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1992-04-27 第123回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年四月二十七日(月曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     会 長         中西 一郎君     理 事                 尾辻 秀久君                 大城 眞順君                 赤桐  操君                 和田 教美君                 立木  洋君     委 員                 井上 吉夫君                 沓掛 哲男君                 木暮 山人君                 下稲葉耕吉君                 田村 秀昭君                 永野 茂門君                 成瀬 守重君                 野沢 太三君                 宮澤  弘君                 一井 淳治君                 翫  正敏君                 角田 義一君                 細谷 昭雄君                 三石 久江君                 山口 哲夫君                 山田 健一君                 上田耕一郎君                 井上  計君    事務局側        第一特別調査室  下田 和夫君        長     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○外交総合安全保障に関する調査  (「九〇年代の日本役割-環境安全保障の  あり方ー」)     ―――――――――――――
  2. 中西一郎

    会長中西一郎君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査会を開会いたします。  外交総合安全保障に関する調査議題といたします。  本調査会は、第百十五回国会において設置されて以来、調査を進めてまいりました。今や最終報告をまとめるべぎ段階に至っております。このため、本日は、このような状況を踏まえて意見交換を行うことといたしました。  既に委員各位にお配りしてあります会長案は、理事会の了承のもとに、これまでに聴取した参考人意見質疑等の中で提起されました問題点提案を、本調査会調査テーマ「九〇年代の日本役割-環境安全保障あり方この観点から、できる限り一致点を見出し、調査会として何らかの提言に結びつけることができるよう私のもとで「課題提言」として整理をしたものであります。委員各位には、こうした点を踏まえて意見をお述べいただきますようお願いいたします。  本日の議事の進め方でありますが、理事会で協議いたしました結果、まず最初に、各会派に配分いたしました時間の範囲内で会長案全体についてそれぞれの会派から包括的に意見をお述べいただきます用意見表明が一巡しました後、この会長案環境安全保障と新しい平和秩序二つ部分に分けて、懇談形式により自由に委員から補足して意見をお述べいただく形で進めることといたしたいと存じます。  それでは、まず、会長案について各会派から包括的に順次御意見をお述べ願います。
  3. 大城眞順

    大城眞順君 それでは、会長案につきまして意見表明いたします。  六月三日からブラジルで開かれます環境開発に関する国連会議、いわゆる地球サミットを直前に控えまして、我が国はもちろん世界的に地球環境問題が広範に取り上げられ、大きな盛り上がりを見せております。このサミット成功いかんにつきましてはさまざまに取りざたされておりますが、地球を救い、人類、自然の生存を可能とするためにも、サミットが必ず成功するよう期待するものであります。日本政府イニシアチブの発揮を心から切望いたしております。  ところで、このように地球環境問題が盛り上がりを見せるのに先駆けて、今期外交総合安全保障に関する調査会は早くからこの問題を視点に据え、これを安全保障という枠組みの中でとらえ直そうという先駆的な取り組みをしてきたわけでありますが、まず私はこのことを率直に評価いたしたいと思います。  会長案が指摘しておりますように、今や環境安全保障という言葉が全く新しい言葉であるにもかかわらず、かなり定着しつつあると思います。日本人初宇宙飛行士秋山豊寛さんは、宇宙からこの地球を見た印象を聞かれて、「アフリカが余りに茶色くて雲がない。アメリカ日本などの雲がグレーで汚れている。一方でカリブ海やインド洋はきれいだ。ガガーリンが青いと言った地球よりも地球は病んでいるなどいう印象だ」と語っておりますが、今に生きる我々は人類生存、あらゆる生態系持続可能性、そして地球全体の環境安全保障のためにこのかけがえのない地球を青い惑星の状態で将来の世代に残し、つなげていかなければなりません。その責任と義務が今この地球に住む我々一人一人に課せられていると言ってよいのであります。  かつて、地球に対する最大脅威は核兵器による破壊でありました。今はそれにかわって、あるいはそれに加えて、地球環境破壊、すなわちオゾン層破壊地球温暖化熱帯林破壊などによる地球環境破壊最大脅威となっているのであります。この意味で、私は、安全保障という言葉がかつてのように軍事的な脅威に対してだけではなく、今では広く環境破壊などの非軍事的脅威も含むより包括的、網羅的な脅威からの安全保障をも取り込んで考えていくベきであると思います。まさに安全保障の再定義をすべき状況にあると思うのであります。しかも、その安全保障は、地球環境破壊を防ぐためには世界国々がグローバルに協力しなければならないのと同じように、地球上のすべての国、すべての人々地球的な規模対応しなければならないいわば地球安全保障なのであります。私は、本調査会がこのような認識を基本として調査を進めてきましたことを評価いたしますとともに、この問題は今後もさらに調査を継続するに値するものと思っております。  さて、会長案の細部につきまして若干の要望を述べさせていただきます。  まず第一は、地球環境破壊は、人間活動の富の部分からも、そしてまた貧の部分からも生ずることをもっと強調してほしいと思うのであります。経済成長のための開発を追求することによる環境破壊がある一方で、生活が貧しいがゆえの破壊、すなわち生活のための環境破壊がもう一方にあります。その結果、人間と自然との共生循環の原理が壊され、破壊という悪循環が生まれるのであります。こうした悪循環のサイクルをどうしても断ち切らなければなりません。  そのための一例を申し上げますならば、政府開発援助ODAの供与にしましても、環境破壊したり汚染することがないもの、あるいはむしろ環境保全破壊防止につながるような環境に配 慮した援助実施、また科学文明一定規制を加えるといった措置を具体的に講じていくことであります。地球環境破壊を防ぐために富の側の役割は何か、貧の側の役割は何か、そしてまた双方の側を最も望ましい形でつなげる接点ほどこに求めたらよいのかなとについて、より一層調査していくべきことを提案いたします。  一方、今日は国際化時代と言われているわけでございますが、地球環境問題はインターナショナライゼーション、国際化視点だけではなお十分ではなく、むしろグローバライゼーションの立場に立たなければならないということであります。空気も水も土もみな人類と自然の共有のものであるという地球化理念を明確に打ち立てなければなりません。また、空気、水、土といった地球生態系が崩壊していくことによって地球上の一人当たりの穀物生産量は逓減しますし、毎年の穀物不足量が漸増していくという指摘を重く受けとめて考えるべきであります。さらに、量的な穀物不足の危機のほかに、化学肥料、農業の多量使用、あるいはポストハーベストによる食べ物の危険性、すなわち質の問題も放置できません。こうした食の安全保障立場から適切な対応必要性についてもできれば言及していただきたいと思います。  次に、安全保障についてでありますが、国連を抜本的に改造する一つの試みとして、現在の安全保障理事会のような機能を持った、今日の重要な懸案事項を扱う複数の理事会国連に設置することは一つのアイデアであると思います。我が国はそのような提案をしつつ、その中で自国の地位にふさわしい十分な責任を果たしていくべきだと思います。  しかし、同じ抜本的改革案であっても、国連構成単位として企業平和団体などを参加させるというのはいかがなものでしょうか。国連はユナイテッドネーションズであって、ユナイテッド企業でもユナイテッドNGOでもありません。これらは本来国連参加主体とはなり得ないと思いますし、仮に参加を認めたとするならば、逆に国連の混乱、機構の肥大化、非効率化を招くばかりであると懸念するのであります。国連をつくりかえる必要性を認め、またそのためのさまざまな提案、考え方があってもよいと思いますが、むしろ将来の国連はよりシンプルなものを志向し、世界人々から親しまれるものにしていくべきだと思います。  次に、会長案は、国会国際平和研究所を設置するよう提案しております。その意図は十分に了解するのでありますが、かりそめにも唯一の立法機関、国権の最高機関である国会機能を侵すようなことがあってはなりません。今後の報告書の取りまとめに当たっては、この点に十分留意すべきことを盛り込んだらいかがでしょうか。  最後に、二点について申し上げます。  第一は、本調査会が、我が国安全保障あり方政策そのものについて今期も十分な相互討議を行い得なかったことはまことに残念であります。現状においてはそれはなかなか難しいことはよく承知しておるのでありますが、将来、いつの機会にか忌憚のない意見交換を行い、国の政策立案に反映させたいと思っておりますことをこり際特に申し上げ、委員各位の御理解を賜りたいと思います。  第二は、本調査会は、今期地球環境問題に力を注ぎ、またそれなりに基本的な事項について提言も明らかにしつつあるわけでありますから、それをさらに一歩前進させ、調査会に与えられた機能一つであります立法勧告権を生かしまして、地球環境問題に対応するに当たっての我が国基本的理念を含めまして、その大枠、原則を定めるような、いわば地球環境憲章にも類する地球環境問題のための原則に関する法律案といった立法をこの際勧告したらどうかと思うのでありますが、いかがなものでしょうか。  これらの点につきまして、会長において再度御検討、御協議いただき、最終報告が一層中身の濃いものとなり、本調査会存在価値をアピールするようなものとなりますことを、そしてまたそのことを広く社会に知らしめる有効、適切な措置をとるようお願いいたしまして、私の意見表明を終わります。
  4. 赤桐操

