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1992-05-12 第123回国会 参議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第7号
公式Web版
会議録情報
0
平成四年五月十二日(火曜日) 午前九時三十五分開会 ――
―――――――――――
委員
の異動 五月十一日
辞任
補欠選任
仲川 幸男君
井上
章平
君 森山 眞弓君
狩野
安君 三上 隆雄君
小川
仁一
君 針生 雄吉君
中川
嘉美
君 五月十二日
辞任
補欠選任
古川太三郎
君
磯村
修君 ――
―――――――――――
出席者
は左のとおり。
委員長
下条進一郎
君 理 事 上杉 光弘君 岡野 裕君 田村 秀昭君 藤井 孝男君 佐藤 三吾君 谷畑 孝君 矢田部 理君
木庭健太郎
君 吉川 春子君
井上
哲夫君 田渕 哲也君 委 員
井上
章平
君 板垣 正君 尾辻 秀久君 大島 慶久君 合馬 敬君
狩野
安君
鹿能
安正君 木宮 和彦君
須藤良太郎
君 関根 則之君 永野 茂門君 成瀬 守重君 西田 吉宏君 野村 五男君 星野 朋市君 真島 一男君 翫 正敏君
小川
仁一
君
喜岡
淳君 國弘 正雄君 小林 正君 櫻井
規順
君 竹村 泰子君 角田 義一君 田 英夫君 細谷 昭雄君 太田 淳夫君
中川
嘉美
君 立木 洋君
磯村
修君 猪木
寛至
君
事務局側
常任委員会専門
辻 啓明君 員
参考人
国際連合カンボ
ディア暫定機構
明石
康君 (
UNTAC
)
務総長特別代表
――
―――――――――――
本日の
会議
に付した案件 ○
参考人
の
出席要求
に関する件 ○
国際連合平和維持活動等
に対する
協力
に関する
法律案
(第百二十一回
国会内閣提出
) ○
国際緊急援助隊
の
派遣
に関する
法律
の一部を改 正する
法律案
(第百二十一回
国会内閣提出
) ○
国際平和協力業務
及び
国際緊急援助業務
の
実施
等に関する
法律案
(
野田哲
君外三名発議) ――
―――――――――――
下条進一郎
1
○
委員長
(
下条進一郎
君) ただいまから
国際平和協力等
に関する
特別委員会
を開会いたします。
参考人
の
出席要求
に関する件についてお諮りいたします。
国際連合平和維持活動等
に対する
協力
に関する
法律案
、
国際緊急援助隊
の
派遣
に関する
法律
の一部を改正する
法律案
及び
国際平和協力業務
及び
国際緊急援助業務
の
実施等
に関する
法律案
、以上三案の
審査
のため、本日の
委員会
に
国際連合ガンボディア暫定機構事務総長特別代表明石康
君を
参考人
として
出席
を求めたいと存じますが、御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
下条進一郎
2
○
委員長
(
下条進一郎
君) 御
異議
ないと認め、さよう
決定
いたします。 ――
―――――――――――
下条進一郎
3
○
委員長
(
下条進一郎
君)
国際連合平和維持活動等
に対する
協力
に関する
法律案
、
国際緊急援助隊
の
派遣
に関する
法律
の一部を改正する
法律案
及び
国際平和協力業務
及び
国際緊急援助業務
の
実施等
に関する
法律案
、以上三案を一括して
議題
といたします。 本日は、
明石参考人
から御
意見
を聴取し、同
参考人
に対する質疑を行うことといたします。 この際、
明石参考人
に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多忙のところ本
委員会
に御
出席
いただきまして、まことにありがとうございます。
委員会
を代表して厚く御礼申し上げます。
明石参考人
からは
忌憚
のない御
意見
を承りまして、今後の
審査
の
参考
にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。 議事の進め方でございますが、まず、
明石参考人
から三十分程度御
意見
をお述べいただき、その後、
委員
の
質問
にお答えいただく
方法
で進めてまいりたいと存じます。 それでは、
明石参考人
に御
意見
をお述べいただきたいと存じます。
明石参考人
。
明石康
4
○
参考人
(
明石康
君) ただいま
委員長
から御親切な御紹介にあずかりました
明石
でございます。 ただいま、ニューヨークの
国連本部
から明日
カンボジア
に帰るわけでございますけれども、その途次東京に寄らせていただきまして、
PKO協力法案
という非常に重要な
法案
の
審議
をなさっておられるこの参議院の
委員会
の場で、私なりに見ております
カンボジア
における
国連
の
役割
、
任務
、当面しておる問題、課題その他について、できるだけ
忌憚
なくお話し申し上げたいと存じます。 私は、ただいま
審議
中の
法案
の内容とか詳細は存じておりませんので、その点についての御
質問
には十分にお答えできないと思いますけれども、
UNTAC
というものの
性格
、
国連
の
平和維持活動
の実態、その中での
UNTAC
の位置づけといったようなものについて申し上げて多少の御理解を得ることができれば、その文脈の中での
法案
の意義なり
目的
なりというものがある程度浮かび上がってくるのではないかというふうに期待申し上げております。 御
承知
のとおり、
UNTAC
というのは、基本的には昨年の十月二十三日に
パリ
で締結されました
パリ協定
というものを基づいております。
パリ協定
は、御
承知
のとおり、
安保理
五
常任理事国
であります。アメリカ、イギリス、フランス、それから
ロシア
と
中国
という五カ国と、
カンボジア
における
紛争
、
戦争
の主体であった四派の
代表並び
に
ASEAN諸国
、
ベトナム
、
ラオス
、それから
カンボジア和平
について大きな
役割
を担ってまいりました我が
日本
と
オーストラリア
、こういったような国が
中心
になりまして結んだものでございます。これをまた
国連
の
安保理事会
がさらに承認いたしまして、
事務総長
のことしの二月の
報告
に基づいて
UNTAC
を設立するという
決定
がなされましたのは二月の二十八日、
安保理決議
七四五においてそれが行われて
正式発足
の
運び
になったわけでございます。 三月十五日になりまして、私は
UNTAC
の中枢になる
局長クラス
七名と、それから
軍事部門
の
司令官
に任命されました
オーストラリア
の
サンダーソン将軍
とともに
現地プノンペン空港
に立ったわけでございます。それ以来現在に至っておりますけれども、約四千名の
文民
並びに
軍人
が
UNTAC
の
活動
に参加して現在に至っております。二月の
事務総長報告書
にありますとおり、最終的には
軍人
一万五千六百人、
文民警察
三千六百人、
文民
約三千人、ローカルの
カンボジア人
約六万人を
UNTAC
は包含する予定でございます。
予算面
を申し上げますと、
国連
の
PKO
に関する特別の
予算枠
がございますけれども、これは義務的な
分担金
の
方式
で分配されるわけでございます。その額は最終的には決まっておりませんけれども、当初は十九億ドルと思われておったわけでございますが、十八億ドルにやや弱というところが
分担金
の総額になるだろう。これは
UNTAC
の全期間約十八カ月の総
予算
でございます。今
国連
では、
予算
と
行政
に関する
諮問委員会
というところで
UNTAC予算
が
審議
されておりまして、来週の月曜日、十八日には
国連総会
の第五
委員会
にこれが上がってきて、来週中には
予算
が採択されるという見込みでございます。 しかしながら、
UNTAC
に関しましては、ああいう二十年の戦火と
悲劇
の中で
インフラ
その他もほとんど完全に破壊されてしまった国でありますし、この六月に入りますと
雨季
になりまして交通その他の便宜が非常になくなってしまいますので、
国連
としては極めて異例のことではございましたけれども、二億ドルの当初
立ち上がり予算
をともかくも
総会
によって許可されました。この
立ち上がり
の二億ドル
予算
も
国連
の
総会
の来週承認します最終的な
予算
の一部に充当されます。 そのほかに、
難民
の
帰還
に関する約一億ドル余りの
予算
、正式に言いますと一億一千六百万ドルと、それからそれを除きました
カンボジア
の
復旧
、衛生、
初等教育
、
農業改革
、
道路
、橋その他の修復、その他緊急的な
復旧
に要します
予算
約五億ドル、
難民帰還
と
復旧部門
を足しますと約六億ドルの
予算
がまたさらにこれは拠出の形で各国からの寄附が予想されております。したがって、合計しますと約二十四億ドルという
予算
になります。 そういう
意味
では
国連史
の中でも画期的な大きな
平和維持活動
であるということが言えると思いますけれども、私はこの
UNTAC
の
特徴
は決して
予算規模
とか陣容の大きさというところにあるものではないというふうに考えております。
UNTAC
の
特徴
はむしろ極めて多面的なその
活動
の様相と、
国連
が与えられておる極めて大きな特殊な
権限
という点にあるのではないかと考えております。 それで、小さい
意味
での
平和維持活動
では
UNTAC
は決してありません。
平和維持活動
は、
国連
のなす少なくとも七つの多面的な
活動
の一部であるということが言えると思うのでございます。そういう
意味
では、これは平和の
維持
の面もありますし、新しい平和を
カンボジア
につくるという
平和造成
の面もございますし、それから
カンボジア
の民生を向上させ、新しい繁栄の状態に
カンボジア
を導いていくという
平和建設
の面、英語で言いますとピースキーピングとピースメーキングと
ピースビルディング
という三
局面
から成り立っておる、そういう
複合PKO
であるということが
性格
の
特徴
であると言えると思うのでございます。
国連
は、こういうような暫定的な統治を旧
植民地
ではやったことはございますけれども、
独立国
に関してやったのはこれは前代未聞でございます。 それで、
行政監視
、
監督
ということが
一つ
ございまして、これは何のためにやるかといいますと、来年予定されております
公正民主選挙
に至るまでの間、中立的な
雰囲気
を
カンボジア
に保つ。四派のうちのどの派を有利にするのでもなく、どうしても中立的な
雰囲気
を保つことが
選挙
の前提であるということで、外交、国防、財政、情報並びに国内の
治安
という
五つ
の
部門
に関しましては
国連
は直接の
管理権限
を与えられております。そういうものを政令とか規則をつくり、
調査
、
監督
をやり、必要に応じては勧告を発することによって
行政
に目を光らすということをやるわけでございます。 それから第二には
人権
の擁護でございます。御
承知
のとおり、
カンボジア
の特に
ポル・ポト派支配
の
時代
には大変な
悲劇
がございまして、これは第二次大戦のときのナチの
残虐行為
にも匹敵すると言われますけれども、約百万人ないしはそれ以上の
犠牲者
が出たわけでございまして、そういったような
記憶
が人類の
記憶
にまだ生々しいわけでございます。そういうのを繰り返さないためにも
人権
というものを
カンボジア
の制度の中にくっきりと決めておこうということで、
国連
の
ガリ事務総長
が
プノンペン
を訪ねました四月の十八日から二十日の間にも、
世界人権宣言
に基づく
二つ
の
人権規約
にこの
カンボジア
の
最高国民評議会
の十二人のメンバーが
事務総長
の前で署名するという儀式がございました。 それから、ある
カンボジア
の
地方
で
農民
の土地の収奪、収用の
事件
がございまして
発砲事件
に至ったわけでございますけれども、
地方官憲
がそれに介入しておるということで、
国連側
から
文民警察
それから
人権担当者
が
現地
に赴きまして、初めは抵抗があって
調査
が妨げられたのでございますけれども、
カンボジア
の
プノンペン政権
の了承を得てさらに
現地
へ行って、
農民
の苦情の問題は解決に至ったわけでございます。その後も
国連
はいろいろな陳情を数多く受けております。そういう
人権
の問題が第二の
部門
。 それから
民主選挙
でございますけれども、
国連
は
世界各地
で
選挙
の
監視
をやって現在に至っておりまして、最近の例ではナミビアの
選挙
の
監視
、これには御
承知
のとおり
日本
からも教十名の
監視員
が
派遣
されたわけでございますけれども、
カンボジア
の場合、単に
選挙
を
監視
するのみならず、
選挙
を全く初めの
段階
から組織するという
任務
を担っております。そのことでこちらが
世界
の
選挙法
をいろいろ検討しまして、恐らく一番いいと思われるエレメントを摘出して、
選挙法
の
法案
を今
カンボジア側
に提示しております。 まだいろんな問題はございますけれども、この
選挙法
が採択されましたらことしの秋には
選挙人
の登録を行う、来年の四月末ないしは五片までには
自由選挙
を行いたいと思っております。その
段階
に至っては約一千名の国際的な
選挙モニター
に
監視
していただく。それからことしの五月からは約四百人の
国連ボランティア
、
青年協力隊
の
国連版
ともいいますけれども、その
人たち
にも
選挙
の準備を
カンボジア
における約二百の郡に二名ずつ展開して手伝ってもらうということになっております。 それからもう
一つ
の
部門
は、
文民警察
が行う法と秩序の
維持
でございます。
カンボジア
は、不幸なことに二十年の
戦争
の結果、
国じゅう
に
武器
がはんらんしております。そのことで
治安
が極めて悪い。田舎に行きますと山賊のようなものがよく出てまいりますし、
プノンペン
の町でも、自由な
政治活動
を行いたい
人たち
が何か恐怖と不安のために伸び伸びと
政治活動
ができないという
状況
がありますので、そういう
状況
に対しては、これは基本的には
カンボジア
の
地方警察
の
責任
なのでございますけれども、その
地方警察
十五人に一人ぐらいずつ
国連
から
警察
を
派遣
し、
治安
の
維持
というよりも、
治安
を
維持
しておる
地方警察
をモニターするという
役割
を担っております。この長はオランダから出ておりますルースという人が直接の
責任者
でございます。 それから第五の面としては
軍事面
がございますけれども、これはあくまでもその四派の間の
停戦
を厳しく
監視
するという面と、
外国軍隊
の撤退、これは一九八九年までに
ベトナム
は
カンボジア
から
軍隊
を撤退したと言っておりますけれども、本当にそうなのか。また、一度撤退した
軍隊
が
カンボジア
に帰ってきていないかということを
監視
するということで、
カンボジア
と
ベトナム
の
国境
九カ所、
タイ
との
国境
七カ所、
ラオス
との
国境
二カ所にそれぞれチェックポイントを設けて
監視
を行うという機能を果たします。 それから、ことしのこの六月の十三日ないしはその前後から
停戦
は第二
段階
に入ろうとしております。そのことによって四派約二十万の
軍隊
を五十五カ所の場所に集まってもらって、それからその
人たち
を登録し、軍備を全部取り上げ、
武装解除
、
動員解除
を行う。ミニマム七〇%の
人たち
を
動員解除
してしまうというのが
目的
でございます。
安保理事会
は、できればこれを七〇%以上に、一〇〇%までしてほしいということを言っておりますが、七〇%まで行って、そのできたモメンタムでもってできればそれ以上に進みたいというのが我々の希望でございます。 それから二十五万とか二十七万と言われております各派の
民兵
、こういったような
民兵
の
武装解除
を行い、
民兵
が持っております
武器
を破壊するという仕事もございます。そういうものを約一万五千のそういう
手KO
に関する一連の
軍人
が行うわけでございます。 こういう今申し上げたような
行政監視
、
人権
問題、
選挙
、それから
治安
の
維持
、
軍事部門
、この
五つ
の
部門
が
国連
の
通常予算
ないしは
PKO予算
によって賄われるわけでございます。 それから
最後
の
二つ
、
難民
の
帰還
、これは今でも
タイ側
に三十七万人の
カンボジア難民
がキャンプの中で待っておるわけでございますけれども、これをいかに
帰還
させ、自分の国に温かく迎えられ、
カンボジア
の
生活
にこれを溶け込ませるかということは、
国連
の
難民高等弁務官事務所
が
中心
に我々を助けていただいているわけでございますけれども、これをできればことしじゅうにやりたい。しかしながら、御
承知
のとおり、
地雷
の撤去その他が
予想外
に難航しておりまして大変なんでございますけれども、多少のおくれがあっても、我々はプランをある程度手直しすることによってともかくもこの三十七万の
難民
の
自由選挙参加
を達成したいと思っております。 それから
最後
の
復旧
でございますけれども、
国民
一人当たりの所得が百ドルくらいと言われておりますけれども、これはお隣の
ベトナム
に比べましても約半分、それからもう
一つ
の隣の国である
タイ
に比べましては十分の一以下というような
状況
にございます。アジアの
最貧国
と言われておりますネパール、バングラデシュ、こういったような国に比べてもなおかつ劣るような
状況
ではないかと思います。 私も二十五年前に
現地
におりましたけれども、二十五年前よりもはるかにひどい
生活
を
国民
は強いられておりまして、その
意味
で医療、
道路
、橋梁その他の
インフラ
の整備、修理、
教育
の向上、
農業改革
その他は焦眉の急でございまして、この六月二十一、二十二日に予定されております
日本国政府主宰
の
カンボジア復旧会議
というものにも相当大きな注目が浴びせかけられておりますけれども、この
復旧部門
も極めて
カンボジア
にとっては重要なものでございます。 それで、これからいろんな努力をしまして、さっきも申し上げたとおり来年の四月末か五月までには
自由選挙
を行いたいというのが我々の念願でございます。
自由選挙
の結果、
各州ごと
の
比例代表制
をもちまして百二十名の議員が
立憲議会
に
選挙
される
運び
になります。この
立憲議会
が三カ月以内に新憲法を制定して
立法議会
に変身いたします。その
立法議会
が新
政府
を選ぶ。新
政府
が樹立した
段階
で我々はめでたく
現地
から帰ることができるわけでございます。 果たして、この
