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1992-04-21 第123回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年四月二十一日(火曜日)     午後一時一分開議 出席委員   委員長 太田 誠一君    理事 井奥 貞雄君 理事 中川 昭一君    理事 村上誠一郎君 理事 持永 和見君    理事 柳本 卓治君 理事 小野 信一君    理事 細谷 治通君 理事 日笠 勝之君       浅野 勝人君    石原 伸晃君       岩村卯一郎君    江口 一雄君       衛藤征士郎君    狩野  勝君       河村 建夫君    久野統一郎君       小林 興起君    左藤  恵君       関谷 勝嗣君    戸塚 進也君       林  大幹君    前田  正君       山下 元利君    池田 元久君       岡崎 宏美君    沖田 正人君       佐藤 観樹君    佐藤 恒晴君       沢田  広君    鈴木  久君       仙谷 由人君    中村 正男君       早川  勝君    堀  昌雄君       山下洲夫君    東  祥三君       宮地 正介君    山口那津男君       正森 成二君    中井  洽君       菅  直人君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 羽田  孜君  出席政府委員         大蔵政務次官  村井  仁君         大蔵大臣官房総         務審議官    日高 壮平君         大蔵省主税局長 濱本 英輔君         大蔵省証券局長 松野 允彦君         国税庁次長   冨沢  宏君  委員外出席者         法務省民事局参         事官      吉戒 修一君         参  考  人         (日本公認会計         士協会会長)  山上 一夫君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ————————————— 委員の異動 三月二十六日  辞任         補欠選任   浅野 勝人君     亀井 静香君   石原 伸晃君     熊谷  弘君   岩村卯一郎君     大野  明君   江口 一雄君     綿貫 民輔君   狩野  勝君     田邊 國男君   亀井 善之君     野中 広務君   河村 建夫君     森  喜朗君   久野統一郎君     島村 宜伸君   池田 元久君     松本  龍君   中井  洽君     大内 啓伍君 同日  辞任         補欠選任   大野  明君     岩村卯一郎君   亀井 静香君     浅野 勝人君   熊谷  弘君     石原 伸晃君   島村 宜伸君     久野統一郎君   田邊 國男君     狩野  勝君   野中 広務君     亀井 善之君   森  喜朗君     河村 建夫君   綿貫 民輔君     江口 一雄君   松本  龍君     池田 元久君   大内 啓伍君     中井  洽君 同月三十日  辞任         補欠選任   浅野 勝人君     越智 伊平君   石原 伸晃君     鹿野 道彦君   池田 元久君     井上 普方君   正森 成二君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     浅野 勝人君   鹿野 道彦君     石原 伸晃君   井上 普方君     池田 元久君   不破 哲三君     正森 成二君 四月十五日  辞任         補欠選任   東  祥三君     鳥居 一雄君 同日  辞任         補欠選任   鳥居 一雄君     東  祥三君 同月二十一日  辞任         補欠選任   佐藤 観樹君     鈴木  久君   富塚 三夫君     沖田 正人君   堀  昌雄君     岡崎 宏美君   渡辺 嘉藏君     山下洲夫君   東  祥三君     山口那津男君 同日  辞任         補欠選任   岡崎 宏美君     堀  昌雄君   沖田 正人君     富塚 三夫君   鈴木  久君     佐藤 観樹君   山下洲夫君     渡辺 嘉藏君   山口那津男君     東  祥三君     ————————————— 四月十七日  公認会計士法の一部を改正する法律案内閣提  出第六九号)(参議院送付) 三月二十四日  共済年金改善に関する請願衛藤征士郎紹介  )(第六七〇号)  同外一件(赤城徳彦紹介)(第六九九号)  同(植竹繁雄紹介)(第七〇〇号)  同(衛藤征士郎紹介)(第七〇一号)  同(倉成正紹介)(第七〇二号)  同(原田義昭紹介)(第七〇三号)  同(三原朝彦紹介)(第七〇四号)  同(簗瀬進紹介)(第七〇五号)  同(衛藤征士郎紹介)(第七五三号)  同外六件(今井勇紹介)(第七八三号)  同(宇野宗佑紹介)(第七八四号)  同(衛藤征士郎紹介)(第七八五号)  同(小宮山重四郎紹介)(第七八六号)  同(塚原俊平紹介)(第七八七号)  同外一件(二田孝治紹介)(第七八八号)  同(松本十郎紹介)(第七八九号)  同(山下元利紹介)(第七九〇号)  同(衛藤征士郎紹介)(第八二〇号)  同(北川石松紹介)(第八二一号)  同(武村正義紹介)(第八二二号)  同(塚原俊平紹介)(第八二三号)  同(松岡利勝紹介)(第八二四号)  同(村岡兼造君紹介)(第八二五号)  同(衛藤征士郎紹介)(第八四九号)  同(村山富市紹介)(第八五〇号)  電波によるたばこ宣伝廃止に関する請願(大  野由利子紹介)(第六七一号)  同(沖田正人紹介)(第六七二号)  同外十三件(仙谷由人紹介)(第六七三号)  同(伊東秀子紹介)(第七〇六号)  同(大野由利子紹介)(第七〇七号)  同(沖田正人君君紹介)(第七〇八号)  同(伊東秀子紹介)(第七五四号)  同外四件(秋葉忠利紹介)(第七九一号)  同(不破哲三紹介)(第七九二号) 四月七日  共済年金改善に関する請願衛藤征士郎紹介  )(第九〇四号)  同(衛藤晟一紹介)(第九〇五号)  同(亀井久興紹介)(第九〇六号)  同(小宮山重四郎紹介)(第九〇七号)  同(島村宜伸紹介)(第九〇八号)  同(虎島和夫紹介)(第九〇九号)  同外一件(野呂田芳成君紹介)(第九一〇号)  同(葉梨信行紹介)(第九二号)  同(畑英次郎紹介)(第九一二号)  同(岩屋毅紹介)(第九五八号)  同(衛藤征士郎紹介)(第九五九号)  同(小宮山重四郎紹介)(第九六〇号)  同(中村喜四郎紹介)(第九六一号)  同(衛藤征士郎紹介)(第九九三号)  同(小宮山重四郎紹介)(第九九四号)  同(粟屋敏信紹介)(第一〇二四号)  同(衛藤征士郎紹介)(第一〇二五号)  同(小宮山重四郎紹介)(第一〇二六号)  同(衛藤征士郎紹介)(第一〇四六号)  同(小宮山重四郎紹介)(第一〇四七号)  同(小宮山重四郎紹介)(第一〇五九号)  電波によるたばこ宣伝廃止に関する請願(  松本龍紹介)(第九一三号)  同(伊東秀子紹介)(第九六二号)  同(岡崎宏美紹介)(第九六三号)  同(高沢寅男紹介)(第九六四号)  同(中村巖紹介)(第九六五号)  同(渡部行雄紹介)(第九六六号)  同(鍛冶清紹介)(第九九五号)  同外五件(仙谷由人紹介)(第九九六号)  同(高沢寅男紹介)(第九九七号)  同(中村巖紹介)(第九九八号)  同(高沢寅男紹介)(第一〇四八号)  同(三浦久紹介)(第一〇四九号)  同外八件(秋葉忠利紹介)(第一〇六〇号)  同(井上義久紹介)(第一〇六一号)  同外一件(高沢寅男紹介)(第一〇六二号)  同(三浦久紹介)(第一〇六三号)  パートタイム労働者の百五十万円非課税に関す  る請願近江巳記夫紹介)(第一〇二三号)  同(矢追秀彦紹介)(第一〇六四号) 同月十日  共済年金改善に関する請願甘利明紹介)(  第一一二一号)  同(石原慎太郎紹介)(第一一二二号)  同(粕谷茂紹介)(第一一二三号)  同(小宮山重四郎紹介)(第一一二四号)  同(梶山静六紹介)(第一一六三号)  同(小宮山重四郎紹介)(第一一六四号)  同外一件(北川正恭紹介)(第一一八九号)  同(小宮山重四郎紹介)(第一一九〇号)  同(小宮山重四郎紹介)(第一二二五号)  同(町村信孝紹介)(第一二二六号)  同外二件(青木正久紹介)(第一二六二号)  同外二件(麻生太郎紹介)(第一二六三号)  同(小宮山重四郎紹介)(第一二六四号)  同(自見庄三郎君紹介)(第一二六五号)  同(山村治郎紹介)(第一二六六号)  電波によるたばこ宣伝廃止に関する請願(井  上義久紹介)(第一一二五号)  同(江田五月紹介)(第一一二六号)  同(楢崎弥之助紹介)(第一一六五号)  同(外口玉子紹介)(第一一九一号)  同外一件(鉢呂吉雄紹介)(第一一九二号)  同外四件(沖田正人紹介)(第一二六七号)  パートタイム労働者の百五十万円非課税に関す  る請願北側一雄紹介)(第一一二七号)  同(浅井美幸紹介)(第一一六六号)  同(春田重昭紹介)(第一一六七号) 同月十三日  共済年金改善に関する請願小宮山重四郎君紹  介)(第一三四一号)  同(浜野剛紹介)(第一三四二号)  同(平泉渉紹介)(第一三四三号)  同(増田敏男紹介)(第一三四四号)  同(小澤潔紹介)(第一四一五号)  同(小宮山重四郎紹介)(第一四一六号)  同(福永信彦紹介)(第一四一七号)  同(柿澤弘治紹介)(第一四五六号)  同(木部佳昭紹介)(第一四五七号)  電波によるたばこ宣伝廃止に関する請願(小  川信紹介)(第一三四五号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第一三四六号)  同(長谷百合子紹介)(第一四一八号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第一四五八号) 同月十六日  共済年金改善に関する請願岩屋毅紹介)(  第一五一六号)  同(河村建夫紹介)(第一六五八号)  同(増田敏男紹介)(第一六五九号)  電波によるたばこ宣伝廃止に関する請願(辻  一彦君紹介)(第一五一七号)  同(外口玉子紹介)(第一五一八号)  同(楢崎弥之助紹介)(第一五一九号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第一六〇一号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第一六六〇号)  消費税廃止飲食料品即時非課税課税最低限  引き上げに関する請願小沢和秋紹介)(第  一五二〇号)  同(金子満広紹介)(第一五二一号)  同(木島日出夫紹介)(第一五二二号)  同(児玉健次紹介)(第一五二三号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一五二四号)  同(菅野悦子紹介)(第一五二五号)  同(辻第一君紹介)(第一五二六号)  同(寺前巖紹介)(第一五二七号)  同(東中光雄紹介)(第一五二八号)  同(不破哲三紹介)(第一五二九号)  同(藤田スミ紹介)(第一五三〇号)  同(古堅実吉紹介)(第一五三一号)  同(正森成二君紹介)(第一五三三号)  同(三浦久紹介)(第一五三三号)  同(山原健二郎紹介)(第一五三四号)  同(吉井英勝紹介)(第一五三五号)  同(金子満広紹介)(第一六六一号)  同(古堅実吉紹介)(第一六六二号) は本委員会に付託された。 四月十二日  共済年金改善に関する請願(第一二六六号)は  、「山村治郎紹介」を「亀井静香紹介」  に訂正された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公認会計士法の一部を改正する法律案内閣提  出第六九号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 太田誠一

    太田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公認会計士法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。羽田大蔵大臣。     —————————————  公認会計士法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいま議題となりました公認会計士法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、最近における公認会計士業務国際化多様化等状況等に対応し、公認会計士業務に引き続き多くの優秀な人材を確保するため、公認会計士試験制度等について所要改正を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、公認会計士試験制度につきまして、第二次試験に短答式試験を導入するとともに、第二次試験論文式試験科目選択制を採用するほか、試験委員定数法定制を改め、公認会計士審査会で決定し得ることとする等の改正を行うことといたしております。  第二に、罰金額等の上限につきまして、所要改正を行うことといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただけますようお願い申し上げます。  以上であります。
  4. 太田誠一

    太田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 太田誠一

    太田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本公認会計士協会会長山上一夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 太田誠一

    太田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  7. 太田誠一

    太田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仙谷由人君。
  8. 仙谷由人

    仙谷委員 日本公認会計士協会山上会長参考人として御出席をいただきましてありがとうございます。  せっかくおいでいただいたわけですが、ちょっと時間をいただきまして、景気動向、それから環境税といいますか、地球環境問題等々について、最近のニュースでございますので、大蔵大臣などの御意見をいただきたいと存じます。  まず、景気でございます。昨日の東京証券取引所売買高が約二億株足らずといいますか二億株弱、終値が一万七千七十一円三十六銭。五百九円の、何というのですか、下落といいましょうか、そして、本日の午前中の終値はこれより二十円八銭安いということのようでございます。  大蔵大臣、今のこの景気動向でございますが、さあこれからどうなるのかということも含めてお話をいただければと存じます。
  9. 羽田孜

