてくれというお言葉でしたが、どういう事情で納本していないか明らかにしていただきたいと思います。
  103. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) まず、事実関係でございますけれども、納本の状況でございますけれども、昭和三十二年から四十九年までは防衛庁が納本をいたしておりました。それから五十年から五十六年まではラヂオプレスというこの発行のもとがその責任において納本をしておった。五十七年以降両者から納本が行われていないという経緯でございます。  それはどうしてかということを調べましたが、わかっておりますことは、まず三十二年から四十九年まで防衛庁は納本しておりましたけれども、四十八年に人事資料等内部資料を閲覧するというような一つの事件がございまして、納本の図書等の見直しを行いまして、その際「海外国防資料」につきましても部内資料であると定義づけられまして、昭和五十年から納本を中止したというふうに承知をいたしております。  それから、五十年から防衛庁が納本を中止したことに伴いまして、国立国会図書館から直接ラヂオプレスに納本の依頼がございまして、防衛庁黙認という形で納本されることになったと聞いております。それからまた、昭和五十五年に宮永事件を機会に調査月報等の見直しを行いまして、部内資料の配付等について検討いたしました際に、ラヂオプレスに対し「海外国防資料」の国立国会図書館への納本を中止させたということでございます。  その後、国立国会図書館からラヂオプレス及び防衛庁に納本の依頼がございましたが、部内資料であり、国の諸機関のために発行される出版物というものに該当しないと解されまして、納本しないということで現在に至っているところでございます。
  104. 小川仁一

    ○小川仁一君 ちょっと納得できないんです、今のお話では。さっきから言っているように、これは特段部内資料でも機密でもないんです。こういうようなものは当然のことながら予算を使っておつくりになっているし、それから私たち国会議員も率直に申し上げて見たいものです。また、関心のある方々も見たいものだと考えておりますので、部内資料ということですべてに枠をかけてしまいますとあらゆるものが出てこなくなります。そうでなくても防衛庁は機密だ機密だが多過ぎるなんていう御批判もあるんですから、せめてあなた方の作戦とか行動に関係のないものについては納めていただきたいと思いますが、これは今すぐここでという御返事はいただかなくてもいいですから、私が申し上げたことを中心に御検討を願いたいと思います。  それから次に、国立公文書館は各省庁から受け入れをしているわけでございまして、その文書の保存、公開をすることがお仕事になっているわけです。そこで各省庁の文書を受け入れるについての基準、規定があると思うんです。簡単にお答え願いたいと思います。
  105. 坂東眞理子

    説明員坂東眞理子君) 国立公文書館では、既に設立二十年以上たつわけですが、特に昭和六十三年の六月一日から施行されました公文書館法で、「国及び地方公共団体は、歴史資料として重要な公文書等の保存及び利用に関し、適切な措置を講ずる責務を有する。」と法律で規定していただきましたので、それに基づきまして各省庁の御協力を得て資料を移管していただいているわけでございます。  特に、各省庁からの移管につきましては、昭和五十五年十二月二十五日に各省庁連絡会議申し合わせというものがございまして、できるだけ協力をしていただくということで、各年ごとに移管計画を立てまして移管を進めているところでございまして、もう既に私どものところには五十万四千冊の文書を収蔵してございます。そしてその中でプライバシーにかかわるもの等々を除きまして、三十年以上を経過したものについては公開をするという方針でやっております。
  106. 小川仁一

    ○小川仁一君 法律もあるわけですから、御協力は当然だと思いますけれども、法の趣旨に基づいて、これはもちろん出せなんていう言い方はないと思いますが、単なる御協力ではなしに、公文書をきちんと御整理ください。そうすれば、私たちも前の時代に何があったかということがいろいろわかりますので、資料として後世に残るものですから、ぜひ御努力願いたいと思います。  いただいた資料によりますと、外務省、防衛庁からはほとんど出ていないんです。六十一年から平成元年まではゼロ、平成二年に防衛庁が一件、こういうふうな状況になっていますが、これは国立公文書館になぜお出しにならないのか、御説明願いたいと思います。
  107. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) お答えいたします。  防衛庁の文書の国立公文書館への移管でございますが、先ほど担当次長の方からお話がありましたように、申し合わせがございました。その当時、独自の保存、公開施設を有する省庁としまして、防衛庁については別段の取り扱いをするということになりまして今までやってきたわけでございますが、国立公文書館への公文書等の一元的な集中保存という観点から改めて検討いたしまして、平成二年度から導入をすることにしたということでございます。したがって、以前はなかった、今後は防衛上の是非や部内利用の必要性等との兼ね合いを考えつつ、あとう限り移管するよう努力してまいる考えでございます。
  108. 鏡武

    説明員(鏡武君) 外務省につきましては、国立公文書館の設置に先立ちまして、昭和四十六年の四月に外務省に外交史料館というものを開設しております。この史料館の方に外務省の公開済みの文書等、相当量の文書を保管しておりまして、これらすべて一般からの閲覧にも供しているという状況でございます。このような事情がございますので、外務省としては、これまでのところ国立公文書館に公文書を移管するという措置はとっておりません。
  109. 小川仁一

    ○小川仁一君 外務省が外務省でお持ちになることも一つの方法だと思いますが、せっかく国立公文書館というものをおつくりになった。そこへ行ったら関連してほかの資料も見れる、外務省も見れる、ついでに防衛庁も見れる、こういうふうな形で、例えば三十年後に公開するにしても十年後に公開するにしても、総合的に見れるようになると思うんです。だから、外務省のことにあえて異を唱えませんけれども、将来の課題としてこれはやっぱり国の一つの秩序体制としてきっちり決めておいていただきたいと思います。これは要望です。  それから、国立公文書館に最近五年間についての受け入れ文書のリストをお願いしたのですがいただけませんでした。事情を伺いましたら、各省庁は納入に際してのリストをつけていないと。端的には、ダンボールに入れてぼんと持ってくるだけなんです。また、国立公文書館の側ではとても受け入れ文書のリストをつくるだけの能力も現状ではないというお話もございます。ある人に言わせると、自分のところに置いておくのが邪魔だから、さりとて捨てるわけにもいかないと、まあ倉庫がわりに送ってくるなんというふうなことを考えている人はないと思うが、うわさ話で出てくるような状況もあります。  こういう問題については、やっぱり日本の歴史を後世に残す、こういう観点から歴史的な財産ということで整理して統合していただきたい。さっきも七三一部隊の返還資料はどこにあるかはっきりしない、アメリカから返されてきたものが。こんな状況では慰安婦のときと同じようにあっち行ったりこっち行ったり、ぽっと出たり、これではどうにもならないと思いますので、今後の改善方法について、これは総理府にも国立公文書館にもそれぞれ考え方をお願いしたいと思います。
  110. 坂東眞理子

    説明員坂東眞理子君) 全く先生がおっしゃいましたとおり、私どもは、この後世に残すべき貴重な資料の研究、選別、保存等々についてしっかり取り組まなければならないと考えているわけでございます。  中でも特に、公文書館法の第四条で専門職員の養成に努めるというふうな規定をしていただきましたことを受けまして、平成元年の十一月より私どものところで専門職員の養成に関する委員会を設置いたしまして、各界の有識者の方々にお集まりいただきまして、公文書館でそういった重要な、これは本当に歴史的な価値がある、保存に値する資料がどうか等々のことを研究し、調べ、選別するといった専門的な仕事を行う職員はどういったような資質が必要なのか、どういった教養を持つべきなのか、どういった権限を持つべきなのか等について話し合っていただいておりまして、それの報告も近々まとまると思いますので、そういったものを十分踏まえて対処していきたいと思っております。
  111. 小川仁一

    ○小川仁一君 総理府か官房の方には御意見ありませんか。
  112. 高岡完治

    政府委員(高岡完治君) 国立公文書館の使命につきましては、当参議院においても大変な御尽力を賜ってきたところでございます。先生の御指摘の点を十分踏まえまして、私ども、後世の人からそしりを受けないように、関係省庁と十分相談をさせていただきながら研究させていただきたいと存じます。
  113. 小川仁一

    ○小川仁一君 私たちお互いは、ある一時期しかそういう課題、例えば外務なら外交問題、防衛なら防衛問題に一時期しか接触しないんです。したがって、長い歴史の中でこれを見ていくということは、私たちの任務を果たす上においても非常に大事ですから、ぜひ両者力を合わせて処理というか整理をお願いしたい。  特に、今、専門官のお話が出ましたけれども、後世に公文書を歴史的な財産として残す大事な仕事をなさるには、十分な人数と有能なスタッフが要ると思います。特に、専門スタッフを置かれるというお話がありましたが、これもあちこちで聞くところによりますと、せっかく専門官を配置しながら、行政職の余った者を、これは定員法の関係もあるかもしれませんけれども、機械的に回して、専門職を持たないという、能力がまだ十分じゃないという方も配置されているやに聞いております。定員法のひずみだと思います。  この点、今後の問題として、公文書館は本当に専門的な人をそろえるように努力をしていただきたい。いろいろな事件もありまして私も内部事情はかなり知りましたけれども、そのことは言いませんが、今後の努力を、しっかりとしたお考えをお述べ願えればありがたいと思います。
  114. 高岡完治

    政府委員(高岡完治君) 国立公文書館は私どもの所管でございますので、その立場でお答えを申し上げます。  二点あろうかと思います。一つは、先ほど私どもの次長がお答え申し上げましたように、この公文書館の保存等についての専門職員、アーキビストと申すようでございますけれども、これの専門職員をどんなふうにして養成していくか。養成していく必要は十分認識しておるところでございますけれども、何しろまだアメリカ等参考にしながら研究をしている段階でございます。関係の有識者の先生方、研究者の方々にお集まりいただきまして研究会を開き、近々結論を得て、関係省庁にも十分御相談をしながら、先生指摘のような公文書の保存という点について十分後世の人たちの批判にたえ得るような制度に仕上げてまいりたい、総理府としてはかように考えております。  それからもう一点は、公文書館におきます具体的な専門職員の配置等の問題でございますけれども、これにつきましては、そういう専門職員が養成されておらないという点もございますので、例えば古文書に通じた職員を大学院等から採用するというようなことを適宜やってはおりますけれども、まだまだ先生指摘のように不十分なところが多々あることは私ども認めざるを得ないところでございます。その点につきましても、私ども、総理府職員のこういう公文書の保存等についての専門知識の普及といいましょうか、専門職員の養成ということも兼ね合わせながら、適材適所ということで極力努力をしているところでございます。  ただ、現実の問題としてはいろんなことがございますものですから、御批判をいただくようなことに相なっておるのではないかと思っております。その点は十分反省をしながら御指摘のような方向で総理府としては対応してまいりたい、かように考えておりますので、ひとつ温かいお力添えを今後とも賜りますようお願いを申し上げたいと存じます。
  115. 小川仁一

    ○小川仁一君 では、ちょっと話題を変えて、今度は自衛隊の方へお聞きしますが、各自衛隊に関連する任意団体の性格とその刊行物についてお伺いをいたします。  まず、前回、国会図書館に御努力を願いました「陸戦研究」と「鵬友」の納本依頼の結果はどうなっておりますか。国会図書館の方、御答弁をお願いします。
  116. 井門寛

    ○国立国会図書館参事(井門寛君) さきに先生から御指摘がございました「陸戦研究」と「鵬友」という両雑誌につきまして、それぞれの発行元に対しまして納本をお願いしましたところ、両方とも特定の人々を対象に発行されているものであって、一般に公開すべきものではないという理由で納本を御了承いただくまでには至りませんでした。  以上でございます。
  117. 小川仁一

    ○小川仁一君 結論は納本しなかったという答えが返ってきたわけですが、私が知っている限り、各自衛隊に関連する団体の発行する雑誌は、陸が「陸戦研究」、空が「鵬友」、「翼」、海が「波涛」、これだけしかありません。それぞれ防衛庁に見せていただくようにお願いをいたしましたが、「陸戦研究」はお貸しを願い、見ることができました。また「翼」も今回届けていただきました。しかし、「鵬友」と「波涛」は防衛庁が所蔵をしているが見せることができない、こういうことなんですが、その理由を明らかにしていただきたい。
  118. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 「鵬友」と「波涛」につきましては、それぞれをその会誌としております私的サークル、もちろんその私的サークルの会員は幹部自衛官あるいは幹部自衛官のOB等でございますが、そのサークルに問い合わせましたところお貸しすることは御容赦いただきたい、こういう回答でございました。
  119. 小川仁一

    ○小川仁一君 防衛庁に非常に関係のある、しかも自衛官がつくっている雑誌でございます。これを国会議員に見せてならぬというのは一体どういうことでしょうか。「陸戦研究」、「鵬友」、「波涛」は防衛庁の教育訓練局が発行団体から寄贈は受けていると、しかしあなたは見てもいいがおれたちは見てはいかぬと。内局が何か制服に弱みでもあるんですかね。それとも、そう言われると唯々諾々と言うことを聞いているんですか。何か見せては困ることが中に書いてあるんですか。  こういうことなんです。私はここに「翼」を持っています。「陸戦研究」もお借りいたしました。見せていかぬという理由をはっきりしてください。
  120. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 理由を聞いてみますと、「鵬友」、「波涛」につきましては、その中に装備の性能、操法、運用部隊運用等、自衛隊の能力及び行動要領等にかかわる事項が含まれておるということが理由のようでございますけれども、先生せっかくの御要望でございますので、いま一度この団体の方に先生の御意思をお伝えいたしまして、いま一度その意思を聞いてみたいと存じます。
  121. 小川仁一

    ○小川仁一君 この本を出している団体自衛隊の幹部です。「陸戦研究」を除いては幹部学校の校長が副会長です。だから、それぞれお話はしているけれども、会の趣旨を見ると親睦団体でもあるようでございます。プライバシーに入るものは別として、そういう団体がやっている研究物を我々が見られない、防衛庁が手に入れても国会議員に出すのにそういう団体の御意向を承らないうちは出せない。これじゃ内局は表れじゃありませんか。内局が弱くなったらシビリアンコントロールはできません。過去の歴史というものがあるわけでございますから、強くなれというのではありませんが、つまんないものを非公開にするような形式主義はおやめになった方がいいと思います。  それで、長官、あなたはこういう「陸戦研究」とか「鵬友」とか「翼」とかというのをごらんになったことはありますか。
  122. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 私も、問題の指摘等もございましたので拝見をいたしました。それまでは私もこのようなものが存在することは知りませんでした。それはつまり、今、教育訓練局長のおっしゃられたように、任意団体で発行部数が限定されていたものであるからだろうと推察をいたします。  今、先生指摘のように「陸戦研究」は確かに会長はOBでございますが、あとは現職の方々が役員をやっております。こういう任意団体の必要性というのは各省庁あるということを前回も私は小川先生に申し上げたことがございますけれども、これは今、小池局長が再度任意団体の意向を聞いてと言っておりますが、私はやっぱりお聞きいたしておりまして、これは秘匿性のあるものということであれば、きちっとこれを秘匿性のあるものとして処理しなければいけないし、一般に入手できるものであれば、国会議員の先生方が見せてくれと言えば見せるのは当たり前だ、こう感じますので、この刊行物について、今後発行されるものについてどうするか、ひとつ前向きに先生の御要望に沿ってやってみたいと考えております。
  123. 小川仁一

    ○小川仁一君 長官が前向きに検討をしていただくということで、また改めて御意見を申し上げることもあるかもしれません。こういう種類のものを秘密にするとかえって世の中の人間というのは知りたくなったり疑ったりするんですよ。この心理状態を考えながら御配慮願います。  さて、次に、「陸戦研究」、「鵬友」、「翼」、「波涛」の発行団体の性格について伺いますが、いただいた回答によれば、「鵬友」、「翼」、「波涛」の発行団体の所在については特になしと書いてありますね。所在地がないということは、これは日本国内にない、国籍不明の団体かなと思ったり、あるいは「鵬友」だからお空の方にあるのかと思ったりね、「翼」も。「波涛」というのは海の中にあるのかなと思ったりするんです、これ。こんな常識でわかるようなことを、特になしなんて回答することはおかしいんじゃないですか。
  124. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 特になしと申し上げましたのは、特に事務所と言えるようなものはないということでございまして、連絡先といたしましては「鵬友」の方は新宿区市谷本村町五の一というふうになっております。それから、「波涛」につきましては新宿区市谷本村町五の一、そのようになっております。
  125. 小川仁一

