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1992-04-22 第123回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年四月二十二日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 高村 正彦君    理事 岩村卯一郎君 理事 金子徳之介君    理事 杉浦 正健君 理事 東   力君    理事 簗瀬  進君 理事 石橋 大吉君    理事 前島 秀行君 理事 藤原 房雄君       赤城 徳彦君    石破  茂君       内海 英男君    大原 一三君       金子原二郎君    亀井 久興君       中谷  元君    鳩山由紀夫君       保利 耕輔君    星野 行男君       松岡 利勝君   三ッ林弥太郎君       御法川英文君    柳沢 伯夫君       有川 清次君    佐々木秀典君       志賀 一夫君    田中 恒利君       竹内  猛君    辻  一彦君       鉢呂 吉雄君    堀込 征雄君       目黒吉之助君    西中  清君       藤田 スミ君    小平 忠正君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  田名部匡省君  出席政府委員         農林水産大臣官 馬場久萬男君         房長         農林水産大臣官 今藤 洋海君         房長         農林水産省経済 川合 淳二君         局長         農林水産省構造 海野 研一君         改善局長         農林水産省農蚕 上野 博史君         園芸局長         食糧庁長官   京谷 昭夫君  委員外出席者         厚生大臣官房老         人保健福祉部老 中村 秀一君         人福祉計画課長         農林水産委員会 黒木 敏郎君         調査室長     ————————————— 委員の異動 四月二十一日  辞任         補欠選任   小平 忠正君     柳田  稔君 同日  辞任         補欠選任   柳田  稔君     小平 忠正君 同月二十二日  辞任         補欠選任   鈴木 俊一君     中谷  元君 同日  辞任         補欠選任   中谷  元君     鈴木 俊一君     ————————————— 四月十七日  農業改良資金助成法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三六号)(参議院送付)  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第六六号) 同月十六日  米の輸入自由化反対等に関する請願(小沢和秋  君紹介)(第一七三〇号)  同(金子満広紹介)(第一七三一号)  同(木島日出夫紹介)(第一七三二号)  同(児玉健次紹介)(第一七三三号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一七三四号)  同(菅野悦子紹介)(第一七三五号)  同(辻第一君紹介)(第一七三六号)  同(寺前巖紹介)(第一七三七号)  同(東中光雄紹介)(第一七三八号)  同(不破哲三紹介)(第一七三九号)  同(藤田スミ紹介)(第一七四〇号)  同(古堅実吉紹介)(第一七四一号)  同(正森成二君紹介)(第一七四二号)  同(三浦久紹介)(第一七四三号)  同(山原健二郎紹介)(第一七四四号)  同(吉井英勝紹介)(第一七四五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第六六号)  農業協同組合合併助成法の一部を改正する法律  案(内閣提出第六七号)      ————◇—————
  2. 高村正彦

    高村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農業協同組合法の一部を改正する法律案及び農業協同組合合併助成法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査に入ります。  順次趣旨説明を聴取いたします。田名部農林水産大臣。     —————————————  農業協同組合法の一部を改正する法律案  農業協同組合合併助成法の一部を改正する法律   案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 田名部匡省

    田名部国務大臣 農業協同組合法の一部を改正する法律案及び農業協同組合合併助成法の一部を改正する法律案の二法案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  まず、農業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして御説明いたします。  農業協同組合法は、昭和二十二年に、農民自主的協同組織としての農業協同組合の発達を促進し、農業生産力の増進と農民の経済的、社会的地位の向上を図ることを目的として制定されました。以来、経済環境農業及び農村をめぐる情勢変化対応して、農協の健全な育成を通じ農業振興地域発展に寄与し得るよう、所要制度改正を行ってきております。最近では、昭和五十七年に、信用農協連合会員外貸付制限緩和内国為替取引に係る員外利用制限廃止等改正措置を講じたところであります。  しかしながら、その後の社会経済情勢変化には著しいものがあり、とりわけ近年の我が国農業及び農村をめぐる状況を見ると、農業担い手不足顕在化農村高齢化進行等さまざまな課題に直面しており、このような状況のもとで、農協事業組織についても、営農生活両面での組合員ニーズ多様化金融自由化等への的確な対応が求められているところであります。  今後とも、情勢変化対応し、農協が本来の使命を果たしていくためには、その自主的努力にまつところが大きいことはもとよりでありますが、制度面においても、農協の行うことができる事業内容充実するとともに、執行体制強化を図る等の改善を進めていくことが緊要となっております。  このため、今般、農業協同組合法の一部改正提案することとした次第であります。  次に、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、組合事業内容充実を図ることとしており、農業経営効率化等の見地から、受託農業経営連合会も行うことができることとしております。また、高齢化社会対応して組合老人福祉に関する事業を行うことができる旨を法律上明らかにすることとしております。さらに、農協資金地域での活用を図るため、特定農協について員外貸付制度緩和することとしております。  第二に、組合執行体制強化するため、理事会及び代表理事法律上設置することとするとともに、学識経験者等理事への登用の観点から正組合員以外の理事の枠を拡大することとしております。また、内部牽制による的確な業務運営を確保するため、監事の業務会計監査機能拡充等を図ることとしております。  第三に、農協組織整備の円滑な推進に資するため、農協組織の各段階等において活用し得る事業譲渡等の規定を整備することとしております。  第四に、農事組合法人活性化を図る観点から、その設立のために必要な発起人の数の要件緩和する等の改善を行うこととしております。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。  続きまして、農業協同組合合併助成法の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。  農業協同組合合併助成法は、昭和三十六年に、適正かつ能率的な事業経営を行うことができる農協を広範に育成して農民協同組織の健全な発展に資するため、農協合併促進を図ることを目的として制定されました。以来、七回の延長を重ね、農協合併促進に大きな役割を果たしてきたところであります。  しかしながら、全国的にはいまだ市町村区域未満農協が約三割存在する状況のもとで、今後とも、農協組合員ニーズ多様化等対応した健全な事業運営を図るとともに、農業及び農村活性化に積極的に取り組んでいくためには、合併による経営基盤安定強化を図っていくことが喫緊の課題となっております。  このような状況を踏まえ、農協合併を引き続き促進して農民協同組織の健全な発展に資するため、所要改正を行うこととし、この法律案提案した次第であります。  次に、この法律の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。  まず第一に、合併経営計画都道府県知事への提出期限を三年間延長して、平成七年三月三十一日までとすることとしております。  第二に、合併経営計画を立て、都道府県知事認定を求めることができる合併の範囲を拡充し、特定専門農協合併を追加することとしております。  第三に、合併経営計画に定めることができる事項として、固定した債権の償却に関する方策を追加するとともに、都道府県知事及び農林水産大臣は、当該方策に従い実施する措置につき助成を行う法人を指定することができることとしております。  第四に、合併経営計画提出期限延長に伴い、都道府県知事認定を受けた農協合併について、税法上の特例措置を設けることとしております。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ、これら二つの法律案につきまして、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  4. 高村正彦

    高村委員長 以上で両案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 高村正彦

    高村委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。東力君。
  6. 東力

    ○東(力)委員 大臣にお伺いいたしたいと思いますが、農協組合員営農生活を補完し、農業生産振興を図るとともに、地域活性化に寄与することを基本的役割としているはずでありますが、近年、農業農村においては担い手減少耕作放棄地増加高齢化進行等が深刻な問題となってきていると思います。また、農協運営につきましても、まず第一に階層分化といいますか、専業農家兼業農家、さらには非農家組合員増加等が一層進んでおりまして、このために農協に対するニーズにつきましても多様化してきている。これにどう対処するかというような問題があると思います。  第二に、金融自由化等流れの中で、信用事業信用業務高度化専門化を迫られている中で、経営管理体制強化経営収支の厳しさ、特に小さい単協なんかではそうだと思いますが、こういう問題にどう対処するかというような問題が生じてきていると思います。  三番目に、今度の法改正合併等促進することになると思いますが、それによって経営基盤強化したり組織再編整備をしていく、こういったことに対する方向づけをどうするかというような問題が生じてきている、こういうことに対して法改正を行っていこうということであると理解しております。  まず質問の第一は、今回の法改正によって農協事業運営とかあるいは地域農業振興や、さらには農村地域活性化、こういったことにどのような効果が期待できるのか、これですべていろいろな趨勢をひっくり返すようなことにはならないと思いますけれども、今度の法改正は、要はどういうことをねらっているのかということが質問の第一点であります。  また、最近農林水産省におきましては、新しい食料・農業農村政策検討本部というんですか、これを設置しておりまして新しい方向を模索していると聞いておりますが、この農政の展開方向というか、こういうことを模索している中で、今回の農協法改正はどのように位置づけられているのか、これにつきましてもあわせてお答えいただきたいと思います。要は、大臣から、これで農家農村は何を期待できるのかということにつきまして御説明いただければありがたいと思います。
  7. 田名部匡省

    田名部国務大臣 時代変化についていくというのは農協もなかなか大変だろうと思います。特に、最近の経済情勢をめぐる変化というものは、農協執行体制、要するに、組合長や幹部の皆さんの、何といいますか、より質の高い経営というものが求められる時代になってきたと思います。その中で、これで万全かということでありますが、いろいろ改善しながら、この至らないところはまた手直しをしていく、常にそういう状況が続いていくんだろうと思いますが、当面、私どもこの改正においては、連合会による受託農業経営事業の導入でありますとか、あるいは農事法人制度改善設立要件を五人から三人に緩和するとか、農協による、高齢者農村地帯にも非常にふえておりますし、世話をする若い人たち減少しておる、減っておるということから、都市部よりも農村というのは、そういう意味ではどうしても手厚いものが受けられないという状況にあると思います。そういうことで、これも老人福祉事業というものを法律上明記する、あるいは経営管理体制整備、これは理事会制法定化でありますとか、員外理事枠を拡大するということを行うわけでありますが、何といっても、今申し上げたように、多様化する組合員ニーズ、あるいは金融自由化等対応するとともに、今お話しのように、農業振興あるいは活性化に寄与することを期待しているわけです。  営農指導事業充実、これは大事な要素でありますが、あるいは今これから進めようとする、あるいは先生お話しのように放棄地等がふえておりますから、そういうものも全部合わせて、農用地の利用調整あるいは活動の強化という面からも改善をしていかなければならぬ事態になっておるということでございます。自主的協同組織でありますから、私どもも、農協皆さんあるいは農村皆さん地域地域によっていろいろ事情があると思うのです。それに対応できるようにきちっとみずからが整えてくれるということを期待すると同時に、私たちもまた、十分そのようなことを指導してまいりたい、こう思います。  御質問の第二点でありますが、地域農業担い手あり方、将来の農業団体、機関のあり方などについて今省内で検討をいたしております。今回のこの改正における受託農業経営でありますとか農事組合法人制度、こういう改善は、もう既に現状では情勢を踏まえてどうしてもやらなきゃならぬという問題でありますからそれをやるわけでありますが、いずれにしても今後の新政策検討とも関連する事項、例えば担い手あり方に関する農協制度上の対応等については引き続き検討していく。これは進めるのは進めますけれども検討するものはまた検討を重ねて近々に大体の骨子をお示ししたい、それを、また先生方の御意見を伺って少し立派なものに仕上げたいということですから、これから整理の段階でいろいろあると思いますが、そういう考え方で進めていきたい、こう思っております。
  8. 東力

    ○東(力)委員 ありがとうございます。先生方の御意見というのは余りいい意見がないかもしれませんが、実際の農業従事者とか関係者意見をよく聞いて、実態に即した効果的なものをひとつ考えていっていただきたいと思うわけでございます。  次に、農業生産に関する農協の取り組み方に関連いたしまして質問をいたしたいと思います。  まず、農協組合員が生産する農産物の流通加工を初め、信用事業、共済事業等多種多様の事業を行っているわけでありますが、その存立基盤は何といっても農家農業生産に活力があるかどうかで非常に大きく違ってくると思うわけであります。このため、農協といたしましては営農指導を初め農作業や農業経営受託農地保有合理化のための農地利用調整事業等の各般にわたる事業能力を付与されているわけでありますが、今回の改正におきましては、特に連合会受託農業経営をできるようにするという点とか、あるいは農事組合法人に関する事項につきまして設立要件緩和する等の改正を行っていると思いますが、これの内容効果というもの、何をねらっておるかということについて、まずお聞かせ願いたいと思います。
  9. 川合淳二

    川合政府委員 今大臣からもお話がありましたように、今回特に、連合会受託農業経営とそれから農事組合法人に関する事項について改正をいたしております。  これは担い手育成とか規模拡大促進という観点からいたしますと、現実的に連合会が特に畜産等の分野で果たしております機能活用したいということが、まず受託農業経営を行うことの主要点でございます。畜産は、御承知のようにかなり規模の大きい経営があり、それは単協を超えた連合会がその支援なりをしているという実例、実態がありますので、こうした道を開きたいということでございます。  それから、農事組合法人要件緩和につきましては、担い手減少とか、今先生お触れになりました耕作放棄地増加などに対処いたしまして、この農事組合法人の一層の活性化と申しますか活用を図っていきたいということでございます。  いずれにいたしましても、これらは農家協同組織による営農体制整備充実という観点から行いたいと思っておりますので、こうした点で地域農業のそれぞれの実情に応じた振興に果たす農協等役割強化ということを主眼としたいと思っておるのでございます。
  10. 東力

    ○東(力)委員 その連合会受託農業経営というのは、主として畜産関係が具体的にあるんだというようなことでございましたが、一般的に言いますと、もう少し農協組織を簡素化しようというときに三段階から二段階というようなことがあって、連合会という段階は要らないんじゃないかという意見も聞くんですが、これと一見矛盾するように感じるんですが、ここのところ、ちょっと御説明いただけますか。
  11. 川合淳二

    川合政府委員 受託農業経営は、現在も単協につきましては既にこの制度がとられております。その単協におきまして、特に畜産関係が中心でございますけれども規模が大きくて、既にその取引あるいは資材の購入等につきまして直接的に連合会が携わっているものがございます。  一方で、単協合併あるいは大型化ということを通じまして、そうした農家についての対応の道は開いていくということになろうかと思いますが、現実的に現在では単協を既に超えて、連合会が関係し援助していくという形をとらないと間に合わないというような状況も出ておりますので、そうしたもの、主として農協を補完するという機能になろうかと思いますが、そうしたことでこの道を開きたいということでございます。
  12. 東力

    ○東(力)委員 農事組合法人につきまして、設立要件緩和してもう少し活性化を図ろうということに関しまして御質問したいと思うのですが、簡単に言うと、組合法人というのをつくって、いろいろな制限があるわけですが、もういっそのこと株式会社でやってはいけないのかというところまで、私は素人的に思うのですが、それに関しまして小さい質問からさせていただきます。  まず、農地を持てる者というのは今限られておると思うのですが、どういう人ですか。つまり、農協とか連合会がやれるようになっても農地を持てるとは限らないですね。どういう人が持てるのかということをお願いいたします。
  13. 海野研一

    海野政府委員 農地を持てる人でございますけれども、これは、みずから農地につきまして適正かつ効率的に耕作をしていくという意思のある人ということでございまして、ですから、農事組合法人とかその他の有限会社などにつきましても、実質的にそういう人たち運営をしていくものであるということが確保されている場合に農地が持てるというようなことにしているわけでございます。
  14. 東力

    ○東(力)委員 その農事組合とか有限会社、それに合名、合資会社も、いろいろ制限があるのでしょうが、持てるというふうになっておると思いますが、農協連合会はだめなんですね。
  15. 海野研一

    海野政府委員 現在のところの考え方といたしましては、その法人を通じて直接その法人事業としての耕作、これに事実上その法人を支配する人がタッチしておるということでいっておりますので、農協の場合もちろん、例えば農地保有合理化事業というような格好で短期的に持つことはございますけれども、いわゆる農業経営をするための農地取得ということは認めていないわけでございます。
  16. 東力

    ○東(力)委員 私ども、例えば和歌山県の農村地域に住んでおるというか出身の者が大変憂慮していることは、農村社会あるいは農業衰退とかあるいは過疎化ですね。農業に魅力があれば後継者も育つでしょうし、担い手というものを心配する必要はないわけでありますが、そういうことから、衰退それから担い手がない、過疎化、そういう現象がずっと続いている。これを何とかしようというのが私たち政治課題の大きいものです。  それから、大臣もきのう、おとといと出席されておりましたが、地方拠点都市につきましても、同じような流れの中で日本全体を均衡ある住み方あるいは産業配置をやって、均衡ある成長をしていこう、生活面でも、どこに住んでいても文化的な水準というか、そういったものをアメニティーも含めて享受できるようにしていこう、そういう政策が非常に大切だと思うわけです。それを具体的にどうやっていくかという方法は、財政面とかその他地方公共団体いろいろありますが、やはり一番力を入れたいのが、例えば企業誘致ですね。これは、農業だけではなくて製造業とかあるいは観光とかいろいろとあると思うのですが、今日の資本主義社会で最も大きな資本を集められる、あるいは人材を集められる、あるいは企業家精神を発揮できるという制度として一番力を発揮しているのが株式会社だと思うのですが、農業でなぜ株式会社にやらせてはいけないのか。  例えば、農林水産省の所管である水産業におきましても、株式会社が大いに頑張って世界に進出しているわけでありますが、いっそのこと農村地域株式会社にやらせたらどうかということを考えるのです。これのメリットは、先ほど言いまし たように、資本とか人材とかノウハウとか、あるいは企業家精神を言いましたが、もう一つスケールメリット、例えば観光をやっている、民宿をやっている、あるいは食品加工をやっている、流通をやっている、リゾートをやっている、そういう会社農業経営に進出すると、非常に大きな効果が期待できるのじゃないかということを思いつくのですが、一方で副作用とか、既存のいろいろな体系とかにインパクトを与えて、それが非常に耐えられないマイナスだということもあろうかと思うのです。  いずれにいたしましても、個人の段階ですと、専業農家で頑張っているよりも兼業農家でどこかヘサラリーマンに行って、そして休みとがその他を利用してするような農業の方が、所得も高くて安定しているという感じも見られますので、それを組織とか法人にも拡大して、いっそのこと株式会社を導入したらどうかという気もするのですが、大臣、いろいろな専門的なことはまだ事務当局から聞くとして、こういう考え方に対してどういうふうなお気持ちを持っていただくでしょうか。
  17. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私も東先生と非常に同じような感じでいろいろと考えておりました。どうしても土地問題等が、非常に難しい問題がありますけれども、実際いい経営をしようとすると、やはり経営感覚のある人が必要、それから資金というものがこれは必要だ。そういうところが若干まだ、今すぐ新しい農業農村ということでやってみると、少し難しいかなという感じは受けます。  物によっては、私の地元でも養豚でありますとか養鶏、そういうものは会社経営でやっておるところもある。ただ、このえさの研究とかなんとかというと、農地を持てない、それで借りて研究をしたりなんかしているところもある。あるいは、株式会社の場合のメリットというのは、やはり雇用の安定といいますか、身分あるいは給料もきちっと決められてやれるといういい点というのもあると思うのです。現状では、家族だけでやりますとどうしても、自分の子供ですから、給料を払うという意識がないんですね。ですから、何か隣の青年は工場に勤務、車で通って、それで自由に使える。ところが、後継者に生まれて農業をやると、一定の収入というものは定まっていない、そういうところがやはり問題があるだろうと私も思うのです。  ですから、問題は、土地をどうするかという問題等がありますけれども、本当に農家皆さんもそういう方向でいい、何か関連する企業も含めていろいろなことをやれるということで、全体としてうまくいくということになれば、いま少し私も踏み込んでいいのかなという感じを持っております。ここのところはまだまだ議論の余地がありますので、感じとしては私はいい方向に進むのでないかなという感じがする。しかし、これも農家自身の考え方、取り組み方が何といっても大事でありますから、嫌だというものを無理にもさせられませんが、何か方法があればこの打開の道というものは今後議論をして、そして進めていく方法もあるのではないかなという、これは感じです、感じを持っていますので、大体同様の考えを私も持っておるということでございます。
  18. 海野研一

    海野政府委員 申しわけありませんが、少し補足をさせていただきます。  今大臣が申し上げたようなことで、いろいろ企業的なセンスを入れていかなければいけないということは先生おっしゃったとおりでございます。そういう意味で、一つは、現にいろいろ例えば機械作業の面でございますとか育苗とか種子の開発とかというような形で、いろいろ大企業のメリットを生かすそういう格好で入れてきているわけでございます。  また、現実に土地を持っている農業経営自体につきましても、もちろん有限会社その他ではございますけれども、実際に今大臣が申し上げたような経営の中のいろいろな経理その他をしっかりやっていくために法人化というようなことは有力な方法になるだろうというふうに思うわけでございます。ただ、株式会社そのものが土地を持つということになりますと、株式会社が、一般的にはこれは株式の自由譲渡が前提になっておりますために、必ずしも農業をやるという目的でなくて、株式の取得を通じて土地を手に入れようというような人が出てくるという問題が一つございます。  それと、スケールメリットの点でございますけれども、現在世界的にも大体いろいろな大企業が農業に乗り出しては、事実上結局家族農業が支配的になるというような傾向が全体にありますほかに、我が国の場合には分散錯圃というような状況がございまして、現在だと今の一般的な土地条件のもとでは五ヘクタールぐらいから先はなかなかスケールメリットが出てこない。圃場整備その他がうまくいって、相当程度中で換地その他で寄せた場合でも、十町歩か二十町歩か、その辺のところから先なかなかスケールメリットが出てこないという中では、大企業が大きくやったから大いにここでスケールメリットが上がるというものでもないということでございますと、そういう中で出てくる大きな企業、一体どういう意図で出てくるだろうかというようなことも勘ぐらざるを得ないというような問題があります。  もちろん、いろいろ企業的なセンスを入れていくという意味で、大企業の関与でございますとか、さらには農業経営自体を法人化していくというような問題は必要なことだろうと思いますが、ただ、株式会社そのものが農地取得をするということにつきましては、ちょっといろいろ問題が大きいと思っております。
  19. 東力

    ○東(力)委員 大臣が、もちろん責任があるとかなんとかじゃなくて、前向きに考えたらという弾力性ですね、これは非常に大事だと思うわけですが、それを示していただいて、今だめだよという話もよくわかるのですけれども、時間がないのでまたゆっくりと研究したいと思いますが、前向きで検討してみてほしいということがまず第一ですね。  それから、そのスケールメリットの話でも、土地をいろいろしろというスケールだけ言っているのじゃないのですよ。会社が大きければ、例えばハイテクをやって、土地がなくたって物すごい生産ができることだって今から出てくると思うのですよ。だから、土地が少なくてもハイテクで物すごい生産を上げられるとか、しかしそのために大きな設備投資が要るとか技術の開発が必要だというようなことも出てくると思うのですね。だから、耕作放棄地がたくさんふえておる中で、なおかつハイテクなどが発達して大学の農学部も非常に競争率が高くなった、非常にうれしいことと私は思って聞いたわけですが、こういう中でやはり変化を積極的に取り入れて農業活性化あるいは地域活性化につなげていく道があるのじゃないかということをひとつ検討課題にしていただきたいと思います。また、大臣のリーダーシップでひとつよろしくお願いいたしたいと思います。  時間が余りありませんので、あと一つ二つ大事なことをお聞きしたいと思います。  その前に、農村社会高齢化への対応で、何をやられるのですか、老人福祉事業というものをやれるようにするという話もあります。これにつきましては今質問いたしませんが、市町村のいろいろな大きな役割を担っていこうという話、代理をしようというような話になることも多いかと思います。合併等で広域になったときに、市町村の行政とどうやって連携を保っていくか、調整をしていくかということが全体としても大きな問題になると思いますけれども、この福祉政策につきましては特にその点を十分に、どうやってやっていくのかということにつきまして関心がありますが、効率的にやれるように努力していただきたいと思います。  私の次の質問信用事業についてでありますが、金融の一括を含めて、農協系統信用事業につきましても証券信託業務への参入の道が開かれたわけでありますし、また国債の窓販、ディーリング等の業務能力も付与されることになったわけですね。それから農協の員外貸出規制の緩和を行う等、業務内容充実を行うこととしておりますが、業務の拡大に伴ってリスクも増大してくると思うのです。非常に激しく動く中で、バブル経済の崩壊、特に銀行とかノンバンクが大変苦しい状態に置かれておりますが、こういうことを考えるときに、やはり行政当局もしっかり指導、監視してもらいたい、検査もしてもらいたい、そして、不祥事はもとより、貯蓄者に対して迷惑をかけないようにしてもらいたいという気持ちが非常に強いのであります。  したがいまして、私の質問は、今度の改正内容がどういうねらいをして、その結果、我々の目的としている農業振興とか農村地域活性化に、ほかの金融機関もあるでしょう、農林中金とか農林公庫もあるでしょうが、その中で農協信用事業にどういうことを期待しているのか。そして事故防止に対してどのような措置をとろうとしているのか。  それからもう一つ聞いておきたいと思いますが、営農関係ですね、先ほどやはり農協農業振興ということを基本にすべきだということはありましたけれども、職員数から見ると購買部門が三三%を占め、信用部門が二六%、それから指導部は八%しか占めていないというように、何か数からいうと経済、流通あるいは信用事業は拡大し、組合というものがだんだん企業化、官僚化している中で、本体、本来基本である農業に対する指導が若干弱いのではないかということがございますので、この点につきましても注文、お願いをしておきたいと思います。  まず信用事業についてお答え願います。
  20. 川合淳二

    川合政府委員 今お話ししましたように、金融関係の一括法を含めまして、信用事業について業務内容充実それから経営の健全性の確保に関する点につきまして改正をお願いしているところでございます。  御承知のように、金融の自由化が進んでおります。その是非はともかくといたしまして、農協経営の基盤をなすものの重要な部分が信用事業でございます。したがいまして、この信用事業が健全に運営されるということが今後の農協経営に非常に大きな影響があると思っております。その中で自由化の競争が進むわけでございますので、この競争条件の整備を図って多様化する組合員ニーズ対応するということが主眼でございますが、今まさに御指摘のあったように、これはリスク管理と申しますか、リスクを一方で伴うものでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この経営の健全化、あるいはそのためにも業務内容充実ということが必要ではございますが、やはりそうした体制のできているところからこうした道を開いていくということが必要であろうと思っております。そういうことも考えまして、今回の法律改正では業務執行体制整備ということに大きな主眼を置いて改正を図っているところでございますが、これは法改正だけではもちろん十分ではございません。今後の運営あるいは指導にまつところがたくさんありますけれども、まずそうした形で管理体制の整備ということに一つの中心点を置きたいと思っているわけでございます。  それから営農指導問題でございますが、これはまさに先生御指摘のように農協の基本問題といいますか、農協の本来的事業であるわけでございます。それがともすればないがしろにされているという御批判があることも承知しているわけでございますが、これは法律改正というよりも、やはり実態的にどう取り組むべきかという面もかなり大きいと思います。この法改正を契機に、もう一度この問題について本来事業であるということを認識いたしまして、指導面におきましても十分対応するように考えていきたいと思っております。
  21. 東力

    ○東(力)委員 もう質問の時間が終了しましたので、質問ではなくて最後のお願いを一つしておきたいと思います。  広域合併に関してでありますが、こういうことをやっていく中で地元にもいろいろ心配とか動きがありますので、まず第一に、これに当たりましては営農指導地域事情に即してやっていただきたいということが一つ。それから第二には、市町村行政との連携をしっかり確保していただきたい、その努力をしていただきたいということが第二であります。第三は、過疎化に拍車をかけるような、事務所を閉鎖するとかそういうことにつながっていかないようにお願いいたしたいと思います。それから第四は、やはりそうなってきますと末端の農民との接触あるいは相談というものが減ってくる、疎くなってくるような感じがいたしますが、そういうことのないように極力気をつけていただければありがたいと思います。  どうもありがとうございました。
  22. 高村正彦

  23. 岩村卯一郎

    ○岩村委員 ただいま議題となりました二つの法案について質問いたします。ただいまの東先生質問と重複するする点も多少あるかと思うのでありますが、事柄が重大でありますので、その点につきましては再確認、こういう意味で御理解をいただきたいと思うわけであります。  まず第一に、基本的な農水省の考え方であります。  大臣も先ほど申されましたが、昭和二十二年来、農協農業者を主体とする自主的協同組織として、農業生産の増進と組合員の経済的社会的地位の向上に努めて、我が国の農業農村発展に重要な役割を果たしてまいりました。そのことは御高承のとおりであります。しかしながら、近年、内外の経済社会情勢の著しい変化の中にありまして、我が国の農業農村は都市化や混住化の進行、さらには担い手減少過疎化高齢化等による中山間地域の活力の低下などのさまざまな課題に直面しているわけであります。  中でも、特に私が強調いたしたいのは、農業農村が直面している最大の問題は、高齢化と新規就農者の減少による後継者難と担い手不足であります。これが十五万ヘクタールに及ぶ耕作放棄による農地の荒廃にもつながっているわけであります。現状のままでは日本農業は内部から崩壊するおそれさえあると指摘せざるを得ないわけであります。極めて深刻な状況であります。  また、農協組織事業について見ましても、大規模専業農家から兼業、非農家にまで幅広く分化した組合員の多様なニーズにどのように対応していくのか、そして金融の自由化のもとで、信用事業を初め共済、経済事業等すべての事業分野におきまして、他業態との競争の激化が想定されるというこれまた厳しい情勢にどのように対応していかれるのか、大きな課題を抱えておられるわけであります。  このような状況のもとで、農協が今後とも組合員の負託にこたえるとともに、地域農業振興活性化のために期待される役割を発揮するためには、農協自身どのように取り組んでいくのかという点、また政府としては農協の取り組みについていかなる対応をなされていくのか、まずその基本的な考え方について大臣の御見解をお示しいただきたい。
  24. 田名部匡省

    田名部国務大臣 先ほどもお答えしたところでありますが、何といっても農協農業者の協同の組織であります。したがって、これだけ激しく変化する社会情勢を的確にとらえるということがもう何よりも大事なんですね。そのためにはこの指導陣の先取り親といいますか、そういうことが非常に求められておると思うのです。そこで、そういうことにしっかりと対応しながら事業運営を進めていくことが大事だ、そのことが農業振興活性化に寄与していくわけでありますから、私どもとしても大いに期待をしたい。  去年の十月でありますけれども農協大会で今後の事業運営あり方あるいは組織改革の推進、こういうものが決議されまして、このため、この事業組織の見直し等を進めていると伺っておりますが、私どもとしても、農協協同組織としての原点に立って、期待される役割、とりわけ組合員営農生活を基本とした事業運営が確保されるように、こうした自己改革の努力、そうしたものに対して的確に指導もいたしてまいりたい、こう考えております。
  25. 岩村卯一郎

