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1992-05-29 第123回国会 参議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年五月二十九日(金曜日)    午前十時三十分開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月二十九日     辞任         補欠選任      須藤良太郎君     藤田 雄山君      立木  洋君     上田耕一郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         下条進一郎君     理 事                 上杉 光弘君                 岡野  裕君                 田村 秀昭君                 藤井 孝男君                 佐藤 三吾君                 谷畑  孝君                 矢田部 理君                 木庭健太郎君                 吉川 春子君                 井上 哲夫君                 田渕 哲也君     委 員                 板垣  正君                 尾辻 秀久君                 大島 慶久君                 合馬  敬君                 鹿熊 安正君                 木宮 和彦君                 須藤良太郎君                 関根 則之君                 仲川 幸男君                 成瀬 守重君                 西田 吉宏君                 野村 五男君                 藤田 雄山君                 星野 朋市君                 真島 一男君                 森山 眞弓君                 翫  正敏君                 小川 仁一君                 喜岡  淳君                 國弘 正雄君                 小林  正君                 櫻井 規順君                 竹村 泰子君                 角田 義一君                 田  英夫君                 細谷 昭雄君                 太田 淳夫君                 常松 克安君                 中川 嘉美君                 上田耕一郎君                 磯村  修君                 寺崎 昭久君                 喜屋武眞榮君    委員以外の議員        発  議  者  野田  哲君        発  議  者  久保田真苗君        発  議  者  村田 誠醇君    国務大臣        内閣総理大臣   宮澤 喜一君        外 務 大 臣  渡辺美智雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 加藤 紘一君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  宮下 創平君    政府委員        内閣審議官        兼内閣総理大臣        官房参事官    野村 一成君        内閣法制局長官  工藤 敦夫君        内閣法制局第一        部長       大森 政輔君        内閣法制局第二        部長       秋山  收君        防衛庁参事官   金森 仁作君        防衛庁長官官房        長        村田 直昭君        防衛庁防衛局長  畠山  蕃君        防衛庁教育訓練        局長       小池 清彦君        防衛庁人事局長  坪井 龍文君        外務省アジア局        長        谷野作太郎君        外務省欧亜局長  兵藤 長雄君        外務省経済協力        局長       川上 隆朗君        外務省条約局長  柳井 俊二君        外務省国際連合        局長       丹波  實君        外務省情報調査        局長       鈴木 勝也君    事務局側        常任委員会専門        員        辻  啓明君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案(第百二十一回国会内閣提出) ○国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案(第百二十一回国会内閣提出) ○国際平和協力業務及び国際緊急援助業務実施等に関する法律案野田哲君外三名発議) ○派遣委員の報告     ―――――――――――――
  2. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を開会いたします。  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案及び国際平和協力業務及び国際緊急援助業務実施等に関する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 田英夫

    田英夫君 最初に、けさの新聞を見ますと、これは政府ではなくて、自公民三党が来週六月一日にも修正案をこの委員会提出をするということが報じられております。  私どもは、先日私もこの席で申し上げましたとおり、修正修正という話が我々の頭の上を飛び交っておりましたが、さっぱり我々の視野の中に入ってこない。実はここに至って、特にPKFの問題について御質問をしようにも、政府案は既に半分凍りかけているという状況の中で、どこまでお話をしていいのかということを先日も申しました。大変困っておりましたが、いよいよ修正案が出てくると、こういうことが報じられております。  最初に、凍結とか国会事前承認というようなことも、これはまだ報道の上で飛び交っている段階ですけれども凍結をするというようなことは、前例はあるようですけれども、その先例によると一体どういうやり方をするのか、今回はどういうことになるのか、これもまたしかし政府に伺うというのもおかしなことになるんですね。これは内閣法制局長官に伺いたいところですけれども、どうですか、法制局の方で先例ぐらいはわかるでしょう。
  4. 工藤敦夫

    政府委員工藤敦夫君) お答えいたします。  ただいまの凍結という件でございますが、先日この委員会においてもたしか矢田部委員からのお尋ねに対して私お答え申し上げたと存じます。凍結ということ自身、私は新聞等で拝見しておりますけれども法律的な表現用語ではございませんので、私の方から確たることを申し上げるわけにはまいりません。
  5. 田英夫

    田英夫君 先例、私も調べてみますと、昭和二十七年に保安庁法、それから海上公安局法、いずれにしてもこれは警察予備隊から保安隊自衛隊とくるそのときの段階だろうと思いますが、昭和二十七年にこの二つ法案について、参議院のちょうど最後の段階で、凍結と言えるのかどうかわかりませんけれども、「別に法律で定める日から施行する」という、これは法律全体のようですね。やっぱり一部をちょっと除いていますけれども、かなり大部分をこの場合いわば凍結をしている。施行日を先に延ばしているという意味凍結をしたという前例はあるようであります。  それで、それ以外に、いわゆる報道として我々の頭の上を飛び交っていた修正条項修正案なるもので、実は一体どういうことになるのか、修正案が出てきてみて、果たしてそこで検討をしてどうなるんだろうか、政府案と比べてどういうことになっていくんだろうかと今から疑問に思う点が多々あります。  例えば停戦監視とか、あるいは後方支援と言われる医療部門とかさまざまの部門がありますね。そういうものは凍結しないという報道もあります。したがって、そういうものは国会事前承認の対象の枠からは外れるという、これは民社党大内委員長が指摘された部分ですけれども報道によると、大内委員長の指摘にもかかわらず、今度の修正案ではこういう部分凍結からもあるいは国会事前承認からも外れているということが言われております。  こんな点は、私どもにとってみれば、停戦監視もあるいは後方支援自衛隊自衛隊の服を着て行くわけですから、私どもが絶対にそれは憲法上あってはならないという部分に触れてくるわけでありますから、凍結になってしまえば、まあとりあえずはいいやということにはならないのであります。その範囲がどこまでなのかということが定かでない。さあ今度修正案が来週出たときにそれを検討させていただいて、これならやっぱりだめだとか、ここのところは疑問だということが実は相次いで出てくるだろうと思います。  したがって、通常の法案修正をする場合には、政府案修正を加えた、そしてすぐ採決をするという、そういう段取りになっていることが多いわけでありますが、それは私どもも認めるわけですけれども、しかし今度の場合はそうはいかない。国論を二分し、憲法に触れるかどうかという、私どもは触れると思うわけですが、そういう問題について依然として、憲法に大いに触れるのか少し後退するのかというような、そんな程度の違いでも実は国民立場からすれば非常に大きな問題です。  ここを考えましたときに、来週一日にお出しいただく、これは自民党公明党民社党ですが、お出しいただいた後この委員会で十二分に私ども審議をしなければならない。そうでなければ国民皆さんに相済まないと思っておりますが、自民党総裁であり総理である宮澤さんは大いに審議をしましょうとここで約束をしていただきたい、いかがですか。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまのお尋ねは、結局当委員会の運営に関することでございますので、私からそれにつきましてとやかく申し上げるべきものでないであろうというふうに考えます。
  7. 田英夫

    田英夫君 それは宮澤さん、私は総理と呼ばずに宮澤さんと呼びますけれども、大変おかしなことでありまして、昨日も党首会談をやられました。五党の党首と会われたのはまさに党首としてお会いになったと思います。したがって、だからこそ修正の話をされた。総理大臣として修正の話はできないはずでありますから。したがって、今の御答弁は、もちろんそれは国会で、特にこの委員会で言えば理事会で話をすることでありますから当然でありますけれども総理として今のような私の質問に対してはお答えになれる立場にあると思いますが、いかがですか。重ねて伺います。
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨日、各党委員長方々と、幹部の方もいらっしゃいましたが、お目にかかりまして、そのうち幾つかの党、会派からこの法案につきましての御意見がございまして、その中には修正すべきであるという御意見を述べられた方々もおいでになります。しかし、これは私から御紹介をする自由はないと思いますので、田委員が先ほど仰せられましたように、政府といたしましては、御審議を願っております政府原案を最善と考えておるということでございますけれども、すべての会派ではございませんでしたが、各党会派の中には修正をすべきであるという具体的な御意見を開陳になられましたことは事実でございます。しかし、それは私が御紹介する自由を持っていないと考えます。
  9. 田英夫

    田英夫君 例えば凍結をするということが言われている。それがどの範囲かよくもちろんわからないわけですが、いよいよ出てきた修正案を見てみたら、二十四条の三項というものが凍結されているのか凍結の枠から外れているのか、これは実は私どもにとっても大変大きな関心事であります。これは防衛庁長官はもうおわかりのとおり、武器使用にかかわる問題でありますから、これは当面、しかもカンボジアへのPKOというものが差し迫って行われるかもしれないという状況にある中で、この武器使用の問題が現在の形のままで凍結されずに枠外に外れていれば、これは当面大変なことにならざるを得ない。  後でカンボジアの問題は触れますけれどもカンボジアは決して和平が完全に成立をして安全であるとは言いがたい部分があるわけでありまして、私どもはそうした今から想定考えても、修正案が出ていない今の状況想定考えても数々の疑問点が浮かび上がってくる。当然私どもは、少なくとも修正案が出されてからかなり多くの時間をこの修正案審議のために割かなければならないと、こう思っております。  総理はきのう田邊委員長に対して、参議院でも十分に審議を尽くしたと思うとおっしゃいましたが、私どもは全くそう思っておりません。審議をいたしますのは私どもでありますから、特に修正案というものが政府案の根幹を変えるような修正案であるようですから、これについては改めてじっくりやらなければならないと思っております。この点は今の総理お答えは全く不満でありますが、先へ進まざるを得ませんので、ひとつ宿題として私どもの主張を頭の中にとどめておいていただきたいと思います。  そこで、これから申し上げる問題も、実は今までの審議の中で、各党の御質問の中でまだまだ十分に論議をされていない問題と思いますので、きょうあえて取り上げるわけでありますが、実は私ども理事会の中で、先日行われたカンボジア問題の集中審議のように、つまりこの新しい国際情勢、今世界激変をしているこの国際情勢に対する認識、そしてそれにかかわって日本PKOを含めてどういう国際貢献をしたらいいのかという最も根本的な問題について、まだまだ討議は十分だとは言いがたい、したがって集中審議をしようじゃないかということを申し入れましたが、これは理事会でまだ自民党初め皆さんの御了承を得ず、集中審議が行われておりません。  きょうはそのいわば先駆けという気持ちで、できれば今後これを集中審議で取り上げていただきたいという意味を込めまして、この問題について御質問をしたいと思います。御質問といいますか、議論をしたいと思います。  まず第一に、いわゆる冷戦構造が終結をした、崩壊をした、こういうふうに言われているわけでありますが、確かに総理外務大臣世界激変をしているということは当然御認識になっていると思います。今のこの世界情勢変化を、大変大きな質問で恐縮ですが、それを短く言っていただくのは大変言いにくいかもしれませんが、総理外務大臣、お二人に伺いたいと思います。一言で言えばどういうふうに世界は変わってきていると認識しておられるか、このことをまず伺いたいと思います。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一言で言えという仰せでございますので、冷戦が終わりまして新しい世界平和秩序が構築されようとする時代、軍備にかけました大きな負担がいわゆる平和の配当となってあらわれることに努力すべき時代、そういうふうに考えております。
  11. 田英夫

    田英夫君 外務大臣、いかがですか。
  12. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 一言で言えば総理と同じであります。
  13. 田英夫

    田英夫君 私は、今の総理の平和の配当という御答弁は同感であります。冷戦構造、私は冷戦と言うのにも余り賛成でないのは、ホットだった場合もあるわけですね、朝鮮戦争とかそういう熱い戦いになったこともありますから。つまり、それはアメリカ中心とする自由陣営ソ連中心とする社会主義陣営イデオロギーで真っ二つに分かれて世界イデオロギー対立をして相争った。それが今申し上げたように熱い戦いになったのが朝鮮戦争でありベトナム戦争だと思います。世界はまさにイデオロギーによって二つに分けられていた。  だからこそ、日本政治イデオロギーで、これ順番を間違えるとしかられますけれども自民党、その次が民社党でいいですか、公明党に最近はなるのかもしれませんが、いずれにしても自民党民社党公明党、社民連という薄い小さいところも入れて、社会党、共産党というふうに、イデオロギーで切れているでしょう。  例えば、これはかまぼこと思っていただきたいんですが、かまぼこ包丁で切るのに縦には切りませんね、横に切っていく。それはイデオロギーという包丁で、右からというのもこれはしかられるかもしれませんが、右から自民党という大きな切れがあって、そしてこの今申し上げたような順序でイデオロギー包丁で分かれていた。これが日本の場合もそうであります。それが最も端的に分かれたのはいわゆる五五年体制です、自民党社会党と。学者もそういうふうに言ってきたわけですね。まさにイデオロギー時代と私は言いたいと思います。  そして、それが崩壊をした、イデオロギー対立というものが崩壊をして新しい時代になった。新しい時代ですから、私は新時代と、現在からこれから将来のことをそう色分けをしたいと思います。つまり、イデオロギー対立が私は解消したと申し上げたいんですが、解消したと思われない方がまだ大勢おられるという現状があります。  そこで、一体これからどうなるのか。これからの世界というのは今まさに平和の配当と言われたようなそういう時代になることは私も賛成でありますが、どうなっていくだろうと総理はお思いですか。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは正確に予測をすることは難しゅうございますけれども、大きな流れとしては、新しい平和が構築される流れというものが私は強いと思いますし、そういう意味ではいい方に向かっていくであろう。  ただ、これはもうよく田委員が御承知のとおり、その反面で、この一、二年現実に見ておりますように、民族問題であるとか宗教問題でありますとかそういうことの、今までいわば冷戦、両陣営対立という中で隠されていたような部分表面化をしてまいっておりますから、そういう点ではかえって局地的にいろんな問題が起きております。そのことは事実でございますし、またそれが民族自決というような形をとろうとしておるように思われます。  私どもとしては、現実国連というものが機能するようになってまいりましたものですから、今ユーゴスラビアでもあるいはその他でも見ますように、そのような紛争の解決と平和の維持増進について国連に期待するところが大きくなる。そういう国連の機能を強化し、また協力をいたしたい、こういうふうに考えておりますけれども、大きな流れは、それは何と申しましてもいわゆる核の抑止力という非常に不安定なもとで築かれておりました平和というものが、もう少ししっかりした基礎に立つような方向に向かっていく、そういう可能性は決して小さくないと思います。
  15. 田英夫

    田英夫君 そこまでも私は賛成であります。私の言い方で言えば、このイデオロギー対立時代というものがそうある日突然すぱっとなくなって今の新時代になったわけじゃありませんから、長い間かかって次第次第に変化をしてきたと思うんですね。これ、御質問しようと思いましたけれども私の方から申し上げると、私の考えです。  私がおやっと思ったのは、一九七二年にいわゆる頭越しですけれどもニクソン訪中をした。ニクソン大統領訪中をしたというあたりから私はちょっと世界の今までの状況と変わってきたなということを感じました。そして、一九七二年という年はそういう意味で記憶に残る年だと思います。これはもう総理も当然お気づきと思いますが、一九七二年にはいわゆる日中国交正常化ということが行われた。ことしがその二十年になります。同時に、その年にたまたま私は朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮を初めて訪問したのでありますが、その直前に南北朝鮮、つまり韓国と北朝鮮はいわゆる七・四共同声明というものを出しました、七月四日。自主、平和、団結という三原則に従って南北が統一しようじゃないかと。しかし、これは実らなかったわけであります。まだ世界変化が十分ではなかった。朝鮮半島を取り巻く情勢が依然として東西対立であったから、まさに南北対立という構図の中でこれが実らなかった。言葉だけのものになりました。しかし、こういうことが言葉だけであれ言われたということの意味は非常に大きかったと思います。この辺からずっと、世界は厳しいイデオロギー対立東西対立ではなくなるんじゃないだろうかという予兆のようなものがここから出てきていたんじゃないか。  その後、そういう目で見てまいりましたところ、今総理は最近もユーゴとかいろいろの紛争があるということをおっしゃった、そのとおりであります。だから国連の役割も重大だ、重要だと、これもそのとおりであります。しかし、東西対立が完全に崩壊をした、ベルリンの壁が崩壊し旧ソ連崩壊をしたということで、急に紛争が始まったわけではありません。ちょっと振り返ってみますと、そういう予兆を感じた以後もフォークランド紛争とかイランイラク戦争とかアフガンへのソ連の進攻とか、あるいは今の問題のカンボジアだとか、今四つ挙げましたけれども、とりわけ考えてみますと、いずれも朝鮮戦争のようなイデオロギー対立戦争ではありません。フォークランド御存じのとおりです。イランイラクだってイデオロギー対立したわけじゃありません。カンボジアに至っては、社会主義ベトナム社会主義カンボジアへ攻め込んだということであります。したがって、紛争はあった。しかしイデオロギー対立紛争ではなかった。これからもそうなるでしょう。  こういうことを考えてまいりますと、いわゆるこれからの新時代というものは、私の言葉でずばり冷戦時代と新時代を比べると、冷戦時代というのはイデオロギー対立で、そして問題は軍事的な力を背景にして、その均衡の上でようやく平和が保たれていて、時にそれが破れると朝鮮戦争のようなことが起こるという時代、非常にずばり一言で言ってしまえば軍事力時代と言っていいんじゃないでしょうか。それに対してこれからの新時代というのは、総理も言われたように、平和の配当というお言葉があったとおり、平和主義時代に変わってくるんじゃないか。平和とか軍縮とか、そういうことがこれからは非常に重要な政治の柱になるんじゃないか。  今までは軍事力ということが非常に世界均衡を保ち、世界秩序を保つために重要視されている。世界秩序を保つのは軍事力だ。これが旧時代冷戦時代。これからの新時代は平和、軍縮といったことによって軍事力対立させていかない、下の方に置いてしまうという時代になるんじゃないか。こう私は理解をしておりますが、総理の御意見を伺いたいと思います。
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういう兆しが確かに強くなってきておるということは申し上げることができると思いますが、何分にもいわゆる冷戦というものが終わったと言われましてから、たっております時日が余りに日時が短うございますので、それがそういう流れになっていくのかどうか、少なくとも後から振り返って、仮に経過的な時間であるかもしれませんが、十分いろいろ用心はしていかなければならないと思いますけれども流れとしてそうなってくれればいいと思っております。
  17. 田英夫

    田英夫君 そういう変化が起こってきている中で、これはいつの時代でも、変化をしていくとその古い時代考えをそのまま持ち続けている人たちが残ってしまうということは人間社会の中でやむを得ないことかもしれません。  その最も端的な例が、あの三月にニューヨーク・タイムズがスクープしたアメリカの国防総省の国防計画指針という、これは最初草案でありました。ごく数日前、これまたニューヨーク・タイムズがその手直しをしたものを報道いたしましたから、総理御存じのとおりだと思います。あの修正をしたものも含めまして、最初草案に至っては論外と言っていいと思いますが、若干御紹介をすれば、アメリカこそが世界の警察官であるという考え方の上に立って、国連も時には相手にしない、アメリカ軍事力によって世界秩序を維持するということが根幹になっていたと思います。  これに対して、さすがにホワイトハウスやアメリカの議会から一斉に批判が起こりまして、それを手直ししたのが数日前の報道による改正案といいますか、そういうものであると言われています。その最初草案では、日本とドイツを名指しで、この両国が世界の中で台頭してくることを許さない、そういう意味のことまで含んでいたわけであります。このアメリカ、しかも国防総省ですから、戦争をするのが仕事という人たちでありますからある意味では当然なのかもしれませんが、この考え方は古い東西対立時代考え方をまさにそのまま今の新時代に持ち込もうとしていることだと言わざるを得ません。  たまたまお名前を挙げて恐縮ですけれども、先日、民社党の田渕委員がこの席で、湾岸戦争のときにあの多国籍軍に賛成をして日本もそれに参加をしようと、参加できる部分で参加しようという意味でしょうが、つまり賛成をしようとされた方とこれに反対をした人たちと、今度のPKO法案賛成をしている人と反対をしている人は、これは連動をしている、こういう意味のことを言われたと思います。私はその限りでそのとおりだと思います。当然だと思います。  それは、私はしかし結論は田渕委員と全く逆さまなのでありますが、あのイラクのフセイン大統領のやり方は、私もまことにけしからぬことだと思いますが、そうした問題を、多国籍軍を編成し、その中心にみずからアメリカが座って軍事力によってこれを制圧し解決しよう、こういう考え方をとった。私どもは、そうではない、もっともっと経済制裁とか平和のうちに問題を解決する方法があるではないかと、あのときに主張いたしました。今度のPKOについて私どもが言っていること、そして政府そして賛成をしている党の方が言っておられることの違い、これは同じだと思います。  つまり、結論を言ってしまえば、湾岸戦争のときも、今度のPKO自衛隊を出すという問題も、問題の解決の中心軍事力を据えるということは同じではないでしょうか。もちろんPKOは戦うものではないという、これは後でPKOの歴史を申し上げますが、しかし私どもが反対をしているのは、特に憲法のかかわりがあるからもちろんでありますけれども、そうしたやり方は新しい時代、これからの平和の配当と言われる時代のやり方ではない。  まさに、軍服に値する自衛隊の服を着て銃を持った人たちが行って解決をしなければならないというのは前時代的なものだという考え方で、その対立はまさしくあの多国籍軍のときのアメリカの国防総省、その考え方の根底は先ほど御紹介したような、そうした考え方があるわけですが、そうしたやり方は冷戦時代の、私の名づけた名前で言えば軍事力主義の考え方が依然としてそこに残っている、こういうことに私はならざるを得ないと思っているんですが、総理、いかがですか。
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 常に非常に精緻な、きめ細かい論旨をお進めになっておられる田委員でいらっしゃいますけれども、最後の部分が私にちょっとうまく受け取れませんで、現実に湾岸戦争が起こりましたのは、サダム・フセインの侵攻はあの年の八月の初めでございました。それからおっしゃいますように、経済制裁をもってこれに対応しようとした、国連安保理事会中心に各国がそういう努力を共同していたしました。  でございますから、現実に武力行使が始まったのは一月の半ばでございますので、その間はそういう試みがもう非常に一生懸命に行われた。武力の行使をやるまいという努力が国連事務総長を初め安保理事会中心にあれだけ行われましたことは御承知のとおりでございます。しかし、そのことについて十分な成果を上げ得なかった。  現実に起こりましたことは、サダム・フセインによるクウェートの侵攻でございますから、武力による侵攻でございますから、経済制肘でこれが復元できないとすれば、これに対してはやはり対応する方法を考えなければならない、そうでなければ武力による侵攻というものがそのまま認められるということになるわけでございますから、そういう考えのもとに国連安保理事会が武力を使うことを認めたという経緯であったと思います。  多国籍軍には違いございません。そうではありますが、それは国連安保理事会中心になってその決議を一つ一つ踏み重ねて、武力による侵攻の排除が行われた。しかも、行われましたそのいわば安保理事会のマンデートの範囲内でこの武力行使はとどまるわけでございます。バグダッドに進攻するというようなことはなく、二月の何日でございましたか、きちっとそこで武力行使が終わる。あくまで国連の安保理事会のそのようなマンデートに忠実に行われたということでございますから、その点では冒頭に言われました、国防総省が最初に書かれたと御紹介になられました、武力による世界の支配といったようなこととは私は異質のことであったのではないかというふうに考えます。
  19. 田英夫

    田英夫君 アメリカという国は、大変ある意味では民主主義的な体制があらゆる分野で進んでいる。同時に、ある部分では大変、先日のロサンゼルスの問題でも明らかなように、人権の問題を含めて、そして今申し上げた国防総省のような考え方が一方に出てくる。大変多様な意見が交錯をしている中で、しかし論議がある一定の方向に進んでいくという意味では評価に値する部分があると思うんです。  そういう意味で、二つ日本PKOにまつわる、あるいは直接的ではありませんが、アメリカの大変おもしろい部分を見つけてみたんですが、一つは、五月十五日に報道されておりますが、十三日、下院の外交委員会の公聴会でブレジンスキー氏が証言をしている。  ブレジンスキーのことは総理もよく御存じと思います。私も何度か会いました。もちろんこの安全保障の問題、国際問題の権威でありますが、彼の証言は、日本に防衛責任の増加を求めるのは非常に疑問である、国連平和維持活動、PKOに軍事面で参加を要請することは疑問だと、こう証言をし、さらにその理由として、ドイツに関しては欧州共同体、いわゆるECなどの枠組みがあるのに対して日本にはそうした大きな枠組みがない。つまり、野放しにしちゃ危ないぞと、こういう意味にとれる発言をしております。  もう一つは、これはPKOに直接関係ありませんが、日本政府の最近の態度に対して、アメリカの議会の中でやはりかなり大きな批判が出ております。  これも五月の二十日に開かれましたアメリカの下院の外交委員会東アジア・太平洋小委員会、いわゆるソラーズ委員会ですが、そこでソラーズ委員長は、タイのこの間の流血の事態に対する日本政府の対応を厳しく批判をしている。  名前を挙げておりますから、そのまま読みますが、「加藤官房長官や外務省高官が「秩序が回復され、事態が平和裏に収拾されることを望む」」と、これはしかし、そのとおりかもしれませんけれども、まず言ったと。「タイ政府の動きは法と秩序を回復するためにとられた」もので理解ができる、こういうふうに言っているのは、もしそれが報道のとおりだとすれば大変なことだ、これはタイ政府軍事力によって国民を圧殺することを肯定しているやり方だと、こう批判をしております。  ソラーズ氏についても私も何度も会って、彼の委員会も傍聴いたしましたが、アジアの問題については詳しい人であると同時に民主党の国際問題についての、若いですけれども権威の一人だと思います。  そういう意味考えますと、この批判は、特に後段のタイの問題についての批判は、日本政府のあり方が武力で軍事力で問題を解決しようとするやり方を肯定したものだというところは、PKOと絡めて私はまことに残念だと思います。総理、いかがですか。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは事実関係をちょっと申し上げておく方がよろしいと思いますのですが、私はソラーズのその部分は読みました。ところが、ソラーズがそういう発言をしながら、これはひょっとしたら自分は間違った情報に基づいているのかもしれない、そうならいいんだがというような、幾つかのやりとりがございまして、結局、多少正確でない情報に基づいた発言であったのですけれども、そういうような、やや御本人も多少しっかりした根拠に必ずしも立っていないかもしれないということを自分で認めながら言われたことでございましたので、我が政府のタイの問題に対する立場というものはそのようなものではなかったのでございます。
  21. 田英夫

    田英夫君 この問題は後におきまして、先日、明石代表がこの委員会に来られていろいろ話をされた。その中で、非常に私は注目すべきだと思う発言がありました。きょう今ずっと申し上げてきた論旨に沿って取り上げてみたいと思うのは、PKOも私はもともとこれは冷戦構造時代の産物だと思います。冷戦構造で米ソが対立しているという状況の中で、それぞれが拒否権を使うために国際紛争が容易に国連の手によっては解決できない、そういう中で苦肉の策として生まれたのがPKOではないか。  明石さんも言っておりましたが、コンゴの場合などは明らかに誤りを犯している、こう認めておられました。そして、PKOも最近では非常に変わってきた、こういう発言をされております。私もそのとおりだと思います。また、変わらなければならない。冷戦時代の産物であるPKOがこれからの新時代に役立つためにはどうしたらいいか。私の論理で言えば、主張で言えば、PKOはますますもって軍事的な面を薄めていかなければならない、そして民生といった部門を多くしていかなければならない。  そのときにもっと言われたことは、ピース・キーピング・オペレーションですが、ピースキーピングというよりもこれからはピースメーキングとかピースビルディングとかいう、そういう考え方が大事になるのではないかと思いますという意味のことを明石さんが言っておられる。全く私も同感なのであります。  さらに、つけ加えてそのときに明石さんが言われたのは、これからは国連紛争解決といいますかそういう問題も、憲章第七章の国連軍、これは実際は米ソの対立で今まで発動できなかったんですけれども、これからはできるかもしれないということを言う人もいる。しかし、明石さんは、そういうことよりも、第七章の国連軍ということによって紛争を解決するのではなくて、第六章とか、これは平和的安全保障とこう一言で言われている部分、それから第八章の地域的安全保障と言われている、この七章にかわって六章、八章というところを重視していかなければならなくなってくると思う、こう言っておられる。  私は、全く賛成であり、なるほど国連から世界を見ておられるなと感じたのでありますが、総理はいかがですか。
  22. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先ほどから論議になっております、冷戦後に国連の平和維持活動がどういう役割を新たに見つけて発展していくべきかというのは、現在国連の中におきましても非常に一つの大きなテーマでございまして、まさに先般一月三十一日の安保理サミットの結果を受けて、このテーマにつきまして七月に国連事務総長にひとつリポートを出すようにというのがサミットの一つの結論だったわけですが、このテーマをめぐりまして加盟各国が今までいろんな意見を出しております。ですから、先生の御提起になっておられる問題は、今後の問題としては非常に重要なテーマだろうというふうに考えております。  しかしながら、現実には、現在のPKO活動というのは、実は数え方にもよりますけれども、四十三、四年の歴史の中で二十七設立されておるんです。しかしながら、過去三、四年でそのうち十四できておるというのは、冷戦の後のかかわりというものと、PKOの重要性が非常に増しておる。それが、現実にはその主要な部分は軍事要員によって賄われているというのも冷厳な事実であろうかというふうに考えております。
  23. 田英夫

    田英夫君 明石さんはさらに、今の六章、八章の問題を述べるとともに、従来は例えばNATOのような、いわばその地域の防衛ということで、排他的という言葉をそのとき使われたと思います。排他的な、地域的な集団安全保障というものをつくることで、それに対してソ連、東側はワルシャワ条約機構というもので対抗するというような、そういう排他的な軍事的集団安全保障というやり方を世界はとってきた。しかし、それも既にヨーロッパの場合はいわゆるCSCEという形で「共通の家」というような、そういう言葉が出てくるように、もちろん東西対立冷戦構造がなくなった中でできたわけですけれども、そういうものに変わってきている。同じようにということで六章、八章というものを重視する。この八章は地域的ですけれども、そういうことも言われたわけです。  私は、今PKOを論ずるに当たって、そういう部分を非常に重視していかなければいけない。それ自衛隊に銃を持たせて行かすんだ、いや、それはいけないんだという、そういうところだけが注目されて、そこにライトが当たっているということでは、これは後世の人たちに対して申しわけない。もっとこういう大きな世界流れの中で、PKO変化してきている、PKOもますます軍事的な部分が小さくなっていかなければならないと当面のカンボジアの責任者が言っているという、こうした言葉を大切にしなければいけないと思いますよ。外務大臣、ちょっと首をかしげておられたから、どうですか。
  24. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 大変博学なことをお聞かせ願っているんですが、結論から言うと、首をかしげざるを得ないからかしげたわけであります。  先生の話を聞いておりますと、ではUNTACというPKO活動は悪いのかという、そこのところの意見を聞かせてもらいたいんです。あれは悪い、悪であると。軍事行動を持つから、PKO活動というのは、これはノーベル平和賞を受けたとしてもそれは認めがたいとおっしゃるのかどうか、そこを聞かないと答弁ができません。
  25. 田英夫

    田英夫君 UNTACは、私は悪いとは申しません。これは、私どもPKOに参加すべきだと言っている。これは野田さんに後で社会党案のことを伺うわけでありますが、UNTACの日本が参加できる部分に積極的に参加しようじゃないか、しかも参加する以上はできる限り本当にきちんとした仕事をやろうじゃないか、それにはどういうふうにやったらいいかということをみんなで議論して考えたのが野田さんが提起された案でありますから、私は、今のあのカンボジア状況の中で、UNTACがああいう形で苦悩しながらやっている、このことは本当によく理解ができますし、非常にいいことだと思います。  しかし、日本がその軍事部門に参加をしていいかどうかというところは全く別の問題であります。だからこそ、日本に平和憲法というものがあるからこそ、その部分はだめなんだと世界に向かって堂々と主張したらいいというのが私ども考え方である。  しかし、世界の大きな変化の中でPKO自身もこれからは、繰り返して言いますが、明石さんの言われるように、またそういう事態があったときにできる限りまず民生部門、復興というようなことを国連の手でやっていこうと。だって、従来はいわゆる平和維持軍と、それから停戦監視、選挙監視というところしかやってこなかったんですから。それが今度カンボジアでは既に民生部門に広がりつつある。これがもっと広がるだろう。そうなると、日本の果たすべき分野がますます大きくなってくる。軍事部門はやりませんよとはっきり言っていい、こう思うわけです。どうぞ。
  26. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) そうしますと、要するに、日本はやらないが、ほかの国が軍事部門を担当することはよいということですね。  しかしまた、社会党の幹部の方が私のところへ来て、UNTACに対しては一二・五%というような分担だけでなくて三〇%以上出すべきだということも言われています。この点はいかがですかな。
  27. 田英夫

    田英夫君 いや、大変歓迎します。こういう議論をするのが国会だと私はかねてから思っているのでありまして、大いにお答えをいたしますが、もちろん日本の財布を預かっているのは政府であり、大蔵大臣でありますから、日本が出せる範囲とか、どこから出すかというようなことは政府がおやりになることですが、しかし私どもはアジアの一員として、しかも経済的に大きく育った日本として、やはりカンボジアの問題については応分というのはかなり応分の、アジアの一員としての経済的な、つまり財政的な負担をすべきだと、こう思っております。  その点は、どなたか知りませんが、社会党の幹部の方が言われたという数字までは私申しませんけれども、一二・五というようなことでは少ないだろうということは私も同感であります。お答えになりましたか。
  28. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ありがとうございました。よくわかりました。  問題は、UNTACは主として軍事部門にお金がかかるんです。しかも、このお金は各国の軍隊を出したところに還元されるんです。だから、軍事部門戦争で軍事行使をするからいけない、日本はそれには参加するなと。じゃ、湾岸戦争と同じであって、あのときも湾岸戦争にお金を出すのはいけない、出すべきでないと反対された方もあります。ところが、今回は平和維持活動だからお金を出していいと。  平和維持活動の中身が軍事部門があるからそれはいけないというのであれば、やはりお金は出すべきじゃないというのなら論旨が徹底いたしますが、UNTACのお金は各国に還元されるんですよ、あれは。還元されるんですよ、人件費とかそういうものはしっかりしたある基準に従って。そうすると、軍事活動をやっている人に日本は金を出すということになるんですよ、その三分の一でも幾らでも。それもおかしいじゃないかという議論になってこなければ私はかみ合わないんじゃないかと。  ただそれは、日本憲法がある、憲法の解釈上で意見が違うから日本だけは軍事部門に参加しないと。しかし、軍事部門に参加していることもそれは重要な、軍事部門といったってこれは戦争をやるわけじゃなくて戦争の後始末だから、それには応分の金を出しなさいというのなら私は一貫していると思うんですが、そうなれば私は共通なんですよ。
  29. 田英夫

    田英夫君 そこが違うようですね。  湾岸戦争とUNTACの活動とは全く性格が違います。したがって、あのとき九十億ドルを出すの出さないのという、ああいうものに、さっき国防総省の考え方を御紹介しましたけれどもアメリカが誤った考え方でああいう形でやるものに日本が手をかす、お金も出す、そういうことはよくないと。しかし、国連PKOという、本当に今後もこのことは大事に育てていかなければいけない、新しい時代にふさわしいものにしていかなければならない、そういう中の当面の課題はUNTACであるということですから、UNTACに対して日本がお金を出し、それが軍事部門の活動に使われてもこれは一向に構わないことだと思いますよ。それは出すべきだと思います、国連の活動の中の費用として。  国連の活動の中にはそういう部分もあるわけですから、これは当たり前のことであります。そういうものに金を出していけないなどと我々は一度も言ったことはない。それはどうぞひとつ、応分という意味は多目の応分で出していただきたい。これはしかし、恐らくだれもそういうことを主張した人はいないんじゃないですか。私はそのことははっきり申し上げておきたいと思います。  話がカンボジアの問題になりましたから、カンボジア問題に移っていきたいと思いますが、いわゆる新時代にふさわしい日本PKO法案のあり方というのをここで私ども考えていかなければならない。みんなでひとつこの新時代、まさに総理が言われた平和の配当と言われるこの時代に、しかも平和憲法というものを持っている日本が真剣にどういう役割を果たしたらいいかということを考えるときに、原点に戻りますと、我々ここは参議院ですから、いわゆる一九五四年、昭和二十九年の参議院の決議に戻らないわけにはいかない。  これはお聞きするまでもなく、政府にお聞きすることはなくて我々が決めることですが、あの決議についてはその後何も取り消すとかそういう決議が行われたわけではありませんから、この間も公述人が述べておられたが、生きている、こう考えざるを得ないんですね。これはしかし、行政府に伺うべきではありませんから、私はそういう意見だけを申し上げます。  そこで、もう何度も紹介されておりますから私はこの決議を改めて読むことはいたしませんが、もう皆さんもよく御存じのとおり、海外出動をなさざることの決議という、これはしかし、実に自衛隊が発足したときに時宜を得た、先輩はまことに見事なものをやられたと今さら改めて敬意を表したいと思いますし、鶴見祐輔さんが述べられたこの趣旨説明などは、本当に今ここでやっても全くぴったり当てはまるような、そして将来を見通して実に見事だと思いますね。  鶴見祐輔さんという方は、御存じのとおり、宮澤総理は当時御同僚であって同じ参議院議員であったわけですが、私は、私ごとですが、親戚になるものですから大変彼の人柄をよく知っておりますし、息子は、息子はというのはおかしいですが俊輔君という息子がいますが、彼は私と同年ですから、非常によく鶴見祐輔さんという人を承知しております。作家でもある。この文章もしたがって見事でありますが、本当に将来一度出してしまったらとめどもなく出すことになるだろうと、こう述べているあたりは見事なものだと思います。  この決議、これは先ほども申し上げたように、取り消すような措置がとられていないわけですから、生きている。生きているということは、海外に出動なさざるの決議ですから海外に出しちゃいけないんですね。ですから、今宮澤内閣がおやりになろうとしておられるPKO法案による自衛隊の海外出動は、だれが考えてもこの決議には違反する。国連であろうと、どういう世界情勢であろうと、これは違反する。もし違反したくないならば、これを取り消す以外に方法はない。  政府自民党は、まあ政府は、これは参議院にやってくれというわけにはいかぬでしょうけれども、多数決ででも、あれは満場一致だったわけですけれども、多数決でもこれを取り消す勇気がありますか。これをやらなかったら決議違反ですよ。自民党総裁としてお答えいただきたい。
  30. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この決議の解釈は、最終的には無論参議院が有権的になさるべきものでございますので、そのゆえに田委員から私にそれをお問いになっていらっしゃらないということはわかっておりますが、それだけを申し上げました上で、私はその決議がなされるときに現におりましたわけでございますが、最近またこの当時の鶴見祐輔議員の趣旨弁明を拝続してみました、もう一度。  こういう御趣旨なんだと思います。つまり、自衛権というものは、それは確かにある。あるが、自衛自衛と言ってよそまで出かけていくことになればとめどもないじゃないか、そういうことはいけないんだと、こういうことを言っていらっしゃるんですね。  ですから、自衛ということでよそへ向かって軍隊を、武力行使を広げるというようなことはいけないんだと、こういう趣旨で、今速記録がございませんので残念でございますが、そういうふうに私は言っておられると思っておりまして、自衛隊が武力行使を目的でなく出かけていくというようなことについて、そのときはそういう想像もなかったのかもしれませんが、そういうことを言っていらっしゃるのではないということを私は趣旨弁明をもう一遍速記録で読みまして思ったわけでございますが、しかしこれは院の決議を政府が有権的に申すべきことではありませんで、ただおまえもいただろうという仰せがありましたので、自分の感じていることを申し上げたわけでございます。
  31. 田英夫

    田英夫君 ここに速記録がありますけれども、私も何度も読んでみました。どう考えても、例えば「我が国が不当に侵略された場合に行う正当防衛行為であつて、」、つまり自衛隊がやることはですよ、「正当防衛行為であつて、それは我が国土を守るという具体的な場合に限るべきものであります。幸い我が国は島国でありますから、国土の意味は、誠に明瞭であります。」、こう述べておられる。それから外へ出ることがいわゆる海外出動だと、そういう定義までここに述べておられる。  そして、鶴見祐輔氏の趣旨説明に続いて、我々の大先輩である羽生三七さんが賛成の討論をしておられます。これを読みましても、これもまことに見事なことで、自衛隊の問題についてはいろいろ意見があるがということを述べられた後で、「にもかかわらず、自衛隊の海外出動を認めないという一点で各派の意思が、最大公約数でまとまつたことは、参議院の良識として、誠に欣快に存ずる次第であります。」、こう羽生さんは述べておられる。先輩はそういう気持ちでようやく一致をしてやられたことなんですね、これだけは守ろうと。  これが参議院のあの決議でありますから、今それを破って自衛隊を海外に出動させることに賛成をされる参議院会派皆さんは一体どういうお気持ちでこの決議を受け取っておられるのか、私は問いただしたい。しかし、その場がないんですね。幸いにして、野田さんたちが座っておられるような形で来週からはその三党の代表の方がここに座って修正案について説明をし、答弁をしてくださるだろうと思います。そういう場がなくちゃおかしいですから。  そのときに、その三党なり何党か知りませんが、修正をしようと。修正をしても凍結をしても自衛隊が海外に出ていくことは変わりないわけでありますから、凍結しておいたって、電子レンジじゃないけれども、チンといって解けたら自衛隊の洋服を着たのが出てくるわけですから、そういうことを決議に反しておやりになるという。  海外出動をなさざるということですから、武力行使とかそういうことを言っているわけではありません。自衛隊が武器を持って海外に行くということをやめよう、こう決議しているわけですから、これについて私は修正をしようという各党皆さんにただしたいと思う。あなた方は、それなら先輩がやられた決議を無視して出そうというのですねということを一言わないわけにはいかない。皆さんたちはそれにまさに加わっておられるわけですが、このことは厳粛に考えていただきたい。  鶴見祐輔さんというまさに、保守革新という分け方はもう私はないと思いますが、当時でいえば保守の方ですよ。自民党皆さんの先輩ですよ。緑風会というものがありましたけれども、それはやがて自民党になっていったんですから。そういうことをこの際もう一回申し上げておきたいと思う。  それから、カンボジアの問題について先日もいろいろな点を触れましたけれども、ひとつ難民の問題についてここで触れてみたいと思います。  UNTACの計画では、一日千人、これでやれば三十七万とか四十万とか言われる難民がことしいっぱいで大体帰国できて、来年五月の選挙に間に合うだろうと言われた。とてもそれは無理ですね。今の状況では、これから雨季を迎えるということを考えますと、この計画は全く無理だと言わざるを得ない。非公式に明石さんは、ひょっとするとタイの難民キャンプで投票をするという事態になるか、あるいは選挙を延ばすかしかなくなるかもしれないということを言っておられる。  そこで、この難民の帰国について、当面日本協力できる分野というのは政府はどういうものがあるとお考えですか。外務省どうぞ。
  32. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 結論から先に申し上げますと、UNHCRが中心になって担当しておることは先生御承知のとおりですが、先般、東京に滞在しておられました緒方高等弁務官と私も会談いたしましたけれども、結論から申し上げて、こういう国際機関の活動に対する財政的支援というものが緒方さんの立場からごらんになってやっぱり一番ありがたいということを言っておられまして、先般、御承知のとおりカンボジアの難民帰還問題につきまして一億一千六百万ドル欲しいという国際的なアピールが出ておりますが、これに対しまして緒方さんは、日本が本当に他国に先駆けてトータル三千五百万ドルというものを出すということを非常に早く言ってくれて、これが非常に大きな呼び水になった、本当にありがたかったということを言っておられました。  UNHCRは、こういう国際的に集まった資金を使いまして、物資の調達あるいは人材の確保ということにつきましていろんな分野で熟知しておるわけですから、まさにこういう資金を使ってみずからそういう調達を行い、人材を集めて、それをもって難民の帰還をやるという、そういう意味でこの財政支援ということが非常に重要だということでございます。  ただ、もちろんそのほかに国連としてニーズというものがあるんであれば、人材面の協力ということも、例えばボランティアの活動というのがございまして、日本人の方が現在一名既にコンサルタントとしてカンボジアで働いておられて、さらに水の専門家、水道の専門家が何か近くUNHCRと契約されると聞いておりますが、こういう場合に私たちとしては仲立ちをして人材面でもできることがあればやっていきたいというふうに考えている次第でございます。
  33. 田英夫

    田英夫君 当面、実はこの難民の帰国がさっき申し上げたように大変大きな難問なのでありまして、今国連局長が言われたように、資金面の援助というのは実は難民のための会計は別枠になっているようで、その点で日本はぜひ資金援助をやるべきだと。  それに関連をしてちょっと国連のUNTACの方の計画を調べてみましたら、えらい細かな計画を立てているんですね。例えば帰国していった難民一家族当たりバケツ二個、くわ二つ、かまが二つ、スコップが一つ、なたが一つとか。五メートルの角材二十本、これは家を建てる。それからそのためのビニールシート、とりあえずは屋根はビニールシートだというわけです。くぎが八キロとか、こういう計画まで立てている。  ところが、全く材料が集まらないために、お金がなくて、資材もなくて、したがって帰った難民の人たちは、自分たちの手でその辺の木を拾ってきたりなんかして住むところをつくらなくちゃいけないという実態のようです。そのくらい困っている。  それから、どこへ入植させたらいいのかということを決める作業というのが、これがまた人手がなくて、実際にはバッタンバンにいる竹森さんという日本人が一人でやっているんだそうですよ、これはいわばNGOの人ですけれども。この人の仕事というのは、いわゆるランドサットという衛星で撮ったその地域の写真、その上に、完全なわけじゃありませんが地雷原がどこにあるかという地図、それをオーバーラップさせて、それで地雷原から外れているところで耕地になり得るような、みんなこれ農民ですから、そういう人たちが入る入植地を決めていくという作業を全く一人でやって、御本人はもう日本に帰らなけりゃいけないという個人的な理由があるにもかかわらず、UNTACの方ではあなたに帰られたんじゃこの仕事をすぐにかわれる人はいないということで、引きとめられているというのが実情のようであります。  そういうことで、日本はまず一番先にやるとすれば、難民を救援するためのお金を出すことと資材、これはバンコクならバンコクで買ったっていいわけですから、お金を持っていって、そういうことをぜひやるべきじゃないかというふうに思うんです。  今竹森さんの話をしましたけれども、これは野田議員に伺いたいんですが、ボランティアということで実は日本のNGOの人たちは既に随分向こうへ行っていろんな活動をしている。先日清水さんという人が参考人で来た。彼はその全体の世話役のようなことを若い人ですがやっておられるわけで、野田さんの方から見てこのNGO、日本のボランティアの人たちがどんなことをやってどういうことがこれからあるんだろうかお調べのようですから、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  34. 野田哲

    委員以外の議員(野田哲君) 田委員お答えいたします。  まず、きのうのことですけれども、ある新聞に「PKO再考」という特集の記事が、これは連続で出るようでありますけれども、そこでUNTACの選挙の仕事をお手伝いに行くために男の方が三人、女性が五人成田を出発したときの記事が大きく報道されています。「草の根貢献 背伸びせず」、「カンボジアには文民こそ必要」、こういう見出しになっているわけであります。そういう形で現地でNGOの皆さん非常な貢献をされているわけでありまして、先日見えた清水さんの方から、あるいはまたいろいろ現地での活動の状況の文書などをちゃうだいして私が調べたところでは、次のような状況でボランティアの活動が続けられている。  まず一つは、日本国際ボランティアセンター、先日お見えになりました清水さんが中心になってやっている方ですが、このボランティアセンターが現地でどういう仕事をやっているかといいますと、まず一つは自動車の修理、保守、整備、この技術指導を現地の人たちにやって自動車修理のための人材の育成をやっている。それから、保健衛生知識の普及や保健婦や助産婦の養成の仕事、地域診療所の運営についての助言、それから生活用水を確保するための井戸の掘削。それから、今お話がありました、難民の帰還を促進するための協力、お手伝い、こういう仕事をやっていまして、その活動地域は、カンダール県、それからバンテアイミアンチェイ県というんですか、それからバッタンバン県、そういう地域で活動されている。  それから、曹洞宗ボランティア会というのがやっておられます活動がございます。これは高校生ぐらいの人たちを対象にした職業訓練、それから教育の復興への助言、協力。この曹洞宗ボランティア会の活動地域はプノンペン市、それからプレイウェーン県。  それから、幼い難民を考える会というボランティアの活動があります。これは主として子供の家庭の福祉プログラムをつくること、子供の健康と成長のための環境づくりの助言、家庭相談員の養成、それから保育所の開設と保母の養成、こういう仕事をやっていらっしゃいまして、これは活動地域はカンダール県。  さらに、「二十四時間テレビ」チャリティー委員会というのが現地の活動をやっておられます。これは主として教科書をつくることについての指導、助言、医療活動への援助、それから井戸の掘削。この活動地域はカンダール県ということで、全体としてこれらの方々の活動が行われている地域というのはプノンペンを中心にしたカンボジアの南部の地域とそれからタイの国境沿いの西側の地域、こういう地域でこういう方々が活動を続けておられます。  以上でございます。
  35. 田英夫

    田英夫君 今の野田さんのお答えのように、総理外務大臣、ぜひ聞いていただきたいんですが、既に日本人の青年たちが本当に何にも言わずに見事な活動をしている。私も現場を見ますと、生活なんか大変ですよ。これをこの間の清水参考人は楽しみながらやっているような意味お答えをしておられた。若い人だからできるんでしょうけれども、青年海外協力隊、これに応募してくる人たちもそういう意味で立派だと思います。私も毎回時間がとれる限り青年海外協力隊の送別会には顔を出して激励をしているんですけれども、若い連中は本当にこのごろ若い者はなどと言えない見事なことをやっている。  先日、これも若いグループですが、ピース・ボートという、リーダーは女性ですけれども、この人たちは、船を一隻借り切ってさまざまな物資を積んでコンポンソムに入港した。例えばこのアイデアがおもしろいところは、さすがに女性と思いますが、使い古して今は使わない足踏みミシン、日本じゃみんな電動になっているから。ところが、この間申し上げたように電動ミシンは向こうじゃ電気が全然だめだから使えない。その足踏みミシンを全国で使わない人出してくださいと言ったら、これを聞いてまたどっと集まった。  いろんな物資を持っていったんですね。子供たちが教科書が足りないということを聞いて、そのための紙をたくさん集めた。私も行ってみたら、三、四人に一冊しかなくて、それもぼろぼろになった教科書を首を集めてやっているという小学校の光景を見ましたけれども、そういうことを聞いて紙を持っていった。私のところでも、たまたま友人が鉛筆を何万本と私にくれるというから、もっと早く言えばよかったのを、辻元さんという女性にこれも持っていってくれないかと言ったら、もうとてもいっぱいですといって、残念ながら今回は断られました。こういう点も、政府はそのボランティアを今度は援助する立場に立っていただきたい、このことをこの際にぜひ実行していただきたいという意味を込めてお願いをしたいと思います。  時間が大分たちましたから、これは防衛庁長官のあれになるんですけれども、地雷の問題。これはもう随分議論されてきた問題かもしれませんけれども、今凍結という話が出てきました。凍結範囲は先ほど申し上げたように定かではありません、出てこないとわかりませんが。渡辺外務大臣は一つの例え話のようにして、医療班が歩いていて横に地雷があったら取らないわけにはいかないだろうというようなことを言われたと聞いておりますが、そういうことは別にして、日本は地雷の撤去をやるんですか。
  36. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ただいま御審議をいただいております政府案によりますと、三条の「国際平和協力業務」の中に「放棄された武器の収集、保管又は処分」ということがございまして、地雷という言葉はございませんけれども、これは私ども地雷を含むものというように考えておりますので、当然PKO派遣されれば地雷の処理に当たるというようなことを考えております。
  37. 田英夫

    田英夫君 凍結範囲いかんではこれはわかりませんけれども、しかし外務大臣の例え話で言えば、今の防衛庁長官のお話と合わせると、やることになる。  これは大変長い名前の条約ですが、前に矢田部委員もちょっと取り上げましたけれども、「過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約」というのがあって、これは日本も批准をしているわけですね。残念ながら、カンボジアは現在は政府そのものがないに等しい状態ですから、従来もずっと内戦といいますかベトナムの侵攻に対する戦いが続いていて、批准という形にはなっていない。そういう条約ではありますけれども、これは条約局長がこの前衆議院でお答えになっておりました。しかし日本側はこれ批准しているんですから、この条約の中に定められた義務は守らなければいけないと思いますね。  平たい言葉で言うと、難しい条約の名前が書いてありますが、地雷はこの中へ入るわけですね。その地雷の問題についての知識を自国の軍隊に周知させなければならない、地雷に限りませんけれども、こういう兵器についての知識を自国の軍隊に周知させなければならない、こういう条項がありますけれども自衛隊はそういう教育をやっているんですか。
  38. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今御指摘の地雷全体につきましての訓練は、我が国の防衛所要上必要でございますからやっておりますけれども、今御指摘の国際条約との関係についての法規上、または我が国が加盟しているということで、カンボジアは加盟してないようでございますけれども、これはまだ私はそこまでの、国際条約の周知徹底というところまでは行っていないんじゃないかと、これは想像でございます。  なお正確に調べまして、そういうことを含めて地雷訓練をやっているかどうかは正確にまた後ほどお答えをしたい、こう思います。
  39. 田英夫

    田英夫君 これは実際に非常に悲惨な姿ですが、足が片方ない人とか、一番悲惨なのは、棒でつついて探っていくという極めて原始的なやり方を今担当しているタイ軍なんかはやっているようですが、あったというんで、そっと掘り出していく、その作業のときに爆発してしまったという場合が、こう持ち上げるときに爆発してしまったという人は両手がない、そして、顔に来ますから目が見えなくなる、こういう状態の人が結構多いんですね。これが一番悲惨であります。  そういうことがあってはなりませんから、この条約にも書いてあることであり、地雷についての知識というものを、しかもこれは前田哲男さんという軍事評論家が現地へ行って詳細に地雷について調べてこられた。写真も私拝見しましたが、この間から話が出ているように、プラスチック製とか木製とかいうものは金属探知機に全然ひっかかりませんから、これは手でやるより仕方がないということで今のようなことをやっているようです。  これはもう私は自衛隊人たちにやってほしくないという個人的心情を持っていますけれども、本当に条約で義務づけられているんですから、これは防衛局長もよく聞いておいてほしいんです。「自国の軍隊」と書いてありますが、もちろん外国から見れば、条約に入った以上は自衛隊はその扱いを義務づけられるものと言わざるを得ませんから、周知する教育を、もう批准してから十数年たっているんですから、これは義務違反になりますよ。ぜひそういうこともやっておいていただきたい。  カンボジアが和平ができたからといって決して安全ではないということは先日も申し上げました。喜岡委員新聞の例を引いて言っておりましたけれども、インドネシアの軍隊が、まあインドネシアの軍隊だからインドネシアの新聞ジャカルタ・ポストに出たわけですけれども、本当に危険な状態にさらされたコンポントムを中心とするあの辺は、タ・モックというクメール・ルージュの参謀総長ですけれども、この人が非常に強い姿勢をとって和平に反対をしてきた、この人たち中心とする部隊がまだ抵抗をしていると。ヘリコプターの問題があったのはもうこの春ですけれども、ごく最近あったのがこのジャカルタ・ポストが報道をしたことであって、いまだに戦闘が続いているという状態、そういう中で起こっている。そこへもし行くというようなことになったら、これは容易なことではありません。  最後に伺いたいのは、先ほどの一番冒頭で申し上げた修正というところにまた戻ってしまうんですけれども、いわゆる国会の承認ということが盛り込まれると聞いています。となると、これが防衛出動や治安出動と同じような条文になるとすれば、これは国会開会中であればすぐに、しかし現実には、私は通ることはない、廃案になると思っておりますけれども、今仮にこの国会で、もし修正議決というようなことになった場合には一体国会承認はどうなるんですか。これは仮定の問題ですけれども政府としてお答えになれると。これはあの防衛出動などの規定によると、直近の、今もしこの会期末までにできなければ直近のということになるんじゃないでしょうか。  そうすると、次の国会というのは参議院選挙が終わった後の特別国会ということが予想される。そこで、あえてこの国会承認を求めてでも自衛隊を出そうということですか。報道によると恐らく国会の承認ということが今度の修正の中に入ることは確実のようでありますから、それを強引に押し通された場合には、そしてこれが成立した場合にはもうこの夏の特別国会ででもおやりになるおつもりですか。どなたでも結構です。国会の問題だから事務じゃだめだ。大臣に。
  40. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) まず最初に答えてください。
  41. 野村一成

    政府委員野村一成君) 恐縮でございます。お答え申し上げます。  何分、ただいま先生、国会承認ということで御質問がございましたけれども、私ども政府原案においては承認という仕組みになっておりませんので、また、いろいろと報道されていることにつきましても、実際どういうふうになるかということははっきりお答えする立場にないものというふうに考えておる次第でございます。
  42. 田英夫

    田英夫君 だから審議しなくちゃいかぬのですよ。  ここに並んでおられる大臣や政府委員皆さんには答弁をする権限がないんですから、修正案については。ですから、修正案をお出しになった方がそこに並んで趣旨説明をし、そしてそれに対しての我々の質疑を受けていただかなければどうしようもありませんよ、これは。例を挙げていったらさっきと今とほんの一、二例を挙げたにすぎないのでありまして、もう極めて重要な疑義がたくさんあります。これをぜひ受けていただかなければならぬということを自民党総裁である総理と理事の皆さんを含めた関係各党皆さんにこの場をかりてお願いというより要求をしなければならない。来週からはこの修正案をめぐって審議をさせていただく、このことを最後に申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  43. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ―――――・―――――    午後一時三分開会
  44. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、三案について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  45. 翫正敏

    ○翫正敏君 私の手元には毎日のようにいろんな国民の声が寄せられております。その一つを読ませていただきまして質問の前段にしたいと思います。  「自衛隊の海外派遣に反対し、真の国際平和貢献を要請する決議」ということで、これは五月二十日の日にある女性団体から参議院議員翫正敏殿ということで寄せられたものであります。   今、国会では「国連平和協力」に名をかりて、自衛隊の海外派遣を可能にするための「国連平和維持活動(PKO法案と関連二法案」を成立させようとしています。   これらはまさに「武力による紛争解決」を放棄した、日本憲法に違反し、日本を再び軍事大国化しようとするものであり、私たちは絶対に容認することはできません。   そればかりか、植民地支配と侵略戦争によって犠牲を与えたアジアの人々に対し、未だ謝罪も償いもしていない日本が、海外派兵の道を歩みだすことは、アジアの人々を含む国際社会において許されることではありません。   私たちは、戦後一貫して、世界の平和のために、全力で運動に取り組んできました。それだけに、日本憲法平和主義世界の関心を高めている時に、自衛隊カンボジア派遣することに強い憤りを感じざるをえません。   私たちは、憲法に違反した立法を国会議員に託したおぼえはありません。又、「自衛隊の海外派遣」による国際平和協力に関しても未だ主権者である国民の合意とはなりえていません。   世界の新秩序づくりの中で、経済先進国となっている日本が国際的に貢献することは当然であり、国民各層の納得のゆく、平和協力として難民救済・医療援助・食料提供などの、非軍事・民生分野で一層の努力を実現していくことこそ急務だと考えます。   私たちは、政府提案になる「国連平和維持協力法案」を、撤回し、あらためて、武力によらない国際協力を実現することを参議院議員各位及び政府に対して強く要請致します。 こういう内容でございます。  これは手紙の形になったものですけれども、はがきとして寄せられたもの、こういうものも含めますと山のように私のもとに四月十三日以降寄せられてきておりまして、最初は一枚一枚枚数を数えておりましたが、最近は数えられないくらいに多いわけで、九九%は私の地元の石川県の方から寄せられてきておるというような状況でございます。私は、この有権者の皆さんの強い要請にこたえて、本委員会においては徹底した慎重審議を強く委員長に対して求めていきたいということでございます。これからも引き続き徹底した慎重審議を強く求めたいと思います。  そこで、外務大臣質問をいたします。  指揮権に関する統一見解が三本出ております。平成三年十一月二十日に衆議院に提出されたもの、平成三年十二月六日に本委員会提出されたもの、平成四年五月十八日に本委員会提出されたもの、これは外相発言という名前がついていますが統一見解として提出されたもの、この三本がございますが、政府提出になる本法律案におきましては指揮監督は内閣総理大臣、イコール本部長ということですが、本部長となっているわけですけれども、最後に出されました平成四年五月十八日の統一見解におきましては国連の現地司令官のコマンドのもとに入る、こういうふうにされたわけであります。  この五月十八日に出された統一見解は最終的かつ不動の政府統一見解である、このように理解してよろしいでしょうか。
  46. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) いろいろな言い回しはありますが、最終的に出したものでまとめたわけでございます。したがいまして、これは整合性がとれておると我々は考えております。
  47. 翫正敏

