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1992-02-26 第123回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年二月二十六日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 太田 誠一君    理事 井奥 貞雄君 理事 中川 昭一君    理事 村上誠一郎君 理事 持永 和見君    理事 柳本 卓治君 理事 小野 信一君    理事 細谷 治通君 理事 日笠 勝之君       浅野 勝人君    石原 伸晃君       岩村卯一郎君    江口 一雄君       衛藤征士郎君    狩野  勝君       亀井 善之君    河村 建夫君       久野統一郎君    小林 興起君       左藤  恵君    関谷 勝嗣君       戸塚 進也君    林  大幹君       前田  正君    山下 元利君       池田 元久君    佐藤 観樹君       佐藤 恒晴君    沢田  広君       仙谷 由人君    富塚 三夫君       中村 正男君    早川  勝君       堀  昌雄君    渡辺 嘉藏君       東  祥三君    宮地 正介君       正森 成二君    中井  洽君       菅  直人君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 羽田  孜君  出席政府委員         大蔵政務次官  村井  仁君         大蔵大臣官房総         務審議官    日高 壮平君         大蔵省主計局次         長       小村  武君         大蔵省主税局長 濱本 英輔君         大蔵省関税局長 吉田 道弘君         大蔵省証券局長 松野 允彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         国税庁次長   冨沢  宏君         国税庁課税部長 坂本 導聰君         国税庁徴収部長 中川 浩扶君         国税庁調査査察         部長      根本 貞夫君  委員外出席者         国土庁土地局土         地政策課長   板倉 英則君         国土庁土地局地         価調査課長   木村 誠之君         文化庁文化部宗         務課長     梶野 愼一君         通商産業省機械         情報産業局自動         車課長     川嶋  温君         自治省税務局固         定資産税課長  堤 新二郎君         参  考  人         (日本銀行理事)福井 俊彦君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三号)  法人特別税法案内閣提出第四号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五号)      ――――◇―――――
  2. 太田誠一

    太田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出租税特別措置法の一部を改正する法律案法人特別税法案及び相続税法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池田元久君。
  3. 池田元久

    池田(元)委員 おはようございます。池田元久でございます。昨日の本会議に引き続きまして、いわゆる国税三法につきまして質問を行います。  まず、羽田大蔵大臣にお聞きしたいと思います。  羽田大蔵大臣は、選挙制度政治改革専門家でいらっしゃいます。非常に熱心な政治改革主張者でいらっしゃいまして、私も政治抜本改革につきましては人後に落ちないつもりなんですが、ただ、羽田大蔵大臣は、人知の限りを尽くしたというような言行といいますか、自民党主張をしております。全部ではございませんが、いわゆる並立制につきましては必ずしも私はそのような高い評価はしていないのですが、いずれにしても政治改革の論議を羽田大蔵大臣といろいろ行いたい、このように思っておりましたが、きょうは大蔵委員会ですので、本論に入る前に少しだけ触れたいと思います。  羽田大蔵大臣政治改革とよく言われますが、今の情勢の中で何が最も重要であるか、端的にお答え願いたいと思います。
  4. 羽田孜

    羽田国務大臣 まず、これは各種世論調査もございますし、また最近のいろいろな風潮、そういう中で、国民政治に対する信頼というものが非常に薄らいでしまっていること、これを私たちはひとしく憂慮しなければいけないと思っております。しかしこれは、世論調査にあらわれますのは我が国民の意思の動向でありますけれども、私どもいろいろな国の人たちお話ししたり、またいろいろな国の方々日本に対する評論、こういったものを、各国の皆さん方のを拝見する機会も多いわけでありますけれども、最近では、どうも日本政治から国の行く光といいますか方向が見えてこないとか、あるいは日本の中でいろいろ議論されておることが、本当国民生活をあれする、あるいは国際的な役割の分担とかそういった問題について、どうも本当に見えてこないよというのは、これはいろいろな見方があると思いますけれども、率直にそういうことを言われる方があるという現状、これを私たちは踏まえなければいけないのじゃなかろうかと思っております。  その中で一番大きな問題というのは、政治に金がかかるということであります。政治に金がかかるというのは、アメリカなんかの場合にも相当政治あるいは選挙に金がかかるというのが現状でありますけれども、金がかかる先というのは、いわゆる言論の自由というものはいかなることがあっても封圧してはいけない、抑えてはいけないということの中で、いわゆるテレビですとかラジオですとかパンフレット、そういったものに物すごい金がかかっているというのが現状であります。そして、そのための金の集め方、PACなんというやり方がありますけれども、これについては触れませんけれども、しかし、それについて今アメリカの中でも議論になってきておるということであります。そのほかの国を見ますと、年間のお金というのがおよそ三百万円とか、あるいは選挙のときに英国あたりでかかるのは百二十万とか百五十万円である、あるいはドイツあたりでも数百万円であるということから考えますと、日本法定選挙費用からいっても圧倒的に低いわけですね。この乖離というものに対して、そのお金、一体どうやって集めるのというようなことがあります。よそから見たときにちょっと異常だなというものが出てきてしまっておるというのが現状じゃないか。そして、これを議論していますと、よく与党がという話がありますけれども、しかし、実際に与党が使うということになりますと、だんだんそれに引かれてしまうというのも現状であろうということで、やはり金の問題について我々は相当深くメスを入れながら、そしてみずからを厳しく苦しめながら考えていかなければいけない問題であろうというふうに思っております。  これの一番の基本というのは、せんじ詰めますと選挙制度という、これは率直に申し上げまして、我が党の場合には、社会党さんも二人出しているところがあるわけですけれども、これはお二人であり、しかも限られた選挙区でありますが、我が党の場合には、全国どこの選挙区でも、あるときには、無所属の保守系も入れますと、議席の数より余計に出てしまっておるという、まさに熾烈な争いをしておるということでありまして、そういったことなんかもあれしたときに、やはり制度そのものについて本当に考えなければいけないのじゃなかろうかと思っております。  そして、この問題を議論されますときに、常に倫理ということが言われる、あるいは腐敗防止ということが言われます。これは確かに一部の例をあれしますと、際立って政治活動というのじゃなくて私の生活と混同されてしまっておるという面が非常に厳しく指弾されるわけでありますけれども、しかし、そういうことだけではなくて、今の現状では政治活動にも実際に本当に金がかかってしまっておるということですから、ただ個人の自律ですとかあるいは倫理というもの等だけではどうにもならない。というのは、今までも倫理規定ですとか行為規範「これは国会ノートに書いてあるということでありまして、私ども常にそれを持っておりますけれども、実際にそういうものがありながらもなおかつこれを犯してしまっておる、あるいはそれを犯すような状態にあるというところに問題があるんじゃないのかなということを振り返ってみたときに、ただ倫理という、個人を律するというだけにはもう限界がない。そこに便利を言葉といいますか、清濁相あわせのむとかあるいは当選するためにはやむを得ないんだというような言葉までもう当たり前みたいに使われるようになってしまっておるということ、このあたりを私たち深く反省しなければいけないと思っております。  その意味で、現在の制度というものが制度疲労であるということを認めながらこの問題に対応する必要があるのかな。そうかといって、私どもがこの間、今御指摘がありました私ども提案政府並びに与党提案というのをいたしましたけれども、残念ですけれども審議未了というああいう形になってしまいました。これについてきょうは細かく議論する時間はないと思いますから申し上げませんけれども。ですから、私は、制度改革まで踏み込まなければならぬと思う。しかし、それはある程度やむを得ない。余り免じゃしようがありません。五年なら五年という一つの限度を切りながら、今当面やれる問題は一体何なのかということについて議論し、そのかわり、先行きについても制度について触れておく必要があるのじゃないのかなと考えております。
  5. 池田元久

    池田(元)委員 今羽田大蔵大臣が真っ先に政治と金の問題についておっしゃいました。最近といいますか、ずっと自由民主党も、かつて三木答申とかいろいろありました。最近では政治改革大綱ですか、どうも最近選挙制度の方に傾斜をし過ぎているのではないか。私も選挙制度を変える必要があるという立場でございますが、今まで政治と金にまつわって、派閥の会長とかいろいろなことを自民党内でもやってきました。しかし、羽田大蔵大臣が恐らく堅持されるであろう大綱は、全体を読むと非常にトータルな形で出されております。これは大変結構なことだと思うのですが、今度の政治不信、戦後といってもいいのですが、これはやはり何といっても疑獄事件が次々起きて、そういった政治と金にまつわる問題が一向に解決されない。特にリクルート事件の反省を受けてあの大綱はできたのですけれども政治と金をむしろ選挙制度にすりかえたのではないか、このような見方もできるわけでございまして、やはり今一番大事な問題はこの政治と金の問題、腐敗の問題ではないかと私は思うわけです。  それで、きのうも申し上げたのですが、やはり何といっても政治腐敗防止ということで、汚職事件有罪になった者や選挙違反連座制有罪になった者すべてに対して立候補を制限する。イギリスではかつて一八八〇年代にやっておりますが、これをやる必要がある。そして、当然のことながらまた政治資金透明性を高めることも必要だと思います。そのことをやるだけでもこれは大変なことなんです。よく三点セットで全部できなければやらないというようなことを去年自民党は言っておりましたけれども、歴史を見れば、あれを三つ一緒にやるというようなことはまず不可能なわけでございまして、この政治資金の問題、政治腐敗防止、これをやっただけでも大変な功績でありまして、ぜひこの問題に取り組んでいただきたい。そうでなければ、やはり国民から非常に反発といいますか、見捨てられるのではないか、このように考えるわけでございます。  羽田大蔵大臣は、つい先ごろ宮澤総理に招かれて官邸に行かれたようでありますが、入閣する前は選挙制度の問題について宮澤さんとは意見が食い違ったようでありまして、そういうこともございましたけれども官邸で何を進言されたか、お尋ねしたいと思います。
  6. 羽田孜

    羽田国務大臣 今お話のございました、どうもすりかえじゃないのかということが第一。それから、何か選挙制度の方に偏っているのじゃないのかというようなお話もあったのですけれども、今お話のあった腐敗防止という問題については、それから政治と金の問題については、実はロッキード問題が起こりましたときにもこの問題は延々と議論されたものです。その以前にも実はやられたはずです。そこから倫理規定ですとか行為規範というものが生まれてきたと思うのです。しかし、結果としてまだそういったものが全然後を絶たないというのが現状であり、そして、いろいろな方の調査によりますと、さらにお金がかかっていくというのが現状である。  そういうことで、金と腐敗の問題あるいは癒着の問題とか、いろいろな問題がありますけれども、なぜそこが問題が起こってくるのかということを考えたときに、やはり制度まで踏み込まなければいけないのじゃないのかなということを、私たちも実は大綱をつくるときにも延々と今お話があったことを議論した結果が、やはり制度まで踏み込まないと、結局根っこを絶たないと、言葉だけで幾ら言ってもだめなんだ、幾ら文字にしてもだめなんだという中でそこに至ったということだけは、一応私たちの考えとして御理解をいただいておきたいと思うわけであります。  それともう一点は、これはお金の問題だけではなくて、どうも政治を語るときにも、自分たちの体に痛みを覚えること、こういった問題については、残念ですけれども本当のことは国会の場でもあるいは私たち政党の中でも議論されない場合というのがあるのですね。同じ選挙区から何人か、三人とか四人こうやって出ておりますと、これは与党ということだけではなくて野党の人も出ておりますと、今この時点を将来に向かって新しく切り開いていくためにはこういうメスを入れなければいけないんだなんという言論をしようものだったら、あのやつがこうしてしまったからあなた方こうなったんですよとやられてしまって、次の選挙もだめになってしまうということがありますから、なるべく難しい問題というのは避けて通るというような風潮も実は生まれてきてしまっておるということ、これも結局制度にあるのじゃないかということ。  ですから、私はもう今、これじゃなければいけないとは言いません。人知のきわみということを申し上げて、私はそう今でも確信を持っておりますけれども、それを言ったのでは皆さんとの議論ができないということでありますから、別にそれにこだわりませんけれども、しかし本当に直そう、本当に新しい政治をやろうというのだったら、やはり制度に踏み込まなかったらできないだろうということを実は私は思っておるということでございまして、そのことを申し上げたわけであります。  それから、総理のところに行ってお話を申し上げた問題については、これは総理とのお話ですから表に、私は党の中でも別にこれは申しておりませんけれども、ただ総理に申し上げたことは、確かに今の審議未了になって廃案になった、これは実は定数是正審議未了になったのですよね。野党さん何とか御一緒になって出した腐敗防止法も、どういうことか趣旨説明もされずに、質問もなされずに、これも我が党が出したのと一緒に……(池田(元)委員趣旨説明はしました」と呼ぶ)一緒にこれは審議未了にしちゃった。質問は全然ないままになってしまったんですよね。  ですけれども、私が申し上げたのは、総理に一番申し上げたかったことは、やはり今日の状況というものは非常に閉塞してしまったような状況なんだ、だから、この状況を打破するためには、今幾らどんな新しいいい政策を打ち出したってなかなか理解されませんよ、ですから、本当政治改革をやらなければいけません。そのためにはやはり全体の一つ構想、この選挙制度についてのやり方とか何かこれはまた議論することとしても、いずれにしても、全体の構想制度まで踏み込まなければいけないという先行きをきちんと示した上で、それで現実に今すぐやらなければならぬことということをやる必要がありましょう。しかも、将来構想というものはそんな長い期間ではなくて、例えば四年とか五年ぐらいのところまで置きながらやることが大事なんじゃないですかね。そして、当面やることとなると、今の定数是正の問題があります。しかし、これもやはり国民に、もう国会で決議をやったことですから、ある程度きちんとしたものをやらなければいけませんよというようなこと。あるいは政治資金ですとか、そういった問題についてやることもよろしいでしょう。しかし、いずれにしても、ちゃんとした最終的なビジョンというものを示さないといけないということを、大まかに言いましてそういうことを申し上げたということです。  そして、今もう一つだけ申し上げておきますと、この三点セットということ、政治資金定数是正だけでも大変なんだから、ほかのことまで一緒にやれと言ったってとても不可能だよということなんでしょうけれども、しかし、もうそこまで踏み込まないと、今要するに日本の国はここまで来た、この国をさらにいいものに上げていくために、質のいいものに上げるために、あるいは世界的な役割を果たしていくというような大きな転換の時代に対応できる政治をつくるためには、私は、やはり不可能と言ったのではいけないのであって、そこの意識改革をしないと、そしてそういう改革をしないと、国民もやはりなかなか意識改革ができないであろうと思っております。  そして、国民には私ども大臣のときに、あるいはその前に、農産物の自由化問題等をお願いしました。あるいは今商店に対しても大店舗法のお願いをしたり、国際化社会である、ボーダーレスの時代であるということでいろいろなことをお願いしているにもかかわらず、国会議員はどうもみずからの身のことになると、何かつらいことだ、いや、そんな厳しいことできっこないじゃないか。これでは主権在民といったときに、国会というものが本当国民をリードすることができるのだろうかということを思ったときに、不可能と思われたことを今私たちはやはりやらなければいけないのじゃないのかなというふうに思って、率直に勝手なことを申し上げて恐縮であります。
  7. 池田元久

    池田(元)委員 基本論とすればおっしゃるとおりでございます。しかし、現実論から言うと、やはり三点セットで一括してワンパッケージで通してくれとか、それから全体像を明示してはっきり決定してそれで始める、もちろん、全体像をつくることは大変結構です。何事も将来の全体像を明示してやるのは大変手法としては、手法といいますか、やり方としては当然だと思います。しかし、現下の情勢からいいまして、それからまた、これまでのそういった方々の力量からいいまして、何はともあれ政治腐敗防止立法をこの際今国会中にやる、それをやっただけでも、これまでの内閣の仕事からいえば相当なところまでいくと私は思います。もちろん内容によりますが、確固とした政治腐敗防止政治倫理立法を行うべきである、このように考えております。  もちろん、選挙制度とこの問題が関連しないわけはございませんので、私は、当然その先には選挙制度改革がある。ただ、自民党の首脳が言っておりますように、政党助成とかそういうものは小選挙区制をやらなければだめなんだ、このようないわば取引みたいなことはやる必要はないのじゃないか、このように考えております。  この問題、いろいろございますが、とにかく今の情勢を受けて、政治と金の問題についてやはり具体的な措置を講ずべきではないかということを申し上げて、一応この問題についてはここまでにしたいと思います。  さて、政治改革国会改革に絡んできのうの本会議質問でも取り上げたのですが、これは他党のことなんですが、自民党税調のあり方について一言お聞きしたいと思います。これは単に党内問題に干渉するという意味ではなくて、今の日本政治構造一つの具体的なあらわれとしてお聞きしたいわけでございます。  確かに自民党税調で専門的に熱心にいろいろ検討をされていることは大変結構なことだと私も思います。しかし、昨日も申し上げましたが、各種団体からいろいろな要望をいかに取り入れるか、またどれだけ租税特別措置等の税の例外措置を設けるかというところが作業の中心と言っていいんではないか、このように考えます。まあ税金をまけてくれということを組織ぐるみでやっていると言ったら言い過ぎでしょうか。そういったものが年々盛んになりまして、きょうはちょっと持ってこなかったんですが、いわゆる電話帳という各種団体要望がございます。数えてみたら千七百ぐらい、千六百六十から七十の要望が出されていますね。ほとんどが税金をまけてくれと。もう細かいところまでいろいろな要望が出ておりまして、団体の数がたくさん書いてあります。  私は、これが単にお願いするというだけなら問題はないと思うんですが、どうもその業界、企業との関係かこれによって深まって、いろいろ好ましくない関係もあるんではないか。ある中堅議員の話によりますと、税調幹事になった途端に、それまで全く関係なかった業界団体から二つも政治献金が届いたと、このようなこともございまして、私はやはり大変問題があるんじゃないか、このように考えております。羽田大蔵大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。
  8. 羽田孜

    羽田国務大臣 いつも十一月の終わりごろから税制調査会、始まりまして、きょうはここに、まさにそれのずっと取り仕切りをやっていらした山下先生初め皆さんいらっしゃいますけれども、しかしこれはやっぱり政権与党として幅広く皆様方意見を聞くということで、私も実は参画したことはございますけれども、これはもう何というんですかね、あらゆる層の皆様方意見を聞きましょうということで、割合と私は、割合というところか、大変真摯にやっておると思います。しかもこれに対して税制調査会長ですとかあるいは委員長ですとかあるいは各部会長ですとか調査会長ですとか、また各議員たち、これはだれでも実ははいれる、入れてくださるわけですよね。そこで賛成の人もいれば反対の人もいるんで、この問題についてやっぱりこういう租税特別をやるべきである、あるいはこれを延長すべきであるとなりますと、こちらの方からは、いやそれはもう目的を達したはずだからやめるべきであるとか、非常に生々しい議論がされておるということで、私は大きく評価をしている人間であります。  ただ、私ども政府といたしまして、こういったものをどうしていくのかといいますと、党のそういう答申をちょうだいするということ、それと同時にあわせて並行して議論されておりますけれども、相当権威のある皆様方がお集まりになって政府税調というものもやられておるということでありますし、またこれはただ政府与党というだけではなくて、野党皆様方の党首の皆様あるいは政策担当責任者方々、こういった方々と私ども総理並びに党の役員の皆様方も入りまして、率直に今度は野党皆さん野党皆さんでお聞きになったものを私どもも承りながら、その中で採用できるものは採用していくということで、割合と公正にやられておるということであり、またその中で特に与党税調というのは、これは物すごい時間をかけながら議論されておるということでございまして、私は国民の声というものを国政の中に反映していくという中にあって一つの機能を果たしている組織でなかろうかなという理解をしておるということであります。
  9. 池田元久

    池田(元)委員 私は、そういうその場での議論が活発であるとかなんとかということを言っているわけじゃございません。いろいろ弊害が生じるように行き過ぎているんではないか、このように申し上げているわけでございます。恐らくそういう答えが返ってくるとは思ったんですが、ただ羽田大蔵大臣は先ほどから申し上げておりますように政治改革については御造詣が深いんで、ちょっと意外なんですが。  腐敗防止の観点からいっても問題があるということを先ほど申し上げましたけれども、議会政治という上からいってもこれはちょっと行き過ぎではないか。これは要するに法案の事前審査制を与党の中で全部やってしまう、そこで全部議論を尽くして議会に出す。議会は単に、投票機械じゃありませんけれども、通過するだけ。これはやはり議会政治の空洞化を招いているのではないか。これは心ある学者も非常にそういう点を憂慮している。その点について羽田大蔵大臣の御答弁をお願いします。
  10. 羽田孜

    羽田国務大臣 これは繰り返しになって大変恐縮でございますけれども、私はやはり国民の声というものを幅広く聴取していく、これは政党としての役割であろうと思っておりますし、また、むしろそういったものがもっともっと、選挙制度あるいは政治改革をしながら、むしろ地方なんかでもそういうことが行われて、それがまた中央に上がってきて、その中で議論していく、そんなふうに改革はしていくべきであろうと私は思っておりますけれども、私はやはり一定の役割を果たしているのかなという理解をいたしておるところでございます。
  11. 池田元久

    池田(元)委員 自民党の今のあり方が当然で、あれが普通だという考え方からいくと、民意といいますか要望をくみ上げるから当たり前だと。しかし、自民党の過去のあれからいっても、最近大変自民党政調会政治というのは肥大化しているわけです。これは先輩にお聞きになればいいと思います。そういった意味で、この政調会政治は議会政治の観点からいっても問題があるんではないか。これは自民党だけの問題ならいいのですけれども、やはり説とか国家全体にかかわる問題ですからお尋ねしているわけでございます。  この問題についてはこの辺までにいたしまして、次に、私大蔵委員会に来て初めての質問でございまして、大蔵省のあり方というとちょっと大げさになるのですが、ちょっとお尋ねしてみたいと思います。  大蔵省は、予算編成について、各省の要求を査定して予算を事実上編成すると同時に、予算の執行に当たっている。今の自民党政調のあり方と同じように、もうこの制度に初めから入っていると、これは全然問題ないと思っているでしょうが、必ずしもそうじゃないのです。憲法では予算の編成権、国会への提出権は内閣にある、こういうふうに明記しております。予算編成は内閣の総合調整機能であるから当然内閣が行うべきであるという考えに基づいて、このようなことになっているわけでございます。そして戦後も昭和二十五年の財政制度審議会、昭和三十一年の行政審議会、いろいろ改革を提言しております。特に昭和三十九年の臨時行政調査会、これは第一次ですね、これではこういうことを言っております。  現行制度では、内閣総理大臣の地位が著しく  向上し、総合調整機能を発揮することができる  ようになったにもかかわらず、従来からの伝統  と、内閣の補佐機関が弱体であることのために、  依然として調整機能を確保することができず、  ことに予算編成は、事実上の政策の決定であり、  内閣の重要な任務であるにもかかわらず、内閣  にしかるべき補佐機関が欠けているために、実  際は大蔵省が予算編成のすべての事務を担当  し、内閣の決定は形式に堕している。このように言っています。そしてこの答申では、いわゆる内閣で総合調整機能を行うために内閣補佐官というものを提言しているわけでございます。  こういった大蔵省のあり方、基本的なところでございますが、内閣の総合調整機能のために、今各省横並びの中の一つである大蔵省が取り仕切るというのはどうなのか、この辺のところを羽田大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。
  12. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘でありますけれども、現在アメリカなんかの場合ですと、御案内のとおり財務省と、あるいは行政管理予算局ですか、これがありまして、財務省の方は専ら金融ですとかあるいは財政の方向とか、そういったものについて仕事をやっておるようでありますけれども、あとの例えば英国、ドイツの場合には、日本と同じように大蔵省がこういったものを管轄して、いわゆる税制、金融、財政全体、これを大蔵省が管轄しておりますし、またフランスの場合には、これは経企庁的なものも含めながら、財政金融等、税制、これ全部大蔵省がやっておるということでございまして、このあたりのところは、どうなんですかね、日本の行き方について、それはもうちょっと内閣が権限を持って調整しなさいという議論があるわけではございますけれども、そういった機能があるとしても、私は、今の仕組みというのは割合とよくつくり上げてこられたのじゃないかなという感覚を持っておること、これだけ率直に申し上げておきます。
  13. 池田元久

    池田(元)委員 ただいまの問題は、大蔵大臣に聞くというよりも、これは内閣の問題ですから、そういうような答弁が返ってくるであろうということは予測しておりました。  その内閣補佐官構想はさておきまして、この問題意識は非常に僕は大事だと思います。いわゆる日本の行政は縦割り行政だ、行政の割拠性の弊害があると言われております。各省のセクショナリズムは、関係業界、関連団体等の利害対立によってこういったセクショナリズムは一層拍車がかかるわけでございます。内閣がそういった意味で予算編成に関して必要な統制や調整を行うというのが行政の一体性を保つ上で大変重要なことではないか、このように考えます。内閣の予算編成の基本的な事項、例えばその予算編成にかかわる重点政策、経済見通し、予算規模等については事前に十分審議を行っていくべきではないか、そこにやはりこの問題についての問題意識といいますか、内閣補佐官というのは、いきなりそこまでいって、いろいろ当否はあると思いますが、やはり行政の総合調整機能、内閣の総合調整機能を高めるといいますか、これは本来のことでございますが、そういった意味からは、今のように暮れにばたばたやるのではなくて、各省の協議を十分にやって、今申し上げたような重点的な問題については事前に十分審議をやるということが必要ではないかと思います。  そして、大蔵省は省の中の省とかそういうふうに言っている。本当に言われているかどうかわかりませんが、各省の予算を査定して、ほかの省の大臣を呼びつけて大臣折衝というものまでやります。しかし、戦後のこういったいろいろな論調がございます。最近は余り言われておりませんが、やはりこういった論議があるということを大蔵大臣、大蔵省当局の方はよく認識されて、謙虚にやっていただきたい、このように考える次第でございます。
  14. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘のこと、私どもやっぱり謙虚に、やっぱり余りにも配分権も持っておるということでおごってはならぬということを、常にこれは戒めなければならないことであろうと思っております。  ただ、今シーリングなんかについてもよく議論があるわけでありますけれども、大体の一つの方向を出しながら各省に夏の時点で申し上げる、そして夏からずっと実は議論を重ねてまいりまして、そして暮れに詰めていくということでございまして、割合と時間をかけながら最近では相当深い議論というものはなされているんじゃないのかな。そして、そういう中で本当に今やらなければならないこと、そういうことについて優先順位をつけていくということなんかも、この間に私は割合と進められてきたというふうに思っております。  そして、役所の中に入ってみますと、おもしろいなと思ったのは、やはり主税と例えば主計なんか、真っ正面から大議論を展開しているわけですね。そして、いやそんなものはとても税ではあれだから、まずおまえのところをもっと削減しろよというような調子で大議論をしておるということでございまして、私は割合と今うまく運営されているのかなというふうに思っておりますが、しかし、今慎まなければいけないよということ、何でも大蔵省が全部切り盛りするようなことじゃなくて、やはり各省庁の話も聞きながらということ、これはやっぱり厳に我々としても慎みながらいかなきゃならぬ問題であること、これはよく御意見承っておきたいと思います。
  15. 池田元久

    池田(元)委員 自民党税調、大蔵省のあり方について基本的なところを申し上げましたが、私たちが永田町や霞が関で常識と思っていることを、ずっと歴史的な経過とかいろいろな国際的な事情からいって必ずしも常識が常識でない、この辺のところをよく考えていただきたいということで、あえて問題提起をしたわけでございます。  さて、九二年度税制改正の進め方についてお尋ねしたいと思います。  きのうも景気の問題について発表されましたが、日本経済は昨年の春から停滞局面に入っていたわけです。しかし、これまでずっと景気は引き続き減速しながら拡大局面にあるといった判断、これは誤った判断ということが後からわかったのですが、やってまいりました。税収も非常に大幅減収となったわけです。  こうした事態に対しては、不要不急の経費の節減、また、補助金その他の歳出の削減合理化というのをまず真っ先に行うべきであったと思うのですが、先ほど出ております暮れの自民党税調を中心とする税制改正の中で、やはりまず増税ありき確かに延長部分が多いのですが、安易に財源を積み上げたのじゃないか、このような印象がぬぐえません。この辺についてまず大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  16. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに今まで多少過度と言われました成長というものがあったわけでありますけれども、それが金融引き締め等ずっと進めてきたという中にあって、まさにバブルがはじけたという言葉で俗に言われておりますけれども、そういう中で、確かに当初予測いたしました税収というものが厳しくなってきたということは現実であります。そういったものを踏まえながら、平成三年度の税収の落ち込みというもの、これがやはり平成四年にも引き続いていくということはあり得るだろうということで、私どもといたしましては、まず何といっても歳出を見なければいけないということで、今までの制度ですとか、あるいはそういう中から生まれてきた補助金、それからある程度目的を達成したと我々が思うようなものについてはともかく全部見直していただきたいということで、これは実はもう大変な議論をした中で歳出の削減というものを図る方向で進めてきたということでありました。その上でやむを得ないものについて増税を図らなければいけなかった、あるいは建設国債等を発行しなければいけなかったということであります。  そしてもう一つの視点は、これは落ち込ませちゃ、後退をさせちゃいけない、過度なものではいけないけれども、インフレを恐れながらも持続可能な安定した成長というものをつくり上げていかなければいけないということで、景気を刺激するというところまでいきませんけれども、景気に配慮したものもやらなければいけないというような中で、今度の予算編成というものは相当苦労をしたということを申し上げることはできると思います。
  17. 池田元久

    池田(元)委員 この予算編成といいますか税制改正の動きの中で、国際貢献の増税構想なるものが突如浮上して突然去っていった、こういう経過がございました。しかし、この中身を検討すると問題が大変多く含まれます。この国際貢献の増税構想について、ポイントだけで結構ですから経過を説明していただきたいと思います。事務当局で結構です。
  18. 小村武

    ○小村政府委員 国際貢献構想は、私ども、昨年予算編成段階におきまして自由民主党からの御提案もあり、政府といたしましても検討をし、こうした問題について検討を加えたものでございますが、その具体的な内容につきましては、その検討段階においてこれは最終的には合意を見られなかったということで、非常に途中経過のものでございますが、大まかに申し上げまして現在ODA予算だけでも八千億円を上回る規模の国際貢献策がある、さらにこれから国際社会の厳しい変化に即応して新しい国際貢献を果たしていくためには、五千億円程度の資金をプールとして持っておくことがぜひとも必要である、こういった構想であると承知をいたしております。
  19. 池田元久

    池田(元)委員 五千億円のファンド、国際貢献資金を設けるというようなことですが、その使途ばどのようなことを考えていますか。
  20. 小村武

    ○小村政府委員 この段階におきまして種々議論がございましたが、これにつきましては、その詳細についてここで申し上げるようなことではないと思います。私ども、ここで具体的に、こういう方針でどうこうするというところまでの議論が外に向かって申し上げるようなものとしてでき上がっていないということでございます。
  21. 池田元久

    池田(元)委員 後の方の、でき上がっていないというところが本音ではないかと思います。  この国際貢献増税というのは、自民党の中から出たというふうに言われておりますというか、まあ出たものです。この構想について、羽田大蔵大臣基本的な考えをお尋ねしたいと思います。
  22. 羽田孜

    羽田国務大臣 国際貢献構想については、確かに表面に出てきましたのは予算のときであったわけでありますけれども、党の方の中では割合と長い期間実は議論されたようであります。  これはどういうあれかといいますと、やはりポスト冷戦ですね、それからいわゆる湾岸戦争が終わった。そしてみんなが、世界じゅうの人たちが、これから何を一体やっていくのかというような、いろんな将来の、未来の世界についてみんなが考え出した。その中にあって、やはり日本が、いろんな役割の要求というのがあったというふうに思っております。これは、私が大臣に就任してからでも、たった一カ月ぐらいの間に三十何人もの各国の首脳が私の部屋にやってきたということ、そして、その人たちと語をしておりますと、今までのODAで対応できる部分とODAじゃなかなか対応できない部分が出てきておる。それから、もう先生もよくあれのように、やはり環境の問題なんというのも相当大きな話題になってきておりますし、あるいは基礎科学の問題なんかについても日本がさらにもっと負担すべきじゃないのかという話がありますし、また、CIS初め東欧諸国がやはり大きく転換してくる、そういったところの資金需要に対しても、日本、やはり分担してくれよということで、こうなってきますと、単にODAじゃ対応できないということ、しかもわずかなものではなかなか対応できないんじゃないのかというようなことが議論されたようでございまして、そういうものが予算のときに私どもにボールが投げられたということであります。  ただ、これは確かに、おっしゃるとおり時間もなかったということでございます。そういうことで、政府税調の方でもこれが議論されたようでありますけれども、いずれにしても、これはやはり、日本人は何をやるのか、一人一人が、やはり国民みんなで考えていただかなきゃならぬ問題だろう、これはこれからやはり議論していかなきゃいけない問題だろう。そのときには当然財源等についてもやはり考えながら、あわせて考えるべき問題であろうということが、実は最後のまとめの中で、政府の方からも党の税調の方からも上がってきておるということでございまして、私どもは、これはただこのときだけで済まして、後もう、まあ一応流れだからしょうがないやということだけではやはり済まない問題であろうと認識しなければいけないと思っております。
  23. 池田元久

    池田(元)委員 国際貢献という言葉、これは大事なことですから。ただ、それによって、そういった名目で増税する。しかもこの手続には大変問題があると思います。これはもう皆さん御存じのような経過で、ああいういわば密室で、ほとんど密室だと思うのですが、進行いたしました。  さて、こういった目的税といいますか、こういったものは、大蔵省当局はこれまで好ましくないと言ってきたはずでございますが、この辺の考え方は矛盾しないかどうか、当局にお尋ねしたいと思います。
  24. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 目的税自体につきましてのいろいろな今までの論議というものにつきましては、ただいま先生からお話ございましたように、慎重に対応すべきであるという論議が基本的にはございました。  今回、国際貢献の問題との関連でお尋ねかと存じますけれども、国際貢献との関連では、国際貢献ということの重要性、これは恐らく政府部内、政府税制調査会等の論議でも否定されるところはなかっただろうと思うのでございますけれども、それに迫っていくための具体的なスキーム、そのスキームが固まり、さらに財源問題に及ぶという過程で目的税の論議というのはあり得たかもしれません。しかし、具体的に今回展開されました論議は、厳密な意味での目的税論議として展開されてきたというところまでまいりませんで、国際貢献のために何かお金が要るというところは確かに論議の対象となっておりましたけれども、それをさらに詳細な目的税論議に煮詰めていくというところには至っておりません。もしそういうようなことになりました場合には、目的税論議、先ほど申し上げましたような政府の今まで基本的に持っておりましたような考え方、その考え方に照らしてどうかという論議になったであろうと思います。
  25. 池田元久

