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1992-04-16 第123回国会 衆議院 地方行政委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年四月十六日(木曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 中島  衛君    理事 岡島 正之君 理事 小坂 憲次君    理事 福永 信彦君 理事 古屋 圭司君    理事 増田 敏男君 理事 谷村 啓介君    理事 中沢 健次君 理事 小谷 輝二君       井奥 貞雄君    石橋 一弥君       佐藤謙一郎君    田邉 國男君       谷  洋一君    中谷  元君       森田  一君    遠藤  登君       小川  信君    北川 昌典君       北沢 清功君    小林  守君       山口 鶴男君    山口那津男君       吉井 光照君    吉井 英勝君       高木 義明君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 羽田  孜君         自 治 大 臣 塩川正十郎君  出席政府委員         大蔵大臣官房総         務審議官    日高 壮平君         大蔵大臣官房審         議官      薄井 信明君         大蔵省主計局次         長       田波 耕治君         大蔵省関税局長 吉田 道弘君         国税庁課税部長 坂本 導聰君         自治大臣官房長 森  繁一君         自治大臣官房総         務審議官    滝   実君         自治大臣官房審         議官      遠藤 安彦君         自治大臣官房審         議官      石川 嘉延君         自治省行政局長 紀内 隆宏君         自治省行政局公         務員部長    秋本 敏文君         自治省財政局長 湯浅 利夫君         自治省税務局長 杉原 正純君  委員外出席者         外務省国際連合         局国連政策課長 神余 隆博君         国税省国税不服         審判所次長   中島 富雄君         厚生省社会局更         生課長     松尾 武昌君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部障害者雇         用対策課長   坂本由紀子君         建設省住宅局住         宅総務課長   小川 忠男君         建設省住宅局住         宅建設課長   中澤 守正君         地方行政委員会         調査室長    渡辺  功君     ————————————— 委員の異動 四月十五日  辞任         補欠選任   小川  信君     吉岡 賢治君   山口那津男君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   吉岡 賢治君     小川  信君   坂井 弘一君     山口那津男君 同月十六日  辞任         補欠選任   森  喜朗君     佐藤謙一郎君   神田  厚君     高木 義明君 同日  辞任         補欠選任   佐藤謙一郎君     森  喜朗君   高木 義明君     神田  厚君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出第二五号)      ————◇—————
  2. 中島衛

    中島委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北沢清功君。
  3. 北沢清功

    北沢委員 おはようございます。  まず、一昨日それぞれ地方交付税についての総論的な御質問がございまして幾つかの問題が出されたわけでありますが、特にその中で山村の問題、特に林業の問題が出されまして、その中での一つ過疎対策といいますか、そういうものの理念について塩川自治大臣から、林業の問題は企業ではないのだ、企業的ベースではないのだ、国民共有の資産をいかに守るかというような意味での御答弁がありまして、私は非常に感銘を深くしたわけでございます。  実は、昨年の十月私はこの地方行政委員会で、特に森林面積に応じた交付税過疎地域に投入をしろ、そういうようなことについてお尋ねをし、またマンパワー対策看護大学にも触れて当特質問したわけでありますが、これらは自治省において非常に積極的に対応されまして、今回地方単独事業費という形でそれぞれ大きな実現を見たということ、これはいろいろ、ふるさと創生論もございますが、いわゆる町村日本の抱えているあらゆる問題というものを地方段階でどういうふうに計画的に具体化をするかという意味で、私はこの間における皆さん努力を非常に多とするものであります。特に、一昨日自治大臣から本を示されたわけで、「これでわかる地方単独事業」という本でありまして、これは町村の村長さんであるとか議員さんの知恵袋というふうに言われていますが、知恵袋中身を非常に適切に表示されたという意味で、今申し上げる評価とともに評価をいたしたいと思います。  しかし、まだまだ幾つかの問題点がございますので、これらについてはさらに次年度に向けて精査をし、また不備を補充するという形が必要ではないかという意味で、私どもも、積極的に評価をしながらなおかつその拡大強化を図っていくために努力をいたしたいというふうに思っております。  そこでまず、本年から新たに設けられました企画振興費につきまして御質問いたしますが、これは私ども社会党地公労地方交付税改革の指標として昨年の十二月に申し入れました地方交付税制度改革大綱の中で、森林組合による森林維持管理自然環境保護、それから水資源確保のための森林用地取得などを主眼とした環境保全費提言したのでありますが、これがこのたび日の目を見たものと理解をするところでありまして、これは今日ますます重要になってきております環境行政の将来にとってまことに意義があるし、また、我が党が提言をいたしました環境保全のために資することを願っているわけであります。  これが我が党の認識というか見解でありますが、自治省としてはどのような構想を持ってこの企画振興費を創設されたか、改めて自治省見解をお聞かせいただきたいと思います。
  4. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 平成四年度の地方交付税法、ただいま御審議いただいている内容の中に、単位費用の中で従来その他の諸費の中に含まれていたいろいろな費目を分割いたしまして、企画振興費という費目を新たに都道府県分市町村分について設けさせていただきました。  この理由は、今先生御指摘のように、環境保全対策というような問題が最近地方にとっても非常に大きなテーマになってきたということを踏まえ、これらの経費地方財政計画にも充実したわけでございまして、これを基準財政需要額に的確に算入したいという気持ち、それから、かねてから行われております地域づくり推進事業というようなものがだんだんと市町村事業都道府県事業として定着してきたということもございまして、こういう費目を別に分割する必要があるのじゃないかということでございます。  これまでも地方団体が新たに取り組んできました地域づくりとか公害対策というようなものは、すべてその他の諸費の中に算入してきたわけでございますが、その他の諸費というのはもともとは管理的な経費人事管理だとか財政管理だとか文書広報費というような管理的な経費を主体にして計上していたものでございますので、この中にいつまでも入れておくということは、経費の性格といたしましても適当でないのではないか、こういうこともございますし、これらの経費は将来積極的に拡充していく必要があるということを考えますと、この際、その他の諸費から分割して新しく企画振興費という費目で独立させた方がいいのではないか、こういうことでやらせていただいたものでございます。
  5. 北沢清功

    北沢委員 そういったお考えで創設をされました企画振興費でありますが、特にここ一週間、いわゆる地球環境という問題から発していろいろ環境問題がクローズアップされております。市町村段階で身近にそういう問題が取り上げられるということは、ある面では自治省先見性といいますか、具体的な把握が非常に正しかったというふうに理解されるわけですが、振興費の具体的な中身は一体どういうふうになっているのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  6. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 企画振興費県分におきましては、地域振興費文化振興費環境対策費、それから企画調整費、こういう費目に分けまして、例えば地域振興費でございますと、地域づくり国際化推進、あるいは社会参加支援というような問題、それから市町村振興という自治振興関係経済振興対策、それから情報化対策、こういうようなものを入れております。文化振興費はそれぞれの地域文化振興のための経費。それから環境対策費といたしましては、一般的な環境対策のほかに自然環境保全あるいは公害対策公害センター運営費だとか自然公園費、こういうようなものを費目として計上いたしております。それから企画調整費といたしましては、全般的な企画調整費のほか、交通安全の推進消費者行政土地対策、こういうようなものを計上いたしております。  それから市町村分につきましては、町づくり推進費環境対策文化振興企画調整、こういう大きな費目に分けまして、町づくり推進費の中には、地域づくり推進とか国際化推進社会参加支援情報化対策推進、近隣の自治組織関係経費、こういうものを入れております。それから環境対策といたしましては、環境対策費公害対策費という経費で入れております。それから文化振興は、文化振興という形で全般的に計上しておりますが、企画調整費としては、それぞれの市町村の一般的な企画振興のほかに交通安全対策消費者行政土地対策、こういうような経費を見込みまして一つ企画振興費という形で費目を立てたものでございます。
  7. 北沢清功

    北沢委員 今御答弁をいただいた中で、環境保全といってもいろいろなものが考えられると思います。例えば具体的にお尋ねをいたしますが、水資源確保のための森林用地獲得といったようなものに適用されるでしょうか。また、今日環境破壊土地開発の波は広く及んでおるわけでありますが、ゴルフ場の農業やリゾート開発による水質汚染は深刻なものがあります。各自治体水源汚染から守るために施策を施さなければならないわけでありますが、この用地取得もなかなか思うに任せない現状であります。これは単にその自治体だけの問題ではなくて、下流に位置をする住民飲用水を守るという点から水源汚染されないようにするという具体的な目的での用地取得が急務であろうと思うわけであります。  特に、私は長野県の出身でございますが、今回長野県では水環境保全条例というものを実は全国に先駆けてつくりました。そこで、これをつくる過程というのは、議会側、特に我が党との関係について、提起をした立場から相当議論があったのですが、そのことを大きく阻んでおったのはやはり私権の制限といいますか、水を汚染するところを守るための用地確保という面についての私権という問題が大きなネックになったわけでありまして、そんなこともあってようやく今回成立の運びになったわけであります。  そういう意味から、今申し上げるような点についてお考えをお聞かせいただきたいと思うのでありますが、よろしくお願いをいたしたいと思います。
  8. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 環境保全関係につきましては、ただいま御指摘のように最近いろいろな環境問題が出てきております。従来はいわば産業公害型の問題が多かったわけでございますが、最近は御指摘のような水源あるいは水質保全とか、廃棄物の処理の問題とか、自動車の排気ガス、大気の保全というようないろいろな問題が出てきているわけでございます。さらに、地球規模におきましては、地球温暖化とかオゾン層破壊というような問題がございまして、こういう問題もやはり地域の問題として取り組んでいこうという空気が非常に強く各自治体に出てきていることが最近言われているわけでございます。  そういう意味から、この住民環境問題に対する意識の高まりとか実践活動の展開というようなものに地方自治体が取り組んでいく、対応していくというために、まずソフト経費が必要だと思います。従来はこのソフト経費地方財政計画公害対策費として平成三年度ベースで六百六十七億円の計上をしていたものでございますが、今回これを大幅に額をふやしまして、単に公害対策ということではなしに環境保全対策費として千七百億円を計上することにいたしました。実質的には一千億の増額をしたわけでございまして、これをいわばソフト経費として使っていただこう。  具体的にはどういうことをやっていただくかという点については、先ほどの交付税基準財政需要額の中の環境保全対策費幾つか申し上げましたけれども、それぞれの地域の実情に応じて住民に対するいろいろな啓発活動、あるいは環境管理計画の策定だとか、ごみ減量、リサイクル、緑化、花いっぱい、水質浄化対策、いろいろな問題について地方自治体が取り組んでおるわけでございますので、こういう取り組んでおりますさまざまな環境対策ソフト面経費をこれによって充てていただこうという意味で、一千億円のソフト経費増額地方財政計画お願いして、これを基準財政需要額に算入することにしたものでございます。  さらに、水資源の問題につきまして、水質汚染が非常に心配される、こういうものの防止のために、例えば汚染が心配される水源地地方団体取得をするというような方策をした場合に何か財源手当てがないかという問題も御指摘でございましたけれども、この問題につきましても、将来取得した土地をどのように使っていくかということによりましていろいろと財政措置のやり方もあると思います。  例えば、水源地の周辺を取得いたしましてこれを汚染から守るという意味から、例えば市民の森というようなものに将来開放するというような形で公共の用に供するということになれば、都市生活環境整備特別対策事業債という事業債をことし平成四年度から設けましたが、都市緑地保全というための取得費をこういう今申しましたような地方債措置をするというようなことも一つ考えられます。それから、水源地河川区域内におきまして河川整備と一体となって緑地とか運動場などの施設整備を行うというような場合の用地取得でございますと、臨時河川等整備事業債でございますとか、あるいは本年度設けました特定河川環境整備事業だとかいうようなものを充てることが可能ではないかと考えます。また、将来いろいろ公共的な施設としてやっていこうというのであれば公共用地先行取得事業債というものも可能でございましょうし、事業中身によりまして地方債の対象もいろいろ検討いたしておりますので、地方団体の御要望に応じて適切に対処できるのではないかと考えております。  それぞれの自治体でそういう問題がございましたら、積極的に私どもにも御相談をいただきたいというふうに考えます。
  9. 北沢清功

    北沢委員 今土地取得についての御答弁がございまして、これはある面では非常に大きな前進であろうと思いますが、私はなぜ特に水の問題を取り上げたかということですけれども、最近、より自然に近い水を水道源確保するという意味で、今厚生省でその基準見直し等が行われております。きょうもけさ新聞に出ておりまして、いわゆる基準を若干緩和をするというような点について、むしろ日本のある面での基準は緩やか過ぎはしないかということが住民運動として出てきておる、署名が何十万、五十万ですか、集まったというふうに出ております。やはり山村があるということの一つの大きな意義というものは、下流なり、毎日飲用しておる水の、特に水道水源というものの関心といいますか、そのこともこれからは非常に大きな住民皆さん環境を通じての関心事になるのではないか、そういうふうに考えておるわけであります。  そういう意味で、実はここに私、おととい大臣からお示しになった本もございますが、水道全日本水道労働組合というのがございまして、「水サイクルの回復をめざして」というようなこういう本ができております、「二十一世紀の水道・下水道ガス」ということで。これは高校の教科書としても採用されているというふうに実は聞いておるのですが、非常に内容考え方も立派だと思います。下流水道に従事をしている皆さんでさえも山村のことを考えなければならない。そういう意味で、土地の肥料による富栄養化という問題や、または農薬というものをゴルフ場水源も含めて非常に関心を持っておるわけであります。  私は、いわゆる公害に対する住民運動というのは確かに六、七〇年活発になったわけでありまして、これは今もって水俣病等において企業的な責任を果たしておらない面も裁判に持ち込まれているわけでありますが、その後やはり住民関心事というのは深く沈潜したという形で、自分たちの体にとって生命にとってどうかということに非常に向けられているというふうに思うわけであります。  そういう意味で、やはり、地域に生きる人々を守るという面でも自治省サイドのこれに対する取り組みというものが相当強化をされているという意味で、私は、この地方単独債における、特にまた今御答弁のありました点については評価をするわけですが、まだまだ私どもの要望する点にはほど遠い点もございます。ぜひこれらの本をひとつ読んでいただきまして、これは一つ提言であります、政策提言でありますから、今後十二分にひとつ反映をしていくように特にお願いを申し上げたいと思います。  それでは次の問題に移りますが、このところ次々と設立をされておりますいわゆる第三セクターに関してお尋ねをいたしたいと思います。  つい先ごろ、埼玉県の上尾市のビル管理などを業務としております第三セクター土地開発公社について、浦和地裁で、市が職員派遣して給与を支払っているのは地方公務員法第三十五条に違反するとの判決が出たばかりなのは御記憶に新しいと思います。これについて、開発公社側が控訴中でもあり、直接言及は御無理がと思いますが、これは全国的な大きな影響を及ぼす内容でありまして、単に上尾市に限ったごとではないと思われるわけであります。次々に訴訟が起こされるような事態も想定をされるのではないかと思われますので、自治省はこのことに関してどのような見解をお持ちでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  10. 秋本敏文

    秋本政府委員 御指摘にございました浦和地裁判決は、職務命令によって職員を市の出資する株式会社に派遣し、給与は市が支給した、こういう事案につきまして、当該職務命令地方公務員法第三十五条に違反するとして、市が職務専念義務免除措置をとらずに職員を第三セクター派遣給与を負担したことは、法律及びこれに基づく条例根拠がなく、地方自治法第二百四条の二の規定に違反するというものでございました。  この判決につきましては被告側は控訴しているという状況でございますので、私どもとしては、今後の訴訟の推移を十分見守ってまいりたいと存じております。
  11. 北沢清功

    北沢委員 それでは、実際に行われております自治体からの職員派遣について、自治省はどの程度実態把握されておるのでしょうか。職員派遣実態についてお尋ねをいたしたいと思います。
  12. 秋本敏文

    秋本政府委員 いわゆる第三セクター等に対する職員派遣でございますけれども、復職を前提として第三セクターなどに常勤の役職員として派遣されている一般職職員につきましては、平成元年四月一日の時点では二万一千百二十二人でございまして、その派遣形態別の内訳で申し上げますと、職務専念義務免除によっておりますのが九千四百八十四人、四四・九%、休職が六千八百六十五人、三二・五%、職務命令が四千六百五十二人、二二・〇%、退職が百二十一人、〇・六%となっております。
  13. 北沢清功

    北沢委員 今お伺いしたところでは、退職休職を含めてさまざまな形をとっているようですが、どのような形で派遣をされるにせよ、非常にあいまいな、派遣根拠のないままに現に多様に存在をする第三セクター等自治体職員派遣をされているというのが現状ではないかと思うわけであります。  根本的には、地方公務員法が第三セクターへの職員派遣を想定していないことが問題ではないかと思われますが、地方公務員法の改正を含めて、第三セクター等職員派遣する場合の身分、そしてまた労働条件について、自治省としてきちんとした指針をお示しにならなくてはならないのではないかと思うわけでありますが、この点についてお考えお尋ねをいたしたいと思います。
  14. 秋本敏文

    秋本政府委員 地方公務員法が制定された当時に比べますと、その後の状況、いろいろな面で変化をしてきているというところがあろうかと思います。今御指摘のございましたような点につきまして浦和地裁判決といったようなこともあったわけでございますし、身分保障など派遣についてのいろいろな問題点指摘をされているということでございますので、いわゆる第三セクター地方公社など広い意味地方公共団体外郭団体といったものへの派遣職員身分取り扱いなどにつきまして制度あり方ということを検討する必要があると私ども考えております。
  15. 北沢清功

    北沢委員 人材派遣の面からお尋ねをしてきたわけでありますが、次々と最近設立をされておりますいわゆる第三セクターそのもの実態について、どこまで自治省把握をされておるか。内容にもさまざまなものがあるように思われるのですが、それぞれの設立目的運営状況。などについて、把握されている範囲で結構でありますので、お答えをいただきたいと思います。
  16. 滝実

    滝政府委員 地方団体設立に関与いたしております第三セクター、これをすべてを調査するのは、大変数が多いものですから難しい、こういうことで、私どもは、四分の一以上の額を出資している法人、こういうふうに限定をいたしまして、およそ三年置きぐらいに今まで調査をいたしております。  その結果で見ますと、最近のデータでは、平成二年の一月一日現在が最近の資料でございますけれども全国でこういった第三セクターは五千四百七十七、こういう数値でございます。このうち約六〇%が一〇〇%、地方団体が一〇〇%出資している法人がこの五千四百七十そのうちの六〇%ぐらい、それから、二五%程度が五〇%以上一〇〇%未満、こういうような法人でございます。  中身としてはどういうものが一番多いかと申しますと、やはり公共用地とか住宅用地、そういうような用地関係の造成、取得あるいは処分、こういうようなことに関連するものが一番多くて、これが大体全法人のうちの四〇%ぐらいがそういう用地関係ではないかというふうに把握をいたしております。それから、それに準じて多いのが農林水産関係法人、それから教育、文化関係法人、こういうところがそれに準ずるような数が出ているわけでございます。  あと私ども調査いたしておりますのは、資本金の金額でございますとか役職員の数とか、そういうようなことでございまして、運営実態そのものは、これはなかなか全国的な調査では把握しにくい点でもございますので、そういうようなところまでは立ち入っていない、こういう状況でございます。
  17. 北沢清功

    北沢委員 非常に数が多いということや、また十分に把握されてない面もございますが、私は、第三セクターの望ましいあり方といいますのは、公共部面の持つ公共性公益性と、民間部面の持つ経済性効率性の調和がよくとれて、地域のニーズに合った公共サービス確保、提供が、採算をとりつつ行われることであろうというふうに思うわけであります。  しかし現状は、残念ながら自治体を親会社とする単なる下請機関としかみなされず、行政責任もあいまいで、サービス提供の水準も低いといったようなマイナス面の弊害ばかりが指摘をされているのが実態ではないかというふうに思うわけであります。  そこで、第三セクターの定義づけといいますか、あるべき姿への統一的な見解や指針というものが必要な時期に来ておるのではないかというふうに思いますが、この点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  18. 滝実

    滝政府委員 私どももそういった観点から、調査調査として三年置きにする傍ら、この数年間、第三セクターに関する研究会を非公式に設けてまいりまして、その中で具体的な第三セクター運営状況等についてデータをそれぞれ出し合っていただいて勉強会をやってきたというのが実態でございますけれども、今仰せのとおり、これについては少し指針となるようなものをまとめる必要がある、こういうことで、私どもとしては、この平成四年度の新年度予算にそういった関係経費を計上していただいて、もう少しその辺のところを方向づけのような、あるいは第三セクターあり方についての検討をやってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  19. 北沢清功

    北沢委員 それでは、自治省も今年度予算の中でもそういうようなお考えがあるということでありますので、ぜひひとつ進めていただいて、このあいまいさといいますか、また、二万数千人の皆さんが出向するわけでありますから、これも地方自治体職員としてはばかにならない数でございます。そんなことを含めて、裁判問題等もございますから、適切な指導指針等を明らかにしていただきたいということを特に要請をしておきたいと思います。  それではもう一つお伺いしたいのですが、このたび新たに打ち出されました公立看護大学等の施設整備に対する財政支援措置についてお伺いいたしたいと思います。  高齢化社会に向かって、医療従事者の人材確保が重要な課題でありまして、これは政府がかなり本気で取り組まないと対応できないことは、既にこの前私も指摘いたしましたが、病院での病床閉鎖の問題、従来行われた医療サービスの面でも容易ならざる事態になっていることからしても、非常に明らかであろうと思います。それは単なる人材確保というだけではなくて、これからの医療の高度化、専門化などの医療を取り巻く環境の変化にも進歩著しいものがありまして、こうした課題に対処するためにも、こうしたやる気のある地方公共団体を支援することは、まことに時宜を得た措置であろうと思うわけであります。  そこで、今回の財政支援措置に関して、実際の地域の反響はどうか、また、自治体の具体的な要望はどのように出されておりますか。また、出された波及効果についてもお尋ねをいたしたいと思うわけであります。
  20. 滝実

    滝政府委員 今回予定をいたしております看護大学等の施設整備につきましては、これは当面の経済対策を進めるということでことしは早めにこういった単独事業について事業を進める必要がございますので、現在これにつきましてもヒアリングの最中でございます。したがいまして、まだ来週中までかかるものですから完全に終わっていないのでございますけれども、今後のヒアリング予定も含めまして、現在出されてきておりますのが大体十三道府県ではないだろうか、こういうふうに見ております。  中身としましては、圧倒的にやはり看護学科が数としては多い、こういうことになるのでございますけれども、そのほかにも理学療法関係でございますとか作業療法とか、そういった医療関連学科もそれに付随して当然ございまして、こういった点につきましてもかなり地方団体における取り組み方が強まっている、こういうふうに私どもは見ております。
  21. 北沢清功