    羽田国務大臣 我が国経済は現在、労働力の需給というのは依然引き締まり基調であろうと思っております。また、大分一時期より落ち込んだと言われます住宅建設、これにつきましては下げどまりの動きが見られる。一方では、製造業中心といたします設備投資伸びの鈍化あるいは企業収益の減少などを背景に、このところ企業業況判断には減速感が広まっておりまして、我が国経済というのはまさに調整過程にあるということが言えるのではなかろうかと思っております。  また政府におきましては、こうした調整というものが企業家心理を大きく冷え込ませるあるいは消費者心理も冷え込ませるということがないように適切に対応するため、三月三十一日に公共事業前倒し等を含めました施策、緊急経済対策というものをやりました。それに翌日、日銀によりまして、公定歩合についても四月一日に同様の観点から〇・七五%引き下げが実施されたということでございます。また四月九日には、景気に配慮いたしました平成四年度予算、これが、両院協議会におきまして御協議をいただいた結果これを成立させていただいたということでございます。  今後の見通しにつきましては、乗用車などの耐久消費財伸び悩み、これはまだ見られます。また設備投資につきましては、やはり過去二けたで伸びてきたということがございますので、そのストック調整、こういうものがありまして、非常に慎重さというものがあろうと思っております。しかし、物価が安定しておるというようなこともございまして、また雇用者の所得につきましても、確かに前年に比較しますとことしの春闘、多少低くなっておりますけれども、やはり着実な伸び背景にしておるということで、個人消費そのものは底がたく推移していくだろうというふうに見込まれます。また、先ほど申し上げましたように、住宅投資というのは持ち家また貸し家中心にして下げどまりの兆しか見られるということ、また、金利の低下の効果というものが住宅投資ですとか設備投資等にも徐々に浸透していくであろうというふうに思っておりますし、また一部ではいわゆる在庫調整というのが一巡したといいますか、そういった中で多少いい兆しか見えてきているものもございますけれども、徐々にこれは全体が進展していくであろうというふうに思っております。  そういう意味で我が国経済は、当面なお調整局面を続けるというものの、インフレなき持続可能な成長へと移行していくものであろうと私たちは考えております。  確かに株式は、今御指摘がございましたように前引けが一億二千万株の扱いで一万七千五十一円と、午前ちょっと百八円ほど下げましたので一万六千円台に突入しましたけれども、またこれが反発しておるということがありますけれども、実際に、最高のときの三万八千九百円ですか、そういったものに比較いたしますと大変低いところにあるということであろうと思っております。ただ、今申し上げましたような措置、あるいは現在経済がこうやって動いている推移を見ますと、いろいろな国の状況に比べましても、私はファンダメンタルズというのはまだ日本はしっかりしているということであろうと思いますし、また少しずついい方向というものも見えてきているのではなかろうかと感じておりまして、この株式もそういったものがきちんと反映されるようになってほしい。そのために、やはり株式市場そのものの信頼を回復するということが何といっても大切なことであろうと私たちは考えておりまして、私どもも適切にこの問題に対応していきたいというふうに考えております。
  10. 仙谷由人

    仙谷委員 今大蔵大臣がお答えになったような景気見方経済見方、そして宮澤さんが六月には底を打つというふうなことをおっしゃっておるのを報道で拝見いたしましたが、私も、ことしの二月までは大体そんな感じではなかろうかというふうに、いろいろな方々の意見を聞いて考えていたわけでございます。ところがここに参りまして、株価が一万七千円を切って一万六千円台に突入する、一説には一万五千円台を予想する方もいらっしゃるようでございますが、そういたしますと、都市銀行それから長銀含み益が、株価が一万六千円台になりますと大体十一兆円から十二兆円だ、そのぐらいにまで下がってくると言われております。そして反対に都銀、長銀の持っております不良債権が約二十兆円、それで回収可能な金額が大体六〇%ぐらいだろうと言われておりまして、含み益のほとんどが飛んでしまうのではないか、こういう予測をしておるエコノミストといいますか、向きも相当多いようでございます。そうなりますと、少々金融システムを維持するのに問題が出てくるのではないだろうか、こういう説がございますし、私もやや危機感を持って最近株価を見始めたところでございます。この部長銀不良債権あるいはいわゆるBIS基準との関係でクレジットクランチというふうなことにならないようにするために、株価株式市場対策というふうな小手先のことではなくて、景気先行指標としての株価が上向きになるような政策が必要なのではないだろうか、そう考えておるわけでございます。  それで最近の経済指標でいいますと、百貨店売上高大阪地区で三月期に四・二%減少した。それから東京では三月期に七・八%、大型店といいましょうか、百貨店売り上げが減少しておるという指標が出ておるわけでございます。先ほどちょっとおっしゃいましたけれども個人消費を何か刺激する政策が今必要なのではないだろうか、こう考えるわけでございますが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  11. 羽田孜

    羽田国務大臣 まずクレジットクランチというようなお話があったわけでございますけれども、いろいろな風聞というものはございます。実は私どもも、そういうことでそれぞれ聞き取り等を担当によってしていただいておりますけれども、そういった心配というものはないということを申し上げることができると思います。  その理由といたしまして、銀行はなお十分な株式含み益を持っておりますし、また本年三月期の決算を見ましても、本業の方の収益力をあらわします。務純益、これを見ますと、信託銀行を除きましていずれの業態も大幅な増益というものをまだ持っておるということであります。また当期利益は、不動産業等への貸出金の償却というものを前広に行ったことなどによりまして減益となっておりますけれども、その利益の規模というものは、それでもなお昭和六十一年と同程度の水準を確保しておるということであろうと思っております。  確かに御指摘のように、株価下落をするということになりますと、自己資本比率に影響を与えるということでありましょうけれども、ことし三月末にはその基準であります七・二五%、これをすべての銀行がクリアしているというふうに私ども思っております。なお、八%というのは来年の三月期の基準でございますけれども、ことし三月末で見ましても、この八%に達していない銀行はわずか数行というふうに思われております。いずれにいたしましても、自己資本比率につきましては、各銀行とも来年三月末に向けまして、劣後ローンの取り入れ等によりまして、その向上を図っていくものであろうというふうに考えております。  なお、いわゆる百貨店等におけるところの売り上げが減だということ、これはちょっと具体的にまた数字等について、今審議官も来ておりますから、申し上げさせていただけると思いますけれども、これはちまたの話で大変恐縮でありますけれども、この間も地方皆さん方がお見えになりました。地方百貨店あるいはそういったものが、例えばAコープなんというものも少し減っておる。ただ、全体的に高価なものというのは売れなくなっておる、しかし少し格を落としたもの、これを買う人が多いということで、額そのものは多少減っておるけれども量そのものでは、数量では余り減っておりませんということ。  そして、ちょっと調べてみますと、例えば、これはAコープですから多分農協のあれだと思いますけれども預金そのものについては多少ふえているというのですね。これはよくあることなんだけれども、お米なんかも、一〇一、二%というとテレビを買いかえたりなんかする。そのお宅ではせいぜい数万円の増収にしかならないにもかかわらず、大変高価なものを買うようになる。しかし、不作だといって二%、三%落ちますと、途端にぐんと減って浴衣一枚買ってもらえないのですよという話をこの間されました。これは一人だけではなくて、確認しますと、あちこちでそういう話もあるということで、やはり不況だ、不況だと言いますと、地方は逆に財布ひもを締めちゃいますよ、これは実は地方経済界を代表する方も、中央で余りそれを言われますと、地方は結構しっかりしているにもかかわらず、財布ひもを締める癖がありますからねというようなことも言われております。私どもはそういったことも——しかし、そうかといって、先ほど申し上げたように個人のマインド、これは企業家と一緒に個人のマインドも冷めてはいけないということでございますから、私どももそういった面に配慮しながら対応しなければいかぬ。  そういった点では、例の公定歩合の引き下げなん。というものも多少いい効果をあらわしてくるのであろうというふうに思っておりますし、また住宅等についての対策を緊急対策の中でも進めておるというようなことから、あるいは今度の平成四年度の予算の中でそういったものを進めておるということからも、そういう面での刺激というものを与えていくことができるのかなというふうに考えております。いずれにしましても、御指摘の点、よく私どもも腹の中に置きながら、実情をきちっとチェックしていきたいというふうに思っております。
  12. 日高壮平

    ○日高政府委員 個人消費動向についてお尋ねがございました。  全般的には先ほど大臣から御答弁申し上げたとおりでございますが、幾つかの点を補足して申し上げたいと思いますけれども、確かに百貨店売り上げがここのところちょっと伸び悩んでいるということは事実でございますが、これは一つには、昨年の三月ごろまで、いわゆる高級な絵画とか貴金属品とか、そういったものがかなり大量に売れていた。したがいまして、昨年の三月との対比におきまして伸び率が鈍化しているということは事実であろうかと思っております。ただ、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、物価が落ちついている、あるいは雇用者数が堅調に伸びている、あるいは現金給与総額もまあまあの伸びで推移しているという状況から考えまして、私どもこれからの個人消費動向を考えます場合に、それほど心配していないというのが現在の姿であろうかというふうに思っております。
  13. 仙谷由人

    仙谷委員 お言葉を返すようでございますが、百貨店売り上げの問題の中で、四月十八日の日経新聞に内訳がどういうふうに落ちておるかというのが出ておりました。その中で注目をしなければいけないのは、家庭用品、これが八・二%下落、それから婦人服・洋品、三・〇%落ちているということでございます。  私の地元もそれほど不況感はございません。ございませんけれども、縫製の下請メーカーというふうなものが相当ございます。ことしの初めにその経営者の方々と多少話をしておりましたら、ことしいっぱいは景気が非常に暗いという話をその縫製の下請のメーカーさんがやるわけでございます。なぜならば、婦人物のブラウスが昨年の冬ごろから売れなくなった。ブラウスというのは繊維業界では先行指標である。つまり、女性は景気がよかろうと悪かろうと多少のことでは毎年毎年ブラウスを買うのであって、ブラウスの売り上げが落ちるというのはどうも一般の消費者の消費マインドが冷え込んできておるのではないか、こういうことを言っておりました。それは、つい二月までは統計上あらわれてこなかったわけでございます。この三月の百貨店売上高指標の中に初めて婦人服・洋品、こういうものが売り上げが前年比落ちてくる。そして家庭用品までが落ちてくる。こういうところに、相当マインドが冷え込んでおる、つまり、大蔵大臣がおっしゃったようにその分貯蓄がふえているからいいではないかという議論もあるのかもわかりませんけれども、最終需要がどうも落ち込んできておるのではないか、ここが重要なポイントではないかというふうに考えるわけであります。  五年間のGNPとの比較でいいますと、GNPは三割くらいこの五年間で増加しておるのですね。民間の設備投資が七割くらいやはり増加しておる。しかし個人消費は二割強くらいふえただけであって、そして可処分所得も二割ぐらいしかふえてない、こういうことでございます。九一年の消費性向は七四・五%ということになっておって、五年前に比べるとどうも三%ぐらい低下しておるという指数もここに出ておるようでございます。  先ほどおっしゃいましたように、失業率が依然として低うございますので、失業のない不景気なんということはあり得ないというのが近代経済学の一つの原則のようでありますけれども、しかし聞くところによりますと、社内失業が相当ふえておるのではないだろうか。そして、現実に所定外労働時間が目に見えて減ってまいっておることは間違いがない事実のようでございます。そうだといたしますと、ここで、補正予算の話が相当大きい声で自民党の方から叫ばれておりますけれども、財政出動させて公共事業をふやす、そういう補正予算を組むというのは少々、今の人手不足の時代、そして、たまたまきのうの朝日新聞の論壇に出ておりましたが、三重県では、七五%の前倒しの公共事業の予算がおりてきても土地がないんだ、土地が今まで買えてないから公共事業なんかちょっとそんなにこなせませんよという記事が出ておったと思います。ここは、前回の大蔵委員会の議論からいいますと、まさに地価税財源をどういうふうに予算措置すべきだったかという議論になるわけでありますけれども公共事業をもう一段補正予算で追加するというのは、実は効果としては余りないし、少々いろいろなところに無理が来るのではないか。そうだといたしますと、ここは緊急避難的に住宅に関する利子補給あるいは減税、あるいは所得税の減税を思い切ってやるということが必要なのではなかろうか、こういう結論に私自身、私だけでありますけれども、達したわけでございます。  私はそんなに減税、減税と言うのは好きな方ではございませんけれども、ここは、今は所得税減税がむしろ景気対策として必要なのではないか。宮澤さんが、九月になればやることが減ってくる、入り用なときには入り用な金をきちんとつくるつもりだとおっしゃっていますから、ぜひお金をつくっていただいて、二兆円か三兆円かわかりませんけれども、所得税減税を思い切ってやるということを、今でも連休明けにでも発表していただく、そのことが個人の消費マインドといいますか最終需要を喚起させる、そしてそれが実体経済に反映して株価も持ち直す方向に動くのではないだろうか、こういうふうに考えますが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  14. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに企業の収益等が減少しておるというようなこと、そういったものを全体的に見たときに、あるいは今百貨店等の事情について具体的にお話があったわけでありますけれども、そういったものを見たときに、全体の状況というのはやはり冷え込んでいるということは言えると思うのです。ただ問題は、今お話がありましたように、実際にはまだ雇用者は非常にタイトであるというような状況であるということでございまして、そういう中にあって、私どもとしては、今日までいろいろと手を打ちましたことによりましてこれから間違いなく着実にいい方向に向かっていくのじゃなかろうかというふうに現在の状況というものを判断いたしておるところでございます。  そういう中で、確かに御指摘のとおり追加のということがありますけれども、今お話がありましたとおり確かに土地の問題もありますが、人手不足とか、あるいは建設業なんかの場合にまだ相当仕事のストックを持っておるということでありますから、公共事業そのものも、七五・二%というのを私たち打ち出しておりますが、これが本当に消化されるだろうか。むしろ仕事はまだあるからこれが少し移動するだろうという話がありますし、あるいはこういったものを措置することによりまして、前金で支払われるというようなものの中からいろいろな資材が買われていく、そういう中に一応の在庫調整というものを終わりながらまた生産が上向いていくという、いわゆる効果の発現というものも出てくるであろうということでありますから、今から後期におけるところの公共事業というものをどうこうするというのは、やはり私も考えるべきじゃなかろうというふうに思っております。  されば減税あたりをしながらというお話であるわけでございますけれども住宅につきましては私どもとしてやり得る限りのことを対応してきたというふうに思っております。そして、今日の調整局面というのは、バブルと言われた、しかも非常に高い伸びというものを示した、この後にあってはどうしても避けては通れない局面であるということであって、ただし、企業家のマインドとか消費者のマインドを余り冷やし過ぎてしまうということになると浮揚できなくなってしまうというおそれもあるから、その辺は私たち注意をしなければいけないわけですけれども、さあそれじゃ今すぐ減税をしながら対応するのかということになりますと、私はそこまでやるということはむしろいろいろなことを引き起こしてしまうおそれというものもあるのだろうと思いますし、加えまして、率直に申し上げて、法人特別税ですとか、あるいは自動車の消費税等につきましても新しい措置を皆様にお願いをしなければならなかったということでありまして、財源からいっても今実際にできる段階にはないだろうということを申し上げざるを得ないことをお許しいただきたいと思います。
  15. 仙谷由人

