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国務大臣(
羽田孜君) これは端的にお答えするのは大変難しいのでございますけれども、確かに昨年の夏ごろから多少景気というのは減速してきたということはやっぱり現実であろうと思っております。
しかし、私たちはここでよく冷静に考えなきゃならぬと思うことは、やはり先ほど申し上げましたように、あのバブルと言われたときの住宅の建設戸数ですとか、
アメリカのことも申し上げましたけれども、もうこれは繰り返しません。それから自動車の販売台数というものも、これも異常と言われるくらいに非常に高いものであった。要するに、バブルで土地ですとかあるいは株式、財テクなんかでも相当利益を得たということで、今までのマインド以上のものが高揚したと思うんです。そういう中で相当大きなものが
伸びてしまったということでありますから、これは
伸びるということになりますと、当然あるところに来ましたら天井が来るのは当たり前のことだと思うんですね。ということになりますと、これは
調整をしなければいけない。
しかし、バブルという中にあって、各企業とも、しかも相当労働力が不足したということがありますから、大きな設備投資もなされたということでありますから、どうしても生産は高くなっております。しかし、天井というのは必ずあるわけですから、天井が下がったときには当然ここで控えなければいけないんですけれども、設備投資というものは非常に太さかったということで、まあまだいくんじゃないかという中で在庫がふえてしまったということがあると思うんです。ということになりますと、これは避けて通れない事実として、私はここで
調整局面というのは生まれてくるのは当然だと思うんです。
ただ、その
調整局面というのは一体どの
程度なのかということを判断しながらこうやって見たときに、やっぱり昨年の特に秋ごろから本当に減速感というのはだんだんだんだん強くなってきたろうということで、このままいくとなかなか厄介だぞということで、住宅なんかも変なふうに冷え込んでしまわないようにということで、いわゆる財投等についても補正
予算で対応する、あるいは公共事業等についてもゼロ国債で対応するということで、これは史上最高なんと言われるものも財投等なんかでも対応してきたということはもう御
案内のとおりであります。
そして、昨年の七月に公定歩合も引き下げられ、十一月にも引き下げられ、そして十二月三十日、仕事納めになって、それから後にまた翌年いろんなことを考えるときのよすがにということで実は公定歩合も引き下げだというのが現状であります。本来でございますと、これやっただけでも相当大きくいろんなものが活発に動き出すということなんでありましょうけれども、しかしその前に投資したものが相当大きかったということがあり、また在庫というものも思ったより相当大きかったということでありましょう。そういう中で、いわゆる設備投資等が、あれだけの公定歩合の引き下げにもかかわらず、意欲はあるものの実際にはそんな大きくなかったということが言えると思います。
それに対しまして、私たちは刺激するということについては、バブルの行き過ぎの成長というもの、これはやっぱり反省しなければいけないということでありまして、刺激するということについては我々はちゅうちょしなければいけないということでありますけれども、しかしこのまま冷え込んでいくということは危険であるということによって、先ほども申し上げましたように、いわゆる公共事業等につきまして相当大幅な対応というものを私たちはしてきたということでございます。
いろいろな難しいスキャンダル問題等があったにもかかわりませず、皆さんも大変精力的に
予算の
審議をしていただいたということで、一応暫定
予算も十一日間だけで済ますということで御
審議をいただいたということでありまして、私どももそのことは大変ありがたいことだと思っております。そういうことをやりながらも、なおかつそういった
予算というものが組まれた、あるいは公定歩合が引き下げられた、こういうものがきちんと連動して動けるようにということで、
予算の期間中でありましたけれども、各党の皆様方からのいろんな御
指摘もいただきながら、私ども
政府・与党と一体になって話し合いながら今度の緊急対策というものをやりました。この緊急対策の内容についてもう細かくは申し上げません。
確かに、これからも増産していくという、設備投資というものは当然そんなに意欲というものはないであろうけれども、労働力不足という構造的な問題はこれはまだこれからも続くであろうということ。そこへ持ってきて、時短というものが課題に上ってきたということによって、こういうものに対してインセンティブを与えようということ。こういったことがありましたし、またそこへ持ってきまして、私どもといたしましても、公定歩合等についても、これに対して対応いたしましょうということで実はもろもろの施策をやってきたところでありまして、しかも前倒しということもやる。これはかつての八〇%以上やったときと、それ以上のものであろうということも言われておるわけでございまして、本来、ここで企業家の皆さん方も、これでひとつやるぞという気持ちを当然私は起こしていただけるものであると思っております。
ただ、なかなか企業の方はまだ在庫
調整の最中ですから起こってはおりませんけれども、しかし個人の皆様方は、住宅についてはもう少し床面積を広くというような希望ですとか、あるいは借り家にしてももう少し質のいいものに住みたいなという意欲が非常に強いということで、今度の公定歩合等が三次に引き下げられた、そして四次に引き下げられたということもありますけれども、いずれにしましてもこれがもう既に上向きになってきたということがあります。
ただ、株式等につきましては、今御
指摘がございましたとおり、またこれに対して本当の復調といいますか、むしろ今こうやって見ましても一万八千三百十七円ということで、これは九時十五分の段階で、もう一度十時のやつが出てきておるんだと思いますけれども、まだ復調しておらないというのは現状でありまして、この間、私どもの次官もこのことを憂慮しながら、彼は次官というより個人、ずっと
財政を担当してきた責任者として、これはちょっと
日本の全体のファンダメンタルズから合わないぞという思いでああいう
数字なんかを何気なくぽろっと漏らしたということであろうと思っております。しかし、私は、もうそろそろいろんな皆様方がこれに気がついていただく、
日本のファンダメンタルズは決して弱くないんだということについて自信を持ってもらう必要があろうかと思っております。
ただ、残念ですけれども、株の場合には例の証券不祥事の問題があり、またその残滓としての問題が今飛ばしというような形で表面化してきたということで、個人株主の方が、かつて八七年か八年のころでしたか、あのころはいわゆる金融資産が一六・数%ぐらい市場に流れておったようですね。ところが、今現在は一〇・二、三%ということでありますから、四、五十兆円ぐらいは引っ込んじゃったという
状態です。これには、やっぱり何といっても、ただ単なる対策で浮き足立っていろんなことをやるということよりは、むしろそういった信頼を取り戻すための基本的なことを私たちはやっていく必要があろうと思っております。
ですから、もうこれも長くなりますからやめますけれども、
日本経済新聞あたりで、「多面鏡」あたりのきのうのやつを拝見しておりましても、これだけのことをやったら本来動くものが、どうもマインドが少し冷え過ぎているぞということを逆に実は
指摘をいたしております。要するに、やっぱりあるときには我慢もし、そして我慢をしながらも着実にきちんと
日本の足元というものを見ながら、みんながマインドというものをむしろ強くしていくことが大事なんじゃないのかという
指摘なんかもそろそろ方々でこうやって見かけられるようになってきたということでございまして、余りにも過激だったものですから、これが剥落したという中でちょっと萎縮し過ぎてしまっている面、これがあるんであろうと思っております。
私どもはいろんな対策をもうとりました。ですから、そういったことに対して自信を持って、
経済活動というものは活発になる、そういう中で株式も信頼を取り戻し、大衆もまた証券市場に戻ってくるというものを今私たちは期待するというところであろうというふうに考えております。