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1992-03-12 第123回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年三月十二日(木曜日)     午前九時開議 出席分科員   主 査 志賀  節君       相沢 英之君    松本 十郎君       村上誠一郎君    伊東 秀子君       川俣健二郎君    松浦 利尚君       近江巳記夫君    河上 覃雄君       玉城 栄一君    冬柴 鐵三君    兼務 井上 普方君 兼務 沢田  広君    兼務 新村 勝雄君 兼務 仙谷 由人君    兼務 竹内  猛君 兼務 辻  一彦君    兼務 山口那津男君 兼務 木島日出夫君    兼務 正森 成二君 兼務 伊藤 英成君    兼務 柳田  稔君 兼務 江田 五月君  出席国務大臣         外 務 大 臣 渡辺美智雄君         大 蔵 大 臣 羽田  孜君  出席政府委員         内閣審議官         兼内閣総理大臣         官房参事官   野村 一成君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務大臣官房会         計課長     藤崎 一郎君         外務大臣官房領         事移住部長   荒  義尚君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 佐藤 行雄君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省経済局長 小倉 和夫君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         大蔵大臣官房会         計課長     志田 康雄君         大蔵大臣官房審         議官      石坂 匡身君         大蔵大臣官房審         議官      薄井 信明君         大蔵省主計局次         長       田波 耕治君         大蔵省関税局長 吉田 道弘君         大蔵省理財局た         ばこ塩事業審議         官       谷川 憲三君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省銀行局保         険部長     鏡味 徳房君         大蔵省国際金融         局長      江沢 雄一君         国税庁次長   冨沢  宏君  分科員外出席者         法務大臣官房審         議官      山本 和昭君         法務省訟務局民         事訟務課長   中野 哲弘君         大蔵省主計局主         計官      原口 恒和君         大蔵省主計局主         計官      岩下  正君         厚生省援護局援         護課長     戸谷 好秀君         厚生省援護局業         務第一課長   村瀬 松雄君         農林水産省経済         局国際部国際経         済課長     宮本 晶二君         水産庁海洋漁業         部国際課長   城  知晴君         水産庁漁港部計         画課長     坂井  淳君         通商産業省産業         政策局商放課取         引信用室長   寺坂 信昭君         郵政省電気通信         局電波部移動通         信課長     鬼頭 達男君         国民金融公庫副         総裁      塚越 則男君         外務委員会調査         室長      市岡 克博君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君         予算委員会調査         室長      堀  一郎君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月十二日  辞任         補欠選任   伊東 秀子君     小林  守君   松浦 利尚君     中村 正男君   冬柴 鐵三君     河上 覃雄君 同日  辞任         補欠選任   小林  守君     土肥 隆一君   中村 正男君     松浦 利尚君   河上 覃雄君     玉城 栄一君 同日  辞任         補欠選任   土肥 隆一君     伊東 秀子君   松浦 利尚君     川俣健二郎君   玉城 栄一君     近江巳記夫君 同日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     長谷百合子君   近江巳記夫君     河上 覃雄君 同日  辞任         補欠選任   長谷百合子君     沖田 正人君   河上 覃雄君     遠藤 和良君 同日  辞任         補欠選任   沖田 正人君     松浦 利尚君   遠藤 和良君     冬柴 鐵三君 同日  第一分科員山口那津男君、江田五月君、第三分  科員沢田広君、正森成二君、第四分科員新村勝  雄君、竹内猛君、木島日出夫君、第五分科員井  上普方君、第六分科員仙谷由人君、第八分科員  辻一彦君、伊藤英成君及び柳田稔君が本分科兼  務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成四年度一般会計予算  平成四年度特別会計予算  平成四年度政府関係機関予算  (外務省及び大蔵省所管)      ――――◇―――――
  2. 志賀節

    志賀主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  平成四年度一般会計予算平成四年度特別会計予算及び平成四年度政府関係機関予算大蔵省所管について、政府から説明を聴取いたします。羽田大蔵大臣
  3. 羽田孜

    羽田国務大臣 平成四年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関收支出予算について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、七十二兆二千百八十億一千百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、租税及び印紙収入は六十二兆五千四十億円、雑収入は二兆二千百十四億九千二百万円、公債金は七兆二千八百億円となっております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、十八兆二千二十六億三百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、産業投資特別会計へ繰り入れは二千百六十六億四千七百万円、国債費は十六兆四千四百七十三億二千万円、政府出資は三千四百七億円、予備費は三千五百億円となっております。  次に、当省所管の各特別会計歳入歳出予算について申し上げます。  造幣局特別会計におきましては、歳入歳出とも三百十三億六千二百万円となっております。  このほか、印刷局等の各特別会計歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関収入支出予算について申し上げます。  国民金融公庫におきましては、収入五千百三十五億八千百万円、支出五千四百五十四億九千三百万円、差し引き三百十九億一千二百万円の支出超過となっております。  このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして子細な説明にかえさせていただきたいと存じますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。  以上であります。
  4. 志賀節

    志賀主査 この際、お諮りいたします。  ただいま羽田大蔵大臣から申し出がありましたとおり、大蔵省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 志賀節

    志賀主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――    平成四年度一般会計歳入予算並びに大蔵省    所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入    歳出予算及び各政府関係機関收支出予算    に関する説明  平成四年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関收支出予算について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、七十二兆二千百八十億一千百万円でありまして、これを前年度予算額補正予算(第一号)による補正後の改予算額。以下同じ。)に比較いたしますと、一兆六千四十五億四千六百万円の増加となっております。  以下、歳入予算額のうち主な事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、租税及印紙収入は、六十二兆五千四十億円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、三兆五千百四十億円の増加となっております。  この予算額は、現行法による租税及び印紙収入見込額六十一兆九千六百七十億円に、平成四年度の税制改正による増収見込額五千三百七十億円を加えたものであります。  次に、各税目別に主なものを御説明申し上げます。  まず、所得税につきましては、二十七兆二千七百九十億円を計上いたしました。  法人税につきましては、租税特別措置整理合理化等による増収見込額を加えて、十八兆一千二百二十億円を計上いたしました。  また、消費税につきましては、普通乗用自動車に係る税率の特例による増収見込額を加えて四兆九千六百八十億円を計上いたしました。  以上申し述べました税目のほか、法人特別税四千四十億円、相続税二兆二千二百六十億円、地価税四千二百億円、酒税二兆二百五十億円、たばこ税一兆百二十億円、揮発油税一兆五千七百六十億円、関税八千七百九十億円、印紙収入一兆六千六百三十億円及びその他の各税目を加え、租税及印紙収入合計額は、六十二兆五千四十億円となっております。  第二に、雑収入は、二兆二千百十四億九千二百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、一兆二百三十一億九千三百万円の減少となっております。  この収入のうち主なものは、日本銀行納付金一兆四百八十億円、日本中央競馬会納付金三千九百十二億四千九百万円、特別会計受入金三千八百七十三億九百万円等であります。  第三に、公債金は、七兆二千八百億円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、五千五百億円の増加となっております。  この公債金は、「財政法」第四条第一項ただし書の規定により、公共事業費出資金及び貸付金財源に充てるため発行する公債収入であります。  最後に、前年度剰余金受入は、八百四十二億五千五百万円となっております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、十八兆二千二十六億三百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、四百四十四億八千七百万円の増加となっております。  これは、国債費が九千百七億四千七百万円、予備費が二千億円増加しましたが、他方、産業投資特別会計へ繰入が一兆八百三十三億五千三百万円減少したこと等によるものであります。  以下、歳出予算額のうち主な事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、第一に、産業投資特別会計へ繰入につきましては、二千百六十六億四千七百万円を計上いたしておりますが、この経費は、無利子貸付けの財源に充てるための「日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本整備の促進に関する特別措置法」に基づく産業投資特別会計への繰入れに必要なものであります。  第二に、国債費につきましては、十六兆四千四百七十三億二千万円を計上いたしておりますが、この経費は、一般会計の負担に属する国債及び借入金の償還及び利子等の支払並びにこれらの事務の取扱いに必要な経費財源を、国債整理基金特別会計へ繰り入れるためのものであります。  第三に、政府出資につきましては、国民金融公庫等機関に対し、一般会計から出資するため必要な経費として、三千四百七億円を計上いたしておりますが、その内訳は、国民金融公庫二百五十億円、中小企業信用保険公庫百九十五億円、海外経済協力基金二千九百六十二億円であります。  第四に、経済協力費につきましては、四百三十六億三千五百万円を計上いたしておりますが、この経費は、国際開発金融機関を通じて供与する発展途上国に対する経済協力等に必要なものであります。  最後に、予備費につきましては、予見し難い予算の不足に充てるため、三千五百億円を計上いたしております。  次に、当省所管特別会計のうち主な会計につきまして、その歳入歳出予算概要を御説明申し上げます。  まず、造幣局特別会計におきましては、歳入歳出とも三百十三億六千二百万円となっております。  次に、印刷局特別会計におきましては、歳入九百六十五億四千五百万円、歳出八百九十九億二千六百万円、差引き六十六億一千九百万円の歳入超過となっております。  以上申し述べました各特別会計のほか、資金運用部国債整理基金外国為替資金産業投資、地震再保険及び特定国有財産整備の各特別会計歳入歳出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関収入支出予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、国民金融公庫におきましては、収入五千百三十五億八千百万円、支出五千四百五十四億九千三百万円、差引き三百十九億一千二百万円の支出超過となっております。  このほか、住宅金融公庫農林漁業金融公庫中小企業金融公庫北海道東北開発公庫公営企業金融公庫中小企業信用保険公庫環境衛生金融公庫、沖縄振興開発金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行の各政府関係機関収入支出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  6. 志賀節

    志賀主査 以上をもちまして大蔵省所管についての説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 志賀節

    志賀主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  8. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 羽田大蔵大臣に私は二点にわたって質問をいたしたいと思います。  その第一点は、前々から専門でありずっと自民党の中で総合農政の仕事をしてこられ、かつまた党では政治改革の中でも中心的な役割をしてこられた大蔵大臣に、これは本来向きが違うと言われるかもしれませんが、この際この日本農業というのは、単に農林水産省一省の問題ではなくて非常に大きな課題になっておりまして、政治一つの中心であり、社会問題にもなろうとしている。跡取りがない農村というものが各地にできてきている。それを考える一方においては、米問題、農業問題が非常に外圧の中で苦労している。そこでやはりこの際、羽田大蔵大臣農業というものに対する理念というか哲学というか、これをひとつお聞きしたい。
  9. 羽田孜

    羽田国務大臣 私も竹内委員と一緒に、まさに国会議員のほとんどを議員としてあるいは政務次官、大臣として、また党の責任者としてこの問題に取り組んできたものでありまして、まさに同憂のものがあるということをまず申し上げたいと思います。  まず、御指摘のございましたように、今日本農業というのを見ましたときに、本当に高齢化が進んでしまっておるということ、そしてやはり担い手というものが本当にわずかしか新しいものが参入しないという現実、それともう一つは、農業基本法以来相当長いことその精神にのっとりながら規模の拡大等農業が本当に自立てきるものをつくろうということでやってまいったわけでありますけれども、もろもろの社会情勢の変化という中にありまして、これが停滞しておったというのが率直なところであろうと思っております。  そういう結果、日本農業農業が生産するいわゆる食糧自給率、こういったものも穀物においてもカロリーにおいても非常に低いところになっておる。一億二千万という人口を抱える日本の国が先進国の中では最も低いカロリー、しかもカロリー自給率からいったら、先進国というよりは、世界百六十五カ国が国連加盟国だとするならば、私がかつて農林水産省に調べさせましたら百四十五、六番目くらいであろうというところまで実は低くなっておるというのが現状であるわけでございます。  そして、そういうことが進む中で、農村、あるいは農村というよりは農地というものがやはり荒廃してきておるということ、そのことによって災害なんかというものがやはり起こってきておるという現実というものを見たときに、あるいは農業がずっと伝承してきた、またそういう中から生まれてきた文化というものも、何か少し損なわれておるのじゃないか。あるいは地域社会というものがお互いに、例えば水田農業なら住民たちお互い協力しながらやっていく、そういう組織にも一つの陰りが見えてきているんじゃないのかということを考えましたときに、やはり昔から農は国の基なりということがあります、そういうものを振り返ったときに、やはり日本農業というのは非常に難しい現状に今あるんだなということ。そして、そこにカロリー自給率が下がったということは、それだけ輸入が多いわけでありますけれども、加えてまた、国際的な新しい秩序というものがつくられようという中にあって、いよいよ一つの転機を迎えておるということであろうと思っております。  そういう中で、私どもといたしましては、ただこれを嘆いていたんじゃ、あるいはだめなんだと言っておったんじゃ日本農業というのは決して前に向かって進むことはない、本当に衰退していってしまうものであろう、ということは、国土もあるいは日本社会というものも非常におかしなものになっていってしまうだろう、あるいは消費者に対しても安定した食糧、安全な食糧というものが供給できるのかということを考えたときに、今私たちはこの問題をただ嘆いているのではなく、真っ正面からやはりこの問題と取り組むときであろうというふうに私は考えております。  ですから、そういう中で中核的な農業は一体どうしていくのか、あるいは二種兼業農家はそういう中でどう位置づけるのか、あるいは老人の皆さま方農業というものを一体どう位置づけていくのか、そして今度新しく参入する人たちをどうやって迎え入れていくのかということ、そして終わりに、そういった人たちが本当に生々と発展していくためにはやはり農村社会あるいは農村皆さん方が生活する環境というもの、こういったものをきちんとしていくことが大切であろうというふうに考えておりまして、今農林水産省の中でも新しい食料・農業農村政策検討本部というのを設置されまして、農業政策あるいは農村政策総合的見直しというものを行っておるということでございまして、私どももこういった推移を見詰めながら一人の政治家としてこれからもこの問題に取り組んでいくと同時に、安心した食糧、それと同時に生産にいそしむ人たちあるいは地方に住む人たちが本当に誇りを持てるような農業農村というものをつくり上げていくことが日本の健全な発展につながるであろう、このように考えております。
  10. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 やはり同感ですね。大体同感であって、全く異議がないですが、私自体が考えることは、やはり農業というのは土地労働によって安全で良質で新鮮な食糧消費者に確実に一定の価格で供給する、これはこの食糧安全保障という立場から資することであります。それから農業は、単にそれをするだけじゃなしに、国民全体の立場からするならば水や緑や景観を保持し、そして空気の浄化、それから洪水防止国土保全、こういう社会的な役割をもしている。なかんずく環境保全の問題は、今環境問題が国際的になっているときに極めて大事なものである。そして水田は、日本人の基礎食糧である米をつくると同時に、品種改善であるとか土地改良であるとか、多くの農村における文化を歴史的につくってきたものであり、大臣も先ほど言われたように農村における集落あるいは神社、仏閣がありますけれども、そういう中で米をつくっては喜び、楽しみ、そういう歴史と文化が育ってきた。  こういうことを考えると、農業というのは単に財界や多くのマスコミ、それから一部の学者が言うような安い物でさえあればどこでだれがつくっても構わないというこの考え方は、これはいけない。やはり自然との調和あるいは人間の健康上の問題、こういう問題もしっかり見詰めながら農業に対応していくというそういう姿勢、理念哲学、これが必要じゃないのかと思いますが、それに対して羽田大臣の考えを。
  11. 羽田孜

    羽田国務大臣 基本的に私も今竹内委員からの御指摘はまさに同感であり、私たちはやはり何といっても農業の果たす役割は、今土地労働というお話があったわけでありますけれども、そういう中から安全な食糧、そしてそれを安定して供給すること、また景観だとか文化というものは大事であると同時に、やはり環境保全というもの、この役割は非常に重要であろうと思っております。  そしてこれは、農業には効率のいい農業とあるいはそういうものだけではないというものがあるということで、ファミリー農業なんていうものが、これはアメリカあたりでも企業農業と同時にファミリー農業というのは改めて見直されているということ。それから環境保全とかそういったものをあわせて考えるときに、やはりその地域の中で住んでいる人たちがきちんと物事をやっていくということは非常に大事であるということで、そういった考え方というのはヨーロッパの中にも今新しい一つのニーズとして生まれてきているということ、こういうことがあると思いますから、そういったことはやはり大切にしていくということ。  それから今、だれでもどこでもいいじゃないかという議論がマスコミその他でなされているというお話がありましたけれども、やはり食糧というのは総じて基本的にはその地域の中で生み出していくということ。これは実は自然のあれとして私は物すごい重要なことだなと思うのは、やはり例えば日本なら日本という国のキャパシティーがある。その中でどういう食糧が生産され、そういう中でどういう人口が養われていくかということ。そうでないと、どこからでもどんどん入ってきて構わないんだよということになったら、キャパシティーを超えてしまう人間というものは自然の生態系にもとんでもない影響を与えてしまうだろうということを考えたときに、基本的にやはりそうあるべきということを考えなきゃいかぬ。しかし情報化社会の中では、ともかくヨーロッパで食べているもの、中国人が食べているもの、韓国人が食べているもの、みんな奥さん方はテレビでもって見ながらそれを調理していくわけですけれども、ともかく西洋料理食べちゃだめよ、中国料理食べちゃだめよ、インド料理食べちゃいけないよということは――今メキシコの方の料理まで日本ではやっていますよね。そういう時代であるから、しかも情報までボーダーレスになった、金まで人までボーダーレスになったときに、全部それを断ち切るということはできないから、そのあたりを私たちも考えながら、そこに調和をどうやってとらせていくのかということが大事だな。そういう中で日本農業というのをどう発展させていくかということが一つの重要な今私たちが考えなければならないことである。  ですから、これは報道関係者も経済界の人も、あるいは農業にある人たちも、地方の人たちも、みんなで本気でそういったものを論ずるときがあるのかな。ただ、だから私は、守るというだけじゃやはりだめだということで、古きよき伝統を守りながら新しさを知るというよりはむしろ新しさをつくり出すということで、温故創新なんという言葉をよく言っておるのですけれども、そんな姿勢でこれから取り組んでいく必要があろうと思っております。
  12. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 全くこれは同感であって別に異議を言うことはありませんから、先の方へ進ませていただきますが、農林省見えていると思いますが、ガットの問題なんですね。  本来、三月一日にそれぞれの国から問題が出て話し合いをするということになっているのに、それがおくれている。きょうは三月十二日だ。これまでの経過と若干の見通しについて報告をしてほしい。
  13. 宮本晶二

    ○宮本説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、ウルグアイ・ラウンド農業交渉におきまして我が国は、従来から、農業生産の持つ特殊性や食糧安全保障あるいは国土環境保全農業が果たしている多様な役割が適切に反映されるとともに、交渉妥結を可能とするためには各国の最低限の利益を損なわないことが不可欠である、こう主張しているところでございます。  我が国は、三月四日、ガット事務局に農業に関する国別約束表を提出いたしました。この国別約束表は、包括的関税化は受け入れられないなどの我が国の基本的立場を踏まえ作成したものでありまして、国内支持につきましては、主要な農産物に関しましてAMS、すなわち総合的計量手段による支持保護の削減を提示するとともに、国境措置については基礎的食糧たる米、及び十一条二項(C)、いわゆる生産調整対象品目の関税化に関する欄は記載しないで提出してございます。なお、十一条二項C品目については現行、今入っておるアクセスの維持に努める旨記載しておりまして、また一般関税についてはある程度の削減を提示しておる、こういうことでございます。  そこで、各国国別約束表を出すことになっておるわけでございますけれども、この中身については秘扱いとされておりますのでその詳細は明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、各国からの説明によれば、アメリカはダンケル合意案に沿って国別約束表を作成しておる、それからECは基礎的資料を提示するにとどまっているということで、現在のところ知る限りにおいては九カ国ほどがこれを提出してきておりまして、まだ提出していない国も相当あるという状況でございます。  それで、農業交渉につきましては各国の国別約束表が出そろった段階で本格化するものと予想されますけれども、御承知のとおり各国とも種々の困難な問題を抱えておる、こういう現状にございまして、今後の交渉の成り行きは至って不透明な状況にあるというふうに考えてございます。いずれにいたしましても、我が国としては、これまでの基本方針のもとに食糧輸入国としての立場が確保されますよう最大限の努力を傾注してまいる所存でございます。
  14. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 今御報告があったように、当初の原案から大きくずれていて見通しが不透明である、それも当然のことだと私は思うのですね。農業のような自然を相手にするものが工業の生産と同じような形で取り扱われるということ自体に問題がある。それは確かにガットの十一条二項(c)という項目がある。あるけれども、それは意外に軽視をされている経過もないことはない。というような中で、やはり各国の困難な問題を踏まえながら、日本現状というものはむしろ、二百六十億ドルとか二百九十億ドルとか、計算にはいろいろ仕方があるだろうけれども、輸入していて、その八割がアメリカから入ってきているということになると、大変日本は世界一のまたそういう食糧輸入国、穀物輸入国でもある。そういう中から、現状農業は既に跡取りが一昨年は二千百人、去年あたりは千七百人だという。そして、高齢化、女子化、婦人化ですね、そして一方においては、三十万ヘクタールという耕作放棄地がございます。こういうような状態の中で、集落がなくなってしまうというような状況を考えるときに、先ほど大臣からもお話があったように、日本農業というのは本当に危機的だ、これを救うためにどうするかという問題がやはり先に考えなければならぬということであって、ガットに対していろいろ抵抗すれば国際的に孤児になってしまう、こういうことをしばしば言って恫喝するようなこともあるけれども、ここら辺について総括的に大臣の方から。
  15. 羽田孜

    羽田国務大臣 基本的には今農林水産省の方からお答えをしたとおりの姿勢で、今農林水産省あるいは外務省がその交渉に当たっておるということであろうと思っております。  ただ、私どもがここで注意しなければならないと思いますのは、これはただ効率化するとかそういうことだけではなくて、やはりこのガットそのものというものはこれは成功させていかなければならない。これは、ガットといいますか、自由貿易という中で最大の恩恵を受けている国として、これを推進するということは非常に重要なことであろうと思っております。  ただ、私どもが総じてこの流れを見ておりますと、どうもガット交渉というのが、いわゆる輸出国、これが相当輸出国に偏っているといいますか、傾いているんじゃないのかなという実は危惧がございまして、私も、大臣に就任する直前にアメリカあるいはジュネーブにドンケル事務局長を訪ねまして、そのことを訴えてまいったということでございまして、やはり輸入国の立場というものを、こういったものについても、この貿易のルールをつくるときにひとつ考えていかなければいけない。もともとガットができ上がったときにも、十一条という項が実はでき上がったのも、あるいはセーフガードなんというものが一応導入されたというのも、こういったやはり特殊事情というものに対して対応しようということであったはずなんであって、今日なお私は農業の特殊な事情というものは変わっておらないと思っております。  ですから、私も各国から来られる皆様方に対して、あるいは向こうに出かけていきましたときに皆さんとお話しするときにも、余り理想だけを追ってはだめですよ、そして、できるだけ自由度というものを広げていくということは大事であるけれども、余り理想を追うことによって、結局ガットというものをつぶしてしまったら一体どうするんだということを実は訴えておるということでありまして、私ども内閣もこれからもそういうつもりで対応していきたいということを申し上げたいと思います。それで、その基本には国会の決議というものがある、こういったものを尊重しながら対応していくということを申し上げたいと思っております。
  16. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 もう一つ問題があるから、かいつまんで整理をしますが、今の大臣の御答弁でほぼはっきりしたわけですが、やはり世間には日本農業は過保護であるということが常に言われていますね、過保護論が。私は過保護だとは思っていない。むしろ少し厳し過ぎやしないかと思う。ただ、正直言うと出し方等においては考える余地はあもけれども、過保護だとは思わない。ところが、財界でも行革でも過保護だと言う。ガットでもそれは言われている。それから、農林予算を見ても、かつては十何%の農林予算が現在では四・五、六%に下がってしまっているということから見ても、予算の面から見ても、防衛費の方だけはずっとシーリング抜きでやるけれども、農林予算、ことしはちょっとふえたけれども、必ずしもいいとは言えない。そういうふうに考えてみると、過保護論というのもどうもぐあいが悪い。  そこで、国会の決議の問題に関連をして、今お話があったように、国会の決議を大事にしていくということと、それからこの間選挙が二回あって、奈良と宮城があって、いよいよ自民党の方でも米の問題についてはガードを固めて取り組もう、こういうふうになったということはいいことだけれども、選挙があるからガードを固めるのじゃなくて、やはり哲学があって、その哲学の上に先ほど大臣から答弁があったようなそういう方向において一緒にやっていける、こういうことについてひとつ一括してお答えをいただきたいと思います。
  17. 羽田孜

    羽田国務大臣 これはいろいろなふうに報道されたりなんかするのですけれども、それからいろいろな講演ですとかそういう中で、あるいは一つの問題を説明するために短い時間の中で説明されたりするものですから、誤解がよくされるのですが、これは私どもの党あるいは私ども内閣といたしましても、やはり食糧というものはきちんと確保すること、それからそれに従事する人たちが本当に誇りと、またそれをやることによってちゃんと生きていけるということ、これを確保するということは何としても私は大事なことだろうと思うのです。  ただ、予算の面でやはり多少何年かの間にシェアというものは低くなっているということは、農業というものをそういう中にあって私どもは長い時間をかけながら、基盤整備ですとか生産性を高めるということに投資してきた。これは、国民に安定して、しかも安価であるけれども、しかも質のいいものを提供しょうということのために努力をしてきたということで、農業者の方にもそのメリットがあると同時に、やはり消費者にもお返ししていかなければならない。特に、食管というものは非常に大きな赤字というものを抱えてしまっておるということで、この逆ざやというものを解消しようという中で、全体の農業予算というものは低くなってきております。  ただ、これは一人当たりの農業者に対する助成ということからいきますと、確かによその国に比べますと日本の場合には小さいということが言われますけれども、単位当たりの面積に対する資本投下ということからいきますと、アメリカにもヨーロッパにも比して圧倒的に高いというのが実は現状であるということ、この辺を考えながら本当に農業の目指す、我々の哲学が画指すもの、これを実現するために、やはり節減するものは節減する、あるときの目的を達したものは勇気を持って切る、そのかわり必要なものに対してこれを充てていくということは大事なんであって、これは私たち議員たちは常に持たなければいけないだろうと思う。  それから、今の最後お話のございました今度のガットに向かう姿勢というものにつきましても、これは実は別に選挙だからどうこうということであれしているものではないということだけは率直に申し上げたいと思います。いろいろな人のことがいろいろなふうにとらえられておりますけれども、その人たちはまさに農政の中に今日まで長い経験を持った方々であるということ、それからガットというものの性格というものを、これは日本だけが全然何でもなくて大丈夫だよということじゃない、これではやはり許されないということと、それから守るということよりむしろ攻めていった方がいいということ、そういう中で日本農業を本当に守り、むしろ発展させていくためには、このガットの決着の中で日本は、消極的であるよりは、前に向かって日本から提言していくことも重要であろうという中での発言が、よく誤解されて何かいろいろと報道されたりいたしますけれども、それぞれの皆さん方がそういう哲学を持ちながら対応しておるんだということは、ぜひともひとつ御理解をいただきたい。そして、逃げるのじゃなくてやはり真っ正面から切り込んでいくという姿勢というものは重要であろうということ、このことは私は率直に申し上げておきたいと思っております。
  18. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 農業の問題は時間の関係からこれだけにして、あとは農林委員会の方でまた引き続いて進めていきます。  時間が最後になりますが、私は過日科学技術委員会で長官に質問をしたのですが、大臣もこの十八号答申のメンバーですね。諮問に対して、一月二十四日に答申が行われております。これは非常に立派な、新世紀に向けての新しい方向として、科学技術と国際協力という問題をうたっているけれども、その中で一番問題になっているのは、日本の科学技術研究に対する国の出す予算が非常に少ないということだ。七五年には二七・五%国が出していて、最近一六・五%になっている。ますます年を経るにしたがって国の財政支出が少ない。これまた海外のイギリスやフランスやアメリカやドイツに比べたら日本は最低だ、こういうことである。そして多くを民間の財政に依拠して基礎研究がされている。少なくともこの答申にもあるように、科学技術の基礎研究の費用ぐらいは国立の大学や研究所でしっかり落ちついて勉強をする――民間が金を出せば必ずそれについては見返りをとるから、短期間に成果を期待する、これではいけないと思うのです。現在、この答申では倍増という言葉が言われているけれども、後ろの方に情勢を見てと、こういうふうにまたそれを否定している。これはやはりシーリングがあってだめだということを大蔵省担当主計官はそういうふうに言ったけれども、これでは答申の中身は死んでしまう。そしてまた、科学技術の国際貢献ということについてはいささか見劣りする。これについて、その答申に加わった大臣として、私はやはり閣議の決定などによって、そのシーリングを乗り越えて実行してその実を上げてほしい、こう思っております。
  19. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘の科学技術予算でございますけれども、やはり国際的に、日本に対して基礎研究についてただ乗りであるというような批判が実はあるということは私もよく承知しておりますし、またそういうことに対して、余り基礎研究に対して日本が積極的でなければ、自分たちとしてはもうそういう研究機関への出入りなんかもとめるなんという話なんかもちらほら実は私どもの耳に入ってくるというのが現実であります。ただ、全体的にいいますと、日本は民間も相当出しておりますけれども、御案内のとおり応用技術なんというものであって、基礎技術という面でやはり低いというのが現状であろうと思っておりまして、私たちはそういった基礎技術の研究、基礎科学の研究ということに対して、よその国の人たちも受け入れるとか、日本が研究開発したものをよそに均てんするとか、そういった新しい役割というものを日本が担っていかなければならないということは、まさに答申の中でもいろいろと言われているところを私どもよく承知しております。  ただ、確かに全体的の伸びからいったときにいろいろと指摘される点があるわけでありますけれども平成四年度の科学技術振興費、これは一般会計が、一般歳出というものが四・五に対して八%の伸びを示しておるということで、公債残高なんかで非常に大きく累増してしまっているという、厳しい中にあっては相応の配慮をしているということが言えるんじゃなかろうかと思っております。ただ、主要国の研究費の推移というものを見てみますと、アメリカあたりがやはり圧倒的に高いわけでありますけれども日本の最近のあれは割合と高いところで、あるいはドイツですとかフランスですとか英国に比べても、全体的なものとしては割合と高い伸びを示しておるということが言えるんじゃなかろうかと思っておりまして、さらに私たちは、いろんな国からの指摘あるいは今度の答申、そういうものを踏まえながら適切な対応をしていきたいということを申し上げておきたいと思います。
  20. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 時間が来たからちょっとだけ要請しておきますが、現在国立大学の、あるいは大学院、研究機関、これが千九百二十三万平方メートル、その中で理科系が六百三十五万平方、そのうちで今老朽化して直ちに直さなければならない面積が三百二十八、約半分、これを計算すると一兆二千億になる。大阪大学がこの間火事になった、あれも非常に古い。東大も古い。これは建物が古くて老朽化している。いい研究できませんね。こういう点についてこれは大蔵省に要求しますが、ひとつしっかり文部省と連絡をとって、早急にはできないかもしれないが、十分に落ちついて研究できるようにしてほしいということを要望して、終わります。
  21. 志賀節

    志賀主査 これにて竹内猛君の質疑は終了しました。  次に、伊東秀子君。
  22. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 私は、最近非常に問題になっておりますカード破産の問題でお伺いしたいと思います。  最新のデータによりますと、消費者金融とそれから販売信用、クレジットを合わせた新規の信用供与額が五十七兆円、クレジットのカードの発行枚数が一億六千六百万枚を突破したというようなデータが報告されておりますが、こういったカード社会の反面、一昨年から昨年にかけて裁判所への自己破産宣告の申し立てが大変急増しているということが言われておりまして、最高裁の方から資料を出していただきました結果でも、平成元年は自己破産申し立てが九千百九十件、平成二年が一万一千二百七十三件、平成三年では二万三千二百八十七件というふうに、二年から三年にかけて倍増しているというような結果があるわけで、この自己破産宣告申し立ての九割がいわゆる銀行とかクレジットとかあるいはサラ金というか、消費者金融からお金を借りまくった多重債務者の自己破産宣告であると言われておりますが、こうした背景について大蔵省の方ではその原因についてどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
  23. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘の点につきましては、これはまさに社会問題になろうとしておるという感じを受けます。これは政治改革なんかやっておりまして、漫画の本をみんな集めてくるのでそれを見ておりましたら、「ナニワ金融道」というのがありまして、まさに今御指摘になった多重債務者の増加、それによって消費者といいますか、そういうカードを使う人がとんでもないことを次から次とやっていくのが事細かくかいてありまして、ははあ、こんな現実になっているのかなというのを率直に実は漫画から知ったのです。しかし、漫画になるくらいにやはり社会問題になっているんだろうと思います。  これは確かに、カードというものが出てきたということで安易に使うということが一つの理由であろうと思いますのと、もう一つは、やはり貸す方にあっても、よくあれは五十万円で一つの限度、天井なんか設けられているということなんかもあるのですけれども、そういったものを超えてしまってやる、あるいは年収額の一〇%に相当する金額ということで指導するということになっておるのですけれども、そういったものも実は超えてしまっておるという、双方にやはり大きな原因というものがあるのじゃなかろうかというふうに思っております。ただ、そういう意味で金融機関あるいは貸金業者というものに対して、一層適切な顧客審査の徹底というものをやることが必要であろう。また、そういった信用情報機関というものを積極的に活用していくことが必要であろうと思っておりますが、この場合に、また下手に進んでいきますとプライバシーを侵害してしまうなんてとんでもないことを引き起こすという可能性もあるので、そういった点にも注意していかなければならぬのかなということを改めて思っております。
  24. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 今も大蔵大臣の御答弁にもございましたけれども、やはり多重債務者が増加するのに歯どめになるようなシステムというか、そういうものができていないということが消費者個人の甘さの問題以外にやはり大きい要素として考えられるのじゃなかろうか。そしてさらには、今おっしゃられましたように、業者の側で過当競争によって無差別に過剰の与信を行うということが大変問題じゃなかろうかと思うわけですね。その過剰な与信に歯どめをかけるというか、過剰に信用を与えないということには、情報の交流システムをつくるということが大変今おっしゃったように重要だと思うのですけれども、今それぞれ、例えば銀行でしたら全国銀行協会連合会、クレジットでしたら日本クレジット産業協会、サラ金というか消費者金融、ノンバンクでしたら消費者金融系の全国信用情報センターというそれぞれ情報センターを持っているにもかかわらず、その三者間の情報交流がない、だからカードと銀行とノンバンクとそれぞれが、この人はどれくらい借りているのかということの情報をつかめるシステムがないということが大変問題じゃないかと私は思うのですけれども、その辺についてはいかがお考えでしょうか。
  25. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに過剰与信の防止策として個人信用情報ネットワーク、これが有効ではないのかという御指摘、私どももそのとおりであろうと思っております。貸金業規制法では、各都道府県に設立される貸金業協会は信用情報機関を設立して、または指定して会員に利用させ、過剰融資を防止するよう指導しなければならない、この旨の規定が置かれているところでございます。現在、信用情報機関としては、主に貸金業者の信用情報を扱う機関のほか、主に金融機関情報を扱う機関、また主に信販会社やクレジットカード会社の情報を扱う機関などがございまして、各信用情報機関を通じて各業態ごとに個人信用情報ネットワークが図られておるところでございますけれども、さらに業態を超えての情報交流についても、六十二年三月からですか、延滞等の事故情報の交流が行われておりまして、その交流というものは年々増加しているというふうに私ども理解をしておるところであります。私どもといたしましては、プライバシー保護に配慮した信用情報機関の積極的な利用をさらに指導していくということと同時に、通産省とも協力をしながら信用情報整備ですとかあるいは充実、情報交流の促進をしていくことがやはり今大事なことであろうというふうには思っております。
  26. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 それから、金余りとかバブル経済が進行していた昨年、一昨年、その前という中で、業界が非常に過当競争で、とにかく貸し付けをふやそうということが根底にあったと思うのですが、そういった過剰与信に対する処罰規定が全くないということも問題だと思うのですが、その辺についてはいかがでしょうか。
  27. 土田正顕

    ○土田政府委員 いわゆる過剰与信を防ぐにはどうするかということにつきましては、ただいま大蔵大臣から御説明を申し上げたとおりでございますが、これは、どうして過剰になるかないしはならないかの見きわめをつけるその情報源として各主要業者間の情報交流が必要である、まずそういう環境をつくらなければいけない、こういう状況でございまして、先ほど大臣から御説明申し上げましたが、現在までのところではいわゆるブラック情報と申しますか、事故の情報については主要三センターにおいて情報交流が実施されておるわけでございます。しかし、さらに過剰与信を防ぐためにはいわゆるホワイト情報、つまりどこでどの程度の与信を実行しているかという情報につきましてはまだ今現在情報交流が十分に行われているとは言えない状況でございまして、この点につきましても今後関係省庁及び関係業界内での意見交換それから意見調整が必要である、それが現段階であると存じます。そのような、自分の業者が与信を行うことがその個別の債務者にとりまして過剰与信になるかならないかというその見きわめがつくようなそういう手段をまず。十分与えるということが先決であるというふうに私どもは考えているわけでございます。
  28. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 としますと、例えば貸金業法等で過剰に貸し付けた業者に対する処罰等は今のところは考えていないという御答弁と受けとめていいのでしょうか。
  29. 土田正顕

    ○土田政府委員 委員御承知のとおり、この貸金業の規制等に関する法律では第十三条で過剰貸し付け等の禁止の規定がございます。そこで「貸金業者は、顧客又は保証人となろうとする者の資力又は信用、借入れの状況、返済計画等について調査し、その者の返済能力を超えると認められる貸付けの契約を締結してはならない。」とございますし、それからそのような返済能力を超えると認められる貸し付けを防止いたしますために別途、これは通達でございますが、一業者当たりの貸付金額について、これは無担保、無保証で貸し付ける場合のめどでありますが、五十万円または年収額の一〇%に相当する金額とするよう指導を行っているところでございます。  現在のところは、このような個別の業者が個別の相手に対して与信を行うときに過剰にならないようにこの法律の規定を背景とした指導をしておるということでございますが、現在世間で問題とされておりますのは、いわば幾つもの貸金業者なり銀行なりカード会社にまたがりました多重債務者の問題が指摘されておるわけでございます。その場合には個々の貸金業者なり与信を行う方の立場としまして、今どのくらいの債務が既にあるのか、それにみずからの方からさらに貸し付けを追加することが本人の返済能力その他からいってどのくらいの負担になるのかということがわかるということが前提でありませんと、それがわかった上でなおかつ過剰な与信を行ったというときにはさらに法規制の強化も考えられるべきでございましょうが、現在のところはまず貸金業者に対してそのような情報を与える環境整備しなければならない、そのような段階ではないかと考えておるわけでございます。
  30. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 ぜひ情報のネットワークを密にすると同時に、やはりそれを超えて出てくる場合には法規制の五十万または年収の一割というものを、私も札幌で弁護士をやっておりましたころなどは五百万、六百万とそういうところから一人の人に貸しているという実態が本当に何件もございましたので、ぜひそういった過剰債務を与える業者に対する規制も厳しくしてもらいたいと思います。  次に、クレジットの問題に移りたいのですが、一応消費者金融に関しましては法規制が利息制限法とか出資法とかあるいは貸金業法とかあるわけでございますが、クレジット、販売信用に関しては全く法規制がないというところが大変今問題じゃなかろうかと思うわけでございます。例えばクレジットの手数料については利息制限法、出資法の適用もない、だから手数料は幾らに設定しても業者の方で何らの規制を受けないという状況があるわけでございますが、これは私はきちっと法の網をかぶせるべきであると考えますが、この点についてはいかがでしょうか。
  31. 寺坂信昭

    ○寺坂説明員 お答えいたします。  クレジット取引のうち販売信用にかかわる部分、私ども通産省でございますけれども、販売信用にかかわる部分につきましては割賦販売法で幾つかの規制があるわけでございます。例えば、ただいま大蔵大臣初め大蔵御当局から御説明がありました支払い能力を超える購入の防止、そういったものにつきましては、既に割賦販売法におきまして、割賦販売業者等は信用情報機関を利用すること等により得た正確な信用情報に基づき消費者の支払い能力を超えると認められる割賦販売等を行わないよう努めなければならない、そういった規定もあるわけでございます。したがいまして、こういう割賦販売法上の幾つかの規定によりまして消費者保護のための法規制がなされているわけでございますけれども、今先生御質問になりました手数料の問題でございます。  割賦販売法に定めております割賦手数料と申しますのは、割賦購入あっせん取引等におきまして必要な経費、例えば信用の調査費あるいは集金費、事務管理費、金利その他のもの、まさに割賦販売にかかわります手数料、これを言っているわけでございまして、いわばこれはサービス業におきますサービス料金に相当するようなものでございます。したがいまして、貸金業と申しますか、金銭消費貸借におきます金利、これとはまた異なった性格を有するものでございまして、したがいまして、金利とは異なった性格を持っておりますこのサービス料、これに関しまして、現在の割賦販売法におきましてはその上限を設けていない、そのように考えておるところでございます。
  32. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 建前はサービス料だと言いながら、現実には大変事務が類型化していて消費者金融における金利的な要素が強くなってきているという状況の中で、やはり私はこの手数料に対する規制ということはもう今や必須じゃなかろうか。このカード破産に多重債務者が陥っていくものには、消費者金融における高金利とカードにおける高手数料ということが大変大きい影響を与えているのじゃないかと思うのですが、その辺をもう少し通産省としても、もう一歩進めた考え方を持っていただきたい。これはサービス料なのだからいたし方ないのだと言っていれば、割賦販売法に先ほどの規定があってもそれは全く精神規定というか抽象規定でありまして、現実には何ら手数料抑制あるいは多重債務者を発生させないための歯どめになっていないということが問題じゃなかろうかと思うわけでございます。  それから二つ目には、現実にクレジット契約における会員規約において、管轄の規定にしても、それからあらゆる細かいことが類型的に、一々いいですか、いいですかという形での契約の合意をとらないで、物を買ったらすぐにクレジット契約もそのまま消費者との間に結ばれる状況になっているにもかかわらず、その文言が大変消費者に不利なものにできている、この点も法規制を加えなければいけないと思うわけございますが、いかがでしょうか。
  33. 寺坂信昭

    ○寺坂説明員 お答えいたします。  販売信用にかかわりますクレジット云々、割賦販売法におきまして規定を遣いておるというのは先ほど申し上げたとおりでございますけれども、その契約条項に関して申し上げますと、消費者、会員の方の十分な御理解が得られないままに契約が結ばれる、そういった場合に問題を発生させる、そのような可能性を持っているわけでございます。したがいまして、販売信用にかかわりますクレジット、これにかかわります契約書面に関しましては、従来より割賦販売法の規定あるいは通達に基づきまして、一定以上の大きな文字を使うとか、あるいは購入者に対します注意事項につきましてはその書面の中に赤枠で、赤字で記入することとか、さらには契約書に使用いたします紙の厚さとか質とか色とか、そういったものについても十分留意をするように指導をしてきておりまして、購入者にとって見やすい書面、そういったものになるよう指導をしてきているところでございます。  ただ、現実に申しまして、こういった今の契約書面、これが専門用語あるいは法律用語、そういったものを避けましてやさしい言葉、わかりやすい言葉で記載されているかあるいは購入者にとりまして理解されやすいものになっているのかどうかということについては、疑問がないわけではないというふうに思っているわけでございまして、既に社団法人の日本クレジット産業協会におきまして一昨年より学識経験者から成りますクレジット契約約款研究会というものを設置いたしまして、消費者の方にとりまして理解しやすく、しかも見やすい契約約款のあり方についての検討を進めているところでございます。近々その具体的なモデル約款ができる、そういう予定になってございまして、今後はそういったモデルをもとにいたしまして、一層わかりやすく見やすい契約書の普及を指導してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  34. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 私が札幌でたくさんやってきた事件の中にも名義貸しとか空売り事件というのがありまして、例えば自動車販売会社が業績を上げたいために他人の名義を借りてそして売ったことにする、加盟店契約でクレジットのお金が入ったらそのままドロンしてしまう、そして消費者のところヘクレジット会社から請求が来るという事件、集団悪徳商法事件として何件か私もそういう事件の弁護団の中に入っていたわけですけれども、クレジット会社もそういう商法をやっているところは薄々気づいているはずなのに連帯責任がないために請求だけは消費者が受けるということで、大変社会問題になっていたわけでございます。  今もそういう事件はあると思うのですけれども、こういったさまざまな会員に不利な規定を強行させるとか手数料が高いこととか、それからクレジット会社と今言った販売店との通謀による消費者のだましなどに対して規制をつくっていくような法規制、例えばアメリカですと消費者信用保護法というものがあるわけでございますが、こういったものをぜひつくるべきだと思うのですけれども、これについてはいかがでございましょうか。
  35. 土田正顕