    仙谷委員 ここで所得税減税でも御決意をいただくと、経済のわかる名大蔵大臣になれるのじゃないかと思ってお話をしたのでございますが、どうもそうならないようでございます。しかし、個人消費が五%ぐらい伸びれば成長率が大体三%近くなるというふうに言われておりまして、最終的には家計部門の需要を復活させる、喚起するというのが最も大事なことではないか。したがいまして、政策目標もそこに方向が向けられなければならないのじゃないかということを申し上げて、次のテーマに移ります。  次に、環境税といいますか環境問題と国民あるいは私どもの負担といいますか、そしてその財源についてお伺いをいたします。  地球環境賢人会議東京宣言というのが出されたように伺っております。これについて大蔵省は、事務次官が、恒久財源を目指して前向きに検討するというふうなことを言った、述べたというふうに新聞報道がなされておるわけでありますが、大蔵大臣、この地球環境賢人会議東京宣言、これについてどういう御所見をお持ちなんでしょうか。
  16. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさに賢人会議は、本年六月のリオにおきまして開催されるUNCEDに向けて会議がなされたということであります。この中で、やはり地球環境というものが非常に悪化してきておる、これに対して対応しなければいけないという積極的な姿勢というものが実は示されたということだろうと思っております。  ただ、そういったものを進めていくときに、やはりその財源というものが必要であろうということで、この問題は東京宣言の以前に、御案内のとおりOECDの租税委員会ですとかあるいは環境委員会におきまして、環境対策としての税制を活用できないか、そんな議論がありましたり、あるいはロンドン・サミットでも、税を含めて環境保護のための経済手段を開発する作業を奨励するなんということが実はあったという、こういったものを背景にしながら実は議論がされたところでございますけれども、この賢人会議におきましては、どういう方法だよということまではまだ示されておらない。何らかの財源対策というものは必要であろう。  そういう中での環境税ですとか、あるいは環境債なんということも言われたりしておりますけれども、いずれにしましても財源というものを考えなさいということでありまして、私どもは、この東京宣言の大事なところは、やはり環境問題に対してみんなが理解をしなければいけない。しかし、そういったものが一体今度とういう手続で一体どんなものがあるのか、何をやらなければいけないのか、そういったことを詰めていきましょうということはこれは非常に大きく評価されるところでありますし、それで必要なものに対する財源手当てというものを何らかのことをやはり考えていかなければいけないというふうに私どもは評価いたしております。  今日までも、私どもといたしましては、OECDですとかあるいはサミットの提言等を踏まえながら、いわゆる地球環境問題という問題についての世界的な、国際的な動きというものにどう対応しようとしているのか、ずっと勉強してきておるところでありますけれども、私どもまた、東京宣言というものを踏まえながらこれをさらに勉強していきたいということで、今次官がというお話があったのですけれども、次官もそういう意味じゃなくて、いろんなことが言われておるようですね、いろんな形で議論しなければいけませんねという意味で言われたのが、何か一部、環境税について理解を示したというふうに報道されてしまっているのではないのかと思いますけれども、まだそこまで政府の内部で議論しておるということではないことを申し上げたいと存じます。
  17. 仙谷由人

    仙谷委員 私は国際貢献という言葉は余り好きじゃございませんけれども、しかし、国際社会の中でのいわば工業先進国としての日本の役割分担というふうな観点から考えましても、いろいろな仕組みの環境についての日本としての負担がどうしても避けられない。それは、お互いの国のエネルギー政策に対する技術移転の問題一つとってみても、当然のことながら、じゃだれがその費用を負担するんだという話にすぐなるんじゃないかと思います。  そういう意味では私も、要するにCO2問題での排出規制を税によってやるというヨーロッパ的な考え方が非常に参考になるんではないかという議論を二年ぐらい大蔵委員会でさせていただいたわけでございますけれども、ことしの地球サミットに向けて、いよいよ開発途上国に対する開発援助あるいは技術援助、あるいは環境を保全していただくための資金協力というふうなことが必要になってきた、具体的になってきたなという思いを強くしておるわけでございます。  そこで、日本の中でこの種の環境に対する賦課といいますか私どもの負担というものを議論するときには、やはり一番必要なのは、とりわけ大蔵省が環境税を提起するというふうなことになりますと、また痛くない腹を探られる。つまり、何か一般財源上して税収をもくろんでおるのではないか、こういう話になりがちでございます。それは、今の反地価税キャンペーン、また最近、私がせんだってもこの委員会で問題にさせていただきました方が本腰を入れて反地価税をやるというふうなことを言っておりますけれども、これも、何となく地価税収入がきちっと土地対策に使われなかった、今年度予算で使われなかったということが問題になっておるんじゃないか。  この環境問題に対する負担を考えるときには、やはり目的と使途をきちっと決めるということが一番重要なんではないだろうか。つまり、議論の方向が、まず何のために使うのか、あるいは何のために必要なのかということがまず議論をされないと、単なる税収取りに終わってしまうんじゃないか、そういうふうに考えておるわけでございます。  その点について、大蔵大臣あるいは主税局長の御答弁をちょうだいいたしたいと思います。
  18. 羽田孜

    羽田国務大臣 今お話のありましたように、環境問題、今度の賢人会議、あるいはUNCEDに向かって議論をされておりまして、環境の問題というのは非常に重要なものであるということはやはり国際的にも理解をされるようになってきておるというふうに思います。特に、ポスト冷戦、こういう中にあって人類が協力しながら地球の環境を守っていくというのは、これはもう大変私は一つの大きな人類の使命であろうと思っておりますし、また、日本がかつてここに発展するまでの間にいろいろな公害にぶつかった、それを克服してきたという経験、こういうものを生かしながら対応していく、日本がリーダーシップをとるということもまた重要な日本としての役割であろうというふうに思っております。  その意味で、今御指摘のございました点等を踏まえながら、我々としても一体どういうことができるのか、ただお金だけじゃない、今のように、人的なものとかあるいはノウハウを移転していくとか、そういった問題があろうかと思っておりますけれども、しかし、いずれにしてもそういったものに資金がかかるということがある。その意味では、おっしゃるとおり、一体何をどうするんだ、そのために一体どんなふうな負担がかかるのか、それに対してどのようにそれぞれが役割の分担を果たすのかということの目的がきちんとしないと、国民は環境ということに対しては理解されるでしょうけれども、それの一つの目標というのがきちんと定まらないと理解を得ることができないだろうというふうに思っております。  具体的に今主税局の方で検討していることがあったら、局長の方からまた御答弁させていただきます。
  19. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 ただいま大臣から答弁がございましたように、また仙谷先生から御指摘がございましたとおり、環境問題を基本的にどう考えるのか、そのためにどのような政策が必要なのかという論議がまず重要でございまして、税の仕組みの話とか、そういった問題はその先のことといいますか、順序といたしましてはその先のことであるというふうに考えさせていただいておりますし、先般の次官の発言につきましては先ほど言及をしていただいておりましたけれども、次官の考えも同じでございます。  今大臣から、具体的なことについて何か付言をすることがあればということでございましたけれども、特に私どもの部局としまして、今申し上げました問題意識以上に進んで具体的なものを検討しておるという事実はございません。
  20. 仙谷由人

    仙谷委員 それでは、次の議題に入ります。  山上会長、どうもお待たせをいたしました。  監査の問題をお伺いするわけですが、昨年証券会社に損失補てんというふうな問題が発生したわけでございます。ことしはことしで政治スキャンダル絡みで使途不明金あるいは債務保証、債務保証というのは経験のある人はそんなに難しい話じゃないのですが、NHKのテレビなんか見ておりましても、債務保証という言葉が特別の説明用語になって出てくるぐらいでございますので、なじみのない、なじみの薄い言葉だと思いますが、こういう簿外の取引といいますか、こういう問題が出てきておるわけでございます。最近では、証券業界では飛ばしというふうな問題も出てまいっておるようであります。  この種の問題と監査の関係というのはいかがなるんでしょうかという、つまり監査、公認会計士による監査、会計監査、監査法人による監査、現行の建前上ではこれは防ぎようがないという話になるんでしょうか、それとも何らかの手だてがあれば防げるということになるんでしょうか。まずその辺、今の会計処理の現状との関係でお答えをいただければと存じます。
  21. 山上一夫

    山上参考人 それでは、お答え申し上げます。  御質問のございました一連の損失補てん等の取引は時価、これは公正価格でございますが、それと隔たりのございます価格による取引によって行われておりますが、売買取引の中には非上場有価証券、上場されてない有価証券等が含まれておりますために、これらの公正な取引価格というのは完全に把握することが困難な場合がございます。また、時価とそれから取引価格が離れておるということが仮にわかった取引といたしましても、それが営業取引の一環として行われたものとする企業企業の方ではそのように主張いたしますので、取引目的をそうではない、損失補てんだと断定することには困難の伴う場合があるわけでございます。これまでは、監査を通じましてその全容を把握することはそれほど容易なことではない、困難な場合があるというふうに考えざるを得なかったのでございます。仮にこのような取引の全貌が把握可能な場合があったといたしましても、当該取引に関する処理慣行が必ずしも確立されていないという現状のもとでは、これを直ちに監査意見に反映させるというのは困難であっ北と思われます。  このような状態でこれまで来たわけでございますが、昨年十二月に、監査基準、監査実施準則及び報告準則の全面的な改正が行われました。その結果、今回の改正では、財務諸表の重要な虚偽記載を見逃してはならない、看過してはならない旨が明記されておりますほか、こうした監査環境の変化に対応したことといたしまして、経営者による確認書の入手を義務づけているなどございまして、今後一層有効、適切な監査の実施に資するものと私どもは受け取っておるわけでございます。  また、本年一月一日施行の改正証券取引法によりまして、損失補てん等が明確に法律上禁止されました。私どもの協会におきましても、これらの施策に対応して、できるだけ早く損失補てん等の監査のあり方について改善すべき点があるかどうかの検討を行い、適切に対処していく、このように考えております。  以上でございます。
  22. 仙谷由人

    仙谷委員 いわゆる証券取引法上、損失補てんが違法な取引であるというふうに定められる以前の段階で、今おっしゃいましたけれども、監査の過程で、例えば一日の取引で、一日に同じ相手を取引相手として同じ数量のものを、単価が例えば十ドルで売って二十ドルで買い戻す、損益として、約四十億円もそこに損益が発生する。つまり、証券会社から見れば損が発生しておるわけですね。会社の損失がそこに発生を一月のうちにしておるわけでございます。そんなものが発見されたとしても、会社の主張は、それは別にいいんだ、通常の取引なんだというふうに主張をされた場合には、会計士としては、これを除外して監査意見を書くというふうなことにはならないんでしょうか。それはつまり、帳簿上ちゃんと取引が正確に記載をされておれば、それはそれで監査としては適正な処理がされておるという意見になるんでしょうか。
  23. 山上一夫

    山上参考人 今の御質問につきましては、従来はそのような取引が事実としてあり、それが記録として残っておるということでございますので、私どもとしてそれが虚偽行為である、あるいは不正であるというようなことには言い切れない部分がございまして、少なくとも監査報告書の面で、監査証明の面でそれを証明するといったようなことは必ずしもできやすいものではなかった、むしろできにくいものである、このように考えておりました。そして、そのような場合には私どもは、商法特例法の第八条によりまして、監査役にその旨を報告する、そして善処してもらうといったような道がございましたので、そのような方法をとっておった、このように考えております。ただ現在では、新しい基準、新しい準則が出ましたので、その範囲も私どもの方である程度厳重にチェックしなくちゃいけないようになってきたかというようなふうにも受け取っております。
  24. 仙谷由人