    ○小川仁一君 所在地があるんですか。
  126. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 連絡先がそのようになっておるというふうに承知いたしております。
  127. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) 先生お尋ねの「翼」につきましても事務所というものを特にないというお答えをしたわけでございますが、連絡先は防衛庁の航空幕僚監部内ということでございます。
  128. 小川仁一

    ○小川仁一君 あなた方の回答は特になしと。これ見てみましたら、ちゃんと専用の電話もお持ちになっておる。ある場所防衛庁建物の中。連絡先というけれども、そこにいる人は防衛庁の職員に決まっている。絶えずその連絡者がそこにいるわけではない。とすれば、どういう形態で、だれがその連絡者になっているんですか。それから自衛隊の専用線もあるんですね。内線もありますよ。この番号でやったときに御返事がいただけると思うんですが、念のために私の方から言いま、しょうか。鵬友発行委員会は、新宿区市谷本村町五の一、電話〇三−三二六八−三一一一内線五一〇九、自動即時、これは自衛隊の電話ですね、八−三二−五一〇九、こんなふうにしておいて、何です、回答は、所在地なしなんて。これは承認できない。  回答を撤回するか、あるいははっきりしてください。責任持って回答してきたんだから、明確にしてください。そうでなきゃ、これ以上質問続けられない。
  129. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 連絡先の電話は、それぞれ海上自衛隊幹部学校の資料室、それから航空自衛隊幹部学校の資料室の内線電話になっております。
  130. 小川仁一

    ○小川仁一君 では、その資料室で連絡を受ける人は職員ですか。それとも団体が雇っている事務職員ですか。
  131. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 防衛庁の職員でございます。ただし、この仕事に専従しておるわけではございません。
  132. 小川仁一

    ○小川仁一君 しょっちゅうかわっているわけだ、そこの職員が。終始、一生いるわけじゃないわけだ。その都度それぞれの仕事を言いつけるわけですが、労働組合なんかでも、ちゃんと協定書を締結してその部屋を使用したり、職員に任務を預けたりしているんですが、防衛庁の職員にそういう任務を預ける法的根拠を明確にしてください。
  133. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) ただいま申し上げましたように、その職員がこのことに専従をしているわけではございませんで、資料室の仕事をしておるわけでございますが、その暇にこういう仕事もしておるということでございます。
  134. 小川仁一

    ○小川仁一君 だから、その法的根拠をはっきりしてください。そういう職員にそういう仕事をさせる法的根拠をはっきりしてください。自衛隊法のどこにある。
  135. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 広い意味では、厚生活動の一環のようなものではないかと思っております。
  136. 小川仁一

    ○小川仁一君 何活動
  137. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 厚生活動の一環のようなものではないかと理解いたしております。
  138. 小川仁一

    ○小川仁一君 今おっしゃるのは厚生活動だ、厚生活動として職員が参加している、そしてまた編集もし、出している本を私的サークルの研究だといって御答弁になっている、私の方には。私的サークルというものは厚生活動の対象になるんですか、防衛庁では。
  139. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 厚生活動には、野球部でございますとか、テニス部でございますとか、いろいろあるわけでございますが、やはりそういったものではないかというふうに思っております。
  140. 小川仁一

    ○小川仁一君 そんなあいまいな話をしたってだめですよ。はっきりしてください。隊員が野球するものと、専用電話まで引っ張って連絡員を置いて、一定部数の本を出して、それを会費を取って売っているんですよ。こういう団体とごっちゃにして済まないですよ、世の中は。私的サークルですか、それとも隊の中における野球部やなんかと同じような厚生の対象の団体ですか、それとも完全に独立した団体ですか。一々あなた方行って、お伺いしなければその本は人に貸すこともできないというふうな団体を、そんな扱いで、答弁で済みませんよ。これは、はっきりしてもらわないうちは済まぬです。
  141. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) こういった組織は公的な組織ではないわけでございます。  それから、専用電話というようなものを引いているわけでもございません。普通の内線を使っておるだけでございます。そういったところを御理解いただきたいと思います。
  142. 小川仁一

    ○小川仁一君 本当に専用電話はありませんか、NTTの。
  143. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 専用電話というものはございません。これは資料室の内線電話でございまして、この資料室はそれぞれの幹部学校の資料室として日々機能しておるわけでございます。
  144. 小川仁一

    ○小川仁一君 とにかく非常に大きな便宜を図っているわけですね。会員の申し込み、後で申し上げますが、会員の申し込みは部隊ごとに部隊で手続をとってここへ送ってくる。そこで、その所在地なしとあなたがおっしゃったが、所在地のある連絡先のところが全部書類を整理してその人に本を送る。転勤になっても、これは人事部の方でだれがどこに転勤になったというので全部やってここで始末をする。一定の業務もやっているはずです。そういう状況。  普通の団体の中では私的サークルなんて言わないんですよ、こういうのは。外郭団体とかなんかという形でそれなりの補助をするんだったらそれなりの便宜を図って、便宜供与をしてそうやってやっているから、私はかなり防衛庁の指導なり統制というものがあるものだ。それがないと言うんでしょう。それでいて便宜供与だけしている、おかしいと思いませんか。
  145. 小池清彦

    政府委員小池清彦君) 私どもは、自衛官が公的な立場を離れましてこのようなサークルをつくりまして、それぞれある程度自由に議論し、自由に論文を発表し、それぞれ研さんし合うということはむしろ好ましいことであると考えております。  ただ問題は、それらの議論、それらの論文の中に、現在の防衛の基本的な政策、すなわち専守防衛、シビリアンコントロール、非核三原則、日米安保体制、そういった基本的防衛政策を逸脱するようなものがもし中に入っていれば、それは自衛官としてふさわしくない行為である、このように考えております。その点は私も責任を持ちまして、それはそういう雑誌を見ております。見ておりますが、いまだそういうふうなものには出会っておりません。そういう基本的な防衛政策を踏まえた上で、やはり自衛官は何をやっちゃいかぬ、こういうこともやっちゃいかぬと、こういうことにして締めつけることがあるいは本当にいいかどうかということもあると思うのでございます。  そういう意味で、私は自衛官がそういった現在の基本的な防衛政策を踏まえた上で、ある程度自由に議論をしたり、そういう論文を発表したりする場を持つということはむしろ好ましいことではないか、そのように考えておる次第でございます。
  146. 小川仁一

    ○小川仁一君 「翼」はおたくでは所蔵していませんね。
  147. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) ちょっと今、所蔵していないということですか、ちょっと先生の御質問がわからなかったんですけれども。
  148. 小川仁一

    ○小川仁一君 「翼」は防衛庁では所蔵しておりませんね。持っておりませんね。
  149. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) お答えいたします。  私は寄贈を受けて持っております。
  150. 小川仁一

    ○小川仁一君 あなた方の方からの電話の回答では、「翼」は所蔵していない、貸し出しについては発行団体の了承を得て借りてきたといって、私のところにこの「翼」を貸してくれたんです。何が本当なんです。所蔵してないのが本当か、所蔵している方が本当か、その辺、答弁と前に私の方で電話あるいは文書でお聞きしたことと食い違っているから必要以上の時間をかけてこんなこと言っているんです。こんなこと余り言いたくないんです。
  151. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) 今、私がお答えしましたのは、私に送られでくるんで私は持っております、こういうことでございますが、防衛庁としては所蔵してないということで資料を提出したわけでございます。
  152. 小川仁一

    ○小川仁一君 なるほどね。個人的にはお持ちになっている、しかし防衛庁としては持ってないと。見せてくれというときは個人的な人を個人的にお願いずれは見せてもらえますか。
  153. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) これは御要望に応じまして、先生にもお出ししましたし、ほかの方からも御要望がありましてお貸しをしておるということはございます。
  154. 小川仁一

    ○小川仁一君 そんな簡単なものだったら、なぜ国会図書館に出せないのですか。
  155. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) 私が出す、出さないという立場にないという意味でお答えしているわけでございまして、当会の方が出すことを考えていないと、こう申しておるものでございますから、私はそれをお伝えしておるわけでございます。
  156. 小川仁一

    ○小川仁一君 これは長官、今まで何か私もぐだぐだ言いましたけれども、私はそういうふうに委託研究とかいろいろやったものを、これは部内資料であるかもしれないけれども、団体にはやらないが、個人には寄贈する、やっぱりこれ常識でいうと、それだったら団体にやったっていいじゃないかと、こんな感じがするんです。これ常識じゃないだろうかと思うんです。  私たちが見せてくれといったら個人で持っているものを貸してくれるんじゃなくて、防衛庁でお持ちになったものを今までどおり、私は防衛庁から借りたとばっかり思っていたんですが、そういうふうにお貸し願えるとか、何も書店に出して売れとは言っていませんよ。最低でも国立国会図書館には置いてもらうとか、こういうものは一々私的団体の意向をお伺いしなくても貸してもらえるとか、もう少しこういう形で進行できないものですかね。  それについて、時間もありませんから少しつけ加えますが、さっきも申し上げましたとおり、みんな現職自衛官ですよ、会員も何も、お金を出していることもわかっているんです。今言ったように、いろいろお話しになりましたけれども、便宜供与していることは事実です。資料室で、隊員に一定の任務を、専念義務を外してほかの仕事をやってもいいように指示しているんだから。また、その電話を使って外へ、例えばある編集者とか発行人にまで電話をすることもできるんだから。  そういう状況、法的根拠と言いましたけれども、これは法的根拠は、余り自衛隊法だの国家公務員法突っ込んでもややこしいことになるからやめますが、こういう種類のものだったら、もう何も隠しておく必要はないじゃないですか。部内資料の一部を図書館なりあるいは公文書館なりに出してやるような御指導ができないものでしょうかということを長官にお聞きしたい。
  157. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今までの委員小池局長とのやりとりをお伺いいたしておりまして、私は二つ問題があると思いますね。  一つは形式論でございまして、この種の団体が任意の、しかも個人的な集まりである。言うならば教養の向上とか資質の向上を目的とした任意的なもの、しかも現職の自衛官ではないかと、こういう形式論がございます。この点はおっしゃられるとおり、もしもこの任意の団体が全く防衛関係のない研究、研さんでなくて、ほかのこと、そういうことをしておるとすれば、これはいろいろ問題があることも私はもう重々わかります。  しかし、今度は実態的な話になりますけれども、これらの活動は、いわば職員の自主的な自己研さん活動といいますか、そういうものとして非常にまじめな研究を登載されていることも委員はお認めいただけるかと思いますけれども、こうしたもの青、会費まで出して、そして会員に配付するということをやっておるわけでございまして、先ほど小池局長が言いましたように、我が国の防衛の基本政策にかかわるようなことをそこで堂々と開陳されても、確かに非核三原則を撤廃すべきだとか、専守防衛はだめだとか、そういうことは困りますけれども、その基本的な防衛政策の枠内でいろいろの所見を自由に述べさせるということは、かえって自衛隊の活性化のために私はつながると思うんですね。そういう意味では、小池局長が述べられたのは実質的なことを申し上げたわけであります。  そういうことを申し上げた上で、防衛庁が何で持ってないのかと。これは持った方がいいですね。おっしゃるとおりです。防衛問題についての自己研さん的な問題でございますから、これをその団体から寄贈を受けて所蔵するということは私は必要だと思います。だから、今後持っているようにいたします。そして、国会議員の先生方が見せてくれと言えば、秘匿に関する面がもしもあるとすれば、先ほど申しましたように、そういう安易に手に入るものの中に秘匿性のあるものを収録することがそもそもこれはおかしいわけでございますから、そういうことのないように今後いたした上で、きちっとそこの整理をいたしまして、そして御要望があれば議員の先生方にはお見せをいたすなり、貸し出しをするなりいたします。  ただ、図書館法の二十四条との関係で申しますと、法律要件的にはそういうものには該当しないということを先ほどから政府委員が申し上げておるわけでございますが、小川先生のおっしゃる点はよくわかります。したがって、先ほど申しましたように、そういう点に疑義があるとすればこれはかえってマイナスになりますから、疑義のない方法で前向きに検討させていただく、こういうことを申し上げさせていただきます。
  158. 小川仁一

    ○小川仁一君 今のお話で私の申し上げたいことの八割方は御答弁をいただいたと思います。一々さっきから言っているように、自衛隊員がそういうものに関与する法的身分とかなんとかと言ってみましたけれども、要は、私はもういい年になりましたけれども、この年代で終わりです。この年代で終わりだという同世代に生きた自衛隊の皆さんなり幹部の皆さんが、どういう物の考え方てどう処理してきたかということをやっぱり後世の人に文化的な遺産として残すべきだと考えたわけです。  そのためには、これは多分防衛庁の図書館にもないと思います、まだのぞいてみておりませんが。あるいは防衛庁の図書館でもいいです。国民ということを対象にすれば国会図書館でもいいんです。そういうところへ一部でもいいから御寄贈なさる、こういうことは一つの時代に一つの仕事をした人の当然の義務ではないか、義務と言えばオーバーですけれども、それぞれの生き方の中で仕事をやってこられたわけですから、その責任において出されるのが筋だと思います。  ですから、かたくなに部内資料とか部外資料とかというふうな物の言い方をせず、私はこの前のときに、五年たってからでもいいじゃないかということを申し上げたことを長官御存じだと思います。今すぐ秘密で出せないものだったら、ちょっと間を置いて出したっていいんです。こういう形で私は、国会図書館あるいは公文書館というものをつくられた精神というものを大事にしながらやっぱりお考えおき願いたいと思う。その後、私はしつこいたちでございますから、発展のぐあいを見てまだ質問するかもしれませんが、きょうは終わります。
  159. 板垣正