    ○土田政府委員 ただいままでの御審議でいろいろ実態の御説明を申し上げたわけでございますが、そういう消費者信用の取引にはいろいろな形態がございまして、例えば消費貸借といいますか、貸金業とか銀行の行っておりますようなまさに金を貸すという行為もございますし、それから信販、クレジットのような物品販売に付随する信用供与というようなものもあるわけでございます。そのように形態はさまざまであり、また信用供与する機関もまちまちでございますが、これはそれぞれ固有の経緯、いきさつを経て発展してきたという事情でございまして、したがいまして、現在の我が国ではそういうものを総合的かつ統一的に規制する法律がない、それで各業法なり取引法で規制内容を異にし、監督当局も異なっているというのが現実でございます。  そこで、ただいま委員御指摘のような、各国によりましては統一的な法律、消費者信用法規が制定されているという例もございますが、我が国でのこれまでの発展の経緯をかんがみますと、消費者信用のこうした多面性とか規制の実効性などからしますと、直ちに米国のような立法を導入することについては十分慎重に考えるべきであろうと思うのでございます。  ただ、今後の問題といたしましては、これはいろいろ具体的に議論しなければいけない論点が多々あるのでございますが、例えば金利の上限とか消費者保護に関する行為規制とか、それからさらには監督官庁の問題もあるかと思います。そのような問題は多々ございますけれども消費者保護それから適正な競争原理の条件の整備という観点が重要であるという御趣旨であるといたしますならば、それは私どももこの規制立法の議論を待つまでもなく、現時点でもなおいろいろ工夫を要する点はあると思っておりますので、十分御指摘の点も念頭に置いてこのいろいろな施策に取り組んでいく必要があると考えております。  議論によりましては、やはり我が国でも総合的かつ統一的に規制する法律を早期に制定すべきであるという御議論があるということは私どもかねてから承知しているわけでございますが、そのような法制の検討と同時に、むしろそれ以前に現時点でのシステムでなおいろいろ改善し工夫する余地がある、その点についても十分努力してまいりたいと考えております。
  36. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 ぜひよろしくお願いします。  次に、エイズの問題に移りたいと思うのですが、WHOでもエイズ患者あるいは潜在的な患者の爆発的な増加が全世界的に大変問題になっておりまして、今世界でエイズ患者は四十四万六千六百八十一名、これはことしの一月一日現在ですけれども、WHOの報告ですが、潜在的には一千万を超えているのじゃないかと言われておりますし、日本におきましても全体で千九百五十五名のうち一千五百三十一名が血液製剤に基づく患者である。あとはそれ以外の異性間や同性間の接触に基づくエイズの増加なんですが、血液製剤を除いた患者数が平成三年三月二十六日の二カ月間の統計では十六名発生していたのに、平成四年一月二十八日のやはり二カ月間の調査では六十一名にふえている。つまりこの一年だたない十カ月間に四倍増になっているというような急激な、日本の国内においてもエイズ患者の増加の状況がある。  にもかかわらず、この関係予算について見ますと、平成元年度から平成四年度の案までほとんど金額が変わってないのですね。予算がふえてないのです。これは大変大蔵省としても対策に対する敏感性というか必要性について、私は少し考え直してもらわなきゃ困る。このエイズの恐ろしさということを考えたときに、エイズ関係予算、教育から対策課を強化することから、かなりの予算増を見込んでもらわなければならないと考えるわけですが、なぜ据え置いたのか。この辺の状況をちょっと御答弁いただきたいと思います。
  37. 田波耕治

    ○田波政府委員 突然の質問で、今担当者がおりませんけれども、エイズ対策につきましては全体として非常に大きな問題だということでかねてからかなりの力を入れてきているというふうに承知しております。  なぜ金額が据え置かれたか、その具体的な積算については、ただいま手元にございませんので、必要があれば後で御説明をするようにさせていただきたいと思っております。
  38. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 一般質問のときに通告しておいたものですから、その件であれしたのですが、やはり私は、予算措置をかなり増加してもらわなければ困る。文部省もやっとエイズ教育に取り組み始めだということが言われておりますが、やはり一番大事なのは、エイズ対策課なりを、HIV対策課と言えばよいのでしょうか、きちっと政府の中に設けるべきではなかろうか。例えばエイズ対策室というのが結核・感染症対策室の中に設けられているのですけれども、六十三年十月に補佐が二名、係長が一名、これが今日まで全然ふえてないのですね。  例えばアメリカですと、血友病財団スタッフが八三年は五名だったのが八八年には三十名にふえているとか、サンフランシスコ市のエイズオフィスも現在スタッフが三十名いるとか、こういう状況がぼかは言われておりますので、こういった拡充をぜひお願いしたいと思うことが第一点と、もう一つは、民間団体がこの問題についてはかなりボランティア的に取り組んでいる。これに対して、こういった民間のエイズ問題に一生懸命取り組んでいる方への援助をぜひともしてもらいたい、このことを二つ要望したいのでございますが、その件について大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  39. 羽田孜

    羽田国務大臣 この据え置いた理由等について私ども承知しておらなかったことを申しわけなく思っておりますけれども、今御指摘がございましたように、最近の報道等を見ておりましても大変大きな勢いで伸びているというのが現状でありまして、まさに非常に危険な状態にあるということを私ども今痛感します。その意味で、今御指摘のありましたこと等の問題につきましては関係省庁とも十分連絡をとりながら、本当にこれがとんでもないことにならないようにやはり歯どめというものをしなければいかぬだろうというふうに思っておりますので、よく関係省庁とも連絡をとっていきたいというふうに思っております。
  40. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 終わります。
  41. 志賀節

    志賀主査 これにて伊東秀子君の質疑は終了しました。  次に、山口那津男君。
  42. 山口那津男

    ○山口(那)分科員 まず初めに、国家公務員の上級職採用試験において合格して採用された職員について、大蔵省関係でいいますといわゆる本省採用と国税庁採用という二つの採用ルートがあるかのように言われておりますが、最近の報道によりますと、同じ学歴、東大法学部卒業でありながら待遇に格差が歴然としていたということで訴訟が起こされたということが報道されております。  このようなことが実態としてあるのかどうか。これは以前からこういう話がいろいろな場所でなされていたことは私自身も承知しておるのですが、まずその実態について、どうなっておるでしょうか。
  43. 羽田孜

    羽田国務大臣 基本的な問題を申し上げますと、これはもう大事に当たりましては当然のことでございますけれども、従来から、公務の要請に基づきまして適材適所これを配置する。行政効卒を最大限に発揮できるような職員個々の適性あるいは能力及び勤務実績等を的確に把握いたしまして、これらを総合勘案して適正公正な人事の確保に努めているというところでございまして、本省の採用者、国税庁採用者につきましてもこのような基本的な考え方のもとで人事を行っているというのが私たちが今日まで行ってきたことであるということを申し上げておきたいと思っております。  確かに、今お話がありましたように、報道にございますようにこれが訴訟にかかっておるというような実態がございます。私どもはこの訴状を十分検討して対応していきたいというふうに思っております。今訴えの内容につきましてのお話でしたか、これにつきましては、国税庁長官に対しまして指定職五号俸の適用をすべき義務があることの確認ですとか、あるいは対人事院総裁に対しまして勤務条件に関する行政措置要求に対する人事院の不作為の違法であることの確認、また国に対して給与差額を支払うことというような具体的なあれで訴状が出されておるということであろうと思っております。
  44. 山口那津男

    ○山口(那)分科員 この点につきまして、訴えの個別的な内容ばかりでなく一般的にも、私が個人的に承知しておる国税庁に採用された東大法学部出身の職員あるいは元職員の方々からもそういうお話は幾度となく私は聞いているわけであります。ですから、あえて実態を資料として明らかにせよとまでは言いませんが、ぜひその実態を正しく把握して、先ごろ総理の方から国家公務員の東大偏重傾向をなくそう、是正しよう、こういう発言もあったわけでありますから、同じ学歴でありながら歴然とした差が出ているとすればこれもまた問題なんでありまして、ぜひ改善を要望しておきたい、このように思います。  さて次に、みなし法人の税制についてお伺いいたしますが、これは、いわゆる給与所得控除の控除分が給与生活者の給与所得を得るための必要経費的な部分も含んでおる趣旨である、こういう考え方からいわば二重の控除を受けることになる、こういう不合理性が指摘されまして、廃止になるだろう、このように言われてまいりました。  しかし、これは立法当初からこういうことはもうわかっていたわけでありまして、こういうことがわかっておりながら、なぜみなし法人税制ができたのかという、この立法趣旨にさかのぼってお答えをいただき、そしてまた、念のため今回の廃止を決意した理由について簡潔に御答弁願います。
  45. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 みなし法人の設立時にさかのぼって理由並びに経緯等含めて答弁をせよというお話でございます。  みなし法人課税制度につきましては、御案内かと思いますけれども、昭和四十八年度の税制改正におきまして、中小企業の店と奥といいましょうか、その経理を分別するといいましょうか、言ってみますれば、中小企業の企業経営の近代化、合理化というふうな観点から導入されたものでございます。  ただ、今御質問ございましたように、当時の税制調査会の答申におきましても、このみなし法人課税をした場合の実質的な税負担の変動というものが世間一般の常識から見て妥当なものと考えられるかどうか、特に、サラリーマンとみなし法人課税方式を選択した事業主との間において均衡が正しく保たれることになるのかどうかといった点については、種々議論があるという答申をいただいております。そうしたこともありまして、実は、これは所得税の基本税制ではなくて租税特別措置といたしまして、期限を切って設立をしたものでございます。その後幾度か延長になっておりますけれども、そうした経緯を踏まえてできたわけでございます。  その後、このみなし法人課税制度につきまして、税制調査会におきましてもたびたび議論をされたところでございまして、今議員が御指摘になりましたように、このサラリーマンの負担との不均衡感というふうなことが非常に指摘をぎれました。昭和六十二年、六十三年の税制改革を通じましてもこうした点が議論になりまして、昭和六十二年の九月の税制改正におきまして、この事業主報酬の額に実質的な制限が設けられたことは御案内のとおりだと思います。  しかし、依然としてまだその制度自体は存続しておったわけでございますけれども、この制度につきまして、事業遂行のための費用、これは既に事業所得の金額の計算上必要経費に算入されている。さらに、事業主報酬に給与所得控除を適用いたしますことは経費の二重控除になる。今御指摘になったことでございます。そういう指摘が大変強くなされました。  それから、この企業の経営形態の選択に当たりまして、法人形態あるいは個人形態、これのどれを選ぶかということはそれぞれのメリット・デメリットを総合的に勘案して選択をしていただくべき話であって、個人形態を選びながらこの法人形態のメリットを享受しょうというのはおかしいじゃないか、こういう批判もございました。  そういう見直しの声が非常に強くなりました中で、昨年末の税制調査会の答申におきましては、課税の適正、公平の推進の観点からみなし法人課税制度を廃止する方向で検討することが適当である、こういう御指摘をいただいたところでございまして、こうした経緯を踏まえまして、平成四年末にみなし法人課税制度を廃止するという法案をお願いしておるところでございます。
  46. 山口那津男

    ○山口(那)分科員 今述べられた廃止の理由については私も十分納得できるわけでありまして、当然のことだと思うのです。しかし、それはさっきも指摘したように立法当初からもうわかっていること、それをなぜあえて立法したのかということで、その立法趣旨の合理性というのは果たしてあったのかどうか。今の御答弁ですと、その立法趣旨がほとんど実現されていないというように私は思うわけであります。  片や、にもかかわらず立法したわけでありますから、個人企業でありながら法人化の税制面でのメリットは得られる、ここが実質的なメリットだったろうと私は思うのですね。それを今回奪うということになった場合に、法人成りをして法人税制のメリットを得られる人は構いませんが、法人化できないような個人業種という形態も幾つかあるわけであります。例えば税理士とか弁護士などは法人化が許されておらないわけであります。こういう特定の業種について法人化を認めるかどうかは、別の角度からの御議論もあろうかとは思いますが、いずれにしても、特殊な部分については、この廃止による不公平がまた別な意味で出てくるのではないかと私は思いますが、この点について御意見を伺います。
  47. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 この廃止の理由等につきましては、十分御理解をいただいておりますので繰り返しませんけれども、簡単に申しますと、結局、このみなし法人課税制度を廃止いたしましたのは、適正、公平な税制という観点から廃止をするという方向をとらせていただいたということでございます。  今のお話で、法人化できる事業、できない事業、そういった事業が、確かにおっしゃいましたように弁護士とかあるいは税理士とかいうのがあることは事実でございます。ただこれは、あくまでもその事業の性格なりあるいは業法なつ、そういったものの問題としてとらえられて、そういうふうな業態をとるべくとらえられている問題であるというふうに理解しておりまして、そこはその税法の問題として議論するのはやや難しい問題ではないかなというふうに考えております。
  48. 山口那津男

    ○山口(那)分科員 一般の団体法的な立法ができるかどうかということは、またそれはそれで問題でありますが、やはり税制上この法人化によるメリットを享受できていた者がこれでできなくなるという結果でありますから、この点についての税制上の何らかの代替措置、特別措置ということも私は検討すべき課題であろうと思うわけであります。この点は指摘だけしておきます。  さてそこで、廃止されたわけでありますが、一方で、青色申告の控除というものが、これまで一律十万円というものがありました。今回これが特別控除ということで三十五万円になったというふうに承知しております。この三十五万円を特別控除として認める、これの立法趣旨はどういうものであるか、まずお答えください。
  49. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 これは青色申告者につきましてこういう新しい制度をお願いしているわけでございますけれども、この青色申告制度は、御案内のように、一切の取引を青色申告者は正規の簿記の原則、つまり複式簿記、BS、PLをつくるということでございますけれども、それに従って記帳するということが原則とされておるわけでございますので、簡易帳簿とかあるいは現金主義というふうなものが、それまで至らない方々のためにある程度認められておりますけれども、実はこの正規のきちっとした記帳というものが必ずしもうまくいっていないという面もあることもまた事実でございます。  実は、この納税者の方々に正しい申告をしていただいて、そして正しい納税をしていただく、できるだけこの記帳をきちっとしていただいて、正しい申告といいますか、所得金額を把握していただいてその申告をしていただく、そうしたためにいろいろな制度を仕組んでおりますのが青色申告制度でございますけれども、この普及率が営業所得の場合では五割程度というところで近時ずっと推移をしております。  実は私どもは、この青色申告の普及をもっと上げてまいりたいと思っております。それが、適正、公平な課税というふうなものの第一段階として必要なことではないだろうかと考えておるわけでございますが、昨年末の税制調査会の答申におきまして「適正・公平な課税の推進のためには、適正な記帳慣行を確立し申告納税制度の実を上げていくことが喫緊の課題であり、青色申告制度に係る施策は、このような観点から今後とも重要である」こういう御指摘をいただいております。  そこで、こうした税制調査会の趣旨あるいはこの青色申告になるべく多くの方々が移行していただきたい、そして適正な記帳慣行を確立していただきたい、そういうふうなことからこの青色申告特別控除制度というものを設けまして、三十五万円の特別控除をお願いする。その正しい記帳をし、いろいろな正しいことをしていくためには、さまざまなコストもかかると思います。そうした点を含めまして、そういう青色申告向上のためにこういう制度を設けだというのが制度設立の趣旨でございます。
  50. 山口那津男

    ○山口(那)分科員 一般的なことはわかりました。  そこで、これがみなし法人課税廃止にかわる青色申告事業者に対する代替的な、何といいますか、メリットを与える制度であるというか、そういう趣旨も含まれておるのかどうか。  それから、青色申告会等からは、以前から勤労所得分を控除せよ、具体的には六十五万円というような要望も出ておったかと思います。それとの関係がどうなのか、そういう勤労所得も考慮したという趣旨が含まれるのかどうか。  それから、記帳の実態というのは極めて私は実際は乏しいといいますか、記帳を実際にはできない、やりたくてもできない、能力や時間的なゆとりからできないという方々も非常に多いだろうと思うのですね。ですから、こういう記帳をしなければこの控除のメリットを受けられない、いわば要件とすることが実態から見て妥当なのかどうか、ということについてそれぞれお答えを簡潔に願います。
  51. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 この今のお尋ねの中で、勤労所得分に対する配慮という観点ではございませんで、先ほど制度を設立いたしました趣旨で申し上げましたように、青色申告の、何といいましょうか、実行していただく方はふえていただきたい、記帳水準を上げていただきたい、そういうふうな趣旨でこの制度を設けておるわけでございます。  それで、この六十五万円といいますのは、給与所得控除六十五万円がミニマムでございますから、恐らくそれとの関連でそういうふうな御質問がと思いますけれども、御案内のように、この給与所得控除はサラリーマンの概算経費控除等々の性格を持っているものでございまして、これはややいわば青色申告者とは事情を異にする話であろうというふうに私どもは考えております。  それから、記帳につきまして、確かに直ちにきちっとしたものにしなければ三十五万円はだめだというふうにいたしますのもややこの制度を設けました趣旨からすると問題があろうかというふうに考えまして、五年間の暫定的な措置ではございますけれども、やや簡易な記帳でありましても、少なくともPLのほかに、BSまで作成していただいておればこの青色申告特別控除の対象にするというふうな措置も講ずることにしておるところでございます。
  52. 山口那津男

    ○山口(那)分科員 いずれにしましても、今述べられた理由であるとすれば、この青色申告者への移行を促進する、そして記帳を一般化するという趣旨からすれば、三十五万円という額が果たしてそういうえさになるのかどうかという点では額が実は私は少な過ぎるのではないか、このように考えます。いずれにしてもこういう控除額、もう少し幅を広げるような御検討を要望しておきます。  さて次に、家賃の関係ですが、私は個人的なことを申し上げますと、人生の半分は地方都市で生活をいたしまして、残りの半分は大阪と東京という大都市で暮らしました。その間引っ越しを十五回ほどやりまして、この家賃の高騰というものについては身をもって高い負担というものにあえいできた者の一人であります。つまり、地方ではそういう負担が何ら痛痒を感じない程度であるのに、大都市であればあるほど相対的に、つまり自分の勤労所得等との関係で相対的に非常に高い負担を強いられているというのが実情であるということであります。  例えば、これが近年の調査、東京都生活文化局で平成二年に調査を行いまして、平成三年の三月に発表されたデータがあるんですが、東京の区部で申し上げますと、家賃が月収の二二・三%、可処分所得に対する家賃の比率が二六・七%、非常に高率になっております。東京都全体で見ましても、月収に対する家賃の比率が二一%、そして可処分所得に対する比率が二五・四%、こういう厳しい結果が出ておるわけであります。さらに前回、つまり平成二年の前の調査、昭和六十三年でありますが、このときの調査と比べますと、月収が一五・五%、可処分所得が一五%上昇したのに対しまして、家賃は二〇・二%上昇しておりまして、家賃の伸び率が極めて高いという結果が出ております。これは、この大都市の相対的な高負担がいかに進んでいるかということを示すデータであります。  ところで、平成二年度の予算審議の折に我が党の委員から、これは入れかわり立ちかわり多くの議員から家賃の控除制度あるいは家賃の補助制度、こういう相対的高負担解消のためのさまざまな提案がなされて質疑も行われました。しかし、そのときに大蔵省側は、家賃控除についてはさまざまな理由を挙げてこれを否定されました。  その理由を主なものを挙げてみますと、まず高額所得者、高家賃支払い者などそういう人ほど有利になるという理由。それから納税をしない人には何らの恩典が及ばない、これは控除につきましてですね。それから家賃手当と併用すればばらまき福祉につながる。それから一極集中化を促進するものである。都市と地方のアンバランスを拡大させる。それから還付する場合の査定のコストが非常に大きい。このような理由が挙げられたわけでありますが、これは平成二年の審議における議論であります。しかし、こういう大蔵省側の御主張にもかかわらず、我が党からは再三この点についての御検討を要望するという話があったわけでありまして、今の東京都のデータからしましても、そのときの議論の後にもこの家賃の上昇の傾向というのが相変わらず続いておる、こういう実態であります。  したがいまして、昨年度の予算審議ではこの点余り議論されなかったようでありますが、平成二年度の審議の後にこれを大蔵省側としてどの程度御検討されたかどうか、簡潔に伺います。
  53. 羽田孜

    羽田国務大臣 私どもも実は今度の予算審議するに当たりまして、あるいは税制三法を御審議をいただく大蔵委員会等におきましても、この問題についての御質問が多々あったところでございます。その中で私申し上げてまいりましたのは、今実はいろいろと、私もその後、今度の予算に当たりましても、この問題について大分省内でも議論をいたしておりますけれども、しかし今御指摘のあったこと、ほとんど全部また同じようなことしか実際に出てこないというのが現状でありまして、私ども今日の段階でも、国でこういった問題に対して対応するということは非常に困難であるということは申し上げざるを得ないというのが率直なところであります。  そして私ども、そのかわり、そのかわりと言うよりは私どもやはりこういったことで線を引く、一体どういうやり方でやれるのか。また今お話のあったように、低額の所得者の場合には税が納められていない、ということは、そういった人たちには均てんしないじゃないかというような問題もあるので、なかなかこれは難しいなということで、それよりはやはり住宅というものを供給するというようなことで優良なファミリー住宅、こういったものを建設する者に対して特別な助成をしていこうとか、そういった措置というものをやってきておるところで、むしろ優良な住宅をできるだけ価格を安く提供するということの方に国として対応することが必要なのかな。それでいろいろな国を見てみますと、やはり各国においても家賃そのものについての対応というのはなされておらないということであろうと思っております。  ただ、地方を見てみますと、やはり地方が大分過疎化してきておるということで、そういった皆様方には、この町としてはどういう対応をしますよということで特別な対応をしておるのは日本の国内にあっても地方にあっては過疎化対策としてのあれはあるのですけれども、しかし国でやるということはやはりそういうものを見ましてもなかなか難しいのかなということを率直に申し上げざるを得ないということを申し上げておきたいと思います。
  54. 山口那津男

    ○山口(那)分科員 今の御指摘は、さまざまな家賃控除制度不採用の理由と相まってそれなりに私は理解はできるわけであります。しかし、それが必ずしも説得力を十分持っているかという点についてはいささか疑問がありまして、例えば高額所得者ほど有利になるではないかということですが、これは例えば所得の上限を設けるとかあるいは控除額の上限を設けるとか、制度の工夫によって大分緩和されるものだと私は思います。それから、納税してない人には恩典がないじゃないか、均てんされないではないか、こうおっしゃいますが、しかし納税すらできない人、つまり所得がほとんどないという人でありますから、そういう人に対してこの制度を云々すること自体がおかしいわけであります。それから、その他収入経費等の関係で、家賃の実際の支払いはあるけれども、申告としては反映されない、こういう方もいらっしゃるかもしれませんが、それも控除を否定する理由としては非常に弱いのではないかと私は思います。  それから、一極集中化を促進する、こういう御指摘もありますが、しかしこの家賃控除制度を設けたから直ちに一極集中が促進されるというのはいかにも大げさでありまして、一極集中の原因というのはほかにもっと大きな理由がいっぱいあるわけであります。したがいまして、解消策もその他の抜本的なものを考えるべきであって、この家賃控除が一極集中を是正するベクトルにならないことは確かでありますが、また促進する効果も疑わしいと言わざるを得ません。  例えば、持ち家住宅指向についての先ほどの東京都の平成二年の調査でありますが、「持てないと思う」と答えた人が二〇%、それから「全く絶望的」という方が二九・七%、合わせて半分近くいっておるわけであります。したがいまして、大都市居住者においては、もう持ち家政策では救済されないことが居住者に感じられておるということの証左であります。  さらにまた、都市と地方がアンバランスになるではないか、こうおっしゃいますが、やはり大都市ほど高負担であるということが問題、それをどういう政策で緩和するかということが問題なんでありまして、例えばほかの制度で地方と都市のアンバランスが生じておるということはほかにも幾らでもあるわけであります。例えば相続税、これは持ち家の方の問題でありますが、課税最低限が近年だんだん引き上げられてきておるわけであります。この傾向は、要するに地方の相続税納税対象者は激減しておるということを示すわけでありまして、しかしその割には大都市居住者にはさほど恩典はない、つまり課税最低限の額の引き上げがまだまだ少額であるということであります。したがいまして、これも説得力のある理由にはなっておらないと私は思うわけであります。  それから、還付の査定のコストがかかるということでありますが、これも一般的なことでありまして、例えばさっきの青色の控除、これを利用するためには記帳がなされておるかどうかを一々調べなければならないはずでありますが、実際にそういうことを調べた上で還付をしているとは思われません。私も現行の制度の範囲で過去幾度か還付の請求をいたしましたが、一度も詳しい調査をされたということはございません。ですから、この点については一定の証明の資料を添付させるとか、そういう制度によって改善することが可能なのでありまして、これも説得力のある理由にはならない。  つまり、一々大蔵省が挙げられましたことは、問題点の指摘としては検討に値するものの、家賃控除制度を全く否定する理由としては私はおかしい、このように思います。  そして、今回野党の予算案の共同修正要求の中にこの家賃控除制度というものが入っているわけでありますが、今なおなぜこういう要望が出てくるかということを考えてみたときに、例えば持ち家率というのは全国で六一%でありますが、東京ではこれが四一・四一%、大阪では四九・四八%、つまり半分以上が借家であるということなんです。これは一九八八年の調査であります。  ですから、この借家の率においても、または絶対的な戸数においても、大都市のこういう借家住まいの方々に対して持ち家と区別した何らかの恩典を与えること、これを考えるべきだろうと思うわけであります。その上で、各自治体におきまして、大都市中心に家賃補助制度というのが創案され、工夫されてきております。これは、国において控除も補助も容易に進まないところから、いわば大都市の各自治体の自衛策としてこういうものが実現されてきておるということであります。  この控除制度それから家賃補助制度、総合的に見て、この相対的狂家賃高負担についての改善にどのような政策が妥当であるかどうか、この点についてお考えをただしたいと思います。
  55. 石坂匡身

    ○石坂(匡)政府委員 大変細かくいろいろ御質問がございましたので、若干事実関係だけ簡単に申し上げさせていただきます。  一つは、今おっしゃいました点で、その前提になります問題といたしまして、家賃、つまり衣食住でございますけれども、こうしたものは典型的な生計費であるわけでございます。そうしたものを所得税の中で特別な控除を設けるということにつきましては、それをいたしますとあらゆるものを個別に控除をするという問題に発展してまいりまして、税制上非常に大きな問題がございます。そういう問題もございまして、そうしたものは基礎控除等の包括的な一般的な控除の問題として考えていくというのが税制上のまず基本的な考え方である、この点だけ先ほど答弁漏れでございますので、申し上げさせていただきます。  あとの点の御指摘は承りましたが、その中で相続税の問題がございましたけれども、これは今般お願いしております相続税の改正におきまして、二百平米までの一般の方々が住んでいらっしゃる、あるいは商売をしていもっしゃる土地の評価額につきましては相続税評価の減額割合を非常に引き上げております。これはまさに三大都市圏というふうなものに住んでおられる方が十分受益になると考えております。  それから、もう一つ、供給サイドの問題といたしまして、税制の方では、今般の平成四年度の税制改正におきまして、三大都市圏につきまして優良な貸し家住宅供給の促進の観点からファミリー向けの優良賃貸住宅の割り増し償却、供給サイドで貸し家をふやす、持ち家と同時に貸し家をふやす、そういういわば住宅供給サイドの政策を講じております。この家賃控除というものは貸し家需要をふやすというふうなサイドに働いてしまいますので、むしろ供給をふやしていくということに政策のポイントがあるのではないかと私どもは考えております。
  56. 羽田孜

    羽田国務大臣 今も基本的な問題についてお答えを申し上げたのでありますけれども、確かにサラリーマンの方々、あるいは学生さんにしてもそうでありますけれども、家賃というものはなかなか厳しいな、生活費の中で占める割合が非常に高いというのはやはり現実におるのだろうと私は思っております。  ただ、持ち家がどうなのかということにつきましては、これはよその国に行っても、いろいろと私ども勉強したこともございますけれども、持ち家というよりは良質な空間の床面積の広い貸し家、そして世代世代によって移り変わっていくというようなことがあるから余り持ち家である必要もないのだという指摘ども実はあるところでございまして、日本の古い時代というものを見ましても、割合と都市においては借り家といいますか、そういったものが多かったのかなというふうに思っております。  そういう意味で、私どもといたしましては、でき得る限り公営あるいは公団等の高級住宅を促進することを拡充していくというようなことが大事だろうと思っておりますし、やはり優良な住宅というものをできるだけ提供していく、そしてできるだけコストを安くしていくということが大事なのかな、そんなことでこれからも対応していきたい。また、今いろいろとお話のあったことにつきましても、私たちも引き続いて勉強していきたいということを申し上げさせていただきます。
  57. 山口那津男

    ○山口(那)分科員 基礎控除について先ほど御指摘がありました。それは一般論としてはわかりますが、これは一律の話でありまして、相対的な大都市居住者の高負担ということに対する答えにはならない。税制上救済には限度がある、こういう御指摘だということで承っておきます。  いずれにしましても、この住宅問題、特に大都市居住者については深刻な問題でありますので、鋭意工夫を凝らしていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。
  58. 志賀節

    志賀主査 これにて山口那津男君の質疑は終了しました。  次に、井上普方君。     〔主査退席、伊東(秀)主査代理着席〕
  59. 井上普方

    ○井上(普)分科員 昨日、外務委員会におきましてODAのことを承りましたら、渡辺外務大臣は、ODAについては個別プロジェクトごとに大蔵省予算の際にチェックしておるからそうむちゃくちゃが起こらない、こういうふうなことを実は承ったのであります。御承知のように、ODAにつきましては、どうもそれが本当に民生の安定あるいは向上に役立っておるのかどうか、私どもから見ても疑問に思われるものがたくさんあるわけで、ここらあたり大蔵省としてはどういうような、こんなことをなぜ聞くかといいますと、外務省は、いや、大蔵省が査定しておるから大丈夫だ、こう言うのですな。あれはともかくうまいこと言う人だけれども、おかしなことを言う。それよりも、会計検査院とかひとつきっちりしたことをやれと言いますと、外務省は、マルコスの事件がありましたので、これは主権を侵害するからそういうことはできませんなんということを言う。おかしいじゃないか。日本がマーシャル・プランで援助を受けたときに、アメリカは会計検査院等々で、末端にまで行き届いておるか、どういうようになっておるかというのを相当な検査をした。ところが今は十億円ODAで援助しようとすると、それは相手国の主権を侵害するから何とかかんとか言って外務省の連中は知らせないというようなことがございます。  だから、企画、外務、それと大蔵と、もう一つ建設省ですか、これが四つが主管になっておることは私も存じておりますが、どういうような方針でいわゆる査定というのですか、そういうような考え、個々のプロジェクトあるいは事案についてどういうような方法でやっておるのですか。
  60. 田波耕治

    ○田波政府委員 ODAの予算でございますけれども、ODAの中にはいろいろなタイプがございます。先生御存じのとおり円借款だとか無償だとか国際協力、それぞれ日本考え方も違っておりますし、各省庁の関与の仕方も違っているところがございますけれども、基本的には、例えば円借款であれば、今先生からお話がございましたように、外務省のほかに大蔵省、通産省、経済企画庁というようなところがそれぞれいろいろな角度からチェックをして、予算の要求についてもある程度関与をし、査定の段階においてもいろいろな形で御協議を申し上げるというような形で基本的には積み上げを行っておるところでございます。  先生の主たる御関心はその執行の問題というふうに承りますけれども、それにつきましても私どもは、余り細かなものは別といたしまして、その執行の段階におきまして御協議を受けまして、それについて果たして予算をつくったときの考え方に合っているかどうかというようなことをチェックをさせていただいているところでございます。ただ、最終的に、いわば会計検査院的な見地からどういうふうなことということでございますれば、ちょっと問題は違うと思います。
  61. 井上普方

    ○井上(普)分科員 そうすると、どうも国内の一般会計のあるいは公共事業の査定のやり方と同じような考え方に近いわな。あるいはそれよりももっとゆっくりした考え方大蔵省は臨んでおる、こう考えてよろしいか。
  62. 田波耕治

    ○田波政府委員 予算のそれぞれの性質におきまして、おのずから予算のつくり方も執行も違ってまいりますけれども、ODAにつきましては、一定の枠の中である程度の自由度を出先に与えることによってより一層いい援助ができるということもございます。そういったものも考慮に入れた執行を行っているところでございます。
  63. 井上普方

    ○井上(普)分科員 そうすると、きのうの外務大臣の言ったことと大分違ってくるんだ、これは。あれは口はうまいし、相当な侍だから、あいつにごまかされたなというような気が私は合せぬでもないのです。  そこで一つお伺いする。私は去年の終わりにタイ・バンコクに行ったところが、あそこに歴史博物館というのをつくっておる。ODAでつくっておるのですな。これは経済協力あるいは民生安定という問題と何ら関係はないと私は思う。それは、エジプトで有名なオペラハウス同様じゃないですか。こんな、あなた査定したのですか。査定というかオーケーと言ったのなら責任ありますよ、これ。
  64. 田波耕治

    ○田波政府委員 前段の外務大臣の御答弁と私の申し上げた点、私の言い方にちょっと誤解があったかもわかりませんが、基本的には私どもも責任を持って御協議を受けやっておるところでございますので、外務大臣がおっしゃるとおりではあると思います。ただ、私が申し上げたかったのは、その中におきまして、例えば小規模なもので効率的にやるためには、もう少し授権をしたような、そういったアイデアも取り入れておりますという意味でございます。  後段のタイの歴史博物館の具体的なケースは、ちょっと私、今大変申しわけございませんけれどもあれでございますが、基本的なODAの考え方に反するようなものであるか、もう少し勉強させていただきたいと思っておりますが、実物を見ておりませんので、この場での御答弁はちょっと差し控えさせていただきたいと思っております。
  65. 井上普方

    ○井上(普)分科員 私は、そういうような予算は別にとってやったらいいんじゃないかと思うのですよ、向こうに必要であれば。しかし、ODAで歴史博物館だのオペラハウスをつくるということになれば、これはどこまで広がっていいやらわからない。だから私はあえてここで聞くのです。  しかも大蔵大臣は、それは小規模援助のODAのを見ましたよ。拝見しますと、これは効果が上がるだろうなというのはたくさんある。中には警察庁までODAにあるのですな。どうしたんだと言ったら、それは向こうから警察官を研修に来させるのですね、日本の治安がいいから。これは非常に安いけれども、そういうような予算も入っている。私は結構なことだと思うのですよ。小規模のこういうようなものの方に私はむしろ力を入れた方がいいんじゃないかなという気すらする。  しかし、エジプトにしたってタイにしたって、まあタイは大分力をつけてきたけれども、向こうの一億ドルと日本の一億ドルというのはこのくらい差があるのだからね。それをODAで建てましたなんて、得々としてバンコク駐在の日本の大使館員が私に語った。となり上げたんだが、こんなことを、しかも外務大臣はきのうは、いや今までと違いまして大蔵省が査定をして個別にひとつ見ておりますから間違いございませんなんと言われたのでは、大蔵省の面目いずくにありやと私は言いたい。どうだ、わかりましたか。
  66. 田波耕治

    ○田波政府委員 先生がおっしゃっている御趣旨はわかります。そういうこともございまして、そのほかにも近年ODA執行の問題についてはいろいろな方からいろいろな御指摘を受けているということも承知しております。そういうこともございまして、ことしの予算ではできるだけ事前の評価、事後の評価といったものを適正にするような点にかなり力を入れた予算配分もしておるところでございます。  ただ、先生のおっしゃる歴史博物館の具体的な例についてはちょっと私も知識はあれなんですが、すべてのそういう文化的な活動に対する援助がODAの目的にそもそも反するかということになりますと、そういった面において民生の安定を図るといったこともODAの広い意味の対象にはなり得るというようなことは、完全には排除をされないというふうに思うのですが、いかがでございましょう。
  67. 羽田孜

    羽田国務大臣 今のお話、まさに田波さんから言われたのは基本であろうと思っております。  ただ、今の御指摘の点につきましては、私どもに対しても、どうもODAの予算を使いながら、一つの政権だとかそういったものの一つのモニュメントといいますか記念塔みたいなものをつくる傾向というのがあるのじゃないか。本当に民生の役に立っているのかという指摘は実はあるところでございます。  そういうことで、最近では、例えばダムなんかでも記念塔的なダムをつくるということのために物すごいでかいものをつくる。本当にそれが地域農業だとか洪水の調整だとかそういうことに役に立っているのだろうか。むしろそういうものよりは小さなため池的なものを数多くつくってあげた方がいいんじゃないのか、あるいは井戸みたいな小さなものをやってあげた方がむしろ民生のためにいいんじゃないのか、そういうことも指摘されておるところで、このODAの採用あるいは実施等についてもそういった点について配慮すべきであるということが言われて、今お話があったとおり、本当にそういった今までやったものはどんな効果があったのだろうかといったものを、地域まで関係省庁が出かけていって調査するなんということも今盛んにやっておるということでございまして、御趣旨はよくわかりますので、私どももそういったことをよく配慮しながらこれから対応していかなければいけないというふうに思っております。
  68. 井上普方

    ○井上(普)分科員 大臣の御答弁は私はわかります。しかし次長さん、あなた言うけれども、歴史博物館と民生安定とどんな関係があるんだ。そのときの大使がオペラが好きなためにカイロに大きなオペラハウスをつくって、これと民生の安定とはどんな関係があるんだ。そんなことまで言ったら、これは何でもできるよ。それをチェックするのが大蔵省だと渡辺さんが言ったから、外務大臣大蔵大臣になったときに、そういうシステムに変えました、こう言うから、私はあえて聞いているんだ。  バンコクはいつできたんだ。最近だよ。
  69. 田波耕治

    ○田波政府委員 具体的なケースについては、先ほど申しましたようによく調べさせていただきたいと思います。
  70. 井上普方

    ○井上(普)分科員 私は、よく調べて、本当に民生の安定のためではなくて、政権の維持のためであるとかあるいはまた政略的な意味合いでやるのは極力避けなければいかぬと思う。  外務省というのは、私は外交官に対しては不信感を持っているので、どうもそういう目で私も見がちなんだ、また、そう見えるような状況がある。こんなことを言ったら失礼な話だけれども、私らが在外公館へ行きますと、私らに対する過剰サービスだ。そして見ておると、優秀だなと思ったのは、中にはキャリアの人もおるけれども、ほとんどがともかくアタッシェの職員だ。ああこれはいかぬと言ったら、この間、行革審が出てきて外務省に対して勧告を出している。中を見るといろいろ書いてあるけれども、大使、公使なんというのは、民間大もと書いてあった、学者も書いてあった。しかし、各省の高級役人の経験のある人、行けと言って、そうだなと。次官にならぬ局長は、ちょっと言葉がしゃべれたら、全部ともかく大使に出した方がいいよと。かつては十五、六人しか特命全権大使がいなかったのに、今では百二十人もおるようになって、キャリアの者はところてん式に全部特命全権大使になるから、こんなに勉強せぬようになってしまう。  日本ということを考えると、一番大事な役所というのは外務省だ、続いては文部省だというのが私の持論なんだが、それはともかくとして、まあ言い過ぎるな、これくらいでやめておこう。  いずれにしても、きっちりしてもらわなければ。それは私は会計検査院まで入れというのはちょっと無理があるのではないかとは思う。しかし、国民の目に変だなと映ることのないようなODAをやらなければいかぬ、こう思うのですよ。これからもODAは、東南アジアで七〇%ぐらい使っているでしょう。しかもその額だるや、このごろでは一兆七千億に達している、非常に大きいものだ。向こう側から見たって大きい、我々が考える以上に大きいんだから。それをやはり国民の皆さん方の税金ですからね、何に使っているのも、どういうように使われたか明確にする、そしてまた明朗なものにしていただきたい。そして効果の上がるもの。港をつくったら一年で砂で埋まってしまうというような事業もよくやるんだよ。こういうものを直していただきたい。こう思う余り、きのう外務大臣がそんなことを言ったので、あえてここでお伺いするんだが、もっとしっかりしてもらいたいということを申し上げておきます。  時間がございませんので、続いてまた、実は、日本の貿易黒字がたくさんあるといって毎年毎年言われているんだが、一体どこへ行ったのだろうかと不思議でならない。きのうも遠藤周作さんの「心の砂時計」という随筆集をちょっと読むと、一体日本は経済大国になったのだろうか、世界から尊敬される国になっているのだろうかといういろいろな項目で、どれもこれも変わったように思えないと書いてあるのです。この貿易黒字は一体どこへ行ったのですか一どうお考えですか。
  71. 江沢雄一

    ○江沢政府委員 貿易収支それから貿易外収支それから移転収支を合わせまして経常収支というものが集計されております。この経常収支の黒字は、その分資本の流れといたしまして必ず海外へ流れているわけでございます。これは長期資本収支と短期資本収支と両方ございますけれども、年によって振れがございます……
  72. 井上普方

    ○井上(普)分科員 もういいよ。わかったから、それでよろしい。  黒字は全部海外へ流れている、こう言う。なるほどと。  そこでもう一つお伺いしたいのだが、このごろ、大前研一さんがNHKのテレビに出てニュース解説か何かをやっている。あの人の説を聞くと、アメリカの会社が日本で、例えばIBMだ、こういうのが日本で製品をつくって海外へ輸出している、日本からアメリカヘ。その額が大体五百億ドルあると言うのです。そうすると、アメリカから日本に対しての黒字が四百五十億ドルですか、とんとんではないかという議論を展開している。今あなたのおっしゃったように、海外へ流れていると言うけれども、ということになると、向こうから来ておる貿易収支というものは、それであればとんとんにならなければならぬですね。どうですか、そこらあたりは。
  73. 江沢雄一

    ○江沢政府委員 先生御指摘のように世界はボーダーレスな経済になっておりまして、内外の資本が入り乱れて、例えば、今おっしゃったようにアメリカの企業は日本で生産をし、それを海外へ輸出する。したがいまして、貿易収支というものをどういう形でとらえたらいいのかというのが非常に大きな問題であることは事実でございます。  ただ、これは議論の尽きない話でございまして、従来、日本から出ていくものは輸出、それから外国から日本へ入ってくるものは輸入という形でとらえているわけでございまして、その差額が貿易黒字として日本側に計上されておる。その分はドルなり、要するに外国からの受け取りでございますから、それは何らかの形で外国に預金されたり投資されたりしているわけでございます。  具体的に申しますと、例えば海外への直接投資とか延べ払い信用とか日本からの借款とか、円建て外債を外国から発行してもらって日本の投資家がそれに投資をするというふうな形で、かなつ安定的に海外へ投資されておる資本もございます。  ただ同時に、証券投資というのがございまして、これは内外の金利差とか株価とかいうマーケットの変動等にょりまして大きく振れるものでございまして、たまたま一九九一年、昨年は海外からの資本の流入が非常に大きくて、長期資本収支で見ますと、ネットの資本流入ということになりましたが、この分は実は短期資本収支という形で短期の資金として海外に出ておるのでございまして、全体として見ますと、貿易収支なりあるいは経常収支の黒字というのは海外へ投資をされておるということでございます。
  74. 井上普方