    北沢委員 非常に数から見て要望が多いというふうに思いますが、ここで具体的な中身でありますが、目的といたしました看護大学を設置するためというふうになっていますが、これは例えば既に設立をされております公立大学であるとか短大での学部とか、また学科を併設する場合はどういうふうになるのでしょうか、その点について。
  22. 滝実

    滝政府委員 既に設置しております大学に新しく学科を設ける場合、それからまた新しい大学の中に看護学科を設ける場合、いずれも、この看護学科の部分あるいはその他の医療関係学科、それについては当然その部分は今回の財政支援措置の対象とする、こういうふうに考えております。
  23. 北沢清功

    北沢委員 わかりました。  それでは、また、ここでは看護婦等となっておりますが、高齢者保健福祉推進十か年戦略、いわゆるゴールドプランでありますが、あの達成のために、看護婦ばかりではなく、保健婦であるとか理学療法士など、幅広い分野でのマンパワーを育成、確保することが不可欠であるというふうに思いますが、大体この大学の対象は看護婦以外にも広がっておるというふうに思いますが、その点はいかがでしょうか。
  24. 滝実

    滝政府委員 先ほども申し上げましたとおり、主体は看護学科でございまして、これが大勢でございますけれども、そのほかにも作業療法士とかそういうような医療関係学科も現在既にヒアリングの最中でございますけれども把握をいたしております。私どもとしては、今仰せのとおり、看護婦のほか、保健婦でありますとか理学療法士あるいは介護福祉士、こういうようなその他の医療、福祉に関連する国家資格の確保ができるような学科については当然それは対象としていきたい、こういうふうに考えております。
  25. 北沢清功

    北沢委員 こうした医療従事者の要請については、従来所管が厚生省でありまして、厚生省でもこうした面での施設整備が進められてきていたというふうに思うわけでありますが、こうした経緯を踏まえたならば、それぞれの地域の需給バランスを踏まえて適正に行う必要があるというふうに思いますが、実効を上げるためにも、厚生省との密な連絡が不可欠であろうというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  26. 滝実

    滝政府委員 今回の支援措置をする前にまず文部省当局のこういった大学あるいは学科の新増設あるいは新設に関する認可が前提になるわけでございますから、当然それを受けて私どもは支援をするということになるわけでございますけれども、仰せのとおり、具体的にはこの医療関係につきましては、当然主たる所管は厚生省でございますから、今後とも厚生省と連携をよくとって進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  27. 北沢清功

    北沢委員 また、この大学等の整備については財政支援処置がとられるわけですが、実際の大学等の運営に当たっては相当の財政負担が伴うと思うわけでありますが、このような考えられる財政負担、財政処置についてはどうなっているでしょうか。お考えお尋ねをいたします。
  28. 遠藤安彦

    遠藤(安)政府委員 一般的に公立大学あるいは短大の運営経費については、普通交付税基準財政需要額に算入をいたしております。  若干技術的に申し上げますと、道府県分、それから市町村分の計算におきまして、その他の教育費という費目がありますが、そこで密度補正を適用いたしております。その内容ですが、具体的に申し上げますと、公立の大学とか短大の学部あるいは学科別の学生数に、学部、学科別の必要単価を積算しまして、それを掛けて需要を計算して算定している、こういうぐあいになっているところであります。  ただいまお尋ねの看護系の大学、短大でありますが、平成三年度の算定におきましては、学生一人当たりでございますが、大学については九十三万円、短大については九十万円ということにいたしております。この算入単価は毎年度実態調査する等必要な見直しをいたしておりますが、今後もこの単価については適切に対応してまいりたい、こう思っております。
  29. 北沢清功

    北沢委員 これはそれぞれ設置する県なり市において非常に心配されているところでありますので、実情に応じてという御答弁がございまして、今後も積極的に対応するということでありますから、特によろしくお願いをしたいと思います。  それでは、ここで自治体病院についてお尋ねをしたいと思いますが、自治体病院は地域住民にとって中核的な病院、いわゆる地域中核病院であるべきと考えるわけでありますが、この自治体病院の機能、役割について、自治省はどのような見解をお持ちでしょうか。お尋ねをいたしたいと思います。
  30. 石川嘉延

    ○石川(嘉)政府委員 自治体病院は、平成二年度末で九百九十ございまして、その規模、役割はさまざまでございます。  これらを大きく類型化してみますと、一つは、高度、特殊な医療を行うとともに、医療従事者の研修などを行う総合病院、そういうタイプが一つございます。それから二つ目に、地域の医療機関の中核として地域の医療水準の向上に資するような地域中核病院というようなものもございます。それから三つ目に、僻地医療を担う不採算地区の病院。それから四番目には、成人病センターとかがんセンターといった名称で呼ばれるような、疾病の予防とか検診治療等、保健行政的な性格の強い医療を行う病院というのもございます。それから五番目には、精神病院など特殊な医療を行う病院というように、大きく分ければ五つぐらいに分類できようかと思います。  自治体病院は、地域の実情に応じまして自治体みずからの意思で設置、経営をされておりまして、果たしている役割もその地域でいろいろでございます。それぞれでございます。我が国の医療にとってそれなりに重要な地域において役割を果たしているというふうに考えております。  自治省といたしましては、それぞれの病院が期待されました役割を十分に果たせるように、今後とも必要な支援を行ってまいりたいというふうに考えております。
  31. 北沢清功

    北沢委員 今御答弁をいただきましたように、まさに地方の中核病院としていろいろな多方面な、特に僻地の中核病院というものも僻地医療の一つの中核をなすわけでありまして、その役割は地域において非常に大きいというふうに考えられます。しかしながら、多くの自治体では経営的な問題を抱えながら財政的には苦しい状況にあるというのが実情であろうというふうに思います。  特に、そのために昨年の交付税法を審議した際に、附帯決議として、「病院事業に対する一般会計からの繰出金の充実を図ること。」ということを特に盛り込んだわけであります。  そこで、お伺いをいたしたいと思いますが、この決議に基づいて自治省として今年度何らかの改善等を講ずるおつもりはあるのかどうか。この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  32. 石川嘉延

    ○石川(嘉)政府委員 病院事業につきましては、原則として診療報酬で賄うというのが建前でございますけれども、しかし一般行政として行うべきものも実際には病院の事業の中で行っている、あるいは社会保険診療報酬のみでは賄うことがもともとできないと思われる経費、こういう経費につきましては、一般会計から繰り出しをするということを認めておりまして、平成四年度の地方財政計画におきましては総額で四千四百四十三億円を計上しております。これは前年度に比べまして三百七十八億円の増、率にいたしまして九・三%の増となっております。中でも高度医療の整備充実を図るための繰り出し金につきまして、前年度に比べまして三五・二%増、また僻地不採算地区医療の充実を図るための繰り出し金を一二・一%増額したというように、その内容におきましてもいろいろ配慮いたしまして、昨年の本委員会での特別決議の線に沿って努力したと考えております。
  33. 北沢清功

    北沢委員 非常に積極的にやられているということですが、やはり地方自治体病院というのは、率直に言って、個人の病院ではできないような高度医療だとかがん検診であるとか、そういうような問題、また僻地の問題も取り上げておりますから、今後もひとつ、積極さはわかるのですけれども地方病院の経営の実態等や、また高度医療に対する財政負担等含めて、今後も一層ひとつ積極的に当委員会の決議に沿いまして大きく増進をされるように要望いたしたいと思うわけです。その点についての一層の支援処置を講じていただくよう特に要請をしておきたいと思います。  それでは最後に、いわゆるふるさと創生一億円事業に関してお伺いをいたしたいと思います。  当初、非常に華々しく打ち上げられまして、これまで三年にわたって処置がされてきたわけでありまして、当初私も、この施策というものは住民の意思または各自治体の意思というものが自由に行政の中で存在できるということで、大きな意義を持つというふうに思いますが、しかしその内容は、あるところにおいては金塊を買ってケースに入れて飾っておくとか、いろいろイベントも行われましたり、今まで要するに通常の行政ではできない問題が積もり積もっていたわけでありますが、そういう問題が一度にはっと出てきて、これは長期的に見ればもっと基本的に取り組む必要があるのではないかということを、実は私は県議時代に県会でも取り上げたことがございます。  これは、この事業地域活性化などに成果は上がっておるわけでありますけれども、それぞれの自治体に対する自治省評価なり見解なりをお聞かせをいただきたいと思います。
  34. 滝実

    滝政府委員 仰せのとおり、ふるさと創生事業につきましては、実質的には三年を経過をいたしてまいりました。  この三年間の中身を振り返ってみますと、総括して申し上げられますことは、一つには、ふるさとを見直しまして、個性豊かな自主的あるいは主体的青地域づくりを促す契機になった、こういうことが一つあろうかと思います。それからもう一つは、事業内容をみずから考える過程を通じまして市町村が企画力を向上させる、こういうことで大きな契機になった、こういうことが総括的に言えると思いますし、これらを一言で申すならば、市町村が活性してきたということが最大の成果ではないだろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  例えば、これをもう少し具体的に例を一つ二つ挙げて申し上げますと、長野県の例で申しますと、長野県の山村でございますけれども、うば捨て山伝説で有名な麻績村があるわけでございます。この麻績村のふるさと創生事業というのは、山の上に観月のための観月堂を建設するとか、あるいは園地をつくるとか、そういうようなささやかな事業であったわけでございますけれども、そういう事業そのものはささやかな事業であったにもかかわりませず、村の若い人たちが、このふるさと創生事業でつくった施設を中心に自分たちで活発なイベントをやるとか、あるいは青年団活動をやるとか、そういうようなことで、事業そのものは非常に細かい事業でございますけれども、この事業が契機になっていわば若者の活動が活発化した。あるいはこれが周辺の村まで波及いたしまして、現在数カ村である程度広域的な観光事業をやろうか、そういうようなところにまで発展している。  こういう例が見られるわけでございまして、基本的には、このふるさと創生事業事業そのものがささやかであっても、それの波及効果というのがかなり大きいものであるというふうに私ども評価をいたしておるわけでございます。
  35. 北沢清功

    北沢委員 今お聞きすると、それなりの実績があって、またこれからも実施をするということですが、最初に大きく宣伝された割には、このところ非常に話題もなくなっているようでありまして、これを定着と言っていいかどうかわかりませんけれども自治省ももっと積極的にPRをした方がいいかと思うわけであります。また、今までの実績を踏まえて、今後も同様にお続けになるのか、それとも何らかの見直しをするおつもりなのか。四年を経過いたしますと、話題性にも欠けたり、マンネリ化をしている面もありはしないかと思いますが、この点については、見直しなど、お考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  36. 滝実

    滝政府委員 確かにおっしゃるように、当初騒がれた事業がその後、年とともに、先生も一言仰せになりましたけれども、私どもは定着してきた、こういうふうに考えているわけでございまして、そうなりますと、ニュース性がないということで余りマスコミには出てこない状況が出てきている、こういうふうに思います。  ただ、事業そのものは、一億円事業と並んでこれを裏打ちする事業として地域づくり推進事業をやっているわけでございますけれども平成二年度の事業実績を見ましても、また平成三年度の事業実績を見ましても、事業意欲は結果的にはかなりのものになっているというふうに私どもは判断をいたしております。  したがいまして、仰せのとおり、三年ないし四年を経過するわけでございますから、私どもはこの年内、ことしの夏に向けまして過去三年間の事業を少し整理をいたしまして、今後の方向づけと申しますか、そういうものを一つ打ち出した上で、来年度、平成五年度以降どう取り組むか、こういうことで目下検討を進めている最中でございます。
  37. 北沢清功

    北沢委員 いろいろ定着してまいったという評価もありますが、今回地方単独事業に見られるような、ある面では地方自治体の抱えている主要な問題、特に、今まで企業原則というか、そういう問題からもう一つ一歩踏み込んだ、地方の文化であるとか、これからの高度医療、マンパワー対策であるとか、またはさまざまな、ある面では基本的な問題が提起をされておるわけでありまして、一過性のものから、ある面では、例えば過疎対策をとってみてもなかなか過疎はとまらない、特に今後拠点都市構想というものも出てくるわけですが、その中で心配されることは、新たな第二の過疎が始まるのではないかという心配もしておるわけですね。  だから、そういうことに目をきちっと向けていかないとだめだと思うわけでありまして、私は実は森林の問題を、面積を財政需要額に入れてもらいたいということを言ったのですが、そのとき帰り際に、前の自治大臣の吹田大臣が飛んできまして、北沢さん、やはり山に月給取りがなきゃだめなんだよ。当時、国有林の職員を二万人体制にするとか二万五千人体制にするとかという問題の最中でしたけれども、たまたま塩川大臣がこの間森林組合の問題に触れまして出された問題がございます。この問題は私はやはり、いろいろの環境整備も大切でありますし、今言った活性化に向けて大切でありますが、山の中で食えるというか、農業も同じことですが、農業で食えるということ、そして山が荒れることは国民にとって不幸せなことであるという認識、そのことは企業性ではないんだという形の中で、EC型の施策といいますか、デカップリングとか、そういうような地域に住む人たちの生活をきちっとして見ていくというか、吹田大臣の言われたような月給取りがなきゃだめだよ、臨時的な形ではだめだよと言ったことの印象を私は非常に深くしたわけであります。そういうことをやはり積極的に取り組まないと、いつまでも過疎はなくならないし、ある面では過疎地というのは安楽死をするわけですね。  ですから、ぜひひとつこれらを含めて、自治省が非常に森林荒廃対策に対して積極的だ、そのことは即過疎の問題に積極的だということにかかっておると思いますので、これらを含めて、最後に今後における地域づくり地域活性化についてはどのような展望と意欲を持っておられるか、大臣に御方針等についてお伺いをいたしたいと思います。
  38. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 ふるさとづくりが一つの転機となりまして、各地方自治体が自分で考え、自分で行うということから、やはり自治というものの意識が非常に鮮明に変わってきた七私は思っております。戦後ずっと地方自治が施行されて地方行政の独立性と言われてきましたけれども、実際はやはり依然として明治憲法以来のいわば国の政府の出先機関にしかすぎなかったものが、数年前からそういう意識が非常に強くなってきたということ、これは私は非常にいいことだと思っております。  つきましては、例えば先ほどおっしゃいました森林というもの一つつかまえましても、これをどう生かすかということは、それこそ村じゅう挙げて考えていただきたいと思うのです。これは国の事業だ、林野庁の仕事だ、あるいはまた山主の問題だというような考えじゃなくて、私はぜひこれは考えていただきたい。  そのためには、昨日も申しましたように、森林に対する交付税の見方というものを変えていくべきだということを強く主張しておる一人でございますが、そういうことから、まず市町村森林をどうしたいということをやはり積極的に意思を出して、そしてそのための対策という具体的なものを——どうも最近は顔が見えないということをあちこちで言われますけれども、顔が見えないということは何かといったら、漠然としたことを言っておるだけであって、つかみどころがないということなんですね。結局、具体的なものが出てこなければ対策はやりにくいのではないか。あわせまして、地域に合った具体的な対策もひとつ出していただきたい。そういうふうなものを例えば知事会あるいは町村長会を通じて集約されていくという訓練もやはり地方団体はやってほしい、私はこう思っておりますので、どうぞ先生方もそういう指導をひとつお願いいたしたいと思います。
  39. 北沢清功

    北沢委員 大臣の決意、非常に結構でありますので、ぜひその決意で、自治省が今後において地方自治体住民のために非常に柔軟に実態をつかまえられまして対処されますことを心から御期待をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  40. 中島衛

    中島委員長 吉井光照君。
  41. 吉井光照

    吉井(光)委員 私は、最初に、地方の時代の抜本的改革についての塩川大臣のお考えをお伺いをしたいと思うのです。  御承知のように、昭和五十四年に、神奈川の長洲知事が地方の時代の創造ということを提唱をいたしました。この言葉は流行語のように非常にはやってきたわけでございますが、以来十三年を迎えました。  しかしながら、一向にこの地方の時代はやってこないわけです。相変わらずというか、ますますというか、大都市への人口または産業の集中がどんどん加速をされる。反面、地方では逆に人口の減少にますます拍車がかかって、その地域の活力が低下をする。そして、過疎化が進んでおる。おまけに、出生率を見ましても、これがだんだん低下をしておる。そのすべてがやはり地方なんです。合計の特殊出生率が一・五三、人口の減少都道府県数が十八道県に拡大をした。市町村の数でも、やはり全体の六四%が人口が減少しておる。  こうした原因は、都市の事情また地方の事情、それぞれにさまざまな問題を抱えているわけですが、そうしたものが複雑に絡み合っているわけです。今ここでそういった問題に触れることは時間がございませんので割愛をいたしますが、問題は、本当の意味での地方の活性化をどうしたら実現できるかということでございます。  大都市圏の持つ住環境の悪化、それから長時間通勤、地価の高騰、こうしたいわゆる病理的な現象をどのようにしたら潤いと豊かさの実感できる大都市生活に変えられるのか。また地方は、豊かな自然環境に恵まれてはいるものの、どうしたら若者が定住をできるのか。  御承知のように、中曽根内閣は行革内閣と言われました。そして三公社の民営化が図られたわけでございますが、本省の許認可事項を見ましても、五年間で五百八十三もふえております。ことしの一月末では一万五百八十一。現状は本省にまたどんどん権限が集まっているような状況でございます。ということは、ますます中央集権的になる一万だということでございます。したがって、そういった権限の問題はもちろんでございますが、今審議されておりますところの交付税制度といったものについても、抜本的な改革に今こそ大なたを振るわなければならない時期に来ているのではないか、私はこのような気がするわけでございます。  よく均衡ある国土の発展、こうした言葉がもうたびたび使われるわけでございますが、では、均衡ある国土というのは一体どういう国土なのか。こういったことについても非常に疑問を抱かざるを得ないわけでございます。  地方へ財源と権限を金面移譲する問題、それから道州制論議とかいろいろあるわけですが、私は、最終的にはこの国会を、政治行政機能を体系的に移転をしながら新しい都市づくりをした上で移す以外に方法はない、このようにも思います。実際にはこれは二十年か三十年かかる話ではございますが、移転するということがある程度具体的に決まったならばそれだけのアナウンス効果が出てくるのではないか、またアナウンス効果というものが始まってくるのではないか、私はこのような気がするわけでございます。  地方の活性化については、各省庁がそれなりにいろいろな施策を進められてまいりました。しかしながら、これといった成果、どういう成果が上がってきたかというと、甚だこれは疑問でございます。今国会におきましても地方拠点法が審議されているわけですが、この拠点法も六省庁が共同で提案ということは、これはまさに画期的なことでございます。しかし、これとてその効果についてはどうかな、こういう声も聞かれるわけでございます。ところが、地方は何としても活性化させたい、こういう気持ちからこの地方拠点法についても、我も我もとまさにわらをもつかむような気持ちで名のりを上げているわけでございますが、いずれにいたしましても、過去十数年の地方に対する施策というものが全く裏目に出ている。そして現在ますますその格差が広がりつつある。  こうした現状から、地方の活性化という大きな政治課題、こうしたものに対して、自治大臣地方の時代を開く抜本的改革のお考えをお聞かせを願えたらと思うわけでございます。
  42. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 やはり私は、一番大事なことは、住民なりあるいは地方自治行政に関係している人が、地方の自治行政の自治ということ、憲法にうたわれております自治の本旨というものを今真剣に考えていただきたい、その意識の転換がなくして、私は地方行政の健全な発展はないのではないか、こう心配しておるのであります。  幸いにいたしまして、現在は財政的にもその基盤が固まってまいりましたから、そしてまた、社会の多様化に対応するためのいわば市町村行政におきます人材もある程度そろってまいっておりますので、地方自治体の行政に取り組む姿勢は従来とは違ってきておると私は思います。しかし十数年前を見ますならば地方行政は、何を言っても金がないんだ金がないんだ、そればかり言って、みずからやろうとする——金がないのか知恵がないのかわからぬような状態がずっと続いておりました。しかし最近は、皆さんのおかげであったと思うのですけれども地方財政の収入がしっかりと基盤が固まってまいりましたので、この基盤の上に新しい、自分ら自身で努力して財政需要を切り開いていって、それを地方の開発、活性化に結びつけていきたい、こういうふうな意欲が非常に高まってきたのではないかと私は思っております。  特に、地方へ行きますと、町村は割とハードの面は非常に積極的に考えておられますけれどもソフト面についての意欲というものが少なかったのでございますけれども、一億創生事業ということからソフトの面が非常にクローズアップしてきているように私は思っておりまして、それを支えていくというか延長をずっととっていくためにも、交付税の改正に際しましてはソフト面における交付税措置というものを従来よりも十分に見てもらいたいということを私は要請しておる。  こういうことでございまして、そのことで地方自治という意識がだんだんと固まってくるのではないか、私はこう思って実は将来を期待しておるところであります。
  43. 吉井光照

