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1992-05-12 第123回国会 衆議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年五月十二日(火曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 浜田卓二郎君    理事 鈴木 俊一君 理事 田辺 広雄君    理事 津島 雄二君 理事 星野 行男君    理事 小森 龍邦君 理事 鈴木喜久子君    理事 冬柴 鐵三君       愛知 和男君    石川 要三君       衛藤 晟一君    奥野 誠亮君       坂本三十次君    小澤 克介君       沢田  広君    仙谷 由人君       高沢 寅男君    谷村 啓介君       松原 脩雄君    倉田 栄喜君       木島日出夫君    中野 寛成君       徳田 虎雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田原  隆君  出席政府委員         法務大臣官房長 則定  衛君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省刑事局長 濱  邦久君         法務省矯正局長 飛田 清弘君         法務省保護局長 古畑 恒雄君         法務省人権擁護         局長      篠田 省二君         法務省入国管理         局長      高橋 雅二君  委員外出席者         外務省国際連合         局人権難民課長 吉澤  裕君         厚生省児童家庭         局育成課長   弓掛 正倫君         労働省労働基準         局監督課長   山中 秀樹君         最高裁判所事務         総局刑事局長  島田 仁郎君         最高裁判所事務         総局家庭局長  山田  博君         法務委員会調査         室長      小柳 泰治君     ――――――――――――― 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   中野 寛成君     大内 啓伍君 同日  辞任         補欠選任   大内 啓伍君     中野 寛成君 同月十二日  辞任         補欠選任   亀井 静香君     衛藤 晟一君 同日  辞任         補欠選任   衛藤 晟一君     亀井 静香君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提出  第五〇号)  少年保護事件に係る補償に関する法律案(内  閣提出第五一号)      ――――◇―――――
  2. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所島田刑事局長山田家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 浜田卓二郎

    浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。      ――――◇―――――
  4. 浜田卓二郎

    浜田委員長 内閣提出刑事補償法の一部を改正する法律案及び少年保護事件に係る補償に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  まず、両案の趣旨説明を聴取いたします。田原法務大臣。     ―――――――――――――  刑事補償法の一部を改正する法律案  少年保護事件に係る補償に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  5. 田原隆

    田原国務大臣 刑事補償法の一部を改正する法律案について、提案趣旨を御説明いたします。  刑事補償法による補償金額は、無罪等裁判を受けた者が未決の抑留もしくは拘禁または自由刑執行等による身体の自由の拘束を受けていた場合については、拘束一日につき千円以上九千四百円以下とされ、また、死刑の執行を受けた場合には、本人の死亡によって生じた財産上の損失額として証明された額に二千五百万円を加算した額の範囲内とされておりますが、最近における経済事情にかんがみ、これらの額を引き上げることが相当と認められますので、右の「九千四百円」を「一万二千五百円」に、「二千五百万円」を「三千万円」に引き上げ、補償の改善を図ろうとするものであります。  次に、少年保護事件に係る補償に関する法律案について、その提案趣旨を御説明いたします。  少年が罪を犯した疑いがあること等を理由として刑事訴訟法または少年法規定によりその身体の自由を拘束された場合等において、刑事手続により無罪となった場合等であれば補償対象となるのに対し、家庭裁判所における少年保護事件に関する手続において犯罪その他の非行が認められないことにより不処分等決定を受けても、これに対して補償を行う制度はありませんでした。  これは、少年保護事件に関する手続が専ら少年保護目的として行われる利益処分であること等によるものでありますが、非行が認められなかった場合に、身体の自由の拘束等が結果的には少年にとって理由のない不利益を与えたこととなることは否定しがたいところでありますので、このような場合に、刑事手続におけると同様、不利益を受けた少年に対し身体の自由の拘束等による補償を行うこととするため、この法律案提出することとした次第であります。  この法律案の要点は、以下のとおりであります。  その一は、補償要件についてでありますが、非行が認められないことにより、審判開始決定、不処分決定または保護処分取消決定等を受けた少年等が、当該非行に関して身体の自由の拘束または没取を受けた場合に、補償をすることとしております。  その二は、補償をしないことができる場合についてでありますが、補償要件を満たしても、本人審判を誤らせる目的で虚偽の自白をしたこと等により身体の自由の拘束等が行われた場合、身体の自由の拘束が他の非行によって基礎づけられる場合、本人補償を辞退している場合その他補償必要性を失わせまたは減殺する特別の事情がある場合には、補償の全部または一部をしないことができることとしております。  その三は、補償内容についてでありますが、身体の自由の拘束による補償については、刑事補償法第四条第一項に定める金額範囲内で相当と認められる額の補償金を交付することとし、没取による補償については、没取した物を返付し、返 付できないときはその物の時価に等しい補償金を交付することとしております。  その四は、補償機関についてでありますが、審判開始決定等をした家庭裁判所補償に関する決定及び補償の払い渡しを行うこととしております。  その五は、特別関係者に対する補償についてでありますが、補償に関する決定を受ける前に本人が死亡した場合においても、本人配偶者、子、父母等本人と生計を同じくしていたものまたは少年法第二条第二項に規定する保護者であった者に、本人が生存していたとしたならば受けたものと認められる補償同一補償をすることができることとしております。  その他所要の規定の整備を行うこととしております。  以上が、刑事補償法の一部を改正する法律案及び少年保護事件に係る補償に関する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  6. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これにて両案の趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仙谷由人君。
  8. 仙谷由人

    仙谷委員 両法案を審議させていただくわけでございますが、私個人といたしまして、あるいは日本社会党といたしましても、基本的には両法案の前進といいますか、子供のあるいは少年人権保障について前向きな内容を評価するものでございます。そういう前提の上で、数点お伺いをしてまいりたいと思います。     〔委員長退席星野委員長代理着席〕  宮澤総理生活大国というふうなスローガンを掲げていらっしゃるわけでございますが、何といいましても、日本に求められているものは、その生活の中でも人権の尊重というものをいかに具体化、実体化していくか、そのことだろうと思います。そして、私どもが公平な裁判を受ける権利がどれだけ保障されるのかという問題が、やはりそこにかかわってくるわけでございます。  その中で、本法案いずれも憲法四十条との関係身体自由の拘束、つまり司法手続の中での身体自由の拘束が結果として間違いである、あるいは結果として抑留、拘禁すべきでなかった場合に補償をしなければならない。これは国際人権の流れとも軌を一にする憲法上の規定でございますが、それを少年事件についても実体をつくろうとする試みであろうと私は考えておるわけでございます。  そこで、趣旨は今法律案提案理由ということで御説明をいただきました。今回こういう法案をつくるに至ったきっかけといいますか、大きな要因は何であったのか、まず御説明をいただきたいと存じます。
  9. 濱邦久

    濱政府委員 お答えいたします。  先ほど提案理由説明でも申し上げましたけれども、一般の刑事裁判手続において無罪裁判が行われた場合、あるいは罪を犯さなかったものとして不起訴処分に付された場合でありますれば、少年犯罪の嫌疑によってその身体の自由を拘束された場合におきまして、今委員仰せのように、結果として、理由のなかった身体の自由の拘束等に対しまして刑事補償または被疑者補償対象として補償がなされるわけでございますが、家庭裁判所における少年保護事件手続におきましては、犯罪事実が認められないということで不処分等決定を受けましても、これに対して補償を行う制度はこれまでなかったわけでございます。そういう意味で、この刑事補償あるいは被疑者補償との均衡から申しましても、身体の自由の拘束を受けた少年に対して補償を行う必要があるということは以前からその必要が指摘されていたわけでございます。  そういう状況でありますとともに、昨年三月二十九日の最高裁の第三小法廷の決定がございまして、その最高裁決定意見の中で、立法論としてこのような少年保護事件手続における補償制度というものを設けることが望ましいという意見が付されたわけでございます。そのようなことも踏まえまして、今回、少年保護事件手続における補償制度というものを立法化したいというふうに考えるようになった次第でございます。
  10. 仙谷由人

    仙谷委員 法務省でも外務省でも結構なんですが、この最高裁判決を契機として少年保護事件についても、非行事実なしという理由による不処分審判開始については身柄拘束に対する補償をしなければならない、こういうことで本法案の作成、提出が行われたということなんでありますけれども、これは現時点で日本も締結をしております国際人権規約B規約の九条五項との関係ではどういうふうに理解をしたらいいのでございましょうか。法務省でも外務省でも結構でございます。
  11. 吉澤裕

    吉澤説明員 御指摘のとおり、人権規約の九条五項は「違法に逮捕され又は抑留された者は、賠償を受ける権利を有する。」というふうに規定されておりますけれども、この九条五項の規定が、今問題になっておりますような少年保護に基づきます家事審判手続につきましても賠償を受ける権利ということまで規定したものであるというふうには当然には考えられないのではないかというふうに思っております。
  12. 仙谷由人

    仙谷委員 憲法規定との関係もございますし、この最高裁判決についてお伺いをいたすわけですが、今刑事局長がおっしゃった園部裁判官意見というのは、基本的には憲法四十条の規定、つまり無罪裁判というこの概念は、必ずしも刑事司法手続による無罪判決終局判決としての無罪判決だけではないんだ、そういう趣旨なんだということがまず前提にあるわけですね。  それから、先ほど私が申し上げた国際人権規約B規約九条五項「違法に逮捕され又は抑留された者」というのは、この「違法に」というのは手続的に違法だ、つまり何らの手続をとられなくて逮捕抑留された者というのにとどまらずに、やはり結果として逮捕抑留逮捕勾留手続が違法であったという場合も含むんだというのが常識的な解釈じゃないかと私は思うんですね。外務省が今こういうわけでもないという否定否定の表現を使われますと、ちょっとわけがわからなくなるわけでありますけれども法務省としては、この国際人権規約B規約の九条五項、これと今回のこの少年保護事件に関する補償というもの、そして先ほど園部裁判官意見を挙げられましたけれども園部さんが前提的な事実としております無罪裁判についての解釈、これについてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
  13. 濱邦久

    濱政府委員 まず条約の関係につきましては、先ほど外務省御当局からお答えになられたところと同じような考え方を私どもはしているわけでございます。  今回のこの少年補償制度につきましては、先ほど委員が御指摘になられました憲法四十条との関係につきましても、この憲法四十条の言っておりますのは「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。」という規定でございますので、現行刑事補償は、先ほど申し上げましたように、刑事裁判手続において無罪裁判を受けたときの刑事補償につきましてはまさしくこの憲法の四十条から発するものということで理解しているわけでございますが、今回御提案申し上げております少年補償制度につきましては、これは、先ほど委員指摘最高裁決定の多数意見の中でも判示されておりますように、憲法規定そのものに基づくものではなくして、もちろん憲法の四十条の趣旨をさらに進めるという趣旨制度ではございますけれども憲法四十条の規定から発する刑事補償そのものとは異なるものである。そういう意味では、今申しましたように、今回御提案申し上げている少年補償制 度は刑事補償法に基づく刑事補償とは異なるものであるというふうに理解いたしております。
  14. 仙谷由人

    仙谷委員 論理展開を逆さまにされますと、そういう言い方になるのですね。私が聞いておるのは、少年保護事件において非行事実なしということで不処分審判開始になった者というのは、憲法四十条に言う無罪裁判を受けた者というふうに言うべきではないか、言えるのではないか、あるいは人権規約との関係でいえば、違法に逮捕されまたは抑留された者というふうに言うべきではないか、こういうふうに聞いておるわけです。というのは、そのことが多分この補償法との関係でも、本人の有する請求権といいますか権利性といいますか、補償を請求する権利なのか、恩恵として与えられるようなものなのか、ここにかかわってくるんではないだろうか、こういうふうに考えるから聞いておるわけでございます。  では、これはどういうふうに解釈したらいいのでしょうか。刑事補償法の二十五条に、免訴もしくは公訴棄却になった場合には、そして実質的にそれがいわば無罪と同じように事実がなくて免訴または公訴棄却になった場合には要するに憲法四十条に言う無罪裁判を受けた者とみなすのか、あるいは憲法上の無罪裁判を受けた者の中に、その上位置念の中にこの二十五条の免訴もしくは公訴棄却判決を受けた者も含まれるというふうに解釈していいのかどうか、それはいかがですか。
  15. 濱邦久

    濱政府委員 今委員お尋ねの前段の関係でございますけれども憲法四十条さらには刑事補償法で定めておりますところの刑事補償と申しますのは、これは委員案内のとおり、国家機関故意過失を問わずに、先ほど委員御自身も申されましたように、遺法に身柄拘束が行われた者について結果的に無罪裁判があった、結果的に理由のなかった不利益について補償をしよう、しかもその補償につきましては、今申しましたように、国家機関故意過失を問わないで簡易迅速にと申しますか、標準的な金額補償を速やかに行うという趣旨制度として認められているわけでございます。  むしろ、国家機関故意過失に基づく違法な行為によって損害を国民に与えた場合の賠償につきましては、これは憲法の十七条で定めておりますところの国家賠償ということで賠償しようという、憲法もそういう建前をとっておりますし、刑事補償法もそういう趣旨からでき上がっているものというふうに理解しているわけでございます。その刑事補償法刑事補償請求権という形で権利性を認めるかどうかということと今の国家機関故意過失のある場合に賠償を認めるかどうかということとは必ずしも重なるものではないであろうというふうに思うわけでございます。
  16. 仙谷由人

    仙谷委員 後段の方は。
  17. 濱邦久

    濱政府委員 後段は……。ちょっと恐れ入ります。
  18. 仙谷由人

    仙谷委員 余り法律論争をしてもしょうがないような気もするのでありますけれども、事は本法案にやや不十分な点があるのじゃないかというところに関係をいたしますのでお伺いをしておるわけでございます。  先ほどお伺いしたのは、園部意見憲法四十条の解釈園部裁判官意見きっかけにして本法案をつくらなければいけない、こういうことになったのじゃないかと私もそんたくをしてお伺いをしておるわけでありますけれども一つ憲法四十条と少年保護事件関係を聞いたわけですね。それからもう一つは、人権規約上の問題として違法に逮捕されまたは抑留された者、つまり上位置念にそういうものがあって、その具体的な構成要件といいますか概念としてこれは入ってくるのじゃなかろうか。その一つの例証として、刑事補償法二十五条による公訴棄却免訴判決を受けた者というのは憲法四十条の無罪裁判を受けた者のうちの一つではないでしょうかということをお伺いしたわけです。
  19. 濱邦久

    濱政府委員 どうも失礼いたしました。  先ほどの後段の質問に対するお答えを落としておりましたけれども、今委員指摘刑事補償法二十五条が規定しておりますところの補償は、公訴棄却または免訴裁判がなければ無罪裁判まで行きついたであろうと考えられるような事案についての補償を定めているわけでございますけれども、これは理解としては、憲法四十条が定めているのはあくまで無罪裁判があった場合の補償を定めているのであって、今の刑事補償法二十五条はそういう趣旨を公平という観点からさらに拡大したものであろうと理解すべきものではないかと思うわけでございます。したがいまして、端的に申しますと、憲法四十条で定められておるのはあくまで無罪裁判があった場合の補償についての規定であると考えておるわけでございます。
  20. 仙谷由人

    仙谷委員 これは法律用語で言うと、判決裁判が外延も内包も全く同一かどうかということになってくるんだと思いますけれども、今局長がおっしゃったのは、裁判という言葉は、つまり憲法四十条の裁判という用語刑事訴訟手続による無罪判決と限定されるべきだということに私は聞こえたんですね。つまり、公訴棄却判決無罪判決ではないというのは、これは厳密に言えばそういうことになるはずでございます。ところが、刑事補償法二十五条によって、この部分についても補償を受ける対象としてちゃんと含まれておるわけです。そうですね。だから、法律的に、実質的に無罪裁判と考えれば、この少年保護事件だって憲法四十条の無罪裁判を受けたという場合に含まれるのじゃないかという解釈が成り立つのではないか。多分園部さんの意見というのはそういうところを踏まえておるんではないだろうか、私はそう考えるから聞いておるわけでございます。  いずれにしても、この憲法の精神の趣旨を実体化する、そのことがこの法案の骨子だと思います。それは刑事訴訟手続じゃなくて、身柄拘束をして、ある意味での刑法的、あるいは非行というふうな言葉であらわされておりますけれども刑法的犯罪あるいは刑法犯罪も含めて審理をしていく、こういう過程が現実の家庭裁判所手続の中ではあるわけでございますので、そこで身柄拘束をしたことが結果として間違いであれば補償をする。しなければ均衡を欠く、あるいは人権侵害をそのまま放置してしまう、こういうことになるからこういう問題が出てきておるんだと思いますね。  そこで、お伺いをするわけですが、本法案、これは全く本人請求権といいますか、請求的な事柄が書かれていないわけでございますが、その辺はどういうふうに理解したらよろしいんでしょうか。つまり、家庭裁判所裁判官の善意にすべて頼っておれば決定を出していただけるということでいいんだろうか。つまり、職権であっても、職権発動を促す何らかの規定というものがあった方が望ましいといいますか、法案としてもいいのではないかという解釈も成り立つと思うのですが、いかがでございますか。
  21. 濱邦久

    濱政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、少年補償についてどのような構成をとるかということは専ら立法政策の問題であるというふうに考えているわけでございます。少年補償目的さらにはそのよって立つ少年審判手続目的あるいは性格を考慮して決定すべき事柄であると基本的には思うわけでございます。現行少年法の枠組みを前提にして考えております少年補償制度につきましては、家庭裁判所職権による制度とするのが相当であるという考え方でできているわけでございます。  その理由を少し説明させていただくわけでございますが、一つには、現行少年審判手続はもともと専ら少年保護目的としておるわけであると理解しているわけでございまして、例えて申しますと、国家保護を要する少年の親というふうにとらえる国親思想のもとに家庭裁判所専権的職権主義構造を採用しているというふうに基本的に理解しているわけでございます。その手続において非行なしというふうに判断された者に対する補償につきましても職権によることとするのが制 度として一貫するということが一つでございます。  それから、二つ目理由としましては、これを逆の言い方をいたしますと、請求権というふうに構成するためにはその要件である非行なしの判断がより客観化される必要があるというふうに考えるわけでございまして、例えば非行認定手続を整備した上で非行なしの場合になすべき決定を創設して、あるいは非行ありの認定自体に対して不服申し立ての道を設ける、さらには非行の存在を前提とする保護処分決定に対しても処分終了後の再審を設けることとか、そのような点をもあわせて検討することが不可欠であろうというふうに考えているわけでございます。これらの点につきましては、委員も御案内のとおり、少年法改正の中であわせて論議すべき事柄ではなかろうかというふうに考えているわけでございまして、今回のこの少年補償制度はあくまでも現行少年審判手続前提としたものであるということが二つ目理由でございます。  それから、先ほど委員指摘になられました職権発動を求めることもできないのかという御趣旨でございましたけれども、もちろん家庭裁判所職権で判断するというか、職権によって行う補償制度でございますけれども、形はどういう形であれ一家庭裁判所職権による制度として構成しておるものでありますから、その職権発動を促すということ自体は、それは一般的に可能なことであろうというふうに思うわけでございます。
  22. 仙谷由人

    仙谷委員 裁判所が三十日以内に独自に決定をしなければならないというふうになっているわけですね。そうしますと、そんなことはないとおっしゃるかもわかりませんけれども看過をして三十日徒過した、本来はこれは補償すべき場合であったのではないだろうかというふうな疑問が出てくるような事案。続いてお伺いするわけですが、不服申し立て権というのも当然のことながらない。つまりこの規定によりますと、決定があるかないかについても何らかの不服の申し立て方というのも権利としてはないわけですね。それから、不服をもし申したとしても、応答義務もないことになっておりますね。そうなりますと、そういう看過とか徒過とかという場合にはどうなるのでございましょうか。
  23. 濱邦久

    濱政府委員 請求権として少年補償制度構成すべきであるという御意見については、今委員が御指摘のように、抗告等による不服申し立てをあわせて認めるべきであるというお考えがやはり基本にあるのではないかと思うわけでございます。不服申し立て制度を認めるかどうかということにつきましては、これは、一つには、現行少年審判手続におきましては、先ほど申し上げましたように、家庭裁判所が専権的な判断機関として位置づけられておるわけでございまして、保護処分決定を除きまして、一定程度少年不利益を及ぼすような処分に対しましても抗告は認められていないわけでございまして、このことと一貫しないというふうに理解しているわけでございます。  それから、二つには、非行ありの認定に対する抗告を認めないまま非行なしの判断がなされた場合の補償の要否あるいは程度についてだけ抗告を認めるということはこれまた一貫しないというような考え方になるわけでございまして、このような問題がございまして、抗告等による不服申し立て権ということを認めることは相当ではないという考え方をしているわけでございます。  そもそも一般的に判断能力が成熟している成年と異なりまして、少年審判対象となる少年は一般的には判断能力が未熟である、それを補う保護的環境の整備されていない者も少なくないから、請求権ということで構成するよりも、少年の後見的機関として位置づけられている家庭裁判所補償の要否、程度の判断をゆだねて、少年の申し出、による再度の考案の余地を認めるというこの法案の行き方の方がかえって少年保護にかなうものではないかというふうに考えたわけでございます。  いずれにしましても、刑事補償及び被疑者補償制度のある意味ではギャップを埋め、身体拘束を受けた後に非行なしの判断を受けた少年保護するという建前の少年補償という制度でございますので、職権構成によって十分達成できるものである。従来、少年審判手続につきましては家庭裁判所職権によって健全なその裁量によって少年審判手続を運営するという信頼の上に立って設けられている制度であるというふうに基本的に理解しているわけでございます。     〔星野委員長代理退席、委員長着席〕
  24. 仙谷由人

