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1992-03-26 第123回国会 衆議院 逓信委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年三月二十六日(木曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 谷垣 禎一君    理事 川崎 二郎君 理事 佐田玄一郎君    理事 坂井 隆憲君 理事 松浦  昭君    理事 上田 利正君 理事 大木 正吾君    理事 伏屋 修治君       赤城 徳彦君    今枝 敬雄君       大野 功統君    小林 興起君       古賀 一成君    鈴木 恒夫君       深谷 隆司君    真鍋 光広君       松岡 利勝君    森  英介君       山本  拓君    上田  哲君       田中 昭一君    田並 胤明君       武部  文君    筒井 信隆君       山下八洲夫君    吉岡 賢治君       坂井 弘一君    鳥居 一雄君       菅野 悦子君    中井  洽君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 渡辺 秀央君  出席政府委員         郵政省放送行政 小野沢知之君         局長  委員外出席者         衆議院事務次長 谷  福丸君         内閣総理大臣官 坂本 幸一君         房参事官         参  考  人         (日本放送協会 川口 幹夫君         会長)         参  考  人         (日本放送協会 中村 好郎君         副会長技師長         事務取扱)         参  考  人         (日本放送協会 堀井 良殷君         理事)         参  考  人         (日本放送協会 中野 正彦君         理事)         参  考  人         (日本放送協会 諏訪 恭也君         理事)         参  考  人         (日本放送協会 安藤 龍男君         理事)         参  考  人         (日本放送協会 中村 和夫君         理事)         参  考  人         (日本放送協会 黒川 次郎君         会長室経営計         画〕局長)         逓信委員会調査 辛島 一治君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十六日  辞任         補欠選任   吉岡 賢治君     筒井 信隆君 同日  辞任         補欠選任   筒井 信隆君     吉岡 賢治君     ――――――――――――― 三月十六日  NTTダイヤルQ2に関する陳情書  (第五一  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認  を求めるの件(内閣提出承認第一号)      ――――◇―――――
  2. 谷垣禎一

    谷垣委員長 これより会議を開きます。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 谷垣禎一

    谷垣委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 谷垣禎一

    谷垣委員長 まず、趣旨説明を聴取いたします。渡辺郵政大臣。     —————————————  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認   を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  5. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 ただいま議題とされました日本放送協会平成年度収支予算事業計画及び資金計画提案理由につきまして、御説明申し上げます。  この収支予算事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づきまして、郵政大臣意見を付して国会に提出するものであります。  まず、収支予算につきまして、その概略を申し上げます。  一般勘定事業収支におきましては、事業収入は五千四百三億七千万円、事業支出は五千百三十一億八千万円となっており、事業収支差金二百七十一億九千万円は、二百三億二千万円を資本支出に充当し、六十八億七千万円を翌年度以降の財政安定のための繰越金とすることといたしております。  一般勘定資本収支におきましては、資本収入資本支出とも九百五十一億五千万円となっており、建設費六百七十八億円等を計上いたしております。  次に、事業計画につきましては、その主なものは、衛星放送の継続的・安定的実施に万全を期するために補完衛星製作・打ち上げに着手すること、視聴者意向を積極的に受けとめ、豊かな放送番組提供と公正な報道に努めること、国際放送について、番組充実刷新を行うとともに、受信改善を図ること、受信料制度周知徹底を図り、受信契約増加受信料の確実な収納に努めること等となっております。  また、事業運営に当たりましては、視聴者により一層信頼される公共放送を実現していくとともに、経営財源確保のため、受信契約増加受信料の確実な収納に努め、あわせて経営全般にわたり効率的な運営活性化を図ることとしております。  最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金需要及び調達に関する計画を立てたものであります。  郵政大臣といたしましては、これらの収支予算等につきまして、おおむね適当であると認めた上で、収支予算等実施に当たっては、受信料収入確保及び経費の節減に努めることが必要であること、補完衛星の打ち上げが受信者負担増とならないよう業務効率化等に努めることが必要であること等を指摘した意見を付することといたした次第であります。  以上のとおりでありますが、何とぞよろしく御審議の上、御承認のほどお願いを申し上げる次第でございます。
  6. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長川口幹夫君。
  7. 川口幹夫

    川口参考人 ただいま議題となっております日本放送協会平成年度収支予算事業計画及び資金計画につきまして、御説明申し上げます。  平成年度事業運営に当たりましては、激動する国際情勢など、放送の果たす役割が増している状況のもと、視聴者の期待と要望にこたえ、調和のとれた多様で豊かな放送を行って、より一層視聴者に信頼される公共放送を実現してまいる所存であります。  業務の推進に当たりましては、経営財源確保のため、受信契約増加受信料の確実な収納に努め、あわせて経営全般にわたり効率的な運営活性化に努めてまいります。  平成年度の主な事業計画について、御説明申し上げます。  まず、建設計画につきましては、衛星放送の継続的・安定的実施に万全を期するため、補完衛星製作・打ち上げに着手するとともに、放送番組充実のための設備整備を行うほか、老朽の著しい放送設備更新放送会館整備等実施することとしております。  次に、事業運営計画について申し上げます。  国内放送におきましては、視聴者意向を積極的に受けとめ、番組充実刷新を図るとともに、公共放送の使命に徹し、公正な報道と豊かな放送番組提供に努めてまいります。  また、バルセロナ・オリンピックと参議院議員通常選挙放送については、万全の体制で取り組むこととしております。  国際放送におきましては、放送時間を拡充し、日本の実情を正しく諸外国に伝えて国際間の相互理解に貢献するとともに、海外在留日本人に多様な情報を的確に伝えるため、番組充実刷新を行います。  また、海外中継を拡充して、受信改善に努めてまいります。  契約収納業務につきましては、受信料負担の公平を期するため、受信料制度周知徹底を図るとともに、効果的・積極的な営業活動を行い、受信契約増加受信料の確実な収納に努めてまいります。  調査研究につきましては、新しい技術開発研究を初め、放送番組放送技術の向上に寄与する調査研究を推進し、その成果を放送に生かすとともに、広く一般にも公開することとしております。  以上の事業計画実施に当たりましては、経営全般にわたり業務の見直しを一層徹底し、要員については、年度内三百三十人の純減を行い、総員一万三千九百九十人とし、給与につきましては、適正な水準を維持することとしております。  これらの事業計画に対応する収支予算につきましては、一般勘定において、事業収支収入総額五千四百三億七千万円を計上し、このうち、受信料については、五千百六十五億三千万円を予定しております。これは契約総数において四十万件、衛星契約において百五十二万件の増加を見込んだものであります。  これに対し、支出は、国内放送費など、総額五千百三十一億八千万円を計上しております。  事業収支差金二百七十一億九千万円につきましては、このうち、二百三億二千万円を資本支出に充当し、六十八億七千万円を翌年度以降の財政安定のために繰り越すこととしております。  次に、資本収支につきましては、支出において、建設費六百七十八億円、放送債券償還等に二百七十三億五千万円、総額九百五十一億五千万円を計上し、これらに必要な財源として、減価償却資金などの自己資金のほか、放送債券及び借入金などにより、賄うこととしております。  なお、受託業務等勘定においては、収入六億四千万円、支出五億六千万円を計上しております。  最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて、資金需要及び調達を見込んだものでございます。  以上、日本放送協会平成年度収支予算事業計画等につきまして、そのあらましを申し述べましたが、今後の事業運営に当たりましては、協会事業視聴者負担する受信料により運営されていることを深く認識して、多様で豊かな放送を行うとともに効率的な業務運営を行い、協会に課せられた責務の遂行に努める所存でございます。  委員各位の変わらざる御協力と御支援をお願いいたし、あわせて何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。
  8. 谷垣禎一

    谷垣委員長 これにて趣旨説明は終わりました。
  9. 谷垣禎一

    谷垣委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦昭君。
  10. 松浦昭

    松浦(昭)委員 ただいま提案理由の御説明があり、また補足説明がございました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件につきまして、郵政省及びNHKの御当局に御質問を申し上げたいと思います。  参考人の方々には当委員会にお運びをいただきましてまことにありがとうございました。以下、二、三御質問を申し上げたいと存じます。時間も二十分と限られた時間でございますので、お尋ねいたしたいこともたくさんあるわけでございますが、特にNHK予算支出項目の中で最大の眼目の一つではないかと思われます衛星放送に関しまして御質問をいたしたいと思う次第でございます。  三月二十二日、今から五日ほど前でございますけれども、NHKスペシャル番組で、「テレビはどこへゆくのか」という大変興味の深い放送がございました。情報化時代と言われるこの激動の世界の中にありまして、テレビが果たします大きな役割になるほどとうなずかせられる点がありますと同時に、ボーダーレス時代テレビ、さらには多チャンネル化時代テレビ幕あけともいうべき視点が非常に明確になっておりまして、二十一世紀に向けての我々の役割というものがいかに重大なものであるかということを痛感した次第でございます。  さて、その多チャンネル化時代あるいはハイビジョン時代というものを担う花形は何といっても衛星放送であるわけでありますけれども、その契約も爆発的にふえて五百万件を超えていると聞いております。しかし、その花形の機材であります放送衛星、現在NHK放送第一と第二、JSB、それにハイビジョン試験放送を担当しておりますBS3a、BS3bが打ち上げられているわけでありますが、BS3aにつきましては打ち上げ直後からふぐあいが生じていると聞いておりまして、このため補完衛星の打ち上げは焦眉の急という状態であると伺っておるわけであります。今回のNHK予算にありましても、その目玉といたしまして、放送衛星製作・打ち上げ五十億円、地上施設整備十四億七千万円、計六十四億七千万円が計上されておるわけでございます。この補完衛星いわくつきと申しますか、今までBS2XであるとかBS3Hと二度ともロケットが原因ということで実は失敗をしている状況であります。  そこでお尋ねをいたしたいわけでありますが、どうして補完衛星が必要であるかというその必要性を明確にいたしていただきたいと思いますと同時に、この衛星の打ち上げによりまして安定的な運用確保されるのかどうか。  それからまた、過去の失敗を繰り返さずに、高い信頼性を保持いたしまして、二度あることは三度あると言われないということのためにはよほどチェックの機能というものが果たされなければならないと思うわけであります。この対策をどうお考えになっているか。  さらにはまた、私が考えますに、本来このような放送通信インフラと申しますものはいわば公共的な仕事のもとにつくられる施設でありまして、本来国が行うべきじゃないかという考えもあるんじゃないかと思いますけれども、今の公共事業のシステムからいいますと直ちにそうはならないかもしれませんので、今回はNHKさんが国の助成を受けまして調達、打ち上げの主体になるという形になっているわけであります。この予算方式によりますと、まさにNHK国民の皆さんから受信料を取りまして、それによって衛星の費用の大半を賄うということになると思うわけであります。そうなりますと、NHKの責任は極めて重大でありますし、また受信者負担ということについてはどのようなお考えをお持ちになるのか。そしてまた、その負担を軽減するためには、あるいは万が一の場合に備えまして保険等のいろいろな施策も講じていかなければならないと思うわけでありますけれども、これらの疑問点、一括してお尋ねいたしますので、いろいろお尋ねして恐縮でありますが、NHKの副会長さんが多分一番御適任と思いますので、御答弁をいただければありがたいと思います。
  11. 中村好郎

    中村(好)参考人 お答えいたします。  今先生の御質問が三点あったかと思いますが、前段の二つにつきまして私からお答えいたします。後の保険等の問題につきましては財務担当の方から説明させたいというように考えております。  まず、現在放送をやっておりますBS3a、3bの状況でございますが、BS3aにつきましては、太陽電池発生電力低下という問題が発生いたしまして、現在二チャンネル運用を行っておるところでございます。現状では安定に運用されておりまして、このまま推移すれば二チャンネル運用寿命末期、今の予定では平成九年夏でございますが、寿命末期まで可能である、このように考えております。BS3bの状況につきましては、打ち上げ後から現在に至るまで順調に推移しておりまして、今後も寿命末期まで三チャンネル安定運用が可能である、このように考えております。  次に、補完衛星必要性でございますが、これにつきましては、BS3の寿命末期には衛星放送視聴者の数が一千万を超えるだろうという予想もございまして、衛星放送を安定に継続するためには軌道上に完全な衛星が二機必要だというように私ども考えております。こういう観点から、先ほど申し上げました3aが安定的には二チャンネル運用しかできないという状況の中で、ぜひ補完衛星を打ち上げさせていただいて万全の体制をとりたいということでございます。  なお、郵政省における検討会でも、審議の結果、補完衛星を早期に打ち上げる必要があるとの報告をいただいております。  次に、補完衛星につきまして、2X、3H、二度とも失敗したわけでございますが、今回の補完衛星の打ち上げ計画実施するに当たりましては、これらのふぐあいにより不成功となったことを重く受けとめまして、信頼性を十分に確保するための体制を強化していきたいというように考えております。  具体的には、NHK内に補完衛星に関する技術諮問委員会を設けまして、部外の専門家各位から多年にわたる経験を生かした御意見をいただくことにしております。この中で衛星及びロケットの設計、製造に当たっていかに信頼性確保していくかについて御助言をいただきながら、打ち上げのための万全な体制を確立していきたい、このように考えておるところでございます。
  12. 中野正彦

    中野参考人 三点目の衛星関係設備投資についてお答えいたします。  先生指摘のとおり、衛星関係設備投資につきましては総額で六十四億を予算計上いたしております。そのうち十四億は地上施設老朽更新ということで通常整備を図ることにしております。肝心の補完衛星建設費といたしましては五十億円を計上いたしておりますが、一応平成年度に打ち上げを予定いたしております補完衛星については、平成年度から製作着手をいたしたい、そのための着手金として五十億円を計上いたしております。これの財源といたしましては、これは自己資金でございます建設積立金から充当するという考えでございます。  それから、この設備投資をした後の事業収支への影響はどうなるのかということでございますが、これは補完衛星を六年度に打ち上げをしまして、これを実際に運用いたしますのが六年度以降になりますので、その段階から減価償却等必要経費として予算を六年度以降に計上するという考えでございます。  なお、打ち上げにつきましては、これは万全の体制で臨みますけれども、万一に備えて打ち上げの保険を掛けるということで今検討を進めております。  以上でございます。
  13. 松浦昭

    松浦(昭)委員 どうもありがとうございました。  そこで、BS3の補完衛星の打ち上げについては、ただいま申し上げましたようにいろいろとお伺いをいたしたわけでありますが、これも関心でありますけれども、いま一つの大きな関心は、これに関連いたしましてポストBS3というのがどうなるかというのが非常に関心事であります。この衛星放送こそは二十一世紀日本放送網をどう組み立てるか、情報社会として日本はどういう社会になっていくのかということの分岐点になるかという感じがいたすわけでありまして、極めて高い政策判断が要請されると思うわけであります。しかも、現行BS3の寿命から考えまして、平成九年には後継衛星を打ち上げなければならないという必要に迫られていると聞いておりますし、しかも衛星調達には長期間準備が必要というふうに仄聞いたしておりますので、平成五年、もう来年度でありますけれども、その時点で国としては計画を立て、ポストBS3ということを考えなければならない時期に来ていると聞いております。  ただ、このポストBS3ということを考えますと、この調達、打ち上げの主体をどうするのかはまだはっきり決まっていないというふうに伺っておりますし、またBS3の後継衛星、これも二個、その上に補完衛星も入れれば三個というものを百十度のごくわずかに限られた地域に打ち上げていくわけでありますけれども、そのチャンネル数が八つになるというふうに聞いておるわけであります。その割り当てチャンネルがふえますと、そのふえた分につきましては、もちろん民放の各社にチャンネル割り当てをするというようなことも出てくるかもしれませんし、また民放自体にも今度は地方局との関係というのが出てくるはずであると思います。それからまた、学校放送をどうするかとか、あるいは国会放送をどうするかというような、そういう公共的な放送の問題も出てくるんじゃないかと思います。  また、一昨日、実はNHK技術研究所を訪ねさせていただきまして、大変勉強させていただいたわけでありますが、価格さえ安くなりますと、ハイビジョンというのは非常に鮮明な画像でありまして、きっと需要も多くなるんじゃないかと思われるわけでありますが、このハイビジョン専用チャンネルをどうするんだということを考えました。また、ポストBS3では新しい技術としてディジタル方式というのを見せていただきましたけれども、研究所で見ましたところが、一つチャンネルを三つに分けるという、かなり鮮明な画像が得られたようであります。そうなりますと二十四チャンネルということになりますし、しかしまた受像機を変えなければならない問題があるということも承っておりまして、ディジタル方式をとってチャンネル数をふやすのか、それとも受像機は別途のものが調達されるというようなことになるのか、この決断もまた非常に重要なことだと思います。さらには、通信衛星との関係、CATVとの関係をどうするかというのもきっと重要な判断の材料になってくると思います。さらに、ソフトの制作面でどうするのかも非常に重要な問題だという感じがいたしましたし、また各放送事業者の採算が果たしてとれるのかどうか、健全な経営確保できるのかどうかということについてもいろいろ考えさせられることがあったわけであります。  非常に頭の痛い大変なことをお考えにならなければならないということでありますけれども、ひとつ放送行政局長の方から、今のところどのようなお考えで臨んでおられるか、またこの八チャンネルの配分という問題も含めまして、今の段階で御答弁願える点につきまして御示唆をいただきたい、このように思う次第であります。
  14. 小野沢知之

    小野沢政府委員 御答弁申し上げます。  まず、BS後継機調達、打ち上げの主体をどう考えているかということでございますが、先生指摘のように、BS後継機段階衛星放送あり方という問題は、放送行政の最重要政策課題というふうに認識しております。そこで、平成五年じゅうを目途に決定する方針で今準備を進めております。昨年の秋ごろは早くて平成五年という御答弁をしておったのですが、その後の情勢の進展の状況等を見まして、ただいま申し上げたようなペースになってきております。そこで、今後の衛星放送あり方検討放送普及基本計画の変更、放送事業者決定手続等と並行して放送衛星調達を進めまして、平成九年ごろにはBS後継機による放送を開始できる体制を事前に整えておくことが望ましいというふうに考えております。  ところで、放送衛星調達形態でございますけれども、放送事業者がみずから調達する形態放送事業者とは別の法人、いわゆる調達法人放送事業者決定に先立ちまして衛星調達し、衛星運用段階に入った段階放送事業者設備提供する形態考えられるわけでございますが、BS後継機調達、打ち上げ、運用の段につきましては、この調達法人の設立の問題も含めまして、現在郵政省において関係方面と連絡をとりながら鋭意検討中でございまして、衛星放送重要性から見て、その継続性確保する観点からできる限り早急に結論を得たいというふうに考えております。その早急に結論を得る時期のめどでございますが、昨晩までも一生懸命詰めていたのでございますが、明確には申し上げられませんけれども、本年夏ごろまでには結論を得たいということで今準備を進めているところでございます。  それから次に、BS後継機の八チャンネル割り当てについて郵政省はどのような考えで進めていくかということでございますけれども、この問題は、我が国の今後の放送あり方、ひいては国民生活、さらには産業社会の各分野にわたりまして重大な影響を及ぼす問題でありますので、その適切な結論を得るために慎重かつ十分な検討が必要であるというふうに考えているわけでございます。  そこで、郵政省といたしましては、平成年度、来月早々にでもなりましたら本格的な検討着手したいと考えておりまして、その検討に当たっての基本的な考え方でございますけれども、既存の衛星放送事業者、それから今後の衛星放送に重大な関心を有していらっしゃる方々、それから衛星放送に関連する製造事業者のほかに関係各方面の技術者の御意見をお聞きする場を設け、それらの御意見を重要な参考資料としてできる限り公正な手続により取り運んでいきたいという方針を固めまして、今その準備を進めているところでございます。このような取り運びを行いますが、ただいま先生が御指摘になりましたように、衛星放送に対する国民需要動向、民間衛星放送事業、それから有料放送方式の動向、それからBS後継機段階での利用可能ないろいろな技術の動向、さらにはハイビジョンの普及動向、そういったものをもろもろ見きわめました上で、先ほど申し上げましたように平成五年じゅうを目途に結論を得たいというふうに考えているところでございます。  それから、CS、BSの関連等の問題についてでございますが、CS放送BSのように軌道位置とかチャンネル数の制約も少なく、将来の多チャンネル化が比較的容易なメディアであるわけでございますが、幸い去る三月十一日に東京大学新聞研究所長の高木先生を座長といたします通信衛星を利用する放送の普及の在り方に関する研究会から報告書をいただきまして、その中で、多チャンネル性のほかに、CS放送は広域性、高画質・高音質等のメディア特性を有しており、これらのメディア特性を生かしておのおののチャンネルが専門的内容を持ち、かつより限定された視聴者も対象とし得る放送メディアであるという指摘を受けておるわけです。郵政省といたしましては、BSが将来の基幹的放送メディアの一つとして発達普及していくことを期待しているのに対しまして、このCS放送につきましては、国民のより専門的な情報ニーズに対応する放送メディアとしてその発達普及を図っていきたいというふうに考えているわけでございます。
  15. 松浦昭

    松浦(昭)委員 いろいろお尋ねしたい点がありましたけれども、時間が来てしまいましたので、最後に大臣に、この多チャンネル化時代におけるメディア、放送というものが非常に重要でありまして、特に日本国民の文化あるいは芸術といったものに非常に大きな影響を及ぼしていくと思うわけであります。こういう時代に備えまして郵政省の責任は非常に大きいわけでございますが、これに対処する大臣の所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  16. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 これからの放送の多チャンネルあるいはまた多メディアという、こういう急速な進展の時代というものを、ただそういう時代であるということで看過することなく、我々としてはこれを重大に受けとめていろいろなニーズにこたえていかなければならない。視聴者ニーズに対応するためには良質で多種多様な、何といっても一番大事なのは放送ソフトの面であろうというふうに思います。  そういう意味では、制作あるいは流通体制の確立、そして総合的な放送ソフト充実政策というのがこれから展開されていかなければならないだろう。そこに放送を通じた地域情報化の推進あるいは豊かな日常生活が確保されていくという考え方の中から、そういった基盤の整備あるいは国際化への適切な対応も重視して、平成四年六月を目途に放送行政局に放送政策課というものを新設いたしまして、個別の放送メディアごとに一貫した行政を行うとともに、各メディアを横断的にとらえた総合的な政策を推進して御期待に沿いたいと思っております。
  17. 松浦昭

    松浦(昭)委員 ありがとうございました。  終わります。
  18. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、坂井隆憲君。
  19. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 坂井でございます。  最近の日米経済摩擦とかフランスのクレッソン首相の対日批判などを見ていますと、海外と日本との経済摩擦というのは、単に経済だけの問題でなくて、日本の文化、風俗、そういうものについての理解がやはり少し足りないのじゃないか、そういうような気もしているわけでありまして、そういうことを考えますと、これから国際放送というものの役割は年々増大していくのじゃないかと思うわけであります。  ただ、テレビ時代を迎えてから既に久しく、世界の多くの国々では衛星時代が到来している中で、我が国では国際放送だけは依然として短波によるラジオ放送が主流であるわけであります。アメリカのVOAなどが通信衛星を使ってヨーロッパのCATV放送番組を供給したり、またイギリスのBBCがテレビによるワールドサービスの構想を発表するなど、国際放送においても多メディア時代において各種の対応が考えられている状況にありまして、湾岸戦争のときにアメリカのCNN、イギリスのBBC、そういうものの現地の放送がかなり日本にも入っていまして、果たして日本番組もそれだけ海外に出ているのだろうかということを、私だけでなくて日本国民みんなが思っているところじゃないかと思います。  ちょうど先週の土曜日に、三月二十一日ですが、NHK衛星放送放送記念番組として海外で好評を博したNHK特集の一挙上映が行われましたけれども、「シルクロード」などの作品が海外でも好評であったということでありますが、一体今の状態でNHK通信衛星を使って海外に発信している番組、どのようなものがあるのか、またNHK番組の海外提供の現状についてもお伺いいたしたいと思います。
  20. 中村和夫

    中村(和)参考人 お答えいたします。  現在、通信衛星を使って映像で情報発信している番組には、「トゥデーズジャパン」と、「アジアナウ」、それから「ジャパンビジネストゥデー」、ことしの一月からアメリカのABCニュースに「アジアビジネスナウ」、二分間ちょっとの番組でございますが、これをデーリーで提供しておるというのが通信衛星を利用しての、英語を主体にしての情報発信番組でございます。  それから、昨年の四月からテレビ・ジャパンという日本語による発信番組を、欧米とも再放送を含めて大体十一時間でございますが、それを開始いたしております。欧米合わせて大体六千百世帯受信者がいらっしゃいます。テレビ・ジャパンでは、モーニングワイドとか昼のニュース、十九時のニュース、それから大相撲とかそういうものを主体放送しております。  それから、NHK番組の海外提供の現状でございますが、平成年度、有償で頒布する、商業ベースで提供しているものが大体四千百十二件、大河ドラマの「翔ぶが如く」、連続テレビ小説の「純ちゃんの応援歌」、「青春家族」等々でございますが、そういうものが四千百十二件ございます。それから貸し出しと申しまして、公的資金の援助を受けた上で無償で提供するというものが二千五百二十八件、先ほど御指摘ございましたけれども、そういうものについては、「地球汚染」、「地球大紀行」、「シルクロード」、「北極圏」等々、二年度では多いところでは十三カ国、それから少ないところでも七カ国ぐらい番組提供しているのが現状でございます。
  21. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 ただいまお話がありましたテレビ・ジャパンについてなんですけれども、テレビ・ジャパンの設立、そしてこのような事業の推進というのは時宜を得たものであると私も非常に評価をしているものでありますけれども、仄聞しているところによりますと、MICO、MICOはもとよりテレビ・ジャパンにかかわる現地法人の収支状況というものは余り芳しくないように聞いているわけであります。ですから、今のテレビ・ジャパンの実際の現状、収支の現状、それから今後どのようにテレビ・ジャパンをてこ入れしていくつもりなのか、この点についてお聞かせ願えればと思います。
  22. 中村和夫

    中村(和)参考人 テレビ・ジャパンは現地法人として運営してございまして、受信料とCM収入と協賛金という三本柱で運営しているわけでございますが、受信料の方は事業計画に沿った線で大体見込みどおり運営されているわけですけれども、昨今の経済情勢等々ございまして、CMの収入と協賛金が思うように集まらない、計画値をかなり下回っているというふうに聞いております。  そういう状況から、支出については衛星の借用料など固定的な経費をどれだけ切り詰めるかという努力もなさっているようですし、その他事務、営業経費等も非常に切り詰めて運営、努力をしているというふうに伺っております。  NHKとしては、アメリカの現地法人には八時間、ヨーロッパには六時間、番組提供してございますが、ソフトの提供の内容をより充実したものにしていきながらてこ入れをしていきたいというふうに思っております。
  23. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 昭和二十五年の放送法案の提案理由補足説明というのを勉強してみたのですけれども、そのときにその説明の中において、第一に、「全国津々浦々に至るまであまねく放送を聴取できるように放送設備施設しまして、全国民の要望を満たすような放送番組放送する任務を持ちます国民的な公共的な放送企業体とこれはNHKですね、「個人の創意とくふうとにより自由闊達に放送文化を建設高揚する自由な事業としての」「民間放送局」の二つを定めているということを説明されているわけであります。  NHK業務を維持運営していくための特殊な負担金として受信料が設定されているわけでありますが、受信料番組視聴者に対する対価として設定されているのではなく、業務運営全般を支えるものとして構想されているからこそ、その受信料財源として全国津々浦々に至るまで放送を聴取できるように放送設備施設していくということがNHKの大きな使命だったと思うわけであります。ただ、放送法を制定したときのように、全国あまねく受信できるようにするという目的はほぼ達成したのじゃないかと思います。むしろ国際化している今日、NHKに求められているのは、国内ではなく海外の津々浦々に居住する日本国民の要望にこたえるような番組を作成し、提供していくということではないかと思っているわけであります。  昭和三十九年の臨時放送関係法制調査会の答申というものを読んでみますと、国際放送の目的は「国を代表して国際理解を深め、国際親善に役立たせようとするものであって、どちらかといえば国策的なものであり」諸外国は「このような点を考慮して、国費の負担によって国際放送実施している」として国費の負担でやるべきとの考えを示しているけれども、一方で、国際放送は「国際理解の増進や、外国との経済交流の発展に資するとともに、海外同胞に適切な慰安を与えることを目的として行なわれており」「遠く故国を離れて海外にある同胞が故国の事情を知りたいという願望をもっていることに対し、進んでこれにこたえ、適切な慰安を与えることは、われわれ国民の義務」である、また「国民の念願でもある」としているわけであります。  昭和二十年代から三十年代にかけて国内的にあまねく受信できるようにすることがNHKの使命であったとすれば、今日においては、海外の同胞にも受信できるようにしていくことも国民の義務でありNHKの使命であると考えるわけであります。だとすれば、NHK国際放送に関し、受信料をある程度の財源の一部として海外の同胞に受信できるようにしていくこともある程度やむを得ないことだと思うわけでありますけれども、現実問題は受信料にかなりおんぶし過ぎて国費の負担は非常に少ないわけであります。ですから、我が国の文化、風俗等を海外の人たちによりよく理解してもらうという目的と海外の在留邦人に我が国の番組提供していくという二つの目的を達成していくために、国費で負担すべき分野と受信料である程度見ていくこともやむを得ない分野というものをある程度区分しつつ負担のルールの明確化を図らなければ、いつまでたっても我が国の国際放送は進展しないと思っているわけでありますが、例えばハード面の整備は全額国の負担とするなど負担あり方についてどのように考えているのか、見解を伺いたいと思います。
  24. 小野沢知之

    小野沢政府委員 お答え申し上げます。  我が国の国際放送は、郵政大臣NHK放送事項等を指定して行わせる命令放送NHKが自主的に行う自主放送を一体として実施しておりまして、その所要経費については、命令放送に必要な費用は国が負担し、自主放送については受信料負担するという仕組みになっているわけでございます。  そこで、郵政省といたしましては、こうした国際放送の果たす役割の重大性を認識いたしまして、その充実強化を図るために必要な政府交付金の確保に省の一般会計の枠内の中で長年にわたり努力してまいりまして、一定の成果を上げてきたわけでございますし、またNHKにおきましても、みずからの判断で必要な予算確保してきたところでございます。こうした命令放送負担あり方というのは、現行の放送法に基づきまして長年にわたり定着してきたわけでございます。  そこで、これを例えば御指摘のようにハード面の整備を全額国の負担とするというような負担あり方の抜本的改正ということになりますと、現行の国際放送あり方の基本にかかわる問題であるということで、今後慎重に検討することが必要であるというふうに考えますが、検討課題とさせていただきたいと思います。
  25. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 国際放送の基本にかかわることだということはわかりますけれども、慎重に検討というよりも、十分検討してもらいたいと思っているわけであります、前向きに。  それから次に、先ほど言いましたように、NHK財源というのは受信料に頼っているわけでありますけれども、ドイツなどを見ますと、公共放送財源の一部が広告放送からの収入で占められているわけでありまして、これは受信料のみに依存するよりも、広告放送からの収入があった方がむしろ政治権力の介入を排除できるというようなことが一つ考え方にあるように聞いております。だとすれば、広告放送実施することが公共放送の本質に反するとは言えないのじゃないかと考えるわけでありまして、ただ、我が国の放送法ではNHKに対して広告放送を禁止しているわけであります。これは政治的中立を確保するとともに、いかなる私的利害にも影響されないようにするという目的と同時に、民放の成長を阻害しないという目的、NHK放送網は全国にわたっておりますし、その媒体価値は極めて高いので、NHKに広告放送を認めるようになれば、広告主は競ってNHKを利用することになる、そうしますと、民放は成長し得ないことになるのではないかという懸念が一つあったのではないかと理解しているわけであります。  ただ、NHKを中核とする国際放送の分野でいいますと、テレビ・ジャパンの現状を見てもまだ採算に乗る状況ではない、広告放送を基礎としている民放が進出するほどには市場が熟し切っていない現状にあると思うのです。民放が広告放送を基盤として国際放送に乗り出すような市場の状況でないとするならば、当面、国際放送の市場が熟成されるまでの間、受信料を基礎とするNHKが、その財源によってみずから制作した番組、委託した番組も含みますけれども、そういう番組に広告をつけて海外に低廉に提供しても民放を圧迫することにはならないのではないか、むしろ市場育成までの間、初期投資的な意味でNHKが率先してやるべきことではないかと思うわけであります。公共放送による公共性という意味の一つに政治的中立性の確保ということがあるとしても、国内で公共企業体であるNHKが作成している番組は、その番組自体がもう既に公共性を帯びているものが多いと思うのですね。だとすれば、その番組に広告を取り入れてでも低廉に海外に提供していくことは国際放送の展開のために必要不可欠ではないかと思いますけれども、御意見を聞かしていただければと思います。
  26. 小野沢知之