    赤桐操君 中西調査会長の御努力調査室の大変な御協力で本調査会最終報告討議資料調査会長案がまとまりました。本当にありがとうございました。  「九〇年代の日本役割」の冊子を拝見いたしましたが、これまでの調査会での論議はもちろん、招致した参考人の貴重な御意見等も御勘案願って、環境安全保障と新時代平和秩序構築の二項目にまとめ、それぞれの項目を「課題提言」に整理いただいたことは大変結構であります。政府提出法案中心に審議するいわば受け身の国会から、政策提言並び参議院先議法案提出という主体的、能動的で立法府本来の役割を果たすために、六年前、国会法を改正して本院に調査会制度を設けた趣旨に照らしても、中西調査会長案提言を多数盛り込んだ苦心の跡がうかがえるのであります。  さらに、本年六月、ブラジル環境サミットが開かれることは世界的関心事であります。私ども外交総合安全保障調査会が、地球規模での環境破壊によって人類生存を初め地球上の生命が脅威にさらされている昨今、地球環境に優しい「共生循環」を柱にした新しい生き方の政策提言を行うことはまことに時宜を得たものであると存じます。願わくは、この調査会最終報告が何らかの方法で環境サミットに提出され、国際的に一定役割を果たすことを強く期待し、要望要請をいたすものであります。  中西会長のお取り計らいで包括的な意見表明機会をいただきましたので、以下数点にわたり私の意見を申し上げます。  まず、環境安全保障の部についてでありますが、できましたら国際経済的な視点からの分析を補っていただきたいのであります。  その一は、今日の世界的環境破壊の背後に南北問題、すなわち経済成長格差と貧富の問題が存在いたしております。  多分、六月の環境サミットでもこの問題は相当重要なテーマ一つになるであろうと思われます。南の国の人々の飢餓、貧困からの脱出をどう図るか、また北の富める国々からの援助の問題、そして豊かな生活構造排気ガスによる地球温暖化といった環境破壊を生み出す問題をどう解決するか等、課題提言すべき点があるのではないでしょうか。  その二は、人口問題についてであります。  環境破壊原因一つが爆発的な人口増加によってもたらされていることは否めません。その多くは発展途上国開発途上国で起きており、飢えと貧困、そして生きるための労働力確保悪循環に陥っている問題であります。開発途上国経済発展環境政策と調和を図りつつどのように進めていくか多くの課題がありますが、人口爆発的増加対策と不可分と考えるのであります。  その三は、環境安全保障資金の問題についてであります。  地球規模での環境安全保障を推進する場合、多額な資金を必要とすることは間違いありません。ブラジルでの環境サミット準備会議ともいうべき先ごろ東京で開かれた賢人会議でも重要な議題となったことは周知のとおりであります。既にいろいろの構想や負担のあり方報道されております。平和の配当を最優先にこの分野に回すべきは当然と考えますが、討議資料では特段の提言は行われておりません。私も個別問題に深入りし過ぎることは本調査会性格等から避けるべきだと考えます。しかし、非常に重要な課題でありますので、提言の一項を起こし、皆さんにあらゆる分野からの検討を行うことの注文を出すべきではないかと存じます。  その四は、我が国ODA政府開発援助環境保護の問題であります。  既に、国会委員会審議でも取り上げられたことがありますが、過去の我が国開発援助現地 住民の生活を脅かしたり、環境破壊の被害をもたらした例が幾つかございました。まことに残念であります。政府開発援助実施要請主義に基づくこと、また相手国主権尊重と重要な関連があること等、困難な点も承知いたしております。しかし、国民の血税を使っての政府開発援助環境破壊、公害、汚染等の引き金となってはなりません。この点で慎重な事前調査はもちろん、さらにプロジェクト実行、建設中も完成後も現地政府共同調査を行い、その結果を公表するようなシステムづくりが必要かと考えます。  次に、新しい時代平和秩序の部についてであります。  その一は、国連重視平和秩序構築との関連で、ぜひ国連憲章から旧敵国条項を削除していただきたい。第二次大戦の戦勝国中心となってつくられた国連でありますが、間もなく敗戦から半世紀を迎えようとしております。そして、この間の激変は討議資料の随所に述べられたとおりであります。多くの説明は必要ないと存じます。日本国民が心の底から国連重視世界平和構築に協力できるために、国連憲章の改正を提言に盛っていただきたいと思うのであります。  以上、私の所見を申し上げまして、終わります。
  5. 和田教美