    仙谷委員 保護対象ということを非常に重視されておっしゃられておるわけでございますが、また後にも聞きますけれども、現実には、しかしこの種の案件が発生する場合というのは、弁護士付添人がついて問題点を指摘し、そして非行事実なしということに至るケースの方が圧倒的に多いのじゃないかというふうに経験的には感じるのです。そうだとすると、国親が上から下まで面倒を見るという発想、それはそれであってもいいのですよ。けれども、それに加えて、やはりもう少し、基本的に申し立て、応答という関係はつくった方がいいのではなかろうか。それは次の次にお伺いする費用補償との関係でも、どうもそこのところが、制度の論理的な一貫性を求める余り実質的な権利救済といいますか、その部分が不十分なのではないだろうかということを強く感じるわけでございます。  ちょっと消化不良でありますけれども、次に進みます。  そもそもこの刑事補償法がつくられたときには、いわゆる第二次世界大戦前の旧法との関係もあり、あるいは刑法体系も部分的に変わったということもあって、遡及効が刑事補償法には規定をされておるようでございます。簡単で結構ですから、その部分を御説明いただきたいと思います。
  25. 濱邦久

    濱政府委員 確かに委員指摘のとおり、現行刑事補償法が新たに制定されましたときには、新憲法の施行時まで遡及して適用を認めるということにされたと理解いたしております。  その趣旨を考えまするに、今委員も御指摘になられましたように、旧刑事補償法のもとでの補償制度と申しますのは国家の恩恵的補償という考え方でございまして、基本的に新憲法のもとで制定されました現行刑事補償法とは異なるものであったというふうに理解しているわけでございまして、現行刑事補償法は新憲法人権の保障ということを進める趣旨権利性を認める制度としてつくられたものというふうに理解するわけでございます。したがいまして、当時としては、根本的に異なる制度をつくるということから、少なくとも新憲法の施行時まではさかのぼらせた方がいいという趣旨でそういう手当てをしたのだというふうに理解しているわけでございます。
  26. 仙谷由人

    仙谷委員 論理的には私はこれから聞くお答えになっているのじゃないかと思いますが、本法案、つまり少年保護事件に係る補償に関する法律では遡及というのは一切認めてないわけです。  例えば、現時点で保護処分が出ようとしている、出ておる。そして、この要件に該当するような処分が出た場合でも、本法が施行された後に保護処分を受けた者じゃないとこの補償を受けられない、こういうことになるわけでございますね。その辺は、遡及の規定というのをこの種の権利救済的法案というのはやはり持つべきではないだろうかと私は考えるのでございますが、いかがでございますか。
  27. 濱邦久

    濱政府委員 まず、御審議いただいている少年補償法案の附則におきましては、この法律の施行後に第二条に規定する決定、すなわちその不開始決定あるいは不処分決定があった保護事件に係る身体の自由の拘束又は没取について適用するということにしているわけでございます。それで、なぜその遡及適用を認めないのかという御趣旨の御質問であろうと思うわけでございます。  もちろん、これも遡及適用を認めるかどうかということ自体は専ら立法政策の問題であると考えるわけでございまして、第一に、実質的には旧刑事補償法の全面改正でございました現行刑事補償法の例、これは先ほど委員が御指摘になったと ころでございますが、この場合を除きまして、例えば証人等の被害についての給付に関する法律による給付あるいは犯罪被害者等給付金支給法による支給等、比較的近似する制度につきましていずれも遡及適用を認めていないということが一つ。  それから第二に、遡及適用を認めるといたしますと、少年法が施行された昭和二十四年までさかのぼらせることは、審判記録の存在とか家庭裁判所手続負担の面からおよそ不可能であろうというふうに思うわけでございますが、一万どこかの時点で切らなければならないということになりますと、これはなかなか合理的な説明が難しいと思うわけでございまして、かえって新たな不均衡を生み出すことにもなりかねないというふうに考えるわけでございます。
  28. 仙谷由人

    仙谷委員 ちょっとお伺いすることを変えます。  補償をしないことができる場合として、「本人補償を辞退しているときその他補償必要性を失わせ又は減殺する特別の事情があるとき。」という規定がございます。これは先ほどの不服申し立て等々の権限といいますか権利といいますかやり方とも関連すると思うのですが、つまり職権で記録だけを見て家庭裁判所裁判官決定を行うというイメージにどうしてもなるわけです。その場合に本人を呼んで、君、君、もうこれ要らないだろうというふうな話に、つまり一切外には見えないところで本人の意思確認がされるおそれが十二分にあるのじゃなかろうか、こういうことを考えるのです。あるいはもっと言えば、警察の少年係の人がそういうことを慫慂に行く可能性も全くなきにしもあらずだと私は経験上思うのです。  そういう本人の辞退というのをここへ書いてあるわけでございますけれども、先ほどおっしゃられたように、つまりその意思表示の問題として、要保護的なものが対象者であるという前提を置いて保護をするから家庭裁判所独自でいいのだ、こういうふうにおっしゃられるわけですが、今度はいわば利害が相反するのではないかと思われる家庭裁判所の方が辞退の意思があるかないかを判断する、これはまたいかがなものだろうかなという思いにとらわれるわけでございます。ここで辞退の意思が真意に出たものかどうなのか何で担保するんでしょうかということをお伺いしたいわけであります。
  29. 濱邦久

    濱政府委員 今委員指摘のように、第三条で、補償の全部又は一部をしないことができる場合の一つの事由として「本人補償を辞退しているとき」というふうに規定されているわけでございます。  この点につきましては、まずその補償の辞退があったからということで直ちに補償の全部または一部をしないことができるというわけではなくて、家庭裁判所の健全な裁量によって補償の全部または一部をしないことができるということでございますから、少年法におけると同様に、この少年補償法案につきましても家庭裁判所は十分な後見的機能を発揮すべきことが予定されているというふうに言えるわけでございまして、一たん少年補償を辞退する意思を表示したから直ちに補償しない旨の決定をするのではなくて、委員今御指摘になられましたように、少年の判断能力や辞退の理由を十分に考察して、必要に応じて保護者からも意見を求めるなどの措置を講じた上で、補償をするかどうかあるいはその内容を定めるという運用が予定されていると考えるわけでございます。そういう意味少年保護に欠けるところはないと理解しているわけでございます。
  30. 仙谷由人

    仙谷委員 それでは、次に進みます。  この補償法案には付添人あるいは本人の費用の補償の請求というものは入っておりませんね。今の刑事訴訟、刑事補償両体系でも、刑事訴訟費用の請求というのは刑事訴訟法の中へ枝番号がついて入っておって、独立の体系にはなっていないわけでございますけれども、実質的に考えますと、この種の案件は、よく冤罪事件だとかなんとも言われますけれども、まさに付添人及び本人あるいは保護者が相当エネルギーを使って努力をしないとこういう結果にならないという部分も相当あるといいますか、むしろその比重が大きいのではないかと思うのですね。先ほど来のお答えで、大体この費用補償請求は制度の論理的一貫性からとても認められるわけがないという感じでございますので、その点についてはお答えを聞くのを差し控えまして、実質的にこういう非行事実なしという不処分審判開始という結果に至るために弁護士付添人がちゃんとつくべきだろう、ついた方が人権保障といいますか少年権利救済にとってよいというよりも大いに望ましいということになると思うのですね。  そこで、最高裁判所の方にお伺いするわけでありますが、昭和四十七年の十一月に法律扶助協会の方で付添人をつけられるかどうかという照会をなさっておるようでございます。このそもそもの動機といいますか趣旨といいますか、それと、昭和四十七年以降の経緯、今どのくらいの家庭裁判所法律扶助協会の各県支部の間でどういうことが行われているのか、これについてお聞かせをいただきたいと思います。
  31. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 今委員仰せのとおり、少年保護事件の場合には制度上刑事事件の国選弁護人のような制度が現在はございませんが、しかし実際に事件処理をしております場合に、刑事処分または少年院送致が予想されるような重大な事件もございますし、少年非行事実の重要な部分を争っておる事件ということもございます。この種の事件の場合で弁護士である付添人が必要だというふうに感ずる事件は裁判所の側としてもあるわけでございます。  その場合に、少年の家庭が貧困であるというような形で弁護士である付添人の援助が受けられないのは相当ではないであろう、こういうような考え方から、今御指摘がございましたように、昭和四十七年十一月十六日に家庭局長から法律扶助協会長あてに「少年保護事件に対する法律扶助について」という書面をもって、少年保護事件につきまして弁護士である付添人を選任するために法律扶助を与えることができるのかどうかという趣旨の照会をさせていただいたわけでございます。これがきっかけになりまして翌昭和四十八年、まず名古屋の家庭裁判所、弁護士会、法律扶助協会愛知県支部三者の間で協議ができましたし、同時に、同じ年でございますが、東京の場合に、東京家庭裁判所それから法律扶助協会東京都支部とも話ができまして、法律扶助協会による付添人扶助の運用が四十八年から開始された、こういういきさつでございます。その後この趣旨がだんだんと広まってまいりまして、法律扶助協会の受け入れ態勢あるいは弁護士会の受け入れ態勢が整ったところから順次その都度その地区の家庭裁判所との協議をしていただきまして、次第に全国的にその数がふえてきているという状況でございます。  私どもで現在把握している限りでございますけれども、本年の五月一日現在で、全国家庭裁判所五十庁のうち三十八庁でこの付添人扶助制度が実施に移されていると理解しております。また、平成三年度中にこの制度が利用されまして、弁護士である付添人が選任された件数は全国で三百一件であると把握をしております。  以上でございます。
  32. 仙谷由人

    仙谷委員 そもそも付添人がつくかどうかということでございますが、私が持っておる資料が平一成元年までしか入っておりませんが、平成元年ですと、付添人がついておる少年保護事件が〇・六四%、総数で千七百九十五人ということであるようであります。その千七百九十五人のうち弁護士付添人が千六百九十四人、一般の保護事件の総数からいいますと〇・六一ということでございます。わからなければ結構でございますけれども、もし平成二年、三年の数がわかりましたらお示しをいただきたいと思います。  それから、この少年事件の付添人について要するに法律扶助協会と昭和四十七年以降ある種のシステムを運用されてきておるわけでございますが、これについて法律扶助協会の方からの要望とか、あるいは不満ということはないのでしょうけ れども注文とか、そういうことが家庭裁判所、それから法務省人権局になるのでしょうか、つまり資金との関連というようなこともあると思いますが、この点についておわかりになる範囲お答えいただきたいと思います。
  33. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 まず最初の付添人がつく数の点でございますけれども、平成二年度に終局をしました一般保護事件総数の中に占めます付添人がついた事件、全体では千九百七十五件でございまして、この付添人のうち、弁護士である付添人に限って見ますと千八百七十二件ということになっております。  それからまた、法律扶助制度の運用につきまして、いろんな、その都度問題点が出てくる場合にどう対応しておるのか、こういう趣旨の御質問がと存じますが、これは、各地区の家庭裁判所に対して法律扶助協会あるいは弁護士会等から協議の申し入れがあって、それの運用の仕方等について随時協議をするということが一部の庁では現実に行われているというふうに理解をしております。
  34. 仙谷由人

    仙谷委員 法務大臣、ちょっと時間がなくなりましたのでお願いやら希望しておくわけでございますが、今申し上げたとおり、少年事件に付添人がつくパーセンテージ、非常に少ないのですね。ただ、その少ないうちでも弁護士付添人が付添人としてはついている割合が非常に高い、こういうことですね。それから、家庭裁判所の今の答弁でもございましたように、事件の種類によってはやはり弁護士付添人をつけた方がいいという事案があるといいますか、相当数あるのかどうか私よくわかりませんけれども、おる、こういうことですね。先ほどのお答え、平成三年が三百一件、法律扶助による付添人がついておる。全体としては先ほどのお答えからいたしましても、大体千七百件から二千件までの付添人がつく事件のうち三百件ぐらいが法律扶助による付添人がついておるということだろうと思うのですね。  考えますと、私はこれが悪いシステムだとは思いませんし、もっと拡張すべきだと思いますけれども、なぜこうなるかと言いますと、やはり一つは、国選付添人制度というのはもちろん現行制度でないわけであります。つまり、どこかが費用負担をしないと付添人がつかないということがあるわけでございます。現行制度上も、あるいは本質的にも、国選付添人という格好よりも、何かリーガルエイドと言うようでありますけれども法律扶助によって付添人をつけていくというふうなことの方が望ましい結果が、つまり少年と付添人の関係も含めて、望ましい結果が出るのではないだろうかなというふうにも経験上感じたりするわけであります。家庭裁判所の方は、法律扶助というものを使って、資力の問題とかそういう付添人をつけた方がいい事件についてつかない場合に、何とか解決しようということでこういうことをお進めになってきておるのだと思うのですね。  一方で「少年保護事件の支部別実績」というのを法律扶助協会からいただいて、見ますと支部別に物すごく数がばらつきがあるのですね。多分これは財源だと思うのですね。あるいは年度によってもばらつきがありますけれども、先ほど出てきました愛知というのは群を抜いて多いわけであります。取り組みも多いけれども、多分贖罪寄附とか、寄附でお金をつくって、そして弁護士さんの中で熱心な人が多分いらっしゃって、回転しておるのだと思いますね。この制度を、今の法律扶助に関する法務省の、何というのですか、内規とか、法務省的にはいろいろな制約があるようでございますけれども法律扶助制度を拡充強化して、少年保護事件において少年人権保障といいますか権利救済をより充実したものにしていくということについては、法務大臣、いかがでございますか。
  35. 田原隆

    田原国務大臣 先ほど来、委員と私ども刑事局長とのやりとりを聞いておりますと、一方は実体論を大分述べておられるし、一方は法律構造論のような感じがいたしまして、法律の構造上なかなかしかねるということで現在の形になっていると思うのですが、ただ、今おっしゃったように、実体論から見てそういう実態も既にあるし、少年について、簡単に言えば国選の付添人の制度が要るのではないかということであろうというような気がしますが、実体的に見ますと、法律扶助の中の、法律扶助協会が行っているものの中に、国庫補助金によるものとそうでないものとあるわけですが、少年の場合は付添人その他については法律扶助協会自体の財団の金で運用しているということになっているわけですね。そこにもやはりさっきの両論の、両方の構造論の違いがあらわれていると思うのですけれども、ただ、私、少年法のこととか実務は詳しく知りませんが、少年法改正のことについて今勉強はしているわけでありますから、構造全体と関係がかる問題ということは先ほどから申し上げておりますので、全体の改正のときに一緒に考えるべきことではないかなと法務省としては考えている次第であります。     〔委員長退席星野委員長代理着席
  36. 仙谷由人

    仙谷委員 ちょっとお答えになられた視点が違うかと思うのですね。つまり、現行制度の中で、法律扶助協会というものを使って現行制度の中でもやる気があればできるんだというのがまず出発点になっているわけですよ。それを模索してきたのが家庭裁判所だと思う、少年事件については。現在、刑事事件についても、弁護士会が弁護人推薦制度というのをつくったりあるいは当番弁護士制度というものをつくって、現在の国選弁護人は被告人になってから以降しか付されませんから、それ以前の捜査段階での弁護活動を充実してやろう、そのことが冤罪を防ぐ道である、あるいは冤罪でなくてもその人の権利を保障する道であるということでやり始めているわけですね。いずれにしてもその部分については、ある期間とかある回数であれば弁護士の方も奉仕でやるでしょう。やっていらっしゃる方、いっぱいおりますから。特に少年事件の今回問題になったこういう事件を担当されている弁護士さんなんかは、ほとんど持ち出しでやってここまで来ているわけですね。しかし、それがシステムになったら、全部ただということになるとうまくいかないわけですね。そこで、法律扶助制度に対する国のかかわり方の問題になるわけでございます。  現在「法律扶助事業費補助金交付要領」というのが法務省にあるようですね。この交付要領によって、要するに日本の場合には、法律扶助協会に対する国のお金というのは、民事事件の訴訟、民事訴訟の扶助にしか使えないという建前で、今補助金が、何かことしは一億五千万ぐらいですか、微々たるものが補助金として交付されておる、こういうことになっておるわけですね。  ここに法律扶助協会が外国へ行って調べてきた「英国・ドイツの法律扶助」という報告がございます。こういうのを拝見しますと、法律扶助の中でも相当重要視しなければいけないのは、我々は法律相談と言っていますけれども法律上の助言を与えるための財源的な措置、それから刑事事件、我々の感覚からいうと刑事事件のうちの一つ少年事件というのがあるのですけれども少年保護事件、こういうものがあるわけです。これを事件が始まったときから、つまり警察的に言うと捜査に着手されたときから弁護活動あるいは少年事件における弁護的な活動が、付添人の活動が始まらなければいけない。そういう観点で言いますと、日本の場合は法務省が頭を切りかえていただいて、それは刑事的なことも民事的なことも、法律相談にも、刑事事件、少年事件にも法律扶助が行われるような手だてを考えなければ、弁護士と国民のある種の距離間とかそれから料金の問題つまり資力の問題とか、解決できない問題があるのではないかと思います。  ちなみにイギリスというのは、刑事法律扶助だけで日本円で四百二十九億円、当番弁護士制度に百十億二千五百万円と書いてあります。刑事事件の法的な助言、援助に二十八億五千万円という金が使われておるわけでございます。この当番弁護士制度のお金なんかはほぼ一〇〇%国庫の補助金、それから先ほど申し上げました刑事事件、刑事法律扶助というのは九〇%以上が国庫補助であ る、こういうことになっておるわけです。ドイツも三百三十九億円というお金が、これは全事件を通じて扶助がなされておるわけです。扶助に対する国庫あるいは地方政府の助成措置がなされておる、こういうことになっておるわけです。やはりここまでいくべきではなかろうかというふうに私は考えるわけであります。イギリスの場合には、特に刑事事件の被疑者、被告人の場合、給付を受ける人は全国民の六〇%くらいまで給付を受けられる、そういう水準の高さになっておるというのですね。  もっと言いますと、弁護士の経験からいいますと、今の刑事事件で、本当は刑事事件というのは個人が罰せられますから、個人として今の税制が前提になる限り、刑事事件の報酬を払えるという人は私はほとんどいないと思いますね。だから、リクルートの江副さんやロッキードの田中さんがどこからお金を捻出してきておるのか、厳密に言えば私は不思議なんですね。可処分所得がそんなに残るはずがないんですよ、日本は、フローだけからいいますと。だから、ストックがある人がそれを処分して弁護士につき込むというのだったら話はわかりますけれども、フローであれば、それはちょっと大臣も自分の給料と税金の関係をお考えになったら、刑事事件に自分がなったときとかあるいは選挙違反で大量の選挙違反者が出たときにどうするかということを考えて、弁護士に払う着手金、報酬は、これは税金を取られた後の可処分所得だけということになったら、多分弁護士報酬を払えるという人は僕はいないと思うのです。サラリーマンの方々も、非常に厳しいけれども、預金をしておったものとか、何とか取り崩して持ってきていらっしゃるんだと思うのですよ、刑事事件になったら。  だから、そういう前提で考えますと、とりあえずは刑事事件についても法律扶助が出動する、そして資力のある人は資力に応じて返してもらう、こういう法律扶助制度の本来のところに返ってこないと、刑事事件あるいは少年事件、あるいは刑事事件的、民事事件的な法律相談についてのそういうリーガルサービス、本来の意味のリーガルサービスを国民が受けられる実体的な担保がないんじゃないかと思うのですね。そこで、私はこの際思い切って、何か参議院の方では林田悠紀夫議員に法律扶助制度の充実について質問をされたようでございますけれども、頭を切りかえて本当の意味での予算というものをつける、そのためには現在のような財団法人法律扶助協会では困るということならば、やはり法律扶助の法案をつくってそういう法人をつくるということが必要なのではないのかな、こう考えておるわけでございます。  そこで、最後に法務大臣に、たまたまきょう話題になりましたのは少年事件と刑事事件でございますけれども、この法律扶助を私が申し上げたような方向に向けていく、これからますます複雑多様化する社会において、どのような立場の人もどのような階層の人もリーガルサービスがちゃんと受けられるように実体的に保障していくということをお願いしたいわけですが、法務大臣、いかがでございますか。
  37. 田原隆

    田原国務大臣 今の法律扶助の概念からいきますと、国庫補助はおっしゃるような感じでございますし、一億五千万くらいしかないことも事実でございます。しかし、これも徐々に伸びてきておりまして、これを法律できちんとやれとおっしゃる御意見もわからないではありませんが、長年今の方法が定着してきておりまして、前進しておりますが、それなりの国民的合意がないとなかなかできないわけでございまして、おっしゃるようないろいろな話を聞きますと相当専門的な分野がかなりあって私が経験しない分野も結構あるものですから、常識的にわかる分野とそういうものとがごっちゃになりますので、政府委員からまとめて答弁させます。
  38. 篠田省二