    仙谷委員 証券局長にお伺いするわけですが、監査というものはそういうものなんですか。適正に処理されておれば、中身は不当であっても、あるいは今のようなケースであれば、政務次官、頭をかしげられましたけれども、一日の取引で四十億円会社に損させだというのは、いいですか、これは刑法上の犯罪になりかねない行為ですよ。あるいは株主から見れば、その旨がどこかに注記されなければ、あるいは特記されなければ、その会社の資産状態あるいは取引行為がディスクローズされないことになるわけでございます。こんなことが会計監査のレベルでは網にかかってこないということであれば、これはだれが指摘するのかという問題になるわけでございます。  先般、もうそろそろ廃刊になる予定の一番まじめな週刊誌が、「公認会計士なんかいらない!」という表題で書きました。中身は必ずしもそういう趣旨ではなかったですけれども、表題はそういうふうに書いてあった。つまり、素人から見ればそういうふうに思わざるを得ないような部分がこの間の企業の不祥事というもので感じられるわけですね。  前回の大蔵委員会審議の中で、大体会社の監査役なんというのは何をやっているんだという話になりました。当然のことながら、公認会計士の先生方あるいは監査法人でも発見できなかったのか、あるいはそれについての何らかの意見を会社の方に言うことができなかったのかというのが我々素人の疑問なわけでございます。  そこで、松野局長にお伺いするわけですが、どうもシステムとして、あるいは監査のルールの問題としてそこのところが抜け落ちていく、そういう問題があるのじゃないでしょうか。いかがですか。
  25. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに、御指摘のような取引が会社の帳簿にそのまま載っかっておれば、監査というのはそれでいいというものでは決してないというふうに思うわけです。今、協会長からも御説明がございましたように、当時は、そういう取引について確定的な判断をして監査上意見を言うというところまでの確定したルール、慣行がなかったというような問題はあったわけではございますけれども、私どもとしては、やはり御指摘のような取引というのは通常の売買取引というふうに考えるわけにはいかないのではないか。明らかに通常の売買取引とは異なる取引であるということで、ディスクロージャーの上でこれをはっきりと明確に区別して開示するのが適当であるということにしまして指導をして、その後、有価証券報告書の訂正を求めたわけでございます。  確かに、公認会計士が行います会計監査につきまして、ルールをどこまで詳細なものをつくるかというところに非常に難しい問題がございます。企業の取引というのは非常に多様にわたっておりますし、また、どんどんと新しい取引が生じてまいるわけでございまして、すべてを律するような詳細なルールをつくるというのは率直に申し上げてなかなか困難でございます。やはり問題が出た都度それに対応して、適正な監査が行われるような制度上の手当てをしていくということが必要だろうと思うわけでございます。  先ほど協会長からも申し上げましたように、今回監査基準を改定いたしますときに、この点についても十分な検討をいたしまして、確認書制度というのを導入いたしました。この確認書制度というのは、その目的といたしますところは、第一次的な責任はやはり経営者が持っているのだということをはっきりとさせる意味がございまして、まずその適正な財務諸表を作成する責任というのは経営者にあるのだということ、それからその適正に作成された財務諸表あるいは監査に必要なすべての資料を監査人、公認会計士に提供したということを確認するというような制度を導入いたしたわけでございます。  これによって、一応経営者が、自分が作成について責任を負っているのだという点の自覚を求めるということ、そういったものの提供を受けた会計監査人、公認会計士が、先ほどもありましたように、不正を見逃さないというような態度で監査をしていただくというような点もあわせて今度の監査基準の見直しの中に含めたわけでございまして、すべての取引を判断する監査の詳細なルールをつくるというのは非常に難しいわけではございますが、制度上の仕組みとしては今申し上げたようなことを通じて、より公正な監査ができるような手当てをしたというふうに考えているわけでございます。
  26. 仙谷由人

    仙谷委員 それでは公認会計士協会の会長の山上参考人にこの確認書について、公認会計士協会の方では、この確認書なるものがどういう内容のもの、あるいはいつ公認会計士の方に提出されることが望ましいというふうにお考えなのか、この確認書についてお伺いをしたいと思うのです。もし現在、その様式でも決まっておりましたら、説明をいただければと思います。
  27. 山上一夫

    山上参考人 確認書につきましては、基本的に私どもの監査は、会社の協力を得て、会計士と会社との間で協力して監査の実施をすることによって企業財務を確立するという目的に立っておりますので、新しく確認書ができるといったようなことは協力体制を確立する上から非常に望ましいことである、このように受け取っておるわけでございます。  そして、その内容等につきましては、今、監査基準等の実際の受け皿といたしまして監査基準委員会というものが組織されまして、その中でその内容等をつぶさに検討するということを実施中でございます。  以上でございます。
  28. 仙谷由人

    仙谷委員 先ほど証券局長がお述べになった以上は具体的な内容のところまでは良たお詰めになれていない、こういうことでございますね。  そこで、この確認書といいますか、経営者の責任で、財務諸表の作成についての最終的な責任は経営者にあるという前提から出発するのだ、こういうことなのでございますが、先ほどの証券局長のお話の中に、いわゆるすべての財務諸表あるいは監査証拠を提出したということを確認する旨の記載がなされる予定である、そういうふうに私はお伺いしたのですが、いわゆる網羅性という問題でございますね。商法の三十三条には財務諸表についての整然明瞭性と言われる原則が書かれておるわけでございます。  それで、この確認書に、それにつけ加えて、要するに公認会計士あるいは監査法人に提供する財務諸表あるいは証憑といいますか証拠、これが真実である、そしてまた適宜に作成されたものである旨を確認書の中に織り込むという点はいかがでございましょうか。
  29. 山上一夫

    山上参考人 先ほど申し上げましたとおり、その内容につきましては、現在具体的に検討中でございますので、先生の申されたことをよく外しまして検討を進めたい、このように考えます。
  30. 仙谷由人

    仙谷委員 今の点、証券局長、いかがでございますか。つまり、網羅性、整然明瞭性に加えて、真実性と適宜性を確認書の中に盛り込ませる、いかがでございますか。
  31. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どもが今度改定いたしました監査実施準則というのがございますが、その中には、先ほど私が申し上げました作成責任が経営者にあること、それから監査に必要なすべての資料を提供したこと、それから重要な偶発事実あるいは後発事象について十分連絡、通知をするというようなことを少なくともこれは書けというふうに書いてございます。先ほど申し上げましたように、適正な財務諸表の作成責任というところを裏返して言えば、真実性というようなことになるわけでございますけれども、確かに御指摘の点も大変重要なポイントでございます。まだ確認書の様式とかあるいは必要記載事項について私どもとしても完全にセットをしているわけではございませんので、その点については十分御意見を伺いまして、内容についてさらに検討をしたいというふうに思っております。
  32. 仙谷由人

    仙谷委員 結局、この使途不明金問題というふうなものあるいは粉飾決算というふうなものを詳しくお伺いするつもりはないわけでありますけれども、公認会計士協会の方でも、昭和五十四年の段階で「不正支出・使途不明金等に係る監査の充実強化について」というのがまず出されて、次には、これは昭和六十二年二月でございましょうか、「最近の会社役員等による不正事件続発に対する監査の対応について」という、会計士協会の用語で言えば通牒が出されたと聞いております。  この種の、端的に言いますと虚偽記載といいますか、あるいは故意による脱漏といいましょうか、そういう問題についても重大な関心を持って監査人が監査人として当たらなければならないということをお考えになっておったんではないかと思いますけれども、反対から言いますと、結局財務諸表に載せられてないものこそが問題である。つまり、使途不明金とかそれから現金を勝手に使ってしまったとか、要するに財務諸表上載っていないものの方に問題があるんだというふうな格言といいますか、大学教授の言葉もあるようでございますので、この真実性をどうやって担保するか、ここのところが核心だと思うのですね。裏から言えば、虚偽記帳をどう防止するか、虚偽記載をどう防止するかということだろうと思うのです。  したがいまして、この確認書につきましても、真実性を担保する、あるいは財務諸表の作成という観点から見ますとそれが適時につくられる、つまり後からつくられたり訂正されない、そういうものであるということを含めた確認書をぜひとっていただきたい、そういう監査慣行といいますか、会計処理の慣行をおつくりいただきたい、私、要望をいたしておきます。  そして、証券局長にもお願いをするわけですが、日本ではこの財務諸表に対する虚偽記帳といいますか、虚偽記載については罰則等々はどういうふうになっておるのでしょうか。
  33. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今のお尋ねは企業の側でございましょうか。公認会計士の責任についてまずちょっと申し上げますと、公認会計士の場合には証券取引法と商法監査特例法と二つございます。  証券取引法上の責任といたしましては、虚偽記載があった場合あるいは記載すべき重要な事項が欠けていた場合に、故意または過失でそれを見逃したというような場合には、監査を行った公認会計士の場合には、そういう財務諸表をもとに、証取法でございますから有価証券の取引が前提になりますが、その有価証券の取得者が損害を受けたというような場合には、これはその損害を賠償する責任を公認会計士にも負わせているわけでございます。  それから、商法監査特例法の方におきましても、同じようにやはり公認会計士が重要な事項について監査報告書に虚偽の記載をしたというような場合には、これは一般的に第三者でございますが、それによって第三者に損害を生じさせた場合には損害賠償責任があるということでございます。  証取法の方は、いわば証券取引の公正さといいますかを確保するという意味で証券の取得者に対する損害賠償責任を規定しておりますし、商法監査特例法の方は、監査対象会社の監査内容の適正を確保するという意味で、今のような損害賠償責任を規定しているわけでございます。
  34. 仙谷由人

    仙谷委員 その財務諸表の作成について最終的な責任は経営者にあるという、その経営者が会社の従業員を使用して財務諸表について虚偽を記載し、もしくは故意に記載をしないという場合にはどういう罰則があるのかということをあわせてお伺いしたいと思います。
  35. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 経営者の側でございますが、証券取引法におきまして有価証券報告書などに虚偽の表示をした場合というのは、証取法では一番重い罰則であります三年以下の懲役または三百万円以下の罰金に処せられることになっております。なお、罰金につきましては、現在私ども審議をお願いしております法律では、法人の罰金はその百倍に引き上げるということを予定しているわけでございます。
  36. 仙谷由人

    仙谷委員 財務諸表に虚偽の記載をする場合をお伺いしておるわけでございまして、貸借対照表、損益計算書その他附属計算書類に虚偽記載が行われた場合にはどういう罰則があるかということをお伺いしたいわけであります。
  37. 吉戒修一

    吉戒説明員 お答え申し上げます。  会計帳簿及び計算書類の虚偽記帳、要するに事実を記載しないあるいは虚偽の事実を記載したというような場合につきましては、取締役が行い良した場合には百万円以下の過料に処せられます。それから、監査報告書の同じような虚偽記帳につきましても同じく百万円以下の過料に処せられます。これは商法上の罰則でございます。それから、同じく監査報告書の虚偽記帳につきまして、会計監査人が行いましたときにも商法特例法によりまして百万円以下の過料に処せられるということになっております。
  38. 仙谷由人

    仙谷委員 要するに、有価証券報告書の届け出書に虚偽記載をした場合には懲役刑等が科されるようになっておるようでありますけれども、今お伺いしましたように、商法上も財務諸表に対する虚偽記載そのものは過料で済むということになっておるわけです。ここにいわゆる使途不明金問題等々、あるいはもっと言いますと、A勘定、B勘定、C勘定というふうな財務諸表が二重にも三重にもつくられるといういいかげんな会計処理がはびこる原因にもなっておるんではないだろうか。つまり、会計書類といいますか、財務諸表作成についての緊張感がない。その分、財務諸表そのものについての信頼性がなくなってくるというのは当たり前の話でございます。  この点、今商法改正、特に会社の計算書類の公開の問題とも絡んで種々検討はされているのだろうと思いますけれども日本の財務諸表についてそこまで、つまり緊張感のある財務諸表の作成あるいは信頼性のある財務諸表というふうなもののために、虚偽記帳について罰則を考えるというふうにはお考えになりませんでしょうか。まず法務省、いかがでございますか。
  39. 吉戒修一

    吉戒説明員 お答え申し上げます。  会社の計算書類の適正な記載ということは、有限責任を前提として極めて重要なことであろうかと考えております。虚偽記帳につきましては、先ほど申し上げましたように百万円以下の過料という定めになっております。  先生御主張のように、この罰則の強化につきましては、実は他の商法違反行為との横並び等の問題もございまして、なかなか難しい問題があるのではなかろうかというふうに考えております。しかしながら、会社の会計の監査につきましては、その計算の適正の確保を図るという観点から、さらに御主張でありますように、計算書類の登記所における公開等とか、いろいろな改善の方策等につきましてさらに検討を重ねてまいりたい、かように考えております。
  40. 仙谷由人

    仙谷委員 日本コッパーズ事件というのがあります。公認会計士が損害賠償義務があるというふうに指摘をされた初めての判例ではないかというふうにも言われております。平成三年三月十九日に東京地方裁判所で出された判決でございます。被告になった監査法人は極めて有名な監査法人でございます。  この中で指摘されておりますのは、現在の監査においても従業員の不正行為の発見も副次的、限定的な目的として残されているんだということ、あるいは通帳等を実査すべき義務があったのだというふうなことが言われておるわけでございます。山上会長、この現在の監査においても従業員の不正行為の発見も副次的、限定的な目的として残されているという判決のくだり、これについての公認会計士としてのお考えはいかがでございましょうか。
  41. 山上一夫