    和田教美君 調査会最終報告書会長案を拝見いたしました。これまでの最終報告書のスタイルと比べてみますと、これまではどちらかといいますと各論併記両論併記というふうな、調査会安全保障問題に関する意見の食い違いというふうなものを反映した面がかなり浮かび出ておったわけでございますけれども、それに比べますと、今度の調査会長案二つテーマ、特に「環境安全保障を目指して」という第一項目テーマについては、努めて各会派の主張にとらわれずに、コンセンサスを求めて共通あるいは一致できるという点について提言というふうな形で具体的な提言を出しておられるということは、調査会あり方として一つの進歩であるというふうに私は評価をいたしております。調査会長の御苦心と、それからそれを支えられました調査室皆様方の御努力に対して多とするものでございます。  さて、今既にお二人の方々からいろいろな意見が出ておりますし、私も時間が制限されておりますので、余り具体的なことはこの際は申し上げませんけれども、まず「環境安全保障を目指して-「共生循環」こという問題について、こういった点をつけ加えたらどうかということを一つ申し上げます。  それは、平和、安全というふうな問題と、環境の問題が非常に密接な関連性があるという点を強調したらどうかということでございます。  このリポート最終案によりますと、環境の問題も総合安全保障という枠の中での一つ構成要素であるから、そういうかかわりで環境安全保障の問題を取り上げておるという形になっております。それはそのとおりだと思いますけれども、しかし余りに総合安全保障中身にすべての問題がかかわってくる。例えば経済環境もというふうになってくると、安全保障そのものの概念がますます拡散していくというふうな問題点も前々から指摘されておるわけでございます。  そこで、なぜこの調査会がこの際環境安全保障を重点的に取り上げたかという点についての補強材料として、今私が申し上げました平和、安全と環境問題との非常に密接な連関性ということを強調したらどうかと思うわけでございます。  それは、具体的には、この調査会勉強シリーズの「参議院外交総合安保資料シリーズ ナンバー8」の「九〇年代の日本役割-環境安全保障あり方こというプリントでございますが、その中で綿貫礼子さんが、「生態学的安全とは何か」というなかなか独自性のある論文を書いておりますけれども、それを見て思いついたわけでございます。  綿貫礼子さんは、具体的にどういうことを言っているかというと、「共生」という問題、これを媒介として平和の問題と安全保障の問題などを論じておるわけですけれども、綿貫さんの見解によると、この「共生の思想が問われるのはこ大体大きく分けて三つあると。「一つは、自然と人間関係性こであると。「つまり生態系では生きとし生けるものすべてが「共に生き合って」おり、人間も決して外側にあるのではないという関係」。それから二つ目は、「人間人間との関係性」。これが二つあって、「人間人間関係性ではとりわけ南と北」との問題、それから「男性と女性さらに現代世代対将来世代のかかわり方が重要である。」というふうな区分けの仕方をしております。  この綿貫理論に基づいて私考えますと、自然と人間との関係性で今問われているのは、人間がしばしば地球環境破壊など生態系破壊者として行動してきたということであります川合調査室に調べてもらっているんですけれども、最近環境庁があるいは経済企画庁の委託で、環境問題についてのリポートをまとめるに当たって、その内容が新聞に報道されておりましたけれども、それによると、やはり環境問題の前進には平和が前提であると、重要であるということが強調されておるというふうに報道をされておりました。こういうふうに、自然と人間との関係でもこの両者の関係は非常に密接であるということであります。  それからもう一つ人間人間との関係では、今もお話ございましたように、北と南との関係先進諸国経済成長至上主義に走って、南の資源収奪を続けた結果が南の発展途上国貧困人口爆発、疫病の多発などにつながっているという問題があり、これらがまた南の国々紛争あるいは戦争の原因ともなっているという関係でございます。環境破壊はもちろんのこと、紛争にもつながっておるという問題でございます。  それから最近、平和の配当という言葉がよく言われております。これは、世の中が平和になってきたんだから軍事力をなるべく低いレベルにとどめて、それによる平和の配当途上国開発あるいは環境保全などに使うべきであるという議論でございます。しかし、そのイニシアチブをまず日本がとるには軍縮の問題を真剣に取り上げなければいけないというふうに私は考えるわけでございますけれども、そういう点で見ますと、軍縮問題どこの共生とのあるいは環境との関係も決して無関係ではないというふうに言えるわけでございます。  そういう点で、この問題を取り上げることがこのリポートをこの調査会がやったということの意義づけの補強材料になるんではないかと思いますので、その点をまず申し上げたいと思います。  それから、あとの問題につきましては、もう既に時間も参りましたので、後の補足的な意見の中で二、三申し上げたいと思います。
  6. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 調査会長案環境部分について、日本共産党としての意見表明します。  全体としてこの部分は、参考人意見委員会での討議を踏まえて、広い視野でまとめられたものとしてユニークで積極的な内容を持つものと思います。こうした高い評価前提とした上で、幾つかの問題点を提起いたします。  一、提言では、日本の公害環境問題は終わったかのような印象を受けるものとなっていますが、日本にはまだ大気汚染、ごみ、公害患者問題、森林保護問題などなどたくさんの課題があり、こうした問題をどう解決するのかが大きな課題として残っています。  二、次に三ページで、「共生」と「循環」の立場から、南北問題を重視していることに賛成です。そのためには、厳しい環境アセス法を制定し、海外で活動する日本企業にもこれを守らせることが重要な課題になっています。  十ページに、「日本国内にある基準」とありますが、これは極めて不十分なものであることを指摘したいと思います。  三、四ページから五ページでの「理念提言は、倫理と教育に傾き過ぎており、熱帯雨林問題、地球温暖化問題などに鮮明なように、地球環境破壊の主役の一つになっている日本巨大企業責任 とその活動規制をより明確にすべきだと思います。  四、六ページの軍縮推進による環境財源提言は大いに賛成です。  五、七ページの「地球版緑マーシャルプラン」の提言は、内容はおおむね積極的ですが、この名称には賛成できません。というのは、マーシャルプランヨーロッパ経済復興役割を果たしたことは事実であっても、NATOとアメリカヨーロッパ支配政策と結びついていたからであります。  六、六月からブラジルで開かれる地球サミットに対する政府対応には極めて消極的なものがあります。例えば、今度のサミットで大きな問題になるCO2の削減問題で、日本現状維持アメリカ規制反対の態度です。一万ドイツは、今より減らす計画を持っています。日本は削減のために積極的に動くべきなのに、報道によると日本とECはアメリカに対してCO2を削減してくれるなと言っているとのことで、これが事実ならば許せません。その点で、当調査会として政府に対する勧告がどうしても必要だと考えます。会長並びに委員各位の御検討を期待します。
  7. 立木洋