    池田(元)委員 ちょっと苦しいところがあるんじゃないかと思うのですが、財源対策で飛びついた。飛びついたという表現が非常に意味があるんじゃないかと私は考えます。そして、この国際貢献増税構想は一たん姿を消したのですが、これは振り返ってみると、結果的にそうなったかインテンショナルにそうなったかわかりませんけれども、とにかく構想がいわば目くらましになって増税が通った。別の言い方をすれば、国際貢献増税構想が出たことによって、七千億円余りの増税は一兆三千億円との比較で通しやすくなった、このような見方が出ておりますが、一言見解を伺いたいと思います。
  26. 羽田孜

    羽田国務大臣 決してそんなものをもくろんだということじゃないので、先ほども申し上げましたように、やはりポスト冷戦、ポスト湾岸といいますか、こういったところから本当に世界の新しい秩序づくりというものの模索が始まったということでございまして、それまでも環境問題、いろんな問題、議論されておりましたけれども、ようやくそういった大きな動きというものが出てきた中で、本当に国際社会はこれからどうあるべきかということが問われるようになったということでありまして、そこから生まれてきた構想であって、決して、ただ税収が不足しておるからこれを何とかするんだということに充てるんだという、げすな考え方でやったんじゃないということだけは、ひとつぜひ理解をしていただきたいというふうに思います。  ただ、ああいうふうに出てきたものですから、これは外から見ていますと、確かに話してみればそれは必要だということがわかるなあ、しかし余りにも唐突じゃないかと言われればそれまでなんですけれども、しかし、突如といいますか、割合と急激に出てくるような、国際的にやはりそういう環境であったということもぜひ御理解をいただきたいというふうにお願いしたいと思います。
  27. 池田元久

    池田(元)委員 当事者の言葉として、問題提起をしたからいいんだ、議論を起こしたんだ、こういったことも聞いております。これから、来年の税制改正、九三年の税制改正の中でまたこの構想がどんな形で姿をあらわしてくるかわかりませんが、議論をこれからも続けてまいりたいと思います。  さて、どうもことしの暮れのあのドラマを見ておりまして感じたことなんですが――去年の暮れのです、失礼いたしました。年度、暦年というのは難しいものでありまして、恐縮いたします。  去年の暮れのあのドラマを見ていて感じたことですが、政府税調というのは一体何なのか、こういう感じがいたしました。これは経過を見ると本当に恥ずかしいといいますか、ちょっとどうかというのをどなたも感じると思うのですが、十二月十四日に政府自民党が国際貢献増税を実施する方針を決めますと、前日固めた税制改正の答申案を白紙に戻してしまったわけです。これは、五千億円の国際貢献資金で増税の上積みが必要になって、増税の理由などについて全面的な書きかえが必要になったからだ、このような説明も出ております。ところが、十七日に政府自民党が国際貢献増税を断念いたしますと、政府税調もすぐに見送りを決めることにしたわけです。一転二転しているわけです。まあそんなものかと言ってしまえばそんなものかもしれませんが、ここに政府税調の置かれた立場があらわれているのではないかと思います。大蔵省の立場も投影している、このように感じもいたしますが、その辺について大臣の考えをお尋ねしたいと思います。
  28. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 当時の事実関係だけは私から御報告を申させていただきたいと存じます。  ただいま御指摘がございました十二月の中ごろ、確かに政府税制調査会は平成四年度の税制改正の論議をかなり緊密なスケジュールで進めておった最中であろうと思いますが、論議は一つの論議のルールにのっとりまして進んでおりまして、その間において国際貢献税の論議が起こってきた。そのことによって、政府税制調査会の何か今の池田先生のお話によりますと答申案のごときものが白紙に戻ったというような事実は一切ございません。そのようなことはございません。  政府税制調査会の論議は、まず基本的にどのような態度で平成四年度改正に臨むのかという論議から始まりまして、個々の問題について掘り下げていくというプロセスをとります。そういうプロセスに従ってことしも進み、最終到着点に到達したということを御報告申し上げておきたいと存じます。  その間、国際貢献の論議が出てまいりまして、あれは一体どういうことかということが政府税制調査会の中でも議論にはなりました。なりましたけれども政府税制調査会議論というのは、その問題について結論のところに明らかにされておりますように、やはり国際貢献の重要性というものをはっきりさせつつも、さらに掘り下げた論議が必要である、今後検討していくべき問題であるということで一貫しておったと思います。
  29. 池田元久

    池田(元)委員 いずれにしましても政府税調、去年の暮れだけではございません、毎年毎年ですが、最近は党税調にも追随をしている、党高政低というふうに言われております。そして自民党税調は内政干渉するなという御意見もありましたけれども政治全体のかかわりからいって大変問題がございます。同時に政府税調についても、ころいった主体性、果たしてこういうものの存在理由、レーゾンデートルはありや否やというところまで考えざるを得ないわけでございます。タックスペイヤーからいうと、違い先生が並んで毎年の暮れやっていますけれども、あれは何なんだ、このように思いたくなるのではないでしょうか。  きょうは基本論ばかりしゃべっておりますが、大蔵委員会に来たばかりで、中に入るとこういうものは普通に見えるかもしれませんけれども、私は、こういう大きな審議会がこんなふうに運営されていることが大変問題がある。それから審議会政治というのも本当は、基本に返れば、羽田大蔵大臣もおわかりのとおり大変問題があるわけです。その審議会がこういう主体性のなさで果たしていいのかどうか。自民党税調とともに政府税調もこの際基本から洗い直してみる必要があるのではないか、私はこのように思います。いかがでしょうか。
  30. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 先ほどから池田先生のお話を伺っておりまして、なるほどそういうふうにごらんいただいているのかなという感じを改めて感ずる次第でございます。複雑な税制論議を毎年まとめてまいりますときに、最初にお話ございましたけれども、私どものところにも一般的にいろいろな方面からの要望というのが届いてまいります。そういうものは各省を通じて来る場合もございますし、ダイレクトに来る場合もございます。そういうものを我々なりに受けとめるという段階が一つございます。それを税制改正の案にどう高めていくかというときには、政府部内においてどうだということをきちんとしなければいけない。それに対しまして、内閣総理大臣の諮問を受けましたこの審議機関というものが設置される必然性は私はあると思います。  一方、議院内閣制のもとでございますから、与党の中での論議、それが政府の論議と調和していく必要がございまして、党税制調査会という場にその論議があわせて付されるということになるのも必然的なことだと思います。それもこれもすべて、最後法案にまとめて、この国会に御審議をいただくためのいわばプロセスでございます。その一つ一つのプロセスを外からごらんになるとそういうふうにごらんいただくということも、私今お話を伺っておりましてなるほどと思うのでございますが、逆にまた先生がこの税制改正をまとめていかれるお立場にお立ちになってお考えいただきましたときに、そういうプロセスにも必然性があるということはおわかりいただけるのじゃないかと思います。  政府税制調査会政府税制調査会として政府の中の思想をどうまとめるかということを徹底的にやるわけでございますし、党税制調査会のお立場もそれなりにあると思います。
  31. 池田元久

    池田(元)委員 余りよくその理由といいますか説得力のある理由として理解はできませんが、とにかくおっしゃるようにいろいろな納税者の要望をくみ上げる、こういう点では必要だと思います。しかし、あの暮れのドラマ、あれを見れば果たしてどうなのか、こう率直に考えたわけでございまして、大きな問題ですから、すぐにどうというのはできないかもしれませんけれども、しかしここへ来でいろいろな、先ほどの大臣の発言じゃありませんが、制度疲労、金属疲労しているのは単に選挙制度だけじゃないのです。今言ったようなところも問題があると思いますので、ぜひその辺を問題意識として持っていただきたい、このように要望しておきます。  さて、時間がございませんので、地価税の問題についてお尋ねしたいと思います。  この土地問題は大変重要でございます。地価税がことしから実施されました。この内容は、皆さんもお感じになっていると思うのですが、当初の方針から次々と後退した、骨抜きという言葉がよく使われますが、そのような内容でございます。ただ、こういった資産課税を導入したこと自体は大変評価できると思います。また、最近の法人への資産の集中など、そういった経済のゆがみを正す上からもこの地価税は重要な意義があると考えております。ただ、ここへ来て、実施されたばかりなのですが、早くも名のある大手不動産業者から、廃止してくれ、このような声が出ております。  これについてお尋ねしてまいりますが、まず最近の地価の動向、そして上昇、騰貴といいますか高騰した理由また鎮静している理由について国土庁の御答弁をお願いいたします。
  32. 木村誠之

    ○木村説明員 お答え申し上げます。  最近の地価動向についてでございますが、一言で申し上げれば、基本的には大都市圏における地価の下落傾向は強まりつつございます。また、下落している地域も拡大しております。さらに地方圏におきましても鎮静化している地域が拡大している状況にございます。  また、地価の高騰の要因、下落の要因ということでございましたけれども、今回の地価高騰は、御承知のとおり東京都心部におきまする業務用地需要の急激な増大、それが周辺住宅地における買いかえ需要へとつながりまして、さらにこれを見込んだ投機的取引の増大等が主な原因と思われます。また、その背景といたしまして、いわゆる金余りと言われたような状況、あるいはまた土地の適正な利用を促進する制度が必ずしも十分ではなかったというような側面もあろうかと思います。さらに言えば、資産として土地が有利だという意識が国民方々の間にずっとあったということ、こういった問題も挙げられるのではないかと思っております。  このような地価の高騰も、先ほど申しましたとおり下落傾向にあるわけでございますが、その要因といたしましては、一つには、私ども国土利用計画法というものを持っておりますが、監視区域の指定の拡大強化が図られておりまして、全国の市街化区域の八割をカバーするほどになっております。土地利用の規制が行き届いてきたということでございます。さらに、先ほど申しましたような今回の地価上昇の背景となりました金融状況も大きく変化してまいっておりますし、そのようなことを受けまして、不要不急の投機的需要がおおむね姿を消したというふうに思っております。また加えまして、今お話のございました地価税の創設を初めといたしました土地税制の総合的な見直し、これが行われております。こういった各般の土地対策の効果が総合的に浸透してきたのではないかというふうに思っております。  最近の状況を見ますと、先ほど申しました地価の下落傾向は引き続き継続しているように思われます。エンドユーザーの間にも、地価の動向につきましては先行きまだ安くなるのではないかという印象を持っておられる方も多いようでございます。ただ、私どもといたしましては、地価の動向については決して気を緩めることなく、十分注視してまいらなければならないというふうに考えております。
  33. 池田元久

    池田(元)委員 いわゆるバブルの崩壊といいますけれども、一言で言いますが、まだそのバブルの泡は完全に消え去ってはいない、そのような認識を私持つわけですが、その辺はいかがでしょうか。
  34. 板倉英則

    ○板倉説明員 地価の動向につきましては、今地価調査課長の方から申し上げましたとおり鎮静化傾向にありますが、やはり大都市の地価水準はまだまだ高いというふうに私ども承知しております。したがいまして、昨年一月に閣議決定されました総合土地政策推進要綱に従いまして適正な水準に向けての地価の引き下げ努力を着実に重ねていく必要がある、かように承知しております。
  35. 池田元久

    池田(元)委員 まず国土庁の方から、いわゆる地価税法の廃止の声について、御見解を端的にお伺いしたいと思います。
  36. 板倉英則

    ○板倉説明員 今申し上げましたとおり、総合的な対策を着実に実施していく必要があるわけでございますが、そうした中にございまして、土地税制役割というのは、都市計画とか土地取引規制等と並びまして大変重要なものがあろうかと思います。  今回導入されました地価税は、土地の保有に一定の負担を求めることによりまして、土地の資産としての有利性を縮減し、土地の有効利用の促進にも資するという意味におきまして、土地政策上も大きな意義を有していると承知している次第でございます。また、他の諸施策と相まちまして、二度と再び地価高騰を引き起こさないための制度的な枠組みを構築するという観点から見ましても大変重要な意義を有している、かように承知しております。
  37. 池田元久

    池田(元)委員 大蔵省の見解を、同様の問題についてお尋ねしたいと思います。
  38. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 国土庁からの御説明を伺っておりまして、私どもの考え方も全く同じでございますが、一つは、国会の論議を経まして土地基本法が成立を見、これを出発点といたしまして土地税制改革の論議がなされ、地価税が生まれまして、この一月一日から施行されてまだ何日かというところでございまして、しかし、少しずつその所期の効果が今あらわれつつあるという状況であると認識をいたしております。  それで、この地価税そのものでございますけれども、これは土地神話を打破するというような大目的に向かっておる政策でございまして、短期的な対症療法的な措置として我々は認識しているわけではなくて、むしろ長期的といいますか、体質改善的な措置として認識されるべきものではないかと思っております。  それからもう一つ、これに関連して付言させていただきたいのは、土地対策というのは、あれだけいろいろな広範な論議を通じて出てきました結論としまして、総合的な政策として取り組まれるべきものであるということでございました。総合的政策のパッケージディールでございます。そのパッケージというのは、一つ一つがお互いに意味を持ち合っているものでございまして、その中で地価税の果たしている役割というのは全体に響く部分がございます。こういったものを十分に認識して今後の運営に当たりたいと思いますし、そのような認識が広がっていくことを期待します。
  39. 池田元久

    池田(元)委員 今の御答弁は大賛成でございまして、ぜひそういうことでやっていただきたい。  ただ、なるほど、しかしと言わざるを得ません。というのは、いわゆる総量規制を早々に外してしまいました。そういう立派な考えを持っているのにどうして外してしまったのか、また端的に理由をお尋ねしたいと思います。
  40. 土田正顕

    ○土田政府委員 総量規制でございますが、これは私どもが昭和六十年ごろから続けてまいりました金融機関の土地関連融資についての一連の指導の中の一こまとして、いわば非常緊急の措置といたしまして一昨年の四月から導入したものでございました。その後、見てまいりますと、金融機関の土地関連融資の伸びは総じて抑制基調が定着をいたしました。また、各金融機関における土地関連融資に係る審査管理体制の充実強化も図られてまいったと思われます。このようなことで、この指導の趣旨が着実に浸透してきたと私ども認識しておるわけでございます。他方、先ほど国土庁から御説明がありましたような地価動向もございまして、私どもとしては、いわばその非常緊急の措置をとり続ける必要はなくなったのではないか、非常緊急的な事態が解消されれば当然総量規制は解除するのに適当な時期に来ているのではないかと考えまして、昨年末をもって総量規制の解除の方針を決定したところでございます。  しかし、ただいまそれぞれ答弁をいたしましたように、いわば地価動向についての注意を緩めるというような態度は毛頭持っておりませんので、私どもといたしましては、金融機関の土地関連融資について、金融検査の活用とかヒアリングの機動的な実施などを通じまして、投機的な土地取引などに係る融資を厳に排除していくという姿勢を引き続き堅持いたしますとともに、総量規制の効果的な発動の仕組み、いわゆるトリガー方式と申しますが、そのようなものもあらかじめ明示いたしまして、地価高騰の際に、いわば機動的に対処できるような態勢を整えておるわけでございます。
  41. 池田元久

    池田(元)委員 いろいろ述べられましたけれども、総量規制の解除は、やはり大蔵省に弱いところがあって、そこからの声が強かったのではないか、こんな感じもいたします。総量規制の問題を取り上げたのは、地価税法も同じようにどこかからの声で変なことにならなければいいがな、こういうことで取り上げたわけでございます。  総量規制でトリガー方式を取り入れた、これは大変立派な道具ができたわけですね。しかし、残念ながら、ちょっと六日のアヤメ的なところがございまして、もうちょっと早くこれができていればバブルもここまでひどくはならなかったのじゃないか、このように考えます。ただ、つくられたことは大変結構なことではないかと考えております。  それからもう一点、やや専門的になりますけれども、相続税の評価にかかわるいわゆる奥地といいますか、奥地逓減率の問題につきましてちょっとお尋ねしたいと思います。これは言葉として相続税財産評価基本通達の改正による奥行き逓減率の縮減の問題、非常に難しい言葉でございますが、要するに住宅地などは道路から奥行きの深い土地は有効利用が図りにくいとして評価を下げているわけですね。しかし、商業地などでは奥行きのあるまとまった土地は非常に有効利用率が高いということから、十二月にですか、国税庁が通達を出したということですが、これについて端的にポイントだけでいいですから説明してください。
  42. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 ただいまの御指摘は御指摘のとおりでございますが、ちょっと御説明させていただきますと、平成三年十二月の土地等に係る評価通達の改正は、最近における土地取引や土地利用の実態に適合した適正な評価を行えるようにその全体的な見直しを行い、評価の一層の適正化を図ったものであります。  御指摘のように、宅地を路線価方式で評価する場合の奥行き価格補正率については昭和三十九年に設定されたものでございまして、その後、現在の土地利用の実態、特に商業地域における立体的高度利用に伴う敷地面積の実態に適合しないものとなっているということから、その実態に即するように改正を図ったものでございます。  具体的には、例えば従来繁華街、高度商業地区というのは一本でございましたが、それをビル街地区と高度商業地区、繁華街地区というように三つに分けまして、それぞれに応じて奥行き逓減補正率を変えている。その結果、例えば丸の内のビル街地区でございますと、従来百メートル四万の土地でございますと六一%までに減額される、高度のビルが建てられる地域でございますが。一方、十メートル四万の土地ですと減額されない。これはビルが建たないわけでございます。しかし、今の土地の評価の観点からいえば、むしろ前者は効率的利用を図れる、後者は図れないということでございまして、改正の結果、前者については減額なし、後者については八%の減額。これは私ども単独の判断というよりも、専門家日本不動産研究所にお願いしてやったものでございます。
  43. 池田元久

    池田(元)委員 一片の通達以上の大きな意味のある内容でございます。今おっしゃったこと、まことに結構なんですけれども、なぜこういうことをもっと早くできなかったか。別に奥行きのある商業地が利用しやすいというのは今に始まったことじゃないわけです。やはり行政をもっと迅速に進める必要があるのではないか、このような感想を持ちました。そして今、この地価税を導入するときにこの通達を出せば、反発に、火に油を注ぐのは必至なんですよ。その当否は別として、非常にまずいやり方ではないか、このように思います。  それでは、次の問題に移らしていただきます。  きのうは総理の方にお尋ねしたのですが、経済社会のあり方と税制といいますか、羽田大蔵大臣には後半のところに答弁をいただきました。ただ、重要な問題ですので、もう一度ここで一言申し上げたいと思います。  日本は経済大国と言われますが、海外では摩擦を起こしています。国内ではよく、ゆとり、豊かさというようなことをいろいろな団体が言いますが、そんな状況にはほど遠いと言っていいのではないでしょうか。  最近、ソニーの盛田会長が論文を書きまして、論議を呼んでおります。その後、それに続いていろいろなところで識者の方がいろいろな見解を発表しております。これは特別新しいということではございません。しかし今、日本がここまで来て、しかも対外摩擦を起こして、このような経済の状況になっている中ですから注目されるわけでございます。問題は、経済の担い手である会社法人のあり方だということになります。法人は押しなべて利益などを配当などに回さない、そして競争力の向上や内部留保に回そうとしているわけです。そして、労働者の賃金、労働者の賃金と言うと、すぐ総労働、総資本。イデオロギー的にこう言っているというわけではございません。まさに企業のあり方が社会的に問題があるという観点から申し上げているわけでございます。ですから、経営者の報酬もアイアコッカさんみたいにもらうのはちょっと問題があると思うのですが、経営者の報酬も先進国に比べて低く抑えられている。企業のいわゆる社会貢献もまだまだ貧弱になっているわけです。個人は豊かにならずに企業だけが豊かになる。企業の競争力が強くなって摩擦が広がる一方だ。こういった日本的経営を中心とする経済構造を今こそ転換しなければならないときではないか、このような問題意識を持つわけでございます。羽田大蔵大臣におかれては、こういった最近の論議、この辺についての御感想をお聞きしたいと思います。
  44. 羽田孜

    羽田国務大臣 今御指摘がございましたように、また日本型経営が危ないという盛田さんのあれも読ませていただきました。確かに我が国におきまして、戦後の復興期に終身雇用制が定着したということ、そして企業のマネジメントに従業員との間に運命共同体的な意識が形づくられて、労使が一体となって技術を磨いたりあるいは生産の効率を上げ品質の向上に励むという企業風土が形成されたということでございまして、まさにそれは今御指摘のあったとおりだというふうに思っております。このことは、確かに今日の我が国の国際的な競争力を築いてきたというプラスの一面というのは大きく評価されるべきであろうと思っておりますけれども、しかし一方では、先進主要国に比べて労働時間が長くて個人生活を十分楽しむゆとりがないという指摘であろうと思っております。  実は、これは堀昌雄先生と一緒に私ども昨年フランスに行って、クレッソン首相とお会いしました。クレッソンさんのいろいろな物の言い方というのは、非常に端的に物を言われるということで私どもは初めから警戒をしておったわけですけれども、やはりお互いに競争するのにはお互いが同じルール、同じ環境でなきゃだめよというわけなんですね。それで、多少幾つかの点はクレッソンさんは昔のままの日本のイメージがあるものですから、勘違いされている面があったようであります。私たちも実はそのときはかっかとしておったのですよ。何をあのおばちゃん言うんだということで、もっとおまえさんたち働いて、もっといいものでもつくれよという思いがあったことも事実なんです。後で堀先生なんかとそれこそ深夜まで徹夜しながらいろいろと議論をしたことがあったのですけれども、しかし、考えてみると、ああいうやり方でよその社会に出ていって、確かにいいものをつくるためにみんなが一緒になってやる、それでどんどん生産性を上げていってしまうということになりますと、日本から出ていった例えばソニーならソニーという会社がフランスでもほかのものを全部駆逐していってしまうということで、果たしてそれでいいのかな。事実、私がその前の日にある地域を見まして、その人たちと話しましたら、そこにいるフランス人の人たち日本型の経営を非常に評価しているのですよ。土曜日の午後も働きに出てくる、日曜日も出てきてしまうと言うのですね。もう六時になったから帰りなさいと言ったって帰らないと言うのですよ。なぜだと言ったら、我々の製品は非常にいいということでどんどん売れているんだ、これを納める期間がおくれてしまったら我々の信頼にかかわるよと言うので、ちょうど日本の勤労者の思うのと全く同じような状況に今フランス人のある地域の人がなっている。これは私たちは非常にいいことだと思って評価しておったのですね。  ところが、どうも堀先生と御議論したり、また今度盛田さん  盛田さんという方は少なくも世界に十カ所ぐらい拠点を持っていると書かれているように、私はその工場も幾つか見ましたけれども、その盛田さんは年がら年じゅう世界を歩いていたわけですね。ところが今度は、ほかの経営者の人たち一緒に行って少し離れた形でこうやって見たときに、あれ、おれたち今までいいと思ってやっていたこと、質がよくて安くて、そしてみんなに喜ばれるというんだから何でこれが悪いんだと思っていたけれども、しかしそれでは今度ほかを全部駆逐してしまうということになるとやはり問題があるんだな、しかもただシェアを広げるために物を安くつくることきり進めてしまったこと、これは問題があるんだなということに気づかれた。私はやはりこれは大事なことであって、まさに利益というものをどう配分していくのか。要すみに、今御指摘があったように、経営者もやはりちゃんと堂々といただくものはいただく、それと同時に勤労者たちもちょうだいする、それとまた株主にも、やはりとうとい資本を出したんですから、この人たちにもきちんとした配分を与えていくというこの考え方というのは私は評価すべきものであって、今までの経営というものは本当によかったのかということと、あわせてやはり労働時間の短縮の問題だとかあるいは生活のゆとりの問題だとかこういう問題に、もう一度ここで足踏みしながら我々は考える時代が来たのかなということを改めて思い、そして総理も大体こういう発想で、昔から言われてきたけれどもどうもなされなかった、今もう一度ここからスタートしようというのが生活大国という発想であったということも申し上げておきたいと思います。
  45. 池田元久

    池田(元)委員 ぜひそういう問題意識を持っていただきたいと思います。  総理のおっしゃる生活大国への前進、いろいろ読ましていただきましたけれども、今の現状分析と目標だけは書いてある、そこに至る道筋がどうもはっきりしない。それを解く一つのがきが、先ほどから申し上げております。そういう観点ではないか、このように考えております。  さて、現在の国会状況ですが、今、予算というものがかかっておりまして、これは大変重要です。経過は別といたしまして、報道によりますと暫定予算というような話も出ておるようですが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  46. 羽田孜

    羽田国務大臣 これはもう何回も国会でも申し上げてまいりましたけれども、今度の予算というのは生活大国とかあるいは国際貢献というようなことも柱になっておりますけれども、その中で、そういうものを通じながらやはり景気というものに対しても実は配慮したものであるということであります。景気というものが成長していくのが余り過度であっては、またいろいろなひずみも生んできてしまうわけでありますけれども、しかし、今私たちは国内からもいろいろなものを求められておる、そして生活大国にしなきゃならないということがありますし、また国際的にも資金需要というのは非常に大きくなってきておるということで、日本の経済はどうなるのかなということについてG7でも最も皆さんから実は議論議論といいますか、期待があったところでございまして、そういうものにもおこたえしていかなければいけないといったときに、この予算というものが暫定予算なんということになりますと、限られたもの、義務的な経費しか盛られないということになってしまったのでは、やはり心理に与える影響も悪いし、実際に仕事が継続していかないということになったらいけないので、いろいろな御意見があると思うのですけれども、ぜひともこの予算をやはり一日も早く通していただくということと、それを執行するためのこういった税法というものも通していただきたいということをお願い申し上げたいというのが私の率直な気持ちであります。
  47. 池田元久

    池田(元)委員 私、先ほどから政治改革を初め我が国には改革すべき問題が多々あると。私たちの周辺でも、きょうテーマにした問題だけでも、税制審議のあり方、自民党税調のあり方、政府税調のあり方、そしてまた大蔵省のあり方、そしてさらには日本経済のあり方、すべて今これは問い直されている、転換のときではないか。やはり改革というのがキーワードになる。すべてに対して原点に返って見直す、とっぷりつからないで客観的に見直して、そこに手がかりを得て改革する、このようなことが必要ではないかという感じがいたします。これから大蔵委員会でいろいろ勉強してまいりたいと思っております。  残余の問題ございますが、この辺で切り上げたいと思います。ありがとうございました。
  48. 太田誠一

    太田委員長 午後零時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時二十五分休憩      ――――◇―――――     午後零時三十三分開議
  49. 太田誠一

    太田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡辺嘉藏君。
  50. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 渡辺嘉藏です。税制三法に対しまして、野党第一党の立場から、是は是、非は非として謙虚に質問を始めさせていただきたいと存じます。  まず第一は、法人特別税については賛成しかねます。なぜかといえば、現在の法人臨時特別税はこの三月三十一日で切れるわけでございます。これは湾岸戦争対策費としての一時的なものであったわけですが、これにかわって今度は出るわけなんですが、今までにもこの種のものは昭和四十九年の会社臨時特別税、これは二年間、そして昭和五十九年、所得減税の財源確保のための法人税の基本税率を一・三%上乗せしたこと、ところが、この五十九年の一・三%の基本税率の引き上げば、六十年十二兆円、六十一年十三兆円、六十二年十五兆八千億円と法人税が異常な増収をいたしましたので、六十二年からはこれが廃止になったわけです。もちろん時限立法で延ばしてきたわけですけれども、今後の景気の動向から見ますと、六十二年、六十三年、平成元年のような異常な好況あるいはまたバブルはまず考えられないのではないか。  といたしますると、一時的にはこういう歳入不足のための税制を設けるということは好ましくない、むしろ五十九年に行いましたように法人税率をまず引き上げる、私はこれは二%引き上げることが妥当だと考えておるわけです。理由は、法人税率は六十一年のときにはそういう意味で四三・三%であったわけですが、今日ではこれが三七・五%、五・八%引き下げられたのであります。そうすると、税率の引き上げを言いますと常に実効税率を反論されるわけですが、現在の実効税率が、ドイツにおける五二一八七%、アメリカは貿易上日本といろいろな摩擦を起こしながら、それでも日本の方が優位に立っておりまするが、実効税率は四〇%、日本は臨時特別税を含めまして平成四年の一月で四九・九八%ですから、二%引き上げましても実効税率は五〇・八八と私は計算したのです。この程度にしかならない。とすれば、ドイツよりも二%も実効税率は低いわけです。こういうような意味合いで、こういう場当たり的な、また国民に対してはむしろだまくらかしたようなこういう税制ではなくて、正面から取り組むべきではなかろうか、これについて大臣の御答弁をいただきたいと存じます。
  51. 羽田孜

    羽田国務大臣 法人税の税負担水準につきましては、六十三年の税制改革によりまして、私どもの方も国際的視点に立った法人税制の確立という観点から、具体的には基本税率を四二%から三七・五%に引き下げたということはもう御案内のとおりであります。  一方、今回の法人特別税の創設は、当面の厳しい税収動向、財政事情に対応するために、国民経済あるいは国民生活への影響に十分配慮しながら、現行の税負担を念頭に置きつつ、その範囲内で新たに必要最小限の措置を講ずるとの観点に立ちまして、臨時の措置を行ったということでございます。
  52. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 えらい紋切り型の御答弁をいただいたわけですが、それではあかぬのですわ。私は何回も言うように、この税というものは余りちょこちょこ、むしろこの法人税というものはなぶるべきじゃない。なぶったら、きちっとこれでいくんだ、こういう観点から、私はこれを強く要求しておきます。私どもの態度はまた後ほどです。  第二番目は、現在の石油臨時特別税も、これはまた三月で切れるわけですが、私はこれは何らかの形で継続、残すべきであると考えております。湾岸対策として法人臨時特別税が四千四百億、今回のそれは四千四十億、そしてこの石油臨時税は二千二百八十億、これが今度は廃止になるわけなんですね。これだけは約束どおり。しかし私は、これはむしろ継続した方がいい。なぜかといえば、現在、キロリットル当たりの税金なのですが、二千四十円、これに湾岸対策として五〇%の上乗せをいたしまして三千六十円、こういうことになっておるわけなのですが、私は、むしろこれを継続しながら四千八十円に引き上げた方がいい、こういう考え方を持っております。  なぜこのようなことを言うかというと、あの一・三%の法人税率を引き上げたときには、昭和五十九年、このときの原油は、北海ブレンドが一番標準的に信用できるという意味でこれを採用したわけですが、二十八・九六ドル、いわゆる二十九ドルなんです。現在はこれは二十ドルなんです。そしてレートは、そのときには二百五十一円のレートであったのですが、これが今百二十七円のレートに下がったんです。そういたしますると、キロ当たりについて昭和五十九年のときには百八十三ドル、今日では百二十六ドル、それがためにこれが日本に輸入されるときにはどれだけの価格になるかということは、五十九年のときには一キロリットル四万五千八百五十八円、現在は一万九千百五十一円なのです。四一%に下がっておるのです。このように下がったことは、これは石油業者の単なる企業努力じゃないのです。国際的な流れの恩恵と日本経済の向上による円高なのです。こういうところから見ると、石油業者だけをこの際、これを外して、そして廃止するというようなことは、だれが見ても妥当性を欠くのではないか、このような意味合いから、この石油における臨時特別税については、社会環境を保全する意味においても、あるいはまた国際的な恩恵を受けたわけなのですから、国際貢献的な意味合いの財源のためにもこれは残し、むしろ、今申し上げたような恩恵を受けておるわけなのですから、私は、今までのキロリットル当たり二千四十円を四千八十円に上げても、これはすべて国民も納得するものであり、国民全体に恩恵を与えるものである、このような意味合いでこれは残し、このように上げるべきだという考え方ですが、どうですか。
  53. 羽田孜

    羽田国務大臣 今お話ありましたことは、やはりレートが変わっておるよということ、あるいは社会環境保全という意味、そういうところからも、石油からの税というものはもう少し求めてもいいんじゃないかという率直な御提案だろう、一つの御見識であろうというふうに私は思います。  ただ、この臨時につきましては、湾岸支援のためということで臨時的に国民に広く負担をお願いするという関係、そして石油がまさに湾岸地域からあれされておるというようなこと、そういうことで特別にお願いを申し上げたということであります。そういうことから、法律の規定に従いまして、この臨時については失効をさせるということであったということでございまして、今ございました御意見というものは、私どももやはり頭に置いておきたいということを申し上げることができると思っております。
  54. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 頭に置いていただいて恐縮ですが、ありがたいのですけれども、やはりこれは実行してもらわなければいけないと思うのです。  次に、歳入不足のための全体的な立場からもう一つお承りをいたします。  租時法の第九十条の四で、特定輸入の石油製品、これを今回は対象を拡大して免税にしようとしておられます。これはナフサが主であることは御案内のとおりです。従来は産業振興上安いナフサによって、そしてあらゆる製品単価を引き下げる、コストダウンを図る、こういう意味でこれの免税措置は必要な時期もあったのです。しかし、今申し上げたように原油は下がった、レートは上がった、相殺して当時の四一%の価格になったのです。こういうような意味合いから見て、またこれを継続する必要は断じてない。これによる減税額は約五百億といいます。この五百億は、今日のこの業界の実情から見まして全く無意味である。先ほど申し上げたような石油の臨時税を廃止をした問題、それとこれとを関連してくると、石油業界を余りにも優遇し過ぎておるのじゃないだろうか。まさに不公平そのものだと私は思う。  ちなみに、これは悪気で言うんじゃないのです。政治献金を見てみますと、石油連盟から一億の政治献金がなされておる中で、自民党国民政治協会に九千百万円、石油化学工業協会が八千四十七万円が七千五百四十七万円、合計一億八千万円のうちで一億六千六百万円自民党政治献金があります。平成二年です。私は、いいとか悪い、こう言うんじゃないのです。しかし、こういう動きから見ましても、そのほかの党には、野党の一部にほんのちょびっと行っているだけです。すべてがオールマイティーで入っておる。こういうところから見ても、私は石油業界に手心を加えたとは思わないけれども、そういうふうに、自民党にも税調があります、政府にも税調があります、それらいろいろ勘案いたしますると、私はこの措置はよろしくない。これはもう、この免税措置は今回からは廃止した方がいいんだ、こう考えております。九十条の四ですね。  と同時に、消費税の問題については、これはもう私どもはかねがね廃止すべきである、こういう立場で主張してまいりましたが、今日の歳入不足という当面する課題の中で、消費税の税率の引き上げがなされるのではないかということが国民の中で大きな危惧として流れておることは事実なんです。今までのそれぞれの総理大臣あるいはまた大蔵大臣も含めて、税率は引き上げません、私の任期中は、こういうことでおっしゃってきた。先日宮澤総理は、そういう消費税の税率の引き上げというようなことは下の下だとおっしゃった。しかし、下の下でもおやりになってきた実績が幾多ある。また、政治というものはそういうものが多い。こういうような意味合いから、大臣は、任期中には絶対に私はそういう消費税の税率の引き上げはやらない、こう断言できるのか。もし断言されればできるだけ長く大臣をやっておってもらった方がいいし、やるというようなニュアンスがあるなら、これは早くやめてもらった方がいいのです。この点は率直な話ですが、ひとつ国民のために明らかにしてあげていただきたい。  そして、あわせて言っておきますが――ここで一遍切ります。
  55. 羽田孜