    ○板垣正君 私は、防衛問題に関連して、若干要望になるかもしれませんが、防衛庁の見解を中心に承りたいと思います。時間も限られておりますので、簡明な御回答をお願いいたしたいと思います。  第一は、冷戦後の我が国の防衛のあり方の問題であります。  これは極めて根本的な、基本的な問題であり、ソ連の崩壊により東西冷戦構造が解体してまさに画期的な時代を人類は迎えておる、新しい世界の秩序を求め、その模索が始まりつつある、こういう意味におきましては、私どももいたずらに過去にとらわれることなく、思い切った新しい発想転換も必要であると思います。  しかし、そうした反面、既に地域的ないろいろな紛争が起こっておる、民族的対立が起こっておる、宗教的な問題もある、特にアジアにおきましては、またいわゆる冷戦が終わったという姿が具体的な姿として端的にあらわれてきておらない。こういう情勢の中で、ああもう世界に平和が来るんだ、防衛費は削ればいい、自衛隊は縮小すべきだ、こういう極めて安易な風潮と申しますか、こうしたものは私は非常に危険だと思うんです。国家防衛の問題はまさに民族、国家存立の基本でありますから、午前中の御答弁にもあり、また常日ごろ長官もおっしゃっているように、そういう情熱を踏まえ、慎重に対処していかなければならない、こういうことであろうと思います。  湾岸戦争の後、やはり各国が取り組んでおりますのは、この冷戦体制の解けた後、こういうある意味における激動の時代、こうした時代にいかに対処していくか、あるいは防衛の面におきましては特に近代化が著しく進められつつある。こういう近代化に着手し、それが具体化されるというふうな状況というのはほぼ十年かかると言われております。したがいまして、今の時点の防衛の問題についても、やはり十年ぐらいの幅を持って、十年ぐらい先の姿のいろんなシナリオを描きながらこれに我々がいかに対応していくか、そういうことが必要ではないのか。  端的に十年後に描かれるシナリオとして、さらに国連が指導的な姿になっておるのか、米国の今の一極の存在がどういう姿になっておるのか、いわゆるブロック化というものがさらに進められた姿になるのか、あるいは地域的な紛争が頻繁に起こるというような情勢も考えられるのか、さらには深刻な南北問題が大きな焦点となって南北対立の姿が十年後の問題になっているのか、こうしたものもやはり踏まえながら、かっ私どもは、きょう午前中のお話にもありましたとおり、ロシアは一体どうなっているだろうか、減少はございますけれども、ロシアは依然として超軍事大国である姿には変わりはない。百五十万にするとかなんとかいろいろ言われておりまするけれども、ロシアの軍事力あるいはその戦力、能力、こうしたものがどういう姿になっていくか。  朝鮮半島の動き、特に北朝鮮の核開発問題も依然として疑惑に包まれております。あるいは中国の場合も、膨大な陸海空を持ち、かつ防衛白書にもあるとおり、いわゆる海洋戦力、南沙あるいは西沙、尖閣、こういう南シナ海におけるプレゼンスを求め、海洋戦力の強化を着々と図りつつあるということは今や明確な事実になりつつある。こういう動きも一体これからどうなっていくのか。  こうしたことを踏まえた場合に、やはり戦後の防衛体制は基本的には正しかったと思う。専守防衛を基調とする節度ある自衛力の整備と、あわせ日米安保体制のもとに一度も戦禍をこうむることなく平和を守り、この繁栄を築き上げてきたその根本にありました防衛政策は誤りなかったと言えると思うのであります。  しかし、これを規制しておりますのが「国防の基本方針」であります。我が国の防衛の基本方針、防衛政策の基本にある国防の基本方針は昭和三十二年に制定されたものでございますけれども、私はなかなかよくできていると思う。じゃ、この防衛の基本方針がそのとおりに具現化されたであろうか、そういう立場から考えますときに、第一に言われている「国際連合の活動を支持し、国際間の協調をはかり、世界平和の実現を期する」、いわゆる国連協力の問題も高らかにうたわれております。今まさに焦点となっておりますPKO活動に対する協力というようなことも、こうした立場でもっともっと早くこういう問題に取り組んでもよかったのではないのか。「民生を安定し、愛国心を高揚し、国家の安全を保障するに必要な基盤を確立する」、こういうことも言われておりまするけれども、これが単なる抽象的なったい文句に終わったんではないのか。  熱心な愛国心とまでは言いませんけれども、いわゆる防衛に関してはほとんど無関心である、防衛・軍事問題というのはタブー扱いされている、こういう姿が今なお続いてきているのではないのか。  そのほかの問題もございますけれども、そういう立場において、冷戦解体下における我が国の防衛の基本的な考え方について長官の御見解を承りたいと思います。
  160. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 大変常日ごろ我が国の防衛問題、安全保障問題に熱心にお取り組みいただき、また御造詣の深い板垣委員からの御質問でございます。  私、お伺いしておりましてまことに同感するところばかりでございます。そういった意味で、今後この防衛力というのは、冷戦構造が終結したからといって直ちにこれを急激に削減すべきものとか廃止すべきものとかというような性格のものではございませんで、主権国家の独立を守っていく、あるいは国民の生命、身体、財産をきちっと守っていくというのは基本的な責務でございますから、いかなる他の手段によっても代替不可能な機能を私は持っていると思います。国家の存立の基礎であると存じます。  そういう基本的な認識のもとに、これからも着実な安全保障、この問題に取り組んでいかなければならないと存じております。委員の御指摘の問題、いろいろ御指摘になりましたが、特にこれから国連中心外交というようなことで、既に三十二年にこのことが記述されている点の御指摘も私はそのとおりだと思います。  それからまた、やはり国を守るのに、愛国心のないそういう防衛というものはあり得ないわけでございますから、我が国国家、国民を守るという価値観といいますか、そういうものが基本になければならぬことも、これは御指摘されているとおりでございます。また、この中には、将来、国連が理想像として国家間の軍事主権を超えて機能するような場合にはそちらに移行するということはございましても、それまでは米国との日米安保体制を基調として、基軸として我が国の防衛を図っていくということも書かれております。それからまた、国力、国情に応じて漸進的に自衛力の整備を図っていくということも書かれておりますが、私は、この点は量的にはほぼきていると思います。  委員の御指摘のように、軍事技術の近代化に即応して、やっぱり更新・近代化を図ること、これ、ぜひとも専守防衛立場であればあるほど余計必要ではないかと思っております。私どもは、そういった意味で、今後我が国をきちっと守っていくということが重要でございます。  なお十年先のことに言及されましたけれども、十年先の国際情勢はどうなるか、この変化の激しい時代でございますから恐らくだれも的確な予測はなかなかできないと思います。しかし、少なくともそういう中長期的な視点を持って安全保障問題というのは取り組まなければならないというのも御指摘のとおりだと存じます。  いろいろ御教示をいただきまして感謝申し上げます。
  161. 板垣正

    ○板垣正君 次に、中期防の見直し、あるいは大綱の再検討の問題であります。  中期防については、昨年十二月二十八日の安全保障会議においてこの見直しについて指示があり、防衛庁においても本年一月二十二日に防衛検討委員会を設けて鋭意検討中ということを承っております。中期防の中に、いわゆる中間において見直しを行うということもございますし、こういう情勢下における検討ということは当然考えられていいと思います。ただ、この問題についても先ほど申し上げましたように、ただ予算を削ればいい、自衛隊員を削ればいいと、こういう発想だけで取り上げられる問題ではないし、また何でもかんでも来年度予算にこれを間に合わせなきゃいけないというような考え方も私は誤りである。七年度までの中期防でありますから、やはり鋭意検討の上、この自衛隊というもの、防衛というものは、一たん減らしてしまえばそれをまた復元させるということはできないわけであります。  同時に、大綱についても同様であります。大綱、いわゆる別表の問題、これもこういう激動の中で見直していく。何と申しましても米ソ冷戦の時代の所産であることも事実でありますから、ある意味においてこれらを抜本的に見直す、やはり我が国の防衛のあり方なり、それを大綱としていくという従来積み重ねてきた基本線を貫きつつどうこれを検討していくか、こういう問題があろうと思います。  こういう問題につきましては、例えば、いわゆる基盤的防衛力ということが言われてまいりました。「情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときは、円滑にこれに移行し得るよう配意された基盤的なものである」と、基盤的なものというのはまさにそういうふうにうたわれている点であろうと思うけれども、それじゃ本当にそういう態勢ができているかというと、有事法制もまだできておらない。あるいは、いわゆる予備の自衛力の問題、予備自衛官のあり方というのも極めて問題が多い。こういう面で私は、こうしたものの見直し、検討は必要でありますけれども、今までの防衛、こうした予備の問題、これは普通ですと、いわゆる平時、有事というようなことがこのごろ言われておるようですけれども、少なくとも平時に比較して三倍以上の動員力を持っているというのがある意味では常識的な列国のあり方であります。  こうした姿も含めて検討されなければならないのではないのか、したがってこの問題についても極めて慎重に取り組んでいただきたいということが要望でありますが、いかがですか。
  162. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、委員の御指摘のように、現在の中期防におきまして三年後の総額の範囲内における見直し、これははっきりその中期防の中に明定されております。そして、この検討に着手したのも委員指摘のとおりでございます。  昨年の安全保障会議におきまして、総理の方から前広にひとつ検討を開始してほしいということでございますので、これは中期防がつくられたときに大きなもう変化が、方向としては確定的でございましたが、なおその後、ソビエト連邦の崩壊というような歴史的な変化等もございました。こういったこともございますので、それらが直に基盤的防衛力構想に結びつくものではないと私は思いますけれども、背景として、考慮すべき要素としては大きな背景要素でございます。そういう点を踏まえて、三年後見直しが中期防に恐らく書き込まれておるものと存じますが、そういった趣旨に即して、慎重の上にも慎重にひとつこの問題に取り組んでいきたいと思っております。  なお、大綱別表の見直し等は、委員の御指摘のように、これは中期防期間中、つまり平成三年度から七年度までの五カ年の間によく検討をして、そして次期防に、あるべき防衛力の姿、機能、組織、編成、そういうものを考えていきたいと思っておるところでございます。しかし、これも委員の御指摘のようになかなか時間の要する問題でございます。簡単につじつま合わせ、数字のつじつま合わせでやれるような話ではございません。そういう認識のもとに私どももやってまいるつもりでございます。  なお、委員が先ほど指摘されたように、大綱の中に基盤的防衛力構想について書かれておることにお触れになりました。基盤的防衛力構想の考え方自体、私はこれは今後維持すべきものと考えております。ただし、必要な場合にはそのエクスパンションといいますか、その所要に応じて機能を拡大することまで明記されておることも委員指摘のとおりでございます。  そういった点を含めまして、基盤的防衛力構想であればあるほど、有事の場合にはきちっとした専守防衛の建前で我が国を防衛しなければなりませんから、こういった問題を含めまして、機能的に専守防衛のこの原則のもとで我が国を防衛できる体制を今後本当に真剣に考えていかなければいけない、このように存じておりまして、そのような方向で今後検討させていただくつもりでございます。
  163. 板垣正

    ○板垣正君 ありがとうございました。  いずれにしましても、こういう基本の問題についてこれを慎重に固めていく、防衛庁が担当でありますけれども、これこそいわゆる政治の、シビリアンコントロールというのはこういう問題についてやはり政治が責任を果たすことであろうと思う。そういう意味合いにおいて、これは我々自身の反省も含めて、今後考えていかなければならない問題であろうと思います。  次の問題は人材確保の問題であります。  これも極めて重大な問題であります。改めて言うまでもなく、これから若年の方々がもう数年後には七割になるというようなことで、防衛庁におかれてもこの募集についてはいろんな検討をされ、困難を冒し、苦労しておられる、こういう状況もよく承っておるわけでございます。  そこで私は、こうした人材確保の問題は、今のようにただ防衛庁に任せ、制服の人たちが地連で、本当にああいう姿における募集というのはもう限界ではないのか。これは自衛隊に限らず、例えば消防であるとか、警察官であるとか、あるいは建設関係でも現場の仕事であるとか、つまりは汗を流すきつい仕事、苦しい仕事、危険な仕事は嫌です、いわゆる三K、これが遺憾ながら現実の若い人たちの姿のようでありますから、こういう形で人材が非常に偏ってしまっておる。こういう問題は、単に防衛庁だけの立場でこれはどうにもできない問題があろうと思う。  そういう意味では、今後の教育のあり方なりあるいはこれからの人材の配置問題等も含めて、私は政府全体の責任として取り組み、そして今後の高齢化社会とともに若い人がどんどん少なくなる、そういう中で、しかし防衛の問題、警察の問題、消防の問題等々は外国人にこれ任せるわけにはいかないわけであります。どんなに苦しくても我々自身がやっていかなくちゃならない。そういう意味合いで、この人材確保の問題はそういう角度からひとつ取り上げられるべきではないかという点が一点であります。  もう一つは、現在検討中のこのカンボジアにおけるPKO関連の問題でありますが、端的にもう現地の今川大使以下大使館がああいう厳しい中で行動しているわけでありますから、防衛庁としても防衛駐在官を早急に派遣されるべきではないのか。やはり制服のああした専門家の立場で現地を見る、これは外交官の見方とは随分違うわけであります。  そういうものがまた今後、いずれ法案が成立し国連の平和維持活動自衛隊の方々に御苦労いただくという段階が私は参ると信じております。そしてまた法案が成立をしたら調査団を出そうということもきのう委員会で承っておりますけれども、それはそれとして、駐在官の派遣ということであるならば、これは今すぐに、すぐというわけにはいかないにしても早急にお考えいただけるのではないのか。そして、現地の生々しいそうした面を、制服の専門家の目で見た現地の情報あるいは現地の人脈等も含めて、今から活動をやっていただくという点について私はぜひ取り上げていただきたいと思います。  以上二点であります。
  164. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) この人材確保の点は、私どももやはり優秀な人材をいかに確保してこの崇高な任務を遂行させていくかという視点は一番基本的な問題であると考えておりますしかるところ、委員指摘のようにいろいろな諸問題がございます。中でも、今委員の御指摘になった今後の人口構成の構造的な変化は、これは予測されるわけでございまして、我々が、自衛官として募集対象となる十八歳から、幅は広げましたけれども二十六歳くらいまでの年齢層というものはこれから構造的にどんどん低減していきます。そういう中で結局防衛庁だけがそういう人たちを雇用というか、募集すみわけにもまいりません。  そういう意味で、各産業その他と非常にから合う面がこれから多くなってくると思いますね。今でも広報のそういった面については、求人倍率等も、今一・二二か、一・二五か、ちょっと下がって一・二二くらいだと存じますけれども、そういう構造的な問題がさらに一層深刻化してまいります。そういうことを頭に置きながら、今委員の御指摘のように、これは確かに地連だけに任せておくべき問題ではございません。本庁として、また政府として、これは真剣に取り組まなければならない視点であろうと、これはもう同感でございます。  具体的に今後どう展開するかはこれからの問題でございますが、とりあえずは防衛庁の中でこの人材確保の検討チームをつくりまして、いろいろできるあとう限りの手段を今回決定させていただいてやりますが、しかし、これとてもその構造的変化になかなか十分対応し切れないだろうと私は思っております。これは委員指摘のとおりで、今後のひとつ大きな視点として考えさせていただきます。  それから、防衛駐在官の点、カンボジアにおける防衛駐在官は御承知のように大使館の閉鎖前までは、たしか四十七年から五十年くらいまで駐在をさせておりました。しかし、大使館の閉鎖とともにもちろん引き揚げさせてきたわけであります。現在PKOの問題が議論されておりますが、これはカンボジアだけを目的としたものでないことはもう説明するまでもございませんが、当面の対象としてカンボジアがまた考えられることも事実でございます。  したがいまして、当面の任務遂行のために直ちに防衛駐在官を派遣するということよりも、私が昨日申し上げましたように、調査団等を派遣して、何が日本の自衛隊にできるのか、どういう要請があるのか、現実の具体的な実態はどうなのかという点を踏まえませんと、具体的なより効果的な貢献をするためのプランはできません。  そういうことで申し上げたわけで、当面はそういうことでこの問題を処理させていただきますが、将来的な課題としては、防衛駐在官を各地に派遣しておりますが、かなり効果的な機能を果たしていることも私は認めております。そういう意味で将来課題としては十分検討に値すると、このように考えております。
  165. 板垣正

    ○板垣正君 最後は、市ケ谷一号館の問題であります。  この問題は、午前中も社会党の翫先生からありまして、たまたま意見が一致いたしました。移ること自体の考え方なり歴史記念館として残せというお立場もあります。私は歴史観においては随分相隔たっているものがあると思いますから共同戦線張れるかどうかわかりません。ただ、防衛庁防衛中枢機能を効率的に一番発揮できる形に配分されることについては基本的に私は賛成であります。あの六本木のあの環境がそれにふさわしいとは思いません。  ただ、問題は、市ケ谷一号館、いわゆるあの歴史的な存在、これを跡形もなくなくしてしまうということについては、私も旧軍の一人ではございますけれども、そういう立場を越えて一国民の立場からもこれは極めて重大な問題ではないのか。長官も御存じだと思いますけれども、これは第一生命が、あそこは御承知のとおりいわゆるGHQ、マッカーサーが乗り込んできて占領政策をしいたシンボル的な建物でございます。第一生命がもうこれを取り壊すのかどうするか、こういう問題に直面そした第一生命においてはいろいろな論議の末、あのマッカーサ〇元帥の使ったものはもとよりあの表玄関の姿ですね、そういうものはそのまま残しながら、それを抱き込むような形において近代的ビルを建てるという結論に到達し、そういう形で進めようと、この報道も見たわけでございます。  民間の会社でも、やはり日本の歴史にとって刻まれたそうしたものについては、だれが行ってもここはマッカーサーが使った部屋ですよというものは残そう、会社にとってはむしろ経済的にはマイナスが多いと思うんです。しかし、そういうものが恐らく本来の姿ではないのか。  あの市ケ谷台は、明治初年おの尾張藩の屋敷があったと言われておりますが、明治七年から軍の言ってみれば発祥の地であります。その後、昭和十二年にあの建物完成を見て、改めて申し上げるまでもない、いろいろな日本の歴史の流れの中で、営みの中で極めて象徴的な存在できたことは申し上げるまでもないわけであります。  この問題についての検討の経過も承っております。二年もかけて十分に検討をされて結論を出された、そして、新しい施設をつくる上においてはあの建物を残すわけにいかない。六十二年八月二十八日に協議を決定されて、このことがテレビで報道されて、平成三年五月十五日の教育テレビでこのことが報道されて一般の人には初めてこのことがわかった、こんなことになっていたのか、これが問題の発端であることも御承知であろうと思う。  この六十一年から二年間の検討をされているいろやられたが、あそこを移しても現地においては問題はないと。私はこの結論の出し方は極めて安易ではないのか。防衛庁が、自衛隊が守るべきものは、現在の呼吸をして生きている人をもちろん守らなきゃならない、今の姿を守らなきゃなりませんけれども、やはりその背後にあるところの積み重なった日本の歴史、伝統、文化、そういうつながりの中に今あるわけでありますから、そうしたものを守っていく、あるいはそれを後世に残していく、この本来の日本の姿を後世まで守っていくというのが、私は本当の意味における国を守るということであろうと思う。  これは、もちろん防衛庁だけの仕事ではありません。日本人がみずから心がけなければならない。国の守りということはそういうことであろうと思う。  ところが、肝心の、しかも第一線に立って御苦労をいただく立場にある防衛庁立場において、余りにも安易にそうした歴史的存在を抹消してしまう、新しいものを建てる上において、どうしても難しいという、そういう立場だけが正面に運ばれて、そういう姿で進められているということについては私どもは納得できない。この問題はもう一度真剣に検討していただきたい。以上、要望であります。
  166. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 市ケ谷の一号館の問題は、午前中断先生からもるる御質問がございましてお答えしたとおりでございますが、繰り返しになって恐縮でございますけれども、この計画が六十年ごろから立てられました際にそうした問題も当然意識の中にはあったことと私は存じます。これは推定でございます。しかし、現実の問題として、あの市ケ谷台の中で広さとして二万六千平米、床面積二万六千平米というのはもう相当な大きな構築物でございます。これが中央にどっかと腰をおろしておるわけでございます。それをそのままに存置して、防衛本庁なり、中枢機能をその周辺に持っていくということは、私は常識的に考えても不可能だと思います、市ケ谷移転するということであれば。  したがいまして、板垣先生の心情、それから国を守ることの第一歩は歴史を重んずることだという趣意の御発言は賛成でございますけれども、既にこのことは工事に着手をいたしまして進行中でございます。したがいまして、これは私も何とかならないのかなという感じで、内部で質問もいたしてみたわけでございますが、その結果は、ここまで話がきちっとなって、もう進行中で予算もつけられておる話でございますから、到底これに応ずることはできないなという感じを率直に持っております。  ただし、ああいう建物でございますから、あのものそれ自体を残さなければ意味がないということだと思いますけれども、あの地にはこういうものがあったんだと、こういう歴史的な、旧軍時代あるいは戦後のモニュメントとして、こういうものがあったんだということを何らかの意味で、あの地を訪ねる方々、これから多くなると思いますけれども、それはきちっとすべきものかなと。しかし、具体的にどうするかというまだ具体的な結論まで得ておりませんが、率直に申しまして、そういう感じでおるのが現状でございます。
  167. 板垣正