    立木洋君 私は、引き続いて第二の「新しい時代平和秩序を求めて」についての意見を述べさせていただきます。  この課題の中で、国家機能及び国家のつき合い方を変えていこうという相互依存の仕組みの問題が提示されています。ここでは「積極的平和」という表現を使っていますが、この内容を充実させるということを前提にして私は同感です。ただ、ここで重視されなければならない問題は、民族問題についての叙述がほとんどないことです。  民族の自決権尊重という問題は、国家間、民族間の相互関係においても極めて重要であり、民族の自決権の尊重は世界の平和の前提であるということを考えるならば、これらの叙述は補足すべき点があるというふうに述べたいわけです。特に、今日民族問題は、その分離の問題やら連合の問題等々においてもこの問題が解決されなければならない問題ですし、武力によらずに、民族自決権の尊重を前提として話し合いによって解決するということが大切だと思います。  ここで指摘しておきたい考え方の一つとして、平和秩序の問題の中で、国際的な諸問題に対処する上でダブルスタンダードという考え、つまり二重基準が存在するということは矛盾を深刻化する点になるので、この点は改められる必要があるということは当然指摘されるべきではないでしょうか。これは、国際的な諸問題を処理する上で当然の原則が形骸化されるということになりますし、正しい秩序の確立にはなり得ません。この問題は、核兵器の問題においても、また中東の問題においてもこれまで私たちの見てきたところであります。もちろん、これが侵略者の口実にされるということは許されないわけですが、いずれにしろ、二重基準は世界の秩序を正しく確立していく上で矛盾を内包するということを述べざるを得ないわけです。  そういう意味から考えて、このため、従来の力による平和と安全の枠組み等々の軍事ブロック、これらの解体、核兵器が人類と共存し得ないということを前提としての廃絶、これらの問題は明確にされる必要があると考えます。  提言一のところの「世界史の教えるところ」という点では、今述べた民族自決権の尊重、戦争・武力行使の違法化の実現等々が問題だと考えます。  提言二の中では、国際的緊密化の問題についてはやはり原則として平和五原則に基づくべきではないでしょうか。  提言三にある内容では、このイデオロギーは当然主権在民、侵略戦争の反省、これを不可欠にするものと考えます。  提言四については、賛成であります。  次の、「アジア・太平洋の平和・軍縮・発展」等の問題については、今の日米安保条約の問題、在日米軍の問題等々少なくない問題があると考えます。これらの中にもちろん同意できる点がありますが、問題の一つとしては、日本が唯一の被爆国であるということを考えるならば、アジアの非核化の提案、これは重要ではないでしょうか。ましてや世界の流れを考えるならば、当然日本軍縮についても提起されるべきだと思います。日米安保条約の廃棄は私たちとして明確に主張しておきたいと思います。  最後に、「国連の強化」の問題については、国連二つ世界大戦の反省に立って、すべての国が参加する集団安全保障体制を確立し、いかなる軍事同盟もない世界を目指すことを根本精神として発足したわけですが、当初これが十分な力を発揮し得なかったことはこれまで見たところであります。  ところで、今回の状況の中で、ことし三月以降行われた国連の機構改革が常任五大国の権限、機能を強める方向に進んでいるという国際的な批判も見られるわけであります。これらの点については、国連の改革はやはり民主化を基本とすべきだということは国連基本精神の発揮と同時に強調したい点です。  また、国連安保の動きで叫ぶべきことは、どんな国際紛争でも平和的解決を最優先させ、そのためにあらゆる努力を十分に尽くすということ。第二に、十分な努力を尽くした後やむを得ず武力行使を行ったとしても、大国に事実上の白紙委任を与えるような解決ではなく、国連責任と指揮のもとで行うべきであるということを述べておきたいと思います。
  8. 井上計

    井上計君 調査会長案を拝見して、中西会長の大変な御努力、さらに識見に改めて敬意を表すると同時に、職員の皆さん方、関係された皆さん方に心から感謝をいたします。  大変勉強不足で申しわけありませんけれども、一読して感じたことは、改めて政治の要請とは何であるかということについて最近いろいろと感じることがあります。最近の政治は、過去の追及と現状解決のための論議に多く集中して、将来の問題、国民の未来、あるいは将来への展望をどうするかというふうな、言えば先取りの問題ということがほとんど論議されていないということについて、お互いが失念しておるんではなかろうかとも、こんなふうな感じを持っておりましたが、この調査会長案を拝見して、改めて将来の問題、特に地球百年の大計が論じられておるという点について大きく評価をするものであります。  具体的な問題について、個々に各会派から述べられましたし、また私自身もこれをずっと拝見してすべて共感、同感、賛成でありますから多く申し上げる必要はございませんけれども、二ページにありますように、「国益に基づくだけでなく、地球益の立場でグローバルな連帯責任をとるとの立場に立つ」云々ということがありますが、この「地球益」というのは新しい言葉として大いに評価をいたしたい。我々、従来、国益云々とか言っておりますけれども、さらに一歩進んで地球益というふうなことを言ったことがありませんので、これから地球環境問題を論ずるときに、国民にもこの地球益という表現がぜひ理解されるようなPRをすればいいな、こんなふうなことを感じたわけであります。  それから、「新しい環境保全型文明の理念」の中で述べられておりますが、「大量生産、大量消費、大量廃棄等の社会構造を改めこ云々とありますけれども、全くそのとおりであります。  現在、いかにむだなものを多く生産して、またむだな消費をしているかということを反省しないと、私は人類の破滅につながるということを特に昨年あたりから実際に感じたことがありますけれども、特に我が国の場合には、先進諸国の中でもむだな生産、むだな消費をしていることはもう最大だ、こんなふうに感じる点があります。東京湾のあの廃棄物、ごみの埋立場を見ても、我々日本人はこんなもったいないことをしていていいのであろうか、こういう反省をさせられるわけであります。  先進諸国、特に日本は、経済感覚といいますか経済観念といいますか、しばらく続いておる大 量生産、大量消費、そしてそれが企業の繁栄につながるという今までの考え方、これを改める、こういう啓蒙も必要であるし、また国民の間に物を大切にするという運動、これらのことを再びやることもぜひ重要ではなかろうか、こんなふうなことを改めて感じたわけであります。  国民の間にこのような、言えば地球益という問題、それが即自分たちの子孫の繁栄につながるんだというふうな具体的なプロセスを出すことによって、ただ単に今回の会長案が理想論にとどまることなく、実施への具体的な方法をとるようにぜひこれからもお互いが努力し、また会長も大いにひとつ御努力をちょうだいいたしたい。  以上、短い時間でありますが、所見を申し上げて、終わります。
  9. 中西一郎

    会長中西一郎君) 以上で各会派意見表明は終わります。  引き続きまして、委員意見の交換を行います。発言順序等は特に定めませんので、自由に意見交換を行っていただきます。  それでは、会長案のうち、「環境安全保障を目指して-「共生循環」この部分について委員意見をお述べいただきます。  意見表明を希望される方は、会長の指名を待って御室言ください。また、できるだけ多くの方々が発言できるよう、御発言は一、二分程度におまとめ願います。  それでは、発言を御希望の方は手を挙げていただけませんか。
  10. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 会長案には、「緑の再生」として、造林、育林の重要性が指摘されておりまして、具体的な行動計画が掲げられております。私は、細部についてはさらに検討を要することもあると思いますが、計画のねらいは本調査会提言とするにふさわしいと思っております。  ただ、聞くところによりますと、造林は、これまで国内で農林水産省が総力を挙げて行った場合でも年間四十万ヘクタール、最近では年間五万ヘクタール程度のようでありますので、百五十万から二百万ヘクタールといえばかなりの政治的決意と努力が必要であります。  そこで、この国際的な緑の再生・造林計画を国際貢献の大きな柱として、我が国のナショナルプロジェクトとするぐらいの働きかけを政府にしていったらいかがでしょうか。話を伺った横浜国立大学の宮脇昭教授は、森林の再生計画として、一つの村に一つの森をつくるという意味で一村一森運動を提唱されておりますが、我々も、世界一つの地域に一つの森をといったスローガンのもとにこの緑の再生・造林計画を推進していくべきであると考えます。  さらに、これとあわせまして、日本の山や森が破壊されている現状や問題の指摘もぜひしておくべきであると思います。地球環境破壊の一因である開発途上国における薪炭材の採集や焼き畑農法とは違って、国内における緑の破壊は、ゴルフ場、スキー場の開発や住宅用地の確保あるいは林業従事者の不足による山林の荒廃などによるわけでありますが、こうしたことも視野におさめながら、国内においても緑の再生に積極的に取り組むよう強調すべきであると考えます。  以上、意見を述べます。
  11. 成瀬守重