    ○翫正敏君 一、二、三と仮に番号をつけますと、この三本というのは一、二、三と上へ積んでいったものであって、どれかをなくして二にしたり、二をなくして三にしたりという性格のものではない、こういう理解でよろしいですか。
  48. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 整合性をとらせて総合的にまとめたと。順序その他は余り意味がないのです。
  49. 翫正敏

    ○翫正敏君 総理大臣にもお尋ねしておきますが、最終的に、五月十八日付で出されました外相発言という形の統一見解、これが最終的かつ不動の指揮権に関する統一見解、こういうふうに承ってよろしいでしょうか。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのように心得ております。
  51. 翫正敏

    ○翫正敏君 ところで、私はこれを読んでみたんですが、昨年の十二月六日の統一見解におきましては、一、二、三とあります三番のところに「本部長が作成する実施要領に従い、我が国の指揮監督に服しつつ、平和協力業務を行うこと」、こういうふうになっておりまして、これは法案の内容と一致しているわけでございますが、五月十八日に出されました統一見解では「本部長は、国連のコマンドに適合するように実施要領を作成し、または変更し、」の後に、「防衛庁長官は、この実施要領に従って我が国から派遣される部隊を指揮監督し、」というふうに、我が国における指揮監督の主体が防衛庁長官というものに変わっているわけですけれども、これは外務大臣にお聞きしますが、これでよろしいんですか。どうしてこういうふうになっているんですか。
  52. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それはそこに書いてあるとおりでありまして、「法案では、自衛隊の部隊が国連平和維持活動に参加する場合、本部長は、国連のコマンドに適合するように実施要領を作成し、または変更し、防衛庁長官は、この実施要領に従って」というのは、防衛庁長官は本部長の下にいるわけですからね。だから、「防衛庁長官は、この実施要領に従って我が国から派遣される部隊を指揮監督し、国際平和協力業務を行わせることとなっています。」と。だから、本部長が実施要領というものをすり合わせてこしらえまして、それに従って防衛庁長官が具体的な指示を与えると、こういう意味です。
  53. 翫正敏

    ○翫正敏君 この指揮監督の問題は、この法律案の中でも第二条でありますが、「協力の基本原則」というものの第三番目に書かれております。「内閣総理大臣は、」、飛ばしますが、「内閣を代表して」「指揮監督する。」と、中飛びになりますがこういうことになっておりまして、防衛庁長官ということにはなっていないわけです。この五月十八日の文章では、防衛庁長官は指揮監督するというふうになっておりますが、これは間違いではありませんか。
  54. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 正確にお読みいただきますならば、五月十八日の二の点だと存じますね。「法案では、自衛隊の部隊が」というようになっております。自衛官が参加する場合は、個人として参加する場合と部隊としての参加と両方ございますが、ここに書かれておることは自衛隊の部隊がこの活動に参加する場合のことを指し示しておりまして、自衛官個人はもちろんこの本部長である内閣総理大臣の指揮下に入ります。そして、部隊としての場合も、実施計画が定められ実施要領に従いまして部隊の長として防衛庁長官現実に指揮を行うと。最終的には本部長の統括下にあることはもちろんであります。そういう意味で、矛盾はしていないと。
  55. 翫正敏

    ○翫正敏君 矛盾はしていないとおっしゃいますけれども、文章で「防衛庁長官は、」の主語がずっと続いて「指揮監督し、」というようになって、指揮監督の主体が防衛庁長官になっていますね。ですから、これはこの基本原則にある内閣総理大臣が指揮監督するということと国内的な、後で国連の指揮とコマンドですか、それと我が国における問題というのも問題にしますけれども、国内においても内閣総理大臣防衛庁長官のつまり二重指揮になるのではないかという、こういう基本的な疑問を感じましてこれは質問をしておるわけなので、もっと正確に答えてください。
  56. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 防衛庁長官総理大臣の指揮下に入るわけですから、総理大臣のつくった実施要領、作成、またはこれの変更、というものをつくった中で、総理大臣防衛庁長官に言って、防衛庁長官が部隊を指揮すると。全体を指揮するのは本部長であって、部隊を指揮するのは防衛庁長官
  57. 翫正敏

    ○翫正敏君 疑問の内容がおわかりになっておらないようですから、こういうふうに言い直しましょうかね。つまり、内閣総理大臣が指揮監督するということなのか、防衛庁長官が指揮監督するということなのかという問題は、言い方を変えればまるっきり自衛隊がこの仕事を全部やっちゃうのではないかという、そういう疑問をこの文章は持たせる内容になっているというふうに思ったから、そういうふうに私は受けとめたから、これはやはり正しくないんじゃないかと、こういう指摘をしているわけなんです。  ですから、内閣総理大臣がありその下に防衛庁長官がいるから、常にこういう上下の関係になって、ここからこういうふうにいくんだから何も御心配はありませんと、そういうようなことをおっしゃっておられるんでしょうけれども、しかしこれは最終的なこの統一見解という文面ですから、これはやっぱり指揮監督という言葉の主語は、あくまで法律に則して、指揮監督の主語はこれは本部長であるとか内閣総理大臣、これはどちらでもよろしいですけれども、そういう文面にしなければ、その以前からの流れから言いましても整合性がとれないのではないか。  先ほど外務大臣は、整合性をとってつくってきたというふうにおっしゃいましたから、まとめたものであるというふうにおっしゃいましたから、やはり前回の十二月六日の三番の文章の場合には本部長ということになっておりますから、私は内閣総理大臣という言葉を使えとは言っていません、本部長でも構いませんけれども、それは明確にしないと、渡辺外務大臣などが例えば解散云々というようなことでも、これは権限は最終的には総理大臣に一元化しているということで、一元化されなきゃならないわけですよね。  その一元化の問題で、こういう言い方をするとそれは不遜かもしれませんが、自衛隊の暴走ということを、(「自信がないね」と呼ぶ者あり)いや、自衛隊の暴走ということだって考えられないわけではないんですから、やはり内閣総理大臣が指揮監督するというこの法文の内容に則し、そして十二月六日のこの三番に書いてあるとおりにこれは整理をしなければならないのではないかということを強く私はこれを疑問に感ずるんですけれども外務大臣はこれを読まれて、指揮の二元化であるとか防衛庁長官の単独の判断で部隊を動かすとかというようにこれを読むという、そういう疑問を感じませんか。
  58. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は疑問を感じないんですがね。わかりやすく言えば総理大臣が大枠を決めて、こういう範囲でこういうことという計画実施要領というものをつくりますから、その枠の中で、防衛庁長官が連れていった部隊をその枠の中で具体的に指揮する。こういうことですから、やっぱり指揮監督という言葉は使われていますから、それは本部長防衛庁長官も指揮権はあるわけですよ。防衛庁長官はその部隊についての指揮監督をする。総理大臣は全体、防衛庁長官を含めて、防衛庁長官を指揮監督するのは総理大臣ですから、だから二重にはならないんですよ。
  59. 翫正敏

    ○翫正敏君 総理大臣、どうですかお考えは。こういうふうになったら、自分のところから防衛庁長官が独立をして指揮権を、指揮監督権を発動するというように、文章としてのことを言っているんですよ、実際にそういうことをするかしないかということじゃ本当はなくて、この統一見解が最終的にまとまってこれが確固不動のものであるとするならば、その文章において問題じゃないかと、こういう指摘をしているんです。「防衛庁長官」の主語は、やはり本部長とするかまたは内閣総理大臣とするかというふうに改めるべきだと、私はこう思うんですが、総理のお考えはいかがですか。
  60. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 実は委員最初にこれは包括的な、もう最終的なものかという御確認をなさった意味がようやくわかりました。ここで指摘されているのは、包括的に、私さっき自衛官の個人参加の問題を言いましたが、この個人参加の問題でなくて、ここで問題になって議論されている視点は、要するに国連のコマンドと指揮官との関係でございまして、主として部隊、自衛隊の部隊としての行動の場合における問題を前提にしているわけですね、まず第一は。そういうことがございますから、すべて網羅的にこの法体系の、今度の法案の体系の指揮系統を全部網羅的にしているものではないということが第一でございます。  しかし、問題になりましたコマンドについての自衛隊の部隊としての参加との関係は、これがさっき外務大臣の仰せられたように、最終的な統一的なものである、これは間違いないです。他方、内閣総理大臣自衛隊に対する指揮権は、自衛隊法の七条に書いてございます。もう申し上げるまでもございませんが、「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。」と明確に書いてございます。  それじゃ、防衛庁長官は指揮監督権がないかというと、その次に第八条というのがございまして、長官の指揮監督権について、「長官は、内閣総理大臣の指揮監督を受け、自衛隊の隊務を統括する。」。ただし、陸幕長、海幕長、空幕長の監督を受ける部隊及びその機関に対する長官の指揮監督は、それぞれ当該幕僚長を通じて行うものとする。こういうように一貫して最高指揮官は総理、そして防衛庁長官、こういうことになっております。  他方、この国連平和協力法によりますところは内閣総理大臣が、いわゆる国際平和協力本部の本部長としての内閣総理大臣の位置を規定しているわけでございまして、それは内閣総理大臣である本部長がこの法案によりましても実施要領、そのもとは実施計画になりますが、これに適合するようにちゃんと実施要領をつくりまして、そして防衛庁長官がこれで部隊を指揮していくということを申し上げているわけでございますから、これは自衛隊法とそれから今回の法律、おのずから国際協力本部というのはまた別に組織としてはつくるわけで、その本部長総理大臣である、それと防衛庁長官との関係を律したもの、こういうように理解をしていただきたいと思います。
  61. 翫正敏

    ○翫正敏君 総理にもお答えいただきたいんです。つまりこれは、私らこの法案に反対ですが、反対の者が何を言っているんだと、そういうことは言ってほしくないので聞いてほしいんですけれども、つまり自衛隊がそのままこれは行くわけじゃないんです。一応別個の平和協力隊というものと併任されるわけです。そしてそれのトップはこの法律に書いてあるとおり内閣総理大臣が指揮監督するという指揮の国内的な一元化、そして国連のもとにおいては国連のコマンドに一元化という、後からこの問題点はちょっとただしていかなきゃならないと思っておりますが、とにかく今国内的な問題で言えば、防衛庁長官は外して、これはやっぱり内閣総理大臣に指揮監督を一元化するというのがこの法案の大原則だ、基本原則と書いてあるんですから。総理、ちょっとお考えをお示しください。総理お答えください。
  62. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、防衛庁長官から法律を読んで御説明を申し上げたとおりでございます。
  63. 翫正敏

    ○翫正敏君 納得いかないので、これちょっと理事会で検討してください。これで間違いないのかどうか。(発言する者あり)理事会で今してくれと言っていないです。今聞いてくれと言っていませんが、これ基本原則にかかわる重要な問題で疑問があるんだから、委員長理事会で後刻検討してください。
  64. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) なお、さらに納得いただくように追加の答弁をしていただきます。
  65. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) もう一度それではちょっとくどいようでございますが申し上げさせていただきます。  自衛隊の方の点は先ほど申し上げたとおりでございます。これは一貫して総理大臣が最高の指揮権を有する、それから私も指揮監督をできるという権限が、七条八条で書いてあるのは答弁したとおりでございます。  他方、この国際協力法案によりまして内閣総理大臣は本部長たる資格を与えられるわけです。その本部長たる資格のもとにおいてこの方向性の中の位置づけ、最高指揮権者としての内閣総理大臣は本部長になり、そしてそのことについて記述をされておりまして、そして私がさっき自衛官個人として参加する場合は内閣総理大臣の直属の指揮を受けますということを申した点もこの法案では明確になっています。部隊として行動する場合はこの実施要領に従って防衛庁長官が直接指揮をしますが、結局最終的には本部長である内閣総理大臣の責任に、指揮監督の責めになることはこれはもう申し上げるまでもない方向性になっておるわけでございます。御理解をいただきたい。
  66. 翫正敏

    ○翫正敏君 今おっしゃっていることは、実施要領のところで第八条の三項のところに、本部長は、必要と認めるときには自分の権限の一部を別の、これは隊員と書いてありますけれども、だれか協力隊員の一人に委任することができるという、このことによって防衛庁長官に自己の指揮監督権を委任する、そういう意味ですか。総理、どうですか、そういう意味ですか。
  67. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  ただいまのはたしか八条の三項の実施要領の作成または変更に関する権限の一部の委任ということでございまして、その規定、これは本部長はまさに実施要領を作成または変更するわけでございまして、その権限の委任の問題とただいま御指摘になっております指揮監督の問題とは違う。
  68. 翫正敏

    ○翫正敏君 違うのならば、やっぱりこれはこの法案の大原則である、基本原則である「内閣総理大臣は」と書くか、または「本部長」と書くか、どちらかを主語にしていただかないと、この統一見解はおかしい。絶対おかしいですよ、これ。だから、理事会で検討してくださいと言っている。しないんですか。
  69. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今、八条の三項の権限の一部委任の説明が野村室長の方からございましたが、この九条の平和協力業務の実施について、「防衛庁長官は、実施計画に定め」るこの「平和協力業務について本部長から要請があった場合には、実施計画及び実施要領に従い、自衛隊の部隊等に国際平和協力業務を行わせることができる。」という規定がございます。これによってこの法案の中では、協力部長防衛庁長官に部隊としての要請をされるわけでございます。そして、それに基づきまして実施要領に即応して防衛庁長官が実施していく、こういう構成になっておりますことをぜひ御理解いただきたいと思います。
  70. 翫正敏

    ○翫正敏君 いや、ちょっと理解できないんです。防衛庁長官が指揮監督するというのが生に出ていますね。「防衛庁長官は、」「部隊を指揮監督し、」と、中飛びにすればそうなるわけで、内閣総理大臣が指揮監督するということとこれはやっぱり、必ず衝突すると私言っているわけではありません、同じ日本国の中の、それも総理大臣があって任命された防衛庁長官がおいでて、そしてされるわけですから、常にいつも衝突するとか暴走するとか、そういう極論を申し上げるつもりではありませんが、やはりこの統一見解としてつくられる以上は、私はそれはちゃんと法律の大原則に書いてあるとおり、指揮監督者というものは総理大臣であると。本部長と言いかえてもいいですが、法案では本部長となっているんですから。  そうしてもらわないと、これはやっぱり読んだ私も納得できないし、国民も納得できないわけです。(「わからぬのはあんただけだ」と呼ぶ者あり)わからないのはあんただけ、そんなことはないです。だから、ちょっと再検討してください。
  71. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 決して独自に防衛庁長官が指揮監督をするわけではございませんで、最高の指揮官と申しますか責任者である内閣総理大臣がこの国連平和協力実施本部の本部長をなさるわけです。それに従って、適合したような実施要領に従って部隊を指揮監督するということを書いてあるわけであります。  したがって、委員の御指摘の点は、多少形式的な論理構成がどうかという御議論のようにも拝聴できます。つまり、ここでは包括的な統一見解だと言いながら、部隊使用、自衛隊の部隊として参加する場合のことだけが記述されておって、それが「防衛庁長官は、」と出てきているけれども、実際は個人参加の場合は国連平和協力部長が直接指揮する場合もございますから、そういったことを包括的にやるべきでないかという御疑問も形式的にはおありかと存じますが、先ほど申しましたように、この文書はまさに国連のコマンドと自衛隊の部隊としての行動との整合性、調整の問題が議論されまして、それを最終的にこれで外務大臣から申し上げた、こういうことでございますので、その点は御理解いただかないとならないと思います。
  72. 翫正敏

    ○翫正敏君 十二月六日のときには、三番のところに「本部長が」というふうにちゃんと主語がなって、「指揮監督」となっているわけです。要するにこの三本の統一見解というのは指揮権に関するものですね、指揮、コマンド、指図、こういうことがいろいろるるずっと議論されたので、それを一回まとめて出され、またいろいろ議論が出たので二回目出され、またさらにいろいろ出たので最終的にまとめられて三回目ということになったわけでしょう。  それで、外務大臣がおっしゃったように、三番目というのは、一、二も含めて総括的に網羅して三番目とまとめたんだと、こうおっしゃったわけですね。そうであれば、この二番目のところと同じように、あくまで「本部長が」というふうに一元化してこの二番目の文章を変えていただいた方がより正確にはっきりわかると私は思うんです。  だから、これは非常に私は疑問なので、説明を聞いてもちょっとわからないので、後でちょっと理事の方で検討してください。
  73. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) では、また防衛庁の方から、畠山防衛局長
  74. 翫正敏

    ○翫正敏君 防衛局長答弁してもらってもしようがないですよ。
  75. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) いや、補足説明ですから。
  76. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 同じことを申し上げることになると思うんですが、別の言い方で御説明をさせていただきたいと思います。  ここの文章の「防衛庁長官は」というところが問題だという御指摘のようでございますけれども、これを御指摘のように本部長ないし総理大臣というと矛盾したことになってしまいまして、「実施要領に従って」でございますから、実施要領をつくるのが本部長でございますから、その本部長がつくった実施要領に本部長が従うということは、意味するところがなくなってしまうので、そこで、まず閣議決定した実施計画に基づいて本部長が実施要領をつくって、その範囲内で具体的に指揮するのが防衛庁長官だということは、先ほど防衛庁長官から申し上げました法案の九条四項のところで、実施要領に従って防衛庁長官はと書いてあることと全く同じことを言っているわけでございまして、そういう意味合いでございます。
  77. 翫正敏

    ○翫正敏君 ちょっとよくわからないんですが、時間の関係もありますので留保します。またぜひ検討してください。  それで次に、たくさんあるのでやらなければならないんですが、この中に、十二月六日の分ですが、この五番目です。ここに、「主権国家がどうして国連の事務総長の指揮に従うことがあるか」、こういうふうに総理大臣答弁を行ったということが書いてありますね。この「主権国家がどうして国連の事務総長の指揮に従うことがあるか」というこの総理の発言というのは、これはトータルにまとめられた中では自然と消えているわけですけれども、これは撤回された、こういうふうに理解してよろしいですか。
  78. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはいわゆる、前のお話に返るんですけれども、懲戒権、懲戒ですね、懲戒権というようなことはあるのでございますがというようなことなんでございますね。それで、あとはこの今の統一見解でお読みいただければいいと思います。
  79. 翫正敏

    ○翫正敏君 いや、総理は、議事録をずっと読みますと、この発言は再三にわたって繰り返し、国際公務員ではないんですからと、こういうことを前置きされながら、「主権国家がどうして国連の事務総長の指揮に従うことがあるか」と。明石さんみたいな国際公務員の方は別だという、こういう意味を踏まえながら、前置されながら、再三にわたっておっしゃっておられるわけですよね、委員会の中で。  だから、これは最終的にまとめられた国連の指揮、「コマンド」、コマンダーのコマンドですか、コマンドのもとに入るわけですから、「主権国家がどうして国連の事務総長の指揮に従うことがあるか」という、こういうことをたまたま一回ちょっと言われたということではないので、再三再四にわたって国際公務員ではないということを前置されながらおっしゃったわけですから、やはりこれは総括的なまとめの段階で撤回になって消えた、こういうふうに理解してよろしいんでしょう。
  80. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) つまり、国際公務員ではありませんから、任免とか身分、懲戒というようなものは国連の事務総長やなんかができることではないんで、それは政府等の主権国家がその点は持っておるということは前から何度も申し上げておりまして、コマンドの関係は今のこの五月十八日の見解に包摂されるものでございます。
  81. 翫正敏

    ○翫正敏君 じゃ、現在でも「主権国家がどうして国連の事務総長の指揮に従うことがあるか」というこういう御発言と見解は維持されておる、今日ただいまも総理は維持されておると、こう理解していいですか。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 身分に関すること、懲戒等に関してはそうでございます。
  83. 翫正敏

    ○翫正敏君 身分に関して、懲戒に関してということじゃなくて、そういう文面の中でじゃなくて、「主権国家がどうして国連の事務総長の指揮に従うことがあるか」というこの表現では、これはもう国連のコマンドに従わないということを、我が国は総理大臣が指揮監督して我が国の部隊を動かすんだという、そういうことをずっと言っておられたわけですから、これはやっぱりほかの、社会党じゃなしにほかの党からのいろんな主張があったりして最終的に指揮権の問題ということでまとまったわけでしょう。この五月十八日の時点でまとめ出されたわけだから、その従前の答弁というものについてはいろいろ誤解を招くことがあった。あったから撤回をされたんじゃないんですか。そうでないんですか。
  84. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 初めからそれは一貫しておりまして、「「コマンド」に従う」ということは、実施要領をこういうふうに書くんだと、この法律にございますとおりでございます。それはコマンドに従うのです。それは初めから一貫してそうでございまして、ただ身分とか懲戒とかいうことを国連の事務総長ができるわけではない、これも一貫しておることでございます。
  85. 翫正敏

    ○翫正敏君 これも本当に総理答弁は納得できないんですが、またやっているとどんどん時間がたって同じことになりますので、これもまたそのうち、まだきょうは一回戦ですから、初めて出てきたので、これから二日目、三日目、四日目と出る機会がありましたらまたしつこくやらせていただきますが、ちょっと一応終わります。留保して終わります。  それで、平成三年九月二十七日の武器の使用と武力行使の関係についての統一見解、こっちの方に移ります。  これにつきまして、これ読みますと、武力の行使に当たらない武器の使用例というものがこの二の方の「例えば、」というところ以下に書いてございますね。読まないでもいいと思いますが、「例えば、」以下を読んでみますと、  自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員の生命又は身体を防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限の「武器の使用」は、憲法第九条第一項で禁止された「武力の行使」には当たらない。 こういうふうに書いてございますが、これは「例えば、」と、こういうふうになっていますから、これ以外の武器使用憲法九条第一項で禁止された武力行使に当たらないという場合、そういう場合、この統一見解はもちろん国外におけるPKO活動の、つまり外国の領土、領海、領空というところでの活動ということで言っていると理解していますから、書いてはありませんがそういうふうに理解しますが、そういうことで、そういう前提を付しつつ、もっと厳格にこれをほかにもあるのかどうか示していただきたいんですが、これは法制局になるんですか、つくられたのは。
  86. 工藤敦夫

    政府委員工藤敦夫君) お答えいたします。  今、委員の読み上げられたものにつきましてのお尋ねでございますが、ここで「武器の使用」と申しておりますのは、その一にございますように、いわば武力の行使と対比させながら武器の使用という概念を申し上げ、かつ憲法九条一項の「武力の行使」というものは「「武器の使用」を含む実力の行使に係る概念である」ということで両者の関係を言い、そして「「武器の使用」が、」ということでその後を述べているわけでございます。  その特に「例えば、」とございますが、ここは今回の法案二十四条のところで書かれておりますものを引きましたわけでございまして、そういう関係にあるということで申し上げているわけでございまして、「例えば、」というの以外に、ここに挙げましたもの以外にどういうものがあるかということでございましたら、むしろその「武力の行使」というそこの「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」に当たらないもの、これがいわば武力行使でないと、こういうことになろうと思います。
  87. 翫正敏

    ○翫正敏君 それは後でまたもう一遍聞きますから、よく覚えておいてくださいよ。それはぐるぐる回りにならないようにちょっと気をつけますがね。  それで、議事録をいろいろ読んでみましたんですが、平成三年十二月五日のこの参議院の当委員会の議事録を読んでみます。政府委員丹波實さんのこういう答弁があります。  武器がいかなる場合に使用できるかということを規定いたしております。それによりますと、これらの武器はセルフディフェンス、自衛の場合にのみ使用を許される。その自衛とは次の二つを含むというのが一般的な考え方で、A、自己の生命を防衛するため、B、PKFの任務が実力により阻止され、これに抵抗する場合。日本がPKFに参加するに当たりまして、けさほどの法制局長官の御答弁にもございましたけれども、Bのケースについて、一般的に日本が武器を使用するということについては憲法上議論があり得ると。したがって、Bについては、一般論としては、Bのケースということだけでは武器の使用はしない。 こういうふうな答弁がありまして、それを受けて同日、それから少し実はページが飛びますが、宮下防衛庁長官が、   SOPに必ずしも全体として拘束を受けるというものではないというように私は理解しております。   その例としては、ただいま国連局長が御答弁申し上げておりますように、例としてA、Bのケースがあり、我が国としてはAのケースのみに武器使用が認められておる、そしてBの場合には武器使用はいたさないということを事前に国連に了解を得ているということでございます こういうふうに答弁されておりますが、現在もこういう答弁は維持されているということで理解してよろしいですか。
  88. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 私が述べたとおりでございますが、委員の丹波局長答弁と私の答弁との関連を問題視されておられると存じますけれども、丹波局長の言ったのは、任務遂行のために国連の場合には武器使用があり得ると、生命、身体の防護のほかにですね。しかし、その任務遂行といっても、具体的に生命、身体の脅かされるケースが中に生ずることは、これは間々実態としてあるという前提のもとに、Bで任務遂行のための武器使用は我が国の場合は禁止しておりますよ、この法案は。しかし、それが二十四条の自己の生命、身体を守るための武器使用になり得るケースも、何といいますか、転化する可能性を否定してないというように私は理解しております。  しかし、あくまでも日本のこの法制では、自衛官が自己の生命、身体または同僚の生命、身体が脅かされるときに武器使用ができると。しかも、その場合も相手に危害を加える場合は正当防衛、緊急避難に限るということを厳密に書いてございますから、私はそのように今も理解しております。
  89. 翫正敏

    ○翫正敏君 それで、五月二十二日の本院の答弁で丹波政府委員はこういうふうに言っておられるんですね。   三番目の武器の問題でございますが、先ほどからも御説明申し上げてまいりましたけれども、軍事要員が派遣される場合に、武器の携行が国連の過去の慣行あるいは文書によって認められることになっておりますが、この武器は自衛のためのときにしか使ってはならないということになっておりまして、その自衛と申しますのは、自己の生命を防衛する場合、それから国連の任務が武力により阻止された場合それに抵抗する場合という二つのケース つまり、さっきのこれで言うとAの場合、Bの場合ですね。  二つのケースがその自衛の中に含まれるということで、いずれにいたしましても、これは武器の使用でございまして、武力の行使という考え方で理解されているものではございません。 というふうに答弁されたんです。また後で少し補強されたようですけれども、このときこういう答弁をされたのは、これはこの十二月五日の日の大臣の答弁に反するのではありませんか。
  90. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 国連のこのPKFの活動に当たりましての武器使用考え方につきましては、衆議院の段階から一貫して基本的な考え方を御説明申し上げてきておりまして、何ら違いはないわけです。  先生が引用になられた五月二十二日の私の答弁でございますが、質問しておられた先生が答えは簡単にとおっしゃられたので簡単に申し上げたわけですが、そこで私が申し上げた中で、これは基本的には武器の使用の問題であって、武力の行使というそういう中で議論されている問題ではございませんと、簡単に申し上げたわけでございますけれども、後ほどこれだけでは誤解を呼びかねないということで、五月二十七日に答弁の機会があったときに、国連では自己の生命を防衛する場合とそれから国連の任務が妨害された場合の二つにつき武器の使用が許される、二つとも武器の使用の問題であって武力の行使の問題ではございませんということを申し上げましたけれども、それは基本的にはという意味でございまして、後者につきましては、状況によっては武力の行使に該当する状況も排除されませんということをつけ加えて御説明させていただいたと、こういう次第でございます。
  91. 翫正敏

    ○翫正敏君 二つ聞きたいんですが、二十二日の日にはなぜこういうふうに防衛庁長官答弁と、それからさらに言うならば従来の丹波国連局長自身の答弁とも違うことをおっしゃったのか、その理由ですね、これが一点。  それからもう一点は、このときの答弁、私、二十七日の答弁をちょっとテープを起こしてみたんですけれども、前の委員会、これは五月二十二日のときに、私が先生、これは質問された喜屋武眞榮議員なんですが、に武器の携行と武力の行使の問題について御説明申し上げましたときに、国連では自己の生命の場合とそれから国連の任務が妨害された場合の二つにつき武器の使用が許される、二つとも武器の使用の問題であって武力の行使の問題ではございませんということを申し上げましたけれども、基本的にはそういうことでございますという意味でございまして、後者につきましては、場合によっては武力の行使にあるいは当たる場合もあるということを申し上げて、補足的に御説明させていただきたいと思います、と。テープを起こすとこういうふうになっているんですね。  それでお聞きしたいのは、さっき聞いたことが一点、なぜこういうふうに二十二日の日に言われたのかということと、もう一点は、じゃ、場合場合があるとこうおっしゃるならば、その場合場合を区別する線引きの基準ですね、それを示してください。
  92. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 前者につきましては、今も御説明申し上げた中に含めたつもりでございますが、国連が、A、Bのケースですね、これは基本的にはいかなる場合に武器を使ってよろしいかという、基本的にはそういうことを論じた世界の問題ですということを申し上げようと思ったわけですが、その基本的にはという言葉が必ずしもきちっと入っていなかったので、誤解を呼んではいけないということで補足的に二十七日の日に御説明を申し上げた、こういう次第でございます。  第二番目の点につきましては、この点もある委員の先生から具体的なケースを挙げられて、これはどうだ、あれはどうだと御質問がありましたけれども、これは具体的な状況の中で、問題は自分の生命を防衛する必要があるかどうかというそういう判断がその現場で行われるということでございまして、抽象的にこういうケース、ああいうケースと挙げられても、そこで抽象的に線を引くというのは難しいということで御理解をいただきたいということを御答弁申し上げたことがございます。
  93. 翫正敏

    ○翫正敏君 結局は、丹波さんのおっしゃりたいのは、自己または自己とともに現場に所在する生命、身体の、Aの場合ですね、このAの場合においてのみ武器使用が認められる、つまり憲法九条第一項で禁止された武力行使には当たらないということにおさまるのだ、こういうことをおっしゃりたいんですか。そのBの場合について、任務遂行への実力妨害に対する武器の使用の問題について、これを武力行使に当たる場合と当たらない場合というように二つに分けるという意味ではない、こういうふうにおっしゃりたいんですか。そう理解していいんですか。
  94. 丹波實

    政府委員(丹波實君) もともとは憲法の問題から出てきている問題ですけれども、私たちがPKFに参加をしていくというときの法的な考え方、枠組みというものを検討した際に、国連の過去の慣行あるいは文書を調べてみますと、まず武器の携行が許される、その武器は自衛の場合にのみ使用が認められるとあって、その自衛とは次の二つを含む。一、自己の生命を防衛する場合、二番目は国連としての任務が実力により阻止された場合。前者のケースにつきまして武器を使用するという点については、人間のいわば自然的な権利として異論はないんだろうと思います。ただ、第二番目につきましては場合によっては憲法上の論議があり得るという、抽象的にはそういうことでございます。  しかし、それではBのケースが起こったからすぐその瞬間に発砲しろということは国連は言っていないんですね。まず説得しなさい、いろいろそういう手続を経なさいということを言っておりまして、その手続を経ているうちに、相手が言うことを聞かずにこっちに発砲しようとする瞬間というのはやっぱり場合によっては起きてくるであろう、そういうケースはAに転ずると申しますか、こっちの生命が危ない状況であって、法案二十四条上の武器の使用が認められる事態であろう、そういう考え方で仕切ったということでございます。  あわせて一言だけつけ加えさせていただきますと、この仕切りをする際に幾つかの国にそのBのケースで武器を使ったことがあるかどうかということを聞いてみましたけれども、そういう事例というのははっきりしたものとしてはなかなか、私は実態がゼロであったということをここで断言するつもりは毛頭ございませんけれども、そういうケースというのはなかなかないということを各国が説明していることもまた事実なので、そういう意味では、抽象的にはA、Bでしょうけれども現実のケースとしてはその本質、PKFは戦いに行くわけではないという本質から考えて、なかなかBのケースというのがそう多いということでも同時にないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  95. 翫正敏

    ○翫正敏君 そう多いのではないとか、数の大小の統計学の話を今しているのではないのです。  このSOP、ガイドラインによれば、今問題になっているA、Bという場合、このB、つまり実力でPKOの活動が妨害された場合にはすぐに武器の使用――武力行使というふうになっていますけれども、この文書は。そういうふうにするのだと書いていないことはもちろんですが、最終的にはそういうふうになるというように書いてあります。我が国においてはそれは憲法第九条第一項に禁じられた武力行使に当たるということなのでこれはしないと、そういう説明を今までされてきたと思うので、その点について法制局長官の方からひとつ、先ほどの平成三年九月二十七日の「武器の使用と武力の行使の関係について」の統一見解を踏まえて、補強があればちょっと御説明ください。
  96. 工藤敦夫

    政府委員工藤敦夫君) お答えいたします。  今の御質問につきましては、基本的には私はただいまの国連局長答弁のとおりだろうと思います。  ただ、そこにおきまして若干私が補足するといたしますと、例えば任務の遂行を実力をもって妨げる企てに対抗する、こういった場合、その場合に、それが先ほどの答弁で私申し上げましたように、「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」に直ちにそのままいつでも当たるということであるかどうかについては、これは状況のいかんによって違います。憲法の規定しておりますところは、先ほど申し上げましたような、定義いたしました武力の行使、これを禁じているわけでございます。そこはケース・バイ・ケースで判断されるべきもの、ケース・バイ・ケースのことであろう、かように考えます。
  97. 翫正敏

    ○翫正敏君 そうしますと、法制局長官の立場からいいまして、この九月二十七日の政府の統一見解の中の二項に「例えば、」と書いてあって、「例えば、」以下がありますね、この点について、ここで「例えば、」ということであるのでいろんな場合があって、その中の一例としてこういうのがあってということが書かれている。私に言わせれば、こういうところの不明確さから、丹波国連局長が先ほど言われたように場合によってはというような言い方で、線引きの基準もなかなか難しいんだと思いますが、そういう武器の使用、武力行使、この問題を出されたわけなんですね。  だから、この統一見解における「例えば、」というのはやっぱりちょっと厳格性を欠いているというように私は思うんですが、そういうふうに長官はお思いになりませんか。
  98. 工藤敦夫

    政府委員工藤敦夫君) ただいまの御質問の点でございますが、例えば国内的なことで申し上げれば、警察といったようなところで武器の使用という用語を使っております。それから国際的に申し上げれば、先ほどのような定義から申し上げれば、いわゆる紛争当事者の一方となるような場合、これが問題なのであって、そういう意味で先日いつぞや謙抑的というふうに私申し上げたことがございますが、そういう意味で構成しているということでございます。
  99. 翫正敏

    ○翫正敏君 工藤長官の話を何遍聞いてもいつもわからぬようになるんですけれども、もう一遍丹波さんに聞きます。  二十二日のときに喜屋武議員の質問に対してお答えになった点については、私は、言葉足らずであったとか、それからちょっと時間がなかったのではしょったとかというようなことではなくて、かなり大胆に従来の見解を変更するような踏み込みをなされたのではないかと、あのときそういうふうに感じたんですね、そこで後ろで聞いておりましたが。それでその次のときに、喜屋武議員からは何の質問もないのに、出てこられたときに、何やらで恐縮ですがとかというような前置きをされて補強をされたんですよね。ですから、やっぱり二十二日のときの答弁というのは、これは従来の見解から見て逸脱したものであったということを自主的にお認めになって、そして二十七日の時点で言い直された、こういう理解をしてよろしいですね。
  100. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先ほどの御説明の中に含めたつもりですけれども、この国連のSOPなりその他の書類が、この問題、例えばサイプラスのときの事務総長見解もそうですけれども、基本的には武器の使い方というものを論じておるんですということを申し上げたかったわけですが、その基本的にはというところが必ずしも後で議事録的に当たってみましたらなかったので、誤解が生じてはいけないということで補足させていただいた、こういうことでございます。
  101. 翫正敏

    ○翫正敏君 非常に納得ができないんですけれども、まあそれは留保しましょう。一応次に行きます。二日目もありますから、またやります。  国連の平和維持活動の一覧というのを見ますと、一九四八年のパレスチナ休戦監視から一九九二年のソマリア停戦監視まで二十七回の国連PKO国連決議されているわけですけれども、この国連PKOでSOPが作成されているもの、作成されていないもの、これ仕分けをしてください。
  102. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 全部についてSOPが存在しているかどうか承知いたしておりません。  例えば最近の例で申しますと、この点もこの委員会で最近少なくとも二、三回申し上げましたけれども、UNTACにつきまして四月の二十日前後に国連本部に問い合わせたときにはまだSOPはできていなかったわけです。その時点で、ユーゴに展開しているPKFにつきましても同じことを問い合わせたのについて、その時点ではできていないと言っていました。あるいはもう、きょうはできているのかもしれません。  それから、一番最後に、二十七番目に設立されたソマリアでございますが、これはオペレーション自体がまだ始まっていないということで、そういう意味ではSOPはできていないと思います。  それから、最後に一言。  四十三、四年かの歴史でございますので、そんなにきちっとしたものが最初からできていたのかどうかという問題もございますし、そういう意味で総括的に申し上げますと、全部について承知しているというわけではございませんので、ひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。
  103. 翫正敏

    ○翫正敏君 多分そうだと思うんですね。積み上げてきたものの中でだんだんガイドラインというものにもまとめられてきているわけですから、最初からあったとは思えませんね。  それで、一から全部聞いて、本当は教えてもらったら一番いいんですが、じゃ、後ろからさかのぼってください。二十四番から二十三、二十二とこの表で上がって、わかる範囲でSOPがつくられているのといないのを仕分けしてください。それから古いのはわからないと、こういうことで結構です。
  104. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先ほど申し上げましたとおり、全貌を把握しているわけではございません。例えばUNAMICでございますね、これはUNTACの前身ですけれども、これにつきましてはSOPは作成されていないということで、短期間の活動でございますから、恐らくそのままで終わったんだろうと思うんです。  それから、今申し上げたUNTACとユーゴにつきましては恐らく現時点ではできているんだろうと思うんですけれども、そういうことでございまして、上に上がれば上がるほどさかのぼりますので、SOPがあるかどうか全部聞いたわけではございませんので、この場でそれ以上は御答弁申し上げることはできないということでございます。
  105. 翫正敏

    ○翫正敏君 それはちょっと国連局長、おかしいんじゃないですか。  私がさっき一から全部言ってくれと言ったのは、それは昔の古い古い話で、四十年も前のものというようなことで無理なのかなと思って、今度はこっちからと言ったんですよ。全くわからないということですか。そんなことないでしょう。そんなばかなことで国連局長が務まるんですか。  それは、ほかのところのものを出せと言っているんじゃないんですよ、私は。前にカンボジア、それからユーゴのSOPを出してくれと言ったら、それはないということだったんですよ。ないものは出せないですわね。それはそれで結構ですが、それ、さかのぼるものでつくられているのかいないのか、そういう把握もできていなんですか。そんなことはないでしょう。隠しているだけでしょう。ずっと言ってくださいよ。私はこれにマルかペケかつけていくだけですから。それで、それからもっと古いのはわからないと、そういうことでいいですよ。
  106. 丹波實

    政府委員(丹波實君) これは先生、私たち、全貌は必ずしも把握していないということを申し上げておる次第で、例えば一九七四年につくられましたUNDOFにつきましてはSOPが存在しているということを聞いております。
  107. 翫正敏

    ○翫正敏君 何番ですか。
  108. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 番号は十二番に当たると思いますが、ゴラン高原ですね。  それから、一九七八年のレバノンの場合には存在していると聞いております。それから一九八八年のイランイラク軍事監視団、それから七八年のナミビアのUNTAG、それには存在しているということは承知いたしております。  そこで、先生、ぜひ御理解いただきたいんですけれども、先生も御承知のSOPにつきましてのモデルSOPというのが存在していて、これは過去に国連が使ってきたといいますか、作成してきたSOPをみんな総合的にそのエキスを取り出して取りまとめた書類なんです。したがいまして、私たちはSOPの問題を考える場合には、この書類を見ていれば総合的なものだということで、これは把握しなければいかぬと思っていますけれども、過去二十七全部について個々に把握していないから、できない場合も、存在していないのも恐らくあるんだろうと思います。いずれにしても、状況はそういう状況にあるということでございます。
  109. 翫正敏

    ○翫正敏君 今把握していないのはわかりましたが、それはやっぱりちゃんとあるのかないのか調べるべきだと思うんですよ。だから、あるかないかを言っているんですよ。ここへ出せという話はまたこれから言いますが、あるかないかだけは、古いのはない、この辺からはつくられるようになったけれどもこのPKOはいろんな事情があってできていないとかいうような仕分けは、この二十七のうち全部で十ぐらいは今説明してもらいましたね、できていない、できているということで。あと残りについても、後刻でいいですから仕分けをして示してください。よろしいですか。ちょっと答弁してください。
  110. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生のせっかくの御質問でございますので、国連に問い合わせたい、結果については追って先生のところに御報告申し上げたいと思います。
  111. 翫正敏

    ○翫正敏君 PKOのSOPと、SOPのガイドライン、これですね、これは和訳だから、和訳が完全に正確かどうかということは、私は仮訳のこんなのを持っているわけですから、それはちょっと別として、外務大臣、この中身を比べてみて、今いろいろ重要な問題点として私も指摘し今までも指摘されてきたのは、指揮権の問題と武力行使の問題ということが非常に大きいと思うので、その内容についてSOPと、つくられているSOPですよ、それとSOPガイドライン、まとめられたこれですね、これと指揮権の問題と武力行使の問題で違っているという、そういうことはありますか。そういう把握しているのはありますか。
  112. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生、まことに申しわけありません。先生の御質問意味が必ずしもよくわからないんですけれども、もう一度、申しわけございません。
  113. 翫正敏

    ○翫正敏君 指揮権の問題と武力行使の問題という、こんな長いものですから全部全く同じだということは、そういうことを聞いているんじゃないんですが、非常に重要な論点として今まで議論されてきたことで言いますと、指揮権の問題、これにも何ページかに書いてありますね、ガイドラインの方では。それから武力行使の問題、これもこの何ページかに書いてありますでしょう。  こういうことについて、既にできているSOP、PKO派遣されたその当該地のSOPですね、それとこのガイドラインの中身が、武力行使の問題と指揮権の問題の二つに限って言いますが、これについて違っているという例はありますかと聞いているんです。
  114. 丹波實

    政府委員(丹波實君) どうも失礼いたしました。  まず、SOPの前文を見ますと、これはこれまでの、標準行動規範と呼ばれておりますけれども、先ほど申し上げましたけれども、SOPからいわばエキスをとって、一つの今後のモデルとして作成したので、年に一回レビューしなさいということが書いてあって、現地の司令官はこれにできるだけ合わせるようなものを今後SOPをつくっていきなさいということが前文にあるわけですから、その前提は、過去にできてきたPKFのSOPは、場合によってはこれと若干違うものがあるのかもしれない。その場合には、将来はこれに合わせて直していきなさいよということが書いてありますから、そういう場合が理論的には想定されているのかなと。同じことは、あるいは指揮について言えるのかもしれませんが。  他方、ここでも何度か御説明申し上げましたモデル派遣協定の第七項ですね、あれはほとんどこれと同じ表現を使っていますので、その指揮の考え方についてはもう基本的には差異はないんじゃないか。  いずれにしても、その表現を離れますと、武器の使用の問題と指揮の問題については、SOPとモデル派遣協定その他の刊行文書の中での考え方は、基本的には私は違ったものはないだろうというふうに考えております。
  115. 翫正敏

    ○翫正敏君 基本的には違っていないというふうに、当然そうだと思うんですね。しかし、個別にSOPがつくられるということもまた事実であると、こういうことなので、本法律が万一成立をしたという場合には、日本PKOに人員を派遣するということになるわけですけれども、その場合には当該SOPは国会に報告される、派遣地別に、カンボジアであればカンボジアのSOP、ユーゴに派遣するならユーゴのSOP、そのほかのところへ派遣するならそこの地のSOP、これは当然にもう国会に報告されるものと理解してよいか。さらに、そのSOP自体の法的性格というもの、これもあわせて御説明ください。
  116. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生御承知のとおり、このSOPにつきましては、モデルSOPについてもそうですが、国連の内部文書であって、国会を含めて公開の用に供するということは、国連は再三再四勘弁してほしいと言っていることは御承知のとおりで、いろいろ折衝の結果、しかしSOPについては衆参両院におきまして、一定の先生方に閲覧していただいたということで基本的にモデルSOPの考え方は御承知いただいておると。それに合わせて、合わせてと申しますかUNTACのSOPも作成されたのか、あるいは作成されるんだろうと思います。  そういう全体を考えまして、そのUNTACのSOPを公開申し上げるということはできないということは、これはぜひ御理解いただきたいというふうに考えます。
  117. 翫正敏

    ○翫正敏君 それは全くおかしい話で、このガイドライン、SOPのガイドラインのことを聞いているんじゃないんですよ。日本が、この法律が通った場合に派遣する当該派遣地でコマンダーがつくるSOPですよ。それを国会に報告しないんですか、それは納得できないですね。日本派遣する場合ですよ、それを国会に報告しないんですか、ここへ、国会に出さないんですか。大臣、どうなんですか。外務大臣、答えてください。
  118. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  SOPというものについての国連の従来の考え方から察するに、UNTACのSOPについても困難であろうということを申し上げた次第でございます。
  119. 翫正敏

    ○翫正敏君 大臣、どうですか。
  120. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ただいま国連局長答弁したとおり、UNTACというのはカンボジアへ展開する部隊の中にあるわけですから、そこでやっぱり一つのガイドラインをつくられると思いますが、それは表には、正式には出さないと、やっぱり同じだろうと。今おっしゃったとおりです。
  121. 翫正敏

    ○翫正敏君 それじゃ非常にまずいんじゃないんですか。きょうもう時間がないのでいきませんが、五原則との関係とか、いろいろ起こってくるんですよ。だから、それを考えていけばこの文書を、つくられたSOPを国会に出さないということであれば、五原則がちゃんと守られるかどうかという担保は、我々議員が知ることはできないということになるんですね。だからそうすると、法律に書いてあるから守られるんだ、はい信じてください、法律に書いてあるから大丈夫ですと、これだけの話になっちゃうんですか。それはおかしいんじゃないんですか。  日本派遣する場合に、国会にぜひ、全部出せというんじゃないんですよ、ほかのところも。日本派遣する場合、その当該地でつくられたSOPは当然国会提出されるべきです。総理大臣、どうですか、当然じゃないですか。そうじゃないと日本の……。
  122. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 五原則の担保は、先生御自身が今おっしゃったとおり、この国会でお認めいただく法案の枠組みでございまして、日本PKO、PKFに参加していくに当たりまして、この法案の枠組みの外に出ることはできないわけでございます。そこで担保がされているということでございます。
  123. 翫正敏

    ○翫正敏君 総理、どうですか。当該派遣地の、それは今度法律が通ればカンボジアだけに派遣するわけじゃないんでしょう。どこでも、国連の要請があって、同意があって、もちろん五原則のうちの三つは、これは日本独自のものでありませんから、同意、合意、中立、この三原則はこれはPKOの大原則ですから、これはある意味で別に見なくてもいいと思うんですが、日本独自のものがあるでしょう。中断というのがありますし、それから武器使用についての一つの制限的なものがありますね。そういうことについて、今度日本国連との間で協定を結んだりしていくんだろうと思いますが、それはきょう聞く時間ないんですけれども、そういうのを聞こうと思っていたんですが。  いずれにしましても、当該地のSOPが国会提出していただけないということであれば、法的性格ということも単なる内部文書、国連の内部文書と、こういうことなんだろうと思いますが、そういうことではこの法案が通った後、これは官房長官の管轄のことになるんですから、私内閣委員ですけれども、内閣委員会の方で審議されることになると思いますが、実際に派遣ということになれば、議論できないことになりますよ。それはやっぱり絶対に私は納得できないんです。派遣する場合の当該地のSOPは国会提出していただく、こういうことはぜひやっていただきたいので、ここで総理がそうおっしゃっていただけるかどうかちょっと聞いて、おっしゃっていただけないなら、これはちょっと理事会で本当に諮ってください、どうですか。
  124. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先ほども御説明申し上げましたとおり、今後できるSOPにつきましては、基本的にはこのモデルSOPに合わせてつくられる、こういうことになっているわけでございまして、モデルSOPにつきましては、御承知のとおり一定の方々に閲覧申し上げて、問題点は把握しておられるわけで、我々の判断ではこの現在の法的な枠組みというものがSOPのどこかの条項なり条文にひっかかって、どうしてもにっちもさっちもいかぬという関係にはなっておらない。幾つかの問題点につきましては、国連とも話し合いの上、結果として問題はないということになっておることは先生も御承知のとおりでございます。
  125. 翫正敏

    ○翫正敏君 そういう国連の了解の問題も……(「終わりだよ」「時間が来た」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)わかってます、時間来ているのわかっているんですが。  それは国連との了解ができているということについても非常に疑問があるので、今後ただしていかなければなりませんが、いずれにしてもこういう重大な文書を提出もしていただけないということになれば、今後この法案が通った後、国会で報告をしたり、承認になるかもしれませんが、そういうのもできないんじゃないですか。これは絶対理事会で検討してもらわなければ困りますよ。委員長、それは言ってください。理事会で協議してください。(「冗談じゃない」と呼ぶ者あり)冗談じゃないって、何も冗談じゃないですよ。  終わります。
  126. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 最初に、総理、よろしいでしょうか。  各党とも党首会談を昨日精力的にこなされたと思うんですけれども、この党首会談を終わられまして、総理の御感想はいかがなものでございましょうか。
  127. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 党首会談におきましては、このPKOの問題あるいは政治改革の問題、経済情勢など、各党によりまして少しずつテーマは違っておりましたが、主としてそういうお話、問題につきまして意見の交換をいたしまして、大変有益であったと思っております。  恐らく、太田委員お尋ねは、その中で御審議中の法案についてということであろうかと思います。各党によりまして、この法案についてのお考えはもとより同一ではございませんで、政府提出しております案につきまして、いろいろ修正についての御意見を述べておられました。その詳細につきましては、私がここで申し上げる自由はございませんけれども、いろいろ参考になることを承らしていただいたということでございました。
  128. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 総理の御感想としましては、長い長いトンネルの向こうに晴天が見えてきたのか、曇りなのか、あるいはあらしか、あるいはまだ暗やみの中か、その辺の御感想はいかがですか。
  129. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもとしましては、長いトンネルでございましたので、これを抜けまして文字どおり国連の平和維持活動に協力をいたしたいと考えておりますけれども、何分にもこれは本院、立法府の御意思でございますので、そのようなことを心から念願をいたしております。
  130. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 さて、外務大臣お尋ねしますけれども、ユーゴスラビアの現在の情勢ですね、きょうのお昼の報道では、安保理事会でも制裁決議案をEC、アメリカ中心として検討するようなことも報道されておりましたが、この点はどのように我が国としては対応されるおつもりですか。
  131. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 直近の情報については欧亜局長から説明させます。
  132. 兵藤長雄

    政府委員(兵藤長雄君) 簡潔に御報告を申し上げます。  御承知のとおり、ボスニア・ヘルツェゴビナはまさに第一次世界大戦の勃発の地でもございますが、多民族のるつぼと言われますように、御承知でいらっしゃると思いますけれども、あそこにはセルビア系の住民、これが約三割、それからイスラム系の住民が約四割、クロアチア系の住民が約二割という形で混在をしている。その中で、このボスニア・ヘルツェゴビナの独立を宣言ということが行われ、それに対してセルビア系の住民が反発をしたということから、これが武力紛争に遺憾ながら発展しているわけでございます。  現在、イスラム系のいわゆる武装勢力というものが大体約十万程度、クロアチア系の武装勢力が約三万人程度というものに対しまして、セルビア系の武装勢力約六万人、そのほかにいわゆる旧ユーゴ連邦軍が四万人入っておりましたが、そのうちのセルビア、モンテネグロ出身者は全部故国に引いたということを新しいユーゴ連邦側は、これは私ども承認いたしておりませんけれども、宣言をいたしました。しかしながら、それに対しましては、ボスニア・ヘルツェゴビナに居を持つ約三万人のセルビア軍、セルビア系の正規軍が装備とともに残ったということのために、圧倒的な装備の優勢を背景といたしまして武力でこの問題を解決しようとしているというのがEC、米国側の批判でございます。  その武力の抗争が昨日あたりから、特にサラエボのあたりで激化しているということでございまして、そういうセルビア系の動きに対して、ECあるいは米国あるいは今は安全保障理事会におきましてこれを何とかとめるべく制裁決議ということに発展しそうな形でございまして、現在国連の中におきまして、イギリス、フランス、ベルギー等が中心となりまして何らかの制裁決議を提出するという動きが急に出てきておるという状況でございます。
  133. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 国連局長さん、このユーゴのボスニアにPKFが派遣されないということは、これは情勢が不安定でありまして停戦の合意が守られる可能性が低いという判断に基づいているのではないかと思うんですが、PKOはあくまでも停戦の合意を待って開始されるというこの大原則、これが一応はここでは貫徹をされている、こう思いますが、その点はいかがでしょうか。
  134. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生も新聞その他で御承知かと思うんですけれども、ボスニア・ヘルツェゴビナは、今ここで御説明があったとおりの状況であるわけですが、にもかかわらず、特にヨーロッパの国の一部を中心として国連のPKFを派遣すべきだという議論が非常にあったわけです。これは、例えばフランスが直接ガリ事務総長に訴えたようなことも四月の末にございましたけれども、そういう動きを受けまして、国連は今まで二回特使を出しているんですね。一回は四月の十四日から十八日、これは元国務長官のバンスさんがヘッドになって特使として行かれた。二回目は、五月の四日から十日にかけて、グールディング国連事務次長が特使として行って情勢を見てきたわけです。  その二つとも、帰ってきて、現下のボスニア・ヘルツェゴビナの情勢のもとではPKO派遣は実現不可能だ、PKO派遣のためには敵対する関係当事者間の何らかの停戦の合意が必要である、そういう状況にはない、したがって今の段階では派遣はできないという結論を出している。したがいまして、一番重要な停戦というところについては先生おっしゃったとおり、そういう原則というものはやはり守っていこうという考え方で対応しているというのが私たちの判断でございます。
  135. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 サラエボからもPKO本部の一部撤収が決定されたわけですが、サラエボの場合は本来の任務地でありますクロアチアの戦闘再開ではなくてボスニアの内戦のとばっちりを受けたものでありますけれども、いずれにしましても危険な状況になれば避難し、その状況が好転しなければ撤収する、これは国連の原則でありますし、現在審議中のこの法律案とも一致するんじゃないかと思いますが、その点どうですか。
  136. 丹波實