    吉井(光)委員 次に、完全週休二日制と住民サービスについて、この導入に伴うところの財政措置につきまして若干お尋ねをしてみたいのです。  三月三十一日の経済対策閣僚会議で発表されました緊急経済対策の中で、国家公務員の完全週休二日制については法改正の成立を受けて平成四年五月を目途に実施することがうたわれました。地方公共団体の場合も、この法改正の成立を受けて、「出来る限り国との均衡をとりつつ導入ができるよう、必要な条件整備に努めるよう地方公共団体に対して要請する。」このようになっているわけでございますが、この場合最も大事な点は、完全週休二日制に伴って行政サービスの低下を招くことのないように配慮する点であるということはもう言うまでもございません。私は、この住民サービスの低下を招かぬよう若干の提言をしておきたいわけでございます。  まず第一点目は、役所が休みの土日や祝日でもカード一枚で住民票を交付できるいわゆる自動交付機を導入する自治体がもう出始めているわけでございます。現在、兵庫県の伊丹市、大阪府の羽曳野市、千葉県の船橋市、それから東京の台東区、この四つの自治体で実施しているようでございますが、荒川区でもことしの九月、中央区も来年四月の導入を目指して必要経費を予算化をして準備に入っておる、このようなことを聞いております。これが一台約二千万程度かかるということでございますが、これが近い将来印鑑証明であるとか税関係などの証明書、それから戸籍謄本などいわゆる対象を広げることも検討をされているわけでございます。そして申請書類に一々書き込んだり、それから窓口に並んだりする必要もなくなって、銀行やクレジットカードと同様に暗証番号一つで済む時代もそう遠くはないと思われるだけに、期待も非常に大きいと私は思います。導入実績を見てからなどと、そういった消極的な姿勢ではなくして、こうした機械の購入経費等に対する財政措置自治省は積極的に支援して自治体をいわば誘導をしていくべきではないか、このように思います。  それから二点目として、いわゆる駐車場の開放でございますが、役所はおおむね市の中心地にありまして非常に利便性の高い場所に建てられているわけでございます。したがって、休日、祝日における役所の駐車場及び駐車可能なスペースの利用価値というものは非常に高いわけでございまして、市街地の駐車場不足の解消に大いに役立つことだと思います。役所という関係上いろいろな問題はあるにしましても、これを無料開放し、そして住民サービスの向上に貢献していくよう各自治体に働きかけていくべきではないかと思うわけでございますが、この点が第二点。  それから三点としては、第一点目のように機械化による休日サービスもあれば、職員の交代制によって、住民票等の住民窓口を役所や公民館、デパート、ショッピングセンター等、いわゆる市民が利用しやすい場所で開いているなどして、工夫がいろいろされているわけでございます。しかも、そうしたアイデアが職員の中から発見されてきている。職員提言によってそういったことが行われている。いわば役所とは役に立つところでなければならず、住民あっての役所、それから行政は最大のサービス産業である、これは出雲市の岩國市長さんがおっしゃった言葉でございますが、私もまさにそのとおりだと思います。したがって、これを機に全国レベルで市民が頻繁に利用するサービス業務については休日、祝日も利用できるところの休日サービス制度、そうしたものを創設したらどうか、このように思います。  きょうの新聞を見てもおわかりになりますように、国会図書館が土日閉館すると言っているわけでございますが、世間では週休二日制というのがどんどん進んでくる。せっかくの休みだからせめて図書館や美術館、博物館に行っていろいろ勉強もしたい、このように思っても閉館ではこれはもうどうしようもないわけでございまして、サービスする側とサービスされる側との理念、論理というものは当然違わなければならない、違うのが当然でございますから、こうした意味からもやはり休日サービス制度の創設というものが必要ではなかろうか、私はこのように思うわけでございます。  今、御承知のように引っ越しの時期でございまして、異動の大変多い時期でございますが、住民票の異動手続や証明書はもう必ず必要でございます。ところが最近多くなっている夫婦共稼ぎのサラリーマン世帯では休みをとってその手続をとらねばならない。なぜ貴重な休暇を住民票をとるために使わなければならないのか、高い地方税を払うだけで肝心なときに必要なサービス提供がないじゃないか、こんな不満の声も聞くわけでございます。したがって、やはり行政としてはこうした不満の声にこたえることが必要だと私は思いますし、そうしたもろもろの点につきまして自治省としてはどのようにお考えになっているか、お尋ねをしておきたいと思います。
  44. 紀内隆宏

    ○紀内政府委員 お答え申し上げます。  第一点と第二点について、まず第一点の住民票の自動交付機についてのお話でございますけれども、閉庁日に限らず、通常の日の閉庁後のサービスというふうなこととの関連もございますけれども、コンピューターなどのオフィスオートメーションの機器を活用して住民サービスの向上を図る、そのためのいろいろな工夫が行われておりまして、御指摘住民票の自動交付機につきましても、昨年から一部の市において稼働し始めているところでございます。私どもといたしましても、地方公共団体の行政サービスの一層の向上が図られますよう、自動交付機の促進に限らず、いろいろな工夫に対して助言、協力してまいりたいと思っておりますし、また、これらの市民サービスの向上のために行われるいろいろな工夫に伴って所要の財源につきましては、実態を踏まえて積極的な対応を図ってまいりたい、このように考えております。  次に、駐車場のお話がございました。市役所や役場に置かれております駐車場につきましては、一般的には地方自治法のいわゆる行政財産として管理されておりまして、その目的外の使用の場合には、行政財産としての用途または目的を妨げない限度において使用することができる、こういう位置づけになっておるわけでございます。市役所や町役場の駐車場は、本来は市役所や役場への来庁者の便宜を図るという趣旨で設置されているのが一般的であると思いますけれども、私ども具体的な例を調べてみますと、その利用形態にはいろいろなものがあるようでございまして、地域の実情なり住民のニーズに対応して適切な管理に努める必要があると思っております。  御指摘の土日における駐車場の利用につきましても、このような観点からそれぞれの地方公共団体において住民の意向などを勘案しつつ適切に判断されるべきことと考えております。実際に現場におきましては、土日の利用等についていろいろな問題があることと思われます。また、問題の性質によって解決の方法もそれぞれ異なるものと思っておりますが、要は、これらの問題を解決して適切な管理の一つの態様として利用が可能となるかどうかということでございまして、具体的な手法を含めてその団体の知恵の働かせどころではないか、このように考えております。
  45. 秋本敏文

    秋本政府委員 私の方からは、完全週休二日制という観点からお答えをさせていただきたいと思います。  完全週休二日制ということになりますと、土曜日は基本的には従来の日曜、祝日と同様ということになりますので、いわゆる閉庁ということになってまいります。そういった場合に、御指摘もございましたように、土曜、日曜という連続の休日ということになりますので、行政サービスの低下が懸念をされるわけでございます。したがってこのことを念頭に置いた工夫が必要でございます。週休二日制を地方団体で導入いたしますためには、御案内のように条例改正が必要であり、またそのためには住民皆さんの理解、協力が必要でありますので、サービスの点についての工夫は特に必要だろうと思います。  そういったことから、自治省におきましては、完全週休二日制について地方公共団体関係職員に対する説明会、実はこれを昨日開催いたしたのでございますけれども、その際におきましても、閉庁日におけるサービス提供のためのさまざまな工夫の事例、御指摘のございましたような自動交付機による住民票の交付といったようなこと、あるいはまた郵便による住民票の申請、交付、閉庁をしない、開いております文化会館等のサービスコーナーでの住民票の交付、そういったいろいろな事例などについて御紹介をしまして、それぞれの地方団体で工夫していただくように御努力お願いをしております。  もちろん予算とか定員とかの制約がございますので、そのことについては住民の皆様にも御理解をいただかなければならない面、こういったこともあると思いますけれども、今後ともできる限り必要な情報提供を行いまして、地方公共団体でも努力をしていただきますように指導、助言してまいりたいと存じております。
  46. 吉井光照

    吉井(光)委員 いろいろと難しい点があろうかとも思いますけれども、どうかひとつ住民サイドに立ったサービス行政を徹底をしていただきたい、このように要望をしておきたいと思います。  次に、公営住宅の入居基準の見直しでございますが、去る三月二十五日に第三次行革審が、塩川自治大臣が昨年暮れの閣議で提起をされましたいわゆる特養老人ホームなど地方の実情に合わない国の制度や、港湾施設の扱いなど各省庁の調整が必要な国の縦割り行政などについて、今後本審議会、部会で積極的に審議していくということを決められた、このように報道されているわけでございます。これは、ふるさと創生事業推進過程で縦割り行政が自治体の行政運営に支障を来していることが明らかになったことからその改善が必要だと判断されたようでございます。また、こうした自治体におけるところの問題事例を幅広く収集するために約半数の都道府県と道県市町村を対象にアンケート調査を実施されることになった、こういうことでございます。  さて、ここで地方の実情に合わない国の制度の例としてぜひとも言っておかなければならない点の中に、全国一律の公営住宅の入居基準の見直しの問題があると私は思うのです。この問題につきまして私は過去二回予算委員会と建設委員会で取り上げてきたわけでございますが、そのときに建設省の住宅局長は、この入居基準についてはナショナルミニマム的な発想での対策となっているわけで、この趣旨からすると全国的な一律基準という従来の考え方が出てくる、このように答弁をされていらっしゃいます。これはちょっと難しくて何のことか私にもよく理解できないわけでございますが、わかりやすく、ナショナルミニマム的な発想でなければならない積極的な理由とはどういうことなのか。また、地方地方でいろいろな要望があることも十分承知をしている、このように答弁をされておりながら、なぜその声を反映できないのか、つまり地方自治体ごとの判断で決めることがどうしてできないのか、あわせて明快な答弁お願いしたいわけでございます。  そこで、各地方で判断をするということについてでございますが、これは今さら言うまでもございませんが、都市部と地方とでは給与水準から物価水準、それから住宅事情、こういったものも大きく異なっております。その異なっている条件を前提にはじき出したところの全国一律入居基準を設けること自体にそもそも矛盾があるのではないか、不合理で公正を欠くことになるのではないか、私はこのように思います。  労働省の平成二年度の調査によりますと、地域別最低賃金格差は、一番高い東京、大阪、神奈川が日額四千三百五十七円、一番低い宮崎、鹿児島の三千七百三十五円とでは六百二十二円もの格差があるわけでございます。この格差を何ら補正しないままにはじき出して公平とこれは本当に言い切れるのかどうか、私は、もう明らかにおかしいのではないか、このように思うわけでございます。  むしろ、それぞれの実情に合った判断をした方がより公平であり、特に大都市部で住宅に困窮している中堅サラリーマン層にとっては大変ありがたい話ではないかと思うのです。貧窮の時代の施策をいつまでも引きずり続けるのではなくして、私は、やはり時代時代に合った賢明な判断が問われているわけでございますので、実情に合うように公営住宅法を改正をして、そして全国一律の入居基準というものをやめて、自治体で独自に決定できるようにすべきであると思うわけでございます。  地方の実情に合うように国の制度を改善すべき点は改善するよう指示をされた自治大臣としては、建設省にも改善するように強く申し入れられたらどうか、このように思うわけでございます。  それとともに、もう一つの点は出生率の低下、これは先ほど申し上げましたように今我が国の大きな政治課題でありますが、その主な原因の一つに、私はやはり住宅事情が挙げられると思うのです。四人以上のファミリー世帯がいわゆるゆとりを持って住めるところの公営住宅を大量に供給することが前提ではあるわけですが、それとともに、私は十八歳未満の子供が三人以上いる世帯については所得水準というものも緩和をして、そして優先的に入居できるように配慮することぐらいしないと出生率の向上は望めないとも思うわけでございますが、この点についての建設省のお考えをお伺いしたいと思います。
  47. 小川忠男

    小川説明員 お答えいたします。  まず、公営住宅の入居基準でございますが、御承知のように公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者を対象とする、こういうふうなことでございまして、全国どこへ行きましても国民の最低限度の住生活を保障するという観点が基本になっているわけでございます。  その意味合いからは、先ほど先生もかつて住宅局長が答えたことを、もう一度繰り返させていただくことになりますが、やはりこういうふうな基本的な考え方からはナショナルミニマム的な考え方というのが一つの物の考え方になるわけでございまして、現段階では全国的な基準で運用いたしておるというふうなことでございます。  ただ、若干補足させていただきたいと思いますが、例えば第一種公営住宅につきましては、三三%といいますか、全世帯の所得分位を並べたときに下から三三%の世帯を対象にして入居基準を設定するというのを一つ基準にしておるわけでございまして、それを地方部に当てはめた場合、県によりましては、例えば比較的所得水準の低い県につきましては、全国の三三というのはその県にとっては六〇%をカバーするというふうな実態にもなっております。  ただ、お尋ねのように、例えば東京などではどうだと言われますと、比較的所得水準は高いということもございまして、三三をかなり下回るというのが実態でございます。ただ、そういうふうなことから確かにいろいろな地域性というものはございますが、もう一つの点からは、公営住宅だけではなくて、公社の賃貸住宅あるいは公団の賃貸住宅の機能の役割分担という点も一方においてはあろうかと思います。そういうふうなことを勘案しながら、現段階では冒頭申し上げましたような全国的な基準で、その枠内でいろいろ知恵を出していただいているのが実態でございます。  ただ、物の考え方としてどうだという点を先生おっしゃったのだろうと思いますが、やはり公共団体が設置し管理するわけでございますから、いろいろな状況が違うならば違うなりにという議論も一つ確かにあろうかと思います。ただ、入居基準だけではなくていろいろな意味での問題なり要望というのも確かにございますので、全体を含めましていろ。いろな意味から検討させていただきたいというふうに考えております。  それからもう一点、出生率を高めるために、公営住宅の入居について、子供がたくさんいる家庭について優先入居をというお話でございました。  これにつきましては、私どももそのとおりというふうに考えておりまして、平成二年でございましたが、政府部内に関係省庁の連絡会議が設けられました。そういうふうな経緯がございまして、各省庁で出生率を高めるという観点からいろいろな議論が行われた経緯がございまして、私どもとしましても、それらの結果を踏まえまして、平成三年、昨年の十月でございますが、各公共団体に対しまして、私どもは特定目的公営住宅と呼んでおりますが、その一環といたしまして、十八歳未満の児童が三人以上いる世帯、これを多子世帯と位置づけた上で、優先入居を取り扱うようにということで各公共団体にお願いし、要望いたしております。  以上でございます。
  48. 吉井光照

    吉井(光)委員 次は、身障者の施策についてお尋ねをしたいと思います。  昭和六十二年の二月に厚生省が実施をいたしました身障者の実態調査によりますと、我が国の身障者数が二百四十一・三万人と推計されておりまして、前回、五十五年の二月の調査結果百九十七・七万人と比べますと約二二%増ということでございます。過去七年間の推移を見ますと、幾つかの特徴といいますかそういったものがあらわれているわけでございますが、まず第一に、障害の種類別では、肢体不自由者の占める割合が全体の六〇・五%、これは圧倒的に多いわけでございまして、増加率も非常に高いわけでございます。二番目は、年齢階級別でございますが、老齢化を反映いたしまして五十歳代以上の階層の増加が非常に著しい。一方で三十歳未満の階層では減少傾向にございます。三点目としては、障害程度別では一級、二級の重度障害者が九十二・三万人、三八・三%でございまして、前回調査の三二・七%に比してその割合が増加するとともに、増加率でも一級、二級が大きく、障害の重度化の傾向が認められるわけでございます。これらの状況から、我が国の身障者の実態というものは、老齢化それから重度化、そして原因の多様化等々といった傾向が見られるわけでございます。  私は、せんだって山口県下のある民間のボランティアで運営されておるところの重度身障者の小規模の共同住宅、ここをお伺いいたしました。そこは、共同住宅といっても名前ばかりで、実態は、昨年の十九号台風によりまして吹き飛ばされた屋根の修理をすることすら欠く古い木造住宅でございます。これは町から安く土地を貸してもらって、そこにある民間人が住宅を建てているわけでございますが、町の援助は一切なく、入居者の身障者年金で生活をして、そして外出する場合などのボランティアを頼むときの費用、こうしたものも全部自費。入居者は家族など同居者がいない、いわゆる単身者がほとんどだけに、その生計の援助も得られず、その暮らしぶりは想像以上に大変でございました。中も、水屋一つとってみても、普通の高さでは用を足しません。したがって、非常に地についたような水屋が全部用意されて、そして寝たきりで炊事ができるというふうな、そういったこともされているわけでございます。  しかしながら、彼らに会ってみて、その顔がみんな明るく生き生きとしておる、どうしてだろう、このように思ったわけですが、体が不自由でも、恵まれた施設に入っているよりは社会参加ができるなら、たとえどんなに生活が苦しくても、その方が生きる喜びがある、このように異口同音に言っているわけでございます。したがって、社会参加をしたい、そういった意欲を非常に感じたわけでございます。  こうしたことを頭に入れながらひとつ答弁お願いしたいわけでございますが、ゴールドプランと身障者対策についてでございますが、今回の地方交付税法の改正で福祉関係経費の充実が盛り込まれているわけでございますが、これは高齢者保健福祉推進十か年戦略、いわゆるゴールドプランの一環でございまして、総事業費は二年度ベースで約六兆円と言われておりまして、国、地方、民間で各二兆円ずつの分担となるようでございます。このプランは、超高齢化社会の対応策で、お年寄りを中心としたものでございますね。しかし、福祉全体からとらえた場合には、身障者に対する施策というものも関連するのは当然含まれてしかるべきではないか、このように思います。  この点、ゴールドプランとそれから身障者対策との関係をどのように位置づけていらっしゃるのか、まず確認のために厚生省お尋ねをしたいと思います。
  49. 松尾武昌

    ○松尾説明員 お答えいたします。  ゴールドプランにおきましては高齢者の総合的な在宅福祉サービスを推進するという目標で実施しておりますが、身体障害者福祉対策もこのゴールドプランの中に盛り込んでいるところでございます。  具体的に申し上げますと、一つはホームヘルパーについてでございますが、ホームヘルパーにつきましては老人福祉施策と身体障害者福祉施策を一緒にやっております。こういうことで、その増員につきましても、身体障害者の部分を盛り込んでこのゴールドプランの中に入れまして推進しているところでございます。  それからもう一つ、住みよい福祉のまちづくり事業というのを実施しております。これは、高齢者も身体障害者も住みよい町というのは同じだということでございまして、この住みよい福祉のまちづくり事業はゴールドプランの中に入れまして実施しております。  このほかに、こういう在宅サービスを推進いたします長寿社会福祉基金というのを、七百億円ほど基金を持っておりますが、この中でも障害者のための機器開発あるいは介護機器の開発等について、この基金を運用いたしまして実施しておるところでございます。  以上でございます。
  50. 吉井光照

    吉井(光)委員 そこで、先ほどもちょっと触れました重度身障者の共同住宅の現状と取り組みについてお尋ねをしておきたいのですが、身障者でも特に重度身障者世帯に対する公営それから公団、民間における共同住宅の建設戸数や、それから入居状況等の現状がどうなっておるのか。また、九十二・三万人の重度障害者世帯の住宅対策は十分であるかどうか。  また、重度身障者の共同住宅の推進について、福祉面では厚生省、それから財政上負担の面では自治省、それから住宅建設面では建設省、これらが中心的な役割を担って互いに連携し合いながら、いわば三位一体となって取り組まなければなかなか前に進まない問題でございますし、各省の連係プレーいかんによって事の成否が決するだけに、厚生、自治、建設各省のそれぞれの取り組み方、これをお聞かせ願いたいと思います。
  51. 中澤守正

    ○中澤説明員 お答えいたします。  障害者が暮らしやすいように設計、設備等について十分配慮した住宅の供給は重要な課題であろうと考えております。これまでも身体障害者向けの公営住宅の供給等について努力してまいったところでございますが、これまでの建設実績といたしましては、延べ一万五千戸を数えております。  これらの障害者向けの住宅の計画に当たりましては、例えば、入居者が決定してから浴槽であるとか洗い場、便器、流し等の位置等を決定するような設計方法を取り入れたり、可動式の設備、家具等を採用するというようなことで、障害の程度内容に応じた暮らしやすい住宅となるようにそれぞれの事業主体について指導をしておるわけでございます。また、これに伴いまして当然建設費等の増高が考えられるわけでございまして、これらについても特別な補助金を加算するようなことを講じておるわけでございます。  これらの施策によりまして、関係省庁いろいろございますが、協力しながら身体障害者の暮らしやすい住宅の供給に努めておるところでございます。
  52. 松尾武昌

    ○松尾説明員 お答えします。  身体障害者福祉対策の中での住宅対策でございますが、重度身体障害者の方々の地域での生活施設としまして、身体障害者福祉ホームの整備を行っております。  この身体障害者福祉ホームは、昭和六十二年度に創設した事業でございますが、身体障害者の方々が家庭で日常生活を営むのに非常に支障がある、そういう方に対しまして、日常生活に適するような居室あるいはその他の設備を障害者に配慮して整備いたしまして、身体障害者が容易に自立した生活を営めるように配慮した施設でございます。  平成四年三月末現在で十二カ所ほど整備されておりまして、この福祉ホームの整備に当たりましては、整備費、運営費を補助しているところでございます。
  53. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 身体障害者の住宅対策という問題につきましては、ただいま各省からもお話しのとおり、それぞれの省庁がその所管の中で具体的な対策を講じられるとともに、それを十分関係省庁の間で連携を強め、協力をしていかなければならない問題だというふうに考えております。  そういう意味から、自治省におきまして、特に地方財政を担当している立場から、地方団体がとういう施策に十分に対応できるような、そういう財政措置というものをこれからもしてまいらなきゃならないと思っておりますし、御案内のとおり、今年度の地方財政計画におきましては、ゴールドプランのいわゆる国の事業に対する地方負担額というものを全額地方財政計画に算入いたしますとともに、地方地方の実情に応じていろいろ行います福祉施策につきまして事業が実施しやすいような、そういう面からのソフト面の福祉施策の充実ということで、そういう経費の一〇%、金額にして約二千四百億円の増額をいたしましたし、また、昨年に引き続きまして地域福祉基金を三千五百億円を積み増しできるような措置を講ずるということで、できるだけ地域の実情に応じるようなそういう財政措置も行っているところでございまして、今後ともよく地方団体からの御要望も承りながら、この経費の充実に努めてまいりたいと思っております。
  54. 吉井光照

    吉井(光)委員 ひとつよろしくお願いしたいと思います。  次に、建設省は、四年度から福祉型借り上げ公共賃貸住宅、この供給を推進をして、そして四年度予算で全体事業枠の二千戸を計画をしているわけでございますが、これは、現行の高齢者向借上公共賃貸住宅を拡充をして、そして高齢者に加えて障害者、それから母子世帯の居住の安定の確保を図るために、土地所有者の建設する良質な賃貸住宅を地方公共団体または地方住宅供給公社が借り上げて、そして家賃負担を軽減して賃貸する制度でございまして、大いに期待したいところでございます。ところが、本年一月から二月にかけて全国自治体に説明会を開いて、そしてヒアリングをされたそうでございますが、いまだ手を挙げる自治体がいないようでございます。  したがって、私は大丈夫だろうかというふうな気がするのですが、今後本制度を進めていくに当たっての問題点としては、まずどの程度の規模の共同住宅を考えていらっしゃるのか。二番目としては、重度身障者が互いに連携をとりやすい同一フロアにするような機能的な設計、設備の住宅が必要ではないのかという問題。三番目は、当然身近に必要となるところの介護体制づくりをどうするのか。それから四番目として、入居対象者を公営住宅の入居収入基準を満たす者としているが、基準以下の者の取り扱いはどうなるのか。五番目として、実際のところ採算ベース考えると、福祉型住宅を建てようという土地所有者がどれだけ確保できるのか、私はこの点が非常に難しい問題だろうと思います。  このようないろいろな問題が考えられるわけですが、こうした諸問題について建設省はどのように対応するおつもりなのか、予算が成立をした現在、本制度の詳細計画の見通しはいつごろになるのか、また、先ほど申し上げました二千戸の総事業費はどう確保されているのか、お尋ねをしたいと思います。  また自治省は、本制度におけるところのハード、ソフト両面にわたるところの財政措置等の支援策についてどのように取り組んでいらっしゃるのか、あわせてお尋ねをしたいと思います。
  55. 中澤守正

