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国務大臣(
羽田孜君) 柳田議員に
お答え申し上げます。
増税策を撤回するべきではないかという御
趣旨でございますけれ
ども、
平成三
年度の税収は、もう当初
予算に比べまして約二兆八千億円と税収全体の五%
程度減少すると見込まれております。この急激かつ大幅な税収の落ち込みにより、
平成四
年度以降、
財政収支状況が深刻化するものであろうというふうに見込みまして、
平成四
年度におきまして、
歳出の徹底した
節減合理化あるいは税外収入の
確保、さらに建設公債の発行額の増加等の
努力を払うとともに、
税制面におきましても、極力税収を
確保する
観点から何らかの対応策を講ずることが必要であるというふうに
考えて、このたびのような
措置をとったものでございます。
しかし、もう既に
総理からも
お話がございましたように、今度の場合には
法人特別税の
基礎控除、これにつきまして、三百万円から四百万円に引き上げるということで、中小
企業あるいは零細
企業等に配慮をいたしておりますし、自動車の
特例税率も
現行より低くしたということ、それから石油
臨時特別税、これを失効させるということによりまして、今日より
負担は軽減されるというふうに
考えておりまして、現下の
経済の基調にマイナスの影響を及ぼすものではないというふうに
考えさせていただきたいと思っております。
なお、
消費税につきまして、昨年の十二月に、何か私からそれを予測させるような発言があったということでございますが、そんなことは全然実は
考えておりませんで、今も三%の
税率についてどうこうということは念頭にないことを明確に申し上げておきたいと存じます。
いずれにいたしましても、
消費税の
税率の変更というのは、まさに他の税と同じように、国会の議決を得るものであるということでございます。そして、今後の
財政需要の動向ですとか
税制全体としての
負担の
あり方などを踏まえまして、そのときどきの
経済社会情勢の条件のもとで
国民が選択する事柄であるというふうに理解をいたしております。したがって、
国民の御理解なしに安易な
税率の変更を行うということは
考えられたいことを申し上げておきたいと存じます。
なお、
歳出の削減を行い、
政府保有の
土地、株式を売却すれば
増税は全く必要ないと
考えるがどうかということでありますけれ
ども、
財政改革を推進する等の
観点で、私
どもは、既存の
制度、施策を先ほど申し上げましたように
見直してまいりました。
一般歳出につきましては、その増加額というものを前
年度同額以下としたほか、国有財産の売り払い収入を含め税外収入の
確保に努めるなど、可能な限りの
努力を払ったところでございますが、当面の厳しい税収動向、
財政事情に対応するため、建設公債の発行額を増加させ、
税制面においても必要最小隈の
措置を講ずることといたしたものでございまして、今回の増収
措置はやむを得ないものであるというふうに御理解をぜひいただきたいと存ずるわけであります。
なお、取引相場のたい株式の
評価方法の改善、
贈与税の納税猶予
制度など中小
企業承継
税制についての対処
方針ということでございますけれ
ども、中小
企業者の
相続税を含めた
相続税につきましては、
昭和六十三年の
抜本改革におきまして大幅な減税を行ったほか、今回提案をいたしております
租税特別措置法の一部改正法におきましても、
土地の
相続税評価の
適正化に伴う
相続税の
負担調整に際して、
事業用の
小規模宅地等につきまして
特例の減額割合を六〇から七〇%に引き上げる
措置を講ずることとしておりまして、これらは中小
企業の事業承継の円滑化に資するものであろうというふうに認識をいたしております。
なお、御
指摘の株式
評価の緩和や生前贈与に係る納税猶予の
特例の
創設は、
土地の
資産としての
有利性の縮減という
資産課税の
適正化の流れに合わないという問題があり、適当でないことを御理解をいただきたいと思っておるところでございます。
青色特別控除の問題でございますけれ
ども、この問題につきましては、控除
制度を政組いたしまして
青色申告特別控除制度を
創設し、正規の簿記の原則に従い記帳している青色事業主、この皆様方に対しまして三十五万円の控除を認めることとさせていただいたところでございまして、これ以上の引き上げは困難というふうに
考えております。
なお、
地価税収を家賃控除の
創設に充てたらどうだ、あるいはパートの内職の非
課税限度の引き上げに充てるべきであるということでありますけれ
ども、
地価税の
創設に伴います純
増収分につきましては、「
土地対策等に資するという
観点から
歳出を通じ
国民生活に還元することが現実的には適当である」との昨年末の税調
答申、この