    ○板垣正君 率直な御見解を承りました。大変残念であります。また、どうしても納得ができません。私自身は、今後の課題としてさらに御検討をお願いしたい、こう申し上げて質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  168. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 引き続いて自民党から質問させていただきます。  我が国の領土、我が国民の生命、財産を守り、我々が現在享受しているこの自由と人権尊重の民主主義社会を守るということは、政治の基本であります。したがいまして、政治家として最も考えなきゃならない基本的な問題であるというふうに認識しております。  けさほど同僚の翫委員から、自分は自衛隊憲法違反だという立場で質問されているわけですが、何でこの四十五年間、日本が平和を享受してこれたのか。自然に平和だったわけじゃないわけでありまして、特に我が国は資源小国であり、貿易立国としてかつてない繁栄を築いてきた。そして、この繁栄を引き続き維持するためには、我が国の安全が今後も確保され、世界の平和と安定と秩序が不可欠であると私は思っております。  それで、現在のところ、あと七百年か千年間ぐらいは、現在十億近い餓死に面している人類がいる限り、世界の秩序、安定というものは、軍事力の均衡の上に成り立っているということがはっきり言えるのではないかと思います。これはいいこととか悪いこととかは別問題として、現実の問題でありますので、現実を直視しなきゃならない政治家としては、その点について十分な認識を持ってなければいけないというふうに思うわけであります。  すなわち、一九四五年に日本が連合軍に敗北して以来、我が国はアメリカのマッカーサー元帥のもとで占領されました。そして朝鮮戦争が一九五〇年に起きたときに、日本は主権がないにもかかわらず、日本に駐留する米軍が韓国に移動したときに、主権のない我が国に、マッカーサーの命令によって警察予備隊が創設されました。七万五千人で発足しました。これはどういうことを意味するかというと、軍事力の力の空白を生じさせてはならないという世界の常識からであります。  そうして考えてみますと、冷戦が終結するまでの現在までの我が国の平和というのは、日米安全保障条約によって米軍が日本列島に駐留をしていた。そして長官を初め、防衛庁の皆さん、自衛隊の皆さんが営々として黙々として世の中の平和の中で、無理解と無関心の中で黙々と精励してきた、そのことによって日本の平和が保たれたということを私は強く感じる次第であります。  そして、なぜ百年に一度か二度しか起こらないようなこの米ソの対立、冷戦というものが終結したのか、これは自然に終結したわけではありません。正しく自由諸国が結束をして安全保障の努力を怠らなかったことによってもたらされたものであり、このことを念頭に置いて、軍事力の均衡と抑止力の維持によって世界の安定が保障されるという基本的な枠組みは、過去も現在もそう遠くない将来にかけて変わることのない極めて必要なことだと私は考えておりますが、防衛庁長官はどのようにお考えか、お聞かせください。
  169. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 委員のおっしゃるとおり、国の安全を保ち平和と独立を維持していくということは極めて重要な事柄でございます。こういう冷戦構造が解消された後におきましても、最終的にやはり安全保障を担保するものは防衛力であるということは紛れもない私は事実だと思います。今後、国際連合が本当に国際警察軍として、各国が軍事主権を放棄して移譲するような事態があるならばともかく、そういう事態はなかなか想定されません。  したがいまして、最終的な担保は軍事力であるというように思いますが、安全保障の問題について申し上げますならば、これは我が国の安全保障と同時に、アジアにおける安全保障、それから同時に世界的な安全保障の枠組みを今こそ考えるべきときに来ているように思います。  そして、これはやはり政治あるいは外交また経済、こういった総合的な視点から各国の理解と協調を深めていくことが何よりも私は必要だと存じます。同時に、それだけで果たしていいかと言えば、冷戦後も各種の各地におけるリスク、あるいは紛争等は多発しているのが現状でございます。深刻なグローバルな世界的な意味の対立、対決というものは、あるいは紛争のおそれというものは解消いたしたといたしましても、御指摘のような問題は多々ございます。  そういう意味で、やはり世界的なあるいはアジアの、また基本的には日本の安全保障を確保するために必要な自衛力をきちっと保持して、我が国の基本的な防衛政策のもとでこれに対応していかなければならないものでございまして、委員の御指摘のとおりだと存じます。
  170. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 それで、冷戦が終結した後に、非常に不透明で不確実な予測しがたい時代を迎えたと、共通の敵は不確実性だとブッシュ大統領も言っております。  それで私は、冷戦終結後の世界に二つのことがこれから起こり得るのではないかというふうに思います。  これは個人的な見解でございますが、まず一つは、非常に激しく対立しているときには、少々価値観の違う嫌なやっだけれども、自分の陣営に引き入れようと、こういう作用が働きますが、それが終結した段階においては、共通の価値観を持っているかどうか、本当に自分たちの仲間がどうか、そういうような選択が激しくなるのではないか。特に、アメリカに今、日本異質論というのが出ておりますが、本当に日本は西側諸国と同じような正義感の真の共有ができるのか、それに基づく具体的行動ができる国なのかということが問われるのではないかというふうに思います。  それからもう一つは、親分が弱まっているわけで、片っ方のソ連の方は解体しちゃったわけですから。宗教とか民族とか領土とか資源とか、そういう問題でナショナリズムが高揚してくる、隣の国よりもよくなりたいという欲望を持ち始める、そして地域紛争が生起するという方向に向かっていくんではないか。それの一番いい例がイラクのクウエートヘの侵攻ではないかというふうに私は考えております。  特に、大国の当事国が関与しない中小国同士の紛争ということは、国際社会のいろいろな、特に国連とか、そういう国際社会の集まりの中でどうみんながそれを抑え、そういう紛争が行われないようにしていくかというような、いわゆるナショナリズムよりは国家のエゴによる紛争でございますので、国際社会が関与していくということが非常に多くなるのではないかというふうに思うわけです。  それで、私が日本は異質であるという点を申し上げますと、イラクはクウエートに侵攻して残虐行為をしている、それで多国籍軍が出ていった、それでそれをもとのイラク領に戻そうとする、そのときにいろいろな経済制裁や働きかけや国連の十二の決議等をやっていく。ところが、日本の中には、そういうのを武力でやるのはおかしいと、あくまでも話し合いでいくということなんですが、話し合いということは価値観ではないんですね。国際社会の法と秩序を乱したものは断固として、これは最終的に武力をもってしてもそれを阻止するという、それが価値観なんですね。日本の場合には、話し合いをずっと続けていく、また次に話し合いを続けて、話し合いというのは価値観ではないわけでありますので、その点が日本が世界の孤児になる一つの……(「孤児になるんですか。平和国家が孤児になることはありません」と呼ぶ者あり)よく聞いてくださいよ。今から申し上げますからね。  これは国連の決議なんです。日本は国連に入っているんですよ。国際社会という世界に通用する姿勢をきちっとつけなければいけない、法を犯したものは。そうすると、話し合いやっている間にクウエートの人たちはイラクの人たちに残虐行為を受けているんですよ。それはいいんですか。その辺をちょっとお聞きしたいんです。それは幾らやっても構わないわけですか。(「だれが答弁すればいいんですか」と呼ぶ者あり)いいえ、済みません。わかりました。  日本人の多くは、日本人の中には、平和を祈り、戦争は嫌だと言っているんだから何が悪いんだと。だれだって戦争は嫌なんです。その嫌な戦争をどうしてもやらなきゃならない立場になった、国連の決議でですね、三十カ国の国の人たちがやっている、その多国籍軍に入っている。みんな嫌だと言ってもやらなきゃならないのに、何も手をかしてくれない日本というのはひどいじゃないかと、こういうことになるわけですよ。  それで、日本は自分のところの憲法を読み誤って、平和主義といいながら国際的にひとりぼっちになっていく、これは戦前と全く一緒なんですね。一九三三年に日本非難決議案が出ました。四十二対一で日本だけ正しいと。それで英米を初め世界の人たちはひどい、それに日本人は拍手を送っているわけです。それで世界の孤児になって、ああいう太平洋戦争に突っ込んでいったわけです。  だから、今回も自分のことだけ言っていると変な国だということになってしまう。そういうことでございまして、これから二十一世紀に向かってこれの答えを日本はまだ出してないわけですね。したがいまして、これからPKO法案その他ございますけれども、何とか日本も国際社会の人たちと同じ立場で同じように価値観を共有していかないと、その価値観のギャップという、大きなツケが我が国に将来回ってくるのではないかということを非常に私は危惧している者の一人でございますので、この点の長官の御評価を賜りたいと思います。
  171. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 田村委員、大変基本的な問題について御質問、言及をされたわけでございますが、冷戦後の世界に二つの問題があるという問題意識ですね。  一つは、東西間が激しく対立し合っていた冷戦構造下、これは確かに第三世界とか非同盟中立の国とかいろいろございましたけれども、基本的には東西の対立の構造の中で、いろいろ諸問題は吸収されてきたというのは私も事実だと思います。そういうことは実際あったと思います。それで一方の旧ソ連邦が崩壊したということによって、それではもう対立がなくなったからすべて万々歳かというと、委員と同様に私もそうは思いません。現にそういった各地の民族紛争、宗教紛争、地域間の紛争等の多発していることもございますし、また、多発するおそれもあります。そういう点では基本的認識を異にいたしておりません。そして同時に、これからの価値観を国際社会の中で共有していこうということも基本的には私は賛成でございます。  ただし、今御引用になりましたイラクとクウエートとの経過の問題につきましては、多少私は見解を異にしております。これは率直に申し上げさせていただきますが、八月二日にイラク・クウエート戦争が始まりました。そして国連は直ちにこれへの経済制裁等を勧告いたしました。我が国もいち早くこれには応じました。そしてそれに対して応分の拠出をいたしますということで対応いたしました。多国籍軍も編成はされておりましたけれども、戦火を交えるまでには隠忍に自重を重ねて、国連の事務総長の仲介あるいはソビエトを巻き込んでの仲介その他の工作が行われました。  しかし、これによってもなおかつあの不法な侵略がやめられないということをもって多国籍軍が昨年の春侵攻を開始いたしまして、短期間のうちにクウエートからイラク軍を撤収、撤退させたわけでございまして、この多国籍軍への我が自衛隊の参加問題はしばしば議論されておりますように、これはやはり私は、今の現在の九条の公権的な解釈のもとでは無理ではないかと思っております。  また、多国籍軍への後方支援を目的とした平和協力法、今のPKO法とはこれは違いますよ。それは、現に戦争が行われているというときの後方支援問題、これがやはり国民的な理解が得られなかったというのも私もある程度は理解できます。  そういう点で、今回のPKO法は、まさにその戦争が終結した後の国際貢献でございますから、前回出されて廃案になった平和協力法案とは全く違うということを申し上げておきたいと思います。  私どもは、この憲法九条の建前からして、やはり専守防衛立場を貫いてまいりましたし、これはこれとして、四十年間日米安保条約とともに我が国の安全保障に非常に大きく寄与してきたこの構造は私は高く評価すべきものだと存じますし、今の憲法九条によりまして、私個人としては、多国籍軍に参加するようなことはちょっと無理ではないかなという感じを率直に持っております。  したがいまして、共通の価値観を持つことはいいといたしましても、共通の価値観というのは何も武力だけについての問題ではございません。政治、経済、文化等々あらゆる分野における共通した価値観、民主的な制度あるいはその運営等々万般にわたるものの共通の価値観を世界が持つことは、これからの世界の安全保障のために大変重要なことだと考えております。  我が国も、憲法九条を改正して集団的自衛権を行使できる事態にならなければ人並みなことができないのではないかという意見のあることも重々承知しながら、やはり積み重ねられてきた今の自衛隊は、私は憲法で認められておる個別自衛権に基づく合憲的な存在としてこのあり方は尊重していくべきものと。将来、自由民主党は自主憲法の制定をこれは党是、党の方針としておりますから、これについていろいろ議論をして、なおその上でこの選択をどうするかという問題があることは重々私も承知をいたしておりますが、現在のところはさように考えておるところでございます。
  172. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 どうもありがとうございました。  官房長官がお見えでございますので、せんだっての内閣委員会で、板垣理事から天皇、皇后両陛下の御訪中については慎重を期していただきたいという要望が出ておりました。その後の検討の結果を教えていただきたいと思います。
  173. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 田村委員御案内のとおり、天皇陛下の御訪中につきましては、中国側より、本年が日中国交正常化二十周年にも当たりますのでこの秋にぜひ御訪中いただきたい旨の要請がありまして、我が国としてはこれに対して真剣に検討しているところでございます。  いずれにせよ、陛下の例外遊は日本国民の祝福が得られる中で行われるべきものと理解しておりまして、現在検討中でございます。
  174. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 ありがとうございました。  東西の冷戦が終結して平和がやってきたんだから我が国の防衛費を削れという一部の意見がございます。  防衛庁の方にお尋ねしますけれども、アジアで今軍縮をしている、軍事費を削っている国が一国でも、私はそういう国はないと考えておりますが、そういう国があったらちょっと教えていただきたいと思います。
  175. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 私もこれは大変非常に重要な問題であると思いまして、私の知る限りでは、調べさせましたが、アジアでは軍事費を減らしている国はございません。むしろ、二けた程度で伸ばしている国が多いというのが実態であろうかと思います。  なお、国別に必要であれば政府委員から御説明させます。
  176. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 そういう状態の中で、どうして日本の防衛費の伸びを削るのか教えてください。
  177. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 私どもの今の防衛費というのは、たびたび御説明申し上げておりますように、基盤的防衛力構想に立ってこれをやっておるのでございます。しかしながら、世界の情勢と全く無関係というわけにもこれはまいりません。直接、世界がこうなったからすぐ防衛費を減らす、あるいは世界がこうなったから防衛費をふやすといっても現実にできるものでもありませんし、またそうすべき問題でもございません。  さはさりながら、大勢としていろいろの問題がこの世界の情勢の変化を投影いたしまして、私ども考えなければならない点が多々ございます。そういう点で、今後の防衛力を考える場合には、やはりそういうことを重要な背景、視点としつつも、基盤的な防衛力構想という理念をまた一方でとりながらそれの整備を図っていくべきものと、こう考えておりまして、まあ、たまたまというか、現在こういう時点にありますので、私どもとしてはいろいろ苦悩して、もうちょっと本当は近代化のためには必要であるという考え方もございましたけれども、三十二年ぶりの低い伸び率にいたしたわけです。しかし、その中身等については、あとう限り後方重視、その他のできる限りの対応をしていこうということで今回の予算をつくりまして、伸び率で言えば三・八%、これはまさに昭和三十五年以来の、三十二年ぶりの低い率になっていることも御承知のとおりでございます。
  178. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 これは質問ではございませんが、最後に、我が国の防衛について遺漏なきを防衛庁長官にぜひお願いしたいと思います。  それと、自衛隊の隊員は大変純粋な考え方を持っておりますので、このPKO法案につきましても非常に自分たちに降りかかってくる問題であるというふうに受けとめ、政争の具にしないようにぜひお願いしたいと思います。  終わります。
  179. 吉川春子