    ○岩村委員 基本的なお考えについてはよくわかりました。  次に、法案の中身に入りますが、まず農協農業生産に関する事業機能についてであります。  農協は、農業者の協同組織として組合員に対する営農指導事業を初めとして、農作業の共同化、生産性の向上を図るためのさまざまな事業を行っているわけでありますが、今回の法改正においては、連合会による受託農業経営農事組合法人要件緩和という二つの面での改正が盛られているわけであります。  このうち、受託農業経営については、昭和四十五年の制度導入以来、経営受託するにはその地域の自然的、経済的条件を日ごろから最も熟知している必要があるという認識のもとで、その実施主体を地域に根差し、農家を直接の構成員とする単協とすることが適当であると言われまして今日まで運用されてきたものと承っておりますが、今回これを新たに連合会にも行わせる、その目的はいかなる理由によるものなのか。また、実際に連合会が実施する場合におきましてはどのようなケースがあると想定されるのか、この点についてまずお聞かせをいただきたい。  また、現場の声としては、連合会受託農業経営の道を開くことは企業的農業経営の志向が強まってまいりまして、ひいては大企業の参入による農地の買い占めに道を開くことにつながるのではないか、こういう危惧の声が聞かれます。この点については、そのような心配は全くないのかどうか。  さらに、法改正によって連合会に実施する道を開いたとしても、受託農業経営事業の実施主体についてはやはり地域に密着した単協が基本であって、連合会はあくまでもその補完に徹すべきだ、こういうふうに私は考えるわけでありますけれども、いかがでありましょう。
  26. 川合淳二

    川合政府委員 今回受託農業経営連合会にも広げたいと思っているわけでございますが、今お話のございましたように、そもそも受託農業経営は、農協組合員営農を補完しつつ、規模拡大などを推進するという目的のために昭和四十五年に制度化されております。近年、畜産などの分野におきまして農家専門化とか規模拡大が進展しておりまして、技術、経営指導などの点で単協よりも連合会が直接対応している、えさの供給とか営農指導などが直接行われているという面が出てきております。受託者の確保という面でも連合会の広域性を活用した方が効率的な場合もあるというようなこともございまして、この道を開いたらどうかということで今回の改正をお願いしているわけでございます。  具体的なケースとして、今私どもがイメージがございますのは、畜産の分野で既に相当程度大規模化が進んでおります養豚などの中小家畜を対象にした農業経営で、技術、経営指導面で既に単協よりも連合会型を採用しているというようなものについて、受託経営連合会が行うということが効率的であるというような場合を想定しているわけでございます。  ただ、こういう連合会の道を開くということでございますが、御指摘のように、やはり一番地域に密着した単協が引き受ける、受託するということが最も望ましいわけでございます。したがいまして、連合会がやるケースはあくまでも単協の補完という位置づけをしてまいりたいと思っております。  それから、御指摘の大企業の参入による農地の買い占めにつながらないかという点でございますが、もちろん連合会協同組織、系統組織の一員でございます。そうした観点から、協同組織による営農体制整備の一環という中でこれを行っていかなければいけないと思っておりますし、当然そうあるべきものだと思っております。私どもといたしましても、単協連合会の協調のもとに、連合会対応した場合により効果的であるというようなことをよく指導してまいりたいと思っております。     〔委員長退席、簗瀬委員長代理着席〕
  27. 岩村卯一郎

    ○岩村委員 単協の補完それから大企業の農地買い占め、こういった点についての歯どめ措置について十分ひとつ留意していただきたい。要望いたしておきます。  次に、農協経営管理に関する諸制度、法制度については、今日の農協事業をめぐる状況対応いたしまして的確かつ機動的に業務執行を行うためには、これにふさわしい執行体制整備を図ることが必要であります。したがって、理事会制代表理事制、こういったものの法定化を初めとして、種々の内容改正となっています。この点については時宜を得た施策とそれなりの評価をいたしておりますが、その中で理事についてお伺いいたしますけれども、学識経験者や専門家を登用する観点から、員外理事を拡大するとともに職員との兼職を認めること、こういうふうになっておりますが、今回の法改正を受けて、実際に有能な学識経験者をどのように登用していくおつもりなのか。また、この点に関連して、組合員の幅広い意向を反映するため青年層や婦人層の登用を求めておられます。どのような指導をこの点について行われるのか、まずお聞かせを願いたい。  また、懸念される問題としては、職員と理事との兼職によって、ところによっては理事のみの主導によって業務運営が行われていく傾向が強まるのではないかという、つまり実務と経営の権限の集中はいただけない、こういう現場の声がかなりあるわけであります。この点についてどのように歯どめをかけ、そして健全な農協運営ができるように対処されるおつもりなのか、明らかにしていただきたい、こう思うわけでございます。
  28. 川合淳二

    川合政府委員 農協経営と申しますか運営が、近年の内外の取り巻く情勢変化に応じまして、非常に専門化あるいは高度化しているわけでございます。また、組合員の要望あるいはニーズがいろいろ多様化しているわけでございます。したがいまして、それを受けとめる、いわゆる役員であります理事さんの能力といいますか素養と申しますか、そういうものを含めまして、やはり高度なものが求められてきているというふうに思っております。  したがいまして、今の理事制度の中でいろいろな形で理事が登用されるという道を開きたい。当然のことながら、地域によりましていろいろな状況かございますので、一定の型にはめた形で登用ということを考えるのはとても適当でないと思いますが、道を広げたい、弾力的な道を広げたいということが、今回の改正の一番の主眼点でございます。  今お話がございました青年層とか婦人層の登用ということは、法律改正だけでできるということではもちろんありませんので、そのためには、例えばこうした青年部会あるいは婦人部というようなものの活性化あるいは強化ということがまずある。また、それ以前の問題かもしれませんが、正組合員にこうした人たちが入っていくというようなことの地道な努力がまず必要だと思いますが、それと同時に、やはりある意味では農協の外の人に農協経営に参画していただくという道を少しでも広げたいということが今回の改正でございます。したがいまして、改正自体によってすぐそういうふうになるということにはならないかもしれないわけでございますが、やはりそうした道を開くということを徹底することによりまして、そうした考え方農村あるいは農協組合員に持っていただくということが、一番大きな今回の改正の主眼点だというふうに御理解いただきたいと思います。  したがいまして、職員と理事との兼職、これにつきましても、今御懸念がありましたような点の御指摘があることは私どもも承知いたしております用地域によって、これの取り組み方につきましてもいろいろあろうかと思います。これにつきましては、やはり理事会あるいはもっと言えば総会でのある種の、言葉は悪いのですが、監視といいますか、執行部に対する監視というものを、いろいろな制度的にも私ども今回若干整備したつもりでございますけれども、そうしたところからも見ていただくということが必要であろうとは思いますが、やはり弾力化、登用の道の弾力化を開くという意味で、この兼職の点についても御理解をいただきたいというふうに思っている点でございます。
  29. 岩村卯一郎

    ○岩村委員 青年、婦人層の登用については問題はなかろうかと思うのでありますが、問題があるとすれば、今ほど申し上げました職員の理事との兼職の問題であります。この点については、先ほど申し上げましたように、権限の集中化ということによって、理事の一方的な主導によって農協経営が行われる、運営が行われる、こういう懸念が現場において強うございますので、その点について行政指導によって歯どめをかけていただきたい、これはぜひ要望をいたしておきたいと思います。  次に、農協系統の組織整備につきましてお伺いをしますが、昨年の十月に全国農協大会で、みずから事業二段・組織二段とすることに取り組んでいくという決議をなさいました。今後着実にその決議が具体化されることを期待しているわけでありますけれども、こうした動きを現実のものとして実効あらしめるためには、その前提となるものはより一国会併の推進を図る必要があると考えるものであります。実際に現場の組合長等にお話を伺ってみますと、農協合併を進めていく場合、農協の中にはいろいろな複雑多岐にわたる問題が伏在をいたしております。こうした点を克服して合併を進めていくためには、何らかの助成措置がないと進んでいかない、したがって合併助成法の延長とか、あるいは拡充はどうしても必要であるという意見が多かったわけであります。  そこで、今回大幅に内容が拡充されている合併助成法について若干お尋ねをいたしますが、農協系統におきましては、二十一世紀までに現在の三千四百余の農協を千の農協にする、こういうことを目標として、合併に取り組んでいるところであります。政府は、これを助成法を初めとして種々の施策で支援をいたしているわけでありますが、このことはまことに結構なことであります。ぜひとも推進すべきでありますが、当局は、果たして助成法の延長期間である三カ年間に農協合併の数はどの程度進展すると見込んでおられるのか。そして、この間に事情の異なる農協同士の合併促進するための具体的にいかなる指導を行っていこうとなされるのか。この指導方針が適切に行われませんというとなかなか進まない、こういう面が出てくるわけでありますので、明確な方針をひとつお聞かせをいただきたい、こう思うわけであります。
  30. 川合淳二

    川合政府委員 今お話ございましたように、農協合併は、最近の情勢からまいりまして、農協の基盤を強化するということから今まで以上に必要になり、かつ緊急の課題になっているというふうに思っております。  今お話がございましたように、系統組織を二十一世紀までに千農協にするという構想を目指しまして、その促進を図っているわけでございます。今御質問ございました、今回の助成法の延長の三年間でどの程度具体的に進むかということは、自主的協同組織でありますし、農協の自主的な系統組織の推進によって進められるものでございますので、どのくらいというふうに具体的な数字でお答えすることはなかなか難しいわけでございますが、この前の第七次の期間中は、平成元年からの三年間におきまして約五百の農協減少、三千九百ありましたものが三千四百になったということなどの実績がございます。最近の系統の状況を見ますと、第七次の期間以上に合併の機運が高まっているというふうに見受けられますので、こうした数字以上の取り組みが図られるのではないかというふうに今のところ考えているところでございます、  これはもう先生御承知のとおりでございますし、今御指摘ございましたように事情がそれぞれ異なる組合同士の合併でございますので、地域によっていろいろ事情がございましてなかなか困難な問題があるわけでございますが、やはりこうした情勢といいますか環境の変化の中で、やはり基盤を強化するというそうした必要性につきまして組合員がよく理解をするということ、それからこれは各県で取り組んでいるわけでございますが、各県の合併の計画を具体的に立てて、そのスケジュールに基づいて進めていくということ、さらには問題は合併後のことでございますから、それについての構想あるいは見通しというものをなるべく具体的に示しながら、役職員だけではなくて組合員と一体になった合併の推進というものが必要ではないかと思っておりますので、私ども今後ともこうした観点で指導をしていきたいと思っております。
  31. 岩村卯一郎

    ○岩村委員 実際の合併の問題を進めていく場合に、農協の役員同士あるいは組合員同士ではなかなか難しい面がある。そこで、所によっては町村長さんばかり役をやって、そしてかなり、農村というのは一杯飲まねば本当の本音が出ない、こういうことで自腹で出すか町費を使ってやっているところもかなりあるのですよ。いわゆる呼び水ですね。そういう苦しい中でも何とか進めていこうというのが実態であるようでありますが、今回二億幾らか合併のための予算を計上されておりますが、その予算というのはどのようにお使いになるわけですか、お聞かせいただきたい。
  32. 川合淳二

    川合政府委員 今お話にございました、私ども平成四年度予算で計上いたしましたものは、合併の推進を図るために各県で指導をする上での予算、あるいは農協連合会などが推進をする上での補助金というようなものから成り立っておりますが、考え方といたしましては、一つは合併によりまして市町村行政との関係を緊密にしていく、逆に申しますとその緊密化が薄れていくことについて、そういうことのないようにしていきたいということが一つ。それからもう一つは、先生今御指摘がありました、やはり合併を進めていく上で一番難しい点は、やはり負債と申しますか固定化負債を持っている農協を一緒に合併していくということについて、他の農協がなかなか十分受け入れられない、そういう状況がございますので、そうした経営問題につきまして、財務問題と申した方が端的かもしれませんが、そうした問題について合併の前後におきまして十分指導をして、合併のしやすい、円滑に進めるような基盤なり環境をつくっていくということを主眼にした予算でございます。  一方、これにつきましては、今回御審議いただいております合併助成法の中で、固定化債権の対策といたしまして基金構想を取り入れております。これも、そうした合併の支障となる点につきまして、何とか円滑化を図るための対策等の一環、として位置づけ、こうした形で支援をしていきたいということで改正をお願いした点でございますので、こうした点を予算と相まちまして推進を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
  33. 岩村卯一郎

    ○岩村委員 先ほど余り生臭い話をして恐縮だったのでありますが、適正な使用によって合併がスムーズに進行するように御配慮を願いたい、こう思います。  さて、最後のまとめとして大臣から直接力強い御答弁をひとつ承りたいのでありますが、今回の農協法改正は、農協が我が国の農業農村活性化に果たす役割強化のためには一つの前進をもたらす、こういうふうに期待をいたしているわけでありますが、冒頭にも申し上げましたとおり、今日の内外の厳しい課題に対処していく上で、農業担い手確保を初め環境保全型農業の確立という世界的な課題にも抜本的な対策をさらに講じ、足腰の強い農業育成を図っていくことが求められておるというふうに考えます。  この際、大臣から、農政の責任者として今後の農業政策の基本的方向づけについて明確な指針を示していただきたいのであります。どうぞ大臣、ひとつ明確にお願いします。
  34. 田名部匡省

    田名部国務大臣 もうおっしゃるとおり、この現在の我が国の農業農村というものは、担い手の不足でありますとか高齢化、国際化、本当に大きな節目を迎えていると思います。二十一世紀に向けて、以降どういう農業にするかということは大事なことだと思うのですね。お世話になるお年寄りがふえる、出生率の低下による、ですから従来の感覚ではもうやっていけないということをみんなが認識するということが私は大事だと思うのです。  そのためには、一番問題になっているのは土地利用型の農業が非常に難しい、困難をきわめておるということでありますから、ここをどうしても、この経営意識を喚起しながら、いつも申し上げるように経営管理能力にすぐれた担い手、あるいは企業的経営のできる担い手育成するということが非常に大事だと思います。  また、地域によって農業はそれぞれ特色を生かした農業振興をしなければならぬ。ですから、そこのところと、いま一つ生活関連、これがもう大都市に資本を投下したという嫌いはあると思います。農業もやりましたけれども生活関連の部分、環境という部分については私は投資が少なかった、こう思います。  そこで、この美しい村づくりでありますとか多様な就業の機会、これはきのう、おとといと集中審議をやりましたが、地方拠点都市整備、これらも含めて都会に若い人たち流れないようにしたいということでありまして、都会から行くことも大事でありますけれども、まずこの定着を図るという観点から、就業の機会を確保するということによって活力が出てくる。若い人たちがどんどん村を離れるということになると、本当に村の存立あるいは社会的な機能というものまで失われていくわけでありますから、そういうことで、今進めております農業農村をめぐるいろいろな問題点というものを洗い直して、二十一世紀という新しい時代にふさわしい農業農村方向を明らかにしてまいりたい、こう思っております。
  35. 岩村卯一郎

    ○岩村委員 終わります。
  36. 簗瀬進

    ○簗瀬委員長代理 堀込征雄君。
  37. 堀込征雄

    ○堀込委員 私は、今度の農協法改正は極めて大改正でありますし、しかも時代的な背景を見ますと、戦後日本の農政の曲がり角という意味で非常に大きなエポックを画す法改正ではないかと思うわけであります。  と申しますのは、戦後日本の農業、一つは農地法による自作農主義、こういうもので、食糧不足の時代を自作農を創設することによって、またもう一つは食管法などによって、そして疲弊した農村を救うために農協制度によって、私はこういう三つの大きな柱によって戦後の農業政策が行われてきたし、戦後の日本の農業が培われてきたというふうに思うわけであります。  今考えますと、農業生産発展をしまして非常に過剰な時代になった。そして、この戦後農業を支えた、あるいは農政を支えた三つの制度とも見直しが必要とされているというような曲がり角に立っているのではないか。つまり、新しい時代対応した制度の確立が求められているという時代背景が今あるのではないかというふうに私は思うわけでありまして、そういう意味で今度の農協法改正は、戦後の日本の農政の一つの柱であった農業協同組合というものをその法的な面で見直すという意味で極めて大きな課題を抱えている問題であるし、次なる時代を見据えたものでなければならない、こういうふうにまず思うわけであります。  そこで、今回の改正は、既に御指摘ございましたように、系統農協の方で、平成三年三月二十九日に総合審議会というもので答申をされて、その中で必要な法改正対策ということを指摘しておられます。そしてまた、ことしの二月二十六日に農林省の農協制度研究会であわせて報告書が出されておりまして、ほぼその内容と軌を一にしているというふうに思います。つまり、それを受けて今回の法改正がなされている背景があるというふうに読み取れるわけであります。改めて、こうした情勢対応する農協の体制をつくるべきだという考え方であります。  私は、そうした農政の大転換あるいは新しい農政を確立する、そうした時期に農協改革の実効が上がるべく今度の法改正が必要だと思いますが、法改正の動機につきまして、そういう問題意識でよろしゅうございますか。大臣、いかがでしょうか。     〔簗瀬委員長代理退席、委員長着席〕
  38. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おおむね方向としてはそういうことでありますが、これではちょっと手ぬるいという御批判もあります。何によらず、一遍に大改革というのはなかなか難しいし、また時代変化に伴って前進と改革というのは常に私たちが留意していかなければならぬ、そんな点であろうと思います。あるいは、来るべき日本の人口の動向というものを踏まえまして、次の世代の人たちに負担をどれだけ与えない仕組みというものを今から着実につくっていくかということが、これは農業ばかりではなくて日本全体として、今までの繁栄の中で、改革をしない、前進もしないということでいいのかということを考えたときに、やはり私たちは思い切ったことをやっていかなければならぬというものの一つとして、今回のこの農協法の改正をお願いしておる。  特にその中でも、高齢化あるいは混住化、こうしたものが新たな農協対応として生まれてきておるわけでありますから、その辺のところをどうしていくかということも考えましたし、あるいは、農協組合員の負託にこたえる的確な事業運営を図るということも本当に大事なことでありますし、スリムになってだんだん周りが減っていくときに本体だけはそのままでいいのかという議論もありまして、そういうことを考えながら農業振興活性化を一層進めていこう。  中身としては、連合会による受託農業経営事業の実施あるいは高齢者福祉事業の取り組みを行って強化をしていきたい、そして事業内容充実する。あるいは、理事会の設置等により組合経営管理体制強化しよう。あるいは、農協系統が打ち出した組織整備方向を踏まえた信用事業事業譲渡の規定の整備合併促進、こういうものもあわせてこの際改正をする。一方では、地域農業担い手あり方を初め、私どもが今進めておる新しい政策検討とも関連する課題等については、引き続き検討しながらさらに改革を進めていきたいというふうに考えておるわけであります。
  39. 堀込征雄

    ○堀込委員 そこで、前段確認をさせていただくわけでありますが、今回は、農協法改正農協合併助成法あわせて提案をされているわけであります。先ほども御指摘ございましたけれども、系統農協の方では一千農協構想というものを打ち出して、これを推進しようと言っているわけであります。農協合併、特に今回は広域合併が行われるということでありまして、それはそれなりに必要でございましょう。一面で、どうしても農家との結びつきが心配をされるという面があるわけであります。多少そういう面に目をつぶっても、現在の農協経営実態から見て、やはり経営体制を維持するということを重視しながら合併を推進しなければならないとお考えなのかどうか。つまり、農林水産省平成元年二月一日の経済局長通達で、合併を後押ししようという通達を出しているわけでございまして、おおむねそういう考え方で、そういうことを必要な理由としながら合併を進めているというふうに考えてよろしゅうございますか。
  40. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おおむねその方向であります。  何といっても、環境の変化にどう対応していくかということが、農業振興活性化のための役割を十分果たしていくため、そのためには何といっても経営基盤強化が大事でありまして、これが弱いために末端の農家皆さんが求めるところもできないという部分もありますので、このような観点から、農協系統組織においては農協合併の推進を図っているところであり、私どもとしてもこうした自主的な取り組みに対して、農協合併助成法等による所要の支援をしようということであります。  また、この農協合併によって営農指導体制の強化、あるいは野菜、畜産などの各生産部門の、部会といいますか、活動を活発化、あるいは案出荷施設などの共同利用の施設の整備が図られるというメリットがあるわけです。ですから、いずれにしても、小さいものがばらばらあるよりも、集中的にそこに投資をして、そして農家皆さんが本当に意欲ある農業に取り組めるような体制を図る、こういうことでございます。
  41. 堀込征雄

    ○堀込委員 また後で具体的に触れさせていただきますけれども、もう一つ、合併に伴って今までの系統農協組織方式あるいは事業方式を見直そう、こういうことが進められているわけであります。つまり、事業二段・組織二段、こういうことで、連合会整備もあわせて進めようという方向が今打ち出されておりまして、農水省としても、今度の法改正の中に事業譲渡規定などを盛り込んでおる、こういうことでございますが、これにつきましても、広域合併合併として経営基盤強化をするんだ、あわせて事業方式、組織方式も見直すんだ、ここのところの農水省の一番の主眼は何ですか、あるいは、必要とする理由は何でしょうか。
  42. 川合淳二

    川合政府委員 やはり系統組織が、先ほど大臣からもお話ございましたように、最近におきます経営環境の変化というものに的確に対応できる、それから、何よりも組合員の要望に確実にこたえられるという組織になっていくということが一番の主眼であると思っております。したがいまして、そうした観点から必要な法改正、例えば、今御指摘の事業譲渡というような規定を整備するというようなことを考えているわけでございます。
  43. 堀込征雄

    ○堀込委員 それでは、具体的な問題に入らせていただきます。  まず、先ほどももう御質問ございましたが、受託農業経営事業連合会への業務能力の付与という問題があるわけでありまして、今回の法改正で盛られているわけであります。これは、具体的なケースにつきまして先ほど御質問ありまして、よくわかりました。  単協との事業競合の問題でございますが、具体的にやはり出るんじゃないかという感じがするわけであります。この辺はどう調整をし、どういうふうに分担をしていこうというふうに想定をしていらっしゃるんでしょうか。
  44. 川合淳二

    川合政府委員 やはり受託経営につきましては、基本は、単協が受けるのが基本であると思っております。したがいまして、補完的な位置づけということになろうかと思います。  これは先生御専門でございますので御承知の点でございますが、いろいろな系統の流れの中で、直接、単協を通らないで農家がいろいろなサービスと申しますかを受けている、例えば消流などの中身を見てみましても、県連から農家へ直接いろいろな形でというのが、これはいろいろなはかり方がございますけれども、二割弱というようなところもございまして、しかも、近年それが伸びているというようなところがございます。内容は、やはり先ほどもお話ししましたような畜産関係でございますので、そうしたことが中心になろうかと思います。  しかしながら、いずれにいたしましても、単協でできるものを連合会がやるということにはならないように、そこの交通整理と申しますか、そこはきちっとしたいと思っております。
  45. 堀込征雄

    ○堀込委員 ぜひそういうことで調整をいただきたいと思います。  次に、農事組合法人設立事業運営についての要件緩和の問題でございます。今後の農協経営活性化のためにぜひとも必要な措置であろう、そしてまた、期待もされているところであります。  実は最近、非常に荒廃地などもふえておるというような状況でございまして、担い手もいない、やはりもう少し農協役割を強めたらどうだ、先ほど株式会社云々という議論もございましたけれども、そういう議論がずっとあるわけであります。現行法では、農協みずからが農業経営ができるのは受託農業経営事業というところまでということになっておりますが、多少、地域の実情に応じて一歩踏み込むというようなことも考えてもいいんではないかという気もするわけであります。  私は、実は戦後の農協の歴史を見て勉強させていただきまして、やはり販売とかそういう面の共同化というのは農協事業の中でかなり進められてきたし、実効も上げられてきた、しかし、生産面の共同化ということにつきましては、農協は手を出さずに、むしろ個別農家、あるいは場合によればさまざまな農業会議所とかそのほかのところでやられてきたということで、生産のところの共同化ということ、生産過程の共同化というところが手をつけられないし、非常におくれてきたという面があるのではないかというふうに思うわけであります。そういう意味で私は、その部門については、国の施策の中心が大規模化、コスト低減ということで言われてきたわけでありますけれども、もう少し生産の共同化という視点が必要ではないかというふうに、基本的な考え方を、実は今までの総括をしているわけであります。  そういう意味で、農事組合法人要件緩和がせっかく法律に盛り込まれましたが、地域の実情に応じて、例えば山間地で跡取りもいない、荒廃地でどうしようもないというようなところについて、多少農協役割を強めるというようなことについてはいかがでございましょうか。
  46. 川合淳二

    川合政府委員 今回の農事組合法人要件緩和は、協業化の推進ということがその中心課題だと思っております。  この制度昭和三十七年にできておりまして、御承知のような基本法農政のもとで、協業化を進めるという考え方を受けてこの制度ができております用地域によってかなり状況が異なりますけれども、一時期、かなりこうした形での協業化が進められたわけでございますし、現在でも、立派にこうした制度のもとで経営がなされている法人もあるわけでございますが、やや最近、当時の勢いといいますか、それが失われかかっているという点も否めないと思っております。  それは、状況変化してきておりまして、例えば設立要件につきましても、五人ということでは、今の農家といいますか農業従事者の構成などから考えてやや過大であるというようなこと、それから、今の農業経営実態からいきまして、常時従事者の要件というようなものも、やや、もうちょっと弾力化を図るべきではないかというような御意見、それから、今先生まさにお触れになりました、農作業といいますか、そういうところのこの法人の生産に対する取り組みを強化するというようなこと、あるいは、施設の員外利用などの点でもうちょっと弾力化しようというような点、農事組合法人活性化ということを主眼にいたしまして、今回改正に盛り込んだわけでございます。  それから、今先生御指摘になった農協役割ということでございます。これはいろいろ御議論があることでございますし、後ほど先生からも御議論があろうかと思いますが、やはり私どもは、現行制度の中で協同組織としてつくられておりますこの農事組合法人活性化ということで、まずその面の役割をもう一度期待してみたらどうかということで今回改正しているわけでございます。先生の御指摘につきましては、今後、私どももなお検討すべき問題というふうに考えている点でございます。
  47. 堀込征雄

    ○堀込委員 具体的にこれから検討されるでありましょうけれども、いずれにしても、設立事業運営農協がさらに力を入れる体制をぜひ検討をいただきたいというふうに思います。  次に、今度の法改正の中で老人福祉事業の明確化がうたわれているわけでありまして、極めて適切な措置だというふうに考えます。問題は、法律法律だけでございまして、どう農村における老人福祉事業をやっていくかということが問題であります。農協老人福祉事業地域事業として展開をしていかなければならない、そういう事情に今農村が置かれているというところであります。  そこで、問題は、こうした事業でございますから、共助の精神も必要ですし、それから、国、地方公共団体との一体的な取り組みも必要であります。今農協が健康管理活動、例えばケアサービスなどをする場合に、その財源と人材をどう確保していくのかというのが非常に問題になっているというふうにお聞きをしているわけであります。例えばホームヘルパーの講習などについて助成があるわけでありますが、農協が実行したときは、その講習会の講師料だとか旅費だとかが助成対象になっている。しかし、実際に農協などが主催をしてホームヘルパーの養成講習をやる場合は、四泊五日とか、非常な経費をかけてやっているという実態があるようでございます。  さらには、御存じのように農村にはひとり暮らしの老人ども多いわけであります。デイサービスなんかも厚生省は一生懸命進めていますけれども、行政がやる場合はそれでいいんですけれども農協がやる場合もやはりこれは国の厚生事業の一環というふうに位置づけていただいて、それなりの補助が必要ではないかというふうに思うわけであります。  しかも、今度農協合併は、広域合併によって比較的農協の建物、施設などで、統合合理化によって少しあいたといいますか不必要になったというか、そういうものもありますから、こういうのはデイサービスセンターとして活用できるような条件もかなり出てきているという実態もございます。  さらには、この財源の問題でありますが、例えば、農協がこの財源手当てのためにシルバー債というようなものを例えば発行をしたら、その税対策について一定の配慮をするとか、つまり、高齢化社会を迎えた、しかも農村が非常にその対策が迫られている、その事業の一環を農協が担う、こういうことでありますが、農協の方はさまざまな、実は財源と人材の問題で今困難にぶち当たっているという実情があるわけでありまして、福祉政策を絡めてきめ細かい対策と指導が必要ではないか、こういうふうに思いますが、この考え方、いかがでございましょうか。
  48. 川合淳二

    川合政府委員 今回、老人福祉事業につきまして法制上明確化したわけでございますが、今先生がお話しございましたように、この事業は非常に何と申しますか、農協にとってある意味でやらざるを得ないといいますか、本当に希望してやるというものでない要素があるというところがあろうかと思います。農村高齢化が進んでおりまして、当然のことながら既に農家の介護問題とかいうものが発生し、現実に、こういう制度があるなしにかかわらずそういう事業が行われつつあって、農協もそうした中に取り込まれているという現実の姿があるわけでございますので、それを法制化して明確化していくということを今回いたしたいと思っているわけでございますが、やはりこの福祉事業というのは、全体の福祉事業の中で農協がどういうふうな役割を果たすべきかというそういう位置づけを明確にした上で、全体の福祉事業の中で農協がその役割の一端を担っていくということを明確にしておく必要があろうかと思っております。  例えば、今高齢者対策、特に介護に対しますリーダーの養成などにつきまして、私どもといたしましても若干の予算を計上いたしまして御支援しているわけでございますが、こうした問題につきましても、全体の、これは計画としては厚生省で持っておりますゴールドプランというような計画の中に位置づけはされておりますけれども、そうした位置づけの中でやっていくということは、あくまでも基本としてやはり対応していかなければいけないと思っております。  特に財源につきましては、例えばホームヘルパーの派遣事業などにつきまして公的な在宅福祉事業農協がやるというような場合には、当然のことですが市町村からの委託を受けてやるわけでございますので、適正な委託費というものに基づいて実施するようにしていかなければいけないというようなこともありますし、今御指摘がございましたシルバー債などにつきましては、これも構想の段階でありますし、実態がどんなものかということをよく十分見きわめた上でいろいろ考えなければいけないと思いますけれども、これも、全体の福祉事業の中でどういう役割を果たすかということは少なくとも明確にした上で検討していくようなものであるというふうに思っておりますので、今の先生の御指摘、私どもも十分踏まえて今後の展開に注意深く対応していかなければいけないと思っております。
  49. 堀込征雄

    ○堀込委員 そういうことで対応いただきたいと思いますが、ちょっと答弁ひっかかったのですけれども、別に農協が希望してやる事業ではないというのはちょっとひっかかるのですけれども、やはり高齢化社会の中で、協同組合でございますから、組合員の健康と福祉のためにやるというのは、これはやはり希望する、しないとか問題ではなくして、当然の任務として出てくるのではないか、こういうふうに思いますので、ぜひそこは間違いのないように確認をしておいていただきたいと思います。  そこで、ちょっと時間の関係で先へ進みます。  信用事業整備につきまして、別途、大蔵委員会付託の金融一括法の中で議論をされるということになっております。ここでは、農協法では員外貸出規制の緩和、貯金量の百分の十五というふうになっておるわけでありますが、これは、かつての通達で一定の農協を指定要件としていた、ほかの条件ではございましたが、例えばどういう農協を指定要件として考えているのか。信用リスクなり金利リスクの増大を大型になればなるほど招くわけでありまして、どうしても業務執行体制強化だとかあるいは内部検査体制の強化などが必要であります。農協ども、率直に言っていろいろな不祥事件が起きているというのも実態としてはあるわけでございますから、かなりきめ細かい指導方針が必要ではないか、あるいは農協側の業務執行体制や内部検査体制の強化が必要ではないか、こういうふうに思うわけであります。  そこで、常勤監事の設置だとか権限の拡大、これらも私は賛成でありますが、例えば株式会社法では、資本金五億円以上とか負債が二百億円以上は公認会計士の監査が必要だとかございます。農協には中央会監査というものがあるわけで、行政監査もございますが、いずれにしても、中央会監査も相手の同意を必要としているというようなことがあるわけであります。別途、金融一括法の中では、業務がますます拡大をし、ディスクロージャー規定も整備をされるというようなこともあるわけでありまして、ますますリスク管理、検査体制の強化が望まれるということであります。  先ほども申しましたが、平成元年二月一日の経済局長通達では、資産五百億円以上の農協、それから資産一千億円以上の連合会、これにつきましては中央会の監査を受けなさい、必要により公認会計士の監査を受けなさい、こういう通達を出していらっしゃいます。そして、同じ日の農協課長通達では、学経理事がいて、農協監査士の資格のある者が補助者としてなっている場合は対象から除外してもいいというようなことが言われているわけでありますが、今回の改正につきまして監査体制の整備、これで十分と考えますか。どういう体制を考えていらっしゃいますか。いかがですか。
  50. 川合淳二