    ○井上(普)分科員 それは局長、アメリカの大統領のある人は、日本の総理大臣に会った途端に一番先に言うことは決まっておったというのです。日本は金利を安くしていただいてありがとうというあいさつをする大統領もおったらしい。というのは、これは日本機関投資家がアメリカの連邦の国債をどんどん入札して買ってくれるからありがとうという意味だったのでしょう、金利差があったから。しかし、金利差がなくなって、九一年はこういうように今までのような黒字じゃなくなっている、あなたの方のアメリカの証券投資の紙をいただいたら。これは貿易収支にしましても、私はあなたの言うのは大体正しいと思うんだ。そうすると、大前研一さんの言うような意見というものも取り入れた形の貿易収支の形を示さなければ、ともかくアメリカの生産量というのはどんどん落ちている、日本は技術革新で進んでいるということになったら、いつまでたっても経済摩擦だのへったくれだの言われますよ。だから、あるいは見直すような統計のとり方を何か一つ考えたらどうです。これは通産省に言うのがいいのか大蔵省に言うのがいいのか、それはわかりませんが、ひとつそこらあたりも考えてやらなければならぬと思います。  それからもう一つ、もう時間がございませんが、宮澤総理の美しい日本をつくるという本を読んでおると、これから海外へ資本が出ていってそれの還流があるから、さて日本で生産業がどうなのか、それよりもやはり生産地点というのは日本に置かなければいかぬというのがあの人の考え方のように私はあの本を読んで承った。そこで、宮澤さんが思わず生産のとうとさ、勤労のとうとさということを言うたところが、アメリカのジャーナリスト、マスコミがえらい異常反応を示して、私は宮澤さんの言っていることはそう間違ってなかったと思う。何も間違ってないと思うのだけれども異常な過剰反応を示したので、私もびっくりするし、あれは宮澤さんもびっくりしただろうと思う。そういうような点からしまして、ここらあたりはきっちりとあなた方も、海外投資の実質をつかめということよりも、むしろ今円建てで貿易がかなり行われている。それは世界の基軸通貨であるドルに対する不安だ。あれだけどんどこどんどこ貿易赤字をやり財政赤字をやれば、それは印刷機でどんどんドルを刷らざるを得ないような状況になっている。だから日本もこの二の舞をしてはいかぬ。これが一つ。  それから、東南アジアの円建ての貿易を見ますと年々ふえている。恐らく九一年ですと三四、五%いくのじゃないですか。ところがその統計を探そうと思うと実はないんだ。ようやっと見つけたのが、見つけてもらったと言った方が正しいけれども、ここに出てきたのが一つある。私は拝見して、言われておるのと数字が大分違うな、こういうことを感じたのです。こういうパンフ、これは委員部に行っていただいて御苦労をかけたんだが、「東銀週報」というのに初めてあったというんだ、対東南アジアの「決済通貨別にみた日本の輸入」というのが。こんなことをやっているのですか、やってないのですか、簡単にお答え願いたいと思うのです。
  75. 江沢雄一

    ○江沢政府委員 これは貿易の統計の一部といたしまして集計をしておりましたが、統計の手間ということもございまして、正確な数字を把握するのが非常に難しいということもございまして、正確な数字は今のところ私どもの手にございません。
  76. 井上普方

    ○井上(普)分科員 これは、基軸通貨が危ないのだから、少なくとも円建てで決済ができるような貿易に今から徐々に指導しなければいかぬ。指導したいなんと言ったらアメリカがまたぎゃあぎゃあ言うから、そこらあたりは注意しながらやらなければいかぬと思いますが、しかし東南アジアで見ますと、恐らく円建てでやっているのが三四、五%になっている。これでは三〇・八%になっていますか、これは九一年の上半期です。こんなのが出ておる。  だから、こういうようなのをきっちりおとりになりながらやはり日本の財政のことをやっていただかなければならぬと思いますので、この点御注意までに申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  大臣、何か一言ありますか。
  77. 羽田孜

    羽田国務大臣 今御指摘をお聞きしておりまして、まさに日本の円というものも一つの基軸通貨の第一歩を歩み始めておる、また向こうのいろいろな人たちと話しておりましてもそういう評価というものはなされてきておるということでありまして、そういったもののデータ等をしっかりつかみながら、円がどのように動いているのか、あるいは今御指摘のドルがどんなふうにあれしているのか、私どもも適正につかみながら、適正な対応をしていかなければならぬと思っており、ます、
  78. 井上普方

    ○井上(普)分科員 終わります。
  79. 伊東秀子

    伊東(秀)主査代理 これにて井上普方君の質疑は終了しました。  次に、正森成二君。     〔伊東(秀)主査代理退席、主査着席〕
  80. 正森成二

    ○正森分科員 きょうは、私は主として国民金融公庫の問題を中心に聞かせていただきたいと思います。  副総裁御苦労さまでした。総裁が御出張のようなので、副総裁に中心に伺います。  まず最初に、私が手元にいただきました「国民金融公庫現状」という小冊子がございますが、それを拝見させていただきますと、月末の金貸し付けというのが七兆四千八百三十三億円くらいになっておるようであります。大体そんなものですか。
  81. 塚越則男

    ○塚越説明員 お答え申し上げます。  「国民金融公庫現状」という冊子をお持ちいただいておると思いますが、これは一応毎月発行いたしております。三年十二月末のを私手元に持っておるのですけれども、金貸し出しの残高は七兆五千五百五十七億というふうになっておりますので、先生御指摘の数字で間違いないと思います。
  82. 正森成二

    ○正森分科員 過去について伺いますが、昭和三十年度はどれくらいでしたか。次のページに書いてありますが。ちょっと数字が違ったからね、今の。
  83. 塚越則男

    ○塚越説明員 三十年度一年間でございますか。――失礼いたしました。残高としまして、三兆九千……(正森分科員「それ、けたが違っていませんか。昭和三十年ですよ」と呼ぶ)失礼いたしました。三百九十三億でございます。
  84. 正森成二

    ○正森分科員 副総裁が思わずけたを間違えたくらい、非常に貸付残高がふえているわけです。現在の残高は七兆をはるかに超えておる。昭和三十年代はどうかというと、数字のけたを間違えて、三百九十三億円くらいのを三兆とお読みになるくらい、昭和三十年代と今では物すごく貸出件数がふえているわけなのです。  ところが、資本金の方はいかがですか。資本金、は、銀行局からいただいたのを見ますと、昭和三十年代は二百億円でしょう。それがずっと二十五年間近く据え置きになりまして、昭和五十年でも二百億、昭和五十五年になってやっと二百二十億、昭和六十二年で二百六十億というように、貸し出しか百倍を超えるくらいふえておるのに、資本金は実際にはほとんどふえなかったのではないですか。
  85. 塚越則男

    ○塚越説明員 先生お話しのとおり、そのような経過をたどっておりますが、その後六十年それから平成元年、平成二年それから平成三年と資本金を増加させてきておりまして、現在では八百九億円ということになっております。
  86. 正森成二

    ○正森分科員 私の質問を先にお答えになりましたが、現在が八百九億円で、今年度予算が通ると千五十九億円になるということも承知しておりますが、昭和六十二年くらいまでを見ますと、ずっと二百億というのが続いて、ほとんど資本金がふえていないというのはお認めになったと思います。  そこで、銀行局長、伺いますが、同じく政府関係の金融機関であります輸銀、開銀がどういうぐあいになっているか。時間の関係で私からある程度申しますので、イエス・オーライあるいはノーと答えていただきたいのですが、輸銀の場合は、昭和三十年の資本金は三百四十億円、国民金融公庫とほぼ相並んでおりましたが、年々資本金がふやされまして、昭和四十年には千七百五十八億円、昭和四十五年には四千四百八十三億円、昭和五十年には七千六百十三億円、昭和五十五年には九千三百七十三億円ということで現在に至っていると思いますが、いかがですか。
  87. 土田正顕

    ○土田政府委員 輸出入銀行の資本金につきましては、ただいま御指摘のような計数の水準をたどっております。
  88. 正森成二

    ○正森分科員 さらに、後で開銀も伺いますが、輸銀、開銀には単なる貸倒引当金のほかに法定準備金というのがあって、それが毎年内部留保として積み増しされることになっています。輸銀については、昭和三十年の法定準備金、つまり利息なしで使えるお金が十億円しかございませんでしたが、例えば昭和六十二年をとりますと二千百三十五億円、ほぼ二十一倍にふえていると思いますが、いかがですか。
  89. 土田正顕

    ○土田政府委員 御指摘のとおりでございます。
  90. 正森成二

    ○正森分科員 それでは、開銀について伺います。  開銀は、昭和三十年から資本金については非常に厚く遇されておりまして、二千三百三十九億円でありました。それを現在も引き継いで現在も二千三百三十九億円となっておると思いますが、いかがですか。
  91. 土田正顕

    ○土田政府委員 御指摘のとおりであります。
  92. 正森成二

    ○正森分科員 ところが、法定準備金はどうかと見ますと、昭和三十年が百三十七億円でありましたが、貸倒引当金を積んだ、またそれ以上に利益がどんどん出ますので、法定準備金を積み増しまして、例えば昭和四十年には六百二十八億円、昭和五十年には二千八十六億円、昭和六十年には実に五千二百四十九億円、こういうことになっており、現在では六千億円を超えておると思いますが、いかがですか。
  93. 土田正顕

    ○土田政府委員 現在六千五百三十四億円、現在と申しますか、平成二年度でございますが、六千億円を超えております。
  94. 正森成二

    ○正森分科員 そのほかに、これは政府の金融機関ですから、一定の法定準備金、貸倒引当金を積んでなおかつ利益があれば、これは国庫に納入することになっておりますね。その国庫納入が、累計でいきますと、現在までの数字もございますが、昭和六十二年で輸銀は約一千億円を累計で国に納めており、開銀は約六千億円を国に納めたはずであると思いますが、いかがですか。
  95. 土田正顕

    ○土田政府委員 大体側御指摘のとおりであります。
  96. 正森成二

    ○正森分科員 そこで副総裁、伺いたいと思うんですけれども、結局国民金融公庫というのは現在では七兆円からのお金を貸しておる。これは財投から金が入るわけですね。財投に一定の金利を上乗せして貸すことになる。ところが、これは全部利息のつく金ですね。資本金やあるいは法定準備金のようなものは利息のつかないお金ですね。  一方、輸銀や開銀を見ますと、もちろん主な原資は財投などから入ってくるわけですが、輸銀について見ますと、例えば昭和六十二年度には、資本金が九千六百七十三億円で法定準備金が二千百三十五億円だということになりますと、約一兆二千億円も利息のつかないお金を持っているわけですね。開銀はどうかといいますと、資本金が二千三百三十九億円で法定準備金が五千七百億円余りあるということになれば、これも約八千億円は利息のつかないお金を持っているわけです。ところが国民金融公庫はどうかと言えば、同じ六十二年で見ますと、資本金は二百六十億で貸倒引当金は百二十一億円しか持っていない。利益に相当するようなものは何もないということになれば、これは貸出総額に対する利息のつかない自分の自己資本というのは微々たるものですね。これが国民金融公庫の経営や財務状況に重大な影響を与えることは当然であると言わなければならないと思います。私は、昭和六十年の四月十六日に大蔵委員会で質問いたしまして、当時の銀行局長は吉田さんでございましたが、仮に国民金融公庫が輸銀、開銀並みの自己資本を持っておるということにして、それで財投から借りている金利を払わなくてもいいということになれば、一体貸出金利はどれくらい下げられるかという質問をしたことがあります。それに対して、昭和六十年度で輸銀、開銀並みの割合で自己資本が国民公庫にあれば、輸銀並みとした場合約一・七%、開銀並みとした場合一・一%の引き下げになる、こういうぐあいに答えておられます。もちろんそれに引き続いて、国民金融公庫の金利というものは基準金利で民間の長期最優遇金利と同水準に定めておるというようなことから、これは金利は下げられないという答弁がございましたが、それは逆に言えば、金利が下げられないとすれば、ここで明らかなように輸銀並みとした場合は約一・七%分、開銀並みとした場合は約一・一%分内部留保をふやせることができ、非常に経営、運営が楽になるということを逆に証明していることにほかなりません。それをお認めになりますか。
  97. 塚越則男

    ○塚越説明員 私どもとして、仮に輸銀、開銀並みに資本金があったらどうかというような試算をしたことはないわけでございますが、先生御承知のように、公庫といたしましては、銀行その他一般の金融機関からの資金の融通を受けることを困難としている国民大衆に対して必要な事業資金の供給を行うという設立目的を持っておりまして、必ずしも民間の金融機関になじまないようなものにお貸しをしているわけでございますが、その場合の金利は政策的に決まってまいります。そのときどきの利ざやの縮小というようなことがございますと、その場合には補給金をいただいておりますし、また逐年このところ資本金を投下していただいておりますので、現在の事業の進め方に問題はないというふうに考えております。
  98. 正森成二

    ○正森分科員 私が後から聞く補給金の問題まで先におっしゃいましたが、大蔵大臣国民金融公庫法によると、十八条二項でありますが、公庫は、「独立して事業を遂行する意思を有し、かつ、適切な事業計画を持つ者で、銀行その他一般の金融機関から資金の融通を受けることを困難とするものに対して、小口の事業資金を供給することをいいこ云々、こうなっているのです。つまり、国民金融公庫というのは、普通の銀行から相手にされない、そういうものに対して事業がなおかつやっていけるように「銀行その他一般の金融機関から資金の融通を受けることを困難とするものに対して、小口の事業資金を供給する」、こうなっているのですよ。  私がなぜ昭和三十年に貸出残高が幾らで資本金は幾らかと聞いたかといいますと、当時は貸出残高はお認めになったように三百九十億ぐらいですね。そのときに資本金は二百億であるということになれば、貸出残高に対し半分は利息の要らない金を持っているのです。だから金利は下げられるし、低い金利で下げてもなおかつ内部の運営は赤字にならずにいくということになっていた。ところが現在はどうかといえば、貸出残高は七兆円を超えるということになっているのに資本金はほとんどふえておらない。今年度の予算で若干ふえるということになりましたが、昭和六十年ごろまではほとんどふえておらないということになれば、これは経営状況が困難になるというのは極めて明白だと言わなければならないですね。  だから経営が悪くなって、そのために臨調行革によりますと、ここに臨調行革の最終答申を持ってまいりましたが、その答申、五十八年三月十四日を見ると、「国民金融公庫については、収支相償を基本として、貸出利率を見直すこと等により、国による新たな出資及び利子補給を抑制する。」こうなっているのです。そんなもの、輸銀、開銀と同じぐらいの資本比率を持っておっても、なおかつ貸出対象者が普通の銀行では相手にされないようなところを相手に貸し付けるということになれば非常に焦げつきが起こってみたり利息の支払いが滞ったりというので困難であるのに、資本構成がむちゃくちゃ悪いということになればこれはうまく立ち行かなくなるのが当たり前じゃないですか。これが政府の中小金融機関に対する態度だと言わなければなりません。  そこで銀行局長、時間がございませんから伺いませんけれども、財政規模が悪いので信用保証協会等々に対しても取り立てをしっかりやれという意味の通達が、九・一六通達なんか出たようでありますが、これが国民金融公庫にも反映いたしまして、国民金融公庫では猛烈な取り立てをやっているのじゃないですか。  私の手元にある資料によりますと、これは私も住んでおります東大阪ですが、簡易裁判所の仮差し押さえ件数を見ると、昭和五十九年で見れば、簡易裁判所の総件数が百九十一件、うち公庫が百五十二件。昭和六十年は百八十三件中百六十一件が公庫。六十一年は二百二十四件中二百三十一件が公庫。公庫の方が簡裁の件数より多いのは、簡裁が一月一日から十二月三十一日までの統計に対し、公庫が四月一日から三月三十一日だから、こういうようなずれが起こっているわけであります。  これは東大阪だけじゃないですよ。例えば名古屋簡易裁判所でも、昭和六十二年の不動産等の仮差し押さえ三百一件のうち国民公庫が百八十四件、静岡の浜松簡易裁判所では、昭和六十二年の四十六件のうち公庫の申し立てが三十三件、大体三分の二ぐらいをいつでも占めておるわけであります。  そういうぐあいに非常に厳しい取り立てをやる上に、選別をやりまして金を貸さないということをやっておりますから、例えば昭和六十二年の十二月十八日には、東大阪の国民金融公庫の門の前で、お金を百五十万円借りられなかったという業者が灯油をかぶって自殺しているんですよ。そんなことでどうして国民金融公庫法の十八条の趣旨が守れるんですか。
  99. 土田正顕

    ○土田政府委員 国民金融公庫の業務の運営の実情につきましては国民公庫の方から御説明をお願いすることといたしまして、今までの御議論にございました損益の調整と資金の補給の方法につきまして、若干輸開銀との横並びの議論もございますようですので、その点について簡単に考え方を御説明申し上げます。  この輸開銀、国民公庫、それぞれ独立採算を目的とするわけではございますが、そのときに損益の調整ということと、それから貸し出しその他の事業に必要な資金の供給というものを一応切り離して考えることはできるのではないかと思うわけでありまして、具体的に国民金融公庫の方は、委員御承知のとおり、補給金を交付するということによりまして損益、差損を補てんしてきているということでございます。それからまた輸銀、開銀につきましても、かつてはかなりいわば融資の資金を補給するという観点から出資を追加してまいりましたが、例えば輸出入銀行につきましては、これは輸出についての補助金的な措置を制限するという国際的な合意もございますし、その影響もございまして、昭和六十年度以降資本金の増加は行っておりません。また、開発銀行も比較的大型の採算性を考えながらの事業に対する金融を補給するということで、資本金はずっと据え置きになっております。この点は、生業資金を融資することを目的とする国民金融公庫とは若干趣を異にすると思うわけでございます。この資金補給について、もちろん国民金融公庫で近年毎年やっておりますように追加出資の方法もございますが、これはどちらかといえば経営基盤の強化を図るためということで、財政状況を勘案しながら出資を追加しておる、そういう位置づけであるということを御了承いただきたいと存じます。
  100. 正森成二

    ○正森分科員 今銀行局長から答弁がありました。例えば輸銀、開銀などで資本金がふえていないところもございますけれども、そのかわり内部の利益の中から積み立てる積立金が猛烈な勢いでふえているでしょう。国民金融公庫の場合には、確かに収支差補給金というのが出ており、それが累年で二千三百億円ぐらいになるということは、私の部屋ヘレクチャーで来られたときに伺っております。しかし、赤字になってしまってから赤字を埋めるためにこういうお金を出す前に、これと同じお金を何年か前に出しておいてやれば、これが例えば二千億円ぽんと出しておけば、五%で貸し出すとすればこれは百億円丸々内部に残るわけですから、だから百億円ぐらいの赤字というのはそれだけでも出ないで済むということなのに、こういうものを一文も出さないで、赤字になってからそれを補給して累年でこんな額になるというのは経済のあり方から見ても非常にまずいやり方であり、政府の中小企業に対していかに冷淡かということを臨調行革以来示していると思うのですね。  笑い話じゃないのですけれども国民金融公庫の係のところへ金を借りに行ったら、なかなか貸してくれないうちじゃなくて信金さんに相談してみたらもっと親身になってくれるかもしれませんよなんて言われたところがあるのですよ。こんなのだったら国民金融公庫として恥じゃないですか。そういうことを申し上げて次に移りたいと思います。  そういうことを国民に対してやっているのと同様に、労働組合や職員に対してもあなた方はけしからぬことをやっているのじゃないですか。昭和五十年十月七日に、「人情報」、人事局の情報の報告、こう書いて「五〇-二こというのが本店人事部長から出ておりますが、百五十の支店に対して「「労働組合カード」の作成について」というのを出しておりますね。これは本店が指示して出したのですか。
  101. 塚越則男

    ○塚越説明員 私ども当時の資料が保管されておりませんのでその辺よくわかりませんけれども、私が見ました限りでは、今お話しのような文書というのは、労組カードの作成依頼の文書のように思われます。そういうことだろうと私どもは思っております。
  102. 正森成二

    ○正森分科員 よくわからぬなんていいかげんなことを言ったらいかぬですよ。ここに、きのうレクチャー聞きに来られた方にも見せましたけれども、きちんとあなた方の方の書式で国民金融公庫の用紙に書いたものが全部手元に入っているのですよ。それを見ますと、これは都労委で労働事件にもなっているのですが、あなた方の証人として出廷した鹿児島支店の次長や、あるいは現在長崎支店長ですが、労組カードがあったことは記憶しておる、本店に送っていた、自分も書いたことがある、こう言って認めているのです。  それを見ると、もう詳細に労働組合の役員や個人の評価をしておりまして、例えば書記長の欄を見ますと、「(共)党員 性格は陰性 民青幹部として外部活動は活発、組織をバックに力をつけている。」こう書いてあるし、婦人部長の二十五歳の女性に対しては「(共)党員 今回始めて表面に出て来た。体制に対する反感は強い 民青グループの「あねご」的存在」なんて、こう書いておる。  それで、そのほかの状況を見ますと、「児島は人脈を通じ本部情報を得、これを利用して支部員を掌握し、もっぱら上級職員ににもみをきかせ、一方赤松は、スポーツを利用して巧妙に若手にとり入り民青へ引き込みを図るといった(両名とも(共))」こうなっておって、「党主導型でリーダーシップを発揮していた。」というようなことが書いてあるし、「支部内に(共)グループが十名おり、うち女子が六名と多い。このグループは権利意識強く、団結を教条として女子層をリードしている。女子層の動向が支部の体質を左右することから、まづグループを明白にするため監理課に集め、動向を注視するとともにこなんて書いてあって、あなた方はそれを把握した後で、配置転換までして対策を講じておるということを言っておる。  それだけでなしに、「迫力に欠けるため、今回の委員改選にあたり良識層から松尾を送り込むことに成功した。今後も良識層のリーダー養成及び若手職員との対話を一層密接に」していきたいというようなことを書いております。  さらに、鹿児島支店長は特別報告を本店に対して送っておる。それを見ると、「思想の偏向者が全組合員の二四・九%を占めていること。(男子五名、女子六名、計十一名)なお、組合員の色分けは、別紙のとおりである。」ここに入っているけれども、もうちゃんと色分けしているじゃないですか。そして、「党勢拡大のため無知な若年層に対して職場の不平不満をあおり民青入盟を勧める」というようなことが書いてあるかと思うと、「(共)、(共)組が、女子の中間派に対し、総会への出席及び組合活動が消極的であるといって、締め付けを行っている」云々というようなことを言っておる。  それで、職場に何か悪影響があるのかというと、「労使間のトラブル等は無く、職場内の規律、秩序は保持され、雰囲気は明るく、対話のある職場に変って岩だが、今後とも(共)分子の排除には十分留意する必要がある。」職場は明るくて秩序があるのに、マル共グループだけは一生懸命排除するということを言っている。  いろいろ時間の関係で省略いたしますが、「左右の勢力バランスを一時逆転させるため男子のハネ上り分子を良識派と入れ替える必要がある。とくに(共)グループである池田克己を除く野元幸一及び本吉将志等の女子職員に対する影響力からみて、この際、池田を除く二人を転勤させなければ女子の体質を変えることは困難と思われる。」ということで、転勤まで言っておって、この中に資料がついておりますが、転勤について消極的な人まで転勤させるということをやっておる。  また、家族の状況なんか見ますと、ある二十一歳の女性は「民青員、家族ぐるみの党員、内部では目立った動きはないが外部で活動している」というようなことを調べ、詳細にやっているじゃないですか。  それだけじゃないですよ。私らが全部詳細に見ますと、例えば昭和五十六年の項を見ますと、「(共)坂元、井上が県、浜田が市の民青グループの幹部であることが判明した。」「(共)県代議員大会に池田が出席、井上、浜田は県常任委員会に出席していることが確認された」。  こんなことまで国民金融公庫はやっているのですか。こんなことは、国民金融公庫単独の力でなしに警備警察か公安調査庁の協力がなければできないことじゃないですか。そういうことまでやって労働組合法に反して支配介入を行い、労基法に反して思想、信条による差別を行っている。こんな、内部に対してはこういうことをやり、外部の中小企業に対しては非常に冷淡で、信金の方が親切ですよと言われるようなことをやっておって、どうやって政策金融の目的」が達成されるのですか。  都労委でも差別がひどい。二百万、三百万の賃金の差別を受けていると言って十九名の人が申し立てしているでしょう。都労委から和解の話もあるでしょう。あなた方は自分たちの非を認めて、改めるべきは改めなければいけないのじゃないんですか。
  103. 塚越則男

    ○塚越説明員 当時の資料が保管されておりませんので、実際にそのような報告があったかどうかということは私どもわかりませんが、現在においてはそのようなことは一切ございません。  それから、先ほど労組カードのお話が出ましたけれども、これは各支店における労使間の交渉や協議を円滑に運営していくために、公庫としても労組役員の役職とかその氏名等を把握しておくことが必要であるという趣旨でやっているものでございまして、そういったことだけを記載しているものでございます。したがいまして、職員の思想、信条等に関する事項についての調査を目的としたものでは全くございません。
  104. 正森成二

    ○正森分科員 いいかげんなことを言ったらいかぬですよ。現在はそんなことやってないと言うけれども、過去にそういうことをやったことが明白に書かれておって、しかも鹿児島地方の支店次長をやった者が認めているじゃないですか。現在やったことないと言うところを見ると、現在はこんなことやったらいかぬと思っているのですね。それなら、余計都労委で問題になっていたら速やかに非を認めて和解すべきじゃないですか。あるいは話し合いをすべきじゃないですが。  大蔵大臣大蔵省でも私は全税関や全国税について二足のことがあったということを二、三年前に質問したことがありますが、これはやはり本家に見習うのですかね。余りよくないんじゃないですか。答弁を求めて、終わります。
  105. 志賀節

    志賀主査 正森委員、時間でございますので、本会議も予定されておりますから、これにて正森成二君の質疑は終了をさせていただきたいと存じます。  次に、河上覃雄君
  106. 河上覃雄

    河上分科員 たばこについての広告並びに自動販売機の深夜稼働のあり方につきまして、未成年の喫煙防止という視点から質問をいたしたいと思います。  まず、たばこ広告のあり方でございますが、たばこ事業法に基づきまして、大臣の指針が平成元年十月に告示されております。日本たばこ協会がとりました施策、さまざま自主的基準を設定いたしましたが、大臣のこの告示を受けて日本たばこ協会が自主基準を強化した結果、未成年者の喫煙は減ったのか減らないのか、この点からお尋ねしたいと思います。
  107. 谷川憲三

    ○谷川政府委員 これまでの喫煙動向に関すを調査、これは成人を対象としたものでございまして、未成年者の喫煙の実態について必ずしも適当な調査がございません。時系列的に変化を追った調査がございません。したがって、数字の上で正確に申し上げることはできないわけでありますけれども、私どもとしては広告自主規制の効果はそれなりにあるのではないかというふうに思っております。  ちなみに、警察庁の調査によりますと、平成二年度中に喫煙で補導した少年は三十三万二千九百十一人ということで、前年度に比べて六万六千七百九十三人、一六・七%減少しているという数字があるようでございまして、これも一つ効果を示していると考えていいのではないかというふうに思います。
  108. 河上覃雄

    河上分科員 それでは未成年者の喫煙防止に向けての対策を講じましても、その効果がはっきりわからなければ次策がとれない。ぜひその効果等がわかるような調査方法、なかなか難しいと思いますが、検討してはどうかと思います。  今御説明にもありましたように、ここ数年の紙巻きたばこの販売高を見ますと、年々増加の傾向にありまして、金額ともにふえているわけであります。販売量は約三千二百二十億本、前年と比較いたしましても一〇二・六%、販売定価代金につきましても三兆五千九百五十二億円、前年比一〇三・三%、このようにふえておるわけであります。ここに未成年者が喫煙して補導された人数をお示ししようと思ったのですが、大蔵省の方から今御説明がありまして、確かに二年度までで減っております。  こうして考えてみますと、販売高が増加しているにもかかわらず未成年者の喫煙が減っているとの傾向でありますので、日本たばこ協会の自主基準をさらに強化すれば一層効果が上がるのではないか、私はこのように考えるのですが、どうでしょうか。
  109. 谷川憲三

    ○谷川政府委員 現在たばこの広告の自主規制につきましては、広告媒体のいかんを問わず、未成年者を対象としては行わないということになっております。また、特に影響力が強いと思われますテレビの広告につきましては、深夜の時間帯、現在の状況でございますと二十二時五十四分から翌朝の五時まで、この時間帯に限って行われるということになっております。また、業界の方の事情もありまして、たばこ業界の営業の自由といいますか宣伝の自由というもの、そういう点も考慮いたしますと、現在行われている水準での規制というのが妥当な線ではないかと私どもは考えている次第でございます。
  110. 河上覃雄

    河上分科員 これはつい先日、二月十二日の新聞でございますが、欧州議会ではたばこ広告禁止案を可決をいたしました。全面禁止。この案については、EC保健相理事会等に諮られて承認すれば全面禁止が可能、こういうことになっているようでございまして、国際的にもテレビ、ラジオ等の広告は金面禁止の方向に動いているということが言えるのではないか。アメリカ、イギリス、フランス、旧西ドイツ、イタリア、カナダ等でもやはりそのような傾向にありますが、こうした国際的な動きに対する御見解あるいは御感想をいただきたいと思います。
  111. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほどからお話がありましたように、未成年者のやはり心身、こういったものの発達に対しては悪影響を与えるということはもう多くの識者の方からも指摘があったところでございまして、先ほどからお話しのように、我が方としてもたばこ審議会等の答申を得ながら、広告等についての規制といいますか、そういったものを進めてきておるわけであります。  確かに、各欧米先進国等においても全面禁止ですとかあるいは相当厳しいものを進めておるという状況を我々もよく見詰めながら、やはりたばこというものが一面で成人に対しては一つのあれがある、憩いのものであるのかもしれない。しかし、こういった問題もあるということを念頭に置きながら、我々もそれぞれの御意見を伺いながらやはり対応していかなければいけないのかなということを思っております。  しかし、いずれにいたしましても、まず基本的にやはり家庭教育ですとか社会教育ですとか、そういったものが重要なことであろうということで、そういった面での努力なども喚起していく必要があるのかというようなことも改めて思っております。
  112. 河上覃雄

    河上分科員 これは総理府の世論調査でございますが、ちょっと時点はさかのぼりまして六十三年の十月、特にテレビ広告の影響という調査をやりました。ここでのデータを見ますと、テレビ広告が未成年者の喫煙を誘う、こう答えているのが四一・六%もあるのです。健康に悪くないと思わせる、一八・三%、吸わない人の喫煙を誘う、これが二一・七%等々、こうした調査も出ておりますが、ほとんどの人が、何らかの影響をテレビ広告から受けている、こう答えているわけであります。先ほど申し上げました国際的な傾向とこうした我が国の実態を考え合わせますと、私はたばこの広告については全面的に禁止をすべきではないのか、こう考えるのですが、大蔵省の見通し、そして見解はいかがでございますか。
  113. 谷川憲三

    ○谷川政府委員 先ほどお話がありましたように、欧米主要国ではたばこのテレビ広告等の全面禁止の措置がとられております。我が国におきましては、たばこ事業等審議会で検討されて答申が出されているわけでございます。  この答申におきましては、たばこの広告について未成年者の喫煙防止等につき一層配慮する必要があるものの、広告の禁止というものは営業の自由あるいは表現の自由という国民の重要な権利を制限するものであるだけに慎重に判断をすべきであるということを申しております。また、欧米主要国では、酒類あるいは生理用品等ほかの商品の広告も規制されている例が多いわけでございますけれども、我が国ではそれらの広告について特段な規制を行っていないというように、国民の広告に対する受けとめ方というものについて欧米諸国との感覚の違いがあるのではないかというふうに思われるわけであります。また、健康に影響を及ぼすおそれがあるとされている商品がほかにもある中で、たばこの広告だけ禁止するというのは若干不合理ではないか、そういうふうな理由から、当面広告の全面禁止は行わず自主規制の強化を求めることとした、これが元年五月の審議会の答申でございました。  私どもといたしましても、このような考え方に基づき、この答申の趣旨を尊重して、当面現在の広告の自主規制という形での規制を続けていくのが適当ではないかというふうに考えているわけであります。
  114. 河上覃雄

    河上分科員 ここにあります日本たばこ協会の自主規制のをいろいろ読ませていただぎました。これを読みましても不十分、こう思いますし、これは後ほど質問いたします自動販売機との関係でも出てくるわけでありますけれども、何とかもう少しこの自主規制だけでも強化できる方向、これは大蔵省としてもお考えになられた方がいいのではないか。今の御答弁ですと、今のまま、これで結構なんです、これでいいんですというお話のように私は理解しておりますが、もう一遍重ねてお尋ねしますけれども、このままでよろしいですか。
  115. 谷川憲三

    ○谷川政府委員 この自主規制、実際の実施は、例えばテレビの放送量の規制は平成二年の八月から、あるいは現在のテレビの深夜の放送、深夜に限定するという放送時間の規制についても平成三年の四月からということで行われてきておりまして、まだこの規制自体実施されて間もない、この措置を講じて間もない段階でございますので、当面この規制の効果を見守っていく段階ではないかというふうに考えているわけでございます。
  116. 河上覃雄

    河上分科員 当面というのはどのくらいでしょう。
  117. 谷川憲三

    ○谷川政府委員 具体的に何年ということは申し上げられませんけれども、先ほど申し上げたように実施されて間もないということでございますので、当分の間現在のこの規制の効果を見守っていきたいというふうに考えております。
  118. 河上覃雄

    河上分科員 先ほども申し上げましたように「製造たばこに係る広告活動に関する規準」というのを自主基準として日本たばこ協会が発表しているわけでありますけれども、テレビの広告の問題等々さまざまありまして、「未成年者を対象とする広告活動は行わない」「主として未成年者に人気のあるタレントまたはモデルを広告に用いない。」あるいは「テレビ、新聞及び雑誌による広告には、未成年の喫煙禁止に関する注意表示を次のとおり挿入する。」であるとか、「現在の社会環境に鑑み、女性に喫煙を奨励するような広告活動は行わないものとする。」「女性の喫煙ポーズを広告に用いない。」とか「女性向けの新聞及び雑誌においては、広告を行わない。」このように一応歯どめをしながら自主的な規制みたいなものを設けておやりになっておるわけですが、テレビであれ新聞であれ雑誌であれ仕切りはないわけでありまして、未成年者もいつでもどこでもまた自由にさまざまな面から見られる、入手できるわけでありますので、私はこうした側面からも最近の傾向、動向を思いながら心配をするわけで、その上で自主規制をもう少し強化することはできないのか。特にテレビ等においては先ほど申し上げたようにもう全面禁止でもいいのじゃないか、このように申し上げているわけであります。  これは次の自動販売機の件とも絡み合いますので、立体的にさせたいために次の自動販売機のあり方について質問を移します。  まず、未成年者喫煙防止対策の一環で、たばこ事業法施行規則を平成元年の六月に改正をいたしましたね。ここでは「十分な管理、監督が期し難いと認められる場所」であれば小売販売業の申請に対して許可を行わない、こういたしました。では、その効果はいかほどのものがありましたでしょうか。
  119. 谷川憲三

    ○谷川政府委員 お話がございましたように、たばこ事業法施行規則の改正によりまして、「未成年者喫煙防止の観点から十分な管理、監督が期し難いと認められる場所」での自動販売機については、小売販売業の申請に対し許可を行わないということとされております。この結果、施行規則改正後許可を受けた小売販売業者につきましては、自動販売機を店舗に併設する専管理の適正が図られる、この点について確保されるというふうになっていると承知いたしております。
  120. 河上覃雄

    河上分科員 店舗に併設すると承知いたしておるとの答弁であります。  それでは、六十三年におきますたばこの自動販売機の設置台数が四十三万一千五百台、元年には四十四万台、およそであります、二年には四十七万、三年には、これは推定でございますけれども四十八万から九万、どんどんふえているわけですね。  この法律、今申し上げましたたばこ事業法施行規則、元年六月、これができる前の六十三年度が先ほど申し上げましたように四十三万台でございますが、これは今施行されている「十分な管理、監督が期し難いと認められる場所」ではない、六十三年度はこの法律の適用がないわけでありますので、当然そのような事態が出ていると思うのです。店に併設されてない、こういう事態が四十三万台については理論的に可能になるわけであります。  そこで、こうした法改正以前の四十三万台の中で、店舗に併設されてない、あるいは店舗から見えないところに置かれているような実態もあるわけでありまして、これらについては一体どうなっているのでしょうか。
  121. 谷川憲三

    ○谷川政府委員 御指摘の施行規則の改正以前に設置された自動販売機、多数あるわけでございますけれども、そのうち管理の十分行き届かないものにつきましては、やはり元年の七月に、たばこ販売協同組合等を通じまして設置場所の変更等所要の改善措置を講ずるよう要請をいたしております。この要請を受けて、全国たばこ販売協同組合連合会等で傘下の小売店等にこの趣旨を徹底させていただいておりますので、現在までこの是正に向けた取り組みが行われている、こういうふうに理解いたしております。
  122. 河上覃雄

    河上分科員 それを通知してから大分時間がたっているわけです。したがって、一体どこまでどうなったのか、大蔵省としては実態把握していますか。その効果はどうあったのか、いかがでしょうか。
  123. 谷川憲三

    ○谷川政府委員 先ほども指摘ありましたように、平成三年の十二月末現在でたばこの自動販売機は約四十八万九千台ございます。管理の行き届いていない販売機の台数がどれくらいまだ残っているかということにつきましては、特に私どもとしては正確な台数を把握いたしているわけではございません。先ほど申し上げたように、業界を通じて各小売店に対して管理が十分行き届くような改善措置を講じてほしいということを伝えておりますので、それに沿って各小売店で改善の措置をとられているということで、正確な数字をつかんでいるわけではございませんけれども、御指摘のように相当時間がたっているわけでございますから、現在において管理の十分行き届かない自動販売機、これは極めて少ないというふうに認識をいたしております。
  124. 河上覃雄

    河上分科員 こういう事実が私の周辺でもたくさんあるのです。そういう事実を見ながら申し上げているのでありまして、やはりきちっとしないとこれは怠慢じゃないのですか。出しっ放し、投けっ放しですよ、やったのですから。自主基準まで設けたのでしょう。それはどうなっているのですか、どういう措置になっているのでしょうか。時間がたっているわけですから、やはりきちっとやるのは当たり前だと私は思うのです。おやりにならないのだったら一々こういう告示や自主基準なんかつくらない方がいいじゃありませんか。私はこの点強く指摘をしておきたいと思うのですね。  それでもう一点。たばこ小売販売の許可を既に得ている者が新たに自動販売機を設置しようとする場合、大蔵省に対して自動販売機設置の許可申請が必要なんですか、どうなんでしょうか。
  125. 谷川憲三

    ○谷川政府委員 たばこの小売販売業の許可でございますけれども、小売販売を行おうとする者が営業所ごとに受けることになっておりまして、既に許可を受けている者が同一営業所において新たに自動販売機を設置する場合には、特段の許可の申請という行為は必要はないということでございます。
  126. 河上覃雄

    河上分科員 大臣、これはいかがでしょう。既に小売店として許可を得ていれば、新しく設置をする場合必要ないとおっしゃっているのです。じゃ、またどっかに隠れてしまうじゃありませんか。さっき改正施行規則申し上げましたが、十分管理監督が期しがたいと認められる場所に新たに設置する場合、届け出る必要ないわけですから置いてしまえばわかりません。これはやはり不備じゃないのですか。やはりきちっとしないといけないのじゃないかと私は思うのです。隘路ですね、こういうのは。どうでしょうか。
  127. 羽田孜

    羽田国務大臣 この許可というのは、基本的には財政専売といいますか、たばこというのはそういう性格のものであるということで、たばこの店というものは不安定になるとこれは問題があるということで許可制度というのはたしかとられているというふうに私は理解しておるわけでありまして、もともとの法の規則、基本がそういうものであったろうというふうに思いますので、そういう観点からいったときに、その店が自分の範囲内において自動販売機を出すということについては私は問題ないと思います。  ただしかし、逆に、喫煙のよしあし、あるいは子供たちが買うのじゃないかという今御心配のことがあらわれてくるということに対してどう対応するのかということで、我々として法でどうこうするということがあれなのか、あるいは店に対して、そういうことに対してきちんとそういう自主規制のあれを守らせることを徹底させる、こういうことにまず努めていくべきじゃなかろうかというふうに理解をいたします。  いずれにいたしましても、先ほどからの御議論をこうやって拝聴いたしておりまして、やはり未成年者の喫煙に対する御心配というのは、実は私たちもよくわかります。それから、営業の自由ですとか、言論ですとか表現の自由という問題、これをやたらに束縛することはどうなのかということを私たち一方でお互いやはり考えている問題でありますけれども、しかし情報化社会というものがこんなふうに進んでいくというふうには私たちもこれはそんなに大きくあれしておりませんでしたし、自動販売機もこんなふうな発展をするものであるということは実はこういった議論のときには余りなかった問題であるから、やはり新しい時代の一つの問題なんだろうという視点に立ちながら、いろいろな角度から私たちも常にもう一度検証してく必要があるのかなということは率直に感じましたことを、感想として申し上げておきたいと思います。
  128. 河上覃雄

    河上分科員 どうぞ大臣、今指摘させていただきました点、具体的な改善をしっかり措置していただければと強く求めるところであります。  最後の部分になりますが、深夜稼働の件でございます。  元年の七月四日に全国たばこ販売協同組合に対しまして地域の実情に応じた深夜稼働の自粛を指導なさいましてから、二年半を経過したわけであります。その二年半、業者の取り組みはいかがなものなのか、お尋ねいたします。
  129. 谷川憲三

    ○谷川政府委員 たばこ自動販売機の深夜稼働の自粛につきましては、業界の自主的な措置として要請をいたしたわけでありますけれども、業界といたしましてこの問題に真剣に取り組んできていただいているというふうに認識しております。  ただ、この自粛要請の効果、正直に申し上げまして、現在具体的な姿として必ずしも十分あらわれていないというふうに認識をいたしておりまして、今後とも地域の実情に応じた形での深夜自粛の実現を一層働きかけていきたいというふうに考えている次第でございます。
  130. 河上覃雄

    河上分科員 これも先ほどと全く同じですね。二年半経過をいたしまして、地域の実情に応じた深夜稼働の自粛を促して販売協同組合もその方向で動いているわけですから、何ら掌握がされてない、わからない、十分ではないと思う、これも全くの野放し。出したんですから、指導徹底したんですから、やはりきちっとフォローすべきじゃないのでしょうか。  これは前段と重なりますのでこれ以上申し上げませんが、その上でどうでしょう、さらに指導強化を私はすべきじゃないのか。と同時に、酒類と同じょうに、酒と同じように、時間制限をきちっと法規制でかぶせるとかなんとかというお考えはございませんか。
  131. 谷川憲三

    ○谷川政府委員 酒類の自動販売機の深夜稼働の自粛につきましては、御指摘のように現在大半の業者が遵守するというふうになっていると承知いたしております。これは十年以上前から、国税庁によるたび重なる自粛指導、それから業界としての自主規制の努力ということでこういう結果が実現されているというふうに思われます。  たばこの自動販売機については、先ほど来の話にありますように、平成元年七月に自粛要請を行っているわけでございますが、今後ともその効果が十分に上がるように、業界と十分協議しながら一層徹底に努力をしてまいりたい、このように考えております。
  132. 河上覃雄

    河上分科員 いろいろ実態を指摘させていただきましたが、それらを合わせまして、具体的に何らかの形で措置をするとお約束できますでしょうかどうか。最後に御見解を求めまして、終わりたいと思います。
  133. 羽田孜

    羽田国務大臣 これはまさに自主規制等でやっていただくことでありまして、その実態等が今一体本当にどうなっているのか、やはり我々としてもそれをフォローしなければならないということがあるでしょう。そういう意味で、まず調査というものをできるだけやっていくということをこれから検討していかなければいけないと思っております。そして、その効果を見詰めながら次の対応というのはどんなことがあるのか、私たちも誠実にこういったものに対応していきたいというふうに思っております。
  134. 河上覃雄

    河上分科員 以上で終わります。
  135. 志賀節

    志賀主査 これにて河上覃雄君質疑は終了いたしました。  午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  136. 志賀節