    ○吉川春子君 現在ほかの委員会で審議中ですけれども、国連平和維持活動の軍事活動に日本が協力する、それに自衛隊を参加させることについて日本国憲法第九条は明確に否定しています。その矛盾の一つが指揮権問題であると思います。  それで、外務省にお伺いいたしますけれども、指揮権については、法案の体系上はもちろん、政府も、日本政府に指揮権があり、国連の事務総長の指揮下には入らないとこれまで繰り返し答弁してきました。しかし、国連文書では、各派遣国は国連の指揮のみを受け本国の指揮を受けてはならないと明記されております。  PKOに軍隊を派遣してきた諸国の立法は、指揮権をどうとらえているかについてまず伺いたいと思いますが、例えばフィンランドはどうなっていますか。
  180. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  まず、二つに分けてお答え申し上げたいと思います。  一つは、そもそもフィンランドがPKOに参加するに当たって法体系がどうなっているかということ、それにあわせまして、二つ目として、指揮の問題がどう処理されているか、そういうぐあいに二つに分けてお答え申し上げます。  一つは、フィンランドにつきましては、PKOに参加するそのフィンランドの国連待機軍についての基本的な法律といたしまして国連平和維持活動への参加に関する法律というのがございます。それにもう一つ国防軍に関する法律と二つそういう法体系がございます。このうち国防軍に関する法律第二条には、国防軍の任務一つとして、国連の要請により国連平和維持活動部隊を派遣するための準備を行うということが規定されておるわけです。先ほどの第一番目の国連平和維持活動への参加に関する法律は、フィンランドがPKOに参加する上での基本的な枠組みを定めていると、以上がフィンランドがPKOに参加する基本的な法的な枠組みの問題でございます。  次に、先生の御質問のPKOに参加していくに当たっての国連のコマンドとの関係がこれらの法律的な枠組みの中でどう処理されているかということかと存じますが、先ほど申しましたPKOへの参加に関する法律の第三節、これは服従関係あるいは内部命令と組織の権限というものを定めておるわけですが、次のような規定になっております。平和維持組織は、その行動については国連に従うが、それ以外についてはフィンランド国防省に従うと。繰り返しますけれども、その行動については国連に従う、英語でサボーディネートという表現が使われていますが、そういう規定になっておると、こういうことでございます。
  181. 吉川春子

    ○吉川春子君 要するに、国連の指揮下に入ると、フィンランドの国際平和維持活動に参加する法律の第二条にそうなっているわけです。  それから、スウェーデンとデンマークの場合は、この指揮権の問題だけに限ってお聞きいたしますが、どうなっておりますか。
  182. 丹波實

    政府委員(丹波實君) まず、スウェーデンについては同種類の法律がございます。デンマークにつきましては議会の決議ということで処理されておるわけでございます。  スウェーデンにつきましては、国連待機軍に関する法律というのがございまして、その第二条に、政府は国連事務総長からの要請を受け、平和維持活動に参加するため待機軍を国連事務総長の利用に供する、あるいは用に供することができるといったぐいの表現になっております。英語ではディスポーザルという言葉でございます。  デンマークにつきましては、先ほど申し上げたような議会の決議の中で、省略いたしますけれども肝心なところは、待機軍を国連のやはり用に供する、これもディスポーザルという言葉が使われておりますけれども、そういう意味では、スウェーデン、デンマーク、同じような表現が使われているということでございます。
  183. 吉川春子

    ○吉川春子君 用に供する、用に供するとおっしゃいますけれども、要するに指揮下に入ると、こういうふうに国会図書館のこれでは翻訳しているんですけれども、指揮下に入るという翻訳は間違いなんですか。
  184. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 過去のPKO委員会でのやりとりで、先生は私の英語力に若干の疑問を示しておられますけれども、アット・ザ・ディスポーザルといいますのは、まさに利用に供するとか、あるいはあなたの言う指示に従いますと、そういう意味で、これは行動面につきましては、あなたのというのは俗的な言い方ですが、その国連の指示に従いますと、そういうことを意味した表現であるというふうに理解いたしております。
  185. 吉川春子

    ○吉川春子君 それで、そのフィンランド、スウェーデン、デンマークの各国は、PKOに参加した部隊はすべて国連の指揮下に、すべてというか、国連の指揮下に入るということを法律や下院の決議で明確に規定しているということは、今御答弁があったとおりなんです。  それで伺いますが、日本では他の派遣国と違って、PKOに派遣された自衛隊は国連の指揮下には入らない。だから協力法というふうになっているわけですけれども、そういうことですね。
  186. 丹波實

    政府委員(丹波實君) フィンランド、スウェーデン、デンマークについて御説明いたしましたが、総じて、表現は違うものの私たちの理解では、PKO委員会で何度も御説明申し上げておりますが、この派遣モデル協定第七項、先生が先ほど御引用になられましたけれども、基本的にはそういう考え方を受け入れた考え方が規定されているんではないかと思います。  日本の法案におきましても、何度も御説明申し上げてきておりますとおり、この第七項の国連司令官のコマンドというものが現実に実施されるような法的枠組みというものを現在のPKO法案は用意しておると、こういうぐあいな理解でございます。
  187. 吉川春子

    ○吉川春子君 このフィンランドの法律の三条には、組織の従属関係、内部規律及び権限において、平和維持組織は、作戦面では国際連合に、その他の面ては国務大臣に従属する、こういうふうになっていますけれども、日本がPKOに参加する場合もこの点は、実体は同じじゃありませんか。
  188. 丹波實

    政府委員(丹波實君) PKO特別委員会で何度も御説明申し上げてきておりますとおり、この派遣モデル協定の第七項に言いますところの国連の司令官が持っておる配置、組織、行動及び指令についての指図、コマンドというものを日本政府としてはこの法案の枠内で実施するということでございます。
  189. 吉川春子

    ○吉川春子君 要するに、フィンランドは、もう一度言いますけれども、組織の従属関係、内部規律及び権限において、平和維持組織は、作戦面では国際連合に、その他の面では国務大臣に従属する。だから、日本の場合もそういうことになるわけですよね。オペレーション、具体的な配置とかそういうものは国連のコマンドに服する、しかしその他の面、懲戒権とかそういうものは日本にあるという説明ですから、このフィンランドの法律の三条の決めているところと内容は同じじゃないんでしょうか。そこを、同じかどうかということだけでいいです。
  190. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 第三国の国の法律について確定的な解釈権は私たち行使できないわけですから、一〇〇%のことは申し上げることはできませんが、要するにフィンランドの場合も日本の場合も、PKOに参加して出ていった場合に、国連司令官の行動面におけるコマンドというものに従って行動するということ重言わんとしているわけでございます。
  191. 吉川春子

    ○吉川春子君 スウェーデン、フィンランド、デンマークの場合の規定にある国連の指揮下に置くということは、国連の指図を受ける、全面的に、全部懲戒権も含めて国連に預けちゃいますよということじゃなくて、そういうものは留保しながらもその指揮下に置くという表現を使っている。それと日本が国連のコマンドに従うと言っていることと、中身は同じことを言っているんじゃないかと、そういうことを聞いているんです。どうですか。
  192. 丹波實

    政府委員(丹波實君) スウェーデン、デンマークのそのディスポーザルという表現が、指揮という言葉が適当かどうかはちょっと判断にあれでございますけれども、いずれにしても、先ほどから申し上げておりますとおり、派遣モデル協定の第七項といいますのは過去四十数年間の国連のPKO、PKF活動の伝統、プラクティス、慣行というものを盛り込んだものでございます。スウェーデンもデンマークもフィンランドもそれを承知の上でこういう法律をつくっておるわけでして、我が日本のPKO法案も、基本的にはそういうことを念頭に置いて、そういうものが実施される法的な仕組みというものをつくっておるということでございます。
  193. 吉川春子

    ○吉川春子君 それで、この北欧三国の法律は参加法になっていますね。日本は協力法となっていますけれども、日本が参加法というふうにしなかった理由は何ですか。
  194. 野村一成

    政府委員(野村一成君) その「参加」と「協力」という言葉につきましては、これは平成二年十月二十六日でございますが、この前の平和協力法が審議されたときでございます、そのときに参加と協力についての統一見解を出してございます。  それによりまして、「協力」というのは、これは「国連軍」の場合を引用してございますが、それはもう「参加」を含む広い意味での関与形態をあらわすものであって、「当該「国連軍」の組織の外にあって行う「参加」に至らない各種の支援をも含むと解される。」と、そういうことでございます。したがいまして、この「協力」という言葉を使う場合には、「参加」とそれからその周りの支援を両方含めて使っているということでございます。  この法案の体系を考えますと、まさに国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案というのが一番適当な表現であるというふうに考える次第です。
  195. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと説明が長くて理解しにくかったんですけれども、「参加」と「協力」というのは違うんですか、同じですか。
  196. 野村一成

    政府委員(野村一成君) 先ほど私申し上げたと思いますが、「参加」という場合には、この場合には「国連軍」でございますが、それの「司令官の指揮下に入り、その一員として行動することを意味し」云々ということになっておりまして、「協力」は、それをも含め、さらにそこまでの参加に至らないような各種の支援をも含むということでございます。したがいまして、参加も含めた広い概念であるということでございます。
  197. 吉川春子

    ○吉川春子君 防衛庁に伺います。  自衛隊法防衛出動治安出動について規定を持っていますね。そして、私たちはこういうことには反対だし、憲法上できないと思っていますが、法律の仕組みとして以下伺うわけですけれども、この防衛出動治安出動の場合、特別の部隊を編成して任に当たると思うんですけれども、その場合の指揮権はどうなっていますか。自衛隊法二十二条を読み上げてみてください。
  198. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 自衛隊法の第二十二条、「内閣総理大臣は、第七十六条第一項」、これが防衛出動でございます、それから、「第七十八条第一項又は第八十一条第二項の規定により自衛隊の出動を命じた場合には、特別の部隊を編成し、又は所要部隊をその隷属する指揮官以外の指揮官の一部指揮下に置くことができる」というのが第一項の規定でございます。
  199. 吉川春子

    ○吉川春子君 要するに、「特別の部隊を編成し」、その「所要部隊をその隷属する指揮官以外の指揮官の一部指揮下に置くことができる」と、こうなっていますね。この「一部指揮下に置くことができる」というのはどういう意味ですか。
  200. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 特定の事項、運用等につきまして、それに限って指揮下に置くということであろうと思います。
  201. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと今わかりませんでした。この規定に言うその「一部指揮下」とは、例えば防衛出動が命ぜられ、部隊が特別に編成された場合には、その行動については本属する指揮官以外の指揮を受けるけれども、処分を含めた人事権その他の事項については本属の指揮官の指揮を受ける、こういうことを規定したものじゃないのですか。どうですか。
  202. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 基本的にはおっしゃるようなことになろうかと思います。つまり、通常のときに隷属している指揮官のもとに通常はあるわけでございますが、防衛出動が下令されて、特別の部隊を編成した場合には、通常所属している指揮官以外のところに部隊として集結されることになりますから、それについては作戦行動その他について指揮下に入ると、しかしながらいわゆる懲戒権的な服務的なものについてはもとの指揮官の指揮下にあるというような意味合いを含んでいると思います。
  203. 吉川春子

    ○吉川春子君 もうお出かけですか、防衛庁長官。  今お聞きのように、自衛隊法二十二条には「一部指揮下」という言葉が使ってありまして、そして防衛出動などで新たな部隊が編成されたときには、人事権とか後方のその他のいろいろなことについては本属の指揮に従うのだけれども、そのほかのいろいろ行動、それは新たに編成された部隊の指揮官のもとに置かれると。これはPKO法案で防衛庁長官も何遍も答弁されています国連のコマンドとの関係に似ていると思うんですよね。それと同じというふうに理解してよろしいでしょうか。それだけ答弁をされてからお出かけください。
  204. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) ちょっと法律の解釈の問題でございまして、この自衛隊法の「特別の部隊の編成」は、まさに国内における直接侵略、間接侵略に対応する場合のことでございますので、PKOでも大体先生のおっしゃるとおりのように思いますけれども、なお厳密を要する点があろうかと思いますので、その点はまたきちっと御報告させていただきたいと思います。
  205. 吉川春子

    ○吉川春子君 どうぞ結構です。  PKO準備室か、あるいは外務省が、防衛庁かどこでも結構なんですけれども、PKO法案の八条二項に言う国連の指図、つまり国連のコマンドは自衛隊法二十二条の一項の「一部指揮」と同じではないですか。それなのにPKO法案では「指図」としているし、自衛隊法では明確に「一部指揮」という言葉を使っていますよね。この八条二項の方も一部指揮のことじゃないんですか。
  206. 野村一成

    政府委員(野村一成君) 私は、自衛隊法そのもののことについて明確にお答えする立場にはないわけでございますが、この法案の八条二項で言っておりますいわゆる国連の指図と、私どもコマンドと同義であるというふうに言っております。基本的に同じ意味だということを申し上げております。その趣旨は、先ほど国際連合局長から申しましたように、いわゆるモデル協定第七項に掲げております……
  207. 吉川春子

    ○吉川春子君 それはいいです。逐条項はいいです。
  208. 野村一成

    政府委員(野村一成君) その七項に基づきまして有している国連の権限であると、そういうふうに理解しておるわけでございます。
  209. 吉川春子

    ○吉川春子君 私、もう何遍も言いましたけれども、自衛隊法二十二条には「一部指揮」という言葉が出ていて、しかもそれは新たに編成された部隊の指揮のもとに従うけれども、人事権その他は本属の方に残っているんだということを防衛庁は明確にさっき答弁されました。そうだとすれば、PKOの方も懲戒権その他が日本に残っているという理由でこれは国連のコマンドなんだと、指揮じゃなくて指図なんだという答弁を繰り返してこられたんですが、この自衛隊法二十二条一項に言うところの「一部指揮」と、それからPKO法案の八条二項ですか、この「指図」と中身は全く同じですよね、今の答弁からして中身は同じなんです。それなのになぜ法律が違う生言葉まで違ってきちゃうのか、そこを伺っているわけです。どうですか。
  210. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 自衛隊法の解釈の方は私の方でやり、それからPKO法案の方の有権解釈は野村室長の方なものですから、両者を踏まえて有権解釈上全く同じ内容かという御質問について、必ずしも私の方から正確にお答えすることはできないかと思いますけれども、御指摘の大筋としては非常に性格として似ていると。ただ、「一部指揮」というのがどこまでの指揮を含めるのが実際の立法者の意思であったのか。それから、それが「指図」というPKO法案のときのお話と全く範囲が一致しているのかという厳密な議論になってまいりますると、必ずしも正確にお答えができないということでございます。しかし、大筋としては御指摘のとおりのニュアンスは理解ができるところでございます。
  211. 吉川春子

    ○吉川春子君 PKO法案をつくるに当たっては、国内法の体系をみんなお調べになったと思うんですよね。しかも、自衛隊が出動するわけですから自衛隊法を当然外務省でも検討されましたでしょう。そして、自衛隊法には「一部指揮」という言葉があって、まさに新たに編成される部隊に指揮をゆだねるけれども、本属の方に懲戒権その他は残すということがあるわけだから、これと違う言葉をPKO法案で自衛隊を出動させるときに「指図」という言葉を使うに当たっては、じゃどこが違うから「指図」という言葉にしたのかと、そういう検討があってもしかるべきじゃなかったんですか。そういう検討はされたんですかされないんですか。
  212. 野村一成