    川合政府委員 二つの問題の話があったと思っております。  一つは、指定農協の問題でございます。これは先生御承知でございますが、員外利用枠の拡大でございます。  現状、これも農協によりましてでございますけれども、現在の五分の一という枠では十分地域対応できないというようなところが出てきておりますので、そうした農協につきまして、貸付状況を見まして、あるいは資金の運用状況、貸付審査体制の充実などを総合的に勘案して、必要かつ適当と認められる農協に限って指定するというふうにいたしたいと思っております。この指定の運用につきましては、こうした時期でもございますので、慎重を期してまいりたいと思っております。  それとある意味で裏腹の問題でございますけれども、リスク管理の問題でございます。これは、業務執行体制強化とかあるいは内部牽制体制の充実というものを十分に図っていく必要があるわけでございます。こちらの面では、今回の理事会制とか代表理事制、あるいは員外理事枠の拡大もそうでありましょうし、監事の会計監査機能の拡充というようなものについても整備を図ることにしているのもその一環でございます。  それからもう一つ、そうした制度を動かす上で、中央会の監査その他の問題がございます。今御指摘ございましたように、私ども平成元年の指導通達におきまして、中央会監査の充実と公認会計士などの活用について指導をいたしております。この問題につきましては、やはりこれだけ大きな農協が出てき、かなり資金量も大きくなり、その活動も非常に多様化しているということでございますので、外部からの監査、外部から見れば透明性を確保するという経営が必要だと思っております。公認会計士につきましてもう少しその活用を図るべきだという御意見があることも私ども承知しております。こうした点について、今後系統ともよく御相談をしていかなければいけない問題だと思いますが、方向としてはそうしたことを強めていくということが必要だと私ども思っております。  ただ、これにつきましては、一挙にそういうところまで持っていくということはなかなか難しいと思いますが、中央会の監査あるいは行政の検査というようなこととうまく相まちまして、こうした専門家の活用ということをより一層進めていくということが今後の課題であろうと思っております。
  51. 堀込征雄

    ○堀込委員 次に、経営執行体制強化整備についての問題であります。  理事会権限の明記、そして代表理事制の法定化を今回うたったわけでございます。業務の適正な運営を確保するという意味で極めて大切なことでありますが、これは農協法三十一条との関連はどうなるのでございましょうか。つまり、理事の損害賠償責任、第三者に対する連帯損害賠償は代表理事が負うということになるのか、理事の連帯責任が今までと変わるということになるのかならないのか、この点についてちょっと明確にしておいてください。
  52. 川合淳二

    川合政府委員 今回、代表理事理事会法定化を行いまして、執行責任を有する理事と合議機関であります理事会との関係を明確化したわけでございます。これは、適切な業務執行体制整備するということを主眼としたものでございます。あわせまして、理事が明確な責任範囲のもとで業務の執行をし得る体制を整備するということでございます。  この場合、今お話がございました代表理事制の導入と農協法三十三条、理事の責任範囲との関連でございますけれども代表理事理事会で議決された業務を執行する。これによって組合に損害を与えた場合、理事が善良なる管理者の注意をもって理事会の議決を行い、かつ執行すれば組合に損害を与えなかったであろうと考えるときにつきましては、その議決に賛成した理事は、執行理事代表理事と連帯して責任を負うという整理になっております。したがいまして、今お話がございました代表理事制の導入と農協法三十三条との関係につきましては、そういう整理をいたしているわけでございます。
  53. 堀込征雄

    ○堀込委員 わかりました。そうすると、理事会で一つの融資なら融資に反対をすればその理事は免責になる、こういうことでございますね。  そこで、先ほども質問ございましたが、広域合併農協になりますとどうしても員外理事枠といいますか、学経理事の登用というものがどうしても大切だというふうに考えます。しかし、実態はかなり強力な指導がないと実行できていかないのではないかというふうに思うわけであります。今、私の地元もそうでございますが、大体、農協理事は、市町村単位の農協理事の選出方法は、各地区で総代を選んでその中から理事を地区ごとに何人というような割り振りをして、大体地区で割り振って、そこから出てくる。また、地区ごとに割り振りをされた理事がことしはどの地域に当てるかというようなことを談合、相談をしながら理事の選出が行われているというのが大部分の実態ではないかというふうに思うのです。それはそれで、順繰りにやるということも悪いことではないのですけれども、しかし農協規模がここまで来ますと、やはりそういうような習慣といいますか、風習といいますか、正していかなければならないというのは今度の法制度で指摘をされている、法制度もそういうことを考えてやっているのだろうというふうに考えるわけであります。  こうした広域農協農村における実態、そこで理事を選んでいく、その理事の互選によって組合長や専務を選んでいくという実態、あるいはそういう構造をどうやってこの指導の中で正しながら員外理事の拡大だとか学経理事の登国策、これは指導方針をお持ちでございましょうか。
  54. 川合淳二

    川合政府委員 法改正をする場合に、現実と申しますか、実態があってそれを追認する意味で法改正をしていく場合と、ある意味の目標を掲げまして、その目標のために法改正をし、現実をそこまで何とか引き上げていくというやり方があろうかと思いますが、端的に申しまして、この問題は後者の対応だと思っております。  実は、今回員外理事枠を四分の一から三分の一というふうに広げておりますが、必ずしも四分の一自体が今制約になっているというわけではございません。四分の一に遠く及ばないというのが実態だと思っております。したがいまして、私どもは四分の一を三分の一にするということを通じまして、この問題の必要性を今後指導していかなければいけないと思っております。  何と申しましても、今先生がお話しのような実態理事が選ばれているということがございますので、私どもといたしましては優良事例といいますか、そうした全国の中のすぐれた員外理事登用の実績あるいは実例を各単協によく説明していくということと同時に、今の役員さん、組合員皆さんに、ある意味では経営内容にまで立ち入って比較した資料などを提供することによりまして必要性をよく御理解をいただいていくということが必要ではないかと思っております。これは系統組織と一緒になってやらないとできないことでございますけれども、確かに現実とかなり遊離した点がありますので、そこはよく肝に銘じて対応していかなければいけないと思っております。
  55. 堀込征雄

    ○堀込委員 次に、事業譲渡規定についてお伺いをいたします。  事業二段・組織二段、これは今系統農協の中で討議をされている取り組みに対して対応されて出されたわけでございます。まず法的な面について伺います。  信用事業、共済事業については総会の決議によって事業譲渡ができる、経済事業については、その他の事業という表現の中に、全部の中に含まれる、こういうふうに理解をしてよろしいのかどうか、あるいは、わざわざ経済事業というのは事業譲渡規定に規定をしなかったのかどうか。  もう一つ、農林中央金庫法との関係でございますが、信用事業事業譲渡、業務規制、これは単協、信運と農林中央金庫は違っているわけであります。今回の金融一括法の中でもその面での農林中央金庫法の整備はないというふうに思うわけでありますが、近い将来この整備は考えていらっしゃるというふうに理解してよろしいでしょうか。
  56. 川合淳二

    川合政府委員 事業譲渡の規定につきましては、私どもこんなふうに考えております。今系統で組織の再編につきましての御議論、これは平成五年の三月までにその具体案をつくるということで検討が進められているわけでございます。したがいまして、最終的にはこの検討を待って、その再編整備の姿から必要な法的整備をしていくということになろうかと思いますが、そうした段階でステップを一つ進めるという場合に、一番一般的と申しますか普遍的に必要となろう事業譲渡について、今回規定をしたという位置づけでございます。  信用事業と共済事業について書いたというのは、これはまさに法律的問題でございまして、この二つの事業につきましては、組合との間に多数の継続的な債権債務関係がございまして、これを移転する、譲渡するという法律上の行為があるわけでございますが、経済事業などにつきましては、これは法律上そういう継続的な関係というものがございませんので、法律上の移転というのが起こらない。一つ一つのことが契約上とぎれていくということがございます。そうしたことで、これはまさに法律上の問題でございまして、経済事業についての手続規定は設けなかったということでございます。現実に、例えば経済事業を廃止するというような、これはちょっと考えにくいことでございますが、そういうことがあれば、これは事業計画の変更とかという問題でございますので、当然のことながら総会で組合員の意思を聞かなければいけない問題でございますので、それはそういう取り扱いになろうと思います。  それから、農林中金の問題は、これは御承知のように法制度が別になっておりまして、中金は特別法に基づく法人でございます。したがいまして、これと信連との関係などを考えますのは、やはり具体的にどういうふうな方向に行くかということをある程度把握した上でないとこの改正はちょっとできないということもございまして、今回はこの点については触れておりません。この点につきましても、今系統で検討されております平成五年三月までの検討を待ちまして検討をしていかなければならない問題だというふうに考えております。
  57. 堀込征雄

    ○堀込委員 それでは、以下当面している農協の問題について御質問させていただきます。  一つは、農協における人材面の問題でございます。広域農協合併によって、例えば預金量が一千億とか場合によれば二千億というような農協すらちらほら出てきているという現状がございます。そうしますと、余裕金運用あるいは有価証券運用だとか、しっかりしたスペシャリストがいなければとてもではないが経営ができない、運営ができないという事態になってまいります。あわせて内部チェック体制の確立も必要だ、こういうことになるわけであります。つまり、今度の合併の進捗度合いと農協内部における人材育成の進行度合いとがうまくマッチをしていかなければ、合併はしたけれどもそこを仕切れる体制にならないというような事態になるのではないかということも実は懸念をするわけであります。  そういう意味で、今合併をしている農協については、県連から派遣をされたりいろいろなケースで対応をしているようでありますが、この人材確保指導という面で、農水省、考え方がありましたら示してください。
  58. 川合淳二

    川合政府委員 確かに、合併が必要だということは、結局経営の基盤強化ということでございます。しかしながら、経営をつかさどると申しますか担当するのは人でございますので、人の要素が、この合併することによってどれだけその合併効果を上げるかということの大きな要素になると思っております。  したがいまして、この問題は、地域によっていろいろでございますので一律にどうということはなかなか言いにくいわけでございますが、やはり人材につきましてそれを効率的に使っていく、例えば合併あるいは再編整備ということでありましても、やはり県段階におります有能な職員をその県で広く活用すると申しますか、そういう体制をつくっていくということが必要ではないかと思います。  そうした職員をつくるということも、研修等の必要性があるわけでございますが、やはりこの点につきましては人にかかわる問題でございますので、こうした計画を立てる県段階あるいはそれぞれ個々の合併計画の中で、十分その点について中心的な課題というふうにお考えいただきまして対応していただくということではないかと思っております。私どもとすれば、研修あるいは人事交流、そういうようなところをまず指導していくのではないかというふうに考えております。
  59. 堀込征雄

    ○堀込委員 実は広域合併あるいは組織整備によって、人事管理といいますか人材の面で不安になる点は、そういうこととあわせてもう一つは、具体的に農協農家をつないでいるのは今農協職員だ、そこのところが非常に薄くなるのではないかということが心配をされるわけであります。今の農協は、実態を見ていただくとわかりますけれども、例えば金融の職員が貯金の推進に行って農家を回る、ついでに農家からあの購買品をくれとか頼まれて注文を受けてくるとか、あるいは職員が手分けをして一つの地域を担当をして、いろいろな農家の要望を聞いたり注文をもらったりして、つまり総合力の中で実際に事業が行われている。そこでその組合員と職員のつながりができ、組合員農協のつながりができている、こういう面があるわけであります。これが広域合併になりますと、そういう意味では非常にスペシャリストになっていって、その面でも農協職員と農家が離れ、農協農家組合員の面が、合理性を追求するがゆえに遊離をしてしまうのではないかという点が心配をされるわけであります。  それからもう一つは、市町村単位を超す広域合併をした場合に、今転作とかあるいは土地改良事業、こういうものについては市町村行政と密接不可分な中で、特に営農技術員などが中心になって、市町村の職員と一体となってやっているわけであります。農水省の皆さん御存じかどうか、例えば転作の各農家の割り当てなどは大体各自治会で、各農村部落で夜の会議が行われる。そこの懇談会へ営農技術員が出ていって、いろいろ不満や要望を聞きながらやっているわけでありますね。そして、それが広域になって、そういう実態の中で技術員が本所に広域農協で一括集められちゃう。では一体こういう営農相談とか行政と一体となっている転作とか土地改良事業なんかがスムーズにいくのかどうか、あるいは営農相談なんかも気軽にできなくなるケースが出てくるのではないか、したがって農協農家組合員の間がますます離れてしまうのではないか、こういう心配もあるわけであります。そのことは、実はデータによりますと、極めて皮肉でございますけれども、例えば組合員一人当たりの貯金量だとか、購買、販売などの実績を見ますと、比較的小規模農協の方が高くて、合併を進めて効率化を図った農協の方が一農家当たりの農協利用高が低いという数字も明確に出ているわけでございまして、やはり合併合併で必要でありましょうけれども、そこをつなぐ、農家組合員農協をつなぐ、つまりその間にある農協職員というものの存在をどういうふうに抱え、機能させていくのかというところがどうしても必要だ、こういうふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  60. 川合淳二

    川合政府委員 確かに合併農協自体の経営基盤強化ということのために必要なわけですが、今御指摘の農家農協との関係、それから市町村行政との問題は、一番私ども課題として残される、常にその点について注意を払っておかなければいけない問題だと思っております。そのためには、事業あるいは経営の効率的な運営という一方で、組合員の日常活動に適切に対応できるような体制、例えば支所機能、従来の農協を支所としたような形での機能充実、ある意味ではこれはやや二律背反的なところがないとは言えないわけでございますが、これをやっていかなければ本当の合併効果は出てこないと思っております。したがいまして、私どもは、農協が広がりますと、その中にいろいろな生産の地域が出てまいりますので、そうした生産の、作物別に部会などをつくる、これはうまくやっている農協では前例があるわけでございますが、そして野菜とか畜産とか、あるいは野菜の中でも施設園芸などの部会をつくってそれに農協が担当者をつけて対応していくというような、これは地域の特性に応じた対応というようなことにもなろうかと思いますが、そうした対応。  それからもう一つは、市町村との関係では、連絡協議会と申しますか、協議会方式をつくって緊密な連絡をとっていくというような、農協の中の組織あるいは制度といいますか、そういうものを準備していかなきゃいけないと思っております。  私どもも今の点は一番難しいかつ大変な問題だと思っておりまして、平成四年度でも予算を計上してこの点に力点を置いて進めたいと思っておりますけれども、確かに合併につきまして常にこの点は配慮しなきゃいけない問題だと思っておりますので、私どももその点は強く意識して対応していきたいと思っております。
  61. 堀込征雄

    ○堀込委員 もう一つ、人事面では重要な問題が起こっているわけであります。その肝心な農協職員が農協離れをするというか、中途退職をするケースが非常にふえているわけであります。平成二年の、農協の労研というところがございますが、そこの資料によりますと、退職者が一万五千五百九十六人ですね。定年退職者がこのうち四千三十四人。何と十八歳から三十九歳の中途退職者が八千百八十四人もいる。実はこういう実態になっています。しかもここ数年は驚くべき数字でこの中途退職者の数が広がっているという現実がございます。  要するに、働きがいというか農協の将来に展望を持てないとか、あるいは週休二日制などなどの労働条件がおくれているとか、いろいろな事情があるというふうに思うわけであります。この農協合併法あるいは今度の農協法改正を機に、こうした実態について農水省としてもぜひひとつ指導のメスを入れていただきたい、中途退職者を具体的になくすような方策を団体と一緒になって考えていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  62. 川合淳二

    川合政府委員 全体的な日本経済の労働力の問題など、あるいは若年労働者が減少してきつつあるというような状況の中で、一般的な状況として起こっている面もあろうかと思いますが、そのほかにやはり農業あるいは農村に対しますいろいろな考え方から根差しているところもあろうかと思います。それとやはり農協自体の職員に対する対応という問題についての不安などがあろうかと思います。  したがいまして、私どもはこういう問題は、再編整備とか合併ということを通じて、例えば労働条件の改善というようなことができやすくなるわけですから、そういうことで対応できるわけでございますが、ただ、そうした計画をなるべく早く具体的に示さないと、不安、動揺する期間が長ければ長いほどこういうことが起ころうかと思います。したがいまして、今系統組織検討しております再編問題につきましても、平成五年三月という期限でやっておりますが、なるべく早く具体的なそういう構想を示して、将来への展望を開いていくということがやはり必要だと思っております。  それと同時に、やはり研修、教育の充実あるいは人事制度改善というようなことについて系統組織が取り組んでいただくということも必要だと思っておりますので、そうした観点で私どもも指導に努めていきたいと思っております。
  63. 堀込征雄

    ○堀込委員 ぜひ対策を進めていただきたいと思います。  そこで、事業譲渡に関連をしまして心配をしている点もございますので、まず信用事業からお伺いをいたしたいと思います。  信用事業につきまして、系統組織再編を進める場合に、私は幾つかの心配の点がございます。一つは、農林中金の資金運用力の問題でございます。仮に、組織二段・事業段階構想を想定しますと、大まかに言って今の農協貯金の六五%が信連に預けられている。そしてその信連の四〇%強が中金へここ数年行っているという大まかな数字がございます。つまり農協段階で見ますと、大体預金量の三〇%弱が中金へつながっている、こういう実態になるだろうというふうに思います。仮にこの農協が信連に預ける四十一兆円が全部、去年がおととしでしたか四十一兆円ぐらいあるわけでありますが、全部中金へ来た場合に中金の資金運用力で一体これはしのげるのかどうか、大丈夫なのかどうかということが心配になるわけであります。現在でも農林中金の貯賃率は四〇%ぐらいで、都銀の六〇%から七〇%ぐらいの平均に比べますと極端に低いわけでありまして、私はこの点を一つは心配をしている。  それから第二点目に、単協の側から見ますと、単協の決算状況を分析をしてみますと、いろいろな事業をやっておりますけれども事業収支は大体とんとんだ。そこで、信連初め連合会からの奨励金等でそのときの当期利益金を出しているという傾向がございます。それで、果たしてこの組織二段なり事業二段をやった場合に、全国連がこうした対応ができるのかどうか、単協の収支はそのことによって大丈夫かどうかという点を率直に言って心配をするわけであります。  第三でございます。  例えば今の信用事業単協における事業は、メールをやるとかいろいろな推進資材をやるとか、現在、県連の信連が相当資金をかけて、費用をかけてやっている。これは、もし二段階になった場合、単協負担になってくるのではないか。結局預金量一千億程度の単協になりますと、相当な資金運用力もつけなければいけない。今申し上げましたような推進資材なども用意をしたりいろいろな条件をつけなければいけない。つまり、今でも資金調達のコストが上がっているにもかかわらず、そういうコストがさらに上がってくるのではないか、単協へしわ寄せがいくのではないかという点を心配するわけであります。  それから、金融のオンライン化構想、たしか平成十二、三年ごろ一本化しようという構想があったというふうに思うわけであります。あるいは為替の決済業務を含めて県段階の機構、組織、例えばオンラインの中継基地だとかそういうものは一体、これも単協の負担になってしまうのかどうか。  そうなりますと、この事業二段・組織二段というのは、幾つかクリアしなければならない問題がある。単協にすべての経費負担が押しつけられるというようなことでは、単協経営がうまくいかないのではないかという点を心配するわけですが、いかがでございましょうか。
  64. 川合淳二

    川合政府委員 これは先生御承知の点でございますが、三段階を二段階にしていくという問題は、何と申しましても系統全体としての経営コストを低減していくということになるわけでございます。したがいまして、そうしたことができない、逆に申しますと、そういうふうにならないような二段階制ということになったら、これは意味がないわけでございます。  したがいまして、今御質問の、後の方の県連の問題を考えますれば、県連が今のままでまいりますと、金融自由化の競争の激化の中でどれだけの経営成績を上げていけるかということにある意味でかかってくるわけでございまして、そうした中で、三段階のどの部分をどういうふうに合理化して二段階に近づけていくかということが問われている問題だろうと思っております。  農林中金につきましては、私どもは、今お話しのように、一挙に資金量あるいは運用資金量を拡大するということに耐えられるかどうかということは、これはかなり大きな金額が一気に動くというようなことを想定していますのでこれは別といたしまして、今の農林中金の能力というのはかなり高いものがあろうかと思っております。これは長年にわたりまして運用ノウハウなども蓄積してきておりますし、人的、組織的体制も推し進めてきている。それから、国債の窓販とかディーリング業務につきましても、段階を経て導入してきておりますし、こうした結果、各種関係格付機関からも高く評価されております。外国の格付機関ではトリプルAというような、日本で農林中金のほかにはあと一つぐらいしかないというような格付を受けている点もございまして、そういう意味では、徐々にではございますが、かなりの経営力を持ってきているというふうに考えております。ただ、環境がいろいろ変わってきておりますので、それに対応していく、常にそういう努力はしていただかなければいけないというふうに思っております。  それから、今お話がございました単協と信連との関係の点でございます。  問題は、やはり奨励金とか特別配当金というものが単協経営にかなり大きな役割を果たしているわけでございますが、このままでいくと、こういうものが果たして十分払えるかといいますか、還元できるかという問題になってくるわけでございますので、そうしたことを何とか食いとめる。一方で、経営コストを下げていくというために組織をどういうふうにしていくかというのが、今後の再編におきます問題だと思っております。当然のことながら、オンラインの問題などにつきまして、県の段階がどういう役割を果たすかということも含めまして現在検討しておりますが、そうした観点から、この再編の問題は視点を置いて検討していただかなければいけない問題だと思っております。私どもも系統の検討に際しましてはそうした点を十分踏まえて、できる指導をしていきたいと思っております。
  65. 堀込征雄

    ○堀込委員 もう一点、経済事業の関係についてお伺いをいたします。  今のに関連をして、広域合併農協になる、そして組織二段・事業二段ということが想定をされますと、率直に言って、これだけ産地間競争が激しくなっているわけでございまして、特に販売事業について一体どういうことになるだろう。各県経済連が今備えている能力、ノウハウを全国連や広域単協に移譲することができるであろうか、あるいは持ち得るであろうか。そういう多大な投資が全国連や広域単協でできるのかどうかという不安を持つのは、これは組合員農家も同じだろうと思うのであります。  各県経済連の事業経営状況を調べますと、そういう産地間競争の中で販売事業をやる、その体制を維持するために必死に、購買事業とセットにしながら、例えば購買事業の利益などを回しながら、農家へ還元しながら生産販売体制を維持している、こういう面もあるわけであります。したがって、購買の方で多少高いとか安いとか品物がどうかとかいういろいろなことはございますけれども、今の三段階の中で、そういう補完機能の中で大切な販売機能というものが維持をされてきているのではないかというふうに私は思うわけであります。分析をしてみますと、そういうことがますますよくわかるわけであります。  しかも購買事業を見ますと、戦後、農協の購買事業というのは、物のない時代に貧しい農家組合員が共同購入をして、一銭でも安く仕入れよう、こういうことで始まっているわけでありますから、今、農業資材など非常に自由競争になって激しい中でありますから、価格を下げるという面と、農協の価格があることによってその地域の何か独占的な価格が高くなることを防いでいる面と、やはり農協の購買事業というのは二つの面で大きな役割を果たしていると私は思うわけであります。  そういう意味で経済事業も、今の段階連合会の補完機能もかなりうまくいっているめではないか。しかも全国連の利用率を見ますと、販売高、扱い高の多い県連ほど低いという結果も出ているわけであります。私はそういうふうに見えますが、いかがでございましょうか。
  66. 川合淳二

    川合政府委員 経済事業組織整備につきましては、端的に言いまして、購買事業と販売事業でも恐らく違いがあるでしょうし、販売事業の中でも、物によってかなりいろいろな対応が考えられると思います。今先生のお話がございましたように、先生の県の経済連、特に野菜などにおきます販売力というのは非常に高いものがあるということを私どもも承知しております。  こうした問題について、逆に全農の役割は、地域間競争が激しくなる中でだんだん低下していく部門もあろうかと思います。購買事業、例えばかなり大規模に外国から輸入するというようなものにつきましては、やはり全国段階連合会役割というのがあろうということがございまして、これは、経済事業と一口に言いましても、部門別にそのあり方というのはいろいろ違ってくるだろうと思っております。  ただ、これはとかく外の人から言われる批判でございますが、三段階でそれぞれ手数料を取ること自体はむだではないかというようなことを言われますように、各段階との部門かというのはそれぞれ事業によって違うと思いますけれども、やはり今のままではいけない。コスト低減を図るためにも効率化あるいは合理化が必要だということで、この再編という問題について取り組んでいると私ども承知しております。  そういう観点で、どこの部門をどうするかということを含めまして、やはり全体として考えていかなければいけない問題ではないかと思っております。
  67. 堀込征雄

    ○堀込委員 もう一点だけ、実は私質問の冒頭に、農協法と農地法と食管制度ということを申し上げました。例えば系統二段階になった場合、もう一つの柱である食管法問題、これは指定法人とか卸の問題とか県段階の問題があります。ごく簡単で結構ですが、どういう姿を描かなければならないのでございましょうか。あるいは検討に入っているのでございましょうか。いかがでしょうか。
  68. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 御指摘ございましたように、現在の食糧管理制度運営に当たりまして、生産はもちろんでございますが、集荷、卸売、小売、各段階にわたりまして、農協業務と密接に関連をして制度運営が行われておるのは御指摘のとおりでございます。  今回の法律改正を契機にした農協組織の再編が今後どのように進んでいくか。我々実態を見ながら、食管制度運営に当たってどういう対応をしていくかということを考えなければいけないと思いますけれども、少なくとも、現在の食管制度運営実態農協系統における自主的な発意による組織再編を阻害することのないような考え方を基本的に持つ必要がある。そして、系統組織の中で自主的に組織再編が進むにつれまして、当然のことながら、先ほど申し上げました食管制度に関連をした業務再編整備も必要になってくるわけでございます。その状況に合わせまして、食管制度運営についていろいろな手直しをしていくという場面も出てこようかと思いますけれども、それがどういうタイミングで、あるいはどういう内容で起こってくるかということにつきましては、まさに今回の法律改正を契機にした組織再編自体がどういうふうに進んでいくかということをよく見きわめた上で対応していくのが的確ではなかろうか。私どもとしても、そういう基本的な姿勢で対応してまいりたいと考えておる次第でございます。  具体的に、どういう業務についてどうこうするというところまで立ち至った検討はまだ着手しておりません。
  69. 堀込征雄

    ○堀込委員 最後に、農協の大変な改革をやるわけであります。着実な歩みができるように、それぞれ農水省としてもバックアップをいただきたい。  七〇年代から八〇年代にかけて、特に西ヨーロッパ、オランダ、ベルギー、フランス、ドイツ、あるいはカナダ、アメリカなどにおいて生協が相次いで倒産、崩壊をしていった歴史をぜひこの際見据えながら、今度の農協合併あるいは農協組織再編を考えていただきたい、そういう視点で指導していただきたいというふうに思うわけであります。特に、ヨーロッパの生協は大型化、効率化ということを追求した結果倒産をした、崩壊をした、株式会社化をし銀行支配を受けた、こういう歴史があるわけであります。ヨーロッパの失敗は、結局組合員の参加と民主主義を形骸化させたところにあった、こういうふうに言われております。ぜひ他山の石としながら、日本の今回の農協改革に誤りなきを期してほしい、こういうふうに思うわけでありまして、効率化の追求、規模の拡大と組合民主主義というものを調和させながら改革を進めることが必要ではないかと思いますが、この問題についてはいかがでございますか、最後に伺います。
  70. 川合淳二

    川合政府委員 西欧の生協がそういう歴史をたどったということにつきまして、私ども若干ではございますがお聞きしております。先ほどから御議論ございましたように、何よりもやはり組合員のための農協組合員による農協でございます。 この点が失われることが一番の致命的な問題だろうと思いますので、私ども、その点につきまして、合併あるいは再編成について常に中心課題に置きながら対応してまいりたいと思っております。
  71. 堀込征雄

    ○堀込委員 終わります。
  72. 高村正彦

    高村委員長 午後一時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後一時十二分開議
  73. 高村正彦

    高村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中恒利君。
  74. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 農協が日本農業に与えている影響は大変大きいわけでありまして、組合員総数が八百六十万九千人と言われておりますし、販売の事業高は六兆四千億、購買事業五兆二千億、貯金が五十六兆円、共済長期保有高は二百九十八兆円、役職員は三十五万五千人に達していると言われております。しかし、農業の現実は既に御指摘のように大変厳しい、そしてますます悪化の道を強めておるわけでありまして、その影響は最近の農協の収支、組織事業経営、すべての面に赤信号がともされているわけであります。  私はこの間、かつて農林省の政府高官であった人が退職をして、頭の中では在職中農業の危機ということがしばしば念頭にあったわけだが、この一年間あちこちの人々に会って初めてこの危機の深刻さというものを肌で感じた、こういうふうにこぼされておりました。特に農協の問題は、農協外のマスコミであるとかあるいは組織外のいろいろな人々からいろいろな意見や注文や御批判をいただいておるが、それはそれとして、一番怖いのは組合の内部で、農協の内部から非常に鋭い批判の声が上がっているということである、こういうことを述懐されておりました。私も全く同感であります。  農協組織が生き抜いていくためにどうすればいいのか。この農協法あるいは合併助成法改正の意図も、その視点に立って進められていると思うわけでありますが、一体こういう中で協同組合が、古くして新しい課題だと言われております日本の農協、特に総合農協というものを地域組織としてこれからも十分にその機能を発揮させていく、そういう方針に立つのか、それとも農業者という職能の立場に立って組織の方針を回転させていくのか、こういう二つの問題は依然今日残されておると思うわけであります。  農林大臣、まず最初に、農業協同組合地域機能というものを中心にこれから運営強化発展を図っていくのか、それとも職能機能というものに重心を向けていくのか、こういう点についてまず大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  75. 田名部匡省

