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1992-06-01 第123回国会 衆議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年六月一日(月曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 太田 誠一君    理事 井奥 貞雄君 理事 中川 昭一君    理事 村上誠一郎君 理事 持永 和見君    理事 柳本 卓治君 理事 小野 信一君    理事 細谷 治通君 理事 日笠 勝之君       浅野 勝人君    石原 伸晃君       岩村卯一郎君    江口 一雄君       狩野  勝君    金子原二郎君       亀井 善之君    小林 興起君       左藤  恵君    戸塚 進也君       林  大幹君    星野 行男君       前田  正君    山下 元利君       池田 元久君    佐藤 観樹君       仙谷 由人君    早川  勝君       堀  昌雄君    渡辺 嘉藏君       宮地 正介君    正森 成二君       中野 寛成君  出席政府委員         大蔵大臣官房審         議官      金子 義昭君         大蔵大臣官房審         議官      西村 吉正君         農林水産大臣官         房審議官    今藤 洋海君  委員外出席者         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     館 龍一郎君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  若井 恒雄君         参  考  人         (全国労働金庫         協会理事長)  船後 正道君         参  考  人         (全国信用組合         中央協会会長) 治山  孟君         参  考  人         (評論家)   五代利矢子君         参  考  人         (信託協会会長)早崎  博君         参  考  人         (日本証券業協         会会長)    渡辺 省吾君         参  考  人         (農林中央金庫         理事長)    角道 謙一君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ————————————— 委員の異動 六月一日  辞任         補欠選任   衛藤征士郎君     金子原二郎君   久野統一郎君     星野 行男君   中井  洽君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   金子原二郎君     衛藤征士郎君   星野 行男君     久野統一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融制度及び証券取引制度改革のための関係  法律整備等に関する法律案内閣提出第七三  号)      ————◇—————
  2. 太田誠一

    太田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出金融制度及び証券取引制度改革のための関係法律整備等に関する法律案を議題といたします。  本日は、参考人に御出席をお願いいたしておりますが、午前の参考人として東京大学名誉教授館龍一郎君、全国銀行協会連合会会長若井恒雄君、全国労働金庫協会理事長船正道君及び全国信用組合中央協会会長治山孟君、以上四名の方に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位には、それぞれのお立場から忌悼のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでありますが、まず、各参考人にそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、次に、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、館参考人からお願いいたします。
  3. 館龍一郎

    館参考人 ただいま御紹介いただきました館龍一郎でございます。  金融制度及び証券取引制度改革のための関係法律整備に関する法律案について私見を述べて審議参考に供する機会を与えられましたことを、大変光栄に存ずる次第でございます。  さて、いわゆる金融不祥事を受けまして検査監督に関する金融証券検査委員会の設置を含む法案審議が行われ、先般成立を見たというように承知いたしておりますが、金融不祥事の原因は、第一次的には個人犯罪事件であり、またそのような犯罪に対して十分なチェックが行われなかった経営システム及び経営責任者の問題であります。しかし、さらにさかのぼって考えてみますと、一九八七年以降の長期にわたる金融緩和と、それによってもたらされました余剰資金の増大によって地価、株価の高騰を招き、その高騰に伴って金融機関の審査に緩みが生じ、また固定手数料制のもとで証券会社の手元に損失補てんを行い得る利益が生じたことによるものと考える次第でございます。  このような不祥事に対しましては二つの対応が考えられます。一つ検査監督を強化する方法であります。いま一つは、取引のルールを明確化するとともに当局の介入は最小限度にとどめ、市場自浄作用市場がみずからを浄化していく自浄作用を活用する方法であります。  この第二の考え方は、不祥事自体競争制限的な規制や慣行によってもたらされたモラルハザード一種、例えば自動車保険が掛けてありますと、自動車の運転についての注意がとかく慎重を欠くに至る、そういう気の緩みが生じやすいということを普通モラルハザードというように申しますが、そういうモラルハザード一種で、貸し出し等について慎重さが失われた結果であるという考え方によるものであります。  さきに議決、成立を見ました検査監督に関する法律は、第一の方向での手当てであります。検査監督を強化するという対応でございます。現在審議中の法案は、業務範囲拡大して競争を促進し、それによってモラルハザードが生ずる余地を取り除くという性質のものであると理解しております。この両法案成立することによって不祥事再発を防ぐことができるのでありまして、一方を欠いては不祥事対策としては不十分であるというように言わざるを得ないと考える次第であります。こういう点からもこの法案早期成立が望ましいというように私は考えておる次第でございます。  昭和二十七年前後に確立しました戦後日本金融制度は、資金資源の乏しい状況のもとで限られた資金資源を有効に活用するために専門主義分業主義基本として形成されてまいりました。すなわち、業務分野に応じて市場を分割し、それぞれ専門金融機関をつくり、その責任と工夫で金融効率的利用を図る一方、各分野への相互参入規制することによって競争自体を制限し、それによって金融機関保護を与えてきたものでございます。このようなシステムは戦後経済復興の時期には大変有効に機能したと言うことができますが、資金の不足から資金余剰経済経済自体が転換しまして、縦割り金融システムはその存立の基盤を失っただけではなく、その後のニーズ多様化金融証券化金融国際化あるいは金融グローバル化といった最近の要請にこたえることができず、規制の抜け穴、ループホール探しのためにむだな精力が費やされるようになってきていたと考えます。  また、国際的にも、日本市場への参入が困難である一方、日本金融機関企業投資家資金調達運用が容易な海外市場運用調達の場を求めて進出するところから、日本海外でのオーバープレゼンス日本市場閉鎖性不透明性への非難が高まり、この面からも金融制度の抜本的な見直しか痛感されるようになっていたのであります。  以上のような観点から見ますと、今回の金融制度改正は、やや遅きに失した感を免れないのでありますが、事柄が専門的、技術的であり、また利害が複雑に錯綜しているということから考えますと、多少の時間を必要としたということもまたやむを得なかったのではないかというように考えておる次第でございます。制度改正は一般に将来のことであるために、改正後の状態についての不安を完全に払拭するということは大変難しい面がございます。そのためどうしても、後になって考えてみますと、何だ、あんなことであったのか、大したことはなかったと考えるようなことであっても、将来のことでありますから、そこに不安があり、改正が非常に難しい面があるということは否定できないというように考えておる次第でございます。  私たちはさき金融制度見直しに関しまして、見直しの視点として、利用者立場国際性信用秩序維持地域活性化を挙げまして、そういう観点から制度見直し金融制度調査会の場において行ってまいったわけでございますが、それを受けて今度の法律案要綱が、「内外の利用者のため、金融機関及び証券会社の有効かつ適正な競争促進等による金融資本市場効率化及び活性化並びに諸外国と調和のとれた金融制度及び証券取引制度の構築を図る必要性にかんがみ、金融機関及び証券会社の各種の業務分野への参入をはじめとする金融制度及び証券取引制度の包括的な改革を実施するためこ法律整備する必要がある、こういうように述べておりますのは、先ほど申しました利用者立場国際性といったような観点から申しましても妥当なものであるというように考えておる次第でございます。  参入の具体的な方策といたしましては、法案は、業態別子会社方式による相互参入を原則として、地域金融機関については限定的に本体による信託への参入を認める、あるいは私募の概念を明確にして銀行付随業務として私募を行うことを認める等の改正が行われ、また地域金融への配慮から協同組織金融機関業務が大幅に拡大されているということは注目に値する点でございます。各金融機関は、金融機関としての責任重大性を強く認識して、その経営に遺漏なきよう慎重な運営を今後において図っていく必要があるということを特に希望しておきたいというように考える次第でございます。  さて、参入具体的方式については、いろいろな方式が考えられるわけでございまして、現行方式をそのまま続けていくという考え方、あるいはユニバーサルバンク方式をとっていくという考え方、あるいは特例方式によってホールセールに限定して銀行による兼業、広い範囲での兼業を認めていくという方式、あるいは持ち株会社方式、それから業態別子会社方式等参入方式としては考えられるわけでございます。これらの幾つかの方式について、私どもといたしましては、金融秩序維持するという観点、それから企業支配、別の言い方をしますと、市場支配力の集中の可能性、あるいは公平性、それから現行制度連続性といったような観点を踏まえて詳細に検討をした上で、業態別子会社方式を主体として、それに本体での相互乗り入れ方式を適切に組み合わせるという方式が適当であるという考え方に達したわけでございますが、私は現在においてもその方式が望ましい方式であるというように考えておる次第でございます。  なお、多くの賛成者がありますユニバーサルバンク方式につきましては、私自身ユニバーサルバンク方式をとった場合にはどうしてもモラルハザードの問題が強くあらわれてくるという可能性があるというように考えているわけでございます。銀行はペイメントシステムの一環を形成しておりまして、したがって銀行はほかの機関に比べて手厚い保護を受けておりますので、そういう銀行がすべての業務を兼営するという方式は、これはモラルハザードを強化する危険があるという点で、私自身としては望ましい方式とは考えておらないということを申し添えておきたいと思います。しかし、私といたしましては、その後の不祥事等を踏まえますと、広い範囲での自由な競争が、ディスクロージャーの拡充を前提といたしまして極めて重要な点であるというように考えておるわけでございます。したがいまして、この法案が認められまして、さらに進んでは業態別子会社が業法上認められたすべての業務を行い得るという時期ができるだけ早く到来するということを強く期待するわけでございます。そうなりますと、ユニバーサルバンクではございませんが、バンキングという意味ではユニバーサルバンキングが可能になる、そういう状態になった場合には、これは世界に通用する制度として海外にも堂々と胸を張って対応し得るということではないかというように考えておる次第でございます。  なお、最後に、参入できる体制をつくるということは、参入しなければならないということではないということを申し上げておきたいと思います。もうけ過ぎになる分野があれば、その分野にほかの金融機関が自由に参入することができるようなシステムにしておくということが、金融制度の上でいいますとモラルハザードを排除し、すべての人がそれぞれ慎重な態度で銀行経営を行っていく基本になるというように考えるからでございまして、必ず金融機関参入しなければならないというわけではございません。それぞれの金融機関がそれぞれの特性に応じてそれぞれの分野参入していくような体制が、これによって実現することを強く希望しておるという次第でございます。  非常に簡単でございますが、以上をもちまして私の公述を終わります。(拍手
  4. 太田誠一

    太田委員長 どうもありがとうございました。  次に、若井参考人にお願いいたします。
  5. 若井恒雄

    若井参考人 ただいま御紹介いただきました全銀協会長若井でございます。  本日は、大蔵委員会にお招きいただき、私ども考え方を申し述べる機会を与えてくださいましたことに対し、まずもって御礼申し上げます。  また、昨年来、一連の金融不祥事で世間をお騒がせしたことにつきまして、全銀協会長として、この場をおかりしておわび申し上げる次第でございます。私どもといたしましては、さまざまな対策を打ちつつ、信頼回復に向けて決意を新たにいたしているところであります。  さて、今般の金融制度改革関連法案につきまして、私ども銀行業界は、従来のいわゆる縦割り金融制度を抜本的に見直すものであり、利用者利便国際性信用秩序維持理念とした新しい金融制度づくり第一歩と認識いたしております。  制度改革は私ども金融界の悲願であります。世界的に金融証券化国際化が目覚ましく進展している今日にあって、ひとり我が国ばかりがこれまでの縦割り専門金融機関制度を守っていたのでは、もはや不自由きわまりないと言わざるを得ません。  諸外国金融制度は、我が国現状と比較して相当自由なものになっております。例えば、英国、ドイツ、フランスなどの欧州各国では、銀行証券兼営制度をとっております。米国では、基本的には銀行証券分離制度をとってきましたが、信託業務銀行業務ともともと不可分の関係にありますし、銀行持ち株会社証券子会社を持ち、社債株式の引き受けなど、制限つきながら順次その業務範囲を広げてきております。また、カナダでは昨年、制度改革を実施し、各業態の幅広い相互参入が可能になっております。  従来の制度のままではどう不自由がと申しますと、まずお客様の御要望に十分こたえられません。例えば、普通銀行期間の長い預金とか変動金利型の預金を新たに出そうとすれば、それは別の金融機関、すなわち長期信用銀行信託銀行領分を侵すことになります。あるいは銀行が新しい証券化関連商品を開発しても、証券会社領分を侵すと言われてしまえば実際には販売ができません。  逆に、証券会社の方でも、社債期間の短いものとか変動金利型のものを出そうという場合には、これまでの制度前提とする限り、普通銀行預金とか信託銀行のビッグといった商品領分を侵すことになります。特に、証券会社は近年、中国ファンドやMMF、実績分配型短期公社債投信でございますけれども、そのように銀行預金に類似した商品の開発、販売に熱心に取り組んでおられますが、やはり銀行領分には踏み込めない部分が大きいので、不自由を強いられている面があるようでございます。  つまり、銀行にしろ証券会社にしろ、お客様ニーズに合わせて創意工夫する余地が限られているということであります。  そういたしますと、お客様の方でも、こんな金融市場では不便だというので、例えば海外支店のあるような事業法人海外資金調達したり、機関投資家海外資金運用したりということになってしまいます。国内資金調達ニーズがあり、かつ資金運用ニーズがあっても、制度が邪魔になって国内ではうまく両者のニーズがかみ合わず、お互いに海外市場に行ってやりましょうというようなことになりがちであります。  これは、国内金融市場が空洞化するということを意味します。そして、金融機関お客様の中でも、海外金融市場に自由に接触しにくいようなところは、国内で不自由を強いられることになります。海外金融サービスを自由に享受できるようなお客様と、個人中小企業のようにそれが難しいようなお客様とでは、随分不公平なことになってしまうわけであります。  問題はそれだけではございません。私ども金融機関は、海外では海外金融機関競争しております。しかし、例えば邦銀海外支店証券絡み派生商品投資信託などを販売しようとしても、我が国制度上、規制されているものはできません。逆に、外国銀行日本国内支店本国並み金融商品、例えばカードローン債権証券化した商品を提供しようとしても、我が国規制で新商品の持ち込みが難しいということになります。このため、外国銀行は事あるごとに、日本はこれだけの金融大国になったにもかかわらず、金融証券市場新規参入者に対して開かれていない、日本消費者は十分なサービスを受けられていないといった主張を重ねてまいりました。  私ども邦銀としても、すべて外国がよいと思っているわけでは決してありませんが、自由に競争ができない、あるいは業務範囲が十年一日のごとく固定されたままで経営選択余地が乏しいといった我が国現状は、今日ではやはり、制度が実態に合わなくなっていると言わざるを得ません。東京市場は、規模の面では世界の三大金融市場一つと言われるまでになりましたが、制度が古いままではその責務が果たせないということであろうかと思います。  金融機関としましても、経営環境の悪化に対応して頑張っていこうというときに、このまま古い制度に押し込められておりますと、どうしてもひずみが生じ、リスクが大きいという点も申し上げておきたいと思います。  例えば、普通銀行は、今日では長期貸し出し短期貸し出しの倍ぐらいあります。にもかかわらず、長短分離の壁があり、長期調達が制限されているため、金利変動リスク流動性リスクを管理する手段が制約されてしまっております。  あるいは、銀行がやはり自己資本比率向上のための分母対策という意味で、既存貸付債権を小口化して投資家販売しようとしましても、いわゆる業際の垣根に阻まれて銀行による販売ができないということになりますと、市場が育ちません。せっかく債権流動化の計画を立てましても、現実には絵にかいたもちに終わってしまうおそれさえございます。  制度改革が実現すれば、銀行リスク管理BIS対策上も選択肢が大きく広がることになります。私どもが本法案早期成立をお願いしているのは、かかる現状を何とか打開したいという趣旨であります。  無論、この制度改革関連法案成立すれば、それで相互参入は十分かといえば、決してそうではありません。例えば、証取法の附則で銀行証券子会社に当面、株式ブローキングが禁じられるという点は、私ども銀行としては、やはり残念でございます。しかし、法案はこれまでの議論の集大成であり、ここでとにかく第一歩を踏み出さないことには、相互参入は先に進みません。  他方、今はバブル崩壊の影響が広がっている時期であり、証券市場環境も悪いのであるから、金融機関は本業に専念したらどうかという御指摘もあります。また、市場が冷え切っているときに改革どころではないという御意見もあります。しかしながら、今はっきりとした新制度の青写真を描くことをせず、旧態依然とした制度のまま放置したのでは、証券市場への信頼回復も進まないように思います。競争原理が徹底しないままでは、証券市場に対する投資家の不信は払拭されないからであります。適正な競争不祥事再発防止にも有効であるばかりでなく、新規参入が促進されれば既存業者にもよい意味で刺激になり、市場活性化につながるものと考えます。  長い間待ち望んだ制度改革であります。私ども全銀協に加盟しております都銀、長信銀、信託銀行地方銀行、第二地方銀行は、経営選択の幅が広がりますので、すべてこの法案早期成立することを切望しております。先生方におかれては、どうか私ども趣旨をお酌み取りいただくとともに、今後とも御指導、御鞭撻を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。  以上で私の御報告を終わらせていただきます。(拍手
  6. 太田誠一

    太田委員長 どうもありがとうございました。  次に、船後参考人にお願いいたします。
  7. 船後正道

    ○船後参考人 全国労働金庫協会の船後でございます。このたびの金融制度改革法案の御審議に当たりまして、労働金庫業界意見を述べる機会を与えていただき、まことにありがとう存じます。まずもって厚くお礼申し上げます。  以下、労働金庫業界としての総括的な意見を二、三申し上げ、御理解を賜りたいと存じます。  まず、今回の金融制度改革法案は、我が国経済構造変化への対応、とりわけ国民の金融に対するニーズ多様化への対応金融自由化国際化の流れに即応させる必要性から提案されているものと理解いたしております。本法案には、六年間にわたる金融制度調査会での掘り下げた審議を通じて、これまでの専門制分業制を特色とした我が国金融制度見直しを初め、経営健全性の確保などを骨子に幅広い検討の結果が反映されている、かように考えております。  次に、労働金庫は御存じのとおり労働組合や生活協同組合を主な会員とする協同組織金融機関として活動してまいりました。協同組織金融機関相互扶助理念に基づいて設立されたものでございます。設立当時と比べまして今日では金融経済環境が大きく変化いたしておりますが、協同組織金融機関の特質を生かし、会員組合員ニーズにこたえていくことは依然として強く求められているところでありまして、協同組織金融機関は引き続き社会的に重要な存在意義を持つものとされております。  このため、今回の制度改革におきましては、協同組織金融機関業務範囲拡大制度改革の重要な柱の一つにされている、かように考えております。  既に金利自由化が大きく進展いたしまして、この面では私ども労働金庫も他の金融機関と同じ土俵での競争を余儀なくされております。一方、業務面自由化制度上の制約から大きく立ちおくれておるのが現状でございます。公正かっ適正な競争条件を確保する上でも、また多様化している会員勤労者ニーズにきめ細かく対応するためにも、制度改革は私どもにとりましてまことに切実な課題となっております。  また、金融自由化時代におきましては、それぞれの金融機関がみずからの役割に応じてその持ち味を発揮し、利用者ニーズにこたえていくことが強く求められております。そのためには、各金融機関がみずからの個性や能力、経営意思に基づいて業務選択できるよう業務分野拡大が必要であります。今回の改正案は、こうした趣旨に沿うものであると考えております。私どもといたしましても、今回の改正によりまして拡大されることになる新しい業務に適切に対応していくよう人材育成体制整備等について既に着手しているところでございます。  以上申し上げました金融制度改革労働金庫業務範囲拡大は、金融自由化の進展を初めとする金融環境変化会員勤労者金融ニーズ多様化が進んでいる現況のもとでは、ともに急がれる課題でございます。特に労働金庫業務範囲拡大につきましては、金融制度第一委員会において取りまとめられましてから既に二年の歳月が経過いたしております。また、労働金庫にかかわる法改正案の内容につきましては、いずれも金融制度調査会の該当委員会で、私ども労働金庫業界の代表も参加し、慎重に審議されたものでありますし、労金業界の要望もほぼ満たした内容になっております。  なお、このたびの制度改正金融機関の合併及び転換に関する法律の対象金融機関長期信用銀行等とともに労働金庫が加えられることにつきましては、それが法制度の体系整備観点から行われる措置である、かように認識いたしております。  労働金庫といたしましては、あくまでも労働金庫制度のもとで経営の主体性を堅持し、会員勤労者の幅広いニーズにこたえてまいる所存でございます。ぜひとも御理解いただきまして、労働金庫が経済・金融環境変化対応して社会的に要請される各般の業務機能を早期に発揮できますよう御要望申し上げる次第でございます。  拝聴ありがとうございました。(拍手
  8. 太田誠一

    太田委員長 どうもありがとうございました。  次に、治山参考人にお願いいたします。
  9. 治山孟

    治山参考人 信用組合の治山でございます。  平素は、私ども信用組合業界に関しまして非常に御指導、御理解のほどいただいておりますことを厚く御礼申し上げたいと存じます。  また、本日は、衆議院大蔵委員会先生方のお集まりの場におきまして、私どもの信用組合に関する制度改革必要性につきまして御説明を申し上げる機会を設けていただきましたことを心から感謝申し上げ、御礼を申し上げたいと存じます。  それでは、まず最初に信用組合の役割とそして現況につきまして御説明を簡単に申し上げたいと存じます。  信用組合というのは、地域それから人縁、地縁、そういうものを経営の基盤といたします協同組織の金融機関でございます。中小企業、特に零細企業勤労者等の組合員に対します資金の円滑化と経済的地位の向上に資すると同時に、地域社会の発展に貢献することをその使命としているところでございます。  私ども信用組合業界は多様な業態によって構成されてございます。すなわち、限定されました地区内での中小零細企業勤労者等を対象にいたします地域信用組合、それからお医者さんだとか特定の業種を対象といたしております。域信用組合、またお巡りさんだとかあるいは学校の先生、宮内庁の職員等、官公庁の職員さんを対象といたしております職域信用組合、この三業態がございまして、特に地域の信用組合の中には、韓国系等いわゆる外国系と申しますか、そういう外国系の信用組合もございます。  ところで、現在の信用組合の現況でございますけれども、平成四年三月末現在で全国には三百九十七信用組合、店舗数にいたしまして約三千店舗有しておりまして、私ども組合員の数はおよそ四百万人を超え、お預かりしております預金量は二十二兆四千億円、御融資を申し上げております金額が十八兆円となってございまして、協同組織性の強い地域金融機関として確固たる基盤づくりに努めてまいったわけでございます。  次に、信用組合に関しましての制度改正について御説明を申し上げたいと存じます。  以上申し上げましたように、多様な業態を有する私ども信用組合業界でございますが、これまでの機能が我が国資金不足時代に構築されました制度によります預金・貸し金業務に限定されてまいりましたために、金融国際化証券化が急速に進展する中にありまして、組合員である顧客の金融ニーズ多様化、高度化に的確に応ずることができない状況が続いてまいったわけでございます。  近年、御高承のとおり、我が国におきましての金融資産の蓄積は全国の中小企業及び個人の段階まで着実に進んでおりまして、それらお取引先の方々の財産の管理、運用面でのニーズ多様化が見られているところでございます。  このような情勢の著しい変化を踏まえまして、私ども信用組合業界では、金融新時代に相ふさわしい信用組合制度の確立の必要性につきまして関係方面に強く要望してまいったわけでございます。幸い平成二年六月、金融制度調査会におきまして「協同組織金融機関業務及び組織のあり方について」に関する報告の中で、私どもがお取引先の強いニーズを背景に長年要望してまいりました外国為替や国債等公共債の窓販業務の取り扱い等につきまして、その取り扱いの実態を御理解いただき、前向きの報告をちょうだいしており、これらの事項につきましては、現在、本委員会で御審議いただいておりますいわゆる金融制度改革法案に具体的に法制化されているところでございます。  若干補足させていただきたいと存じますが、私どもといたしましては、現に海外との貿易取引を営む取引先が非常に多く存在し、外為業務に関するニーズが強い状況にあること、また、国債の窓販につきましては、私どもの直接取り扱いではなく他の金融機関の代理業務としての取り扱いであるため、顧客のニーズに十分にこたえられない状況となっておりますので、その実態に即した制度の改善を図っていただきたいというわけでございます。  加えまして、付随業務でございますが、有価証券の貸し付け、保護預かり業務あるいは余裕金の運用に関しましても、信用金庫並みの規制の緩和をしていただき、幅広い金融サービスの提供等を行いながら、より安定した経営基盤づくりに努めてまいりたいと考えているわけでございます。  さらに、金融制度調査会の報告におきまして、私ども地域社会においてより良質な金融サービスの提供を行っていくため、合併による経営基盤の強化を図ることも必要とされておりますが、信用組合業界といたしましても、その円滑な推進のため合併手続につきまして、信用金庫並みの規制の緩和をお願いに参ったところでございます。  また、昨年六月、金融制度調査会におきましても、「新しい金融制度について」に関する報告でございますが、金融機関金融自由化国際化証券化等の進展のもとで、多様な金融商品サービスの提供の要請等にこたえていくためには、新しい金融制度の枠組みの整備が必要とされたところでございます。とりわけ、その見直しに当たりまして、私ども地域金融機関地域住民、地方の中小企業等に対する金融サービスの均てんや地域格差の是正等に対する地域金融面からの貢献を通じまして、地域活性化に貢献できるようにすることが重要とされましたことは、私どもの従来からの主張でございまして、まさに時宜を得た提言であると高く評価しているところでございます。  この基本的な考え方に基づきまして、現在御審議いただいております金融制度改革法案におきまして、私ども協同組織金融機関につきましても、信託業務等他業態業務に関し子会社方式本体方式あるいは代理業務方式のいずれかの方式によって参入することが可能とされており、その内容は中小金融機関経営の実態面に十分配意したものとなってございます。  最後に、私どもの信用組合業界の体制整備につきまして御説明を申し上げたいと存じます。  このたびの金融制度改革につきまして、金融機関相互間の競争は一段と活発化することが予想されてございます。私どもといたしましては、業務拡大の要望と並行いたしまして、個々の信用組合の体制整備につきまして種々の検討を重ねてまいっております。新たな業務を希望する信用組合につきましては、組織の設置、人材の確保、育成、先進金融機関あるいは証券会社との業務提携の推進等、新たな業務を健全に遂行し得る体制づくりに努めており、かなりの進展が見られているところでございます。  私ども信用組合業界の合併がかなり速い速度で進んでおりますが、このことは個々の信用組合が金融の新時代へ的確に対応しつつ、制度本来の機能を十分に発揮していくための選択の結果であると考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、新規業務への参入には、人材面あるいは資金面等多くの経営資源の投入が必要でございます。  先ほど述べてまいりました報告でも触れられているところでございますが、新規業務への参入には、経営健全性を確保する観点から、業務遂行能力を有することが前提とされており、私どももこの点に特に留意しながら対応してまいりたいと考えておるわけでございます。  業界といたしましても、連合組織でございます全国信用協同組合連合会を軸としまして、業界全体として制度改革の方向に沿った金融サービスの提供が実現できますよう各種の選択肢を考えながら着実に取り組んでまいりたいと考えておりますので、先生方におかれましては、以上申し上げました私ども考え方に御理解をいただき、金融制度改革早期実現にぜひお力添えを賜りますようお願い申し上げまして、御報告を終わらせていただきます。  御清聴ありがとうございました。(拍手
  10. 太田誠一

    太田委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 太田誠一

    太田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前田正君。
  12. 前田正

    ○前田(正)委員 本日は、先生並びに業界団体で御活躍の皆さん方におかれましては、大変お忙しいところ当大蔵委員会に御出席を賜りまして、厚く御礼を申し上げます。  それでは、早速ですが、自由民主党を代表して質問を申し上げますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  今回の法案では、銀行証券子会社信託銀行子会社をつくり、また証券会社銀行子会社や信託子会社をつくることにより、各金融間の相互参入を図るものとなっております。これらの業務多様化するならば、本来、本体で一体となってもいいとは思われるところでありますが、子会社方式としてあることは、利益が相反する弊害の発生があるからだと考えられます。業態別子会社方式は、この利益が相反する弊害を防止する上で本当に有効なものかどうか、館先生にお尋ねいたします。
  13. 館龍一郎

    館参考人 お答えいたします。  先ほども申し上げた点でございますが、私ども金融制度調査会におきまして、どういう形での参入が望ましいかということについて検討したわけでございます。今御指摘がありましたように、仮に多様化の利益、いろいろな業務を同時に行うことによって経費を節約するとか経営の安定性を図るとか、そういうことができるという利益があることを考えますと、その点だけを中心にして見た場合には、御指摘のあったユニバーサルバンク、何でもできるユニバーサルバンクが一番いいというように見えるわけでございますが、そういうユニバーサルバンクをとりました場合には幾つかの弊害が起こってくるというように考えられるわけであります。一つは御指摘の利益相反の問題でございますし、そのほかに信用秩序維持の問題、そういう種類の問題が考えられてまいります。  ところで、子会社方式相互参入を図り、同時にそういう形で競争が非常に活発に行われるというような状況を想定いたしますと、そういう状態のもとでは、例えば利益相反をやったような銀行については、これは先ほどもちょっと触れた点ですが、余り強調いたしませんでしたけれども、同時に銀行業務についてのディスクロージャーが広い範囲にわたって行われている場合には、人はその復そういう銀行を相手にしなくなってくるという意味での市場メカニズムを通じた排除が行われてくるようになるだろうというように考えます。そこで、仮にユニバーサルバンクになっても、一般に言われるほど利益相反の弊害というのは大きくないだろうというように私どもは考えているわけでございます。そうは申しましても、完全な自由競争が行われ、完全なディスクロージャーが行われるわけではございません。したがいまして、我々といたしましては、相互参入を認めていく場合に子会社方式をとってという形で、その場合でも、なお起こり得る利益相反なり信用秩序の不安という問題に対して対策を講じておくのが望ましいだろうというように考え、さらに、それでもなお不十分な場合にはある程度ファイアウォールのようなものを導入していく、少なくと、もアームズ・レングスのようなものをこの中に入れておく必要があるだろう、その場合に、子会社方式になっていれば、ファイアウォールの効果は子会社方式でない場合に比べてはるかに強力に働くのではないだろうか、こういうように考えまして現在のような制度を考えたわけでございます。
  14. 前田正