    小野沢政府委員 お答え申し上げます。  初めてお聞きする大胆な御提言をいただいたわけですが、テレビ番組を海外に提供するには特別に多額の経費を要するわけでございまして、そこでそういったことを経費面から支える一方策としての御提言だと思いますが、それにつきましては、私ども次のような問題点があるというふうに考えております。  一つは、たとえテレビ番組の海外提供のためとはいえ、NHK自身が広告を募ることは公共放送としてのNHKあり方としてふさわしいか十分検討する必要があるということ。第二点は、公共性の高いテレビ番組でありましても、広告と一体として視聴される場合、その公共性について視聴者にどのように受けとめられるか十分調査する必要があるということ。第三点として、諸外国においては、広告放送につきまして量的規制、たばこやアルコール等の規制などきめ細かな広告規制が行われている場合があるので、受け入れ国の実情を調査する必要があるということ。第四点として、現状では我が国のテレビ番組に対する海外の需要がアニメーション等に限られているために、広告のついた我が国のテレビ番組の海外の受け入れ可能性につきまして十分調査する必要があるということ。そういう問題点があるというふうに認識しております。  いずれにいたしましても、先生の御提言につきましては、今申し上げたような点を踏まえましてこれから多角的に調査検討を加えていきたい、このように考えます。
  27. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 初めて言う意見ではありましたけれども、やはりNHKが今大きな曲がり角だと思うのですね。ちょうど先般、日本民間放送連盟からNHKの”商業化”に関するアンケート結果の送付というものがありまして、NHKの商業化問題に関していろいろ意見が書いてあったわけであります。  細かいことは省きますけれども、先ほど言いましたように、NHKが全国津々浦々に至るまで放送設備を敷設するという基礎的な目的はもう既に達成したわけでありまして、難視聴解消を主目的として導入された衛星放送ももはやメディア間競争の対象となっている状況にあります。そのような状況のもとで、我が国の放送業界は、民放を含めかなりの程度成熟しつつありますし、多チャンネル時代、ディジタル時代に向けて、機器メーカー等の関連業界を含め全体として放送関連分野は日本経済においても重要な成長分野として私は思っているわけであります。また一方では、地域間競争が非常に激化しております。  そういう中で、自治体にとってはふるさと創生の一環としてNHKと結びついて何かやっていきたいという気持ちは非常に強くなってきているわけであります。私の県、佐賀県でも吉野ヶ里フェスタの問題でそういうことがありましたけれども、いわゆる公共企業体、準公共企業体であるNHKが公共団体である自治体と結びつくことは番組の公共性を損なうことにはならないであろう。そしてその番組自身が公共性を帯びていれば、公共団体である自治体の広告を取り入れても何ら公共性を損なうことにならない。要するに、最終的に民放との調整をどうするかだけが残ってくると思うのですね。  昭和二十八年にNHKが開局したときのNHKテレビ番組というのを調べてみたのです。そうしますと、当時は昼から夜の九時ぐらいまでしか放送していない。内容は大体今のNHKチャンネルの教育テレビ的なものが非常に多かったわけでありまして、そういうことから推移して、今はもうNHKチャンネル数も多くなった。衛星放送もあります。それから放送時間帯も長くなってきた。内容も、少しずつではあるけれども、その分バラエティーに富んできたように思います。NHKの関連団体もふえ、民放もそうですけれども、NHK自体が巨大化してきているというのが今の現状であります。ハイビジョン時代に向けて、しかも先ほど言われたようにBS3の設計、製作なんかの費用負担の問題もあるわけでありまして、依然として受信料を基礎として運営していくことだけでいいのかどうかということで、商業化問題については私は半ば期待と興味を持って考えていたわけであります。  そういうことを考えますと、このNHKの商業化路線、民放は反対的な意見を言っていますけれども、私はある程度期待していたのです。分割・民営化みたいなことは今は言いませんけれども、このNHKの商業化路線、例えば公開録画番組などでの自治体の協賛とか、国際放送の分野でいえばグローバル・ニュース・ネットワーク構想などの商業化路線についてどのように考えているのか、見解を伺って質問を終わりたいと思います。
  28. 小野沢知之

    小野沢政府委員 お答え申し上げます。  多メディア・多チャンネル化の進展に伴いまして、NHK役割に対する関心が非常に高まっておりまして、各界からいろいろな意見が出てきているわけでございますが、一言で申し上げまして、調和ある前進をNHKにはしていただきたいというふうに郵政省としては考えておりまして、これから各界のいろいろな御意見を丹念に研究いたしまして、これからの行政施策に反映していきたい、このように考えております。
  29. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 よろしくお願いします。ありがとうございました。
  30. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、山本拓君。
  31. 山本拓

    ○山本(拓)委員 山本拓でございます。時間がございませんので、端的に質問させていただきます。  まず初めに、川口会長さん、御就任おめでとうございます。ところで、川口会長さんの初めて当たられた平成年度事業運営の基本姿勢についてお尋ねをいたします。
  32. 川口幹夫

    川口参考人 昨年の七月三十一日に会長に任命をされましてちょうど八カ月になりますけれども、この間に私も驚くほどに外部の状況がどんどん変化してまいりまして、先ほどから先生方の御指摘のように多メディア・多チャンネル化の進展、それから国内情勢の変化、それから世界の情勢が物すごく目まぐるしく変化しております。こういうものに対して、今どう対応するかということと、今後どのように対応していくのか、非常に長期の計画を迫られているという現状にあることを強く認識しております。NHKは本来的に受信料によって成り立つところである。つまりそれは受信者の御期待にこたえなければいけないという責任を持っているというふうに私は基本的には解釈をしております。  そういう意味で、私どもがまずなすべきは、受信者に対してどのような責任ある務めを果たしていくのかということでありまして、それには平成年度番組編成にも幾つかのポイントを挙げましたけれども、例えば変動する世界の情勢にどう対応するかとか、それから教育テレビというものは特に大きな影響を子供たちに及ぼすものでありますから、これをどういうふうに強くするかということ、あるいは広い意味で国民全般の御愛顧にこたえるような番組実施しなければいけないし、それから大型の企画でもって、それこそ豊かな放送というものを実現をしなければいけない、そういうことを考えております。  経営の方向としては、それをするためにも、しかしながら受信者の御負担をなるべく軽減をするという方向で業務の効率化に努めたい、いろいろなことを今考えておりまして、少なくとも十年先を見通した計画をなるべく早く立案をして、皆さんの御期待にこたえたい、このように思っております。
  33. 山本拓

    ○山本(拓)委員 いわゆる平成年度NHKの五カ年経営計画の折り返し点になるわけでありますが、ちょうどこの時点に立って、NHKとして当初の五カ年計画と比較して収支状況、そしてまた目的の達成状況について御報告いただければと思いますので、お願いいたします。
  34. 中野正彦

    中野参考人 お答えいたします。  現在実施いたしております五カ年の経営計画の中での平成年度の収支見込みは、収入総額で五千四百七億円、支出につきましては五千二百四十七億、資本支出の充当に百九十三億、差し引き過不足が三十三億の赤字ということでございます。これに対します平成年度収支予算でございますが、経営計画に対しまして事業収入で三億円の減収となっておりますけれども、一方におきまして、事業支出はゼロベースの考え方によりまして業務の見直しなどを徹底いたしておりまして、百十五億の圧縮を図っております。なお資本支出の充当が十億円増加いたしますために、差し引きしまして六十九億の黒字ということでございます。したがいまして、経営計画の三十三億の赤字に対しまして六十九億の黒字ということでございますので、経営計画に対しまして百二億の収支改善を図るということになっております。ちなみに平成年度から四年度までの三カ年の全体の収支で申し上げますと、経営計画に対しまして百六十五億の収支改善を図るということになっております。  次に、事業計画実施状況でございますが、経営計画の基本的な考え方、これは国際化あるいは高度情報化、こういったものが進展していく中で、NHK公共放送として使命を果たしていく、そのために重点的な事業実施をしていこう、こういう基本的な考え方で今経営計画を実施しているわけでございますけれども、この基本的な考え方に基づきまして、放送番組充実刷新あるいは効果的な営業活動の推進、それによりまして受信契約増加、確実な収納に努めるなど、効率的な業務運営を行っております。今後とも、より一層視聴者の期待と要望にこたえる放送サービスを行いまして、安定的な財政運営に努めてまいりたいと考えております。
  35. 山本拓

    ○山本(拓)委員 今のお話の中で、公共放送として特色あるということだと思うのですが、私、かねがね思っていることで、いわゆるこれから国の方針として週休二日、労働時間短縮、そして宮澤総理の方針であります生活大国ということで、国民だれしもがきんさんぎんさん百歳まで長生きしましょうというところですね。そうなりますと、国民の立場からすると、要するに休みがふえるわけですね、余暇時間。それをどう過ごしたらいいか。甚だしい人なんかですと、山本さん、土日休みになったので暇だから土日のアルバイトないだろうかという人があらわれる始末で、それでは何のために週休二日を進めているかわからないわけですね。そこで、NHKとして、要するに国民の趣味、そしてまた教養を高める、そういう方向へ国民が時間を費やすようなお手伝いをひとつ徹底してやっていただきたい。  例えば、昔と比べて今の教育番組、3チャンネルは非常によくなったと思います。なお一層それを充実していただいて、ただ、国民の趣味と申しますか、要するに価値観の多様化でいろいろばらばらですから、だからもう十五分番組ぐらいに区切って、いっぱい、ダンスからサーフィンから何からもういろんな番組を、メニューをどんどんそろえて、そしてそれを選ばせる。そしてまた、それを視聴者からどんどん提案させて、それで要望が多かったものは試しに十五分ぐらい選考してその番組をどんどん放映させる。やはりそういうキャッチボール、視聴者とのキャッチボールをやりながら番組編成を細かくいっぱいつくっていただきたい。それはやはり公共放送としてしかできない問題じゃないかなと思いますので、その点について、番組編成、ちょっとお尋ねいたします。
  36. 中村和夫

    中村(和)参考人 御指摘のような時代状況であるということは私どもも強く認識しております。  それで、教育テレビは、やはりそういう時代にあって、文化・生涯学習チャンネルとして幅広い文化とか教育実用番組を編成していく、知的欲求にもこたえていくというようなことで、時代の要請に何とかこたえようと努力しておりますが、今御指摘のいろいろな番組、趣味講座というのを今やってございますけれども、来年度からは、パソコン講座とか、気功術という中国の医術の分野がありますが、「気功専科」とか、そういうものも積極的に取り入れていきたい。それからやはり生涯学習といいますか、もう少し深みのある講座物が欲しい。以前、市民大学講座というのをやっておりましたけれども、それにかわるような、それを発展させる形での人間大学講座というのを来年度展開してみたいというふうに思っております。  やはり教育教養番組として教育テレビというのは存在感のある波にしないといけないということを強く認識しておりますので、そういう方向で努力してまいりたいというふうに思っております。
  37. 山本拓

    ○山本(拓)委員 ぜひとも充実していただいて、やはり教育放送ハイビジョンを導入するぐらいの重要性で取り組んでいただきたいというふうに思っております。  そしてもう一つは、前の会長さんですか、グローバル・ニュース・ネットワーク構想というのを何かお聞きしたことがあるのですが、それ以来その計画はとんざしているというふうにお聞きいたしております。私はかねがね、衛星放送を見まして、何てむだな番組をしているのか。例えば、せっかくの衛星放送が、昔の懐メロとかウルトラマンの漫画とかそういったものを放映しておられる。これはつなぎだから仕方ないんでしょうけれども、元来そういったことはCATVとか地域ローカルにさせる仕事でありまして、私は、やはりお願いしたいことは、これから国際化時代として、例えばCNNとかああいう民間レベルのものは、やはりスポンサーのつくところしかいきません。そうではなしに、日ごろからアジアの国々のトップニュース、それを片っ端から、朝から晩まで衛星第1チャンネルで流したっていいんじゃないか。  例えば一日二十四時間、一カ国二十分で計算しますと、七十二カ国のニュース番組が二十四時間流せるわけですね。だから、そういう意味で、どこの国のニュース番組も、ブータンとかなんとか聞いたことのない国のニュース番組を朝から晩までずっと流してやっておくことがそろそろ必要なんじゃないか。価値が出る出ないは別として、そういうふうに流すことによって、これから国際化の時代を迎えるに当たって、政治家だけが国際化したってだめなんで、国民が草の根的に国際感覚を身につけるためには、日ごろからそういう国際情報テレビで見聞きしていくということが一番大事なのではないか。そういう意味では、そういう特色ある番組編成をお願いしたい。  時々やってはおられます。番組を見ますと、何時、何時、何時と定期的にやっていますが、大体、どんなに一流のコックが料理をつくっても、お客さんがそれを食いに来てくれなかったら何にもならないわけですから、何時、何時、何時とその番組を一方的にやられても、忙しい人はだれもこんなテレビ欄を見てやりませんよ。だから、朝から晩まで、例えば午前中はアジア、午後はヨーロッパ、夕方はアメリカみたいに大まかに分けて朝からずっと流しておきますと、みんなそれぞれ自分の感覚で生活をそれに合わせていくようになるのではないか。やはりそれができるのもNHK、いわゆる公共放送しかできない。CNNとかスポンサーがつくところのあんなところと一緒の物まねをしたって、そんなのは民間放送に任せればいいと思うので、そういう点、同じように番組編成の点でぜひともひとつ考慮していただきたいと思うわけですが、その点の御見解をお聞きいたします。
  38. 中村和夫

    中村(和)参考人 現在、衛星の第1テレビというのでは、世界じゅうのニュースを、二十四時間の放送で比率でいいますと五五%、世界じゅうの各放送局から主なニュースを取り寄せてやっておりますが、来年度は新しくスペインとかそういうところの放送もニュースの中に入れていきたい。御指摘のように、やはりその国、その地域によってニュース価値というのはそれぞれ違いますので、どれだけ多様な価値観がそのニュースの分野でも展開されているかということをやはりきちんと提供した方がいいというふうに同様に思っております。  それから、海外放送機関と協力を強めて、ニュースの素材を多様に集める努力を一方でしなくてはいけないということで、海外の放送機関と、アメリカのABCニュースを中心としてですが、いろいろなところと今どういう形で協力関係をさらに進めていったらいいのか、取材協力協定とかそういうものを結んで、国際情報をできるだけ多様に、安く入手するという方法を努力しております。世界的なニューズネットワークというものをつくる上で我々は我々なりに努力しなくてはならないと思っているのですが、その第一歩として着実にそういう協力関係、ニュースを収集する努力を一歩一歩進めていくというそういう努力の先駆けとして、まずアジアのそういうニュース取材、制作体制をきちっと進めたいということで、来年度もう一歩先に体制を進めるという手段を講じております。
  39. 山本拓

    ○山本(拓)委員 私がお願いしているのは、例えばNHKの本体自体が、1チャンネル自体が報道番組中心でやっているわけですね。私は大いにそれは賛成だと思います。何か起きるとすべてそこで特集を組んだり、ぼんとやるわけです。だから、それと同じようなことを衛星第1でやったって意味がないんじゃないか。だから、日ごろから朝から晩まで流しておく。  例えば英会話の先生に聞くと、こんな教室でハウ・ドゥ・ユー・ドゥーとやるよりも、一日三時間わけのわからぬ英語のテープをばんばん聞かせておけば自然と身につく。それはそうだと思います。だから、それと一緒で、朝から晩まで二十四時間、ブータンとかインドとか聞いたことのない国、今度独立国家共同体が分裂しましたけれども、それらの国々のニュース、やはり下手に特派員を送ってそんな人の意見を交えるより、そんなのはカットして、直接向こうでつくったものをぼんぼん事実だけ国民に知らしめた方がいいし、やはり報道番組のコメントを入れるのだったら本体の方で十分やればいいわけで、そこを使い分けをしていただきたいなというふうに思っているところでございます。  最後に大臣に、先ほどの質問とちょっと重なりますので恐縮でございますが、今までずっと申し上げましたように、これからチャンネルがふえる、メディアもふえる。しかし番組の質が落ちては何にもならない。だから、やはり中身が問題だ。先ほどの御答弁で、いろいろな番組センターをつくったりということでございますが、やはりそれに対して大臣として、いかに今後放送行政の中でソフトが大事かということ、またそれに取り組む強い姿勢というのを改めてお聞かせいただけたらお願いいたします。
  40. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 山本委員のいろいろな御提言、本当に傾聴するものもありまして、我々これから多メディア・多チャンネル化の進展に伴って考えていかなければならない一面であろうと思いました。  放送ソフトの充実ということはまさに喫緊の課題だと思います。いろいろな意味でこれから検討を積み重ねていく、いわば放送ソフトの充実に関する調査研究会というような中で、答弁もあったと思いますが、昨年七月以来の開催、本年四月に報告書をまとめられる。まとめていただいたものを踏まえまして、今おっしゃったような広範なニーズというものをどうこの放送ソフトの面で充実あるいは環境整備のために取り入れ実現していくかということが、まさに豊かさを実感できる国民生活の実現ということでありましょうし、もう一面は、まさに多彩な生活文化の創造という新たな、二十一世紀に向けた日本文化というかあるいは地球文化というか、そういうものをこういう中で考えていく、そういう、まさに放送文化を通じてその時代に来たのかなという感じでございまして、ぜひひとつ一緒にこれから検討しあるいは研究をして、ニーズにこたえていく放送の時代というものを創造していきたい。一生懸命努力をいたしたいと思っております。
  41. 山本拓

    ○山本(拓)委員 どうもありがとうございました。
  42. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、上田利正君。
  43. 上田利正

    上田(利)委員 NHK収支予算に入る前に、渡辺郵政大臣、実は一つだけお願い申し上げておきたいのでございますけれども、実は昨晩からけさにかけましてNTTと全電通、労働組合の中で、今次生活問題で交渉がずっと続けられました。私もあちこち飛び歩いていたわけでございますが、大臣も非常に御関心を持っていただいたようでございます。全電通とNTTは、あの民間になる前から、公共企業体の当時から労使関係が非常に良好だった。何しろ話し合いの中でやっていこうという。ところが、ことしはどうも経営側が、しかも民間になって当事者能力があるわけですから、何とかして解決しなければならぬということにならなければならないものを、かたくなな状況経営側の態度でした。さすがの全電通も、このままでは事業が進んでいかない、職員が、もうこんなNTTだったら、こんなに汗水垂らしてやっていても何にもならぬじゃないか、まだ民間になる前の方がよかったわ、何たる経営者だ、こういうことの中で、とうとうけさ八時半からストライキに入ってしまいました。  私と一緒に働いて三十年もたった人たちが、女性で五十前後の人たちがおります。私が朝、地元のJRに七時に乗りますと、もうテレホンカードを売るためにJRの駅のホームの片隅で、今寒いときに一生懸命売っている。そして先生買ってと言うから、毎朝買うわけにいかない、銭がないから。そういうふうにもう三十年も勤めた五十前後の女性社員が一生懸命やっておるのです。全電通も九時半にストライキを和解、入って一時間ですね、一日のストライキはやめました。本当に全電通もよく耐えたなと思っているのでございますけれども、ところがどうも二千二百円ぐらい昨年よりもダウンという状況です。ですから、これは大臣がどうこうする問題ではないのですけれども、一応労使の間で賃金問題というのは決めるのだ、これが建前ですから、そういう点ではこれからぜひ大臣としても深い関心を持っていただきますように、お答えは要りませんけれどもお願い申し上げる次第でございます。  それでは、本論に入りまして、大臣に二つだけ冒頭お尋ねいたします。  その第一は、NHK平成年度収支予算に付する意見書についてでございますけれども、私この意見書をずっと見ておりまして、六十二年から昨年までの五年間を見ますと、非常にコンパクトに、しかも今後の経営に向けての重要課題について、言うなれば箇条的に明快に大臣の意見書が出てまいりました。しかるに、今回は非常に膨大なものでございまして、五年間の意見書の平均を計算してみましたら約十三倍ということでございます。いやすごいあれだなと思いました。長文ということで大は小を兼ねるということがございますけれども、大きければいいというものでもないのです。例えば、飛んでいる鳥を撃つ場合に大砲かミサイルで撃ってしまえばいいというわけにはならないでしょう。あるいは日本古来の文化と申しますか文芸と申しますか、そういう中では五、七、五という俳句でございますか、その中にずっとまとめている。あるいは三十一文字といいまして短歌もございまして、そういう古来の日本の文学、文化の伝統というものがございます。短いからだめじゃないんです。俳句は俳句でいいんです。短歌は短歌でいいわけでございます。なぜ今回このような膨大な、私読むのにも大変時間がかかりましたけれども、大臣の意見となられたのか、その理由はどんなものか、まずこれをお伺いしたい、こう思います。  それから二つ目でございますが、二つ目は大臣の同じく意見としまして、経営計画を上回る収支差金が出ております。すなわち、経営計画上では百六十億のところを、今回の予算では二百七十二億円として百十二億円も多く収支差金を計上している。そしてこれは、大臣の意見としてはおおむね妥当としておられるわけであります。収入見込み額を見ますと、実は計画より三億円ほどマイナスなんです。去年の予算を見ましたら、ことしの予算は二十三億円も減収になっているのです。計画より収入見込み額はそういう形になっております。  さらに支出を見てみますと、経営計画額よりも実に百十五億円も言うならば低く支出を抑えているのです。こんなに削減をして公共放送としての使命を達成できると言えるかどうかと疑問に思うくらいでございまして、収入が減って支出をうんと減らしてしまっている。そして収支の差金が多くなりましたということはどういうことか理解ができないのであります。これが健全な財政と言えるかどうかというふうに私は疑問を持つわけでございます。  衛星平成元年から四年度までの累積赤字を見ますと、三百七十八億円が今赤字になっているのであります。この累積赤字のために支出を犠牲にしている予算ではないのか、こう思うわけでございますし、また、この四年度予算において、前年度に対し八十六億円の事業運営費の削減を行うとしておりますけれども、中身を見ますると、人件費が四十六億円、半分以上を占めております。今日本人は働き過ぎだということで、アメリカとの貿易摩擦の問題であるとか、あるいはゆとり、豊かさ、労働時間も千八百労働時間にしていこうではないかという、こういう状況に逆行していくではないか、それを大臣の意見では、おおむね適当、こう言われておるわけです。本当にこれは適当なのかどうなのか。適当な意見を出したのじゃないか、こう思うぐらいでございますけれども、この二つ、大臣の方からお答えを願いたいと思います。
  44. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 今上田委員からおっしゃられました、NHKに対する公共放送としての視聴者関係方面からの関心が、私は、もともとある、また、あってしかるべし。また、その責任、使命ということを感じてこられたわけでありますが、最近はとみに、多メディア・多チャンネル時代に伴いまして、NHKに対する関心度が高まっていると思うのです。  そういう意味からいたしまして、私は、そんな情勢のもとにおける郵政大臣としての意見を、国会NHK予算を御審議いただく際の参考のための意見として、今御指摘いただいたように、報道発表によって国民にも公表しているものであるので、この意見を、ある意味では詳細に今までになく申し上げたという次第でありまして、各項目の要点を取りまとめて、これに対する評価を行った、その上で全体の評価を明らかにすることが適切である、こういう観点で、例年に比べて比較的項目の記述量が多くなった。これはむしろ、おっしゃるように俳句も短歌もということもありますが、長歌ということもございますので、ぜひひとつここのところは御理解をいただいて、そしてNHK当局におかれても、言うならば、そういう各項目で受けた指摘をやはり踏まえて経営努力をしてもらう、あるいはまた視聴者ニーズにこたえてもらうということではなかろうかというふうに思います。そんな意味で一つはとらえたということでございます。  中身の御質問、足りないところは、後、経理担当、あるいはまた会長の方からも御説明いただこうと思いますが、財政を長期的に安定させるためには、受信料収入確保経費の節減ということは、これはもう私が言うまでもなく、委員が一番よく御存じでございますが、まさに公共放送の使命達成に必要な番組制作費や調査研究費などの費用を確保した上で、できる限り経費節減に努めた結果、御案内の、支出経営計画に比べて百十五億円下回ったということでございまして、上田委員の御指摘、御懸念される点も、ある意味においてこれは注意をしていかなければならぬことであろうと思いますが、要はそういう考え方で、百十五億円の下回った支出経営計画であった。  人的経費については、関連団体への業務委託、新営業システムの導入など業務の効率化によって、経営計画に沿って経費の節減をしたもので、まさにこれは、言うならば経営の安定あるいはまた健全、効率化、こういったものに対する非常な努力の足跡と見て評価をしていただける、私が言うのもおかしいですが、ひとつ考えていきたいものだと思うのであります。  平成年度予算は、公共放送の使命達成に必要な経費及び要員を確保した上で、事業収支差金は御案内の百十二億円改善されておるわけでありまして、私は、全体としておおむね妥当、こう評価したのでありますが、視聴者負担のみでニーズにこたえる、そして、視聴者負担だけを当てにした経営方針ということのみならず、今与えられている枠、条件、環境の中でどう健全経営、健全な運営、あるいはまた効率化を図っていただくかということを考えてみますと、この辺の努力はおおむね妥当というところではなかろうか、こう思ったわけでございます。
  45. 上田利正

    上田(利)委員 大臣は自画自賛をしておるようでございますけれども、そういう視点でなくて、私どもも、NHK公共放送としてこれは充実発展をしていただかなかったら、また、受信料を払っている国民の皆さんもそれを期待しているわけでございますから、その基本線は一致すると思うのでございます。しかし、手法として、やはり経営の中で人的経費を減らせれば、一番易しいことなんですよ。もっと収益を上げて、そして、その中でかつ人的もということならいいけれども、収入を減らして、そのために、その人的経費を含めながら減らしていって、収支差金がこれだけ、百十五億出ましたよということは、これは経営としてはいかがなものか、こう思います。時間がございませんから、その程度にいたしておきます。  また、なお、長文もいいじゃないかというお言葉もございましたけれども、長ければ長いほどいいというものではございません。十三倍といったら、来年は二、三倍ぐらいにとどめるくらいに、また来年これの十三倍にもなったらどうにもならないでしょう。毎年毎年十三倍にもなる。ですから、そういうことで、ぜひその辺は御理解をしておいていただきたい、こう思います。時間の関係で、大臣、ありがとうございました。  それでは、小野沢局長さんに一つだけお尋ねしますから、そう長くなく、短く御答弁を願いたいと思います。  大臣の意見の中で、NHK業務効率化等に努め、補完衛星、仮につけますとBS3Nということになると思いますけれども、それの打ち上げが受信者負担増とならないようにすることが必要と御指摘をしておられます。衛星は、それぞれ今まで受信料で全部上げてきております。そういう中で、今受信者負担増とならないようにということをおっしゃっておりますけれども、具体的にこれはどういうことなのか。例えば、負担増としないということは、受信料以外の経費で打ち上げるということが一つございますし、また、昨年の八月に打ち上げに成功いたしましたBS3b、この3bよりももっと安い価格で打ち上げる、こういう手法もあると思いますけれども、この点について局長さんからお答えをいただきたい、こう思います。
  46. 小野沢知之

    小野沢政府委員 お答え申し上げます。  次の二点から、NHK業務効率化等に努めることによって、補完衛星の打ち上げに伴う受信者負担増を抑えることができると判断して、その旨を指摘をしたものでございます。  第一点は、平成元年八月に設定された衛星付加料金が、平成二年二月に打ち上げに失敗した補完衛星BS2Xの減価償却費を見込んで算定されており、また、BS2X打ち上げの目的と同様に衛星放送の継続的・安定的実施をより確実にすることとなるために、この分を今回の補完衛星の費用に充てることが可能であるということが第一点でございます。  第二点は、従来の補完衛星が随意契約調達されていますのに対して、今回の補完衛星は公開入札により調達されるわけですが、従来の補完衛星経費と大きく異ならないと想定されるために、落札額がBS2Xのときに見込んでいた額を極端に上回ることは考えられず、仮に不足額が生じたとしても、NHK業務効率化等に努めることによって補てんできると考えたということでございます。
  47. 上田利正

    上田(利)委員 この問題は、あとNHKの方にちょっと関連で御質問しますから、次に移ります。  次に、NHKにお尋ねをいたします。  まず、会長にお尋ねしたいんでございますけれども、昨年の七月末に川口会長は御就任なされました。会長のモットーは、ちょっと書物で見ましたら、三つの「た」ということで「三た主義」というように聞いております。サンタクロースのサンタかな、こう思いましたけれども、実は、つまり楽しめる、ためになる、そして頼りになる、この「三た」ということで、そういうテレビ番組をやっていこうということのようでありまして、私見まして本当にすばらしいな、お世辞でなくてそう思いましたし、私自身も同感でございます。  そういう立場に立ちまして、第一にお尋ねしたいのは、ドラマの制作に当たっては、島体制時代には外注方針をおとりになるという方向がとられました。NHK本体の制作を順次減らしながら外注、それに対しまして川口会長は順次戻すようなお考えがあるかどうか、これが一つでございます。実は、報道局長中村和夫理事がおりますけれども、この間テレビを見ましたらインタビューでこう答えておりました、中身、私存じておりますけれども。四月からの新しい番組編成も含めながら、ひとつ会長のお考えをいただければ幸いだ、こう思います。  それから二つ目は、先ほども他の委員から御指摘がございました三月二十二日の言うならばスペシャル番組ということで「テレビはどこへゆくのか」というのを私も見ました。一時間半近くあって、夜遅かったのですけれども、見出したらどうしても見なければならぬ、やはり逓信委員になったのかなと私思いましたが、見た中で、マルチチャンネル時代が到来しようとしておるということや、国際的にも国内的にも多くの問題を抱えているということをあの中で改めて知りました。  昨年夏から香港で始まりました、先ほどもお話がございましたスターテレビ、BBCと提携しながらアジア全域を覆うということができる衛星放送としてある程度実績を上げている、こう聞いております。我が国でも既に五百人程度が受信をしておると言われておりますし、BBCの戦略は、CNNに対抗して香港をアジアの通信基地にしていこうというふうな戦略もあるやに聞いております。NHKを中心にして民放連も含めましてこれにどう対処していくのか。また、アジア総局を新設されたようでありますけれども、これはスターテレビとの関連性があるのかどうなのか。先ほども御意見ございましたように、CSテレビも開始をされております。スーパーバードBの打ち上げが二月の下旬に成功いたしておりまして、CSも開始される、こういう状況も関連もありますから、そういう面も含めて御見解を賜りたい。  三つ目は、国際メディア・コーポレーション、いわゆるMICOでございます。これは、余り言いたくございませんが、言うならば島会長のツルの一声でつくられて、国際的な映像ソフトビジネスを事業の柱としておって、昨年四月に御案内のようにニューヨークにテレビ・ジャパン、先ほどから御論議されておりますが、これが開始をされました。欧米で六千百世帯ぐらいでこれを見ておられる。しかし、発足を急ぎ過ぎ、あるいは民放との協力、協調も無視してしまった中で強行したということや、昨今のバブル経済の崩壊という状況とあわせて、経営状況は非常に好ましくない、こう聞いております。民放連を含めまして第三セクターでやった方がよかったのじゃないかという有識者の声なども私ども今聞いておりますけれども、このMICOについて会長としてどのようにお考えになっておるのか。  以上三点につきまして、時間の関係もございますから一括お答えをいただきたい、こう思います。
  48. 川口幹夫

    川口参考人 今の御指摘の三つは、NHKにとっては極めて大事な問題でございます。順次私の考え方を申し上げていきます。  まず、大河ドラマの外注のことは、私の就任の前に決まっておりまして、既に作業に入っております。その段階での問題点とか見通しとかいうことについてはエンタープライズの意見も十分聞いております。そしてその中で「信長」はもう放送をスタートしたわけですが、今後実施段階でいろいろな問題点のチェックをし、さらに今後の展開についてもはっきりした考え方をまとめていこうというふうに思っております。  その次の段階でありますけれども、エンタープライズは、大河ドラマを外注するならば、NHKの中でつくれなかった独特の形を出してみようというふうなことも考えたようでございます。それで提案がありまして、来年度につきましては、来年の一月からですけれども「琉球の風」という沖縄に取材をした大河ドラマをまず半年いたしまして、後半は「藤原四代」ということで、これまでNHKのドラマで出てきたことのない材料を扱います。これはいずれも外注をしたことによって新しいショックといいますか新しい展開を図ろうとした、そういう番組でございまして、そこにこれから私自体は細かい注意を払いながら、それがどうなっていくのか、あるいは外注したことによって多くのデメリットというものが出てくる可能性はないか、十分に検討していきたいと思うのです。余り早くこのことについて結論を出しますと、現在一生懸命そこで仕事をしておる者が大きな戸惑いを感じたり無用の混乱を生ずるということもありますので、じっくりと、その形をとりながら、よりいい方向に行くためにはどうすればいいか、当然もとに返すということも一つの選択肢としてあるかもしれません、そういうことを含めながら十分に検討していきたい、このように思っております。  それから、第二のアジアの取材体制報道体制ということについて申し上げます。  スターテレビがBBCのワールドニュースを入れて放送するということが起こって非常に大きなセンセーションを醸し出しておりますけれども、これについては、私は直接NHKの対応をどうこうするというふうには今考えておりません。むしろ、私が考えましたアジアセンター構想というのは、島さんが言われたGNN構想、つまりグローバル・ニュース・ネットワークという形でやるには、NHKがアジアの中でどのような立場にあるのか、どのような形でアジアのニュースを世界に送り出すのか、こういう立場と方法論がないと実際上世界をめぐるネットワークはできないというふうに思っております。したがいまして、初めから企業があって、そういう会社をつくって全世界の情報ネットワークをつくるという考え方は非常に危険であります。しかもそれを企業として成立させるということは幾多の困難が伴いますので、これをそう早急にやるべきではないというふうに判断しまして、そのためにアジアセンターをつくって、アジアの取材体制それから報道体制ということをまず強固なものにして、それを例えばヨーロッパあるいはアメリカというところと相互にネットワークをつくりながら世界を覆うネットワークをつくっていく、このようなステップで行きたいというふうに思っております。  せんだってBBCのワールドニュースの社長が来ましていろいろ聞きましたけれども、BBCも多分にNHKと同じような経営環境にありまして、それを打開するために今の海外進出は企業のカによってやろうというふうに考えたようでございます。ですから、その一つの大きなよりどころが、アジアに一億六千万の英語をわかる、しゃべる人間がいる、そこではBBCのニュースを出すことは非常に大きなプラスになるというふうに解釈したようでございます。そういう形でもって既にスタートしておりますけれども、これは我々としてはまた別な形で、BBCとも十分に連絡をとり、あるいは協調できるところは協調しながら、ネットワークの形成のために努力をしていきたいというふうに考えております。  MICOにつきましては、私が就任して一番気にかかったのはこのことでありまして、実はMICOの経営はある程度、一年たったところで見直そうと思っておりました。その結果では、やはり非常に大きな、無理なスタートをしたと御指摘がありましたけれども、そういう面が響きまして、経営的には非常に苦境に立っております。その苦境に立っているMICOを何とか健全な形に戻したいということでございまして、一つは人員削減等を行います。それから業種をいろいろ選別をして新しい方向づけをするということと同時に、民放各社に今後の協力をお願いしたい。これはNHKの方針でもってつくった会社でありますので、やはり私は、私が責任を持って解決をすべきことだと思っております。したがいまして、今後民放と十分連絡をとり、お願いをしながら健全な育成のために頑張っていこうというふうに思っております。
  49. 上田利正

