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1992-05-26 第123回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年五月二十六日(火曜日)     午前十時十三分開議 出席委員   委員長 麻生 太郎君    理事 新井 将敬君 理事 鈴木 宗男君    理事 浜野  剛君 理事 福田 康夫君    理事 上原 康助君 理事 土井たか子君    理事 遠藤 乙彦君       小渕 恵三君    唐沢俊二郎君       鯨岡 兵輔君    古賀 一成君       長勢 甚遠君    松浦  昭君       五十嵐広三君    井上 一成君       伊藤  茂君    伊藤 忠治君       川島  實君    藤田 高敏君       古堅 実吉君    和田 一仁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 渡辺美智雄君  出席政府委員         防衛施設庁総務         部長      竹下  昭君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務大臣官房文         化交流部長   木村 崇之君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 佐藤 行雄君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         文化庁次長   吉田  茂君  委員外出席者         環境庁企画調整         局地球環境部企         画課長     濱中 裕徳君         環境庁自然保護         局計画課長   橋本善太郎君         環境庁自然保護         局野生生物課長 菊地 邦雄君         外務大臣官房審         議官      野村 一成君         外務大臣官房審         議官      小西 正樹君         大蔵省関税局輸         出保税課長   花井 伸之君         文化庁文化財保         護部伝統文化課         長       渡邉  隆君         文化庁文化財保         護部記念物課長 吉澤富士夫君         外務委員会調査         室長      市岡 克博君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   川島  實君     田並 胤明君 同日  辞任         補欠選任   田並 胤明君     川島  實君 同月二十日  辞任         補欠選任   唐沢俊二郎君     戸塚 進也君   古賀 一成君     齋藤 邦吉君   和田 一仁君     大内 啓伍君 同日  辞任         補欠選任   齋藤 邦吉君     古賀 一成君   戸塚 進也君     唐沢俊二郎君   大内 啓伍君     和田 一仁君 同月二十六日  辞任         補欠選任   古堅 実吉君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   三浦  久君     古堅 実吉君     ――――――――――――― 五月十四日  子ども権利条約全面的批准等に関する請願  外一件(上原康助紹介)(第一九三八号)  子ども権利条約批准と実行に関する請願  (古堅実吉紹介)(第一九三九号) 同月二十一日  児童の権利条約批准に関する請願東順治君  紹介)(第二二九〇号)  同(江田五月紹介)(第二二九一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月二十日  竹島の領土権の確立及び同島周辺海域における  漁業の安全操業確保に関する陳情書  (第七  五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  世界文化遺産及び自然遺産保護に関する条  約の締結について承認を求めるの件(条約第八  号)      ――――◇―――――
  2. 麻生太郎

    麻生委員長 これより会議を開きます。  世界文化遺産及び自然遺産保護に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤忠治君。
  3. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 まず初めに議事運びについて委員長の方に取り計らいをお願いしたいと思うのですが、十時から始まるやつが十五分延長しているのですね。これで私の持ち時間が、十一時十五分までですから十五分短縮ということになりますね。その時間の確保をしてもらえますように、そのことをまず委員長見解を伺ってから質問に入ります。よろしゅうございますか。
  4. 麻生太郎

    麻生委員長 よろしゅうございます。
  5. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 そうしましたらお聞きしますが、十五分の持ち時間の分は、短縮された分はどこで保証いただけますか。最後でも結構です。私、順番を言いませんので、例えば、きょうは本会議がありまして、一時十分までは休憩なんですね。川島委員が一時半からやりますね。ですから、この枠組みは変更できないという御事情でしたらそれは私は結構でございますから、一番最後にでもつけていただければありがたいと思います。私の持ち時間は一時間十五分でやらせていただきたいな、こう思っておりますので、どうでございますか。
  6. 麻生太郎

    麻生委員長 正確な時間割りは後ほど御返事を申し上げますが、午後の始まる冒頭なり最後なり何らかの形で時間を確保させてい丈だきたいと存じます。
  7. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 それは協議して決めていただけますか。
  8. 麻生太郎

    麻生委員長 はい。
  9. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 ありがとうございました。  そのことを前提にいたしまして、まず初めに外務大臣に、この条約に入ります前にお尋ねをいたします。  つまり見せしめ発言なんですね。これは二十四日に福岡のたしか地元財界セミナー出席をなさって、そこで思うところを述べられた。その発言の中身が、見せしめのために解散をせよ、こういうことのように私は承っているわけですが、これは大臣承知かどうかあれですが内外に大きな反響を呼んでいると思うのです。大変国民の間では、私たち地元なんかにしょっちゅう入っておりますから聞くのですが、外務大臣といえばこれは日本外交政策をつかさどる直接の責任者であります。言うならば副総理でございますから政府の極めて重要な責任のある立場に立たれている外務大臣が、国会運営の次元で国対のやりとりがございましてトラブル発言があったというならまだしも、政府の要人の立場で、しかもこの問題は恐らく意図されているのはPKO法案をめぐる思いをこのことに関連させて発言をされたのだろうと私は思いますから、これは大変なことだろうと思うのです。  見せしめのために解散というのは一体どういう論理なんでありましょうか。私は思うのですが、外務大臣本音というのは、つまり思うように自分たち一定の枠の中で大体言ってくれる人はいい、その箱の中に入ってこない人間が国会の中でがたがたするんだったらこれは許せぬ、やってしまえといえような、そういう権力者の発想があるんじゃないですか。この見せしめという言葉は、言うことを聞かぬやつは力でやっつけよう、大体そうだと思いますよ。一般にそういうふうに使われますよね。だから、言葉をかえていえばそれは断罪者立場じゃないですか。  国会というのは政党中心運営がやられていると思うのですが、大きな政党であろうと小さな政党であろうと、言うならば審議を堂々と尽くして、そして議会というのは議事運営は運ばれていくものだろうと私は思っております。つまり、どんなに数が大きくても小さくてもその政党には一定支持者がございまして、支持を得て国会に出ている国民の代表、言うならば最高の立場でやられているのだと位置づけられていると私は思っておるのですが、そういう中で審議をやられたことに対して政府立場からそういうものも言われるというのは、これは到底納得できません。  しかも、政府立場に立つならば、むしろ国会運営十分議論をして一定合意点を図るようにやっていってくれぬかな、もちろん政府から出した法案というのがそのまま通っていけば政府立場としてはそれにこしたことはないのでしょう。しかし、言うならば国民の世論を受けた格好国会審議国会の場が設定されているわけですから、その場でさまざまな議論が出るのはむしろ当然じゃありませんか。そうならば、円満に国会議論が行われて合意点が見出されていくということをむしろ尊重する立場政府はあるんだろう、私はこう思うのですが、そういう点から考えますと明らかにこれは越権行為じゃないのか、このように言わざるを得ません。  大臣大臣立場でPKO問題を考えて、外務大臣として責任ある立場法案を出されているんだろうと思いますが、このPKO問題、一言触れさせていただきますが、私はこう思っているわけです。  国連中心にして、加盟国ができる範囲で精いっぱい努力をしようと。そして、アジアで言うならばカンボジアの人々が、和平を回復したい、新しい政権を一日も早くつくりたいと。戦後復興に向けて住民の願いを一身に受けた、そういう戦後復興に取り組んでいく体制をつくってやりたい、一人でできなければ国連がやっていこうというのでUNTACが生まれて、各国も、加盟国も、それぞれのできる範囲で精いっぱいやっていこうというのが基本じゃないでしょうか。私は国際貢献はそういうものだと思うのですね。  例えば、一つの町内に例をとれば、ある御家庭が非常に困っておみえになる、ではみんなで助けていこうじゃないかということになった。ところが、ある家庭では夫婦げんかが起こって、どういう助ける方法があるのかというので議論が高じてけんかになった。援助を受ける方も本当にそれでうれしいのでしょうか。  私は卑近な例を出してこう言うのですが、それじゃいかぬと思うのですね。みんながそれぞれの立場でできる範囲のことを精いっぱいやってくれたということがあって初めて、助けてもらう人だって、これはありがたい、では自分たちの二本足でしっかり立って、さまざまな課題が山積しているけれどもこれから再建のために頑張っていこうやという、そういう勇気というか主体性というものがそこから生まれてくるのではないでしょうか。私はそう思っているわけでございます。  ということになれば、我が国が二つに分かれて本当にけんかを始めるというか、喧騒をきわめるというか、そういう状態ではなくて、国民が、この範囲だったらみんなが一緒にやっていけるじゃないか、そういう国民合意。私たちがよく言うのですが、それは周辺国合意も必要でしょう。しかし、国内の各政党が、まずこの段階からやっていこう、国民もそれはいいじゃないかということを一段一段積み上げていって、国際貢献の場で、あれも足らなかったな、これをどのようにこれから充実させていこうかという議論が、一定程度実績を積み上げた上で、言うならば次の課題に取り組んでいくという姿勢に変わるんじゃないでしょうか。私はそういうものだと思うのです。  ところが初めから、政府はこう考えているんだ、だからこれでなければいかぬというふうに固執をされたら、どうしたって国会審議というのはぎくしゃくすると思うのです。ボタンのかけ違いだと私が言いましたら、それは大臣立場からすれば見解の相違だと言われるでありましょう。そのことは言わないにしても、私は国際貢献の基本的なスタンスというのはそこに置いて取り組まないと、どうしたって、日本には日本の国情がございますからね、一挙にそのことが何もかも政府の思うように、あるいは与党の思うように話というのは進まないだろう、こう思っております。  ところが、大臣としてはいらいらされて、では見せしめのために解散せい、これは問題のすりかえでしょう。そんなことが通るのだったら、日本議会制民主主義なんというのは吹っ飛んでしまいます。このように思いますが、大臣の本当の気持ちをきょう冒頭に聞かせていただきたいし、私たちとしては、この見せしめ発言は撤回していただきたい、こう思っております。  どちらでも結構ですが、大臣本音を語っていただいてひとつ内外に明らかにされた方が、大臣は次がある方でございますから、そういう重要な方がこういう発言をされるということは、とてもじゃない、国民や我々、党にとっても本当にこれは問題だと思いますので、その点をはっき力していただきたい、かように思います。
  10. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 我々も、政府原案というものはいろいろ考えた末につくったものでございますから、これは最善なものであると思うのは当然でございます。しかしながら、国会法律審議するわけですから、そこで国会の多数の方がそれは修正されるべきものだということになれば、その修正範囲が我々の意図するところから全くかけ離れてしまったのではそれは賛成するわけにはまいりませんが、しかしながら、そういう考えもあろうというようなことで同意できる点であれば修正に応じる、それはやむを得ませんという立場をとってきております。  したがって、法律案は随分参議院などで修正をされて成立するという例はたくさんございます。このPKO法案につきましても、御承知のとおり衆議院段階で、ある年限がたったらば、そこでもう一遍継続するかどうかについて国会で見直すという趣旨修正がなされました。我々は反対をしておったのでございますが、国会の多数がそうであるならばやむを得ないということで今日に至って、参議院に来て議論が交わされておる。  参議院の中でもいろいろ議論がありまして、もう新聞に出ておるとおり、一口で言えば民社党側からは、国会承認事前承認というものをぜひ入れてくれ、そうすれば賛成の余地がある、こうおっしゃっておるわけです。それから公明党の側からは、要するに、いわゆる任務遂行に当たって武力行使があり得るかもわからないと心配される法案の中のあのイからへというところですね、捕虜の交換とか武器の回収だとか地雷の撤去だとかいろいろ、直接な軍事行動といいますか、そういうようなところを俗に言う凍結をして、当分凍結してもらいたい、こういう議論が出ておりまして、政府としては、それは今賛成というわけにまいりませんということを言っておるわけです。  しかし、党と党の間では交渉事が行われておるということは新聞に載っておるとおりでございます。政府はそれについて意見を求められれば、何らかの意見を言わざるを得ないという段階に来るでしょう。したがいまして、そのこと自体は決して野党の言い分を聞かないとかそういう考えば全くありません。  しかしながら、国会には会期があることでございますし、審議時間と申しましてもおのずから限界があることでありまして、いろいろ制度があるわけです。予算にしても法律にしても参議院に行った場合は一カ月以内に成立しなかったときは云々というようなこともございますし、条約でもそういうことがございます。  そういうようなことで、PKO法案というものほかなり長時間の、今までに例の少ないほどのたくさんの審議時間が行われてきた。我々答弁に立っておりますが、人はかわるけれども、質問内容は大体七、八割以上ほとんど同じことの繰り返しの現状にあることも事実でございます。ニュース価値もない、これも事実であります。そういうような中にありまして、どこかでこれは決着をつけなければならない。  こういうときに当たって、巷間伝えられる話ですからそれに一々答えるわけではありませんが、あらゆる抵抗をしてでもこれは廃案に追い込むんだ、こういうようなことが聞こえますので、私どもといたしましては、これは当然に議長議事整理権というものがありまして、いつまでも投票に時間をかけるというようなことについては法律によって、国会規則の中で、議長投票を促し、そして何分以内に投票に応じない場合はそれは棄権をしたものとみなします、投票箱閉鎖開匣と言う権利を持っておるわけです。  そういうように、議長議事審議を行うことについて、極端にそれに物理的な抵抗がもし行われて、それで大混乱になって投票箱がひっくり返るとか投票もできない、議長の指揮には従わないというようになってしまえばこれは何をか言わんの話であって、これは民主主義のイロハのイの字の問題でございますから、我々はできるだけ法案を通したいが、極力通していただきたい、それは念願は最後最後までそうなんです。しかしながら、仮に大混乱になってしまったと仮定をした場合は選挙以外には方法がない。  選挙見せしめという言葉を使ったということの御批判を受けているのですが、実際はどっちが見せしめられるかわからないのですね、選挙の結果というものは。見せしめと言われたって、それはそういうふうな法案を出した方が見せしめられてしまうのか反対した方が見せしめられてしまうのか、実際はわからない、国民審判の結果ですから。私は、そういう意味ではなくて、審判にかける、要するに見てもらうという軽い意味で言っているのですが、いやいや、本当なんですよ。見せしめるということは敬語を使ったつもりで、見てもらうというようなつもりで言っているので、結果を、国民の厳粛な審判を受けるということなんですよ、その意味は。  だから、その言葉が懲罰的だというのだったら、これは取り消しても結構なんですよ。だけれども、私の言わん上した趣旨文脈から見てもらえばわかることであって、言葉の一言半句だけをとらえておっしゃるか、全体の文脈から見て御判断をいただくかということで御批判は分かれるのだろう、さように考えております。  私自身も実は選挙はやりたくないのです、正直な話が。任期がまだ二年もあるのですから。何もここで、あと二年もあるのに一カ月以内に任期をとられてしまうというようなことは、私個人としては本当は耐えがたいところであることは間違いありません。有権者もそう思うでありましょう。しかしながら、ともかく国の大政策というようなことになってしまって、それがそのような形でどうしても国民審判を受けざるを得ないということになれば、参議院選挙はあるわけですからそういうようなときに、これは衆議院混乱が起きた場合のことで、参議院解散というのはあり得ないわけですから。  私は解散権はありません。ありませんが、私は国務大臣として進言することはできます。聞くか聞かないかはそれはわかりません。また、同意を求められることもあります。賛成する賛成しないは、国務大臣として自分意見を行使することはできるわけでありますから、そういうような一般論を言ったものであるということで御理解いただければ大変ありがたいと存じます。
  11. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 私そんなことを聞いていないのですよ。国対委員長じゃないのですからね、外務大臣は。国会のいわゆる関係者じゃないのですから、私は議事運営のことで外務大臣答弁をもらおうと思ってないのです。  つまり外務大臣立場からするならば、この国会審議をやっている案件の処理の問題に触れられて、しかも、どうもなかなか思うようにいかぬ政党が存在している、だから見せしめのために解散をやるというのですよ。そのように大臣は言われているわけですよ。物理的抵抗でぶざまなことをやれば見せしめのために衆議院解散してもいいと思っている、こういう言い方なんですよ。  聞きますが、今も投票箱をひっくり返すという話がありましたが、そんなこと一回でもありましたか。投票箱が本会議でひっくり返って落ちてくるというような、そんなばかなことが実際にあったらそれは懲罰問題ですよ。そんなばかなことを、国民予断偏見を与えるようなことを重責にある人ががんがん言うというのは、私は良識を疑いますよ。そうでしょう。  まあ聞いてください。物理的抵抗と言われますけれども……(発言する者あり)やかましい、黙っとれ。物理的抵抗と言われましたけれども、これは決めた、言うならば議事規則なりなんなりありますよ。その範囲の中でやるのが物理的抵抗ですか。私は思っておるのですが、物理的抵抗から出てくるイメージというのは、例えば本会議でどうもこのままだったらやられるというので特定のグループが机を引っ張り出してきてバリケードでも築く、そういうのが物理的抵抗でしょうが。何ですか、この言い方は。国民に対して一定予断偏見を与えるようなことを、これはマスコミだってよく使うのですが、そういう言い方というのは間違っているのじゃないですか。私はそう思うのですよ。  そういう品位のない言い方はやめていただきたいし、そんなものが、日本国会物理的抵抗がやられるというのだったら大変な問題ですよ、大臣。私はそう思っております。そんなことは厳にあってはいかぬ。それはまた国会懲罰委員会で裁く問題でございまして、大臣からわざわざ言われる問題ではない、私はこう思いますよ。  それから大臣、今も経過に触れられました。私はそのことが本意ではありませんから余り言う気はございませんけれども、多数意見でもづてやってきたけれども少数意見がまだなかなか近寄ってくれないというような発言がございましたが、多数意見と言われますけれども野党で最大の党がそこに全然加わっていなくて、その野党が主張しているポイントというのは大臣承知のはずでありましょう。つまり、自衛隊がどういう格好国際貢献をするかということは、生のままでは困る、それは別枠でやっていくべきだということを主張しているじゃないですか。ポイントはそこなんです。一番のポイントのところについて……(発言する者あり)やかましい、黙っとれ。議事妨害だよ。
  12. 麻生太郎