    政府委員(丹波實君) ただいま私が力点を置いて御説明申し上げたのは、ボスニア・ヘルツェゴビナの情勢国連の今後のPKFの派遣するかしないかの問題だったわけですが、もう一つ、実は国連は既に国連保安隊と呼ばれておりますPKFを、ボスニア・ヘルツェゴビナの北西に当たりましょうか、クロアチアの四つの地域に展開しておるわけです。  これにつきましては、まだいざこざはあるようですけれども、基本的には関係当事者は停戦を守っておるということで国連保安隊は存在しているわけですが、ただ、いろいろ兵たん的な理由それから通信といった理由でクロアチアに展開している国連保安隊の本部だけがこのボスニア・ヘルツェゴビナの首都であるサラエボに本部機能だけを持っていた、ここのところが非常に状況が危なくなってきたのでこれが撤退して別なところに移動した。そういう状況で、国連保安隊自体はまだクロアチアに今存在している、しかし本部につきましては危険な状況になってきたので撤退した、そういう意味では、先ほどの原則というものもやはりそこでは守られているというのが私たちの判断でございます。
  137. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そこで、先ほどお話がありましたように、安保理等で今制裁決議案をいろいろと議論されるということでございますけれども、そこで私たち、いろいろとそういう戦闘状態等行われますと、やはり心配してまいりますのは、最初はそういう制裁決議が行われる、そしてその後にやはり状況は変わらなければ、またEC、アメリカ等の軍隊の出動になりやしないか、これはあり得ないかもしれません、私たちの取り越し苦労かもしれませんが、多国籍軍のようなものがそこに出動されるような事態になった場合に、国連でこれは決定されるとなりますと、また前回のイラク・クウェート戦争のような状況日本にも何らかの要請がされてくるんじゃないか。しかしそのときに、このPKO法案が恐らくそのときには成立をしていると私たちは思っておりますけれども、この法律案をもとにしても、そういう要請に対してははっきりと政府としてはこれはお断りすることができると、こう理解していますが、どうでしょうか。
  138. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生御承知のとおり、国連PKO、PKFと申しますのは国連憲章に明文の根拠を持っておるわけではございませんので、その進化発展してきておるということは事実だと思うんです。したがいまして今後、ユーゴ的な情勢であるにもかかわらず国連が何らかのPKF的なものを送ろうという動きが将来出てきても、これは全くそういうものはありませんということをここで断言できることではないと思うんです。しかし、今の先生の御質問との関係で非常に重要なことは、この法案考えておりますのは、従来の伝統的なPKO、PKFであるならば日本は参加しようということでございますので、私たちはあくまでもそういうものでなければ参加していかないということでございます。
  139. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、問題を変えますけれども、せんだって公聴会におきまして波多野公述人は、このPKOの参加の問題につきましていろいろとここで御意見を述べておみえになりました。その中で、二つの理由を挙げられてこのPKO法案についてはほぼ全面的に賛成だということで意見を述べられたわけでございますが、その中で一応要望点とされて七つの点を挙げられているわけでございます。  その第一点は、PKOに参加する場合には謙虚な態度で参加すべきではないか。  第二点は、軍事部門、民間部門での最高レベルの人と物を提供すべきではないか。日本はおくれて参加するわけでございますから、当然そのことは各国と比較になりますので、そういう点の配慮をすべきである点を述べておみえになりました。  三点目には、PKOに参加する人の適性を事前に十分に調査し判断するための組織、制度の確立をすべきではないか、こう提言されておりました。  四点目は、PKOに参加する人たちに対して参加のために必要な訓練を短期間に効果的に施すということを考えるべきではないかとおっしゃっておりました。  また五番目には、平和とか人道とかいうだれが見ても正しい崇高な目的のためには犠牲をあえていとわない心構えというのが必要ではないか、こうおっしゃっておりました。  六番目は、日本のハイテク技術、これを最高度に発揮することが必要ではないか。例えば、先ほどからも論議になっておりましたが、カンボジアでは地雷の処理ということが非常な問題でございますが、木製とかプラスチック製の地雷というのはなかなかこれは探査できません。しかし、日本のハイテク技術というものを最高に発揮してこのような地雷探査用の機器を開発することが非常に必要なことではないか、こういうことも述べておみえになりました。  七番目は、PKOに参加する民間人に対する補償制度を確立すべきではないか。  簡単に申し上げますと、こういう七つの要望点をおっしゃっておみえになりました。これに対する政府のお考えをちょっとお聞きしたいと思います。
  140. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私はそのとおりだろうと存じます。したがいまして、参加する部隊の使命感とかそういうものが重要であって、やはりそれは戦争をやるんじゃなくて、戦争を起こさないようにするということの奉仕活動でありますから、また地域の歴史とかそういうふうな風俗、習慣、そういうようなもの等もよく教え込まないと、民衆と接する場合があるから、えらい誤解を受けるとかそういうこともあるそうです。したがって、かなり高度の訓練がある程度必要であることは私は避けられないだろうと考えます。
  141. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘の波多野公述人が指摘したポイントでございますけれども、若干個別、各論に入らせていただきます。  まず、最高レベルの人と物の問題でございます。やはりこの法案の中でも関係行政機関の職員のうち、業務を実施するため必要な技術、能力等を有する職員を協力隊に派遣するという点が十二条にございます。また、それ以外に、例えば地方公共団体とかあるいは民間の団体の協力を得まして広く人材の確保に努めてまいらなければならないというふうにも考えております。また、この業務の実施に必要な装備とか設備、資材でございますけれども、業務の目的を十分考えまして、もちろん予算という限界はあるわけでございますけれども、その範囲内で適切に対処していく必要があろうと思っております。  それから、まさに波多野公述人が指摘しております人の適性あるいは訓練、先ほど外務大臣から答弁がございましたですけれども、あるいは心構えとしての問題、そういった点につきましては、この法案第十五条で規定いたしております研修、私この当委員会の場で繰り返し非常に強調させていただいておりますけれども、まさにこの研修の必要性、重要性というのを強く認識している次第でございます。  それから、最後の波多野公述人が指摘しております、特に採用になった民間の方に対する補償制度でございますけれども、民間から参加していただく方については、この法案の仕組みでは一般職の国家公務員として新たに選考により採用される仕組みをとっておりまして、こういうことを申し上げるのはあれでございますけれども、例えば不幸にして亡くなられたというふうな場合につきましては国家公務員災害補償法による補償が行われる仕組みになってございます。また、場所によっては非常に不安定な政情の地域でございますので、あるいは危険な環境のもとということでもございます。当然そういった民間から参加していただく協力隊員につきましても賞じゅつ金の制度というのも検討して進めてまいっている次第でございます。  総じて、私申し上げましたとおり、波多野公述人の指摘になっておられる七項目、非常に何と申しますか、貴重な御意見をいただいたというふうに認識している次第でございます。
  142. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 波多野公述人の公述、私も同感でございまして、自衛隊が組織として参加する場合も心すべき点が列挙されているのではないかと存じます。  つまり、PKOはまさに戦闘行為をやるためではございませんから、謙虚で抑制的でなければなりません。そして平和目的でなければなりません。それからまた最高レベルの人で最高の判断のできる適応力を持った方、そういうことが必要でございます。それから、参加適性の人の問題でございますが、これもやはり自衛隊の中から本当に参加に適性な人を選ぶということも重要な視点だと存じます。しかも、なおかつ参加者に対して訓練をやる。これは今までの専守防衛の業務と違いますから、そういう点の訓練、特に武器使用なんか今議論されておりますけれども、私どもは厳格にそういう訓練をきちっとやること、それからまた相手方の事情その他に精通する訓練、研修も必要でございましょう。  それから、何よりもやっぱり平和、人道のための貢献であるという意識をきちっと持って臨むことが非常に肝要だと存じます。ただ自衛隊が海外に出るからどうだこうだという議論が、法律論としてはよくわかりますけれども、私ども法律という枠組みのもとでこの崇高な任務に従事するわけですから、あくまで平和の戦士としての、平和の使徒としての役割をきちっと派遣すべき自衛官は心得るべきものと、こう思います。  あとは、ハイテクその他は、私も防衛全体がそうでなければならぬと思っておりますが、それは相手国の状況その他に応じて非常に効率的な装備、配置が必要であろうかと思います。また、自衛官の場合も民間人と同様に賞じゅつその他あらゆる手だてをこの困難な任務のために講ずべきことは当然のことで、大変示唆に富んだ意見だと存じます。
  143. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 話は変わりますが、現在このPKO協力法案については審議中でありますけれども、当委員会で常松委員から質問をいたしましたところ、防衛庁は国際緊急援助隊派遣される自衛隊医療チームの編成、能力等について答弁しているわけです。最近報道をされているわけですが、それを見ますと医療分野だけでなく給水、輸送の三分野で約七百二十人の派遣規模とすること、あるいは運用について陸上自衛隊の五方面隊が三カ月ずつの持ち回りで待機態勢をとるということが報道されておるわけです。この防衛庁の構想について何点か確認を含めてお聞きしておきたいと思うんですが、この想定というのはどのような状況のもとでの派遣を前提とされているんでしょうか。
  144. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 編成の具体的な問題でございますればまた防衛局長の方から補足させていただきますけれども、主としてこの新聞の記事は、国際緊急援助隊の場合の規模が七百二十人くらいという見出しを掲げたものを委員は御指摘だと存じますけれども国際緊急援助隊活動の場合におきましては、これは法律が成立すれば直ちに公布、実施ということに相なりますし、その任務の性格は国内の災害派遣に非常に類似したものでもございます。しかし、部隊として海外のそういった自然的な大規模な災害に派遣をするわけでございますから当然調査研究をしていかなければなりませんが、そういった報道されているような運用構想自体を固めたものではございません。当然勉強は法案提出している以上させていただいておりますけれども、そういう運用構想をきちっと固めたものではないということをはっきり申し上げておきます。
  145. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) まず、数字の問題でございますけれども、私ども医療活動につきまして二百七十名という数字を後方支援を含めまして既に御答弁申し上げたところでございます。  そのほかに、この新聞報道によりますと、給水活動と空輸活動を含めまして、それを単純に足し算して七百二十名という報道がなされておるわけでございますけれども、これは我々の考え方からすると間違いでございまして、単純に足し算するということは二重の意味で適当でない。つまり、それぞれの給水、輸送チームが何名かということは別にいたしまして、それらが出されたとしても、まずそれを同時に派遣するということはあり得ないだろうと私どもは思っております。それからまた、仮に同時に派遣されることがあったとしても、後方支援部隊が共用される部分がございますから、共通になる部分がございますから、それを単純に足し算することはできないということでございます。  それから、御質問の中でどういう前提を置いたかという点でございますが、一つは期間でございますけれども、これは従来の派遣された緊急援助隊の例にかんがみまして数週間程度ということで、ここでは一応三週間現地で活動するという前提を置いていますし、それから現地におきます食糧から輸送、通信、それらについてほぼ一〇〇%の自己完結性が求められるという前提のもとに計算をしたものでございます。
  146. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 その持っていく機材とか装備の種類とか数量、その他もいろいろと検討されていると思いますけれども、それは現在保有しているものをそのまま持っていこうとされているのか、あるいは改造等の必要性とかその能力、あるいはそれらを運搬する手段、例えばヘリコプターとか車両などというものを運搬する能力というものを自衛隊は保有しているのか、あるいは将来的に保有する必要もないのか、その点はどうでしょうか。
  147. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 先ほど来申し上げております数字につきましては、これは一定の前提を置いた場合の最大の派遣規模ということでございますので、具体的な派遣要請がありましたときにどういう単位で送るかということと一応別の問題でございます。  したがいまして、具体的なケースにおいてどのような装備、機材を持っていくかということは、その要請の依頼の内容、規模、態様によりますので、それを一概に申し上げることはできませんが、要するに、御質問の中にございました、大体において既存の自衛隊が持っている装備、機材を持っていくのかという点については基本的にそのとおりでございます。すべて一〇〇%そうかということでは必ずしもございませんけれども、基本的にそういう考え方でございます。  それから、輸送の問題でございますけれども、輸送につきましては、これも距離とか、要するに災害の場所それから要請される内容の規模、そういった事柄の内容ということによることが大きいわけでございますので何とも申し上げられない点がございますけれども、一般的に申し上げますと、自衛隊の持っております輸送機であるC130それから輸送艦あるいは補給艦といったようなもので輸送が大半可能であろうと。  それから、ヘリコプターについて特段にお話がございましたが、ヘリコプターを現実に持っていくか持っていかないかはその要請内容次第でございますけれども、問われれば、それは輸送能力はそれらによって可能であるということを申し上げさせていただきます。
  148. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 報道はいろいろとございましたけれども、それですと陸上自衛隊の各方面隊が持ち回り方式で待機態勢をとると、こういうふうにしているわけですが、その理由はどのような理由ですか。
  149. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 先ほど冒頭防衛庁長官からもお答え申し上げましたとおり、そういう運用構想をいろいろ検討はいたしておりますけれども、五方面隊で持ち回りでというような運用構想を固めたという状況には現在ございません。
  150. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 例えば、派遣される地域などの情報収集はどこで行っているのか。また、外務省等の派遣に当たっての連絡、調整及び派遣隊への指揮、連絡、そういった司令部的な機能というのがあると思いますが、そこはどこが行っているんでしょうか。
  151. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) ちょっと御質問の趣旨を必ずしも正確にとらえたかどうかわかりませんが、具体的な地域の状況等の連絡、指揮ということでありますと、これはまだ法案も成立しておりませんし、具体的にどこに派遣されるかということによって今後体制を固めていくということに相なろうかと思いますが、一般的にこの緊急援助隊の派遣の実情とか実績とかあるいはあり得るケースといったような研究につきましては、今陸上自衛隊に検討チームというのをつくって、そこで現場的な調査検討は行っておりますし、それから当然内局で、我々のところも外務省等と連絡をとりながらそのあり方の実態について情報を得ているということでございます。
  152. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 国際平和協力隊に部隊派遣する場合ということも今後はいろいろと検討されていると思うんですね。  この四月の十九日でしたか、報道によりますと、陸上自衛隊では派遣部隊の編成やあるいは派遣要領の策定をするためプロジェクトチームを編成していると、こういうことが報道されているわけですが、そこでいろいろと検討はされていると思います。  それでお聞きしたいわけですけれども、いわゆるPKO本体の業務を行うために普通科部隊を派遣する場合、これは凍結されてしまう可能性もあります。また、後方支援だけを行う場合についてどういうような構想を描きながら皆さんはそれを検討されているんでしょうか。
  153. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 御指摘のとおり、今陸幕の方のプロジェクトチームにおきまして、PKO法案あるいは緊急援助隊改正法案の成立に備えましてさまざまな机上での調査研究を行っておるという実態でございます。  それで、PKOについて特にどういう内容の検討かというお話でございますが、そこまではまだ、いろいろ実際に派遣先がどうなるか、あるいはまた何を求められるかといったことが必ずしも最終的に具体化しておりませんので、そういう点を踏まえて今後検討するということに相なろうかと思いますし、現段階ではPKOについては具体的なイメージがわいてきていないというのが実情であろうかと思います。
  154. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いずれにしても、もうこの法案が成立寸前、それはどうかはっきり私たちもわかりませんけれども、ぜひとも成立させたいと思っておりますよ。そういう段階に来て、今そういうことでありますと防衛庁として作業がおくれているんじゃないかという感じもしてなりませんけれども、前回私は自衛官によるPKO業務の実態的な調査、これを指摘いたしました。  そこで、防衛庁としては、この法律案が成立した場合には、その運用というものに対してやはりこれは遺漏のないようにしなければならないと思いますので、やはり自衛官によるより詳細な実地調査というのを行っていくべきではないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
  155. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) この点は、法案が成立いたしますと直ちに、本院で議論がございますように、カンボジアへの派遣ということが現実的に考えられるわけでございまして、この点につきましては私も過般の当委員会質疑におきまして、当委員会で成立させていただけるならば、これは施行は三カ月以内となっておりますけれども、しかしやっぱり実態を見ませんとどのような任務を遂行するのかどうか、あるいは準備状況はどうすべきか等々さまざまな問題がございますから、これはもう早急に調査団を派遣したいと思っております。  私は、現在でも法律的には可能だと思っております、自衛官をカンボジアに出して見てくることは。これは可能だと存じますが、政治的な判断のもとに、少なくとも当委員会における審議が議了をした段階くらいまで待つべきであるというように考えて前回御答弁申し上げたわけでございまして、どうしても委員の御指摘のように派遣する前には綿密なやっぱり調査が必要だと、こう思っております。
  156. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 その問題も含めまして、実際に自衛官を派遣するに当たりましては、やはりさまざまな準備というものが必要でしょう。以前には一年程度はかかるでありましょうという認識防衛庁長官は示されておりました。本委員会で何度も指摘されておりますけれども、例えば教育、訓練、そういったものについてのマニュアルの作成であるとかあるいは教材の収集、あるいは一般隊員に対する実際の訓練などもなかなか短期間で行えないのではないかと、こう思うわけですね。  こういう問題等は、特に事の重要性と申しますか、そういうことにかんがみますと短期間で拙速的に行ってはならないと、そう思うんですが、その点はどうでしょうか。
  157. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) まさに、自衛隊派遣する場合はこの法の趣旨に従って厳正粛々と行われなければならないわけで、そのためには現地に臨んで拙速で何をしていいかわからない、あるいは各国PKO部隊との連携もろくすっぽできないというような状況では、これは困るわけでございまして、私どもはやはり十分周到な準備のもとでこの派遣をしたいと考えております。  従来、私が半年ないし一年というような期間を申し上げ、そしてまた北欧のセンターに要員を派遣して、そして帰ってきて集合教育をできるような教官等の育成も必要であると、こう申し上げたことがございます。これはまさに一般論としてこの制度が恒久的な制度として考えた場合に、私はそういうことを申し上げたわけでございまして、これは昨年だったと思いますが、最近に至ってカンボジア問題が現実の問題となれば、できることからきちっと、法律の与えられた任務の範囲内でできることからやるということも十分必要なことかと存じますので、先ほど申しましたように、実際に何が要請されるのか、何がプライオリティーがあるのか、この法律の任務の中で、そういった点を考慮しながら、しかし要請があっても十分な準備期間を必要とするものもございましょう。  そして、今の自衛隊の能力、経験の中で対応し得るものもございますから、そういった点を含めて、期間は一義的にはなかなかカンボジアについては申し上げるわけにはいかないと思いますが、先ほど申しましたように、くどいようでございますが、きちっとこの任務をやるためには十分な準備とそして隊員の訓練、これを前提とすべきことは当然だと思っております。
  158. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 法律が通っておりませんので答えにくい点もあろうかと思いますが、例えばさきのペルシャ湾への掃海艇の派遣、これにつきましてもいろんな部隊の編成につきましては特別に編成されたということを聞いているわけでございますが、今回のこの法案が通りました後の業務の実施につきましてはどういうような構想でいらっしゃるのか。先ほどから質の問題あるいは人選の問題、いろんなことをおっしゃっておりましたし、既存の部隊のままで派遣されるのかあるいは特別な部隊が編成されるのか、その辺は基本的にどうお考えですか。
  159. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これはたびたび申し上げておりますように、既存の部隊そのままを派遣するというわけにはまいらないと思います。PKOの任務、それから要請によりますけれども、それに適した人もまた選択しなければなりません。  そういう意味で、既存の部隊そのものを出すということは考えておりませんが、例えば施設関係でございますれば施設大隊等々もございますから、それらを中心として編成するということは任務に応じてあり得ることかとは存じますけれども、既存の部隊そのまま出すというようなものではないというように考えております。
  160. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 その場合でございますけれどもPKOにしましてもあるいは緊急援助業務にしましても場所が大体外国ということになるわけでございますが、従来の実績あるいは経験というものがまだ積み重ねられておりません。そうなりますと、派遣される隊員の負担というものも大変大きいんじゃないかと思うんです。  今回の掃海艇の場合も非常な苦労をされたと聞いておりますが、特にPKOにつきましては、これは先ほどからお話ありますように、特殊な能力あるいは強い忍耐力が必要でありますし、本人の任務遂行に当たっての強い意思というものもこれは不可欠だと思いますが、やはりその参加をされる本人の意思ということもやはり確認する必要があろうかと思うんですが、その点はどのようにお考えですか。
  161. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 自衛隊は入るときに宣誓はしていただいておりますけれども、こういう特殊な任務でございますから本人の意向、家庭状況あるいはその他の状況を判断いたしまして、適正その他もございましょう、そして本人の意思に反してやるということも余り適切でないと思います。人数も、これはもう法定して二千名ということで、恐らくその中には警察あるいは選挙、行政指導等々もございますから、おのずからそんな二千人満杯ということはあり得ないわけでございまして、十分そうした資格者はあり得るし、またそれを訓練することも可能でございますから、委員の御指摘のような配慮を十分しながら編成をやっていきたいと、こう思っております。
  162. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 長官、実際に国際平和協力業務への部隊の派遣、これにつきましてはどの程度の期間で準備可能になるのか、あるいは可能にしたいとこうお考えになっていらっしゃるのか、その点ちょっとお聞きしたいと思うんです。
  163. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ちょっと先ほどの答弁と重複するようで恐縮でございますが、恒久的にはやっぱりPKO一般ということになりますと、PKOのあるいは監視団あるいはPKFその他、これはPKFの先進国といいますか北欧で訓練センター等もございますから、そういう点で十分なまた訓練をして、層の厚いものにしていく必要はあろうかと存じます。  ただし、今議論されておりますカンボジアに直ちにというようなことでございますると、その与えられた任務、要請によって違うと思います。比較的短期間に派遣可能な機能もあろうかと、任務もあろうかと存じます。また、やはり相当訓練を要し、長期の時間を要するものもあるだろうと、こう思われますので、具体的には先ほど申しましたように実際に調査をし、向こうの意向その他もよく見きわめた上でできるものからやるということも一つの方法かと存じますので、最終的な完結する姿とは別に段階的に私は考えてもよかろうと、これが現実的ではないかなという感じは、カンボジアに関してはそんな感じを抱いております。
  164. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次は、自衛隊の学校等におけるPKOの教育課程導入についてちょっと提案と申しますか、お話ししておきたいと思うんです。  このPKO活動の必要性というのはこれからますます大きくなってくると思うんですね。また、日本に対する侵略の可能性ということは、これはますます相対的に低くなってくるんじゃないかと思うんですが、そういう状況になりますと、自衛隊としてもやはり将来は、これは今すぐの課題ではないと思いますけれども、なかなかそれは議論のあるところですから、PKOの活動というものを本法案のような余技として位置づけるんじゃなくて、本来業務の一つとして、例えば三条の自衛隊の任務として位置づけることも検討しなければならないんじゃないかと思うんですが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  165. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) この点も、これからの国際新秩序の中で我が国の自衛隊の果たす役割というものは、このPKO活動のような機能を通じて高まることは十分予想されてくるところでございます。しかし、現在は三条は直接侵略、間接侵略に対応する専守防衛の本来的な任務を規定しておりまして、この法制上自衛隊の任務の遂行に支障のない限りにこれに参加するという建前でございますので、私はやっぱり将来的な問題としては、委員御指摘のようなウエートが高まってきますれば、そうしたことを自衛隊内部で訓練し層を厚くしていく、そういう問題も自衛隊内部の問題として定員の枠内で組織的に考えてもいい時代がやがて来るだろうと思います。  もう一つは、三条の中へ具体的に入れるということになりますと、これは本来任務になりますと、やっぱり装備その他、艦船もそれ用のもの、あるいは航空機も足の長いもの等々必要な面がまいってきます。今私どもはそこまでは考えておりませんで、現有の装備等で、自衛隊の任務の遂行に支障のない限りで貢献をしていこうというのがただいま提案している法案でございますが、将来的な問題としては、いろいろ委員御指摘のような問題提起、これは十分にあり得ることであろうかと存じております。
  166. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 私が申し上げましたのは、このPKOの活動という、これは自衛隊皆さんばかりが主体でなく、あるいは民間の方々、NGOの皆さん方もいろいろ協力し合ってされていくことが本来的であろうと思っておりますが、自衛隊の中における要員の確保ということも、教育ということも非常に重要なことであると思って話をしているわけです。ですから、やはり本来的な業務として考えるか、あるいは余技としてやるかによって、こういういろんな要員の教育ということに差があってはならないと思いますけれども、その点は、考えてみると、余技であれば短期的な教育でもいいんじゃないか、あるいは本来の任務であればこれはきちっとしたカリキュラムに基づいた教育というものをされていくんじゃないか、そういうこの問題についての私の考えがあるわけでございまして、そういうような違いが生じないようにやはりきちっと教育というものは対応されるおつもりですか。
  167. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 私の申し上げたのは、この法案の構成上の問題を先ほど申しまして、重要性において、これから新しい時代国際貢献自衛隊がやろうということでございますから、いささかも劣るものではございません。そういった意味で、これからも任務としてはもう甲乙つけがたいような感じで私どもは臨みたいと思いますし、そしてまた訓練もきちっとしていきたい。募集その他も、自衛隊派遣を通じて国際貢献をどうしても私はしたいんだと。これは本当にあり得ることなんです。  この間、掃海艇のときに自衛官が五百十何人参加しましたけれども、湾岸に行ってみて、これだけこの機雷掃海で湾岸諸国から歓迎され、感謝され、本当に自衛官になってよかったと言う若者がたくさんいる話も私たちは直接に聞きましたし、ありますから、こういった点についても配慮しながら、いささかもこの任務が軽いものであるというようには受けとめておりません。
  168. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いずれにしましても、このPKOの特殊性からしまして、やはり自衛隊の各種学校できちんとPKOの教育もすべきではないか、こう私は思うわけです。これは、日本アメリカとは全然違いがございますけれどもアメリカの士官学校ですか、ROTC等では、ちょっと目的は違うようでございますが、ある程度のカリキュラムを組んで平和維持活動について教育も行われているわけです。  ですから、そういったことを考えてみますと、日本の防衛大学校とか、あるいは幹部候補学校等々で、やはり日本アメリカでは目的も違うし教育訓練の制度も違うと思いますけれども、国際的に果たそうとする役割もこれは異なっているわけでございますから、そういったいろんな違いもあろうと思いますけれども、やはりROTCで行われているようなカリキュラムというのも日本自衛隊におけるそういう大学校にも設置する必要があるんじゃないか、こう思って御提案したんですが、どうでしょうか。
  169. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 将来的にはやっぱりウエートが高まり、そして自衛隊の機能として大きな位置づけがなされれば私も同様に考えます。そして現状においても、この業務はまさに国際的な平和貢献の任務でございますから、これからのやはり防衛大学校における学生にしてもぜひ国際性というものを身につけていく必要があろうと思っております。そういう意味で、カリキュラムを今直ちにつくるかつくらないかはともかくとして、自衛隊が、これから国際貢献の場がこういう面であるんだ、その持つ意味はどうかというようなことはやっぱりきちっとした認識を持っていただく必要があろうかと思いますし、これは防大に限らず幹部学校等においてもその必要性は私はあろうかと思っております。
  170. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 最後に、総理に二点だけお尋ねいたしておきます。  冷戦が終わりつつある、あるいは世界の平和と繁栄のために国連中心として旧西側も東側も協力して努力していこう、こういう状況変化がございます。それがやっぱり政府をしまして、自衛隊PKO活動、それから災害救援活動、人道的救援に当たらせよう、こういう決意をされた場面になったんじゃないかと思うんです。従来政府は、我が国に対する侵略、これは我が国自身の防衛力と日米安保体制によって未然に防止するという考えをとってきたわけでございますけれどもPKOなどの参加は国際環境をより平和なものとするための努力の一環であろう、こう思います。その意味で、我が国の安全確保の上でこれは大いに重要なものになると考えておりますけれども総理はこの点をどのようにお考えでしょうか。
  171. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 湾岸戦争がいい例でございましたけれども、このときに米ソの冷戦というものが終わっていて、国連が事実、実際あの湾岸戦争処理の中核になったという、そういうことを我々は目の当たりに見たわけでございます。そういうところから、国連というものをこれから大事にしていかなければならない、また大きな役割を担うであろうということをお互い感じたわけでございますが、またそれとほとんど時を同じくして、米ソの対立が解消しましたらば、今度は局地的にいろいろな民族自決あるいは宗教等々による紛争が起こって、それがまた国連の仲裁、平和維持というようなことを求めるというようなことになってまいりました。  それらのいろいろな事情から考えまして、いわゆる冷戦後の世界というものが国連の活動に非常に期待するところが多いということをお互いが痛感をいたしておるわけでございますが、我が国としては、憲法の前文におきましても、諸国民の信義に信頼をするということ、これは初めて国連というものがそういう期待を担う機関になろうとしている、その国連の平和維持活動に我々が参画をし、貢献をすることが即新しい平和構築の時代における我々の務めであり、またそれが我々自身の繁栄、安全を全うする道でもある、このように強く感じておりまして、どうかこの法案の成立につきまして本院の御賛成を得ますように、心から念願をいたすものでございます。
  172. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そこで、最後になるわけですが、この法案審議する中で私たちも提言をし、申し上げてまいりましたけれどもPKOの参加を含めて国際的な貢献というか、責務と申しますか、それを行っていく上におきましては、やはり近隣諸国のいろんな懸念というものも解消しあるいは理解を得ることが必要だろう、このことは私たちも何回も提言をしてまいりました。このことは我々の予想以上にやはり周辺の諸国の皆さん方に対しては大きな懸念の種になっていることは、渡辺外務大臣のお話ではそういうものは一切ないというお話も時々承りましたけれども、まだ根強いものがあるわけです。  ですから、日本がこのPKO法案を通し、PKO活動に参加するということに際して、やはり率先して平和国家であるという方途をより明確に総理として示すべきじゃないかと思うんです。今までも大綱の見直し、あるいは中期防の修正あるいは減額等も御答弁されてまいりましたけれども、それを国民皆さん方に、あるいは近隣の諸国に対して総理がもっとより明確にこの際示していくべきではないか、こう思うんですが、もう最後になりましたが、総理の御意見を承っておきたいと思います。
  173. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は太田委員の御指摘のとおりであると思います。幸いにしてこの法案が成立をしたといたしまして、仮に国連から、関係交戦団体等々からも要請がありましても、政府としてはどのようなときにこの要請に応ずべきかといったようなこと、それは周辺の諸国のそれについてのいろいろ反応もあり得ることでございますし、またそれらを確かめました上でこの法案の内容を実行するといたしましても、いわば模範的な実践をすることによって、幾らかあちこちにございますようなもし懸念がございますれば、それをまた事実によってそれにこたえていくというような心構えも必要でございましょうし、表明されておりますような懸念については十分慎重に対応をいたさなければならないと思っております。
  174. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 初めに、法案修正問題について宮澤首相にお伺いします。  きのう党首会談日本共産党の不破委員長は、修正案が新しい規定を持ち込むものである以上、衆参両院ともに本格論議を保障すべきだと、そう首相に申しました。私どもも衆参両院での本格的審議を強く要求します。  不破委員長宮澤さんに、国対委員長をよくコマンドしろと、そう言ったんですが、私もこの本格的審議について、自民党総裁としての、コマンダーとしてのコマンドを求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
  175. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨日、各党の代表の方々から御意見も承り、また私も申し上げまして、大変有益な会合でございましたが、政府立場といたしまして修正というふうなことを申す事柄ではございませんで、各党のお話を伺いますと、いろいろこの案については御批判が多うございました。  政府として、立法府の多数の御意思が修正ということになりますれば、それはもとより謙虚にそれを承らなければならないわけでございますが、その御処理につきましては、それはおのおのの院におかれまして御決定なさるべきことであって、行政府の者がそれにかれこれ申しますことは、これは出過ぎたことであると思います。
  176. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 本格的審議をしないと国民は承知しない、このことだけ言っておきます。  次に、参議院の決議問題、午前中も田委員質疑で取り上げられました。私ども憲法解釈の見解違いますけれども、当時の鶴見祐輔議員の提案理由はまことに堂々たる歴史的演説なんですね。決議本文は御存じのとおりです。「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。」  鶴見議員の提案理由は、その自衛隊の任務を国内秩序、国土を守るものと厳密に限定しています。今回の法案は、自衛隊の出動目的について、この自衛以外の国連平和維持活動にし、行動の範囲も国土以外の海外にしている点で二重に参議院決議に違反しています。ところが、首相はそれを言い抜けようとしていますけれども、これは政府の決議解釈さえゆがめたものです。  法制局長官にお伺いします。  一九七〇年三月三日、参議院予算委員会で、社会党の亀田得治議員の質問に対して、高辻法制局長官、この方は参議院決議時代法制局第一部長ですから経過はよく御存じです。次のように答弁しています。  「それが武力の行使をそもそもの目的とするものではないけれども、場合によったら武力の行使も容認されるというようなものであればどうかと言えば、そういうことになるのである限りやはり私は許されないと思います」と。今度のPKO法案は、文字どおり場合によっては武力の行使も容認される危険があるわけなので、こういう当時の政府の、参議院決議についての当然の解釈を今勝手に政府が変えることはできますか。法制局長官、いかがですか。
  177. 工藤敦夫

    政府委員工藤敦夫君) 昭和四十五年に高辻元法制局長官が参議院の予算委員会におきまして御答弁申し上げていることは事実でございます。  ただ、その場合には、いわゆる国連の今回の平和維持隊、こういうものが、まず紛争当事者の間に停戦の合意が成立しているとか、あるいは紛争当事者が平和維持隊の活動に同意しているとか、さらにそれを前提としまして中立で強制しない、こういう立場国連の権威と説得で停戦確保等の任務を遂行するものである、こういう今回の平和維持隊の機能と申しますか、そういう強制的手段によって平和を回復するような機能を持つものではない、こういう点から考えまして、今のようなことがこの答弁の中に含まれているとは考えておりません。
  178. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 こういう勝手な解釈を国権の最高機関としての参議院が許すわけにはいきません。  一昨年、国連平和協力法案が問題になったとき、社会党の佐藤三吾議員が予算委員会でこの問題について参議院としての有権解釈、この問題を提起されました。予算委員長は、理事会で協議し、理事会において協議の結果、議長に御検討願うことが妥当であるというので、参議院議長に検討を申し入れました。皆さん経過は御存じのとおりです。議運で十月二十四日から十一月八日まで五回にわたって有権解釈について協議をしております。最終的には、協力法案は廃案になりましたから、廃案に伴って協議は未了ということになった。  今度の法案は、あの法案よりももっと直接に自衛隊の海外派兵ですから、参議院としての有権的解釈を未了のままでそのまま放置できないですよ。私は、ぜひこれは本特別委員会委員長として参議院議長に提起して、院としてのこの有権的解釈を確認すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  179. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 本件は理事会において検討させていただきます。
  180. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 次に、一番問題になってまいりました武力の威嚇、武力の行使問題について、宮下防衛庁長官にお伺いします。  大体、外へ行くこと自体が憲法違反なんですよ。外へ行ってからもっとひどい憲法違反を行おうとしているのがこの法案なんです。PKFの武器使用には二つのケース、A、要員の生命、身体を防護するため。B、PKFの任務が実力により阻止された場合、これに抵抗するためとなっていることは何回も問題になってきました。  このBのケースについて、宮下防衛庁長官は昨年十一月二十日衆議院で、空砲で射撃するようなこと、あるいは相手以外の方向に対して威嚇射撃をするということ、これも理論上可能だとそう答弁しました。昨年十二月五日本特別委員会で、矢田部委員質問に答えて、こういう威嚇その他の行動が行われ、その後の経過で、二十四条の武器使用ということになるだろうと答弁しているんですね。  そうしますと、平和維持隊はこのBのケースに際会した場合、こういう威嚇行動、空砲の射撃あるいは威嚇射撃、これはできるんですか。
  181. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 私の答弁した趣意は、今の法案の二十四条の武器使用に関することでございましたけれども、この法案は、自衛官が自己または自己とともに現場に所在する他の自衛官または隊員の生命、身体を防護するためやむを得ない必要な理由がある、相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的と判断される限度で実施計画等に定めた規定による装備である武器を使用することができるということについて触れたわけでございまして、これは武器使用が一応できるという規定ではございます。  しかし同時に、この三項の規定による武器使用に際しましては、刑法三十六条または三十七条の規定に該当する場合を除いて人に危害を与えてはならない、殺傷してはならないということを明定しておりますから、三項の方が法律概念としては多少広うございます。予防的な措置としてそういう空砲を撃つようなことが絶対許されないかと言えば、それは逃避する、あるいはそういったトラブルに巻き込まれないための手段としてそういう方法があるいはあり得るかなと、そのことまでも否定はしていないと、この三項は。しかし、三項によって人を殺傷したり、現実に武器を使用して相手を死傷させたりする場合は、厳密な刑法の規定の適用がありますよということを書いたものと、それを例えてそのような形で申し上げたわけであります。
  182. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかし、宮下さん、この法案の二条の二項、人に危害を加えなくても武力による威嚇は二条二項で禁止されているんです。二条二項、「国際平和協力業務実施等は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」と。あなた、威嚇はいいと言ったんです。おかしいじゃないですか、取り消しなさい。
  183. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) その場で自分の生命、身体を守る手段としていきなり発砲する、そして相手を死傷させるというよりも、それを逃避する行動は、ここにいう「武力による威嚇又は武力の行使」だとは私は思いません。ここでいう二条の二項で掲げられているのは、国際平和協力の業務を実施するに当たっての手段として部隊としての「武力による威嚇又は武力の行使」を意味するものでございまして、私が申し上げているのは、二十四条における自衛官個人の生命、身体の防護のためということを申し上げたわけで、この二条の「武力による威嚇又は武力の行使」というものとは次元を異にしておる、このように思います。
  184. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 法制局長官、憲法九条は「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」となっています。今、防衛庁長官が言うBのケースで、任務が実力で阻止されそうになったと、そのときに空砲を撃ったり威嚇射撃したり、これは合憲なんですか。
  185. 工藤敦夫

    政府委員工藤敦夫君) お答えいたします。  従来から「武力の行使」あるいは「武力による威嚇」の定義につきましてはお答えしているところでございます。「武力による威嚇」という憲法九条の規定はかように考えております。すなわち、通常、現実にはまだ武力を行使しないが自国の主張、要求を入れなければ武力を行使する、こういう意思なり態度を示すことによって相手国を威嚇することである、このように説明されておりまして、学説も多くはこのように書いてございます。  それで、具体的な例として、例えばかつてのいわゆる三国干渉ですとか等々のようなものが例に挙がっているのが「武力による威嚇」の例だろうと存じます。
  186. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 実は、ここに私はこの法案のガラス細工という本質がよくあらわれていると思うんですね。つまり、政府はこの憲法九条の中で武力の行使問題だけに問題を絞って、矮小化して、さあ武力の行使になるかどうか、いや武器の使用というのは体の防護だから武力の行使じゃないと国連局長は訳まで書いてやってきたでしょう。そうじゃないんですよ。第九条は「武力による威嚇又は武力の行使」、両方を禁止しているんです。  国連の平和維持活動はなぜ軍事力が必要なのか。これは法第三条にも「武力紛争の当事者間の武力紛争の再発の防止に関する合意」の問題なんかが書いてあるでしょう。これはとにかく紛争が再び起きないようにというんだから軍事力が要るんですよ。その軍事力は、武力の行使にたとえ至らなくても、つまり武力、軍事力の持っている威嚇機能、これを利用しているんですよ、威嚇機能を。ですから政府は、これは武力の行使ではないから合憲だ合憲だと言っているんだが、国連の平和維持活動というものが武力の威嚇機能に全面的に依存しているんですから、だから憲法九条を持っている日本としては、こういうPKO、特にPKFには一切参加できないはずなんですよ。  法制局長官にお伺いしますが、自衛隊が武力の行使に至らないで武力による威嚇機能の発揮だけにとどまっていればそれで合憲なんですか、海外でやっても。
  187. 工藤敦夫

    政府委員工藤敦夫君) ただいま「武力による威嚇」の定義を申し上げましたけれども、そのようないわば自国の主張、要求を入れなければ武力行使に至るぞと、こういうふうな意思、態度を示すこと、こういうふうなことには今回の法案におきましても絶対にならないものと、かように考えております。
  188. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私も憲法の本、大分ここで調べた。今おっしゃるようなことが書いてありますよ。つまり、威嚇でしょう、おどしでしょう、これをのまなければやるぞというようなおどし、そういう解釈が確かに書いてあるけれども、そうじゃないんですよ。武力による威嚇機能というのはもっと一般的なんです。  私はここに国連憲章を持ってきている。国連憲章二条の四、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と書いてある。ですから、国連の目的と両立し得る場合は「武力による威嚇又は武力の行使」はあり得るというのが国連憲章の規定なんですよ。つまり、国連憲章の目的、これと両立し得る「武力による威嚇」というのは、認めなければ六章半と言われるPKF活動はあり得ないですよ。  私は、この問題、これ議論すれば、大体国連のPKF問題の、PKO活動の本質にかかわる大問題、日本憲法自衛隊のあり方、今度の法案のね。しかし、もう時間がありませんので、ただこの問題、非常にたくさん問題があるので、政府に私は要求したい。  政府は、「武力の行使」の問題については政府統一見解を出した、「武器の使用と武力の行使の関係について」。憲法は「武力の行使」だけじゃなくて「武力による威嚇」も禁止しているんだから、それで防衛庁長官は威嚇はいいということまで本委員会でも答えている、議事録にちゃんとありますよ。それで、法制局長官の答弁も極めてあいまいなので、私は政府に対して「武器の使用」と「武力による威嚇」の関係について、統一見解を首相に要求したいと思います。
  189. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ちょっとその前に、さっきの二条二項とそれから二十四条の私の発言と、これを同一レベルで論じておられるように存じますけれども、私は二条二項の「武力による威嚇又は武力の行使」という意味で申し上げたわけではなくて、まさに自衛官個人の生命、身体を保護する一つの方法論として、消極的に、なるべく、できれば相手を殺傷しない方がいいんです、そういう意味で申し上げたわけでございまして、全く次元の違う問題でございまして、「威嚇」という言葉だけでそこを同一視されることは大変誤解を招くと思われますので、はっきりそこは区別していただきたいと思います。
  190. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 言葉といっても、定義というのは非常に重要なんです。これは二条四項で「武力による威嚇又は武力の行使」、これは使えないとはっきり書いてあるんだから。それを防衛庁長官が平気で威嚇射撃もいいというようなことを言っている。こういうことになると、大体アメリカがよく空母なんか行かすじゃないですか、軍事力の展開そのものが、やっぱり武力による威嚇そのものが使われるんです。そういう重大問題なので、政府に私は強くこの政府の統一見解を要求したいと思います。
  191. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ちょっと委員長
  192. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もういいです。いいです。あなたは取り消すべきだ。  次の問題に移ります。  丹波国連局長、例の五原則と国連了解の問題についてお伺いしたい。  今の問題とかかわるんですけれども武器使用と武力行使との関係の問題、いわゆる第五原則にかかわる問題です。丹波局長は、昨年十二月五日の本委員会でBのケースがAのケースに転化して命を守るための武器使用となるケースがあると言いました。これは実態はどういうケースなんですか。
  193. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先ほども別の先生に御説明申し上げましたけれども、抽象的にこういうケース、ああいうケースと言うことは難しいわけですが、具体的な状況によってこちらの生命というものが危なくなる状況法案で申しますと二十四条のもとで武器の使用が認められる状況、それがBのケースがAに転化してきている状況である、そういうことでございます。
  194. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そうしますと、PKFの任務の実行が実力で阻止されるケースですよ、Bは。空砲を撃ったりなんかしているうちにだんだん緊迫してくると、隊員が個々の判断でAだというので、自分の命が危ないというので撃ち始めるわけです。一人が危ないならみんな危ないですよ。みんな撃ち始めますよ。指揮はしないで束ねると言うのだけれども、何を言おうとこれは集団的な武力行使そのものだと思うんです。それまで合憲というようなところにこの法案のひどさが実にくっきりとあらわれている。  私は、政府のからくりがよくわかりました。  国会に、昨年八月十四日、ニューヨークでの「国連グールディング事務次長との協議要旨」、こういうものが提出されています。これを見ますと、ずっと五原則を説明して、特に第五原則のところで次長から、「平和維持隊においては任務の遂行を実力で妨げられた場合にも武器の使用ができることになっている旨の指摘があったが、当方より、従来の平和維持隊の武器使用の実態に鑑みれば、武器の使用を要員の生命等の防護のために必要最小限のものに限ることとしても、我が国として十分任務を遂行できるものと考える旨述べた。」と。だからAだけで十分やれると言うんです、実態にかんがみて。先方もこれを了解した。それで「第五原則が国連にとって何の問題もない旨述べた。」となっているんです。  「実態に鑑みれば」というのは一体どういうことかということを、丹波国連局長は本委員会で五月十八日に答弁をしています、角田義一委員質問に対して。いろいろ関係各国を調べてみた、主なところを。そうしたら、Bのケースで武器が使われたとはっきり説明した政府はないと。過去をずっと見ていくと、やはり生命が侵されたから使った、そういう意味でほとんどのケースがAであるというそういう実態なんだというんですね。  そこで国連局長は、Bを切っても実態にかんがみれば、このような方針で十分に任務を遂行できると確信しますと言ったと。それで、グールディング事務次長もなるほど、それならいいと。つまりAだけで、Bを切っても全部やれるというんです。そうなると、コンゴ型PKF以外は、これまでのPKF活動は九つあったというんだけれども、コンゴ型を除けば全部このAでやれるというんですよ。大変なことじゃないですか。  いままでどのぐらい死んでいますか。死者は七百七十二人。コンゴの二百三十四人を除けば五百三十八人の死者が出ているんです。そういう五百三十八人も死者が出るようなこれまでのPKF活動がAだけで全部できる、Bを切っていいんだと。恐るべきからくりじゃありませんか。こういうものを許せますか。
  195. 丹波實

    政府委員(丹波實君) この問題につきましては、随分多くの時間を使って御説明申し上げてきたつもりでございますけれども、PKFの本質というものにつきましてまだ御理解をいただいていないというのは大変残念なことだと思います。  先般、この委員会で明石特別代表が説明しておられましたけれども、例えばUNTACを例にとりますと、今日まで犠牲者は一人も出ておりません。今まで犠牲者は、マラリアにかかった二人と自動車事故でけがをした人が一人、それからUNAMICのヘリコプターが射撃をされてオーストラリアの大使が負傷したというだけですということを言っておられる。さらに、武器の使用につきまして明石さんは、基本的に国連は武力不行使という線で、軽火器は持っておりますけれども、それの使用は全く肉体的に自分が危機に瀕したときのみにしか用いないのですということを繰り返し説明しておるわけです。  先生が今状況説明された、どんどん集団的な紛争状況になるというのは、実はPKFの前提が崩れたときで、各国の過去の例を見ましても、そういうときは離脱をしたり中断をしたり、場合によってはそういう任務をやめているということなんで、PKFは、何度も申しますけれども戦いに行っているわけではございませんので、そこのところはひとつぜひ御理解いただきたいと思うんです。  それから、先ほど死者のことについて触れられましたけれども、例えば今までスウェーデンにつきましては五十九名の方が亡くなられたと。そのうち活動中に亡くなられたのは九名、残りの五十名は、交通事故で亡くなられたのが十四名、それから病気で十二名ということでございまして、全部がドンドンパチパチで亡くなったということではないんです。  これは、京都大学の香西先生は、UNEFというPKFとUNDOFのPKFの死傷者を調べられて、香西先生はその本の中で、UNEFとUNDOFの二つのPKFの犠牲者を調べてみると、大部分は地雷に触れて亡くなられたか交通事故である、こういうことも言っておられるわけです。ぜひ御理解いただきたいと思います。
  196. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、今のような局長の説明でこういう重大な内容をそのままにはできません。国連事務次長との協議内容も一片の報告程度で済まされない重大な問題なので、事は国民の命、自衛隊員や公務員の命にかかわる問題なんです。それだけじゃありませんよ。指揮問題もある、撤収問題もある、SOPのガイドラインもいまだに提出されていない。  そこで、私はガリ国連事務総長、グールディング国連事務次長の参考人の招致を要望したい。向こうの都合でもし困難な場合は、各党によって構成される調査団を国連派遣するということを求めたいと思います。
  197. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 時間です。
  198. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 理事会で協議してください。
  199. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御意見は承っておきます。
  200. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 以上で終わります。
  201. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 私は、きょうは二十五分しかありませんが、連合参議院を代表しまして質問をいたしたいと思います。  まず、私どもは今回のPKOの参加については、別の組織で参加をしたらどうか、こういう考えを持っていますということは何度も繰り返し申し上げてきました。それはいろいろな理由から困難であって、現行の政府法案の形が今現在最良なんだ、こういう趣旨の答弁もいただいてまいったわけであります。  きょうも実はその問題についてお尋ねをいたしたいと思います。お尋ねをいたしたいといってもお答えをいただけるかどうか、これは大変難しいと思いますが、それは新聞でもあるいは各党間の調整ということで政府案修正内容について取りざたされておりますし、私どもにも声をかけていただいております。しかし、どうにも私どもそこのところがわからないというのがまず別組織の主張の点でございます。  自衛隊が部隊ごと出ていかれる。そうすると、それはこの法案でいきますと三条の業務をやるということになれば、内閣総理大臣の指揮のもと、防衛庁長官の指揮のもとで部隊長が指揮をしながらかつ業務をやる。そうしますと、自衛隊の方が併任で行かれて、PKO隊員として一体何の業務をやられるんだろうか、三条以外。拾ってみますと、四条にPKOの「派遣先国において実施される必要のある国際平和協力業務の具体的内容を把握するための調査、実施した国際平和協力業務の効果の測定及び分析」と書いてあります。そうすると、これは自衛隊の方が行かれてPKO隊員として活動されるわずかに残っている部分、そういうふうに政府提出されている法案は読み取ることができるわけであります。  そうしますと、部隊ごと自衛隊の方がPKO活動だからそれはいいんだというお考えで出ていくということになるわけでありますが、これは私どもはここのところとみに議論されておる、例えばFについてしばらく凍結をしたらどうかということを考えるならば、むしろFを出さない間は逆に自衛隊員をそのまま部隊で派遣をするよりもひとまず別組織の中でやって、いろんな反省なりあるいは評価が出てきて見直すところは見直すということが本来の自然の成り行きといいますか、最も理解しやすい道ではないかと考えるわけです。  そこで、外務大臣が何かいろいろ発言をされたと。私は決してその発言を取り上げて、そういうことはどうなんだこうなんだと言うつもりはありませんが、外務大臣国会外の発言で、PKOを今の政府考えている出し方じゃなくて別組織で出すというのは火事場で婦人会が屋根に上がるような例えになるんじゃないかと。いろいろ例えが大変お上手で、いろんな形で比喩をされている例が多いんですが、あるいは、やくざの発砲現場にロータリークラブがとめに行くようなものだというようなことをおっしゃったというのが新聞に載っているわけでございます。  この発言をどうこうという、私の質問はそういう趣旨じゃございません。そうじゃなくて、火事場で婦人会が屋根に上るということは要するにまるで役に立たないんだという趣旨で、別組織というものはそういう意味でだめなんだという趣旨でおっしゃったと思うんですが、一方では連合参議院が別組織のことに非常に執着が強いので、三年後には少し検討の中に入れてあげましょうというようなことを言われておるということも聞いております。そうすると、これはどっちが真意なのだろうかと。  要するに、とてもどだい無理な話を、できない相談を言われて困っているということなのか、それともそうじゃなくて、今自衛隊が部隊でユニットとして出かけるということが即応性なり自己完結の六十日という求めなり、これは宮澤総理もしばしばおっしゃってみえますが、そういう安全配慮を自分たちでできるためにもとかということで、やむを得ないんだけれども、見直すことの中には入っているんだというようなことも聞いておるものですから、これは大変答えにくいことなんですが、一体困難な、どだい無理なことなのかそうでないのか、別の組織というものに対してどのようなお考えがあるか、お尋ねをいたしたいと思います。
  202. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 当面別組織で、自衛隊が持っているような練度といいますか訓練された技能、そういうものを自衛隊と関係なくこしらえるというのにはかなりの年限がかかるでしょうということが一つです。  一方に、自衛隊の方はもう訓練された人がおるわけですから、この間の掃海艇を出すに当たっても、あれは別組織でやるといったら、船をつくったり訓練をしたりというようなこと、それはもう五年や七年かからなきゃ間に合わないわけですね。あれと同じように、別組織でやるというのは口では簡単ですが、かなりの年数が、熟練した人をつくるためには期間がかかる。じゃ自衛隊から出向さして、それで別組織やって急いだらどうだと。それは一つの方法かもしれませんが、しかしながら自衛隊から出向さしたら、自衛隊の持っているいろんな施設がある、トラックだとかジープだとか無線機だとか、そういうものが今度は使えないから別に調達しなきゃならぬという話になってくる。  したがって、いずれにしても当面の間には合わない。しかし、将来それは自衛隊の中でそういうような別組織を、別組織というか専用の緊急救助だとかPKOとかというふうなところに行く部門を別組織でつくるというようなことであればそれは考えられるかもしれませんし、いずれにしても今すぐの間には合わないという意味で申し上げたわけでございます。
  203. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 実際には、Fの凍結というのが今やもう、今まだ出されておりませんが、修正案の中には当然出てくる内容だと言われております。  それで、私なんかが考えるには、FとOの区別が大変難しいとかいろんなことはありますが、かなり今回、修正案で仮に通ったというふうになった場合には、限定的なといいますか、当初もくろんでいた参加よりも大幅に制限つきの参加にならざるを得ないだろう。それは恐らく、例えのうまい外務大臣は若葉マークで行くんだというふうに一言でそのことをおっしゃってみえると思うんですが、こういうふうに限定的に行くならば、憲法論議で延々と論議をしても果てしのない議論が続く中では、なおさら別組織にした方がすっきりする。あるいは、一時的にしろ、そういう形でひとまず論争の幕をおろして、改めて再開するんだということも、決して多くの人が笑うようなことではむしろないんではないかと私は考えるのであります。  例えば、きょう朝から議論がありました中にも、武力の行使についていろいろな角度から質問がなされました。この武力の行使についても、危険なところには行くわけでないんでそんなに大げさにとらえることはないとか、あるいは、国連からPKOの参加要員というのは軍人の形で来てほしいと言われているんだけれども、実は外交官的な存在でもあるんだというふうな言葉は、裏を返せば、それならば何といいますかひとまず自衛隊の部隊参加を棚に上げてやれることはできないだろうか、こう考えるわけですが、実際には新聞報道見ますとそれは土台無理な話だという意見が出てくるわけですね。  軍人で参加をするには部隊参加だ、部隊参加とならないと指揮権が出てこないんだと。そうなれば別組織というのは、最初のスタートが間違っているから無理なんだというふうにある新聞で評論家といいますか専門家が言っているところ読みました。部隊参加をすること、すなわちいわゆる指揮権の統一というふうにとらえられているんでしょうけれども停戦監視員について考えればこれは個人的な参加で構成をされておると一般的には理解をされている。  そこで、今回、Fの凍結というのはいろいろな問題がありますからそれはお答え難しいと思うんですが、停戦監視員が我が国からも参加をする。これはたくさんの人が参加するわけじゃないでしょうけれども、そういう場合には防衛庁長官の指揮のもとに所属の部隊の指揮のもとに入って行かれるのか、あるいはまさに国連のコマンダーの中で個人として日本から派遣された将校が参加をされるのか、その点はいかがでございますか。
  204. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 停戦監視団の場合はこれは武器は持っておりません。そして、個人参加でございます。したがって、部隊としての自衛隊の参加ではございません。指揮権は防衛庁長官にはありません。これは本部長たる内閣総理大臣の命のもとにこの業務を実施いたします。しかし、その場合でも国連の監視団員としての機能というものは当然調整されたものとして行かれる、こういうことになろうかと存じます。
  205. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 そこで、現実停戦監視団に日本自衛隊の方がもし参加をするとすれば、恐らくこれまで防衛駐在官ですか、昔で言う駐在武官ですか、こういう経験のある方が恐らく候補者に上ってくるんではないかと思われるわけですが、こういう防衛駐在官について身分上のことについてひとつもう一度確認をしたいと思います。  それはどういうことかといいますと、伝え聞くところによりますと、いわゆる防衛庁の自衛隊員が在外公館に行かれる際には一たん防衛庁の職員といいますか自衛隊員をやめて、退職をされて外務省の職員になられて、そして一年なら一年赴任先の外国で語学研修を終えると防衛庁の身分ももらって、そして、しかし指揮は外務大臣及び派遣先の大使、公使の命のもとに外務省の職務をこなす、こういうふうになっているんだということでございますが、これはもう間違いないわけでしょう。それは外務省も防衛庁もそのとおりでございますか。
  206. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 外務省から正確にはお答えすべきかもしれませんが、そのとおりでございます。おおむねそのとおりです。
  207. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) ただいま先生がおっしゃいましたことで基本的に正確であると思います。  防衛駐在官は基本的には防衛庁から外務省に出向をしていただいておる外務事務官でございます。そして、主たる身分を外務事務官にした上で改めて自衛官に兼ねて任ぜられているというふうに言って差し支えないと思います。防衛駐在官は在外公館に勤務いたしまして、例えば軍事情報の収集とかあるいは軍事的な問題の調査等を行う外交官、外務事務官でございまして、外務省の職務に従事しておるわけでございますので、この点先ほど先生もおっしゃいましたとおり専ら外務大臣及び在外公館長の指揮監督に服しているという関係でございます。
  208. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 何のことを考えてあの人は質問しているだろうかと言われるでしょうから、私が申し上げたいと思うのは、こういう話を前提にして、Fの凍結がささやかれて参加が当面若葉マークといいますか限定的な形になるとすると、むしろ、どなたか既に委員の方も御質問されておりましたが、当面行ける限定された枠というのはどこだろうかと。文民警察と選挙監視は行けるでしょうけれども、これは何百人も行くわけじゃないだろうし、選挙監視も来年の四月の選挙監視にスポットを当てて派遣をしなきゃいかぬ。これらは恐らく他の行政機関から外務省の職員に休職・出向なのか退職・出向なのか知りませんが、そういう形でPKO隊員として行かれる。そして、あと限定されたということで停戦監視団が今防衛庁長官のお話のような形で参加を仮にするというと、実は別組織で行って十分可能なことではないかと思われてならないわけであります。  後方支援の部隊に自衛隊の方が行くときに、後方支援がFと見境がつかない。どこまでがFでどこまでがOだろう。あるいは地雷処理についても、Fの中に入っているのに、じゃ目の前の地雷処理をしなきゃならぬときに外国の人に一々お願いするまでぽかんと立っていなきゃいかぬのかとか、そういう議論を聞いておりますと、限定された参加しかできないときこそ別組織にして、今の現行法案のような部隊のまま防衛庁長官の指揮の中で行くよりも、私は青二才と言われるかもしれませんが、総理大臣の任命のもとのPKO隊員と。  任務を終えて帰ってきてからまたもとの職場にどういう形で帰られるか、それはまたそれで考えればいいことですし、その間にもし災害等に遭われた場合に、我々のように平和な世界に暮らしているのは一億円、二億円の生命保険をかけておけばいいわけですが、こういうところに行かれる方はこれは生命保険もかかりません。したがって、特別なそういう補償システムを考えて、とりあえず別組織で出ていってもらおうじゃないかというか、お願いしようじゃないかというのは決して私は夢物語ではないと思うんですが、こういうことは修正案を前提にした質問だから答えが難しいと言われかねませんが、お答えをいただけたらありがたいのでございますが。
  209. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 修正案を前提にした議論は、私どもこれが最良のものとして今御審議をいただいておりますのでそういう前提ではございませんけれども、よしんば、三条の後半ですね、例えば三号の夕に輸送とかあるいは建設とか通信とかそういう業務が書かれてございますね。これはやっぱり組織としての自衛隊の訓練を経た隊員として行うことが、要請にもよりますけれども極めて効率的、有効であろうと思います。一方、停戦監視団の方は、今申し上げましたように個人としての参加でございますから本部長の直接指揮を受けて行くわけでございますが、問題は二つございまして、その問題と同列に、例えばタ号の業務等は論ぜられないと思います。  そしてまた、なおいわゆる休職・出向ということが言われますが、休職の場合はこれはあくまで自衛官としての身分は保有しておりまして、その身分に基づく業務を病気その他によって一時停止することでございますから、これはいわゆる休職・出向の休職というのは当たりません。出向というのは、ただいま防衛駐在官の問題で議論されましたが、退職をいたしまして先方に行き、そしてまた併任をするということですから、この出向形態というのは形式的には考えられるところでありますが、これは先ほど外務大臣答弁を申し上げたとおりでございまして、退職をしてそれだけの人数を別個の組織にするということになれば、訓練もしなければなりませんし、また装備の点も、さっき外務大臣がお触れになりました自衛隊の所有する装備等を所管がえをしてやるということ、これはなかなかすぐ直ちにいいというわけにもまいりません、これは自衛隊の本来の装備でございますから。  それからまた同時に、資格の問題等もございますね。自衛隊であればこそパイロットあるいは艦船その他の資格が一般の資格と違って与えられておるわけでありますけれども、これを退職・出向ということになりますと、改めてそういう資格も取り直していただかなくちゃなりませんし、もろもろ考えた場合は大変膨大な経費とそれから訓練の期間を要しますし、非常に財政負担も伴うことでもございますので、私どもは、やはり今ある自衛隊が平和目的のために行くということですから、この機能をきちっと使うということがタ号だけとってみても必要なことと、我々はもちろんイからレまでを考えておるわけでございますけれども、タ号だけ仮によしんば委員の御指摘のような議論をしたとしても、やはり私は必要ではないか、このように存ずるところであります。
  210. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 丁寧にお答えをいただきましてありがとうございます。  ただ、もう一つだけ御質問をしたいわけでございますが、後方支援というか、あるいは輸送とかロジとか言われておりますが、後方支援の部隊の場合でもいわゆる身の危険が生じることがある。  私がスウェーデンのPKOの訓練所を見に行ったときには、たまたま輸送車両の乗員の訓練をやっておりまして、ある駐屯キャンプに輸送隊が品物を届ける途中に発砲があったという想定で、その隊員は全部車をとめて地上にはって地雷等の点検をしてからそろりそろりとキャンプに行った。キャンプに入ってみたら、想定ですが、人形で黒焦げになっている死体がある、あるいはけがをしている隊員がおる、それから火災がとまってない。そうすると、そこへ行って人工呼吸なり死体の処理なりあるいは火災の消火なりをする。  こういうふうな訓練をやっておったところを見せていただいたわけでございますが、そういう意味では後方支援の中でも常にそういう身の危険の中に入らなきゃいかぬし、これまで議論をされてきた武器の使用が全くないかというと、そうではない。そうすると、要員の生命のためにのみ使うんだと言っても、現実にその場に臨んだときに任務への直接的な侵害なのか、あるいは身の危険が迫っているときなのかというのは容易に区別がつかないんじゃないかという議論に対して、私はその質問をするつもりはありませんが、今までそういう答弁質問の間のそごが随分出てきております。  そういうことを考えると、今防衛庁長官がおっしゃった即応性とか、いろいろ経験を持っている自衛隊の今の技術と、そういう規律と経験を生かして、日本がとりあえずそこでPKOの存在を示すのにいいんじゃないかという理屈のほかに、ワンクッション置いたらどうなんだろうかと。そうすると、憲法上の問題も何となく一つワンクッションによって今のような、きょうここでの議論のようなことが避けられるんではないかというふうな思いをいたしているものであります。  もう時間が参りましたので、この問題、また次の機会がありましたら質問したいと思うんですが、なるべく早く修正案が本当に出るものならば出していただかないと、私ども質問がもう続かないというよりも、質問しても答えができないと言われると、もうそれでアウトになってしまう。これは要するに、何か審議を尽くしたというお言葉も聞こえましたけれども、私はこういう問題の質問をもう少ししたいと思ってもできない。その点を最後に、お出しになるなら本当に早く出していただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  211. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、まず国連待機軍の制度についてお伺いをしたいと思います。  現在、PKO派遣するものとして待機軍という制度をとっておる国が幾つかありますけれども、それらの国とその様式について、まず御説明を伺いたいと思います。
  212. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 御説明申し上げます。  世界のもの全部把握しているかどうか別といたしまして、PKOの参加に当たっていわゆる待機軍と呼ばれている制度を有している国として、典型的にはスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランドなどの北欧四カ国がまず挙がってくると思います。  これらの待機軍の概要は、国によりまして若干の差異はありますけれども、各国とも兵役終了者や現役の将校等の応募者の中からこの待機軍要員を選抜登録あるいは契約しておきまして、国連から要員の派遣要請があった際にはこれらの要員を派遣するという制度でございます。  この待機軍は、各国の国防軍の内部にその一部として、フィンランドの場合には国防軍とは別個に国防省のもとですけれども、編成されておりまして、現在、その規模につきましては、スウェーデンは二千名、それからノルウェーにつきましては千三百三十名、デンマークにつきましては九百五十名、フィンランドにつきましては二千名ということになっております。  以上が、その典型的な待機軍制度の国ですが、これに加えましてカナダにつきましても、カナダ型とよく言われますが、国防軍の中にあらかじめ、これは典型的には陸軍なんです、陸軍の中に、そういう場合にこれはPKOだよというイヤマークをしておくということでございまして、そういうものをあらかじめ軍の中で訓練しておく。これがカナダ型と呼ばれておる形でございます。
  213. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 この待機軍制度が設けられた経緯とその理由についてお伺いしたいと思います。
  214. 丹波實