    上田(利)委員 会長から意欲的な御答弁をいただきました。なお、職員が意欲を持って、誇りを持ってNHK経営に参画して、国民の立場に立ってやるんだ、こういう視点を忘れずにぜひこれからも御努力を願いたいと思います。  もう時間が二分ぐらいになってしまいました。非常に重要な、大臣に聞いた中の細かい点の衛星放送にかかわる経理の問題で三、四点聞く予定でおりましたけれども、もう時間がございません。ただ一言、御答弁は要りませんけれども申し上げたいのは、この収支予算あるいは事業計画が出てまいっておりますけれども、事業収支状況が、これは総額のもので五千四百四億ですか、こう出ております。それで、いわゆる衛星については、この資料の中では小さく、そのうち衛星のという形で、内容をよく見ないとわからぬような形で衛星が出てきておるんですけれども、やはり私は常に言ってきておりますのは、いわゆる総合テレビ衛星もそれはもう一緒ですから、そして付加料金方式をとっているんだから、連結決算でやるのはいいんです、総体。しかし、そのうちこれだけ衛星にはかかりました、あるいは元年度でつくりました経営計画は衛星についてはこうであって、そして毎年毎年の経過は実際はこうです、それで予算はこうです、こういうものを事業収支の全体と同じような形の中でやはりつくって、そして明らかにして、私は三百八十数億赤字だ、こう申しましたけれども、そういうものが一目瞭然にわかるようにしていって、それを五年度、六年度、最終の六年度の中ではこうしますよというふうにしないと、言うならそれを総合テレビのいわゆる受信料衛星をみんなやっているような形になってしまいますから、できれば分計方式をとって、これから衛星衛星、それから地上波は地上波とやって、そして連結決算では全体はこうですよ、こういうような方向に順次来年、再来年、例えば五カ年計画のこの経営計画が終わった以降はそういうふうにするような形の中での経理にしていくべきではないか。NTTもそういう形で、郵政省からの指導の中で市内と市外と別々にするという形が出ているわけですから、ぜひそういうことを御検討願いたい。時間がないからそれだけ申し上げます。  最後に、小野沢局長さんに一言申し上げたいのでございますけれども、本当に小野沢局長は詩歌に秀でておりまして、私敬服いたしております。俳句なども非常にすばらしい、私どもとても追いつかないような形になっておられます。  そういう中で、私敬服をいたしておりますけれども、ただ私、三歳になったときにおふくろさんが脳卒中で倒れて、三年間寝て、六歳のときに亡くなりました。おやじは私が十九歳の冬に亡くなりましたけれども、私は六人兄弟の五番目でございますが、個人的なところを言っちゃいけませんけれども、そのおやじが男手一人で育てました。そのときに私に言ったのが、おまえは大きくなって、そしてどういう立場になっても謙虚ということを忘れちゃいかぬぞ、どんな立場になっても謙虚ということを忘れるなということをよく言われました。今、春が間もなく来ます。水もぬくもってきております。そして、桜の花から、甲州では桃の花、そしてフジの花と、こうなるのです。東京でも亀戸天神のフジの花がきれいに咲きますけれども、そういう中で、一つことわざがございます。下がるほど、下がるほどですよ、人は見上げるフジの花というのがあるんです。「下がるほど人は見上げるフジの花」。亀戸天神に行けば本当にそうです。下がらぬフジは見えませんよ。その言葉を局長に送って、私の質問は終わります。ありがとうございました。
  50. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、吉岡賢治君。
  51. 吉岡賢治

    吉岡委員 私は、放送会館建設計画について、まずお聞きをしたいと思います。  福岡の関係平成四年に完成をする、あるいは千代田分館が平成四年に、そして広島が平成年度完成予定、さらに大阪の放送会館整備のための諸準備というような内容でもって百二十九億三千万円計上されているわけでございます。  そこでお聞きしたいのは、名古屋の放送会館というのは民間活力を導入し、二百四十一億円、こういう賃貸権料の収入というものが上がった、さらには毎年三億の家賃が入ってくる、こういうふうに立派に今建設をされ運営されている、このように聞いているところでございますけれども、そのコンセプトについて簡潔にお願いをしたいと思います。
  52. 中野正彦

    中野参考人 名古屋の放送会館の建設に当たりましては、これはまず愛知県それから名古屋市、NHK、この三者で地域の再開発を図っていこう、こういう計画の中でこの放送会館の建設を進めてまいりました。この放送会館の敷地でございますが、私ども持っておりますこの土地、大変一等地でございまして、したがって、この貴重な土地を高度に有効に活用していこうということで、広く民間から共同建設の提案をちょうだいしまして、初めて私どもNHKとしては民間どこの放送会館の共同建設に取り組んだわけでございます。  この新しい放送ビルは、地域における放送文化の発信拠点として地域文化の向上に役立てたいと考えておりまして、いろいろなイベントの開催あるいは市民プラザ、それからドラマの制作、番組公開、こういったものができるような、そういう多目的スタジオ等も含めまして、さまざまなオープンスペースを設けまして、市民と開かれた関係の交流を図っていく、こういうコンセプトで建設を進めてまいったものでございます。    〔委員長退席、松浦(昭)委員長代理着席〕
  53. 吉岡賢治

    吉岡委員 大阪放送会館は、昭和十一年に建設をされておりますけれども、いわばラジオ時代を生き抜いた。そしてまた、テレビ時代に入りまして新館づくりが行われたということでございますけれども、今やはり一番古くて狭いというのが実情であろう、このように思うところであります。  大阪放送会館の着工見通しと建設のコンセプトがわかれば簡潔にお願いしたいと思います。
  54. 中野正彦

    中野参考人 現在の大阪放送会館、これは先生指摘のとおり大変古うございます。昭和十一年にもう建設をされまして、その後いろいろ増築、改築を行いまして、一応機能の保持を図って業務運営をやってきたわけでございますけれども、いかんせんもう建築して五十数年経過いたしておりまして、大変老朽、狭隘が著しいという状況でございますので、早急に建てかえをしなければいけない、こういう移転整備検討を進めてまいってきたわけでございます。  この移転候補地につきましては、実は大阪市の方から移転要請がございました。大阪市の中央体育館の敷地、ここに大阪市とNHKが共同で開発をして、大阪市は体育館、NHK放送会館をつくろうではないか、こういうことで移転要請がございましたけれども、あの敷地には御存じのように難波宮の文化財が埋蔵されているということで、この文化財の発掘調査をこれまで三年間かけて行ってまいりました。その結果、大阪市はこの敷地の中で特に南側の部分で体育館の建設を予定をされておりましたけれども、ここでは遺跡の保存ということで体育館の建設が非常に困難であるということで体育館の建設は断念をされまして、残る北側の部分については遺跡の保存と開発が可能であるという結論をお出しになりまして、改めてNHKに移転要請を、これは平成三年の二月にそういう要請がございました。したがいまして、私ども協会としては、この大阪市の新しい移転要請を受けましてこれを十分検討した結果、移転を了承いたしまして、それで、その後都市計画公園の指定を解除するという都市計画の変更を大阪府の都市計画審議会の方で審議をしていただいて、その審議は終わっておりまして、現在は行政サイドで所定の手続を進めておられるという状況でございます。  これからでございますが、大阪市と十分連携をとりながら、スケジュールを含めた具体化に向けての検討を進めてまいりたいというふうに考えております。また、放送会館の建設に当たりましては、遺跡の保存と活用を十分図りながら、ニュースセンターあるいは制作スタジオ、公開番組ホール等地域にふさわしい、そして関西の中での豊かな歴史性、文化性あるいは国際性を備えた、市民に十分親しまれる施設を目指してやっていきたいというふうに考えております。また、民間との共同建設の問題でございますけれども、多角的な検討を行って敷地の有効活用を図っていきたい、こういうふうに考えております。
  55. 吉岡賢治

    吉岡委員 大阪放送会館の建設につきましては、近畿の拠点局、こういうことになるであろうとは思います。それだけでなくて、やはり西日本でどういう位置を持つのか、あるいは東京に万が一のことがあった場合に代替機能を持たすとかそういうようなことも必要ではなかろうかというように思いますが、その点について簡潔にお願いします。
  56. 中野正彦

    中野参考人 先生の御指摘については全く同感でございまして、遺跡の重要性を十分認識をしまして遺跡の保存と活用が図られ、かつ文化の薫りの高い、市民に開かれた会館を目指したいと思っております。  それから、新しい放送会館の機能についてどうするかということでございますけれども、これは二十一世紀を見据えた放送会館を目指すとともに、御指摘のありましたバックアップ機能、東京の本部機能を十分バックアップできるような機能についても現在重要事項であるということで検討しております。
  57. 吉岡賢治

    吉岡委員 また、視聴者との交流の拠点、こういうことも非常に重要かというように思います。したがいまして、予定地は先ほども御説明がございましたように難波宮跡、こういうことになっております。したがいまして、まさに二十一世紀の文化とその拠点、そして千二百年ぐらい前の文化がまさに融合する、そういうことも可能性としてあるわけでありますから、その遺跡保存と市民への公開、こういうことを含めた開かれた放送会館にぜひしていただきたい。そのためにも市民の皆さん、視聴者の皆さん、あるいは現場で真剣に働いていらっしゃるNHKの職員の皆さん方の声を十分反映していただきたいということを要望申し上げておきたい、このように思っておるところでございます。ぜひ一言お答えいただきたいと思います。
  58. 川口幹夫

    川口参考人 大阪の方には今建設委員会を設けまして、鋭意このことについて細かい詰めをやろうと思っております。もちろん、先生指摘のとおり地域の拠点ということもあれば、文化財あるいは芸術等の発信源としての役割も非常に重要でございます。大阪が持っている大きな立場というものを我々も十分理解してこの建設委員会の中で細かい具体的なことを諮っていきたいと思っております。
  59. 吉岡賢治

    吉岡委員 次に、多メディア時代におけるNHKの将来といいましょうか、そういうことについてお尋ねをしてみたいと思います。  ハイビジョン放送試験放送が開始されまして、それから来年予定されているCS放送、こう考えてまいりますと、本格的な多メディア・多チャンネル時代、こういうものが今大きく動き出そうとしていると思います。こうした時代の変化の中で公共放送NHKはどうあるべきか、このことは非常に重要な問題だと思います。現状から将来を展望すると、公共放送の使命があるだけに問題を感じておられるだろうと思います。  そこでお聞きしたいのです。ハイビジョンテレビ放送ハイビジョン推進協会の手によってNHKあるいは民放番組提供、こういうことで試験放送が行われております。これが本格化し普及していくことが確実視される、このような状況にあろうかと思います。そこで、アメリカの連邦通信委員会、FCCはディジタル方式を採用すると言っています。一方、NHKはアナログ方式であります。アメリカの市場規模というのは非常に大きい。そういう立場から見てみますと、方式の変更をどういうふうに定めるかということは各方面に大きな影響を与える、このように思います。ひいては受像機の低廉化への問題あるいは普及が遅くなるのではないか、こういうようなことさえ考えられるわけでございますが、その点についてお聞きしたいと思うのです。  それと同時に、民放運の研究所のアンケート調査によりますと、ハイビジョン受像機普及率というのは一九九七年に一〇%を超えるだろう、そして一九九九年には五〇%に達するという予測があるわけであります。NHKとしてこのようなハイビジョンに対しての考え方がありますればお聞かせいただきたい。所見を伺います。
  60. 中村好郎

    中村(好)参考人 今御質問が二つございましたので、前段のところを私の方からお答えしたいというように思います。  今先生の御質問でございますが、これは内容的には送信の規格についてどうかということをお聞きになっておられるというように拝察いたします。この送信の規格につきましては、各国の放送事情、電波事情によって決められておりますので、世界的な統一は非常に難しいというように思っております。現在日本方式はミューズというアナログ方式で送信をしようということになっておりますし、ヨーロッパにおきましてはHDMACという方式でサービスをしようということになっております。したがって、日米間の調整ということにつきましては非常に難しい問題だというように認識をしております。  FCCのお話がございましたが、現在アメリカではこの送信規格につきまして、一九九三年ですから来年でございますが、来年の秋ごろアメリカの方式を決めようということでいろいろな提案を求めた結果、現在六つの方式が出てまいりまして、この六つの方式について技術試験を行っておる段階でございます。この中にはディジタル方式もございますしアナログ方式も入っておりまして、両方がこの六つの中に入っておりまして、来年の秋ごろ、このFCCがディジタルをとるのかアナログをとるのか、この試験の結果によるというように思っております。  なお、日本方式につきましては、先ほど申し上げましたけれどもミューズ方式が現在実現しておるわけでございまして、これは先生指摘のアナログ方式でございますが、長い間技術実験を十分行って実用性を検証した上で我が国の標準方式として定めたものでございます。NHKはこの方式ハイビジョン放送を発展させていきたい、このように考えております。
  61. 堀井良殷

    ○堀井参考人 御質問の後段の部分についてお答え申し上げます。  ハイビジョンの普及のスピードにつきましてはさまざまな予測が行われているわけでございますが、どのような内容を放送していくのか、あるいはそれを視聴者がどのように受けとめていかれるのか、視聴者のニーズの動向、あるいは今技術革新が非常に進んでいきますので技術の動向、つまり低廉な受像機がどの程度普及していくのか、どの程度安くなるのかといったような問題がございまして、極めて予測が難しいという側面もございます。  しかし、NHKといたしましては、現在行われております試験放送に参加いたしまして、現在約四時間の番組提供しているわけでございますが、さらにすぐれた番組を制作しこれを提供いたしまして、積極的にハイビジョンの普及促進に協力しかつ努力したい、こう思っておるところでございます。
  62. 吉岡賢治

    吉岡委員 日放労は機関紙の中で、BS4の打ち上げによって本格化するハイビジョン放送について、それが進んでまいりますと衛星放送ハイビジョンと地上波との間に挟まれたメディアになりまして独立では生きていけるほどの魅力は持ち得ないだろうと判断するというふうに書いてある。ということは、衛星波を地上波からハイビジョンヘの移行期のメディア、こういうふうに見詰めているというように思うわけであります。また、ハイビジョン放送につきましては、有料方式で、その放送局はNHK主体の民間団体によって運営されるものとしてはどうかというようなことを言っておられます。NHKの職員団体の皆さんが言っておられるだけに、非常に身近に感じるといいますか、真剣に考えなければならない提言だというふうに思っていますけれども、NHKの所見をお伺いしたいと思います。
  63. 堀井良殷

    ○堀井参考人 ハイビジョンが非常にすぐれた技術特性を備えておりまして、将来の放送の基幹的なメディアになるだろうという可能性を秘めているというところは御指摘のとおりでございますが、一方において現在行われております衛星放送は、地上放送とは異なる特質を持った魅力ある番組として現在視聴者の方々に受け入れられつつあるというふうに思っているわけでございまして、私どもといたしましては、この地上放送の充実とあわせまして衛星放送の普及になお努力しつつ、さらに次のメディアであるハイビジョンの開発推進に努力していきたい、こう思うわけでございます。  先生指摘の、ではハイビジョン事業形態としてどのような形で成り立つのかということにつきましては、現在の試験放送でさまざまな経験を積み重ねつつあるわけでございまして、そうしたものを検証しつつ、私どもとしては各方面と御相談しつつNHKとしても積極的にかつ主体的にハイビジョンの推進に取り組んでいきたい、このように思っているところでございます。
  64. 吉岡賢治

    吉岡委員 郵政省にお聞きしたいと思うのですが、先ほどお話が出ておりますように、社団法人ハイビジョン推進協会、こういうことによって試験放送が行われているわけです。成熟をしていくことは間違いないわけでありますが、その段階ハイビジョンのメディアをNHK割り当て考えなのか、その辺を明快にちょっとお答えいただきたい。    〔松浦(昭)委員長代理退席、委員長着席〕
  65. 小野沢知之

    小野沢政府委員 お答え申し上げます。  あらゆることを念頭に置きながら対策、施策を決定しなければいけないわけでございますが、ハイビジョン放送用のチャンネルNHK割り当てるか否かにつきましては、将来の衛星放送あり方の一環として検討する必要があるというように考えております。  そこで、具体的には、ただいま御指摘になりました事業主体の問題とかあるいは放送方式の問題とかそういったことにつきまして、来年度早々から本格的検討着手したいということで今準備を進めているわけでございますが、関係各方面の御意見を聴取する中で、公正な手続をとりまして、衛星放送に対する国民需要動向だとか民間衛星放送事業及び有料放送方式の動向、BS後継機段階で利用可能な技術の動向、今お話しになりましたハイビジョンの普及動向、そういったものを見きわめた上で、平成五年中を目途に結論を得たいと考えております。したがいまして、現段階衛星放送事業主体については未定でございまして、したがいましてNHKハイビジョン放送用のチャンネル割り当てるか否かにつきましても未定でございます。
  66. 吉岡賢治

    吉岡委員 ぜひ早急に決めるようにしていただきたい、こう思います。  さて、もう一つの問題は、今NHK事業主体というものが、一つの形になって我々が見えている部分とそうでない部分があると思うのです。それは、御案内のとおりNHKの関連団体、これが非常に多いということによって、見えているNHK以上の大きな事業体ということになっているのではないかと思われるところであります。概要を見てみますと、放送番組の企画・製作、販売分野で十五社、それにエンタープライズの孫会社であるMICO等がくっついている。さらに、業務支援分野で六社、公益サービス分野で七社、福利厚生で二団体、計二十二社の九団体ということになっているわけであります。こう考えてみますと、NHKが巨大化している、また、その概要の中身を見てみますと、商業化の方向へ走る可能性さえ秘めた内容になっているというように思っているところでございます。  そこで、簡潔にお尋ねしたいと思うのですが、それぞれの会社にNHKの職員の出向者はどのくらいあるのか。また、経営状況はどうなのか。そして、番組をそれぞれの会社に委託をする、あるいはその業務を委託するということではございますが、それによって各社の、言うなれば収入が大きく左右されるわけであります。したがいまして、NHKの委託を、会社側からいえば委託を受けて収入となる部分と、独自が事業を進めて収入を得る部分、こういうものがわかればお教えいただきたい、このように思うところでございます。今明らかにできないとするならば、後刻資料をいただきたいと思っておるところでございます。  なぜこのことを聞くかといいますと、番組の購入費というのが九〇年までは大体六十億前後でございました。それが九一年には八十億、九二年には百二十億、九三年には百五十億を超すであろうというふうに言われているわけであります。こうなりますと、いわゆるNHKの自主制作番組というのがどんどん減っていく、こういうことを示唆しているわけであります。そうなったときに、公共放送として一体どうあるべきなのか、このことが現実に問われてくる至近な問題だ、このように思わざるを得ないわけであります。したがいまして、この件についてNHKがどのようにお考えになっているのか、そして郵政省につきましても同様に、番組の外注なり委託というものがNHK番組の質を落としたり、あるいはノウハウの空洞化、こういうものを及ぼすであろうということを考えるときに、一定の検討をし、結論を出すときに来ているのではないか、このように思うところでございますので、質問をいたしたいと思います。
  67. 堀井良殷

    ○堀井参考人 NHKの関連団体は、公共放送NHK事業が円滑かつ効率的に遂行できるように設立いたしまして、株式会社の形態をとっておりますものが二十一団体、財団等の公益法人が七団体という形になっておるわけでございます。NHKからの出向者は六百八十人でございます。  経営状況についてのお尋ねでございますが、平成年度の実績を見ますと、一部の新設いたしました関連団体を除きましておおむね健全な経営ということになっておるわけでございます。ただし、昨今の経済環境の変動から非常に厳しい状況があるということはございますが、星今後とも堅実な経営を行うように努力してまいりたいというふうに思っております。  委託についてでございますが、私どもが関連団体に放送番組の制作を委託するに当たりましては、業務委託基準というものを設けまして、番組の質の確保、いい番組をそこでつくるということを基本にいたしまして、なおかつ経費、要員等の効率的な運用というようなことも十分配慮いたしまして委託しているという状況でございます。
  68. 小野沢知之

    小野沢政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点でございますが、郵政省といたしましては、現在NHKが関連会社の事業活動を通じて巨大化、商業化に傾斜しているとは考えておりませんけれども、NHKがそのような批判を受けることのないように十分配意していただきたいというふうに考えております。  それから第二点の番組制作等の業務の委託でございますが、そうした委託に当たりましては、公共放送としての番組制作ノウハウや制作要員の確保などに将来にわたって支障を及ぼさないよう慎重を期して良質な放送番組提供に努め、国民の期待にこたえてほしいというふうに考えております。
  69. 吉岡賢治

    吉岡委員 最後に大臣に、新しい時代に向けての長期展望というものがあれば明確にしていただきたい、このように思っております。
  70. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 NHKに関しましては、今までの御質疑を踏まえながら、あるいはまた吉岡委員が今御指摘されたような点を十二分に郵政省として検討あるいはまた研究をしながら、バランスというか調和あるNHKの発展というか、あるいはまた内容の充実、そしてそれには視聴者の皆さんから協力をしてもらわなければいかぬ。言うならば視聴料を円滑に納入してもらうということが何といってもNHK経営基盤を安定させることだと私は思うのです。そういう意味でのNHKの労使一体の協力あるいは信頼関係、あるいはまた視聴者のそこに寄せる期待感、こういうものがNHKのこれからの発展のエネルギーになる、私はそんな期待をいたしておりまして、多メディア・多チャンネルの時代における、ある意味においてはまさに国民が最も中立、公正な報道として期待をしているNHKのより一層の責任、使命といいましょうか、あるいはまた社会性、国際性、こういうものが大きくなってくる時代、大いにひとつ検討していただき、我々も心して一緒に取り組んでまいりたいと思っておる次第でございます。
  71. 吉岡賢治

    吉岡委員 終わります。
  72. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、鳥居一雄君。
  73. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 御質問申し上げたいと思います。  今NHKがさまざまなメディアを持って公共放送の使命を推進されております。海外向けの国際放送を含めまして十系統、それぞれのメディアにおいて非常に重要な役割だと思っております。  それで、まず伺いたいのですが、中波のラジオのステレオ放送、本年三月十五日から、関東圏におきましては文化放送、TBSあるいはニッポン放送、近畿圏でも朝日放送、毎日放送、そしてまた四月に入りまして、九州圏あるいはまた中部圏、中京圏、こういう地域におきましてステレオ放送が始まった。テレビが既にステレオでありますから、中波のラジオのステレオというのは非常に待たれてきたわけでありまして、そういう中でNHKが後ろ向きである。これをやらない理由というのはどういうことでしょうか。
  74. 中村好郎

    中村(好)参考人 お答えいたします。  NHKは、現在音声波につきましてはラジオ二波とFM一波でサービスを行っております。それで、放送サービスの実施に当たりましては、ラジオは情報番組を中心に、FMはステレオによる高音質番組など電波の特性を生かした番組編成を行いまして、放送サービスに努めておるところでございます。  こうしたラジオ放送状況と中波ステレオ放送についてはステレオ化のために相当な経費を必要とすることから、現時点では中波のステレオ化につきましてこれを実施する計画は持っておりません。NHKといたしましては、むしろ中波につきましては、夜間、遠距離に伝搬するという特性から、地域によっては外国電波による夜間混信がございまして改善の要望を受けておりますので、まずこのことにどう対策するかを検討することが当面の大きな課題だというように認識をしております。
  75. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 中波のラジオというのは、言ってみればNHK草創のときに初めて登場したメディア、そういう意味では古いメディアかもしれません。しかし、技術革新の成果、期待される成果という意味でニューメディアの中の一つとしての位置づけ、そういう位置づけがこれまでに電波利用の長期展望の中でも位置づけられ、新しい技術革新の成果として中波のラジオが元気回復した、こういう非常に大きな反響を呼んでいるのが現状だと思うのですね。  一方、NHKの場合、中波のラジオにつきましては、受信料が既に廃止になり受信料収入がラジオにおいてはない、こういう中でそれ相当の投資というのはなかなか難しい、こういうのが短絡的な御判断ではないのか、このように思えてならないのですが、NHKの使命というのは、九つのメディアあるいは十系統、この十系統をトータルで受信料の御負担をいただく、そして公共放送の使命を進めていく、こういうお立場であるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  76. 中村好郎

    中村(好)参考人 お答えいたします。  先ほど申し上げましたけれども、NHKはそれぞれの保有しておりますメディアの特性に合ったサービスをすることを前提にいたしまして、先ほども触れましたけれども、ラジオの第一放送は主としてニュース、生活情報を中心とする情報波だ、第二放送につきましては語学番組だとかあるいは学校放送番組を送る多様な教養番組メディアだというような形でやっておりますし、高音質のサービスにつきましてはFMを使うという、メディアの特性をもってそれぞれ対応してサービスをしてきておりまして、おおむね私どもは受信者の要望に、音声のサービスという面では御期待に沿っておるんではないのかなというように思っております。  ラジオにつきましては、先生今御指摘のとおり、私どもの大変大事な波でございますので、例えば最近に至っては「ラジオ深夜便」等も編成いたしまして、特に高齢者の方々を中心に大変御好評をいただいております。今後もこのラジオの番組につきましては、引き続き大事にしていきたいというように思っておるところでございます。
  77. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 電波の限られた資源を有効活用していこう、こういう一つのメルクマールがあると思うのですね。  それからまた一方におきましては、世界各国の趨勢を見てみますと、電波特性からいって中波の放送エリアというのは非常に大きな、例えば東京を中心にして言えば関東地方、あるいは中部地方、近畿圏、すっぽりかぶるようなそういうエリアが期待できる。したがって、車社会の中にあってアメリカで非常に広がりを見せたという背景は、これはもう厳然たる事実でありますが、ビッグスリー、いわゆるフォード、クライスラー、GM、これがモトローラ方式のC−QUAMを搭載することに決めた、これがもう決定的だったと思うのです。  したがって、三月十五日から我が国におきまして中波のラジオのステレオ放送が始まりましたけれども、これも決定的には車に搭載されることが決まる、そういう段階だと思うのです。NHKとしては、ぜひこの受信者意向というのを大事にすべきだと思うのですが、これは確かめる方法は幾つかあるだろうと思います。三カ月に一遍やっている世論調査あるいは地域におきます視聴者会議、ここで中波のラジオにつきましてそういうテーマで意向を確かめる、こういうお考えはありませんでしょうか。
  78. 中村好郎

    中村(好)参考人 NHKは、番組その他いろんな問題につきまして視聴者の御意向を的確に吸収するということをいろんな場を通じてやってきておりますので、先生の今の御提案も含めて、これからそういうものに対する要望がどういう形になっておるのかということも正確に把握をしていきたいというように思っております。
  79. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 一方におきまして、メディアの持ち過ぎではないかという御批判があります。この検討も実はNHK御自身も行われていると思うのでありますが、中波に投資ができない、それは多メディアの問題、これが解決しない限り、ラジオを続けて維持していくんだ、こういう最終決定がない限り投資は難しいんだ、こういう意見が実は一方にあります。NHK中波のラジオ、これを今後続けていくお考えでしょうか。どんな検討をされていますか。
  80. 川口幹夫

    川口参考人 当然放送というのはいろんな形の放送があります。NHKテレビとラジオ、FMを持って、そのほかに国際放送という短波の放送も持っております。いずれもその波の特性に応じて、本来持っている公共放送の責任を果たすためにやっているというふうに私は認識しております。ただ、この時代になりまして、それでは今までやってきたことをすべてそのままやればいいのかといいますと、そうではございませんで、これは相当にいろんな面で検討をし、改革すべきは改革をするということをしなければいけないと思っております。  今先生指摘の中波の問題につきましても、中波が、ラジオの放送が現在、前とは比較にならないぐらいに受信者の方々の御愛顧をいただいているということも一方でございますので、どのように今後進めていくか、十分に検討した上で方向を定めていきたいというふうに思います。
  81. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 現在一億六千万台のラジオがあると言われております。ぜひ価値の高い中波のラジオを目指していただきたいというように思います。  続きまして、国際放送につきまして伺いたいと思うのですが、放送法の中でも、本来業務という位置づけがあります。短波のラジオ、これが海外におきまして日本情報を正確につかんでいくために非常に大きな役割を果たしてまいりました。費用対効果という上でかけがえのないメディアだと思うわけです。  この短波のラジオ、いわゆるNHKが行っております国際放送の拡充という点で非常に不十分な現状だと思います。国内におきますこの送信所、八俣で行っております。三百キロワット。そして海外における中継所の充実。今日においていまだに全世界各国カバーできないという状況で、本年イギリスにおける中継所、BBCとの間で成約があった。したがいまして、段階的に広がっていく、こういう形を実はとっているわけでありますけれども、今後、イギリスにおける中継所が完成したとしても、北米あるいは豪州、これが受信不良という地域です。抜本的に対策が講じられないものかどうなのか、御意見を伺いたいと思います。
  82. 中村和夫

    中村(和)参考人 ただいま御指摘ございましたように、国際放送段階的に充実していくという方向で現在やっております。現在二十二カ国語で四十八時間放送いたしておりますが、来年度の末までに五十二時間半実施したいということで、今一部御指摘ございましたけれども、八俣の送信機、三百キロワットの送信機を三台増設するということで、それが稼働しますと、五十二時間半放送できるということになっております。将来的には、こういう努力を続けていきまして、六年度に入りましたら六十五時間まで出力増を含めて検討していきたいというふうに考えております。
  83. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 各国の放送時間の統計資料が出ておりまして、我が国の国際放送は十五位。これは最新の資料であります。日本国際放送時間は三百三十六時間。ちなみにトップのアメリカが二千四百時間、旧ソビエトが千九百五十一時間、中国、西ドイツ、イギリス、エジプト、北朝鮮と、こう続いてまいりまして、放送時間の上から十五位。これはまあ決定的には中継所の問題ということなんだろうと思います。  国際放送運営経費、これがまた極めて弱体であるという現状。各国ともに政府交付金というのが非常に大きな役割を果たしておりますが、今日における日本国際放送の政府交付金というのは二〇%に満たない。こういう現状につきまして、NHKとして、自主放送という建前はあると思いますが、NHKの意思として、政府交付金について大幅な拡大を要求する、こういう意思表示が大事だと思うのですが、会長いかがですか。
  84. 川口幹夫

