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1992-02-26 第123回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年二月二十六日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 山村新治郎君    理事 中山 正暉君 理事 原田昇左右君    理事 町村 信孝君 理事 村岡 兼造君    理事 村上誠一郎君 理事 串原 義直君    理事 野坂 浩賢君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君       小澤  潔君    唐沢俊二郎君       倉成  正君    左藤  恵君       志賀  節君    戸井田三郎君       中谷  元君    村山 達雄君       柳沢 伯夫君    山本  拓君       井上 普方君    伊東 秀子君       加藤 万吉君    小岩井 清君       新盛 辰雄君    関  晴正君       筒井 信隆君    水田  稔君       元信  堯君    和田 静夫君       石田 祝稔君    日笠 勝之君       冬柴 鐵三君    児玉 健次君       三浦  久君    伊藤 英成君       中野 寛成君    楢崎弥之助君  出席公述人         野村総合研究所         研究理事    奥村 洋彦君         立教大学教授  和田 八束君         北里大学教授  坂上 正道君         慶応義塾大学総         合政策学部教授 丸尾 直美君         東京大学経済学         部教授     貝塚 啓明君         名古屋商科大学         国際経済学科          長・教授    板谷  茂君  出席政府委員         内閣官房副長官 近藤 元次君         総務政務次官  遠藤 武彦君         防衛政務次官  魚住 汎英君         経済企画政務次         官       田中 秀征君         沖縄開発政務次         官       鴻池 祥肇君         国土政務次官  前田 武志君         外務政務次官  柿澤 弘治君         大蔵政務次官  村井  仁君         大蔵省主計局次         長       田波 耕治君         大蔵省主計局次         長       涌井 洋治君         文部政務次官  松田 岩夫君         厚生政務次官  園田 博之君         農林水産政務次         官       二田 孝治君         通商産業政務次         官       古賀 正浩君         運輸政務次官  佐藤 敬夫君         郵政政務次官  笹川  堯君         建設政務次官  金子 一義君         自治政務次官  穂積 良行君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ————————————— 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   鹿野 道彦君     中谷  元君   戸田 菊雄君     元信  堯君   中野 寛成君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   中谷  元君     山本  拓君   元信  堯君     戸田 菊雄君   伊藤 英成君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   山本  拓君     鹿野 道彦君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成四年度一般会計予算  平成四年度特別会計予算  平成四年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  平成四年度一般会計予算平成四年度特別会計予算平成四年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成四年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず奥村公述人、次に和田公述人、続いて坂上公述人順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、奥村公述人にお願いいたします。
  3. 奥村洋彦

    奥村公述人 御紹介にあずかりました奥村でございます。本日は、国際経済情勢に関しまして、我が国から見て重要な事柄と考えられる四つの問題を御報告さしていただきます。  世界経済は今大変重大な局面にございまして、日本がそれに深くかかわっておりますので、こうして御説明さしていただく機会をお与えくださいまして大変ありがたく存じ上げています。  第一の問題は、世界経済は今大きな歴史的な変革期にあり、対応を誤りますと重大な禍根につながるおそれがあるという点であります。アメリカの学者でキンドルバーガーという教授がおられますが、世界経済で力の移行期に危険なことが発生しからであると指摘しておられますが、今はまさにそうした時期に当たっていると思われます。  大きな変革が二つ進んでいます。一つは、アメリカ経済力後退であります。もう一つは、東ヨーロッパと旧ソ連における体制変更でございます。  まず、アメリカ経済力後退につきましては、八〇年代にとりわけ目立ってまいりましたが、最初は、とりわけ八三年から八八年にかけましては、外国からの借金で支えられまして高度成長を図っていたために問題が糊塗されていましたが、八九年春以降、成長率アメリカ潜在成長能力を下回ってくるにつれ、次第に表面化してまいりました。  例えば、製造業国際競争力について見ますと、現在、家電でテレビをつくっているメーカーは一社にすぎません。シェアは一二%でございます。工作機械は、かつてはアメリカで使いますものほとんど自国で生産しておりましたが、現在は半分は輸入しなければいけない。世界におけるアメリカ工作機械ウエートは、第六位の六・七%に低下しているわけでございます。なお、日本世界におけるシェアは二三%で、第一位でございます。自動車も、御承知のような事態になりまして、現在アメリカメーカーは、自国シェア、約三分の二に落ち込んでおります。こうした家電工作機械自動車における経済力後退はよく知られているところでございますが、今、飛行機におきましても、ボーイング社の最新鋭の飛行機777をつくろうといたしますと、設計図上は二一%は日本製という事態になってきております。  アメリカでも競争力弱体化につきましては、その原因が何によるものか種々議論されているところでございますが、決定的な点は、設備投資が現在一人当たり日本の半分しか行われていないという点でございまして、設備投資が行われない国では研究開発投資も行えない、したがって競争力も強くなれないという悪い循環に陥っているわけです。日米問題は、よく指摘されますが、こうしたアメリカの問題につきましては日本で問題にしているだけではございませんで、他のアジア諸国中東諸国ヨーロッパ諸国でも同様にアメリカの問題を指摘しているところであります。  アメリカについてはまだ後ほど触れさせていただきますが、世界の大きな変革のもう一つの点は、東ヨーロッパと旧ソ連体制変更であります。このうち、東ヨーロッパにつきましては、現在はまだトンネルの中にありますが、次第にトンネルを抜け出る時期を模索する明るい段階に入りつつあります。旧ソビエト地区につきましては、東ドイツポーランドの実験から、この後成長率が大きく落ち込み、失業率は恐らく二五%程度に達する可能性がありますので、旧ソ連につきましては、今後大きな問題になってまいります。社会主義体制から市場経済へ移行いたします場合に、これまでなかった流通、金融情報通信運輸といったインフラをまず整備しなければいけないわけですが、このインフラについては外国民間資金に依存するわけにはいきませんので、外国の公的な資金をまず取り入れてインフラをつくり、その後世界から民間資金を招くという段取りが必要でございますが、現状ではまだ順調な展開を見ていないところであります。しかし旧ソ連東ヨーロッパともに前進する以外道はないわけでございますので、今後数年にわたりましてかなり苦しい場面を経験して、中期的に明るい道につなげるものと位置づけておくことができます。  四つの問題をきょう申し上げようと思っておりますが、第一は、今申し上げた歴史的な大きな変革でありますが、第二の問題は、こうした大きな流れの中でことしの世界経済がどのように動いていくかという、足元の問題でございます。  現在、世界経済で明るい方向を向いている地域低迷を続ける地域と、二分することができますが、このうち明るい方向を向いているものは、中東地域東ドイツ、チェコ、ハンガリー、ポーランド地域といった旧東欧地域、そしてラテンアメリカのうちメキシコ、チリ、アルゼンチンといったところであります。しかし、こうした国は世界経済にとりまして中核になっている国とは必ずしも言えません。  世界経済中核地或であります。アメリカドイツ、旧ソ連地域は、ことしも低迷する状態が予想されるわけであります。とりわけアメリカについては大変懸念すべき状態にありまして、マイナス成長こそ脱しつつありますが、ことしアメリカに期待できる成長率はせいぜい一%前後でございます。  アメリカ成長率がなぜ低いのかにつきましては、表面的には消費者政策に対する信頼がないとか、不動産不況コンピューター不況だとか、あるいは州、地方政府赤字に陥っているといったことが挙げられておりますけれども、これらはあくまで表面的な理由でありまして、アメリカ経済低迷の根因は、八三年から八八年にかけまして外国借金を多く取り入れ、借金経済に陥る中で無理な高成長を図ってきたということであります。現在、その債務づけのまさに渦中にあるわけでございます。  ドイツにつきましては、旧東ドイツがかなり高い成長率になる。一部には一〇%近い高い成長を遂げるだろうという予測がございますが、これを織り込んだといたしましても、旧西ドイツを合わせたドイツ全域といたしましては、成長率は昨年の三%前後から、ことしは一%程度下がった二%程度しか財待できないという状態でございます。  私ども日本にとって、ドイツを見ます場合にもう一つ重要な問題は、ドイツ経常収支は昨年の赤字に続きましてことしもまた、米ドルにいたしますと百億ドルを超える赤字になるということでありまして、現在世界の各地が資金を求めているときに、ドイツからお金がたくさん出ていくということは期待できなくなっている点が日本にとっても重要な点でございます。旧ソ連につきましては多くのことが霧の中にあるわけですが、現在世界金融市場で旧ソ連についてわかっていることは、今後二、三年ソ連混乱は解消できないという点だけでございます。とりわけ、失業率が二五%程度まで上がってまいりますと、旧ソ連で二千万人を超える失業者が出るのではないかということになってまいりまして、こうした点をドイツ中心とする西側諸国は非常に恐れているわけであります。ドイツマルクに対して外国から投資が行われておりますけれども、もしソ連でこういった混乱が発生いたしますとドイツマルクも急落するのではないかというおそれすら抱かれているところであります。  このように、世界経済で明るい地域低迷する地域とございますが、どちらかといいますと低迷する地域ウエートが高いわけでありますので、私ども日本政策がこのバランスをとる上で大きなかぎを握ってまいります。  極めて今日的な問題で、アメリカ株高について一言触れさせていただきます。  現在ニューヨーク株価は続騰いたしております。しかし、アメリカ経済は大変な不振でございます。現在のニューヨーク株価は八五年ごろから上昇し続けたものでございますが、この七年間で約三倍の高さになっております。七年間で三倍もの高さに経済不振の中でアメリカ株価がなってきているということはかなり異様なことでございまして、世界的に政策を誤りますと、私どもが八七年に経験したようなことが起こらないとは言い切れない状態でございます。とりわけ今回のアメリカ株高は、アメリカ政府が思うように景気が回復いたしませんので短期金利を非常に下げてまいりまして、二十七年前の一九六四年、強かったアメリカの水準まで短期金利を無理に下げております。現在アメリカ預金をいたしましても、預金金利はほとんど物価上昇率と同じくらい、つまり実質金利はゼロでございますので、個人の資金がかなり預金から株に移って株高が発生しておりますので、私どもアメリカ経済は先行き明るいので株高になっていると必ずしも楽観視しておくことはできないわけでございます。  第三の問題といたしまして、このアメリカの構造的な低迷日本とのかかわりについて申し上げたいと思います。  八〇年代に入りましてから日本黒字累積いたしました。今、八〇年から昨年に至るまでの日本経常収支黒字を足し合わせてまいりますと約五千二百億ドルの金額になりますが、この間、アメリカ経常収支赤字の累計は八千九百億ドルに達したわけでございまして、現在日本アメリカとで八〇年以降発生させました金融ギャップは一兆四千百億ドルを上回っております。私どもが、アメリカ債務日本債権ということで、両者の差額が八〇年以降一兆四千百億ドルに達していることを考えますと、アメリカ経済はなぜ容易ならざる事態に陥っているかがはっきりするわけでございます。  こうしたアメリカ債務累積がなぜ可能であったか、なぜアメリカで八〇年代に外国借金でもって高成長を図ることができたかということが現在のブッシュ大統領政策を見ていく上で大事なポイントになるわけでございますが、この間、日本は本格的に外貨建て資産を蓄積する初めての段階でございましたので、初めはアメリカ中心にして積極的にジャパンマネーを海外へ出していったわけでございます。しかし、八九年ころになりますと、日本金融機関を初めとして日本投資家はかなり腹いっぱい外貨建て資産を蓄積し終えた段階に入ってまいりまして、いわば外貨建て資産蓄積の第一段階から第二段階に移ってきたわけであります。  第一段階のときには、アメリカ政府は容易に外国借金に依存して高成長を達成できましたが、ジャパンマネーが第二段階に入りますと、アメリカ政府にとりましては簡単に外国資金を取り入れて高成長を果たすことができなくなってまいりました。このことは、今アメリカ連邦政府とかアメリカ企業借金状態を考えますとはっきりするわけでございます。今アメリカ連邦政府民間企業のネットの借金残高をGNPで割ってみますと、現在は六六%、八〇年末には三三%でございましたから、八〇年代でほぼ倍増させました。朝鮮動乱を終えてからの四十年間で平和時最悪の借金状態に今アメリカは陥っているわけでございます。ジャパンマネーは一時はこうしたアメリカ政策を助けていたわけでございますが、現在はそうすることができなくなっておりますので、アメリカにとりましては日本お金とのかかわりで非常に困難な局面に入っている。  グリーンスパン・アメリカ中央銀行総裁に当たる方が十二月十八日になりまして初めて、アメリカ債務づけに陥っているので思うように景気回復ができないとお話しされているわけでありますが、私どもにとって注意すべきことは、こうした借金をし過ぎるとおかなか経済回復はうまくいかないということを昨年の十二月十八日になって初めて議会で中央銀行総裁に当たる方がお話しされるという状態でございます。  第四の最後の点でございますが、このような世界経済、とりわけアメリカ経済の構造的な問題を念頭に置いて、世界最大債権国であります日本国際的責務について一言申し上げたいと思います。  日本は今、世界経済の中で大変高いウエートを占めており、かつ金融面ではほとんど最大債権国になっているわけでございますから、世界経済に対しては日本は重大な責任があります。日本経済は自由な貿易と自由な資本移動という戦後のガット・IMF体制、そして変動相場制のもとで繁栄しているわけでありますから、このような舞台が変わるような事態に持っていくのは日本にとっても望ましくないわけでありますが、現在、世界の物差しで正本を見ますと、日本アメリカの間で、先ほど申し上げましたように巨額の一兆四千百億ドルを超える金融ギャップがある。その上に日本経済成長率は現在実力以下に低迷してきておりまして、かつ経常収支黒字が七百億ドルを超えるという状態でございますので、私どもは一九二〇年代に当時の債権国アメリカが誤った政策をとって世界経済混乱した、こういった経験を十分学んで日本経済政策を適切に運営して、アメリカ及び世界経済を助けるといった姿勢もぜひ必要になってきているのではないかと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 山村新治郎

    山村委員長 ありがとうございました。  次に、和田公述人にお願いいたします。
  5. 和田八束

    和田公述人 和田でございます。  私は財政税制の方を専門にやっておりますので、本日は予算全般につきましてその問題点と見ておりますところを申し上げまして、若干私の意見も申し上げたいと思います。  平成年度予算でございますが、いわゆるバブル経済崩壊後の状態のもとで、かなり苦しいといいますか、財政状況のもとで編成されているように思うわけであります。  そこで、財政の現在における課題といいますと、景気対策でありますとか、あるいは生活大国への基礎づくりでありますとか、あるいは世界状況の変化に伴う軍縮という課題でありますとか、あるいは国際貢献でありますとか、こういうふうな非常に大きな問題があるわけですけれども、これらの課題のどれが重点であるかということは必ずしも見えてこないところがあるのですが、それ以上に、これからの財政方向づけといいますか、これについての内容がはっきりしないという点が非常な不安感を抱かざるを得ないというふうに思うわけであります。  最近十年ぐらいの財政の動向を見てまいりますと、いわゆる財政再建というのが八〇年代以来大きな課題でありましたけれども、これに対して、八〇年代におきましてはいわゆる中曽根行革というのが行われまして、主として公共事業の抑制を初めとする経費削減、それから行政改革というのが行われまして、これらによって財政再建への方向がとられたということであります。必ずしもこれによって一挙に国債の減額というのが実現したわけではないわけでありますけれども、九〇年代の初めになりますと、いわゆるバブル経済によりまして税収入が非常に潤ってまいりまして、それによって公債依存度が低下するという非常にラッキーな状態になったわけであります。それに伴いまして、公共投資が一挙にふえる、あるいは福祉政策もかなり以前に比べまして増加するというふうなことになりまして、一応財政にとっては見通しができてきたように見えたわけですけれども、昨年から本年になりまして急速に税収入が鈍化いたしまして、今日に至った。  これから先一体どうなるのか、再び経費削減によりましてこれを乗り切るのか、あるいは財政再建見通しを、計画をここで変えるのかというふうなことが、一つ岐路といいますか、選択の岐路に現在立たされていると思うわけです。あるいは増税というふうな考え方も成り立つわけですが、これを一体どちらにいくのかということであります。  結果的にはかなり大幅な公債発行が行われまして、昨年、平成三年の公債発行が五兆円余りであったのに対して、七兆円以上ということでありまして、主として公債発行が税収の鈍化といいますか減少というものをカバーする、こういう形になったわけであります。今後これが、昨年策定されました財政長期見通しによりまして平成七年度までに公債依存度を五%程度にするというふうな、こういう一つ見通しというものが実現できるのかどうかということにつきましては非常な危うい感じを持つわけでありまして、その点が本年度予算において一つ不安材料ということになると思うわけであります。  公債発行につきましては、これを建設国債だけで賄うのか、あるいは特例公債発行にするのかというふうな問題が景気対策とも絡んで議論されたわけでありますけれども、同時に、歳出面におきましては国債費が年々かなりの額、本年の予算でいいますと十六兆円以上になっておりまして、その割合が二三%弱というふうなことでありまして、これは長期的にかなり予算圧迫材料になるということは言うまでもないわけであります。  したがいまして、現在の予算状況を見ますと、予算全体に占める一般歳出割合というのは五割強というふうなことでありまして、実際に国民が財政によっていろいろなサービスなり受益を受ける度合いというのは、一般会計の外見的な大きさに比べまして非常に小さいということであります。こういう状態がかなり長期的に続くということは非常な不安でありまして、一時的に公債の増発というのは財政上やむを得ない、あるいは景気対策的な意味もあるというふうに考えましても、長期的に見まして、このような財政状態が長く続く、あるいは公債累積が百七十兆円を超えるというふうなこういう状態は、やはり国民経済的に見ましても、あるいは財政状況からいいましても非常に不安な状態でありまして、早期に改善が行われるということが必要ではなかろうかと思うわけでございます。  その点につきましてまた後で申し上げることにいたしまして、次に税制改正について意見を申し上げたいと思うわけですが、税制改正につきましては既に抜本的税制改正というのが行われまして、この抜本改正内容というのはかなり社会的、経済的にも定着してきたところもあるわけで ありますけれども、なおいろいろな点で抜本改正の仕上げをするとか、あるいは見直しが必要であるということは言うまでもないと思うわけであります。  抜本改革のスローガンといたしましては、資産所得消費負担バランスというふうなことも言われたわけでありますけれども、必ずしもそれが最近において改善されているというふうには言えないわけであります。殊に、給与所得者といいますか、サラリーマン納税者数というのは年々ふえておりますし、それからいわゆる直間比率という点から見ましてもほとんど目立った改善というものはないわけでありまして、やはりサラリーマン中心としたところの所得税負担というものは低下しているとは言えないわけでありまして、次第に上昇傾向にあると言っていいと思うわけであります。抜本改革から既に何年かたっておりますので、ここでやはりサラリーマン減税といいますか、これを行う必要というのは極めて大きいというふうに言えるわけであります。  その点、本年は例えば地価税が施行されるわけでありますけれども、この地価税収入は一部を減税に充てるというふうなことも言われていたわけでありますけれども、そのような地価税収入を見込んだところのサラリーマン減税というものが実現しなかったというのは、かなりそういう給与所得者にとっては落胆する結果になっていると思われるわけであります。  それに対して相続税は、評価の改定などもありまして、それに伴う相続税課税評価適正化というのですか、これに伴ってその調整ということで減税が行われ、さらに小規模宅地等にかかわる課税特例ども拡充されて、相続税については唯一減税の対象になっているわけでありますけれども、もともと相続税といいますのは、資産の不平等といいますか、こうしたものを是正するということで、あの狂乱地価上昇というふうなもとでの地価対策の一環としてもかなり重視されたわけでありまして、それがこのような相続税評価の見直しということに実現された向きもあるわけでありまして、そのようないきさつからいいますと、かなりほかの税項目に比べまして相続税減税というのは過大ではないかという感じがするわけであります。  ここでやはり相続税の持っております資産の公平という観点を維持するということでいえば、若干この評価の改正によって負担の増加という結果になる部分もあるわけでありますけれども、さらに大きな相続税の目的ということからいいますと、かなり過大な減税になっているのではないかというふうな感じがいたしまして、ここのところやはり私といたしましては、給与所得者に対する減税というのが非常に必要であったのではないかというふうに思うわけであります。  それで、全体として増税が行われたということは、税収の減少に伴う歳入の問題からいいまして一つの対応ではあったかと思うわけでありますけれども、やはり財政のあるべき姿ということでいいますと、安易に増税で収支を償うというのではなくて、歳出の面での見直しというものを十分に思い切って行うということが必要ではないかと思うわけであります。  しかしながら、現在の財政の歳出のあり方からいいますと、かつて公共事業費を長期にわたって抑制したというふうなことを再び行うということは事実上できないわけでありますし、また、社会資本の充実というものが特に必要になってきているということが言えるわけであります。あるいはまた福祉、社会保障予算というものは、高齢化社会を控えましてこれを抑制するということは、これも不可能なことであります。  そういうふうにして見ますと、なかなか、歳出の抑制、削減とかあるいは財政に直結するような行政改革といいましても、すぐに効果があるようなものがあるというふうには思われないわけであります。  その中で唯一、一つの歳出削減の面での期待が持たれる部分というのは防衛費ではなかろうかと思うわけでございます。  従来、防衛費につきましてはいろいろな問題がありまして、必ずしも削減というところに直結しなかったわけでありますけれども、今日は防衛費をめぐる環境といいますのは、国際状況の変化でありますとか、あるいは国際的な貢献でありますとか、そういうふうな観点からいいましても非常に条件が整ってきているわけでありまして、今後、歳出面における合理化あるいは歳出の抑制というふうな観点からいいましても、唯一期待のできるのが防衛費ではなかろうかと思いますので、中期防の見直しでありますとか、あるいは定員の削減等も含めまして、防衛費をいかに削減するかということが歳出面においては一つの重要なポイントになるのではなかろうかと思うわけであります。  それからもう一つ、この予算において理解が非常にしにくいという部分でありますけれども、NTT株の収入による事業というのがありまして、これは、従来一兆三千億円ぐらいこれが充当されていたわけでありますけれども、本年はその財源の裏づけがなくなったということで、主としてBタイプ、いわゆるBタイプと言われる部分でありますけれども、この部分につきましては建設国債発行しているということであります。そのことによりまして、表面的に公共事業費がかなり前年に比べて一般公共としては増加するとか、あるいはその分につきましての公債収入がふえるというふうな結果になっておりまして、結局NTTの収益事業といいますのも一般公共と一体的に行われてきたわけでありますので、いきなりこれを一兆円以上削減するということも公共事業の確保という点からいうと問題があるということはよく理解できるわけでありますけれども、しかし、従来NTTの収入というものがあって、それを国民に還元するということで行われてきたわけでありますけれども、どうも非常にわかりにくいわけでありますし、今日のように建設国債で財源の裏づけをしなければならないということになってまいりました以上、このNTT事業のあり方というのも、もとに戻しまして一般公共の中に含めるというふうなことでないと非常にわかりにくいのではないかという感じがいたしますので、一つの検討事項ではないかと思うわけであります。  最後になりますが、以上のようなことで、私は、現在の財政問題で非常に重要者のは、やはりバブル経済崩壊後の今後、どのような方向づけをしていくのかということでありまして、これを国民の目によくわかるように示していただくということが大事だと思うわけであります。  その点からいいまして、一つのあり方といたしましては、やはり長期財政計画というのを本格的なものを一つ立てる必要があろうかと思うわけであります。今までは収支見通しということで一つの試算が行われたりいたしましたけれども、もう少しはっきりした形で、何といいますか、一定の成長率のもとでの歳入の見通しというものを明確にするということと同時に、財政バランスを、収支バランスを長期で考える。  いわゆる単年度主義でやりますと、この年度に歳入が不足いたしますと公債を増発する、逆に、バブル経済時のように税収入がかなり豊富に入ってまいりますと、それを単年度で歳出化するというふうなことになってしまいますので、やはり従来の経済の状況からいいましても数年という区切りで変動があるわけでありますので、地方財政などではそういうものに対応するために一つの基金を設けて財政の調整をやっておるわけでありますので、国家財政におきましてもそういう手法というものが必要ではなかろうかというふうに考えますので、ひとつ御検討をいただければ幸いだということであります。  それからもう一つは、財政状況が非常によくない、あるいは赤字である、国債発行しておりますので赤字であるということになりましても、これは一般会計について言えることでありまして、財政といいますのは特別会計それから政府機開会計全体を通じて存在しているわけであります。 で、これら全体を見てみますと、必ずしも一般会計で見るような歳入不足といいますか、問題があるのかどうかということであります。  昨年の政府予算が出た段階での新聞報道などによりますと、一般会計では不足しているけれども特別会計では非常に剰余金などがあるんだ、全体で二十六兆円にも達しているというふうな新聞報道がありまして、私も全体を見ることはできなかったわけでありますけれども、特別会計の幾つかを見てみますと、不用額というのが非常に多い、一割ぐらいを占めている特別会計が幾つかあります。それから剰余金収入というのがかなりありまして、四割ぐらいに達している特別会計もあるというふうなことでありまして、一般会計こそ非常に厳しい状態でありますけれども、これを総合的に見ていく必要があるのではないかというふうに感じますので、ひとつ特別会計、一般会計を通ずる財政の見直しというものが必要ではなかろうかというふうに感じましたので、その点を申し上げまして終わりにいたしたいと思います。どうも失礼しました。(拍手)
  6. 山村新治郎