    ○篠田政府委員 お答え申し上げます。  先ほど諸外国に比べて我が国の法律扶助の点が非常に貧弱ではないかという御指摘がございましたけれども金額の点からいいますと、確かに委員指摘のとおり非常に大きな差があるわけでございます。しかし、これはいろいろ国の制度全体にかかわる問題でございますので、単純に比較することはできないのではないかというふうに考えております。  それで、現在の法律扶助制度につきましては、昭和三十三年度以降今日まで財団法人法律扶助協会に対する国庫補助という形で行ってきているわけでございますが、現在のところその制度が定着しているというふうに考えております。したがいまして、当面は現行の予算補助という方式によってさらに法律扶助制度の充実発展に努めてまいりたいと考えております。ただ、御指摘のとおり現在の制度は民事の事件に限って法律扶助をやっている、しかも訴訟事件を中心にしているというのが現状でございます。その点についていろいろと範囲を広げたらどうかとか、それから先ほどもお話ございました法律相談につきましても広めるべきではないかというような御意見もございますけれども法務省といたしましては法制定の是非を含め今後とも法律扶助制度について勉強してまいりたい、そういうふうに考えております。
  39. 仙谷由人

    仙谷委員 時間が参りましたので終わりますが、この点は国民からいえば防御権といいますか、あるいは権利の主張を実体的にできるかどうか、それを国の制度、あるいは国の制度そのものではないけれども法律扶助というふうな制度で実体的に保障して。いけるかどうかの話なんですね。局長、単純にその金額を比較できないと言ったけれども、やはり単純に比較しないでも一千五百万と一億五千万というのは、これはちょっといかがなものか。それで、法律扶助協会の人に話を聞きますと、いつも財源の問題が手かせ足かせになって活動が広げられないということが事実のようでございますので、ひとつ法律扶助制度で刑事事件でも民事事件でもあら似る面で国民の権利保護という立場から積極的に取り組んでいただきたいと存じます。終わります。
  40. 星野行男

    星野委員長代理 松原脩雄君。
  41. 松原脩雄

    ○松原委員 まず、刑事補償法関係についてお伺いをいたします。  今回、補償金金額ですが、上限の方は上がったのですが、下限は一日千円で据え置きということになったわけなのですが、これは物価上昇率に合わせて上限を上げたのに下限は据え置きにした、その理由をお伺いしたいと思います。
  42. 濱邦久

    濱政府委員 お答えいたします。  確かに今回の刑事補償法の一部改正をお願いしている法律案の中では、下限の千円というものはそのまま据え置かせていただいているわけでございます。これは、ここ数回の刑事補償法の一部改正の際に、従来そのような取り扱いでお願いしていたわけでございます。その理由と申しますのは、上限につきましては、今委員指摘になられましたように、賃金水準の上昇あるいは物価水準の上昇等を勘案して引き上げさせていただくわけでございますが、下限の千円という金額につきましては、これは事案によりましては下限の千円に近い金額を適用して補償をするという事案もかなりあるわけでございますので、そういう意味でこの千円につきましてはそのまま据え置かせていただいているわけでございます。
  43. 松原脩雄

    ○松原委員 そこで、一般の、死刑以外の今回の補償の伸び率、それから死刑の場合は二千五百万が三千万に上がりました。それの伸び率が少し違うように思うのです。死刑の方が伸び率はちょっと少ないですね。そういう差ができてしまったのはどういうところに理由があるのでしょうか。     〔星野委員長代理退席、鈴木(俊)委員長     代理着席〕
  44. 濱邦久

    濱政府委員 まず、拘禁の補償の部分につきましては、今委員指摘になられましたように上限額を昭和二十五年の刑事補償法制定時にさかのぼりまして、今日までの賃金水準の上昇率とそれから物価水準の上昇率をそれぞれ根拠にいたしまして引き上げ額を算出しでいるわけでございます。  他方、この死刑執行の場合の補償金額二千五百 万円を三千万円に引き上げるという点につきましては、これはもともと死刑執行の場合の補償金額について、拘禁の補償の場合とは異なって端的にどのくらいに引き上げるのが相当なのかという点につきましては、死刑執行の場合の補償の中身と申しますか実体が拘禁補償の日額の場合とはやはり異なるという点が一つあると思うわけでございます。と申しますのは、拘禁補償の日額と申しますのは、これは観念的には拘禁されていたことによって受けた不利益、その中には財産上の損害あるいは精神上の損害いろいろなもろもろの損害が考えられるわけで、そういうものについて標準的な金額補償しようということから、この拘禁補償の日額というものは算定されてくるのだろうと思うわけでございます。  ところが、他方、死刑執行の場合の補償金額と申しますのは、これはあくまで死刑執行を受けた者に対する精神的な損害というか慰謝料というふうに理解すべきものであろうというふうに思われるわけでございます。したがいまして、死刑執行による補償金額を引き上げる場合に、どの程度引き上げるのが相当であるかということについては、必ずしも拘禁補償の日額の引き上げと同じ取り扱いをする必然性はないのではないかというふうに思うわけでございます。  そこで、それでは二千五百万円をどの程度引き上げるのが死刑執行の場合の補償金額の引き上げとしては相当かというような観点から独自に考えますと、例えば交通事故の場合の事故死亡者に対する慰謝料の最高額の推移とかあるいは自動車損害賠償保障法で定めております死亡保険金の金額等を参考に、一応三千万円という金額を相当な金額ではないかということで三千万円の金額が出てきたわけでございまして、そういう意味で拘禁補償の日額の引き上げとはその中身が違うということから、必ずしも同じレベルで引き上げるということにはならないのではないかというのが結論でございます。
  45. 松原脩雄

    ○松原委員 ちょっと御説明が納得できるというどころの御説明ではないように思いますが、一つだけ、補償ですね。仮に死刑が冤罪で誤っていた、後ほど明らかになった場合、もちろん国家賠償という問題が別途立っておると思うのですね。これと国家補償との関係はどういうふうになっているのか、簡単に御説明願います。
  46. 濱邦久

    濱政府委員 この死刑の執行の場合の補償金額がどういうふうに算定されるかというお尋ねだと思うわけでございますが、まず一つは、現行刑事補償法第四条の三項におきまして、先ほどお答え申し上げました死刑の執行による慰謝料に相当する部分が、現行では「二千五百万円以内で裁判所の相当と認める額の補償金を交付する。」というふうに規定されているわけでございます。さらに、その四条の三項のただし書きで「本人の死亡によって生じた財産上の損失額が証明された場合には、補償金の額は、その損失額に二千五百万円を加算した額の範囲内とする。」ということが定められているわけでございまして、現行刑事補償法四条三項のただし書きで、本人の死亡によって生じた財産上の損失額がそれに加算されるということになるわけでございます。  さらに、死刑の執行に至るまでの拘束抑留、拘禁されたことによる損害の補償というのは、今申し上げた事柄とは別に、現行刑事補償法第四条の一項、二項の規定によりまして、現行は一日千円以上九千四百円以下の割合による額の補償金が交付されるということに相なるわけでございます。
  47. 松原脩雄

    ○松原委員 国家賠償との関係が出なかったですが、次の質問に移ります。  少年補償についてでありますが、先ほども仙谷委員から指摘がありました第三条第三号、本人補償を辞退しているときその他の場合には全部または一部を補償しないことができるという規定です。これは刑事補償法と対比してみますと、この三号規定はないのですね。だから、少年だけに特に設けられた規定であるということでありますが、その中で「本人補償を辞退しているとき」ということが問題になってくるのと違うかなと私は思うのです。つまり、本人裁判官に聞かれる、本人が、いや、私はもう補償を請求する意思はありませんというふうに答える、そうすると裁判官が、じゃこの子は補償は必要ないんだなということで補償しないということになるんだろうと思うのですね。  ところが、先ほども出ましたように、少年についてはいわゆる国選付添人のような制度もありません。弁護人がついている例が余り多くない。しかも、少年は大概抑留効果といいますか鑑別所ショックというのがあって、大概の手のつけられないと思われていた子供でもあそこへ抑留された後は大変おとなしい、素直な子になるといいますか、そういう例が非常に多いです、私も実際そういう経験をたくさんしていますから。そうすると、そういうふうな子供の場合は、もう何でもいい、一回抑留されているから権力に頭をたたかれている、早くここから解放されたいというふうな意思があって、何でもいいから迎合して、裁判官に、いや、補償を請求するつもりはありませんというふうなことがたくさん出てき得るんじゃないかと私は思うのですね。そういう意味で、この規定を置いてしまうと少年補償をつけた点が運用上形骸化されていくのではないかと思われるのですが、この点についてはどのように見ておられますでしょうか。
  48. 濱邦久

    濱政府委員 今委員指摘になられましたように、刑事補償法では刑事補償請求権という構成をとっておりまして、請求を待って補償するという形になっておるものでございますから、少年補償の場合とは異なることはやむを得ない。すなわち、少年につきまして、刑事補償法ではない少年本人の辞退の意思があるかどうかということを一つの考慮事項とするということは、少年補償制度において認められる考え方と申しますか、刑事補償の場合とはそこが違うと理解しているわけでございます。少年の後見的機関と考えております家庭裁判所におきまして、少年保護という観点に立って適正な運用をしていくということでこの制度はもちろん考えているわけでございまして、少年保護事件におけるこれまでの家庭裁判所の実績に照らしまして、今委員が御心配になられたような、少年にとって不本意な辞退をさせられるとかいうようなことはないように適正な運用がなされるものと理解しているわけでございます。もともと家庭裁判所の後見的機能を信頼する建前でできているわけでございまして、現行少年法の基本的理念に沿って立法がなされていると理解しているわけでございます。
  49. 松原脩雄

    ○松原委員 今の質問を裁判所の方から、運用上過って少年の意思が抑圧された形で、本心ではない形で運用が形骸化する可能性があるというおそれについて裁判所としてはどういうふうなお考えで対処されるのか、お聞きをしたいと思います。
  50. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 仰せのように、少年事件の場合には、判断能力が不十分であるとか他からの影響を受けやすいというような要素が多分にございますので、そういうような事態がないとは言えないと思っておりますけれども、また、それだからこそ家庭裁判所職権で後見的な機能を果たすように予定された制度ではないかと考えているわけでございます。家庭裁判所裁判官は、もちろん現在の少年保護手続一般につきまして、少年の健全育成を腹に入れて、保護の見地から後見的な作用を果たしておる。その機能の中には、当然福祉的な機能も一つ底流にあるわけでございますけれども、もう一方で司法保障的な機能ということも非常に大事なものとしてあるわけでございます。  今仰せのような点は、まさに家庭裁判所に課せられた司法保障的な機能の面から後見的な配慮をしていくという趣旨であろうと考えております。当然、家庭裁判所にゆだねられた権限として、仰せのような運用の心配はないものと考えております。
  51. 松原脩雄

    ○松原委員 そこでもう一点だけ。補償の要否及びその額について少年に不服の申し立て権を認め たといえば認めていますね。ただし、処分をした原裁判所にのみ一回不服の申し立て権を認めているわけですが、これはどうなんでしょうか、上級裁判所に抗告をするというふうな手続の保障がなぜ今回とられなかったのか、その理由だけちょっと聞かせてください。
  52. 濱邦久

    濱政府委員 現行少年法は、改めて申し上げるまでもなく、刑事司法的なアプローチをとらないで、専ら後見的、福祉的なアプローチを採用して、国を保護を要する少年の親というふうにとらえる国親思想のもとに家庭裁判所専権的職権主義構造を採用しているというふうに理解しているわけでございます。観護措置決定あるいは補導委託を伴う試験観察決定あるいは保護処分を伴わない没取決定など、少年に一定程度不利益を及ぼす処分につきましても抗告を認めておらないわけでございます。現行少年法が唯一抗告を認めておりますのは保護処分決定でございますが、これにつきましても抗告審である高等裁判所はみずから終局決定をすることはできないこととされておるわけでございまして、原決定を取り消す場合は必ず家庭裁判所に差し戻すか移送しなければならないというふうにしているわけでございます。  このような後見的、福祉的アプローチにつきましてはいろいろな御意見はあると思うわけでございますが、現行少年法がそういう建前を前提として、これまで家庭裁判所が果だしてきました後見的機能に照らしますると、上級審に対する不服申し立てを認めないからといって直ちに少年保護に欠けるとは言えないのではないか、少年の申し出による、先ほど委員が御指摘になられました再度の考案の制度を設けることによって補償決定の適正は十分担保されるものであるというふうに考えているわけでございます。
  53. 松原脩雄

    ○松原委員 それで、刑事補償ですが、これは国籍の相違、外国人にももちろん適用があるものでしょうか。
  54. 濱邦久

    濱政府委員 特にその点の制約はないものと理解しております。
  55. 松原脩雄

    ○松原委員 ちょっと質問を変えたいと思います。外国人の労働者問題について少々お伺いをしたいと思います。  日本が多くの外国人労働者を迎える、その趨勢は恐らくこれからもうんと広がっていくであろうというふうに思われます。そういう意味で外国人労働者政策と言われるものは大変重要だ、私はこう思っておるわけです。  そこで、これは新聞報道もなされたわけでありますが、フィリピンから日本に技術者あるいは技術研修、この辺が実ははっきりしないんですが、いずれにしろ技術的能力を持ったフィリピンの青年たち、これらの人々が昨年の八月に現地で化学技術者及び電気技術者の研修生を募集するという広告を見て応募をして、そして日本の会社、これは東京都の江戸川区にある山口精糖株式会社、この会社に雇用をされて、昨年の末に日本に来日して仕事を始めたわけであります。  ところが、それらのフィリピンの青年たちは、当初は技術者として待遇されるあるいは技術研修としてさらに高度な技術を磨くという約束で入ったにもかかわらず、実際与えられた仕事というのは砂糖袋の運搬やこん包、ボイラーのような機械の操作ばかりで、専門家としての研修にはほど遠いいわゆる単純肉体労働と言われる分類になるような労働に従事させられておった。これでは、フィリピン本国の大学で電気工学やあるいは化学、そういう専門教育を受け、現地でもそのエンジニアとしての仕事に携わっておった、しかし非常に高度な技術を持った日本でその技術を磨いて、もう一度本国へ戻ってフィリピンの国の繁栄のために頑張りたい、そういうまじめに技術目的で入ってきた青年たちが普通の単純労働と言われるものに従事させられたということで、会社は約束違反ではないかということで今、労働紛争が起こっております。これはもう実際に裁判所へ仮処分の申請すら出されておる、こういう状況が発生しておるわけであります。  そういう事実関係は既に法務省の方にも申し上げておりますが、本件の場合、フィリピンの青年たちが入国をするに際して、在留資格が「技術」と言われる資格要件で入ってきているわけであります。私この事例を見まずに、「技術」という資格を使って実際は単純労働をさせる、こういう新手の、いわば法の趣旨に反した外国人労働者の受け入れの手法がここで生まれているのではないか、そういう観点から少しこの問題についてお聞きしたいと思うのですが、まず最初に、こういう「技術」の資格で日本に外国人労働者が入ってくる場合、その取り扱いの基準は大体どうなっておるのでしょうか。
  56. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 お答えいたします。  日本で在留するためには入管法に基づく在留資格を得なければいけないわけでございますが、「技術」の在留資格ということに関しましては入管法及び入管法の施行規則、及びその基準等については法務省令であるいわゆる基準省令によって定められております。  「技術」の在留資格といたしましては「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動」というふうに定義されておりまして、その基準といたしましては、日本人と同等以上の月額報酬を受け、それから「従事しようとする業務について、これに必要な技術若しくは知識に係る科目を専攻して大学を卒業し若しくはこれと同等以上の教育を受け又は十年以上の実務経験により、当該技術若しくは知識を修得していること。」ということになっておりまして、在留資格認定証明書交付申請などがございました場合には、これら在留資格該当性や基準の適合性などを審査しまして、それで認定証明書を発給しておる、こういう仕組みになっております。
  57. 松原脩雄

    ○松原委員 つまりいわゆる大卒である、高い知識がある、それから受け入れる場合でも日本の技術者と同等以上の待遇でなきゃならぬ、大体こうなっていますよね、メーンは。そういう意味では、認定するにはいわば相当限定されるだろうと私は思うのですよ。  ついでに、別途でよく出てくるのは「研修」。在留資格による「研修」ですね。「研修」の場合も実に細かい、非常に細かい規定があって、本当に研修目的が担保されるようなものでないと受け入れないということも、実際法務省では決めておられますね。  そこで、その「研修」の場合とちょっと比較しておきたいのですが、この山口精糖という会社は従業員が七十人ぐらいの会社です、七十人の会社。そうすると、もし「研修」で受け入れたとした場合、七十人ぐらいの従業員のおる会社の場合は、在留資格を出すのには何人ほどの研修生の受け入れになっておるのでしょうか。
  58. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 お答えいたします。  「研修」につきましても、入管法及び入管法の施行規則及び基準省令、これは法務省令でございますけれども、によりまして非常に厳格に規定されておりまして、仮に七十名か八十名程度の会社が研修員を受け入れるということになりますと、研修施設とかそういういろいろな条件がございますが、数だけでいいますと二十人に一人ということでございますので、その程度の規模の会社であれば、研修員の受け入れはせいぜい三名から四名というところではないかと思います。
  59. 松原脩雄

    ○松原委員 「研修」の受け入れでいけば三人ないし四人が基準である、ところが本件の場合では、七十人程度の精糖会社で十名の技術者を受け入れる、それについてあなた方の方で在留資格を認めたわけですね。これは、皆さんがその認定をするに際してどのように調査をされたのか、その結果どういう判断を下されたのか、ちょっと説明願えますか。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  60. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 この具体的な例で申し上げますと、雇用主である山口精糖から昨年九月十三日に東京入国管理局に対し申請がございまして、月額二十七万五千円以上の報酬を支払って精糖製造、加工における技術開発の業務に従事させるもので あるとして在留資格認定証明書交付申請がございました。それで、東京入管局といたしましては、規則に従いまして審査した結果、これは適合であるということで、十月三十一日、在留資格、技術一年として在留資格証明書を交付したものでございます。  今先生の御質問は、そういう場合において会社の規模というものはどういうふうに関係してくるのか、あるいはこないのかという御質問でございますが、「技術」の在留資格の基準につきましては、会社等の従業員数に応じて受け入れる外国人の人数を制限するというような取り扱いは行っておりません。しかし、当該会社等における真の活動内容が「理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務」であるか否かがこの「技術」の在留資格該当性の審査のポイントとなるわけでございまして、今回の今先生御指摘の件に関しましては、申請人すなわちこのフィリピンの方ですが、申請人がすべてそのような「技術又は知識を要する業務」につくものと認められましたので、その入国を認めた、こういうことでございます。
  61. 松原脩雄

    ○松原委員 その根拠ですけれども、今聞いていますと、一つは、二十七万五千円と今おっしゃったかな、その報酬が二十七万五千円。恐らく契約書の写しのようなものが提出をされたと思うんですね。報酬金額一つの根拠になっているだろうと思うんです。それからもう一つは、この山口精糖さんというのは、我が社の技術は日本でも東大や京大を卒業した程度の高度な教育を受けた者でないと実はできない仕事なんですといったぐいの説明書等も実際は徴求して審査の判断材料にされたことはありませんか。
  62. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 非常に高度な技術を要するものとして申請があった、それで許可したというふうに承知しております。
  63. 松原脩雄

    ○松原委員 そこで、それ世当然書類審査で終わって、例えばその現地会社に行ってみる、そういうところまでは至らなかったのでしょうか。
  64. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 この場合は現地にまで行って調査しているというところまではやっておらず、書類で審査しただけでございます。
  65. 松原脩雄

    ○松原委員 今この場合とおっしゃったけれども、現地の会社に出向いて調査する場合もあるのでしょうか。
  66. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 原則として書類審査でございますが、必要に応じて、何か調査する必要があると認めたときは現地を調査することもございます。また、更新がございましたときには、いろいろな前の例に照らしまして現地に行って厳密に調査することはございますが、今のような場合は原則として書類審査で行う、こういう慣行にしております。
  67. 松原脩雄

    ○松原委員 こういう技術資格で入ってくる外国人労働者は、一番近いところの数字でいいですけれども、年間では何名ぐらいで、フィリピンからは何名が入ってきますか。
  68. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 平成三年中において在留資格「技術」の資格で新規入国した総数は三千百六十六名でございますが、このうちフィリピン人は二百九十名でございます。
  69. 松原脩雄

    ○松原委員 裁判所に仮処分を申し立てられた例で見ますと、フィリピンの青年たちが入ってくる、入ってきたらすぐに会社側はパスポート及び在留資格認定証明書をいわば預かった、保管をしてしまった、そして返してくれないというのでこの仮処分の申請をしたときに裁判所の主文の中にそれは入ってしまった、パスポートを返してほしいという仮処分申請が出て、その結果裁判官が間に入って和解でパスポートとこれは返したということになっているのです。  これは念のために聞いておきますけれども、外国人がもしパスポートを常時携帯していないと法的にはどうなるのですか。
  70. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 入管法の規定によりまして旅券等は常時携帯する義務がございますので、それを持っていないと義務違反ということになります。
  71. 松原脩雄

