○対馬
孝且君 三年度を締めくくる
エネルギー政策に関しまして私は提言を申し上げたいと思います。時間の
関係もございまして、総合的な
エネルギー政策の
あり方について御
意見を申し上げたいと思いましたが、石炭
政策に関して私は重点を絞って、二十分では時間が足りないのでございますけれども
意見を申し上げたいと思います。
なお、最後に各会派の
意見の中に
福間先生が他の総合
エネルギーの
関係で御
意見を申し上げる、こういう会派として打ち合わせをいたしておりますことも御了承願っておきたいと思います。
かねて石炭
政策につきまして当
調査会でもしばしば私申し上げてまいりましたが、まず
日本として中長期の石炭
政策の今後の
あり方を明確にする必要がある。御案内のとおり、第九次
政策というのが昨年六月出ました。私に言わせますと、どうも
基本。的な
政策が不在であると言わなければなりません。それはなぜかと申しますと、
経済合理主義一本やりではないか、安けりゃいいということだけで国の
エネルギーとして
考えるべきものではない。
第一に私が申し上げたいのは、まず緊急のセキュリティーという位置づけを石炭
政策に求めるべきである。それは昨年の湾岸戦争の教訓として御案内のとおり、あの湾岸戦争が起きたときに、もし長引いたら非常に人心の不安が増大したであろうと私は思います。それは
我が国に国家、民間備蓄を合わせまして百四十二日間という石油備蓄があった、これが
エネルギーに対する人心の安定を大きく示したものであると、こう思っております。緊急時の
エネルギーとして、今日全体の
エネルギーに占める
国内炭の
割合は一・五%でございます。しかし、今申しましたように、その石油備蓄の百四十二日間という
エネルギーのいわゆるセキュリティーの
基本というものを
考えるならば、
我が国の
国内資源の
エネルギーは、今日の埋蔵量その他を判断した場合に、石炭はこの緊急時の安全保障にこたえられる、今日の資源はまだ増大をしている。また今日は、後で申し上げますが、理論炭量で三十二億トン、実収炭量でいつでも五億トンから八億トンの炭がございます。そういう
意味で、私は緊急非常時の
エネルギーの石炭
政策ということで位置づけをすべきであるということを申し上げたいと思います。
それから第二の問題は、私はどうも
日本の場合、今の石炭
政策を見ますと、資源愛護をするという
政策が不在である、こう言わなければなりません。なぜかならば、一九八八年のIEA会議での石炭の国際的な埋蔵量は一兆三千億トンでございます。これは一九八九年の
世界が一年に掘っております石炭収量で換算いたしますと、三百年石炭を採掘する年限がございます。
そこで、
我が国は一体どうなのかということを申しますと、先ほどもちょっと触れましたが、理論炭量として三十二億トン。それから、この間も私は当
調査会でも申し上げたことなんでありますが、今、実収炭量として約八億トン。それから現在、九州、北海道で掘っている分布
地域における実収炭量というのは五億トンでございます。これは通産省がこれをきちっと認めています、
政府側も。そうしますと、これを展開してみると、仮に一千万トン掘ったとしましても、これは五十年であります。それから今、実収も七百万トンを割っているのでありますが、五百万トンベースでいった場合には百年の石炭の資源があるということが国のNEDOの
調査の実績によっても証明されているのでございます。
したがって、私はどうもこの点については、第二の位置づけとしては、石炭資源を愛護するという愛護論が
日本の石炭
政策に欠けている、こう言わなければなりません。そういう
意味で、石炭資源の愛護の
基本の
考え方に立つべきであるというのが第二の主張でございます。
それから第三は、これは
海外炭技術のノウハウを、交流という目的もございますけれども、国際的に非常に
日本の技術が超一流であるというのはIEA会議においても評価されているところでございます。私も随分
海外へ行って