タイムテーブルどおりUNTAC
の事業が進むのかという疑問がいろんなところから出されております。確かに
カンボジア
の
インフラ
は全くユーゴスラビアなんかに比べても問題にならないくらいひどいものです。それから、申し上げたような
難民
の
帰還
の問題が前に立ちふさがっております。それから、数はわかりませんけれども、数百万と言われる
地雷
、その多くはプラスチックであり木製であり、
地雷探知器
ではとても探知できないような
地雷
が一部ではなく
国じゅう
にばらまかれております。それから、今申し上げたとおり
雨季
の問題、そうでなくとも通行が極めて不便なところで
雨季
になったら国の半分くらいが水浸しになってしまうというような
状況
のもとで、果たして
任務
が達成できるのかという疑問はあります。
UNTAC発足
前にも我々の
行政部門
の
担当者
は、来年
選挙
まで持っていくのは無謀な話だ、やめた方がいい、一九九四年を目指した方がいいという議論がありました。 しかしながら、私と
事務総長
は、それは無理はあるだろう、決してこれがスムーズにうまくいくとは思えないけれども、今の
国連
の現状から見たら、やはり九四年までこれを引き延ばしたら
予算
からいっても
国連
にそういう金はないし、次から次と新しい
平和維持活動
、新しい
地域紛争
が噴き出しておる
世界
でもってそんなに
カンボジア
に長くかまけているわけにはいかぬ。それから、
国連
による
占領
であっても、どんなに良識のある
占領
であっても、
占領
というのは長引くと必ずその
国民
にいい結果はもたらさない、
国民
の依頼心を強めることにもなるかもしれないということで、来年一九九三年に強行するということに
事務総長
は
決定
し、私もそれについてはそうだと思っております。 それで、
暫定機関
はそういうことで新
政府
ができるまでの
機関
でございますけれども、
最高国民評議会
というのが四派から構成されておりまして、その
議長
は
シアヌーク殿下
でございますけれども、私はその
最高国民評議会
に必ず
出席
することになっておりまして、
シアヌーク議長
は私を
共同議長
だなんて呼んでいただいておるわけですけれども、
シアヌーク議長
と事前に協議を密接にいたしまして、
議題
の作成、実質的な提案はこちら側からさせていただくという形にしてやっております。 できるだけ
最高国民評議会
は
コンセンサス方式
で
決定
する、しかしそれが不可能な場合は
議長
である
シアヌーク殿下
の英断にまつということになっております。
シアヌーク殿下
が
決定
がどうしてもできない場合は、
国連
の
特別代表
である私の方にそのお鉢が回ってくるわけでございまして、
選挙方法
に関しましてもそういうことが一度ございましたけれども、私は、
シアヌーク殿下
に
決定
してほしいという声に対しましては、もう一度やっぱり
最高国民評議会
の皆さんの間でやってみてくれと。それでも不可能な場合は
国連
としては
権限
を行使するのにやぶさかではないけれども、基本的には
カンボジア人
の問題であるからそういう新しい民主的な習慣を身につけてほしいということで一度は押し返しております。
カンボジア
をめぐる大きな
状況
を申し上げますと、やはり今
ポスト冷戦
の
時代
でございます。
カンボジア
における戦乱がその典型的な例でございますけれども、ある
意味
で
米ソ
ないしは東西両陣営の
代理戦争
の感が
カンボジア紛争
の場合はあったんじゃないかと思います。しかしながら、
ポスト冷戦
の
時代
になって
米ソ関係
もよくなりましたし、ソ連という国はもうなくなりましたし、中・
ロシア関係
もよくなりましたし、
中国
と
ベトナム
の
関係
も修復しております。
ASEAN諸国
はこの一月末の
首脳会議
で
インドシナ半島諸国
に秋波を送っております。 そういったふうな新しい
状況
のもとで、やはり
カンボジア
における戦いのようなものは懲り懲りだという精神が新しい
雰囲気
、基調になっておるんだと思います。そういうことで、
カンボジア
をめぐる外的な
要因
は非常に
和平
のために楽観的な
要因
とみなしていいんじゃないかと思います。 しかしながら、
カンボジア
の中にそれでは平和のための
内的要因
があるかと申しますと、これは二十年血で血を洗った仲でございますからなかなか深い
不信感
というものは解消できないわけでございます。そういう背景の中で、
国連
としましては、この
過渡期
におきましてできるだけ中立的な、中立不覊な存在として四派の間の橋としての
役割
を果たしたいと思っております。また、
カンボジア
を今の
状況
から
民主主義
の
状況
に持っていくための
一つ
のクッションであるというふうにも我々は規定しております。それから、
カンボジア
に
民主主義
をもたらすための触媒にも
国連
はなり得るだろう。それから、
タイ
と
ベトナム
という、より大きな国に挟まれた
カンボジア
の
独立
を保障してやるということも
国連
の責務であろうかと思います。 今や
国連
の
PKO花盛り
の
時代
でございまして、今申し上げたように、
冷戦時代
にあったような
代理戦争
の
局面
は次第になくなっておりますけれども、その反面、歴史的に非常に根の深い新しい人種的、民族的、
宗教的紛争
がかま首をもたげております。
カンボジア
の場合、その両面があるのではないかと思います。
国連
としましては、そういう新しい
時代
に対応すべく懸命になって努力しているわけでございますけれども、さっきも申し上げましたとおり、次から次と新しい
政治決定
を
安保理
は行っておりますが、その財政的な裏づけになりますと、急にやっぱり
国連
の主要国の財布の開きぐあいが渋くなります。そういうことで、我々は
予算面
でも非常に苦渋しております。 それから、過去四年の間に
国連
が発足せしめた
平和維持活動
の数はその前の過去四十年の
PKO
の数よりも多いくらいでございます。そういう
状況
のもとで、
国連
の
行政
機能、ロジの機能はパンク状態にございます。そういう
状況
で、
カンボジア
におりましても、我々は
カンボジア
の中の問題に対処するのはやぶさかではありませんけれども、
国連本部
からの十分の支援が期待できないんじゃないかという、そういうフラストレーションに時々陥っておるのが実態でございまして、
事務総長
に対してもこれは率直に訴えておきました。 そういう
状況
にございますけれども、やはりこういう
ポスト冷戦
の新しい
時代
における
国連
の
役割
は大きくなる一方でございますし、
平和維持活動
も従前のような狭い簡単な単純な
平和維持活動
ではなくて、新しい外交的な合意、枠組みの中で要請される多面的な平和
活動
というふうになってきております。そういう
状況
のもとで、押しも押されぬ経済力その他を身につけた
日本
というものに対する期待もかなり大きくなってきておるということは事実だと思うのでございます。 そういう
状況
に現在あるということを序言的に申し上げて、これからの御
質問
にできるだけ私の知識の許す限りお答えしてまいりたいと思います。 御清聴大変ありがとうございました。(拍手)
下条進一郎
5
○
委員長
(
下条進一郎
君) ありがとうございました。 以上で
明石参考人
からの
意見
聴取は終わりました。 これより質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言を願います。
岡野裕
6
○岡野裕君 自由民主党の岡野裕であります。
明石
特別代表
には、
カンボジア
真の
和平
の実現と、はたまた自由
民主主義
に基づく新
カンボジア
国、それが誕生ということにつきまして、文字どおり全
世界
が注目する中で日夜にわたりますところの御
活動
、御努力、まことに御苦労さまでございます。私ども
日本
国の同胞の一人といたしましても、また同郷同窓の人間といたしまして心から誇りに思っている、そんな次第であります。 きょうはまた、代表、さぞや御多用でありましょうところ、貴重なお時間を御割愛いただき、本来でありますならば私どもがいささかのおねぎらいをしなければなりませんところ、ただいまは三十分にわたりましていろいろと御教示をいただきました。かてて加えまして、
PKO
法をここで実現をさせるためにこれからの我々の質疑にお答えを賜ると、本当にありがとうございます。厚くお礼を申し上げる次第であります。 さて、質疑に入るわけでありますが、代表も申されましたが、今日、冷戦構造の終えんが言われましてもう久しいものがあろうかと、こう思うわけであります。あの
米ソ
対立、核
戦争
もあるかというような脅威にさらされたあの
時代
を思いますと、ようやくこれでこの地球の上にも春が、平和が訪れるかと非常に楽しい気持ちでおったわけでありますが、はてさて現状はいかがでありましょう。今日の新聞、テレビ、あの血なまぐさいようなそういう報道は、いまだに毎日のように尽きることがありません。いや湾岸あるいはユーゴあるいはアフガンというようなことで、例を挙げても五指、十指を屈するというようなものであろうと思うわけであります。 ここまで
雰囲気
ができてきたのにまだ戦いか、争いかと、これは人間のさがだろうかというような気もせぬわけではないわけでありますけれども、私はその中でやはり一番大きな期待は、ちょうど時を同じゅうして、
明石
さんがおいでになるところの
国連
そのものの平和を開拓し
維持
するという機能が大きくクローズアップされてきた。あの湾岸におきますところの多国籍軍、これらもそうでありましょうけれども、とりわけ、やはり戦わない
軍隊
である、平和のための
軍隊
である、鉄砲は撃たないのであるというこの
PKO
が
世界
のいろいろな
紛争
に出ていかれ、その国々の皆さんからぜひ来ていただきたい、ぜひ何とかしてほしいという招きに応じ、結局その場に平和が現出をする、そういう
意味
合いで先般ノーベル平和賞もいただかれたという次第であります。 そんなことを考えますときに、私は、
PKO
、一九四八年にスエズ、パレスチナ、あの
PKO
ができて以来四十四年を数えます。先ほど代表もおっしゃっておられました、四十四年間に数えて二十六ないしソマリアを入れて二十その
PKO
が組織をされていると思うのでありますが、その二十六、その中で最近五年間に十四の
PKO
が創設されております。昨年の四月以来今日までわずか一年そこそこでありますけれども、七つでありましょうか八つでありましょうか、UNIKOM、西サハラ、エルサルバドル、アンゴラ、ユーゴのUNPROFORあるいはUNAMIC、
UNTAC
、そしてソマリア、数えると八つになるわけであります。代表、本当に
PKO花盛り
だなという感じがいたすわけであります。 そういうような
意味
合いで、戦わない
軍隊
である、平和の天使であるその
PKO
が
世界
の万人に愛されて、ぜひ来てほしいと、おおそうか、それならば多くの国が、よしきた、みんなで行こうというような
雰囲気
にあるわけであります。いや、
PKO
というのは
戦争
につながるものだ、そんなものはいかがなものであろうかなどと言っている国はどこかの国しかない。みんなが来てくれ、やあ行こうという
雰囲気
が盛り上がってきたこと、
明石
代表が非常に御努力をされた成果だと思っております。ひとつその辺につきましての
明石
代表の御感触を承れればまことに幸せであります。
明石康
7
○
参考人
(
明石康
君) 今、岡野先生が御指摘になりましたとおり、
国連
の
平和維持活動
というのははっきりした
目的
と
性格
と手段を持っております。 実は、
日本
において
国連
軍ないしは
国連
平和維持活動
が言われる場合に、いろんな形での今までの
国連
の介入のあり方があったものでございますから、やや議論に混乱が見えることがありますのは非常に残念なことだと思うのでございます。
一つ
には、朝鮮
戦争
ないしは湾岸
戦争
型の介入の仕方がございました。これは基本的には
国連
憲章第七章に基づく強制措置の一部というふうに考えてよろしいと思うわけでございます。
国連
憲章第七章第四十三条に決めております
国連
軍というのはまたちょっと違いまして、
国連
の
安保理
五
常任理事国
から成る軍事参謀
委員会
の指揮下におけるそういう強力な戦闘を行う、侵略を防止する
軍隊
の構想がその四十二条には盛られております。これはもう一九四七年、冷戦が始まると同時に、
米ソ
の対立のために事実上棚上げにされて現在に至っております。 それで、朝鮮
戦争
と湾岸
戦争
の場合はむしろ
国連
そのものの
軍隊
ではなくて、
国連
のお墨つきをいただいた、
国連
によって正当化された
軍隊
、総司令部も
国連
の外につくられ、
事務総長
の管轄下にはないという形でのアドホックな
国連
の軍というものがつくられたわけでございます。 ところが、岡野先生がいみじくもおっしゃったとおり、
PKO花盛り
の
状況
になっておる場合の
PKO
というのはそれとは違って、
国連
憲章第六章ないしは、正式な規定がないままに六章と七章の間の六章半のところにあるんではないかということが言われるものでございまして、確かに
軍人
は使用いたすわけでございますけれども、その機能は
軍隊
的機能というよりもむしろ外交官的な、調停官的な機能である、ないしは
警察
官的な機能であるということが言えると思うのでございます。 国際
紛争
、最近の場合は国内
紛争
解決のそういう
紛争
処理の一手段として、当事者ないしは当事国の合意ないしは同意を待って
派遣
される、せいぜい小火器を持つだけの、
停戦
監視
団の場合はそれさえも持たないという形での極めてソフトな
国連
、そういうものを
PKO
は担わされております。そういう
意味
では、第七章下のハードな
国連
と、第六章下の私がソフトな
国連
と呼んでおります
国連
のあり方の違いを念頭にはっきりと置いてお考えになることが極めて重要だと思うのでございます。 私は、これまた
国連
の
PKO
に関してはよく例え話をいたしまして、これはデパートのショーウインドーに非常に似ておるということを言うわけでございます。デパートのショーウインドーは、これを壊して中に入って泥棒しようとすればできないことはないわけでございますけれども、ショーウインドーを壊しますとガチャンと大きな音がして隣近所に全部わかってしまって、近所の
人たち
があたふたと駆けっけるものでございますから、なかなかデパートのショーウインドーを壊すような勇気を持った、ないしはばかな人間は出てこないわけでございまして、
国連
の
PKO
も本質的にはそういう脆弱なものかもしれません。 しかしながら、それを壊すことによって、その
PKO
に違反することによって、
PKO
は国際社会全体の意思を担っておりますから、
世界
じゅうを敵にすることになるというのが
PKO
というものの
特徴
ではないかと思います。
カンボジア
に関して言いますと、この
UNTAC
が配備されました三月十五日以前の
段階
でありましても、UNAMICという先遣隊が
現地
に行っておりました。その総兵力は数百人の小さなものでございました。しかしながら、UNAMICが配備された六カ所においては
停戦
違反の
事件
が一度も起きませんでした。コンポントムというところでのみ
事件
が起きたわけでございますけれども、それはコンポントムにUNAMICのチームが配備されてなかったからでございまして、それで本部要員を割愛しまして無理をしてコンポントムにもチームを
派遣
することにしたわけでございます。これは軍事
監視員
数名から成る小規模なチームでございましたけれども、
国連
旗を掲げ、
国連
の威信を背景にしている以上、これに手向かうというのは、軍事的には簡単なことなのでございますけれども、道義的、政治的になかなかできない。それが
国連
のやはりプレゼンス、存在というものの基本的な価値をあらわしておるんじゃないかと思います。 今度の
UNTAC
はそれに比べますとやや大規模なものになります。これは二十万に及ぶ正規軍並びに二十五万ないしはそれ以上の
民兵
の
武装解除
、
動員解除
の仕事がございますし、兵器の破壊の仕事も担っておりますので、仕事が大規模であるがゆえにそういう規模も、
国連
サイドの規模も大きくなるわけでございますけれども、
PKO
というものの本質的なことは、岡野先生がいみじくもおっしゃったとおり、基本的にはそういう前例にないような各
国民
の意思を代表した新しい
タイ
プの平和
維持
のための二十世紀が発明した新しい手段である。それは国際
紛争
解決の一手段であるというふうにお考えになってよろしいんじゃないかと思います。
岡野裕
8
○岡野裕君
PKO
は
世界
的なトレンドになっている、まことに花盛りでいいなというお話をいたしたわけでありますが、そんな
雰囲気
の中で、先般のロンドン・サミット、昨年でありますが、この
国連
の平和
維持
の機能、安全保障の機能を大いに高めようという決議がありました。またアメリカの今年一月の
安保理
サミットでは、我が宮澤総理が
PKO
の基盤というものも確保しなければならない、財政的な面の支援もみんなでやろうではないか、特に
PKO
が円滑裏にいくように協議グループというようなものをつくったらいかがであるかというような提言をいたしていることを
明石
代表御存じだと存じます。 というような中で、非常に花盛りになってまいりましたが、その
PKO
が非常に規模がどんどんどんどん大きくなっていると思うのであります。ユーゴの
PKO
一万五千人、それから今度の
明石
代表の
UNTAC
二万二千人、こう言われておりますけれども、まだ現在進行中が十一ぐらい
PKO
があろうか、こう思うわけであります。そうしますと全体で、いかがでありましょう、四万人から五万人ぐらいの
PKO
構成員というようなことになる。これは財政負担も大変であろうし、同時にまた要員をどうして供出ができるか、
明石
代表のお悩みの
一つ
ここにあろうかと思います。 先般も、衆議院のお話でありましょうか、ユーゴのUNPROFORの方と
UNTAC
の方でこれぞという要員の奪い合いがあったというように聞いているわけでありますが、今まで
PKO
の歴史の中で、八十カ国、五十万人がこれに参画をしている、こう聞いております。我々
日本
としましては、
国連
の
分担金
、
PKO
の
分担金
、任意拠出金、あるいはまた
PKO
の信託基金、これらも一生懸命
協力
をしようと我々も勉強しているところでありますが、要員の面の
日本
の貢献といいますか
協力
、いささか寂しいものがあるように手前自身は思っております。 ナミビア