    ○前田(正)委員 次に、若井会長さんにお尋ねいたしたいと思います。  金融自由化の進展に伴い、金融界の再編成が進むという見方があります。個別業としてのビジョンの考え方をお聞かせいただきたいのと、また、今の銀行の数は多いと思われますか、少ないと思われますか、お尋ねいたします。
  15. 若井恒雄

    若井参考人 ただいまの御質問に対しましてお答えを申し上げたいと存じます。  最後の話の、銀行の数が多いか少ないかということでございますけれども、例えばアメリカでございますと、金融機関、特に銀行の数が非常に多いというふうに私どもは聞いております。それに比べれば日本の場合には少ない、こういうふうに言えるかと思います。ただ、これを何の比較で考えるかということでは非常に難しいというふうに思うわけでございます。  それからもう一つ、前の御質問はちょっと……。何でございましたですか。
  16. 前田正

    ○前田(正)委員 金融界の再編成。
  17. 若井恒雄

    若井参考人 そうでございますか。これにつきましてのお答えでございますけれども、再編成というものをどういうふうに考えるかということでございますが、これを金融機関同士の合併、買収というふうな観点で見ますと、我が国だけでなくて世界的に非常に増加しているということでございます。そういう意味では、今後も当分こうした動きが進むというふうに私どもは予想しております。  それで、一般的に申しまして、金融機関経営選択肢として積極的に合併、買収を決断する場合には、規模の利益あるいは業務多角化の実現をねらうという場合もございますし、あるいは得意分野なり地域なりに的を絞って体力の強化をねらうというようなことがあるわけでございますけれども、この金融自由化の進展に伴いまして経営選択の幅が広がってくれば、一つ選択肢として合併、買収あるいは金融再編成というものがおのずからふえてくるというふうに予想されるわけでございます。  それからいま一つは、業績が悪化した金融機関が出てまいりますと他の体力のある金融機関がこれを救済合併する、こういうようないわば後ろ向きの再編成も行われてくるのではないかというように思います。ただ、その場合、あくまでも国民経済的見地から信用秩序維持を図るということが求められるわけでございまして、個々のケースごとにいろいろな選択肢の中で選ばれるということでございますので、これについて、すべて再編成に結びっくかどうかということも申し上げられないというふうに考えております。  以上でございます。
  18. 前田正

    ○前田(正)委員 次に、船後理事長さんにお尋ねいたしたいと思います。  労金の立場から見られまして、今回の制度改革に最も期待するところは一体何なのか、具体的にお聞かせいただきたいと思います。
  19. 船後正道

    ○船後参考人 労金の立場からして今回の制度改革に最も期待するものは何かというお尋ねでございます。  冒頭の陳述でも申し上げましたように、何と申しましても業務範囲拡大によりまして利用者の多様なニーズにこたえることが可能になるという点でございます。また、これによりまして全金融業態制度的にはほぼ同じような業務範囲になる、かように理解いたしております。もちろんこれの実施に当たりましては、私ども協同組織金融機関でございますので、そういった立場から真に労働金庫の専門性を発揮する上で特に必要なものから順次実施してまいりたい、かように考えております。
  20. 前田正

    ○前田(正)委員 次に、治山会会長さんにお尋ねいたしたいと思います。  今回の制度改革では、信組にも業務範囲拡大が認められることになっております。このうち特に期待している新規業務はどんな分野なのか、お聞かせいただきたいと思います。
  21. 治山孟

    治山参考人 先ほども御説明申し上げましたように、私ども業務範囲拡大につきましてはもう長年の要望でございまして、このたびの法制化の御予定に対しまして感謝申し上げるわけですが、特に外国為替の業務それから国債等の窓販、ディーリング業務それから信託業務及び証券化関連商品の取り扱い等の分野につきまして期待しているところが非常に大きいと申し上げたいと存じます。よろしくお願いいたします。
  22. 前田正

    ○前田(正)委員 さらに治山会会長にお尋ねいたしたいと思いますが、金利自由化の信組の経営に与える影響は大きいでしょうか、どうでしょうか。また、今回の制度改革によって信組の経営健全性が損なわれるとお思いでしょうか、あるいは経営上のリスクが増大するといったことはないでしょうか、お尋ねいたしたいと思います。
  23. 治山孟

    治山参考人 金融自由化の問題でございますが、確かに資金調達コストの上昇、それから金利変動リスクの増大等、私ども信用組合経営にさまざまな影響を与えることは否定し得ない、そういう事態だと考えますので、これらの問題につきましては、適切に対応し得る体制整備それから体質の強化、こういうもので当面極めて重要な経営上の課題と認識し、その実現に努めているところでございます。今回のこの制度改革によりまして業務範囲拡大されますと、それに伴いましてリスクが増大する面もありますが、一方組合員等の取引先のニーズにこたえ得るということになりますと、当然そこに経営基盤というものが一段と強化されます。それと同時に、新規業務の取り扱いにつきましての収益の増大が期待されるため、増大するリスクの管理に十分配意しつつ新規業務に積極的に取り組んでまいりたいと考えているわけでございます。
  24. 前田正

    ○前田(正)委員 もう一度治山協会長にお尋ねいたしたいと思いますが、全国の信用組合は非常に数が多いということと、先ほど御説明がありましたとおり、中小零細企業者を対象とした地域銀行であるわけであります。たまたま私の父が実業信用組合という銀行経営いたしておりまして、組合の難しさというものを私もよく存じておるところでございますが、信用組合というのは預金高が非常に少ないところに関しましては、最近機械化を導入したり、いろいろなものの業務の中から利益を上げるということは非常に難しいというふうに聞いております。さらに、こういったものがどんどん参入をいたしますと、利益率というものがもっと落ちるのではないかというふうな懸念がいたしますし、特に最近の信用組合の不祥事件というものが非常に多過ぎまして、大阪におきまして富国信用組合だとかあるいはまたこの間の府民信用、ごく最近では、東京では、いちば信用組合がいろいろと問題があるように聞いておるところでございますが、これからの信用組合の将来のあり方ということできれば一遍お聞かせをいただければありがたいというふうに思っております。  また、監視体制というもの自体が、今それぞれの各地方自治体で監視をされておられ、大蔵省とは直接関係ないわけであります。したがいまして、そういう監視体制というところにいろいろと問題があるのではないかというふうな気もいたしますし、また各地方自治体においては、金融課というところでは本当に職員さんが非常に少なくて、信用組合さんのそれぞれの監査等々についても大変難しいものがあるように伺っておりますが、その辺もあわせて一遍治山会会長さんにお尋ねをいたしたいと思います。
  25. 治山孟

    治山参考人 先ほども申し上げましたように、信用組合というのは三業態ございますが、特に私ども地縁、人縁の金融機関だとよく言われておりますが、その中に当然専門性の問題、例えば中小企業、零細企業の方たちだとか勤労者の方たちだとかあるいはそこの地域の住民の方たち、これが全く対象になってございますから、そういう専門的な問題を徹底的に私たちは追求していかなければならないという役目、目的がございます。それからもう一つ、合理性の問題でございますけれども、確かに株式会社でございませんから、協同組織となりますとおのずからそこに非営利性というものに対しまして、逃げるという意味ではございませんが、例えば私たち当然集金制度どもとっております。それからまた、地域だけでございますから、地域あるいは組合員の方々に対して現在の新しい情報を的確に早く提供していかなければならない、こういうものもございます。したがって、そこには当然もうけるとか云々という問題ではなくて、やはり非営利分野においての配慮というものも、信用組合はきめ細かい金融サービスの提供が必要になってくるだろうと思います。そういたしますと、私たち自由化の中におきましては、信用組合たりとも自由化の中での金融機関でございますから、おのずから、きょう先生方にお願いしておりますように、総合金融サービスの提供できる体制づくり、こういうものを考えていかなければならない。例えば私たちにおきましては地縁、人縁ということを申し上げでございますから、人と人との触れ合いというものに対してのお取引、それからまたそういう環境づくり、事業をなさっている方たちに対しましてどのようにアドバイスしていかなければならないかという面、こういうものもございますし、現実にまた地域だとか組合員の方々に奉仕していかなければならないという信用組合人の養成、こういうものが当然必要になってまいりますから、私たちは役職員に対して働きがいのあるそういう研修、育成というものを考えていかなければならないのが個々の信用組合の一つの大きな使命であると思います。  それからもう一つ先生から御質問がございました、それではこれからという問題でございます。私たちにはおのずから、協同組織金融機関でございますから、したがって我々は信用協同組合というのはどのような形でお互いに連携を保ちながらやっていかなければならないかという協同の力、これが、例えば中央協会は政策団体であり、それから先ほど申し上げました補完機能を持っております全国信用協同組合連合会、この連合会におきましても、新規業務に対しましての対応、これは当然連合会の力をおかりしながら個々の信用組合に対しましての補完、こういうものを持っていかなければならない、そういうことが私たちの大きな役目であろうと存じます。  それから、先ほどもちょっと合併の話が出ておりましたが、確かに三業態ございますので、外国系と私たちは合併はできませんが、しかし業域だとかあるいは地域だとか、そういうことになりますと、総合的なサービス機能というものを提供する場合に当然適切な規模の追求というものが必要になってまいるわけでございます。そういたしますと、そこに業務提携だとか業務協力だとかあるいはまた合併だとか、こういうものがあるわけでございます。ただ、先ほども先生にお願い申し上げましたように、合併の手続が非常に難しいのです。なぜならば、中小企業等協同組合法に基づきまして、総代会ではない、信用金庫の場合は総代会ですが、総代会ではない総会、この総会においてとにかく手続をとっていかなければならない。その場合に、平均の組合員数が一万人、多いところで十万人を超えていると思うのです。そのときには物理的にも経済的にも大変な負担がかかる、そういう面がございますので、今回はおのずから、私どもの総会に出てまいる方たちというのは総代さんがほとんどでございますのでその総代さんにという、そういう考え方を御披露申し上げたわけでございます。  それから最後に不祥事の問題でございますが、大変これは業界にとりましても、もう改めておわびを申し上げたいと存じます。もう信用組合業界におきましても、公共性の強い信用組合、社会的なそういう責務に置かれております信用組合、これが不祥事件を未然防止できなかったという反省、これは重々考えてございますし、また業務運営全般にわたりまして見直しを行い、再発防止のためにいろいろな措置を考えでございます。  例えば業務の刷新に関する検討部会というものを設置いたしまして、そしてその部会におきましても全般的な問題点を洗い出し、これに基づきまして会員信用組合が徹底的にその見直しの要請を行いながら各自が業務運営体制の改善に努めている、そういうところでございます。  それからもう一つ、中央協会には監査機構というのがございます。これがことしの四月から連合会から委託を受けまして、私どもの今度は政策団体といたしまして会員三百九十八の信用組合に対して定期的にとにかくこれを、お互いに情報を交換しながら話し合うという、場合によっては各都道府県の検査体制に対しましても一応、生意気ではございますけれども、補完させていただくような面が将来起こってくるかもわからない、そういう希望を持ちながら、信用組合はだれのための信用組合であるかという基本に立って物を考えていきながらやっていきたいと思いますので、御指導をどうぞよろしくお願い申し上げる次第でございます。  以上です。
  26. 前田正

    ○前田(正)委員 ちょうど時間となりましたので、これで質疑を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  27. 太田誠一

    太田委員長 小野信一君。
  28. 小野信一

    ○小野委員 おはようございます。お忙しいところ私ども審議のために貴重な意見を御拝聴させていただきましたことに、心からの御礼を申し上げます。  最初に、館先生にお尋ねをいたします。  御存じのように、金融制度調査会も証券取引審議会も将来の金融構造の構築を目的として長時間審議をしたのだろうと私は思います。当然だとも考えます。しかし、その答申、そして今回の改正案現状改革にとどまったのではないか、こういう批判がありますけれども審議会の審議の内容、答申案、そして今回の改正案、三者を見た場合にどういう御見解、御感想をお持ちでしょうか、お聞かせ願いたいと思います。
  29. 館龍一郎

    館参考人 それではお答え申し上げます。  大変難しい、大きな問題でございます。できるだけ将来を見通して、いろいろな問題にたえ得るシステムをつくりたいというのが私どもの念願でございまして、現在の段階で提出しております改革案がそれだけで十分なものであるというようには、私自身決して考えておるわけではございません。ただ、子会社方式による参入という形を採用したということは、子会社という形ではいろいろの業態がそれぞれの業務の中に参入してくることができるという意味では、ほかのシステムに比べると相当弾力的な構造になっているというように考えているわけでございます。  具体的に例を挙げるのは非常に不適当とも思いますが、仮に、全くの仮の問題といたしまして、保険業が銀行業務参入したいとか証券業務参入したいとか、そういうようなことがあった場合に、これはやはりこの子会社方式を使って参入してくることができる、そういうような意味で、システム全体としては開かれたシステムであり、弾力的なシステムになっているのではないだろうかというように、私自身はこの法案について考える次第でございます。
  30. 小野信一

    ○小野委員 もう一つお尋ねいたします。  金融自由化の先進国であるアメリカでは、自由化によって金融コストが大変高くなって、経営危機が見舞っております。同時に、銀行の国際競争力が大変低下をいたしております。その内容を見ますと、銀行証券会社の垣根を低くして、一方ではファイアウォールを厚くするという政策でございました。ところが、ヨーロッパの金融界は、本年末のECの統合を目前にいたしまして、ECの銀行基本法に当たる銀行指令案によってユニバーサルバンクが展望されております。私は、世界金融自由化はこの二つの方向ではないだろうかと思います。先生から見て、この二つの方向の長所と短所はどんなものなのか、我が国の方向はどちらの方向を目指すべきなのか、御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  31. 館龍一郎

    館参考人 それでは、お答えいたします。  これも非常に難しい問題でございます。ユニバーサルバンクという方式、先ほど申しましたように一つ方式というように考えるわけでございますが、ユニバーサルバンクをとっておりますヨーロッパの国をとって考えてみますと、そこではどちらかといいますと証券市場の活動というのは余り活発ではないという面が見られるわけでございます。日本であるとかアメリカは、ヨーロッパ諸国と違いまして非常に証券市場が大きいわけでございます。したがいまして、ドイツを代表とするようなヨーロッパ方式ユニバーサルバンク方式日本なりアメリカに適応したシステムであるかどうかということを考えますと、そこにはやはり問題があるのではないかというように考えておりまして、やはり証券市場を含めて、全体としての金融の一体化ということを考えていく場合には、それよりはフレキシブルな現にアメリカがとろうとしている方式、あるいは日本がとろうとしている方式の方が方式としては望ましい方式ではないかというように私自身は考えておりまして、恐らぐヨーロッパ諸国も、証券市場が発達してくるに伴ってその方向を採用するということになるのではないか。イギリスが、現にユニバーサルバンクと言いながら、実際上は子会社方式を中に導入して、子会社を通じてユニバーサルバンクを行っている例が多いということからも、その方が妥当ではないかというように考えておる次第でございます。
  32. 小野信一

    ○小野委員 銀行協会の若井会長にお尋ねをいたします。  今回の制度改正について、その必要性、内容についてどういう認識をお持ちになりましたか。そして、今後心配なところあるいは論争になるだろうと予想されるところはいかがなものでしょうか、お聞かせ願いたいと思います。
  33. 若井恒雄

    若井参考人 ただいまの御質問にお答えを申し上げます。  先ほど報告で申し上げましたように、今回の制度改革は従来の縦割り金融制度を抜本的に見直すものでありまして、いわば二十一世紀を展望した新しい金融制度づくりの重要な第一歩であるというふうに私ども認識しているわけでございます。この法律改正を契機といたしまして、業態間の垣根が低くなり、金融機関が相互に他の業態業務に幅広く参入していくことができるようになりますれば、競争の促進により高度化、多様化する利用者ニーズにこたえ、利用者の利便の向上に資するとともに、国際的にもある程度整合性のとれた金融制度に近づく、そういうふうに期待しているわけでございます。  法案の大枠につきましては、私どもといたしまして大いに歓迎をしているところでございます。すなわち、相互参入業態別子会社方式を原則としながら本体での相互乗り入れも進める、そういう点、それから子会社の業務範囲は法制上は各業法で定められたすべての業務とされている点、また、経営選択の幅を広げるために異業態間の合併、転換を想定した制度的な枠組みを整備する、そういう点、これらの法案基本的な部分は極めて妥当なものと考えておりますので、ぜひとも今国会で法案成立することを望んでいる次第でございます。  今後の争点という点につきましては、新法がいよいよ施行されるということになりました場合に、業態別の子会社と親会社本体業務範囲を当初段階でどの程度制約するのか、また、子会社と親会社との間のファイアウオールをどの程度厳しく設定するのかといった点が争点になるものと予想いたしております。私どもといたしましては、当初からできるだけ自由な制度にしていただきたいというふうに希望いたしております。国民経済的見地からも、新規相互参入の実効を上げることが何としても重要であるというふうに考えているからでございます。  以上でございます。
  34. 小野信一

    ○小野委員 もう一つ、皆さんが証券子会社をお持ちになったときに、最低必要資金量といいますか、これはいかほどと予想いたしておりますか。同時に、業務範囲につきましてはどういうお考えをお持ちですか。
  35. 若井恒雄

    若井参考人 ただいまの御質問についてお答えを申し上げます。  証券子会社の最低資本金は、先般の免許基準の見直しによりまして総合証券の場合には百億円以上というふうになっております。引受業務を行う以上、この最低資本金の基準がメルクマールになるというふうに考えております。銀行証券子会社を設立する場合に、資本金の額をしからば百億円以上ということでどう決めるかということでございますけれども、昨今の経営環境は非常に厳しい状態を考えますと、この百億円以上の資本金、そういうのでもその負担は率直に申し上げて大変きっいと言わざるを得ないわけでございます。新規参入によりまして競争を促進するという観点から考えますと、設立の負担が余り大きくなっては競争促進の実が上がらないのではないかというふうにやや懸念しているわけでございます。  次に、証券子会社業務範囲でございますけれども、既に法案では証券業務の柱でございます、また、かつリスクも小さいというふうに私ども考えております株式ブローキング業務が禁止されております。実際の認可の段階でさらに制約が加わるかもしれないということも伺っているわけでございます。そもそも証券会社であるにもかかわらず、この証券の子会社が証券業務を自由に行えないというのは、私どもからすると、ちょっと理解ができないというふうに考えておるわけでございます。また、新規参入による競争促進という観点からも、新規参入者既存のビッグプレーヤーに大きなハンディキャップをっけられるということでは、なかなか競争が難しいのではないかというふうに考えるわけでございます。  最後に、証券子会社の必要資金という御質問でございますけれども、今申し上げましたように、その業務範囲がどの程度になるのか、また会社の規模をどの程度にするかということによっていろいろと異なってまいりますので、それがはっきりしてない現状では、正直のところは予想がなかなかっかないわけでございます。一般に新しく会社を設立する場合には、当然どのような業務をどの程度の規模で行い、その結果どのくらいの資金が必要になるのか、またそれに対してどの程度の収益が見込めるのかということがわかりませんと見積もりができないわけでございまして、私ども、正直なところ困っているわけでございます。そういう意味で、法案早期成立業務範囲などの大枠ができるだけ早く決まりますことを望んでいる、こういうことでございます。
  36. 小野信一

    ○小野委員 治山信用組合中央協会会長にお尋ねいたします。  外国為替、国債等の公共債の窓販等業務に関する協会の考え方はいかがなものでしょうか。
  37. 治山孟

    治山参考人 お答えを申し上げたいと存じます。  私ども取引先の中小零細企業者、この中には海外との貿易を営む者が非常に多く存在してございまして、それらの顧客からの送金為替や外貨預金取引を望む声が多く聞かれているわけでございます。このような実態を踏まえまして、私ども業界にとりましては信用金庫並みの外為業務の取り扱いが可能となる制度改正を、各方面に長年にわたりましてお願いを申し上げたところでございます。  また、国債等の窓販でございますが、私ども業界では、既に長期信用銀行三行の代理業務といたしましてかなりの組合が取り扱っているところでございますが、顧客のニーズに円滑かつ十分にこたえていくためにも、みずから取り扱うことがどうしても必要と考えでございます。本業務につきまして、信用金庫並みのこれまたお取り扱いをぜひお認めいただければ幸いかと存ずるわけでございます。これらの業務につきましては、収益環境が厳しくなりつつある現況からいたしまして、私どもにとりましては手数料収入増に寄与するものと考えておりまして、経営基盤の強化等を図っていくためにも必要と考えておりますので、何分とも御理解のほどをよろしくお願いを申し上げます。
  38. 小野信一

    ○小野委員 もう一度お尋ねしますけれども、先ほど意見陳述の中で合併手続の規制緩和の意見がありましたけれども、具体的に業界ではどういうことを望んでおるのでしょうか。
  39. 治山孟

    治山参考人 先ほど少しばかり御説明を申し上げましたように、中小企業等協同組合法で、この合併の決議に関しましては総会事項になっておりまして、これを総代会でも対応できるようにお願い申し上げているわけでございます。私ども信用組合業界では、金融自由化に伴いまして的確に対応するためには、先ほどもちょっとお話し申し上げましたように、どうしても規模のメリットと申しますか、そういう確保が必要であるという考え方に立ちましての合併の進め方、これを中央協会といたしまして推進している最中でもございます。  ただ、その場合に、手続上の問題でございますが、現行法では総会事項になっておるがために、先ほど申し上げました平均一万人を超える組合員、そういたしますと、最高でも十万人を超えてございますから、決議を求める必要性が、物理的に経済的な面で大変なコストを負担するとともに、渉外担当あるいは内部職員まで動員することにより、結果的に組合員等に対しまして、一時的ではございますが金融サービスの低下という現況を来すわけでございます。今後とも、より良質な金融サービスを提供するための合併が続くことが予想されてございますので、私どもといたしましては、その円滑な推進のためにも、ぜひ早急に信用金庫並みの手続で対応できるよう規制の緩和をお願い申し上げる次第でございます。よろしくお願いいたします。
  40. 小野信一

    ○小野委員 私の質問は終わらせていただきます。早川委員とかわります。
  41. 太田誠一

    太田委員長 早川勝君。
  42. 早川勝

    ○早川委員 貴重な御意見、大変ありがとうございました。私の方からも、若干お尋ねさせていただきたいと思っております。  最初に、館先生と若井会長、お二人の方から御意見をいただきたいのですが、先ほど、今回の金融制度改正というのは、昭和二十七年以来の専門制とそれを軸にした今日の我が国の歴史を大転換するというお話がございました。そういったことを考えてみますと、同時にいつも議論になるものに公的金融分野の問題がございますね。端的に言いますと、郵便貯金の問題がございます。マネーサプライのサイドからどういった形でこの郵便貯金をコントロールするのかとか、金利の問題、自由化絡みでイコールフッティングの問題、いろいろな形で議論になります。また、かつては、郵便貯金は負債を非常に抱えているのではないかといった形で銀行の方から批判が出されたことも記憶いたしております。  そういったことを考えてみますと、全体的な金融制度を考えていく場合に、郵便貯金の問題をどのように理解され、位置づけていくのが妥当なのか、ぜひお二方からお聞かせいただきたいと思っております。
  43. 館龍一郎

    館参考人 それでは、ただいまの御質問にお答えいたします。  先生御承知のように、公的金融分野は、日本金融の中で非常に大きなウエートを占めるようになってきておりますから、金融の問題を考える場合に、公的金融の問題を除外して考えていくことはできないのが現状であると思います。  ところで、今回取り上げておりますのは、主として民間金融の問題でございます。民間金融分野においてできるだけ広い範囲での競争を促進する、こういう基本的な考え方でございますが、民間金融分野競争が促進され、それに伴って効率的な経営が行われるようになってまいりますと、その裏側といたしましては、非効率な分野から民間金融機関は撤退する可能性がどうしてもそれだけ大きくなってくることが考えられるわけでございます。したがいまして、そういう民間のベースでは採算が合わないという分野については公的金融の役割というのはある面では逆に増大する面があるというように私自身は考えているわけでございます。  そこで、公的金融の問題になってまいりますが、公的金融と言うときに、資金調達の面と支出の面と二つがございます。  支出の面につきましては、今申し上げましたように、公的金融の役割は特に効率化が図られていくと目が届かなくなってしまうおそれのある分野については一層の充実を図っていかなければならない。もちろん、これは私の個人的な見解でございますが、既に不必要になった公的金融分野も全くないわけではございませんし、そういうものは整理しなければならないと思いますが、全体としては、公的金融の役割は増加する面もあるだろうと考えております。  資金調達の面については、これはまさに民間金融機関と直ちに競合する面が非常に大きいと思います。したがいまして、民間金融と競合する資金調達面については、民間金融機関が採算上決して提供することができないような商品を公的金融が民間金融の補完の役割を超えて提供し、資金を集めていくというところには一つの問題があり、その公的金融機関の提供する商品商品性については、今後十分に検討し、担当の郵政なり大蔵との間で十分な協議を続けていく必要がある。そうでなければ金融が全体としてうまくは機能しなくなるおそれがあるというように私自身は考えております。
  44. 若井恒雄

    若井参考人 今館先生がお答えになられました点が基本的なことでございまして、私どもといたしましても、郵便貯金を含めました政府系の金融機関というのは、とにかく民業の補完に徹することが重要であると考えておるわけでございます。そういう意味では、民間金融機関ではリスクの点あるいは採算等に徴して十分行き届いたサービスを提供することが困難な分野あるいは対象をカバーすることが政府系金融機関に課せられた役割だと考えております。  特に郵便貯金につきましては、民間とイコールフッティングじゃない面が多々ございます。例えば税の問題でございまして、法人税あるいは事業税がかからないとか、民間であれば預金に保険料の負担があるけれども政府信用を背景としているためにそういうことが要らないとか、いろいろの面で民間とイコールフッティングではございません。特に商品性につきましては、御存じのとおり定額郵貯という商品がございまして、これは十年の固定金利、しかも他方では流動性があるということで、民間ではこれと同じものをつくることは到底困難である。なぜ郵貯がそういうことができるのかと申しますと、郵貯の説明によれば、ある時期は定額郵貯が赤字になったとしても、十年間を通算してみれば十分ペイする商品であるのだ、こういうことでございますけれども、仮にそうだといたしましても、民間の場合は、ある時期赤字になってしまいますと当然信用不安が起こるということになってこういう商品ができないわけでございます。ところが、郵貯の場合には、政府の信用が背景にございますので、郵貯が赤字であるということになっても一般の方は郵便貯金をやめるということにはならない。こういう点で非常な違いがあるわけでございます。今後金融自由化してまいりまして、特に金利自由化が進みます場合に、民間の金利と全然別に郵便貯金の金利が決められるということではぐあいが悪いわけでございまして、これについては、大蔵省、郵政省の間でいろいろと調整がなされているわけでございますけれども、私どもといたしましては、郵貯のいろいろな金利があくまで民間金利に追随するということであってほしいと思っているわけでございます。
  45. 早川勝

    ○早川委員 館先生にお伺いいたします。  先ほどの小野委員の質問にお答えされた中で、いわゆるユニバーサルバンキングですね、西ドイツと日本の例を比較されて、証券業の発達あるいは利用形態が全然違うということで、どちらかというと我が国とアメリカの方が望ましいという意見を述べられましたが、今議論されておりますし、またこれからも具体化されていく中で大きな問題になるのは、先ほど先生も触れられましたけれども、ファイアウォールの問題だと思うのですね。アメリカは御存じのように持ち株会社方式をやられておるわけですが、それに対して今度子会社方式という形を我が国はとろうとしているわけです。持ち株会社におけるファイアウォールというのは、横並びにそれぞれの金融機関がありまして、そこにいかに縦でいわばファイアウォールを立てるかということになると思うのですが、いわゆる親子、子会社方式といいますと、系列とすれば縦系列になりまして、そこにファイアウォールを横に引くということになると思うのですけれども、どうも持ち株会社の方は立てやすいんじゃないかなと思うわけですね。ところが、親子の、系列の関係でそれを横に切ったファイアウォールというのはなかなか難しいんじゃないかなという感じを持つわけですけれども、この点についてはいかがお考えですか。
  46. 館龍一郎

