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参考人(
堺次夫君)
悪徳商法被害者対策委員会という
消費者グループを主宰しております堺と申します。
昭和四十九年の二月から、いわゆる
一般消費者を食い物にする
悪徳商法の追及、
被害の
未然防止といった
市民活動に取り組んできています。
実は、私が今回
参考人という立場で
意見陳述をさせていただくのは、これが九回目でございます。これまで八回は、いずれも
悪徳商法による
被害が多発し社会問題化したところから、立法の
必要性あるいは
対策を望むということで御注文を申し上げてきたところでありますが、今回の場合は、まだ
クレジット債権、
リース債権につきまして、
一般消費者のトラブルということは聞いておりません。
伺うところによりますと、既に
リース債権、
クレジット債権は自由に
販売され、その
規模は既に一千億円
規模に達しているということでございます。ただし、最低
販売単位は一口五千万円ということでございますから、いわば
一般消費者がこのままこの形が続くならば
被害に巻き込まれるということはなかろうというふうに考えます。その自由営業のもとでやっておられるその商売というものを
整備され、そして悪徳な業者が入らないように、また
大口の
投資家の方の保護を図るためにこの法案が出されるということは、これはこれで大変結構なことだと思います。基本的に賛成でございます。
ただし、注文がいささかございます。及びこの法案自体とともに、
クレジット業、
リース業の
あり方についても一言申し上げたいと思います。
まず、法案及び法案
成立後の運用に関してでございますが、一口五千万円という単位で
販売されるということでございますが、これが将来におきましてもう少し小口化され、一千万円以下という金額になってくるということになりますと、
一般消費者が大いに
関係してまいります。それは、
一般消費者の
クレジット債権なり
リース債権という社会的な認知度が増すまでは、理解が増すまではそのようにやってほしくないということをまず考えます。なぜならば、完全にはこれは元金保証ではないからであります。
次に、衆議院でもこの論議が出ておりましたけれども、
クレジット業、
リース業という本業以外に
調達された
資金が回らぬように、とりわけこれまでバブル経済における失敗に伴う不良債権処理であるとか、あるいは今後のまたバブル経済の助長にこうした
資金が回らないように、流れないようにしていただきたく思います。及び
クレジット業につきましては、本業であったとしても、今のままの営業姿勢であれば、良質で低コストで集められた
資金がまたまた無選別過剰
与信の
資金源になってしまわぬように注意をいただきたいと考えます。
そのためには、
譲渡計画の審査が万全であること、あるいは予定されている指定調査機関は、とりわけ特に公共性、公正な判断が求められると考えます。それから、
投資家の判断の基準となるディスクロージャーは、個人のプライバシーに配慮しつつできる限り幅広く開示されることが必要であると考えます。それから、この法案の中におきまして適用除外
事業者の規定がございますが、考えられるのは
銀行とか証券会社だと思いますけれども、
一般投資家といいますか、そういったところに
販売なさるのは、ノウハウを持っておるのはこの人々であろうと思いますが、免許業者であるからといってその商法が公正であるとは限りません。現在、ワラントに見られるごとく、証券
業界の過当勧誘、不法勧誘はあちこちで訴訟ざたになっておるところでありますから、そういった適用除外
事業者が商売をなさるというときには、本法と同水準でなければならない。それでなければ法のもとの平等ということが図れないと考えます。
それから、この法案の周辺部分でございますが、いわゆる
クレジット業、
リース業の本業部分にっいででございます。
特に現在、先ほどもお話がございましたけれども、若年
多重債務者の増大、自己破産宣告の増大ということが社会問題になっておることは皆様御承知のとおりでございます。その
対策につきましては、総合的な
対策が必要であります。すぐできるものは即刻行い、中長期的な
課題の解決ということもやってまいらなければならないと考えます。今、
クレジット産業協会の方から、この
対策につきまして
審査体制の
整備、
社員教育の
徹底、
消費者啓発、
加盟店の
啓発、
カウンセリング体制の
整備ということのお話がありましたが、これにつきましては全く異存ございません。ただ、これに少し追加をさせていただきたいと存じます。
まず、
審査体制の
整備でございますが、私ども
悪徳商法を追及していつも感じておることは、
悪徳商法の背後に必ず悪徳な
クレジット業者の存在があるということであります。
一般消費者は、相手が
悪徳商法をやっている人間であるかどうかはわかりません。経験もありませんし、相手はだましのプロであります。ところが、
クレジット業者の
方々は、これはビジネスであって相手がどういう商売をやっているかということはわかるはずであります。わかっていながら、過当競争の余り
消費者信用与信をやってしまっている、
加盟店契約を安易に結んでしまうという結果から、それが後々多重
債務に陥ったことがあるということを私は聞いております。ですから、
審査体制に当たりましては、当然借りる側の方のチェックということも大事でありますが、
加盟店のチェックということをやっていってもらいたいものだと思います。
それから、
社員教育のことについておっしゃられましたが、
社員教育のみならず、実は一番必要なのは社長の教育でございます。何と申しましても営業至上主義の余り、数字が上がれば何をやっても構わないということではございません。昨年、
銀行、証券
業界の一連のスキャンダルによりまして、