    政府委員(野村一成君) 今、先生、国内法、自衛隊法を例にとってるる説明がございましたけれども、基本的にはこのPKO活動、特に国連のコマンドの関係につきましても、要するに国際連合と主権国家の集まりとの間の長年の慣行によって積み重ねられてきたものでございます。それを、いわゆる派遣国と国際連合との間のモデル協定、こういうものだろうということで表現しているものでございますので、私どもはそういう意味では、何と申しますか、このきちんとした国内社会の国内の法の体系のもとで、そういう今のような国際連合とそれから主権国家との間の長年の慣行が確立しているものがあるかというと、それは必ずしも私はそうじゃないのだろうと思っています。  基本的には、私どもが一番この法案をつくる際に留意いたしましたのは、まさに長年の慣行ででき上がってまいりました国際連合と参加国との間の慣行、モデル協定第七項にあるわけですけれども、このコマンドというのを、実態を踏まえて、それを国内法上で使っている。国内法でございますPKO法案、その場合に用語として何が適当かという、そういう意味での法令探索は行いました。しかし、やはり私は一番重要なのは、長年の慣行である国際連合のコマンドというのを、どういうふうに実態をとらえるかということが重要だと思います。
  213. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと論議が空転しているんで、私時間がもったいなくてしょうがないんですけれども、この自衛隊法の「一部指揮下」という言葉をPKO法案を立法するに当たって検討したんですか。そして、その検討の結果この自衛隊法の「一部指揮下」という言葉は使えない、だから「指図」にしたんだと、そういう経過があるんですか。
  214. 野村一成

    政府委員(野村一成君) 私、必ずしも御理解いただいておらないような感じがいたすんでございますけれども、要するに国際連合と主権国家の集まりとの間の長年の慣行というのを、それを必ずしもきちっと国内法体系でどういう言葉でというのは、これは違った法体系でございますので、それにきちっと合う言葉が、私ども指揮あるいは指揮監督ということではない、そういうふうに判断した次第でございます。  なぜそうかといいますと、これは繰り返しになりますけれども、モデル協定第七項で言っております国連のコマンドというのは、必ずしもそれには該当しないという、そういうことでございます。
  215. 吉川春子

    ○吉川春子君 PKO法案は、条約とか国際法じゃないわけです、国内法ですね。だから国内法の体系に合わないものをつくったら、それはおかしいじゃありませんか。国内法の体系に沿ってつくっているわけでしょう。それが一つと。それで、国連のコマンドに従うということを繰り返し言っているわけなんですよ。実際上国連の指揮下に入るんだということも言っているわけなんですよ。だから、私はその論議はPKO委員会でやっていますから、きょうしているんじゃないんです。自衛隊法で、こういう「一部指揮下」という概念があるのにもかかわらず、しかもまさに一部指揮ということと同じですよね、自衛隊の派遣、PKOにゆだねるということは。  それとの関係を聞いているんで、この自衛隊法との関係はどうなのか、その点を聞いているんであって、モデル協定とか国連との関係というのは、今はちょっととりあえず必要ないです。自衛隊法検討はどういうふうにしたのか。で、この自衛隊法の「一部指揮」という概念と「指図」という概念のどこが違うのか。その点を端的にお答えください。どうですか、防衛庁
  216. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) PKO法案の方の「指図」というのが、例の指揮権から人事懲戒権を引いたもの、つまりそれは指図の対象になっていないということだといたしますと、こちら防衛庁自衛隊法二十二条の規定の「一部指揮」というのが、それと全く同じかとおっしゃると、必ずしもそうではなくて、特定の任務を帯びた部隊の、その部隊の必要な限りにおいて命令を下すという場合、本隊所属の部隊にまた別途の命令ということもあり得るわけでございまして、必ずしも人事懲戒権に限っているというふうに、ここは有権的に確立された解釈というわけではございません。  その意味で、「一部指揮」というのと「指図」というのが全く同じであるかという厳密な議論になりますと、私としては必ずしもそうだということが申し上げられない実情でございます。  なお、「一部指揮」と「指図」ということ、大まかに言って同じような事態であるにもかかわらず、それを別の法律で別の言葉を使っているのはけしからぬではないかという御指摘かと思いますけれども、そこは用語の選択の問題として、先ほど来、野村室長が申しておりますとおり、純粋に国内での戦闘場面におきます指揮というのと、それから国連が絡む、国連との絡みでの指揮命令系統との場合では、これは場面が違うということを先ほど来野村室長は述べているものと思います。
  217. 吉川春子

    ○吉川春子君 何が原隊の方に、原属の方に残されるかという問題、いろいろ違うけれども、しかし新たな部隊でその司令官の指揮を受けるということは同じでしょう。そして、懲戒権その他のものは残されるということは同じでしょう。だから、そういう同じものについては、全く一字一句同じじゃなくてもいいわけです。性質は同じでしょう。そうじゃありませんか。そして特徴は、消防とか災害出動とか捜査とか、いろいろな問題、PKO委員会で問題になりましたけれども、ここは「一部指揮」という言葉は使ってないわけですよね。  自衛隊法に明確に一部指揮権という言葉があるわけです。にもかかわらず、それを「指図」というふうにしているのは全く私、納得いかないと思うんです。それは、国連が相手だからそういうふうに国内の法律も変わってきちゃうんですか。そうじゃないでしょう。だから、どこが違うのでそういうふうに言葉が違ってきたんですか。残されている懲戒権とか範囲が違うから、だからその言葉が違ってきちゃったと、そういうことですね、防衛庁がおっしゃるのは。
  218. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 本隊に残されている指揮権限の部分がどのくらいかということについて、今、厳密に確定解釈を申し上げられないということを先ほど申し上げたわけでございまして、それとの差の問題もありますし、それから指揮命令が、そもそも国内における同一組織内の上下関係という形で構成されているのがこの自衛隊法でありますけれども、PKO法案の方の国連の「指図」というのは上下関係という形でのものではなくて、国際機関とある国との組織との異なる間における指揮関係といいましょうか、指図関係といいましょうか、そういうものでありますから、ディメンションが違うということを申し上げているわけでございます。
  219. 吉川春子

    ○吉川春子君 もう時間がなくなりました。PKOで参加する場合は上下関係じゃないと。じゃ国連のコマンダーとは同列関係になるんですか、自衛隊が。そんなばかなことないでしょう。
  220. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 国連の指揮官の指図というときに、国連の指揮官という者と、我が国の組織、自衛隊等の間では組織的には違うということでございまして、この自衛隊法の場合には、いずれにしても自衛隊という一つの組織の中における上下関係を規律しているということでございまして、もちろんその指揮下に入るということになれば、国連の場合でもその入った瞬間から上下関係になるわけでありますけれども、そもそもの指揮関係を、書き分けるときにその本隊の、要するにそこの関係が国連というものと我が国の自衛隊という、そういう組織の異なる間での関係であるということを申し述べているわけでございます。
  221. 吉川春子

    ○吉川春子君 委員長。これで最後にします。  きょう答弁がいただけなくて、答弁を受けている間に余計わからなくなったんですよね。  それで、私は要求しておきますけれども、自衛隊法の「一部指揮下」という場合は、原隊の方にどういう権利が残って、そして新たに組織された部隊にどういう指揮を受けるのか。それとPKO法案の八条二項の「指図」とどういうふうに性格が違うのか、同じなのか、それを整理して後で文書で出していただきたい、表にして出していただきたい。そのことを要求して、お答えをいただいて終わります。どうでしょう。防衛庁上外務省の両方に。
  222. 野村一成

    政府委員(野村一成君) 私の方からは、特に「指図」という言葉を使った、特に国連のコマンドとの関係について申し上げますと、やはり国際連合と主権国家という見地からいたしますと、上下関係とか命令服従関係というのを内在させているものじゃないわけです。また、これは繰り返し御説明申し上げておりますように、懲戒権等の直接の強制手段を伴ったものじゃないと、そういう実態に着目いたしますと、組織的にお互いに独立した主体間における要求とか指示とか、そういうのがここで言っておりますコマンドの実態でございます。したがいまして、法令用語として用語例から探索すれば指図と、そういうふうにしたわけでございます。
  223. 吉川春子

    ○吉川春子君 自衛隊法と全く同じことなんですよ。だから出してくれますか。
  224. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 野村室長の方と相談して、文書として整理して出すように努力したいと思います。
  225. 太田淳夫

    太田淳夫君 それでは話題はちょっと変わりまして、官房長官も時間がおありになるそうでございますので、関連の質問だけ先にさせていただきます。  と申しますのは、総理官邸建てかえ計画状況なんでございますが、この現在の官邸につきましては、昭和四年に構築されまして、老朽化あるいは狭隘化がかねてから指摘されておりました。大平内閣のときにこの建てかえ構想が浮上しまして、当時の中曽根内閣昭和六十二年五月に「総理大臣官邸の整備について」という閣議了解を行って、総理大臣官邸整備検討委員会を設けて検討を進めてこられたようです。当初平成二年度着工四年度完成ということだと思いますが、大分状況としてはおくれておるようです。竹下内閣あるいは海部内閣は余り積極的ではなかったと言われておりますが、宮澤内閣の取り組みはいかがでございましょうか。
  226. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 確かに御指摘のとおり、総理大臣官邸の老朽化は非常に進んでおりまして、また非常に狭隘な状況になっております。  御参考までに申し上げますと、中央官庁街にあります役所の建物で一番古いのが総理大臣官邸でございまして昭和四年、次が警視庁の昭和六年、人事院ビルの昭和八年、文部省の昭和八年、特許庁の昭和九年、会計検査院の昭和十年、国会議事堂が昭和十一年で、大蔵省が昭和十八年と、こうなっております。そのうち警視庁が建てかえを終わりましたし、特許庁も終わりましたから、総理大臣官邸というのはもう老朽化のトップを走っておるということは言えると思います。  ただ、非常に由緒のある、それからライトさんの設計であるという文化財的な意味もありまして、なかなか決断ができないようなところも各内閣ございました。太田委員指摘のとおりの閣議決定もございますので、鋭意この建てかえには宮澤内閣としても推進してまいりたいと思っております。  特に、耐震性という点に問題がございまして、かなり大きな地震があった場合、その際、総理大臣官邸がそれぞれの復旧や危機管理等に対しての指揮系統の中枢になうなきゃならぬのですけれども、その総理大臣官邸自体の電線、電話線等がそのとき働いているか、つまりライフラインというのがそのときに機能しているかというと、まずちょっと無理じゃないかというような状態なものですから、これはもう緊急の仕事ではないかなと思っております。  それで予算上のいろいろな問題もございますけれども、今年度の大きな一つの進展としましては、建設予定地内にございますサイエンスビルという首相官邸のすぐ下にあるビルとのいわゆる補償交渉が先月終わりまして、契約がまとまったところでございます。これが一つの大きな進捗になります。  それから首相官邸の前から溜池の方におりていきますと、ちょっと左に曲がりくねっていく一方通行の道路がございます。あの道路は医道でございますけれども、あれを本年じゅうにつけかえて、あれから真っすぐどんと下に落としてまいりますとキャピトル東急ホテルの前にございます地下鉄の入り口のそばまでおりることになります。そういう意味では、第一議員会館と第二議員会館の間にあります道路と同じぐらいの急な勾配の道路になりますけれども、それを今年度工事に着手する、そういうつもりで頑張っておるところでございます。
  227. 太田淳夫

    太田淳夫君 かねてから官邸の機能強化という面でもいろいろと指摘をされております。第一次行革審答申の中にも、総合調整機能の強化あるいは緊急事態の対応という観点から指摘もされておるわけですが、また先般の湾岸危機のときにも、官邸のハード面での機能強化の必要性が改めていろいろと指摘されてきているわけです。  今のお話ですと、一生懸命頑張って努力していくということでございますけれども、最近国会国会移転の特別委員会が設置されました。また、総理の私的諮問機関であります首都機能移転問題を考える有識者会議も定期的な会合を持たれたりしていまして、国会移転とかあるいは首都機能移転の論議が特に活発になってきているように思うんですけれども、そういうものとの関連でやはり官邸の建てかえ計画についてはいろいろな影響があるんじゃないか、こう私は思うんですが、その点はどのようにお考えですか。
  228. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) その点につきましては、確かにこれまでもいろいろ議論のあるところでございますけれども、現段階では国会等移転の時期、手順、方法等につきまして明らかになっておらない状況でございます。そういう段階で、一方では先ほど申しましたように、老朽化が相当進んでおること、狭隘化が著しいこと、それから緊急事態に的確に対応する点で支障が生じているということ等もございまして、官邸の建てかえというのはちょっと余り日を置けない緊急を要する課題になってきているのではないかという判断をいたしております。  また同時に、今御指摘のような臨時行政改革推進審議会の答申もございまして、やはり建てかえには手をつけるべきではないかという各方面の御意見もございますので、この首都移転等の関係はございますけれども、建てかえは進めていかなければならない状況にあるのではないかと我々は判断して、その方向で進めさせていただいておるところでございます。
  229. 太田淳夫

    太田淳夫君 では次に、公益法人の問題について若干お尋ねをいたします。  五十六年発足して以来の臨調の答申は、行政改革を進める視点としては、変化に対応、簡素効率化、信頼性の確保、こういうのを提示しまして、この基本的な考え方は第一次行革審、第二次行革審あるいは第三次行革審においても引き継がれてきているわけでございます。こうした行革の理念というのは行政機構のあり方につきましても当然反映されなければならないものでありまして、行政機構のあり方としては、社会情勢の変化など、対応力に富みながら総合性及び整合性が確保されて、簡素にして効率的であり、かつその新設に当たりましてはスクラップ・アンド・ビルドの原則によって膨張は抑制しなければならない。これは当委員会でもかねてから論議されてきたところです。  そこで、官房長官、総務庁長官に御見解を伺いたいんですが、行政機構のあり方を考える場合に、当然中央省庁、地方自治体、特殊法人、認可法人、そして公益法人などを含めたトータルなものとして検討しなければ行革等の実は上がらない、こう思うんですが、この点はどうでしょうか。
  230. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 御指摘のように、やはり我が国のような体制をとっているところでは、できる限りガバメント、政府というものは小さくてスリムであるべきであろうというのが理想の形であると思いますし、そういう観点から行革審等でも御議論いただいていることだろうと思います。その方針に従って、我々も政府機関、それからそれの関連の機関等につきましても、その精神で物事を進めてまいるべきであろうと考えて、努力いたしているところでございます。
  231. 岩崎純三

    国務大臣(岩崎純三君) 先生からお話のございました行政機構につきましては、まさに変化への対応力に富んだ、しかも総合性あるいは整合性が確保されて、そして簡素にして効率的な行政機構が要求されるわけでございます。  政府といたしましては、累次にわたる臨調、行革審の答申をいただきまして、中央省庁の再編合理化、あるいは今御指摘のございました特殊法人に対する改革、さらには国から地方への権限の委譲、あるいは規制緩和等々について、一歩一歩着実にその改革に臨んでまいったところでございます。  そこで、公益法人あるいは認可法人トータルで考えるべきじゃなかろうかということでございますけれども、行政改革の中では、政府が強制的に設立をする特殊法人、これは当然その管轄に入るわけでございますが、民間の法人でございますので、まず所管の省庁が行政指導、監督をいたしておるわけでございますので、それらとの連絡調整を図りながら、この件については対応してまいりたい。  いずれにいたしましても、変化に対応できる総合的で効率的な行政を実現するため、行政機構部の改革にこれからも懸命に取り組んでまいる所存でございます。
  232. 太田淳夫

    太田淳夫君 官房長官、結構です。  では、内閣法制局に伺いますが、公益法人とはどういうものでしょうか。定義はどのような定義ですか。
  233. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) お尋ねの公益法人、これは民法第三十四条の規定に基づき設立されたものであろうと思われますが、そのポイントを申し上げますと、公益を目的として、かつ私益を目的とせず、そして行政官庁の許可によって設立されたものを言うということでございます。
  234. 太田淳夫