    田名部国務大臣 最も難しい質問だと思います。大都市、東京でありますとか神奈川県なんかへ行きますと、農協のビルが町の真ん中にありまして、農地が全然周辺にないところもあります。あるいは私の住んでおります八戸市なんかですと、農地もありますが混住化が大分進んでいまして、農協の周りにはいろいろな人たちが住んでいる。あるいは村の方へ行きますと従来からの農協という姿。さまざまありますので一概には申し上げられませんが、しかし、農協あり方については農業者を中心にした職能組合、こういう見解がある一方で、今申し上げたような混住化でありますとか都市とかということになると、地域組合としての性格を持っておるということであって、まあ実態面から一律に論ずるというのはなかなか難しいなという気がいたしております。  しかし、いずれにせよこの農協農業者の自主的な協同組織でありますから、組合員営農生活のための事業運営を基本としていかなきゃならぬ。しかしながら、今申し上げたようなことでありますので、地域農業振興やあるいは生活農業者以外の方と共同しておるという部分では、その面にもやはりいろんな役割を果たして、活性化に寄与していかなければならぬのではないかということで、非常にあいまいな答弁でありますけれども、その地域の実情に応じてこれから運営されていくべきものではないかなという感じがいたします。
  76. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 農協組合員とは何だ、こういう基本的な問題が私はあると思うのですよね。これは質問の予定には入れてなかったが、農協農業を営む農民でということになっておるのですが、農業を営む農民と言っておるけれども、実際に今日本の組合員の、正組合員が五百五十四万、准組合員が三百六万だが、この五百五十四万の正組合員というのは、これはまた絞っていけばほとんど兼業サラリーマン農家で、日曜百姓ですね、よくやって。ほとんど奥さんがやっています、お嫁さんが。ところが、このお嫁さんは余り、最近はぼつぼつ入り始めているが、組合員になっておりませんね。それから、農業というのは一体何だ、農林省が規定する農民の規定は何だという問題にまでつながっていくと思うのですね。だから、そういう意味では、私は一口に農民農民と言うんだけれども、やはり農業で食っていける専業の農業者といったようなものが農民なんで、それでいくとそういう人々がつくっていく職能組織だ、こういう考えもあるし、それから今大臣がおっしゃるように、非常に混住化して、異質化して、さまざまな多様性を持ってきておりますから、そういう中で生活、生産、そして共済、信用、こういう金融事業なんかというのは非常に共通性を持っておるわけですから、そういうものが実態としては中心なんですよね、今の農協事業機能の中では。それからいくと、やはり地域全体を包括した組織でないとなかなかやれない。現に総合農協があって専門農協があって、たしか総合農協は三千五百くらい、専門農協が四千四、五百あるのじゃないかと思うのですが、専門農協はちょっといろいろ問題があってなかなかやりにくいという話を聞くわけですね。そんなことを考えると、大臣が今おっしゃったようなことに落ちつかざるを得ないということもわかるわけですけれども、また一方、先ほど大臣みずからもおっしゃったように、今日の農業情勢というものは、議論をしたりあるいはいろいろな問題をぶつけ合うときではない、現実にどうしたらいいのか、何かやらなければいけない、こういう状態になっておるわけでありますから、私は、農協だけじゃありませんが、農林漁業団体全体に対する相当思い切った改革をやるべき時期に来ておると思いますから、この辺の問題についても十分基本的に問題を詰めて対応策を立てていただくようにお願いをしておきたいと思います。  今回の改正案の中身は大体三つあるわけでありまして、一つは農協事業充実させるということ、二番目は経営管理の整備をするということ、そして三番目は農協合併、そしてそれにつながってまいるわけでありますが、農協が従来の三段階から二段階に移っていく、その場合にいろいろな事業を移行させていくための事業譲渡の条項を設置する、こういうものになっていくと思うわけでありますが、いろいろそれぞれ問題がありますが、私はその中で、先ほどもいろいろ皆さんのお話があったわけでありますが、事業充実の中でやはり生産活動、営農活動、これが農協の活動の中では一番大切だ、今一番おくれておる、これを充実せよ、こういう声はちまたにあふれておるのですね。あふれておるのですが、この農協営農指導事業というものは、営農指導といういい名前をつけておるわけでありますが、しかし詰めていけば、やはりずばり農協農業経営にどれだけタッチし得るか、あるいはタッチするかという問題につながっていくと私は思うのですよ。  そこで、この問題は大変大きな問題でありまして、日本の農政の基本的な仕組みにつながっていくという観点で現在農林水産省は二十一世紀の農政の方向について議論を進めていらっしゃるわけですが、そこでもなかなか結論が出ないということになって、なお検討中だ、こういうふうに承っておるわけでありますが、これまでの議論の中で、農協農業経営というものにどこまで接近するか、させるべきか、あるいは農業経営そのものずばり農協が担当し得ないのかどうか、こういう点について議論がなされておると思うわけでありますが、その議論の経過の概要を御報告をしていただきたいと思います。
  77. 川合淳二

    川合政府委員 農協みずからが農業経営を行うことにつきまして、御承知のように担い手不足のような問題と関連いたしまして、農協が持ちます農業経営に必要な人材とか施設等を活用して、地域農業担い手の一つとして農協を位置づけるべきであるという意見があるわけでございます。これに対しまして、農協組合員事業と競合する農業をみずから経営すべきでないという競合論からくる反対論、それから農地法の世界からくる、農地の所有にかかわりまして、農協を入れることはさらに農地の所有につきまして広く道を開く一つの契機になるのではないかということからの消極的な意見などがあるわけでございます。  それと同時に、そうした一般的な問題のほかに、地域によってそれぞれそういう問題も違うのではないかという視点からの検討あるいは御意見もあるわけでございます。そうしたかなり多方面からの問題。それからさらには、担い手という視点からいえば、今後どういう法人あるいは個人が地域農業担い手となるべきかという観点から、農協がどういう位置づけになるかというようなことを含めましてかなり各種の意見があるわけでございまして、現在そうした意見についてさらに検討を深めているという状況にあるわけでございます。
  78. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 これは検討を深めて、今度の第一回の発表、報告では載らないかもしれませんが、次までには一定の成案を得たいという気持ちで進められているわけですか。いつごろになりますか。
  79. 川合淳二

    川合政府委員 省全体の検討の議論でございますので、私からスケジュール的なことは申し上げられませんが、やはり担い手の一環として検討し、担い手の対策の中で位置づけられる問題だというふうな視点で今検討を進めているところでございます。
  80. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 農林省は、これまでしばしば食糧の自給ということについていろいろな考えを出しているわけですが、たしか日本の耕地が五百万ヘクタールがぎりぎりで、それ以下に減ると日本国民の最低カロリーと言われております二千カロリーを割る、だから五百万ヘクタールは切ってはいけない、こういう主張をせられていたように私は記憶をしておるわけでありますが、今耕作放棄地というものは、新しい資料で一体どれだけになっておりますか。
  81. 川合淳二

    川合政府委員 私ちょっと詳細な資料を持ち合わせませんが、二十万ヘクタール弱ではないかと思っております。
  82. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 二十二、三万と一般的に言われておりますし、センサスなんかを見るともっと大きいですね。三十四、五万とか、中には四十万というのも出ておりますが、いずれにせよ相当な土地資源が荒廃をしておるわけであります。耕地は今たしか五百三十万ヘクタールくらいですから、そうするとことしいっぱいで五百万ヘクタールになりますよ。そうして次の年は切ってしまいますよ。しかも、減っていく速度は今の状況からいくとますますひどくなりますね。  きょうの農業新聞にも、人口が西暦二〇二〇年になったら今の半分以下に減る、四割くらいになる県が何か四県か五県あるといったような推測が書いてありますね。またそういう方向をたどっておるわけですね、特に山村、中山間というのは。そういう現状を見てみると、そういうところでは人がいないわけですよ。先ほど来皆さんおっしゃったように、土地耕作放棄と跡取り、農業をやる人がいなくなったということでありますが、二十歳代の青年農業従事者は七万七千人、日本の集落はたしか十四万集落あると思うのですね。しかもこの七万七千というのは男女ですから、男女平均でいくと二集落に一人しかいない、男だけで見ると三集落に一人しかいない、こういうのが今の担い手の現実ですね。  だから、そういう観点でいくと、私は農協はいろいろ問題はあるでしょう、農地法の関係とかいろいろあります。先ほど自民党の委員の先生も相当突っ込んだと思われる質問をせられておったようでございますが、この状態までいきますと、せっかくの貴重な日本の土地資源を眠らせておる、これは避けなければいけないと思うのです。これは活用しなければいけません。そのためには、私はいろいろ考えるけれども、村では農協が一番いいように思うのです。農協以外の団体といったって、それは町村がやればいいですけれども、町村が農業をやるというわけにもちょっといかぬでしょうからね。だから農業協同組合が今受託経営ということをやっておりますね、これがぎりぎりですね。今やっておるやり方の中では受託経営というのがぎりぎりの線ですね。受託経営でやっておるわけですけれども受託をしようとしても受ける人がいないわけですから、そういうところは農協農業を担当していくという形に方向づけを出してもいいのじゃないかと思うのです。農地の保有合理化事業というのがたしか平成元年から発足して具体的に今動き始めておりますけれども、これを動かしておるところではやはりその声は強いですね、人がおらないのだと。だから貸し借りができない。だから我々のところは一定の期間、農協とかいろいろありますが、そういうところがその間は土地を草ぼうぼうにさせないで管理をして経営をしていくというような状態にしてくれたらいいという声があるわけです。山村などのように労働力が決定的に不足しているところでは、何人かの新しく農業をやる人が出るまでは土地を管理していきたいと言っておるわけです。  ところが今、農地の所有の問題については、農協で例をとれば信託という業務がありますね、それから受託経営という制度がありますし、それから生産法人制度がありますね。この三つしかないわけです。いずれも農業経営耕作農民個人につながっておる。こういう観点から、そこのところをこういう特殊なところに限ってはやっていくというような方向は出ないものでしょうか。私はそれは思い切って踏み込まなければいけないと思うわけでありますが、この機会に御見解を承りたいと思います。
  83. 川合淳二

    川合政府委員 農協農業経営を行うことについての御意見は、今先生おっしゃられましたように、実際に農業担い手がなくなっている地域についてだれが担い手になるかということを考えれば、もう農協しかないのではないか、そういう地域があるのではないかという御意見に根差すものだというふうに考えております。したがいまして、そういう地域農業経営をだれが担うのか、例えば第三セクター論とか農協論とか、さらに発展いたしますと、先ほども御議論がありました株式会社論というものが出てくるわけでございます。そうした問題の中で最も身近なものが農協だという御意見はそのとおりだと思っておりますが、そうした不耕作地などの多い、それから担い手のないような地域でどういう担い手が必要かということは、これは地域によってまた違うとは思いますが、私どもはそういう担い手論の一環としてこの問題を今検討しておりまして、今の先生のお話なども十分参考にさせていただきたいと思っております。  それから、先ほどの御質問の不耕作地の問題でございますが、数字としては十五万ヘクタールという数字が一つありまして、そのほかに農家以外の持っているもので六万六千、これは性格がちょっとはっきりしませんが、そんなことで二十一、二万という平成二年の数字がございます。
  84. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 結局、農業のリスクを生産面ではほとんど個人というか個別経営にゆだねておるというところに問題があるわけでありまして、これは農政上の責任もあると思います。これは現実に山村で今の条件の中でやって、農業経営が黒字になるというところは恐らく出てこないと思うのです。だから、このままいけばどんどん減っていくだけだと思うのです。だからそのリスク、危険を負担していくという思い切った姿勢が農協からも出てこなければいけないと思います。農協は販売、購買、金融事業をやって手数料を稼いで大き くなるだけではだめなので、やはりそういうものから出てきた黒字を生産活動に投入していく。そういう姿勢を示すのが農業協同組合なんですから、私はそういうところでは農協が大胆にこの担い手課題に責任を持つという姿勢が必要だと思うし、政策もそういう動きに対しては積極的な援助をしていくということが必要だと思います。そういう意味でお願いをしておく次第であります。  そこで、営農指導事業でありますが、営農指導事業というのは、さっきの農協農業経営と同じように非常に期待をされていろいろ言われておるのですが、それにしても営農指導事業の法的な根拠、これは恐らく、農協法第十条の第十項目に農業の技術、農業経営、教育、情報、こういう形で出ておりますね、あそこが基本だろうと思います。農協は次のような事業を行うということで、ちょっと今六法を持ってきていませんが、一番最初にたしか信用事業だと思うのですよ。金を集めたり、あるいは貸し付けたりする。それから販売事業、購買事業、一つ飛ばして共済事業があって、十番目にそれが出ております。その前の方に農地の造成とかいろいろな施設、そんなことをやるという。農協が何でもやれるようになっておるからたくさん書いておりますが、営農指導事業の法的根拠というのは、農協法の第十条の第十項目というのが出発点のように私は思うのですね。その辺も私は、農協が生産営農活動というものを土台にして、そしていろいろな事業を結びつけて農家経営を前進させていく組織だというような性格は、初めにつくったときからちょっとおかしいのじゃないかと思うのですよ。本来ならば、第十条の第一項目にそういう項目がびしゃっと入らなければいけない。皆さんいつもそれを言っておるんだ。ところが実態は、法的な根拠というものは、順番でどうこう言うわけではありませんが、やはりちょっと弱いですね。農協法の改正をやるなら、今度の改正案、私は悪いとは思いませんよ、思いませんが、もっと思い切っでやってもらいたい、それはこういう営農事業に関する法的な基盤というものをもっと明確に大胆に打ち出していく必要があったと思うのですが、その点についてはどういうお考えでしょうか。
  85. 川合淳二

    川合政府委員 農協営農指導事業につきましては、今お話がございましたように、十条の一項の十号などに基づきます事業を基本にいたしまして、そのほかの例えば受託経営農業経営あるいは農地信託などが法律的には位置づけられているわけでございます。確かに先生のおっしゃられるように書かれていないという点はありますが、この営農指導事業というのはむしろ農協の本来的な事業ではないかと思います。各種事業、例えば販売事業であれ、購買事業であれ、その中心にあるのはやはり営農指導事業を通じてそういうものが行われるということでございますので、恐らく法がつくられた段階では、営農指導事業というのはある意味では本来事業であって、これを行うのは当然、当たり前のことだというふうな考え方があったのではないかと思います。  しかしながら、現在この営農指導事業につきましてどうもおろそかにされているという批判があるということは、十分深刻に受けとめる必要があると思っております。今回、これに関連して規定の整備をいたしてはおりますけれども、この規定の整備だけにとどまることなく、全体としてこの事業について、もう一回本来的な事業としての見直しをしていかなければいけないのではないかというふうに考えているところでございます。     〔委員長退席、金子(徳)委員長代理着席〕
  86. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 局長さんが今おっしゃったように、営農指導というのは、本来農協全体がそういうふうにやらなければいけないものなんだ、だから販売事業や購買事業金融事業を全部そこへ集中して考えなければいけないんだということをみんな言うんですよ、組合長も。しかしそうしたら、現実に農協営農指導事業部というものは、例えば営農指導員の数だって、予算だって、どうだといったら、やはり一番不安定ですよ。農業協同組合昭和二十二年にできましたけれども、あの農業協同組合の成立をめぐっていろいろな論争があった。いわゆる生産面の協同活動をする協同組合として発足させるべきだという議論もあった。しかし、結局流通面を中心というような形になって今の協同組合ができた、そのときにこれがつくられたわけですよ。生産というものをそれほど当時重視していなかったのじゃないかと私は思いますね。昭和三十年ごろからこの営農指導ということを盛んに言い出して、技術員、指導員を置けというようなことから始まってだんだん今日の体制になって、それが農協機能と完全に結びつくところに大きな特徴があるということになっておるんだと思いますから、今の状態で、営農指導事業というものについて、やはり一つの基本的な考えと法的な位置づけというものを考えていただきたいと思います。恐らく、どうせこの次に農協法というのは相当思い切ったものをつくらなければいけないようになるんじゃないですか。今度、金融では相当従来と違った形が出てきておりますけれども、その他の問題についてはいずれ遠くないときにやらないと、日本農業、あるいは農協経営自体も持ちこたえられないという状態になってまいりますよ。だから、そういう意味で、今局長さんがおっしゃったようなことを十分考えて、臨んでいただきたいと思います。  特に当面、指導事業の予算、予算の問題は、やはりこれは不安定ですよ、いろいろ言っても。それは現実に各事業、持っておる面は多いですけれども、いわゆる教育情報資金が、二十分の一は積み立てねばならないということで繰り入れるようになっておりますね。それから、あとはもう指導事業の実費とか賦課金とかそんなもの。それで、あとは全部事業を繰り入れておる。事業の繰り入れというのは、なかなか実態は思うようにいっていないというのが現状ですよ。それよりも、もっとはっきりとした基金か何かをつくって、固定的に指導予算というものはやはりからんと一定のものが確保されていくような、そういう状況をつくっておく必要があると思いますが、これについて何かお考えはありますか。
  87. 川合淳二

    川合政府委員 当然のことながら、営農指導事業充実していくためには安定的な財源ということが必要でございまして、この点について、実態的にはなかなか難しいということは、今の経営収支の中からそうしたものを生み出していくということの難しさだと思っております。しかしながら、これにつきましては、やはり組合員みずからの賦課金あるいは剰余の中の目的積立金というようなものを造成することによって充てていくという考え方をとるべきだろうと思っておりまして、そうした指導はこれまでもしてきているところでございますけれども、今後とも、こうした観点に立った指導を続けていきたいというふうに考えております。
  88. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 それから、受託経営の問題ですが、これは委託を受けて農協農業経営を営むということになっておるわけであります。これは、基本はやはり委託をした農家にあるわけでありますから、損益は農家に落ちつくということになっておりまして、農協はその委託料というか一定の報酬を受けるということになっております。今行われておるのは経済連などの大きな畜産の施設などでありますが、それらの計算が、損益計算が非常に厄介。私も実はちょっと行って見せてもらったけれども、正直言ってなかなか難しくて、頭が混乱するような難しい計算の仕方をみんなやっております。あれを簡素化してくれという要望が出てきておると思いますが、これは何か案がありますか。簡便にやれるような方法でやってくれないかというお話が非常に強いわけですが、どうですか。
  89. 川合淳二

    川合政府委員 御指摘のように、この受託農業経営事業は現在、実施組合二百十六組合で、実施面積が一万五千七百というようなことでございまして、全体の農協数からすれば、いまだ活発な運営がなされているとは言いがたい状況にあります。  その理由の一つとして、今御指摘がありました、損益計算方式が非常に複雑であるという点が指摘されております。これは私どもも何とかすべきであるということで、現在、この簡素化について具体的な検討に入っております。いわゆる共通経費などのアロケーションとかそういう問題で一つのネックがあるようでございますが、そこはある意味では思い切りといいますか、これは当事者、関係当事者の御理解も必要なわけでございますし、それから、農協の方もそうした計算で受け入れるというようなことも必要になってくると思いますが、ここがネックになっているというのは関係者皆さんの御意見でございますので、私どもも何とかその簡素化について進めなければいかぬということで、現在、検討を進めているところでございます。
  90. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 これは関係団体等よく見て、できるだけ簡素に、簡単にやれるような方法を講じていただきますように、お願いをしておきます。  それで、事業譲渡の問題ですが、これは規定を設けるということになっておるわけです。この問題は今回の法改正をやらなければならない原動力みたいなものじゃないかと私は理解しておるわけですが、一つは合併であるし、一つは事業の譲渡であります。ただ、これは、全国農協中央会の総合審議会がたしか平成三年の三月ごろ答申を出して、それを受けて、十月に農協大会で特別決議をして、五年に実行方策を明らかにして実施に移る、何年までかかるかということはわかっておりませんが。そして結論は、現行三段階を二段階に切りかえるということですが、これは大変な問題だと思いますよ。そんなに簡単にいくような問題ではないと思うのですが、それでもやるということで農協自体が自主的に決められたんですから、私は結構なことだと思っておるんですよ。皆さんも、それを応援するというような意味で、今度の農協法改正も一つの勘どころになっておると思うのです。  ただ、この中で、もっとはっきりさせておかなければならないのにはっきりしてないのは、やはり合併農協というもの、合併農協というか単位農協、この単位農協というものはどういう役割を基礎にして組み立てていかなければならないか、そして、今度の答申にも出しておりますが、この単位農協というものが、株式会社だったら東京が本店で出先が支店ですが、農協の場合は逆で、やはり地区の農協というものが本店で、片一方は支店だということにならなければいけないので、そのために、単位農協が自己完結の機能を発揮するために何が必要かということについて、私は、農協自体ももっと突っ込んだ議論をして出してもらいたかったなということがあります。それから、今の三段階の問題は、多くは連合会に向けられておりますよ、連合会に対する批判がやはり大きいと私は思っておる。だから、それについてもやはりもう少しメスが加えられる必要があったんではないかという気がいたします。  しかし、なかなか難しい問題だから、こういう大方針を出すことによって、合併が一方では進んでいく、その中から解決をしていくというようなお考えのようだとも思っておりますが、いずれにせよ、事業譲渡を通してやはりいろいろな機能が、事業が移っていくんでしょうが、その場合に、要員の計画ですね、人間の問題も出てくると思いますよ。人間の合理化ですね。これもなかなか、はっきりよう出せないというような幾つかの問題を持っておるわけでありますが、基本は、単協というものをどうしていくかということだと思うんです。その場合に、要員問題と密接に絡むわけでありますが、要員問題について農林省に考えよというのは無理なのかもしれんが、役所としては、指導機関としてはこれをどういうふうに考えたらいいか、もしお考えがあったらお示しをいただきたいと思うんだ。
  91. 川合淳二

    川合政府委員 今回、系統組織がみずから系統組織再編整備という問題に取り組んでいこうということを決定されたわけでございます。これは並み並みならぬ覚悟の上での問題だと私どもは思っております。私どもも積極的に支援、応援していかなければいかぬと思っておりますが、やはり何と申しましても、その再編をどういうふうに具体的にやっていくかというのは系統組織みずからがお考えいただく問題でございます。しかしながら、今御指摘がございましたように、何と申しましても原点は単協個別の組合でございまして、単協がなくなって連合会だけあるという姿は想定できないわけでございますので、そこが原点であるということはそのとおりだと思っております。  したがいまして、例えば、既にそういう構想がある県がございます。例えば単協が三つとか四つとかかなり少数になった場合に、県の段階連合会はどういう機能になっていくんだろうというようなことを現実に具体的に検討し始めている県もあるわけでございますので、発想としてはそういうふうに出てくるだろうと思っております。  その場合に、人的資源といいますか要員問題をどう考えるかということでございますが、これはまさに行政が、介入と言うとちょっとおかしいのですが、指導すべき問題ではないわけでございます。ただ、当然のことながら、再編整備の問題を考える場合に、この要員問題を抜きに考えられないわけでございますので、その点については私どもも、そうした一般的な問題として指導していくということになるのではないかと思っております。
  92. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 この問題は非常にいろいろ与える影響が大きいと思いますが、現実に二段階の問題が投げかけられてから、やはり県連の職員、約四万四、五千おるんだと思いますが、こういう諸君は心配しておりますよ、これ。当面、自分たちの問題がどうなるんだという心配があります。  ところが、これは一方では、全国連は要らなくて県連があればいいんだというような動きも出てきておりますね、全国には。何カ所かの県なりブロックでそういう動きが出てきておりまして、これも要員問題と絡んでおる節があるわけですから、十分注意して、指導する上に当たって見守っていただく必要がある、こういうふうに考えております。  そこで、合併助成法の関係に入るわけですけれども合併の問題、合併農協が本店であるという問題でありますが、この問題を考える場合にいつも言われるのは、いわゆる合併農協組合員との関係が薄くなっていくということですよね。これが、確かにさっきうちの堀込委員質問にもありましたが、定数なんかを調べてみても、規模が大きくなるに伴って、販売、購買、金融、共済事業等、事業組合員一人当たりの額は少なくなっていっておりますね。これは全体の傾向ですよ、この十年来。合併をすれば事業が大きくなる、絶対額は大きくなりますよ。しかし、一人当たりの組合員農協の利用率というのは減っております。逆に系統利用率は高くなっていっておる。こういう矛盾がやはりこの十年来の農林省の統計で出てきておりますね。  これをどういうふうに見るべきかという大きな問題があると思いますが、私は、これはちょっと理屈になりますけれども、今までの農協組織力、組織体制というものは、やはり古い農村の秩序、これを踏まえて仕組まれておったと思いますよ。それは村の自治機能、部落の、集落の自治機能ですよ。それが今急速に壊されておる。その物的な基盤ががらがらになっておるわけでありまして、これがきかなくなってきた。ここに農協の危機が出てきておると思うのです。だから、農協は、そういうかつての古い伝統的な部落の仕組みの上に乗った事業の展開なりあるいはいろいろなことをやるのではなくて、新しい世の中の変化農業情勢変化対応する方向を今打ち立てなければ大変なことになると思っておるのですよ。それを合併農協が仕組んでいく必要があると思うのですよ。  だから、理事の代表制とか学識経験理事をふやすとか、こういう問題もありましょうけれども、私は、もっと大切なのは、組合の中に組合員の要求というか声がどんどん入っていくような仕組みをどういうふうにしてこの合併でつくっていくか、それがないと、合併というのは上からかぶさっていく力でかぶせられてしまいますよ。単協は支店になっていきますよ。だから、そこをねらいにした行政指導が必要だと私は思いますが、私の考えについて御意見がありますか。
  93. 川合淳二

    川合政府委員 農協合併、特に広域合併につきまして組合員との関係にいろいろな問題が出てきがちであるということについては、御指摘のとおりであると思っております。  先生から今お話がありました、組合員の二戸当たりのいろいろな利用状況合併すると希薄になるといいますか、という点につきましては、先生が今御指摘のような問題と、それから私ども、やはり広域合併になればなるほど混住化率といいますか農家多様化しできますので、従来の形に比べて薄められて数字が出てくるということは否めないのではないかと思っております。  今回、私ども改正、これは、例えば今お触れいただきました理事会あるいは代表理事制というような制度は、考え方によっては何を今ごろ、こういう問題だろうと思っておりますけれども、やはり今までの農協の法制度は、まさに先生が今お触れになりました、古い農村と言うとちょっと言葉はあれでございますが、限られた地域における協同組合ということを想定してつくられていたと思っております。したがいまして、理事会とかそういうものを法定しなくても、村内でいろいろよく見通しができるような組織であるということを前提にしてつくられていたと思っております。  したがいまして、今回こうしたことを法制化したというのは、やはり何と申しましても、組合が大きくなって、制度としてきちっとしなければ、透明性なり組合員の声というものが制度として行き届かなくなるのではないかというところから出てきたというふうに私ども考えておりまして、こうした要望が系統組織からも出てきたというのは、やはりそういう点にあるのだろうと思っております。  したがいまして、改正の一点一点がどうかということではなくて、全体としてこの改正の意義なりをよく末端まで説明し、普及していかなければいけないというふうに私どもも考えております。
  94. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私は、法律的には、今局長さんがおっしゃられたような仕組みをつくっていくということもわかりますが、これは法律ということよりも、農協運営あるいは合併農協のあるべき姿、そんなものも、系統農協みずからがあるいは関係農民みずからがつくっていくということがより大切なんでしょうが、そういう場合に、大体今までも農協合併も大変長い間かかっておりますから、その間の経験で出てきておるわけですよ、もう。いわゆる品目別の生産委員会とか、青年とか婦人とか、事業別のいろいろな組織とか、極めて多様なグループ組織というものが単協の中につくられて、そういう意見がどんどんはね返ってくるようなシステムが必要だと思います。  だから、代表理事制を置くことによって相当優秀な人が出てきて、トップマネージメントが出てくるということもわかります。それも結構ですけれども、裏側を返すと、特に農村経営なんというのは苦手というのがやはり多いですから、へまをすると独裁に、ワンマンになっていく心配もまたあるわけですよね。だから、そういうことをさせない内部牽制組織というものも必要ですよ。必要ですが、農協の場合はやはりさまざまな多様な小グループの組織体制が下でがっちり支えていくということだと思いますよ。  私のところにミカンの組合があります。これは専門農協ですけれども、これなんかはまさにそのとおりやっておるように思うのです。ですから、そういうものがもっとたくさん出てこないと、本当に生きた合併農協はできないのじゃないかと思います。これは系統農協自体でも検討しておると思いますが、法律改正ではないけれども、そういうような青写真を出してそういうものに引っ張っていくということを行政の立場でも配慮をしていただきたい、こういうふうに思います。  そして、合併農協の問題では、先ほども質問があってお答えがあったので重ねて申し上げることもあれですが、今、三一%、千九十八組合というものは、やはり規模が市町村未満の農協ですね。今度考えていくこの大型農協、これは五千戸で職員三百人、こう言っておりますね。  それで、今の三千四、五百のものを千ぐらいにするというわけでしょう。そうするとこれは数カ町村がまたがっていくことになるわけですが、そういうことになっていくと町村との関係は非常に厄介になってくると思うのです。農林省は協議会で十分意思疎通をしながらということのようですが、町村と農協とのつながりをどう持っていくかということも非常に大きな問題になってまいります。  合併助成法というものは従来議員立法でやっておったのですが、今回政府提案になっておりますね。この政府提案になった背景というか、理由も何かあるのだろうと思いますが、議員立法、これは我々、委員長の方で考えていただくわけですが、議員立法というものと政府提案の立法との間にどういうふうに差を見つけ出していったらいいのか。この法律についてはこういう問題もあると思うのです。そして、その合併の進捗というものをどういう程度に大ざっぱに見ていくか。そういう点、一括してお答えいただきたいと思います。
  95. 川合淳二

    川合政府委員 確かに今、一千農協という構想を持っておりますので、単純に言いましても、三千数百の市町村に対しまして一千農協ということでございますので、かなり市町村を超えた農協が出現するわけでございます。  先ほどもお話がございましたが、転作事業一つとりましても、市町村との関係というのは非常に緊密に行われているわけでございますので、やはり今後とも市町村の行政との連携強化というのが非常に大事になろうと思っておりす。  そういう場合に、私どもは連絡協議会というようなものを設置することについて一つの考え方を持っているわけでございますが、当然のことながらこれだけにとどまらないで、これも先生お触れいただきましたが、地域によって、いろいろな生産部会、こうしたものがそれぞれつくられて、その生産部会なり協議会が市町村と密接な関係を持っていくというようなことを進めていく必要がさらに出てこようと思っております。  そうした中で、私どもが今回、行政と申しますか政府立法としてこの合併助成法をお願いしたのは、私どもの従来の改正に加えまして、特定専門農協助成法の対象にしたということ、それからさらに、円滑な合併を進めるために固定化負債対策などを講じるための基金を設置する、当然のことながらそのための計画を立てるというふうなことを拡充したということで、私ども政府としてこれを出したわけでございます。もちろん、議員立法との関係について私どもはよくわからない問題でございますが、私どもの立場から申しますと、そういうことでこの法律案をお願いしているわけでございます。  いずれにしても、市町村との関係というのは非常に大事でございますので、先ほどの個々の組合員との問題とも、二つの重大な課題として、私ども今後の指導の中心課題としていきたいと思っているところでございます。
  96. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 この議員立法と政府提案との関係は、私は議会としてもちょっと詰めていかなければいかぬと思うのです。農協合併助成法という法律は、長い間絶えず議員立法で延長延長をやってきておるわけですよ。それを政府が今度はっと出して、これが政府提案になっていく。それにはそれなりの理由があるし、政府提案の方がよろしいという判断がなければいけないと思うのです。そういう点は、政府側も従来の経緯にちなんで政府提案に切りかえた理由を議会に対して説明をすべきだと思うし、政府はこういうことだから勝手にやりますよということは、今までの経緯から見てちょっと荒っぽ過ぎはせぬか、私はそんな気がいたしますので申し上げたわけであります。  それで、農協合併の一つの問題は、合併の大きな阻害条件になっておる固定化債権について、基金を設置をして金利分でそれをこれからしばらくかけて償却をしていく、こういうことになっておるわけでありますが、この固定化の償却をやる基金というのはどういうような形で組み立てていくのか。いわゆる新しい財源はどこから拠出をしていくのか。  それから、これまでもこの種のものが相当の府県につくられておるわけであります。合併は今始まったことではないわけですから、今度の提案されたものとずばり合ったものではないかもしれませんが、いろいろな県でこれに類似した法人設立がなされておるわけであります。そういったものと、この法律でこれからつくっていく基金、法人の関係はどういうふうな形で調整をしていかれるのか。この辺をちょっとお示ししていただきたいと思います。
  97. 川合淳二