    麻生委員長 御静粛に願います。
  13. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 人が発言しているのに、やじるな、やかましい。だから問題は……(発言する者あり)やかましいな。問題は、だからどういうふうにすればまとまっていくのかということについて、法案を提出されております政府にしてみれば、そのことについて最大限私は努力をいただくということがあってしかるべきではないのか。何が何で、反対だということを言っておる政党は、今の国会審議の中であるとすれば少数じゃないんですか。私はそう思っておるわけですよ。違うんですか。そこはまだ議論を煮詰めていってぎりぎりまでやるということが必要なんじゃないんですか。その努力というのは最後まで捨てられるというのはいかがなものか。こういう思いは私ひとりか知りませんけれども、感じるわけでございます。だから、私はあえて反論めいたことを申し上げたわけです。  ですから、私は外務大臣から国会運営の今後の運びとかそういうことを聞きたいと思って言ったんじゃないんです。外務大臣という重職にある方が、言うならば国会運営見せしめのために解散をやるんだ、こういうことを言われるということはどう考えても納得できません。ですから、いやおれの本心だからこれからも堂々と言い続けていくんだというのだったらそれは結構でございます。発言は自由でありまして私が抑えるわけにいきませんから。そうでしょう、鈴木さん、そのとおりなんですよ。そういう立場議論しているのですから。  ただ、広辞苑で言っていますよ、見せしめというのはどういう日本語の解釈なのか。「他の人に見せて懲りさせること。」見せしめのために厳重に罰することなんです。そういう意味なんですよ。これは実際そうなんです。そういうことを考えますと、一国の外交をつかさどる責任者である、副総理であるその外務大臣がこういうことを言われるというのはどうなんでしょう。私は通らないと思いますよ。もう一度見解を伺いたいと思います。
  14. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私は、外務大臣として職員上街頭演説会をやっているわけじゃないんです。私は国会議員でございますし、私は国務大臣でもございます、外務大臣でもあります。しかし、国会議員として私が自分の所見を申し上げたことは私は何ら差し支えない、そのように考えております。  ただ、見せしめという言葉が悪いと言われれば不穏当かなという感じもしないわけではありませんが、私といたしましては今言ったように、今先生のおっしゃった解釈にしても、結局結論は国民が出すわけですから、どちらが孤立させられるのかはそれはわからぬわけですね、結果は。そうでしょう。だからそこのところは特定の少数党だけが孤立させられてしまうのだと決めてかかることも私はいかがなものであろうかな。少数であったけれども、国民の方は、大衆はもっと余計つくかもしらぬし、多数党の方が見せしめ、あなたの言う意味で言ったら見せしめに遭うかもわからないし、正直な話が、これはやってみないことにはわからぬことなんですよ。厳正な批判を受けるということは、そういうことでどっちがどうかわからぬことですよ。  それからまたもう一つは、多数党だからといって少数党の意見を聞かないなんということはないのであって、衆議院で自民党は幸いなるかな多数党を持っておりますが、しかし、できるだけ少数意見も聞けるだけ聞こうというようなことでやってきたことも事実でございます。まして参議院に至っては自民党は少数党なんですから、多数党じゃないんですから、だから自民党が幾ら威張ってみたところで、そんな強行採決なんかできるわけがないのですよ、現実は。だから、多数の方になるべく共通な広場をつくってもらうように努力をしていることも事実なんですよ。  ただ、問題は、別組織ということになりますと、自衛隊以外の組織をつくるということについては政府としては到底応じられない。これは限界なんですよ。だから、その趣旨を酌んで何かやろうというのだったらまた話し合いの余地もあろうと思いますが、我々は、やはり党と政府の間でありますから、表は譲るにいたしましても、いろいろな打ち合わせとか何かについて意見を聞かれることは多々ありますよ、それは。あるけれども、我々、は国会においては我々の主張しているとおりで通してくださいということを繰り返し申し上げていることも事実でございます。
  15. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 何か全然条約と違う議論で時間が四十分たってしまいまして、見せしめ発言にひっかかったような感じがしますけれども、とにかく大臣……(発言する者あり)そうなんですよ、正論をやればいいのであって、そういうことを言われるものですから、私も何か見せしめ発言のおかげで四十分あおりを食らいましたけれども、そういうことは本意じゃないのですね。ですから大臣に、今見せしめ発言はこれは本意でないということの発言があったと思いますが、投票箱をひっくり返すだとか物理的抵抗だとかと言うのはやめていただきたいと思います。そういうことになりますと感情が入ってきまして、人間はやはり感情ですから、本当にお互いに理性に基づいてやっていかなければいかぬということが山積しているわけですから、そういうことはひとつ厳に戒めていただきたい、こう思います。  時間がございませんので、次に行きます。  それでは、本論の条約の方の質問に入りたいと思いますが、まず初めに、この条約は五十年に発効しているわけでして、今回提出されるまでに二十年もかかっているわけです。御承知のとおり、随分と昔から条約批准の促進について私どもも主張してきているわけですが、五十五年四月二十三日の外務委員会では土井先生がこの問題を取り上げられまして、当時の大来外務大臣質問をされているわけです。そのときに、当時の外務大臣は「できるだけ早く、でき得れば次の国会の機会に提出するように取り運びたい」、このように答えられているわけです。  ところが今日までかかった。条約が発効してから二十年たってやっとこの委員会にかけられたということなんですが、これはどうなんですか。政府全体の極めて消極的な態度ということが言えるわけですが、とりわけそれは、言うならば外務省の所管でありますからその立場からするならば、なぜ二十年かかったのかということについて当然私は疑問に思いますので、この点についての答弁をまずいただきたいと思います。
  16. 小西正樹

    ○小西説明員 お答え申し上げます。  この条約につきましては、先生おっしゃられましたとおり、昭和四十七年にユネスコの第十七回総会において採択されておりまして、その三年後、五十年に発効したわけでございます。  この条約の国内的な実施につきましては、一般的に締約国の裁量にゆだねられている部分が相当多うございます。したがいまして、私どもといたしましては、各国の締結の状況、各国がこの条約をどういうふうに運用しているか、こういう点を見きわめて、どういう実施体制を組めばよいかということについて検討してきたわけでございます。特にこの条約の四条では、この条約で定める文化遺産自然遺産、こういう遺産が第一義的には遺産のある国の保護義務であるということが規定されておりますし、具体的に遺産の保護、保存等を可能な範囲内で、かつ、その国にとって適当な場合に行うように第五条でも規定いたしております。したがいまして、こういう状況について各国がどういうふうにこの条約を運用しているかということ等をこれまで見きわめてきたわけでございます。その検討が終了いたしましたので、このたび御承認をお願いしているわけでございます。  長い期間でございましたけれども、昭和五十七年から六十二年にかけましては、特に、先生御承知のとおりユネスコの運営について不満を持つ国々がございまして、アメリカ、イギリスがそれぞれ脱退したというようなこともございました。これは事務局の行財政面での管理運営が不的確ではないかというようなこと、あるいはユネスコの中での事業についての疑問が提起されたわけでございます。そういうこともございまして、私どもの方でもそういう状況を見ておったということも一つございました。  ただ、昭和六十二年には新しくマイヨールというスペインのもとの教育大臣でございますが事務局長になりまして、ユネスコにも改革の動きが出念頭に入れまして鋭意検討を進めて、このたび国会の御承認ということでお諮り申し上げているわけでございます。
  17. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 いずれにしても、どういう国際的な事情、国内の理由があったにしても二十年というのは長過ぎると思いますよ。そのことがやはり問題だと私は思うのです。したがって、条約批准が二十年間もおくれたということに対して外務大臣としてどのようにお考えなのか、見解を一言伺いたいと思うのです。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 今政府からるる説明がございました。確かに二十年間、署名してから批准するまでに時間がかかるというのは、おくれている、異常じゃないかという御指摘があっても不思議ではありませんが、この条約で文化・自然遺産の認定とか保護等の問題については、それぞれの国の国内的な実施について各締約国が裁量権を持っていいというところがたくさんあるようであります。したがって、それらの解釈の確定などに対し各国とも運用状況等は特に慎重に考慮される。そういうようなことで慎重にやってきた結果、文化財保護法、自然環境保全法、自然公園法、こういうようなものとの整合性等について時間が大変かかってしまったという点は申しわけないと思っておる次第であります。
  19. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 この条約に関連をしまして二つほど聞きたいのですが、遺産条約に関係した条約として、武力紛争の際の文化遺産保護のための条約、これが一つ。二つ目は、文化遺産の不法な輸出入及び所有権の譲渡に対する禁止及び防衛措置に関する条約というのがあると思います。我が国はいまだにこれを批准してないのですが、今後の対応についてどうお考えなのか、これが一点でございます。  二点目は、地球温暖化防止条約、それから生物多様性保全条約、つまり地球環境に関する条約が、これはサミットが六月に行われまして、朝のテレビでも竹下元総理がインタビューされておりましたが、出発をされるわけですね。これに関係する。と思うのです。このことについて政府は今後どう対応されるおつもりなのか。  以上の二点、質問いたします。
  20. 小西正樹

