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村山富市君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、ただいま議題となりました
櫻内義雄衆議院
議長の
不信任決議案について、その提案理由を申し上げます。(
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自衛隊の海外派兵を目指す
国際連合平和維持活動等に対する協力に関する
法律案の審議をめぐる本院のこれまでの経過は、
さきの参議院において、我が党の委員が留保した質問に
答弁をなし得ないまま、無謀な強行採決を行うことによって四泊五日の異常な徹夜
国会となったことに対する何らの反省もないまま、六月九日の議院運営委員会における委員会付託強行とPKO特別委員会の強行採決など、暴挙に次ぐ暴挙を重ねて今日に至っております。(
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我が党は、かかるやり方は、もはや法案の是非を問う以前の議会制民主主義の根幹にかかわる深刻な事態であり、かつ、我が国の民主主義の歴史に重大な汚点を残すものであるとの認識に立って、櫻内
議長に対し、再三にわたりこの自公民による数の暴力に反省を求め、話し合いによる秩序を回復するため、
議長の機能を発揮するよう再三にわたって要請してきたところであります。(
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しかしながら、櫻内
議長は、この事態に対し何一つ議会運営を正常に戻す努力をしないばかりか、本来、公正、公平、不偏不党の立場に立って本院の円滑な運営を保持すべき責任をも放棄し、一方的な政府・自公民三党の数で押し切る政治の強行を傍観放置し、みずから話し合いによる道を閉ざして、言論の府としての議会の権威を失墜せしめたのであります。(
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ここに至って、もはや櫻内
議長の
不信任決議案をもってその職を辞するを求めるほかはありません。私はここに、激しい怒りと深い憂慮を込めてこの決議案を提案するものであります。(
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不信任を求める第一の理由は、既に申し述べたとおり、いわゆるPKO法案の審議の経過、状況について許しがたいものがあります。なぜ、言論の府であるこの
国会で
議員の質問権を封じ、審議の時間を
制限し、自公民の求めに応じて一方的に
質疑終結を行い、採決を強行したのでしょうか。(
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それは、今日、法案をめぐって、まさに世論は二分されています。自衛隊の海外派兵に
反対する国民世論は日を追うて高まりつつあります。現に、
国会の周辺には連日連夜、自衛隊の海外派兵に
反対する声がこだましています。審議が進めば進むほど、法案の持つ数多くの矛盾が明らかとなり、継ぎはぎだらけのガラス細工、その持つ問題点が拡大することを恐れたからにほかなりません。だから、こうした矛盾や問題点の解明がなされないまま、政府・自公民三党の議会運営のルールを無視した問答無用の姿勢がまかり通ってきたのであります。(
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すなわち、PKFの範囲や武器使用にかかわる問題、国連の指揮権と、武力衝突時における撤収を盛り込んだ自民党のいわゆる五原則との矛盾は、ついに解明されるに至っておりません。さらに、自公民三党の共同修正案において、みずから立法府の機能を放棄した議会の事前承認にかかわる条項、国連平和維持隊の定義の欠語、PKF凍結の意味など極めて不十分な審議経過により、数多くの疑問を残したまま、ひたすら自衛隊の海外派遣のみが強行されようとしている。この事態は、まことに危険きわまりない理不尽なことと言わなければなりません。(
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この審議の過程における櫻内
議長の果たすべき役割は、この理不尽を謝し、関係法案の強行採決に当たっては、これを委員会に差し戻し、国民合意を目指すための一層の慎重審議と、だれもが納得できる、しかも、アジアの近隣諸国から喜ばれ、歓迎されるような国際貢献のあり方を求めることであったのであります。この当然かつ大事な役割を放棄した責任は、まことに重大と申さなければなりません。(
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さらに、本法案の委員会強行採決以来、アジアの近隣諸国の日本軍国主義復活に対する懸念と不安は急速に高まり、激しい非難と抗議が寄せられていることは御承知のとおりであります。まことに憂慮にたえないものがございます。
かくて、この暴挙は、我が国及び我が国民とアジア周辺諸国との信頼関係を著しく傷つけ、損なう結果を招いたのであり、この暴挙を許した櫻内
議長の責任は、極めて重大と言わなければなりません。(
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不信任を求める第二の理由は、政治改革についてであります。
そもそも、本
国会における最も重要な課題は、自衛隊の海外派兵ではありません。リクルート、証券・金融疑惑に続いて新たに発生した共和・佐川事件の真相を究明し、積年の政治腐敗の根源を正す法整備を図り、政治倫理の確立、
国会改革、一票の格差是正に取り組み、国民の政治不信の解消にあらゆる努力を尽くすことにあったのであります。(
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国会に対する国民の期待と注目は、いかにして
国会が政治腐敗防止に対する自浄機能を発揮してその対策を講じ得るかということにかかっています。
言うまでもなく、政治改革は
国会自身の問題であり、事柄の性格上、院を代表する
議長のリーダーシップと責任はだれよりも問われなければなりません。
PKO法案の提案者である
加藤官房長官が、新たに共和汚職事件に関与している疑いが生じ、我が党が真相解明のために共和の森口五郎元副社長らの証人喚問を要求していることを、この特別委員会ではなじまないとして委員長の一方的見解で処理した、特別委員会での間違った運営を正そうとしない責任は極めて重いのであります。(
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議長は、直ちに特別委員会に審議のやり直しを命ずると同時に、即刻、証人喚問の実現を図ることを求めるべきでありました。
しかも、
議長は、これを放置しただけにとどまらず、予算委員会の審議以来、懸案となっている、共和・佐川事件にかかわる共和の森口元副社長、阿部文男代議士、佐川急便の佐川清会長らの証人喚問の実現に極めて消極的であるばかりでなく、実質的には
反対さえしてきたのであります。
去る五月二十六日、社会党、公明党、民社党の三党はそろって、事件の根幹をなす人物の喚問はいまだ実現を見ていない、このままでは
国会に対する国民の不信を増幅させ、立法府としての権威を著しく損なう事態を招こうとしている、我々は、自由民主党に反省を促し、
国会が国民の負託にこたえ、事件の真相解明ができるよう証人喚問の実現に全力を尽くすよう強く求めている、
議長においても立法府の長としてこの実現を図られるよう要請すると
議長に対し再三要請してきたのであります。
議長は、この要請に何らの努力をしないまま、今日に至っているのであります。これは、まさしく
議長不信任に当たる重大な責任であると言わなければなりません。(
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第三の理由は、本本
会議における
議事運営についてであります。
議長は、自公民三党の意を体し、
発言時間
制限の
動議の採択を口実に、慎重な審議を期待している国民の声に耳をかさず、
発言時間を
制限し、それのみか再三にわたる採決時間の一方的な短縮など、議会制民主主義に反する
議事運営は、不偏不党、公平、公正であるべき
議長の権威を汚すものであり、全く許しがたいことと言わなければなりません。(
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今、世界は冷戦構造を解体させ、世界的な軍縮の時代に向かっております。我が国が第二次世界大戦の反省の上に立って制定した平和憲法は、現在ますますその有効性を増しており、国の内外から高い評価を得ているのであります。今こそ我が国の平和憲法が世界に向けて発揚されるときであります。時代が変わったからとか、国際貢献のためだからという口実によって自衛隊の海外派遣を認めることがあっては断じてなりません。(
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重ねて申し上げますが、こうした認識を欠き、公平な議会運営を不能にした
議長のもとでは、議会制民主主義の再生も、活性化も不可能であることを強く申し上げ、私の櫻内
議長の不信任案に関する提案理由の説明を終わります。(
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