    ○中澤説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生からいろいろ御紹介ございましたように、借り上げ公共賃貸住宅制度といいますのは、土地の所有者の協力を得まして公共団体等が借り上げて、それに対する家賃負担等を軽減して、いろいろな公営住宅の下位層の方、それから高齢者、身体障害者の方たちに利用していただいておるものでございます。  特に福祉型と申しますのは、平成三年度から発足いたしまして、当初は高齢者向けとして発足いたしましたが、本年度からは身体障害者も対象に加えて事業推進を図っていきたいと考えているわけでございます。  その事業の要件であるとか、そういうお話もございましたので、多少その辺もお話しさせていただきますが、まず戸数要件でございますが、これは一棟借り上げる場合もございますし、また一戸、二戸というふうに、これについての特別の要件はございませんので、需要の実態に応じて規模等についても適用。するようになっております。  また、これは身体障害者の方でございますので、普通の借り上げと違いまして、やはり設計上いろいろ配慮しなければいけないという問題がございます。特に障害者に配慮した設計とか設備を行います場合に、これは地主の方の御了解も得なければいけないわけでございますが、そういう設備、特別な設計をすることになろうと思いますので、これについての補助を行うことにしております。  また、敷地の環境整備であるとか、また共用の廊下、階段等についても特別な手当てが必要になってくると思いますので、これに対する助成も入れさせていただいております。  それとともに、特に家賃負担が非常に大きな問題でございますので、これについての家賃対策補助という制度も導入させていただいているわけでございます。  それから、所得制限等の問題がございますが、単身者の場合に下限を今までいろいろ設けておったのですが、こういう問題についても撤廃をさせていただいておるところでございます。  本年度発足した当初でございまして、まだ予算案の段階で、各公共団体にも御説明させていたたいているわけでございますが、福祉部局等との連携もまだ十分できていないということもございまして、残念ながら今のところ事業の申し出をされておるところはございません。私ども、何しろ発足した当初でございますが、市町村等を初めといたしまして、その制度の普及徹底を図りたいと考えております。  それとともに、やはり住宅側だけではできない施策でございますので、福祉部局との連携等を図りまして、特に実施体制について万全を期していきたいと考えております。  それとともに、これは何よりも土地の所有者の方の御協力を得なければいけないという制度でございますので、これら土地所有者の方に対する情報提供をこれから進めていきたいと考えているわけでございます。  以上、私ども、戸数二千戸、全体の枠は用意しているわけでございますので、その需要が出てまいりますれば直ちに供給の態勢に入りたいと考えております。  以上でございます。
  56. 湯浅利夫

    湯浅政府委員 ただいま建設省の方から御説明がございましたとおり、この制度平成四年度から創設されるということで、具体的な内容についていろいろとまだ煮詰めるべき問題もあろうかと思いますので、それらの状況というものをよく私どももお伺いしながら、関係省庁ともよく御相談しながらこの問題を検討してまいりたいと思っております。  地域特別賃貸住宅制度という制度一つの類型ということで今回この制度を検討しているわけでございますけれども公共的な住宅、公共サイドから供給する住宅のあり方という問題につきましてもいろいろとまだ問題があろうかと思います。公営住宅のほかにいろいろな住宅施策というものがあるわけでございまして、そういう中のどういうところに位置づけてこういう問題を検討していくのかという点もございましょうし、福祉の面からのアプローチをどうしていくかという問題もあろうかと思いますので、よく関係省庁とも御相談をしながらこの問題を検討してまいりたいと思います。
  57. 吉井光照

    吉井(光)委員 次に、重度障害者の雇用対策でございますが、厚生省調査によりますと、身障者のうちの就業者が七十・一万人、就業率は二九%。就業率がだんだん低下をしているようでございますが、これは障害の重度化と高齢化によるもの、こういうふうに私は見ております。また、一般の就業率五九%に比べれば約半分程度であるという結果が出ておるわけでございます。  これも小さな町村の現場の話でございますが、ある両足のない重度障害者の女性の方が言っていらっしゃることは、私たちにとって何よりも強く望んでいることは社会参加である、たとえどんな小さな仕事でも仕事があるというだけで生きがいとそれから張りと喜びを感じることができる、生きがいそのものなんですよ、こういう訴えでございます。そして、その方はワープロを一生懸命習った、そして見事なできばえの技術も習得できたわけでございます。したがって、自分も何とか仕事をしたい、自分の技術をひとつ認めてもらいたいということで、どこに行ったら仕事をさしてもらえるだろうかと思って、まず一番自分に身近な福祉事務所の窓口に行った。ところが福祉事務所では、いや私のところではそれこそ秘密的な書類が多いから、あなた方には仕事はさせられません。このようにむげに断られたというのですね。  これはごく一例でございますが、こうした大きなハンディを背負った人たちが技術を学べるところの授産施設が通える身近な距離にあるのか、また身につけた技術を発揮できる職場のあっせん窓口ではどのような細かい配慮がなされているのか、さらに授産施設や就業先の確保、今後どのように進められていくのか。  今申し上げましたように、都会におりますといろいろな施設もこうしたいわゆる障害者に対するところの配慮というものも非常に進んでいるわけですが、田舎へ行けば行くほど、やはりこうした点が非常におろそかなように私は思えるわけでございます。  したがって、私は、地方であればあるほど、そうした認識が低いところであればあるほど、やはり政治、行政の手を差し伸べてあげなければいけないのじゃないか、このように痛感したわけでございますが、いかがですか。
  58. 松尾武昌

    ○松尾説明員 先生おっしゃいました福祉事務所の対応が非常にまずかったようでございます。その点につきまして、もし個別であればよく指導をしたいと思います。  身体障害者の福祉対策の中での雇用の対策でございますが、身体障害者福祉対策としましては、就業困難な身体障害者の職業を与える施設としまして、身体障害者授産施設及び身体障害者福祉工場を整備しております。平成二年現在でこれらの施設は約三百三十七カ所、その入所定員は一万六千二百六十四人でございます。  今後もこれらの施設を重点的に整備してまいりたいと思っておりますが、特に身体障害者授産施設整備につきましては、できる限り住み慣れた住宅での生活を進めていくという観点から、適所型の、通う施設でございますが、適所型の授産施設推進していきたいと思っております。  また、重度の身体障害者の方を対象といたしましては、介護の面に配慮しました重度身体障害者授産施設、こういったものの整備を大いに進めてまいりたいと考えております。
  59. 坂本由紀子

    坂本説明員 障害者、特に重度の障害を持つ方々の雇用対策につきましては、労働省といたしましては、一般の雇用へ就業できることを最大の重点といたしまして施策を推進いたしております。  具体的には、各公共職業安定所に、障害者の方々の職業指導でありますとが職業相談を担当する専門の者を配置いたしまして、障害者の方々の職業相談等に当たっております。そのほか、基本的な労働習慣を身につけるための職業準備訓練でありますとか職域開発援助事業等のきめ細かな職業リハビリテーションを実施しているところでございます。  また、法律によりまして障害者の雇用を義務づけております。民間企業につきましては一・六%というような率になっておりますが、重度障害者につきましては、雇用された場合には一人を二人分として数えるということでダブルカウントの措置を講じてその雇用促進を図っておりますほか、雇い入れに際しましては各種の助成措置を講じております。助成率でありますとか助成期間等につきまして、重度の方々については手厚い配慮をいたしております。  そのほか、直ちに一般雇用につくことが困難な重度の方々が雇用の場を確保できるようにということで、民間企業地方公共団体とが共同出資をいたしまして重度障害者の雇用企業設立するという事業を展開いたしておりまして、現在全国で十七企業が操業いたしております。少なくとも各県で一つのこのような企業が設置されることを目指して労働省としては施策を推進いたしております。  そのほか、このような措置を講じましてもまだ重度の方々の雇用がおくれているという現状にございますので、現在の国会に障害者の雇用の促進等に関する法律の一部改正を提案いたしております。これは重度障害者の雇用の促進と職場への定着をねらいといたしたものでございます。  今後とも、重度の方々が社会参加できることの重要な一つの柱でありますところの雇用の促進を目指しまして施策を推進してまいりたいと考えておるところでございます。
  60. 吉井光照

    吉井(光)委員 身障者の問題につきまして、公共施設等の問題、これもいろいろな問題がございます。例えば、大きい病院に行っても身障者用のトイレが三階に一つしかないとか、また新幹線のホームも、車いす用のエレベーターがホームの一番端に行かなければないとか、やはりいろいろな問題点がございます。こういった点にもぜひともひとつ留意をしていただきたいと思います。  最後に、自治体職員の国連機関への派遣についてでございますが、ニューヨークの国連邦人職員会がこのほど、日本人の国際公務員を拡充する施策として地方公務員との関係強化に乗り出したいという意向がございます。そのねらいは、自治体職員を出向待遇や国連職員として国連本部や国連関連機関の職員に招いて、そして国連活動におけるところの日本のプレゼンスを高めることにあって、一方自治体側でも、国際化に役立つと強い関心示しているわけでございます。  私は、地方公務員のこうした国連派遣がまさにグローバル化の時代にふさわしいことであると思います。草の根国際交流を広い世界の舞台で広めていく絶好のチャンスだと、ぜひとも実現をさせたいわけでございますが、この場合、地方公務員海外派遣法等、法律上の問題点があるのかどうか、自治省と外務省にお尋ねをしたいと思います。  以上で質問を終わりたいと思います。
  61. 秋本敏文

    秋本政府委員 いわゆる地方公務員海外派遣法第二条第一項におきまして、任命権者は、我が国が加盟している国際機関の要請に応じ、これらの機関の業務に従事させるため職員派遣することができることとされております。この規定に基づきまして国際連合、国連の専門機関等に地方公務員を派遣することにつきましては、法律上特に問題はないと考えております。
  62. 神余隆博

    ○神余説明員 お答え申し上げます。  委員御質問の件につきましては、結論から申し上げますと、国際機関への地方公務員の派遣については外交上の問題は特にないというふうに考えております。  かねてから国際機関で働く邦人の数が非常に少ないという指摘がなされておるところでありまして、外務省としましても国際機関人事センターなどを設置いたしまして人材の確保に努めておりますけれども、ちなみに国連に勤務する邦人職員の数は全部で八十八人と、大変少ないということになっておりまして、本来望ましい職員数の半数であるという点もございます。それから国際機関全体をとってみますれば、邦人の数が四百五十人というふうになっておりますし、これも非常に少ないということでございますので、国際化の進展に対応するためにも、関係省庁と鋭意協議、連絡を進めてまいりまして、地方公務員から国際機関への派遣の方途につきまして検討を進めていきたいと考えております。
  63. 吉井光照

    吉井(光)委員 終わります。
  64. 中島衛

    中島委員長 午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  65. 中島衛

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより大蔵大臣に対する質疑を中心に議事を進めますが、大蔵大臣の出席時間が限られておりますので、理事会での申し合わせどおり、質疑時間の厳守方をお願い申し上げます。  それでは、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中沢健次君。
  66. 中沢健次

    ○中沢委員 自治大臣とはもう既に何回か委員会でお手合わせをいただいておりますが、きょうは羽田大蔵大臣に。七夕と同じでございまして我が委員会には年に一回の出席。私は、かつて大蔵大臣が農水大臣をされておりましたときに、出身が北海道でございまして、米の問題で北海道の先輩議員とお訪ねをした際に中沢という名刺を渡したときに、長野の出身ですか、こういう質問を受けた記憶がございます。私は、決して大臣に対して特別な予見も持っておりませんし、個人的な反感なんか持っておりませんが、しかし、後ほどいろいろ交付税の問題についてお尋ねをいたしたい。やや批判的なといいましょうか、大蔵省に対しまして厳しい指摘をするかもしれませんが、その辺は、お互いに立場が立場でございますので、ひとつ御理解を得ておきたいと思います。  さて早速でありますが、約一時間三十分時間をいただいておりますので、できるだけ大蔵大臣に質問を集中したいと思いますが、しかし、幸いにして自治大臣も同席をされておりますから、その都度また自治大臣地方行政あるいは地方財政に対する哲学あるいは具体的な見解もあわせてお尋ねをしたい、このように考えております。よろしくお願い申し上げます。  最初に、緊急経済対策につきまして簡単にお尋ねを申し上げたいと思います。  十三日に総理の記者会見がございました。改めて緊急財政対策について決意を含めてお話がございました。この委員会でも、大臣の一般質疑から始まって、交付税審議の際にも、やや角度が変わっておりますけれども、今までも議論をしてまいりました。  そこでまず大蔵大臣お尋ねをしたいと思いますが、総理の記者会見を見るまでもなく、予算が上がったばかりでありますけれども、やはり日本の経済が非常に厳しい環境に置かれている。内容的には釈迦に説法でありますから一々申し上げません。したがって公定歩合の引き下げあるいは予算の前倒し、そして自治省サイドでいいますと、地方公共事業の国同様の前倒し、こういう緊急対策がそれぞれ打ち出されてまいったのでありますが、私はやはりこの種のことはそれなりに積極的に評価をしたいと思いますけれども、しかしながら、予算の前倒しの後、一体後半どうなっていくのであろうか、いろいろな関係者からもそういう意見なんかが既に持ち上がっておりまして、したがって、予算が上がったばかりの段階でありますけれども、秋にはやはり国としても大型の補正予算を組む必要があるのではないか、同時に、それとやや横並びで、地方財政計画、場合によっては地方債の枠の拡大等々を含めて、国と地方を共通する改めての緊急財政対策というのが必要になってくるのではないか、このように考えますが、この点につきまして、まず大蔵大臣から所見を伺っておきたいと思います。
  67. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 まず、今日の景気に対する対応でありますけれども、いずれにいたしましても、昨年の夏ごうからですか、今まで大変大きく成長しておりました経済、これに陰りといいますか、一つの減速傾向といいますか、そういったものが見えてきたということでありまして、私ども、これに対しまして、十二月に行われました例の補正予算、こういったものを対応する、そういう中でゼロ国債六千億というものを認めるとか、あるいは財政投融資等で相当大幅のものをやらせていただきました。そして、十一月と十二月に続いて公定歩合の引き下げという対応をしたわけであります。  しかし、こういう対応をする中にありましても、さらに景気の減速感というものが広がりつつあるというのが現状でありまして、こういったものに対して、私どもは、税収は相当伸びが引っ込んでおりますけれども、しかし、そういう中にあってもこれに対応しなければいけないだろうということで、実は景気に配慮した予算をつくったということであります。  そして、今御指摘がございましたように、そういったものを国会で御審議いただきまして、国会で通していただく、その前後いたしまして、私ども、党の方とも話し合い、いわゆる緊急経済対策というものをやったことはもう御案内のとおりであります。特に、その中の中心になりますことは前倒しということでありまして、公共事業、これは地方もともに前倒ししましょうということで、自治大臣の方にも大変御配慮をいただいておるわけでございます。  ただ、こういうことをやる現状というのは、私は今減速感ということを申し上げたわけでありますけれども、なおかつ今日、有効求人倍率は一・二五ということでありまして、割合と高いところにある。かつてのように失業者が町にあふれているということじゃないということであります。それとやはり国民の金融資産なんというものも割合と高いレベルのものはあるということ、それから企業もある程度の蓄積というものを持っておる、これはよその国なんかと比較するとそれは私は明らかに申し上げることができると思っております。  そういう中で今申し上げたような措置というものをやるということでありますから、これは前倒しということをやりますと、当然相当幅広くいろいろな資材、こういったものの手当てをしておくということでありますから、これは幅広くどんどん広がっていくものであろうと思っております。しかも雇用が、労働状況というのが逼迫している中でこういうものをやりますから、後に仕事があるよと安心感を与えながらも、これが多少ずれていくというようなことがあるだろうと思っております。  そういうことを考えましたときに、私どもといたしましては、今その補正というものをここで考えるということよりは、むしろこの効果というものを今見詰めるということが大事なときであろうと思っております。ですから、そういったものを見きわめながら、私どもはやはり機動的に対応していくということであります。  地方債につきまして、例えば地方の、塩川大臣ともお話ししましたり、あるいはほかの県の県知事さんなんかともお話ししておりましても、いや、私の方ば七割五分をちょっと超えるものというよりは、むしろ八割ぐらいまでいきますよと言う方もいらっしゃいますし、また大臣なんかも、あるいは地方債というものの枠というものも考えなきゃいけないのかなというような話も、要するに、そのときの状況というものをきちんと見きわめながら対応していく必要があろうということでございまして、今私ども、補正については考えておりませんけれども、やはり今後この推移というものを見守っていきたいということでありますし、また、地方債等につきましては、これからも自治大臣と十分話し合っていきたいと思います。  一つだけ申し上げておきたいのは、おかげさまでいろいろな対策を進めたり、あるいはこの緊急対策の中で住宅に対するインセンティブなんかも与えております。そういうことで、住宅も一時期は百二十二万ぐらいまでですか、落ち込んだということがあったのですけれども、このところ百三十万戸に戻り、四月あたりになってきますと大体百四十万戸近くまでいくのかなというふうに回復の兆しか見えておる。そういうものに伴いまして、例えば鉄鋼なんかでもそろそろ在庫の調整というものが進むのかなというような、いい兆しも見えてくるということでございまして、私どもは、そういうものの本当の動きというものを十分見きわめながら対応していきたいというふうに考えております。
  68. 中沢健次

    ○中沢委員 それで、自治大臣お尋ねをしたいと思います。  一昨日の委員会審議の中でも、やはり地方の財政が日本経済を支えている。とりわけ、ずっと近年は地方の単独事業がどんどん順調に伸びておりまして、大臣御案内のように、平成四年度の地財計画では十四兆円、それから国の補助事業でいうと十兆円でありまして、私なりに単純に計算すると、国の直轄事業を入れますと、国・地方公共事業というのは約三十四兆円に上るわけですね。その中でもやはり地方の単独事業という十四兆、しかもそれは景気回復あるいは緊急経済対策には有効な手段だ、私もそのように認識をするし、大臣も一昨日は大体そういうトーンで、基調で答弁されたと思うのです。  ですから私は、この際、まだ交付税上がっておりませんけれども、例えば七十四兆円の平成四年度の地方財政計画について、必要な時期には見直しをする、あるいは連動して、地方の単独事業についてはもう少し思い切って後半の景気対策も考えて枠を拡大をする。具体的には、地方債の発行の杯そのものについて相当程度勇断をもって拡大をする、こういう必要性があると思いますが、改めて確認の意味で、見解をぜひ示していただきたいと思います。
  69. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 おおよそ今おっしゃったような数字は蓋然性があると私も思っております。そこで、先ほども大蔵大臣のおっしゃいましたように、これからの追加措置を必要とするものについては積極的に対応していきたいというお話でございますので、私たちも今中沢さんの御質問しておられる趣旨は十分心得ておりますので、まずとりあえず、この六月を一つの目標にいたしまして、単独事業並びに補助対象事業の執行状態はどうであるかということと、それから、執行に着手、準備段階にあるものはどういう状況にあるかということを、その一時点をつかまえてちょっと精査してみたいと思っておりまして、それが年度間におきますところの事業執行の一つの調整になればと思っております。  そこでなお景気をさらに一段と刺激する必要があるとか、あるいは地方におきます特殊な投資の事情があるといたしますならば、まず私たち対応したいと思っておりますのは、起債の充当、あるいは起債の額そのものをふやすことをもって一つの刺激材料にいたしたいと思っておりまして、直ちに地方財政計画を修正してそれに応ずべきものとは私は考えておらないのです。必要あれば、補正等の必要がございましたら当然それはいたしますけれども、その以前にいたすべき措置としては地方債の扱い方であろうと思うのであります。  といいますのは、地方債の発行と交付税関係は、いわば、ある点におきましては重複しておる点がございまして、ただポケットの移しかえに終わってしまうところもございますから、追加財政投資をするということはやはり起債が一番有効なのではないか。その場合に何を対象事業とするかといえば、やはり公営企業並びに準公営企業等がまずそれに対する措置として考えられるのではないかと思っております。  そういう面から見まして、今自治省の方でも、公営企業の有効な、いわば経済に対応する有効なあり方というものはどういうことかという、これ、今後の問題として検討しておるところでございますし、それからまたもう一つは、土地の有効利用ということを考えますならば、土地対策土地の手当てが行き届いておるもの、土地を持っておるものに対する当該事業の年次を早めていくとか、あるいは経年度事業についての促進を図るというようなこと、そういう措置をまず講じていきたい、こう思いまして、その上でのさらに地方財政計画の見直し、追加見直しということ等も順序を追うていきたい、こう思っておりますが、おっしゃるように下半期におきますところの財政支出というものがいわば上期で切れてしまって、トンボのしり切れになってしまわないように、十分注意をして運営していきたいと思っております。
  70. 中沢健次