    館参考人 それではお答え申し上げます。  これも大変難しい問題を含んでおると考えております。持ち株会社方式と現在提案されております子会社方式とを比較した場合に、持ち株会社方式があるメリットを持っておるということは否定できないところでございます。ただ、日本の場合は、先生御承知のように、独禁法の上で持ち株会社方式が禁止されておるということがございます。もちろん、かつて持ち株会社が禁止された当時と現在との間には状況の違いがありますから、したがって、永久に持ち株会社方式を禁止していくのが適当であるかどうかという点については別途検討に値する点がないとは思いません。しかし、この金融制度改革とのかかわりにおいて、日本の経済政策の基本法である独禁法そのものをここで問題にしてくるのは適当であるかどうか、そういう非常に大きな問題がございます。しかも、一方で先ほども申しましたように、いろいろな意味金融制度改革がどうしても避けて通れない重要な問題になっているということを考えました場合には、子会社方式であってもそこにファイアウォールとか競争とかあるいはアームズ・レングス・ルールであるとか、そういうものを入れてくることによって弊害を取り除いていくという方式をとることが必要なのではないかというように考え、そしてまた、そういう方式でも、これも先生御承知のことと思いますが、系列企業の系列内取引の比率を見ましても、ここへ来て独禁法の適用が強化されているということもあって、系列内取引の比率は次第に低下してきておる状況が見られるわけでございます。したがって、私といたしましては、一方でディスクロージャーを十分に行いながら競争を促進していくという政策をとっていけば、それなりに十分な役割を果たしていくのではないかというように考えている次第でございます。
  47. 早川勝

    ○早川委員 続けて館先生にお伺いして恐縮なんですけれども、実は徳田元銀行局長が書かれたものをちょっと読んでおりますと、昭和五十六年のときの銀行改正に絡んで館先生がいわば感慨を述べられたという形で紹介されているのです。それはディスクロージャーの問題が骨抜きにされた、結局こういった修正をすることによって銀行は後年大きなツケを払うことになるだろうと、いわば先生は警告されたということを徳田元銀行局長が書いておられて拝見したのですけれども、もしあのときにディスクロージャーを完全にやっていれば、ある意味では今回のようなバブルの問題だとかノンバンクを介してのああいった不祥事は避けられたかもしれない、あるいはそれに対して国民の監視はもっと行き届いたかもしれない。結果論ですけれども、そんな感慨を持つわけですけれども、もう十年余を超えてしまったわけですが、改めて、その警告は今回の改革に絡んで十分生かされなければいけないわけですし、銀行は三月期を含めて来年からと言われておりますけれども、こういった動きを先生はどんな感じで見られておりますか、伺いたいと思います。
  48. 館龍一郎

    館参考人 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、私は、今度の不祥事とのかかわりで、一つ個人責任経営責任と、それから競争が十分に行われていなかったという点と、ディスクロージャー、これだけを挙げたわけでございます。前回の銀行改正の場合に、私は全体としては競争促進ということを基本として考えておりましたけれども、その点については今回ほど強く競争の重要性を強調はいたしませんでした。広い範囲での競争の重要性は強調いたしませんでしたが、しかし、ディスクロージャーにつきましては、ディスクロージャーがPRになっては困る、やはりディスクロージャーというものはPRではなくて本当のディスクロージャーでなければならないというように考えておりましたので、その点から当時の銀行法の改正についてやや残念に思っだということは事実でございます。現在でも私はディスクロージャーの重要性、競争とディスクロージャーの二つが完備されて初めて金融秩序が外からも透明であり、かつ公平なシステムとして機能していくことになるのではないか、こういうように考えております。したがいまして、今後、この法案成立した場合には、ディスクロージャーの問題についてはさらに検討を加えて、その範囲なり細部の点について詰めた議論を行っていく必要があるというように考えております。  もう一点だけ申し添えさせていただきますと、ディスクロージャーについては、例えばディスクロージャーが行われても、例えば私自身銀行のディスクロージャーの文書をいつも見ているかといえば、そういう時間はないわけでございますし、預金者の大部分はそれを見ないわけだと思うのですね。しかし、ディスクローズされていることによって、いつでも見られるという可能性ができるわけでございます。そうしますと、銀行経営者はそのことを踏まえて経営を行っていかなければならない、みずから規律を遵守していかなければならないという役割を果たすという意味で、ディスクロージャーは極めて重要であるというように考えておるということを申し添えておきたい。
  49. 早川勝

    ○早川委員 若井会長さんに二点お伺いいたします。  先ほどの陳述で冒頭に不祥事の問題が言及されましたけれども、第一点は、不祥事の原因あるいは今後どんなことを考えられているのか、そしてまた、とりわけノンバンク問題、これがいわば中間的な役割、ある意味でトンネルのような役割をしたのじゃないかなという感じもいたします。そういったことを考えまして、どういった反省と今後対策を考えられているのか、これが第一点でございます。  それから、それに関連しまして、今、館先生も触れられたディスクロージャーの問題ですね。そういった反省を踏まえまして、残念ながら延びたわけですけれども、今年度末ですね、来年になりますけれども、そのときのディスクロージャーはどの範囲のことまで考えられてどういった姿勢で臨まれようとされているのか、お伺いいたしたいと思います。
  50. 若井恒雄

    若井参考人 ただいまの先生の御質問にお答え申し上げます。まず、金融不祥事対応でございますけれども、信用が金融機関の存立基盤であって、それを維持することが金融機関に課せられた使命であるということは申し上げるまでもないわけでございます。にもかかわりませず、信用を損ねるような不祥事が相次ぎましたことは、まことに遺憾であるというふうに考えております。長く続いた金融緩和のもとで、業容拡大と収益追求に走る余り内部管理がおろそかになってしまった面があったことは否めないというふうに考えております。銀行界全体として非常に反省しているところでございます。  この再発防止のために、まず銀行界がどのような対応をしているかということでございますが、昨年の十一月に七項目、十三の対策から成ります。務運営体制のあり方等に対する改善措置というのを取りまとめまして、全銀協といたしまして各金融機関に周知徹底をいたしました。特に、審査の項目では、不動産融資につきましての心構えあるいは具体的手法をまとめました「不動産金融マニュアル」をこの三月に完成いたしまして、各銀行に配付したところでございます。また、各銀行におきましても審査体制を強化する方向で本部組織を改正するところが多くなっております。一般に、銀行の審査部門はかつては独立していたのが普通でございましたが、八〇年代に業務推進部門に取り込まれるところが多くなりまして、結果として審査よりも業務推進が優先された、そういう面があったかと思います。その反省に立って、多くの銀行がここへ来て再び審査部門を独立させ、いわば原点に立ち返ってリスク管理の強化を図っているところでございます。  また、第二の御質問の、ノンバンク問題につきまして銀行はどう考えているのかという点でございますが、ノンバンクはそもそもは独立した経営体でございまして、融資を実行するかどうかはあくまでノンバンク自身経営判断によるものであるわけであります。したがいまして、問題が生じた場合には、まずもって個々のノンバンク自身経営責任が問われなくてはならないというふうに考えております。しかしながら、ノンバンクの資金調達の大宗は私ども金融機関からの借り入れであるということを考えますと、そもそもいわゆるバブルの時期にノンバンクに対します銀行の与信供与が十分な節度を持ったものであったかと申しますと、私ども銀行といたしまして反省すべき点があったのではないかというふうに考えております。ノンバンクの経営がおかしくなりますと、そのツケは結局は債権者であります金融機関に回ってくるということになりますし、特にノンバンクの大手どころが経営破綻を来しますと貸出金融機関経営問題に直接つながりかねない、ひいては金融システムの安定が揺らぐおそれが出てくるというふうに考えております。そういう意味で、このノンバンクの問題につきましても、我々としては信用秩序の混乱を招くことのないようにいろいちと検討をしてまいらねばならないというふうに考えております。  それから最後に、不良資産のディスクロージャーの問題についてお答えを申し上げたいと存じます。  ディスクロージャーがそもそもどういう意義で行われているかということにつきましては、先ほど館先生のお話のとおりでございまして、私どもただいま御質問ございました不良債権情報について金融機関はどう考えているのかということについて絞ってお答え申し上げますと、全銀協といたしましては、この一月から全銀協の経理専門委員会において鋭意検討を進めてまいりまして、基本的な方針としては、平成五年の三月期から開示するということに合意を見たわけでございます。現在、この方針に基づきましていろいろとこれから検討を進めていくべく、具体的に引き続き経理専門委員会で不良債権の定義や担保評価の方法など実務的な詰めを行いますとともに、開示内容の細目につきましては、金融制度調査会のディスクロージャー作業部会の検討結果も踏まえまして決定をいたしたいというふうに考えております。  私どもといたしましては、銀行のディスクロージャーについては、すべての項目を全行が画一的に開示するよりも、最低限必要な基準を定めまして各行の自主的な判断と工夫により個性を出すということがよろしいのではないかというふうに考えておりますが、ただ、不良債権情報の開示につきましては、情報を受ける側におきまして誤解されるということになりますと、個々の信用に非常に影響を及ぼすことになりますので、具体的な開示内容や基準につきましてはやはり統一することが必要であるというふうに考えておりまして、来年の三月までそれを十分に詰めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  51. 早川勝

    ○早川委員 船後理事長に二点お伺いいたしますので、答弁いただきたいと思っております。  第一点は、労金というのは各県一庫ですから、四十七にそれぞれございますが、伺いますと、それぞれ単位金庫の経営内容等でいろいろ差があるということも言われております。そういった中で今回の制度改正が行われようとしているわけでございます。労金として業務拡大等々好ましい結果が生まれるわけですけれども、全体として見た場合、これからのこの制度改革後のいわば新時代と言っていいかとも思うのですが、そういった中での展望をどのように持たれているのかというのが第一点でございます。  それから第二点は、先ほど述べられておりましたけれども労働金庫としての理念に立脚するのだ、地域性なり協同組織としての性格は堅持していくんだということ宣言われたのですが、可能性として合併もできるわけですね。だけれども、それはやらないんだということを述べられたわけでございますが、館先生のお話を伺っておりますと、二十七年から専門制と分業システムでやってきたのだけれども、一番望ましいのは何でもやれる機関が望ましいのだ、たしか、そういうことを言われたと記憶しているのです。そういったことを考えてみますと、労金の問題においては、確かにスタートはそうだ、だけれども、四十七金庫はそれぞれ問題を抱えている、もうカバーし切れないかもしれない、経営の悪いところは依然として悪いかもしれない、そういったことを展望しますと、やがて合併の問題等々、そういうふうに進めば進むほど本来のスタートの理念から変わるんじゃないか、変わらざるを得ないんじゃないかなと思いますけれども、この点とう考えられているか、伺いたいと思います。この二点です。
  52. 船後正道

    ○船後参考人 お答え申し上げます。  第一の御質問は、今回の制度改革を契機として、労金は新時代に向けてどんな展望を持っておるか、こういうお話でございます。大変幅広い質問で、お答えするのに難しい質問でございますが、まず、今後も金融自由化が進展いたしまして、私ども経営環境、事業環境が一段と厳しくなっていくだろうということは十分認識しているところでございまして、そのためには特段の努力が今後も必要でございます。この点につきまして、まずもって申し上げておきたいことは、先生も御承知のとおり、労働金庫は四十その労金と協会、連合会で構成されておる業態でございまして、同一の経営理念に基づいて金融事業を展開しておるわけでございます。こういったことから、今後ますます。界内部としての協同、連帯を強めて、総合力の発揮に努めてまいりたい、かように考えております。二、三、具体的に申し上げますと、今回の制度改正で予定されております。務範囲拡大や新規業務への参入などにつきましては、会員勤労者ニーズを踏まえながら、一方、経営上の観点から、経営能力やノウハウの蓄積などに対応して着実に実施してまいりたいと考えております。  次に、労働金庫の今後のあり方に関して申し上げますと、勤労者ニーズにこたえ、勤労者から信頼される金融機関として発展してまいりたいと考えております。その点では、全国四十その労働金庫労働金庫制を堅持して、経営の主体性を確保してまいりたいと考えております。この点につきまして、今後も予想される厳しさを考えますと、経営健全性の確保のためには各金庫における自主努力は必要でございますが、自主努力とともに、業界内部における業務連携や合併に向けての適切な取り組みも必要でございます。そういった点は既に業界内部で確認しておるところでございます。なお、全国労金の大同団結、いわゆる全国労金の一本化につきましては、こういったことの進展を見ながら今後も引き続き追求してまいりたい、かように考えております。  次は、労金の合併、転換の問題につきましてどういうふうに考えておるのか、今後は客観情勢の推移とともに理念も変わっていくんじゃないかといったような御質問がと思いますが、その点につきましては、私どもは、今回の制度改正で、まず業務面におきましては、他の金融機関とのおくれというものは相当程度回復されるわけでございます。いわば同一土俵での競争が可能になってくる、かように理解いたしておるわけでございます。そうなれば、労金の専門性はどうしたかということになるわけでございますが、労働金庫勤労者を基盤として設立された相互扶助金融機関でございますから、その協同組織金融機関としての性格は守ってまいりたい、あくまでも堅持してまいる所存でございます。もちろん金融のことでございますから、万が一ということがございます。預金保険にいたしましても、あるいは合併転換法にいたしましても、そういう万が一のときに、やはり信用秩序維持とか預金者の保護といった観点からいろいろなセーフティーネットを張りめぐらしておられるわけでございますが、私どもといたしましては、繰り返し申しますけれども、そういったことを踏まえながらも、なおかつ労働金庫協会といたしましては、あくまでも労金制度の堅持ということで今後の展望を切り開いていきたい、かように考えておるところでございます。
  53. 早川勝

    ○早川委員 治山会長に、今労金にお尋ねした問題と基本的には同じ問題をお尋ねしたいと思います。  先ほど、合併というのは本来の機能を生かすための選択だ、こう言われたのですけれども、例えば都銀と信用組合が合併した場合果たしてそう言えるのかどうかということで、つまり合併、転換ということを推進すればするほど本来の機関がなくなっていくんじゃないかなと思うのですね。そういったことまで展望せざるを得ないんじゃないかなという危惧をするわけですけれども、その点について伺っておきたいと思います。
  54. 治山孟

    治山参考人 お答え申し上げたいと存じます。  報告の中にもお話し申し上げましたように、私ども地域信用組合、業域、職域、外国系、そういう業態がございますが、と同時に、もう一つ地域の中でも特に規模的な格差というものがございまして、例えば一方では一兆円近くの信用組合もあれば、あるいはまた何十億円ぐらいの信用組合もある、こういうようなこともございまして、おのずから私たち中央協会といたしましては、先ほども申し上げました総合的にサービス機能というものを提供し得る体質、こういうものをつくっていかなければならないとか、あるいはまた働いている職員の立場だとか、せっかくお取引をちょうだいした方たちに対してのサービスの機能の問題だとか、いろいろな点からいきました場合には、確かに規模的なメリットというものも見逃すわけにはいかない、こういう意見が非常に強うございますので、私たち、おのずから各委員会におきまして、当然、合併とは、業務提携とはということも一応検討材料にして現在進めている、そういう状態でもございます。したがって、その地区その地区においての、例えば東京が埼玉県と合併するわけにはいきませんから、行政のお立場でそういう一つの管轄になってございますから、私たちは、その地区のいわゆる同じ信用組合が、もしも業務提携によってお互いにメリットをもたらせるような問題が出てくるならば、当然そこに業務協力だとか提携だとか、こういうことを皆さん方考えていただきたい、そういう推進の仕方も考えておるわけでございます。  以上でございます。
  55. 早川勝

    ○早川委員 終わります。ありがとうございました。
  56. 太田誠一

    太田委員長 日笠勝之君。
  57. 日笠勝之

    ○日笠委員 参考人の皆様には、公私どもにお忙しいところ大変に御苦労さまでございます。公明党・国民会議の日笠勝之でございます。  概括的な質疑につきましてはもう同僚委員の方からも多々ございましたので、私は木を見て森を見ないような具体的な御質問になるかもしれませんが、いよいよこの金融制度改革法案も大詰めになっております。衆議院段階では大詰めでございまして、採決の日も近からんと思っておるわけでございますが、本音のところをぜひ今後の審議参考にさせていただくべくお聞かせ願いたいと思うわけでございます。  まず館先生に、長年の取りまとめの御労苦に対して心から敬意を表します。  それで、この金融制度調査会の答申を読みますと、一つには大蔵省の裁量にゆだねる部分が非常に多くて、大蔵省の権限の拡大であるとか焼け太りになるのではないかとも言われております。例えば証券子会社信託子会社を設立するにいたしましても、免許の審査基準などはまだ明確ではなくて、今一生懸命審議の中で詰めておるわけなんですね。私はもうそろそろこの審査基準なるもの、どういうふうな条件がそろえば子会社が設立てき、また本体でも業務ができる、こういうものが明確にないと参入される側はたまらないと思うのですね。  そこで、やはりこういう経済政策でございますので、免許審査基準であるとか、またいつになったらフルラインの業務ができるのか、当分の間はブローキングもだめであるとか、こういうふうなことになっておるわけですが、先生にいたしましては、こういうのが不透明である、また、いつになればフルラインで業務ができるのか、こういうようなことを両方あわせまして、先生の率直な御感想をまずお聞きしたいと思います。
  58. 館龍一郎

    館参考人 お答え申し上げます。  大変難しい問題で、私としてはお答えに苦慮するところがないわけではございません。問題が非常に大きいだけに、今度の制度改正に当たりましては、制度改正の場合に具体的な成案を持ってそれをもとに置いて、これで適当であるかどうかという形で審議を進めてくるという審議の進め方、特に前段階における調査会であるとか審議会での審議の進め方がしばしば行われるわけでございますが、問題が大きいために、今回の場合には外側から、むしろ理念の方から考えていって、それを実現するためにはどういう制度がいいであろうかという、そういう考え方で今度の制度改革を考えてまいりました。したがいまして、当初はもう非常に、どういう改革が行われるのか全くわからないといったような批判も行われ、そのために賛成なのか反対なのかも明確にしにくい、こういうような議論さえ行われたわけであります。それで、そういう状態でありましたけれども、しかし理念の方から詰めてくるという外国で普通に行われているような方式で今度の審議をやってまいりまして、現在のような形のところになってまいったわけでございます。  ところで、実際に現在の提出されているところでは、細部にわたる免許基準とかそういうようなことが具体的には出されていないではないかという御批判でございますが、それらの問題は、そのときどきの情勢に応じでできるだけ、最終的にはワルバンキングといいますか、それぞれの業態別のすべての業務ができるように進める方向を理念として掲げながら、一歩一歩現実は動かしていこうという考え方に立っているために、どうしてもそういう免許基準のようなところが最後になってしまってきているという問題ではないかと思います。それで私は、そういう具体的な問題を考えていく過程で、できるだけあらゆる業務ができるような方向に一歩でも近づいていくならば、それは将来の姿としては望ましいのではないかというように考えております。  しかし、そうは申しましても、ある部分についてはすぐには導入しないという規定を設けて、当分の間というようなややあいまいな言葉が入っているわけでございますが、これはやはり実際に運営してみないとどういう影響が生ずるかということについて確信を持ってお答えできないというと。ころから来ている問題なので、その点についてはひとつ御了承をいただけたら、こういうように考えております。
  59. 日笠勝之

    ○日笠委員 それでは、若井会長に具体的にお伺いをしたいのですが、諸規制、諸慣行の見直しか答申ではうたわれておるわけですね。私はこの前からこの委員会で、三局指導について大蔵大臣に後日質問のときに最終的な御答弁をもらうようにはなっておるのですが、こういうふうな三局指導であるとか、また三年超の定期ですね、こういうものもお聞きしますと、もう口頭での通達であるとか、三年超の定期についてもその銀行の体力といいましょうか健全性等を勘案しながらその都度認可をしていくとか、何か自由化に逆行したような、諸規制、諸慣行の見直しと言いつつも、この法案が通った後もまだまだそういうものが残滓が残るのではないかというような考えも持つわけですが、率直なところ、会長のお考えで三局指導については本音はどうなんでしょうか。
  60. 若井恒雄

    若井参考人 三局指導につきましては、私ども銀行界といたしまして十年以上にわたってこの撤廃というのを求めてきたわけでございます。いろいろと事情も御説明をいたしてまいりました。  それで、一番のそのときの問題点は、証券会社として独立して海外銀行の証券現法が経営を行っているのかいないのか、証券会社の方から見ると、独立していなくて親銀行の助けをかりてやっているのだ、こういうことを言われたわけでございます。当初におきましては、まさにまだよちよち歩きということでそういうこともあったかと思うわけでございますけれども、既に数年前からユーロ市場におきまして日本銀行の証券現法というのは、引受実績あるいは流通関係への関与におきましても、他の証券会社、専門の証券会社と比べてそれほど見劣りのしない業績を上げておるようになっておるわけでございます。そういうことを踏まえますと、やはり証券会社である以上は当然他の証券会社と同様にいろいろの業務について認めてもらうのが望ましい、こういうことになるわけでございまして、その点につきまして、私どもとしては一刻も早くこれは解除してもらいたいという考えであったわけでございます。  それで、先般、羽田大蔵大臣が、先生の御質問に関連してかと思いますけれども、もしこの金融改革法案が通るということになればやはりこういうものは見直して、当然銀行の証券現法であっても日本企業の主幹事になってしかるべきであろうというようなニュアンスのことをおっしゃったということを伺いまして、大変私どもとしてはありがたく、かつ、心強く思っている次第でございます。
  61. 日笠勝之

    ○日笠委員 それからもう一点、細かい問題になるのですが、若井会長に重ねてお伺いしますが、今、銀行親会社と証券子会社のいわゆるファイアウォールにつきましてこの委員会でいろいろ審議を深めておるわけなんですが、今現在かすかにわかりかけておることが、例えば親銀行から証券子会社へ休職出向なんかで派遣をしますね。休職出向ですから、親会社にはポストだけはあっても業務はいたしませんね。その場合は、例えば給与補てんはしちゃいけないとか、コンピューターの共同利用は、証券等監視委員会が現場のコンピューターのところへ行きまして、情報が自由にお互いが取り出せるか取り出せないか、どうなっているかというのを一々見るとか、それでまた、店舗も同じ店で入り口が同じではだめだとか、名称、名前も、まあ都市銀行さんで三菱銀行さんのは三銀とは言わないからちょっと言いにくいのですが、例えば住銀証券とか拓銀証券というのは銀と証が同じ名前でいかがなものかとか、それから職員のノーリターンですね、これも、証券局長は実に困った困ったと、一つの答弁で四回も困ったとおっしゃるぐらい、非常に明確になっていないわけなんです。そういう細かいファイアウォールをどうするかということを今一生懸命詰めておるわけですが、まだ定かにはなっておりません。こういうようなファイアウォールが非常に細かいところで、通達や政省令等々でさらにさらにこの法案が通った後決められますと、私ども審議をしておるかいかないわけでございますが、実際にこの参入する側ですね、これはもう、そんなにファイアウォールが高く高くあれば、参入意欲が阻害されるのではないか、この参入による適切な競争が働き、利用者利便が向上するという本来の理念が阻害されるんじゃないかという声もありますが、そういうファイアウォールにつきまして会長はどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。
  62. 若井恒雄

    若井参考人 ただいまの御質問につきましてお答えを申し上げさせていただきます。  いろいろとファイアウォールにつきまして、私どもとしてはまだ不明確と申しますか、骨格がよくわからないという点で、銀行証券子会社をつくる場合に非常に苦慮しているわけでございます。  今先生がお挙げになりました点、例えば職員の出向禁止という点につきまして私ども銀行から見ますと、銀行に入った者に、今度は証券の子会社ができるから出向してくれというふうには言えますけれども銀行をやめて行ってくれということになりますと、当然のことで、退職金の問題であるとか年金の問題であるとかいろいろな問題が起こってくるわけでございますし、第一に、組合との関係で非常に問題が起こってくるわけでございます。人によっては、そもそも人権問題だというようなことまで言うということもあるわけでございますけれども、ここら辺が、その出向ではだめだということになりますと、やはりその証券の子会社をつくるのを根本的に見直さないといけないということになってくる懸念があるわけでございます。  ノーリターンルールも同じことでございます。また、建物の共有の問題など、確かに、お客様が誤解をされる、入り口は同じでもって誤解をされるというようなことがあってはいけないというふうには私どもも考えておりますけれども、誤解をする懸念がない程度であればよろしいのではないか。例えば入り口を分けるなどして誤解を招かないようにするというようなことで、店舗の共有というものは認めてもらいたい。そういうことによって、有限の資源を、国民経済的にも大事な資源を活用できるということになるのではないかな。また、コンピューターあるいはディーリングルームの施設なども同じようなことでございまして、これを有効活用するということがやはり大事ではないかなというふうに思うわけでございます。  もちろん、情報管理という点ではきちんとしなくちゃいけないわけでございまして、こういう点につきましては、インサイダー規制その他もあるわけでございますし、またコンピューターの場合には、プログラムを、そういうことでパスワードを特に制定することによりましてそういうものも防止するということも考えられるわけでございます。特に、外国におきましてはディーリングルームを分けているというような例はないようでございまして、私どもとしては、参入いたします子会社が本当に有効に働けるためには、こういう点についてぜひ前向きに考えていただきたいというふうに思うわけでございます。  ついでに、私ども、このファイアウォールでいろいろと懸念しております点をちょっとつけ加えさせていただきますと、例えば、俗にメーンバンク規制ということをやるべきだというような御意見があるわけでございます。  ただ、おおよそ取引先と銀行との間で親しい関係になっておれば、ある程度その間に影響力というのは生ずることは当然でございまして、それをもって、だからメーンバンクの場合には証券の子会社はその企業の証券の引き受けをやってはいけないということになりますと、非常に我々としては困惑するわけでございます。本来、お客様のための制度改革ということからしますと、親しくお取引いただいているお客様に対しまして、証券子会社を通じて証券商品の供給ができるということは一番望ましいわけでございまして、これができないということになりますと、何のために証券子会社をつくったのかということにもなるわけでございます。  さらには、何か共同工作もぐあいが悪いというようなことを言われているようでございまして、そういうことになりますと、お客様が例えば、銀行銀行証券子会社、それぞれにいろいろ資金調達のことについて相談をしたい、一緒に来てくれ、こう言われましたときに、一緒に行ったらもうこれは共同工作だということになってしまうということになるわけでございまして、そういう点でもぜひ御配慮をお願いしたいというふうに思うわけでございます。  いずれにいたしましても、このファイアウォールは、私どもから見まして、既に法律面で基本的な手当てができておりますので、それを基準といたしまして、もしさらにその上につけ加える必要があるとすれば、あくまで、不公正な行為を防ぎ、お客様の利益を守るために必要最小限度のものにとどめていただきたいというのが私どものお願いでございます。  以上でございます。
  63. 日笠勝之

    ○日笠委員 まあ本来なれば、ここに日本証券業協会の会長にも来ていただいて、今の会長のお話に対する御感想を聞かなければいけないのですが、これは昼からでございますので、次へ進めさせていただきます。  船後理事長、それから治山会長にそれぞれ一点だけお伺いいたしますが、いわゆる本体信託業務もできるわけなんですが、その本体での信託業務も、「公益信託、土地信託等」ということで、この「等」という字がどういう意味か、あと何が入るかわからないのですけれども、問題は、この公益信託、土地信託だけで果たして信託業務参入をしていくということができるのかどうか。というのは、いわゆるメリットがあるのかどうか、コスト的に合うのかどうかという、これが一点ですね。  それからもう一つは、それ以外の信託業務をやるとした場合の人材育成ですね。我々が聞いている範囲では、非常に信託というのは長年のノウハウが要る、いわゆる人の育成が大切である、こう聞いておりますが、労働金庫、信用組合のお二人の責任者の方に、この本体でもしやるとする信託業務は、公益、土地信託以外にもどういうものを望んでおられるか、またその人材育成ですね、人の問題ではどのような手当てをされておられるのか、それぞれお聞きしたいと思います。
  64. 船後正道

    ○船後参考人 証券・信託業務でどういう範囲を考えておるのかというお尋ねでございますが、先生ただいま御指摘のように、信託業務にいたしましても証券業務にいたしましても、その取り扱いは大変難しゅうございます。そこで、労働金庫といたしましては、当面は代理業務や提携業務で顧客ニーズにこたえてまいりたいと考えております。そして体制整備とノウハウの蓄積に努めてまいりたいと考えております。しかし、顧客ニーズ多様化を踏まえまして、将来的には本体なり子会社なりで信託業務、証券業務を扱いたい。そういう場合には、こういう顧客のニーズに十分対応できますように、今から取り扱える範囲につきましてはできるだけ広く門戸を開いておいていただきたい、かように考えております。  信託につきまして、公益信託、土地信託以外にどんなものかというお尋ねでございますが、現段階におきましては具体的に申し上げかねるところでございます。
  65. 治山孟

    治山参考人 お答えを申し上げたいと存じます。  信託業務に関しましては、私どもかなりの組合におきまして現にお取引先の方々から相談を受けている、そういう現況でもございます。したがいまして、信用組合によりましては信託銀行との業務提携で積極的に取り組んでいただいて、そしてお取引先のニーズに間接的におこたえしているという、そういうことが相当認められているということでございます。したがって、人材等の問題につきましても、当然先進的な金融機関であります信託銀行さんのノウハウ、そういうものを私ども、大変失礼な言い方をいたしますれば御利用させていただきながら、各組合員の方々にサービスを提供させていただく、こういうことで現に進ませていただいているわけでございます。  また、本体あるいは子会社方式、このいずれにいたしましても、地域金融ニーズに適切にこたえる見地から、業務範囲につきましては幅広いものでお願いをしているわけでございますが、特に、具体的には、土地信託だとか公益信託だとか、あるいは遺言信託等が考えられているわけでございます。  以上でございます。
  66. 日笠勝之