    ○小西説明員 先生お尋ねのまず第一点の二つの条約でございますが、まず第一の条約、武力紛争の際の文化財の保護のための条約、これについての外務省の考え方でございますが、この条約は、条約実施のための国内措置の問題について種々検討すべき点がございます。特にこの条約が主たる目的としております特別の保護、これは保護すべき文化財を国際管理のもとにおいて保護するということでございますけれども、この対象となる文化財が集中する地区、これらの地区が重要な軍事目標、例えば空港、放送局、国防のための施設、こういったところから妥当な距離にあるということを条件にいたしております。  したがいまして、我が国につきましては、こういった重要な文化財が集中しております京都とか奈良、こういったところについて要件を満たすということについては相当困難があるのではないかというふうに私どもは考えております。こういう問題点がございますので、この条約については私ども非常に慎重に考えております。  また、先生がおっしゃいました第二番目の条約、文化財の不法な輸出入の防止等に関する条約につきましては、これは、我が国の国内法令との関係等について関係省庁とも十分協議いたしまして、締結の可能性について検討することといたしたいと考えております。  第二の御質問でございますが、先生がおっしゃいました温暖化防止条約、この条約の作成に当たりましては我が国もいろいろな面で貢献したわけでございます。人的な面、この条約の作業部会での議長を務める、あるいは各種の具体的な提案をするといった形で種々貢献をいたしました。また、生物多様性の保全条約につきましても、我が国としては積極的に交渉に参加したわけでございます。  我が国として、今後これにどう対応するかということでございますが、そういう経緯を十分踏まえまして、我が国がこれを国内的に実施した場合に国内法との関係においてどういう問題があるかということを検討した上で積極的に対応していきたいというふうに考えております。
  21. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 次に伺いますが、遺産登録が、批准をしますと我が国としてそれにかかわらなきゃいかぬわけですね。時間の関係がありますから具体的なことを議論する余裕はございません。絞って申し上げますが、現在のところこの遺産登録、これは大体何カ所ぐらい申請する予定であって、いつごろまでにこの申請を完了しようとお考えなのかというのがまず第一点。  二点目は、その選定に関する役所は一体どこなのかということです。具体的に申し上げますが、外務省はどのポストが担当されるのか、環境庁はどのポストが担当されるのか、文化庁は一体どのポストが担当されるのか。  このことについて二点お伺いいたします。
  22. 小西正樹

    ○小西説明員 まず、第一の御質問でございますけれども、この登録についてはいつごろを考えているかという御質問でございますけれども、これは、この条約について国会の御承認を得て、できるだけ早く、世界遺産委員会という組織がこの条約の締約国によって構成されておりますので、その遺産委員会に提出をいたしたいというふうに考えております。  また、第二の御質問でございますが、この物件の選定にかかわる関係省庁としてどういうところがあるかということでございますが、この条約の実施にかかわる法律といたしまして、文化財保護法、自然環境保全法、自然公園法といった関係の国内法律がございます。これについてそれぞれ所掌されておられる文化庁、環境庁、こういった役所がこの条約の国内的な実施に当たるわけでございますので、その省庁の担当の課が窓口となるわけでございます。  具体的に申し上げれば、文化庁につきましては文化財保護部記念物課、環境庁につきましては自然保護局計画課が窓口となります。また私どものこの条約を所管する外務省といたしましても、この連絡調整に選定作業において当たるわけでございますので、国際連合局の社会協力課が窓口となる予定でございます。
  23. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 この最終登録リストの作成なんですが、どのようにこれは決定されるのかというのがまず第一点。  二点目は、だれが決定されるのか、最終的な決定権者はどなたなのか。  以上二点、お伺いします。
  24. 小西正樹

    ○小西説明員 第一の御質問は、どのようにこれが選定されるかということでございますけれども、さっき申し上げました関係省庁が相談いたしまして、どれがこの世界自然遺産文化遺産として適当な物件であるかということについて検討しました上で、その関係省庁の合い議によって決めたいと思います。  最終的にだれが決定するのかということでございますけれども、これは各省庁それぞれがかかわりを持っているわけでございますので、文化庁、環境庁、外務省、この三つの省庁が中心になって合議によって決めるというふうに考えております。
  25. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 合議で決めるということだけわかりました。あとは三省庁がそれぞれ意見を持ち寄って合議で決めるということはわかりました。  そうすると、例えばかなりこれは専門的な知識も要りますわね。例えば環境庁の場合、文化庁の場合、もちろん外務省もそうですが、しかるべき審議会に相当するようなそういう学識者の皆さんの言うならば受け皿があって、そこに検討を依頼しまして、そこから、こういうふうに我々としては思いますという報告を受けて、それを踏まえて三省庁が集まって合議の上決定をする、こういう意味なんですか。そのあたり、もう少し詳しく説明してくれませんか。
  26. 小西正樹

    ○小西説明員 先生今御指摘のとおり、この物件の選定に当たりましてはいろいろな角度からの検討を要するわけでございます。それにつきましては、それぞれの分野における専門的な知識経験を持った方々の意見見解が必要になってくるかと思います。したがいまして、私どもはこの条約で言われます物件の選定に当たりましては、例えば文化財保護審議会あるいは自然環境保全審議会、こういったところにお諮りすることによりまして専門家の方々の御意見を求めるということを考えております。
  27. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 結局このあたりが抽象的だと、これは後でぎくしゃくすると思いますよ。それで僕は聞いているんです。後も関連しますから、ここのところポイントで聞いているんです。  つまり手続ですよね、合議決定に至るまでの手続です。だから外務省はどういうふうに手続を経て決められるのか、ほかの二つの庁もどういうふうに決められるのかということを、これはこの遺産条約批准とはセットなんでしょう。とりあえずこれだけ二十年おくれたから先行させておいてあとのことはまあゆっくりやろうというわけにいかぬと思うんですよ。これはもう一体でございまして、恐らく、私たちのところへも聞こえてきているんですが、我が県としてはこういうものがありますからひとつということにどうしてもなってしまうんですよ。そのときにきちっとシステム化されてないと、何かそこで御苦労が余分にあってもいかぬ、こういうふうに私は思いますから、詰めたような格好でお聞きしております。で、現時点とこまで固まっているのかということを明らかにしてください。
  28. 小西正樹

    ○小西説明員 私の御説明がやや舌足らずであったかと思いますが、もう少し具体的に述べさせていただきますと、まず、文化財保護法、自然公園法、自然環境保全法、こういった関係法令を所管している文化庁、環境庁、こういった省庁から原案を発議してもらうということを第一段階として考えております。それで第二段階といたしましては、文化庁、環境庁によって原案を取りまとめていただくということを考えております。それから第三の段階といたしまして、こういった文化庁、環境庁以外の省庁も含めまして関係している省庁の間で意見調整を行うことを考えております。第四の段階といたしまして、関係した法令等の所管官庁によります関係自治体への意思照会、先生今お触れになりましたけれども、そういう物件のございます地方自治体の方は非常に御関心があると思いますので、そういう自治体の意見もそこで照会することを考えております。それから第五の段階といたしまして、先ほどちょっと触れましたが、関連法令の所管省庁による審議会、文化財保護審議会、自然環境保全審議会、こういったところで意見を聴取するという過程を考えております。第六の段階といたしまして、関係省庁の連絡会議による最終的な取りまとめを行い、第その段階といたしまして、外務省から世界遺産委員会へ提出する、こういう過程をたどって選定したいというふうに考えております。
  29. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 わかりました。そういうふうに運ばれるということですが、問題は、その自治体あたりからは組織的にというんですか、ルートがあって上がってきますが、それ以外の民間団体、さまざまあると思うんですが、そういうところから意見を上申しようと思いますと、これはなかなか整理がされてないように私は思います。ですから、下から上がってきます。そういう多くの声を酌み取るというんですか、そういうシステムづくりというのは必要のように思うんですが、どうですか。これを全然やらずに入ろうとしましても、それこそまた役所の方はさまざま苦労が伴うと思うのですが、その辺はどうお考えですか。
  30. 小西正樹

    ○小西説明員 お答え申し上げます。  今先生の御指摘になられた点は非常に大切な点であろうかと思います。これは当然のことながらこの問題の所管官庁であります環境庁、文化庁の方でもいろいろな形でそういう考え方なり意見を吸い上げるチャネルがあると存じますけれども、私どもがこの条約の適用に当たって特に考えております過程といたしましては、先ほど触れました文化財保護審議会、自然環境保全審議会において、各界それぞれの分野において代表的な専門家の方々がいらっしゃるわけでございますので、この審議会にお諮りしてそういうところでいろいろな意見を吸収させていただきたいというふうに考えております。
  31. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 担当の課へ直接いろいろなものを持っていくということしかないとするならば、大変事務煩雑になると思いますよ。ですから、中間に何かそういう受け皿というのですかというものをおつくりになって、さまざまある意見はそういうところでさばくとか、もちろんその審議会に直結するかどうかということの検討は要るにしても、声が反映できるようなそういうシステムづくりというのはお考えになる気持ちはないのですか。私はあった方が後でお役所も困らぬと済むんじゃないか、こう思っているわけで、別にいい、やっていくということだったらそれでいいのですが、どうです、それを考えられた方がいいんじゃないですか。
  32. 小西正樹

    ○小西説明員 ただいま先生が述べられましたお考えも踏まえまして十分検討させていただきたいと考えております。
  33. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 次に進みます。  これは直接関係があると思うのですが、アンコールワットのことなんです。現地へ行かれた方はひとしく痛感されたと思うのですが、まさに世界的な遺産、遺跡だと思います。カンボジアの人々にとっては民族統合の象徴だ、こういうことになっているわけで、たしか四派もそれぞれ旗にはアンコールワットを載せていますよね。だから、それぐらいカンボジア人の誇りなんでもありましょう。  ところが、現地はこの遺跡の破壊が大変進行しているわけでして、これの修復作業には私たち聞くところインドだとかポーランドだとかフランスあたりがそれぞれの程度でそれぞれの部署でやられているわけですね。日本にもこれはNGOだと思いますが救済委員会というのが、財界、学者先生なども本当に協力されて大変努力をいただいている。しかも、十年間ぐらいは調査に当たってこられたというのは頭の下がる思いが私もするわけであります。  問題は、このアンコールワットの本体の修復はインドがたしか担当しておりまして、これは二国間協定でやっている。八〇年から二国間協定で、たしかことしの七月ぐらいにその契約というのですかが切れるというふうに現地でも私はお聞きしたわけです。そういうことをもちろんSNCもわかっておりまして頭を痛めておりまして、たしかこの二月には保存の修復委員会をシアヌーク殿下の肝いりで発足していることも私は知っているわけです。  そこで、そういう現状の中で質問をさせていただきたいのは、新政権が成立後でないと、この世界文化遺産委員会に正式には入れないような気がするのですね。それまでの間は空白になるわけです。現地のアンコールワットでもそうですが、随分と広い地域で遺跡が散らばっているわけですから、そういうものに対する修復の手がここで切断をされるということになりますと、その間進みます。これは守るという点からいきますと大変気になることでもございます。したがって、この点を一体どのように私たち考えればいいのかというのが一点ですね。  二点目、そういうふうな状況であればあるほど、我が国としての積極的なこの援助策というのですか、修復を中心にしました遺跡を守るための援助策というのが必要ではないのかな、こんなふうに思いますが、以上二点だと思います。質問させていただきます。
  34. 木村崇之

    ○木村政府委員 先生御指摘のように、アンコール遺跡はカンボジアの国家国民の象徴としての意味合いを持っておりまして、私どもも同遺跡の保存、修復に対する協力については非常に重要なものとして考えております。また、そういう意味合いを持っているということからいたしますと、カンボジア政府の意向というものを十分尊重する必要があるというふうに考えておるわけでございます。  先生御指摘のとおり、本年の二月四日には、シアヌーク議長のもとにアンコール遺跡の保存のための国内委員会及び国際諮問委員会がつくられました。まず私どもとしては、カンボジア側のイニシアチブを踏まえて、国際諮問委員会の活動に対して協力を行っていきたいと思っております。また、国際的な協力につきましても、我が国としては従来から世界文化遺産保存活動を積極的に行っておりますユネスコと協議しつつ、国際的な支援体制づくりに主体的に貢献していく必要があると考えております。したがいまして、私どもはそういう観点から、カンボジア政府、ユネスコ及び関係国に対しても早急にその組織化を進めるよう働きかけておるところでございます。  先生御指摘の第二の御質問、具体的に我が国はどういうことをやるのかということでございますが、まず先生御承知のとおり、我が国は世界の遺跡の保存、修復の協力のために、ユネスコに文化遺産保存日本信託基金というものを設けておりまして、これまで八百万ドル拠出をしておりまして、今年度の予算で三百万ドルの御承認をいただきまして、現在拠出のための手続を行っております。日本信託基金からアンコール遺跡についても既に専門家会合開催経費、資料整備、調査及びカンボジア人専門家の研修等のために三十七万ドルの協力を行っております。  また、去る三月、柿澤政務次官がカンボジアを訪問した際に、平成四年度中にこの基金を通じまして百万ドルを限度とする追加的な協力を行うということを意図表明しておりまして、この追加拠出の内容といたしましては、カンボジア政府が緊急に必要としている遺跡の保存、修復、カンボジア人専門家の養成、アンコール遺跡保存事務所の改修、機材供与並びに技術協力等を行おうと思っておりまして、これについて内容の具体的な早急な取り固めのために、カンボジア政府関係者、ユネスコ及び先ほど先生御指摘のありましたアンコール遺跡救済委員会というところとも協議をしておるところでございます。  以上でございます。
  35. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 大変積極的な支援策、協力策をとられておりまして、私たちも本当に御苦労さま、こう申し上げたいのですが、今後ともひとつ、重要なことでございますので、お願いを申し上げたいと思います。  一応ここで質問を中断させていただいて、後に譲らせていただきます。ありがとうございました。
  36. 麻生太郎

    麻生委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時十四分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  37. 麻生太郎