    山上参考人 この件は今から十七、八年前の昭和五十年前後に起こった問題で、判決がやっと昨年出たという問題でございます。その当時は、財務諸表の適正性の監査については、不正の発見は特別にその目的として掲げられたときを除きましては、たまたま監査の過程で知り得たときには監査役に報告するといったような程度で受け取られておったような時代であったと思います。  ただ、その後私ども、昭和六十三年十月四日付で日本公認会計士協会の監査第一委員会報告第五十号というのを出しまして、本来も言うと監査基準や準則を直さなければいけないのですが、一応それの先取りといたしまして、この報告を出して、預金及び偶発債務について直接確認をすることが可能になるなど、このような報告が出ました後は、当然に今おっしゃいました通帳の実査といったようなものを直接やるというようなことが義務づけられてきたわけでございます。  そして、今度の新しい基準及び準則においては、明らかに重要な財務諸表の虚偽記載を見逃してはならない、看過してはならないということが明示されております。そのようなことから、今後はそのようなものが当然義務づけられてきた、このように思っております。
  42. 仙谷由人

    仙谷委員 そういたしますと、今度のこの監査基準あるいは準則改正によって、監査の中身についても相当その真実性といいましょうか、あるいは会社自身の不正行為、従業員の不正行為というふうなものについても目を光らせる、あるいはそれを担保するものとしての確認書というふうなものがあるというふうにお伺いできるわけでありますが、そしてまた、虚偽記帳についての罰則問題あるいは会社の中での経理担当者のモラルの問題といいますか、あるいは社内規定の問題等々が相まてはもう少し期待できる状況にもなろうかと思うのです。  そこで一つお伺いしたいのですが、公認会計士事務所あるいは監査法人の監査というものが、アメリカでは同一監査人が七年を超えては監査をしないということになっておるようでございますが、日本ではどうなっておるのでしょうか。
  43. 山上一夫

    山上参考人 今アメリカでは同一監査人がずっと続けてやらないとおっしゃいましたが、恐らく監査人というのは例えば監査法人という、日本の場合は監査法人がかわるのではなくて、監査法人の中の責任者がかわっていくというようなことは日本の監査法人でも行われておるわけでございますし、それから外国でも、聞くところによりますと、監査人がかわるのではなくて、その中における責任者といいますか、それが交代するというようなルールだと聞いております。したがいまして、外国で行われているようなことは日本の監査法人でも行われておる、このように受け取っております。
  44. 仙谷由人

    仙谷委員 今のは、日本の監査法人でもルール化されておるという趣旨ですか。
  45. 山上一夫

    山上参考人 一定の時期ごと監査人そのものがかわるというのではございませんですね。監査法人の中における責任者が交代するというようなことは実際に行われている、こう申し上げているわけでございます。
  46. 仙谷由人

    仙谷委員 だから、ルール化されているか。監査法人の中のルールとか協会のルールとしてそういうことがあるのですか。
  47. 山上一夫

    山上参考人 それは監査法人の中におけるルールとなっておると思いますが、実際にそういうものが行われているということを聞いておりますが、どういう規定によって行われているかは各監査法人において多少違いがあるかもしれませんけれども、そのようなルールをそれぞれ設けられておると聞いております。
  48. 仙谷由人

    仙谷委員 これは、ぜひ協会の方でそういうルールをお考えになったらいかがでしょうか。といいますのは、我々に漏れ伝わって聞こえてくるお話の一つは、非常に監査法人のクライアント争奪戦が激しいということなんですね。そのために公認会計士補の争奪戦が行われる。つまり、監査法人が大きければ大きいほどビジネスとしての業務展開がより拡大して行えるという、まさにビジネス戦争に監査法人が入っておるのではないだろうか。だから、きょう問題になっておりますこの法案、試験制度との関係でも、青田刈りが非常に激しいではないかという議論も聞くわけでございます。そしてまた、そんなことはゆめゆめないとは思いますけれども、どうも日本的横並び、仲よし社会の中で、長年のおつき合いの中で監査が、中身の問題については、つまり当不当の問題については甘くなっておるんではなかろうか、そんな話まで聞こえてくるわけでございます。したがいまして、そういう外からの疑念、そういうものを払拭するためにも、やはり協会の方で何らかのルールづくりをすべきではなかろうかというのが私の考え方であるわけでございます。  といいますのは、これは弁護士もクライアントから報酬をもらうわけでありますけれども、しかし、弁護士は闘う相手がおります。つまり、原告であれば被告という相手がおります。刑事事件であれば検察官という相手がおって、クライアントのために闘うわけでありますけれども、どうも考えてみますと、公認会計士の会計監査は、だれのために、何のためにするのかといいますと、その会社の信用のためではあるけれども、少々会社の即時的な利益とは離された、会計書類の公正とかあるいは真実性とかあるいは会社の資産がいわゆる債権者とか株主にきちっとディスクローズされる、つまり経営者そのもののために監査があるのではないのじゃなかろうか。にもかかわらず、経営者から報酬をいただくという構造になっているところが公認会計士さんの会計監査の悩ましいところではないだろうか、そんなことを感じるものですから、できるだけ癒着とかなれ合いとか言われるようなことがないようなルールといいますかシステムをおつくりになられた方がいいのではないだろうか、そう思って申し上げておるわけでございます。  大蔵省に一言お伺いするわけですが、何か大蔵省出身の方で、公認会計士の資格がないけれども監査法人に就職する方が最近どんどんふえておる、もっと言えば、監査法人の方から営業展開のためにスカウトをされているという事実があるということも聞くわけでございますが、そういう事実はありますか。あるいはこの一年、二年、三年ぐらいでどのぐらいの数の方が監査法人にスカウトされて就職されておるのか、おわかりになる範囲で結構ですからお答えください。
  49. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今お尋ねにありました監査法人に大蔵省にかつて勤務した人間が就職しているという事例はございます。数についてはちょっと今手元に持っておりませんが。  これは、監査法人と申しますのはだんだん非常に大きく、大規模なものになってまいっております。それは、当然対象となります企業も非常に大きくなり、かつ、業務も複雑化、多様化しておりますので、それを監査するのに必要ないろいろな能力等から考えますと、監査法人もある程度規模を大きくしていくというような流れにあるわけでございます。  私ども、監査法人が大きくなるということについては、基本的には競争が適正に維持されていればいいという考えでいるわけですけれども、ただ、大きくなりますと、監査法人の内部の管理の問題が出てまいります。これはなかなか難しい問題でございまして、公認会計士の方々ももちろん監査法人の管理運営に当たっておられるわけでございますけれども、そういう管理運営に当たるというような点から、大蔵省にかつて勤務していた人が欲しいというような話があって就職するというような例が多いというふうに聞いております。少なくとも私が聞いている限りでは、監査法人の監査対象先を開拓するためにそういう人間を要求しているというふうには聞いていないわけでございます。
  50. 仙谷由人

    仙谷委員 今後ともその点について注意をしていただいて、いわゆる天下りの規制といいますか、私は、優秀な大蔵省の方々がどこで就職しようと、それは原則としては自由だと思いますけれども、公認会計士の世界までも大蔵省の方々が就職をしてあらぬ疑いを持たれないように、人数とかどういうところに就職したとか、そういう事実調査をひとつお願いいたしたいと存じます。  テーマを変えます。  公認会計士の報酬というのは今どういうふうになっておるのでしょうか。平均的な場合といいますか、資本金別に異同があるのであれば、それを含めて少々お答えをいただきたいと存じます。
  51. 山上一夫

    山上参考人 公認会計士の報酬は、公認会計士法の第四十四条第一項第十号において、会則に大枠の規定を置くことになっておりまして、それに基づきまして、具体的には細則である公認会計士報酬規定というものがありまして、そこで定められておるということでございます。  その内訳は、財務書類の監査証明に係る報酬に限って申しますと、基本報酬と執務報酬、この二つに分かれまして、前者につきましては総資産をベースに定められておりまして、後者につきましては、責任者、補助者たる公認会計士及び会計士補の区分により、執務報酬一日について幾らという額が定められているわけでございます。  なお、会則八十二条第二項では、会員の受けるべき報酬は、報酬細則に定める額を標準として、地方の事情、受嘱事項の難易軽重、委嘱者の負担能力等を参酌いたしまして、適正妥当と認められる金額でなければならない、このようにしております。  それから法定監査、すなわち証取監査及び商法監査につきましては、今申し上げました基準に準じて別に金額が定められているということでございます。その個々の金額等につきましては、時間の関係でお許し願いたいと思います。そのような決め方でございます。
  52. 仙谷由人

    仙谷委員 私が間違っておれば訂正をしていただきたいのですが、タイムチャージといいますかアワーチャージの方は、時間の料金の方は、公認会計士一人につき一日八万円ぐらい。それから、大ざっぱに見て、商法上の監査あるいは証取法上の監査をいたしますと一千万円ぐらいすぐかかってしまう、こういう話を伺うのですが、いかがでございますか。
  53. 山上一夫

    山上参考人 一日の日当でございますが、今、法定監査以外の報酬が七万一千五百円というのが会計士の日当でございます。士補は一日四万四千円、このようなことになっております。
  54. 仙谷由人

    仙谷委員 一千万円ぐらいかかるというのはいかがですか。
  55. 山上一夫

    山上参考人 一千万円という金額は基本報酬とそれから執務報酬との兼ね合いでございますが、普通一千万円というのは、ちょっとよくわかりませんけれども、二、三百万から始まってやれる会社も、資本金あるいは規模についてはできる、このように思っております。ただ、証取監査その他につきましては当然一千万円ぐらいになる、このように思いますが、今ちょっとそこのデータがはっきりしておりませんので、御勘弁願います。
  56. 仙谷由人

    仙谷委員 それが絶対的に高いとか安いとか私は申し上げるわけではないのですが、昨年の商法改正の論議の中で、衆議院でも参議院でも、中小会社においても計算書類を公開させる、それから会計専門家による計算の適正担保を図らなければならないという附帯決議がなされておるわけでございます。中小会社というのはどこからとるか難しゅうございますが、例えば資本金一千万以上の会社というふうに考えますと、四十八万ぐらいございましょうか、そういう会社の計算書類の公開あるいは適正担保について、この附帯決議を受けて、今法制審あるいは法務省の方でどういう検討が進んでいらっしゃるのでしょうか。
  57. 吉戒修一

    吉戒説明員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、昭和四十九年に商法の改正がございまして、その際に、株式会社の監査制度が充実強化されました。いわゆる資本金五億円以上の大会社につきましては、会計監査人による監査が強制されたということでございます。その後昭和五十六年の商法改正によりまして、さらに対象の会社が負債総額二百億円以上の会社まで拡大されました。株式会社の有限責任の前提といたしまして、会計監査人による監査の対象の外にある中小の会社につきましても、会社の計算の適正が確保される必要があろうかと考えております。  しかしながら、公認会計士の数の不足でありますとかあるいは監査コストについての会社の負担能力の問題等ございまして、法務省におきましては、公認会計士に限定しない会計専門家による監査よりは簡易な計算のチェックの制度として、会計調査人による調査の制度の導入を提案したわけでございます。これにつきましては、平成二年の商法改正の前に御審議いただきましたけれども、会計調査人による調査は監査とは言えないのではないかというような問題があったり、あるいは対象となる会社が資本金三千万円以上の会社あるいはその負債額三億円以上の会社と考えましたところ、二十万社以上あるということがございまして、そういうふうな問題が出てきますと、関係各界の方からいろいろな御異議が出てまいりました。したがいまして、最終的には成案を得ることができませんで、平成二年改正では見送られたということでございます。  しかしながら、中小会社の会社の計算の適正の確保ということは極めて重要な問題と私どもでは考えております。そこで、今御紹介にございましたように、平成二年の商法改正の際にも国会の附帯決議にも取り上げたことでもございますし、次期の商法改正の検討事項の一つとして取り上げております。したがいまして、今後法制審議会において調査審議をお願いしたい、かように考えております。
  58. 仙谷由人

    仙谷委員 中小会社の数、そしてまた商法改正動向、さらには監査にかかる報酬、こういうのを総合的に考えまして、証券局長、いわゆる計算書類の会計専門家による監査というふうなもの、これについてどうお考えになっておりましょうか。つまり、税理士を何らかの方法で会計監査ができるような資格にするということを御検討なさるんでしょうか。
  59. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今回お願いしております改正案は、受験者が非常にふえて、現行の試験制度あるいは試験委員が法定されているという状況では十分な選考ができない、あるいはより多様な人材をということで、科目選択制を導入するというような試験制度の改正をお願いしているわけでございますけれども、公認会計士が監査をする対象はどんどんふえてきております。上場会社もふえておりますし、店頭公開会社もふえております。あるいは商法監査もふえてまいりますし、それ以外のいろいろな法律によって監査を義務づけられている学校法人等もあるわけでございまして、そういった流れを考えますと、監査の適正さというのを確保していくためには、かなりの監査能力の拡充というものも必要になろうかというふうに思うわけでございます。ただ、監査につきましては、先ほど来御指摘がありましたように、やはり不正の発見といいますか、質というものも要求をされているわけでございまして、そういう量的なニーズと質のニーズとをどういうふうに調和させるかという非常に難しい問題があるわけでございます。  いずれにいたしましても、今言及されました税理士と公認会計士の問題、これはすぐれて商法監査の対象をどこまで、特に中小会社についてどこまで拡大していくかというような問題と非常に密接に関係をするわけでございまして、先ほど法務省からも御答弁がございましたように、法制審で検討が進められております。私どももそれを見ながら、公認会計士業務のあり方、特に中小会社に対する監査というものをどうやっていったらいいのかという点については、今の御指摘の点も含めて検討をさせていただきたいというふうに思っております。
  60. 仙谷由人