    ○日笠委員 もう一度若井会長、最後に一問簡単にお伺いします。  実際全銀協の中ではなかなか御掌握されてないかと思いますが、三菱銀行さんと言うのは大変失礼かもしれませんが、証券子会社とか信託子会社に参入するとした場合のシミュレーションはもうお済みなのですか、それだけお聞きして終わりたいと思います。
  67. 若井恒雄

    若井参考人 ただいまの御質問にお答えを申し上げますと、一応あらましのシミュレーションというのは私どもとしてもいたしております。ただ、先ほど申し上げましたように、ファイアウォールその他いろいろ業務範囲、決まっておりません状態でございますので、なかなか精密なシミュレーションができないということで、あらましのところで今中断状態、こういうことが正直のところでございます。
  68. 日笠勝之

    ○日笠委員 終わります。ありがとうございました。
  69. 太田誠一

    太田委員長 正森成二君。
  70. 正森成二

    ○正森委員 まず最初に、私ども持ち時間が非常に少のうございますので、参考人の皆さんにはせっかくおいでいただきましたが、四人全部について伺えないかと思いますので、あらかじめお許しを願っておきたいと思います。  まず最初に、若井参考人に伺いたいと思います。  あなたの最初の意見陳述及びその後の質疑を聞いておりますと、私の率直な印象は非常に強気な御発言で、従来の制度に対する批判及び今度の制度改正を早く抑制を解いてほしいという、よく言えば積極的、もっと厳しく言えば攻撃的な発言だったと思います。  そこで、あなたの発言の中で、今度の改革というのは都銀はもちろん長信銀、信託、地銀、皆これを待ち望んでおるという意味の発言がございました。しかし、私がここに持ってまいりましたのは、九一年七月十五日の「金融財政事情」というのに載っておる文章ですけれども、これは信託界の、旧財閥系の信託の役員が一定のいわば危惧を述べて「いままでも、融資にせよ社債の受託にせよ、信託は都銀に泣かされ続けてきた。都銀が顧客によいサービスを提供した結果そうなったのならしかたがないが、その点は疑わしい。だから、都銀の信託への参入が、利用者利便につながるとはとうてい思えない」「同じグループ内に、二つの信託はいらない。グループとしては二重投資になるわけで、経済合理性に欠ける。それだけならまだしも、都銀が信託を吸収するような事態になれば、ただでさえ強い都銀がますます強大になってしまう。はたして、そうした状況が日本経済にとって好ましいことかどうか」こういうのが信託業界の意見として載っているのですね。ですから、証券会社に危惧の念があるのはもちろん、金融界でもすべてよしよしてはない面があるのじゃないですか。どう思われますか。
  71. 若井恒雄

    若井参考人 ただいまの先生の御質問に対してお答えを申し上げます。  たしか「金融財政事情」の「信託銀行」というところに出ている御意見ではないかと思うわけでございますけれども、私ども、一応公式の場でということになりますと、信託銀行さんそういうふうにはおっしゃらないわけでございまして、ここら辺は私どもどう判断してよろしいかというふうにちょっと苦慮するところでございます。  ただ、私ども信託銀行業務普通銀行業務の間に相互乗り入れをした方がいいというふうに申し上げておりますのは、私どもの業界のエゴというよりはお客様から見てそういうようなことになるのではないかな。ちょっと平たいことを申し上げますと、よく私ども三菱銀行ということで電話がかかってきまして、電話に出ますと、いや実はおたくで信託をしたいのだというようなことが間々あるわけでございます。要するに、お客様から見ればまさに三菱の中に、それぞれあるけれども信託普通銀行と違いがあるというふうには思っていない。何でもやってもらえるのじゃないか、現に信託銀行さんの方はどちらもやっておられるわけでございますから、普通銀行の方もやっているのじゃないか、こう思われるのではないかなと思うわけでございます。そういう意味で、私どもとしては、今回の金融制度改革というものはそういう意味で幅広く商品を取り扱えることによってお客様の利便を増すということが第一のねらいということでございまして、そういう枠組みはつくっていただきたい。  あとそれに、正直に言って、乗り出すかどうかというのは個々の銀行の判断である。グループ内に二つも必要があるかないかというのは、それぞれやはりグループのお客様あるいは外部のお客様が判断することではないかな。私どもとしては、もし外部のお客様があった方がいいと思えばやはりやるべきだと思いますし、そうでなければまた考えなければいかぬかな、そういうふうに思うわけでございます。
  72. 正森成二

    ○正森委員 館参考人に伺いたいと思います。  「エコノミスト」に参考人が論文を書いておられるのですが、一問一答のような形ですね。七月十五日の「エコノミスト」であります。その中で、ユニバーサルバンクじゃなしにユニバーサルバンキングである、銀行局の某課長の発案だとかいうようなことを言われて、それで、あなたもユニバーサルバンキングの考えに賛成だということを言っておられました。その中で「ユニバーサル・バンクが将来の望ましい姿であると考えておられる方もたくさんある。とくに都銀は、それがいちばん望ましいと考えています。しかし、私はユニバーサル・バンクには賛成ではありません。何故なら一部の銀行の力が強くなりすぎる。市場支配力の集中が強くなりすぎるので、それはとりません。」こうおっしゃっています。あなたのこの御意見に珍しくと申しますか、私も賛成であります。  事実、銀行というのはメーンバンクでいろいろ情報を持っておる、資金の提供者でもある。おまけに、事業会社に五%以上株式を持ったらいかぬという制限はありますが、全体としては日本で今一番株式を持っているのはまさに金融機関なんですね。証券業協会の調べでも四二%を超えております。そういうところが証券業協会に進出する、そしたら、一部大蔵省の幹部も危惧しましたように、自分のところがたくさん株を持っているわけですから、その株を売買するということで限りなくインサイダー取引に近づくとか、いろいろな危惧があるわけですね。ですからこういう点について、ここでお述べになった先生の御意見についてなお重複して承ることができればありがたいと思います。
  73. 館龍一郎

    館参考人 先ほどもここで申し上げましたように、私はユニバーサルバンクそのものには賛成でございません。基本的にはユニバーサルバンキングシステムに賛成しているわけでございます。  今問題として挙げられた点につきましては、ユニバーサルバンクと違ってユニバーサルバンキングであればその弊害が弱められるだろうというように考えるのが第一点でございます。さらにそれに加えて、ディスクロージャーが十分に行われていくということになれば、それによっても弊害は除去されますし、それでなお弊害が残るというようなことであれば、アームズ・レングス・ルールとか、そういうような規制を同時に導入していくということが必要である、こういうように考えております。
  74. 正森成二

    ○正森委員 そのディスクロージャーについて伺いたいと思います。この間の五月二十日付の朝日新聞に、ディスクロージャーについて大蔵省が圧力をかけて後退したという記事が載っておりました。同様の記事は経済誌にも経緯が詳しく載っております。  ところで、館参考人は、「金融財政事情」の本年の二月三日号を拝見しますと、ディスクロージャーについて意見を書いておられまして、「自己責任による経営健全性の確保を基本としつつ、たとえばディスクロージャーの一層の推進が大変重要であることを強調している。」という御自分のなさったことについて意見を言われまして、それでこれを義務規定とすべきか、あるいは自主的なものにすべきかということに進んで、「個人的には、ボランタリーな形ではなく、できる限り義務づけていくほうが望ましいと考えているが、そうすると逆に開示内容が限定されてしまうといった弊害もあるかもしれない。それならボランタリーにして、どこかの銀行が主導で自主的に不良債権内容を含め、開示項目を積極的にふやすことで、業界全体が開示を広げていくことが当面望ましいかもしれない。」こう言っておられます。  これはまさに、若井さんが会長になられる前に、末松さんが去年からことしの初めにかけて実行しようとして銀行協会の事務方がいろいろ努力したにもかかわらず、大蔵省の圧力によってつぶされた方向であります。こういう点について、若井参考人館参考人はそれぞれどうお考えになるか、ごく簡単に御意見を承りたいと思います。
  75. 館龍一郎

    館参考人 それではお答えいたします。  私は、そこに書いたとおり、望ましいのは、義務規定によってやっていくのが望ましいというように考えております。ただそのときに、かえってそれで十分だという気持ちが起こってしまうなら、むしろボランタリーの方がいいかもしれない。それともう一つ、現時点はやや特殊な時点になっているので、将来の方向と現在の時点での判断が多少違っておるということを申し上げておきたいと思います。
  76. 若井恒雄

    若井参考人 ただいまの、末松会長のときにいろいろと銀行協会では案ができたんだけれども、当局の圧力と申しますか、そういうものによって開示がおくれたというような御指摘でございますけれども、私どもといたしましては、外部からの圧力で不良債権情報の開示がおくれたというふうには聞いていないわけでございます。私どもが承知しておりますのは、不良債権というものを公示いたします場合に、例えば不良債権の定義、これは各銀行でまちまちであるとか、あるいは担保を評価すべきかすべきでないかという点についても意見の相違がございまして、その結果受け取るお客様に無用の混乱を招くということになってはぐあいが悪いということで、もう少しそこも辺を詰めるべきではないかということで平成五年三月期からになったというふうに承知しているわけでございます。
  77. 正森成二

    ○正森委員 優等生の答弁ですね。ですけれども、週刊東洋経済の四月四日付には「不良資産開示阻んだ大蔵・銀行「談合」」ということでこの間の経緯が詳しく出ているのですよ。圧力をかけたのは紛れもない事実なんです。あなたもお立場上そういう優等生の答弁になったと思いますので、参考人ですからこれ以上御質問はしないことにいたします。  最後に一問。銀行サービス残業について労働省からいろいろ指摘を受けて、特に三月二十五日には担当者が呼び出されて、「金融機関における労働時間等の適正管理について」という注意を受けられたと多くの新聞が報道しています。そして四月三十日までに局の要請に対する回答を提出するようにというふうに言われたとも聞いております。ユニバーサルバンクあるいはバンキングを主張されるなら、世界銀行あるいは文明国で通用する労働条件が確保されなきゃならないのは当然のことであります。ですから、こういう点についてどう対応されようとしているのかということと、それから、この一年間ほどに銀行サービス残業などを解消してその代金を支払った金額あるいは行名、数を伺いたいと思います。  それから、時間がございませんのであわせて伺いますが、市銀連の機関紙などを見ておりますと、大みそかの休日という要望が非常に強いようで、かつて銀行界では、紅白歌合戦を家族とともにというスローガンがはやったわけです。紅白歌合戦はやっとこのごろ家族と見られるようになったが、昼間はやはり働かなければならないということでその要望が強いようであります。それらの点についてお答えになれる点がございましたら承って、私の質問を終わらせていただきます。
  78. 若井恒雄

    若井参考人 ただいまの先生の御質問に対しましてお答えできる限りお答え申し上げたいというふうに存じます。  最初に、三月二十五日付で東京労働基準監督局から東京銀行協会に対しまして「金融機関における労働時間等の適正管理について」ということで要請を受けたことは事実でございまして、会員銀行における労働基準法等の違反事例を排除し、正しい労働時間管理等が行われるように指導されたい、こういうことであったわけでございます。  私どもといたしまして、銀行協会はその性格上、個別行の労働条件について指導したり調査したりする立場にはないわけでございますけれども、御要請の趣旨というのは非常に理解できるところでございますので、当局より御指導いただいた内容を会員銀行各行に速やかに伝達いたしますとともに周知徹底を促す、あわせまして、四月二十日付で会員銀行あて周知徹底を図ったという回答をいたしたわけでございます。個々の銀行といたしまして、私どもも含めまして各行が個別的に一生懸命対応しているというふうに私は考えております。  特に先生が御指摘になりましたように、国際的な面から見ても我が国銀行の労働時間が多過ぎるということはおっしゃるとおりでございまして、私どもとしては何としてもこれは改めていくように努めたいと思っております。いろいろなところから手をつけておりますけれども、とりあえず一つは休暇をふやすということ、それから早帰りを促進する、この二点について私どももいろいろと施策を行っておりますけれども、他の銀行さんも本当にこれは真剣に取り上げているということは先生にぜひ御理解をいただきたいと存じます。  なお、いわゆる残業料の支払いが適正に行われているかどうかということにつきまして、実は新聞等でいろいろな報道がなされているわけでございますけれども、私ども協会としてはそういうものの報告を受けるという立場にございませんので、正直なところ、残念ながら新聞以上にはよく承知していないということで、この点についてもひとつお許しをいただきたいというふうに存じます。  最後に年末休日の点でございますけれども、これも時短ないしはゆとりある生活の追求といった大きな時流から見て、ぜひ前広に検討してまいりたいというふうに私ども考えております。ただ、反面、社会的なコンセンサスの醸成というものも大事でございまして、この年末休業が経済活動、特に中小企業の方や個人の方の生活にどういう影響を与えるかということの検討は欠かせないわけでございます。また、郵便貯金、それから信用金庫、信用組合、農林漁業系金融機関などを含めました全金融機関として足並みをそろえてまいるということも大事でございますので、私どもとしてはそういう点を、コンセンサスをつくる方向でこれからはぜひ努力してまいりたい。ただ、ことしはどうかということになりますと、今の段階ではまだちょっと申し上げられないということでお許しいただきたいと思います。
  79. 太田誠一

  80. 中野寛成

    中野委員 民社党の中野でございます。きょうはありがとうございました。時間が十五分ですから、大ざっぱな御質問だけを申し上げます。  まず館先生にお尋ねをいたしますが、今回、大改革であるから今日に至るまでの過程で随分と時間がかかった、やむを得なかったと思うというお話でございました。もちろん今回の改革には、金融機関経営健全性の確保とか国際性の問題だとか利用者の利便を図るとか、前向きの視点に立つものが多いわけであります。しかし同時に、お話がございましたように、業務範囲拡大相互参入、それが適正な競争を生み、モラルハザードが確立されていく。さらっと聞きますと、なるほどと思うのであります。ところが、各業界を代表されます参考人の御意見をお聞きいたしますと、大変結構です、一日も早く成立をとおっしゃるわけでございます。相互参入競争が激しくなるということは、場合によってはどこかが得をしたり強くなったり、また、どこかが損をしたり弱くなったりということも当然考えられるであろうと思うのでございます。そういう意味では、大改革だから時間がかかっただけではなくて、やはり各業界の利害調整もまたいろいろと大変だったのではないだろうか、こう私は思うわけでございます。各業界ともに期待もあれば不安もある、その調整、そのネック、そして今後なお心配が残されているということがあろうかと思うのでありますが、館先生にそこをまずお答えいただければと思います。
  81. 館龍一郎

    館参考人 お答えいたします。  今御指摘のとおり、白地に新しく制度を書くわけでございませんで、既にいろいろの金融機関が存在するところで改革を行うわけでございますから、したがって、その改革によってある程度のダメージを受けるという分野があるということは避け得ないことでございまして、それを国民経済の観点から見て、何が望ましいかという観点で整理してまいりました。しかし、実際の最後の段階においては、そういう利害調整の問題が絡んで相当の時間を費やしたということは否定できない面であると申し上げたいと思います。
  82. 中野寛成

    中野委員 もう少し具体的にどういうことをとお聞きしたかったのですが、何か具体例で一、二ございませんか。
  83. 館龍一郎

    館参考人 具体例と申しますと、これ、いろいろな金融機関がございますから、先ほど信託の問題がここで話題になっておりましたけれども、当然信託信託なりの問題があると思いますし、証券については証券の問題があるというように考えております。特に、当面ブローカレージは行わない、そういう形で決着を見ておりますが、御承知のように、外国では銀行は全部ブローカレージを行っているわけですが、日本はブローカレージをもともと当面行わないと明記しているところにあらわれているように、個別具体的には、いろいろな利害というものは複雑に絡んでおったということは否定できないところでございます。
  84. 中野寛成

    中野委員 というと、きょう午前中にお越しいただいた方々は、どちらかといえば攻勢派、午後いらっしゃるところが守勢派ということになるのかな、余り率直に言い過ぎてもいけないかもしれませんが。  そこで、まず先に船後理事長治山会長にお尋ねをしたいと思います。同じような視点でお尋ねをいたします。  確かに業務範囲拡大をされる。今まで大変狭苦しい思いをしたという意味では、業務範囲拡大されることは大歓迎。また、例えが悪いかもしれませんけれども、私は、労働金庫、信用組合は、今の政治改革、選挙制度で言うならば奄美選挙区みたいなものかいなと思う。というのは、鹿児島の方と選挙区が合併されても、奄美の各島は現在の二人の候補者でがっちり押さえてあって、鹿児島からはなかなか侵入してこないであろう、我々はその奄美の基盤を前提に置いて鹿児島へ打って出る、そうすると奄美の選挙区の人は得やという例え話が実はあるのでございます。何か労働金庫と信用組合は似たようなところがあるようにも感じます。しかしその規模からいいますと、なかなかもって大変、金利自由化等は別問題でありますが、そういう面でもいろいろ対策を講じなければいけない厳しい状況がまず先にあって、その上で今度は業務範囲拡大だという意味では、歓迎だということだけでは済まないのではないか。もちろんそれだけで安心していらっしゃるわけでもないであろう。そういう意味では期待と不安、期待の部分は先ほどお聞かせをいただきました。不安の部分があるとすれば、これは我々ぜひお聞かせをいただいておって今後の対策参考にしなければいけないと思うのですが、いかがでしょうか。
  85. 船後正道

    ○船後参考人 業務範囲拡大は業界多年の宿願でございまして、今回の改正でほぼ満たされることになるわけでございます。もちろん、先生も御指摘のように、収益機会拡大というのは、他方におきましてはまたリスク機会拡大というような面も持っておるわけでございますのでございますから、私どもは、この拡大された業務を実際にやっていくという点になりますと、これはやはり慎重に考えてまいりたい。やはり会員勤労者ニーズを一方に考え、他方におきましては、私ども経営上の観点あるいはまた体力あるいは人材、ノウハウ、こういったものを勘案しながら慎重に実施してまいる所存でございます。
  86. 治山孟

    治山参考人 先ほどもちょっと御説明申し上げましたように、中央協会の仕事というのは、全国からの各会員組合さんのそういう声を収集しながら、できるだけ日ごろのそういう業務に関しまして、各お取引を願っている方たちあるいはまたその地域、私たちの信用協同組合の本来の使命というものを果たさせる、そういう行き方でございます。大体毎年六月から七月にかけまして、全国を十三の区域に分けまして自分自身が出てまいりまして、ディスカッションというそういう一つシステムがあるわけですが、そのときに、この新規業務拡大というものにつきましては非常に声が強いのですね。と申しますのは、例えば私たち信用組合と申し上げましても、やはり金融機関というように各お取引の方たちは見ていらっしゃる。去年までは例えば国庫歳入金の問題がありました。そういうときには、東京なら東京で都税は信用組合で扱ってもいいけれども、国庫歳入金についてはこれは日銀の問題だから取り扱いできませんよというような、金融機関の中でもそういうようなある程度の閉鎖的と申しますか、私たちにとりましてはニーズにこたえていない、そういう問題がございますので、今回は日銀の歳入金の問題についてはおかげさまで突破口を開いた、こういうことでございます。  したがって、この声の問題につきましては、私たちは不安というものについては、確かに不安の問題については、コストの問題で先ほども前田先生にお答えを申し上げましたけれどもリスクの問題は確かに一方でありますが、反面、各地域、各組合員の方々、こういう方々に対しましてのニーズにこたえた、そのこと自体が私たちにとりましては体質の強化につながるというように感じてございますので、不安の問題につきましては、大変先生失礼でございますけれども、自分自身も信用組合の経営者の一人といたしまして日ごろから感じていないというのが現況でございます。
  87. 中野寛成

    中野委員 それでは、最後に若井会長にお尋ねをいたします。  各業界比較いたしまして、どちらかというと銀行さんが一番得するのかな、こう世間では見られるわけでございます。そこで、しかしながらその銀行さんといえどもいろいろやはりまだ言いたいことはいっぱいあるぞというところがあるだろうと思うのですね。新しい金融制度づくり第一歩だと認識しているとおっしゃられた。第二歩、第三歩が当然期待をされているであろう、こう思うのでございます。  そういう中で、先ほどもちょっと出ましたが、政府系金融機関のあり方についてやはり銀行としては一言あろうという気もするわけでありますし、一方ではいわゆるメーンバンク規制についても、これはちょっとそういうことを言われるいわれはないぞと言いたいお気持ちもあるでありましょう。また、今後参入をされるときに、証券子会社の資本金や業務範囲はどうなるのだろうか、これについても先ほどちょっと百億では高過ぎるのではないかという御指摘もございました。また、新設する証券子会社と従来からのいわゆる系列証券との関係をどうするかという政治の問題もあるであろうと思うのでございます。  これらのことについて銀行立場から、申し上げましたことについて必ずしも万々歳ではないんだというところがあれば、それはそれで率直にお聞かせをいただきたいと思うわけでございます。
  88. 若井恒雄

    若井参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  大変御質問が多岐にわたっておりまして、うまくお答えできるかどうかわからないのでございますけれども、私、先ほどもいろいろお話が出ましたけれども、何か都市銀行が一番今回のあれでは利益を得るのではないか、また都市銀行というのは非常に強力なのではないかというようなことが背景にあるように伺うわけでございます。  確かに十年くらい前はあるいはそういうこともあり得たかと思うわけでございますけれども、その後の日本の経済の発展に伴いまして、産業界も非常に発展を遂げてこられました。御存じのとおり、間接金融から直接金融へという形で自己資本も非常にふえてこられるということで、大企業はもちろんでございますけれども、中堅、中小企業でも、非常にいいお会社につきましてはむしろ銀行に対する選別をしておられる。私どもが選別をするということではなくて、お客様の方が銀行を選ぶというような状況になっているわけでございます。  そういう状況において、私ども都市銀行、御存じのとおりバブルの後始末というような問題がございまして、いろいろな問題を抱えている。株式もこういうことになっておりますので、いわゆるBIS規制についてもクリアできるかどうかというような問題が非常にあるわけでございます。そういう状況の中でこの金融制度改革を迎えているということでございまして、私どもとしてはやはりこの改革趣旨でございますお客様のために本当にお役に立つということを通じて銀行経営内容をもう一回よくするように、本当にお客様本位の経営をやるということ、これを第一歩にいたしたいというのが率直なところであるわけでございます。  では、そういうことになったら銀行が何でもどんどんできるのかと申しますと、御存じのとおりBIS規制のクリアというような問題もございますし、例えば証券あるいは信託のノウハウというようなものにおいて都市銀行がどれだけのものがあるかといえば、やはり既存専門金融機関がはるかに進んでいるわけでございます。またコンピューター一つとりましても、そのソフトの開発というものには非常なお金がかかるというようなことでございまして、正直なところそういうことになってどれだけ我々都市銀行としてやっていけるのかということになりますと、資源の問題、お金の問題あるいは人の問題ということで、やはりいろいろと難しい問題があるのではないかなというふうに考えておるわけでございます。  ただ、金融制度、そういう枠組みができてそういうことになるんだということになれば、やはザ我々としても真剣になって一生懸命努力する、これがやはり今後の金融機関の健全なる競争を促すことによって、お客様の利便と国際性あるいは金融信用秩序への貢献ということに役に立つのではないか、そう考えているのが私どもの今の考えでございます。そういう意味で、どうかひとつ御理解を賜りたいと存ずるわけでございます。
  89. 中野寛成

    中野委員 終わります。ありがとうございました。
  90. 太田誠一

    太田委員長 これにて午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後二時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時七分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  91. 太田誠一

    太田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、金融制度及び証券取引制度改革のための関係法律整備等に関する法律案について、参考人として評論家五代利矢子君、信託協会会長早崎博君、日本証券業協会会長渡辺省吾君及び農林中央金庫理事長角道謙一君、以上四名の方に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言あいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位には、それぞれのお立場から忌悼のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでありますが、まず、各参考人にそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、次に、委員がもの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、五代参考人からお願いいたします。
  92. 五代利矢子

    ○五代参考人 ただいま御紹介にあずかりました五代でございます。今回の金融・証券制度改革法案につきまして、一般のごく素人の立場から、一利用者ということで意見を申し述べきせていただきたいと思います。  まず初めに、基本的な認識といたしまして、金融自由化は、利用者金融に対するニーズ多様化、高度化にこたえるとともに、我が国経済の効率化と発展に寄与するものだと考えております。金融自由化によりまして、市場における各種の金融機関の間に競争を促進し、利用者ニーズ対応した多様な金融商品及びサービスが提供されるばかりてなく、競争促進による各種手数料の引き下げや、サービスの向上にもつながっていくと期待しております。また、こうした目に見えるメリットのほかに、金融システム全般の効率化、さらに国民経済全体の効率化といった目に見えないメリットも大きいのではないかと考えております。  次に、制度改革に対する利用者の視点でございますが、今回の金融・証券制度改革についても、こうした金融自由化の流れの中で利用者の利益を増進するものであってほしいと思っております。その意味からも、制度見直しに当たっては、個人企業といった金融機関証券会社利用者の利益をいかに向上させるかという点を主眼として検討されなければならないと思います。利用者立場という視点からは、金融機関の間の競争を促進することによって金融効率化を図るとともに、各金融機関利用者のさまざまなニーズを酌み取って、質のよい、かつ多様な金融商品サービスを提供できるようにすることが重要だと思います。  また、利用者の利益を向上させるためには、金融資本市場の発展を阻害しております諸規制、諸慣行を取り除きまして、一般利用者も公平にアクセスできるような道筋をつけ、市場活性化を図ることも重要かと考えております。  以上申し上げましたように、金融・証券制度改革に当たりましては、利用者立場を最も優先すべきであるということは当然ではないかと考えております。金融業界、証券業界のみに通用する都合や事情のために利用者立場が軽視されることがないよう、十分な御配慮をお願いしたいと思います。  また、利用者立場というのは、例えば一カ所でいろいろな金融サービスが受けられればそれがとりわけ便利でよいというようなことだけでもないのではないかということもつけ加えさせていただきたいと思います。金融サービスというものは無色透明なお金を対象にしているだけに、目に見えないさまざまな問題を生じやすいものだということは、さきの一連の金融・証券不祥事で国民各層は思い知らされた観がございます。例えば情報を悪用するインサイダー取引のようなものや、特定の集団の利益のみを図る利益相反的な行為を引き起こしやすい誘惑が生じやすいのではないかと思っております。  したがいまして、金融機関証券会社の人々にはより高いモラルが要求されるべきことではありますが、同時に、モラルだけに頼るのではなくて、制度的な仕組みをより工夫して構築することにより、一見利用者には関係がないかのように見えても、結果的には利用者の利益を損なうことが生じることがないようにする必要があると思います。一般利用者というのは、情報収集力、情報解読力その他さまざまな点で、専門プロ集団でいらっしゃいます巨大な銀行証券会社に対して対等に渡り合うことが難しい状況に置かれておりますから、この点への配慮も重要なことではないかと考えております。  次に、今回の金融制度改革についての評価でございますが、まず相互参入による競争の促進について申し上げます。  金融機関証券会社につきましては、これまで新規参入が認められてきておらず、また、いわゆる横並びで行動する傾向が強いことから、十分な競争があったとは言いがたいのではないかと思っております。今回の制度改革では、金融機関証券会社がそれぞれ子会社を設立するということにより相互に参入することができるわけでありまして、いわばこれまでにない新しい血が導入されることによって競争が促進され、その結果新しい商品の開発や各種手数料の引き下げといった効果が期待できるのではないかと考えております。また、利用者が自分のニーズに合った金融機関を選ぶことができるようになるわけですから、利用者にとっても大きなメリットがあるのではないかと思っております。また、新規参入方式といたしまして子会社方式を採用することにつきましては、さきに述べましたように、目に見えないさまざまな問題から利用者の利益を守るには、現段階においては有効で現実的な方法ではないかと思っております。  次に、地域金融機関業務範囲拡大について申し上げます。  地方銀行、信用金庫などの地域に根差した金融機関につきましては、本体での土地信託等の信託業務を認めていく、あるいは信用金庫、信用組合といった協同組織金融機関業務範囲拡大するということ、今回のこの制度改革の成果が大都市の利用者のみならず地方の利用者の方々にもひとしく及ぶというわけでございまして、これもまた歓迎すべきことだと思います。  次に、証券業務範囲拡大について申し上げます。  金融証券化の進展に伴いまして、新しい金融商品が生まれてきております。これらの新商品は英語の名前がついておりましたり、また商品の内容が複雑でありますために、普通一般の利用者にはなかなかなじみにくいのが実情でございます。しかし、ディスクロージャー等、証取法の投資家保護を図ることにより、利用者にとって安心して投資できる方向を目指しているわけですので、結構なことだと思います。ただ、ディスクロージャー等も、一般の利用者の方々が十分その内容が理解できるような工夫が今後なされなければならないと考えております。また、こうした新商品は新しいものだけに、従来の枠組みと申しますか、縄張り争いとは関係なく利用者本位に取り扱えるようにすべきであると思いますので、金融機関本体でこうした新商品の取り扱いができるようになってくることはよいことだと思っております。  最後に、金融機関健全性の確保について申し上げます。  私たち利用者は大事なお金を金融機関に預けて運用するわけでございますから、金融機関経営健全性が確保されることがすべての金融制度改革の大前提であると考えます。この観点から、自己資本比率規制等に法律上の根拠を与えまして、金融機関経営の指標とすることは歓迎すべきことだと思っております。  また、金融自由化の進む中で、預金者にも自己責任原則が働く場合が生ずるわけでございますので、金融機関経営情報の開示の必要性は今後ますます高まってくるものと思われます。不良資産などの開示について余りにも後ろ向きな態度をとることは、利用者立場から見ていかがなものかと思われます。  今回の制度改革法案は、既存金融・証券をめぐる実態を十分に考慮しつつ、しかし時代の要請に合わせて必要な改革を行おうとするものであり、利用者立場から見てもプラスになることだと思います。金融機関証券会社の昨年の一連の不祥事に対しまして国民各層の批判は高まっておりますので、それにこたえて公平性、透明性を確保し、健全な金融市場を確立していくための土台づくりへのスタートとして期待しております。  以上でございます。失礼いたしました。(拍手
  93. 太田誠一

