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岩田委員 賃金問題についてはかなり慎重な
発言ではなかったかというふうに思いますけれ
ども、
大臣おっしゃるように、これは
労使の問題、
企業の問題がありますからなかなか簡単に言える問題ではないと思いますが、総じて私が思っていることをそういうふうに申し上げましたのは、時間短縮は何とかしよう、しかし
賃金についてはなかなか困難であるという状況になっていくと思います。
ただ、この
賃金問題についてもやはり
大臣に頑張ってもらわないと、景気は冷え込んだ、落ち込んだ、当面ちょっと大変だろうというような警戒感だけが先に走って
賃金問題の抑制になっていく。毎年のパターンなんですよ。毎年のパターンだけれ
ども、
盛田論文でも言われている推測、行間から読み取れるのは、この
バブル経済を挟んで、これまで
日本企業というのは稼ぎに稼いできたと言ったら語弊がありますけれ
ども、ため込んできた、これほど
世界にばらまいてきたわけですから、そういった
意味では
労働時間、これは一大目標であることは私も否定をしませんけれ
ども、
賃金についてもやはり同列に、豊かさ、ゆとりの根本であることは間違いないのですから、そういうことで申し上げたわけで、ぜひこれは理解を特にとどめていただかないとやはり問題ではないかというふうに思うのです。
毎日
新聞に「「
生活大国」への道 92
春闘に問う」というシリーズが出ておりましたけれ
ども、その中で、
ドイツと
アメリカと
日本の
比較的類似した三人の
労働者の
生活実態を出しております。
若干申し上げますと、
アメリカは三十九歳のGMに働く夫婦と五人の子供さん、七人
家族なんですが、この方の年収が、大体六万ドルですから七百八十万円ですね。車が三台で、一戸建てで十室のマイホームを持っている。
日本円にしますと大体一千百万円くらいで買えたということが載っておりますが、彼が満足かどうかということについては、もちろん満足しているというふうに言っています。これは記者の目があるから受けとめ方はいろいろありますけれ
ども、しかしこういうふうに書いています。
日本の
労働者は「緊張が高くてストレスもたまっているんじゃないの。彼らが幸せかどうか知らないが、仕事以外でもストレスの多い
生活らしいじゃないか。それに人が多いから、
土地も持てない」、こういうふうに
アメリカの三十九歳の
労働者は言っております、
ドイツの、これはベンツに勤めている四十歳の方なんですけれ
ども、年収が五万五千マルク、約四百四十万円ですね。それに郊外に、どこの郊外でしょうか、とにかく三百平方メートルの
土地を入手して一年前に家を建てた。地下一階、地上二階、地下にはワインの貯蔵庫とバーがある。三千二百万円で建築をした、こういうふうに載っています。
それから
日本の、これは本田技研なんですけれ
ども、三十五歳。本田技研というのは時間短縮が随分進んでいるところですね。昨年一年間、この三十五歳の
労働者がやった
勤務時間というのは千八百九十時間ですから、これは見事なものだと思いますね。それぞれ四十時間から三十九時間前後の
ドイツ、
アメリカの
労働者と
勤務時間はそう長短がありません。
それから、いわゆる
勤務時間も余り変わらないという同じような
条件の人をとっているわけですが、ここで感じますのは、
日本の
労働者はとてもじゃない、幸せとは感じない。ゴルフだって行きたいけれ
ども年に二回か三回、あとはパチンコか庭の手入れ、こういう落差があるのですね。
例えば
ドイツなんかは、こういうふうに
賃金は余り差がないのだけれ
ども、我々から見ると大変うらやましい家を持てるというのは、これは財形の問題ですね。
ドイツの
労働者は
日本等に比べて
世界に先駆けて財産形成をやってきたのですね。
労働者が同じように我々にも財産が持てるような給料をくれということで、長い歴史かかって運動をやって今日まで到達しているわけですね。
アメリカは財形なんというのは余りないですね。ほとんどないでしょう。ところが、
土地が広くて安いのですよ。ですから、こういうふうにできる。まさに
日本と比べますと雲泥の差がある、こういうことを感じます。
それから、旅行はどうかというと、やはり一週間単位ぐらいに
欧米は
家族旅行で行くのですね。
日本はなかなかそうはいきませんね。
労働大臣、
日本の旅行というのは、最近リゾート法でも問題になりましたが、豪華主義になって、なかなか一家五人、一家四人行こうといったって大変なんですよ。行く時間と帰る時間、お父さんは疲れてしまって大変な状況である。しかも、一泊は何万円と豪華主義になっているのですよ。向こうはお金がかからなくて行けるシステムになっているところが違うのですね。
そういった
意味でも
労働者生活、
労働者の豊かさ、ゆとりに対して、今まではちょっと間違ってきたのじゃないかというふうに思いますね。リゾート法も規制して縮小しよう、これは失敗したからそうなっていますけれ
ども、この時期にやはり
労働省としてもいわゆる
勤労者の余暇利用についてもっと大胆にいくべきではないか。一時期いろいろありましたけれ
ども、雇用促進事業団がやっている例のハイツ、これはなかなか今人気がいいのじゃないですか。ああいう安くて簡単に利用できるもの、こういったものに一方では対処していかないとなかなか難しいというふうに思いますね。
もう
一つは、
賃金は余り変わらないのですけれ
ども、ドルで換算をしていくと、しかも
購買力平価で見ますと大変な差があるのですね。
ドイツなんというのは四百四十万ぐらいですが、ぐっと上がるのですよ。これも一概には
比較してどうだということは言えませんけれ
ども、しかし大きな
格差の要因ですね。それから物価問題があるでしょう、内外
格差。
とにかくこの
ドイツと
日本と
アメリカの三人の
労働者の
生活実感については、
アメリカと
ドイツは非常に幸せだと思う。
日本の
労働者は、三十五歳の彼はくたくたとは言っていませんけれ
ども、想定できますわね。この差を一体どうするのか、これが当面というかここしばらくは大きな問題になっていくのではないかというふうに私は思うわけであります。
つまり、ここで私が
労働省にお尋ねしたいのは、これまでは何かというと貿易収支がどうであるとかGNPがどうであるとかということを
一つの基準にして、それを支えて額に汗して働いてきた
労働者の
生活実感というのを見てきたかどうか、この点が今
政府にも我々にも問われているのじゃないかというふうに思いますが、この点はいかがですか。