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岩本久人君
細川護煕氏、現在は行革審の豊かなくらし部会の部会長として、例えばパイロット自治体の問題やなんかもこの方の責任でいろいろ提言をされておるという
問題等もありますが、いずれにしても、我が国には真の
意味での
地方自治は存在しないというのが今回私が、私というのは
細川さんですが、今回私が新党を旗上げしようとした原点であるということを言っておられるわけですから、あえてこの問題を
自治大臣に見解を聞いたわけであります。基本的な理念の
問題等では大いに共鳴できるということでありますので、また後からよろしくお願いをしたいと思います。
ところで、
中央対
地方という、この
地方税・財政制度を真っ向うから切っておられる論文が一つ見つかりました。実は昨日皆さん方のところにも事前にお渡ししておると思うんです。題して「都市は
地方に搾取されている」、これはマッキンゼー
日本支社長の大前研一さんの論文であります。大前さんに言わすと、自分の論文の中でもかなりハイレベルな満足のいく論文だということであります。また、これの副題としてこうなっているんです、「たとえば島根県民への交付金は神奈川の14倍」、こういうことで全国的にかなり読まれておる論文でございます。国際的なアナリストでもあるし、大変ファンも多くて、この方の書かれた論文についてはいろんなところで大変な
意味を持ちますものですから、あえてこれを取り上げさせていただきたいと思うんです。
ここに書いてあること、何が書いてあるか、かなり長論文ですから私なりにまとめてみました。いわく、五つにまとめられると思うんです。氏の主張をかいつまんで要約すれば次のようになる片思うんです。
一つは、今の
日本が抱えている二つの大きな問題は、東京一極集中とその裏返しとしての
地方の過疎化であるが、特に
地方は破産とも言うべき
経済状態になっている。二つ目、
日本のGNPを押し上げている属すなわち都市、それとそれに便乗している属すなわち
地方と二極化しているのが今の
日本である。三つ目、
地方は国庫補助金とか
地方交付税とかいう形で都市の稼ぎを搾取しており、しかも国という親からおまえは稼ぎが少ないからとたくさんの小遣いをもらっている子ほど金遣いが荒くなっており、稼ぎがよくて家に金を入れている子ほどぴいぴいしている、これが現実だ。そして、稼ぎのない子が親からもらう小遣いというのも、もとをただせば稼ぎのある子が、都会の者が家に入れた金である。四つ目、
地方は
中央からの金を浪費しており、その例がだれも来手のいない工業団地や中海・宍道湖干拓淡水化計画である。
中央から金が来るとわかっているときに自助努力する気にはならず、他人の金だから自力更生の意欲も仕掛けもない自律神経失調症にかかっている。五つ目、自助努力こそが
地方自治の始まりである。都市から得られる税金は都市で使えるようにし、
中央政府で都市から集めた金を
地方にばらまくのをやめにすることが大切である。
以上がこの大前さんの論文の要約だと思います。
そこで、私は、大前氏が今の基本的な考え方を展開するにつけて提示しておられるさまざまな資料を
調査してみたんです。
一つは、各県別の国から
地方へ出しているお金の合計。たまたま、氏はそれを
地方譲与税、
地方交付税、
国庫支出金の
合計額、これを全国各県ごとに人口で割って、一人当たりの金額を、どこが一番多くてどこが一番少ないかということで表にしてあるんです。これを見ますと、島根県は、彼が指摘したように一人当たり金額が三十三万七千円です。一方、十四分の一だと言われた神奈川は二万四千円だ、だから十四倍だ、こういうことを言っているわけです。しかし、私にしてみれば、
地方交付税の性格というものは、法律で決まっている
地方固有の
財源であるということ、
地方譲与税にしてもしかりであるということ、そしてその前提となる各県の県税を全く入れない、除外しての議論でありますから、これはとてつもない暴論であって、とてもそんなもの聞く耳持たないというのが私の立場でございます。まさに、これを称してためにする議論だと私は思っております。