    山村委員長 ありがとうございました。  次に、坂上公述人にお願いいたします。
  7. 坂上正道

    坂上公述人 坂上でございます。  本日は、平成四年度の予算案の審議に関連をいたしまして、医療の問題につきまして見解を述べる機会が与えられまして、大変光栄に、またうれしく存じております。六年間、病院長それから看護学部長を併任いたしました体験も交えまして見解を述べさせていただきたいと思います。  まず、私どもの国の医療の現状でございますけれども、戦後の公衆衛生対策、それから経済の発展、それから社会基盤の充実というようなものが裏づけになったと思いますが、加えまして医療技術の進歩によりまして、私どもの医療の状況というのは世界的に見て第一級の数字になっております。  数字が一つの論理でございますので、数字を申し上げますと、御存じのように平成二年に寿命が男性において七十五・七、女性において八十一・五というのはまさに世界一であります。それからなお誇るべきは乳児の死亡率でございまして、これが四・六ということでございまして、まさに世界最低であります。ちなみにアメリカが九、ドイツが七でありますから、これは大変な数字でございます。  それから医療の制度でございますが、現在提供されております医療内容は欧米諸国と比べて遜色のない水準にあると思います。この水準に達しているという内容は、医療のアクセシビリティーと申しますか、医療を受けやすいというその安易さ、それから医療の水準、それから医療保険の適用範囲が非常に広い、こういうことが言えようかと思います。  ただし、ここで申し上げたいことは、医療費でありますが、これは国民医療費という言葉が俗な言葉であるそうでありますけれども、かって五年前に平成元年を二十二兆二千億というふうに読んでおりましたけれども、実績が二十兆六千九百億でございました。すなわち一兆五千億ぐらい、単純な俗を言葉で申し上げますと抑え込まれているわけでありまして、そのことがよいことか悪いことか、またどこに原因があるのか、それから何らかのひずみをそれがいざなっていないかということは考えるべき問題であります。ちなみに平成二年は二十一兆七千二百億というふうな想定でございますけれども、これが予想値からどのくらい、また単純に申し上げる言葉では抑え込まれるかということは、数字上の一つの分析すべき問題であろうかと思います。  次に、医療を取り巻くさまざまな情勢の変化でありますが、当然御存じのように疾病構造が変化をいたしまして、感染症から成人病、非感染性の慢性疾患に疾患構造が変化をいたしまして、現在の三大死因は悪性腫瘍、それから脳血管障害、循環器疾患の三つでありまして、これが三大死因であります。したがいまして、がんの問題その他を伴いまして、入院生活の長期化というようなことが問題であります。なおかつ、御案内のように、人口の高齢化によりまして、老人医療というものが大きなウエートを占めてまいりました。これが在宅医療につながる問題、それから末期医療における医療のあり方ということにつきまして大きな問題を投げかけているわけであります。  国民の側から見ますと、医療ニーズの多様化が起きてまいります。したがって、多様な医療に対応する必要が医療機関にも必要であります。それと同時に、根本的に治療中心から予防、リハビリというようなことで、医療概念に変化が生じてまいりました。  これを担うべき医療技術でありますが、医療技術につきましては、先端高度技術というものが医療分野にも応用されまして、いわゆる脳死、臓器移植というようなことが問題になりましたことは御存じの点であります。しかしながら、高度技術が医療に応用されるということに伴いましては、それを制御する人間的な配慮というものが必要でありまして、したがって、医療が人間的な温かみを持つこと、医の心というものが尊重されまして、医療担当者と患者との間の会話、コミュニケーション、信頼関係が成り立つということが極めて大事な問題になったと思います。これがインフォームド・コンセントという言葉、これを説明と同意というふうに日本医師会は訳しておりますが、要するに患者さんに対して十分な情報を提供いたしまして、そして同意を得ながら医療を進めるという医療が近代の医療では必要であるというような変化をいたしているわけであります。  それから、それに対応する医療機関の整備でありますが、これは量的な整備に関しましてはほぼ目的を達しているだろうというふうに言うことができます。すなわち、ベッドが既に百二十六万床ございますが、これは医療計画制度の導入による病床規制というようなことを行ってみますと、現在数字におきまして十万床既にオーバーしておりますので、量的には目的を達しているということが言えるかと思います。しかしながら、なお僻地問題その他がございまして、同じように健康保険の費用を払いながら、また税金を納めながら、僻地の方々が医療を受けられないということは大変問題でありまして、量の充実の中に僻地問題などの医療の偏在という問題を問題にいたしたいというふうに存じます。  それから、質的な充実でございますが、これは、先ほど申し上げましたように、人口の高齢化、疾病構造の変化、あるいは医療技術を取り入れるというようなことでございますが、このために、現在存在しております量的には満ち足りました医療施設機能というものを体系化いたしまして、医療資源を有効に使うという意味から、医療を適切に提供できる体制の整備ということが必要であろうかと思います。これが、議会で継続審議になっております医療法の改正という問題につながるかと思いますが、この医療機能の体系化というものは時間のかかる問題ではありましょうが、私は早速に手をつけるべき問題であろうというふうに考えております。  それから、医療を支える医療従事者の対策でありますが、これは医者の問題につきましては、御存じのように一県一医大というような問題で医師がたくさん養成されまして、既に平成二年、人口十万に対して百七十一というレベルに達しておりますので、医師は既に十分な量に達しているということが言えようかと思います。むしろ平成七年に向かいまして一〇%削減という手が打たれておりまして、これは医師の養成のために必要な一つの計画であろうというふうに存じております。  しかしながら、この数のそろいました医者におきましても、やはり質の向上ということは問題でございまして、私も医学教育を行う立場からいいましても、今後の医者のあり方に関しましては、大変重大な問題があると思っております。すなわち、現在の若い医者は臓器専門というものに向かいまして、人間全体がわかるという医者になっていかないおそれがあります。もちろん臓器専門家の存在も必要ではございますけれども、そういう能力を持つと同時に、全人的な医療が行えるという医者の養成が必要であろうというふうに存じます。そういう意味では、医学校を卒業いたしました直後の初期臨床研修というものは極めて大事であるというふうに存じております。これが、インターン廃止以後、努力規定のままとどまっておりまして、臨床研修の制度の整備がおくれているということにつきましては、大事な問題でありまして、今後充実させる必要があるということを痛感いたしております。  それから、ナースの問題でありますが、看護職は非常に大事な仕事でございまして、皆様が御病気になってごらんになればすぐわかることでありますが、医師と患者との間に立ちまして、その両方の中間の位置を担ってくれる、しかも病者の傍らにありまして常にケアをしてくれるのは看護職であります。ケアという言葉は、ギリシャ語のカーラーから来たそうでありまして、カーラーというのは悲しみをともにするという共感の意をあらわします。そういう意味におきまして、ナースが患者の傍らに常にいてくれる、そして共感をしてくれるというところから医師もまた医療情報、患者の情報をとらえることができるわけでありまして、大事な位置にある職であるということを強調いたしたいと思います。  国でもこの需給計画は計画を立てておられまして、平成二年度末では八十三万人というような数でございますけれども、この計画に対しましては、なお十万近い不足がございまして、看護婦の数の充実ということは大事な問題であります。ちなみに、平成十二年、紀元二〇〇〇年には百十六万人へ持っていこうというのが第四次につくられましたナースの養成計画であります。  このナースの確保に当たりましては、医療が非常に高度化している、今後在宅ケアが進むであろうという環境の変化に対応いたしまして、質の高い看護職員の確保が大切であるというふうに存じます。さりながら、若年人口というものはいよいよ減少するわけでございまして、その中からナースのマンパワーを確保するということは大変な問題でありまして、いわゆる三Kというようなイメージの語る言葉が巷間言われておりますけれども、その辺の解決をぜひする必要がある。これによりまして、看護婦不足による医療機能が落ちるということのないようにしていただきたいと思います。  この点につきましては、この予算案を拝見させていただきますと、大幅な予算の増がなされておりまして、今回の医療費の改定におきましても、引き上げ五・〇のうち看護関連に二・六%というような改定がなされておりますことは評価することができると思います。しかし、これが先ほどのキャンペーンに動かされまして単発的になされたということではなくて、ぜひ中長期的な視点に立ちまして、看護婦の養成、待遇の改善ということを進めるようにお図りをいただきたいと存じております。  なお、しかし、この看護業務の中には改善すべき点も種々ございまして、現在は厚生省の中の検討会に私も参加いたしておりますが、業務そのもののあり方の改善ということにつきましては、なお工夫を凝らしてまいりたいというふうに存じております。  総括いたしますと、現在日本の医療というものは、数の上においての充実はなされておりますけれども、質の上での充実というものが考えられるべきであるということになろうかと思います。  以上をもちまして、私の公述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  8. 山村新治郎

    山村委員長 ありがとうございました。
  9. 山村新治郎

    山村委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷元君。
  10. 中谷元

    中谷委員 三人の先生方には、お忙しいところ国会までお運びいただきまして、将来に対します適切な御提言を賜りまして、まことにどうもありがとうございました。  歴史におくれる者は歴史によって罰せられると申しますけれども日本の政治や経済もこういった世界の中でおくれてはならないと思っておりますけれども、まず第一に、奥村先生にお伺いをさしていただきます。  今世界は力の移行期にあるということで、非常に、東西の冷戦後の状況を見てみますと、湾岸戦争でもわかりますとおり、やはりアメリカの政治経済が世界の平和秩序維持のためにはなくてはならないということで、日本アメリカの政治経済を積極的にバックアップしていこうという方針で臨んでいるわけでありますけれども、先ほど先生のお話の中で、もはやこのジャパンマネーが飽和状態に来ているということで、グリーンスパンさんも、債務づけで経済改革はもはやうまくいかないというふうな状況で、低金利で株を上げる政策をしているということにしておりますけれども、果たしてこの株が下がればどうなるかという心配もありますので、今後のこのアメリカ経済は果たしてどうなるかということと、それから日本の現状を見てみますと、非常に今までのパターンでいきますとバブルが崩壊すると景気が悪くなって、そうなると国内よりもむしろ外国へ輸出をする、そうなると外圧が高くなって日本金利を下げて結局またバブルが起こってしまうというようなことで、これからバブルがまた復活するんじゃないかという心配がありますけれども、このような世界経済の中で日本経済はどのような方針で進んでいくのかという点について、二点お伺いさせていただきます。
  11. 奥村洋彦

    奥村公述人 お答えさしていただきます。  ただいまの中谷先生の御質問の第一は、日本からお金アメリカへ入らなくなっていることと、アメリカ政策アメリカ経済の先行きについてでございますが、ジャパンマネー自体は現在世界最大の対外資産を持っている、豊富な量を誇っているわけでありますし、また、ことしを考えますと、日本経常収支黒字は七百億ドル程度出ようかと思いますので、日本お金自体は豊富にございます。  しかし、これまで、とりわけレーガン大統領のときのように日本お金が簡単にアメリカへ入っていく状態にあるかといいますと、当時とは違って、現在の日本投資家は外貨建て金融資産、とりわけドル建ての金融資産をかなり多く持っておりますので、よほど魅力がないとアメリカへは入りにくくなっております。この点が現在のアメリカ政策の手足を縛ってきているというふうに考えます。アメリカの経済は二%から二・五%成長する実力がありますけれども、ことしアメリカに期待できるところは一%程度のプラス成長になろうかと思いますので、アメリカにとってはことしも実力を下回る成長率低迷を余儀なくされるのではないかと判断いたしております。  第二の点は、こういった世界とのかかわりでの日本政策、とりわけ日本金利を下げた場合にどういう結果になるだろうかという点であろうかと思いますが、日本経済が一九八六年から八九年へかけまして過剰なマネーの供給が行われ、いろんな資産の値段が暴騰いたしました。その後、過去一年半ばかりかけましてこの過剰なお金を吸い上げてまいりましたので、私はきょう時点では日本経済に過剰なお金はほぼなくなってきていると考えております。したがいまして、これからはお金の量は正常な部分、今回政府でお立てになられました新年度の経済成長率三・五%を目指す運営にふさわしいお金の量の増大に変えていきませんと政策目標は達成されないわけでございますから、これからは本腰を入れて通貨の量を正常な伸びに戻す必要があると思います。  そうした場合にまた土地など資産の値段が上がってくるのではないかということでございますが、私はそのおそれはないと思います。過去数年、資産価格が暴騰いたしましたのは、ただ金利が低かったから暴騰したということではございませんで、一部でお金を取り入れてきて銀行に預金いたしますと、かえって預金金利の方が調達コストを上回って、したがってマネーがふえ過ぎたという嫌いがございますが、現在はそういう金利体系にはなっておりませんので、ここでマネーをふやしあるいは金利を下げましても、また資産価格の暴騰を引き起こすということにはならないと思います。  どうもありがとうございました。
  12. 中谷元

    中谷委員 どうもありがとうございました。  それじゃ和田公述人にお伺いをさしていただきますけれども、先ほどのお話の中で、唯一予算で削れるのは防衛費が削れるというふうなお話がありましたけれども、一体防衛費のどの面が削れるのかということでありますが、例えば、北海道なんかでも地域経済の活性化のために社会党の先生方も駐屯地部隊を削らないでくれというようなお声も上げていただいているということでありますけれども、この点と、それからもう一つは、地方にあるような基金を国に積んだらいいというふうに言われておりましたけれども、国は非常に財政的に厳しくて現在金がないわけでありますけれども国債を出してまでも基金を積めというふうにおっしゃるのでしょうか、その点につきましてお伺いをいたします。
  13. 和田八束

    和田公述人 最初のお尋ねでございまして、防衛費ということを申し上げたわけでありますけれども、歳入項目をいろいろ見てみますと、最近公共事業費がやはり増加傾向を回復してきているということでありますし、それから社会保障費も一定の規模を維持しているということで、この辺は一般歳出の中では大きな費目になっております。今後、この歳出面の合理化、見直しというふうな対象が一体どこにあるのかということになりますと、やはり唯一防衛費ではなかろうかというふうに見ておるわけであります。  しかし、これは単年度で幾らということを申し上げているわけではなくて、やはり長期的な方向の中で、例えば、中期防の見直しとかあるいは定員のあるべき姿というふうなことの中で、従来の増加方向だけということではなくて、国際的な状況も踏まえて考えてみるならば、この辺が財政の、といいますか、一般歳出の中での見直しの一番中心になるのではないかということを今申し上げたわけであります。  お尋ねにもありましたように、一部やはり、何といいますか、自衛隊によって地域経済が、貢献といいますか、潤っているというふうな、いわゆる基地経済といいますか、これは自衛隊だけではなくて米軍の基地なども含めてあるわけでありますが、これはなかなか基地経済からの脱却ということは以前から地域経済の中でも言われてきておりまして、基地経済というのは、非常に経済としては単純になって基地にだけ依存するということになりますので、いろいろな産業のバランスをとった経済開発ということが非常に必要になってまいりまして、そういう点からやはり地域の人たちの努力というものが必要なわけでありまして、基地がなくなったら非常に困るというのは、これは私はその地域住民の皆さん方全体の意向がどうかということはかなり疑問に思えて、これも短期的にはそういう状況も出てくるかもしれませんけれども、やはり今後長期的なあり方としては十分に考えていかなければならぬ、こういうふうに考えております。  それから、基金の点でありますが、そういうふうな、これも単年度で、本年無理に積み立てるというのじゃなくて、逆でありまして、今年などはどちらかというと基金が仮にあるとすれば取り崩す年度になるわけでありまして、かつてのように歳入が比較的順調に増加したというときに基金を積み立てるということでありまして、恐らく不況期というのは二年とか三年とか、こういうふうな期間で続きます。それから好況の時期というのはその次に二年なり三年なり、まあ今回の好況は非常に長く続いたわけでありますけれども、こういうふうな大体五年とか六年を周期にいたしまして好況と不況とが入れかわるということでありますと、好況期に一定の基金を積み立ててそして不況期においてそれをある程度取り崩して使うというふうな、こういう考え方でありまして、これを好況期における収入を全部使い切ってしまって後で国債はまた増発するということになりますと、これはいつまでたっても国債依存財政から脱却できないのではないかということで申し上げたわけでありますので、ぜひ検討していただければというふうに思います。
  14. 中谷元

    中谷委員 どうもありがとうございました。  それじゃ最後に、坂上先生にお伺いさしていただきますけれども、医療も量より質の時代というふうなことで、大きい見地に立ってのお話でありましたけれども、お医者さんの問題でありますけれども、最近若いお医者さんが、もうお医者さんも飽和状態になっているということでなかなか新規開業が難しいということでありますけれども、そもそも自由社会の世界において、能力がある人がそれぞれの自分の才能を生かすというのが自由社会の理想でありますけれども、こういった若いお医者さんに生きがいと夢を持たせるようなこれからの、地域医療計画なんかもありますけれども、医療計画という中でこういった自由開業ができるような道が開けるかどうかという点についてのお考えをお聞かせいただきたいということと、それから、今病院の統廃合なんかも非常に地方では進んでおりますけれども、果たして小さな診療所を各地にたくさんつくっていく方向で進むのか、それとも、交通が便利になったので大きな総合病院を町につくって統廃合を進めていくかというふうな選択を迫られている地方自治体が多いわけでございますけれども、そういった点につきまして、どっちの方向の方がいいのかという点をお聞かせいただきたいと思います。
  15. 坂上正道

    坂上公述人 御質問いただきましてありがとうございました。  まず、ドクターの新規開業の問題でございますけれども、多分皆様方のお目にとまっております医師の分布の統計として、三十五歳のところに山がありまして、これが勤務医である、それから六十のところに山がありまして、これが実地医家であるというようなことがお目にとまっていると思うのですが、平成元年度の医師の実態調査が出まして、ちょうど三十五ぐらいの山のところに実地医家の小山がちょっとでき始めているんですね。ですから、これは自然現象として勤務医が飽和状態に達しましたので、やや流れて開業医の数の峰が小さいけれどもでき始めつつあるという実態でございます。ただし、これがどういうふうな新規開業しているかということは問題でございまして、やはり開業のための資金が困難であるということは一つの問題であろうと思います。したがいまして、ビル診とかあるいはグループ診療というような形で開業が行われているのかもしれませんが、数字まで整った実態はよく私も存じません。  今後は、先ほどのお尋ねでございますが、やはり診療所というものは家庭医機能を持った立場でどうしても必要なものであって、病院がどんどん拡大するという方向だけではいけないと思います。それから病院にとりましても、先ほど申し上げましたように、やはり高度医療を行う場所とそれから慢性疾患を扱う病院というようなものが分けられるべきでありまして、そういう機能分化をいたしませんと、すべての病院がすべて充実して、すべて高度医療も何もかもやるというようなことは、医療資源の使い方からしてむだであろう。したがって、病院の体系化、機能の分化が必要であるというふうに存じます。  ありがとうございました。     〔委員長退席、中山(正)委員長代理着席〕
  16. 中谷元

    中谷委員 時間がちょうど終了いたしました。三人の先生方、どうも本当にありがとうございました。
  17. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 次に、小岩井清君。
  18. 小岩井清

    ○小岩井委員 お三人の先生方、きょうはお忙しい中をお運びいただきましてありがとうございました。  最初に和田先生にお伺いをいたしたいというふうに思います。  経済企画庁は昨二月二十五日に月例経済報告を出しました。昨日のことですから若干この内容を申し上げますけれども、この月例経済報告によると、   我が国経済については、需要面では、個人消  費は基調として堅調である。住宅建設は減少傾  向にあるが下げ止まりの動きがみられる。設備  投資は総じて根強いものの、伸びが鈍化してい  る。産業面をみると、在庫は増加傾向にあり、  鉱工業生産は弱含み一進一退で推移している。  企業収益は総じて減少しているものの、依然と  して高い水準にある。企業の業況判断には、減  速感が広まっている。雇用面をみると、有効求  人倍率がやや低下しているものの、労働力需給  は引締まり基調で推移している。このように、  我が国経済は、景気の減速感が広まっており、  インフレなき持続可能な成長経路に移行する調  整過程にある。   政府は、内需を中心とするインフレなき持続  可能な成長経路への円滑な移行を図るため、き  め細かに経済運営に努めてきたところである  が、引き続き内外の経済動向を注視し、適切か  つ機動的な経済運営に努めることとする。となっております。平成四年度の政府の経済見通しは、実質経済成長率三・五%、名目五%であります。しかし主要民間研究機関の五十四機関の平均については、実質三%、名目四・五%を予測しています。これはいずれも政府経済見通しより厳しく低成長を予想しているわけでありますけれども、昨日、二月二十五日発表の月例報告並びに政府の経済見通しと主要反間研究機関五十四機関の経済見通しを踏まえてお伺いをしたいわけでありますけれども、現在の景気、そして景気の先行きをどう見ているか、あわせて、景気対策をどうするか、そして、平成四年度日本経済全般の動向をどう見るか、これを伺いたいと思います。あわせて、このようなことを踏まえて平成年度予算案はどういう評価になるのか、この点についても先生からの御意見を伺いたいと思います。
  19. 和田八束

    和田公述人 お尋ねでございますが、あらかじめお断りいたしたいのは、私は経済分析、経済見通しの方は必ずしも専門家ではございませんで、適切なお答えができるよう準備というのは必ずしも持っておりませんので、また別の公述人の方でその辺の専門家の方がいらっしゃいましたら改めてお聞きいただければというふうに思います。ただ、財政予算面に限って私も政府の経済見通し等は一応拝見をいたしましたし、他の経済機関等の経済見通しというのも一応は目を通しているわけであります。  今おっしゃったようなあれでありますけれども、私は、政府の経済見通しで一番需要項目で大きく出ていたのは、民間住宅投資ではなかったかと思います。ここのところで三・五%という数字が出ておりまして、他の経済機関などの三%あるいはそれ以下に比べて大きく出ているのはその辺ではないかと思うのです。その辺で判断いたしますと、住宅建設はここのところやや低迷をしておりまして、地価動向というふうなことも関係するのでしょうけれども、本年じゅうに政府見通しで考えたほどこの民間住宅投資が拡大するかどうかという点については私も疑問を持っておりますので、他の条件がそんなに変わらないとすれば、政府見通しほどの成長率はかなり難しいのではないかというふうに思っておりますが、これはまだ本年度というのは先のことでありますので、いろいろな諸条件というのが不確定だと思っておりますがあるというふうには思います。  ただ、そういう経済と財政との関係でありますけれども、経済に対する財政の役割というのをどう見るかということでありまして、従来は、主として景気後退期において、需要面において財政の役割というのが非常に大きく見られることがありまして、特に、公共投資とかあるいは減税というふうなことが有効な手段であるというふうに言われておりまして、では公共投資はどうであったのかといいますと、公共投資が不況対策的に特にふえたということは本年の場合にはないと思いますけれども、昨年度以来かなりの水準に達しておりますので、公共投資面からの需要としては私は一応十分にあるのではないかというふうに考えます。  それから、減税という面でいいますと、これは減税による景気への効果というのはほとんどない。個人消費というふうなお話が今もございましたけれども、個人消費はやややはり落ち込んできているのではないかという見通しからいいますと、私は、先ほどの意見のところでも申し上げましたように、サラリーマン中心とした減税というものの必要性がやはりあったのではないかというふうに見ておるわけであります。
  20. 小岩井清

    ○小岩井委員 ありがとうございました。  奥村先生にお伺いしますが、先ほど国際経済情勢について四点にわたって詳細に御説明いただきましてありがとうございました。その国際情勢四点を踏まえて、ただいま私和田先生に御質問しましたことに関連をして、日本経済に対する影響並びに具体的対応について、この点についてお伺いしたいと思います。
  21. 奥村洋彦

    奥村公述人 お答えさしていただきます。  先ほど小岩井先生御紹介の経済企画庁の文言の中に、内外の動向によく注意してという箇所がございまして、私は今回の場合は、とりわけ海外の動き、特に世界経済中心であります。アメリカが何十年ぶりかの困難な局面に対応していることによく注意する必要があると思います。日本経済の中だけを見ていれば、日本経済は依然として潜在的な成長能力は四%程度ございますし、企業もやる意欲がありますので、これまでマネー経済の後、建て直しのために信用の量を圧縮してこられた適切な政策のもとで、地価も十分下がった、また過剰なお金もなくなってきたと思いますので、これから新年に入りましてからは、とりわけ世界経済の動きに注意して正常な通常の中立的な政策に直していくことが必要だと思います。  私は、そうした政策に直された場合には、九二年度の経済成長率といたしましては三%程度成長を期待できるのではないかと思いますが、政策を十分転換しない場合には成長率は三%を切ってくる可能性も十分あると思います。一番の項目は、先ほど小岩井先生が消費から住宅設備、在庫等々挙げられましたうちで、私は民間設備投資について一番危惧しているところであります。現在、経営者の方は実力はあるし意欲もあるわけでございますが、何せ何十年ぶかりの地価、株価の暴落の直後で、通貨の量がまた極端に伸び悩んでおりますので、非常に不安心理に駆られて新年度を迎えようという状態でございますので、こうした経営者の方の心理を考えますと、設備投資を喚起するような政策というのがさらに必要になってくるのではないかと思います。
  22. 小岩井清

    ○小岩井委員 ありがとうございました。  坂上先生にお伺いします。先ほど詳細に医療問題についての御説明をいただきましてありがとうございました。  そこで、高齢化社会到来と言われているわけでありますけれども、六十歳以上の労働力の活用について伺いたいんですが、引退したナース並びに六十歳以上のホームヘルパーについて人材を確保していく必要があるんではないかと思いますけれども、その辺のお考え方を伺いたいと思います。
  23. 坂上正道

    坂上公述人 御質問をありがとうございました。  このヤングシルバーの労働力への問題というのは私の専門外でございますけれども、今後のヘルスマンパワーの確保という点から見ましても、六十歳以上の者を含めた労働人口の中で何%確保できるかという計算をしたいぐらいでございまして、六十歳から六十五歳の間の人材の活用ということは重大な問題だと思います。それに伴う施策としては、ヤングシルバーの方々が生涯教育においてどういう訓練を受けてその仕事に達し得るかということ、それから、健康なそういうヤングシルバーを医学、医療の面であらかじめつくれるような医療を行っておくということが大切であろうというふうに存じます。  ありがとうございました。
  24. 小岩井清

    ○小岩井委員 どうもありがとうございました。  続いて和田先生にお伺いいたします。  先ほど先生の御説明にもございましたけれども特例国債依存からの脱却、以前からの財政再建の目標が達成できましたのは、バブルで税収が予想以上にふえたり、NTT株が高額で売却できたりしたからだと思うのです。政府の財政運営の成果とはこれは単純には言えないというふうに思います。  今度の財政目標、一九九五年度までに国債依存度を五%まで引き下げる、この点について決定したと思ったら来年度は建設国債の増発で事実上これは困難に陥っています。政府はそれに固執をしているようでありますけれども、先ほど先生もおっしゃられました、単年度の財政のつじつま合わせに懸命になるよりも、単に国債依存度の数字というものだけではない、長期的観点から財政をどうするのか、そして生活向上のための財政をどう運営するのか、この構想をすべき今その時期に来ているのではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  25. 和田八束