    志賀主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  大蔵省所管について貧疑を続行いたします。辻一彦君。
  137. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 きょう私、中国の三江平原の農業開発、最終的には円借款にかかわる問題でありますので、それについて二、三質問をして、あと新幹線問題について時間があれば若干触れて、大蔵の所管のみならず、もっと幅広い意味から大臣の御見解も伺いたいと思っております。  私は、昨年の五月に一人で行きまして予備調査をやり、十月に調査団四名で一週間ほど中国の三江平原に参りまして、現地にも入って、また中央政府、それから黒竜江政府等の責任者とも接触をしていろいろ勉強してまいりました。  それで、中国の三江平原は、御承知のようにこれは歴史をさかのぼれば松花江それからウスリー江、黒竜江の三江、三つに挟まれた一千万ヘクタールの大平原。そのうち六百万ヘクタールは農耕可能地であり、半分の三百万ヘクタールは大体開墾されておる。これは朝鮮戦争の後に、今の国家副主席であります王震さんが当時、朝鮮の帰還軍十万人を連れてそこに入植をして開墾をやった、それが大体三百万町歩の出発点であります。その後は、いろいろ手は尽くされておりますが、洪水、干ばつ、それから、一万メーターに一メーターという落差なので、非常に平たん過ぎて水が流れない、低湿地がある。こういう点で、かなり低い生産力、あるいは荒れているという状況にあります。  そこで、中国の方からこれをひとつ開発したいということで、日本政府とJICAが調査をしまして、農林省の技術陣百八十六名を延べ三年間にわたってこれに送って、三江平原農業開発の中心的な地区に宝清県、そこで竜頭橋典型地区、竜頭橋モデル地区開発計画というのを青写真をつくった。それを中国の方に渡して帰った。ところが、八年間たっておりますが、中国の方は融資の順序がエネルギー、交通そして通信等に優先されるためにそちらの方にはなかなか回ってこないということで、今まで棚上げになっておったわけであります。最近、地元黒竜江省も非常に力を入れて、中央政府もこれを支援する、こういうことで、もう一遍これにひとつ本格的に取り組もう、こういうような機運が出てまいった。そういうのが昨年の状況であります。  実は、羽田蔵相は、十一年前になりますか、八一年に当時の衆議院農林水産委員会の重要メンバーとして現地を見ていらっしゃる。だから、相当時間はたっておりますが現地についての認識は深いわけでありますので、これらの経緯等を踏まえてどういう認識をこの三江平原農業開発に持っていらっしゃるか、まず一つお伺いいたしたいと思います。
  138. 羽田孜

    羽田国務大臣 この三江平原、今御指摘のとおり私、一九八一年、ちょうど御堂の松沢代議士なんかが盛んにお話がありました。ちょうどたしか新潟県の土地改良区の佐野さん等が大変熱心にやってこられというようなことで、その皆様方と一緒に視察をしたわけでございますけれども、まさにここはかって、日本の皆様方なんかも入植した場所でもあるというようなこともあります。  行ってみまして、広大な面積。もちろんこれは、今一部が開発モデル地区としてひとつやってみようということでありますけれども、全体になったら日本の耕地面積よりももっと大きいのじゃないかということが言われておるわけでありまして、十億を超える中国にとっては、食糧基地としてやはり大変大きな役割を果たすところであろう。特に、ここは穀物生産基地としてやろうということでありまして、そのときにも、今お話がございました宝清県の竜頭橋を中心にしてダムをつくりながら、このダムをもとにしてかんがい等をやるということでその計画が進められておるということでありまして、私どもとしては、さきにも申し上げましたように、中国全体にとってもやはり大切な場所になっていくのじゃないのかな。  それと同時に、今のお話のように我が農林水産省からもたくさんの人を送ると同時に、また先方からも受け入れまして、いろいろな技術あるいは機械の操作、そういったこと等につきましても私どもは御協力をしてきたということでありますから、せっかくのこういった協力というものを生かしていくことはやはり重要なことであろうというふうに考えております。
  139. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 そういう点では随分と的確な判断をされておるようでありますのでちょっと心強い感じがしますが、なおいろいろ課題がありますので、この中国の三江平原の農業開発を何とかして推進をさせてあげたい、こういう点で三つの問題を私は考えておりますので、それについても大臣の御所見を少し承りたいと思います。  第一は、今中国は食糧の重要性は言うまでもないわけでありますが、現在十一億の人が大体概算いる。それから今世紀の終わりには大体十三億になるだろうと言われております。十三億の人々に食糧を確保するということは世界の歴史的な、大変なことであって、そういう意味で、食糧の安定という点から三江平原の食糧基地としての重要性を今非常に大きく見直しておるという時期にあると思います。  今まで中国は、人民公社を大体解体をして個々の請負制にしたためにずっと意欲が出て、農業生産が上がってきたのであります。しかし、四億三千万トン、相当な生産をしましたものの、これからさらに超えていくにはやはり新たな食糧基地等がどうしても必要だ、こういう点が認識されておると思いますが、中国が食糧の面で安定をしていくということは、これは大きく言うとアジアの安定、日本の安定にもつながるのではないか。こういう点で、一つは、中国自体の食糧基地としての重要性、これをひとつ我が国が建設する以上は支えていくということが日本の安定にもつながるのではないかということが第一点であります。     〔主査退席、冬柴主査代理着席〕  第二点は、今環日本海構想というようなものが言われておりますが、必ずしもEC・北米経済圏に対抗してアジア・太平洋圏というわけではないのでありますが、アジア・太平洋の経済の中に新しい活性化の地域を求めていくということが大事だと思います。  そういう意味で、一つは環日本海という経済構想があります。この環日本海の経済構想は、国連等では今朝鮮、ロシア、中国にかかわる図們江、朝鮮名でいえば豆満江、ここの三角地帯の開発計画があるのですが、これも環日本海の港をにらんだ場合に非常に大事な地域だと思います。もう一つはシベリア開発が大事ではないか。これはもうかなめであると思うのですが、森林資源のシベリアという点と、中近東に匹敵するあるいはそれ以上と言われる天然ガスの開発等はECも非常に関心を持っておりますが、アメリカや日本も一緒にやろう、こういってECの独占を阻んだ例が過去ありますが、そういう点でシベリアの開発が非常に大事だ。  そのときに、シベリア開発に関して、資源がある。そうすると、技術、労働力、資本というものが必要であるが、もう一つ食糧が大事だ。今の状況ではウクライナから遠く何千キロを越えて食糧を選ばざるを得ない、そういう状況にありますが、将来シベリア開発に大量の食糧が必要となったときに、中ソ国境の三江平原において食糧が生産されてそれが供給されるとなれば、私はシベリア開発、環日本海のこれからの大きな経済発展に大変役立つのではないか、こういう感じがします。  以前は、中ソが余り仲がよくなかったときにはそんなところを開発してまた問題が起こったらどうするんだ、こういう御意見もあったのでありますが、今中ソ間は安定をして、そういう大規模な紛争が起こるというような可能性はまずまずないと思われる。そういうような安定性もあるので、今ここで食糧を生産し、供給の可能性は将来非常に大きい役割を果たすのではないかと思います。  第三点は、我が国の畜産はトウモロコシやマイロ、コウリャン等九九%以上を外国から輸入しておりますが、最大の生産地が北米、アメリカの温帯地帯だということは言うまでもない。これ以上安定した生産地帯はないのであります。しかし、余りにも特定地域、特定国に依存するということは、輸出を問わず輸入を問わずいろいろ問題がある。そういう点で、アメリカのトウモロコシや飼料は十分大事ではありますが、同時に世界の三大トウモロコシの生産地いわゆるアメリカとECと中国、その中国の、私も見てきましたが、吉林省は広大なトウモロコシの生産地でありますが、それとすぐ、この三江平原続きにトウモロコシ等が力が入れられるということになれば、家畜のえさ、トウモロコシの輸入市場の分散安定、こういう観点からも大変有効でないか。  以上三点を、私としてはそういう感じをいろいろな論議をし、あるいは現地を見、また先輩のいろいろな御意見等も伺いながら三つの点にまとめて、これはどうしてもここにひとつ我々も力を入れさせてもらって協力すべきではないか、こう思っておりますが、そこらを踏まえて大臣の御感想あるいはお考えを伺いたい。
  140. 羽田孜

    羽田国務大臣 食糧の問題につきましては、現在一時余っている現象というのがあったわけでございますけれども、やはり中長期的に見たときにはなかなか不安定であろうということが言われておりまして、そのときに人口の伸びに生産というのが本当に追いつくだろうかと言われたときに、まさに中国の場合に今先生が言われ。たことは当てはまるのであろう。そういったときにちゃんとした食糧基地として成長していくことがあろうというふうに考えております。  それから、今環日本海構想という中で御指摘があったわけでありますけれども、おっしゃるとおり今のCISという形、あるいはウクライナはちょっとあれなのか、もしれませんけれども、いずれにしましても旧ソ連邦における食糧基地というのはウクライナであるということは言われております。そのときに、シベリアにということになりますとこれは大変なあれであろう。今、乳製品なんかにつきましても、シベリアあたりでは長いこと汽車等に積みながら持ってくるということのたかに苦労されておるという現実からいきましても、今言われたような新しい開発というのがシベリアに起こるとすれば、その集まる人たちのための食糧の供給というものは、まさにここは国境沿いであるという中で一つ役割を果たすなということについても、これは私は卓見であろうと感じております。  それから最後の、我が国の畜産のえさにつきましても、これはガットの中でも、自国で生産するということだけを主張するというのはおかしい、食糧安全保障ということになれば、やはりこれを分散することも重要であろうなんということまで言われておるわけでございまして、これは食糧あるいはこういった飼料穀物等について全般的に言えることであろうと考えまして、今御指摘のございましたこの三点につきましては、私は一つ考え方であって評価すべきものであろうと思います。  ただ、あともう一つは、先生も現地に行かれてお感じになったと思いますけれども、まだやはりあそこの地域というのは生活レベルからいきますと相当低い水準にあるというのが実態でありまして、そういった皆さん方に近代的な生活といいますか、さらに高い水準のものを提供するということは非常に重要であろう。  どのくらいの大きさですか、ともかく大変に広い面積のところにずっと一列になって、何をやっているのかと思ったら、菜っばの間引きですか、これをやっているのだそうで、このままいくとこれは一通り一番最後まで終わるとなると一日で済むのかなというぐらいに長いのを腰を曲げながらみんながやっておるという実態を見たときに、これからやはり情報化社会というもので世界の農業とかいろいろな国の姿をあの人たちが見たときに、なぜ私たちはいつまでもというふうに思う日が必ず来るに決まっておるということを考えたときにも、ああいった地域というものをより生活等を向上させるためにも新しい農業を取り入れていく、そのために我々としても、向こうの要請があるんだったならばやはりできるだけ協力するということは重要なことであろうということを申し上げておきたいと思います。
  141. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 非常に共通した認識を持っていただいておるので結構だと思っております。  そこで、現地をごらんになったように、三江平原は一千万ヘクタールというと日本よりも大きいわけで、大変広いところですが、いかに我が国が協力をこれからしようといっても一遍にできるわけでも何でもないわけですが、そういうために今JICAはモデル地区を設定をしてそこからひとつ手をつけよう。そのモデル地区も相当スケールが大きくて四万八千ヘクタール、約五万ヘクタールですから相当大きいのでありますが、ここに五億トン程度の、多摩のダムの二倍半ぐらいになりますが、ダムをつくり、洪水を制御してその水をかんがいに当て、さらに低湿地の排水を図るという竜頭橋ダムを中心としたモデル地区をJICAは青写真として先ほど申し上げたように出している。これをいよいよ黒竜江省も力を入れたい。  私も、北京の中央政府で、向こうは日本の方で省に当たるのを部と言っておりますが、水利部、農業部、国家計画委員会等を訪ねて、大体副部長、次官クラスとかなり詳しい話をし、それから黒竜江省の現地の省政府等の担当の副知事さん、省長等にも会って、また現地にも行って、県まで行って、村になりますか、いろいろ話も聞いてまいりました。  いよいよ自分たちも力を入れて一定の経費も負担をし、中央も少し出して、そしてやりたいんだ。そこで、かなめはやはり円借款が可能かどうかということに最後はかかってくる。北京の国家計画委員会もこういう計画を全部後で査定をして国務院へ上げるわけですが、そこもやはり外資、日本の円借款がどうなるかということにかかる、こう言っておるのであります。  これは性格上向こうからそういうお話がなければこちらから言い出せるような問題ではないのでありますが、先方の方から順位をたんたんと上げて、そしてこれにひとつ取り組みたい、こういうふうになったときに、私は円借款の面において、まずは第三次の見直しか可能ならばそれが一番いいのでありますが、それが困難なときには第四次の円借款に何としても入れる用意があってしかるべきではないか、こう思うのであります。田紀雲副総理もこの間来でいろいろ要請もありましたので、まず第三次の見直し、余裕の可能性、それから、でなければ第四次に対する見通し等についてお伺いいたしたい。
  142. 羽田孜

    羽田国務大臣 子細につきましてもしあれでしたら局長の方から申し上げますけれども、この問題につきまして中国側の方から正式な、話としては今までもあるのですけれども、実際にないということでございます。ですから、第三次の中で別枠というよりは第三次の中で本当にできるのかどうか、このあたりはまた中国側の方から今出されているものの中で優先順位をつけてくるとか、あるいは第四次というお話もあったわけでありますけれども、この第四次につきましても先方の方からやはり優先順位をつけてここをどうしてもやりたい、それから日本のJICAと今まで協力してもらったことを生かしていきたいというお話というものが正式に外交ルートを通じてあれば、私どもとしてもいろいろな関係皆さん方と相談しながら対応することは可能であろうというふうに思っております。ただ、今まで話としてはあるのですけれども、残念ですけれども正式の話がないというのが現状であろうと思っております。
  143. 江沢雄一

    ○江沢政府委員 今大臣から申し上げたことで尽きておると存じますが、この三江平原の農業開発につきまして穀物生産基地としての重要性は私どもも十分認識をしておりますけれども、中国政府から正式の要請があった場合に私どもとしてどういうふうに対応していくかということを検討すべきであろうと思っております。
  144. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 きのう実は午後外務の分科会に出て同様にこの問題を提起をして渡辺外相の所信も聞いたのですが、同様に中国の方からそういう要請があれば各省庁が相談をしてひとつ対応するように、第四次円借款においても向こうの要請があれば考えていきたい、こういうことでありましたから、外務、大蔵、農林等はこの問題では一番の大事なところでありますので、御答弁を聞いて、私もそういう時期が来ればこれは取り組んでいただけるだろうと期待をいたしております。よろしくお願いしたいと思います。  それから、JICAがもう一つ具体的にやっているのには農業総合試験場計画というのがありまして、私も宝清県それからジャムス、ハルビンと、現地の三、四カ所のJICAのやっている試験場を見てきたのでありますが、冷害試験であるとか育種の試験であるとか畑作の試験それから土地改良、排水の試験等々やっております。かなりな成果を上げておるという評価が現地でもそれぞれあるのですが、せっかく三年をまた二年延ばしてフォローアップをやって、来年の三月で一応期間が来るわけですが、この研究成果を現地の方に、下の方というか末端におろしていくにはもう一段階普及をする施設や普及する事業というものがどうしてもやりたい、こういう期待といいますか声が現地に強いのであります。これは農林省等の現地に出向している皆さんも、せっかくここまできておるのだからJICAの皆さんもそういう普及段階をもう一段階広げたい、これを協力できたらいいと思う、現地の皆さんの声は、これは中国側の声でありますが非常に強い要望がありました。  そういう点で、将来第三次の見直しあるいは少なくとも第四次の円借款に具体化するという場合に間をつないでいくためにも、私はこのJICAの普及施設、普及事業を拡充して少し年限を、新たなプロジェクトを展開するということが大変有効じゃないかと思うのですが、これについてどうお考えになるかお伺いしたい。
  145. 江沢雄一

    ○江沢政府委員 先生御指摘のとおり、JICAがモデル地区の開発調査を実施いたしましたし、また農業総合試験場をつくりましていろいろパイロット的な技術協力をやっておるわけでございます。このJICAの方の成果それから農業総合試験場の成果、この辺をさらによくフォローいたしまして今後の対応を考えていきたいと存じます。
  146. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 この点は現地の中国側も、黒竜江省それから現地の宝清県、それから双鴨山市というのが県の上に、県と市が日本と道なんですが、黒竜江省、双鴨山市それから宝清県、それぞれ非常に熱意を持っておりましたので、このことをもう一度お伝えをして、ぜひひとつ具体的に考えていただきたい、期待をいたしたいと思います。  三江平原の問題はこれで終わりますが、最後に新幹線問題、特に北陸新幹線の問題についてちょっと触れて、これは大臣の御感想といいますかお考えも伺いたいと思うのです。  まず新幹線は、国土の均衡ある発展というところから出発をして、昭和四十八年の十一月に整備五線が決定をされた。その中で北陸新幹線は、御承知のように東京から、高崎から出まして長野、宮山、それから福井県の若狭、小浜市近郊を通って大阪に至る、こういうように決定をされております。ようやく今高崎から軽井沢、長野に方向が決まって、冬季オリンピックを控えて長野まではフル規格が実現することになったのは大変いいことだし、大変努力をされた皆様方に敬意を表したいと思っております。  問題は、実は富山県、石川県は大筋新幹線の、若干の調整等はありましたが大筋通って、それから最近運輸省は敦賀までを大体調査の対象にしてきたので、具体的に言いますと、敦賀までは富山、石川と同じようにスーパー特急が走る可能性があると思うのですが、敦賀からあとが問題として残されておるわけであります。  四十八年に北陸新幹線、日本海新幹線、北回りの新幹線、若狭回りと我々は言っておりますが、それが決められたゆえんは、一つは何といっても東海道新幹線の災害等があった場合の代替の役割を、日本の二大都市、東京と大阪を直結することがいつでもできるようにしてあるということが一つの大きな点であったと思います。  もう一つは、昭和四十八年当時福井県の若狭湾は原子力発電の重要な基地でありまして、当時電力は五百二十万キロワット生産をして関西に送っておった、関西の有力な電力を送っておったわけであります。こういう地域が、当時は原子力では日本一の電力生産地が過疎になったり高速体系から取り残されることがあってはならない、こういう観点から若狭回りという大阪直結のコースが引かれたんじゃないかというように私は感ずるわけであります。  ところが実は現在原子力発電所は、私は原子力発電の問題については一つの意見を持ち、安全問題については随分と取り組んでおりますが、それは別として、今十三の原子力発電が動いておるのですね、千二十万キロワット。それからもう二つ、近く、来年あたり稼働すればこれは十五基、一千二百万キロワット。福島や新潟を超えております。そういう意味で、私もソ連のチェルノブイリやアメリカのスリーマイル等々各地の原子力を見て回りましたが、世界最大の原子力、電力基地になっておるという状況にあります。昭和四十八年に考えられた電力基地、五百二十万キロワットの二・三倍に今なっている、関西の経済圏の電力の約半分はここで賄っておる、そういう基地になりました。それが敦賀まで来てあとはどうなるのかわからない。そういう点で、福井県の南の方、県南、ある意味では嶺南という言葉を使っておりますが、県南の住民の皆さん、自治体は非常に懸念を、心配をしておるという状況にあります。  この電力の重要性は国家的見地から見ても極めて大であるし、そういう地帯が過疎化をしないということは新幹線本来の均衡ある国土発展という観点からも大変大事でないか、こう思っておりますので、私は事あるごとにこのことを主張して、閣議決定どおり若狭回りで大阪へ至る道を一日も早く推進してほしいということを強く言っておるのでありますが、大臣も北陸新幹線の沿線でもありますし、初めから御関係があったと思いますので、それを踏まえて、これについてのひとつお考えといいますか気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
  147. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘ありました点につきましては、まさに私もこの新幹線問題、もう始まった当初のころからかかわってきたということでありますし、いずれにしましても、今一番最後の方でお話がありましたように、国土の均衡ある発展、いわゆる多極分散と言われたときに、やはり、何というのですか、アクセスというものが非常に重要なものであろうと思っております。そしてまた、単なる代替線というだけでなくて、内陸部というのがこれから世に出ていくため、こういったことのためにもこの新幹線の果たす役割というのは非常に大きなものがあるであろうということを考えたときに、ただ二大都市を結ぶというだけでないものがあろうかと思っております。  ですから、私自身も実は、ただ東京と長野の間が時間が三十分早くなる、一時間早くなるなんということに対して関心を持つよりは、むしろ、いながらにしてずっと関西から九州の方と結びつくということが、これからの時代、必要なんじゃないのかというようなことを申してきたわけでございます。その点については御指摘の点について私も理解します。  ただ問題は、私たち注意しなければいけないのは、やはり国鉄の改革というものを厳しい中で進めてきたということ、あるいは行政改革の趣旨、そういったものの中からも、やはり第二の国鉄をつくっちゃいけないということ、こういうことを念頭において、収支採算性ですとか財源、あるいは規格及び並行在来線の問題、こういったものも私たちはきちんと念頭に置きながら対応していかなければならないということだろうと思っております。  特に、若狭までの区間につきましては、以後の、問題につきましては、例の新幹線建設準備事業ということで運輸省におきまして今調査をまさに行っておる最中であるということでございまして、こういった調査結果というものを、出たその時点で我々としても適切に、個々の問題としては対処していく必要があろうということを申し上げておきたいと思います。     〔冬柴主査代理退席、主査着席〕
  148. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 これで終わりますが、一つだけつけ加えておきますと、確かに大臣が言われるように、新幹線は、人を運ぶということは当然大事なんですが、もう一つは、環日本海経済を見たときに、この福井県の南側、関西の奥座敷だったんですが、これから見ると、そういう意味では表玄関になる時代に変わりつつある。  そういう意味で、新幹線の動脈直結が非常に大事だということをもう一つつけ加えて、私は質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  149. 志賀節

    志賀主査 これにて辻一彦君の質疑は終了しました。  次に、木島日出夫君。
  150. 木島日出夫

    ○木島分科員 私からは、納税者の権利の問題について質問をしたいと思います。  ことしもまた、ことしは三月十六日ですか、所得税の確定申告の期限が近づいてきておりますが、中小零細企業にとってこの国税の申告期というのは、国の税金をみずから計算して申告して納税するという国税申告でなくて、大変悩ましい意味の過酷な税金、「酷税」の悩ましい申告期だなどと言われているわけであります。納税者にとって、申告が終了すればほっと一安心という状態にはなっておりません。それは残念ながら日本の国税庁や税務署が、申告納税制度におけみ納税者の権利をないがしろにするような事後調査や課税処分が行われているからではないかと私は常々考えているわけであります。  そこできょうは、事後調査のあり方について、特に調査期日の事前通知の問題と、立ち会いの問題に絞って質問したいと思います。  第一に、事前通知の問題であります。  御案内のように、これは任意調査であります。納税者宅への臨宅調査については、事前に納税者に連絡をして、納税者の都合を聞いて、期日について合意してから臨宅調査に入るのはもう当然のことであると思うわけでありますが、残念ながら、我が国では現実には事前通知抜きで、いわゆる抜き打ち的に税務調査官が納税者のお宅へ臨宅して、トラブルを起こしている事例が非常に多い。一昨年のこの予算委員会の当分科会においても、私はこの問題を指摘したわけであります。それで、態度を是正されたいとお願いをしたわけですが、この二年間、税務当局の態度が一向に変わっているようには思われません。  なぜ任意調査にもかかわらず、当然やるべき事前通知なしで突然に臨宅調査をやろうとするのか、その理由をまずお聞かせ願いたいと思います。
  151. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 お話しのように、税務調査に当たっては、納税者の理解と協力を得て円滑に調査が行われるということが望ましいわけでございまして、事前通知を行うことを原則といたしておるわけであります。しかしながら、税務調査を的確、円滑に行う上で支障が生ずる場合、こういうような場合には事前通知をしないケースもある、そういうことでございます。  例えば、どういう場合支障があるかということでございますけれども、あらかじめ調査に対する忌避、妨害が予想される事案あるいは特別調査事案、そういうようなケースについては通知しない場合もあるわけでございます。
  152. 木島日出夫

    ○木島分科員 あらかじめ忌避、妨害が予想される場合、こういう場合にはもう事前通知なしで直接行くんだということのようですが、どんな場合なんですか。
  153. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 これは一概になかなか申し上げられないわけでございます。個別の事案に応じて具体的に判断すべき事柄であると承知しております。
  154. 木島日出夫

    ○木島分科員 特別調査事案と言いましたが、どういう事案なんですか。
  155. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 特別調査事案と申しますのは、特に重点的に調査を行う必要があると認められる事案でございます。例えば有効な資料が私どもの手元にあるというようなケースについては、特別調査に該当するようなケースもあろうかと思います。
  156. 木島日出夫

    ○木島分科員 どうもそれだけの説明では、任意調査である税務調査について、しかも過去の、納税者が申告納税した事案について過去の申告が正しかったかどうかが結局調査の目的になるわけでありますから、今の説明では調査の期日を決めるに当たって抜き打ちでやっていいという理由にはどうもならぬと思うわけですね。とても私は納得がいかないわけであります。  結局こういうことなんですか。事前に調査の期日を納税者に伝えて臨宅調査をすると調査に来るのがわかってしまうから、納税者は過去の分、既に申告をした分についての帳簿などを改ざんするおそれがある、それをやられたのではたまらぬから、そういうことを防ぐために抜き打ちで行くんだ、こういう発想なんでしょうか。それなら意味はわかります。
  157. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、あくまでもこれは個別の事案に即して判断すべき事柄でございますので、こういう場合なら必ずそうなるというようなお答えはしにくいわけでございますけれども、今委員のおっしゃいましたようなことも判断の場合の一つの要素にはなろうかと思います。
  158. 木島日出夫

    ○木島分科員 それは本当に納税者に対して日本の国税庁は不審の目で見ていると言わざるを得ないわけです。改ざんをされるとか帳簿がつくりかえられるというようなことを避けるために抜き打ちで調査に入るんだという。そうだとすれば、その発想は要するに国犯法、町税犯則取締法の強制調査の発想なんですね。これは裁判所の令状があって初めてそういう事前通告なしの強制調査に入ることができるわけでありまして、到底今の説明では、事前通告をしないで臨宅調査に入る理由としては私は納得できません。  国税庁が既につくられている「税務運営方針」によりましても、「調査方法等の改善」として「税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うものである」、「一般の調査においては、事前通知の励行に努め」るということがちゃんと書いてあるわけでありまして、私の周りでも非常に多くの事案が、普通の事案が、今国税庁が使いました特別調査などというものではなくて、普通の事案で抜き打ち調査がなされているわけであります。ぜひともこういう事前の通知抜きの抜き打ち調査は以後やめられたいとお願いするわけであります。  実は、私は昨年の十一月に一週間アメリカに行ってまいりました。そしてアメリカにおいて、アメリカも申告納税制度であります、日本がアメリカをまねしたわけでありますが、一体納税者の権利かどんな状態になっているのかをつぶさに、アメリカの税務署の幹部ともお会いいたしまして調査してまいりました。そうしますと、アメリカでは事後調査で、事前通知なしの調査なんというのは考えられない、大体調査に行くときに納税者に事前に連絡をして、納税者と話し合って日を決めてお伺いする、当然のことだということを聞かされてまいりましたし、アメリカではそれをはっきり法律にもしたためているわけであります。  これは全国商工団体連合会の皆さんとともに、私は国会の請暇をいただいてアメリカヘ行ったわけであります。その結果を一冊の本にまとめて大変立派な冊子になっておりますので、きょう一冊持ってきております。大蔵大臣に贈呈をいたしますので、ひとつしっかり勉強していただきたいと思います。  ちょっと見てください。国税庁の次長も一緒に見てください。十八ページ右側の真ん中、「(4)税務署が」、税務署というのはIRS、アメリカの内国歳入庁というものです。インターナル・レベニュー・サービスというのですが、「税務署が納税者と面接して調査しようとする場合には、事前に日時・場所を納税者と相談して決めなければならない。」これは法律があるのですが「法第七千六百五条(a)改正」。当然なんですね。  アメリカでも調査に入るには事前通知して納税者と合意の上で日を決めるという当然のことが、なぜ日本ではやられなくてトラブっているのか。ぜひこれは大蔵大臣、アメリカですらもこういうことをやっているのですから、いいことは見習って、日本でも事前通知を、法律でもいいですから徹底してほしいと思うわけですが、いかがでしょうか。
  159. 羽田孜

    羽田国務大臣 冒頭に、確定申告の時期が来ると悩ましいあれになるというお話があったわけでありますけれども、やはり権利と義務ということで、権利をあれすると同時に義務というものがある。これはやはりみんなが理解しなければいけない。しかし、義務といえども、やはり悩ましいものではなくて当然のこととして受け入れられるような環境というものをつくっていくということ、これは非常に大事なことであろうというふうに思っております。  そして、今お話のございました点につきましては、基本的には日本の場合にも事前に通知してやっていくということが普通のあれであろうと思っておりますけれども、中に忌避といいますか、があるというようなことが、いつもそういうあれかあったなんという事例があったりいたしますと、あるいはこれに対して、調査の執行等についての妨害などが予測されるなんというような特別なときにそういったようなことがあるようでございますけれども、やはり基本的には事前に通知していくということがあれであろうと思っております。  いずれにしましても、こういった今直接の事例などお引きになっての話でございますので、私どももさらに勉強していきたいと思っております。
  160. 木島日出夫

    ○木島分科員 実は今、納税者の権利の問題が国内においても大きな関心の的になっておりまして、私ども日本共産党は、ことしの二月十四日に納税者憲章の提案をいたしまして、その中の第三条で、「調査予定が事前に通知されること」、また「調査日時について納税者の都合が尊重されること」、これはしっかりこの憲章に入れようではないか、そういう呼びかけを国民に対してしておりますし、また大蔵省、国税当局に対してもしているわけでありますから、ぜひとも私どものこの呼びかけに、今大臣答弁ありましたけれども、真摯に答えていただきたいと思います。  二つ目に、今度は立ち会いの問題についてお伺いをいたします。  どうも最近の税務署は、事後調査について納税者がみずからの権利を擁護するために自分の友人等信頼のできる者に対して立会人をお願いするといたしますと、立会人がいるとなると税務調査官はもう調査しない。早速打ち切ってしまって、反面調査をして、推計に基づいて更正処分を乱発する、そういう事案が非常に多いです。それが異議申し立てや不服審査あるいは裁判になって争われている根本にあります。  納税者が調査を受けるに当たって自分の権利を保全するために、要するに調査が不当に行われないために、自己の権利を保全するために自己の信頼する者に立ち会いをさせるということは、もう納税者の基本的な権利だと私は思うわけでありますが、どうも税務当局はこれを一貫して排除する姿勢を持っておられるようなんですが、税務署の見解はどうなんですか。
  161. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 税務調査につきましては、しばしば納税者の取引先等との取引関係等に話が及ぶわけでございまして、その場合取引先、第三者の秘密、プライバシーに触れることが多いわけでございます。税務署員には通常の公務員以上の厳格な守秘義務が課されておる、こういうことから考えましても、結果としてこれら第三者の秘密が侵されるような状態で調査を行うことは避ける必要がある、これが第一の理由でございます。  第二には、そういった場合、立ち会いをする専門の立場といたしまして税理士制度というものがあるわけでございまして、税理士以外の者が反復的に多くの納税者の方々の調査に立ち会うということになりますと、税理士法に違反するというおそれも出てくるわけでございます。  これらのことを考えまして、原則として第三者の立ち会いはお断りする、そういう立場でございます。
  162. 木島日出夫

    ○木島分科員 いつでも税務当局は税理士法違反のおそれという問題と守秘義務に触れるということを持ち出してきて立会人を排除しようとしているのですが、ちょっと突っ込んで聞きます。  税理士法違反のおそれという言葉を使いましたが、そんなあいまいなことで立会人を排除しては困るのです、権利の問題ですから。反復継続して、自分の友人である者が事後調査を受けるときにそこに立ち会うということは税理士法違反に該当するのですか。おそれじゃいかぬです。該当するんですか、どうですか。
  163. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 それはあくまでも具体的ケースに即して判断をしなければならないということでございますから、絶対にそうなるというようなことは申し上げられないわけでございますが、反復的に多くの納税者の調査において立ち会っておられるということであれば、その蓋然性はかなりあるものと考えております。
  164. 木島日出夫

    ○木島分科員 いわゆる報酬をもらわないで立ち会っても税理士法違反になるというのですか、たくさんやっていれば。
  165. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 報酬の有無は関係ないというふうに理解しております。
  166. 木島日出夫

    ○木島分科員 どのくらいの回数やればなるというのですか。
  167. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 それにつきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、あくまでもやはり個別のケースについて判断をしてまいらなければならない問題でございます。何回というような具体的な数字があるわけではございません。
  168. 木島日出夫

    ○木島分科員 非常にあいまいな理屈で、またあいまいな基準で、事実上立会人を排除する視点ではないかと思わざるを得ないわけです。  では、もう一つ守秘義務についてお尋ねいたします。  今答弁は納税者と取引先との関係が出てくる、それを明らかにすることが税務署の側、調査官に課せられた守秘義務に触れるのだとおっしゃられました。納税者と取引先の関係について、事後調査するときには当該納税者にただすことは当然ですね。それはいいわけでしょう。守秘義務でも何でもないわけでしょう。
  169. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 当然その点について納税者に御質問することはあると思います。
  170. 木島日出夫

    ○木島分科員 守秘義務を言うのはそういう場合だけですか。要するに、納税者と取引先との関係を事後調査の場では開示しなければならぬ、それが納税者以外の第三者に聞かれるとまずいのだ、そういう理由だけですか、守秘義務違反になるからいかぬのだというのは。
  171. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 あらゆるケースについて必ずしも網羅しておるかどうかわかりませんが、主としてそういう場合を考えております。
  172. 木島日出夫

    ○木島分科員 今答弁にありましたように、納税者と第三者との取引関係、当然、売ったり買ったりお金を預金したりどれだけの経費を使ったり、そういうことを示して調査するのは当たり前なことだと思うのですね。それは納税者に対しては、それを明らかにすることは守秘義務の概念である秘密では全然ないわけですね。納税者と取引をした第三者との関係をその納税者に開示するわけですから、そもそもそれを開示するなんということは国家公務員なり税務署の職員に課せられた秘密という概念とは全く違う範疇なんですね、だと思うのですよ。  ですから、たまたまそこにその納税者が信頼する友人等の立会人がいても、そんなものはそもそも秘密の概念じゃないのですから、守秘義務で税務署の職員が国家公務員法違反のような罪に問われるようなことは考えられないわけだと思うのですが、どうですか。
  173. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 先ほど第三者との取引ということについて限定してのお尋ねだったということが今わかったわけでございますけれども、その場合でございましても、税務署は公権力を持ちまして第三者である取引先についてその納税者の知らないようなもろもろの事情についても知っておる場合があるわけでございまして、それらの事々についても必要に応じて納税者に開示して質問するというケースが出てくる場合もあるわけでございますので、それがすべて秘密でないというふうには私ども解しておらないわけでございます。
  174. 木島日出夫

    ○木島分科員 納税者のまだ知らない事実を開示するんだ、しかし、それも結局は、納税者と関係のない事実でなくて納税者との取引関係に限られるわけでしょう。そこで私さっき聞いたのですよ。そうでしょう。  納税者の、自分と全然関係ない事実、例えばAという業者がいた、それと同業他社がいる。その同業他社の年間の売り上げは幾らぐらいだとか所得率は何%ぐらいだとか、そんなことをもし事後調査の場面で開示すれば、それは確かに守秘義務に違反すると私は思います、納税者と関係ないことなんだから。事後調査に有利になるために第三者のことを引き合いに出すということは、それは守秘義務に違反していかぬことだと思いますけれども、今御答弁になったのは、納税者の知らないことであっても結局納税者と第三者との取引関係関係することに絞った話でしょう。そうだとすれば、そのこと自体はもう秘密の概念から外れるのじゃないかと思うのですよ。  大体これまでに、立会人をつけてそういう場で税務署の調査官が発言したことが守秘義務違反で罪に問われたような例はないでしょう。
  175. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 私ども税務職員の守秘義務と申しますのも、その税務調査に必要な範囲内で納税者に対してそれが開示されるというような場合は守秘義務違反に該当するものではない、つまりその必要な範囲に限って守秘義務は解除されておるのだというふうに解釈をしておるわけでございます。
  176. 木島日出夫

    ○木島分科員 どうもそれは守秘義務という法律上の概念についての勝手な解釈だと思わざるを得ないわけです。  では、この問題についてアメリカはどうなっているのかということをちょっと御披露させていただきたいと思うのですが、ちょっとお渡しいたしました冊子の七十一ページを大臣、国税次長見ていただいと思うのです。  七十一ページの右側の方に、一九八八年技術的雑歳入法、テクニカル・アンド・ミセレーニアス・レベニュー・アクト・オブ・一九八八、これの七千五百二十条に「納税者との面接手続」というのがあるのですよ。「面接の記録(レコーディング)」というのがありまして、要するに税務調査官による納税者の調査ですね、面接、これの記録の問題なんです。  一つとして、「租税の決定又は徴収に関して納税者と面接する内国歳入庁職員はこ日本では税務職員です。「納税者が自己の費用及び機器」、テープレコーダーなど「で面接の記録の許可を事前に要請する場合は、認めなければならない。」日本の事後調査では、納税者がテープレコーダーなんか前に置いたら、それこそ税務署の調査官は血相を変えてそのテープレコーダーを消せと言います。ところがアメリカでは、納税者がテープレコーダーを置くことを求めた場合は認めなければいかぬとはっきり書き込んでいるのですよ。  二番目はもっとすごいです。「(2)内国歳入庁職員による記録」の(B)、これは納税者でなくて税務調査官の方が記録をした場合ですが、そういう場合でも「納税者が当該記録の筆記録又は複製を要請した場合は、その費用の弁償を条件として提供する。」要するにテープレコーダー等を税務署の方が置く、その場合に、税務署が録取したテープレコーダーを私にくれ、翻訳してくれという要求をしたときには納税者の金で渡さなければいかぬ、そこまで徹底しているのですよ。  立ち合いの問題についても、二十三ページのところをちょっとお手数ですがごらんいただきまして、これはアメリカで公認会計士をやっている日本人の先生から聞いた話であります。左下に「調査立会人」ということが書いてあります。「アメリカにおける税務代理人制度については」云々だが、「通常の税務調査の立会は友人、知人、家族、従業員等、資格の有無を問わず誰でも構わない。」これは当然のことなんですよ。  アメリカにおいて守秘義務なんという話は、全くそんなばかな話はないわけでありまして、大臣、これが少なくとも私が実際に一週間アメリカに行って調査してきた厳然たる事実であります。日本の税務調査の実態は非常におくれている。納税者の権利という面から見ると、国際的に恥ずかしいほどおくれているのじゃないかと思わざるを得ません。少なくともさっきから言っている事前通知の問題と、立会人をつける、これは税務代理行為をするわけじゃないのです。決して立会人というのはそこで口を挟むわけじゃない、納税者にかわって立ち居振る舞いするわけじゃない、立ち会ってじっと見ているだけなんですよ。当然の権利です。  アメリカでは当然至極のこの権利を我が国においてもきちっと認めて税務運営をやっていただきたい。先ほど私が申し述べましたことし二月十四日付の我が党の納税者憲章の提案にも、立会人を置くことは当然の権利だということがうたい込まれているわけでありますが、ぜひ大臣お願いしたい。
  177. 羽田孜

    羽田国務大臣 このところの点について私がちょっとあれしたのでは、これは税務署の調査員といいますかこの担当の人の了解を得なければいけないというような何かそういったものもあるのじゃないかということ。それから、税の執行のあれについて今私も具体的なお話を直接聞いたわけですけれども、ではアメリカの方でその問題についても今度ほかの方のあれは一体どうなっているのかということについては私もまだつまびらかにしておりませんので、この問題についてどうこうというコメントをすることは差し控えたいと思いますけれども、しかし、先ほど冒頭にも申し上げましたように、やはり権利と義務という義務の部分にあっても余り悩ましいものであってはならないということ、これはやはり環境整備ということは我々も努めなければいけないなという思いを改めていたしております。  それから、これは一般論でありますけれども、アメリカの人たちの税を納めるというその考え方というのは、ちょっとおれたちと感覚が違うなと思ったこともあるので、そのあたりの、そのかわり彼らは堂々と、今度は払った以上は権利を主張するぞということで非常に厳しいものがあるということがございますので、そんなこともあわせてひとつ勉強していきたいと思っております。
  178. 木島日出夫

    ○木島分科員 実は、日本は戦前やはり賦課課税方式だったのですね。それはアメリカとは全然質的に違ったわけなんですが、御案内のように、昭和二十四年ですか、シャウプ税制勧告を受けて、アメリカの税の仕組みの基本を日本は学んで申告納税方式というものを採用したのでしょう。申告納税方式というのは、納税者は自分で所得を計算する、そして自分で申告する、そして自分で納税するということですね。それを尊重するというのが税務署の基本的な責務なんです。その一番制度の大事な根本、根幹を日本はアメリカをまねて、税制の民主化が進んだわけですね。だから同じなはずなんですよ。  ところが、今大臣、どうも日本とアメリカは大分考え方が違うんじゃないかのようなお話がありましたけれども、結局それは私は税務当局の姿勢がいかぬのじゃないかと思うのです。日本は戦後アメリカを見習って申告納税制度をつくりましたけれども、そういう立場で皆さん三月十五日までに一生懸命申告を出しているわけなんですが、残念ながら日本の国税庁と個々の税務署は、その根幹を学ぼうとしなかった。あくまでも賦課課税方式のつもりで、納税者が出してきた申告書というのは単なる参考資料にすぎないんだ、そんなものは信用できないんだ、調査して真相を明らかにして税務署が決める税金が確定する税金なんだ、そういう発想に、だから発想は戦前の賦課課税方式の発想なんですよ。だから事前通告もしないで抜き打ち調査をやってみたり、立会人を排除したり、すぐに反面調査に入ったり、修正申告をぽんぽん乱発するというのは、やはり税務署の方、国税庁、大蔵省の発想がアメリカの根本精神を学んでこなかったからじゃないかと思わざるを得ないのです。  もう四十六年たつわけですから、ここら辺でしっかり申告納税制度の根本精神、納税者の権利の問題、それを尊重すべきだという税務署の責務をしっかり受けとめてことしの税務行政を運営されたいとお願い申し上げまして、時間ですから終わります。
  179. 志賀節