    ○中沢委員 今大蔵大臣自治大臣からそれぞれお話がございました。私の趣旨は、今自治大臣最後におっしゃいましたようなことで、後期についても十分、国・地方を通じまして配慮の必要がある、必要なときにはそういうことについて十分具体的な手段を含めて考えたい、こういうことでございますから、ぜひひとつよろしくお願いを申し上げておきたいと思うのです。  さて二つ目には、地方財政の認識について、若干の時間議論もしてみたいと思うのです。  なぜそういうことを言うかというと、大蔵省はどちらかというと、国の財政よりも地方の財政は裕福だ、地方の財政は余裕がある、もっと正確に言えば、財源余剰論ということを大蔵省はかねてから主張してまいりました。私はこの問題について、時間が余りありませんから各論にわたっては余りできないと思いますが、例えば大蔵大臣の出身の長野県、選挙区は長野二区、私は北海道で北海道四区、私なりに財政の実態について数字を調べてみました。それで、内容的に改めて自治省からは数字は示されなくて結構だと思いますが、特徴的なことをまず僕の方から申し上げてみたいと思うのです。  大蔵大臣の出身の長野県は、県税の割合というのは歳入全体の二八%。それから、財政力指数でいいますと、全国都道府県平均〇・五〇に対して〇・四七、大体全国平均ぐらい。ところが長野二区、二十その市町村がありまして、一覧表をいただいていろいろ分析をしてみました。財政力指数でいいますと、全国市町村の平均は〇・四二。二区の二十その市町村のうち、全国平均を上回るのは四市を入れて十市町村、下回るのが十七町村。とりわけ、非常に財政力の弱いところの、固有名詞は挙げることは御遠慮申し上げますが、税収が三%という、そういう町村も存在をされている。これはもう事実、間違いがないところです。  長野のことばかり言うのは失礼でありますから、私のところも少し言いますと、いつも委員会で私の出身の夕張のことを言えば、本当に皆さん、お気の毒だなという顔をされて、正直言いまして自治省も随分いろんな配慮もいただいているのでありますが、私の夕張は全国市町村のレベルから見ると大幅に落ち込んでおりまして、財政力指数は〇・一七、極めて脆弱。北海道、横路知事が今責任を持って道政を執行しておりますが、北海道の財政力指数は〇・三八、長野の〇・四七よりも劣る、こういう状態。  つまり私が言いたいのは、今、長野と北海道、二区と私の夕張、具体的な数字を示しました。三千三百の地方自治体の財政というのは、ここに象徴されておりますように大変な格差を持っている。ですから、公債費の残高だけで国が百七十四兆で地方が七十二兆だ、これを取り上げて地方の財政が余裕がある、私はもうこういう議論はそろそろ大蔵省も卒業をしてもらいたいと思うのですよ。もっと言えば、自治大臣は大蔵省にそういう意味での教育的な指導をぜひお願いをしたいなと思っているくらいです。  そこで大蔵大臣、もうこれ以上申し上げませんが、今私が申し上げましたような具体的な事実をも含めて、大臣として地方財政についてどういう認識を持っておられるか。まさか地方財政、余裕があるとは私はお答えにならないと思うけれども、改めて見解をお聞きしたいと思います。
  71. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 もうすべて御承知の上の御指摘でございますので、これはお答えするのは大変難しいのですけれども、今御指摘ありましたように、地方団体は三千三百ある、そういうことでそれぞれの財政状況というのは非常に大きく変わっております。私どもの今御指摘のございました長野県第二区を見ましても、市の方は全国の平均を上回っております。それからまた軽井沢のような特別な地域になりますと、一・七幾つですかというようなことで大変高いレベルにあるということでありますけれども、しかし一・一〇なんというところも実際に私の地区の中にもあるということでございまして、全国的にということになりますと、これはいろいろなばらつきがあるということは言えるのじゃなかろうかというふうに思っております。  ただ、総じてあれしますと、今こう言うけれどもという御指摘があったわけですけれども、やはり国と地方というのは車の両輪であるということで、あるときには国の方が余裕があるときには国の方でお手伝い申し上げる、また地方の方からはお力をおかりするというようなことがあるということでありまして、一応比較するときには、今御比定があった公債依存度ですとかあるいは公債残高、また公債費の比率が予算の中にどんなふうに占めているのかというようなことは、やはり私ども考えなきゃならぬ。そういったときに地方の方が国に比べますと良好な指標になっているということは申し上げることができるんじゃなかろうかというふうに思っておりまして、その面では地方財政の方が今、今日の状況は健全であるということは言えるんじゃないのかなというふうに私は認識していることを改めて申し上げさせていただきます。
  72. 中沢健次

    ○中沢委員 その議論をやっていきますと一時間半じゃ終わりません。別な問題に移しまして、改めて別な角度から少しまた議論もしてみたいと思います。  ただ、私は、大蔵大臣という立場でいえば、従来から歴代の大蔵大臣はそういう主張をずっと繰り返されて、大臣がかわっても同じような答弁をされておりますから、今度は羽田さんが大蔵大臣になったから途端に我々の主張に同調するということは、正直言って今の段階では期待していません。しかし大臣、今おっしゃったようなことは、木を見て森を見ないということわざがございます。先輩に対してこんなことを言うのは大変失礼かもしれませんが、そういうことも十分ひとつわきまえていただいて、自治大臣自治省と大蔵大臣や大蔵省が財政問題についてお互いに、平たく言えばかみしもを脱いていろいろな議論をしていただきたい、そのことだけは申し上げておきたいと思うのです。  そこで、三つ目になると思うのでありますが、交付税の特例減額について少し時間を割きましていろいろな角度で議論をしてみたいと思います。  最初に、昨年の十二月の予算の政府原案確定の際に、実は私も社会党のシャドーキャビネットの自治委員長補佐という、平たく言えば大蔵政務次官、影の大蔵政務次官か自治政務次官ということなんでしょうが、そういう仕事もやっておりまして、自治大臣にもお会いをしたし、あるいは大蔵大臣にもお会いをいたしました。特に自治大臣には、当初大蔵省というのは、この際、地方財政が余裕があるから三二%の交付税率を引き下げようと——だれが言ったかは別ですよ。あるいはそこまでいかないにしても、何兆円かの特例減額を自治省側に求めていこうと、新聞では盛んに報道されておりました。私どもはそうさせてはならない、こういう思いで十二月のぎりぎりに自治大臣に、とにかく税率の引き下げはどんなことがあってものんではだめだ、こういうくぎを刺さしていただきましたし、特例減額については昨年も五千億やっているわけでありますから、ことしまた受けるとなると二年続きである、しかも当時は一兆円以上というような話がずっと飛び交っておりましたので、一兆円ということについて言うと、我が社会党、党内的にもいろいろな意見がありまして、とてもじゃないけれども去年のように交付税を条件つきで賛成するなんということにはなりません、本音も含めて申し上げてまいりまして、いろいろありましたが八千五百億特例減額、このように落ちついたわけでございます。  そこで、大蔵大臣、当初恐らく一兆円という特例減額を最後の段階で自治大臣に要請をした、こういうことを聞いておりますが、そういう特例減額を求めたのはなぜなんでしょうか。簡単で結構でありますから、お答えをいただきたいと思います。
  73. 田波耕治

    ○田波政府委員 お答え申し上げます。  幾らの御要請を申し上げたかということにつきましては、いろいろ年末の予算編成の過程におきまして私ども自治省と、まさに委員おっしゃいますようにかなり突っ込んだお話し合いをさせていただきました。その過程におきましていろいろな考え方があったわけでございますけれども、基本的な考え方といたしましては、先ほど大蔵大臣からお答えがございましたように、現在の国と地方の財政状況を比べますと、私どもとしては、マクロ的には、地方財政につきましてはその円滑な運営のため所要の地方交付税総額を確保した上でなお財源に余剰があるという一方で、四年度の国の財政状況は極めて厳しい状況にある、予算編成そのものも非常に困難な状況にあったということを勘案して御要請を申し上げたというふうにお答え申し上げたいと思います。
  74. 中沢健次

    ○中沢委員 いろいろな経緯があったということがありました。私もそれはもちろんいろいろな経緯があったと思うのです。ただ、この一兆円というのは、かなりいろいろな客観条件からいえば立証ができるのですね。結果的に八千五百億の特例減額、そして一般財源化はトータルをするとかつてない非常に多い金額になって一千五百億。ですから単純に計算すると、特例減額の八千五百億と、それから今まで補助金で出ていたものを、地方が肩がわりをしたということは私は余り言いたくありませんが、しかし一般財源化をしたのが一千五百億、足すとちょうど一兆円なんです。ですから、一兆円というのは私はやはり単なる経過の問題だけではなしに、具体的な事実として立証できるといいましょうが、客観的には存在をした。これ以上そのことについては申し上げませんが、それはひとつ私の方から指摘をしておきたいと思います。  そこで、大蔵大臣、国会議員を長くされておりますからその辺については十分御承知だと思いますが、あえて聞いておきたいと思いますが、地方交付税という制度についてどういう認識をお持ちでしょうか。例えば地方制度調査会のいろいろな見解、それから毎年大蔵大臣と、人がかわりましてもこの委員会で議論をしてきた経過等々もありますから、その辺を十分踏まえられまして、地方交付税という制度について羽田大臣としてどういう見解を持っておられるか、改めて聞いておきたいと思います。
  75. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 地方交付税というのは、国が地方に交付するものでございます。これはもう申し上げるまでもないわけでありますけれども、本来地方が徴収すべきものを国がかわって徴収しているという性格のものではないだろうということは申すことができると思います。  ただ、地方交付税は、地方団体がひとしく行うべき事務を遂行できるように、数多くある地方団体の財源の調整のため国が地方に交付する使途制限のない一般財源であって、その総額が国税の三税、これが三二%、あるいは消費税が二四%、また、たばこが二五%という、法定されておるものであろうと思っております。このように定められた国税の一定割合、これが法律によりまして地方団体に当然帰属していくということで、いわば地方のあらかじめもう決められた一つの財源であるというふうに申し上げて差し支えないのじゃないのかなというふうに思っております。
  76. 中沢健次

    ○中沢委員 それで自治大臣、一昨日もその辺はやりとりありましたけれども自治大臣としては地方交付税をどのようにとらえられていらっしゃいますか。
  77. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これは明確に申しますと、国が地方にかわって徴収する税である、私はそう認識しておりまして、これはあくまでも地方の固有の財源である、こういう認識であります。
  78. 中沢健次

    ○中沢委員 そこで、私自身も地方制度調査会の委員でもありまして、昨年のたしか十二月八日と記憶をしておりますが、当時の大蔵省の動きに非常に地方制度調査会全体が危機感を持ちまして、そうさせてはならないという危機感がございました。全会一致で意見書というのを改めて採択をし、それぞれの総理以下関係大臣に送付をした事実があります。その内容は、もう言うまでもありませんが、交付税というのは地方の共通する自主財源であって、地方にかわって国が徴収をしているにすぎない、要約をすれば。これは、自治大臣とはもう何回もそのことはお互いに念押しをしているわけです。今も同じような答弁がございました。  ところが、どうも大蔵大臣が出てきてお答えになりますと、その肝心のところが、簡単に言えば玉虫色なんですよ。いつもそうなんですね、今まで。何となくそのことは、我々も最後のところは、まあ年に一回しかこの委員会においでになっていないし、大蔵大臣としてはこれが限界かな。もっと言うと、我が党は伝統的にこの法案は反対をしてきた。見解の違いがあってもやむを得ない、こういう立場をずっととっていました。  しかし、昨年の場合は、特例減額が初めて出てきて、ことしも、くどいようですが今度二回目、また出てきた。これは地方交付税という制度についての基本認識も含めて、従来のように大事な部分がすれ違いじゃやはりまずいのじゃないか。すれ違いのままであれば、我々としてはやはり昔に帰って、これはもう見解の違いであればこの法案は賛成するわけにいかない、こういうことにもなるわけでありまして、どうでしょう、大蔵大臣、この際、僕の時間はもう一時間しかありませんが、これからまたいろいろやりますけれども、せっかくお見えでありますが、ぜひひとつ自治大臣がおっしゃるような見解に余り枝葉をつけないで、根幹のところでわかりやすく、自治大臣のおっしゃるとおりです、このように答弁していただけますか。改めて聞いておきたいと思います。
  79. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 もう先ほども申し上げましたように、徴収されているものにつきましては法律によって率等が実は定められておるという、またあるいは、あるものについては定額が決められておるというようなことでございまして、それでそういう意味からいきますと、いわば地方の権利のある財源であるという意味におきましては、まさに地方の固有の財源であるということは申し上げることができるであろうと思っております。  しかしいずれにしても、これは何というんですか、お互いの立場というものを、これは車の両輪でありますから、片っ方だけがうまくいくということはできないわけでありますから、そのあたりは私ども十分これからも話し合いをすることについては全然やぶさかじゃありませんし、またお互いに助け合っていく問題であろうと思っております。  ですから、基本的の、今の私は最後のくだりのところでは、まさに地方の、そういう意味からすると、地方の固有の財源ということが言えるでしょうということを申し上げたことをひとつぜひ御理解をいただきたいと思います。
  80. 中沢健次

    ○中沢委員 くどいようですが、大体野党は予算に反対しました。その理由は、八千五百億の減額については容認できない、これも一つの理由なんですよ。しかし、野党が反対しても結果的に予算は、もう釈迦に説法ですけれども成立されますね。ところがこの法案でいうと、野党が反対すると、極めて現実的にいえば、衆議院は通っても参議院に行くとどうなるかわからぬ。これはやはり、そちらに座っていらっしゃる両大臣としては大変な責任を持つと思うのです。我々も責任を持ちたい。仮に賛成をするのであれば、そこのところの基本認識も従来のようなあいまいな——何となく政治の世界ではわかっているけれども、国民から見ればよくわからぬ。それでなくても地方交付税という制度は難しいわけでありますから。しかし地方交付税という制度はこうですよと、やはり自治大臣がかねてから言っているように、私が今簡単に言ったようなそういう見解に余り枝葉をつけないで、しかしながらなんて言わないで、この隣どうですか、歯切れよく。そこから歩み寄ってこれからまた私も議論したいと思います。これは与党の先生方は黙っていらっしゃいますが、心は全く同じだと思いますね。
  81. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 しかしながらというのは、ただ申し上げたのは、私があれしたのは、いわゆる本来地方が徴収すべきものを国がかわって徴収しているよという、そういう性格なものじゃないということで、そういう意味で言いますと、固有の財源という、その意味では固有の財源ということじゃありませんよということを申し上げておるのであって、私は基本的には今自治大臣がお答えしておることとそんなに変わっておるものじゃないというふうに理解をいたしております。
  82. 中沢健次

    ○中沢委員 恐らくこれは予算委員会規模ぐらいの議論に、これからどんどんやればやるほど議論を深めなければ私はだめだと思うのですよ。しかし、今大臣がおっしゃったように、基本的には自治大臣と変わってないと言うのだから、変わっていないのであれば、どうですか、私がさっき言ったようなことで、あれでいいですか。自治体の共通する自主財源であって、地方にかわって国が徴収をしている、このとおりですよ、地方制度調査会もそのように文章的にも整理をしているし、自治大臣も私と同じ言い方をされているし、大蔵大臣も、基本的には同じだと言いながら、どうもしかしながらという、余計なことと言ったら失礼かもしれませんが、それはつけない方がいいのじゃないですか。どうですか。(「閣内不統一じゃないか」と呼ぶ者あり)
  83. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 これはまあ閣内不統一という遠くからのお声もありますけれども、これはまさに長年議論をしてきたことであろうと思っております。ともかくやはり、税としてたばこからあるいはお酒から、あるいはいわゆる所得、法人、酒また消費税というもの、それぞれのパーセンテージを決めながら国がこれはちょうだいします、国が決めた法律に基づいてこういった徴税をいたします、しかしその中で何%、何%、何%はこれ地方の方に申し上げましょうということでこれは整理されているので、私はそこで、やれおれはこれは固有の財源だぞどうだぞという私は筋合いのものじゃないのじゃないのかなというふうに、これはまた御議論をしたいと思いますけれども、そういうふうに思っております。
  84. 中沢健次

    ○中沢委員 それで、先ほど私があえて政治的な話をしました。我々は野党としては伝統的に反対をしてきた。見解が違うから反対をした。昨年は、やや初めての経験でありましたけれども、附帯決議じゃなくて単独決議を付して、かなり厳しい条件をつけて、大体公明党さんもそうでありますが、賛成に回って、交付税法案が成立をしたのですよ。そこのところをまず大蔵大臣も政治的に、私のような新参者から言うまでもありませんが、よく判断をしてもらいたい。それはやはり従来と違う。  それと同時に、これから国と地方財政は車の両輪だからどう助け合うかという話は、これはまた別の次元ですよ。地方交付税制度とはこうだ、しかしお互いに助け合うという話の余地は当然出てくると思うのですよ。ですから余りその辺はしゃくし定規に考えないで、この際せっかく大物の大蔵大臣ということでこの委員会に登場されたわけでありますから、これからの地方と国とのいい意味での財政的な協力関係をずっと続けようということであれば、私の個人的な意見ではないわけでありますから、ぜひひとつもう一度、くどいようですが、はっきりさせてもらいたいと思います。
  85. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 この問題につきましては、まさに今一極集中問題についても大変議論のあるところでございまして、権限の移譲、あるいはそういったものに伴っての財源の問題ですとか、そういったことなんかについては基本的な、根本的なものにやはりさかのぼって議論して、そこで一つの方向を出していくべきものであろうというふうに考えておりまして、今のはまさに、一つ法律の中に基づいて徴収したものをまたこれを分ける法律に基づいてこうやってやっているということでありますから、ここで余り、いかに今までいろいろなこだわりがあったという中で、しかし、今度の法律とかそういったものについて、先年からですか、採決等に当たってもいろいろな深い御理解をいただいておるということは、私ども感謝を申し上げておるわけでありますけれども、この問題は今申し上げたような地方へのいろいろな権限移譲ですとか、あるいはそれに基づくところの財源の移譲ですとか、そういった中でやはりきちんと整理されていくべき問題なのかなというふうに認識をいたしておりますけれども、しかし基本的には、実際にそれが大体決まっていくのだということ、これは法律に基づいてやっているのだということだけは申し上げることができると思います。
  86. 中沢健次

    ○中沢委員 それで正直言いまして、これ以上この問題について仮になかなか見解が合わないのであれば、大体今までは年に一回大体二時間半大蔵大臣に来ていただいてこの委員会で議論をしてきた、今までは大体それで、見解が違うからということでお互いに、けんか別れと言ったら失礼ですけれども、それで済んだと思うのですね。去年は少し違った。ことし以降どうするかということになってくると、どうか委員長、きょう私の持ち時間は余りありませんから、この際ですから、理事会で、改めて大蔵大臣にまた時間をとっていただいて本委員会に来ていただく、このことを強く希望したいと思いますが、いかがでしょう。
  87. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 大蔵大臣の言っている言葉を私はそれを一つの表現であらわすならば、一つの特定の税と言ったらいいかと思うのでございますが、ある特定の税のうち法律をもって国と地方との配分をあらかじめ定めて徴収をする税、しかしこの配分の分については地方固有の財源として充当するものである、こういう意味だろうと私は思いますが、ですから、国が徴収する、地方にかわって徴収する税でありますから、これはあくまでも予算措置でもって定めておるものではなくて法律によって定めておるものだということが一つであります。そしてもう一つは、地方の固有の財源であるということ、この二つが交付税の基本的な性格だろうと思います。  それをやっておりますのは、絶えず交付税に関しましては、例え一円の貸し借りといえども法律をもってしなければ動かないというのは、そこに私は重みがあるというものである、こう思っております。  それからもう一つは、直入の問題と関連した議論となると思うのでございますけれども地方交付税に関しましては、国の予算配分の予算構成の中で、一般財源と既にそれと切り離した地方交付税という、これはいわば地方と国との共同の仲間の財源だよということできちっと明確にされておる。それと国債費、公債費というもの、こういうぐあいに配分されてきておりますので、地方の方の側から見ても交付税というものは初めからこれは地方のものであるという認識に立って私は申しておるものでございますので、言葉の表現ではいろいろと違っておるだろうと思いますけれども、大蔵大臣の言っているのと私の言っているのとは、その趣旨においてはというか、税に対する扱いについては同じである、私はこう思っております。
  88. 中沢健次

    ○中沢委員 それで重ねて申し上げますが、確かに今塩川自治大臣がおっしゃったようなことは、我々もそういうことをいろいろ議論してきております。ただ、大蔵大臣の立場にかわって自治大臣がおっしゃられても——私はそれはわかりますがね、おっしゃられてもやはり困るわけですよ。大蔵大臣塩川自治大臣は言葉もわかりやすくいこうじゃないか、言葉の行革ということなんか随分この委員会でも発言されています。ですからこの際、大蔵大臣からすぱっとわかりやすく、どうしても今直ちにそういうことができないのであれば、私が委員長に言ったように、今までは確かに年に一回大蔵大臣に来ていただいて議論した、これからは年に一回二時間半じゃ、大事な大事な交付税の法案の審議というのはやはり時間不足は否めないと私は思うのですね。これをひとつまた理事会でやっていただきたい、どうですか。
  89. 中島衛

    中島委員長 中沢君の提案につきましては、理事会で協議いたします。
  90. 中沢健次

    ○中沢委員 それで大蔵大臣、また後ほど今度は具体的な問題についてやはり同じような議論もしてみたいと思いますが、とりあえずは関係する問題に移っていきたいと思うのです。  地方財政が非常に苦しい時代があった。私はまだ国会に出ておりませんからよくわかりません。先輩の議員の話を聞くと、大変苦しい時代があって、交付税の三二%を引き上げてもらいたい、地方六団体も含めて与党の先生方もそういう意見があった。しかしこれは実現しなかった。しかし、どうしても地方では財政需要があるわけでありまして、必要なことはやはり交付税で足りなければ結果的に国から借金をして、そして地方に配分をして一その積もり積もった借金が、たしか昭和五十八年ですか、約十二兆になる。これ以上地方の借金がふえたら——当時の地方財政規模というのは恐らく五十兆ぐらいだと思いますが、これはもう国の財政どころじゃない。バッターアウトだ。  そこでどうしたかというと、これ以上多く申しませんが、国がおよそ半分、地方がその半分、折半をして借金を返そう。そして、具体的な返済計画でいうと、国は平成三年度から借金返しをする、地方財政も平成三年度から借金返しをするという予定でしたけれども、実は経緯の中で社会党は随分異論を申し上げました。この際、地方交付税を配分するよりも借金を早く返そうじゃないか、地方財政計画交付税の中では借金返しにずっと努力をして、そして約五兆六千億の地方の借金は平成四年度は六千億になったのですね。これは、経緯だとか事実だとかは改めて答弁は要りませんが、間違いがないと思うのですよ。  私はこの間、この委員会で何回か借金返済については、借金の返済も大事だけれども地方としてはやりたい仕事がたくさんある、ですから交付税ということで配分をすべきだという論陣を張ってまいりました。しかし事実問題としてはそうならない。ですから、私なりに考えますと、地方というのは本当にまじめに、まあくそまじめという言葉は乱暴かもしれませんが、まじめ過ぎて借金が気になって、借金返しを一生懸命やって、結果的に借金が非常に少なくなった。交付税特会に対する借金は六千億になった。そこに今度は国の方は目をつけて、地方の財政は余裕があるじゃないか、金を貸せ。  これはやはり大蔵大臣、大蔵省として付確かに国の財政、地方の財政ということでいろいろ考えるのでしょうけれども、私から言わせれば、地方が血のにじむような努力をした末に借金を軽くしてきた。それに大蔵省は目をつけて、去年もそうでした、ことしも地方財政が余裕があるんだから金を貸せ。つまり、地方交付税という制度を頭の中では理解をしながら、いいですか、頭の中では理解をしながら、実際問題としてはもう国の思いどおりにどうにでもなる、こういう発想がやはり背景にあって、乱暴かもしれぬですが、大蔵省大国主義、独善的、私はやはりそう言わざるを得ませんね。それについてはどうでしょうか。
  91. 田波耕治