    川口参考人 国際放送重要性については私も人後に落ちない認識をしているつもりでございます。ただ、現状、それではどのような形でそれをふやしていくのか、大きな力にしていくのかということにつきましては、やはりいろいろな条件がございます。その条件を一歩一歩クリアしながら、先ほど中村が申し上げましたように、時間増とか、それから使っている言葉の数の増だとか、いろいろなことをやっていこうと思っております。  その中で、当然のことながらNHKだけではいけませんので、国の交付金をいただくことによってそのスピードがもっと速まるとか大きくなるとかいうふうになることは、NHKとしても当然歓迎するところでございます。よろしく御配慮をお願いしたいと思います。
  85. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 政府交付金につきまして、郵政大臣に伺いたいと思うのです。  今日の日本の国の国際放送、これは一面、NHKの意思における自主放送という面があります。一方におきまして、命令放送、国の広報活動という立場からの政府出資、こういう二面性が実はあるわけです。しかし、今日までの経過の中で命令放送部分と自主放送というのは混然一体であって、どうも線が引けない。こういう中で、我が国の国際社会の中に占める地位、これにふさわしい国際放送あり方という考え方からいきますと、まことにもって低いところに現状はあるのだろうと思うのです。抜本的な改革が必要だと思うのです。今後どのように取り組まれるのか、伺いたいと思います。
  86. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 鳥居委員の御指摘は、今我が国の海外に対する政策の、ある意味では実は一番大きな問題点の一つであるべきものが、放送の自主性、自律性、中立性というような、いわゆる憲法との関係とでもいいましょうか、そういう観点から、政府の取り組む姿勢というのは非常に難しい面が今までありました。しかし、今まさに国際化時代、しかもまだ、日本が各国にいかに正しく理解をしてもらった上で日本としての役割を果たしていくかということを考えてみますと、これは本当に真剣に、しかも早急に検討していかなければならない国家的な課題であり、ある意味ではもちろん政治的な課題の一つであろうというふうに思います。そういう認識は、鳥居委員と私、全く変わるものではございません。  現状、今NHKの方で答弁されましたように、そこの現実性、実現性の面で、環境の整備、条件の整備という面は、確かにハードの面とそれから今私申し上げたようなソフトの面とを考えますと、非常に難しい問題ではある、こんな認識であります。  しかし、国際放送の充実強化を図る方針というのは、世界が小さくなり、そしてまた日本の果たす役割が逆に大きくなるということの中で、今までのようなことで果たしていいのかということから、実はことしの予算措置も、御案内の欧州向け中継放送を開始するある程度の、郵政省としてはと言ってはしかられますが、かなり大幅な努力と予算措置をしたつもりでございます。私も、今おっしゃられた平成年度に向けて一つの課題として、平成年度は今の予算を何とぞ速やかにお願いを申し上げて、そして、積み上げ方式で果たしていいのか、間に合うのかというような観点から、平成年度予算の問題について、政府交付金をどのように確保するか検討しつつ最大限の努力をし、喫緊の課題としての認識を持ちながら検討いたしてまいりたいと思っております。
  87. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 終わります。
  88. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、武郎文君。
  89. 武部文

    ○武部(文)委員 昨年、島前会長をめぐる残念な事件が起きまして、大変な注目を浴びたわけでありますが、さらに、この事件を通じて協会内部の弱点も表面化いたしました。ある程度の混乱が起きたのは事実でございますが、川口体制になりまして新しい第一歩を踏み出そうとしておるわけでございますが、しかし、問題点が消えたわけではございません。したがって、これから私は、基本的な問題について最初にお伺いをしたいのであります。  現在、策定された五カ年計画が進行中でございます。したがって、中途で計画の変更ということはいろいろ難しい問題があろうと思いますが、しかし、決断を誤ると取り返しのつかぬことになる、私はそういうことで心配しておる者の一人であります。  現在のNHK経営状態を見ますと、極端な衛星放送重視、あるいは突然千三百億円もかかるようなGNN構想が発表されて、我々は驚きました。MICOの問題は、先ほど会長からこの処置についてお話がございましたからこれはわかりましたが、エンタープライズその他関連会社は約三十社に上っておる、これも先ほどの御答弁でわかりました。まさに関連会社が乱立しておる。その経営状態がNHKの足手まといになりかねない。ハイビジョンもいろいろ論議がございましたけれども、実験放送に入ってまだ半年足らず、必ずしもハイビジョンについては明るい展望があるとは言い切れない、私はそのように見ておるのであります。  前回の受信料値上げの際に、これが最後の値上げたということがしばしば提案者の島前会長の発言の中にございました。五年間は絶対に値上げをしない、五年たって次の値上げができるかどうか、できぬかもしらぬ、そういう覚悟で我々はこの値上げを提案したのだ、こういう趣旨説明があったのであります。  ところが、そういう発言の裏で、今申し上げたように、衛星放送ハイビジョン、莫大な経費を必要としながら、受信料衛星放送を含めて頭打ち。収入は目標どおりに達することも難しいのではないだろうか、こういうような、まさに非常事態だと言ってもいいくらいな状況になっておると認識しなければならぬ事態ではないだろうか。また、こういう番組は外注がどんどんふえまして、先ほども指摘がございましたように、NHKによる自社制作が三〇%程度になっておる、これ以上自社制作を切ったら、これはもうNHK番組制作能力が空洞化する、こういうことさえ懸念をされておるような状況だ、こういう認識に立っておるわけであります。  そこで、会長にお伺いをしたいのですが、番組ソフトの確保、自社制作能力の確保を今後どのように進めようとしておられるか、これが一点。もう一点は、五カ年計画が進行中だということを申し上げましたが、この五カ年計画の見直しということをお考えになっておるかどうか。これを最初にお伺いしたいと思います。
  90. 川口幹夫

    川口参考人 先生指摘のとおり、私が会長になりましてから、いろいろな形で、NHKの今後をどうやってうまく発展させるのかということが最大の私の問題点でありまして、したがって、平成二年の値上げのときにかかりました五カ年計画につきましても、大幅な見直しをする必要があるかもしれないという観点に立って検討を始めました。ところが、私が会長になってから後でも、国際情勢の物すごい変化、それから、国内の経済情勢の変化、さらには、放送というメディアが持つ今後の見通しというふうな点で、非常に多くの問題を抱えてしまいました。したがいまして、軽々に計画の変更等について結論を出すことは無理だという感触を得まして、これはちょっと時間をかけようというふうに今考えております。したがいまして、これから、しかしそんなに長くかけたのでは経営自体が非常に危なくなりますから、なるべく早くということですが、一年以内に何らかの結論を得て、そして先生方にもお諮りをし、郵政省とも相談をし、そして視聴者の御理解も得ながら、新しい方向づけをきちんとしていこうというふうに今思っております。  それから、初めの方の御質問ですが、この多チャンネルの時代というのは、かえってどういう番組をみずから出すかという公共放送本来のあり方の方が問題になってくる、そういうふうに私は認識をしております。山のようにチャンネルがあっても、あるいは、そこで幾ら購入された番組が踊っても、視聴者が一番まず注目してくれるのは、どこの放送局がどのような番組を出すかという、そういうことではなかろうかと思うのです。したがって、NHKとしては、公共放送として国民の皆様におこたえする番組というものをどうやって出すのか、どうやってつくっていくのかという視点こそが一番大事になってくる、こういう認識を非常に強くしております。  したがいまして、私が島さんと違いますのは、多メディア時代、多チャンネル時代に、ソフトを買えばいいという考え方よりも、むしろその中で、特徴のあるみずからの番組をどうやってつくるのかという方向に一番ウエートを置いてやろうというふうに思っております。したがいまして、自主制作率をどんどん減らしていくとかいうふうなことよりも、どうやってみずからの力で番組をつくり出していくのかという方向に大きなウエートをかけたい、こう思っております。
  91. 武部文

    ○武部(文)委員 もう一つ、今の問題に関連をして川口会長にお聞きをしたいのであります。  昨年の三月にこのNHK予算審議を行いましたときに、同僚の田並委員から質問がございまして、私は後で議事録を詳細に読んでみました。これは、月刊誌に述べておられた島前会長の発言をただした質問なのであります。このとき島さんは、公共放送一つしかないという例はないわけで、ドイツ、フランスは全国放送公共放送とローカル放送公共放送の二本立てになっておる、場合によっては衛星放送なりなんなりをNHK以外のところに移すという方法もある、こういう発言がございました。同時に、最後に、ここ一、二年中にはある程度の青写真をきちっと示す時期が来ておるのではないかと考えている、こういう発言がございました。これは当委員会での発言であります。三月であります。同じ昨年の六月に、島さんは大阪で、「公共放送として地上テレビとラジオを最小限残し、それ以外は民間会社や第三セクターに分離して事業化する。全国放送局と地方放送局の分割もあり得る」、こう演説したということを聞いたのであります。  このような発言は、歴代の会長の発言の中にはかつて一度もなかったことであります。島さんは、退陣されましたけれども、長きにわたって役員をされた方であります。この島さん、五カ年計画を立てた責任者の発言として、私は容易ならぬことを言っておられるというふうにこれを見たわけでありますが、この発言を川口会長はどういうふうにお考えでございましょうか。
  92. 川口幹夫

    川口参考人 大阪の発言そのほか、私、細かく本人の意思を聞いておりませんので真意のほどはわかりかねますけれども、ただ、多分に、一種の危機感といいますか、今後の多チャンネル時代、それから時代の大きな変化、特に視聴者の変化ということの中で、NHK経営が大きな行き詰まりを見せるのではないか、だから、それに対してどのようなことをやるのか、一つにはみずからが変わらなければいけないというふうな認識を持って、恐らく発言したことではないかと思います。  私は、そういう一種の危機認識というものについては同じような考え方を持ちますけれども、ただ、その危機の中で、それでは単純に、例えば民営化とか民活化とかいうようなことをすればいいのか、あるいはソフトを購入するとか、関連団体をふやして、いわゆるNHKのほかの仕事でもってそれを助けていくという方法をとるのか、こういう問題について、非常に大きな問題点があるという認識をしております。  したがいまして、まず、みずからの力によってその危機を乗り越える方策を考えるべきだというふうに思っておりまして、そのことをいろいろな意味で詰めていきながら、なおかつ大胆な発想をする必要もあるだろう。その際は皆様の、特に受信者で成り立っているNHKですから、受信者の御理解というものをまず得ながら、一つ一つ確実に進めていかなければいけないんではないか、このように思っておりまして、今申し上げました向こう一年以内にというのは、そういう十分な論議を経た上で検討したものを、皆様にも御審議いただいて、NHKの方向づけとして的確な形を示していきたい、こういうふうに思っているところでございます。
  93. 武部文

    ○武部(文)委員 私が述べました島さんの発言は、やめた人ですからとやかく言いませんが、しかし、長きにわたってNHKにおられた役員であり、しかも、ついこの間までここでお互いにやり合った間柄ですから、少なくとも、こういうNHKの根幹にかかわる重大問題でございまして、十分な論議をかけてこういう問題はやり合う必要があるということだけを、今回は時間もございませんから、申し上げておきたいと思います。  それで、次に移りますが、NHKは、ラジオ時代の昭和二十五年に、いわば受信料制度ができたわけであります。あれから四十年を超えたわけでございますが、NHK運営は皆さんの受信料で賄われておりますという、テレビの画面を通じて国民に協力を訴えておられる、まさにそのとおりだと思います。その受信料に関連をして、営業問題についてのみひとつ質問をさせていただきたいと思います。  営業関係では、NHKは口座振替を重点にしておるわけでありますが、この口座振替の契約件数は現在どのくらいで、全部の収入の中で口座振替による収入は割合がどのくらいで、一年間の収入金額は総額幾らか。それから、集金人の皆さんによって受信料収納される件数はどのくらいで、一年間の収入総額は幾らか。それから、集金人の皆さんの数。これをちょっと説明してください。
  94. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 お答え申し上げます。  四年度予算の数値で申し上げたいと思いますけれども、口座振替の契約件数は二千七百六十一万六千件でございます。口座振替での受信料収入は四千百四十八億円でございます。それから、訪問集金でございますけれども、訪問集金の契約件数は五百六十三万件でございまして、受信料収入が一千十七億円でございます。それから、委託集全員の数でございますけれども、三千二百二十二人というふうなことで、職員は二千百五十六人ということでございます。  以上でございます。
  95. 武部文

    ○武部(文)委員 三千二百二十二人の中に二千百五十六人がおるのですか、それとも別ですか。
  96. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 お答え申し上げます。  職員が二千百五十六人でございまして、委託集全員が三千二百二十二人ということでございます。
  97. 武部文

    ○武部(文)委員 はい、わかりました。  収納率は今まで非常に問題になってきたわけですが、この数字の発表には、いろいろ数字がありましてどれが本当がよくわからぬというようなことをよく言われます。例えば公の収納率は契約に対して九七%、いや実際は八七だ、いや現実に人口はどんどんふえておるし契約の台数もふえておるから七〇%だ、いろいろなことが言われておりますが、的確な、正確な数字というものはなかなかつかみにくいとは思いますけれども、これをいいかげんな数字で計算すると財政が狂ってしまうわけですから、やはり的確な数字を常に把握しておく必要がある。私は、後でも申し上げますが、大変難しい受信料収納ですから、少なくともNHKの根幹にかかわる、受信料NHKの根幹なんですから、それをいいかげんな数字ではなくてきちっとしたものを常につかんでおいて計画を立ててもらいたい。これは要望しておきたいのであります。  そこで、受信料収納のための営業経費率ですが、平成年度で何%か、五カ年計画が終了するときに大体営業経費率を何%に見ておるか、またそれが達成できると思っておられるか、この三点伺いたい。
  98. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 営業経費率の圧縮につきましては、受信料収入増加と並んで営業活動の大変大きな柱だというふうに私どもは認識しております。このような認識のもと、経営計画で定めました六年度末の経営計画の経費率は一二%程度というふうなことになっておりまして、私どもはそれを目指して今種々の改革に取り組んでいるところでございます。その一つは、振替払い込みを中心とする新集金方式というものがございます。そのほか、新営業システムの導入など各種の改革に取り組んでおるところでございます。  それと、平成年度以降の経費率でございますけれども、二年度は一四・四%、これは予算ベースでございます。それから、三年度は一四・三%、四年度は一三・九%ということで圧縮させてまいりました。確かに五カ年計画策定当時予測し得なかった厳しい条件がいろいろございますけれども、私どもとしては平成年度末営業経費率一二%程度を達成しようということで今のところ取り組んでいるところでございます。
  99. 武部文

    ○武部(文)委員 努力はわかりますし、いろいろ方策を考えていらっしゃるようですけれども、衛星放送関係の営業費というのは地上波の二倍くらいかかるということを聞いています。確かにそうだろうと思います。したがって、一四・四が一四・三、一三・九それから一二、こういうふうに圧縮をしていかれるという目標もよくわかりますし、それは計画上そうであろうということはわかりますが、残念ながらそうはいかぬ。そうはならないし、また一律的に、例えば大臣の意見書の中にも一層の効率化というところがございますが、効率化は結構だけれども、ただ単に机上のプランとして立てていくだけでは問題の解決にならぬ。  私は具体的なことを申し上げたいと思います。  この営業経費率の中で最も大きいものは人件費だと思います。先ほどお述べになったように、三千二百二十二人と二千百五十六人というこの皆さんの人件費がほとんどを占め、私の承知しておるところでは七五・八%が人件費だと聞いておるのであります。そういう状況の中で平成六年までに一二%の営業経費率にしたいということのようでございますが、そのためには一体要員をどういうふうにしようとしておるのか、この計画を聞かせてください。
  100. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 お答え申し上げます。  まず営業活動の構造そのものを変えていこうというふうなことでございます。つまり、営業活動はどうしても訪問に頼る訪問対策構造というのがございますけれども、これをなるべく間接的な方法で集金なり契約をとるという方法に変えていこうということでございます。  先生もおっしゃいましたように、確かに人的経費が七五%を占めるということでございますので、営業経費の圧縮についてはここの部分を圧縮するということでございます。一つは、新営業システムの導入によりまして内務職員の業務を効率化し、しかもこれを関連団体に外注することによりましてより効率的な業務の仕方を目指そうということでございます。それから外務職員につきましても、新規採用を停止しまして委託集全員にかわれるところはかえていく。それから委託集全員につきましては、間接集全員の拡大によりまして集金区を拡大しまして、それだけ人員を減らしていこうということでございます。そういう形で委託集全員及び職員の圧縮を図っていくというふうなことでございます。
  101. 武部文

    ○武部(文)委員 では一つだけお聞きいたしますが、平成年度のこの委託集金人による集金区は三千区域あるというふうに聞いておりますけれども、そのうちの一四%に当たる四百五十四地区は補充がなくて欠区のままだということを聞いております。これは事実でしょうか。
  102. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 確かに先生のおっしゃいますように、昨今の深刻な人手不足の影響を受けまして、大都市圏を中心に委託集全員の確保が非常に困難な状況にございます。全集金区のうちで約一割強の欠員が常態化しておるというふうなことでございまして、適格者の確保が大きな課題となっていることは事実でございます。  営業経費率の圧縮の課題もありまして、委託集全員の少数精鋭化を図る一方で、社会情勢等を勘案しまして協会財政の許容範囲内で社会水準に見合う処遇改善実施することによりまして委託集全員の確保と定着を図るほか、パートタイマーとか学生アルバイト等の多様な労働力の活用や衛星受信把握の外部委託等の推進によりまして業績の維持を図ってまいりたいというふうに考えております。
  103. 武部文

    ○武部(文)委員 計画や努力はよくわかりますが、時間がございませんから、私は、私の意見も言うことになると思いますが、最後会長の御意見を聞けば結構だと思います。  衛星放送の有料化が始まりましてから二年余り過ぎましたけれども、現状では計画どおり契約が進んでいないと私は見ております。御努力はよくわかりますけれども、残念ながら計画どおりに普及と契約とが乖離しておるということは事実であります。確かに、一月は伸びたようでありますが、これは冬季オリンピックの関係があったり、一月というのは大体伸びるときですから、そういうこともあったりして、この数字が平年に平準化すると私は思っておりませんから、大変今の状況は楽観はできないと思っています。  九〇年度に五カ年計画を決めたときには収支見通しが出まして、八九年から九一年の三年間は赤字、衛星放送ですよ、九二年度は単年度で黒字、九四年度には赤字はゼロになるだろう、こういう見通しを立てて我々に提示をされました。普及度も一千万台を見込み、契約は九割を達成、こういう計画が示されました。確かに、この一千万台というのは大きいなと思っておったんですが、ある世論調査によると、衛星放送を見たいという人が五千万人もおるそうですから、そういうことを考えると一千万というのがそこから出たのかなと思いますけれども、実態は必ずしもそうはいかない。現在の衛星契約率を見ればおわかりのとおりです。見込みと実態との間には大きな乖離が生じておる。  そして、先ほど私申し上げたように、集金区の中にも欠区が生じておる、こういう状況であります。後補充がない。これはこの委員会でずっと前からこの集金人の皆さんの問題を何回か取り上げたことがございまして、私は記憶をいたしておりますが、契約や集金の困難というものは、現場の人でなければわからぬ苦労があるんです。私は、いつか、大分前になりますけれども、その人たちについて回ったことがありました。大変なことだということを実感をしたのですが、やはり今でもその状況はそう変わってはいない、これが実態だと思っています。二戸建ででも難しいのに、共同住宅、マンションはなおさら困難が多い。また、不在者、特に都会では不在者が現在七割に達しておるというのです。三割しか会えないというのです、昼間に行って。そうすれば今度は夜行かなきゃいかぬ、こういう状況になる。転居者がどのくらいおるかと思って調べてみましたら、全国で約三千四百万の契約数に対して、転居などの契約更新ですね、契約変更の対象は、年間実に千四百万件だというのです。これは驚くべき数字であります。この千四百万件という転居者、いろいろなことで動く人たちが自分からNHKにどこへ変わりましたからというようなことを申し出るなんということはとんでもないことです。あり得ることがないのです。そうすれば、おのずからこの人たちが足で回ってその転居先を捜す以外にないのですよ。  そういう苦労の中で、先ほどお述べになったような収入が、千十七億円という集金人の力によって収入になっておるんです。確かに口座の振りかえでは四千百四十八億円という大きい数字になっておりますが、千十七億円という集金人のこの金額がなかったらばこれは大変なことになる。こういうことを考えますと、この集金人というのは、ただ単なるアルバイトや学生をその都度雇ってみたり、そういうようなことで追っつく仕事ではないと私が前に考えたとおり同じ状態が今でも続いておる、このように見ています。単純な水道料金や電気料金の集金と違うのです、これは。  NHK受信料の性格から放送法のことまで質問されて答えなきゃならぬ、そういう苦労も確かにあります。十年ほど前にNHK受信料を払わざるの論理などという本が出まして、大変物議を醸しました。しかし、今はそういう状況はやや鎮静化をしておりますからそういう苦労はないとは思いますけれども、それでもなおこの受信料制度の問題点を一々説明をしながら受信料を徴収して回る現場、第一線の集金人の苦労というのは並み大抵ではないということを私は特に強く皆さんに訴えておきたいと思うのです。  このことは、毎回の予算のときに同僚委員からもたくさん発言が出ました。今この収納状況を見ると、大変重要な曲がり角に来ておるように思うのです。したがって、一二%に営業の率を下げる、その目標は結構ですよ。しかし、ただ一律に机上プランで営業率を一二%にしなきゃいかぬのだというようなことだけでこの問題は解決しないと思うのです。待遇の問題もあるでしょう。人員の補充も必要でしょう。やはり専業の職員の皆さんに対して、営業の活動が十分できるような配慮をしなければじり貧になってしまうと思うのです。こういう人手不足のときにこんな難しい、夜、夜中まで歩き回らなきゃならぬような、そういうところにやってくる人は減ると思うのです。どうぞひとつ、会長も新しくなられたわけですが、今私が申し上げた営業の一二%ということは、目標としては結構だと思いますけれども、ただ目標だけに追いまくられて現場の実態を見失わないように、この点最後会長の御意見を聞いて終わりたいと思います。
  104. 川口幹夫

    川口参考人 御指摘、御意見、本当にありがとうございます。  私、会長就任のときのあいさつの中で職員に言いましたのは、NHK受信料によって立つということ、そしてその受信料をお納めいただいている受信者と正面から向き合うという形でのあり方を心がけようということをまず力説をしまして、その後、その受信料を納めていただく営業活動というものについて、単なる営業のメンバーだけの仕事ではないというふうにお互いに認識をしよう。例えば放送現場にある者も技術の者も、あるいは地方で番組をつくっている者もすべて自分たちが営業の一角を担っている、営業の仕事もまた我々の仕事だというふうに認識をしてやろうじゃないか、当然会長以下役員も営業のことについてはみずからの仕事として取り組もうということを言ったわけです。  そのことで、一つは、これからやっていきたいと思っておりますのは、営業の活動をNHK全体の活動としてはっきり認識をすることと同時に、その源にはやはり番組がよくなければいけない、放送している内容が御信頼いただけるものでなければいけないということがありますから、それの充実強化、豊かな番組をつくってそれを提供していくという考え方をその基本にやはり据えなきゃいけないと思っております。  それから、そういう番組を出しても、今度は実際上の受信者の把握というものについてはなかなか困難が伴います。先生おっしゃるとおりです。ですから、その困難を克服するためにはやはり我々が誠心誠意その靱帯を強くするための努力をしなければいけないと思います。したがって、委託集全員の皆さんにも私はできるだけみずからの仕事が公共放送NHKとして最も重要な仕事だというふうな認識を持ってもらって、今後とも十分な努力をしてもらうようにいろいろな働きかけをしております。今後経費率を下げることは、それは目標でありますから一生懸命やりますけれども、何とか営業本来の仕事のあり方をはっきり認識した上で仕事として位置づけることをお約束したいと思います。
  105. 武部文

    ○武部(文)委員 済みません、長くなって。  終わります。
  106. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、上田哲君。
  107. 上田哲

    上田(哲)委員 NHKは、前会長の不名誉な退任の後、新会長による初めての予算案の提出であって、そこに新しい方針、抱負が込められていると思います。どう変わったかということを絞って伺いたいのです。最近NHKの中が大変明るくなったと言われる。これは結構なことだと思うのです。  そこで第一に、新会長の方針は、具体的には受信料制度の復権をまず大きな基本とされておるというふうに理解してよろしいですか。
  108. 川口幹夫

    川口参考人 そのとおりでございます。私は、NHKという公共放送の存在が受信者という大きな対象なしには全く成立しないものだというふうに思っておりまして、その公共放送をまた支えていただくのも受信者、つまり受信料というのがNHK経営の基盤になるべきだというふうな認識をしております。
  109. 上田哲

    上田(哲)委員 同感であります。大いにその線を復権していただきたいと思います。  そこで、その収入にかかわる問題点の中で、NHK関連事業からの収入を非常に重視してきたというこれまでの流れがある。無理にといいましょうか、事実上の赤字体質を無理に黒字にして本体に吸い上げるという傾向があったように聞いております。その辺はいかがですか。
  110. 川口幹夫

    川口参考人 関連事業によって仕事のいろいろなやり方を変えていくという形は、私も当時放送局長でおりましたので承知しております。ただ、そのあり方は、あくまでもNHKが本来踏むべき方向というものを助けるためにあるべきだ、いわば補助の立場でしかないというふうに認識をしております。  そこで、もうかること、あるいは副次収入を上げて協会財政に大きく寄与するということは、それはあればあったでいいのですけれども、そのことのために無理をして本来の趣旨を取り違えてはいけないだろう、こういう認識をしております。したがって、今回も副次収入増加については大幅な増加を実は見込んでおりません。ほとんど昨年と変わりません。そういう意味では、無理をしない、放送本来の意義をわきまえた関連事業あり方というものをもう一遍はっきりと認識をしてやらせようというふうに思っております。
  111. 上田哲

    上田(哲)委員 本体吸い上げのため無理な粉飾決算なんかをさせないように。関連事業には長いことNHKで頑張ったOBの諸君が行っているわけですから、その人たちをいじめないようにぜひ配慮をしてあげていただきたい。  あわせて指摘します。これまでの国会答弁の中で、受信料の値上げは当分やらないというようなことが述べられておりますね。九〇年三月二十八日の逓信委員会、九一年三月十五日の逓信委員会などです。例えば九〇年三月の当委員会では、担当者が、「五年間は絶対に値上げを申請しないか、もうその決意でございます。会長もお約束できると思います。」と言い、前会長は、「ある種の覚悟を持っている」と答弁しています。九一年三月には、前会長は「私どもは今の受信料制度による公共放送を少なくともあの五カ年計画の間はもたせる、それから先は値上げなんということは考えられないんじゃないか」と発言しております。これは今の新会長答弁趣旨からして取り消されておくべき時期ではないかと思います。
  112. 川口幹夫

    川口参考人 昔からNHK予算をオリンピックに例えて四年ごとに値上げをするというふうなことをやゆして言われたことがございます。そのころからNHKのいわゆる赤字体質というふうなものが問題になっております。  我々は、そのたびに四カ年間の計画を立てて、そして新しい事業をやるときにはまたそれに必要な、時代の変化があったり状況の変化があったりする、そのときは値上げをお願いしようという態度できたわけですね。そのこと自体が大きな問題点としてとらえられて、そして平成二年のときは今度の五年間の計画を立てて、その間は絶対値上げをしないし将来ともまずすることはないだろうというふうな前会長の発言になったと思います。私は、できるだけ値上げはしない方がいい、それは受信者自体がそのことについてはやはり非常に大きな負担になるわけですから、御負担は抑えなければいけない、そして我々が組んだ予算の中でできるだけの仕事、最大限の仕事をしなければいけないというふうな認識はしております。  ただ、いずれの時期にか、やはり時代が変わり、あるいはこの激しいテクノロジーの進歩発展というふうなことから考えますと、時代の先端をいく放送自体がある種の財政危機に陥るということはこれは避けられないことかもしれません。ですから、できるだけその期間の中でいろいろな経営努力をして、あるいは新しい方向づけを模索をしながらやっていきますけれども、ぎりぎりのところで立ち行かないという状況が来るかもわかりません。そのときは我々が持っているものをそのまま皆様にお見せして、このような形でやっております、やっていきます、ですからぜひ御理解いただいて値上げに御賛同いただきたいということを申し上げる時期もやはりあってもいいんじゃないか。そういうふうにすることが本来的に受信料で成り立っているNHKあり方ではないかというふうに認識をしております。
  113. 上田哲

    上田(哲)委員 無論、みだりに値上げというのが好ましくないことは言うまでもないわけでありまして、国民のため、これは十分に配慮してもらう第一義でありますけれども、目前の値上げに関連して何かと取引をしようというようなあり方があってはならない。先ほど来の受信料の復権、受信料NHKの財政の中心にしっかり据えていくという立場からすれば、収支について、必要経費について堂々とこの場で議論を続ける、取引や制的なしの議論を続けることが正しいことです。こういうことで、前の国会答弁は事実上訂正されたと理解をいたしておきます。  次に、放送編成の問題です。新会長の文化指向。具体的に言えば金曜ドラマをつくるとかさまざまな企画を出しておられるようであります。これに絞って伺います。文化指向はいい。しかし、これは逆に言うとNHKの中ではいいドラマをつくりにくい状況ができているということなのか。この際、会長の新方針はそうしたドラマという面からの文化復権といいますか教養復権といいましょうか、そういう意気込みだというふうに理解していいんでしょうか。
  114. 川口幹夫

    川口参考人 放送というものが非常に多面性を持っているものだということを私はつくづく考えます。放送はとにかく非常にたくさんの方に一度にいろいろな情報提供し、娯楽を提供し、あるいは教育的なものを提供できる、そういうメディアだということを認識をしております。したがいまして、放送に対する受信者の要望というのは非常に広いものである、しかも多種であり多様であり、その中で非常に質の高いものを要求しているということが言えると思うのです。したがって、そのいずれのものにもNHKとしては対応していかなければいけない。  この前、放送記念日のときに私はイギリスのBBCの人の言葉を引用して、公共放送というのは何だと言われて、そのBBCの人が言った言葉で、すべての人に対してベストのものを提供する情熱だというふうに答えているんです。その人の言葉を聞いて、やはりどこの公共放送の人も同じようなことを考えるんだなと思ったのですが、そういうすべての人にベストのものを提供しようという情熱を私どもは持ち続けなければいけない。それが例えば過度にどちらかのパートが偏重される、こちらの方は全く顧みられないという状況になっては困ると思いまして、したがって、私が四年度の新番組の編成でまずやはり一番トップに据えたのは、新しい国際情勢あるいは国内情勢に対してどう対応するかということであり、それから次に大型の番組あるいは夜間の娯楽番組をどう充実するかということ、三番目に教育テレビを大いに充実しようということを言ったわけですね。そういう意味で、ドラマについてもできるだけ御要望にこたえることをやっていきたいという趣旨でございます。
  115. 上田哲

    上田(哲)委員 できるだけいいドラマをつくれるような環境を、その答弁のように、NHK局内で自主的にやっていける体制をぜひ考えていただきたいものです。  おとといのこと。最近の目玉人事だと言われた番組制作局長小林由紀子さんが退任された。報道によりますと「番組をつくりたいから」だということなんですね。これは今のNHK番組がつくりにくい状況だということを反映していることになるのですか。
  116. 川口幹夫

    川口参考人 多少違いまして、小林局長の場合は去年の異動でドラマ部長から番組制作局長という大きな責任を負う立場になったわけです。ただ、彼女本来の志望というのが、ドラマの現場で自分がプロデューサーになってドラマをつくりたいということであったわけです。組織の一つの形ですから、異動に対しては彼女はみずからの考え方を清算をしてというのか変えて、そして番組制作局全体の運営ということを考えてこういう事態に至ったわけです。ただ、その中で幾つかの自分なりの抵抗もあったでしょう。それと同時に、本来彼女が持っているあの番組制作への情熱、意欲というものが非常に強くなって、ことしの初めになってからそういう決心をしたということでございます。
  117. 上田哲

    上田(哲)委員 「おしん」で名をはせた人ですから。個人のことはともかくとして、有能な人材を外へ出さないで内でも仕事ができるようないいNHKをつくってもらいたいと思います。  そこで次に、最近のNHK放送の中でどうも元号と西暦の扱いの問題が目立つのであります。私が最近、特にある一定の期間をとって調べてみたら、NHKでは九割が元号なんですね。西暦が非常に少ない。これはどういうことだろう。例えば最近の平均株価が二万円を割ったというテーマ。「昭和六十三年から平成四年まで」、こうなるのですね。これは非常にわかりにくい。一九八八年から一九九二年と言えば、すぐ引き算してああ四年間だなというふうになるわけです。これが例えば民放を見ますと、同じ時期に有効求人倍率の推移だとかエイズの患者の発生数の増加だとかあるいは貿易収支比較だとか証券会社の決算報告の推移だとかいうのはずっと西暦になるのです。NHKはこれが元号でくるのですね。これは私はちょっと、どういうことなのかなと考える。特別な意図でもあるとは思えないが、どういうことかな。答弁を求めれば、NHKは恐らくあの八九年三月四日から八日の自局の世論調査の数字を根底にされると思うのです。時間がありませんからその辺のところは飛ばして話をしますが、これはその世論調査の時期そのものが昭和だ、平成だと重なる時期でもあるわけで、単純にその調査数字を根底にするのでは適切でない。そうではなくて、この巨大なマスメディアの選択肢が持っている世論誘導力といいますか、そういう側面からもう少しく検討されるべきではないか、こういうふうに思うのですね。  例えば新聞を見ますと、それぞれ一定の見識を持って元号を西暦に切りかえています。朝日は一九七六年一月一日、毎日は一九七八年一月一日、読売は一九八八年一月一日からそれぞれ、それまでの昭和何年(千九百何年)というのを千九百何年(昭和何年)に変えているわけですね。日経は一九八八年九月二十三日。これは昭和天皇の容体に合わしているわけです。新聞を初めその他のメディアはくるっとこういうふうに元号から西暦に変えている中で、NHKはかたくなにと言わなければならぬような極端なパーセンテージでしきりに元号を強調される。先ほど来の答弁を聞いていても、NHKの人の答弁は全部平成何年としか言っていないのですね。  これはこだわるつもりはないのです。ただ、今挙げた幾つかの例示は明らかに国際化の側面を背負っているデータでありまして、日本の第一最大メディアというべきNHKが、これらに全く西暦を拒否しているように感じられるということになると、いかがであろうか。これは二十一世紀の到来の声が高まる中、ある年限の中では一定の意味を持ってくるのではないか、こういう気持ちもするのですね。この辺はどんな感触をお持ちですか。
  118. 中村和夫