    ○松原委員 そこで、そのパスポートを預かっている方については、今おっしゃった入管法の規定で、常時携帯を客観的には妨害する形になるのだけれども、ずばりの法律規定で処罰するような、そういう規定はありますか。
  72. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 入管法上は本人の携帯義務違反ということになりますけれども、その預かった人に関しての規定はございません。
  73. 松原脩雄

    ○松原委員 法律上ずばり預かった者を処罰する、常時携帯の義務をいわば客観的には妨害している形になるのですが、それを処罰する規定はないということはよろしいです、私これ以上は別に聞きません。しかし、いずれにしろ、通常考えてみても、パスポートを預かってしまっている、こんな状態で、いわば労働者をそこに実際上拘束するような間接的な効果が私は出ていると思うのです。  そこで、刑事的な追及という問題とは別に、そういう明らかにパスポートを預かっておるような行為を察知した場合は、何がしかの対処方法というのは入管当局としてはとることはできないのですか。
  74. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、パスポートといいますのは外国人登録証のない方にとっては携帯義務がございますので、そういう携帯義務違反を生じさせるようなことをする雇用主といいますかそういう者に対して、そういうケースが我々でわかった場合は、それは非常に望ましくないことであるというふうに言うということでございます。
  75. 松原脩雄

    ○松原委員 望ましくないのは、そんなのはだれが聞いてもわかるわけですが、いわゆる行政当局の事後措置として、一回在留資格認定をしてしまった、ところがその後、入ってきてパスポートの常時携帯ということがないという状態を察知した場合、皆さん方の方で何がしか打つべき義務なりそういったものはあるのでしょうか、ないのでしょうか。
  76. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 この入管法の規定といいますのは、申請があった場合正直に申請されているという前提で行われているわけでございます。それから、この雇用主と被雇用者との関係がきちっと契約に従って、契約を守り従って行われているということ、それから日本法律を守って行われているという前提でございますので、もしそういうことがあるということでございますと、入管といたしましては考えられる一つの方法としては、次の申請のときあるいは更新のときにこの会社なりそういう雇用主のビへービアといいますか、そういうことをよく考慮に入れて行政的な措置をとっていく、こういうことになるのかと思います。
  77. 松原脩雄

    ○松原委員 書類審査で認定をされたわけですが、恐らく決め手の重要な一つになったのは雇用契約書。月額二千百ドルという雇用契約書が申請書類には出されておると思うのです。しかし、実際は、青年たちに出しておるお金は月額三百ドル、日本円に直すと三万九千円という金額で支給されておったわけです。これは裁判所でも、そのとおりだ、三百ドルを賃金として私は払っておったということを山口精糖自身も認めていますから、事実関係については争いがない。そうしますと、入管当局には二千百ドルという金額、大体日本の技術労働者と同等だということになるためにそういう契約書を出しておった。ところが、実際のフィリピンの青年たちとの間では三百ドル。だから、実際事実関係からいうと、契約書は二通つくられておるのですよ。労働者向けには三百ドル、入管向けには二千百ドルという契約書が実は出されておったわけなのです。  そこで、お聞きしたいのですけれども、そういう二千百ドルという契約書が来て、これが日本の技術労働者と同等だという判断をする基準ですが、それは山口精糖と他の業種との基準で判断されたのか、それとも山口精糖の中の既存の技術労働者の賃金と比べてこれは適正だというふうに判断されたのか、これはどちらで御判断なすったのですか。
  78. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 お答えいたします。  「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額 以上の報酬」ということにつきましては、申請人が就労しようとする当該会社において同じ業務に従事する日本人と同等以上の報酬を受けるか否かを基本として判断しております。ただし、全国的に見まして同種の業務に従事している日本人の平均賃金より明らかに低い報酬で就労しようとする場合にはこの要件に当てはまらないものとして取り扱っております。  さて、今お尋ねの山口精糖の場合でございますが、申請において月額報酬二十七万五千円から三十万円の間において申請人の各自の給与が定められていたということから、この要件に当てはまるというふうに判断したわけでございます。
  79. 松原脩雄

    ○松原委員 ちょっと済みません、それはその山口精糖の既存の技術労働者と比べて適正だと見たのかどうか、そこをもう一回はっきりさせてください。
  80. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 本件の審査に当たりましては、報酬月額が二十七万五千円以上でございまして、大学卒の初任給が今十八万から十九万でございますので、この大学卒の初任給を大幅に上回っております。それで、本件基準を、この法務省令の基準省令を満たすことはもう明らかでございましたので、特に山口精糖の報酬とか全国水準の平均賃金について調べなということではございません。
  81. 松原脩雄

    ○松原委員 判断の基準は今のでわかりました。  そこで、今回の例ですけれども、具体的な例でいきますと、その入管当局に提出した契約書は実際は実態とは全然違うわけです。月額三百ドルだと言っておる。三万九千円ですか、そういう金額になっておる。その点については裁判所の資料を見ても山口精糖からの書類から見ても三百ドル、そのとおり払っていますということで、これは全く争いがない。そうすると、結局入管当局にはいわゆる「技術」の在留資格を取るためにそういう契約書をこしらえて提出したということで、いわば虚偽内容の契約書をつけて在留資格認定をいただいた、こういうふうになるだろうと思うのですよ。そんな場合は入管当局としてはどういう措置、考え方をおとりになるのでしょうか。
  82. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 この件につきましては、先ほどどのような経緯で在留資格認定証明書を交付したかということを申し上げたわけでございますが、三月十日付の新聞におきまして研修目的で入国させ単純労働をさせているというふうに報道されたことがございまして、東京入管局におきまして山口精糖に雇用されたフィリピン人からの事情聴取や会社の実態調査を行った結果、この会社はフィリピン人に対して月額報酬として三百ドル、約三万九千円を支払っているにすぎず、最低賃金法に基づいて決定される最低賃金にも満たない、それで最低賃金法違反の疑いがあるというふうに認めまして、四月十七日、東京入国管理局からその旨を管轄する労働基準監督署及び警察署に通報したところでございます。  さて、それ以外にどういうふうな措置をとるかということでございますが、今私たちといたしましては、この申請は技術ということで申請がございまして、本人と会社の間に実際どういうような契約がなされたかということについては私たちもまた承知しておりませんので、これは今先生おっしゃったとおり裁判で係争中でございますので、その辺は裁判の推移を見守りたいと思いますが、現在のところは、とった措置はそういうことでございます。
  83. 松原脩雄

    ○松原委員 実はこれは山口精糖だけの問題ではなくて、あと二つの会社も関係していた。フィリピンでその募集広告をするときにAYACインターナショナル会社という名前で募集広告を出した。結局採用したのが、山口精糖に十名それから茨城県にある有限会社中郡電機それから株式会社CCSですか、これらに七名、合わせて十七名を、AYACインターナショナルというところを経由して外国人労働者を入れてきた。このAYACというのは、どうも今申し上げた三つの会社の責任者の頭文字をとってできておったらしいということで、これはどうやら相当よく物事をお考えになって組織的にやっておるということもだんだん明らかになってきたわけです。  そこで、今出ました有限会社中郡電機ですけれども、これもまた紛争を起こしています。  ことしの三月に、この中郡電機に働くフィリピン人の青年たちが、水戸労働基準監督署ですか、そこへ、いわゆる単純労働であって技術と全く関係ない仕事をさせられておるということで実は申し立てをしておるようであります。これについて、水戸の労働基準監督署は六月の末までに会社の解決案を提示せよという勧告をしておるということのようでありますが、実際はこれらの青年労働者もことしの七月初めには滞在期間が切れるというところに迫っておるわけで、それに六月末までに解決案を出したということであったら、解決案が出た途端にすぐ帰ってくださいということにもなりかねない話にもなっておるように思うのです。そういう意味では、労働省の方でこの件の事実関係をどの程度まで掌握をされておられるのか、お伺いしたいと思います。
  84. 山中秀樹

    ○山中説明員 先生御指摘の有限会社中郡電機につきましては、平成四年の一月に、フィリピン人の元労働者から賃金不払い等について水戸労働基準監督署に対して申告がなされました。同署におきましては、この申告を受けまして事実関係の調査を行いました。その結果、賃金の不払い等に関し労働基準法違反が認められるということで是正勧告を行っております。  先生御指摘の是正勧告の期日の問題ですが、一般的に私ども労働基準監督機関は、法令違反の是正についてその違反の態様なり難易度等を検討いたしまして、是正をいつまでにやってこいという是正期日を定めて行っております。本件につきましては、先生御指摘のとおり、六月末を目途に是正を行うように勧告いたしました。これについては、この監督署で、当該違反の是正について事案の態様等からある程度の時間を要するということで、そういう判断に基づいて行ったものであります。  本件の処理に当たりましては、今後とも、先生御指摘のように申告人の置かれている立場をも十分考慮いたしまして、可能な限り早期に解決するよう適切な指導に努めたいというふうに考えております。
  85. 松原脩雄

    ○松原委員 ここでも労働争議、紛争状態が生じておって、賃金について是正勧告だ、山口精糖については最低賃金法違反であるという認定で労基署の方に告発されたのですか。
  86. 山中秀樹

    ○山中説明員 私ども、入管当局から通報を受けております。
  87. 松原脩雄

    ○松原委員 大臣にちょっと感想を大まかな話だけでお聞きしたいと思うのですが、きょうも傍聴の方に来ております。それらの方々は、一人はフィリピンのファーイースタン大学の電子工学科、一人はイースト大学の電子工学科、一人はマプア工業専修大学化学工学科、それからナショナル大学化学工学科、こういうところを卒業して、そして日本にまさに技術研修に来た。募集広告を見ていると、技術者オンリーが欲しいのか研修者が欲しいのかどうもわからない、技術研修という言い方、そのような募集広告になっているわけです。  私も彼らに話を聞いてみた。そうしたら、こういう若い青年たちは、フィリピンという国は貧富の格差が大きい、しかしこの国を自分たちの技術や力でもって繁栄するいい国にしたい、そういう気持ちがある。フィリピンから見て日本という国は、敗戦後の日本人がアメリカを見ていたと同じようなイメージで今の日本を見ている。ここには技術があり、そして豊かさがある。ここで高度の技術を習得して国へ戻れば、もちろん自分の再就職にもいいでしょうが、しかし何よりもフィリピンという国全体の豊かさのために非常に役に立つはずだという、いかにも青年らしい気持ちです。敗戦後の我々日本人がこれから国をもう一回立て直さなければならぬと思った、あのときと同じような気持ちを持っておると私は思うのです。そういう技術習得にかけて日本にやってきたフィリピンのこれらの諸君たちをがっかりさせるような単 純労働者として扱うということがあったのでは、この青年たちをこのまま失意の中でフィリピンに戻すということは、日本という国全体にとっても国民にとっても大変大きな損失になると私は思うのですが、その点で大臣の御感想はいかがでしょうか。
  88. 田原隆

    田原国務大臣 今、山口精糖のことからお話しになりましたけれども、山口精糖そのものについては現在係争中でありますので、私がコメントするよりも一般論として、今一般論的な御質問でありましたが、考えてみたいと思うのです。  我が国を取り巻く国際環境や国際的地位は非常に変わってきておりますから、出入国管理の運営というものも大変難しくなってきている。この前の改正入管法のときにいろいろなことを考慮して、結局、技術者は積極的に受け入れるけれども、一般、通常労務者は受け入れないというか慎重に対処するという基本方針を決めて、それに基づいてやってきているわけでありますけれども、ただいまおっしゃったような、これをうまく利用して、労働力不足とかそういうものに資するためにだましていくということは日本の国際的信用を傷つけることが非常に著しいというわけでありまして、これは大変なことだと私も思うのです。したがって、一般的な調査としての事実関係も調べなければいかぬですが、個別の問題としても、事実関係をきちんと調査して、不法に対しては厳正に対処しなければならぬ、こういうふうに考えております。  不法就労も、右から見る場合と左から見るのと両方あると思うのです。観光ビザで来て不法就労するというあれと、技術と称して実は一般労務をさせられておったというのも一種の不法就労ではないかと、私これは全く素人考えですけれども、そういうふうに思うわけでありますので、関係省庁ともよく協議して、外国人の人権にも十分配慮して対処してまいりたい、このように思います。
  89. 松原脩雄

    ○松原委員 今の大臣の御答弁、まさに私もそのとおりだと思うのですよ。  そこで、入管局長にちょっと確認しておきますが、技術ビザで入国される方が年間に三千名強ですね。それで、昨年フィリピンからは年間大体二百九十人という形で入国されている。そういう意味で、今まで研修目的というのがかなり、いわゆる単純労働の需要も満足させながらやるというのが実際のところではないかと私は思うのです。ところが、どうも技術に関するビザでいわゆる単純労働と言われるものを導入してくる新たな手口というか、そういうものの一つの事例として今出てきているんじゃないかと私は思うのですよ。したがって、入管局長、ちょっと要望しておきたいのですが、この山口精糖それから有限会社中郡電機、株式会社CCSの事例、いわば今後の行政措置の問題もありますので、この際徹底的に調査して検討していただきたい。それから、現地のフィリピンで、これらの会社が大体一緒になってやっていると私は思うのですが、いわゆる募集会社をつくっている。AYACインターナショナルカンパニーというものもつくってやっておるようですよ。だから、問題はそういったところの解明まで、入管当局として今後こういう方法を放置しますと私は大変難しくなると思う。  技術労働だといっても、現場へ行ってみて、技術労働なのか単純労働なのかの区分け、限界というのが確かに難しくなる例があるのですよ。例えばの例が鉄筋工ですね。鉄筋工という、簡単に曲げるあれも技術なのかそれとも単純労働なのかと言われたら、どっちかなというふうに実は悩むような場合があると思うのですね。それは技術だという意見もある。しかし、あれは単純労働に区分するという行政上の措置をやっているはずです。そういうふうにして、いわゆる限界例を持ち出されて、「技術」の在留資格でどんどん法が本来目的をしたものを超えていっておる。しかし、これは、初めから観光目的でこちらで働くんだという形で入ってくる外国人労働者と、それこそ大臣おっしゃったように、事例が違うと私は思うのですよ。自分たちは技術を持っているのだ、そういう自負と誇りがある。そのつもりで日本へやってさた。ところが、やらされたのは単純労働だということになれば、大変大きな国際的な信用を失う危険性を持っていると私は思うのです。そういう意味で、今挙げたこの事例について、入管としては徹底的な調査と対応をしていただきたい。そして、それができたら報告をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  90. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 お答えいたします。  技術の在留資格は、先ほど申しましたように「理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動」を予定しているものでございまして、このような専門的技術または知識を要しない業務は排除されるというふうに考えておりますので、単純労働を目的とする案件は当然除外されることになります。  しかしながら、今先生が御指摘になったように、技術という名目で在留資格を獲得させておいて、実際はそれに値しないようなことをやらせるというようなことが起きますと、法の秩序も乱れますし、また我が国の労働マーケットといいますかそういうものの秩序自体も乱れてまじめに法を守っている人が損をする、こういうような状況になりますので、我が国の経済にとっても極めて好ましくございませんし、また先生御指摘のとおり、日本の国際的なイメージ、国際的な立場からいってもこういうことは排除しなければならないというふうに考えておりまして、各申請の審査に当たっては、この点に留意して慎重に十分審査をして、このようなことが起きないように適切に対処してまいりたいと思っております。  今具体的に先生の御指摘になりましたAYACとか中郡というような会社につきましては、これが山口精糖と同一グループといいますか、そういうグループであって、連係して活動しているのではないかという御指摘につきましては、入管当局として実はこういうことは今まで把握しておりませんので、今先生から御指摘ございましたが、現実に本件のようなケースが裁判で係争中であるということもございますので、当局としてもその能力の限り徹底的に調査していきたいというふうに考えているところでございます。裁判中でございますので、裁判の推移というものももちろん十分見きわめる必要はございますが、私たちといたしまして、入管当局として権限のできる範囲内できちっと調査をいたしたい、こういうふうに考えております。
  91. 松原脩雄

    ○松原委員 そこで、本件の場合は書類審査で審査をなさった。恐らく決め手になったのは契約書の報酬額だと私は思っているのですね。ところが、その契約書の報酬が実は内容虚偽であったということになるからこんな問題になっちゃった、こうなるわけです。先ほど原則としては書類審査とおっしゃったけれども、現場に向かって審査するということについて、この新聞によれば「職場に立ち入り調査するのは難しい」というコメントを出した人がおるようですが、実際はどうなんですか。現場調査をすることができる体制に入管が今なっているのかどうか、この辺はどうですか。
  92. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 先ほど申しましたように原則は書類審査でございますが、これは現場で調査した方がいいというような場合には現場にも行きます。しかし、極めて数多い案件を迅速にまた限られた人数で処理するということでございますので、書類で一応きちっとした資格があり、それなりの要件に適合しているということであれば、わざわざ人を派遣して現場を調べるということまでは、行政コスト上からそこまですべてやる必要はないのではないかということで書類審査を原則としているわけでございますが、今後、今のようなケースが起きるのは非常に好ましくないので、できる限りそういうものを察知する能力を蓄積いたしまして、きちっと対応していきたい、こういうふうに考えております。
  93. 田原隆

    田原国務大臣 入管局で入り口から出口まで一〇〇%全部すべてを管理し、それからその後の状態もすべて管理するというのはキャパシティーを超えると私は思うのです。関係各省が所管する部 分がたくさんありますので、これは政府一体となってやる部分が多いと思うので、これは逃げ口上で申しているのではなくて前向きな姿勢で私は申しているのですけれども、そういう意味で、先ほど私の答弁の最後の方で関係省庁と協議しと申し上げたわけでございますので、その辺もよく御理解願いたいと思います。
  94. 松原脩雄

    ○松原委員 そこで、大体想像していただけばわかると思うのですが、彼らの技術者としての力を使うような状態ではないから紛争状態が起こってしまった。私たちに技術労働をさせてほしい、そういう気持ちで来たフィリピンの青年たち。こういう労働紛争も起きましたので、実際こういう会社にはそういう能力はもうないというふうに言って多分いいでしょう。  もう一つは、こういう労働紛争になってしまったわけですから、一種の信頼関係も壊れてしまっている。通常、日本でも、労働紛争が起こった後の雇用関係はなかなか難しいのです。そうだとしますと、結局、彼らは在留資格がたしか一年だったと思うのですが、この問題は裁判所で起こっているけれども、仮にこの問題が解決したとしても、会社との関係で解決したとしても、実際これらの諸君たちは当初日本に入ってきたときの高い目的や意識、動機といったものを全部満たされなくて、このままお帰りくださいとなったら、国際信用を失ったままで帰してしまうということになると私は思うのです。ここを何とか、一つは、新しい就職先で技術等目的を達してもらいたいなという気持ちを普通なら持つだろう。本人たちも持っているのです。一たん入管が外国人労働者を入れた、しかしその後この手の紛争が起こった場合に、きちっと行政でこれに何とかうまく対応できるような仕組み、例えば新しい雇用先を探すとか、こういった悩んでいる外国人青年たちに相談に乗ってやるとか、そういうふうな仕組みのようなものが今現にあるのでしょうか。もしないとしたら、その点のところはどんなふうにお考えになっていますか。
  95. 高橋雅二

    ○高橋政府委員 入管の地方管理官署は、特に東京入管におきましては、相談所はございますけれども、外国人で新しい職場にかわりたいとか、今のような、非常に気の毒なケースかもしれませんが、そういう場合に就職をあっせんするというところまでは、そのような仕組みもそういうこともやっておりません。ただ、いろいろ相談に応ずるということは、資格の切りかえとか、そういうことはございます。
  96. 松原脩雄

    ○松原委員 大臣にお聞きしたいのですけれども、それは行政当局自身がなくても、適切な第三者機関なりそういったものも、しかも法務省だけでなくてまさに関係各省庁ということになるだろうと私は思うのですが、何がしかこの手の紛争――外国人労働者問題は今後は大変重要な問題になると思うのです。日本で高齢社会に行きますから、しかも一・五人の出生率という点からしまして、日本の今後の場合、外国人労働者にその労働を多く依存するということは不可避的な趨勢だと私は思うのです。そして、うまくいけばよろしい。しかし、どこかにこういう不心得者がおって紛争が発生する。事紛争が一回発生すると国際問題になりかねないわけですから、そういう点からして何がしか、こういうふうな紛争が起きたときに政府なり、第三者機関というのか、そういうふうな方法でそういった受け皿を検討していくということは今考えられないものでしょうか、いかがでしょうか。
  97. 田原隆

    田原国務大臣 今受け皿があるかどうか詳しく承知しておりませんけれども、各省の連絡会議が相当細かく詰めるシステムになっておりますし、それから自民党といたしましても、外国人労働者の問題について、各部会の幹部が組織して、最近相当活発にやっておるようでありますが、恐らく各党も同じようなことでおられると思います。そこで、先生のお考えは非常によくわかる考えでありますので、勉強させていただく時間をお与えいただきたいと思います。
  98. 松原脩雄