    和田公述人 財政再建計画につきましては、私も先ほども申し上げましたけれども、御意見、そのとおりだと思います。やはり単年度での均衡といいますか、財政運営といいますか、そういうことではなくて、やや長期的に考えて本格的にやりませんと、現在の国債の、何といいますか重荷というのは、これはもうかなり重大であるというふうに思います。  特にことしの場合には、ややその辺の見通しがなくて七兆円の国債発行が行われたということは非常に不安な感じをいたします。特に、建設国債で全部新規発行をしたわけでありますけれども、これで建設国債の充当の、それに対応する歳出面なわけですけれども、これがもうほとんど一〇〇%近くなっているのではないかと思うのですね。平成三年度の場合にはまだすき間が若干ありまして、補正予算の場合も建設国債で対応できたわけですけれども、本年の場合、この経済見通しがどうなるかわかりませんけれども、最終的にまあ補正予算で税収の減額補正というふうなことになった場合には、これは見合いの建設国債発行はほとんどできないというふうなぎりぎりのところではなかろうかと思うわけであります。  したがいまして、むしろ建設国債で全部発行するのではなくて赤字国債特例債の方がむしろ財政の弾力性という点ではベターではないかというふうな意見も、我々の財政学の仲間などでもそういう主張があったわけでありますが、私も、長期の財政運営の中で考えるならば、すべて建設国債の方がベターだということではなくて、特例債の運用というのもあり得るというふうに考えるわけでありますけれども、これはあくまでも、そういう長期的な財政の弾力性の確保ということを前提にして言えることでありまして、したがいまして、今後の財政運営からいいますと、自然増収の基金化でありますとか、それからもう少し根拠の明確な財政見通しといいますか計画化というものを早期に立てる必要があるのではないか、こういうふうに考えているわけであります。
  26. 小岩井清

    ○小岩井委員 同種の御質問で恐縮なんでありますけれども奥村先生いかがでしょうか、今の。
  27. 奥村洋彦

    奥村公述人 私は特に財政の専門家じゃございませんので詳しいお答えはお許しいただきたいんですが、今日本の政府の資金繰り状態といいますか債務状況というのは、アメリカに比べた場合には非常に身軽でございます。金融世界は、だれかがお金を借りだれかが貸すという世界でございますから、世界全体を見て、日本だけお金をためていってうまくいくということはございませんので、日本の個人の貯蓄率は依然として老齢化社会を控えて非常に高い貯蓄率を維持しているわけでありますし、日本企業部門も、かつてのような高度成長ではございませんので、かってほどは企業資金の不足というのは大きくはなってまいりませんので、このときに余りにも財政資金状況に固執いたしますと、日本世界との関係ではかなり困難な問題が発生するのではないかと思います。  もう一点は、私は、今日本企業は実質経済成長率四%を達成する意欲も能力もありますので、そういった成長率にしていけば財政も自然と改善してまいりますから、成長率が低いまま財政だけ改善しようということになりますとまさに悪い循環、縮小均衡に入りますので、そうしたことはぜひ避けていただいた方がよろしいのではないかと思います。
  28. 小岩井清

    ○小岩井委員 ありがとうございました。  続いて、地方財政との関連について和田先生にお伺いをしたいと思いますが、問題点五点ほど指摘をしてお考えを伺いたいと思います。  一点は、一兆円以上の余剰が見込まれるということにして地方交付税が八千五百億円、国に貸し付ける形で減額をされて、国の財源不足を補てんをしていますね。これはただにこういうことではなくて、国と地方の権限を見直して現行の交付税率や補助金制度を再検討して、国と地方間の財政構造を考えた措置をとるべきではないかというふうに思うわけでありますけれども、この点が第一点であります。  二点は、地方財政計画の骨格となる地方財政収支見通しによりますと、地方財政の歳入規模七十四兆三千七百億円、対前年四・九%増としているわけでありますけれども、これは前年の所得課税をするという、これは住民税そうなっていますね、ということになるとすれば、バブルの崩壊の影響はもろに出るというふうに思うんですね。したがって、次年度以降大きな影響が出るんではないかというふうに思われますけれども、この点についての御意見も賜りたいと思います。  それからさらに地方財政について、一般財源の占める割合について、確かに増加は今いたしておりますけれども公共投資基本計画、公共投資十カ年計画並びに日米構造協議によって四百三十兆円の投資をするわけでありますけれども、これらを踏まえた形で地方の単独投資事業経費を対前年一一・五%増と拡充をして、これまた地方財政に肩がわりさせていることについて、この点についてどうお考えになるかということであります。  そして四点目ですけれども、地方の単独事業を伸ばして公共投資を拡充するという一方、地方債計画では前年より三・七%減少させております。また歳出においても、国保、国民健康保険ですね、国保事務費や義務教育費の一部で国が負担していた一千五百億円ほどを、これは今度は地方負担にしている。高齢化対策についても地方にすべて任しているということについて、これは地方財政の硬直化の要因をつくっているのではないかというふうに思いますけれども、この点についてもお考え方を伺いたい。  五点目としては、生活関連枠二百億円の配分、これについては目立った変化は見られておりません。新設の臨時特別枠でも省庁別配分シェアはそのままであります。下水道整備、ごみ処理などの補助については、これまた未整備の自治体を重点にしておりますから、特に地方都市に傾いている。土地の高騰した大都市近郊都市については、そういう面からいうと整備の水準に大きくおくれが出てくるのではないか、こういうふうに考えられますけれども、以上五点、地方財政との関連で指摘をいたしましたけれども、これらについての先生のお考えを伺いたいと思います。
  29. 和田八束

    和田公述人 大変難しい広範囲なお尋ねでございまして、最初の方は国と地方の財政関係でありますが、平成年度予算とのかかわりでいいますと、予算編成の幾つかのポイントというのがあったわけですけれども、その中のかなり大きな部分として地方交付税をどれだけ削減できるかというのが歳出入バランス一つの大きなポイントであったと思います。  その結果、今のお話のように八千億円程度国が借りるという形で事実上一般会計ベースでは削減が行われるということになったわけでありますけれども、しかし、事実上それが直ちに地方財政全体にとっての地方交付税の減に結びつくかといいますと、交付税譲与税特別会計というクッションを置いて出ていく。いわゆる入り口ベース、出口ベースというふうなことを言っておりますけれども、そういう関係で見ますと何とかつじつまが合っているというふうな、こういうことのように私は見ているわけでありまして、何といいますか、一つの政治算術的な結末ではなかったか、こういうふうに見ているわけであります。  しかし、長期的あるいは基本的な問題で考えますと、今のお話にもございましたように、やはり国と地方の関係の見直しとかあるいは財源の再配分とか、こういう大事な問題がある、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。特に最近では単独事業費が非常に地方サイドではふえておりますし、それから公共事業等の、あるいは高齢者対策というふうな面をとりましても、地方財政の役割が増大しているということはそのとおりでありますけれども、役割の増大とともにやはり財政負担もふえてきているということでありまして、そういうふうな状況を見てみますと、やはり、特に市町村における財源の確保ということが重要な大事な問題ではなかろうかというふうに思うわけであります。  地方交付税でいいますと、基準財政需要額をどういうふうに計算するかということが交付税額を非常に大きく左右してまいりまして、私は、単独事業がふえるあるいは地方の単独の施策がふえるということは、これは歓迎すべきことだろうと思うのですけれども、それによるところの一般財源の確保という点からいいますと、やはり基準財政需要額をもうそういう新しい動向に即して見直していくという、そういう地方の独自な施策とか、あるいは単独事業も含めてこれを拡大していく、あるいは、実際の一般財源の支出とそれからこの交付税サイドにおける基準財政需要額の計算というものができるだけ近くなるように計算をしていくというふうなことでやってもらいたいというふうに思っております。  バブル経済の崩壊によるところの税収面への影響ということは、これはまあ私は国ほどの影響があるかどうかということはちょっと問題だろうと思いますし、また地方財政の方でいいますと、固定資産税の評価の見直しとかいうようなことがありますので、それほど大きな影響があるというふうには考えられないわけですけれども、しかしこれも、地方財政といいましてもいろいろ格差がありまして、府県と市町村では大分違いますし、それから地域によっても違いがありまして、都道府県の中でも東京都のようなところはかなりその影響が大きくて、本年の東京都予算というのは相当基金の取り崩し等を行って編成したというふうな、こういう事実から見ますと、大都市財政に与える影響というのは非常に大きいと思います。  したがいまして、これからの地方財政のあり方ということを考えますと、一律に地方財政を扱うというのではなくで、大都市あるいは府県、それから市町村、それから過密地域、過疎地域というふうな、比較的その地域の実態に応じた、何といいますか、一律ということではなくてきめの細かい制度上のあり方ということを考えていく必要があるのではないかというふうに思います。
  30. 小岩井清

    ○小岩井委員 ありがとうございました。  時間が迫りました。最後に御質問いたしますが、和田先生、また恐縮でございます。  先ほど削減できる唯一のものは防衛費だというふうに先生おっしゃられました。千六百五十八億円増、三・八%増ですね。これは政府は抑制したと言っているのですけれども、抑制じゃなくて、世界の流れは軍縮ですから、したがって削減をしていくべきだというふうに思いますね。ですからその点について、これはこの防衛費を増大をさせていく、要するに抑制であってもふえていることは間違いありませんから、増大をさせていくという時期は、世界情勢、世界の流れの中からも、先ほど世界経済奥村先生おっしゃいましたけれども世界全体の流れの中からもこれはもうそういう時期は終わったんじゃないか、増大査定は。この辺の御認識を伺いたいというふうに思います。  それからあわせて、その世界的変化を本格的に受けとめるということで、中期防の見直しをして日本も軍縮にしていく、軍縮の模索をするという、そういうことが必要ではないかと思いますけれども、その点について先生のお考え方を伺いたいと思います。
  31. 和田八束

    和田公述人 私は、従来も日本の防衛費が占める財政的な地位というのはかなり過大であるというふうな考え方を持っていたわけでありまして、定員につきましても、まあ実際陸上十八万、それから実定員、実際の充足隊員で十五万というふうに聞いているわけでありますけれども、それだけの軍事力というものが我が国において必要なのかどうか。そして正面装備の点におきましても、どういうふうな考え方のもとで行われているかということは私もよくわかりませんけれども、極東の我が国の立場からいって、果たしてアジアあるいは我が国における国民的なコンセンサスのもとで行われているのかどうかということについては疑問を持っていたわけでありまして、この際、その辺のところを十分に根本から議論をして、そして防衛費のあるべき水準、姿というふうなものに立って、ここで新しい国際情勢の立場からひとつ考えていただきたいというふうに思うわけでありまして、そういう点から十分に削減、人件費的な面におきましてもそれから正面の装備におきましても、削減する余地といいますか、あるわけでありまして、ここで日本のそういう一つの防衛、軍事というものに対する姿勢を示すという意味からも、ひとつめり張りのきいた予算編成をしていただきたいというふうに考えているわけであります。
  32. 小岩井清

    ○小岩井委員 ありがとうございました。
  33. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 次に、石田祝稔君。
  34. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 公明党・国民会議の石田祝稔でございます。きょうは、三人の公述人の皆様、早朝より大変に御苦労さまでございます。いろいろと私も皆さんの御意見を拝聴いたしまして、何点か御意見をまた新たにお伺いをさせていただきたいと思います。  まず最初に、坂上先生にお伺いをしたいと思いますが、私は厚生委員もやらせていただいておりますので、特に医療費の問題でちょっとお伺いをいたします。  この数年間、国民医療費の伸びを国民所得の以下に抑える、こういうふうな基本的な考え方がありまして、その結果、先生も先ほど言われておりましたように、思った以上に国民医療費が伸びなかった、逆に言えば抑えられてきた、こういうふうなお話でございましたが、私は、この国民医療費はこういう考え方でこのまま続けていっていいのかという疑問を持っております。また、OECD諸国の中でも日本の一人当たり国民医療費は高くはない、こういうふうにも言われておりますので、今後どういう考え方に立ってこの医療費全体をとらえていくべきであるのか、このことについてお話を伺いたいと思います。
  35. 坂上正道

    坂上公述人 御質問ありがとうございました。  先ほども申し上げましたように、医療費が国民所得の率の中で制御されるようにという、そういう政策があったことは確かでございますけれども、それが結果において平成元年度におきましては、公的に出されておりました予測値に対しましても一兆五千億ぐらい抑え込まれたということを先ほども申し上げたわけでありますが、それはその数字をいいと評価するか悪いと評価するか、これは別の問題がまたあると思いますけれども、実際に抑え込まれたためにいろいろな医療のひずみがあったことは確かではないか。  その一つには、高度先進医療というものは健康保険外で扱えるようになっておりますし、コアであります保険医療というものもまた行われているのでありますが、医科大学病院におります私どもにとりましては特に、研究的に開発されました、しかも患者に利益になるいい医療が実行できない ということが苦しいわけでありまして、一例を申し上げますと、腹腔鏡で胆のうをいじるというような手術は健康保険では認められない。しかし患者にとってはそれは侵襲の少ないいい医療技術でございます。そういう研究的な医療が国民のために提供できるような構造になってほしいというふうに思います。  そういたしますと、公的な国のお金あるいは健康保険のお金で使える医療費というものが、ある制御のもとに置かれることは必要かもしれません。しかし、そのほかに自費の構造での医療というものはある程度あってもいいのではないか。例えばそれを研究機関の大学病院に与えますと、大学病院は約一〇%でございますから、二兆ぐらい使っておりますが、それを三〇%ぐらい使いましても六千億でございます。ですから、そういう意味での高度先進医療以外の高度医療が展開できるような構造の医療費があってほしいというふうに思います。  それは、繰り返しになりますが、コアのところは健康保険、その他は自費でやるか、あるいはほかの民間保険で行うかというような構造の変化が必要ではないかというふうに存じております。
  36. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 それでは、次に奥村先生にお伺いをしたいのですが、先生は、四点にわたりまして今後の日本の役割の重要性を述べていただいたと私は認識をしております。それで先生の別の論文もちょっと読ませていただきましたけれども、その中で、日本世界に対して比較優位を持つものとして、金融力、技術力、そしてマネジメント能力、これがあるんだ、こういうお話を私拝見をいたしまして、ですから、日本世界における役割、この三つの日本が比較優位を持っている力で、どういう形でこれから貢献をしていけるのか、いわゆる昨今言われております国際貢献、これについてどういう形で進めていけばいいのか、そのことについてお話を伺いたいと思います。
  37. 奥村洋彦

    奥村公述人 お答えいたします。  今石田先生御指摘のように、日本は、軍事力あるいは国際経済制度をつくり上げるといった政治力の面ではアメリカにはまだ劣っていると思いますが、しかし、金融力とか技術力、各企業の経営のマネジメント能力についてはすぐれた面が指摘できると思います。こういった面を生かして、今世界資金が不足している地域、とりわけ東ヨーロッパ、旧ソ連地域、ラテンアメリカ地域などに日本が新しいタイプの公的ルートによる資金供給をすべきだと思います。  この場合、ただ従来型のインフラ整備、例えば土木だとかいった面に代表されるインフラ整備だけではなくて、現在の世界経済で必要としているインフラ整備、例えば東ヨーロッパ地域でございますと金融とか流通とか通信とか運輸といったものが本当に必要な面でございまして、こういった分野で日本ですぐれた能力を持っていますのは、公的部門そのものよりはむしろ民間企業などでございますので、政府がイニシアチブをとって公的ルートで海外にお金を流すといたしましても、しかしそれは、日本民間部門と一体になった二人三脚の動きでやっていかないと効果的な援助はできないと思います。日本は援助をする以上、もちろんそういった国と人的な関係を密にいたしまして、将来日本にとってよりいい外交などができるような目標を明確に立てて、海外に対して支援していくことが有効だと思います。
  38. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 では、続きまして和田先生にお伺いをいたします。  生活大国ということが最近よく言われておりますが、この生活大国を目指しまして、公共投資、特に生活基盤投資、また福祉部門における国と地方との関係についてでございますが、私も別の論文で先生の論を拝見しますと、従来からの問題として自主財源の問題また財源配分の是正、財政自主権の確立、こういうことが現在問題である、こういうことも御指摘になられておりますけれども、そういうことを含めまして、今後の特に高齢化社会を見据えて、国と地方のあるべき姿、これを財政の面から教えていただければありがたいと思います。
  39. 和田八束

    和田公述人 従来、国と地方の関係ということでいいますと、やはり国の方でいろいろな財政の配分とか事業というものが基本的には決められて、そして、地方自治体の方での自主的あるいは独自的な事業なり判断というふうなものが非常に狭められていたということは言えるのではないかと思うのですね。これは地方自治体と一口に言いましても、いろいろな差がございまして、都道府県の中でも財政力の差がありますし、それから市町村と都道府県との違いというものも十分にあるわけでありますけれども、これからの生活関連的な公共事業あるいは高齢時代に対応したところのいろいろな福祉政策ということを考えますと、やはり市町村が実力を持って、力をつけて、市町村が独自の政策をきめ細かく行うということがどうしても必要だと思うのですね。  社会資本の面でいいましても、基幹的な、自動車のための全国的な道路網というふうなことではなくて、むしろ地域の通学、歩行者の道路整備というふうなことが、あるいは、環境の整備とそうした社会資本整備とのマッチをどういうふうにしていくかとかというふうなことが非常に重要になってまいりますし、それから高齢者あるいは老人福祉というふうな問題につきましても、いろいろな違いがありますので、それに対応していくということが重要でありますので、この辺でやはり国と地方とのあり方、それから府県と市町村との協力関係というふうなものが、そのあり方というものが重要であると思いますけれども、同時に、市町村なり府県の方も、とかくいろいろな施策について国の財政援助なりあるいは国の判断を求めるというふうな、何といいますか、一種の依存的な姿勢というものもなかったわけではないわけでありまして、そうした自治体側の考え方の脱却といいますか、そういうのも必要ではなかろうかということを私などは考えているわけであります。
  40. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 坂上先生にお伺いをいたします。  この四月一日から診療報酬が医療費ベースで五%上がる、そして薬価の見直しで、これは医療費ベースで二・五%のダウンである、実質二・五%の医療費の改定がある、こういうことでございますけれども、私は、特に公明党は、看護職の確保ということが非常にこれから大事である、こういうことを常々主張してまいりまして、私も特に、国公立病院というものはベースアップとかいわゆる人件費が予算で配分をされる、しかし私立の病院、療養所というものは、医療費が結局一本で診療報酬という形で全体払われるものですから、今回たしか二・六%看護職に充てなさい、こういうふうなことだったと思いますが、私立の病院で果たしてそういう形で明確に待遇改善の方にいくのかどうかということを、非常に私も実は心配をしておるのですが、そのこと等含めまして、私の個人的な意見ですが、今後人件費というものを別に配分と申しましょうか、診療報酬の中で区分けはできないだろうかというふうな、個人的な考え方でありますけれども持っております。  このことにつきまして御意見をいただければと思います。
  41. 坂上正道

    坂上公述人 大事な御指摘をいただいていると思います。  しかしながら、医療保険の構造というのは、発足当時は原価計算をいたしたそうでありますが、その後、経済の膨張につれまして医療費が格段にふえましたときに、原価構造の考え方というのは失われてしまったというふうに言われております。  ただし、今回の点数改正につきましては、手術料その他につきまして、いわゆる外保運と申しまして外科の関係の保険連合が人件費まで含めた原価計算をした、それを参照されたやに聞いておりますので、そういう構造に戻そうとはしているのでしょうが、いかにも膨大になりましたところの構造を先生の御指摘のように変えるということは大変困難なんだろうと思います。特に、ドクター フィーとかキャピタルフィーというものに分けろということが基本的な議論で言われておりますが、そのことすらも困難であるということであります。  しかしながら、今回の点数改正につきましては、明らかに看護婦への人件費手当てに二・六%充てる、こういうことでございますので、これはナースヘの処遇の改善ということは、給与表、特に四十年代の給与が寝ておりましたものを直すというような努力、これは人勧でもそういうふうに構造を変えておられますから、民間もその影響を受けて変えるであろう、夜間勤務手当も変えるであろうというふうに、看護職の手当の方へ向いていくだろうと思います。  御指摘のように、国立は特別会計からのお金で動きますのでそれは簡単にできるわけでありますが、民間は全く医療費のみでやらなければならないということで、民間病院の経営は大変困難であるというふうに思います。願わくば、今後はそういう人件費の問題、それからドクターフィーも含めたフィーの分け方というものを構造的に変えるべき時期が来るであろう、また来てほしいというふうに期待をしております。
  42. 石田祝稔

    ○石田(祝)委員 どうも三人の先生方、ありがとうございました。終わります。
  43. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 次に、三浦久君。
  44. 三浦久

    ○三浦委員 どうも大変御苦労さまでございます。私は日本共産党の三浦久でございます。  まず最初に、奥村先生にお尋ねをいたしたいと思います。先生は、アメリカの経済の構造的な不況の状況について詳しく御説明をいただきました。そのアメリカ経済の構造的な不況から脱出するための長期的または短期的な対策というものはどういうものなのかということですね。そしてまた、それが実行された場合に、日本の経済や日本の国民に対する影響はどういうふうになるのかということについて、御所見を承りたいと思います。
  45. 奥村洋彦

    奥村公述人 お答えさしていただきます。  ただいま三浦先生のおっしゃったことについては多くの議論が行われておりますけれども、机の上での議論が多いわけで、なかなかワシントンの政策当局のアクションにはつながりにくい事柄だと思います。したがって、今九〇年からアメリカ経済成長率は実力以下になってきておりまして、ことしもそういう状態でございますので、九〇、九一、九二と三年間にわたって低い成長率で、失業者がふえてきているわけです。ただ、このことは、アメリカにとりましては借金高度成長ができなくなってきている、したがって短期的には成長率を実力以下に持っていっているという解決をみずからしているということでございますので、私は、今のアメリカ景気低迷は循環的なものではなくて、レーガン大統領のときにとられました政策のツケが回って、中期的にこのような政策をとらざるを得ないということでございます。したがって、短期的な脱出方法というのは、結局は成長率を実力以下に持っていくこと以外ございませんので、余り短兵急ないい解決策はないということでございます。  長期的に脱出するにはどうしたらいいか。一番の基本は、アメリカの経済的なシステムの問題にあります。特に、ほうっておいてはなかなか教育、研究開発投資、従業員の訓練というものが、個別の民間企業などではできない経済システム上の問題がございますので、こういったところを直していかないと、長期的にアメリカ競争力を強めてくるということを期待持てないわけでありますが、この点についての重要性はワシントンの当局の方も認識はしておられます」しかし、アクションに結びつくかどうかはかなり疑問を持って今のところは見ておかざるを得ないと思います。  したがいまして、こうした短期、長期の見通しのもとで日本が今行うべきことといいますか、日本にとっての意味合いは、今アメリカが何十年ぶりかの苦しい場面に直面していますので、できる限り現行の自由貿易体制、現行の国際通貨体制アメリカが壊すことのないように、日本アメリカを支援する必要があると思いますが、この支援の仕方が、八〇年代にやってまいりましたような直接アメリカ日本民間お金を流すということは期待できませんので、アメリカを間接的に支援するということで日本はイニシアチブをとってやっていくべきだと考えております。
  46. 三浦久

    ○三浦委員 どうもありがとうございました。  坂上先生にお尋ねをいたしたいと思います。  看護婦不足ですね。この原因について先生がどういうふうに御認識になっていらっしゃるのか、それと、それとの関連で、現在の政府のこの看護婦確保の対策は十分だというふうにお考えになっていらっしゃるのか、また、不十分だとすればどういう点が不十分なのか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  47. 坂上正道

    坂上公述人 御質問ありがとうございました。  一番の原因は、やはりナースという職種がほかの職種に比べまして夜勤があるということでございます。この夜勤の回数が、いわゆる二・八と申しまして、二人で月に八日ということをリミットにしたいということでありますが、現状ではやはり二・力あるいは二・十の状態にあるであろう。これが一番の看護婦たちの苦痛であろうというふうに思います。しかしながら、実際に看護婦の中でのモチーフが低いかというと、決してそうではありませんで、辞職の理由は結婚とか育児というのが最大でありまして、勤めが嫌だという理由は、実は看護協会の調査においては低いわけでありまして、そういう自分の職業を天職と心得て、心の中は一生懸命燃えているけれども働いている外部の環境がいかにもつらい。  それから、給与が低い、こういうことであります。給与が低いというのは、数字の上では決して他の女性の職種に対して低いわけではないのでありますが、先ほど申し上げましたように、給与の上がっていくペースが四十ぐらいのところで横に寝てしまうわけですね。これが問題でありまして、やはり看護婦が婦長になり位置を得ますと、それによりまして給与が上がっていくのかもしれませんが、普通のいわゆる平のナースであった場合には、職能給がとられておりませんから、どうしても寝た給与になっていく。したがって、初任給は割合高いのだけれども、中年で給与が低くなるという給与体系が問題なのだろうというふうに思っております。ですから、そういう欠点を改変し、また彼女らの天職に対する動機を生かしていけば、一つの解決策になるであろうというふうに思います。  今回の予算を見させていただきますと、いろいろなところで工夫が凝らされておりまして、実際の予算案の上ではかなり高いパーセントで予算案が組まれているように拝見をいたしました。全体に九十一億でありましたものが百十五億に膨らんでおりますから、二七%ふえたというのはこれは大変強化された予算であるというふうに数字の上では評価をいたします。具体的な項目は略しますけれども、総額はそういうことでありました。  したがって、今年度の予算においては評価をいたしますが、これも先ほど申し上げましたように、単発的に終わらないで持続的にぜひこういう体制を長く維持をしていただきたい、そういうことによりまして、十カ年戦略というストラテジーができておりますことの具体的な細かい計画が達成されるようにお考えいただければ幸いだというふうに存じております。  ありがとうございました。
  48. 三浦久

    ○三浦委員 ありがとうございました。  奥村先生にまたお尋ねをいたしたいと思います。  日本の労働者の労働条件、この劣悪さというのは、国際的にもまた国内からもいろんな批判が出ております。国際的にはフランスのクレッソン首相が、日本人はアリのように働く、私はそんな生活嫌だよ、社会保障も堅持していきたいし、また人間らしい生活もしたいというようなことに象徴的にあらわれていると思いますね。  それからまた、国内では最近、文芸春秋の二月号でソニーの盛田会長さんが「「日本型経営」が危い」、そういう小論を書かれておられます。そこでは、価格設定を欧米より低く抑えて競争力を向上させる日本企業の経営のあり方が国際的に批判されているということを前提にして、「こうしたやり方は企業の体質を強化することに大きく役立ってきましたが、その半面、利益を従業員や株主、または地域社会などに還元していくという側面が陰に隠れてしまった」というふうに述べられておられますね。これは、財界でもこれで全部意思が一致しているというわけじゃないと思うのですが、いろいろな議論があると思うのですが、先生はこういう議論に対してどういうふうにお考えでございましょうか。
  49. 奥村洋彦