資料は十ぐらいあるんですが、一々言っておっても時間ありませんので、あえてためにする議論だと私思いますもので、では反対に面積当たり
行政投資が多い順という資料をとってみました。これでいくと、我が島根県は、一平方キロ当たりの
行政投資
総額、五千二百万円です。これに対して、当たり前のことではありますが、東京都は十七億七千九百万円、実に三十五倍から四十倍だと。なぜ私がこういうことを言うかといいますと、車ほどさように計数のとり方次第ではどのような議論にでもなろうということを特に言いたかったわけであります。
そこで、搾取されておる代表として指摘をされておるわけでありますから、そこに
生活の本拠を持つ私としては、島根県民として一つほど今何が一番言いたいかということを言ってみたいと思うんです。一々話しておっても仕方ないからおきますが、一つは全地球
規模的な
環境という問題に、どちらがどのように貢献をしているか。都市の周辺におけるベッドタウンの問題とか、あるいは水源涵養の問題とか、その他ありますが、一番ここで私が申し上げたいのは、せっかくお金の話が出ておるわけですから、私はなぜ過疎になったか、過疎になった原因は何かということをちょっと主張してみたいと思うんです。
ここに一つのデータがございます。これは去年一年間の統計ですが、島根県の中で、島根県には普通大学は一つしかありませんので、広島、岡山、京都、東京、こういった大都市圏の大学に通っている者の親の
調査をして統計をとってみましたら、大学に通っている家庭の平均の支出額の中から、授業料というのはどこでも同じように払わなきゃなりませんので、授業料を引いた
生活費だけ、それの平均が百九十四万六千六百円と出たんです。これは島根県だけではないと思います。同じような
規模の県では同じことだと思うんです。私は、その搾取している側だと言われたところだけ宣言ったんです。つまり、都会の大学に出すために大学のないところの親はどれだけの
負担がかかるかといいますと、もう一度言いますと、百九十四万六千六百円です。一年に約二百万円かかっているというわけです。
そして、これも去年の島根県のデータですが、大学を卒業して県内に就職した者が卒業生二千五百四十一人のうち八百人、三一・五%です。つまり、約千八百人は都会に就職して、そのままそこの都会での貴重な人材になっている、こういうことを私言いたいんです。これは大学だけですが、ほかに短大も同じような数字でいきますと、県内就職率が四九・八ですからこれが五百五十人。それからちょっとレベルは違いますが、高校を卒業した生徒で就職したうち県内にとどまる者が四九・四です。ちなみに、全国都道府県の高校を卒業して県内に就職を求める者の全国平均は七三・九ですが、私のところの島根は四九・四、約五割。高校を卒業して就職する者が四千人おるわけですから、そのうちの半分の二千人。
そうすると、単純に計算しても、この二千人、千八百人、五百五十人で約四千五百人の者が、島根県に生まれて親が苦労して苦労して育てて、そして大学まで出して、大変なお金、力、エネルギーを使った者が県外に出ていく。主として一極集中と言われるこの東京都、こういう大都会の中で今や貴重な人的資源としてそこの
地域の都会の発展のために精いっぱい頑張っている、こういうことなんです。そのことについていささかの反省もない。
そういうようなことについて、私は今後
地方交付税、
地方財政計画、そういったものを考えるときに、もちろんそういったことから考えると、これは税金の基準財政需要額に足らないところを埋めておるということがあるかもわかりませんが、それを超えるものがここにあるということを私言いたいために言ったんですが、そういったことを十分勘案をして今後の
地方財政計画とかいろいろなものをつくってほしい、こう思うわけであります。まず私は、その問題についての大臣の基本的見解をお願いしたいと思います。ちなみに、今の私の試算だけでいつでも、大体一年間に島根県民が払うお金は高校、大学だけで三百億円ぐらいになっている、こういうことであります。それを含めてひとつよろしくお願いしたいと思います。