    ○田波政府委員 委員指摘のように、いわゆる五十年代の大変な地方財政が厳しい時代に、交付税特会においてかなりの借金をしたわけでございます。それを昭和五十九年度の地方財政対策に関する(中沢委員「経緯についてはよく知っていますから、いいです」と呼ぶ)改革で折半をした、そのことは先生おっしゃるとおりでございます。  その後でございますけれども地方につきましては、まあ全般的に見て地方財政の収支状況が先ほど来申し上げているような状況であること、あるいは臨時行政改革推進審議会の答申におきましても、そういうような状況のもとにおいては、地方財政の中期的な健全化等を図る観点から、できるだけ借金を返すようにというような趣旨の御答申もございます。そういった観点から、かなりの部分早期に償還が行われてきたというのが実態だろうかと思います。  翻って、国の方でございますけれども、国の財政につきましても、委員御承知のように、かなり厳しい財政状況のもとで、かなりのいろいろな面における改革の努力をしてきたところでございます。これはいわゆるマイナスシーリング、ゼロシーリングその他の手法もてこといたしまして、あらゆる努力を尽くしてきたわけでございますけれども、さはさりながら、地方のような、余裕と言うとおしかりを受けるかもわかりませんけれども、繰り上げて償還をするような状態にはいまだなってないということについて御理解をいただきたいというふうに思います。
  92. 中沢健次

    ○中沢委員 理解をしてもらいたいというお答えですが、理解ができません。  大臣、どうですか。非常に大事な問題ですね。地方交付税をどのように認識をしているかということと、地方が一生懸命血のにじむような努力をした末、こういう財政状態に結果的になった。今度の特例減額、去年の場合もそうですが、これはやはり大変な問題ですよ。どうですか。大蔵大臣として見識ある答弁を聞いておきたいと思います。
  93. 田波耕治

    ○田波政府委員 大臣お答えになる前に一言、恐縮でございます。  国の方につきましては、いわば早期償還というところか、いわゆる償還財源をどうやって、あるいは利子についても同じでございますけれども、国債費を調達をするかということにつきまして大変な努力をしているところでございまして、ぎりぎりの努力の結果、法律に定められました償還財源等の確保を図っているというのが実情でございます。  なお、八千五百億円の件につきましては、これは地方交付税法附則三条に基づく地方交付税の年度間の調整措置でございます。したがいまして、国と地方の間ではいわゆる貸し借りということでございまして、将来精算を行うことになっておるということについて補足をさせていただきます。
  94. 中沢健次

    ○中沢委員 委員長大臣
  95. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 趣旨は今田波さんからお答えを申し上げたとおりでありまして、国としても決して何もむだ遣いしているというあれじゃないのであって、やはり非常に厳しい財源の中でいろいろな御要請に対してもこたえていかなければいけないということで、金利の、いわゆる利息の分ですとか、そういったものについてはきちんとあれしておりますけれども地方がやったように繰り上げてやるということができないというのが現状であろうと思っております。  いずれにいたしましても、国の方といたしましても、二度と特例公債を発行しないことを基本として、公債依存度の引き下げ等をやっていこうということで、我々の方といたしましても、これからもやはりせっかく努力をしていかなければいけないというふうに思っております。
  96. 中沢健次

    ○中沢委員 いずれにしても、私はこの問題でやや結論的に言うと、地方の方は、正直者がばかを見る、こういう印象はやはり残ると思うのですよ。特に自治大臣、そう思いませんか。  地方からいろいろなさまざまな要請がある。自治体レベルでいえば、住民からさまざまな要望がある。金がないからできない、我慢をしてくれ。そして、少し財政見通しが出てくると、僕らはその当時反対してきましたけれども、借金返しをした。大蔵省はどちらかというと浪費型、放漫財政型、レッテル張って悪いですが。地方の場合は倹約型で、もっと言えば余りにも借金を苦にし過ぎた。そのツケが変なところに回ってきまして、またまた、貸し借りの問題にしても大蔵省は、とにかく金を貸せ、地方は金があるんだから金を貸せ。こういう態度自体にもやはり私は問題があると思うのですよ。地方六団体の、本当に地方の首長なんかは、僕と同じようなことは言いませんよ、紳士が多いわけですから。しかし、やはり気持ちは同じですよ。大蔵省ちょっとひど過ぎる、自治省もっとしっかりやってくれ、こういうことだと思うのですがね。  自治大臣、そのことについてどうですか。
  97. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私も地方自治と長い間つき合ってまいりまして、見ますと、そういう浮沈はいろいろあったと思っております。特に、昭和四十四、五年ごろでしたか、その時分苦しくて、また先ほどおっしゃいました五十五、六年から八年、そういう時期にかけましてございました。それは地方自治体のいわば行政の内容と申しましょうか、それと随分と関係があると思うのであります。  その当時顧みますと、四十四、五年のときは公害、それから交通問題というものの戦争が始まって、いわば公害戦争、交通戦争が始まってきたところでございまして、地方自治体として打つべき手がなくて、いわば財源的にも行き詰まってしまった状態でございました。そのときには、やはり国が交付税特会に大きく貸し付けをして切り抜けた。五十七年、八年のときも同様であったと思っております。  今度、確かに生まじめにやってきたというのは、自治省自身がそういう姿勢を堅持してきたということ、これは今評価していただいて、我々もそれなりの努力をしてきたかいがあったんだなということは思っておりますが、しかし私は、いたずらに過去の問題だけのことではなくして、これからの将来を見ました場合に、今ここで大蔵といろいろと話をしております中に出てきますことは、この今の財政上の基盤というものを、これを国はただ余裕があるという見方ではなくして、地方自治体状況の中でこれから展開されていく大きい問題として、公共投資の十カ年計画がありますし、福祉ゴールドプランの十カ年もありますし、そういうものを見定めていくならば、現在一時的な余裕論というものではなくして、要するに地方自治体の財政の自主性をどうして認めていくかという、お互いが認識し合うかという、ここの点にこそ私は重大な問題があるのではないか、こう思うておりまして、私は、この機会にお互いが財政の責任者として、これからの地方行政のいわば財政需要というものの新しい需要の開拓と、それからその必然性というものをこの際にしっかりと国全体として認めていく、その財政の裏づけをこの際に大蔵省がきちっとしてくれるならば、これで今回の八千五百億円の特例というものはそれなりにやはり意義があった、捨て石になってきたというような感じがしておるわけであります。
  98. 中沢健次

    ○中沢委員 それでもう一つ共通する問題で、私はちょっと見逃すわけにいかないなと思うのが一つありました。具体的にこれから少し議論したいと思います。  最初に自治大臣に改めて聞いておきたいと思いますけれども、八千五百億を国に貸した。自治大臣はしばしば公経済のバランス論ということを言われています。私は、これはこれで議論の余地もあるし、いろいろ意見を言いながらも最終的にどこでまとめるかということはあり得ると思うのですね。大蔵大臣、横に座っていらっしゃいますが、自治大臣として、八千五百億を国に貸したその理論的なというか基本的な見解は公経済のバランス論である、改めて確認をしたいと思いますが、いかがでしょう。
  99. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私は今でもはづきりそう認識しております。それは物事というのは、先日も申したように、見る角度から解釈は変わってくると思うのです。大蔵から見たら、それだけの余裕が生み出せるではないか。初めから大蔵は、あるから貸せ、こういうことではなくて、生み出してくれ、つくってくれ、余裕をつくれ、こういう言い方でありました。私どもは、それは余裕はないんだ、ないんだけれどもっくろうと思うたら無理してでもつくれるような状況であった、そういう認識なんです。  それでは、その無理してでも。ということは何か。将来性に備えて、やはり先ほどおっしゃったように自治省の生まじめさというもの、借金はできるだけ返したい。例えば、臨時財政特例債、六千何ぼですか、残っておりますね。公営企業を入れたら八千億ある。そういうようなものも早期償却して、先ほど言った新しい財政需要に備えていくべきであるという、そういうことを思っておったけれども、まあそれもちょっと延ばそうかとかいうことがございますし、それから補助率のカットがございましたし、建設国債のいろんな処理しなきゃならぬものも多少あるだろうし、そういうことを思っておったのでございますが、そういうようなものは、それでは余裕財源としてそんなところからでもひねり出そうかというようなことがこちらの方の言い分だったということなんですね。
  100. 中沢健次

    ○中沢委員 それで、大蔵大臣に同様趣旨でお尋ねをしたいと思うのです。  「平成四年度予算及び財政投融資計画の説明  大蔵省主計局 理財局 (未定稿これは各国会議員のボックスに入っておりました。昨年も私、見ました。いろいろ問題だなと思いましたが、昨年の五千億のうち四千五百億は特会に対する返済金を国に貸した。これはいろいろありましたけれども、やむを得ぬというそういうおさめ方をしたわけですね。  ことしどうなったかということで三十一ページを見ましたら、去年と同じことを書いているのですよ。去年よりももっとひどいなと思いましたけれどもね。大蔵大臣、こういう書き方をされています。これは大蔵省がつくった説明資料です。三十一ページ。いろいろありますが、地方財政について言えば「大幅な財源余剰(二兆三千六百二十五億円)となり、これを、「地方交付税法」に基づく特例措置として地方交付税を八千五百億円減額する」。  どう思いますか。今自治大臣は、公経済のバランス論、地方も厳しいけれども、何とかやりくり算段をするというバランス論ですね。しかし大蔵省は、これを見る限り、先ほどから大蔵大臣、いろいろ政治的な配慮も含めて少し玉虫色になりつつありますけれども、やはり地方財政は余裕がある、ここで言うところの地方財源の余剰と。これはバランス論と全く違う。そういう論拠に立っているのですよ。これはどうですか。撤回されますか。これは大臣から聞きたい。
  101. 田波耕治

    ○田波政府委員 国会に御提出申し上げました資料の件でございますので、大臣のお答えの前に一つ説明をさせていただきたいと思います。  いわゆる「予算の説明」にそういう記述があることは事実でございます。これは多少、地方財政対策をとる場合の手続と申しますか、私どものいろいろな事務上のやりとりを御説明させていただく時間をいただきたいと思うのですけれども地方財政対策をとる場合におきましては、まず前提となります地方財政の収支見通しをつくります。これは、自治省、私ども、それぞれいろいろな議論をしていくわけでございますけれども……(中沢委員「時間がありませんので、できるだけ簡潔にやってください」と呼ぶ)はい。簡単に申し上げますと、歳入面においては税収であるとかあるいは補助金、国庫支出金、そういったものを積み上げまして、地方の歳入を適正に見積もります。それから歳出につきましては、例えば社会資本の整備であるとか福祉だとか地方の所要の歳出を見込みます。このギャップが出てき得るわけでございますけれども、この過不足が生じた場合におきましては、例えば、先ほど来委員から御指摘のような昭和五十年代におきましては大変な財源不足が出てきたわけでございます。その場合にはどうやって財源を確保するかということを検討するわけでございます。近年のようにこのギャップが逆にプラスになるという場合にはどうするかということを議論するわけでございまして、その議論を踏まえた上で最終的に収支のバランスの合った地方財政計画ができ上がるわけでございます。  私どもが余剰というふうに申し上げておりますのは、その前段階の、いわゆる地方財政対策を講ずる前の収支のバランスというものをとらえてそう申し上げているということでございます。
  102. 中沢健次

    ○中沢委員 大蔵大臣から。
  103. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 この措置というものをとりましたその背景では、今も話がありましたように、歳出面では、いわゆる投資単独事業というのは一一・五%という昨年度を上回る非常に高い伸びを見込んでおるほか、あるいは高齢者福祉や社会資本の整備のための所要の歳出も見込んでおるということ。歳入におきましては、地方税が四・一%というふうに堅調な伸びを示しておるということでございまして、元年度ですとかあるいは二年度、三年度、引き続いて二兆三千六百二十五億円というものが生まれてきたということでありまして、どうもこれは財源余剰と言うと、その言葉がどうもおしかりを受けているのじゃなかろうかと思っておりますけれども、これは地方財政でもどんどんどうにでも伸ばせということであればあれですけれども、まさに今自治大臣からもお話がありましたふうに、やはり車の両輪といいますかバランスというものもあるということで、しかし、このバランスは、今度の場合にまさに地方の方が高く実は伸ばされておるということが言えるんじゃなかろうかと思っておりまして、この点はぜひひとつそういうことで御理解をいただきたいというふうにお願いをしたいと思います。
  104. 中沢健次

    ○中沢委員 それで、非常に大事な問題ですから、もう少しやっておきたいと思います。  公経済バランス論と地方財政余剰論。というのは違うのですよ。一々説明するまでもない。お互いに助け合うという立場でやるのと、一方的に国は地方が財政に余裕があるから八千五百億カットしてもいい、全然違いますね。もっと言えば、一昨日ですか、塩川大臣は小谷委員指摘に対して、それは立場があるし、右から見れば、左から見れば違うんだという言い方をされました。私はふだん自治大臣のおっしゃることはなるほどと思っていますが、しかし事この問題でいえば、地方財政の実態の問題、地方交付税という制度の問題、それが基本にあって、やはり地方財政は決して楽ではない、余裕がない、それが物事の本質だと思うのですね。楽ではない、余裕はないけれども、しかし国と地方財政の車の両輪の関係で大蔵省の要請を受けて立った。くどいようですが、我々も議論の余地があるんですよ。ところが物事の本質を全く否定をして、一方的に、地方財政は余裕があるじゃないか、貸して当たり前だ、極端な話。こういうことでは私は納得できません。  もっと言いますと、やはり地方財政のいろいろな今日の姿を、我々の努力以外に、もちろん地方六団体も地方の首長も、もっと言えば国民全体が大変な努力をしてきた。その人力の大方の意見は、地方財政余裕論、そういう論拠については一〇〇%否定しているわけですね。ですから仮にきょうのこの論議の中で大蔵大臣が余剰論ということにこだわるのならば、それにくみしてこの法案について賛成する、これはやはり我々としては、言うこととやっていることと違うじゃないか、特に社会党何をやっているんだ、もっと言えば、自民党の地方行政に関係する人力価やっているんですか、自然な流れとしてはそうなると思うのですよ。  ですから、事の本質で言うと、くどいようですが、公的な財政のバランス論と地方財政の余剰論というのは全然違う。全然違うものをどうして一緒になってこの法案を議論しろというのか非常に不思議でならない。先ほど山口大先輩が言われました。これこそ文字どおり具体的な閣内の不統一ではないでしょうか。それぞれ両大臣から、改めてこの問題に限って、具体的な問題に即して答えていただきたい。
  105. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私は終始公経済のバランスの問題だと思っております。そこで大事なことが一つあると思います。これは中沢さんもお気づきだと思うのですが、交付税の計算の一番基盤となっておりますのは、基準財政収入額と基準財政需要額、この権衡を見るということなんですね。これ以上私は申しませんが、その意味において、我々もやはりきちっとした計数をこの際に示していく必要がある、私はそう思っておりまして、しかし本件に、つまり平成四年度特例に関しましては、私の立場から言うと、公経済のバランスを維持するためにやむを得ざる措置であったということであります。
  106. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 先ほどからのお話でありますけれども、いずれにしましてもこの問題につきましては、地方財政で必要なものというもの、これを確保した、またそれを確保するためには、これは自治省初め地方団体それぞれが大変苦労していただいておるものであろうというふうに私は理解をいたしております。そういう中で、余剰とかあるいは余裕という言葉というのは、これはやはりいろいろな議論があるところだというふうに私は思います。しかし、やはり大変苦労して生み出していただいたものであるというふうな理解でしたら御理解いただけるのであるかなと私は思っております。  しかし、先ほどの問題につきましての議論も含めて、ある措置一つの性格につきましては、自治省あるいは大蔵省の間で認識が食い違うことというのがあり得る点を私どもは御指摘の中に見るわけでございますけれども、いずれにしても、この問題については今後とも、大蔵省そして自治省双方の中で真剣に協議をしていきたいというふうに申し上げておきたいと存じます。
  107. 中沢健次

    ○中沢委員 特に大蔵大臣の今のお答えはやっぱり私は納得できません。先ほど言いましたけれども、我々もいろいろありましてもこの交付税の法案についてはもう真剣に議論をして、最終的にこの法案にどういう態度で党として臨むか。公経済バランス論であれば党内的に私も含めて検討の余地は正直言ってあります。しかし、こういう説明書の中でも明確に地方財政が余裕があって財源余剰論ということで大蔵省が言う限り、これを認めて我々が交付税の法案に賛成をするということはできません。明確に言っておきたいと思うのですよ。  ですから、先ほど委員長が大蔵大臣に改めて来ていただくかどうかは理事会でやると言いました。私も理事ですから理事会でもいろいろ議論したいと思いますが、何回も来ていただきたい気持ちはありますけれども、この問題についてはきょうひとつ結論を出してくれませんか。例えばこの説明資料について言うと、未定稿だからそういう誤解があるんであれば削除をするだとか、あるいは大臣の方から、自治大臣と同じような立場でお互いに協力し合うとか。公経済のバランス論に立ちますだとか、そういう具体的な答弁をぜひ欲しいと思うのですよ。そうしなければますます、距離を縮めようと私は思っているんですよ、思っているんだけれども、意に反して、我々は昔のように伝統的にやっぱり反対せざるを得ない。別におどかしでも何でもありません。恐らく公明党のこの後の質問者も同じ言い方をすると思うのですよ。どうですか。
  108. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 中沢委員がお話しになろうとしているお気持ちは私もよく理解をできるものであります。そして、私どもも別に公経済のバランス論というのを、これは否定するものではないわけでありまして、やっぱり公経済というのはバランスをとる、ということは、要するに片っ方が余り行き過ぎてしまわないようにしなければならない、要するに、ある程度の力があってもあるときには抑えなければならないということがあるんだろうと思っております。その意味で公経済のバランス論ということは、私もこれはそのとおり考えるものでございまして、そういう中で御苦労いただきながら生み出していただいたものであるという理解をやっぱり私どもとしてもしてよろしいというふうに思っております。いずれにいたしましても、この表現の問題ですとかいろんなあれがありますけれども、今後両省間で慎重にひとつ協議、検討さしていきたい、またしていくべきものであろうという認識を持ちます。
  109. 中沢健次

    ○中沢委員 ふだん私は極めてあっさりした男なんですがね。物わかりがよ過ぎるという、そういう話なんかいただいていますが、しかし私はどうもやっぱり納得できませんね。せっかく、これは予算に付随する説明書、予算は上がった、これは過去のものだ、こういうとらえ方をあるいは大蔵省がするかもしらぬ。しかし、交付税の審議をきょうで二日目やっている我々から見れば、これは過去のものではないんですよ。それは大蔵大臣もよくおわかりいただけると思うのです。  ですから、私の希望というか私が指摘をしたいことは、もうくどいこと言いません。政治的な判断をしていただいて、この際公経済のバランス論に立つと一言言っていただければ、すべての問題は私はわかりましたとなるんです。そこまで言わないからまだ私は再質問再質問に立たざるを得ないんですよ。具体的にこの字句修正をしろということは枝葉の問題です。公経済バランス論に立つ、そしてその立場で自治省と十分これから相談をする、こういうふうに答弁していただけませんか。であれば別の問題に移りたいと思います。
  110. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 お話につきまして、地方財政につきましては、円滑な運営のための所要の地方交付税総額というものを確保して、そしていろいろな倹約すべきものはしていただく、そういう中で一つの財源というものを生み出していただくということであろうと思っております。平成四年度の国の財政というものが極めて厳しいという中にあって予算編成が非常に厳しかった、そんなことを勘案しながら、これはまたまさに地方の方に御苦労いただく、また国の方も苦労するけれどもどうしても不足するという中で、公的なあれについてのバランスというものを考えていただきながら、今度のいわゆる地方交付税法の附則第三条に基づいてこういう措置をしていただいたものであろうというふうに私も理解をいたすということを申し上げたいと思います。
  111. 中沢健次

    ○中沢委員 私は頭は悪いのかもしれませんが、大臣は頭がよ過ぎて、よくわかりませんね。どうして私が言うように、本当にわかりやすく、歯切れよく、それは自治大臣と同じような見解です、公経済のバランス論に立ちます、ですから国と地方は車の両輪だ——冒頭大臣おっしゃっていたじゃないですか。当然の理論的な結論として、私の言っていることは何もとっぴなことを言っているつもりもないし、とっぴでないと思うのですよ。当たり前の真ん中の話ではないでしょうか。ですからこの際、公経済のバランス論に大蔵大臣も立ちます、具体的な内容について言えば、自治大臣あるいは自治省と大蔵省とこの問題についても十分相談をします、こういうふうに答弁をしていただければ一番わかるのですよ。そうじゃないですか。
  112. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 いずれにいたしましても、公的な、公経済、公的経済というもののバランス、これを失したのではこれは車の両輪にならないということは今お話しのとおりでありますし、それは私もそのように考えております。ですからその都度、そのときそのときによってお互いが苦労しながらそれを調整してくることであろう、その意味での公的な経済のバランスということについて私も理解をいたします。  いずれにいたしましても、今後ともそういったことのお互いが、これは大蔵省と自治省が本当にもう車の両輪であり、また一体でなければならぬものが、余り見解とかあるいは何かで食い違うということは問題があるでしょう。そういう意味では、今後とも両省間の中で十分にひとつ話し合って国民の理解が得られるようにしていきたい、そのことを申し上げたいと存じます。
  113. 中沢健次