    奥村公述人 ただいまの三浦先生の御質問は大変合議論を呼んでいるところで、したがいまして、答えもだれかが神様のように出せるといったたぐいのものではございませんが、私は今個人的に考えておりますところを申し上げさしていただきます。  いろんな見解が内外で、日本の労働者の生活条件だとか分配の状況だとかについて述べられておりますが、きちっとした数字などで証拠立てて日本の労働者の生活の質と海外とを比べたものは多くないと思います。適当な事例を引いてこうだということはたくさんございますけれども、そういうことをお互いの国同士でやっていても余り建設的ではございません。それで、日本の場合には、私は、これまでの仕組みは退職後の老齢者の方が余り多くない場合には非常にいい仕組みであったと思われますが、これから退職後の方々が非常に多くなってくる場合には従来のやり方を改善していく余地はあると思います。同様に、国際化を進めていって外国の人たちが加わってくるといった面におきましても、今までのやり方を改善する余地があると思います。  しかし、今それでは日本のやり方は全面的に悪くて、例えばアメリカのやり方は全面的によいのかということになりますと、経済成長率などでよく示されますように、実はアメリカの経済システムの方が付加価値を生み出すのにはよくない経済システムではないかという評価ができると思います。とにかく付加価値が大きくならない限りは、幾ら老齢者の方に対して手厚く、あるいは福祉のために手厚く、あるいは海外へ援助しようといいましてもできないわけでございまして、まず、理想の目標を掲げてそれを実行するためには、付加価値を一番多くする経済の仕組みを優先すべきだと思います。  そういう観点からは、日本が今とっている経済の仕組みは付加価値を多くする上では世界に冠たる非常にいい仕組みでございますので、これからもできるだけ実力相応の高い成長日本は目指すべきだと思いますが、従来とは違って、成長の成果をどうするんだというところでは、老齢者が多くなることとか海外の人たちを入れた場合だとかいったことで、見直していく、よりよいものにしていく必要があろうかと思いますが、付加価値を生み出す仕組みについては現在のところは世界の中で非常にいい位置を日本は占めているのではないかと思います。個々のケースについて幾つかの事例も挙げられますが、時間の関係もございますので、こういった大きな枠組みでお答えにかえさしていただきたいと思います。
  50. 三浦久

    ○三浦委員 ありがとうございました。  これは和田先生にお尋ねをいたしたいと思います。  もうくどくど言う必要ないと思いますけれども日本の労働者の年間の労働時間、これは千八百時間にしようというのが政府の目標でありますが、なかなか実現が不可能になっておりますね。この労働時間の短縮を実現するためには、具体的にどういう方法をとったらいいか、この点についての先生のお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。
  51. 和田八束

    和田公述人 どうも私の専門分野とは少し違いまして、私も一人の、何といいますか、そういう勤労者であるとすれば、できるだけ労働時間が短縮されるということは望ましいことでありますけれども、なかなか我が国の従来のテンポということからいいますと、言われているほど進まないというのが実情でありまして、これはやはり、どういう方策があるかというふうに聞かれますと、私はちょっとその辺のところは十分な考え方を持っているわけではないのですけれども、やはり現状からいいますと、欧米並みの労働時間、それから長期のバカンスとか、そういうものが享受できる環境というものが早く実現してほしいということは大いに希望するところでありまして、そういうことです。
  52. 三浦久

    ○三浦委員 どうもありがとうございました。終わります。
  53. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 次に、伊藤英成君。
  54. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 民社党の伊藤英成でございますけれども、三人の公述人の皆様方、きょうはいろいろと貴重な御意見、ありがとうございました。  まず最初に、奥村先生にお伺いいたしますけれども、端的にお伺いいたしますが、日本経済の持つ潜在成長力、その水準をどういうふうに考えられるのか。そしてことし、ことしというのはこの平成四年度、平成四年度にこの潜在成長力をできるだけ達成するためにどういう政策がこれから必要なのか。そして、そうしますと九二年度の成長率を何パーセントできると思うか。そしてもう一つ平成五年度、九三年度に成長率はどのくらいになると先生は考えられますか。お伺いします。
  55. 奥村洋彦

    奥村公述人 お答えいたします。  日本経済の持っている実力、潜在成長能力につきましては、過去一、二年研究をしてまいりまして、日本の四十ばかりの企業の方々と御一緒に矛盾のない予測を心がけてまいりました。今、皆さんと一緒に研究した結果は、九五年にかけまして今後数年間は日本経済は四・一%程度成長できる力があるということであります。また、日本の代表的企業の方々は意欲もございますので、政策はそういった潜在成長能力達成に向けて展開されるべきだと思います。  新年度の経済成長率につきましては、私は、出だしか低くなっておりますので、政策をかなり思い切って展開いたしましても三%程度の平均成長率にとどまるのではないかと思います。しかし、年度の平均というよりは、いつからよくなってくるかということが問題でございますので、この年末以降おとりになられております政策に今後のさらなる刺激政策の展開を加えれば、夏場から踊り場を終えて上昇に向かっていく可能性があると思いますが、政策を展開しない場合には、夏場になっても低迷している状態が十分考えられます。  そこでまずやっていただきたいと思っておりますのは、現在通貨の伸びが不足しておりますので、政府がお立てになられました経済成長率目標に整合的な通貨の伸びをまず確保していただきたいと思います。しかし、それには短期金利はもう一段下げませんと十分な通貨供給は行われないのではないかという危惧を持っております。長期の金利につきましてはかなりお下げになられましたので余りその危惧はございませんが、短期金利については下げの余地が十分あると思います。  財政面につきましては、今回の予算、財投計画を含めて、かなりの手当てをなさっているわけでございますが、もし金融面だけでは政府の政策目標に到達が無理であるという判断をお立てになられる時期には、もう一段の財政面からの刺激も、私はきょう申し上げました世界経済のために、日本が果たすべき責務として十分認識して当たっていく必要があるのではないかと思います。  夏場以降、十分な政府展開で浮上いたしました場合には、平成五年度の経済成長率は三・五から四・〇の間に上昇していくことが期待できると考えております。  どうもありがとうございました。
  56. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 奥村先生にまたお願いしたいんですが、今株式市場が非常に低迷をしているというふうに言えると思うんですが、現在の株価状況についてどういうふうに考えるか。そして、株式市場の活性化を必要とすると考えた場合には何を今することが必要だというふうに考えられますか。
  57. 奥村洋彦

    奥村公述人 現下の非常に微妙な問題でございますので、私も軽々にお答えする準備はしておりませんが、しかし、一番基本的な問題は、日本経済が実力成長、具体的には四%程度の経済成長を中期的にするんだ、それに目がけて政策展開を行っていくんだということが、日本企業あるいは株式市場の参加者に十分説得的に理解されませんと、なかなか現在のぐずぐずした状況を脱却できないと思います。付加価値の伸びが海外よりも高いということが日本株価を元気づける一番の原因でありまして、これがない場合には、幾ら小手先のことを行いましてもなかなか長続きしないのではないかと思われますので、日本の持っている力を十分発揮できるような経済成長というのがまず必要で、今の市場参加者の不安はそうしたところにあるのではないかと思っております。
  58. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 さらにもう一つお願いしたいんですけれども、先ほどもちょっと話が出たんですが、いわば世界資金需要というのは極めて大きなものがありますね。そういう中で日本がどういう役割を果たしていくかという議論も先ほどありました。日本の対外収支の黒字の水準との関係で、この資金需要との関係をどういうふうに先生は考えられますか。
  59. 奥村洋彦

    奥村公述人 お答えさしていただきます。  この問題は、どこの国が黒字であり、赤字であり、どのくらいだと適当か、困るかということは、ちょうどコインの裏と表を見ているようなことでございまして、幾ら黒字が大きくても、その結果国際的にお金が円滑に流通する、循環すれば、問題はないわけでございます。そうしますと、現在の世界及び日本政策展開のもとで国際的に円滑に資金を循環させることができるのはどの程度黒字までなのかという判断が必要になってまいります。  私は、きょうお聞きいただきました新しい世界への資金供給チャンネルを政策的に手当てなされば、新年度に予想されます経常収支黒字七百億ドル、貿易収支の黒字一千億ドル程度までは、世界は許容できると思います。しかし、それを超えてきて、なおかつ日本成長率が実力を下回っているということになりますと、日本だけ非常にわがままな手前勝手な政策をしているんじゃないかというふうに世界評価するのではないかと思います。
  60. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 和田先生にお伺いしたいんですけれども消費税の問題について。消費税は、いわばこれから高齢化社会を迎え、そして豊かな福祉社会を実現するためにということで導入をしてきたと思っているんですね。そして、その消費税について、私は予算委員会の席とかいろいろなところでも申し上げてきたんですけれども、この税を導入をして、それをどういうふうに使うかということをもっとわかりやすくすべきではないかということをいろいろ提案もしてきたんですが、そのうちの一つに、これからの高齢化社会ということを考えれば、いわゆる年金という問題について、消費税がよりそこに使われるということをわかりやすくする。そういう意味で、特に、基礎年金の中に今国庫負担率というのは三分の一、こうなっているんですが、せめてそれを二分の一、あるいは国民全員が享受をするその基礎年金の部分については全額国庫負担でやったらどうだということですね。そういうふうに、この消費税を導入して、その使い方をわかりやすくすべきだという論をたびたび主張してきたりしているんですが、和田先生はこの問題についてどういうふうに考えられますでしょうか。
  61. 和田八束

    和田公述人 消費税とそれから年金との関連ということでのお尋ねだったと思うのですが、まず基礎年金を全額国庫負担で賄うということについては、基本的に私はそういうことの方が望ましいのではないか、これはもうちょっと詳しく説明する時間というのは今ありませんけれども、単に負担というだけではなくて、年金のあり方として、ましてやそちらの方が望ましいというふうには考えております。  では、そのための財源をどこに求めるのかということになるわけでありますけれども消費税だけにそれを求めるのかどうかということについては、私はまだそこのところは判断がつけかねているわけでありまして、私、税制全体の中で見直していくということではなかろうか。消費税につきましては、一部福祉税あるいは目的税的な議論があったというふうなことは承知しておりますけれども、私は必ずしもそれになじまないのではないかという考え方を持っております。  ただ、年金のための、いわゆる保険料負担とそれから税との関係でいいますと、やはり今後次第に社会保険料負担がふえてくるという現状にありまして、その負担のあり方ということは十分に考えていかなければならないわけでありまして、説とそれから保険料と合わせた国民負担の問題というのは、将来的な見通しなり長期計画も含めて、一つ大事な問題点だろうというふうには思っております。
  62. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 和田先生にもう一つお伺いしたいんですが、先ほど財政の単年度主義から、長期的な視点で運営をすべきだというお話がございました。そして自然増収の基金化ということも考えるべきだという話があったんですが、私も全く賛成するんですね。  それで本来、この来年度の予算ですね、今提案されているこの予算案の中では、今の日本の不況の中において、法人税とかあるいは自動車消費税というように、これはいわば約束違反で、しかもこれを増税をするという形をとっていますね。私、本来財政は、この平成四年度を考えればむしろ減税をして、そして景気のいいときに、あるいはそれは九三年度かもしれません、あるいは九四年度かもしれません、そういうときにそれは基金から補てんをするというようなことをすべきだと思うんですね。そういう意味で、この増税のやり方というのは、本来の財政のあり方として極めてよくないやり方をしていると思いますが、いかがですか。
  63. 和田八束

    和田公述人 私もほぼそういう考え方に同感であります。先ほども、最初のところでも申し上げたかったわけですけれども、時間の関係で省略をしてしまったわけですけれども、かなり問題点がある。特に、赤字法人課税というふうな問題がその中で提起されまして、法人税の欠損金の繰り戻し還付の二年間停止というふうなこともあるのですが、これなどはどういう意味なのかほとんどよくわからない。つまりそれに見られますように、基本的な税制の問題というのの議論というのがなくて、非常に対症療法的に処理されたという感じがありまして、税のそういうあり方ということを重視する立場からはかなり不満な考え方を持っているわけであります。
  64. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 坂上先生、お願いいたします。  きょうも、看護婦のこれからの計画に対してどういうふうにできるかということについてもちろん心配をされたわけですが、私も非常にそこを心配しているんですが、その看護婦の不足の中で、外国人労働者を入れたらどうかという話もあるんですね。で、ある人によりますと、例えばフィリピンの看護婦さんは非常にいいんではないかというふうに言われる方もいらっしゃるわけですが、これから日本の将来の看護婦さんということを考えたときに、こうした外国人の看護婦さんの問題について先生はどういうふうに考えられますか。
  65. 坂上正道

    坂上公述人 御質問ありがとうございました。  マンパワーの数の上からいいますと、一つのオルタナティブということは言えると思います。しかしながら大変大きな問題を含んでおりまして、医療というものが、人間が人間を取り扱うという現場でございますので、言葉を介在した意味でのコミュニケーションということがケアの上ではどうしても必要でございますので、そこに外国人の方が看護助手という立場で入ってきて、実質的に看護という業務が行われるかどうかに一つの問題があります。  それからもう一つは、よしんば外国人の方を看護助手という立場で医療の現場にお迎えするといたしましても、これはやはりあくまでも研修という純粋な動機があるべきでございまして、そこにおいていい看護学を研修していただいて、そして母国に帰ったならばその方々がやはりナースという仕事で仕事につけるということのために私どもの国がそれらの外国人の方に協力するという、すなわち研修という形がはっきりしている理念を伴って行う必要があるということでございます。  そのバリアを越えるためにはさまざまなやはり計画が必要であろうということで、現段階ではすぐに外国人の労働者が看護助手として、数だけが不足であるから入ってくるということに関しましては直ちには賛成いたしかねるというふうに考えております。  ありがとうございました。
  66. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 どうもありがとうございました。
  67. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員一同に成りかわり、厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  68. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成四年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず丸尾公述人、次に貝塚公述人、続いて板谷公述人の順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、丸尾公述人にお願いいたします。
  69. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 丸尾でございます。  きょうは、政府予算の審議に際しまして、衆議院予算委員会で意見を述べさせていただく機会をいただきましたことを大変光栄に思っております。  現在の日本は、当面は景気後退にどう対処するかということ、第二に、種々の国際的要請にどうこたえるかということ、第三に、やや長期的には人口高齢化問題にどう対応するか、それから第四に、生活の質の向上への国民の強い期待にどうこたえるか、そういった方面に今回の政府予算が適切に対応しているかどうかといったようなことでお話をさせていただきたいと思います。  まず第一点ですが、最近の経済指標あるいは予測等を見ますと、国内も国際的にも相当の景気後退が生じており、このままではさらに一層深刻になり、政府の来年度の経済成長率見通しも困難になるおそれがあるわけです。そこで、政府としては、ここで金融政策に加えて財政面でてこ入れをするかどうかという問題があるわけです。政府としましては、今回一般会計の方は控え目に抑え、財政投融資の方で一〇%以上の伸びという形でこの問題に対処しようとしているわけです。これは現段階として適切な方向であろうと思います。ただ、より深刻に景気後退が生ずるおそれがある場合に備えて早急な政策がとれるように財政的に備えておくことが必要であると思います。  その場合に、政府予算、政府支出拡張で財政赤字が多くなりますと、これは行政改革等のかつてからの課題と反することになりますので、景気後退等に対応と財政赤字問題をどう両立させるかという大変難しい問題に今回直面しなければならないわけです。しかし、私の見るところ、現在のように日本の供給サイドにまだ深刻なボトルネック、障害がない段階では、有効に適切なところに政府支出を拡大すれば、そのことによって景気の落ち込みを避け、経済成長率を維持できれば、財政赤字の、絶対額はともかくとして、対国民所得比は大きくならないのではないか、ならない可能性の方が多いのではないかというふうに感じます。  そのことを示唆するために、グラフを二つ配りました。ここは学会ではありませんから非常に大ざっぱなグラフですけれども、要するに、図表一は横軸に政府支出の、これは国民所得統計で言う政府支出ですね、それの増加率を、縦軸にその年と次の年における財政赤字の対国民所得比をとっています。次のページの図表二は横軸に一般会計支出の増加率をとっています。いずれの場合も回帰線は右下がりである。まあこれは一般的にこの相関関係はそれほど強くありませんし、ほかの要因がいろいろありますから明確なことは言えませんけれども、少なくとも、政府支出の増大がかえって財政赤字の対国民所得比を小さくする傾向の方がどちらかといえば強いということですね。  こういうところなどを精緻に計算しまして、そしてまた政府支出をふやすにしましても、例えば住宅なども直接にふやすとお金がかかりますから、利子補給などの形で間接にこういう不況のときに住宅の投資及び更新、再開発などを促す、そういうことをやれば財政赤字問題と景気回復とを両立させることは十分可能であると感じております。  それから第二番目に、高齢化に対応する問題ですけれども、高齢化の進行で社会保障等々が、あるいは労働力のマンパワーが非常に深刻な問題になるといろ、これは余りに周知のことですから今回はちょっと省きまして、出生率の問題にちょっと焦点を絞っております。  御承知のように出生率が、ひのえうまのときの合計特殊出生率の一・五七よりさらに低くなっておりますけれども、出生率との間に非常に相関関係が強いのは、私が去年の夏ごろか秋ごろ出しました計算などでどうしても一番は一つきり出てきますのは女子の初婚年齢と非常に相関が強いということですね。初婚年齢が高くなるにつれて合計特殊出生率が下がっている。そして初婚年齢、合計特殊出生率ともに雇用部門での女子の就業率と非常に関係がある。このことは、今後労働力不足とか男女雇用均等、平等化によって女子の就業率が高まっていきますと一層出生率が下がるおそれの方が強いということですね。  例えば東京は雇用部門での女子の就業率は非常に高い。そして平均初婚年齢は日本で一番高い。そして出生率は、おととしの日本が合計特殊出生率が一・五七だったときに東京は一・二三か四ぐらいですね。非常に、何といいますか就業率が高く、初婚年齢が高く、出生率が低いという形になっていますけれども、このまま日本が推移すれば、全国が東京化すればこれは大変なことになってしまうわけですね、出生率の点から。  そういうことを考えますと、女子の就労と出生率の回復とを両立させるようなより積極的な政策が必要ではないかということです。もちろん政府は出産休暇、育児休暇を導入したわけですけれども、何かまだあれでは効果はないんではないかという感じがします。  今回も、去年どことし、二回欧米にちょっと調査に行きましたけれども、例えば日本と比べると、所得水準では為替レートで計算すると十分の一ぐらいのチェコスロバキアでも、出産休暇は九カ月で有給です。ECの中では非常におくれている国のスペインでさえも二週間は有給です。二週間でしたかな、二週間以上有給ですね。とにかく有給にしていくということ、そして労働環境がむしろ、女子や高齢者でも働ける労働環境や労働条件にしていく、そういうことによって結婚をしても出産しても就労を続けれるような労働環境をつくっていく、そういう点についてまだまだ政府としてはすべき政策があるのではないか。もうちょっとそういう面で今回前進があると期待したのですけれども、恐らくもうちょっと出生率ショックが深刻になる次回、もう少したちましてからそういう政策、今回は無理としましても、そういう方向に進んでいってもらいたいと期待しているわけです。  要するに出生率が低いと将来の労働力不足は一層深刻になりますし、高齢化の程度も、もし今の程度の出生率が将来も続くとしますと、二〇二〇年代の六十五歳以上の高齢者比率は、政府が予測する中位予測の二五%台でなくて二六、七%になります。そういうことを考えまして、男女の雇用機会の均等という観点からも、あるいは高齢化対策としましても、もう少し家族政策ともいうべき政策とそれから労働条件、労働環境政策、そういうところに高齢者、出産前後の女子も就労するのがノーマルであるという、そういう発想に立った政策予算措置が必要ではないかと思います。  それから第三点としまして、首都圏への一極集中と生活の質の問題ですけれども、今回の予算書とともに送っていただきました「平成四年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」という政府文書の七ページには「多極分散型の国土の形成を促進し、安全で良質な国土・居住空間の形成等に努める。」と言っておりまして、その辺のことをいろいろ書いてありますけれども、どうも今回の予算措置の中に、そういう政策を進めることあるいは生活の質を重視するということを言っていますけれども、そういうことに重点を入れたという感じが予算の中ににじみ出ていないという感じがします。日本の場合、一極集中化を排するということを前々から言っておりますけれども、どんどんとまだ自然の破壊は都市の周辺では続き、国土庁の去年の研究報告書にも出ておりましたように、東京二十三区の山林面積は既に五%になっておる。横浜でも一九八九年で八・九%、それが横浜みなとみらい21計画では六%台までに山林面積が下がることになっています。  そういうことが今なお続いているということはかなり異常なことではないかと思います。私は神奈川県の環境アセスメント委員をやっておりますけれども、今なお自然が破壊され、谷が埋められて、そこに工場、研究所と称する工場に近いようなものがつくられたり住宅がつくられたりしておりますけれども、やはりこの辺からもう都市は自然をふやす方向に逆転していい段階ではないかと思います。  世界的に山林が減少していまして、発展途上国に対して山林を保全しろと言っていますけれども、自分の国の方で、先進国が減少しているようでは余り示しかつかないのではないかと思います。あるいは水辺にしましても、これも国土庁の調査ですけれども、東京湾の沿岸の自然海岸の比率は五・二%。大阪府と広島県は一三、四%と非常に自然が少なくなっています。  この自然が大事だというのは、環境保全という観点だけではなくてこれから余暇が日常化してくる、そうすると自然というのは、自然や水辺、山林等は公園と同時に非常に最も基本的な、日常的な庶民の余暇資源ですね。そういうものを重視するという観点から、自然の開発が非常に高くつき、そして自然を保全したり再生する場合には相当の補助がつくという、そういうかなり思い切った政策予算上織り込まないとこれまでの傾向の逆転はできないと思います。  ヨーロッパの西ドイツなどで比較的分散化ができているというのは、政府自体が分散化していることもありますが、ベルリンとかあるいはケルンとかスウェーデンのストックホルムとかああいうところでは公有地が、ベルリンでも六九%公有地である、ストックホルム市内でも大ストックホルムまで入れると七〇%が公有地であるという有利な条件はありますけれども、それにしましても自然の保全地区と公園で四〇%から五〇%を占めている。そういうふうに昔から余り建てさせなければ一極集中は生じなかったのですけれども、山林面積が五%になるまで放置した、そして横浜などではまだ進行するのを放置しているということが変わらない眼力、作文ではあっても本当に分散化というものが進むとは思わないわけです。  それからもう一つ、生活の質との関連で、文化政策に関しまして、この辺で文化政策元年という感じがそろそろ出てきていいのではないかと思うのです。海部首相のときに文化政策に関心が出まして、文化基金などをつくられて前進がありまして、文化元年に近づいてきたという感じはありますけれども、一九八八年の文化庁の「わが国の文化と文化行政」という文書にもありましたように、人口が日本の半分程度のフランスやイギリスに比べましても日本の芸術や文化財保存の予算というのは数分の一でしかないというのは、どうしてもちょっと日本は異常ではないかという感じを受けるわけです。  あるいはスウェーデンと比べますと、スウェーデンのことしの文化振興と文化財保存のための予算が二十四億四千百万クローナ、一クローナ二十・五円としますと約五百億円ですね。日本の場合のそれに見合う予算が四百九十五億九千八百万円ですから、大体同じですね。スウェーデンというのは人口が神奈川県よりちょっと多い程度、八百五十万ですから、その国の予算とほぼ同じだというのは、少しまあ異常ではないか。向こうも異常ですけれどもね。スウェーデンという国もちょっと異常でやり過ぎていますけれども日本の方も少し異常ではないかという感じがします。やはり日本が文化的な国として世界的に評価されるためには、ここら辺にもうちょっと予算配分があっていいんではないかと思います。  そして文化的な施設等々は、これも一つの余暇施設なんですね。日本で余暇施設、レジャー施設といいますと、北海道とか長野とかいろいろなところに、自然を開発して、自然を壊してそこに鉄やセメントの建物をつくったり道路をつくる、それを企業と政府と関係し合ってやっていく、これが日本の余暇対策という感じがするわけですけれども、もうちょっと身近なところで、町中に、あるいは町の近郊で自然を楽しんだり文化や芸術を楽しめるような、そういう環境をつくれるような、そういう予算措置を講じていく必要があると思います。これは地方も大いにやるべきですけれども、やはり文化も東京に集中してきている。そのために、これもまた人口が首都圏に集まる理由ですから、やはり地方にそういう文化を享受できる場所をもっとつくっておく必要があると思うのです。  それから、余暇施設として考える場合、非常に日本の文化施設というのは利用者にとって、特にサラリーマンにとって不都合ですね。国立博物館にしましても四時半にはもう入れなくなる。そういう非常にサラリーマンのことを考えていませんから、なかなか入れない。これが欧米ではそうじゃないのですね。一週間に一遍か二遍は少なくとも遅くまでやっている日があるわけです。例えばルーブル博物館でも月曜日と水曜日は夜九時四十五分まで開いています。新しくできましたオルセー美術館も木曜日は九時十五分まで、ピカソ美術館は夜十時まで水曜日は開いています。そういうような配慮というのは、もう少し予算措置があって人件費等でそこのときやれる対策があればやれるのではないかと思います。  それから最後に、これから経済の自由化、ますます国際的にも国内でも進んでいくと思います。そして、世界的に見ましても自由主義経済化の傾向は顕著であり、共産圏国の失敗によってそれは明らかであります。しかし、この自由主義を非常に主張するサッチャーさんとかレーガンさんは、他方で、非常に自由主義を主張し、そして累進税率を、累進度を非常に下げたりする、しかし、その見返りとして、勤労者の資産平等化のための資産形成という政策を非常に積極的にやっていますけれども日本の自由主義にはそちらが欠けているような気がします。  勤労者財形制度というのがありますけれども、私も財形制度審議会の委員を八年間やらせていただきましたけれども、一生懸命主張してもほとんど前進しない。特に、株のような資産まで財形に含むということには非常に強い抵抗があって動かない。ECではPEPPER報告と言われる報告が出ています。要するにファイナンシャルな、金融面での資産参加などを推進する政策が行われていまして、かなり関心事になっていますけれども日本の場合にどうもそういう方向はむしろ後退である。財形制度は後退しましたし、そして財形の枠も、十八年間五百万円という枠がふえていない。  この辺で、自由主義を非常に主張するからには、他方で勤労者がだれもが資産を持てるような、そういう社会にしなければならない。そういう社会になれば、安んじて自由主義化を進め、自由競争をやらせて、そして税金も、税率も累進度を下げたりしてもいいわけです。そっちがなくて、片方だけを推進しますと、変な自由主義になるわけです。そういう点でも今後御配慮をいただきたいと思います。  時間になりましたので、これで終わります。(拍手)     〔委員長退席、中山(正)委員長代理着席〕
  70. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 ありがとうございました。  次に、貝塚公述人にお願いをいたします。
  71. 貝塚啓明

