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野田国務大臣 私もこの教科書の
表現を見て、ああなるほど、こういう
表現の仕方もあるものかな、こう思って見ております。それぞれ見ると、私なりに
個人意見を言いますと、これは私
ども文責を持っているわけじゃありませんので、率直に言って多少どうかな。これは多分市場
経済を前提とする
政府という大前提が
一つあるのじゃないかな。やはりこれは
計画経済下ではこういうような
目標ではないのかもしれないですね。
それから若干気になる
表現ですけれ
ども、第四で「
中小企業を保護・育成することである。」というのは、これは率直に言ってちょっと言い過ぎだな。私
どもは
中小企業に十分手厚い支援をする必要性を考えておりますけれ
ども、保護
政策ではないと思っていますね。少なくともいわば大
企業と比べて
中小企業というものが、技術開発力、情報収集能力、マーケティングの話あるいは資金能力、いろいろな面で、やはり人的、資金的、技術的、いろいろな制約があるわけですから、そういったものをどう支援するかということで現在の
中小企業政策をやっておるわけで、そういう点で「保護・育成することである。」と言い切っちゃっているというのは多少どうかなという感じもしないでもない。
そういう
意味で、順序がいろいろあるかと思いますが、特に
中小企業については、今申し上げましたような
中小企業が大
企業に比べてハンディを背負っておるような
分野をどう支援するかということで今日まで、特に最近は今申し上げました金融の
側面、技術開発の
側面あるいはマーケティングの話のほかに人手不足というものが、特に
労働時間
短縮などの問題もあるわけですから、そういった
中小企業が
労働力をいかに確保するかということに今日特に重点を置いておるということは言えると思います。
それから第五の中に、「極端な
経済的不平等をなくすために、
所得の再分配をはかる」、これは私
ども、現在の我々の
政府としてそういうことを考えておるわけでありますけれ
ども、これはむしろ政治的――いろいろなことだと思います。恒久的に
政府の役割であるかどうかというものは、それはまた
政策の問題だ、政治の問題だと思います。
そういった面で見ますと、少なくとも私
どもは福祉国家といいますか
社会保障の充実ということは政治的にも大事な要請である。それから
所得の再分配の話も、もちろんまずそれぞれ労使間においてどういうふうに
所得が配分されるのかというような問題はありますけれ
ども、この
所得再分配というのは結果論という
側面も実はあると思っております。特に直接税の
世界において、財政、特に租税
政策の効用の
一つの中に
所得再分配効果があるということは、これはもう厳然たる事実であると思います。
それから、「市場
経済の長所がじゅうぶん発揮できるように、自由競争の条件を確保することでありこれも我々市場
経済の中で大事なことは、まず基本的に自由な新規参入ができること、そして同じ競争条件のもとでそれぞれ
努力した者が正当なる成果が得られるような
環境をどう整備するかということだと思います。そういった中から、不当なカルテルであったりあるいは優越的な地位を利用して抑えつけていくとか、そういう中に独禁
政策の非常に大事な仕事がある。さまざまいろいろな角度からの独禁
政策が入ろうかと思いますが、少なくとも
一つはそれぞれの持てる活力を自由に発揮してもらう、そのことがトータルとしては
経済にとっても
国民の福祉にとっても
プラスの成果が上がるんだという前提に立っておる。
そういう中で見てみると、不当な競争制限ということが行われるということは好ましくない。しかし一方で、弱肉強食的な姿になったのではぐあいが悪いというようなことから、若干の例外措置が独禁
政策の中でも認められておるということだと
認識をいたしております。
それから、「
景気の調整をはかって完全雇用と
物価の安定を
実現することである。」これはまさに
景気政策の
目標であります。しかしこれは、ご案内のとおり、我が国はたまたま今日までの
国民の
努力と、率直に申し上げて我が
政府の
政策と相まって、
世界の中でも最もすぐれた完全雇用の
水準と
物価の安定ということを達成しておるわけでありますが、
世界全体を見てみると、必ずしもそれがうまくいってない国々もたくさんあるわけであります。私
どもはその点を
念頭に置いて、さらにこれから完全雇用、
物価の安定の定着のために
努力をしていきたい。それは私
どもが常々申し上げております、雇用の均衡を維持しながらインフレなき内需中心の
安定成長を
実現をしていくということが大事なことだと申し上げておるわけであります。
そういう点で、この教科書に欠けておる視点は、実は国際
経済社会における協調という視点が
一つ欠けておるな、率直にそういう感じもいたしております。まだまだいろいろな視点があろうかと思いますけれ
ども、これはかなり思い切って五つに限定してあるものですから、あれっと思って見ておりますけれ
ども。
それから「公共的な用途をもつ財やサービスの供給」の問題、これはまさにそのとおりでありまして、まず
社会資本の整備あるいは生産基盤の整備、いろいろなことを、我が国はどちらかというと
民間の産業基盤の方が先行して整備されてきておるということから見れば、
生活大国を目指していこうという上で必要なことは、そういう
社会資本の整備を特に今世紀の間にさらに充実をしていかなければならぬ、このように考えておるわけであります。
時間の関係で多少大ざっぱな物の言い方で恐縮でありましたけれ
ども、大体そのようにこれを拝見して、
先生の御
質問を受けながらそういうふうに感じた次第であります。