    中村(和)参考人 御指摘のように明文化したような規定はございません。ただ、ニュース等では、日本国内の事象を伝えるときは通常元号を用いて平成年度予算という形をとっているということと、一方、今御指摘がございましたけれども、国際社会の中で日本と海外が運動している動き、国際的に使用されているいろいろな問題については、例えば九二年度予算教書といったような西暦を使っているというような形、アメリカの予算教書のような場合ですね。それからイベントやなんかでは西暦を冠したものについてはやはり西暦を使っているというようなことで、特に明文化しているということではございません。
  119. 上田哲

    上田(哲)委員 そういう答弁になるのはわかっていたのであらかじめ整理して聞いているのですが、それじゃ困るのですよ。そうじゃなくて、もっと鋭敏に世界の流れとか国際的な背景ということを国内事象に吸収していく感触が必要なのであって、少なくとも現実に、今の答弁のように国内は元号であって国際的には西暦であるというふうになっていないのですね。だから私は例示を先に挙げたんだけれども、まるで答弁になっていない。  そうなりますから、ちょっといろいろ基本的なことを念のために聞いておきたいんだけれども、国ではどうなっているかということです。  一九七九年六月六日に三原総務長官の談話が出ているのですね。この談話は、元号の使用の問題について。「一般国民は、これまでと同様に今後も、元号、西暦を自由に使い分けていただいて結構である。」「公的機関の窓口業務においては、これまでも届出等の書類の年表示には元号を用いるよう国民の方々の御協力をいただいてきたところである」「引き続き国民各位の御理解と御協力を要望する次第である。もとより、これはあくまでも協力要請ということであり、西暦で記入されたものも適法なものとして受理されることはいうまでもない。」長官談話にははっきり書いてあるのです。  総理府に伺うが、これは今もそのとおりで間違いありませんね。
  120. 坂本幸一

    ○坂本説明員 昭和五十四年に当時の三原総理府総務長官の談話が出ておりますが、そのとおりでございます。
  121. 上田哲

    上田(哲)委員 そういうわけですから、元号でも西暦でもどっちでもいいということになっているわけです。私がここで西暦で一九九二年度予算案と言おうが元号で言おうが、これはいいわけですね。このことはこの議事録にも残るはずですが、これは衆議院の事務次長が来ていますから、しかとそれでいいんですね。確認しておきます。
  122. 谷福丸

    ○谷事務次長 先生の御発言はそのまま会議録に載ることになっております。
  123. 上田哲

    上田(哲)委員 ところで、きょう新聞に出ているのですが、これは新聞のとおりですよ。きのう神奈川県議会本会議で、ある議員が一九九二年度予算案についてと発言したのに対して、議会がこれはだめだというので議事録ではこの部分をすべて削って第一号議案と直したというのです。これは今の話と違うのですな。まさにきのうのことです。神奈川県議会のことです。報道の限りですが、今衆議院では結構だと言うのですから、国会ではそういうことはない、一九九二年度予算案でよいということになるのでこれは深追いはしません。深追いはしませんが、ちょっと調べてみますと、問題は多い。  例えば請願は、実物が具体的に手元にありますけれども、例えば米の市場開放阻止に関する請願、これは平成四年一月三十日受理、こうなっているわけですね。それから、同じように質問主意書、これは谷村啓介君の動力炉・核燃料問題についてでありますが、これも平成四年二月二十日提出となっているのですね。それから、この時短の法律案の提出でありますが、これも平成四年二月六日提出となっていますね。これはみんな平成になっています。実は経緯からいうとこれはかつて昭和でなければ受理しないという経過があったのです。これはきょうは時間がありませんから深追いしませんが、そういう中で一九九一年八月召集の百二十一臨時国会から、例えば質問主意書では質問主意書提出者が西暦も元号も日付を書かぬでもいいというような処理になっています。その辺は事務当局が努力をしたんだと思うからこれも追及はしませんけれども、実際に議長に提出するときには、議員が西暦で書いても事務局が全部これを元号に書き直して出しているという実態なのであります。きょうはこれを後の議論にいたしますけれども、こういうふうな規制があるとすれば国際化の中で大変おかしいことです。あらゆるところで二十一世紀になったらという話がいっぱい出るわけですから、もう西暦化が国際化の流れなんです、ボーダーレスの世の中なんですから。そこのところを議会内でも何か規制が行われたりということになっているとすれば問題である。これはしっかり後の議論にしていただきたいというところにきょうはとどめるのですが。  さて、放送ということになるとその辺は一層敏感にしていくべきだと思うのですね。例えばNHKは、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国と必ず言うわけですよ。だったら、「一九九二年(平成四年)、あるいは平成四年(一九九二年)」と言ったって何秒もかかるわけではないひ何々容疑者という言葉も使いなれてきているという流れからしますと、そこはひとつ検討あるべきではないかと思うのですね。いかがでしょうか。
  124. 川口幹夫

    川口参考人 西暦と元号の問題につきましては、NHK自体がかたくなに考えることはないと私は思っています。その一つの根幹にすべきものは何かというと、それは国民の中の常識あるいは国民感情というものではないか。それが熟成すれば、例えば全部が西暦になったとしてもそれは構わないし、NHKもそれをやればいい。ただ、現状はやはり元号に対する愛着とか執着とか、あるいは国民感情の中に非常に広くそれが行き渡っているところがやはりあるように思います。したがって、放送の上では、どちらかに統一するのではなくて、それは場合によって使い分ける、時には先生おっしゃるとおり西暦と元号を併記して言うということもあっていいのではないか、こう思っております。  例えば私は一九二六年生まれですが、ぱっとおわかりにならない方が日本人は多い。大正十五年と言うと、はあとおっしゃいますけれども、所によっては一九二六年つまり大正十五年ですねというふうに言いながら御説明する、そういう煩わしさが当分あるのですね。ですけれども、できるだけ国民感情の上に立った表記の仕方をすべきだというふうに思っておりまして、ただ、私どもが相手にする世界各国は当然西暦でなければ全く通用しませんから、これについては一切西暦ですべてのことを表記するというふうにしております。
  125. 上田哲

    上田(哲)委員 原則的なところから余り踏み込んで、放送の内容をどうしろというようなことを言おうとは私は全く思いません。ですから、ここにひとつ良識を駆使していただきたいということになるのですが、ちょっと偏りが強過ぎるという多くの指摘はひとつ耳を傾けていただきたいのであります。確かに何年生まれというときに、これは昭和何年生まれであるとか大正何年生まれたという方が世代論としてもわかることはわかります。しかし、例えばさっき私が例示いたしました有効求人倍率でありますとか貿易収支でありますとかあるいは証券会社の決算の推移なんというものは、特に昭和と平成にまたがっていたり国際比較を伴っています。こういう場合もかたくなに元号一本にするということはちょっと別の意味を持つのじゃないかなということを再度指摘をして、これはひとつ御検討いただければ結構であります。  時間が参りましたが、いずれにしてもまさに国際放送時代になっているわけでありますから、私が挙げたのはその中の一例にすぎませんが、ぜひそういう面でもバランスをとった、しかも文化豊かな放送の実現に新会長がこの新予算を背負って奮迅の努力をされるように心から期待をしておきたいと思います。  終わります。
  126. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、田並胤明君
  127. 田並胤明

    ○田並委員 それでは、最初に局長の方にちょっと質問いたしますが、この放送法三十七条に基づく郵政大臣意見書が手元に配られましたけれども、これは従来から見ると本当に親切丁寧に、手とり足とりというか、そういう感じで事細かく協会事業計画なり資金計画に対して意見が述べられているのですね。これは今までの意見書とずっと比べてみて、非常に細かく、しかも懇切丁寧に書かれているわけですが、私どもが従来から言っているように、確かに協会協会としての自主的な考え方に基づく予算編成であるとか事業計画だとかあるわけですし、それをあえて監督官庁である郵政省がここまでやる必要があるのかどうか。  これはもちろん放送法の第一条に言うところの目的に抵触をする部分は中を見ても全然ございません。これはあくまでも事業計画あるいは収支予算に対する意見書ですからそれはそれでいいのですが、余り手かせ足かせをするのは果たして公共放送の性格からして、確かに監督官庁としての兼ね合いもあるでしょうけれども、いかがなものか、こういう感を非常に強くしたのですよ。もちろんここに書かれますと非常に参考にもなりますし、なるほどそうかという面もあるのですが、そういう意味で、いろいろ協会という公共放送を役目として国民の皆さんに放送提供している性格からして、どの辺までが妥当なのだろうか、こういうことをちょっと思ったものですから、意見書を書かれた責任者として、どういうお気持ちなのか、まずそれを聞かせてもらいたいと思います。
  128. 小野沢知之

    小野沢政府委員 お答え申し上げます。実はこの意見書を立案する場合に過去のケースをずっと調べたわけでございますが、今回の意見は昭和三十三年度以降の意見に比べますと記述量は多くなっておりますが、それ以前に比べますと二倍程度の増加であり、昭和二十九年度意見は今回の意見より記述量が多かった、そういう調査も踏まえたわけでございます。それよりも、着任いたしましてNHKの問題をいろいろ処理してまいりましたけれども、多メディア・多チャンネル化の進展等に伴いまして、公共放送としての役割が非常に増大して、NHKに対する視聴者関係方面からの関心が非常に強まって、いろいろなことを肌で感じてきたわけでございます。  そこで、この郵政大臣意見というのは、このNHK予算の御審議の際に御参考にしていただく、また報道発表いたすものですから、関心も非常に強くて、そこで内容の正確を期すということが必要であるというふうに判断したわけであります。その場合の手法として、NHK予算の各項目の要点をまとめて、これに対する評価を行って、いわばそれが各論ですが、その上で総論として全体の評価を明らかにすることが適切であるというふうに考えて取りまとめたわけで、結果として、例年と比して郵政大臣意見の項目等記述が増大したものでございますが、来年度、現職にとどまることもありませんが、御指摘の点はまたそれなりに十分受けとめたいというふうに考えております。
  129. 田並胤明

    ○田並委員 もう言われていることはそのとおりだと思いますが、先ほど言ったように、やはり公共放送ですから、できる限り郵政省郵政省としての、法の三十七条に基づくこの意見書を添付しなければいかぬということになっていますから、その辺の兼ね合いを、ややもするとちょっと監督官庁として行き過ぎちゃうとこれは大変なことになりますから、その辺の兼ね合いを十分考えて今後とも対応していただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。  早速内容に入りますが、一つ国際放送関係でございます。  この意見書を見ますと、特に映像による国際放送の充実向上に努めなさい、映像による諸外国との放送番組の交流を積極的に推進をしたり、あるいは世界に向けた映像情報が少ない、こういう現状を改善して、海外在留日本人に対しても情報提供をするということを目的にしてNHKも頑張っているようだけれども、ぜひひとつそれを充実強化しろ、大臣の意見の中でこういう意見が出ているわけですね。  私はこれについてお聞きをしたいのは、こういう意見に対してNHKはどういう計画をお持ちになっているのか。あるいは、受信料収入番組をつくったりなんかするわけですから、当然所要経費を、この意見に基づいてどういう計画のもとで予算措置をされようとするのか。それともう一つは、これは郵政省に聞きたいのですが、これは法三十三条に基づく政府の命令放送一つとして考えてよろしいのかどうか、その三点についてまず聞きたいと思います。
  130. 中村和夫

    中村(和)参考人 海外への情報発信、特に映像による情報の発信の重要性というのは我々も国際化の中で非常に大事だというふうに認識しております。幸い、昨年世界を一周する通信回線というのをNHK確保しておりますものですから、その回線を通じて「トゥデーズジャパン」とか「ジャパンビジネストゥデー」とか「アジアナウ」とかそういう三つの英語による発信番組を現在やっておりまして、ことしの一月からアメリカのABCニュースに「アジアビジネスナウ」という二分間のデーリーの英語による映像を伴った情報の発信というのを始めました。  それと一方では、アメリカとヨーロッパ、ロンドンでございますが、現地法人によりまして日本語による邦人向けの映像による情報提供というのを始めております。アメリカの場合はNHK番組が一〇〇%で八時間、実際の放送は再放送を入れまして十一時間やっておりますが、ヨーロッパの場合は民間放送番組も一時間半ぐらいやっておりますので、NHK提供する番組は六時間という形でやっております。我々としては、そういうテレビ・ジャパンという現地法人のやる番組についても、先ほども御質問ありましたように、経営的になかなか難しい面もありますが、供給側としてはそのソフトの中身をできるだけ充実させて映像の発信の効果というものをきちんとやっていきたいというふうに思っております。
  131. 小野沢知之

    小野沢政府委員 お答え申し上げます。  映像による国際放送の実現方策につきましては、今後の我が国の映像による国際交流の推進施策全体の一環として検討されるべき問題だというふうに考えておりますが、もし仮に将来NHK本体が映像による国際放送実施するとした場合には、現行法制度上は短波放送ですから、現在の短波による国際放送を例にしながら考えてみますと、みずからの業務として行う形態とか政府の命令によって実施する形態とかこれらを一体として行う形態などが想定されるわけでございます。  そこで、NHK実施主体となることの適否だとか政府の命令によって実施することの適否とかそういったことにつきましては、技術的実現の可能性とか国民意見関係各界の御意見NHK意見等を十分踏まえながら、多角的かつ慎重に検討する必要があるというふうに考えているわけでございます。  御質問があったので今頭にひらめいたことですが、今回の予算をお認めいただきますと、政府予算ですが、放送分野における国際化に関する調査研究ということを実施することにいたしておりますが、今御指摘のような点を検討項目の一つに加えることを検討してみたいというふうに考えております。
  132. 田並胤明

    ○田並委員 せっかく大臣の意見書の中に、今後の国際放送重要性から単なる放送だけじゃなくて映像も含めた放送提供するということが指摘をされているわけですから、当然私は、今局長が言われたように映像放送も含めて具体的にどういう内容でどういう時間を放送するのか、これについて政府の方から命令が出るもの、ぜひこれだけはNHKでやってほしい、こういうものが出てくるのではないかというふうに思ったものですから、そういう具体的なものがこの中に含まれているのかどうかということで質問したわけですが、現実には、そういうものがこれからの検討課題だ、NHKNHKで今自主的にやれるものはやっておいてもらって、後さらにそれを充実強化をするためにはどういうような方法でやるか郵政省NHKで協議をして決めていきたい、こういう内容です。  先ほども言ったように、受信料でもって賄っているわけですから、政府としてこういう映像を発信した方がより国際化に貢献ができるんだというふうに判断をした場合には、それに伴う予算措置も大臣、当然しっかりやっていただかなくちゃいけないんじゃないだろうか、こういうふうに思いますので、その辺はひとつ、後ほどの国際放送に対する政府交付金の問題と絡めて質問をいたします。それはそれで、そういうことでひとつ留意をしてやってほしいということです。  それから、政府交付金の比率の問題について。国際放送に対する政府交付金の比率が資料を見るだけではどうも年々下がっているような気がするんですね。というのは、資料によれば平成二年までは政府交付金が大体多いときで、六十二年の二五・二%、平成元年の二一%、平成二年が二二・五%、こういうふうに政府交付金の比率がきておるわけですが、平成三年から、これは予算上の経理なんでしょうが一八・九、本年度は一九・〇、これも予算上でありますが、このように比率が下がっているんですね。これは、具体的に年度が終わって決算になればまた二〇%にいくのかどうかその辺はわかりませんが、数字を見た限りでは、国際放送重要性を政府がNHKに求めながらもこの交付金の比率が下がっているということについて少し問題があるのではないかというふうに思うのです。  特に、放送法の三十三条によれば「郵政大臣は、放送区域、放送事項その他必要な事項を指定して、協会国際放送を行うべきことを命ずる」と、いわゆる命令放送になりますが、これについての費用負担というのは三十五条で、「協会の行う業務に要する費用は、国の負担とする。」いわゆる命令放送については。ただし、予算で決まっているからそれの範囲内なんだ、こういうふうに私なんかに言わせれば逃げているのかもしれませんが、そういう内容になっているわけですよ。そうしますと、命令放送はどんどん出すけれども実質的に政府の交付金の比率が下がるというのは、それだけNHKに過重な負担を強いているのではないだろうか、このように思うんですね。本当はもっと細かく聞けば、それでは平成年度郵政省放送区域、放送事項その他必要な事項をどういう内容をNHKに指示をしたのか、その経費がどのくらいかかって、それに対して政府はこれだけの支出しかしてなかったんだ、本当はそういうところまで聞きたいわけですよ。時間がないからそこまで言いませんが、いずれにしても、この比率の下がっていることについてぜひ大臣の所見を聞かせていただきたいと思います。
  133. 小野沢知之

    小野沢政府委員 細部と申しますか、冒頭私がお答えしましたその後大臣に御答弁いただきますが、先生指摘のように、NHK国際放送経費全体に占める政府交付金の割合は平成年度において二割を切っているのは事実でございます。  ところで、NHKの自主放送NHK国際放送重要性判断して自主的に組み立てていくわけでございますが、一方、私どもの政府の交付金は、先生一番御承知のように、私ども郵政省所管の電気通信行政分野の一般会計は非常に限られているわけでございます。その中で国際放送の充実強化の必要性を認識して命令放送の充実強化を図ってきたわけでございますが、昭和五十六年度から平成年度までの十年間、公共投資を除く郵政省一般会計予算全体がどのくらい伸びたかと申しますと約一七%の増額でございますが、この政府交付金につきましては約五二%ほどの増加になっております。そういう意味では、国際放送関係した郵政省の過去の方々、また現在の職員が国際放送重要性を認識して一生懸命努力したことだということでございます。そういうような姿勢でもって平成年度以降についてもなお取り組んでまいりたいというように考えております。
  134. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 田並委員の御質問で、私、命令放送と自主放送の兼ね合いが非常に今大事だ。それから、命令放送の場合に、先ほどもちょっと申し上げたのですが、政治的中立性とかあるいは公平性であるとか、あるいはまた国際性といいましょうか、そういった問題を、命令放送として政府が依頼をするということはそう問題はないと思うのです。しかし、やはり政府放送というと、政党政治ですから、そこは非常に難しい議論が出てくるのではないか。いわゆる国全体として考えた場合に、日本の国を正しく理解していただき、あるいはまた認識してもらいということを考えますと、できるだけ政府として、NHKのいわゆる視聴者による負担にかかわらず、国民の広くいただく税金の中から、公平無私、普遍性を持って日本の国を報道してもらうということは非常に大切なことだと思うのですけれども、そこのところはなかなか難しいことかな。  しかし、この節、非常に重要度が出ている。これは委員が御指摘されているとおりでありまして、この放送効果、国際放送におけるメリットというか必要性というのを十二分に考えて対応していくということ、また費用の負担ということも同時に考えていかなきゃいかぬ、こんなふうに考えて、今後とも放送行政の最重要施策の一つとして国際放送の充実と強化を図る方針を、先ほども申し上げましたが、五年以降も予算に向けまして努力をし、また研究をいたしてまいりたい。私が先ほど申し上げたのですが、非常にこれは重要な、しかも喫緊の問題だと思っているのです。ちょっと今までの間、惰性的ではなかったかな、あるいはNHKさんに少しおんぶし過ぎているのかなという感じもありまして、政府広報との関係とかその他を考えながら、早急にひとつ検討していきたい。御指導をよろしくお願い申し上げたいと思います。
  135. 田並胤明

    ○田並委員 大臣の最後の方は結構なんですね。甘え過ぎていたんじゃないかな、少し考えようかな、それは大変結構なんです。ただ、政党政治だから政府の放送までそういうふうになると私たち思ってないのですよ。政府というのはまた別ですからね、幾ら政党政治でも。これは国民に対して中立だろうと思うのですよ。そうでなければいけないのであって、そういう意味で、決して心配なく、日本のいいところ、いろいろなところを放送を通してどんどん外国に理解をしてもらう、この仕事は非常に重要ですから、ぜひもっともっと熱心にやっていただきたい。このことだけ申し上げておきたいと思います。  次に、要員問題について幾つかお聞きをいたします。  要員問題について、これは予算上の人員と実人員と、若干のとらえ方の違いがあるとは思うのですが、例えば平成二年の要員計画を見ますと、純減二百八十ということになっていますね。それで予算人員が一万四千六百五十四人。ところが実績としては平成年度純減が三百十一、そして年度末の実人員が一万四千三百一。だから計画と実人員との間に実は相当の乖離があるわけです。実人員と予算人員との間では。もちろん予算人員と実人員のとり方が違うんだからと言えばそれまでなんですが、見ると平成年度計画予算人員と、平成年度末の実人員との間には三百五十人以上の差がある。そして昨年度平成年度計画を見ますと、純減が三百で予算人員が一万四千三百三十六。もう既に実人員では平成年度末で一万四千三百一になっているわけです。ところが、平成年度計画は一万四千三百三十六。こういう誤差というか違いがあるわけです。また平成年度のを見ても、そういう平成年度の実人員と予算人員の差が出てきているわけです。これについて少し説明をしていただきたい。  もう一つは、協会の方は、恐らくその事業量等から判断をしてなんでしょうが、かつて一万五千人体制というのを言ってきたと思うのです。現在はもう既に一万四千人台になっているのですが、NHK業務量等から見て一万五千人体制が崩れたというかなくなって、今新たに何万人体制をいつごろまでにやろうという計画があるのかどうかです。これは決して私はそうしろと言うのではなくて、かつて一万五千人体制と言ってきて効率化を進め、現在ではもう既に一万四千人台になっている。何の計画もなく毎年毎年純減がこれで予算人員がこれでということでやろうとするのか、あるいはどこを目標にして効率化というものを進めようとするのか。これをまず聞きたいと思うのです。  それとあわせて、時間がもう一分か二分しかないので、例えば今新聞等ではやりのサービス残業、いわゆる時間外労働協定を超えて時間外労働をやったり、あるいは時間外労働をやったけれどもそれに対して賃金が支払われておらないとか、こういうサービス残業の実態というのはNHKにはないのかどうか。私は、かなり事業量が拡大をしてきているような気がいたしますし、一部委託に回しているとしても、果たしてこれが業務量に見合う定員なのかどうか、こういう気がするものですから、その辺の実態があるのかないのか、お聞かせを願いたいと思います。  それと、業務の委託というのはもう既に行われているわけですが、郵政大臣意見書を見ますと、例えば業務を委託する際には効率化のほかに、効率化はもちろん考えてやることだけれども、あわせて公共放送としての番組の質の維持向上、協会における番組制作能力の維持向上、これに配意をすることが必要だ、このように指摘をしているわけです。  そうすると、このことは、今NHKがまさかそうなっているとは思わないのでありますが、郵政省が心配するような傾向というのはあるのではないか、こういう気がするものですから、定員をどんどん減らすことによって自主制作番組を減らして外部委託あるいは再放送、そういう形で余りしのいでいられますと、放送というのはやはりノウハウの蓄積が非常に重要でありますから、そういう意味でのNHK公共放送としての業務といいましょうか、それが薄らいでくるのではないか、こういう気がしますので、あわせてそのことを質問して、時間ですから終わりたいと思います。
  136. 安藤龍男

    ○安藤参考人 お答えいたします。  幾つかございましたけれども、まず、要員の予算人員と実人員の違いでございますが、予算人員といいますのは、一年間の人件費を算出するための根拠ということでございまして、これは実人員とは少し数字が違っております。実人員といいますのは、四月一日に採用がございますものですから一番要員が多くなりまして、後毎月退職をしておりまして三月三十一日がその年の一番少ない人員ということになります。ですから、毎月平均して退職をするとすれば、真ん中の九月三十日が予算人員とほぼ等しいということに理論的にはなるわけでございます。先生がおっしゃいました実人員の数字は、その年度の三月三十一日の年度末人員でございますものですから、今言いました予算人員と実人員の差というのはかなり多くなっております。  それから、要員効率化との関係でございますが、二年度の要員効率化については、二百八十を計画いたしまして、実際は三百十一実施をいたしました。これは、退職をかなりかたく見積もってはおるのですけれども、最近かなり早く退職するという方がおりますし、五十七歳から六十歳の間で退職する方を計算しておりますけれども、もっとその前に退職をするという方もいらっしゃるものですから、実際に効率化が計画よりも進んでいるということでこの数字の差になってきております。  それから、翌年度予算人員をつくる場合には、先ほど言いましたように理論的な数値をつくるものですから、少し技術的なことになりますけれども、前の年の予算人員の半分と翌年度予算人員の半分とを足したものが翌年度予算人員というふうになっております。したがいまして、四年度予算人員の一万三千九百九十というのは、三年度純減の半分、三百を予定しておりましたからそれの半分ですから百五十、それから四年度は今三百三十を計画しておりますのでその半分の百六十五、それともう一年度前の二年度は二百八十よりも三十一多く人が減りましたものですからその数はそのまま、三十一のまま足しまして、これを平成年度予算人員から引いたものが四年度予算人員というふうになる。ちょっと数字をたくさん並べましてまことに申しわけないのですがそういうことでございまして、乖離ということでは、数字は違っておりますけれども実質的には乖離はございません。  それから、二番目の要員計画といいますか効率化についての御指摘でございますけれども、おっしゃるように、昭和五十九年に七年計画で一万五千人体制を実現するという計画を立てまして、それをずっと実施してまいったわけでございますけれども、それは計画よりも一年早く実現をいたしまして、平成年度に一万五千人体制を実現したわけでございます。平成年度に改めて経営計画といいますか、長期経営計画をつくるに当たりまして、NHKの場合は、公共放送としまして受信料視聴者からお預かりしてこれを最も効率的に使うという観点から、業務の効率運用というのはたゆまぬ努力をしていかなければいけないということの中で、平成年度から新たな五カ年計画の中で人員削減を、五カ年間で二百億円の削減をするという計画を立てたわけでございます。それに従いまして平成年度が二百八十、三年度は三百ということで、二年度は先ほど申しましたように三百十一、それから三年度は、もう数日でございますけれども、これは間違いなく三百は達成できるということでございます。その延長で、平成年度は三百三十を実施するということでございますけれども、当然要員効率化を推進していくわけでございますけれども、最後に御指摘のあった放送サービス、それが低下するということがあっては決してならないわけであります。したがいまして、協会は関連団体あるいは外部のパワーと一緒になりまして、放送あるいは協会事業の低下を来さないように協力をして進めているところでございます。  それから二番目に御指摘がございましたサービス残業という点でございますけれども、確かに今申しましたように協会は要員効率化を進めておるわけでございますが、そういう中でBSとかあるいは国際報道とか国内放送番組の充実とかいうことで番組の強化充実を図っているわけでございます。そのために、職員には特に頑張ってもらって、勤務面でもかなり負担をかけているということは正直言ってございます。そういうことで、協会といたしましては、思い切って不要な業務はスクラップをするとかそういうことを進めておりますと同時に、制度面でもフレックスタイム制度とか、あるいはまたノー残業デーというようなものを進めたりしておりますし、この四月一日からは時短を含みます完全週休二日制を実施をいたします。  そういうことで労働条件の改善には鋭意努めておるわけでございますけれども、御承知のように労働時間というのが放送事業の場合は非常に長いわけでございます。協会の場合には二千百時間でありまして、全産業平均よりもややオーバーしているという実態がございます。特に放送現場についてはそれよりもまだ多いということもございますので、労働時間短縮の社会的な動向の中でより一層改善に努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  137. 田並胤明

    ○田並委員 終わります。
  138. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、伏屋修治君。
  139. 伏屋修治

    ○伏屋委員 最初に、NHK会長経営に対する基本的な考え方についていろいろとお尋ねをしていきたいと思います。  島前会長経営拡大の強硬路線をとられたということが修正をされつつありますし、川口体制のソフト路線というものが民放各社ともに非常に好感を持って受け入れられつつあるということは私も認識をしておるところでございます。そうかといって、それでもう全然批判、注文がないのかと言えば、やはり巨大組織であるNHKに対しますいろいろな注文、批判というものがあるわけでございますが、そういうものに対して会長としてはどう認識をされて、どう対応されようとするのか。その一つとしては、非常にメディアが集中しておるというのも大きな問題だと思いますが、それに対応するお考えがあったら聞きたいと思います。
  140. 川口幹夫

    川口参考人 おっしゃるとおり、NHK経営そのものはいろいろな問題をこの後もはらんでおります。特に時代が変わり、社会情勢が変わり、国際情勢が変わるという中で、NHKがこれまでどおりの形でいけるとは私は全く思っておりません。今後の経営状況の中で、それでもなおかつやはり基本に公共放送としてのNHKあり方というものを据えていきたいと思っております。  その中で私が一番やはり考えますのは、番組情報というものをどのような形で提供するのか、そのことが一番でございますけれども、あわせて、現在NHKが持っている経営的な条件を全部総括してみよう、それで後々メディアがふえていきます、その中でどのような形をとるのが一番視聴者の期待にこたえられることなのか、そのことをはっきり見定めていきたいと思っておりまして、先ほど申し上げましたが、一年かかって十分にそういう条件を検討した上で新しい方策をはっきり立てたいというふうに思っております。
  141. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今日的にNHKが非常に巨大化しメディアが集中してきたということにはいろいろな要因があると思いますけれども、その中でも、民間の放送事業者には非常に厳しく適用されておるところの集中排除の原則がNHKには適用除外になっておる。これも一つのメディアの集中の要因ではなかろうか、このように考えるわけでございますが、これに対して郵政省のお考えをお聞きしたいと思いますし、また今後二十一世紀にわたりましてはますますメディアはふえる。減ることはありません。ふえることはあっても、減ることはない。まるっきり多くのチャンネルが生まれてくるわけでございますが、そういう多メディア時代にもこのような原則を適用しようとするのか、柔軟に対応しようとするのか、この二点については局長の御答弁をいただきたいと思います。
  142. 小野沢知之

    小野沢政府委員 お答え申し上げます。  第一点のお尋ねですが、いわゆるマスメディア集中排除原則をNHKにつきまして適用していない理由でございますが、それは、我が国放送法の体系におきまして、NHKと民間放送とはそれぞれその設立目的を異にしている、規律のあり方が異なっているというためでございまして、具体的には、主として次の二点が異なっているわけでございます。  第一点は、NHKは公共の福祉のためにあまねく日本全国において受信できるように、豊かで、かつ、よい放送番組による放送を行うことによって公衆の要望を満たすとともに、文化水準の向上に寄与すること等の特別な使命が課されており、その使命を達成するため必要な各種メディアが与えられているということでございます。第二点は、NHKは毎年その収支予算とか事業計画等について国会の御信認を受けることにより、保有するメディアによる適正な放送事業運営を行っているという認識でございます。  それから、第二点のお尋ねの極めて大事な問題でございますが、多メディア・多チャンネル時代が本格化するときに当たって、いわゆる集中排除原則についてどのように考えるかというお尋ねでございますが、この原則は電波の有限希少性及び放送社会影響力の重大性を根拠としてきたものでございますけれども、多メディア・多チャンネル化の進展に伴い国民放送利用の選択の機会が増大してきておりますし、また各メディアの特性により社会影響力が変化してきている、そういう情勢の変化がございます。そこで、そうした情勢の変化等に即した対応が必要となってきているという認識は持っております。そのために、現在テレビやラジオに比較して社会影響力が小さいテレビジョン文字多重放送などの多重系の放送メディアにつきましては、既にマスメディア集中排除原則の適用を除外しておりますけれども、郵政省といたしましては、今後とも多メディア・多チャンネル化の進展に即応した法制度のあり方を考究してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  そこで、現在放送行政の最重要課題の一つになっておりますのが、CS放送にかかわるマスメディアの集中排除原則の適用のあり方についてでございますが、去る三月十一日、東京大学新聞研究所の高木所長を座長とする通信衛星を利用する放送の普及の在り方に関する研究会の報告書が出されまして、その中で、ただいまの点につきましては「CS放送の多チャンネル化が実質的に進展した段階において、緩和を検討することが必要である。」という記述がなされております。したがいまして、郵政省といたしましては、この報告書の趣旨を踏まえ、今後CS放送実施によって国民が多くのCS放送番組を選択することが可能となっていく状況を展望しながら、関係各方面の御意見をよく聞くとともに、今後の全体動向等を見きわめながら検討を行っていきたい、こういうふうに考えております。
  143. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そういう多メディアがNHKに集中しておるということに対する他の事業者の不満というものは非常に多くなってきておるわけでございます。映像ソフトを買いつけるにしましても、メディアの少ないところとメディアの多いところではこれは勝負にならない、こういうような不満もあるわけでございますので、NHKとしては公平な競争の環境をつくる必要があるのではなかろうか、こういうふうに考えますが、具体的にそういう競争環境をつくるについてのお考えがあったらお聞かせいただきたいと思います。
  144. 川口幹夫