    ○成瀬守重君 今回、御配付いただきました原案にはない食糧の安全保障について申し上げたいと思います。  昨年九月二十日、この調査会アメリカのワールド・ウォッチ・インスティチュートのレスター・R・ブラウン氏をお招きして意見を伺いましたが、ブラウン氏の陳述は、世界的に耕地の減少、反当たり生産性の伸び悩み、人口は増加し、結果として一人当たりの穀物生産量は年々逓減して、十年後には食の危機が顕在化するとのことでありました。現に、地球上には数億の飽食を享受している人々がいる反面、飢餓にさらされている数億の人々がいるのであります。例えばアメリカの穀物生産さえ、気候変動、地下水枯渇、土壌の微生物の死滅、耕土の流亡などを考慮すると、いつまでも巨大穀物輸出国たる地位を続け得るとは言えないという相当有力な見方もあります。  このことは、量の面からの食糧の安全保障を忘れてはならないことを示していますが、我が国が衆参両院において米の自由化をしたいという決議をしたのも、農は国の基であり、農業生産の担い手を守るということとともに、食糧の安全保障の見地に立つものであるということは言うまでもありません。  そして他方、最近特に、我が国においても欧米においてもやかましくなっている食糧の安全性の問題を忘れてはならないと思います。これは化学的添加物や農業の残留による危険性のことでありますが、ガットなどで安全基準の引き下げを策する動きと、各国の消費者グループの安全基準を厳重にすべきだという両論があることは周知のとおりであります。化学肥料と農業の多投による土壌の劣化、水質の汚染といった環境破壊と食糧の危険性は放置できない問題であります。まさに命にかかわる安全な食物の確保は人間にとって最も重要な問題であるだけに、量、質両面における食糧の安全保障ということは、我が国のみならず、どの国にとってもゆるがせにできない問題として行政各部が適切に対応することが求められているのであります。  行政当局においても、こういった立場での情報調査の把握、収集、公表とか食糧の安全保障について十分な措置をとることを要望すみものであります。  以上でございます。
  12. 翫正敏

    ○翫正敏君 ちゃんとした原稿も書いてないんで申しわけないんですが、「環境安全保障を目指して-「共生循環」この項については基本的には賛成できる内容でありまして、ずっと読んでいきますと、語句とか部分的なことについて訂正してほしいなと思う点もありますけれども、大枠はこれでまとめていただきたいというのが意見であります。  なお、七ページのところにあります「(参考に以下に行動計画案を掲げる)」と書かれまして枠でくくってあるところについては、ほかとのつり合いから考えましても、この枠をすべて取り払って、「案」というのも取り払って、普通の全体の文章の流れの中に書いていただいた方がいいのではないか。  そして、ここの題目についてだけちょっと意見があるんですが、地球の「緑被率復元」ですか、そういう言葉になっていますが、「緑のマーシャルプラン」とか、八ページの方では「事業基金」とか、また「国際造林推進機構」とか、こういう幾つかの言葉がありますが、これを全部一まとめにして緑の地球防衛計画という、そういう名前にしてはどうかというふうに思いました。  この枠は全部取り払って、全体の流れの中にこれをおさめた方がいいのではないか。  以上です。
  13. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 二つテーマで、前の方だけというお話なんですけれども、全体を通じて感じたことを一つ申し上げますが、調査会提言というのは権威のあるものでなくてはならない、そう思います。  読んでみますと、全部で三十三あるんですね。内容も非常に重いものと軽いもの、それから包含されるようなものとまじっているようでございますけれども、そこはひとつ会長のところで十分検討していただきまして、重点的に調査会で合意されるものを提言として取りまとめていただきたいというのが第一点です。  それから、前の方へ戻りますが、例えば「環境庁を環境省に格上げ」という提言がございますね。これは中身がよくわからない。例えば、既に大臣は専任の環境庁長官という大臣がおられるわけですね。一々名前が変われば何か変わるわけでもないし、環境庁だけではなくて、各省庁に関連のある環境行政というのは具体的にいっぱいあるんです。そういうふうなものをどういうふうに取り上げて、統一的に環境省なら環境省でやろうとするのか、あるいは現在の環境庁の取り上げている分 野のほかに新たに大きな地球規模環境行政をやろうとするならどういうふうなものが入るべきであるか、その辺の提言がなければ、ただ機構を充実しなさい、何しなさい、一応承認しなさいと言ったって内容がないんじゃないかというふうな感じがいたします。  それから三番目は、参議院の調査会長提言ということになるわけでございますので、お話がございましたように言葉を慎重に選んでほしい。最近、マスコミにちょっと載っているような流行語みたいなものが飛び込んできて、まだ解釈的にも定着していなかったりというふうなものに飛びつく必要はないんで、やはりじっくりその辺のところを詰めていただいて重みのあるものにしていただきたい。  大変努力されておるわけでございまして、環境行政というものは流れとしてはもうこのとおりだろうと思いますが、そういうふうな意味でひとつ御配慮をお願いいたしたいと思います。
  14. 山田健一

    ○山田健一君 会長の御努力にまず敬意を表したいと思います。  それから、今ちょうど下稲葉委員の方からも御指摘がありましたけれども、まず五ページの提言一、環境省への格上げというお話でございますが、これは我々も実は大賛成でございます。  いろんな意味で、財源的にも非常に制約がある中で環境行政が非常に手足を縛られて、あるいはまた省庁の関係でなかなか思うようにいかない。去年も実はいわゆる国内体制を整備していく、ある意味では循環型の構造を目指す、こういう立場からリサイクル法あるいはまた廃掃法、これが国会でも審議をされました。そのときに私たちは、一つは廃棄物をできるだけ出さない、生産の段階でそういうものを考えながらやっていこう、そして一たん廃棄されたものについては廃棄の処理をどうしていくという形で、廃棄物処理とリサイクル法とがつながっていない。  全体的につなげていくためにはやはり環境基本法、これをきちっとやっぱりつくって、そして、地球的な環境問題を視野に当然入れながら、さらには四ページにも書いてありますが、「環境倫理」、これをやはり基本にしながら、さらに九ページの提言三でも述べられていますが、「国や自治体の建築物及び公共事業には熱帯材の使用を制限」、「輸入削減」等々書いてあるわけでありますが、こういう問題を含めていわゆる環境基本法の制定、そのための我々の努力というものがある意味では求められているんではないか。  環境省への格上げという問題にしても、そこら辺を踏まえて、なおかつ人的な面、財政的な面、こういうものをしっかり補強していく、こういう立場から環境行政を推進していくという視点が求められているんではないか、そのことをあわせて申し上げておきたいと思います。  以上です。
  15. 野沢太三