    羽田国務大臣 九十条の四につきましては主税局の方から申し上げさせていただきまして、消費税についての御質問でありますけれども、これはもう両院合同協議会におきまして合意に基づいて議員立法による法改正、これが昨年の十月から実施されているということでございます。政府としては、この改正を円滑に実施することが最も重要と認識しておりまして、今三%の税率についてどうこうするなんということは本当にございません。  ただ、今、おまえさんが在任している間はというあれなんですけれども、在任というものは、どのくらいやるのか、五年やるのかあるいは何年やるのか、本当に見当つかないということで、ただ、私がこの前参議院でちょっとお答えしたのは、何か勘違いされているのですけれども、私の在任中はどうこうですよという言い方は余り見識のあることじゃございませんということで申し上げているので、私は、これについて本当に今念頭にはないということを率直に申し上げておきます。
  56. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 法人増税は臨時的な措置ではなくて恒久増税で臨め、それから石油の臨時特別税については、今回政府は廃止すると言っておるけれども、筋違いではないかという御指摘でございます。  直接に答弁を求められておりますのは後者に関連してかと存じます。渡辺先生の御指摘は、現局面における石油価格の推移というものに着目されまして、その動きから見てなぜこれに課税することを考えないのかという御指摘かと存じますけれども、その場合、今回の重質NGLにつきましての措置というものを引き合いに出されましてお尋ねだったと思いますが、その点から御説明申し上げますと、石油化学産業の原料というのは一〇〇%ナフサに依存してまいったわけでございますけれども、その八割を中東を中心とした輸入ナフサに依存しております。その原料構造の脆弱性というものが問題になってまいりまして、それを補いますために、原料多様化ということの要請にこたえるためにオーストラリアとかインドネシアに広く賦存しております重質NGLというものをその仲間に加えておく、原料構造を安定させようという趣旨が一方にございます。こういう減免措置というのは、そういったいわば構造的な動きにまず着眼しているところがございまして、結局油の価格というのは刻々動くものでございますから、その動きがこういった制度に投影されます状況というのは、相当大きな、長いレンジの中でその問題について的確な対応が必要であるというようなことになってまいりました場合には論議に上ってくるかと存じますけれども、今回の場合はそういった流れの論議ではなくて、いわば構造論議として議論させていただいたということを御報告申し上げておきたいと存じます。
  57. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 その新しい製品を入れて、そしてナフサの量が減るからプラス・マイナスはゼロなんだ、こういうふうに承って、私はそういうことはわかるんです。それでいいんです。ただし、この特例そのものをこの際はなくしていいんだ。ナフサの価格はこれでもう下がったんですから、原油価格がこれだけ、四一%まで下がったんですから、こんなときにまだ特例で、これに対して約五百億減税特例を与える必要はない、私はそういう考え方なんです。これはもうだれが聞いても納得できる話。  それから、大臣にもう一遍確認しておきますが、ということは、消費税の税率の引き上げはない、大臣の就任期間中、こういうふうに理解していいんですか。
  58. 羽田孜

    羽田国務大臣 大臣の就任期間中という、いろいろな経済情勢が変わる場合がありますよ。ひょっとすれば五年ぐらいやっているかもしれませんので、そうなるとどうなんだという話もあります。これは、いいかげんなことを言って申しわけないんですけれども、ですから、そういうもので私はどうですよというのはそれは余り見識のあるあれじゃないだろう。ただし、私は今税率を上げるなんということについては一切念頭にないということを申し上げておきたいということなんでございます。
  59. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 ただいまの渡辺先生の重ねての御指摘、よく頭の中に置いておきますが、今回の論議に際しまして、石油価格の動きというものを直接増収措置との関連で我々は認識し論議はいたしませんでした。
  60. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 今そういうことは念頭になかったということですが、これはぜひ念頭に置いて対処していただかないと、この租税特別措置法は一部に偏ったり妙なところに不公平の含みがあっては国民は疑惑を持ちますから、ぜひひとつお願いをいたします。  それから大臣、五年も六年もおやりになる可能性はあります、将来総理大臣かもしれぬのだからね。だから私は特に聞いておきたいのですが、その点を。  これ以上は水かけ論になりますから言いませんが、歳入欠陥に対しまして、私は先ほど申し上げたように、法人の特別税、法人税の税率を見直すことによって、これによって先ほど申し上げたように五千億の増収ができる。それから、石油の臨時税を継続し、これの税率を先ほど申し上げたように引き上げることによって四千五百億、そしてその他の消費税の分について八百二十億、そして今の申し上げた石油の租税特別措置法における特例の廃止、そしてこれの税率の引き上げが自動的に行われた結果、一兆一千三百二十億の増収になる。このように私はかねてから言っておるわけですが、消費税の還付金が一兆三千億、これは大部分がその輸出による仕入れ控除になってくるわけなんです。全部とは言いません、大部分だ。とすれば、今日、大蔵省が発表された昨年の経常収支、貿易収支、大変な黒字になってきました。この一千億を超えた貿易黒字、こういうとこみから考え、またアメリカは貿易赤字が減少したそうですが、日本に対しては、対日赤字はふえておる。こういう実態から見て、私はこの輸出に大宗を置いた還付一兆三千億、これは振りかえた新しい新税の形で、輸出税という形でこれは私ども日本政府としても輸出の抑制にはこういう格別の努力をしておる、そしてこういう財源によって、消費税の飲食料品の非課税一兆三千億は十分これで賄えるわけなんですね。こういうふうな輸出税の創設を含めて、私は、財源対策としてはこれで総額二兆三千三百億あるんですから、こういうふうに行うべきではないか、こういうふうに申し上げるんですが、どうですか。
  61. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 消費税の還付、輸出還付が巨額に生じておる、そういうものに着眼してはどうかというふうに承らしていただきましたが、よろしゅうございますか、輸出還付。そういう意味でございましたら……
  62. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 いやいや、還付は行われる、消費税の見合いにおいてというふうに御理解いただかないといけません。
  63. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 申し上げるまでもないことかと存じますけれども、消費税というのは内国消費税として位置づけておりまして、海外で消費されます輸出取引につきましては、国境税調整という観点からこれを免税するというのは各国がやっておることでございます。輸出先国の事情に任せるということで、これを消費地課税主義と申しておりますけれども、私ども今までいろいろ主要国の付加価値税の実態を聞いてまいりましたけれども、輸出に際しまして一度政府が取得しておる消費税を還付をとめているということは聞いたことがございません。つまり、今の渡辺先生のお話は、還付すべきものを手元にとどめておいて、その税収の見合いで別途の措置を講じるというふうに私伺ったのでございますが、還付を還付でやれということになりますと、私が申し上げることにつきましてこれ以上御説明の余地はないのでございます。つまり、今の輸出の還付の構造は変えるな、ただそれに見合うものについて別途新しい税を立てろということになりますと、新規の輸出税ということになろうかと思います。それにつきましては、関税局長の方からお答えを申し上げます。
  64. 吉田道弘

    ○吉田(道)政府委員 輸出税、輸出に対して税をかけるいわゆる輸出税でございますが、これは、今先生が御指摘のように、確かに最近の貿易の不均衡ということで黒字がふえております。ただ、従来の私どもが考えております考え方は、やはりいわゆる貿易拡大の形で解消していくというのが本来の筋だとは考えておりまして、輸出税を仮に導入した場合を考えますと、むしろ輸出を抑制するという形で縮小均衡に陥るおそれがある、あるいは、変動相場制のもとで仮に輸出税を設けた場合でも、輸出を抑制する形に必ずしもならないという実効上の問題もございます。また、諸外国における輸入課徴金の導入の引き金になりかねないという問題もございます。また、そのかけ方によるわけでございますが、仮に一律にかけるという形をとりますと、いわゆる輸出産業の中にはかなり中小企業がございまして、こういうところに与える影響は非常に甚大なものがございます。  そういうことを考えますと、やはりいわゆる輸出税というものについては、これは慎重に検討していかなければいけないというふうに考えております。
  65. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 今関税局長がおっしゃったけれども、それは今まで何回も聞いた教科書的な答弁であって、そんなことで、中小企業が三%これにかかったからといって絶対に困りません。これは僕が実際にやっておるのだからよく知っておる。むしろ困るのは大企業なんですよ。だっぷんと出しておる方なんですよ、自動車を初めとして。だから私は、三%の消費税分を輸出税として取ることによって一兆三千億あるんだ、だから、一兆二千億から一兆三千億あるんだから、これによって財源は確保できる、こういうことを言っておるわけですが、関税の問題は、石油の問題もありますから後刻またやりますけれども。  次に、みなし法人のことなんですけれども、みなし法人ができたのは昭和四十八年なんですけれども、この経過をちょっと振り返りますると、昭和四十七年の十二月三十日に税制調査会は、このみなし法人の導入、設立については好ましくない、こういう答申をいたしておる、これは御承知のとおり。ところが、この答申を受けて政府は、昭和四十八年四月十日衆議院に可決させ、同月四月二十日に参議院を可決させ、そしてその明くる日の四月二十一日から施行したのです。税制調査会は、これは好ましくない、不公正がある、不合理だ、こういうふうに言うたものを、時の田中内閣、愛知揆一蔵相はわあっとやってしまったんです。そして参議院が通った途端に、明くる日から実施だ、こういうふうにしてやったものなんです。  今度税制調査会で、このみなし法人制度は不合理だ、出たら、さっさと今度はやめましょうと、こうきた。こういう政治やり方をすると国民は、政治は何をやっているんだ、こういう疑惑を持つ。私はみなし法人におけるプラスとマイナスを実態として知っておるわけなんですが、私も、この廃止についてはやむを得ない、しかしそれの見合いにおいての青色控除のこの引き上げ、三十五万円にされるわけですが、これは、その裏づけとなるBS勘定もつけて、貸借対照表もきちっとつけて、そして万々なものなら二十五万円上乗せしてやる、こういうことだろうね、今まで十万円だったんだから。三十五万というと大きく見えるけれども、二十五万。二十五万というと、税率に置き直して考えると幾らになるか。三万円かそこいらなんですよ。ところがみなし法人で、これが源泉の給与控除を受けていた人々は、三百万の人でも四百万の人でも今の三割程度の控除がありますから、百万近い控除を受けていた。だから私は、この際、青色控除をこれの見合いで、そして条件つきで引き上げるならば、これは五十万以上にすべきなんだ。五十万にしても、税率に置き直して大体七万かそこらにしかならない。そうすると、今までの給与控除で百万見ていたものの半分になりますね。こういうような意味合いで、私は、このみなし法人についての政治のあり方、そして青色申告の控除が三十五万、多いように見えるけれども決して多くない、むしろ五十万にすべきなんだ、こういう考え方ですが、主税局、御答弁いただきたい。
  66. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 二つの話がございます。  一つは、そのみなし法人課税の話でございますが、これは先年来、政府税制調査会におきましてもそうでございますが、与野党間あるいは野党間のいろいろなお話し合いでも、私どもが伺っておりますところ、問題ありという御指摘をいただいておる、いわば宿題になっております問題でございまして、今回、いろいろな検討の結果これを廃止させることになったということでございまして、この話はそれとしてお聞き取りいただきたいと存ずるわけでございます。  一方、青色申告制度の実態を見まするところ、青色申告の普及率を高めていくことが今大事であるという認識を我々は持っておりまして、したがいまして、政府税制調査会におきましてもこの点議論をいたしました結果、「適正・公平な課税の推進のためには、適正な記帳慣行を確立し申告納税制度の実を上げていくことが喫緊の課題であり、青色申告制度に係る施策は、このような観点から今後とも重要である」という趣旨の答申が示されました。  これに従いまして、あとは青色申告を広げていきますためのインセンティブとしてどの程度のいわば恩恵が適当であるかという議論になろうかと思いますけれども、誘導策というものを考えます場合に、やはりそこには相当の規模と申しますか、ある適正な水準というものがあり得るばずであるということで論議が行われました。これが余り過大になりました場合でも、やはりその負担の公平といった点から適当でないという気がいたしますし、これの位置づけというものにつきましてもいろいろ議論がございましたけれども、勤労性のある所得すべてについてこれを認めてはどうかというような議論もたしかございましたが、そのこともやはり適当でないということになりました。したがいまして、性格的には青色申告の普及に役立っためのものということになりまして、かつ額的にも三十五万というのが、いろいろ議論の結果最終的にこの辺で適正としようということになった数字でございまして、私どもとしましては、その議論の過程から見ましてこれ以上でもこれ以下でもない、この程度が適正であるというふうに思っております。
  67. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 どういう根拠でこれが三十五万が適正だと。勘なんですか、それとも懐勘定なんですか、どちらですか。
  68. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 そこは、こういったインセンティブ効果を生じせしめるための措置というものの水準を決めますことは私どもとしてなかなか難しいことでございますけれども税制改正において貴重な一つの場面であると思いますのは、いろいろな立場の方がいろいろな主張をされて、議論の結果落ちつくところに落ちつくということでございまして、しかし、それも想定して議論したものではございませんけれども、ちょっと私どもがこの数字自身を吟味しますときに見たことでございますけれども、渡辺先生おっしゃいましたように、当初、四十年代の末ぐらいから青色申告を普及しようということで措置されましたものは十万円、青色申告控除十万円でございました。その当時と現在とを比べますと、経済規模も大きくなっておりますし、何かにつけ大きくなる。物価ももちろん上がっております。そういった趨勢全体を見ましたときの広がり方、そういうものとこの恩恵自体の規模の大きくなり方というものはそうふつり合いなものではないという感じを受け、そういうものであろうかと思った次第でございます。
  69. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 余り科学的な根拠ではないと私は思うのです。先ほどおっしゃったとおりなんですよ。十万円はもうずっと二十年近くやってきたんですから、十何年十万円で。そいつが物価の変動その他から見れば、事業規模から見たって、三十五万になったって何も上がったとは私は思えない。むしろ法人成りをとめて青色申告を完全なものにするために複式簿記もきちっとやらせるなら、五十万円ぐらいにしてやらないとだめだ、物価の変動その他から。最初から十万円のままで来ておるのですから。私はそう考える。そして、十万円の人のものを三十万にするとか三十五万にするならわかる。まあそれを、余り上げるときちっとした青色の帳簿体系ができないという心配があるなら、十万円が二十万円でもいいのです。しかし、三十五万円にきちっと条件つきでさせるならば、これはもう五十万円以下ではいけないと私は思う。これは強く言っておきますが、ここではこれ以上言っても水かけ論になります。私ども与党なら多分にそういうふうにやったと思いますけれどもね。残念ながら言いっ放しになる危険がありますが、この点はひとつ十分科学的に答弁ができるようにしていただきたい。  次に、不適当な税制の見直しの一つとして、金融機関と一般企業との未収利息の取り扱いに若干異なりがありまするので、法人所得の申告額に格差が生ずる危険があるのです。これは、金融機関の未収利息の計上は、昭和四十一年九月五日の国税庁長官の通達によりまして、六カ月以前の未収利息は期末に益金に算入しなくてもいい、こうなっておるのです。一般企業の場合には、法人税の基本通達で、債務者が債務超過等で一年以内未収利息が続いた場合には益金算入に及ばない、こういうことになっております。  ということは、ここで六カ月と一カ年の表現上食い違いができた。これを私は実態からいろいろ考えてみるのですが、六カ月以前というのと一年以内というのとで、この中間における発生した未収利息、いろいろ計算してみてもどうしても合点ができないのです。だから、この際こういうふうな、金融機関は六カ月だ、一般は一年以内だ、こういうことでなくて、斉一した通達に改めるべきではないか、そして、六カ月決算の場合にはこれまた不利になるのではないかという危惧もいたしております。こういうような意味で、この点が一つ。  いま一つは、金融機関の場合には、貸し出しをすればその利息の分も予測しながら担保を徴収しておるわけですね。ですから、六カ月以前の未収利息は資産に計上しなくてもよろしいという一律的なことでなくて、その担保の見合いの状況等々を見ながら、あるいはまた銀行の経理基準等があるわけですが、これによるⅠ分類、Ⅱ分類程度は当然これは、Ⅲ分類、Ⅳ分類になると無理だと思いますが、Ⅰ分類、Ⅱ分類までは私は担保の状況によってこれは益金に算入させて、そして課税していくのが妥当である。そうでないと、この部分について後から入ったら益金に入れるでいいじゃないかという論理は、貸倒引当金の上乗せと同じ現象が起きる、こういうふうに私は見ておるわけです。だから、そういうことについてはこの際税制の見直しをすべきではないかと思うのですが、どうですか。
  70. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 御指摘の貸付金の未収利息は、原則として発生主義により収益に計上すべきものとされておりますが、債務者の状態から見て利子を回収することが確実でない場合にまで収益に計上すべきものとすることは実情に即さないという観点から、このような場合には実際に利子を回収するまでその収益計上を見合わせることができるという扱いになっております。  御指摘のように、この利子を回収することが確実でない場合の判断基準の一つとして、一般事業法人の場合には、債務者が御指摘のように債務超過に陥っていることなどにより、その支払いを督促したにもかかわらず、期末以前一年以内に支払い期日が到来したもので、その全額が未収になっていること、こうなっております。一方金融機関の場合には、期末以前六カ月に当たる日の直前に到来した利払い期日以後期末までに到来する支払い日に至る利子の全額が未収になっている、こういう、確かに扱いが異なっております。  この取り扱いの違いは、一般事業法人の貸付金には貸し付けの目的など種々でございまして、その未収となっている原因を客観的に見きわめる必要がありますので、そのためには相当の期間を必要とするということから一年としておりますが、一方金融機関につきましては、金融機関の特殊性を考慮し、従来から半年となっております。金融機関につきましては、金融機関の性格から利子の回収には常に相当の努力が払われているということでありまして、半年も未収になっているというものについては、その後もなお長期間未収となっているという実態がございますので、この辺も勘案して扱っているところでございます。  それから、もう一つの御指摘の担保の点でございますが、利子を回収することが確実でない場合の判断基準として、御指摘の金融機関については半年間という基準でございますけれども、担保の有無というのは判断基準に入っておりません。この理由は、担保物の処分には相当の日時を要するということ、また担保物の処分によっても利子の回収額は極めて少ないという実態を考え火ものであります。ただ、担保の有無というのを判断基準としていないというのは、金融機関、一般事業法人、いずれについても同じでございます。
  71. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 今の六カ月と一年の問題、これはこの際は基本的に改めて、そして誤りのないように私はされるべきだ。そうでないと、昨日、一昨日やったのですけれども、いろいろな演題を想定してやってみると、どうしてもぴったりこない。じゃ、元金の一部を入れておって利息は入っておらなかったとか、いろいろなケースが予想されますので、これはもう斉一を期す必要がある。  いま一つは、金融機関は貸し付けの場合には担保をとるのです。一般はまずしないのです、そういうことは。担保をとらないのです。いいですか、まずとらない。金融機関の場合はまずとる。この違いは大きいのです。こういうような意味合いで、私は、担保の裏づけのあるものは未収利息を六カ月で打ち切る必要はない。やはり一定の期間は未収利息を計上し資産化させて、そしてそれには適当な課税をする。そうでないと、その間未収利息を資産に計上しませんから法人税はかかりませんから。入ったときにかけますよ、こんなのは当たり前のことです。そうすると、その間一年なり二年なりは、これは貸倒準備金と同じものが上積みされることと同じ結果になる。そうすると、千分の三の貸倒金が時には千分の四になる。千分の五になっておるかもしれないのです、金額によっては。だから、そういうような意味合いで私は、これを当然一体化することと、それから、担保その他がある銀行の場合には六カ月で打ち切る。一年で打ち切る必要はない。これはやはりその資産の裏づけのある限り資産化させるべきだ、こういうふうに思います。後からまた答弁をいただきます。  次に、相続税の租税特別措置法の改正についてでございますが、この相続税法改正につきましては合点がいかない点が多々ありますが、時間等の関係もありますので一つだけ御指摘したいのですが、小規模宅地の減税の割合が、今度これを拡充いたしまして事業用は六〇%を七〇%に減額します。居住用は五〇%を六〇%に減額します。私は、これはまず第一に不自然だと思うのです。なぜか。事業用だけ七〇%にして居住用は六〇でいいという。むしろ私は逆だと思うのです。こういう不自然な事業用擁護の措置は好ましくない。特に小規模特例と書いてあるものですから、みんな、小規模の人、二百平米の小規模の人だけが適用になる、こう思っておるのです。そうじゃないんですね、これは。千坪の人でも一万坪の人でも十万坪の人でも全部、この条件が整えば適用になるのです。  ですから、わずか一〇%上げただけでも三百九十億になる。その元金は幾らかと言っても、これははっきりしないらしいのですけれども、まあ乱暴な言い方ですが、一〇%で三百九十億だからそれの五倍か六倍していただければいいのじゃないかというような示唆もいただいたので、それで計算いたしますると約二千億になる。合わせると二千三百九十億という大変な財源なんです。これが小規模宅地の特例ということで今度また行い、引き上げようとしていらっしゃる。特に私はこの意味において、この引き上げについてはまず反対をいたします。居住用は五〇%の現在のままでよし、事業用は四〇%に引き下げる、将来はこれを廃止をする、そして何らか別の措置を講ずる、これが必要ではないか。  いま一つは、相続税の四十三条に、どうしても相続税を払えないときには物納でよろしい、こういうことで物納物件は「課税価格計算の基礎となった当該財産の価額による。」こうなっておりますので、土地はまずそういう現象は起きませんが、なぜかといえば路線価格で計算いたしておりまするから、時価の六〇なり六五%程度ですから、これを物納するようなばかげたことはしません。しかし、債券、株券については、六カ月前ですと千円の株が五百円になることは今の状態ではもうざらなんですね。そうすると、六カ月前のこの株券を千円の評価にしたものを五百円で納めてもいいのです。こういうばかげたことは何としても改めなければいけない。これをまた十カ月にしようというのでしょう。この運用益だけでも大資産家は大変な利益を上げるのです。その間に話し合いのための時間が必要なんて、そんなことはない。時間を与えれば与えるほどかえってトラブルが起きるのが私のいろいろやってきた実感なんです。むしろ六カ月は、私は妥当な線だと見ておるんです。こういうような意味合いで、この物納の相続税法四十三条の規定はこの際改めて、物納時点の時価とするというふうに改めていくことが必要ではないか、かように考えておりますが、この点は二つお答えをいただきたい。
  72. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 最初のお尋ねでございますが、小規模宅地に対する措置が納得いかないということでございますが、これは、相続課税をいたしますときに相続税を払う立場の方々のその居住の安定と申しますか、あるいは事業の継続と申しますか、そういうものにどの程度の配慮をする必要があるかということからとられている措置でございまして、その場合、居住であろうが事業であろうがそこに存在しております法益は似ておるわけでございますけれども、なぜ事業用の方を居住用よりも優遇しておるかという点について申し上げてみますと、これにつきまして今までございました論議としましては、結局、商売をやっておられます方にとって今商売が営まれている土地との結びつきというものは非常に大きな意味を持つ。つまり、居住の場合も大きな意味を持つわけでございますけれども、どちらかといえば商売の場合の方がより大きな意味を持つ。なぜならば、商売というのはどこででも場所を変えて営むことのしがたい要素がより大きい。つまり、事業の展開されております場所というのは雇用の場所でもございますし、その取引先とのいろいろな密接な関連の上に成り立っている事業でございますし、事業主以外の多くの人たちが社会的、経済的な基盤としてその事業と関連を持っているわけでございます。そういう意味からいいますと、この事業の承継というものの持っている意味合いというものは、居住の承継ももちろん非常に大きな意味を持つのでございますけれども、それを上回るというのが従来の論議でございまして、そのような論議を今回踏襲しておるというのが率直なところでございます。  それから、もう一つお話は、例えば株式が典型でございます。株式の物納につきましての価額の話でございますが、相続税の納付におきまして、一定の条件のもとに相続財産による物納を認めるわけでございますけれども相続税法の四十三条一項に、そのときの収納価額というのは相続税の「課税価格計算の基礎となった当該財産の価額による。」というふうに定められておるわけでございます。これは、その相続税の課税時期においてそのものの価格に基づいて課税しておりますことから、その財産を物納します場合においてもその価額で収納すべきであるという考え方なのでございますけれども、結局、税の確定性という理念を踏まえました原則的な考え方をここにお示ししておるわけでございますけれども、今回審議願っております相続税法の改正によりまして申告期限が延長されましたからといいまして、この考え方まで今変更すべきではないと私どもは思っておるわけでございます。もしその課税時期から収納時期までの間に株価が下落した場合、その下落した収納時の価格を収納価額にすべきではないかという問題提起もあり得るわけでございますけれども、もし仮に相続税の課税を課税時期の価格に基づいて行っているにもかかわりませず、物納の収納価額というものが下落した価格でしか認めないということになりますと、価格変動のリスクを納税者に押しつけることになるという心配もございまして、それが納税者からの不信を招くことになってはいけないという考え方をしておる次第でございます。
  73. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 そこまで配慮されておるなら、まだまだほかに配慮すべきところが多いのであって、一般庶民には株で納めるというような感覚は余りないんです。大きな人なんです、これは。大資産家なんです。株を何万株も持っておる人なんですよ。そういう実態から見て、余りそらぞらしいと言っては悪いけれども、上っ面の話でなしに実態から判断いただくと、少なくとも株の場合には、上がればその株は金にしてからでなければ納めませんよ、千円が千五百円になれば。当たり前のことです。千円が五百円になったら、よし、これでいけと。千円で通りますから。こういう、何といいますか、悪質者を許すような抜け穴はこの際封じておいた方がいい。  じゃ、現在持っていらっしゃる物納を受けた株式でどれだけの目減りが実際にありましたか。この間何回も出してくれと言ったのは、きょうの質問までに間に合わせるという話だったけれども間に合わぬらしいけれども、どうです、どれだけありましたか。
  74. 中川浩扶

    中川政府委員 目減りの個々の場合によりましていろいろあると思いますが、総合的に見まして必ずしもはっきりは把握をしておりませんが、いろいろのものを含めまして多くはないと思っております。  といいますのは、管理をまだ続けているというか処分をする時点を、必ずしも即しておりませんので、まだ保有しているものでありますとか、あるいは逆の場合もありますとか、いろいろなケースがあると思っております。まだはっきりしたケースは把握しておりません。
  75. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 それは調べられるつもりですか。そしてまた、調査してその中身を私の方へお知らせいただく、委員会にお知らせいただく、こういうふうに理解してよろしいですか。
  76. 中川浩扶

    中川政府委員 物納財産につきましては、実際に物納した後、理財局の方に引き継ぎますので、そちらの方で管理なり処分をするということでございますので、ちょっと私の方で即答いたしかねると思いますが。
  77. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 そんなことはないと思うのですよ。少なくとも物納を受けて、それを一つ一つ許可していくんですから。いいですか、もらいっ放しじゃないんですよ。これはよろしい、これはいけませんと言って取り下げさせたり却下したり許可しておる。だからそんなもの、きちっとしたものを受け取っておるんですから、国税庁でそんなことわからぬはずがないんです。これはわかっておるけれども出しんさらぬかどうか知らぬけれども、これはやっぱりきちっと、こういう実情だということを天下に明らかにしていただきたい。そうでないと、物納を受けたものの中でこういう損とほかの損と一緒にごっちゃにされちゃ、国政審議にこれは妥当な状態ではないと思いますのでよろしく頼みます。何しろ一千億からあるのですからね。――じゃ、報告をするかどうかをひとつ御答弁をお願いします。
  78. 中川浩扶

    中川政府委員 そういった関連の具体的な資料というのは国税庁では持っておりませんので、理財局の方で全部保有しております、その物納財産につきましては。
  79. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 それはわかっとるで。国税庁で物納を受けたときにこれはもうはっきりしておるのですよ、株でもらったもの、そうでないもの。だからその株でもらったものは今どういう評価になっておるか、これはこの際明らかにしておいてもらうのは当然だと思うのです。だから今すぐできなければ、何しろきょう午前中に間に合わせるという話も間に合わぬのやで。だから後からでもいいから、委員会にやっぱりきちっと報告いただく、これをひとつお願いしておきますが、どうです。
  80. 中川浩扶