    川口参考人 実は先日も在京の民放の五社長と懇談をしてまいりました。その席上でもいろいろなお話が出まして、民放連の社長さん方もNHKに対していろいろな意見を開陳されました。私も、当然のことながらNHKが今置かれている現状から将来への見通し等を語りまして、ただ、いろいろな問題があるけれども、民放NHKは協調の中でぜひ仕事をしていっていただきたい、つまり競争のある協調、あるいは協調性のある競争というふうな形で、これからの放送事業民放NHKというものが併存していく体制というものをできるだけ理想的な形で今後とも維持させていただきたいということを申し上げました。それで五社の社長さん方も、基本については全く同感だから、これまでみたいに多少のいがみ合いではなくて全面的にいろいろなことを話し合う形でもって進めていきましょうということを言っていただきましたので、今後ともその基本の姿勢はきちんと守って、そして今後出てくる問題について対応したいというふうに思っております。
  145. 伏屋修治

    ○伏屋委員 これは田原さんの本の「メディア王国の野望」という中にもありましたが、これはうわさの段階であるという前置きはありますけれども、いわゆる二〇〇一年に向かっての衛星放送、これはトランスポンダーはもう八本持つ放送衛星ということになってくるだろう。そのうわさの一つの中では、NHKがトランスポンダー2本、それからJSBが一本、それからソニーが一本、松下が一本、民間は一つの中に五社が押し込められてしまっておる、こういううわさなんですけれども、そういうようなことも言われておるし、本にも書かれておるわけでございますので、より慎重にその辺は、五社の社長との懇談の中ではお互いに協調してやっていこうという話ですけれども、その内幕はかなりまだNHKに対する危惧を持ち、民放のこれからの営業のあり方等々についても非常にどろどろしたものがその中にあるのではないか、そういうことも十分踏まえながら今後公平な競争ということに門戸を開いていっていただきたい、これは要望しておきたいと思います。  それから、問題でありましたMICOですが、去年の二月から九月あたりまではマスコミの新聞には華々しくMICOが取り上げられました。そしてテレビ・ジャパンあるいは映画制作あるいは五年間で一千億の事業規模にする、こういうようなことをMICOの社長が言明したというようなことが新聞に報道されておりましたが、一転してことしになりましてから、MICOを縮小するというようなことになってきたわけですけれども、この縮小せざるを得ないというその要因についてお尋ねしたいと思いますし、そしてどのような縮小をしようとしておられるのか、また今後MICOはどのような方向に進もうとしておるのか、この三点、そしてあわせてGNNの現状についてもお聞きしたいと思います。四点お聞きしたいと思います。
  146. 川口幹夫

    川口参考人 MICOが事業的に余りうまくいかなかった理由というのは幾つもありますけれども、非常に大きな点を挙げれば、まず民放系で、いわゆるMICO三原則というのがありますけれども、出資をせず、人を派遣せず、番組を買わない、その三原則で拒否反応をされたということで、いわば販路が全くない商売ということになっておるというのが一つあります。当然のことながらこの会社自体の設立の目的は、単にNHKのためだけじゃなくて広く放送あるいはメディアというものに対して国際的なソフトを提供しよう、あるいは各社がつくったものを国外に販売をしよう、そういう目的を持ってつくられた会社なんですけれども、それが設立のいろいろないきさつから、御協力を十分得られなかったということがまず第一にあると思います。  それからもう一つは、やはり世界の状況が相当激しく変動いたしまして、特に日本の国内的な経済変動の問題もありまして、思うような形で運営ができなかったということがあろうかと思います。  三番目は、例えば映画への出資とかあるいは番組の輸入輸出というものについての幾つかの計画どおりにいかなかった点というのがあるかと思います。そういう点を十分に社内で検討した結果、MICOの社長さんから私の方へ、この一月になりましてから規模の縮小、将来の方向についての大きな方針の転換ということを言ってまいりまして、私も責任の大きな部分を持っておりますから、それについて、ではNHKとしてはどのような協力をするかということを話し合った次第であります。  今後は、まず人員を削減いたします。そして一部、NHKの出向した社員をNHKの方に帰したいと思っております。それから事業の中身を吟味をいたしまして、当面非常に大きくリスクをしょうようなものはやらない、堅実な形でもって業績に結びつくようなものを選択をするということを二つの大きな柱にしまして、今後とも、四十七社という出資の会社がありますから、そういう会社の方々に対する責任を十分に自覚しながら営業を続けていきたい。その段階で、私もNHKの責任者として、民放各社にできるだけお力添えをいただくようにという形での協力依頼をしてまいります。そういうことで、当初の目的の何%かになりますけれども、何とかその力を果たしたいものだというふうに思っております。  それから、GNNにつきましては、既に大きな話題になりましたけれども、私自体がこの前アメリカに行きまして、そしてGNNの一万のコパートナーでありましたところのABCの会長とも話をしてまいりました。それから一方ではBBC、あるいはヨーロッパのEBUという放送連合がありますけれども、その首脳の方々とも話し合いまして、NHKが島さんのときに立てました、いわゆるGNN構想というのはその考え方を基本的に変えます、つまり企業でもってそういうネットワークをつくる、会社をつくって、そして大いに世界的なネットワークをつくって事業を開始するということはやめます。一つの理由は、それはやはり今の日本の経済状態の中では、十分な資金的な協力を得られる見込みがないということ。それからもう一つは、そういうネットワークをつくりましても、世界的な意味で通用する情報ネットワークがすぐできるというものではない。一つは大きな問題は、アジアのニュースがそのまま世界に通用するような形での状況というのは今ない。  やるならば、私自体はその必要性は認めますから、だから島さんがお考えになったGNNの企業による進展ということはおいておいて、NHKがまずやるべきこととして、アジアセンターをつくって、アジアの情報をいかに取材するか、そのことをどうやって世界に伝搬をするのかというふうなことを主体にした構想に切りかえていく、これをGNNの新しい出発だということにしたい。先行きは企業になるかならないか、それは十分検討の上で決めればいいことで、ただし、その世界的な情報ネットワークをつくることはNHKの責任の一つでもあるというふうに考えております。
  147. 伏屋修治

    ○伏屋委員 もう時間があと二、三分しかございませんので、最近民放連営業委員会というところがNHKの”商業化”に関するアンケートというものの結果をまとめておられましたが、これはNHKは御存じですか。
  148. 堀井良殷

    ○堀井参考人 そのような調査をまとめられたということは伺っております。
  149. 伏屋修治

    ○伏屋委員 この結果についてNHKがどうお考えになっておるのか、具体的にお聞きしようと思いましたけれども、時間がございませんので、NHKのお考えを文書にしていただきたい、こういうふうにお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  150. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、田中昭一君。
  151. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 私は、時間も少ないわけですが、二点について見解をお聞きをしたいと思います。  まず第一は、きょうもこのようにして平成年度事業計画予算などについて議論をしているわけですが、事業計画策定のあり方などにつきましてやや疑問を持っておりますので、この点についてお聞きをしたいと思います。  平成二年から六年度にかけまして経営計画が策定をされました。これに基づきまして、毎年度事業計画あるいは予算などについて協会の方から提供されてスムーズな形で議論がなされてきている、こういうふうに実は私は判断をいたしております。  しかし、いろいろと御提起もありましたように、ここ二、三年間におけるNHK経営あり方などについて、非常にマスコミなどでも大きく取り上げられております。これは私コピーしてみんな持っておりますけれども、かなりの量になっております。この中では民放との摩擦であるとかいろいろございます。これはもう時間がありませんから省略をいたしますけれども、その結果、最終的には会長が交代をする、そして島路線から川口路線に変更した、こういうふうに言われているわけですね。  この中で例えば代表的なものは、幾つか挙げますけれども、今も議論がございました日本版のCNN、GNN構想の問題とか、それから今これも提起がございましたMICOの問題、いわゆる映像ソフト会社の問題であるとか、それからNHKエンタープライズなどを中心にする巨大関連企業の設立てあるとか、こういう問題などが非常に大きく取り上げられて議論になっておりまして、これはまさにNHK放送界制圧計画ではないかということで、非常に民放との摩擦の問題など含めまして社会問題として取り上げられてきた、こういうふうに理解をいたしておりまして、これは協会の方も否定をすることはできないんではないかな、こういうふうに私は思っております。  私は、今申し上げましたようにGNN構想がいいとか悪いとか、MICOがいいとか悪いとか、そういう問題をきょうここで言うつもりはないんです。しかし、事業計画なり予算を、私も、ピンからキリのキリかもわかりませんけれども、そういう問題についてここでやはり討論に参加をして、そして賛成をしておるという立場に立つならば、これは視聴者なり国民の皆さんに対して一定の責任がある、こういう立場を踏まえた場合に、やはりもう少しきちんとしておくことが必要ではないか。  一つの例を挙げますと、今会長の方からも答弁がございましたように、GNN構想の問題がございます。これは私は川口会長会長になられた際に質問を申し上げましたけれども、あれだけ問題になった問題は、経営計画でも事業計画でもほとんど議論らしい議論がされてない、こういう状況だったと思います。しかし、島会長が昨年の四月十六日にラスベガスに行って、これを世界の人たちを相手にして打ち上げた、しかもそれは直ちにやる、金も使うということを明確に言って、来年東京に来られたらそれはもう実現しておるというような発言までラスベガスでされておる。こういう状況になっておりまして、この問題について事業計画なり経営計画との関係で一体どうなんですかという質問に対しまして、川口会長は今もお答えされましたように、もうやらないという答弁がございました。それから、もうやめられましたけれども、小山副会長は、これは島会長が勝手にもう独断でやったことだ、私たちはよく理解してないんだ、十分な議論もされてないんだということを御答弁になられた。これを協会の方はもう御記憶のことだと実は思うんです。  ところが、ここに「NHKことしの仕事側」というパンフレットがございます。これはマル秘文書でも何でもない、大衆、視聴者に対して配布をされたNHKのPR雑誌だと思うわけです。私は立派なPR誌だと思っているわけです。この中で、平成年度の重点事業などについて詳しく、GNN、グローバル・ニュース・ネットワークというものがここに明確に取り上げられているのですね。これは島会長が勝手にラスベガスに行って打ち上げたとか、十分な議論がされていない、我々も知らなかったのだ、こういう発言があったわけですね。これは会長も御記憶でしょう。しかし、現実に重点事業として、事業計画でも経営計画でも議論がされていないことが重点事業の第一点目に既にPRされておるわけですね、視聴者に対して。これは、我々は事業計画の議論に参加をした、ところがとてもでない大きなGNN構想が出てきた、これは我々知らない、どうなんですかとお聞きをしたら、それは島会長が独断でやって十分な議論がされていない、こう言われた。ああそうですか、それは今後はそういうことのないようにします、こういうことで終わっておるわけですが、これは島会長がひとりで編集をして配ったんじゃないのじゃないか、こう思うのですね。そういう立場に立ちますと、私は、事業計画であるとか経営計画であるとか、そういうものの国会における議論などというものは一体どういうことになるのかという疑念がどうしても頭の中からぬぐい切れないわけですね。  したがって、時間もきょうはございませんけれども、三つのことについてこの際はっきりしていただきたいなと思っているわけです。  その一つは、放送法の十四条では事業計画予算などについては経営委員会の議決が必要だ、こういうふうになっているわけですね。こういう問題は、それでは経営委員会での議論は一体どうなっておったのかということです。ここのところを私は知りたいわけですね。経営委員会で議論がされて島会長が打ち上げた、ほかの人は経営委員会で議論されたことを知らなかった、こういうことになるのかどうなのか。もう十年も前からこの逓信委員会の附帯決議では、経営委員会の議論の内容などについては視聴者にわかるように周知をすべきであるとか、オープン、公開の問題については附帯決議でなされているわけです。一体経営委員会の議論というのはどういう形でそれが視聴者に対して周知されておるのか、ここのところを一つはやはりはっきりすべきではないかな、これが第一点です。  それから第二点は、これは今も申し上げましたけれども、放送法三十七条では事業計画などについては国会承認が必要になっておるわけですね。国会承認が必要だけれども、予算を伴って世界的に打ち上げるような問題が国会で何にも提起されない。これは一体どういうことなのか。だとするならば、NHK経営計画であるとか事業計画であるとか経営路線というものについて国会の中で承認を求めるというのはどの範囲のものなのか。どういう内容については国会承認が必要だと思っておられるのか。ここのところをもう少しやはりきちんとしなければならないのではないかな、こういうふうに思います。  それから三点目は、経営計画もあるいは事業計画も、そんなに激しい議論が出されて採決で決めるということでなくて、かなりスムーズな形で議論されてきたと私は思う。私たちもほとんど賛成の立場に立ってきたと思うのですね。ところが、NHK経営というのは大変大きなさま変わりをして、そして路線が変更されてきた、こうなっておりますね。マスコミの上ではこうなっておるわけですね。これは、事業計画とそういうNHKの基本的な経営路線というのは一体どういうつながりになっておるのか。冒頭言ったように、事業計画などについて国会の中で討論に参加をし賛成をする立場に立った場合に、そういう問題はやはり国民の皆さんや視聴者の皆さんに対してきちんとしたものを持たなければ、形式的に形だけで逓信委員会承認をし賛成をしたというのは余りにも寂しいと私は思っているわけで、ここらの問題について少し具体的に御説明をいただきたいと思います。
  152. 堀井良殷

    ○堀井参考人 私どもの事業計画の重要な点につきましては、経営委員会にお諮りいたしまして、経営委員会で重要事項の御審議、御検討、御指示をいただいているところでございます。こうした経営委員会で御審議いただいた、あるいは決定された内容につきましては、直ちに会長以下の執行機関の手にゆだねられるということで、私ども執行機関に参りました事項についてはNHKの広報あるいは視聴者の方々へさまざまな手段で周知、御理解いただくというふうに努力しているところでございます。したがいまして、重要事項については経営委員会にお諮りし、御審議いただき、決定の後には速やかにそれを皆様方に御報告をする、こういう事業運営を行っているわけでございます。  さて、私ども国会事業計画収支予算等を提出し御承認をいただくというのは、NHKの持つ公共的性格からいってこうしたことが必要であるということで、この意味合いを私どもも十分承知しているところでございまして、誠意を持って私どもの事業計画を御説明させていただくべく努力しておりますし、今後も努力していきたい、こう思っておるわけでございますが、いわゆるGNNという事業計画につきましては、構想の段階でございまして、事業計画として形をなしたものではなかったということでございまして、これまでの予算事業計画の中で具体的に国会等で御説明してこなかった、その中であたかもGNN構想が既定の具体的な計画であるかのごとく受けとめられたようなことがあったとすれば、これは私どもの説明が非常に不十分であったと申しますか、誤解を招くということがあったとすれば、非常に反省しなければならないと思いますし、今後は十分に御説明して御理解をちょうだいしていきたい、こういうふうに思うわけでございます。  それから、五カ年計画というものを策定いたします中で、これは基本計画でございますので、個々の単年度のそれぞれの事業計画につきましては、この五カ年計画という基本の枠組みの中で、それぞれ単年度、経済社会その他のメディア状況の動向に合わせた新しい計画を策定し、国会にも御説明し、御承認を得ていくという手順を踏んでいきたい、こう思っておるところでございます。     〔委員長退席、松浦(昭)委員長代理着席〕
  153. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 言われることは、私はよくわかるんです。そのとおりだと私も思っているわけです。しかし、そうなってないから聞いておるんです。例えばGNN構想などというのは大変私は世界的に大きな計画だと思いますよ。そうじゃないんですか。これくらいの大きな計画も、事業計画では出す必要もないし、そんなのは経営委員会でも議論する必要もないし、会長がやろうと思えばいつでもできるんだ、こういうふうになっているんですか、なっていないんですか。そして、さっき言ったように、パンフレットに書いてあるじゃないですか。議論してないと言っているじゃないですか。知らなかった、島会長が勝手にやったんだ、こう言われたでしょう、委員会で。しかしPR誌には書いてあるじゃないですか。そういうつじつまが合わないから聞いているんですよ。そうしないと、どんなきれいごとで事業計画などについて議論しても、結果的にはそういう問題が今後、出ないと思いますけれども、しかし仕組みとしては、そんなふうに会長がやろうと思えば、事業計画とか国会承認とか経営委員会とか、そんなものは関係がなくて、世界に出かけて何でも打ち出してやることができるんだという仕組みにNHKはなっているんですか。そこをはっきりしてくださいよ。
  154. 堀井良殷

    ○堀井参考人 例えばこうした映像による国際交流といったような大きな事業につきましては、当然経営委員会でも御議論をいただき、事業計画として策定し、それを国会を初め各方面に御説明し、予算として御承認をいただく中で実施してまいるべきものであるというふうに考えております。これまでのところで不十分な点があればおわび申し上げますとともに、今後十分な御説明をしてまいりたい、このように考えております。
  155. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 よくわからないのですね。よくわからないのですよ。しかし、きょうは時間がありませんから、今後こういう疑惑を持たれるようなこと、先ほど言ったように、我々も事業計画経営計画などの議論に参加をする立場、国民の皆さんとの関係では、やはり一定の責任があると思いますよ。ここで言いたいことを言ってそれでしまいというそういう無責任な態度をとりたくない。ですから、GNN構想について、あれは島会長がやり過ぎだ、勝手にやったのだと言われるならそれでもいいんです。しかし、質問をしましたら今度やらない、こう言われた。しかし、PR誌に載っている。こういうつじつまの合わないことは、私は、NHKぐらいのきちんとした組織体ですから、これはやはり今後きちんとしてほしい、こういうことを申し上げておきたいのですが、会長いかがですか。
  156. 川口幹夫

    川口参考人 田中先生の厳しい御指摘を受けましたけれども、私もそのようなことがあったことは大変恥ずかしいと思います。実は、GNN構想そのものは、先ほど堀井が申し上げましたようにまだ構想段階で、いわゆる計画として、計画というのは、明らかにお金の問題とか人の問題とかあるいは会社機構の問題とか組織の問題とか、いろいろなものがついて初めて計画になるのですが、それが経営委員会で話されたとか、あるいは理事会で審議されたとかいうことはないということを確認しております。  それがなぜそうなったのかということになりますと、今の九一年のPR誌に載っているとすれば、これは実は私は初めてきょう知りましたけれども、大変お粗末で申しわけない。島前会長がNABの大会でみずからの構想としてそのようなことを申し上げた、これは事実であります。その意図が、現在の世界情勢から考えて、世界を結ぶグローバルなネットワークをつくるということが非常に緊急の課題であって、そのことを早くやる。やることによって、放送事業者がそれによって大きく裨益することがあるだろうというふうな考え方だったろうと思います。  ただ、先ほども申し上げましたように、私は、そのこと自体については現状ではとてもすぐ実施できるものではないし、またできるとしても、それは多くのステップを踏んでからいかないとできることではないというふうに認識をしております。このことがそういうPR誌などに載るということについては、これはもう本当にお恥ずかしいのですが、今後はそういうことは全くないようにいたします。  特に、経営委員会との関連で言いますと、経営委員会もGNNについては、いわゆる構想を聞かされていたけれども、計画としては何ら審議をしていないという事実がございます。したがって、そういうふうなことがどこまで進展していたのか、どういうふうに結論を求められたのか、そのことも実は経営委員会でははっきりしておりません。そのことは、私が就任してから、経営委員会から特に私に対して要請がありまして、今後いろいろなNHKの根幹にかかわる計画は必ず経営委員会に話して、経営委員会と十分な相談をした上で確定をしてくれということをくぎを刺されました。ですから、私就任以来はきちんとそういうことをやっておりますので、今後は絶対にないということをお誓い申し上げます。
  157. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 今後の新会長のもとでの御努力を強く求めておきたいと思います。  時間もございませんが、二つ目は、私はNHK公共放送でありまして、よりよい公共放送を充実するために一層の努力をしてほしい、こういうふうに強く申し上げたいわけですね。  NHKというのは我が国における唯一の公共放送公共放送の充実というのは、私流に言いますと、私は大きく分けて二つあると思います。一つは、やはり言論報道機関としてより信頼される、厳正中立、偏向してない真実の報道をするということが極めて重要だと思います。  もう一つは、豊かな文化創造の機能を有するということが必要だと思います。そういう立場で努力をすることが放送法第七条の目的に沿うものである、こういうふうに思っておりまして、まず第一点は、NHK視聴者の皆さんから受信料をいただいて経営をする、いわゆる公的に保障された財源運営をしていくということを、今回の予算でも、収入の九五・六%は受信料収入によって賄っていくわけですから、ここのところはやはりきちんとすべきであると思います。したがって、非営利性を厳守するということが基本でなければならないのじゃないか。そのことによって、放送法第七条が改正された後、民放などを含めまして、大量の子会社の設立てあるとか商業類似行為の問題であるとかいろいろ追及されておりますから、ここのところはやはりきちんと踏まえる、こういう姿勢を明らかにすることが必要ではないか、これが第一であります。  もう一つは、これもいろいろ議論がありましたように、多メディア時代と言われる中で、公共放送としてのNHKのメディア保有数を今後どう考えていくのかというのは、今後の一つの大きな課題ではないかな。多くのメディアを持って、そして所属の系列会社がたくさんできるということになれば、番組をたくさんつくらなければいけない。やはり質と量との関係では、いい番組ができなくなっていくのではないかな。そういう意味では、量産体制を廃して、良質な番組をつくる、こういうことに努力をするという立場から、今後公共放送NHKがどの程度のメディアを持っていくのかというのは大変重要なことではないか。今後の展望などがあればお聞かせをいただきたい、こういうふうに思います。  それから、三つ目は、公共放送NHKとしてのとるべき道は、何としても良質の、国民視聴者の皆さんが納得する、そういう番組をつくる、ここに徹する、こういう立場に立った場合、私はやはり自主制作というものを原則にすべきではないかな、こういうふうに思っております。したがって、下請であるとか関連団体でつくるというのも、今まではNHKのノウハウを持った方々が行ってつくっておられたかもしれませんけれども、これがプロパーがふえてくる、こういう関係になりますと、いろいろ問題点が出てくるのではないかな。時間がありませんから言いませんけれども、いずれにしても自主制作を原則とする。そして、良質の番組をつくる、こういうことが極めて必要ではないかなと思います。  非常に舌足らずですけれども、私は、NHK公共放送としての使命を果たすために、こういう問題が今後の大きな課題ではないかな、こういうふうに考えておりまして、これらの三点の問題についてのNHKとしての考え方をお聞きしたいし、また郵政大臣としての御見解も最後にお聞きをしたいと思います。
  158. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 先生のおっしゃられること一々ごもっともだと思います。公共放送であるNHKは、放送法に従いまして、豊かでよい放送番組放送することによって、いわゆる公衆の要望を満たすとともに、また文化水準の向上に寄与するということがその基本的役割の大きなところだろうと思います。多メディア・多チャンネル時代において、放送番組の充実は、各種放送メディアの健全な発達、普及を図る上で喫緊の課題であり、NHK役割は一層重要である。まさに先生のおっしゃったとおりでございます。同感であります。  NHKは、この公共放送の果たす役割をよく認識されまして、放送番組の一層の充実に努めていただきたいということを期待をいたしておるということを表明させていただきます。
  159. 川口幹夫

    川口参考人 NHKがよって立つゆえんは、あくまでも報道機関としてのあり方であり、それから文化創造の機関ということにあると思います。そういう点では、この二つは私どもは片時も忘れてはいけない大きな使命であるというふうに認識をしております。その方向で進みます。  それから、関連団体の仕事のあり方については、これは一月になりましたときに、私が全関連事業の社長を呼びまして言ったことの中に、関連事業の仕事の仕方というのを基本的に考えてもらいたい。それは、NHKが持っておる使命感とかそれからNHKあり方からスタートをして、関連事業はそれぞれ独特の立場があるわけですから、その持ち分に応じできちんとした対応をしてもらいたいということを言いました。そのことは、これから関連事業と一緒になってNHKが進んでいかなければいけない以上、どうしても必要なことだろうと私は思っております。一層の自覚を関連事業のみんなに持ってもらって、相ともに手を携えていこうというふうなことを今考えております。  それから、メディアについては、これからたくさんのメディアができるわけですけれども、それは選択が非常に自由になるということであって、放送する側、つまり受け手と送り手という意味からいいますと、送り手の立場からいえばこれは非常に厳しい選択を迫られるということですね。ですから、その選択に合うものをつくる。つまり、山のように百チャンネルとか百五十チャンネルあっても、さすがにNHKチャンネルは違うというふうなあり方を示してこそNHKの存在意義がある。多メディア時代に生きるNHKの道というのは結局そういうことではないかというふうに私は認識をしておりまして、今後とも番組制作については、あるいは報道あり方については一段と努力をしたいと思っております。
  160. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 NHKの今後の御努力を心から念願いたしまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  161. 松浦昭

    松浦(昭)委員長代理 山下八洲夫君
  162. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 貴重な二十五分間でございますので、簡潔にまた端的にお尋ねさせていただきたいと思います。  私も、NHKの自社制作の番組とかあるいはまた要員問題を中心に若干質問させていただきたいと思います。特に、言われるまでもなく、たびたび出ているわけでございますが、NHK受信料を徴収して放送をしております唯一の我が国の公共放送であるわけですね。そういう中で、テレビで申しますと、地上波が二浪、それから衛星二波、全部で今四波受信料放送なさっている。そういう中で、私の聞くところによりますと、年間約三万時間くらいの放送をなさっている、このように伺っているわけです。  そういう中で、まず自社制作は年間どれくらいあるのか、あるいはまた今お話に出ておりました委託あるいは調達放送時間はどれくらいになっているのか、そして再放送はどれくらいになっているのか、まずお尋ねしたいと思います。
  163. 中村和夫

    中村(和)参考人 番組の自主制作については波によって数字が違っております用地上波はやはり国民の生活に不可欠な基本情報とか創造的な文化の提供、地域放送、生涯学習番組といった総合サービスをやっているわけですけれども、地上波では平成年度については自主制作率は七七・八というふうになっています。波別によって、性格によって違うわけですが、衛星放送の場合はモアチャンネルということと、先ほども御説明しましたけれども、衛星第一の場合は五五%が報道、ニュース番組ということでいワールドニュースを全部計算に入れますと、委託、購入の部分が九〇%近くなっている。二十四時間の放送でございますからそうなっているということでございます。それから衛星第二につきましては、六〇%が難視解消ということになっておりまして、総合テレビと同時の放送または再放送というものが入っているわけですけれども、衛星第二の場合には委託、購入の部分が七〇から八〇%というふうになっております用地上波の委託、購入の比率を細かく言いますと、総合では購入が六・七、委託が一三・二、教育の場合には購入が五・五、委託が一八・九というふうになっております。
  164. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 いろいろな統計がありまして、大ざっぱに申し上げまして私の統計の中で、一つは、全部四波まとめて申し上げますと、自社制作は大体年間九千時間ぐらいになるのではないか、そして委託、調達が一万一千時間、そして再放送が一万時間、大ざっぱに申し上げましてそれぞれ三分の一ぐらいずつになっているのかなと思ったり、また私はNHKのこの資料もいただいて持っているわけでございますけれども、今お話がありましたとおり、平成年度の総合テレビプラス教育テレビで申し上げますと、購入、委託が二二・二%、三割をちょっと割っている、二割強というところが委託、購入になっている。あるいはまた衛星放送で申し上げますと、第一が九〇%はもう委託、購入だ。あるいはまた衛星第二でいいますと、これは難視解消の問題等がありますので若干サービスの内容は違うわけでございますが、独自のサービスの中では七〇から八〇%が委託、購入になっているというような資料をいただいております。  あるいはこれは全日本テレビ番組製作社連盟の九〇年十月というので見ましても、総合テレビでニュース類を除きますと三六・一%、あるいは教育テレビでいいますと二五・四%、こんなような数字が出ているんですね。そうしますと、大体大ざっぱで、つかみなんですが、三〇%ぐらいが自主制作がなというふうに見た方が正しいのではないかというような感想を私は持っているのです。  それと同時に、これは素人の私が専門家にこんなことを申し上げてお許しいただきたいのですが、例えば、きょうは延期になりましたけれども、いよいよあしたから春の高校野球が始まるわけですね。春、夏、甲子園の野球放送を全国放送でどんどんやられるわけです。ついこの間終わりました大変人気の高い相撲でありますとか、大体こういうのはNHKが独占して放送なさっているわけですが、これはそれなりの苦労で、また両者間の関係もよくて放送なさっていると私は思うのです。そのほか、例えばオリンピックでありますとかいろいろなスポーツ類をNHKとしましてはよく放送されますね。あるいはまたほかのイベントなんかもよく放送なさる。私は、正直申しましてこういう放送というのは自社制作に入るのかなという疑問を持つのです。あれはちょっとカメラのセンスのいい、カメラアングルのいい方とそれからちょっとアナウンサーの上手な人がやれば、大体感激する部分とかそういうのはそちらのスポーツの現場でつくり出してくれるのですから、あれは自社制作とは私自身は思わないのです。だが、現実をいいまして、そういうものも入ってこれがおおよそ三分の一だろうというふうに私は思うわけですね。  そうしますと、私は、冒頭ちょっと触れましたように、NHK受信料運営をなさっている、そのことを考えますと、一つ民放にまねのできない、何といってもこのような放送をどんどん流すべきではないか。そのためには、やはり余りにも視聴率にこだわることもないと思うんですね。もっと突っ込んで申し上げますと、例えば相撲にしたって高校野球にしたって、あるいはバルセロナのオリンピックも今度の平成年度予算案では大きな目玉商品になっておりますけれども、こういうものは極端な言い方をすれば民放に譲ってもいいのではないかというような気もするわけですね。  特に映画、ニュース等の購入権料ですか、こういうのを見ますと、ABCニュースが昭和六十年から平成元年に向けまして二・九九、約三倍になっている。そういうソフトを買うと、昭和六十年が一〇〇としますともう三〇〇になっているんですね。またオリンピックなんか見てみますと、冬季オリンピックの昭和五十九年のサラエボの二百五十万ドルが平成四年のアルベールビルは九百万ドル、あるいは六年のリレハメルというのですか、千百七十万ドル。あるいは夏でいいますと五十九年のロスが千八百五十万ドルだった。そしてNHKが力を入れております今度のバルセロナ、夏、これは五千七百五十万ドル。これを例えばレートを百三十円で計算してみますと約七十五億円ぐらいになるんですね、放送権料が。  こういうことを考えますと、私は、こういうものはどちらかといいますと自社制作のソフトといいますか番組とは思えないんですね。ですから、私はもっと自社制作の方に力を入れるべきではないかというふうに思うのですが、その辺の感想はいかがでしょうか。    〔松浦(昭)委員長代理退席、委員長着席〕
  165. 川口幹夫

    川口参考人 まず、スポーツのことについてちょっと先にお話を申し上げます。  例えばオリンピックの放送というのは、これまでもそうですが、この前アルベールビルをやってみて驚きましたのは、国民の大方が非常に大きな関心を持っていらっしゃる。それに対してNHKが多少サービスを怠りますと、すぐ猛烈な反発が参ります。もっと放送してくれというような形での要請が参ります。それは、単にオリンピックがスポーツではなくて、もっと何かプラスアルファのものがあるんじゃないか。そういう点からいうと、オリンピック放送を全部民放に渡してしまうことについては私は大いに抵抗があります。それをやったら、それこそ受信料を払っている人たちから、おまえらは何やっているんだ、おれたちが払っている受信料を何でその我々が見たいオリンピックに使ってくれないんだというふうになるんじゃないか、そういうことを非常に強く感じます。ただし、これは非常に高い放送権料でありますので、今も民放連の人たちと話をしていますけれども、できるだけ民放と協調し合って、民放にも応分の負担をしていただく、そして、当然のことながら放送時間の割り振りとかそういうものについてもお互いに協調しましょうという話し合いをいたします。できるだけNHK負担は少なく済むように努力をしたいと思っています。  それから、高校野球はNHKが独占ではございませんで、ABC放送という民放も一緒に放送しております。ただ、時間的にNHKが全部をカバーしますので、何となく高校野球イコールNHKみたいな印象があるのですけれども、朝日放送の系統は現在同時にやっておるという状況がございます。そういう点で私は、別にNHKが何でも独占じゃなくて、物によっては民放との協調の中でやっていく必要がある、今後もそういう道を探したいというふうに思っております。  それから、自主制作のことについてですが、自主制作の方がよくて、購入なり委託なりは悪いという理屈ではいかないものがあると思うのです。例えば、番組にしても、BBCとかフランスのアンテーヌ2というところがつくった番組というのは、もう我々が見てもほれぼれするようなものがあります。これを購入して見ていただくというのはやはり非常にいいことではないかと思いますし、それから委託でいえば、NHK系統の制作会社だけでなくて、ATP、テレビ制作者連盟という民放系の会社があります。そういうところでつくったものもこれを購入するあるいは委託をするということでやりますと、相当NHK番組もバラエティーができますので、そういうことからいうと、問題はまず中身の問題である。ただし、そうはいっても自主制作をどんどん減らすということについては非常に大きな問題がありますから、どこかでその線はきちんと守って、全体のバランスを考えた上で中身の濃いものを放送する、これが一番いいんじゃないかと思っております。
  166. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 会長答弁もよく私も理解はできるのです。確かにいい番組、本当にほれぼれするような、そのような番組を購入してNHK放送なさる、これは結構なことなんです。そういうものはやっていただいてもいいんです。それと同時に、やはりNHKもそのようなものを逆に自社制作でつくり上げて世界じゅうに売る、その方がもっとすばらしいことだと思うのですね。それに負けないようなものをやはりつくり出していく、このことを私は忘れてはいけないと思うのです。  それと同時に、そのようないいものをつくるというのは、大変またある面では難しい面もあろうと思います。経費も場合によればかかる場合もあろうかとも思います、正直申しまして。だが、現実に私、余り素人だからかもわかりませんけれども、例えば先ほどちょっと言いましたね、野球とか相撲なんかというのはその放送権を買って放送すればいいんですが、ドラマというのは全部自分のところでつくり上げないといけないのですね。そちらの方が手間暇もうんとかかると思うのです。そうしますと人件費も余分にかかると思うのです、正直言いまして。だから、そういうものというのは、私はある面ではコストのかかるいいものになればなるほど、例えば記録映画でございますとか、そういうものはやはり民放は逃げると思うのですね。なるべく避けたい。正直言って、民放の皆さんには申しわけないけれども、経費のなるべくかからない——経費がかかるといいますのは、放送権料が高くても、視聴率が高くてスポンサーのうんとつくもの、これだったら少々高くても買うだろう、こういう気がしてなりません。ここがやはり私はNHK民放の違いだと思うのです。だから私は、NHK民放の違いの、NHKでしかやれない、そういうものへもっと力を入れてもらいたいなというのが率直な意見です。そのことを考えますと、先ほどちょっと自社制作を大ざっぱに三割ぐらいではないかと私は申し上げたのですが、この数字は正確かどうかわかりません、正直言いまして。だが、何といいましてももっともっと自社制作をふやしていく。  それから再放送、私はこれも否定するわけじゃないのです。再放送にしましても、ああもう一回見たいというのは確かにたくさんあるのです。私だって、正直言いまして、あの「長良川河口堰」のああいう放送はもう一度してほしいなと今でも思っております。だが、そうではなくて、余りしなくていいようなものも随分再放送で流れているのですね、正直言いまして。そのことを考えますと、もっと自社制作をふやしていく、そういうことにより力を入れてほしいなというのが私の率直な気持ちなんです。せめてNHK放送されます番組の二分の一ぐらいは、絶対どこの民放にも負けませんよ、自前でつくっているのですよ、こういうふうにしてもらいたいと思います。その辺の考えはいかがでしょうか。
  167. 川口幹夫