選挙
管理で三十一人が行った、あるいはニカラグアに六人が行ったということでありますが、最初のキプロス、コンピューター技術員が一人であったでありましょうか。今の
UNTAC
、やはりこれも一人かな。もう今まで五十万人が行っているのに、
日本
は今まで全部累計して四十人ぐらいかな。五十万人も行っているのに
日本
が四十人だ、一万分の一以下だと。
日本
のこの経済力であります。
日本
の人口も少ない方ではありません。しかしながら、一万分の一とはどんなものかなと思うわけであります。 そういう要員で
協力
の少ないところが、ひとつ円滑裏にやるために協議グループを開こうではないか、あなたのところは未払い金が大きいよ、もう少し出していかがであるかというようなことを申しておると、何もせぬくせに、えらいおせっかいな生意気なこと重言うのではないかというような受け取り方があったりなんぞしないように我々もしなければならないなど、こう思っているわけでありますが、要員確保の面では
明石
代表、いかがでございましょうか。
明石康
9
○
参考人
(
明石康
君) ただいま岡野先生の御
質問
、要員確保の面、これはかつては余り
国民
にとって大きな問題ではございませんでした。
紛争
の数も少なかったわけですし、
国連
の出番も多くはございませんでした。それに小国で比較的中立的な国、ネパールとかフィジーとかガーナとか、そういう国は
国連側
から財政的な支持さえ得られれば、割と欣然として
国連
の
平和維持活動
に参加していただけたわけでございます。 ところが、先生は
カンボジア
の
UNTAC
とユーゴスラビアのUNPROFORとの競合
関係
みたいなものがありはしないかという御指摘がありましたけれども、まさにそういう問題が出てきております。 例をとってみますと、カナダなんでございますけれども、御
承知
のとおり一九五六年にカナダの当時のレスター・ピアソン外相と当時の
事務総長
のダック・ハマーショルドが、二人で合議しまして、合議というとちょっと語弊がございますけれども、相談した上で
国連
の最初の一九五六年のスエズにおける
国連
緊急平和軍というものが構成されたわけでございます。それ以来カナダというのは
国連
平和維持活動
の先頭にいつも立ってきております。 私も、この
カンボジア
の問題が起きたときにすぐ、カナダのようなすぐれた
軍隊
を持ち、公正な客観的な国際行動で評判のある国にぜひ
軍隊
を出してほしいと思って交渉したわけでございますけれども、カナダはそれ自身の国内の財政事情とそれからユーゴスラビアにかなり大きな大隊を出さざるを得ないということで、オタワでやってみたけれども、残念ながら
カンボジア
には兵たん部隊、中隊程度のものでございますけれども、これを
一つ
しか出せないということで、カナダの
国連
大使が済まなそうな顔をして私のところに説明に参りました。そういったような例は幾つかございます。 そういうことで、やはりヨーロッパ諸国にとってはユーゴスラビアが一番緊急な問題でございますし、地域的なそういう関心のゆがみというのは
世界
が単一になったといってもまだあるわけでございまして、そういう
意味
で、今までは
日本
に期待するものは財政的な期待というのが基本的なものでございましたけれども、要員の面でも
PKO
がこんなに大規模に、また各地域に
派遣
されるようになりますと、不足が目立ってまいっております。 それから
カンボジア
の場合なんでございますけれども、各国に要請される歩兵大隊、これは
カンボジア
は
インフラ
が整備しておりませんので、六十日全く自給自足で、糧食、水、その他も自給できる、またみずからテントを張って宿営できるような能力を持った、設備を持った一個大隊をそれぞれ要請しておるわけでございまして、アジアの国、ヨーロッパの国はほぼそれが可能でございますけれども、出兵してもよろしいと言った一部のアフリカの国なんかは、設備その他において
国連
の方がそれを購入してやらないと実際には
カンボジア
に配備できないということがございまして、アフリカの
一つ
の国は結局これをリストから外さざるを得ませんでした。 そういうふうなこともありまして、要員の単に数をそろえるということのみならず、その資質と準備のぐあいから言いまして、どこの国からでもとれるものではないという
状況
がございますので、やはり
国連
としましては、できるだけ多くのこま、しかもいいこまが欲しいというのが
国連
の
PKO
の
一つ
の課題でございます。
岡野裕
10
○岡野裕君 おっしゃるとおりであると思います。やっぱり
PKO
常連国といいますか、カナダがそうでありましょう、
オーストラリア
がそうでありましょう、北欧四国等あると思うのでありますが、しかし
PKO
は特定の幾つかの国がごそっと
協力
をするというのではなくて、
明石
代表、
PKO
オリンピックなどという言葉を聞いたことがあるわけでありますが、なるべく多くの国々がそれぞれの分に応じて、それぞれ人を出して
協力
をするというのが本来の建前であろうと、こう思っているわけであります。 さて、そんな中で
PKO
法案
、
明石
代表御存じのとおり今当
委員会
で
審議
中であるわけでありますが、やはり
日本
国も一億二千万、人口が多いわけでありますので、いろいろな説があるわけであります。これはやっぱり海外派兵につながるのだからどんなものであろうか、
戦争
に巻き込まれてしまうんだから反対だという声がないわけではありません。 我々が今考えておりますところの
PKO
というのは、大体建前としてこんなものだ。例えて言うならば、
停戦
の合意があったところだ。それから当該国の方からぜひ来てほしい、こっちが無理やり行くんじゃないよ、来てくれと、来ていただいて結構だということで行くのである。それから両者にくみしない申立てある。そうして武力の行使というのはもう行わないんだと。あるいは
PKO
が攻められてどうしようもないというときには、
PKO
業務を中断し撤収をするのであるというようなことを基本にわきまえて、
国連
の統括のもとに参画をするというような構想を描いているわけでありますが、マスコミその他、言をなす者がいろいろおりまして、同じざんごうの中で周りの
軍隊
が鉄砲を撃ってやっているのに我々だけ
協力
をしないで弾は撃たない、あるいは攻めてこられたから、ほかの国が頑張っているのに
日本
だけは退却だ、すたこらさっさと逃げなければならない、そんな非現実的なことがあるかと。本当に「指揮」が滑ったの「コマンド」が転んだのというようなことがかまびすしいというようなことが新聞を見るとお感じ取りいただけると思うのであります。 そういうような
意味
合いで、
明石
代表いかがでありましょうか、かつてのことであつものに懲りてなますを吹くとか、重箱の隅をつづいているような議論だというような言われ方がないわけではありません。しかし、今お話をしましたような、我々が概念しておりますような
PKO
は
五つ
のこういう種類のものだというのは
日本
だけのものでありましょうか。やっぱり
国連
PKO
というものがそもそもそういうようなものである、撤収ということがあるのである、武力行使はもう本当に原則として絶対やらないのである、それはやるとしても本当のまれのまれのまれのことであると、こう聞いているのでありますが、
国連
代表の
明石
さんからお考えをいただければまことに幸せであります。
明石康
11
○
参考人
(
明石康
君) まさに
国連
の
平和維持活動
に従事するそういう各国のユニットは、基本的に武力行使ということを
目的
としておりませんし、その能力も持っておらないというのが現状でございます。さっきも申し上げましたとおり、
国連
の
PKO
の影響力の基盤をなすものは国際社会、
国連
の声望を担い、その権威を背景に行動するからでありまして、決して持っておる兵力に依存しておりません。 さっきの例で、
国連
の先遣隊の例を申し上げましたけれども、
国連
としましてはできるだけ多くの国の参加を得ることにしておりますけれども、それは例えばたった五十人の
国連
の平和
維持
軍でございましても、それが十カ国から構成されておりましたら、本当は一カ国から構成した方が効率がいいのかもしれませんけれども、十カ国から構成されておった場合に、それに対して弓を引くというのはそれらの十カ国に対して弓を引くことになり、国際社会全体に敵対行為をとるという面がはっきりしてくもからでございます。そういう
意味
で、
国連
の
派遣
するそういう平和
維持
部隊ないしはユニットの持つ国際政治的な
意味
というものを肝に銘じておかなくてはいけないんじゃないかと思います。 確かに
国連
の平和
維持
軍におきましても、武力行使ないしはそれに近いことを行ったことが過去においてなかったことはございません。一九六〇年のコンゴの危機のときにそういうことがカタンガで一度ありました。しかし、それがやはり間違いであったということを
国連
も反省し、そういったようなことは二度と繰り返すまい。
PKO
というのは力を、武力を行使してはならない。武力を行使し、戦闘に巻き込まれることによって、
国連
はそういう戦闘者と同じレベルにまで落ちてしまう。客観的、公正なそういう道義的に上に立つ
軍隊
じゃなくて、そういう
紛争
当事者に落ちてしまう、そういうことではいけないという意識が完全に今では貫かれております。 そういう
意味
では
国連
は、岡野先生のおっしゃったように当事者、当事国の同意原則、そういうものに基づいておりますし、一九五六年の場合は
総会
決議、その後はほとんど
安保理決議
に従って
派遣
されるわけでございますから、これに抵抗する国内勢力ないしは国の場合は国際社会から手痛いそういうお仕置きを受けるというのは自明のことになっておりますから、
国連
の
PKO
はそういう
意味
では非常に道義的に精神的に強い存在であるということは言えるわけでございます。 また我々も、
国連
の
PKO
の
現地
における配備におきましては、これはさっき申し上げた
カンボジア
のコンポントムという地域における我々の
国連
軍、平和
維持
軍の使い方をごらんになればおわかりになると思うのでございますけれども、一月十五日以来、コンポトムという
プノンペン
北方の
カンボジア
中部で何度か戦闘行為がございました。これは四派の
軍隊
が入り乱れておる戦略的な要衝地帯でございます。ハイウェー六とハイウェー一二の交差点にちょうどありますし、地味肥沃な地帯でございまして、それから現在、乾季の終わりということで、
雨季
に入りますとそのとった土地を農地とし田んぼとして耕作できるわけでございますから、乾季の終わりには陣取り
戦争
がどうしても起こる伝統がございます。 そういうことで、コンポントムにも何度か戦闘がございました。しかしながら
国連
としましては、戦闘行為が行われている間はここに兵力を配備せずに、
停戦
が成立し、四派の
軍隊
の相互の分離、これが完了した
段階
で初めてインドネシアの一個大隊のうち二個中隊を
現地
に配備しました。そういうことで、既に交渉された
停戦
が恒久化し安定化するために
国連
の平和
維持
軍は
派遣
されておるわけでございます。 そういう
意味
で、
国連側
としては、武力の行使は本当に慎む、それから実際に戦闘状態が行われるところにはみずからを配備しない。ユーゴスラビアでもこの原則は貫徹されております。そういう
意味
で、
国連
は腰抜けではないかというふうな批判さえ浴びることがございますけれども、それはやっぱり湾岸型の、戦闘型の
国連
軍と、本質的には丸腰で
国連
の道義的な力を背景として行動する平和
維持
軍との基本的な
性格
の違いから出ることなんでございます。
岡野裕
12
○岡野裕君 我々が一生懸命これを可決成立させてしたいものだと思っている
PKO
日本
版が、
PKO
日本
版ではなくて
世界
の
PKO
の理念そのものだというお話を
明石
代表から聞きまして、一安堵、勇気ますます出た、そんな次第であります。 さて、先ほど数ある
PKO
の中で
明石
代表の
UNTAC
は在来の
PKO
とは一味違うものである、ただの平和
維持
ではない、ピースキーピングばかりではなくてメーキングでありビルディングであるというお話がございました。私は、やはり気宇壮大なこの
UNTAC
だな、なるほど
停戦
監視
もやる、
武装解除
もやる、パトロールもやるということではありますけれども、これから
難民
を
帰還
させるのである、それを
選挙
民ということで登録をさせて
選挙
をやるのである、その
選挙
のためには極めて自由な、表現の自由も確保された
民主選挙
でなければならない、そのためにはラジオもトランジスタラジオをたくさん配ったらどうだという同僚の御
意見
もあったりなどするほどで、そのために民主
政府
ができる、非常に大きいユニークな
PKO
だと、こう思っているわけであります。 その
意味
合いでも、これが成功するか否か、皆さんから渇望されている
国連
の
PKO花盛り
だと、それがそのとおりに完遂できるかどうか、いわば試金石の
一つ
だと、こう思っているわけでありますが、これだけ世紀の大事業である
UNTAC
に我々
日本
もぜひ参画をして、
日本
の
国民
子々孫々に至るまで語り伝えられるような、そういう成果を得たいものだと思っております。 同時にまた、
日本
が外交の方針ということで掲げております、
一つ
は
国連
中心
主義だ、
一つ
は自由主義陣営の中にくみするものである、もう
一つ
アジアの一員である、この三つの原則はそのまま今度の
UNTAC
に合致するものだと思っております。
国連
の
UNTAC
であります。
国連
中心
主義の
日本
だという
意味
であります。はたまた自由主義だ、自由、民主の
カンボジア
国をつくろうということであります。
カンボジア
は一衣帯水、
日本
の、アジアの同僚であります。そういう
意味
合いで、今の外交三原則は、口で言うんではない、なるほど実行で示すのだと、これが
UNTAC
に我が
日本
PKO
をお送りする一番基本である。言うならば、この外交三原則が試されている試金石、これが
UNTAC
だと、こう思うのでありますが、いかがでありましょうか。
明石康
13
○
参考人
(
明石康
君) 岡野先生が極めて雄弁におっしゃったとおり、私は
日本
の
国連
第一主義というものを具現する非常にいい、最高の、理想的な場が
カンボジア
ではないかと思います。 先生が今御指摘になりましたとおり、
カンボジア
の場合、単なる
平和維持活動
ではなくて、平和の造成、平和と建設、そういったようなものの一部として存在するわけでございます。そういう
意味
で、
国連
のサイプラスの
平和維持活動
のように何年も何十年も永続するような
活動
ではございません。
カンボジア
の国づくり、民主社会づくりというものが完成した上で
国連
はきれいに引き揚げるわけでございますし、そういう
ポスト冷戦
後のああいう小国の
独立
を守り、ここに
民主主義
をつくり、繁栄の基盤を確保するということは、
国連
にとってもやりがいのある仕事でございますし、アジアの非常に重要な国である
日本
にとっても決してこれをなおざりにできない、そういうケースだと思いますし、ほかの国々はやはり
日本
が
カンボジア
でどういうリーダーシップを示すのかというのを大変な期待を持って見ておるんではないかと思います。 私は先週、ワシントンに行っておりましたけれども、ワシントンでもそういう
意味
で、
日本
はいろんな点で
協力
してくれるし、湾岸
戦争
のときも財政的な拠出は大変なものであったと。しかしながら、何か
日本
という国はと見こう見してほかの国がどれだけやるだろうかということを見てからお金でも何でも出すので、せっかく出した巨額な金が
タイ
ミングを失しているがゆえに効果がないということを言っておりましたけれども、私は
カンボジア
の場合だけは少なくとも、
日本
がほかの国の後に付して、驥尾に付して行動するんではなくて、率先してリーダーシップを示してほしい、そういうふうに大いに期待しております。
岡野裕
14
○岡野裕君 世紀の大事業に我々
日本
もぜひ参画をしたい、こういう気持ちいっぱいでありますが、ただ、
カンボジア
の方で歓迎をしてくれるのかどうかというようなことが問題だという話もないわけではありません。やはり初めて出す
PKO
ならば、どこかもっと遠く離れたところから始めたらどうだという声があるわけでありますが、我々が最近聞きますところの
カンボジア
の意向でありますが、来日をいただいた
シアヌーク殿下
、あるいはフン・セン首相、それから
現地
におきますところのチア・シム
議長
でありますとか、サドリ代理、あるいは
オーストラリア
から行かれたサンダーソン
司令官
、やっぱり
日本
の
PKO
来てくれよと、自衛隊が来ていただいて結構だ、PKFでぜひやってくれよというようなことで大歓迎であると。過去にいろいろあった、いやいやそんなことを
カンボジア
国民
は考えておらないよ、
国民
も大歓迎だよという声をそういった要路の皆さんから聞いているわけでありますが、代表は地元
カンボジア
においでになるわけであります。そういう
意味
合いで、
カンボジア
八百万の皆さんの声もいろいろ入ってくる機会もあろうかと思います。こういった要路の皆さんの声は
カンボジア
一般の皆さんの声と遊離をしているのでありましょうか、いかがでありましょうか。
明石康
15
○
参考人
(
明石康
君) 私は、
カンボジア
に関する限り、
カンボジア
国民
で
日本
から
カンボジア
の
PKO
に人が参加するというのに反対する人は恐らく一人もないんじゃないかというふうに考えます。
シアヌーク殿下
もそういう
UNTAC
の代表に
日本
人が任命されたということを非常に何度も言葉をきわめて歓迎する趣旨のことを言っておられまして、その場にヨーロッパとかアメリカの大使連中がいて、私は、余りシアヌークさんが
日本
人とかアジアと言うものですから、かえってはつが悪くなりまして、いや自分は
国連
からの代表として来ておるんだということで言い直したわけでございますけれども、しかし、事
カンボジア
に関する限り、第二次大戦中のバッタンバン州の移譲に関して、むしろ私は
日本
が
タイ
の肩を持って
カンボジア
には恐らく不快感を与えたんじゃないかという懸念も持っておったわけでございますけれども、そういう過去の経緯は全くもう意に介しておらず、歓迎されるということは本当に問題なく事実だというふうに考えてよろしいと思います。
岡野裕
16
○岡野裕君 安心して結構だと、非常にうれしいお言葉でありがとうございました。 もう
一つ