    ○松原委員 時間が参りましたので、どうもありがとうございました。
  99. 浜田卓二郎

    浜田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十九分開議
  100. 田辺広雄

    ○田辺(広)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。谷村啓介君。
  101. 谷村啓介

    ○谷村委員 午前中、仙谷委員、松原委員の方から刑事補償法、さらに少年刑事補償法について細々とした質問がございました。したがいまして、私の方は、刑事補償法と将来非常に関係が深くなるであろうと思っております石川一雄さんの問題について質問を逐次出しておきたいというふうに思うのであります。  まず、この問題の過去の委員会あるいは本会議等の質問をずっと精査といいますかいろいろと調べてみますと、たくさんの関係資料といいますか、そんなものがございます。やや古いものもございますが、そういった問題を取り上げながらの質問に入りたいと思います。  まず、現在千葉の刑務所でございますけれども、石川一雄さんの健康状況あるいは所内におけるその他の状況、そういった問題についてお尋ねしたいと思います。
  102. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 石川受刑者は、現在千葉刑務所におきまして、昼間は施設内の洗濯工場において洗濯夫兼補綴夫として就業し、夜間は個室において読書などを行う規則正しい生活を持続しておりまして、健康状態も良好で、処遇上特段の問題は生じていないというふうに理解しております。
  103. 谷村啓介

    ○谷村委員 私も先々月末の三十日とそれから先月の六日に千葉刑務所へ参りました。その際にも、同じように所長の方から、ただいま御報告がございましたようなことをお聞きしたのであります。とりわけその際耳に残りましたのは、私どももぜひ本人に面会をしたい、こういうふうに思いまして参りました。しかしながら、それは実現できませんでしたが、その理由は、今おっしゃったような洗濯の仕事等に従事しておるので、したがって例えば十分間の面会にしても他の仲間に迷惑をかける、こういうことがその理由のようでございまして、私も大変考えさせられましたけれども、それから推してみましても、受刑態度といいますか、そういったものの一端がうかがえるようでございました。そういう感想を持って実は帰ったわけでございますが、その問題はそこまでにいたしておきたいと思います。  まず、具体的な質問に入るわけでございますが、一九八二年に日弁連の当時の会長の山本忠義さんという方から「千葉刑務所在監石川一雄の仮出獄について(要望)」という書面が提出をされておるのであります。これは提出先は関東地方更生保護委員会、さらに千葉刑務所、こういうふうになっておるわけであります。そして、その中身を見ますと、現在もいろいろな議会で質問あるいは答弁がなされておりますけれども、そういうものの原点に近いような、私どもの主張と大変似通っておりますけれども、そういうものが読み取れるのであります。その第二を見ますと、当時はまだ十年に至っておりません、まだ確定後五年ということでございますから、その問題に焦点を当てながら未決勾留日数という問題を取り上げられて、「実務の取扱いは、未決勾留日数の通算を無視し、確定後、現実に一〇年を服役したあとでなければ、仮釈放を許さないが、これは誤れる解釈・運用である。」というふうに、弁護士会の方の主張が前提になっておるわけであります。  そこで、簡単に言いますと、五年経過した時点ではありましたけれども、そういうことを考えると、もうその時点で仮釈放の期間的な要件は備えておるということで、関係地方委員会に通告をしなければならぬという点を取り上げておるわけであります。その後、仮出獄の要件としての「改悛ノ状アルトキ」ということについての弁護士会の見解をるる四点挙げて述べておられるわけでございます。こういう内容の要望でございますが、そ の趣旨についてどのようにお考えか、まずお伺いいたしておきたいと思います。
  104. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 刑法二十八条の解釈の問題は必ずしも私の所管ではございませんけれども、矯正で考えている取り扱いというのは、刑法二十八条に無期受刑者の仮出獄の要件として、改悛の状があるときは無期刑については十年を経過したる後仮出獄を許すことを得と規定しておりますので、私どもの取り扱いといたしましては、無期刑の言い渡しを受けた者は現実に刑の執行を十年間受けた段階でなければ、すなわち刑の執行開始の日から十年を経過しなければ刑法所定の仮出獄の形式的要件が充足しない、ですからそれを経過して初めて仮出獄の要件が満たされるというふうな取り扱いで運用しております。
  105. 谷村啓介

    ○谷村委員 この中にも具体的にございますが、当時の刑務所長に対して、十年経過したら通告を当然しなければならぬことになっておるわけでございますが、その通告はいっなされたのか、お尋ねしたいと思うのであります。
  106. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 犯罪者予防更生法二十八条に基づく通告といたしましては、この石川受刑者の場合、石川受刑者が無期懲役の刑の執行開始した起算点から十年の、いわゆる応当日と申しておりますけれども、十年たちました昭和六十二年八月十五日が応当日でございますが、その経過してから遅滞なく数日後、厳密に申しますと八月十八日付でございますが、通告をしております。
  107. 谷村啓介

    ○谷村委員 そこで、先ほど取り上げましたこの弁護士会の主張といったものについて、若干法務省考え方をお尋ねしておきたいと思うわけであります。  御承知のように、一九六一年に改正刑法準備草案というものが出されております。そしてまた、それを受けて一九七四年ですか、改正刑法草案というのが出されておるわけであります。この中をじっと見ますと、仮釈放について、準備草案の方では、従来の考え方を変えて新しい考え方をなさっておる。こういう点が第八十八条「仮釈放の要件」の中にあるわけであります。ちなみに読んでみますと、「従来、この制度は、一応刑の改善的目的を達した者に対して、刑の執行を続けることは無用であるという観点とか、仮釈放を受刑者に対する恩恵として許すという思想から、仮釈放の要件として、一定期間の経過のほかには、受刑者の改心の情を唯一のものとしていたが、本案は、仮釈放制度を法的にはともかくも、事実上は刑事施設外における刑の執行の一態様としてみようとする立場をもとり入れて、仮釈放の要件として、改心の情のほかに、刑事施設内において拘禁して刑の執行をするよりもこれを中止して社会生活を通じて更生を期することがより相当であると認められることを附加した。かような立場は、仮釈放者に対する保護観察を必然的ならしめるものであるといえる。」こういうふうに、準備草案は仮釈放について非常に前進をした考え方を示していらっしゃるわけでありますが、こういう考え方については法務省当局はいかがお考えか、お尋ねしたいと思うのであります。
  108. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 刑法の改正は私ども矯正の方の所管ではございませんし、またその刑法の改正のことについて矯正がどう考えておるかという御質問であればちょっとお答えしにくいわけでございますが、私どもとすれば、矯正は、現在効力がある法律に従って、忠実にその法律を守って運用をしていかざるを得ないわけでございまして、刑法改正が実現していない段階におきましてその草案の趣旨に沿った運用はなかなかしにくい、つまり現行の刑法のもとでの考え方でしか矯正は運用できない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  109. 谷村啓介

    ○谷村委員 今おっしゃるようなことはわかって質問しておるわけです。もちろん刑法は改正しておらぬわけですから、まだまだこの問題については時間がかかるようでありますけれども、こういう考え方について、私はやはりこういう考え方の方が正しいのではないかと思うわけでありまして、そういう考え方が現にあるわけですから、その考え方についてのお考えをお尋ねしているわけでして、今の法律があるにかかわらずそれについてどうこうという質問をしているわけじゃありませんから、そういう観点でお答え願えればありがたい、こういうふうに思います。
  110. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 刑法の改正についてはいろいろな考え方があると思います。現行の刑法の解釈についてすらいろいろな説があるわけでございますけれども、私ども矯正の立場で、ある考え方についての評価を聞かれても、これは公権解釈をするわけではございませんし、まことに困るわけでございます。ですから、私どもといたしましては、現在の法律に従って、それの有権的な解釈のもとで運用しているというのが精いっぱいのことでございまして、そのある考え方についてどう思うかと聞かれても、それは私どもの公の立場としては申し上げにくいということでございます。
  111. 谷村啓介

    ○谷村委員 矯正局長の答弁はそこまでだろうと思うのです。  次に移りますけれども、そういう考え方が将来刑法を改正する上でいろいろと議論されて、しかもこれは法務省の方がおやりになっている作業でありますから、審議会をつくっておやりになっているわけですから、やはり権威があるといいますか非常に尊重されるべきものだと私は考えているわけであります。  そこで、これを受けて改正刑法草案というのが法制審議会から出されております。  仮釈放、第十一章にございますが、例えば八十二条「執行期間の計算」というところがございますけれども、第二項に「減刑によって死刑を無期刑に変更された者に対する仮釈放の処分については、判決確定後の拘置日数は、前条第一項に規定する期間に算入する。」こういうふうになっているわけであります。前条といえば三分の一と十年という規定があるわけでありますけれども、こういう考え方についても御答弁は願えませんか。つまり改正刑法草案に盛っておる精神ですね。いかがでしょう。
  112. 濱邦久

    濱政府委員 今委員指摘のような仮釈放の期間の算入に関する規定が改正刑法草案の中にあることは仰せのとおりでございます。ただ、昭和四十九年に法制審議会から答申を受けましたこの改正刑法草案を一つのたたき台として、法務省におきましてその後も継続して刑法改正の作業を行っておるところでございますけれども、なお政府案として確定したものはいまだ持ち合わせておらないわけでございます。
  113. 谷村啓介

    ○谷村委員 改正刑法草案を見ますと、この「はしかき」には当然現行刑法が大変古くなったということで現状に合わない、現代の要請に適合しないという問題を含んでおるので全面的に再検討する必要に迫られだということが書いてありまして、法務省では、このような観点から昭和三十一年十月から予備的な草案の作成あるいは同省の刑事局内に刑法改正準備会と称する非公式の委員会を設けたというふうになっておるわけでありまして、「同準備会は、同省刑事局長を会長、同省特別顧問小野清一郎博士を議長とし、在京の学者及び実務家十数名の参加を得て審議をつくした結果、昭和三六年になって改正刑法準備草案を完成し、理由書とともにこれを公表するに至った。」というふうなことをずっと「はしかき」にも述べておられるわけであります。したがって、私は、法務省としてはこういう考え方というものをずっと長い間議論されて、そしてまた日の目を見ておりませんけれども、改正刑法草案なるものができたというふうに理解をしておるのですが、それでいいですか。
  114. 濱邦久

    濱政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、刑法改正草案の答申は昭和四十九年の五月に法制審議会からあったわけでございますが、その後、これは委員案内のとおり、刑法を全面改正するにつきましてはいろいろな御意見がございまして、必ずしも一致したものを得るまでには至っていないわけでございます。したがいまして、法務省におきましても、この刑法全面改正作業の中でいろいろな御意見を検討しているということで ございまして、いまだ確定した政府案の作成までには至っておらないという実情でございます。
  115. 谷村啓介

    ○谷村委員 確定した政府案ができておったらもう既に出されておると思うのですけれども、確定してないということから出されてないというふうに思うわけでありますが、先ほど言いましたように、法務省としても現在の刑法というものについてはいろいろと問題がある、長期にわたり過ぎておるという問題もありますが、現状にそぐわないという問題があるのでこういう作業をお進めになったのではないでしょうか。
  116. 濱邦久

    濱政府委員 もちろん委員指摘のように、現行刑法は明治時代に制定された法律でございまして、刑法を全面改正する作業というものは長い期間を費やして行ってきているわけでございます。その一つの過程として、先ほど委員指摘になられました昭和四十九年の五月に改正刑法草案という形で法制審議会の答申があったわけでございます。したがいまして、法務省におきましては、昭和四十九年に法制審議会から答申のありました改正刑法草案をも一つのたたき台として刑法全面改正作業の方向づけを検討しているという段階であるわけです。
  117. 谷村啓介

    ○谷村委員 先ほどの改正刑法準備草案にちょっと戻りますけれども、これの解釈といいますか、そういったところを見ますと、例えば先ほどもちょっと挙げましたが、「減刑によって死刑を無期刑に変更された者に対する仮釈放の処分については、判決確定後の拘禁日数は、実質上懲役又は禁固の執行と同視して、受刑者の利益のために、無期刑について執行を受けた期間に算入することとした。」こういうふうな解説がついておるのですね。私はこの「受刑者の利益」というものを優先するんだという考え方、これはまさに同感でありますし、次に質問を展開いたします問題とも関連をいたしますので、あえてこういう考え方がこの準備草案には盛られているぞということを指摘しておきたいというふうに思うわけでありますが、何か感想があれば述べていただきたいというふうに思います。
  118. 濱邦久

    濱政府委員 今委員は改正刑法準備草案までさかのぼっての御指摘だろうと思うわけでございますが、今委員指摘の改正刑法準備草案の規定というものは、先ほど御指摘になられた改正刑法草案の八十二条の二項と同趣旨規定を言っているものであるというふうに理解しております。
  119. 谷村啓介

    ○谷村委員 局長の御答弁はそれ以上は出ないと思いますけれども、私はここで言いたいのは、せっかく法改正の準備を続けられておる、その中のつまり死刑囚、あるいはその他の受刑者でも結構ですけれども、これからの刑法の流れというものは、解説の部分に指摘されておりますような受刑者の利益というものを重視していく時代ではないかな、こういうふうに実は思うわけです。そういう点についてはいかがでしょう。
  120. 濱邦久

    濱政府委員 今委員がお触れになっておられる具体的事件について直接関連してのお答えはもちろんいたしかねるわけでございますが、ただ、私どもが刑法改正作業を今後も続けていく上におきまして、相対立する、相反する御意見がいろいろあるわけでございますから、そういうものを十分検討していく過程で、今委員が御指摘になられましたような御意見をも十分参考にして今後の作業も続けてまいりたいというふうに思っております。
  121. 谷村啓介

    ○谷村委員 次の質問に移りたいと思いますが、過去何年かの間に委員会でいろいろと質問がございました。その特徴的なところを取り上げて改めて質問をいたしたいと思うのでありますけれども、例えば一九七九年法務委員会、当委員会におきまして、西宮弘議員の質問に対して当時の豊島法務省矯正局長が御答弁なさっておられますね。  「結局、執行開始の日から十年たたないと仮釈放の恩典に浴し得ないということ、これはやむを得ないのだろうというふうに考えております。ただしかし、十年経過の時点におきまして、本人の状況等をよくしんしゃくいたしまして、適当な措置をとりたいというふうに考えております」こういう御答弁が七九年当時にございますが、この中に言う矯正局長の御答弁「十年経過の時点におきまして、本人の状況等をよくしんしゃくして適当な措置をとりたい」こういうお約束があるわけでございますけれども、これはその後の経過は一体どういうふうになっておるのか、尋ねておきたいと思うわけであります。
  122. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 刑法二十八条の規定によりまして、今御指摘のように無期刑につきましては十年を経過したる後仮釈放を許すことを得ということでございますから、許すことができるということで、無条件に許すというわけではないのでありますけれども、そういう規定がありますので、行刑施設におきましては、無期刑受刑者につきましては十年を経過した時点で地方更生保護委員会に先ほど申し上げましたような犯罪者予防更生法二十八条の規定に基づく通告を行います。そして、その上で、各施設内に設けられております仮釈放審査会というのがございますが、そこにおきまして、地方更生保護委員会に仮出獄を申請するかどうかについての審査を開始することとしており、現にそういうことを実行しているわけでございます。  当時の豊島矯正局長が申し上げたのは、このように十年間を経過した時点で通告をし、審査を開始するというようなことを念頭に置いて適当な措置を講じたい、こういうふうにお答えしているのだと承知しております。
  123. 谷村啓介

    ○谷村委員 その部分だけ抜粋しましたからそういうお答えになるのだろうと思うのですけれども、この質問の前後の流れを見ますと、確かに、十年経過をしたら、具体的な前向きの処置といいますか「本人の状況等をよくしんしゃくいたしまして、適当な措置をとりたい」。通告というのは義務ですからね、先ほどあなたがおっしゃったように。十年経過したらこれは通告しなきゃならぬということになっていますから、それは問題外だと思うのですよ。ここに指摘しているのはそうじゃなくて、やはり申請という問題を絡めた質問に対する答弁だというふうに流れから見まして思っておるわけですけれども、今のような御答弁ではやはり少し私どもの方は物足らないというふうに思いますが、いかがでしょう。
  124. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 善言葉を返すようではございますけれども、十年を経過したというのは非常に重要な二つのメルクマールになるわけでございまして、だからこそ通告をする。通告は義務ではございますけれども、この通告というのは、更生保護委員会に対して、うちの刑務所ではこういう人がいるんですよということをまず更生保護委員会に明らかにするということで、そしてその上で刑務所内で仮釈放審査会でいろいろ検討を始めるということは、決して後ろ向きの姿勢ではなくて、前向きの姿勢で仮釈放に向けた審査を開始するわけでございますから、そういうふうな意味で、私が申し上げたことと豊島矯正局長が申し上げたことと特に矛盾はないというふうに私は理解しております。
  125. 谷村啓介

    ○谷村委員 そういう点について、なるほど、刑務所へ行ってみましても、実は中で定期的に審査もやっているんだというふうなことの繰り返しに終わっているという点が私どもとしては非常にじれったいということがあるんですね。したがって、先ほどのような質問になるんですよ。しかも、ことしの八月が参りますと、十年どころじゃない、十五年経過するということですね。しかも、身柄拘束されて、来年が来れば三十年だ。非常に長い身柄拘束、異常とも言えるような拘束状態にあるわけでありますから、余計にそういう点を私どもの方は力説したくなる。これはおわかりだろうと思うのですが、いかがでしょう。
  126. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 無期刑受刑者と何らかのかかわりのある方で、無期刑受刑者に同情的立場に立たれる方が無期刑受刑者の長い間拘束されていることに同情を持たれるということは私どももよくわかっておりますし、私ども矯正におきましても、そういう無期刑受刑者をずっと処遇していくわけでございますから、そのことは十分承知しており ます。  ただしかし、善言葉を返すようではございますけれども、司法機関において無期刑という非常に重みのある刑が最終的に確定しているということは、その無期刑というのは言うなれば無期限にいくというのが原則でございまして、そして後、刑法において情状があって、十年を経過して情状が仮釈に適するような人については仮釈を考えなさいよ、こういうわけでございますから、十五年になったら当然もう長いから仮釈放になるというふうには一概には決めつけられませんし、私ども矯正の立場からもいろいろ考えながら、仮釈放の意義を踏まえて運用していく、そういうことにならざるを得ない。そういうふうな私どもの非常につらい立場も御理解いただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
  127. 谷村啓介

    ○谷村委員 今局長おっしゃるように、私どもは特定の人だから同情してそんなことを質問しているわけじゃありませんよ。今までの経過を踏まえながら、それに立脚をして質問しているわけで、その点がもし勘違いなら、それは訂正してくださいよ。そういう立場じゃありませんよ。そういう点ははっきりしておきたいと思うんですね。しかも、今おっしゃるお言葉の中に、いや、それは無期だから、重たいんだから、したがって無期でやるのが当然でございますよ、十年というのはいろいろほかの条件がある場合にやるにすぎませんよという、本当にその考え方が受刑者の利益といいますか、先ほど私が冒頭に挙げましたような考え方が主流になると思うのですけれども、そういう考え方がある以上、今のようなお考え方というのは余りにもかたくなな考え方じゃないか、こういうふうに私は思いますが、いかがでしょう。
  128. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 頭がかたいようで非常に申しわけございませんけれども、有期刑と無期刑と区別されて刑法で規定されております。それで、有期刑は二十年までいけるわけです。そうすると、刑法上は有期刑よりも無期刑が重いことになっておりますから、無期刑の人が常に有期刑の一番重い者よりも早く釈放になるということになると、これはやはり刑法の体系というのは崩れるのだろうと思うのです。私どもとしては、そういうふうないろいろな難しいところで矯正の執行をやっている、そういうふうな難しい立場でやっているということを御理解いただきたいと思うのです。
  129. 谷村啓介

    ○谷村委員 そういう考え方なら、先ほど過去の質問の中で取り上げました例えば豊島さんのお答えというのはなぜこういう答えが出るのですか。今のあなたのようながっちりしたしゃくし定規な話ならこんな話は出ませんよ、先ほど言いましたように。そうでしょう。十年経過の時点において「本人の状況等をよくしんしゃくいたしまして、適当な措置をとりたい」というふうに本委員会で述べられておるのですね。それとあなたの今の答弁を比較しますと、まるで違った次元の話のような気がいたしましてしょうがないのですね。これは私の錯覚でしょうか。
  130. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 特に私としては御質問と異なった趣旨を申し上げておるつもりはないのですが、結局一般論として申し上げれば、私が申し上げたようなことになるわけでございます。ただしかし、仮釈放の問題というのは一般論ではなくて個別の問題でございます。個別の問題でありまするが、その個別的な状況を見て、早くなる人もあるだろうし、それから十年どころじゃない、二十年以上いる人も出てくるでしょう。それはしょうがないわけですが、一般論として申し上げるときに、受刑者の利益だからということで常に軽く、軽くということは私どもとしてはちょっとできかねるということを申し上げたつもりでございました。
  131. 谷村啓介