    太田委員長 どうもありがとうございました。  次に、早崎参考人にお願いいたします。
  94. 早崎博

    ○早崎参考人 信託協会長の早崎でございます。今回意見を述べさせていただく機会を設けていただきましたことに対しまして、厚くお礼を申し上げます。  信託業界といたしましては、各業態間の相互参入により競争を一層促進し、利用者利便の向上を図ろうとする今回の金融制度改革法案に賛成であります。  これまでも信託業界におきましては、国際的な金融協調と我が国金融市場の一層の発展に貢献するという観点から、昭和六十年には外国銀行信託銀行九行の参入が行われておりますし、また昭和六十一年には投資顧問会社にも広く市場を開放するなど、金融自由化国際化に前向きに対応してきたと考えております。このような対応を含めまして、信託業界としての一貫した考え方は、信託利用者利便の向上と信託業務の健全な発展に資する適正な競争を行ってまいりたいというものであり、今回の制度改革もこのような観点でとらえているところであります。  戦後、信託会社は銀行法に基づく普通銀行となり、普通銀行信託業務ノ兼営等二関スル法律、いわゆる兼営法により信託業務を兼営する形をとってはおりますが、実態的には信託を主業として健全な信託制度の発展を目指してきたところであります。  我が国信託制度が幸いにもお客様の御支援をいただき、諸外国にも類例を見ないほど発展してまいりました背景には、信託銀行信託を主業として、貸付信託、年金信託、土地信託など、絶えずお客様や社会のニーズにこたえる商品サービスを開発してきた地道な努力が大きな要素としてあるのではないかと自負いたしております。したがいまして、今回の制度改革におきましても、これまでの歴史的な背景を踏まえ、信託を主業とする信託銀行子会社が参入することによりまして、一層競争が促進され、お客様の利便性が向上することを願っている次第であります。その意味で、相互参入方式として業態別子会社方式が採用されましたことは、私どもがかねてより主張してまいりました信託主業の精神にもかなうものであり、信託業務の健全な発展を目指そうとするものであると理解している次第であります。  今回の金融制度改革に伴い信託業界に新規参入される場合に、私どもとしましては、これまでの信託業界の果たしてまいりました役割と歴史を踏まえまして、ぜひ次の点を念頭に置いていただきたいと願っております。  まず、信託業務の本質、事業精神に対する深い理解をお願いいたしたいと思います。  信託制度は、委託者から財産の所有権の移転を受け、専ら委託者のために、委託者に成りかわって財産の管理、運用を行うという性質を持っております。昨年六月の金融制度調査会答申におきましても、信託業務は、委託者、受託者間の長期にわたる高度な信頼関係を基礎とする業務とされておりまして、銀行、証券とは異なる信託のあり方を十分理解していただいた上で業務を遂行していくことが必要だと考えられます。  次に、信託業務を行うに当たりましての専門能力の保持、育成であります。金融制度調査会答申におきまして、さきに申し上げました高度な信頼関係に続けて、銀行業務などとは異なる技術的、専門的知識が要求される業務とされておりますように、業務処理能力が信託業務のかなめであると考えられております。  そして第三に、具体的な業務遂行を支える体制整備であります。信託業務を的確に遂行するために十分な財産的基礎及び業務遂行体制整備していただくことをお願い申し上げます。  以上申し上げました観点から、今回の制度改革に当たりましての信託業界の基本スタンスは、これから申し上げるとおりであります。  まず、制度改革に関する今後の具体的な内容につきましては、平成三年六月の金融制度調査会答申、証券取引審議会報告で取りまとめられました趣旨と乖離が生じないようにお願いいたしたいと存じます。また、信用秩序維持金融制度の根幹をなすものであり、金利自由化と同様、諸規制、諸慣行の見直しを含めた金融制度改革は、現行制度との連続性競争条件公平性を踏まえ、一歩一歩着実に行われるべきであると考えます。さらに、子会社方式本体方式を問わず、信託参入の場合の適格性、資格要件につきましては、信託業務の性格を十分に考慮して御判断願いたいと存じます。なお、制度改革が外銀信託に与える影響につきましても十分御配慮いただきたいと存じます。  以上、基本的な考え方を申し上げましたが、それとの関連におきまして、今後の具体的運営に当たりましては、次の点をお願いしてまいりたいと存じております。  まず、信託銀行子会社の業務範囲につきましては、技術的、専門的知識が要求される信託業務の特性を十分御考慮の上、きめ細かい高度なサービスの提供と利用者利便の向上にかないますよう、一定の限られた範囲のものからスタートしていただきたいということであります。  また、地域金融機関による本体業務範囲につきましては、子会社方式に対する例外的措置でありますことから、子会社方式よりもさらに限られた範囲のものになると理解いたしております。あわせて、兼営法改正案におきましても、信託業務の認可条件の一つといたしまして、「金融秩序ヲ乱ス虞ナキコト」とされております趣旨を踏まえていただき、信託業務への参入が着実かつ段階的なものとなりますよう御配慮いただきたいと存じます。  次に、信託銀行子会社と親会社との関係につきましては、競争条件公平性に御配慮いただき、実質的に親会社本体による信託業務への参入となって、ひいては制度改革の意義に反するような事態になりませぬよう、しかるべき弊害防止措置を設けていただきたいと存じます。  さらに、各地域における信託ニーズに一層こたえてまいりますために、今回の改革によりまして新たに創設されます信託代理店制度は画期的な制度であると存じておりますので、ぜひその実現を図りたいということであります。信託代理店制度の実現によりまして、地域利用者へのサービス向上はもとより、地域金融機関信託業界の双方にとりましても実りあるものに育ててまいりたいと存じております。  なお、信託業界の子会社による証券業務への参入につきましては、信託業界が長年にわたり証券関連業務に携わってまいりました実績を十分評価いただければと期待いたしております。  現在御審議いただいております金融制度改革法案は、我が国金融資本市場自由化国際化に向けました基盤づくりとして必要不可欠なものと考えております。ぜひ、その趣旨のもとに適正な競争が行われ、利用者利便の向上が図られますよう期待いたしております。  以上でございます。(拍手
  95. 太田誠一

    太田委員長 どうもありがとうございました。  次に、渡辺参考人にお願いいたします。
  96. 渡辺省吾

    渡辺参考人 日本証券業協会の会長を務めております渡辺でございます。  本日は、制度改革のための関係法案に関しまして意見を申し述べるようにと、そういう機会を与えていただきまして、まことにありがたく、厚く御礼を申し上げます。  既に先生方にも御心配をいただいておりますが、最近における株式市場は大変厳しい状況で推移いたしておりまして、まことに憂慮されるところでございます。  こうした市場低迷を反映いたしまして、証券会社の収益状況は極めて厳しいものになっております。全国の一般の証券会社二百六十社の本年三月期の決算状況を見ますと、受け入れ手数料収入は前年比三四%減、また売買等損益も前年比三二%減と、それぞれ大幅な減収となっております。経常損益は、前年までの黒字から一転して約二千五百十億円の赤字を計上し、当期損益も約四千八十億円の赤字と業績が大幅に落ち落ち込みました。この結果、本年三月期では、国内証券会社二百十社中実に二割強の四十八社が無配会社、五割強の百十四社が減配会社という厳しい状況でございます。この点につきましては先生方にぜひとも御認識をいただきたいと存じます。  それでは、今回の改正法案につきまして私ども意見を申し述べさせていただきます。  まず、証券界の基本的な考え方は、今回の制度改革は昨年六月の証券取引審議会が取りまとめました「証券取引に係る基本制度の在り方について」と題する報告書の趣旨に沿って行われるべきであるというものでございます。今回のいわゆる制度改革法案には、有価証券の定義の整備、公募概念の見直し私募の取り扱いの明確化、銀行等の子会社方式による相互参入等の措置が盛り込まれております。これらは基本的に昨年六月の証取審報告書の趣旨に沿ったものと理解いたしております。したがいまして、私どもは本改正法案に反対するものではございません。政省令の概要につきましては大蔵省の方から大蔵委員会の方へ示されたところでございますが、今後の行政の運用方針につきましても明確にならなければ判定できないところであり、十分御審議いただくようにお願い申し上げます。  次に、私どもは、観念的には相互参入が認められておりますが、実際上の可能性を考慮いたしますと、銀行証券子会社を設立、運営することに比べまして、証券会社銀行子会社や信託子会社を設立、運営することは極めて困難なことであると認識しております。だからといって証券子会社の設立に反対するものではございませんが、このように証券界は実際上攻め込まれる立場になることにつきまして御認識をいただき、今後、証券子会社業務範囲をどうするか、必要な弊害防止措置をどう構築するか等につきまして十分御配慮いただくようにお願い申し上げます。  第三に、既に地方公聴会において証券界の代表が申し上げたことでございますが、証券界は経営状況が極めて厳しい状況の中で制度改革競争促進という急流の中に巻き込まれることになりました。この急流を乗り切るためには相当な努力を覚悟しなければなりませんが、特に中小証券会社には、証券会社銀行子会社設立の可能性等の改革内容は現実には遠い世界の話でございまして、今回の制度改革は、結局一部の大銀行や大証券会社の業容拡大を容易にし、金融・証券分野における大小格差をさらに増幅することになるのじゃないかという懸念も強いわけでございます。  もちろん、今回の改正法案では、株式ブローカー業務を当分の間銀行等の証券子会社には認めないことを明記される等配慮が行われておりますし、また証券界としても、いたずらに現状に甘んずることなく、自由化国際化証券化等の大きな流れの中で、多様化する顧客ニーズに積極的に対応するよう全力を尽くさなければならないと考えております。したがいまして、私は、今回の制度改革に反対するという考え方ではございませんが、制度改革は決して白地に絵をかくわけではありません。改革の結果、しっかりした経営を行っている証券会社が立ち行かなくなるようなことはぜひとも避けていただきたいと思っているわけであります。この意味で、新しい証券会社新規参入のテンポ、銀行等の証券子会社に認められる業務範囲銀行本体が取り扱える証券化関連商品範囲等につきましては十分な配慮がなされる必要があり、これらの諸点について今後の行政運用方針の明確化を含め、慎重な御審議をお願い申し上げます。  以上、総論的に申し述べさせていただきましたが、次に、二、三具体的な点につきまして意見を申し上げたいと存じます。  まず第一は、証券取引法上の規制の対象となる有価証券の範囲、すなわち有価証券の定義の整備についてであります。  御承知のとおり、近年の金融証券化の流れは早晩我が国におきましても強まることが予想されるものであり、取引の公正性を確保し投資者保護に資する観点から、証券取引法に基づく適切な規制を及ぼすことが市場のいわば基本的なインフラ整備として必要であり、それが今後、創意工夫に満ちた新商品が活発に開発され、それら証券化開運商品市場が発達する前提になると考えられます。このような考え方に基づいて、昨年六月の証取審報告書において包括条項の採用が提言されたところでありますが、その後の大蔵省等の御検討の結果、今回の法案では、提言のような包括条項は取り入れられず、従来どおりの個別列挙のほかに、政省令により個別に有価証券を指定する方式が採用されております。  証券界といたしましては、包括条項が導入されなかったことは甚だ残念でございますが、流通性のある商品については証券取引法に基づき規制するという原財を確立していただき、新しい証券化関連商品の政省令の指定については機動的、弾力的に行うという運用方針を明確にしていただくようにお願いする次第であります。  もし、このような機動的な追加指定が円滑に行われなければ、そのことが創意工夫にとる新しい証券化関連商品の導入を制約することになり、結果として制度改革のねらいが実現しなくなることに留意する必要があると思います。  また、有価証券に指定できないものについても、実質的に見て証券会社が取り扱うことが適当な商品につきましては、証券会社兼業承認を機動的に行うとともに、個別の業法等により証券会社業務規制されることのないよう配慮をお願いいたしたいと存じます。  第二に、公募概念の見直し私募の取り扱い等について申し上げます。  昨年六月の証取審報告では、発行者のニーズ資本市場国際化の進展等を踏まえ、私募についての法整備を進めることが提言され、それに基づき、今回の法案において所要の法整備が行われており、私どももこれは必要な改正であると考えております。しかし、同報告書に「公募市場の有する価格形成機能や資金配分機能を考えると、資本市場の望ましい姿は、投資者が広く参加できる公募市場が中心となっていることである。」とされておるように、私どもは、公募、私募の両市場は調和のとれた姿で発展すべきであり、私募についての法整備が結果として私募市場のみの肥大化を招き、公募市場の機能発揮やその発展に悪影響を与えることのないよう、必要な法的措置等が適切に講じられることが絶対に必要な前提条件であると考えます。  このため、具体的には、私募の肥大化により公募市場に悪影響を及ぼしたりディスクロージャー制度が骨抜きになることがないよう、私募の対象証券の限定、私募証券取得者の限定、発行後または取得後一定期間の転売規制等につきまして明確に規定されることが必要であると存じます。  第三に、証券業務への新規参入問題についてであります。  証券界といたしましては、現在の免許制下におきましても新規参入により適正な競争が行われることが望ましいことと考えており、証券市場の仲介者として適格性を有する者が証券会社として証券業務新規参入することに反対するものではございません。しかし、その参入は、中小証券会社立場にも配慮しつつ、当面、発行市場を中心に漸進的、段階的に行われるべきであると考えます。また、適格性に関しましては、特定企業企業グループのみに依存するような、いわゆる機関店的な証券会社は中立的な市場の仲介者として問題であり、認めるべきではないと思います。  特に、銀行の子会社方式による証券業務への参入につきましては、これも昨年六月の証取審報告書に詳述されておりますように、銀行企業に対し影響力を及ぼし得る特別な地位を有していることにかんがみ、銀行証券子会社につきましては、銀行により影響力が行使され、市場に悪影響を及ぼすことのないよう、実効性のある弊害防止措置を制度的に確立することが不可欠の前提であります。  今回の法案では、証取審報告を受けて、親子会社間における弊害防止措置として、一、取締役の兼職禁止、二、通常の条件と異なる条件での市場取引の禁止及び三、信用供与に係る抱き合わせ販売の禁止の三点が規定されておりますが、そのほかにも、証取審報告で提示されております弊害防止措置は、ぜひとも実効性のある形で措置していただくようにお願い申し上げます。さらに、証券取引におけるクロスマーケティングの禁止や人事のノーリターンルール、メーンバンク規制等につきましてもきめ細かな配慮をしていただく必要がありますし、また、親銀行の影響力が海外現地法人に及び、同様の弊害が生じないよう所要の措置を講ずることも必要であります。  銀行証券子会社に認められる業務範囲につきましては、発行市場を中心として漸進的、段階的に取り扱うべきものと考えられます。今回の法案では、附則第十九条第一項において、当分の間銀行等の証券子会社には株式ブローカー業務を認めない旨が明記されておりますが、この制限はその趣旨から見て、CB、ワラント等のいわゆるエクイティー商品や株価指数先物取引に関するブローカー業務についても運用上同様に取り扱っていただきたいと考えております。  最後に、諸規制、諸慣行の見直し、撤廃問題について申し上げます。  現在、法制審議会商法部会において社債改正問題について検討が進められておりますが、証券界としては、長年にわたり、社債発行限度の完全撤廃、受託会社の機能を社債発行後の社債の管理に純化すること等について要望を行ってきたところでございますが、この問題は、今回の制度改革と密接不可分の関係にありますので、昨年六月の証取審報告の趣旨に沿い、早期に実現が図られますようにお願い申し上げる次第であります。  また、証券会社本体による外為業務の許可範囲拡大につきましては、これも長年の懸案のまま、まだ解決が見られません。この問題は決して新しい業務を認めるという性格のものではありません。現在、証券会社本体が外為法上の包括許可を受けておりますが、その後の証券業務の高度化に伴いまして、引受業務に伴って必要となるスワップ等に関連する外貨との交換等も可能になるよう、包括許可の範囲拡大してほしいというものでありますので、今回の制度改革機会に、その早期実現が図られますよう先生方にお願い申し上げる次第でございます。  さらに、証券会社信託子会社を保有できるようになるわけでございます。特金とかファントラ等証券業務に密接に関連する信託業務につきましては、その業務範囲として認めていただきたいと考えております。  以上をもちまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手
  97. 太田誠一

    太田委員長 どうもありがとうございました。  次に、角道参考人にお願いいたします。
  98. 角道謙一

    角道参考人 ただいま御紹介をいただきました農林中央金庫の理事長角道でございます。  日ごろ、農林漁業系統の諸事業につきましては御指導、御高配をいただき、厚く御礼申し上げます。また本日は、金融制度改革に関する法律改正につきまして意見を申し述べさせていただく機会を賜り、心から厚く感謝を申し上げる次第でございます。農林漁業系統金融機関立場から、制度改正法案につきまして意見を申し述べ、御参考に供したいと存じております。  初めに、御高承のこととは存じますが、私ども農林漁業系統組織の概要について簡単に御説明を申し上げます。  農林漁業系統金融機関は、農林漁業者を中心に構成されている協同組織の金融機関といたしまして、農林漁業者の経済的、社会的地位の向上、農林漁業やその関連産業の発展、さらには農山漁村地域の振興等を図っていくことを目的としております。  系統組織は、市町村段階には単位組合がございまして、県段階と全国段階にそれぞれ連合組織があり、いわゆる三段階制をとっております。単位組合は指導、販売、購買、共済、信用等の事業を営んでおり、県の連合会や全国段階は指導、経済、共済、信用ごとにそれぞれの事業を単独に行って単位組合を補完しております。  農林漁業系統金融機関は、全国の農山漁村等に広く約一万八千余の店舗を配し、他の金融機関サービスの及ばない地域につきましても、系統組織一体となって組合員を初め地域住民等に広く金融利便の提供を行い、地域にとってはなくてはならない金融機関としてその役割を果たしております。また、農林中央金庫は、系統信用事業の全国機関として、総合的な企画や事業推進を行い、単位組合や県の連合会で貸し出し等運用した残りの資金を国民経済全般に役立つように運用し、そこから得られました収益を系統組織に再び還元すること等によりまして、系統信用事業全体の信用秩序維持発展の役割を果たしております。  このたびの金融制度改革法案は、金融国際化証券化金融技術の高度化等に対応し、銀行、証券、信託等の金融分野相互参入を初めとした業務全般の自由化を進め、利用者の利便向上を図ろうとするものと承知しております。  金融利用者は多様かつ高度なニーズを有するようになっておりまして、それに応じ金融機関の側においても新たな金融商品サービスの開発を進めていく必要がございます。農林漁業系統金融機関は、いわゆる過疎地帯と言われるような地域からかなり都市化の進展した地域まで、全国各地の地域住民等に広く金融利便の提供を行っておりますが、私どもの対象としております農林漁業者や地域住民等にあっても、金融ニーズが大きく変化してきており、金融自由化金融技術の高度化に対応した金融サービスの向上を図っていくことが不可欠となっているところでございます。  制度改革法案は、農林漁業系統金融機関につきましても、地域金融機関として銀行その他の金融機関と同様に信託業務や証券業務対応できるよう法整備がなされており、具体的には農協や漁協等の単位組合は土地信託等の本体参入が、また県域の連合組織であります信連につきましては本体または子会社での証券・信託業務への参入が、さらに全国組織である農林中央金庫については子会社による証券・信託業務への参入が可能となるよう措置されております。  私ども農林漁業系統金融機関といたしましては、このたびの制度改革法案はまことに時宜を得たものであり、また協同組織金融機関に対しても十分御配慮をいただいたものと高く評価しております。  さらに、制度改革法案は、信託や証券の相互参入だけではなしに、金融制度調査会の答申に従いまして、既に他業態金融機関に認められております公共債の窓口販売やディーリング、外国為替業務等、他業態金融機関に比べ機能の面で劣っております。務につきましてもあわせ認めていただく内容となっております。  金融自由化の進展は、利用者利便を向上させる一方で金融機関にとりましては一層競争を激化させることを意味しており、私ども農林漁業系統金融機関は他の金融機関と同様な競争をしなければならず、他の金融機関と比べ機能が劣後した場合には利用者の期待に十分こたえることができず、農林漁業や地域経済の振興等の役割を十分には果たせなくなってしまうところでございます。このたびの制度改革法案は、系統金融機関に期待されているこれらの役割を果たしていく上で不可欠な金融機能の整備もあわせ行われる内容となっており、ぜひ御理解を賜りたいと考えております。  私ども農林漁業系統金融機関は、今回の制度改革により広げられる業務を活用して、広く地域の農林漁業者や地域住民等への金融利便の向上に努力してまいりたいと考えております。もちろん、新しく拡充される証券や信託等の業務につきましては、直ちにすべての組合が取り扱いを行うというわけではなく、能力や体制の整っているところから順次取り扱いを進めていくこととなりますし、また県の連合会や農林中央金庫といたしましても、これを十分に補完し、また適切な指導を行っていくことが必要であることは申すまでもございません。  さらに、私どもは、今後の農林漁業や金融環境の厳しさに対応するため、みずからの組織の効率化を図るべく検討を進めており、現在三千以上あります農協を、当初目標の一千農協よりさらに進んで大幅な合併を進め、連合組織についても統合等による組織の見直し整備を通じ、組合員地域住民に一層信頼される健全な組織にしてまいりたいと考えております。組織整備につきましては、既に今次国会で農協法や農協合併助成法の改正が行われており、これら法律と今回の制度改革法案とが一体となって、組合員の期待にこたえ得る法整備がなされるものと考えております。  以上のように、私ども系統金融機関は、今回の制度改革法案をぜひ今国会で成立させていただきたいと念願しております。これらを通じまして、系統諸事業の強化と組織の効率化を進め、厳しい環境が続いております農林漁業や農山漁村の振興等に一層の努力をしてまいりたいと考えております。よろしく御理解のほどお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手
  99. 太田誠一

    太田委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
  100. 太田誠一

    太田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井奥貞雄君。
  101. 井奥貞雄

    ○井奥委員 きょうは、お忙しい中にもかかわりませず各参考人の先生には御足労いただきまして、大変感謝申し上げます。それぞれのお立場からいろいろと御意見をちょうだいいたしました。  最初に証券業協会の渡辺参考人にお尋ねをしたいと思います。  実は午前中にも全国銀行協会若井会長からもお話がありましたし、過日私どもは地方公聴会に出かけまして、特に私は札幌の方に参ったわけでありますが、銀行協会あるいは証券業界それぞれの会長からいろいろと御意見を拝聴いたしました。銀行協会の会長さんを初め、都市銀行地方銀行を含めて、午前中の質疑をお伺いしていても自信満々でありますし、胸を張ってお答えをしておられました。それに引きかえて、いろいろな問題があって、今の業界のお立場あるいはこれからの問題というのはよく理解をいたしますけれども、その中で銀行証券子会社につきましては激変緩和の措置として、ただいまもちょっとお話になられましたが、株式ブローカー業務というものは当面の間禁止されている。その趣旨にかんがみますと、当分の間というのはどれぐらいな期間だというふうに思っておられるのか、その辺をちょっとお伺いいたしたいと思います。
  102. 渡辺省吾

    渡辺参考人 お答えいたします。  先ほどもちょっと触れましたけれども、おっしゃるとおり株式のブローカー業務に関しましては銀行証券子会社はいろいろな観点から当分の間これを禁止するということになっております。これは昨年六月の証取審の報告でも明記されておりまして、証取審は御承知のように長い年月、六年ぐらいかけて学識経験者によっていろいろと審議を重ねられ、外国の事例等も調査されて、ようやく立派な答申をいただいておるわけでございますけれども、その答申によりますと、証券市場の中でも流通市場では株式や転換社債あるいは株価指数先物、オプション取引等の売買高に占める大手証券会社のシェアはだんだんと下がっている、低減傾向にある。したがって、有効な適正な競争を促進する方策としては、新規参入必要性は、市場現状から見ると発行市場に比べると小さい、流通市場の方が競争導入の必要は小さいというふうに証取審の結論はなっております。  それから、銀行による株式ブローカー業務への参入につきましては、銀行の特殊な性格、つまり銀行が歴史的に株式の売買業務を今まで行っていなかったということ、そういう経緯、それから銀行自身が、これは日本銀行の非常な特殊性だと私は思います、特にアメリカと比べるとそういうことが言えると思いますが、銀行自身が大量の株式を持っているという点、そういうために、これがブローカー業務を行うということになりますと、その適切な執行との関係に問題があるのじゃあるまいかという点。  それからもう一つは、この株式のブローカー業務というのは、御承知のように中小証券会社経営の主軸になっておりますから、そういう点を考慮いたしまして、いろいろの点を考慮しまして、法律によって当分の間はこれを認めないという措置を講じたわけでございます。したがいまして、これは今先生おっしゃります激変を緩和するいわばショックアブソーバーみたいなものとしての経過期間のような考え方ではなくて、そういう性格のものではなくて、したがって、いろいろ先ほど来申し上げていますようなそういう理由に基づいて、当分の間はこれを禁止するということですから、その弊害防止措置とかあるいは中小証券の経営状況とか、そういったものは今後変化していくということになれば、これはそういうことになると思いますが、したがって、物理的な時間の長さの問題ではないというふうに私どもは思っております。
  103. 井奥貞雄

    ○井奥委員 これはもう物理的な時間の長さではないということはよくわかるのでありますが、当分の間という形で、法律で附則第十九条に盛られているわけでありますが、できるだけこれは公平な競争をするということが今回の大きなことであります。大変だろうと思いますけれども、できるだけ早い期間に自立をしていただいて、しっかりと銀行と胸を張って張り合っていただいて、こういった透明性、公正性というものを常にこれを開示していただけるように、ぜひともひとつお願いを申し上げたいなというふうに思っております。  それから、ただいまちょっとお話がありましたけれども、附則の第十九条の二項であります。既存証券会社銀行が買収した場合には、銀行証券子会社として株式ブローカー業務の禁止というものがしり抜けになる、こういうおそれがあるということでありますし、逆に、今も渡辺会長お話しになられましたように、銀行というのは、とにかく四十数%も株式の中で銀行が持っているというようなこれは現実的実績があるわけでありますが、それを銀行の子会社によって、それがインサイダー的に取引をされていくというのも大変な問題があるわけであります。そういった中で、特に中小証券というのが、玄人筋というんでしょうか、あるいはプロ集団というのがそういった中小証券に対して大変取引をしていたということでありますが、逆に、そういったことが裏目というんでしょうか、そういったことのために中小証券の経営内容というのは物すごく苦しくなっているわけであります。こういった形で、銀行が人材なり金融なりというものを支援していくということになれば、当然しかしそこではかってブローカー業務をしておったわけでありますし、それから顧客があるわけでありますから、こういった問題についてどのように考えておられるのか、この点をお伺い申し上げたいと思います。
  104. 渡辺省吾

    渡辺参考人 先生御指摘のように、十九条二項で、買収の場合には株式のブローカー業務は、先ほど申し上げましたような理由で、当分の間はこれを禁止するというふうに建前はきちっと決まっておりますけれども、それについて何か考慮が必要な場合があるのじゃないかといったような、そういった規定になっておるように思います。しかし、これは非常に例外の場合でございまして、もしそれが通常の救済というような形の場合、つまり従来でもそういったような企業の救済というような場合は、人を派遣するとかあるいは金融的な援助をするとか、いろいろな形で救済の形がございました。しかし、今の御指摘のように買収というような形にしてこれを救済するといったようなことは極めて例外であると同時に、それについて、そういう場合が仮に起こった場合に、それにブローカー業務をもし認めるというようなことになりましたならば、それは本則と全くしり抜けということになりますから、そういったようなことがないように厳格に運用していただきたいというふうに思っております。
  105. 井奥貞雄

    ○井奥委員 それから、きょうも渡辺会長のお話をお伺いしているときに、特に証券会社として銀行子会社というものに進出をしていくというのは少ないのではないかなというお話がありましたが、今のお見通しては何社ぐらい、どれぐらいな規模になるのかということをちょっとおわかりの範囲内でお答えいただきたいと思っております。そして、証券会社本体で行われる業務というのは今外為業務があるわけでありますし、包括業務の許可を受けているというふうに今も冒頭でお話しになられましたけれども、そのほかに何か御要望があればお聞かせをいただきたいと思います。
  106. 渡辺省吾