    川合政府委員 農協合併に当たりましては、組合間の資産内容の格差を調整する財務調整ということが実際問題として一番大事な問題になるわけでございますが、その場合の固定化負債がどうしても合併の大きな障害になると言われているわけでございます。したがいまして、今回この点につきまして、私どもは、今お話がございましたように農協の系統みずからが負担して全国段階と県段階に基金を設置する、そういたしまして、こうした固定化債権の回収、償却に対しまして助成を行っていくというような制度を設ける、この基金への負担金につきまして税制上損金算入を認めるという措置を講じることとしたわけでございます。  今お話のございますように、都道府県段階におきましては、従来からさまざまな形で固定化債権対策を講じてきているわけでございますが、その中で基金という形で実際に設置している県が十四県ございます。このうち多くの基金は、合併推進を図ることを目的としておりますのでかなり似通った基金があるわけでございます。したがいまして、今回の法改正に伴いまして推進法人というものを設立していくわけでございますが、この趣旨に沿った形で衣がえというか、そういう必要があるところもあろうかと思います。そうした所要の調整が必要だと思いますが、既存の基金につきまして、そうした調整を図ることによってこうした推進法人にしていくということを考えていくべきではないかというふうに考えております。  なお、基本的にはそれぞれ県段階で十分検討されるべき課題でございますので、この辺は、もちろん私どもも県とよく御相談をしながら、その運営なり設立に適切に指導をしていきたいと思っております。
  98. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 いずれにせよ、二つの法人ができて同じようなことをする必要はないわけでありますし、また基金はそれぞれが出していくのだろうと思いますから、ひとつ十分調整をしてやっていただきたいと思います。  時間がありませんので、あと二つ三つ予定をしておりましたが、質問はできませんが、大臣に最後にお尋ねをしておきます。  私は、農政の責任者として、農林漁業団体の問題は非常に大きな問題だと思うのです。ところが、歴史的にこの問題はなかなか厄介な難しい問題だから、例の河野一郎さんがやろうとしてもやれなかった。だから少し、ちびっておったらいけぬが、思い切ったことができにくいという背景や条件もあるが、現在の農林水産業を取り囲む情勢は大変困難で厳しい、相当思い切った施策を打ち出さなければいけない状態になっていると思うのです。だから、私は、この農林漁業団体のあり方をこの際総合的に検討していただきまして、そして整理するものは整理していく、そして簡素で効率のある、そして今の農業情勢に十分対応し得るような強力な団体組織をつくっていくということが必要だと思いますから、そういう方向に向かって努力をしていただきたいと思います。  幸い、二十一世紀農政のあり方検討されておるようでありまして、その中に多分この問題は一つの課題として入っておるのだと思いますが、この際、農林団体行政に対する農林大臣の決意のほどを篤とお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  99. 田名部匡省

    田名部国務大臣 あくまでもその地域農業をどうするか、それがだんだん停滞していきますと、農協が必要でなくなるという事態になるわけでありますから、一体今の状況の中で本当にどうあるべきか。  私は、上から何でも言うのは余り好きな方じゃないのです。と申しますのは、アイスホッケーの話をたびたび申し上げて恐縮でありますが、教え過ぎは決してうまくなりません。みずからが考えて努力をするというところに発展というのはあるのです。人から言われてやるというのは、やっている方もおもしろくない、自分がいろいろ考えてやると非常に進歩もあるし、また効果も上がるということを別の分野でいろいろとやってみました。教え過ぎるとやはり、教えなかったことは全然考えようとしませんから、柔軟性がないといいますか対応が非常に悪くなるということがありますので、あくまでも農家農協のトップの幹部の人たち現状実態をどう認識して将来に向かってどうあらなければならぬかという気持ちを持たないと、私の方で一方的にこうだこうだと、それは資料としては提供したり、あるいは指導はいたしますけれども、みずからの考えのないところに幾らいいアイデアを持っていっても、それを受け入れるだけのものがなかったら絶対これは成功しないと思うのです。ですから、私どももそういう意味ではこの実態というものをよく指導し、そして皆さんも本当にこのままじゃ我々はいかぬという認識の上に立って初めて先生がおっしゃるような大改革、これをやらなかったら本当に将来もたないと私は思うのです。  ですから、そういう意味でいろいろ検討課題の中でやっておりますけれども、一番大事なことは何といったって担い手です。この担い手をどうするかという観点から、農協自体もいろいろと抜本的に削るところは削る、やめるところは思い切ってやめる、そのぐらいのことをやりませんと、事業においても赤字を何十年も抱えている、何となくずっとやっていくというのも問題があります。ですから、そういう意味では本当にこの農協そのもののやっていることが農家の負担としてかかわっていくわけでありますから、農家皆さんのため、担い手のために自分たちがどうあるべきかということを私は考えていただきたいし、私たちもそれに向かって努力をいたしたい、そう思っております。
  100. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 質問を終わりますが、大臣も私の質問の要点をもう少し、質問予告していなかったからあれだと思いますが、私は農林漁業団体が第一たくさんあり過ぎると思っているのですよ。もう少し整理できないかという気がしております。その他いろいろありますが、時間がありませんからきょうは議論はもうやめます。いつかまた機会を得たいと思いますが、ともかく農林漁業団体のあり方というものについてはよほど考えてもらわないと事は進まぬ。単に農業だけの問題ではないと思っておりますから、この点だけ申し添えて質問を終わります。
  101. 金子徳之介

    ○金子(徳)委員長代理 前島秀行君。
  102. 前島秀行

    ○前島委員 私は、今同僚の田中先生の御質問延長するような形で質問を始めたいと思うのです。  と申しますのは、まず第一に、農協に対してさまざまな意見があると思うのですね。それをいわゆる今度の法改正の中でどう受けとめ、それがどう改正されているのか、あるいは今後の農政指導として、担当官庁としてそれをどう具体的に指導しようとしているのかということをまず第一に伺ってみたいと思うのです。  いわゆる農協に対するさまざまな意見、私は率直にあろうと思うのです。外部から若干辛らつな表現を使わせていただくなら、商行為に走り過ぎてはいないのかとか、本来の農協の任務あるいは基本理念というものは最近希薄になっているのではないだろうかとか、あるいは信用事事業中心で本来の農協組合農協のあるべき営農指導という面は比重がだんだん落ちているのではないだろうか。あるいは内部的には、今までさまざま御指摘があったように、農民農協離れ、とりわけ中核農家農協離れは目立っているのではないだろうか。あるいは、購買事業信用事業等のあり方等々さまざまな意見が出されていることは事実だろうと思うのです。現に行政の方でも総理府の行政監察だとか新行革審等々での指摘もこれあるわけです。     〔金子(徳)委員長代理退席、委員長着席〕  私は、こういうさまざまな意見について、全部農協におっかぶせたり農協の責任だよということにはならぬと実は思っているわけであります。やはり行政の責任というものはあるのではないだろうか。特にこの農協というのが、ずっと戦後の経過なんかを私は多少読ませてもらったりすると、やはり行政の補助機関的な機能というものを大きな柱としてやってきたことは間違いないわけですね。出発時点もそうだったと言われています。そういう機能を持ちつつ、そしてまた具体的には食管に代表されるような制度依存的な事業といいましょうか、そういうものが大きな事業の柱になっていたことも事実だろうと私は思うわけであります。そういうシステムの中でずっとなされてきて、農業農協を取り巻く条件が非常に変化をしてきた。そういう変化の中でいわゆる農協の基礎基盤といいましょうか、存立基盤というものが今や根底から崩れようとしてきて、さまざまな問題が改めて提起されている。そういう状況の中で法改正がなされたんだろう、私はこう思っているわけなんでありまして、そういう面でまたこれからもこの議論というのは続くであろうし、農協あり方あるいは農政のあり方ということは続くだろうと思うわけであります。  そこで、大臣、第一にこの農協に対するさまざまな意見というのを行政としてどう受けとめているか。それは単に農協に対するだけではなくして、行政、農林省にも対するさまざまな意見と受けとめるべきではないだろうか、私はこういうふうに思っていますので、その辺のところを今度の法改正の中でどう受けとめ、どう生かし、そしてまた今後その意見を具体的な指導の中でどう消化していこうとするのか、その辺の基本的な認識と基本的な考え方をお聞きしたい、こういうふうに思います。
  103. 田名部匡省

    田名部国務大臣 日本経済の発展と呼応して農協の果たした役割、それは十分立派に果たしてきたと思います。しかし、だんだん厳しい環境、あるいは日本全体がそうでありますように、担い手の問題でありますとか高齢化の問題でありますとか都市に集中する、あるいは他産業が非常に賃金が高い、そういうことの中でいろいろと、行政もしっかりしない、あるいは農協自体も、経済が大きくなるにつれて農協もそれぞれ皆大きくなって、そしていろいろな事業に手を出すということになって、だんだんどうも我々の意図するものとは違うという批判が出てきたのだろうと思うのです。  最初からそうであったわけでなくて、当初はやはり一生懸命、農家がよくなることによって農協が存立をしておったという認識があったのですけれども、今でもないとは言いませんが、だんだん手を広げたためにそっちの方がちょっと手薄になったと言われる批判はあったと思うし、我々も見ておって何か改革しなきゃいかぬ、いかぬと思いつつも、まあ何とかなっているときは仕方がないかなという気持ちもあったと思うのです。しかし先々を見てまいりますとそうもいかないということで今回の法改正ということになったわけでありますが、何といっても自主的な協同組織でありますから、これを運営している方々、これと一緒になっている農家皆さんがその変化に気づいて、やはりやらなきゃいかぬという気持ちを持っていただかなければならないし、また私たちもそういうことについてはこれからいろいろと努力をしていきたい、こう思っております。  幸い、昨年の農協大会で今後の事業運営あるいは組織改革の推進を決議いたした。いろいろとやはり内部の方でもこのままではいかぬという認識があったのだろうと思います。農協が、この農協協同組織としての原点に立ち返ってやろう、こういうことでありますから、そのことを大いに進めていただくように、また私たちもこの努力をいたしていきたい。  営農指導については、協同組織たる農協の基礎となるわけでありますから、何といっても重要な事業であるというふうに考えております。今回の法改正を機に、より一層営農指導事業の質、量両面の充実が図られるように強力な指導に努めてまいりたいというふうに考えております。
  104. 前島秀行

    ○前島委員 さまざまな農協に対する意見、私はやはり行政の方ももっとみずからの受けとめ方をしなくちゃいかぬじゃないかと思うわけであります。やはり農協は戦後ずっと農政とのかかわり合いの中で動いてきたことは間違いないわけなんであります。その結果として、片っ方で直接の生産農民から見ると、今の農協農民から離れてしまっているんじゃないだろうか、こういう意見になっているわけなんであります。行政の方も、政府の方もぴしっとそういう受けとめ方をして、先ほど大臣は余り教え過ぎるのも悪いと言うけれども、教え過ぎなかったんではないだろうか、責任をその辺のところを持ち得なかったんではないのかという基本姿勢はあると私は思うわけであります。そのさまざまな意見の典型が、今大臣が言われましたけれども営農指導の問題、先ほど田中先生も言われましたけれども、今度の法改正の中でこの問題に触れなかったことが、やはり今のさまざまな意見に対する受けとめ方あるいは行政の基本姿勢を示しているのではないかなと思うわけであります。  先ほど田中先生からありましたが、いわゆる根拠としては十条の一の十ですか、あの辺のところらしいのですけれども営農指導という言葉は全然出てこない。あるいはいろいろなことをあれすると、この営農指導に対する一つの統一した認識もないようでありますし、あるいは片っ方で今度の法改正を見ると、いわゆる九のところの老人福祉の方のところはわざわざ一項目を入れている。今の農政を取り巻いている状況農協に対するさまざまな意見を考えると、もちろん老人福祉の問題をぴしっと明文化することも必要なんだけれども、それ以上に営農指導というものをどう日本の農政の中で、農協の活動の中で位置づけるかということはより重要ではなかったんだろうかなというふうに私は実は思うわけであります。  そういう面で私は、今回の法改正の中でこの営農指導というところがぴしっと位置づけられて法改正というものをすべきであった、あるいはもっと明確にすべきであったというふうに思うくらいなんであります。そういう面で、何でこの点は触れなかったのか。老人医療の方をあえて触れて、後で聞きますけれども、こちらの方を明確にし得なかったのは何なのか。あるいは農政の不十分だという点についてどういう点をこれから改善しようとしているのか。  営農指導のいろいろな問題については、財政的な問題が問われたり、あるいはいろいろな能力あるいは指導員の質の問題等々が問われているわけでありますし、あるいは改良普及員等々他の行政との兼ね合いの問題なんかが言われているわけであります。そういう面で、なぜ今回あえてこの営農指導にかかわることについては法改正の中で言えなかったのか。あるいはここに改善の余地があるとするなら、具体的に何を変えようとしているのか、どういう形で具体的に指導をしようとしているのか。ここの問題を明確にしない限り、私はこれに対するさまざまな意見というのはなかなか解決をしない。社会的なあるいは世間的な、国民的な合意というものも得にくいのではないかというふうな気がしますので、その辺のところの具体的な指導方針を含めて見解を賜りたいと思っております。
  105. 川合淳二

    川合政府委員 農協営農指導事業は、確かに農協法の十条一項十号というような規定もあるわけでございますけれども、本来的にやはり農協が行うべき事業であるというふうに考えているわけでございます。したがいまして、それぞれのこの十条に書かれているような事業営農指導と密接に結びついてすべて行われるべきものであります。そういう意味で、本来事業と言えるべき事業だと思っております。  それが現在批判としてあらわれているのは、ともすれば経済事業なら経済事業信用事業なら信用事業が独立した形で運営されている、中心であるべき営農指導との結びつきを失いがちであるというところに一番の批判があるのではないかと思っております。  したがいまして、私どもは今回の改正で、例えば受託農業経営の問題それから農事組合法人の問題など営農指導事業のある種の手段とも言うべき制度につきましてその改善を図ろうとしているわけでございまして、私どもの今回の改正の中心的な課題の一つとして、この営農指導事業の復活と申しますか、もう一度ここのところに力点を置いて農協本来の事業活性化を図ろうということを考えているわけでございます。したがいまして、法律的に改善したということだけにとどまらないで、全体としてこの事業をどうやって盛り上げていくかということが非常に大事だと思っておりまして、例えば営農指導員の確保の問題、資質向上の問題、それから先ほど申しました販売事業など他部門との適切な連携の問題、そして安定的な財源の確保というような点について、それぞれ地域の置かれた状況があります、地域条件とか営農類型などをもとにやらなければならない問題もありますが、そうした点に十分指導の力点を置いていきたいというふうに考えているところでございます。
  106. 前島秀行

    ○前島委員 恐らく、全体が営農指導だと言うんだろうと思っていたんですけれども、それなら何であえてその老人医療のところの法改正を九の二という形でつくってやったんですか。具体的にそっちの方を先に聞きますけれども老人福祉の方の法改正といいましょうか、あそこに一項をつけ加えることによって何をしようとしているんですか。
  107. 川合淳二

    川合政府委員 もちろん農協の一つの役割として、農業者なり農家生活面に対する改善あるいは向上に対する寄与ということがあるわけでございますが、私ども今回老人福祉事業をここに取り上げました問題は、やはりその問題が農協事業の中にしっかり位置づけられるべき状況になってきたということが一つ。そしてもう一つは、員外利用との関係で、この事業は、例えば医療事業がそうでございますが、従来の五分の一というような関係ではなく百分の百という、ある種の緩和措置をさしていただいておりますが、そういう位置づけをする必要があるということで、今回福祉事業について法定、明記したということでございます。
  108. 前島秀行

    ○前島委員 要するに、新たに福祉事業という、老人福祉ということをつけ加えることであって、いわゆる在宅福祉をやりたいというのが目的でしょう。それは別に今回九の二を新たに一項目つくらなくてもやれるんですよ。片っ方では、そういうことをやらぬでも在宅福祉をやりたいというならやれるのに、もう少し明確に営農指導という、確かにこれは解釈によっては、すべてを営農指導だといえばそれはそれまでのものですけれども、やはり一つの重要な柱としてびしっと位置づけるということは、やはりこれからのあり方として、基本的な農協の進むべき方向として重要な意思表示にもなる、こういう含みも含めて今回法的に整備をすべきじゃないか、すべきだったのではないか、こういうふうに私は言っているわけであります。  いずれいろいろな形でこれからも議論がなされるでしょうし、この農協問題、あるいは具体的な法改正というのもまたいずれ議論になってくると思うので、いずれにせよその農協に対するさまざまな意見、それはとりわけ営農指導ということに対する意見が多いわけでありますから、それを具体的な行政の中で、指導の中で生かしてほしいということをお願いしておきたいと思います。  次に、いわゆる生産対策等との関係、とりわけ農協のかかわり方との関係を聞きたいのであります。  先ほどもありましたように、いわゆる担い手といいましょうか、基幹的農業従事者減少していることは間違いない、統計的にも間違いない。あるいはいわゆる農家数の減少というのもこれは間違いない。先ほどもありました遊休農地、これは先ほど二十数万、こう言いましたけれども、いわゆる作付をしていないところをつけ加えますと三十六、七万になるわけなんですよね。そこの作付をしていない面積なんかは十四、五万あるはずなんであります。そういうところを入れますと三十五、六、まあ三十七万という数字も出てくるわけなんでありまして、その数というのは相当いっているということなんであります。  そういう現状の中で、ずっと戦後、三十七年以来やってきたこのいわゆる中核農家といいましょうか、規模拡大という形で農協が中心になって土地集積をするための方法が三つあったわけですね。先ほどもあった、この成果といいましょうか、これは正直言って全然ない、かなり遅れている、こういうふうに言っていいと思うんですけれども、これはなぜなんだろうか。先ほど実務的にもややっこしいし、あるいは農協という、営利という観点から見ると必ずしも、まあ簡単に言うともうかるような仕事じゃないから敬遠するという、そういうものなのか、制度的にいろいろ問題があるのか、あるいはもし制度にいろいろ問題があるとするならば、簡素化と簡単に言いますけれども、それは具体的に今後改善しようとしているのか。この問題をひとつ答弁願いたいと思います。
  109. 川合淳二

    川合政府委員 農協土地利用集積のために行っている制度は幾つかあるわけでございますが、御指摘のように必ずしも十分にそれが普及してないということでございます。例えば農地信託という制度がございますが、これは二十四農協、六百九十ヘクタールというふうに非常に小さい数字でございます。この農地信託は、一般的に申しまして信託という形式をとりますものですから非常になじみが薄く、形式的ではございますが所有権が農協に移るというようなことから心理的に抵抗感があるというようなそういう問題もありますけれども、やはり私ども制度にも若干の問題があったのではないかということで、今回は売り渡しの相手方を見つける期間を延長、例えば一年から五年というようなことを考えまして、必要に応じまして、その相手方が見つかるまでの間、地方の維持などの観点から農地管理を行うことができるというような措置を講じることとしております。  また、農地保有合理化促進事業農協がやること等ができることになっておりますが、これにつきましても、まあこれは平成元年からということでございますのでまだ時間が経過してないということもございますので、これにつきましてはよくその趣旨の徹底、あるいは必要に応じまして、担い手に貸し付けるまでの間の農地管理を行うことができるというような運用面での措置をすることによりまして、この面での農協役割活性化あるいは活発化というものを図っていきたいというふうに考えているところでございます。
  110. 前島秀行

    ○前島委員 やっぱり制度的にもいろいろな問題がある、なじまない。所有権の移動だとかいわゆる耕作料の位置づけの問題とかといういろいろなじまない点がある、こう言う。ただ、それだけで言い切れない部分が若干あるんじゃないかなというふうな部分。というのは、五十五年の、あるいは五十年のときの農振法の改正で出てきた農用地利用増進事業の方ですね。こっちの方でのかなりの土地流動というのは進んできているわけですね。これは自治体がかんでくるという面あるいは土地耕作権だとかあるいは土地所有権の移動という問題がかなりクリアされているからという面もあろうと思うけれども、やはり一つには積極性というものがない。それをまた行政が積極的にカバーするといいましょうか支援するという面がなかった、弱かったんではないかというふうに私は言わざるを得ない、こういうふうに思っているわけなんであります。  そういうことも片っ方で思いつつ、その担い手づくりをじゃあこれから具体的にどうしていったらいいのか、そこに農協がどういうふうにかんでいくことが必要なのかということだろうと私は思っているんです。  先ほど言いましたように、作付をしていない面積を比べますと三十七、八万あることは間違いないですね。その遊休地というのがふえていく速度あるいはさまざまあったいろいろな制度によるこの土地の流動化、とりわけ所有権はなかなか移動しませんから借り入れという形でもって集積されていく。このスピードというのを見てみると、いわゆる遊休地の拡大率というのはここのところ五年、十年の間に五〇%以上のスピードでどんどんどんどん拡大をしている。片っ方はそういうさまざまな制度農協を中心としたさまざまな制度でもって土地が集積されていく。特に借り入れという形でもって集積されている率というのは、同じスピードで見ると三〇%弱の拡大率でもっていくわけなんですね。そうすると、政府がいろいろやってきた構造再編の方策の速度よりかいわゆる遊休地の拡大の方がどんどんふえていくという形になっているというのが現実だろうと私は思っているわけであります。  そういう現実の中で、今回農事組合法人制度改正してやりいいようにしよう、かなり具体的な成果を上げる形のために今度の改善策をした、こういう意味であるのだと思うのですけれども、かなりここに放置される、遊休される土地と構造の再編というところに期待をかけているのかな、こういうふうに思うわけでありますけれども、そういう面で、いわゆる構造再編に向けての制度として、農事組合というのは相当ウエートを置いていくのか、あるいはそれ以外の方法というのを検討しているのか。とりあえず農事組合の位置づけといいましょうか、あるいはこれをどう積極的に育成しようとしているのか、その辺のところをひとつ基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
  111. 川合淳二

    川合政府委員 今御指摘がありましたような状況のもとで地域農業振興を図っていくというためには、実情に応じまして多様な農業経営が展開されることが必要だと思っております。農事組合法人制度昭和三十七年につくられております。協業化というような考え方対応するためにつくられた制度でございますが、現在の状況のもとでもう一度、この農事組合法人というような協業形態が担い手の受け皿として期待され得るのではないかというふうに考えて、今回の改正に踏み切ったわけでございます。  御承知のように、農事組合法人要件があるわけでございますけれども、それを現代的に緩和することによりまして、その振興に当たりましてはその地域状況に応じた的確な指導というものが必要だと思っておりますけれども、一つの協同組織としての形態の制度としてこの農事組合法人制度をもう一度活性化させたい、活発化させたいということで今回改正しようとしているところでございます。そういう役割を果たし得るまた制度であると思っておりますので、十分な指導をしてまいりたいと思っております。
  112. 前島秀行

    ○前島委員 ここ顕著な現象として、いわゆる規模拡大といいましょうか中核農家育成という形の中で、家族農業を柱とした大きな一つの柱が要ると私は思うのですね。これが主流であることは間違いないだろうと思うのです。同時にまた、先ほど言いましたように、急激な速度でもって耕作放棄地だとか、あるいは作付をしないという地域だとか、あるいは都市化地域等々においてはいわゆる相続問題等々、担い手がいないという形でもって分化していく可能性もあるだろうと思うのですね。あるいは片や条件不利地域の中山間地域、山間部ではなかなか経営ができないという形の中でまた耕作放棄地が拡大をしていく、こういう現象がかなりのスピードでこれからいくんだろう。そういう中で、今担い手をどうするのか、あるいはそういう農園への集団をどうつくるのかということが緊急な課題として、また基本政策の中でも議論をされているだろうと私は思うのですね。今回の法改正というのは、現行の枠の中で、現行体系の中で許される農事組合活性化して、ひとつそれでいこうじゃないかというのが当面出されてきた方針だろうと思うのですね。  さて、この現行の枠の中で、農事組合を中心とした新しい担い手づくりだけで、この大きな流れの中でこたえられるだろうかどうなのだろうか。いわゆる従来あった基本的な家族農営中心という形の中で、現行体系の中だけでそういった現象、五百万ヘクタールというけれども、現実には耕作面積は九〇年センサスで言うと四百三十六万ぐらいですか、耕作面積としては五百万をもう現に切っているというのが出てきている状況の中で、いわゆる新しい体系といいましょうか、現行の枠の中でいいんだろうか、その辺のところを恐らく基本政策として議論されているだろうし、近くその方向が出る、こういう話も聞いているのですが、今度の法改正との関係もありますし農事組合活性化という課題もありますので、その辺の認識をぜひ聞かせていただきたい、こういうふうに思います。
  113. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 新政策検討との関係でお尋ねでございますので私の方から申し上げますが、御指摘のように、現在私どもこれからの日本農業担い手をどういう形で考えていったらいいかということを検討している段階でございます。形が家族経営という形、従来からありますいわゆる家業的なといいますか先祖伝来やっているような家族経営という形の農業経営だけではこのなかなか難しい時代対応できないではないかという感じがいたしております。  もちろん、今先生おっしゃるように家族農業経営というのは我が国農業の中心的な存在でございますし、今後ともそうあり続けなければならないと思っておりますが、地域によりまして家族経営対応することが難しいところもある。また、その経営の継続性、安定性という意味で個人経営的なものがいいのか、より法人化したものがいいのかということを考えますと、最近のように世の中が非常に変動しておりますと、従来型の家族経営ではむしろ不安定な要素すらある、そういうことも考えられますので、そういう要素もあろうかと思います。  何よりも私ども考えていますのは、今後の農業を担っていくものは、それが個人であれ他の組織体であれ、経営意識を持って経営管理能力にすぐれている、また企業的な経営ができる、そういう要素を兼ね備えていることが必要ではなかろうか。そういう資質を持った経営体がより規模が大きく生産性の上がる農業をやっていく、そして持続的で安定的な経営になる、こういうふうに考えておるわけです。そうしますと、家族経営以外にも今お話のありました農事組合法人しかり、あるいは協業経営と言われている他の形態のものもございますし、耕作組合のようなもので完全に経営をやっているものもございますし、いろいろな形態のものがあろうかと思います。  今我々の検討しているのは、これだと形を決めるのではなくて、形はそういう多様なものがあっていい、しかし、それが本当に農業を担っていく上で効率的な経営、安定的な経営ができるかどうか、そのための条件整備はどうしたらいいかということをこれからの政策あり方として検討しているという事態でございまして、経営体の形そのものを余り枠をはめてこだわるということよりは、その本当にねらいとする農業を担っていく資質なり力を持ち得るものとしてどういうものを育てたらいいか、こういう検討をしているところでございます。
  114. 前島秀行

    ○前島委員 それ以上のあれは今出ないかなとは思うのですけれども、いずれにせよ今回の法改正というのは、現行の体系の中で農事組合等々の改正といいましょうか改善をした、こういうことでありますけれども、今のあれですと、いずれさまざまな農業担い手をつくらなくてはいかぬ、これはもう間違いない課題であろうと思うわけであります。そうすると、いわゆる農地法との兼ね合いだとか、あるいは面的に管理といいましょうかカバーしている農振法との兼ね合い等々の問題も出てくるわけなんでありますけれども、今回はそういうところは全然触れない形で、現行の枠の中でのいわゆる担い手づくりという位置づけだろうと思うんですね。その辺の、さまざまな担い手だとかさまざまな形での営農集団だとか生産形態をとなってくるとそれとの兼ね合いがどうしても出ざるを得ない、こういうふうに片っ方では思うわけです。いい悪いは別ですよ。  そういう意味で、その辺の議論の経過といいましょうか、方向というのはどんなふうになっているのか、ちょっと聞かせていただきたい。
  115. 海野研一

    海野政府委員 おっしゃるように、担い手、さらにそもそも農業労働力そのものが足りなくなってくる中で、ただ流動化の数量自体は、決して壊廃面積といいますか耕作放棄の方が大きいわけではなくて、耕作放棄は五年で六、七万ふえたわけでございますが、利用権設定による流動化自体は毎年五万ないし六万流動化しておるということでございますが、それにしても本当に人がいなくなってくる、その中で耕作放棄してくるという中で、本当にだれが担っていくかというのは大変な問題でございます。  検討内容についてはただいま官房長から申し上げましたとおりでございますけれども、そういう意味で、このような問題は現行制度の枠を離れての検討でございます。まだ具体的に現行制度の何法はいじるかというようなところまで来たわけでございませんけれども検討の結果、どのような格好の担い手をどのようにして育成していくのかというようなことの結果、農地法にしても農振法にしても必要が出てくれば改正をしたい。改正の方を先にピンどめしているわけではございませんが、そういうような気持ちでおります。
  116. 前島秀行

    ○前島委員 あとは、いわゆる担い手づくりといいましょうか、そういう耕作放棄地をどう管理していくといいましょうか、そういう意味で、やはり先ほどの田中先生の質疑にもあったように、農協役割というのは、私これは避けて通れないことだろうと思うわけでありますけれども、私は、何といっても家族農業というのが中心であることは、これは間違いないわけなんだろうと思うのです。しかし、現実に実態論として耕作放棄地というのがふえている、これは何とかしなければいけないという意味で、どう絡み合うのか、そこをどう組織化していくのかという意味で、私は農協というものが大きくクローズアップされてくるだろうと思うわけでありますけれども、そういう意味で、今実態論として、こういうさまざまな担い手耕作をするには、もういわゆる家族農業だけではしょうがないので、さまざまな形態をやらざるを得ないではないか。しかし一方で、法人だからといって株式にあれした場合の問題点ということは、これはあることは事実なんであります。この心配というのは、これはもう絶対あるわけなんであります。  そうすると、やはり農協がその辺のところを積極的に耕作放棄地にかかわっていく、そういうことが必要ではないか。とりわけ、条件の悪い地域なんかにおいては農協が積極的にかかわって、それを行政が、国が支援する、それで新たな新規参入者とのつなぎ役をしていく、こういうことが重要ではないかという意見があると私は思うのですね。  そういう意味で、この農協役割ということをもっとやはり前に出すべきではないか。新たな法人形態を、問題のある法人形態を考えることよりか、今必要なのは、いわゆる耕作放棄地を中心として急激にふえている地域の対策として、農協が積極的にかかわる。農協も正直言って組織でありますから、特に片っ方で経営問題が現実に大きなウエートを占めているということになる。そういう角度から見ますと、そう簡単にそんな飛びつくことはできないので、結局そういう耕作放棄地を管理する、そして農地を確保していく。そのことは同時に、食糧を確保していくというこの原則に通ずるわけなんでありまして、そうすると、やはり政府の、行政の積極的な支援というものが基本的になければならない。そういう面で、農協が積極的に前に出るべきではないか、出すべきではないか、そのことをまず基本的に追求すべきではないかという考えが私は出てくると思うのです。  そういう面で、今農地法だとかあれをいじる以前に、今持っている現行の中でも、単に農協に権利調整だとか何かの機能だけではなくして、積極的に経営体としてかかわっていく方法だって私は現行体系の中にあるのではないだろうか、それを行政が、国が支援していくという基本的な姿勢が必要ではないだろうかというふうに思うわけであります。そういう面で、この一連の担い手づくり、とりわけ耕作放棄地がふえていく過程の中で農協をどう位置づけていくのか、それをどう国が支援をしていくのかということが、私、今問われているような気がしてならないわけなんであります。そういう面で、この農協の位置づけ、農協役割というところをひとつ整理した形で考え方を示してほしい、こういうふうに思います。
  117. 川合淳二