海外の石炭事情を視察してまいりましたし、私自身、坑内に入っております。例えば、ソビエトのドンバス炭田に私は入りました。それからポーランドにも入っています。チェコスロバキアのユージンという炭鉱にも入りました。中国の炭鉱では龍宝炭鉱にも、坑内掘りでありますけれども、入っています。
こうして行ってみますと、今
我が国に求められているのは自走枠採炭方式というもの、これは
海外では非常に高く評価をしてございまして、むしろ今、旧ソ連邦、それからカナダ、中国、こういう
関係国からぜひ
日本の技術を入れてもらいたい、また、一定の人員をこっちに派遣して
技術開発のための交流計画を
実現してもらいたいというのがございます。これを私は第三の石炭
政策の
基本として、この際大いに
海外へ技術を売る、ノウハウを売るという、同時に
日本の石炭をさらにそのことによって
発展をさせるという一石二鳥の役割を果たすことは、実際に展開することは可能であります。そういう点を
考えますと、私は
海外炭技術のやはり維持
発展というものを第三の
考え方に位置づける必要がある、こう私は思っているわけであります。
それから第四としては、
我が国に現在入っております石炭は、一九八九年ベースでいきますと、御案内のとおり一億一千三百六十万トンでございます。二〇〇〇年には、一億四千二百万トンというのが長期
エネルギー需給見通しの中に計画されているわけであります。かってこの場で埼玉大学の室田助教授もちょっと言ったことがございますけれども、自国の資源は一割
程度は
国内石炭として維持すべきである。それは言うまでもなく、私は先ほど前段で申し上げましたが、緊急非常時のセキュリティー、安全保障論という
考え方に立つべきだということをここでも室田先生が申し上げたことがございますけれども、私はそういう
意味でも今日の
国内炭の見直しということが重要であると、こう思っているわけであります。
そこで、次の問題の提起でありますが、現在、長崎県の電発の松島火力一号機という火力発電所がございます。これは大体五十年代に入ってからでございますけれども、
国内炭と
海外炭の混焼火力発電所でございます。つい最近北海道の北電が発表しましたところによりますと、苫東三号機というのをつくる。これは三十五万トンであります。これは石炭火力なんです。これも先ほど言った松島火力一号機の火力発電所同様に、つまり
国内炭と
海外炭の混焼火力発電所、これをやることにおいて
国内の需要が
拡大をする、こういうことにつながっていきますので、私は今
我が国のなすべき大事なことは石炭専焼火力発電所の増大、強化ということが必要である。それと
海外炭と
国内炭の混焼火力発電所の設置の
拡大をしていくべきである、こういうふうに提言をいたしたいと思います。
それから、最後の
考え方でありますが、私は常々国会の場で十八年間も石炭
政策の一環として訴え続けたことでございます。それはどういうことかと申しますと、
国内炭と
海外炭の格差がございます。これを私は
流通機構を一元化したらどうだと。これは私は法案を出したことがあります。石炭資源活用法案という法案を昭和五十年に、当時
調査会がありませんでしたから、商工
委員会でこれを提案したことがございます。私はいまだにこの
考え方は間違っていないという確信を持っているのはなぜかといいますと、
海外炭と
国内炭の受け皿を一元化していけば、それだけの価格の
水準というのはある
程度負担になっても維持することは可能ではないか。それはある面では
国内炭と
海外炭の利益を一元化するわけですから、その点では
国内炭の高い分を補うとかまたは
海外炭の安い分をこっちに補っていくというような、そういう相互の
政策が可能であるということを
基本にした法案を提案したことがございますが、いま一度このことを石炭
政策の今後の
あり方として検討していただきたい、このように
考えておる次第でございます。
以上、
基本的なことを私申し上げましたが、したがって、こういう
政策をもう一回見直してもらいたい。何も私は
日本の石炭
政策だけを言っているんじゃなくて、田