    中川政府委員 先ほど主税局長の方から答弁いたしましたように、物納の財産の価額につきましては課税時の価格で引き取るといいますか、物納財産として受領いたします。その後国有財産として処分いたしますものですから、国有財産の方で即処分はいたしませんが、管理ないし保有するということでございますので、つまびらかな個々のものについて明らかにできるかどうかはわかりませんが、そういったことについての御説明は機会を見て申し上げたいと思います。     〔委員長退席、柳本委員長代理着席〕
  81. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 期待しております。  次に、不公平税制の見直しの一つをお聞きしたいわけです。  公益法人とは、法人税法その他いろいろな特別な優遇措置が講じられているわけですが、すなわち本来の事業による収入は非課税です。収益事業によるものは純収益の二七%で、寄附容認額も三〇%までは無税である、これは御承知のとおり。なぜこのような優遇措置が公益法人には与えられておるのか、まずお示しいただきたい。
  82. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 公益法人そのものの純粋な業務、つまり収益事業以外の本来の業務に関しましては、これは公益に奉仕する法人として課税しないという考え方を従来から貫いてきたわけでございます。ただ、公益法人の中に、事実上通常の法人が営んでおる収益事業と全く等価といいますか、同じような営業をしておられる場合がある。それは、市中においてまさにお互いに競争関係に立つものであって、その収益事業部分についてまで公益事業並びで非課税にするというのは行き過ぎであるという論議から、その中の収益事業部分を切り離しまして、これについて課税をするというのが今の考え方でございます。
  83. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 収益事業だからこれは競争原理もあり、社会のバランスを考えて、当然収益事業は課税対象にする。しかし、先ほど申し上げたように一般法人は三七・五、かつては四二、ところが公益法人は二七。それから寄附金につきましても三〇%は無税。一般法人は、もう御承知のように寄附金控除限度額であらゆる制約を受けておりますからほんの微々たるものですね、後ほどまた申し上げますが。だから、公益法人というのは、宗教、慈善、学芸等社会公共の利益を目的として営利を目的としない法人のことを言うからであると定義はあるのですね。  平成二年の七月から平成三年の六月までの一年間に、公益法人の税務調査で九百十二件調査をされた。私は、去年の十二月までの一年間のものを欲しい、こう申し上げたのですが、古い、古いと言ったら悪いですが、六月しかやってないから、こういうことで、これはやむを得ないと思いますが、九百十二件おやりになっている。その中で更正決定を受けたものが八百三十三件、そのうちで不正、脱税の件数は八十五件の悪質者があった、こういうふうに報告を聞きました。その悪質者の中の五十五件が、約六五%、宗教法人である。そして申告漏れ税額は百三十九億、そのうちの宗教法人が七十四億、五三・二%が宗教法人である、こういうふうに承ったのですが、これは事実に相違ありませんか。
  84. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 ただいま御指摘の数字はそのとおりでございます。
  85. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 といたしますと、公益法人は、現在平成二年度で収益事業を行っておる公益法人が二万九百六十八件あるんですね。そうすると、年間九百十二件調査をおやりになる、これは大変な努力ではあるけれども、しかし勘定すると、単純にいくと二十数年かかる。税の時効は七年です。調査の時効は五年なんです。これで果たして公平な税の調査が行われておるか。一般企業に対して、中小企業みたいにがりがり、がりがりと言っては悪いのですが、かなり厳しい調査をおやりになる。厳しくてやむを得ない。当然なんです、調査ですから。これはいいんです。いいけれども、こういう中小企業や一般企業と比べると公益法人のこの収益目的の二万件に対する調査にしてはおかしいのではないか。先ほどもお話に出ましたように結婚式場だとか冠婚葬祭その他駐車場、あるいはまた賃貸借の土地だとかマンションだとかいろいろなことで収益を図っていらっしゃる中には、これを株に投資して、そして中には補てんまで受けたところもある、こういうのが実態なんです。これの調査について、これからどういう調査体制をとられるのか。  私は先日、先日といっても先年なんですが、京都のある有名なお寺を見学に行ったのです。そうしたら、入口で三百円払いました。夫婦で六百円払った。そうしたらお札をくれたのです。私はここの信者じゃないから要らないと言ったんです。そうしたら、これが入場券だというので、仕方がないからもらってきた。家内安全、いろいろ書いてありましたな。そうすると、これはお寺本来の事業ですから非課税なのか。それともこれは入場料のかわりで収益事業なのか。このお寺は、元年の収益事業の申告は、二億一千八百万円申告をしていらっしゃる。これはどちらに入るのですか。と同時に、先ほど申し上げたような調査をどういうふうにされるのですか。
  86. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 公益法人の収益事業につきましては規定されておりまして、その規定の対象に拝観料は入っておりませんので、したがって非収益事業、こういうことになります。
  87. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 調査は。
  88. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 私どもももし人手が豊富にあれば、公益法人も含め一般法人、もっと調査を拡大したいと思っておりますが、限られた人手の中でいかに効率的に行うか、これは公益法人も一般法人も含めてでございますが、そういう中ではできるだけ多くの情報を確保し、その情報に基づいて、不正があると認められるものを中心的にウエートを置いて実施するということでございまして、先ほど何十年に一回、こういうことでございますが、通常の正しい申告をしているところはあるいは百年たっても行かないかもわかりませんので、そういう面では重点的にやっているということで、これは公益法人に限らず一般法人もでございますから御理解いただきたいと思います。
  89. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 収益事業による所得額は、平成二年には千九百五十六億円とありまして、昨年新聞、テレビで報道されました創価学会が造成された墓苑の脱税の疑いで税務調査を行われたとあったのですが、これは事実かどうか。それからこの創価学会へのそれまでの税務調査は行ったことがあるのかないのか。御答弁をいただきたい。
  90. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 一般論として申し上げますと、宗教法人を含む公益法人についても実地調査を実施しているところでございます。それも、先ほど申し上げましたように問題があるところを重点的に取り上げて行っているところでございます。  御指摘の創価学会の件は、個別の件でございますので、ここでは答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  91. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 もしここで調査なされて、脱税額があった、当然これは修正申告なり更正決定なり、あるいはまたそのほかの――そのほかの措置はないか。何らかの措置をとられるわけですね。  創価学会が昭和六十二年に当初申告されたのが収益事業としては九十九億八百六万円なんですね。これが修正申告をされて、八億九千三百九十七万円の修正で百八億二百三万円になりました。昭和六十三年は百億六千三百四十九万円、修正で六億百五十三万一千円を上乗せして百六億七千八百八十万円。元年は九十四億二千七百十一万円の当初申告に対して修正は八億七千三百十三万円、合計百三億二十四万円となります。平成二年は百四十億七千七百九十六万円の当初申告で、これは修正はなし。ですから、修正額は三年間で二十三億八千二百四十一万円、こういう修正申告がなされたわけですが、この修正申告をなされたことは事実かどうか。それから、これは墓苑収益の事業の脱落分であったのかどうか。
  92. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 お尋ねの件は個別にわたる案件でございますから答弁は差し控えさせていただきますが、ただ、最近三年間の創価学会の公示所得で申し上げますと、平成元年三月期分は百六億七千八百八十万円、平成二年三月期は百三億二十四万円、平成三年三月期は百四十億七千七百九十六万円でございます。
  93. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 そうすると、私が申し上げた額と同一ですね。そういうふうに理解していいわけですね。
  94. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 私が申し上げたのは公示所得金額でございます。
  95. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 一般企業が墓苑を造成いたしまして販売するということはまずあり得ないわけですね。なぜかといえば、これは宗教法人が一応やっている。墓をつくるということについては特別な許可が要りますから、一般だれでもやるというわけにはいきません。しかし、墓石を売るということは事業ですから、これはだれでもできるわけですね。ですから、その意味で今度の税務調査が行われたのは、この墓石の部分、その他の収益があったかどうかの部分、そういうところに当然調査をされたと思うのです。  そこで、まず、今お話がありましたような百億を超える収益事業の所得申告がなされたといたしますると、平成二年に百四十億七千七百九十六万の申告をされた創価学会、私は御立派なものだと思うのですが、これがもし三〇%の寄附控除後の申告だとすれば、もとに戻ると、もとは二百一億一千万円となるのです。三〇%の寄附は六十億三千万円、これを差し引いて百四十億が課税所得として公示価格にのってくるわけです。といたしますると、この二百一億の所得があった場合でも三〇%の寄附をすれば、この法人は四十五億八千七百八十五万円の税金で、国税、地方税、全部あわせて済みます。もし一般法人がこの寄附金の限度計算等を行うことによりますると二億五千三百七十五万円、これは資本金を二十億とみなします。そうすると、片一方では六十億三千万円の寄附金が無税、一方では二億五千万円、こういうアンバランスが出てくるわけですね。この結果、納税額は法人所得でいきますと、宗教法人の場合には四十五億八千万円、普通法人でいきますと八十九億八千万円、倍の税額となるわけですね。私はこれが不公平だと言うのです。先ほど主税局長もおっしゃったように、同じ仕事をやっておる、同じ収益を上げておる、同じ事業をやっておる。片一方は二七%であり、寄附金控除その他をずっと認めてくるから四十五億で済む。一方は八十九億の納税をする。どう考えてもこれは公平を欠くのじゃないか。同じ事業なら、同じことをやっているのならば、公益法人であろうと――公益法人は本来営利を目的としないのですから、営利を目的としないところが営利が上がったら一般法人と同じように納税させるのが正しい税のあり方だと私は思うのですが、どうですか。
  96. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 確かに渡辺先生御指摘のように、同じ事業を別の主体が営んだからといいまして、事情が同じであれば同じ税負担を生じて当然であるという考え方はそのとおりだと存じますけれども、ここに一つの事情がございますのは、公益法人が一般的に収益事業を営まれますケースとしましては、収益事業で上がった収益を公益のために使いたい、そういうお考えのもとに営まれるケースが多い。もう少し別の言葉で言えば、より一般的であろうかというふうに観察されるわけでございます。  結局、法人が支出しました寄附金の扱いになりますけれども、一般法人の場合の寄附金の損金算入割合に対しまして、そういった事情から、公益法人の場合にはより有利な損金算入割合を認めておるという事情がございます。これが最終的な税負担の違いに響いてくるということは起こり得るわけでございますが、先ほど来の御指摘もそうでございますが、公益法人のこういった税制上の取り扱いはこれでいいのかということはかなり前から政府税制調査会でも意識され、それから与野党間のいろいろな税制協議でも取り上げられたところでございまして、私どもとしましても、ここに問題があるということにつきましてはたびたび教えていただいておるという感じがするわけでございますけれども、一体、この問題をどういうふうに解決すればいいか、公益法人のあり方をどう考えていけばいいかというのはなかなか容易な問題ではないという感じが正直に申しましていたしておりまして、今後引き続きこの問題を問題として考え続けていきたいというふうに思っております。
  97. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 私は創価学会だけにターゲットを絞っておるわけではなくて、余りにも突出して大きいから一つの例として言っておるだけです。悪意も他意も全くありません。ただ、創価学会系の墓苑が非常に多いのですね。私の調査によれば、東北池田記念墓地公園は宮城県の白石市に一万九千七百基、はるな平和墓苑が群馬県榛名市に二万五千基、富士桜自然墓地公園が富士宮市に五万二千基、中部池田記念墓地公園四万八千基、そして北海道の厚田村にある厚田墓苑が三万五千基。関西池田記念墓地公園が現在までに六万基、この四月にはあと一万基がオープンする――オープンというのが適当かどうか、すると言われております。合計いたしますと、この一万基の未オープンの分は除きましても二十三万九千七百基ある。これは悪い言い方ですが、仮に一万円の利益があっても二十三億。  これは幾らで売り出しておるかということですが、七年前の北海道の厚田墓苑の当時で一基約五十万円だそうです。はるな墓苑については七十二万円だそうです。そして関西の池田墓苑については九十万円だったそうです。今売りに、売りにというか、これは、オープンに出しておるのは一万基、現在は百万円だそうです。こういう大変な量のものなんです。だから仮に、まだできかけのものその他を除きましても二十三万基ということになると、そうすると、平均七十万円の値段であったと仮に計算いたしますと千七百億ぐらいの大事業なんです。大収益なんです。大収入なんです。課税の計算をどのようにおやりになったのかわかりませんし、帳簿をどのようにお調べになったかわかりませんが、聞くところによると、帳簿というものは出てきたり出てこなかったりいろいろあったそうです。  そこで、国税庁としてはどういうふうにおやりになったかは、これは私が推測します。平均で七十万と見て、墓石がまず三十万。土地が造成等含めまして三十万、土地も何も大きいのをつぶすんじやありませんから。しかしそれでも三十万。そうすると残金が十万円。この中から経費その他が出てくるんじゃないか。こういうふうに計算いたしできますると、課税を二分の一、非課税を二分の一、そして割りますと三十五万になる。三十五万ずつから、課税の三十五万から三十万の墓石を引くと五万円の利益が、収益が残ります。その中から一般経費諸掛かり費を引く。こういうふうに善意に見ても、半分それを見ても収益として残るのは二万五千円。二十万基でも五十億、こうなるんです。これの修正申告等から考えまして、調査あるいはまた修正申告は三年で打ち切っておられるように思われるんですが、時効は七年ある、調査の時効も五年はあるんです。私は何も七年金部とかいろんなことは言いませんが、少なくとも私は、三年で打ち切った理由はなぜか。これは余りにも金額が大き過ぎるからなんです。本来の事業の収入は、当然これは非課税ですから、ここには入りません。しかし、本来の宗教事業としての非課税になっております部分もかなりある。私が聞きましたところによると三百億ないし五百億は年間あると言われております。そのほかいろいろ多くの疑問を私は感じましたし、不審な点も見ましたもので、これはこれ以後、きょうは時間がありませんのでこの一つだけ聞いておきますが、逐次聞く予定ですけれども、いずれにしても本来の教義のための事業とそしてこういう収益事業とが会計上本当にきちっと分かれているかどうか、ここまで突っ込んで調べであるかどうか。私は、日本の国税庁には、本当にすばらしい能力と努力を日ごろ敬意を表して見ております、これは欧米に比べたら格段の差なんです。こういうような意味で、この点について承りたい。
  98. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 一般論として申し上げますと、例えば宗教法人につきまして調査をするときに当たりましては、収益部門と公益部門というものを明瞭に区分して処理、調査をするということをやっております。例えば神社で駐車場を経営していて、そこで駐車場の造成の費用がかかり、一方で神社自体の修繕を行うというような場合に経費が一体とされていないかどうか、その辺は収益事業たる駐車場部分と神社の修繕費、公益事業部分とを明瞭に分けて、区分経理をするようという観点から調査をしております。
  99. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 国税庁は常に個別案件は答弁しないということで私どもには明らかにされませんので、後日また聞くといたしまして、きょうはこの程度にしておきますが、文部省来ていらっしゃいますか。  文部省にお伺いしますが、この創価学会等の宗教法人、これの所轄庁は都道府県並びに都道府県にまたがるときには文部省、こうなっておりますから文部省にお聞きをいたしますが、この宗教法人法によりますと、宗教法人が公益事業以外の事業をやってもいい、こうなっておりますから、だからこういうことになってくる。ただしその収益は、これはこの宗教法人の本来の目的に使うべきなんだ、こういうことになっておりますが、そういう点、きちっとそこまで見て指導をしていらっしゃるかどうか。  いま一つは、この創価学会の設立目的は、「日蓮太聖人側建立の本門戒壇の大御本尊を本尊として日蓮正宗の教義に基づき――中略)公益事業、出版事業及び教育文化活動を行う」こういうふうに書いてあるわけです。ところが、ここに大日蓮という名のもとに破門通告というのがあるのですけれども、この破門通告を読んでおりますと、そうすると、創価学会に対して日蓮正宗としては破門をしたよ、これは十二月七日付なんです。その前には、十一月七日付には解散の勧告をしたよ、こういうことになっておるわけですね。私は聞いたんです。なぜ解散の勧告をされましたか、こう聞いたら、教義の逸脱、社会的な問題、何ですかと聞いたら、ルノワールの問題、補てんの問題、脱税の問題等々いろいろおっしゃった。はあ、そうですか。これは聞いたとおりを申し上げただけです。こういうふうになりますると、そうすると日蓮正宗の本山は大石寺であると私ども、これは常識的に思っておるわけですね。だから、文部省としては、これに対しては都道府県で東京都がやっておるから文部省としては知らないというお話でしたけれども、しかし、こういう解散勧告が来たり破門通告が来るというようなことになると、これが宗教団体なのかどうなのか。教義はこれなんだ、そしてこれから破門したんだ、解散させたんだということになると宗教団体でなくなりはしないのか、宗教法人でないのではないか、そうすると税法上の取り扱いもまた変わるわけなんですね。この点についての御見解を文部省、お知らせください。     〔柳本委員長代理退席、委員長着席〕
  100. 梶野愼一

    ○梶野説明員 たくさんのお尋ねをいただきましたけれども、まず最初に、創価学会の所轄庁でございますが、創価学会は、これは単立の宗教法人、もう少し申し上げますと、ほかの宗教法人と包括あるいは被包括の関係にない、教派とか宗派、教団というようなものを持たない単立の宗教法人でございます。そして、そういった場合には事務所のございます都道府県の知事になるわけでございます。この場合には都知事でございます。逆に申し上げれば、宗派などの都道府県をまたがる被包括法人を持っているところは文部大臣が所轄庁になるわけでございますが、これは東京都の所轄に属する法人ということでございます。  それから次に、公益事業以外の事業を宗教法人法でも規定があるということでございましたけれども、これは先生御指摘のように、宗教法人法の六条で、まず第一項では、「宗教法人は、公益事業を行うことができる。」で、第二項におきまして「宗教法人は、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができる。この場合において、収益を生じたときは、これを当該宗教法人、当該宗教法人を包括する宗教団体又は当該宗教法人が援助する宗教法人若しくは公益事業のために使用しなければならない。」  これについて、ではどういう使途といいますか、使用ということの実情はというお尋ねでございますけれども、宗教法人法ではこのほか憲法で定める信教の自由や政教分離の原則というのもございまして、これにのっとりまして、宗教法人の管理運営につきましてはできる限り行政庁の関与を少なくしております。したがいまして、宗教法人の管理運営は自主的、自律的に行われることを原則としておりまして、こういった場合の所管庁が調べるというようなことを予定していないわけで、特に所轄庁には宗教法人の財務運営の状況調査する権限も与えられておりませんし、また宗教法人にはこうした所轄庁に対しまして財務状況などを報告する義務もないというところでございます。  それから三点目に、今、他の宗教法人との関係の途絶といいますか、破門ということですが、宗教法人として設立いたす場合には宗教法人法に基づきまして要件が定められておりまして、先ほどから申し上げております単立宗教法人の場合で申し上げますと、その要件が、宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的といたしまして、そして礼拝の施設を有するということでございます。一般的に申し上げれば、こうした宗教法人としての要件を具備しておりますならば、他の宗教法人との関係が途絶いたしましても存立は可能でございます。創価学会に関して申し上げれば、新聞などに報道されております今回の破門によって、今申し上げました宗教法人としての要件に何らかの変更があったということの報告は、所轄庁である都道府県からは受けていないというところでございます。  以上でございます。
  101. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 では、質疑時間がないそうですから、今いろいろまだ合点のいかない答弁を、腹の膨れない答弁もいただいておりますので、これはまた逐次それぞれにお聞きをするとして、きょうはとりあえず以上で終わります。ありがとうございました。     ―――――――――――――
  102. 太田誠一

    太田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事福井俊彦君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 太田誠一

    太田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ―――――――――――――
  104. 太田誠一

    太田委員長 宮地正介君。
  105. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは税制三法の法案の審議でございますが、非常に重要な問題でございますので、私は特にこれからの経済の景気の動向と、また今回の法人特別税あるいは自動車の消費税の四・五%の特例税率、こうした問題との関係について、きょうは大蔵大臣初め日銀の理事にもお越しいただいておりますので、少し御質問をさしていただきたいと思います。  まず最初に、きょうは日銀の理事に参考人としておいでいただきまして、大変にありがとうございます。  昨日、経済企画庁長官の方から月例経済報告で閣僚会議に報告された内容等がマスコミ等でも報じられております。私も早速この月例報告の内容を拝見させていただきました。今まで経済企画庁の月例報告の内容をずっと、過去、昨年来から見てまいりますと、景気については持続的な拡大基調にあるという、そうした基本に立って、消費の動向とか設備投資の動向とか、あるいは在庫調整の問題とかいろいろ調べて、その都度閣議で報告をされ、国民に発表されてきているわけでございます。昨日のこの内容を見ておりますと、まさに拡大という言葉が事実上消えてきた。恐らく後退という言葉は、これは報告書に書くことはなかなか難しいと思いますが、事実上そうした言葉が消えてきたということは、やはり相当現在の景気というものが厳しい状況にあるという認識を野田経済企画庁長官は報告されたのではないか。それを受けて各紙とも、景気後退事実上認めるというような、そうした報道がなされております。  私も、具体的に経済の主要な指標というものの最近の動向等を見ておりますと、一つ個人消費、これが昨年の十-十二月期においては、消費者態度指数でも七・一マイナスになっております。特に新車の新規登録台数、乗用車などにおいてはマイナス一一・四。これは暮れのいろいろな状況があるにせよ、相当落ち込んでおります。また在庫調整も通産省などからいろいろ調べてみましても、今相当在庫がたまりつつある、こういうことで、私もこの景気というものを非常に心配しております。  まずきょうは日銀の理事の方から、日銀として、今日の経済というもののこの動向をどういうふうにごらんになって、分析をされておるのか、また今後この景気の対策について、一部には金融的には公定歩合の再引き下げの問題とか、あるいは予算を早く成立させて公共事業の前倒しをさせるべきだとか、いろいろな対策も検討されておりますが、まずこの点について日銀の御見解を伺っておきたいと思います。
  106. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答えを申し上げます。  ただいま委員から、経済指標をるる御指摘になられながら、現在の経済の姿につきまして御見解を拝聴させていただいたわけでございます。私どもも、現在ただいまの国内の景気動向を観察いたしますと、設備投資を中心にいたしまして最終需要の減速度合いがこのところやや強まっている、率直にそう認められる状況にあると思います。そういう中でございますので、在庫調整の動きが本格化いたしまして、かなり広範囲な企業におきまして生産が抑制されておる、在庫を調整するために生産が抑制されている。それらを総括いたしまして、私ども、現在ただいまの国内景気の動きは調整局面にあるという言い方をさせていただいております。  ただ、何分にも日本経済、過去数年にわたりまして速過ぎると申しますか、かなり速いスピードでの成長を遂げたということとか、まあその間、いわゆる資産価格の高騰という弊害も生じたということなどを念頭に置きますと、現在ただいまの景気の調整の動き、こうした調整局面が生じてきていること自体はやむを得ない面があるというふうに判断いたしております。  そうした一方で、そうは申しましても景気の調整局面というものは極力円滑に、かつスムーズにと申しますか、推移する必要があるわけでございますが、現在の調整局面にあります経済の姿をつぶさに観察いたしますと、一方で景気のいわゆる底がたさもなお維持されていることは確かでございます。設備投資を中心にこの最終需要の減速度合いがやや強まっているというふうに冒頭で申し上げました。設備投資は、全体としては二けた台の伸びが何年も続いた後でありますだけにある程度の調整が免れない、現にそういう状況にあるということでございますけれども、非製造業の投資とかあるいは研究開発、合理化絡みの投資を見ますと、なお相応に根強いものがあるようにうかがわれます。  また個人消費について見ましても、ただいま委員から個人消費につきましても少し後退ぎみではないかという御指摘がございましたけれども、物の消費の面、それからサービス的な面というもの全体を観察してみますと、やはり高水準の雇用が維持されている。現状の中におきましては、全体としての個人消費は基本的に底がたい展開が維持されており、そうした状況は今後も続くことが期待できるというふうに思われる状況にあると思います。  こうした点に加えまして、これまでの金融緩和の効果、金利がかなり急速に下がってきていることの累積的効果というものが着実に浸透しつつある段階だというふうに考えておりまして、その点をも考慮に入れますなれば、国内景気は当面なお調整過程を続ける、それは避けられないといたしましても、しかし急速に落ち込んでいくおそれは小さい、いずれはバランスのとれた姿に移行していくというふうに判断しているところでございます。  もちろん、経済は生き物でございまして、ましてやこういう環境変化の激しい時代でございますから、いろいろな要因から、あるいは予期せざる事柄から経済が変動する可能性は全くは否定できないわけでございます。したがいまして、今後とも経済の推移につきましては、予断を持つことなく情勢の変化を忠実にかつ注意深く見守ってまいりたいと思っているところでございます。  先ほどもちょっと触れましたけれども、景気の調整過程そのものは不可避であるということであるといたしましても、その調整過程が必要以上に深くならないようにという配慮が非常に大切でございます。現実にこれまで公定歩合の三次にわたる引き下げを含めまして一連の金融緩和措置をとってまいりましたのも、そうした調整過程を必要以上に深いものにしない、滑らかにするという趣旨に立って実施してきたものでございます。  景気を中心に今申し上げましたけれども、物価に関して一言触れさせていただきますと、全体として物価は改善傾向をたどっ亡きておりますけれども、今回は労働需給が総じて引き締まり地合いをなお続けている、いわばこの完全雇用に近い状況のもとでの景気の調整、今まで余り経験のない調整局面を経過中でございまして、やや長い目で見て、物価情勢について注意を怠れない状況が続いているということも念頭に置く必要があると思っております。  そうした観点から、日本銀行といたしましては、当面の景気、物価の変化を忠実にこれを追い求め、適切な金融政策を弾力的に行うということはもちろんでございますが、同時に、今申し上げましたような物価問題というものを頭に置きまして、ある程度中期的な視点も踏まえて対応していかなければならないと考えている次第でございます。金融施策の運営に当たりましては、これまでの公定歩合引さ下げの効果浸透をなおじっくりと見守りながら、これまで同様物価の安定を機軸に踏まえた慎重な政策スタンスを維持しつつ、今後の状況に臨んでまいりたいと考えているところでございます。
  107. 宮地正介

    ○宮地委員 今福井参考人から、景気は調整局面にある、まだ何か底がたいものがある、こういう認識のようですが、私は、もっと政府も日銀もこの景気を深刻に受けとめるべきではなかろうか。具体的に景気の一番の現状を示す一致指数、これも三カ月連続で五〇%を切っているわけですね。既に二七・七とか相当、企業の間の在庫が非常に今たまりつつある。この在庫調整も相当長引くであろう、こういう非常に強い危機意識を持っているわけです。  まず日銀として、率直に伺いますけれども、この金融政策として、かなめ役として、公定歩合の再引き下げの問題についてはどういうふうに今検討されておるのか、まずこの点についてもう少し御説明いただきたいと思います。
  108. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答えを申し上げます。  ただいま景気動向についての認識について改めて御確認のお尋ねがあったわけでございますが、私どもも、景気の動向につきましては減速のスピードがこのところやや速まっているという意味で、厳しく受けとめていることに相違はないというふうに思っております。したがいまして、それに対する政策対応といたしまして、特に金融政策の面からの対応といたしましては、この調整過程というものは避けられず、かつ必要ではあるけれども、しかし必要以上にその深度の深いものにならないような配慮は十分加えながらその推移を円滑に運ぶべきだ、そういう立場から政策対応を図ってきているというところでございます。三次にわたるこれまでの公定歩合の引き下げ、あるいは市場金利を含む全般としての金融緩和措置も、そうした趣旨に沿って実施してきているところでございます。事実、これまでの金利の低下スピード、かつその低下幅はかなり大幅なものでございます。市中の貸出金利の重要な指標となっております長期プライムレートあるいは短期の貸し出しプライムレート、いずれをごらんいただきましても、ピーク時の水準に比べますと長期の場合には二・九%、短期の場合は二・四%と大幅な低下を見ておりまして、これだけ大幅な金利低下の効果というのは、あるタイムラグをもって経済全般に相応の効果を持つことは間違いない。そうした意味で、目下その効果浸透の過程を見守っている、こういう状況でございます。  もちろん日本銀行といたしましては、今後とも引き続き経済の推移について、先ほども申し上げましたが、一切予断を抱くことなく今後の推移を注意深く見守りたいということでございますが、現状はこれまでの一連の措置の効果浸透を見守っていくことが特に大切だと考えている状況でございます。したがいまして、ここで金融政策の面から新たな追加的な措置が必要であるというふうには考えておりません。
  109. 宮地正介

    ○宮地委員 この問題は非常に重要な事項ですから、十分に日銀としても状況を把握しながら、タイミングを逸しないように、これはタイミングが大事ですから、今後慎重の中にも、また勇断を持つときはタイミングを見て、どうか国民生活の防衛のために汗をかいていただきたい。  大蔵大臣大臣にも伺っておきたいのですが、やはり私は、相当深刻な景気の状況だと思うのですね。やはり当面は予算の成立という問題、これは非常に重要な景気に与える影響です。我々もそうした面から、この予算についてはそれなりの配慮というものはしていかなくてはならない、こういう立場をとっているわけですが、予算成立後のことについて今から伺うのはいかがとは思いますが、これだけ景気が深刻な状況に今来ているわけですから、一つは金融政策の面と、もう一つは財政主導の中で、今回思い切って公共事業にも建設国債を目いっぱい、七兆三千億近く使って突っ込んでいるわけですから、要はこの機動的な運用の問題がこれから大蔵省初め求められてくると私は思うのです。具体的に、今後こうした状況が余り長続きしていくと大変に国民生活が厳しくなりますので、前倒しの公共事業の対応というものも当然手法として検討しなくてはならない。この点についてまずどう考えているかということが一点。  それからもう一点は、今、株式の市場が非常に低迷しております。確かに証券市場においては、ああした不祥事件がありまして、それに対してのいろいろな規制が今厳しく検討されておるわけです。そういう中で、株式市場、証券市場の規制は規制として、これは再発防止、今後の市場のルールの明確化、これは大事だと思う。しかし一方で、この市場を余り冷やしたままにしておくと、これも景気との関係で、これは放置できない非常に重要な課題だと私は思うのですね。そういう点で、この証券市場、株式市場の活性化に向けても、一方では再発防止の規制措置を検討すると同時に、市場の活性化、この問題についても大蔵省としては大いに検討して、景気との相関関係にあるこの市場活性化に向けてもそれなりの対策を打っていくべきではないのか。それは税制上の措置もあろうかと思いますし、いろいろと処方せんはあると思います。そういう点についても大臣として今後どういうお考えを持っておられるのか。  この二点について、まず御報告いたただきたいと思います。
  110. 羽田孜

    羽田国務大臣 景気の動向といいますか、現在の見方につきましては、ただいま日銀の理事さんの方から細かくお話があったところでありまして、今先生の方からは大変な不況な状態だという話でありますけれども、ただ、私どもは立場上、クールにそっと見詰めなければいけないという面があります。そういうところから見ましたときに、物価が引き続き安定しているということ、そういう中で、確かに過去のように高価なものが売れるということは落ちついてまいったわけでありますけれども、しかし、食料品初め日常雑貨等につきまして、非常に堅調に拡大していっておるという状況があるのじゃなかろうかと思っております。それと、三次にわたります公定歩合の引き下げというもの、それによって、日銀またはそれぞれの皆様方がいろいろと御配慮をいただいておるという中で、市中の貸出金利等も下がってきておるという中にあって、住宅等についての、いわゆる持ち家ですとかあるいは貸し家、こういったものについては下げどまり、そして少し上向きになりつつあるのかなという感じを実は持っているところであります。  いずれにいたしましても、そこに加えて、今お話があった労働事情というものが割合と堅調に進んでおるというようなことから見まして、このあたりは非常に注意深く私たちも見守っていかなければいけないところであろうということで、特に今御指摘のございました金融についての追加措置が必要じゃないのかということではありますけれども、貸出金利等が順調に、そしてまた中小企 業金融公庫を初め公的な金融機関なんかも通じながら、中小企業に対してできるだけの配慮といいますか、そういったものをしていただく、そういうものを我々は今冷静に見詰めていくときであろうと思っております。  ただ、財政の面でどうだというお話が今あったわけでありますけれども、この財政はまさに、今御審議いただいております予算の中にはまさに景気を刺激ということまではいっておりませんが、公共事業等、生活関連の公共事業等を中心にしながら、また地方の単独事業等をよりよく進めるとか、あるいは財投等を相当つぎ込んでおるということでございまして、まずこの予算を一日も早く通過させることが必要であろうというふうに思っております。その上で私たちとして、そのときの景気の動向を見ながら、私たちも決して安心していられるというものではないので、やはり注意深く見守っていなければならないということでありますから、景気がどんどん後退することなんかがないように注意深く見守りながら適切に対応していく必要があろう。その場合でも、労働事情というものが逼迫しておるというような状況でありますから、今からただ前倒しということになっていったときに、さあいろいろなものの物財費あるいは人件費等が高騰するということになってしまいますと逆に足を引っ張ってしまうというようなこともあろうと思っておりますので、そのあたりも私たちは注意深く見守りながら適切に対応していかなければならない。しかし、今御意見があったことは私どもよく念頭に置きながら注意深く見守ると同時に、そのときの状況によって適切にまた機動的に対応すること、これをひとつ考えていきたいというふうに思っております。
  111. 宮地正介

    ○宮地委員 株式は。
  112. 羽田孜

    羽田国務大臣 失礼しました。  確かに、この株式の状況につきましては、一時期は三万九千円くらいまでいったのですが、今は二万一千円を超えたというところでございますけれども、全体的に見ましたときに相当冷え込んでおるということ、そしてアメリカの経済の実態あるいは企業の実態からあれしたときにも、どうも日本の株というのがそのファンダメンタルズをきちんと表現しているのかなということを思うときに、今御指摘がありましたように、まず何といっても第一のあれとしては、大事な証券市場でありますから、この一回不信を買ったものをどうしてもここで信頼を取り戻すということ、これは私どもも行政指導の面でやっていかなければならぬ面もありますけれども、あわせて証券協会あるいは証券取引所、こういったところが中心になって指導していただく必要があろう。  実はこの間、私はこのそれぞれの代表の方々に大蔵省においでいただきまして、今やっていらっしゃること等についてお聞きすると同時に、きちんと情報等を、変なふうに萎縮してはいけないわけでありますから、情報等を投資家の皆さん方にお知らせするようなことをでき得るものについては堂々とやっていただきながら市場の活性化をやっていただきたいなということを申し上げたり、またお話の過程の中にあっては、株式というものは投機的なものよりは投資でなければならぬ。この前も大蔵委員会の方でもお話があったわけでありますけれども、投資ということを大事にしていくということを考えたときに、いわゆる配当性向というものについてもう少し考えたらどうだろうか、あるいは配当率についてももう少し考えたらどうだろうか、また、午前中の議論の中にもありましたように投資家に対する配分というものをこれからの企業経営の中でも考えていく必要があろうというようなこともありまして、そういったことについてお話を申し上げたりいたしたところでございまして、いずれにいたしましても、この株の市場の活性化というものについては、私どもは十分話し合っていかなければいけない。  ただ、余り行政が今度は入るということについても反省をしなければならない点があるわけでございまして、やはり市場というのは自由な、公正な、しかも情報がよく開示された中で行われるということが大事であろう。しかし、私どもは必要な環境整備にはさらにこれからも努めていきたいというふうに思っております。
  113. 宮地正介

    ○宮地委員 その辺については、いろいろ今後証取法の改正等がありますから、具体的にはまたその段階で詰めていきたいと思います。  そこで、今そうした景気が非常に後退な状態になってきている。果たして今回の法改正の中の、まず法人特別税あるいは自動車の消費税率六%が四・五、本来なら四年度から三%、法人特別税についても、これは湾岸問題で一年限りということですが、まず基本的にこの二つの増税については、私は、国民にしっかりと御説明しませんと公約違反ではないのか。これは政府の、一年限り、あるいは三年度末限りで四月から今後は三%、こういう消費税導入のときの約束事あるいは湾岸のときの特例措置、この国民への約束事に対して、平成四年度のこの二つの増税というのはやはり政府としての公約が守り切れなかった、このことについてしっかりと国民に御説明する、そこが原点だと私は思うのですね。その点について、まず大蔵大臣、どういうふうに考えておられるのか。  それからもう一つは、こうした景気の動向を見たときに、両方とも景気をむしろ、法人税なんかの二年も延期するということは、まさに景気を後退させる上にブレーキをかける、アクセルではなくてブレーキ役です。また逆に、消費を今後伸ばす意味から、四・五というのはやはり三に戻せばさらに消費の需要面でも価格が下がり、先ほど申し上げたように、乗用車の、新車の販売台数も、昨年の暮れはどんと一一%落ち込んでいるわけです。アメリカからの外圧も、自主規制が非常に厳しくなってきている。こういうような経済のバックグラウンドを考えたときに、果たしてこの増税はやるべきではなかったのではないか。もっと別の財源の手法は検討できなかったのか。宮澤総理も本会議で、やむを得ない、本来はやりたくなかったというニュアンスの発言をされておりますが、まさに私はそのとおりだと思うのです。大臣、この二点についてどういうふうに国民に御説明されますか。
  114. 羽田孜

    羽田国務大臣 税はまさに国民皆様からちょうだいするものでございまして、本当理解を得られるものでなければならない、これは御指摘のとおりであろうと思っております。そういう意味で、今度の場合にも、確かに私どもとしてはまず新しい税といいますか、そういったものに頼るという以前に、必要のあるものはあるものといたしましても、節減すべきものは節減しなければいけないということで、いろいろな厳しい中でありましたけれども、御理解をいただきながら、いわゆる歳出について抑えるということについてまず努めたところであるわけでございます。その上で、先ほどお話のございました建設国債等についても発行する。そして、なおかつやはり不足するというものについて、これはどうしても税にお願いしなければいけないというところに立ち至ったわけでありますけれども、しかし、やはり御理解いただくためには、このまま延ばす方もいいだろうというような意見もいろいろとあったことも事実でございます。しかし、これをこのままやるということになれば、何だというおしかりを受ける、そして、税そのものに対する信頼をいただくことができないということで、まずともかくこの税についてはやはり臨時のものであるからということで、一応失効させるということを基本に考えながら、もう既に御案内のとおりに、法人税については基礎控除について三百万を四百万にするとか、あるいは自動車についても普通乗用車について六%を四・五%に減額、減額といいますか、これを下げた、率を下げたということでございまして、そして石油臨時についてはやめたということでありまして、新たにこの二つについて所要の改正をしながら、手直ししながらお願いをするということにいたしたということでございます。  そういうことで、いずれにしましても石油臨時はこれがなくなったということでありますし、また法人の方につきましても中小の皆様方には効果があります三百万から四百万の基礎控除をしたということと、自動車につきましても四・五にしたということでありますから、景気そのものについても、何というんですか、悪い影響というよりは、この点では前年に比べればむしろ評価されてもよろしいのじゃないのかなというふうに考えておるところであります。しかし、いずれにしましても、今まであった税の中からそれを今度新たに考えたといいましても、置きかえたという形でございますから、その点の御理解を得るために我々も努力しなければいけないというふうに思っております。
  115. 宮地正介

    ○宮地委員 だから、そこに基本的に私は、大蔵大臣はやはり政府の経済閣僚の中核ですから、消費税の導入のときに、平成四年度から自動車は三%にします、また、この間の補正のとき、湾岸のときにも、法人特別税については一年限りです。石油についてもそうです、石油がなくなったのはこれは当たり前なんですよ。だから法人についても一年限り、これを一応廃止して新たにということで名前を臨時特別税からただ臨時をとって特別税にしただけで、中身はさらに二年間延長なんですよ。これはきちっと国民に、国民皆さんにお約束したことはこういうことでした、しかし財政事情がこういうふうに逼迫してどうしても、行政経費の節減もいろいろやったけれども、やむを得ずここはこうなんですということで、私は、ここは一度おわびをすべきだと思うのですよ。おわびをする、公約に対してできなかったのですから。それから新たに今度は国民にお願いをするというこのけじめを、特に政治家である大蔵大臣ですから、私はやはりこれはやるべきである。基本姿勢の問題としてそういうことをお持ちだと思いますけれども、答弁の表現の中には、何かそこのところがちょっと薄れているなという感じが見えるとまずいと思うのです。私は、そういう点ではけじめをしっかりつけるべきである。それから、約四千八百四十億ですから、この五千億についてどういうふうに汗をかいてきたのかということについても、私は、きちっと御説明をすべきである、こう思うのです。  例えば私は、国民から見てこれは十分検討すべきではないのかという問題の事例をちょっと一つ挙げてみたいと思うのです。例えば、平成二年度の特別会計の予備費の使用総調書というのがあるのですね。これを見ますと、平成二年度の特別会計の予備費の予算の総額というのは約二兆一千億なんです。それで、実際この予備費が使われた額というのは、何と三百二十七億なんですよ。パーセンテージにするとわずか一・五%。実際にこの差し引きの使用されなかった残額というのが二兆六百七十五億なんですよ。今現在特別会計は三十八あります。その中の三十七がこういう形になると、ほとんどもう使われてない。昔はいろいろ使われたのもありました。特別会計も七十本以上ありました。だんだん縮減されて、現在は三十八本。これは国民から見ますとどうなんだ。確かに外為会計みたいに平成四年度で一千五百億ぐらい一般会計に繰り入れる、こういうところもあります。やはりこの状況を見たときに、特別会計に対する予備費の見直しということについて、大蔵省はどこまで真剣に取り組んだのだろうかという、やはりこの問題が出てくる。一つ一つの特別会計について、大体これは次年度に繰り越しあるいは積み立て、こういう形です。これをすぐ一般会計に繰り入れるというには、法律の改正だとかいろいろ無理があるのは私は承知をしております。しかし、こういう財政が逼迫しているときに、それじゃこの査定の段階で、当然これは一般会計からも相当この特別会計には繰り入れをしているわけですね。総額では四十四兆円ぐらい行っているわけです。そういうときに、この予備費のところの見直しについてどこまで切り込んで対応されたのか。また、今後特別会計の予備費のこうした使用残が多額に、九九・八五%なんという、本当にほとんど使われない状態で残っておる。これは一般会計と違いますから、先ほど申し上げましたように、積み立てなり繰り越しになっていくわけです。やはりこういうところは国民の目から見たらなかなかわかりづらいんですね。やはりそういう点で、そうした見直し等に努力をして、財源の捻出にはいろいろな御苦労があったと思いますが、この点について、平成四年度においてはともかく、今後特別会計のこうした予備費の使用についてもっときちっと精査をして、国民にわかりやすい見直しを私はしていくべきではなかろうか。ましてや、今回の二つの増税をやる。五千億ぐらいの財源は、場合によってはここのところにがまんしてもらって、予備費というのは不要不急の額というふうになっておりますけれども現実に不要不急の額が二兆円以上も使われないで次に積み立て、繰り越しされていく、こういうことについては非常に国民から見ると不可解である。私は、この際抜本的に今後、平成五年度以降でも結構ですが、見直しをしていくべきではなかろうか、こういう感じがしているんです。この点について大臣、御説明をいただきたいと思います。
  116. 小村武