は、
カンボジア
もそうだけれども、アジアの周辺国はどう思っているだろうかというようなことがちょくちょく問題になります。
日本
人はやはり見てくれを気にする
国民
であります。自分はこうだと思っても周りがどう思っているのかなと、どう見られるであろうか、心配りが細かいと言えば細かいのでありましょうけれども、右顧左べんじゃないかというような気がします。
中国
、韓国の要路の皆さんの考え方も大分変わってきた、一時は慎重にと言っていたけれども、大分変わってきたようだと。先般、
中国
工兵隊四百人が
現地
に行っている。その皆さんが、非常に我々もこの
PKO
に意義を感じて誇りと思って一生懸命やっていると。それから
日本
の
PKO
、決して反対するものじゃないよと、歓迎をするものだというような声があったと聞いているわけでありますが、いろいろ反省をしなければならない国、かつて
日本
は仏印進駐もあった。なるほどそうだと思うのでありますが、同じような経験は
日本
ばかりじゃないと思うのであります。 仏領インドシナと言われておりました。あのフランスは侵略の結果あの三カ国を領有した。一九四五年、
日本
軍が武装解体をした後も二年間ぐらいフランスは領有ということで三国と
戦争
をしていた、こう思うのであります。
中国
だって中越
戦争
というのがついこの間あった。
カンボジア
ではありませんけれども、近くでそういうことがありました。
タイ
、これは数世紀にわたって侵略云々ということがあります。それを反省した上ででありましょう。なれば率先して行かねばならないというようなとらえ方をこれらの国々はしている。過去にかかずり合うだけではなくて、そういうことがあればあるほど、懸念を払拭するためにも皆さんが一緒にやっている、その中に我々も入るのだと。その態度、行動によって周りの皆さんからも、いや
日本
は平和だということを認識してもらうのが一番の要請ではないかと、こう思っておるわけであります。 そのためにはいかがでありましょうか。北欧四カ国、
PKO
のための合同訓練
機関
を設けてあります。
日本
も、例えば東南アジアに近い沖縄あたりに
ASEAN諸国
の合同の
PKO
訓練所をつくるでありますとか、資材の集積場所、これも沖縄ならば便利であります、というようなことをするということで、アジアの国々の皆さんとともに
PKO
を我々も頑張るのであるというようなことも
一つ
の考えだと、こう思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
明石康
17
○
参考人
(
明石康
君) 今、岡野先生の御提案なすった
二つ
の提案でございますけれども、アジアにおける
国連
PKO
物資集積所の構想、私自身も大賛成で、いろんな場でそのことを申し上げてまいりました。私の冒頭発言の中で、いろいろ
PKO
を
カンボジア
に展開する上で挫折感が多かったと。それは
国連本部
側からの支援体制が十分じゃないためであって、いろんな物資の到着が滞っておるという事態に起因しておることだったわけでございますけれども、
国連
の場合、ヨーロッパのイタリーのピサに
PKO
のための物資集積所がございます。ここからアフリカ、中東、ヨーロッパにいろいろ物資が急速に運ばれる体制にございます。残念ながらアジアにはそういうようなところが
一つ
もございません。 私は、
カンボジア
にもう二カ月近くおりますけれども、なおかつそのプレハブのオフィスビルディングさえ
カンボジア
現地
に到着しておりません。そういうことで我々はしびれを切らしておるわけでございます。
国連本部
ともいろんな
意味
でけんかをして、一刻も早くいろんな物資を届けてほしい、いろいろ注文をつけておるわけでございます。
日本
のアジアに最も近い沖縄もその
一つ
の候補地であると思いますけれども、もしそういうところに
PKO
の資材集積地があったならば、アジアに将来起こり得る
地域紛争
に
国連
が速効型の体制を組めるという
意味
では非常に助かるんじゃないかと思います。 それから、
PKO
は決して一国のための
PKO
ではよくないんだと思うんです。私は、やっぱりアジアとの
協力
、和解のためにも、今回野先生は
ASEAN諸国
とおっしゃいましたけれども、
ASEAN諸国
のみならずアジア全体の国々の
PKO
の訓練所、研修所というものを我が国が資材面、資金面でも面倒を見ることによってつくってやる。そのことがアジアにおける
日本
の存在をまた一段と大きく描き出すんじゃないかと思います。 財政面での大きな支持もこれぜひ期待したいと思いますし、そのほかに、今おっしゃった
二つ
の集積所構想と
PKO
訓練所構想、これはぜひ国
会議
員の皆様方に引き続き御検討いただきたいと思っております。
岡野裕
18
○岡野裕君 そうでございました、ASEANではありません、アジアあるいは環太平洋全域というふうなことでいければ幸せだな。時間がなくなりました。
最後
に、やっぱり顔のある貢献をというような
意味
合いでお話をしたいわけでありますが、私まだ
現地
に行っておりませんけれども、
現地
に行かれた皆さんから聞きますと、
明石
さんの
カンボジア
UNTAC
の本部の前に三カ国の旗がずっと飾ってある。しかしながら
日本
の日の丸の旗がない、非常に寂しいというような思いで、
日本
も経済的に貢献しているじゃないか、技術、資材でやっているよ、ぜひ日の丸の旗も上げてくれよというような要望をなさった由でありますが、まあ、なかなかやはり人的貢献といいますか、
PKO
に参画をしているその国の旗だということで
日本
の日の丸はいまだしたと、こう聞いているわけであります。 やっぱり人的貢献であります。その場合に自衛隊は禁句だなと、だから
文民
でどうだというような声もあるわけであります。だけれども、湾岸のときもそうでありました。自衛隊じゃぐあいが悪い、まあ後方支援だ、
難民
輸送だ、ひとつJALさんどうだ、ANAさんどうだ、川崎汽船、ジープを運んでくれよとか、いや自衛医官を出すわけにはいかない、民間のお医者さんどうだと言いましたが、結局まあC130ぐらいでと。それもとうとう行けない、こうなったわけであります。 特に
カンボジア
は、代表おっしゃいました、もう二十年の抗争の後だ、
治安
もうんと乱れているのである、
地雷
がもう三百万発、四百万発というようなことではらまかれている。公務員だとか
軍隊
の給料も遅欠配だ、懐かしい言葉であります、遅欠配だと。そうして、一部そういう皆さんは盗賊化をしているのだ。
武器
や弾薬がもうあっちやこっちやちまたにあふれ満ちているというような中で、果たして
文民
がどれほどやれるであろうか。やれれば
文民
で結構でありますが、やあ、けが人が出た、どこかの国の軍医さんいませんか。やあダンプが壊れた、どこかの国よ助けてくれよ。いや宿舎がない、
日本
国は
生活
水準が高いよ、木賃宿じゃだめだよ、グルメはない。とんでもない話であります。 そういうような
意味
合いでは、この
国連
PKO
の中に
PKO
特別委員会
がありまして、
文民
参加の三条件というようなものがある。
一つ
は、即応態勢ができているか。もう二、三日でさっと行けるか。あるいは設備や装備が完全であるか。あるいは自分で防衛をするというような体制というものが完備をしているか。はた迷惑になってはならない、自己完結性がなければならないというようなことを聞いているわけであります。 そういったような
意味
合いで、日の丸の掲揚でありますとか、あるいは今の装備その他のいわゆる
文民
の三原則というような
意味
合いから、
最後
に代表から御指導いただければまことに幸せであります。
明石康
19
○
参考人
(
明石康
君) 今、岡野先生から御指摘のありましたとおり、
国連
の
PKO
活動
の幾つかの
局面
には確かに
文民
も使用できないことはございません。交通面、運輸面において、ないしは医療の面において利用できる余地は十分にございます。 しかしながら、岡野先生がいみじくも御指摘になったとおり、即応性という点、それからいろいろ備蓄その他の点で組織的な形で対応できるかどうかという点。それから
国連
のロジ部隊、兵たん
関係
の部隊なのでございますけれども、これ
カンボジア
のようなところですと六十日間の自給体制を持っていかないとだめなわけでございます。そういうことで例えばドイツの場合、医療隊を出してもらっているわけですけれども、これもまた軍の医療隊という形をとっております。それからインドからも医療隊が参りますけれども、これも、これまた
軍隊
の一部でございます。 そういう
意味
で、野戦病院をつくる体制というものがやっぱり
国連
としては、特に
カンボジア
のような
インフラ
の整備されてないところにおいては必要不可欠でございまして、その他の面では
文民
、NGOの活躍の余地も非常に多いのでございますけれども、今先生が申されたような即応態勢その他、そういう設備その他の面の必要性、自給・自生体制、それから自己の安全その他を守る、そういう条件、そういったような面からいいますと、やはり
軍隊
的な組織と経験を経た者が、機能的にはシビリアンの機能に近くとも組織能力の点からいってやはりそれに軍配を上げざるを得ないという場合も多々あるということは事実でございます。
岡野裕
20
○岡野裕君
明石
代表には、私のつたない
質問
につきまして懇切丁寧に御指導賜りましてありがとうございました。 これからもぜひ
世界
のため、
カンボジア
のため、
UNTAC
、立派に成功いたしますように御努力をなさいますよう、加えまして酷熱の地であります、ひとつぜひお体をおいといになりますようお願いをいたしまして、岡野裕、質疑を終わります。 ありがとうございました。
國弘正雄
21
○國弘正雄君
明石
代表、御足労を煩わせました。きょうこちらにお出ましを願うことになったのは、たしか自民党の皆さんがお呼びになって、私たちも
質問
をする折をお分からいただいたということでございます。 私は、私ごとになって大変申しわけありませんけれども、かつて
国連本部
で当時の
事務総長
にかなり長時間にわたってインタビューをするといったときに、
明石
さんに大変に御配慮をいただいてお世話になりました。これまた私ごとになって大変恐縮ですけれども、私が代表の一人でありましたある出版社から「
国連
ビルの窓から」という大変に興味深い御著書をかって出させていただいておる。また後一月ぐらいでございましょうか、今度は「
国連
から見た
世界
」という本を御出版賜る。私事にわたりますけれども、私としては大変にうれしいことでございまして、ついこの間も読売新聞の書籍広告を見ておりましたら、私がごく最近に出した本の隣に新しい「
国連
から見た
世界
」という
明石
さんの御著書の広告が出ておりまして、大変に懐かしく、うれしく思った次第であります。 今さら申し上げるまでもないんですが、
明石
さんは三十五年間
国連
におられたわけです。そして、五代の総長にお仕えになった。これはもう大変なトラックレコードでありまして、しかも今重責を負って
カンボジア
におられて、
国連
のお仕事をしておいでになる。大体、歴代の総長を見ておりますと、せいぜい二期で十年なんです。二期やられなかった方もおありになる。ところが、
明石
さんは三十五年という歳月を
日本
人として最初に
国連
にお勤めになった方として続けておちれるわけです。かつて国際連盟の次長として新渡戸稲造さんと杉村陽太郎さんが勤められた。これは杉村さんは外務省の大先輩であります。この方たちだって非常に短い期間しか次長としてお勤めにならなかった。 ただ、おもしろいのは、あのお二人とも岩手県の御出身なんです。そして、次長は秋田の御出身である。つまり、東北出身者が国際舞台で非常に見事なお働きをなすったということは、これは私、秋田だのあるいは御郷里の市内などに伺って話をさせていただいたときに、いつも、東北人というのは世の中の常識に逆らって大変に国際的な視野であるいは国際的な
活動
をしてこられた。
明石
さんがその一人のいい例であり、五千円札の新渡戸稲造先生がそのもう一人の例だというようなことを申し上げてきたわけです。とにかく大変なお仕事だったと思うんです。 ところが、御著書の中にも出ておりますけれども、長い
国連
の
生活
の中で、時には
国連
の仕事に懐疑的になった、あるいは絶望感を抱いた、やめようと思ったというようなことを述べておられるわけですが、例えばどういうときに絶望され、どういうときにやめたいと思われたか、そのあたりをお漏らしいただければ幸いです。
明石康
22
○
参考人
(
明石康
君) 國弘先生とは長い長いおつき合いで、先生と申し上げることさえもちょっとはばかられ、國弘さんと申し上げたいような親しい間柄を持たしていただいておるわけでございます。 東北から国際人が輩出するというお話が今ございましたけれども、私は郷里に帰りますと、半ば笑い話ですけれども、
二つ
の要件を東北人は備えておるからではないかと申すのでございます。
一つ
は、東北弁には例えば標準語にない音がございまして、イとエの中間音のイエといったような音があります。標準語で英語をしゃべろうとしますとイット・イズになってしまうんですけれども、東北弁でしゃべるとイェト・イェズとちょうどいいぐあいになる。そういう特殊な音があるということが
一つ
。それから第二のことは、東北人にとりましては標準語の取得が第一外国語の取得でございますから、第一外国語をマスターしてしまいますと、第二外国語、第三外国語の取得が心理的にずっと容易になる。こういう
二つ
の理由で、東北の雄物川とか米代川の水はハドソン川にもテムズ川にも続いておるんだ、したがって、ボーイズ アンド ガールズ ビー アンビジャスと言いますと、皆さん大いに喜んで奮い立つわけでございます。 今、國弘さんから、
国連
に奉職していろいろフラストレーションの時期があった、そういうことについての御
質問
がありましたけれども、私は
国連
というものは、偉い国際法学者がお書きになるような
一つ
のきちっとした制度であり機構であるというふうに思っておりません。
国連
というのは
一つ
の生き物である。
米ソ
が冷戦を交えておったころは、もう
安保理事会
は拒否権の乱用でほとんど機能できませんでした。それから一九六四年の
国連総会
は、まさに
国連
の
平和維持活動
の経費をめぐる
米ソ
の対立のために一度も表決さえできなかった非常に不幸な
総会
、そういう時期がございました。
国連
は非常に高い国際社会の理想、理念を掲げる場でもございますけれども、ある
意味
では非常に低次元の国際政治のどろどろしたものが常に漂っております。そういう
意味
で
国連
というのは、掲げる理想の高さと同時に、それを達成できない現実の無力感にさいなまれることが非常に多い場だと思うのでございます。 それから、
国連
というのは大きな機構でございまして、幾ら一介の青年が頑張ってもなかなか仕事を認められないということもございますし、そういう
意味
では、
日本
的な終身雇用社会、年功序列社会のなまぬるい心地よさというものとは全く別の職場であるんじゃないかと思います。私は、決して
国連
に奉職する人間に特殊な技能とか能力が必要だということを言っておるのではなくて、
日本
的な
意味
で、地味にいい勉強をし実力を備えつつも、なおかつ国際社会で働くだけの話学力と行動力を身につけるということが大事だと思うわけでございます。 私は国際人という言葉が大嫌いなんでございまして、すぐれた
日本
人こそすぐれた国際人になり得る、両者は全く違った存在ではないんだという確信を持っておりますけれども、過去の
国連
においては、
国連
自体がそういう矛盾に悩まされ、士気の落ち込む時期がございました。最近は幸い、岡野先生の言葉じゃございませんけれども、
PKO花盛り
でございまして、
国連
が
ポスト冷戦
の
時代
に入っていろいろ新しい要請を次から次とされておる、そういう期待感がございますから、ある
意味
では仕事をしても張り合いがあるのが事実でございます。 と同時に、さっきも申し上げたとおり、これだけの期待に果たして
国連
がこたえられるのか、財政的な能力は十分か、
行政
的な足腰は強いのかということになりますと、内部にいる者として必ずしも安心できない面があるわけでございます。そういう
意味
では、
国連
というのはほかの職場と同じく、栄光の時期もあるし悲惨な時期もあるということで、私は決して
国連
が高尚な職場だとは思っておりません。しかしながら、国際社会にとって使い道のある
一つ
の道具であり手段であるわけで、あがめ奉るべきそういう何か特殊なものではない。 私は、
日本
人にとっては
国連
に対するイメージは国際的に決して悪くないわけでございますけれども、
国連
をやたらに
一つ
の客体として美化したりロマンチックに考えずに、もっと
日本
の外交のために有意義に使い得る、国際社会で多数の支持を得るために説得し、これをリードし得る国際
機関
としてダイナミックにとらえる、そういう発想が必要であろうということを折に触れて言ったり書いたりしておるのが現状でございます。 そういう
意味
で、さっきも申し上げたとおり、
国連
は生き物である、生き物である以上病気にかかることもありますし、さっそうとして働く時期もありますし、失意に悩まされることもあるわけでございます。 しかしながら、現在の
国連
は明らかにいろんな可能性、ポテンシャルを持っている場だと思うのでございます。そのためにもそのポテンシャルを生かすのに、
日本
という我が国はいろんな
意味
で
国連
を支え、これを強力ならしめ、今までのような大国主義、国と国とのバイラテラルな形で外交が決まっていくような事態から、本当にマルチラテラルな、多角的な、グローバルな観点から安全保障なり、軍縮なり、開発なり、環境問題なり、そういうものに取り組める新しい時期に立ち至っておるんじゃないか、そういう
意味
では絶好めチャンスである、これを逃したら同じようなことはもう二度とあらわれないかもしれないという、一面では大きな期待と、一面では危機感を私は持っております。
國弘正雄
23
○國弘正雄君 去年の大みそかに
ガリ事務総長
に口説かれなさって、若干逡巡されたようですけれども、初めはその任にあらずというふうにお考えだったようですが、最終的に決意されたそのいきさつを伺おうと思ったんですが、今お答えがありました。 ただ、そのときに逡巡された
一つ
の理由に、シアヌークさんのようなエネルギッシュな人とあれこれやるのは大変だというような趣旨のお言葉があったんですね。かつて、一年半にわたって
タイ
国と
カンボジア
のいわゆる
国境
紛争
をめぐって、バンコクとそれから