    仙谷委員 時間が参りましたので終わります。山上会長、どうもありがとうございました。
  61. 太田誠一

    太田委員長 東祥三君。
  62. 東祥三

    ○東(祥)委員 公明党の東祥三でございます。  本日は、公認会計士法の一部を改正する法律案について、時間の許す限り基本的なことを質問させていただきます。  まず初めに、本日御多忙のところ参考人として来ていただきました日本公認会計士協会会長の山上一夫様に二点お伺いしたいと思います。  第一点は、現在我が国において、日本経済を支える企業活動の経理の健全性を監査する多くの優秀な公認会計士の方々が経済社会において御活躍されておりますが、会計士の需給バランスといいますか、企業からのニーズに対して対応可能な人員数というのはどのような状況なのでしょうか。さらにまた、経済の多様化、規模の拡大に伴いまして、今後さらにどのような需要が見込まれるとお考えになっているのでしょうか。この点についてまず初めにお聞きしたいと思います。
  63. 山上一夫

    山上参考人 最近におきます公認会計士の需給状況の推移を見てみますと、経済の急速な拡大に伴って、会計士補の求人市場を中心に一時需給がタイトであったことは事実でございますが、ここ数年、第二次試験の受験者と合格者が着実に増加してきておることに加えまして、バブル経済の崩壊による証券不況の影響もありまして、現在需給バランスは相当程度改善されてきている、このように受け取っております。  ただし、今後における公認会計士に対する社会的要請の高まりを背景に、公認会計士に対する需要は引き続き着実に増加するものと予想されますが、同様に、従来にも増して深い専門的知識と幅広い識見とが必要とされる実情にございます。すなわち、企業活動の高度化、国際化等に伴い、個々の監査対象業務も年々複雑になってきておりぎすほか、取引の透明性、公正性の確保等の観点から、ディスクロージャー制度の制度上の要請が高まっていることに加えまして、企業等も情報処理サービス等高度な専門的知識と柔軟な発想を求められる各分野において需要が拡大している、このような現状でございます。  以上、お答えをいたします。
  64. 東祥三

    ○東(祥)委員 続きまして第二点目でございますが、御案内のとおり、税理士法の第三条で、公認会計士は資格取得と同時に税理士の資格もあわせて持つことになっております。この点に関連して山上参考人にお伺いしたいのですが、公認会計士が税理士登録されている数、そしてまた実際その上で税理士の仕事をされている方は一体どれぐらいいらっしゃるのでしょうか、また税理士の仕事をされている方が税務遂行上支障がないのかどうか、この点についてお伺いいたします。
  65. 山上一夫

    山上参考人 公認会計士は現在九千三百名程度おりますが、税理士登録をしている者はおよそ四千七百名で、公認会計士の約五割程度でございます。ただし、この四千七百名は、監査をしないで税務専業というのではなくて、傍らに監査なり、あるいはマネージメント・アドバイザリー・サービスなどそれぞれ専門を生かしながら同時に監査もやっておる、このような現状でございますので、先生の御質問が税理士プロパーということになりますと、ちょっとその辺は統計はないし、また監査は何らかの形で少しはやっているという方が多いと思うわけでございます。  公認会計士第二次試験合格後、大部分の会計士補は大手監査法人に就職をいたしまして監査実務の経験を積みますが、やがてそれぞれ専門性を生かして社会のニーズに対応した各業務分野に移行しているというのが実情でございます。公認会計士協会は、実務補習を初め各種の研修を充実することによってこれらの公認会計士が正しく社会の要請にこたえ得るよう対処しているところでございまして、職務遂行上支障は現在見受けられておりません。  以上でございます。
  66. 東祥三

    ○東(祥)委員 兼務されている数はわかりますか。今九千三百人中四千七百人が登録されているということでございましたが、この四千七百人は税務を兼務されている、こういうふうに理解してよろしいですか。
  67. 山上一夫

    山上参考人 四千七百名の方が税務をおやりになっているということは確実だと思うのです、登録をしておりますから。ただ、その方が監査を同時に全部やっておるかというと、監査はなくて税務だけという方も中にはあるかもしれない。その統計はちょっと今持っておりません。
  68. 東祥三

    ○東(祥)委員 ありがとうございます。  大蔵省にお伺いいたします。  今の点と関連していることでございますが、公認会計士と税理士について、職業会計人として同じ基盤に立つ両者であると私は認識しておるわけでございますけれども、業務内容は一方は監査、他方は税務と分かれており、独立しているように思われます。また、試験内容も基本的に異なる。にもかかわらず、税理士法の第三条で公認会計士は資格取得と同時に税理士の資格もあわせて持つことになっている。筋論でございますが、大蔵大臣、この点についてどのようにお考えでございますか。
  69. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答え申し上げます。  公認会計士は、他人の求めに応じて報酬を得て財務書類の監査または証明をすることを業とするものでございますけれども、財務書類は法人税などの税額計算の基礎となるものでございますこと、また公認会計士の資格を得るための第三次試験の科目には租税に関する実務が含まれていること等を考慮いたしまして、公認会計士に対して税理士資格を付与することとしておるものであろうと思っております。なお、米国やドイツの例を見ましても、公認会計士につきましては税理士業務を行うことができることとされておるということであろうと思います。
  70. 東祥三

    ○東(祥)委員 ということは、大蔵大臣は、別に問題がないということですか。
  71. 羽田孜

    羽田国務大臣 そのとおりでございます。
  72. 東祥三

    ○東(祥)委員 税理士の資格を取るためには税法三科目をとらなければならなくなる。公認会計士の場合は税法三科目は別にとる必要がない。税理士は税務が担当です。そしてまた公認会計士は監査担当です。その点について私は質問しているわけでございますが、もう一度大蔵大臣、お願いいたします。
  73. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 公認会計士業務と税理士業務というのはおのおのその固有の分野を持っておるわけでございますけれども、先ほど来の御議論を私なりに整理させていただきますと、税理士業務は法人税とか申告所得税につきまして、税額の計算の基礎として個人や法人の事業の会計あるいは決算に関する知識、能力が要求される業務である。一方また公認会計士の方は、商法の監査特例法でございますとか証券取引法に基づきまして法人の作成した決算書類に対して監査、証明を行うこととされているわけでございまして、法人の会計決算についての専門的な知識が要求されている。このように、税理士と公認会計士はともに専門の業務の基礎といたしまして企業会計についての高度な知識が要求されておることにもう一つ加えまして、例えば法人税の申告に当たりましては会計上の項目が、税務上の処理に関して確定決算主義というものが今とられておるわけでございます。決算の方法というものも法人税の計算と密接に関連してくみ部分がございます。したがいまして、公認会計士は法人が税務申告をも考慮した上で行う決算を監査、証明するということとなりますから、法人税につきましても相当の知識が必要となってくるわけでございます。そういった意味で、公認会計士試験の第三次試験に税務に関する実務が加えられているものと考えられます。  こういった観点からしますと、両者はそれぞれ固有の業務として立っているものではございますけれども、共通する部分、密接に関連する部分がある、その限りにおきまして今のような制度がとられているということにつきましては御理解を賜れるものと思われます。
  74. 東祥三

    ○東(祥)委員 業務内容はそれぞれ独立している、しかし両方とも共通する部分がある。そういたしますと、公認会計士の資格を取る、そして自動的に税理士の資格も得られる、この逆というのは果たしてあり得ないのか、これが私の素朴なる疑問でございます。公認会計士と税理士との間に、その基盤をなすところに補完関係がもしあるとするならば、例えば監査業務に関する試験に合格したら会計士の業務を行えるように税理士に資格を与えられるような、そういうツーウエーのシステムというのができないのかどうなのか、素朴に思います。この点についていかがお考えですか。
  75. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 公認会計士と税理士、それぞれ固有の業務を持っております。もちろん、今主税局長からお答えいたしましたように相重なる部分もあるわけでございますが、公認会計士の方から見ますと、現在の税理士試験で会計学というものが一つ試験科目としてございますけれども、それは簿記と財務諸表というふうに限定をされておりまして、公認会計士の必要とする会計学はそれに加えまして原価計算あるいは監査論というようなものが入っているわけでございます。我々の考え方からいたしますと、公認会計士の業務をやる上で、本来業務を遂行する上でこの会計学というのがいわば中核になる科目でございまして、この中核となる科目について今申し上げたような状況にあります関係で、どうしても税理士試験の会計学というものをそのまま受け入れるということはなかなか難しいのではないかという感じがしているわけでございます。  公認会計士業務というものは、先ほど来御議論がございましたように非常にいろいろ社会のニーズも強まっております。質の維持も量の拡充にあわせて要請されているわけでございます。現状だけから申し上げますと、現在の試験制度のもとでは公認会計士の中核的な科目である会計学について見ましても今のような問題がございまして、なかなかつーウエーというふうには簡単にいかないということを御理解いただきたいと思うわけでございます。
  76. 東祥三

    ○東(祥)委員 公認会計士試験制度は、一方において一括で試験が行われています。他方、税理士においては、科目合格制というのでしょうか、そういうシステムです。公認会計士も税理士も同じ会計職務に携わるものとして考えた場合、例えば、同一の試験科目である簿記だとか財務諸表は共通試験で実施したらどうなのか。その上で、税理士の資格を持っている方が、ある意味で特恵を与えることによって、一つ一つ科目合格制、こういう制度は導入することができないのか、このように素朴に思うのでございますが、この点についてはいかがお考えですか。
  77. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 公認会計士試験につきまして、今御指摘がございました科目合格制といいますか、そういうような制度を導入するのはどうかということを公認会計士審査会などでも大いに議論をしていただいたわけでございますが、現在の、総合的な全体の水準を見て合否を判定するという形の維持をする方が適当であるというふうな意見が多かったわけでございます。  それにしましても、今御指摘がありましたように、税理士試験の科目であります簿記と財務諸表論については、例えば共通試験をするというようなことが考えられないかという御指摘でございますけれども、共通試験をするという場合に非常に難しい問題がございますのは、やはりおのおのの、税理士なりあるいは公認会計士業務ということの観点から見た試験内容というものがあるわけでございまして、それをどのように調和させるかという問題、それに、仮に調和させたといたしましても、同一の問題というものを受けるということになりますと、これは例えば実施日を統一しなければいけないとか、かえって受験者の選択の幅を狭めるというような問題も非常にあるわけでございまして、なかなか共通試験ということは非常に技術的に難しい問題がございますし、別々にしてそれを免除するという問題につきましては、先ほど申し上げたように、会計学という公認会計士の中核業務、中核の科目ということから考えまして、なかなかそこまで踏み切るのは現時点では非常に難しいというふうにお答えさせていただかざるを得ないというふうに思うわけでございます。
  78. 東祥三

    ○東(祥)委員 この可能性をシャットアウトすることではなくて、先ほど山上会長の方からもお話がありましたとおり、経済の多様化、複雑さ、それを考えますと、当然企業会計監査に対しての需要というのはますます高まっていく、それに対して、必要とされる公認会計士の数がうまくマッチできるのかどうか、こういうことも懸念されるわけでございますので、同じ底流の部分でもう既に税務に関して資格を持っている税理士の方々に門戸を開いてあげて、公認会計士になりやすいような仕組みをつくってあげればいいのではないか、このような可能性だけはあけておいていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  79. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今申し上げましたように、なかなか難しい問題、いろいろございます。しかし、一方では御指摘のように量の拡充という問題も非常に大きな問題でございます。質を維持するということもあるわけでございますが、いずれにいたしましても、この公認会計士監査をいかに充実していくかということについて、業務のあり方、あるいは公認会計士業務を行う能力の判定法とかいうようなものについてはさらに検討をする部分が我々としてもあるというふうに考えているわけでございます。先ほど申し上げました中小会社の監査問題というものもまだ議論がなされているわけでございまして、そういったものも十分踏まえながら、公認会計士法上の問題として今御指摘の点は承らせていただければというふうに思うわけでございます。
  80. 東祥三

    ○東(祥)委員 法案の内容に入らせていただきますが、第二次試験に短答式を導入されることになっておりますが、この改正によって、採点者、そして受験者並びに会計士を必要とする企業や団体にどのようなインパクトがあるとお考えになられますか。三者にとって、この短答式を導入することによって一体どういうふうになるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  81. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 この短答式試験を導入いたします理由の最大のものは、現在非常に受験者がふえておりまして、第二次試験は論文式だけで行っていうわけでございますが、多数の受験者の論文の答案を精査するのが非常に困難になってまいっております。そういった問題。それから、やはりより広く多様な人材に公認会計士試験の受験の機会を与えるというようなことも考えまして、短答式試験を導入し、その短答式試験に合格した者について論文式試験を受けるというような制度にしているわけでございます。  これは既に司法試験などでも実施をされている制度でございますが、私どもとしましては、こういう制度をとることによって、今申し上げましたように採点者の負担がかなり軽くなり、答案の精査が非常にできるようになるというメリットがございますし、また受験者につきましても、短答式の導入ということがその受験者層を広げるというような効果がないかというようなことも考えております。短答式の方が出題の範囲を広くとるということが可能になるわけでございますので、受験者について、より広い知識、経験あるいは能力を判定できるということになろうかと思います。それから、そういったことを通じて多様な受験者がふえ、質を落とさないでも量を確保できるということになりますれば、これは公認会計士に対するニーズに十分こたえることができるわけでございまして、私どもとしてはそういうふうな姿になっていくことを期待をいたしまして、今回の短答式試験の導入というものを提案させていただいているわけでございます。
  82. 東祥三