    ○小村政府委員 御指摘のように、特別会計の予備費の使用状況については、平成二年の御指摘の額はまさにそのとおりでございます。  ただ、この予備費につきましては、特に保険特別会計におきまして、一定の給付費に対する割合で計上しております。これが使用されない場合には将来の給付財源になるというものが大半でございまして、例えば年金で申し上げますと、年金につきましてはそもそもそうした余裕金が生ずるような保険料の設定をいたしております。  ただ、短期保険につきましては、御指摘の点も踏まえまして、例えば平成四年度予算におきまして、政府管掌健康保険につきましては保険料率を千分の二下げる、これによりまして千二百四十億円の減税効果がある。あるいは雇用保険におきましては、平成四年と五年の二カ年にわたりまして千分の三の保険料を下げさしていただく予定にしております。これによりまして、四千五百億円の保険料負担の減、実質減税効果でございます。こうした特別会計の収支状況を見ながら財政の健全性を図っていく。  一方、一般会計との関係におきましては、これは特別会計、特別の収入をもって特別の支出に充てますので、御指摘のように、法律をもってしなければ一般会計の財源として使用はできません。それなりの理由がないとその財源の使用というのは、流用はできないということでございまして、できるものといたしましては、税外収入として本年度千五百億円計上させてもらっております外為特会からの受入金等を予定しております。  いずれにしましても、この予備費の計上方法、御指摘の点も踏まえまして今後さらにまた私ども検討を加えていきたいと思っております。
  117. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ今後検討してもらいたいと思うのですね。念のために、平成元年度においても、予算総額が約二兆三千七百七十二億、実際に使われたのが二千五百九十三億、残り不使用が二兆一千百七十九億。六十三年度においても、二兆一千六百七十億が予算総額であったが、実際は千六百九十三億しか使われていない。一兆九千九百七十億が残っておる。三年間連続で大体二兆円前後ですよ。この繰り返しを今後もずっといくということは、国民から見て非常に不可解である。一方では増税というので、確かに今保険の適用とかいろいろなことで処方されているのはわかりますけれども、これは今後非常に見直しが必要なところではなかろうか、私はこういうふうに思いますので、十分に今後は検討をしていただきたい、こういうふうに強く要請をしておきたいと思います。  それから、時間もありませんが、ぽんぽんと何点かお伺いしておきたいと思うのですが、一つはサラリーマンの勤労所得、平成元年度で大幅な所得税法改正等をやりまして、これで平成四年度、六十二年度以来三年かかるのですね。三年間で可処分所得は若干ふえていますけれども、実際面で、賃金のアップとか物価の状況を見ますと、勤労サラリーマンの所得という面についてはやはり何らかの減税をすべきではなかろうかという声も最近非常に強く出てきております。そういう点で、今同地価積の税収が一艘会計、一般財源に全部使われた。当初は所得税減税あるいは土地の対策にと。今回、大蔵省としては土地対策等について一般会計の中で組み入れだというような答弁がされておりますけれども、私はこうした勤労所得者の実態等を見て、今後、平成五年度以降、大体三年たって、平成五年度以降の税制改正の中で、平成四年度ですぐやれとは言いませんが、やはり所得税減税に踏み込んでいく時期ではなかろうか。可処分所得の面を考えたときに、例えば人的控除の拡大の問題、これもやはり見直しをしていくべきではなかろうか、この点が一点です。  そういう中で、私は今回ひとつ自分でも確定申告をやってみましたけれども、最近子供の教育費というのが非常にかかっているのですね。小学校、中学校からもう塾で、いい高等学校や大学あるいは中学へ行かせるために早くから塾へ行かせなければならない。大体今私学傾向になっていますから、私立に入れますと入学金とか授業料も非常にかかる。現在十六歳から二十三歳ということで人的控除のところが、特別扶養控除が四十五万になっていますね。これは中学生ぐらいまで、高等学校以上しゃなくてもう中学生、十二歳から三十五万を四十五万ぐらいに引き上げる、このくらいのことはやって、事実上教育費の税制上の控除というのはないわけですから、ここに一応手当てするということで、十六歳から二十三歳ということで、高等学校、大学へ行かせている子供には特別扶養控除、ここはもう中学生から入れるべきではないかということで、これも十分検討していくべきではなかろうかということを私は考えております。  この二点について、主税局長で結構ですから、まず答弁していただきたい。
  118. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 何点が御指摘をいただきました点につきましてお答えを申し上げたいと存じます。  まず、所得税減税でございますが、さっきもちょっと御指摘がございました抜本改革の所得税減税というものがいかに大きいものであったかということでございます。例えば、収入レベルで三百万円ぐらいの階層でございますと、先生御記憶いただいているかと存じますが、それまで七万八千円ぐらい払っておりました所得税、住民税の負担が、改正後八千七百円ぐらいになっている。軽減率としましては八八・八%でございました。五百万円ぐらいに直しましても四〇%以上の軽減になっております。そういう大きな軽減の余韻というのは、まだ私は続いているんだと思います。と申しますのは、例えば平成元年、この抜本改革のちょうど直後ぐらいの時点のレベルから考えてみますと、その当時の給与収入額、それからそれを賃金指数で伸ばしまして調整いたしました平成四年の給与収入額というものを想定してみまして、税引き後の手取り額を比較してみますと、仮にそれに消費者物価上昇率を加味した実質ベースに直して比較しましても、ほとんどの給与所得者におきまして手取り所得が増加しておると考えられますし、その税の負担率というものは、その人たちが給与が上がります数年前のレベルで負担しておりました負担率に比べて、給与は上がり、かつ累進所得税でございますから負担率は上がって当然であるはずでございますけれども、なお改正後の効果が及んで、レベルはそこまで達していないというふうに推定されます。そういう事実があるということを御報告申し上げておきたいというのが一つでございます。  それから、地価税の処理につきましては先ほど御指摘があったとおりでございますが、今回純増収分として約二千億、これの処理につきましては、たびたび申し上げてございますような論議がございました結果、現実的にこれを土地対策を主眼とした措置に回すということで措置させていただき、それはそれなりに経済に働きかけるであろうと期待しておるわけでございます。  最後に、御指摘ございました教育費の支出に関しましては、これはもう抜本改革のときに論議をいたしたことで、まさに今先生御指摘ございましたような十六歳から二十二歳までの扶養親族を中心に割り増し扶養控除を設けましたゆえんはそのような論議に発するものでございましたけれども、あのときの論議を思い出していただきますと、やはり家計の収支というものをそれぞれのモデル的なサラリーマンの家計を頭に置いて眺めてみましたところ、やはりその負担が急速にふえている部分というのはこの層であるということでございまして、その前後の負担の関係に比べますと、やはりはっきりと負担の増が認められる層ということで措置をさしていただいた記憶がございます。その措置の効果がまさに、先ほど申し上げましたように、このときの減税効果として今効いているんだという気がするわけでございます。
  119. 宮地正介

    ○宮地委員 今後十二歳まで引き下げる考えは、検討の余地ありませんか。
  120. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 所得税制のあり方それ自体につきましては、今後の社会経済の変動、変化を貫く我々の課題として常に見直していかなければならない問題だというふうに自覚しておりますけれども、今直ちに先生が御指摘ございましたような階層につきましての特別な配慮がほかの配慮に優先するかという点につきましては、私も自信がございません。ただ、くどいようでございますけれども、万般の所得税を取り巻く事情というものを常に追いかけながら検討はしていかなきゃならないいろいろな問題の中の一つの問題であるという感じがいたします。
  121. 宮地正介

    ○宮地委員 あと一点。マル優廃止のとき、御存じのように附則のところに五年後に総合課税に移行するということを明確にしましたね。ちょうどこの九月ごろに利子配当課税の総合課税化という方向の時期がやってくるわけですが、今後大蔵省としてこの問題についてどういうふうに取り組んでいくお考えか、これを確認しておきたいと思います。
  122. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 利子課税の問題につきましては、先ほど先生から申しつかりました所得税減税、特定の教育費負担増加に対します所得税減税への対応という問題に比べますと、より具体的に私どもの問題意識にございまして、これは法律の中に、マル優制度を廃止後五年ぐらいをめどにしまして、五年ぐらいを経過した時点におきまして見直しを行うものとすると明記されております。このことはしかと受けとめまして、この秋以降の税制改正の論議の中で当然検討されなければならない問題だ、ただ具体的に利子課税の何をどうということにつきましては、現在の段階ではまだ白紙でございます。
  123. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、国民に対しての約束事、先ほどの二つの増税の問題もそう、地価税の問題もしかり、マル優廃止のときの附則の問題しかり、こういう問題をぜひきちっとけじめをつけて、そして国民の信頼の得られる、また国民理解の得られる税制体系というものを今後きちっとやっていっていただきたい。特に消費、所得、資産の適正なバランスの問題等についても、またいずれかの機会にお伺いしたいと思いますが、ぜひそうした一つ一つの約束事に対して誠実にけじめを持ち、また説明をし、報告をし、そして国民理解と納得の得られる税体系をつくっていただきたい、このことは強く要請しておきたいと思います。  最後に、時間もあと七、八分でございますので、国税職員の処遇改善、定員増問題、こうした問題について少しお伺いをしておきたいと思います。  まず、最近の国税職員の仕事の量、質、大変に拡大をして、だんだん国際化をしてきております。新たに税制改正によりまして、今回地価税の創設ということで、また評価問題等調査等で、人員についても平成四年度では定員増については相当御努力いただいたことには敬意を表したいと思います。しかしこの国税職員は、もう大臣御存じのように、大体五万二千名ラインで前後しておる。仕事は非常に膨大になる、また質も、非常に巧妙になる、厳しくなる、国際化になる、こういう中で職員の仕事というものは大変な状況になっておる。そういう点で、まずその定員増についても今後ぜひ御努力をいただきたい。これについての考え方、御決意、これを一点。  もう一つは、そうした中で職場の環境の改善。と同時に、私はきょう具体的に、この国税職員が仕事を一生懸命、残業したり日曜出勤したり調査に出かけたりいろいろやって、最後にほっとして帰ってくるところは我が家ですね。家庭ですよ。ここはやはり一番大事なところだと思うのですね。国税職員の特徴というのは、大臣、約五万二千名のうち半分、二万五、六千名の方は全部宿舎なんですね。マイホームというより全部宿舎で生活をされている。五〇%近くが宿舎生活です。これは非常に大きな特徴なんですね。  この宿舎の中でも非常に劣悪なのがいまだにあるのですね。大臣御存じかどうかわかりませんが、昭和二十三年に建ったものがまだあるのですよ。二十三年人月にできた仙台局の水沢署なんかというのは大変なものです。これは水洗トイレじゃなくてくみ取りですよ。それで、私も写真を見させていただきましたけれども、非常にちょっと、これは人間がお住みになるような宿舎ではないのではないのかなと、そういうところで頑張れ頑張れ国税職員と、しっかり稼いでこいというのでは、これはちょっとひどいのじゃないかなという気がするわけです。  ちょっと大臣、写真を。これはカラーじゃないのですけれども。これは私も時間があれば一度見に行きたいなと思っているのですが、非常に大変です。  私はきょうはちょっと時間がないので何点かを言いますので、特に劣悪なところをお調べいただいて、後ほどぜひ御報告いただきたいのですが、関東信越国税局管内には、新潟の巻税務署の飛落宿舎六戸、これは三十二年に設置されたもの。それから、同じ関信局の新潟県の新発田にあります税務署の西公園宿舎四戸、これはもう水洗トイレじゃありません。昭和三十六年四戸。それから今の水沢、これは特に全国いろいろの中でも劣悪な宿舎でございます。これはワーストスリー。夏はムカデが出てくる、冬はすき間風。もうこれは大変なところに帰って、それでまた元気を出してあしたから仕事だと。これは踏んだりけったりですよ。ぜひこの点は早急に、きょうは次長も来ていると思うのですが、一度長官にお時間のあるときに見に行ってもらって、長官というのは大体全国を見て歩くのが仕事なんですから、ちゃんと尾崎長官に見ていただいて、すぐこれは、平成四年度の予算が通ったらよくチェックして四年度で改築してもらいたいですね、建てかえ。  その場合に一言だけアドバイスしておきますが、新潟県には税務署が十三署あるのです。それで、例えば巻とか新発田の飛落とか西公園は、むしろ新潟市内に宿舎があった方が、子供さんの教育の問題とか最近便利な電車が走っているようで、むしろこうした税務署の近くにおつくりになるよりも非常に有効的で、入居者も非常にそうした希望も強いめです。ですから、私はもしこの巻と新発田の二つをお建てかえする場合には、新潟市内におつくりされた方がいいのではないかということはアドバイスしておきたいと思います。  この点、まず次長、今後の御決意、また大臣は全国的にこうした劣悪な宿舎でない、もう少し人間らしい、やはり家庭に帰ってきたときにほっとして憩える、そしてさらにまた明くる日から仕事に精が出せる、こういう環境づくりに御努力いただきたい。このことについてお二人の答弁をいただいて終わりにしたいと思います。
  124. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 まず、先生の御理解のある御意見に対しまして感謝を申し上げたいと思います。  最初に定員でございますけれども、まさに委員がおっしゃいましたとおりの状況のもとで国税職員、努力をしてもらっておるわけでありまして、平成二年に至るまでの過去十年間をとりますと、納税者の数、法人数ともに四割増になっておるのに対しまして、定員は四%という増加でございまして、大変厳しい環境でございます。そういうことに対処いたしまして、私ども事務の合理化、効率化等、大いに進めておるわけでございますけれども、それでもなお足りないという分につきましては、厳しい行財政事情のもとでございますけれども関係当局に御理解を願いまして、先ほどもおっしゃいましたように、平成四年度につきましても五百五十一人という純増を予算案の中でお認めをいただいておるわけでございますが、今後とも増員につきまして各方面の御理解が得られるように、税務の困難性、歳入官庁の特殊性等につきまして訴えてまいりたいというふうに考えております。  それから、宿舎の問題につきまして極めて具体的にお触れになりましたけれども、私ども、これにつきまして従来から努力をいたしておるところでございまして、老朽化したものから建てかえをお願いをしておるわけでございます。先ほど具体的にお触れになりました水沢周辺の十九戸、それから新潟周辺の十二戸、これにつきましては、平成四年度で全部につきまして建てかえのお願いをいたしておりますが、このほかに水沢につきましては純増九戸、新潟周辺につきましては純増三戸のお願いをしておるところでございます。まあ、なかなか財政事情もございますので一度に全部というわけにはまいりませんけれども、今後とも老朽化した宿舎の改善につきましては努力を重ねてまいりたいと存じております。
  125. 羽田孜

    羽田国務大臣 私からもまず、国税職員につきまして御理解あるお考えをお聞かせいただきましたことにつきまして、心からお礼申し上げたいと思います。  御指摘がございましたように、今度新しく地価税が導入されるとかあるいは国際化が進んでいくということで、非常に質も量も大きく変わってきておるという中でございまして、実は大変な苦労をいただいておるところであります。つい一月でございますか、各局長さん方が上京してこられた折にも、皆様方の御苦労というものに対して敬意を表すると同時に、やはり仕事というのは一生懸命やるということは、これはもう大蔵省あるいは国税庁すべてそうでありますけれども、しかし、家庭とかそういったものに対してどうも案外みんなないがしろになっているのじゃなかろうか、そういった点について十分ひとつ配慮してもらうようにお願いをしたいということを、特に健康管理の面ですとかあるいは各家庭での潤いの問題ですとか、そういった問題についてもぜひ御指導いただきたいということを実はごあいさつでも申し上げたわけであります。  いずれにいたしましても、その基本になります定員の問題ですとかあるいは住宅の問題ですとか、こういった問題についてせっかくのあれもいただきました。また今、国税当局の方でもそういったことについて配慮しておるということでありますから、私どもも万全を期していきたい、みんなが働きやすい環境をつくっていきたいというふうに思っております。ありがとうございます。
  126. 宮地正介

    ○宮地委員 じゃ、終わります。
  127. 太田誠一

    太田委員長 仙谷由人君。
  128. 仙谷由人

    仙谷委員 日本社会党・護憲共同の仙谷でございます。  いわゆる租特の審議に当たりまして、私も景気動向についてお話をお伺いしようと思って若干の用意はしたのでございますが、先ほど日本銀行の専務の方、そして今同僚議員から質問がございまして、私ごときがやらなくてもほぼ尽きておるように思いますので、そこからさらに話を進めたいというふうに考えます。  まず大蔵大臣、財政演説の中で「国民の一人一人が生活面での豊かさを実感できるよう、国民生活の一層の質的向上を」図らなければならない、それから、内需を中心とした「インフレなき持続可能な成長」へ移行しなければならないというふうなことをおっしゃていらっしゃるわけでございます。なかな含蓄があるといいますか、意味深長な言葉であるだろうなと思います。  それは、二年前、私どもが議席を得させていただきましたところの経済の状況、あるいはそれをめぐるいろんな議論でございます。当時、九〇年の三月には、いわゆるトリプル安というのがあって、これをどう見るかというふうなことで議論が闘わされておりました。そして、まさに現象としてといいますか、あるいは体で感じるものとしては、土地の高騰が行き着いて、このままじゃどうにもしょうがないという状況で、そこから地価税論議が始まって、地価税は昨年結実をしたわけであります。九〇年の三月に、一たん株も安くなったわけでございますけれども、今日のような状態になるということはその時点で予想された評論家の方もだれもいなかった。ましてや証券・金融スキャンダルというふうな形でバブルがはじけるということはだれも思いも及ばなかったのがおととし、あるいは昨年の今ごろでもそうであったのかもわかりません。  現時点に立ってみますと、やはりこのバブルとは何だったのかということ、あるいはあの五年ぐらいの、八〇年代後半から九〇年の中ごろまでといいますか、あるいは年末までというふうに考えてもいいんでしょうか、この経済とは何だったのか。そして、我々は今不況とか深刻な景気後退というふうなことも言われておるわけでございますが、実はそうではなくて、我々がこのバブルを経験して、今の時点で経済政策として、あるいは日本の経済の構造改革の問題として何をしなければいけないのかという点が我々に課されておる使命ではないか、そんなふうに私は考えておるわけでございます。その点につきまして、ちょっと抽象的でございますけれども、大蔵大臣の御所見、ございましたら一言承りたいと存じます。
  129. 羽田孜

    羽田国務大臣 今御指摘のございました、やや過熱ぎみだった経済成長、この時期は日本の産業なんかも相当力を得てきたということもありましたでしょう。それと同時に、いろんな、特に人手が不足してくるなんという新しい傾向も出てきておるということ、そういう中で投資意欲というようなものも非常に大きかったというものがあったと思います。また、そういうときに、ちょうどプラザ合意で円が急激に高くなるんじゃなかろうかということで、そういったものに対応するための金融の緩和というものもございました。こういうものが大きく、これがさらに加速して大きく膨れ上がってしまったのがやはりあのバブルであったろうというふうに思っています。  ですけれども、私どもこの中で張力返って考えてみますと、そういう中にあって、地方の中小あるいは零細企業と言われるところなんかにおきましても、割合と工場等に新しい設備が投資されたり、また小さな工場なんかでも研究開発の機関をつくるようになったというような一面もございましたり、またこの中で、地域にやはり少しでも還元していかなければいけないなんということが企業の中にも実は生まれてきておったというふうに思っております。こういった点では、私はこのバブルというのはただ否定されるべきものだけではなくて、日本の国がここまで大きく発展していく一つの成長過程の中にあって、一つのいい面というものを残してきたんじゃなかろうかという面は評価すべきだろうと思います。  ただ、問題は、そういったことを進める中に、ともかく何でも生み出された富というものを相当むちゃなところに投下されてしまったり、あるいは計画性を失って投下されてしまっているということが、いろんなところの破壊だとか、あるいは地域からもいろいろと指摘される一面もあったことも事実であったろうと思いますし、そういう中にあって、特に土地の価格をとんでもないところまで押し上げてしまったということ、こういうことが国民のいろんな活動に支障を来しましたり、あるいは、日本に門戸を開きました、日本に出てきました、ところが、事務所、いわゆるオフィスあるいは住宅、こういったものが高くてどうにもならぬなんというので、日本に進出したけれどもまた帰ってしまった企業なんかもあったということ、こういうものを見たときに、やはり土地というものが異常になってしまったなあということと、やはり多少浮ついたものが生まれてしまったということは、私たちは反省しなければいけないんじゃなかろうかと思っております。  しかし、この反省というのは、ただ国が、あるいは我々がというだけでなくて、こういう大きく膨れ上がったあの中にあって、おい、本当にこれでいいのかねという声が方々で出てくると同時に、先ほど池田さんとの話の中にもありましたように、日本型の経営というのは今までいいと思っておったんだけれども、しかし、本当にこのままでいいのかね、労働の配分率なんかについても本当にこれでいいのか、あるいは資本家に対する、株なんかへ投資した人に対しての還元というものはこれでいいのかねとか、あるいは企業というのはもっと社会的な責任を果たしていかなければいけないのじゃないかとか、また、一人一人の国民生活というものがこれだけ大きくなったけれども、そういったものに対しての本当の還元というのは十分なされているのだろうか、実はいろいろなことがその中で議論されたということでございまして、私どもはこの事態というものを振り返りながら、再びこんな大きなバブルみたいなものをつくっちゃいけないけれども、しかし、やっぱり持続可能な安定した成長というものは維持しながら、その中でその当時議論されたこと、そしてその後議論されたこと、こういったものを実現していくのが今の時代じゃないのかなというふうに改めて思っております。
  130. 仙谷由人

    仙谷委員 多分今のが、その先ほどの国民生活の一層の質的向上の中身と内需を中心としたインフレなき持続可能な成長の内容であったのだろうと思いますが、内需を中心としたというのは、当然のことながらこれは経常収支の黒字を拡大させない、縮小させる、そういう政策目標だと思いますし、インフレなきというのは、これは消費者物価指数が上がるということだけじゃなくして、資産インフレをもう一度起こさないんだということでもなければならないというふうに考えます。そしてまた、持続可能な成長というのは、五年、十年というふうなその程度の期間の問題ではなくて、もう少し長い、私どもの子供やあるいは孫にまでかけて、あるいはもう少し言えば世界各国との共生ができるようなそういう成長を目指すんだ。とりわけことしは地球環境サミットの年でございますので、この環境に配慮した経済といいますか、環境の負荷を組み込んだ経済政策というのがなされなければならないな、そういうふうに私は考えておるわけでございます。大蔵大臣の今の御答弁もそういう趣旨であったというふうに理解して先に進みます。  ところが、資本主義経済、市場経済というのは本質的にどうもカジノ化するのではないかというのを、つい最近でございますが、国際日本文化研究センターの教授の飯田経夫さんという方が書いていらっしゃるわけでございます。日本経済新聞の「私の新・資本主義論」というのに書かれていらっしゃいました。  資本主義は効率を尊ぶから、カネ儲けのためにも、最も効率的な方法をドライに探す。そのためには、時間もかかり、チームワークも必要なモノづくりは明らかに適当ではない。   男一匹が才覚(と幸運)のすべてを賭けて、「一発当てる」可能性のある「カジノ経済」の方が、はるかに目的にかなう。その意味で経済の「カジノ化」は、資本主義の必然だと見なされよう。 というふうに書いているわけでございます。  このカジノ化を制度的、政策的にどうやって減殺させていくのか、封じ込めていくのかというのが実はこの市場経済のまさに構造改革の問題ではないだろうかというふうに私は感じておるわけでございます。多少大蔵省に褒め過ぎになるかもわかりませんが、したがいまして、制度的には地価税の問題というのは、実はそういうカジノ化を防ぐ制度的担保としての意味があるのではなかろうかというふうに私は意味付与をしておるわけであります。といいますのは、地価の暴騰というのはプラザ合意以降の超低金利政策の中で起こったわけでございまして、それを防ぐ総量規制等々行ったわけでございますが、それが遅過ぎた、まあこういうことになるんだと思いますが、その時点で、 要するに土地神話あるいは土地の保有コストが非常に低い。あるいは金融資産としての有利性が、有利性にまさる土地保有コストがかかるんであればこんなことになっていなかったんではないかということも考えられるわけであります。地価税だけで土地の高騰を食いとめるということはとてもできないことではありますけれども、ただ、例えば金融政策にしましても、地価税があることでその分金融政策にフリーハンドが発生する、あるいは発生し得る余地があるのではないか、そんなふうに考えておるわけでございます。  昨年の地価税についての代表質問のときに、多少、私も半分しかわかっておりませんけれども、長谷川さんやあるいは野口教授がその定式を書いていらっしゃったのを引用して、地代収益、期待値上がり益、節税益、その和と利子率の比例で地価というのは決まってくるんだという話をさせていただきました。そして、今また金利を三度公定歩合を引き下げて、もう一度早く下げないとどうにもならないというふうな、割と大きい声というのは少数の人だと思いますけれども、少数の人の大きい声が聞こえてくるという事態になっておるわけでございます。地価税がなければ、そんなことをすればもう一遍ミニバブルを起こすのではないかと私は杞憂をしておるわけでありますけれども、幸い地価税というのが導入された。昨年の附帯決議で機動的にこれを使うんだということも決議をされておりますので、必ずしもこれからの金利政策が、もう一段下げることが絶対的にいけないというふうな議論にはならないんじゃないかと思いますが、それもこれも地価税という制度的な担保がつくられたからだというふうに考えておるわけでございます。そういう意見を持っておるわけでございますが、大蔵大臣の方ではこの地価税の持っておる金融政策との関連での意味というのはどういうふうにお考えになっておられましょうか。
  131. 羽田孜

    羽田国務大臣 今御指摘がございましたように、確かに金融政策だけでは地価の高騰を抑えるということは非常に難しい。これは実は総量規制を執行しているときにも申し上げてまいったわけでありますけれども、やはり説とかあるいは都市計画とかそういったものが合わさって地価の高騰というものは抑えられていくものであろうということを考えたときに、今御指摘がございましたように、地価税を創設したということによりまして、金融政策等についてもある程度フリーなあれが与えられたということは事実であろうと思っております。  いずれにしても地価税の基本は、ただ税収をこれによって上げることが目的じゃないということでございまして、あくまでも土地というものがほかの資産に比べて有利であってはならないということ、そしてただ持っているということは決して利益じゃないんですよということをこの税によって理解をしていただこうということが一番の目標であるということであろうかと思っております。
  132. 仙谷由人

    仙谷委員 一昨年、昨年の地価税論議といいますか、土地保有税論議の中で行われた議論は、サラリーマンが年収の五倍ぐらいで一時間ぐらいのところで土地を買えるような地価にしなければとても勤労意欲もなくなるし、資産格差がつき過ぎてとんでもない社会になるのではないか、大ざっぱに言えばこんな議論だったと思います。昭和五十八年が、何かまあまあマクロ的に見ると年収の五倍ぐらいの地価であったというふうに言われておるわけでありますが、先ほど国土庁の方に最新の地価の動向調査というのをいただきましたら、東京圏で、昭和五十八年を一〇〇といたしますと平成二年二四九・五、平成三年二四七・〇、それから東京都区部は平成二年二八三・八、平成三年が二七五・六ということのようでございます。そうしますと、昭和五十八年から約三倍近く上がったのが、少々下降ぎみであるけれどもまだ年収の五倍で買えるような地価にはなってないということでございます。  そういたしますと、今の時点は、私の個人的な見解から言えば、本当はことしの地価税も〇・二%でなくて〇・三%か〇・四%にすべきじゃないかというふうな極端なことも言いたいぐらいでありますけれども、まだまだ地価の動向に注意をしなければ、注意をした金融政策あるいはその他の政策をとらなければミニバブルが発生する、そういう可能性もあるのではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。  現在の地価のこの水準につきまして、大蔵大臣あるいは国土庁の方で、あるいはこれからの動向について、見通しについて国土庁の方でひとつ御答弁をいただきたいと存じます。
  133. 羽田孜

    羽田国務大臣 現在の水準につきましては、確かにこのところ地価の上昇というのは鈍化してきた、そしてまた一部では実際に下がっているということ、これは地価税を含む土地税制改革のアナウンスメント効果があるんだろうというふうに思っております。しかし、地価水準というのは地価高騰前に比較いたしますと、まだ大都市圏のところでは二倍以上というふうになっておるところもあるというのが現状でございまして、水準はやはり依然高いのであろうというふうに思っておりますから、再び地価が高騰するというこの神話だけは何としても打破しなければいけない。限られた土地でございますから、土地が上昇してしまって今お話しのような事態になったんではいかぬ。これは国民経済全体にとってもマイナスであるということを考えながら、私どもこれを注意深く見守りながら、総量規制をあれしたときにも例のトリガーなんかの制度を取り入れたということでございます。
  134. 木村誠之

    ○木村説明員 お答えいたします。  ただいま先生からお話のございました数字でございますが、最初にちょっと申し上げさせていただきますが、お話の昭和五十八年に対する数字は、昨年七月一日現在の数字でございます。公的な調査といたしまして年間二回、一月一日の地価公示と七月一日の地価調査を行っております。その後、実は昨年暮れに私ども「最近の地価動向」というものを取りまとめました。それによりますと、昨年後半以降、特に大都市圏におきまして地価の下落傾向が強まっておりまして、先ほど言われました東京圏それから近畿圏、昭和五十八年の二・五倍という数字はもう少し小さくなってきているとは思いますが、ただいま大蔵大臣からお話がございましたとおり、依然として二倍を超えているのではないかというふうに見ております。  いずれにいたしましても、適正な水準ということから考えますとまだ高いと言わざるを得ないと思っております。したがいまして、私ども総合土地政策推進要綱に従いまして土地対策を引き続き強力に推進してまいる所存でございますけれども、今後の地価の見通しということにつきまして、あわせてそのとき関連の皆様方といろいろヒアリングをさせていただきましたが、不動産市場、今大変弱含みでございまして、またエンドユーザーの方々にも先安感というものが非常に強い状況でございます。したがいまして、今後ともこういった今の下落傾向というものは当面続いていくのではないかというふうに見ております。ただ、これは決して気を緩めることができる問題ではございませんので、引き続き十分注視して取り組んでまいりたいと思っております。
  135. 仙谷由人

    仙谷委員 ところが、ここへ来て、まさに金融スキャンダルということで、昨年の金融業界の混乱に一役を買った銀行の方は債権回収が甚だ困難になってきた、あるいは延滞債権が大幅に出そうだ、あるいは回収不能の債権が二兆円ぐらい出るのではないか、貸倒引当金よりもはるかに多いというふうなことで、どうも土地を高騰させて帳じりを合わせよう、そんな雰囲気とか動きが一方では見えるわけでございます。まさに国民の、庶民のツケで彼らが行ったバブルの清算をしようという話になるわけでございます。  もう一方では、不動産業界を中心にして、地価税が悪税である、即刻廃止せよという厳しいことを言う人まで出てきたわけでございます。一月二十四日の日刊工業新聞紙上で不動産協会理事長という名前で坪井東さんという人がそういう発言ををしているわけであります。「性格があいまいで、諸外国にも例がない。」「土地政策関係がなく税金のための税金だ。」「有効利用されている用地にも課税するとは不合理極まりない。即刻、廃止すべきだ」。次の日にはデパートの松屋の社長さんが、私どものところでも二けたの億に近い額が地価税で取られる、地価税は悪税であるという議論でございます。こういうことが、のど元過ぎれば熱さを忘れるというのが人間の豊かもわかりませんけれども、バブル崩壊と言われる現象から一年たつかたたないうちにこの種の議論が出てくる。  今私が申し上げた、諸外国にも例がない、土地政策関係がなく税金のための税金だ、課税することは不合理きわまりない、こういう論理を主税局長はどういうふうにお考えになりますか。
  136. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 長い論議の後、土地問題を抜本的に解決していくために土地基本法が論議されまして成立を見、これを受けまして土地税制改革の作業が進み、やっと結実いたしまして地価税となり、それが実施されましたのがこの一月一日でございます。そして、先ほど来お話ございました金融措置の効果等と相まちまして、ただいまやっとそのアナウンスメント効果が広がり、所期の効果があらわれんとしているやさきでございます。  けさほどもちょっと申し上げましたように、地価税というのは、先ほど金融措置について御討議ございましたような緊急臨時的な対応というよりも、もう少し長期的、体質改善的な対応をなすべき方策と心得ておりまして、そういった種類のものが今やっと導入されようとする。しかもまだ地価税につきましては、一度も具体的な納税は行われていないという状況でございます。したがいまして、私どもとしましては、これがせっかくの御議論でございまして、大事に定着をして、その実効を本当に上げてくれるように、それのみを念ずるわけでございますが、ただいま仙谷先生のお話の中に、どなたかのお言葉を引っ張ってこられまして、外国にも存在しないとんでもない税であるというような御議論等があるようでございますが、この外国とはどこを指しておられるのかということもございますけれども、土地の問題というのはある意味では日本の特殊な問題でもあった。したがいまして、それと同じような問題がどこにもあるということではなくて、日本はやはり日本なりの対応をしていかなければならないという一つの典型的な問題であるというふうに思っております。
  137. 仙谷由人