    ○貝塚公述人 貝塚でございます。  予算委員会の公述人としてお招きを受けまして、大変光栄に存じます。  私は、財政学者、財政が一応専門でございますので、その観点から平成年度予算について私の意見を述べさせていただきたいと思います。  最初に全体として明年度の予算に対する評価を申し上げまして、それからやや個別的な問題、例えば景気の観点の問題あるいは財政の効率化の問題、それからさらに多少私自身のやや批判めいた話をさせていただきたいと思います。  最初に、全体としての評価でございますが、今年度予算は御存じのように、曲がりなりにも赤字国債が解消してとりあえずの財政再建の目標が達せられたわけであります。その結果、財政バランス改善してきたわけであります。ところが、この財政収支改善には、これはバブル経済が非常に盛んになったときの影響がありまして、税収入が非常にふえたわけでございますが、他方バブルがはじけた後は、むしろ金融的に非常に収益が悪くなりました結果税収が非常に減ったという状況にあります。したがって、明年度の予算というのは大変税収が見込めないということで、今年度の予算に比べますと一・二%の増というわずかな税収増であります。  こういうわけで、財政を取り巻く環境はかなり変わったわけであります。日本財政は、ある時期から、第一次石油危機以降赤字国債を相当大量に発行したわけですが、赤字国債をなるべく発行しない体制に持っていって、そしてしかも経済全体として財政がなすべき役割を果たさなくてはならないという、そういう難しい局面に来たわけでございますが、明年度予算はまさにそういうことが非常に端的に出てきたわけであります。  予算編成をやられるときには、一方において赤字国債発行はどうしても避けなくちゃいかぬという課題があります。他方において経済の景気はやや下降ぎみであって、景気を抑制してはいけないということがございます。両方を両立させながら予算を組むというのが明年度予算であります。その場合、赤字国債発行できないということでありますから、ということは、別の言い方をすれば経常的な支出は余りふやせないということですね。しかし公共投資はかなりの程度ふやせるはずでありまして、明年度の予算はそこのところを考えて公共投資はできる限り伸ばす。伸ばすというのは、これも御存じだと思いますが、公債発行というのが、結局公債発行は建設公債であれば発行でき得る。そういたしますと、公共事業費に見合って大体発行できるというのがぎりぎりの最高限度であります。  明年度予算は実も言うと公共事業費の九六・二%までを国債で賄う、ぎりぎりのところであります。したがって公債全体は発行がふえたわけで、公債依存度は七・六%から一〇・一%にふえました。したがって、そういう意味では公債発行はふえたわけでございますが、しかし赤字国債発行は避けたということになります。まあ、ぎりぎりのところで予算を組んで、その中で政策的な経費をなるべくつけて、別の言い方をすればめり張りをつけて、そして財政収支バランスの悪化をできる限り抑えた予算だというふうに評価いたします。そういう限りでは明年度予算というのはかなり苦心の産物であるというふうに思います。  以上が大体全体としての評価でございますが、もう少し個別的な問題といいますか、世の中でよく議論になっております景気に対する財政ということで申し上げますと、私の意見は、明年度予算というのは景気に対して中立的ということですね。要するに抑えるわけでもなく非常に今度は積極的にやったというわけでもなく、中立的だというふうに考えます。  公共投資の伸びはかなり伸びました。それから、特に現在は地方財政の方が財政事情は潤沢でありますので、地方の単独事業が、これは一一・五%と非常に伸びたわけですね。ですから全体としてかなりの公共投資の伸びがあったということでございます。  それからもう一つつけ加えておきたいことは、公共投資基本計画というのがございまして、これは日米構造協議で日本側がアメリカに対して十年間の公共投資の総額を、たしか四百三十兆円でありますが、約束したわけであります。日本財政当局が十年間の間これだけ公共投資をやるという約束をしたことはいまだかつてありませんで、財政当局がそういう約束をしないというのが財政当局でありますが、ところがアメリカに対して十年間の約束をしたということは、逆に言うと大変重要な意味を持っている。要するに、日本民間部門ですね。企業経営者あるいは直接的には一番建設業あたりが関係ございますけれども、言ってみれば日本は今後予算においてある程度公共投資は十年間相当の額を保証するということを約束したわけでございます。  ですから、明年度の予算は実を言うとその中に入っておるわけでございますけれども、そういう意味で、確かに民間の経営者の方は景気が悪くなったということをよく言われるわけでありますが、少なくとも財政公共投資についてはあるスピードで、長い目で見れば十年間相当の公共投資を拡大するということを約束しているわけでございます。これは実を言うと民間の経済界に対して大変、ここまで、これだけは財政がやるということを約束しているという意味でプラスの効果があるというふうに私は判断しております。  それから財政投融資がかなり拡大されておりまして、この財政投融資というのは非常に複雑ではございますが、一言私の意見を申し述べれば、現在はこういう状況にありまして、というのは、民間金融機関というのは大変経営が悪くなっております。バブルがはじけた後経営は非常に悪化しております。ですから、国際的ないろいろ要請もございますけれども、自己資本を充実しなくちゃいかぬということもありまして、民間金融機関は実を言うと余りお金を貸すことに積極的ではありません。  財政投融資というのは政府がやっているある意味で金融でありまして、郵政貯金その他からたくさんお金が上がってきて、これを政府金融機関あるいは直接に政府の公団に貸しているわけでありますが、政府金融機関の例をとりますと、やはり政府が自分でお金を調達したものを貸すというのは、これは、もし貸してくださいという申請があればもちろん審査はいたしますけれども、積極的に貸せるわけですね。政府が要するにお金を集めて貸すというのは、やはり非常にリスクがないというのですか安全であるわけですね。そういう意味で、財政投融資でお金を貸していくということは、実を言うと民間金融機関は非常に歓迎しているというふうに思います。というのは、民間金融機関はなかなか貸せないわけです。そう簡単に貸せないという状況にあります。そういう意味で財政投融資がある規模でもって拡張されているということは、景気に対してばいい影響があるのではないかと思います。  したがいまして、見た目は財政はそれほど景気に対して非常に積極的ではないし、解釈によってはあるいはそういう御意見もあるかもしれませんが、財政景気を抑えているという御意見があるかもしれませんが、私は、以上申し上げましたことから、明年度予算につきましては景気中立的であって、財政は、財政赤字を、拡大をなるべく避けて、そういう意味で中立的な予算を組んでそれでよかったのではないかというふうに思っております。  それから、財政の効率化ということがよく言われておりますが、二、三の例で今回の予算にもそういう点でプラスになっている点があるのではないか。これも皆さんよく御存じだと思いますが、防衛関係費という話がございます。防衛関係費というのを今後どうすべきかというのは大きな問題でございますが、やはり日本の防衛関係費というのは今後は従来とは違ってGNPが伸びれば同じスピードで伸ばすというふうなものではもうもはや決してなくなっているということは確かであります。そうであるとすれば、実を言うと、やりくりする予算の中から、今までは防衛関係費の増になったものをぼかの部分に回せるはずでありまして、そういう形で、今年度予算は防衛関係費の伸びはかなり抑えられましたが、今後やはりそういうふうに全体の中で防衛関係費のシェアは少しずつ下がっていくのがやはり当然ではないかと思います。  もちろん、伸びをとめろとかそういう極端なことは申しませんけれども、従来と違って予算については違った観点で、そしてわかりやすく言えば、そこで節約したものはほかの部分に回せるということが十分ある。現在の規模はたしか四兆五千億ですか、不正確ですが、ODAが大体九兆円ぐらいございます。その大体半分ぐらいが防衛関係費でございますから、そこをある程度抑えられれば相当の節約ができて、毎年、数字で申せば一千億ぐらいはほかへ回せるということになります。  それから、ほかの点で明年度予算で申し上げますと、健康保険や雇用保険の財政が非常によくなった。社会保障関係は大体財政で見れば、財政状況は悪くなっているというケースが多いのですが、健康保険や雇用保険は、実を言うと黒字がかなりたまった。  なぜたまったかということの一例でございますが、政府管掌の健康保険は、たしか三年か四年前に本人負担の医療費のたしか一割を自己負担にしました。そのときから、わかりやすく言えばお医者さんにかかる率が減ったというのが一番大きな理由であります。その結果として健康保険会計は政府管掌の方は非常に黒字がたまって、今度は保険料を下げるという状況になりました。これは、私は非常に結構なことじゃないかと思います。ある程度自己負担をするということがやはり政府全体の財政にとってプラスになるという非常にいい例ではないかと思います。  雇用保険の方は、要するに日本は非常に完全雇用といいますか、完全雇用というよりも人手不足でありまして、どんどんどんどん外国人労働者を違法、ある場合には違法ということですが、雇っているわけですから、完全雇用でありますから、要するに、失業保険であります雇用保険がお金を払う必要はほとんどないというわけで、財政収支がよくなるというのは当然でございます。  それから三番目は、これは実を言うと私も多少利害関係がありますけれども、大学関係の予算がふえたということでございまして、これは大変ありがたいことだというふうに思います。というのは、私は別に文科系の人間ですから余り文化のことを申し上げるつもりはございませんけれども日本の自然科学とか実験をやっておられる部分というのは、国立大学で予算がどうもずっと抑えられておりまして、もう老朽化して、それから最近の学生諸君はどうやら余り理工系は好きではないらしい、要するに、文科系で勉強する方が余り手が汚れなくて気楽に見えるということですね。そういう傾向もございまして、そういうところで実を言うと理工系はかなり大変なことになっている。したがって、そこでやはり必要なことは、広い意味で研究者の環境をよくしていただいて予算をつけていただくというのが非常に重要でありますし、私ども民間の経営者の方にお会いするときには、このまま放置すれば日本の基礎研究というのは非常におくれて、最後は日本の会社経営にツケが回るということを申し上げておるわけですが、その点で大変評価いたしたいと思います。  それから、あと二、三問題点を申し上げたいと思いますが、公共投資は大変枠はふえたわけでございますが、しかし公共投資というのはもう以前からここ十年間ぐらい、財政学者はいつも言っておりますけれども、ゼロシーリングのときには、統計を見ていただくとすぐわかりますが、公共投資の分野別の配分比というのは大体〇・一%も変わっておりません。きれいにシェアといいますか、割り振った比率は非常に驚くべきほどきっちりと変わっていないということであります。公共投資をふやすときには、できれば新しい分野に回して日本の今後の経済社会にプラスになるようにやっていただきたいというふうに思うのですが、なかなかそれがうまくいってないということが今でもそうではないか。  実際、枠はふえたのですが、本当に重点的にうまく配分されているかについては、財政当局が苦心されているとは思いますけれども、なおかつやはりシェアが変わらないということは、できる限り日本経済が、今経済が調子がいいときに公共投資をできる限りやってうまく配分するということに、そうしないと二十一世紀の日本の社会資本の形成は非常に難しいという気がいたします。先ほど丸尾公述人も言われましたけれども、文化関係、あるいは例えば一例を申し上げれば京都とか金沢とかああいう古い町並みがだんだんだんだんなくなっていく状況というのは、やはり広い意味での環境であって、そういうものをどういうふうに保持するかというのは大変お金がかかると思いますけれども、やはりやらなくちゃいかぬということであります。そういう点になるべく配分していただきたいということでございます。  それからもう一つは、ODAの問題というのがございます。今、日本の経済協力というのはどうなっているかといいますと、たしかOECDが決めた発展途上国向けの援助というものですね。ですから、対象は一応現在OECDが考えている発展途上国にお金をいろいろ供与するということであります。ですから、非常に話を何といいますか極端にすれば、例えば日本アメリカに貸すというわけにはいかないわけであります。それから、ヨーロッパの先進国にも貸すわけにはいかない。それから例えばソ連や東欧にもすぐODAで貸せることにはなっておりません。しかし、日本は今や経済的には非常に力が強くなって大変あちこちから今の発展途上国以外の国々からいろいろやってほしいと、しかもやはりそれはやらなくちゃいかぬということがございます。現在ODAの予算はそういう体制にはなっておりません。  したがって、やはり国際貢献というのをODAだけの枠の中で考えるのは無理がきているというか、それでは日本の国際的な貢献はできないという状況に来ているのではないかと思いますのできれば、なかなか難しい問題でありますけれども、旧社会主義国というのですかとか、それから実を言うと場合によってはアメリカでもそれからヨーロッパのイギリスでもフランスでも、日本はやはり何かやらなくちゃいかぬというときが必ず来るはずでありますし、そういう状況に来ておりまして、できる眼力そういうふうな形でODAについては今後いろいろ考えていただきたいというふうに思います。ODAの枠だけじゃなくてODAの枠を少し変えてフレキシブルにする、弾力的にするということではないかと思いますが、その辺は今後非常に重要であるかと存じます。  以上、全体的な評価と幾つかの個別的な問題に、ついて私の意見を申し上げました。大体時間が来たようですので、ここで失礼させていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  72. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 ありがとうございました。  次に、板谷公述人にお願いをいたします。
  73. 板谷茂

    ○板谷公述人 板谷でございます。  名古屋商科大学の国際経済学の中で、東南アジアの地域研究をやっております。したがって、本日は、きょうまで日本がとってきた国際協力の実態が一体よかったのかどうか、あるいは現地でそれが歓迎されているのかどうかなんということを中心にしながら、今貝塚先生がちょっとおっしゃったODAなんかも含めまして、単年度の国家予算ではなしに、十年、二十年すなわち二十一世紀あたりまで考えた予算を作成する場合に、我々日本国民が何をしておかなければいけないかというようなことに焦点を当てながら考えていきたいと思っております。  本年度だけの単年度、見てみますと、二国間無償援助、一般会計の方の経済開発等援助費目の文化無償というのが、平成三年度が二十四億円で、本年度も何とわずか二十四億円で、プラス・マイナス・ゼロであるということになっております。この二十四億円を数字で表現をしますと、二国間無償援助のわずか一%であるということと、ODA全体の中では〇・二五%であるということ、それから本年度の一般会計に置きかえますと何と〇・〇〇三%という、数字にならないような小さな数字が本年度の二国間無償援助の実態なんです。  一体全体国際貢献というのはどういうものなのかということを考えていかなければいけないと思うのですけれども、確かに金額を増加するということが歓迎される要因にはなると思うのですけれども、問題はその内容だと思います。これから限られた時間しかありませんけれども、成果が上がった、すなわちちゃんと成果が上がったんだというのは、政府にせよ、あるいは関係機関がいろいろと書いてもいますし発表もしておりますので、その後ろ側で埋もれてしまっている成果の上がらなかったケースと、それから日本側が要請されたにもかかわらず協力もしなかった、むしろ無視をしてしまったというケースを二つだけ絞りまして、先生方にお考えいただけたらと思うわけです。  まず最初に、成果の上がらなかったケースなんですけれども、これは一九八三年に総理大臣が東南アジアを一回りしまして、タイの、タイに国立大学が十あります、その中の二番目の国立大学と言われるタマサト大学に、日本研究センター、インスティチュート・オブ・ジャパニーズ・スタディーズというのを無償で出してやろうじゃないかということになったんです。十二億円です。建物は、清水建設が名古屋の黒川紀章先生の指導のもとに四千五百平方メーターの建物をつくりました。こんな立派なものなんです。これが日本研究センターですね。すごく立派なものです。  ですけれども、問題は、こんなにすばらしい、中に日本庭園あり、茶室あり、図書館あり、読書室あり、セミナーの宿泊設備まであるのですよ。ですけれども、その援助の中にたった一冊の本もないのです。大使館から私呼ばれまして、飛んでいきました。小野寺参事官がいらっしゃいまして、板谷君、何とかならないんだろうかということです。本人も日本政府のお役人さんですからそれ以上は言えないと思うのですけれども、十二億円の建物は建てて、そして図書室もつくったんだ、その図書室の中に、これ見ていただくとわかりますけれども、立派な図書室があるのですよ、そこに本が一冊も来ていないわけです。何とかしてもらえないだろうかというのが小野寺参事官の私への相談です。  わかりました、帰りまして、私は民間人ですけれども何とかさせていただきましょうと名古屋へ帰ってきて、早速新聞社、特に毎日新聞が一生懸命やってくれたのですけれども、毎日新聞に呼びかけて、全国に、図書を集めて送ってやろうじゃないか。三カ月の間に何と十万冊集まりました。十万冊の図書というのはどのくらいの量がといいますと、この部屋二つ分ぐらいにびっしり天井まで積み上げて、それが十万冊です。すごい量です。トヨタに頼みまして、トヨタというのは車を輸出していますから船があるわけですね。サニーパインという船が十一月の二十八日に名古屋港を出て、バンコクへ着いたわけです。  その十万冊はとてもこの建物の中には入り切りませんので、二万冊だけ寄附しまして、残りの八万冊はタイの国立大学の残りの九つの大学で分けてくださいということで、大学庁長官がカセム・スワナクンという、チュラロンコン大学というこれまたすばらしい大学があるんですけれども、そこの学長さんなんです。それで、カセムさん、ひとつ引き受けてくださいな、わかりました、それじゃ二万冊だけ国際研究センターの方に回して、残りの八万冊は我々が引き取りましょう、そして日本コーナーというのをつくりましょうということを言ってくれまして、現にチュラロンコン大学の図書館の一番上のところにジャパン・コーナーというのができ上がっています。  これはこれでいいのですけれども日本の援助というのは、金額はそれは確かにすばらしいですよ、十二億円でこれだけの建物ですからね。二階建てです。ですけれども、図書をなぜ持っていかないのか。日本研究センターなんですよ。向こうは一生懸命日本のことを勉強したいわけですね。それも、輸出がすごく、日本の経済がどんどんどんどん伸びている、企業も一生懸命やっている、そういうものも含めて勉強したいわけですよ。だから日本研究センターというのをつくってほしいということになったわけですね。にもかかわらず、一冊も本を贈らないというその、何というのでしょうか、無神経さというか、これは政府も責任があるでしょうし、我々国民だってもっと考えなきゃいけない問題じゃないかなと思うのです。  したがって、タイでは日本研究センターという名前を最近変えさせられまして、東アジア研究センターになりました。日本の心のどこかにそういうものがあると思うのですよ。しかも、この所長さんになったのがバニヤット・スラカンビットという助教授です。当時三十七歳の、ある意味では若造ですね。にもかかわらず日本研究センターの所長に抜てき中の抜てきをされたわけですね。それほど日本に対する熱意にあふれているにもかかわらず、残念ながら我々がやってきたことというのは不十分だったと思うのです。  そのスラカンビット氏がよく言うのに、日本というのはどうして自分たちの売りたいものだけを売っているんだろうかということをよく本人は言います。というのはどういうことかといいますと、一九六〇年代に日本自動車を持っていったんです。タイの産業の中できっとこれはもうかりますよ、これをやれば何らかの効果が上がりますよということで自動車会社が一斉に一社も例外なしに進出していったわけです。タイはそうじゃなしに、特にバニヤット・スラカンビット氏あたりは、トラクターですとか耕運機ですとかコンバインだとか、あるいは農機具だとかそういうものをつくる機械あるいは産業、それを持ってきてほしいということを言っているわけですよ。  だって、タイは今から十七、八年前は八二・六%、農民は。タイの国民の全体で農民が八二%くらいだったのですよ。きょう現在でも七〇%ですから、したがってそれは減らしていきたいんです。近代的な国家にしていくためにはもっと先端技術なりあるいはハイテクなりそういうものをどんどん入れていきたい。だけれども、国民はまだ相変わらず七〇%農民なんですよ。その農民に、さあ自動車買えよ、ちゃんとノークラッチですばらしいんだぞなんと言ったって、それはお金持ちには通用するけれども農民たちには全然関係ないわけですよ。それよりはトラクターだとかあるいはコンバインですとか、そういうものをなぜ日本は持ってきてくれないんだろうか、そういう農機具を最有力にどうしてしてくれないんだろうかということがこの研究センターの所長のスラカンビット氏の我々に対する最大の怒りです、極端に言えば。  なぜ農機具とかあるいは農業関連のインダストリーを持ってきてくれないかといいますと、タイには、一番新しい資料なんですけれども九万九百二十七工場があります。ほぼそのうちの半分が精米工場なんですよ。残りがコンピューターの下請をやっているだとかあるいは電機工場だとかあるいは自動車だとか、そういう工場ですね。この精米工場というのは、皆様方もすぐおわかりいただけると思うのですけれども、十二カ月のうち三カ月ほど動けばもつあとの八カ月、九カ月は遊んでしまうわけですよ。脱穀すればもうそれで終わりですからね。そして、その玄米を白米に直せばそれで精米工場というのは終わるわけですよ。  ですけれども、タイの国にとってはこの精米工場なんというのはすごく大きなウエートを持っているわけですよ。工場が九万九百二十そのうち半分以上が精米工場なんですから、これを利用したいわけですよね、スラカンビット先生たちば。これが遊んでいるわけです。八カ月ほど遊びますから、その八カ月を何とか利用して、そして農村工業、アグリカルチュアルなインダストリーを、ちょうど日本がやってきた、明治、大正、昭和の初めにやってきたようなそういう形で持っていきたいんだということだったわけです。それに対しても、残念ながら我々は協力をしなかったわけですね。  これがインドネシアに行きますとまたさらにもっと、先ほど申し上げましたように考慮もしてやらなかったし、そんな提案があっても日本は協力しないよという、一番悲惨なケースを申し上げて私の時間にしたいと思うのですけれども、私自身も、このスラカンビット氏の問題にせよ、日本研究センターにせよ、あるいは今から申し上げますものにせよ、間接的ながらそれぞれ関係してきたものですから、そういう意味で皆様方の御了解というか御理解をさらに深めていっていただきたいなと思うのです。  それはどういうことかといいますと、インドネシアが、もうかなり前からなんですけれども飛行機産業をつくりたかったわけです。そして日本に、それこそ何十回、何百回という形で日本政府に依頼があったわけです。我々民間に対してもそれはございました。私は、お亡くなりになったんですけれども副大統領のアダム・マリクさんと対合と、口幅ったい言い方ですけれども交友関係があったものですから、アダム・マリク副大統領を通じてこういう話を受けたわけです。  なぜそんな話をここへ持ち出すかといいますと、インドネシアというのは長さが、国の東西の長さがここからジャカルタぐらいあるんですよ。五千六百キロぐらいあるわけですよ。もう一つ言いますと、ここから、国会のこの場からハワイのワイキキの海岸ぐらいまでがちょうどインドネシアの長さなんです。そこに一万三千六百七十その島が入っているわけです。その一万三千六百七十その島のわずか三千ぐらいしか使っていないわけですね。理由は何だと思います。飛ぶものがないからなんですよ。島を結べないわけですから。  日本は同じように自動車を持っていったわけです。あらゆる自動車会社はインドネシアに進出しております。それはアメリカも入っています。ヨーロッパの連中も入っておりますですね。ですから日本だけを責めるわけではないんですけれども、向こうは飛行機が欲しかったんです。どうなったかといいますと、プロフェッサー・ドクター・ハビビという科学技術担当国務大臣がいらっしゃいますけれども、この方を西ドイツへ派遣しまして、そして向こうでさらに飛行機の勉強をさせて、最後はメッサーシュミットにハビビ先生はお入りになって、そして副社長までなさったんですよ。インドネシアの国民でありながら、メッサーシュミット、あの有名な戦闘機をつくっているメッサーシュミットの副社長になっているわけですよ。それで、航空機というのは何であるか、どうやってつくったらできるかということをちゃんと自分で勉強してインドネシアに帰ってきているわけです。  そして、多分アメリカにもいろいろと折衝したと思うのですよ。イギリスもフランスも、もちろん日本にも、一番近い距離にあるわけですから、日本は何とか協力できないだろうかということを言われたと思うのです。日本は、生意気なというようなものでしょうね。先端技術中の先端技術ですからね、飛行機なんというのは。陸上ですと、あるいは海上ですと、とまればいいわけですね、車は。ですけれども飛行機はとまるわけにいかないわけですね。それは次の瞬間、死を意味するわけですから。そんな科学の中で一番難しい問題をインドネシアの発展途上国がやるとは何事かというようなものだったと思うのです、当時。ですから日本は全く協力しなかったわけですね。  あの有名なバンドンという、一九五五年にバンドン会議が行われたあそこにこの工場はあるのです。すばらしい敷地を持っています、大きな。二千メーターの滑走路まで持っている工場です。スタートは一九七六年だったんですけれども、そのときは五百人で工場を運営しているわけですね。八三年に、ロールアウトといいまして第一機目の飛行機が出ました。現在五万九千人の従業員がおります。下請工場が百十七社あります。そして、きょうたまたま持ってきたんですけれども、こんな立派な飛行機をもう既につくっているんですよ。これはインドネシアの製品ですよ。インドネシアがつくっている飛行機です。年間三百機、四百機というこれをつくっているわけですね。日本も多分とこかの会社が買っているんじゃないかなと思うのですけれども、ハワイあたりの飛行機はほとんどこれです。それからタイの農林省あたりも専らこれ。農林省、それから軍隊、それから海岸警備隊なんかは、この235というのですけれども、それを買っております。残念ながら協力したのはスペインなんですよ。アメリカも多分断ったんでしょう。ヨーロッパの国々も、そんなインドネシアが飛行機をつくるなんてというようなことだったと思うのですよ。日本ももちろんだめというようなものでしょうね。そんな、まず基礎科学からやっていって、そして頂上にあるのが飛行機産業だよというようなことだったと思うのです。  ですけれどもインドネシアは、国家統一をしていく場合にこの一万三千六百七十七と言わずに住民がいるところの三千だけでも結びたいわけですね。それが何と、ここからシンガポールとかここからジャカルタの距離なんです、国の長さが。そこにずっと島があるわけでしょう。ですから、スカルノ大統領もそうだったし、今のスハルトさんだって何とかしてその島を早く結んでいきたいと思うのですよ。  例えばジャカルタからスラウェシという、昔のセレベスですけれども、そこへ船で行くにしても三週間ぐらいかかるわけですよ、最も速い船ですら。新聞がジャカルタで発行されて三週間後にしかきょうの新聞は着かないわけでしょう。そういう状況なんですよ。全部無線でやらなければいけないわけですね。有線はありません。ラジオも、ないわけじゃないですけれども、ジャカルタの市内だけぐらいしかそれは通じないわけですから。ですから何とか飛行機で、お金がかかってもいいからスマトラを結びたい、それからバリを結びたい、それからカリマンタンを結びたいというのがインドネシアの気持ちだったと思うのですよ。  インドスという言葉は、インドの東という意味ですね。インドネシアというのをぶった切って、インドスというのとネソスというんですけれどもね、ギリシャ語です。ネソスが島々です。だから、インドの東にある、いっぱいある島々というのがインドネシアの語源ですよね。こんなことで日本が一体ちゃんとやっていたのかどうか、その辺を一遍皆様方によく考えておいていただければと思います。  工場の中へ行きますと、日本人は一人もいません、残念ながら。普通のどんな工場でも、それが自動車の組み立て工場であろうがコンピューターの工場であろうがあるいは何であろうが、大概日本の技術者が技術指導とかそういうことでいます。五人、十人といるものです。ですけれども、このインダストリープサワットトルバンヌサンタラという工場にはたったの一人も日本人はいないのです。入れないわけですね。向こうも入れたくないのでしょう、きょう現在では。ですけれども、ハビビさんは先月も名古屋に来られているのですよ。そして何とかまだ道がないだろうか。というのは、次のことをまた考えていらっしゃると思うのですよね。日本はいろいろとそういう技術とそれからテクノロジーを持っておるわけですから、ハビビさんはもうちょっと何とかならないだろうかということを今でもおっしゃっておられます。  最後に、アダム・マリクさんがいつも我々に言ってくれるのは、日本の製品が立派だからそれが売れると思ったら大間違いだよ、製品がいいからあるいは技術が高いから売れると思ったら大間違いだと。我々もやがてそこへ追いついていく、それがヨーロッパであれアメリカであれ日本であれ。日本に我々が期待するのは、日本人の持っている心、それを輸出してくれないだろうか。倫理観かもしれませんね。労働への取り組みでしょう。あるいは目上を尊敬するというそういう人間関係、上下関係というかそういうものをインドネシアに輸出してもらえないだろうか。すなわち、本人の言葉をもってすると、心の輸出をしてほしいということを盛んにおっしゃっていました。  そんなことをお伝えしながら、予算案に、ちょっと踏み出しているというか関係のない話になっているかもしれませんけれども、これも大きな意味で経済協力、これからの、単年度ではなしに五年、十年、二十年先の日本の国家予算というのはいかにあるべきかということをお考えいただけるチャンスじゃないかなと思いまして、きょうこんなものも用意しました。どうも失礼しました。(拍手)
  74. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 ありがとうございました。     —————————————
  75. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本拓君。
  76. 山本拓