    渡辺参考人 今度はフェアな競争を導入するために相互参入ということになっております。したがいまして、今先生の御指摘のように証券会社も、銀行ないしは信託銀行、そういったような形で参入することができるということでございますけれども銀行子会社とか信託子会社をどの程度考えておるかという御質問のように伺いましたが、これは各証券会社経営判断によるものでございますので、私ども、それを想像することはちょっと難しゅうございます。  しかし、一般的に申しまして、本格的な例えば信託銀行を構築するということになりますと、これはもう大変に大きな資本と人材、店舗、ノウハウといったようなものが必要となります。したがいまして、証券会社現状ではこうした巨大な投資を行うことはかなり困難であるというふうに思います。それで、先ほど申し上げましたように、当面証券会社が仮に信託銀行に進出するという場合には、参入するというふうな場合には、業務に関連のあるような、お客様の利便性を高めるため、しかも利益相反等のおそれがない業務として、例えば冒頭申し上げましたように特金とかファントラとかいったような、そういう証券業務に密接に関連する分野を中心にした子会社を設立するということが考えられると思います。全体としてはちょっとただいま私は想像がつきかねますので、お許しをいただきます。
  107. 井奥貞雄

    ○井奥委員 あといろいろありますが、時間が限られておりますので、それでは五代先生にちょっとお伺いを申し上げたいと思います。  冒頭に投資者保護ということを言われました。証券化の関連商品でございますけれども、この枠組みを整備することによって、いろいろな新しい金融商品というものが投資の対象としてこれは出てくるわけでありますが、消費者のお立場を代表されて、どういう商品が出てくれれば大変好ましいということがありましたら、一点お伺いをしたいと思います。  そして、もう一点でありますが、有価証券であっても貯蓄性の強いもの、金融機関の扱う商品でもとにかくハイリスク・ハイリターン、こういったふうに、こういう商品が出てきているわけでありますけれども、このような商品が各界のエゴによって利用者にとって大変わかりづらいものになってきているわけでありまして、特に安全と危険とのはざまにある商品というものが何となくぼやっとして出てくるような気がしてならないわけでありますけれども、こういったことを含めてちょっとお答えをいただければありがたいと思います。
  108. 五代利矢子

    ○五代参考人 御指名がありましたのでお答え申し上げます。  最初の御質問でございますけれども、確かにこのところ金融証券化は急速に進展しておりますし、御承知のとおり欧米においては多種多様な証券化関連商品の開発が行われておりますが、我が国においても、金融自由化国際化の進展を踏まえればこうした流れは必然的なものであろうかと思いますし、証券化関連商品の開発は今後ますます促進されてくることだろうと思われております。  今回の有価証券定義の整備は、昨年六月の証券取引審議会報告の考え方に沿いまして、投資性及び流通性のある証券化関連商品を幅広く証券取引法の不公正取引の防止に関する規制やディスクロージャーの規制などの対象にするものでございます。これによりまして新しい証券化関連商品につきまして市場整備及び充実、投資者保護が図られることは大きな流れとしては望ましいと思っております。ただ、これまで証券化関連商品につきましては、投資者保護観点から、販売先を制限しましたり最低販売単位を大口にするなど、いわゆる一般投資家への販売は事実上制限されてきたところでございます。そこで、今回の法改正によりましてこのような措置というものが見直されて、新しい証券化関連商品が一般投資家にも提供されることは望ましいことだと思っております。  先生の御質問のどういう商品がというところは、私自身素人でございますのでちょっと今ここでこういう商品ということは具体的に申し上げられませんが、消費者の側も今非常にいろいろ金融商品については勉強もしウォッチングもしておりますので、魅力的であれば必ずやその商品が売れるようになると存じます。  それからもう一つのお話の、有価証券であっても貯蓄性の強いものや、金融機関の扱う商品であってもハイリスク・ハイリターンのものが登場しっっあるということについてのお話でございますけれども、御指摘のとおり、金融自由化国際化の進展や利用者ニーズ多様化に伴いまして新しい商品が開発されましても、それが各業態業務分野にまたがるものであるケースがふえてきておりまして、現行制度のもとではその都度主として担い手をめぐる各業態の間の対立がございまして、御指摘のように、利用者にとって非常にわかりづらく、同時に利用者への提供が進まない傾向にあったというふうに思われております。  今回の法案では、各業態金融機関相互参入を図るため、業態別子会社方式を主体としつつ、利益相反の弊害の発生可能性の少ない業務につきまして本体での取扱方式を適切に組み合わせているというところでございますから、これにより金融秩序維持を図りまして、預金者及び投資者保護を徹底しつつ各金融機関利用者ニーズ対応した多様な金融商品あるいはサービスを提供することは、今後、今以上には可能になるというふうに考えております。
  109. 井奥貞雄

    ○井奥委員 どういう個別の商品がいいのかというのは、それぞれの機関で秘密裏に進められていることだろうというふうに考えておりますが、例えばワラントなんかの問題も一時期大変な問題を引き起こしましたけれども、これはエンドユーザーに対するきっちりとした説明がなされていなかったということが大変大きな問題でありまして、また、それぞれが確認書を取り交わすといったことも双方がやっていないということで、こういった制度とかあらゆる改革というのはその後から一つのものの体験を通して生まれてくるのだろうと思いますけれども、どうぞそういった意味を含めて、投資者とかそういった末端、いわゆる最終の購買者に対して、できるだけ公正性の中で競争された、そういうものがわかりやすいようなシステム販売されていくように、ぜひとも広い見地から今後とも御指導いただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。  それから、時間もありませんけれども、早崎会長さんにお尋ねをいたします。  制度改革によって信託分野での新規参入がかなりふえてまいったわけであります。信託銀行経営環境に与える影響というのは、とにかく今までは、何となくここだけは特別なんだという感覚が実は私たちにもあったわけであります。国内でも、国内銀行が七行と大和銀行が一社やっておられますし、それから外資系で九社、全部で十七社が参入をしているということでありますけれども、これからはそういう垣根というものがだんだん外されていくわけであります。証券会社のように、今回のように法律で定められているというのじゃなくて、運用方針で固まっているというふうに私たちは思っておりますが、信託銀行子会社の業務範囲というのは貸付信託と年金信託、その下に「等」というのがありますけれども、この「等」というのはファントラとか特金とか、そういうものを含めてお考えなのかどうかというのが一点であります。  それから、こういった中の信託市場というものが、いろいろな業界、業態から垣根を越えて参入することによって大変活性化するというふうに思っておりますし、この結果としてパイがふえるかどうか、こういったことにつきましてもちょっとお答えをいただきたいと思います。
  110. 早崎博

    ○早崎参考人 信託銀行子会社の業務範囲についてどのように考えているかという御質問がと思いますが、この点につきましては今後行政当局が判断されていくというふうに承知いたしておりますので、具体的には私からは差し控えさせていただきたいと存ずるわけでございます。  ただ、せっかくの御指摘でもございますので、冒頭にも申し上げたことではございますが若干敷衍させていただければというふうに思います。  冒頭でも、金融制度調査会の答申と実際とが乖離しないようにと申し上げたわけでございますが、そこでは信託銀行子会社の業務範囲につきまして、「貸付信託、年金信託等の金銭の信託等の一部を除く」というふうにされており、また併営業務でございます不動産仲介業務につきましても除外されているわけでございますので、一定の限られた範囲とされるものと理解しているわけでございます。  また、地域金融機関につきましては、子会社方式の例外的措置として本体による参入が認められておるわけでございますが、その業務範囲につきましては、金融制度調査会の答申で「土地信託、公益信託等」とされておりますように、子会社方式よりもさらに限定されたものになるというふうに理解しているわけでございます。  信託業務お客様との長期的な取引関係前提とするものでございますし、銀行業務、証券業務とは異なりまして、技術的、専門的な知識が要求されます信託業務経営につきましては、かなり長期的な視点で見る必要があるというふうに思っております。私ども業務の展開を振り返ってみましても、新しい業務を開始いたしました場合に、これを採算に乗せるのには相当の長期間を要したという経験が数多くございます。技術的、専門的知識が要求される信託業務の特性からいいまして、新規参入はやはり経営を健全に遂行し得る十分な財産的基礎を持って行われ、かつ的確な業務遂行体制などの業務基盤を整備した上で信託サービスニーズにしっかりこたえていくことが受益者の保護利用者利便観点からも望まれると思いますので、このような観点から一定の業務範囲からスタートした方が適切ではないかと考えているわけでございます。これによりまして、その範囲におきましてはきめの細かい、高度なサービスが提供されることが期待できるからでございます。  それから第二点の御質問で、今後どういうような市場活性化があると考えているかという御質問だと思いますが、今回の金融制度改革といいますのは、これも冒頭申し上げましたことの繰り返しになりますけれども競争を一層促進させることによりまして利用者利便をさらに向上させるということを目的としていると理解しておりますので、信託への新規参入によりまして競争が一段と激しくなるということは十分考えられるわけでございますし、既存信託銀行経営に与える影響は少ないとは言えないと思われるわけでございます。  しかし、それが改革の目的にかなう競争でありますれば、当然私どもとしても経営努力を重ねてこれに対応していかなければならないと考えているところでございまして、御指摘のように、信託市場という面から考えますと、今日のように信託業務が発展してまいりましたベース、すなわち国民各層の資産形成やその管理、運用ニーズ拡大してまいりましたのは歴史的に見ますと比較的最近のことでございまして、今後、競争の促進の中で信託を主業とする信託銀行が切磋琢磨して新しい信託商品サービスの開発に力を注ぐことによって信託市場が一層活性化拡大していきますことを期待しているところでございます。  以上でございます。
  111. 井奥貞雄

    ○井奥委員 ありがとうございました。  まだまだお伺いしたいことがたくさんあるわけでありまして、角道先生にも二点ばかり準備をしてまいったのでありますが、この次の機会にさせていただきまして、お許しをいただきたいと思います。  それでは終わります。
  112. 太田誠一

    太田委員長 小野信一君。
  113. 小野信一

    ○小野委員 社会党の小野信一でございます。  私ども審議の深化のために貴重な御意見を賜りましたことに心からの御礼を申し上げます。  最初に、五代先生にお尋ねをいたします。  金融制度調査会も証券取引審議会も長い間の審議を経てまいりました。そして、答申を行い、今回法案改正になったわけですけれども消費者といいますか利用者立場から見た場合に、審議会あるいは調査会の審議の内容と答申案と、そして今度の改正の中に、後退したのではないかという意見が多く聞かれますが、どんな御感想をお持ちになりますか。
  114. 五代利矢子

    ○五代参考人 御指名によりお答え申し上げます。  確かに長い間の審議の中ではいろいろな議論が出ておりまして、しかもそれがそれぞれのお立場からの議論がございましたので、全般的に最後の段階に来て非常にすっきりしたという感じにはいかないよう受けとめられる向きもあるやに伺っております。ただ、私自身立場といたしましては、今回の金融制度改革基本的な視点は、利用者立場国際性金融秩序維持、それに地域活性化であろうかと思っております。  このうち、特に利用者立場というところで考えますと、今回の制度改革は、相互参入により業態間の垣根を実質的に低くすることで金融資本市場における競争を促進し市場効率化を図るとともに、より多様で良質な金融商品サービス利用者への提供を可能とする方向でとらえたいと考えております。また、この改革によりまして利用者は、預入期間三年超の預金など金融商品多様化のメリット、また各種手数料の引き下げ、預金金利の引き上げ等の価格面でのメリット、それから自己のニーズに合った金融機関選択が可能となるメリット、それから先ほども申し上げましたが地方の住民の方々、中小企業、農林漁業者の方々に対する金融サービスがひとしく及ぶというメリット、このことについてはこれをメリットと受けとめることができるようになると思っております。また、こうした目に見えるメリットばかりでなく、金融資本市場効率化を通じた国民経済全体の効率化といった目に見えない形で制度改革のメリットを受けることになる、そのスタートではないかと思います。いろいろとまだ議論も尽くせず不十分なところもあったかと思いますけれども、少なくともその一歩が踏み出されたのではないかと理解しております。
  115. 小野信一

    ○小野委員 金融自由化利用者のために万能であるというような意見も聞かれるわけでございますけれども自由化の先進国であるアメリカの銀行は、コストが高くなりまして国際競争力を大変失って、今危機に直面をしておるのは御存じのとおりであります。日本金融自由化では、アメリカの自由化のこれらの内容から多くのことを学ぶことができますから、アメリカのような失敗は繰り返さないとは思いますけれども、どんな注意を払いながらこれから自由化をしていかなければならないか、意見がございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  116. 五代利矢子

    ○五代参考人 ただいま御指摘がありましたように、金融自由化が進むと金融機関が倒産するというようなことは、アメリカの例によって私も何度か伺っております。そういう場合、我が国では戦後銀行の倒産が起きていないこともございまして、国民の金融システムに対する信頼はかなり大きなものがございます。このため、金融自由化を進めるに当たってはこうした事情を十分踏まえ、信用秩序維持預金保護観点からいろいろと金融システムの安定性を確保するための環境整備こそ非常に重要なことだと思っております。例えば金融機関に対しての一層のディスクローシャーを求め、匡氏にとってその経営内容をよりわかりやすいものにするとか、預金保険制度意味や仕組み、さらにその限界についても国民に十分な情報を提供し理解を深める、そういった土壌づくりがあって初めて金融自由化のメリットが少しずつ浮かび上がってくるのではないかと思っております。
  117. 小野信一

    ○小野委員 銀行証券会社にのみ責任が課せられているような感じがいたしますけれども、これからは利用者の自己責任原則が大変大切になってまいるだろうと思います。そのための手がかりとして何が必要だとお考えになりますか。
  118. 五代利矢子

    ○五代参考人 お答え申し上げます。  このたび制度改革によりまして競争が促進され金融機関経営選択の幅が広がるということ、その結果として責任が伴うということでありまして、自己責任原則のもとで、各金融機関の盲主的努力のいかんによって金融機関利用者により選択を受けるという形を通じて明らかになってくると思います。これは金融機関の側の問題でございますが、また利用者の側も、先生の御指摘のございましたように、今後金融機関金融商品をみずからの責任において選択するわけですから、これまでとは違い十分理解し判断する力を養わなければならないと思います。このためにもディスクロージャーは重要な意味を有していると考えられます。ディスクロージャーは、金融機関がその企業内容を公開することを通じてその行動や財務内容を正し、経営健全性に関する自助を促進する効果を有しております。しかし利用者立場からいたしますと、金融機関のディスクロージャーの現況は、金融機関経営内容、健全性などを理解し判断する上で現在必ずしも十分なものとは言いがたいのであります。そしてこの点についての一層の充実を図っていく必要があると思います。それから、さきに申し述べましたように、これらの情報は、単にディスクロージャーといっても、一般の人々がわかりやすい形で提供されてこそ初めて効果があるものだと考えております。
  119. 小野信一

    ○小野委員 渡辺証券業協会会長にお尋ねをいたします。  今回、銀行証券会社が相互に子会社を持って乗り入れるということになりました。競争の促進を図るということでございます。しかし、両者に力の差が大きい場合には、大きい力を持っておる方に圧巻されることは歴史的に証明をされております。今回のこのような相互参入の場合に危険がないものなのかどうか、証券業界ではどのように見ておりますか。
  120. 渡辺省吾

    渡辺参考人 ただいま先生の御指摘のように、相互参入ということで、銀行は子会社形式による証券会社の設立によって証券界に参入し、そこでフェアな競争が行われるという物の考え方、私ども証券界も子会社形式で銀行を設立することができて、競争をフェアにそこで実現することによって効率的な市場が生まれるという考え方でございますが、今先生の御指摘のように、力の差があるではないかということでございます。おっしゃるとおりでございまして、先ほどお答えいたしましたように、私ども銀行を設立するといいましても、その資金量あるいは店舗網、人的な陣容、ノウハウにしましても、大変な投資が必要でございますので、現実には証券界はすぐにそれが簡単にできるなどとは思っておりません。しかし、一番の問題は、それ自身は証券界も力をつけて一生懸命それに対抗できるようなことをすればいいわけですけれども、問題は質的な面にございまして、日本銀行が持っております、先ほどもちょっと触れましたけれども、非常に特殊な性格、つまりこれは歴史的なものでございますけれども、例えばメーンバンク制にあらわれておりますような企業との関係、産業界に持っております力関係、それからまた株式を大量に保有しているといったようなことから証券業務の一部については特殊な関係があるといったようなこと、いろいろな点がございましで、銀行がそのまま証券界に力を持つということになりますと、これは今申し上げたような日本銀行の持っております力関係からいって、質的に非常に大きな問題をそこにもたらすのではないか、そのために資本市場がゆがんでいくのではあるまいかという点が非常に大きな問題でございます。それが証券取引審議会でも議論されまして、その点を避けるためにはそういった弊害を防止するいろいろな施策が必要であるということになりまして、俗にファイアウォールと呼ばれておりますけれども、そこに一つの障壁をつくることによって銀行のそういった過大な力が証券市場をゆがめないようにする、そういう形で相互に参入された新しい証券会社と従来の我々証券会社がフェアに競争ができるようにするということが期待されておるわけでございます。したがって、私は、そういったような弊害防止措置が厳重にきちっと実効のある方法で確保されるのならば、力関係は別といたしまして、当初の証取審の目的にせよ、今回の法案の持っておりますねらいにせよ、それは結構なことだというふうに考えております。
  121. 小野信一

    ○小野委員 先ほどの意見陳述の次に、法案には反対はいたしませんけれども、しかしと言って、五回その心配な点を申し述べておりました。そこで、午前中に銀行協会の会長にお尋ねしました。銀行が子会社の証券会社を持って設立する場合に、最少必要資金量は幾らか、ところが、資本金は百億以上ですから百億ちょっとでできるのではないだろうか、こういうニュアンスでございました。今度は逆に、証券業界が銀行業界に子会社を持って乗り入れる場合には、必要最低資金量は幾ら必要だとお考えになっておりますか。
  122. 渡辺省吾

    渡辺参考人 これも先ほどちょっと触れましたので、繰り返す面がございましたらお許しいただきたいのですけれども、私どもが仮に銀行を設立するといたしましても、これは各社それぞれの経営判断ですから、一般論でしか申し上げることはできませんけれども預金・貸出業務という銀行一つの中核のような業務がございますが、これはいわば規模の利益といったようなものが非常に働きやすいスケールメリットのあるものでございますので、膨大な資本と人材、店舗網といったようなことが必要かと思います。それは証券界の現状では到底実現することが困難であろうと思います。そこで、先ほども申し上げましたけれども、証券業務との関連でお客様の利便性を高めるといったような点から、特金やファントラ等の証券業務に関連の深いそういった信託業務参入する、そういうことに展開するというのが一番現実的ではないかと思います。  それで、資金量という点になりますと、これもはっきりしたことは申せませんけれども、例として、例えば本邦へ外国信託銀行の進出がございましたが、その場合には最低の資本金は十億円でございました。しかし、資金量といったようなことになりますと、実際には数倍とか十数倍とか、あるいはさらに大きな資金量が必要になるかとは思いますけれども、しかし、資本金だけで申しますとそういう例がございます。
  123. 小野信一

    ○小野委員 これからちょっと率直にお尋ねいたしますので、お気にさわるかもしれませんけれども、御意見を聞かせていただきたいと存じます。  今回の制度改革は、業界間のエゴばかりで利用者利便観点が欠けているのではないか、こういう批判がありますけれども、どういう受けとめ方をいたしておりますか。  もう一つ、今回の改正は、結局一部の大銀行、大証券の寡占傾向を強めるだけだという議論がありますけれども、内部から見た場合に、そういう危惧をお持ちになりますか。
  124. 渡辺省吾

    渡辺参考人 御質問は、業界間のエゴばかりで利用者の利便といったような点が欠けているのじゃないかといったような意味だったと思います。  しかし、私ども本当にそう思いますのは、結局利用者の利便といったようなことで、第一に利用者の利便に当たるものは何かと考えますと、それはやはり公正、透明で効率的、安定的な資本市場を我々が築いていき、そして企業投資家の方々が信頼されて、安心して利用していただけるような、そういう市場をつくるということが何といっても利用者の利便の第一ではなかろうかと思います。そのことは、先ほどもちょっとお話ございましたように、アメリカの例で見ましても、規制緩和によりまして銀行業務拡大して、銀行の倒産が盛んに多発いたしまして、一説では五千億ドルにも上るような救済資金を国民が結局負担したといったようなことも言われております。こういった制度の安定性と効率性とはトレードオフの関係にあると私は思います。したがって、この制度改革によりましてそういった金融システムの全体がきちんと行われるように、破綻しないように慎重に行われるべきじゃないか、そういう点で、アメリカでも金融近代化法案といったようなものが何回か審議されまして、そしてそういった点については、消費者の中からは必ずしも利便性あるいは効率性といったことだけではなくて、やはり安定性とかそういったものが期待されておるといった例がございます。そういったような法案が廃案になったという経過を私どもも聞かされております。したがって、今御質問の点につきましては、私はやはりそういった証券市場をつくることが利便性の第一であろうというふうに考えております。  それから二番目の御質問は、寡占化の傾向が進むのではないかという御質問でございましょうか。確かに、銀行証券子会社新規参入してきました場合には、証券会社のシェアはそれだけ低下してくるということかもしれませんけれども、しかし、銀行による市場の支配あるいは企業支配といったような問題が新しく発生してくる、これは先ほどもちょっと触れましたが、そういったようなことが発生する可能性が高いと思います。金融制度調査会の報告にも、新しい金融制度の構築に当たっては、寡占による弊害をもたらさないような歯どめの措置が必要だというふうに出ておりますので、その業務範囲を含めまして、金融寡占を防止するための十分な措置がとられることが必要なのではないかと思います。  それから、証券会社銀行を設立するのは、これは金融制度調査会の報告にもありますが、銀行に比べて証券会社は、資本力等の面から見て、ほかの業界を傘下に持つのほかなり困難を伴うというふうに指摘を受けております。銀行に比べれば、証券会社につきまして大規模な、例えば金融コングロマリットが出現するといったような可能性は極めて少ないと思います。いずれにしましても、今回の制度改革は適正な競争促進のために行われるものでございますので、金融寡占が発生するといったようなことのないように十分な弊害防止措置を期待したいと思います。
  125. 小野信一

    ○小野委員 アメリカでもファイアウォールは緩和の方向にあると聞きますけれども、現場に携わる皆さんはどのように把握をいたしておりますか。また、実際の運用の場合にはかなり弾力的に取り扱っておると聞きますけれども、いかがでしょう。  改めて、日本の場合にファイアウォールはなぜ必要だとお考えになりますか。同時に、必要だといたしまして、紙に書き法律化しただけでは実効力がないわけでありますから、これを担保する場合にはどのような具体的な措置が必要だとお考えになりますか。
  126. 渡辺省吾

    渡辺参考人 ファイアウォールが必要な理由と申しますのは、これも先ほどちょっと触れましたけれども日本の場合に、銀行が子会社の証券会社を設立することによって証券界に参入しフェアな競争をするといったような考え方、これは一つのテーゼとしてわかるわけですけれども、しかし繰り返しますが、日本銀行が持っております特殊な地位、日本銀行株式を持っている、メーンバンクである、それから役員を派遣しておる、社債の受託もやっておるといったようないろいろな点で、ほかの国の銀行よりもはるかに強力であるということが言えると思います。また、産業界に対する力がそれだけ強いということも言えると思いますので、先ほどから何遍も申し上げておりますように、参入自身については私ども反対するものではございませんけれども、そういった弊害が証券市場をゆがめないように、そこに弊害防止措置が必要である、それがファイアウォールであるということでございます。  先生ご承知のように、アメリカではファイアウォールが今度の法案より以上に、二十八項目にわたって築かれております。アメリカの商業銀行株式を持つことはできません。禁じられております。にもかかわらず、そういったファイアウォールによって銀行の持っております性格と証券業務との弊害防止措置が講じられているということでございますから、日本銀行はさらにそれよりも強い防止措置が必要であるということは明らかだと思います。  それで、それが緩和の方向にあるのではないかという御質問でしたが、そういうことはございません。アメリカではむしろ、そういった緩和のような物の考え方が出たこともございますけれども、これには非常に反対がございまして、消費者連盟なども反対をいたしまして、その法案はつぶれて廃案になってしまったといった例もございます。また、ごく一部に、総体的にではございませんが、ごく部分的な緩和は確かにございます。それは、例えば外国銀行に対して行われたものがあったり、あるいは銀行自身貸付債権証券化に関連して行われたもの等のごく部分的な緩和という、修正といったことはございますけれども、全般に緩和されたという傾向は聞いておりません。  それから、どういうふうにしてその実効を担保するのかといった御質問じゃなかったかと思うのですが、これは、日本の場合には今度の監視委員会といったものができるわけでございますが、アメリカでもあればFRBによって行われておりまして、設立の場合に条件をきちんと審査をいたします。と同時に、年次検査もいたします。そういった形で、スタートのときに審査をいたしますと同時に、その後それをフォローした検査をしているということでございますので、我が国でもファイアウォールがきちんと決められ、しかもそれが実効のある形で担保されることを私どもも強く期待しております。
  127. 小野信一

    ○小野委員 証取審で取り上げられているファイアウォールとはどのような内容のものですか。同時に、それ以外にどのようなものが必要だとお考えになりますか。日本において銀行証券子会社業務範囲はファイアウォールに関連してどのようにあるべきだとお考えになりますか。余り狭いと経営が成り立ちませんし、競争促進、利用者利便観点から見ると制度改革趣旨に合致しないということにもなりかねませんので、その点の御意見を聞かせていただきたいと思います。
  128. 渡辺省吾

    渡辺参考人 ファイアウォールの必要性は、先ほども申し上げましたのでもう繰り返しません。証取審でもこういう点については相当議論が重ねられたと聞いておりますが、証取審ではファイアウォールは十一項目述べられております。アメリカでは先ほど申し上げましたように二十八項目載っておりますけれども、証取審では十一項目載っております。  私も暗記しておりませんが、御参考までにちょっと申し上げてみますと、親会社のリスク証券子会社に及ぶこと。二番目は、証券子会社経営が特定の者との取引に過度に依存すること。三番目は、経営不振に陥った企業への親会社の債権の回収に充てるために当該企業が発行する証券を引き受け、販売すること。つまり、親銀行が自分の不良貸しを一般大衆にしょわせてしまおうということですから、そういうことは避けられたいということだと思います。四番目は、親会社が発行する証券を引き受けること。五番目は、証券子会社業務を支援するために、親会社が証券子会社取引の相手方に特に有利な条件で取引すること等、親会社が発行会社、投資者に直接の影響力を行使すること。六番目、証券子会社の親会社が資金の貸し付けを行う者である場合には、これは銀行ですが、証券子会社からの証券の購入を条件として親会社から顧客に信用を供与すること。これは今度の法案に入っております。七番目、証券子会社と親会社との間で証券子会社の有利な条件で取引すること、これも法案に入っております。八番目、証券子会社が引き受けた証券を、引き受け後一定期間内において親会社が購入すること。九番目、発行会社、投資者等に関する非公開情報を親会社から子会社に伝達すること。十番目、取締役の兼任あるいは店舗を共用すること。取締役兼任は法案に入っております。十一番目、親銀行がその影響力を及ぼすことができるような企業が発行する証券を証券子会社が引き受けること、こういったようなことが証取審で十一項目述べられております。しかしその一部は、今申し上げましたように法案に入っておりますが、入っておるものは数が少のうございます。  それで、証券界といたしましてはそのほかに、今のお尋ねですと例えば証取法六十一条の引受人の信用供与の制限といったようなこと、証取法四十五条の社債募集の受託の禁止等についても当然証券会社と同等の規制をする必要があると思いますし、さらにクロスマーケティングと申しまして、銀行証券会社が例えば同行して商売をするといったようおことがクロスマーケティングでございますが、そういったものの禁止、それから人事のノーリターンルール、これは一度証券に入った役職員が銀行く戻るという、その約束もしくは事実上そういったようなことによってリターンする、ノーリターンルールと呼んでおりますが、それとかメーンバンク規制、これもメーンバンクである場合の規制についてでございますが、こういったようなことにぜひ厳正で実効性のある規制を講じることを証券界としては強く希望しておるわけでございます。  まだ御質問ございましたでしょうか。——よろしゅうございますか。失礼しました。
  129. 小野信一

    ○小野委員 株式ブローカー業務をなぜ銀行に認めないとお考えになりますか。  続いて、信託銀行子会社でどのような業務の認可をお望みになりますか。
  130. 渡辺省吾

    渡辺参考人 これもちょっと先ほど触れましたので、繰り返しになりまして申しわけございませんが、日本銀行企業株式を大量に保有しております。また、融資を通じて取引企業の内部の情報がよくわかっております。したがいまして、株式ブローカー業務参入いたした場合には、証券市場での公正な取引の確保に問題が生ずるおそれがあるんではないかということで、株式ブローカー業務を認めないということでございます。  もう一つの理由は、全然あれが違いますが、これも先ほど触れましたように、中小証券はもう手数料収入の中の七〇%以上ぐらいを株式ブローカー業務に依存しておりますから、銀行の進出によりましてこういったことの競争関係に立ちますと、経営基盤への影響が非常に大きいわ付でございます。また、そういった中小証券の数はもう全国二百六十五社のうちで大部分でございますので、そういった経営に問題が生じれば市場の安定性を損なうというおそれも強いわけでございます。そこで当分の間法律によってこれを禁止するということになったわけでございます。
  131. 小野信一

    ○小野委員 先ほど銀行協会の会長にもお尋ねしましたけれども、アメリカでは銀行証券会社の垣根を低くしてファイアウォールを厚くするという方向をとっており、ヨーロッパ、ECでは逆にユニバーサルバンクの方向で進んでおる。日本の場合にどちらが進むべき方向なんだろうかと見る場合に、顧客利便の観点からはユニバーサルバンクの方がすぐれておるのではないか、こういう見方があるんですけれども、業界ではどのように分析しておるでしょうか。
  132. 渡辺省吾