    ○野沢太三君 地球環境保全の問題につきまして、大変立派な報告書をまとめていただきましたことにまずもって御礼を申し上げたいと思います。会長並びに関係の皆様の御努力に感謝を申し上げる次第でございます。  環境保全の問題につきましては、先進国の責任が非常に大きいということはこれまでずっと指摘されてきておるわけでございます。最近開かれました賢人会議の結果等を見ましても、これから開かれますブラジル地球サミットで何を言うかということを考えましても、私どもは先進各国が環境保全のコストを負担するということをここで覚悟を決めなければいけない時期が来ているんじゃないかと思うわけでございまして、生産あるいは流通、消費、各段階にわたります環境保全のコスト負担ということを提言の中に盛り込んでいただければありがたいと思うわけであります。  その意味で、提言の中に「平和の配当基金」ということを御指摘いただいておりますが、これはまことに結構でございますが、むしろさらに踏み込んで、今後の開発というものはすべて共生循環にかかわるコストの維持を前提にしていくんだということを六番目ぐらいに起こしていただければありがたい。  以上でございます。
  16. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 先ほども一言言ったんですけれども、国内で環境アセス法、これが制定されていないというのは日本の非常に大きな問題だと思うんです。七二年の環境白書、これは環境アセスメントの必要性を指摘していたのに、政府がこの制定を結局渋って、八三年に法案を廃案にしてしまったんですね。その後閣議決定でやってはいるんですけれども、日本の制度と外国の環境アセス制度と比べますと、社会的影響の評価、代替案の提示、誘発される影響の検討などもすっぱり日本の場合には抜けているという欠陥があります。  京都大学経済研究所のバレット氏は、日本の政治システムは経済活動になるべく干渉しない、日本環境アセスメントは開発の決定を正当化し、地域の反対を抑える道具として利用されていることが多いと、なかなか的確な指摘をしているぐらいなんですね。結局、事業アセスになっていまして計画アセスになっていない。東京都の条例なんかも事業アセスなんですね。今度、川崎市で初めて計画アセスの条例ができて、非常に高く評価されています。  アメリカのアセス制度では、もう基本計画の段階から住民が参加して調査をし、代替案を出し、その評価を繰り返していくということになっているのに、日本は事業計画が決まってから意見書を出すという程度の参加しか認められていません。アメリカのサンフランシスコのミッションベイの開発計画では、住民参加の徹底で、当初の案は超高層ビルのビジネス都市だったんですが、それが住宅と緑、オープンスペースを本当にふやす計画に変わったという実例なんかもあるんですね。  そういう点で、地球環境がこれだけ問題になっているとき、地球環境破壊責任のかなり大きな部分を担っている日本の国として、やはり国内で環境アセス法を制定するということはどうしても必要で、これをぜひ報告書に盛り込んでいただきたいと思います。  以上です。
  17. 中西一郎

    会長中西一郎君) 他に御発言もなければ、「環境安全保障を目指して-「共生循環」この部分についての意見交換は終わります。  引き続きまして、会長案のうち、「新しい時代平和秩序を求めて」の部分について自由に御意見をお述べ願います。
  18. 永野茂門

    ○永野茂門君 全般的に提案が詳細過ぎて、多過ぎるということは同じ意見でございます。もっと絞っていただきたい、これが第一であります。  第二に、安全保障関係のところは、先ほど井上委員から百年先の理想的なことまで追求しているというお褒めのお話がありましたが、それと私は裏腹になりますけれども、こういう提案は余り先のことを眺めてもしょうがないんで、せいぜい五十年以下、三十年ぐらいまでのところだろうと思うのであります。  その観点からとらえますと、全般的にバラ色過ぎる。世界はそんなに甘い状態にはないんじゃないか。決して軍拡競争がとまっているわけじゃありませんし、軍縮競争が始まっているわけじゃありません、ここにはそういうふうに書かれておりますが。アジア地域でも「いくつかの不安定要因」どころじゃなくて、たくさんの深刻な不安定要因があるわけでありまして、将来の傾向的な方向止してこういうねらいでいくということはもう大賛成でありますけれども、現実的にはここ二、三十年ということを考えた場合には、余りにバラ色過ぎる見積もりといいますか、見通しに立っておられる。この点はぜひ修正していただきたいと私自身は思います。  それから、その次は、「平和研究所」を国会に持つという提案でありますけれども、これは私は反対です。反対だと申しますのは、一つの政党あるいは安全保障政策について非常に近い政策を持った政党が集まっているような国会であるならば一つの平和研究所というのが非常に有効な力を発揮すると思うわけでありますけれども、非常に違った考え方の政党で構成されている国会一つの平和 研究所というのは無理だと、政府あるいは各政党がそれぞれしっかりした平和研究所を持ってやっていくべきだと、こう思います。これが第三点であります。  それから第四点は、日本の「平和主義」をしっかり世界に共通の価値として追求させるようにということを提言していらっしゃいますけれども、一口で言えばこれは当たり前のことであって、特に提言するようなことではないし、それから「平和主義」という言葉そのものがいろいろと問題のあ至言葉でありますので、「平和主義」という言葉を消していただけばそこの文章はそれでいいことだと思います。  要するに、戦争を放棄して平和を尊重する。「戦争放棄」という言葉もちょっとあいまいなところがありますけれども、まあこの趣旨はいいとして、「平和主義」というのはいろいろ誤解を生じやすいんで、消していただくか、あるいはこの項そのものが余りにも当たり前だから消していただいた方がいい、私はこう思います。  以上です。
  19. 和田教美