    ○東(祥)委員 受験者の視点から質問させていただきます。  まず初めに、会計士の現在までの合格者数と、そのうち大学在学中もしくは卒業時に試験に合格した者、卒業後就職してから合格した者、卒業後就職せずに専門学校に行き、受験に専念して合格した者の割合、この点についてお伺いしたいと思うのです。
  83. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 最近の受験者数と合格者数でございますが、第二次試験について申し上げますと、受験者数だけまず申し上げますと、平成元年度が五千七百三十五名、平成二年が六千四百四十九名、平成三年が七千百五十七名というふうにふえております。合格者数が、平成元年が五百九十六名、平成二年が六百三十四名、平成三年が六百三十八名ということでございまして、大体六百名台だということでございます。  それから、お尋ねになられました、合格者のうち、例えば在学中あるいは卒業と同時に合格した者、さらに受験学校に通った者とか就職していた者というような割合でございますが、私ども実は受験願書にはそのような観点からの記載を求めておりませんので、そういう分類については把握していないわけでございますが、例えば今申し上げた平成三年に第二次試験に合格いたしました六百三十八名について職業別内訳というものを申し上げますと、無職の人が三百八十九名、六一%ございます。これは恐らく大学卒業後受験に専念していた人ではないかというふうに考えられるわけでございます。それから学生というのが百五十三名、二四%、会計事務所に勤めておられる方が六十名、構成比で九%というような姿になっております。
  84. 東祥三

    ○東(祥)委員 短答式が導入されますと、一つの危惧を私は持っておるわけですが、論文試験とは異なりまして、ある意味で特別な技術が新たに負荷されるのではないのか、そういうことを考えます。これはどうなるかまだわからないわけですけれども、短答式が導入される、新しい技術をマスターしなければいけなくなる、そうすると、ある意味でますます受験学校に通わざるを得なくなってくるのではないのか、このように思うわけですけれども、この点についてどのようにお考えでしょうか。当然短答式を導入されるときにこういう基本的な部分が議論なされたと推察いたしますので、どういう結論が得られたのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  85. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、短答式試験論文式試験と違いましてかなり広い範囲をカバーできるというメリットがあるわけでございます。私どもは受験者の負担ということも考慮し、かつ公認会計士業務という観点から考えまして、短答式試験につきましては試験科目を会計学と商法に限っております。これは、いわば基礎的な科目でございますとともに、論文式試験の必須科目と共通科目でございます。そういったことからいいますと、受験者に特に過大な負担をかける、新たな負担をかけるということにはならない、従来からの論文式試験の必須科目でもございますので、会計学、商法に限るということで、過大な負担をかけることにはならないと考えているわけでございます。  なお、短答式試験の具体的な問題の作成に当たりましては、その内容について適正な出題内容を確保するということが必要でございます。短答式試験ということの性格上、試験問題をつくる人もかなりの数が必要なわけでございますが、そういう適正な出題内容を確保するために試験問題を調整するための委員会というものを公認会計士審査会の中に設けて、そこで出題内容の総合チェックを行うというようなことで適正な出題内容を確保できるようにしたいというふうに考えております。
  86. 東祥三

    ○東(祥)委員 大臣にお伺いします。  第一次試験に今回外国語試験を導入されると言っているのですけれども、その根拠をお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、柳本委員長代理着席〕
  87. 羽田孜

    羽田国務大臣 第一次試験は第二次試験を受けるのに相当な一般的な学力を有するかどうか、これを目的とするわけでありますけれども、最近における公認会計士業務国際化が著しく進展しておるということを踏まえまして、一般的な学力を判定するためには外国語の能力をも勘案することが適当というふうに考え、試験科目に外国語を追加するということになったわけでございます。  なお、外国語の利用、学習状況等がなり広範であること、また司法試験等地の国家試験の第一次試験でも広く外国語を課している、こういうことを勘案いたしますと、外国語を追加いたしましても受験者に過大な負担を課すことはないだろうというふうに考えておるところでございます。
  88. 東祥三

    ○東(祥)委員 国際化への対応というのはすごく言葉としては響きがいいのですけれども、大学の教養課程で外国語を習得する、それをやっている人は基本的に免除されるということでございますが、本当に国際化に対応するという視点で考えた場合、大学の教養課程における外国語の授業内容をもっと整備しなければならないのか、そちらの方が先なんじゃないのか、このように思うわけです。また、基本的には高校程度の外国語の能力があって、外国語を高校まで真剣に学んでそこで教えられるものを全部習得していれば、会話、また書くこと、聞くこと、基本的には問題ないわけです。それをあえて外国語試験を導入する、一般教養課程として、これも非常にあいまいなわけですけれども、それを導入するということは、大学卒業者でない人、未進学者に対して大きなる負担を与えてしまうのではないのか、私はこのように思うわけですけれども大蔵大臣、いかがお考えですか。
  89. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに語学教育というのは、これは基本的に中学、高等学校、大学と今ありますけれども、そういったものも充実ということは重要であろうと思っております。その点は別の問題として私どももさらに検討していかなくてはいけないと思っております。  しかし、まさに国際化という言葉を割合と我々もあっちこっちで使うことになってきたのですけれども、やはりボーダーレスの中でいろいろな企業が海外にも進出いたしますし、また向こうの会社なんかもやってくるということでございまして、そういったものに対して対応するということが今どうしても望まれるという時代になってこようと思っております。その意味で、本当に自分たちがそういう業につき幅広い業をやろうという気持ちというのは今若い人たちの中に非常にふえてきておるというふうに私ども見ておりまして、そういう意味では、そういうことを認識をされたならば決してこれは負担にならないのじゃないのかな。やはり今、語学ぐらいしっかりと一カ国語ぐらい身につけておくということが大事であろうということで、幅広く見たときに英語というのが世界の中でも相当広く使われているということからこれを追加することにしたんだろうというふうに考えております。
  90. 東祥三

    ○東(祥)委員 最後の質問になるかと思いますが、第二次試験科目に選択試験導入ということで、経営学、経済学、民法の中から二科目を選択するということになっております。会計学は経営学の一部であると私は思っているのですが、そういう視点から考えますと、経営学というのは必修にした方がいいのではないのか、このように思うのですが、いかがでしょうか。これを最後の質問とさせていただきます。
  91. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今回の科目選択制の導入によりまして会計学と商法は必須にいたしまして経営学、経済学、民法の三科目の中から二科目を選択するというような制度を考えているわけでございますが、会計学は先ほど来申し上げておりますようにこれは公認会計士が行います本来業務のいわば中核をなす科目でございます。経営学につきましては、確かに会計学との関連は深いわけではございますけれども、公認会計士に要求されております財務諸表の適正を担保する、それを担保することを目的といたします監査業務ということから申しますと必ずしも必要不可欠であるというふうには考えないわけでございまして、経済学と民法と合わせてこの三科目を選択科目にするということを、いろいろ議論の結果そういうことで適当ではないかというふうな考え方をとったわけでございます。
  92. 東祥三

    ○東(祥)委員 ありがとうございました。
  93. 柳本卓治

    ○柳本委員長代理 正森成二君。
  94. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣が、公認会計士業務国際化多様化等状況等に対応し公認会計士業務に引き続き多くの優秀な人材を確保するためと言われましたが、私どもも基本的には同じような考えを持っておりまして、本法案には賛成をさせていただきたいと思います。  そのことを前提にしまして、きょうは協会長の山上一夫さんにお見えいただいておりますので、多少現状について厳しいことも申すかもしれませんけれども、率直な御見解を伺いたいと思います。  最近の状況を見ますと、ここ一年余りの間に、粉飾決算では日東あられとか、それから不正融資事件では富士銀行、旧埼玉銀行、東海銀行とか、あるいは昨年本委員会で問題になりました損失補てん事件とか、引き続いて発生いたしました。そのほかにも、日本航空電子工業事件の外為法違反とかマクロスの粉飾決算事件などもあります。少しさかのぼりますと、昭和六十二年ごろ明らかになったのですが、リッカーの粉飾の場合があります。これらを見ますと、リッカーなどは昭和五十二年から五十九年まで八年連続で粉飾決算で、しかも公認会計士がこれを発見できなかった。最近の例では、今の日東あられにしましても富士銀行等の不正融資でも去年の損失補てんの問題でも、すべて公認会計士は適正意見を付しております。そうしますと、一体なぜこういうのが発見できなかったのだろうか、だれが監査人を監査するのかということも言われているのですが、これについてどう考えておられますか。
  95. 山上一夫

    山上参考人 御指摘の件につきましては、協会といたしましては、私ども協会の立場で申し上げなければなりませんが、そういった事実がございますと、協会の方でその事実の内容を確かめるために、監査業務審査会というのがございまして、そこで御当人あるいは当該監査法人に来てもらいまして事情をよく承る、このようにしております。そして、その結果何か手落ちのようなところがありますと、紀律委員会という委員会がございまして、そこへかけまして、そこでやはり懲戒等に処すべきであるとすればそれを懲戒委員会に回す、このような手続をとっているわけでございます。  今御指摘のようないろいろな事実がありましたという新聞記事は私どもも読んでおりますけれども、現在、協会といたしましては、そういった記事について適当な対処をまじめにやるという態度で過ごしております。
  96. 正森成二

    ○正森委員 非常に酷な言い方かもしれませんけれども、ここに持ってまいりましたのは朝日ジャーナルのことしの四月十日のものですが、「不正をチェックできない公認会計士なんかいらない!」という記事が載っております。その中の冒頭に、この朝日ジャーナルの職員でしょうが、「ある東証一部上場の機械会社の財務部門に勤めていた時だった。」という経験を書いておりまして、   約一〇年ほど前のその日、上司から「今日は公認会計士が監査に来るから、準備しておくように」と指示があり、会議室に貸借対照表などの帳簿類が運び込まれた。午前一〇時ごろ、公認会計士が到着。有価証券や、支出などの証拠となる領収書や伝票類などが入っている金庫のカギもあらかじめ開けておき、要求があれば出せる態勢になっていた。   しかし、公認会計士は、会議室に入ったまま何の音さたもなく、昼になって会社から出された弁当を食べると、間もなく帰ってしまった。  上司や同僚たちも、それが当たり前、という顔をしている。   「へえ、そんなもんか」と思った。数カ月後、出された有価証券報告書には「この財務諸表が、経営成績を適正に表示しているものと認める」と、公認会計士のサインの入った監査報告書が載った。   それ以来、「公認会計士」と聞くと、「昼メシを食べて帰る人」というイメージがこびりついてしまった。 こう書いているのですね。  非常に酷な言い方かもしれませんけれども、例えば、この間、明和監査法人が敗訴しましたね。これは四千七百七十九万二千七百八十二円を支払えということで、日本コッパーズですかの関係で出たものであります。それを見ますと、なぜ敗訴したかという判決文を見ますと、七八年一、二月の監査の際に、定期預金証書、通帳の原本を提出させて確認しなかったため、不正を発見できなかったということで、判決は「定期預金証書などを実際に確認する程度のことは、職業的監査人としては当然すべきで、それを怠るとすれば監査の依頼の趣旨に反する」、こう言っているのですね。  これについては二様の対応がありまして、新聞記事などを見ますと、あなた方公認会計士協会では、こういうように公認会計士が一々責任をとらされれば、アメリカでは非常に多くの監査法人の事務所が倒産というようなことになったとかいう記事もありますし、大変だというので防備を固めて、何もかも責任にされたらかなわないという意見と、それから、もしこれで公認会計士側が勝ってたらえらいことで、国際化の中で日本は大恥かくところだった、つまり、そういう最低限の帳簿さえ日本の公認会計士は調べなくても適法だという日本の風土なのかということで、国際化状況の中で非常な恥になっていて、この判決があってよかったという説と、両方あるんですね。だから、今度の法改正で公認会計士の数をふやし、質を高めるということも必要ですけれども、よほどの姿勢で反省していただかなければならないのじゃないか、こう思います。  それに関連して申し上げたいのは、今監査法人が非常に日本の場合独占状態になっているんですね。トーマツ、朝日親和会計社、中央新光、それから太田昭和、センチュリーですか、そこら辺で大体七割以上を独占しているという状況が起こっています。他の同僚委員もおっしゃられましたが、リクルート活動が非常に大きい。例えば公開される証券の、そこの予備軍を開拓するために「大手監査法人は野村証券をはじめとした四大証券の法人営業部を窓口に積極的な営業活動を展開するまでになっている。」こういうことを言いまして、「一歩間違えば、「会計士としての倫理」と「監査法人としての営利」という微妙なバランスを崩しかねない危険性」を持っている。これは去年の七月十八日の日経に載っております。こういう点をお考えになる必要があるんじゃないか。例えば公認会計士が立派な試験を受けても、仕事は五つか六つぐらいが七割も独占しておる。公認会計士が独自性を持ってやろうと思っても、その監査法人の上役がどうこうしろということになれば 独立性が失われるということで、例えば業界トップのトーマツなんというのは、従業員が千八百人もおるのでしょう。  これは弁護士業務では、先ほどの社会党の方も弁護士ですが、私も弁護士ですけれども、ちょっと言われましたけれども、我々弁護士は、依頼者から保証金を預かって使い込んだとかで処分された人が出ますけれども、基本的には民事の場合には相手方から、刑事の場合は検察官から、やり合うから常にチェックされているんですよ。その上に、おまけに裁判所が上からにらんでおるということですから、めったなことはできないんです。ところが、公認会計士はそういうチェック機能がないということになれば、これが非常に問題だと思うのですが、そういう点はいかがですか。
  97. 山上一夫