    渡辺参考人 顧客の利便性からいってユニバーサルバンキングの方が便利ではないかという意味の御質問だったように思います。それともアメリカのように障壁を低くして、そのかわりきちっとして、相互参入するけれども弊害防止規定をきちんとするというやり方とどうかといったような意味の御質問のように理解いたしましたが、よろしゆうございましょうか。——ユニバーサルバンキングは、これは御承知のようにヨーロッパでは主流になっているわけでございます。しかし、金融制度調査会の長年の検討の結果も、日本ではユニバーサルバンキングは、それをとらないということに結論を下しております。その理由は、これは私の意見も入りますが、やはり資本市場がそのためにゆがめられて発達がおくれてしまう、未発達になるということが起こるわけで、これの一番いい例はドイツの資本市場だと思います。  ドイツは御承知のようにユニバーサルバンキングでございます。しかしドイツの資本市場は非常に未発達という状況になっております。そのかわりドイツでは銀行による企業の支配それから市場支配というものが著しゅうございまして、資本市場は二義的に未発達になっておるということでございますし、また、そういった問題からインサイダー取引が多発しておりまして、これが問題になっているといったようなこともございます。  こういった点から考えまして、日本では金融制度調査会の方の結論は、資本市場金融市場が相互に車の両輪としてバランスのとれた発展をしていく、そういう形が日本の経済にとって望ましいんだという結論を下しておりますが、私もそういうふうに思います。したがいまして、今回の法案のように銀行、証券が相互に参入をいたしまして、フェアな競争をすることによって効率を上げる、しかし、何遍も申し上げるようでございますけれども、その弊害の防止についてはきちっと決めて、それをしかも担保するという形によって両市場の均衡のある、車の両輪のような発展が期待されるのでございます。車の両輪が片一方が大きくて片一方が小さければどんどん曲がってしまいます。ですから、やはりそれはバランスのとれた両輪であることが望ましいのではなかろうか、そのためにはユニバーサルバンキングでない方がいいのではないか。六十五条の精神は今日的意義はあると証取審でも結論づけておられますので、そういう形で今後進んでいくことが日本の経済にとってよろしいのではないかというふうに考えております。
  133. 小野信一

    ○小野委員 最後に、今般の制度改革機関投資家向けの私募市場が創設、拡大すると思いますけれども私募についてどのようなお考えをお持ちになっておりますか。
  134. 渡辺省吾

    渡辺参考人 これも昨年の六月の証取審報告で方向が打ち出されております。発行者のニーズやそれから機関投資家の発達を踏まえまして、一定の機関投資家だけを対象としたディスクロージャーを必要としない、しかも現在よりも大幅に流通性が増大した私募を新設することも褒言しておるわけでございます。私どもは、資本市場の望ましい姿は一般投資家が広く参加できる公募市場の方が本当は中心であるべきだというふうに考えておりまして、私募についての法律整備が公募市場の機能発展に悪影響を与えて市場全体の機能が損なわれないようにすることが必要だというふうに考えております。  繰り返しますと、私募市場現状から見まして、それが増大し、それに法的ないろいろな整備をするということは、これは必要なわけでございますけれども、本来一般投資家が参加する公募が中心であるという考え方は、これは証取審でもそういうふうに打ち出しておりますので、私どももそのつもりでこれからやっていきたいと思います。  それで、今度の改正法案では私募に関して、しかし大部分が政省令にゆだねられております。したがいまして、先ほど申し上げたような証取審報告の趣旨を踏まえまして、私募市場だけが肥大化するといったようなことのないように、そういった制定を行っていただきたいというふうに思います。  それから、私募のあっせん業務銀行も行えるようにするということはやむを得ないと思いますけれども、その場合に公正な競争条件を確保し、それから利益相反といったような弊害防止の観点から、私募のあっせん業務私募を受託する受託業務を兼ねるということは禁止する措置が必要ではないかというふうに考えております。
  135. 小野信一

    ○小野委員 ありがとうございます。  角道中央金庫理事長にお尋ねをいたします。  今金融自由化がある程度進みまして、各銀行ともに調達コストが増大をいたしております。農協系統の収支も大変厳しいと私は思っております。今後ますます自由化が進みますと、金融機関競争が激しくなってまいります。したがって、中小金融機関の合併あるいは再編が避けられないものだろう、こう思います。こういう金融自由化の中で農協経営の困難性に農協自身がみずからどのように対応していかなければならないとお考えになっておるのか、金庫の理事長としてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  136. 角道謙一

    角道参考人 お答えを申し上げます。  金融自由化というのは、私どもも既にこういう国際化の流れは必至であるというふうに考えておりまして、平成元年度から自由化チャレンジ計画というものを策定をいたしまして、個々の農協ごとにコスト計算であるとか経営の合理化をどうするかとかいうようなことをいろいろ試算をして、それぞれの単協、信連がこれらの自由化にたえていくようなことを計画をいろいろやってきたわけでございますが、さらにこれらの金融自由化が進んでまいりました現状におきましては、単なる計画ではなしにこれをさらに運動として発展をさせていくということで、本年度から自由化チャレンジ運動ということをいたしまして、例えばローンであるとか定期積み金であるとか振替決済とか、そういうものの事業推進を進めていく、また反面、経営合理化ということで経営効率化を進めるとかあるいは自己資本の充実を図っていくとか金融リスクの変動等にどう対処していくかというようなことを運動として今進めてきております。  またさらには、抜本的には、信用事業だけではございませんで、農協をめぐる農業情勢というものもこのところ非常に厳しくなってきておりますので、農協自体の抜本的経営刷新あるいは事業方針の改善を図っていくという観点から、昨年の十月の第十九回全国農協大会におきまして、非常に大きな二十一世紀に向けての農協の改革方針を示しております。その柱の一つになりますのは、冒頭に申し上げましたような、現在三段階ございますがこれを将来には基本的には事業、組織とも二段階に持っていく、またその前提といたしましては農協の合併を進めていく、現在約三千四百余りございますが、三年前の農協大会におきましては一千農協に統合していくということを目標としておりましたが、これをさらに進めていくということをさきの農協大会で決めまして、現在では約八百弱の計画の方向に収れんをしております。  そういう意味で、全国段階あるいは県段階におきましても、来年の三月までに具体的計画を立てるということを現在進めておりまして、抜本的な見直しの中でこれからの農協を二十一世紀に向けて魅力ある腰の強いものにしていく、また、その中におきまして信用事業につきましても、これからの金融自由化にたえていける、そういう足腰の強い体質にする、同時に、基本的には組合員あるいは地域の要望に、ニーズにこたえていくということを私ども念頭に置いておりまして、これの運動を指導を進めているところでございます。
  137. 小野信一

    ○小野委員 今回の制度改革は、私から言うまでもございませんけれども銀行信託、証券の相互参入による競争の促進を通じて利用者の利便の向上を図るということでございます。したがって、農漁協系統も、銀行や信金に比べておくれておる国債の窓口販売やディーリング、外国為替の取り扱いを認めることによって、組合員取引先への高度な金融サービスの提供を可能にするということでございます。  しかし、現在の農協の実力からすれば、法制上幅広く機能が拡充されましてもこれに参入できる農協は数は大変少ないのではないか、こう考えます。したがって、農協系統として今回の制度改革のメリットは何であるのか、お聞かせ願いたいと思います。  同時に、農協から見た場合に、今回の制度改革で残されたものは何だと、早急に解決してほしいものは何だとお考えになりますか。
  138. 角道謙一

    角道参考人 お答えを申し上げます。  今回の金融制度改革は、本来的にはやはり消費者利用者の利便にこたえるということが第一の目的であろうと思います。その意味で、私ども農協系統組織におきましても組合員あるいは地域住民という方々の需要にこたえていく、そうして今始まろうとしております厳しい金融競争の中で系統金融機関がそれぞれに生き延び、さらに発展をさせていくということが基本だと思います。  そういう意味で、現在の状況で見ますと、信託あるいは証券業務等につきましても、それぞれ地域あるいは組合員ごとに需要がございます。また、先ほど言われました外国為替であるとか国債等の公共債の窓口販売、ディーリングというものにつきましては、他の金融機関の大半が既に認められております。そういう意味で現在の農協系統組織の機能としておくれている部分をまずほかの金融機関並みにそろえていただく、そうしてこれからの競争に向かっていくということがまず第一の前提であろうかと思っております。  そういう意味で、制度面におきましてはやはり他の金融機関並みに、金庫につきましては証券、信託につきましては子会社による参入、あるいは県段階の信運におきましては本体において参入をする、あるいは子会社の形で参入をする、これをそれぞれの信連の経営状況あるいは人材その他の地域の要望等、これを判断をしてやっていく。また農協につきましても、これは信託でございますが、そういうふうに機能としては与えられてまいりますが、具体的にこれをどのようにやっていくかというのは、やはり冒頭に申し上げましたように、三千余りの農協、千六百の漁協が一斉にやるというわけではございませんで、大きいものには三千億の資金量を持っておるような農協もございます。また非常に小規模の農協もございます。漁協もございます。それぞれの立場立場でどの程度の規模でどう始めていくかというのはそれぞれの組合の経営判断にかかるかと思っておりますが、当面、信託等につきましては、現在、生産緑地法等によりまして農地の転換等は考えられておりますし、そういう土地についての信託というのはいろいろ現地農家におきましても要望もございますし、そういう要望の強いところから、まずそれぞれの身に合ったところからそういう規模で進めていくというように考えておりまして、それなりに時間もかかろうかと思いますけれども、それぞれの地域組合員あるいは住民の要望にこたえていくということを基本に、それぞれの組合の形によりましてこれから考えていくということになろうかと考えております。
  139. 小野信一

    ○小野委員 それでは最後に、信託協会早崎会長にお尋ねをいたします。  今回の制度改革については、信託銀行の協会の方も基本的に賛成だ、こう考えてよろしゅうございますか。
  140. 早崎博

    ○早崎参考人 お答え申し上げます。  信託業界の考え方は、冒頭申し上げました内容に要約されておりますので、重複する点をお許しいただきまして、私ども考え方を別の角度から申し上げたいと存じます。  制度改革は、競争を一層促進することによりまして利用者利便をさらに向上させることを目的として行うものでございますので、信託業界としてもこれを前向きに受けとめております。さらに敷衍して申し上げますと、制度改革は各金融機関にとりましてどの部分で特徴や強み、すなわち競争力というものを発揮していくのかという将来の進路をそれぞれの主体性に基づいて判断する一つの転機ではないかというふうに考えているわけでございます。したがいまして、制度改革を。守りとしてとらえるのではなくて、新たな業務展開を図るチャンスとして、または各信託銀行がみずからの将来の姿を選択して、それに向かって企業としての体質を転換していくまたとない機会として前向きにとらえたいということでございます。  以上でございます。
  141. 小野信一

    ○小野委員 午前中には、銀行協会の会長から、証券業界の子会社の業務内容について聞きました。そこで、信託協会では子会社の取り扱う業務範囲について、どんなお考えを持って、どんな希望をお持ちになっておりますか。
  142. 早崎博

    ○早崎参考人 ただいまの御質問は、信託銀行子会社についての業務範囲というふうに承ってよろしゅうございますか。——先ほど御説明させていただきましたことと重複する面があるかと存じますが、お許しいただきまして申し上げたいと思うわけでございますが、信託銀行子会社の業務範囲につきましては、今後行政当局が判断されていくと承知いたしておりますので、具体的には差し控えたいわけでございますが、せっかくの機会をちょうだいいたしましたので、冒頭申し上げましたことを若干敷衍させていただくことにさせていただければと思うわけでございます。  冒頭でも金融制度調査会の答申と実際とが乖離しないようにというふうに申し上げたわけでございますが、「貸付信託、年金信託等の金銭の信託等の一部を除く」というふうに、金融制度調査会の答申におきまして信託銀行子会社の業務範囲が定められているわけでございますし、また、併営業務であります不動産仲介業務につきましても除外されておりますので、一定の限られた範囲とされるものと理解しているわけでございます。また、地域金融機関につきましては、子会社方式の例外措置として本体による参入が認められているわけでございますが、その業務範囲につきましては、これも金融制度調査会の答申で「土地信託、公益信託等」とされておりますように、子会社方式よりもさらに限定されたものになるというふうに理解しているわけでございます。  このように考えておりますのは、一定の業務範囲からスタートした方が、その範囲におきましてはきめの細かい高度なサービスが提供されるということが期待できるからでございまして、仮に信託銀行子会社の業務範囲を広くいたしますと、多岐にわたります。務の遂行体制というものが整わずにかえって利用者がきちんとしたサービスを受けられなかったり、これまで長年にわたりまして形成されてきました業態間の競争条件の相違に対する配慮というものが十分になされないまま競争が行われた場合には、真の利用者利便にかなうものとは言えないおそれがあるというふうに考えるからでございます。  このように、利用者利便の向上や競争条件公平性確保などの観点から、信託業務への参入は一定の限られた範囲からとして、その範囲できめ細かい高度なサービスが提供されることが適切であると考えておりまして、制度改革による相互参入範囲、テンポについては、金融秩序に混乱を来さないよう、一歩一歩着実に進めていただくことをお願いしたいというふうに思っております。  先ほどから金銭の信託につきましてお話もちょっと出ておりますので、私ども考え方を金銭の信託について申し上げさせていただきますと、今回の金融制度改革の目的は、競争の促進によりまして信託を初め各金融機関の取扱業務をさらに発展させていくことにあると理解しているわけでございます。貯蓄商品多様化というものは、金利自由化の進展につれまして、信託方式によらなくてもこれを図ることができるというふうにまず考えられるわけでございます。  二番目に、合同運用指定金銭信託、単独運用指定金銭信託、ファンドトラスト、特定金銭信託というような商品につきましては、それぞれ大口定期などの預金とかあるいは証券投資信託とか、投資顧問とかカストディーとか、こういうような業務と競合関係にございまして、業態間の競争の中で利用者利便の向上が図られてまいりました。  三番目に、信託は財産の管理、運用を目的とする制度でございまして、金銭の信託運用成果を管理するのに十分なシステムが必要となるわけでございます。設立間もない信託銀行子会社に膨大なシステム投資を強いることになる金銭の信託を取り扱わせるということは、収支面からいっても適切ではないように思うわけでございます。  四番目に、広範な店舗網と企業に対する集積度の高い地位を持っております親銀行などが信託銀行子会社と一体となった営業展開を行うことがないように、親会社と信託銀行子会社との間には弊害防止措置を設ける必要があるわけでございますが、これは先ほど来お話の出ております銀行と証券との間のファイアウォールとはまた別の角度から弊害防止措置が必要だというふうに考えているわけでございますが、それとともに、銀行業に近似する性格もある金銭の信託につきましても、業務範囲から外しておくことが妥当だというふうに考えるわけでございます。  金銭の信託のような既存信託銀行経営に大きな影響を与える業務を認めることになりますと、兼営法の改正法案にありますように、金融秩序を乱すおそれも起こり得ると心配もいたしておりまして、こうした申し上げました理由から、金銭の信託信託銀行子会社の業務範囲から除いていただきたいというふうに考えているところでございます。  以上でございます。
  143. 小野信一

    ○小野委員 信託への新規参入に関して業界が主張している競争条件公平性とは、具体的にどういうことを言っておるのですか。
  144. 早崎博

    ○早崎参考人 お答え申し上げます。  これも先ほど来お話が出ていることを引用させていただきますと、力に差があるということを競争条件公平性というふうに私どもは申しているわけでございます。これも繰り返しになりますけれども、今回の制度改革は、金融サービスに対しますニーズ多様化にこたえるために各業態間の競争を一層促進して利用者利便をさらに向上させることを目的といたしまして、各業態間で子会社方式による相互参入を図っていくこととされているわけでございます。しかし一方、これまでの我が国金融制度を考えてみますと、業態別の分業体制がとられてまいりました。その歴史の積み重ねは、例えば都市銀行信託銀行との間では、国内平均で三百二十対五十六といった店舗数の大幅な格差がございます。すなわち五・七倍になろうかと思いますが、こうした大幅な店舗数の格差や、この格差に起因いたします個人企業との取引集積度の違いにあらわれているわけでございます。このように、これまで長年にわたりまして形成されてまいりました業態間の競争条件の相違に対する配慮が十分になされないままに競争を行うということは、種々の弊害を引き起こすおそれというものも考えられるわけでございまして、制度改革の意義に反する事態を招きかねないわけでございます。  そうした意味から、ユニバーサルバンキング考え方が排除されまして、信託分野への参入信託を主業とする子会社方式によることとされましたのはまことに適切な判断であったと私は評価しているわけでございます。しかしながら、その場合でございましても、子会社の独立性というものが十分確保されずに、親会社の力が信託銀行子会社の取引関係にストレートに反映するような事態というものは既に申し上げました趣旨から避けるべきでありまして、親会社の実力の差に影響されることのない独立性のある信託銀行として、お互いに創意工夫と経営努力によって競争していく状態が必要であるというふうに考えるわけでございます。先ほども申し上げましたように、銀行と証券との間とはまた別の意味での弊害防止措置ということを考えたいということでございまして、こうした観点から、信託銀行子会社につきましても、親会社の影響力が遮断されて、競争条件公平性を確保して適正な信託取引が行われるための措置というものを十分に検討していただきたいというふうに考えているわけでございます。実質的に親子一体運営というものがなされますと、本体参入と何ら変わりがないということになるからでございます。したがいまして、例えば親会社からの役職員派遣の制約、親会社の店舗網による信託銀行子会社の商品販売禁止、さらに、店舗や施設、コンピューターの共用禁止、親会社の取引先に対する信託銀行子会社との取引誘導の禁止、親子会社間の通常の取引と異なる条件での取引の禁止の具体的内容等々、親子間の取引のあり方を初めとする業務隔壁をどのように設けておくかが検討の対象になるというふうに考えております。  以上でございます。
  145. 小野信一

    ○小野委員 長時間、御意見ありがとうございました。これで終わらせていただきます。
  146. 太田誠一

    太田委員長 宮地正介君。
  147. 宮地正介

    ○宮地委員 公明党の宮地正介でございます。  きょうは、大変御多忙の中、参考人の皆さんには大蔵委員会にお越しいただきまして、まず心から感謝を申し上げる次第でございます。  きょうは、二十五分間という限られた時間でございますので、端的にお伺いをしてまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  まず評論家の五代参考人にお伺いしたいと思います。  今回の金融制度証券取引制度改革一つの目的の中におきまして、自由化あるいは国際化、こうした問題と同様に、国民の信頼回復というのが非常に大きな視点になっているわけでございます。昨年来、我が国におきましては金融・証券の不祥事事件が多発をいたしまして、国民、利用者立場から、日本金融界あるいは証券界はどうなっているのであろうか、特に、大変不公正な仕組み、また、そうした制度的な問題に欠陥があるのではないか、国民は不信を募らせると同時に大変な怒りを持っているめでございます。そういう中での今回の改革については、国民もそれなりに大きな期待を持っていたと思います。さきの証券取引法の改正あるいは大蔵省設置法の改正によりまして、再発防止のための機構的な改革が行われました。御存じのように、証券等の監視委員会の、いわゆる日本版SECに近い形の新たな機構が設置をされました。また、金融におきましても、今後、大臣官房の検査部に一本化をされてまいりますが、果たして国民の期待に沿ったそうした機構改革であろうか、この点が一点。また、今後、そうした再発防止の新たな機構によりましてそうした不祥事が二度と起きない、そうした実効性が上がるのであろうか、こういう疑問が国民の間に広がっているわけでございますが、率直に言って、利用者立場から五代参考人はどのように受けとめておられるかお伺いをしたいと思います。
  148. 五代利矢子

    ○五代参考人 御指名によりお答え申し上げます。  今お話がございましたように、私たち国民の側でも厳しい批判を持ってこの両業界を見詰めていたことは事実だと思います。  さて、昨年の不祥事の原因が何であったかと考えますと、まず第一に、金融資本市場の適正な競争が行われていると私たちは思っていたわけですが、これが実は損なわれていたこと、それからもう一つは、金融機関の自己責任認識、それから組織内部の問題でございますが、内部の管理体制というのが非常に不十分であったこと、それから、取引の公正の確保にわたる法令その他のものをきちんと守っているかどうかという、状況に対する管理の機能が決して十分ではなかったこと、こういうことを挙げることができるかと思います。つまり、平たい言葉で申しますと、私ども利用者の方の世間一般での常識というものが業界の間の常識として通用しないのではないかというあたりが国民から激しい批判を受けたことだと思います。  ところで、今回の公正確保法案制度改革法案の二法案でございますが、一、業態間の相互参入を図り金融機関相互の適正な競争を促進すること、次に、自己資本比率規制の根拠規定の新設やディスクロージャー規定の整備などを行い、金融機関の自主規制と自己責任原則を尊重しつつ経営の健全を図ること、そしてもう一つは、今先生もお話しになられましたように、証券取引等監視委員会を設置するほか、さらに業界の自主規制機関の強化を図ることなどが盛り込まれております。これで十分かどうか、ここは議論のあるところだと思いますが、少なくともこういったことが、この不祥事への反省がこの法案の中に幾つかは盛り込まれているというふうに私自身は考えております。  次の御質問は、ファイアウォールのことに関してでございましょうか。恐れ入りますが、申しわけありません。
  149. 宮地正介

    ○宮地委員 どうぞお座りください。  さきの証券不祥事の事件が起きまして、一番国民が不信を持ったのは、大蔵省というその指導監督に当たる当局と実際にそれを運営する業界、この関係の中に、野球でいいますと、アンパイアである審判と実際に出ているコーチ、このコーチと審判が一体になっているんじゃないか。これはまず仕組みの上からきちっと分離をしないと、やはりこうした不祥事の事件というのは再発防止ができないんじゃないか、こういうことで、国民の間からも、参考人御存じのように、アメリカ型のような証券取引委員会という厳しいSECのようなものを独立機関としてつくるべきではないか。やはりアンパイアとコーチが一体になったような今の仕組みでは再び同じような不祥事が起きるのではないか、こういう反省の中で、今回、証券等取引委員会という新たな国家行政組織法の八条機関ができ上がったわけです。我々としては、一歩前進だな、こういう立場から、さき法案については賛成をして、参議院も可決、成立したようでございます。しかし、国民の間には、大蔵省の一つの傘の中で八条機関という機関ができたのは、これはやはりまだ弱いんじゃないか、本来はやはり独立した三条機関ぐらいにすべきじゃないか、こういう厳しい御批判もあるわけです。その点について本当はお伺いしたかったので、後ほど一言で結構です。  それで、きょうは一番大事な証券業協会の渡辺会長見えておりますから、会長さんのところが今回の証券不祥事の事件の一番の大事なところですから、ずばり、今回のこうした前段の大蔵省設置法による改正あるいは証取法の改正、今回のこの金融・証券制度改正、これで二度とあのような不祥事は起きない、こういうふうに確信を持、ってよろしいでしょうか。この辺についての御見解を伺っておきたいと思います。
  150. 五代利矢子

    ○五代参考人 ただいま先生が御指摘のように、SECの設立に関しては、学者の方々の御説を伺っていても、あのような機関を設けるべきだという御意見は新聞その他で拝見しております。ただ、私自身は、今先生がおっしゃいましたように、とにかく一歩前進したんだということを一応は評価したいと思います。そして、前進したこの機関が果たしてそれだけの機能をきちんと果たすかどうか、このことについて国民は、前のことがございますから、注意深く見守っていかなければならないと考えております。
  151. 渡辺省吾

    渡辺参考人 大変申しわけございません。今後二度と不祥事が起きないように、もう証券界挙げてこれに取り組んでおります。  ですけれども、先生の御質問にお答えするといたしますと、監視委員会ができまして、それにつきましてとやかく申す立場にはございません。私どもは監視委員会によって監視され、またいろいろと検査されるという立場にございますので、申し上げません。  それから、やはり私どもは免許会社ということに今でも引き続きなっておりますので、大蔵省は免許を与えた業者に対してそれなりの監督なりいろいろな措置をとられると思います。それは当然だと思います。ただ、御承知のように、従来非常にたくさんの通達による行政指導といったような監督もございましたが、これは大幅に整理されまして、法令によるものは法律にする、それからそうでないものは私ども証券業協会の自主規制機関としての機能を法律上きちっとはっきりさせていただきまして、そして自主規制にこれをゆだねるという形に整理されました。したがいまして、大蔵省は免許制の親元ですから、それなりのいろいろな処置をとられることは、これは当然私どももそれをお受けするというつもりでおりますが、証券業協会は新しく自主規制機関になったわけでございますから、その責任を重大に受けとめております。  それで、本来そういった監視委員会ないしは罰則を強化するといったようなことだけでこういりた不祥事件の再発防止、これはもちろん重要なことですし効果はございますが、自主規制機関としては、そういうことではなしに、自主規制と申しますのはもう改めて申し上げるまでもございませんけれども、自分たちでやっていいことと悪いことの自主ルールをきちっと決めたわけですから、それを必ずきちっと守るということが確保されれば、そういった不祥事件というのは大幅に、ないしは未然に防止することができるはずであるということでございましょうから、そういった形で私どもの協会も、あるいは業界に対しても、そういうことで今現に臨んでおります。それから私どもの協会の中にも当然のことでございますけれども監査機構というものがございまして、それも今までは業界の会社のいわば指導といったようなことをやっていたわけですけれども、これからはその目的も変えました。つまり、法令の遵守状況がどうかということを監査の目的にいたしました。そして、人間も大幅にふやしました。したがって、我々が自主規制機関としてそういうことに取り組むことに全力を挙げるということになっておりますので、監視委員会や大蔵省の監査に依存しないで自分たちでやろうという気構えておりますので、どうぞ御了承いただきたいと思います。
  152. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ渡辺会長には、今回のこうした再発防止に対する改革、また、制度改革、機構改革、こういうものを生かして国民の信頼にどうかこたえ得るこれからの御努力をぜひ私は御期待と、また要請したい、こう思うのです。  もう一点。私どもが今非常に懸念しておりますことは、先ほど渡辺会長の御報告ありましたように、今証券市場が非常に低迷しております。収益も非常に減益で、また従業員の退職状況も過去にないぐらいに非常に厳しい状況にある。そういう中において今回の金融・証券の制度改革、これが災いを転じて福となす、こういう方向に持っていければ非常によいことだな、こういう感じを我々持っておるわけでございますが、まず会長にずばりお伺いしたいのは、この制度改革によって国民の信頼回復を得ることによって、企業マインドとかあるいは国民の、投資家の冷えたマインドというものが活性化する方向に、プラスに働くとお考えかどうか、この点が一点でございます。  もう一点は、この低迷する市況を活性化するための特効薬というのはなかなかないと思います。私どももこの委員会で再三、宮澤総理を初め大蔵大臣にも、景気の浮揚のためにもっと思い切った対策を講じなさい、今回の前倒し七五%や金利の再引き下げだけでは近い将来また先細りになるのではないか、秋口には大型の補正予算を組んで内需拡大で景気の追加対策をやるべきだ、こういう檄を飛ばしているわけでございますが、渡辺会長、活性化について、今後の対応について、どうしたらいいとお考えなのか、この二点、お伺いしておきたいと思います。
  153. 渡辺省吾

    渡辺参考人 今度の法律改正市場信頼回復し、活性化につながるかどうかといったような第一の御質問でございました。二番目には、その活性化の方策として何かあるかということでございましたが、そういうことでよろしゅうございましょうか。  冒頭の陳述でも申し上げましたように、現在の株式市場は特に大変惨めな状況でございます。そういった低迷しております原因はいろいろございますけれども不祥事に関連して信頼が失われた、個人投資家市場復帰がまだ十分でないといったようなことが一つあります。もう一つは、過去においてエクイティーファイナンスが、ちょうどバブル現象によってエクイティーファイナンスが市場の圧迫要因として今でも残っておるといったようなことが一つ大きな原因だと思います。  それで、今回の金融制度改革は、有効で適正な競争を促進することによりまして証券市場に対する信頼回復を図るということをねらい、また、我が国金融資本市場効率化活性化を通じて健全な発展に資するということがねらいでございますので、私どもも、先ほども申し上げましたように、その必要性については十分に理解しておるわけでございます。この法律成立いたしますことによってそういった事態が改善されることを強く期待しております。  今お話しのように、この活性化についての特効薬はないという御指摘でございましたが、各方面からもいろいろと、株式市場、こんな状況では困るということで、政府でも、あるいは産業界でも、金融界でも、大変な御心配をおかけして、私どもとしても何とかこれに取り組まねばならぬと思っております。御承知のように、政府でも三月三十一日には緊急経済対策を取り上げていただきまして、大変そういう意味では異例なこととして私どもは感謝しているわけでございますけれども一つ一つ努力を積み重ねていく以外にこれはといった特効薬、即効薬があるわけではございません。証券界は、まず自分たちでできることは何かと申しますと、昨年の不祥事で失われました投資家信頼を早く回復して、先ほども申し上げたように、特に個人投資家を中心として市場に復帰していただくということ。幸いにして、最近幾らかそういった動きが見えておりますけれども、まだまだ私どもの努力が足りません。一生懸命で努力をこれからも続けてまいります。  そして、信用回復のために、私ども協会としては倫理綱領をつくったり、それから営業姿勢についてのいろいろな、例えば営業のガイドラインをつくるとか、管理者体制をつくるとか、あるいは暴力団対策をとる、利益配分ルールを決める、いろいろなことをやってまいりましたけれども、自分たちだけの努力では、率直に申しまして不十分な点がございます。例えば、産業界にお願いしておりますのは、一般投資家に対して配慮のある投資家対策をとっていただきたいということ。それから、エクイティーファイナンスに限ったことでございますけれども、実質配当性向を向上させていただきたい。新しい利益配分ルールについても、御理解をいただいて実施いたしております。それから、政府あるいは諸先生方にお願いをいたしたいのは、何と申しましても、日本経済が投資家から見て活力のある景気回復の足取りを示すということが投資家にとって非常に大きな関心事でございますので、機動的、弾力的な財政金融政策によりまして、日本経済の成長を持続していただきたいということはお願いでございます。それからまた、よく言われることでございますけれども、国際的に調和のとれた証券税制といったようなことについても、これから税制調査会なりがいろいろな点で御審議をいただけるのかなと期待しております。  いずれにしましても、先ほどの答弁で申し上げましたように、金融市場証券市場は車の両輪でございますし、また発行市場と流通市場も、これも車の両輪のようになっておりますので、これがバランスのとれた形で機能し、それによって日本経済に貢献できるように、これからも我々としてできるだけの努力をしてまいるつもりでおりますので、どうぞ御理解、御支援をお願いいたします。
  154. 宮地正介