プノンペン
を絶えず往復なさったというような、
カンボジア
問題あるいは
カンボジア
の
国境
紛争
の問題については非常に豊かな原体験をお持ちなわけですが、そのシアヌークさんという人が、私の聞いているところではどうも抜きがたい対日
不信感
のようなものを、今はどうか知りませんけれども、かっては持っていた。かなりそういう趣旨の発言を私も見たり聞いたりしたことがあるわけですね。 一体なぜ
日本
に対してああ厳しいんだろうというふうに思う
一つ
の理由は、先ほどちょっとお触れになりました、例の
戦争
中に
カンボジア
の三分の一近くを
タイ
国に渡してしまう。随分乱暴なことをしたものだと思うんですが、もしその
記憶
に対して
カンボジア
の人が恨みつらみを抱いていてくれないとすれば、彼らの寛仁大度に私どもとしては本当に感謝せにゃいかぬというふうに思うんですけれども、シアヌークさんという人がどうも対日
不信感
を持っていたというふうなことがあって、大変だなというふうに私は、ほかにも大変なことがたくさんあるわけですけれども、
一つ
の大変なことではないのかなと。しかも、あのSNCというのもかなり混成旅団的な複雑な背景を持っておりますし、フン・センさんのことを
カンボジア
の首相、
カンボジア
の首相と、これはマスコミを含めてよく言いますけれども、実際は
プノンペン政権
の首相でしかないわけでございますから、
シアヌーク殿下
の存在というものが今後随分といろいろなときに
明石
代表にとっては大変なことになるのではないか。 しかし、シアヌークさんそのものは別としても、あの非常に複雑な構成を持っているSNCというものの上にある種の統治機構としてお座りになっていらっしゃるわけですが、そのあたり言ってみれば連合政権と言うのでしょうか、あるいは幾つかの派閥から成り立っている政権とでも言うのでしょうか、そこをうまくやっていらっしゃるのは大変な御苦労があると思うし、例えばフン・セン氏だけの言うことを聞いて、フン・セン氏の
意見
が全
カンボジア
の
国民
の総意であるなどと思ったらとんでもない間違いだと私は思いますし、そんなこんなで御苦心のほどが存するだろうと思うんですが、そのあたりいかがでございますか。
明石康
24
○
参考人
(
明石康
君) 大変鋭い御
質問
で、幾つかのアングルがございますのでどこからお答えしていいのかわかりませんけれども、私はこの
任務
をお受けするときに逡巡した、躊躇した幾つかの理由の
一つ
は、おっしゃるとおり
シアヌーク殿下
とうまくやっていけるだろうかという不安が
一つ
ございました。 國弘さんが御指摘になったように、確かに私は、
戦争
中に
日本
がどちらかといえば
タイ
・
カンボジア紛争
において
タイ
の肩を持っだということが少し板として残っておるんじゃないかという懸念もございましたし、それからもう
一つ
は、やはり昨年十月合意されました
パリ協定
というものが、
国連
の
役割
とそれからSNCの
役割
と
プノンペン政権
、その三者のそれぞれの機能、
権限
の区別に関しまして必ずしも明確な規定をしておらない、これが将来大きな
紛争
の種になりはしないかというような不安もあったわけでございます。 この
最後
の点から申しますと、割と
国連
の存在は
カンボジア
の四派によって期待もされ信頼もされておる。私は最初から四派に対して公正な客観的な立場で当たろうと。もちろんクメール・ルージュに対しては国際的な批判がいろんな
意味
で浴びせかけられておりますけれども、クメール・ルージュの指導者に対しても、私は言い分は聞くだけ聞いて納得できるものがあったらそれには応じてやるべきだと思いますし、とにかく戦場の論理を
民主主義
、議会政治の論理に持ってきて
カンボジア
の統一と
和平
を樹立するということが最大の使命でございますから、そういう
意味
では誠心誠意を持って四派に当たっていこうということで、これからどうなるかはわかりませんけれども、今までのところ割と四派の信頼を得て現在に至っておると思います。 それから、SNCと
国連
との
関係
でございますけれども、やっぱりSNCは全く物の考えの違う四つの派閥から成り立っておりますので、なかなかスムーズに合意ができない。そういうことで、
UNTAC
にむしろお鉢を回して妥協点を探ってもらうということが多うございます。そういうことで、それにこたえないことにはやはり
カンボジア
の事態は少しも改善しませんので、私は
UNTAC
の意思を押しつけることは自分の
性格
からいっても決して好きな方ではございませんけれども、よく
UNTAC
の存在は戦後の
占領
期のマッカーサーの存在に例えられます。私は
国連
というものは決してマッカーサーにはなってはいけないし、何もしない存在だと思いますけれども、こういう
カンボジア
の一時の政治的な空白期にやっぱり必要な存在である。さっき、
国連
は四派の間の橋であり新
政府
に導くまでのクッションであり、
カンボジア
の
独立
を保障するそういう存在、ギャランティーであり
民主主義
をつくる上での触媒であると申し上げましたけれども、そういうふうな
役割
を果たすならば、
カンボジア
国民
全体の信頼を引き続き得ることができるんじゃないかと思っております。 シアヌークさんも今やお年七十歳に達しましたが、かつてのように今でも才気豊かな人で実に多才な、ある
意味
ではファウスト的な能力の持ち主で英邁な政治家でもありますし、何としても
カンボジア
の農村部に行って感じますのは、もう彼に対する
カンボジア
農民
の崇拝の念は無条件であり極めて高いものがあるわけです。しかも、頭の回転が非常に早いし、日夜そういう政務に専念してなお疲れを知らないというところがありまして、その
人たち
にとってやや角が取れて円熟したダイナミズムの存在になっておるという
意味
では、私はやっぱりシアヌークさんと私との信頼
関係
というものがこの
カンボジア
の
過渡期
をうまく乗り切っていく上での
一つ
のかなめではないかと思っております。 そういうことで、シアヌークさんを批判する人もおりますけれども、やはり
国連
としてはああいう英邁な政治家、指導者を大事にし、
議長
でございますから、四派の間をまとめる上でもやはりシアヌークさんに対する私の期待は極めて大きいわけでございます。そういうことで
協力
しながらやっていけるんじゃないかという確信を持っております。
國弘正雄
25
○國弘正雄君 シアヌークさんについてのお話はわかったんですが、ただ、やはり幾ら
国連
が、これはもう
PKO
に限らず、ある地域に介入し、介入というか、かかわりを持ったとしても、その
人たち
自身の政治的な意思のようなものがちゃんと存在しなければ和解もあるいは
和平
も達成されるべくもない、これはもう鉄則だと思うんです。 その際に、この
カンボジア
について四派のまとまりというか、あるいは政治的意思、ポリティカルウイルというものが本当にあるのかどうなのか。特に、旧クメール・ルージュの例えばキュー・サムファンというような人と接触をおとりになって、彼らもまた
カンボジア
復興の大業に欣然として参加するというような方向に向かっているのかどうなのか、そのあたりが私ちょっと気がかりなんですね。 そして、それに関連するんですが、かつて、これは最近のことではありませんけれども、あの
人たち
の中に例えば
国連
軍、これは非常にルーズな定義で言っているわけですけれども、厳密な定義ではございませんが、
国連
軍よ来たらば来だれと。あるいはだれか、
日本
であれどこでもいいんですが、軍事勢力、軍事集団を
カンボジア
に持ってくるんだったら、これは四派でなくて五派になるだけの話だと。つまり、そこでは明らかな戦闘行動が行われるであろうという非常に不気味な予言のようなものをして、そして必ずしも四派のある種の合意に従おうとしないという、そういう傾きというか傾向を見せている。しかも、旧クメール・ルージュ自身が必ずしも
一つ
にまとまっていないというような、それこそ何というんでしょうか、場合によってはまたぞろ灰神楽が舞うような話になりかねない。 もしそういう。ようなことになったとした場合に、そして我々が
PKO
をもし
派遣
したとした場合に、これはある種の内政干渉というかあるいは内戦に首までつかってしまうというおそれがあるのではないか、その懸念についてどうお考えですか。
明石康
26
○
参考人
(
明石康
君) クメール・ルージュは四派の中で
プノンペン政権
に次ぐ大きな勢力でございまして、一部の
農民
層の強い支持を得ておるということも事実でございます。クメール・ルージュの真意が那辺にありやということについてはもちろんだれもわからないわけでございますけれども、キュー・サムファン、クメール・ルージュのリーダーでございますけれども、それからソン・セン、クメール・ルージュの国防大臣、総
司令官
、この二人と私は何回も会って、SNCの枠内でも、またバイの形でも会っておりますけれども、この二人ともに
パリ協定
に関してはクメール・ルージュも全面的にこれを支持しておる、また
協力
するつもりであるということを繰り返し言っておりますし、それを疑うだけの材料を私は持っておりません。 私は、やはり国際情勢は変わっておりますし、冷戦は終わりましたし、クメール・ルージュ側にとってもかつての
中国
とか
ASEAN諸国
から得ることができたような援助は、
中国
の場合は完全にもう断ち切られておるというふうにも聞いておりますし、もう自前で行動しなくちゃいかぬ時期になっておる。 それから、クメール・ルージュの指導層はほかの指導層に比べても
教育
水準その他は高いくらいなんですね。フランス共産党華やかなりしころフランスで大変いい
教育
を受けて、キュー・サムファンなんかは博士号を経済学について取っておりますし、二人と話すときも非常に立派なフランス語で二人とも話してくれますし、その当時のフランスの共産党の影響とそれから
中国
の文化大革命の影響を受けて、クメール・ルージュ的な非常にラジカルな出血の多い
農業改革
、農地改革の抗争にあの
人たち
がのめっていったんだと思うのでありますけれども、今や事態も変わったわけでございますから、私は、やはり来年春の
自由選挙
というものをポル・ポト派としてはまとまった形で
選挙
運動に参加し、幾つかの議席をとるということに政策を決めておるんじゃないかと思います。恐らく多数の政党は過半数はとてもとれないのでありましょうけれども、まずさしあたって幾つかの議席をとる。そのことによってまた
プノンペン政権
の非能率、腐敗その他を批判し続ける。そのことによって、五年後、十年後になるかもしれませんけれども、いつかは過半数をとれるという、そういう見通しがあるんじゃないかと思うんですね。そういう
意味
で、戦場の論理から議会政治における闘争の論理にクメール・ルージュも変わっておるんじゃないかということが
一つ
言われておりますし、それを疑う根拠を私は持っておりません。 それから、今、國弘さんが言われました、クメール・ルージュそれ自体一枚岩ではないのではないかという観測につきましては、私もそういうことを聞いております。私は、ポル・ポトとかイエン・サリとかそういう指導者にはSNCのメンバーでもありませんし特に会っておりません。クメール・ルージュの中が、そういう民主政治に変身しようといういわば柔軟なキュー・サムファンその他の一派と、いや武力闘争を続けるべきだという強硬派とに分かれておる、なかなかそういうことで政策
決定
が容易じゃないということも観測としてあることは事実でございます。真相はわかりません。しかしながら、SNCの場であらわされる限りクメール・ルージュも
国連
に
協力
し民主政治に賛成しておるということも事実であります。 よくアメリカの中にクメール・ルージュを抱き込んだ
和平
構想というものは間違いではないかという見方もありますけれども、私は、クメール・ルージュを
戦争
の論理から平和の論理に導き入れるためには、やっぱりこういう
パリ協定
の枠というのが唯一の現実的な解決策だったと思いますし、アメリカの上下院議員も最近はそういう議論に変わってきているというのは非常に喜ばしい現象だと思うのであります。
武装解除
というものを徹底的にやることによって疑似
民主主義
者転向をできるだけ防止するということ、それから短い期間ではありますけれども、
民主主義
と
人権
の保障を制度的にできるだけきちんとした形でつくり、我々が去った後でもそれが一〇〇%覆されないように、
カンボジア
の有識者とかそういうNGOを育てておくということが
国連
にとっての急務であろうかというふうに考えております。
國弘正雄
27
○國弘正雄君
PKO
について伺いたいんですが、その前に私、ひとり言を申しますからお答えは結構でございますので、お耳にだけとめていただきたいと思うんです。 それは、今でも数万を数える
ベトナム
兵が
プノンペン
政府
軍の軍服というか制服を着て
政府
軍の中に入っているんだというようなことが言われています。あるいは
カンボジア
には三十万というようないわゆる入植者があちこちにおるということも聞いております。
カンボジア
と
ベトナム
、あるいは
ラオス
と
ベトナム
との
関係
というのは、もう言うまでもなく東北アジアと東南アジアの文化的な抗争というような、そういう色彩も含めて長くいろいろ問題があるわけですが、
カンボジア
国内に今も残っているであろう
ベトナム
の人々、その中には
軍人
もいるわけだし入植者もいるわけですが、そういうような
人たち
が将来非常に大きな問題になるのではないか。 特に、
選挙
というようなことになった場合に、
ベトナム
の人にはあるいは
選挙
権はないのでありましょうから、したがって、その
人たち
がしかし投票に行くということを試みるかもしれない。ところが
監視
団といっても、
ベトナム
人と
カンボジア人
あるいはラオ人と
タイ
人との識別が果たしてつくであろうかどうであろうか。我々同じアジア人とは言い条なかなか難しい。 〔
委員長
退席、理事藤井孝男君着席〕 ましてや、アジア以外のところからやってきた人にとっては、
選挙
監視
と口では言うけれどもそう簡単にはいかないのではないかというような気がいたします。これは私のひとり言でございますからお答えは結構であります。 さあ、そこで
PKO
なんですが、
国連
の
PKO
ということを考える際に、
日本
と
国連
との間の非常に大きな何といいますかギャップがあると思うんです。それは何かというと、
国連
憲章は個別的な自衛権というものを認めておりますし、それから集団自衛権というものも当然のこととして認めているわけですね。だからこそ、さっき花盛りという言葉を先生お使いになりましたが、過去において軍事同盟の花盛りであったということが言えると思うんです。ところが、
日本
国憲法はこの点においては全く
国連
憲章とは違っておる。もう今さら詳しいことを申し上げる必要はありません。 したがって、この両者のすり合わせというのが大変に難しいのではないか。確かに
日本
国憲法の前文と
国連
憲章の字句との間には類似点がたくさんございますけれども、しかし基本的なそういう概念において、考え方において両者が相異なっていると、このすり合わせがそう言うはやすく行うはかたいのではないか、簡単にできないのではないか。そのすり合わせを全くほうったまま
PKO
に参加する、
PKO
を送るというようなことは非常に重大な問題を引き起こすのではないか。まず第一に、やはり
日本
国憲法というものを余りないがしろにしない方がいいと思うんです。我々、例えば国
会議
員であったり、あるいは宮澤さんが総理大臣であったり、あるいは渡辺さんが副総理、外務大臣であったりするのはなぜかといえば、要するに憲法においてその手続が認められ、その憲法の手続に従って総理大臣であり、副総理であり、国
会議
員であるわけですね。そうすると、我々のよって来るゆえんのものはいわば憲法の中で担保されている、あるいは憲法の中に文言としてうたわれている。ところがその憲法を、その憲法によってある職員を持っておる我々がないがしろにしているということは、これは自己否定にほかならないと私は思います。ですから最近の、憲法なんぞ邪魔だとかあるいは憲法なんぞ古びた、だからもうお蔵に入れちまえというような議論は、我々の自己存在そのものをみずから否定することになりかねないと思うんですね。 その
意味
において、
PKO
を論ずるに当たって、やっぱり
国連
憲章の基本的幾つかの理念と我々の憲法の理念というものとの間に若干のかなり重要な食い違いがある。そこをきちっと埋めていかないで、軽々に何かこう、何といいますか事実でもって乗り越えていくということは、これは
日本
国憲法にとってもあるいは
国連
憲章にとっても後々に悔いを残すことになりかねないというふうに思う。この点は私、特に強調したい。そして
明石
さんの御
意見
も伺いたいんです。 というのは、私は
明石
さんの書かれたものは随分よく読ませていただいております。その中で、一九三一年のお生まれと聞いておりますが、私は一九三〇年ですからほぼ同世代なんですけれども、その書かれたものの中で、要するに
国民
が要望する
日本
の
国連
外交というのは一部の国に気兼ねしないで新憲法がうたっておる平和主義の精神を貫くことであると。その平和主義、国際主義のとうとい理念というものが
国連
の憲章でもあるんだけれども、
日本
の場合にはさらにそれに加えて憲法第九条という、これはお言葉をそのまま引用いたしますと、「実に
世界
史の上でも例のない、
戦争
否定の情熱に満ちた条項を持っている。」と、こう仰せられているわけですね。 そういうことを考え合わせまして、私がさっき申し上げましたような
国連
憲章とそれから
日本
国憲法との間のずれというのかな、乖離というのかな、あるいは違いというのかな、そこはきちっとお互い押さえてこの
PKO
の議論はしなくちゃいけないのではないかという気がいたします。御
意見
をちょうだいしたいと思います。 〔理事藤井孝男君退席、
委員長
着席〕 それからもう
一つ
、ついでです。五月十一日の気圧新聞の社説が「なぜ自衛隊にこだわるのか」という文章を掲げております。その一部を引用いたしますと、「冷戦後の新しい
時代
における
日本
の進路や、国際
協力
のあり方についての視野の広い検討がなおざりにされ、自衛隊
派遣
問題だけに矮小化する論議がまかり通っている。」、これは毎日新聞の五月十一日の社説の文章の一部であります。このあたりについても、私もそういううらみを感じている一人として、ぜひ今申し上げた幾つか、三つほどのことについて、
明石
さんの御
意見
を賜れば幸いでございます。
明石康
28
○
参考人
(
