○
不破哲三君 私は、
日本共産党を代表して、ただいま上程された
宮澤内閣信任決議案に対する
反対討論を行うものであります。(
拍手)
日本共産党は、
リクルート、
共和、
佐川など相次ぐ金権腐敗問題での
責任を初め、
宮澤内閣の反民主的で反
国民的な
性格と
政策をこれまでも一貫して批判してまいりました。特に、今回の
PKO法案の
強行の企ては、この
内閣が、
日本の
憲法のもとで
国民を代表して
政権を担う資格がないことを決定的に証明したものであります。(
拍手)
その第一は、これまでの
歴代政府の
解釈改憲をついに
海外派兵の
法制化にまで拡大し、
憲法第九条を全面的に踏みにじろうとしていることであります。
これまで、
自衛隊が
違憲であるか
合憲であるか、この問題については、私
たち日本共産党と
自由民主党の間には、もちろん大きな
見解の相違がありました。しかし、今の
憲法のもとでその
自衛隊を
海外での
武力行使に
参加させることが許されないことは、これは
自衛隊合憲論者を含めて一致した
合意となっていた点であります。ところが、
宮澤内閣はこの
合意さえ投げ捨てて、ついに
海外派兵の
法制化に踏み出したのであります。
それは、例えば一年
数カ月前までの
政府の
憲法解釈の公的な見地、
PKO協力でも
平和維持軍的なものには
参加できない、困難である、これが公式の
国会での
答弁でありましたが、これを投げ捨てて、
平和維持軍への
参加を含む
自衛隊の
海外派兵を
PKO法案の柱とすることに
最後まで固執したところにも、最もあからさまにあらわれております。
法案賛成論者は、
PKOは
憲法が予想しなかった新事態である、こんな
弁明を持ち出します。しかし、これは通用しないものであります。
PKOの最初の展開は、一九四八年のインド・パキスタン問題とイスラエル問題、パレスチナ問題。つまり、
PKOは
憲法と同じぐらいの
歴史を持っているものであります。それ
一つ見ただけでも、こうした
弁明の偽りは明瞭であります。
しかも、より根本的に言えば、状況が変わったからといって、
解釈の勝手な
変更が許されないのがまさに
憲法であります。だからこそ
憲法には、わざわざ特別の条項を設けて、
憲法の
尊重擁護義務というものを厳格に定めています。これに背を向けて、
憲法第九条に、
政府自身の手で破壊的な大穴をあげようとする
責任は極めて重大であります。
第二は、しかもこの
暴挙を行うに当たって、
自民党・
宮澤内閣が
公約違反で
主権者を欺いていることであります。
全国的な一番間近の
選挙は昨年の一斉
地方選挙でありました。この
選挙での
PKO問題での
自民党の
公約は、昨年一月の
自民党第五十三回大会の決定にも明確なように、一昨年十一月の三
党合意でした。つまり、
自衛隊とは別個の
組織で
PKOに
協力するというものでありました。こういう
公約を掲げて
国民の判断を求めながら、
選挙が終わったら
数カ月にしてこの重大な
公約を投げ捨てる。そして、百八十度転換させた
自衛隊派兵立法を、
国民の新たな審判を目の前にしながらその前に
強行成立させる。これは
主権者である
国民を欺くも甚だしいものと言わなければならないではありませんか。(
拍手)
第三に、
宮澤内閣は、この
海外派兵立法の
口実に
PKO協力、
国連協力ということを
最大限に使いながら、その
PKOの実体を
国民に隠し続けている
責任も重大であります。
国連平和維持活動、
PKOというものの核心は
軍事要員による
軍事活動にあります。ですから、
PKOの
標準行動規定とか
訓練ガイドラインとか、
PKOに関する
国連文書は、明確に
武力行使の章を含んでいます。
PKOだから
武力行使の心配はないなどの
議論は、全く成り立ち得ない
議論であります。(
拍手)
しかも、
国連の
責任による
国際活動として、部隊の全
行動が
国連、現地ではその
司令官の指揮下に置かれることも明確に
規定されています。そのことは、
日本の国内法によって左右されるものではないのであります。幾ら、国内法で五
原則なるものを決めて、それによって
PKOの
活動を実質的に
制約することができる、それが可能であるかのように言うのは全くのごまかしであります。
特に重視すべきことは、最近の
PKOの
性格、
機能の変質であります。ユーゴスラビアでも
カンボジアでも、現に
PKOは武力紛争が停止される以前に展開され、それが繰り返されています。しかも、これは今日では例外ではありません。この六月一日に
国連PKO特別
委員会が報告書を発表しましたが、その報告書では、こうしたことを
PKOの当然の任務とする方向で、
国連平和維持活動の新たな
性格づけ、任務づけを行うことがはっきりと提起されています。
ニューヨークからの報道では、
日本の
国会での、そしてまた
政府の
PKO法案論議を見て、
国連の実情に余りにも無関心である、その実際を何ら知りもしないし、関心も持たないまま専ら
自衛隊派兵の体制づくりだけを急いでいる、こういう論評が
国連筋の意見として紹介されています。これでは、