    仙谷委員 大蔵大臣にもぜひ御注意をいただきたいということで要望いたしたいのでございますが、不動産協会の新年会で坪井会長が来賓の山崎建設大臣自民党代議士を前にして、業界はどしゃ降りの雨の中にいる、地価が下落しているときに地価税がそのままかかってくる、ぜひ地価税の改廃について検討してほしいというふうに強く訴えた、こういう記事もあるわけでございます。まさに不動産業界のエゴといいますか、即時的な利益追求というのがここに見えるわけでございまして、こういう議論自民党の中でもあるいは税調の中でも一顧だにしないということでお願いをしたいと思いますし、それから自民党も、不動産業界からは献金を受け取らないようにしていただきたい。献金を受け取るからこういう議論が平気で出てくるということになるのだろうと思います。どうかその点ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に、ダイヤモンドという雑誌でも反地価税キャンペーンが行われておるわけであります。相当厳しい見出しで、「なぜ誰も騒がない地価税急騰ショック」という見出してあります。「来た!大都市直下型「地価税」の衝撃」「家賃値上げ?価格に転嫁?不動産、ホテル、百貨店それぞれの攻防を追う」。要するに、地価税を払うのが嫌だということだけが書いてあるわけですが、こういう議論がこれからどんどん広がるのではないだろうか。我々が地価税論議のときにいろいろ論議をいたしました。そして、今宮澤さんも大蔵大臣国民生活の一層の質的向上ということを言われて、これには日本の場合に土地の価格を下げないことには、住宅から社会福祉の施設から道路から公園から何にもできないという状況に今立ち至っているわけです。にもかかわらず、業界業界独自の利益を直接的に追求なさるということでございますので、その点は大蔵当局だけではなくて、大蔵大臣自民党の諸先輩の先生方もぜひ、余り一つ業界の即時的な利益を代理をしないようにお願いをしておきたいと思います。  ところが、その反地価税の議論の中に、もう一つこういうのがあるのですね。結局、土地対策にこの税収が使われなかったじゃないか。だから、大蔵省は徴税屋としてうまく立ち回ったんだ、大蔵省の高等戦術に落とし込まれて、結局、増税の片棒を担いだやつがいっぱいおるじゃないか、こういう議論でございます。先般の公明党の日笠議員の一般質問の中でも、どうも地価税導入の附帯決議の中にある所得減税もしくは土地対策費用に回すというのが本年度予算の中できちっと生かされていないのではないかという議論があるわけでございます。私は甚だ予算編成上の問題についても残念だと思いますし、そのことがこういう反地価税キャンペーンに力を与えるということになればゆゆしいことであると考えますので、その点補正予算の段階なのか、あるいは本予算の組み替えというところまでいかないのでしょうけれども、大蔵大臣の現在のお気持ち、御意見を伺っておきたいと考えます。
  138. 羽田孜

    羽田国務大臣 今御指摘のとおりでありまして、私どもは相当広範な議論を踏まえましてこの地価税が設立されまして、この一月から実際に動き出したということでありまして、私どもは先ほど申し上げましたように、いわゆる地価神話を打破する、そして二度と地価高騰を呼び起こさないということのためにこの税制は大事にはぐくんでいきたいということを改めて申し上げたいと思います。  なお、この地価税について、今度の予算の中においてというお話があったわけでありますけれども、私どもも、新しく住宅等を開発するものあるいはまた地方公共団体等におきまして土地を活用する、そういったことのために先行取得をするというものに対して予算を配分をいたしましたり、またこの調査のための問題ですとか、あるいはその情報等を皆様に提供する、そういったこと等につきまして、私どもとしてもそれぞれ措置をいたしたところでございまして、これからも地価税につきましては、まさに土地問題あるいは住宅問題とかそういった問題に十分生かされるように配分をしていかなければいけないであろうというふうに思っております。
  139. 仙谷由人

    仙谷委員 それでは、ちょっとテーマを変えさせていただきます。  非常に残念なことでございまして、そしてまた証券特別委員会の中での議論から見ますと、そしてまた、これから私ども議論をしなければいけない金融制度改革あるいは金融検査特別委員会でございましょうか、その設置をめぐる問題というのが我々の前に提起されておるわけですが、この三、四日の新聞で大きく証券会社の飛ばしの問題というのが提起をされております。  実は、いわゆる証券スキャンダル、補てんの問題が起こったときに、私は、山一総合ファイナンスというところに山一証券が補てんをしたそのやり方、山一総合ファイナンスのファンドのそもそもの設定の仕方から見て、これは飛ばしてある、引っ越しである、こういう、他の事業会社の営業特金なのかはともかくといたしまして、その損を全部集めた、それがこの山一総合ファイナンスの口座であって、それを丸ごと補てんしたのが山一証券の山一総合ファイナンスに対する補てんであるという話をしました。よく調べてほしいということを言いました。最後には、よくわからないという返事でございましたが、そういうことがあの当時からわかっておりました。そして、三協エンジニアリングの問題というのは、そもそもの八九年十一月のこの補てん問題のきっかけである大和証券のこの三協エンジニアリングに対する補てん、それも何かビルの株を使っての補てんというのが、これも飛ばし、引っ越しという話があったわけでございます。この種の話があるだろうということは、これは大蔵省の証券局も当然のことながら予想をしていらっしゃっただろうと思います。  ところが、昨年の十二月の末に、もう四社の特別検査を終わってすべておしまい、もうこれでないんだというふうな雰囲気になってしまったわけでございますが、今度はこれが、いわゆる私ども弁護士経験者から言いますと余り気持ちのよくないやり方、つまり裁判所を使うというやり方、利用するというやり方で実質的な補てんが行われ、あるいはその前提としての利回り保証が行われているということがどうもこれからどんどんと明らかになるんではないか、そんなふうにこの三日間の新聞記事を見て考えるわけでございます。証券局長、これは甚だ証券局長にまたまたこういうことをお聞きするのもつらいんでございますけれども、どのくらい新聞で今報道されていることを事実問題として現時点で確認できていらっしゃるんでしょうか。
  140. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 このいわゆる飛ばしというふうに言われております問題につきましては、御指摘のように先般の国会におきましてもこういう問題があるんではないかというお尋ねをいただきまして、私どもも飛ばしという言葉自体の内容は非常に不明確ではありますけれども、そういうような形での証券会社の関与というようなものがあり得るというような問題意識を持って検査をしてまいりたいというふうにお答えを申し上げたわけでございます。  私ども、その後いろいろと特別検査などを通じて証券会社を検査したわけでございますが、現在明らかになっておりますケースは、証券会社の営業マン、担当者、企業の取引の担当者でございますけれども、この担当者が全く会社に無断といいますか、会社の帳簿を全く通らない形で法人間の証券の取引の仲介をしたというような行為でございます。私ども、検査でもいろいろとチェックをしたわけでございますが、こういうふうに担当者が全く会社に無断で企業間の取引の仲介をするということになりますと、これはいかなる形でも会社の帳簿にはあらわれないものでございまして、残念ながら検査において把握するということができなかったわけでございます。  これが明るみになりましたのは、結局、企業間の直取引が繰り返し行われ、その直取引の対象になっております有価証券の値下がりといいますか、これで含み損がどんどん膨らんでいくというようなことで、その企業間の直取引がそれ以上続かなくなったというような段階で初めて問題になったわけでございまして、その場合に、もしそれを証券会社の担当マンが仲介をしたということで証券会社がそれを引き取るということになりますと、これは法律で今度禁止をしていただきました文字どおり損失補てんに該当してしまうわけでございまして、我々としては、こういう問題については証券会社に対して、ともかく不明朗な形で解決するのではなくて、ちゃんと法令等に則した解決をすべきであるということを指導してきたわけでございます。  その結果、新聞報道にありますように、あるいは訴訟に持ち込まれ、あるいは民事調停手続に入るというような形のものが出てまいっているわけでございます。これにつきましては、民事調停あるいは訴訟の過程でどういう判断がなされるかという問題があるわけでございますが、証券会社としては、それは営業マンの個人的な仲介行為であるということで全く把握できなかったという問題はあるわけではございますが、しかし、営業マンが仲介行為をしたということを考えて、相手方の企業が証券会社に対して使用者としての責任を問うというような形で損害賠償を請求しているわけでございます。  私ども、これが、今まで報告を受けました限りでは、今申し上げましたように担当マンの個人的行為である、いかにしても証券会社が把握できなかったということでございますけれども、しかし、やはりこの内部管理体制に問題はなかったのかどうか、さらにそういう営業マンを監督する立場にある人間が十分監督をしていたのかどうかという監督責任の問題、さらには経営責任の問題というようなものも考えられるわけでございます。  こういう問題が一体どの程度あるのかという点につきましては、率直に申し上げまして、今申し上げましたように全く会社の簿外で行われている行為でございまして、明るみに出ております、新聞報道されておりますケース、あるいはそれ以外にも顧客のトラブル、法人の顧客との間でトラブルになっているというようなことは聞くわけでございますけれども、全貌について把握するというのが現在のところ残念ながらできないわけでございます。ただ、証券会社に対しましては、特に法人取引の関係でございますので、法人担当者あるいは法人顧客に対してこういった点について十分照会をして、こういう問題がもし潜在的に存在するんであればそれを早目に会社がチェック、把握をして、それなりの対応をする必要があるというふうに指導しているわけでございます。
  141. 仙谷由人

    仙谷委員 今の話を聞いておりますと、いつもながら、こういう問題が起こったときにどこの会社でも、それは個人の営業マンがオーバーランしてやったんだという話になるわけでございますけれども、例えばコスモ証券の件について、私は具体的な事実として、社長が実際に手を下したというふうなところまでは聞こえてきませんけれども部長連中、課長連中が一人ではなくて数人、それも五、六人の者がそれぞれ違う会社、A、B、C、D、E、F、それぞれの会社を担当しでおって、それを全部まとめて飛ばしを何回か重ねたという話が入ってきておるわけでございます、会社ぐるみだと。だから、会社の専務か常務かに当たる人も朝礼かなんかで全国の部店長がなんか集めて、これはあいつだけがやったことにしてくれなんというあいさつを二十四日の朝礼でやっておるということまで私のところに入ってきておるんですよ。兜町全体では一兆円ぐらいこういう飛ばしで、彼らの言葉で言うとしこっておる、つまりもう身動きがとれなくてどうにもならないものが一兆円ぐらいある。大和証券は一千億もある。大和証券はまだ二、三件あるというふうに記者会見でも言っておるようですが、そういうことが言われておるんですね。  だから、これは個人的な責任にするということをやりますと、どうも会社総体としては正しいけれどもとんでもない営業マンがおっだんだという話になるわけです。まあ事実関係がそれぞれ具体的にきちっと出てくるというのにはなかなか難しい問題があろうと思いますけれども、しかしながら、いつもトカゲのしっぽ切りをしておったんでは、この証券業界透明性を持った公正な市場参加者として、自律するというとおかしいですけれども、自己規律ができる会社になるのかどうか、私は疑問だと思うんですね、去年からことしですから。このことが株式市況に与える影響というのはそんなに小さくないのではないか。これは我々がほじくり出してきて言ったんではなくて、そもそも裁判をやったから明らかになったわけでしょう。したがいまして、この点については証券局、御苦労でありますけれども、もう一度ひとつ力を入れて調査をする、調査の結果をオープンにするということをぜひお願いをしておきたいわけでございます。  で、法律関係をちょっと聞いておきますが、もしこの飛ばしというのにかかわった場合は、対象物が株であれば、A社で評価損を出している株をB社に評価損、つまり現在時価にかかわらず何億円かで買い戻しつきで買い取ってもらうという行為は一方では利回り保証、つまり買い取ってもらう会社には、次にこういう金額で買い戻すんだからという話ですから、これは利回り保証禁止に触れるということになるんじゃないでしょうか。それから、そもそもその飛ばしていただいた会社の方は、これはつまりもともと評価が二十億になっているものが、元金が三十億だったから、それに年間の利率として一〇%をプラスして、どこかのB社からそれを払って、買い取ってもらったということになると、これは完璧な補てん禁止に触れるんじゃないかと私思いますけれども、いかがでございますか。
  142. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どももこの事実関係を、訴訟中のものもございます、あるいは調停中のものもございますが、よく把握いたしまして、その中で証取法上の問題になるという行為があれば、これは我々としても厳正に対処していきたいというふうに考えているわけでございます。  お尋ねの利回り保証あるいは損失補てんの問題でございますが、先ほど申し上げましたように、これは担当者がいわゆる口約束みたいな形で行っているケースが多いということでございます。その当事者の企業の意識は、有価証券の売買というよりも一種の金融取引である、有価証券担保金融のような形であるというような意識を持っているわけでございます。担保金融ということでありますと、それは利回り保証とか損失補てんという問題は生じない問題でございます。ただしかし、形の上では有価証券の売買の形をとっているわけでございまして、その売買の形をとっている場合に、それに対して、仮に仲介した証券会社の営業マンが利回り保証的なことを言うとかあるいは損失補てん的なことを言っておれば、これはその仲介した営業マンは証券取引法に触れる行為だということが言えると思います。金融取引であるのか、あるいはそういう損失保証あるいは利回り保証がついた売買なのかという点についての事実確認が何分にもまだ十分できないわけでございますが、御指摘の点、確かに私どもも非常に問題意識を持ってこの事実解明に当たっていきたいというふうに思っております。
  143. 仙谷由人

    仙谷委員 形式が担保金融のようなものだというふうにおっしゃったわけですが、当事者の意識は違いますよ。これは明らかに飛ばしをやってあげるんだ、やるんだということじゃないでしょうか。つまり大和証券と東急の、これはきょうの新聞各紙に出ていますけれども、日経金融新聞かなんかに両方の記者会見が載っていますよ。東急は大和への融資であったと思っておったというふうに言っているけれども、何で東急不動産が大和証券に金を貸さなければいかぬのですか。そんなことは両社の規模と営業から考えたって常識じゃないですか。それは名目としては何か現先売買とか、私もよくわかりませんけれども、あるいは金融取引的な、お金の貸し借り的なことを装っておるけれども、実態は買い戻しつきの飛ばしなんですね。そういうことが明らかなんですよ。だからみんな裁判している、そういうことになるんじゃないですか。  これは、今口約束という話をされましたけれども本当に口約束なんですか。私は、口約束で調停をしたり裁判をしたりするということはちょっと考えられない。これはそれぞれ念書とか変な書面がなんか知りませんけれども、あるいは改めて通達を読みますと、蔵証の二百八十七、五十一年三月十日、これを読みますと、債券の現先売買については契約書をちゃんとつくることと書いてありますね。だからつくっておるんじゃないですか。  で、もう一つ言いたいのは、大蔵省はどうも、調停とか裁判で訴訟をやったら、そこで和解したんだから、これは合法化されていいんだというふうなお気持ちが何かおありになるのかもわかりませんが、例えばコスモ証券の例で新聞紙上から私が抜き書きをしたのだけ見ますと、調停の申し立てが一月十三日。二月二十四日には調停がもう既に成立して損害賠償金三百六十億円を支払えと、こう書いてあるわけですよ。これは弁護士の常識から言えば、あらかじめ話ができていなければこんなことはできないのですよ。要するに形式として裁判所の調停を使う。調停調書をつくってもらって裁判というお墨つきを与えてもらう、それ以外に考えられないじゃないですか。それから、例えば大和証券のきょうの新聞に出ておった件。これも十二月下旬の提訴ですよ。そして既に和解が成立したと。本裁判を提起したら、訴状が相手方に送達されるだけでも今一カ月から四十五日かかるのですよ。第一回目の口頭弁論で、それじゃ和解しましょう、ああ和解できました、和解条項書きましょうという話でしょう、これ。そうしないとこんな手品はできない。つまり、裏では両当事者間で談合が成立しているからこういうことができるのですよ。昔、国土計画法の上限価格をクリアするために、不動産屋同士で即決和解というのがはやったことがあります。裁判所へ持っていって、東京の不動産屋が下田の簡易裁判所まで行って、即決和解で国土法の制限額を超過する金額で買う、こんなのは裁判の悪用なんですよ。それと同じようなことがどうも行われておるんじゃないか、裁判という名前をかぶせた補てんがここで行われておるんじゃないか、そんなことを感じるわけでございます。何でもかんでも裁判所の形式を与えたら合法化するとか正当化するということではない。つまり、もう一遍証券スキャンダルが起こりつつあるように思うわけでございますけれども、その辺は厳しくお調べをいただきたいと思います。  それと、私は、この事実関係を拝見して、これはもう証券取引法三十五条を発動して、事実関係をちゃんとお調べになって処分手続にのせる、そのことを証券局長が決意されて、大蔵大臣も決意されてやっていただくほかに、金融検査特別委員会でございましたか、証券金融検査特別委員会ですか、今度設置されるという、あの中でも処分手続だけ大蔵大臣のところへ残したわけですから。残っているわけですね。だから、そのことについての合理性が全くなくなる。こんな明らかな脱法、違法、でたらめな行為が起こって、それに対して大蔵省が、いやあれは外務員とか営業マン一人が何か勝手なことをやったとか、そんな話で済まされると、これはゆゆしい問題だと思います。まさにこれからの金融証券委員会の審議にも重大な影響のある問題だと思いますので、この処分手続にのせる、そのために調査をするということをひとつ御決意を披瀝していただきたいと存じます。
  144. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どもも、先ほど申し上げましたように、この事実関係を解明するということに今全力を挙げているわけでございまして、その中で、外務員の違法行為、あるいは場合によってはそれがその証券会社自身の行為ということが認定できるかどうかという点も含めて事実関係を解明するわけでございます。その結果、もし証取法違反というようなことが、非常にそういう可能性が強いということになりますと、御指摘のように証取法三十五条による行政処分の手続としての審問というものが行われるわけでございまして、この一連のこういう行為の中で、証券会社あるいはその外務員がどういう行為を行って、それが証取法上どういうふうに評価されるか、つまり証取法違反行為があるかどうかという点を中心にして事実解明を進めてまいりたいというふうに私ども思っております。
  145. 仙谷由人

    仙谷委員 それでは、証券局の厳正な調査をひとつ期待をいたしまして、本日は時間が参りましたので、またあした時間をいただいておるようでございますので、あしたにいたしたいと存じます。  どうもありがとうございました。
  146. 太田誠一

    太田委員長 正森成二君。
  147. 正森成二

    ○正森委員 私は、まず輸入促進税制の関連から伺いたいと思います。  羽田大蔵大臣に伺います。失礼ですが、川柳でもないんですが、田舎などで使われる俚諺で、もち食ってから火に当たるというのがあるんですが、どういうことか御存じですか。――もち食ってから火に当たる。
  148. 羽田孜

    羽田国務大臣 どうも学問がなくて申しわけありません。
  149. 正森成二

    ○正森委員 大臣も御存じないようですが、これはもちというのは普通焼いてから食べるものですね。それを焼かずに食べた後で体を火であぶって、それでもちを焼いたということで、大体が順序があべこべではないか、もちというものは焼いておいしくしてから食べておなかへ入れるもので、生のものをおなかへ入れてしまってから腹を火に当てるというのは順序が逆ではないかということを言った田舎の俚諺なんですね。  私がなぜこういうことを言うかというと、その輸入促進税制が二年余り前にできまして、今度もまた新しいものが追加されますが、これはアクションプログラムに関連するわけですが、それについてこの一月にある新聞が「視点」という欄で論評しているんですね。どう言っているかというと、「米国の自動車と部品を日本へうんと増やして売り込もうという。米国車が売れないのは質や性能が悪く値も高いからで、米国内でも日本車に大敗している。米国のユーザーも買わないものが日本でたくさん売れるわけがない。米国車をもっと売るには米国の自動車産業の体質を改善し競争力を強くするのが先決だ。それを後回しにして、とにかく買えというのは順序があべこべである。」こう言って、これを言うために、もち食ってから火に当たるという俚諺と同じことである、これがこの「視点」に書かれている論評の言い方なんですね。  これは東京新聞一月十三日ですが、例えば「左ハンドルのまま日本で売ろうとする。」というような例を挙げた後で、「米国は日本の流通の「系列」を非難しているが、米国車や部品の売り込みには系列をフルに利用しようとする。」そうですね、トヨタは何ぼ買え、本田は幾ら買え、日産は幾ら買えと、各社がそれぞれ計画を出していますね。それは自分の系列やら影響力を利用して買ったり売ったりするわけであります。「商談に政府を介入させ管理貿易の色を濃くする。貿易自由化・市場開放の主張と管理貿易化との倒錯は「餌食って火に当たる」どころではない。」こう言っているのですね。これは私は当たっていると思うのです。  それで、今度の租税特別措置を見ますと、輸入促進、外資導入円滑化税制というようなことで新たに租税特別措置が追加されております。例えば輸入促進のためのインフラ整備というのでは、その整備主体である総合商社や倉庫業者、運送業者など大企業の参加する第三セクターに対し、産業基盤整備基金からの出資、債務保証、NTT無利子融資や開銀融資を行うほか、二二%の特別償却を認める、そうですね、主税局長。――そのほか対内投資事業の円滑化のための優遇措置等々がありますが、申しません。こういうのを新たに設けるだけでなしに、既に二年余り前に輸入促進税制と言って、輸入が前年度より一〇%以上ふえると、三つぐらいの場合に分けておりますが、税額控除とか特別償却とか、あるいは商社の場合には外国税額控除で税金を納めていないのがありますから、売り上げのふえた部分の二割は無税で積み立てるというようなことで、至れり尽くせりをやっているわけであります。  そこで、伺いますが、あなた方からいただいた資料では、平成二年度は八百七十億円の減収でしたね。平成三年度は九百八十億円の減収。本年度は、これはまだ行っておりませんけれども、マクロで計算すると前年度よりやや減少するというような数字をいただいております。もっとも、アクションプログラムがございましたから、どうなるかはちょっとわかりませんが、そういうことのようであります。しかし、こういう新聞社の論評なんかを見ますと、初め大蔵省は、その輸入促進税制ができるときに、果たして効果があるのか、しかもその減税の対象になるのは黒字の企業だけではないか、またそれによって値段が下がる保証はない、ある意味ではそれによって安い製品ができて逆に輸出促進になるのではないかとか、当時の、三年前の新聞を見てみますといろいろ書いてある。それで十分効果がないからアクションプログラムのようなものをつくらなければならなかったのじゃないですか。それで、こういう税制は世界でも類例がない税制だと言われているのですね。大体、輸入がどんどんふえた元凶は何かといえば、自動車関係のビッグフォーとかなんとか言われているのがどんどん輸出をして、それで対米輸出不均衡ができたのに、その元凶が輸入をちょっとふやせば逆に国民税金から減税をしてやるなんというのは、世界に類例のない税制だと思うのですが、いかがですか。
  150. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 平成二年度改正のときのことを思い出すのでございますが、確かに先生がただいまお話しくださいましたように、輸入を促進する必要があるということで、輸入促進対象の特定の製品の輸入につきまして、一〇%以上これを増加させました場合には、製造業者または卸小売業者のそれぞれにつきまして、今御説明がございましたような措置を講ずるということにいたしたわけでございます。この措置は、平成二年度から三年間の措置として講じております。その後、これもただいま先生から御説明ございましたような減収額というものが現実に発生しております。ということは、それだけの輸入が行われたということを物語っておるのだろうとは思いますけれども、その間、どの程度の輸入増加になったかという具体的なことは、あるいは通産省の方からお答えいただいたらいいと思いますけれども、私どもはこの制度がスタートするに当たりまして、今新聞でごらんになったとおっしゃいましたような論議を通産省と交わしたことがございます。最初、議論を始めましたころは、相当な激論をしたという記憶もございます。ただ、いろいろ話をしておりますうちに、当時、輸入をふやすということが緊要な問題であるということにつきましての問題意識は我々にも広がってまいりまして、ほかにいいすべなければこの措置によることにしよう、そして、これは一応三年間の措置として様子を見ようということで、今まさにその様子を注視しておるという状況にあるわけでございます。したがって、この措置がどうであったか、今先生がややそのような感触、つまり消極的な感触でこの措置を見ておられるのではないかという気がするわけでございますけれども、その結論をいただくのにはまだ早いまだ実績が積み上がっている段階であるというふうに見ております。
  151. 正森成二

    ○正森委員 通産省からきのうレクチャーを伺ったのですが、通産省、来ておられますか。――今度、主として米国製自動車部品の輸入拡大百九十億ドルというように新聞紙上に報道されました。きのう聞いてみますと、内訳すると純粋の輸入は二十億ドルから四十億ドルヘ、ほぼ倍になる。そのほかに現地調達が七十億ドルから百五十億ドルにふえ、締めて九十億ドルが百九十億ドルになる、こういうことですか。
  152. 川嶋温

    ○川嶋説明員 御説明をいたします。  今先生御指摘のとおりでございまして、輸入が九〇年度の二十億ドルから四十億ドルへ、アメリカにあります日系の現地工場の現地における調達が七十億ドルから百五十億ドルへという数字がアクションプランに記載されております。
  153. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、二年前につくりました輸入促進税制が効いてくるのはこの二十億ドルから四十億ドルの部分だというように理解され、したがって、日本の系列下請企業の失う売り上げというのもそれほどではないという考え方も成り立つのですが、しかし、実際はそうではなくて、現地調達の部分も今まで日本で調達しておったということになれば、これは得べかりし販売額が失われるということにもなってくるわけですね。  そこで、ここに、アクションプログラムができましてから新聞で報道されておりますが、例えば本田技研のある幹部は「外から買える額としてはもう限界だ」ということを言いまして、こう言っているのです。「米国製自動車部品の現地調達の新しい目標額四十三億八千万ドルを、本田の北米での現地生産能力約六十万台で割ると、一台当たり七千ドル以上になる。車一台の原価は約一万ドルなので、工場での付加価値分をこれ以上減らすわけにはいかない」だから、もう限度だという工とを言っているわけです。  そして、「日本のメーカーはタイヤ、ガラス、シートなど現地生産車に使用する汎用一はんよう)品はすでに買い尽くしている。調達額を増やすには、エンジン、変速機など軍の心臓部を米部品メーカーと共同開発する必要があるわけだ。」ところが、「交渉の途中で、そんな面倒な話はゴメンと相手がやめてしまうのが一般的パターン」で、「できる限りのことはやった。しかし、こちらの努力だけで目標は達成できない。米メーカーの自助努力が必要」と、さっきの「視点」で言っている人と同じことを会社の首脳部が言っているのです。  そして、それが部品メーカーにどんな影響を与えるか。これは別の新聞であります。読売新聞の一月二十八日号によりますと、「トヨタ系部品メーカー最大手の日本電装など自動車部品関連メーカー八社が拠点を置く近隣の刈谷市」の話ですが、「トヨタ自動車が海外から購入する部品の目標額を掲げたびその額五十二・八億ドルは日本円にすると七千億円に。これは電装が一年間にトヨタに納める金額にもあたる」こう言っているのです。  そして、「トヨタグループでは二番手であるアイシン精機などは、「今回は円高の時よりきつい。来期は借り入れもやむを得ない」と、トヨタグループの堅実経営の金科玉条としてきた「無借金経営」を引っ込めるところも出てきた。」  それで、孫請企業はもっとひどくて、「トヨタ本体の業績悪化が数十倍に増幅されるといわれる孫請け企業だけに、「コスト上昇の製品転嫁どころか、親会社を通して、値下げ努力を逆に求められる」と心配する。」これはさらに一般市民に広がって、「刈谷市内の個人消費も湿りがち。市内のユニー、イトーヨーカドーといった大型店の売り上げは、年末商戦で前年を一割程度下回る不振で、ほぼ前年並みだった名古屋市内の松坂屋などのデパートとは、明暗を分けた。」云々というように書いてあります。  大臣、いいですか。だから、こういういろいろな被害が広がる、それを、もっとやれ、もっとやれ言って、中小企業からも集めた税金を投入するのが今度の輸入促進税制なんですよ。こんなことで納得しますか。私は、当初、二年前につくるときに通産と大蔵で意見が違ったという新聞も読みましたけれども、当時の大蔵の幹部の方が正論だったのじゃないですか。
  154. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 今の正森先生のお話を伺っておりまして思いますことは、結局、こういった一つ一つ措置というのは何のためにとられたのかということでございますが、そのときの全体の状況判断、そして、この措置がもたらした効果というものは先ほど申し上げましたようにまだ確定をいたしておりませんけれども日本側の努力というもののあらわし方というものはそういろいろ種類があったわけではございませんでした。したがいまして、総合的にこれをどう評価していただくかというのは、これから後もう少ししてからにしていただきたい、繰り返しになりますけれども、そのようにお願いしたいと存じます。
  155. 正森成二

    ○正森委員 政権を担当している政府、政党あるいはそれを補佐する大蔵省としては、いろいろ難しい点があると思いますが、今私がここに引用したようなそういう事実がある、あるいは少なくともあると報道されておる。赤旗じゃないですよ、赤旗は一つも引用してないですからね。そういうことがあるということで、やはりいろいろ広い見地から政策を考えていただきたいということを御要望申し上げておきたいと思います。  それでは、次の問題に移らせていただきます。今度の税制では、青色申告関係の特別控除制度等の税制改正がございます。それで、きょうはその問題について少し伺いたいと思うのですが、結局その中心は何かといえば、これは自家労賃をどう評価するか、その内容には事業者本人の報酬の問題もございますし、それからそこに従事する親族の賃金部分をどう評価するか、あるいは控除するかという問題があります。それにつきましては、少し不十分ですが調べてみたんです。  私の見ました限りでは、昭和四十八年に大きな改正がございました。そのときに、主税局長の濱本さんの大先輩に当たる高木主税局長が典型的な答弁をしておられるわけです。お答えになるかと思いますが、私の方から引用しておきますと、昭和四十八年三月二十九日の衆議院大蔵委員会の議事録であります。こう言っています。「御存じのように、所得税は利子所得、配当所得、不動産所得、給与所得等十種類の所得に分かれておりまして、十種類の所得ごとに経費の計算方式その他がきまっておるわけでございます。その所得税の中で、いわば十種類のものの中で一番中心的なもの、あるいはもとをなすものが事業所得でございます。その意味は事業所得というのは資産からなるところの所得と労働からなるところの所得が分離不可能だ。お店があって、そこで事業をして所得があがってくるという場合に、そのお店の資産、いろいろの意味での資産、固定資産なりたな卸資産なりの資産、そういうものから生まれてくるものと、その方の労働自身から生まれてくるものと、それが合体して所得が発生してくるところに事業所得の特色がございます。その事業所得の特色こそ考え方として所得税の中心をなすものであります。」こう言っているのです。  そして、高木さんのこの議論の特徴は、そういうことを言って、ここで言っておりますように、これは分離不可能なものだ、こういう主張ですね。これが核心なんですよ。そういうことを言いましたら、今度参議院に行って、そこでまた反論する議論などがありまして、昭和四十八年四月十七日の参議院の議事録を見ますと、高木主税局長がやや柔軟な答弁をしているのです。もちろん、濱本主税局長は御存じと思いますが、時間もございますので私の方から読みますと、「所得税のたてまえとして勤労性の所得と他の所得と区分していろいろ計算のしかたを変えるということにするという考え方はあり得る考え方であると思います。」こう一応認めた上で、「しかしこと言いまして、それは非常に今の所得税法の基本と違うということを言った上で、さらに「そうかといって、そういう考え方が全く成り立たないというわけではなくて、何か勤労部分とその他の部分とを分けて、そして税法を組み立てるという考え方も、理論的には成り立ち得る考え方であるわけでございまして、いわばこれは、所得税の一つの非常に長期的な、恒久的な研究課題であるとは思っております。」ここまでは譲歩しているわけであります。  えらい先取りして申しわけありませんが、濱本さんも先輩の意見を踏襲しているわけですか。
  156. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 そういう御議論がございましたことは承知いたしておりますし、勤労所得というものの把握あるいは今おっしゃいましたような意味で事業所得の構成要素をどういうふうに把握するかというのはなかなか難しい問題だと私も思っております。今回も、ちょっとこれはまた逆に先生のこれからのお尋ねを先取りするようなことになっておるとすれば大変失礼なんですが、みなし法人課税をどう見直すかという議論に関連いたしまして、勤労所得というのは何であろうかという議論がございました。  それから逆に、いろいろ考えてみたわけでございますけれども、さっき先生がこの質問の冒頭におっしゃった自家労賃の扱いを一体どういうふうに私どもは認識すればいいのか、あるいは法律では今どういうことを予定しておるのかということでございますけれども、ちょっとそのことを申させていただいて、私どもの認識のお答えにかえたいと思うのでございます。  現行法というのは、事業主から生計を一にしております親族に支払われます対価については原則として必要経費として認めないということになっていると思います。これは法律上五十六条に明記されております。これは個人事業は家族ぐるみの協力と家族の財産を一体として管理、使用して遂行されていく、こう考えるのが一般的でありまして、仮に対価の支払いがございましても、その対価が相当であるとの認定もなかなか難しいということもあって、所得分割の恣意性を排除するという趣旨からこうなっているというふうに私どもは認識しております。このような考え方は、これまでの所得税制の根幹をなしてきたというふうに、貫いてきた考え方だというふうに思っております。  ただ、青色申告者につきまして、専従者給与の支払いを認めまして必要経費の特例としてその算入を是認することといたしましたのは、正確な記帳あるいは記録に基づいて家計と企業、店と奥と申しますか、そういうものが分離が行われている、そういう青色申告者の場合においてこれが認め得るのではないか。このような事情にない白色申告者の場合についてどうかということになるわけでございますけれども、生計を一にする家族従業員に対する家族労働報酬の支払いを認めることは、やはりただ認めることはできない、こういうふうに認識しました。しかしながら、現にその家業に従事している家族従事者につきまして、全然従事していない家族と全く同一に扱う、現に従事している白色申告者の家族と従事していない人とを全く同一に扱うというのはいかがかなという議論がございまして、配偶者控除、扶養控除にかえて特別の控除の適用を給与の支払いの有無にかかわらず認めたといういきさつがございます。そういう苦しい議論をたどってきておると思います。  もう一つだけ申させていただきますと、その本人でございますけれども個人事業主に対する報酬の支払いを想定するということにつきましては、これは払う人と受ける人が同じ人ということになるわけでございまして、経済的な負担関係においてはいわば変わらない、そういうことから、税制上特別に取り扱う必要性はないというふうにそもそも思っておったわけでございますが、仮にこのような事業主に対する報酬の支払いを認める、先ほど四十八年というお話がございましたけれども、みなし法人課税の論議でございますが、給与所得控除の適用を認めるということになれば、現行のみなし法人課税の廃止の理由の一つとされました経費の二重控除の問題、これが発生するということになる。結局、みなし法人課税制度を今回見直すことになったわけでございますけれども、最後までここのところはひっかかっておったところでございまして、この二重控除の問題というのが大きく取り上げられるに至り、今回、やはり適当でないという結論に立ち至ったということでございまして、長い苦しい解釈といいますか、その実態に合わせ、かつ法律の論理というものを守ろうとする中で構成されてきたいろいろな場面がございましたけれども、今日の結論においては、そこのところはすっきりしたというふうに考えております。
  157. 正森成二