    志賀主査 これにて木島日出夫君の質疑は終了しました。  次に、伊藤英成君。
  180. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 まず最初にお断りしておきますけれども、今自民党と民社党の党首会談をやっておりまして、今私はそこに同席をしておりまして、ちょっとおくれてまいりまして、事務局の皆さん方に御心配をおかけしまして済みませんでした。  早速ですけれども、本日は自賠責保険の問題についてお伺いをいたします。  まず料率の問題でありますけれども、一月の三十一日に自賠責審議会が開かれ、自賠責保険の収支が報告されました。審議会の資料によりますと、平成三年度の損害率は一一一・四%であります。この検証結果だけを見ますと収支は赤字でありますけれども、昨年、当時の滞留資金約一兆四千五百億円を還元する目的で、料率の引き下げ、これを平均八%行ったわけでありますから、これは当然の結果であります。むしろ赤字が出た分ずつ滞留資金を還元していくということを考えれば、この赤字は歓迎すべきものだと言ってもいいと思うのですね。  ところで、この審議会の資料によりますと、料率改定時の平成三年度の予定損害率は一一七・一%であります。これによりますと、今回の検証値の一一一・四%は予定よりも五・七%も収支はよかったことになるわけでありますけれども、この原因はどういうことですか。
  181. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 自動車損害賠償責任保険の収支検証につきましては、最新のデータであります直近過年度までの支払い保険金の実績データを用いて各年度の収支見込みを推計しておりまして、毎年用いる実績データを更新しながら検証を行っているところでございます。  具体的に昨年の料率改定時、これは平成三年の四月でございますが、そのときには平成元年度までの支払い保険金の実績データを用いて平成三年度の収支見込みを推計しているわけでございますが、ことし行いました検証では、平成三年度検証とこれは称しておりますが、平成二年度末までの支払い保険金実績のデータを用いて収支見込みを見直しているところでございます。  この支払い保険金実績は交通事故状況の変化の影響を受けるものでございまして、最近の交通事故状況を見ますと、事故発生件数はここ数年来増加基調にございましたが、平成二年中は減少しておりまして、自賠責保険におきましても平成二年度における傷害の事故発生率の見込みが料率改定時に比べて低下していること、あるいは医療費の支払いの適正化が進みまして治療費関係が低下し、傷害保険金が減少している、また、後遺障害の認定につきまして、その調査員の研修等の諸施策を実施してきておりまして、認定の厳正化が図られてまいりまして後遺障害十四級の支払い件数が減少している、そういった要因が重なりまして、昨年度の検証よりも損害率が改善しているわけでございます。
  182. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 この自賠責による医療費の支払いの適正化について、これは大蔵省も懸命に取り組んできたわけでありますけれども、ことし一月の自賠責審議会の報告によりますと、この診療報酬基準について全国十八地区で合意に達し、そのうち八地区において実施中である、こういうことでありますけれども、今後の合意及び実施の見通し、それから非常に大都市の例えば東京とか大阪、愛知、神奈川とか、この辺はどのようになっているあか一お伺いします。
  183. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 医療費の適正化に向けて診療報酬基準を作成していく、これは長年先生からの御指摘を受けて私ども努力しているところでございますが、御指摘のように診療報酬基準案につきましては現在八つの県で既に実施されているほか、御指摘がございましたように十県で実施に向けての合意がなされているところでございます。他の都道府県につきましても、合意、実施に向けて精力的に各都道府県の医師会と損害保険会社側の協議会を開催しておりまして、最終的な詰めの段階で合意、実施にまだ至っていない地区が多いと聞いております。  御指摘の東京、大阪等の大都市につきましては、各都道府県医師会と損害保険会社側とで精力的に協議を重ねているところでございますけれども、大都市圏は他の地区に比較しますと比較的医療費水準が高いというような事情があるとともに、医師会の会員数も多いというような事情がございまして、会員一人一人の理解を得るのに時間を要している実情にあると聞いております。  今後とも、各地の実情はございますけれども、できるだけ早期に基準案の実施が図られますように医師会に協力をお願いするとともに、損害保険会社に対してもさらに一層努力するように指導していきたいと思っております。
  184. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 この医療費の適正化こそが今日までのこの自賠責の保険収支の改善に最も寄与してきたのではないかと思いますね。これはもう鏡味部長が課長でいらしたときに、かつて私も課長どこの問題について何度もいろいろ議論もしてきたわけでありまして、当時課長が本当に一生懸命に取り組んでくださって、今日またこの責任の部長としてやっていらっしゃるわけでありますから、これから本当に鋭意取り組んでいただきたい、このように思います。そういう意味で、先ほど申し上げた全国各地に医師会との合意のもとにこうした診療報酬基準を一刻も早く実施をしてくださるように重ねてお願いをしたいと思います。  それから、料率の再引き下げの問題であります。自賠責保険の滞留資金の還元方法についてでありますが、平成二年十一月の自賠責審議会において、当時一兆四千五百億円あった滞留資金を保険料率の引き下げの原資として活用すべきだ、こういう答申でありました。そして、累積黒字を七年、累積運用益を十年で還元するという前提で、昨年の四月、保険料率を平均八%引き下げたわけです。予定損害率一一七・一%として、今回の予定値との差五・七%は、予測が外れたというにしてはこれは随分大きなパーセンテージだと思います。今後何年も収支がよいという状況になりますと、滞留資金は予定どおり還元されないのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  185. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 自賠責審議会におきましては、昔確かに伊藤先生からいろいろと御指摘もいただきまして、自賠責審議会を当時では必要の都度開くことにしておりましたが、当時の御指摘もいただいて、毎年必ず一回は開いて料率あるいは事故の状況それから損害の発生の状況等を検証するということで、毎年料率検証をしているところでございます。  それで、先ほど御指摘がございましたように、昨年の料率引き下げに当たりましては、契約者のお払いされる保険料では保険金の支払いには満たないけれども、その分はそれまでたまっていた累積黒字とか累積運用益を充てていくというようなことでその不足をカバーする、それによって料率の引き下げを行う、こういう考え方で料率の引き下げが行われたわけでございます。それで、平成三年度の検証におきましては、先生御指摘のように当時見込んだところよりも先ほど御説明しましたように損害率が改善しておりまして、それが一時的なものかどうかという問題でございまして、交通事故がたまたま、本当は改善されて事故が減っていくというのが大変望ましいわけでございますが、増加傾向にあったのが平成二年減少した。しかしながら、平成三年はまた残念ながらやや増加傾向にある。そういう中で、料率につきましては平成三年の四月から引き下げを行った、その状況をもうしばらく見ていく必要があるのではないか、こういう考え方に立ったわけでございまして、仮に先生がおっしゃいますように、今後とも事故率が改善し収支の状況がよくなれば運用益を計画どおり補てんしなくても済むかもしれない。それがあるいは事故率が下がって大変望ましい状況かもしれませんが、これはまだ将来の状況を見ないことには現段階ではなかなか確定的なことは申し上げられないと思っております。
  186. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 自賠責審議会の資料によりますと、平成三年度の収支の予想がマイナス九百五十三億円と出ております。平成四年度ではマイナス千百五十一億円というふうになっております。それで、今後の見通しでは、大体毎年一千億円程度の赤字を考えておけばよいということになりますか。
  187. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 その契約年度によって数字につきましては若干の振れが生じますが、先生御指摘のように千億強、千百億とかその前後の数字が続くのではないか。ただ、将来の契約台数とかそういったものによってこの辺は振れますけれども現状のままで推移するとすればそういったところが見込めるのではないかと思っております。
  188. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今の部長のお話ですと、大体そのくらいにおさまるんじゃないかという話ですね。これは先ほどの話のように、各都道府県との医療費適正化の状況も、今実施中のが八地区あり、合意したのが土地区あり、さらにこれを全国にというふうにこれからますます鋭意取り組んでいかれるわけですね。したがって、これからその効果はもっと上がってくると思うのです。その上にさらにということでありますが、平成二年度末で当初見込んだ一兆四千五百億円の滞留資金は約一兆五千九百億円というように、千四百億円ふえておりますよね。そして、滞留資金は今後も毎年一千億円以上増加するんじゃないかと私は思うのです。そういうふうに考えますと、実際の収支の赤字額と運用益の使用を考慮しても、当初の滞留資金は全然減らないということ、つまりユーザーに還元されることなくずっと推移しているということになるんだと思うのですが、いかがですか。
  189. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 先ほど来申し上げていますように、昨年の料率引き下げに当たりましては、当時の料率計算上は収入保険料では保険金は賄えない、しかしながらそこは、それまでの累積黒字とその当時存在していた運用益を充てることによってその差額を補う、その際に累積黒字につきましては七年間で割り振っていく、不足に充てていく、それから運用益につきましては十年間で不足に充てていく、こういう考え方で料率計算ができ上がっているわけでございます。  それで、現在料率計算はそういうことでございますが、累積黒字につきましてその補てんが行われている段階でございますので、形の上では累積運用益が決算上は減らない形になっておりますし、新規の運用益が発生するということですが、累積黒字が補てんされ、その次に累積運用益が補てんされていきますと、必ずこれが減少する段階が参るわけでございまして、その料率計算の前提ではこの累積運用益が十年間で補てんされ尽くされる、こういうことになっているわけでございます。
  190. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 七年とか十年とかいうのはやはりよろしくないんじゃないですかということを私は昨年の予算委員会で強く申し上げました。さつぎのような状況でありまして、さらにこの自賠責特会の予算書、平成四年度を見ますと、ここで利子収入だけでも千四百億円計上されていますね。したがって、これはさらに損保分とかそういうものも含めますと恐らく二千億超すんじゃないかと思うのですよ。そういうようなことを考えると、今申し上げたようなユーザーへの還元を早くしないと、これは自賠責審議会の契約者等に早く還元すべきだという答申に明らかに反している、私はこういうふうに思います。  これは申し上げるまでもありませんけれども、この制度はノーロス・ノープロフィットの原則で行われなければなりません。私は、去年のこの分科会でも滞留資金は五年間で還元すべきだという話をし、そして詳しく計算した結果として、当時私は五年償還で一八・八%引き下げをしてちゃんとやっていけ。ますという数字を申し上げました。さっき私が申し上げたような最近の状況であります。ということを考えれば、私は再度一〇%料率を引き下げるべきだ、こういうふうに提案をいたします。これは、現在の状況等を考えれば、去年の分科会で当時橋本大蔵大臣はこう言ったのですね。「委員の御指摘のように、来年度においてでもこの滞留金を見直せるといった事態になることを私は願っております。」と去年言われました。私は、現在の状況というのはまさに当時の橋本大蔵大臣が願ったとおりの事態になっている、こう思うのです。そういう意味で、ことしの七月でも引き下げるべきだと思いますが、いかがですか。
  191. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 まず、累積運用益の問題でございますが、一昨年の自賠責審議会の答申におきましては、平成二年度末までの累積黒字及び累積運用益を契約者等に還元するべく料率引き下げを行う、こういうことが答申されているわけでございますが、なお、そのときの答申では、累積黒字及び累積運用益の還元が直接の原因となって中期的に料率の引き上げを招くことがないようう配慮すべき旨も指摘されておりまして、料率の引き下げに当たってはこの点も考慮されているところでございます。さらに、そのときの答申では、その後発生する運用益の使途については、将来の収支改善のための財源として留保しておくことを考慮すること等も指摘されておりまして、そういう考え方で現在の料率が設計されておるわけでございます。  それで、ことしの検証におきまして議論されましたところでございますが、最近の交通事故状況を見ますと、平成三年は残念ながら悪化の傾向にある。そういうようなことで、今後このような傾向が続けば自賠責保険の収支がまた悪化し赤字が増加するというようなことになって、仮にこの段階で引き下げを行った場合には、また将来大幅な料率引き上げを招来するおそれもある、そういう観点から見まして、安定的な料率設計、そういったことを考えますと、今すぐ引き下げを行うというようなことは適当でない、こういう議論になっているわけでございます。  運用益の問題につきましては、先ほど申し上げていますように十年間でもって還元をする、それで新たに発生する運用益については将来の収支改善等のバッファーに留保しておく、こういう考え方でございまして、仮に運用益を急激に使用いたしますと一時的に料率は引き下げられますが、運用益がなくなった段階で料率を引き上げなければならない、こういうところがございますので、どういうタイミングで運用益を還元し、どういうタイミングで運用益の留保を行うか、こういったところを総合的に勘案した結果、現在の姿になっているところを御理解いただければと思っておるわけでございます。
  192. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 羽田大蔵大臣、ここからちょっと、また御意見も後でお伺いしたいと思いますので、よく聞いておいていただきたいのですが、今申し上げたように、本来これは契約者たるユーザーのお金なのですね。それで、その運用益というのはそういう格好で今や一兆六千億円くらいという膨大な金額になっている。しかも、これからはどういうふうにそれがマイナスになっていくのだろうか、さらにプラスになっていく部分、両方合わせてもこれからさらにどんどん大きくなっていさそうだという状況であります。したがってこの問題は、早急に料率について私は再検討すべきだ。さっき保険部長はなかなかという感じをちょっと言っておられましたけれども、これは本来の趣旨に戻って検討すべきだと思いますので、ぜひまたこれから御検討をお願いします。  それから、じゃこれはどういうふうに使われているのかという意味でちょっとお伺いするわけでありますが、この累積運用益の使い方について、自賠責審議会の資料によりますと、平成三年度の予算では累積運用益からおよそ百六十億円が交通事故防止策あるいは自動車事故対策センターへの補助金として使用されることになっておりますのでは、大蔵省保険の収支を監督する立場から、これらの百六十億円の助成をするに当たってどういうふうにこの妥当性を考えているのですか。
  193. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 運用益の運用の仕方につきましては、自賠責審議会におきましても大きな方針が指摘されておりまして、その大きな方針に従って運用益が使用されている旨、自賠責審議会にも毎年御報告申し上げているわけでございます。  ちなみに、五十九年の自賠責審議会の答申におきましては、滞留資金の運用益の使途につきましては、交通事故防止対策等とともに自動車事故被害者救済対策の充実にも活用することが適当である旨指摘されておりまして、こういった大きな方向のもとで個々の使用につきまして自賠責審議会に御報告しながら、その大きな方向のもとで運営が行われているということで御了承いただいている、そういった形で私どももこの使用の状況について関与させていただいているわけであります。
  194. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 平成三年度の運用益の使い方について、年度末にほぼ近いことしの一月三十一日の審議会にかかっていますね、平成三年度のものは。これでは審議会で妥当性を事前に審議するというようなことは考えられませんよ。私は、実態は文字どおり事後報告しているにすぎないと思うのです。このときの審議会で、この使い方の問題について具体的にどういう審議をしたかの議事録をいただけますか。  さらにそれにつけ加えますと、平成四年度は、この運用益から、例えば事故対策センターへの政府出資金あるいは補助金の助成金、合計いたしますと平成三年度だけで八十九億円、平成四年度は一気にふえて百五十億円使っていますね。だれがどういふうにこの妥当性についてこの審議会で検討しましたか。
  195. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 運用益の使用状況につきましては、先ほど申し上げましたように大きな使用の方向につきまして、考え方につきまして審議会で御審議をいただき、答申をちょうだいし、それから使用の実績に基づいて御報告を申し上げているところでございます。  それで、今御指摘のあった具体的な項目の使用につきましては、それぞれまた法律等がございますので、その法律の趣旨等に基づき使用がなされているというふうに理解しているわけでございますが、自賠責審議会におきます議事録につきましては、かねてより御議論のあるところでございますが、審議会におきます自由な御議論を確保するという観点から、従来からこの点につきましては公表を差し控えさせていただいておりますので、御理解をちょうだいできればと考えておる次第でございます。
  196. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 申しわけないのですが、私のところに、非公式なのでしょう、議事録がございます。この中には一切触れられておりません。触れられてない、この中には。一度また議事録を見せてください。私、そんな審議してないのじゃないかと思うのですよ。しかも、大蔵省は、大蔵大臣も保険部長も、これはあくまでユーザーに帰属するものであります、だから、できるだけ早くこれは還元しなければいけないということです。そもそも今のユーザーが払った金をずっと遠い将来に何とか還元しようなどという話はおかしいですね。保険制度の原則からして私はそれは間違っている。これは一兆六千億もあるのでしょう。しかも、今後の状況等を見ても、あるいは利子収入等の動きから見ても、これはおかしいだろうと思うのですよ。それは四十四年の自賠責審議会の答申で、長期的に自賠責の運営と支払いの合理化につながるという理由で助成云々と書いてありますよ。これはこの趣旨にちゃんと合うようにしなければならぬと私は思うのですよ。  だから、事故対策センターのことをさっきちょっと触れましたね。これは要するに、事故対策センターの行っている貸付業務等を見ても、あるいは事故対策センターの設置、運営をする医療施設でも、その趣旨といいましょづか、そういうものをつくるというのはいいんだけれども、じゃその自賠責の運用益から手当てすることが本当に適当なんだろうかというと、これは違うんだろうという気がするのですね。  それから、今介護料も支給していますね。これはひょっとしたら二重給付の印象じゃないだろうか。一度保険として支払って、それを受け取って、さらに介護料を払いますね。これは二重給付ということはありませんか。要するに、こういうのは保険としての自賠責の限界を超えたこと、その限界を逸脱したことをやっていることじゃありませんか。
  197. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 運用益の使用の問題につきましては、先生御指摘のように昭和四十四年の自賠責審議会答申におきまして、救急医療体制の整備充実について責任保険制度の限界を超えるものでないよう留意すべき旨記載されているところでございます。他方、先ほど申し上げましたように五十九年答申におきましては、滞留資金の運用益の使途について、交通事故防止対策等とともに自動車事故被害者救済対策の充実にも活用することが適当である旨指摘されているわけでございます。  御指摘の事故対策センターへの助成につきましては、交通事故被害者救済を目的とする自動車損害賠償保障法の趣旨に沿い、自賠責再保険特別会計法に基づき同特別会計から支出されているものと承知しておりまして、これが自賠責審議会答申の趣旨に反するものではないと考えております。
  198. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 実は、この事故対策センターの問題についても、これは昭和五十六年のときに、その対策センター法の改正をしたときに附帯決議としてついていますね。このときでも、この「療護施設のモデル事業としての性格上こと書いてあるのですよ。これは性格がモデル事業なんですね、いいですか。ところがことしの予算案を見ますと、今度はこういうのを、多分五十数億というのはこのためだと思うのですが、岡山にもつくるとなっていますね。だれがそれをつくった方がいいといって決めるんだろうか。そもそもこの附帯決議の中には「社会保障的観点から、療護の施設の在るべき姿を速やかに検討すること。」となっていますね。社会保障制度の一環としてああいういわゆる植物人間とかそういう人の問題について考える話、これはひとつ重要でしょう。それを、今一般のいわゆる善良なユーザーが一生懸命納めて、そのたまっている運用益でそこにどんどん政府が金を出しますというようなやり方をしている。本当にそんなことはいいんだろうかということですよ。  だから、もう時間がありませんから最後にそういう意味で聞くのですが、先ほど申し上げたように、例えば事故対策センターでもこれは運用益からですよ、これは何度も申し上げますがそもそもユーザーに帰属するその運用益から、例えば平成三年度でもここに八十九億、平成四年度でも一気に百五十億という大きな金を、自賠責審議会ですら審議もされずにこれが使われている。しかもそれが、さっき申し上げたような審議会の答申の趣旨からしても、あるいは法改正をしたときの附帯決議の趣旨からしても問題な使われ方をしていると私は思うんですよ。そういう意味で、この運用益の使い方の問題について抜本的に見直しをしていただきたい、こういうふうに思います。  私は、特会の分の運用益の使い方についてひょっとしたら大蔵省は全く関与してないんじゃないかな、いろいろなところで聞いてみますとそういう感じすら持ちます。そうした大蔵省の関与の問題も含めて、抜本的にこの問題についてのあり方を検討していただきたい。それについての御意見を、申しわけありませんが、部長とそれから大臣にもお伺いしたいと思います。
  199. 鏡味徳房

    鏡味政府委員 運用益の利用のあり方につきましては、自賠責審議会でも種々御議論があるところでございまして、先ほど来御説明申し上げておりますように、それが答申にも反映されてきているわけでございます。個々の運用益の使用のあり方につきましては、所管をしております運輸省の方ともよく話をしながら、相談をしながら、今後ともその自賠責審議会における御議論の中で適正な使用に向けて反映させていきたい、このように考えております。
  200. 羽田孜

    羽田国務大臣 今るるお話を伺ったわけでありますけれども、いずれにしましてもこの運用益は、今部長の方からもお話がございましたように、これは今御指摘もございましたけれども、やはりユーザーの皆さん方が支払った原資として発生するものであるという、このことをきちんと私たちもわきまえながら、この利益の使い方というものはそういったものに対しての対応をしていかなければいけないであろうということを考えております。いずれにいたしましても、今後の対応につきまして運輸省とも十分連絡をとりながら適正な対応をしていきたいということを申し上げたいと思います。
  201. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 時間になりましたので終わります。ありがとうございました。
  202. 志賀節

    志賀主査 これにて伊藤英成君の質疑は終了しました。  以上をもちまして大蔵省所管についての質疑は終了いたしました。  大蔵大臣初め政府委員各位、御苦労さまでした。     ―――――――――――――
  203. 志賀節

    志賀主査 次に、外務省所管について審査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。川俣健二郎君。
  204. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 シベリア抑留者強制労働補償問題、古くて新しい問題ですが、これを、委員長初め皆さんに了解得てお配りした資料をやりますと三時間はかかるんですが、これを与えられた三十分で終わりたいと思います。  まず、厚生省ですか、総理府ですか、抑留者が何人で残留者が何人で生存者が何人、そして、旧ソ連の名簿、それから埋葬地資料等、皆さん新聞等でにぎわしているように聞いておりますが、こういった状況等お聞かせ願えませんか。
  205. 村瀬松雄

    ○村瀬説明員 お答えいたします。  初めに数の方でございますけれども、帰還者から聴取いたしました情報をまとめた資料によりますと、旧ソ連地域に抑留された者約五十七万五千人でございます。このうちモンゴル地域につきましては一万四千含まれております。現在までに帰還した者でございますが、これは約四十七万三千人でございます。さらに、このうちモンゴルは一万二千含まれております。それから、死亡と認められる者につきましては五万五千人でございます。なお、モンゴルが約二千人含まれておる、こういう数字になっております。  それから、昨年の四月でございますけれども、旧ソ連政府から提供されましたのは、埋葬地ごとに埋葬者の姓名それから生年、当時の軍の階級及び死亡年月日が記載されております約三万八千人の名簿と当時の埋葬地付近の地図など、こういう埋葬地資料でございます。そういう状況でございます。
  206. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 時間があれば遺骨収集などの状況も伺いたいのですが、新しい資料で、もうお年を召してきたわけですから、七十五歳の吉沢さんがハプチェランガ鉱山、すず山だようですけれども、皆さんがチタ地区の収集に非常に努力されたようですが、さらにそれから五百キロ奥地、約十時間、山また山を乗り越えて行ってきたようです。この写真によると、遺骨がこのように分散されておるので、余りないんですが厚生省に後でこれをやりますから、どうぞこれを見てください。これは去年の九月の九日から十六日、一週間にわたって撮ってきた写真でございます。  さて、大臣、これは私は昭和五十五年、かれこれ十五、六年になるわけですが、十回、きょうで十一回目です。私も予算委員をやっていましたので予算委員会、本委員会ですね、それから分科会、厚生省の当時社会労働委員会、衆議院の本会議の代表質問、それから分科会と十回やって、今で十一回目なんですが、どうもらちが明かない。それは、今までは分科会では隣の第一分科会で、官房長ですね、どうにもならない。そこで、大臣御承知かもしれませんが、組織を変えて、処理する能力をなくしてしまった。機構はほとんどない。四人プラス手伝い四人で、八人で戦後処理をやっている。しかも、戦後処理問題懇談会、これを解散してしまった。もう戦後処理は終結した、こういうとどめだ。ところが、外務大臣が方々へ外交案件で行ってこられて、戦後処理は到底終わっていない、慰安婦問題、強制連行等々、大変前向きに解決しなければならない問題がいよいよ横たわってきた、こう思います。  そこで、私はあえてきょうは外務省管轄の第二分科会にお願いしたのは、まあ言いたくはないけれども、今の内閣でやる気あるというか実力あるというか、副総理格の外務大臣がやはり一番これに取り組んでくれるんじゃないだろうかいな。立場立場でございます。そこで、あえて直訴嘆願のような質問になろうかと思いますけれども、今までの経過のあらましをちょっと話しておきます。④からずっと書いておりますが、「抑留者は捕虜かどうか」という問題から入っていきます。  当時の外務大臣の園田大臣が、最後の決断として捕虜であると。それまでは、満州で敗戦になったんだから、こちらへ、うちへ帰ってくればいいのに、いつの間にか北の方へ行ったんだから、あるいは行方不明者だと言えば行方不明者ですが、存知しないことだということから終戦後の国会が始まっています。しかし、これはやはり立派な捕虜である。立派な捕虜と言っては失礼だが、捕虜扱いで考えるべきだ。  さてそこで、国会の審議の経過は、それでは当然補償すべきではないか、こういうことになった。そこで、この⑥のところに「ザ・セット・パワー」という英語があるのですが、これはジュネーブ条約の一項です。フランス語でジュネーブ条約ができておるのですが、それを英語に訳すと「ザ・セット・パワー」。これを時の外務省皆さん方がどう解釈したかといいますと、抑留国、こういうように解釈してしまったときから事が面倒になってきた。というのは、抑留国が補償すべきであって、当該国いわゆるこの場合は日本が補償の責めにない、こういうことで一点張りであった。  ところが、ここに昭和六十一年九月三日、外務大臣が安倍晋太郎さんから倉成先生にかわったすぐでしたが、ちょうど我々はあのダブル選挙の十二月前に国会が閉会で、その閉会中に、ジュネーブ条約の日本語文の一部を改正します、訂正しますという官報が出た。それは「六十七条中「抑留国」を「当該国」に改める。」こういうように一片の官報が出た。  というのは、ジュネーブ条約の背景を申し上げますと、各国の捕虜は、帰ってきたら帰ってきた自国でお互いに補償しよう、フランスはドイツから帰ったらフランスで補償しよう、イタリーはフランスから帰ってきたらイタリアで補償する。もちろん補償の仕方は年金で補償しよう、一時金で補償しよう等々ありますが、いずれにしてもジュネーブ条約の精神は英語訳「ザ・セット・パワー」、自国でそれぞれ補償しよう。こういうものに、日本はジュネーブ条約に調印の判こを押した。したがって、これは当然日本国がやるべきではないか、こういう問題になってきたわけでございます。  ところが今度は、次の問題は、果たして、向こうに連れられて行ってきたと言うけれども、働いたか働かないかわからない、こういうことになってきた。じゃ労働者の労働したという証明書を持ってきた南方、いわゆる東南アジアですね、その当時南方でしたが、これはイギリス、フランスの植民地だった。そっちの方から来る人には証明書をもらってきたんだから終戦後払った。ソ連から来た人には何もないから払うあれはない。こういうことになって、それじゃと裁判に訴えたわけです。  さて、その問題の裁判の進行状況なり、そして何年ぐらい今かかっているのか。もうぼつぼつ結審ではないか、判決ではないかと、当該、四十万人以上まだいるわけですから、日本国に生存しているわけですから、その人方から見るとこれは到底人ごとではない。  それじゃ、裁判の状況などを、ちょっとここで一呼吸入れて話してもらえますか。法務省ですか。
  207. 中野哲弘

    ○中野説明員 お答え申し上げます。  いわゆるシベリア訴訟は、昭和五十六年四月十三日に東京地方裁判所に第一次訴訟が提起されまして、その後昭和六十年十月までの間に第二次ないし第四次訴訟が提起されて、第一次訴訟に併合され、原告合計六十二名が、被告、国に対して総額二億六千万余りの支払いを求めたものであります。  この訴訟は、その後三十回に及ぶ口頭弁論を経て、平成元年四月十八日、東京地方裁判所で国勝訴の判決の言い渡しかなされました。これに対し、原告ら六十二名のうち四十名が、一審判決を不服として総額一億七千三十万円の支払いを求めて、平成元年五月一日、東京高等裁判所に控訴いたしました。控訴審におきましては、十一回の口頭弁論が開かれて、平成三年十月十五日に弁論が終結し、判決言い渡し期日は追って指定となっております。  なお、平成四年二月二十七日に控訴人らから、ロシア連邦からいわゆる労働証明書の交付を受けたとして弁論再開の申し立てがなされております。  以上でございます。
  208. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 本当にあらましでしょうけれども。  ちょっと、今委員長の了解を得てこの「全抑協広報」の抜粋をお配りしたのですが、大臣にも分科員皆さん方にもお配りしてあると思いますが、これは昭和五十八年十二月十五日第三種郵便物認可の広報であり、これは抜粋のものです。  ここに書いておるように、「シベリア抑留者に朗報」「労働証明書をみんなの手に」「抑留補償の条件整う」。この文章を、ちょっと経過を書いてありますのでちょうどいいなと思って、時間がない質問ですから読みますと、     勝利への道   一月十七日悲願の労働証明書が発行された。  ビホヤ委員長は、ロシア共和国政府を代表して「長い間、人道的行為を怠ってきた我が国の怠慢を許してほしい。これを機会に日ソの友好が一層前進することを信ずる」 こういうように述べられた。これはやはり外務大臣にもいろいろと今後の参考になろうかと思います。  そこで、十行ぐらいにわたって、切りのいいところで読み上げますと、  労働証明書が難儀を重ねたのは、この労働証明書をもらうのに難儀を重ねたというのは、国内補償に直結する問題であったからである。 これは非常に問題のある文章なんですが、決して、旧ソ連、今のロシア、そっちの方の国内補償じゃなくて、こちらの方の国内補償をしなければならないということになったものだから、ジュネーブ条約のほかの外国もそうだったから、皆さんが官報で抑留国は当該国だったと訂正したように、もしこれを国内補償するということにでもなったら大変だったと。さらに、  アメリカ、イギリス軍の未払賃銀補償は帰国のとき労働証明書を持参し日本政府が支払うことで決着した。 さっき言った、東南アジアから、あるいはその他からは。  しかし、シベリア帰還者に、この国家補償は認められなかった。ソ連政府労働証明書を発行しなかったからである。スターリンは国際批判を恐れ、死亡者の人名や墓地の公表を避けた。しかし抑留者たちは、労働証明書がなくとも、米、英、帰還兵と同様の待遇をすべきと要求した。当時の日本政府も、これを認めソ連に証明書の発給を求めたがソ連はこれを拒否し、結局は抑留者たちが涙を呑む結果となってきた。 そこで、今言われた、   昭和五十六年四月、東京地裁に対する国家補償要求裁判はこうしてはじまった。第一審判決は、労働証明書に代るものとして慣習法の効力が争われたが裁判所はこれを否定し要求を却下した。 やはり労働証明書がなければいかぬ、こういうことの一点張りであった。涙をのんだ。   第二審裁判長は、国に対して労働証明があれば補償に応ずるのかと何度か法廷で正した。これは労働証明書がこの裁判の核心であることを物語る。労働証明書実現のため斎藤会長 この全抑協の会長です。  会長を中心とする全抑協は獅子奮迅の努力をつくした。ロシア政府が最終的に誤りを正したのは人間としての共感がそうさせたものと思う。弁護団はすでに弁論再開を裁判所に求めている。全国の抑留者は一人残らず労働証明書を手にし勝利の道に向けて前進しよう。 こういうように、生存の五十万の皆さん方がかたい、かたい結束で今かたずをのんでおるわけでございます。  そうなると、やはりこれは何としても金額の多寡ではないんだ。金額の多寡ではない。やはりこれは、イギリスやフランスの方からの植民地から帰ってきた人力に与えたように、労働証明書で与えたように、いろいろ時価計算の必要もあろう。しかし何らかの形で捕虜であるという定義もした。そして当該国、いわゆる抑留した国ではなくて、当該国が払わなければならないという訂正もした。そして労働証明書も出てきた。こうなれば、私はやはり宮澤内閣がどういう姿勢をとるのか知りませんが、どう考えたってこれは、単なる感情的ではなくて、理論的に言ったって当然何らかの形をとらないとえらいことになるのではないかな、こう思って、私はあえてきょう時間をもらったわけでございます。  あえてつけ加えれば、その裁判になったときの法務大臣がだれそれになった。その法務大臣なるものはこの全抑協という組織を分断した人です。その人が株の問題の、脱税の問題で首になった、すぐやめた。これは言わない、私はあえて。議事録に残したくないから言わない。  そこで何とか、外務大臣、きょうは代表の人方が来ております。さっき話したハプチェランガ鉱山、すず鉱山に行ってきて、写真を撮ってきた、同胞の遺骨の写真を撮ってきた、ほったらかされている骨をとってきた人力も来ております。これに何らかの形をとらなければならぬのではないかな、こう思っております。これはもう政府の決断以外にないと思います。どうでしょうか、そういうことです。外務大臣、ひとつ。外務大臣でいいです、外務大臣から。
  209. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 法律上の問題は条約局長から今説明をいたします。  私は政調会長の当時だったと思いますが、この抑留者問題、非常に自民党の中でも熱心な方もおりまして、川俣先生も長い間この問題で一生懸命やられて、熱心な方であることはよく存じております。そこで、党内でも随分問題になって、非常にお気の毒である、何か慰霊といいますか慰労といいますか、そういうような国民として感謝の意を表する必要があるということで、当時、記憶に違いかなければ一律十万円だったのではなかったですかね、それを差し上げるということとともに、銀杯か何かを感謝の意味で差し上げて、ひとつこれでまことに少ない金額でございますが御勘弁をください、こういうようなことで、大体政府・与党としてはそれで一応もう決着したというつもりで今日までいることは、これは事実でございます。  その他、法律上の問題につきましてはどういうふうなことになっておりますのか、川俣先生のおっしゃるのもなるほどなと思って私感心して聞いておったのですが、専門家の意見をちょっと言わせていただきたいと存じます。
  210. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 私の方から手短に御答弁申し上げたいと存じます。  川俣先生、この問題につきましては大変深く御研究になっておられますので、余り多言を要しないと思います。  三点ございます。  第一点は、先ほどちょっとお触れになりました、いわゆる日本語訳の訂正の問題でございますけれども、これは捕虜に関するジュネーブ条約六十七条の訂正でございますが、これは昭和六十一年の当時に告示をいたしまして訂正をしたわけでございます。川俣先生からも御指摘もございまして、当時この条文について再検討を行いまして、また単に条文の表現ということだけではなしに、成立経緯あるいは各国の解釈等も広く調査したわけでございます。ただ、その結果、必ずしも明確に一つの結論に達することはできなかったわけでございます。すなわち、この「ザ・セット・パワー」といっております部分が抑留国を指すのかあるいは捕虜が属する国を指すのか、その辺が一義的に確定できないという結論になりましたので、原文に即して当該国というふうに訳しまして、そしてその具体的な意味はいわばケース・バイ・ケースの解釈にゆだねるほかないというのが当時到達した結論でございます。  それから第二点は、これも川俣先生御承知の点と思いますけれども、これまでも何度か御答弁申し上げたことがあると思いますが、この捕虜の待遇に関するジュネーブ条約は第二次世界大戦後に成立したものでございます。そして日ソ間でこれが適用になりましたのが一九五四年でございますので、この条約が、第二次大戦を契機として起こっておりますいろいろな問題にそのまま適用されるということには無理があろうというのが、これまでも何度がお示ししました政府側の考え方でございます。  第三点は、いずれにいたしましてもこの条約六十七条の趣旨と申しますのは、抑留国あるいは捕虜の所属国が行った支払いを最終的に敵対行為が終わったときに関係国の間の取り決めの対象としなければならない、すなわち戦後に取り決めをつくって清算をしろという規定でございまして、いずれの国が補償責任を負うかということは、この六十七条で直接規定しているものではないという点でございます。
  211. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 あと五分だという通告ですが、局長一つは結論に達しなかった。二は、日ソ間の関係で第二次大戦に行われたことが、戦後の条約にそれを当てはめることは無理があるのではなかろうか、これは裁判で決めますからね。それから第三番目は、敵対行為が――第三番目はどういうことですか。
  212. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 第三番目に申し上げましたことは、問題になっておりますジュネーブ条約六十七条の趣旨は、抑留国あるいは所属国が行いました支払いを最終的に敵対行為が終わったときに関係国の間の取り決めの対象としなければならない、言いかえれば、戦後に清算をするための取り決めをつくってその対象にするというものでございまして、いずれの国が補償責任を有するのかということはこの条文では直接規定していないというのが、これまでの私どもの解釈でございます。
  213. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 そうすると、どっちの国が払うんだということがこの条文だけじゃわからない。しかし、これは政治的にどうするかはまた別ですね。  大臣、これで希望しておきますが、確かに政調会長おやりになっているころに、大臣の特別な計らいで十万円と銀杯、これをちょうだいした。これは労働証明も何にもないときだった。ところが、今現在労働証明がこのとおり生きてきたものだから、だからこの点については総理府にもっと機能というか権限というか、機構があればいいんですけれども、若いのが四、五人でやっている程度なんでどうにもならない。厚生省は遺骨収集その他しかない。そうすると、やはり外務省が中心になって何らかの決断をしない限りはいかぬのじゃないかいな、こう思いますので、ぜひこれを、労働証明書がおわびしながらソ連から提出された以上は、日本がそれに対する何らかの措置をしないと、これからいろいろと日ロ問題が出てきます、こういうことにひびがくると大変だからということもあって労働証明書を出したかもしれませんよ。しかしそればかりじゃなくて、人道的な問題もあるということなんですから、ああ日本というのはそんな国かいなということが、ソ連だけじゃなくて、払ってきている当該国、自分の捕虜に対して払ってきた国からも指さされないように何らかの措置を何とか検討してもらいたいと思いますけれども大臣、いかがですか。もう検討の余地ないというならいいですよ。
  214. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 これは私は、実は外務省の中でいろいろ対ソ問題を協議したときに、要するに日本はソ連に対して宣戦布告はしていないわけですから、中立条約を結んでおったものを一方的に破って攻め込んできて、罪とがのない満州とか当時の北支地方とかにおった軍人軍属、中には民間人も一部いるようですが、一方的に拉致して強制労働につかせて、それで死亡させた厳然たる事実であって、むしろソ連から損害賠償を取りたい、それぐらいの気持ちだということは僕は相手にも言いましたよ。ところが、それは残念ながら日ソ共同宣言で、国としてのそういうようなものはお互いにもうやらないということで、日本の方もそういう権限を皆放棄しちゃった。それからソ連側もそういう権限は一切放棄する。国家間ではそういうふうに相互に放棄しているから、それは要求はしないということになっているというから、それは仕方がないね、お互い国同士決まったことだから、それならばちゃんと共同宣言は確実に、我々もそれは守るのだから少なくともソ連側も共同宣言を、あれはもうチャンスを失ったとか無効扱いをするというような今まで言ってきたことは間違いてあるから、少なくともこれは確認すべきものだということを実際は今要求している最中なんです。  ただ、そうなりますと補償問題その他については外務省の手を離れたことでありまして、これは純然たる国内的にどうするかという問題になると思います。したがって、担当は総理府になるのか、また一方、裁判があるといいますから裁判に訴え出る権利を、これは別にそれを全部放棄したものじゃありませんから、国と国の間のものを放棄した、あとは裁判の結果、そこまで新しい真実が出てきて裁判所がそれに対応するか、もう結審間際だということでございますので、それを見るということにならざるを得ないのではなかろうか。  さように、残念ながら今のところはそれ以上の御回答をすることはちょっと言い過ぎだろう、その程度にとどめさせていただきたい。親友の川俣先生ではございますが、ひとつ御了解をいただきたいと存じます。
  215. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 そこまで言っていただければ、これから裁判の行方、それから政府内部の副総理がせっかく外務大臣をやっていますから、そういったものを、私もこれからの成り行きを見まずし、何とか外務大臣もお忘れなくよろしくお願いしたいと思います。  以上です。終わります。
  216. 志賀節

    志賀主査 これにて川俣健二郎君の質疑は終了しました。  次に、玉城栄一君。
  217. 玉城栄一

    玉城分科員 私の第一問は国際交流の点についてお伺いをいたします。  大臣も御存じのとおり、沖縄にJICAの国際センターというのがございます。この国際センターは非常に評価を受けておりまして、途上国、東南アジアの方々が大分来ていらっしゃる。今まで大体千八百名ぐらい研修を受けられて卒業していかれたということであります。研修を終えてお帰りになるときに、研修された方々が異口同音に、パーティーといいますか、そのときに涙を流して非常に懐かしかるといいますか、よかったというようなことで大変な好評を受けておりますと同時に、研修生の方が琉球大学だとか県立の中部病院とかそういうところでいろいろ研修を受けられるわけですが、いずれにしても非常に沖縄は温かい、人間の温かさですね、そういうことがあって、本土にはどうも行きにくいが沖縄ではそういう研修を非常に受けたいという希望が相当あると承っております。  御存じのとおり沖縄県は移民県でもありまして、ハワイはもとより北米、南米、中米、たくさん出ていまして、去年だったでしょうか、ウチナーンチュ大会というのをやりまして大変な好評であったわけです。沖縄の人はいわゆるイチャリバチョデエーといって世界の人みんな兄弟だ、黒いのも白いのも黄色いのも全部兄弟だ、そういう感覚を持っていて、国境という意識を持たないわけです。同時にまた、来る人も外国に来たという意識がない。そういうことから、やはり沖縄県民の温かみというものが肌に伝わってきて研修生の方々も非常に感じておられると思うわけであります。  そこで私がお伺いしたいのは、沖縄県の国際化についての、我が国の南における国際交流拠点としての位置づけは、沖縄の二次振計とか三次振計の大綱で、国際交流ゾーンの形成を目指すなど沖縄県の国際化の方向性を明確にしております。また、平成三年三月に策定された沖縄県高度情報化基本構想においても、国際的な情報交流の推進の項目で、国際交流の推進あるいは国際化を図るために諸既存施設との有機的な機能拡充を図ることを目的に国際交流情報センターを沖縄県で整備したい、さっき申し上げました国際センターの隣に沖縄県の国際交流情報センターつくって、あの一帯をそういう国際交流のゾーンとしたい、こういう考えで沖縄県はいるわけですが、外務省としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  218. 川上隆朗

    ○川上政府委員 御指摘の沖縄県のセンター設置構想でございますけれども、私ども具体的な内容は承知していないわけでございますが、構想自体が前から存在しているということは承知いたしております用地方において国際化の機運が一般的に高まっている今日、沖縄県の場合、その地域特性を生かした国際交流活動を推進されようということは大変時宜を得たものであるというふうに基本的に考えます。  交流ゾーンにつきましては、今御指摘のありました沖縄国際研修センターもそれに含まれているというふうに承知いたしておりますが、JICA、国際協力事業団と沖縄県及び県民との協力関係の推進といった観点から見ましても、本件の交流ゾーンの構想というものは今後に期待し得るのではないかというふうに考える次第でございます。
  219. 玉城栄一

    玉城分科員 外交の責任者でいらっしゃる大臣も多少はお感じになっていらっしゃるかもしれませんが、人間外交という人間次元の外交というのは、やはりそういうふうに温かみがないとこれは通じないわけですが、一番端的な例を申し上げますと、PKO、火の手が上がったのは東南アジアから、また軍国主義が始まったという調子の反対が上がってくるということから考えて、やはり日本はもっと人間味のある外交を、相手にわからすようなそういうものにしない限り、なかなかそういうPKO、国際貢献ということは難しいなという感じを受けたわけであります。  そこで、今申し上げております。そういう沖縄を拠点にした国際交流ゾーンをつくる、そういうことをJICAあるいは外務省協力して、地方自治体も協力し合ってやっていく必要が当然非常にあると思うのですが、大臣、どうお考えですか。
  220. 川上隆朗

    ○川上政府委員 基本的には今申しましたように、国際交流ゾーンという構想で、先生の御指摘になっておられますような、沖縄の特性を生かした東南アジア全体との交流といったようなものが既にJICAのセンターを通じて芽生えて育ってきておるというふうに我々承知いたしておりますので、その大きな交流構想が同じような方向で実を結ぶということになることを我々も期待する次第でございます。
  221. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 沖縄県はASEANに一番近い日本地域でありますから、特にASEANとの交流というようなものも考えて、亜熱帯の農業ですか、それの研修施設等も沖縄につくったような気がいたします。また、国際交流センター等も設置をして、東南アジア等のいろいろな人を受け入れたりなんかをする。  そういう点で、本当に周りの住民も研修生等に温かくおつき合いをいただくということは、単に国が費用を出して招いているというだけでなくて、フィーリングでおつき合いの中からいい感じを持って帰ってもらうということは非常に重要なことでありまして、そういう点で沖縄県の方々が温かく接してくださっておることは民間外交として私は高く評価してよろしいのではないか、さようにも考えております。
  222. 玉城栄一

    玉城分科員 それで、これは私は長年外務省の方にお願いしまして、北海道あるいは大阪もでしょうか、外務省の大使がいるけれども、何で沖縄県には、安保条約のほとんどの基地が沖縄県にあるのにもかかわらず、外務省一人も来ぬ、おかしいじゃないか、そう言い続けまして、一昨年ですか、沖縄県に参事官クラスで一人派遣されて、今活躍していらっしゃるわけです。  やはり、そういう方々を外務省とされても本当に活用されて、今申し上げる国際交流を本当に活発にしていかなくちゃならないと思うのですが、今そこまでいっていらっしゃらないですね。一生懸命やっていらっしゃることはそのとおりなので。すが、県あるいは外務省と板挟みに遭った形になりかねないという状況なのですが、そこら辺、もう少し外務省もやはりスポットを当てて、活躍のしやすい状況をつくり上げてあげるということが非常に大事だと思いますけれども、いかがでしょうか。
  223. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 ただいま先生から御指摘のありました沖縄県との各般にわたる調整、そういう観点から外務省としてももうちょっと積極的な手が打てないのかという御指摘と理解をいたしました。  私ども、沖縄の置かれているいろいろな状況を考えまして、日ごろから、この政策面で沖縄県当局がお考えになるいろいろな行政のあり方等の分野で外務省としてもいろいろ御意見を申し上げる機会があれば、これはいろいろな意味でよい結果を生むだろうということは私どもも感じております。  今出向をさせていただいている参事官、課長クラスでございますが、それなりに一生懸命やっているという御評価をいただきましたが、まさに本人は大変一生懸命やっているということで、私どもとしてはフルサポートをしていることでございます。  さらに大きな問題につきましては、どちらかといえば本省と沖縄県という形で実務的に御支援ができる体制をもう少し考えていかなきゃならぬかなというふうには思っておりますが、それは、主管局というか、問題が、米軍の諸問題等が出てくれば北米局長の方で対応させていただきますし、私どもとしては気持ちの上では前向きに対応しているつもりでございますので、御理解を賜れればと思います。
  224. 玉城栄一