    和田教美君 今の永野さんの意見に対してやや違った逆のことを言うこともあると思いますけれども「まず第一に、「国会に「国際平和研究所」を設置するよう提案する。」という、これはかねがね我々公明党が言っておりますことでして、これは賛成でございます。  国会の各党は、確かに安全保障問題について異見がありますけれども、要するに平和研究所というのは同一ではないわけであって、国会外の学識経験者なども含めたこういう権威ある機関、SIPRIのような機関をつくるということは私は十分意味があることだというふうに思います。  それから、提言の五にあります「アジア・太平洋議員フォーラム」、これはもう賛成でございます。ただ、これは「国会が毎年開催する」となっておりますけれども、でき得れはアジア・太平洋地域に、持ち回りでなくてもいいですけれども、常に東京で開くということである必要はないんではないかというふうに思います。  それから、もう一つ申し上げたいことは、軍拡から軍縮時代へという表現が二、三カ所出てきますけれども、これは永野さんはちょっと否定的なことをおっしゃいましたけれども、私は基本的な流れとしてはやはりそうではないかというふうに思っておるわけです、軍縮の問題についての記述が余りにも少ないという印象を持っております。  それで、もちろん意見が対立しておりますから、なかなか具体的な提言というようなことにまとめることはできないと思いますけれども、ヨーロッパなどの動きに比べてなぜアジアで軍縮という機運がおくれているのかというふうな現状説明でももう少し入れて、そして各論併記のような形にしたらどうかというふうに個人的には考えております。  ちょっと思いついたことを申し上げますとそんなことでございます。
  20. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 ただいま和田先生から、「アジア・太平洋議員フォーラム」について賛成の旨の御意見がありましたけれども、私もぜひ実現していただきたいということで、賛成させていただきたいと思います。  そこで、その実現のため、本調査会イニシアチブをとり、例えば地球環境問題における国際協力力あり方などをテーマにして、まず我々がアジア太平洋地域の議員との対話を進めていったらどうかなと考えます。本調査会がぜひそのような突破口となるよう特に期待して、意見を述べさせていただきました。
  21. 立木洋

    立木洋君 一つの問題は、先ほど同僚議員が述べられたことで、国連へのNGOの参加の問題で若干否定的な御意見が出されましたが、ちょっと私は異なる見解を持っておるので述べさせていただきたいと思います。  国連に、今、人権問題にしろ軍縮問題にしろNGOがやっぱり積極的に参加し、意見を述べる機会が与えられ、それぞれの委員会にも出席して発言をするという権利が与えられております。これらの問題というのは、国連を民主的に改革していく、より広範な意見が反映できるよう一な形にして、より積極的な機能を果たし得るようにするということを考えるならば、これまでNGOとして国連の種々の委員会参加でき、見解が表明できるという機会はなくすべきではなく、さらにその権利といいますか、そういう形態はより発展させるべきではないかというふうに考えますので、意見が異なりますけれども、私の考えとして述べさせておいていただきたいと思います。  それから、今述べられた提言の第四の「平和主義」の問題ですが、この問題については、既にもう我が国の憲法の中で「われらは、全世界国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ」、そして平和的に生存する権利を云々ということを明確にここで「平和主義」という言葉で表現されているのであって、ましてやこれは九条の「戦争放棄」ということと相まって「平和主義」ということを提起されているので、いささかのあいまいさもなく述べられているものだというふうに考えますし、この提言第四は、当然これから世界に唱道していく内容として積極的に賛成するという立場から、私はこのまま残しておいていただきたいということを述べたいと思います。  それから、もう一つの点は、「旧敵国条項の撤廃問題」というのがありますが、これは撤廃するかしないかということを明確に提案しているということではございませんけれども、私の考えを述べさせていただければ、敵国条項については、侵略戦争についての深刻な反省ということが重要ではないだろうか。そういう状況に達したということが国際的に認められて、世界的にもこういう条項が必要ないというような状況になるならば、これは当然かもしれませんけれども、やはり日本政府があの侵略戦争についての深刻な十分な反省がなされたとみなされないという見解を我々は持っておりますので、この調査会としてこの問題について提言するというふうにはしない方がいいだろうということも述べさせていただきたいと思います。  以上です。
  22. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 調査会長の並み並みならぬ御努力でこのような案ができ上がったことに対してまず敬意を表する次第であります。  ただ、一つだけ申し上げたいことは、この調査会前提条件の中で、軍事面は除くということを明確にうたわれた方がいいんではないか。この調査会長の案が世界に出ていきますと、世界軍事力によって平和が保たれているという認識に立っておりますから、そういう観点から議論はされておらないわけで、軍事面に関するところは全部抜いた方がいいんじゃないか。国際社会の中で、日本だけが非軍事イコール平和というふうな感覚を持っておりますので、もちろん自衛隊は違憲であるという野党の先生方もおられますし、それをまとめることは不可能でありますので、軍事面についてはこの調査会では特に検討していないというようなことを書き加えていただきたい。  そうでないと、軍縮にしてもそのテーブルに着く――現在、旧ソ連は極東ソ連だけで百数十万、北朝鮮は百二十万、韓国は八十万、中国は三百万以上の軍隊が現実に存在しておるわけで、さらに北朝鮮も今核査察の問題等あり、中国も海軍力を増強しているという状況の中でそういう提案がなされているということは、軍事面についての検討ではないということを明確に打ち出す必要があるんじゃないかというふうに思います。  以上です。
  23. 井上計

    井上計君 ちょっと抽象的な意見になりますが、先ほど立木委員から、日本が侵略戦争云々というお話がありました。もう毎回いろんな方から我が国の、言えば我々は大東亜戦争だと思っておりましたら第二次世界大戦が侵略戦争という汚名の中で非難をされていますが、確かに手段としては侵略戦争的なところはありましたけれども、やはりあのときの我が国立場、考え方というのは日本の、さらにアジアの平和を求めるための手段 としてやむを得ずやった、こういう発想もあるわけですね。  古来、戦争というのは、何も好きこのんで戦争をしたんじゃないんだ、ただ平和を求めるための手段として戦争というやむを得ない手段に実はなったんだという例があるわけですよ。したがって、もう人類はいつの時代でもすべての人が平和を願望して当然なんです。平和を願望しない国民はいない、人類はいなかったろう、こう思います。  そこで、これからもそういうふうな考え方に立つと、平和を求めるために常にどうするかという努力最大限すべきであるが、しかしそのための手懐としてはどうするかという具体的な問題で考えるときに、現在の状況からすると、我が国はやはり国連中心とした平和を求める機関への参加、活動というものをもっともっと重点的にやるべきではないかな、こんな感じがいたします。  以上です。
  24. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 井上委員の発言は、井上さんは大変な戦争体験をお持ちですけれども、しかし二千万人のアジア人を殺りくしたあの戦争は侵略戦争だったということは明白な歴史的事実だということを一言申し上げておきたい。  意見として、最初の前文のところにも何度も書かれていて、安全保障のところにかかわりがあるんですが、二大超大国支配の終えんによる冷戦の終えんという叙述が何回も出てくるんです。不正確だと思うんですね。確かに、ソ連、それからワルシャワ条約機構というのはなくなった。しかし、アメリカが今唯一の軍事超大国として振る舞おうとしておりまして、国防計画指針、これは二ューヨーク・タイムズが報道しましたけれども、新しい大国の台頭は絶対に許さないという国防総省の方針が書かれていて、国連が役に立たぬときは独自の行動をとるとまで書かれていまして、これは十七ページの「国連の強化」のところにもかかわりがある。  去年の暮れ、アメリカのピカリング国連大使の公聴会での発言を読みますと、国連を迂回するというようなことまで長々と述べていまして、ですから、今のアメリカ国連に対する態度、それから唯一の軍事超大国としてやろうとしていく態度は大きな危険があります。これはそのまま書くかどうかは別として、「二大超大国支配の終えん」というのは不正確ではないかと思います。  二番目に、アジア情勢のところでも今の問題は関係があります。立木委員が民族自決権の尊重を強調しましたけれども、アメリカは例えば九〇年に発表された国家安全保障戦略の中で、ソ連がなくなったからアメリカ軍事力行使の対象は今後第三世界になるということをはっきり明言しています。そうすると、この中にも書かれておりますが、日米安保体制の役割機能の新たな変質問題が大きな問題になってきまして、アジアの第三世界発展途上国に対する軍事的干渉、政治的干渉の危険を含む体制に変わるわけです。  アメリカの公聴会での国防総省の発言を見ると、第七艦隊の守備範囲は今度インド洋まで広がるということが表明されていまして、そうするとアジア諸国だけじゃなくて中東まで日米安保体制の対象になってきて、日本はその後方支援の役割、財政的支援、今度自衛隊の海外派兵、PKOまで出ておりますけれども、そういう新しい役割を受け持つ危険が生まれておりまして、新聞報道によると、日米地位協定の改定問題まで防衛庁と国防総省との間で議題になるという危険な事態さえあるんですね。ですから、アジア情勢問題を見る場合にも、各党間の意見は一致しないにしても、今非常に重要な新しい段階に入りつつあるというのは日本安全保障を考える上で無視することのできない重大な問題だと思うんです。  三つ目に、今も御意見ありましたけれども、その点で軍縮への努力をもう少し強調してほしい。ソ連の崩壊、それからアメリカが今ああいう経済的苦境に立ち至っているのも核軍拡競争に双方が余りにのめり込み過ぎた結果であって、日本とドイツが経済的に先へ進んでいるのは、憲法九条もあって日本の軍事費が相対的に少なかったということが大きな役割を果たしているわけですから、その点で日本も含む軍縮努力、これをもう少し強調することは重要な課題ではないかと思います。  以上、三点です。
  25. 細谷昭雄