    ○正森委員 今相当長く説明していただいたんですけれども、局長はみなし法人課税に重点を置きながら説明をされたんですが、もちろん事業主報酬というのも大きな論点ですが、私が申しておりますのは、これから議論いたしますのは、単に事業主だけでなしに、生計を一にする親族に対する労賃の支払いといいますか、自家労賃の問題を、事業主であるなしにかかわらず全般的に理論的に分析するということでお話をしているわけであります。  今の局長の考え方は、言ってみれば、個人企業に対しては結局世帯課税ですね。今大きくうなずかれましたけれども。  ところが、それが困るということになったんじゃないですか。考え方としては、理論的な接近の方法と、それから同時に公平性の観点という接近方法も必要であります。例えば、同じ程度の個人企業でも、法人になった法人成り企業と青色申告企業と白色企業というので余りにも課税負担がアンバランスであることは、それでいいのかという議論が一方にあるわけであります。例えば法人になれば、社長に報酬を払うのは当たり前の話でありまして、大きく言えば松下幸之助さんなんというのは年間大体十二億円ぐらい配当やら何やらありますし、文字どおり大きな企業のオーナーでありますが、社長在任中は社長としての給与をもらっておられて、だれ一人それに対して疑問に思う者はない。あるいは親族であっても従業員として給料をもらうのは当然である。これは法人としての考え方で当然ですね。ですから、同じような小さな企業でも法人成りでやる、法人になったらそれが認められるのに、法人にならないものは不公平ではないかということで青色申告というようなのが出てまいり、青色申告が出てくれば今度は白色の場合でも一定認める必要があるのではないかということになってきたわけで、物の本によりますとこう言っているんですね。「戦後個人主義思想が発達し、法人企業とのアンバランスが、いわゆる世帯課税に対して批判が起こってきた」ということを言われた上で、こう言っているんですね。世帯課税というのはシャウプ勧告、あそこから出てまいったんですけれども、「直ちに昭和二十七年の改正で青色申告の場合に限り親族従業員に対する給与の支払いが当時は五万円限度で認められる。その後、昭和二十八年の改正で、あるいは二十九年、三十六年というように改正されまして、十八歳ならどうだとか二十五歳ならどうだとか、あるいはいや、一律二十歳だとかこそれから控除額が種々変わってまいったことは御存じのとおりであります。これは一々言いますと大変ですから省略いたしますが、で、「昭和三十七年の改正で青色事業専従者については年齢を二十歳に引き下げまして、そしてその控除限度を二十歳以上が十二万五千円、二十歳未満は九万五千円、白色事業専従者の控除額は七万五千円」というように、こうなってまいり、さらに昭和四十二年の改正で四十三年からは、青色事業専従者については控除限度額を廃止して完全給与制が認められた、これは御存じのとおりであります。そして、白色事業申告者も順次引き上げられて五十九年に四十五万円ですね。現在が四十七万円というようになっているはずであります。  そこで、そういうぐあいに変わってきた歴史を見ますと、世帯課税というのが、戦後の個人の尊厳を重んずるという個人単位の考え方からは、事業主の配偶者あるいは事業主の親族あるいは子供であって生計を一にする者というようなものはあくまで事業主の附属物と見て税法上も世帯課税をするということは、これはいろいろな意味で問題があるのではないか。例えば年金や健康保険の点でも、自分が独自の人格で給与をもらっているのから比べたら著しく不利な扱いを受けるし、という中で、今言ったような歴史の中で専従者の控除その他が認められてきたと私は思うわけであります。  そうしますと、今回の改正というのは、もちろん青色申告の特別控除で従前のものが認められる点もございますが、ある意味では、こういう大きな歴史の流れに逆行する面がないとは言えないということを指摘する必要があると私は思うわけであります。  そこで、私が弁護士だから言うわけではありませんが、ここに最高裁の判例があるのです。あるいは主税局も既に御存じかと思いますが、最高裁判所の判例と判例評釈を一そろえ持ってまいりました。それで、これはどういうことを言っているかといいますと、これは最高裁判所民事判例集第二十二巻八号に載っている損害賠償請求事件で、判決の日は昭和四十三年八月二日、第二小法廷でありますが、「企業主が生命または身体を侵害されたことにより生ずる財産上の損害額の算定基準」ということになっている判例であります。  この判例は岡山県の例で、岡山県の畳表の販売等をやっておられた方が自動車事故で死亡なさったわけであります。それに対して第一審の判決と第二審の判決が異なりまして、上告されて、最高裁が結局それに決着をつけたという判例なんです。細かい金額は省略しますけれども、その考え方というのは、畳表をスクーターに乗って一生懸命売り歩くというような全くの個人経営ですから、それが自動車事故に遭って死んだら、御案内のようにその人が死亡したことによって奥さんや家族が受ける損害額はどれぐらいであるかということになれば、その人が年間どれだけ稼いておったか、余命年数といいますか、労働年数が幾らあるか、それを弁護士用語でホフマン方式といいまして、中間利息を引いて、それでどのぐらいの額になるかというようなことで判決ができるわけであります。  そのときに一審と二審の判決が違いまして、その人が稼いでおって税務署へ届けたその金額は全部失われた利益だというように見る判決と、そうではない、その人が死んだ後もその仕事を奥さんや皆が引き継いで、御主人が生きておったときから比べると収入はうんと減ったけれども何とかいけた、そうするとその差額がまさにその人が頑張ったことによる稼ぎ分ではないかという二つの見解に分かれまして、結局、最高裁判所は、労務価額説と言うのですが、後の方の、その人が稼いでおった全額ではなしに、その人がまさに労働によって寄与したその額がその人の稼ぎ高であり、それを損害賠償すれば足りるんだという判決を出したんですね。これが、いろいろ判例評釈を見ますと、税務の上で学者が自家労賃をどう考えるかという上でいろいろ引用されているわけであります。  一部読んで見ますので、大臣も法律に縁のないあれで御退屈でありましょうが、実はこれは専門的に見るとなかなかおもしろいのですよ。判決は「個人企業は会社企業等と異り、経営者個人を離れて別個独立の存在を持つものではなく、あくまでも経営者個人に従属するものであるから、経営者個人がその企業を通じて挙げ得る利益は総て経営者個人に帰属し、将来の得べかりし利益の喪失についてもその理を異にしない。」いいですか、大きく言えば、基本的に言えば主税局長がとっている態度はこの態度なんです。そうでしょう。経営者個人が稼いたものは経営者個人で、分離できないんだ、だから特殊な場合にだけ自家労賃をごく少額認めるだけで、あとは全部事業主の所得として事業所得をかけるのが正当なんだという考え方はこういう考え方になるんです。これがこの判決の二審の考え方なんです。  それを最高裁は「原判決の見解は驚くべき非常識なものと言わざるを得ない。」こう言っているんですよ。大分前の話だけど、日本の最高裁判所は、大蔵省の考えは実に非常識なものと言わざるを得ないと。  蓋し、資本主義経済においては個人企業といえどもその企業の営業上の利益は、企業管理者の智識能力をも含む個人的労務によるもの、外に資本の活用・資本の利子・老舗・商標権・特許権・営業免許権などによる資本的収益が含まれるのみならず、更に店舗の規模、場所的利益等の物的設備、従業員の智能労務等の人的組織による各収益が含まれており、これらが全体として有機的に統合結集されて営業的活動をなし営業の全収益を産み出しているものである。 こう言いまして、いろいろ議論をして、結局その事業主本人が自分の努力によって、自分の経験、特殊なことによって、そして生み出したものがその人の得べかりし利益なんだ。だから、特別にその人が亡くなったために事業がもう全部できぬようになったと、特殊な技能を持っている人もおりますね、そういう場合は別がもしらぬけれども、それ以外はそういうように考えるべきだということで、これを労務価額説と言うのですが、そのことで二審の判決に比べると損害額は非常に減額された。つまり、個人事業者でもその稼いだものが全部自分の所得だということはないと、こうなっているのです。  で、えらい長くなりましたが、そういう考え方からいいますと、シャウプ勧告来とってきた世帯主単位ということで、自家労賃の、それが事業者本人であろうと、生計を一にする家族であろうと、その労働力寄与分を経費として認めない、所得税法五十六条に明文でそうなっているわけです。そういうのはおかしいんじゃないんですか。法人の場合はそんなもの、オーナーの社長であろうと何であろうともらっているし、自分の長男を働かして、うちの二階に置いておっても、堂々と給料をもらっている。それを個人企業の場合には引かない。幾らやっても四十五万、四十七万しか引いてやらないというようなことは、これは新憲法の、世帯が単位ではなしに、個人個人として尊重されるという考えから見ればおかしいんであって、あなた方は、それが不満なら法人になりゃいいじゃないか、青色申告の承認を受ければいいじゃないか、そういう道があるのにやらないんだからそれは白色てしょうがないと言いますけれども、それはそうではなくて、白色が法人になれないには資本の関係や何かいろいろ理由もあるんだから、法人であれ青色であれ白色であれ、業務形態が相似ている場合には税法上それほど大きな差異のないような手段をとるのが当然じゃないですか。私は外国の法制も調べてみましたが、そこでも、アメリカ、イギリスその他でも、一定の限度はありますよ、家族の場合には契約書がきちんとしておることが必要だとか、その支払われる賃金が世間の常識から離れたものではいかぬとか、時間が、きちんと働いているとか、そういう条件が書いてあります。  ちなみに言っておきますけれども、それも全部引用しようと思ったけれども時間がないからやめますが、私が今言ったことの理論的な問題は、泉美之松さん、よく御存じでしょう、あなた方の大先輩で国税庁長官が、「税についての基礎知識」という定価三千八百円の本にちゃんと書いておられるんですよ。私はそれを勉強して、ある意味では受け売りしながら、最高裁判例など若干新しいこともつけ加えて、正森理論で申し上げておるわけで、だからあなた方の先輩も考えておられる議論を言っておるんですよ。  私は、もちろん今度のこの法案の改正でどうこうしろと言ったって、それは無理でしょう、残念ながら我々も少数派ですし。少数も少数、一人ですからね。ですけれども、やはり高木さんは、中長期的というようなことをさっき言っておられましたけれども、そういう点はやっぱり考えてみる必要があるんではないかというように思います。主税局長は、技術的に今できませんと言われると思いますが、羽田大蔵大臣、もし弁護士的なわかりにくい議論も一部はおわかりいただけたとすれば、判例が難しいのはよくわかっておりますし、御感想などお伺いして次に移りたいと思います。
  158. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに私どもも先ほど局長の方からお答えしたあれを持っておったわけでありますけれども、いずれにいたしましても、我が先輩たちですとか、あるいは最高裁判所の判例ということでありますから、高木さんのお話でも中長期的にといいますか、やっぱり長い時間かかるかもしれないけれども勉強してみるということだったろうと思います。勉強さしていただきます。
  159. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 非常に刺激的な新しい課題を与えていただいたという感じがいたしますが、今のお話を伺っておりまして一つだけ私どもの今気づきますところで、主税局長といいますか、主税局の立場におります者としまして申し上げておきたいなと思いましたのは、シャウプの議論というのはあくまでも個々の納税者を単位として所得税を課税するという、そういう制度転換を志したものでございますから、基本哲学はまさに正森先生がおっしゃったような方に向かっていたはずでございます。ところが、それが議論の果てに今のような仕組みになった理由は何かということだと思います。  これはちょっと想像がまじって恐縮でございますけれども、結局個人事業というのは家族の協力によって成り立つものでございますから、事業主から支払われます。その家族への対価、つまり家族の労働報酬はいかばかりのものか、その認定というものが非常に難しいものでありまして、したがって別の言い方をしますと、基本的な個というものに着目した物の考え方の上に税の技術的要請というものがかぶさりまして、やむを得ずといいますか、今のような処理になっている面があるのではないか、そこが基本じゃないかなという気が一ついたします。  それから、外国でも先生おっしゃいましたように確かに青白の区別なく、日本であれば白に該当するような方もそういう控除を受けているではないか、一定の限界はあるけれどもとおっしゃいます。そのとおりだと思いますが、それはなぜそうなっているのかなということを今考えたんでございますけれども、ヨーロッパの場合でございますと恐らく賦課課税制度になっていると思います。アメリカは申告制度でございますけれども。そういうような納税形態の違いというようなものもあるのかなという気がいたします。  いずれにしましても、先生にそれだけ詳しい御説明をいただきました上に、時間もかしてやると言っていただいているわけでございますので、若い人たち一緒に中で勉強してみたいと思っております。
  160. 正森成二

    ○正森委員 それでは次に移らしていただきます。  証券局長においでいただいておりますので、ごく簡単な質問ですが、御質問したいと思います。  最近の報道を見ますと、我が国の企業というのは配当性向の上で非常に問題がある。きょうの産経新聞には、長岡東証理事長も景気への影響が懸念されるというようなこともひっつけて言っておられるんですね。  それで、今後の時価発行増資は、税引き後利益に対する配当の割合、すなわち配当性向三〇%以上を満たしており、増資後も三期は三〇%以上を投資家に公約した場合に限ることを日本証券業協会の規則として明文化することにした、同協会は十四日に決定し、新年度から実施する云々という記事がございますが、この問題について簡単な御答弁をいただきたいと思います。
  161. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘のように、日本の法人の配当性向は非常に低いわけでございます。欧米では大体五〇%を超えているわけでございますが、日本の場合には昨年でも三〇、これは利益が減って若干上がっております。それ以前は二五ぐらいだったわけでございまして、現在、今御指摘のように証券業協会を中心にいたしまして、特に時価発行増資などの株式関係の資金調達を行う企業に対して要請をいたしますルールを策定して作業をしている最中でございます。その基本的考え方は、今新聞報道にありました点、まだ最終的な決定には至っておりませんけれども基本的にはやはり配当性向をこれ以上落とさないという考え方を基本にしたいというふうに考えておりまして、そうなりますと、今申し上げましたように、現在、昨年度で三割でございますので、三割ぐらいの配当性向をぜひ維持していただきたい。  ただ、企業もいろいろございます。急成長している小さな企業もございます。そういった若干の、いろいろケース・バイ・ケースで考えなきゃいけない点はございますけれども、やはり基本的には時価発行ということで時価で資金調達をするわけでございますから、せめて、得た利益のうち株主に還元する部分の割合であります配当性向を行く行くは欧米並みまでには持っていくようなことを考えてもらいたいというのが私どもの希望でございまして、その一歩として今申し上げたようにルールづくりを、ほとんど最終局面に来ておりますが、来月中にもルールをつくりたいというふうに思っております。
  162. 正森成二

    ○正森委員 これは同僚委員も先ほど引用されたかもしれませんが、日本経済新聞の二月七日号に大学の先生が「低配当政策に決別を」という論評を書いておられます。その中の数字なんですけれども、我が国は額面を基礎にして一割配当とか八%配当とか、あるいは一割二分とかいうことを基本にするわけですね。ですから、それは非常に低いもので、この記事では「法人企業の最近六年間の平均配当率は八%であるが、発行価格(時価)で計算される配当利回りは、わずか〇・六七%にすぎない。これは、欧米の三-五%にはるかに及ばない。非所有者の経営者はこの〇・六七%配当利回りを資本の調達コストと思い込むであろう。」こう言っているのですね。つまり、株主が主人公であるという考えではなしに、これを資金の調達コストというように考えて時価発行で価格を高くして、調達コストが安くなればそれはもう結構なことだというような考え方になっている。そして、配当性向が低いから内部留保は多くなります。  それ以外に、今度は引当金の問題であとしばらく質問いたしますが、そうなると、内部留保が非常に多くなれば株価が上昇するのは当たり前なんですね。それで、おまけに奥村宏教授などが言われる法人の持ち合い制度がある。そうすると、市場に出回る株が少ないから、わずかの買い操作によって株価は上昇する。その上がったところで時価発行をするから、時価発行したときは物すごく高くて、安いと思われる資金をふんだんに入手したが、しかもこれは配当しなくていいんですからね、資本に組み入れなければ。それで金がだぶだぶ余って、それを財テクで株で運用してみたりいろいろして、バブルを発生させるということもやったわけで、あの論文でも批判されている日本資本主義の一種の弱点でもあります。  だから、そういうものを考えてなくしていかないと、東証の理事長が心配しているような問題が起こってくるということを申し上げておかなきゃならないと思うのです。共産党の私がそんなことを言うのもおかしな話ですけれどもね。今のようなことをやっておると資本主義に対する信頼がなくなってくるんですね。余り信頼があり過ぎて我々の出番がなくなっても困るのですけれども、私たちは直ちに資本主義を変えようとは思っておりませんで、悪い点を民主的に規制してよくしていくということでございますので、こういう質問もしているわけであります。  そこで大臣、今度法人税法の改正の問題が出ております。主税局長に伺いたいのですが、これは言ってみれば税額に対する付加税的な形をとっておりまして、四百万の控除で二・五ですね。そうしますと、中小企業も対象になるのですが、これは調査室などでも計算しておられると思うのですが、中小企業のうちどれぐらいが今度の増税の網にかかりますか。
  163. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 大まかに申し上げまして、今度四百万円に控除額が引き上がりました後の状態で申しまして恐らく二割ぐらい、全体の二割ぐらいの中小企業がそれにかかるかどうか。
  164. 正森成二

    ○正森委員 二三%じゃないですか。
  165. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 黒字の中小企業のうちの二割ぐらいということでございますね。全体の中小企業の中で、これは前々からまた別の意味でいろいろ問題を提起していただいておりますけれども、赤字法人が非常に多いという問題がございます。まず半分以上小さいところは赤字でございますから、その上での話でございます。
  166. 正森成二

    ○正森委員 私が調べたところでは、三百万円のときなら上位二八%、それが四百万になると二三%というように聞いておりますが、まあいいです。大体二割ぐらいということですから当たらずといえども遠からずで、大体そんなところです。しかし、それが増税の対象になります。  私は、それは税収が足りないからというので、今までの湾岸戦争のようなものは一たん廃止して新たに設けたんだという建前ですけれども、そういう方策をとられるよりは、税率はそのままにしておいても課税ベースを広げることによって増収を考えるというのが税制の正道ではあるまいかということを前々から申しているのです。私どもは、もちろん今の三七・五というのは前の、一番高い四三・三までいきましたかね、それに比べるとうんと下がってますので、少なくとも四〇%以上にせよ、あるいは所得に応じて税率の差異をつけよとかいろいろ言っておりますが、そんなことは今は申しません。ですけれども、課税ベースがあれやこれやで非常に浸食されているということが重大な問題だと思うのです。  それでは、資料はお配りいただいているようですから、その資料に基づいて卑見を申し上げたいと思いますが、我が国は大臣、非常に課税ベースが少なくなりまして、私ども調査では、引当金や準備金はアメリカやイギリスは二種類しかないのです。フランスが五種類で西ドイツが十種類ですが、日本は二十七種類もあります。その結果、これは一九八五年度ベースですが、資本金百億円以上の大企業の実質法人税負担率は三一・四%で、資本金五千万から一億円の中小企業の三七・一%より六ポイントも低くなっているわけであります。これはやや古い資料であります。  そのうちで法人税本法、租特ではなしに本法で規定されている貸倒引当金、退職給与引当金、賞与引当金、製品保証等引当金、特別修繕引当金それから返品調整引当金、六種類の引当金を認めていることは御承知のとおりであります。これを全部一々言うとあれですが、その中の、主税局長は何よりもよく御存じですが、大口はここで出しておきました三つですね。貸倒引当金と賞与引当金とそして退職給与引当金であります。  そこで伺いますが、貸倒引当金は実際の実績と法定繰り入れ率は随分差があるのじゃないですか。時間の関係で申しますと、例えば金融保険業は千分の三が法定繰り入れ率ですが、実績率は、これは予算委員会に提出された資料ですからね、六十年から平成元年の五年間の平均は千分の一ですね。つまり、三分の一です。それから卸小売業は千分の十に対して実績は千分の五、それから割賦小売業は千分の十三に対して実績は千分の四、製造業は千分の八に対して実績は千分の二というように、おおむね三分の一から二分の一以下が実際の実績であります。それから、退職給与引当金はどうかといえば、これは昭和六十三年十月十七日の委員会で、皆さん方の先輩の水野主税局長が、おおむね一〇%から二〇%の間というのが実情でございます、こう答えています。そのとおりですね。
  167. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 正森先生、大変恐縮でございますけれども、ここに水野主税局長の答弁としまして、おおむね一〇ないし二〇の間という数字がございますが、ちょっとこれ、ずっと前を読み返していけばわかるのかもしれませんが、この議論は、要するにこれは退職給与引当金の限度に対します繰り入れ実績ということでございますか。
  168. 正森成二

    ○正森委員 退職給与引当金は、洗い直しじゃなしに積み立てでしょう。
  169. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 そうです、一定の限度まで。
  170. 正森成二

    ○正森委員 だから、全従業員が一度に退職するとした場合は、初め五〇%だったのが、それが四〇%でしょう。そういうあれから言うと一〇か二〇だという、こういう意味です。――それは積み立ての一〇-二〇という意味じゃないですよ。
  171. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 その一〇-二〇というのは何に対して一〇-二〇ですか。
  172. 正森成二

    ○正森委員 つまり、全従業員が一度に退職したとする四〇%が法定繰り入れ率の限度でしょう。それが本当は一〇か二〇だという、こういう意味だと私はとっているのです。
  173. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 今の御説明でわかりましたが、毎年金員がすぐ退職した場合の想定される金額を出して、それに対して現実に積まれている金額の比率ということだと思います。申しわけありませんけれども、その計算は私、今手元に持っておりません。おりませんが、御指摘のように、今の累積限度四〇%というのは当時と変わっておりませんので、それほど変わってないと想像いたします。
  174. 正森成二

    ○正森委員 水野主税局長が昭和六十三年に答弁していることであります。それをごく控え目に言いましても、法定繰り入れ四〇%が実績は一〇ないし二〇だということになりますと、多い方の二〇をとっても法定繰り入れ率は倍以上あるということです。これはもう水野さんの答弁を見ても明らかなところであります。何かまだ異論がありますか。
  175. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 異論というわけではございませんけれども、要するに、今やっております四〇%という率は、平均在職年数というものを前提といたしまして、それぞれある一定の期間勤務いたしました人たちは退職に向かって一歩近づくわけでございまして、その近づいた間に見合います分を積んでいく、積んでいきますと、いよいよ現実に退職しますまでに随分時間がございまして、その間の金利を割り戻すと申しますか、計算をして累積額を決めるというルールになっております。したがいまして、在職期間が変わっていけばこの率は変わってくるということでございますけれども、近年、毎年点検はいたしておりますけれども、その率は大きくは動いておりませんものですから、このような今のような状況にとどめておるわけでございます。
  176. 正森成二

    ○正森委員 だんだん時間がなくなってきましたので、一応、予算委員会に提出された貸倒引当金の法定繰り入れと実績率、これは大蔵省が出したものですから、それから退職給与引当金というのは水野主税局長が答弁されたものであるということで、それを前提にいたしますと、それでこの各委員に差し上げました資料を説明させていただきます。  この貸し倒れ、賞与及び退職給与の三引当金というのは、引当金の中で大宗を占めております。これを見ていただきますと、一九八九年の貸倒引当金の一番上の欄を見ますと三兆九千五百八十億円、これは全法人であります。真ん中が資本金十億円以上で、二兆四千八百八億円。賞与引当金、これも同じであります。退職給与引当金は、全法人が十一兆五千六百六十三億円、資本金十億円以上が八兆一千百九十億円であります。それを全部合計いたしますと、一九八九年で二十二兆二千二百七十八億円であります。これだけが課税ベースから外れているわけであります。  私どもは、これを全部やめろとは言いません。そのために今言っているわけです。実績率も言ってある。しかし、大体、貸倒引当金の場合は二分の一ないし三分の一以下である。退職給与引当金の場合は二分の一以下である。そうしますと、仮にこれを諸外国のように、委員長いいですか、諸外国の場合は、こんな事前に引当金を認めているというような制度アメリカやイギリスなんかでもないのです。多くの国は、実際にそういう事故が起こった場合に、必要が起こった場合にはそれはもちろん全額、これは当たり前の話でありますが、それを事前に無税で積み立てていく、それも実績よりも二倍も三倍も積み立てる。結局、それは企業がさまざまなことに運用できるのですからね、財テクにだって運用できる。退職給与引当金に至っては、一生懸命それで運用して、企業内部に持っていればいいということで、企業外に積み立てるのじゃないから、本当に倒産したときは退職給与引当金はどこにもないというような例だってあるのです。それを、仮に実績に従って法定繰り入れ率を二分の一にする。そうしますと、実際の実効税率は、いろいろありますが、法人税にそれから地方税が加わりますから、それを入れますと大体五〇%です。そうすると、二分の一の二分の一ですから四分の一、それだけ課税ベースが広がって税収がふえるということになるのです。理論的にはそういうことなんです。今、我が意を得たというように大きくうなずかれましたから……。私から見て、主税局長が大きくうなずかれました。  それから見ますと、一九八五年のところを見てください。一番下の合計欄は十六兆六千八百八億円。仮にこれを十六兆円とするでしょう。この時点で法定繰り入れ率を二分の一にする。そうしたら、実効税率は五〇%ですから、これの四分の一、すなわち四兆円税収がふえることになる。一遍に四兆円も取ったら企業は困るだろうというので、これを五年で取るということになれば八千億円ですね。しかし、この中には中小企業が入っているから、真ん中の資本金十億円以上ということにしても十兆円ありますから、この四分の一といえば二兆五千億円、五年だったら五千億円ずつ税収はふえるということになるのです。 その上、多くの議論は、こういう引当金というのは今あるものを一回限り崩すだけで、崩してしまえばもう税収はないというのが多くの人が言われるところなんです。ところが、そうじゃないのですね。これを見てください。「(a)-(b)」という一番最後の欄があるでしょう。これは一九八九年の数字から八八年を引いたものです。そうすると、全体では一兆八千七百七十四億円、資本金十億円以上の法人企業だけでも一兆九百二十三億円あるのです。これだけ一年間でふえているのです。  さらに、きょう主税局から資料をいただいて、これは一九八九年までですが、一九九二年の予算委員会に提出するものをいただきましたら、貸倒引当金がふえております、五千九百九十八億円。退職給与引当金は三千八百二十八億円、賞与引当金は八千八百八十一億円ふえて、全体で一兆八千七百七億円ふえております。
  177. 太田誠一

    太田委員長 正森成二君に御注意申し上げます。持ち時間を五分オーバーいたしております。
  178. 正森成二

    ○正森委員 もう時間ですね。はい、終わります。  ということは、毎年毎年課税ベースが一兆八千億円も全法人の場合はふえておる。それから十億円以上の場合も一兆はふえておる。そうすると、これに四分の一をかければ二千五百億円が毎年毎年入るということになるでしょう。そういうことをやるべきじゃないですか。  終わります。答えてください。
  179. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 引当金制度は、申し上げるまでもなく、企業の所得計算をいたしますときに、費用と収益の対応をきちんと考えます上で必要な手法と心得ておりまして、長い間、歴史的に論議されまして、今我々が運用しておりますやり方というのが合理的なやり方だと思っております。これは政策税制ではなくて、いわば所得計算上当然のこととして考えられるものと言ってもいいかと存じます。したがいまして、その額が大きくなるというのは、ある意味におきまして企業の規模が大きくなってくれば当然のことでございます。  ただ、そうは申しましても、それらのそれぞれの引当金というものが設けられております目的に即応して運用されるためには、毎年点検をする必要があると考えております。ことしも貸倒引当金につきましては、例えば先生は先ほど金融機関について実際は千分の三の引き当て率があるけれども実績は千分の一ではないかとおっしゃいました。そのとおりでございます。これに着目いたしましていろいろ議論もいたしましたけれども、金融機関が今直面しております状況、こういう状況からいたしましたときに、一体今発生しておりますいろいろな不良債権の山というものがどの程度の結果に終わるのか、その法定繰り入れ率の水準としまして妥当な水準というものをどう見きわめればいいのかということは、慎重な議論を要する問題だというふうに考えまして、そういうような点検の結果、貸倒引当金にしましても賞与引当金にしましても、また退職給与引当金にいたしましても、現在の制度がまずことしの場合は妥当であろうというふうに判断したということだけ御報告しておきます。
  180. 正森成二

    ○正森委員 相続税についても伺いたいと思いましたが、時間が参りましたのでやめさせていただきます。済みませんでした。
  181. 太田誠一

    太田委員長 中井洽君。
  182. 中井洽

    ○中井委員 最初に、過日の委員会で大臣の所信に対してお尋ねをしましたときに、冒頭、本会議の財政演説と大臣の所信表明とを比べて、所信表明の中の第三、「調和ある対外経済関係の形成と世界経済発展への貢献」の項で、一番に財政演説で載っております日米首脳会談の問題が抜けておる、どういう理由だ、こうお尋ねいたしましたところ、大臣は、財政演説の中で抜けておると思ってお答えになられた、こういう答弁でありました。私は時間がなかったものですから、訂正せずに、再質問せずにそのまま質問いたしました。きょうは少し時間をいただきましたので、この点を重ねてお尋ねをし、答弁を御訂正いただきたいと思います。
  183. 羽田孜

    羽田国務大臣 財政演説を行いましたのは一月二十四日の時点でございました。G7はまだ未開催でございまして、この中では一月八日、九日に行われた日米首脳会談に言及したということでございまして、その後一月二十五日にニューヨークでG7が開催され、日米首脳会談におきまして話し合われた内容を土台として議論が行われたところでございまして、そこで、二月四日の大蔵委員会での所信の中では、直近に開催されたG7での議論について言及することとしたものでございまして、先般二月十九日の大蔵委員会でも、こうした趣旨のことを御答弁申し上げたところでございます。
  184. 中井洽

    ○中井委員 国税庁にお尋ねをいたします。  昨日国会で共和事件の証人喚問、参考人招致が行われました。またその席で法務大臣から捜査の終結、こういう報告がなされ、後は裁判ということになるわけであります。  私どもこの中で、ここは倫理議論する委員会じゃありませんので、関心がございますのは、あの目をむくような金額をもらったと言われております阿部文男議員、あるいはまた昨日二千万円をもらったことを国会でも証言なさいました塩崎議員、そして一千万円おもらいになった鈴木元総理、これらの人たち税金がどうなるのかということを私はお尋ねしたいと思います。当然こういう事件でありますから、国税庁は御関心を持ってもう調べられておるのか、あるいはこれから調べられるのか、まずお答えいただきます。
  185. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 個別にわたる事柄でございますので具体的なコメントは避けたいと思いますが、一般論として申し上げますと、あらゆる情報、新聞情報等も含めましてあらゆる情報等を我々常に注視しておりまして、そういう情報に基づきまして適正な調査等課税の適正な執行を図るよう努力したいと思っております。
  186. 中井洽

    ○中井委員 それは裁判が終わってということでなしに、捜査が終わったから、国税としては、一般論で結構ですが、十分対応できる、このように考えていいですね。
  187. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 一般論として申し上げているわけでございまして、新聞等の情報等があれば我々は絶えずそれをキャッチし、それに基づいて絶えず適正な執行に努めるということでございまして、個々の案件について捜査がどうとかなんとかというコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  188. 中井洽

    ○中井委員 これも個々の件でお答えいただけないのかもしれませんが、どうしてもわからない点がありますのでお答えいただきたい。  二千万円もらった方が、二年間預かっておいて、そして二年後に個人の所得で修正申告をなさる。これが大変世間から糾弾をされるようなお金。そういうときにも、これは国税の常識からいけば重加算税とか罰則的なものは一切つかない、個人が修正をしたらつかない、このように聞いていますが、事実ですか。
  189. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 一般論として申し上げますと、修正申告書が提出された場合には、その修正申告書が自主的に行われたものかあるいは税務調査を察知して行われたものか等によって違いがございまして、後者であれば、察知して行われたということであれば、過少申告加算税を課する、前者であれば、過少申告加算税は課されないということでございます。
  190. 中井洽

    ○中井委員 もう一点は、このお二人の方がおられる。同じ経過で、同じような趣旨でお金を二千万、一千万とそれぞれおもらいになる。片一方は二年間預かっておいて返して、返しだ人が猫ばばしたものでもう一遍返して修正申告をした。もう一人の人は一千万もらって二年間預かって返した。この人は修正申告しない。ここらはどういうふうになるんですか。
  191. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 個別の案件はコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、仮に一たび課税関係が決定されて課税処理が終わってしまったものについて、たとえ後からそれを返還したとしてももう課税関係の処理は終了したということになります。
  192. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、この一千万もらって返した人も当然修正申告をなさるべきだと私ども理解をいたしますが、それでいいですか。
  193. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 これも一般論でございますが、金品等を預かったということでは課税関係は生じません。
  194. 中井洽

    ○中井委員 二年間預かるなんということがあるんでしょうか。この共和の問題に関して、お答えにくいことは承知をいたしておりますが、政治不信のもとであります。一般のまじめに納税をされている人、こんな理屈では到底税務署が許してくれずに課税を受けられている方が全国何百万とおります。そういった人たちと平等な税務調査、課税、こういったものがきちっと行われるように強く要望いたします。返事してください。
  195. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 一般論として繰り返しになりますが申し上げますと、それが預かり金である限りは課税関係は生じない、ただ、事実として預かり金ではなかったということになれば、課税関係は当然生ずるということになります。
  196. 中井洽

    ○中井委員 時間がありませんので、きちっと捜査をしていただくことを強く申し上げて、ほかの問題に移ります。  冬季オリンピックが終了をいたしました。日本はかつてない好成績で、私どもも大変喜んだ次第であります。この大会でメダルをおとりになった方々へは、今回からJOCが、金メダルは三百万、銀メダル二百万、銅メダル百万円、こういう報奨金を出す。金メダルをとられた方々も現代っ子らしく極めて率直に、自動車買うんだとかうれしいんだとか言われております。また、JOCの報奨金だけじゃなしに、他にも競技団体か後援団体からお金が出るやに聞いております。アマチュアスポーツとこういうお金ということを云々というよりも、現代でありますし、世界の情勢から見たらこういったことはふえてくる。しかし、逆に考えてみますと、この人たちは大喜びで帰ってまいりますが、帰ってきたら当然課税対象になるんだと思いますが、いかがですか。
  197. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 所得税制から見ますと、報奨金という収入が現に生じたわけでございますので、その収入に応じた相当の負担をしていただくということは、現行制度上やむを得ないことでございます。  ただ、報奨金のみならず、いろいろな機会にいろいろな形で金品を収受される方々に対して、そんな方々まで税金を負担していただくことがいいのかどうかということは、過去いろいろな場合に論議になってまいりました。しかしそれは、今所得税法第九条に法律の条項として限定して書かれておりまして、これはよその国においてもそうでございます。ノーベル賞の受賞金でも課税されている国もございます。
  198. 中井洽