    政府委員(丹波實君) これは歴史をずっとさかのぼりますと、一九六〇年代にUNEFという非常に早い段階にPKFが設けられたときのところまでさかのぼるわけでございまして、やはりそういうものが設けられた場合に、加盟各国が迅速にあらかじめ用意された要員を出してこれるように各国がそういう待機軍的なものをつくってはどうかということを、たしかカナダのピアソン外務大臣が提唱し、それを国連が受けて相当議論したことがございます。先ほどの北欧につきましては、基本的にはそういう国連の中における議論を受けて北欧四カ国としてつくったということでございます。  ですから、結論的にこういう制度を設けましたのは、常時要員を登録しておくことによりまして、国連からの派遣要請が行われた際に迅速な要員の提供を可能とし、もって国連による機動的なPKOの展開に資するというのが基本的な目的であったというふうに承知いたしております。
  215. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 ただいまの御説明にもありましたけれども、私はこの待機軍制度を設ける理由なり必要性があるように思うわけです。といいますのは、国連平和維持活動の任務の特殊性というのがあります。これは軍隊でなければできないけれども、軍隊の仕事とは違うわけです。  例えば、この間UNTACの代表の明石さんがお話ししておられましたけれども、要員選定の困難さということに触れられておりました。これは一つは協調性が必要である、それから忍耐力が必要である、それから仕事そのものが非常に単純な仕事で根気の要る仕事だ。それからもう一つは、現地に溶け込むために語学が必要だ。それから環境が必ずしもいいところでないから健康とかいろんな他の要素も要るわけです。それからもう一つは、装備一つとってみても本来の自衛隊日本の国防のために必要な装備とは違う種類のものがやっぱり必要になるかもしれない。それからもう一つ重大なのは、私は武器使用のやり方が基本的に違うと思うんですね。できるだけ武器は使わないようにする、それも個人の判断でやる。これは自衛隊の原則とはもう全く違うわけです。そういうことを考えますと、この要員というものはやっぱり非常に特殊性がある。  それからもう一つは、今言われた迅速性、即応性ということです。我が国の場合はこの協力隊は非常設ということになっておりまして、一つのPKOの活動について計画が決まってからそういう編成をする、あるいは応募をするということになるわけでありますけれども、これは即応性とかあるいはPKOの任務の特殊性から見て支障は果たしてないのだろうか。この点はいかがでしょうか。
  216. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  国連等の要請があった場合にそれに適宜的確、迅速にこたえることが必要であるという点は確かに御指摘のとおりだと思います。  何分この法案の仕組み、先生御指摘のとおりその要請の都度協力隊を編成するということでございまして、この法案にも書いてございますように、ふさわしいそういう技術、能力等を有する要員を自衛隊あるいは海上保安庁等、あるいは関係行政機関等において基礎的な訓練を含めまして、そういう具体的要請がありましたときにそれにこたえていただくということでございまして、こういった仕組み、何と申しますか即応性といったニーズに対しまして円滑にこたえられるようにしていかないといけないというふうに思っております。
  217. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 例えばこの法案が成立した場合、カンボジアに平和維持隊を派遣する場合にどれぐらい期間が必要か、お伺いしたいと思います。
  218. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 現実カンボジア派遣するということになりますれば、カンボジアにおける要請その他が具体的にいかなるものであるかによって違ってまいると思います。  私ども論議の過程で、先ほども答弁申し上げましたが、半年ないし一年を要すると、こう一つのモデルみたいなパターンとして、恒常的な制度として考えた場合のことを申し上げておきましたけれども、具体的にカンボジアということになりますれば、カンボジアにまず私ども本当に調査団でも出して、現実にどういう具体的な要請があるのか、そして直ちに対応し得るもの、また直ちに対応できないがちょっと訓練をすればできるもの、あるいはかなり期間をかけてきちっとしなければ対応できないもの、さまざまなものがあろうと思いますし、それからその任務の種類もいろいろその具体的ケースによって違うということが上がってくると思います。  そういう意味で一義的に申し上げることはできないわけですが、私どもは、やはり自衛隊をこういう新しい任務で出す以上は、きちっと今先生のおっしゃられた使命感なりそういうものを持って、そして本当にこの法律の趣旨にのっとりまして立派に任務を果たし得るということを基本的な原理原則といたしまして、そういう視点からできるものからきちっとやっていくというのも一つの現実的な対応の仕方ではなかろうか、こう考えておるところでございます。
  219. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 この平和維持隊の編成、応募にしましても、特殊な部隊は別として既存の部隊をそのまま出すわけではない、そのように言われておりましたけれども、そうすると自衛隊から出すにしても各部隊から適任者をやっぱり募集しなくてはならない。そして、それが決まれば今度は特別な訓練が必要である。北欧型の待機軍の場合でも、大体一般の兵員で二週間あるいは士官クラスだと四週間の訓練を義務づけられておるわけであります。そうすると、その都度常設ではなくてそういう隊をつくるとなると、かなりの時間を経過しないといけないということになろうかと思いますけれども、この点はいかがですか。
  220. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ある一定の規模以上のものを想定いたしますと、今委員の前提とされているような条件のもとではかなり時間を要する面が多かろうとは存じます。しかし、先ほど申しましたように、どれだけかかるかは具体的な要請とその任務の内容によることはこれはもう繰り返して申し上げるまでもございませんが、そのような感じでございます。  なお、隊員から選定してくるわけでございますが、国際緊急援助隊のいわば国内の災害派遣を国際的にやるのと違いまして、PKOその他全く新しい業務でございますから、これはやっぱり周知し、その精神をきちっと理解し、歴史も理解し、そしてまたカンボジアのいろいろな面も理解しなければなりませんから、かなりな時間を要することはこれは現実の問題として委員の御指摘のとおりだと存じます。
  221. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 PKOそのものがやっぱりこれからどんどんふえていくというよいうな傾向が見られるわけですけれども国連でも今まで何度かにわたってこの問題がいろいろ論議されたことがあります。そして、PKFの装備や兵たん面の規格化とかあるいは訓練の方式の標準化、統一化、同時に国連がこういうものを出す場合に各国がどれぐらいの用意があり、言えば出してくれるかというその情報をやっぱり常に持っておくことが大事だと。こういう面から考えても、この待機軍制度というものは今までも奨励されたことがありますけれども国連としてむしろ望ましい形になっていくのではないかと思いますね。  そういう動きとも関連して、我が国の場合、今すぐそうしろというのは無理かもわかりませんけれども、近い将来においてやっぱりそういう形というものを考える必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  222. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 防衛庁の組織の中でこの業務のウエートが高まってくるということも十分考えられますので、将来的にはそういった定員あるいは防衛庁の組織内の問題として、これは語学にもたけておらなければなりませんし、いろいろの要因が、先生さっき御指摘のような点がございますから、将来的にはそういうセクションといいますか内部組織といいますか、そういうものを考えることは私は有要になってくるのではないかとも思っておりますが、今直ちにそういう恒常的なものを組織内に設けるということは考えてはおりません。しかし、将来的な課題としては十分検討に値するものと思っております。
  223. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に指揮権の問題ですが、これはこの委員会でも再三論議されておりますし、また先般外務大臣から統一見解も示されたわけであります。そこで、私も二、三の点について確認をしておきたいと思います。  まず初めに、もとのコマンドは国連から出るわけですけれども、それが我が国から現地に派遣された部隊に至る命令系統ですね、これは一体どういうふうになっておるか、これを明らかにしていただきたいと思います。
  224. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  先生御指摘のように、まず国連の現地の司令官からコマンドが出るわけでございまして、具体的にいつどこで日本の部隊については何をするかといった点がコマンドという形で指示が出る。それに対しまして、本部長あるいはその権限を委任された者は、この法案の枠内でそのコマンドの内容に適合するように実施要領を作成、変更いたします。防衛庁長官は、このようにして作成、変更されました実施要領に従って自衛隊の部隊を指揮監督して協力業務を行わせるということでございまして、したがいましてコマンドが出され、そのコマンドに適合するように実施要領を作成、変更するということで、法案の枠内でコマンドどおりに業務を遂行するということでございます。  他方、やはり状況のいろんな変化に応じまして、国連から出されるコマンドというのがその都度変わってくるということがございます。それに適合するように同じように実施要領を作成、変更するという形によって、法案の枠内でこの部隊によりましてそのとおりに実施される、そういう仕組みになっておるわけでございます。
  225. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 そうすると図でかきますと、国連現地司令官があって、そこから我が国の本部長、つまり総理大臣のところへ来て、それから実施要領を本部長がつくり、それに基づいて防衛庁長官が現地部隊に指揮をする、そういうことでいいわけですか。
  226. 野村一成

    政府委員野村一成君) 今先生の御指摘のとおりで基本的に正しいと思います。
  227. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから、国際平和協力本部と現地の部隊との関係ですけれども自衛隊が部隊で派遣される場合は、本部長から防衛庁長官を経て現地の部隊、それから海上保安庁の場合は国連平和協力本部から海上保安庁長官を経て現地の部隊と、それで個人参加の場合は本部長が直に現地の部隊と、文民の場合もそうですか。
  228. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答えいたします。  今、先生文民と申されましたか、一般の協力隊員の場合は、これはこの法案の仕組みといたしまして、本部長の指揮監督のもとで業務に従事する、そういうことになっております。
  229. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 そうすると、担当大臣がそのラインの途中に入るのは自衛隊と海上保安庁というふうに理解していいわけですね。
  230. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  いわゆる組織参加の場合でございます。したがいまして、この法案第九条三項と四項、業務の実施につきましては、それぞれ海上保安庁長官あるいは防衛庁長官の指揮のもとで業務の実施に従事する、そういう仕組みになっております。
  231. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 政府の統一見解には、「国連の「コマンド」に適合するように実施要領を作成又は変更し、」とありますけれども、この場合の実施要領とコマンドの関係について確認をしておきたいと思います。  我が国が作成する実施要領は、コマンドのすべてを満たすものか、コマンドされたことはすべて含まれているのか。それからもう一つは、実施要領はそのコマンドされたもの以外も含んでおるのか。それで、この二つが全く同一であるのか、違うとすればどの点が違うのか、お伺いをしたいと思います。
  232. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  この法案の仕組みにおきましては、特にコマンドの実施ということでは、先ほど答弁申し上げましたように、この実施要領というのが非常に重要な役割を果たしておるわけでございまして、それがまさにコマンドに適合するように作成または変更される、そういう仕組みのもとで業務が実施されるということでございます。  したがいまして、実施要領の内容といたしましては、通常の状態では、この法案の枠内でコマンドのすべてを満たすというふうに考えて、コマンドの内容のすべてをそれに適合するように作成、変更するということでございます。  他方、これはごく例外的な場合ということで、いわゆる中断の場合につきまして、国連のコマンドの枠外で行動するに至ることがあるということ、これは先生御案内のとおり第八条第二項で書いてあるわけでございます。  この実施要領の内容といたしまして、じゃコマンドのほかにどういうのがあるかということでございますが、やはりコマンドの枠内で我が国から派遣されます要員が平和協力業務を適切に実施する上で必要と認めるほかの事項も定めることになるというふうに考えておる次第でございます。
  233. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから、この実施要領というのをつくるのは我が国だけで、ほかの国は余り例がないということも聞いておりますが、我が国だけが実施要領を作成するという手段をとる理由は何ですか。
  234. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  私の承知する限り、先生御指摘のとおり実施要領という仕組みで業務を実施する国はないというふうに理解しております。  なぜそういうことをするのかということでございますが、この法案の基本的な仕組みといたしまして、やはり法案実施の中核と申しますか、それをなしておりますのが総理府内に設けられます平和協力本部でございます。その本部長、これは内閣総理大臣でございますが、内閣総理大臣が我が国の要員によりますいかなる業務の実施につきましてもその円滑な実施を確保する、そういうのが重要であるというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、先ほど御指摘ございましたいわゆる組織参加の場合、海上保安庁職員が参加する場合、あるいは自衛隊の部隊が参加する場合、業務の実施につきましてはそれぞれ海上保安庁長官あるいは防衛庁長官の指揮のもとで行動するわけでございますけれども、本部長が作成、変更いたします実施要領を介在させることに、それに従って業務を実施させるということによりまして、本部長といたしまして、海外におきまして例えば自衛隊の部隊等が与えられている業務をきちんと円滑に実施している、そういうことを本部長みずから確認する、そういう仕組みが重要と考えてそういうふうにいたしている次第でございます。
  235. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 先ほどの御答弁の中で、実施要領はこの法案の枠内でコマンドのすべてを満たすと言われましたけれども法案の枠内でというけれども、例えばコマンドの中に法案の枠外にはみ出す部分があることもあり得るわけですか。
  236. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  通常の場合はもうほとんど法案の枠内で、したがいましてコマンドどおりに実施要領を作成、変更するということでございます。  他方、これは累次御指摘がございますように、いわゆる中断の場合と申しますのは、これはもちろん現地の平和維持隊の、PKOの活動の基本的な前提が崩れているという状態でございますので、そういったときには現地の国連の司令官あるいは事務局と緊密な連絡のもとで行動するわけでございますけれども、最終的にはやはり本部長の判断のもとでコマンドの枠外で行動するということがあり得るという、そういう意味で私申し上げた次第でございます。
  237. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 例えば国連の現地司令官がコマンドを出す場合に、我が国の部隊にコマンドする場合はやはり我が国の前提、五条件はもちろんですけれども、前提それからこの法案を理解してもらっておくことが必要ではないかと思います。この点はどうなんですか。
  238. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  外務大臣はすり合わせという言葉で的確に表現されておられることでございますけれども、この法案の内容、あるいはこの法案の内容の場合の実施の仕組みにつきまして、現地司令官はもとより国際連合との間でよく理解を得ておく必要があろうというふうに私どもは感じております。
  239. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に、実施要領にいろいろのことを定めるわけですけれども、すべての細かなことを書くわけにはいかないと思います。現地で緊急に国連の司令官からコマンドがあった、それは実施要領に定めのないことだと、あるいはコマンドが実施要領から見てちょっと判断がつきにくい場合、この場合に現地の我が国の部隊はどういう態度をとるのか。このコマンドに従うのか、あるいは現地の司令官の判断に任せるのか、あるいは本部長に伺いを立てるのか、この点はいかがですか。
  240. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  できる限りコマンドの内容に適合できるように弾力的に実施要領を作成しておくということが必要であろうかと思います。  他方、とは申しましても、例えば巡回を一つ例にとりますと、来月からは人数を少しふやして実施してくれないかというふうな話になりますと、まさに増員というふうな話にもなり得るわけでございまして、一つの例でございますけれども、そういった場合には、現地の部隊の責任者といたしましては、やはり本部長に伺いを立てて実施要領の作成、変更を必要とするといった場合があり得るわけでございます。そういう意味におきまして、非常に適時に対応するということが必要になろうかというふうに考えております。
  241. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 終わります。
  242. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 まず、二日間にわたる公聴会あるいは本特別委員会における今日までの経過をお聞きしましても賛否両論あったわけでありますが、その反対の主なることは、自衛隊派遣することに反対という声が圧倒的であったと私は思っております。  そこで、総理外務大臣防衛庁長官に明快にお聞きしたいこと、答えていただきたいことは、なぜ自衛隊派遣するのか、その真意はどこにあるんでしょうか、お聞きしたい。
  243. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これはこの委員会でもう何十回となく議論されたことでございますし、外務委員会でも私は先生にも何度かお答えをしたと思います。  それは、この国連の行う平和維持活動に対して協力するかどうかということがまずポイントでありまして、協力するということになれば各国とも軍隊を中心にして行っておるわけでございまして、そういうことになりますと、ばらばらで日本が出るというわけにもいかない、やはり自衛隊、外国の軍隊とは違いますが、性格は違いますが、自衛隊協力をしていただく、これを中心協力していただくというのが国際常識になっておりますので、常識に従って我々は考えただけでございます。
  244. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、外務大臣の答えられましたことにさらに加えて申しますならば、この平和維持活動というものが行われるところがしばしば自然的に非常に恵まれない環境にある地域の場合が多い。しかも、戦争が終わったばかりでございますから、荒れておるということはもう当然のことでございますが、そういうときに、こういう苦労の多い仕事をいたしますのに、自分がまず食っていくこと、住んでいくこと、衛生、輸送等々、これは組織と訓練と経験がなければとても、自分がいるだけでも大変でございますから、その中でこういう難しい仕事をするということになりますれば、やはりそれなりの経験があり組織があり命令系統のあるものでなければ役に立たないだろう、こういうことが大事だと思います。
  245. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 外務大臣総理の申されたことでもう尽きるわけでございますが、委員がしばしば本席で問題にされますのは武器の使用と武力の行使の問題でございますが、この武器の使用についてはあくまで、私どもははっきりいえば手ぶらで行ってもいいと思うんです、自衛隊の組織、経験、知識を生かしていくためには。と思うんですが、しかし停戦が合意され相手国も受け入れるという条件であっても、全く問題がなければこのPKO派遣する必要はないわけでございますから、多少の危険もございます。護身用の武器を持っていくということでございまして、これは武力の行使につながらないものという点は明確になっておりますので、委員がしばしばその点に言及されますので、その点だけ私から申し添えさせていただきます。
  246. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 二十一世紀のアジア・太平洋、ひいては世界における日本のあり方、果たすべき役割等についてじっくりと検討し論議を尽くした上で、日本世界に対してどのような貢献をなすべきものか、その結論を出すべきではないか、こう思われてなりませんが、総理、いかがですか。
  247. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 世界に対する貢献というのはたくさんございます。我々は、ODAを通じていろんな貢献をしておったり、あるいは環境問題でいろんな貢献をしたり、あるいは軍事、軍備の縮小というような点でいろんな提案をしている、これも広い意味では貢献でございましょう。それから、貿易等の問題についても輸入を増大するというふうな政策をとる、これも貢献でございましょう。しかしながら、その貢献の一つとして、今度のように戦争が終わった後、あるいは地域紛争が終わった後、再びそのような紛争を起こさせないための平和維持活動ということで国連が主導権を持ってやっておる、こういうふうな新しい世界の動きに対する貢献、これも一つの貢献である、新しい貢献のあり方であると。  したがって、中国などは、「解放軍報」を読んでみると、私ここに持っていますが、中国の解放軍が初めて歴史的に世界のひのき舞台に躍り出ることができた、これによって我々は世界に解放軍が貢献できるということは大変な誇りだというようなことまで言っておるわけですから、やはり世の中は変われば変わってくるんだということもひとつ知っていただければありがたいと思います。
  248. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 国際平和協力とは一体何なのか。クリーンな手で、クリーンな手段で貧困の克服、教育の向上、公衆衛生の増進、医療の充実、生活環境の整備、生産活動の活性化等に地道に協力すべきではないだろうかと思われてなりません。軍隊を差し向けて武力で平和を保障するという考え方はいわゆる米国の亜流であり、私は、やがて世界国民の不信と反感を招く結果となることは火を見るよりも明らかであると確信いたします。  平和憲法を持つ日本が二十一世紀の世界で生きていく道は専ら平和に徹することであり、自衛隊は専守防衛のための組織の範囲でやる。超えず、やがては縮小、改善してそれこそ真の国際平和協力隊を目指し、日本は非軍事的貢献に徹すべきであると思われてなりません。総理防衛庁長官の所見をお聞きしたいと思います。
  249. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員の御指摘の非常に広範にわたるこれからの平和的な国際貢献業務、私はこれも重要だと思います。しかし、今回それだけにとどまらず自衛隊PKOに参加させるゆえんのものは、これははっきり申しまして我が国一国だけで武器を携行していくものではございません。  先生もう重々御承知だと思いますけれども、今カンボジアの例で申しますとたしか三十六カ国で、四十四カ国まで集まるというんですから、国連の中の組織体として我が国も参加、国際協力するわけでございますから、かつての旧軍時代のような国の政策遂行目的のために我が国あるいは特定の同盟国だけでこのような行動を起こすということは絶対ないわけで、これは国連の参加の協力業務でございますからあくまで平和的な業務でございます。たびたび五条件その他いろいろ議論されておりますけれども、詳しくは申しませんが、あくまで自衛隊の本来の専守防衛の任務とは次元を異にした任務であるという点はぜひひとつ御理解いただきたい。  ただ、別組織にどうしてしないのかという御議論もたびたび本院でございますけれども、これは自衛隊の現在の組織、機能、経験等を生かしてやることが最も効率的、即応的であり、各国ともそのようにやっている、このように解していただきたいと思います。  それから、先生の御指摘は、専守防衛で当面やってだんだん縮小していけよ、そして同時に、最後には真の国際平和協力隊を目指してやってくださいという御指摘だと存じますけれども、我が国の防衛というのは専守防衛でございます。そして、決して軍事大国にならないといういろいろ基本的な防衛政策のもとに基盤的な防衛力を整備するというのがあくまで我が国の立場でございます。もちろん、国際情勢その他もございますから、これらの計画あるいは防衛計画の大綱の別表についても検討を加えるということは総理初め私も申し上げておるとおりでございます。  真の国際平和協力隊というものが先生の意味するところは何であるか、ちょっとよくつまびらかに私もわかりませんけれども自衛隊も平和を確保するための自衛隊であるという点は、これはもういささかも変わりない点でございますので、このことだけ申し上げさせていただきます。
  250. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それじゃ残り時間、もう一問お尋ねしますが、これは総理にぜひ答えていただきたい。  PKOは、停戦合意が成立したというても紛争地域に派遣されるものであり、合意に反して紛争が継続あるいは再燃する可能性は極めて高いと言わざるを得ません。自衛隊は武器を携行し自己の生命、身体を守るための武器使用は認められているわけであるから武力の行使に至る可能性は極めて大きいと言わざるを得ません。  ところで、武力の行使は憲法第九条の禁ずるところである。そこで政府は、指揮権がどうのコマンドがどうのと苦し紛れの答弁を繰り返しておりますが、このような議論はすべて憲法第九条の壁をどのようにしてかいくぐるかというこそくな手段であります。自衛隊PKOへの派遣憲法違反になるのは明白であります。平和憲法を守らずして何が国際平和協力かと言いたいのであります。総理の御見解を承りたい。
  251. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) しばしば言われますとおり、国連平和維持活動は、発砲するようになりましては紛争当事者となってしまうのでありますから、それではもう平和維持活動の失敗だということはしばしば言われるとおりでございます。  いろいろ不幸な例をお挙げになりましたが、何が不幸だといって戦争で人が死ぬほど不幸なことはありません。せっかくそれをやめたんだからどうか後戻りしないようにひとつ国連に来てくださいと、これほど私は人道的な活動というものはないだろうと思います。
  252. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  253. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) この際、本委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。  まず、第一班の御報告を願います。上杉光弘君
  254. 上杉光弘

    ○上杉光弘君 大阪班につきまして御報告いたします。  大阪班は、下条委員長、谷畑理事、木庭理事、合馬委員喜岡委員、小林委員、立木委員及び私、上杉の八名で構成され、昨二十八日、大阪市において地方公聴会を開催し、六名の公述人から意見を聴取した後、派遣委員から熱心な質疑が行われました。  まず、公述の要旨を簡単に御報告申し上げます。  最初に、関西経済連合会常任理事・関西経済同友会常任幹事能村龍太郎君より、戦後四十六年、我が国は平和であったために経済発展を遂げることができた。我が国が国際平和のために貢献することは、日本憲法の本旨に合致する。PKOへの参加は、平和による豊かさをみずからに体得させるために重要な役割を果たすものである。PKO活動は、直接に我が国の利益のために行うのではなく、国連の要請によって、平和を維持するために行われる。経済大国としての我が国は、これに積極的に参加する責務があり、政府提出法案賛成するとの趣旨の意見が述べられました。  次に、立命館大学国際関係学部教授関寛治君より、ポスト冷戦時代世界軍縮の動きに対して、我が国の軍縮措置がほとんどなされていない。米国の安全保障政策にも変化が見られる今日、対米従属の外交政策を改めるべきである。憲法の精神は、国連中心外交の中に生かしていかなければならない。国連への貢献は、PKO自衛隊派遣することではなく、非軍事的貢献によるべきである。PKO問題を本格的に決定するのであれば、国会を解散して民意を問うべきであるとの趣旨の意見が述べられました。  次に、外交評論家三宅和助君より、カンボジア和平はアジアの平和と安定にとって最重要課題であり、我が国も、国連カンボジア暫定機構、UNTACに積極的に協力すべきである。PKOは、和平が成立してからのものであり、小火器の使用も正当防衛のためのものであるので、武力の行使ではなく、憲法に違反しない。PKOへの効率的な協力のためには自衛隊の組織による参加が不可欠である。UNTACへの自衛隊派遣については、カンボジア人自身もこれを歓迎している。政治的妥協をしてでも政府提出法案を一刻も早く成立させるべきであるとの趣旨の意見が述べられました。  次に、大阪YWCA平和委員会委員長松井義子君より、政府提出法案は、戦後補償をないがしろにしたまま、国際貢献、平和維持活動の美辞麗句のもとに、憲法違反の自衛隊による実質的な海外派兵を行おうとするものであり、強く反対する。我が国は着々と軍備増強に努めており、アジア諸国の反発を招いている。PKO協力法案が成立すれば軍事大国につながるとの警告を無視してはならない。憲法九条を地球規模で広めるようにすべきであるとの趣旨の意見が述べられました。  次に、神戸大学法学部教授芹田健太郎君より、PKOへの協力憲法の精神に合致するものであり、推進すべきである。PKOは敵のいない兵士と呼ばれるように、その本質は非強制、中立、国際性にある。政府提出法案にはPKF参加五原則が明確化されているが、これは我が国の非戦の立場を表明したものである。PKF本体への参加凍結の論議は、国民の十分なコンセンサスを得るため、政策判断として肯定できるとの趣旨の意見が述べられました。  最後に、立命館大学法学部教授大久保史郎君より、政府提出法案は、違憲の自衛隊を海外で軍事的性格の強い活動に参加させるものであり、さらなる違憲と言わざるを得ない。PKOの実態と法案国連平和維持活動などとの間には重大なそごがある。PKF本体への参加凍結などの修正の動きが伝えられているが、PKF本体と後方支援とは明確に区別できるものではなく、これにより法案の違憲性が払拭されるものではないとの趣旨の意見が述べられました。  公述人の意見に対し、派遣委員より、国際貢献のあり方、PKOの本質、自衛隊の海外派遣憲法との関係、PKF参加五原則に対する評価、法案修正論議についての見解、UNTACの活動状況と我が国の協力方策など広範にわたる質疑が行われました。  なお、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はこれにより御承知願いたいと存じます。  以上で大阪班の報告を終わります。
  255. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 次に、第二班の御報告を願います。岡野裕君。
  256. 岡野裕

    ○岡野裕君 地方公聴会新潟班につきまして御報告をいたします。  新潟班は、藤井団長、田村理事、佐藤理事、真島委員、角田委員、磯村委員、寺崎委員及び私、岡野の八名で構成され、昨二十八日、新潟市において地方公聴会を開催し、六名の公述人より意見を聴取した後、派遣委員から熱心な質疑が行われました。  まず、公述の要旨を簡単に御報告申し上げます。  最初に、中条町長熊倉信夫君より、国際環境が激変する中で、我が国はともに汗を流す努力を怠っては諸外国の信用と理解を得られない。日本の戦後復興の経験を生かし、カンボジア援助をなすべきである。海外の悪条件下での諸活動に当たるには、訓練され、指揮系統の整備された組織である自衛隊以外になく、別組織をつくることでは国費のむだ遣いとなるとの趣旨の意見が述べられました。  次に、弁護士大塚勝君より、PKO法案は、指揮命令、武器の保有、使用、国会報告、自衛隊派遣等問題点が多い。自衛隊の海外派遣は我が国政府の基本的な政策変更である。自衛隊は違憲の存在であり、平和憲法に反することはもとより、憲法解釈から自衛隊派遣が可能になるとは思えない。政府は、警察予備隊保安隊から自衛隊へと軍備拡張する中で、平和主義を否定し、憲法を侵害してきた。昭和二十九年の参議院決議の趣旨からも自衛隊派遣すべきではない。日本の貢献は非軍事的なものに限るべきであるとの趣旨の意見が述べられました。  次に、前青山学院大学教授斎藤鎮男君より、PKOは軍隊を使用するが純然たる平和活動であり、国連の権威の象徴として派遣されるもので、一国の都合や立場からのみこれを見てはならない。PKOは我が国憲法に抵触せず、国際義務である。多数の国々がその平和的意義を理解して参加している。PKOは戦闘の再発防止活動であり、紛争当事国の合意のもと、中立を守り、武力を行使しないことを特徴とし、すべて自己防衛のためのみに武器を携行する。カンボジアPKOは我が国にとり緊急を要するとの趣旨の意見が述べられました。  次に、宗教者平和の会会員大西しげ子君より、自衛隊の存在自体違憲であり、自衛隊の海外派遣憲法九条に二重に違反する。憲法日本人のためだけでなく、世界じゅうの平和を愛する人々、戦争の犠牲を強いられたアジアの人々のためにも守るべきであって、同時に、戦後補償をきちんと行うべきである。自衛隊とは別個の組織で、非軍事の分野での積極的活動を行うべきであるが、最大の国際貢献軍縮であるとの趣旨の意見が述べられました。  次に、連合新潟会長滝沢剛君より、PKO法案を成立させ、国際貢献に対する積極姿勢を明らかにすべきである。成立の前提としては、平和憲法を守り、国連中心を貫き、非軍事、民生分野に限定し、PKFを凍結し、見直し条項を明記し、事前国会承認を盛り込むことである。自衛隊派遣は好ましくなく、軍事施設等の撤去や停戦監視活動等には自衛隊の参加は認めざるを得ないが、自衛隊と別組織として身分は休職・出向とすべきであるとの趣旨の意見が述べられました。  最後に、弁護士高池勝彦君より、PKO法案国際貢献のために必要である。自衛隊は合憲である。自分の国の自衛隊を信用できない国がどうして他国から信頼されようか。自衛隊PKOに必要に応じて派遣すべきであるが、PKO法案は煩瑣で、制約が多過ぎ、国際常識に反し、武器使用及び撤収の点で国連の指揮下で足手まといとなるおそれがある。我が国の場合、基本的に自衛隊の位置づけがおかしいのであり、自衛隊の士気をもっと考慮すべきだとの趣旨の意見が述べられました。  公述人の意見に対し、派遣委員より、国際貢献についての国民合意形成の重要性、憲法平和主義自衛隊派遣の関係、PKF凍結事前承認の是非、PKF活動における武力行使の可能性の有無、指揮権をめぐる国連日本との関係、中国、フィリピン等アジア諸国の反応、別組織によるPKO参加の意義、カンボジア支援のあり方など広範にわたる質疑が行われました。  会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はこれにより御承知願いたいと存じます。  以上で新潟班の報告を終わります。
  257. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) これをもって派遣委員の報告は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十七分散会      ―――――・―――――    〔参照〕    大阪公聴会速記録  平成四年五月二十八日(木)  場所 大阪市 ホテル日航大阪   派遣委員    団 長 委員長      下条進一郎君        理 事      上杉 光弘君        理 事      谷畑  孝君        理 事      木庭健太郎君                 合馬  敬君                 喜岡  淳君                 小林  正君                 立木  洋君    公述人        関西経済連合会        常任理事・関西        経済同友会常任        幹事       能村龍太郎君        立命館大学国際        関係学部教授   関  寛治君        外交評論家    三宅 和助君        大阪YWCA平        和委員会委員長  松井 義子君        神戸大学法学部        教授       芹田健太郎君        立命館大学法学        部教授      大久保史郎君     ―――――――――――――    〔午前九時三十一分開会〕
  258. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) ただいまから参議院国際平和協力等に関する特別委員会大阪地方公聴会を開会いたします。  私は、本日の会議を主宰いたします国際平和協力等に関する特別委員長下条進一郎でございます。よろしくお願いいたします。  まず、私ども一行のメンバーを御紹介いたします。  自由民主党所属で理事の上杉光弘君でございます。  日本社会党・護憲共同所属で理事の谷畑孝君でございます。  公明党国民会議所属で理事の木庭健太郎君でございます。  自由民主党所属で委員の合馬敬君でございます。  日本社会党・護憲共同所属で委員喜岡淳君でございます。  同じく小林正君でございます。  日本共産党所属で委員の立木洋君でございます。  次に、公述人の方々を御紹介申し上げます。  関西経済連合会常任理事・関西経済同友会常任幹事能村龍太郎君。  立命館大学国際関係学部教授関寛治君。  外交評論家三宅和助君。  大阪YWCA平和委員会委員長松井義子君。  神戸大学法学部教授芹田健太郎君。  立命館大学法学部教授大久保史郎君。  以上の六名の方々でございます。  さて、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案及び国際平和協力業務及び国際緊急援助業務実施等に関する法律案、以上三案につきましては、目下、本委員会で審査中でございますが、本委員会といたしましては三法案の重要性にかんがみ、国民の皆様から忌憚のない御意見を賜るために、本日、当大阪市及び新潟市において、同時に地方公聴会を開会することにいたした次第でございます。何とぞ特段の御協力をお願い申し上げます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  公述人の皆様におかれましては、御多忙中のところ、本日は貴重な時間を割いていただき、本委員会のために御出席賜りまして、まことにありがとうございます。派遣委員一同を代表いたしまして、心から厚く御礼を申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員質疑お答えをいただきたいと存じます。  なお、この会議におきましては、私どもに対しての質疑は御遠慮願うこととなっておりますので、御承知願います。  傍聴の方々にも傍聴人心得をお守りいただき、会議の円滑な進行に御協力くださるようお願いいたします。  それでは、これより公述人の方々から順次御意見を承ります。  まず、能村公述人にお願いいたします。能村公述人。
  259. 能村龍太郎

    ○公述人(能村龍太郎君) 御指名をいただきました能村でございます。  私は何の権力も持っておりません大阪の一市民、一町人でございます。  一九四五年といいますと、昭和二十年の三月十三日の夜でございますけれども、この付近はアメリカの戦略空軍によります第一回目の空襲がございまして、大変な被害をこうむりました。十万人以上の人が死んだわけです。大阪の中心の船場の古い家々も由緒のある家々も多数焼失いたしまして、まさに一望千里とも言える焼け野原になったわけでございます。翌日の午後まで、まだ空は煙で夜のごとく真っ黒でございました。茫然として私はそれを眺めておりましたが、私はその中でやっと生き残ったわけでございますけれども、当然無一物になったわけでございます。  その後四十六年の間、私自身も、そして大阪も、また我々の日本も、その間戦争がなかった平和のおかげですばらしい経済の発展、成長を遂げることができました。その平和がもたらしてくれました豊かさは大変ありがたいもので、平和によって恐怖がなくなり、したがって人間の考える力、頭脳の力が十二分に発揮されることによりまして我々の今日の豊かさがもたらされたものでございまして、考えてみると、その我々の豊かさの基本は平和そのものではなかったかと考えておる次第でございます。もちろん、これには日米安全保障条約が大変役に立っておるわけでございます。  過去、人類の歴史における戦争といいますものは、食物や資源の不足そしてまた気象の急変による食糧不足のために、民族が移動せざるを得ないための理由による悲惨な事実が往々にしてありました。さらに、自分たちの生活圏を広げるために領土を拡大する、それも平和のためという名目で実際にはそれぞれのエゴで人類は長い間戦争してきました。その間の人類は知識や情報の不足で知らないことがまだ多く、そのための恐怖心による行動もたくさんあったわけでございます。また、人間にとって常に貧しさこそがさらなる恐怖心を募らさせ、過激なる行動をとらせ、ついには戦争をもたらすということでの最大の原因ではなかったかと思うわけです。  本来、人間にはすばらしい大脳がございまして、その大脳の性能は、何と申しますか、クロマニヨン以降の現代人の間はそれほどの本来差はあるように思われませんけれども、交通、通信の未発達な時代、あるいは民族文化や宗教上の制限による情報の不足によって、その知識量の欠陥によってもたらされる貧しさ、そしてそのことによる食べていけないという恐怖心によりまして、戦争という悲惨な事態が随分続いてまいりました。  今日の日本の豊かさをもたらしたものは、我が民族の持っておりました知恵の質、知識の量が豊かであったからで、第二次世界大戦でたとえ一時は全損と言ってよいくらいの損失をいたしましたけれども、知識と知恵を使うことによりまして、またさらに重要なることは、人間社会の中でお互いを信用する、そして信用することによって大きな契約が成り立ち、すなわち経済活動が拡大するという我々の長い伝統があったために、今日の発展を可能にしたと思っておる次第でございます。  平和のありがたさについて言えば、日本はその持っていた知識によって、一六〇〇年、天下分け目と言われる関ケ原の戦いのとき、当時のヨーロッパでは考えられないような六万丁の鉄砲があったことによりまして、そのことが宣教師たちの報告によって、あの大航海時代であったヨーロッパの国々が日本を侵略することをあきらめたわけでございまして、そのおかげで徳川時代二百六十年間、鎖国という平和な時代を保ち得たと思うわけです。  社会の平和、安定があってこそ、人々は経済活動に対して頑張れることにより、豊かな社会を実現することができるわけです。イギリスが本当に豊かになったのは、一八一五年、ナポレオンが敗れて、有名な会議は踊るというウィーン会議の後約二十一年間、ビクトリア女王が即位をするまでの間イギリスは戦争をしなかった、そのために本当の豊かさがもたらされたわけです。明治の初年、我が国の鉄道が新橋―横浜間にやっとできたころ、イギリスには既に一万五千キロの鉄道が敷設されておりましたが、それは戦争がないことによりかち得た豊かさによるものではないでしょうか。  科学技術の進歩により、武器が腕力から鉄砲、大砲、飛行機、ついにはミサイルになりました。この輸送の合理化によって原爆や水爆の使用による大国間での大きな戦争は相殺とオーバーキルのおそれで不可能となってしまいました。また、人間の自由なる発想と生産性を無視し、軍事力のみに頼っていた共産主義国ソ連の自滅によりまして第三次世界大戦は終わったと言われておりますけれども、今日ではかえって世界の国々の間でトラブルが表面化しつつあることは御承知のとおりであります。特に民族間、宗教間の争いは、過去の長い歴史の間、戦いというものは常にだまし合うということ、戦いは詭であると孫子もその兵法で言っておりますけれども、双方の不信感によって平和という状態が維持されにくいのが現実のようです。このようなとき、人々が武力によって相手から人命や物質、土地を奪い合うよりも、平和の状態による豊かさをみずから体得させ肌で理解させるためにも、今回のPKO活動は人類社会にとって大変重要で重大な役目があると考えておる次第でございます。  昔々二千五百年前、春秋時代の孔子様が文武両道ということを言われました。これは十八史略にも載っておる有名な言葉でございますけれども、文武の武は戈をとどむ、武器を置いているということでございまして、これは相手から侵されずみずからも相手を侵さぬという平和の本来の姿なのであります。残念ながら、人間はまだ神様ではないのでみずからの抑止力も乏しいがゆえに、平和の姿を維持させるため今回のようなPKOによる平和の形の維持に協力することこそが、今までに乏しい人々に平和による豊かさをもたらす体験を味わわせるまたとないチャンスではないでしょうか。  一方、我が国の存在にいたしましても、世界が平和でなければ当然その豊かさすら成り立たないわけでございまして、考えてみますと我が国は人口が面積に比して過大であり、食糧も資源も不足であります。したがって、これからも世界じゅうで単に富める国としてではなく尊敬されるような行動をして、そのおかげでどこにでも自由に往来できて、物々や情報が自由に交換できるということは生存のための必須条件でもあります。そのために我が国もその平和のために協力、貢献せざるを得ないわけでございまして、これこそ我が国の憲法の本旨ではないでしょうか。  平和に対する我々の願いは切なるものがありますが、以前にある婦人団体でお話をいたしましたところ、あるリーダーのお方が私どもは神様に平和をお祈りしておりますと誇らしげに言われましたので、私は、神様にお願いするのはまことに結構なことでございますが、一体どの神様にお願いされているのですか、アマテラスオオミカミ様ですか、出雲の神様ですか。あなたのお子様が東京大学か早稲田大学に入学御希望の願いならば間違いなく聞いてくださると思いますけれども、例えば日本の神様とイスラムの神様では話し合いがつかないと思いますし、その上、最近では同じ神様の下で同じイスラムの人たちがお互いに戦争するようになってしまいました。  したがって、神様が違っては、神様同士が話し合って平和をもたらすことをお願いいたしましてもそれは全く無理なお願いというものではないでしょうか、失礼なことにはなりませんでしょうか。また、神様のいらっしゃらない相手の国の場合は一体どうなのでしょうか。そういう状況を承知の上で神様にお願いするだけであなたは平和に対する貢献ができたとお考えになるのでしょうか。単にお祈りするだけで平和が成り立たないのはまことに悲しいことではございますが、我々人間の社会の現実でございます。そういう意味で、お祈りだけで安心されることは本当のまじめな行動でしょうかと申し上げたことがございますが、戦争の問題は全く人間同士の問題なのでございます。  今回のPKOの問題も、憲法違反との話も聞き及んでおりますのですが、私は改めて何回も憲法を読み返しましたが、憲法の中にも国際貢献せねばならないという立派な考え方もあります。PKOに関しましては、これは直接に我が国の利益のためにこういう組織をつくり派遣するということでは断じてないわけでして、したがって我が国の領土をふやすために、我が国のエゴとして派遣するわけでは決してないわけです。我が国に直接の利益はないけれども国連の要望によって平和を維持するために、経済大国として存在を認められている我が国にとりましては、当然というよりもぜひ参加せねばならぬ大きな責務があるのではないでしょうか。  現実の問題として考えますと、貧しい人たちが住んでいる地域があったとして、そこに一軒の家だけの大金持ちが居住しているということはまさに非常な危険な状態でありまして、実際には不可能なことです。したがって、我々は、PKOのことは当然ではございますが、その次の段階として考えなければならないことは、我々の知識と知恵を、現在は貧しいけれども本来は優秀な人間社会のいろいろな国の人たちの御希望によってはそれぞれに協力して知識と知恵の向上に努め、ともに将来豊かな社会になっていただくことにこれからもぜひとも貢献せなければならないと考えておる次第でございます。そうすることによってのみ本当の平和と人々に豊かな社会をもたらすことになるわけでして、そのための第一段階として何としてでも戦わない、戦闘のないという状態を維持するためにも、我々は今回のPKO考え方に賛同して最大の御協力をせなければならないと考えておる次第でございます。  以上、ありがとうございました。
  260. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  261. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) 次に、関公述人にお願いいたします。関公述人。
  262. 関寛治

    ○公述人(関寛治君) 私の公述は五つの点にわたって行われることになります。  第一番目は、ポスト冷戦時代軍縮、平和という課題に日本外交はどういう形でこたえてきたかということであります。二番目は、国連中心外交が戦後四十五年を経てどのように変貌してきたか、その国連中心外交の中でのPKOの位置づけと日本の従来の政策との関係でございます。三番目は、ポスト冷戦時代のバイゲモニーと言われる日米関係の中でのアメリカの大きな変貌と日本の役割の問題でございます。それから四番目に申し上げたいことは、日本憲法はそういう中でどういう意味世界的に持っているのか。政府が理解している日本憲法の位置づけと国民が理解している位置づけとの間にギャップがないか、そういう問題に焦点を当てたいと思います。五番目は、地球化時代と言われる中で日本のリーダーシップというものはどういう形で実現されるべきかということからPKOの問題に議論を進めたいと思います。  まず、第一番目の問題から申しますが、ポスト冷戦時代軍縮、平和が最も重要な時代になっているわけです。日本外交はこのとき自衛隊に関して一体軍縮のどのような措置をとったかということが最大の問題になろうと思います。  それで私どもは、現在、世界軍縮するためには二十一世紀までには世界の軍事費が全体として半分になるということが必要だと思います。その半分になる中で日本というものは一体どういう役割を果たすべきだろうかということをいった場合に、日本軍縮措置はほとんどとられていない、これは最大の問題であろうと思うんです。それで、湾岸戦争が起こりました。この湾岸戦争というものの直後において、アメリカのブッシュの支持率は最高に高まりましたけれども、現在つるべ落としに落ちております。それは湾岸戦争に対するアメリカの政策に対する批判であります。あのとき多国籍軍というものを編成して日本はそれを支持するという方向を出したわけです。しかし、それが最大の間違った戦争だということがアメリカの中で今や大統領選挙を目前にして高まってきているわけです。このような状況で日米関係をどう考えるかというのは後で申し上げたいと思います。  もう一つの問題は、ポスト冷戦時代日本のやるべきことは、今まで過疎地帯にあった、日本時代中心にした新しい発展というものを考えるべきで、それがあらゆる地域にモデルをつくるべきであるということであります。このような点では日本外交は非常におくれていると思います。  次に、国連中心外交の問題に入りたいと思います。  国連中心外交を考える場合には、国連現実の機能がどのように変貌してきたかということが非常に大切であります。もともと冷戦の起源であった朝鮮戦争というのは国連軍の出兵によって始まったわけです。これが冷戦を大きく形づくる原因になったわけですから、その後国連の活動では、国連軍というよりは現在問題になっているPKOの活動の方に重点が移ってきたわけです。  国連中心の集団的安保という考え方とPKOとの間には大きな矛盾があった。その矛盾というのは何かといえば、PKOは基本的には軍事力を行使しないで、そして兵力引き離しの監視というところに焦点があった。したがって、そこには中立国から成る軍隊のみが派遣を許されていた。なぜなら、中立国から成る軍隊は、冷戦時代における基本的な戦略というものとは対抗していたわけであります。そういう意味で、中立国というのはPKO派遣するには最も適した軍隊であるということだったわけです。  しかし、日本は、残念ながら日米安保条約のもとで、自衛隊というのは巨大な戦闘をするための一部の補完部隊として養成されてきたわけですね。このような自衛隊というものと日本憲法との間に大きな矛盾が起こったことは当然であります。このようなことから、憲法というものがだんだん骨抜きになってきたというのが日本の歴史的な事情であります。いかにして日本憲法というものを国連中心外交の中で位置づけるかという問題は再検討を要する課題だと思います。  三番目に、ポスト冷戦時代のバイゲモニーというのが非常に今重要な概念になってきております。それはなぜであるか。それは、軍事中心で安全保障を行おうとしてきたアメリカの政策が、ポスト冷戦時代に変わらざるを得なくなっている。それに対して、日本は経済中心で発展をしたわけであります。そういう意味で、日米関係というものが新しい次元に来ているわけであります。  そのような次元の中で、アメリカが従来考えていた戦略と日本考えていた従属、アメリカにどちらかといえば従属する、これはもうはっきり日本の外交でも、今後日米関係が重要だから日米関係を中心にして考えるということで、概してアメリカの言うなりになってきたというのが実情かと思いますね。これは外務省ははっきり言っているわけです。実際調べてみればわかるんですが、日本の外交青書というのは、アメリカが変わって大体二年ぐらいたつと変わるという特徴を持っているのは、これははっきりしているわけです。調べてみればわかる。こういう状態をいかにして我々は打開していくのかというのがポスト冷戦時代の課題であるはずなのですが、この点で外務省外交が非常におくれているために、日本政治のリーダーシップがはっきりしないという問題があります。  このポスト冷戦時代国連外交という問題にもう一回返りますと、国連には多様な機能がございまして、安全保障機能が軍事的な問題から経済の問題、さらには文化の問題にも関係してきているわけです。この文化の問題で日本は七〇年代に大きなリーダーシップをとりました。それは、七五年に国際連合大学をつくったわけであります。これはユネスコの機能と密接に関係がある。しかし、このような機能に対して日本は、せっかく国連大学を日本に持ってきたにもかかわらず、世界的な学術ネットワークをどうするかということにはほとんど投資をしなかった。このような外交政策の基本的な誤りのツケとして、日本は今PKOのような問題だけを何か国際的な貢献というふうに間違っている。これはPKOの問題を考えるに当たって、非軍事的貢献というところに重点を置くことが絶対必要であり、諸外国もだんだんそうなってきている。  アメリカでも二つ流れがあります。一つの流れは、日本憲法というものを世界に拡大する運動、そういう考え方がアメリカの中に出てきており、従来のペンタゴンの戦略との間に大きな矛盾を引き起こしつつあるわけです。このようなことは、ポスト冷戦においてソ連圏が変わったということだけでなくて、アメリカも必ず変わるというのが始まっているわけであります。  その一つの象徴的なのは、昨年、一体ケネディを暗殺したのはだれかという問題として、その真相を追及する動きとして起こっております。ケネディ暗殺関係の真相を追及する本が数冊ベストセラーを継続させております。このような変化というものを我々はいかに見るのかということであります。ケネディがアメリカン・ユニバーシティーで一九六三年の六月に演説した内容は、ゴルバチョフよりも二十数年早くペレストロイカの内容に近い共通の安全保障という概念を打ち出しているわけであります。しかし、六三年十一月二十二日、ダラスで暗殺されたわけであります。この真相が現在追及されているということであります。  アメリカの基本的な政策は、このような問題はインテリジェンススタディーズという研究の中でなされておりますが、インテリジェンススタディーズの中で言われたことは、米ソ関係には何の秘密もないから今や米ソ関係についてはすべてのことを公開できるということが第一原則として主張されております。  第二原則は、例外として、同盟国に政治的混乱を与えることは依然として米ソ関係の問題でも公表できないという例外が主張されております。  第三原則、これが最も重要なんですが、アメリカの第三世界に対する政策は全く変わらないんです。したがって、第三世界に対する政策に関しては秘密作戦行動を含めて一切公表できないと。この政策は、アメリカの戦後軍事政策のポスト冷戦時代の戦略の中にはっきりと反映してきております。第三世界に対して軍事力を行使するというのは、国連による多国籍軍の編成というだけではなくて、ユニラテラルアクションもとり得るということを言っているわけです。これは、私どもアメリカン・ユニバーシティーとの共同シンポジウムで、ワシントンDCで国防関係の重要な人物によってはっきりと宣言されている。  このような政策との関係で日本はどうするのか。アメリカの平和を主張する考え方の中では、日本はあくまで非軍事的貢献をして、そしてアメリカのそういう軍事政策に協力しないという考え方、そちらの方がより重要だという考え方が出てきているわけです。このような中で日本憲法の持っている位置づけというのは、私は小沢提案の中で述べられているような解釈ではだめだと思うんです。根本的にだめだと。日本憲法は、明らかに世界の新しい平和秩序をつくるための積極的役割を果たす可能性に満ちている。しかし、その可能性PKO派遣というところだけに焦点を当てて、それに自衛隊を参加させることだけが第一の優先順位だと考え考え方は間違っているということであります。そうではなくて、これは根本的に新たな次元で時間をかけてゆっくりと再検討されるべき問題で、現在慌てて自衛隊PKOの名前で派遣するということは間違いであります。  そこで、PKF一次凍結論があります。しかし、この一時凍結論ということを言うくらいなら、何で初めからそんなPKOを、急いでそんなものを通そうとするのか、私は全くわかりません。PKFというものを一時凍結論として考えるならば、これは凍結解除という方向にいつかはいくわけです。それはもうPKFなんというものを考えないで、非軍事的貢献は幾らでもできるわけです。それを、何か抱き合わせでやるために、日本がやるべきことがちっともやられていないということであります。民間の援助、それを精密に検討して、今すぐにでもそれをやるべきであるというふうに言わざるを得ません。  そういう問題に対して政治のリーダーシップがおくれているわけです。ポスト冷戦時代における政治のリーダーシップのおくれは、これは明らかに自民党の中でも分裂現象としてあらわれているわけです。はっきり言えば、金丸さん、小沢さんは朝鮮民主主義人民共和国を訪れております。そして、新しい日本時代のための政治的リーダーシップをとりました。中曽根さんはイランイラク戦争のときにイラクに行ったわけです。そして早急な武力行使をやめるようにアメリカに提案しているんです。しかし、これはうまくいかなかった。しかし、とにかくこのような分裂がなぜ起こるのか。なぜ金丸さんは朝鮮民主主義人民共和国へ行ったか、小沢さんはなぜ多国籍軍の編成に対して批判的にならないで、逆にそれを支援する方向にいったのか。これは自民党のリーダーシップの分裂以外の何物でもありません。  そのようなリーダーシップの分裂をもたらしたものが外務省の外交政策の世界情勢判断におけるおくれである。その課題のための新しいリーダーシップができていない。この新しいリーダーシップを野党が全面的に展開するべきであるにもかかわらず、若干おくれているわけです。PKOの問題が出てきたので、やっと社会党が新しい別の案をつくったという状況であります。もっと早くつくるべきではなかったんでしょうか、社会党は。そして、日本国民はこのPKO問題をもし本格的に決定するならば、その前には私は国会を解散してPKOの問題だけで選挙を行うべきである、日本憲法の問題を絡めて選挙を行うべきであると。解散を恐れてはなりません。そして、それだけを中心にして国民の世論を徴する。そうすれば、私は今の政府よりは場合によると国民の方がはるかに賢い人ではないかというふうな感じを持っております。これは学生に対して常に接触している身で感じるわけです。  私はカナダに約八カ月おりました。その間、アメリカのアトランタにも参りました。九六年にアトランタでオリンピック委員会委員長をするアンドリュー・ヤングとも話しました。アンドリュー・ヤングは明らかに私の考え方と非常に近いということを申し上げたいと思います。  以上で私の陳述を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  263. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  264. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) 次に、三宅公述人にお願いいたします。三宅公述人。
  265. 三宅和助

    ○公述人(三宅和助君) 現在のPKO法案のとりあえず想定をされているのはカンボジアの平和活動にいかに協力するかということでございますので、なるべく現実的な問題として私の方から御説明いたしたいと思います。  私自身、インドシナ問題に二十数年間関与いたしまして、ベトナム、カンボジアを十数回訪問しております。一昨年で一回、それから昨年は二回訪問しておりますし、またことしの三月にも訪問しております。そこで、シアヌーク殿下、フンセンその他各大臣、それからできるだけ一般の民衆の方、そしてベトナム、タイでも政府関係者から、私の場合政府の要員でございませんものですから、できるだけ中立的な客観的な立場から話を伺ってきたということでございます。  そこで、これらを通じまして私から、まずカンボジアの和平というものはアジアの平和と安定のかなめであると、これは非常に重要な点でございます。このカンボジアの平和問題が解決して初めてベトナムとASEANとの平和共存の基礎ができた。ですから、今やベトナムとインドシナを含む平和共存の基礎ができたということは、このカンボジアの平和の解決にあるわけでございます。したがいまして、一カンボジアの問題ではないということが重要でございます。  それから第二の点は、このカンボジア和平というのは、一九八八年からありとあらゆる努力、これは国連における常任理事国五大国会議、またジャカルタにおける非公式会談、そして東京における東京会談というありとあらゆる努力の成果が実って、そして去年の十月二十三日にパリで平和協定が署名された。これは全会一致でございまして、当事者の四派のみならず、すべての当事国がこの平和というものに対して合意し、それに対する国連の関与の仕方も合意したわけでございます。大変な努力によって、しかもアジアの国がリーダーシップをとって、そしてやっと達成したカンボジアにおける平和というものを我々はどうしても守らなければならない。また、日本がこのインドシナとASEANの平和的共存による最大の受益者の一人であるということを忘れてはならないと思います。  その次に具体的な論点、いろいろな論点が各党皆さんの中で展開されておりますので、私の結論だけを申し上げたいと思いますが、PKO協力というものは武力行使ではない。平和というものが成立してから平和を維持するものである。要するに戦う相手はいない。四派が全部合意した。ポル・ポトを含めて合意したわけですから、戦う相手がいない。そして、私がちょうど訪問しましたときにも、今までの中で最も大きなコンポントムにおける紛争が起きておりました。そのときに、インドネシアの部隊長がおりまして、我々はこの紛争が解決するまで現地に行かないんだと言ってプノンペンの私と同じホテルに泊まっておりましたが、ちょうどそのときシアヌーク殿下がその紛争を解決して帰ってこられました。そのときにシアヌーク殿下にお会いしましたら、要するに四派の軍事委員会で問題は解決する。そして、自分が積極的に説得して四派の話し合いがついたと。  さて、それが平和になったときに行くわけでございまして、この現在のカンボジアにおけるUNTACの機能というものは、これは明石代表も私に何回も繰り返し言っておりましたが、紛争を解決するためのものではない。紛争がおさまったときに、それを監視し、それを維持するということであって、従来のような考え方とは全く違う概念である。  ただ、カンボジアの実態を見てみますとやはり治安が悪い。それは治安が悪いというのは、皆さんよくすぐ戦争という、紛争ということですが、それ以上に実は強盗とか、あるいはいろいろと今軍隊が引き揚げております、それで警察も余ってくる。そして給料が払えない。それが匪賊化しております。ですから、それは大した兵力ではないんですけれども、こういう治安に対してやはりいかなる人、特に派遣される人については小火器を持って、もし万が一何か起きた場合にはこれに対してみずからの正当防衛として持たれるということは単なる、それ自体もそうでございますが、やはり安心感、自信を持って行けるということにもなるわけでございまして、これはいわゆる通常言われる武力の行使、国による武力の行使ではない。  したがいまして、私は率直に言いまして憲法には全く違反しないというぐあいに考えておりますし、まして湾岸戦争の多国籍軍と時々同じ次元で考えられます。私自身も、当時イラクにちょうど中曽根元総理が行かれる前に行って人質解放のために努力した一人でございますけれども、このときはあくまでも国連の決議があり、これに基づいて、基づいてというよりはこれによって許容された多国籍軍、米国の行動であり多国籍軍の行動であり、しかもイラクの侵略に対してクウェートを解放するための手段として軍事力が行使されるということでございます。これは国連そのものの行動ではないわけです。国連で許容される、したがって国連違反ではないけれども、しかし国連そのものの行動ではない。  UNTACというものは国連そのものの行動です。現在既に三十カ国五千人が配置されているそうで、続々と今入っております。インドネシアの八百五十、マレーシア八百五十、タイ工兵隊、それから中国も工兵隊ということで入っております。明石代表も言っておりますが、決して国連の武力によって平和を維持するのではない、国連の権威。現実問題として先遣隊が行っておりましたときに、国連の先遣隊が三人、五人行くことによって、今までいざこざが起きていたところにいざこざが起きなくなってきたということを言っておりますが、これはまさしく国連の旗、国連の権威というものが非常に生きているという証左でございます。  それでは、そのためには果たして自衛隊が必要なんであろうかという次の疑問になるわけでございますが、確かに現地へ二十何名の日本のボランティアの方も行っております。非常によくやっております。私自身、外務省時代カンボジア難民のときに、緒方貞子団長の副団長として難民救済のために行きました。また局長時代には毛布を集める運動をやったわけでございます。しかし問題は、行ってよろしいといってもそう簡単に、随分努力しましたけれども集まらない、なかなか行ってもらえないということも、まして厳しい状況であれば非常に難しいということの現実をやはり私たちは見なければならないと思いますし、現に行った場合に、なかなか機材も思うようにならない、コーディネーションもうまくいかないということでございます。  その点では、組織的に自己完結的に行動できるのはやはり日本においては自衛隊以外にはない。仮に第二自衛隊をつくるにしてもそれは同じことであって、対外的に見るとやはり自衛隊派遣ということではなかろうかと思います。要するにこういう状況のもとにおいては、今言った治安上の大きな問題がある場合に、装備の点でもまた予算の面でも、自衛隊の組織力をもって行動するということが大変重要である。  現にフランス、豪州、インドネシアの部隊の方にお会いしましたが、テントを持っていって、そして水を含めて、井戸を掘って自給自足をしながら自前で行動をするわけです。これは実際問題として、テントを張って井戸を掘って、水から食料品も二月分持っていって現地の生活を圧迫しない。もしそれは全部圧迫しますと大変なインフレ、ますます経済状況の悪化につながりますから、これは自己完結的に能率よくやっているという意味におきまして、明石代表もシアヌーク殿下も言っていましたが、本当に頭の下がる思いである。フランスから、遠くから来て、全く自分たちから遠いアジアに来て、ヘリコプターを持ってきて、そして地方のひどいところに生活している状況を見て、頭が下がるということを言っておりましたが、現実問題としてフランス、豪州の隊が入ってきたのを私は見ましたけれども、大変な歓待で大拍手でありました。  それで、アジアの目ということをよく言われます。ASEANの中でほとんどの国が大賛成でございますし、タイの場合は、もちろんこれは日本の国内問題であって日本国内で決めるべき問題であるけれども、平和を維持するという国連の行動に対してなぜ日本はだめなんだろうかと。私もいろいろと日本の国内事情の説明をしておりますが、リー・クアン・ユー首相、この方がよく反対だということに誤解されておりますが、私も個別にお会いしました。お会いしましたが、リー・クアン・ユー首相さえも自衛隊派遣というのは我々問題ないと。ただ、そこで言っておりましたのは、日本は技術力も進んでいるし、それから機材も優秀であるから、できれば後方支援に重点的にやった方がより効果的ではないかと思うと。しかし、これは日本が決めるべき問題であって、派遣そのものには反対ではないということでございます。  ベトナムの方にもお会いしました。よっぽどこちらから質問しない限り、このPKO法案の問題が出ても、自衛隊の方はどうですかと積極的に質問をした場合に、あくまでも質問をした場合ですが、向こうからは慎重にやってもらいたい、それよりもベトナムに援助してくれ、日本はやはり経済力が得意なんだから経済力でひとつ大いにやってもらいたい、それよりもベトナムに対して援助を再開して早くやってほしいというところに重点があるということでございます。  しかし、何よりも大事なことは、カンボジア人自身が非常に日本自衛隊協力というものを歓迎しているということでございます。もちろん、シアヌーク殿下、フン・セン首相その他お会いした方、皆そうでございますが、一般の人の中にも、極端に言うと、中国、ベトナムはちょっと困ると。というのは、やはり中越戦争とかポル・ポトに中国は支援した、そしてベトナムは派兵していたわけですから、やはりそういうものに対してはちょっとというような感じでございますが、この中国さえも工兵隊というものを派遣しているわけなんで、本来この種のものというものは、余り極端に外国がどう気にするかというよりも、聞けば中国でもどこでも、それは慎重にやってくださいと。  現に慎重にやろうとしているわけでございますから、やはり日本の外交としては、客観的にまずカンボジア国民がどう思うか、政府はどう感じているか、そしてその横にあるタイがどう判断しているかということを中心的に考え、また多少の誤解が私は依然としてないことはないと思いますが、これはやはり実際に派遣することによって、いかに平和のための有効な協力をしたかということによってむしろ誤解を解いていく、極めて有効であったということが大事ではないかと思います。  それで、最後に、現在一つの政治的妥協としてPKF本体への参加の凍結問題というものが取り上げられておりますが、私は本来その必要はないと思いますけれども、ただ政治は妥協ですから、問題は一刻も早くこの法案を通してもらいたい。実際問題として、本体への参加凍結というのは、後方支援と機材の提供が特に期待されておりますし、例えば地雷の撤去、除去の問題につきましてもむしろ訓練だと。カンボジア人にみずからやらせないといかぬということと、その訓練の機材と訓練要員が欲しいということをカンボジア政府の方もUNTACの方も言っておられました。  したがいまして、実際問題としては支障はないのでございますが、ただ、世の中カンボジアだけじゃありません。これからどうしてもいろんな場合がありますし、そのケース・バイ・ケースによっては、必ずしもあれほど明確に今回のカンボジアみたいに果たしていくのかどうかという問題もございますから、これはやはり将来の問題としては、仮に凍結しても、この凍結解除をすることが適当であるかどうかということをそのときの客観情勢でぜひ見直しをやっていただきたいと思います。  それから、国会における事前承認でございますが、およそ一つの法律、私は今回理屈というよりもむしろ現実問題として考えた場合に、やはりこれだけの国民賛成にしろ反対にしろ関心を持っている。ですから、一つの法律を通して執行につき一々事前承認はおかしいじゃないかということはありましょうが、やはりこれだけの大きな最初のケースだとすれば、国会事前承認をとるということはむしろ正しいのではないか。ただ、この問題を含めて、能率性の問題も含めて、やはり将来の問題として考えていく。カンボジアはもう始まっているわけです、そして来年の春にも選挙が行われる、その地ならしをやらなくてはいかぬ。したがって、いろいろな形で妥協してでも一刻も早くこの法案を通して、そしてやっていただきたい。そして、日本はその場合に、これに参加することによって、確かに資金協力も大事です。しかし人的の協力も必要ではないかと思います。  最後に、インドネシアの隊長が私に言ったことが最後に強く印象に残っております。自分たちは前線で活動する、何ら危険はない。それなのに日本がもしいろんな理由で困るというのなら私たちがやってあげましょう。日本人は、日本自衛隊はプノンペンにいなさい、やってあげましょう。ただ、装備とお金だけ下さいということを言った。私は非常に憤慨しまして、失礼な話じゃないか、そういうことではない。やはりそれぞれの分担に応じて、その国の国内体制に応じてやれるところからやっていくということであって、最後に明石代表が私に言いましたが、これはある意味において平和維持に対するオリンピックである。ですから、日本協力できる分野を十分やって、そして平和維持に対する日本の姿勢、決して金だけでやるのではない、我々みずから平和の維持に対して日本が積極的にやっているという平和のオリンピックのために協力してもらいたいということを申されて、私は非常に強い感銘を受けたということを最後に申し上げまして、時間でございますので終わらせていただきたいと思います。
  266. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  267. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) 次に、松井公述人にお願いいたします。松井公述人。
  268. 松井義子