    太田淳夫君 最近この公益法人についていろんな問題点が指摘されておりました。  その第一の問題点は、公益法人の設立が増加をし、国民の目に見えないところで行政組織が膨張しているんじゃないかということと、第二点は、公益法人の設立につきまして各省庁が行政権限を盾に経済界に資金を出させているということが指摘をされているわけでございます。  そこで、時間もないのでちょっとあれですが、文部省にお伺いしますが、文部省は、総理府の資料によりますと、所管の公益法人が最近四年間、昭和六十二年から平成元年までに急激な増加をしているんですが、文部省としてはどのように分析されていますか。
  235. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) お答え申し上げます。  御指摘のように、文部省所管の公益法人数は、昭和六十二年の十月一日現在の千五百四十四法人から、平成二年の十月一日の数で申しますと千六百十六法人となっておりまして、御指摘のとおり、七十二法人が増加をいたしたということでございます。  最近の文部省関係の公益法人の設立の傾向を見てまいりますと、最も多いのが芸術文化の領域でございます。次にスポーツでございますとか学術などの振興、それから国際交流の促進や、留学生への援助を目的とした法人の設立が多く見られるわけでございます。これらの分野における社会的ニーズの高まりというのが一つあろうかと思います。  もう一点は、企業が近年、本来の営業活動にプラスをいたしまして公益的活動を行うことにつきまして、社会一般にもまた企業自身にも大変認識が深まってきたというふうなこともございまして、こういうような民間レベルでの取り組みというものが活発になってきているということのあらわれではないかと理解しているわけでございます。
  236. 太田淳夫

    太田淳夫君 民間が公益目的のために自主的に社団または財団を設立しまして、その事業目的に沿って活動している公益法人というのは問題にしているわけではございませんけれども、そうした公益法人とは別に行政機関、公社、公団、事業団、特殊法人が、その事業を分離したり下請させるためのいわゆる外郭団体として公益法人を設立するケースが最近ふえているんじゃないかと思うんです。  しかも、その背景には、行革が進行して特殊法人の新設が抑制されたために、調査委託の受け皿づくりの名目や、あるいは天下り先を確保するなどの目的で、経済界募金によって、あるいは各省庁が直接募金を行って設立しているという実態があったわけですね。  経団連がこの問題について調査しましたところ、昭和五十六年度以降の十年間で四十七件の官主導と思われる財団等の公益法人が設立されたということであります。あるいは、財団法人を設立するには基本的財産が必要となるわけですけれども、経団連のやはり調査によりますと、昭和五十六年度から平成二年度までの十年間に設立された四十七件のこの官主導と思われる財団等への経済界の拠出金は千三百五十一億円に達した、こういう調査の結果が出ております。これに対して政府、地方自治体等の拠出金は約二百六十億円と、経済界拠出金の五分の一に満たない額だと、こう言われているわけです。  また、その官主導による財団設立の内容を見ますと、通産省、厚生省、大蔵省、建設省、農水省関係の募金が、件数、金額とも圧倒的に多くて、しかも経済界の拠出金額というのは、昭和五十六年度から六十年度までの五年間で二百九十一億円、昭和六十一年度から平成二年度までの五年間で千六十億円と、後半は前半のほぼ三・六倍というくらいに経済界への拠出要請が加速度的に多額化しているわけです。  そこで、総務長官にお伺いいたしますが、あなたは一応公益法人というのをいろいろとまとめられている、監督されている立場の大臣じゃないかと思うんですが、公益法人がその自主的につくられるのではなくて、省庁が財界に金を出させて公益法人をつくる、こういう公益法人の設立というのは、公益法人設立のあり方として認められるべき行為ではないと思うんですが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  237. 増島俊之

    政府委員(増島俊之君) 総務庁としましては、総務庁設置法がございまして、特別な法律によって特別の設立行為をもって設立される、そういう法人につきましての管理をいたしております。  この特別な設立行為といいますのは、政府が設立委員を命じまして設立行為をさせる、そういう法人でございます。これがいわゆる特殊法人と言われているものでございます。  それで、先ほどの公益法人の問題につきましては、先ほど法制局からもお答えがございましたように、民間の発意によりまして、そして各省庁におきます主務大臣が許可してつくられる、そういうものでございます。したがいまして、総理府が従来よりいろいろな共通的な基準というものを設けられまして、各省庁のその公益法人等含めまして、総合調整の立場でそのいろいろな御指導もなさっているというふうに承知いたしております。  したがいまして、各公益法人の問題につきましては、そういう御指導のもとで各省庁が個別に適切に管理していくべきもの、そういうふうに理解いたしております。
  238. 太田淳夫

    太田淳夫君 総理府がこれはまとめるんですか。
  239. 石倉寛治

    政府委員(石倉寛治君) おっしゃいましたとおり、事務次官会議がございまして、そういう会議の中で申し合わせをいたしまして、こういう公益法人の指導監督につきましては、各省主務大臣の認可権限が設定されておるわけでございますけれども、区々ばらばらになるということが問題になるということで、連絡会議を設けまして調整をいたしておるところでございます。
  240. 太田淳夫

    太田淳夫君 その連絡会議というのは、公益法人監督事務連絡会議のことですか。
  241. 石倉寛治

    政府委員(石倉寛治君) おっしゃるとおり、官房長クラスをメンバーにいたしまして、総理府次長が議長を務めております。
  242. 太田淳夫

    太田淳夫君 先ほどから主務官庁というお話なんですが、例えば昨年の経団連の機関誌の中に、経団連事務総長が「官主導による財団法人がこんなに出来でいいのか」という論文を書かれているわけですが、その中に、   特に最近では、民間から資金を集めることが各省庁がその行政権限をバックに、所管業界や主要企業に資金協力や要員派遣を直接求めてきている。   さらに経団連ではこのところ、八件ほど大型の財団の設立について打診を受けている。この中には非常に多額の拠出が要請されているばかりか、経済界に話を持ってくること自体がお門違いと思われるものも含まれている。   また、これらの財団等の設立とは別に、所轄官庁による種々の資金協力要請が企業に対して直接行われており、ある大手企業によれば業界団体経由の募金は全体の二−三割に過ぎず、行政権限をカサに要請されるものは物的・人的なものを含め七−八割に達しているという。   これでは、民間としては行政権限を盾に迫られれば否応なく従わざるを得ないという意味で、正に「官喝」なのである。 官による恐喝だと、こういうふうに省庁から公益法人設立について資金を要求される経済界の実態をこの月報に書かれているわけですね。  したがいまして、こういった実態をきちんと調査をして、この官のゆすりじゃないかと言われているような公益法人の設立、こういうようなことがあってはならないんじゃないかと思うんですね。その点について、これはどこですか、あなたのところでちゃんとやるのですか。
  243. 石倉寛治

    政府委員(石倉寛治君) 荷の重いお話でございまして、私どもとしては問をとりまして、できるだけ公平なあるいは適正な指導監督ができるようにすることのおぜん立てをするという役割をいたしておるわけでございます。  先ほどお話に出ました官主導型の財団法人の件についてでございますけれども、この文章を私どもも読ましていただいておりますけれども、決して経団連がこういう募金をすべて否定しておられるわけではございませんで、同じ文献から見ましても必要なものは出すんだということをおっしゃっておるわけでございます。そういった点で、公益法人というものがどういう形でつくられていくかというまず目的、それから需要、それから事業遂行の能力、こういった点から私ども個々に主務官庁が認可をいたしまして設立を認めると、こういう形をとっております。  個々に私どもとして統計をとっておりますけれども、全体の認可数は承知をいたしておりますが、こういう微妙な問題につきまして分類するということについて個々にやっておりませんので、したがいましてつまびらかにするところではございませんが、やはりそういう御非難を受けることのないような対応はしなきゃいかぬというふうに考えておるところでございます。
  244. 太田淳夫

    太田淳夫君 これは当然ですね。対応をやはりきちんとしていかなきゃならない問題ですね。この問題はもうあれでしょう、特殊法人の問題から認可法人の問題、過去に国会でこのことは論議を随分長い間されてきているわけです。決算委員会における政府に対する警告の中にも、この公益法人のあり方の問題について出されておりますしね。そして、それに対する政府の回答もきちんと出されておるわけですけれども、この経団連の事務総長の話を見ますと少しも改善されている様子はないわけです。ますますこれはふえているような感じがしてなりません。  そういう意味から、もう時間もないので結論だけ申し上げますと、昭和四十七年三月二十三日に公益法人設立許可審査基準等に関する申し合わせというのを先ほどの公益法人監督事務運絡会議でされているわけですけれども、こういう各省庁が経済界に資金を出させて公益法人をつくるという行為をなくすためには、この申し合わせについても見直していかなければならないんじゃないかと思うんです。その点はどうですか。
  245. 石倉寛治

    政府委員(石倉寛治君) 公益法人の設立認可そのものにつきましては、それぞれ主務官庁が分かれておりますということは申し上げたわけでございますけれども、先ほどおっしゃるような諸種の問題点という内容が、やはり個々の法人ごとに吟味されるべき問題でございますので、したがいまして、統一的に法人の認可の基準というものは共通事項を整理するということになりますために、どうしても十分おっしゃっておりますようなことについての基準づくりということにはならないわけでございます。  いずれにいたしましても、疑惑を与えるような法人を認可することはよろしくないことでございますので、私ども協議を続けまして対応したいと考えております。
  246. 太田淳夫

    太田淳夫君 今、管理室長から話がございましたけれども、特殊法人というのは非常に厳しい設置管理で規制が行われているわけでございますので、逆にそれを逃れるために公益法人、認可法人というものがふえてきていると思うわけでございます。やはり行政改革のいろんな精神あるいは行政管理を推進する立場からしまして、このような乱立と申しますか、必要があってできるんでしょうけれども、確かにできたものがその目的に沿ってきちっとした業務をされている問題については私たちは申し上げません。  この委員会でも睡眠している法人もあるんじゃないかということで指摘も再三再四受けている。そういう実態に合わないもの、あるいはただ補助金をもらうためにやっているようなものについては、これはもうここで口を酸っぱくするぐらいに管理監督しろと言ってもなかなかそれが行われてきていないのが実情じゃないかと思うんですね。  そういった意味からしましても、公益法人とかこういう問題について、政府全体としてもっときちっとした統一的な審査あるいは管理の網をかぶせていくべきではないか、こう思うんですが、その点はどうでしょうか。
  247. 岩崎純三

    国務大臣(岩崎純三君) 今、現行の行革審につきましては、一昨年の十月に発足をし、総理の諮問を受けまして審議をいたしておるさなかでございまして、既に過去二回にわたって答申が提出をされ、今六月中を目指しまして第三次の答申について審議が行われておる、こうした状況であろうと思います。  今、先生から御指摘のございました公益法人あるいは認可法人等々特殊法人をつかさどる総務庁として、そういったものに今後どう対応すべきかということでございますが、他の省庁にまたがる問題でもございまするし、また、行革審がこれからどういう問題を審議の対象として、課題として取り上げるのか、そうした推移を見詰めながら総務庁といたしましては適切に対応をしていきたい、このように考えております。現段階でかくあるべきだという定かな状態にはございません。
  248. 太田淳夫

    太田淳夫君 経団連も、この第三次行革審にこの問題を取り入れるように申し入れているようでございますので、政府としてもそういう申し入れをしていただきたいと思います。もうこんなに国会議論しながら、改善をいろいろと論議しながら少しも変わってないし、こういった民間から非難されるようなことのないようにぜひともお願いをしたいと思うんです。  そこで、最後になりましたが、行政相談委員という制度が地域の住民の身近なところにございまして、気軽に相談できるように設立されているわけでございますが、この相談委員の方々というのは無報酬でボランティアの精神で活動をやっていただいているわけでございますが、実費弁償という制度のもとで国からわずかな活動資金しか支給されていない。年額でわずか二万四千円ということでございますが、これで果たして十分な活動ができるのかどうか。  それぞれボランティアの方々でございますので、ボランティア精神で対応されていると思いますけれども、待遇面あるいはこれからますます相談件数もふえてくるでしょうから、その行政相談委員の皆さん方をこれからふやして、行政の多角的な住民の相談に応じていただきたい、こう思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  249. 岩崎純三

    国務大臣(岩崎純三君) 今、先生からお話がございましたとおり、行政相談委員制度は本当に国民の身近なところにあって苦情をお聞きし、その問題の処理に当たる行政相談委員制度が発足いたしましてことしはちょうど三十年になります。まさに国民生活の中に最も身近なところで行政問題について定着をいたしておる制度の一つであろうと、こう考えております。  平成三年度に行政相談委員の方々が取り扱った苦情相談の案件は十六万五千件ございまして、この数は、総務庁が相談にあずかっておる総数の中の七割強を占めておる、大変重要な役割を果たしておる方々であろうと考えております。  実費の弁償につきまして先生からお話のございましたとおり、一人平均年額がまさに二万四千円、活動に対して十分なものとは考えておりません。これからもその充実に向かって努力をいたしていきたいと考えております。  なお、相談委員の増員の件でございますが、平成三年に二百五十七名増員をいたしました。これでトータル五千四十六人、十分なものとは考えませんけれども、行政相談の委員先生方の仕事が国民の身近なところにあって、行政に対する不満や不服、それを吸い上げ、それを行政に反映する、そして行政の信頼を確保するためにこれからも一層その充実強化のために努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  250. 磯村修

    ○磯村修君 私、PKO問題に関連しまして幾つかの疑問を持っておりますので、幾つかお伺いをしてまいりたいと思います。  初めに、防衛庁にお伺いしたいんですけれども、法案によってPKOに派遣される部隊、この場合、その隊員というのは、法案の十二条に規定されております身分によって現地で活動する場合は、もちろんこれは自衛隊法の拘束下で活動するんだと、こういうふうに理解してよろしいんですか。
  251. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 自衛隊法の各法条が基本的に適用になる、そのもとで活動が行われるということで結構でございます。
  252. 磯村修

    ○磯村修君 そこで、隊員は自衛隊法によって上下の関係がございます。隊員は指揮官の命令に服従するというふうな決めもあるわけなんですけれども、特に法案の中で武器使用の、二十四条で決められております武器使用がございますですね。これは、原則として個々の隊員の判断によって武器は使用できると、こういうふうなことになっているんですけれども、特にそういうことを決めたということは、もちろんこれは憲法の制約ございますから決めたんでしょうけれども、よく政府の答弁の中に「束ねる」というふうな言葉が表現されておりますですね。この束ねるという意味についてちょっとお伺いしたいんです。  特に、隊員が個々で判断しにくい状況下の中でもって、指揮官あるいは上官の、何というか束ねるという、上官がその場合束ねてやるんだ、措置するんだというふうなことのようなんですけれども、束ねるというのは、つまり上官の隊員に対する助言ということになるんでしょうか、あるいはもう少し強くなって拘束性というふうな、拘束するというふうな意味が含まれているのか。さらに、あるいはもう少し自衛隊法に基づくような指揮というふうな意味が含まれるのか、その辺のまず概念と申しましょうか、お伺いしたいんですけれども。
  253. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) ただいまお話にございましたように、PKO法案の第二十四条、自衛官の武器使用について限定して申し上げますと、「自衛官はこと書いてあることから、自衛官の個々人の判断によって武器使用を行うということでございます。  その場合に、個々の自衛官が要件を満たしていると判断した場合に、当然そこで武器の使用が自衛官の判断によって許されるわけでありますけれども、その場合にでもなおかつ、いろいろな影響を勘案して、経験の豊かな上官たる指揮官がそれを抑制的な方向にのみ指揮を、自衛官に対してそういうことを指導するということがあり得るというのを「束ねる」という表現で言ったということでございまして、あくまでも武器の使用それ自体は自衛官個々人の判断ということになるわけでございます。その場合に抑制的な方向にのみ上官の指導が及ぶことあり得べしということを申し上げているわけでございます。
  254. 磯村修

    ○磯村修君 そうしますと、それは例えばそういう状況の中でも鉄砲を撃つとか撃たないとかという状況判断がしにくい場合に、経験豊かな上官が、おまえもう少し待っていなさいと、こういういわば抑制的な助言ということになるんでしょうか。指導ということになりますと、少し上下の関係が強くなってくるような感じがするんですけれども、いかがでしょう。
  255. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) ただいま申し上げましたように、あくまでも武器の使用それ自体は自衛官の個々の判断ということに法律上ゆだねられておりますので、これをいかなる方向にも法的にきつく規制するということはできないわけでございます。つまり、自然権的な権利として、そこに自衛官の個々の判断ということにゆだねられているわけでございます。  しかし、実際上の部隊のその置かれた状況等にもよりますけれども、そこのところによりよき判断というものを上官に求めることもあり得るということでございまして、その判断の性格がどういうものなのかというのが御質問の趣旨がと思いますけれども、上官がある状況判断して各自衛官に対して判断を示せば、通常そういうものに従った行動がとられるというのが一般的常識ではなかろうかというふうに思います。
  256. 磯村修