    山本(拓)委員 自民党の山本でございます。十五分でございますので簡潔にお尋ねをいたします。  昨年バブルがはじけて、不景気景気後退になったと言われている中で、大体昔でいいますと、不景気が来たというと失業者がふえるのですね。しかしながら、昨今では不景気と言われていく中でも人手不足が続いている今現在の日本の社会構造、この現状をどうとらえたらいいのか、また今後これがどうなるのか、そこらの御所見を端的にお尋ねをしたいと思います。貝塚先生、そしてもしよかったら丸尾先生ということで。
  77. 貝塚啓明

    ○貝塚公述人 ただいまの労働力についての御質問でございますが、先生がおっしゃいますとおり、日本は現在完全雇用だと思います。しかも、恐らく少し不足していて、本来であれば、不足していれば賃金が上がるということになるのですが、その部分は実を言えば、やはり外国人労働者にある程度依存しているというのが実情ではないか。したがいまして、労働力の問題はかなり長期的に経済を考える場合に心配な点であります。経済計画で今後どうなるか、ちょっと私わかりませんけれども、恐らくこの十年間ぐらいに政府がいろいろ予定している経済成長率がもしうまくいかないケースはどういうケースかと言えば、やはり労働力不足が深刻化するケースの方が強いのではないかというのが私の意見でございます。  それで、その場合、それから先が大変難しい問題で、これは経済学者がうまく答えられるかどうかわかりませんけれども外国人労働者をどこまで認めるかというところがこれから先日本にとって大変大きな課題で、私自身もそんなに自信はありませんが、平たく申し上げれば、何というのでしょうか、恐らく文化的な風土もかなり違ったところの人々をうまく日本の社会で受け入れて、手始めに大学ぐらいからどんどんやって、今もう大学は随分ふえております。ですから、何というのでしょうか、できれば少しずつソフトに入れていって、だんだんみんななれてという形であれば、何とかいくのじゃないかなという気がいたします。  余りはっきりしたお答えになっておらないと思いますが、労働力の話は、実を言うと日本の経済にとってこれからしばらくの間がない重要な問題だし、下手をすると日本経済成長を抑える要因にもなり得るというのが私の考え方でございます。
  78. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 一つは、日本の生産年齢人口が減少に転ずるのは一九九五年ですけれども、既に年々の増加数は減少しているわけですね。かつては八十万人ぐらいずつふえていたときがあるわけです。それがもうことしは恐らく、ちょっとはっきりしませんけれども、だんだんと下がっていきまして、四十万かそこらで、三十万、二十万、十万となってマイナスになるわけですね。その段階に既になっているということ。そして企業等は既にそれを知っているということですね。  それからもう一つは、現在日本で発展している産業は、福祉関係も含めてサービス的な産業であり、非常に労働集約的な分野であるということですね。ですから、同じ成長率でも労働力の需要は若干高いということではないかと思います。
  79. 山本拓

    山本(拓)委員 全般的に景気後退が続く中で、その受けとめ方は業界においても地域においてもちょっと強弱があると思うのですが、こんな質問なんなんですが、こういう状況の中で、もし仮に先生方が日銀の総裁だったらどのように対応されるか、御所見を承りたいと思います。これも両先生にお願いをいたします。
  80. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 財政金融政策の方は貝塚先生の方が御専門ですけれども、数年前までは貨幣供給、M2プラスCDが一〇%を超す伸びをしていた。それが急に数%に下がってしまった。私の計量的な計算ですと、貨幣供給の伸びというのは数年おくれて景気に非常に影響しできます。そして物価にも影響しできます。どちらかといいますと、日本の場合、貨幣供給は政策変数そのものであるよりも、むしろ受動的に動いておりますからね。政策的にもう少し急な落ち込みを避けるということをする、そういう政策手段を持つべきだと思いますね。
  81. 貝塚啓明

    ○貝塚公述人 金融政策についての御質問ですが、私が想像するところ、日本銀行総裁も随分いろいろお考えになっているんじゃないかと思いますが、私自身の意見は、やはりもう一度公定歩合を下げられる余地はあり得ると思いますが、ただそれをいつ発動するかというのが一番のポイントであって、要するに現在確かに景気後退なんですが、本当に深刻なのかどうかというあたりもう一つ私は、民間の業界の方は随分深刻だというふうに言われますけれども、別の見方をすれば、二、三年前は財テクでほとんどうまく稼げたわけで、財テクというのはほとんど、こう言うと金融機関の方にしかられるかもしれないが、余り労力が要らないわけです。うまくいくときは全部もうかってしまう。だけれども、今はそういう時節じゃなくて、本当にまたもとの本業へ戻ってやらなくちゃいかぬ。そうすると大変だなというところが、それが大変だ、大変だということの意味しているところじゃないかと私は思いますので、私は まだ公定歩合を下げられる余地はあると思いますが、やはりもう少し様子を見て、これじゃまずいなというところになってからの話じゃないかというのが私の意見でございます。
  82. 山本拓

    山本(拓)委員 よく最近あちこちからデノミ論が出てきているのですが、率直にこのデノミについての御見解も承りたいと思いますので、両先生お願いをいたします。
  83. 貝塚啓明

    ○貝塚公述人 デノミネーションの話は、たしか渡辺副総理か何かが言われたのかもしれませんが、デノミネーションというのはどういうものかというのは、これは現在、例えばわかりやすく言いますと、今一応一円からありますね。今例えばデノミネーションでどうするかというと、恐らく今の百円を、例えば要するにラベルを張りかえてそれを一円と読みかえるということですね。ですから、現在、随分昔に日本はインフレーションになりました結果、貨幣価値が下がって、要するに割合と高額な値段がつくようになって、そういうものがふえてきたら、もう小額のお金を使うことの意味がほとんどなくなったときにデノミはすべきものじゃないんでしょうか。  例えば、一円はほとんどもう要りません。それから十円はもうほとんど使いませんと。今はしかし十円は使うわけですね。地下鉄を乗れば最低の料金はたしか東京百四十円であります。それから郵便料金もたしか六十二円ですか。それからもう一つは、消費税が入って端数がいろいろできまして、したがって日本の現在の経済取引の中で百円以下というのはやはり依然として使われておりまして、これが余り使われないときにはある意味でむだなんですね。そういうお金をつくっていることも、それからそういう単位を使うこともむだですから、そのときはデノミということを考えたらいいのではないか。  もちろんデノミそれ自身はそのときに全部単位を変えますので、御存じだと思いますけれども、取引は、全部単位を変えるということは、契約書というのは全部書きかえなくてはいかぬ。ですから恐らく、例えばの話で印刷は全部やり直さなくてはいかぬとか、ですから、デノミによって多少印刷業界とかそういうところは当然需要がふえますし、ある程度経済の需要はふやすという効果はありますが、私の意見としては、現在まだいろいろ使われておるのであれば、今それを十円をやめてしまうということになれば、百四十円のものはどうするんですかね。百円にするか二百円にするかということになりますから、まだそういう時期には来ていないというふうに思います。
  84. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 経済学者にとっては、デノミというのは本当に今おっしゃられたように貨幣単位の問題であり、どうしても小さいお金が必要ならまた銭が復活するということで、それと印刷関係、あらゆる金額を用意したものが刷り直さなければなりませんから、そっちの関係が景気刺激効果があるという以外のものではないんですけれども、ただ、アナウンスメント効果とか錯覚を利用した効果、あるいは気分を一新する効果、そういう効果はありますね。  意外と普通の人はデノミというのはわかってなくて、大変な変化のように思いますし、心理的には大きな変化ですから、そういう効果を利用して何か政策がここで大いに変わる、そして景気どもこれによって転換するんだ、かつてレンテンマルクの危機なんてああいうふうにありましたけれども、ああいうふうに何か深刻なときにデノミというのを使って心機一転政策を転換するというような点では効果はあるんじゃないかと思います。
  85. 山本拓

    山本(拓)委員 それでは最後に、今後の高齢化の進展を考えた場合の中長期的な医療、年金制度のあり方についてちょっとお尋ねをいたしたいと思います。両先生にお願いいたします。
  86. 貝塚啓明

    ○貝塚公述人 医療、年金制度につきましては、年金の方を簡単に申し上げますと、やはり年金というのは、既に一度厚生省が以前の段階で、三年ぐらい前に年金の受給開始年齢を六十歳から六十五歳にという提案を出して、これは実を言うと国会では承認されなかったと思いますけれども、やはり年金自身は今のままでいくと、先ほど丸尾先生も言われましたけれども、だんだんだんだん働く人口が相対的には減っていくわけですから、財政的にはかなり大変な状況になります。ですから、やはり事前に手を打つとすれば、まずは開始年齢を六十五歳に延ばしていくというのがまず第一であります。それから先は、もう一つはやはりこれは政府が既にお考えでしょうが、年金相互間でちゃんと公平になるように年金全体は一元化してやるというのが必要だと思われます。  それから医療につきましては、日本は最近はたしか医療費の伸びはそんなに激しくありません。アメリカなんかの方がはるかに医療費の伸びが激しいのでありますが、医療については一言で申し上げればやはり老人医療といいますか、高齢者の医療が最大の問題で、私が非常に直観的に申し上げれば、日本の現在の病院というのはもともと、元気な、要するに働き盛りといいますか、四十代、五十代あるいは六十代の人が病気になったときにかかるシステムになっております。ところが、今のだんだん高齢者の問題になれば、結局医療と保健というのですか、要するにその間の区別がなくなって、ある意味で、病気でなくても病院に行かなくてはいかぬ。その体制日本のやはり医療機関にはできていないわけですね。そこをシステムとしてうまくつくっていって、余りお金のかからないような形にするのが一番重要ではないかというふうに思います。
  87. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 余り大きな問題ですから前回避けたのですけれども一つは、高齢化の進行につれて老人医療の負担が高まっていく。それのうちの介護的な部分が一部公費負担が半額になりましたけれども、やはり段階的にその介護的な部分の公費負担、よりその範囲を広げてやっていくことが必要になってくると思います。  在宅的な面に関しましても、看護婦の方が、在宅看護なども出てきましたけれども、やはり一番ふえてくる中心は高齢者医療の介護とのかかわりだものですから、ここをはっきり予算等マンパワーをしっかりと計画をすることが必要だと思います。そして、一元化ももちろんその一つのまた課題になっていくと思います。  それからもう一つ日本は医療は社会保障の中で割にうまくいっている、割に少ない医療費で平均寿命は世界一長いというような、割によくいっている部分ですけれども、ただ、大変いわゆるアメニティーの部分を非常に犠牲にしているわけですね。これくらいの豊かな国になりますと、病院でも介護施設でも大体個室がむしろ中心、原則になってきまして、食事なども五時に機械的に終わらせるとかいうことじゃなくて弾力的でありますし、選択もできるというようなことになっています。そういうアメニティー部分に関して、果たしてこれを北欧並みに社会保障に入れて、平均水準自体をみんな高くしてしまうか、そして社会保障で面倒を見るか、あるいはそこは私的な保険でカバーするか、その選択をするということが非常に大事だと思います。公的な部門でも、もう少しアメニティー部分を拡大していいのじゃないかと思います。介護とアメニティー部分ですね、焦点は。  それから、年金に関しましてはやはり一元化問題、二階部分の一元化問題がありますし、それが今度自営業部門の年金化で少し進んできたわけですが、やはりこの問題についてまだ国民が非常に不安を持っている。本当に年金はもらえるのか、しっかりもらえるのか、政府が言っているようにもらえるのか、それと介護の方の不安と相まって、依然として高齢者の老後に対する不安というのは非常に高い。  このことを考えますと、将来の年金計画をきちっと示して、そして実際にそれくらいだと保険料が幾らになりますよ、国民負担率が幾らになりますよというのがもう少し身近にわかるように。そうすると、給料の場合今一五、六%税金と社会保険料でいっているのが、それがこれくらいになりますよ、しかしそのことによって実質所得自体が下がるというのじゃないんだということをもうちょっとはっきりさせる必要がありますね。一般の人は、負担率が倍になるということはもう所得が下がると思ってしまうのですね。そうではなくて、これだけ成長していけばちゃんと所得はふえていきますよ、その範囲で政府の計画はやれるのですよということをもう少し説得力ある形で示す必要があると思います。  それからもう一つは、しかしそうは言っても年金だけでやれるのはこれくらいである、アンケート調査で言われるような国民の、サラリーマンの期待よりは五、六万低いのですね。そこをどうすればカバーできるか。その辺で、政府がこれだけやれる、その他の部分は職域年金なりあるいは個人年金なりあるいは財形などでカバーしていくべきだ、その生涯設計をもう少し立てられるような、そういう素材をしっかり提供してあげる必要があると思います。
  88. 山本拓

    山本(拓)委員 ありがとうございました。
  89. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 次に、筒井信隆君。
  90. 筒井信隆

    ○筒井委員 社会党の筒井信隆でございます。  きょうは忙しいところを三先生方おいでいただきまして、本当にありがとうございました。  最初に、景気予算の関係についてお聞きをしたいと思いますが、先ほどからのお話を聞いておりますと、丸尾先生と貝塚先生、ややニュアンスの違いがある。その一つの前提として、景気の現状についての認識の点があるのではないかという感じを受けているところでございまして、景気の現状についての認識をまずお聞きをしたいと思います。  平成四年の一月二十四日閣議決定されました「平成四年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」、ここでは景気の現状についてこういう判断をしております。「我が国経済は、拡大テンポが緩やかに減速しつつあり、やや過熱ぎみであった高い成長から、雇用の均衡を維持しながらインフレなき持続可能な成長経路に移行する過程にある。」やや過熱ぎみであった高い成長が持続可能な成長経路に移行する過程にある、こういう認識を政府はしているわけでございますが、ややこれは甘いのではないかという意見もあるようでございますが、これについて丸尾先生、貝塚先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  91. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 確かに九〇年、九一年、特に労働市場の点からいきますと非常に労働力不足で、特に建築部門が不足でしたから、労働市場の需給均衡という点ではむしろ過熱が普通になってきたという、そこはそのとおりだと思うのですね。ただ、一カ月前と今でもう既に情勢が変わっておりますように、あらゆる景気指標がやはり予想していたよりはもう少し深刻であるということになってきておりますから、先ほども申しましたように最悪になる、予想される範囲内で下限になることを想定して、財政的な予算措置を、発動できるような予算措置を講じておくことが必要であると思います。
  92. 貝塚啓明

    ○貝塚公述人 景気の現状についての御質問でございますが、経済企画庁の文書は私も持っておりますが、これは何というのでしょうか、お役所の文書で読みにくいわけでございますが、これを読むのはどういうふうに、私の理解では、「インフレなき持続可能な成長経路」というのはもう少し成長率が幾らか低い目であるんだ、それが一番何というか正常な成長率で、それを高い目で出て、それが少し別の言葉で言うと、在庫調整というのがあって、短い景気後退があって、やがてそっちへ戻ると予想するというのが政府の予想じゃないかと思います。  で、幾らか楽観的過ぎたのではないかと。要するに、次に景気が上向くのは、たしか企画庁の方のいつか御説明を聞いたことがありますが、夏過ぎたら少しよさそうになりそうだということであったのですが、それはちょっとおくれるんじゃないかと。ただ私は、現状が非常に困った状況にあるというふうには思っておりません。やがて反転するであろうというふうには見ております。それが少しおくれるという感じじゃないかというのが現状の評価でございます。
  93. 筒井信隆

    ○筒井委員 そういう景気の現状の中で、今度の予算案に対する評価でございますが、まず丸尾先生の方に、先ほどのお話によりますと、景気後退部門においてもう少し積極的な財政政策、これがやはり必要なんではないか。先ほど住宅の利子補給の例をちょっと挙げられておられたようでございますが、それを含めましてもう少し積極的な財政政策の中身についての御説明をいただきたいと思います。
  94. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 まず、先ほど一つ言い忘れましたけれども、政府の立場としては、全体としてはもうちょっと景気を深刻にとらえているんじゃないかと思いますよ。しかし、政府が悪くなったと言ってしまうと、そうすると、それが効果を持ちますからね。余り政府は悲観論を出せないところにあるわけですね。ですから、そう言わないとしても、備えは十分にしておかなくちゃいけない。  そしてさしあたり、赤字国債はどうしても出せませんから、公共事業費を場合によってはもう少しふやせる体制にしておくということと、それから、利子補給と言いましたのは、なぜ言ったかといいますと、昔利子補給で造船などで、へましたことがあるから印象悪いのですけれども、住宅に関してきちっとやれば、要するに、直接住宅を一戸建てると何千万とかかる、しかし、そのローンを世話してそこを利子補給してあげれば、そうすれば非常にわずかな金で大きな投資が動くわけですね。この制度をもう少し活用していいと思うのですね。  そして日本の場合どうしても、利子補給をやると公的機関がきちっと官庁のお日付役がいて、しっかりやらないとうまくいかないという形ですけれども、そろそろそういうのじゃなくて、金融機関にやらして、利子補給をあるルールを守れば出すという、極端に言ったら住宅金融公庫要らないんだとか、そんなことを言ったら怒られてしまいますけれども、そういう自由経済のメカニズムに合った方向をもうちょっと考えていいですね。  例えば、利子補給なんというのは自由経済と反するようだけれども、補助金というのはやり方によっては、例えば住宅手当なんかもそうでしょう。欧米諸国の一つの傾向は、住宅の家賃は自由市場に任せる。スウェーデンのような国でも家賃統制はずっと前に撤廃されてますね。しかし、そこで自由市場で任じてもいいように住宅の供給対策はきちっとやる。そして、家賃を払えない人には利子補給をやる。そうすると、住宅に関しては一物一価でまさに市場経済になるわけですね。それと同じように、利子に関してもある程度自由に利子を決めて、そこで利子補給をやる。金融自由化の方向というのはそういう方向なんですね。そこで、利子補給等に関して、少ない予算で大きく投資を動かすようなそういうことをもっとやるベきだ。  それでもまだ間に合わない場合には、さっき言いましたように、予備費をかなり置いて機動的に不況に対策できるような措置を、ことしの場合特に十分備えておく必要があるということですね。そして、本当に景気がそれをやらなかったらうんと下がるものであれば、それをやることによってかなり上向くということになれば、先ほどのデータでもちょっと示しましたように、必ずしも財政赤字が、公共事業費がふえてそれによって若干公債発行額がふえても、対国民所得比が大きくなるということには必ずしもならないということですね。その辺の計算をもう少し詰めなければならないと思います。私、計算しようと思ってましたけれども、これ急だったものですから余りできませんで……。
  95. 筒井信隆

    ○筒井委員 貝塚先生に今と同じ問題なんですが、先ほど、景気に対する今回の予算財政は中立的である、それをおおむね肯定的に評価されておられたと思うのですが、もう少し景気に対する積極的な財政政策、そういうものが必要でないのか。もし、まだ余地があるとすればどういうものが考えられるか。その点、先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  96. 貝塚啓明

    ○貝塚公述人 景気の現状は先ほど私が申し上げたような評価をしておりますが、例えば、要するに予算に積み増しをしてというのは、今の段階では私はどうも必要でないというふうに思います。ですから、丸尾公述人よりはややもう少し楽観的なんでありますが、したがってその中立的というのは、なぜ中立的で評価できるかということは、もともと財政が、税金が減ってしまって、税収が減ってしまって、財政収支が悪くなる局面にあって、そこは余り悪くするのを放置はできないという面があります。いわゆる財政再建といいますか財政の効率化、そういう考え方もある程度守らなくちゃいけないし、他方、ある程度民間の経済も考えなくちゃいかぬ。そういう意味で中立的ぐらいのところが言ってみればぎりぎりのところじゃないかというのが私の評価でございます。  で、今のところは余り景気は、確かに予想よりは悪くなっておりますが、私は、しかし民間の経営者は、こんなことを言うとあれですが、ちょっと悪くなると、悪くなった、悪くなったということをすごく宣伝するわけでありまして、そこを割り引く必要があって、もう少し様子は見てもいい余裕は残っているというのは、ですから、まさに秋口ぐらいに本当に景気の問題が今考えている以上にぐあいの悪い状況になれば、それはそれとして、補正予算とかいろいろな考え方は当然あり得るというふうに思います。
  97. 筒井信隆

    ○筒井委員 次に、丸尾先生にお聞きをしたいのですが、高齢化、出生率の低下、極めて大きな問題になっているわけでございます。先ほどの丸尾先生の話によりますと、一つは出産育児休暇の点に関して、これを所得保障をつけたもっと完全な保障という点が、一つ目、それから労働環境の改善、もっと女子労働者等が働けるあるいは高齢者労働者が働ける労働環境の改善、それと住宅事情の改善、この三つを挙げておられたと思いますが、その三つのさらに説明と、それ以外にもありましたらその指摘もいただきたいと思います。
  98. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 私はよくスウェーデンを研究しているのですけれども、スウェーデンが一度下がった合計特殊出生率を二・〇二までもたらした、そのための積極政策として十ぐらいの政策が考えられるわけですけれども、その中で効果が特にあったんじゃないかというようなところを、特に日本の場合あるんじゃないかと考えたのを挙げたわけですね。そして、出産休暇を有給化する。有給化するといいましても、企業が丸ごと出すというと、そうすると今度は女性を雇わなくなりますから、ですからやはりそこはある程度社会保険化する、あるいは場合によっては産業ごとあるいはどこかで基金化して、出産前後の女性を雇っているところが不利にならないようなそういう一種の社会保険的な形でやることが必要であるということです。すぐは、ことしはできませんでしょうけれども、恐らくそういう方向で今後考えていくことが間もなく必要になるんじゃないかと思います。  それから、住宅に関しましても、きょう統計出しませんでしたけれども、やはり住宅の狭さと出生率が相関関係がかなり強いんですね。東京が出生率が非常に低いというのも住宅事情が少し関係あるんではないかということで、住宅。児童手当はあえて触れませんでしたけれども、今度上げましたし、やはり児童手当だけというよりも所得関係ですね、何か子供がふえた場合に欧米の場合は児童手当と住宅手当がつくことが多いんですね。そして、教育費の方が国によっては余り心配ない、そういう点がかなり総合的に一つのインパクトとして影響してくるんじゃないかと思います。  それから、日本の場合はやはり労働環境が、働きながら女性が安心して出産できるためにはやはりもう意識が変わらなくちゃいけないですね。高齢者が働くということと出産前後の婦人も働くのがノーマルである、それがノーマルである。そこで、考え方を変えなくちゃいけない。今までは単身赴任もノーマルである、そして超過労働もノーマルである、そういうのがノーマルだと考えているから、そしてそれは男子が就業しているからノーマルだと考えている。それに耐えられなければ女性は男女雇用平等なんと言う資格はないとか、そういうような発想がもう変わらなくちゃいけないですね。そもそも婦人が安心して出産できるような労働条件や職場がむしろノーマルであるという、そうなることが非常に必要ではないかと思うのです。  それからもう一つは、婦人というのはどうしても体力等々で、オリンピックの記録で見てもわかるように劣っているんだ、そして出産があるからハンディキャップもあるんだ、だから雇用に差があるのは当然だというような意識があるけれども、この考えももう若干の欧米諸国では通用しないですねびそのハンディキャップというのは、出産等に伴うのは別に女性のためにやっているんじゃなくて、人間のために、男子と両方のためにやっているんですから、その負担を分かち合うのはむしろ当然だ。その意識、そして職場に高齢者も婦人も働いている、そして何の支障もないような職場がノーマルだという、そういうような方向に転換するという、その意識が変われば政策はついていきます。そこが重要だと思いますね。
  99. 筒井信隆