    麻生委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川島實君。
  38. 川島實

    川島委員 私は、ただいま議題になっております世界文化遺産及び自然遺産保護に関する条約についてお尋ねをいたします。  国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、憲章上の任務として文化財の保存及び数多くの遺跡の保護事業を行ってまいりました。特に、昭和四十一年の第十四回総会で、文化財、記念物、遺跡等の保存及び修復のための国際的な原則及び基準を設け、保護のための協力体制の確立を目的とする条約が作成されました。また一方、自然及び天然資源の保全に関する国際同盟が、昭和四十七年六月の国連人間環境会議自然遺産の保存を目的とする世界遺産保存条約を作成し、この二つの条約を調整し一つの条約としてまとめたのが今回の条約であります。昭和四十七年十一月の第十七回ユネスコ総会において賛成七十五、反対一、棄権十七で採択されております。その後、各国の準備期間がとられ、この条約の効力は昭和五十年十二月十七日に発生いたしました。  ところが、我が国は今日までこの条約締結されていなかったわけであります。現在まで既に百二十二カ国の締約国があるのに、なぜ今日までできなかったのか理解ができません。  ユネスコは、戦後日本にとって一番なじみ深い国際機関であり、一九五一年に、国連加盟一九五六年に先立ち日本が戦後初めて加盟した国際機関であるにもかかわらず、またユネスコの理念が戦争を防ぐため教育、科学、文化の振興と交流を通じて各国が互いによりよく理解することであり国連中心主義を唱える我が国の進むべき道と同じと考えられるのに、おくれた理由は私どもには理解ができないところでございます。  先ほど我が党の伊藤議員の質問に対しまして外務大臣は、おくれた理由として、それぞれの国の国内的な実施について検討した、さらに、我が国は文化財保護法、自然環境保全法、自然公園法等について検討に時間がかかった、小西審議官は、この条約の国内的制約について各国の締結の状況を見て検討してきた、さらに条約の四条、五条にある、この遺産のある国の保護についてこれまで検討してきたが、今回これが終了した、さらにアメリカ、イギリス等のユネスコに不満を持っている国や、その原因となった事務局の財政、管理運営等の改革が進んできたから今回条約締結することにした、こういうふうに理由を述べておるわけでございます。  そこでお尋ねをいたしたいわけでございますが、これらの文化財保護等の三法律についてどのような検討が加えられてきたのか。さらに、条約の四条、五条について審議官は、検討してこれで終了したと答弁をさきになされておるわけでございますが、具体的にどのような検討をなされて今日に至ったのか、この経緯についてお伺いをしておきたいと思います。
  39. 小西正樹

    ○小西説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、この条約において特に検討を要しました点は、この条約上遺産と申しておる、それに該当する国内の物件につきまして、改めてこの条約上の遺産として国内法上の認定を行う必要があるかどうかという点でございました。この条約四条及び五条におきましては、遺産の認定についても、保護、保存等その他の措置につきましても、この実施については可能な範囲内で行うように努めるということが規定されております。この努力の具体的な内容については各締約国の裁量にゆだねられておるわけでございます。  それで、我が国につきましては、基本的には文化財保護法、自然環境保全法及び自然公園法、この三法に基づきまして第一条及び第二条で言われている物件といったものを含めましてより幅広く指定ができる体制にございます。そこで、この条約上の遺産を認定するために改めて法制度等を設けることは必ずしも求められていないのではないかというふうに私どもは判断したわけでございます。  それで、この判断につきましては、私ども各国の国内実施体制を同時に調査いたしまして、各国とも同じようにこの点については運用している、すなわち各国とも特別な国内立法措置を講じて認定等の措置を行っているわけではなくて、おおむね現在ある国内法に基づいてそういう物件の認定なり指定を行っているということでございました。これはオーストラリア一カ国が特別な立法を行ってそういう認定等行っておりますが、調査した限りにおける他の主要国の例につきましては、いずれも自国の関係法律範囲内において認定なり指定を行い、かつ条約で求められております保護、保存、整備、活用等の措置をとっているわけでございます。  こういった点につきまして私どもが検討するということで、そのための期間が若干かかったということで御理解いただきたいと思います。
  40. 川島實

    川島委員 今回の条約締結すれば六月の地球サミットに向けて我が国にとって非常にいいイメージになる、こういう発言をされている人たちも多いわけでございまして、私もその点については賛成でございます。  しかし、今日までの長い期間何らその措置がなされていなかった。今回もまたこの条約締結してもさらに立法措置をとらないということで説明がなされているわけでございますが、今日まで行政措置としてどのようなものがなされてきたのか。今回これで立法措置をとらないということで決めているわけでございますが、今後の我が国の文化財保護、環境保全について私はこの機会に見直しを行う必要があると思う。それだけに非常に多くの問題点があるという理解をしておるわけでございますが、立法措置をとらないのであれば行政措置としてどのような対策を講じられるおつもりか、お伺いしておきたいと思います。
  41. 吉田茂

    ○吉田(茂)政府委員 文化財保護関係では、現在のところ文化財保護法に基づく文化財の保護指定、これによりましてこの条約から参ります要請は確保されるというふうに私ども考えておるわけでございます。この条約による国内措置を担保する制度、体制は既に現在の体制で達成されている、こう考えておるわけでございます。しかしながら、この条約批准された暁におきましては、さらに文化財保護の充実に努力をしてまいりたいというふうに考えております。  現在のところ文化財の保護ということにつきまして、最近のいろいろな状況、社会的、経済的な変化の中で文化財保護に対してどう対応するかというような課題がございます。現在、文化財保護審議会のもとに文化財保護の企画特別委員会というものをつくりまして今後の文化財保護制度についての検討を進めたい、こう考えております。その中で、こういった条約の実施に伴ってのいろいろな問題も当然他のテーマとともに検討の内容に入ってこようかと思います。そういった中で今後文化財保護の充実につきまして全般的な努力を重ねてまいりたい、かように存じております。
  42. 橋本善太郎

    ○橋本説明員 我が国におきましては、自然環境保全法及び自然公園法に基づきましてすぐれた自然環境を有する地域を原生自然環境保全地域あるいは自然環境保全地域または自然公園等として指定いたしますとともに、その中で一定の行為を制限し、または必要な施設を整備する等によりまして当該地域の自然環境の保全を図っているところでございます。  また、この自然環境保全地域であるとかあるいは自然公園に指定されますと、自然環境保全地域にありましては自然保護取締官、国立公園にありましては国立公園管理事務所というところが関係都道府県等との協力も得ながら現地管理に当たっている。したがいまして、既存のこれらの制度をもとに今後もやっていくわけでございますけれども、自然遺産に登録されました場合には必要に応じてより適切に管理及び整備の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
  43. 川島實

    川島委員 政府は、この条約締結に当たって、この条約の意義として三点挙げておるわけでございます。  一つは、文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護し、保存するとともに、国際的な協力及び援助の体制の確立を図る、これが一つ。二つ目は、我が国として世界の遺産の保護の分野における国際協力に寄与する。三つ目は、文化遺産保存日本信託基金を平成元年に設置をいたしました。  この三つを挙げて意義を唱えられておるところでございますけれども、我が国の現状を見るときにまだまだいろいろな地域で遺産の保護が私どもにとっては十分でないと受けとめておるわけでございましで、多くの対策が必要と思われるわけでございます。この意義に対しての対応、体制等について御答弁をいただきたいと思います。
  44. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 ただいま先生が述べられました三つの点を基準として我々は国際協力をやろうと言っておるのですが、国内的には欲を言えばまだまだこれで十分というようなところになってないこと、これも事実でございましょう。財政事情その他の制約もございますから、今後とも各省庁とよく連絡をとりながら国内におきましても一層文化遺産保護という点については十分配意してまいりたいと考えております。
  45. 川島實

    川島委員 政府が出されておりますこの説明書「保護に関する条約について」、この中の「締結の意義」の中で、「文化遺産とともに自然の地域、動植物の生息地等の保護をも対象とした本件条約を早期に締結しここうあるわけでございます。  これらをずっと見ておりますと、現在問題になっております岐阜県の長良川の魚介類等もその自然環境等いろいろ学界から問題点を指摘が出されてきておるわけでございますが、これらも対象になるというふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  46. 橋本善太郎

    ○橋本説明員 どのような物件がこの条約で言います顕著な普遍的価値を有し自然遺産に該当するかということにつきましては、本条約の第三条により各国の判断に一応はゆだねられておるということになっておりますが、この自然遺産の候補地選定につきましては、条約締結後に本条約第二条の定義を踏まえまして、国立公園等すぐれた自然環境として我が国の国内法により保護が図られている地域の中から世界的に見ても傑出した価値を持つというところを自然環境保全審議会等の意見も参考にしながら選定するということになると思いまして、ただいま御指摘の長良川については現時点では対象になるとは考えておらないということでございます。
  47. 川島實

    川島委員 あと遺産登録の関係もございますので、これはまた後ほど触れていきたいと思いますが、政府は今回の六月の地球サミットに向けて予備会談で「地球憲章に関する日本の提案」ということで幾つか提案をなされております。その中でこの条約と関係しそうだという問題について二点お尋ねをしておきたいと思います。  一つは、第四原則として、「現在及び将来の世代に対する責任」という項目で、   現在及び将来の人は、人類の共通の資産であ  る地球環境がもたらす恵沢を享受する基本的権  利を有するとともに、現在及び将来の世代の利  益のため、それぞれの立場で環境に対する著し  い影響を未然に防止するとともに環境の状況を  回復し、改善する責務を有する。 こういうふうに述べられております。  それからもう一つは、十八原則の中で「地球環境の科学的解明」という題目で、   各国は相互に協力しつつ、国際機関等が推進  する組織的観測と調査研究計画に積極的に参画  するとともに、団体及び個人の協力の下、その  責任及び能力に応じ、組織的観測・調査研究計  画に基づいた地球環境の状況把握と科学的解明  に積極的に取り組み、その成果を自らの意志決  定及び行動に積極的に生かしていかなければな  らない。   地球環境に科学的に未解明な部分があること  をもって、地球環境保全のための取り組みを延  期し、又は行わないことの理由としてはならな  い。 こういうように非常に積極的な援言をなされておるわけでございますが、これについて御所見をお伺いしておきたいと思います。
  48. 橋本善太郎

    ○橋本説明員 御指摘のように、例えば熱帯林の破壊の問題であるとか生物多様性の減少等の問題であるとか自然環境保全分野におきます地球的規模の環境問題の解決につきましては、我が国は積極的な貢献を図っているところでございます。本条約締結によりまして特に開発途上国の自然遺産保護に寄与する等、この分野におきます我が国の積極的な取り組みというものを一層進めることになるというふうに考えております。
  49. 川島實

    川島委員 これほど我が国の政府を代表して提言をしているわけです。地球サミットに出すための予備会談で出ているわけです、環境庁も含めて。だから、それだけの答弁でございますか。具体的に行動計画なりいろいろな形のことを考えていないわけですか。
  50. 橋本善太郎

    ○橋本説明員 例えば自然環境保全法第二条には、自然環境のもたらす恵沢を広く国民が享受し、将来の国民に自然環境を継承することができるようにするという旨が掲げられております。  これは自然環境保全法の基本理念でございますけれども、一方、本条約の基本的考え方、自然遺産を人類全体のための世界の遺産として保護し、保存し、将来の世代に伝えようということでございまして、それは地球的規模の環境問題に取り組む姿勢と軌を一にしているというふうに思います。  そのような観点に立ちますと、本条約に基づきまして個別の自然遺産世界遺産の一覧表に記載されたというような場合には、これは単に自然環境保全法で言います日本国民の共有の財産というだけではなくて、世界人類のいわば共有の財産という価値づけ、そういうものが付与されるわけでございまして、そのような趣旨を踏まえましてより一層適切な保護管理というものに努めてまいりたいというふうに思っております。
  51. 川島實

    川島委員 環境庁は、今度の六月のサミットに向けてのアジェンダ21の予備会談で日本政府出席をして出されている地球憲章に関する日本の提案ということを御存じですか。私はそれについて言ったのです。
  52. 橋本善太郎

    ○橋本説明員 私は自然保護局計画課長でございますけれども、本日は地球環境部の方がちょっと来ておりませんので、ただいまの問題は後ほど御説明に上がるなりなんなりしたいと思いますが、いかがでございましょう。
  53. 川島實

    川島委員 私はなぜこういう質問をするかというと、政府委員をお願いしますと言ったら課長に急に決まる、そしてきのう打ち合わせをして、けさもう一度いらっしゃいと言っても来ない、これじゃ具体的な質問をしても答弁できないでしょう。課長さんがこれから出られるときは、私は結構でございますけれども、政府を代表して出られるのかどうか、この件を確認しておきたいと思います。答弁はすべて政府答弁だと理解をして差し支えございませんか。
  54. 野村一成

    ○野村説明員 環境庁の方でも今の先生の御質問に適切に答えるべく今至急手配いたしておりますので、まことに恐縮でございますけれども、今の点については後刻できるだけ早く答弁させていただくということで御容赦いただければというふうに存じますが。
  55. 川島實

    川島委員 次に進みます。  我が国はユネスコの最大の出資国と言われております。ところが残念ながら米国や英国、シンガポールが脱退をいたしまして、予算の三〇%近い費用が未納になっておるわけでございます。こうした中で我が国はユネスコにおけるどういう役割を果たしてきたのか、この件についてお伺いをしておきたいと思います。
  56. 小西正樹

    ○小西説明員 先生御指摘のとおり、一九八四年には米国が脱退し、その後八五年にはイギリスも脱退しております。これに加えましてシンガポールもまた脱退しておるという状況がございます。その結果、ユネスコの財政においては先生御指摘のとおり三割程度の赤字が生じるという状況に至ったわけでございます。したがいまして、我が国はこの状況を踏まえましてぜひともユネスコの事業を効率化、重点的に効果的にこれを再検討していく必要があるということでユネスコの改革に向けての運動を始めました。その結果、昨年でございますけれども、我が国がユネスコの改革のために提案いたしました決議案がユネスコの総会において採択されております。  この決議案におきましては、従来ユネスコの運営管理に大きな役割を果たしておりました執行委員会という組織がございますけれども、その執行委員会の代表が個人代表になっておりました関係上、必ずしも財政上、事業上の詳細な専門的な問題について造詣が深くないという事情もございましたので、これを個人の代表から国の代表にするという点、それから行財政の問題についての専門家による諮問委員会をつくり、その諮問委員会意見を聴取しつつ行財政の問題を初め事業の効率化を図っていくということで、日本はその提案を出したわけでございます。この二つの主要点を持っております決議案は全会一致で採択されております。  このように我が国といたしましては、まず第一に財政面での欠陥を踏まえましてできるだけユネスコの文化事業計画が効率的に実施されるように努力してきたつもりでございます。
  57. 川島實