会長には昨年六月イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデンに行っていただきました。私はこれを読ませていただいて非常に参考になりましたが、今なおイギリスは九千万トン、旧西ドイツは五千五百万トン、フランス、非常にフランスは
我が国に似ているんでありますが、千二百三十万トン掘っています。
我が国ではもう七百万トンを割っているんですよ、今日の段階で。
私はそれを申し上げたいのは、同じ資本主義の自由主義陣営でありながら、旧西ドイツの場合はいまだに五千五百万トン掘っている。しかもあそこはコールペニヒ方式。私も旧西ドイツへ行っていますから見てきました。これはいいか悪いかという問題の
政策的判断はありましょう。しかし、
国内資源を愛護するという、
国内資源を使うというこの
基本に立った場合に、一定の電力の
割合に対して
消費者が八%負担しています。もちろん国も助成をしています。これはコールペニヒ方式と言うんでありますが、これは一朝にして旧西ドイツがやったわけじゃないんです。時のシュミットさんが天下をとったときに、自国の資源は自国が使うという、つまり一口に申しますならば、資源愛護論という
基本に立って今なお旧西ドイツは自国の炭を掘っている。しかも、褐炭という、ごらんになったと思いますが、非常に低カロリーの炭でさえさらにこれを活用しているという
現実であります。そういう点を踏まえますと、決して
我が国だけが石炭を優先してと私言っているんじゃないんです。そういう
意味でも
政策ということを訴えたいと、こう思っている次第でございます。
最終的には合理化になるということも私は申し上げなきゃならぬと思います。それは
経営多角化、新
分野開拓ということは、最後の政治的決断というものをすべきであるというふうに私は孝之ているんです。またこれは、石炭協会の中でもそうですよ、言っていることは。そういう
考え方をきちっと持つ必要があるという点を
一つ申し上げておきたいと思う。
それから第二に、当
調査会でも
政府に申し上げましたが、
政策がないんですよ。
政策とは何だといったら生産枠でしょう。例えば、一年間に一千万トンなら一千万トンを掘るということで
我が国は第一次から第八次まできたわけでしょう。かつては五千五百万トン、これだって私は全部携わってきましたから、三千万トン、二千万トン、一千万トンと、こうきたわけですよ。これが第九次
政策にはないんですよ。なくなったんだ。
それはどういう答えかというと、
構造調整十年間、十年間コントロールをして、労使がその力がなかったら経営をやめていくということですから、
政策がどこにあるんですか、
政策が。一千万トンという今まで枠があったから、一千万トンの枠の中でどうやって
企業が、石炭労使が努力をして維持していくか。一千万トンという枠が取っ払われちゃって、どうぞ御勝手に労使の努力でひとつ石炭を売るところを見つけなさいと、極論を言えばそういうことでしょう。もちろん単年度ごとに決めていくとは言っていますよ、方針では。しかし、力がなくなったら結局みずから閉山をせざるを得ないという、この前ここで申し上げましたけれども、むしろ、雪崩閉山を早める結果の
政策になるおそれがあると。私はそういう
意味で申し上げたいのは、この点について
政策的に
考えて、見直してもらいたい。これが具体論の第二であります。
それから第三は炭価なんですよ。石炭鉱業合理化臨時措置法五十八条の一項にありますように、基準炭価は国が定めるとなっているんですよ。これは法律ですよ、石炭鉱業合理化臨時措置法。それが国が定めると言っていながら、今度の答申を見ますと、六千カロリーを基準にした場合には千円下げると、こう言っている。それから露頭炭は二千円下げると、こう言っている。これはどうなんですか。何人を問わず物価が上昇していく、資源が下がるものじゃありませんから。
海外炭は下がっても我が方のコストは下がらぬわけですから。その点から判断していった場合に、炭価は下げて、そしてさらに露頭炭は二千円下げてやっていけと。これじゃもう閉山せいということと同じですよ。これではやめろと言った方がいいんですよ、極論言うと。