    ○公述人(松井義子君) 私は、言葉にこだわる一人として、かつての十五年戦争中少女時代を過ごした者として、またかつての侵略戦争の後始末の一端にかかわる運動につながっている者として、PKO法案という実質自衛隊海外派兵法案並びに関連二法案に強く反対しています。  言葉には命があり実力があります。私の少女時代の皇民化教育一辺倒の中でまさにこのことが実証されました。神国日本、万世一系、天皇の赤子、八紘一宇、大東亜共栄圏、聖戦完遂、まだまだありますが、これらの言葉はすべて上意下達、政府から国民へと一方的に流されていて、国民はこれを文字どおりオウム返しに受けとめていました。その当時はこれ以外の道はなく、選択の余地もなかったのです。  二十六日の中央公聴会で、国民PKOについて徹底的に研究して結論を出すのは難しい、政治家が勇気を持たなければならないという言葉に出会って驚いています。政治家に任せておけばよいとのお考えだとしたら、またいつか来た道に来ているのではないかとの深い危惧の念に満たされています。しかし、これは昨年の湾岸戦争以来、国連平和協力法案が浮上しましたように、自衛隊を何としても海外へとの政府の意図を酌んでいるものと思います。あれは内外からの厳しい反対で廃案になりましたが、またまた維持活動という言葉でお化粧直しをして今回の法案が出され、国会の内外で目まぐるしい攻防戦を繰り広げられている様子は、言葉のすりかえ、まやかしのゲームを見せられているようで、何ともやり切れない気持ちでいっぱいです。  廃案となった前法案に対して、福田元首相が自民党顧問会議で、非軍事国家、専守防衛に徹してきた日本の戦後のあり方に誇りを持って堅持せよと言われたことなど吹き飛ばして、国際的な合意に基づき国際的に協調して行われる場合には、我が国が海外で実力を行使したとしても、それは憲法第九条には抵触しないと考えられるという小沢調査会の提言を見せられて、まるで言葉のペテンにかけられているとしか思われないのです。  あの狂気のような湾岸戦争の実態を知れば知るほど、規制された報道の陰に隠されていた事実を知れば知るほど、国際的な合意とか協調という言葉を無条件に受けとめることができないのです。今や国連がにしきの御旗となっているようですが、実際はアメリカと言いかえられるのではないでしょうか。ここにも言葉に寄りかかってその実態を見失っている状況があります。  言葉は、歴史の光の中で、事実の前で謙虚に受けとめるべきものと思います。平和とか貢献という言葉で、かつてこの国はどのような歴史をつくってきたのでしょうか。昨年から一気に噴き出しています日本戦争責任を問い、戦後補償を求める叫びの切実さを思うにつけましても、かつて美辞麗句のもとに何がなされたかが明らかになったと思います。  私が出会うことのできた広島、長崎の韓国人被爆者で、戦後祖国に帰ったために日本人並みの援護政策から遠く隔てられたまま放置されてきただれからも、私たちは皇国臣民として、天皇の赤子として名前を日本式に変えさせられ、言葉日本語を強要されて一生懸命働いたのにと訴えられて、返す言葉がありません。日本にいては想像もつかない苦労をし続けて次々亡くなっていき、生き残って死を待つばかりの人を私たちは訪問しなければならないのです。  その中の一人の男性がぽつんと、数年前でしたが、日本はまた戦争をするのだろうと漏らしたのを耳にして、日本政治の動きがかつての戦争の傷を持ち続けて生きている隣国の人にもきな臭さを感じさせているのかと思うと、国際社会へ貢献するために自衛隊を活用すべしという声のむなしさと恥ずかしさに打ちのめされるのです。  日本が本当の平和国家になってくれないと私は死んでも死に切れない、かわいい孫たちや若い者のためにも、日本は軍事大国にならないでと繰り返し私に訴えられたのは、元韓国の被爆者協会会長の辛泳洙さんでした。  六年前から、アジア・太平洋地域の戦争犠牲者の代表の方々の生の声を聞く集会にかかわり、ますます厳しく、私たちの国は果たすべき責任を果たさぬままに経済大国となり、そして着々と軍事大国への道を突き進んでいることを突きつけられています。私は、自衛隊の中身は軍隊であり、そこにはより優秀で近代的な侵略用兵器が整備されていて、いかに効果的に、いかに多くの殺人をするかという訓練がなされていることを思えば、存在そのものがとっくに憲法違反だと思っている一人です。  市民の会発足時に一千万募金を目標にしていましたが、当時の海上自衛隊の演習用の魚雷一本の値段と知って、心から憤りを感じました。アジア二千万人の戦争犠牲者を悼むこともなく、着々と軍備増強に努めてきて、今やイギリス、フランスを抜いてアメリカに次ぐ軍事大国となって、どうしてアジア諸国が不安を抱かずにおれるでしょうか。反発せずにおれるでしょうか。  シンガポールから、PKOへの日本参加はアルコール中毒者にウイスキー入りチョコレートを与えるようなもの、インドネシアから、PKO日本が加わる必要なしという強い言葉が投げかけられているのは、言うまでもなく過去の歴史の教訓があり、現在のあくどい経済侵略の実態があるからにほかならないと思います。そして、だれよりも敏感に、切実にこの法案の行方を見詰めているのが、五十年間、過去の日本から受けた傷に苦しみ続けてきた国の人々なのです。  昨年十二月、初めて日本に来て、胸に秘めてきたつらいつらい思いを私たちの前で語ってくださった元朝鮮人従軍慰安婦の金学順さんが、日本に来るのはつらいし、日の丸という言葉を聞くと込み上げてくる怒りを静めることができないと言われながらも、日本に来て、PKO法案に多くの人が反対されていることを知ってうれしかったと喜ばれたことが印象的でした。  PKO法案は、ひとり日本国内で賛否が問われているだけではないのです。イギリスの軍事専門誌に見られるように、自衛隊は装備の近代化によって極東・アジア地域の主要軍事力になりつつあるだけでなく、PKO参加を認める法改正が国会を通過すれば世界の軍事国家に道が開かれるとの警告を無視してはならないと思います。  昨年四月二十六日、戦後初めて憲法違反の掃海艇海外派遣は、再び戦争の惨禍を繰り返さないと誓った日本人の平和への思いを踏みにじって強行されました。主権在民の憲法をないがしろにしながら、自衛隊の海外派遣に大きく道を開くPKO法案を、憲法前文に、また第九条第一項にふさわしいものと主張する小沢調査会答申原案には、言葉のすりかえの余りの巧妙さにただただ驚くばかりです。  全国組織のYWCAでは、ことし二十九回目の憲法研究会を持って、今こそ原点に立って、力による平和に抗していこうと確認いたしました。  この六日前に大阪で、「二度とあやまちをくり返さない PKO廃案を求める女たち行動 栗原貞子さんヒロシマの思いを語る」と銘打って集会を開きました。広島は加害者でもあったとうたい続けてこられた栗原貞子さんを広島から迎えて、呼びかけ人の六名に、準備に当たったのもすべて女たちでした。この会は、憲法九条を地球規模で広めようとの熱い願いで締めくくりました。準備期間十日足らずにもかかわらず、賛同者百七十名、廃案を願う署名千三百名で、その後も連日署名と賛同カンパが届けられております。そこに書き添えられている女たちの切実な願いに、どれだけ励まされたことでしょうか。だれもが、生活の中で、生き方の中で肌で感じとっている政治の実態に危機感を募らせているのです。  その中に、日本人が国際貢献と言うとき、侵略の言いかえだ。国際貢献こそ大東亜共栄圏の復活、侵略戦争への第一歩。貢献がペテンであることを一番よく知っているのは、実は政府ではないだろうか。私たちはだまされない。そして、日々の報道での耳ざわりのよい言葉に、知らず知らずならされて無抵抗だった。栗原さんの詩で指摘され、何かせぬばと思う、とありました。  この栗原さんの詩は、集会の五日前につくられたペンの走り書きでしたが、皆さんの前で披露しました。これをお聞き願って、私の公述を終わります。   始めに言葉ありき  栗原貞子  昔 天皇  今 貢献  メデアが口うつしに伝えると  その言葉は国中で増殖される  言葉がふくれあがると  その意味考えようとしない人たちは  それをそのまま呑みこんでしまう  街角で署名を求められても  「貢献だから」という  息子も教え子も「コーケン」のために  鉄砲かついでかつての侵略の地へ  送られる  人々よ、その言葉を撃て  すり替えとき弁とペテンの言葉が  再び正義を名乗っているとき  暗黒の言葉を  真昼の太陽のように照らし出せ  真実を明らかにせよ  その始めに言葉ありき  かつては天皇陛下万歳だった  いまは貢献万歳だ  言葉のキーワードを読解せよ  モノやカネだけでなく  日本の若者も血を流せ  グローバル・パートナーシップ(地球規模の協力)  バードン・シアリング(責任分担)  世界秩序、新大東亜共栄圏  国連に占領されたカンボジア  言葉をいのちとする人々よ  虚妄の言葉をゆるして  あやまちをくり返すまい  一度目はあやまちでも  二度目は裏切りだ  死者たちへの誓いを忘れまい 以上です。
  269. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  270. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) 次に、芹田公述人にお願いいたします。芹田公述人。
  271. 芹田健太郎

    ○公述人(芹田健太郎君) ただいま御紹介いただきました芹田です。私は、国際法の研究者として意見を申し上げたいと思います。  まず、私どもの置かれている今日の時点というのが歴史的にどういう意味であるのかということを申し上げたいと思います。  御承知のとおり、冷戦が終わった。そして、これまでの非常に大きな課題であった軍縮であるとか平和というのが少し見えてきた。そしてさらに、二十一世紀は環境保全というようなことが我々の課題になっている。そこで、日本として国際社会にどう働きかけ、国際社会との関係で我々はどう変わっていくのかということが問われているように思います。その意味では、これまでの日本外交を二十一世紀に向けて転換するべき時期に来ているんではないか。  そこで、私自身は、憲法をやはりこれから日本の外交を進める際に柱にしていく、それだけの誇りのあるものだというふうに思っております。むしろ、誇りあるというのみならず、日本憲法というのは二十一世紀の世界の姿を先取りしているものである。そして、これまで実は世界が力を中心に動いてきただけに、不幸なことに日本憲法の精神は生かされてこなかったのではないか、そういうふうに思っております。  さて、この戦争放棄、不戦を宣言している憲法を擁護する立場から、世界の平和に貢献するための道を探るということであれば、力による平和というのを否定する、そこにしか道はない。そして、それは堂々と世界に向かって日本のあり方を主張することのできるものであるというふうに思います。まさに、その意味では、今問題になっておりますPKOというのは国連が試行錯誤の上につくり上げてきたものであって、これへの協力というのはその一つの方法であろうというふうに思います。  御承知のとおり、PKOの原型というのは、一九五六年のスエズ動乱を契機に派遣されたいわゆるUNEF、国連緊急軍というふうに言われるものであるわけです。これは朝鮮戦争派遣された大国中心国連軍というのが、力によって北朝鮮からの攻撃に反撃するということを目的にして出された。そして、その軍事行動が第三次世界戦争の危機というんでしょうか、それさえもはらむものであった。それとは全く違うものとしてPKOはつくられた。朝鮮戦争の経験が示したものは、力ずくの平和ということの限界であったろうというふうに思います。  その経験を生かして、力を用いないで中立主義を標榜する、あるいは法的な中立国などを中心にした中小の国の部隊、あえて軍隊と言わないで私は十五年来部隊というふうに言っておりますけれども、その部隊から成る軍事組織を国連のシンボルとして現地介在させる。そのことによって紛争当事国の武力衝突を回避させるというのがPKOの出発点であったというふうに思います。  実は、御承知のとおり、国連憲章という条約の中にはこのPKOについては全く規定はございません。つまり、冷戦の構造の中で朝鮮戦争という実際に熱い戦争を戦った、力ずくの戦争を戦ったことによって、これではだめだ、何かあるのだろうかということで、知恵を出し合ったのがPKOの始まりであった。そして、これは実は敵を持たない。そこで、国連軍というんでしょうか、PKOに参加している兵士たちのことをソルジャーズ・ウイズアウト・エネミーズ、敵なき兵士たちというんでしょうか、というふうに呼ぶ書物さえあります。兵隊というのと敵がないというのは、いわば矛盾した言葉ではあります。兵隊というのは国を守るためにというんでしょうか、敵に対抗して戦うものであって、敵がない兵隊というのはあり得ない。  しかし、あえてPKOというのはそういうものとしてつくられた。そして、実はスエズ危機に際して最初のものが派遣され、派遣されといいましても、各国の同意を得て、部隊派遣各国の同意を得て、そして現地に駐在する。エジプトそのもののもちろん同意を得て派遣国連が進めてそこに駐在した。そのものをモデルにして、その後一九六〇年にベルギーから独立しましたコンゴ、現在のザイールが内乱状態に陥り、そこからの要請もあって、さらにスエズ・モデルで国連がやはりPKOと後に言われるようになったものを、ONUCを派遣いたしました。  ただ、これはいわば二回目のものでありました。そして内乱というものに介入したことによって、二回目の経験でもありましたこの国連軍、ONUCの活動の中では、試行錯誤がつきものではありますけれども、やり過ぎではないか。具体的な作戦によってやり過ぎではないかという問題も出てまいりました。そして、国連の中でも当然議論がありましたし、私ども学者の中でもその点については議論がありました。  いずれにしろ、PKOというのはそういう出発をしてきて、そして六〇年代になってこれが理論化される、あるいはその性格というのを明確に位置づける、つまり非強制、中立、国際性というものを明らかにいたしました。六〇年代になってPKOということを言うように、ピースキーピング、平和維持ということを国際司法裁判所の意見の中で言い、それが一般化され、そしてさかのぼって、国連が発足して以来の各種の国連の活動をこのPKOという形でくくって理論化してきて現在に至っているというふうに言うことができるかと思います。  ただ、先ほど申しました非強制、中立、国際性という性格は明らかではありますけれども、このPKO冷戦構造の中で生まれた、そしてその中で成長してきたということは否定できない事実であるわけです。そして冷戦が終わった今、その中で成長してきたPKOというものをどう位置づけるのかということは、やはり問題が残っているというふうに思います。したがって、冷戦後の世界PKOがどういうふうになっていくのかというのは見きわめる必要があるというふうに思います。  湾岸戦争型、あれは国連軍でも何でもありませんが、その後に投入された国連派遣したもの、この型も一つのPKOというふうに考えられます。もちろん同意があったと、形式的にはそうではあります。これを指してPKOの変質というふうに見ることもできます。  しかし、それ以外に例えばカンボジアの問題あるいはバルカン半島の問題、あるいは旧ソ連崩壊に伴って幾つかのところで発生している武力衝突。軍縮が実現しても武力衝突というのは必ず出てくる。そこに非強制、中立、国際性というふうにして国連が試行錯誤の結果つくり上げてきたものを送り込むという可能性は、武力衝突がなくならない限りあるというふうに思います。  他方ではPKOの変質ということも語られている。あるいはPKO自体が二分化をしていくということも考えられる。もしそうだとすれば、現在の位置というのはどちらになっていくのかはわからないというふうに思います。  しかし、冒頭申し上げましたように、日本憲法というのが二十一世紀の価値を宣言しているという意味で、この時点でも主張できるし、そして主張すべきであり、日本の外交、あるいは日本世界に向かって私どもはこういう立場世界とつながっていきますということを言うのであるとすれば、そういう場所として憲法立場から論じれば、これまでの少なくとも冷戦構造の中で武力を使わない、武力闘争があった中に両当事者が実は勝ち負けがなくて、どちらが悪いということでもなくて、とりあえず矛をおさめて、話し合いによって解決をしましょう。その間、その間に入って私どもが武力衝突を避けるようにいたしますというその非強制、中立、国際性のPKOというのは大変大きな意味がある。  そしてその性格を明確に我々が認識をし、そして憲法との関係を明らかにしていくとすれば、世界に向かって日本協力するというのは非戦の立場からであるということを宣言することは非常に重要であるというふうに思います。  それは憲法修正というふうなことでもなければ、解釈によって憲法を変えるということでもないというふうに私には思えます。むしろ、実は憲法の持っている価値をそこに明らかにするんだと。しかし、国連というのは政治の場であるということはそのとおりであって、冷戦構造の中でPKOが生まれ育ってきた、変質することもあり得べしだとすれば、私どもは非強制、中立、国際性というそのPKOに参加する、非戦の立場からはそうだということを法的にも明確にする必要がある。  つまり、我々は今度のこの法案の中にその点を国内の政策として、日本国民はこうあるんだということを明確にする。そして国連がその政策とは違う方向にいくとすれば、例えばそれがもし武力を使うという形での、あるいはどちらかがぎゃふんといって負けた、仕方がありません、うんと言いますというふうな形のところに持っていくというふうなことであれば、それは私ども法律上、そして私どもが宣言した原則からしては許されませんということを言うことができる。  その意味で、いわゆる平和維持隊への参加に当たっての基本方針といわれている五原則というものを法律の中に盛り込むというのは、単なる妥協というんではなくて大変大きな意味がある。そして、実は憲法立場からすれば、これを明確に法文化していなければならないというふうに私には思えます。  ただ、現在の状況というのは、国民の間にこの点について十分な認識あるいはコンセンサスがあるというふうにはとても思われません。そして私ども第二次世界大戦の戦争について十分な反省があったというふうにも思えない。国民の間にも自衛隊を出すということについては危惧がある、懸念がある、これも否定できない。アジアの諸国の中に、一方では来てくれという意見もあるし、あるいはできるだけやめた方がいいという意見もある。そうすると、国民の間の十分なコンセンサスに向けての努力というのはしなければならないし、外交努力というのも必要である。それは法的に必要であるということではなくて、政策的に必要であろうというふうに思います。  その意味でPKF本体への参加凍結というのは、この際はやはり政策的な判断として必要ではないだろうか。法的に必要であるというふうには私は思いませんけれども、そういうふうなものというふうに考えております。  なお、PKO参加五原則に関しましては、国連の中で成立してきた慣行でありますので、その慣行を単に確認するだけではないか、それなら必要でないという意見があるかもしれない。しかし、私の立場としてはそうではない。憲法立場からは、単に確認というのみならず、これを積極的に打ち出していくという意味があるというふうに思います。  ありがとうございました。
  272. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  273. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) 次に、大久保公述人にお願いいたします。大久保公述人。
  274. 大久保史郎

    ○公述人(大久保史郎君) 御紹介いただきました立命館大学の大久保です。私の専攻は憲法ですので、憲法立場から発言させていただきます。  今回御提案の国連平和維持活動等の協力法案についてですが、結論を先に申し上げますと、この法案は第一に、日本憲法前文、九条に明記された平和原則を率直に解する以上、どうしても違憲と言わざるを得ません。  それから第二に、これまでの政府側の憲法解釈あるいは自衛隊関係法制から見ても、あるいは参議院みずからの自衛隊の海外出動を禁止した決議から見ても、今回の法案の合憲性、合法性、正当性に全面的な疑問が出ざるを得ない。  さらに第三に、国連の方から見たいわゆるPKOの実態と本法案が規定する国連平和維持活動等なるものとに重大なそごがあります。こう見ますと、この法案は三重の無理を重ねた違憲の法案であると残念ながら言わざるを得ない。  もう一つ、凍結案なるものがいろいろ出ております。この点についても、実は本法案に照らして凍結案が具体的にどういう形になるのかということ自体、私にはわかりませんけれども法律的に考えてみても、結局これは法案の違憲性を払拭するものではなく、無理だ、根本的に矛盾をもたらす、全面的に削除せざるを得ないという、法案上はそういうふうにならざるを得ないというふうに私は考えております。  なぜこのようなことを言うか。憲法学者は常に自衛隊が違憲と言わざるを得ないということを何度も言ってきました。しかし、これはオウム返しに私は九条とか前文の言葉を使ってただ言っているというわけじゃないんですね。私たちが大事なのは、憲法の目的と、問題は手段です。法律家としては特に考えざるを得ない。安保条約も極東の平和と安全、日本の安全、憲法世界の安全、PKO世界の安全、みんな安全、平和を言っている。問題は、それをどう達成するか、どういう手段で達成するかなんですね。安保条約と日本憲法が真っ向から対立してきたというのははっきりしているんです。なぜ対立したんですか。目的は一致しているように見えるんです、言葉では。手段が違う。  日本憲法の意義は、この手段に関して、本当に平和を達成しよう、平和を希求したいといえば、結局一切の戦力を放棄せざるを得ない、こういう見地に独自性がある。PKOについて、例えばそれは武力行使ではない、軍事的活動ではない、これはPKOが目指すところはそのとおりです。武力行使を直接目的とした行動ではないということは、みんな意見が一致している。問題は、ではなぜ軍事要員が必要なんですか。なぜ軍事的性格を帯びざるを得ないか。PKOというのは、PKF、国連平和軍、軍事的な活動を伴いながら平和を目指す、この点ですね、これをどう見るか。これが実態で出てきているわけです。すなわち、目的を達成するためにどういう手段をとるかが問われているときに、単に平和目的だ、武力行使でないことを目指すということだからという議論にはならない。残念ながらそうならざるを得ない。そういう考え方に立たざるを得ないということをはっきりさせたい。  この考え方に照らして今回の本法案の案文を見ますと、実は一般に思っている以上のものではない。この目的規定について今細かいことを言う時間はありませんけれども、目的規定はいわゆる国連の平和維持活動というものに限定されるかというと、そうじゃない。「等」とついています。人道的という名のものもついております。非常に広範囲です。そして、先ほど公述の中でも言われましたが、一般にPKOというのは中立的で、そして非強制力を持つ等と言っているんですけれども、あるいは関係国の同意を得る、いわゆる先ほど出ましたような五原則というんでしょうか、そういうものをついて、それを目指そうとしているが、実態は、我々が送り出す国連側はそれを目指しているけれどもそうなってない。そういうふうに目指してうまく成功する場合も、そうでない場合もある。このことをリアルに見るかどうかが大事だと思うんですね。  そういうふうに見ますと、今回の法案というものはそういうふうになっていない。むしろ、具体的に言いますと、主眼とする平和維持活動に関しても、武力紛争の再発防止に関する合意の遵守の確保といっているんです。すなわち、覚悟しなきゃいけないわけですね。どうしてもそこに一定の軍事的、武力的な問題を伴うことを覚悟しなきゃいけない。発生することが現実可能性であるということを前提にしなきゃいけない。そこが問題なんですね。  あるいは、もちろんあと統治組織の設立の援助というのがありますが、さらにその他国際の平和及び安全を維持するための活動というのが国連の統括のもとにという広い甘い概念のもとでまとめられているんです。そして、中立性とか停戦の合意、派遣への同意、撤収、中断等々がありますが、それを一つ一つの条文に照らしてみると、細かいことを今言えませんけれども、本当にそうなんだろうかということについて現実的な保証があるのか。最大限それを防止するような案文になっているんだろうか。とても読めない。こんな複雑なものはなかなか法律家でも読めないです、わからない。  ところが逆に他方で、通常の国連が言っているPKOにないようなものも入り込んでいます。それは紛争が発生していない場合のときですね、これは紛争が発生していませんから当初これはわからない。危険だと思うとき先へ、いわゆる予防的PKO、これについても入っているんですね。これは何を政府考えたんだろうかと、そのことについて考えざるを得ない。そういう意味で言いますと、あるいは人道的な救援活動についても、これは湾岸戦争のときのヨルダンの例を考えればいいわけであって、紛争当事者ではない、そこへ自衛隊派遣するかどうかと、こういう問題がありました。あるいはサウジアラビア、こういうようなところを含めまして多国籍型の活動に対する道も、少なくとも条文上はそう読まざるを得ない。  それから具体的な業務、これはもう一目瞭然ですね。冒頭に挙がっているイからヘ、これは三条の三号なんですが、条文の細かいことは別にしますけれども、武力紛争の停止の監視、兵力引き離し等々、これは自衛隊がやるとなっていますね。これは明らかに軍事的な活動ですね。そういう性格を持っている。平和を目指しているかもしれないけれども、行為としては軍事的性格を帯びざるを得ない。だから自衛隊なんです。だから、PKOは軍事要員を不可欠な要件としていますね、国連側も。したがって、PKO活動からPKFというものを取り除いたらどうなるんだ、そういう概念では発達過程でも現実でもないはずだ、その点を考えたい。  そうしますと、当然これ以外のというのか、医療、物資、輸送、保管、通信、建設、これもやはり絡んで一体となっている。現実のPKF本体とそれから後方支援という言葉がよく俗っぽく言われますが、そんな区分はどこにあるんですか。現実にはないですよ。国連側にもないですよ。ただそう言っているだけです。そのことも考えないといけない。  あといろいろありますが、それからもう一つは武力の行使、威嚇という憲法上の論点と、それから武器の使用、これもこれまでの議論の中でたびたび政府答弁も二転、三転しております。そうして結局、平和維持軍への参加というのは当然に武力行使を不可避とせざるを得ない。そう言いますと、自衛隊の参加が明白に九条に違反するということにもなる。実際に武器を保持させているということがもう既に考えられているわけですね。これは自衛のためだとか隊員の生命を守るためだとかというふうに言いましたけれども、そういうための自然的な人間の正当防衛ということと、だからといって武器を持っていいなんということとはつながらないですよ。もしそんなことを言ったら、私、武器を持たなきゃ、今。  常にそういう生命を維持したいということとか自衛したいということと、具体的にどんな武器を持っていいかとは全然別問題です。アメリカでは憲法上武器を持つことが保障されていますけれども日本で、だれも自分には命を守る権利があるからといって、武器を持っていいなんということはないはずですよ、逮捕されますよ、そんなことをやっていたら。ということは、既に武器の使用を前提としている、考えざるを得ないということが入っているわけですね。このことが、指揮命令との関係を含めまして武器の使用と武力の行使は違うなんという説明はとてもできないですよ、これは。まあそういうことです。  それから最後の論点なんですが、今既にいろいろな方々が出ておりますので、私がこういう今回の法案憲法上の難点、何重もの違憲性と言わざるを得ないと言ったのは、ただ個人の意見というよりも、私が今言ったのは一個人の意見ですが、しかし憲法学者の大多数の意見なんです。  憲法学者の立場には、政治的にはいろんな立場もあります。九条がある。それも九条があるから、文言があるから、だからとかいうあしき法律解釈を言っているわけじゃないんです。戦後四十何年間の中で、この憲法九条をめぐる、あるいは平和主義をめぐってさまざまな改廃、護憲とかいろんなあれがありました。その中でもまれながら憲法学者は必死に考えてきた。そしてその長い四十数年の中の憲法の前文、九条にあらわれている平和主義というのは、日本のこれまでの、少なくとも戦後日本の発展を支えてきた、安保の方へ暴走しないようにとめてきた。  残念ながら、批判されてもやむを得ないですが、自衛隊がこれほど大きくなった、憲法学者が違憲の存在だと言っている自衛隊世界第三位だと言われるようにもなってきた。内心じくじたるものがありますけれども、しかしそれでもひどいことにはしなかった、少なくともそれだけの役割があった、そういう自負心とか経験とか研究成果とかいうものがあるわけです。そういう点から、大多数のというふうに言ってもいいですが、私がこれはと思う憲法学者はみんなこの声明で改めて反対しているんです、凍結案も含めまして反対している、その点を理解していただきたい。  それからもう一つ、憲法学者が言っているのは、先ほども出ましたが、ポスト冷戦と言われているこの中で日本は何を世界に向かって、国是というとちょっと言葉は古いですが、何を基本方針として言うのだと。憲法しかないじゃないですか。今安保条約に表現されている、世界の国々がぶつかり合う、ただ平和といってもだめだ、力でやらなきゃいけない、そういうものをこれからの日本の国是にできるんですか。できないですよ。日本憲法ですよ。そして、日本憲法の精神を具体的にやると。この四十年間守ってきた、非戦と言われました、あるいは戦力を持たない、非軍事に徹する、こういうことが、二十一世紀というのでしょうか、世界に向かっての日本の基本的な、ファンダメンタルなプリンシプルですよ。僕はそれがあったら胸張っていける。もちろん政治的にいろいろあるだろう、だけれども何とかしたい、こういうことじゃないんでしょうか。非常に僣越なことを言ったかもしれませんけれども、ぜひこの点を理解していただきたい。  そうしますと、結論にいたしますというのか、時間でありますので最後にしますが、この九条のできた原因は何だったのだろうか、何でこれほど厳しいこういう条項ができたんだろうか。こんな九条や前文があるためにこの政府の案はぐちゃぐちゃになっちゃっているんですよね、とても理解しがたい。あっち行ったりこっち行ったりしている。政府の説明も混乱する。それほどの厳しい憲法の前文や九条の規定がなぜできたか。前提は言うまでもなく、力によってはだめだ、単に平和を目指してではだめだ。本当のところはオフェンスとディフェンスは区別がつかない、これはアメリカ戦争権限法の結論です。オフェンスとディフェンスを分けるとだめだとアメリカでも言っている。日本は早くもそれを確立して曲がりなりにも守ってきた。これを堅持するということが第一だと思うんです。  もう一つはその前提です。やはりこれはアジアの人に対してや日本国民に対して大変な犠牲を払ってきた。実は日本について、私も含めまして、日本がこの九条をかち取るに当たって世界に対して与えた被害というのでしょうか犠牲というのでしょうか、戦争責任の問題について十分やってこなかったのじゃないか、国民も含めてそうじゃないかと私思うんです。この点をやっていかなければ世界の信頼はできないですよ。これはドイツと対比してもそうだと思うんです。  私個人の経験としても、九条の問題は日本だけかとかいう問題について国際的なシンポジウムに出かけたこともあります。そのときの説明にしても、特にこのポスト冷戦の中で、あるいはソビエトやあるいはアメリカの今の国の大変な混乱の中から何かと、俄然空気が変わっているような気がしますけれども、この九条の意義というのは大きいというふうに、最後舌足らずになりましたが、確信しております。ぜひこういう見地から検討していただければと、僣越なことを言って申しわけなかったのですが、よろしくお願いいたします。
  275. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) どうもありがとうございました。  以上で公述人の方々の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。  なお、質疑及び御答弁は御着席のままで結構でございます。
  276. 合馬敬

    ○合馬敬君 参議院議員の合馬でございます。  きょうは本当に公述人の皆様方から大変識見のあるお話をお伺いいたしまして、深く感銘し、かつこれからの参考にいたしたいと思っておるわけでございます。  私ども最初から申し上げておりますように、皆様方とともに平和を願う気持ち、これはもうだれでも人後に落ちないわけでございまして、この世界から一切の戦争をなくしたい、こういう気持ちはもういっぱいにあるわけでございます。  そうは申しましても、冷戦構造崩壊いたしました。アメリカソ連による力の平和というものが、そういった構造が崩壊いたしまして、それじゃ世界がそういうことで平和になったかと申しますと、国対国、民族対民族、宗教対宗教あるいは経済格差、そういったようなことでますます紛争というのが頻発し、もっと激化してくる、こういったようなおそれさえあるわけでございます。そういった中でそういった国際紛争をどうやって解決していくか、これは非常に大事な問題でございます。  戦争が起こる前から、紛争が起こる前から、戦争を起こさせないということでこれを力でとめる、こういうことも一つのやり方でございます。戦争現実に始まった、紛争が始まった、民族同士の殺し合いが始まった、これを力でやめなさいということでやめさせるということも一つのやり方でございます。しかし、これは我が国の立場からいってもなかなかできない、こういったような状況でございまして、せいぜい私どもといたしましては、戦争が終わった後、平和な体制をつくるためにどのような措置について我が国が協力できるか、こういうことが精いっぱいではないか、こういうように私は思っておるわけでございます。  先ほどから能村公述人、三宅公述人、それから芹田公述人のお話、私また非常に感銘を受けたわけでございますが、そこで私、三先生にお伺いいたしたいわけでございますが、そういう中で、私はPKOの本質というものについてまだいま一歩国民の皆様方に理解がされていないんじゃないかというように思うわけでございます。  御承知のように、PKOというのは国際紛争をどうやって解決していくかということで、国連憲章の第六章には仲裁だ、和解だ、いろんな調停だと、そういったように実力によらない紛争の解決の仕方もありますし、国連憲章七章では軍事参謀委員会をつくってまで実力で平和を実現していこう、こういうような文章もあるわけでございます。明石代表もこの前日本に来られましたとき言っておりましたけれどもPKOというのは、そういった中からどうやれば具体的に平和が実現するか、それを考えて、六章半とこう言いましたが、六章と七章との中間だ、六章半だと、そういったいわゆる人類が生み出した知恵である、国際紡争の解決の知恵であると。先ほど芹田公述人でございましたか申されましたように、だからPKOというものについては国連憲章に規定はないんだ、いろんな長い歴史を経て試行錯誤の末こういうやり方が一番いいんじゃないか、こういうようなことでたどり着いた、こういったように言われておるわけでございます。  そういった歴史を経まして、既に八十カ国以上の方、そして五十万人に上る人、これが一九四八年のパレスチナの休戦協定以来PKOに、国際平和の実現のために努力してきた実績でございまして、それが高く評価されまして一九八八年にはノーベル平和賞の受賞に輝いた、こういう実績があるわけでございます。  私どもはそれを受けまして、今回の法案の中でも、平和というものを実現していくために我が国が国際貢献をやっていくその平和維持隊の参加に当たっての基本方針というものを五原則という形で決めたわけでございます。  御承知のように、一番は、紛争当事者の間で停戦の合意が成立していること。二番目が、当事国の国を含めました紛争当事者が平和維持隊に来てほしい、日本にも参加してほしい、そういう要請、同意がある、こういうことでございます。  三番目が、平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、どちらにも味方しない。例えばカンボジアの例で言えば、ポル・ポトというのはあれだけ残虐な行為を働いたのだから悪いやつだと、こちらの方がまだいいんじゃないかとか、内心ではそういったような主観があっても、それはもう一切のイデオロギー対立は捨象いたしまして、どちらの紛争当事者にも偏ることなく中立的な立場を厳守する。そして、そういった停戦の合意が崩れてやっぱりもう我々は仲よくできないということでそういった取り決めが崩れた場合には、我が国から参加した部隊は撤収する。武器の使用につきましても、要員の生命、身体の防護のための必要最小限のものに限る、こういう厳しい原則をつけましてこのPKOに我が国は参加しようじゃないかと、こう決意をしたわけでございます。  もっとざっくばらんに申しまして、例えばカンボジアの例を言いましても、四派が二十年間近くにわたって非常な戦乱をくぐり抜けてきた。その中には大変な殺し合いがあった。大体百万人以上、一説によれば三百万人も殺され、あるいは被害を受けた。カンボジアでは国民所得も今や世界の最貧国をさらに下回るといったような貧しい生活をしておる、もう戦争はやめたい、その四派の当事者がみんな言っておるわけです。  しかし、同じカンボジア国民であるけれどもどうも相手が信用できない。ひょっとしたら裏切るんじゃないか。おれは戦争をやめると言っているけれども、夜半ひそかに武器を集めてまたおれの方に攻め込んでくるんじゃないか。自分の方の支配している国民の生命、身体、財産を損なうんじゃないか。どうも相手が信用できない。ここで国連というものにお願いをして、全く中立な人がそういった平和を実現してほしい。そのために力をかしてほしい。こういったようなお願いがあってPKOへの部隊を派遣する、こういうように私ども考えておるわけでございます。  しかるがゆえに、先ほどからも公述の皆様方からお話がありましたように、PKOというのは戦わない部隊、敵のいない部隊、そういったような非強制・中立、これを守る部隊である。そういったような性格を持っておると、こういうように私どもは解釈しておるわけでございます。先ほど申されました公述の先生、また同じ意見でも結構でございますから、それぞれの御感想なり御意見をお願いいたしたいと思います。
  277. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) それでは、能村公述人、それから三宅公述人、芹田公述人、それぞれ簡単にお願いいたします。
  278. 能村龍太郎

    ○公述人(能村龍太郎君) 長い間戦争をしている人々の間には、相手に対する不信感というのはどうしてもとれない、簡単にこれはもうおさまらないと思います。ですから、PKO皆さんにお願いして戦いのない状態、これもそう簡単にはうまくいくと思いませんけれども、これから時間をかけて、その間に何とかその人たちの生活が安定するように、生活が安定して豊かな生活をするということになりますと人間いろいろと知恵が発達いたしまして、豊かさを享受できるようになりますと無理に戦争もしなくていいんではないかというようなことにもなってきます。  やっぱり戦争に導く最大のゆえんは貧困、食べていけない、やっていけないということにあるのではないかと思うので、それを我々日本人が何とかそういう知恵とか知識をこれからも御希望に従ってできるだけお教えする、と言うと恐縮かもしれませんけれども、御希望によってそのノウハウを伝えていくというようなことで人々の豊かさを保障していくようにこれから我々は努力していくべきではないか。これは大変立派な誇りのあるこれからの仕事ではないかというふうに思う次第でございます。
  279. 三宅和助

    ○公述人(三宅和助君) まず、PKOの本質の問題は今先生御指摘になったとおりで、停戦すなわち平和の維持、これが非常にポイントなんであって、紛争を解決するのでもなけりゃ、達成するのでもないということ。ただ、シアヌーク殿下が言っておられましたが、やはり長い間戦争をしていた四派の間に大変な不信感がある。不信感というものはどうしても細かい問題については出てくる。ということで、大枠につきましては、四派のいわば大ボスと申しますか、例えば中国、ソ連、ベトナムとかを含めて全部当事者間で合意されておりますから、それが大きく逸脱することはないであろう。ただ、実際問題として小さないざこざというのはやはり起きてくる。それを監視し、そして問題が起きれば今度四当事者間で解決させる、そういうことをやらせるための一つの手段として考えているわけです。  それで、実際問題として起きた場合に、これは明石代表が言っておりますが、これはもともとUNTACもそれからPKFも戦うことを目的にしていないがゆえに、その前提が崩れた場合には当然引き揚げる。そして当事者間の解決に任せる。そして、回復したらもう一度行くというようなことで、もちろんそのための助言なんかはあるでしょう。ですから、そういう意味におきまして、この法案の中に書かれている、危険で、そういう前提条件が崩れる前に日本は引き揚げるということは結果的に国連の今考えていることと全く同じであるということが言えると思います。  最後に一言だけですが、やはり平和維持、これをさせることが何といっても来年の春に行われる選挙の前提条件で、今やるべきことはどうやって平和を維持させるかということと、どうやって貧困を早く解決する政治的な安定をもたらすかという二つの面。後者の問題につきましては、当然ながら日本の経済協力的な貢献ということでございますが、同時に平和そのものに対して日本ができる範囲内において、膨大な人員を送るというようなことは必ずしも必要はないし、日本の得意とする分野においてできるだけ協力をする。しかし、これは避けてはいけないということが大事だ。そういう意味におきまして、私はこの法案を、法律的というよりも政治的に早く妥協してでもぜひ早く間に合う形で協力してもらいたいということでございます。
  280. 芹田健太郎

    ○公述人(芹田健太郎君) 現実的な問題について、そして現実的な必要性については三宅公述人がお話になりました。私は法律家ですので、法律家として最も危惧されている点、つまり軍事組織が介入しているということと武器の使用ということについてどう思っているのかについて意見を申し上げたいと思います。  国際法の立場から国連憲章を見ますと、国際連合憲章では二条四項で武力の行使、武力による威嚇というのを禁止しております。もちろん、これは国の独立あるいは領土保全という二つを挙げまして、特にこの二つに向けられた武力の行使、威嚇あるいは国連の目的に反するような仕方での行使、威嚇というのが禁止されているわけです。それでは禁止されていないものは何かというと、もちろん国連憲章五十一条で自衛の場合というのが掲げられております。そして、国連の目的ということからすると第七章の軍事的な制裁措置ということが挙げられるのであろうというふうに思います。  先ほど申し上げましたように、国連憲章上の力を使うということに関しては、国連はしてこなかった、やったわけですけれども反省の上に立ってしてこなかった。そして現実PKOというのは何をしてきたか。軍事組織が確かに参ります。武器も持ってまいります。国によっては一発もこれまでのところ撃ってないということが明らかな国が幾つもございますが、発砲したということもある。それは事実であるわけで、否定できない。それに対して懸念があるというのもこれはそのとおりだろうと思います。  ところで、軍事組織の介入あるいは武器の使用とそれからその武力の行使との関係はどうなのかということであろうかと思います。  軍事組織が介入するということは、軍事目的であるということとは切り離されている。一国がそれぞれの軍事力を養って自衛なりあるいは何なりのために使うという、軍事目的で使うということがもちろんあります。それは日本憲法は精神としては否定をしている。しかし、軍事組織そのものが利用されるということについては、場合によってはいろんな点で許されていることがある。そして武器の使用というのも、武器を持っていて使用される、武器の使用というのは法的には武力の行使であろうと。武器の使用というのは単なる事実を指す言葉であって、日本の国内法上は武力の行使と武器の使用について多分いろんな言葉の問題があるかと思いますが、国際法の立場からいいますと武力の使用であるというふうに思います。  しかし問題は、武力の使用というものを許されたものというふうに理解する、許されたものがあるわけで理解する、しかし許されているといっても力はエスカレートするということは当然あるわけです。そこで、その際に、国連PKOの活動の中では、人間、自然の状態で興奮して力を使うということがエスカレートしていく、そういう人間のありように対してチェックをしている。だから軽火器しか使わない。問題がありそうになれば避けていくというふうな形でこれまでの実行があり、そしてそれは紛争というものがあり武力が使われているという現実がある以上、そして有史以来残念ながら人間というのはそういうふうにしてきたし、これからも多分なくならないであろう。とすると、限定をして軍事組織の介入、そして武器の使用という前提を持ちながらも、行かなければならないというのが残念ながら人間のありようではないかと。  その際に必要なことは、我々としても、日本の方針として国内法の中に五原則という形で、武器の使用は要員の生命等の防護のため必要最小限のものに限られるというのはやっぱり必要なことであろう。その意味でこの条件がある限りでは私はやはり賛成できる。現在、そして二十一世紀も、残念ながらこれはあるし、その点では貢献していく必要があるんではないだろうかというふうに思います。
  281. 合馬敬

    ○合馬敬君 ありがとうございました。  そこで、PKOの一環といたしまして、UNTACにつきましてのまたこれ評価の問題でございますが、御承知のようにカンボジアは二十年にわたる戦乱で本当に疲弊した。ともかくも戦争をしている当事者同士がもうその戦争をやめたいと。百万人以上の人が殺された。そしてなおかつ今も百万発から三百万発と言われておりましたような地雷がカンボジア全土にばらまかれて、かわいそうな子供、いろんな人が足首を吹き飛ばされたりして死んでおる。本当に生活は疲弊しておる。そういったようなところで、ここでもう一度また戦争が再発するようなことがあったら、これはまた大変なことになる。カンボジア国民にとってもこれ以上の不幸なことはない。こういう中で、やっと四派がこの戦争をやめたいと。国連にお願いします、PKO派遣してください、こういったようなことで要請があって、UNTACというのが組織されたわけでございます。  先ほど、松井公述人のお話を聞いておりますと、私、どうも何か武装した自衛隊カンボジアに侵略戦争に出かけて、カンボジアの領土を占領するのか経済的に支配するのか、そこら辺までは言っていないんでしょうけれども、どうも何かそういったようにも聞き取れたのでございますが、あくまでも私はそういった戦争を二度と再発させてはならない。もうこれ以上のカンボジアの人が死んではならない。そういったためにともかく停戦をし、そしてそれを実現させてやろう。  もしほかのいろんな協力をしましても、ODAだとかNGOいろいろありますが協力をしましても、また紛争が再発しましたらそういったものはすべてパアになるわけでございまして、私も前は農水省の役人をやっておりまして、そういった関係で東南アジアの農業協力一生懸命やりました。しかし、カンボジア紛争のおかげで一生懸命協力しましたカンボジアの農業開発はすべて灰じんに帰しておる。何にもならなかったんですね。だから戦争を二度と起こしてはならない。そういう意味でこのUNTACというのは組織されたんですね。  昨年の十一月にパリ協定ができて、そして二月二十八日に安保理の決議があってUNTACが成立した。三月には明石代表も着任していよいよ任務も決まった。このUNTACの仕事というのは何か。私これが非常に誤解されていると思うんですね。UNTACはあくまでも、予算だ人員だ、国連にとっては大変膨大な規模ですけれども、それだけではないんですね。いわゆるカンボジアにおいて平和維持、平和造成、平和建設、こういったことを複合的にやって、最終的には停戦を実現し、平和をもたらした段階で立憲議会。  今はまだカンボジアの国内では国家主権というのは確立してないんですよ。立憲議会をつくって、そして憲法を制定して新政府を樹立する、それが最大の目的なんですよ。それは停戦が崩れたら全部パアになってしまうわけですからね。国づくりはそれからなんですよ、本格的な国づくりは。そのためにわざわざ国連に外交、国防、財政、情報、治安、国家の大事な主権ですよね、これを国連が任されておる。そういうシステムになっているんですね。そのために我々がこれを最も早く実効的にやるためにはどうすればよいかということで今回の我々の法案というのをつくったわけでございます。  いつまでも待つわけにはいかないのであります、お金もかかりますから。なかなか無理じゃないかと。今のカンボジアの治安状況考えたら、来年の四月、五月までにそういった選挙までやって新政府の樹立をやるというのはとても無理じゃないか、それはあります。私もそのおそれを持っております。しかし、本当にこのカンボジアの平和をもたらしてやるためにはそこまで踏み込んでやらないと、カンボジア国民がまた毎日死んでいく。こういう切迫した事態なんで、何としてでも来年の四月か五月までにはそこまで持っていってやりたい、こういうのが私どもの意向でございまして、そういう点につきまして松井公述人はどういうようなお考えをお持ちなのか、ちょっとお聞かせ願いたいんですが。
  282. 松井義子

    ○公述人(松井義子君) 小型武器の貸与を受けて、事態に応じて合理的に必要と判断される程度にそれを使用するという、こういう言葉だけで実際にその場でそういう冷静な判断ができるかどうか。私は法律の細かい条文というよりも、やはり現実的にこういうことで一応国民が納得するのかどうか、現場でそういうことが可能なのだろうかということに大変疑問を持っているということと、大阪でカトリック関係の「平和の手」というグループ、ちょうど自衛隊派遣の声が上がったときに民間機を飛ばすという運動をしまして、全国的に募金をして何機か飛ばした。  そのグループの中で上杉さんという方がついこの間カンボジアに行ってこられてつぶさにそこで生活してこられたんですが、その話を聞きまして、新聞報道なんかで見るカンボジア状況、それから明石代表とかカンボジアの国の代表的な人が日本政府に言ってこられることと現実とがどんなに違っているかということを聞きまして、驚きました。税金も取られていないような貧しいところで、学校の先生が給料も出ないのでアルバイトをしながら教えている。とにかく、もう私たちの想像のできない貧しさの中で、求めているのはやはり子供たちの教育それから生活面の援助、そういうことをお金持ちの日本に求めているということを聞きました。  そして、大げさに鉄砲を担いでと言いましたけれども、やはり小型武器を持っていて身を守るという、そんなことが文字どおりにいくかどうか、現実の場合に。どうして自衛隊というものを行かせないといけないのかというと、やはりそこには必ずそういう武器を使う訓練をされた人たちが必要だということが前提になっているのではないかと思いますので、そのように申し上げました。
  283. 合馬敬

    ○合馬敬君 よかったら三宅公述人からも、もしよろしければ。
  284. 三宅和助

    ○公述人(三宅和助君) ここではっきりしておきたいのは、私自身も実は今度和平ができる過程におきまして現地でフン・セン首相にも会い、シアヌーク殿下にも会って、そのときは確実に両方の意見が分かれていたんですね。そこで、その接点を求める唯一は、お互いに不信感があるものですから、武装解除にしてもそれから停戦監視にしても、お互いの四派の間だけでどうもこうもならなくなって、国連というものに、UNTACに委託して、SNCという、国民評議会という一応形式的な主権はあるんですけれども、あえてその事務を国連の機関にお願いしてようやく四派がまとまったということなんです。  ですから、決して国連からやってやるぞという話でも何でもなくて、パリ協定ができる根底というものは、国連というものを通じてどうやって今言った平和を維持するか。毎日毎日内乱、戦争が起きていますから死んでいます。どうやって一般国民の死傷者を早く平和によって救うかと。そして、実際問題として非常に貧困にあります。もう教科書も足りなければ薬もない、何もないという状況。しかし、それをやるためには戦争が起きちゃだれも協力もできない。  したがって、一刻も早く生活を安定させるためには平和が必要である。そして最終的には選挙に持っていく。それから難民も帰還させる。そのためには、あえて国連というものに主権の一部を譲渡して、そしてお願いしてやってもらっているということであって、決して国連の侵略でもなければ、あるいはそれに協力するということがカンボジアの侵略でも何でもない。むしろ四派が頼んで国連に委託したものに、そして全当事者がこれに賛成したというものに対して求められて協力するというこの本質というものをやはり、必ずしも一般の国民皆さんそこはややっこしくてわかりにくいと思いますが、その本質をぜひ理解してやることが必要なのではないかと私は思います。
  285. 合馬敬

    ○合馬敬君 そこで、またこれも非常に過大に言われているんですが、PKO日本自衛隊が参加すると、先ほど申しましたように、重武装をして侵略戦争に乗り出すんじゃないかと。さらに我が子を戦場に送るなと、非常に情緒的に言われて、私のところにも本当にたくさんのPKO法案反対というあれが来るわけでございますが、今のような御説明なら、このPKOというのは平和を維持する、守る、つくるというもので、およそ戦争とは全く関係がないですね。戦争が終わった、やめたいと言った当事者が、終わった後にそれをどう平和に結びつけていくかというようなものでございまして、それがなぜ侵略戦争と言われるのか、非常に私は前々から疑問に思っているわけでございます。  もちろん、過去の日本の侵略戦争の歴史というのもございます。それはしかし、なぜそういった侵略戦争になったかといいますと、これは日本が後発資本主義の国家ということもあって、植民地の労働力だ、資本だ、これを安価に、安く使いたい、市場を独占したい、そのための自分の経済圏、生活圏を独占的に確保したいと、こういったような背景があればこそ日本は、侵略戦争と言われておりますが、それに乗り出していったわけでございます。  そう言いますと、もうアジアはすべて植民地の歴史でございまして、アメリカのフィリピン、イギリスのインド。イギリスのかつての富というのは大半はインドの植民地的な侵略によって確保されたと言われておるぐらいでございますからね。フランスのインドシナあるいはオランダのインドネシア。東南アジアは植民地の歴史でございますですよね。ロシアといえども沿海州だ、アムール川流域だ、全部これは中国から取り上げた領土ですよね。  そういったような歴史はありますけれども、そういったような反省に立って、戦後、これではいかぬということでガットだ、IMFだ、そういったような国際機関をつくり、国連中心となって一つのそういった平和な世界をつくっていこう、こういうことになったわけでございます。日本はそれに加えまして、自国の安全を日米安保条約、自衛隊といったことで確保したがゆえに、平和な社会の中でこれだけの繁栄を確保したわけで、今や自由世界の中で全世界が平和であるということで最大の恩恵を受けておるわけでございます。  日本にとりましては、世界の各地どこであろうとも戦争が起こると困るのでありまして、ましてや侵略戦争なんて、もちろん意思も能力もありませんけれども、そういったようなことを起こすメリットというのが今後とも全くないわけでございまして、そういうようなおそれは私はないと思うのでございます。  そういう中で、例えばいろいろ周辺諸国の感情を言われておりますけれども、中国も工兵隊を五百名、生命、身体を守るために小銃、機関銃程度でございますが武装させて、カンボジアPKOに五百名派遣したわけでございますが、これは「解放軍報」を読んでいただきましたらわかりますように、今や中国軍隊も堂々と世界に向けて平和貢献に活躍できるようになった、これは中国軍隊の誇りであると、こういうように言っておるわけでございます。ドイツも、いわゆる人道的な援助ならばということでドイツの軍隊はPKO派遣できるといったように言われております。きょうの新聞を見てみましても、NATOとしてPKO派遣できるようにしたいということで検討を始めた、こういうように聞いておるわけでございます。  そういったような中で、私は国際的な平和というのを保っていくために日本もオールオーバー・ザ・ワールドでこういった意味の国際的な貢献というのをやっていく必要があるんじゃないか。アメリカアメリカといいますけれども、やはりこの冷戦構造崩壊した後は、パックス・アメリカーナではもうこれはアメリカもやる意思がないと、自分のナショナルインタレストにかなったところだけしかこれからはアメリカは守らないと、そういったような方針が大分如実に見えてまいっております。  これもきょうの新聞をちらっと見ましたけれどもアメリカの大使ですか、日本は余りにもカンボジアに肩入れし過ぎるんじゃないかと、アメリカは余りカンボジアに直接的な利害がないのでそんなにやるつもりもないと、そういうような意向を漏らしたといったようなこともきょう新聞でちらっと見ましたけれども、そういうようなこれからの国際情勢の中で、日本一国で世界の平和を保っていくなんというそんな力は全くございませんので、それなりの貢献というものをやっていくと、そういうのがこれから必要じゃないかと思うわけでございます。  そういう意味で、じゃ大久保公述人に、これからそういった意味日本は本当に侵略戦争に乗り出すような意思と能力、あるいはそういった状況があるのかどうか。それから、現行のこのPKO法案ができたがゆえにそういったことが加速されるのかどうか。そういう御解釈をちょっとお聞かせ願えれば幸いでございます。
  286. 大久保史郎

    ○公述人(大久保史郎君) 私、法律家ですので、現行のあれからいうと、今の時点でPKOが、先ほど私申し上げましたけれども、武力行使を直接意図する活動だとは言っていないんです。だれもそんなこと言っていないし、それから今の時点でもちろん日本が、私も望みもしないし、そういうことを言っていない。  しかし問題は、まず九条の原則的な問題で言いますけれども、過去にだれも侵略すると言って侵略した国はないですよ。どこの国でもディフェンスフォースと言ったりするんですね。現実にそういうものが起きてしまう。そういう長い歴史の教訓があるわけですね。第二次大戦後、特にそれで国連もできた。しかし、なかなかそういうふうにいかない。その苦しみの中にあるわけです。だから、とにかくだれも侵略戦争かどうかということの基準で言っていることではないと思いますね、今の時点では。しかしそれでは、先ほど言いましたけれどもアメリカはナショナルインタレストを求めているかもしれない。日本は何ですか、ナショナルインタレストを求めない、ただただということになるんでしょうか。僕はリアリズムから言うとそうじゃないだろうということです。  それからもう一つは、九条の問題について先ほどできたら触れていただきたかったんですけれども、九条の教訓は単に平和を目的とするとかいうことじゃなくて、一番の意義は、先ほど申し上げましたように、そのための武器、手段ですね、これを厳しく規制する、というと持たないというところに私は観点があるんだと思うんです。そうでなければ、今もめている憲法上の問題はこの九条とそれからこの法案との対立ですね、もしそういうことが全然ないんだったらこんな対立は起きないし、だれも苦労することがないわけです。その点を一番理解していただけたらありがたいなというふうに思いました。
  287. 合馬敬

    ○合馬敬君 そこで、カンボジアの現状を踏まえてこのUNTACに日本がどのような国際貢献、人的派遣ができるか、こういうような問題があるわけでございますが、どの部門に送るか、それはPKFもありますし後方支援と言われているものもありますし、いわゆる文民が活動できる分野もいろいろあるでしょう。そういったようなことですが、特にカンボジアでは、私が承知しておるところでは、輸送、通信、兵たん、ロジ、先ほど中国の例を挙げましたけれども工兵部門ですね、こういったようなものについてぜひ早くUNTACに派遣してほしいという要請があるように承知しております。  カンボジアの現状は、先ほど申し上げましたように、二十年にわたる戦火で非常に疲弊しておる。それから気候も、五月から十月までが雨季ということで、特に八月から十月までは大変な雨が降って、三百万発とも言われております地雷も木製だとかプラスチックというのは全部この雨で今度は浮いて、どこに流れていくかわからぬ、こういったように聞いておりますし、この前NGOの方に聞いたんですけれども、やはりNGOの人も今どこに地雷があるかわからないけれども、もうその危険を覚悟でいろんなところに出回っておりますと。ああ大変ですねと、こういったような話をしたのでございますが、そういった大変な雨季もある。  それから温度も三十五度、場合によっては四十度まで上がる。それから病気もこれは赤痢だコレラだ破傷風だ、いろんな病気もたくさんあるんですね。いろいろ衛生状態がまだ余りよくないので、非常に発生しておるというように聞いております。  それから治安の状況も、軍隊が二十万ですか、これをまず七〇%動員解除、武装解除と言っておりますけれども、そういった動員を解除された兵隊さんが今度はどこに帰って何で生活していくか、その保障も全くないわけでございまして、加えて民兵の方が二十五万、二十七万とおられるように聞いておりますが、そういったような方も、仮に帰ったところで何で生活していくか、その保障も全然ありませんから、そういう意味で治安状況というのは非常に悪化するおそれがあるというように言われております。  そういう中で、もしこのUNTACで日本協力をするとすれば、何度も言われておりますように、やはり即応性といいますか、どういった事態が起こっても自分だけで対応でき、治安を含めて自分の少なくとも生命、身体は守れる、こういった即応性。それから自己完結性といいますか、依食住はすべて自分で賄える。現実派遣されておるある国の軍隊も自分の住むところはまず自分たちで建てるということから始めておるというように聞いておりますので、そういった自己完結性。  それから完全な装備ですね。通信だとか、もし万一事故が発生した場合にも直ちにどこかに連絡をとらぬといけませんが、そういった車だ電話だ通信装置だと、だれも面倒を見てくれるわけではございませんので、そういったようなものを備えておく必要がある、こういうことですね。  この前、ある政党の方がカンボジアに行きまして、治安の問題に触れて、そういうものは我が国からは自分で防衛をするとかいうことはできないんで、よその国から出しておるPKFにお願いをいたしたい、こういうような話がございましたけれども、これはもう本質的な誤解でございまして、PKFというのは同じように出かけていったPKOの隊員を守る必要は全くないわけでございます。  PKFというのは、あくまでもそういった停戦監視とか休戦協定の実施だとか、そういった本来の任務をやるわけでございますので、日本から出かけていった隊員の生命、身体を守ってやる、そういう必要は全くないし、そんな義務もないわけでございますし、特別にお願いいたしましても、それはちょっとお願いのし過ぎじゃないか、こういうような話になろうかと思います。  そういったようなことで六十日間、少なくとも衣食住を含めて一切の装備を含めて任務を遂行できるような体制が組める、そういった組織、チームというのは私は今のところ日本では自衛隊しかないんじゃないかというように思っておるわけです、それはもう五年、十年たてばできるかもわかりませんが。  それから、青年海外協力隊を送れというような話もございますが、青年海外協力隊は、例えば派遣するときには二十人に一人の割合でお医者さん、それから青年海外協力隊の面倒を見る教官といいますか、これをつけて出し、なおかつ相手国のどこに住むか、どういう食事をするか、どういう仕事をするかは相手国が供与してくれる、そういったような条件がないと出せない、こういうことになっておりますし、またそれ以上のことを青年海外協力隊にお願いするというのは私はこれは無理であろう、こういうように思っております。  NGOの方は、これはもう宗教的信念に燃えて、地雷で足を吹き飛ばされようと、ともかくおれはカンボジアの人を助けるんだ、そういう信念に燃えていっておられる方がございますが、私はそれはそれで非常にいいことだと思っております。ただ、国が派遣する以上はそういった方々のいわゆる本当の献身的な犠牲心だけに頼るわけにはいかないわけでございまして、送る以上はそれなりの身分保障、生命、身体の安全といったものを注意してあげないと国として送れない。  こういう現状でございますし、また自衛隊自身がおれは行きたい、早くカンボジアに行って仕事がしたい、そう言っておるわけでもございません。これは私どもとして今、日本でUNTACを成功させるためにぜひ自衛隊に行っていただきたい、それだけの用意をしてほしい、こういうように日本国民からお願いをしているというのが私は現状であろう、こういうことを思っております。  そういう点を含めまして、三宅先生かなり現地の御実態にも詳しいようでございますので、御意見なり御教訓なり、あるいは御感想でも結構でございますからお聞かせ願いたいと思います。
  288. 三宅和助