    川合政府委員 当然のことでございますが、農協地域農業振興にかかわっていく場合に、何と申しましても、現在の一番の問題である担い手問題にどういうふうに対応していくかということが一番重要な問題だと思っております。  この担い手問題は、当然のことながら新規就農者の問題なども含むわけでございますけれども、こうした問題につきまして系統組織自身は昨年の農協大会におきまして、地域農業集団の育成担い手としての位置づけの明確化、あるいは農協連合会による農業生産への取り組みの強化、それから地域内労働力の活用というような点で、農業の多様な担い手育成に取り組むことを決議しております。  私どもといたしましても、現在、新規就農者とか担い手の確保対策、制度的に農協の中にかなり制度としてはあるわけでございますが、こうした措置を講じているところでもございますので、今回の改正を契機に、農協系統自身の担い手育成に対する主体的な取り組みに対して、積極的に私どもも指導なり所要の支援をしていくという考え方に立っております。  何と申しましても地域農業の中核的な存在でございますので、農協がやはりこの問題に深くかかわっていくということは非常に重要なことだというふうに考えております。
  118. 前島秀行

    ○前島委員 いずれにしても重要な問題でありますし、その柱は何といっても農協であろうと思うわけであります。それが農家、生産者の意向を直接反映し、あるいはそのためになる新しいさまざまな担い手対策をぜひ考え出していただきたいというふうに思います。  あと具体的な面で、農協経営管理体制の問題についてちょっと伺いたいのであります。  今回、いわゆる理事会制度ですか、あるいは代表理事制度だとか員外枠の拡大だとか職員と理事の兼任等々の改正がある。私はそのことはいいと思うのです。管理体制の強化になると思うのですけれども、問題は、形はつくったが、魂が入らないと意味がないというふうに私は思うわけであります。その辺のところのポイントは、いわゆる監査体制ではないかなというふうに思うわけであります。  それは、ただ監事をつくるとか置くとかという形じゃなくして、常任ということがポイントではないだろうかな。いわゆる信用事業とかいろいろな事業というのは非常に複雑になってきていますから、それを十分監査できる、監督できる体制づくり、ただ置けばいいという形ではないような気が私するわけなんであります。ここの特に信用業務でいえば、貸付業務といいましょうか、融資のところまでぴしっと監督できる体制ということが、いろいろな事件を起こす対策としても、あるいは全体の管理体制としても重要ではないだろうかというふうに思います。そういう面で、今度の法改正の中で、この監事というのは常任監事ということを義務づけているのか、あるいはその辺の指導というのはどうしようとしているのか、ちょっと具体的に聞かせていただきたいと思う。
  119. 川合淳二

    川合政府委員 今回、監事の権限強化についての規定の改正をお願いしているわけでございます。これは、組合業務や財産の状況の調査権を付与する、あるいは理事組合に著しい損害を及ぼすおそれがある事実を発見したときの監事への報告の義務づけとか、理事の法令違反、定款違反などの行為に対する差しとめ請求権、それから理事会出席権、招集請求権の付与など、具体的にそういう問題をつけております。  先生御指摘のように、こうした制度の根幹をなすのはやはり監事そのものでございますので、これに適格な人に就任していただくということが何よりも大事なことでございます。この監事を常勤と申しますか、常任させるということが望ましいわけでございますが、なかなか今の農協の体制では一足飛びにそういうわけにまいりません。したがいまして、義務づけということはなかなか難しいと思っておりますので、今回の改正で義務づけというところまではいってませんが、なるべくそういう形に進めてほしいという指導はしていきたいというふうに思っております。
  120. 前島秀行

    ○前島委員 財政も含めまして、監事の常勤、常任というのはなかなか厳しい側面がありますけれども、ここが私一番大事なことだろうと思いますし、質の問題を含めましてぜひ指導を徹底してほしい。  それと、いわゆる監査機能というのでしょうか、調査体制というのでしょうか、内部監査の問題と外部、行政の調査といいましょうか、検査といいましょうか、この辺は今度の法改正の中で何か改善されようとしているのでしょうか、あるいはその辺に対する指導強化の方針を示してほしいと思います。
  121. 川合淳二

    川合政府委員 法律的には、先ほど申しました監査機能強化というようなことがその一環であるわけでございますが、この問題は農協の中の体制の整備の問題でございますので、直接的に法律にかかわる以外のところでの体制の整備ということが必要になってくると思っております。例えば貸し付けの担当者の資質の向上とか、貸付審査部門の設置あるいは強化ということが非常に大事になってくると思っております。したがいまして、これは法律制度の外の問題でございますが、十分な体制整備に努めるようにこれは強力に指導してまいらないといけないというふうに考えております。
  122. 前島秀行

    ○前島委員 時間が来ましたので終わりますけれども、ぜひひとつ大臣農協に対するさまざまな意見課題というのは、同時に行政、農林省に対する課題でもあるんだという認識を持ってこれからやってほしいということが、私のぜひお願いしたい第一点です。  それから、今農協に対する非常にさまざまな意見の中の問題の、特に監視体制の問題として、やはり農協の体質改善ということが一般論として私は求められているような気がしてならない部分がたくさんあるわけです。閉鎖性の問題だとか、あるいは先ほども出ていましたけれども、役員選出の方法の問題等々含めまして、やはりそういう体質改善、民主化といいましょうか、その辺のところも今後行政の方の指導としてぜひ強力に推し進めていただきたい、そのことをお願い申し上げまして、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  123. 高村正彦

    高村委員長 西中清君。
  124. 西中清

    ○西中委員 法案の質問に入ります前に、一点お伺いをいたしておきたいと思います。  平成三年度産米の不作によりまして、今年度の転作目標面積は八十三万ヘクタールから七十万ヘクタールに、十三万ヘクタール緩和をされたわけでございます。この十三万ヘクタールは復帰が可能なのかどうなのかということが報道でもいろいろ言われているわけでございますけれども、現在の見通しについてお伺いをいたしたいと思います。
  125. 上野博史

    ○上野政府委員 作業の現在の段階は、農家への転作等の目標面積の配分が大体終わりまして、地域間の調整が進められているというような状況でございます。我々が各県等からの話としてつかんでおります感じからいたしますと、北海道においては大体いいところまでいくのじゃないかというふうな感じでございますが、一方で、都府県の方では相当程度達成されるのじゃないかというふうに見られますものの、転作等が定着をいたしております地域であるとか、あるいは担い手が脆弱で、既に固定的な保全管理というような格好で水田が管理をされているような地域が多い中山間地域というようなところで稲作復元が困難であるというような事情のあるところもございまして、地域によりまして若干事情の差がございます。そういうことがございまして、さらに十三万ヘクタールの緩和を実現するためには努力をしなければならない状況にあるというふうに理解をいたしております。そのために、地方公共団体農業団体などと一体となりまして、一生懸命趣旨の徹底を図りながら、地域間調整に努めるということをやっている段階でございます。さらに所要の稲作作付面積が確保できますように努力をしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  126. 西中清

    ○西中委員 現状では十万ヘクタール強というように聞いておりますが、その程度ですか。
  127. 上野博史

    ○上野政府委員 一部そういう報道もございましたけれども、私ども、きちっとした数字みたいなことで申し上げられるほど的確に把握しているわけではございませんので、一般的な状況把握というようなことでございますので、今のようなお答えをさせていただいた次第でございます。
  128. 西中清

    ○西中委員 今御説明をいただきまして、中山間地域等の稲作の復帰が困難である、こういう御説明ですが、その前に、減反緩和というのが一年で終わる、そういうところで、来年になったら再び転作が強化されるのじゃないか、こういったことが農家にとってはやはり大きな不安であり、危惧であり、目標の達成は簡単ではなかったという最大の原因ではなかったか、私はそう思っておるのです。そういう意味で、毎年毎年くるくる変わるのでは農業経営という点からいけば極めて不安定で、とてもそういう話には、したいのはしたいでしょうけれども、応じ切れないというのが本当のところだと思うのですね。ですから、この方針を出す前に三年なり五年なり、いつまでもというようなことでは現実的ではないと思うのですが、この間はこれぐらい緩和しましょう、こういう方針でも出ておればきちっとした成果が出ておったのではないかと思いますけれども、その点についてはどう考えられておりますか。
  129. 上野博史

    ○上野政府委員 例の水田農業確立後期対策の最終年度がことしということでございまして、来年以降の扱いにつきまして検討しなければならないというふうに我々も考えているわけでございます。今回の緩和は去年の不作という事態が発生をいたして初めて出てまいった問題でございまして、ポスト後期の姿というようなこと、その程度の基本的な方向をはっきりさせてこの緩和の問題を処理するというのにはちょっと時間的に対応ができなかったという事情があることは、ひとつお許しをいただきたいというふうに思います。  それから、農家が思うように転作の緩和に取り組めない事情として、今委員の御指摘の点については、我々もそういう話を聞いているところでございます。ただ、私どもの方からいいますと、どうしても必要なお米の生産というのは確保したいということでございまして、去年と同じような不作の事態が起こっても米の需給に心配がないという程度の稲作を確保するための最低限の話として今回の対策をお願いしている、こういうことでございます。  ただ、今後の話になりますと、やはり米の需給のギャップというのはあるというふうに考えているわけでございまして、何かの格好でそこの需給ギャップの調整をしていかなければならない事態というのは続くのだろう。ことしの転作の緩和の事情、それによります米の生産というのは、単年度ベースで見ますとかなり需要をオーバーした生産ということになるわけでございまして、これを何年も続けるというと、一方では過剰の問題が生ずるわけでございますので、この辺来年以降どういうような生産調整というようなことを考えていくのかという規模の問題につきましては、米の生産力をどう見るか、あるいは四年産の米のできぐあいがどうなるのか、あるいは需要の動向がどうなるのかというような要素を十分に検討いたした上で決めてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  130. 西中清

    ○西中委員 先ほど十三万ヘクタールの御努力をされるということ、これは了解いたしますけれども、仮に伝えられるように十万強ということで終わったとするならば、当然この平成四、五米穀年度の需給見通しを見直す必要が出てくることもあり得る、こう理解しておいてよろしいでしょうか。
  131. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 先生お話しございましたように、食管法に基づきまして米の需給に関する基本計画を作成をしておるわけでございますが、直近のものでは昨年の不作、あるいはまた十三万ヘクタールの転作緩和を前提にいたしまして、先般の三月末に平成四米穀年度及び平成五米穀年度についての基本計画を作成へ公表したところでございます。  この考え方は、平成四米穀年度末から、つまり昨年の十月末から、平成五米穀年度、来年の十月末の状態にかけて、平成三年産米の不作という異常な事態に対応して転作緩和をするということを前提にしまして、来年の十月未の在庫を百万トンないし百十万トンというレベルを見込みを立てて作成をしておるわけでございます。  今回の十三万ヘクタールの転作緩和の実行状況によりまして若干の影響を受けることは確かでございますけれども、この状況は、今農蚕園芸局長からお話ございましたように、まだ最終的な見通しは立っておりません。若干面積の変動はあり得るにしましても、もう一つの大きな変動要素として、これは自然条件に支配されるわけでございますが、作況がどうなるかという問題がございます。大変大ざっぱなめどとして申し上げますと、面積一万ヘクタール動くことによって変動幅が大体五万トン程度でございます。それから、作況が一%変動することによりまして十万トンのいわば増減があるということでございまして、ことしのそういった変動要素がどういうふうになるかということを十分見きわめて対応していく必要があるというふうに考えております。  したがいまして、先般の三月末に立てた基本計画を途中で直すか、あるいはまた来年の同じ時期には平成五あるいは平成六米穀年度に係る基本計画を作成する時期を迎えるわけでございますが、注意深く事態の推移を見まして、途中で基本計画の変更をするのか、あるいは来年の三月に作成をする基本計画に十分それを踏まえて作成していくのか、よくまた事態の推移を見て決めていきたいというふうに考えております。
  132. 西中清

    ○西中委員 よくわかりました。せいぜいの御努力をお願いをしておきたいと思います。  そこで、この法案の審議に入らせていただきますけれども農業の国際化、金融の自由化、高齢化の進展と担い手の不足、情報化の進展など、これは何も農業だけではありませんけれども、大変な激動の中で今農協はどう組合員の期待にこたえなければならないのか、これは極めて難しい問題に直面しておると私は認識をしておるわけでございます。本当にこの激変の中で、だれが責任があるとかないとかという、そういう単純な話ではないだろうと私は思うのです。  したがいまして、英知を絞っていろいろと皆さん方も御努力をいただいていると思うのですけれども、ここでしっかり踏まえておかなければならない問題として私が思うのは、農協事業目的としては第八条に述べられておるとおりの目的を持っておるわけです。しかし、それでいいのかなという感じも実は持たないわけではないのです。要するに、こういう素朴な目的だけで今後の運営がしていけるのかどうなのかという、こういう疑問すら持っておるというのが私の率直な気持ちでございます。現に営農指導員は単協平均にしましても五・二人。ところが、これは信用事業の四分の一近い人数にすぎない。要するにこれは信用事業の方が主体になっているようなイメージが避けられない。こういうことを見ましても、これからの農協のあるべき姿、それは一体どうあるべきなのかということについて、農林省の研究会のあれも拝見しましたけれども、今のところよくわからない、こういう感じがするわけでございます。やはりある程度一定の方向性というものを、早急に確たるものを示す必要があるのではないか、実はこういうような思いでおるわけでございますけれども、この点についての大臣のお考えがありましたならば、お伺いをしておきたいと思います。
  133. 田名部匡省

    田名部国務大臣 農業農村を取り巻く環境というのは、私も先生と認識は一致していると思います。問題は、協同組織であります農協多様化する組合員ニーズに十分対応できているのかということが問題になっているわけでありますが、今までも努力はしてきておるのでしょうけれども、いろいろな時代の変遷に伴ってそれの先取り精神で改革というのがなかなかできにくかった。しかし、いよいよこれは厳しいということを互いに認識をしてきて、今はその心構えというものがみんなできてきていると思うのです。そういうことで、本来の協同組織としての原点に立ち返って、今後ともその使命を十分果たしていかなければならぬということであります。  原点に立ち返るというのは、やはり自分のそれぞれ持っておる農家営農指導、これはもう言わずもがなのことであって、そのためにできた農協でありますから、そのことはやるとしても、ただ問題は、この地域も大変な高齢化でありまして、特に農村高齢者は、六十五歳以上でありますが、平成二年で二〇%、全国平均よりも相当早い、大体二〇%ぐらい早いペースで進んでおるものですから、生産活動にも支障が生じかねないということで、今回は福祉事業強化を図ろうという内容等も盛っておるわけでありますが、いずれにしても業務執行体制整備していろいろ問題を起こさないようにしていく。そういうことが起きますと、農民農協に対する信頼というものを失っていくわけでありますから、やはり責任を持ってやっていただく。農協が偉い立場というか上にあるわけではなくて、農民から委託されてその事業を進めていくんだという気持ちが失われてくると、これはだんだんおかしくなっていく。何をやってもいいんだというふうになっていくということでありまして、そういうこと等も十分今回はこの法の中できちっと体制を整備していきたいということでございます。
  134. 西中清

    ○西中委員 それから、連合会受託農業経営を行うことというふうになりますけれども、この法改正、従来の出資環境だけではだめだったのか、どうしてもこれは必要なものなのかどうか、その辺のところの説明をいただきたい。
  135. 川合淳二

    川合政府委員 受託農業経営制度は、今お話がございましたように、単協組合員営農を補完しつつ規模拡大等を推進するという趣旨で、昭和四十五年に制度化されております。  近年、畜産などの分野におきまして、農協を超えまして直接連合会対応しているというケースがふえてきております。畜産、特に中小家畜、養豚などにその例が見られるわけでございますけれども、こうした場合には、連合会の広域性を活用した方が効果的な場合があるということで、今回この受託経営を受けることが連合会ができるという形をとりたいということでございます。もちろん、基本的には、農協単協がこれを受けるというのが本来の姿であろうと思います。それでは受けかねるというような規模、あるいは広域的なものにつきまして連合会が受ける、言うなれば補完的な機能として連合会受託農業経営の場合の位置づけというふうにいたしたいということで今回の改正を考えたわけでございます。
  136. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、これは単協連合会が競合するという場面も出てくるのではないか。これはどういうところで線を引かれるのか、その辺のところ。  それからもう一つ、畜産農家のことをおっしゃっておりますけれども、今後畜産以外の業種でもこういうことを予測されておるのかどうか、それもあわせて伺いたいと思います。
  137. 川合淳二

    川合政府委員 まず、競合するような場合には単協がやはり受託すべきであるというふうに考えておりますので、そこはそういう形で交通整理をすべきであると思っております。  それから、畜産以外の分野では、現在のところちょっと私ども想定しておりません。事態の進展によりましてそういうものが出てこないということも言い切れませんけれども、今のところ畜産などがその中心であろうというふうに考えております。
  138. 西中清

    ○西中委員 次に、農協農業経営についてちょっと伺っておきたいと思います。  高齢化の比率が先ほどもお話がありましたけれども農業就業人口における高齢者比率は平成二年で三五・七、大変な急速な高齢化でございますが、それに伴ってさまざまな深刻な影響も出ておるようでございます。農水省で調査されましたデータ等を拝見しましたけれども高齢化が先行している地域では農業生産減少しておるとか、それから耕作放棄であるとか、転用の増加であるとか、地域全体の活力の低下であるとかいうようなことを指摘されておるわけでございまして、とりわけ担い手減少、そして耕作放棄の増加、これは極めてゆゆしい問題だと私は思っております。これに対してどのようにこれから対処していかれようとしておるのか、これをまずお聞きをいたしたいと存じます。
  139. 海野研一

    海野政府委員 我が国の農地面積は昭和三十六年に六百九万ヘクタールございましたけれども、それをピークに減少が続いておりまして、平成二年には五百二十四万ヘクタールというふうに減少をしてきたわけでございます。狭い国土の中で高密度社会を形成している我が国におきまして、住宅地であるとか工場用地であるとかそういう都市的な土地需要にも適切に対応しながら、食糧の安定供給のために優良農地を確保していくということは、極めて大事なことだと思っております。そういう観点から、実は、農地面積の減少の分量としては都市的な土地利用への転用の方が大きいわけでございまして、これらとの土地利用の調整につきましては、農地法、農振法の適切な運用によりまして優良農地の確保を図ってまいりたいと思います。  一方で、最近耕作放棄が急速にふえてきております。耕作放棄にはいろいろなケースがございまして、中には、本当に農家が食うに食えないときに、桑だけなら植えられるとかいって桑をやっと植えた斜面が、ある程度所得水準が上がってくるとそこまでとても手が出せないというようなところでございますとか、ミカンが非常に好調なときに、あの値段でならミカンの本なら植えられるというようなことで植えたところとか、そういう意味で今となっては耕作放棄をするのも無理もないというところもございます。しかし、あとは例えば基盤整備が済んでないがゆえにうまくいってないようなところ、これについては早急に基盤整備をして、ほかの人が機械を使ってそこの部分も一緒にやれるようにというような格好でまいります。  ただ、今一番憂慮されるのが、高齢化によって人手がなくなった、それをそのまま放棄しているというようなものでございまして、これらにつきましては、一つには利用増進事業、一つには保有合理化促進事業、そういうようなもので担い手農家にできるだけ回していくということで有効利用を図ってまいりたいし、なかなか担い手農家が十分いない、手が回らないというようなところでは、協同組織その他のいわば作業受託、それらを活用しまして耕作放棄に手が回るようにしてまいりたいというふうに考えております。
  140. 西中清

    ○西中委員 先ほども意見が出ておりましたけれども、私も思うのですけれども担い手がいない地域というのは結構あるわけで、地域の実情に応じて農協がみずから農業経営を行うということも、これは真剣に取り組んでいかなきゃならない問題となっているんじゃないかなというように思っております。この点についての農水省のお考えを伺っておきたいと思います。
  141. 川合淳二

    川合政府委員 今お話ございましたように、農協みずからが農業経営を行うべきではないか、特に担い手不足が深刻になっているような地域については、農協の必要な人材とか施設などを活用して担い手の一つとして位置づけるべきであるという意見があるわけでございます。この問題につきましては、一方で農協組合事業と競合するということ、そういう農業をみずから経営すべきではないのではないかという考え方、それから農地法の農地所有との関係から消極的な意見もあるわけでございます。  ただ、この問題は、そうした今までの考え方とは別に、今先生がまさに御指摘になった担い手あり方の一つとしてどうかという問題が重要な問題として今日あるわけでございます。今先生がお話しになったような地域において、担い手として、例えば第三セクターあるいは従来ある農事組合法人、これも協同組織でございますが、あるいは先ほどの御質問にございました受託経営、そういう形で担い手たり得るかどうかということも含めまして、今後担い手あり方の一環として、農協がそうした地域でどういうふうにこの問題にかかわっていくかという視点で検討しているところでございまして、先生の今の御意見ども参考にさせていただきたいというふうに思っております。
  142. 西中清

    ○西中委員 それに関連いたしまして、農地保有合理化促進事業の運用に当たって、担い手が見つかるまでの間、農協農地管理のための耕作を行い得るようにすること、それから、農地信託制度の運用の改善を図れといった要請が出ておるわけでありますけれども、政府としてはどう対応しようとしておるのか、伺いたいと思います。
  143. 海野研一

    海野政府委員 農協による農地保有合理化促進事業につきましては、平成元年度に関係通達の整備をいたしまして、それを契機に事業の取り組みがふえてきたわけでございまして、元年度に二十一農協平成二年度では六十三農協農地の賃貸借を行っているわけでございます。面積につきましても、まだまだ始まったばかりではございますけれども、元年度二百五十ヘクタールから、二年度には六百八十六ヘクタールというふうに伸びてきております。  特に、近年の耕作放棄などを含めまして、やはりきめの細かい農地保有合理化事業というものが、特にいろいろな、例えばいわゆる農地銀行活動でございますとか、その他利用調整、あっせん、そういうようなものとうまく組み合わせて、地域段階で行われていくことが大事だというようなことで、平成四年度からは、予算上、農地保有合理化促進事業に対して、小作料の三年一括前払いに対する助成を行うということにいたしておりますほか、この農地保有合理化促進事業を利用した農地の総合的な再配分調整を行うための合意形成活動に対する活動費の助成ということを始めたところでございます。  今後、いわば地域段階で、農協の合理化促進事業というものが地域土地の合理的な利用、担い手への集積ということに役立っていくことを期待しているところでございます。
  144. 西中清

    ○西中委員 次に、農事組合法人についてでございますけれども、今回の改正で、法人設立及び事業運営に係る要件緩和、これが行われるわけでありますけれども、今後の農業担い手として農事組合法人をどのように育成しようとされていくのか、また、農協はどのような役割をこの法人に対して果たしていくべきか、その辺のお考えを伺いたい。  同時に、法人形態による農業経営ということになりますと、農地法上の農業生産法人としては、組合法人のほか、有限会社等が認められておるわけでありますけれども、やはりこうして時代が大きく変わってまいりました。株式会社についても検討すべき段階になってきたのではないかというふうに思いますけれども、その辺についてのお考えを伺いたいと思います。
  145. 川合淳二

    川合政府委員 私の方から、農地信託制度農事組合法人につきましてお答えさせていただきます。  信託制度につきましては、御指摘のように、信託という事柄がなじみが薄いということもございまして、余り普及してないというのが率直なところでございますけれども、この制度も、今回の農用地利用調整活動の強化という視点からいたしますれば、改善をして運用すべきということでございます。売り渡し信託につきまして、相手方を見つける期間を延長、これを一年から五年までというような点などを改善いたしまして、この制度強化を図っていきたいと思っております。  それから、農事組合法人につきましても、やはり協業形態の育成ということが期待されているわけでございますので、今回、農事組合法人要件緩和いたしまして、その普及強化を図りたいと思っております。設立に際します要件であります五人を三人に、あるいは常時従事者の割合を二分の一から三分の一に、それから施設の員外利用を認めるというような弾力的な改善を図りまして、この問題に対処したいと思っております。  株式会社につきましては、構造改善局長から……。
  146. 海野研一

    海野政府委員 株式会社の問題につきましては、先ほど来、いろいろな質疑応答の中で、幅広く多様な担い手育成していくという問題、特にその中で、経営管理能力にすぐれた企業的経営のできる担い手育成することが大事だというようなことでございますが、その中で、株式会社農地を取得させることがいいか悪いかというふうな問題になりますと、株式会社の場合、株式の自由譲渡というものが原則になっておりますので、株式譲渡の結果取得した農地において、適正かつ効率的に耕作する意思のない人がその会社を支配していくというような可能性があることをどう考えるかというような問題もあります。  また、農業が一般に家族経営向きだというようなことのほかに、我が国の現在の分散錯圃の中で、いわゆる大企業が大資本を投下してやっても、十分それにふさわしい収益力がある経営はできないというような中で、このようなものを導入するメリットがそもそもあるのかないのかというような問題。さらに、農地法上の耕作者主義というものとの関係で、ここに所有権や使用収益権を与えるということが妥当か。いろいろ問題が大きいことでございまして、直ちにそちらの方向を向くというわけにはまいらないのじゃないかと思っております。
  147. 西中清

    ○西中委員 確かに問題はさまざまあるようでございますから、そう簡単な問題ではないと思っておりますけれども、恐らく、そういう方向へ踏み出していかなければもう現実がついていけないのじゃないか、私はそういう思いでおりますので、じっくりと研究をしていただきたいと思います。  それから次は、農協経営管理体制整備でありますけれども、今回の改正で、理事会制代表理事制の法定化が行われるようになります。今まではこれは定款等でやっておったのでしょうけれども、法制化することによって具体的にはどのような効果をお考えになっておるのか、伺っておきたいと思います。
  148. 川合淳二

    川合政府委員 今までは、今御指摘がございましたように、定款上の位置づけはございましたが、法制上には位置づけがございませんでした。これは、農協農業者の小規模な協同組合組織ということで発足し、そういう組織では必ずしも理事会のような業務執行のための意思決定機関の設置を義務づける必要がないというような発足当時の考え方に基づいて来ていたというふうに思っております。  しかしながら、御承知のように今日の農協合併の進展などによりましてかなり大型化し、組織も大きなものになっております。したがいまして、やはり、組合運営組合長など一部の常勤理事中心のものとなって、理事会業務執行に関します意思決定機能業務執行理事に対します牽制機能が十分に発揮されていない。これは定款上あるから実際上はそうではないという意見もございますけれども、やはり、法制上きちっとその役割をすることによってそういうものが十分発揮されるのではないかということでございます。  理事会組合業務執行に関する意思決定権と業務執行理事に対します監督権限を法律上明らかにすることにょりまして、合議制による意思決定の実を上げるということができますし、また、理事会業務執行理事に対します監督機能強化されるというふうに考え、私ども、この法制化に踏み切ったものでございます。
  149. 西中清

    ○西中委員 理事会制代表理事制を法制化したからといって、体質がずっと変わるわけではないわけでありまして、やはり先ほども御指摘がありましたように、どう魂を入れるかということが問題と私も同じように思っております。その点、いろいろまたお考えがあろうかと思います。  参考までに伺っておきますけれども、特別指導農協は現在全国で幾つあるのでしょうか。また、何が問題になっておるのか、伺いたいと思います。
  150. 川合淳二

    川合政府委員 この制度は、固定化債権の発生などによりまして経営が悪化あるいは悪化するおそれのある農協の財務の健全化を図るために、特別指導農協として指定いたしまして、財務の確認調査あるいは財務健全化計画の樹立、その実行についての常時監視指導、あるいは経営コンサルタントの派遣などによりまして早期に再建を促すというものでございます。平成元年から実施しております。現在この対象になっておりますのは、平成三年度におきまして百三十八組合というところでございます。
  151. 西中清

    ○西中委員 いろいろな問題をきっちり指導していただく、これは大事なことだと思います。同時にまた、制度上でもいろいろときっちりした制度というものを構築していく必要があるのじゃないかと思うのです。  その一つの提案といいますか、申し上げたいと思いますけれども農協のディスクロージャーが今度拡充が図られるということですけれども、一定以上の大きな農協と信連、こういったものは内部監査、監事だけではなくて、商法に定められた外部の公認会計士など監査人の監査を受けるのも一つの方法ではなかろうか。統合、統合ということで、ますますまた大きくなっていくことが多いわけでありますから、本当に社会的責任も大きいのですから、そういった点で、こういった方向性もひとつ考慮されてはどうかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  152. 川合淳二

    川合政府委員 私ども、一定の規模以上の農協あるいは信連につきまして、現在、行政検査や監事監査のほかに中央会監査を受けるように指導しておるわけでございます。これは、今お話がございましたように、外部からの目でその経営なり運営を見ていくという必要性からでございます。決算監査でございますから、この決算監査におきまして、監査の補助者といいますか、もう一つの専門家の目という意味で公認会計士などの活用ということも指導しているわけでございます。  これにつきまして、一定規模以上については義務づけたらどうかという御意見もあることは私どもも承知しておりますが、現在の系統の実施状況あるいは段階からいきまして、これを義務づけるということにつきましては、系統内部の意思もまだ統一されておりませんし、その受け入れ態勢もまだ十分でないというふうに思っております。現在のところは、こうした所要の指導を受ける農協をふやしていくということからまず取り組んでいきたいというふうに思っております。
  153. 西中清

    ○西中委員 この改正で監事の権限が強化され、その果たす役割は一層重要なものになっておりますけれども、果たして法律が期待するような機能が十分発揮されるかどうかについては懸念する向きもないわけではありません。平成二年度における一農協当たりの監事数は平均四・一人でございますけれども、常勤監事を置いている農協はほとんどなく、今後権限の強化に即応した資質の向上と常勤監事の設置が重要な課題ではなかろうかと思うのでありますが、この点についてはどう考えておられますか。
  154. 川合淳二

    川合政府委員 今回、監事に新たな権限あるいは義務を付与したわけでございますが、この制度改正にとどまらず、先ほど来先生御指摘のように、問題はこうした制度を動かす人、人材であるわけでございます。すべての農協にこうした権限を十分に活用できる監事が就任することがもちろん望ましいわけでございますが、なかなかまだそこまでに行ってないというのが率直なところだろうと思います。  しかしながら、そうした体制を少しでも早くつくるという意味で、研修なり、そういう面での問題もありますけれども、確かに常任監事というような形で常勤の監事を設置することが望ましいわけでございます。ただ、これにつきましては、受け入れ態勢、特に財政的な問題もあろうかと思います。それから同時に、できれば学識経験者の登用などが必要でありますが、そういう人材がすべているかというような問題もあります。しかしながら、常勤監事が望ましいということはそのとおりでございますので、今後一層その設置が促進されるように指導してまいりたいというふうに考えております。
  155. 西中清

    ○西中委員 次に、農業に就労しておられる女性の問題について伺っておきたいと思います。  平成二年度で三百四十万人、農業就業人口の六〇%を女性が占めておられます。また、基幹的に農業に従事している女性もほぼ五〇%を占めている。まさに、日本農業は女性が支えていると言っても言い過ぎではないと思います。  ところが、農協における女性の正組合員の加入率は一二・五%にすぎません。また、六万八千六百十一名の役員のうち、女性役員数は七十名にすぎません。近年、農協も女性の組合員の加入を進めておられるようですが、この加入率が低いのはどういう理由によるとお考えなのか、伺っておきたいと思います。
  156. 川合淳二