    山上参考人 御質問の、我が国では五つほどの法人が七〇%のシェアを占めている、この点につきまして御意見があったわけでございますが、私ども、一方におきまして企業が非常に巨大化して、国際化、多様化、複雑化してまいりますと、だんだん規模が大きくなってきます。それを監査するにはこっちの方も相当の力をつけなくてはいけないというので、それと対抗すべくやはり大きくなっていく。また、その監査の仕方は組織的監査と申しまして、二人や三人の監査ではとてもできることではないというようなことから、相対的に大きくなり、シェアが縮まって集約されてきた、こういうことになってきたのが現状であろう、こういうふうに思います。  そこで、先生の言われた、そういったようなときには監査人と被監査会社の中で癒着的なものが行われるのではないか、そういう御心配がございました。ただ、私どもは一方におきまして、もし大きなクライアントのところに非常に弱小な監査法人なり個人が太刀打ちいたしますと、いつ首切られるかわからない。そのために、何かあっても我慢してしまうというようなことがあってはいけない。ところが、ある程度大きな法人になりますと、その中で一つ二つ断られたところで別に大勢に影響がないというようなことで、強くなるのではないかというような観点も一面においてあるわけでございます。  そのようなことから、独立性が必ずしもそれによって阻害されていると一方的に言い切れるものではないというような感想を持っておりますが、今先生が申しましたいろいろな新しい会計士補の募集の状況等々は、私どもよく読んだり見たり聞いたりしておりますもので、それにつきまして過去には自粛を要請するような書面を出したこともございます。今後十分に勉強いたしまして、御指摘の点をできるだけ和らげまして、ないようにしたい、このように思っております。
  98. 正森成二

    ○正森委員 参考人としておいでになりましたので、もうちょっと厳しく言ってもいいのですが、ここらでやめておきます。  大蔵省に伺いたいと思います。  いろいろな問題が起こるのについて、物の本によりますと、大蔵省は監査について、個人事務所を認めないで監査法人あるいは共同監査のみ認めるという指導をしているようであります。そのことが公認会計士の個人事務所の発展を妨げて独占状態をつくっているのではないかとか、あるいは三月期決算が急増してそこへ固まっており、監査の実施期間が法定されているためにそこへ集中する、そこで監査がずさんになるというような意見もありますが、それについて大蔵省の御見解を承ります。
  99. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 非常に大きな監査法人ができてきているということは事実でございます。私ども今度の監査基準の見直しの中で、そういう大きな監査法人についてできるだけ組織的な監査をしろというようなことを要求をしております。決して個人監査を認めないというような指導をしているわけではございません。ただ、大企業がふえてまいりますと、どうしても必然的に監査法人による組織的な監査というのが普及してきているという事実はございます。  それから、決算期が集中することによって、なかなか監査が難しくなっているということも、これも御指摘のとおりであろうと思うわけでして、基本的には決算期がもう少し散らばればいいわけでございますけれども、これはなかなか私どもとしてできることではない。そうなりますと、今申し上げましたように、できるだけ組織的、効率的な監査を短時間にやれるようにするということが必要ですし、また、それが例えば確認書をとるというようなことで担保されていくというようなことで、いろいろと与えられた状況の中で適正な監査ができるようなルールづくりをしておりますし、また今後もそれをしなければいけないというふうに思っております。
  100. 正森成二

    ○正森委員 時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますが、アメリカで監査が非常に進んでいる。あるいは日本に比べてかどうかわかりませんが、不祥事が少ないのは二つわけがある。学者が言っていることですが、それはアメリカのSECの活動ですね。あんまりなことをしているとSECに摘発される。あるいはアメリカでは、いいことか悪いことかは別として、訴訟が非常に発達しておって、監査法人がへまをしてかすと訴訟でやられるということが大きなチェック機能になっているというわけであります。日本の場合はあらゆる意味でディスクロージャーを企業も行うし、それから監査人もできるだけ意見表明あるいは特記というような、いろいろなことが今度は基準で整備されました。時間がありませんのでもうやめますが、そういうことが必要ではないかということを申し上げまして、後で御迷惑かけたらいけませんので終わらせていただきます。答弁は結構です。
  101. 柳本卓治

    ○柳本委員長代理 中井洽君。
  102. 中井洽

    中井委員 山上参考人にお尋ねをいたします。  きょうは長時間ありがとうございます。先ほどからいろいろ御議論ございましたように、去年の証券不祥事を含めて、会計監査というものがうまくいっていない問題がたくさん出てまいりました。そういう問題が続発をするというのは、法律や会計士さんの制度、そういったものに何か大きな欠陥があるのだろうか。あるいは日本企業風土の中で、なかなか毅然としてチェックをできない、そういう日本独特の理由によるものだろうか。あるいは公認会計士さんのプロとしてのモラルの欠如か。率直に会長とされて、長年の御経験から、どれが一番だとお思いでございましょうか。
  103. 山上一夫

    山上参考人 監査を通じまして、全部の不正を漏れなく見つけるということは大変難しいことであろうか。いわゆる監査のやり方に精査と試査とございますけれども、現在我が国の法定監査は試査ということを原則としております。仮に精査をいたしたといたしましても、オフバランスのいろいろな簿外の、出てない問題といったようなものをすべて摘発することができるかどうかということは非常に難しゅうございますし、それから従来は、財務諸表の監査は財務諸表の適正性の監査でございまして、不正の発見というのは、特別それを契約にうたった限りにおいて行われることで、あとはたまたま通常の監査の過程において不正が発見されたときにはそれを監査役に報告するというような意味で受け取っておりました。そういったようなことから、これまではあらわれました不正を隠すというのではなくて、不正自体を発見するということがなかなか困難であったこともあったわけでございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、新しい基準、準則ができまして、それらを包含して大変我々の監査の領域も広がり、深さも大変深くなった、こういうふうに受けとめておりますので、できるだけ努力して先生の御趣旨に沿いたい、このように思っております。
  104. 中井洽

    中井委員 大蔵省にお尋ねいたしますが、今回の法改正で受験者をふやそうとなさっておるのか、あるいは大体今まで一年に一割以下の合格者でありますが、合格者をふやすという形をお考えになっていらっしゃるのか、どちらですか。
  105. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今回の試験制度の改正は、受験者数がふえてきているという現実を踏まえて見直す部分もあるわけでございますが、私どもとしてはさらに科目選択制などを導入して、多様なバックグラウンドを持った多様な受験者がふえるということを期待しております。受験者がふえれば、質が落ちるということは好ましくないわけでございますけれども、受験者がふえればそれなりに合格者もふえていくのではないか、それによって量のニーズも、質を維持しながら満たせるということでございまして、受験者がふえ、かつ合格者もふえていって、社会のニーズにこたえられるようになればというのが私どもの今回の見直しの大きな期待しているところでございます。
  106. 中井洽

    中井委員 この一、二年で受験をされる方で三十代、四十代の方は大体どれくらいの数が、あるいは三十代、四十代の合格者というのはどのくらいおられるかおわかりですか。
  107. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 ちょっと合格者の年齢別データは手元にございませんが、合格者の平均年齢が二十五歳ちょっとくらいでございまして、比較的若い人が多いということでございます。
  108. 中井洽

    中井委員 先ほどの会長のお話でも、大きな複雑化した企業会計の中で、不正をチェックしていくというのは大変難しいというお話がございました。やはりこれからも企業そのものもどんどん大きくなりますし、海外との連結決算等含めて大変複雑になってまいります。そういうときに、若い、頭の柔軟な方がどんどんと合格をされて、鍛えられていい会計士になるということも大事だけれども、いろいろな方面で、この企業会計というものの経験をお持ちになった方が会計士として実務経験を持ってチェックをされるということも大事じゃないか、私はこのように思います。会計士さんのいろいろな御意見を聞きますと、やはり実務ということがもっと身につくような、あるいはチェックできるような試験体制にしろ、こういう声が圧倒的に多いわけであります。そういう意味で、いろいろと問題はあろうかと思いますが、先ほどからお話あった税理士さんであるとか、あるいは一部上場の企業で何年も経理担当でこられた方々あるいは大学の先生、こういった人たちが別試験で公認会計士になられて、そして、経験豊か、またモラルも高くチェックをしていくという制度が必要ではないかと思いますが、大蔵省と山上会長、それぞれにお答えをいただきます。
  109. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに御指摘のように、非常に実務経験豊かな人が公認会計士になられるということは、適正な監査を行う上でも必要であるというふうに考えているわけでございます。現在の制度でも、御存じのように、実務経験について一定の要件を要求しております。今回の改正によりまして、その実務経験あるいは実務補習の制度をかなり実態に合わせまして、余裕を持ってそういう実務補習なりあるいは実務経験が積めるような仕組みにしたわけでございますけれども、御指摘の、例えば税理士とかあるいは大企業の経理担当者というような者、大学教授につきましてはこれは現在でも既に一部科目免除を認めておりますけれども、こういったような方々を公認会計士にするのはどうかということでございます。  これは、先ほど来お答え申し上げておりますように、現在の制度の仕組みの上で直ちにそういうことをするということにはいろいろと問題が多いわけでございますけれども、今後監査対象がどんどんふえてくるということになりますと、こういう試験制度の見直しによって、私どもは、質を落とさないで量の確保ができるという期待を持っているわけでございますが、さらに今後の状況を見ていろいろと考えていかなければならない問題も多いというふうに考えるわけでございまして、その辺は商法の改正等とも絡むわけでございますが、できるだけこの公認会計士の方の質を高めながら、かつニーズにこたえていくような方策については引き続き私どもとしても検討していく必要があるというふうに考えております。
  110. 山上一夫

    山上参考人 私どもは第二次試験を、公認会計士となる素質を備えている人を選んでいるということで、決して二次試験が受かったからその方がすぐ会計士としての能力を持っているというふうには考えてないわけです。そして、現在では実務補習、業務補助という三年間の修業期間を経まして初めて三次試験が受けられる、こういうような仕組みになっております。そこで、先生のおっしゃった長年いろいろな実務の経験を持たれる方たちをそこで導入したらどうかというような御意見も確かに聞いておりますが、基本的に二次試験を受かってからそういった実務の経験を三年間して三次試験を受けるというコースと、それからそういった経験的なもので入ってくるというコースとちょっとニュアンスが違うので、私どもとしましては、会計士の監査と税理士の税務とは仕事の性格が違うんだというような気持ちで今のところ理解しているわけでございます。
  111. 中井洽

    中井委員 お話もよくわかりますが、とにかくこの複雑な企業会計というものに十分経験を持った人たちがその経験を生かして受けやすい形で試験を受けて選抜をされて会計士になる、こういう道もぜひお考えをいただいて、多様な、またレベルの高い公認会計士の制度を維持していただきたい、このことを御要望いたします。  最後に、山上参考人に一つだけ御意見を承りたいのでありますが、今政治改革等でいろんな議論がなされております。この中で政党に対する公的補助、援助の問題が議論をされて、私どもはふやせということを言っております。現在既に国会議員を通じて各会派に立法調査費という形でお金がおりております。この政党の公的助成というのはこれからふえていくのはもう目に見えているわけであります。しかし、公認会計士さんに監査をしてもらわなきゃならないということにはなっておりません。私どもはこれは当然つけていくべきだ、経理というものを明らかに各政党もしていくべきだ、このように考えておりますが、会長の個人的な御意見、いかがですか。     〔柳本委員長代理退席、委員長着席〕
  112. 山上一夫

    山上参考人 その方向は私どもとしてぜひお進め願いたい方向であるということを申し上げておきます。
  113. 中井洽

    中井委員 以上で終わります。
  114. 太田誠一

    太田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  115. 太田誠一

    太田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  公認会計士法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  116. 太田誠一

    太田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  117. 太田誠一

    太田委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、井奥貞雄君外五名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議日本共産党、民社党及び進歩民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。正森成二君。
  118. 正森成二

    ○正森委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨説明といたします。     公認会計士法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について十分配慮すべきである。  一 今後とも、我が国経済・社会の拡大、発展に伴う公認会計士制度を取り巻く環境の変化に対応しつつ、公認会計士に対する社会的要請に応えていく必要があることに鑑み、引き続き多くの優秀な人材を確保する観点から、公認会計士試験制度の望ましいあり方について検討を行っていくこと。  一 企業活動の国際化多様化等が進展する中で、企業経理の透明性、公正性を確保していくため、公認会計士監査の一層の充実を図るとともに、経済取引の多様化等に対応した会計処理方法の確立及び企業内容等の開示の一層の充実に努めること。 以上であります。  何とぞ御賛成賜りますよう、お願い申し上げます。(拍手)
  119. 太田誠一

    太田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  120. 太田誠一

    太田委員長 起立総員。よって、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。羽田大蔵大臣
  121. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいま公認会計士法の一部を改正する法律案につき御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意をしてまいりたいと存じます。     —————————————
  122. 太田誠一

    太田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  123. 太田誠一

    太田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  124. 太田誠一

    太田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十一分散会      ————◇—————