    ○筒井委員 それから、丸尾先生が一極集中の排除と生活の質向上のための予算配分についての先ほど御説明もございまして、自然の破壊、これが生活の質を低下させている、同時に自然の破壊が一極集中をももたらしている、こういう趣旨の先ほどお話だったと思います。  自然の破壊、都市における自然の破壊が生活の質を低下していることはわかるわけですが、都市における自然の破壊が一極集中をさらに強めているという、その点の御説明、逆に言えば、自然の保全が生活の質の向上にもつながるし、都市における自然の保全というのが一極集中の排除にもつながる、自然と一極集中の関係についての御説明をさらにお願いをしたいと思います。
  100. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 非常にわかりやすい具体的な例を言いますと、私今環境アセスメント委員やっているのですけれども、大抵出てくるのは、山林を破壊したり、川を埋めたり、そういうところにいろいろな施設等をつくるということですね。あるいは住宅団地をつくるということです。なぜそうなのかというと、日本は自然を壊すのを認めているというのがありますけれども、要するに安くっくわけですよ、一番。そうでなくて、日本で逆に都市再開発というのは割に少ないですね。汚い、壊して建て直した方がいいようなのがごろごろあるんだけれども、そっちは手をつけないで自然を壊す。なぜそうなのかというと、その方が安いし手間もかからない。再開発には非常に説得とかお金とかいろいろかかるから、だからどんどん自然を壊してそこにどんどんつくっていくわけですね。それを変えることが必要だということですね。  だから、自然破壊が非常に高くつく、むしろ原則としてもう自然破壊をするような施設などは一切つくらない、もし何かどうしてもっくるとしたらそれに見合う自然を再生するという、ドイツなどは今世紀の初めからやっていますけれども、そういうのを義務づけるとか、そこできちっと抑えておけばそんなに集まり過ぎませんよ。それから、公園面積とか、きちっとした歩道とか、セットバックとか、そうしておけばそんなに集まらない。それをやらなかったということが一つの、自然破壊が安くつくということが非常に大きな原因だと思います。
  101. 筒井信隆

    ○筒井委員 公共投資の点について貝塚先生にお聞きをしたいと思うのですが、先ほど公共投資の分野別の配分比が、シェアが固定しているという指摘をされまして、これはもうまさにそのとおりだろうと思うわけですが、それを生活関連部分を重点にした、シェア自体を変えるという方向にしなければならないというふうに思うわけですが、今度の予算自体はやはりそういう形になっていない。先生のほかの論文等の御指摘によりますと、生活開運分野の方は欧州等では大部分になっている、その点で日本アメリカはその部分の比重が非常に少ない、今回の予算においてもそう見るしかないだろうと思うのです。  その点が一点目と、それを改革するためにはどうしたらいいかという点ですが、今の中央省庁の配分を前提にする限りなかなかシェアの固定というのは直らないのじゃないか。これもなかなか難しいですが、これも欧米で中心になっておりますように、公共投資の大部分を地方政府によって行わせる、そういう形によって地方政府で行う場合にはまさに住民のニーズにある程度対応してそういうシェア固定なんという現状がなかなかないわけですから、それを強めることによってそういう改革の方向性をやっていくのが必要ではないかというふうに思うわけですが、その二点についての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  102. 貝塚啓明

    ○貝塚公述人 後の方の御質問から。要するに公共投資の配分を変えるにはどうしたらいいかということでございますが、地方分権をやればそれなりにうまくいくんじゃないかというふうにおっしゃる、私は基本的には同じ意見であります。  御指摘のように、結局中央官庁が持っているそれぞれの建設なら建設、あるいは厚生省なら厚生省、あるいは運輸省なら運輸省、それがずっと補助金を通じて末端まで行っているわけですね。そのシステムは、実を言うと非常にかたいんですね。そこをある程度変えないと。というのはやはり、ここにお役所の方も出ておられると思いますが、官僚機構というのは、それぞれ自分のシェアをきっちり守るというのはある意味では非常に重要な職分であって、だとすると、そこへ、ある部分はそこを少し切るというか、そうすると地方が、ですから最近の傾向でいえば地方単独事業というものがある程度出てきたということは、それは評価できるのじゃないでしょうか。地方がそれなりに自分でやる、そのために恐らく、ただしもう少し言えば、やはり地方の自治体も相当スタッフをきっちり抱えて、そこをうまくやれる執行能力といいますかそういうものをつけて、そういう方向にやっていけば少しずつ変わるのじゃないかと思います。  それから、最初の御質問は、日本公共投資を昔から熱心にやってきたわけですが、ヨーロッパの諸国は実を言うとそんなに熱心にはやっていないのです、最近は。なぜそうかといえば、もうヨーロッパは、要するに社会資本が充実されたからそんなにやらなくてもいいというのが一つです。それからヨーロッパは、先ほどの御質問と同じことになりますけれども、ヨーロッパは地方分権が進んでいる国が多いので、中央政府が旗を振って公共投資をやれ、やれというふうなことを必ずしも、そういうことはやれないと言った方がいいのでしょうか、だから、地方が独自でやるというスタイルになっているところが違うと思います。  やはり何というのでしょうか、既存の配分を変えるためには、私どもはいつも発想を変えて、先ほど丸尾公述人が言われたことも全く同意見でありますが、やはり社会資本というのは広く解釈して、環境とかそういうものも保全するとか、そういうことを維持するとか、そういうことも本当は社会資本にカウントして、計算に入れて、そういうものとしてもう一遍見直して考えてみる必要があるのではないかと思います。そうしないと、この十年間ぐらい本当に有効に時間を使わないと、二十一世紀になって余り財政的に余裕がなくなったときに、さてやろうと言ってももう遅い。  それから、もう一言つけ加えれば、社会資本というのは、つくりますと、これはもう余り壊せないのですね。御存じのように五、六十年間ぐらい耐用年数がありますから、まあ今はいいと思ってつくったものも、あと二、三十年たったら何だということになるわけです。ですから、つくったらなかなか壊せないので、そこも慎重にプランを練って、やはり今の若い人が一体どういう社会資本を欲しているかということも、私どもの世代のことは余り考えなくてもいいというのが正直なところで、若い人が将来一体どういう社会資本を望んでいるかということをやはり考慮に入れて、時代に即した社会資本の形成をやっていくのがいいのではないかと思います。
  103. 筒井信隆

    ○筒井委員 板谷先生にお聞きをしたいのですが、先ほど相手国のニーズに応ずる援助といいますか、相手国の立場に立った援助がなされていない具体例を挙げて指摘をしていただきました。そういう援助が、どうも先ほどの例を一つの例にして結構あるように聞いております。なぜそういうふうになったか、原因についての御認識と、どのような改革をすればそういう不十分な援助体制から脱却することができるか、御意見がありましたらお願いしたいと思います。
  104. 板谷茂

    ○板谷公述人 私、昭和二十六年に大学を卒業しましてから、かれこれ四十年以上にわたりましてアジアばかり研究しているわけです。どっぷりつかり込んでいるわけなんですけれども、今までに四十七回ほど東南アジアを回っております。  その中で、アジアの声として国会議員の先生方に御認識いただきたいのは、例えばここ三年間どっても、国会だけが悪いわけじゃありませんけれども、リクルートだとか政治改革だとか、現在だと共和事件だとかあるいは佐川急便だとか、それだけなんですよね。一体アジアのことを考えてくれたのかということを彼らは言うのです。マハティールさんだってそうですし、インドネシアの人たちだって、この間私はスハルト大統領にお会いしました。言外に言っているわけですよ、そういうことを。リクルートと共和とそれから政治改革ばかりじゃないか、一体インドネシアという言葉が国会で論議されたことがあるんでしょうかと言うわけでしょう。そんなことをおっしゃるわけですよ。それがお答えになるかどうかわかりませんけれども、やはり我々これから、アジアというのは一番日本の、経済援助にせよ、あるいは輸出の三分の一はあそこへ行っているわけですから、もっとアジアというものを考えてやらなければいけないと思うのです。  インドネシアばかり申し上げておりますけれども、インドネシアから日本へ来ているのは〇・九%ですよ。留学生が日本に大勢来ています。四万一千人ほど来ていますけれども、わずか〇・九%がインドネシアですからね。逆に、こっちからはインドネシアにいっぱい行っているわけですよ。向こうの人たちはなぜ、若い人たちのレベルで教師になってくれないか。教師というのは必ずしも学校の先生という意味じゃなしに、倫理というものはこういうものなんだ、社会道徳というのはこういうものなんだ、あるいは人間のつき合いというのはこういうものなんだということをなぜ教えてくれないのか。あるいは工場で働く場合に、こういう考え方で我々はやっているんだということを、どうして教師になってもらえないだろうか。日本人というのは逃げているじゃないか、アメリカやヨーロッパに。それを盛んに言っておられます。  そんなことで答弁にかえさせていただきます。
  105. 筒井信隆

    ○筒井委員 おっしゃるとおりの面があるわけですが、政治改革ばかりずっとやっているのですが、しかし一回もまだ実現したことがないというその事情、その原因、これを板谷先生にお聞きするのはちょっと問題外なのでお聞きしませんけれども、そういう事情があることをひとつ前提にしまして、最後の質問になりますが、丸尾先生に、労働者の資産形成、資産分配の問題。  これは今マスコミ等でも、株主配当、労働者配分、これらが非常に足りない、企業の方にばかりそれらが集中をしている、これらの点が非常に財界の中でもいろいろな論議がされているようでございまして、特に勤労者に関してどういう点をさらに、資産分配の点に限って結構ですが、改革、是正をしていかなければならないのか、その点についての御意見を最後にお聞かせいただきたいと思います。
  106. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 一つは、土地に対してはかなりいろいろな認識がありますけれども、やはり株ですね。株は、例えば、上場会社の株式は一九七五年にはGNPの二九%だった。それが一時は百何十%になって、また一〇〇%を切りましたけれども、下がると、やはり下がった、やはり労働者はあんなの持たなくてよかったというようなことでおさまっているけれども、やはり長期的に考えれば、株を持っているということは得なんですよ。  そして、アメリカでも、ESOPという労働者株式所有制を非常に提唱した議員や人たちが言っておりますように、アメリカの場合、株の増加分の九五%は今既に持っている人のところへ行っている。そういうことでは集中しできますからね。やはり勤労者に自然に株を持っていくような制度が必要だ。従業員持ち株制というのがありますけれども、対株式全体の中の比重は一%切ってしまいましたからね。やはりもうちょっとそれが自然にふえていく、そしてそれをふやすことが労働者にとっても得である、企業にとってもある程度メリットがある、そして社会にとっては、そのことによってある程度分配上の問題に対する対応にもなるわけですね。  要するに、企業としては今労働分配率問題がいろいろと言われていますけれども日本は確かに企業が蓄積して成長できるのは分配率が非常に低いからですよ。分配率を上げてしまうと、今度は企業は蓄積できなくなる。もし企業の株がすべて利潤から調達されているとすれば、資本家によって調達されているとすればそういうことになるのだけれども、勤労者自身が蓄積した金で、しかも自然に蓄積した金で、場合によっては利潤分配のような形で、成果配分のような形で蓄積された金で株式がふえていけば、分配の公正と資本蓄積、成長とが両立するわけですね。  そういうことも考えていきますと、やはり財形の中に従業員持ち株あるいはミリオンのようなものでもいいし、あるいはもうちょっと直接的に何か基金をつくってそれを通じて株を持つのでもいいし、何らかの形で労働者が自然にどんどんと株を蓄積していくということができるような誘導政策を導入していいのではないか。これは私は財形審議会で八年間主張し続けてきたことです。  イギリスでも、一九七〇年代にそういう声が起こって、労働者の資産を形成するにはどうすればいいかというような委員会がつくられて報告書が出て、それを政府が受けて、労働党のときからそういう制度を導入して、サッチャーさんのとき非常に普及したわけですけれども。そしてECではPEPPER委員会の報告が出て、そういう方向で動いているわけですけれども日本はもう余り経済的に自信があり過ぎて、そういうのを余り見なくなってきている。  やはり資産問題というのはもう少し目を向けて、勤労者がすべて株を持つようになるという方向政策的に誘導する、それだけの予算措置をつけるということが必要じゃないかと思う。勤労者財形の部門というのは、どうももうあそこはあきらめちゃっているんですね。こんなことを言っても大蔵省で通るわけがないということでやる気がないですね。もうちょっと雰囲気が変わって、それでもう勤労者株式所有、そしてすべての人々が資産を持つ社会、これこそが従来の資本主義とも違い、社会主義の欠陥をも是正し、従来のスウェーデン型の福祉国家とも違う新しい方向であり、なお、分配の公正と効率を両立させる道だという、その辺についてもう少し信念を持って、財形審議会が眠っているならばほかのものをつくって、そこで積極的に答申を具体的に出して、それを受け入れて何か政策を出すような、そういうことをそろそろやっていい時期じゃないかと思うのですね。
  107. 筒井信隆

    ○筒井委員 ありがとうございました。終わります。
  108. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 次に、草川昭三君。
  109. 草川昭三

    ○草川委員 草川でございますが、お三方の先生方、大変きょうは御高説を賜りましてありがとうございます。  私は持ち時間が十五分よりございませんので、板谷先生に絞ってお伺いをしたいと思うわけであります。  先ほど国際貢献の問題について具体的な事例を出されまして、大変参考になりました。今度の四年度の予算は御存じのとおり七十二兆円を超しておるわけでございますけれども、ODA関係は九千五百二十二億でございますか、七・八%の対前年度のアップになっておるわけでありまして、他の項目に比べまして特別に優遇をしておる予算ではないか、こう思うのです。非常に我々も、それなりに歓迎をしておるわけでございますが、今、具体的な事例といたしまして、非常にうまくいっている例、そしてまた大変現地で反発を受けている例、それぞれ出されたわけでございますが、私ども今後の問題について大変貴重な御提言だと思うので、いま少し事例を出していただけないかどうかお伺いをしたいと思います。
  110. 板谷茂

    ○板谷公述人 先生、こういうケースをお考えいただいたらどうでしょうか。例えば、世界のエビの七五%ぐらいは日本が食べているわけです。日本人が、我々が、てんぷらだとかそういう形で。そのエビを大手商社、例えばS社ですとかあるいはM礼とか、そういうすごい日本の大手中の大手の商社が艦船を仕立てまして、そして昔の西ニューギニア、現在はイリアン・バラットと言っておりますけれども、そこのあたりまで行くわけですよ。ざっと六千五百トンぐらいの船です。その中にはフレオンガスを入れまして、マイナス四十二度になるような、そういう設備をまず持っているわけです、冷凍設備を。それからその冷凍設備の上に、ざっと三カ月から四カ月どこにも行かないでいいように、食糧から水からすべてを積んでいくわけです。もちろんお医者さんも入っていくわけですね、その中に。それでインドネシアに行くわけです。  清水から出るのですけれども、ずっと清水からインドネシアの西ニューギニアのあたりまで行きまして、三カ月、四カ月とエビをとるわけですよ。で、どこにも寄らないのです。ジャカルタにも寄らないしスラバヤにも寄りませんし、デンパサール、バリ島にも寄りませんし、どこにも寄らずに行くわけですね。それで二千トン、三千トンという、そういうエビをとってくるわけですね。  インドネシアにとっては実はこれが輸出なんです。日本向けの立派な輸出になるわけですよ。ですけれども、インドネシアはそれこそ一グラムも輸出していないわけですね。全部日本の商社が来て、そして勝手にじゃないのですけれども、とつて、そして日本へ、また清水へ持って帰っていくわけですよ。ですけれども、インドネシア側は自分のところの、持っているところの海産物の輸出統計にちゃんと挙がってくるわけですよ、エビの輸出。  タイでもそうです。同じように沖合いに来て、タイの水は飲むと下痢するぞとかいってやっているわけですから、衛生設備が悪いものですから、ですから、バンコクへは絶対寄るなよと。最近はエイズの問題なんかもあるとかいってやっているわけですね。ですから、寄らない。ジャカルタも寄らないしスラバヤにも寄らないしバンコクにも寄らない。それでいながら、タイにせよインドネシアにせよ、輸出なんですよ、これ。立派な輸出に、なってしまうわけですね。  それでいながら、一体日本というのは何の貢献をしたんでしょう。そこで、例えばパイナップルにせよバナナにせよ、あるいはマンゴーでも買ってやったらどうですか。そうすればまだインドネシアに貢献できるし、タイに何らかのものが落ちるわけですね。やらないのです。清水港からもう全部すべての、ラーメンまで持っていくわけですから、あらゆるものを、薬品から何から全部持っていってしまうわけです。そして四カ月、五カ月、絶対どこにも寄らなくてもさあっと帰ってこられるようにしているわけですから。  こういうことは、エビの会社というか、S商社だとかあるいはMという会社にしてみれば立派な日本への貢献というか、現地には貢献してませんけれども日本の国民のために我々は一生懸命 やっているんだということになるわけですね。果たしてそういうことでいいのかどうか。別途に、旧ソ連の場合はあそこでお金を取るわけですね、入船料的に。インドネシアなんか取ってないんですよ。ですから、やはり何らかの形で考え直していかなければいけないのじゃないかなと思うのですけれども。  それから、先生おっしゃったような問題の延長線上にあるのですけれども日本というのは現地の言葉、すなわちアジアの言葉をほとんどやってないのです。国立ては東京外語大学と大阪外語大学のたった二つだけです。公立の大学は一切やっていません。アジアですよ、中国じゃなしに。中国はやっているところがありますけれども、アジアに関してはやってないのですよ。もう東京外語と大阪外語と、それから私学でわずか三つなんです。天理外語と神田外語と、それと京都産大と……(「慶応はやっていますよ」と呼ぶ者あり)ですけれども、学部学科じゃないのですよ、残念ながら慶応は。私はよく知っているのですけれども、息子が慶応に行っているものですから、おまえのところは語学専門学院じゃないかと言ってやっているのですけれども。  そういう意味で、学部学科でちゃんと、文学じゃないですよ、文学じゃなしに言葉として教えているのは、私学が三つ、国立が二つです。そしてアジア学、中国語を除いて、わずか五百八十人しかいないのですよ。国立大学、何と十五、六万人から二十万人ぐらい入学定員があるのですけれども、その中のわずか〇・一%ぐらいしかいないわけですね。これでは育たないと思うのです。あるいはアジアと取り組もうとしても、なかなかそういう意識にならないと思うのですよ。それはアメリカとかあるいはヨーロッパの方が衛生状態もいいですし、それから進んだ国だったわけですから、そっちの方にどうしても目が向きますけれども日本のきょう現在の、これからの二十一世紀を考えた場合に、アジアにもっと我々は、国会議員の先生方というのは日本のリーダーですから、ですから、なおさらそういう問題に目を向けていただければと思うのですけれども。アジアというのはおくれている、汚ない、はだしで、そして日本にとってプラスにならない国ではないかという意識が多分にあるのではないかなと思うのです。  愛知県で、ここへ来る前に県庁に電話をかけて、英語以外で高等学校の先生になったのは何人いますかといって学事課に聞きました。ゼロです。四十七年たって愛知県で、愛知県ということは同時にほかの県も多分そうだと思うのですけれども、英語以外で高等学校の教師の資格を取っている人間はいないのですよ。大学側は、文部省はちゃんと用意しているんですよ。インドネシア語でもマレー語でもあるいはビルマ語でも、それでいいですよ、ちゃんと高等学校の教員資格になりますよということを言ってくれているんですけれども、受け皿の方の高等学校がそういう意識じゃないわけですね。専ら受験勉強の方に忙しくて、国立に何人入れた、慶応、早稲田に何人入れたの方が忙しいものですから、おくれているという状態じゃないかなと思います。
  111. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ続いてお伺いしたいと思うのですが、今日本の心を輸出をしていないという最初のお話がございましたが、それの裏返しの意味でいろいろと今お話をお伺いをしたわけでございますけれども、今までこのODA問題については国会でも毎年のように問題が出ているわけでありまして、その都度外務省の方もフォローアップをしておりますよ、あるいはまた、最近では会計検査院の方も具体的な案件についての検査に出かけているようでございます。その都度国会の方にも問題点の報告が出ておりますが、それには先ほどお話がありましたように、隠れた問題というのが随分あるのではないか、こんなような反省を私どもも持っておるわけであります。  そこで、東南アジアに限りませんけれども日本に対する援助の要請については現地の方からこういうものが欲しい、あるいはこういうプロジェクトをつくってもらいたい、さまざまな声が出てきてそれが大使館あたりが仲介になっていろいろとあるようでありますけれども、実際上は商社ですね。商社が案件をつくり上げて現地の政府、要人に働きかけをし、あるいはまた日本の国内にいろいろと働きかけをする。実はこの下準備は商社の役割が非常に大きいということを我々は実はかねがね主張しておるのです、いい面も悪い面もあるんですけれども。  ところが、商社が案件をつくり出す、あるいはフィージビリティースタディーというのですか、FSをやるのもほとんど商社が実際はやってしまう。それで一つのモデルというのですか、つくり上げたものを案件として俎上にのせるというようなことがあるから、先ほど先生がおっしゃったような問題点というのも出てくるのじゃないか、私なりにそういう感じを持つんですが、一体今後のあり方について、現地の生の声をどのようにして日本のそれぞれの機関に反映をしたらいいのか、あるいは従来どおりやはり商社というようなものの介在というのは暗黙に認めざるを得ないのかどうか、先生の御経験から何かお話をお伺いしたい、こういうように思います。
  112. 板谷茂

    ○板谷公述人 御提案がありました仲なんですけれども、少なくとも三つくらいに分けて考えなきゃいけないのじゃないかなと思うのです。それは政府対政府の段階もありますし、先生がおっしゃったように商社を通じて大使館から外務省なりあるいはJICAとかそういうところへ流れてくる線、それともう一つ、向こうで先ほどちょっと出しましたタマサト大学だとかあるいはチュラロンコン大学ですとかインドネシアのガジュマダ大学ですとかインドネシア大学とか、そういうところでも一生懸命やっているんですね。国家はいかにして発展させていくべきか、そのためには海外経済協力はいかにあるべきかということをやっているんですよ。  そこまで入り込んでいっていないのがきょう現在の日本の現状です、それは語学の問題もあると思うのです。さっきのあれじゃありませんけれども日本じゅうでわずか一年間に百人ぐらいしかいないわけですから、インドネシア語を勉強するのは。しかもそれが高等学校の教員にもなれないし、ただインドネシア語を勉強したというだけで終わってしまうわけですね。その人が適材適所になっているかいないかというのは、まずいない方が多いと思います。  ですから、三つに切って、政府対政府というのは、これはもうどこの国でもあるわけですから、世界じゅうどこでもある。それから商社が持ってくるような、そういうOECFとかあるいはJICAですとか、そういうところにおける問題と、それからもう一つ、上下の問題じゃないのですけれども、まじめに一生懸命外国との協力をどういうふうにしたらいいかということを考えている、そことの日本側の話し合い、実はそこが一番良心的な声が出てくるわけですね。たまたまそれはビジネスには結びつかないと思うのです。ですけれども、実はそれが向こうでは一番欲しいわけですね。  こういうことではないでしょうか。明治二十二年の、ちょうど名古屋にきんさん、きんざんという双子の女性がいるのですけれども、あの人の生まれる三年ほど前に明治憲法というのができたわけですけれども、明治憲法の時代というのは歳出歳入と、歳出が先にくるんですよ。旧憲法というのは歳出歳入なんです。新憲法は歳入歳出なんです。それは官が、お役人があるいはお上が民にお金を出してやるというのが歳出になったんじゃないですか。ですけれども、今の新しい憲法の方はそうじゃなしに、善良なタックスペイヤーとしての国民からいかにして集めるかというから、歳入もしくは収入が先にくるわけです。で、歳出もしくは支出の方が後にくるわけですね。これが明治憲法と新憲法との大きな違いだと思うのです。第九条がどうのこうのとやっていますけれども、それより以上にある意味では予算問題からすれば、歳出が明治憲法では先にきていた、すなわち官が、政府が、お役人がどうやって分けてやるかということが優先していたわけですね。ですけれども、我々が今生きているこの戦後の場合はそうじゃなしに、善良な国民からどうやってお金を集めるかという方が先になっていくわけです。  それともう一つ、歳出歳入あるいは歳入歳出の場合でも、日本国民だけでよかったわけです、明治憲法もそれから新憲法の時代も。ですけれども、今はそうじゃなしに、タックスを払ってこないアジア、タックスを払ってこないアフリカもこの中へ入ってくるわけですから、したがってそれをちゃんと考えていかないと、世界との対応に日本はおくれていってしまうのじゃないかな、こういうふうに思います。
  113. 草川昭三

    ○草川委員 どうもありがとうございました。
  114. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 次に、児玉健次君。
  115. 児玉健次