    ○谷村委員 三月三十日でしたか、法務大臣とお目にかかりましたね。そんな場のお話をいたすのはいかがかと思いますが、どうもやはり頭がかたいですね。あなたがおっしゃるようにどうも頭がかたい人が多過ぎて困ります。これは答弁は要りませんよ。どうせ後で質問しますからね。そう思います。  じゃ、次の質問に移ります。時間の関係がございます。  この資料をいろいろと見てまいりますと、刑期の問題とは、もう一つ要件として改悛の状といいますか、四つぐらいそれを見る場合に条件がありますよということがあるようでございますね。その一つに私ども、質問の中でもいろいろと出てきておりますけれども、当然、今本人は再審の請求をしておるということでありますが、そういうふうな問題があるいは仮釈放の決定に影響を与えているのではないかなというような、こういう懸念も繰り返し質問の中で述べられておるわけであります。  それについては、例えば一九八八年の坂上富男議員の質問、その他の方の質問にもございますけれども、実際はそうじゃないのだ、現に再審請求をしておる人も仮釈放になっております、あるいは八八年の時点では、仮釈放になってからその人が再審請求をしたこともあるのですという例を引かれました御答弁がありますが、再審請求という問題が、その他の、つまり改悛の状といいますかその他の条件について一〇〇%関係がないか、こういうことを念を押しておきたいと思うのです。いかがでしょう。
  132. 古畑恒雄

    ○古畑政府委員 お答えいたします。  刑法第二十八条は、仮出獄の実質的な要件といたしまして、委員がおっしゃいましたように「改悛ノ状アルトキ」という規定をいたしております。幾つかの要件とおっしゃいましたが、具体的に申させていただきますと、悔悟の情、更生の意欲、再犯のおそれ、社会の感情等というものでございまして、こうした事情を総合的に判断することになっております。これは委員も御承知と思いますが、仮釈放及び保護観察等に関する規則第三十二条に定めておるわけでございます。  再審請求をしている者は、確定判決に示された事実関係を否認している者ということになろうかと思います。そのような者については、一般的に申しますれば「改悛ノ状」の判断におきまして問題とされることがあろうかと思われますけれども、単に否認しているということだけをもちまして「改悛ノ状」がないとして仮出獄を許可しないということはないというのが従来の運用でございます。私どもといたしましては、前に述べました諸要件を多角的、総合的に検討いたしまして、個々それぞれに仮出獄の許可の決定がなされることになる、かように理解しております。  なお、委員から坂上富男委員の質問の際の保護局長答弁の話が出ましたけれども、これは、現に受刑中再審請求をしている者、将来仮釈放となった場合に再審請求を予定している者についても仮釈放をした例があること、私どもとしては更生保護の見地から見て適切と思う者を他の者との公平を考慮しながら決定するように運用していることという趣旨の答弁をしているものと承知しております。私どもといたしましては、現在でもこのような趣旨で仮釈放を更生保護の基本原則にのっとりまして適切に運用してまいりたいというふうに考えております。
  133. 谷村啓介

    ○谷村委員 そうすると、今のお話は、先ほども議事録の中の問題を出しましたけれども、冒頭に私が質問いたしましたように、弁護士会の会長名でその点についても触れているのです。その触れておる部分といいますと、「仮出獄の要件としての「改悛ノ状アルトキ」とは、一般には「規律を守り善行を保ち人に悔悟したということを認めしゅうるような情状を意味し、……基本的には再犯のおそれのない場合に帰せられる」と解されており、具体的に①受刑者の悔悟の念の有無、②被害感情、③服役態度、④出所後の受入体制等の諸事情を勘案すべきであるとされている。 しかしながら、事件本人の場合」は、今お答えがございましたけれども、①②③④のうち一番問題になるのは「専ら③の点のみから客観的に「改悛の状」の有無を判断すべき」であるという見解を示されておりますが、その「専ら③の点のみ」というのは服役態度を指しておるわけでありますが、そういうふうに理解していいのですか。
  134. 古畑恒雄

    ○古畑政府委員 お答えいたします。  先ほど私は四つの要件について申したわけでございますけれども、それは「保護観察に付することが本人の改善更生のために相当であると認められる」かどうかを判断する要件として申したわけでございます。しかし、そのほかにも、一般的に「本人の資質、生活歴、矯正施設内における生活状況、将来の生活計画、帰住後の環境等」諸般の事情を総合的に、多角的に考慮する、私どもはそうした運用に従って行っております。
  135. 谷村啓介

    ○谷村委員 今の御答弁によりましてもわかりますように、この再審請求の問題というのは仮釈放の要件といいますか、それには関係ないのだ、先ほどもおっしゃったが、否認しておるのだから「改悛ノ状」なんでなかなか、悔悟の念といいますかそんなものはあるわけではないわけで、そういう点については別に関係がない、こういうふうな御答弁があったというふうに、先ほどの議事録も引用いたしましたけれども、それはよろしいのですね。
  136. 古畑恒雄

    ○古畑政府委員 もちろん、再審の請求をしておるという一事をもって「改悛ノ状」がないというわけにはまいらないということを申しておるわけでございます。  ただ、私どもといたしましては、現実に、これは個々の事件を地方更生保護委員会において合議体の更生委員が慎重かつ適切に審理して決定する。ということになるわけでございますので、その審理の段階で一つの要素として考慮するということでございます。
  137. 谷村啓介

    ○谷村委員 今御質問しておるのも、もちろん今のお話のように仮釈放及び保護観察等に関する規則、この中を見ると第三十二条に明示されておるわけでありますが、日弁連の方は、これに指摘しておりますのは、同じようなことではありますけれども、仮出獄の実質的要件として「注釈刑法」等の内容を引き合いに出して、「「改悛ノ状アルトキ」とはこ「具体的に①受刑者の悔悟の念の有無、②被害感情、③服役態度、④出所後の受入体制等」がそれに当たるのだという解釈があるようでございますから、したがいまして、今おっしゃったような問題と、その前段の段階でも、申請をする段階でもこういうことが基準になっておるのではないかというふうに思って、その際にも再審請求という問題についてはひっかかりはないか、こういう御質問を実はあわせてしたというふうに私どもの方は考えておりますけれども、いかがですか。
  138. 古畑恒雄

    ○古畑政府委員 私も日弁連の御要望は拝見いたしたわけでございます。これとてもいろいろな諸事情を勘案すべきであるという考え方もございましょうし、これに対するいろいろな意見もございましょうと思いますが、一つの御見解ではないかというふうには思います。あくまでこれは、委員会で審査する場合には委員のようなお考えあるいは弁護士連合会のようなお考えというものをしんしゃくさせていただくということになろうかと思います。
  139. 谷村啓介

    ○谷村委員 それじゃ、次の質問に入りたいと思います。  これは一九九一年の質問だろうと思うのですが、未決通算の問題でありますけれども、小森委員の最近の質問に対して佐藤勲平法務省保護局長さんの方から未決通算についての答弁があるわけであります。この答弁を見ますと「仮出獄の審理に際しまして考慮すべき事項がございます。これもさらにいろいろ細かいのが具体的な場面で生ずるわけでございますけれども、その中の一つとして考慮の対象になるものとは考えております。」という御答弁がございましたが、これはそのとおりに理解してよろしいか。
  140. 古畑恒雄

    ○古畑政府委員 佐藤勲平局長がさきに答弁いたしましたとおり、未決通算日数の長短につきましては仮出獄審理に際して考慮すべき多数の要素の一つであるというふうに解するという点においては変わっておりません。     〔田辺(広)委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 谷村啓介

    ○谷村委員 そうなりますと、これも何回か議論がされた問題ですが、十一年八カ月という未決勾留というものが、もう既にこの八月には刑確定後十五年間の経過を迎えようとしておるわけですね、先ほどもちょっと議論いたしましたが。そういう点では、一体どのように実際に未決勾留期間というものがその要素の一つに加えられておるのかということがさっぱり見えてこないような気がして、いつまでも同じことをおっしゃっているような、そんな気持ちがいたすわけですが、いかがでしょうか。
  142. 古畑恒雄

    ○古畑政府委員 地方更生保護委員会は、いわゆる準司法的機関とも言われておりまして、三名の合議体によって個々の案件を審理しているわけでございます。それは、具体的な事件の審理において、その過程でいろいろな事情の中に今申しましたような未決通算日数の長短についても考慮するということでございますので、今個々具体的な事件につきまして委員会の判断に先立つ前に一つの考えを打ち出すということはなかなか難しい点でございます。その点はひとつ御了解いただきたいと思いますけれども委員のようなお考えというものは委員会の方に十分伝えるつもりではおります。
  143. 谷村啓介

    ○谷村委員 次の質問に移りたいと思います。  同じように議事録を見ますと、これは八八年の衆議院予算委員会第二分科会のようですが、林田法務大臣は井上泉さんの質問に対して「石川一雄さんは昨年八月に刑法所定の最小限の期間を経過したことになりますが、通常無期受刑者につきましては刑期を十五、六年間経過した時点で仮釈放になっておりまして、石川さんにつきましても他の無期刑受刑者との間に特に有利にも不利にも偏しないよう公平に取り扱われるべきものであると考えておりまして、当面仮釈放の問題はまだ起きてこないもの、こういうように考えております。」という御答弁があるのですね。これは法務大臣からそういう御答弁のようであります。  この中で、さっきもちょっと議論になりましたが、刑期を十五、六年間経過した時点で仮釈放になっている人が無期の人は多いということですね。これは過去の資料を見ましてもほぼそういうふうになっておると思うのですね。ここにございます資料によりましても、昭和六十一年-平成元年というふうになっておりますが、十五、六年というのが圧倒的に多い。そして、平成二年の欄を見ますと、これも総数の仮出獄の人員十そのうちでやはり十六年あたりが非常に多いという統計があるわけでございますけれども、そういう点については私は林田法務大臣の御答弁とほとんど一緒の傾向だと思うわけであります。  こういうふうに見てまいりますと、石川さんの場合はことしの八月が参りますと十五年を経過するということであります。先ほどもおっしゃいましたように未決勾留期間という問題は、たくさんのあるいは数個の条件のうちで一つにすぎないかもしれませんけれども、それが大いに参考にもされるということになってまいりますと、石川さんの問題も近々に決着を迎えなければならぬ時期に来ておるのではないか、私こういう気がいたしますが、林田法務大臣の御答弁も踏まえてちょっと御答弁を願っておきたいと思うわけであります。
  144. 古畑恒雄

    ○古畑政府委員 保護局は地方更生保護委員会を所轄しておるわけでございますけれども、元来は矯正施設からの仮出獄の申請があった場合に対応するということになっておるわけでございます。その場合にどう考えるかという御質問であろうかと思うわけでございますけれども、私どもといたしましては、やはり個々の事案についての適正妥当な解決をしたいと考えていあるわけでございます。  抽象的なお答えで御満足いただけないかとも思いますけれども、あくまでこれは個々の事案を準司法的機関としての委員会が審査するという法律上の建前があるものでございますので、私どもとしましてはそれ以上お答えしかねるという点もあるわけでございます。その点をごしんしゃくいただきたいと思います。
  145. 谷村啓介

    ○谷村委員 もちろん私ども承知しておるので す。申請をすること、それは当該刑務所の所長の専権事項であるということはよく承知しております。ただ、今までの質問や答弁を見まして、さっき言ったようなことについて一体どうお考えになるかという点をお伺いしたかったわけですから、矯正局長、ひとつ答えてください。
  146. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 いろいろな過去のいきさつはございます。それは全部承知しております。ただ、仮釈放の運用が、一時期おっしゃるように十五、六年ぐらいで、仮釈放の申請をかなり多くした時期もございました。ところが、最近は必ずしも十五、六年で申請できないような状況になってきております。それはどういうわけかと申しますと、何といっても受刑者の質がいろいろ難しくなってまいりまして、平均すると十五、六年では申請できない人が多くなっているからかもしれないと思います。  何と申しましても、刑務所長というのは、自分の所掌であるその施設を預かっている責任者でございますが、刑務所長が仮釈放の申請をする場合に一番心がけなければならないのは、同じような立場の受刑者の公平さということでございます。公平さを欠くことになりますと、刑務所の運営が非常に難しくなります。今は御承知のとおりに、B級の刑務所におきましては三分の一が暴力団関係者が入っております。それから、覚せい剤事犯者も非常に多うございます。そういう人たちが大勢いるところで不公平な取り扱いは非常にできにくい、そういうところがございまして、それで不公平な取り扱いをしない、公平な取り扱いをしつつ、なおかつ個別的に実質的な公平を保つようにというのが非常に難しいところでございまして、そういうところをいろいろ工夫しながら現場の刑務所長がやっている、そういう実情でございますので、十五、六年という、昔そういうふうな状況であったのが、必ずしも今そういうところにいっておらずに、むしろ十九年ぐらいになってきているという実情になってしまっている、そういうこともございますので、そういうところをいろいろ研究しながら適正な仮出獄の運用に努めている、こういう実情でございます。
  147. 谷村啓介

    ○谷村委員 今の御答弁はちょっと解せない点があるのですね。今までは十五、六年というのが非常に多かった。最近は状況が変わってきた。今おっしゃったことは、それは恐らく刑務所内に暴力団や覚せい剤、そういう人もたくさんおる、したがって、公正を期するという問題が大変難しいというか微妙だといいますか、そういうことがあるので、むしろ十九年ぐらいになっておる、そういう御説明なのですか。
  148. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 必ずしも、そういうふうに端的に要約されておっしゃられると誤解を招くと思いますが、一つにおいては、受刑者の取り扱いが非常に難しくなってきているということが一方においてございます。それから、一方においては、これもいろいろな考え方、変遷がございまして、かつて刑務所が非常に過剰拘禁に近いような状況になったことがございました。そういうときに仮出獄をもう少し活用したらどうか、そして刑務所の過剰人口を少し解消しようではないかという動きがあったときもございました。今の刑務所は大体八割ぐらいで、過剰収容状況にはなっておりません。  そういうときにおきますと、仮出獄の運用というのは受刑者にとってあるいは社会にとっても一番、これはここで大丈夫だというところで仮出獄をしようという、仮出獄に対する考え方の違いも変遷がございます。そういうこともいろいろございまして、現在は十九年ということになっているようでございます。
  149. 谷村啓介

    ○谷村委員 だんだんお答えが議事録を見る限り、先ほども林田さんの答弁について質問いたしましたが、無期刑の皆さんが仮出獄される日が実際にだんだんおくれているのですね、今もおっしゃったけれども。そういうことが正しいのかどうかという疑問が、私どもは率直にございます。先ほど刑法改正の問題について、私も考え方が、やはり受刑者の利益になるような方向が正しいのではないかという指摘をしましたけれども、そういう方向から考えますとこれは問題ではないか。  もう一つは、今の、たくさん刑務所におったから、狭くなったから出したんだというような話もむちゃくちゃな話ですよ。今すいているからなかなか出せないんだという話もむちゃな話ですよ。それはいかがでしょう。簡単でいいです。
  150. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 御説明申し上げると極端に話をとられて、どうも誤解を招くようなことがあって非常に説明しにくいわけでございますけれども、いろいろな考え方があるのだと思います。  それは、仮釈放という制度があるのだから有効に活用しようという考え方もあっておかしくない、刑務所が過剰収容のような状況になればそういう考え方が強まることも決しておかしくはないと思います。それからまた、そういうときに安易に仮釈放にしたために、一たん無期の刑を受けていた者が仮出獄で出てまだ強盗殺人を犯したというようなことがあって、それで社会から物すごく非難を受けたことも現実にあるわけでございます。そういう非難をこうむったようなことになれば、やはりまた反省というものも出てくるかもしれません。そういうふうないろいろな考え方、人間がやることでございますから、これが一番正しいということはなかなか初めから決められないわけでございまして、いろいろ試行錯誤をやり、また失敗をやり、おしかりを受け、そういうふうな中で実績がだんだん積み重なっていくものだろうと思っておりますので、私の乱し上げたことが、余り極端な、変なことを申し上げているつもりじゃございませんで、本当にありのままを申し上げているということをどうか御理解いただきたいと思います。
  151. 谷村啓介

    ○谷村委員 その問題はそれ以上触れません。  そこで、先ほども公正とかいろいろな問題が指摘されましたけれども、例えば石川さんの場合は身柄拘束されて二十九年ですね。しかも、別件逮捕ということのようであります。二十九年のうち、実際には刑の確定後が、この八月で十五年でありますから、十五年に近いですね。十一年八カ月の未決勾留、その他を入れましてざっと十四年ですか。合わせて二十九年ということになるわけでありますが、こういうケースというのはほかに多いですか。
  152. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 無期刑で刑務所に何年入っていたかということですと、三十年ぐらいのケースはないわけではございません。ないわけではございませんが、今お尋ねの具体的な案件につきましては、未決が非常に長いというのは、これはレアケースだと考えております。
  153. 谷村啓介

    ○谷村委員 そういう意味で、今局長がおっしゃったような極めて特異なケースの一つにも入る。公正、不公正という問題を考える場合に、これは一つの大きなポイントになりはしないか、他の人たちが見た場合に、そういうことを正確に知った場合には大きな要素になりはしないか、こういうふうに私は思うから、実はその点をあえて御質問申し上げたわけであります。そういう点も今後の問題としてぜひ御考慮願いたい、こういうふうに思いますが、一点、いかがですか。
  154. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 先ほど保護局長も答弁いたしましたように、未決勾留日数が長いということはやはり仮釈放をするかどうかということを考える上での一つの判断の基準にはなるものだと私は考えております。仮釈放を具体的に申請するのは千葉刑務所長の専権事項でございますから、これは千葉刑務所長の判断に任せなければなりませんけれども、千葉の刑務所長もそういうことは十分承知しております。
  155. 谷村啓介

    ○谷村委員 あと時間がなくなりましたが、最後になろうかと思いますが、法務大臣の方にいささか御質問を申し上げたいと思うわけでございます。  さっきも質問いたしましたが林田法務大臣の御答弁ですね、十五、六年間経過した時点で仮釈放になっておるんだ、石川さんにつきましても特に有利にも不利にもしないけれどもそういうふうに普通に、ごく一般に取り扱っていくんですよ。こ れは十五、六年というのが前提になっておるわけでありますが、そういう点について現法務大臣としていかがお考えか。  それから、この間、三月三十日に、先ほども言いましたけれども、大臣のところに私ども関係者が参りましてお話をしたり要望したりいたしました。その際の大臣からの御答弁は、簡単に言いますと、余りかた苦しい雰囲気の話じゃございませんが、二つの趣旨があったように思います。  それは、石川さんの場今いろいろと事情があったように思える、しかも仮出獄等についてはもちろん所長の専権事項であるのでこれにくちばしを入れるということもできないけれども、しかしそれを申請する等について所長自身もいろいろと悩みも多いことだろう、その上に立って、前向きと小いますか、そういうことが実際に実行できる雰囲気というか環境づくりというものをぜひやってみたいものだという点が一つあったように思いました。それからもう一つは、その場の雰囲気といいますか、矯正局長もいらっしゃいましたが、そこで私どもと話をした、お互いの交換をした話の雰囲気といいますか、そういうものも関係者に伝えたい、そういうお話があったように思っておるわけでありますが、その二つの点、林田さんの御答弁そして後段挙げました三月三十日のこと、その後の対応は具体的にどのようになされたのかお聞かせ願えればありがたい、こういうふうに思います。
  156. 田原隆

    田原国務大臣 お答えします。  第一点の林田元大臣の件につきましては、細かく詰めて読んではおりませんが、私も期間を調べてみると一番早いので十四年数カ月というのがございましたし、全国平均で十九年だったかな、それから千葉で二十二年でしたかね。数字が間違っておったらちょっと後で訂正させていただきますが、そういうふうに千葉は少し差がありまして、ただし私、この数字はたまたま数学的に足して平均したらそうなった、あるいは突出したものがあったとかにすぎない場合がこの場合多いんじゃないかと思うんですね。必然性もそれはあるいはあったかもしれません、先ほど局長が申したような波を打っていくのもあるかもしれませんが、私はそういうふうに考えております。そういう意味で、一応十五年たたれたということは今までの最低の記録の十四年数カ月、約十五年というのに非常に近い、それから平均が十六年十一カ月か十二カ月かというのに比べるとまだたってないとかいうような数字の比べ方そのものは余り意義を感じませんけれども、私はそういうふうに思います。  それから、仮釈放の要素というのはいろいろあって、さっきおっしゃったような改悛の状とか十年以上とかありましたけれども、私は私なりに統計学的というか数学的に物を判断してみますと、その要素が全部きちっとうまくそろっている場合と、一つ突出している場合と、一つ下に突出している場合とかいろいろあると思うのですね。そうすると、他の状況が皆同じようなときに仮釈放が二人か三人出たときにどうしょうかと思ったときに、どこかの要素が強い人が出るのはあれだし、どこかの要素が悪い人が落とされるのは当然だし、そういうふうに判断すべき要素じゃないかなというふうに私はさっきから感じておりました。したがって、林田先生の御意見については私も責任を持った御回答は申し上げられませんが、数学的な、数字的な結果はそういうふうで確かにある。  それから、三月三十日の御陳情に対する私めお答えですが、私もいろいろお聞きしまして、この方は長い期間、未決勾留を含めると三十年近く、当時、陳情を受けたとき二十八年数カ月か二十九年でございましたが、そういう期間を経ておられるし、非常に健康でもあり、資格的に二級という高い級を持っておられるし、長期間入っておられるし、まじめであるし、明るくやっておられるというようなこと等をお聞きして、当然皆さんが問題にされておるわけだな、そういうことを感じたわけでありましてああいうふうに申し上げましたが、何というか、保護更生委員会に申請するのは、あのときにも申し上げましたようにそこの所長の専権事項でありますから、勝手に乱す、これはかえって個々の問題としても一般論としてもよくないであろう。  しかし、所長はやはり人間ですから、あのときも申し上げたと思うのですが、悩みに悩んで決める場合が大変多いと思うのですね。そのときにだれと相談するかというと、やはり部外の人じゃないだろうと思うのですよ。上司であり同僚であり仲のいい人の数人とかいうところに御相談するだろうと思いますから、その相談したときに、あんなのやめとけよ、絶対だめだという雰囲気とそうでない雰囲気とがあるわけですから、このような場合には、私あのときにもお答えしたように、環境づくり、雰囲気づくりをして本人がやりやすくしてあげなきゃいかぬな、しかし、やる、やらぬは本人の決意だというふうに申し上げたと思うのです。  それから以降どうしたかということについては、矯正局長も立ち会っておりましたし、そういうことを、その後また法務省に帰って二人で会ったときも雰囲気づくりについて話をしたりしたわけでございまして、個々に一人一人呼んで、私があの人と関係がありそうな人を呼んで雰囲気づくりにおまえはここでこうせいと言うことは私はできませんが、そういう経過で今日まで来ております。
  157. 谷村啓介