明石康
君) ありがとうございます。 私は、国際公務員としての私の立場上、
日本
がどういう形で国際的な責務を果たすか、
国連
に対する責務を果たすか、それをどういう態様において行うかということについては、これはとやかく申し上げる立場にありませんし、それこそ内政干渉になりますので言葉を控えさせていただきたいと思います。 しかしながら、今、國弘さんが
国連
憲章第五十一条の個別的並びに集団的自衛の原則、権利というものについて触れられたわけでございますけれども、私は
国連
憲章五十一条というのはある
意味
で
国連
憲章の異端分子であるというふうに考えております。これは、一九四五年のサンフランシスコの
国連
憲章制定
会議
のときに、アメリカの当時の孤立主義者であったバンデンバーグ上院議員らが、
国連
が機能しない場合、
安保理
が機能しない場合にもアメリカが行動をとり得るようにということで急に挿入した一種の安全弁でございます。ところが冷戦が始まりまして、そういうバンデンバーグその他が懸念したような冷戦のために
安保理
が機能しない時期が来たわけでございます。それで五十一条がまさに花盛りになりましていろいろ援用され、北大西洋条約機構の法的な基盤になり、また他方、東側のワルシャワ条約機構の法的な基盤になっていったんだと思うんです。 今、
国連
で考えられております。そういう集団的な安全保障体制というのは、五十一条に基づくものではないと思います。五十一条に基づくそういうNATOないしはワルシャワ条約機構というのは、まさに排他的な同盟条約だと思うんですね。ところが今
国連
で考えられておる集団的な安全保障というのは、排他的ではない、包括的な
世界
的な集団安全の体制であるというふうに考えてよろしいんじゃないかと思うんです。 それで私は、先ほども岡野先生のおっしゃったことに関連しまして、
国連
の
PKO
というのは基本的には
国連
憲章第六章の「
紛争
の平和的解決」というものの一端として考えてよろしいと申し上げまして、第七章、五十一条も第七章の一部でございますけれども、第七章に基づく外交的、交通手段による経済的ないしは武力による強制行為というのは、やや今の
日本
的な
雰囲気
にはなじまない、しかしながら
国連
の集団安全保障体制の一部には違いない
一つ
の柱である、
国連
にはそういうハードな側面とソフトな側面があり、
PKO
というのはソフトな側面の一部と見てよろしいんじゃないかと申し上げたわけでございます。 これからの
国連
は、今度
事務総長
になったブトロス・ガリさんも強調しておりますけれども、
国連
の憲章の第七章も確かに大事である、そういう強制措置、経済的軍事的強制措置も必要なこともあろう、しかしながら基本的には第六章の
平和維持活動
と第八章の地域的な取り決め、地域機構の活用ということを
二つ
の大きな柱にしてやっていこうということを言っておるわけでございます。 そういう
意味
で
国連
の集団的な安全保障体制というものをとらえた場合に、私は、第九条を含める新憲法の精神に違反するどころか、自国の安全を自国のみでやるとか、アメリカとの安保条約のみに依拠する体制から、もっと地域的な、ないしはグローバルなものに移行していこうということが
ポスト冷戦
期への
一つ
の新しい方向であるとすれば、それは
国連
の精神にも合致しておりますし、新憲法の精神にも矛盾しておらない。そういう
意味
では
PKO
問題にもっと
日本
は積極的に前向きに対応してよろしいんじゃないかというふうに考えるわけでございます。しかしながら、自衛隊云々のことについては
意見
を差し控えさせていただきます。
國弘正雄
29
○國弘正雄君 とおっしゃると、
PKO
も生き物ですから、
国連
も生き物でございますから、当然時間の経過とともに変貌していくというのはこれはある
意味
では当たり前だと思うんですね。 ただ、今までの
PKO
ということからいうと、あるいは
PKO
の持っていた幾つかの原則からいうと、明らかに変わりつつあるということが言えるんじゃないか。例えば、もちろん
国連
憲章上の根拠がないということは私も知っていますけれども、しかし慣習法的に幾つかのやり方が生まれてきた、あるいは原則みたいなものが生じてきたわけですね。そのうちの
一つ
は同意の原則だと思いますし、それから中立の原則だと思いますし、多少の例外はありますけれども大国を排除する、除外するという原則もありましたし、それからいわゆる武力の行使を差し控えるという原則もあったと思うんですね。 ところが、最近の例えばイラク・クウエート
監視
団、いわゆるUNIKOMなんかを見ておりますと、この四つないしは三つの原則が全部軒並み破られてしまったということは、これはもうフェアな言い方だろうと思うんですね。特に、また
UNTAC
につきましても、ただ単に
一つ
の国の平和を
維持
するというだけではなくて、統治機構を初めとする、そのいわばトップに
明石
さんおいでになるわけですが、内政そのものの再編成を指導するという形であるとすれば、私は従来の
PKO
の枠をかなり大幅に乗り越えてしまったんじゃないかという気がする。 と同時に、もう
一つ
申し上げられると思うのは、
国連
の名のもとに超大国、実際はアメリカですけれども、の非常な強い意思が押しつけられるという危惧はないだろうか。UNIKOMの場合は私はそうであったというふうに思う。アメリカという国は、もうこれは代表にそういうことを申し上げるのはまさに釈迦に何とかでございますけれども、やっぱりアメリカというのは今までも
国連
に対して、過度に熱心になったかと思うと全く冷淡そのものになって
国連
などというものはくそ食らえみたいな、言葉が悪くて申しわけありませんが、そういうやり方をとってきたことがある。かつて国際連盟、ウィルソン大統領が唱道したのに、
最後
まで入らなかったのがアメリカ合衆国でありました。あるいは今も、幾らか覚えていませんけれども、
国連
の
分担金
をあの大国がいまだに四の五の言い立てて全部支払っていないというようなぶざまな
状況
であります。しかし、いずれにしても、そういうアメリカの意思が対象国に押しつけられてしまうというおそれがないのであろうかということが私の危惧でございます。 それから、時間がございませんからもう
一つ
だけ確認をさせていただきたいんですが、ちょっと話題が変わります。例のSOPでございますけれども、使用する
武器
も、あるいは自衛のために
武器
を使うという正当性も、それを決めるのはあくまでも
事務総長
である、あるいは
事務総長
が任命したコマンダーである、
国連
の
関係
者であって
日本
国総理大臣ないしその他の
日本
国の
人たち
ではない、それが基本原則であるというふうに私は了解をしておりますが、その了解は
国連
のお立場からいって間違いないかどうか、そこを確認させていただきたい。 というのは、この間も渡辺副総理・外務大臣がこの問題に触れて、要するにコマンダーのコマンドに従うということだよ、こう仰せになった。何のことかよくわからないわけであります。コマンダーのコマンドに従うというのは何の説明にもなっていない。いわば同じ言葉のトートロジーというか繰り返しにすぎないわけですね。ですから、このあたりで非常に疑念というか、あるいははっきりしないものを我々覚えているのでありますけれども、とにかく
事務総長
から命令を受け取る
国連
の
司令官
からのみ
PKO
は命令を受け取るというのが
国連
の基本原則である、このように考えてよろしゅうございましょうか。そのことはひとつ御確認をいただきたいと思うんです。
明石康
30
○
参考人
(
明石康
君) ただいま國弘さんから非常に傾聴に値する幾つかの
PKO
の分析がございました。おっしゃるとおり、
PKO
というもの自体もその創成期に比べまして脱皮して現在に至っておるんだと思います。冒頭に説明申し上げましたとおり、非常に
カンボジア
の
UNTAC
の場合多岐、多面的な
活動
をしておる、そういう
意味
では、当初の
PKO
に考えられもしなかったような一種のエボリューショナリーな発展を遂げて現在に至っておるのが事実でございます。
国連
と内政干渉、これに関しましても、
国連
憲章第二条第七項が内政不干渉原則をうたっておりますけれども、
人権
なんかの点をとってみますと、四十年前には明らかに内政干渉と思われたような各国の、例えばミャンマーなんかに関します
人権
問題での国際社会の批判、弾劾、そういったようなものが当然許されるという慣行が今や確固として成立して現在に至っております。そういう
意味
では、憲章第二条第七項というものはますます狭く解釈され適用されて現在に至っておるということが現状だと思うわけでございます。
国連
とアメリカの
関係
につきましては、私自身もいろんなところで書いておりますが、ある
意味
では非常に迫力的な外交を展開することもございますし、あるときには非常にエモーショナルな、激情的な、そういう予見性の難しい外交に転じることもございまして、ほかの国もそうでございますけれども、全く安定した、バランスのとれた
国連
外交をやっておるかというと必ずしもそうではないわけであります。そういう
意味
では、我が
日本
こそそういうアメリカに対してよき忠告者、よき友人としてもっと均衡のある
国連
外交をさせる大きな
役割
を担っておるんじゃないかと思うんです。 今、アメリカの滞納金の問題がございましたけれども、
日本
こそそういう義務的な拠出をきちんきちんと支払うことによってアメリカに対して忠告者としての強い立場を
維持
することができるわけですし、問題によっては
分担金
プラスアルファとして国際社会を新しい方向に導くためのリーダーシップをとる。過去においても、
国連
天然資源回転基金の創設、UNCTADの共通基金の創設、それから
国連
大学の創設その他に
日本
がとってきたイニシアチブ、これは単に
分担金
を払うという域をはるかに超えた新しい構想の実現であったわけですけれども、私は、そういうような
日本
のイニシアチブ、ビジョン実現の場としての
国連
の利用ということをますます創意をもって考えていい時期に達しておるんじゃないかと思います。
國弘正雄
31
○國弘正雄君 それから、SOPの五のdは。
明石康
32
○
参考人
(
明石康
君) SOP云々のこと、私はそういう
国連
の
PKO
の具体的な
軍事部門
に
関係
しておりませんので詳しいことはお答えできませんけれども、
PKO
がいろんな形で脱皮しているにもかかわらず、基本的に真の
意味
での自衛に必要なためのそういう軽
武器
の携行ないしは使用しか許されておらない。その
意味
では基本線が現在まで貫徹しておるのが事実だと申し上げてよろしいと思います。 御
承知
のとおり、
カンボジア
の歩兵大隊の場合であっても全くの軽火器の使用しか許されておりませんし、当初、一番先に到着しましたインドネシアの一個大隊、これはもうインドネシアで最もすぐれた、訓練の徹底した
軍隊
でございますけれども、
プノンペン
市内をパトロール、巡回させる、そのことによって
プノンペン
市民に安心感を与えるということが大きな
任務
であったわけでございますけれども、大きな
国連
旗を掲げ、
国連
のトラックで、
国連
マークを大きく描いたそういう車両に乗りまして、全く
武器
を携行しないで
プノンペン
市街を常時パトロールしたわけでございます。そういうことで
国連
の、ないしは
国連
の
PKO
の影響力、存在は
武器
に頼るものではないという点では
一つ
大きく貫徹しておるのが現状であると申し上げてよろしいと思います。
國弘正雄
33
○國弘正雄君 どうもありがとうございました。どうぞ御無事でお帰りくださってよいお仕事をと思います。
最後
に、これは
参考人
に対してではなくて、
一つ
だけちょっと嫌がらせみたいなことを言うんですが、アメリカの西部の言葉ではピストルのことをピースキーパーと、こう言うわけです。それから、レーガン大統領は例のMXミサイル、つまりミサイルエクスペリメンタルというのをピースキーパーと呼んだわけですね。このピースキープとかピースキーパーという言葉はかなり、つまり軍事的な行動あるいは
戦争
と背中合わせの寒さみたいなものがあるということだけは申し上げます。 ありがとうございました。
木庭健太郎
34
○
木庭健太郎
君 公明党・
国民
会議
の
木庭健太郎
でございます。 本日は、
明石参考人
、お忙しい中を立ち寄っていただきまして、私たち今この
PKO
の
法案
を
審議
しておりますし、非常に
参考
になる御
意見
をいろいろ賜りまして、心から感謝いたしております。さらに、私たち若い人間にとっては、
日本
人の一人としてそういう
国連
の大事な仕事に
明石参考人
がついていただいているということは我々にとっては誇りでもありますし、本当に今一番難しい中で努力されていることに心から敬意を表するものでございます。 今二人の方からいろいろ御
質問
があっておりました。私どもも
明石参考人
がおっしゃったように、この冷戦構造が崩れた中やはり小さな
紛争
がふえてきている、その現状の中で
国連
を
中心
とした
平和維持活動
、
PKO
に何とか積極的に本格的に参加できないものかということでこれまでも我々なりに努力もしてきたし、その中で私たちの立場は、本格的に参加するには
日本
の自衛隊も使わざるを得ない面もあるんじゃないかということまで考えて取り組んでまいりました。 今、
UNTAC
が
カンボジア
で展開しているわけですけれども、その
UNTAC
の展開した最初の、三月でございましたか、オーストリアでしたか
オーストラリア
でしたか、
国連
のヘリコプターが撃たれるという痛ましい事故がございました。
日本
で見ていると、ああいうのを聞くとどういう評価になるかというと、ああ危険だな、危ないな、
UNTAC
というのは本当に大丈夫なのかな、そんな論議になりがちなんです。 私は、
明石参考人
からもぜひお聞きしたいんですけれども、そういう問題が起きたときに、では
UNTAC
、
PKO
はどう対応したのかということが非常に大事だと思うんです。それをきっかけとして何か
紛争
へ巻き込まれるようなことがあれば、これは
PKO
の本質を外れることになると思うんです。そこでどう対応したかということが非常に重要になると思いますし、また先ほども指摘になっておりましたけれども、一応小火器を持った
人たち
が
カンボジア
に行くわけです。いろんな
意味
で
カンボジア
の
人たち
がどういう評価をしているかという面もあると思います。 私たちの石田
委員長
が今
カンボジア
に行っておるんですけれども、その際、先ほどお話がありましたインドネシア部隊の
司令官
にもお会いをしております。そのときに、先ほど御指摘になりました
プノンペン
市内では市民にそういう警戒心を起こさせない、きちんと
武器
を持たない、
国連
の旗のもとでやるんだということを明確に述べられておりました。またコンポントムの現状についても、こういうことをおっしゃっております。 コンポントムなどでは
プノンペン政権
とポル・ ポト派の小競り合いもあるが、われわれは一切 関与しない。あくまでも事実を
UNTAC
本部 に伝えるのが
PKO
としてのわれわれの役目で あるからだ。われわれの部隊の目の前で争いご とが起きたら、われわ札はすぐに引きあげる。 なぜなら争いに来たのがわれわれの
目的
ではな く、
PKO
の
監視
、パトロールの
活動
であるか らだ。まさにこれが私は
PKO
の本質であると思っております。
明石参考人
に
一つ
お聞きしておきたいのは、そういう
国連
のヘリコプターが撃たれるようなことがあった。しかし、こういうのは極めて例外的なことであって、その後どう対処されたのか。またもう
一つ
、一応
武器
を持った
人たち
が行くわけですから、こういう方たちが
カンボジア
において、
カンボジア
の方々にどう
UNTAC
というのが評価されているのか、この辺を簡潔にお聞かせ願えればありがたいと思います。
明石康
35
○
参考人
(
明石康
君) この
UNTAC
ヘリコプターに対する射撃
事件
でございますけれども、これは
オーストラリア
のスチュワート大佐がクメール・ルージュ支配地域の上空をヘリで査察しておったときに幾つかの砲弾でヘリが撃たれまして、スチュワート大佐は腕に負傷をしまして、急遽
タイ
の病院にエバキュエーションという形で運ばれました。幸い、傷も小さい傷ではありませんでしたけれども、治療よろしきを得まして、スチュワート大佐は
現地
に復帰して今活躍しております。非常に明るい
性格
の人で、しょっちゅうジョークを飛ばしてみんなを笑わせ、
オーストラリア
人でありますからカンガルーハウスという家を建てまして、実に仕事も深夜まで、仕事に極めて熱心なのでありますけれども、時たま時間があると羽目を外してそこのプールで泳ぎ、みんなで水球をやり、実に遊ぶ方も上手な男で、そういう
国連
の
UNTAC
の
軍事部門
の皆さんの非常にあけっ広げの明朗な
性格
を典型的に一身に体しておる大佐で、皆さんの注目の的の人でございます。 それで、この
事件
に関しましては我々の方で徹底的に調べまして、フランスのロリドン将軍がその任に当たりまして、これは
国連側
としてはクメール・ルージュ側のしわざであると結論せざるを得ないという結論を出しております。これをその後、軍
事件
業グループというのがありまして、毎週四派の将軍クラスを集めてやっておるわけですけれども、そこでその結果を発表しまして、これに対しましてクメール・ルージュ側は、自分のところも独自の
調査
をやったけれども、これはクメール・ルージュの兵士の発射した銃砲によるものではないという結論を出したということで、水かけ論に終わっておりますけれども、この五月一日に私どもが
国連
安保理
に出しましたレポートの中ではそういう両論併記という形で発表しております。それで、こういうものが紋続的、反復的な形で行われたら
国連
安保理
は何らかの行動をとるんだと思いますけれども、これはごく
一つ
だけかけ離れた
事件
でございましたからそういう
状況
で終わっておるわけでございます。 それで、今、木庭先生のおっしゃったとおり、基本的に
国連
は武力不行使という線で、軽火器は持っておりますけれども、それの使用は全く肉体的に自分が危機に瀕したときにのみいたし力なく使用することは許されるにしても、そういう問題解決のために
武器
は使用しない。また、使用に値するくらいの大きな
武器
は持っておりませんし、そういう
意味
ではシンボリックな
武器
にすぎません。私自身、護衛のために何人かの人がついておりますけれども、この
人たち