    玉城分科員 ひとつ本省とされてもぜひバックアップをお願いしたいと思います。  また質問をかえますが、これはきのうも出たかとは思いますが、例のPCBの問題をちょっとお伺いしたいのです。  まず一つは、環境分科委員会での報告から承りたいと思います。
  225. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 この間のレイ報告で明らかになりました在日米軍の基地に関連する環境問題は大変広範でございます。  そこで、この間三月五日でございましたが、環境委員会を開きまして、環境分科会でございますが、いろいろな点について我々の懸念を伝え、また照会を始めたところでございます。そこできょうは、特に沖縄関連で御関心も強いと思いますので、沖縄関連のことについて数点御報告いたします。  一つは、一番話題になりましたのは嘉手納でございますが、嘉手納につきましては、我々の方からは非常に綿密な検討が要るんだということを言いまして、特に八六年に変圧器処分場で起きたというPCBの絶縁液の漏出問題につきまして、その後のアメリカ側の当時の処理状況を聞きました。  先方から聞いたままでございますが、八六年十一月二十五日に事故があったことが発見されまして、そしてその日から除去作業を始めた。そして、取り出しました汚染土を含む廃棄物につきましては、処理のためにアメリカ本国に移送した。その当時の調査で、地下水の汚染はなく、周辺地域への危険性もないというふうに判断された。それから、確認いたしましたのは、この際の汚染除去には日本人従業員は従事していないということのようであります。そしてこのPCB変圧器については、アメリカ側への日本側から提供したものもあったようでございますが、大部分を既に撤去してある。この間も別の機会に申し上げたかもしれませんが、二つ残っているのは近々撤去するということのようであります。  それからキャンプ・マクトリアスにおけるPCBの問題もありますが、これにつきましては、昨年十一月のことのようでありますが、これはアメリカ側の言ったままでありますけれども日本人がその基地に四つの変圧器を持ち込んだ、持ち込んで捨てだということが目撃されている。その後アメリカ軍がその変圧器を点検した際、PCBの漏れを発見して即座に除去を行った。そしてまた汚染土については特殊ドラム缶に詰めて処理をしたということのようであります。そして、この作業には、嘉手納の場合と異なりまして若干の日本人従業員が従事していたようでありますが、もともとしかるべく訓練を受けた従業員によって、保護服と言うのでしょうかを着用の上行われて、その健康、安全の管理には万全を尽くしているということのようであります。  キャンプ・バトラーの話もございましたが、この点についてはまだ事実関係を照会中であります。  環境分科委員会につきましては、我々の方から照会したさまざまの問題についてのアメリカの回答が整うのを待って、第二回を開きたいと思っております。
  226. 玉城栄一

    玉城分科員 問題は、環境問題について我が国政府として米側に立入調査はできるのでありますと言ったって、どういう根拠でできるか、できないのであればどういうことでできないのか、それを明らかにしていただきたいと思います。
  227. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 根拠云々の前に、この間来大臣も申し上げておりますが、我々としては環境分科会の手順を踏んで、必要とあれば環境庁等の方による立入調査もいたしたいと思っております。ただ、まだいろいろな質問事項もございますし、アメリカ側からの回答を待って分科会でどこまで事態が究明できるのか、解明できるのか、それをまずやってからその上で考えたいというふうに思っております。
  228. 玉城栄一

    玉城分科員 そういうチェック体制が我が国側としてできるようなことを、環境委員会とかそれから日米合同委員会が持たれたわけですから、ぜひこの際そういうところまできちっと話を詰めて、特にこの環境問題、PCBとかいろいろなものが今後ほかにも基地内で出てくるかもしれません。それについてやはり常に掌握できるような状況にしておかないと、この前も八六年に漏れて、そして今度このレイ報告が出て初めて明らかになった、とにかくそういう時点で、あっ、そういうものがあるのかなという感じでわかるというのじゃなくて、今後米側とそういうものが常に掌握できるような状況で話し合いをしておく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  229. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 もともと環境分科委員会を設置いたしました背景も、環境問題の重要性にかんがみまして、環境庁の専門家の方を委員長にしてこの問題を議論していく場をつくったわけでありますから、この問題についてさらに一層の対策が必要であれば、それはまだその段階で考えたいと思います。  確かに今度レイ報告が出た結果物事がわかったということもございますが、私の判断では、アメリカ側もそれなりの対応をいたしているようでございます。ただ、それだけでは我々に不安感が残るのも事実でございますので、今後どういう形で対応していくのが一番よろしいのか、今回のケースを一つの参考にいたしまして、この問題が終わった後で今後どうするのかということもまた考えてみたいと思っております。
  230. 玉城栄一

    玉城分科員 このレイ報告の中にも、向こうから指摘もされているわけですから、やはりこの環境問題、健康に非常に関係する問題であるだけに、我が国としてもちゃんと掌握できるように、必要があれば立ち入りをするというような体制まで今度はぜひきちっと話を詰めておいていただきたいとお願いします。  また質問を変えますが、次は尖閣列島。もうこれは、あの島々というのは沖縄県の行政区域の中に入っておりますので、沖縄県としても、県議会でもそうですが、非常にこの問題、関心を持って見守っております。  その中の一つに、安全操業で漁業関係者の方々から強い要望があるわけですが、これは水産庁の方、いらっしゃいますか。安全操業についてお願いします。
  231. 城知晴

    ○城説明員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘の尖閣諸島周辺水域でございますが、この地域におきましては、沖縄県の漁船も含めまして底びき網、まき網、はえ縄等の漁船が操業いたしております。現在私ども聞いております範囲では、二月二十五日以降におきましてもこの水域におきまして特段の新たな状況が生じておる、事態が発生しておるというふうには聞いておりません。  ただ、今後御指摘のような日本漁船の安全操業の確保を図ります上におきましては、やはり漁船間並びにここに派遣いたしております取り締まり船等との密接な連絡体制を確立することが重要だ、このように考えておりまして、先般水産庁といたしましては、この地域の操業に当たりましては集団操業を実施していただきたい、二つ目には、それぞれ漁船間の連絡を密接にしていただきまして、また、当方が派遣いたしております取り締まり船等との連絡体制を確立していただきたい、このような指導を行ったところでございます。さらに、この水域に対しましては、水産庁といたしましても取り締まり船を派遣いたしまして、海上保安庁と十分連絡をとりながらこの地域の安全操業の確保に努力いたしたい、このように考えております。
  232. 玉城栄一

    玉城分科員 今のお話で、水産庁としても取り締まり船をあの水域に派遣をして取り締まりをするということは、今までやってなかったが今回やる。やるとするならば、水産庁が取り締まり船を持っていらっしゃるわけですね、どういう形の船をいつからいつごろまで派遣するのか、その辺をお伺いいたします。
  233. 城知晴

    ○城説明員 水産庁といたしましては、取り締まり船といたしまして三月十六日から宮城丸、約五百トン程度の船でございますが、これをまず十五日程度派遣いたしまして、その後続けて船を入れかえまして、当面とりあえず七月の中旬ぐらいまで派遣いたす、このような予定でございます。
  234. 玉城栄一

    玉城分科員 七月の中旬以降はどうなりますか。
  235. 城知晴

    ○城説明員 今申し上げましたように、今回船全体の運航の中におきましてとりあえず七月中旬までの予定を決めたということでございまして、七月に入ります前に七月中旬以降の船の派遣問題につきまして水産庁内で検討の上決定させていただきたい、このように考えております。
  236. 玉城栄一

    玉城分科員 そういうことで、もう一つ非常に強い要望がありますのは、尖閣列島に漁船の避難港をぜひつくってもらいたい。天候が非常に荒れる海域でありますから、そういう避難港をつくっていただいて、もちろんこれは日本漁船だけでなくて、あるいは台湾の漁船であろうが中国の漁船であろうが、そういう場合にはどんどん受け入れるというようなことも考えていいのではないか、とりあえず避難港をつくってもらいたいという要望が強いのですが、いかがでしょうか。
  237. 坂井淳

    ○坂井説明員 先生の御指摘のとおり、尖閣列島における避難港の整備につきまして沖縄県の漁業関係者の意向が県の方に伝えられているということは存じ上げております。私どもの方には参っておりませんけれども、そういうことになっております。  尖閣諸島につきましては、従来ちょっと調査が行われておりますが、現地の海底地形とか海象条件、そういうような資料が皆無に近い状態でございまして、現在避難港の実現の可能性につきまして、即断して申し上げることはできませんので、今後慎重に検討してまいりたいというふうに思います。
  238. 玉城栄一

    玉城分科員 来てないということでありますが、私のところに来ていますので、ちょっと読み上げますが、   尖閣海域は、沖縄県有数の漁場として本県の  みならず、九州各県、遠くは中国、台湾等の漁船  が操業をしているところであります。   古来、同海域は近海漁場として極めて生産性  が高く、漁民の漁業生産の拠点として利用され  ております。   ところが、同地域は、天候が急変しやすく、こ  れまで天候急変による船舶の遭難事故が多発  し、安全操業に支障をきたしている状況であり、  船舶の避難施設や船員の避難施設の設置が強く  望まれております。   つきましては、尖閣諸島海域における安全か  つ安定した操業と近隣諸国の漁民の安全が確保  できますよう避難港の建設及び船員の避難施設  を建設し、同海域の有効活用を積極的に推進す  るための漁業基地を建設して、近海漁業の振興  と漁民生活の安定確保をはかるとともに、国際  的漁業基地として、また、近隣諸国の交流の場  として活用させていただきたい、こういう趣旨なんですが、こういうことが来ていますので、水産庁とされてもそういう関係者に照会されて、ぜひひとつこれの対処策をお願いしたいと思います。  外務省にちょっとお伺いしますけれども、尖閣列島の中の赤尾嶼、黄尾嶼ですか、米軍基地提供施設区域がありますね、その状況をちょっと御説明いただきたいと思います。
  239. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 御指摘のとおり、黄尾嶼と赤尾嶼に二カ所、地位協定に従いまして射爆場が提供されております。活用の状況ということでございますが、近年は米側はこれを使用しておりません。ただ、その理由は我々の承知しているところでは、アメリカ側も日中関係等に配慮して少しそれを控えていたということのようでありまして、状況が許せば使いたいという希望は寄せられていると聞いております。
  240. 玉城栄一

    玉城分科員 今は使っていないというのであれば、返還をしてもらった方がいいと思います。ここはもちろん土地料とかそういうものはどうなっています、地料。いわゆる米軍に提供しているわけですから、それは防衛施設庁の管轄になるんでしょうけれども、その辺はどれぐらいの地域ですか。それもあわせてお答えお願いします。
  241. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 申しわけありませんが、詳細については存じておりません。施設庁の方に聞いていただいた方がよろしいかと思います。
  242. 玉城栄一

    玉城分科員 今も沖縄全体で問題になっております米軍の遊休施設及び区域というものは、あるいは返還させてもらってそれを有効利用させてもらいたいというのは一般の世論なんです。だから、こういう射爆場跡地ですから、私も現場は見ておりませんからわかりませんけれども、今申し上げたように、漁船の避難港であるとかそういうものに使えるのであれば、これは返還してもらって使うことによって近隣の漁業関係者の安全というものに役立つわけですから、そういうことも考えていただきたいと思います。いかがでしょうか。
  243. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 黄尾嶼、赤尾嶼のあたりが避難港として適地であるのかどうかということは、私は判断をいたしかねますので、その点は控えさせていただきますけれども大臣からもこの間来お答えしておりますように、不用な基地については返してもらったらよろしい、特にことしは返還二十周年というときでもありますので、基地の整理縮小という問題についても、なるべくこの機会に実現すべきものはすべきであるという御指示もいただいております。  ただ、先ほど申し上げましたように、この二つの射爆場につきましては、むしろ使いたいのを遠慮して我慢していたというところのようでございますので、使ってないからないとだけ断定できるかどうか。私も、そのところはむしろどうかと聞けば、それなら使わしてほしいと言われる可能性もあるのではないかと思っております。いずれにせよ、御趣旨の点は踏まえまして検討させていただきたいと思います。
  244. 玉城栄一

    玉城分科員 終わります。
  245. 志賀節

    志賀主査 これにて玉城栄一君の質疑は終了しました。  次に、仙谷由人君。
  246. 仙谷由人

    仙谷分科員 日本社会党・護憲共同の仙谷でございます。  外務省その他の官署に対しまして、国際的な人権の問題を質問させていただきたいと存じます。  来年は、世界人権宣言から四十五年が経過するいわば、ある意味では記念の年になるわけであります。世界人権会議が開かれる、後でまた人権会議のことについてはお伺いをいたしますが、人権会議が開かれるという年でもございます。そして、冷戦が終結したという。現時点で、御承知のように、南北問題と言われておる問題が、より解決すべき、そして困難な課題として私どもの前に提起をされているのではないだろうかと考えております。  ソ連邦の崩壊を目の当たりに見まして、ユーゴスラビア等々の状況を見ましても、あるいは中近東、南西アジアという地域を見ましても、これからは民族的あないは宗教的、人種の問題に基づく紛争や人権の抑圧というふうなことが多々発生するのではないかという危惧も持っておるわけでございます。一方で経済が非常な国際化といいますか相互依存、相互協調の関係になってまいりまして、御承知のように人、物、情報が想像を絶するような勢いと量で行き交うという状況にもあるわけでございます。当然のことながらそういう状況の中で人権もボーダーレスになってくる。あるいは国際的な形あるいは国際的な中で人権が保障されなければならないという要請が我々の前に強く出されておるということをつくづく考えているわけでございます。  国連に国連人権センターという機関もございます。そして国連は人権に関する諸条約というものを相当採択をいたしまして各国にその批准を迫っているといいますか、批准を求めているというふうに考えてもいいのではないかなと思っておるわけでございます。日本が人権大国とは言われない、人権の面ではややおくれておるんではないだろうかということで、国連の人権委員会の中で外務省の担当者の方が人権規約に基づいて報告をしておるわけでございますが、その報告がどうも国内状況を報告しなければいけないということで外務省の方はむしろつらい立場にあるのではないか。ある意味で私は同情をしながら、やはり日本国内の人権状況をもっと人権が尊重されるような状態に持っていかなければならない、ここのところが我々政治家あるいは外務大臣を含めた義務ではなかろうかと思っておるわけでございます。  後で詳しくお伺いするんですが、国内的な人権尊重の確立といいますかその問題は、当然のことながら、いまだに日本に残る部落差別の問題、そして今後ますます増加するであろう在日外国人の問題、そうして在日外国人の中でも、戦後の処理を私どもが十分にできなかったためにいまだに背負わなければならない戦後責任の問題というふうなこともあるのではないかと考えておるわけであります。そしてまた、この国際的な人権保障といいますか国際人権の尊重の課題という観点からいいますと、日本がこの点に関して、とりわけ国連への協力、これは金と人ということになろうかと思いますが、国連への協力ということが必要になると思いますし、諸々の人権条約への加入といいますか締結ということがいまだに大きな課題としてあるんではないだろうか、そういうことを考えるわけでございます。  そこで、まずお伺いをしたいと考えますのは人種差別撤廃条約についてでございます。これは大臣にお答えをいただきたいわけですが、御承知のように一九六五年に国連総会で採択をされた人種差別撤廃条約であります。この問題につきましては、ちょっと調べてみますと、多分間違いないと思うんですが、一九七〇年に市川房枝さんが質問をしまして、そして当時の政府の方から愛知外務大臣だというふうに私は聞いておるのですが、「国内法改正の作業も現在進めている段階でございますが、この条約につきましてはできるだけ早く成案を得たいと考えております。」という答弁があった。それで、その後予算委員会、外務委員会等々で先輩議員が質問をされる、八七年の二月には土井たか子委員長が質問をする、八七年の三月には久保田真苗議員が参議院で質問をするというようなことがあるわけです。ことしでついに二十一年、二十二年人種差別撤廃条約が検討され続けたという状況があるわけでございます。外務大臣、この問題につきまして、いかがお考えになりますでしょうか、御所見をいただきたいと存じます。
  247. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 二十年間も未締結のまま放置されているということは、素人的に考えれば、これはどういうわけなのだろうか、世界のうちで百三十カ国も加盟をしておって、国連中心主義などと日本政府は言ってきておるわけですから、当然これは加盟されるべきものだというふうに考える、普通そうなりがちだと私は思います。だけれども、なぜそれが署名されないのかというと、聞けば聞くほどまた別なもっともな理由もあって、日本の憲法が余りにも個人の人権を尊重し過ぎる。し過ぎると言ってはこれはまた語弊があるのかな、非常に個人の人権を大切にする、法の前に平等とな言論の自由とか、そういうことを非常に厳格にとらえているからいろいろ問題が出てくるのかな。  正直なところ、私は大臣になって日もないし、ここまで勉強している暇がなかった。だから、国会でも済んだら私は法務省と一遍よく話をしてみて、実害のないような形で何かできないものかな、どちらかといえば私は締結する方が四分六でいいのじゃないかという感じなんですよ。なんだけれども、まだまだ百点までいっていないわけだから、そこでよく勉強してみようという感じにここ二、三日なってきたというのは事実であります。
  248. 仙谷由人

    仙谷分科員 難しい問題というのが今までの国会の議論の中でも取り上げられていることはいるのでありまして、表現の自由との関係で特にそういう議論がなされておるわけでございますが、私はこれは言い逃れだと思います。二十一年間も二十二年間も放置したまま表現の自由が大切だ、そんな議論は成り立たない、到底成り立たないのではないか。それならば、この人種差別撤廃条約は表現の自由を抑圧するものであるから我が国は締結できないということを明らかに、国際的に、はっきり宣言すべきだと思うのですよ。そんなことをしたら国際的に笑い物になるということを考えて一日延ばしに延ばしてきた、二十二年延ばしてきたというのが実態であろうと思っております。  といいますのは、議論になっております扇動概念ですね、人種的差別の扇動、人種もしくは民族的出身を異にする人々の集団に対する暴力行為またはこれらの行為の扇動というふうなものが抽象的で、表現の自由を侵す可能性があるとおっしゃるわけですが、日本の他の法律では、あおり、唆し、扇動というふうな、憲法上表現の自由に抵触する可能性のあるものが今相当数、現行法体系の中にもあるのですね。  それで私は、今の渡辺外務大臣の答弁じゃなくて、今までの政府答弁を拝見しますと、やはりこれは言い逃れだ。つまり、プライオリティーの問題があって、後で申し上げますけれども、例えばわいせつ文書に対する通信の問題でも、この種の話については堂々と電波法で違反、禁止という格好になっているわけですね。ところが、差別的扇動についてはその種の問題がない。表現の自由と抵触するというふうなことを口実にして条約を締結しない、国内法を整備しない。私はこの問題は外務省であるよりもむしろ法務省とか警察とか、そちらの方に原因があるのではないか。ここは外務大臣が大物で実力者のうちに国内的な体制をリーダーシップをとって整えるということ以外に、この人種差別撤廃条約を締結する、そのことによって日本が全世界に人権を尊重する国であるということを明らかにすることはできないのではないか。  だから、この問題で私は外務省だけを責めたり、追求したりするつもりは全くない。これはせんだっての外国人登録法の指紋押捺の問題でも同じですよ。外務省がリードしても足を引っ張る役所がいっぱいある。ここが、日本の縦割り構造なのか何かわかりませんけれども、大問題だ。それで渡辺外務大臣に、副総理という立場からぜひリーダーシップを持ってこの人種差別撤廃条約にもお取り組みをいただきたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。どうか決意のほどをもう一度お聞かせ願いたいと存じます。
  249. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 先ほどお答えしたとおりで、私がきょうあすにどうこうということは申し上げられませんが、国会でも終わったらひとつ真剣によく勉強をして、その次の国会等で結論が出るようにやってみたいと思います。
  250. 仙谷由人

    仙谷分科員 日本はいわゆる国際人権規約の中の自由権規約というものについては締結をしておるわけでございます。私どもがこの自由権規約について申し上げたいことは、実は自由権規約について国連の人権委員会に報告をすることになっておるのですね。その報告書がことしも出されております。この報告書の作成のいきさつといいますか、どういう国内諸官署の討議といいますか、打ち合わせでできるのか。とりわけ私がちょうだいしました報告書でいきますと、最後から三枚目、「同和問題の現状と課題」というのがございますが、この「同和問題の現状と課題」というところで書かれておることはどういう経緯でこの種の文書が作成されておるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  251. 丹波實

    ○丹波政府委員 この報告書の作成の過程に当たりまして、大変広い関係各省庁との協議を経て毎回こういう報告書をつくり、報告をしておるということでございます。
  252. 仙谷由人

    仙谷分科員 この報告書作成については、いわゆるNGOといいますか、その各分野についてのいろいろな運動を進めている、あるいはそういう課題に取り組んでいる諸団体との打ち合わせということは余りなさってないようですね。例えば、今私が申し上げた二十六条関係の「同和問題の現状と課題」というようなところは多分総務庁と協議をなさっておるのじゃないかと推測をしておるわけですが、これからは、どうでしょう、諸外国の中でも運動を進めておる、あるいは取り組んでいるボランティア団体とか諸団体、日本でいえば部落解放に取り組んでいる団体というのはあるわけでございますので、こういうところとの協議を、報告書を作成する前には協議をするというおつもりはないでしょうか。あるいはそういうふうにしていただきたいという気持ちを込めてお願いをするわけですが、いかがでございますか。
  253. 丹波實

    ○丹波政府委員 この報告書につきましては、実は先生、ことし一つ新しい点は、従来は、報告書を人権委員会に出しまして人権委員会がその審査をして初めて公表するということだったのです。ところが、国会の先生方、それからNGOの方々からできるだけ早く公表してほしいという御意見、御要望がございましたので、今回のものにつきましては、国連に出すとほとんど同時に公表したということで、私たちはそれなりの努力はしたつもりでございます。今先生の御指摘の点につきましても、大変非公式な形ではございますけれども作成の過程で学者の先生の意見をお聞きしたりいろいろなことはしておりますが、今の先生の御意見は大変貴重だと思いますので、今後できるだけ広い形で意見を吸い上げていくといいますか、そういう努力は拡大をしていきたいというふうに思っております。
  254. 仙谷由人

    仙谷分科員 私も読ませていただきまして、過去二回の報告書、あるいは報告よりもやや実態にこの部分も近くなっている、つまり、「同和問題の現状と課題」というのは実態に近くなっているという評価はいたしますが、にもかかわらず、ことしの同対審の意見具申が出たわけでありますが、その前提となっていますいわゆる同和対策事業といいますか地域改善対策事業の未実施地域というふうな問題が全然書かれてないとか、あるいは地域の実態についてもう少し具体的に指摘をするべきではなかろうか。つまり、自由権規約の二十六条は、「いかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する。」効果的な保護を保障できているのかどうなのかという観点からの、例えば地域の今の住環境、あるいは生活保護の受給率、あるいは学歴構成の問題、あるいは識字能力の問題、就業する業務についての問題、あるいは産業の問題というふうな指摘が国際的にもきちっと報告をされなければならないのではないだろうか、そんなことを指摘しておきたいというふうに考えます。  それから、これは在日韓国人、朝鮮人にも共通する部分がある問題でございますが、就職差別を禁止するという法律が日本にないのですね。先ほどは差別扇動の問題というのが出たわけでございますが、外務大臣、これもILO百十一号条約というのがございまして、雇用上の就職差別というものを禁止している、こういうILOの条約があるわけでございますので、早急にこれについても国内法との関係で締結方の検討に入っていただきたいと思います。  次に、もう一遍差別扇動の問題でございますが、おととしてございますが、パケット通信というコンピューターを使った通信の中へ、要するに私が読むのもはばかられるような非常にシビアなといいますか、とんでもない差別文書というか差別通信がなされているという状況が今の日本の中にあるわけでございます。「奴らの所には 原発のような なまやさしいもの ではなく 原爆実験場を つくれ 奴らを殺せ」というのがコンピューターで流れるというところが日本にあるのですね、まだ。そういうことをする人があるのです。これについて表現の自由があるからということで手をこまねいているというのが、実は先ほど申し上げた人種差別撤廃条約の問題でございますし、それから自由権規約、これについてちゃんとした法規制がどうして日本にできないのだろうか、ルールができないのだろうか、ルールを担保する仲裁機関ができないのだろうか、こういうことが今の日本の大問題ということになるわけでございます。  この問題は電波法で、百七条でいわゆる暴力で政府を破壊することを主張する通信、あるいはわいせつな通信、いずれも発することを禁止をしておるわけでございますが、わいせつな通信を発することよりも差別的この種の扇動、「殺せ」という、こういうものを禁止する方が私はプライオリティーが高いと思うのです。なぜこんなものを法律で規制できないのか。電波法の関係について関係の部局から答弁をいただきたいと存じます。
  255. 鬼頭達男

    ○鬼頭説明員 先生御指摘のとおり、電波法の百七条、百八条で破壊活動に係る無線通信、あるいはわいせつな無線通信を発した者について罰則規定を設けております。  一般に、通信の内容との関連で申しますと、個別法に罰則を設けることは、憲法上の要請でもあります通信の秘密との関係で極めて慎重に行われるべきものと考えております。このような電波法の百七条、百八条といった規定につきましては、電波といった非常に広域に広がる無線通信の手段、これが社会的影響が非常に大きいという特殊性にかんがみまして、その悪用を防止するため特別に電波法に処罰規定を置いておる、そういうことが妥当であろうということで置かれたというふうに理解いたしております。同種の犯罪に対しましての罰則規定が一般法でございます刑法においても規定されているところでございます。こういった意味で、御指摘の、差別等の通信に対応する罰則規定を例えば電波法に設けることにつきましては、一般法でございます刑法等におきまして現在その種の規定のないこととの均衡を考慮しますと慎重な対応が必要でございまして、極めて困難であるというふうに考えております。
  256. 仙谷由人

    仙谷分科員 こういうことになるのですね。つまり、わいせつ通信についてはわいせつ物図画頒布罪があるから通信でやることも禁止できる。そうですね。それから、暴力的行為によって破壊活動することを主張する通信、これは破壊活動防止法とか、この間私のところにレクチャーに来た人は外患罪があるという大げさなことを言っていましたけれども、そういうものが一般刑法にあるから通信そのものをも表現の自由を制約しても禁止できる、こう言っているのですね。  副総理、おわかりになったと思いますけれども、差別を禁止する基本法がないからできないんだと言っているのですよ。結局話はここへ帰ってくる、つまり各省庁がみんな、それは私の守備範囲でやるためには基本的な事柄がないからできないのだ、こう言っているわけですよ。だから、総合的な、あるいはちょっと高い立場に立った人が決断をするということでしか、この人種差別撤廃条約の問題どこの種の言動を法規制する、そしてそれを担保する制度、機関をつくらなければならないとすれば、つくるという方向に行かないわけですね。そういう問題であるということなんですよ。ひとつ副総理にすべてを預けるような、あるいは義務として申し上げるようなことも心苦しいのでありますけれども最後に副総理の答弁をいただいて終わりたいと思います。  いずれにしましても、日本が国内で外国人を含めて人権保障をどこまでできるのか、できているのかということ、国連の問題、ちょっと時間がなかったものですからお伺いする暇がなかったわけですが、国連に人的、資金的に、特に国際人権保障の観点から、どこまで我々が寄与できるのか、こういう問題が現実の課題になっているということをよくお考えをいただきまして、最後に、日本で副総理がリーダーシップを持って人種差別撤廃条約が締結できるような国内状況をつくるということを御決意を願いたいと存じます。
  257. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 十分御意見も参考にいたしまして勉強させていただきます。
  258. 仙谷由人

    仙谷分科員 終わります。
  259. 志賀節

    志賀主査 これにて仙谷由人君の質疑は終了しました。  次に、沢田広君。
  260. 沢田広

    沢田分科員 入れかわり立ちかわりでありますから、大臣大変御苦労だと思いますが、短い時間でありますが、若干質問をさせていただきます。  外交の問題というのはやはり非常に長い道のりを必要とするものでもありますから、我々が途中で入ってきてこうだと言ってもなかなか右から左にはならない、一つの、足踏みを多くしていかなければいかぬ、こういうものだと思います。それでそういう立場から見まして、日本がこれからの、外務委員会がありますのでそれぞれ基本的なことはやられているだろうと思うので、それ以外の問題でお伺いをしていこう、こういうふうなことで申し上げます。  一つは、朝鮮民主主義人民共和国に何とか連絡所をつくってもらうということを正式に申し入れる意思はないのか、あるいは、あっても向こうが言うことを聞かないのか、その点は今までの折衝の経過ではどのようになっておられるのでしょうか。
  261. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 御案内のとおり、今日まで約一年間、六回の交渉を重ねましたが、まだまだ残念ながら現状におきましては、基本的なところで双方の立場が非常に大きく隔たっております。そういう中で、もとより国会でも大変御関心がありますのは、いわゆる北朝鮮の核開発の問題がまだちょっと不透明な状況でございまして、そういう中でお話の連絡事務所の開設というのは、私どもの判断ではまだちょっと時期が早いのではなかろうか、いずれそういう段階に至るかもしれませんが、今までのところは日本側からそういう話を北朝鮮側には持ち出しておりません。
  262. 沢田広

    沢田分科員 あちらにはちゃんと日本の中に連絡的な機関があるのでありますが、日本はだれが行ってみましてもなかなか政府を代表する人たちがいてくれる場所がない、それで友好、友好と言いましても、なかなかそれは、やはりだんなさんのいないところへ一生懸命勧誘に行くようなもので、実りがないということにもなるわけなんで、これも表現は非常に慎重にしないとまた怒られそうな気もしないでもありませんが、何とか連絡所だけは当面の折衝のポイントとして、これから日本人も多く行くことになるわけですから、またいずれにしても経済政策の中での協力関係が必要になるわけですから、その意味においては連絡所らしきものでも設置するということをぜひ申し入れておいていただきたい。今度は申し入れることだけは大体言えそうですか。まだそれも言えない状況ですか。
  263. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お考えとして十分承っておきますが、どのタイミングでそのような考え方を正式に向こうに伝えるかどうかにつきましては、いましばらくそのタイミングを慎重に判断させていただきたいと思います。
  264. 沢田広

    沢田分科員 では、それは外交の問題ですから、いつどこでそれを言うかということはいろいろな関係もあるでありましょうから、その点は、では理解しておきます。  それからもう一つは、大臣に、大蔵大臣であった時期もあるわけですから、今海外援助が非常に重要なウエートを持ってきております。予算の中でもいろいろな分野で海外援助を想定しておられるようでありますが、私は提案として、アフリカであるとかいわゆる飢餓に飢えているところへ食糧であるとか薬であるとかが必要だというときに、金額を出した場合には、政治資金じゃありませんが、寄附金の控除を、一万円の足切りくらいは同じようにあってもいいと思うのですが、その分は課税対象から外してやるというようなことはやはり積極的に日本は考えて、善意な寄附というものがもしそれで実ればそれはそれなりにプラスなんでありますから、税収が減るという心配はあるかもしれませんけれども、それにしても日本の全体の外国との友好関係は進むわけですから、そういうことは考えられないのか、また、あるのかもしれませんが、あったらやはり世論に訴えて、寄附金控除の対象だからアフリカとかあるいは飢餓に対してということで提案をしていく、こういう発想は必要ではないかなという気がするのでありますが、いかがですか。
  265. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 確かに日本では損金とか必要経費に認めることについてかなり厳しい制約をつくっております。しかし、慈善事業とかそれからこういうような人道的な援助とか目的がはっきりしたようなものについては、今後もう少し私は緩めていっていいのじゃないか、そのように考えております。今度郵政省がはがきを、そのうちで一円か何かを国際協力のために差し上げたいので、一円高いはがきを買ってくれ、あれで二十何億という金が集まるわけです。そうすると個人ではがきを買った人は必要経費にならないけれども、企業で買ったようなものは現実は全部必要経費になっているわけですから、この部分は寄附金だから損金に認めないなどとは言ってないはずだ。したがって、ああいうような知恵も一つあるのでしょう。  いずれにいたしましても、なかなか政府では金を出せないが、やはり臨機応変に見てやらなければいかぬというようなことについてはもう少し弾力的に考えていくように努力をしていきたいと思っております。
  266. 沢田広

    沢田分科員 それで、ぜひこれは何とか話をまとめまして、ただし経費は一番不信感が伴いますのは、経費でみな落とされてしまうということ。経費はひとつ届で持つなら国で持って、あるいは団体で持つかどうかしていただいて、集まった基金はやはりやってあげる、そういう透明感というものをやはり強める、こういうことが必要だと思います。日赤だって今はだめなんですからね、寄附金控除の対象になっていないわけですから。何とかその道を開いて、世界の求めはこれからより一層多く、強くなるわけでありますから、対応していただけるようにしてほしい、こういうふうに思います。  それからもう一つは、ハンガリーは今度大使館か何かできるようですが、いわゆるもとの共産圏にはこれからどことどこを予定されておられるのでしょうか。大使館なり領事館なり、ハンガリーができるのですね。ハンガリーができるのでありますが、その他はできていないところはどこなんですか。それから、つくろうとしているところはどこなんですか。
  267. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 これからの在外公館新設の御下問と承りました。  一番大きな問題は、先生よく御存じでいらっしゃいますように、旧ソ連邦が崩壊をいたしました結果、旧ソ連邦だけでもロシア連邦を除きまして十一の新しい国が誕生したわけでございます。そのほかにバルト三国がそれぞれ独立をいたしたわけでございます。今、今国会に法律の改正をお願い申し上げておるわけでございますけれども、これら分離、独立をいたしました国、グルジアだけは国家承認をまだ経ておりませんのでちょっと別でございますけれども、その他の国につきましては大使館を設置するというための法律の改正をお願いしておるわけでございます。  それからさらに、総領事館ということになりますと、極東地域がこれから関係は緊密になるということで、例えば現在ナホトカに総領事館があるわけでございますけれども、今般、ウラジオが本年一月一日からいわゆる開放都市ということになりまして、外国人の出入りができるようになりました。将来は例えばナホトカの総領事館をそちらの方に、あるいはウラジオに総領事館をつくるというようなことでございますとか、あるいはそのほかの極東地域につくるというようなことも、将来の問題として必要が出てくるかなというふうに考えております。
  268. 沢田広

    沢田分科員 私は、こういうものは特別の枠でも、これは、外国問題というのは日本の道路を延ばすとか何かとはまた違いまして、それだけ機敏に立ち回りませんと、よそからおくれてしまうと、現在でもそういうので、言葉では表現しておきませんがやはり手おくれになっておる問題もなくはないわけでありますから、それは機敏に、予算措置については準用するなりして、日本の企業なり日本人がやはりそこを拠点としていろいろ、情報なり企業の進出なり日本人が働く場所なり、そういうものはやはり可能にしていくように措置することが必要だというふうに思います。  私もウラジオにこの前初めて行きまして、やはりウラジオの開放はソ連は絶対必要なことだ、やはり二時間でハバロフスクから戻ってくるなんということをやらしていたのではだれも買いにも来ないですよ、そういうふうに言ってきた記憶があるのであります。それは一歩前進したことで、いいことでありますから、なるべくそういうことはやはり機敏に対応するということがこれは必要なことです。大臣だっていつまでも大臣やっているとは思いませんから、やはり職員がその辺は機敏にそういうことに対応していく、準備をしていく。どこからどういう順序にそれを、連絡をつくっていくか。問題が起きてからつくろうというようなことではなしに、もうこれからどんどん国が大きくなっていくわけですから、そういう国々に機敏な対応、これは定員におけるのはいろいろな問題ありますけれども、しかしこれはしょうがないのですから。日本が生活していく上において必要なことですから。そういう上においては対応をきちんと、計画書をつくってそれで進めていく。また、情勢によって変われば変わるように対応してもらいたい。  それで、じゃ、これはお願いしておきます。大臣、お答え要らないですね、これは。大体――ございますか。
  269. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 御趣旨を尊重して、そういうように計画的に準備をするようにさせたいと思います。
  270. 沢田広

    沢田分科員 私、五時に終わらせまして、もとの時間に戻しますからね。大変オーバーしているようでしたから。外務委員会もあることですし、また折り入って申し上げることにいたします。  今度パスポートが出たわけですが、これはひとつ延長してもらいたい、こういうふうに思うのですがね。思い切って七年なりそれぐらいにして、日本のパスポートについては、それぐらい長くても十分管理上支障はないんじゃないのかというふうに思いますが、いかがですか。
  271. 荒義尚

    ○荒政府委員 旅券の有効期間につきましては、昭和二十六年に旅券法が成立しまして、それ以来二年のものがあったりあるいは例外的に延長可能という体制だったわけですが、先生御承知のとおり平成元年で一律五年、こうなってきたわけです。  今御指摘のように、もっと長くという声があることを我々承知しておりますけれども、私ども旅券管理の観点、もちろん国民の利便の観点がございますが、やはり五年を超えますと写真が古くなる。旅券の機能は本人であることを確認するというのが大切な機能でございまして、五年以上になってくるとパスポートにある写真と本人が合わないということも多くなってくる。それからまた、身分事項につきましてもいろいろ変更が生ずる可能性が多い。それから有効期間が延長されますと、どうしてもそれに伴って紛失旅券がふえてくる。紛失旅券がふえますと、それが不正行使につながるという点もございます。それから、これは技術的な点でございますけれども、旅券の冊子自体が、長くなりますと、どうしてもぼろぼろになるというか摩耗しまして、これがまたいろいろな問題を引き起こすということもございます。  私ども、基本的に国民の利便という観点を十分承知しておりますけれども、他方、重要な公文書たる旅券の管理という観点もございまして、今後とも研究させていただきたい。やはり五年が今のところは適当という考えでございます。
  272. 沢田広

    沢田分科員 これは長くしろというのは、管理にプラスになるから提案しているんですよ。大体、たくさん、頻繁に往復する人は、どんどん枚数がなくなっていくんですね、ページが。だからいや応なしにページの増加が必要になってきて、あなたのところへ行くわけですね。ところが、年に一回ぐらいしか行かない人が、五年行ったって五ページで終わってしまう。あるいは、その分余計なところで終わってしまう。だから、かえって七年、長くしておく方が管理はしやすくなって、頻繁に行っているのはだれだというのが目につくようになりますしね。それが同時に更改していったのでは、かえってどさくさに紛れて、わけがわからなくなる。  だから、あなたのは警察の発想なんだからね、免許証の発想と同じなんだから。そういうのでなくて、やはり長くしておくことの方がページ数をふやすたびに来るということで管理をしておいて、あと一般の何も関係ない人たちはそれで差し支えなく使っておる。だから、顔が危ないとかなんとかいったって、そんな、変装する気になれば、三日だって二カ月だって変装できるんだからね。あなただって、坊主になって眼鏡を外せばわかりはしないですよ、これ。だからそういうことを殊さら理屈にしないで、かえって長い方がそういうのは見つけやすいということの意味もひとつ解釈してください。
  273. 荒義尚

    ○荒政府委員 一言だけ申し上げます。  私、別に警察的な観点で申しておるわけではございませんで、先ほど申しましたように、国民の利便というのは大切な視点で考えております。しかしながら、一点だけ繰り返しますけれども、有効期間が長くなりますと、やはり不正使用等が起こるという管理上の問題も考えなければならない、そういう趣旨を申し上げております。
  274. 沢田広

    沢田分科員 大臣だって、ちょっと首をかしげている。今、陰で見えなかったけれどもね、あなたの説明では。だから、どっちが本当に管理しやすくなるかということは、私の言っている方が正しいと思う。  最後に、外国人労働者問題で――これは大体五時に合わせて終わるようにと鈴を鳴らしておいたから、マイクに入っちゃっていますがね。  日本の企業者に商工会議所なり経団連を通じて、日本人の使う人たちが英語をしゃべれるように教育していくことがどうしても必要になるんですね。ですからこれは、おい、こらなんて覚えさせてはかりいれば、必ずこれは向こうへ行って日本人がひったくられたり何かされることになるんですから、そういうことで、今チンといったから以上で終わりますけれども、ぜひそういうことを心がけて、これからは、今の論争みたいに本格論争でない、人間人間のつき合いなんですから、やはり心安く会話ができるような仕組みを日本の中で育てていく、そのことの方がどれだけプラスであるかわからぬ、そういうふうに思いますので、提言だけして終わります。
  275. 志賀節

    志賀主査 これにて沢田広君の質疑は終了しました。  沢田君の分科会運営に対しての御協力に心から感謝いたします。  次に、近江巳記夫君。
  276. 近江巳記夫

    ○近江分科員 大臣を始め関係者の皆様、朝から連続でございます。お疲れのことと思いますが、極めてこの外交問題は大事でございますので、よろしくお願いしたいと思います。  私は、まず初めに、核問題について若干お伺いをしたいと思いますが、米ソの冷戦から協調の時代に入ってまいりました。大幅な核削減も行われておる。非常にこれは喜ばしいことでございます。このわずかな期間の激変というもの、平和を願う地球市民一人一人は本当に喜んでおると思うわけでございます。  そういう中で、大臣も御承知かと思いますが、伝えられるところによりますと、ロシアのエリツィン大統領が先月の二十七日、昨年秋から停止しておりました核実験を十月から再開する準備に入ることを認める大統領令に署名したということが伝えられておるわけでございますが、これは政府は確認されておりますか。
  277. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 正式にまだ聞いておりません。
  278. 近江巳記夫

    ○近江分科員 正式には連絡は受けておられないわけですか。
  279. 丹波實

    ○丹波政府委員 今の核実験再開の件につきましては、報道では承知しておりますけれども、まだ確認されていないと私は承知いたしております。
  280. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それでは、担当者に、これは三十分いただいておりますので、その問ちょっと聞き合わせをして、中間で答弁してください。  我が国は、御承知のように被爆国といたしまして、世界じゅうでどの国よりも核の廃絶そしてまた実験の停止、こういうことは本当に声を高らかに叫んでいける立場だと思うのですね。そういう点で、当時のゴルバチョフ大統領が一年間の一方的な核実験の停止を宣言されたわけですね。それは世界の人、一人一人が皆そのことを非常に喜んでおったわけでございますが、恐らくその背景は複雑なものがあろうかと思うのでございます。後で事実確認していただきたいと思うのですけれども、我が国として、この核実験の再開につきましてはやめてもらいたいという申し入れをぜひすべきだと思うのです。アメリカはソ連と違って全面停止はしていないわけですけれども、いずれにしても米ソを初めとして核保有国に対しては、その実験停止ということを核の廃絶とともにあらゆる機会に我が国としては叫ばなければならないと思うのでございます。この点について大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  281. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 御趣旨に賛成であります。
  282. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それじゃ、後で大統領令に署名したかどうか御答弁いただきますが、今大臣はそのとおりであるとおっしゃっておられるわけでございます。ですから、それを事実確認されましたならば、大臣日本国民の声をぜひ届けていただきたいと思うのでございます。いかがでございましょうか。
  283. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 今これは事実確認してからお答えいたしますが、やはりソ連も世界各国に食糧を送ってくれ、人を助けてくれといって頼んで歩いている最中ですから、それは一方において核実験やりますなんと言ったら、みんなそっぽを向いちゃいますから、私は当然のことだろうと思います。
  284. 近江巳記夫

    ○近江分科員 それじゃ、その答弁を聞いてから、帰ってから、もう一遍お聞きしたいと思います。  それから、旧ソ連邦が崩壊をいたしまして新しい独立国家群が誕生しておるわけでございます。大臣御承知のように七月上旬、今お聞きしておる範囲では六日から八日、ドイツのミュンヘンでサミットが開会されるわけでございます。昨年につきましてはゴルバチョフ氏が出席したわけでございますけれども、ロシアが国連の常任理事国、そういう立場の継承をしておるわけでございます。そういう点で、特に旧ソ連問題というのは非常に大きな問題であろうかと思います。常任理事国という立場もございます。ロシアの占める地位というのは大きいと思うのですね。そういう点で、私はロシアをサミットの参加国に加えるべきだと思うのでございます。この点につきまして、大臣のお考えを聞きたいと思います。
  285. 小倉和夫