    ○公述人(三宅和助君) 私、三回ほど最近行ったのですが、現実問題として非常に治安が今でも悪いんです。プノンペン周辺はまあまあですが、やはりちょっと離れますと、今言った軍隊、昔の軍隊の人、警察に給料を今払えない。それはそれとして、我々協力してやらなくちゃいかぬと思いますが、にもかかわらず現実は厳しいわけです。ですから、いわゆる二、三人の暴徒あるいは盗賊みたいのが来るということで、やはりそれはそれで、その程度には対応しなくちゃいけない。  それから、水も悪い。今病気の話が出ましたけれども、マラリアが全人口の二〇%ですから、まあ場所によります。それから結核。そういうひどい状況のもとに、これから行かなくちゃならぬというときに、やはり自己防衛的にまず水の問題を確保しなくちゃいかぬ。通信もしなくちゃならぬ、発電機も持っていかなくちゃいかぬ、当然車だ、ヘリコプターだ、こういうようなもう極めて総合的な体制をとらないと、結局よその国のPKFに参加している人におんぶにだっこになって、それはかえって非常に迷惑をかけるということで、日本協力するというより負担になっちゃったと、こういうことにしてはいけない。  あくまでも我々としては、仮に分野を限定するにしても、やはり自衛隊の組織というものを機動的に使わないとうまくいかない。  なお、気候条件の話が出ましたけれども、私はやはり今のところ現実問題として、国連に参加しているということでブルーベレーをかぶっているわけですね。そして国連旗を立ててやっているわけですが、それぞれの自分のナショナルの隊員の格好をしております。ただ、非常に暑いものですから、私はそういう意味において従来の日本における自衛隊の方と役割も違えば、気候条件も全く違うという意味において……
  289. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) 手短にお願いしたいと思います。
  290. 三宅和助

    ○公述人(三宅和助君) 決して今の自衛隊の人が悪いとは言いませんけれども、ぜひ気候条件を考えて多少お考えになった方がよろしいんじゃないかということを考えております。
  291. 合馬敬

    ○合馬敬君 ありがとうございました。終わります。
  292. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 私はこの大阪選挙区から参議院に送っていただいております谷畑でございます。  きょうは、私ども社会党委員二人、小林、喜岡が参加をいたしております。私が代表いたしまして質問をしていきたいと思います。  本日は本当にお忙しい中、大阪公聴会に出席をいただき、また貴重な意見を賜りまして、心より感謝を申し上げるところでございます。  さて、国連平和維持活動いわゆるPKO協力法案日本の国論を大きく二分をいたしております。私どもの事務所にも毎日のようにはがき、手紙が日本各地から来るわけでございます。きょうは残念ながら持ってくることができなかったわけでありますけれども、本当に山のように来るわけでございます。それは国民の多くは、平和憲法理念に基づいた国際協力のあり方を求めているのであって、決して自衛隊の海外派兵を求めているものではないんだ、こういう趣旨のものでございます。時には手書きであったり、あるいはまた電報による反対の意思表示であったり、あるいはまた国会に対して連日連夜請願という形の中でデモ行進をしながら、国会に請願をしておるような状況でございます。  私は思うんですが、日本国際貢献をするということは、まず少なくとも国際貢献ですから、国論が二分される中でするものではないとむしろ私は思うんです。やはり日本国民賛成をして、少なくとも国会におきましたならば与野党が一致をして国際貢献をしていこうという、そういう条件の中で私は国際貢献をすべきだ、このように思うわけでございます。  過日の連休におきまして、社会党カンボジア調査団ということで私も行ってまいりました。そして、フン・セン首相を初めとしまして、チア・シム国会議長、そして同時にその現地で頑張っておられる非政府組織のNGOの皆さんとも会ってまいりました。そして私自身も国際貢献のあり方についていろいろと考えさせられたところでございます。  あのカンボジアの歴史を振り返ってみますと、フランスの植民地、そして独立。間もなくベトナム戦争が始まっていく中で、どうしても北爆という形の中で、カンボジアに逃げていく。それに対してカンボジアに爆撃が始まる。そういう大国のはざまの中で生きてきた国である、そのように思うんです。そういう状況の中でロン・ノル政権が生まれました。これは御存じのように、アメリカがてこ入れしてつくった政権でございました。  そういう状況の中で、民族ということを旗印にポル・ポト政権が実現をして、そしてあの虐殺になったと思うんです。あのカンボジアを訪れながら、私はなぜ世界に例のないあの虐殺が行われたのか。その背景にはやっぱり大国の干渉であったり、はざまであったり、そういう状況の中にカンボジアが置かれてきたのではないかと、このように思うわけであります。  そして、私がカンボジアに滞在をしているときに、そこでもう一年も二年も滞在をしておられましたプレスの皆さんがおられました。たまたま私が路上で声をかけますと、その人が言っていました。  カンボジア人たちは八百万の人口で、そしてアジアに見られるような大地主制度がなくて、今まで本当にそういえば人をだましたり、あるいはそういうことのしない国民性なんだ、非常に人のいい国民性なんだと。しかし私は今心配だと。いわゆるUNTACが出現をいたしまして、そして、UNTACそのもの自身は私どもも評価します。しかし、多くの外国の皆さんが支援という形の中でこのカンボジアにやってきて、そして今度行きますと、その素朴なカンボジアの心とか生き方、伝統的な生活のリズム、そういうものが、どんどんそれ以上のお金がそこに入ってくる中で新たなるインフレ、混乱、そういうものが私は非常に心配だと。そういうことをあるプレスの方が申しておりました。  私は、国際貢献のあり方は、まさしくそこの国自身が自立して、そして立ち上がっていくという、そういうところに支援をしていかなきゃならぬと思うんです。国益が先にあったり、またいろいろのそれぞれの国の思惑があったり、そういうことは許されないと私は思うわけであります。  これはカンボジアに限ったことではないと私は思います。私も過日バングラデシュに選挙監視団で訪れました。  また、アジアは識字率が非常に低いということでございまして、私も何とかアジアのそういう識字率、とりわけすべての人たちが文字を読め、書け、そしてだまされない、そういうような状況をつくりたい。こういうことでスタディーツアーをバングラデシュなりネパールなり、たくさんの仲間と一緒に行ってまいりまして、今はその識字に対するファンドをつくろうということで現在大阪でアルフというものをつくったり、そういうことをしておるわけであります。  そのときにもバングラデシュの皆さんのお話の中でいろいろありました。例えば最近、援助づけという言葉がよくはやってまいりまして、もう何かあればすぐ援助と、こういうことになります。ときにはバングラデシュの国会議事堂を建てるに当たって日本のODAという話もあったと私は聞きました。それを聞きまして私は非常に寂しくなりました。  私自身は、ODAを含めて、支援をするということを否定しているわけではございません。私はその国自身がみずからの力でその国をつくり上げていくという、そういう中で私どもはどのようにすればその支援ができるのかという、この立場が私どものやはり歴史における教訓じゃないだろうか。カンボジアの歴史を見ても、大国によって、さまざまな状況の中で、今日のこの戦乱を含めての状況から見ても、私はそういうことを強く感じるわけでございます。  そういう意味で、国論が二分された中における国際貢献、とりわけ四十五年間にわたる日本憲法を犯してまで、何が何でもまず自衛隊が先にありき、こういう国際貢献というのは一体いかがなものかと私は思うわけでございます。  そこで、まず最初に能村龍太郎先生にお伺いをしたいと思います。  先生のお話を聞いておりますと、本当に日本が敗戦の焼け野原から一生懸命に働き、頑張って、そしてまさしく今日の繁栄した日本がある、そういうお話でございました。それは一に平和であったからだ、こういうお話ではなかったかと思うわけであります。そしてまた、そういうことだからこそ冷戦後の地域紛争の続発に対するPKOが大事で、そして支援をする必要がある、こういうお話でございました。  私は、能村さんのお話を聞いておりまして非常によく一致することがあると思うんです。ただ一つ違うのは、PKO協力の仕方において自衛隊を出すかどうか、ここが違うわけでありまして、私どもはむしろ日本憲法の理念に合致をしたPKOの中における非軍事、民生において支援をしていったらどうだろう。それなら現在ここにおられる委員を含めて、全体がここの点においては一致しているわけでございまして、だれも反対する者は私いないと思うんです、一致するわけでございます。まずそこからするということが、能村さんの発言と私はまさしく合致するんじゃないか、そのとおりじゃないかと思うんです。  私がいろんな国を訪れた場合も、アジアの諸国におきましては、あの平和理念を持ちながら再建をしてきた日本を学びたいんだということでありますから、私はぜひそういう立場で支援することが日本国際貢献の姿じゃないかなとそう思うんですが、いかがなものでしょうか。能村さんにお伺いいたします。
  293. 能村龍太郎

    ○公述人(能村龍太郎君) 日本は戦後四十七、八年ですか、平和のおかげで我々は今日まで復興することができました。これはお気に召さないかもしれませんけれども日本が平和であったというのはアメリカとの安保条約のおかげであって、それ以外の何物でもないと思います。日本は平和のために何も努力いたしておりません、平和そのもののためにも。アメリカのおかげで我々は現実に平和を維持でき、今日の経済的な発展を遂げることができたと私は思っておるんです。文句があったらまた後でおっしゃっていただきたいんですが。我々経済人といいますものは現実を踏まえて議論をいたしておりますので、やっとここまで生きてこれたわけなんですので、大変失礼でございますが、私はそう考えておるわけです。  現実の問題といたしまして、先ほども申しましたように、日本一国だけの豊かさというのはこれから保障できないわけなんです。成り立たないわけです。非常に貧しい人たちの生存している中で大金持ちがやっていけない、あり得ないわけなんです。すべての人たちがやっぱり豊かになってもらわないと困るわけなんです。そのためのお手助けを我々はしなければなりません。  しかしながら、先ほどもお話ししましたように、現地はいろんな危険性が、病院も水も、あるいは通信も連絡も、その他すべてそういうことがないところでございまして、どこかで貢献するとすれば、どこかの組織体を出さなければならないとすれば、私は現在の日本の持っております自衛隊、これはもう戦後四十数年かかって育ててきた貴重なる組織でございますので、これを使う以外に方法はないんではないか、それ以外の人で喜んで行ってくれる人はないと思うんです。ですから、我々が何か貢献せざるを得ないとすれば、現実の問題として、やっぱり自衛隊の人に行ってもらわなければ貢献できないんではないかというふうに思っております。
  294. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 どうもありがとうございました。  私どもは貢献の仕方、先ほどもお話ししていますように、能村先生の方からもお話がありましたように、日本がこの平和の中で培ってきた技術だとか、知識だとか、あるいはシステムだとか、むしろそういうことで積極的に貢献をしたらいいんじゃないのか、憲法違反を犯してまで行く必要はないんじゃないか。こういうことが私の意見でございまして、次に進みたいと思います。  三宅公述人に質問をしたいわけでございます。  私もUNTACを訪れまして、軍事の統括責任者のサドリさんという明石代表の代理の方に会ってまいりました。その中で一つ感じることは、確かにUNTACというのは軍事部門、いわゆる平和維持をしていくために、パリ協定を守るためにPKFに参加する人々によって、割って入って、そして国連の旗というのか、その威力によって停戦を固定させていく、こういうことは私どもも否定はしませんし、また、それが非常に大事なことだと思うんです。  しかし、私が今お話ししましたように、最近UNTACは非常に文民的な要素も多くなってきた。例えば、このUNTACの最大の仕事が選挙です。カンボジア人の手によって選挙する、そして自分たちの国の将来と国の基礎をつくる、これが僕はUNTACの最大の仕事であると思うんです。  そういう中で、避難民の帰還の仕事だとか、あるいはそれを定住化していく仕事だとか、それはもちろんUNTACもしていくんですが、これはUNTACだけに限らず、UNTACが引き揚げてもずっと民生安定ということで、これは非常に長期にわたっていく問題だと私は思うんです。だから、そういう意味で非常に文民的な要素が多くなってきた。  特に、選挙においては選挙監視団が要ると思います。そうすると、文字が読めない、書けないという。識学率が非常に低いですから、だからそういう意味では、各政党が生まれてそしてその将来を語っていく、そういう選挙にいかにして国民が参加をするか、そしてだれに入れたらいいのか、この判断をしていくことが非常に大事な国づくりの基礎になっていくんですから、だから、それに当たっては印刷がほとんどないということですから、その印刷をどうするんだとか、あるいはそれを伝達するための手段として携帯ラジオというのが今一番いいんじゃないかということが言われています。そういうものは一体どうなるのかとか、UNTACにかかわってでもそういう文民の要素がたくさんある。  あるいは地雷です。UNTACのサドリさんの話で、この地雷は百万から四百万、正確によくわかりませんけれども、いずれにしても無数に埋められておるということでありまして、そのときにこういうことを言っておったんです。間もなくシアヌーク殿下とUNTACとが協議をしながら、SNCと協議しながら、CMAC、いわゆる地雷の処理のための基金、ファンドを世界に緊急アピールを出して集めたいんだと、こういう話でございました。  そのときに、地雷を処理するのは、ハイテクを使ったりというようなものではなくて、忍耐と、人海戦術と言いましたが、たくさんの人と、そしてもう本当にこつこつとやらなければならぬということです。そうなってくると、マスコミなりいろんな情報の中で、いわゆる地雷の処理を自衛隊が支援をしたらいいじゃないかという話がよくあったわけでありますけれども、また私ども委員会においても、渡辺外務大臣から、行進中に地雷があればそれをほうっておくわけにいかぬじゃないか、こういう話があったり、あたかも自衛隊と地雷処理ということがあったんですが、この判断についても、まず考えなきゃならないのは、どれが一番合理的で一発の地雷も残すことなく処理をしていけるか、どういうシステムが一番合理的なのかということから考えなければ、先に自衛隊ありきと、こういう発想ではだめじゃないか。  そこで、その話し合いの中でこういうことを言っておりました。今UNTACの中で二百名の軍隊が、カンボジアの兵士、解除をされた兵隊さん五千人を対象にして訓練をして、その五千人がまた一万人になり二万人になるんだと、そういう話でございました。埋めた人たちカンボジアの兵士が埋めたわけですから、大体どのあたりか、形状とかそういうようなことはようわかるわけです。だから、そういう人たちが動員解除をされて帰還していく、定住していくことが民生にとってもやっぱり非常に大事ですから、ぜひひとつそれをファンドによって雇用して、そして一発も残すことなくそれを除去していくことが非常に大事だ。こういうようにしてたくさん私ども日本の働きがあると思うんです。  もう一つだけ申しますと、やっぱり今UNTACで一番大事な問題は資金です。この資金が今や大変な危機に陥っている。立ち上がり資金二億ドルももうほぼ使い切ってきておる。そして、全体の予算は十九億ドル、どうして集めるかと。聞いたところの話によると、アメリカにおいても議会の中において、なぜカンボジアのUNTACにお金を出さなきゃならぬのかという、そういう反対の意見もあると。そういうような状況で、下手すりゃ日本がほとんどかぶっていかざるを得ない状況がある。そのときに私どもが、あの湾岸戦争のころ、お金だけは出して人は出さないという、こういう声があったと聞くけれどもどうなるかと言いますと、サドリさんを含めて、いやいや決してそんなことはないです、日本がいち早く国連の分担金を出していただいたことについてはもう重ね重ね感謝をいたしておりますと。そういう意味では、このお金にしたってやっぱり国民のこれは税金なんですよ。そういうものをいち早く支援のために出しておるということ自身、お金というものはばかにすることじゃなくて、これも非常に大事な支援のあり方だと私は思うんです。  以上、整理しますと、文民の部分がもっとあるんじゃないか、そしてUNTACに対しては今お金においても非常に大切な問題になってきておるじゃないかと、この点について三宅公述人の方からひとつ意見をお伺いしたいと思います。
  295. 三宅和助

    ○公述人(三宅和助君) 先生御指摘のように、平和維持そのものは実は目的ではないんで、平和維持をやって選挙をやって新しい政体をつくる、そのためにはまず前提として平和維持がないと選挙もできない。だからこそ、まず平和維持をやって選挙をやる。  確かに、選挙には膨大な、七百人に一人の選挙ポストをつくるということが言われているんです。すると、四千カ所と私は聞きましたけれども、膨大な監視要員が要るということになります。しかし、今のカンボジア政府の体制は、これは国内問題であるから何万人のカンボジア人の要員でその選挙監視をやって、それを統括する人としてやっていただきたいということで、外国に対しては、必ずしも外国が全部選挙監視しているという体制は望んでいない。したがいまして、選挙は大事なんです。大事ですけれども、これはカンボジア人にできるだけやらせるということで、たしか私の聞いているのは、外国からは数百人ということでいいと。ですから、大事であるけれどもカンボジア人でできるということ、これは非常に大事です。  それから第二は、やはり選挙をやる以上、三十六万の難民をタイから帰さなくちゃいかぬ、それで初めて選挙名簿はできるわけですから。帰すためにはまず道路をつくり、輸送して帰さなくちゃいかぬ。一週間に一万人帰さなくちゃいかぬということです。ですから、これはタイの軍部の方も、これに対して自衛隊の組織的な、機材も持って組織力のある相当の協力をお願いしたいということも言っておりました。  次に地雷の問題ですが、おっしゃるとおり、今のUNTACの中では、これは時間をかけてもうゆっくりやらざるを得ない。数十万発もあってどこにあるかわからないし、その中には、ソ連製もあれば中国製もあればベトナム製もあるし、アメリカ製さえあるというようなことを言っていました。もうありとあらゆるところに埋まっているわけなんで、それはカンボジア人を訓練してやらせるということでございますから、その訓練要員にはやはり日本に相当の期待感、かなりの技術も持っておりしかも組織力を持っておる自衛隊協力も得たいというのが実態でございます。  それで、そういう観点からいき、また最後におっしゃるように資金面。これはもう一番お金がないことにはどうもならぬということで、やはりこれはアジアの一員である日本に三分の一ぐらい期待したいということで、大体アジアで日本アメリカ以上にやっていますから、そういう面で協力したいということ、これはもう全面的に協力してやる必要があるんだろうと思います。  しかし、にもかかわらず、私が申し上げたいのは、資金だけやればいい、あるいは文民だけやればいいという、その前提として平和を維持しなくちゃいかぬ。これにも日本協力してやらないと、結局、日本はお金はどんどん出す、日本は金持ちだからお金だけ出せばいいじゃないかと。それは彼らはそう言うでしょう。一部の人はそう言いますけれども、全体の気持ちとしては、やはりアジアの平和の中でそのすべての、選挙でありかつ民生の安定のための前提条件である平和の維持のために自衛隊という組織的な能力をもってこれが協力するという、もちろん憲法に違反しないという前提に立って私は話しているわけですが、協力して、だからこれだけでいいということではだめだと、両方をぜひやってもらいたいということでございます。
  296. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 ありがとうございました。  いわゆるカンボジアにおきましては、これから長い息で、二国間支援だとか道路の復旧、そうしてそこで食べていける農業のそういうシステム、そういうことでやはり日本が非常に期待されている。私は、そういう意味では、ぜひひとつそういう文民の状況でやる必要があるんじゃないかということが一つと、UNTACの要人との話の中で、軍の要員もほぼ見通しがつき、PKFについてはほぼ満たされておると、そういう話も実は聞いてきたわけでございますから、今さら急いで国論を二分した中で出かけていく必要はないのではないかというのが私のあくまでも意見でございます。  次に、大久保先生にちょっとお伺いをするんですが、時間が三十六分ということで、非常に恐れ入ります、御協力をお願いします。  やはりこのPKO憲法違反、とりわけこの指揮権と指図の問題、それと国連のSOPの問題、そしてそのために実施要領の問題、もう確認していますと時間がないのでございまして、いわゆる指揮権というのは本来国連の事務総長にあると。なぜそうかと言うたら、平和維持をしていくためには、好きこのんで武力の行使はしないんですけれども、戦わないのがPKOなんですけれども、時にはそのPKOを妨害することがあり得るんだ、そういう場合は武力をもって反撃することができるんだと、これがSOPに明記されている。  だから、そういうことでこの武力の行使にかかわってくるんだと、こういうことがあって、そこには実施要領が、前もって国連との打ち合わせの中で五原則が守られるような形でやるのでそんなことはないんだと、こういうようにぐるぐると回っていくんですけれども、そこらの点を一言だけ、ありましたらひとつ御意見をお伺いしておきたいと思います。
  297. 大久保史郎

    ○公述人(大久保史郎君) なぜ法案に「指図」と書いたかということは、結局国連、まあ司令官となるんでしょうか、PKFを中心とする司令官の指揮下に置かれた場合には、憲法で言う武力の行使あるいは少なくとも威嚇に該当せざるを得ないというところで、苦心の産物として指図と指揮を分けたわけです。結局、この間の国会審議の中で、指揮に入らざるを得ないし、全然指揮に服さないような自衛隊が参加したって、それこそ向こうが困るということでにっちもさっちもいかなくなって、いまだにこの点については政府の方も解消していないと思いますね。  結局は、国連軍の指揮下にあるということになりますと、日本憲法が禁止する九条第一項の武力の行使に明らかに該当せざるを得ないということが結論ですので、この点で憲法の方から見ますと明らかにこの法案憲法九条第一項に違反する、ちょっと簡単に言っていますけれども、違反するというのが一致した意見です。これに対して、この指図と指揮を操作して何とか九条の違憲論を回避しようという議論は憲法学者の方では全然出ておりません。
  298. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 ありがとうございました。  いずれにしても、どういじくりまくっても憲法違反だ、そういうように意見をお伺いいたしました。  芹田先生の方に一つお伺いしたいんですが、先生の今の発言の中で、ポスト冷戦PKOというのは少しこれは変わっていくんじゃないかと。確かに先生おっしゃるとおり、PKOの歴史は冷戦の中で生まれたし、そして中立の国だとか、そういう国たちが平和を求めていく中でやってきたということですね。だから、そういう点については、ポスト冷戦の中におけるPKOはどう変わっていくのかについて先生は非常に何か不安といいましょうか、ちょっとそういうような感じがしたんですが、いかがなものでしょうか。
  299. 芹田健太郎

    ○公述人(芹田健太郎君) PKOにつきましては、実は先ほど申しましたように、国連がそのときそのときに対応してつくり上げてきたもので、前提は冷戦構造で米ソの両大国が入らないということで、そこで初めて中小の国あるいは中立の国が世界の平和に役立ち得る、力は使わないからということで中小の諸国がこれに参与してきたという経緯があるというふうに思います。  ところで、冷戦後になりますと何が出てくるかというと、湾岸戦争のときに危惧されたことではありますが、大国主導で悪い者をやっつけるという形が出てきはしないか。PKOの場合にはどっちが悪いとは言わない。スエズ危機の際においてさえ、イギリス、フランス、それは悪いとは言わなかった。悪いとは言わなくて、そしてどっちかが徹底的に負けてしまうというふうなことでもなくて、その中間の状態でとりあえず話し合いだけでやりなさいということで進んできたものだと。  しかし、冷戦が終わって世界の力関係というのでしょうか、秩序というのはまだ明確には出てきていない。そうすると、今は、あるいは国によってはアメリカに対して信頼がある、そして日本は日米関係を抜きにしては語れないというのも事実ではありますけれども、力関係の中でアメリカアメリカのナショナルインタレストがあるだろうし、日本日本のナショナルインタレストがあるかもしれない。そうすると、かつて行った道というのでしょうか、その道に踏み込まないとも限らない。そこのところはわからない。しかし、従前どおりのPKOがこれからもあると、これも否定できない。だから、従前どおりのところは我々は非戦という立場から参加していく、こういう趣旨でございます。
  300. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 ありがとうございました。  いずれにしても、南北問題だとかさまざまな問題で冷戦後は大きく変わっていくわけでありまして、やはりPKOも中立であったり、そういう国益というものをどう薄めていくかということが今後とも非常に大事になっていくというのが私自身が思っているところであります。  続きまして、関先生にお伺いをしたいんですが、関先生のお話を聞いておりまして、私も本当に同感である、こういうふうに思いながら聞いておったわけであります。  いわゆる国連の中で、安全保障理事会ということもありますけれども、もう一つは経済社会理事会というものがあるわけなんです。そのことについても今日の国際社会においては非常に大事になってきておるんじゃないか。  例えば、私なり流の予防PKOといいましょうか、最近はやはり宗教、人種、それから貧困、そういうことによって非常に複雑に地域紛争というものが絡んできておるということを思うんです。それをぜひひとつ、国連の機構の中でさらにそれを集約していくような調査機関といいましょうか、さまざまの国の紛争を分析し、そこにおけるどういう人種間において何が問題になっておるのか、それを早いことキャッチして、ODAだとかさまざまなそういう経済支援の中で事前に、紛争が起きないような国連のあり方が希求できないだろうかと私は思うんですけれども、先生、いかがなものでしょうか。いわゆるポスト冷戦の平和の維持のあり方ということです。
  301. 関寛治

    ○公述人(関寛治君) 経済社会の問題については、従来国連の活動はNGOをむしろ大幅に認めてきたという経緯があるわけです。例えば、国連軍縮特別総会もこのようなNGOの大きな力によって、結集によって開かれたものでして、一九七八年以降何回か開かれたわけです。これが非常に軍縮についての世界的な世論を結集したという問題があろうかと存じます。これには日本も非常に大きく貢献したのですが、なおポスト冷戦をもたらすという面では非常に大きなリーダーシップが必要だったわけです。  このポスト冷戦の大きなリーダーシップというのがむしろゴルバチョフによって率先的に行われたという面がある。このようなものをつくり出したのは、こういうNGOの大きな活動もあるのですが、もう一つはゴルバチョフに影響した学術文化というものの影響力を認めなければいけない。その一つとして、私は日本にできた国際連合大学がある意味で大きな役割を果たしたと思っておるわけです。この国際連合大学にはゴルバチョフのブレーンというようなのが出てきて、それらがペレストロイカのもとになるパルメ委員会の最終報告に貢献しているんです。パルメ委員会の「共通の安全保障」という最終報告は、日本国連大学の中で最終的な結論が成熟したというふうに言っていいと思っています。これは将来国際政治史で非常にはっきり出てくると思う。  ところが、そういうものに対する貢献は、日本はつくっておきながら日本政府としてまだ十分な貢献をしていないんです。そうして、PKOの問題が出てくると、自衛隊のためにこれに飛びつく、こういうのは基本的に私は戦後冷戦下における日本外交のおくれだというふうに言わざるを得ないんです。そういう面で考えますと、ベトナム戦争は一体どこがやったんだと。そして、そのベトナム戦争の後遺症として起こった問題なんです、これらの問題はすべて、カンボジア問題も。これに対して一体日本はその後どういうふうなことをやったかというと、何もやっていないんじゃないか。今になって慌ててPKOですぐ自衛隊と飛びつくのが非常におかしいというのが私が強調したいことなんです。  むしろ、朝鮮民主主義人民共和国の方がシアヌーク殿下を随分かくまっていろいろ努力しておるわけですよ。その朝鮮民主主義人民共和国との関係も、いまだに戦後四十五年、日本は責任なかったと言っているけれども、今言ったような問題で消極的な意味で責任は私はあると思うんです。非常に消極的だ。積極的にやらなかったわけです。  国連大学を持ってきたのは、これは積極的です。それは立派だと思うんです。後を何をやったか。世界的なネットワークをつくって新しい世界をどうするのかという、交流とかそういう面では全く全力を挙げていないわけです。経済活動だけは世界的になりました。しかし、そういう学術文化の面で世界を今後どうするのか、環境問題にしろ南北問題にしろ、それから安全保障問題にしろどうするのかという検討をやっていないわけです。  ですから、やっていないから、旧来のアメリカ冷戦時代考えていた考え方をそのまま、まだその延長線上で処理しようとする。だから、何といっても自衛隊、何でも自衛隊ということに、それが国際貢献だと思ってしまう。これは基本的に私は前後が倒錯していると思う。やらないでいて慌てて自衛隊だけが出てくるということが問題なんです。  それじゃ、現実の問題はどうかといえば、現実の問題は、こんなPKO法案なんか出さないでやればカンボジアへの貢献は非常に早く私はできたと思うんです。よその国で特殊的な力を持っている国、これは従来からの中立国というものが原則だと思うんですね、PKOを出すというのは。日本は中立国じゃなかったんですから、それを出そうと思うなら自衛隊をもう一回改組して、根本的にPKO向きの訓練をやる、そういうものをつくっておくべきだったんです。今になって、つくってないから社会党の案が出てくるということになるわけですよ。この辺のところが最大の問題で、緊急だからといっても憲法を犯してまで自衛隊にかじりつくのは根本的な政策の誤りであると言わざるを得ない。
  302. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 どうもありがとうございました。全くそのとおりだと思います。  私もこの委員会で、UNTACで聞いてきましたのは、文民警察をぜひ出してほしいということです。文民警察、今出そうと思ったら出せるんです。あるいは選挙監視団も出せるんです。にもかかわらず、この法案が通らなければだめだと。一切これは調査もしていないということですから、全く先生の言うとおりだと私は思いながら聞いておりました。  次に、松井公述人にお聞きをしたいと思います。  松井さんはずっと韓国の人々の被爆者の補償をされておる。その中で、どうしても国籍ということで大きな壁があるということだと思います。  そこで、日本国際貢献を含めてしていくに当たって、どうしても避けて通れないのがいわゆる戦後補償ですね。戦後補償という問題が私はあると思うんですが、その点について松井さんの意見はどうでしょうか。
  303. 松井義子

    ○公述人(松井義子君) 先ほどからのお話を伺っていまして、一番傷を受けた人が苦しんでいるのは、もう自分たちのことはすっかり忘れて日本はやはり新しい世界に覇権を握るというか、経済力を含めて軍事力で上に立とうとしているということで、全く無視されているという絶望感がとても深いということなんです。先ほど安保条約で日本が守られているということですけれども、安保条約のために日本が基地を提供して、その基地から朝鮮戦争それからベトナム戦争そして湾岸戦争にたくさんの軍人、アメリカ兵やそしてまた武器や車が送られていった。私たちは、もう既にそういうふうにして安保条約を容認しているために戦争の加担者であった。そのことを知っているがために戦後の傷に悩んでいる人たちはもう本当に日本に対する不信感というか、それはもうぬぐえない状況なんです。  私は、本当にそういう状況があったままこれから新しい世界、若い人同士の世界を築いていく上でこれがどんなに大きな障害になるか。遅くてもここで本当にこの軍事中心の方向が、先ほどからのように本当に生活とか文化とか学術とかそういうふうに変わっていくということこそこの人たちの痛みに報いる道ではないか。もう単なるお金を補償するとかそういうことではないんですね。この国の方向がどっちの方に行くかということが一番の関心事であるということを申し上げたいと思います。
  304. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 どうもありがとうございました。  あと、本来大久保先生ともう一度関先生にお聞きしたいところであったんですけれども、実はこの審議の中で、このPKO法案が、政府の原案がそのまま国会で通るとはだれも思っていないわけでして、これはPKF凍結というような状況なんです。しかし問題は、PKFはいつか凍結されたものは解けるわけでございまして、問題はその凍結の仕方を含めてどうなっていくのかという姿が全然見えない。見えない中でこれ議論をするというのは私は非常にこれは不公平であり、民主主義においては私は許すべきことじゃないと、そういうことを本当はお二人にいろいろ聞きたかったんですけれども、時間が参りましたので、これをもちまして私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  305. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 きょうは、公述人の方々に貴重な御意見をお伺いいたしまして、とにかく今、日本が軍事大国になってはならない、また平和のために尽くしていかなくちゃいけない、そのことは皆さんお訴えになりながら、そのやり方についてさまざま貴重な意見を伺ったと思っております。  ただ、私、皆さんの御意見の中で納得いかない部分も随分ございます。例えば、PKOについては大体皆さん共通の認識を持っていただいているのかなと思いましたら、御意見の中にPKOというのは、やはり武器を使う訓練を受けた人が必要なんだというような御意見がございました。私は、PKOというのは何が本質なのかということを見きわめなくちゃいけないと思っております。この四十数年の間にPKOはさまざまに試行錯誤しながら一つの形をつくってきた、芹田公述人からそういうお話がございました。  私は、PKOというのは武器を使ってしまえば失敗だ。その時点でPKOというのはPKO本来の本質を失ってしまうと思っております。ただしかし、PKOを実施していく場合、何を一体PKOはやっていくのか。戦争があり、紛争があって、それが終わった。終わったものをどうきちんと停戦後監視していくかということが一番主要な業務であるわけです。それならば、どういう人たちがそういうことを監視できるかという問題で、やはり軍事的知識が必要なんだ。そこからこのPKO、ある意味じゃ先ほど芹田先生は敵なき兵士たちとおっしゃいましたけれども、そういったことが起きてきたと思っておるんです。  私どもそういう考えを持っており、しかも戦後、戦後というか世界にいろんな貢献がある、日本の貢献のあり方がある、そうもありました。ただ現状、冷戦が終わり、地域紛争が激化する中で、世界がこのPKOという問題に、スイスも含めドイツも含め皆さんがこのPKOという問題に世界を挙げてどうすればいいのかということで取り組み始めたことも事実でございます。  まず、私が冒頭芹田公述人にお伺いしたいのは、先ほどPKOの本質の問題を、私自身の考えを申しましたけれども、芹田公述人、このPKOの本質とは何かということで御意見があれば簡潔にお伺いしたいと思います。
  306. 芹田健太郎

    ○公述人(芹田健太郎君) 確かに、木庭委員が今おっしゃるように、PKOで武器を使えばもう失敗だと、私もそう思います。本来そういうものとして派遣されているというのがPKOの本質だと思います。  それは、戦争が終わったというんではなくて、実は戦争はあるいは続いているんではないかと思います。戦争のもとになった意見対立があって、そしてだから武器をとってしまった、しかしそれを何とかおさめて平和的に話し合いで解決し、それぞれの発展を目指してはどうかと。だから入っていくので、入っていった者が武器を使ったらもうそれはおしまいだと、その意味で木庭委員のおっしゃるとおりだろうというふうに思います。
  307. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 芹田公述人にもう二点あるんですけれども、まず一点目お伺いしたいのは、五原則という問題を御指摘をしていただきました。私ども公明党国民会議でございますけれども、私どももこの五原則の問題については非常にこだわりました。最初にこういうものを法案に明文化する必要はないという御意見も随分ありました。先ほど芹田公述人がおっしゃったみたいに、この五原則、停戦の合意が成立している、当事者国間の同意がある、また中立性、これはPKOそのものじゃないか、これをわざわざ法文に書き込むことはないんじゃないかという御意見も確かにございました。  しかし、日本がこれからPKOに取り組んでいくからには、日本としてどういう協力の仕方があるのかということをきちんと書き込む必要があると思い、そういう法案に盛り込むということを私たちは主張し、この政府法案には五原則が明記されたわけでございます。芹田公述人は、今PKOのさまざまな変化冷戦構造後どうなるかという問題を指摘していただきながらこの五原則の重要性を指摘されておりました。  もう一つ、憲法上の問題でも、やはり私たちはこの五原則というのをきちんと法文化することが大事だと思っております。  さらに加えて、今一つ議論になっているのが国会での事前承認の問題でございます。  私たちはこの事前承認という問題、さまざま御意見あるでしょうけれども、一番心配いたしましたのは、もし参加の是非だけを事前承認した場合に、例えばこういう五原則が崩れはしないかという心配をいたしました。やはり事前承認をするからにはこの五原則をきちんと確認するということをひとつやらなくてはいけないというふうに私ども考えております。  そういったことも含めて、この五原則という問題について芹田公述人、もう少しつけ加えることがありましたらお話をいただきたいと思います。
  308. 芹田健太郎

    ○公述人(芹田健太郎君) 先ほど申し上げましたように、PKOの本質は、本質というのは国連が試行錯誤の中でつくり上げてきた、本質は変わらないにしてもつくり上げてきた。国連というのは国際政治の場でそのときどきによって変わっていく可能性がある。私ども大変心配、そして国民が心配して意見が分かれている点というのは、我々はやっぱり過去の傷を持っている、そこで憲法の原則というのを曲げるわけにはいかないんだ、だとすれば単に国連という政治の場でつくられてきて確認されているものであっても、日本としてはこれは譲れない線なのだということをどうしても政策、つまり立法の中に入れておかなければならないのだろうというふうに思います。  それは、国会の承認との絡みで申しますと五原則と承認とどちらが重要なのかということにもつながるのかもしれません。そういう御質問かと思います。  そういうふうに理解して申しますと、重要なのは実は原則の方である。承認の問題につきましては、確かに政治的な状況その他で、極論すれば民主主義は数だと、私はそのことについて疑問を持ちますけれども、数だと言われて原則抜きで多数で承認したというのでは憲法上問題があるし、これまで育ててきたPKOとの関係でいうとやっぱり問題があるように私には思えます。その意味で、五原則というのは法文化して、そしてその五原則に従って承認の審議をするという意味で大変重要なものであるというふうに確信しております。
  309. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私ども皆さんが御指摘されているように、今世界軍縮時代であり、その方向で日本も進んでいかなければならない。そういう意味では、自衛隊の問題にいたしましても、これをどう位置づけ、どう縮小し、どう見直していけるのかというのをきちんと論議もし、実際にそういう取り組みもいたしております。  その一方で国際協力という問題を考えていったとき、世界の平和へ協力していくということで一つのPKOという問題がある。それも私どもは、このPKOに取り組んでいくというのは日本としての一つの責務のような部分があるのではないかとも感じております。そして、そういった問題を考えていったときに実際に、三宅公述人の方から例えばUNTACの現状、カンボジアの現状の御指摘もいただきましたが、そういった部分を、PKOの実態を見ていったとき、またPKOのこれまでの形成過程を見ていったときに、現時点、我が国としては憲法上きちんとした歯どめをした上でやはり自衛隊の能力を生かすしか道はないというふうに私ども考えております。  社会党さんが対案を出されてまいりました。非軍事、民生、文民ということですね。それが将来のPKOでは、先ほど芹田公述人もおっしゃっていましたけれども、いろいろPKOが変わる中ではそういったものが中心のものが生まれるかもしれません。しかし、現実PKOを見ていったときには、この自衛隊の能力というのは生かさざるを得ないと私は感じているわけです。  ただ、そうは言っても、先ほど芹田先生もおっしゃっておりましたけれども国民の理解、アジアの理解という問題がございます。そういった意味で私どもはPKF本体業務の凍結ということを主張しているわけでございます。別の委員は何が何だかわからないとおっしゃっておりましたけれども、私どもは明確にこの凍結という考え方については示しております。ぜひそれは見ていただきたいし、この凍結を解除する仕方についても、解除する場合は新たな法律を出すということも明確に言っております。それを今は何もわからないとおっしゃるのは私どもは非常に心外でございますし、そういったやり方できちんとやりたいと思っております。  それは別といたしまして、やはり現時点でのPKOにおける自衛隊の活用という問題について、芹田公述人、御意見があれば手短にひとつお願いいたします。
  310. 芹田健太郎

    ○公述人(芹田健太郎君) 国際協力のあり方というのは、いろいろ論議がありましたように多様だというふうに思います。私どもの大学でも大学院に国際協力の人材養成のための大学院をつくらせていただきました。  そこで、なぜ自衛隊なのかというお話は、先ほど三宅公述人からもいろいろとございました。ここではカンボジアであると。そして、実はカンボジア、ラオス、ベトナムというのは、第二次世界大戦のときに、日本は仏印処理というふうな形でやはり傷を持っているところでもありました。ここがとりあえず四派の抗争をおさめて、仕事をして、これから発展をしていきたいというときに、まずやはり何としてでも戦火をおさめておかなきゃならない。そこからいろんなことが始まるとすれば、やはりどうしても軍事的な知識とか経験とか訓練というのは必要であろう。そうすると、日本が今あれこれ見回して、仕方がないな、自衛隊しかないわ、こういうのが現実ではないかというふうに思います。  私、法律家として、凍結というのが法的に必要かどうかということではなくて、これは政策の問題であって、法的にはあろうとなかろうと構わないというふうに思います。ですから、政策的なことで凍結というのは十分お考えいただくというんであれば、私はそれで賛成できるというふうに思っております。
  311. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 能村公述人にお伺いしたいんです。  先ほど能村公述人、私は経済人だから現場から物を考えているんだというような御発言がございました。世界に今日本人がいっぱい出ていっているわけですよね。そういった中でいろんな評価も受けております。私どもこのPKO法案審議するときにやはり一つ心配なのは、私どもは今国会でぜひとも成立させたいという考えを持っております。ただ、こういうものが万が一できないというようなことになった場合、やはり私は国際社会の中では厳しい指摘を受けざるを得ない面があるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、その辺について能村公述人、御意見があれば最後にこれをぜひ伺っておきたいと思います。
  312. 能村龍太郎

    ○公述人(能村龍太郎君) 先ほども申し上げましたように、やっぱり我が国は今の憲法によりまして余り軍事力なしで世界の国々の中で国家の存立を図っていかなければなりません。そのためには、我が国だけが豊かであってほかが貧しい国々であっては困るわけでございまして、世の中の現象というのは皆、例えば気圧が低かったら台風が発生いたしますし、水の水位に格差があって滝があったりします。やっぱりできるだけ穏やかにしていかないと、我が国の生存もまたこれから世界のあり方も成り立たないんです。  私ども一番怖いのは、むしろ近い将来人口の爆発なんです。一九〇〇年に十五億人でございましたけれども……
  313. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) お手短に願いたいと思います、質問に対する答えとして。
  314. 能村龍太郎

    ○公述人(能村龍太郎君) とにかくいろんな国から尊敬を受けて、日本もようやっておると、仲よくしていかぬといかぬわけです。バーゲニングパワーは我が国におきましては経済力だけなのでございます。経済力だけではございますけれども、今のような直接戦争に関係のない、要するに平和を維持するためのサービスといいますものは、いろいろな国を豊かにするために、平和な状態をつくって人々に豊かな感じを与えて、そして家へ帰ったら夕御飯を家族一同で笑って食べられるという、そういう状況こそが次の豊かな社会の前提になるわけです。そういうことにやっぱりぜひとも貢献せなければならないと思いますので、ぜひともこれは通るようにひとつ頑張っていただきたいと思います。お願いをいたします。
  315. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ありがとうございました。
  316. 立木洋

    ○立木洋君 日本共産党の立木洋です。どうも貴重な御意見ありがとうございました。  早速質問に移らせていただきますが、最初に大久保先生の方からお尋ねをさせていただきたいと思います。  今のこの法案憲法とのかかわり合いで大変な問題になっている重大な一つなんですが、長期にわたって憲法を専門的に研究なさっておられる憲法学者の方々の御意見というのは非常に貴重な御意見ではないかというふうに考えるわけです。先生の方で、日本の多数の憲法学者がこの法案に対してどういうふうな考えを持っておられるのか、もしそうした事情がおわかりでしたら述べていただければ幸いだと思います。
  317. 大久保史郎

    ○公述人(大久保史郎君) 多くの憲法学者というふうに私が申し上げましたのは、私自身も所属しておりますが、全国憲法研究会というのがあります。それ以外にも、憲法理論研究会とか、憲法を特に専攻する人間はほとんど入っていると思います。いろんな方もいらっしゃいますけれども、大多数入っていると思います。一昨年の国連平和協力法案のとき、特に昨年の七月、それの後七月三十日に、この法案そのものの動きの段階で原則的な声明を出しました。  また、改めて運営委員会、こういう学会でこういうのを出すことについては当然議論があるけれども、だから重々よくよくのことだということを理解していただきたいんですが、最近の例で言いますと、この五月の二十三日付で全国憲法研究会が一応各人の署名をとっています。三百数十名の会員おりますが、そのうちたしか二百二、三十名、もう二百二十名は超えていると思います、その方々です。その代表者は中央大学の清水睦先生という方が今現在代表者になっております。名前を挙げて失礼になるかもしれませんけれども、ちょっと運営委員を挙げますと、私自身も運営委員ですけれども、例えば東京大学の芦部先生、今学習院に移られていますけれども、あるいは樋口先生とか一橋の杉原さんとか、あるいは奥平先生、今国際基督教大学に移られましたが、早稲田の大須賀先生とか浦田先生とか、運営委員は、外国に行かれている以外は全員この声明を出しました。  それは、「自衛隊の海外出動に反対する憲法研究者の緊急声明」ということでして、昨年の七月に、PKO協力に対するものが憲法上許せないと、要旨を言っていますけれども、声明を発表したということなんですけれども、その後、違憲の内容を含む法案であることなので改めて意思を表明したいと。  平和維持軍や停戦監視団はそれ自体軍事組織であるのみならず、平和維持軍は武力行使を伴う武装部隊であって、一切の戦力の保持と一切の武力の行使を禁止した憲法第九条に違反し、許されないものと言わざるを得ない。それからなお、政府自民党と一部野党の間ではPKF凍結案と国会事前承認案が妥協案として論議されているようである。しかし、そのような妥協案も、違憲の自衛隊を海外出動させるという法案の本質を変更するものでなく、またPKF凍結も早晩解除されることが企図されていることからすれば、憲法上許容することができないとしまして、ちょっとほかにも小沢委員会等に触れておりますが、これ自体は簡潔なものなんです。  今大事なのは、日本憲法の精神に即した本来の国際協力は、なお解決を見ていない過去の戦争責任の問題に誠意を持って対処するとともに、不戦と軍縮、非軍事化を内外において実現すべく、さらに今日の地球的課題という南北問題の解決、国際人権の保障、地球環境の保全に全力を尽くすことであるというふうな訴えを出したということです。
  318. 立木洋

    ○立木洋君 続けて、今問題であります修正論議のことについてちょっとお尋ねしたいんですが、今既に修正の内容は出されておるという御意見もありましたけれども、しかし、国会には正式に出されておりませんし、きょう公聴会を行うこの席にも正式にどういうふうに修正されるのかということは発表されていないんですから、それはそういうことが事実だということだけちょっと申し上げておきたいんです。  それで、新聞凍結の内容、修正の内容、いろいろごらんになっていると思うんですが、例えば凍結の問題につきましても、本体を凍結するだとか、あるいは軍事的色彩の強い部隊は凍結するだとかいうふうなことが新聞紙上では見られます。  ところが、UNTACに参加している軍事部門、これはすべて一体になっていて、九カ所に分散することになっています。これは全部歩兵大隊だけではなく、通信、医療あるいは輸送、兵たん、その他、これはもう全部一体で、同じように九カ所に分かれて構成されているというふうな内容になっているわけですから、つまり本体だけあるいは歩兵大隊だけが凍結されても、ほかも全部武装した、武器を使うことが許されているそういう部隊というふうになっているんですから、これは結局は憲法上は最大の疑義がやっぱり残るということになるんじゃないかというふうに思うんです。  ですから、まだ明確に発表されていないという条件がありますけれども、そういう凍結等の修正論議について何か御見解があればお聞かせいただければ幸いだと思います。
  319. 大久保史郎

    ○公述人(大久保史郎君) 今焦点になっているのは、新聞等でお聞きする限りではいわゆる平和維持軍、PKFが焦点になっているわけですね。そこを凍結という言葉、これがわかりにくいんです。しかし、この法案を見ればわかりますように、具体的業務の一番中心部分はいわゆるPKF部分ですね。かつ、そこに主力として自衛隊だけを参加させるとなっているんですね。この部分をいじるということは大体その法案そのものの基本にかかわるわけです。単なる修正で済まされる問題ではない。  それから、実態として、PKOというのは歴史的な経過から見てもPKFというのが中心になっているから、区別できない。それから、それ以外、PKF本体部分後方支援というこの意味がちょっと条文を見たって出てくるわけじゃなくて、何となくその部分をさらうわけですけれども、全体としては切り離すことができない。それから、この業務の部分のところをどういうふうにいじるか知りませんが、これは切り離せないだけじゃなくて、実はこの法案の目的そのもののところが停戦の監視、兵力切り離しを総括的に出しているんですね、国連平和維持。だから、目的規定のところもいじらないと、この国連平和活動の定義そのものをいじらなければ、凍結というんですか、することもできない。  それから、あと問題は凍結の理由なんです。理由というのが、もし憲法上の疑義だとかあるいは国民の理解不十分であるというんだったら、これは削除すべきことであって、凍結すべきことじゃない。それから、単なる政治的駆け引きだというんだったら国民をだますものだ。それからもう一つは、例えば五つの先ほど言った条件が入ったとかありましたね、中立でなきゃいけないとか。あれはみんな結局憲法第九条の武力の行使に当たらないということのためにいろいろそういうことは、九条の問題を回避するために五つの条件とかいうのをつけた。ところが、PKOの実態と合わない、こういう問題も出てきているわけですね。  ですから、もし本気になって凍結考えるんだったら、条文のことをどうするんだと。もしそれをいじらないまま、何となく先延ばしにするんだ、それで適当なときに動かすんだという、これは単なる運用上の問題ですね。そうすると、法案そのものとしては、軍事的性格を持って自衛隊を本体とするものを出すということがこの法案の本体であることと何も変わらない。ということは、憲法九条の問題が正面から出ざるを得ない。だから私は、一体まじめにというのか、条文としてはどうするのか。附則につけるんだと。これも附則のような問題じゃないということがわかると思います。  ちょっとついでに言わせてもらいたいんですが、自衛隊法の目的も、これ海外に出るということは大問題です。これも附則でいじると言っているんですね。これ自衛法の基本的な三条の目的規定にかかわる問題ですから、自衛隊法の基本的任務、性格を変えるものだと思います。  そうなると、今度は自衛隊の合憲の根拠は、政府の説明では自衛のための、自衛権のためのみだったというのが変わるわけですから、自衛のためじゃないんですから、今度はね。そういうふうに附則でやるということでは自衛隊法そのものについても大問題にもなると思います。同じような問題がそこらじゅうあるんじゃないかと考えています。
  320. 立木洋

    ○立木洋君 非常に明快だと思います。  いろいろと政府の方もカンボジアなんかに出す場合に、あそこは大変でいろいろな難しい問題があるから、自己完結的な行動ができるやっぱり自衛隊でないといかぬのだというふうな言い方を盛んにしますけれども、これは結局は自衛隊を出すための口実にすぎないんだということも私は明確だと思うんで、つけ加えさせていただきたいと思うんです。  それで、関先生の方に国際関係の問題御専門なんでお尋ねしたいんですが、今カンボジアで行われている問題でいいますと、国連とそれから二十カ国、つまり関係諸国が中心になってパリ協定が結ばれまして、そのパリ協定に基づいて今のUNTACの業務というのが進められているという状況になっているわけですが、このパリ協定に参加して、そしてカンボジア問題をどう解決するかということに取り組むことになった加盟国二十カ国の中で複数の国々が、日本カンボジア自衛隊を送ることについては問題があるという異論を述べているという国々があるわけです。  そういう状態が、つまりパリ協定に基づいて行うという業務に、それに参加している国々が、関係国が、日本のそういう参加の仕方には異論があるというふうに述べている状況のもとで日本自衛隊を出すということは、今後のアジアの国際的な本当の協力をつくり上げていく上でも私は大変な問題が残るんではないか。  政府の方では、これは異論を述べているのはそんな大したことではないんだというふうに軽く述べられるような風潮もありますけれども、私はアジアの今後の問題を考えるならば、カンボジアの本当の平和を確立するためにも、そういう異論が出ている、パリ協定の加盟国の中で異論が出ている国々が反対しているということはやっぱり重視せぬといかぬのじゃないかと思うんですけれども、その点についての先生の御見解をお聞きできればと思います。
  321. 関寛治

    ○公述人(関寛治君) 日本に対するそういう特別の留保というような考え方は、国際政治史的に見れば、日本冷戦時代にやってきたことに非常に関係が深いと思うんです。もちろんアメリカもそうだと思うんですが、そういう日米関係の両方の関係からこれが生じているとしか考えられないわけです。それは単に戦前の日本の行動だけではなくて、私は戦後四十五年についても大きく問われていると思うんです。そういう問題に対する反省が全くなくて自衛隊を出そうとしているのが非常におかしいということになります。  当然それは、アメリカはどうなのかといったら、アメリカは、それは政府のレベルではむしろ初めは盛んにこれを参加させるのが目的である、むしろアメリカの戦略の中でこの問題が起こったというのが正しい見方だと思うんです。正確な見方だと思うんです。しかし、アメリカ国内で決してそんな一致した意見が見られない。日本がそういう軍事的な貢献をやることに対して反対の声が非常に強まっている。これはポスト冷戦においてソ連は変わったけれども、まだアメリカも変わらない、そして日本も変わらないということから来ているわけです。日本が変わらなきゃいけないんです、軍縮、平和のために。しかし、日本の政界の状況が非常におくれているために、野党を含めてそれができてないから、そこでこういう話になる。  こういう話になりますと、そうすると、例えばこれが流れたら日本が国際的に恥だという声がありましたけれども、全然逆なんです。流れたら国際的な恥でないという、逆にそういう新しい流れが私は出てきていると思うんです。新しい日本の外交政策が求められている。それを日本政治がまだつくり出していないから、こんなところで私が意見述べなきゃならない羽目に陥るわけなんです。おくれているわけですよ、はっきり言えば。これは野党を含めておくれていると思うんですよ。全然おくれていると思うんですよ。これは日本政治が変わらなきゃいけないんですよ、こういう問題で。  それで、日本だけが特殊国家であるということが平和憲法の問題で言われているけれども、実は日本がその特殊国家であるということ、それは平和憲法に基づいている。その平和憲法が、今や世界全体を変える大きな光、すばらしい光として認められ始めている。それを何か平和憲法をこね回してカンボジアに出るということがいかにも国際貢献のごとく言うのは、時代おくれな発想であると言わざるを得ない。我々は創造的に新しい時代をつくり出していく……
  322. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) 時間が参っておりますので。
  323. 関寛治

    ○公述人(関寛治君) 原点に立っていると思うんです。
  324. 立木洋

    ○立木洋君 ありがとうございました。
  325. 下条進一郎

    ○団長(下条進一郎君) これにて公述人に対する質疑は終わりました。  この際、公述人の方々一言御礼を申し上げます。  皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は、本委員会の審査に十分反映してまいりたいと存じます。本日は、御多忙中のところまことにありがとうございました。派遣委員を代表いたしまして重ねて厚くお礼を申し上げます。  これにて会議は滞りなく終了いたしました。おかげをもちまして我々が遺憾なく所期の目的を果たし得ましたことは、ひとえに本日御出席くださいました公述人の皆様の御協力のたまものと深く感謝申し上げる次第でございます。  また、本地方公聴会のため種々御高配、御尽力を賜りました関係者各位に厚く御礼を申し上げます。  傍聴の方々にも長時間にわたり御協力をいただき、まことにありがとうございました。重ねて厚く御礼を申し上げます。  これにて参議院国際平和協力等に関する特別委員会大阪地方公聴会を閉会いたします。    〔午後一時七分散会〕      ―――――・―――――    新潟公聴会速記録  平成四年五月二十八日(木)  場所 新潟市 ホテル新潟   派遣委員    団 長 理 事      藤井 孝男君        理 事      岡野  裕君        理 事      田村 秀昭君        理 事      佐藤 三吾君                 真島 一男君                 角田 義一君                 磯村  修君                 寺崎 昭久君    公述人        中 条 町 長  熊倉 信夫君        弁  護  士  大塚  勝君        前青山学院大学        教授       斎藤 鎮男君        宗教者平和の会        会員       大西しげ子君        連合新潟会長   滝沢  剛君        弁  護  士  高池 勝彦君     ―――――――――――――    〔午前九時三十分開会〕
  326. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) ただいまから参議院国際平和協力等に関する特別委員会新潟地方公聴会を開会いたします。  私は、本日の会議を主宰いたします国際平和協力等に関する特別委員会理事の藤井孝男でございます。よろしくお願いいたします。  まず、私ども一行のメンバーを御紹介いたします。  自由民主党所属で理事の岡野裕君でございます。  自由民主党所属で理事の田村秀昭君でございます。  日本社会党・護憲共同所属で理事の佐藤三吾君でございます。  自由民主党所属で委員の真島一男君でございます。  日本社会党・護憲共同所属で委員の角田義一君でございます。  連合参議院所属で委員の磯村修君でございます。  民社党・スポーツ・国民連合所属で委員の寺崎昭久君でございます。  次に、公述人の方々を御紹介申し上げます。  中条町長熊倉信夫君。  弁護士大塚勝君。  前青山学院大学教授斎藤鎮男君。  宗教者平和の会会員大西しげ子君。  連合新潟会長滝沢剛君。  弁護士高池勝彦君。  以上の六名の方々でございます。  さて、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案及び国際平和協力業務及び国際緊急援助業務実施等に関する法律案、以上三案につきましては、目下、本委員会で審査中でございますが、本委員会といたしましては三法案の重要性にかんがみ、国民の皆様から忌憚のない御意見を賜るために、本日、当新潟市及び大阪市において、同時に地方公聴会を開会することにいたした次第でございます。何とぞ特段の御協力をお願い申し上げます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  熊倉公述人、大塚公述人、斎藤公述人、大西公述人、滝沢公述人及び高池公述人におかれましては、御多忙中のところ、本日は貴重な時間を割いていただき、本委員会のために御出席賜りまして、まことにありがとうございます。派遣委員一同を代表いたしまして、心から厚く御礼を申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員質疑お答えをいただきたいと存じます。  なお、この会議におきましては、私どもに対しての質疑は御遠慮願うこととなっておりますので、御承知願います。  それから、傍聴の方々にも傍聴人心得をお守りいただきまして、会議の円滑な進行に御協力くださいますようお願いいたします。  それでは、これより公述人の方々から順次御意見を承ります。  まず、熊倉公述人にお願いいたします。熊倉公述人。
  327. 熊倉信夫