    川島委員 ユネスコの人間と生物圏研究計画の中で我が国の保護区が四カ所指定を受けている、こういうふうに聞いているわけでございますが、どことどこでございますか。
  58. 小西正樹

    ○小西説明員 恐縮でございますが、手元にちょっと資料を持っておりませんのでお答えできません。
  59. 川島實

    川島委員 世界の中で代表的な自然環境を健全な形で後世に伝えたい、この条約でそういうものを一覧表へ載せていく、こういうふうに言われているわけでございますが、一覧表に載るまでにはいろいろな基準があるかと思います。我が国は後世にこういう形のものを文化財なり自然遺産なりを残していきたいというのは、この条約を結ぶに当たって検討の結果どのくらいあったわけですか。
  60. 橋本善太郎

    ○橋本説明員 自然遺産につきましては、先ほど申しましたように自然環境保全法に指定されております原生自然環境保全地域でありますとか自然環境保全地域、それから自然公園法で指定されております国立公園。原生が現在五カ所でございます。それから自然環境保全地域が現在九カ所。先般、自然環境保全審議会自然環境部会から白神山地を指定してもよろしいという答申を得ておりますので、これが近々指定されますと十カ所になります。それから国立公園が現在二十八カ所でございます。大体これが検討のベースになるというふうに考えております。
  61. 川島實

    川島委員 文化財の方はどのようになっておりますか。
  62. 吉田茂

    ○吉田(茂)政府委員 条約批准されました場合に対象になり得るという対象物は、まず国宝、重要文化財のうちの建造物があろうかと思いますが、このうち建造物の国宝というのが二百七件ございます。それから史跡、名勝、天然記念物でございますが、この中で特別史跡、特別名勝、特別天然記念物を合わせますと百五十七件。これは史跡、名勝、天然記念物の中で特に重要度の高いものということで、合わせて百五十七件。それから、これは昭和五十年の法改正で入った分でございますが、伝統的建造物群保存地区、この中で国が指定しております特に重要な重要伝統的建造物群保存地区三十四地区。こういったところが一番のベースになろうかと思います。いずれにいたしましても、これは相当数が多いわけでございまして、さらにチェックしていく必要がもちろんあろうかと思います。
  63. 川島實

    川島委員 お話を聞きますと登録をするのは一けた台だ、こういうふうにお話を聞いているところでございますが、そういう一覧表に登録をすることによってのメリットといいますか、我が国にとってはどのようなメリットがあるのか、そして、心構えとしてどのくらいの登録を行おうとしておるのか。国によっては非常にたくさん出ている国もありますし、本当に二、三件しか出ていない国も現在出ている一覧表の中にあるわけでございますけれども、我が国としてどのようなお考えでございますか。
  64. 小西正樹

    ○小西説明員 お答え申し上げます。  まず最初に、先生が先ほど御質問されました生物圏の保存地域でございますけれども、資料によりますれば、日本でそれに該当するものとして認められておりますものは志賀高原、白山、大台ケ原・大峰山、尾久島の四カ所でございます。  今お尋ねの御質問でございますが、我が国の物件が仮に、世界文化遺産自然遺産として認められた場合のメリットはどういうところにあるのかというのが第一の御質問でございます。  この条約は、各国におきますこういったすぐれた、顕著な普遍的価値を持つ自然遺産文化遺産世界共通の遺産ということで各国が認識し、それに対して各国がそれぞれの適当な保護、保存、整備、活用のための措置をとるということでございます。したがいまして、この条約で申します文化遺産あるいは自然遺産ということで認められますメリットにつきましては、まずこういった私どもの考え方におきまして、これは必ずしも日本に限らず、国際社会全体が保護すべき環境上あるいは文化上の遺産である、こういう認識であるかと思います。  また第二点といたしましては、こういった文化遺産なり自然遺産がこの条約で定められております世界遺産一覧表というような表に記載されました場合には、それに基づきまして各締約国がそれを国際社会全体の遺産だという認識のもとに、その締約国が自力でその遺産を保護、保存、整備、活用等できない場合あるいはその遺産が危機に瀕したとき、こういったときには、条約が想定しております国際協力の体制に基づきまして、こういった国々の遺産をその危険から、脅威から救うという協力の体制の対象になるわけでございます。そういうメリットがあるわけでございます。  また、こういった物件としてどの程度の数を念頭に置いているかという第二の御質問でございますけれども、この点につきましては、現在世界遺産一覧表に載っておる物件は三百五十八件ございますけれども、これは八十一カ国からなされたものでございます。一番多い国でフランスが十九件の物件を出しておりますけれども、私どもの一般的な感じで申し上げれば、恐らく各国約十件程度のものが普通ではないかという感じを持っております。  したがいまして、我が国としてこういった世界遺産一覧表に提出すべき目録を作成する際には、その世界遺産一覧表に現在載せられておりますようなすぐれた日本の代表的な文化遺産自然遺産を精選、厳選いたしまして決めたい、こういうふうに考えております。
  65. 川島實

    川島委員 そうすると、このユネスコの人間と生物圏研究計画の中で指定を受けている四件は、これはもう入るという受けとめ方をしてもよろしゅうございますか。
  66. 小西正樹

    ○小西説明員 今の御質問でございますけれども、何を具体的にこの世界遺産一覧表の物件として選定するかということにつきましては、この物件を選定するに当たって関係しております省庁、すなわち環境庁、文化庁それぞれ所管している法律もございますので、そういう省庁の意見を私どもも聞きながら、一緒に、いかなる物件が適当かということを検討してまいりたいと思います。  現段階でこの物件はこの世界遺産一覧表に記載すべき物件であるというふうに現在予定しておるわけではございません。
  67. 川島實

    川島委員 ユネスコのそういう世界的な動きをひとつ大切にしておいていただきたいと要望しておきます。  次に、世界遺産委員会の構成でございますが、現在の活動状況等資料をいただいておりますので、具体的にこのわかりにくいところだけひとつお聞かせをいただきたいと思います。特に、世界遺産基金の関係でどのような使われ方をしておるのか、このこともあわせてお伺いしておきたいと思います。
  68. 小西正樹

    ○小西説明員 世界遺産委員会の概況についての御質問だと理解いたしますが、世界遺産委員会はこの条約締結国のうち二十一カ国から選ばれることになっておりまして、そのメンバーにつきましては三分の一ずつ六年ごとに変わっていく、そういう手続規則がございまして、それに従って活動をしておるわけでございます。  その主な活動の内容といたしましては、各国が世界遺産委員会に提出いたします推薦物件の目録を検討いたしまして、世界遺産委員会自分で定めました基準に従って、これを世界遺産一覧表に記載すべきかどうかということを決定することがまず一つございます。  それから、この遺産一覧表に記載された物件の中から、危険にさらされている世界遺産一覧表という、さらにもう一つの一覧表を作成するということになっております。  第三に、締約国からの要請に基づきまして遺産の保護のための国際的な援助を実施することになっております。  また、この世界遺産委員会におきましては、この条約に述べられております自然遺産文化遺産、これらのものに対する国際的な援助を与えるための世界遺産基金という仕組みがございますが、その世界遺産基金の資金の使途について決定することがこの委員会の任務としてございます。  予算についてでございますけれども、世界遺産委員会の資金に基づく予算は、現在、一九九二年の暦年度で、予算総額は二百三十万ドルでございます。この予算総額のうち国際的援助が百三十三万ドル配分されております。また、広報活動に三十万ドル、国際機関等の助言やサービス料について約四十五万ドル、事務局に対して二十一万ドルが配分されております。
  69. 川島實

    川島委員 ありがとうございました。  我が国がこの分担金を納めているわけでございますね。ユネスコの一%と聞いておるわけでございますが、昨年度、金額にして幾らなのか。特にもう一つ、この条約に書かれております任意拠出金というのを出すようになっているわけですが、それらは幾らになるのか。  それからもう一つ、我が国が今回意義の中で唱えておりました文化遺産保存日本信託基金、午前中の答弁では八百万ドルで、ことしは三百万ドル、既に三十七万ドルが協力費として出されておる、こういう答弁をいただいているわけでございますが、これとの関連についてもあわせてお伺いをしておきたいと思います。
  70. 小西正樹

    ○小西説明員 お答え申し上げます。  この世界遺産基金の分担金は、この条約によりまして、これまでの締約国会議においていずれも各締約国のユネスコの分担金の一%ということに定められております。一九九二年—九三年、暦年度分の分担金につきましても、昨年十一月に開催されました第八回の締約国会議におきまして同様に定められております。  我が国については、もしこの条約を結ぶことになりますれば、その決議に従いまして、約七十六万米ドルの支払い義務が課されることとなる見込みでございます。これは結果といたしまして、全体の一四%程度の分担になるかと存じます。  また、先生御指摘の第二の点でございますけれども、世界遺産基金へ支払う分担金と、ユネスコに設置している文化遺産保存日本信託基金、この拠出金との関係でございます。  この信託基金と申しますのは、先生御案内のとおり、ユネスコが、この条約とは別に世界文化遺産救済のために展開しておる文化遺産保存国際キャンペーン、こういうキャンペーンがございまして、我が国も積極的に協力しておるわけでございますけれども、平成元年度に設置されました、ユネスコの財政規則によります信託基金でございます。  この信託基金による協力の対象となる遺跡の選定に当たりましては、キャンペーンの対象となっているものがもちろん中心になるわけでございますけれども、具体的には、個々の遺跡の重要性や崩壊の危険性の高さなどを総合的に勘案して、我が国とユネスコとの間の協議に基づいて決定されるわけでございます。この信託基金につきましては、我が国は現在八百万ドルの拠出を行っておるわけでございます。  これに対しまして、現在の条約で述べられております世界遺産基金も、ユネスコの財政規則に従って設けられておる信託基金であることは変わりございません。ただ、資金については、この条約の定め十五条の四でございますけれども、その規定に基づきまして、ユネスコから独立した性格を有する世界遺産委員会が決定する目的にのみ利用されることになっております。  また、第二十条で規定されておりますが、基本的には、この世界遺産委員会が作成いたしました世界遺産一覧表の中に記載されている文化遺産の中から、援助の要請に応じて、この世界遺産委員会が援助を供与することを決定した物件に対して資金が拠出されるということになっておりまして、世界遺産委員会がその使途を決定するという点において、我が国が積極的に協力しております文化遺産保存日本信託基金とは相違がございます。
  71. 川島實

    川島委員 ちょっと理解がしにくいわけですけれども、世界遺産委員会でいろいろなお金が使われていく、その遺産委員会の中に世界遺産基金がある。それはずっと条約の中にございますからわかるわけですが、日本が新たに設けております文化遺産保存日本信託基金というのは、世界遺産基金の中の二百三十万ドルに全体が含まれているのですか、これはどうなんですか。
  72. 小西正樹

    ○小西説明員 これは全く別でございます。別途、日本が信託基金に八百万ドル拠出しているわけでございます。
  73. 川島實

    川島委員 そうすれば、日本信託基金というのは、我が国の意向が非常に働いて、特定のあそこの遺産についてはぜひひとつ、こういう意向が積極的に働く、こういう理解をしていいわけですか。
  74. 小西正樹

    ○小西説明員 そのとおりでございます。  我が国はこれまでこの条約を結んでおりませんでしたし、また我が国として文化面で積極的に国際的な協力をすべきであるという考え方に基づきまして、このような特別な信託基金ということで協力を進めてきたわけでございます。
  75. 川島實

    川島委員 次に、この条約の中で国際機関が三つございます。文化財の保存及び修復の研究のための国際組織(ICCROM)、これはアメリカ、フランスなど八十二カ国が加盟をいたしております。それから二つ目は、記念物及び遺跡に関する国際会議(ICOMOS)、五十八カ国が参加をいたしております。三つ目は、自然及び天然資源の保全に関する国際同盟、これは六十二カ国が参加をいたしておりますが、この条約を結ぶことによって、今後この三つの機関と我が国との関係はどのようになりますか。
  76. 小西正樹

    ○小西説明員 お答え申し上げます。  先生が御指摘になられました三つの国際機関はこの条約と非常に密接なかかわり合いを持っております。この条約の十四条におきまして、ユネスコの事務局長が遺産委員会議事日程や書類を作成するに当たって、あるいは委員会の決定の実施をするに当たりましては、専門的な知識を有し専門家を抱えておりますこれらの国際機関のリソーシズ、手段及び能力を十分に活用する、能力の範囲における活動を最大限度に利用するという定めがございます。  したがいまして、この条約におきましては、こういった機関が持っておる専門的な知識、経験を最大限度に生かして条約趣旨に寄与させるという考え方がはっきりと規定されているわけでございます。
  77. 川島實

    川島委員 次に、我が国がこの条約締結することによって負う義務というのが五点挙げられておるわけでございます。  その中で一つは、先ほどから議論がありました、遺産の目録を世界遺産委員会へ提出をする。このことは午前中の議論等がありまして、わかったわけでございます。  もう一つは、教育及び広報事業計画を進めていかなければならない、こういうふうになっておるわけでございますが、これがどのように今後考えられておるのか、まずこの点についてお伺いしておきたいと思います。
  78. 橋本善太郎

    ○橋本説明員 自然遺産の候補地の選定につきましては、先ほど申し上げましたように、本条約第二条の定義を踏まえまして、すぐれた自然環境として我が国の国内法により保護が図られている自然環境保全地域、あるいは国立公園等の中から選定することになるというふうに考えておりまして、これらの地域におきましては既に指定の趣旨のPRに努めているところでありますが、世界遺産として登録された暁には、従来のPRに加えまして世界遺産としてのPRも十分行ってまいりたいというふうに考えております。  さらに、学校における環境教育あるいは自然公園内のビジターセンター等における自然教育の実施でありますとか、環境月間、これは例年六月に環境月間というものをやっておりますけれども、そういうところを通じまして啓発をやる、あるいは環境庁の広報誌等を通じまして情報の普及等に努めたいというふうに考えております。
  79. 吉田茂