    ○宮地委員 先ほどからもいろいろ御議論がありましたが、いわゆるファィアウォールについて、アメリカでは銀行と証券の間には二十八項目にわたる防火壁がある。今回、答申では十一項目が答申されておった。しかし、その中の一部が法案として国会に提案をされている。率直に言って、渡辺会長は御不満のような感じを私は受けました。そういう中で、会長は、例えばクロスマーケティングの禁止や人事ノーリターンルール、あるいはまたメーンバンク規制、こういうものについてもぜひ入れてもらいたい、こういう強い要請があったわけでございまして、私ども、さらにあしたも大蔵委員会がありますので、大蔵省当局には強く要請してまいりたいと思います。  今回いろいろ業界の皆さんに伺いますと、やはり、今回の金融制度改革、証券制度改革の中で、中小の証券会社をどういうふうに今後さらに強くしていくか。弱肉強食ではありませんが、都市銀行に食われはすまいか。率直に言って、我々、そうした懸念があるわけでございまして、そうした会長のきょうの陳述については、私どもとしてもぜひフォローしてまいりたい、こういう感じをしているわけでございます。会長、率直に言って十一項目すべてまた答申どおりに戻してもらいたい、こういう気持ちがあろうかと思いますが、今申し上げたような項目以外で、ぜひ国会にお願いをしたいということがありましたら、この際、お話をされたらいかがでしょうか。
  155. 渡辺省吾

    渡辺参考人 何度も繰り返すようでございますけれども、私は、相互参入によりまして、フェアな競争により効率的な市場が形成されるということには全く反対ではございません。しかし、これも繰り返しになりますが、銀行が証券界に参入してまいります場合には、銀行の持っております非常に大きな経済力、企業との関係、そういったものがそのまま証券界に参入してまいりますと、これは本当に日本資本市場はもう非常ないびつな形になってしまいまして、銀行金融と証券と両方持つ。それから、株主としては大株主である。役員を派遣しておる。社債の受託や引き受けもやるといったような形になりますと、非常に大きな力を産業界に及ぼすことになってしまうと思います。それにつきまして、産業界でもこの三月に資金調達に関する協議会というのがございまして、東京電力以下の副社長さん方が大勢でいろいろ議論しておられましたが、その場合にも、今度の問題について、銀行が過度の大きな力を産業界に及ぼすことのないようにしてほしい、そういう要望をしておられます。そういうことを見ましても、投資家ないしは資金調達者、そういった方々の懸念もそこにあるのじゃないかと思います。したがって私は、先ほど申し上げましたように、両方の市場が均衡のとれた形で発展していくことが望ましいのであって、いびつな形になることを防ぐためには、そこに弊害防止のいわゆるファイアウォールといったものが築かれるべきではなかろうか、そういうふうに申し上げているわけでございます。したがいまして、先生の御質問で、具体的にあと何が問題であるかという御質問には直接お答えできません。先ほど例示は申し上げましたが、これ以上は申し上げませんが、趣旨はそういう一点でございますので、どうぞ御理解をいただきたいと存じます。  ありがとうございました。
  156. 宮地正介

    ○宮地委員 時間が参りましたので終わりますが、早崎参考人並びに角道参考人には御質問できませんでしたが、御了承いただきたいと思います。  参考人の皆さん、ありがとうございました。
  157. 太田誠一

    太田委員長 正森成二君。
  158. 正森成二

    ○正森委員 まず最初に、渡辺参考人に伺いたいと思います。  「金融財政事情」の昨年十二月十六日号に、あなたのインタビューが載っております。その中で、証券業界のいろいろな問題点の指摘は同感であるということを前提なさった上で、「ただ、まったくトンチンカンな議論もありますね。改革すべき点は勇敢に改革しようと考えていますが、見当違いの議論が多いのは困りものです。」こう言われて、「「トンチンカンな議論」の最たるものは何ですか」という編集者の質問に対し、「やはり株式委託手数料の自由化論議でしょう。あんな実情を知らない議論はありません。国会の付帯決議、行革審、学者、マスコミの社説、そういった”優秀な錚々たる方々”」ここは括弧づきであります。「がいずれも「自由化をやれ」という大合唱をしている」云々ということで、温厚なあなたにしては珍しく、当たるを幸い切りまくっておられますが、この機会に、あなたが御発言なさりたいことを遠慮なくおっしゃっていただきたいと思います。  ちなみに、あなたがとんちんかんと評された国会の附帯決議に、日本共産党は賛成せず、反対したことを念のために申し上げておきます。
  159. 渡辺省吾

    渡辺参考人 まことに恐縮でございますが、とんちんかんというのは、雑誌が見出しにつけられたので、私はそんな失礼なことを申し上げるような人間ではございませんので、どうぞ誤解を解いていただきとうございます。  それで、手数料問題でございますけれども、手数料問題につきましては、これは単に証券会社経営上困るとか、そういった問題ではないのでございます。そういう意味で、なかなか御理解を得にくいということで、私どもも証取審の委員をしておりますときに大苦戦をしたのでございますけれども、証券界全体に、資本市場全体に非常に大きな影響が及ぶということでございます。  手数料を自由化いたしますとへこれはもうごく簡単に申しますが、個人投資家を中心とする小口の投資のコストを高めます。そして、その小口の投資家個人投資家が中心になりますが、その市場参加を困難にするというおそれがございます。反面、機関投資家取引コストは下がりますから、市場機関化現象を一層促進する、そういう傾向がございます。それからまた、証券会社競争が激化いたしますが、競争力の強い大手証券会社がより有利になるということも、これは集中化でございますが、こういうことも予想されます。  それから、証券会社経営が不安定になりますと、これはアメリカの例を見ますとよくわかるのでございますが、アメリカでも、自由化されましたら証券会社が手数料収入が減ったものですから、いろいろなほかの仕事に乗り出しまして、例えば不動産業務だとか保険業務だとか、証券と関係のないような仕事に乗り出したとか、あるいは自己売買ですね、ディーラー業務に専心するといったような、私は好ましくない方向だと思いますけれども、そういう方面に走らざるを得なかったというようなことも参考になります。そういったような結果、健全な価格形成の市場機能に影響、悪い影響を及ぼすというようなおそれがございます。特に日本では、ほかの国にないすぐれたことだと思いますが、市場集中ということになっておりまして、そこで公正な価格が形成され、投資家は非常に信頼できる取引ができるということでございますが、自由化しますと、この市場集中の確保が難しくなってくるというような問題、いろいろな点が出てまいります。  そういった点もございまして、私どもはこの手数料の自由化については、そういう広い観点からいろいろと慎重に検討する必要があるのではなかろうかということでいろいろ議論したのでございますけれども、結局証取審議会の報告は、当面比較的問題が少ないと思われる大口取引についての手数料を自由化することにしたらどうか、それについては作業部会を設けて一年ぐらい時間をかけて、どういう具体的な実施の時期だとか水準だとか、そういったようなことについて検討をしようということで委員の発言もあって、もう既に一回おやりになったのでしょうか、そういうことだと思います。  そういうことですから、その作業部会の審議をこれから私どもは重大な関心を持って見守っておりますけれども、先ほど申し上げましたように、手数料の問題は決して証券会社の一経営だけの問題ではなくて、資本市場が変わってまいります。アメリカが顕著な例でございまして、私どもはアメリカのような資本市場、アメリカのような証券会社になりたくないと思っておるわけでございます。  特に中小証券のことをお尋ねでございました。中小証券は、これも御承知のように株式の委託手数料が収入の七割以上も占めるようなことでございますし、二百六十五社の日本証券会社全体の中で、大部分は中小証券と言っていいと思います。したがいまして、そういうところが大きな影響を受けるということは、これは資本市場の仲介者、資本市場を担ってお客様方の間の仲介をする役割をしょっておる中小証券の経営が危うくなるということはやはり大きな問題なんでございます。そこで、そういう点についてもいろいろと御配慮を願えればなと思うわけでございます。
  160. 正森成二

    ○正森委員 あなたは、大体固定手数料というのは誤りで、公定手数料と言うべきだというような意見も述べておられますが、時間の関係で先へ進まさせていただきます。その次に、渡辺参考人に続いて伺いますが、「証券業報」のことしの一月号の年頭のあいさつの中で基本的なことをいろいろ述べておられます。そのうちに「個人投資家の証券投資促進」という九一年四月に協会が取りまとめた具体策についてお述べになっております。今の証券の現状活性化するためには、個人投資家証券市場に戻さなければならないというのはだれしも考えることであります。そこで、この具体策についてごく簡単に、今おまとめになったものがございましたらお述べいただきたいと思います。
  161. 渡辺省吾

    渡辺参考人 ごく簡単に申し上げます。  昨年の四月に協会でその報告書をまとめました。そして、協会ばかりではございません、取引所の長岡理事長も熱心にこの問題について取り組んでおられますし、幸い経団連でもこの問題を取り上げて投資家に対するいろいろな対策を考えておられます。  しかし、私どもがまとめました報告書におきましても、次のようなことを調査の結果として報告書に記載しております。株式投資単位の引き下げとして単位株式の組みかえ、今千株で取引しておりますが、それを百株にしたらどうか。それから、株式分割をして株価を下げて投資家の方々が投資しやすくするといったような方法はどうか。もう一つは配当性向を重視した配当政策を実施してほしい。これはもう当然のことでございます。それから証券税制の改善、これも先ほどちょっと触れました。今いろいろございますが、二重課税の問題だとかそれからインピュテーション方式がいいとかいろいろな議論がもうかねて繰り返されておりますが、いずれにしましても、証券税制につきまして取引税の問題もございます。キャピタルゲイン課税の問題もございますけれども投資家が不当に二重課税なんかしょってる部分を改善してほしいということでしょう。それから営業姿勢の適正化、これは自分たちでやることです。こういったようなことを提言しております。  このうちで、配当性向重視の配当政策につきましては、新規ファイナンスについてでございますけれども、この三月まとめられました新しい利益配分ルールにおきまして、産業界の御理解も得まして、株主によりよく利益配分する方向が確かめられたというふうに考えております。
  162. 正森成二

    ○正森委員 早崎参考人に伺いたいと思います。  あなたの最初の御意見陳述を承っておったわけですが、今度の法案について、冒頭は賛成だというようにおっしゃいましたが、中身をよくよく聞いておりますと、一歩一歩着実にお願いしたいとか、あるいは具体的運営については子会社の業務範囲はきめ細かいサービスができるよう一定の限られた範囲からスタートしてほしいとか、あるいは金融機関本体については子会社以上さらに限られたものにしてほしいとか、あるいは着実、段階的になるようにしてほしいというような御意見が目立っておりまして、総じて抑制的な評価の面が目立っていたと思います。あなたが声を大にしておっしゃったのは信託代理店制度ですね。この実現は画期的なことでありますと言って、そこだけは非常に声が高かったというように思っておりますが、それはやはりあなたの御本心があらわれているんじゃないか。例えば午前中も言うたのですが、「金融財政事情」に信託業界の今度の法案についての危惧が出ておりまして、旧財閥系のある信託が「いままでも、融資にせよ社債の受託にせよ、信託は都銀に泣かされ続けてきた。都銀が顧客によいサービスを提供した結果そうなったのならしかたがないが、その点は疑わしい。だから、都銀の信託への参入が、利用者利便につながるとはとうてい思えない」とか、あるいは「都銀が信託を吸収するような事態になれば、ただでさえ強い都銀がますます強大になってしまう。はたして、そうした状況が日本経済にとって好ましいことかどうか」というような意見が「金融財政事情」の去年の七月十五日号に出ております。せっかく国会へおいでになったのですから、建前だけでなしにどうか本音を、ここは大蔵省の銀行局ではなくして国会ですから、遠慮なく本音をおっしゃっていただきたいと思います。
  163. 早崎博

    ○早崎参考人 お答え申し上げます。  冒頭申し上げましたように、信託業界といたしましては、各業態間の相互参入によりまして競争を一層促進し、利用者利便の向上を図ろうといたします今回の金融制度改革法案に賛成でございます。信託業界としての一貫した考え方といいますのは、信託利用者利便の向上と信託業務の健全な発展に資する適正な競争を行ってまいりたいというものでございまして、今回の制度改革もこのような観点でとらえているところでございます。  ただいま先生の方から御指摘のございました記事との関係でございますが、今回、参考人として出席させていただくに当たりまして改めて関連記事に目を通してみたわけでございますが、御指摘の記事につきましては、だれがそのような発言をしたのか、あるいは、したとしてもその真意がいずれにあったかというのは不明でございますので、私としてのコメントは差し控えさせていただきたいわけでございます。  今般の、金融サービスニーズ多様化にこたえまして各業態間め相互参入によって競争を一層促進して利用者利便の一層の向上を図ろうといたします制度改革及び制度改革法案には、ただいま申し上げましたように信託業界としては賛成でございますので、その点御理解いただきたいと存じます。
  164. 正森成二

    ○正森委員 それじゃ、最後に角道参考人に一言だけ伺います。  あなたが農林中金の理事長に就任されましたとき、九一年の五月ごろですが、新聞でインタビューが出ております。その中で、金融自由化の進展が農協の経営を揺さぶっているということをインタビュアーとの間で言われた上で、農林中金を中心とする護送船団方式が崩れ、小さな船一地方の農協)が沈むことになる危険性もある、そうならないよう地道にしかし確実に改革していきたい、こう言っておられます。  今度の法案が通りますと、こういう方向が一層進んで、場合によったら金融再編という方向が進む可能性があると思いますが、それについてあなたの御意見を承りたいと思います。
  165. 角道謙一

    角道参考人 お答え申し上げます。  現状では農協の規模は非常に大きい差がございまして、先ほど申し上げましたように貯金規模三千億を超えるところもあれば十億を切るようなところもございます。それらは一律に同じような対策ではまいりませんけれども金融自由化の中で強い者と弱い者ができてまいりますと、やはり弱い者がその中で埋没するというおそれもあるということもございまして、特に制度の面では私ども農協の信用事業はまだほかの金融機関に比べて機能面で劣っている点がございます。そういうものにつきましては、先ほども、農協法の改正であるとか、今御審議をいただいております金融制度改革法案で能力の面で補強をしていただくということと同時に、私ども自身でも現在農協の事業組織そのものについて抜本的な見直しをしておりまして、現在三千四百余りございますが、これを二十一世紀までには一千農協に合併をしたいということを申しておりましたが、さらにこういうものを進めていく、来年の三月までに各県でそれぞれの具体的な計画を立てる、そういうことで現在では大体八百弱の規模まで合併を進めようということになりますと、平均的に見ますと一農協で貯金規模大体八百億程度になろうかと思います。やはり規模の面でも、そういう事業の面でも、組織その他で補強していく。同時に、先ほど来申し上げておりますような自由化チャレンジ運動というものを強力に推進をいたしまして、そういう冒頭申し上げましたような危険がないように、やはりこれからも系統組織を強化をして組合員あるいは農山漁村の要望にこたえていきたいというふうに考えております。
  166. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  167. 太田誠一

  168. 中野寛成

    中野委員 民社党の中野でございます。きょうはどうもありがとうございました。私がしんがりでございますので、包括的にお尋ねをいたしますが、よろしくお願いしたいと思います。  まず、五代先生にお伺いいたします。  先ほどのお話の中で、利用者としての視点から考えるべきである、そしてその利用者にとっては一カ所でいろいろなサービスが受けられる方が望ましいというふうに述べられたわけであります。同時にまた、そういう効用だけではなくてもっと国民経済全体の活性化効率化にもつながるであろうという御指摘をされました。ごもっともだと思いますし、私もほとんど同感でございますが、ただその場合に、物事逆転して裏からちょっと見てみたいのですが、自由化を進めます。過当競争が行われる。弱肉強食が続く。それによって寡占化ができる。寡占化ができたときに利用者にとってマイナスの効果が生まれてくる。言うならば、もしどこかに欠陥があって悪循環が起こったとしたら、こういうことが考えられますね。このことについてもやはり防止策を考えていくということが利用者の視点から必要だろう、こう思うのでありますが、どういうふうにお考えでしょうか。
  169. 五代利矢子

    ○五代参考人 御指名によりお答え申し上げます。  今御指摘のとおり、全くそれはそのとおりでございまして、うっかり悪循環が起こりますと、利用者利便どころか大変な状況になるということは、私も深く認識いたしております。ただ、問題は今回の自由化の問題を推し進めるに当たりまして国際的な状況、さらに国内的な状況、すべての状況をよく見た上で環境整備をきちんと整えることによってそういった問題をいろいろな点で食いとめることができ、しかも自由化のメリットも受け入れられる、そういう方策をやはり私どもは探っていかなければならないのではないかと思います。  おっしゃるとおり、一カ所でいろいろなサービスを受けられるというのは大変利用者にとって望ましいことで、私自身ももしそうであれば大変便利で助かるというのが実感でございますが、やはり先ほども申しましたように、それに加えて利用者の利益とは、金融サービスにおいて例えば情報を悪用するインサイダー取引や一部の者の利益のみを図る利益相反といった目に見えない問題が非常にたくさんございます、そういった問題は一般利用者にとっては非常に目にとまりにくいものでございますから、今回の制度改革においても制度的な仕組みの中で結果的に利用者の利益を損なうことがないようあらゆる点に配慮して総合的に利用者の利益を守ることが大切ではないかと思っております。そういう意味では今、先ほどからも申しておりますように、これはまさにこの制度改革というのはその第一歩でございまして、利用者自身もこれまで自己責任というものになれておりませんでしたけれども、これからはこういったことに対しても深く関心を持ち、また行政などもいろいろなこの問題に対する情報を提供して、それによって一般利用者たちのいろいろな声がこの制度改革などにももっと強く反映されるような、そしてその中で仕組みがうまく機能するように補完できるような、そういったことを望んでおります。
  170. 中野寛成

    中野委員 ありがとうございました。  次に、早崎会長にお尋ねをいたします。  先ほど正森委員からも指摘がされたのでございますが、本法案には賛成であるという前提の上に立って、随分たくさん御注文をおつけになられたと思うのですね。信託銀行子会社の業務範囲については、信託業務の特性を御考慮の上、一定の範囲のものからスタートしていただきたいということや、それから子会社方式本体方式を問わず新規参入の場合の適格性については信託業務の性格を十分に考慮して御判断願いたいこと等々、御判断いただきたい、御配慮いただきたい、一定の範囲のものからスタートしていただきたい等々随分と先ほど来、もう一つ、しかるべき弊害防止措置を設けていただきたいと、五、六項目にわたってたしか述べられたと思うのでございます。  そういたしますと、これは、例えばこの法案は国会で採決をされ、可決されてしまうとひとり歩きしてしまうのですね。あとは政省令で、または運用に任されている部分があるわけでありますが、これらのことにつきましては、早崎会長としては大蔵省にそういう希望を申されたのか、または国会でひとつ法案修正をしてくれ、もしくは附帯決議で歯どめをかけろというお気持ちが込められたのか、おっしゃっている内容について私は一々ごもっともだと思っているのですよ、ただ、そういういろいろな御注文がつけられましたが、その御心境について確認をさせていただきたいと思います。
  171. 早崎博

    ○早崎参考人 お答え申し上げます。  きょうは参考人としてお招きいただきまして、私の信託業界の会長といたしまして考えていることを申し上げさしていただいたわけでございまして、さまざまなお願いは行政当局にお願い申し上げたいというふうに思っております。先生方にはぜひ私の真情を理解していただければと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
  172. 中野寛成

    中野委員 せっかくの機会ですから、先ほどの意見陳述で早崎会長がおっしゃられた中で外銀信託のことに触れられたわけでありますが、今回の制度改革によって外銀信託がこうむる影響について簡単に御指摘をいただければありがたいと思います。
  173. 早崎博

    ○早崎参考人 外銀信託につきましては、信託業界といたしましても、外資に対します我が国金融自由化とか国際化の象徴的な存在といたしまして歓迎してきたところでございます。先生御案内のとおりではございますが、外銀信託は昭和六十年から六十一年にかけまして設立され、現在アメリカ、イギリス、スイスを本国とする九行が営業しているわけでございます。  私どもといたしましても、外銀信託の活動とか業績動向には絶えず関心を持っているわけでございますが、設立後間もない外銀信託が、今回の制度改革の運営いかんによりましては影響を受けることがないとは言えないと思うわけでございまして、そうしたことがないように、先ほど来お願い申し上げておりますように一歩一歩着実に制度改革が実施されていくことを期待しているわけでございます。  また、これも繰り返しになって恐縮でございますが、新たに参入する信託銀行子会社などの業務範囲とか弊害防止措置とか認可条件等々、制度改革の具体的な運営面で、御当局におかれまして外銀信託への影響という視点からも十分御判断いただけるものと思っております。
  174. 中野寛成

    中野委員 ありがとうございました。  次に、渡辺会長にお尋ねをさせていただきます。  日本株式投資の現状、株価、大変厳しい状況にある、これはよくわかっておりますが、ある人に言わせますと、投機ではなくて投資という視点に立って考えれば今でもまだ株価は高い、平均株価は今でも高いという指摘もあります。もちろん、投資、投機、株にはいろいろな要素があることは事実でありますが、本来正常な姿というのは、やはり投資中心であろうというふうに思うわけであります。しかし、競争が激化をし、活性化とは名ばかりでむしろ過当競争が行われたということになりますと、活性化イコール株価の上昇、そしてそれは、競争の中で投資ではなくて投機熱をまたあおるということになってしまうことはないのでしょうか。いかがお考えでしょうか。
  175. 渡辺省吾

    渡辺参考人 株価の水準につきましては、私どもも、この水準とか、これは妥当、これは高過ぎるというようなことは申しません。しかし、確かに現在の株価が非常な、高値から見ますと半分以下になっておりますから、それによって投資家はもちろん、個人投資家もそうですし、機関投資家もそうですが、銀行は手持ちの有価証券の値下がりによってBISの規制に非常に問題を含んで苦慮しておられるというようなことですし、それから政府も放出株について、NTTなりたばこ産業なりJRにしても皆さん非常にお困りになるということですから、この株価が問題だということもございますけれども、しかし、私どもが一番活性化として望んでおり期待しておるのは、やはり投資家市場を離れてしまったというのを何とか回復して、市場投資家が登場していただけるようにする、そのためにどんな活性化方法があるかというので、先ほどお答えしたようなことを盛んに努力しておるわけでございます。  株価の水準が幾らになったらいいかというのは、なかなか言うことは難しゅうございますし、またそういうことを言うべきではないと思います。したがって、今先生の御指摘のように、投機と投資といったような問題についてお触れになりましたが、投資という点で投資家市場にどんどん登場していただく、特に個人投資家です、個人投資家が、申し上げるまでもございませんけれども機関投資家と違いまして個人投資家が、多数の物の見方の異なった方々が市場に登場されることによって公正な価格が生まれるということでございます。機関投資家はともすれば専門的な分析をいたしますので、似たような方向に投資が傾いていくということもございますので、できれば多数の投資家の方々、個人投資家市場に登場していただくことが私どもの願望でございます。したがいまして、そういうことのための活性化、そういうための施策に一生懸命取り組んでいるところでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  176. 中野寛成

    中野委員 いずれにいたしましても、冷え過ぎても困るし過熱し過ぎても困るということに帰結すると思いますが、あと一点、渡辺会長にお尋ねをいたします。  これは先ほど早崎会長にもお尋ねしたことと共通するのでございますが、先ほど来同僚委員も指摘いたしましたように、本法に決して反対するものではないがとたび重ねておっしゃいました。五回おっしゃったのだそうですが、やはり渡辺会長の本音がまさにそこにあらわれているような気がしてならないわけであります。しかも、相互参入銀行に有利である、我々は攻め込まれる立場である、ゆえに弊害防止措置をぜひとも講じてほしいということをおっしゃられたわけであります。そういう注文をおつけになられながら、また繰り返して反対するものではないがとおっしゃられたわけでありまして、そのお気持ちの中に、私は再度同じことをお聞きするようですが、この法案に反対なのか、時期尚早とお考えなのか、政省令で何とかなるであろうという大蔵省に対する信頼感をお持ちなのか、もう一つ、うがって失礼かもしれませんが、大蔵省とはもう既に何らかの前向きの感触を得ておられるのか、ゆえに反対ではないとおっしゃるのか、そのことについてお尋ねをいたします。
  177. 渡辺省吾

    渡辺参考人 大変難しい御質問であれでございますけれども、先ほどから申し上げておりますように、証取審ではこの問題につきましてもう六年間も議論をして、そして、やはり市場は開かれた市場であって、相互に参入して、そしてフェアな競争によって効率的な市場をつくり、公正な市場をつくるということになったわけで、それには反対する者はないのだと私は思います。したがいまして、それには賛成なわけですし、証取審の報告が出ましたのにも、私なんかも委員でございましたから、それに賛成しております。  ただ、繰り返して申し上げておるように、こういう条件が必要です、つまり、資本市場金融市場も両方がバランスのとれた発展ができるようなそういう形にする必要がありますので、銀行の持っております今のこういう力、産業界との関係とか市場支配の関係とか、あるいは株式を保有しているとか役員とか、そういうようないろいろなことを申し上げましたが、そういう点を踏まえまして、いわゆる公正な競争ということがいいわけですね。ですから、イコールフッティングと申しますね。イコールフッティングで競争することによって初めて公正な競争が確保され、そして健全な市場ができると思います。そういう意味で、いろいろなファイアウォールが必要であって、アメリカでもそうしているのですが、日本でもきちっとファイアウォールが守られるような形にしていただきたい。これはもう当然な主張だと私は思うし、証取審でもそれを十一項目挙げているわけですから、決して証券界が、エゴイスティックに言っていることではないと思います。資本市場の将来を見て、そういう形が望ましいというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、それが十分確保されるように、しかも今御指摘のように、政令等にゆだねられているものが非常に多いものですから、法案に書いてあればこれは法律であれするわけですから確保されている、担保されているというふうに思いますけれども、政省令ということになりますと、またそれが出るまでは不安でございますね。ですから、その点について確認をお願いしたい、こういうことを言っているわけなのでございます。決して大蔵省から何かの確証をいただいているわけじゃ毛頭ございませんので、繰り返し繰り返し私どもの主張を申し上げているわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  178. 中野寛成

    中野委員 わかりました。  時間が参りましたが、もう一点だけ済みませんが、角道理事長にお尋ねさせていただきたいと思います。  いわゆる農協が合併をし、いろいろと強化策を講じられていることはよく承知をいたしておりますが、あわせまして、例えば農地法の改正等も必要になってこようかと思いますが、現在の農業基盤、日本農業を強化していくために逆に信託という制度を農協等で活用される、そして農地を農地として有効利用する。生産緑地法とか農地転用とかの問題ではなくて、農地を農地として、信託を受けたその別の農家に運用させるというふうなことを含めた、しかも大規模農業にそれを活用するというふうなこと等についての考え方というものはお持ちになりませんでしょうか。これは当然現行制度でできるという意味ではありません。法改正も含めての御希望はありますか。
  179. 角道謙一

    角道参考人 お答えを申し上げます。  現在、農地につきましては、既に昭和三十六年だったかと記憶しておりますが、農地の信託制度というのがございまして、農協は農家から農地の信託を受けましてそれを運用するというような制度がございます。自来三十年余りたちますが、そちらの方がなかなか現実には動いていない状況でございます。  そこで、新しく信託制度というのが認められる場合、この土地をどのように運用していくか。専ら今お話が出ておりますのは、宅地供給等の事業でございますが、これは農地として今の新しい信託制度の中で取り込んでいけるかどうか、これについてはまだいろいろ研究する余地があろうかと思いますが、いずれにしましても、農地は農業の基盤でありますし、現在のような農業情勢から見まして、例えば放棄農地が多いとか休耕地等ができているという状況から見ますと、今御指摘のように、大規模農家あるいは大規模農業経営体に集中していって能率的な生産を上げていくということが基本的に必要だと考えております。
  180. 中野寛成

    中野委員 ありがとうございました。
  181. 太田誠一

    太田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まこ とにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、明二日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十九分散会