○
宮澤内閣総理大臣 先ほどから上原
委員から、いろいろな角度からこの
法案につきまして
憲法との
関連でのいろいろな点を御
指摘になりました。それで、これは従来何度がに分けてお答え申し上げていることでございますけれ
ども、改めまして考えているところを、
政府の所見を申し上げたいと存じます。
まず第一に、
自衛隊がこの
平和維持活動に
参加することについて、
自衛隊そのものが違憲であるという、仮にそういうお立場であるとすれば、これは従来何度も申し上げておりますが、また何度も御議論のあるとおり、
政府は
自衛隊というものは違憲ではないというふうに考えておることをまず申し上げたいと思います。
次に、
国連の
平和維持活動そのものについての見方でございますけれ
ども、これも何度か申し上げておりますが、もとよりこれはいわゆる
国連の
平和維持隊が発砲をするというようなことになれば、しばしば関係者が言っておるとおり、それは交戦当事者をもう
一つつくるということにすぎないのであって、発砲をするようではこの
国連の
平和維持活動というのは失敗である。発砲をしないということ、
国連の権威と説得力によってこれを行うということがこの
活動の
本体である。それであるがゆえにノーベル賞をもらったこともあるということにつきましては御
理解を得たいというふうに考えるわけでございます。
しかし、そうではございますけれ
ども、そのような使命に対して、
活動に対して
我が国が参画するということにつきましては、我々の独自の
憲法を持っておりますだけに、その点は幾つか留意をしなければならない点があるということがいわゆる五原則等々の形でこの
法案の中に盛られているわけでございます。
その
一つは武器の使用に関することでございますが、上原
委員は先ほどからしばしば武力の行使ということを言っておられるわけでございますけれ
ども、私
どもは武力の行使というものと厳密な意味での武器の使用というものを分けて考えておりまして、この
法案において武器の使用というものは、この
平和維持活動に従事する者が自分の身に危険があったときに自衛をするということについてのみ武器の使用が認められておる。そのことは、武力の行使にわたりませんようにわざわざ
国連の標準コードよりも極めて厳しく武器の使用を認められる場合を限っておるわけでございます。それは五原則の
一つとして御承知のとおりでございます。これは、万一にも自衛のための武器の使用と思われるものが武力の行使にわたってはなら
ないという配慮からなされておりますことは御承知のとおりでございます。
もう
一つ、局面の展開いかんによって我々の
平和維持活動についての参画をやめなければならない、中断をし、あるいは撤退をしなければならないということもいわゆる五原則の独特な点でございますけれ
ども、これはもし誤りますと
平和維持活動の名のもとに、相手方がだれであれ、それとの武力衝突に陥るおそれが生じますれば、これは武力の行使というふうに見られる危険がある。したがって、そういう危険はあくまで排除しなければならないという意味で、
国連とわざわざ話をいたしまして、我々としては中断あるいは撤退ということを我々独自の判断で、連絡はいたしますけれ
ども行うことがあるというふうに申しておるわけであります。
つまり、もう一度申しますならば、
国連の
平和維持活動というのは、本来武力行使ではないわけでありますけれ
ども、その行き着くところが、個人の自衛からさらに超えて武器が使われる危険がある、あるいはまた、
平和維持活動が妨害されて、これを排除する行為が武力行使になるおそれがある、その
二つのおそれを排除いたしますためにわざわざ
法律にこのような規定を設けておる。
これはもう重々御承知のことでございますけれ
ども、改めて申し上げましたゆえんは、我々の
憲法に違反をするというようなことはいささかもありませんようにこの
法律を注意深く書いてあるということでございまして、世論で十分な
理解がないために、何か
自衛隊がよその国へ出かけていく、それはかつて
我が国がしたことではないかというようなことがございますけれ
ども、御承知のように、これは交戦当事者たちがもう
戦争をやめるという
合意があって、それが前提である、しかも
国連がその要請をせられて、後の平和の維持をするために要請に基づいて出る、その
国連からの要請を我々が受けて、そのような条件が成就いたしましたときに、つまり関係者が全部これを歓迎するということ、そして
平和維持活動が中立的に行われること、そういう場合にのみ、しかも、それでもそれを承諾するかしないかは
我が国が独自に判断をいたすべきことでございますから、そういう意味で、過去において
我が国が陥ったような過ちを犯すということは、まことに、再々、絶対にあり得ないということを十分
法律に担保しであるということを重ねて申し上げたいと存じます。