自衛隊海外派兵の体制づくりのために
国連の看板を利用しているだけだと批判されても、何らの
弁明の余地がないではありませんか。(
拍手)
第四は、
政府が
強行しようとしている今回の
PKO法案が、
アジア諸国に大被害をもたらした
日本軍国
主義の再現復活のための重大な関門を突破するものだということであります。
既にそのことについての鋭い、重大な反応が各地で呼び起こされています。六月五日、
参議院の
PKO特別
委員会で
強行採決された日に、南朝鮮の東亜日報は論説を掲げてこう書きました。「
日本がついに非
軍事原則の鎖を切った。
日本軍の海。外への再上陸が
現実化した。」「
日本軍の軍靴の音が第三国へも響きわたるようになった。」
また、
参議院の本
会議で
強行採決が行われた六月九日には、マレーシアの南洋商報はこういう論説を掲げました。「関係
法案がいったん採択されれば、
日本がその強大な武装部隊を
海外に派兵するために、不可欠の合法的な通行証を手にいれることになるのは間違いない。」「
海外派兵法案が実行にうつされることに対し、関係諸国は国際的に
一つにつながって、
日本軍国
主義の捲土重来を防ぐ実際的な措置をとるべきである。」
アジア諸国におけるこの懸念と批判は、決して
見当違いのものではありません。
自衛隊が強大な武装部隊であることは事実であります。そして、
PKO法案の発動は、この軍隊の
アジア諸国への再上陸になることも間違いない
現実であります。しかも、だれがこれを実行するのでしょうか。
日本軍国
主義の過去の侵略戦争に何ら本質的な反省を持たない
人々が、その実行に当たるのではありませんか。
宮澤首相は、昨年の私の本
会議での追及に対して、過去の
日本の戦争について、侵略的事実は認めたが、侵略戦争であることを認めませんでした。その後の参院
予算委員会での
討論でも、侵略戦争であるかどうかを聞かれて、私はそういうことについて判断する専門的知識を持ち合わせない、そう
答弁しました。
宮澤内閣を支える最大の派閥の代表者竹下元首相は、三年前、首相当時、私の同じ質問に対して、後世の
歴史の審判にまつと
答弁しました。つまり、侵略戦争の反省をしない
人々、そしてまた、
世界政治のこの根本問題、
原則問題で善悪を判断する知識もなければ基準も持たない、そういうことを公言してはばからな、い
人々が、
海外派兵の
法制化を
強行しようとしているのであります。まさに、
アジア諸国の不安は核心を射たものと言わなければならないではありませんか。(
拍手)
第五は、アメリカの覇権
主義の戦略との関係の問題であります。
アメリカは今、生き残った唯一の超大国として、全
世界を自分の
軍事的な監督のもとに置こうとし、いかなる対抗者の存在をも許さないという
軍事戦略、
政治戦略をとっています。国防総省の文書「国防計画指針」の起草過程でこの構想が明らかになったとき、
世界の多くの方面から、アメリカは
世界の憲兵になるのか、全
世界を自分の
軍事的な監督と支配のもとに置こうとするのか、この覇権
主義の構想に対してそういう批判と危惧の声が起こりました。
国連の
事務総長はそれを聞いて、この構想が実行に移されたら
国連が終わりになるとまで言明しました。アメリカがこの構想を進めるに当たっての合い言葉は、不安定性及び不確実性が敵だということであります。それがあるところ、どこでもアメリカには
軍事介入する権利がある、それで
世界各地に手を出そうとしているのであります。
ところが、一月のブッシュ大統領訪日に際して日米両国
政府が発表した東京宣言は、まさにその同じ言葉、不安定性及び不確実性が敵だという言葉を使って、グローバル・パートナー・シップ、地球的規模でのアメリカとの
協力を約束しました。そして、
日本の防衛のためだと言ってきた米軍基地を、この戦略の前方展開の基地として公然と承認しました。さらに続くのがこの
海外派兵立法であります。今度の
海外派兵立法がその計画の一環であることは隠れもない公然の秘密であって、
国連平和維持活動への
協力と言うが、
協力の相手は、入り口では
国連だが、出口では米軍だと言われるゆえんもここにあるのであります。(
拍手)
この
法案は、九〇年代から二十一
世紀に至る
日本の運命を、極めて危険な、また
世界の諸
国民にとっても有害きわまる道、アメリカの覇権
主義と
日本軍国
主義の従属的な結合という極めて危険な道に引きずり込もうとするものであります。(
拍手)
私は、このような計画を、
国民の平和の意思に逆らい、
民主主義の
原則を踏みにじって
強行しようとする
宮澤内閣に対して、その退陣を断固として要求するものであります。(
拍手)
たとえ無法な
暴挙の前にこの
国会での
PKO法案の結末がどうなろうと、
海外派兵に
反対する
日本国民の闘いはそれで終わるものでは決してありません。平和と主権、
民主主義を願うすべての
国民とともに、
自衛隊海外派兵のこの野望の
実現を許さないために、
最後まで闘い抜く
日本共産党の
決意を述べて、
反対討論を終わるものであります。(
拍手)