も私にピストルの携行をすべきかどうかということを聞いてきたときに、
国連
である以上、本当に具体的な身辺の危機がない以上はおまえたちは
武器
は持たない方がいいだろうということを言いつけております。そういう線を
国連
は厳正に現在でも守っておるというのが現状でございます。
木庭健太郎
36
○
木庭健太郎
君 先ほど
明石参考人
から
日本
に対する期待も述べていただきました。あの湾岸
戦争
以来の私たちの反省というのは、やはり金や物だけじゃなくて人的にどれだけ
協力
していけるのかというのが、これまで論議をし、またそれをやらなくちゃいけないという決意で今この
法案
を私は
審議
をさせていただいていると思っているわけです。
UNTAC
においても、もちろん
明石参考人
がおっしゃるように、お金の面でも
日本
は頑張らなくてはいけないと思いますけれども、やはり人の面でも憲法の許す範囲内でぎりぎりの努力は、そういう今努力されている方々と一緒になって汗を流すということは、ある
意味
では
日本
がこれから国際社会の中を生きていく上で必要不可欠であると私どもは思っているわけでございます。 そこで、まず一点お尋ねしておかなくてはいけないのは、
UNTAC
の中で歩兵大隊はほぼ充足し、先ほどちょっとお話がありましたけれども、それでも一国が参加できにくいような
状況
になったということを
参考人
はおっしゃっておりました。そのほかの例えば後方支援の医療とか通信とか復興とか輸送とかロジ
部門
を含めてですけれども、それがどういう充足
状況
になっているのかということを
参考人
から、大まかでも結構ですので、こういう
状況
ですよということをぜひ
日本
の
国民
の皆さんに教えていただきたいと思います。 それと、私たちは、
日本
の国内において
PKO
の問題が本格的に理解されるにはまだ時間がかかる部分もありましょうし、また周辺諸国のいろんな事情また御懸念も考えますと、本当は
PKO
の中核となるのは確かに歩兵大隊のような部分だろうと思うんですけれども、そういうところは
日本
としては今すぐやるべきではなく、できれば
UNTAC
においては後方支援、いわゆる医療、通信、復興また輸送の分野を担当させていただけないかなという希望も持っております。 ただその際に、いわゆる本体をやらないで後方支援をやることで皆さんの評価を得ることが本当にできるのかなという危惧は正直ございます。その辺に対して、そういうものに取り組むだけでいいのかなという点についての
明石参考人
の御
意見
を伺っておきたい。 あわせてもう
一つ
、この後方支援については、我が国の論議の中では、先ほどもちょっとお話しあっておりましたけれども、
文民
でもなし得るし、そういう
人たち
を出しても構わないじゃないかという話があるんです。先ほどの御指摘もありましたし、ああいう地域でもございますし、私たちとしては
文民
では難しかろうと思うんですけれども、その点についてもあわせて御答弁がいただければありがたいと思います。 三つ重なって恐縮ですけれども、お答えいただきたいと思います。
明石康
37
○
参考人
(
明石康
君) 木庭先生のおっしゃったとおり、私は
日本
の
国連
に対する貢献はバランスのとれた、均衡のとれたものであるべきだと思うのでございます。財政的な貢献の点でも
日本
は単なるいわゆる応分な、分に応じた貢献以上のものを求められております。これは肝に銘じておくべきだと思います。 それから人の面の貢献、これがおくれておるのは周知の事実でございます。これは平和の
維持
においてもそうでございますし、私はODAその他に関しても、資金面での援助もございますけれども、人づくり、技術援助、そういったような
日本
人そのものを介した指導というものが随分立ちおくれておるんじゃないかと思います。
カンボジア
の
PKO
に関しまして、こちらでPKFとよく言われておるもの、
国連
ではそういう言葉を使いませんけれども、これは歩兵大隊というふうに解釈しますと、歩兵大隊の充足はまだ完全に
最後
のところまでいっておりません。さっきも申し上げたとおり、まだ不確定要素が幾つかございます。しかしながら、今の御
質問
にお答えしますと、後方支援の面でまだ幾つかのギャップがありまして、その充足が急務であるということは事実でございます。この充足
状況
に関しましては日々
状況
が変わります。それで我々はこういうような細かい表をつくって毎日のごとく充足
状況
を検討し、評価しておるのが現状でございます。 それで、今先生のおっしゃった後方支援の面、これは歩兵大隊を除いたほかの面というふうに考えますと、
停戦
監視
団、これについても四百八十五人の充足が必要ですけれども、半分ないしは三分の二くらいのところまでしか現在いっておりません。これはできるだけ多くの国の参加を得る必要があるので、一カ国多くとも四十四人以上出してもらうのは望ましくないということで、
安保理
五
常任理事国
でも四十四人というふうに限定しておりまして、そういう点もあって国の数を多くするというのが我々の大きな関心でございます。 さっきも申し上げたとおり、それぞれの人の背後にそれぞれの国があるんだ、その国々が結集した国際社会全体が
カンボジア
に展開されておるんだという、その政治的な
意味
を重視するからでございます。そういう
意味
では、
日本
人が五人であっても十人であっても五十人であっても、決して八百五十人の一個大隊を出すのでなくとも、人を出すということに私は意義があるんだと思うのでございます。 それに関連しましてちょっとエピソードを申し上げますと、この四月十八日から二十日まで
ガリ事務総長
が
現地
に行きまして、インドネシアとマレーシアの大隊を見て非常にすばらしいのに深へ印象を受けました。実によく訓練されており、一糸乱れぬ起居ぶりを示しました。しかも、単に大隊として行動するのみならず、インドネシアの大隊なんかはレセプションのときには実にうまく歌を歌うし、交通整理も
カンボジア
の警官と一緒になってよくやってくれるし、クメール語の訓練さえ経てきておるものですから実に民衆との交流をうまくやっておるというような面がございました。 非常に感心しまして、
事務総長
は、インドネシアのスハルト大統領それからマレーシアの総理、それから工兵部隊を出しております
タイ
の総理と通信隊を出しております
オーストラリア
の総理に感謝状をぜひとも出したいということでこれが発出されたわけでございます。そういう
意味
では、別に歩兵大隊でなくても、工兵部隊であってもその他の部隊であっても、いい仕事をすればそれなりに目立ちますし、感謝されるわけでございます。その
停戦
監視
団、まだ十分に充足されておらない。 それから、工兵部隊についてはまだ充足度がかなり不足しております。ああいう
インフラ
のないところでございますから、工兵部隊の需要は極めて大きいわけでございます。航空部隊に関しましては、フランス、オランダからある程度そういう飛行機並びにヘリの提供を得ておりますけれども、これまたイタリアその他と話をしておる
段階
でございます。通信部隊につきましては、
オーストラリア
その他から充足されております。 それから医療部隊は、ドイツが我が国と似たそういう基本法を持ちながらも、NATO地域以外に百四十名の医療部隊を出すことを決めたというのを我々は非常に高く評価しております。ほかにインドからの医療部隊が
プノンペン
以外の
地方
に展開されることになっておりまして、これがドイツよりも大きな四百人近い大規模な医療部隊で、野戦病院を幾つか一緒に持ってくるわけでございます。 それから、軍事
警察
、ロジ大隊、兵たん部隊とも言うべきロジ、これも八百数名必要なのでありますけれども、充足状態は十分でございません。それから、海上部隊に関しましてはウルグアイ、チリその他数カ国から来ることになっておりますけれども、これもまた十分の充足状態には現在至っておりません。 そういうことで、各国と話は一応しておりまして、数をそろえるところまで、それに近いところまでいっておりますけれども、例えばデンマークの
政府
に話して、いいところまでいったけれども結局最終的にはだめになったというふうな例もございますので、充足状態はかなりのところまで来ておるけれどもまだ足りないというのが
UNTAC
の公式の見解でありますし、私のところで
軍事部門
を担当しておる
サンダーソン将軍
もそういうことで非常に悩んでおるわけでございます。
木庭健太郎
38
○
木庭健太郎
君 ありがとうございました。
立木洋
39
○立木洋君 どうもお久しぶりでございます。時間が十分しかないものですから、ひとつ簡潔にお答えいただければありがたいと思います。 私たちは、
カンボジア
問題というのを一貫して重視してまいりまして、民族自決権の尊重のもとで真に平和、復興ということが実現できることを願っておりますし、それについては憲法の平和原則に基づいて積極的な
協力
を行うべきだというのが私たちの考え方です。 そういうことで、
二つ
の点を特にお尋ねしたいと思います。
一つ
の問題は、今後の
カンボジア
問題の決解ということ、それから将来の問題も展望したときにどうしても
一つ
の懸念として残るのはクメール・ルージュの問題、ポル・ポトの問題があるんではないかという考えです。 一九七〇年代の半ばにアメリカ軍がインドシナ半島から撤退しまして、それから新しい道を選択するということが
カンボジア
にも可能になった。しかし、それにもかかわらず、クメール・ルージュのああいうふうな大量虐殺によって大変な事態に巻き込まれたということがありました。そして、この問題に対しては
カンボジア
の
国民
の中ではポル・ポトに対する恐怖感が極めて根強く、何としてでもやっぱりポル・ポトの復活、復権は許されないという気持ちが非常に根強くあった。私も何回か訪問しましてそういう話を聞いたんです。 ですから、これがその後の
紛争
当事国あるいは
紛争
関係
諸国の中でも、この問題についてどうするかということが非常に交渉の対象になってきたという経過もあったと思うんです。 今度の問題では、この
パリ協定
によっては、第三部の
人権
の中で
人権
の侵害の再発を防止するためにというふうなことが立てられ、それについての内容がありますけれども、私は、つまりクメール・ルージュがどういうふうな政策を今後掲げるかという問題だけではなくて、この問題が残した
カンボジア
民族の中への傷跡といいますか亀裂といいますか、これは大変なものがあるんではないか、ドイツにおけるナチなんかの問題で、今日でも依然としてあれを擁護するような新たな勢力が台頭してきて、これが民族問題として依然としてやっぱり残されているということを考えると、この問題の解決というのはなかなか大変ではないだろうか。 特にポル・ポトの代表が
プノンペン
に来たときにああいう
事件
が起こりまして代表が負傷するというふうなこともありましたし、依然として戦闘状態が一部の地域ではあったにしろ続いているというふうなことも見られる、あるいはまた
地雷
をさらに新しく埋めているんではないかというふうな事態さえ懸念される。今のこの問題を解決していく、問題を進めていく上で、この問題について、先ほど若干同僚議員に対する御答弁もありましたけれども、どういうふうな問題をお考えになっておるのか。それから、この問題の将来的な展望はどういうふうにお感じになっているのか、その点をひとつ御説明いただければと思います。
明石康
40
○
参考人
(
明石康
君) 今、立木先生のクメール・ルージュの権力の再現をいかにして防ぐかという問題でございますけれども、これは
カンボジア
民主主義
の将来に立ちふさがっておる大きな問題であることは間違いないところだと思います。
カンボジア
の民衆の大多数にとってクメール・ルージュの再来というのは決して歓迎すべきものと考えられておらないのも事実だと思います。と同時に、やっぱりクメール・ルージュ出現の経済的、社会的背景としましては、やはり
カンボジア
の非常に恵まれなかった
農民
層の一部が都市における富裕層の腐敗と繁栄ぶりを見てクメール・ルージュの革命勢力に引かれていったという、そういう階級的な対立の背景が
一つ
あったと思います。 それから、クメール・ルージュは、
ベトナム
人の
カンボジア
駐在ということを非常に問題にします。我々は、それが事実ならばぜひ
UNTAC
にそういうことを
報告
してほしいということを事あるたびに言っておるのでありますけれども、それが本当に
ベトナム
の
軍隊
がいるのか、軍事アドバイザーなのか、
ベトナム
の
難民
ないしは
ベトナム
国籍の住民がたまたま
カンボジア
で働いておるのか、そこら辺の区別がはっきりしていないものですから何とも言えませんけれども、クメール・ルージュが事ごとに言いますのは、そういう
ベトナム
人の在住、これについてはほかの二派であるFUNCINPECとKPNLFという二派もそういうことを我々に伝えております。我々としても、そういう事実があれば、これは
パリ協定
違反でありますから、徹底的に
調査
する用意はございますけれども、なかなか具体的なそういう情報に接し得ないというのが現状でございます。 それから、先生が今おっしゃったとおり、
地雷
に関しましても、コンポントムの戦闘が頻発しておりますけれども、クメール・ルージュによる新しい
地雷
の敷設ということも、これは確かにそういう
報告
がなされております。そういうことで、平和プロセスヘのクメール・ルージュの参加ぶりについては批判がありますし、私もSNCの場でないしは記者会見で、そういう行為は許せないということを言っておりますし、クメール・ルージュ支配地域への
UNTAC
要員の行動の自由ということも
パリ協定
で保障されている以上、これに支障をもたらすようなことは許されないという批判をして現在に至っております。違反行為に対しては厳しく当たっていく所存であります。 そういうことで、クメール・ルージュも、
時代
が変わりましたし、
中国
その他の支持もなくなっておりますから、やはり国際情勢の違いを念頭に置いて、
選挙
の場、
民主主義
の場で
プノンペン政権
の欠陥ないしは対象を批判する、そういう方に政策を転換しているとも見られますし、そうであればやっぱり
民主主義
の制度的な強化ということをやることがクメール・ルージュ再出現に対する一番の有効な対策ではないかというふうに考えております。 そういうことで、
国民
怨嗟の的でもありますし、クメール・ルージュは
カンボジア
民主主義
の最大の挑戦ではありますけれども、とにかくきちんとした
人権
の保障、
民主主義
の保障、いい憲法をつくる。それから、そういうカウンターベイリングないろんな力を社会に育成してやるということが最大の使命であろうというふうに我々は考えて、努力しております。
立木洋
41
○立木洋君 もう
一つ
の問題といいますのは、民族自決権の尊重をいかに行うかという問題だと思うんです。 御
承知
の九〇年五月に
常任理事国
五カ国が
カンボジア
問題に対する提案をなされてから、その後いろいろな議論の変遷もありまして今日の
パリ協定
になったわけですけれども、見てみますと、これは例えば二カラグアなんかにおけるような
選挙
のあり方と違って、一般
行政
全体を管理
監督
するというふうな相当
権限
の強い
UNTAC
になっている。やはり将来の問題を考えるならば、そこで本当に民族の自決権を完全に尊重するという問題と兼ね合わせて考えた場合に、先ほど
参考人
は幾つかの点で配慮されている言葉が述べられましたけれども、その点でどういうことを考えていかなければならないのか。将来の民族自決権、
カンボジア
問題は
カンボジア人
民自身で、やっぱり将来解決すべき点は、
決定
はそこにあるわけですから、そこが最も重要な点だと思うんで、その点についてのお考えを
最後
に簡潔にお願いしたいと思います。
明石康
42
○
参考人
(
明石康
君) 確かに究極的には
カンボジア人
みずからが
カンボジア
の将来を、
カンボジア
の
民主主義
を担っていくということは間違いのないところでありまして、
国連
は必要な時間を超えて一刻といえども
カンボジア
に立ちどまる、そういう気持ちはございません。しかしながら、
シアヌーク殿下
も時々言うように、
カンボジア人
は非常にバッドルーザーであると言うんですね。
選挙
その他で負けた場合、敗れた方が自分が悪いと思わずに制度が悪いと思ってしまう。それから、
カンボジア人
は三人寄ると政党が六つできると言われております。それは確かに順列組み合わせを考えると三つじゃなくて六つですね。それほど党派性が強いということで、
民主主義
のレールをあの国で敷くというのは大変なことだと思いますけれども、また究極的にはやっぱり
カンボジア人
の
民主主義
であるべきなんで、それは両型のモデルを盲
目的
に我々は押しつけるべきものだとは思いません。 そういう
意味
で、
国連
としましても十分の自制心を持ちつつも、しかしながら
世界
に受け入れられている
民主主義
の基本的な原則みたいなものには相当厳正に適応させるというふうな、柔軟であるけれども厳しい、そういう二重の態度でもって当たるべきではないか。私も
日本
人であり、アジア人の一人でありますし、
国連
の職員ではございますけれども、
民主主義
についてこれが新しいイデオロギー的な教条主義にならないように、やはり人類共通の人間的な価値、そういったようなものを踏まえながら、ある程度柔軟性を持って
カンボジア
の将来の政治づくりに全面的に
協力
するというのが
国連
の使命であろうかと思っております。
井上哲夫
43
○
井上
哲夫君 連合参議院の
井上
哲夫と申します。 実は、ゴールデンウイークに私ども連合参議院は
カンボジア
に参りまして、
明石
代表のお留守にサドリ代理の方やサンダーソン
司令官
、あるいは川上補佐官にいろいろ御教示をいただきました。ありがとうございました。きょうまた、こうして
明石
代表にお会いをしていろいろお尋ねができることを大変幸運に思っております。 それで、時間が私も十分でございますので、二点ほどお尋ねをいたしたいと思います。 まず一点は、先ほど代表のお話の中に、この
UNTAC
の
カンボジア
における
役割
、その第四に法と秩序の
維持
の
役割
と。そこで
文民警察
、これは三千六百人の予定をしているということでございますが、
カンボジア
の大変今不安定になっている
警察
機構のモニターを
文民警察
によって行う。その
文民警察
の御
報告
があったわけでございますが、実はこの参議院の
特別委員会
においても、
日本
から
文民警察
を早く送るべきではないか、
現地
では若干の国からの
文民警察