    ○谷村委員 時間がちょっとあれですが、今おっしゃったようにこの八月が参りますと十五年ですね。大臣も今おっしゃいましたように十六年ぐらいのところが大体平均だということもあるわけでございますし、それに申請されたからといいまして実際ちょうど一年ぐらいかかるそうですね。それからまた、面接等もあっていろいろな問題もあるようでありますから、今されてもやはり十六年あるいは十七年というようなことになろうかと思いますね。そういった意味で、今までのやりとりから見ましても、今までの質問あるいは議事録から見ましてももうその時期が来ておるのじゃないかという気がいたしてなりません。どうぞ大臣、少なくとも御在任中に、非常に温情のある大臣でありますから、あなたの期間中にどうぞ実現を、申請ぐらいは実現できるようなことを大いに期待いたしたい、あるいは期待ができるんじゃないか、こういう気がいたしておりますが、いかがでしょう。最後の質問でございます。
  158. 田原隆

    田原国務大臣 私の任命権者は総理大臣でございまして、あしたやめいと言われるかもしれないし、なかなかそういうことと結びつけては考えにくいんですが、行政は流れておりますから、そして一貫性を持たさなきゃいかぬので、先ほどのような御質問があって確かめておられるわけでございますから、そういう意味からお察しいただきたいと思います。
  159. 谷村啓介

    ○谷村委員 終わります。ありがとうございました。
  160. 浜田卓二郎

    浜田委員長 沢田広君。
  161. 沢田広

    ○沢田委員 今谷村議員から質問が続けられておりましたが、関連して若干申し上げていきたいと思います。  これは埼玉県の問題で、委員長も同じでありますが、私は埼玉県民の一人であったわけでありますし、私も何回か千葉の方へ行ったこともございます。しかし、あそこの刑務所へ行くと、刑務所長のテーブルというのは、明治天皇が座るくらい大きい、ここからこのぐらいつながっているようなテーブルですね。行ったことがありますか、大臣。――ないですか。ほかの刑務所もそうなんじゃないかと思うんですが、今もお話がありましたが、今全国で死刑の宣告なりあるいは無期の宣告を受けている者はそれぞれどのぐらいいるか。今わからなければ後で結構ですが。
  162. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 正確な数字ではなく私の覚えている概数で申しますと、死刑で宣告を受けたとおっしゃいますが、宣告を受けてまだ控訴中とかなんとかというのになりますとちょっとわかりませんが、死刑で確定している人は五十人前後だろうと思います。それから、無期が確定して服役し ている人は、八百人よりも超えていまして、九百人ぐらいいるんではないかと思います。大体これはうろ覚えですが、そう大きな違いはないと思います。
  163. 沢田広

    ○沢田委員 大臣は死刑に判こを押したことがこの期間中はありますか。
  164. 田原隆

    田原国務大臣 まだございません。
  165. 沢田広

    ○沢田委員 前の大臣も押したことはないようですが、何代くらいここのところ押していないか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  166. 濱邦久

    濱政府委員 今委員がお尋ねのようなことにつきましては、従来お答えを差し控えさしていただいているわけでございます。
  167. 沢田広

    ○沢田委員 公の場所で判決を下した結果なんでありますから、やはり死刑ということが社会に与える影響、そして人間の尊厳というようなものの影響であえて発表を差し控えている、こういうふうに解釈をしますが、当たらずといえども遠からずというところでありますか、どうですか。
  168. 濱邦久

    濱政府委員 先ほど矯正局長からもお答えがございましたように、従来死刑が確定した者の数あるいは死刑が確定して未執行の者の数につきましてはお答えを申し上げているわけでございますけれども、今委員お尋ねの、大臣がどなたのときに死刑の執行があっなかなかったかというようなことにつきましては、お答えを御遠慮さしていただいているわけでございます。
  169. 沢田広

    ○沢田委員 やはり社会に与える影響ということなんだろうと思うのです。この間ビデオで死刑の場面がアメリカで撮られた例がありますが、それについてはどういうふうにお感じになりましたか。
  170. 濱邦久

    濱政府委員 今委員指摘の事実というのは、たしかアメリカ合衆国のカリフォルニア州での死刑執行のことを仰せになっておられるんだと思いますが、これは各国それぞれの国民感情とかあるいは国民の物の考え方がいろいろあると思いますので、アメリカ合衆国の事情日本の場合と直ちに比較して御意見を申し上げるということはなかなか難しいかと思うわけでございます。
  171. 沢田広

    ○沢田委員 決めた側に立ったとすればやはり自信と勇気を持って、裁判所もそうですが、自分の責任を持っていくというのが責任政治のことでありますから、例えば立場を変えて見ましても、やったことについては別段恥ずべきことでもないのですし、決められた法律の中において措置をすることでありますから、そういうときに言葉が濁ったりなんかするということはかえって権威を失墜することになるんじゃないのかなという気がしないでもありません。しかし、アメリカの場合の日本に与えた影響、国民に与えた影響をどのように受けとめておられますか、あわせてお答えください。
  172. 濱邦久

    濱政府委員 先ほど払お答え申し上げたのは少し舌足らずだったかと思いますが、先般のアメリカのカリフォルニア州での死刑執行が公表されたことは、確かに当該死刑の確定囚が執行されたということを公にしているわけでございましょうから、それは合衆国のカリフォルニア州の制度としてはそれで差し支えないという、恐らく一般的なお考えであろうと思うわけでございます。  我が国におきましては、死刑を執行した場合に、特にその事実を公表するということはもちろんしていないわけでございます。ただ、検察統計年報あるいは矯正統計年報には、一般の各種統計の一部としてその年の死刑執行人員は登載されることになっているわけでございます。
  173. 沢田広

    ○沢田委員 後段日本に与えた影響は、どういうふうな影響があったと思いますか。
  174. 濱邦久

    濱政府委員 お答えはなかなか難しいかと思いますけれども、死刑を存置しているにいたしましても、その死刑執行の方法ももちろん違うわけでございましょうし、死刑執行の受けとめ方というのも外国と我が国とはやはり違うのではないかというふうに思うわけでございます。
  175. 沢田広

    ○沢田委員 最高裁判所刑事局長さん、今の質問に対してどういうふうにお考えになっているか。
  176. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 非常にお答えしにくい御質問だと思いますけれども、今法務省刑事局長からお答えがございましたように、やはりそれぞれお国柄それから国民感情というものも違いますので、アメリカではこういうことである、しかし我が国は我が国でという立場で、皆それぞれの思いを込めて見ていたものと思います。
  177. 沢田広

    ○沢田委員 個人的な見解でも結構ですが、あなたは死刑賛成論者なんですか、それとも反対論者なんですか、いかがですか。
  178. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 個人的なその点の見解につきましては、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
  179. 沢田広

    ○沢田委員 控えるということの意味は、どちらかと言えば強い方にあるから答えないので、そうでない方にあれば答えるのだろうと思うのであります。  無期についてこれだけおられるというのですが、大臣、無期にしても死刑の人にしても、両面あるのです。確かに、被害者になった人の立場から見れば殺しても飽き足らないという感情というものが一方に存在している。これも考慮に入れなければならぬ。しかし、大臣、その前に私の方から一つ聞きますが、私は三年か四年ぐらい前に、もっと前かな、法務の分科会で、刑の執行を終わった者は履歴書に書く必要はない、罪はもうそれで償われた、だから履歴書に前科ありと書かなくてもいいんだ、こういう質問をして、そのとおりですという答えが出ていたと思うのであります。これ、大臣御存知でしょうか。知っていなかったら、またそちらから答えてください。
  180. 田原隆

    田原国務大臣 私はその当時大臣でなかったので、そういう御質問を先生がされたというのは存じませんでした。
  181. 沢田広

    ○沢田委員 これは調べてもらって、後でお答えください。  三年であるとか五年であるとか刑が執行されて、釈放あるいは仮釈放で出てそのままになってその刑が終了した。終了すれば、罰せられたことによってその罪は償われた、こういうことによってその後の履歴書にもあえてそれを書く必要性はないということで、そのときの大臣が、ちょっと名前は思い出しておりませんけれども、答えられた。これはいわゆる常識の問題なんですね。履歴を書く場合の常識の問題なんです。昔の履歴書は賞罰なんていうのがありまして、小学校のころの優等賞まで書いてくる人もいますけれども、とにかく賞罰の中に入らない、こういうことで確認をしたことなんです。それは、あらゆる人が、国民が、就職の機会あるいは結婚の機会、そういう場所においてどこまで言わなければならないか、そういう限界についての質問に対しての答えなんです。  そこで、石川一雄さんの問題に入りますが、今大臣は、いみじくも非常に慎重に、しかも示唆ある答弁をされておりました。刑務所の所長さんが、部下その他の大勢の意見の中で、いや、この人はまじめで一生懸命やっていて、非常に模範囚の模範だ、だから早く社会に復帰させてやって正常な業務につけさせてやりたい、あるいは結婚もさせてやりたい、そういう醸成といいますか土壌がつくられれば、それは所長が決断をして、一つのルールはありましょうけれども、そのルールの中で仮釈放を認めるというようなことが考えられるんだ。これは一つの例ですよ。例として考えられる、そういうふうにお答えになったというふうに考えますけれども、大臣、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  182. 田原隆

    田原国務大臣 少しニュアンスが違うと思いますけれども、先生は性善なる方ですからそういうふうにおとりいただいてまことに幸いですけれども、私はひねくれているというわけじゃなくて、そこまで明確に申し上げるわけにいかない場合もあるだろう。というのは、御本人が相談されないたちの、タイプの方もあるだろうし、いろいろな場合があるでしょうけれども、人ですから、やはり雰囲気に従う、雰囲気というのを大事な参考の条件にするだろう、そういうときのために、みん ながそういうふうに考えているということを第三者としてよく知らしてあげることは必ずその人の判断に誤りなきを期することができるのではないかという意味からでございまして、これも冷めた気持ちでは決して出ない言葉であったと私も当時の雰囲気を思い起こしております。
  183. 沢田広

    ○沢田委員 法務大臣、だから選挙が強いのかもしれませんが、非常に人間味のあるお答えをされました。  続いて矯正局長さん。非常にまじめに、かたくて、しかもしっかりしてやってこられているようでありますが、今の議論のやりとりで、非常にまじめにやっている、そして模範囚の模範でもある。最初は、入ったころは、もう三十年前でありますから、教育程度というものも非常に未熟性がありましたね。場所的に見てみましてもそういうものがあったが、今は、私も会ってきておりますけれども、非常に勉強してきているし、人間も非常に豊かさを持ってきているということを感じておりますけれども、そういうものによって所長がみずからの権限で判断をしていく。こうなればもう再犯といいますか、二度と罪を犯すようなことはないという自信が持てる、あるいは結婚もさせてやりたい、また地元でも受け入れ態勢はありそうだ、そういうことを考えて決めていくのではないのかなと思うのです。  そこで、矯正局長としては、私が申し上げたようなことが判断のもとになるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  184. 飛田清弘

    ○飛田政府委員 また非常にかたいことを申し上げるようであれなんですが、私どもとすれば、矯正の施設を維持していくということ自体、きちっとかたくやらないとやはり維持していけない面があるものですから、かたいのはお許しいただきたいと思います。  恐らく、千葉の刑務所長がどうであろうかというお尋ねになるわけでございますが、余り個々のことを、これはどうだ、あれはどうだとやられて、それで私がそれについて全部答えてしまって、それが千葉の刑務所長の手足を縛ることになりますと千葉の刑務所長に専権事項として任せることを実質的に縛るようなことになりますので、どうだと言われて、そうですとか違いますとかということを余り明確に言うことについてはお許しいただきたいと思うのですが、今おっしゃったようなことも考慮の中には恐らく入るであろう、そういう点については積極という意味お答えしても差し支えないかと思っております。
  185. 沢田広

    ○沢田委員 我々の質問というのはどうしても逆な質問が多いですから一どうしてもまたはね返りの球が強くなってくるのでありますが、結果的には、そこの置かれた状況の中において、将来に希望が持てる、将来に過ちがない、また信用して心配ない、そういう感情が醸し出されればそういう可能性というものは成熟していくであろう、一般論的にそう考えられる、こういうふうに言えるわけですね。――縦に何回か首を振っておりますから、そういうふうな局長考え方であるということを理解いたしまして、これから我々ももう一回行ってみて、本人がそうなっているかどうか、努力しているかどうか確かめながら対応していきたいと思います。  しかし、これは先ほども述べたように両論あるわけです。大臣、無罪が今たくさん出てきているわけですが、それで補償料値上げしたのかなと思ったのですけれども無罪が出てきたときに我々が一番疑問に思うのは、真犯人はどうしたんだろうな、こう思うのですよ。そして、その家族はどう考えているのかな、こう思うのですよ。これも感情かもわかりませんけれども、捜査の上で何かまずかったことがあるのじゃなかろうか、だからこうなってきたのかな。だれをも恨むのではないけれども、天を恨むような気持ちで、無罪になった人にはお祝いを申し上げるけれども、はて真犯人はどこへ行ったのだろう、こういう何か詰まった感じを持つのです。大臣はああいうときに、どういうふうに法務大臣として、しまったなと思いますか、それともよかったなと思いますか、どうでしょう。
  186. 田原隆

    田原国務大臣 私は、とにかくそういうときは鏡のような気持ちになろうと思って、何も考えないことに努めております。これは事実であります。おっしゃるように、家族のことを考えるとあれだし、しかし事件があってから十年も二十年もたって判決が出たような場合とかになると、その家族がもういらっしゃらなかったり、感情が薄れたりいろいろして、ずれがあるとまた違った感慨が出たりしますし、いろいろな事件があって、直後のときの条件、それから何年かたってみたら本当に間違ってなかったのだろうかという気持ちとか、さまざまな気持ちが入り乱れると思うのです。ですから、統計をとってみますと、数年前の統計でありますけれども、死刑を存続せよという統計の数字は約六七%、やめろという数字は一〇%程度ということで数字に差は出ておりますが、実際の人の心として、現在たとえ被告人であっても、犯人になっていても、その人が今生きている限り、人の命を絶つということは非常に重大でありますから、死刑についていろいろな意見が出るのだろうと私は思います。
  187. 沢田広

    ○沢田委員 時間の関係もありますから今度の法律の方へ行きます。  民事の場合も若干議論しましたが、これはだれが答えるのかなという気がしますが、無罪の場合、計算すると、最高で大体四百五十六万ですね。暗算しますと、補償料は四百六十万くらいですか。四百六十万くらいのものなんですが、現在のこの二十五年を基準にしたことも一つは問題があると私は思っているのですが、二十五年を一〇〇としてこの賃金の数字を出したということについても若干、なぜ二十五年というものを出したのかなというふうに思っております。それから、経済がいろいろ動いてきたわけでありますから、最近の賃金の状況を見て、それでまた状況が変われば変えるということであって、二十五年を一〇〇にして、結果的には年間四百五十六万ということですか、三百六十五日とすれば大体そんな相場でしょう。間違っていたら言ってください、暗算でやりましたから。それが果たして相場と言えるのかなという気がするわけです。これは、無罪になって、一年間でこれだけのものに該当するのだろうかというふうに思うわけです。その点はどういう根拠によるのですか、ひとつ示してください。
  188. 濱邦久

    濱政府委員 まず、今回、刑事補償法の日額の上限の改正をお願いしているわけでございますが、これは委員も十分御案内のとおり、刑事補償法の第四条に抑留または拘禁による補償においては、一日千円以上九千四百円以下の割合による額の補償金を交付するというふうに規定してあるわけでございます。その上限の九千四百円を一万二千五百円に引き上げたいというのが改正の趣旨でございます。したがいまして、具体的には個々の事件について、その上限額と下限額の範囲内で裁判所が具体的金額を決めるということになっているわけでございます。  そこで、今委員が仰せになられましたのは、引き上げの額の算出根拠についてのお尋ねかと思うわけでございます。  確かに、一万二千五百円という金額をはじき出すにつきましては、刑事補償法が制定されました昭和二十五年にさかのぼりまして、それ以降今日までの一般給与水準の上昇率と消費者物価の上昇率を考慮したわけでございます。この方式といいますのは、過去数回、これまでの上限日額の改正の際には同じような方法を講じさせていただいているわけでございます。ただ、今回の拘禁補償の上限日額の算定に当たりましては、前回改正の際の附帯決議の趣旨を踏まえまして、拘禁補償の一層の充実を図るという観点から、拘禁補償の上限日額を逸失利益の部分と慰謝料の部分とに分けまして、前者すなわち逸失利益の部分につきましては専ら一般給与水準の上昇率を基準とする、後者すなわち慰謝料の部分につきましては経済変動一般、つまり一般給与水準と消費者物価の双方の上昇率を基準として引き上げを行うこととしたわけ でございます。  それで、一つの方法としては昭和六十三年、前回の時点を一〇〇として引き上げるということも考えられるわけでございますけれども、昭和二十五年にさかのぼって引き上げを考えだということは、引き上げの額をより手厚く保護すると申しますか、そういう観点から、前回もそうでございましたが、昭和二十五年の制定時にさかのぼって、一般給与水準の上昇率と消費者物価の上昇率を加味させていただいたということでございます。
  189. 沢田広

    ○沢田委員 回りくどく言われましたけれども、ただ、二十五年だけを金科玉条とする考え方については若干問題があるなということで、きょうはその問題は言いません。  それから、例えば網走と高松あるいは埼玉と東京というように、その入っていた場所によっても、地域差もありますし、民間賃金との比較もあるだろうと思うので、これが全国一律で果たしていいということになるのか。寒冷地手当はどうなっているのだろうかとか、都市手当はどうなっているのだろうかとか。それは人間ですから、無罪になって寒冷地。手当は網走では出なかったということになると、これも差別になるのじゃないかという気がするのです。もしそういうことがあった場合には訴訟になってしまうだろうと思うのです。ですから、当然そういう部分を考慮してこういうものは決めていかなかったならば補償にならないのじゃないか。  もっと、その補償の本質もありますが、本質の議論は別としても、それだけでもちょっと補償の体制としてはないのじゃないかなという気がするのです。高松あたりにいると大分気候温暖ですし、住みいいと言ってはいけませんけれども、とにかくいいですから、そういう条件を考えてない金額というのは適当だと思わない。訴訟の対象になってくるのじゃないですか。少なくとも寒冷地手当とか都市手当とか、そういうものが当然伴ってくる必要があるのじゃないかという気がしますが、今これだけだと言うでしょうけれども、個人的に見てどうですか、そういうふうな問題が起きそうだという気がしませんか。
  190. 濱邦久

    濱政府委員 現行刑事補償法の四条二項には、補償金の額を定める際の基準と申しますか、要素を規定しているわけでございます。それによりますると「補償金の額を定めるには、拘束の種類及びその期間の長短、本人が受けた財産上の損失、得るはずであった利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関故意過失の有無その他一切の事情を考慮しなければならない。」こういうふうに規定されているわけでございます。ただ、今委員が御指摘になられましたような地域差と申しますかあるいは環境差というものが直ちにその額の算定に影響するかどうかということは、これはかなり微妙な問題ではなかろうかなというふうに思うわけでございます。
  191. 沢田広