    川口参考人 山下先生に非常に力づけていただきましたけれども、私が今考えておりますのは、自主制作というものの中身をどうやってよくするかということでございまして、自主制作の中身をよくするためには、単なるお金の問題じゃなくて、人の問題があるのです。それと、その人材の育成とか、それをどうやって番組制作のプロにしていくのかという過程がございます。そういうところを十分に考えてやりませんと、ただ人を集めた、ただ自主制作にしたということだけでは、どうしてもいいものはできません。したがって、人材というものをどのような形で我々は集めてそれを育成して、そして本当にすぐれた番組制作者にするかということも、非常に大きな使命であるというふうに思っております。  おっしゃるとおり、我々がいい番組をつくれば、それは過去の例もありますけれども、海外に売れるわけです。「シルクロード」などは相当たくさん世界の放送機関が買ってくれました。そういう形になるのが一番いいと思っておりまして、中身の問題を専心してこれから頑張ろうと思っております。よろしくお願いいたします。
  168. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 時間がありませんから、余り申し上げることはできないのですけれども、長良川河口ぜき、三重県でしたね。私は、例の「信長」、岐阜県が舞台になっていまして、ここに岐阜の方もいらっしゃる、私も岐阜なんですけれども、岐阜県のいい宣伝をしていただきまして大変ありがたいのです、正直言いまして。だけれども、ある面では私は思うのですが、正直言いまして、あれは実際岐阜へ行ってあのような撮影をしなくても、あの代々木の立派なスタジオがあるのですよ。あそこであの程度の放送は今のNHKの能力では十分できると私は思うのです。あそこへ機材を運ぶ、あるいは人を出張させる、地元としてはありがたいのですけれども、経費の面から見ましたら、素人目に見ましても、ある面では遊びが随分あるなと思うのです、正直言いまして。ですから、自社制作というのは確かにいい人材もたくさん必要でしょう。場合によればお金もうんとかかりましょう。だけれども、かかる中でもやはりむだな部分は、切るところはたくさん切っていただくというところで努力していただきたいなと思うのです。それ以上もう申し上げません。  それで、人材の問題が出ましたね。私も、要員の問題、触れたいと思っていましたから、もう時間がありませんので、簡潔に触れたいと思うのです。  平成年度のこの予算書でいきますと、要員削減が約三百三十人ですか。そして、採用されますのが五百八十人で、そのうち大体五百人ぐらいが学卒ということも聞いております。そういう中で、昭和三十四、五年に大量採用なさった、そして今後十年間ぐらいは毎年七百人から八百人ぐらいは定年退職なさっていくのではないか。そういう中で、効率化等で毎年定員を削減させていくという要員の削減計画あるいは要員の効率化の実績、効率化の実績で申し上げますと、六十二年が一万五千三百十一人、毎年少しずつ減りまして、平成二年で一万四千三百二人と大変努力なさっている。そういう中で、将来を考えますと、将来というよりも、もう十年後くらいには一万一千人台になるのではないかというふうに見えるわけですね。私の記憶では、NHKのピークのときは一万六千人台の後半くらい職員が見えたと思うのです。それからいきますとやはり相当な努力をなさっている。一方ではそういう努力をなさる、それも効率化できることはどんどんしていただくことは正しいことですから私は賛成をするわけでございますけれども、もう一方、それにかわりまして、自社制作をふやそうとすると、やはり人も要るのですね。いい方も欲しい。そういう中でこんなペースで職員が削減されていく。そういう中で本当に自社制作を今のように守っていくことができるか、あるいはもっと自社制作をアップさすことができるのだろうかというと、大変な不安を持っているわけです。あるいはまたNHKなんかも、銀行がちょっと問題になりましたけれども、随分最近はサービス労働をやっている、そのような声も実質聞こえてきているわけでございます。  そうしますと、現在でも相当無理な要員で運営をなさっておるのではないかというような気もしますし、また毎年五百人くらいずつ学卒を、今人手離のときに本当にNHKがいろいろと自由に養成できる、NHKに向いたいい人材が確保できるかというと、これも一つは不安を感ずるわけですね。そういう中で、現実にすばらしいソフトをつくっていく、番組をつくっていく、それも同時に自社制作をある程度確保しながらつくっていくという、その辺の決意をぜひ聞かせていただきたいと思います。
  169. 川口幹夫

    川口参考人 私がNHKに入りましたのは、昭和二十五年でございまして、その後テレビが開始して非常に大きな業務量の増加があって、昭和三十四年に教育テレビがスタートするときに大量の人間を採用したわけですね。三十四年、三十五年というのが一番多いわけです。私どもがその中で感じましたのは、そういう一時的な大量採用というのがある時期になって物すごく経営を圧迫するという事実がはっきりと目に見えてまいりました。そのことについては、これは相当大きな覚悟をして効率的な運用に踏み切らないと、完全にNHK経営自体が危なくなる、そういう認識をいたしました。そのことで、現在の効率化のスタートが始まっているわけですね。  ただ、おっしゃるとおり、その効率化そのものが肝心の、自分のところで番組を作る、報道を出すということの精鋭を削減していくということだったら、これは非常に大きな問題だと思うのです。ですから、効率化はまず非現業のところから始める、それでできるだけ間接的な要員を少なくしていこうというところから始めまして、そしてその中でやはり大事なものを保存しておく、大事なものをはっきりつくる体制をつくるにはどうすればいいかということを考えながら、慎重にやってきたつもりです。ですから、現在の一万三千九百九十人という体制は、今後のメディアの進展に従って、私どもがどのようなメディアを保有してどういう仕事をしていくのかということとの関連なしては、ここはいけないのではないかというふうに思いまして、したがって、その計画もこれからの大きな問題として、十分これからの計画の中に盛り込んでいきたい、私はこのように思っております。
  170. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 最後に、大臣に一言だけ要望したいと思うのですが、NHK民放と違いまして、より以上に公共性が高い、しかも受信料制度運営をなさっているということであるわけですね。  ですから、民放にできない、そのようなことに力を入れていただきたい、これが一つです。  二つ目は、そのためにやはりいい人材を多く確保して、そしてその中でやはり自社制作の番組をどんどんふやしていく。せめて五〇%は自社制作で、そして受信料を支払っている皆さん方に放送を送っていただく、そのことが私は一番NHKに求められているところだろうと思うんです。私は、視聴率で競争する、これはNHKにはあってはならないと率直に思います。確かに野球とか相撲とか人気番組、こういうものを放送してはいけないというのではないんです。やはりこういうものを受信料を支払っている皆さんも多くの国民もまた求めているのですから、これは放送していただいていいわけです。だが、何といいましても自社制作をふやしていく、こういう方向で努力していただきたい、また郵政大臣としてもそういう示唆をしていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  171. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 山下先生の、一つはせっかくの御提言、比率の問題はなかなか難しい問題だと思いますので、NHKの方で十分検討していただいて、経営の問題等あるいはまた視聴者のニーズの問題、こういう問題もありましょうから、そこはひとつぜひ御理解をいただきたいと思いますし、その公共性の問題は全くおっしゃるとおりでして、我々としてはNHKの今後果たす役割というのを大いに期待したいと思っています。  要員の問題はおっしゃられるとおりで、全く、ベテランというかそういったノウハウを持っているすばらしい要員をきちんと確保していくということは大切なことだと思います。そういう中で新しい人との兼ね合い、こういうところをよく管理をしていただいて、そして今せっかくの山下先生の御提言やら、あるいはまた視聴者のニーズにこたえていく体制をつくり上げていただくということをひとつ一緒に御期待を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
  172. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、大木正吾君。
  173. 大木正吾

    ○大木委員 同僚議員から各般にわたって質問がたくさん出ましたが、私二つに絞りまして簡潔にお伺いいたします。  最初に、衛星放送問題についてでございますが、今回の予算書並びに事業計画を見てみますと、郵政大臣意見書の中におきましても、あるいはNHKが出しました報告、事業計画等を見ましても、衛星放送問題がこれからどうしても中期計画の後半あるいはその後放送メディアの中心的な位置を占めていく、こういう感じがいたします。  そこで、これは会長に伺うのですが、どのようなテンポで衛星放送が普及し契約が進行するだろうか、この問題について、もし予想がありましたら伺いたいと思います。
  174. 川口幹夫

    川口参考人 衛星は、現在のところ五百万を超えた普及状態だというふうに承知しております。ただ、NHKがその中から契約をしていただいておりますのはまだとてもそこまで至りませんで、大体三百八十万から九十万というところだろうと思うんです。これがこの四年度年度末、来年の今ごろには契約数も五百万を超える、目標は五百二十万でありますけれども、そのような形の進行を予測しております。  それは同時に、衛星というメディアが、地上放送と全く別な観点でもって私どもは今放送しているんですが、だんだんそれが視聴者の方々の中に受けとめられてきたというような認識をしております。特に、時間的に非常にたっぷりした時間がとれるとか、あるいは継続したものができるとか、あるいは海外からの情報を特段にたくさん放送できるとか、いろいろなメリットがありまして、それは特殊なチャンネル、つまり見る人にとっては物すごく裨益するところが大きなチャンネルだという認識をされてきているように思うんですね。したがって、そちらの方向を相当重視していきますと、この五百二十万という平成年度の目標は、次の年度次の年度というところで拡大していくことは間違いないんじゃないだろうか。ただ、それには私どもが努力をして、どのような番組をどう編成するのかということが一番大きな問題になりますけれども、それをきちんとしっかりやれば恐らく拡大していく形になるんじゃないかというふうに思っております。  ただ、それは現在の地上放送のようにくまなく隅々までというふうになるのかどうか、一千万はかたいにしてもその後どのような伸び方を示すだろうか、それは多分に私どもまだわからない部分があります。そういうことを十分に考えながら進めていきたい、それにはどうしても番組の編成が大事でありますから、これに格段の力を入れたいというふうに思っております。
  175. 大木正吾

    ○大木委員 NHKが出した経営計画によりますと、ちょうどことしは中間年ですが、六年には普及目標一千万、こうなっていますね。ことしのバルセロナ・オリンピック等を境にいたしまして、私は大手メーカーの友人がおりますものでこういうことを伺ったのです。例えば十軒の分譲住宅がありまして、そのうち一軒に衛星受信機がつきまして、アンテナがつきまして、一軒のときには余り大きな影響はないのですね。三軒つきますと子供さん方の話、買い物のお母さん方の話で話題になりまして、やはり普及テンポがきゅうっと上がるんだそうですね。そうしますと、これはバルセロナ・オリンピックを経過しまして、ことしじゅうに相当な普及をし、二次計画で一千万という数字はそんなに無理な数字ではない。問題は、その次のことも、かつての東京オリンピック問題やたくさんいろいろな経過、節々を見ていきますと、恐らく平成八年、九年ごろに六割ぐらいの方々が衛星放送受信、普及あるいは契約どちらかに入っている、こういうふうな感じを持つのですね。その次に心配なことがあるわけです。  そういった見方をしてまいりますと、さて現在のNHKの総合放送、第ーチャンネル、これも結局中には相当多くのニュースや情報等が入っておりまして、私も二十四時間の一日の生活の中でテレビを見る時間が大体二時間弱、一時間半ぐらいですかね、これもすべて夜の九時のニュースから始まって十時から10チャンネル、できれば十一時から6チャンネル、こういきたいのですが、こういった問題を眺めていきますと、衛星時代に入ったときには今のNHKの総合第一放送をやっているあの部分が一体どこに移っていくのか、そういったことがちょっと問題として解けてこないものですから、そこのところをもし会長にお考え方がありましたら伺いたい、こう思って質問しているのです。
  176. 川口幹夫

    川口参考人 先ほど申し上げました数字の中で一つ訂正をさせていただきます。  五百二十万というのを四年度末の目標と申し上げましたけれども、五百三十二万というのが今の計画の数字でございます。  ところで、衛星放送の将来についてどのような形で伸びていくのか、あるいはそれは視聴者にどういうふうに受けとめられるのかという問題はとても難しい問題がありまして、私、簡単には現在予測できるような自信はございません。ただ、放送を出す側の考え方を申し上げますと、現在のところ衛星では地上で見られないあるいは地上で受けとめることのできないプラスアルファのものを受けとめる、そういうチャンネルとして受けていただいた方がいいんじゃないかという考え方を持って今放送しているわけですね。それがうまく作用しますと、地上の二浪と衛星の二波とが非常にうまく作用していくことになるんじゃないか。ただ、ある時期に衛星受信者が一千万を超える、あるいは千五百万を超える、二千万になるというふうなことになったときには、ではどのようにメディア全体を見渡すのか、地上と衛星との地位はひっくり返るのか、あるいはそのままなのか、いろいろなことが考えられまして、その進展を見た上で早く私どもが次なる構想を立てて手当てをしていかなければいけないというふうに思っておりまして、それは一千万が一つの大きなメルクマールだなというふうな考え方を持っております。現在そこまでは、地上をやはり基幹として、そして衛星はプラスアルファの非常に大きな受益感を持つチャンネルというふうに編成していくのが妥当ではないかと思っております。
  177. 大木正吾

    ○大木委員 これは時間があったらたっぷり議論したいところなんですけれども、時間がありませんが、私が申し上げたい問題、ポイントはここなんですね。要するに情報の格差ですね。私にしても、大臣にしても、川口会長にいたしましても、情報というものは平等に受ける権利がありますし、受信料ですから、しかも公共放送ですから、そういった中で、言い方はちょっと悪いのですが、お金持ちはつけることができていい情報がとれまして、そしてお金を持たない方々はそういったことは享受できないということはまずいことですね。ですから、どんどんメディアが多メディア化して、多チャンネル化していきまして、大体一般のサラリーマン階層が共通の情報量を持つということ、同時にやはり皆さん方が放送するものを受信できること、こういったことについて、ぜひこれは格差のない社会、格差のない放送社会情報社会というものを念頭に置いて、今川口さんおっしゃった新しいメディアになったときにどういうふうに変えていこうかといったときには、考えの中枢にそういったことを置いてもらわぬといかぬ。このことだけ、ぜひお願いしておきます。
  178. 川口幹夫

    川口参考人 おっしゃることは非常によくわかります。私も、情報の格差はあってはいけないし、できるだけ格差のないような状態でやるべきだ、それから将来は、例えば百チャンネルとか二百チャンネルという膨大なチャンネルになっても、NHKの出すものだけは格差なしに受けとめてもらえる状況をつくるべきだというぐあいに思っております。
  179. 大木正吾

    ○大木委員 ポイントだけお願いしておきまして、あと大臣の方にこれはちょっと伺います。  ここにNHK日本放送協会定款というものを持ってまいりました。その中に、第二章、経営委員会のことが書いてございます。経営委員会の目的あるいは権限等に関しまして事項がございますが、第十一条によりますと、予算から始まりまして収支決算、同時に十二項目に至りまして「その他経営委員会が特に必要と認めた事項」といたしまして、これはほとんど全部の事業を網羅した内容が入っていますね。  それで、経営委員会の形について私も前からずっと関心を持っているのでございますが、先ほどうちの方の田中委員質問したわけでございますが、実際にこの経営委員会の内容といいましょうか、定款に比べて現状の経営委員会がなしている仕事との関係、これに乖離を感じて仕方がないのです。先ほどの答弁、どなたかいたしましたけれども、理事会と経営委員会との関係はどういうふうになっておられるのですか。
  180. 川口幹夫

    川口参考人 理事会と経営委員会関係は、理事会はあくまでも執行責任を負うところだと思っております。経営委員会の方はNHK経営全般に対する最高方針というものを審議決定していただくところだ。したがって、執行部がきちんと執行部案というものを出して、そして経営委員会の御議論を経て決めていただくというふうな形にすべきじゃないかと思っております。
  181. 大木正吾

    ○大木委員 ということは、結局発議することは理事会、執行部の方が発議する、こうなりますね。経営委員会の方はそれを参考にしながら説明を受けてイエスかノーか意見を若干交わす、こういうふうなことになるでしょうね。そうしますと、経営委員会には経営委員会室というものもありませんし、結局理事会が発想しあるいはたたき台をつくったものを経営委員会が見ていいか悪いかということに対して賛否をするのですが、経営委員会が反対をしてつぶしたということはございますか、例として。
  182. 川口幹夫

    川口参考人 私が会長になってからの経営委員会で反対されて執行部案が否決されたというようなケースはございません。
  183. 大木正吾

    ○大木委員 先ほどの田中君の質問なり、あるいは九月ですか、上田委員質問の中身を拝見いたしますと、やはり前会長の島さんが、経営委員会、独断でもって仕事をした幾つかの問題点がございましたね。ああいった問題と、今のお話は全くこれ裏腹の関係になるわけなんですね。  私自身思うのですが、これは大臣に聞きたいところなのです。こういった経営委員会の状態等をずっと歴史的に見てまいりましても、私も参議院の逓信委員長をやったことがあるのですが、その当時から思うのですけれども、やはり確かに人的な関係にもよりますが、定款と経営委員会が余りにも乖離が激しいという問題ですね。  立派なことが書いてありますけれども、経営委員会自身が事務局がございまして、その事務局が、会長の示唆を受けたら受けても結構ですけれども、そこから問題提起をして経営委員会へ出しまして、そして経営委員会が全く理事会と関係なしに決定をしまして、そして会社に持ち込む、こういうことならわかるのですけれども、一般の会社の重役会とかそういったものとの関係を見ていきますと、ユニークな委員会、組織と言えば言えないこともないのですがね。何か宙に浮いた存在価値しかない。  例えば、経営委員会のメンバー中にレギュラー、常任の役員の方が何人か入っておられるとか、非常勤が何人か加わるとか、そういった形の整合性もあろうと思うのですよ。同時に、やはり理事会と経営委員会関係というものをもっとしっかり、例えば経営委員会室というものを設けて、その中にだれかしっかりおられて、そういった方が出したものを経営委員会が議論して、それを理事会が受けて執行体制に入る、こういうふうな形をとるとか、何かそうでもしなかったら、まるっきりこれは、各地方の準知名人ですか、OBの方々などを中心としまして若干の階層別とかあるいは年齢別とかそういったものも入っていますけれども、どうもやはり中身が伴っていない経営委員会、こういう感じがしてならないですね。  ですから、どうでしょう、ひとつとりあえず、経営委員会は一年間に二十二回もやるそうですから、全体の経営委員会の発言の内容を出すことは、名前は要りませんから、ABCDでも何でもいいですよ、要旨で結構ですから、この委員会に御参考までに五回か七回くらいの記録を出していただきまして、議論の内容を拝見しながら、そして改組をするというような状態に持ち込んだらどうか、こういう感じがするのです。経営委員会の文書を全部もらったら、やはりこっちの議員の、私たち要求する側だって時間がなくて読めなかったら恥ずかしい話ですから、要旨で結構ですから、そういったことをしていただく。言えば準公開的なことですね。  ですから、川口会長国民に対し開かれたNHK、こういう話も随分とされておるわけでございますから、まず経営委員会を開けた経営委員会にしていく、こういったことについて、これは会長と大臣からやはり所見をもらわなければいけませんね。
  184. 川口幹夫

    川口参考人 経営委員会の具体的な審議状況、これは年間に、大体月間三回やっておりまして、特に予算審議とか事業計画案のようなNHKの基本的なものを審議していただくときはそのほかにまた一月に二回か三回余分に会議を開きまして十分に論議をしてもらっております。  そういう経営委員会の具体的な審議状況につきましては、自由な意見の交換という立場でありますから、現在非公開になっております。経営委員会審議決定された事項は執行機関の手にゆだねられて、NHKの広報として今度は公表する、それで視聴者に知っていただくというふうな形をとっております。  また、毎年郵政大臣を経由して国会に提出している業務報告書あるいは年一回発行するNHK年鑑等にも経営委員会の活動状況を記述しておりまして、この業務報告書というのは部外発表するとともに、各放送局にも備えつけておりまして、視聴者の閲覧に供するというようなこともしているわけです。  ただ、先生おっしゃるように、経営委員会審議状況をもっと細かい形でもって部外に、視聴者の方々にオープンにする必要はないか。これは私も経営委員会の皆さんと十分これから話し合いまして、そういう方法がないかいろいろ考えてみます。
  185. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 基本的にはNHK、まさに自律性というか主体性を持って、そして不偏不党、公正にやってもらわなきゃいかぬわけですから、言うならば経営委員会はその最たるものでなければならぬというふうに思うのですね。そういう意味では、今大木委員のおっしゃられることの判断というのは、私がこの国会でどういうふうに考えるかという所見を申し上げるといささかの感がしますから、これはひとつ私、決して逃げるのではなくて、経営委員会自身の判断、これだけの議論をすれば、要するに立派な人たちが多いわけですから、それでまた機能も発揮をされるというふうに思いますので、ひとつ経営委員会自身の判断にゆだねたいというふうに一つは思います。  それから、経営委員会理事会との問題というのは、やはり両輪のように機能し合ってこそこのNHKの公共性あるいはまた視聴者のニーズにこたえられる機能というのを発揮されていくことであろうというふうに思いますので、私もぜひひとつ、新体制でありますから、言うならばこの予算川口体制における新しい予算でありますので、新しい機能はまさにここから始まるというふうに期待をいたしている。先生と私、全くそういう意味では同じ気持ちでこれからのNHK経営について注目をし、期待をいたしてまいりたいと思います。
  186. 大木正吾

    ○大木委員 終わりますが、会長も新しいわけですし、大臣も新品でぴかぴかでございますから、どうかひとつよろしく御検討のほどお願いいたします。
  187. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、菅野悦子君。
  188. 菅野悦子

    ○菅野委員 私も、GNN、テレビ・ジャパン、MICOなどの問題につきまして、まずお伺いをしたいというふうに思うのです。  昨年にはNHKの一応目玉的な施策として注目を集めていたという存在だったと思うのですね。中にはNHKの商業主義化ということのあらわれだと、懸念とか不安の声もなかったわけではないわけなんですけれども、それが今手直しを迫られているということで、その一つとしてこのグローバル・ニュース・ネットワーク構想、いわゆるGNNということなのですけれども、先ほどのやりとりでは、構想段階でまだ計画というところまで進んでいたわけではないんだというふうなお話がありましたが、例えば経過を見てみますと、既にアメリカのABCと契約まで済ませていた、ところがそれを白紙に戻して、現在では、事業化を直接目指すのではなくて、NHKとしてできることを一つ一つ積み上げることが大切であると考えているというふうに変わったわけでございますね。  ですから、一年前、ABCとの契約を結んだときには、例えば事業化ということでの見通しがあったのかなと率直に疑問に思うわけですし、この一年間の大きな変化ということを考えてみますと、情勢の変化なのか、それとも判断、御認識といいますか、考え方が変わったということなのか、その辺をぜひお伺いしたいと思うのです。
  189. 川口幹夫

    川口参考人 GNNについてABCと契約をしたという事実は全くございません。ABCと契約をいたしましたのは、ニュースの相互の交流体制についての調印はもちろんしております。それから、番組を一緒につくりましょう、特に、二十世紀プロジェクトというのがありまして、この二十世紀にいろいろな事柄が起こっておりますけれども、その映像記録を集めて、それで二十一世紀を迎えるに当たってこの一世紀の映像記録を集大成しようじゃないか、こういう話し合いはありました。このことについては大体話がまとまります。そういうのはあります。  ただ、いわゆるGNNというものをABCと契約をしたという事実は全くございませんで、私が申し上げましたように、いわゆる構想の段階でとまっておりました。ですから、私はそれを、構想自体をもう一遍白紙に返す、そして新しい形でのニューズネットワークをつくろう。私、ちょっとふざけてGNNというのもいろいろあって、島さんのはSGNNで、私はKGNNだというようなことを言いましたけれども、それは島さんの考え方は、企業としてスタートさせて、その企業がもたらす利益をうまく利用したいということであったかと思うのですね。私は、企業のあり方考えることは非常に危険である、そのことについて現在の情勢で踏み切ることはできないというふうに考えまして、しかし、私がやはり思うのは、国際情報ネットワークというものは何らかの意味でしなければいけない。特にNHKがなすべきことは、アジアの情報をどうやって取材するか、それを伝搬するかという体制づくりだと思います。それはやりましょう、というようなことで現在進んでいるわけでございます。
  190. 菅野悦子

    ○菅野委員 それでは、テレビ・ジャパンについてもちょっとお聞きしたいと思うのですが、既に北米とヨーロッパでCATVによる有料放送が始まっている。北米の方では二千百世帯ですか、ヨーロッパの方では四千世帯という視聴者ということになっておりますけれども、しかしながら、当初の思惑どおりこの場合も進んでいないというふうに思うのです。  このテレビ・ジャパンですが、直接NHK自身の事業ではないということもありますから、NHK本体の経営にはそう影響はないのかなとも思うのですけれども、例えば、映像をアメリカ、ヨーロッパに送る国際回線、これをNHKのものを使用しているということだと思うのです。昨年のときにもこの料金はだれがどのように負担しているのかということで聞かせていただいたのですけれども、そのときにはNHKの出費にならないような形で検討中だという答弁をいただいているのですけれども、これはどうなっているかお伺いしたいと思うのです。
  191. 中村和夫

    中村(和)参考人 先ほども御答弁いたしましたけれども、世界一周の回線というのは、テレビ・ジャパンだけに供しているものではなくて、ABCニュースを衛星放送用にいただいたり、そのほかのソフトを回線を通じて収録したりというようなことも一緒にやっておりますが、テレビ・ジャパンについてはNHK提供するソフトをアメリカまで届ける、そこの部分まではNHKの費用でやりましょう、そこから先のアメリカ国内で、例えば国内衛星を使ってほかのところにデリバリーするということについては、それは現地法人の費用でやっていただく、ヨーロッパについてもそういうことでございます。
  192. 菅野悦子

    ○菅野委員 ということで、いろいろと見直しも必要な部分もあるのではなかろうかというふうに思うのですが、そこでまとめて会長にお伺いしたいと思うのです。  GNNにしてもテレビ・ジャパンにしても、ニュースの国際交流とか映像の国際交流などという目標といいますか、看板といいますか、それは結構だというふうに思うわけなんです。しかし、これらがほとんど視聴者国民が知らないままに進められてきたということがあります。しかも、先ほどのやりとりもありましたし、昨年の私の質問の中でもわかったことなんですけれども、外にわかってないというだけでなくて、NHKの中でもよくわけがわからないという状況があったのではないかなというふうに思います。昨年の質問準備をした過程でも、GNNは会長に聞いてください、私にはよくわかりませんというふうなお話があったりということがありまして、だから、視聴者の合意はおろか、局内でさえ十分な集団的検討が加えられていたのかなというのはそのときも疑問を持ちまして、そういう質問指摘をしたところなんでございます。  それで、これらの経過ということから見て、公共放送が行う新しい事業あり方ということを考えても、非常に大きな問題を残したのではないかなというふうに思うわけなんです。GNNは、近い将来に事業として成立させることができるとの見通しを得ていないというふうなこともお伺いしておりますけれども、一連のこれらの動きを振り返ってみて、拙速のそしりを免れないのではないかと思うわけでございます。MICOの問題につきましても、これはNHKが直接出資しているのかどうかということはありますけれども、大幅に事業を縮小するということにもなっているということもあるわけです。  これら縮小とか、いろいろな意味で大幅な手直しを行わざるを得ないというふうなこと。これは正すべきは正すという立場からであろうと思いますし、それは適切な決断だろうというふうに思うのですけれども、会長のお考え、とりわけ公共放送が行う新たな事業、こういうときに、その進め方というのですか、基本的な考え方といいますか、そういう点についてどんなふうにお考えか、まとめて最後に承っておきたいなというふうに思うわけです。
  193. 川口幹夫

    川口参考人 NHKが今一番問題にすべきことは、現在の状態から将来のあるべき姿へどう変わっていくのかということじゃないかと思うのです。  それは一つは、受信料を基本にするというふうにいいましても、先行きの見通しはどうなのか、その体制そのものはあくまでも何十年も先までもつものなのか。それならばどうするのか。もしもたないとするならばどうするのかというふうなことまで考えた将来への転換というものを現在の私どもはしなければいけない、そういう構想を考え、そして具体的に計画をするということが必要だと思っております。  それをやる上には、これはNHKが独断であるいは独走してやるべきことでは全くない。先ほど言いましたように、経営の母体は受信料でありますから、その受信者の皆様方の御意見をまず聞くということが大事だ。その代表の国会の御意見というのはまず第一に尊重しなければいけないと思います。そして同時に、経営委員会が先ほど問題になりましたけれども、経営委員会という立場での御検討も、私ども執行部としてはできるだけ頻繁に細かくかつ克明に行って、そしてお互いにはっきりしたコンセンサスを持ちながら公の場に出していく。それについて御理解いただいた上で事業を進めていくというふうにすべきだ。これは私お約束をいたします。  そういう意味で、例えばMICOの問題や、あるいはGNNの問題、そしてテレビ・ジャパンの問題、今後いろいろな実施段階での問題点が起こってまいりますけれども、これも今申し上げましたような意味で、できるだけ細かくまず部内の討議を経て、経営委員会の了解をとって、そして外の受信者の方々、国会の皆さん、郵政省の方々、そういうところに十分にお諮りをして、コンセンサスを得た上ではっきりした形として進めていこう、そういうことを考えております。
  194. 菅野悦子

    ○菅野委員 それでは続きまして、今やテレビ番組の中でも非常に大きな存在になっておりますアニメの制作費の問題についてお聞きをしたいというふうに思うのです。  三月十五日に、アニメ関係者が制作現場の危機を訴えて大きなデモンストレーションを行った。これは昨年も行われまして、マスコミも報道されたので、皆さんも御承知いただいているかと思うのですけれども、アニメの制作現場では、長時間労働と信じられないような低賃金、それから慢性的な人手不足ということで、非常に危機的な状況にあるというふうに言われているわけなんです。  私は、昨年四月のNHKの決算の審議のときに実はこの問題を取り上げました。しかし、そこで当時の小山副会長答弁には非常にがっかりいたしました。小山さんがどうおっしゃったかといいますと、「それ相応の報酬を払って委託をしている」、制作費はちゃんと出している、よくほかの放送局との比較もしていただきたいというふうな答弁であったわけです。  要は、NHKのアニメ制作予算というのはほかと比べて遜色ない、したがって十分であるというふうな趣旨だったと思うのですけれども、今もNHKはそういう御認識なのかなということ。  それから、もしアニメ制作が十分な予算の中で行われているという認識であるとすれば、例えばアニメの音声の収録、こういうものは十分な環境の中で行われているというふうに御認識なのかどうか、あわせてお伺いしたいと思います。
  195. 中村和夫