が集結をしているようであるが、
現地
においてはもっと早く
文民警察
に来ていただきたいという声もあるというようなことで議論がなされております。 そこで、お尋ねをしたいわけでございますが、この
文民警察
、先ほど来代表のお話の中に、なるべく多くの国から
UNTAC
の要員というのは出てもらいたいんだ、したがって二カ国、三カ国から三千六百人を埋めるということではないと。
文民警察
についても七十五人程度が
一つ
の目安になっているということは私も伺っておるわけでございますが、
日本
が今
文民警察
七十五人を送るという場合には、例えば六十日間の完全自給態勢、あるいは現実に
プノンペン
市内だけでなくて
地方
に
文民警察
が行くということになると、特別な素養なり訓練なりあるいは
状況
なりが必要であるかどうか、まずその点についてお尋ねをいたします。
明石康
44
○
参考人
(
明石康
君) 法の秩序の
維持
と
文民警察
の
役割
についての
井上
先生の御
質問
でございますけれども、確かに我々は目標値としましては三千六百人の
文民警察
が必要であろうというふうに考えておりまして、その考えは今でも変わっておりません。ところが、先生この間
カンボジア
にみずから行かれましてみずからお聞きになりましたとおり、また私はそのとき
現地
におらなくて大変失礼申し上げました。
文民警察
の充足率はまだ半分くらいにしか達しておりません。これは軍と違いましてもっと小規模な数をそれぞれの国から出してもらっているものですから、それで先生がおっしゃったとおり、一カ国七十五人くらいが限度であろうということで数多くの国に派出をお願いしておるわけでございます。インドなんかは五百人提供できると言ってきたのでありますけれども、余り多過ぎても困りますし、そういうことできめ細かくいろんな国から得ようということであります。 その資格要件としましては、もちろん各国の
治安
維持
に携わる警官としての何年かの経験、経歴、それからできましたら英語ないしはフランス語を話す能力、
軍隊
と違いまして大きな単位として動くものではございませんので、二人ぐらいを単位としていろいろパトロールその他をやっていただくということなので、少なくとも二人のうちの一人、できれば二人とも英語かフランス語ができるのが望ましい。 それに
現地
語、クメール語の通訳をつけて
現地
の民衆とのいろんな話し合いに従事していただくということでありますので、もちろんそういう職業的な警官としての能力、経験、識見、並びにああいう僻地でございますから、健康上の問題が全くないと太鼓判を押されるような
タイ
プの人で、しかも
プノンペン
以外のマラリアなんかのあるところで行動する可能性もございますので、そういう点をきちんと心得ていただくこと。それから、二人単位で行動するわけですから、民衆との接触の上で、やはり
カンボジア
の文化とか歴史、風習に十分の理解と同情を持って当たり得るような人が望ましいということだと思います。
井上哲夫
45
○
井上
哲夫君 もう一点は、先ほど来
参考人
でもあられる
明石
代表が、
PKO
については非常に多岐的に機能分化してきて、かつ過去四十年の数よりも過去四年の数の方が著しいといいますか目立つというぐらいこのところ花盛りになった。そういう中で、
日本
に対して
PKO
の参加はもちろんのことであるが、アジアにおける
PKO
の物資の集結所、あるいはアジアにおけるトレーニング場所をやはり
日本
の力でつくってもらいたい、つくるべきではないか、こういうふうなお話を伺いまして、私も非常にその点では同感でございます。 そうしますと、本来
日本
がこれから
PKO
の問題で参加をしていこうと思えば、かなり集結場をつくり、トレーニングも兼ね備えということで、そのときそのときのものではなくて常設のもの、むしろ常備隊、常設隊、こういうものが望ましい、あるいはそうでなきゃならないんじゃないかというような考えに私は至っておるわけでございます。 その点で、実際に昨年スウェーデンやオーストリア等を回ってみまして、北欧の場合には四カ国でそういうものを持っておりますが、
日本
がアジアにおいて先立ってそういうものをつくっていくためにも、この際常備、常設というような大きな
一つ
の組織をつくって、そして即応態勢に、つまり花盛りの体制にも対応していく、こういうふうなことについてもう少し御
意見
があればお聞かせいただきたいと思います。
明石康
46
○
参考人
(
明石康
君) 私は、物資集積所とアジアにおける
PKO
訓練所構想は決して常設隊、常備部隊の考えに立っておりません。訓練所自体は常設であっても、そこに来る参加者は、各国から一カ月とか二カ月とかそういう形で交代交代で訓練期間だけ来てまだ自分の国へ帰るという
タイ
プの、そういう各国のそれぞれの
軍隊
の一部として、特に有事の際は
国連
の
PKO
に参加できるように、
国連
に参加する上での必要な常識、訓練。 それから、ある
意味
で
国連
の
PKO
に参加する
軍人
というのは
軍人
であるよりは外交官である必要があると私は思います。違った国の人、文化の人といかにして
協力
し理解し得るか、そういう
意味
では、外交官としての能力、それからほかの国の
軍人
さんとつき合う上での必要ないろんな条件、そういうものを身につけるためにも、また
停戦
の
監視
、撤退の
監視
、
武装解除
その他に必要なテクニック、そういうものを身につけるためにも訓練所は極めて重要であり、有効であろうと思います。
世界
じゅうのいろんなピースキーピングに参加した
人たち
からの経験談を聞く、失敗談も聞くということも大事でありましょうし、そういう
意味
では今までの通常の
軍隊
が訓練を受けていないような新しい
意味
での訓練が必要でありましょうし、
ポスト冷戦
時代
の
地域紛争
に有効に対処するためのいろんな技能、経験、これは無数にあると思うんですね。そういうことの難しさを決して軽視してはいけないんで、そういうことを身につけるためにも訓練所は有効であろうと思うわけでございます。単に言葉の問題だけではございません。 それから、現に
カンボジア
に行っておりますインドネシアの大隊を見て思いますのは、この数カ月の間にクメール語の訓練を非常に集中的に受けたようでございまして、いろんな幹線
道路
のパトロールをやってもらいましても、それを同じく
協力
してやっておる
カンボジア
の警官ないしは兵士とクメール語で非常に和気あいあいと話しながらやっておるんですね。これはすばらしい能力だと思うんですね。 それから、
オーストラリア
の
軍隊
は通信隊を担当しております。この
人たち
はもう数年前から、
カンボジア和平
が成立する前からインドシナ半島の諸国に人を
派遣
してそれぞれの国の歴史、文化、風習、政治、そういったようなものを身につけておりまして、そういう政治的な文脈の中で平和の
維持
を考えるということで、こちこちの一〇〇%の
軍人
ではなく、まさに
国連
の
軍人
外交官。 國弘先生はピースキーパーという言葉が必ずしも本当の
意味
でのピースキーピングとは
関係
なしに使われておるアメリカの用法について我々の注意を喚起なさったわけですけれども、私はこれからはアメリカがかつて示したようなグローバルポリスマン、そういう
世界
じゅうに行って平和をみずから押しつける
軍隊
じゃなくて、UNピースキーパーというふうな
関係
者の合意に基づいたソフトなピースキーピング、これがますます要請されるので、そのための必要な訓練をきちんとやっていただくということも焦眉の急になってきているんじゃないかと思います。
井上哲夫
47
○
井上
哲夫君 ありがとうございました。またお帰りになったら激務が待っておりますので、どうぞお体に気をつけて頑張っていただきたいと思います。
明石康
48
○
参考人
(
明石康
君) どうもありがとうございます。
田渕哲也
49
○田渕哲也君 民社党の田渕でございます。
明石
代表が国際的に極めて重要な仕事を
日本
人としてやっておられることに対しまして、我々としましても誇りに感じ、またその仕事が必ず大きな成果をおさめて成功されますように心からお祈りをしたいと思います。 先ほど
明石参考人
の方から、
日本
の行う貢献はバランスのとれたものであることが望ましいと。このお言葉は、
一つ
は財政的な面、人的な面、こういった面でのバランスということも含まれておると思います。また人的な面では、例えば
UNTAC
の場合を例にとりましても、たくさんの仕事の
部門
が分かれておりますけれども、それぞれの
部門
についてもバランスがとれておることが望ましいという
意味
かどうか、お伺いをしたいと思います。 特に
文民
の仕事、
軍人
の仕事があるわけでありますけれども、しかし要員の中の七割までが
軍人
である。したがって、特に
文民
だけでは
日本
がそれを全部あるいは大部分を引き受けるわけにいきませんから、
文民
だけとすると大体三割程度の中のさらに何分の一かという数しか出せないわけでありまして、それではやはりバランスのとれた貢献とは言えないというふうに私は理解するわけでありますけれども、この点について御
意見
をお伺いしたいと思います。
明石康
50
○
参考人
(
明石康
君) バランスのとれた貢献、これは各国とも同じような貢献をしていただきたいという
意味
では全くございません。それぞれの国の
特徴
、得意を生かしながらも、バランスのとれた貢献ということを私は期待したいと思うわけでございます。 アメリカなんかはまだまだ軍事力を持っておりますから軍事的な貢献が
中心
になるでありましょうし、
ASEAN諸国
はどうしても歩兵大隊、近辺でございますからそれを
中心
に出す。シンガポールのような小さい国は
文民警察
を
中心
にする。カナダなんかは伝統的に通信部隊とか兵たん部隊の
派遣
に得意を見せておりますから、そういう
特徴
を出してもいいと思います。ポーランドなんかもロジの面で非常に
特徴
のある
活動
を過去において見せてきております。 そういう
意味
で私は、
日本
は基本的にここまでの大きな経済力を身につけた以上、
カンボジア
に関しても財政的な貢献は別に恥ずることなく堂々として、私は全体の
分担金
並びに拠出金の総計の三分の一くらい出してもよろしいんじゃないかと。そういう期待がアジア諸国にもアメリカにもありますし、我が国にはそれだけの力があるんじゃないかと思っております。しかしながら、それだけではどうも寂しいのであって、やっぱり生身の人間が出ていって汗を流し努力をするというのでないと、顔のある
日本
人が
現地
で貢献するという印象がいかにも薄いという感じがするわけでございます。 そういう
意味
で、ある程度まとまった単位の
日本
人がそういう
カンボジア
の
PKO
の一部として自分の得意なところ、しかも自分が得意とするところでも
現地
が要請するところでなければこれはだめでございますから、空回りになるわけでございますから、
国連側
が最も必要としております、私が今申しましたそういう兵たんないしはエンジニアリングないしは運輸
関係
とかそういうもの。まあ医療
機関
も一時は非常に心配だったわけでございますけれども、幸いドイツとインドがこういう形で出ることになりましたから、医療は当分は
カンボジア
に関する限り充足されたと言っていいと思います。そういう需給
関係
を素早くキャッチした上でほかの国にできないような形での人的貢献をやっていただくというのが大事だと思うのであります。
日本
の貢献とはやや違いますけれども、もう既に
国連
の国際公務員として活躍しておる
日本
人の中で、若手の、特に女性職員なんかが次から次へと
カンボジア
に出てくる傾向がございまして、しかも
プノンペン
よりももっとへんぴなジャングルの中で仕事をしたいなんという元気なお嬢さん方もいて、私はもう本当に涙が出るほどうれしく感じておりますけれども、そういうありとあらゆる面において今先生のおっしゃったようなバランスのとれた国際貢献。
日本
人は危険なところには行かぬ、
地雷
があるところは嫌だなんということは、それはだれでもそこへ行くのは嫌なのでございますけれども、今や
タイ
の工兵大隊、
UNTAC
の傘下で一個大隊、それから
カンボジア
とのバイの
関係
で一個大隊出ておりまして、
地雷
の撤去を扱っておるわけですけれども、
犠牲者
は一人も出ておりません。今まで
犠牲者
は、マラリアにかかった二人と自動車事故でけがした一人、それからさっき申し上げた
オーストラリア
のヘリコプターに射撃されたスチュワート大佐、これくらいしか出ておりません。 そういうことで、
国じゅう
地雷
はありますけれども、それなりの注意をしておればすぐ
地雷
に触れるということではありませんので、余り恐怖観念に陥る必要はないわけでございますから、そういう
意味
で私は、汗を流す人的貢献というものが財政的な貢献とバランスのとれた形でアジアに印象づけられるということが今の
日本
にとっては大変な急務であろうかというふうに考えております。
田渕哲也
51
○田渕哲也君 この国会でも
カンボジア
の問題も含めて
PKO
のやり方についての論議が行われておるわけでありますが、私はその中で、
意見
はいろいろありますけれども、共通している部分は、やはり
日本
の憲法にいう平和主義というものは守っていきたいと、これは
意見
の対立はないと思います。ただ問題は、
PKO
の中に自衛隊を
派遣
することは憲法にいう平和主義に反するあるいは反しない、そういった
意味
で
国民
の
意見
もまた国会における論議も分かれておるように思います。 ただ私は、
日本
の憲法にいう平和主義といいましても、平和というものは一国だけでできるものではありません。他国との
関係
、多くの国の
関係
あるいは
二つ
の国の
関係
が平和かどうかということであります、内乱の場合は別としまして。したがって、その平和主義というものの考え方はやはり
世界
の各国に普遍的なものでなければならないと思います。
日本
は、第二次大戦に負けたときにやはり平和の国というものを目指したと思います。そして、その場合にモデルとして挙げられた国は、大体スイスとかスウェーデンとかいうのが言われたわけであります。しかし、スウェーデンにしましても
PKO
には非常に積極的に参加しておる。スイスもこれに参加しようというような動きになってきております。そういう点から見ますと、
PKO
に自衛隊を出すこと自体が
世界
の普遍的な考え方から見て平和主義に反するというふうなことにはとられないんではないか、また我々も
PKO
に出すことは平和主義に反するという考え方は間違っておるのではないかと私は思うんですけれども、国際的に見てその辺はどういう感じが一般的であるか、お伺いをしたいと思います。
明石康
52
○
参考人
(
明石康
君) 今、田渕先生のおっしゃったことは基本的な問題だと思います。私も、平和が一国だけで守れる
時代
はもう過ぎておると思います。それから、一国の軍事力だけで防げるということはアメリカでさえも今やできないということを認識しておるんだと思います。それが冷戦の残したほろ苦い教訓であろうかと思います。とすれば、私は、
国連
というものにもっと依拠し
国連
を活用する、また
国連
の
PKO
を強化することによっていろんな
地域紛争
に対処するということも
一つ
の道だと思うのであります。しかしながら、
国連
は万能ではございませんし、
国連
にこれを全部、全面的に依拠するのも間違いでございましょう。ですから、平和を守るためには、いろんなそういう選択肢を併用する必要があるんだと思います。
PKO
を支えるためにも、さっきから話がありましたけれども、財政的にも機材の面でも人の面でもいろいろやる道があるでしょうし、
PKO
をとってみてもなおかつ、そういう工兵部隊を出すのか、兵たん部隊を出すのか、医療部隊を出すのか、いろいろあると思います。それからもちろん、
選挙
監視
、
文民警察
、いろいろあると思うんです。ただ、平和は一国だけでは決して
維持
できないし、
日本
のいろんな
人たち
が海外に出ていってほかの国の
人たち
と一緒に汗を流す、そのことで
日本
のやり方の弱点とか短所も見えてくるでしょう。 私は、自衛隊が出るべきかどうかということはこういう場で諸先生方が十分に論議を交わした上でお決めになることだと思いますけれども、自衛隊が海外に出ていってほかの国のそういう
軍人
さんと肩を並べて仕事をするならば、むしろ自衛隊が非常に国際的な面に目覚め、自分たちの限界もわかってくるでしょう。そういう
軍人
外交官的な存在が
国連
の
PKO
の
担当者
でおると申し上げましたけれども、そういう
意味
では、そういう新しい形での国際平和の
維持
の仕方に
日本
の
人たち
がみずから参加するということは、非常にみずからにとっても学ぶことが多いと思います。そういう
世界
における安全保障のやり方は、単独の
軍事面
での安全保障という考え方が背景に退いて、集団的なやり方、地域的なやり方が次第に表面に浮かび上がってきております。そういう新しい
状況
を酌み取るためにも非常にいいものではないかと思います。 そういう
意味
で平和は、平和のためにこれを祈念することも大事でございますけれども、具体的な方策をみんなで考える。また、平和は基本的には不可分である。遠いユーゴスラビアの平和が崩れても、それは究極的にはアジアにまで影響してくるかもしれませんし、私は、そういう
意味
ではヨーロッパ諸国がわざわざ
カンボジア
まで兵隊を出してくるその気持ち、そのとうとさというものを我々は忘れてはいけないんじゃないかと思います。やっぱり、こんなに交通、通信が便利になった
時代
であっても、
日本
人は食べ物とかそういうものについては非常にコスモポリタンになり国際的になりましたけれども、自国の平和とか安全保障を考える場合にまだまだ一国
中心
ではないかと、それが非常に残念だと思います。
田渕哲也
53
○田渕哲也君 ありがとうございました。
下条進一郎
54
○
委員長
(
下条進一郎
君) 以上で
明石参考人
に対する質疑は終わりました。
明石参考人
に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多忙のところ長時間の御
出席
をいただき、貴重な御
意見
を賜りましてまことにありがとうございました。本
委員会
を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手) 明十三日午前十時に
委員会
を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後零時五十一分散会