    川合政府委員 婦人の正組合員加入につきましては、私どもも指導通達などを出しまして、その推進を図ってきております。現在一二%という数字が平成二年度の資料としてございますけれども、徐々にではございますが、その割合はふえてきております。しかし、今先生がお話しのように、農業を支える婦人のウエートからいきますればかなり低いわけでございます。役員の登用あるいは他の農業団体委員というようなお話から考えましても、まず正組合員になるというようなことを広げていかなければ、そうしたところまでおぼつかないという感じもいたしますので、私どもはこの辺は力を入れてまいりたいと思っております。  原因はいろいろあると思いますが、従来は世帯主が一家を代表して農協の正組合員になるという例がございまして、そういうことから婦人の組合加入率がなかなか高まらないということがあったわけでございますし、現在でもまだそれは引き続いていると思っております。したがいまして、一戸一組合員制ということにとらわれることなく婦人の正組合員加入を進めるというふうに今指導しておるところでございまして、こうしたことから徐々に進んできていると思っております。もう少し加速的に加入が促進されるようにさらに頑張ってまいりたいと思っております。
  157. 西中清

    ○西中委員 基本通達の中に「一戸一正組合員を原則とする農協も多く見受けられる」というふうに述べておりますけれども、今もこういう組合は全国にかなりあるのでしょうか、あれば、どのぐらいあるのでしょうか。
  158. 川合淳二

    川合政府委員 必ずしもそういう資料を私どもは持っておりません。現在のところ、建前上はそういう形のは徐々になくなってきていると思っております。しかし、実質的、実態的になかなかそういうふうに行われているということの方が強いのではないかと思っております。
  159. 西中清

    ○西中委員 それから、今回の改正に当たって農水省がお出しになった文書の中に、「後継者や婦人の正組合員加入をすすめ、併せて理事等への登用を促進する。」となっておりますが、かけ声だけではなかなか進まないと思うのです。ですから、農水省としては積極的な施策をとっていく必要があるのではないかと私は思っております。  女性には、家事、育児など、男性と違ったさまざまな仕事もあるようでありますけれも、女性の農業に占めるウエートからいっても、これから大いに登用して、そして農協そのものの体制が変害いくというような方向に持っていく必要があるのではないか、またこれは農協自身が考えなければならない問題なのかもしれませんが、そういう感じがいたしております。ガイドラインとまでは言いませんけれども、何らかの指標みたいなものがあればいいな、こう思いますけれども、いかがでしょうか。
  160. 川合淳二

    川合政府委員 先ほどのお話もございましたように、婦人問題あるいは後継者もそうでございますが、一つは正組合員になっていただくということがこうしたところの登用を広げていく一つの道になると思っております。そうしたことが一つ。それからもう一つ、これは各地で最近組織化されておりますが、婦人部とか青年部とか、そういう組織農協の中につくることによりましてその存在を高めていくということ。それから、農村の各種の会合になるべくこういう人たちが出席するように、これはいろいろな形で行政機関も含めましてそういう働きかけをしていくということなどを通じましてやっていく必要があろうかと思います。ガイドラインという考え方もあろうかと思いますが、残念ながら現在まだ非常に低い率にございますものですから、余り現実離れしたガイドラインをつくることもどうかと思います。今申し上げましたような形でまず具体的に取り組んでいくことが必要ではないかと思っております。
  161. 西中清

    ○西中委員 その際、女性なり後継者が正会員として加入するということになりますと、出資金等の問題が引っかかってくることは事実でございます。ですから、その辺のところは何らかの工夫がまた必要なのかなと私は思っておりますけれども、何かいいお考えはありますか。
  162. 川合淳二

    川合政府委員 出資の制約ということも全く考えられないわけではないと思いますが、そのことが本質的な制約要因になっているというふうにも思えないわけでございますが、実態を私もう少し調べてみたいと思います。
  163. 西中清

    ○西中委員 その辺は、どうかひとつ大いに研究をしていただきたいと思います。  次に、農協組合員数の動向についてでありますけれども、正会員数は昭和四十五年五百八十八万九千人がピークで、現在、平成二年度でありますけれども、五百五十四万四千人となっております。一方、准組合員農村の都市化や混住化の進行等によって増加をしておるようで、平成二年で三百六万五千人、比率にして三六%を占めるようになりました。年々これは上昇してまいったわけであります。都市農協を中心として地域における農業の生産の停滞または後退等にあって、信用とか共済、購買事業等の拡大を図る見地から地域住民を准組合員として組織化しようという動きも見られるようでありますけれども、この准組合員の加入のかなりの増加というものは一体、農協の本来の使命にとってプラスなのかマイナスなのか、変質させられるのかなという思いがしないわけではないのですけれども、その辺については農水省としてはどういう考えを持っておるのか、伺っておきたいと思います。
  164. 川合淳二

    川合政府委員 准組合員が全体として増加している傾向にあることは、今のお話しのとおりでございます。やはりこれは都市化あるいは混住化の進展ということがありまして、農協組織基盤でございます農村地域が変わってきているということ、またそれに農協対応してきたという結果があると思っております。  これは地域によっていろいろありますし、農協役割がその地域でどこに求められているかということとのかかわりもございますので、一概には申し上げられないわけでございますが、一つ言えますことは、経営主義と申しますか、そういう観点から准組合員を無原則に増加させるということは農協の本旨に照らしまして問題があるし、運営におきましてもやはり慎んでいくべき問題だろうと思っておりますので、そうした観点から私どもは指導をいたしております。今後とも適切に対処していかなければいけない、そういう問題であると思っております。
  165. 西中清

    ○西中委員 非常に難しい問題だなと実は私も思っているのですよ。冒頭で申し上げましたように、農協そのものがこういう時代変化で第八条の目的のようなものが、素朴な目的がそのまま貫いていけるかどうか、こういうところへ出てくる問題でありまして、経営の安定という点からいけば私も理解できないわけではないのです。ですから、この辺は非常に難しいな、こう思いますが、ひとつまたよく検討していただきたいと思います。  次は、地域活性化に関する事業整備について伺います。  今回の改正で、高齢者に対する福祉事業の位置づけを法文上明確化しましたことは、高齢化社会への対応措置としては評価される面もございます。しかし一方で、農協がこうした事業まで取り組まなければならない積極的な理由があるのかな、そういう疑問も実は抱いたわけでございます。この点、農水省としてはどう考えているのか、伺っておきたいと思います。
  166. 川合淳二

    川合政府委員 農協営農だけでなく組合員生活面に対しましてもその役割を果たさなければいけないわけでございますので、農村社会におきまして高齢化が進んでいる中で、老人福祉事業の一部と申すべきだと思いますが、取り組まなければならない、そういう実態にあるということは否定できないし、事実だろうと思っております。  確かに、福祉事業につきまして農協がどういうところまで役割を果たすべきであるかというのは難しい問題があると思いますし、率直に言いまして農協にとってもかなり負担になる部分があろうかと思います。しかしながら、現実に農家組合員が抱えていると言うとちょっと語弊があります、その家庭におられます老人の介護ということだけ考えても非常に負担が急増しているという実態がございますし、そのために農業生産活動に支障があるというようなことも出てきているわけでございますので、やはり農協としてもそういう問題に取り組まざるを得ないというのが実態だろうと思います。  しかしながら、この問題は行政、特に市町村行政のもとで、その計画なりのもとでやるべき問題だと思っておりますので、私どもは十分市町村行政との連携なり、その計画の中でやるということで指導してまいりたいと思っております。組合員の介護とかあるいは給食事業みたいな面でまず対応していくことだろうと思いますが、あくまでも市町村行政の一環として、その中の位置づけ、役割あるいは委託を受けてということでやるべき問題だというふうに今考えているところでございます。
  167. 西中清

    ○西中委員 極めて厳しい情勢の中にある農協として、新たなこういう事業を始めるということになると、それなりに人の問題等々余力があるのかなという心配を実は私もしておるわけであります。  厚生省にお伺いをしますけれども、この事業と厚生省のかかわり合いは具体的にどういうふうになるのか、予算措置等についてはどういう考え方に立っておるのか、伺っておきたいと思います。
  168. 中村秀一

    ○中村説明員 お答え申し上げます。  国あるいは地方公共団体が実施している高齢者対策と、今回農協の方で実施されようとしておられます老人福祉対策との関係ということになろうかと思いますが、先ほどもお答えがございましたように、高齢者対策につきましては基本的には市町村の事業とするということで実施をいたしております。また、国といたしましては、こういった事業を支援するために二〇〇〇年までの十カ年の計画を立てまして、平成二年度を初年度といたしまして高齢者保健福祉推進十か年戦略ということで、すべての住民の方が安心して介護問題などについても不安がないように在宅福祉サービス、施設福祉サービスを充実する、こういうことでやっているところでございます。  したがいまして、いわゆる公的福祉サービスと申しておりますように、これらの事業につきましては基本的には市町村あるいは都道府県、地方公共団体の自治体が責任を持って実施するということで進めておりますが、地域の実情に応じた適切な実施主体があるような場合についてはこのような事業を委託できる、こういう形式になっておりまして、基本的には社会福祉法人でございますが、いろいろ基準を定めて在宅福祉サービスなどについて委託をしておるところでございます。  具体的には、今回法律改正などによりまして、農協老人福祉事業については農業者の協同組織である農協組合員の介護等の活動を進めるということでございますが、これがまた地域福祉活動にとっていいということでありましたら、行政の方で例えば委託するというような格好で助成もできるというふうに考えております。  現に、中央会の方でございますが、いろいろな研究会に入っていただきまして、給食サービスのあり方とかそういったものについて、農協と地方自治体とどういう格好で進めたらいいかというような研究もさせていただいておりますので、農水省の方ともよく連携をとりながらこの点について、農協の方にも負担が偏ることのないように、また地域福祉の推進のために社会組織として農協が十分御貢献いただけるような、そういういい仕組みをつくってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  169. 西中清

    ○西中委員 その辺のところをきっちり整理をしていただかないと、いささか農協に負担になっても困るし、どちらにつかずというような形になってもこの事業は困るわけですから、しっかりお願いをいたしたいと思います。  もう時間が参りましたので、最後に一つで終わりたいと思います。  農水省の調査報告書、農作業事故調査結果報告書ですか、これを拝見いたしました。年齢階層別農作業死亡事故件数を見ますと、当たり前のようでありますけれども、圧倒的に高齢者が多いわけでございます。これからますます高齢化が進展をいたしてまいるわけでございますから、これは看過できない重大な問題ではないかと思っております。元気な人と、元気というか若い人と高齢者とはやはりもう基本的に注意しなければならぬことが違うわけでありますから、この辺のところはしっかりした取り組みをしていただきまして、例えば農業機械の改良、これは高齢者に対する安全な機械を開発するとか、日ごろの農業機械の点検整備、それから高齢者その人その人の体の調子に対してのいろいろなサジェスチョン、そういったノウハウをきちっと徹底する、日ごろからの細かい配慮、目配りといったものが必要な時代に入ってきているのではないかな、このように私は思っております。  したがいまして、高齢農業者のための総合的な安全対策といったようなもの、これをひとつきめ細かに取り組んで打ち立てていただきたいな、こう思うのでありますけれども、農水省のお考えを伺って、質問を終わりたいと思います。
  170. 上野博史

    ○上野政府委員 最近の農業就業人口の動きや何かを見てまいりますと、今委員御指摘のとおり高齢農業者の方々に果たしていただかなければならない役割というのがだんだん大きくなっているわけでございまして、私どもといたしましても、高齢者の方々がどういうような農作業にどういうようなかかわり方をしたらいいのか、健康の面等にも留意しながらそのあるべき方向を探っている、一つの作業を今行っているところでございます。  それから、今御指摘のございました農業機械を扱っている最中に起きます事故、これは年をとってまいりますとやはりどうしてもふえてまいる傾向があるわけでございまして、農業就業者の高齢化に伴ってこの点についての配慮をいろいろしていかなければならないということは、まさに御指摘のとおりだと考えております。  対応は二つの面からあるわけでございまして、一つは、農業機械を利用する場合の操作の安全性を高めていく、そういう観点の問題、もう一つは、農業機械自体をより安全なものにしていくという面の課題、この二つがあるだろうと思うわけでございます。  まず、最初の点について申し上げますと、農作業の安全講習会でありますとか農業機械の点検整備、安全操作というような点につきまして、普及事業を含みます都道府県を中心とした指導、研修というようなことを鋭意行っているわけでございますけれども、そういう場合におきましても高齢者ということを十分配慮した内容のものにしていくということで考えて、努力をしてまいっている次第でございます。  それから、機械自体の安全性向上の問題につきましては、例示的に申し上げますと、最近乗用型トラクターの安全フレームの取りつけを義務づけるようになった。あるいは歩行型トラクターの緊急停止装置等の装備を義務づけていくというようなことをやっておりまして、安全性にすぐれた農業機械の普及というものに意を用いているところでございます。  そのほか、生物系特定産業技術研究推進機構におきまして、農業労働力の高齢化対応した機械の取り扱い性の向上等を図るための研究ということもやっていただいておりまして、いろいろな観点から今御指摘のようなことに対応してまいらなければならない、かように考えている次第でございます。
  171. 西中清

    ○西中委員 終わります。
  172. 高村正彦

  173. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 今回の農業協同組合法改正は、農協合併助成法の改正とともに、金融の自由化による総合農協経営危機と農協経営基盤の弱体化を農協の広域合併農協の企業的経営の一層の導入、つまり組織再編で乗り切ろうとするのが目的でありましょう。しかし、農協経営基盤の弱体化というのは、改めて言うまでもなく政府・自民党による農産物の自由化、農業切り捨て政策に基づく農業農村の荒廃によって招かれたものであります。そもそも農協の運動の主人公は組合員であり、農協事業の原点は組合員の要求実現のための協同活動でありまして、その基本原則を大きく後退させるものと言わざるを得ないわけであります。  そこで、まず農協の広域合併についてお伺いをしていきたいと思います。  農協中央会自身が全国で千農協構想を打ち出しているわけですが、この広域合併については、今後の農協あり方についてさまざまな問題が起こるのではないかと思わざるを得ません。  広域合併をした農協の元理事の方は、こういうふうに問題点を指摘しています。広域合併による弊害の最たるものは、理事の数が減って組合員の要望を吸収しにくくなることである、また、これまで行われていた町村別のきめ細かい対応に手が届きにくくなる、合併メリットの大きなものは優秀な人材確保であると思うが、逆に給与格差の未調整や過度の購買推進等を不満として、若手、中堅職員が退職する例がふえている、こういうふうに指摘をしています。農協はますます農民の要望にこたえられるようになっていくでしょうか。農民営農指導は要求に応じて十分にこたえていくことができるということになるでしょうか。  また、広域合併の先駆けと言える三重県における農家組合長を対象にした農協に関する意見調査アンケート、百五十四戸から回収されている。私はここにそのアンケートを持っておりますけれども、そのアンケートの中では、農協事業現状について、農協らしさがなくなっているとする人が四十八人、物売りの押しつけや夜の事業推進はやめること、こういうふうに言う人が六十人、つまり六〇%以上の人がそういう批判をしているのです。そして、きめ細かく出てきた意見がここに並べられておりますけれども農協が企業化している、各戸で嫌われているのではないか、あるいはまた、合併して他町の全然知らない人が来て信用できると思うか、何かにつけて不都合なことが起こってくる、農協の信用がなくなり農協離れが多くなると思う、あるいはまた、合併により職員の触れ合いの低下、農協に協力が低下、自然に農協離れとなる、理想と現実は一致せぬ、こういう意見がいっぱい並べられています。  私は、ぜひこれも大臣に見ていただきたいものだと思いますけれども、これらは三重県だけの問題ではありません。全国で多かれ少なかれ問題とされている点であります。まして、一県で一農協といったところも出てくるわけでありますので、こうした農協の広域合併による農協組合員との関係の希薄化は今後の農協の存立を脅かすものになると言わざるを得ません。その点はどうお考えでしょうか。
  174. 田名部匡省

    田名部国務大臣 何事も楽な方がいいわけであります。しかし、世の中の変化ということをどうとらえておるか。合併しないで農家戸数が減少して負担を多く求めるならばいいわけでありますけれども、しかしそれは、私は困難だと思います。ですから、いろいろお話ありましたが、私どもはそういうことを考えてみますと、いろいろなことが求められておるのですが、経営体質が弱いと、あれもやりたい、これもやりたいと思ってもそれもできないということになります。勢いいろいろな事業に一生懸命になって、今おる職員の給与を払っていかなければならない、いわゆる営農指導以外のことに全力を挙げていかなければならぬというところが今農家からも批判を浴びておるということを踏まえ、将来の日本のあるべき姿というものをとらえてみると、確かにお話しのように組合員との関係が希薄化するという問題もありましょう。しかし、それはないように努力していく以外にないわけでありますけれども、だからといってこのままにしておいていいかということになると、もっと若年の退職者が出るとお話がありましたが、やはり待遇改善をしてやる、いろいろなことから、小さい中ではもう動きがとれないという面が出てきているわけであります。ですから、そのところをどうしてやるか。優秀な若い人たち農協の職員として採用し、能力を発揮してもらおうと思えば、やはりそれ相当の待遇をしていかなければならぬという面もあります。  ですから、いろいろ御指摘がありますけれども、何といっても事業及び経営の効率的な運営を図る、あるいは組合員の日常活動に対応するための支所機能充実してやるとか、いろいろな努力をしながら農協の広域化に、合併によって広域化になるわけでありますが、そのことによって今申し上げたように事業運営の効率化が期待される一方で、今申し上げたような希薄化にならないように一生懸命努力していく、あるいは野菜、畜産などの各生産部会の活用を図るよう指導するとともに、地域の特性に応じた適切な営農指導を確保するために必要な対策を講ずることとしているところであります。引き続き適切に対処して、農家にとっても組合にとっても一番いい道を選ぶということで御提案申し上げておるわけであります。
  175. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 この点は大変重要な問題なんです。私は、大臣の今のおっしゃることはなかなか、そうかとよくわかりかねます。  今、私が心配しているのは、今現在農協が歩もうとしておる道と同じ道を歩んで経営破綻を招いた歴史的な教訓があるからであります。それは、西ヨーロッパの生協運動です。これは協同組合の歴史を開いたイギリスを初めオランダ、フランスなど百年の伝統を持つ西ヨーロッパの生協運動が一九六〇年代に競争力強化策ということでとった大規模合併と、外部からのプロの経営者を雇い入れた中央集権的な運営強化によって組合員が離反し、経営破綻を招いています。これらの経験は、組合員不在、経営優先主義がどこに行きつくか、結局それは協同組合経営の破綻の道であると言わざるを得ないわけであります。この点、大臣はどう認識されるでしょうか。
  176. 田名部匡省

    田名部国務大臣 西欧の生協において組合合併及び株式会社化を進めたものの、その後、その一部の経営が破綻した事例があるということは聞いております。西欧の生協における合併株式会社化の目的は、他業態との競争の激化に伴い、生協組織の近代化や大型化を図ることにあったものと聞いておりますが、競争に打ちかつことを重要視する余り、経営の確実性を失ったこと、組合員との結びつきが希薄化し、組合員による出資や利用、運営、管理が形骸化してしまったこと、そういうことが失敗の原因ではないかと指摘されているところであります。  しかし、我が国の農協は、農民自主的協同組織として地域農業振興地域社会の健全な発展に資するためのさまざまな事業を総合的に行っており、西欧の生協とはその存立基盤や社会的、経済的条件がかなり異なるものと認識しておりますが、農協合併の推進に当たっては、農協組合員の結びつきが希薄にならないように留意することが重要であると考えておりまして、御指摘の趣旨も十分踏まえ指導に当たってまいりたいと思います。
  177. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 もう一つ、広域合併は市町村との関係や食品流通などにもゆがみをもたらすものではないかというふうに考えるわけです。それはきょう、朝からも大分議論がありました。これまでは一市町村の中に幾つかの農協があるのが通例でありました。したがって、市町村として農業振興策を行うときに何の不便もなかったわけであります。しかしながら、広域合併によって市町村の行政の枠を超え、一市町村では農協を対象とするのが困難になって、農業振興施策を実施する際に障害になることがもう既に顕在化しているのではないかと考えますが、いかがですか。  さらにもう一つです。食品流通は、産地の大型化が消費地の食品流通をいや応なく大型化する方向に作用しており、地場流通だとかあるいは零細な小売商、八百屋さんなどを排除する方向に進んでいるわけでありますが、農協の広域合併がますますその方向を強めることになりはしないか。関係者から既に心配の声が上がっております。これらについてどういうふうにお考えか、お聞かせください。
  178. 川合淳二

    川合政府委員 広域合併によりまして市町村との関係が課題になるということは、私どももその点について十分配慮すべきというふうに考えております。この場合に、やはり何と申しましても、組合員との結びつきと同時に、市町村行政との関係を緊密に維持するということが必要と考えております。  一つは、やはり各市町村との協議会あるいは部会みたいな形でその関係を維持していくということも大事でありますし、それから同時に、各地域に応じた生産部会というようなものの活動を活発化する、これは結果として、広域化してうまくいっている農協はこういう組織が非常に活発に機能しているということでもございますので、そうした形をとりながら市町村との連携を図っていくということが大事だと思っております。私どもも、この点につきましては、平成四年度の予算におきまして対策事業を実施することといたしております。  それから、今お話がありました流通問題と申しますか、地場流通との問題でございますが、一つは産地間競争の激化ということがございます。これに対応するためには農協経営基盤強化するという面が当然あるわけでございまして、それでは合併しなければこうした対応が可能かということになりますと、なかなかそういうわけにはまいらない。問題は、それぞれの農協の中の地域のこうした特定の生産、そういうものをどういうふうに持っていくかということでございまして、先ほども申しました地域に応じた部会を活性化あるいは活発化することによってきめの細かい経営というものを図る必要があろうかと思います。そうした中で地場流通というものも対応していかなければいけないと思っております。しかしながら、産地間競争の激化に対応するためには、やはり合併というような基盤強化方策がとられる必要があるという点も御理解いただきたいと思っております。
  179. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 何か御答弁を聞いていたら、肯定しながら否定しているようなわかりにくい答弁になっておりますけれども、生産物の特産品が農協によって違うために統一がとれない、生産物の特産品がこれまでの農協によって違う、それが一つの農協になって統一がとれないんだというようなことを言われておりますから、したがって、かえってそういうものが排除されるのじゃないかという心配をしているわけです。もし言いたいことがあったら、私時間が限られていますから、次の答弁で一緒に答えてください。  もう一つは、事業推進の問題です。これも、多くの負債を抱えている農協が、合併をするに当たってその負債をできるだけなくしていかなければならないということで物すごく拍車がかかっているのです。先ほど御紹介しました三重県下のアンケートの中でも多くの意見が出されています。なぜ農協ともあろう大きなところが物を売って歩かなければならないのか、また、なぜ同じ品物が普通のお店より高いのか、回ってくる職員がかわいそうだ、家には首を長くして待っている子供がいるのに考えてやることができないのか、こういう意見が出されています。そして、今後の農協事業はどうあるべきかという問いの中では、農家に対して不必要なものは買わないように啓発し、農協は物売りの押しつけ事業はやらないこと、そういうふうに答えた人が百五十四人中の六十八人ありました。  この推進事業は、売れるものなら何でも売ろうということになっていまして——そういうふうに見えますよ。墓石から呉服、宝石、農業とはおよそ関係のないものを売るわけです。そして、職員に対しても多大なノルマ達成のために深夜までの労働を強い、当初は日本農業を何とかしたいという意欲を持って入所した若手から中堅に至る職員が中途退職するというようなことになっていく大きな原因の一つをつくっているわけであります。このような農協事業の推進のあり方は改めるべきだと私は考えますが、いかがでしょうか。     〔委員長退席、岩村委員長代理着席〕
  180. 川合淳二

    川合政府委員 農協事業推進は、当然のことながら組合員の要望あるいは需要に基づいて行われるべきものでございますので、もし今のようなことが行われているとすれば、それは行き過ぎであるという批判があっても当然だと思っております。したがいまして、私どもはそういうような形での事業活動が行われないように指導しているところでございます。しかしながら、そのことが農協合併の推進と直接的に結びつくということではないと考えておりまして、それはそれで是正するなりすべき問題であろうと思っております。  それから、先ほどの地域流通の問題につきましても、そういう問題に対して的確に対応していくということでございまして、合併の推進そのものとは直接的に、だからといって合併の推進は行うべきではないということにはつながらないのではないかと思っております。当然のことながら、合併を進める上でいろいろな問題があるわけでございますから、それを克服すべくいろいろな形で対応していかなければいけない、そういう問題であろうと思っおります。
  181. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 もし行われているとしたら、そういう行き過ぎは是正するように指導していきたいとお答えになったと思いますから、その答弁はそのままお受けいたしますけれども、事情を御存じない。合併と直接結びつくものではないとおっしゃいますけれども、実際には合併と直接的に結びついた中で拍車がかかっているということについては十分調査をしてください。そして、ぜひ是正をするように指導をしていただきたいと思うわけです。  金融の自由化対応ということで、農協にも証券信託業務ができるようにするとか、貸付対象の拡大などの措置を打ち出しているわけですが、現在、バブルがはじけて多くの金融機関が不良債権を抱え込んでいる現状にあります。恐らく農協もその例に漏れないと思うわけでありますが、現に経営が軒並みに悪化し、不動産関連の融資で大量の焦げつきが発生し、赤字に転落する会社も出始めた住宅金融専門会社八社に対し、農林中金や農協共済などの農協金融機関が四兆円もの融資をし、既に一部住宅金融専門会社から融資残高の凍結要請が来ているとの報道もされております。さらに、宮城信連では、株の暴落で、投資信託を多く持っていたために受益証券の配当が下がり、株式の償却損などで六十二億の損失を出し、決算承認団体になっているとされているわけであります。また高松東部農協でも、組合長などの不正で多くの損失を出しているわけであります。大臣として、このような金融不祥事や金融面の大きな赤字を出している事態についてどのように責任を受けとめていらっしゃるのか、明らかにしてください。  また、問題はディスクロージャーであります。組合員の大切な貯金をどのように運用していくかについては、農協にふさわしく、組合員にはできる限り開示すべきであります。それがこのような不祥事を再発させない一つの保証だと考えるわけでありますが、その点はいかがでしょうか。
  182. 田名部匡省

    田名部国務大臣 先ほどの事業推進にしても、ただいまの金融関係のことにしても、経営者の感覚の問題だと思うのです。あるいは不祥事なんかでもそうでありますが、社会的な責任感あるいはその後の本人の生涯あるいは家族に与える影響、いろいろなことを考えるのが普通であって、間々数少ない不祥事とか問題を起こすことはあるかもしれませんが、それは個人の気持ちの持ち方、生き方に関する部分だと私は思うのです。  ですから、いろいろな問題で言われたような具体的なことは承知いたしておりませんが、いずれにしてもそういうことが発生したということでありますれば、厳しい批判を受けるに至ったということについてはまことに遺憾でありますし、今後も、信用事業を行う農協の社会性、公共性にかんがみれば信用は経営の原点でありますから、責任ある業務運営体制を確立、強化することが重要であると考えております。このため、農協系統組織に対し、業務運営体制全般にわたる総点検及び内部牽制体制の一層の強化、必要な予防措置等について具体的な方策を講ずるよう指導を行ってきたところであります。今後、こうした事態が繰り返されないように、適切に対応をいたしてまいりたい、こう思っております。
  183. 川合淳二

    川合政府委員 ディスクロージャーにつきましてのお話がございました。  ディスクロージャーにつきましては、従来から農協につきまして、財務状況に関しまして事業報告書あるいは財務諸表等を総会へ提出すること、それから、これらの書類を事務所に備え置きまして、組合員などの閲覧に供するというようなことでその内容を明らかにするということを進めてきているわけでございます。  組合員に対するディスクロージャーが農協の健全な事業運営を確保していく観点から重要であることは御指摘のとおりでございますので、特に信用事業につきまして影響するところが大きいわけでございますので、その透明性につきまして、私ども今回金融制度改革の一環として金融一括法による改正の中で、信用事業部門につきまして一般公衆向けのディスクロージャーを行う旨を規定することとしておりますので、この改正趣旨を踏まえまして、今後適切に指導していきたいというふうに考えております。
  184. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 農協執行体制の問題について今大臣も触れられたわけですが、これまでの総会中心の運営理事会中心にし、その結果起こる組合員の意向と離れた運営を監事の機能拡充、内部牽制機能強化等でカバーしようとし、模範定款例や民法準用のものを株式会社などの運営を規定する商法の準用に移行するもので、農協事業組織全体を企業化し、それを運営に持ち込むものというふうに言わざるを得ないわけです。特に、今回の代表理事を法で定めることによって経営運営の権限集中を図って、規模拡大された農協運営が極めて限られた代表理事で行われることになります。ますます企業的運営組合員の意向と離れた運営がそこからなされていくのではないかというふうに考えるわけでありますが、そうならないという保証はありますか。
  185. 川合淳二

    川合政府委員 今の御意見でございますが、私どもは今度の改正につきましてそういうふうな受けとめ方をいたしておりません。今、総会から理事会への権限の移行というふうなお話でございますが、それは当たっていないと思っております。  今回の理事会制あるいは代表理事制の法定化を行いましたのは、むしろ理事会の責任なりを明確化し、内部牽制体制の強化を図るという趣旨に基づくものでございまして、業務執行体制、管理体制の整備の一環としてそうしたことを行ったわけでございます。  一方、総会につきましては何ら、私どもその権限を弱体化するようなことは今回の改正で行っておりませんし、さらに役員の業務執行責任に対する組合員の請求権を明示するなど、その辺につきましては、むしろそれが組合員の意思反映の点につきましては強化しているということを思っております。  いずれにいたしましても、農協自主的協同組織といたしましてその意向に基づいた運営ができるように行っていくためには、組合員に対しまして十分な情報提供を行うということが必要でございますので、そうした面での指導は当然行うつもりでございますけれども、今回の趣旨がそういうふうに先生がおっしゃるような形で私どもは行ったというふうには思っておりませんので、その趣旨を御理解いただきたいと思います。
  186. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 だけれども理事会中心の運営ということにならざるを得ないわけでしょう、総会中心の運営から。違うのですか。
  187. 川合淳二

    川合政府委員 従来から定款で理事会は定められております。運営自体はそれと変わっておりませんけれども理事会の責任体制を明確化するというのが今回の趣旨でございます。したがいまして、総会との関係におきまして従来と何ら変わっておりませんし、先ほど申しましたような組合員の権限につきましての整備ども行っておりますので、先生のおっしゃるような趣旨ではございません。
  188. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 まだ質問が三つ残っているのです。大変残念ですが、事業譲渡の問題に移ります。  これも全中が決めた事業二段・組織二段の組織再編を実行するための規定でありますけれども、問題はこの事業二段・組織二段の体制が農民にとってどうなのかという問題なんです。県連がなくなれば、当然県としてのまとまりはなくなって、県下の農協状況を聞くのにもわざわざ全中に問い合わせをしなければならなくなり、これまで農民の地位向上、経済的利益の向上のために取り組まれた県段階の農政活動もまとまらなくなることになるのではないでしょうか。結局、全中に多くの権限、権力が集中していくことになって、農業者の下からの意見、意向の積み上げが極めて困難になることは必至だというふうに考えるのです。このことは、当面の事業の合理化になっても、農業、農政にとってかけがえのない農民農業者の意思、要求の結集にはならないでしょう。あるいは、もうそういうことすら必要がない、全中の言うとおりに黙ってついてこい、こういうことになるのでしょうか。大臣、いかがですか。
  189. 田名部匡省