    ○細谷昭雄君 まず最初に、いろんな意見のある中で、会長にここまで積極的に案をまとめていただいたということに対しまして敬意を表したいと思います。  課題は三つありますが、最初の「積極的平和の秩序づくり」、その点につきましては、大枠において設定は全く同感だと思います。ただ、先ほど御意見がございましたが、何といいましても日本の戦前、戦後というきちっとした歴史的な課題というのを踏まえながら、我々が九〇年代で果たさなくちゃいけないことは、アジアを中心にしたこれまでの侵略戦争、これの反省の上に立っていかなくちゃいけない。そうすると、その基本はやっぱり日本国憲法だと、こういうふうに思うわけであります。そういう意味で、会長も指摘しておりますように、日本国憲法の平和条項、これをどう普遍的な世界のレンジにしていくのか、この点での指摘というのをもっと強烈にしていただきたい、こんなふうに思います。  二番目の「アジア・太平洋の平和・軍縮・発展」、こういう中で、軍縮の中に環日本海地域の局地的な平和機構、これも提言されたらどうかな、こんなふうに思うわけであります。一番身近な環日本海地域、しかもこれにはいろんな問題を現在含んでおるわけであります。極めて難しい問題が含まれておりますが、まずそういった地域平和機構、こういったものの構築というのを指摘していいのではないか、こんなふうに思います。  第三点の「国連の強化」の問題ですが、これは私の第二番目の問題提起で、安全保障理事会の問題でございます。この安全保障理事会というのは、やはり戦勝国の新しい世界秩序の出発点だったというふうに思うわけです、歴史的には。これは何といいましても九〇年代、いろんな世界の動きの中で抜本的な改革が必要じゃないのか。例えば、それぞれ指摘されておりますけれども、いわゆる強弱の、大国やそういうことじゃなくて、地域的な代表によるところの新しい安全保障構成国とか、そういったのを大胆に提言していくべきじゃないのか、こんなふうに思うわけであります。  いずれにしましても、この安全保障理事会というのは、現在まさに旧態依然たる、これこそやっぱり改革しなければならない問題でございまして、今のように安全保障そのもの安全保障理事会ということだけに頼らず、いろんな新しい理事会、それを構築しながら、むしろ日本としましては安全保障理事会の理事国になるんじゃなくて、もっと別の意味の、日本国憲法に照らしながら新しい国連の構成、これに積極的な提言をしていただきたい、こんなふうに思います。  以上です。
  26. 木暮山人

    ○木暮山人君 このレポートについてはまことに立派なものだと思うのでございますが、これはいわゆる提言としていろいろとずっと影響を及ぼしていくことじゃないかと思うんですね。ということになりますともう少し視野を広げて、歴史的によって来た何か本当の意味のものをちょっと浮き彫りにしていただきたいと思うんです。  これは、対照的にこうだからこうだと、歴史的に見ましたらほんの四十年か五十年ぐらいの間のことをぱっと言っただけですね。私さっきからこれは立派なことだからもうこれでいいんじゃないかと思っていたのですけれども、どうもここで平和とか、いや将来のなんて話がどんどん出てくる。しかし、もう平和なんというものは通用しなくて、今からは新しい時代では穏やかなとか、もう少し表現が変わっていくと思うんですね、新時代は。それにしましても、では今の時代はどんなぐあいになればいいのか。これが百年後の時代にも共通するような歴史的ないろんな問題というものを包含して提言を残していくべきなんじゃないか。  早い話が、日本が侵略だと言いましても、これはよく考えてみると侵略じゃなかったかもしれない。ということは、歴史の古い、今から百二、三十年前、百五十年前ぐらいのアジア全体の動き、そういうものを皆さん一度お考えになってみたらいいと思います。  そこら辺をひもとかずに、現象だけで判断していきましたら、これを見た次の時代の人たちが、何てまあこの外交総合安全保障調査会の方々は視野がぐっと狭まって、日本のファジーな姿というものはこうだったのかと、単にそれで片づけられたんでは、まして国権の上に立って日本の将来をこれで提言しようとするわけでありますから、ちょっと長過ぎて申しわけないけれども、そこら辺をもう少し何か加味して、少なくとも提言の前の提言というようなものをひとつつけ加えていただけたらと、こんなふうに思います。
  27. 三石久江

    ○三石久江君 調査会長の案を拝見して、とても立派だなと思っているんですけれども、余りうまく言えないんですけれども、この中で地球的に大変大事な問題が抜けているんではないかなと。小さくしか取り上げていないんですけれども、人口問題というのが地球的に大変な問題なんですね。そのことをもう少し大きく、平和的にと言うとまたしかられますけれども、考えていただきたい。それが抜けているような気がするものですから、一言言わせていただきました。
  28. 中西一郎

    会長中西一郎君) 他に御発言もなければ、「新しい時代平和秩序を求めて」の部分についての意見交換は終わります。  委員各位には貴重な御意見をいただき、まことにありがとうございました。  会長といたしましては、本日の意見交換を踏まえ、各理事とも御相談の上、最終報告書を取りまとめてまいりたいと存じます。委員各位の御了承をお願いいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時二十二分散会