    ○公述人(熊倉信夫君) おはようございます。私は中条町長の熊倉信夫でございます。今回このような機会を与えていただきまして、まことに光栄に存じます。  国際情勢まことに厳しい折、国政に日夜精励されておられる皆様に、心から御苦労さまですと感謝申し上げます。  さて、時間に制約されている中での公述でありますので、早速意見を述べさせていただきます。私は法律には全く素人でありますので、日本国民の一人として感ずるままの心情を申し上げさせていただきます。  まず、冒頭申し上げておきたいことは、ただいま参議院審議されております国連平和維持活動協力法案外二件については賛成するものであります。以下、それに対する理由を述べさせていただきます。  その一つは、湾岸戦争以後の国際社会環境の変化にあります。特に日本は、湾岸戦争のときには莫大な金額の負担をしたにもかかわらず、諸外国からは必ずしも好意を持って迎えられず、冷ややかな目で見られているような感じがしてなりません。経済大国日本と言われていて世界経済に及ぼす影響の大きさとは裏復に、世界の平和を維持する大事な活動に日本の顔が見えないというところに問題点があるように思います。  日本は古来から島国であって、外敵の侵入を受けにくい有利性があり、この島さえ守っておれば平和が保たれると思われてきた節があるのでありますが、資源の乏しい日本が今日のように経済に恵まれた幸せな国を維持するためには、大部分の資源を諸外国から輸入し、市場もまた広く各国に協力を求めていかねばなりません。それには積極的に海外に出て交流を深めるとともに、金だけでなく、ともに汗を流す努力を怠っては諸外国の信用と理解は得られないと思います。  また、従来は米ソの冷戦構造の力の均衡による中に世界平和の維持がなされてきましたが、一昨年の東西ドイツの統一と昨年のソ連崩壊等により対立の対象が不透明となり、そのことにより世界の平和が促進されるかに思われたのでありますが、むしろ結果は逆で、緊張がほぐれたためか、民族、宗教等が複雑に絡み局地的に各所に紛争が起こる傾向にあることは残念でなりません。このことはそれなりに新しい世界秩序の構築の台頭だと見るべきでもありましょう。かつての米ソ主導型の構造より別の形のものを国連中心とした経験の中から平和な世界機構の生まれることを期待するものであります。  既に八十余の国々から五十万人の人々がそれぞれ持てる力でPKO活動に参加してきたと聞いておりますが、日本もおくればせながらその時期に来ていると思います。  かつての日本も、戦争に破れ惨たんたる焦土の中に、食べる物も住むところもなく、うつろな目で茫然自失した経験を持った人がたくさんおりました。そんなときに、かつての敵国であったアメリカより放出物資をいただき、飢えをしのぎ、医薬品等の配給を受けながら悪疫の流行を防ぎ、徐々に徐々に力をつけてきたところであります。さらには、荒廃した産業基盤の復興のための技術指導を受け、今はまさに対等以上とすら言われるほどの技術を持つに至ったとうとい経験を持った日本の国であります。  今、世界の各地で、特に日本PKO活動に参加するであろうカンボジアの長年にわたる動乱による疲れ切った人々に、少しでも日本の経験を生かし、経験した者のみぞ知る真の思いやりのある支援ができるならば、派遣される組織のいかんを問わず、きっと日本の近隣諸国を初め東南アジア諸国の人々も日本の心を理解して喜んでくれると思います。  その二は、自衛隊派遣するということについてであります。  巷間いろいろ取りざたされてはいますが、海外の未知のしかも悪条件のもとでの諸活動は、訓練を受けた組織でなければとても難しいことだと思います。荒れた戦場跡地等で資材を運び、幕舎を張り、水をつくり、長期にわたる平和維持活動には、手なれた技術と機材と、そして行動を起こす指揮系統が整備されていなければなりません。そうした機能を持っている組織が日本に他にあれば別でありますが、自衛隊以外には見当たりません。急いで別につくるとしても、PKO活動は常時あるわけではありませんから、仕上がったときに予定されたPKOの活動が終わっていたのでは何の役にも立ちません。当てもないのに別組織を常設することは、国費のむだ遣いになるとも思います。  よく海外派兵は禁じられていると聞かされますが、そもそもそれらの字句の使われているときの派兵とは、戦争に行くことを意味していたと思います。自衛隊は専守防衛であり、侵略のために兵を出すということに日本国民のだれ一人として賛成する人はいないと思います。だがしかし、自衛隊の創設された時代自衛隊が平和維持活動に海外に出るということを予測された方があったのでありましょうか。新憲法は恒久平和を希求してつくられたもので、その理想実現のためのとうとい活動を禁止しているものとは思われません。御苦労でも自衛隊が適任であるという意味でお願いするものであります。  だが、ここに国会の先生方にお願いがあります。さきのペルシャ湾の掃海に出動した海上自衛隊の出発や帰港のときのようなかわいそうなことはやめてほしいと思います。テレビで見る限り、あの厳しい環境の中で頑張ってきた人々を迎えているのは掃海艇をなじる人々の集団と旗ばかりでした。私は涙が出ました。国は、日本国を代表して苦しい仕事に従事した人々には温かい出迎えを堂々としてほしいと思います。  その一つは、世界の平和のために働く人が万が一死亡した場合、不確かでありますけれども、千四、五百万円の弔慰金らしきことが国会で討議されたやに記憶いたしております。名目はどうであってもいいのですが、現在、多少本人にも過失があると思われる交通事故の賠償金でも莫大なものであります。また、先日、グラウンドでラグビーを社会人とやった高校生の重度のけがに対する賠償金が七千万円と最高裁の判決があったと報道されていましたが、自衛隊員の犠牲者にはおよそ世間離れした低い基準のように思われます。世間並み以上に補償してやることがこの崇高な仕事にかける人々に対する国民の心であるべきだと思います。このことにより士気も上がると思いますし、そのプライドを傷つけることのないすばらしい働きが期待できると思います。  いま一つは、これは最も難しいことだと思いますが、ただいまも議会でPKO協力法案をいろいろと議論しているわけですから無理だということは十分承知しておりますが、もっと国民に対し、国を守るとか平和活動に参加するという、悪条件のもとに世界の平和ひいては日本の平和につながる崇高な業務につく人たちに感謝の気持ちを持つ常時啓発活動をお願いしたいと思います。国民の信頼と声援がどれだけ苦しい環境下に働く人々の励みとなり家族の安らぎとなるかわかりません。これから新しい世界の平和機構の構築のために喜んで参加し立派な仕事をしてもらうためには、それなりの後方支援体制がぜひ必要だと思います。  最後に、大変ぶしつけでありますが、先生方に希望を申し上げさせていただきとうございます。  御承知の先生もあられると思いますが、我が中条町には一九八八年五月にアメリカのサザン・イリノイ・ユニバーシティ新潟校が創設されました。ただいま四百五十名の学生がおります。既にカーボンディールの本校に留学している学生が二百名おり、本年の暮れには所定単位を修得した学生が数名卒業する見込みであります。  一九八九年の春、ジャパンバッシングの代表者のようにマスコミで言われておりますアメリカの民主党下院議員で、現在院内総務をやっておられると思われますが、ゲップハート氏がこの学校を訪ね、日米貿易摩擦のさなかでありましたが、日米貿易摩擦解消のすばらしいプロジェクトだと称賛していただきました。そして、その後に講演をしてもらいましたとき次のように言われました。新しい事業をやるときにはリスクが伴う、このリスクを小さくする努力が必要である。しかし、最も大事なことはそれを実行する勇気と決断である。アメリカではこれをフロンティア精神と言うというようなことを言われました。  また、本年一月にブッシュ大統領が来日されましたとき京都でお会いする機会をいただきましたが、そのときのメッセージの中に、地方自治体でアメリカの大学を設立してくれるということは草の根国際交流であり大変ありがたい、感謝していると言っていただきました。  また、現在アメリカの本校に留学している坂井君という学生が本年の一月に休みに来ているときに、彼に会い、君はアメリカに行って何がよかったと思うかねと聞いたところ、即座に、友だちがたくさんできたことです。アメリカ大学だからアメリカの友だちはもちろんですが、二万五千人の学生のうち約一〇%のアジア系の学生がおります。朝鮮、韓国、中国、フィリピン、東南アジアの諸国の人たちです。これから大いに役立つと思いますと目を輝かせておりました。片田舎にまかれた国際交流の種が今ようやく育ち始めております。  私は、PKO活動による世界貢献の大事なことはわかりますが、日常の国際交流の積み重ねの不足が諸外国からの不協和音となるように思われます。アジア諸国の一部に日本自衛隊の海外派兵に懸念があるというようにマスコミに報じられていましたが、日本の国内ですらいろいろと意見のある昨今ですから、そのことは当然だと思います。だがしかし、それから先が問題だと思います。我田引水になりますが、坂井君が言いましたように、広くアジアの友だちができてうれしいという言葉のように、日本国が常時積極的にアジア諸国に日本日本人を正しく理解してもらうような具体的ないろいろなプロジェクトを通じ国際理解を深める不断の努力を助長していただきたいと願うものであります。  まさにゲップハート下院院内総務の言われるように、このPKO協力法案の取り扱いは勇気と決断の時期であり、もしそれによって不都合のことができたならその都度知恵を出し合っていくことが大切だと思います。国連ですら生き物であると言われるように、時代の推移とともに変わりつつあると聞きます。世界平和の維持には緊急時の対応と平時啓発の対応とがあり、どちらも車の両輪のごとく大切なことだと私は思っております。  ささやかな実験を中条町がやっていることを申し添え、つたない私の公述とさせていただきます。  御清聴ありがとうございました。
  328. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  329. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) 次に、大塚公述人にお願いいたします。大塚公述人。
  330. 大塚勝

    ○公述人(大塚勝君) 御紹介をいただきました大塚勝でございます。  本日は、この公聴会に公述人として御選定をいただきましてまことにありがとうございました。派遣委員の先生方には、お忙しい中をこの遠い新潟まで御足労いただき、感謝いたしております。  私は、いわゆるこのPKO法案政府案に反対する立場から、一言意見を申し上げたいと思うのであります。  先般、参議院の方から法案を御送付いただきまして、検討をいたしてみました。大変わかりにくい法案でございます。問題点も私は挙げれば切りがないほどある法案ではないかと思います。まず指揮命令系統のこと、それから武器の保有、武器の使用、国会への報告のみで足ると。一番問題は自衛隊の海外派遣、この問題ではなかろうかと思うわけであります。  そこで私は、いろんな問題点はございますが、自衛隊の海外派遣という問題に限って私の意見を若干述べたい、こういうふうに考えるわけであります。  これが一番問題だと申しますのは、自衛隊の海外派遣の道をつくるということは恐らく国の基本的な政策の変更であろう、こういうふうに私は受けとめておるわけであります。私の考え方の立場としては、自衛隊は違憲の存在であるというふうに考えております。日本憲法の基本的な原理である平和主義に反する違憲の存在であるというふうに考えております。いろいろと議論になっておりますが、私は法律を勉強させてもらってから現在までその考えは毛頭変わりません。  したがって結論としては、海外派遣なぞということはまず考えられない、これは憲法考えられないという意味であります。これで私の意見の結論は出てしまいましたけれども、それを憲法の解釈から自衛隊の海外派遣ができるなどという理論はどこから一体来ているのか、私には到底理解できません。  私は法律屋でありますので、法律の解釈というものに対しては非常に厳格でありますし、勉強もしたつもりであります。法の解釈というものが時代の変遷とともに変わってくるものである、あるいは社会情勢変化とともに変わってくるものである、しかも幅のあるものであるということは私も承知をしております。しかし、法というものは、その立法の精神あるいはその法律の底に流れている理念というようなものは、いかなる社会情勢変化があろうと変わってはいけないものだろう、こういうふうに理解をしておるわけであります。したがいまして、立法の精神やあるいは理念、これを否定するような解釈は到底法の解釈ではございません。法の侵害であるというふうに私は考えております。  ここで改めて私が憲法平和主義などというものをるる申し述べるのは先生方に大変失礼に当たりますし、先生方も十分御理解をいただいていると思いますのでそういうことはやめますけれども憲法の前文及び九条から明らかなように、この平和主義の基本原理というものが政府によって徹底的に踏みにじられてきた、侵害をされてきた、しかもそれが公然とあからさまに無視され続けてきた、こういうふうな歴史的事実があるわけであります。  私は、自衛隊の海外派遣の問題でこの憲法問題を避けては通れないだろう、こういうふうに考えておるわけでありまして、甚だ残念ではありますが、いろいろな資料を見させていただく限りでは余り突っ込んだ議論がなされていないやに考えられます。先ほど申し上げましたように、私の結論は、意見としての結論は出ておりますけれども、私はここで改めて、政府によって、新しい憲法ができそれから四十数年間、憲法の解釈と称して憲法を侵害してきた歴史的な事実を少し検証してみたい、こう思うわけであります。  御承知のように、この憲法ができましたのが昭和二十一年であります。帝国議会における憲法改正案の審議の中を見ますと、大変おもしろいことなんですけれども、この九条の問題についてかなり突っ込んだ議論がなされておるわけであります。その中で、当時やはり自衛権に基づく軍備は持った方がいいではないかという議論もあったようであります。  御参考までに申し上げますと、衆議院で共産党の野坂参三さんが、戦争には正しい戦争と間違った戦争がある、侵略戦争は放棄すべきであるが、自衛の戦争は正しい戦争であるから放棄すべきじゃない、こういうことで当時の吉田首相に質問しておるわけなんです。ところが、吉田さんはその質問に対してこういうふうに答えております。  「戦争放棄ニ関スル憲法草案ノ条項ニ於キマシテ、国家正当防衛権ニ依ル戦争ハ正当ナリトセラルゝヤウデアルガ、私ハ斯クノ如キコトヲ認ムルコトガ有害デアルト思フノデアリマス」、「近年ノ戦争ハ多クハ国家防衛権ノ名ニ於テ行ハレタルコトハ顕著ナル事実デアリマス、故ニ正当防衛権ヲ認ムルコトガ偶々戦争ヲ誘発スル所以デアルト思フノデアリマス、」「御意見ノ如キハ」、要するに野坂さんの御意見のごときは、「有害無益ノ議論ト私ハ考ヘマス」、こう答えております。正論なんですね。また、これが当初の憲法を制定したときの政府の見解であったわけであります。  ところが、昭和二十五年に朝鮮動乱、朝鮮戦争が勃発をしたわけでありますが、当時日本に駐留しておりました在日米軍が朝鮮に出動をした。その穴を埋めるという意味であったんでありましょう、マッカーサーから七万五千人の警察予備隊の設置を求められる、いわゆる政令二百六十号と言われておりますが、そこで当時の吉田政府警察予備隊を設置するわけであります。  警察予備隊の任務は、当時の法律を見てみますとこういうふうになっております。「わが国の平和と秩序を維持し、公共の福祉を保障するのに必要な限度内で、国家地方警察及び自治体警察の警察力を補う」ものとされ、ここが問題なんですね。警察力を補うんだと、こういうことで七万五千人の警察予備隊をつくった。もちろん、憲法九条二項にいう戦力じゃないかということでいろいろな批判や意見が出されたわけでありますが、当時の政府の見解としては、警察予備隊はその目的の点あるいは装備の点、両方から見てもあくまでも警察を補充するものにすぎないんだと、したがって憲法九条二項にいう戦力には当たらない、こういう見解を出したわけであります。  当時の出発のころの装備というのは甚だ貧弱であったようでありますから、しかも目的が警察力を補うということでありますから、戦力に当たるかどうかかなり微妙な問題だろうと思いますけれども、さてそういうことで警察予備隊ができましてから順次装備を拡充をしてくるわけであります。  昭和二十六年にいわゆるサンフランシスコ平和条約の調印があって日本が独立をする、日米安保条約、旧条約が結ばれるわけですが、その点はさておきまして、昭和二十七年に警察予備隊保安隊に改編をされる。当時、陸上は保安隊、海上は警備隊ということで、陸上の保安隊が十一万、海上警備隊が七千五百名ということでありました。この保安隊の任務を見ますと、こういうことになっております。「わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する部隊」、保安庁法四条でありますけれども、こういう規定になっております。  これをごらんになっておわかりのように、警察予備隊と任務が全く違うんです。警察力を補うという目的はこの保安庁法からは消え去ってしまった。特別の必要がある場合に行動する部隊、特別の必要というのはどういう意味なのか私よくわかりませんが、恐らく戦闘行為を言っているのではないか、少なくとも警察とは別の行為を予定しているのではないかというふうに考えられるわけであります。  このような保安隊に改編をされてから非常に国会でも活発な議論になったわけでありまして、この保安隊というものが戦力に当たるかどうか、憲法九条二項による戦力に当たるかどうか、いわゆる戦力論争がなされたわけであります。  当時の内閣法制局の戦力に対する統一見解というのを出したわけでありますが、この統一見解を見ますと次のように言っております。憲法九条二項は、侵略の目的たると自衛の目的たるとを問わず戦力の保持を禁止していると。侵略であろうが自衛であろうが、目的を問わず戦力の保持は禁止しておりますと、こういう解釈。それから、右に言う戦力とは、ここが問題なんですが、右に言う戦力とは近代戦争遂行に役立つ程度の装備、編成を備えるものを言う、こう言っておるんですね。したがって、この保安隊、警備隊というものは近代戦争の遂行には役に立ちませんよと。近代戦争を遂行するほどの能力は持っておりません、したがって戦力には当たりませんよと、こういうふうな統一見解を出したわけであります。  近代戦争遂行能力というのがどの程度の能力なのか基準がまたありませんので、私には理解がちょっとできませんけれども、要するに今までの考え方をがらっと変えてきたということは明らかなことだろうと思うわけであります。そういう経過の中で、また徐々に徐々に軍備の拡張をしてきております。そして、問題になったのが昭和二十九年の日米相互防衛援助協定、いわゆるMSA協定の調印であります。この調印を受けまして自衛隊の創設というのが行われる。改編されるわけですね、保安隊が。  このMSA協定の第八条を見ますとこういう規定になっております。「日本政府は、」「自国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲でその人力、資源、施設及び一般的経済条件の許す限り自国の防衛力及び自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与し、自国の防衛能力の増強に必要となることがあるすべての合理的措置を」とることをアメリカに約束する、こういうことなんですね。これはどういうことかというと、近代戦争遂行能力をつけるように努力しますよアメリカさんと、こういう約束なんですよ。だから、今度は近代戦争遂行能力がなければ戦力でないなどとは絶対言えなくなってきた。それをつけることを約束している。そして、刻々と拡充強化してきたわけですね。  一九五四年にいわゆる防衛二法が成立をいたします。自衛隊法によりますと、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」、「陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、航空自衛隊は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする。」。ここにおいて完全な軍隊になってきました。完全な軍隊。今度は政府としても近代戦争遂行能力がなければ戦力に当たらないなどというまやかしの理屈は言えなくなってきたわけですね。  当時の鳩山内閣は今度は何と言ったかというと、自衛隊のような国土保全を任務とし、しかもそのために必要な限度において持つところの自衛力は憲法九条二項が保持を禁じている戦力に当たらないと。要するに国土保全を任務としているんだ、自衛を任務としているんだから自衛力を持つというのは当たり前のことだ、そんなことはもう禁じているわけじゃないんですよと、こういうふうな見解に変わってきたんですね。これはどうも講学上は最小必要能力と、こう言うんだそうでありますけれども、そういうことで……
  331. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) 大塚参考人、申しわけありませんが、もうそろそろおまとめいただければと思います。
  332. 大塚勝

    ○公述人(大塚勝君) はい、わかりました。どうも長くなって申しわけありません。  政府の今までの平和憲法に対するやり方というものは、私が今説明を申し上げましたように、何としてもまず軍隊をつくらなければならない。そのためには、戦力に当たらないとかあるいは近代戦争遂行能力がないとかいろんなことを言っておりますけれども、要するにこれは完全に平和主義の否定でありますし、憲法の侵害であると言わざるを得ないわけであります。  最後に一つ私申し上げますのは、昭和二十九年に防衛二法案が成立をしたときに参議院で、自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議というものがなされております。これは現在も廃止されたわけではありませんので有効だと思うわけでありますが、その中で、鶴見祐輔さんという当時の改進党所属の参議院議員の方でありますが、この提案についての趣旨説明をやっております。その趣旨説明を見ますと、こういうことをおっしゃっているんですね。  故に我が国のごとき憲法を有する国におきましては、これを厳格に具体的に一定しておく必要が痛切であると思うのであります。自衛とは、我が国が不当に侵略された場合に行う正当防衛行為であつて、それは我が国土を守るという具体的な場合に限るべきものであります。幸い我が国は島国でありますから、国土の意味は、誠に明瞭であります。故に我が国の場合には、自衛とは海外に出動しないということでなければなりません。如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、先般の太平洋戦争の経験で明白であります。 こういう趣旨説明をしておるわけでありまして、まことに私は正論であろうと思うわけであります。  時間が参りましたので、締めくくらせていただきたいと思うのであります。  私は、先ほども申し上げましたように、自衛隊の海外派遣には反対であります。国際貢献が叫ばれている時代でありますが、結論としては、人を出すも金を出すも物を出すも結構ですが、軍隊だけは出してもらいたくないと思います。非軍事的面での貢献に限るべきであるというふうに考えております。どうぞ先生方の慎重な審議をお願い申し上げまして、終わらせていただきます。  御清聴ありがとうございました。
  333. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  334. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) 次に、斎藤公述人にお願いいたします。斎藤公述人。
  335. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) 斎藤でございます。  私は、一九七三年から六年まで国連の現場でPKO審議にかかわっておりますし、この仕事をやめましてから大学においてPKOの問題を専門に勉強してまいりましたので、いささか体験がお役に立つかと思いますので、それを中心にお話し申し上げたいと思います。こういう機会を与えられた意義というものは、私にとっては非常に重要なものであることを申し上げて、お礼を先に申し上げます。  私は、新潟県の県民各位がPKOの問題を検討されるに当たってお役に立つようなことを拾い上げて、謙虚に私の考え方を申し上げて御参考に供したいと思っております。  三点申し上げますけれども、一番最初に私が申し上げたいことは、PKOというものの実体、PKOとは何だということであります。その問題についてやはり三点申し上げたいんです。  第一点は、PKOというものについて誤解があるんじゃないかと思うんです。PKOというのは、軍隊が行って戦闘に似たようなことをやるということを前提に考えておられる方がありますけれどもPKOはそうではなくて、軍隊が活動しますけれども、軍隊は戦争のためではなくて国連の代理者として活動するわけです。言いかえますと、戦争があって、その戦争が事務総長あるいは安保理事会の努力によっておさまった後、その停戦が再び壊れないようにという意味で軍隊が間に入るわけですね。それは戦いをするために間に入っていくのではなくて、国連という建物を持っていくかわりに軍隊、その軍隊も国連自身の軍隊ではなくて、各加盟国の希望するところから出てきた軍隊を国連軍と称してその真ん中に置く、これがPKOであるということであります。  それから第二点は、したがってPKOというのは国際問題であって国内問題ではございません。議論する人おのおの立場がございますので、その立場からいろいろお話をされると思いますけれども、国際問題である。しかも、PKOという組織については、一九八八年までに既に十三、それからそれ以降十三、もう実績を積んでいるわけですね。参加した国が八十カ国、五十万人の人間が参加しているわけです。したがって、そこには一つのルール、規則みたいなものができ上がっている。我々はPKO考えるときにはそれを前提に考えなきゃいけない。我々自身の都合、利益で考えてはいけないということであります。  それから第三点は、ただいまもお話がございましたけれども憲法との関係です。この問題はいろいろな面がありまして、憲法との関係もございますが、ここでは憲法の議論をするつもりは私はございません。  憲法について一つの重大なことを申し上げておきますが、日本憲法第九条というものは、第一項は戦争を放棄している。これはいわゆる日本の平和憲法と言われる理由ですね。ところが、第二項は戦力を放棄している。これは陸海空軍を持たないということで自衛隊云々の問題に関連してくるんですが、今申し上げたいのは、第一項も第二項も放棄したものは権利である、日本の権利であると。義務は放棄していない、国際義務は放棄していない。  日本国連加盟によって国際義務を負いますということを誓約しているわけです。憲法はこの誓約した国際義務を遂行することを禁じていません。また、国際義務を放棄することはできません。おまえもやれと言われたことを私はそんなことはやりませんと言うのだったら、初めから約束するのは間違いであって、義務は放棄できないという意味で国際義務は遂行しなければいけない。そのための手段というものは、あらゆる自分に可能な限りの手段を使ってと、これは日本が国際連合に加盟するときの文書に入っております。日本ができる限りの手段を使って義務を遂行します、こういうことを言っておりますので、憲法の問題をお考えのときにはそれをお含みおき願いたいと思います。  次に第二の問題は、私はPKOとは一体具体的に何だということを申し上げたいわけです。これも三点ございます。  まず第一に、PKOというのは戦争のときに行くのではなくて、事務総長ないしは安保理事会が一応戦闘をやめさせて、戦争という一つの行為は続いているにしても、具体的に撃ち合いを行ういわゆる戦闘というものを停止させるんです。それで、その戦闘の停止した間に本当の問題の解決を図るための交渉をやらせる。その間に再び戦闘が起こってしまってはその交渉ができなくなるから、そこに軍隊を入れて再発を防止するというのが主な目的であります。  それから第二は、これには既にたくさんの国が参加しておりまして、驚くことに、今いろいろ日本PKOに批判があるという報道も行われております中国も、今度のカンボジアPKOには参加したいと言ってそういうことになっております。また、日本と同じ立場のドイツも参加の意思を表明しております。しかも、そういう我々の近い国だけではなくて、貧乏国と称して我々が助けてあげているアフリカの諸国及び最近までソ連の重圧下にあえいでいた中東の二国がやっぱりこれに参加するということでありまして、今やPKO世界じゅうの問題、世界全部が理解している問題というように言っていいと思うんです。  第三に、それに加えて、今我々の前に存在する紛争というのはまさにアジアの紛争であり、カンボジア紛争なんですね。これは紛争がやっと片づき始めて、パリで会議をやった結果がまとまりまして、これはほうっておくとまた戻っちゃうんです。そこで、終わった戦闘を再発させないようにするためにできるだけ早く我々はPKOを送るということに直面しているわけでありまして、国連はそれを決定したわけです。  日本がもしPKOを出すということになれば、早速国連日本の参加を要請してくると思いますが、私がこの第三で申し上げたいのは、そういうように問題は極めて緊迫している、極めて緊急である。御議論は慎重にしていただきたいけれども、間に合わなくてはしようがない。しかも、アジアの問題として国連日本の活動に非常に期待しているということを申し上げておきます。  それから第三番目の問題は、既に衆議院、参議院においてこの問題については詳細審議をなさっておりますので詳しくは申し上げませんが、そのうちの主な問題について県民各位の御参考になることを申し上げておきたいと思います。  第一の問題は、先生方がこの問題を議論されているその目的は、従来日本PKOに参加しないという建前をとっておったのを転換してPKOに参加するという決心をされる問題なんですね。実際に出ていくか出ていかないかという問題の一歩手前の、日本PKOに対する姿勢を決める、失礼でございますけれども、そういう審議であると思います。私はそう思います。  それで、手続きから言いますと、PKOに実際に参加するかどうかということは、その必要が起こったときに、国連から要請があったときに初めて最終決定をすればいいんです。だから、ここで我々はPKOに参加することをこれからは考えてみようということを決心されれば、その要請を受けたときに、もし日本がその場合に例えば財政上困るとかいろいろの事情があってどうしても出せないというときは、日本は残念ながら今般は出せませんということを言って差し支えない。これは主権国家としてやってできることであって、今の国際連合はそれをやれといって強制するほどの力もないし、またそうなってしまえば国際連合じゃなくなっちゃうんです。したがって、今決めるのは姿勢を決めるんだという点が第一点であります。  それから第二点は、先ほどちょっと申し上げましたように、武力行使といいますか、憲法の議論のときに問題になりましたが、武力行使ということはPKOの目的とは関係ないんです。武器というものが関係があるとすれば、武力でなくて武器というものが関係があるとすればその人の生命が危険にさらされたときであって、いわゆる正当防衛であり、あるいは交通機関で交通事故が起こりそうになったときに走って逃げるというときに武器を使うということであって、武器は持っていきますけれども、その武器は戦争に役に立つような武器は持っていかないんです。  私はスウェーデンのこういう人たちを訓練しているところに行って武器も見せてもらいましたけれども、全くそれはピストルに類するものを持っていくだけでありまして、重機関銃とか大砲とかそういうものは持っていかない。武器にしても正当防衛のために必要な武器ということであります。もちろんその武器で自己を防衛することは許されています。そこだけが武器を用いてもいいということであって、あとはむしろ武力を使ってはいけない。それが国連の建前であります。それがPKOであります。武力は使えない。  そこで、実は国連考え方はもう少し緩くて、しかしPKOを出したところが相手が停戦を破って出てくるというときに、どうしてもこれはとめなきゃいけないというときには正当防衛と同じだから使ってもいいということになっているんですが、今度の法律は、先生方の御努力によって、それは日本はできませんといって国連当局にお断りをするということになっておるわけです。ですから、普通のPKO考え方よりもなお一歩引いているということを申し上げておきたいと思います。
  336. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) 恐れ入ります。斎藤公述人、そろそろ時間でございますので、おまとめいただければと思います、結論の方を。
  337. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) わかりました。  それでは、少し飛ばしまして一番大事なところを申し上げますが、このPKOというものは、組織された、しかも訓練を受けた者が必要なんです。自衛隊の問題が起こるのはそれでありまして、足手まといになるような者が行っても意味がない。これから決めるという場合にはしっかりとした組織がちゃんとした訓練を受けた者を送るということでありまして、しかも国連PKO日本に要求するときには軍隊を送ってくれと言ってくるわけです。軍隊を送ってくれということは、日本では軍隊と称するのは自衛隊だけなんです。だから、言いかえますと、軍隊を送れすなわち自衛隊を送れということであって、たまたま最も組織化されたものは自衛隊であるということで、自衛隊で送ることがむしろ必要になっているということであります。  以上、私の申し上げたいことを大分申し上げましたが、最後に、私が国連におりますときに、日本は経済大国だからお金だけ出してくれ、ほかの政治問題等は私たちがやりますというように第三世界人たちが言うんです。そのときに私は、ああ日本はお金を出す国と思われているんだと思いましたが、今日それではいけないという声が高くなって、金だけではなくて人、物をともに協力のために使うという段階になったことを喜びとすると同時に、ぜひこの法案の通過に御努力いただきたいと思います。  以上をもって私の公述を終わります。
  338. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  339. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) 次に、大西公述人にお願いいたします。大西公述人。
  340. 大西しげ子

    ○公述人(大西しげ子君) 大西でございます。きょうは公述の機会を与えられまして感謝申し上げます。  私は、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案、以下PKO法案と略します、に反対する立場で話させていただきます。私は普通の主婦でございますので、主婦の立場でお話しさせていただきます。  まず結論を申し上げます。  私は、現在のPKO法案には反対ですが、日本国際貢献をすること、あるいは国連の平和維持活動に参加すること自体に異議を唱えるものではなく、むしろ国際貢献ということをもっと幅広くとらえ、二十一世紀に起こり得るであろうさまざまな問題をも考え合わせ、平和的に、しかもこれまで以上に積極的に貢献していくべきであると思っております。    〔団長退席、理事岡野裕君着席〕  では、なぜこのPKO法案に反対であるのか、それについて述べたいと思います。  私は、憲法九条により、自衛隊の存在自体違憲ととらえているのですが、自衛隊の海外派遣を認めることは、国際紛争を解決する手段としての武力行使を放棄した憲法九条に二重に違反することになると考えています。また、一歩譲って仮に自衛隊を認めるとしても、自衛隊の海外派遣は専守防衛という従来の政府自衛隊解釈と矛盾し、さらには自衛隊の海外出動を禁じた一九五四年の国会決議をも大きく踏み越えているわけでございます。日本の進路を左右するこのような非常に重大な法案を、その都度御都合主義的な憲法解釈によって成立させようとしていることに私は深い憂慮を禁じ得ません。私は、憲法九条に従って、自衛隊とは別の新しい組織で非軍事分野での積極的活動を行うべきであると思います。  ここで、私がなぜこのような立場に至ったかについてお話ししてみたいと思います。  私は、新生日本の平和憲法とほぼ時を同じくして生まれ、平和憲法とともに育ってまいりました。子供だったころには、白衣姿の傷痍軍人がむしろを敷いて、アコーディオンを弾き歌を歌って物ごいをする姿や、戦争中離れ離れになっていた家族の消息を求める放送が聞こえてくるなど、戦争の悲しみを目にし耳にする機会が多くありました。父はよく戦争体験を話してくれたり、二人の兄弟を亡くした母はその思い出を語ってくれました。    〔理事岡野裕君退席、団長着席〕 父の戦争はいけないという言葉を聞きながら、私は平和な世に生まれて本当によかったと思っていたものでした。中学のころ、熱心な社会科の先生のもとで憲法の大切さを学び、自衛隊は合憲か違憲かをクラスでディスカッションしたりもしました。しかし、何といっても私が心に深く平和の大切さと日本人の戦争責任を強く感じたのは、長じて後、日本の朝鮮、中国への侵略の事実と在日朝鮮人の方々の苦難の歴史を知るようになってからでした。  あるとき、私は徹底的に自分が打ち砕かれる体験をしたのです。そのことについて語らせていただきます。  私は、在日朝鮮人の方と親しくなり、朝鮮人学校に招かれました。ちょうど中学生の外国語の授業の時間でした。外国語といいましても、朝鮮人学校ですから日本語の授業です。フランスの作家ドーデの「さいごの授業」というのをやっていました。この話はフランスのアルザス地方が普仏戦争に負けドイツ領になり、あすからはフランス語ではなくドイツ語を使わねばならないという日の最後のフランス語の授業を書いた短編です。  私は、知っている話でしたので楽しく一緒に授業を受けていたのですが、最後に朝鮮人学校の先生が、「これは私達民族の物語でもあります。明日から朝鮮語ではなく日本語を話しなさいと言われたのですから。」と静かに語られたとき、私はショックで顔を上げられなくなってしまいました。そうだったのか、私たちの国はあなた方の言葉を奪い、文化を奪い、生活を奪い、そして最後には命さえ奪ったのだと、その思いに涙が流れ落ちるのをどうすることもできませんでした。足を踏まれた人の痛みは踏まれた人にしかわからないように、日本人にはどうしても見えてこなかった、いや、見ようとしなかったいやしがたい悲しみの世界が広がっていたこと、そして、そういう世界を強制してきたのが私の祖国日本だったことに初めて気がつかされたのでした。  このとき以来、自分自身の生き方として、踏みにじられた人々の視点に少しでも立ち続けたいと思うようになったのです。  そのような一つ一つの体験や出会いが、私の中に平和の大切さ、戦争の愚かさを刻み込み、母親となってからは特に積極的に平和を子供たちに語りかけていく運動や、日本戦争責任を考えていく市民運動にかかわるようになったのでした。  私は、私たちが憲法を守るのは、日本人のためだけではなく世界じゅうの平和を愛する人々、とりわけ戦争で多くの犠牲を強いられたアジアの人々のためにこそ守らねばならないと言いたいと思います。なぜなら、日本憲法の前文と九条の平和主義は、日本の軍国主義の犠牲になったアジアの人々への深い謝罪の心が込められていると思うからです。私たちは、戦争犠牲者に深く頭を垂れ、一切の戦争を放棄し、非暴力で世界平和をつくり出していくことを国の名誉にかけて誓ったのです。私は、ここに輝くばかりの新生日本の平和への意気込みを感ずるのです。  それが、戦後四十七年の今どうでしょうか。国連協力という名のもとに自衛隊を何とか海外に出し、九条を空洞化しようとしているこの現実、この法案の行方をアジアの人々はかたずをのんで見守っているのではないでしょうか。  最近、私は戦後補償に関する記事を読みました。そこに韓国人の意識調査が掲載されていました。それによりますと、日本人に好感を持っていないもの六七・四%、日本という言葉を聞いただけで気分が悪いもの二六・一%。このような反感が根底にあるからこそ、宮澤首相の訪韓のときに日の丸や天皇の人形が焼かれるということが起きるわけです。  また、私どもの運動で毎年アジアの人々を招いて戦争体験を聞く会を開いているのですが、少し御紹介しますと、原爆の後遺症に悩まされながらも十分な医療を受けられない在韓被爆者の方々、家族十一人を殺され一人生き残ったマレーシアの方、拷問に次ぐ拷問の傷跡を見せてくださったフィリピンの方などから日本の犯したいやしがたい傷跡について話を伺いました。  また、従軍慰安婦や朝鮮人強制連行、サハリン残留韓国・朝鮮人問題など、戦争の傷を負って生きている人々がたくさんおられるのです。そして、このような人々に対して、いまだ明確な反省も十分な償いもなされていないのが実情でございます。まず、戦後補償をきちんとすることが先であり、アジアの人々から危険視される自衛隊派遣は避けるべきだと思います。  今、問題になっているカンボジア支援も、かつて日本が侵略した国であったことを考慮し、生活再建の支援に別組織で最大限の活動を行うことが大切ではないかと思います。国際貢献PKO参加やODAだけではないはずです。非政府組織、NGOにより、本当にアジア、アフリカの途上国でその国の人とともに生活をし、医療、教育、公衆衛生、農業・土木技術などの指導に出ている人々はたくさんおられます。私は、この方々こそ本当の意味国際貢献をしているのではないかと思っているのです。  ユネスコ憲章の中に、「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」という有名な言葉があります。私は、平和というものは軍隊では絶対につくり出すことができないものだと思っております。  先ほども述べましたアジアの人々の反日感情を和らげていくためには、本当に心と心の草の根の交流が大切だと思うのです。NGOの人々の身分保障など余りなされていないようですので、もっと考えられ、多くの人々が安心して出ていけるようにするのも一つの立派な国際貢献だと思いますし、さらに日本国内でもアジア、アフリカからの留学生を受け入れ、農業指導、医学研修など地道に行っている団体もございます。国としてもっとたくさんの留学生を受け入れることも必要でありましょう。  また、日本のODAが世界第一位の援助金を出しながら、被援助国の一握りの人を富ませるだけで、大部分の市民に感謝されるどころか、逆に反感を買っているという現実もあります。NGOに学んで、心がこもり血の通った援助をするなら、途上国の多くの人々の生活の向上に役立つことでしょうし、世界からも大きく認められる貢献となるでしょう。  しかし、最大の貢献策は、何といっても軍縮であると思います。現在、さまざまな地域紛争はあっても、東西の冷戦時代は終わりました。世界軍縮の方向に動き始めました。これからは平和をベースとした地球規模の課題に取り組める時代を迎えたわけです。  先日読んだ本の中に、次のように書かれていました。今、世界で十分な食糧を食べられない人が八億人、飲料水確保の困難な人一億六千万人、途上国の五歳までの子供の死亡二千四百万人、難民千八百万人、森林破壊一年に約千万ヘクタール。しかしまた、こうも書いてありました。一兆ドルに上る世界の軍事費の三週間分を振り向けるだけで途上国のすべての子供が教育を受けられ、五百万の子供を感染症による死から救うことができる。  世界第二位とも三位とも言われる軍事大国日本のなすべき仕事は、まず自衛隊PKOに参加させることではなく、軍縮をし、その費用を世界の人々に還元することではないでしょうか。また、経済優先を改め、東南アジアへの公害輸出や森林破壊をとめることも大きな国際貢献と言えないでしょうか。  ニューヨークの国連本部前に、青年が剣をすきに打ちかえている銅像が立っています。そこには聖書の言葉が刻まれています。「彼らはその剣を打ちかえて鋤とし、その槍を打ちかえて鎌とし、国は国に向かって剣を上げず、彼らはもはや戦いのことを学ばない。」。これは、今から約二千五百年前のイスラエルの預言者イザヤの言葉でございます。これが、国連というより世界の目指すべき姿であり、日本憲法の理念でもあるのです。その世界的な使命のためにこそ日本の平和憲法はあるのではないでしょうか。  最後に、三人の子供を持つ母親として申し上げたいことは、真の国際貢献のために、教育の現場で戦争の反省を深く踏まえた平和教育を行っていただきたいということでございます。日本が過去にどのようなことをして現在あるのかという歴史認識なくして、すなわち過去の歴史への反省なくして真の国際人を育てることはできません。世界じゅうの人々とともに二十一世紀のさまざまな問題を解決していくには、この歴史認識なくしてはできないことを申し上げて、お話を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  341. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  342. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) 次に、滝沢公述人にお願いいたします。滝沢公述人。
  343. 滝沢剛

    ○公述人(滝沢剛君) 御紹介いただきました連合新潟の滝沢でございます。  私は一地方の労働組合の責任者でございますので、国会でどういう審議がされているのかつぶさには残念ながらわかりません。また、参議院事務局からいただいた法案の原案も二日前に届いたということでございますので、中身を正確に読み切っているかどうかも非常に不安でございます。したがって、かなりわからないということが前提になりながら意見陳述をするわけでありますけれども、ぜひその点を前提に四点にわたって見解を申し上げさせていただくということでお受けとめいただきたいというふうに思います。  まず一点目は、現在審議されている法案の取り扱いについてでございます。  PKO法案考えるときに、私は今の国際情勢の中あるいは世界情勢の中における日本の位置づけ、これをどう見るのかというところも大きな切り口としてポイントになるのではないかというふうに思います。そういう意味では、今国際的には軍縮の方向にありますし、あるいは東西冷戦構造がなくなっていく、そういう中で軍縮の方向に流れている。これはもうどなたも否定をされないというふうに思います。また、日本に対する評価も、いろいろあるんでしょうけれども、一口で言えば経済大国だとかあるいは貿易黒字国だとかそういう金持ちあるいは豊かな国、こういうイメージが非常に強く国際的には言われているんではないかというふうに思います。  これらを踏まえて考えますと、世界の環境問題やあるいは平和の問題やさらには飢餓の問題、こういうものに日本としても積極的に貢献をしていく、このことはどなたも否定をされないというふうに思います。この場合に、やはり人、物、金、この三つは切り離すことができないそういうものであろうというふうに私は基本的には思います。特に、他国に言われたから日本がそれに貢献策を後から出す。例えば湾岸戦争で百億ドルに上る金を出しながら余り評価をされないというふうに言われるのも、アメリカ等から言われてから出すそういう後追い的な、国際的には後ろ向きに映るようなそういう対応が今までにあったからこそ、そういう評価につながっていくんではないかというふうに思います。  したがって、私は、今回のPKO法案国会審議に当たってはやはり原則的には今国会で成立をさせる、そういうことを前提に御討議をいただきたい。これが一点目でございます。  二点目は国会運営についてでございます。  これもマスコミ等の報道しか私どもわかりませんから正確かどうかはあれですけれども、私はやはり国会における審議というのは与野党の積極的な話し合いによって決めるべきものだというふうに思います。したがって、自民党のどなたかが言われたように、例えば強行採決とかあるいは見せしめ解散を行うとかそういう言動を弄して国会審議を混乱させる、このことは私は避けるべきだというふうに思います。特に一国の外相が不見識といえば不見識なこういう発言をされるのは、国民の私たちも、選んだ立場の私たちも非常に恥ずかしい思いをするわけですから、そういう点はぜひ、きょうおられませんので言わせていただきますけれども、お受けとめいただきたい。  また、社会党の先生方がおられますので申し上げますけれども、物理的抵抗をやるということを言われるのも私は余りいただけないというふうに思うんです。片や強行採決、片や物理的抵抗、この二つが両対極にあるとすれば、国会審議は常に話し合い、論議の場ではなくて、対決の場にしか国民には映りません。ぜひそういう意味では私は良識のある話し合いを皆さんにお願いしておきたい。  特に、参議院選挙がございますから今回の場合国会の会期延長は難しいのかもしれません。しかし、二日でも三日でも会期延長をするぐらいのそういう前向きな覚悟が政府自民党の方にないのかどうなのか。私は、持っていただいた上でやはり話し合いの上で最終結論を導き出す、このことがよりベターなのではないかというふうに考えている点が二点目でございます。  三点目は、PKO法案の内容について申し上げたいと思います。  これはもうかなり論議をされているのでありましょうから、私が一々先生方にその内容の説明をする必要はないと思います。六点にわたって私はこの法案に内容明記をお願いしたい。  その一つは、当然のこととして日本国の平和憲法は守る。このことを明示するということが一つでございます。  二つは、国連中心主義を貫く。このこともぜひ明記をお願いしたいと思います。ここで国連中心主義といいますと、今ほど申しましたように東西対決あるいは東西冷戦構造がなくなった以降の現状を私は少し心配しています。つまり、今国連の中でイニシアチブを握っているのはどうひいき目に見てもアメリカしかいません。他の国はそれに追従をする。残念ながら日本もそういう立場に見られる。現実にそうなっているんでしょうけれども、そういうふうに見えて仕方ありません。ですから、国連が国際的なすべての問題にその中心になり得る、そういうふうな本当の意味での国連の機能を高める。そういう点についてもぜひ政府皆さんあるいは日本の政界を預かる皆さんからも御努力をいただきたい。このことを前提として申し上げて、私は国連中心主義を貫くというのが二点目でございます。  三点目は、今ほども大勢の方が言われましたから私は中身的に言いませんけれども、やはり非軍事、民生一般に限定をする。したがって、戦闘行動のようなところに対する派遣というのは行わない。このことをやはり明確にしておくべきだろうと思います。  四つ目は、PKFについては、やはり凍結をする。五つ目は、一定期間後の見直し条項を明記する。六つ目は、派遣に当たっては事前に国会承認を得る。  この六つをぜひ入れていただいた上で私はこの法案をまとめていただきたいというふうに思うわけであります。  四点目は、自衛隊派遣についてでございます。  私は、正直申しまして今の自衛隊は大きくなり過ぎたというふうに思います。また、世界軍縮流れになっているときにはやはり日本の場合にも自衛隊を縮小していく、そういう方向が私はあってしかるべきであろうというふうには考えます。そして、大きくなり過ぎたがゆえに、先ほどどなたかからも言われましたけれども、アジア諸国から見て、意図としては派兵ではないんですけれども派兵というふうに受けとめられ第二次大戦の苦い経験を危惧をされる、そういうふうになっているんではないかというふうに思います。  私は、そういう意味で基本的にといいますか、できれば自衛隊派遣はやらない方がいいというふうに思います。やらないでいいのならそれにこしたことはない。アジアの皆さんの危惧に対しても、それによってこたえることができるならいいと思うんですけれども、しかし業務内容を考えたときに私はそういう思考をとることが非常に難しい。非軍事、民生というふうに限定をしてみても、輸送や医療やあるいは通信についてはいいのかもしれませんけれども、例えば軍事施設の撤去とか停戦監視活動とかそういうものが加わってきたときに果たして民間人だけで対処可能なのかどうかというと、やはり私は一定の危惧を持たざるを得ません。  そういう意味で、ベターではないにしても現状のPKO法案を、仮にPKOという国際協力をするとすれば私は自衛隊派遣もやむを得ない、こういうふうに考えているところです。  ただ、自衛隊の併任というのは私は賛成ができません。やはり別組織にして休職・出向、こういう形をとっていただければ幸いだというふうに私の意見として申し上げておきたいというふうに思います。  PKO法案にかかわる部分については以上なんですが、せっかくの機会でございますので二点にわたって私の要望をお聞きいただきたいというふうに思います。  その一つは、冒頭にも言いましたように、地方にいるとこれだけ重要な法案の中身の審議が残念ながらよく見えません。これは何も先生方の責任というふうに言いませんけれども、やはりマスコミでしか知ることができません。  私は、こういう非常に大事な、そういう重要法案のときには国民が見てわかるような何か手法がないのだろうか。例えば、これは手法としてとれるのかどうかわかりませんけれども、大新聞各党の主張を意見広告的に例えば出してもらうとか、これは可能かどうか私もわかりません、かなりラフな言い方をしていますけれども、そういうふうなものをぜひ私としては考えていただきたい。そして、今回のように人、物、金をこういうふうにやるんだというトータルなものをぜひ国民にわかりやすいように示す手だてを御検討いただければありがたいというのが一つ目です。  二つ目は、私は選挙によって選ばれた国会議員の先生方に不信感を持っているということでは決してございません。もう皆さん立派な方でございますし、選挙が民主主義の基本的なルールであることも私は存じています。  そういうことを前提にしながらお願いをしておきたいのは、今回のように国論を二分する論議、例えばマスコミ等で調査をしますと、自衛隊は認めている、しかし海外派遣は反対、こういうのが調査結果として出てくるわけです。こういう重要な法案、例が適切かどうかわかりませんけれども自衛隊は合憲か違憲かということを国民に問うとか、あるいは非核三原則を変えるのに是か非かとか、こんなことは余りないんでしょうけれども、例えばそのように国の基本政策を変えるような場合に、私は、法律的にどうかはよくわかりませんけれども国民投票的なそういうことが考えられないのかどうか御検討いただきたいと思うんです。  確かに解散、総選挙も国民に信を問うという手法としては当然あり得ることですし、今までもされてきました。しかし、どうしてもこの解散、総選挙は、現状で見ると残念ながら各政党の思惑が表面に出ます。特に、政権党の皆さんの判断が当然出るわけですから、そういう点では国民の目から見ますと党利党略が優先されるようにどうしても見えがちです。そうでないというふうに言われるのかもしれませんけれども、私どもから見ているとそう見えます。  ですから、そういう意味では、選挙をやる場合にトータルでかかる金よりも、国民投票をやるとしても金からいったら非常に少ない額で終わるんだろうというふうに思います。同じ投票をするならそういうことが、法律的に私はどうかわかりませんけれども考えられないのかどうか。また、もっともこればかりやっていたらこれは大変なことになるわけでありますので、そういう点では信を問うた結果を踏まえて国会法律案をつくっていただくというふうなことが可能かどうか、ぜひ御検討をいただきたい。  最後の二点は私のお願いでございますけれども、以上申し上げまして、私の発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  344. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  345. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) 次に、高池公述人にお願いいたします。高池公述人。
  346. 高池勝彦

    ○公述人(高池勝彦君) 高池です。  公述の機会を与えられましたので、私の意見を申し上げて御参考にしていただきたいと思います。  湾岸戦争後、自衛隊から派遣された掃海部隊の落合司令官のインタビューの記事を読んだことがありますが、そこに、向こうの港に着いたら湾岸戦争において協力した国々の国旗を印刷したTシャツが売られていた、それを買ったところ日の丸が入っていなかった、任務を終了して帰るころ同じように売っていたんで買ってみたら今度は入っていたというような記事を読んだことがあります。  また、これは有名な話ですけれども、やはり湾岸戦争後、クウェート政府が、ニューヨーク・タイムズでしたかワシントン・ポストでしたか、クウェート解放に協力してくれた諸国に感謝する広告を載せた、その中に日本の名前は入っていなかったということを読んだことがあります。クウェート政府に指摘しますと不注意であったというようなことだったんですが、御存じのとおり、我が国は湾岸戦争において世界で二番目か三番目ぐらいに大きな戦費を支出して、にもかかわらず諸外国からも、またクウェートからさえも感謝されてはいなかったんではないかというようなおそれがあったわけです。  現在、カンボジアの和平をめぐって我が国の対応が国際的に問題となっております。日本人である明石国連事務次長がカンボジア問題の代表として活躍され、シアヌーク殿下やその他の関係当事者が重ねて日本の参加を要請しているというようなことを新聞記事で読んだことがあります。  私は、アメリカに留学して、その後アメリカ法律事務所で働いていた経験があった関係上、アメリカ人や当時知り合ったアメリカ以外の外国の友人が大勢いますけれども、湾岸戦争中に私がそういう外国人の友人たちと話したところ、日本は何かしなければまずいよというようなことを全員が言っておりました。たまたまその全員が言っただけで、私の友人全員が日本は何かしろというふうに言っていたわけではないとは思いますけれども、少なくとも大多数がそういう意見でした。もちろん、日本が膨大な戦費を出しているということを前提にしてそういう意見だったんです。  現在、アメリカにおける反日感情や、世論調査などをしますと、日本が信頼できるかというと、日本は信頼できないあるいはずる賢いというような感情を持つ、印象を持つというような世論調査の結果が出ていますが、これもやはり日本国際貢献に対する態度が関係しているんではないかと私は思います。  もちろん、我が国が国際社会の平和維持に協力、貢献すべきであるという原則についてはどなたも異論はないと思います。ただ、貢献というと、ややもすると我が国が一方的に何か恩恵を与えるかのような印象が少しはありますけれども、これは私は正しくはないと思います。国際平和の維持発展というのは我が国益にも合致するものでありますし、国際平和の維持は他人のためばかりではなくて自分のためでもあることをはっきり自覚すべきです。したがって、我が国が国際平和の維持のために国内法や国内事情を理由として貢献しなかったり、あるいは足りなかった場合には当然国際非難を浴びることになりますし、ひいては我が国の安全が脅かされる場合もないとは言えないと思います。感謝されなくても別に構わない、日本は商人国家だから軽べつされてもいいというわけにはいかないと思います。  現在、国際平和の維持のために、関連して当面問題となっているのはPKOの問題であります。PKOといいますと、それに大きな役割を果たすのは自衛隊の問題でありますが、この点では私は自衛隊は合憲であるということをはっきり確認する必要があると思います。先ほどから自衛隊は違憲だという意見もありましたが、私は弁護士なんですけれども憲法九条は自衛隊を認めている、自衛権あるいは自衛のための軍備、さらにそのための交戦権を認めているというふうに思います。  憲法九条は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、」、「武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と。この「国際紛争」というのは日本が当事国の一員である国際紛争でありまして、国連対他の国々の争いというものは含まれない。つまり、国連の警察行動は国際紛争ではないわけであります。  また、この憲法九条はパリ不戦条約の精神を踏襲しているわけで、その条約でも認められているように、自衛のための戦争、すなわち自衛権を否定しているものではありません。さらに、自衛権の中には国連憲章五十一条で認められている個別的自衛権と集団的自衛権がやはり日本憲法でもこれは認められているということが前提となります。個別的自衛権は外国からの武力攻撃に対して自国を防衛する権利、集団的自衛権は自国に対する直接攻撃がなくても武力を受けた国家を支援してこれを防衛する権利と定義されておりますが、いずれも国際法上自衛権であると認められております。  政府見解は、自衛権の行使は、日本憲法によれば、個別的自衛権に限られており、集団的自衛権の行使は憲法上認められないというものであるやに聞いておりますけれども、その解釈には私は合理性が認められないと思います。  まず、自衛権の解釈について、国連憲章上の定義とは別に我が国独自の解釈をする理由が見当たらない。やはりこれは国際的な常識に従うべきであると思います。  次に、我が国にももちろん集団的自衛権はあるけれども、その行使は憲法上できないというような解釈もありますが、これも不合理であると思います。行使が認められない権利というのは、権利が存在しないのと同じであります。憲法がみずからの国を不完全な国家と自分で認めるというようなことは到底考えられません。  それから、自衛権の行使に関しても、憲法上制限をしているというようなことも考えられません。例えば、正当防衛の方法について法律上禁止するというようなことは極めて不合理であります。もちろん、その自衛権の範囲を自衛権の行使という名目のもとに逸脱すれば、これは自衛権の範囲を超えることになりますから認められないわけです。それは比例適合性の原則とかあるいはつり合いの原則といった国際法の解釈によって行われるべきであると思います。  以上のとおり、私は、自衛隊憲法違反ではない、合憲の存在でありますけれども、先ほどからの他の先生方のお話を聞いておりましても違憲のお考えの方もおられますので、このように自衛隊の存在自体が国論を分けて論ぜられている我が国の不幸な現状を打破するためには、将来明確な形で自衛隊憲法において規定しておく必要があると思います。  さらに、自衛隊の海外派遣を論ずる場合には、自衛隊員の士気を考慮して明確にする必要があると思います。自衛隊は危険を冒して我が国の防衛の任務に当たっており、我が国の軍事力による防衛そのものが憲法違反かどうか論ぜられているような憲法では、我が国の防衛にとって有害であると思います。改憲というようなことは時間をかけて議論するとしまして、例えば関嘉彦都立大学名誉教授がかねてから、過渡的な措置として国会自衛隊の合憲決議、議院の決議になるんでしょうけれども、すべきことを提案されていますが、私もこれには賛成です。  それから、我が国の憲法は国際協調主義の上に立っておりますから、憲法前文に、「日本国民は、」「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と書いてあります。この諸国というのは、平和を愛さない諸国は入らないわけです。平和を愛する諸国に信頼してやったと。国連がその憲章どおり機能している限り、国連決議に従っている諸国民の公正と信義に信頼して、我らの安全と生存を保持しようと決意したわけであります。  ところが、我が国は、他の国とは異なって、すきがあればすぐに他国を侵略してしまう傾向を持っているとか、自衛隊は油断すれば他の国の軍隊以上に政治に介入して軍国主義に持っていってしまうというような議論が私は多いように思われます。これは、健全なシビリアンコントロールの確立には寄与しないばかりではなく、逆の意味で極めて危険だと思います。  我が国には自衛隊国会あるいは政治に対する極端な不信感があるように見受けられます。極端な信頼感は、場合によってはナチスの政治を招くような結果になるかもしれません。民主主義というのは人間に対するある程度の不信感を前提にしているわけでありますから、当然その全面的な信頼ということはあり得ませんけれども、今度は一方、極端な不信感というのは、やはり民主主義を機能させることができないと思います。例えば、自衛隊を一人でも派遣するとアリの一穴ということで軍国主義になってしまうというような議論は、私としてはどうしても理解できません。  自衛隊の海外派遣については、今回のPKOが問題となりますけれどもPKOに関しては、以上の前提から必要に応じて自衛隊派遣すべきであると私は思っております。極力、自衛隊を除外し、やむを得ない場合にのみ派遣するというような限定をつけるべきではないと思います。もちろん、常に自衛隊派遣しろとかあるいは常に自衛隊を優先して派遣しろという意味ではありません。合理的に考え自衛隊の組織力が必要な場合に派遣するというふうに考えていくべきであると思います。  また、PKO、平和維持活動についてはPKFとかあるいは監視活動とかいろいろなものがありますが、監視活動については自衛隊派遣する必要のない場合も少なくないでしょうけれども、PKFについては普通は自衛隊以外にはその任に当たるものは考えられない、こう思います。自衛隊以外のものに、例えば警察やその他のものに、あるいは別組織にして派遣すればいいではないかという意見も先ほどからありましたけれども、まず、なぜ自衛隊を除外しなければならないのか、そういう合理的な理由が私は欠けると思います。自衛隊は危険で、派遣すると軍国主義になるという議論はさておいて、その議論は私は誤っていると思いますので、そういう意見が認められないとすれば、なぜ自衛隊を除外しなければならないのか、合理的な理由がないと思います。  それから、自衛隊は合憲であってもやはり危険な存在だ、だからなるべく海外には出さない方がいいと。これもやはり合理的ではないと思います。組織の構成や訓練や実施、いろんな点から見て自衛隊がふさわしいと思ったら派遣すればいいし、その他の事情からいってその任務にふさわしくない場合には派遣しないというような態度が望ましいと思います。  そういう意味で、よく言われていることですけれどもPKOというのは、軍隊の仕事ではないけれども軍隊でなくてはできない仕事であるというふうに故ハマーショルド事務総長が言ったそうですけれども、私もそのとおりだと思います。  ただし、今回は間に合わないかもしれませんけれども自衛隊を平和維持活動に参加させるために自衛隊法を改正して、総則第三条、自衛隊の任務あるいは自衛隊の行動といったところに平和維持活動に関する任務を追加すべきであると思います。それから、自衛隊法八十三条に災害派遣の条文がありますが、その次に平和維持活動といったような条文を設けるべきではないかと思います。  先ほどから申し上げましたように、平和維持活動参加の事態が発生したときに現実に参加させるかどうかは、これはまさに政治の問題でありまして、常に私は日本は参加すべきであるというふうに思っているわけではありません。その参加の場所、状況、関係国の要請、その他の条件を勘案して当然決められるものだと思います。  当面、カンボジアの問題に関しては、新聞で見ますと、既に五十カ国程度が派遣し、二万数千名のうち軍人は一万数千名となるというふうに言われております。やはりこれも新聞で見たんですが、カンボジアにはアンコールワットとかいろいろな観光施設がありますが、大量の日本人観光客が行って、その背後で日本自衛隊が参加していないPKOが黙々と任務についているというような状況であれば、当然国際的な非難は高まると思います。  アジア諸国の懸念というふうに中国政府が言いますが、新聞によりますと中国政府は今回派遣するようですけれどもカンボジア問題を引き起こした大きな責任は中国政府にあるわけですね。ポル・ポト派を全面的にバックアップして数百万人を殺した。カンボジアの人口八百万人のうち、何百万人かがポル・ポト派の軍隊によって虐殺された。その重大な責任ある中国政府PKOに参加して、カンボジア派遣されているわけです。日本は来てくれるなと言っているときに派遣するのは私はおかしいと思いますが、日本が参加してほしいと言われているときになぜ派遣できないのか、理解できません。
  347. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) 高池公述人、もうそろそろおまとめいただければと思います。
  348. 高池勝彦

    ○公述人(高池勝彦君) 時間がありませんので、最後に法案についてですが、全体として、この種の法案としては異例なほど長くて煩瑣に過ぎると思います。施行令とか行動規範に委任すべき事柄について余りにも詳しく書かれ過ぎている。例えば歯どめ、五原則にしましても、これはまあ反対というわけではありませんけれども、武器の使用の点とか撤収の点とかについて、国連の指揮下にある部隊を逆に足手まといにさせるようなおそれがあると思います。  それから最後になりますが、法案の体裁について、自衛隊の位置づけが非常におかしいと思います。  例えば、この新しい法案の六条二項二号のニとホ、あるいは九条の三項、四項、十三条の一項、二項、いずれも、何かあたかも海上保安庁がPKOの主体であって、それに補助的に自衛隊協力しているというような条文の体裁をとっております。  例えば、第二十条を見ますと、「海上保安庁長官又は防衛庁長官」云々というような書き方がされております。海上保安庁長官といいますと、官僚のヒエラルキーの上では局長クラスだと思いますが、防衛庁長官はもちろん国務大臣です。局長が上に来て国務大臣が下に来るというようなこととか、あたかも何か自衛隊の士気を阻喪させるような条文の体裁になっていると思います。これは簡単ですので、ぜひ改めていただきたいと思います。  まだ言いたいことがあるんですけれども、時間ですので以上で終わります。
  349. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) どうもありがとうございました。  以上で公述人の方々の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。  なお、質疑及び御答弁は御着席のままで結構でございます。
  350. 真島一男