    ○中井委員 これから言おうとすることを先に答えられたのでは大変やりにくいのでありますが、大臣、私はこのオリンピックのメダル、日本もそんな無数にとれるわけじゃありません。こういうのをおとりになって浄財の中から報奨金をおもらいになった。日本ではこれだけが名誉、また努力に対する報酬であります。そういう意味で、オリンピックのメダルに対する報奨金ぐらいは課税対象から外す、法律があるのなら、超党派でもそういう法律をつくって課税対象から外してやるべきだと私は思います。自民党さんでは何かサッカーのトトカルチョまで考えようかというようなことでありますから、その前にアマチュアリズムのこういうオリンピックの新しくできた報奨金制度について、ぜひ大臣としてこういったことをお考えいただきたいと思いますが、いかがですか。
  199. 羽田孜

    羽田国務大臣 今、もう既に主税局長がお答えしたとおりでございまして、心情としての気持ちはよくわかるのでございますけれども、法の中でそれが定められているということであります。ただ、今回の報奨金につきまして、所得税法上の一時所得される収入から五十万円を控除した上で二分の一に課税されるという考え方で、普通の勤労者所得とは、比べまして軽減されておるということは申し上げることはできると思います。
  200. 中井洽

    ○中井委員 重ねて言いますが、先ほど申し上げたような、政治家がお金を裏でもらう、それは税金がかからない、こういう明るいすばらしいものには税金がかかる、これでは庶民はなかなか納得しない。大したことではないんだし、大いなる喜びですから、ぜひ、私どもも機会あるごとに言いますが、お考えをいただきますようお願いをいたします。  次に、先ほどから御議論のございましたいわゆる三つの証券会社の飛ばしの問題であります。同僚議員からもう既に詳しく論議が行われましたので、重複を避けた意味で幾つかお尋ねをしたいと思います。  まず確認をしたいと思いますが、コスモ証券、山種証券、大和証券、これらの調査をいつまでに終えられるのか、また、他の大手の証券でもこういう問題があるのかないのか、きちっとお調べをいただき御報告をいただけるのかどうか、この二点、御返事をいただきます。
  201. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 この報道されております三証券会社につきましては、一部はまだ裁判が行われ、始まったものもございますし、あるいは裁判上の和解が成立したり民事調停が成立したというようなものもございます。私ども、この中身につきまして、和解が成立し、あるいは調停が成立したものにつきましては、証券会社を通じてこの事実関係あるいは当事者の言い分などを聞いて、それがどういう事実関係で、その中にどういうふうな証取法上の問題があるかという点についての検討をしたいと思っております。ただ、民事訴訟が行われているものにつきましては、この訴訟の推移を見る必要があろうかと思います。  また、ほかにこういう例がないかという点でございますが、これは率直に申し上げまして、ないということを申し上げるだけの自信はございません。簿外で会社に無断で行われ、会社が把握できないというような形で行われたものでございます。したがいまして、各証券会社に対してこういったような事実、こういうようなものがないかどうかという点について、特に法人の取引の担当者あるいは場合によっては相手方法人というようなものとの照合といいますか、チェックをすることによって、こういった問題が潜在していないかどうかという点をより詳細にチェックをするということを各社に要請をしているわけでございまして、率直に申し上げまして、こういう株式が低迷状態にあって、ここで起こっております問題は、いわゆるバブルといいますか、株式が非常に好調だったときに行われた取引が下落によって巨額の損失を生じ、それが含み損として存在してこういうような取引が繰り返されたわけでございますので、今のような株式の低迷状況の中で、こういった類似の行為、トラブルというようなものが全くないということは考えにくいわけでございまして、より一層各社に対して、今申し上げたようなことで、できるだけ早くそういう潜在化しているものについて会社として把握するように、この事実把握を進めさせたいというふうに思っております。
  202. 中井洽

    ○中井委員 やがて証券の制度改革の法律を審議しなければなりません。その審議までにきちっと私どもが論議できる資料をお出しいただきますよう、委員長にもお願いを申し上げておきます。  同時に、本当に聞くたびに、どこまで続くぬかるみぞという歌がありましたけれども、そんな感じでございまして、私ども、補てん問題での論議、あれだけやりながらこういうことがまだ起こるのかという思いもいたします。証券法違反の問題については、先ほど仙谷委員から御指摘がありました。それらの点も含めて十分御調査いただきますよう、お願いいたします。  この中で幾つか確認をとりたいのですが、いわゆる現先取引というものですね。これ、わからないのですが、これは債券をもとにしたものだったらやってもいい、証券だったらだめだ、こういうことになっておるのかどうかということが一つであります。  それから、先ほどお話が出ました証券会社の外交員、外交員、外交員といいますが、みんなその証券会社の大幹部であろうかと思うのでありますが、この人たちが会社と会社の金融を仲介できるのか、これは私はできないと思うのであります。そのことについてどう思われておるのか。  それから三つ目、補てんを禁止する法律をつくりましたときに、相手先の企業、証券会社の相手先、取引先の認識の問題で随分論議が行われて、私どもはやむを得ずああいう形で賛成をいたしました。しかし、こういう一種の補てんがまだ行われておって、しかも公然と相手も認識をしておる。こういったものが幾つも出てくるわけであります。そういう意味では、あの補てんを禁止しました法律改正はやはり甘かった、相手先に対する罰則、こういったことをもう一度議論し直すべきだ、こんなことを痛感いたしますが、大蔵省、いかがですか。
  203. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 まず最初のお尋ねであります。  いわゆる現先取引、これは条件つき売買と言っております。ある人が買い戻し条件つきで売却するという証券取引行為でございます。これにつきましては、先般、損失補てんの禁止の法律改正を行いましたときに、この現先取引といいますのは、一定の債券を売りまして、証券を売って、一定期間後に一定のあらかじめ決めた価格で買い戻すわけでございまして、形式的には補てん行為に当たるというようなことで、そのうちで特に純粋の金融取引と考えられます債券を対象としたといいますか、債券を使った条件つき売買については損失補てん行為の除外として法令上明確にしたわけでございます。したがいまして、債券以外のもの、例えば株式ということになりますと、これはそういう条件つき売買にそもそもなじむ証券ではございませんので、そういうものの現先取引は証取法上は補てん行為の例外としては認めておりません。  それから、営業マンが金融仲介行為ができるかどうかという問題がございます。証券会社の営業マンはもちろん証券取引行為を、証券取引の投資勧誘を行うのが本来の使命でございますが、証券会社の場合には間々ファイナンスカンパニーなどに依頼して融資あっせんを行うという行為がございます。この行為は果たして適当かどうかという問題があるわけでございますが、行き過ぎない限りにおいてはそういう行為は認められているわけでございまして、したがいまして、営業マンが融資、金融の仲介、あっせん行為をするということを一切禁止しているということはございません。ただ、今回のこのケースのように、会社に全く無断で、しかも、ほかの企業との取引の仲介をするというようなことは、その証券会社の営業マンとして適切な行為であるというふうには考えられないわけでございまして、会社としてもそういうような行為を容認するということは当然ないわけでございます。  それから、取引先の認識の問題がございました。今回の場合には、いわゆる含み損があります有価証券を企業間で直取引で転々と売買といいますか、あるいは条件つき買い戻し、現先取引というような形で行われているわけでございまして、それがある企業から先に転売先がなくなったという段階でこの問題が起こったわけでございまして、その場合に仲介した証券会社の営業マンに対して企業が損害賠償請求をする、あるいはそれが代表しております証券会社に対して損害賠償請求をしたわけでございまして、このケース自体は補てんというよりは、むしろ我々としては、証券会社の使用者責任を追及する損害賠償請求であるというふうにとらえております。  損失補てんの問題につきましては、証券事故は一応大蔵大臣の確認を得て、それは補てんに当たらないという扱いになっておりますし、それから裁判上の確定判決がある場合にも、これは損失補てんに当たらないということになっているわけでございます。裁判上の確定判決の中に裁判上の和解あるいは民事調停上の和解も入っております。そういう手続は私は必ずしも詳しくはございませんけれども、一応第三者である裁判官が認定をしてそういう調停あるいは和解を行うということで、公正な和解なり調停が行われることを前提にしているわけでございます。民事調停の場合ですと、裁判官は調停手続を乱用するようなものについては調停を拒否できるというようなことになっておりまして、法律違反、つまり補てんを免れるためにそういう調停手続を利用するというようなことについては、我々は裁判官がそういうものは受けないという前提で、こういうものは補てんではないということで法律上の手当てをしているわけでございます。  したがいまして、今御指摘がありました取引先がこういうものを要求することはどうかということでございますが、確かにトラブルが生じて民事責任を追及、使用者責任を追及されたわけでございますけれども、今申し上げましたような公開といいますか、公正な第三者が入った場でそういう手続が行われるということで、みだりに損失補てんが行われることにはならないということで、公正な解決が確保されるという点から、補てんではないという扱いにしているわけでございまして、補てんについて、この前、証取法改正でお願いいたしました相手先の認識の問題とか証券会社が補てんをする場合の問題と、今回の場合には、一応公正な裁判官を中心にして調停とか和解が乱用されないという歯どめのもとで認められているものでございまして、直ちに前回の証取法の補てん禁止の改正が不十分であるということにはならないのではないかと考えているわけでございます。
  204. 中井洽

    ○中井委員 この問題等はまた制度改革のときに論議をさせていただきますが、いつも証券局長の御答弁を聞いていて思うのでありますが、二つお願いがあります。  一つは、証券会社の一セールスマンあるいは外交員がやったという話が必ず入ってこられる。テレビ等を見たり、一般の国民質疑を見て一番わからないのはそれなんですね。一外交員とかセールスマンと言うと、本当に肩書も何もない、外で株のお仕事をなさっている方のように聞こえる。しかし、現実にこういう問題をやっていらっしゃるのは、肩書もつき役職にもある人たちだ。ここら辺の言い方をもう少しお考えをいただきたい。  もう一つは、大蔵省から御説明を聞いたりいたしましても、常におっしゃることは、株価が上がり続ければこういうことは出なかったんだ、こればかりなんです。株みたいなのは上がりっ放しのはずがないじゃないですか。それは下がることもある。だから、上がっていればこういうことは起こらなかったんだという言いわけがいつもちらちらと衣の下から出てくるような感じがいたします。大分局長さんも御答弁になれられてずうずうしくなられたのかどうかわかりませんけれども本当に私どもみんな日本の金融市場の中心の証券市場の健全化あるいは公平化、透明化、こういったことを望んで言っているわけであります。大蔵省がその責任の一番ポイントにあるわけであります。そういった意味で、去年の補てんのときのような気持ちあるいは対応を忘れずにお取り組みをいただきたい、このことを、言わずもがなでありますが申し上げておきます。  続いて、地価税の問題についてお尋ねいたします。  これもいろいろと議論のあったところであります。私どもの党でも、この地価税創設につきまして随分議論、異論が続出をいたしました。最終的に賛成をいたしました。しかし、その中で私ども意見集約をいたしましたのは、固定資産税の評価をきちっとやっていくんだ、これが一つ。それから、附帯決議に盛られたような事項をきちっと実行してもらうんだ、これが二つ。これらあわせて初めて土地対策としての地価税というのは何らかの役を果たすんじゃないか、こういう思いで法案に賛成をいたしました。そういった意味で、今地価税をめぐるいろいろな論議がありますが、この二つのことがいつも条件つきで言われない、地価税だけで言われる。大変残念に思います。  自治省にお尋ねいたしますが、この土地対策、そこから出てきた地価税、これをめぐる論議の中で、かなりいろいろな答弁等で固定資産税の評価、これを七割とはおっしゃいませんでしたけれども、七割に近い形で全国的にやっていくんだ、これが暗黙の前提条件になっておりますが、これらの評価の見直しについて全国的にどのような状況で行われておるのか、お知らせをください。
  205. 堤新二郎

    ○堤説明員 お答えいたします。  平成六年度の次回の固定資産税の土地評価におきましては、土地基本法第十六条、これは具体的には公的土地評価相互の均衡と適正化を図るということでございますけれども、こういった土地基本法第十六条の趣旨なども踏まえまして、また、地価公示制度そのものにおきましても適正化が図られるということを前提といたしまして、地価公示価格の一定割合を目標に評価の均衡化、適正化を図るということにいたしておりますけれども、この地価公示価格の一定割合の具体的数値につきましては、その後いろいろと研究会を設けましたり、また、実際に評価を行います市町村あるいは都道府県との間で十分意見交換を行いました結果、固定資産税の税の性格あるいは地価公示制度の趣旨、そういったものが、やはり違いがありますので、一元化するということはできないわけでございますけれども、そういった趣旨、あるいは昭和五十年代の地価安定期におきましては固定資産税の評価が大体地価公示価格の七割程度までいっておったわけでございます。そういったことを踏まえまして、地価公示価格の七割程度を目標に評価の均衡化、適正化を進めたいというふうにしたところでございます。  このような基本的な考え方に基づきまして、現在地方団体にその趣旨の徹底等を図っておるところでございますけれども評価評価でこれは適正化に努めるといたしましても、現在の評価水準から考えますとかなりの評価の上昇になります。一番問題になりますのはそれの税負担でございますので、評価がえの作業が円滑にいきますためにも、税負担に急激な変化が生じないように、これは総合的かつ適切な負担調整措置と言っておりますけれども、これにつきまして十分検討していきたいというふうに考えております。
  206. 中井洽

    ○中井委員 私どもは、その固定資産の評価、七割に近い形の評価というものに向かうのはなかなか大変だと承知をしております。それゆえにこの地価税の効果も疑問視をいたしまして、附帯決議の中に、どうしてもということで三年を目途にできるだけ早期に行う、見直し、検討をということを入れたわけであります。どうぞそういう意味で、あわせて一本だということで御検討をいただきますようお願いいたします。  自治省、一つだけと言ったのですが、もう一つありますから残ってください。  先ほどからこれもまた議論が出ましたが、当然二千億に及ぶ財源、来年度はもう少しふえるわけでありますが、この財源を減税あるいは土地対策、こういうものに使うんだ、こういうことで附帯決議が行われました、先ほどから二千億土地対策に使ったというお話がありましたけれども、具体的にその二千億をどれだけ新しい制度の補助金として使ったのか、土地対策に使ったのか、あるいは従来の土地対策に幾らずつ上積みをしたのか、一般財源として使ってないというのなら、それをきちっと御説明を賜りたいと思います。
  207. 小村武

    ○小村政府委員 平成四年度予算におきまして大変厳しい財政状況、税収動向でございましたので、私どもこの地価税の財源につきましても有効に活用させていただきまして、土地対策に対する経費といたしまして一義的にこれを特定することは難しいのでございますが、あえて新規施策等を盛り込んだ経費を単純に合計いたしますと、四年度におきまして六千五百億円の経費を計上したわけでございます。  四年度の地価税の純増収額につきまして、対前年度との関係ではそれだけふえてないじゃないかという御指摘であろうかと思いますが、厳しい財政事情のもとでこうした経費について重点的に充当したというところで御理解を願いたいと思います。
  208. 中井洽

    ○中井委員 一度きちっと説明に資料を持ってお越しください。  もう一つお尋ねをいたします。これもきのう少し出たかと思うのですが、地価税の実行に当たって今国税は準備をなさっておるわけでありますが、準備の状況をお聞かせいただきたい。  それからもう一つは、奥行き逓減を廃止されたと聞いております。この奥行き逓減を廃止するというのは、私どもは地価税を論議していますときに二千億という金額をお聞かせいただきましたが、奥行き逓減でやるということは入っておったのか。決まってから出てきたんじゃないかと思います。そうしますと、かなりの、二千億を上回る増収が出てくるんじゃないか、こういう感じを抱いております。土地の値段が下がったと言われますけれども、売買実例が都会ではありませんから、実際には国土法の半値八掛けでも土地は売れない、こういう状況になっております。公示価格、評価価格というのは土地の売買実例がないために高いままに張りついておる。したがって、二千億というのが入ってきて、その上に奥行き逓減廃止でもっとお金が入ってくるんじゃないか、こう思いますが、いかがですか。
  209. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 まず御指摘の地価税の準備状況でございますが、新税であることを考慮しまして、制度の円滑な定着を図り、最初の申告までの間に納税者が地価税について正しく理解し、みずから適正な申告と納税をしていただけるような環境づくりをすることが基本的に重要だと考えております。したがって、この期間内にまず広報体制の整備ということを行います。それから、土地等の保有状況に関する資料に基づきまして、申告案内対象者を的確に把握するというようなこと、さらに標準地の増設、路線価地域の拡大等を図る、あるいは地価税法の解釈基準と土地等の評価評価基準を明らかにするための所要の通達改正を行うというような措置を講ずることによって、納税者が自主的、適正な申告が行われるように準備を進めているところでございます。  それから、御指摘の奥行き逓減率の補正でございますが、これは地価税ということではなくて、現在の奥行き逓減率は昭和三十九年の通達に基づいてなされているものでございますが、御案内のように、現在では例えば地上げ屋がやってきて広い面積の土地を持った方が有効活用できるよというようなこともございまして、我々財団法人日本不動産研究所に、一体これはどう評価すべきかということをかねてから検討をお願いしてきたわけでございます。その結果として、従来例えば繁華街高度商業地区という一つの区分であったものをもっと区分をし直すべきである、これはビル街地区、高度商業地区、繁華街地区に分けるということにすべきであるというような報告をいただき、その中で例えばビル街地区、丸の内のようなビル街地区については奥行き逓減をする必要はないのではないかという御報告でございます。と申しますのは、改正前でございますと、例えば百メートル四万の土地が奥行き逓減率がかかって六一%の評価になる、ところが十メートル四万の土地になりますと、そこにはビル等は建ちませんけれども奥行き逓減はないということになります。ところが、改正後は、前者については奥行き逓減はないけれども、後者については九二%まで評価を下げるというようなことでございまして、これは地価税ということよりも、従来からの昭和三十九年設定以来の相続税の評価通達に問題があったということで手直しをしたわけでございます。  それからその次に、売買実例等が非常に高い事例があるのではないかという御指摘でございますが、我々は相続税評価基準、個々の地点の評価基準を作成するに際しましては、地価公示価格、取引価額、民間精通者価格というものを参考にして決定しているわけでございます。その際、御指摘の異常に高値で取引がされたというような異常値、これは排除して評価することにいたしております。
  210. 中井洽

    ○中井委員 お尋ねしたのは、奥行き逓減の廃止を計算せずに地価税の金額を大体二千億とはじいたんでしょう、こういうことを申し上げているわけです。だから、もうちょっとふえるのと違いますか、こういうことであります。
  211. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 評価の見直し作業というものがどのようなことになるかということが、大体私どもの方にも聞き及んでおりましたものでございますから、地価税収を計算いたします場合に、この奥行き価格の補正率も含めまして計算しておりまして、今回二千億円という先ほど御指摘ございました計算の中には含まれていると考えていただいて結構であります。
  212. 中井洽

    ○中井委員 自治省にお尋ねをいたしますが、固定資産税評価のときにも奥行き逓減というのは行われているんだと私は理解をしておりますが、国の相続税評価でこれを廃止する、こういう形になっていろいろな制度をつくるようですが、自治省として固定資産税全般もそういう形にされるお考えですか。
  213. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 その前に、先ほど申し上げましたように、奥行き逓減率すべて廃止するということではございませんので、そこだけ。
  214. 堤新二郎

    ○堤説明員 昨年末におきまして相続税の基本通達が改正されましたことについては承知をいたしております。また、その趣旨が、昭和三十九年以来改正されておらずに、最近の土地取引の実態を踏まえて改正された、特に宅地の画地計算等につきまして改正されたということは十分承知をいたしております。  現在は、私どもの固定資産評価基準、これは自治大臣が告示をいたしておりますけれども、この固定資産評価基準につきましても、従来ですと相続税の基本通達と固定資産評価基準とは同じ画地計算等を用いておりますので、相続税におきましてそういった基本通達が改正された趣旨を踏まえまして、まだ方針は決めておりませんけれども、改正内容を精査しました上で、所要の見直しをせざるを得ないというふうに考えております。
  215. 中井洽

    ○中井委員 それでは自動車の税のことについてお尋ねをいたします。  たびたび申し上げておるわけでありますが、約束どおり大蔵省は平成三年で六%の消費税を廃止する、そして税収が厳しい折だから新たに自動車だけ四・五%お願いをすお、こういう法律であります。私どもは、一たん廃止をするんだなとたびたび確認をとってまいりましたが、一たん廃止ですと。同じようなものでありましょうが、それは大事なことだと私は思います。ところが、大蔵大臣の本会議等の答弁を聞いていますと、パーセントを下げたと、実に簡単にお答えになっていらっしゃる。パーセントを下げたことでやったんではない。これはやはりきちっと附則にのっとってやめたということをいつの場でも言っていただきたい。そういったことが私は信義だと。結果的におっしゃるような気持ちもわからないわけではありません。私どもはそこのとこみは非常に、こだわるわけではありませんが、大事な問題と考えておりますし、またこれからいろいろな附則や約束が守られるかどうかという問題にもなってくる、こういうふうに思いますので、重ねてお答えをいただきます。
  216. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘のとおりでございまして、今の法人につきましてもあるいは自動車につきましても、そして石油臨時、これをあわせて失効させたということであります。
  217. 中井洽

    ○中井委員 この自動車の税金は二年間ということになっております。二年たったらやめるとも何とも書いてありません。二年特例であります。これは二年で終えるんですか。このように終えると私ども理解してよろしゅうございますか。
  218. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 今回お願いしておりますのは二年間の時限措置でございまして、二年間の時限措置としてお願い申し上げているということに尽きようかと思います。
  219. 中井洽

    ○中井委員 これは私どもが法案に賛成するか反対するか、大変重要なポイントにもなっております。どうしても自動車だけやるんだ、こう言ったら、財源が足りないから、これだけであります。自動車、そんなに売れているわけでもありませんし、自動車自体大変な税金が課せられて、消費者は世界でも本当にびっくりするほどの自動車の税金を持たされて使っているのであいます。自動車はぜいたく品でも何でもありません。全くの必需品で、自動車がなければ本当国民生活活動というものは一切行われない。その自動車を動かすのにも石油、ガソリンにまた大変な税金がかかっておる。こういう状況の中で、財源が足りないから、自動車はかつて六%取っておったんだから四・五ならいいじゃないかということで、お金が足りないからと言われてやる。これは私どもからいくとどうしても納得ができない。なぜに自動車だけなんだということもあります。それを二年間、これは三年でやめるというのをやめて二年間。それをまた今のような答弁で、木で鼻をくくったように、二年、了解してますなんて言われて、はいそうですかと下がるわけにもまいらないのも事実であります。もう少し誠意を持った答え方をしてください。
  220. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 ただいま先生から伺いましたようないろいろな状況というものがございますことを私どもも十分念頭に置いて、今回この審議にも臨んでいるつもりでございます。私の申し上げ方が意を尽くしていなければ大変申しわけないことだというふうに存じます。中井先生の私どもに向けて示しておられます御意向というものは十分私どもも受けとめて、中井先生の我々に向けておっしゃっていただいておりますことは十分頭に置いて、今後この税法の審議の過程でいろいろな御意見も承り、今後に臨みたいというふうに思います。
  221. 中井洽

    ○中井委員 それじゃそれぐらいでやめて、ほかへ移ります。  パート減税の問題でお尋ねをいたします。何回も委員会で過去議論がなされて、それなりに御苦労いただいて対応していただいているのを承知いたしております。また、これをもっとやるということになれば、税制全体、大変な問題になるということも承知いたしております。しかし、その上でまだ大臣にお尋ねを申し上げたいし、意見も言いたいと思います。  それは、私どもどこへ行きましても、中小企業からの陳情の一番はこのパート減税百万というのを何とかしてくれという話ばかりであります。ここのところ少し景気が冷え込んでまいりましたから何とかやりくりできるかと思うのでありますが、日本を支えている中小の企業、しかも大企業の下請の大半はパートの人たちで構成されております。このことは、いい悪いは別であります。そして、そのパートで働く人たちがもう何年も働いておる、主力だ、仕事はめちゃくちゃに忙しい。しかし仕事をやってもらおうと思ったら、もう百万円でみんなやめちゃう。あるいは逆に言えば、これを乗り切ってやろうと思ったらどうするんだ。調べられないことをいいことに、他人の名前でぼんぼんパートを払ったことにして実質的には一人の人に渡す、こういう格好も行われておる。国税庁に調べよと言っているのではないのですよ、調べてもらったらえらいことになりますが。あるいはパートの人たちは、逆に百万円になったらやめちゃう、そして近所の工場へ行っちゃう、そして調べられないことをいいことにまた百万円まで働く。こういう格好でやりくりをしているというかインチキをしているというのが現状であります。このパートの人たちがきちっとやってくれる、レベル高く働いてくれるからこそ日本の経済というのは強いのであり、頑張れるのであります。いろいろな方向転換の話も出てまいりましたが、これからもまだ数年間はこのパートの人たちの不足あるいは税金の問題、これが一番中小企業にとって頭の痛い問題であります。制度とか数字とかいうことじゃなしに、それを超えた中で政治的に何かお考えをいただかないと中小企業経営者はもたない、私どもはこのことを痛感をいたしております。大臣、いかがお考えですか。
  222. 羽田孜

    羽田国務大臣 これは例のパート問題と言われておった問題とはもう違った次元でのお話だと思うんですけれども、いずれにいたしましても、パートで働いていらっしゃる御婦人でございましても、一人で年間百万円を超えられる収入を得ているのでございましたら、やはり御主人の被扶養者としてではなくて、独立した納税者として相応の負担をしていただくべきであろうと思っておりまして、これ以上の非課税限度を引き上げるということになりますと、まさに税負担の公平の面から問題があろうと思っておりまして、今先生から御指摘の点は、このパートの減税の問題とは別問題として考えていかなければならない問題じゃないのかなというふうに思います。
  223. 中井洽

    ○中井委員 もしそういうことであるならば、税金ということについて、あるいは所得に課税をされるということについて、あるいは実際にどれぐらい働いてどれぐらいで御主人の控除も含めてどういうふうになるんだということを働いている女の人たちに説明をしてやらないと、到底それは大臣の言うような形にはならない。もうみんな、百万円以内ならかからない、だからその百万円以内のところへ行くんだという形でもう転々とされる。中小企業は、せっかく育てたパートの人がすぐやめちゃう、上からはどんどん仕事をせいと言われる、それじゃもうやめるんだ、中小企業やめちゃう、こういう形が地域にそれぞれ出ているのが現実であります。言うだけじゃなしに、あるいは税金を取るだけじゃなしに、そういう形で私もきちっとした雇用になって税金をお払いいただければいいと思います。しかし、それはそれで、税金を払ったことが一回もない女性にとっては大変おっかないことなんですね、おっかないことです。だから、それらをきちっと説明する制度等をやはり、大蔵省の所管ではないでしょうが、国税庁、中小企業庁も含めてリードすべきだ、私はこのように思いますが、いかがですか。
  224. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 また一つ大事な御提言をいただいたような気がいたします。  率直に申しまして、中井先生、一昔前までは、あるところまで収入が達しますとやめていく、それは税金のゆえであるということを私ども直接聞きました。それはなぜかというと、それ以上働くと世帯としての収入が減るからでございまして、くどいようでございますけれども、今はそれはないはずなんでございます。ないはずだから、たくさん働けば働くだけ歩どまりはあるはずなんでございますが、それでもなおということがよくわからなかったんでございますが、よくよく私どもまた耳を傾けてみますと、むしろ家族手当でございますとか、あるいは健康保険でございますとか、そういうものが今そういう機能、たまたまかつてのパート問題を再現しているところがあるのではないかという気もいたします。そのあたりは誤解を解かなければいけません。それを何か税の問題と一緒にくるめて言われているような感じもちょっといたします。どういう形で皆さんに知っていただいたらいいか、私どもの持っている手段というものも限られておりますけれども、今の御提言を生かすように考えてみたいと思います。
  225. 中井洽

    ○中井委員 最後に、大臣にこの政治改革の面からお尋ねをいたします。  選挙制度やらそういう政治改革というのは、この場の論議ではありませんからいたしません。大臣政治生命をかけて頑張られたのも周知の事実であります。今大蔵大臣となられました。私は、大蔵大臣として政治改革というのをやることは幾らでもあると考えております。先ほど午前中の池田議員との議論の中で、行政の中へ入ってみると大変緻密にやっていらっしゃる、それはそれですばらしい組織だというお話もございました。私は、それはそのとおりだろうと思います。しかし四十年同じやり方、同じ発想、そして同じ政権党ということで、補助金の制度あるいは政治の仕組み、随分停滞しておるのがある。本当は私どもは政権交代をと、こう言えばいいわけであります。現状はこれは御承知のとおりであります。しかし、それじゃ今の自民党政権が続くから、今のような補助金体制で本当にいいのか、世界がこれだけ狭くなって、世界から日本に対する要求がどんどん来る、そのときに今のような補助金の仕組みで対応できるのか、こういったことを含めてお考えをいただきたい。  私どもは前々から、例えば補助金制度というのはサンセットにすべきだ、十年なら十年やって期限で切ってしまうんであって、もう一遍やるにしても二年ぐらいの間は置くべきだ、こういうことを提言してまいりました。例えば沖縄振興だとか北海道の何だとか、何十年やっていくんだろうという思いもあります。やはり十年なら十年と切って効果を一遍考える、そういった制度ということも一遍お考えになるべきじゃないかと思います。  特にやっていただきたいのは、大蔵省は予算を配分する、しかし配分はなさるけれども、その結果、本当に経済効果、地域への貢献といったものを図ってらっしゃるのか。前に橋本大蔵大臣質問したことがありますが、四国へ橋をつくる、結構なことであります。だけれども三つも要るのか。その一つ目の橋自体も本当に出された予想自動車量、通行量をはるかに下回っている。そういう形で日本じゅうみんな一緒になるまではやるんだといってやっておったら東海道の税金を納めているところはたまらない。税金ばかり払っている。ここらをやはりお互いに議論をしながらいじっていかないと、補助金と政権党とのつながり、またそこから来るいろいろな情けない話、こんなこともなかなか消えないのじゃないか。私はふだんから考えております。党としては、それは北海道にも議員があれば四国にも議員がおりますから、こんなことを言うたら、ぼろくそ怒られますが、しかし、これはやはり言わないと、税金の効果的な、有効な使い方はあり得ないと思うんです。そういう意味で、大臣のお考えを一度お尋ねをいたします。
  226. 羽田孜

    羽田国務大臣 きょうは本当に建設的ないろいろな御意見をいただいたことをまずお礼を申し上げたいと思います。  今御提言のございました、ともかくもう長いこと続いたものについてもう一度見直す、そういった姿勢というものをとらなければいけないのじゃないかというお話でございまして、実は昨年暮れのいわゆる平成四年度の予算案を組みますときにも皆様方といろいろとお話ししたわけでありますけれども、やはり定着したものというものがあるはずであります。しかし、何かそういったものが既得権みたいになってしまっているものがある。そういうことで、全部ともかく、まあ手を突っ込むという言い方はいけないんですけれども、ともかく全部の補助金とかそういったものについて洗い直してほしいということで、相当各省とぎすぎすぎすぎすした話し合いを実はいたしておりまして、中には、確かに一遍に切るということは難しいということで、少しやりましょうというものもあったのです。それから、こういったものは今度は認めるけれども、こういったものを提言したんだから、ひとつこれから見直していただきたいということも実は申し上げておるということでありまして、もう御指摘のとおりであろうと思います。そうじゃないと、もう財政が完全に硬直してしまうということを恐れなければいけないと私は思います。  そして、ことしの新年のごあいさつでも役所の皆さんに申し上げたのですけれども、古きをたずね新しさを知るというあれがありますが、私の場合にはむしろ、古きをたずねながら新しさをつくる、温故創新というぐらいのつもりでひとつ対応していただきたいということを申し上げたところでございます。  今御指摘のことは全く私たちとしても、これは与党がどうのというよりは野党皆さん方からも、この補助金削ることは絶対ならぬぞと、やはりしょっちゅう怒られることがあります。これは私自身も、実はいろいろなものの議員連盟の会長などをやっておりまして、今まであっちだこっちだ、これが一番大事だ、あれが大事だと言ってきたんだけれども、まあそこで今度、削りなさいと言うんだから、実はつらいなという話をしながらやってきたんですけれども、やはりもう一度、手法とかいろいろなものも含めて見直しのときが来ているだろうということを私たちは知らなければいけないと思っております。
  227. 中井洽

    ○中井委員 それは私どもももちろんそうでありまして、人様には削れ、自分のだけは残せというわけには到底いきません。やはり選択の順番あるいは重要性、こういったものをはっきり論議しながらこの補助金制度のあり方、ぜひお考えをいただきたいし、政治改革であれだけの案をつくられた大臣でありますから、ぜひとも、まず自分の省庁でその権限を発揮されて頑張っていただくように再度激励を申し上げます。  と同時に、この間も少しお尋ねをしたわけでありますが、今もこの見直し、削減、予算についてやったと言われました。それから予算の説明の中におきましても、一般経費等は去年を上回らないという形でやって、これだけの伸びで抑えたというお話がございました。しかし、去年の、例えば三年度の補正予算、ここで節約というのは実際は七百三十億だ、残り千七百億ほどはいわゆる使わなかった予算、それで五千億余りは国債の利子が下がったんだ。すると、七十兆の予算で七百億円しか節約できないというのは、民間企業やら一般家庭から見たら全然考えられない。それが国の予算であります。しかし、やり方によってはもっと節約できる部分はある。こういう景気の中で増収策に苦労されるのも結構です。しかし、まずお互いがやはり使い道を減らす、ここらに主眼を置かないと、いろいろな税制というのはなかなか国民理解を得られないのじゃないか、あるいは私どもの姿勢も問われる。そういったことも含めて御努力を賜りたいと思いますが、最後に御意見を承ります。
  228. 羽田孜

    羽田国務大臣 もうその点何も議論申し上げることもなく、全くそのとおりであろうというふうに思っております。  いずれにいたしましても、まずやはり出るを制すということが一番大事なことだろうと思います。ただ、私ども今度取り組んでみまして難しいなと思いましたのは、ここのところ経常経費につきましてはずっとマイナス一〇%ということで、シーリングをかけながらずっとやってきておるということですから、何だかんだといってバブルの時代にもそういったものについて削減する努力はしてきたんだなということを今、実は改めて思わされておりますけれども、さらに私どもとしても十分意を尽くしていかなければいけないと思っております。
  229. 中井洽

    ○中井委員 終わります。
  230. 太田誠一

    太田委員長 次回は、明二十七日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十四分散会