    ○児玉委員 公述人として御出席いただいたことに心からお礼申し上げます。  最初に丸尾先生にお伺いをしたいのですが、先ほど出生率のことについてお話しになった中で、婦人の就業率の上昇とそして出生率の低下、それを積極的な政策の推進によってともに引き上げる、それが必要だという趣旨のことを承りました。全く同感でございます。  私は北海道に住んでおるのですが、一九八九年を例にとりますと、東京の出生率が一・二一、その次が、下から数えてですが、北海道で一・四一、その次が大阪と京都で一・四六でございます。東京が女子の就業率が高いということはよくわかるのですが、私たちこの問題について、一つは、結婚して子供を産んで子供を育てながら働き続行ることができる、そういう社会政策を思い切って強化する。先ほどスウェーデンのお話もありましたが、私たちも先日行ってまいりまして、そこで、両親保険の問題、育児手当ですね、それから保育所の問題が国民的な論議になっている、非常に興味深く拝見いたしました。  そういったこととの関連で、住居の困難という点もさっき質問に答えて先生お答えになりました。九二年度予算では公営住宅の建設戸数が据え置きになっております。これはここ何年間かの一番多数建設したときに比べてわずか三分の一です。これは非常なハンディキャップだと思いますし、それから出生率の引き上げというとき、今日の日本の教育の困難というのもあるだろうと思います。大学における教育費がもう世界一になってきている、そしてそこに至る競争の激しさ、そういう状態の中でこの就業率と出生率をともに引き上げていく。その点で、先ほど育児休業の問題などにもお触れになりましたが、もう少しさらに突っ込んでお答えをいただければ、こう思います。
  116. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 先ほど、東京とか首都圏とか、大都市の出生率が低いということを言いましたけれども、北海道というのはちょっと例外で、私、回帰計算いろいろやると、北海道と沖縄がなければ回帰計算は非常によく、もっとうまくいくという、ちょっと変わったところがあるのですね。北海道は非常に北欧的なところがありますね。  まあそれはちょっと別としまして、先ほど私が言いました中で十分触れなかったのは、保育所の問題がありますね。確かに、保育所をどうするかというのは、選挙の重大論議の一つなんですね。そういうほど重要であるということ。それから、住宅、教育費、私先ほど十項目と言いましたけれども、「スウェーデンの経済と福祉」という本が今月出ますけれども、その中で書いてありますけれども、やはり十項目、それがセットになって進んだから就業率の上昇と出生率の上昇を両立したんでしょうけれども日本は余りやらなくて両立させようというのだから相当大変ですよね。少なくともその中の、先ほど言ったもの以外に保育所問題はもう一つやらなくちゃいけないですね。ある程度負担はもちろんさせながら保育所をやっていく。  それから、教育もおっしゃるとおりですね。教育もスウェーデンは小学校から大学院まで無料ですからね。まあ、ほんの一部の私立学校はそうじゃないですけれども、ほとんど無料ですから。でも、スウェーデンのようにやりますと、あした吉田先生あたりから話があると思いますけれども、非常に負担が大変だということで、やはりあそこまでまねることはないけれども日本はより何が一番効果があるか、何が福祉にとっていいかということを考えて、スウェーデンの十項目の政策を参考にしながら日本で効果的なのをやっていけばいいということになると思います。
  117. 児玉健次

    ○児玉委員 貝塚先生にお伺いをしたいのですが、先ほど先生のお話の中で、財政の効率化、防衛関係費についてお触れになりました。軍事費に触れまして、先ほど先生の御意見の中で、従来と違い、GNPに合わせてふやすというやり方、このやり方についての再検討といいますか、そして全体として予算におけるシェアの引き下げ、そして節約した分を他に回す、そういう御趣旨の御発言だったと承りました。  アメリカで、先日の大統領の予算教書に関する演説の中で、五年間で三〇%以上の軍事費の削減ということを明示しておりますし、イギリスやドイツでも同様でございます。それで、いわゆる冷戦構造がこういう形で姿を消した以上、軍事費の伸び率をいかに抑制するかでなく、軍事費の絶対額をどうやって削減していくのか。もう端的に言いまして、対ソ戦用の正面装備、F15だとかP3Cだとか、そして九〇式の戦車、そういったものについては直ちにこれはもう新規を発注しないことを明らかにしていくことが国民のコンセンサスになり得る、こうも考えております。そのあたりについて、先生の御意見を伺いたいと思います。
  118. 貝塚啓明

    ○貝塚公述人 防衛費の御質問でございます。  先ほど私、ここで公述したときにどうも数字を一けた間違えて申し上げたようですが、それはそうなんですが、防衛費の問題というのは、国際政治の中で恐らくアメリカがもう物すごく防衛費を使っていて、ですから、アメリカ財政の中で防衛費が占める比重は非常に大きいですから、アメリカがもし財政政策をこれからうまくやっていこうとすれば、もう防衛費を削る以外に、増税は非常に難しいですから、恐らく道がないということはそのとおりだと思います。イギリスにしてもある程度そうで、日本はやや特異、そこの中ではやはり防衛費に対する考え方は非常に複雑であって、防衛費はそうふやすべきものではないという考え方がもともとある。それでGNPのシーリングをつくったわけですね。  それで、私が申し上げたことは、だけれども、GNPのシーリングをつくっているということは、逆に言えばGNPが伸びれば伸ばしても当然だという考え方があった。それは最小限もう考え方を変えるべきであるということを申し上げた。それから先は、防衛費ということは、私はやや現実論に立ちますと、先生はよく御存じだと思いますが、非常に継続的な経費が多くて、もう既に発注して恐らく何年間かかかるというものがあるという、まあ言ってみると、仕掛かり品みたいなものがあります。ですから仕掛かり品は、もうある意味では無理でありますから、新規のところから変えていくというのも、それはおっしゃるとおりそうだろうと思います。  ですから結果において、その新規のところを変えていくということでも時間的にはかなり時間がかかって、そう簡単に防衛費それ自身が減るというふうな性質のものでもないということで、それで私は伸び率を抑えるところあたりが現実的ではないかというふうに、それでもかなり今のやり方から変わっていくというふうに思っている次第であります。大体そういう感じで申し上げたということであります。
  119. 児玉健次

    ○児玉委員 もう一つ貝塚先生にお伺いしたいのですが、ことしの予算の前進面として大学関係の予算がふえたという御指摘がございました。私たち、基礎研究のおくれ、そして基礎研究を支える経済的な諸条件の劣悪、これは自然科学領域だけでなくて社会科学領域にもかなり大きなツケを将来に回すんじゃないか、こう思っております。  それで、これを見る場合に、一つは積算校費の問題、そして施設設備費の問題ですね。それがずっと今のように困難になった一つの要因として、財政学者でいらっしゃるわけですから、私たちは、いわゆる予算をつくるときのシーリングのやり方ですね、これは見直すべきじゃないかと思っているのと、もう一つは、大学における研究者を含めた定員削減計画、これが日本の若い頭脳の伸びを相当困難にしているんじゃないか、このようにも考えるのですが、その点について御意見をお示しいただければ幸いだと思います。
  120. 貝塚啓明

    ○貝塚公述人 大学についての御質問になりますと私も利害関係者ということで、全体として眺めてどういうことになるのかということは、何というのでしょうか、非常に難しいような気もするのですが、今御質問について私のとりあえず考えておりますことは、確かに全体として、大学に対する言ってみれば国家予算の配分の比重が低いということは、要するに全体としての文教予算日本はかなりウエートは高いわけです。しかし、文教予算の中で大学関係に出しているものは比重が低いというのが、これがやはり基本的にはどうやら今の状況に立ち至った一番大きな原因ではないか。それは最近文部省さんもあるいは大蔵省、ある程度気がつかれて、そこを直そうということをお考えのようだ。やはりそれはどうしても必要じゃないか。ことしは最初の出発点であって、たしか積算校費も幾らか上がったというふうに思います。  それからもう一つは、これはある意味では申し上げにくいことかもしれない。多少待遇の面も関係があって、これはよく、ちょっと笑い話に近いのですが、理工系の先生は、すごくふんまんやる方ないというのは、要するに私どもの大学でいえば、理工系は、今までは、昔でいえば全部メーカーに就職したりしたケースが多いのですが、最近は証券会社とか、あるいは金融機関ですね。今、最近バブルがはじけてかえってノーマルになって、私はそれは結構なことだと思いますけれども、何といいましょうか、余りの格差の大きさというのは、非常に優秀な人材が大学に残ること、本当は、非常に冗談めかして言いますれば、銀行、金融機関なんかで夜遅くまで働いているよりも大学で少し給料が安くても好きなことをやった方がおもしろいんだというふうにそろそろ思い始めてくれるんじゃないかというか、望みはありますけれども、しかしなおかつ、やはり待遇の改善自身は必要じゃないかというふうに思っております。  どうも余りまとまりのないことで恐縮でございます。
  121. 児玉健次

    ○児玉委員 恐縮ですけれども、丸尾先生にもう一つお伺いをさせていただきたいのですが、先ほど一極集中のことについてお触れになった上で、勤労者の資産形成で欠ける面が強い、そこのところの打開といいますか、非常に具体的な興味ある御意見を私拝聴させていただいたのですが、勤労者の資産形成という問題と、そしていわゆる都市政策、土地政策ですね、特に土地の高騰。土地の高騰は高どまりの状況で、勤労者にとってマイホーム建設に手が届く状態にはほど遠い、そう考えておりますが、そのあたりを勤労者の資産形成との関係で御意見を例えれば、そう思います。
  122. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 株に関する勤労者資産形成と土地に関するものとは若干性格は違いますけれども、ともに同じくこれは上がる。そして、勤労者にとってもすべての国民にとっても最も大きな資産であるという点では共通しています。両方に関して資産が分配、平等的になることが必要だということですね。そして、一極集中が一部のたまたまそこに土地を所有していた人に大変な資産をもたらすということ。株につきましても、一部に集中する、集中した人はますます有利になる、そういう問題があるという点では共通しています。しかし、制度的には、両方を結びつけているということは、私は今のところ余り考えていない。  株に関しましては、例えばイギリスでやっているのは利潤の一部を五年間ためていって、そして五年目に株にするとか、あるいは貯金をだんだんためていって五年目に株にするとか、そしてそのとき株が不利だ、値段が上がっていなければ株を買わなくていい。株は五年前の値段で買えるのです。そうすると、株を持つと危険だというけれども、五年たって株の方が下がっていて貯金の方がよければ普通の貯金の利子もらえるわけですから、そういうようないろんな選択をやったり、あるいは欧米でやっていることを工夫すれば本当に危険がなく勤労者も安心して資産形成できるわけですね。まだ欧米でも大して普及しているわけではないけれども、むしろ彼らはおくれているということで今一生懸命やり始めている。あるいは年金等を一緒にさせた、先ほど言いましたアメリカのESOPですね。これは勤労者の株式所有だけれども、ずっと退職まで持ち続ける。退職したときになるとキャピタルゲインを含めて大変な退職金になるというような、年金も先ほど言いましたように不十分だから、そういうものも含めて勤労者資産形成をやっていけばいいのではないか。  土地に関しましては、やはり基本的には分散化しないと、今の東京で資産を持てというのはかなり無理ですね。  それからもう一つ、都市で日本は再開発する余地はいっぱいあるのだから、そして再開発したら、欧米の都市とかあるいは中国でもそうですけれども、大体大通りのところで、一、二階はオフィスだけれども上は住宅でしょう。それをむしろノーマルにすればかなり建つわけですね。これからも再開発してビルなんか建てるときはそれをむしろノーマルにするというような、今東京都で、リンケージで一部住宅を入れる、そういうけちなことじゃなくて、むしろ住宅が主でオフィスが一部というぐらいのそういう発想にしていけば、それは二月建てではないとしてもマンションは持てる、そういうことはある程度考えられると思いますね。
  123. 児玉健次

    ○児玉委員 ありがとうございました。板谷先生には時間の関係で御質問できなかった失礼をおわびします。
  124. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 次に、中野寛成君。
  125. 中野寛成

    中野委員 きょうはどうもありがとうございました。  まず、今の最後の質問に対するお答え、丸尾先生じていただいたことから関連をいたしましてお尋ねをいたしたいと思いますが、この多極分散とそれから一方では自然破壊の防止、これで思いますのは、一極集中はだめだ、多極分散だ、一方では自然破壊の防止だ、しかし、これは多極分散するとその分だけ自然破壊につながるおそれもある。しかし、これは既に使われている都市部、既に開発されている地域を再開発し有効に活用して、そして現在残されている自然は絶対に手をつけないというような注意などをすればいいと思いますけれども、逆に多極分散が自然破壊につながるということが起こり得るのではないか。そういう意味では、現在の開発された都市部をいかに有効に活用するか、東京でいえば高度利用をするかということなどを真剣に考えないといけないのではないだろうか、こういうふうに思うのでございますが、ここいら辺についていかがお考えでしょうか。
  126. 丸尾直美

    ○丸尾公述人 おっしゃるとおりですね。十分計画されない多極分散はますます地方の自然までなくしてしまうおそれがあるわけですね。しかし、地方といいましても、自然といいましても、本当に荒廃地のようなところ結構あるわけです。そういうようなところあるいは一部草は生えているけれども、自然としての価値は非常に低いというようなところはまだいっぱいあるわけです。ですから、どこを開発するかというのは、そういうことを十分考えてやる必要がある。  だから、場合によってはそういうところに新たな緑、水辺をつくっていく。ヨーロッパでもアメリカでもそうですけれども、ニュータウンをつくるとなると、自然は壊さない。スウェーデンのニュータウンも湖とか山林はほとんど残しますね。そのあいたところの自然破壊にならないところに建てるわけですね。そのやり方でいく。しかも、大体イギリスのニュータウンでもアメリカのニューコロンビアですとか、ああいうところでもそうですけれども、大体ニュータウンをつくると湖をつくるでしょう、川をつくるでしょう、そして木をいっぱい植えるでしょう。かえってニュータウンをつくったことによって荒廃地が緑になり自然がふえるわけですね。そういうような多極分散的なハイテクパークみたいなものをつくっていけばかえって自然はよくなる。しかも、そこに雇用がある。  そういうことを言っても日本がもう一つ欠けているのは、そういうところが魅力がないのですよ。ただ敷地を与えます、減税します、いらっしゃいいらっしゃい。そこに行っても住みたくない、経営者ならばすぐ帰ってきてしまう、そういうところじゃだめですね。水辺をつくったり緑をつくったり、何かするというのはそれだけそこに魅力があるようにする。そしてそこに美術館や博物館とかちょっとした飲み屋街とか、いろいろな魅力をつくってセットにしてやっていく。文化も分散して、情報も分散して、これができればインテリジェントシティ」などにして、テレポートがあるとかそういうところを拠点にしてやっていけば、文化、情報そして行政もある程度分権化する。そういうセットにしてやることによって本当に分散するのであって、そしてまた、先ほど言いましたように慎重に選んで、むしろ自然をふやすような形でニュータウンやハイテクパークをつくっていく。そうすれば、決して分散と自然破壊とは対立するものではないというふうに思っております。     〔中山(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  127. 中野寛成

    中野委員 次に、貝塚先生にお尋ねをいたしますが、先ほど、例えば公共投資の分野別配分比が全く変わらない、これは毎年私どもも政府に対しては指摘しているところでございますが、ことしもまた変わっていない。そしてまた、先ほどは地方財政との関係で行うことも一つの方法だということで先生からの御意見がございました。  そこで、この公共投資の配分が変わらない。これはある意味では役所のセクト主義もありますが、政府・与党の皆さんの何とか族というこっちの方の分捕り合戦も大変にシビアで、これをうかつに変えようものなら血の雨が降ると言った人もおりますが、この辺が大変日本の政治のある意味では限界なのかな、それをいかにして打ち破るかということが我々のまたある意味では野党にとっても使命かなと思うのでございますが、また、その分捕り合戦するのが政治だと思っている人もいるようでございますし、これをどう打破するか、これは先生に聞くより我々が努力しなければいけないことですが。  そこでお尋ねをいたしたいのは、一つの方法として地方分権、これは今丸尾先生からもお答えをいただきました多極分散型とも絡んでくるのだろうと思うのですが、これらのことをどのようにしてより進めていくか、そのときに私は、財政力がある程度あるところは、何というんでしょうね、東京とか大阪なんというのは財政独立というんでしょうかね、財政的独立というふうなことも考えてもいいのではないかな。しかし、そのときに自主財源を決める権限を付与しなければ意味がないわけですね。しかし、地方の場合は住民生活に直結しているものですから、自主財源を付与いたしましても、やっぱりこれは選挙対策でなかなか税率を上げたり新税を設けたりというのがしにくいというふうなことがありますね。大阪市の提言で今事業税というのがございますけれども、これなんかも随分すったもんだして、その結果やっと生まれているんですが、こういう自主財源、多極分散、地方分権、これらのことについてどういうふうに財政的には考えればよろしいでしょう。
  128. 貝塚啓明

    ○貝塚公述人 地方財政の、何といいますか、分権を本当に有効にするにはどうするかというお話でございますが、これは諸外国の例を見ておりますと、実を言うと随分国によって違いまして、例えばフランスは非常に集権的ですし、ドイツは分権的、アメリカも分権的であります。そういうときに結局財政的にどこが一番違うかというと、一番違うのは、今先生が御質問になった、やっぱり税金について地方が独自に税率を決められるかということが一番のポイントのように思います。  で、日本は、それは標準税率というのがありまして、全部ほとんど押しなべて、多少は違いますけれども、ですから地方自治、地方自治というのは、本当に突き詰めて議論をすれば、最終的には、税金の税目は同じでもいいんですが、多少税率が違ってもいいというところから話は出発するというのは私の理解で、そこが動けば、だけれども、これは本当は実を言うと革命的なことであるのかもしれませんので簡単なことではないんですが、考え方としては、やっぱり自分の財源のことはある程度、別に税金をこれを取るということを決めなくてもいいんですが、所得税、住民税と固定資産税、いろんな組み合わせがありますが、それを少し変えることができる、少しばらばらになってもいいやというところを、何というんでしょうかね、そこを思い切るかどうかが一つのポイントで、そうなると非常に混乱が発生してもう大変なことになるというふうにお考えになる方もありますし、いやそうではなくて、それをとりあえずちょっとやってみましょうというあたりのところが一つのポイントではないか。  それから、今行革推進委員会で恐らく非常に熱心に御議論があるところで、いわゆるパイロット自治体というんですか、これもとにかくやっぱり日本の場合は多少実験をしてみるより仕方がないんじゃないのかなというのは、正直なところ、現実的には。それは財源についてもそうですし、いろんな補助金をプールしてやってみるとか、とにかくやってみて、多少は最初は、私は実を言うと失敗はあろうと思います。恐らく失敗してこれでもうだめだというふうになっちゃう危険性もありますが、多少は失敗を恐れずにやったらいいんじゃないのかというのが私の意見でございます。
  129. 中野寛成

    中野委員 貝塚先生にもう一点だけ。  防衛費の決め方、私どもはずっとGNP比一%云々ということは、これはまさに架空の論議、非現実的な論議だといって、これはどちらかというと我々、我が民社党乗らなかったわけですね。そして、結局国際情勢やそのときの財政力、国民の意識、経済力等々考えながら決めていくべきものだというふうにずっと主張をしてまいりました。最近その傾向が出てきたことは大変うれしいと思うのですが、ただ、日本の防衛費の決め方というのは、何か国家の体制、国家の体面を、体裁を保つための基盤的整備だという政府の答弁が来るわけですね。そうするとつかみ金なんですね。基盤的整備、国家の体面を整えるんだということになると、まあこのくらいのものを整えておくといいかなということになってしまって、結局どういうところが仮想敵国であるのかとか、どういう事態が起こるかわからないからそれを想定してとかという一つの計算とか計画がない。だから結局、基盤的整備という言葉のもとに決められる防衛費というのはつかみ金じゃないか。最初に金額ありきではないのか、最初に何%ありきではないのか、こういう意識を我々、印象を持つわけです。ならば、こういう条件だから、まあおおよそこのくらいカットしとけやという大ざっぱな議論だって成り立たないことはない、こうなってしまうわけですね。この辺は比較財政学的に見て防衛費の決め方、いかがなものでございましょうか。
  130. 貝塚啓明

    ○貝塚公述人 今の御質問は大変難しい御質問でありまして、防衛費をどういうふうに基本的に決めたらいいのか。まあ冷戦構造のある場合には割合とある意味では、要するに相手国がこうなっているからということで決められるのですが、今の状況で防衛費が一体どの規模であるべきかというのは、要するに現在の世界の安全保障上最低限この程度はやはり必要でしょう、それに日本がある意味で応分、ある程度寄与しなくちゃいかぬということもあります。ですから、アメリカが猛烈にカットしたら日本も同じようにカットしなくちゃいかぬかというとそれはそうでもない問題で、何といいますか、私自身もあんまりお答えが本当はできないんですが、全体として、世界全体である程度やはり先進国が防衛力を持ってなくちゃいかぬという事態はそれは確かにある。なぜかならば、要するに大きな紛争はなくても小さい紛争はいろいろ実は起こり得るわけですね。それに対して備えなくちゃいかぬという意味で防衛は必要です。その程度がどの程度であるかということをある程度技術的に見きわめてこう決まってくるような性格のものではないかというふうに思います。こういうふうに決めれば一番最適な解決が得られるというふうなことについて具体的にお答えはできませんけれども、そういう感じを持っております。
  131. 中野寛成

    中野委員 時間があと三分しかないんですが、板谷先生にお尋ねをいたします。  大変興味のあるお話をお聞かせいただきましてありがとうございました。タイの日本研究センターの件は、去年七月に向こうへ参りましたときにも聞きまして、思い出しながら御意見を拝聴さしていただきました。そのときにシンガポールへ行きましたが、ウォン・カンセン外務大臣が、五月に海部総理が第二次世界大戦のことについて謝ったことはいい、しかしながら、それでは謝った気持ちで具体的にどうしてくれるのかという答えがないということを指摘されたのを思い出します。そしてまた、マレーシアに行ってもタイに行っても、日本はもっと東南アジアに対して政治的な役割を果たせ、こういう声があったことも思い出すんです。  シンガポールへ日本が資本投下をして経済進出するのはもう大歓迎だ、しかしシンガポーリアンをパートナーとして扱え、そうすれば、やるべきことをやれば昔の悪感情は消えていくだろうという御指摘がありました。そういう中でカンボジアに対してどういう役割を日本が果たすかということが我々の注目しているキーポイントだ、こういう指摘だったわけであります。まずはPKFといいますか、戦後処理をきちっとやる。そして安全を確保した上にエネルギーを第一に確保する。二番目にはインフラ整備をする。その一環としてジャパンブリッジの話もありますが、そして三番目には農業用かんがいだ、こういうことを言っておられましたけれども、そういう活動に対してこれから日本がいかなることに気をつけて何をポイントにやるべきか、お教えいただければと思います。
  132. 板谷茂

    ○板谷公述人 先生、発展途上国というのはすごく苦しかってます。苦しんでいるんです。例えばインドネシアの国家予算を見ますと歳出の三六・六%は諸外国から借りているお金の返済の資金なんですよ。三六・六%ですよ。四割近くは返済費になっちゃうわけですね。ここに難しさがあるわけですね。したがって、国内開発をしたいあるいはもっと道路をよくしたいとしても、四〇%近くがぼんとなくなってしまうわけですね、もうのっけから。それをしかも毎年やっていかなければいけないわけですね、これから二十年間ぐらい。こういうつらさが発展途上国にはあるんじゃないかなと思う。一つインドネシアのケースですけれども。  それから、先生御質問ありましたことに一つ一つお答えするというわけじゃないんですけれども日本の進出している企業は現地の人たちにざっとボーナスとして一カ月から一カ月半ぐらいしか出さないんです。それから給料も非常に安いです。ですけれども、彼らは日本で留学したりなんかしていますから日本の給与を知っているわけですね。ですけれども、現地へ帰ると大体五分の一とか七分の一になってしまうわけですよ、日本人に比較して。  例えばタイに進出しています世界で二番目に大きなヘルプスドッチという大きな電線の会社がありますけれども、ここでは医療費というのは病気になったら全額会社持ちなんですよ。これは一年でも二年でも全部会社が持つわけです、アメリカの会社ですけれどもね。ですから従業員は一人もやめないんです。日本の場合ですと、大体三分の一ぐらいが一年間の間にぐるぐるぐるぐる変わっていくわけですね。しかも学者に言わせると、それはジョブホッピングだとかいって論文書いている人もいますけれども、そうじゃないんですよ。日本は払っていないんです。  医療費は一〇〇%、それから結婚は十万円ですよ、タイで。日本に直したら百万円か百五十万円ぐらいになるんじゃないでしょうか。それが女性であれ男性であれ、結婚の費用として十万円ぽんと渡すわけです。大きいですね、これは。それから保険は三年半、医療保険は、健康保険は全部会社持ちです。途中でやめても、会社が、ヘルプスドッチが持ちましょうと。したがって、繰り返すようですけれども、定着率が一〇〇%ですね。日本の場合は、さっきから言っておりますように三分の一ぐらいがもうやめてしまうんだ、よそのいい会社へ行ってしまうんだよなんというようなことを言っていますけれども、やはりもっと、現地を下へ見ないで、同じ能力があるかどうかはわかりません、ですけれども、もっと現地の人たちのことを考えなければいけないと思うのですよ。  よく言われることですけれども、我々日本人というのは、三つか四つのときにねじは右へ回せば締まるということを知っています。右へ回せば締まるんですよ、ねじは。水道でも同じことですね。ですけれども、それが、フィリピンであれカンボジアであれどこであれ、四十歳になっても五十歳になっても、ねじは右へ回せば締まるということは教わっていないわけです。あるいは、ねじがないんですよ。ねじというのはプラモデルでも何でもいいと思うのですけれども、そういう環境に育ってきていないわけです。  日本は何を言うかというと、現地の連中はだめだなとやっているわけでしょう、さっぱり働かないよと。そうじゃないんですよ。インドネシアの場合なんかは四時半に起きるんです、大体。タイでも大体五時ですよね。そして、八時半が、太陽がまだそれほど暑くならない間に一仕事してしまうんですよ。観光客は大体九時ごろですね、外へ出ていく。で、道路を見ますとインドネシア人がぶらぶらぶらぶら遊んでいる。現地の連中は働かないなというようなものです。そうじゃないんです。彼らはちゃんと朝のうちもう仕事をしているんですよ。夕方またやるわけです、日が沈むころに。我々日本人の観光客はそうじゃなしに、八時ぐらいに朝御飯を食べて、そしてぼつぼつ出かけようか、そのときに彼らは道端で遊んでいるわけですよね、一休みしているわけですから。それを見て、アジアの連中は働かないな、そうじゃないわけです。そんなふうにこれから考えていけば、アジアというのは洋々たる前途があるんじゃないかなと思っております。  お答えになるかどうかわかりませんけれども、失礼します。
  133. 中野寛成

    中野委員 ありがとうございました。
  134. 山村新治郎

    山村委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  明二十七日の公聴会は、午前十時より開会することとし、本日の公聴会は、これにて散会いたします。     午後四時十三分散会