趣旨を踏まえまして、具体的に申し上げますと、例えば公共用地の先行取得のための特定公共用地の先行取得
資金の融資
制度の
創設をいたしたこと、また二番目として、
住宅地の供給を
促進するための
住宅宅地関連公共施設等整備
促進事業の拡充を図ったこと、また、三番目といたしましては、
土地の有効高度利用を
促進するための市街地の再開発事業、駐車場等を拡充する、あるいは
土地基本調査の新たな実施ということでございまして、
地価公示地点の大幅な増設等、
土地情報の総合的な整備の充実等、各般のきめの細かい
土地対策の充実強化に充ててきたということでございます。
なお、家賃控除につきましては、これを
創設するようにということでありますけれ
ども、先ほど
総理からも
お話がありましたように、食費や被服費等と同様、典型的な生計費であることから、家賃だけを取り出して特別の控除を設けることには
基本的な問題があるほか、より高額の家賃を払っている方がより大きな恩典を享受するといった問題もあろうと思います。
また、家賃控除の
創設は、賃貸
住宅への需要だけを刺激することになりまして、優良な賃貸
住宅の供給増には結びつかないという問題がありまして、適当ではないというふうに
考えております。
また、パートの内職減税につきましては、パートの所得者につきましては、先般の
税制改革によりまして特別控除というのをさらに設けたということでございまして、いわゆる逆転現象を生ずるというパート問題というのは解消されたと認識いたします。さもに、
平成元年の十一月のパート減税によりまして、収入の非
課税限度をパートにつきまして百万円に引き上げられたことなど、
税制面で最大限の配慮をいたしたところでございまして、これ以上の非
課税限度の引き上げには、むしろ
税負担の公平という面から問題があろうということを申し上げざるを得ないことをお許しをいただきたいと思います。
なお、遅くとも
平成五
年度の
税制改正までに納税者番号あるいは総合
課税体制を
確立すべきだという御
指摘でございますけれ
ども、
現行の所得
税制につきましては、総合
課税を原則としつつ、利子・株式売却益
課税については、その所得の性格等に応じまして、実質的な公平を図るために分離
課税が採用されておるところでございます。
株式売却益や利子に対する
課税の
あり方につきましては、先般の改正の際に、総合
課税移行問題を含めまして
見直しを行う旨の規定が設けられておりをすところから、この規定の定めるところに従いまして、私
どもはさらに
検討をしてまいりたいと思っております。
なお、納税者番号
制度の導入につきましては、
制度の
前提となります番号をどうするか等につきましての幅広い
視点からの
検討や、プライバシー問題や、
制度導入に伴い
国民がこれを受け入れることになるかどうか、こういった問題、あるいは、費用等の問題につきまして
国民の理解と合意が形成されるかどうかが重要になってこようと思っております。
こうした
考え方を踏まえまして、納税者番号
制度の導入につきましては、今小委員会で
検討しておりますのをさらに私
どもは伺っていきたいというふうに思っております。なお、貸倒引当金あるいは受取
配当益不算入割合の圧縮など不公平と
指摘された問題についてでありますけれ
ども、
税負担の
公平確保は、言うまでもございません、
税制に対する納税者の
信頼を得るために最も重要な理念でありまして、この点につきましては、従来から
努力を続けてきたところでございます。
特に、貸倒引当金を含めた
税法上の引当金
制度は、費用の収益対応の
考え方に基づきまして費用を適正に期間配分するなどの見地から、
法人税の
課税所得を合理的に
計算するために設けられているものであり、
制度自体を
政策税制と
考えることは適当ではないというふうに
考えます。しかしながら、引当金につきましては、個々にその
趣旨あるいは利用
実態等を踏まえ、点検を行い、必要に応じ実情に即した
見直しを行っていくべきものであろうと認識をいたしております。
なお、受取
配当益金の不算入割合の圧縮についてでありますけれ
ども、受取
配当益金不算入
制度は、
法人株主の受取
配当について、
配当を支払う
法人段階とそれを受け取る
株主段階とを通じる
税負担の
調整を行うためのものでございますが、
昭和六十三
年度に行われた
税制改革におきまして、いわゆる親子
会社といった
関係を有しない株式の
配当につきましては、益金不算入割合を八〇%まで引き下げたところでございます。この
制度をさらに縮減することにつきましては、それが
企業の
資金調達ですとかあるいは資本市場にどのような影響を与えるのか、また、諸外国の例な
ども参考にいたしまして、私
どもは今後とも慎重に
検討をいたしていきたいというふうに
考えております。
以上であります。(
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