    ○吉田(茂)政府委員 文部省、文化庁におきましても、各種の広報事業を現在実施しております。例えば毎年十一月に文化財保護強調週間あるいは文化財防火デーあるいは文化財愛護地域活動の研究委嘱というような形で実施をしておるわけでございますが、そういう中でさらに世界遺産あるいは文化遺産ということについての意義その他を強調してまいりたいというふうに思っております。  また、文部省の所管法人でございますユネスコ・アジア文化センターの各種キャンペーンあるいは日本ユネスコ協会連盟のいろいろな広報活動、従来こういろ各種広報活動が文化財について行われている上に、さらにこういった文化遺産世界遺産といった面での広報の充実について要請してまいりたい、かように思っております。
  80. 川島實

    川島委員 次に、我が国はこの条約を結ぶことによって国際的にいろいろ援助を受けられるような形になっているわけでございます。しかし、財政的に我が国は拠出をたくさんしておりまして、援助の受け方も、人材派遣をしてもらうのか、知的ないろいろな専門家に我が国の遺産についての保全の関係についてお伺いをするとか、いろいろあろうかと思いますが、これらについてはどのように受けとめておるわけですか。
  81. 橋本善太郎

    ○橋本説明員 先ほどのお答えの繰り返しになりますけれども、我が国におきましては国内法、自然環境保全法でありますとか自然公園法に基づきまして既に指定しているところを登録するということになると思います。  このような地域では一定の行為を制限しあるいは必要な施設を整備するというようなことは従来行ってきておるわけでございまして、また管理につきましても、自然環境保全地域にありましては自然保護取締官でありますとか、あるいは国立公園におきましては国立公園管理事務所、それからさらに都道府県等の協力も従来から得ているわけでございまして、現地管理等を行っている。これら既存の制度をもとにいたしまして、自然遺産に登録されました場合に必要があるということになりましたらさらにそれらを充実するというようなことを行ってまいりたいというふうに考えております。
  82. 川島實

    川島委員 次に、文化財保護法の関係でいろいろ指定を受けているものについてお伺いをしたいと思います。  文化財保護法の一部改正が一九七五年、今から十七年前に一遍改正になっております。さらに、その後改正になっているかどうかということでお伺いをした結果、昭和五十八年十二月に、これはほかの関係で、国家行政組織法の改正によって改正になっているだけで、文化財保護法に対して推進をしていくための法律改正なんというのは一度もやられてなく十七年間時代とともに今日あるわけでございますが、今回この条約締結するに当たってもう一度見直しをしなきゃならない多くの問題点があろうかと思います。  それは、今日までの経済的な条件の非常に厳しい変化がなされてきておりますし、我が国の至るところでいろいろな破壊の危険にさらされている、国民全体の貴重な共同財産である、そういう保護の目的が国民にもなかなか理解をされずに、施策の多くの問題点が各地方自治体で挙げられておるわけでございます。  特に一つは、文化財保護の理念の確立と国民の理解、協力を得るための教育啓蒙活動の強化、これはどのように進められてきたのか。  二つ目は、重要な埋蔵文化財の含まれている土地ですね、その発掘に関する許可制を実施する、こういうように言われてきたわけでございますが、それらについてはどのようにお考えになっているのか。それから、それらの埋蔵文化財が埋められておるであろうそういう土地についての基礎的な調査だとか地図等必要な資料を整備する、そして周知徹底をしなきゃいけない、こういうふうに言われてきているわけでございますが、それらについてどういう対策がなされてきたのか。  さらに三つ目は、伝統的建造物群の保存地域が今幾つかずっと指定がなされているわけでございますが、まだまだ地方からのこれらに対してのいろいろな提言もなされているわけでございますが、これらの経費の負担についてどのような形になっておるのか、お伺いをしておきたいと思います。
  83. 吉田茂

    ○吉田(茂)政府委員 まず第一点の文化財保護についての見直しの御指摘でございますが、御指摘のように文化財保護法の内容的な改正は昭和五十年に行われたわけでございますが、その後、文化財を取り巻く環境の急激な変動に対応するためどのようにしていくかという問題があるわけでございます。  五十年の場合には、埋蔵文化財制度の充実であるとか伝統的建造物群の保存地区制度の新設等が行われたわけでございますが、その後の社会環境の変化、特に国民の伝統文化への志向が大きな流れとなっている、あるいは産業構造の変化、国土開発の進展、国際交流協力の要請、こういった点から文化財保護制度についての検討をいたしたいというふうに考えまして、文化財保護審議会のもとに企画特別委員会を設けまして今後における文化財保護のあり方に対して検討を始めたわけでございます。  史跡等の整備の問題であるとか文化財の公開の促進の問題であるとか大きなテーマがあるわけでございますが、現在この条約批准に伴って新たな制度をつくるという必要性はない、こう私ども考えておるわけでございますが、今後そういった社会的な変動のもと、あるいは条約を実施していく中で問題点が生じた場合には、そういったものも含めてこういった検討の中で対応をしていきたい、このように考えておるわけでございます。  二番目に御指摘がありました啓蒙活動等でございますが、この点につきましては、昭和五十四年度から、地域住民への文化財保護思想の普及活動を行う、その他の業務もあるわけでございますが、こういった普及活動を行う文化財保護指導委員に対する国庫補助を開始しております。こればかりではございませんが、文化財保護指導委員の教育、啓蒙活動ということについては大きな期待がなされておるわけでございます。  ただ、発掘の許可制につきましては、その後いろいろ検討してまいったわけでございますが、他の公益との調整の困難性あるいは全体としての規制緩和の動向等もございまして実現には至っておらないわけでございます。ただ、こういった埋蔵文化財を中心とした文化財が破壊されないようにという趣旨のもとでは、予算措置の充実ということで、史跡等を買い取りする予算の充実等を中心努力を重ねてきたつもりでございます。  また、遺跡の地図につきましては、昭和四十八年度から全国遺跡分布地図の作成に入っております。それから、昨年度からはさらにいわゆる開発との調整、そういった中で埋蔵文化財を中心にした文化財を守っていかなければならないということで、いわゆる遺跡カルテというものの作成を進めておるわけでございます。  三番目に御指摘のございました伝統的建造物の保存地区の決定ですが、保存につきましては予算措置を講じまして、整備費等の二分の一の補助ということを現在進めているところでございます。  以上でございます。
  84. 川島實

    川島委員 先ほどお話ししましたように、文化財保護法の改正がなされてなくて、十七年前にこの法律の改正が行われたときに十項目の附帯決議が実はついているわけです。このことについて、どの項目とどの項目をおやりになってないというのがおわかりですか。
  85. 吉田茂

    ○吉田(茂)政府委員 御指摘のように十項目があるわけでございます。今申し上げたのはその中の一部と重なる面が多いかと思うわけでございますが、この十項目の中には入っておりませんが、別途発掘の許可制の問題がございました。この点につきましては今申し上げたとおりでございます。  十項目の中で、濃淡の差はございますが、それぞれに実現しあるいは実現に努めておるところでございます。  ただ、十項目の中で「埋蔵文化財の破壊を防ぐためこ「停止命令期間内において、十分な調査を行うとともに、必要がある場合には、史跡の指定又は仮指定を行うなど、埋蔵文化財の保存に万全を期すること。」というのがあるわけでございます。  御案内のとおり、埋蔵文化財があるにもかかわらず工事が行われる、その場合に文化庁長官がその工事について停止命令を出す、こういう制度でございますが、これにつきましては実際その後この停止命令を出すに至った例がない、こういう状況があるわけでございまして、それに伴いまして、この第二項目につきましての実現はないわけでございます。  ただ、これにかわりまして必要な十分な調査を事前に行っていくということがやはり必要なわけでございますので、その点につきましては予算の充実等努力を重ねつつ、この趣旨としておるところにつきましてまた別途の方向で我々としても努力を重ねておるところでございます。
  86. 川島實

    川島委員 文化財の関係は、私が今住んでいるところは徳川家康の発祥の地、岡崎市でございまして、ことしか徳川家康生誕四百五十年ということで各種の行事が待たれているところでございます。その中でも、まず一つは、今都市化が進んで、地域の開発の進展に伴ういろいろな影響があって、火災、文化財の喪失ということを非常に心配いたしておるわけでございます。これらに対しての文化庁としての対策はどのように考えられておりますか。
  87. 吉田茂

    ○吉田(茂)政府委員 こういった文化財の保存施設についての整備の補助金であるとか、文化財、史跡におきますいろいろな防火を中心といたしました施設に対する整備の補助金につきまして、いろいろの充実に努めてきておるところでございます。最近の非常に厳しい財政状況の中で大きな増加ということがなかなか困難ではございますが、本体の修理費のほかにこういった各種文化財の防災のための施設設備に対する補助金というものに対する充実にさらに努力をしてまいりたいと考えております。
  88. 川島實

    川島委員 次に、私のところの市だけでも、国の指定の史跡、建造物それから絵画、彫刻、工芸等が二十四カ所、県の指定が三十二カ所、岡崎市の指定が百九十四カ所で合計二百五十カ所。三十二万都市ですが、そこでこれだけあるわけです。国はこれらの県指定、市指定、それらについてどのような配慮をなされているか。例えば新しく出てきたところをまずとりあえずは市が指定をして市でいろいろ保護を加えているわけですけれども、そういうものを見直しをしてきちっとやっているという機関が国にあるわけですか。
  89. 吉田茂

    ○吉田(茂)政府委員 文化財につきましてもいろいろな種類があるわけでございますが、一般的に申しますと市町村あるいは県の指定について国の補助金というものは文化庁からのものはないわけでございますが、一部交付税措置というようなことも始まっておるわけでございます。  御指摘のような場合に県あるいは市町村が指定した文化財、これにつきましてはそれをさらに全国的な視野の中でどういう評価するかという判断をするケースもあるわけでございまして、そうした場合にやはり国の指定の対象にすべきであるという場合には、調査に入りましてそれを指定していくというケースもあるわけでございまして、国の指定ではないものにつきましても国の地方交付税の措置あるいは県、市町村のいろいろな措置という中で全体的な視野の中で努力をしているという現状でございます。
  90. 川島實

    川島委員 国は、未指定の文化財の調査実施、そういうものはどのように計画して行われているのか。各市はこのことに非常に頭を悩ませながらそれらの復旧事業に力を注いでいるというのが今日の状況でございますけれども、どのような対策を進められておりますか。
  91. 吉田茂

    ○吉田(茂)政府委員 文化財の指定につきましてはいろいろなケースがあるわけでございますが、例えば緊急調査と称しましてある地域を計画的に調査をしながら国の指定の対象になるものはないか精査をしていくというケース、あるいは個々に市町村なり県からの申請あるいは紹介に基づきまして指定をしていくというケース、いろいろあるわけでございます。  ただその場合に、市町村指定あるいは県指定とは違った、国としての全国的な視野からの判断というようなこと、それからある程度の学術的な評価が定まるというようないろいろな条件があるわけでございますが、そういった中で、国の指定について精査のもとに努力を続けているというところでございます。
  92. 川島實

    川島委員 史跡が見つかったときの公有化、買い取る、そういうことはどのくらい行われているわけですか。地域では公園に指定をして、価格が付近の土地の約五分の一くらいになって、土地を持っている人にとっては非常に損害をこうむって、いろいろ裁判ざたになっている例もございますし、文化財の指定を受けたばかりに保護について民間のお持ちの方たちは非常に苦労されている、このような問題点についてどのような措置がなされておるのか。  それから、無形文化財等についての記録の整理保存だとか後継者の育成等はどのように行われているのか、お伺いしておきたいと思います。
  93. 吉田茂

    ○吉田(茂)政府委員 第一の御指摘の点は、文化庁の施策といたしましては史跡等の買い取りという形で対応をしておるわけでございます。  これは地方公共団体が遺跡の中で指定された国の史跡というようなものについてこれを公有化しようというケースでございますが、これに対して国が補助をするということでございます。平成四年度の予算額が約九十四億ということで、昨年度に比べて十四億強増加をしております。これは最近の国土開発、こういったものに伴う開発計画が非常に多くなっているということ等にも対応いたしまして、地方公共団体の史跡等の土地の公有化について一定の補助を行うという施策を進めておるわけでございます。  それから無形文化財につきましては、伝統芸能等の後継者養成事業ということで、重要無形文化財保持者への助成金あるいは無形文化財の伝承、公開に対する補助事業あるいは民俗文化財の伝承、後継者養成等に対する補助事業、こういったものも含めましていろいろな技術講習会等まで含めますと、文化庁における無形文化財あるいは伝統芸能、こういったものに対する補助金が約四億三千万ということで、三年度よりも一億二千万強増加をしておりまして、重要無形文化財保持者への助成金等、こういった事業の中でそういった無形文化財の伝承ということに力を入れておるというところでございます。
  94. 川島實

    川島委員 時間がございませんので具体的な事例については触れませんが、重要文化財が全国で一万一千四百十、国宝が千三十四、重要有形民俗文化財百六十九、重要無形民俗文化財百四十一等々、いろいろ数あるわけでございますけれども、これらに対してこの機会に十分見直しをして、これらの保護保全にひとつぜひお努めをいただきたいと思うわけでございます。  午前中にもお話がございましたが、文化財の不法輸入及び輸出についてどのように指導をしているのか、このことについてお伺いしたいわけでございます。特に所有権譲渡の禁止及び防止の手段に関する条約締結を今後考えていく、こういう前向きな発言が出されておりますので、それは子とするわけでございますけれども、今日のこれらの文化財それから自然遺産等の不法な輸入輸出、ワシントン条約等も含まれるわけでございますが、その現状についてお伺いをしておきたいと思います。
  95. 花井伸之