    ○中沢委員 今の大蔵大臣のお話は私なりに少しわかってきましたから、少しわかってきたと言ったら失礼かもしれませんが、わかりましたから、ぜひひとつ公経済バランス論ということにしっかり立っていただいて、それは過去においても地方が金を借りた時代がもちろんあるわけでありますから、今度の場合も、八千五百億円は絶対だめだ、直ちに法案反対だとは私は言っているつもりはないのですから、そこのところを大臣としても政治家として十分受けとめて、こういう問題について言えば、例えば来年も恐らくこういう説明資料、出てくると思いますよ。書く際にひとつ、次長もお見えでありますけれども、きょうの議論をよく受けとめていただいて、いやしくもことしと同じようなことを文章的にも書かないように、これはひとつきちっとくぎを刺しておきたいと思うのです。  さて、この問題は以上で終わって、一つだけ自治大臣に確認したいと思います。  地方がやりたい仕事、高齢化社会ですとか国際化ですとか社会資本の充実ですとか、多く申し上げません、今まではかなり我慢をしてきた。もっと言えば、交付税上のカウントの仕方も低く抑え込んで、本当に必要な基準財政需要額が十分トータルの形で集約されていない、私はそういう持論に立つのです。大臣もやや同じような見解をお持ちで、一昨日も今も、やはり基準財政需要額基準財政収入額について言うと、本当に地方の時代にふさわしい、今の時代にマッチした交付税制度地方財政計画ということをしっかり考えたい、こういうお話がございました。私は非常に大事な問題だと思う。これはこれからの対大蔵との関係も含めて、国全体の政策の中でもそのことをしっかり自治省として大きな柱にして、関係省庁の理解が必要でないかと思いますから、もう一度そのことについて念を押したいと思いますが、いかがでしょうか。
  114. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私は、これはもう自分の持論としてずっと申してきたことでございますので、あえて御説明申し上げますと、私はやはり自治意識といいましょうか、根本はそこにあるような感じがしてならぬのであります。そこがしっかりしてないものですから、いわば機関委任事務の集合体の自治体というような公共体というような、そういう感じがある以上は地方の自治というものは発展しない、私はそう思っております。  でございますから、先ほどの余剰論の話じゃございませんけれども、これもやはり収入と財政需要とを絶えずバランスをとっていく、その根本はどこにあったかといいますと、私は、地方自治体の方がソフトの事業を少し勉強不足じゃなかったかと思うのです。ハードの方ばかりやっておりまして、ハードの方を中心にした単位測定を何度もやっていく。そこから、その観点に立ってソフトを見ていきますと、まあこの程度だろう。でございますから、同じ事業を裏から見るというと、両面から見て、投資的経費の算定の仕方と経常経費の算定の仕方は同じ事業を見ておっても非常に差がきつう私は感じる。  ですから、これからの基準財政需要額の測定をする場合に、いわば自治体が果たすソフトの役割というものをもう少ししっかりと見定めていく必要があるだろう。それは結局のところ自治意識の涵養につながっていく、私はそういう気持ちを非常に強く持っております。
  115. 中沢健次

    ○中沢委員 もう私の時間が幾らもございませんので、実はこのほかに交付税特会の直入論ですとか一般財源化問題、あるいは補助率カットの復元問題、予定をしておりましたが、これはまた別な機会に譲りたいと思うのです。  今まで主として特例減額問題についていろいろ両大臣指摘をし、やや失礼なことも言ったかもしれませんが、私は、国の財政がどうなってもいいという立場では全くない。地方財政も文字どおり国の財政と同じように、車の両輪のように公経済がうまくバランスがとれないとだめだ。それにしては大蔵省は非常に特権意識というか大国意識というか、同じ金を借りるにしても態度が悪いんじゃないか。やはり自治省に、国の財政が厳しいからぜひ金を貸してください、かつて我々もそういうことで大蔵省にお願いしたわけですから、そういう世間に通用するような常識がやはり必要でないかな、あえてそのことだけを申し上げて、一分ぐらい余っているようでありますが、いつもオーバーしますからきょうはこれでやめたいと思います。  ありがとうございました。
  116. 中島衛

    中島委員長 小谷輝二君。
  117. 小谷輝二

    ○小谷委員 羽田大蔵大臣にはお忙しいところ、きょうは当委員会に御出席をいただきましてありがとうございます。大蔵大臣の所見並びに御見解等を二、三お尋ねしたいと思いますので、よろしくお願いします。  最初に、きのうの新聞によりますと、公共事業の施行対策連絡会議、ここで七五・二%の前倒しを執行することが決定したということでございます。しかし私が心配するのは、ただ公共事業だけではなくして、緊急経済対策実施要綱の中にもありますように、民間の住宅建設、また設備投資等々もかなり影響が大きいのではなかろうか、ここに対する対策も必要ではなかろうか、このように思うわけでございます。  ところが、民間の事業の実施に当たりましては、どういう影響か、今銀行が金を出そうとしない。大蔵省は不動産の融資の総枠制限を外され、さらにまた公定歩合の引き下げ等々景気対策をとっておられるようでございますけれども、それだけでは済まないのではないか、こういう民間からの意見があるわけですけれども、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  118. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 我が国経済というのは、先ほどもちょっと申し上げましたように、確かに現在は調整過程にございます。ところが、こういう調整過程というものが余り行き過ぎますと、企業家等の皆さん方の心理というものを大きく冷え込ませてしまうというようなことで、各省、経済企画庁が中心になりまして、連絡をとりながら、いわゆる先般の緊急経済対策というものを行ったということでございます。  それで、今御指摘のございましたように、こういった問題につきまして、中心になっておりますのは公共事業七五・二%ということでありますけれども、そのほかに今お話のございました、民間でも、例えばNTTですとかKDD、また電力ですとかガスですとか、そういった大手の皆様方にも、予定の投資についてはこれを早めていただきたいということを実はお願いいたしております。  このほか、省力化投資のための融資等につきましても、私どもとしては、関係省庁とよく連絡をとりながらこの内容というものをやっていこう、充実させていこう。あるいは、今御指摘があったことはこの部分にもあるのかもしれませんけれども、中小企業金融の円滑化につきまして、政府関係の金融機関に対してきめ細かい配慮というものをやってもらいたいということもお願いしておりますし、あるいは住宅投資の促進等についても、住宅金融公庫の融資制度の拡充ですとか積極的な活用、具体的に動かしてもいただいておりますけれども、そういったことについて進めることを特にお願いいたしております。  それで、今銀行の方で貸し付け等についての貸し渋りがあるのではないかということがございますけれども、銀行それぞれの皆さん方の聞き取りも行っております。しかし銀行は、やはり貸し出しの業務というのは柱としても最も大きなものでございます。ただ、今までは割合と安易な査定等によって貸し出し等をしておった。それはやはり銀行そのものの不健全なことにもなるということもありますし、あるいは経済全体のバランスを崩してしまうということもあります。そういう意味での審査等というものは、きちんとした審査をすることが、あるときは貸し渋りではないのかと受け取られるようなことがあるのかもしれませんけれども、そういうことはないように私どもも指導をいたしております。  なお、中小企業その他のいろいろなところの聞き取りなどもそれぞれの機関でも実はやっておりますけれども、省力化ですとかあるいは時短の問題ですとか、また積極的に今後の経営を安定に持っていくための施策等につきましては割合と理解をされておるというふうに私どもは承知をいたしておりまして、いずれにいたしましても、円滑な貸し付けといいますか融資というものが行われるように、これからも指導してまいりたい。そしてその効果というものが景気にもあらわれてくるようにしていくことがやはり重要であろうというふうに思っております。
  119. 小谷輝二

    ○小谷委員 公共事業七五・二%の前倒しを執行する、これは上半期で行うように決めて促進されておるようでございますし、私が直接それぞれの自治体に問い合わせてみたところ、八〇%実施いたしますというところもあるようでございますし、地方財政計画の中でかなり大幅な単独事業というものの枠があるということで意欲的に取り組んでおる自治体もかなりあると思います。  しかし、ここらの自治体がそのように進んでいくとしても、下半期はどうなるのかという懸念を非常に持っておる自治体が多いわけですし、また一般的にも、あと下半期に二五%足らずということになれば先行きの見通しが期待できないという点もあるので、今先行きといいましても、上半期といえば九月までに二五%契約を済ますということですから、そんなに余裕のあることではございません。また地方議会でいろいろ単独事業を予算化するとしましても、一番早いので六月定例会、またここでは余りいらうところはないようですけれども、本質的には九月であろうかと思いますが、九月定例会にでも補正の組めるような下半期の対策を考えなければならないのではないか。自治大臣の今までのこの地方行政委員会での御答弁では、六月に状況を見定めながら、その状況によって判断をしていくべきものである、このように御答弁がございました。それもそのとおりであろうと思っております。  いずれにしましても、特に地方の場合、地方財政計画を大きく見直して、この単独事業を補正である程度アップしていくという形のものを示さぬと、動きがとれないのではないかな、この心配、危惧にこたえることはできないのではないかなという気がするんですが、大蔵大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  120. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 これを前倒しするということになりますと、例えば契約をする、そして資材等の手当てをする、またそういった中に前金というものも支払われていくであろうと思っております。こういうことをしていきますと、単に公共事業を進めるということになりましても、これがやはり民間にも資材等について相当波及をしていくことになるわけでありますし、またそういう中に、私どもは、このほかにも省力化その他についてのいろいろな措置、金融的な措置とかいったこともやってきておりますし、また、先ほどもちょっと触れましたけれども、住宅建設というのも実は下げどまりで、むしろ今上向きになりつつあるということであります。  そういうものを、今私たちは毎日毎日の動きをこうやって見詰めておりますと、実際にある部分の資材等については、いわゆる調整というものがそろそろ進みながら、少し生産の拡大に進もうとしているところなども実は徐々に見えてきておるというものであります。  ということになりますと、さあこの公共事業というものが全部そのままできるかというと、あるときには人手がちょっと不足するぞ、資材の問題もあるよということで、これが少しずれていく、移動していくこともあると思います。それから、先ほど申し上げましたように、今上期にとる措置によりましてこの効果というものの発現というものが生まれてくるであろうと思います。ということになっていきますと、そういったものがずっとうまくリンクしていきますと、別に下期のものについて考える必要はないという結果にもなってこようかとも思います。  そのあたりのことを多分自治大臣も、昨日ですか一昨日、お話しになったのではなかろうかと思っておりますけれども、いずれにしても、今まだ、ちょうどこれから動かそうというときに、さああとのものについてどうですよというのは、その効果というものをきちんと見きわめないと、それこそとんでもないそごを来してしまうことになるであろうというふうに思っておりまして、私どもは十分、この効果というものはどんなふうに起こっていくのか、このあたりを今見きわめる段階にあろうということを重ねて申し上げるところであります。
  121. 小谷輝二

    ○小谷委員 交付税の特例減額措置についてお尋ねをしておきたいと思います。  大蔵省が国会に提出しました平成四年度予算及び財政投融資計画、この説明の中には、地方税及び地方譲与税が相当増加すると見込まれるため、元年度、二年度、三年度に引き続き大幅な財源余剰、二兆三千六百二十五億円となり云々、このような説明があるわけですけれども、これの根拠は何なのか、大蔵大臣、御説明いただきたいと思います。
  122. 田波耕治

    ○田波政府委員 二兆三千六百二十五億円の根拠というお尋ねでございますが、先ほども中沢委員に多少御説明申し上げましたけれども地方財政対策をつくる前提として地方財政収支見通しをつくります。  お答えだけを申し上げますと、地方財政収支見通しをつくったそのギャップということになるわけでございますが、その前提といたしましては、歳入面におきましては地方税収はどういうふうになるのだろうか、あるいはいろいろな補助金はどのように出ていくのだろうかというようなことを適正に見積もります。片一方で歳出面につきましても、いろいろ社会資本整備がどうなるのだろうかというようなもろもろの歳出需要をつくり出します。それのギャップを出してみた結果というふうに御理解をいただければよろしいかと思います。
  123. 小谷輝二

    ○小谷委員 地方財政、今年度におきましても総借入金の残高が七十二兆円、これは大蔵大臣も十分御承知であろうと思います。また、地方財政健全化というものの一つの指標としていつも基準にしておりますそれぞれの自治体の公債費の負担比率、これは一五%以上は危険状態にあるという自治省の判断でもありますし、そこに対してはかなりいろいろな角度から事業計画等も見直して、そして健全財政化を図るように今まで指導もしてきたという経緯もございます。この一五%以上の地方団体が、全体の三四%、三分の一にも上っておるという状況の中で、どこから考えても地方財政に大きな余裕があるなんて考えられない。  どういう点でどういうふうに出して判断されたのか十分わかりませんけれども、そういうふうな地方財政の現状を踏まえてなおかつ地方財政はまだ余剰金額がある、こういうふうな判断なんですか。
  124. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 先ほどもお話し申し上げておったことでありますけれども、一五%を上回るのが三四%から五%になろうということ、確かにミクロで見るとそういうことが言えるのではなかろうかと思っております。ただマクロから見ましたときには、歳出面では投資単独事業というものが一一・五%と非常に大きなものでありますけれども、これは昨年度を上回る伸び率を見込んでおるほか、高齢者福祉ですとかあるいは社会資本整備のための所要の歳出というものを見込んでおるということであろうと思っております。また歳入面におきましても、地方税が四・一%と堅調な伸びを示すこと等によりまして、元年度ですとかあるいは二年度、三年度に引き続きまして、いろいろな御苦労をする中で二兆三千六百二十五億円というものを生み出していただいたというふうに考えておるところであります。
  125. 小谷輝二

    ○小谷委員 自治大臣は当委員会におきましても、地方財政は依然として苦しい状況にある、財源があればこれもやりたいあれもしたい、こういう考えも持っておる、何とかこれも実施したいという予定は随分あった、こういうふうにおっしゃっておられるわけでございます。また大蔵大臣も、事実地元長野市町村状況もよく御存じであろうと思いますけれども、社会資本整備の充実、さらに福祉施策にしても、まだまだ地方自治体はこれでいいという状況であろうはずがありません。需要額というのは勝手に決めたものであって、自治体が実際に住民のニーズに合った希望をかなえられるような最低限度の施策すら十分できかねるという状況にあることは御承知であろうと思います。それでなおかつ余裕がある、こういうふうに決めつけられることは非常に矛盾があり、わかりにくいことになるのではないか、このように私は思っておるところでございます。  これはここへおいておきまして、先ほど地方交付税そのものの議論もございましたけれども、これは地方団体の固有財源であって、これは地方財政の固有財源ということは、なぜ固有財源としてこれだけの、パーセント的に国税三税の中の三二%、それから消費税、さらにたばこ税等を交付税の財源として決めた根拠は何なのか、きちっとした根拠があるわけです。我々はそう認識しております。  というのは、要するに国と地方との事務分担、それに対する費用分担等々精査して、それで国の収入、一般会計へ入ってくるものの中からこれだけは地方の財源ということが配分してある、このことについてはこれは否めない事実であろう、当然であろう、このように思っておるところであります。したがって、先ほどからも話がありましたように、自治大臣交付税については、国が地方にかわって集める地方の固有財源である、このように言っておられるわけです。  くどいようですけれども、この点について大蔵大臣見解と御認識をお聞かせください。
  126. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 地方交付税、先ほどもこれは何回も申し上げたのでございますけれども、国が地方に対して交付するものでございまして、本来は地方が徴収すべきものを国がかわって徴収しているという性格ではないということから、これはしつこくしつこく申し上げて恐縮でございますけれども、固有の財源というものではないのではないのかということであります。  ただ、地方交付税というのは地方団体がひとしく行うべき事務というものを遂行できるように、数多くある地方団体の財源、これはいろいろなばらつきがあります、こういったものの調整のため国が地方に交付する使途の制限のない一般財源でございまして、先ほど御指摘のあったそれぞれの税目につきまして法律に定められておるというふうに思っております。このように定められた国税の一定割合が法律によって地方団体に当然帰属する、いわば地方の権利のある財源であるという意味におきましては、これはもうまさに地方の固有の財源であると申し上げても差し支えないものであるというふうに申し上げることができると思います。
  127. 小谷輝二

    ○小谷委員 この地方の固有財源、これを国の一般会計の都合で昨年度に引き続いて今年度も八千五百億を特例減額するということになったわけでございます。これは要するに、今大蔵大臣がおっしゃったように、地方の固有財源という本質を、国の一般会計も必要なので、その都合で地方の固有財源を減額する、そこから借りて減らすということは、地方の固有財源という本質をもう既に変えようとしているのではないか、こういうふうな見解もあるわけであります。  また、この特別減額の件につきまして、当委員会でも自民党も含めて決議をしております。委員会決議、また委員会の附帯決議というのもございます。この趣旨から見てもこれはおかしいのではないのか。この趣旨に反するのではないか。また、今までいろいろ調査会また行革審、いろいろな角度からの御意見もございます。  そこから見ても、地方の固有財源を国の一般会計の都合によって減したり削ったりすべき性格のものではないという意見は、もうかなり各所から当然の意見として言われてきたわけですけれども、大蔵大臣、いかがですか。
  128. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 国会決議があったことは存じております用地方交付税法の附則第三条に基づく特例措置につきましては、先ほど御議論のあったところでありますけれども、昭和五十九年度改正の経緯及び地方交付税制度の趣旨にかんがみまして、地方交付税総額の安定的な確保に資するという考え方から、その慎重かつ適切な運用に努めることという衆議院地方行政委員会における決議を十分認識して平成四年度の地方財政対策に臨んだものでございます。  平成四年度におきましては、所要の地方交付税総額を確保した上で中期的な地方交付税の安定的な確保という観点から減額の特例措置を講じたものでございまして、これは決議に背いたというものではないというふうに御理解をいただきたいということを申し上げさせていただきます。
  129. 小谷輝二

    ○小谷委員 これは国の一般会計の予算書を見てみましても、大蔵大臣、八千五百億というのは出てきませんね。それから、もちろん交付税特会の方も一般会計に八千五百億円貸したというのは何も出てきませんね。説明書きの中にちらっと書いてあるだけなんです。これが地方の固有財源の扱い方なのか、そこらに問題があるのではないか、こう思うわけです。  したがって、少なくとも地方財源という本質から見て、国税収納整理資金というものがあるそうで、そこへ全部一応集まるんだそうですけれども、要するにそこから交付税特会の中に繰り入れる、直入する、こうすれば、ちゃんと交付税特会から一般会計に貸し出し、一般会計は交付税特会から借り入れ、貸し借りが明確になってくる。ところが、予算書に出てきませんね。ただ説明書きにちらっとあるだけ。こんな不明朗な扱い方はおかしいのではないのか。  例えば、地方の一般固有財源であった電気ガス税等が消費税として国税に吸収された、その見返りとして消費税の中から二〇%を消費譲与税として地方に配る、これも特会に入るわけです。これはきちっと国税収納整理資金の中から直入されておるわけです。ところが、交付税だけは直入されていない。だから予算書を見てもわからない。そういうことが整理できていないから非常にわかりにくくて、また一般会計の都合でこのように地方財源を自由に減したりすることができるというふうなことになるのではないのか。  いずれにしましても、一般会計または特別会計にしましても、経理を明確にするという大原則がございます。このような趣旨から考えてもこれは一考を要するのではないか。今まで自治省関係に携わってきた人たちが長い間悲願として声を大きくしてこのことについて述べてきた経緯もございます。また、一般のそれぞれ審議会等の方々からもそのことについてはかなり意見が出ておるわけです。  この点について、大蔵大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  130. 田波耕治

    ○田波政府委員 現在の地方交付税を一般会計から交付税特別会計に繰り入れるという制度でございますけれども、これは委員御承知のように、二十九年度の地方交付税制度創設以来とられている制度でございます。さらにさかのぼれば、昭和十五年に創設された配付税制度のもとにおいても同じような取り扱いがなされているものでございます。したがいまして、これを変更することは国の予算制度あるいは会計制度にも大きな影響を及ぼすものでございまして、私どもとしては極めて問題が多いと考えております。  多少敷衍して説明させていただきますと、現在の制度の長所という点を申し上げますと、歳入面におきましては、税制の根幹をなします所得税、法人税等の全体の税負担の状況をトータルで示すことができる。また歳出面におきましても、中央地方相互間の財源配分の状況を一覧性のある形で示すことによって、国・地方を通ずる財政運営の総合的調整を行うための有効な資料を提供するとともに、これらの状況に対する国民の理解と判断を求めることができるという長所を持っているというふうに考えております。また、交付税特会へ直入するということになりますと、交付時期につきましても実際に収納したものしか支払えないというような点で、地方財政に与える影響も大きいものというふうに考えております。  なお、消費譲与税の件でございますけれども委員指摘のように、消費税が創設されたときに消費税と地方間接税との調整、すなわち電気税等が廃止される、そのほかの地方税についても改革が行われるということでございまして、これに伴います地方税の減収額を補てんするために消費譲与税が創設されたという税制改革の経緯を踏まえまして交付税特会に直入することになったというふうに理解をしておるところでございます。
  131. 小谷輝二

    ○小谷委員 時間も余りありませんので最後にお尋ねしておきますけれども、国庫補助負担率のカットが昭和六十年度より始まりまして、それから増減は一部ございましたけれども、現在はまだ暫定処置として平成五年度、来年度の予算まで現行の負担率でいくということになっております。そこで、暫定期間が過ぎますと、すなわち平成六年度からはこれは当然もとの補助負担率、要するに五十九年度水準、これはもとです、今は暫定ですから、暫定期間がなくなればもとの負担、五十九年度水準に戻るもの、このように私たちは認識をしておりますけれども、大蔵大臣、いかがですか。
  132. 田波耕治

    ○田波政府委員 この件につきましては、法律上は三年間の暫定措置ということになっております。したがいまして、その暫定措置が終わった段階、あるいはその以前においても実は公共事業等についていろいろ検討するというようなことで鋭意関係省庁間で検討しておるところでございますけれども、いずれにしましても仮に暫定期間が終わりますれば、その時点でいろいろな御議論を踏まえて新たな決定が行われるというふうに理解をしております。
  133. 小谷輝二

    ○小谷委員 大臣、これは大事なことです。大臣間の協定、協議、申し合わせ、これはきちっとできておる問題ですから。暫定という処置があった、この暫定処置が切れた、切れたらもとに戻りますね。それは大原則ですね。それは戻すのか。それともまだほかの方法を検討するのか、これは別としまして、暫定期間がなくなれば、もとというのはあるわけです。暫定にはもとがある。もとというのは五十九年度という認識でいいのですか。
  134. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 この問題につきましては、まさに関係省庁の中でこれから協議をいたしますということでございます。
  135. 小谷輝二