    田名部国務大臣 決して御心配のようにはならないと思います。すべて、先ほどの問題にしても、総会できちっとやることをそこで決められるわけですね。その決められたことを理事が忠実に実行する、それ以外のことをやるときは改めて臨時総会を開くという仕組みでありますから、すべてそういうふうに二段階になったから勝手にやるという仕組みにはなっていない。要するに、農民皆さんが決めたことを上部団体できちっと実施する仕組みというものは確立されておるわけでありますから、上の方に権限が集中して何でも自分たちが好きなように運営をするというふうにはなっていない、そのことは十分私たちも忠実にやっていただくように指導してまいりたい、こう思っております。
  190. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 最後に、受託農業経営事業事業能力連合会に付与することと農事組合法人制度制度変更についてお伺いをしておきます。  今回の改正に当たって、全中は、農協農業経営を認めてほしい、農地法の改正をしてほしいと強く迫ったと聞いております。そして、農水省も、農協自身による農業経営あり方については、今後の新政策検討における農業担い手方向づけとの関連においてさらに検討を進めていくものとするとその方向性を否定しなかったというわけであります。農協農業経営を認めるなら、当然企業による農業経営もその道を開くことになり、いずれにしても、家族経営による農業を柱とする日本農業に深刻な打撃を与えることになるわけであり、このようなことは決して許されるべきではないというふうに考えます。  もう一つの問題は、農地法に手をつけない範囲でできる限り農協による農業経営を近づけるものになっていることは全中自身が認めていることですが、その中でも農事組合法人制度変更では、最低三人の組合員農事組合法人設立でき、設立が容易になるとともに、これまで組合員以外の常時従事する者は二分の一までとされていたのを三分の二まで認めるということになったわけですが、このことによって外人労働者を含む雇用労働中心の企業型農業経営に道を開くことになって、家族経営中心の農業に脅威を与えることになりはしないか。  二つの問題についてお伺いをしたいと思います。
  191. 川合淳二

    川合政府委員 私ども、この問題につきましてはやはり現下の農業を取り巻く情勢、中でも担い手の問題、担い手不足という実態にどう対応するかという観点から考えております用地域によっては、先ほど来お話がございましたように、担い手がない、農地耕作する存在がないというような問題から、そうした地域担い手をどういうふうに確保し活性化していくかという視点でこの問題をとらえているわけでございます。  受託農業経営の問題あるいは農事組合法人につきましても、そうした協同組織による営農体制整備を図るという観点から今回お願いいたしておるわけでございまして、あくまでも現在の担い手不足の中でどういう対応をするかという視点での観点が必要であるというふうに考えておりまして、そうした一環で今回の整備をお願いしているわけでございます。
  192. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、御答弁を聞いていて一貫しているのは、何でこういう状態になったのかという点が抜けていて、そうしてあの手この手を出して、私が指摘する点について丸々認められたんではとても法改正できませんから認められませんし、しかしきょうおっしゃったことは私はやはり実行されるべきだということもあわせて申し上げて、時間が参りましたので私の質問を終わります。
  193. 岩村卯一郎

    ○岩村委員長代理 小平忠正君。
  194. 小平忠正

    小平委員 今回の農協法、農協合併助成法の改正は、改正内容もさることながら、その背景について言いますと、現在系統組織自身が取り組もうとしている組織事業改革が根底にあるのでありまして、いわば今後の農協あり方が問われる重要な改正である、こう受けとめております。農協事業組織改革は、私の記憶では昭和四十年代以降大きな課題として取り上げられてきた問題であり、今日、系統自身が本気になって取り組む姿勢を示したことに対しては私どもは高く評価をするものであります。  しかしながら、問題は、どのような意図なり目的で取り組むかの姿勢であります。少なくとも今回の農協改革はただ単に組織自身が生き延びるための方策であってはならないのでありまして、これが組合員ニーズにこたえる機能充実のための改革でなければならない、そのことは言うまでもありません。さらにもう一点、農協法の目的は「農民協同組織の発達を促進し、以て農業生産力の増進と農民と経済的社会的地位の向上を図り、併せて国民経済の発展を期すること」となっております。  しかしながら、最近における農協実態を見ますと、農家数の減少あるいは混在化の進展等に伴い、場合によっては農協運営の重点が農業以外に置かれ、大規模農家後継者等の農協離れ等々が進行していることも伝えられております。政府はこのような状況をどのように認識しているのか。地域地域の実情によって異なるとは思いますけれども農協のあるべき姿、そして前段に述べましたところの現在系統が進めようとしている農協改革の姿勢をどのように認識し、これに対してどう指導されようとしているのか、まずこの点、御姿勢をお伺いしたいと思います。
  195. 田名部匡省

    田名部国務大臣 農協は、お話しのように農業者の自主的な協同組織であります。したがいまして、地域農業振興あるいは活性化、そういうものに大きな役割を果たしてきた、こう私は認識をいたしております。  しかしながら、最近の農業農村をめぐる状況が大変大きく変化をしてきておりまして、組合員ニーズ多様化し、その期待に十分対応し切れていない、そういう指摘も実はあるわけでありまして、このような状況で、農協系統においては昨年の十月の農協大会で今後の事業運営あり方あるいは組織改革の推進を決議いたしたわけでありますけれども、私どもは、何といっても実際これを行う農協あるいは農民皆さんが、来るべき二十一世紀にどうあるべきなのか、あるいは広く日本全体どういう形でこれから国民と一体となっていくかという観点から、いろいろとこの見直しを行っていただきたい。ややもすると何か自分たちの保護といいますか有利といいますか、そのことが実態とかけ離れたようなことであっては私はいかぬ。言ってみれば、現状を何とか乗り切るということではなくて、次の世代の若い人たちが本当に農業をやっていくためにはどうあるべきかという高い次元で今までのことを、お決めになった内容、そういうものをきちっとしていただきたい、そこまでの責任を持つ体制というものをみずからやはり決めていただきたい、こう思うのであります。  私どもとしても、農協が先ほど申し上げたような協同組織としての原点に立って、期待される役割あるいはとりわけ組合員営農生活を基本とした事業運営が確保されるように、こうした自己改革努力に対し的確に指導いたしてまいりたい、こう思っております。
  196. 小平忠正

    小平委員 大臣、私は、今回の改正はいろいろな点を整理する、そしていわゆる組織、いろいろな面の強化を図るということ、これもわかります。そして、農協が今置かれている地域での実情、ニーズ多様化いたしまして、その地域における必要性、これも多面化しております。しかし、私も、大臣が言われたように基本は農民あっての農協、これが原点ですから、この基本といいますか背骨、これから逸脱しないように、このことを基点に踏まえて今後策を進めていってもらいたい、このように強く要請する次第であります。  そこで、次にこの改正案に対して諸点お伺いをいたします。  まず、今回の改正で現在の出資単協に加え連合会にも受託農業経営事業能力を付与しておりますが、そもそも連合会にまで事業能力を認めたのはいかなる事態に対応しようとしているのか、具体的に明示をしていただきたい。私は、連合会受託経営特定の部門に限定すべきではないか、こんなふうにも思うのですが、政府は、この点いかがお考えでしょうか。
  197. 川合淳二

    川合政府委員 受託経営は御承知のように、農協組合員営農を補完しつつ規模拡大などを推進するということで、四十五年に制度化されたものでございます。今お話がございましたように、原則としてはやはり単協農協受託するということがその基本であろうと思っております。  ただ、近年、畜産などの分野におきまして農家専門化あるいは規模拡大などが進展いたしまして、技術とか経営指導の面で、既に単協よりも連合会が直接対応しているというようなケースがふえてきております。特に養豚などの中小家畜の世界でそういうことが見られているわけでございますが、そうした場合におきましては、受託者の確保という面で連合会の広域性を活用した方が効果的な場合もあるということから今回の道を開くということといたしたわけでございます。しかしながら、やはり基本は農協受託するということであろうと思いますので、今申しましたようなケースに限りまして、農協が受けるということの補完という位置づけで連合会受託農業経営を認めるということにいたしたいというふうに思っております。
  198. 小平忠正

    小平委員 次に、営農指導事業強化充実についてですが、農協に対しては現在各方面から多くの指摘がなされておりますが、最も多い指摘は、この営農事業の一層の充実ではなかろうかと思います。そのためには、優秀な人材の確保はもちろんのこと、事業の安定的な運営に必要な財源の確保が不可欠であります。  この中で最近の農協経営は、信用事業にも陰りが見られる等、一層厳しさが増してきておる。いわば不採算部門である営農指導事業充実がどこまで図られるかはまことに心もとない、こんなふうに心配するものであります。このため関係者からは、営農指導事業に必要な経費に対し、税制上の特例措置を講ぜられたいとする等の要請が出ておりますが、政府はこの点どのように考えておられるのか、お伺いをいたします。
  199. 川合淳二

    川合政府委員 営農指導事業につきましては、やはり農協経営の本来的な事業でありますし、他の経済事業信用事業もやはりこの営農指導事業を中心として有機的な展開を図るべき事業であるわけでございます。そうした面が現在十分でないという御批判があるわけでございまして、もう一度、この営農指導事業というものの位置づけあるいは役割というものを考え直し、その強化を図るということが必要であるということで、今回の改正を機にもう一度その体制整備を図りたいと私ども思っているわけでございます。  確かにこの事業それ自体は収益を生む事業ではございませんので、その費用をどうするかという面はあるわけでございますが、今申しましたように、具体的には販売事業なりそういうものと結びついて、より効果を高めるという意味もありますので、そうした面で賦課金あるいは積立金というふうなものを造成して、それでこの事業に充てるという必要があろうかと思います。  税制措置などのお話でございますが、具体的にこの問題にどう対応するかということにもかかわってまいりますけれども、やはり基本的には、農協みずからがこうした費用を生み出して営農指導対応していくということになろうかと思っております。
  200. 小平忠正

    小平委員 御説明はわかりますけれども農協の今の姿を見ていますと、その点は御説明だけでは何となく心もとない気がいたしますが、とにかくこの営農事業というのは、さらに厳しい現下の農業情勢の中では一層の充実が特に肝要である、私はこんなふうに思いますので、この点は強く申し上げておきたいと思います。  次に、厚生省の方、見えていますか。今回のこの改正では、農協法上、老人福祉に関する事業を明示いたしておりますが、私は、高齢化社会対応した措置として、これは評価するものであります。しかし、なぜ農協がこの事業にまで積極的な取り組みをしなければならないのか、私は、そこに依然として我が国の、特に老人福祉対策の貧困さを感ずるものであります。  そこでお伺いいたしますが、今後の老人福祉行政の推進に当たり、農協にどのような役割を期待しておられるのか、また、予算措置としてはどのようなものを用意されているのか、この点について御説明を受けたいと思います。
  201. 中村秀一

    ○中村説明員 高齢者福祉対策の推進と農協とのかかわり合いについてのお尋ねでございますが、厚生省といたしましては、急速に高齢化いたします我が国の人口の高齢化問題に対応いたしまして、すべての国民の方が安心して老後を送ることができますよう施策の充実を図りますために、いわゆる在宅福祉と言われておりますホームヘルパー事業とかデイサービス事業、それから特別養護老人ホームの整備などの施設福祉対策などの事業につきまして、特に人口の高齢化が急速でございますので、日本はまだまだそれでも現在は若い人口でございますが、二〇〇〇年には北欧あるいはヨーロッパ諸国並みの高齢化の水準に追いつきますので、その二〇〇〇年までに何とかこういった福祉基盤を整備する、こういうことで二〇〇〇年の目標を定めまして、平成二年度から十カ年計画で高齢者保健福祉推進十か年戦略というものを立てまして、老人福祉対策の充実に努めているところでございます。  こういった老人福祉対策につきましては、特に在宅福祉対策とか考えますと、地域に密着したところで実施する必要がございますので、また地域の住民のニーズを適切にくみ上げる必要がございますので、第一次的には市町村の事業として、これを都道府県、国が助成する、こういう形で、いわゆる公的福祉サービスといたしまして高齢者対策を進めているところでございます。  今回、農協法の改正におきまして農協老人福祉対策に取り組むということ、これと公的福祉対策との関係いかん、それから、公的対策が立ちおくれているから農協がこういうことをしなければならないのではないか、こういう御指摘でございますが、私ども、基本的認識としては、ナショナルミニマムといたしまして、全国どこにいても地域の方々が必要とされる基礎的なニーズは公的に整備していきたい、こういうことでやっております。ただ、人口の高齢化、これは今後三十年続きますし、世界に例を見ない人口の高齢化が続くわけでございまして、これに対する取り組みというのは、単に行政のみではなくて、国民のすべての方々がいろいろな場を通じまして高齢社会を支えていただくということは、これまた大変重要だと私は思っております。また、公的福祉サービスだけでは行き届かない、いわゆる潤いのある地域福祉社会づくり、こういうことにおきましては、地域のいろいろな組織がそれぞれの立場でまたその機能を発揮していただくということが重要だと考えております。農業者の協同組織であります農協は、特に人口の高齢化が進んでおります農業地域で中核組織でございますので、農協がその地域の特性に応じた有力な社会資源として老人福祉サービスに御貢献いただくことは大変ありがたいことだと思っておりますし、私どもも高く評価さしていただいているところでございます。  農協老人福祉事業をいたします場合に、それでは厚生省としてどういう予算措置を講ずるかということでございますが、例えばホームヘルパー事業、これは市町村が実施いたしておりますが、これに要します費用につきまして、農協が公的福祉サービスの一部を担っていただきますならば、これについては全面的に助成をすることといたしております。また、平成四年度から給食サービス事業に対します助成も始めております。特に農協などは給食サービスなどに向いているんではないかと考えておりますので、これを実施していただく場合には助成をさせていただく。それから施設といたしましては、ケアサービスつきの住宅、ケアハウスというものをこれまた二〇〇〇年までに十万戸整備することといたしておりますが、農協整備される場合には、これに対します運営費の助成をする道を平成四年度から開いたというようなことでございます。  このほかにも、いろいろ先駆的事業あるいは農協の婦人部の方がホームヘルパーになる研修をしていただく場合などにつきましては、それぞれ所要の経費を助成するというような道が開かれておりますので、いずれにいたしましても、農水省の方あるいは農協中央会の方などとも御相談しながら、また県レベルでは各県連の方と御相談しながら円滑に事業を進めてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  202. 小平忠正

    小平委員 次に、信用事業についてでありますが、信用事業は今日まで農協の各種事業の中で中心的な位置づけをされてきました。その収益をもって他事業の赤字を補てんするという役割を果たしてまいったのも事実であります。しかしながら、金融自由化等他業種との競争の激化に加えて、バブル経済の崩壊に伴い、多くの農協信連が今日では経営悪化に陥っている、これが実情ではないかと思います。そこで、これらの実態をあわせまして、今後の収益の見通し等について政府の考えというか認識というか、そこのところをお伺いしておきたいと思います。
  203. 川合淳二

    川合政府委員 農協におきます信用事業は、農協経営の重要な基盤をなしてきております。今お話がございましたこうした信用事業につきまして、金融の自由化、具体的には預貯金金利の自由化などが進展する中にありまして資金コストなども上昇しておりまして、また業態間の競争の激化とともに農協経営が厳しくなっているというのは御指摘のとおりでございます。  若干数字で申しますと、例えば平成三年九月末でございますが、貯金は五十八兆円、前年比七・九%増ということでございますが、貸し出しにつきましても十五兆、これも九・四という伸びを示してはおりますけれども、経常利益は前年度に比べて、二年度の場合は二・六%の減少、それから三年度の上半期も同様に四%の減少というふうになっております。こうした減益基調になっておりますのは、先ほど申しました貯金金利の動向とか、自由金利型の貯金が増加しそのウエートが高まっているというようなことによるわけでございますが、このような流れの中で農協信用事業の収支状況はかなり厳しいものになるということは否定できないと思っております。  そうした状況の中で、私どもは何と申しましても農協経営基盤強化というものが図られることが必要であるというふうに考えまして、同時にこうした金融環境の中でそれに耐え得る経営管理体制というものも必要であるというようなことから、今回の改正の諸点をお願いしておるわけでございます。
  204. 小平忠正

    小平委員 この点について、もう少し具体的にお伺いしたいんですが、時間の関係上、次に移って、農協事業譲渡に関してお伺いいたしますが、今回農協法に事業譲渡の規定を設けたのは、現在農協系統組織がみずから進めようとしております系統の組織事業の二段階制への移行、これを助長するための措置であると私も承知いたしております。私は、農協をめぐる情勢が一層厳しさを増す中で、事業組織体系の簡素化は必要がある、こう思います。しかし、伝えられるところによれば、組織改革の中心が県段階機能のスリム化に集約されるのではないかということであります。しかしながら、事業組織改革の進展に当たっての課題は、ただ単に全国一律の基準で実施するのではなくて、地域地域の実情を反映していかに末端の組合員の利益を確保するかという観点に立つことがぜひとも必要ではないか、こう思います。  この点、北海道における経済事業等について申し上げますと、北海道はホクレンと申しますが、ホクレンにおいてはそのほとんどが自己完結しているのが実態でありまして、その機能の縮小等は利便性等から見ればむしろ逆効果になるのではないかと懸念されるのでありますが、この点を配慮して今後の事業組織改革に当たっては政府はどのような方向で指導をしていかれるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  205. 川合淳二

    川合政府委員 御承知のように、農協系統組織組織再編成ということで事業段階、そして行く行くは組織段階ということを昨年十月の農協大会で決議をいたしております。そして平成五年三月までに具体的改革案を策定するということで、現在各段階検討が続けられているわけでございます。  この問題は、何と申しましても自主的な組織であります農協系統みずからが取り組んでいる問題でございまして、その考え方を私どもよく見て、その上で私どもの支援体制なり考え方を構築していく必要があると思っておりますけれども、今お話しの県段階の問題につきましては、私どもは全体としてまずどういうふうに効率的な組織にしていくか、しかも組合員ニーズに的確に対応できる組織にしていくかということが一番の問題でございまして、農業にかかわる組織でございますので、地域地域によってそれぞれの実情があることも十分承知しております。まず、系統組織が具体的な対応をどういうふうに案として出してくるかということをよく見守らせていただきたいと思っております。みずから改革を進めようという問題でございますので、その上で私どもは必要に応じ適切な対応をしていきたいと考えております。     〔岩村委員長代理退席、委員長着席〕
  206. 小平忠正

    小平委員 ぜひその地域の実情に合わせた適切な指導をしていかれるように要請をしておきたいと思います。  最後に、農協合併助成法の改正についてお伺いいたします。  さきにも申し上げましたが、金融自由化等、最近の農協をめぐる厳しい情勢に対処し、農協合併によって大型化することはやむを得ないとは思います。合併によるメリットの反面、多くの問題なり課題が指摘されておるわけであります。特に、農協が広域化した場合に、組合組合員との関係が希薄化するのではないか。前段もちょっと申し上げましたけれども、その問題。さらには市町村との関係が希薄化するのではないか。農協は特に農村社会においては、その地域においては大きな役割を担っております。したがって、その自治体、地域において農協がなくなることは、これは一つの大きな社会問題にもなる、そういう意味においては市町村との関係の希薄化の問題。さらには、組合員にとって必要な事業であるにもかかわらず、不採算部門の切り捨てが行われるのではないか、こんな懸念もされるわけでありますが、これらに関して、政府としてはどのように指導を行っていこうとしているのか、これについてお伺いをいたします。
  207. 川合淳二

    川合政府委員 農協合併経営基盤強化を図るということで、系統組織挙げて取り組んでいる問題であるわけでございますが、一方で、今お話しのように組合員農協の問題、市町村との関係の問題などについて懸念される点があるわけでございます。  私ども合併に際しまして、一番肝心であります組合員との関係、また各種事業におきまして市町村行政との関係が深い農協でございますので、こうした面について従来以上に緊密な関係が保たれることが非常に大事だと思っております。そのためには、組合員の日常活動に適切に対応するための、例えば支所機能充実というようなこともあろうかと思いますが、私ども予算措置ども図っておりますけれども、各生産部会と申しますか、それぞれの地域に応じた部会などの活動を活発化して、その地域地域農家農協との結びつきを緊密にするとともに、市町村との間では連絡協議会のようなものをよく設置いたしまして、この問題に対応していきたいということで、平成四年度予算におきましてもこうした対策事業を実施することとしております。この法律の制定をお願いしておるわけでございますが、改正ができました暁には、その点について十分配慮した指導をしていきたいと思っております。  なお、不採算部門の点につきまして、これは何よりも組合員ニーズを的確に把握するということが必要でございますので、優先度に応じましてめり張りのある事業の実施ということの中で対応していく必要があろうかと思っております。
  208. 小平忠正

    小平委員 終わります。
  209. 高村正彦

    高村委員長 阿部昭吾君。
  210. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 簡潔にお尋ねをしたいと思います。  私は、この農協二法の改正の意義、これはそれなりに認識をしておるのでありますが、今農協は非常に困難な、非常に厳しい状況に立っている。その根本は、農協を構成しておる組合員が、一人一人の農家がなかなか見通しをしっかりと立てることが困難だというところに、この農協の直面しておる一番の困難な原因があると私は認識しておるわけであります。  ちょうど今から三十年前、農業基本法、そして農協法の改正が行われて、農事組合法人というのが初めて農協法の中で制度として登場してきたわけであります。その当時私は、私の地域の中にたくさんの農業の共同化法人農事組合法人というものをつくることに没頭いたしました。私の地域はササニシキの本場であります。しかし農業の技術革新はどんどん進む。したがって相当の大きい農家でも、前のように十二カ月間、三百六十五日米だけをやっておるわけにはいかない。したがって複合経営をやらなければいかぬというので、特に米プラス畜産であるとか、米プラス園芸農業であるとか、いろいろなことを実は進めました。あれから三十年たってみると、農業法人はそれなりにいろいろな展開をしておるのでありますけれども、しかし、我々が当時思い描いたほどバラ色に大きく展開することにはなかなかならなかった。それはやはり農業を取り巻くいろいろな状況がどんどん変わっていったからであります。あの当時農業基本法は、私どもの米どころにつきましては二ヘクタールの農家が中核農業として成り立つというのが農業基本法をつくり上げたときのうたい文句だったのであります。今はとてもじゃないが二ヘクタールの農業なんというのは全然もう問題にならぬのであります。  そこで、今のこの農協法改正の背景にある農業農村分析の中に、例えば耕作放棄しておる土地が非常に増加しておるとか、確かにそのとおりであります。今年十三万ヘクタールほど減反面積を減らしましたけれども、二百八十数万ヘクタールの水田のうち現在でも七十万ヘクタールは減反であります。この減反を、私の地域で見ますと転作が定着したるもの、これは二〇%定着しておるかどうかであります。ほかのものはみんな仮のものを何とかやっておるだけであります。それじゃ、もしこの減反田というものを本格的に果樹なり蔬菜なりに転換したらどのようになるのか。恐らく豊作貧乏で果樹や蕨菜やそっちの方の市場はパンクするのだろうと思うのであります。  今まで相当長い期間、何度も何度も減反田をどのようにやっていくかということでチャレンジをして痛い目に遭っておる仲間の農業者は私の周りにたくさんいるわけなんです。したがって、今度の農協法の中に我々が問題にしておるのは、我々昭和一けた世代は大体最近農協の指導者で、そろそろもう次の世代にバトンを譲らなければならぬのじゃないかという、したがって、私どもの同世代の長い友人たち農協の指導者が大変多い。この皆さんといろいろ議論いたしますと、組合員の生産と所得をどのように希望あるように広げていくのかということが農協の本来の任務ではないか。全くそうだ。ところがある組合長は、あなたはそうおっしゃるけれども、なかなか大変なものだ。例えば米プラス何をやりなさいといって営農指導をやる。やった結果がうまくいかぬ。そうなると、何だ、組合長がいろいろ骨折ってやれやれと言うのでやったら結果はまずいじゃないかといって総会でたちまち不信任を食らう。そうすると結局、例えばスーパーを始めたり、あるいは信用事業、共済事業などに力を入れて、組合は相当の黒字を持ちました、これを組合員にどのように還元するかということでやっておった方が、生産面で生産と所得をどのように伸ばすかということで組合員にぎりぎりやっていくよりかははるかに、我が方の農協組合長はなかなかよくやるという評価になっちゃうというのですよ。これが恐らく相当多くの地域農協リーダーの皆さんが今直面しておる問題の姿だと私は思う。したがって、営農指導をやろうというなら、何をやったならば生産農家は見通しが立つのかというところまでしっかりした見通しや、その上に立った指導のマニュアルや何かを持っているのでなければなかなかうまくいかぬというのです。  私は、今度の二法の改正に賛成なんです。しかし、この枠組みの中だけで農協の将来、洋々たる見通しになるか、これを構成しておる組合員は前途洋々になっていくのかということになると、私は残念ながらなかなかそうはなっていかない、こういう認識を持っているのであります。農協大会でもいろいろ論ぜられ、議論されて、農林省の中でもいろいろ議論されて、その上で今度の改正案を出されたという意味を私はよく理解しておるのです。しかし、この改正の中で農協も、それを構成する農民も前途洋々かということになるとなかなかそうはまいらない、こういう認識なんであります。  そこで、私の考え方を若干、これは議論になるようでありますが、申し上げたいのであります。  今、私の認識では、自給率は、カロリー換算で四七%。四八%を割ったように見ておる。人口一億二千数百万も擁しておるようなこの大きな国の中で、西ヨーロッパなどとも比較をして、カロリー換算で自給率が五割をはるかに割ってしまったなどというのは、日本くらい規模の大きい国ではそう例がないわけです。そういう中で一体どうするのかということであります。  実は、私の周り、身内で三ヘクタールの農家の持っておる農業機械設備、機械装備、これみんなワンセット千数百万円するのです。三百六十五日の間はとんと、三日とか四日とかせいぜい五日ぐらいしかその目的のために稼働させることはできないような農業機械装備をみんなワンセットずつ、単位の農協組合員である農業者は持っておるのです。この三ヘクタールの農家の持っておる農業機械装備は、本来二十ヘクタールぐらいのことを十二分にやり得るものなんです。例えば、農協がライスセンターをやる、共同利用施設をつくる。しかしながら、この利用率はどのくらいかというと、相当の努力をしてつくったのに、利用率はまだまだ非常に低い。各戸は、コストを度外視して、物すごいむだのある機械装備、設備をおのおので持ちながらやっておる。  したがって、農業の共同化なり協業化なり農事組合法人なりでやろうというもの、むだのない規模で、むだのない装備でいこう、そしてコストもちゃんと合うようなことでやろうというものに対しては、制度的にもっともっとやっていく。それから農協の中で、特に生産物の加工とかあるいは販売とか、実は私は、農事組合法人をいろいろつくり上げてから、当初は、農林省、食糧庁は非常に嫌な顔をしましたよ、生協との間に産直運動というものを進めてきた。あれから二十年以上もたって、相当定着率も進んでまいりました。米以外のいろいろなものも私は相当広げてまいりました。これからの農協あり方は、見通しのあるものの生産をどうやらせていくか、営農指導をどのようにやらせるか。加工や販売まで全部農協がもっと積極的にやり得るためには、政治はもっともっとサポートしていく、そして全体の枠組みの中で見通しがちゃんと立つということをやらなければいかぬのではないか、私は、こういう認識を持っているのであります。  最後の質問者でありますから総論を申し上げましたけれども、ぜひ農林省は、農協が今直面しておるこの厳しい現実に対して、それを構成しておる組合員はもっと厳しい、この状況に対して、もっと根本に触れていったところの施策をきめ細かに、大胆に展開してもらいたい、この希望を申し上げたいと思うのでありますが、農林大臣の御所見を承りたい。
  211. 田名部匡省

    田名部国務大臣 先生ほどの考え方は私は持っておりませんが、伺っておりまして、おっしゃるとおりだ。私は何回か御質問にお答えをしたわけでありますけれども、何といっても農業経営というものは経営が成り立つような、私の夢でありますが、他産業並みの所得を若い人たちが得られるようなことでないと、基本的に所得が低いということでは、高くくれるところがたくさん周りにあるときに、そこに定着するはずがない。だとすると、一体どの程度の規模で何をやるか。水田が仮に二十ヘクタール、あるいはこういうもので五ヘクタール、これを兼ね合わせて五ヘクタールということで積算をしてみると大体経費はこの程度かかる、そうするとこれだけの収入がある、何人で経営すればいいのか、家族三人でいいのか、もっと広く、隣の人と組んでやっていける、その辺がしっかりしていませんと、やってみてもなかなかうまくいかないうまくいかないと、先生おっしゃるように、やれやれと言ったからやったらうまくいかぬ。基本的には、自分がきちっとそういう計算ができる、特に土地利用型について担い手が不足いたしておりますので、経営管理能力にすぐれたあるいは企業的経営のできる、そういう若い人たちを育てていかなければいけないということを実は考えておるわけです。  今お話しの機械のことも、私がもうずうっと何十年も前から、むだだむだだ、こう言ってきました。実際に私の親戚たちに、何でこんなに、隣が買ったから負けないでいいものを買ってくるという競争をするのかということも言いましたけれども、何せ田植えを同時期にやりたいためにどうしても自分で持ちたい。しかし、それも計算をしてみると、機械は買った方がいいのか借りた方がいいのかというのが出てくるわけです。ですから、リース会社とか、あるいは耕作してやる会社をつくる。それは若い人たちでやればいいわけですから。そうして耕作、田植えから稲刈りもしてあげる。いろいろなことを考えて、若い人たちが本当に夢の持てるものにする。私は、コンピューター、パソコン、ファクシミリをたたいて、自分でやってみて、むだを省こう、こういうところに投資しようというやりがいのある農業というものを目指していかなければならないというふうに実は考えておるわけであります。  おっしゃるとおり自給率が四七%になりました。何せ七〇%が山で、三割に宅地も農業も工業も一体となって一億二千万が生きていくというのですから、それはなかなか困難があると思います。あると思いますが、私どもはそれを目指して、嫌だけれども農家の長男に生まれたからやらなければならぬということはもうやめて、本当にやろうという意欲のある人にうんと投資をしていくということでなければならない、こう考えております。  いずれにしても、そのほかにも、美しい村づくりとか、生活関連の下水道とか、そういう基盤も整備して、本当に夢の持てる農業にしていきたいというふうに考えて、今内部で検討いたしておりまして、間もなく、大体の骨子はこういう方向で、二十一世紀の農業はこうあるべきだということをお示ししたい、こう考えておるわけであります。
  212. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 終わります。      ————◇—————
  213. 高村正彦

    高村委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております両案につきまして、明二十三日午前十時、参考人として全国農業協同組合中央会常務理事松旭俊作君、宮崎県経済農業協同組合連合会常務理事三宅一美君、長野県伊南農業協同組合組合長理事氣賀澤隆三君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  214. 高村正彦

    高村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。  次回は、明二十三日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十分散会      ————◇—————