    ○花井説明員 お答え申し上げます。  税関におきまして文化財あるいはワシントン条約該当物品の取り締まりいかんという御趣旨がと思いますが、税関におきましては、関税法という私どもの所管する法律でございますが、この関税法の第七十条の規定に基づきまして、関税関係法令以外の法令、まあ一言で私ども他法令と呼んでおりますけれども、この他法令に基づきまして輸出あるいは輸入に当たりまして許可あるいは承認が必要という貨物につきましては、税関への輸出あるいは輸入申告の際に、その他の法令によります許可、承認、こういったものをとっているかどうかということを確認することにしております。それで、この許可あるいは承認等を取得しているということが確認されたものにつきまして関税法上の輸出の許可あるいは輸入の許可を行うということになっております。  したがいまして、ここで御指摘のような文化財とかあるいは自然保護の関係の物品でございますが、どのような物品について輸出あるいは輸入を規制するかということにつきましては、私どもが所管しております関税法が独自に定めるというものではございませんで、一義的にはそれぞれの国内法令で定めていただくということでございまして、税関はこういった定められているものにつきまして関税法に基づきましてこれを最終的に水際で規制する、こういう立場にあるわけでございます。  それで、文化財の輸出につきましては、文化財保護法によりまして文化庁長官の許可を要するということにされております。したがいまして、輸出申告の際に、関税法第七十条の規定に基づきまして税関は文化庁長官の許可の取得の有無の確認を行うということにしております。  また、ワシントン条約該当貨物につきましては、外為法に基づきます輸出貿易管理令または輸入貿易管理令によりまして、輸出入に当たって通産大臣承認などを要するということにされております。税関に対する輸出申告の際に、通産大臣承認などの有無の確認を行うということになるわけでございます。ワシントン条約該当貨物の関係でございますが、通産大臣承認などがないということで税関において輸出あるいは輸入の許可を行うことができなかった物品、いわば税関で輸出あるいは輸入を差しとめたケースでございますが、昨年二千六百件程度ございます。  以上でございます。
  96. 川島實

    川島委員 文化財の輸出なり輸入で許可を受けたものが何件で、今二千六百件が差しとめられたということですが、その内訳、文化財だとかワシーントン条約の二千六百件の内訳をちょっとお伺いしておきたいと思います。
  97. 花井伸之

    ○花井説明員 ただいま申し上げました二千六百件と申しますのはワシントン条約該当貨物でございまして、これは直接的には文化財保護法の対象になっているものはなかったと承知しております。
  98. 川島實

    川島委員 それじゃ外務省にお伺いしますけれども、今度この条約締結することによって、事前のいろいろなやりとりの話では、水際で、外為法で、大蔵の税関で、いろいろな不法な輸出入、文化財等、世界の遺産等が入ってきたときも押さえられる、こういうふうな話だったのですけれども、今の話を聞いてみますと全然基準がないのですね。よその国がこれは遺産だと指定をされておりましても、我が国はそれに抵触する法律がないから、わからないからストレートに入ってしまう、こういう状況になるわけでありますけれども、これでもこの条約締結してからこれらの問題点についてきちっと対応なさらないおつもりですか。
  99. 小西正樹

    ○小西説明員 先生今御指摘の点でございますけれども、確かにこの条約は、自然遺産文化遺産の双方につきまして、それが顕著な普遍的な価値を有するものについては国際社会全体の遺産として保護していく、保存していくという趣旨を定めたものでございますけれども、条約論だけから申し上げますと、この条約において対象となっておりますものは、文化遺産自然遺産、それぞれ第一条と第二条に定義があるわけでございますが、文化財については第一条でございます。明文の規定はございませんけれども、この条約を作成する審議過程におきまして、特に「記念工作物」というところにございます「建築物、記念的意義を有する彫刻及び絵画、考古学的な性質の物件及び構造物、金石文、洞穴住居並びにこれらの物件の組合せ」という形で決まってございますけれども、これらの文化遺産というものについては、条約の交渉当事国の間にこれが不動産であるという一般的な認識が、共通の認識がございました。  これは条約を作成する際に、この前文でもユネスコの憲章の第一条の目的に該当するところからの引用がございましたけれども、そこで実は、ユネスコの憲章においては芸術的な作品ということが憲章自体には述べられておるところでございますが、この前文に引用する際に、芸術的作品ということで引用しますと動産が入ってくるのではないかという各国からの懸念と申しますか配慮がございまして、それが削除された経緯もございます。また、現在この条約で設けられております世界文化遺産の一覧表に記載されている物件もすべて不動産でございます。  したがいまして、先生御指摘のとおり、こういう条約趣旨からいたしますれば、不動産、動産に限らず一般的にすぐれた価値を、文化的な価値を有するものを保護、保存していくという考え方は当然でございますけれども、条約論だけから申しますと、必ずしも動産についてのそういう国際的な約束を結ぶということまでこの条約の受諾あるいは批准に当たって条約自身が求めておるというところではないというふうに私どもは理解しております。
  100. 川島實

    川島委員 時間がございませんので、最後に要望だけしておきます。  他の締約国の領域内にある遺産を損傷することは許されない、こう言われておるわけでありまして、我が国の不法な輸出入、外から入ってくるもの、出ていくものがきちっとした形で歯どめがきかないというような状況で、これから条約を結ばれるということでございますからある一定の部分はそこで歯どめがきくわけでございますけれども、条約に加盟してない国々だとか我が国のいろいろな遺産についてこれからどうやって水際で防ぐことができるかということをひとつ十分御検討いただくように要望して終わりたいと思います。ありがとうございました。
  101. 濱中裕徳

    ○濱中説明員 先ほど先生がお触れになられました、さきの三月から四月にかけて開かれました地球サミット第四回準備会合におきます地球憲章の諸原則に含まれるべき要素について、我が国代表団から提案をしたわけでございますけれども、この件につきましては、環境庁といたしましても、ちょうど同じ三月に環境庁長官の諮問機関でございます地球的規模の環境問題に関する懇談会におきまして地球憲章に関する基本的な考え方について提言をいただいたわけでございます。  このような提言をいただいたということによりましてもちろん適切な地球憲章の作成に貢献をしたわけでございますけれども、今後の環境政策の推進に当たりましてもこれを貴重な参考として、私ども全力を挙げてまいりたいと考えておる次第でございます。
  102. 麻生太郎

    麻生委員長 遠藤乙彦君。
  103. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 世界遺産条約について質問を進めてまいります。  まず、この条約は大変重要な意義のある条約であり、またユネスコ総会で採択されてから二十年もたっているわけでございまして、なぜ我が国としてもっと早く批准しなかったかと遺憾に思うわけでございますけれども、こういった批准のおくれの中にも我が国の文化というものに対する姿勢が出ているのではないかと感ずるわけでございます。  そこで、個別の問題点に入る前にまず、我が国の国際文化協力についての基本姿勢につきまして、これは大臣にお伺いをしていきたいと思っております。  我が国は経済大国としてあるわけですけれども、文化の面ではいまだにその取り組みが弱いということが言われております。近年になりまして、やっと国際協力構想の三本柱の中で平和の協力、開発の協力に並んで文化協力が入ったことは大きな前進であると評価をするわけですが、ただ、具体的な中身、体制を見ますとまだまだ弱いということを痛感するわけでございます。特に文化協力への予算あるいは人員等の具体的な面で、主要な先進国と比較をしますとまだまだお寒い状態であるということを痛感をするわけでございます。  そこで、個別の点に入る前に、そもそも文化というものに対して大臣はどうとらえておられるのか、そしてまた、これからの我が国の国際貢献、なかんずく最も我が国の貢献が期待されておる文化協力につきましてどのような姿勢で臨むのか、その基本姿勢につきまして大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  104. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 発展途上国においてはどうしても衣食住ということが最優先的に要求をされる。文化の創造や文化の保存ということがややもすると二の次になりがちであるということも事実であります。  我が国の援助はこちらからの押し売り援助ではございませんので、相手国の要請を待ってそれに援助するという形をとっております。また、限りある予算の中で援助が行われるわけでありますから、おのずからそこには優先順位というものがつけられる、そういうようなこともあって、やはり文化援助というものが金額的にも少ないということだろうと思うのであります。しかし、考え方によっては、デモンストレーションのことをやるよりも地道な文化資産の保存というようなことの方が、そう莫大な金がかかるわけでございませんので、相手国の要望がそれほど強くなくとも時としては助言をしてでも文化的な援助をすることが必要であろうと私は考えております。
  105. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 その文化が、いわばぜいたく品みたいな考えで一部我が国ではとらえられている面があるかと思いますけれども、文化というものは非常に大事なものであって、私自身の理解するところ文化は、まず西欧的にはカルチャーという言葉で、カルティベートという話源である、すなわち耕すという意味であって、精神を耕して豊かなものにしていくということが大きな意味である、それが文化である。  他方、東洋的に文化という言葉が使われておるわけですけれども、これまた非常に含蓄のある意味があって、文化の文というのは、文武の二道に対比されるわけですけれども、武に対する文、すなわち非軍事的ということに非常に重点がある、また文化の化は変化させるという意味であって、非軍事的手段を通じて国民を幸せにしていく、変化させる、そういう大変含蓄に富んだ意味があるわけであって、そういった意味におきますと、この西欧的な文化の概念あるいはまた東洋的な文化の概念、いずれも大変重要な哲学を含んでおり、特に冷戦後の世界にあってどう平和を構築するかという点から見ても大変重要な意義がある。単にぜいたく品と位置づけてはならないということであって、そういう視点をぜひ我が国も持って今後の文化協力に強力に取り組んでいただきたいということをまずお願いしておきたいと思っております。  その点もう一つ関連しまして、具体的なケースとしましてアンコールワットの問題を尋ねたいと思います。  これも大臣にお願いをしたいわけですが、午前中もアンコールワットの話は出まして、政府からも今後一生懸命やるというお話がありました。実は私たち公明党も、この五月の初めにカンボジア訪問団ということで委員長以下行ってまいりまして、現地を視察し、アンコールワットにも行ってまいったわけでございますけれども、四十八度を超す大変暑い中を行ってまいったわけですが、大変すばらしい文化遺産であることはもう間違いないわけです。また、その提言は既に大臣にも提出をしてございまして、アンコール遺跡の保全に全面的な支援をひとつお願いしたいということは既に大臣も御承知かと思います。  そこで、さらにちょっと指摘したい点なのですが、このアンコール遺跡の問題、実は今カンボジアの和平と復興と大変深い重要なかかわりがあるということを指摘しておきたいと思います。単に人類共有の文化遺産、すばらしい学術的価値を持った遺産であるということは当然ですけれども、それに加えてもう一つ、このアンコール遺跡の修復ということがカンボジアの和平、復興にとって大変重要な政治的、心理的意味を持つということをぜひ指摘しておきたいと思います。  といいますのは、カンボジアは戦争直後で何にもないわけですけれども、彼らの国民的な誇りというのがまさにこのアンコールワットである、新生カンボジアの国旗の中にもこのアンコールワットの絵が描かれていることから見ても、彼らの精神的支柱、アイデンティティーの一つの象徴ということでもありまして、大変重要な意味を持っているということでございます。  また、今まで幾つかの派に分かれましていわば内戦状態であったわけですけれども、クメール・ルージュも含めてこのアンコール遺跡の保全には全面支援、全面賛成ということであって、まさにこのアンコール遺跡の保全に国際協力をしていくことが、新生カンボジアあるいは恒久的な平和の樹立あるいは国家の再建に当たって大変重要なプラスの心理的、政治的効果を持つということでぜひ認識をして、このアンコールワット及びアンコール遺跡保全について我が国も全面的に協力をすることが大事だということを御認識いただきたいと思っております。  それからもう一点は、やはり文化協力というのは大変息の長い協力であるべきで、余り短期にやっつけ仕事でできるものではない。大変な長い歴史を持ったものであるし、細心の注意をもって進めていかなければならないし、またいろいろな要素との調和も考えなければならないわけであって、やはり文化協力というものは少なくとも数十年、何十年という単位で考えて長期的な視点で進めるべきものであって、その点が大変重要なものであるということを痛感しました。  我が国としてもこのアンコール遺跡の保全には既に三十七万ドルをユネスコの信託基金を通じて支出をし、また、本年柿澤政務次官の訪問の際に百万ドルの供与の意図表明があったわけで、それは大変評価をするわけですが、それだけで済むものではない、もっと長い時間をかけた本格的な、本腰を入れた協力が必要だということを大変痛感してまいりまして、そのことをぜひ大臣にも御理解をいただき、また御支援をいただきたいと強くお願いをしたいと思います。  国内でも既にアンコール遺跡の保全の委員会もできておりますし、民間でも非常に活発な動きがあります。また上智大学の石沢教授等のグループも大変貴重な作業をしておりまして、そういった民間とも十分な連携をとりながら、長期的な視点に立って本腰を入れてやるという決意をぜひこの場で大臣からいただきたいと思います。
  106. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私も、アンコールワット、アンコールトムという大きな遺跡がありますが、二十数年前に一遍行ったことがありました。  それで最近、二年ほど前に訪れてみましたが、大変荒廃をしてしまって、現地の人の話によると中国の文化大革命の影響かもしらぬ。要するに一部の反乱軍が首を取っちゃって、行ってみたとき像の首がみんなないのです。二十何年前にあった首がない。本当に殺風景な状況になっておる。それがさらに傷んでしまうというようなことでは大変困るということで、これについては私も委員と同じように何とかしてやらなければならぬ、こういうことで、ことしの三月に柿澤次官がカンボジアを訪問したときに、カンボジア側からの協力要請もありまして、ユネスコの文化遺産保存日本信託基金がございますから、ここからことしじゅうに百万ドルを限度に追加的な協力を行うという意図表明をやってこられました。  その内容をどうするかにつきましては、目下カンボジア政府関係者及びユネスコとの協議をしておる最中でございます。できるだけのことはやらせていただきたいと考えております。
  107. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 大臣から大変力強いも言葉をいただきまして感謝をしておりますが、ぜひその方向で取り組んでいただきたいと要望をしておきます。  続いてこの条文に即しての質問をしたいと思います。  まず、前文で「遺産を集団で保護するための効果的な体制であって、常設的に、かつ、現代の科学的方法により組織されたものを確立する」と条約の目的としては書かれておりますけれども、この趣旨並びにこの条約によって確立された体制というものがいかなるものであるか、御説明をいただきたいと思います。
  108. 小西正樹