    ○沢田委員 ここで議論は余り長い時間できませんが、例えば寒いところに行って、結核者、結核は今少ないですが、それは与える影響は大きいですね。高血圧の者は南の方へ行ったらまた逆に大きいかもしれぬし、それはやはりあると思うのですよ。これはないと局長答弁しないで、やはり検討していく。きょう出しているから、きょうから検討するということは言いにくいでしょうが、検討の材料としていかなければならぬという要素はあるのだろうと思うのです。何も私、これが絶対だとは言ってないですよ。しかし、そういうものも考えていく必要性のあるものではないかというふうに思っているわけで、首を縦に振っているのはオーケーだという意味なのかどうかわかりませんけれども、ややそういう、なるほどなと言っているような立場でクエスチョンマークがつくのだろうけれども、ああ、やはりそういう見方もしなければならぬか、その程度まではどうも了解したような気がするのですが、そう思って次に行ってよろしいですか。
  192. 濱邦久

    濱政府委員 非常にお答えが難しいお尋ねかと思いますが、先ほど申しましたように、刑事補償法例第四条第二項に「一切の事情を考慮しなければならない。」というふうに書いてあるわけでございます。
  193. 沢田広

    ○沢田委員 それから「何人もことあるのですが、これは少年も当然対象となるというふうに考えていいですね。もちろん婦人もそうでしょうし、あるいは精神障害者もそうでしょうし、何人も補償対象は当てはまる、こういうふうになっていますから、これは少年法関係する者も含まれるというふうに理解してよろしいですか。
  194. 濱邦久

    濱政府委員 刑事補償法に基づく補償は、刑事裁判手続において無罪裁判があった者につきまして抑留、拘禁に対する補償でございますから、それに該当する者はもちろん、少年の場合に、例えば家庭裁判所審判の結果逆送決定があって起訴されて刑事手続裁判を受け無罪裁判があったということであれば、その間の抑留、拘禁について補償対象になるということでございます。
  195. 沢田広

    ○沢田委員 これは大臣、そういうふうに憲法にも四十条にありますから「何人もこということで補償をされる、こういうことがあるわけです。その考え方に差別がなければいいのでありまして、差別をつくられると、非常に言い臥しは遠回しに言いましたが、条件つきにはすべてに適用する、こういうことで答えていたようでありますから、私も大体理解はしておりますが、一応そういう誤解が生じないように対応してもらいたいと思う。これは大臣いいですね。答えてもらわなくていいです。  それから次に、これは外務省、厚生省においでをいただいておりますが、国際法上の少年解釈が、今子供の人権の問題も出ておりますが、非常にまちまちなんですね。一つはそれ。  それから二つ目は、少年の親権者あるいは保護者というか後見者というか、それぞれの国々によってルールが違っていっているわけです。  それで、日本の場合と国際の場合といろいろ違いがある。例えば、私たちが外国へ行って見る子供たちもそれはもちろん違ってくるだろうと思いますが、一応先進国の中を比べてみても、それぞれあり方あるいは刑罰もみんな違っておる。それで、日本少年というものをどういうふうにとらえるか。この法律でいけば、二十六歳までは少年として扱える、こういうことになっているわけです。普通は二十歳までだ、それから子供の人権やなんかでいくと十八歳までだ、こういうことになっていますから、どこが、だれが、例えば東京へ徒弟制度で働きに来ている場合に、国際人権の方では親だ、こう言うのですね。しかし、もし日本の場合だったら、使っている雇用者が保護者になっていくだろうと思うのです。そういうふうに国際公法上の少年というものの社会的な位置づけ、社会が持つべき責任あるいは保護者が持つ責任、親権者が持つ責任、母親が持つ責任あるいはだんなさんも含めて両親という立場でどういう系図、系統になっているか、こういうふうに考えさせられる問題が多いのですね。  それで、法務省も含めてでありますが、厚生省と外務省に、この少年の位置づけというものは将来どういうふうに考えていっているのか。また、諸外国との並びについてはどう考えているのか。これを長く講義されると一時間以上かかりましょうから簡単にというのは無理かもしれませんけれども、あえてその点簡潔にお答えをいただきたい。
  196. 吉澤裕

    吉澤説明員 先生、大変広範な問題についてお触れになりまして、的確な答えがなるかどうかあれでございますけれども、まず国際法ということで、条約上、少年とかそういったものがどのようにとらえられているかということで申しますと、先生もお触れになりましたとおり、日本はまだ入っておりませんけれども、国会に提出させていただいております児童の権利条約におきましては、チャイルドというものを十八歳未満というふうに今定義している。つまり、十八歳未満の者につきましてこれを児童ととらえて、それについての刑事手続についての保護も含めましていろいろな規定を置いているということがございます。  また、あるいは日本が既に締約国になっております国際人権規約B規約というものもございますけれども、その十条におきましては、例えば少年の被告人は成人とは分離される、かつ、できる限り速やかに裁判に付されるというようなことで少年というふうな言葉が出てまいりますけれども、ここに言う少年というのは、その少年をどうとらえるかというのは各国の解釈に任されているというふうに考えられまして、我が国の場合にはこれは二十歳未満の者というふうに考えているわけでございます。  もちろん、児童の権利条約におきましては、この児童というものを十八歳未満ととらえているわけでございますけれども、例えば日本で言えば、少年法その他の体系では二十歳というものを境にしてとらえているわけでございますけれども、それは日本におきましては十八歳以上の者についてもそういう手厚い保護を加えているということで、条約とは何ら矛盾するものではないのではないかというふうに考えている次第でございます。  それで、先生が、親とか保護者といったようなものをどういうふうにとらえていけばいいのかというような御指摘があったかと思いますけれども、この児童の権利条約におきましては、各国の政府が、締約国というものが児童の権利保護のためにいろいろな措置をとっていくということが規定されているわけでございますけれども、それと同時に、その児童につきまして責任を負っております父母とかあるいは法定保護者というものが適当な指示とかあるいは指導を与える責任とか義務というものを尊重しなければいけないというふうにとらえているわけでございまして、国家と児童との関係というもの、あるいは親とか法定保護者権利義務というものを両方条約に織り込もうとしたというような規定になっているわけでございます。  うまくお答えになったかどうかちょっと自信ございませんけれども、そういうことでございます。
  197. 沢田広

    ○沢田委員 じゃ、厚生省はどうですか。
  198. 弓掛正倫

    ○弓掛説明員 児童福祉法におきます児童といいますのは、第四条に十八歳未満の者を児童と言うようになっておりますので、児童は十八歳未満としておりまして、権利条約の方の児童と一致いたしているところでございます。
  199. 沢田広

    ○沢田委員 保護者、親権者、その他の関係は。
  200. 弓掛正倫

    ○弓掛説明員 保護者につきましては、親権を行う者、監護を現にしている者を保護者というように言っております。
  201. 沢田広

    ○沢田委員 それでは、法務省の方の関係では少年の、例えば徒弟制度でいっているような場合の親権者は親元、実家の親であるのかそれからそこの雇い主の方にあるのか、あるいは社会的に民生委員だとかそういうものがあるのか、その辺はどう解釈していますか。
  202. 濱邦久

    濱政府委員 我が国の少年法におきましては、委員案内のとおり、二十歳未満の者を少年というふうに規定しているわけでございます。  それから、親権者と申しますのは、これは民法の規定によって定められているとおりでございます。
  203. 沢田広

    ○沢田委員 私は一般常識で言っているわけであります。だから、東京に働きに来ている十八歳未満の子供たちは果たしてだれが責任を負うものなのか、法律的にはどうなっているのだ。だから、何か事件を起こしたら親元を呼ぶのか、そこの雇い主を呼ぶのか、あるいはそこの地域の民生委員なり人権擁護委員が扱うのか、それをはっきりしてくれと言っているわけですから、お答えください。
  204. 濱邦久

    濱政府委員 私どもの方の所管の少年法関係で申し上げますと、少年法では保護者という概念につきましては「少年に対して法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者をいう。」というふうになっているわけであります。
  205. 沢田広

    ○沢田委員 じゃ、やはり出ていっている先の雇い主が負う、こういうことでしょう、北海道から働きに出ていっているとすれば。  時間がもったいないのに、そういう遠回しに回りくどい答弁をしないでもっとはっきり答えられないのかね。もし出稼ぎに行っている場合にだれがその責任を負うのですかと聞いているのですから、そういう相談があったら、あなたみたいなのろのろな答弁じゃ聞いている人はわかりゃしないでしょう。だれが責任を負うのですかと聞いたら、さあ国元かな、いや親権者というのだけれどもだれかななんて、あなたがそう言ってたのじゃ話にならなくなるのじゃないですか。そういう場合はだれが責任を負うのですか。
  206. 濱邦久

    濱政府委員 今、委員おっしゃっておられる責任を負うという御趣旨を私正確に理解してないのかもしれませんけれども少年法少年審判手続との関係で申しますると、保護者と申しますのは、今申しましたように少年法の二条の二項で規定されているとおりでございまして、これは必ずしも親権者である親には限らないということになっているわけでございます。
  207. 沢田広

    ○沢田委員 結論的に言うと、私がその監督者ですあるいは管理者ですと言って出ていけばだれでもいいというふうに解釈して、例えば行っている勤め先の人が出れば出たでよし、その上司が出れば出たでよし、親元が来れば親元でよし、すべてに共通できる、こういうことですね。これは私も実際に経験していることなんです。だから、あえてその点だれが責任を負うのかということを、ちゃんと法律的にどうなのかということを聞いたわけですけれども、答弁では明確にされませんが、日本では通常そこの雇い主であってもよし、あるいは地域の人であってもよし、あるいはまた親元から出てきてもよし、あるいは被害の金額とかそういうものによって違ってくるのだろう、こういうふうに思います。  それから、時間がありませんから先に行きますが、一つは精神障害者等の場合における少年法の適用、特に少年の中にもそのことが書いてありますね。この障害者については非常に分類が多くて、どの障害者がどれにということは難しいものがあると思うのでありますが、概念的に少年法の中に含まれる、例えばわかりやすく言うと知恵おくれというようなものがありますか、そういうような場合も同じ二十歳になるのか、そうじゃなくて精神年齢としては幾らと見るのか、その辺はどういうふうに考えておりますか、ひとつお答えください。
  208. 濱邦久

    濱政府委員 これも委員の御質問の趣旨を私正確に理解したかどうか自信ございませんが、要するに、現行少年法のもとでは十八歳未満を少年というふうに規定しているわけでございます。  それで、例えば少年法規定しておりますところの少年審判するための要件と申しますか事由としましてよく申しますのは、犯罪少年それから触法少年、虞犯少年というような分け方をしているわけでございます。犯罪少年というのは犯罪を犯した少年、ですから刑事未成年者を除くわけでございます。それから、触法少年と申しますのは、刑事未成年者で犯罪構成要件に当たる行為、刑法に触れる行為を行った者を触法少年というふうに言っているわけでございます。それから、虞犯少年と申しますのは、それ以外の犯罪傾向のある少年を言っているわけでございます。したがって、我が国の少年法では十八歳未満を少年として同じように扱っているというお答えになろうかと思うわけでございます。
  209. 沢田広

    ○沢田委員 これもしゃくし定規な答えなのかあるいは抜けている答えなのか、こういうことになるわけですが、要するに十八歳というのは年月のものだけを十八というのであるが、ある意味においては体の悪い障害者もいるけれども、そうでない障害者もいる。問題は、障害者に対する扱いとしてどうするのかというのは、いろいろな障害によって違うのではないか、こういう提案をしているわけです。これは厚生省も含めてお答えをいただきたいのですが、障害者はこの中に入っているのですよね。項目の中に、少年の中には障害者の場合はこうだということが書いてある。ただ、障害者は非常に多様化しているわけですから、その 多様化されている障害の中において、結果的には十八歳はこれは憲法なんであってどうにもならないということなのか、そうでなく、障害によっては解釈が異なってくる、こういう意味なのかということを聞いているわけです。その点は、あなたの今の答えはやはり解釈を間違えて聞いているのですね。厚生省ともう一回お答えください。
  210. 濱邦久

    濱政府委員 厚生省からお答えがある前に、私ちょっと先ほどのお答えを訂正させていただきたいと思います。  ちょっと私答えが混乱しておりまして、たしか十八歳未満というふうに私が言ったというふうに今御指摘を受けたのですが、私が申し上げたかったのは、我が国の少年法では二十歳未満を少年として扱っているということで、それだけ訂正させていただきます。
  211. 弓掛正倫

    ○弓掛説明員 障害につきましては、障害の種類によってそれぞれ身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法というのがございます。また、児童福祉法には精神薄弱児も含めておりまして、特に年齢を区分けして何歳以上はこういう障害者だというような定義ではございません。
  212. 沢田広

    ○沢田委員 これは一番難しいところなんですが、精神障害者の場合は、いわゆる春夏秋冬によっても異なってくるし、あるいはその中身においても異なってくる。この法律の中で二十歳なら二十歳をもって成人とするということになった場合に、障害者の場合は例えば春先になればやはり若干そういう気が出るというようなものは、一番身近な者は知っているわけです。そういう場合に、それを少年と見るのかそれとも成人と見るのか、それはそのときそのときの都合だからということで今は見ないということなのか、その点を聞いているわけです。
  213. 濱邦久

    濱政府委員 委員の御質問をもう一度ちょっと、私正確に理解していないといけませんので確認させていただきますが、要するに我が国の少年法では二十歳未満を少年として扱っている、ただ、その中でも、今委員が御指摘のように精神の障害がある者とない者とで区別をしているのかどうか、あるいは二十歳以上の成人について精神の障害のある者を例えば少年と同様に扱うというような取り扱いをしているのかどうかということについてのお尋ねかと思うわけでございますが、もしそういうお尋ねでございますと、精神障害があるかどうかということによって成人、少年の区別には変わりはない、精神障害があるから少年と扱うとか、あるいは二十歳未満の少年について精神障害のある者とない者と区別するという建前はとっておらないというふうに理解しているわけでございます。
  214. 沢田広

    ○沢田委員 それは実際にはあってはいけないんですね。とにかく統計上は障害者が五%いるというんですから、どこにでもそれはいるということになるわけですから、そういう状況の中において起こり得る事態に対してどういう扱いをしていくかということを解釈として決めていくのです。犯罪が起きれば、それが障害者の犯罪であれば無罪になる、その状況によりますが、原則は無罪になる。こういうことで、犯罪の結果においてそれは決めていることなんだが、それ以前において決めていないんですね。その以前において決めていない。しかし、それがわかっていればそれ以前において決めていくのが正しい解釈ではないのかというのが今度は私の方の質問なんです。
  215. 濱邦久

    濱政府委員 これも委員のお考えを私よく理解してないところがあるのかもしれませんが、現行の刑法の解釈としましては、精神の障害等があって責任無能力の状態で犯罪に当たる行為を行った場合には責任を問えないということになっていることは、そのとおりでございます。
  216. 沢田広

    ○沢田委員 だから、私が言っているのは、予知できる精神障害者、しかし世の中では解放されて普通人として生活をしている障害者、これは一般的な厚生省の統計でも五%は障害者がいる。我々の中にもいるかもしれませんね。それが予知できる障害者であった場合、例えば春先等で予知できる障害者であった場合はそれは成人として見ていくのか、予知できる者はいわゆる成人とは見ないで少年として置いておくのか、知恵おくれなどはわかりやすい例の一つでしょう、こう申し上げたのです。――ではいいです。この問題はまた別の機会にやりましょう。ひとつ検討しておいてください、よろしいですか。――これも首を縦に振っているから、検討してもらえるということですね。  それから、大臣、この間民事訴訟の中で、もう時間だから、念を押しておきましたが、いわゆる民事の手数料、もう一回言っておきますが、伝わっているかどうか、最高裁判所に所得に応じて手数料を取ったらどうだ、こういう提案をしたんですが、きょう回答を求めようとは思いませんが、裁判所の方では手数料を固定資産の標準価格ではなくて個人個人の所得によって、私は例は悪いが年に三回と見てせいぜい三%、消費税じゃありませんよ、三%ぐらいが限度ではないか、こういうふうに考えているわけですが、所得に応じて訴訟ができるようにすることの方が公平じゃないか、こういうふうに思ってきたわけですが、これは御検討をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか、これはこの前の質問の続きですから。
  217. 則定衛

    ○則定政府委員 例の民事訴訟費用法の審議の際にも政府委員から御答弁申し上げたと思いますけれども、現在、法制審議会の民事訴訟法部会で、今おっしゃいました費用負担の問題を含めまして抜本的に検討しているところでございます。その過程で今委員指摘のような問題もあるいは出てくるのかもわかりませんが、今最高裁という御指名でございましたけれども、法制の問題がございますので、法務省が今後のそういう訴訟費用の問題について検討いたします場合に、そういった問題につきましても思いをいたして考えていきたいと思っております。
  218. 沢田広

    ○沢田委員 ただ、固定資産の評価基準を当てはめるということは邪道である、この前私はそう申し上げたわけで、それを前提として、じゃ次に何があるかということで、それは給与がいいのではないか、それがより公平ではないか、そうすればだれでもいつでも、自分の能力に応じて訴訟を起こすことができる、そういう意味において正しいと判断をしているわけです。念のためですが、例えば東京に住む老人夫婦の年金受給者などを考えたら、資産なんかで勘定されたら何千万円かになってしまうんですからね、幾らバブルがはじけたと言ってみても。だから、そういうことで年金者が訴訟ができないという抑止力を働かしてはまずい、こういう意味で申し上げているわけです。  あと残された時間が短いのでありますが、全部言ってしまいましょうか。そうすると、破産とはどういうことか、これは前に言ってありますね。答えてください。また、どういうペナルティーがあるのですか。
  219. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 お答えいたします。  破産というのは、これは破産法によって定められておる手続でございますけれども、要するに債務者の財産状態というものが悪化しまして、その債務者の財産では債権者に対する債務の支払いができない、いわば相殺権者に対する債務を完済することができないという場合に、申し立てに基づきまして裁判所が始める手続でございます。破産法百二十六条あるいは百二十七条等にその要件が記されているわけでございます。  破産手続開始されますといろいろな制約が出てくるわけでございますけれども、例えば破産手続上は財産に対する管理処分権が奪われるとか、あるいは居住についての自由の制限が加えられるとか、あるいは他の法令による身分上の失権というようなものがあるわけでございます。この財産の管理処分権の喪失とか居住等についての自由の制限というのは、破産手続が行われている間の問題でございます。破産手続が終わりますとこういういわば制約がなくなりますが、他の法令による身分上の制約というようなものが出てまいります。  具体的に申しますと、例えば破産者は、後見人 とか遺言執行者にはなれないとか、あるいは弁護士とか公証人とか公認会計士になる資格はないとか、あるいは株式会社とか有限会社の取締役は破産宣告がありますと当然に解任されるとか、あるいは合名会社、合資会社の社員についても同じような規定がございます。そういった意味で、破産の宣告を受けますと、一定の法律上の制約が課せられる、こういうことになっているわけでございます。
  220. 沢田広

    ○沢田委員 大臣、今問題を提起しているのは、一億八千万枚のカードですね。それで二万五千件以上の破産なんですね。今聞いたように非常にふえてきているわけです。カード破産と言った方がいいでしょうか。OLさんがそういう破産になっていくというようなことが非常に激増しているという、二万五千件を超える破産というものをどういうふうに大臣は今印象として受けとめておりますか。
  221. 田原隆

    田原国務大臣 特異現象だなという感じがまずします。昔はなかった、要するにカードというものが流通するようになってきてから起こった特異現象だなと。これもあっという間に広がってあっという間に気がついたということで、対応が少しおくれている嫌いもありますが、これから対応が必要だなという感じがします。これは商工委員会などでも取り上げてやっておるようでありまして、これからの急いでやらなければいけない問題であろうと思っております。しかし、これは単に制度だけでなくて、倫理的なものも含むのではないかと思っております。
  222. 沢田広

    ○沢田委員 例えばカードの手数料というのは一般的に八%ぐらいの手数料でやっているんですね。特別なのは一五%以上のもありますが、一カ月、二カ月ぐらいおくれて通帳からおろされる。その間現金がなくても済んでいるということがこういうものを助長している面もなきにしもあらず。しかも、一億六千万枚というと、働き人口に比べると、ちょうど六千万の三倍近いですね。ですから、そういうものを考えると、これも近代病の一つになっているのかなと思います。  そこで、大臣としては、今異常事態だというお言葉がありましたが、ぜひこの破産の現状について、商工を含めて、大臣の方でも御検討いただいて、適当な対処すべき方針というものを早急につくってもらいたい、こういうことで御回答をいただきたいと思います。
  223. 田原隆

    田原国務大臣 法務省の専門家とよく勉強して対処してまいりたいと思います。
  224. 沢田広

    ○沢田委員 最後になりましたが、実はこのほか飛ばしかあるのですけれども、きょうはこれは省略をいたします。  私の時間は最初四時五十七分までだったのです。大分私の方の仲間だけで時間がオーバーしたのですから、その分は節約をしまして、五時には終わらせるようにしようと思いますので、そういうことで、あとはまた別の機会にやりますから、そのときには、今みたいなのらのらじゃなくて、的確な答弁ができるように御協力を願って、叱責を含めながら質問を終わりたいと思います。
  225. 浜田卓二郎

    浜田委員長 次回は、来る十五日金曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十四分散会      ――――◇―――――