    ○真島一男君 自由民主党の真島一男であります。  公述人各位には、本日は有益な御意見をありがとうございました。  私が六人の公述人の方のお話を伺いながら感じたのは、これだけなぜ意見が分かれるのかということについて私なりに考えてみましたが、その基本にあるのは、やはり朝鮮戦争とか湾岸戦争とかという国連戦争の場面と、それから今度のPKO、平和維持機構というものとが峻別されていないとか、全く違うものであるということについて、そこは共通の認識に立たないと議論がいつまでたってもかみ合わないというふうに思うのでございますけれども、この点について斎藤公述人から、ひとつわかりやすくお話しいただきたいと思います。
  351. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) 御質問の御趣旨に合うかわかりませんが、私もそういう感じを持っているんです。したがって、もうそういう機会はないかとも思いますけれども、ただ、今度の問題の発展過程からいって、いろいろの議論がされた結果そうなったというように理解して、今般は余りやかましく言わないというのが私の考え方でございます。
  352. 真島一男

    ○真島一男君 そうすると、私の認識は、朝鮮戦争、湾岸戦争が武器を持った国連ならば、今度は端的に言えば丸腰に近い国連の活動だと、こういう理解でよろしゅうございますでしょうか。
  353. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) いや、そうではなくて、場合場合によって違うんですけれども朝鮮戦争のときのは、あれはPKOではなくて、あれは一種の多国籍軍なんですね。ただ、今般の湾岸の多国籍軍ないしはレバノンにおける多国籍軍及びエジプトにおける多国籍軍と違うところは、国連決議によって、しかもその国連決議が国連旗を使っていいという一項が入っているんですね。その意味において、朝鮮の多国籍軍は朝鮮国連軍という名前で呼ばれているわけです。しかし、それは現在我々が考えているPKOとはちょっと違うということで、PKOを大別しますと、朝鮮国連軍的PKOと、そうではなくてその後のPKO、こういうふうに二つに分けて考えられておりますが、概念的にはそうできますけれども、今さら分けてもしょうがないんじゃないかという感じがしております。
  354. 真島一男

    ○真島一男君 ただ、私はこの問題しつこく申し上げるようですけれども、今度のPKO自衛隊を出すことに対する危惧の念というのが、朝鮮型のPKOに発展するのではないかという心配がある、そこは全然違うんだということがきちっとしていなければいけないのだと思うのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  355. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) その点はそういうことにはならないと思うんです。現在、朝鮮国連軍というものについて、時間がございませんので詳しく申し上げませんが、ああいうものは二度と起こり得ないんですね。なぜかというと、あのときはソ連の代表が欠席していて、反対者が反対できなかったわけでああなってしまったんで、もし安保理事会情勢が平常であったならばああいうものはできなかったんじゃないか。これからはああいう状態はもうないわけですね。ですから、あり得ないというふうにお考えいただいたらいいんじゃないのでございましょうか。
  356. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) ちょっと質疑者、答弁者に申し上げます。  私の方の、団長の指名を受けてから御発言願いたいと思います。
  357. 真島一男

    ○真島一男君 PKOという国連平和維持組織は、戦後の国際社会で人類が平和の維持のためにつくり出した、これまでにない一つの新しい仕組みであろうというふうに私は思うのでございます。そして、その輝かしい実績が一九八八年のノーベル平和賞の受賞ということにつながってくるわけでございますが、こういうことに我が国が参加をするということは、日本平和主義からいって当然のことであろうと思うのでございますけれども、熊倉公述人の御感想を承りたいと思います。
  358. 熊倉信夫

    ○公述人(熊倉信夫君) 先ほども申し上げましたけれども、やはりそれぞれの国がそれぞれの力に応じて新しい世界の平和の構造をこれから構築していくというような時期だと私ども思っておりますので、したがって日本がそれなりの力に応じたものを出し合ってこのPKOに参加をするというのが極めて妥当だというふうに理解いたしております。
  359. 真島一男

    ○真島一男君 自衛隊のことについて憲法論からいろいろ御意見がございますけれども自衛隊の活動が一から十まで違憲であるという議論はないのではないかと私は理解をいたしております。  例えば、災害出動、平成三年をとりましても七百四十七件、九万九千九百六十四人という出動をしております。このことは国際的にも評価されていると思いますし、先般江沢民総書記が日本にお見えになったときに、金丸副総裁との話の中で、自衛隊の海外派遣の問題について、災害が起きたときにお互いに助け合うのはどうかねと言ったら、それは結構ですねというようなことのやりとりがあったということを私も伺っております。そういうことで理解をしてよろしゅうございましょうか、大塚公述人にお伺いします。  自衛隊のやることが一から十まですべて違憲であるというものではないのではないでしょうかと、こういうことで申し上げたわけです。
  360. 大塚勝

    ○公述人(大塚勝君) 私が先ほど申し上げましたのは、現憲法上の解釈からは違憲であると申し上げているのでありまして、現実に存在していることを私は否定しているのではありません。それでお答えにかえます。
  361. 真島一男

    ○真島一男君 斎藤公述人にお伺いいたします。  今、国会での議論の中で、PKOのうちPKFと言われる国際平和維持隊という部分凍結したらどうかという議論がございます。それから、シビリアンコントロール強化のために国会事前承認は行うべきだという議論がございますが、そういうことについての御所見を承りたいと思います。
  362. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) 私の意見を申し上げます。  政治的ないろいろ背景があると思いますので、明確にはお答えできませんが、一般的なお答えとして申し上げられますことは、このPKOと言うときにはPKFを含むわけです。そして、その含み方が六割以上八割くらいまで、ちょっと数字をはっきり持っておりませんけれども、大部分がPKFなんです。というのは、PKOという活動が次第に大規模、複雑になってまいりまして、個人の協力では不十分であるということの結果だと思うんです。PKFを制限するということになるとかなり日本の行動の範囲は狭まりますので、非常に残念に思うんですが、ただし、全然ないよりは、それを削ってしまうよりはまだいい。というのは、先ほどもちょっと申し上げましたように、日本PKOに対する姿勢が今問われている。それに対して、日本としてやりますという意思表示をするという意味において私は高く買うわけです。  しかし、それはまた同時に、今申し上げましたように、PKFが活動の大部分であり、しかもPKFかいわゆる一般のPKOかということを区別すること自体が非常に難しくなってきておりますので、その意味で私は、日本政治的な立場でそういうふうにお決めになるのもやむを得ないと思うんですけれども、なるべく早くこれを解除した方がいい。と申しますのは、その凍結の間に日本も経験を積みまして世論の納得を得られる、世論の理解を得るように努力をする余地ができるというように考えております。
  363. 真島一男

    ○真島一男君 斎藤公述人に再度お伺いしますが、PKFを凍結した場合であっても自衛隊派遣が必要不可欠であるとお考えでいらっしゃいますか。
  364. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) お答え申し上げます。  それにつきましては私も非常に慎重に考えてみましたが、PKO現実が今申し上げましたように非常に複雑、大規模になってまいりまして、従来、従来といいますのは、当初PKOという考え方が出てきた時代と比較にならないほど問題が難しくなっているんです。ですから、現在本当にPKO活動全体に対処をするというには非常に組織化された、非常に訓練を積んだ者以外にはできないという意味におきまして、私は非常に強いしっかりとした団体が要る。そういう意味で、国連PKOに対する協力を要請するときにはっきりと軍隊を出してくださいということを言ってくるんです。日本は軍隊というのは法律上、軍隊という言葉がいいかどうか別にして、それに類するものは自衛隊しかないので、自衛隊を出すということが実際的にもまた法的にも一番合致しているということでございます。
  365. 真島一男

    ○真島一男君 終わります。
  366. 角田義一

    ○角田義一君 角田でございます。  大塚公述人にお尋ねをいたします。  先ほど、憲法九条をめぐります歴史的な解釈の変遷について先生の公述を聞いておりまして、大変明快な御論旨で私どもよくわかるのでございますが、現在審議をしておりますこの法案につきまして、若干先生の御見解をお尋ねしたいと思うのであります。  政府の方の説明によりますと、やはり政府もこの憲法を守らなきゃならぬという立場は崩すわけにはこれはまいりませんものですから、いわば憲法で禁止しております武力の行使、これはどうしても避けにゃならぬ。そのために業務の中断であるとか、あるいは武器の使用であるとかというものについては非常に歯どめがかかっておるんだ、五原則があって武力の行使には絶対至らないようになっております、したがってひとつ御安心ください、こういうような趣旨の答弁をずっと繰り返しておるわけであります。私どもは、軍事要員であります自衛隊というものを部隊として出す、しかも武器を持たせて出すということになりますと、政府が言っているようなそんなわけにはいかないのではないか。非常に緊迫した場面等々においてはやはり武力の行使に至る危険性は多分にあるんじゃないか。  したがって、あるかつての政府高官が、この法律はまさにガラス細工のようなシステムになっておるというふうに批判をしておったとおり、現場へ行った場合に、政府が言うような憲法九条の武力の行使は心配ないと、そんなことには当然ならないんじゃないかというふうに私どもは思っているのでございますが、法律家としての先生の御見解を承れればというふうに思っております。
  367. 大塚勝

    ○公述人(大塚勝君) 私、海外に派遣をされてどういう仕事をなさるのか、ちょっとイメージが浮かばないんです。戦場に行ったこともありませんし、そういう修羅場を見たこともありませんのでどういう仕事を現実自衛隊方々がなさるのか、テレビを見たりそういうことしかわかりませんので、どういうことが発生するかもちょっと推測しかねるわけです。  ただ、この法文の上では指揮系統がちょっとはっきりしませんけれども、恐らく現地に行くとやっぱり統一的な指揮系統の中に入るんだと思います。日本だけは別行動をとりますというふうなことはちょっと考えられないと思いますので、統一的な指揮系統の中に入る。そうすると、やはり現地の司令官の指揮命令に従わなければならないと思うんです。そうすると、武器使用は一般的に禁止している、しかしこれは武器を使用しなさいと指揮命令が出た場合に日本の部隊だけは指揮に従わないというようなことが一体考えられるんだろうかという疑問が非常にあります。当然、私は何かが発生すれば武器を使用しなきゃならぬだろう。  そういう事態になったら引き揚げるというようなお話ですが、これもやはり指揮系統に入ったからには現地司令官の指揮命令に従わなきゃならぬだろう。日本だけは憲法上許されないから帰していただきたいと、さっさと逃げるというふうなことはちょっと考えられないんです。しかし、それは私が推測しているだけでありまして、現実にやはりどういう仕事をするかがよくわかりませんので、今先生の御指摘の点についてはっきりしたお答えもできません。この程度で御勘弁をいただきたいと思います。
  368. 角田義一

    ○角田義一君 斎藤公述人にお尋ねしたいと思うんですが、先生は国連で大変な御活躍をされてこられて、PKOにも大変お詳しいわけですが、先ほど先生のお話の中で、このPKOの問題を考えるに当たっては国連の側の立場に立って物を考えなきゃならぬということを大変強調されておられまして、私もそのとおりだというふうに思っておるのであります。  特に、PKOの中で軍事要員を出さなきゃならぬという場合に、国連としては、いわば手引書、ガイドライン等で私どもも勉強しているわけでありますけれども、指揮権の問題につきましてはかなり厳格な原則といいましょうか、慣行というものがございまして、先生百も承知だと思いますけれども派遣国の命令をある程度排除してまでこの国連事務総長のもとに置かれる軍司令官の指揮のもとに服してもらわなきゃならないというのが手引書の中にはっきり書かれてございます。私どもとすれば、私ども自衛隊を出すことについては反対でございますけれども、軍事要員を出すということになりますれば、当然そういうふうに国連の指揮下に入ってその指揮に従わなければ、これはやはり言うところのPKFの統一した活動というのはできないのじゃないかというふうに私は思います。  したがいまして、日本政府が、いわば憲法上のいろいろな制約がございまして、五原則等があってその点は心配ないんだというようなことを国会で言っておるわけでありますが、日本政府日本政府憲法を守らなければならない立場がありますけれども、しかし国連立場といたしますと、軍事要員を出すからにはやはりきちっとした指揮権のもとに服してもらわなきゃならないんじゃないか。この原則は国連としては崩せないのではないか、崩してしまえばPKFそのものの存立が危うくなるのじゃないかというような私なりの理解をしておるわけでございますが、御経験豊富な先生でございますので、その辺はどういうふうに解釈されるか、御意見を承りたいと思います。
  369. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) 御質問の点でございます。この問題は、問題が起こりましたときから私は問題自体の意味がよくわからなかったのですけれども、コマンドという国連側の名称と、それから日本側で言う指揮というものとどう違うのか、どう同じなのかという問題がまずありきなんですね。ところが、その議論をしないで、コマンドだ指揮だということになったんで議論になってしまったんじゃないかという感じを受けたのでございます。コマンドというのは、軍事的に言うといわゆる作戦に類するものであって、例えば、敵は国連側がこっちにいるというのに、日本側の指揮官がいや敵はあっちだと、そういうことはできない。これはコマンドという意味から国連側の軍司令官、現地司令官の言うことを聞かなきゃいけない。  しかし、軍隊の運営にはそういう作戦的な面のほかに行政面があるわけです。例えば、こういうことをせよと分隊長が言ったのに隊員がその言うことを聞かない。言うことを聞けといって命令する、それが指揮権なんですね。だから、作戦的な面については全く国連の言うことを聞かなければいけない、意見具申はもちろんできますけれども、いけない。しかし、そういう行政面のあるいは懲罰とかそういうことについては、日本から派遣した部隊というのはそれ自体まとまって軍隊としての行動ができなきゃいけませんから、その責任者の言うことは聞かせるという意味において指揮権があると言っているのであって、全体の作戦については全く国連の指揮官の言うことを聞く、そういうふうに私は解釈しております。
  370. 角田義一

    ○角田義一君 いわば指揮権と懲戒権の身分に関する問題については、国会でも大変議論になりまして、それなりの理解はお互いしているわけであります。  私が申し上げたいのは、特に軍事要員を出す場合の指揮命令系統というのは統一されていなければいけないんじゃないか。もっとはっきり申し上げますと、いわば平和維持軍でも、先ほど先生が御指摘のとおり、任務遂行を妨害されたときには武力の行使があり得るということは手引書にも書いてございます。そういう場合に、日本だけが、いや私ども憲法に違反いたしますのでそういうときには参加できませんというようなことが、現実問題として果たしてPKFに参加する者として通用するのでございましょうか。国連は、そういうのではちょっと困ると、やはりきちっと指揮命令系統に入ってもらわなきゃ困るというふうに私は国連の方の立場に立てば言うんじゃないかというふうに思っておるんですけれども、その辺のことなんでございますが、いかがでございますか。
  371. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) その点、極めてデリケートでございまして、私は国連側の希望を直接聞いておりませんけれども、統一した立場をとりたいと思っていると思うんです。  現実面を申し上げますと、国連側も、もう日本が入ってから四十年になりまして、日本憲法というものについてかなり認識が高まっていまして、いろんな説明のときに日本憲法九条でそういうことができないんだというような説明を私も何回もしております。だから、ある点についてはこれ以上押すと日本憲法日本政府は困るということを同情的に考えることがしばしばありましたので、私はこの問題の交渉は関係がありませんので知りませんけれども日本の場合にはひとつ例外的にというふうに考えたのじゃないかと思うんです。全くそれは好意といいますか、国連側の日本に対する配慮、言いかえるとPKOをぜひ実現したいという熱意に裏づけられた好意というように私はとっております。
  372. 角田義一

    ○角田義一君 これ以上先生と御議論するあれはないんですが、ちょっと国連のシステムとしてお尋ねしたいのですけれども、仮に日本自衛隊が出ていく、軍事要員を出すという場合に、やはり当然協定を結ばなければならないというふうに思いますが、その協定を結ぶときに、今言った日本憲法上の制約というのはどういうふうな保障で担保されるのでございましょうか。
  373. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) 私は、日本憲法上ということを言わないんじゃないかと思うんです。日本立場とかほかの言葉を使うと思うんです。  というのは、国連憲法を表現として用いるときは、憲法上の手続に従ってということだけなんですね。例えば、あることを決めて、これが効力を発生するかどうかは加盟各国の憲法上の手続を経てという言葉を使っておりまして、例えば批准ということを中心にする問題のときには憲法という言葉を使っておりますので、もし日本と交渉する場合には憲法上というように、私ははっきり言えませんけれども、少なくともそうはっきり言わないんじゃないかと思いますが、これは申しわけありませんけれども、はっきり私にはわかりません。それから、政策論としても日本立場からとかいろんな言い方があると思いますので、できればその方がいいような気が私自身はいたします。
  374. 角田義一

    ○角田義一君 わかりました。ありがとうございました。  大西公述人にお尋ねいたします。  先ほどみずからの経験を踏まえた非常に貴重な公述をしていただきまして、私ども感銘をいたしたわけであります。特に、公述人はアジアの人たちとのかかわり合いも深いというふうに先ほど承ったのでございますけれども、私ども国会審議を通じておりまして非常に残念に思うことが一つございます。それは、自民党さんと私どもと決定的に違っておるなというのは、歴史認識の問題が大分隔たりがあるんじゃないかなというふうに思っておりまして、この点は大変私ども不幸だなというふうに思っておるのであります。  そして、その中で特に私どもが憂えておりますのは、先ほど公述人が在日韓国人の方あるいはフィリピンの方、さらにはマレーシアの方の貴重な御体験をお述べいただいたわけでありますが、仮に自衛隊が武器を持って出ていくというようなことが実現した場合に、アジアの人たち、特にアジアの民衆でございますね。為政者は日本との関係が深いですから、また援助もいただいておるというような関係もありますから、かなり遠慮された物の言い方をそれはされると思っておりますけれども、アジアの民衆がどういうふうに反応するか、これは大変私は重大な問題だというふうに思っておりまして、アジアで日本が孤立していけば私どもは生きていけないんじゃないかというふうに思っております。  したがって、そういうことを考えますと、もちろん憲法上のいろいろ問題はありますけれども、特にアジアの中で日本が生きていくということを考えた場合に、自衛隊を部隊ごとつっくるみで武器を持たせて出すということについては、これはやはりやめた方がいいというふうに私ども考えておるわけでありますが、あなたのいろいろの運動を通じての経験で、自衛隊が部隊として武器を持って出ていくときにアジアの民衆はどういう反応を示すだろうかということについて、御所見があれば承りたいというふうに思うんです。
  375. 大西しげ子

    ○公述人(大西しげ子君) 例えば、先ほどもお話しいたしましたけれども、家族十一人を殺されてしまって、たった一人だけ生き残った、そういう悲惨な人たち、それから私がかかわっておりました在日朝鮮人の人にしてみましても、日本の中にあってもひどい差別の中で生きている人たちがたくさんおられるんですね。そういう人たちにとって本当に日本というのは許せないという非常に強い思いを持っておられます。  それで、私も戦後補償の問題でちょっとかかわっているんですけれども、例えば在韓被爆者の方なんかは本当に気の毒なんですね。日本政府はもう国と国とのレベルで補償済みだというふうに言っていて、四十億を出したというんですけれども、ただそれはその人たちのためになるんじゃなくって、医療センターをつくるということだけで、一カ所に医療センターをつくったって散らばっている在韓被爆者にとっては何にもならない。自分たちはこんなにひどい目に遭ったのに、本当に自分たち一人一人は何の補償もされないという、そういう恨みの声というのは物すごく入ってくるわけですね。  それからもう一つは、日本のアジアに対する経済進出というものがあると思うんですけれども、その上にさらに自分たちの国の森林が破壊されたりとか生活が破壊されたりとか、そういう状況になって二重に日本人に対する反感というものがあると思います。そういうところに軍隊が出ていった場合、例えば家族十一人を殺されたという人にとってみれば、また来たのかという、そういう思いでとらえられると私は思います。そういう意味で軍隊が出ていくということは絶対反対と思っております。
  376. 角田義一

    ○角田義一君 斎藤公述人に、外交官としての御経験がお長いですから、御質問申し上げたいんですけれども、中国の江沢民さんがこちらへ来られまして、日本自衛隊を出すということについてはあくまで慎重にやってほしいという御発言をずっとされておりました。この発言をめぐって国会の中でも大変な議論になったわけでありますが、この慎重にしてほしいということの真意でございますね。私は外交官じゃありませんからようわかりませんけれども、内政干渉にわたらないぎりぎりのところで江沢民さんは中国の民衆の声を代弁されて言っておるんじゃないかというふうに私自身は理解をしておるわけです。  その真意は、慎重にというのは、慎重に手続を踏めば出していただいていいということではなくて、やはり出さないでほしい、そういうことが真意ではないかなと、そういう理解をする感性を私ども持たなくちゃいけないんじゃないかなというふうに理解を私自身はしておるわけでありますが、今はもうかなり先生はフリーな立場でございましょうから、外交辞令として慎重に対処してほしいということの意味、内容というのはどういうふうに理解をしたらよろしいというふうに思っておられましょうか。
  377. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) 私の個人的なお答えを申し上げます。  私は、この問題については本当に心配している人たちが多いと思うんです。私自身が彼らの立場に立った場合も、もしこういう形で出していいかと聞かれたら、やっぱり慎重にしてくれと、できればやめてくれとまで言うかもしれません。私が彼らの立場に立てば。しかし、これは私はむしろいいアドバスとして聞いた方がいいんじゃないかと思うんです。  私自身も、日本PKOを出すことによって軍事力を強めるという意思は全然ございませんし、ただ訓練を受けますから、少なくとも今の自衛隊のように、国内的な用途には非常に役に立つけれども国際的な面ではさあどうかというような、そういう実力ではないもう少し高い程度の訓練を受けますから、私は立派な軍隊にはなるかと思いますけれども、いわゆる帝国主義的な方向の、また侵略の可能性のある軍隊になることについては私自身も反対でありますし、幸いにして日本憲法はそうなっております。  その意味では、私は仮に九条の改正を行うにしてもそうならないようにする必要があると思いますので、アジアの人たちのアドバイスというものは、もう全くあなた方の言うことよくわかります、私たちはそうしませんということをはっきり言って、そして外交交渉のように、しばしばその問題を取り上げて彼らを納得させていくと。  私、納得しないと思うんですけれども、しかし同時に、PKOに出してしまっても、一国の主権の問題ですからこれは私は文句は言えないと思いますし、出してみれば、二千人ぐらいの人間を出して、それが侵略に関係していくなんということは実際はあり得ないので、私は問題の存在を認めますけれども、その問題自体がPKO派遣に大きな支障になるとは思っておりません。
  378. 角田義一

    ○角田義一君 斎藤公述人にお尋ねします。  これは実現はしなかったのでございますけれども、この前の法案審議されているときに、フィリピンの上院でやっぱり自衛隊の海外派兵、派遣について反対の決議というものが上程をされて、可決はされませんでした。上院が解散になってしまったものですから可決はされておりませんが、私は、東南アジア、中国、朝鮮はこの自衛隊の海外派兵については非常に神経が鋭敏になっているというふうに理解した方がよろしいんじゃないかというふうに思っておるのでございますけれども、その辺いかがでございますか。
  379. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) 私は、それは先生のおっしゃるとおりで、特にフィリピンにおいては家族が死んだという例がもう彼らの周辺にたくさんあるわけですね。ですから決議にしても、彼らの例えば日本政府に対する抗議にしても、これはそういう環境のもとで行われているというふうに理解して、いわゆる一般国際法的な意味での抗議とかあるいは外交上の決議というようにとらない方がいいと思うんです。それは特別の国であって、例えば中国においてそういうことをするかというと、私は中国はしないと思います。  それから東南アジアで言いますと、例えばインドネシアなんかは自分のところで今カンボジアにも輸送軍を出しているわけですね。ですから、自分のところで出しているので、おまえのところは危険だということは言えないと思うし、私はごく一部の国については先生のような心配があると思いますので、特別の配慮が必要だと思います。それは私は一国か二国じゃないかと思うんです。
  380. 角田義一

    ○角田義一君 滝沢公述人にお尋ねしたいと思うんですが、連合の山岸会長が大変御苦労なさいまして、このPKOの問題について連合中央でいろいろ御意見をまとめられまして、その御苦労に対して私ども心から敬意を表するわけでございますが、その中で特に自衛隊とは別の組織でやってもらいたいというふうなことが集約をされております。ただ、自衛隊の隊員については休職・出向をイメージするというようなことで、ちょっと私どももなかなか理解しがたい面もあります。  それはそれとしましても、いわば国際貢献をする場合にやはり自衛隊とは別個の組織でやってほしいということで、その辺私ども全く同感なのでありますが、この自衛隊と別個の組織でやるということは一つのけじめとして私は本当に大事だというふうに思っておるのでございまけれども、連合の中でいろいろ御議論がある中で、あえて自衛隊とは別の組織という形で山岸会長が集約をされたということについてはどのように御理解をされておりましょうか。また、先ほどの公述人も自衛隊とは別の組織でやってほしいということをおっしゃっておりますので、その点についてのひとつ御意見があればと思っております。
  381. 滝沢剛

    ○公述人(滝沢剛君) おっしゃられるように、連合としても論議をした結果、自衛隊とは別組織ということで休職・出向をイメージする、こういう結論になりました。ただ、三論を併記した上で出向・休職をイメージする、こういうふうになっていますから、最終的に最後の決断を求めるとすれば、私は個人的な見解ですけれども、やっぱり休職・出向と、したがって別組織で休職・出向と、こういうことになるんであろうというふうに思いましたので、先ほどそういうふうに申し上げました。  なぜ自衛隊と別組織かといいますと、今ほども少し角田先生言われていましたけれども、やはり日本の今までの侵略戦争に対する反省というのは、斎藤公述人に言わせると二、三の国しかないだろうと言われますけれども、かなり根深いものがあるというふうに思うんです。  例えば日本の歴史の中でも、新潟のすぐ隣の会津、福島ですけれども、この福島県の人たちは今でも山口の長州や鹿児島の薩摩等には一切もう口をきかぬ。この前仲直りしようという話があったんですが、これまで拒否をしてしまった。これは日本の中にもあるわけです。それの一番大きなものが、官軍と言われる人たちが来て会津の兵士の死体をみんな道路に並べておいたんですね。片づけさせない。それが今でも一番大きなネックになっているんですけれども、こういう日本にもそれぐらいの、同じ国内でもあるわけです。  ましてや外国で親を殺された、こうなりますと、そういう点では日本のそういうものに対する感情というのは非常に根深い。恐らく今世紀を使っても解消し切れないというものがあると思うんです。ですから、そういう意味ではやはり自衛隊を部隊として出すということについては連合としては賛成できない、そういう立場で論議をしてきたというふうに私は受けとめております。
  382. 角田義一

    ○角田義一君 熊倉公述人にお尋ねしたいんですが、町長さんとして町民の意思をまとめるということでいろいろ問題で御苦労があると私は思うのでありますけれども、今の国際協力の問題についても国論が二分しているわけであります。特に二分をしている理由は二つ私はあると思います。自衛隊というものを部隊ごと兵器を持たせて海外に出すということ、それが憲法上いろいろ疑義があるんじゃないか。さらにはアジアの人たちがいろいろ懸念をしているというようなことが国論を二分している大きな私は理由だというふうに思っております。  民主主義社会ですから、国論が二分されることは私は何も恐れません。むしろそのことは健全だというふうに私は思っておりますが、しかし、分裂したままではやっぱりいけないのであって、国際貢献をやろうということについては大方各党派ほとんど一致しているわけでありますから、先ほど連合の方もお話がございましたけれども、どこかで接点を求めて統合するということがなくちゃいけないのじゃないか。これは国政であれ町政であれ私は本質的に変わらないんじゃないかと、いろいろ町長さん御苦労されておると思いますけれども。  そういう意味で私は、国民的な一つの合意形成、国際貢献についての国民的な合意形成、えらい時間がかかってもやれるところからやる、みんなが合意したところからスタートするということは町政でも国政でも同じじゃないかというふうに思うわけでございます。そういう意味で、先ほど自衛隊を出すということについてはまさに国論が二分をされておるわけでありますから、そうではない、もうちょっと国民的な理解の得られるところで合意形成をするということが大事じゃないか、これは町政でも国政でも基本的に私は変わらないんじゃないかというふうに思うのでございますけれども、先ほどちょっと聞いておりまして気になったものですからお尋ねするんですが、いかがでございましょうか。
  383. 熊倉信夫

    ○公述人(熊倉信夫君) ただいまお話しのことは非常に大事なことで、基本的には私も賛成であります。  ただ、私は、日本でなぜこういう問題が今ここで起きているのかというふうに考えますと、これは国政全般の中に一つ問題があると思うんですけれども、一番国として考えていかねばならない大事な問題は国防だと思います、国を守ると。ところが、終戦直後から、今いろいろと議論されますように、何か自衛隊の問題が出ると非常に、私だけかもしれませんが、何か卑屈な形で、堂々と胸張ってその議論ができないような、どこかいじけた議論になりやすい。それはタブー視されて、何か国防論議というようなものがされてこなかったんじゃないのか。極論いたしますと、日本はこの国防に関して不毛地帯みたいな感じで私は見ております。  さっきも申しましたように、国を守るという国民的な課題、これらを常時啓発しておかなかったことによって、今四十年たったここでにわかにこんなことになってくるものですから戸惑いが非常にある。そういう前提があるのですが、結論的には、やはり先生言われるように、どうしても半端な状態で突っ込んでいくということは国内においても国外においても問題がありますから、非常におくれてはおるけれども、合意の得られる最小段階でまず出る。そして、おくれているのですからそれはピッチを上げながらみんなでまず出してみて、あるいは周辺諸国でもいろいろとトラブルはあるかもしれませんが、じゃこのままでいいのかという一つの反省でこの問題が出ているんですから、日本はこのままでは孤立化してしまう。  やはり、アバウトな感じからすると何かをやらねばならないだろうということで今日ここまで来ているわけですから、その芽を最小限のところで絞り合って、そしてまず立ち上げてみる。そのことによって日本周辺の諸国あるいはいろいろな人々がいろいろなことを言うでしょう。それをまた日本の国内で議論をし合って直すべきは直し、さらに積み重ねるは積み重ねていくというそのスタートをしなければ、いつまでもここで進歩のしない、国際的に貢献のできない、国際的には孤児になるような、そういう形の日本になってしまうんじゃないかという懸念はいたします。  そういうような意味で、今回こういうふうに今国防に関する一つの理念が沸いてきたということは非常にいい傾向ですし、その中でとにかく集約のできる形をひとつ意欲的にやっていただいて、さっきも言うように、まずリスクを最小限にしたところでぜひ立ち上がってほしいというふうにまず思っております。
  384. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 きょうはどうもありがとうございました。短い時間でございますから一言ずつお聞きしておきたいと思うんです。  さっき集団自衛権の問題を含めてコマンドの問題が斎藤先生と議論ございましたが、私は今度の法案審議を通じまして、率直に言って、各党とも国論二分しているとこう言いますけれども、それは自衛隊派遣の問題をめぐって国論が二分されておる。国際貢献については各党とも積極的にすべきだということについては、これはもう一つも異論はない、合意しておるわけです。  そこで、自衛隊に焦点が絞られてくるわけですが、最近新聞でもごらんのように、公明党が提起をしまして、そして民社党自民党を含んでPKFについては凍結するという方向が出されてきつつございます。これは正直言ってどこをどうするのかということについては具体的にまだ定かじゃございませんけれども、いずれにしても、やっぱり維持軍については、PKFについては、これはまだアジアの民衆の感情からいって日本から出すべきでないという、そういう三党の方向が出てきておると思うんです。  私は、それがどうして凍結なのか、削除にならないのかという問題はあると思いますよ。しかし、停戦監視については三党とも今のところ触れていないわけですね。そういうことで、国会の議論を通じながら、各党とも世論というか国民の感情やアジアの感情を踏まえて、だんだん無理なことは無理だ、やっぱりひとつそこら辺については調整せにゃいかぬなという、こういう方向に来つつあることは事実です。  ただしかし、それにしても、さっき大西先生もおっしゃいましたが、アジアに対する日本の戦後処理、これがほとんどやられていない。そのために、例えば最近では従軍慰安婦の問題も出ておりますが、今幾つか御指摘ありましたように、アジアのどこに行ってみても日本の旧軍隊が行ったつめ跡が生々しくまだ残っておる。この問題を処理しないと、いや今度は平和で行くんだから心配ないんだとどんなに言ってみても、足を踏まれた人たちはその痛みを決して忘れるものではない、そういうことを我々は心配しております。  ドイツの場合、さっき斎藤先生からお話がございましたけれども、ドイツは周辺諸国に対してのいわゆる戦後処理、補償についてはほとんど完璧と言っていいほどやっておるわけです。これを今のまま続けますと今世紀の中では支出が約十兆円を超えるんじゃないか。いまだに続けております、年金まで補償しておるわけですから。そういう意味では、そこのところがドイツと日本は基本的に違うんです。  そういうものがあるわけですから、私はこれはなかなか国会の論議だけでは尽くせないものを持っておると思うんです。そういう意味では、滝沢さんがおっしゃったように、国民投票に付すべき性格かなという感じを持っておるんですけれども、今先生方の御意見をお聞きして、そこら辺をどうやっていけばよろしいのか、もし御意見があればいただきたいなというふうに思って御質問を申し上げたいんですが、時間がございませんので先生方全体に御答弁いただくわけにいきませんので、大塚先生と斎藤先生、大西先生、三名の方からいただけますか。
  385. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) 大塚公述人からお願いします。
  386. 大塚勝

    ○公述人(大塚勝君) ちょっと御質問の趣旨が、どの辺をお答えしたらいいのかわからないんですが、失礼なんですけれども、端的にひとつ御質問いただけないでしょうか。
  387. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 今私が申し上げたのは、国会の論議を通じて国際貢献については大体皆さん各党とも意見一致している。問題は自衛隊の問題に絞られてきておる。ところが、この自衛隊の問題については、戦後処理の問題もあり、アジアの民衆の声もあり、そういった問題についてなかなか困難な問題があることは事実ですね。そういう中で、もしいいお知恵でもあればいかがでしょうということです。
  388. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) 大塚公述人、端的に、簡単で結構ですので。
  389. 大塚勝

    ○公述人(大塚勝君) 私が先ほども申し上げましたように、ほかの公述人の方もお話がありましたように、自衛隊というものが非常に異常な形でここまで成長してしまった。しかも憲法上の解釈も非常にあいまいのままできてしまった。先ほど熊倉さんからお話がありましたのと共通する部分もあります。そういう自衛隊であるから、こういう問題になってきたときにすっきりいかないんだと私は思うんですね、国内で災害出動に出ているうちはまだいいですけれども。もう一つは、やはり先ほども他の公述人が申しましたような、アジアの民衆に対して我々の先輩のやってきたこと、この二つが恐らく自衛隊がひっかかる理由じゃないかというふうに私は理解をしております。  やはり人的貢献もどうしても必要だと、これは確かに必要なんでしょう。自衛隊以外の何らかの組織をつくってそれに当たらせるというのが一番いい方法ではないか、軍隊としての部隊を送るというのだけは避けるということが一番いい方法ではないかという気が私はしております。その程度で失礼します。
  390. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) 大変基本的な問題なんで少し詳しく申し上げたいんですが、今の佐藤先生のお話を分析しますと、一つはやっぱり国内の問題と国外の問題がありまして、国外については大体世論もこれは国際貢献としてやった方がいいということになっておりますし、それから外国人も、これは私はマクナマラから直接聞いたんですけれども、おまえのところの自衛隊は、自衛隊自衛隊と言っているけれども我々から見れば同じ軍隊なんで、自衛隊であろうが何であろうが日本の軍隊がPKOに参加して平和のために努力することは大いに歓迎するんだ、もしそれに異論があったらおれのところへ手紙よこせばいつでもそういうことをお返事すると言っていたくらいに、外国では問題になっていないんですね。  問題は、やっぱり今先生の御指摘のように日本の問題だと思うんです。日本の問題というのは、これをもう少し掘り下げてみますと、一つは憲法の問題であり、他は国民感情、これは大西先生がおっしゃったとおり、まさにこういう感じがあるんですね。  それで、憲法の問題については、これは大塚先生も憲法論おやりになりましたし、今、幸か不幸か憲法論が非常に盛んになっておりまして、私はいい傾向だと思うんです。いろんな意味憲法論はやった方がいいと思うんですが、私の今の考えは、要するに憲法は権利を放棄しているんであって、国際義務の履行ということについては何ら触れていない、だから抵触しない。違憲か合憲かという問題の取り上げ方よりも、憲法が何も言っていないのにこれは間違っているというように言う必要はないんで、憲法が何にも書いてないというんだったらば、それを平和のために最も大きく広く解釈するということで私は割り切っております。やがて私はそういう考え方が広まっていくと思うんです。  問題は国民感情なんで、恐らく先生方の間で凍結という問題が出てきたのは国民感情からだと思いますので、そのために凍結が必要だという結論になりましたらば私はそれはやむを得ないと思いますが、なるべく早くそれを解除していただきたい。  それで、この国民感情ですけれども、私が申し上げておきたいのはいわゆる平和主義なんですね。平和主義というのはだれが言い出したか知らないけれども日本憲法平和主義だと言っている。これはだれも異議がないんですが、その平和主義日本憲法だけだというように考えておられ、しかもその平和主義というのは、日本は侵略した前歴があるんで悪いやつだから手を縛っておけと、それが日本憲法なんですね。日本はもう二度とそれはできない。だから、日本がやらないというだけの意味平和主義なんですね。  それで、それができたときに当時のマッカーサーは説明しているんですけれども日本の後にたくさんの国が続いてそうなるというように彼が予期したところが、一国もならなかった。今、憲法を調べてみますと、世界に軍隊を持っていないのは二国あるんです。それはもう小さな国で、軍隊を維持できないような国なんですね。そうして見ると、手を縛っているのは、日本が自分で言い出したんだけれども、どこもついてこない。それでマッカーサーも、そういう時代になったらば、平和主義と初め言った意味平和主義はやっぱり間違っていたんじゃないかというように彼も反省しているということが言われております。  今、平和主義ということを考えるならば、その自分が手を縛ってまで守ろうとしている平和というものを破壊する者がいて、その破壊者を倒すあるいは破壊を防止するという意味、これが平和主義ではないか。その意味においては、日本憲法はやっぱりその意味平和主義にも徹すべきではないか。その平和主義というのは、今申し上げているように、国際貢献、国際義務を履行するという形であって、したがってこれは憲法には抵触しないという感じでできる、そう考えていただけば国民感情も私はわかりやすいんじゃないかと思いますので、ひとつ御了承を得たいと思うんです。
  391. 大西しげ子

    ○公述人(大西しげ子君) 私は、この問題は非常に難しくてお答えできないと思います。今までの皆さんのお話を聞いていましてもお互いに対峙し合っていまして、そこの間の接点というのはどうやったらできるのかはちょっとわかりませんで、やはり歴史に対する認識の違いがもうここまで来てしまった、そこがなかなかくっつくことができないという、そういう現状じゃないかなと思っております。
  392. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 どうもありがとうございました。
  393. 磯村修

    ○磯村修君 私、連合参議院の磯村でございます。  初めに、滝沢公述人にお伺いしたいと思うんですけれどもPKO法案審議の中での最大の焦点というのは何といっても自衛隊の海外派遣の問題であるということなんです。自衛隊につきましては、国民皆さんもいわば専守防衛という任務と目的、そうした自衛隊は多くの方々が支持しているわけなんですね。しかし、いろいろなマスコミ等の世論調査の結果を見ますと、こうした国際平和貢献、それでいわば海外に自衛隊派遣するという問題になってまいりますと議論が分かれる、言ってみれば国民世論の合意がなされていないというのが今の現状であると私は認識しております。  そうした中で、いろんな国際貢献、人の貢献のあり方、当然どこの政党も皆、国民の大多数も、人的にもお金の面でも国際貢献をしなければならないという共通の認識を持っているんですね。ただ一点、この自衛隊派遣するか派遣しないかという問題になってきますと、本当に意見が真っ二つに分かれてしまうという、非常に難しい今の世論形成になっているんです。そうした中で、自衛隊派遣する人的貢献の問題でもって非常に苦心する、その苦心の中に別組織という問題が出てきたわけですね。  特に、できるだけ多くの皆さんの合意を得る一つの方法、手段としていわば別組織というふうなことが出てきて、しかも例えば自衛隊の能力というものを活用していくためには、そのまま生のまま出すということは大変問題があって意見が分かれるところであるということから、休職・出向というふうな形をとって、そしてその能力というものを生かす方法を考えていく、別組織の中で生かす方法を考えていく、そういうことになったんだろうと思うんですけれども、そうしたやり方につきまして、第二の自衛隊をつくるんではないかというふうな批判もあるんですね。  そういう第二の自衛隊をつくるんだという批判、いろんな苦心しているそういう方法論について、第二の自衛隊じゃないかというふうな批判も出てくるわけなんですけれども、滝沢公述人はこの批判につきましてどう受けとめられますか、御意見を伺わせてください。
  394. 滝沢剛

    ○公述人(滝沢剛君) 私は、PKOに参加をする部隊が今の自衛隊と同じ仕事だけをされるんなら、あるいは軍事面だけを全面的にやられるんなら、これは第二の自衛隊をつくりかねない、そういうことになると思うんですけれども、私は細かい点わかりませんから、仮に斎藤公述人の言をかりますと、八割は軍事面かもしらぬ、しかし二割はそういうのではない面もあるという点からいけば、やっぱりそこに依拠をした別組織をつくるということが一番必要だと思うんです。  ただ、私は個人的には停戦監視活動についてもやるべきだと思っていますから、そういう意味になりますと、先ほども言いましたけれども、やはり自衛隊の経験者でないとうまくない面もあるんではないか。したがって、そういう意味では別組織のものをつくるということは決して第二の自衛隊をつくるということにならないというふうに思うのが一つ目です。  もう一つは、国内の意見が二分される最大の理由は、自衛隊が発足をしたときに、先ほど大塚公述人が言われましたけれども最初警察予備隊、次が保安隊、そして自衛隊となったんですね。もし最初から国を守るという立場であるなら、自衛隊というふうにして名前をおつけになることの方がより国民としてはわかりよかった、しかし通ったかどうかわかりませんけれども。そういうふうに変還をされてきている中で、最大今、自衛隊に対して国民が安心をして見ているのは専守防衛ということだと思うんです。専守防衛ということはやっぱり対外的に常に明らかにしていかなきゃならぬ。  そういう意味からいっても、今回の派遣部隊は別組織にすることによって、専守防衛というのは海外に出ることじゃないと思いますから、私は自衛隊の休職・出向という形を明らかにした上で、これが専守防衛の一つの形態なんですということもやはり近隣諸国に理解をしてもらう、そういう意味からも必要なんではないか。したがって、決して第二の自衛隊をつくるというふうなことにはならないというふうに思います。
  395. 磯村修

    ○磯村修君 二点目としまして、PKOというのは戦争に行くんじゃない、戦場に行くんじゃない、あるいは弾を撃ってはいけないというふうなことが本旨であるということがよく国会審議の中で政府側から説明があるわけなんですけれども、滝沢公述人は、自衛隊の部隊がそのまま生のまま参加するということには一応反対の立場をとっているわけですね。そうしますと、当面しているカンボジアの問題があるんですけれども、当面しているカンボジアへの日本としての協力のあり方、これはどういうふうにお考えになりましょうか。
  396. 滝沢剛

    ○公述人(滝沢剛君) 二つの態様があるというふうに思うんです。  まず一つは、短期的には今カンボジア人たちが何を求めているのか。私は、戦争からの復興、これがもう最大だと思うんです。  実は、テレビ局の名前は忘れましたけれども、この前あるテレビがカンボジア現地の報道をしていました。多くの人に意見を聞いているんですが、一番多かったのはお金が欲しいということなんですね。お金が欲しいということを言うのです。軍隊が来てほしいとか武器が来てほしいとか言う人は、その報道に限って言えばゼロでした。恐らく公平さを保つテレビ局ですからそういう意見があれば必ず入れたと思うんですけれども、それがありませんでした。そういう意味では、今短期的に考えるとすれば、できるだけ財政援助を行うというのが当面緊急な課題だろうと私は思います。  それから長期的には、これも戦後復興から経験をしたことでありますけれども、例えば農業の再建とかあるいは医療や教育の充実とか、そういう少し時間をかけなければならない面に、やはりこれもかなり非軍事、民生に偏る面もあるんですけれども、そういう角度から協力をしていくということを優先させてやっていく。そういう中にあって、今後の例えばPKO問題と絡むとすれば、その結果によってまた決めていくというふうに私は考えるべきではないかというふうに思います。
  397. 磯村修

    ○磯村修君 斎藤公述人にお伺いしたいのですけれども、先ほど一応自衛隊が仮にPKOに参加して海外に行った場合、指揮とか指図とかといういろんなお話がありましたけれども、そこでお伺いしたいことは、政府の説明によりますと、このPKO法案が成立して実施されれば、自衛隊が海外に行っても決して心配されるような憲法の制約を踏み出すような行動はあり得ない、こういうふうに説明はするんですが、いろいろ現地へ実際に行ってみればそうもいかない面もあると思うんですね。例えば、もう既にカンボジアでも国連側が攻撃されるという事件も起きているわけです。そうした、いわばこの地域に仮に自衛隊が配置されたといった場合には、やはり攻撃を受けるという不測の事態も考えられるんですね。  そうしますと、そういう場合にはいわばこの五原則に従いまして計画を変更する、部隊を撤収するとか中断するとかというふうな措置をとるから大丈夫であるということでもって、いわばこのPKO法案の運用によってうまく運用していけばとにかくそういう間違いはない、憲法に違反するような間違いはないんだと、こういうふうなことを説明されているんですけれども、斎藤先生はこういうことにつきまして、刑法があれば犯罪はない、道交法があれば交通事故はないという、法律があれば決して起こるものではないというふうな考え方のような説明を政府はするんですけれども、一〇〇%実際にそういう心配されるようなことはあり得ないというふうにお考えですか。
  398. 斎藤鎮男

    ○公述人(斎藤鎮男君) 今まさにおっしゃるとおりに、非常に難しい問題なんですけれども、その問題をなくすには、やっぱり最初国連日本政府との間につくる協定というものをかなり詳細にする必要があると思うんですね。それで、それができた以上それに従うよりしようがない。それがそのコマンド、大きな意味でアンブレラがかぶっちゃっていますからね。ですから勝手にそれを、そこで禁じられていることを憲法に反するというように考えてはだめなんで、それの責任者が考えても簡単には私は出られないと思いますね。やはりその協定に基づかざるを得ないと。  私は、それ以上はちょっとその問題の発展、その事情によると思いますけれどもお答えできるのはその程度でございます。
  399. 磯村修

    ○磯村修君 大西公述人にお伺いします。  先ほどのお話では、国際貢献というのは、自衛隊を出すことだけが国際貢献ではないんだ、やはりいろんな幅広い国際貢献というものを考えていかなければいけないと。例えば発展途上国への協力とか、あるいはいろんな形での貢献というものがあるんだと。  例えば、きょう私、朝日新聞の「天声人語」というコラムがありますね、それを読んでおりましたら、中国の方が日本にいらっしゃって、中国でお医者さんをやっておったんだそうですけれども日本に来ましたら医師の資格が取れないということで悩んだと、在日十二年たってようやく国家試験に受かったというふうな話が載っかっておったんですね。やはりそういうふうに国際貢献というものは今まで閉ざされておった制度とか心を開くことが大きな国際貢献につながっていくんじゃないかというふうなことが書かれてありましたけれども、まさに私もそのような感じは受けたわけなんです。  そこで、例えば非軍事とか民生、こういう国際貢献のあり方というのは、確かにこれは自分だけが平和で豊かであればいいんだとか、自衛隊が行かなかったならば、何といいましょうか、いわば世界の孤児になるとか、そういう軍事面を外した国際貢献では利己主義じゃないかという批判もありますね。一口に表現すれば一国平和主義じゃないか、こういうことがよく言われる批判もあるんですけれども、大西先生はこうした一国平和主義といった批判に対しましてどういう受けとめ方をなされておりますか。
  400. 大西しげ子

    ○公述人(大西しげ子君) 私は、国際貢献そのものに対して反対しているわけじゃないことを先ほどずっと述べましたが、例えば日本だけが手を汚さないような仕事をするというような批判ですね、例えばお金と物は出すけれども人を出さないとかということからこのPKOの問題が生まれてきていると思うんですけれども、私は先ほども言いましたように別組織で、決して、何といいますか国連の活動に参加しないとかいうことじゃなくて、別組織で出せばいいと思うんですね。  そこのところで、ですから別組織の中では一般の人、専門職の人もいますし、それから私は退職した自衛隊の人であるならばいいんじゃないかと思うんですね。例えば自衛隊が隊として出ていくとなりますと自衛隊法を変えなくちゃいけないとか指揮の問題とかいろいろありますけれども自衛隊員が出ていくんであれば、別組織として出ていくんであれば国連の指揮にそのまま入ればいいわけですし、その辺のところで私は別組織で考えればいいんじゃないかと思うんです。  ちょっと、これでお答えになったかどうかわからないんですけれども
  401. 磯村修

    ○磯村修君 民生面でも汗になるんだ、民生面での仕事でも汗になっていくんだと、こういうことなんですね。
  402. 大西しげ子

    ○公述人(大西しげ子君) そうですね。
  403. 磯村修

    ○磯村修君 終わります。
  404. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 まず、大塚公述人にお尋ねいたします。  先ほど先生から専ら憲法との関係で自衛隊は違憲である、海外派遣はやるべきでないという御趣旨の御発言がございました。これはこれとしまして、憲法を一歩離れて考えてみるときに、軍事力一般の概念として、侵略、そして自衛のための軍事力というのがあると思うんです。もう一つの概念として、この二つに属さない第三のカテゴリー、つまり国権の発動としての武力の行使だとかそういうことを目的としない軍事力というのがあるのかなと。この説というのは、実は法制局長官をされていた林修三さんなどもこういう説をとられているようであります。  私は、先ほど御紹介昭和二十一年六月当時の憲法論議のときには、そうした第三のカテゴリーの存在というのは意識されていなかった時代であろうと。しかし、今日は相当状況が変わってきたということもあり、我々としては積極的にこの問題を考えなければいけない、そういうテーマであり時代になったんではないかと思うわけです。  そういう認識のもとにお尋ねしたいと思うんですが、第一番目は、第三のカテゴリーというのを先生は認められるのかどうか。もう一つは、この分野に参加する自衛隊でもその存在はやはり違憲だというようにお考えなのか。二点お伺いします。
  405. 大塚勝

    ○公述人(大塚勝君) 私は先ほど少し政府に失礼な意見をるる申し上げましたけれども、私の意見の基本は、現行憲法内におけるああいう形の軍隊は違憲だろうというのが私の結論なんです。  ただ、戦後もう四十数年になりました。憲法が制定されたころからもう大変に情勢変化しているわけです。国民の中にも、何%か私はわかりませんけれども、現在の自衛隊の存在を合憲として認めるような意識も芽生えてきていると思うんです。しかしその意識が芽生えてきているというのは、専守防衛、非核三原則、シビリアンコントロール、あるいはGNP一%の枠内というふうな、攻撃的な軍隊ではないからだろうと思うんです。恐らくそれぐらいならいいんじゃないかという意識じゃないかと思うんです。外に出ていくということはまた別問題だと私は理解をしておるんです。  そんなことで、私自身の考え方は、憲法論を離れれば防衛のため、自衛のための軍というのはやはり必要なんじゃないかという気はします。どの程度ということになるとまた別問題です。それは私の憲法論を離れた私の考え方ですから。  それから、今第三のとおっしゃることなんですけれども、ちょっと私のイメージとしてよくわかりません。どういうものなんだろうかというのはちょっとわかりません。先生は先ほど観念的には自衛のための軍隊、あるいは侵略のための軍隊というようなことをちょっとおっしゃいましたけれども、その区別というのはどんなものでしょうか。軍隊というのはそもそも戦う集団ですから、自衛のための隊隊とか侵略のための軍隊というような区別は私はできないんじゃないか。あくまで侵略をしないようにどういうふうにやるか、侵略的な面を出さないにはどうしたらいいかということしかないんじゃないかというような気がいたします。  粗雑な憲法論でありますので、誤解もあったかもしれませんが、あくまでも私が主張したかったのは、現憲法内でこれだけの大軍隊を持つというのはいかなる意味においても考えられないということを強調したかったわけであります。  これから日本の進む長い道のりの中ではどうしてもいろんな問題が出てくると思うんです。今言ったような第三国の平和維持活動に協力をしなければならぬというような問題も出てくると思うんですが、私は少しこの法案は性急過ぎるんではないか。確かにカンボジア問題があるから急いでやりたいというのはわかるんですけれども、目先のことを余り考える必要はなくて、二、三年はやはり憲法問題を含めて自衛隊をどうするかを議論しなきゃならぬと思うんです。何らかの結論を出した上で国際貢献考えるべきじゃないか、基本的にはそう考えております。  以上、お答えになったかどうかわかりませんが。
  406. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 高池公述人にお願いいたします。  先ほど、自衛隊PKO派遣することは憲法の面からも何ら問題がない、しかし国論が二分しているような状態の中では、これに一定の方向を与えるために国会決議で決着を図ったらどうかという御提言がございました。私も大変有意義な御提言だと受けとめた次第でありますけれども、この論をもう一歩進めて言えば、例えば安全保障基本法というような、ドイツなんかで取り入れているやり方ですが、そういうやり方を通じて自衛隊の存在の違憲、合憲の問題、あるいは国際貢献のあり方について方向を見出すというのも一つの方向ではないか、私はそう思っているんですが、先生はそういう考え方に対してどのような御所見なのか。  もう一点は、アメリカでの御生活が長いと伺っておりますので、例えばアメリカなんかで憲法にかかわるような問題が出た場合には、どのようにしてそれを処理されているのか。この二点、お尋ねいたします。
  407. 高池勝彦

    ○公述人(高池勝彦君) 先ほど自衛隊をめぐって国論が分かれているのは不幸だということで、国会決議はどうかと申し上げたんですが、今先生からお話のあった、ドイツのような新しい法律をつくるということももちろん結構だと思います。ただし自衛隊法というものがありまして、自衛隊法をつくるのに当然国会審議されて議決されたのではないかというふうに思います。  それからアメリカ憲法改正なんですが、日本憲法が制定されてもう四十数年たって一度も憲法改正が行われていない。これはもちろん世界では、全部知っているわけじゃありませんが、私の知っている限りでは日本だけでして、日本以外に憲法改正が非常に難しい国というのはアメリカなんです。憲法改正が非常に難しい国なんですが、アメリカは二百年間に約二十回ぐらい憲法を改正しております。  私、アメリカが長かったといってもたった三年間でしたので、そんなに詳しくはないんですけれども、私がいる当時も憲法改正の議論がありました。何の問題だったかちょっと記憶にないんですが、それはたまたま憲法改正が通らなかったと思います。ただしその前、戦後この四十年間にも四回ぐらいいろんな憲法改正が通っております。かなりアメリカ憲法改正は難しいんですけれども、まず議会で承認されて、かつ各州の批准が要りますので、最終的には否決されたという事例もあります。しかし、それでも約十年に一回ずつ憲法改正が行われている。  それが本来の民主政治のあり方でありまして、日本も何か自衛隊が本当に憲法違反であればやはり廃止すべきであるし、自衛のために軍隊が必要であれば、先ほど大塚先生からもありましたように、憲法議論を重ねて憲法にそれを明瞭にするというふうにすべきだと思っております。
  408. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 滝沢公述人にお尋ねいたします。  先ほど自衛隊は大きくなり過ぎた、縮小すべきであるという御趣旨の発言がございました。世界情勢が大きく変わっているわけでありますから、日本として国と国民の生命、安全を守るという観点から、あり方を見直すのは当然のことだと思います。  御指摘のように、世界軍縮の方向へ向かっているのはそのとおりだと思いますが、それと同時に集団的安全保障という考え方が芽生えつつあり、広がりつつあるのも裏腹の関係として出てきているのではないかと思うんです。  現行の憲法で、これに日本が参加できるのかどうか。多くは恐らく参加できないと。集団安全保障の中身もまだ決まっていないわけですから、はっきりした概念がとらえられていませんから厳密に言うのは困難かと思いますが、日本が将来軍縮した場合に、国と国民の安全を守るために、国連の集団的安全保障体制の中に積極的に参加するべきだとお考えなのかどうか。憲法はさておいてです。お尋ねいたします。
  409. 滝沢剛

    ○公述人(滝沢剛君) 非常に難しい御質問で、ちょっと答えにくいんですが、私はそれぞれの国に自衛権があるということはもう定説になりつつあると思いますので、そういう角度から考えたときに、必要によっては集団的自衛権があってもいいと思うんです。ただこの場合に、どういう組み方をされるのか、これが明らかでないと、あるいは目的が何なのかというのが明らかでないと、軽々に集団的自衛権はあってもいいんじゃないか否かというのは、現状の中では私はちょっと一言いにくい。やはりその場合も、国民的合意を得られるという前提がなければ、これはまた結論的に言えないことだというふうに私は思います。
  410. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 もう一問、大西公述人にお尋ねいたします。  御存じのとおり、カンボジアは今手を引けば再び戦乱の世に戻るかもしれないという状況の中で、やっと平和の回復、維持、復興の方向へ歩み出しているわけです。今、逆戻りをさせないためにUNTACが一生懸命努力をしている最中ということであり、そのUNTACの活動に、日本にもぜひPKOに参加してもらいたいという要請が来ているんだと思います。  そういう意味で、私は平和というものはだれかが手を差し伸べなければ維持できないという平和もあるのではないか。つまり、つくる努力をしなければ実現しない平和だとかそういう平和もあるのではないかと思うんですが、公述人は平和という概念をどういうふうにとらえられているのか。  二つ目の質問ですが、日本は人のつくった平和は享受するが平和づくりには参加しようとしないという非難が出てくるのではないか、もしPKOに参加しない場合、と思うんですが、公述人はこの点について、やっぱりPKOはごくごく限られた部分にするべきだとおっしゃられるのか、お尋ねしたいと思っております。
  411. 大西しげ子

    ○公述人(大西しげ子君) カンボジアの問題は、私も先ほど申し上げたんですけれども、やはり具体的にもうアジアに出ていくという問題になっていくわけですから、これは大変な問題じゃないかなと思います。  それで、確かに明石代表が要請をされましたけれども、また一面では、国連のガリ事務総長は一応今回はもう組織ができているということですが、カンボジアの問題で見てみますと、参加している国々というのが五十カ国ぐらいあるんですけれども、そこを見てみますと、その国々と日本というのはやはりすごく違うと思うんですね。日本というのは直接そこに戦争中入っていった国、そういう日本というのはやはり慎重にしなければならないんじゃないかと私は思うんです。  ですから、先ほども言いましたように、ほかの部門で、カンボジアの生活基盤をつくるとかいろいろ民生の部門とか、そういうところでやはり貢献すべきじゃないかと私は思います。  平和の概念と聞かれますと、なかなか難しいんですけれども、やはり日本憲法前文に書いてあるような、世界のすべての国々が本当に協調して生きていけるような、それが私の平和の概念でありまして、そのために、そうですね、ちょっとやはり難しくて私お答えできませんね。
  412. 藤井孝男

    ○団長(藤井孝男君) これにて公述人に対する質疑は終わりました。  この際、公述人の方々一言御礼を申し上げます。  皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は、本委員会の審査に十分反映してまいりたいと存じます。本日は、御多忙中のところまことにありがとうございました。派遣委員を代表いたしまして重ねて厚く御礼申し上げます。  これにて会議は滞りなく終了いたしました。おかげをもちまして我々が遺憾なく所期の目的を果たし得ましたことは、ひとえに本日御出席くださいました公述人の皆様の御協力のたまものと深く感謝申し上げる次第でございます。  また、本地方公聴会のため種々御高配、御尽力を賜りました関係者各位に厚く御礼申し上げます。  傍聴の方々にも長時間にわたり御協力いただき、まことにありがとうございました。重ねて厚く御礼申し上げます。  これにて参議院国際平和協力等に関する特別委員会新潟地方公聴会を閉会いたします。    〔午後零時四十六分散会〕