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竹村泰子君 今後の
医療政策を
考えるにつきまして、
患者の権利、
医療サービスの需要者の立場を考慮した政策を
考えるべきであると思います。特に
衆議院からずっとインフォームド・コンセントについてはかなりの議論が闘わされてきたと思いますけれ
ども、インフォームド・コンセントについては早急にその
問題点を洗い出して、
国民の前に広く議論の経過を含めて情報を公開すべきであるというふうに思います。
そもそも、インフォームド・コンセントという問題は、もう言うまでもありませんが、もちろん良心的なお
医者さん
たちは、そんなものはもうとっくにやっているよと、今さらそんなインフォームド・コンセントなんて問題にすること自体がおかしいよと、私もかなりお
医者さんにいろいろお聞きしてみましたけれ
ども、そういう
お答えも随分ございました。この
委員会の中にもお
医者さんがかなりおられますのでお耳ざわりかもし札ませんけれ
ども、しかし一〇〇%そういうお
医者さんばかりではないのでございまして、このインフォームド・コンセントというようなことが近来問題になってきましたのは、第二次大戦後にニュルンベルク裁判でナチスが人道に反する実験を被験者に加えていたということが明らかになったことから、
医学的な実験には被験者の同意が必要だというニュルンベルク綱領というものがつくられ、それ以来西欧社会ではかなり
患者の権利という問題が出てきていると思います。
これは日本
医師会生命倫理懇談会が出しておられます「「
説明と同意」についての報告」という報告書もございますけれ
ども、この中では「
説明と同意」というふうに訳しておられるんです。インフォームド・コンセントというのはどう訳せば一番的確なのかということは種々議論のあるところだと思いますけれ
ども、
患者と
医師の立場で、要するに
説明をされて
患者がそれに対して同意をするというだけのことではないのではないかと、私はそう思うんです。
これは「
医療の倫理」という、星野一正さんという方のお書きになった本なんですけれ
ども、「インフォームド・コンセントの前提条件」としてこんなことが挙げられているんですね。例えば「
患者の
医師への質問の自由」、こんなの当たり前のことだと思いますけれ
ども、なかなかこれがやりにくい。余計なこと質問するなというふうな顔をされることがしばしば。「
患者が同意した
医療を実施した時の
医療上の責任」、それから「
患者の同意拒否権」、
医師が
患者に
説明をして診療行為の選択肢を与えて同意を求めた場合、
患者はいずれの選択肢にも同意をしなくてもよいという拒否権です。それから「
患者の同意撤回権」、
患者が
医師に同意を与えた後でも、
考えが変わったら同意を撤回したり変更を求める権利がある。それから「
医師を選ぶ
患者の権利」、
患者は
医師を選ぶ権利があり
医師を変える権利もある。「
患者の診療拒否権」、「
患者の
医療の選択権の制限」というふうな、こんなことが幾つか書かれておりまして、もちろん
患者には「真実を知る権利」も、知りたくなければ「知らされないでいる権利」も、あるいは「そっとしておいてほしい権利」もあることを忘れてはならないというふうにあるんですね。
このインフォームド・コンセントということについて、
説明をされてそれにただ同意をするということだけではなくて、
患者の自己決定権といいますか、
患者があくまでも自由な意思に基づき診療、
検査、投薬、手術その他の
医療行為について、それを選択しあるいは拒否することができる。それから
医療行為の目的、方法、危険性、予後など、
治療などについて
説明や報告を受ける権利がある、あるいは
患者は同一
医療機関の別の
医療従事者あるいはほかの
医療機関の従事者からの意見を求めることができるとか、個人情報を保護される権利があるとか、今いろいろなことが、御存じのとおり
患者の権利法というものを
考えている方
たちがおられまして、昨年の十月に「
患者の権利法をつくる会」というのが設立されております。
患者の権利法などをつくると
医師と
患者の間がぎくしゃくするのではないか、そういう心配をする人もいるわけですけれ
ども、そしてまた日本の
医療の世界でそういった問題はそぐわない、今までの
関係で十分じゃないかというふうなことも言われております。ただ、その中で、現在の日本における
医療が十分である、もう私
たちはこれで満足をしている、満ち足りているということが一〇〇%言えるわけではない。
快適な環境において最善の
医療を受け、病気であっても可能な限り通常の私
生活や社会
生活を営む権利を持っている。
老人病院の問題をさっき申し上げましたけれ
ども、そういった
患者の権利を奪うことのないようにしなければならない。
患者の納得を得ながら
医療を行うことによってこそ
医師も
医療も進歩するというふうな、こういう
考え方に立ては、インフォームド・コンセントということについてはいろいろな
考え方があると思いますけれ
ども、大変大切な私
たちの命にかかわる権利ではないかというふうに思うわけですね。
さらに、日本では、私も素人なのに生意気なことを言うようですけれ
ども、いわゆるムンテラと呼ばれる、ムンドテラピーというんですか、難しい言葉で、
医師がわかりやすく
説明をして、
病状、
診断、
治療、予後などを
患者に理解させ納得してもらう。そのことのみにインフォームド・コンセントということが使われるとするならば、これは非常に貧弱な発想になってしまうのではないか、そういうふうに思うわけです。
このインフォームド・コンセントの前に親切な
説明、病名、今後の進行状況、
治療、注意事項、副作用の有無、投薬の内容、そういったことについて必要なことを十分
厚生省が
検討するべきではないかと思いますけれ
ども、インフォームド・コンセントということについて
厚生省、
大臣もお伺いしたいと思いますが、どのように
考えておられて、今後どうしたいとお思いか教えていただきたいと思います。