    ○小倉政府委員 先生御案内のとおり、昨年のロンドンにおきましては、七月十七日に、サミットが公式に終了しました後にサミットの首脳と当時のゴルバチョフ大統領との一種の協議と申しますか、そういう場を設けたのは事実でございます。したがいまして、今回ミュンヘンでサミットが行われます場合に、ソ連邦は解体いたしましたが、ロシアの人を呼ぶかという問題は、昨年の例から見ますと問題として確かにあり得るところでございますが、それはサミットに参加をするという形ではなくて、仮にそういうことがあるといたしましても、何かの形で協議するということになる可能性が強いと思います。しかし、その問題は、そういう形であろうともロシアを呼ぶということについては、まだ特にロシア側からもそういうアプローチはない、少なくとも日本にはございませんし、したがって、そういう問題はこれから議長国たるドイツを中心にサミット参加国の間で協議されていく、こういうふうに考えております。
  286. 近江巳記夫

    ○近江分科員 我が国としては積極的ではない、そういう御趣旨の発言があったわけでございますけれども、そうすると、参加国がぜひそうしようということであるならば我が国としては当然賛成されるわけですね。いかがですか。
  287. 小倉和夫

    ○小倉政府委員 これはサミットにどういう形で来るかということ、それから仮に招請するということになりました場合、どういう目的、どういう意義づけを与えるかということによると思いますので、今ここで明確なお答えを申し上げるのはどうかと思いますが、みんなの国が賛成ということであれば、それは日本としても十分勘案して対処することになると思います。
  288. 近江巳記夫

    ○近江分科員 大臣、同じことでひとつお願いします。
  289. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 今局長が答えたようなことになるだろうと思います。
  290. 近江巳記夫

    ○近江分科員 我が国周辺、これは旧ソ連邦を初め中国もございます。隣国として非常に関係強化をしていかなければならないわけでございます。  中国の問題についてちょっとお伺いしたいと思いますが、中国につきましては、大臣もたびたび行かれておりますし、我が国としては最大の経済協力を初め技術協力あるいは学術、文化、スポーツ、あらゆる交流も積極的にやって、本当に一衣帯水の国でございますから、友好をさらに深めていかなければならない、このように思うわけでございます。  そこで、中国の人民代表大会が二十日から始まるということを聞いておるわけでございす。そういう中で、日本が与えた民間人の戦争被害の賠償として千八百億ドル、約二十三兆四千億円を要求する法案が議員立法で提出されるのではないか、こういうようなことが言われているわけでございますが、これにつきましては中国外務省スポークスマンも、これは戦争の国家間賠償とは異なるものという立場をとっておられるようでございますが、このことにつきまして大臣にお伺いしたいと思うわけでございます。
  291. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 アジア局長からまず状況を。
  292. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 ただいまの千八百億ドル云々の件は私どもも報道で承知いたしておりますが、それ以上の情報は得ておりません。
  293. 近江巳記夫

    ○近江分科員 正式にそういうことをお聞きになっていないということでございます。しかしそういうことも伝えられておるわけでございますので、中国の江沢民総書記の来日がこの四月に決まっておるわけでございますけれども、こうした問題であるとか尖閣列島の領有権の問題等、やはり話し合うことになるんじゃないか、そのように推測するわけでございますが、こうした問題につきましては非常に微妙な問題でもございますし、政府間で率直に話し合っておかれることがやはり大事じゃないかと思うわけでございます。こじれたりしこりを残さないためにも十分話し合いをされることが必要だと思うわけでございますが、この点につきまして大臣の見解を伺いたいと思います。
  294. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 中国は信義を重んじる国でありますから、取り決めたことについてそうやたらに変更することはないというように私は考えています。しかしながら情報情報として正確に分析をしていかなければなりません。
  295. 近江巳記夫

    ○近江分科員 まださっきの返事は来ていませんか。
  296. 丹波實

    ○丹波政府委員 ただいまの旧ソ連の核実験再開問題につきましては、きょうの報道を見ましてモスクワの我が大使館に電報を打ちまして、事実であるかどうかを確認すべしという訓令を渡辺大臣の名前で発出いたしております。  ちなみに、もしお許しいただければあわせて一点だけ補足させていただきますと、米ソは現在のところ双方とも地下核実験は認められておる、条約上はそういうことになっておりまして、百五十キロトン以下の地下核実験は認められておるということになっております。しかしながら日本は核実験完全禁止に努力すべきだと、先生おっしゃったとおりでございまして、日本といたしましてはやはり最終的には核実験はなくなるべきだという立場をとっております。ジュネーブの軍縮委員会でそういう立場をとっておりますが、ただ、一挙にゼロにしていくためにはやはり探知能力というものがある程度進む必要があるわけでございますので、国際的にはいわゆるステップ・バイ・ステップ方式、そのステップ・バイ・ステップの意味は、地下核実験の探知能力が向上していくのに合わせて百五十キロトンからだんだん下げていくべきだという立場をとっております。そういう方向で努力いたしております。しかし今先生がおっしゃった旧ソ連に対して申し入れを行うべきだという点に対しては、大臣の御発言もございますし、私たちも国際社会の場で発言はいたしてきておりますけれども、ただいまの応答を念頭に置いて今後対処してまいりたいというふうに考えております。
  297. 近江巳記夫

    ○近江分科員 モスクワ大使館に訓令を出した。そうすると、そういう返事というのはどのぐらいで入るものですか。今の情報化時代で、署名したかしてないか、そんな時間がかかるのですか。その点いかがですか。
  298. 丹波實

    ○丹波政府委員 私はその点につきましての主管のあれではございませんけれども、常識的に考えて、先生おっしゃるとおり普通であればあしたぐらいには電報が返ってくるはずだと思います。その段階で先生に別途御報告申し上げたいというふうに考えます。
  299. 近江巳記夫

    ○近江分科員 お国柄もそれはあるのかもしれませんけれども、大統領が署名したか署名してないか、そんなに時間がかかるものですかね、正式に通るのに。いずれにしても、わかり次第知らせていただきたいと思いますし、またそれが事実であるならば大臣は地下核実験をぜひともやめるべきであると申し入れもしたい、同じ趣旨であるということをおっしゃったわけでございますので、ひとつどうか強くその申し入れをしていただきたい、このように思うわけでございます。それじゃその電報が入り次第よろしくお伝えいただきたい、このように思うわけでございます。  それで、先般も明石国連事務総長特別代表ですか、UNTACの責任者もお見えになりまして、特別代表で来られまして、日本への例えばカンボジア支援であるとか、非常に我が国に対するそうした期待というものは大きいわけでございます。また、ぺルーの大統領もお見えになりますし、政府はそれなりにこうした協力のいろいろな計画をお持ちであろう、このように思うわけでございます。そこで一つは国際貢献、考えてみますと、旧ソ連邦の大きな協力がございます。カンボジア復興、またブラジルの環境サミットもございまして環境問題の協力だとか。  そうしますと世界じゅう見てみますと、ドイツはやはり統一をいたしましてなかなか大変ですわ。アメリカも財政赤字で経済の悪化が伝えられておるわけでございます。そうしますと我が国に対するそういう資金面の期待というのは非常に大きいと思うのですね。日本もちょっと経済の下降局面もございまして、現実はやはり非常に厳しい。わけでございますけれども、そういう点でますますこの国際協力、貢献のいわゆる資金需要というものが増加してくるんじゃないかと思うわけでございます。そこで心配するのは、その財源措置ですね、今後どうしていくのかということにつきまして大臣はどういうようにお考えでございますか。
  300. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 そこは本当に頭の痛いところなんです。あれもやれこれもやれ、国際協力はどんどん応援しろ、財源はどうしますかということになると余りはっきり答えはみんな持っていないんですね。でありますが、これは社会保障費も同じことでありまして、やはり高齢化が進めば社会保障費がかかってくる。これは一般的傾向ですから、国際協力も同じですから、まず切り詰められるものは切り詰めていくということが一つでしょう。そうしてやはり国民の理解と協力を得て何らかの形で、どうしても財源がないという場合はいずれをとるかという判断の問題がありますから、それはその時期になって考えていくしかないのじゃなかろうか。今さらどの税でどうだというようなことを申し上げる段階ではございません。
  301. 近江巳記夫

    ○近江分科員 大事なことは、我が国の国民としてもやはりそういう国際協力の重要性ということはだんだん深く理解されてきておるように思うわけでございます。そういうことで、やはり理解と協力がなければ前進しないと思います。そういう点、安易に増税にぼんと走るということじゃなくして、やはり国民の理解と脇かを得る、そこに深い視点を置かなければいけない、このように思うわけでございます。  それから次に、きょうはこういう分科会でございますので、非常に要点だけの質問になっておりますが、一つはJICA等非常に中南米等におきましても事故が出ておりまして、大臣御承知のようにことしに入って七地域、九人が殺害されていますね。考えてみますと、もう一千万人海外旅行者もおりますし、今海外在留邦人というのは正確な数は私は知りませんけれども、わかっておればちょっと教えてもらいたいと思います。
  302. 荒義尚

    ○荒政府委員 平成二年の数字で六十二万人でございます。全世界でございます。
  303. 近江巳記夫

    ○近江分科員 六十二万人もおられるわけですね。こういう犯罪といいますか、そういうことで事故等に巻き込まれて犠牲者が非常にふえてきておる。これは、例えばJICAだけで見ましても世界九十カ国、五十の事務所、海外青年協力隊を入れまして三千七百名派遣しておるという現状でございます。そういうことで、この安全性について外務省はどういう手を打たれるのですか、それをお聞きしたいと思います。
  304. 荒義尚

    ○荒政府委員 先生御指摘のように、ことしに入ってから既に実は九件でございます。きのうガーナのアクラで邦人の方が一人負傷されまして、そういう痛ましい事故が続いておりまして、私どもも安全対策に腐心しておる次第でございます。  具体的に申し上げますと、第一点は、渡航者あるいは海外におられる方に対する情報の提供、それから安全に対する認識を高めていただぺための啓発活動でございます。  まず私どもは、外務省の中に海外安全相談センターというものを三年前につくりまして、これで各方面からの照会に当たっております。毎日数十件の照会が直接ございます。それに加えまして、都道府県の旅券関係の部門、旅行業界に、日本在外企業協会等を通じまして、渡航情報、これはある特定地域が非常に危険である場合には渡航の自粛の勧告をすることも含むわけですけれども、こういう情報を提供しております。  それからもう一つは、パソコン通信を使いまして、海外に進出しております企業等に対し海外安全に関する情報を直接提供するというシステムもつくっております。それから、ここに持ってまいりましたけれども、啓発用に海外安全ハンドブックであるとか、いろいろ注意をまとめた各種刊行物を鋭意つくって手広く配布する、これは従来からやっておりますけれども、最近もビデオもつくりまして、いろいろできることは今強化しておる。それから、テレビ、ラジオ等も機会があればどんどん我々として出していただいて、啓発に相努めている、それが一つ。  それから、海外に出ている進出企業に対しましては、それぞれの企業内においてできる限り専門の安全対策部門というのをつくるよう我々としてお勧めしておりまして、幾つかの企業では既にそういうものをつくって独自の対策をとりつつあります。それから、在外の公館におきましては、日本人会等の組織を通じまして、なるたけ頻繁に安全に関する意見交換をやったり、あるいは具体的な防犯の手引きというものもやっております。  それから、相手国政府に対しましても、特に危険な地域におきましては、在留邦人等に安全確保のため必要な手段を講じるよう外交ルートで申し入れる、こういう手段を講じております。
  305. 近江巳記夫

    ○近江分科員 次に、ウルグアイ・ラウンドの交渉につきまして、いよいよ大詰めに来ておると見られておるわけでございますけれども、非常に難航しておるということも事実でございます。ガットの事務局が設定しておりました四月中旬の最終合意につきましては悲観論が高まっておるわけでございますけれども大臣は、副総理は現時点でどういうような見通しをお持ちであるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  306. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 これは、何とかお互いに少しずつ譲り合ってでも、ウルグアイ・ラウンドをまとめていきたいという気持ちは今でも変わりはありません。しかし、一国だけが大幅に譲歩するというわけにはまいりませんので、やはりこれは話し合いの場でありますから、よく話し合って、まとめる方向で最大限の努力は、続けざるを得ません。
  307. 近江巳記夫

    ○近江分科員 総理は、宮城の補選の際にも、関税化は絶対反対である、明確におっしゃっておりますね。渡辺副総理は、受け入れもあり得るんじゃないかというような、若干そうしたニュアンスの発言もされておるように思うわけでございますけれども、その点につきましては政府としてきちっと一致されておるのかどうか、それをお伺いします。
  308. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 政府としては一致をしているから、総理大臣の言ったような方向で交渉に目下臨んでいるということです。
  309. 近江巳記夫

    ○近江分科員 じゃ、そういう政府の一致した関税化反対のその線でまたしっかり交渉をやってもらいたい、このように思うわけでございます。  それから、さっきのまだ報告入りませんか。大分かかりますか。
  310. 丹波實

    ○丹波政府委員 先ほどの私の御説明は、要するに電報でモスクワ大使館に今照会しているということでございまして、普通は電報が返ってくるのは恐らくきょうの夜とかあしたの朝になろうかと思いますけれども、そういう意味で申し上げたつもりでございます。
  311. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 外務省があれするのは、電話で向こうへ、ロシアの方へ問いわせて、それで聞いてやるというようなことはやりませんから、ちゃんと行って責任ある人に会って、それで確認をしてきてなければ公式な電報は打ってきませんので、多少時間がかかることだけは御了承を願います。
  312. 近江巳記夫

    ○近江分科員 はい、わかりました。その件は、確認次第厳重抗議をしていただきたいと思います。  えれから、ロシアの核兵器廃棄に伴うさまざまな問題がございます。また、科学者の頭脳流出の問題も非常に心配でございます。そういう点、国際科学技術センター、これは具体化してくるということで非常に結構なことだと思いますし、これにつきましては我が国としても最大の協力をすべきだと思うわけでございます。これにつきまして大臣からお伺いしたいと思います。
  313. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 我々もそのように考えておりますから、今回も松浦議官を私のかわりに科学技術センターのための国際交渉に出てもらったのです。中身は、アメリカが二千五百万ドル出す、ECも二千五百万ドル出す、できれば日本も同額出してくれというような話がございますが、私といたしましては、ECというのは十一カ国もあるわけですし、我が国のGNPの二倍以上合計であるわけですから。その根拠をはっきりさせてもらわぬと、それはただ単に同額というわけにはまいらぬ。しかしながら、応分のものは出しましょう。今国会中でございますから、要するに年度内にちゃんと受け皿ができて金額が納得できれば、それは今月中に私やってもいいと思うのです。しかし、それはどうも来年四月以降になるということでございますし、そうすれば金額はどうするかの問題は予算審議との関係もございますので、それをお引き受けするかしないか、応分の協力はしましょうという程度にとどまっておるわけであります。
  314. 近江巳記夫

    ○近江分科員 明石さんがお見えになりまして大臣に要請されたと思うのでございますが、日本の分担率が二一・四五%ですか、これについてはなさる。しかし、要請は総経費の三分の一、九億ドルぐらいしてもらいたいとおっしゃっておるわけですが、この点につきまして、我が国としてはまた最大の協力をしてあげるべきだ、このように思うわけでございます。その点につきまして大臣の見解を伺いたいと思います。
  315. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 これも多ければ多いほどいいというわけにいかないんで、みんな国民の負担になる話でございますから、だから出す約束するのは格好がいいけれども、だれが負担するんだという話にすぐなってくることなんですよ。そこで、今までの取り決めだと、国連の分担金は一二・四五と決まっているから、それはそれで決まれば持たざるを得なくなるでしょう。しかし、向こうは、日本は人的貢献についてもどれぐらいやってくれるのかわからない、したがって財政面ではたくさん持ってくれという話になるんでしょう。なるんですけれども、我々はPKO法案も竹下審議中であって、全く人的貢献ができないという状態ではないと私は思っておりますから、アメリカ並みにするかどうかということなどは今の段階で決めるわけにはいかないと思っています。
  316. 近江巳記夫

    ○近江分科員 時間が来ました。終わります。
  317. 志賀節

    志賀主査 これにて近江巳記夫君の質疑は終了しました。  次に、新村勝雄君。
  318. 新村勝雄

    新村分科員 幾つかの点についてお伺いをいたしたいと思いますが、まず初めに、報道等によって中国が天皇を招待する、天皇訪中ということが今報道等では伝わっておりますけれども、この点については政府はどうお考えですか。
  319. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 事実関係をお答え申し上げますが、本件はここ一年以上の懸案でございまして、先方から前内閣のときもたび重なる陛下の御訪中についての熱心な招請がございました。最近におきましては、過般一月に渡辺外務大臣が訪中いたしました折に、先方の極めて高いレベルの指導者の方々から、本年はせっかく日中国交正常化二十周年という記念すべき年にも当たるのでぜひ陛下の御訪中を実現してほしい、それが日中関係をさらに前に進めるゆえんであるという強い招請がございました。大臣はこれに対しまして、日本政府としては真剣に検討させていただくという言葉を残されて帰ってこられたわけでございます。
  320. 新村勝雄

    新村分科員 大臣が訪中されたときにそういう話が出たのですか。そうしますと、天皇のお立場は、もちろん国内的には憲法で政治的な機能を有しない、政治とは関係ないということになっておりまして、もちろんこれは国際的にも政治的な性格を持って行動されるということは考えられないと思いますね。そういう場合に訪中をされるということは、その時期あるいは周囲の環境、今までの日中関係の状況等を考えた場合に、仮に今回訪中されるということは、単なる中国に旅行されるということではなくて、必然的に政治的な性格を帯びるというふうに考えられるわけであります。  政府は、この問題についてどういう検討をされ、どういうお考えを持っておられますか。
  321. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 御承知のとおり、日本と中国は友好な関係になっております。それで、たびたび日本からも高官が中国へ行っておりますが、中国側からも以前鄧小平さんとかあるいは華国鋒国家主席とかまたたくさんの大臣の方とか、そしてことしはその招待を私の方でしておるのは、議会側として、議会の議長に相応する万里さんとか、それでまた江沢民総書記等を招待しているわけです。  これに対して儀礼もございまして、中国側といたしましては、日本にたくさん御招待をいただいておるので、ちょうどことしは国交正常化二十年というような大変おめでたいときでございますので、天皇陛下がおいでいただけることは国を挙げて大歓迎でございます、ぜひひとつこの国交正常化の式典を飾る意味においても、そして将来日中は本当に明るい、手をつないでいけるというようなためにも来ていただければ大変ありがたい、国民を挙げて熱烈歓迎をいたしますということであります。  そういうことでございますので、それには慎重に、真剣に検討させていただきますということになっておるのであります。
  322. 新村勝雄

    新村分科員 いわゆる宮廷外交という言葉がありますけれども、宮廷外交という言葉の持つ意味は、政治的な性格が全くないということが一つの前提になると思うんですね。イギリスの女王が来日をされるとかオランダ女王が来日をされるとかということは、これはまさに宮廷外交と言えるかもしれません。しかし日中間の今までの歴史的な関係あるいは現在の日中関係等を考えた場合には、今天皇が訪中をされるということはそこに必然的に政治的な性格を帯びるのではないか。そのことが天皇を政治に巻き込むというかそういうことになって、憲法に規定をされた政治とは無関係という天皇のお立場を害するのではないかという懸念はあると思うんですね。  ですから仮に訪中をするとしても、その時期なりまたその形なりについては十分慎重な配慮が必要だと思うのです。天皇を政治に巻き込まないというか政治からは超然としておるという立場はやはり尊重しなければいけないと考えるわけでありますが、今明確なお答えは無理でありましょうけれども、そういうことを十分考えて御配慮をいただきたいということを要望しておきたいと思います。  次は北方領土の件でありますが、北方領土についてはまだどうなるか全くわからないわけで、今そういうことを論議をする段階ではないと思いますけれども、北方領土には既に旧ソビエトの住民が住んでいる、あるいは一定の資産もあると思います。そういう住民なり資産なりが仮に返還された場合にどういうことになるのか、国籍はどうなるのかというようなことについては、今それを政府が発言することがまずいということであればこれは別ですけれども、そういうことについて検討をされているのかどうかちょっと伺いたい。
  323. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 北方四島の問題につきましては、ことし既に日ロ間で初めての平和条約作業グループをモスクワで開催いたしまして、そしてこの二十日にはコズイレフ外務大臣を東京にお迎えする、さらに九月にはエリツィン大統領に訪日をしていただくという段取りができているわけでございます。その間にもその他の接触がいろいろ行われることになると思います。  ただいま先生御指摘の、北方四島の全部ではございませんけれども、ロシアの住民がおられるという点につきましては、まだこの北方四島の問題の解決がどういうふうになるか決まっておりませんので余り具体的なことは申し上げる段階にございませんけれども、ただ、私どもの基本的な考え方といたしましては、北方四島が返還される場合には、この住民の方々の人権でございますとか、あるいは資産その他、生活というものがあるわけでございますから、こういう方々を温かく迎える、あるいは、もしほかに移住をされるということであれば、鋭意そういう点も十分に考慮する必要があろうというふうに考えております。
  324. 新村勝雄

    新村分科員 国際間で領土が変更されることはしょっちゅうありますよね。今まで歴史上はもう常にあったわけです。そういう場合の一定のルールのようなものがあるんでしょうか。  それから、今のお答えでは、あそこにおられる人たちの人権を尊重して、身分の問題についても経済的な問題についてもあそこにいる人たち立場を十分尊重して対処をされるということでありますが、それ以上の具体的な点はまだ決まっていないということでいいと思いますけれども、一般的に国際間のルールとして、あるいは国際法上、領土が移動した場合に住民はどうなるのかということについて、一般論としてはどうお考えですか。
  325. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 実は、もう二十年になりますけれども、二十年前に沖縄の返還があったわけでございますが、そのときにいろいろ調査したことがございます。沖縄の返還というのは、領土権が戻ってきたというものではなくて、あの場合には、我が国は平和条約のもとで領土主権は持っていた、ただ施政権をアメリカに認めたということでございますから、いわゆる領土の移動そのものではございませんけれども、ただ、それに似た状況があったわけでございます。その返還の準備に当たりまして、いろいろ国際先例を調べてみたことがございます。  結論から申し上げますと、これまで世界史的に、領土が移動した、平和的に移動したこともございますし、あるいは力によって領土が一国から他国へ移ったというものもございますが、いずれにいたしましても、一般的に当てはめるルールというものはないということが言えると思います。この点に関しまして、そういう住民の既得権でございますとか、あるいはその住民の方々の地位の問題、そういう問題は、結局、その一つ一つの領土の移転の背景というのがございますし、また関係国も千差万別でございますので、さまざまな処理がなされているわけでございます。  ただ、現代の国際法の考え方を一般的に申し上げれば、当然、これは内外人を問わず人権の尊重ということはなすべきであると思いますし、それから住民の方々の意思を尊重するということが大事であると思います。他方、領土を返還してもらって我が国に例えば北方領土が返ってくるということになれば、これは我が国の制度というものがあるわけでございますから、それとの整合性の問題も生ずるということでございまして、結論的には、一つ一つそういうような考え方に沿って具体的な案件を検討して処理をしていくというふうに申し上げるほかないと思います。
  326. 新村勝雄

    新村分科員 次に、いわゆる国連外交ということが言われますけれども、これから日本の外交は国連重視、国連中心というか国連重視ということになると思うのです。これに関して総理が、先般の国連において、日本が常任理事国を希望するということを、間接的な表現だそうでありますが表明されたということであります。  仮に日本国が常任理事国になるとすれば、それを正式に表明する前に当然政府部内における十分な検討があったんでありましょうし、さらにまた、国会等においても十分論議をして、あるいは国民の理解なり、あるいは国論の統一ということも必要でありましょうが、この問題について政府の部内においてはどういう検討なり積み重ねといいますか、これがあったんでしょうか。
  327. 丹波實

    ○丹波政府委員 私の方から事実関係についてちょっと御説明させていただきたいと思いますけれども、先生つとに御承知のとおり、国連ができましてから四十七年間たっております。その間、今の先生御指摘の問題に関しますところの憲章の条文には何ら変化がない。他方、この間国際情勢が大変激動したことは御承知のとおりでございまして、こういう状況を受けまして国連の中で、例えば昨年ですけれども、昨年の総会で十年ぶりに安保理議席の公平配分と拡大という議題のもとに八カ国が発言する、そういうことが起きております。  実はこういう議題は毎年掲げられておったんですが、十年ぶりに実質審議が行われたということで国連の中でもその問題意識が非常に上ってきているという背景がございまして、先生まさに今間接的だがというお言葉を使われましたけれども、宮澤総理の先般の発言は、日本がみずから手を挙げだということでは必ずしもございませんで、先生がまさにおっしゃったとおり問題提起をした、一石を投じたということでございまして、今後の考え方としては、先生がおっしゃったとおり、私たちとしては国内の世論、それから国際社会における世論と申しますか、そういうものの動向を見ながら本件を進めていきたいといいますか、本件について対処していきたいというのが事務的な考え方でございます。
  328. 新村勝雄

    新村分科員 総理がそういう表現ながら発言したということになれば、政府部内における検討なり、政府部内における予備的な手続、積み重ね、そういったものはどういう状況ですか。
  329. 丹波實

    ○丹波政府委員 この点につきましては、実はかつて、例えば愛知外務大臣のころ、もう相当前になりますけれども、国連総会で、日本政府として安保理の議席の配分の問題についても国連は検討すべきじゃないかという趣旨のことを発言したことがございます。  繰り返しになりますけれども日本がみずから旗を振ってそこに入っていくべきだという表現で発言しているわけではございませんで、そこはいろいろ考えた上で、こういうまさに間接的な表現にとどめておるという点をぜひ御理解いただきたいと考えます。
  330. 新村勝雄

    新村分科員 これは、まず世界の世論ということも考えなければいけないでしょうし、特に、アジア諸国が日本に対してどう考えているのかという配慮も必要だと思いますが、慎重にやらないといわゆる日本の大国主義がまた復活してきたんではないかという印象を与えかねない。  さらに、アジアの諸国がどう日本に対して考えているのか、こういう点についてはどういう認識ですか。
  331. 丹波實

    ○丹波政府委員 この点につきましては、昨年の総会で八カ国発言したということを申し上げましたけれども、その中にインドがおりまして、やはり安保理の議席を考え直すべきじゃないかという発言をいたしております。それから、同じインドは、この間の安保理サミットでも同趣旨の発言をいたしております。  いずれにいたしましても、各国ごとにあれするということでございませんで、世界全体のそういう国際社会における意見というものもやはり勘案しながら、本件の動向ということを考えていきたいということでございます。
  332. 新村勝雄

    新村分科員 仮に常任理事国のポストを得た場合に、それに相当する責任なり負担なりというものが当然伴ってくるわけですね。そういった点についての十分な用意がなければならない、だろうし、そういった問題についての国民の理解なり国会内の論議なりというものを積み重ねていかなければいけないと思いますが、常任理事国を主張するその反対の責任というものはどうなるのかという点ではどうですか。
  333. 丹波實

    ○丹波政府委員 私は、国連加盟国、現在百七十五カ国でございますけれども、例えば財政の負担率が既に第二番目であるといったようなところにあらわれておりますように、日本は既に相当の責任を持った加盟国になっていると思います。そういう財政負担の問題のみならず、例えば昨年の通常兵器の取引の登録制度を日本がイニシアチブをとったとか、あるいは国連そのものではございませんけれども、ユネスコの改革に旗を振ってそれが成功したとかそれが評価されたとか、あるいはその他の難民の問題とか人口の問題とかで相当の責任を持って行動しておるということでございまして、そういう責任が、もし将来国際社会が認めるのであればそのまま安保理常任理事国として認められていくということで、その安保理常任理事国になったとした場合にそこに日本の責任の質的な転換が起こるという考え方は必ずしも持っておりませんし、それからもう一つ重要なことは、どういう形で安保理常任理事国になるのかというのはいろいろな対応があり得ると思います。ですから、そういうところを見定めながら今の先生御指摘の問題を考えていきたいというふうに考えております。
  334. 新村勝雄

    新村分科員 依然として敵国条項があるという現状がありますし、日本が一定の財政負担をしているというだけで質的な変化は何もない、自然に常任理事国になり得るという安易な考えでいいのかどうか。大臣はその点はいかがでございますか。
  335. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 それはそう簡単に常任理事国になれないと私は思います。それは、百何十カ国もあるのですから、そこで常任理事国になろうとすればいろいろな国連憲章の改定という問題も議題になってきましょうし、日本だけでなくてもっとなりたい国はたくさんおりますし、そうかといって常任理事国十カ国にもしてしまったらまた別な問題が起きてきて、まとまる話もなかなかまとまらないということも出てくるでしょうし、それはやはり慎重に、余り無理をしないでいくことがいいと思っています。だけれども、常任理事国になれることなら、無理なくですよ、それは私はなった方がいい、そう思います。
  336. 新村勝雄

    新村分科員 なれるならばなってもいいと思いますね。思いますが、その場合に安易に現状程度で済むのかどうか。今までの経過を見てみますと、何か重要な問題に取り組む場合に、国会の中の論議あるいは国民世論に対する訴え方についても慎重な積み重ねがなくて、突然にとは言わないけれども、そういう十分な積み重ねがなくて重要な課題が国会等に提起をされてくる、そのために与野党が激突をするというような事案が幾つかあったわけですね。そういったことを考えた場合に、やはりこれは日本の世界の中における一つの大きな転機になるわけですから、国会、国民に対してもそこに到達するまでの積み重ねを十分考慮してやっていただきたいということを要望したいと思います。  それから、時間がありませんので最後に一点、これは大臣に御質問しますが、報道されるところによると、最近自民党の中で、いわゆる小沢調査会というところで新たな憲法解釈なり国連に対応する新しい方針をお出しになったようであります。この問題について大臣はどうお考えですか。
  337. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 実は、私はまた忙しいものだからよく目を通していないのであります。  現時点では小沢調査会の答申というものが自民党の政策の基本になったわけでもありません。一つの提言という形で出ておるわけで、これから党内において大いに議論をされるということは非常に結構なことである。事憲法問題についてタブーで、議論をすることはいかぬという時代ではありません。大いに検討され、勉強を各党ともおやりになったらいいし、社会党のある代議士がPKOの問題で立派な論文を発表されて、ああいうことも非常に結構なことで、国民のコンセンサスが一番必要なわけですから、それは学問的な議論があることは何ら差し支えない、そう思っております。  ただ、国連軍への参加というようなことについては、現実に国連軍というものはできたこともございませんし、そういうようなことで議論したこともありません。したがって、ストレートにそこに今すぐ結びつくというわけではないと思います。
  338. 新村勝雄

    新村分科員 私も詳しく勉強したわけではありませんけれども、小沢さんのお考え、これは党議ではないとおっしゃっていますが、やがて党議になるのではないかというような見通しがありますね。ですから、仮にそれが党議になった場合には、これは一党の問題ではなくて日本国民の運命に関することでありますから、総選挙で国民に問うなり参議院選挙で問うなり国民に対して直接問いかけるということで、ひとつそういう姿勢、発想を持っていただきたいということを自民党の最高幹部である渡辺さんに要望しておきます。いかがですか。
  339. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 御要望として承っておきます。
  340. 新村勝雄

    新村分科員 終わります。
  341. 志賀節

    志賀主査 これにて新村勝雄君の質疑は終了しました。  次に、江田五月君。     〔主査退席、冬柴主査代理着席〕
  342. 江田五月

    江田分科員 第二分科会で、外務省のことに関して伺います。長工場で御苦労さまでございます。  言うまでもありませんが、歴史的な大転換期に差しかかってきたということだと思います。冷戦が終わった、そして新しい国際システムをつくっていかなければいけない重要なところへ来た、これはもう皆同じ認識を持っていると思いますが、しかし、その新しい国際秩序というのはどういうものであるべきかということについていろんな議論がある。先ほどの小沢調査会もそうしたことの一つの提案、しかしあれでいいかどうかはこれは大臣おっしゃるとおり大いに勉強したらいいことだろうと思いますが、さてそこで、私は、まずアジア・太平洋地域における集団的安全保障の枠組みづくりについて質問をしたいと思います。  地域的な安全保障の枠組み、これは地域的集団的自衛権ではなくて、集団的地域的な安全保障の枠組みとして今現に存在するものとしては、コンファレンス・オン・セキュリティー・アンド・コオペレーション・イン・ヨーロップ、全ヨーロッパ安全保障協力会議、これが注目をされると思います。  考えてみると、ヨーロッパというのは、私どもも中学、高校のときに世界史なんというのを勉強したわけですが、ずっと戦争の歴史であったわけですね。やれ三十年戦争、百年戦争、バラ戦争、何とか戦争、何とか戦争とずっと続いて、これがいよいよ一九九〇年にパリ憲章ということで、もうヨーロッパは戦争のない時代に入るんだ、こういう宣言がなされた。  そこへ至るについて、一九七五年のヘルシンキ宣言で、領土の現状の承認を前提に安全保障、経済協力それから人権、これの尊重を柱に欧州三十五カ国が協力をうたいとげて、長い努力を重ねてきた。現在では旧ソ連の共和国もほとんど参加して四十八カ国になりました。ユーゴスラビアの紛争ではその弱点も明らかになったわけでございますが、まずこういうヨーロッパでの秩序をつくり上げるについて私は大きな役割を果たしたと思いますが、CSCEについての外務省の評価、今後の動向についての外務省のお考え、これを伺います。簡単にひとつお答えください。
  343. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 まさに先生御指摘のとおり、一九七五年の欧州安保会議というのは、ある意味では戦後のヤルタ体制を一応ヨーロッパの指導者が集まって追認したという意味で、画期的な会議でございました。このときには、ブレジネフ、グロムイコ両首脳がモスクワから参りまして、ソ連にとっては大成功と言われた会議でございました。  さて、それからいろいろな紆余曲折があったわけでございますけれども、一九九〇年十一月十八日の、今度はパリの欧州安全保障会議は、私は全くそれと逆であった。つまり、その体制が今度は崩れて、新しい体制がヨーロッパにできた。それを追認する会議であった。そこでコール首相、ゲンシャー外相がその最大の役者と言われたということで対照的であったと思いますけれども、過去においてはそういう役割を果たしてきた。  今CSCEの役割についていろんな議論がなされているわけでございますけれども、まさに東西のヨーロッパにおける対立が終わって、NATO対ワルシャワ条約機構、そういう軍事機構の対立の構図が終わって、いわば東側にとってはそういう組織が完全になくなってしまった。したがって、安全保障問題については旧ソ連邦、東欧も含めて今空白状態になっている。そこにやはりこれらの諸国にとりましても、CSCE、安全保障会議一つの大きな意味が出てきたということで、先生御指摘のとおり、旧ソ連邦の共和国も積極的にこれに参加する、また旧東欧諸国もこれに積極的な役割を果たしたいということで、チェコ等も積極的に動いていることは御承知のとおりでございます。したがって、今後そういう意味でも一つ政治的な役割が増大していくであろうというふうに私どもも見ているわけでございます。
  344. 江田五月

    江田分科員 やはりこの冷戦後という時代をどう認識するかなんですが、冷戦構造というのは、対立する二つのブロック、これが安定的に対立して、その対立がバランスを崩さないようにというのでいろいろやってきたわけですが、冷戦後になりますと、そういう対立事項をいっぱいつくってそれを安定させるのではなくて、お互いに共同、協力しながら世界の秩序をつくっていくという、そんな思考方法が非常に重要になってくる。米欧関係についてはCSCEというものがある、あるいはECそしてEFTA、これが一緒になってEEA、あるいはNATOそして旧ワルシャワ・パクト、これが今度はいろいろな関係でNACCといったものになっていくとか、いろいろなネットワークを重ね合わせて、そして紛争の起きない、あるいは紛争を未然に処理する、そういうシステムをつくろうという大変な努力をして、これが功を奏しつつあるように私は見るのです。  さてそこで、渡辺外務大臣の御意見を伺いたいのですが、私は以前からこのCSCEのような枠組みをひとつアジア・太平洋地域にもつくるべきじゃないだろうか。コンファレンス・オン・セキュリティー・アンド・コオペレーション・イン・エーシア・アンド・パシフィック、すなわちCSCAP、Pが必要だと思うのですが、ということを提案をしてきておりまして、オーストラリアのエバンス外相も同じような考えのようで、と私が言うとどうも大変僭越ではございますが、日本外務省はずっとどうも否定的な態度をとっておられる。ヨーロッパとは地政学的な条件や歴史的、文化的条件が違うとか、アジア・太平洋では同じ価値観を共有してないとか、いろいろおっしゃるわけです。  確かにそれは、ヨーロッパというのは、例えばローマであるとか、同じヨーロッパ一つになっていたという時代があった。アジアというのは、アジアが一つになっていたということは、アジアは一つとよく言うけれども、しかし現実にはないとか、いろいろあります、確かに。あるけれども、やはりそういう対立軸をどう組み合わせるかじゃなくて、お互いに共同していく、そういうネットワークをどうつくるか、これはどんなに困難でもやはり粘り強くこれからやっていかなきゃいけない、そういう時代が来ているんで、あれがだめだ、これがだめだ、だからアジアでは難しいんですと、これはやはりまずいんじゃないかと思うのです。  CSCAPは日米安保条約と矛盾するという議論もあるようですけれども、これはアメリカも入れる、ソ連も入れるというような関係ですね。しかしそれは冷戦時代のことなんで、冷戦終結後の新しい世界では状況は変わってまいりました。私はこの二月にワシントンヘ行って議会の上院のスタッフレベルともいろいろ話してきましたが、大いに検討に値する構想であるとの評価を受けました。  私は、むしろこの集団的な安全保障システムとしては、全体として国連が役割を果たす、国連もいろいろこれから変わっていかなきゃいけませんが、それと同時にそのサブシステムといいますか、地域的な安全保障システムと二段構えにして、そういうものをコモンセキュリティー、共通の安全保障システムとして信頼度の高いものにしていく、そういう必要がある。その中に日米安保条約というものもきちんと位置づけて、これは日米関係の一番基軸となる条約関係ですから、それを大切にしながらその関係をもっと意味のある関係にどんどんつくり直していく、そういう日米のグローバルパートナーシップを全体の中で位置づけることが可能である。こうしてアジア・太平洋地域にいわば国連とCSCAPと日米のグローバルパートナーシップ、三層の安全保障システムを構築すべきであると思っております。  こういう構想について、ちょっとばっと広げてしまいましたが、外務大臣、どんなお感じをお持ちになりますか。
  345. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 外務省考え方は、委員が今自分でこうこうこうこうだと言われたようなところに大体集約をされております。  もう一つの問題は、アジアの諸国が安全保障面でみんなでやっていこうという関心は果たしてあるのかということが一つ。それよりも、当面経済問題では何とか一緒にやっていこう、その方には興味が非常にありますが、余り今のところでは興味を持っているとは我々はまだ見ておりません。  そこでだれが旗を振るか。日本が旗を一遍振り出すと、これまた変な誤解を与えかねないようなこともありますから、もう少し私は勉強をした上でないと、外務大臣としては、それはいい構想だからひとつ旗振ってやりましょうとはちょっとまだ言えない段階であります。
  346. 江田五月

    江田分科員 そういうことかと思いますが、ひとつ一緒に勉強しましょう。  変な誤解というのは、多分アメリカのことや何かをお考えなのかもしれませんが、それはあるかもしれないけれども努力しなければならぬ。あるいはこのCSCEの場合でも、当時の旧東側それから旧西側、思惑違っていたのですよね。思惑が違っていたけれどもそういう枠組みをつくって、それで信頼関係醸成、いろいろやってきたらそこに結果があらわれてきたということなので、やはり努力をすることだろうと私は思っております。  続いて、今度はがらっと変わりまして、死刑廃止問題についてお伺いをいたします。  先日、フランスで死刑を廃止をしたときに強いリーダーシップを発揮された元法務大臣バダンテールという人が来日をされまして、私が事務局長を務めておりますアムネスティ議員連盟でも懇談会を開きましてお話を伺ったのです。昨年の七月には、十カ国の批准をもって死刑廃止条約、正確には「死刑の廃止を目ざす市民的及び政治的権利に関する国際規約の第二選択議定書」と、ちょっと長い名前ですが、そういう議定書も発効したということでございます。  一九九〇年の死刑に関する国際連合事務総長の報告書によりますと、死刑廃止国三十八カ国、十年以上死刑を執行していない国は三十カ国、また一部の罪に対して死刑を廃止しているという、もう大部分の罪に対して死刑を廃止しているのだと思いますが、これが十七カ国。日本もこの二年三、四カ月ほど死刑が執行されておりません。私は、そろそろ日本も死刑廃止へ向けてアクションを起こすべきときが来ていると思っております。  これは、死刑を廃止するについてのことを担当されるのは法務省でございますが、外務大臣、閣僚の一人、しかも副総理、重要な役割日本政治の中で果たしておられる政治家の一人止してどういうふうにお考えになるか、ひとつお考えを聞かせてください。
  347. 丹波實

    ○丹波政府委員 事務的にちょっと一つ。  先生もおっしゃったとおり、この死刑の廃止の問題は、国民感情及びこれに基づきます国内法制に直接かかわる問題でございますので、外務省としては、国内感情等、協議しながら慎重に検討している段階でございます。  そういうことでございますので、実態的な問題としては国内感情、国民感情というものを見ながら対応していくというのが、外務省の少なくとも事務的な考え方として今日まで来ておるわけでございます。
  348. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 これは昔から両論ありまして、私はどっちももっともだと思っておるのです、どちらも。これは五分五分。大体そうです。
  349. 江田五月

    江田分科員 大臣の頭の中、大臣のお考えの中で五分五分だということだと思うのですが、それは確かに両説あります。むしろ世論調査などをすると死刑というのは必要だという人の方が多いのですね。ですから、大臣のおっしゃる毛針論でいえば、死刑を廃止しない方がいいという方がむしろ国民の支持を受けるのかもしれません。しかしフランスでは、このバダンテールという人がおっしゃるには、選挙でミッテランさんが公約をした。フランスでも死刑廃止に反対という人が六十数%、それにもかかわらず公約をして、断固これを実現すると言った。その政治家としての見識と強い態度に対して、それを支持するということでミッテラン勝利の一因になったのではないか、そんなような言い方もしているわけでございまして、私はこれは、政治家としてどういう理想像を描き、そこへ向かってどういう努力をするかという一つの見識の問題だろうと思っているわけです。  外務省の事務的立場はわかりましたし、法務省の方も、まあ国民的な課題だということなんだろうと思いますが、法務省のお答えも伺ってもいいのですけれども、ちょっと伺いしましょうか。簡単にひとつ。
  350. 山本和昭

    ○山本説明員 法務省としましては、国民の大多数が極度に凶悪な犯罪を犯した者に死刑を科することは正当であると考えておりますし、しかも、死刑に凶悪犯罪抑制の特別な効果があると信じていると思われることや、重大凶悪事犯が現在もなお後を絶たないことなどの事情にかんがみて、今直ちに死刑を全面的に廃止することは適当でないというぐあいに考えております。
  351. 江田五月

    江田分科員 まあしかし、国民的な課題なんですよね。世界がこういう動向にある、日本も国際国家として生きていこう、国際社会の中で名誉ある地位を占めようというわけですから、こうしたこともひとつやっていかなければいかぬと思うのです。  技術的なことで外務省の方に伺いたいのですが、条約への加入とか批准の手続について簡単に説明してください。
  352. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お尋ねの点がどういう側面か必ずしも私よく理解いたしませんでしたけれでも、批准とか加入の手続でございますが、条約によりまして、いわゆる最終的にその条約に拘束される意思を表明する方法というものはいろいろあるわけでございます。  その一番伝統的で重い形が批准というものでございます。それから、ただいまおっしゃったと思いますけれども、加入あるいは署名をもって拘束されることになるということもございますし、千差万別でございます。この条約につきましてということでございますれば、七条におきまして、批准しまたは加入するということでこの条約に入るということが規定されているわけでございます。
  353. 江田五月