銀行、証券
業界は営業至上主義の廃止、それから人事考課の
見直し、
審査体制の
整備ということをおっしゃられましたが、これは
クレジット業であろうが
リース業であろうが一番今必要なことだと考えます。このことを申し上げたいと存じます。
消費者啓発につきましては、これは
業界の中である会社などは積極的に現在取り組んでいるところもございます。これは、このまま広く広げていってもらいたいと存じます。
それから、
カウンセリング体制の
整備でございますが、現在も日本
クレジットカウンセリング
協会というのがございまして、そこで
カウンセリング体制はとっておりますけれども、これが
全国ネットではございません。相談場所は東京と仙台にしかないと聞いております。これが
全国的な組織になるように、あるいは現在既に各地に三百カ所も存在する
消費生活センターと提携するなり、そういったようなネットワークづくりを早急にやっていただきたく存じます。
それから、破産宣告が出て免責がなされれば借金を払わなくて済むということが何かおもしろおかしく取り上げられている節がございますけれども、これはもう自己破産宣告をとらなければならないといったような環境に陥っている人が余りに多いからでございまして、そこのところを忘れてもらっては困ります。私どもも、もちろんこの自己破産に追い込まれる人々の中身を見ますと、無計画な
利用ということがあることは否定しませんけれども、大体破産者の平均値は
債務額が約五百万、
債務先が十三、四社でございまして、しかしこの中身が問題で、
債務総額五百万のうち、大体もともとの
商品を買った、
サービスを買ったというその値段は三分の一でございます。あと三分の二が借金のための借金を繰り返しているということになっておりますので、ここの段階、つまり借金が払えなくなった、そのときに相談に行ける場所、そこを差し伸べてやらなければいけないと考えます。これは、借金のための借金ということを繰り返していくということをやっておりますと、今政府が目指そうとしておられる内需拡大のところの部分にも悪
影響を与えることは間違いございません。
それから、
破産法でございます。
破産法は、これは
企業中心につくられたものでございまして、つくられて以来その改正がございません。しかし、今日ほど、個人の破産宣告数が二万三千、ことしは三万件を突破しようという
現状でございますと、これはもう少し
破産法の中身を弾力性を持たせる必要があるのではなかろうかと考えます。今は、破産の場合はオール・オア・ナッシングでありまして、破産に伴って払わなくて済むか済まないかということだけでございます。これは本人のためにもよくありません。例えば、一年間だけある一定期間のお金を、ちゃんと生活を正してお金を払っていけばあとは免責をするというような形、こういったものが望ましいのではないかと考えます。これは今後の検討
課題であろうと思います。
それから、なぜ焦げつきが出ても、あるいはこのような破産宣告が出ても、なおいまだもってこの商売というものが後を絶たないのか。特に、とりわけ
クレジットではなくて
消費者金融の方でございますが、このあたりに業者が過当競争を行っている現実があります。やはり現在の出資法の上限金利が、下げられてきまして昨年十一月から四〇・○〇四%になっておりますけれども、これは今なお高過ぎると考えます。大手サラ金の金利は既に二〇%を割っておる現実がございますので、こういったところも少し検討
課題ではないかと考えます。
それから、
クレジット業界、
リース業界とも、衆議院におきまして、これまでの営業体質を改める、本業に返るということが述べられておりますけれども、全くそのとおりでございまして、そちらの方に返ってもらいたいと思うわけでございますが、もう
一つ述べさせていただきますならば、
クレジット業界の本業とは一体何であろうか。やはりこれは
販売信用にあるのではなかろうかと思います。現在、
販売信用を行っていた業者の
方々が
消費者金融の方に手を出されておりまして、その
消費者金融の金額の方が
販売信用よりも大きいといったところが出ております。つまり、これを我々は
クレジットのサラ金化と呼んでいるのですが、そこのところに問題がありはしないか。もう一度ここのところは考えてほしいなと思います。
いずれにしましても、今申し上げましたようにいろいろ問題がございますけれども、今一番
消費者が望んでいるテーマはほかにもいっぱいございます。今回、通産省は
投資家保護ということをうたい文句にこの法案を出されましたけれども、これはあくまでも
大口投資家でございまして、
一般消費者の問題も忘れてもらっては困ります。
一般消費者が望んでいるものは実は幾らでもあります。
例えば、現在もちょっと問題化しておりますが、
クレジット業に絡みまして家庭教師の派遣業、これが
全国で相次いで倒産をしております。ところが、これをチケット制で購入し、
クレジットを組んでいるものでございますから、お金は
払い込んでいる、
サービスは受けられない、しかし請求は来るといったことになっております。対価を全然受ける見通しもないのにお金を
払い続けていかなければいけない、こんなばかげた話はありません。こういうのを継続的取引役務と申しますが、この継続的取引役務の中途解約権、これは一刻も早く導入してほしいと思います。それから、訪問
販売法上における不当な行為による
消費者取り消し権の導入、これは前回の訪問
販売法の改正のときに検討
課題になっております。それからマルチ商法
規制の
強化、これについても東京都が通産省の方に要望書を昨年八月に出しております。こういったものを率先してやっていただくことこそ、
消費者重視、生活大国の名にふさわしい日本国政府の通産省行政であろうと考えます。
話が雑然としてしまいましたが、以上でございます。
どうもありがとうございました。