    ○磯村修君 そうしますと、例えばその状況を見ていて、いわゆる束ねたというふうな指導あるいは助言と申しましょうか、そういうふうな状況がなくなったというか、束ねるという助言なり指導なりをした後はどういう措置になるんですか。
  257. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 御質問の趣旨を必ずしも正確に理解したかどうかわかりませんが、それから先、状況がどのように変わるかによって、その行われることも変わってくるのは当然でございますけれども、恐らく御質問の趣旨は、その後さらに危険が迫ったと、さらに切迫度が高まったという状況においてはどうなるのかという御質問の趣旨だとすれば、そこは仮に束ねて抑制的な方向にしていたものを、禁止を解くという行為が行い得るという状況もあり得るわけでございます。
  258. 磯村修

    ○磯村修君 つまりそれは撃てと、こういう指揮になるんでしょうか、命令になるんでしょうか。
  259. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) そうではございませんで、抑制していたものを外すということですから、いわば撃てということではなくて、平たく言えば撃ってもよい状況になったということでございます。
  260. 磯村修

    ○磯村修君 撃ってもよい状況ということは、つまりもうそれはいわゆる上官の命令に準ずる行為と、こういうふうにも理解できますね。
  261. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 法的性格はあくまでも自衛官個人の判断で武器使用をすることができるということになっておりますが、そこに実際上の上官の判断を条件として加味して抑制的な方向にのみストップをかけて、それを外すと、それは撃たなきゃならぬ状況ではなくて、撃たなきゃならないというのは命令でありますけれども、そういうことではなくて、個々人の判断にゆだねるよという状況に戻したということでありますから、あくまでもそれは個々の自衛官の判断によって武器使用が行われるという状況に、もとの原則に戻ったということでございます。
  262. 磯村修

    ○磯村修君 自衛隊というのは日ごろから集団訓練を受けているわけですね。つまり、それは武器を持っている集団であるということで武力集団ということにもなるでしょう。そういう隊組織というのは、部隊の一体性という行動をとることが自衛隊の本質である、こういうふうになるわけですね。  そこで、こうした組織である以上、例えば海外へ出ていって武力行使を行うこともあり得るんじゃないか、こういうふうな心配をする声とか意見も一方にはあるわけですね。そうした危惧に対しまして、これまで政府は、例えば平和維持のために海外に派遣される場合には、その目的が平和の維持であって、派遣されても武器使用は厳格に規制されているのでそのおそれはないんだ、武力行使をするようなおそれはないんだ、こういう趣旨の答弁をしているわけなんです。  それはそれとしても、これは法律論からいけばそういうことでありましょうけれども、果たして実態から必ずしもそういうわけにもいかないという、いわゆる不測の事態というものもあり得ることですね。そう思いませんか。そういう不測の事態が生じたことを考えた場合、例えばこういう答弁もありましたね。そういう不測の事態が起きたときに、何らかの急迫不正の、急迫な実力によって業務を妨害されるような状況部隊が置かれた場合、組織的に武器を使用した、こういう場合に、これまでの政府の答弁の中では、相手が私的な集団であればそれは武力行使ではない、こういう答弁もありました。しかし、私的な集団であるかどうかということが果たしてそういう状況の中でもって明確に区分けすることができるかどうかということなんです。私はそういうことは大変難しい問題であろう、こういうふうに思います。  そこで、明白に判断できるものではない、あくまでもそういうことは結果論でしか、私的な集団だったのかそうでなかったのかというのは結果論でしか判断できかいわけですね。そういう場合に、例えば私的な集団だと思って組織的に武器を使用したけれども、後で調査した結果それは私的な集団ではなかった、こういうふうな事態もあるかもわからない、そういうことも想定できるわけです。そうした場合に、武器使用に対する責任の問題というのはどうなるんでしょう。どういう責任が生ずるんでしょうか。
  263. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 最初に、ちょっと御質問の前提についてのお話についてコメントをさせていただきたいと思うのでございますけれども、まず、従来確かに私的集団に対する集団的な、組織的な武器使用は憲法違反にならないという、法制局長官だったと思いますけれども、答弁がございました。  しかし、そこのところはぜひ御理解いただきたいと思うのでございますけれども、法的にはそうであるけれども、今回のPKO法案においてはその部分も含めてより謙抑的に、そこのところは憲法違反ではないけれども、そういう今御指摘のようにはっきり事前に区別がつかないじゃないかということも踏まえて、そこのところを今度のPKO法案では武器使用の対象にしていないということでございます。  したがいまして、二十四条ではあくまでも自衛官個人が判断して、その生命、身体の安全が危うくなったときにやむにやまれず武器使用をするということだけを武器使用の条件にしておりますから、少なくとも私的集団に対して憲法違反ではないからといって、組織的な武器使用をすることが許されるという状況には今の法律案の体系はなっていないということをまずお断り申し上げます。  そうした上で、さて、私的集団に対して間違って組織的に武力行使をしたということはしたがってあり得ない話だと思いますけれども、そこで今度は二十四条の要件に該当するものと判断したけれども、それが結果的に見たらそうではなかったというケースがあり得るかどうかという問題に変えさせていただきます。  そうなりますと、これにつきましても宮下防衛庁長官からもるる御答弁申し上げておりますとおり、まさにPKOに派遣する前に自衛隊の訓練を重ねることによりまして、そしてまた法の趣旨をよく理解することによりまして、万が一にもそういう事態というのは起こらないというような十分な訓練を経た上で派遣するということでございますので、私どもの方から違反の状態があり得るという前提でお答えするのはいかがかと思いますけれども、ただいま御質問の中で、万が一ということで御質問があったとして、その責任はどうなるかということだといたします。  それは個々の自衛官の判断が、法の要件に事後に照らしてみたら間違っていたということですと、その行為者は当然懲戒の対象になり得るということでありますし、それから人を殺傷した、殺したということは、権限なくして人を殺したということに結果的になるわけでございますから、その場合に、刑法の国外犯の条項についての適用がある事態が起こったならば、その部分についての規定の適用があり得るということでございます。
  264. 磯村修

    ○磯村修君 派遣される部隊というのは国連の指図に従って行動するわけですね。そうしますと、例えば今のような不測の事態が現に起きたというふうなときに、国連の指図に従ってやっているんだから、行動あるいは国連の指図のもとに任務を遂行中にそういう不測の事態に遭遇した、そういう場合に、国連の指図下にあるんだからうちに責任はないんだとかというふうな意味合いに受け取れる部分もあると思うんですよ。  国連の指図下にあるんだから、指図のもとで行動あるいは任務の遂行をしているんだから、遂行最中に不測の事態に遭遇する、こういう場合、国連の指図下にあっても、いわゆる日本側の法令によってそれは指揮官なり隊員なりは処罰をされる、処分される、こういうふうなことになるんですか、先ほどの答弁では。
  265. 野村一成

    政府委員(野村一成君) お答え申し上げます。  国連のコマンドというものの実態でございますけれども、実は、これはSOPと申しますか標準行動規範で、例えば武器を具体的に使っていい状況あるいは手続面、まず空砲を撃ってどうのこうのというのを定めております。しかし、現実に個々にこういう状況で撃てとか、武器の使用そのものに着目したコマンドあるいは指図というのが出てこないということでございます。  したがいまして、ここは御理解いただきたいんですけれども、先ほど防衛局長御説明いたしましたけれども、この法案二十四条、これは我が国のまさに公務員としての活動の側面があるわけでございますので、それの違反の問題ということでこれは処理される問題であるということでございます。
  266. 磯村修

    ○磯村修君 そういう例えば部隊を派遣する場合、そういう責任論、そういうふうな事態が発生した場合の責任の所在とかというふうな問題については、防衛庁は制服の皆さんと話し合って、十分にその辺は双方でクリアされているというふうなことになっているんでしょうか。
  267. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) そこのぎりぎりした武器使用の場合の、しかもその違反行為をした場合にどうかといったことについて詳しいケーススタディーをやっているということではございませんけれども、担当者を集めまして法案の説明はいたしておりますし、それについての意見聴取も何回か行っておりますので、そこのところの指揮とのかかわり合いも含めまして、十分に意思の疎通は図られていると私は考えております。
  268. 磯村修

    ○磯村修君 こういう今国会で審議されておるPKO関連の法案、これは十分に間違いのないようにつくってあるんだ、したがってそれを忠実に守っていれば不測の事態とかそういうややこしい問題は出ないはずであると、こういうふうに言うんですけれども、これは私はこう感ずるんです。  法律があれはすべて何も起きないはずだ、刑法があれば犯罪はない、道交法があれば交通事故はないんだというふうな感じに受け取れるんですよ。また、一般の人もそういうふうに受け取る部分が多いと思うんですけれどもね。そういうあるいは法案があるから大丈夫だというふうなことであっても、やはり現地というのは環境も違うわけですし、いろんな環境の中で行動するわけですから、そういうことを考えた場合には、やはりその不測の事態というものも十分に考慮しながら対処していかなければいけないんじゃないかと思うんですね。  このPKOに関連している法案というのは、すべて今お話がありましたように、例えば不測の事態に対応するために組織的に発砲したり、そういうものがすべて個々の責任になっている、個々の責任が問われるんだと、こういうことのようでございますけれども、実際にそういう憲法の制約を飛び越えるような、仮に不測の行動があった場合、実際にそういうこともあり得ると思うんですよ。  そういう場合に、果たして個々の隊員なりあるいは指揮官なりの個人の責任でもって済まされる問題になるだろうか。こういう私は感じもするわけなんです。法案はもちろん遵守して行動しなければならないだろうし、また、その上には基本法でありますところの憲法があります。憲法の条文の中には遵守義務というものもあるわけですね。そういう意味合いから、そういう不測の状態になって、そういう制約を飛び越えるような問題が生じたときの、それに対する責任が個々の隊員の責任だけでもって済まされないと私は思います。  そういう意味合いにおいて、いわゆる上部機関に位置する防衛庁長官はその辺、どういう責任論を持っているのか、お伺いしたいと思うんです。
  269. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 大変失礼いたしました。所用のために中断させていただいたことをまずもっておわび申し上げます。  今、磯村委員の御指摘の点は、特別委員会等でも御指摘のあった点だろうと存じます。法案に幾ら書いてあっても現実にどうかという問題も確かにございます。これはケース・バイ・ケースでいろいろな場面が想定されるわけでございますけれども、あくまでも私どもは、武器使用は二十四条の条件に合致した場合のみにこれを、使用を認めておるわけでございますので、この点はいささかも私どもは疑いのないところでございます。しかし、実際に指揮官がこの要件以外で命令をもって武器使用を命ずる、例えば国連のSOPで任務遂行の場合に可能だという点の御指摘もございますけれども、これは排除をいたしております。  したがって、私ども今まで申し上げている点は、個々の自衛官の判断によって武器の使用は行われるけれども、抑制的な意味で使用を制止することはあり得るだろうということを「束ねる」と。私はこの言葉は余り好きじゃありません。私は使いません。しかし、今までの経過からしてそういう言葉が使われておりますけれども、実際は私は客観的に見て、ある何人かの人たちが同一条件のもとで危険にさらされるという状況はこれは間々ある事態でございますから、共同して結果として対処したというような事案はあると存じます。  なお、上官が積極的に武器を使用せよというようなことで任務遂行あるいは客観的な条件のもとでそういう判断をして、それが法の趣旨に間違っていた場合の責任論のお話だと存じます。  私どもはまず第一に、やはり今回のPKOというのは、国内における専守防衛のもとにおける直接侵略に対応するとか、そういう武力行使集団としてのこういうことを外国で行うわけではございません。言うならば中断ですね、業務の中断あるいは撤収ということが書かれておりますように、あくまで平和的な目的のために出るものでございまして、私どもはこれは全く観念を別にして、国際貢献の場合と、国内における専守防衛の武力集団としてこれに対抗する、そういう訓練とはまた違った意味の私は訓練が必要だと存じます。  むしろ、その部隊長は情報をキャッチし、そして客観的な状況をつぶさに知悉して、そしてなるべくそういうことに巻き込まれないような状況判断を常に持ち得るようなやっぱり識見の高い、また指揮官としての総合判断のできる方々でなければならぬと思っております。  そういう意味で、とっさの場合、それは全然この拒否は起こり得ないということは私は申し上げるわけにはまいりませんけれども、非常に可能性として少ないし、私どもはそういう訓練をして、平和目的のためにこの法律の精神によって任務を遂行していきたいと思っております。  そういうことでございまして、もしか個々の人があの条件に該当しないで発砲したり殺傷したりいたしますと、これはこの法律違反になります。そういう場合には、当然この身分の処分の問題、処分権の問題の範疇に入るわけでございますから、これはまあ言うまでもないことだと存じます。
  270. 磯村修

    ○磯村修君 仮に部隊が現地に派遣されたというふうな場合に、一番その自衛隊部隊の隊員が苦慮するのは、苦しむのは、悩むのは、そうした責任の問題を大変悩むんじゃないかと、私はこういうことを思いながらちょっとお伺いしたわけなんです。  そこで、時間が来てしまっておりますが、ちょっと施設庁の方いらっしゃいますか。  最近、工場跡地などでトランスとか、いわゆるPCBの問題が改めて騒がれてきているというふうなことですが、アメリカ軍の基地の中にもこのPCBが放置されているというふうな話も聞いているんですけれども、実際にそうなのかどうか、それから施設庁としてその実態を把握しているのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  271. 藤井一夫

    政府委員(藤井一夫君) 米軍基地内におきますトランスの中にPCBが存在するかどうかという問題につきましては、日米合同委員会の下部機構でございます環境分科委員会というところで米側と折衝をし、情報を得ておるところでございます。過去二回開かれておりまして、四月二十四日が最新のものでございます。  そこを通じて得ている情報あるいはその後に得た情報を合わせて申し上げますと、まず本土の米軍基地につきましては、米側から岩国の基地に提供施設整備により提供した変圧器の中にPCBが含まれているので日本側で撤去するようにという要請がございました。そこで私どもはそれを早速調査をいたしましたところ、米側から要請のありました十三基の変圧器につきましてPCBが含まれているということが判明をいたしましたので、これを日本側で交換をいたしました。  それから、沖縄の米軍基地につきましては、これは米側が設置したものでございますが、現在二基、PCBが入ったものを使用中であるという情報を得ております。これにつきましては、米側で最終処分のために米本国に近々輸送される予定であるというふうに聞いております。  それから、最近得ました情報によりますると、同じく提供施設整備によりまして提供した変圧器の中に、なお沖縄の牧港補給地区の一基及びキャンプ・コートニーの二基にPCBが含まれているという情報が入ってまいりました。これにつきましては早速私どもで調べてみまして、本当に入っているものであればこれは交換をしたいというふうに考えております。  また、なお同時に、米側から今申し上げましたもの以外にも岩国あるいは沖縄の基地の一部に、若干のPCBが含まれている可能性があるトランスがあるかもしれないというような情報がございますので、これにつきましても逐次調査を進めていきたい、このように考えている次第でございます。
  272. 磯村修

    ○磯村修君 そうした状況の中でもって働いている方々の健康への影響というものは、今のところは出ているんですか、出てないんでしょうか。
  273. 藤井一夫

    政府委員(藤井一夫君) 現在のところ、在日米軍従業員に健康上の被害が出ているというふうには私ども考えておりません。  それで、過去においてこういう有害物質を在日米軍従業員が取り扱ったことがあるのかどうかということを米側に問い合わせましたところ、米側といたしましては、あることはあるけれども、これは適切な防護具を着用してやらせておるというような情報を提供されております。  しかし、従業員の中には、過去に従事した作業の中にPCBがあるんじゃないかというような不安感が非常にございます。また、組合からも健康診断をしてもらいたいという要望が来ております。そこで、私ども今回、これから行います定期健康診断の中で、PCBによる被害があるかどうかということをチェックをしてみたい、かように考えておるところでございます。
  274. 磯村修

    ○磯村修君 大変、人の体に大きな影響を及ぼすものでございますので、十分な管理、それから扱い、それから放置されているものの撤去ですね、そうしたことを十分に、速やかにしていただきたいことをお願いして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  275. 梶原清

    委員長梶原清君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。     午後四時三十三分散会      —————・—————