    ○小谷委員 まだちょっとあるようなんで、地方行政委員会でいろいろ協議いたしましたとん税の問題でございます。  これはいろいろ経緯があったとしましても、特別とん税、これは、外航船舶に対する固定資産税を原則課税であったのを原則非課税にした、その見返りとして三十二年に発足した税法です。それからいろいろ変えられたとしても、三十九年にその見返りとしてトン当たり二十円、一年間一括納入で六十円、これが開港市町村に払われるということが決まっており、これは国が徴収して全額その開港市町村に譲与するという譲与税です。国が集めて地方に渡すという制度になっておるわけでございますが、この制度が昭和三十九年に決められてから今日まで二十八年間、四半世紀以上、どちらも協議もせずにそのままほってある。それで各開港市町村からは毎年のように、これは見直すべきではないのか。要するに、港湾整備費にしても、また物価から見てもかなり倍増してきた。  聞いてみれば、これは大蔵省の責任で、法律そのものは大蔵省所管であって料金の改正も大蔵省ではないのか、こういう自治省の意見ですが、大蔵省いかがですか。
  136. 吉田道弘

    ○吉田(道)政府委員 今先生お話がございましたように、この特別とん税法は大蔵省で所管してへる法律でございます。ただし、御存じのようにこの特別とん税は、譲与税法に基づきまして船舶が寄港する市町村に譲与されるという仕組みになっております。三十九年以来据え置きになっておりますので、私どもとしても、基本的に税率の水準の見直しを行うことは望ましいものと考えております。  しかしながら、過去におきましても、何回かごの検討はされております。しかし、一方ではこれを受ける地方団体、片方ではこれを支払う海運業界がございまして、海運業界のいろいろな事情もありまして合意が得られなかったという経緯もございます。この制度ができた後に、その後、特に八大港を中心に、入港料という新しい制度が船主の方に負担がかかるということもございまして、そういうものもあわせまして、今後、関係省庁とも十分相談しながら、検討していくべき問題であると考えております。
  137. 小谷輝二

    ○小谷委員 終わります。
  138. 中島衛

    中島委員長 吉井英勝君。
  139. 吉井英勝

    吉井(英)委員 私は、あらかじめ六つのテーマについて質問通告をしておきましたが、十五分という限られた時間でありますので、既に他の委員の方から、地方財政余裕論であるとか、地方交付税法第六条の三の二項に関連する問題、交付税特金借り入れの問題等について議論がありましたので、その質問をきょうはおいておきまして、他の通告しております質問に入りたいと思います。  今OECD各国では、納税者の権利の擁護とか権利救済ということを中心にして、随分制度的にも前進が図られているときでありますが、そういう点で少し伺いたいと思います。  一九七六年、昭和五十一年四月一日に国税庁の方で出した「税務運営方針」では、この点では、「近づきやすい税務署にすること」とか「適正な課税の実現に努力すること」であるとか、そういったことがいろいろ具体的に示されております。その中では、例えば「納税者の苦情あるいは不満は積極的に解決するよう努めなければならない。また、納税者の主張に十分耳を傾け、いやしくも一方的であるという批判を受けることがないよう、細心の注意を払わなければならない。」こういうふうに指摘もありますし、それからまたさらに「調査方法等の改善」というところでは、「税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うものであることに照らし、一般の調査においては、事前通知の励行に努め、また、現況調査は必要最小限度にとどめ、反面調査は客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする。」などと、随分いろいろと納税者の権利擁護という点で示されております。  こういう姿勢はこの一九七六年当時も現在も変わっていないと思うんですが、まず最初に、このことを確認をしておきたいと思います。
  140. 坂本導聰

    坂本(導)政府委員 「税務運営方針」は、税務行政を遂行する上での原則論を示したものであり、御指摘のように、今後とも私どもは、この運営方針の趣旨に則して税務行政を進めてまいりたいと考えております。
  141. 吉井英勝

    吉井(英)委員 また、その「税務運営方針」ではさらに「不服申立事案の適正かつ迅速な処理」なども中に触れられておりまして、特にそこでは、「国税不服審判所においては、それが税務行政部内における第三者的機関として設けられている制度的趣旨に顧み、その運用に当っては、総額主義に偏することなく、争点主義の精神を生かしながら、充実した合議を行い、権利救済の十分を期する。」と、やはり納税者の権利の救済ということについても、非常に注意をして当たるんだということが方針として示されていると思うんです。  ところで、国税通則法第七十五条に基づく異議申し立て、それから審査請求について、資料を既にいただいておりますし、また、国税庁の事務年報、国税庁の統計年報も見ておきました。そうすると、国税通則法の改正で国税不服審判所がつくられた一九七〇年当時、異議申し立てのあったものに対する全部または一部取り消しとなったのが、大体五〇%台だったんですね。最近の五年間を見てみますと、これが実は二%から六%という状態に落ち込んでいます。審査請求にしても、一九七〇年当時、審査請求に対する全部または一部取り消しの割合が四〇%台であったのが、今大体四、五%台。それぞれ一けた悪くなっているんですね。圧倒的に棄却処分となっているんですが、なぜこういうことになっているのか、その理由をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  142. 坂本導聰

    坂本(導)政府委員 私からは、異議申し立ての方だけ答弁させていただきます。  委員指摘のように、以前は、かつては五〇%ぐらいというものが、ごく最近では六・三%というふうになってございます。これは御指摘のとおりでございます。  私ども、不服申し立ての処理に当たりましては、原処分にとらわれることなく、謙虚に納税者の主張に耳を傾け、公正で適正な調査を行い、事実関係の正しい把握あるいは法令の正しい解釈、運用、そういうものに努めてきた結果、その結果、改善が図られてきたというふうに考えております。したがいまして、取り消し割合の継続的な低下傾向は、このような私どもの事務処理の適正化が図られた結果であるというふうに解釈しているところでございます。
  143. 中島富雄

    中島説明員 国税に関する審査請求につきましては一元的に私ども国税不服審判所の方で処理をさせていただいておりますので、審査請求の方につきましては私からお答えを申し上げたいと思います。  先生御指摘にございましたように、審査請求の結果、原処分の一部または全部を取り消した割合につきましては、審判所創設当初の四十六年で見ますと四一・三%ということになっておりますが、平成二年度では、先ほど先生は四、五%というお話でございましたが、私どもの統計では九・六%ということで、一〇%前後の形になっておるわけでございます。  ただいま課税部長から説明がありましたのとある意味では同じような答弁になるわけでございますが、私ども個々に適正に審理をいたしました結果でございまして、いずれにしましても、私どもの審判所におきましては、原処分庁とはまた別に、私ども独自の調査もいたし、適正に審理をして裁決をいたしておるわけでございまして、全体の結果がやや先ほどのように数字は下がっておるわけでございますが、これは先ほど課税部長からも話のありましたような、やはり実際の執行の第一線での処理がより慎重になっておるというようなこともあろうかと思います。
  144. 吉井英勝

    吉井(英)委員 棄却処分が非常にふえて、その結果、どうせ棄却されるんだからとあきらめて、審査請求がこの五年間、実は毎年一千件ずつぐらい減っているんですね。  それから、これは一九七〇年二月の大蔵委員会で議論があったときのものでありますが、このとき吉國国税庁長官は、国税通則法の改正に当たって、こういうふうに言っておられるんですね。「審判所の裁決が非常に公正であるという評価があがれば、いまおっしゃっておりました潜在的な不服者が相当に表にあらわれてくる可能性があるこだからふえてくるんだと。「私は、審判所の裁決は、いままでよりも全部取り消し、一部取り消しの度合いが高くなる傾向は考えられる」。そのときは国税庁長官がそう言っておられたのに、現実は、逆に一けた低くなっているというのが実態だということが、いただいた資料などからうかがうことができるわけです。  なお、もう少し見方を変えて見てみたんですが、審査請求に対する不服審判所の裁決が不満で訴訟が提起されたものの比率はどれぐらいになっているかというのをずっと調べてみたんです。そうすると、「税務運営方針」の出された一九七六年当時、これが二%台なんですね。だんだんふえてきて、今は五%台になっているんです。  つまり、訴訟率が高くなってきたということは、不服審判所が納税者の権利救済の役割を十分果たしていないんじゃないか、こういうことになると思うんですが、どうですか。
  145. 中島富雄

    中島説明員 まず、審査の請求件数が減少しておるということでございますけれども、基本的には審判所の場合受け身でございまして、審査請求のあるものを扱っておるわけでございまして、私どもとして、その減少している理由自体なかなか定かではないわけでございまして、そのときどきのいろいろな状況によって変動があり得るものであろうかと思っております。  そういう意味で、特段の理由があるというふうには考えておらないわけでございますが、あえて申し上げれば、審査請求自体異議申し立てを経て提出されるものが大部分でございますので、先ほど統計にございましたように、近年は異議申し立て自体がかなり減少しておるということが反映しておるかと思うわけでございます。そういう意味で件数自体が減っておるということで、審判所が納税者の権利救済機関としての期待にこたえていないのではないかということはないのではなかろうかと思っでございます。  それから、先ほども申し上げましたけれども、取り消し等の割合につきましては、このところ大体十数%のところで推移をしておるわけでございまして、かなり長期で見ますと確かに下がってはおりますが、やや中期的と申しますか、そういう感じで見ますと、ほぼ安定的な数字になっておるわけでございます。  いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、個々の事件を適正に処理した結果であるわけでございまして、私どもとしては、従来どおり適正な処理に今後も心がけてまいりたいと思っておるわけでございます。
  146. 吉井英勝

    吉井(英)委員 全部または一部取り消しの比率が一けた落ちてしまった問題、訴訟率が高くなった問題について、要するに明確なお答えというのはお持ちでないということがわかりました。私は、納税者の権利擁護の役割をやはりそこに十分に果たし切れていないと思うんですよ。  これは、当時の会議録を今読み上げましたが、当時の国税庁長官が、むしろふえるだろう、そういう見方をしておられたのに比べても逆になっているわけですね。  ここには二つの問題があると思うんですね。一つは、不服審判所が国税庁から独立した機関になっていないこと。審判官の九三%、これは本部と東京支部と大阪支部に関しての話ですが、いただいた資料を計算しますと、九三%が国税庁幹部で占められているんですね。  かつてこれは一九八八年の予算委員会で我が党の岡崎議員が取り上げた問題に、東京蒲田税務署管内で五十名余の納税者に一方的な異常な更生処分が行われたことについて取り上げて、当時日向さんだったと思うんですが、国税庁幹部の方が、特定の政治目的を持って税務調査を行ったり、威圧的な修正申告の強要はしてはならないという答弁もあったんですが、その問題になった蒲田税務署でそのとき陣頭指揮をされた副署長が、東京支部の審判官になる、今はまた別なところの署長になっておられますが。これはつまり、論告求刑をした検事がそのまま裁判官の席に座ってそれで判決を下すのと同じことになるんじゃないですか。私は、これではとても公正な審査というのは期待できないというふうに思うわけなんです。  そういうことなんですが、実はこの法案を通したときの一九七〇年三月四日の衆議院では、国税通則法の一部を改正する法律案に対する附帯決議というのが行われまして、これは大蔵大臣も当時国会議員でおられたわけですからよく御存じのことと思いますが、そこでは「政府は、国税不服審判所の人的構成及び運用についてその独立性を強めるよう留意し、今後における社会、経済の進展に即応しつつ、国税庁から独立した租税審判制度の創設、出訴と不服申立ての選択等についても、絶えず真剣な検討と努力を行なうべきである。」この附帯決議に関連した広瀬委員の質問に対しては福田大蔵大臣の方から、その部分については「誠意をもって今後検討してまいりたい」、この決議が採択された後さらに福田大蔵大臣は「ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、これを税務行政の末端にまで徹底させ、納税者の権利救済に万全を期するように、今後ともなお一そうの努力をいたす所存でございます。」こういう答弁が行われております。  そこで大蔵大臣に伺いたいんですが、この決議から二十二年たったわけですね。で、まず一つは、やはり審判官から国税庁関係者は除いて公正な機関にする努力が大事だという点があります。それから、独立した制度を創設ということについては、国会で決議しているわけですから、やはりこれの努力を払っていただきたいと思うんですが、この点については大蔵大臣に御決意なり見解なりを伺いたいと思うんです。  時間が参りましたので、あわせましてちょっともう一つ伺っておきたいのは、不服申し立ての代理人については国税通則法第百七条で決まりがありますが、「国税通則法精解」というのをきのうも持ってきてもらいました。これは版によって少々違ってきてはいけませんので、私の方が見ておった版と比べました。最初第六版を見ておったんですが、持ってきていただいたのも全く字句は一緒なんですが、これはこの代理人については「不服申立人は、弁護士、税理士その他適当と認める者を代理人に選任することができる。」というのは「弁護士、税理士は例示であって、代理人をこれに限る趣旨ではない。」という点が一つと、「不服申立てに関する一切の行為とは、不服申立書の提出等の能動的な行為のほか、通知の受領等の受動的な行為を含む一切の行為である。」というのがこの「精解」の示すところでありますが、大蔵省の見解はこのとおりだと理解してよろしいねという点、以上、大蔵大臣と事務方の答弁を聞いておきたい。
  147. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 前半の国税不服審判官の人選等につきまして申し上げたいと思います。  この任用に当たりましては、判事あるいは検事、国税局の課長ですとか税務署長及び税務大学校の教授等から登用しておるところでありまして、確かに部内から入っておることは間違いありません。ただ、やはり法律的な素養というものがありましょうし、あるいはこれは非常に専門的なあれを要するということで、事実関係調査等にも熟練した職員でかつ国税審判官として適性を有する者を任用するなど、権利の救済機関としての適正公平な審査、裁決ができるように配慮しているところでございまして、我々はさらにこの効果を上げるために努力していきたいというふうに思っております。
  148. 坂本導聰

    坂本(導)政府委員 委員指摘の国税通則法百七条でございますが、これは弁護士、税理士は例示でございますから、それ以外の方でもなれるということでございます。ただ、国税通則法以外に、例えば税理士法に抵触するとか、国家公務員あるいは各税法の守秘義務の問題とかございますので、それはまた別の問題という形であると思います。
  149. 吉井英勝

    吉井(英)委員 じゃ、終わります。大臣、また別のときに、アメリカの例も本当は議論したかったんですが、またやりたいと思います。
  150. 中島衛

  151. 高木義明

    高木委員 まず私は、地方交付税の総額の特例措置についてお伺いをいたします。  この問題につきましてはもう先ほど来から繰り返し繰り返し取り上げられておりまして、私としては重複を避けて言いたくはないのでございますけれども、非常な重要な問題でございますので、私たちの立場といたしまして一言お聞きをしたいと思っております。  今回のいきさつは、既に御承知のとおり、国は、地方公共団体の強い反対にもかかわらず、地方固有の一般財源であるこの地方交付税交付金を、平成三年度の五千億円に引き続き、平成四年度八千五百億円減額をするという措置をとりました。これは地方公共団体に与える影響は私は大きいものと思いますし、規模の大小にかかわらず地方の自主性、独自性、こういったものを私は阻害しかねないのではないかということでありますので、この辺について自治大臣として一体どうお考えでこのようなことをされたのか、再度お伺いをしておきたいと思っております。
  152. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 十五分という貴重な時間でございますので簡単に申し上げますと、やはり国と地方との公経済のバランスを維持していくというか、そういう趣旨に立ちましていたしたということでございます。
  153. 高木義明

    高木委員 自治省としての立場をかなり強く主張されたことにつきましては私たちも聞き及んでおりますし、敬意を表する次第でございますが、ただいまの答弁でありますと、国と地方との相互的なかかわりの中でそういうことをされたということでございます。  では、国の財源が不足をして地方の財源余剰が表面上続いておる、こういうことを理由に今後も特例減額を続けていくとするならば、国から地方への返済は実質的に棚上げになる、したがって地方交付税はカットをされるばかりである、こういうことになろうと思いますけれども、大蔵省はこのような地方財政からのいわゆる借金、特例措置、こういうものを今後とも続けていくのかどうか。
  154. 田波耕治

    ○田波政府委員 今回の地方交付税の特例措置は、地方財政収支見通しにおきまして地方の適切な歳入歳出を見込み、所要の地方交付税総額を確保した上で、地方交付税法附則第三条に基づくいわゆる年度間調整として行ったものでございます。  今後どうするかということにつきましては、将来の各年度の地方交付税総額につきましては、各年度の地方財政対策におきまして、あくまでも地方財政の円滑な運営に支障の生ずることのないよう適正に地方財政収支見通しを策定いたしまして、地方交付税法に基づきまして適切な対策を講じるなどして地方交付税総額を確保してまいりたいと思っております。
  155. 高木義明

    高木委員 交付税の減額という形をとっておりますけれども、これはいわゆる隠れ借金でしかないと私たちは考えております。政府はこれまで赤字国債の発行をやめたと言っておりますが、実はこのような形での借金というのは性格からいえば不明朗であろう、このように私は思っております。  そこで一体、国は、国債費以外にこのような将来にわたる債務であるところの隠れ借金、こういったものについては幾らくらい今持っておられるのか、この点についてお示しをいただきたい。
  156. 田波耕治

    ○田波政府委員 初めに、このたびの地方交付税の特例措置につきましては、先ほど申しましたようにいわゆる年度間調整ということで行ったものでございまして、今委員のおっしゃるような隠れ借金ということではないというふうに私ども考えております。  いわゆる隠れ借金というのは特例的に歳出削減措置を講じたものというふうに理解をいたしますけれども、それにつきましては、それぞれの制度や施策をめぐる状況を十分検討した上で、中長期的な観点から制度、施策がバランスのとれたものとして安定的に機能するようにとられた措置でございまして、あるいはそのときどきの運営に支障を生じない範囲内でのやむを得ざるもの、そういったものを特例的歳出削減措置というふうに観念しております。  その金額でございますけれども、四年度末の累計額で申しますと、国民年金特別会計への国庫負担金の繰り入れの平準化で九千七百九十五億円、地方財政対策の改革による交付税特会の借入金、これは一般会計に振りかえられたものでございますが四兆九千七百五十六億円、それから地方財政対策に伴う後年度負担が二兆一千二百五十六億円、政管健保の国庫補助の繰り入れ特例が四千六百三十九億円、政管健保の棚上げ債務が一兆四千八百十二億円、そのほかに、いわゆる国鉄清算事業団の長期債務というものが多額にございます。これが約二十六兆円というふうに観念をしております。
  157. 高木義明

    高木委員 いろいろお話を聞いてみますと、私は国の財政再建というのはまだまだだというふうに思います。そういうことからも、常に増税という話も聞かれてくるわけでありますけれども、まさに今、歳出経費のむだをなくし、あるいは行政効率を高める、そういった改善努力がなされなければならないと思っておりますが、この点について、この際そういった御決意をお伺いしておきたいと思います。
  158. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 我が国の財政というのも、御案内のとおり公債残高が百七十四兆円というものに達しておるということでありまして、国債費が歳出の二割を超えるというようなことで、依然として構造的な厳しさがあろうかと思っております。加えまして、多額の建設公債に依存する現在の財政構造というものが、今後の景気ですとかあるいは税収の変動によっては再び特例公債、いわゆる赤字公債というものの発行に陥らざるを得ないという非常に脆弱性を持っているというふうに思っております。  そういう意味で、今後の中期的な財政運営につきましては、急速に進展しできます人口の高齢化、こういったものに財政が弾力的に対応していくために、特例公債というものは発行してはいけないのだということを基本といたしながら、公債依存度の引き下げを図ることによりまして、いわゆる公債残高が累増しないような財政体質をつくり上げていくということが非常に重要な課題であろうと思っております。  今後もこのような考え方に沿いまして、公債発行額をできるだけ圧縮するため、制度、施策の見直し、こういったものを引き続き行って行財政改革というものを推進することが重要であろう、こういったものは地方との関係ですとかそういったものなどもきちんと正していくことにもつながっていくことであろうというふうに思っております。
  159. 高木義明

    高木委員 これに関連しまして、いわゆるパイロット自治体というのがありますが、これは行革審のくらし部会でそういう提言がなされたわけでございます。これは、なかなか進まない地方分権、権限移譲を一部特例的に進めていこうということでありまして、私たちは注目すべきことだろうと思っております。  これまで民社党は、地方の自主性、主体性、こういったものが最大限に保障されるように、権限の移譲、財源の移譲を含めて、いわゆる地方財政法の第十条の二に基づく公共事業の補助金については一般財源化をする、こういう第二地方交付税というものを提言をしておりますことは既に御案内のとおりでございます。この際パイロット自治体については、そういった権限あるいは財源を移譲するとともに、現在の公共事業の補助金、これについては第二交付税として交付していくことが、いわゆる地方の自律、そして豊かな生活大国、こういうことに直結してくるのではないかというふうに私は思います。  大蔵大臣地方分権の考え方、そしてまた私が今申し上げました第二交付税、こういった問題についての御見解と今後の対応についてお伺いしておきます。
  160. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 まさにこれからの地方と国という関係についてでありますけれども、まずこの点につきましては、自治大臣からも先ほどお話がございましたように、やはり地方自治体というのがみずから主体性を持って物事を進めていくということ、これが今新しい時代で望まれるものであろうと思っております。また、地方自治体もそういった受け皿というものは先ほどお話があったソフトの面も含めてだんだんしっかりしてきておるというふうに思っておりますので、今後こういった問題についてはさらに議論をしていきたいと思っております。  なお、今御指摘のございました地方分権特例制度、パイロット事業ですか、パイロット自治体、これにつきましての権限配分等の特例などの制度具体化のための検討、これが実は行革審の方で今盛んに行われておるということでございまして、私どもも今後、こういった検討の状況あるいは結果というものを踏まえながら対応していきたいと考えております。
  161. 高木義明

    高木委員 まだいろいろ議論をしたい点もございますけれども、今回はこれで締めくくらせていただきます。私が述べました地方分権、こういったことにつきましては自治大臣が所管でございますけれども、ぜひ権限とともに財源の移譲についても最大限の工夫をして善処していただきますように強く要望して、終わりたいと思います。
  162. 中島衛

    中島委員長 本日の大蔵大臣への質疑は終了いたしました。  次回は、来る二十二日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十二分散会