だから、そうではなくて、炭価は石炭鉱業合理化臨時措置法にあるように基準炭価として維持する。つまり今の
水準を凍結しろということですよ。本来ならば上げるべきだという
考えなんですよ。最悪の場合でも現状炭価を維持する。それからどうしても下げなきゃならない場合については石炭鉱業審議会の議を経て、下げる場合については経営を維持するという
基本に立って炭価の問題を論ずるべきである、また変更方をすべきである。これが第三の具体論の問題でございます。
それから第四の問題として、炭鉱
技術開発に関連する支援策の強化
充実をしてもらいたい。現在、石炭液化研究センターというのが夕張地区にもございます。もちろん炭鉱はだめになったけれどもあります。この
考え方を、単に夕張、全国では一カ所じゃないんですけれども、私は石炭を固体燃料で使うというのは限界に来ている、こう思います。そういう
意味では石炭の利用技術研究を含めて液化、ガス化の
方向にさらに
日本の国家的機関として
研究開発を
発展させるべきである、こういう
考え方を具体的に私は提言を申し上げたい。そのことがひいては石炭の
国内炭、
海外炭を含めて量的
拡大につながっていくということと、それから
地球環境破壊対策の
意味でも、そういう
意味での公害対策の一環にもつながっていくというふうに
考えますので、ぜひこの石炭技術研究・研修センターとあわせまして、先ほど申しましたように、液化あるいはガス化という
方向に研究
拡大を強化してもらいたい、こういうふうに
考えます。
それから、時間もありませんので最後になりますが、一、二具体的な問題で次に追加して申し上げたいのは、
現行ある石炭特別会計、これも国の一定の各種の助成あるいは融資措置がございます。これはことしも
政府が一定の努力をしたことを私は歩といたします。歩といたしますが、問題のあることは、ここが大事なんですね、今度の石炭答申が従来と
考え方が違ったのは、従来は石炭合理化によって採算性が合わないから閉山をして、そして事後対策で雇用対策をやってきた。これなんですね。それはだめだという、これは正しいと私は思うんですよ。これは評価しているんですよ、この答申の中にある一
項目は。むしろ受け皿が全部、ずばり言うならば経営の多角化、新
分野の開拓ができて、Aという山がもし閉山をするということの前に、その炭鉱に千人おったとするならば千人の受け皿をつくる、これが答申の骨子ですから、新
分野開拓、経営の多角化、それが完全にでき上がったときに山の閉山をするという、これが今度の大方針ですよ、この第九次
政策の大方針。
ところが、それができるかといったらできないんだ。
現実に問題になっている炭鉱を申し上げてもいいんですけれども、三井芦別炭鉱というのが今会社も苦慮している。ところが、この方針でいっているけれどもなかなか民間ベースでは限界があります、率直に言って。だから、公的な国の援助なり県段階の支援によって、公的受け皿といいますか公的施設、こういうものもプラスしながらやっていかないと、とてもじゃないけれども新
分野開拓、新受け皿体制をつくって山をソフトランディングに閉山させていくと、この
考え方は私反対だけれども、どうしてもやむを得ないとするならばそれも必要でしょう。
そのときに、私はあえてお願い申し上げたいのは、その場合の受け皿というのは、民間サイドだけではなくて、つまり公共、国の段階、県の段階あるいは道の段階を含めて三者一体の
立場で新開拓の
分野の受け皿体制の確立をぜひ
実現してもらいたい。そのためには、先ほど申しました石炭特別会計、これのそういう
意味での重点対策というものを特別会計の中に位置づけるべきであるという
考え方でございます。
時間も過ぎましたけれども、そういう
意味で、最低限
基本的な
政策の提言と、それから具体的な
政策の
考え方を申し上げまして、これを今後の石炭
政策にぜひ起用していただければ幸いである、こう思っている次第でございます。
大変ありがとうございました。