    中村(和)参考人 御指摘の点は日本俳優連合が何回か申し入れているという件についてだと思いますが、三月二日、それからアニメーション事業協会が三月三日付で申し入れをしております。  それで、第一点目の声優出演料、アニメーションの海外購入番組の吹きかえの部分ですが、NHKは、たしか民放各局よりも早いと思いますが、去年の十月から改善をいたしました。  それから第二点目のアニメーション番組のアフレコ条件の改善についてですが、やはり良質の作品をつくるためにはそういうことが必要だという認識で、誠意を持って対応したいというふうに思っております。  NHKの制作費の点でございますが、昨年来二度ほど話し合いをいたしまして、理解はある程度得られたというふうに思っておりますが、今後も必要に応じて誠実な対応をしたいと思っております。
  196. 菅野悦子

    ○菅野委員 このアニメ制作、どんな状況の中でつくられているかということについてぜひ御認識をいただきたいということで、ちょっと幾つか具体的な話もしてみたいと思うのです。  例えば、今例に挙げて聞いた音声の収録ということについてですけれども、日本俳優連合が、アニメの音声収録、この作画状況を、昨年の春の四十日間、四月九日から五月十八日、それから秋の四週間、十月七日から十一月三日ということに分けて調査をしているのです。それを見ますと、例えばNHK放送しております「ひみつの花園」、これは色つき、つまり絵が完成した状態でせりふを吹き込むということができたのは、昨年の春が四二・七八%、秋が五四・二九%にすぎないわけです。つまり、きちんとした絵がない状態の中で声優さんが声を吹き込むというのが半分ほどあるということですね。しかも、その中で最もひどいというのが、業界用語で自味という言葉で言われているのですが、つまり、絵が全くない状態の中で当てレコが行われるということですけれども、これが、春が二・〇二%、秋は一五・七一%あったということなんです。  今もお話がありました、ことしの三月に日本俳優連合から、NHKと、それだけではなくてほかの民放各局あてにも、専務理事の二谷英明さんの名前で、作画状態の改善、これをぜひ何とかしてくれという、それを求める要望が出ているのです。そこでは、「声の出演者にとって作画状態の改善は、仕事の質、作品の質を維持する必要条件であり、これなくして仕事が成立しないのです。」というふうに言っていらっしゃるのです。  ちなみに昨年、ほかの局と比較をしてみてくれという御答弁だったものですから、これも比較をしてみたのですけれども、他の局でも確かにあるのです。自味での録音などが決してよそも少なくないということで、色つきという完成状況での録音比率ということだけで見てみるならば、NHKより低かったのはテレビ東京だけということで、必ずしも威張った状況じゃないなというふうに思うわけです。  確かに声優さん方への、若干条件を上げるということはやられたようですけれども、こうした作画状態を改善してほしいという要望は今なお非常に強いわけで、良質な番組づくりの上では当然のことだと思いますし、子供たちに夢を与えるアニメ制作ということにかかわる点では最低限の要望だと思います。だからそういう点で、番組制作にかかわる者の良心でもあるというふうに思うのですけれども、この作画状況改善要求に対してはどういうふうに考えていらっしゃるのか、お聞きしたいと思うのです。
  197. 中村和夫

    中村(和)参考人 ただいま御指摘いただきましたように、アニメーションは子供たちに夢を与えるものでございますから、アニメーション産業全体のレベルアップのためにはNHKもそれなりの検討を今後とも続けていくということにしたいと思います。
  198. 菅野悦子

    ○菅野委員 テレビアニメの制作がぎりぎりの状態、綱渡り状態が続いているということで、その最大の問題は、制作現場の低賃金それから長時間労働と、それによる人手不足だと思うのですけれども、声優さんの吹き込みの方の話は今もしたのですが、もうちょっとぜひお話ししておきたいなと思うのは、絵をかいている側の部分です。  例えば具体的な話、現在の動画の単価は一枚百六十円です。中堅の動画マンが一カ月かける絵はどの程度だということで聞いてみますと、五百枚ぐらいしかかけないというのです。そうしたら、これは計算したらどうなるか。月収八万円ですよ。だから、そういう点では本当に、アニメ会社に就職しても、親からの仕送りがなかったらとてもやっていけぬと。いわばアニメが好きだからという若者の夢を食べて今の日本のアニメは成り立っているというふうに言っても過言ではないと思うわけです。  ところがこの数年、それでもやっていけなくなっている。あるアニメ制作会社では、三年間に四十人から二十人、人が半減したと言っています。仕事を覚えて脂が乗ってきたころには結婚を控えて、とても食べていけぬということでやめていく。あるいは親から、大体いつまですねをかじっていたら気が済むんだというふうに言われましてやめていく。そしてだれもいなくなったという状況が近づいているという、そういう非常な危機感を表明するアニメ関係者は今非常に多いわけです。音声収録の綱渡り状態も、ここ五年ほどそういう状況の中で急速に進んだと聞いています。  テレビ局に、実際アニメ制作にかかる経費、制作費をぜひ出してほしいというのが制作現場からの切実な声になっておりまして、さっきもちょっとお話がありました日俳連だけでなくて、アニメーション事業協会、ここからもNHK民放各局にこの三月、三点の要望が出されていると思うのです。  その一つは、制作費を、三十分物、動画が四千枚以内というものであれば、一本当たり最低千六百万にしてほしいということで、非常に要望が具体的でございます。その一点。それから二つ目は、正常な制作スケジュールでということで、例えば絵のヨンテインから初号までのスケジュールを最低十六週間欲しいというふうなスケジュールの問題。それから、一年に一回以上、ぜひ定期的な話し合いの場を持ってほしいというふうな要望がアニメーション事業協会の方から具体的に出ているのですけれども、多分NHKにもその要望が行っていると思いますが、これにはどういうふうにお答えするつもりか、お伺いしたいと思うのです。
  199. 中村和夫

    中村(和)参考人 その点についても誠実に話し合いに応じたいと思っております。
  200. 菅野悦子

    ○菅野委員 NHKの制作費につきましては、確かに他の民放よりは高いと言われておりまして、それも事実だろうと思うのですが、ただ、途中で随分と経過するところがありまして、末端の制作現場に行くと、ほとんど民放と変わらないという話も聞いております。例えば三十分物で千二百万円出していると言われている場合でも、NHKからNHKエンタープライズを経て元請と言われるような会社、この間の実績では、学研とかヘラルドなどを経て実際のアニメ制作会社に出る、その段階では九百万ぐらいになっているというふうなことで、実際の具体的な現場におりてきたときには、全く変わらないところか、逆に、絵の枚数とか、コマーシャルがない時間の長さとかいう点ではどうなのかなというふうな声も聞いておりますので、その辺もぜひ一度調べていただけたらということも、あわせてお願いをしておきたいと思います。  そこで、この問題でも会長の御意見をぜひお聞きしておきたいと思うのですけれども、今もお話がありましたように、アニメはやはり子供たちに夢を与えると言われております。しかし、現実のテレビアニメというのは、アニメ好きの若者の夢を食いつぶしてきたというのが率直な実情で、親の仕送りとか、あるいは生活ができないような低賃金というふうな状況の中で、徹夜も含む長時間労働、これに支えられてきているということなんです。日本のアニメは、国際的にもその技術は非常に評価されていますし、日本放送文化の中でもアニメは非常に重要な位置を占めているというふうに思うのですね。ところが制作現場は、今言ったように、非常にお寒い限りということなんです。こういう実態を直視をしていただいて、放送文化を発展させるという立場からも、民放とも歩調を合わせて、ぜひこの種の問題解決に向かっていただきたいというふうに思うのですけれども、一言お考えを聞いておきたいと思います。
  201. 川口幹夫

    川口参考人 アニメ制作についての細かい御指摘をありがとうございました。私も前から、アニメーション番組についてのいろいろな問題があるということは、よく承知しております。そういう現場の方から、あるいは俳優連合等々を通じて、NHKの方にも御依頼が来ているということも知っております。担当の現場の者にこのお話の趣旨を伝えまして、誠実に、前向きに対応するようにいたします。
  202. 菅野悦子

    ○菅野委員 ではもう一点、NHKの労働時間についてお聞きしたいというふうに思うのです。  この間もいろいろな方とのやりとりがございましたが、昨年も私、この問題を質問させていただいたわけなんです。年間総労働時間千八百時間、これはもう、今やNHKに限らず、日本全体の努力目標ということになっておりまして、閣議決定の達成年度にもなってきているわけなんです。しかし、そういう状況の中でも、NHKの実態というのは、時短どころか、残念ながら労働時間延長に向かっているのではないかということを率直に懸念するわけでございます。職員の年間総労働時間は、昭和六十年度は二千五十時間だったんですけれども、それが減るどころかふえ続けて、平成年度は二千百時間になっている。いわゆる残業の方も、月平均が、昭和六十年度は二十七・八時間だったものが、平成年度は三十二・八時間、これも毎年ふえ続けてきたということであります。職員の皆さん方がいい番組をつくるためにということで努力をされている、その努力は買うとしても、やはり公共放送の職場がこんな状況ではいかがなものかというふうに思うわけなんですね。NHKとして、時短に向かうのとは逆行してきたというこの現状についてどのような認識でおられるのか、お伺いしたいと思うのです。
  203. 安藤龍男

    ○安藤参考人 NHKの総労働時間でございますけれども、先生指摘のとおりでございます。平成年度の総労働時間ですが、二千百時間ということでございまして、確かにここ一、二年、時間外もふえてきておりまして、総労働時間も若干ふえてきております。特に放送現場がそれよりもまだ多くなっておりまして、そういう中で、協会としましても、全体的な総労働時間短縮の社会的な要請といいますか、機運にもこたえる意味からも、いろいろな施策をやっております。  例えば、業務のスクラップを進めますとともに、フレックスタイムを導入するとか、時間外を少しでも減らすための、労働組合と相談をして、ノー残業デーを実施するとか、そういうような形で、ここのところ若干ですが、まだ具体的に御報告できるような数字にはなっておりませんけれども、若干増加を抑制してきております。さらに、この四月からは、四週間で二時間の時短を含む週休二日制というものを実施しております。放送事業というのは、非常に自主裁量的な要素もありましてなかなか難しいわけでございますけれども、こういう状況の中で、これからも就業環境、労働条件の改善に努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  204. 菅野悦子

    ○菅野委員 本当に、労働時間の短縮問題というのは、それを裏づける具体的な対策がなければ机上の空論になるというふうに思うのですね。仕事は減るどころかふえ続ける、人は減り続ける。そこで労働時間が短くなるなんというのはないわけでして、昨年も私、ここでも取り上げさせていただきましたが、残念ながら現場の、特に制作現場の実態というのは、もう過労死予備軍というふうな状況がありまして、「京、ふたり」のディレクターが急性死で亡くなられたというふうな悲しい事故もあったわけですから、そういう点ではこの問題は、放送の特殊性とか云々とか言ってないで、ぜひ具体的に努力をしていただきたいというふうに思うわけです。  だから、どうやって時短を進めるかというのは、今も言いましたように具体的な計画が要るだろうというふうに思いますので、そのことをぜひNHKの方でも、千八百時間、ここへ接近するように、これを乗り越えるように、ぜひ頑張っていただきますように、重ねてお願いを申し上げまして、時間が参りましたので終わりたいと思います。
  205. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次に、中井 洽君。
  206. 中井洽

    ○中井委員 大臣も、会長以下NHKの方も御苦労さまでございます。大変長時間になりまして、私が最後でございますので、もし少し我慢をしておつき合いをいただきます。ただ、いつも最後でございまして、これだけ大勢の方が質問なさいますと大半が重なり合っておりますので、あるいは通告してお願いしたのと違う形でお尋ねしたり、他の観点からお尋ねということになろうかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。  先ほど田並議員の議論の中で、交付金の増額のことで質疑がございまして、郵政大臣がかなり踏み込んだ御答弁をいただいた。私どもは大変歓迎をいたします。国際放送に対する交付金ということだけじゃなしに、受信料制度がいつまでもつのかということを考えると、私は、国としてNHKにお金を出していく方法は幾つもあると思うのであります。そういう観点から一つNHKにお尋ねいたしますが、年間、例えば国会の中継あるいは政府の広報、これらでどのぐらいの放送時間をNHKはお使いになっているのか、資料がありましたらお答えいただきます。
  207. 中村和夫

    中村(和)参考人 国会中継の時間についてお答えいたします。  昨年度平成年度に大体百九十時間国会中継をやっております。今年度も既に百八十数時間国会中継をやっておりますので、大体同様。いつも決まっている代表質問予算委員会等々のほか、特別委員会で毎年中継がふえておるというようなこともございまして、おととしと比べると大体二十時間くらいふえているはずでございます。
  208. 中井洽

    ○中井委員 例えばこういう国会中継的なことは国会の費用から中継費を少し出していく、そういった発想というのはあり得ると私は思うのです。大臣、先ほどの田並先生答弁に引き続いて踏み込んでお答えをいただければと思いますが、いかがですか。
  209. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 これは中井委員御存じのとおり、国会にも、いわゆる予算制度でもありますし、あるいはまたNHKの公共性、唯一と言っていい全国一律どこでも情報を得ることができるという最大のネットワークの責任と使命というようなことをいろいろ考えてみますと、公共性というものの占める役割と、今申される国会とか政府とかが講ずる予算措置の兼ね合いというのはかなり難しい問題だと思うのです。  むしろ中井委員の方が経験豊富でいらっしゃいますし、どうも私が今の立場でここで明言できるような簡単な問題ではないような感じもしまして、これはひとつ各党で今後いろいろな場で検討してみたらいかがかなという感じがいたします。
  210. 中井洽

    ○中井委員 私も逓信委員をしてNHK予算も何回も質問させていただきました。何回かごの問題の提議をしたこともございます。私どもの党は、お金を出すということと中立性、公平性を欠くということとはまた別だ、こんなふうに考えております。  もう一つ郵政省NHKかどちらかお答えをいただきたいと思うのですが、この後電波利用税の法案が出てまいります。これで、今NHKで一年間に払われる費用というのは大体幾らぐらいだという計算になっていますか。
  211. 小野沢知之

    小野沢政府委員 お答え申し上げます。  約三億円でございます。
  212. 中井洽

    ○中井委員 電波利用税が、かなり大きな法案でありますが、かなり目的税的に使われる。この金額、目的税的に使われますが、その目的税そのものが今までの郵政の予算の中にも入っておった分野がある。そうすると、郵政の予算的には、それは私どもからすればあいてくる。そういった分で、NHKがこれを持って、三億くらいですから大したことはないけれども、これらの分も持つというようなことを含めていろいろなやり方があると思います。  私どもの党も大いに提言を続けていきたいと思いますが、大臣の方におかれましても、あるいは与党、各党におかれましても十分御協議いただく、そしてNHKの長期的な財政安定、こういったことに私どもは寄与していきたいと考えております。  もう一つ、それでは政治や行政はお金を出したらどうか、出すのはどうだという議論があると思うのでありますが、地方のU局においてはかなり議会中継あるいは県や自治体の広報代ということで出していると思うのでありますけれども、その点郵政省は統計等お持ちですか。
  213. 小野沢知之

    小野沢政府委員 ただいま持ち合わせておりませんので、早速集計して、整いましたら御提出させていただきます。
  214. 中井洽

    ○中井委員 私どもの郷里の三重テレビというところでも県議会中継ということも含めてかなり県が予算化をして出しておる。それがまだなかなか黒字というわけにはいかないというところであります。そういう意味で、NHKに政府が出していく、あるいは国会が出していくというのは決して間違いではない、こんなことも私はあわせ申し上げておきたい。  それから同時に、各地方のU局におきましては自治体がかなり出資金を出しているわけであります。この出資金の比率と、例えばCATVなどは最近始まりましたからほぼ三%ぐらいという形で郵政省が御指導になってそろえておられる。しかし、地方自治体のU局への出資というのは、場合によったら二十数%出しているところもあると私どもは聞かせていただいております用地方自治体の長さんというのは大変な権力を持っておる。そして多選の方がこのごろ多い。そこで二割も十数%も出す。そして補助金も出ておる、交付金が出ておる。そこらにおいては放送の中立が守られておる。しかしNHKは中立を守るためにお金を出さないというのは、ちょっと違うのじゃないかなという感じがいたします。  そういう議論の中で、U局が開局される場合に地方自治体の出資というのは一定の枠をかけておるのか、あるいはかけずにそのときそのときで調整をなさっておるのか、この際郵政省のお考えをお尋ねいたします。
  215. 小野沢知之

    小野沢政府委員 お答え申し上げます。  地方公共団体の出資割合がどの程度が適切かということにつきましては、当該地域におきます放送事業経営基盤だとか申請者の状況等いろいろな事情から決まるものでありまして、具体的な数字を申し上げることは難しいのですけれども、私どもといたしましては、放送事業者がその経営に関して地方公共団体に過度に依存することは基本的には好ましくないというふうに考えております。  こうした考え方に基づきまして、いわゆる一本化調整等を行う際にも申請者等関係者を指導しておりまして、現実の数字といたしまして、平成年度以降に開局したテレビジョン放送事業者、予備免許中の者を含みますが、十四社のうち、地方公共団体が出資しておりますのは七社でございまして、その七社の内訳は、出資比率は〇・五%から四%、平均いたしますと三・三%弱ということでございます。そういう流れで指導いたしております。
  216. 中井洽

    ○中井委員 もう一つNHK会長にお尋ねをいたします。  過日新聞で、このNHK予算案が政府へ出てくる前に自民党の総務会へお出かけになられて、長良川のニュース等でいろいろと御議論があったと報じられておりました。これはこれでまた別問題であろうかと思って言いませんが、予算案が出される前には大体自民党の総務会等へ会長みずから出かけられる、これが長年の慣例でありますか。
  217. 川口幹夫

    川口参考人 慣例として会長が出ていっていろいろな御質問にお答えするというふうな形になっております。
  218. 中井洽

    ○中井委員 社会党さんや公明党さんへもお出かけになられますか。
  219. 川口幹夫

    川口参考人 社会党さんの方にはお伺いいたしました。
  220. 中井洽

    ○中井委員 私ども民社党へは一回もお出かけいただいたことはないわけでございまして、これはどういう基準になっておるのですか。
  221. 川口幹夫

    川口参考人 実は私も基準のことは全く知らないのですが、慣例だからということで、では慣例どおりするかということで行っておりますだけで、全く他意はございません。
  222. 中井洽

    ○中井委員 別にこだわるわけではございませんし、来てくれないからといってひがむわけでもありませんし、私どもは私どもでまじめに御説明を聞き、いろいろと御質疑をさせていただきながら賛否を決めていっておるわけでございます。しかし、社会党さんと自民党さんだけというとやはりちょっと私どもも思わざるを得ない。行かれないなら行かれない。例えば、国税庁長官は政府委員でありますが国会へ、予算委員会でも答弁しません。次長であります。これはどうしてかということがいろいろ議論のあるところでございます。しかし、そういったことも含めて、会長国会へ出てこられないというのは僕は違うと思いますが、政党へどういう形のときに行くんだということは、やはり世間の人から見て、国民から見てどうもおかしいではないかという形にとられないようにきちっと基準をおつくりいただきたい。このことを注文をさせていただいておきます。  それから、まだ少し時間がありますので、長良川のニュースのことをやりたかったのでありますが、NHKのニュースというのは大変信頼のあるものだし、NHKのニュースだけは必ず見るという方がたくさんいらっしゃる。これからもレベルの高い、また視野の広いニュースを続けていただく、これが私どもの願いでありますが、時々見ておりますと、どうしてこれがニュースになるんだろうというのが出てくる。  例えば、三月六日の朝、モーニングワイドという番組で、福島県のある地域の原子力発電所の増設に絡んでのニュースがございました。私はまた、反対運動がいっぱいあってニュースになるのかな、こう思っておりましたら、何にも反対運動はない。町議会は全会一致で増設の決議をして要請をした。これに対してNHK側がそれがニュースだと、反対運動がないのがおかしい、こういう形で朝の全国ニュースの中で流される。こういうのを見ますと、ニュースのあり方、これだけじゃありませんが、チェックというものをどこでおやりになっておるんだろうか、これをニュースとしてやるんだ、そして責任を持つんだ、こういうのはNHKの内部でどういうチェック機能があるんだろうと思うわけであります。これらのチェック機能というのはどういう形になっておられるのか、お答えをいただきます。
  223. 中村和夫

    中村(和)参考人 番組のチェック機能の御質問ですが、番組が提案される段階で、NHK番組の編集に当たって守らなければならない点が四つございます。公安及び善良な風俗を害しない、政治的に公平である、報道は真実を曲げないこと、それから特に、意見が対立する問題については多様な意見を公平にきちっと伝えることに留意するということでございますから、当該番組のデスクなり編集会議でそういう点も踏まえてその提案を審議する、それで制作の過程でそのチーフプロデューサーなり番組の責任者が責任を持って見るという形になっております。
  224. 中井洽

    ○中井委員 そのチーフプロデューサーなりチェックをされる方が現場の方を十分本当に掌握してチェックをし切っているか、こういったこと。あるいはまた外部からいろいろな御批判があったときに、内部でそれをどう消化して、どういうふうに見直しをしたり議論をしたり、それに対して反論をするのか。そこらが僕らは少しわからないのですが、その点いかがですか。
  225. 中村和夫

    中村(和)参考人 これまでのいろいろな経験から、視聴者会議とか番組審議会、これは地方も含めてでございますが、そのほか、番組を何回か出したりニュースを出したりしますと、電話や手紙による御意見というのが年間に四百七十万件ぐらいございますから、どういう御意見があるかということをきちんと受けとめて、またそれを現場にフィードバックして、それでさらにどういう形で番組を構成していったらいいのかということを検討しております。
  226. 中井洽

    ○中井委員 それでは、次に移ります。  四年度予算では人員削減という形で三百三十人、昨年より三十人ふえておる。そしてこの大臣の意見書でもそのことについて述べられております。しかし、毎回毎回NHKのこの人員問題について御質疑を申し上げているわけですが、去年ぐらいから、教育テレビ等をつくられたとき大量にお採りになった人たちがちょうどこれは定年退職に差しかかっておられる。したがって、七、八百人自然減があるんじゃないか。これが十年ぐらい続くと私どもは聞かしていただいております。  そういう中で、先ほどの番組の、自主番組の量、あるいは購入の量、いろいろな比率がおありでしょうが、テレビを四波お持ちである、ハイビジョンの方もいろいろと人が要る、こういったときに人員構成というものをどうあるべきだ、あるいはまた世代間の人員あるいは現場でのスタッフ、パートなんかちょっと聞かしていただければかなり多い人数になっております。一日平均全国で千八百人パートをお使いになっておる。本部では一日平均五百人をパートをお使いになっておる。こういう中で、この人員問題を会長はどういうふうにお考えになっておるか、なかなか適正な人員というのは難しいことだと思いますが、お考えをお尋ねをいたします。
  227. 川口幹夫

    川口参考人 おっしゃるとおり、昭和三十四年の教育テレビの開始のときに相当たくさんの人間を採用したわけです。三十五年も引き続いて採用いたしまして、その結果がある程度後々のNHK経営を圧迫してきたというふうな事実はございます。ただ、それを今の時期に退職者が多い、じゃその分はまた同じ数を採っていくのかというふうなことになりますと、それをやったらまた同じことがこれから何十年かの間に起こってくるわけです。したがって、私は今そこのところに何か一つの工夫はないかというふうに考えております。  したがって、それは新しい人たちを採用するだけじゃなくて、現在持っている中で非常にすぐれた能力を持っている人、あるいは協会にこれからエキスパートとしてまだまだ仕事ができる人、そういうのはできるだけ残していこう、そして仕事をしてもらおうというふうなこととか、それからいわゆるキャリアの採用、これまで外でもっていろいろな仕事をしてこられてすぐNHKの中で役に立っていただく方、そういう方の採用とか、つまり正規の職員の採用をやって、それで職員として仕事をしてもらうということだけじゃなくて、いろいろなバリエーションを考えて、トータルでNHK番組を支えていく、そういう形ができないものかというふうに考えておりまして、今度も安藤人事担当と今いろいろ詰めておりますけれども、この人数的な危機をどのような形で乗り切るか、大いに知恵を出し合って頑張っていこうというふうに思っております。
  228. 中井洽

    ○中井委員 最後に、これもいつもお尋ねをすることでありますが、契約件数のことについてお尋ねをいたします。  これは、ことしの予算では、経営計画の本年度分から比べてかなり契約件数を減らしておりますが、これはどういった理由ですか。
  229. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 経営計画に対して予算が不足しているのは、二つの面がございます。一つは、総数増加目標がいろいろな事情で下方修正せざるを得なかったということと、それから衛星増加目標を下方修正せざるを得なかったということでございますが、その一番大きな原因は、やはり五カ年計画を策定した当初に比べまして、衛星増加目標の契約というのが非常に難しい。一つは、例えば予想し得なかったように衛星の取り次ぎが難しかった、そのための人員確保も難しかったというふうなことや何かがございます。そういう事情がございまして、総数目標の方も当初の四十三万というのを四十万にせざるを得なかったということでございます。  ただ、衛星につきましては、年度ごとの数は若干下方修正いたしましたけれども、経営計画で策定しましたように、平成年度末九百万という確保は、これはぜひ確保していきたいものだなというふうなことで、今営業活動の基盤整備をいろいろやっているところでございます。その一つが新営業システムの導入でございますし、それからもう一つは振替払い込みを中心とする新しい集金方式、そういったものをやりながら基盤強化を果たしていきたい。それから、間接集金については経営計画で定めた八四%を一%上回る八五%を今年度達成しようということにしておりますので、増加計画の方では下回った下方修正をせざるを得なかったのですけれども、そういうことで平成年度末に向けて基盤強化を図っているというのが実情でございます。
  230. 中井洽

    ○中井委員 お尋ねをするたびに不思議に思うわけでありますが、これはお払いいただいて当たり前のお金であります。経営計画そのものも、私どもが質疑の中でこれをよしとして、そしてこれは六年度赤字が出ることを承知でみんな質疑をしているわけであります。経営計画で立てた契約数を上回った、しかし突発的なことやら人件費やら上がって、こうでこうで赤字が想像以上に大きかったというのならわかるけれども、いろいろな事情がありまして下回らざるを得ない、六年には何とか経営計画を達成したいなと思う、そんなことでいいのですか。難しいことはみんな承知しているじゃないですか。しかし、こういう形でやりますと言ってNHKはお出しになったわけであります。衛星放送契約あり方等もそうであります。衛星放送なんかは想像以上に数がふえているはずであります。それを契約件数がうまくいかないというのは、大変悪いけれどもNHKの御努力不足、国民の中にも理解不足もあるのです。しかし、そんなのんきなことで、私は経営計画から下回るような件数を予算として出されるというのは情けないと思います。もう一度答弁してください。
  231. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 先ほど二つの面で収入不足が生じたというふうに申し上げましたけれども、例えば総数の増加目標については、五カ年計画の策定当時には予測し得なかった状況というのは、一つ衛星契約の開発活動が当初の予測をはるかに超えた手間と労力を要する状況であったということでございます。それからもう一つは、人手不足が大変深刻化してきまして、外務業務の労働力確保が大変困難になってきたということでございます。それから、ロックマンション等の増加等で営業活動をめぐる環境が非常に難しくなってまいったということでございます。そのほか、衛星に関しても難しい状況がございますので、申し上げると大変弁解になりまして申しわけないと思っておりますので、私どもとしては、その途中年度では下回る状況がありますけれども、平成年度末の衛星九百万というのはぜひとも達成したいということを目指して今頑張っているというところでございます。
  232. 中井洽

    ○中井委員 これもたびたび言いますが、NTTだって電力会社だって新聞だって、みんなそれは難しい状況の中で集金しているわけであります。NHKさんの場合にはお金を払ってくれなかったらとめるというわけにいかない、ですから大きな武器はないということはわかりますけれども、しかし、何か残ってもいいんだ、契約は全部できなくてもいいんだという発想がどうしてもNHK全体におありになるんじゃないか。やはり収入のもとですからきちっとお取りになる、そのために必死の御努力をされる、そういう姿勢が必要だと私は思います。  これも平成年度を見せていただきますが、年度内増減四十万、こう言いますが、これは衛星カラー契約でふえて、カラー契約からかわってその分でふえるだけであって、カラー契約に意識的にお入りになっていない方あるいは払っていらっしゃらない方、これらをどれだけふやしたかということなんかわかっておりませんし、この数字から見ると、そんなにカラー契約を必死になって九〇%以上あるいは九十数%に至るまで契約料をちょうだいするんだ、受信料をちょうだいするんだ、こういう形でおやりになっていないと思うのですが、いかがですか。
  233. 諏訪恭也

    ○諏訪参考人 確かに経営計画を下回っているというふうなことで、数字を見ますとおしかりを受けるような状態でございますけれども、現場は現場でそれなりに大変頑張っているな。例えば衛星契約でいいますと、今年度我々が予測しました衛星の普及が約二〇%を下回ったわけでございますけれども、しかし、契約については目標どおり百四十五万を達成するところまで参っております。  それからカラー契約のことでございますけれども、現在カラーの契約率が九七%ということでございますので、ほぼ実態に近いものをやっております。私どももいろいろな制約の中で限られたリソースの中で精いっぱいやっているということをぜひ御理解いただきたいなと思います。
  234. 中井洽

    ○中井委員 会長最後に、平成年度には経営計画どおりの契約規模を達成する、こういったことをきちっとお約束をいただきたいと思います。
  235. 川口幹夫

    川口参考人 受信料NHK経営の基幹であるということを繰り返して申し上げておりますけれども、その受信料のまた基幹になるのは公平負担ということだと思うのです。けさほどから申し上げておりますように、私は、営業という仕事は単にNHKの営業がやるだけでなくて、NHK全部が、営業の仕事をそれぞれが引き受けているんだという意気込みでこれからやってまいります。できるだけの努力をやって、そしてあらかじめお約束したことについては必死になって頑張るということをお約束いたします。
  236. 中井洽

    ○中井委員 終わります。
  237. 谷垣禎一

    谷垣委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  238. 谷垣禎一

    谷垣委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について採決いたします。  本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  239. 谷垣禎一

    谷垣委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。     —————————————
  240. 谷垣禎一

    谷垣委員長 ただいま議決いたしました本件に対し、坂井隆憲君外三名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を聴取いたします。坂井隆憲君。
  241. 坂井隆憲

    坂井(隆)委員 ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議(案)   政府並びに日本放送協会は、次の各項の実施に努めるべきである。  一 放送社会影響の重大性及び公共放送に対する国民の期待を深く認識し、放送の不偏不党と表現の自由の確保に一層努めること。  一 協会経営委員会については、最高意思決定機関としての機能が十分発揮されるよう特段に配意すること。  一 協会は、その経営視聴者負担する受信料によることをさらに自覚し、一層創造的でかつ効率的な運営をめざすとともに、職員の処遇についても配意すること。  一 協会は、視聴者国民に対して経営内容を積極的に開示するとともに、受信料制度の理解の促進を図り、効率的な営業体制確保しつつ、衛星料金を含む受信者の確実な把握と収納確保に努め、負担の公平を期すること。  一 衛星放送については、その継続的・安定的な実施に万全を期するとともに、難視聴解消の目的を十分踏まえつつ、番組の充実、ハイビジョンの実用化促進に努め、衛星放送の発展を図るため、将来に向けて衛星に係る経理の明確化等について検討すること。  一 国際化時代に即応した映像メディアによる国際交流を推進するとともに、国際放送重要性にかんがみ、海外中継局の充実、交付金等実施経費について一層配慮すること。  一 協会は、地域社会の発展に貢献する情報番組提供する等、地域放送の一層の充実、強化に努めること。 以上のとおりであります。  この附帯決議案は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党の四派共同提案に係るものでありまして、案文は、当委員会における質疑の動向等を参酌して作成されたものでありますから、各項目についての説明を省かせていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げる次第であります。  以上であります。
  242. 谷垣禎一

    谷垣委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  243. 谷垣禎一

    谷垣委員長 起立総員。よって、本件に対し、附帯決議を付することに決しました。  この際、渡辺郵政大臣及び川日本放送協会会長から発言を求められておりますので、これを許します。渡辺郵政大臣
  244. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 ただいま日本放送協会平成年度収支予算等につきましては、慎重なる御審議の上に御承認をいただき、厚く御礼を申し上げます。  本委員会の御審議を通じて承りました貴重な御意見並びにただいまの附帯決議につきましては、今後の放送行政を進めるに当たり、御趣旨を十二分に尊重してまいりたいと存じます。  まことにありがとうございました。(拍手)
  245. 谷垣禎一

  246. 川口幹夫

    川口参考人 日本放送協会平成年度収支予算事業計画及び資金計画につきまして、ただいま御承認を賜りまして、厚くお礼申し上げます。  本予算を執行するに当たりましては、御審議の過程で種々御開陳いただきました御意見並びに郵政大臣意見書の御趣旨を十分生かしてまいりたいと考えております。  また、ただいまの附帯決議につきましては、協会経営の根幹をなすものでございますので、これを外しまして、執行の万全を期したいと考えている次第でございます。  まことにありがとうございました。(拍手)     —————————————
  247. 谷垣禎一

    谷垣委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  248. 谷垣禎一

    谷垣委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  249. 谷垣禎一

    谷垣委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十三分散会      ————◇—————