    江田分科員 批准ということが必要なのだろうと思うのですけれども、批准のためには国内法の整備というものが必要ですね。この条約を批准するとすればどういう国内法の整備が必要であるかということを検討をされていますか。
  354. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、この問題は国民的な課題でございますし、世論の動向それから国内法をどういうふうに考えるかといういろいろな点があるわけでございます。したがいまして、まだ具体的にこの条約の締結の準備というものは始めておりません。いかなる国内法的な手当てが必要かという点は、あるいは法務省の方にお尋ねいただくのがよろしいかと思いますが、いずれにしましても、この条約の一条で、この議定書の締約国の管轄圏内のいかなる者も処刑されないという趣旨のことを言っておりますし、また、第一条の二項では、締約国は、その管轄圏内において死刑廃止のために必要なあらゆる措置をとるということを言っておりますので、常識的には刑法の改正が必要になろうとは思います。
  355. 江田五月

    江田分科員 どうも伺っている様子ですと、批准の前提としてどういうことが必要なのか、これをまだ検討されていないような感じですが、ひとつぜひ検討していただきたい、既に発効しているわけですから。法務省に聞けということですが、例えば女子差別撤廃条約などのときには外務省の方がむしろ、私の理解ですが、リーダーシップを果たして、例えば労働関係あるいは教育の関係あるいは国籍の関係、そういう点について外務省の方が問題提起をして国内法の整備をしていったわけで、法務省に聞けというのはちょっとそうじゃないんじゃないかなという気がするのです。  そこで、仮に死刑執行停止法というようなものをつくって死刑執行ということを法律上停止する、こういうことになったら、これは批准の条件ができたということになるでしょうか。
  356. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほどちょっと読み上げましたけれども、この議定書の一条の規定が先ほど申し上げたようなことになっておりまして、締約国の管轄圏内でいかなる者も処刑されてはならない、さらに、死刑廃止のために必要なあらゆる措置をとるということを規定しているわけでございます。このような規定に照らせば、御指摘のような措置だけでこの議定書の定める義務を完全に履行できるかというのは、初めて伺いました御提案でもあり、よくわかりませんけれども、とりあえず考えましたところなかなか難しいのではないかという感じがいたします。  なお、国内法の関係につきまして先ほど御答弁申し上げましたのは、私どもとしてまだ具体的に検討は開始していないということでございますが、それはほかの条約につきまして外務省がいわば音頭をとって関係の各省と御相談するということはしばしばあるわけでございます。ただ、先ほど国連局長から申し上げましたとおり、まだこの条約の締結の方針というもの、あるいはその方向というものを決めておりませんので、まだ関係の各省に御相談するという段階には至っていないということでございます。
  357. 江田五月

    江田分科員 しかし、第一条の一項「何人も、処刑されない。」ということについては、今の死刑執行停止をしてしまえば処刑はされないわけで、あとは二項の方は必要のある措置をこれからとっていくということですから、あるいは批准の条件を満たすということになるのかもしれません。  しかし、私は死刑執行停止法というのを実は提案をしないのです。それはなぜかというと、やはりちょっとその法律自体に無理がある。一方で立法府が司法府に対して死刑という法定刑を定めた法律を用意して司法府に死刑の宣告の権限を与えておいて、他方でそれを執行する行政府に対してこれは執行しちゃいけないという停止法をやるというのは立法府として自己矛盾になってしまうわけですから、これはちょっとまずいんじゃないかという感じを実は持っているので、その提案はしないのです。  しかし、何か死刑廃止に向けてのプロセスを考えたい。本来なら法制審議会で十分議論をかけて、専門家の英知を集めて刑法、刑事訴訟法その他関連法制のあり方を検討してもらう。その間に世論調査もする、広く国民の意見を聞く場も設ける、いろいろなことをやらなきゃいけないということだと思いますが、法務省は法制審議会に諮問するとか、あるいは近々総理府に依頼して世論調査をやるとか、そういうようなお考えは今ございますか。
  358. 山本和昭

    ○山本説明員 死刑廃止へ向けてのステップとして死刑執行停止法をつくるかどうかというようなことに関連してお答えいたしますと、刑事訴訟法四百七十九条には心神喪失の状態にある者または懐胎する女子に対して死刑の執行を停止する旨の規定がございまして、これを一般化して御指摘のような制度を設けるということは、立法論としてはあるいは可能なのではないのかなというぐあいに感じておるわけでございますけれども、基本的な考え方としまして今直ちに死刑全面廃止ということは適当でないと考えておりますし、それへのステップとしてのこのような立法化ということにつきましても現在のところ考えておりません。  世論調査につきましては、死刑に関する世論調査を行うか否かにつきましてはその実施時期を含めて検討中でございます。ただ、現在のところ平成四年において死刑に関する世論調査を行うという具体的予定はしておりません。
  359. 江田五月

    江田分科員 世論調査を行う計画があるというような報道があったものですから、その点をちょっと伺ったわけです。  私はやはり立法府のリーダーシップが必要だという感じがしておりまして、立法府で死刑廃止について積極的な問題提起ができるのではないか。そのため例えば、これは今度は提案なんですが、死刑停止法、議員立法の法案を検討してみたいと思うのです。これは、法定刑の中の死刑という規定はそのまま残しておく。そして例えば本格的に法定刑から死刑をなくする方向へ向かうまで十年なら十年の時限つきの特別法で、処断刑として死刑が選択された場合に、もっとも刑法八十一条の外患誘致は法定刑が死刑しかないのでその場合は選択じゃないですが、死刑をもって処断する場合に少年法五十一条のように無期懲役を科すということにする。そして、この規定によって無期懲役を宣告された者については刑法二十八条の仮出獄を適用しない、つまり仮出獄の余地のない終身刑という類型を一つつくる、こういうやり方があるのではないか。  これは伺ってもちょっと検討していないとおっしゃることになるのでしょうが、このような内容の法律が議員立法でできたとしたら、そうすると死刑廃止条約の批准の条件を満たすことになりますか。
  360. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 今のような御提案、勉強させていただきたいと存じますが、今この場で結論的なことはまだ申し上げる段階に至っておりません。
  361. 江田五月

    江田分科員 渡辺大臣、五分五分、御自身のお気持ちの中でもどちらかということにまだ決めかねるということだろうと思うのですが、それでも死刑がいいことだというわけにはいかぬと思うのですよね。私も裁判官の経験もあるわけですが、裁判というものも人間のやることですから間違いがある。ところが、人間の命を奪うというのは、これは間違いでしたでは許されないことでもあるので、死刑をしなくて済むならやはり死刑がない方がいいということだと思うのです。もちろん凶悪犯罪を憎むということにおいて人後に落ちるものではない。しかし、国家が刑務官に殺人を強制できるという、これもまたどうもつらいことなので、いろいろな知恵を出していかなければならぬ。  アメリカなどでもいろいろあって、州によって違うのだけれども、どうも凶悪犯が多いところが死刑が残っている。これはどういう因果関係なのか、いろいろ議論もあるようです。日本では平安時代に、何と保元の乱で源為義が死刑になるまで三百四十六年、死刑がない時代があったんですね。平安時代というのはいい時代だと思うのです。  私の先生の団藤重光先生が「死刑廃止論」というのを上梓されたということもあり、この国際条約も発効したという時期でもあるので、ぜひ死刑の問題について真剣にひとつ大臣も考えてみていただきたいと思いますが、最後にもし御所見を例えれば伺いまして、私の質問を終わります。
  362. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 真剣に研究します。
  363. 冬柴鐵三

    冬柴主査代理 これにて江田五月君の質疑は終了しました。  次に、柳田稔君。
  364. 柳田稔

    柳田分科員 まず、PKOについてお伺いをしたいと思います。  先日、国連の明石さんが国会にいらっしゃいましていろいろとお話をしたというふうに承っておりますけれども、この明石さんがPKOに対して日本協力をすべきだというふうな感じで多分お話をしたのじゃないかなと思うのですが、現段階で国連の明石さんは日本のPKOに対する協力、全般的なもの、あとでカンボジアについても特定して聞きたいと思うのですが、何か御説明があったれば教えていただきたいと思います。
  365. 丹波實

    ○丹波政府委員 昨日もこの衆議院のPKO委員会で参考人としてお話をしておられますし、あるいは外務大臣を初めとします政治の方々と個別にお話をされたつ、それから紙上インタビューをいろいろしておられますけれども、基本的に幾つかのことを言っておられると思います。  一つは、国連の側から最近の世界情勢を見ていると、イデオロギーによる対立の時代が終わって地域紛争がふえてきておる、その処理との関連でPKO、紛争が終わった後の活動として、国連活動の中でのPKOの活動が非常に重要性を増しておるということが第一点。それから第二点は、一般論として、そういう中で日本に対する期待は非常に高まっておる、こういうことが第二点。それから第三点目は、今彼が代表としてごれから赴任されるUNTACの中身についていろいろ説明をされた上で、日本に対するアメリカのと申しますか、あるいはアメリカを初めとする国際社会及び国連の中におけるこのUNTACへの協力、財政的、人的協力日本に対する期待も非常に高まっているという、この三点に集約されるかなと思いますけれども、そういうことを強調しておられたということでございます。
  366. 柳田稔

    柳田分科員 このカンボジアのUNTACですけれども、新聞紙上では大変大きな規模だというふうに報道されております。このUNTACに対する日本協力について具体的に何かお話があったのでしょうか。
  367. 丹波實

    ○丹波政府委員 先ほどのようないろいろな場での明石代表のお話を総合いたしますと、まず第一に財政的な貢献というものをやってほしいということ。御承知のとおり、UNTAC全体の財政規模についてはまだ最終的な決定は見ておりませんけれども、復頭部門それから難民の関係を全部入れて非常に丸い数字で三十億ドルに近い数字が議論されている。その三〇%ぐらいを何とか貢献してもらえないであろうかということを明石代表として言っておられたという点が一つ。それから二つ目は、人的な貢献として、例えば文民警察あるいは選挙監視あるいは行政的な分野における協力ということを言っておられました。特に選挙監視につきましては、来年の四月、遅くとも五月に予定されておりますけれども、全体として千四百人の規模、そのうち四百人は、先生も御承知のようにUNV、国連のボランティア活動として四百人、その一〇%ぐらいは日本の中からボランティアとして出てきてほしい。それから、残った千人は各国が派遣する選挙監視要員ですが、その一〇%ぐらいは日本が出してもらえないかということを言っておられたのが印象に残っております。
  368. 柳田稔

    柳田分科員 PKFについては何かございましたでしょうか。
  369. 丹波實

    ○丹波政府委員 これは先生御承知のとおり、UNTACの前にUNAMICという先遣隊ができておりまして、活動してみたら地雷の処理が非常に重要だということがわかって、追加的にそういう任務を与えたことは御承知のとおりです。あの前後の時期に、たしか明石さんだったと思いますが、非公式に日本がそういうことをやってくれ得るだろうかということを聞かれたことがあります。しかし、それに対しては私たちも非公式に、そもそもそういう活動をするためには、今国会にお出ししておるPKO法案の成立が必要でありましょうし、それからもう一つは実態の問題として自衛隊にそういう能力があるかという問題がございますという答えをしておりましたので、そういうことも念頭にあったせいか、今回はその地雷の処理ということは言っておられませんでした。そのほかのPKF活動に伴う点とすれば、例えば輸送とか通信ということを言っておられましたから、そのPKFの本当のぎりぎりの本隊ということではございませんで、たしかきのうも衆議院のPKO委員会での意見の中では、ロジという言葉を使っておられましたから、そういう通信とか輸送とかいう、いわゆる後方支援的な面のPKFについては触れておられた、そういう意味で触れておられたということになろうかと思います。
  370. 柳田稔

    柳田分科員 今の御説明で、現段階で日本協力できるところは非常に範囲が狭い、全体の活動から考えますと狭いような気がするわけなんですが、衆議院は通過したわけですけれども、参議院段階でこれからいろいろ議論されるわけでありますが、仮定のお話の質問はしませんけれども、現段階で行けないわけですから、PKOは通っておりませんので、そうした場合に、現段階での法律で行くというのは限られますよね。それだけを実際に日本がしたら、仮定になりますが、今行ったら、やはり国際的な批判というのは大分起きてくるものなのでしょうか。外務省としては、どのように御判断されておりますでしょうか。
  371. 丹波實

    ○丹波政府委員 まあ政府外務省といたしましては、今PKO法案を成立させていただきたいということで本当にお願い申し上げている段階でございますので、成立しなかった場合の状況につきましてお話し申し上げるのはなかなか難しいので御勘弁いただきたいと思いますけれども、非常に限定的なものにならざるを得ない。その点につきまして、これも明石さんの言葉ですが、もしそういうことであるならば、大変自分は寂しいという言葉を使っておられましたけれども、寂しいということで、明石さんは形容しておられたということを御紹介申し上げたいと思います。
  372. 柳田稔

    柳田分科員 先ほどロジというのがありましたけれども、これは民間人で十分足り得ることなんでしょうか。
  373. 丹波實

    ○丹波政府委員 これは特にカンボジアの場合には、森林地帯があるとかそれから治安状況とかいろいろなことを考えますと、純粋に民間の方を集めて一つの集団をつくって、その方々に輸送を担当していただくというのは、そういう問題のほかに装備をどうするかという問題もございますし、非常に困難ではないかというふうに考えます。
  374. 柳田稔

    柳田分科員 私ども、このPKO法案については、何とかして成立をさせたいという気持ちが強かったわけでありますが、結果的に国会の事前承認とすべきだという主張が入れられませんで、断腸の思いで反対をせざるを得なかったわけであります。今局長の御説明がありましたとおり、このUNTACに対してもできるだけの協力をしなければならないというふうには思うのですけれども、一方、私も昨年国連に参りましたときに、日本としてできることをしてくださいというのが一応公式見解で、会食をするときは、できるだけやってほしいという感じであったわけでありますが、ただ、やはり日本の国内の、国民の感情と申しますか気持ちを考えてみますと、まだまだ行くことについては、参加することについては、大変すばらしいことだけれども、隊として行くことについては不安があります、そういうこともありますし、アジア諸国の方も、懸念という言葉が当たっているかどうかは別としまして、若干心配をしている向きの国もあるように聞いております。  そういうことをトータル的に考えますと、どうにかしてシビリアンコントロールを強くする必要があるということで、我が党は今もなお国会の事前承認は必要だというふうに思っておるわけであります。PKOの重大さもわかりますし、国内のことも考えなければならないというふうには思うのですけれども大臣、この国会の事前承認についてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、またどう今後のPKOに協力すべきなのか、御見解がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  375. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 今衆議院で予算が成立いたしますとPKOの問題が必ず議題にのってまいります。そういうときに当たりまして、我々としては現在修正されて成立した案がいいと思っておりますが、それは各党間の話し合いで、最初に出すのですから、産むは案ずるよりやすしという言葉がありますけれども、まず産んでみてそして若葉マークで運転をしてみるのが一番わかりやすいのかな、そこらのところは各党間でひとつ話し合いで決めていただけることが一番いい、私はそう思って、今国対が中心にやっておりますから、私はそれ以上のことは申し上げません。
  376. 柳田稔

    柳田分科員 先ほど局長の御説明で、イデオロギーの対立はなくなった、一方紛争はこれからますます起こるであろうというふうにおっしゃっておりましたけれども、そうすると国連の活動、特にPKOの重大さが増してくるわけでありますが、その今後のことについて日本として、法案は法案と考えていただきまして、どういうふうにこのPKOに協力していくべきだとお考えでしょうか。
  377. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 野党の議員でも個々に聞くと、それはPKO法案に反対だという人はいるのはいますが、そうラジカルに反対しているという人はどうも少ないような気がします。また組合とかなんかの幹部の方も、我々も接触がないわけじゃないんですよ、会って話をしてみるとみんな常識的ですよ。この前自治労で調査をしてみたらこういうふうなアンケートが出たとかNHKが調査したらこういうアンケートが出たとか、あれは私は本当だと思いますね。今まで余り知らなかった。だんだん聞いてみると、まして今度のカンボジアに対しては東南アジアからもみんな八百人ぐらいの部隊を出すわけですから、中国まで出すわけですから、豪州はもちろん、じゃ電信の方は全部おれらが引き受けるとかね。そういう中で外国に軍隊を出さないという憲法を持っているインドネシアも、これは戦争でないし平和維持活動であるからこれは特別だ、出します。マレーシア、フィリピンも出す。ほとんどが出すんですよ。日本だけが憲法違反だから出せないとかどうとかと言っておったって、全くこれこそは理解に苦しむということになるんだろう。したがって国民もわかってもらえますから、国民の方は頭の切りかえが早いですから。だからちょうど掃海艇を出したときと全く同じで御心配は要らない、私はそう思っておるんです。
  378. 柳田稔

    柳田分科員 私も国会の調査でドイツもスウェーデンもカナダも行かせていただきまして、今大臣がおっしゃったとおりだろう、だろうというよりとおりだというふうに勉強させていただいて帰ってまいりました。ですからこのPKOというのはやる必要があると思われますし、行ってもそれほど変に心配するようなことはないというふうにも理解はしております。ただ一方、国民の感情なり日本の周辺の国の御意見をちょっと聞くと、やはりシビリアンコントロールを強化すべきではないかなという感じがしておりますので、できれば御理解を賜れば参議院段階でもうまく進むのではないかな、個人的にはそう思っております。  先ほどUNTACに対して三十億ドルぐらい要る、その三〇%の費用を日本が負担してほしいというような御説明がありました。その負担がどこから出るんだろうかということと、さらには法案が通ればPKOの訓練をしていかなければならないわけでありますけれども、この訓練を進めるに当たってもやはり予算が要るかと思うのですが、この予算はどこから出てくるのか御説明をお願いしたいと思います。
  379. 丹波實

    ○丹波政府委員 まず先生誤解のありませんように、三〇%というのは明石さんがそう言っておられたということでございますので、私たちがそれをどう受けとめるかは、そういう国連における分担率あるいは国連及び国際社会におきますところの日本に対する期待、それから日本の財政事情、内外世論というものを考えながら考えていきたいと思っております。  それでどこから出すかという点でございますが、まだ国連といたしましては、最初の立ち上がりの二億ドルは消えましたけれども、その残りの点については、難民のアピールはありますが、その残りの点についてはまだ決定いたしておりません。したがいまして、全体の決定がありましてから、どの程度をどの時期にどういう予算からということを考えてまいりたいというふうに考えております。  訓練の問題については野村審議官の方から答弁していただきたいと思います。
  380. 野村一成

    ○野村政府委員 法案のもとでの予算の仕組みでございますが、実は二本立てになっておりまして、一つは、法案が成立いたしますと恒常的な機関としまして国際平和協力本部が設けられます。したがって、その本部の予算というのがございます。それからもう一つは、個々に国連の方の要請を受けまして業務を日本が、我が国が行う場合に、PKOに参加のその業務に、例えばカンボジアPKOですと、それに要する費用と経費というのはその都度適切な予算措置をとっていくということに相なるわけでございまして、ただいまのところ平成四年度における予算といたしまして研修関係予算案として要求しておりますのは本部の恒常的なものでございますが、おおむね一千九百万円でございます。
  381. 柳田稔

    柳田分科員 各PKOについて参加費用は出すというお話でありましたけれども政府としては最善の法案ということでPKO法案を出しているわけでありますから、UNTACのことも既に頭の中にあるかと思うのですが、それに対する予算というのはまだお決めになってないということでしょうか。
  382. 野村一成

    ○野村政府委員 UNTACにつきましては、我が国が具体的な要請を受けまして、どういう分野でどういう活動をするかということがまず決められるべきことだと思います。その段階で具体的な予算措置というのがわかってまいるわけでございまして、それまでのところは具体的に申し上げることはできないということでございます。
  383. 柳田稔

    柳田分科員 ということは補正を組むということなんでしょうか。
  384. 野村一成

    ○野村政府委員 補正あるいは予備費ということがあろうかと思いますけれども、その時点におきましてどういう適切な予算措置がいいのか、財政当局とも話し合ってまいりたいと思います。
  385. 柳田稔

    柳田分科員 一般的なことを聞いてよろしいでしょうか。今も予算審議しておりまして、予算関連法案があります。ということは、法案が通ってから予算はどこからか探してくるというふうにすべての法案がそうなってしまうんですが、普通ですと予算があってその中に必要な法案があってともに一緒に走るわけですよね。今の御説明ですと、法案は走っていますけれども裏づけの予算はありません、決まってからどこからか探しできますというのではちょっと筋が通らないのではないかと思うのですが。
  386. 野村一成

    ○野村政府委員 この法案におきましても、個別の要請とかニーズがあったときに協力隊というのが構成される仕組みになっておヶまずし、それがいつの時点で具体的に起こってくるか、またその規模につきましてもわからないわけでございますので、どうしても今私が申し上げましたような仕組みにならざるを得ないというふうに考えております。
  387. 柳田稔

    柳田分科員 ドイツやスウェーデン、カナダヘ行ったときに、それの予算は組んでありますとおっしゃっていたのですけれども日本は法案が通ってもないのですか。何か不思議なことだと思うのですよ。最善の法案と思って出します、それはもちろん最善の法案だということで出すわけです。通さなければならないということで出すならば、その通った後の、実際にUNTACとかいろいろなものがあるわけですから、その裏づけの予算がない、通ったらそのときに考えます、国連から要請が来たら考えますということは、非常に理解に苦しむなと思うのですけれども
  388. 野村一成

    ○野村政府委員 本部の恒常的な予算につきましては既に予算要求させていただいておるわけでございますが、何分具体的な要請がなければ、予算としましてその所要額が幾ら必要かということを見積もることが技術的にも困難でございます。他方、私がそう申し上げることは、決して予算措置をとらないということではございませんで、国際平和協力業務を実施するために必要な経費というのは、それを含めてその都度適切な予算措置をとってまいるということでございます。     〔冬柴主査代理退席、主査着席〕
  389. 柳田稔

    柳田分科員 その都度措置をしていく。どこから持っていらっしゃるのでしょうか。
  390. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 予算というのはあらかじめ予見をされて計数的にはじき出せるもので積み上げてつくってあるわけです。それも半年も前からやっておるわけでありますから、しかし現在になっても、日本はUNTACに協力しなさい――これは協力しないようにと言う議員は野党といえども私は聞いたことないのです、みんな協力しろと言っているのですから。それで、相当持つべきだ、一二・五%でいいのか、もっと持て、野党の方、随分言っていますよ、私はきょうも内閣委員会でも質問を受けましたが。しかし、協力するにしても、額が決まらなければ予算にのせようがないのですよ、これは。したがって、本部経費はもうあるわけですから、あとはUNTACの費用でやるのですから、日本の費用じゃなくて国連の費用でやるのですから、国連の費用は各国がみんな持ち寄るわけですからね。そのときに、日本はまだ出せないでほかの国の予算でやってもらうかもわかりませんよ、それは。後から補正予算を組んで出すということかもしれません、直ちに何十億がある日突然一挙にということにはならぬわけですから。一年半とか長い月日の間にこれだけ入り用なんですというだけのことでしょう。ですから、それは間に合うのです。  だから、やり方はいろいろありますよ。技術的なテクニックの話でございますから、まして野党がみんな賛成しているんだったらそんな長年月は要さないはずでございますし、ただ、財源をどこからひねり出すかという財政上の苦労はございましょう。ございましょうが、それは予算技術上、この新年度の予算に計上するということは今言ったような事情で技術的に困難だと言っているだけです。実際上はそれはちゃんと実行できます。
  391. 柳田稔

    柳田分科員 UNTACの三十億ドルの三〇%と明石さんがおっしゃったのは、日本が国連に拠出をして国連から出るわけでありますが、そうじゃなくて、日本が派遣をする人の費用というのは、直接国内のどこかの省庁の予算が見なければならないのです。ですから、その予算がどこの省庁の管轄なのか、つまり、外務省なのか総務庁なのか防衛庁の予算なのか、どこから持ってくるんだろうかなと、縦割り行政とまでは言いませんけれども、その辺のこともはっきりしているべきことではないかなと感じます。  ではもう一つ、別の角度で聞きますけれども、法案の中に、PKOに従事することを希望する者は隊員とか広く人材を確保するということがありますが、訓練をしなければならないわけですね、いろいろなことで。各作戦ごとじゃなくて恒常的にずっと訓練をしなければならない。さらにもっと言うと、民間人を採用するわけでありますから、訓練もいろいろな多岐の面にわたって訓練しなければならないのですけれども、その人たち予算を考えた場合に、本部の経常的な予算が千九百万円で足りるのかな。この人たちの訓練、さらにはその間会社を休んで来るわけですから、そのときに休業補償というか賃金補償するんだろうか、さらには訓練が終わったから、はい、今回はないですからどうぞお帰りくださいといったときに、もと働いていたところが雇ってくれるのかどうなのか、先ほどの繰り返しになるかもしれませんが、その人たちの訓練に要する費用はどこが持つのか、御説明を願いたいと思います。
  392. 野村一成

    ○野村政府委員 先生御承知のように、法案では、十五条で研修についての特別の条項がございまして、民間人あるいは公務員の退職者等から一種の志願者という形で採用される方々については、そういう方々を含めましてこの法案十五条に基づく研修を行うことに相なります。他方、先ほど申しました具体的な要請があってこれでPKOを構成するということになりますと、その段階で先ほど御説明申し上げております所要の予算措置を講ずる、適切な措置を講ずるわけでございますけれども、その中にもやはり研修のための経費というのが当然計上されていくことになります。  それから、休業補償と申しますか、あるいは派遣終了後の再雇用のことについてのお尋ねでございますが、この点については特にこの法案では書いてございません。しかし、第十一条の志願者の中から採用される隊員につきましては、国家公務員法百三条一項あるいは百四条の適用を除外しているという部面がございまして、これは現に、例えば営利事業を営んでおられる方とかあるいは報酬を得て事業、事務を行っているという場合についても、その地位を持ったまま安んじてこの国際平和協力隊に参加できるように、そういった措置は講じているということでございます。
  393. 柳田稔

    柳田分科員 その都度集めて訓練をするわけですか。国会承認を求めたときの、それは相ならぬと言った理由の一つに迅速性が言われておったわけでありますけれども、その都度集めて訓練もせずに行くということは考えられませんから、訓練をし、さらには語学まで教えていくとなれば、その都度集めておって本当に迅速性はあるのかなという疑問が今ふと浮かんだのですけれども、本当にその都度集めていって、作戦にうまく協力できるのでしょうか。
  394. 野村一成

    ○野村政府委員 舌足らずで恐縮でございます。  この協力隊員に任命されるのは、既に関係行政機関等で国際平和協力業務を行うために必要な技術あるいは能力等を有する者があらかじめ予定されているという点がございます。私、恒常的な本部の研修費用を一千九百万円というふうに申し上げましたけれども、やはりこれは恒常的な機関、本部があるわけでございますので、常に一般的なそういう個々の派遣の必要が生じたときにどういうふうに研修について対応するべきかといった基礎的、基本的なことについて、やはり研究、検討を行っていく、そういうことを考えておるわけでございます。
  395. 柳田稔

    柳田分科員 研究、検討は既に終わってなければならないはずなんです。もう法案も出して既に衆議院も通過したわけでありますから、これから実際の訓練とか検討していきますということは、もう目前にカンボジアというのはわかっていたわけでありますから、具体的にこういうことをしなくちゃならないし、こういうことをしますというのも、もう法案を出す以前から一緒に検討していかなくちゃ間に合わないことだと思うのです。  時間が来たわけでありますが、予算措置も、今お聞きしますとその都度都度、行っていただける方もその都度都度と、非常に、聞けば聞くほど何か不安にならざるを得ないような気もしてくるのであります。外務省さんとしても、しなければならないということは先ほど大臣がおっしゃったように我々もよくわかっていますので、いろんな面で御努力をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
  396. 志賀節

    志賀主査 これにて柳田稔君の質疑は終了しました。  次に、伊東秀子君。
  397. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 大変遅くまで御苦労さまでございます。最後でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。大臣も御多忙のようですので、まず大臣からお聞きいたしまして、終わりましたらどうぞお引き取りくださいませ。  大臣は、日本の外交の基軸の一つとして国連中心主義ということをお挙げになっておられます。PKOについてもそれを考えてのことだとは思うのですが、PKO問題は抜きにいたしまして、具体的には、国連中心主義というのはほかにどのようなことをお考えでお述べになっていらっしゃるのか。例えば、国連の採択した条約の早期批准を目指すとか、あるいは国連の採択した見解を最大限尊重して従うよう努めるとか、そういうことを指していらっしゃるのかどうか、いかがでございましょうか。
  398. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 わかりやすく言えば、やはり国連で決まったようなことは、なるべく、できるだけそれに合わせるようにしていくということだと思いますね。一〇〇%というわけにはいかぬでしょうけれども
  399. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 最大限尊重するという御姿勢であるというふうに理解いたしました。  それで、予算委員会の一般質疑の中で、筒井議員質疑の中で、国連局長がセネガル・ケースというのを御説明になられました。これは、一九六〇年にセネガルがフランスから独立する前は、フランス陸軍で軍務についていたセネガル人にはフランス人と同じように年金が支給されていた。ところが、一九七四年に新しい法律をつくりまして、セネガル人の退役軍人には、フランス人とは別に扱う、平等に扱うのではなくて別異な取り扱いをする、一九七五年現在の年金額に凍結するという法律を新しくつくったわけでございます。この決定に対して、セネガルの退役軍人たちが不服として国連に通報したということがございまして、これに対して国連では、一九八九年の四月三日にこのような見解を採択いたしました。  まず、年金は国籍のゆえに支給されるのではない、過去についた軍務のために支給されるというのが第一点。第二番目には、独立による国籍変更はフランス人とセネガル人を別異に取り扱うことを正当化する根拠にはならない。したがって、結論なんですけれども、セネガル退役軍人に対する年金の凍結は国際人権規約の禁止する差別であるという見解を国連で採択したわけでございます。この見解に対して大臣はどういうふうにお考えになられますでしょうか。
  400. 丹波實

    ○丹波政府委員 大臣が御答弁あるいはなされる前に事務的にちょっと一言だけ私の方から。  大体事実関係は先生今おっしゃったとおりだと思います。ただ、重要なところであろうと思いますが、人権委員会は、そういう見解を下すに当たって、この年金水準の凍結ということが先生が今おっしゃったような理由で行われたことは合理的かつ客観的な基準に基づくものとは言えないということであのような見解を出しておる。したがいまして、その人権規約、B規約の第二十六条というのは、法のもとの平等ということを言っておりますが、逆に解釈いたしますと、国籍による差別ということがあっても、それが不合理なものでない限りそういうことも必ずしも排除されないということを意味しておるのだろうと考えております。  したがいまして、そういう差異というのが設けられた場合に、まさにそれが合理的かつ客観的なものであるかどうかということが重要なポイントでございまして、かつ、二つ目は、そういうセネガルのケースが各国、日本も含めまして、いろいろな個々具体的なケースにそのまま当てはまるのかどうかというのは、やはりそれぞれのケースの背後にある事情も勘案して考えるべき問題ではないかということであろうかと思います。
  401. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 大臣にお答えいただく前にちょっと付加させていただきますと、私はここに人権委員会の決定を持っておりますけれども、「国籍は第二十六条第二項にいう「他の地位」に該当する。」つまり、差別をしてはいけないということの中身は、「人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等のいかなる理由による差別」に対してもと。つまり、他の地位という理由による差別という形で、国籍は差別の理由にしてはならないということを含むということをはっきりこの決定にはうたっているわけでございます。  そういう意味では、今の国連局長の御説明は、つまり、国籍による差別は合理的理由にはならないということを言っているのかと思うのですが、その上で大臣の御見解をお願いいたします。
  402. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 私は、条約のこととかセネガルのことはわかりませんが、この間委員会で、要するに日本人で日本の帝国軍人として徴兵をされて、それで戦争に行ってけがをしたとか死亡したとかという方で、しかもその方が日本に在住しておるんだけれども、国籍が、戦争で兵隊のときは帝国軍人だが、戦後になって韓国籍なりほかの籍に変えられた。そこでそういうような人が援護法の対象から外れているのがあるというので、それは気の毒な話だねと。法律上どうなっているか知らないが、通達とか何かでいろいろ書いてあるというお話ありましたよ。法律で拒否されているものはもう法律ですから仕方ないでしょうけれども、あいまいになっているようなものだったら、そういう人はそれはお気の毒だから何か方法がないものか、調べてみようというような趣旨の話をしました。ただし、これは私の所管事項じゃないものですから、援護局のお話ですから、外務省所管でもありませんし、ただ国内法だけの問題なので、それはそういうことで検討してみたいというお話をしたのであります。  しかしながら、韓国におる方で、韓国におった、韓国で徴用された、兵隊に行った、こういうものは、これは日韓の協定でもう既に、個々にその分配とか何かというのはできませんから、だから当時の金とすれば三億ドルですから、大体一千八十億円ぐらいでしょう。そうすると、予算規模からすれば今の十分の一でしょうから、今の日本の規模からすれば実際は一兆何千億という話でしょう。そういう中で、そういうものを一切ひっくるめて入っちゃっているのですよ。だから、韓国でもその後で軍人さんや何かには何かやったそうですよ。多い少ないはそれは向こうの政府のやる話でありますから、どうこう我々は申し上げられない。だから、そういう点では一切解決済みになっております。  ただ、そうでなくて、韓国政府からも何ももらわない、日本におってしかも籍だけが変わったんだ、実態は何も変わらぬという人については、それは気の毒だな、何かならないものだろうかという話を私はしたのは事実でございます。これは一層検討させてもらいたいと思っております。  あとは、海外の問題は私はよくわかりませんので、こちらにひとつ。
  403. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 あと一分だけ。ちょっと今の積極的な御答弁、大変うれしく思うのですが、つまり今の措置は立法によってそうなっているわけですけれども、そういう意味では法の前の平等条項に、憲法やそれから国際人権規約に違反していると思われるわけですけれども、立法措置に対しても、今の外相のお考えを何とか立法を変える方向にもお力添えいただきたいと思うわけですが、その点についてはいかがですか。
  404. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 それは条約の方が恐らく後からできているんじゃないですかね。日本の方の法律が先にできているのかもしれません。そういう問題もございますから、よく検討させてもらいたいと思います。
  405. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 条約が前です。  どうもありがとうございました。  それでは条約局長にお伺いしますが、条約法条約、ウィーン条約ですけれども、五十三条に出てきます一般国際法の強行規範というのは、具体的には、よりわかりやすい言葉でいえばどういうことなのか。法律上の説明では「いかなる逸脱も許されない規範として、また、後に成立する同一の性質を有する一般国際法の規範によってのみ変更することのできる規範」とかいうふうに書いてあるのですけれども、具体的にお話しいただきたいと思います。
  406. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この五十三条の規定につきましては、この条約法条約の採択に至る会議で非常に多くの議論がなされたところでございます。いろいろな意見がございまして、そもそも国際法に強行規範というものはないんだという考え方もございましたし、いや、国際法にも強行規範というものはあるんだ、それじゃ具体的に何かということで相当に意見が分かれたわけでございます。  ただ結論的には、何らかの強行規範はあるであろう、そういうことで、一番関心を持たれましたのは武力によって条約の締結を強制するというようなことは許されないのではないかというようなことでございます。ただ、その点につきましても、伝統的な国際法ではそういうことも必ずしも禁止されていなかったという考え方もあるわけでございますが、少なくとも現在国連憲章のもとにおきましては、武力の行使あるいは武力による威嚇というものは禁止されているわけでございますので、そういう趣旨でこの五十三条の前の五十二条というのが置かれたわけでございます。  それから五十三条には、「締結の時に一般国際法の強行規範に抵触する条約は、無効である。」こう言っているわけでございまして、一つには現在も、例えば海賊行為を行うというようなことでございますとか、あるいは奴隷売買を行うというようなこと、そういうことが禁止されているというようなことは強行法規だという考え方もあるわけでございます。ただ、今後そういう強行法規がまた次第に一般国際法として発達していけば締結のときにそのような強行規範に抵触する条約は無効であるという規定が働いてくる、こういうことでございます。
  407. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 人間の基本的人権に関する平等、法の前の平等条項はこれに該当するんでしょうか。
  408. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 そのような規定が強行法規だというふうにこの条約の採択のときに主張された、あるいはそのように観念されたというふうには私記憶しておりません。先ほど申し上げましたように、条約の締結という観点から先ほど申し上げたようなことが主として論ぜられたということでございます。
  409. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 質問を変えますが、一九七九年に国際人権規約、さらに一九八二年に難民条約、これらに加入したときに、国民年金法と児童扶養手当法、特別児童扶養手当法それから児童手当法、この四法に関しては法改正をして国籍条項がなくなりました。ところが、いわゆる戦傷病者戦没者遺族等援護法、恩給法といった戦後補償立法十三法に関してはこの条約加入のときに法改正をしていません。これは何ゆえに法改正しなかったのか。国籍による差別であるというふうに私は考えるわけですが、その点についてはいかがでしょうか。
  410. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 そのおのおのの国内法におきまして国籍条項をどのように扱ったかという点につきましては、私どもその国内法を担当しておりませんので、関係の省庁の方から御説明いただきたいと存じます。
  411. 戸谷好秀

    ○戸谷説明員 私の方で所管しております援護法に関して申し上げますと、戦傷病者戦没者遺族等援護法における援護は、軍人軍属等国と雇用関係等にあった者に対しまして国が国家補償の精神に基づき行っているものだということでございますので、これは先ほど先生がおっしゃった難民条約等に言う社会保障、そういうものには該当しないということで改正をいたさなかったというふうに承知しております。
  412. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 私が先ほど説明いたしましたセネガル退役軍人のケースでの国連の採択した見解では、年金は国籍のゆえに支給されるのではない、過去においてなされた軍務のゆえに支給されるものであるというふうにはっさりうたっているわけでございますが、厚生省はこの見解に対してはどういうふうにお考えでございましょうか。
  413. 戸谷好秀

    ○戸谷説明員 お答えいたします。  セネガルといいますかフランスの年金法につきましては私ども詳しいことを承知していないわけでございますが、援護法につきましては、戦後恩給等が停止されていた戦傷病の軍人等あるいは戦没した軍人等の遺族に対しまして障害年金、遺族年金等を支給するために制定されたということで恩給法に規定されております国籍条項が受け継がれたものというふうに考えております。  御指摘の国際規約等でございますが、差別取り扱いの禁止を定めているわけでございますけれども、これは内外人の取り扱いについて合理的な差異を設けることまで排除したものではないというふうに伺っております。したがいまして、我が国といわゆる戦後分離独立した地域の方々の財産請求権の問題については、サンフランシスコ平和条約により特別取り決めの主題ということにされておりまして、韓国との間では、既に昭和四十年に請求権協定の中で法的には処理済みになっているというふうに承知しております。
  414. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 問題は、そのような処理の仕方が国際人権規約B規約二十六条、法のもとの平等に反しているということが問題なわけで、国籍による差別は合理的差別ではないということをはっきりとこの一九八九年四月三日の国連の人権委員会の決定はとっているわけです。これはセネガルがフランスから独立する前にセネガル軍人がフランス陸軍に加わったという事実と、朝鮮半島が日本国であった、そのために日本人として徴用されて軍に加わった、そしてその後朝鮮半島は日本の領土ではないということで切り離されたケースと全く同様のケースなわけですけれども、なぜこのセネガル・ケースでは合理的な差別ではなくて、戦後補償十三法は合理的な差別なのか、その根拠が全く論理的じゃないのですよ。何ゆえに国籍条項があることが、法のもとに反しない合理的な理由があるというのか、もう一度はっきり答弁してください。
  415. 戸谷好秀

    ○戸谷説明員 お答えいたします。  セネガルの独立の形とか年金がどういうふうに動いたかということについては私ども詳しく承知していないのでございますけれども、私どもといたしましては、援護法があるということと同時に、そういう分離独立された地域の方々の請求権についてはサンフランシスコ平和条約の特別取り決めの中で議論される、そういう法律全体といいますか、法律を取り囲むものを含めまして対応されてきているということで、私どもとしては、合理的な差異に当たるものというふうに考えさせていただいております。
  416. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 先ほどの外務大臣の御答弁では、非常に常識的に考えて、同じ日本人として軍に応召しながら、一方は日本人だから恩給や援護金を与えて、一方は韓国人あるいは北朝鮮人になったのだから与えないというのは何とも気の毒だ、何とかしたいというお気持ちを吐露されたわけですけれども、厚生省にはそういう気が全くないのかどうか、その辺はいかがでしょうか。
  417. 戸谷好秀

    ○戸谷説明員 私は事務方でございますので、法的にこういうふうに理解しているということでお答えさせていただいております。
  418. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 責任ある答弁がある程度できる方に来てほしかったのですよ。私はこの問題を言うということは当初から通告しておりましたし、そういうような御答弁ではとても満足できないのですよ。  戦後補償立法十三法に関しては国連の決定もある、それから裁判にも出されている、それから、二十一世紀、国籍のない社会をつくろうというこのボーダーレスの状況に向かっている、人権が何より大事だという方向に向かっているわけでございますが、そういう中にあって、検討するような状況は厚生省の中にはあるのかないのか、いかがでしょうか。事実で結構でございます。
  419. 戸谷好秀

    ○戸谷説明員 検討しておる事実はないということを、まことに申しわけないのでございますが、申し上げさせていただきます。
  420. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 外務省の積極的な、人権の立場に立った姿勢と比較して、本当に社会保障とか社会的弱者に対するさまざまな援護をしなければいけない厚生省の姿勢としては、残念きわまりないというふうに思うわけでございます。  次に、外務省にお尋ねいたしますが、一九九一年の十二月に国連に対して第三回の報告書をお出しになっておられますね。「市民的及び政治的権利に関する国際規約第四十条一(b)に基づく第三回報告」ということで、いろいろな人権上の問題点とかそういったことの報告をしているわけでございますが、今まで申し上げた法律における国籍条項については報告を上げておられない。これはなぜ報告しなかったのでしょうか。
  421. 丹波實

    ○丹波政府委員 突然の御質問でございますので、その報告書をちょっと手元に持っておりません。調べて後日、先生のところに御報告申し上げたいと思います。ぜひそういうことで御了承いただきたいと思います。
  422. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 全く報告に掲げてないのですよ。それはお帰りになればすぐわかることなんです。それを前提にいたしまして、この報告事項の中に記載していないということで、これはいずれ国連でいろいろ審議されるわけですけれども、当事者である方々は、この十三法問題に関心を持っている市民グループも含めてカウンターレポートを出す、これは明らかに国際人権規約B規約二十六条違反であるということでカウンターレポートを出すというふうに言っております。さらには、この問題は国連に提訴するとも言って、近々提訴されるのではなかろうかと思うわけでございますが、そういった場合に外務省としてはどういう態度をおとりになるおつもりでしょうか。
  423. 丹波實

    ○丹波政府委員 B規約四十条に基づく報告でございまして、このB規約の実施上問題になっていることを中心にして報告するということでございますので、そういう性格の報告書であることは先生御承知のとおりだと思うのです。  それで、先ほどからセネガルに関します人権委員会の見解につきまして先生御意見を述べておられますけれども、パラグラフ九・四というのが終わりの方にあります。その一番最後の文章ですけれども、そこのところで「合理的且つ客観的な基準にもとづく相違」、差別というのですか、相違というものはB規約第二十六条で禁止されている差別には当たらないということを言っております。それから、その九・五のパラグラフの一番最後の文章、つまりパラグラフ十のすぐ上にありますけれども、同じようなことを言っておりまして、先ほどちょっと私、触れたところですが、人権委員会としては、申立人の取り扱いというものは、この場合には合理的かつ客観的な基準に基づいていないので、したがってB規約で禁止されている差別に該当するという結論を下す、こういうことを言っておるわけでございます。私、先般の委員会でも申し上げましたし、先ほどもちょっと申し上げたつもりですが、国籍によって差異を設けることそれ自体がすぐ二十六条に違反するということではございませんで、その差異のつけ方が、まさにここで言っております合理的かつ実質的な基準に基づいていないところが問題である、こういうことであろうかと思います。そういう考え方でございましたので、恐らく今回の報告書にも入れなかったということだろうと思いますが、この点につきましては、調査の上、なぜ入れなかったかという点については、後日先生のところに御報告に上がりたいというふうに考えます。
  424. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 この事件は国連に近々提訴されることになるかと思いますので、この国際化時代の中で恥ずかしくない対応をぜひしていただきたいと要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  425. 志賀節

    志賀主査 これにて伊東秀子君の質疑は終了しました。  以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。  外務大臣初め政府委員各位、御苦労さまでした。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後七時三十一分散会