    ○小西説明員 今お触れになられました国際的な体制でございますけれども、この条約はもともと、文化遺産なり自然遺産保護に当たっての国際協力というものが一定の諸国、特定の諸国の負担のもとでいわば慈善事業的に、場当たり的に行われてきたという面を反省いたしまして、そういう保護のやり方ではおのずと限度がある、限界がある、したがって効果的な国際体制を築く必要があるということでできたわけでございます。  したがいまして、この「効果的な体制」というのは、この条約においていろいろな規定がございますが、具体的に申しますと、まず、締約国が相互に選び合うことによって構成されます世界遺産委員会というものが二十一カ国で構成されることになっております。それで、この世界遺産委員会が作成いたします世界遺産一覧表、これは各国がそれぞれ自分の国にあります自然遺産なり文化遺産のうち顕著な普遍的価値を有するものを世界遺産の一覧表に記載すべく世界遺産委員会にその目録を提出するわけでございますけれども、こういう世界遺産一覧表をつくる。それから、締約国からの分担金及び任意の拠出金、これを財源といたしまして世界遺産基金というものをつくる、文化遺産なり自然遺産保護のためにこの世界遺産基金をベースにして国際協力を行っていく、専門家の派遣、機材の供与等をこの財源をもとにして行っていく、こういう効果的な国際協力の体制が築かれておるわけでございます。これが先生が御指摘になりました「効果的な体制であって、常設的に、かつ、現代の科学的方法により組織されたものを確立する」という内容でございます。  特に「科学的方法により」とございますけれども、この点については、専門家及び経験が豊富に蓄積されております国際機関である国際センター、ローマ・センターと言われておりますが、正式には文化財の保存及び修復の研究のための国際センター、それから自然及び天然資源の保全に関する国際同盟(IUCN)、記念物及び遺跡に関する国際会議(ICOMOS)、こういった関連国際機関の専門的な知識、経験を最大限度に活用するということによって、現代の科学的な方法を踏まえた国際的な協力の体制が実現できるように工夫されておるわけでございます。
  109. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、この条約に基づく国際的援助の対象となるための条件、並びに、これまでにどういう物件に対してどのような援助を供与してきたのかということにつきましてお伺いをしたいと思います。
  110. 小西正樹

    ○小西説明員 この条約による国際的な援助の対象となるための条件でございますけれども、原則といたしまして、各国が作成し提出する自然遺産及び文化遺産の目録の中から世界遺産委員会が選定いたしまして作成します世界遺産一覧表、それに危険にさらされている世界遺産一覧表、この二つの一覧表に記載されている物件が原則として国際的な援助の対象になるわけでございますが、その際に、締約国から自分の領域の中にある個々の物件についての援助の要請が行われるということが国際的な援助を与えるための要件になっております。
  111. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 援助の要請があるということが要件と伺いましたが、例えば締約国の要請がなくても、世界遺産委員会が独自に必要と判断すれば援助の実施を決定できるのかどうかということですね。  それからもう一つ、我が国もこの条約に基づく援助を要請できるかどうか。この点につきましてお伺いをします。
  112. 小西正樹

    ○小西説明員 締約国の要請がなくても世界遺産委員会の判断で援助の実施が決定できるかということでございますけれども、この世界遺産委員会は、あくまでも締約国の要請ということを援助の実施の要件といたしております。  それから、我が国もこの条約に基づく援助を要請できるのかという点でございますが、この点につきましては、実は条約の第十九条におきまして、いかなる国も、「いかなる締約国もこ自国の領域内に存在する文化遺産自然遺産の物件について「国際的援助を要請することができる。」という規定がございますので、条約の解釈論からすれば我が国も当然この条項を援用いたしまして国際的な援助を要請する資格があるわけでございます。  ただ、前文の第八項に、国際的な援助につきまして、これは「当該国」、すなわち今の場合は日本でございますけれども、日本がとる措置のかわりにはならなくても「有効な補足的手段となる集団的な援助」というふうに規定しておりまして、これはあくまでも当該国、すなわち日本がやる措置のあくまでもお手伝いだという趣旨でございます。  また、第七条には、「この条約においてこ「国際的保護とは、締約国がその文化遺産及び自然遺産を保存し及び認定するために努力することを支援する」というふうにございまして、この国際的な協力の体制というものが締約国がやる自助努力に対する支援という趣旨が明らかでございます。  また、二十五条に規定がございまして、「国際社会はこ援助をする際に、「援助を受ける国は、財政的に不可能な場合を除くほか、各計画又は事業に充てられる資金のうち相当な割合の額を拠出する。」というような規定もございます。  さらにこ十三条の四項に基づきまして世界遺産委員会がその活動の優先順位の決定をするに当たりましては、国際的な援助の要請国の利用し得る能力、特に、その国が遺産を「自力で保護することができる程度を考慮する。」ことになっております。  したがいまして、日本を含めて先進諸国からの要請に対してこの国際的な援助が行われるという可能性は高くないのではないかと思います。実際の運用におきましても、先進国に対してこの条約で定められました国際的な援助が行われました例はごくわずかで、私どもが承知している限り二件しかございません。
  113. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 この条約は武力紛争の場合にどうなるかということですけれども、ユーゴの内戦とか湾岸戦争の際に、本条約上の遺産の保護のためユネスコ及び世界遺産委員会がどういう措置をとったか御説明をいただきたいと思います。
  114. 小西正樹

    ○小西説明員 この条約は、前文に、社会的、経済的状況の変化、すなわち産業化とか都市化、大気あるいは水の汚染、こういったものに起因する文化遺産自然遺産に対する脅威から守るための国際協力体制をつくるということで、主として平和時が念頭にあるわけでございますけれども、他方、条約の中には、十一条の三項におきまして、世界遺産一覧表に記載するに当たりましては、「二以上の国が主権又は管轄権を主張している領域内に存在する物件を記載することは、その紛争の当事国の権利にいかなる影響も及ぼすものではない。」という規定がございますし、また、同じ条項の第四項には、「危険にさらされている世界遺産一覧表」に記載される物件の選定の際に考慮されるべき要件の一つとして、「武力紛争の発生及びそのおそれこということが言及されております。したがいまして、武力紛争時におけるこの条約の適用を必ずしも排除しているわけではないと思います。  特に先生からお尋ねのユーゴの内戦の際にどういうふうな活動がとられたかということでございますけれども、この内戦の際には、実はユーゴに、世界遺産一覧表に記載されておりますドゥブロブニク旧市街、それからスプリト史跡等の文化遺産がございました。こういう遺産が内戦によって脅威にさらされているということでございましたので、この紛争の当事者が、この世界文化遺産自然遺産条約の原則を尊重して文化遺産保護することを要請する趣旨のマイヨール事務局長の声明が発出されております。また、昨年末にかけて二人のオブザーバーがこの現地に派遣されて、状況を監視しております。  それからマイヨール事務局長から、昨年の十二月にはユーゴの連邦国防相に対して、この条約に基づいて文化遺産が尊重され保護されるように都市への攻撃を中止するような電報が出ておりますし、また、ことし一月には都市の損傷状況を評価するための調査団が現地に派遣されておるところでございます。したがいまして、ユネスコにおいてはこの件について非常に関心、懸念が表明されて、具体的なアクションがとられているわけでございます。
  115. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 危険にさらされている世界遺産という条項があるわけですけれども、現時点でどれくらいの数これに当たる遺産があるのか、あるいはどんなものがあるか、ひとつ例示をしていただければと思います。  また、危険にさらされている原因につきまして、今武力紛争の御説明がありましたが、それ以外の点でどんな原因があるのか、この点につきましても御説明を得たいと思います。
  116. 小西正樹

    ○小西説明員 危険にさらされている世界遺産として、具体的には一九九二年の一月の時点で九つの物件が挙げられております。  簡単に御紹介しますと、ベナンのアボメイの王宮、エルサレムの旧市街と城壁、マリのドンブクトゥ、オマーンのバフラの砦、ペルーのチャン・チャンの遺跡、ポーランドのウィーリクツカ塩坑、ユーゴスラビアのコトル自然・文化歴史地区、ユーゴスラビアのドゥブロブニク旧市街、ザイールのガランバー国立公園、これでございます。  それから、危険にさらされている世界遺産の配慮すべき要因といたしましては、これは十一条の第四項にございますけれども、「急速に進む損壊、大規模な公共事業若しくは民間事業又は急激な都市開発事業若しくは観光開発事業に起因する滅失の危険、土地の利用又は所有権の変更に起因する破壊、原因が不明である大規模な変化、理由のいかんを問わない放棄、武力紛争の発生及びそのおそれ、大規模な災害及び異変、大火、地震及び地滑り、噴火並びに水位の変化、洪水及び津波」以上が挙げられております。
  117. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 次に、遺産の登録の件でございますが、我が国はこれからこの条約に加入することになるわけですけれども、具体的に我が国としてどれぐらいの候補が既に挙がっているのか、どういう手続で今後遺産の登録の対象を選定していくのか等につきまして御説明を得たいと思います。
  118. 小西正樹

    ○小西説明員 我が国から世界遺産一覧表に登録するための手続につきましては、我が国の国内において文化遺産自然遺産を関係国内法、すなわち文化財保護法、自然環境保全法、自然公園法を所管されておられます文化庁、環境庁とこの条約を所管しております外務省、この三者を中心に協議いたしまして、その協議の過程におきましてはこのような文化遺産自然遺産についていろいろと専門的な知識経験を持っておられる専門家の御意見も聴取いたしまして、我が国として代表的な、我が国の誇る文化的な遺産あるいは自然遺産、それでかつ普遍的な価値を持つもの、こういったものを世界遺産委員会がその一覧表に載せる基準として用いております具体的な要件を考慮に入れつつ具体的に選定していくという手続を考えております。
  119. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 時間がありませんので最後質問にしたいと思いますが、今度は環境庁、文化庁にお願いをします。  この条約趣旨を今後どのように環境保護政策及び文化財保護政策に反映させていくのかという点につきまして、両庁より御回答をいただきたいと思います。
  120. 橋本善太郎

    ○橋本説明員 自然環境保全法第二条には、自然環境のもたらす恵沢を広く国民が享受し、将来の国民に自然環境を継承することができるようにする旨掲げられているところでございます。一方、本条約の基本的考え方でございますが、自然遺産を人類全体のための世界の遺産として保護し、保存し、将来の世代に伝えようというものでございます。  そのような観点に立ちますれば、本条約に基づき個別の自然遺産世界遺産一覧表に記載されました場合には、単に日本国民の共有の財産というだけでなくて世界人類の共有の財産という価値がつけ加わるわけでございまして、このような趣旨を踏まえましてより一層適切な保護管理に努力してまいりたいというふうに思っております。
  121. 渡邉隆

    ○渡邉説明員 文化財保護法におきましてもその目的といたしまして、文化財を保存し、活用を図って、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献するということが掲げられているわけでございます。この条約文化遺産自然遺産を人類全体のための世界の遺産として位置づけてその保護を図っていこうということで、基本的には文化財保護法の精神、趣旨、目的と一致するものであるというふうに認識をいたしております。  この条約締結いたしますことによりまして、我が国に存在いたしますすぐれた建造物あるいは遺跡などの保護が重要であるということが一般に一層広く認識をされるということがまず一つ大変大きなことだと思っておりますし、特に、その中で世界遺産一覧表に記載されるものにつきましてはその価値が国内外に広く紹介をされるということになりまして、その保護の意識が一層高まるというようなことが期待されるわけでございます。  こういうことは私どもの文化財保護政策にとっても大変有意義なことであると考えておりまして、その趣旨の一層の徹底に努めていきたいと思っておりますし、また国際社会の全体の問題からかんがみましても、この遺産を保護、協力していくということがうたわれておりますので、この条約を契機といたしまして我が国としても文化財保護に関する国際協力という面でも一層の推進努力を図ってまいりたいと思っております。
  122. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 近年、国民の間にも環境それから文化の保全に対する急速な意識の深化が見られるわけでございまして、ぜひ本条約の精神を体して関係省庁間で緊密な連携のもとにこの自然遺産ないし文化遺産の保全行政を進めていただくよう強く要望いたしまして、質問を終わります。
  123. 麻生太郎

  124. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 委員長、時間を確保いただきましてどうもありがとうございました。お礼を申し上げます。  これは大臣にお伺いした方がいいんでしょうか。実は現地に行きますと、もう大臣は現地の模様はよく御承知のとおりでございまして、シアヌーク殿下がお住まいになっておりますちょうどその正面だったと思いますが、トンレサップ川の河畔にポールが二十本立っていまして、メーンポールだけは少し高いんですが、左からずっと国旗が掲揚されております。十九本国旗がなびいておりました。右端のポールだけが国旗がないのですね。これはUNTACでも払お聞きしましたし、外務大臣は親友とも言われておりますチア・シムさんにもお会いしたときに、どうして日の丸が立っていないのでしょうか、こういうふうに私はお聞きしたわけです。チア・シムさんの方は、ちょっとその事情はわかりませんねということでございました。  そこで、私がお伺いしたいのは二点ございまして、一点目は、このポールというのはSNCが管理をなさっているポールなのか、それともUNTACが管理なさっているポールなのか、その点がまず第一点でございます。  第二点は、どうして日本の旗が立っていないのでしょうかという素朴な疑問でございます。何が言いたいかといいますと、我が国は財政支援あるいは物的な支援は他国に先駆けて積極的にやってきたと思っております。そのように私たちも外務省から具体的な資料で伺っておりますし、現にそういう援助も継続、発展させようという立場であると聞いているわけでございます。にもかかわらず日の丸が立ってないというのは、国旗掲揚に何らかの基準が設けられているのではなかろうか、こういう疑問を抱くわけでございますが、その点について御解明をいただければありがたい、かように思います。
  125. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私も感じとしては同じような感じでありまして、日本はこれまで数々のUNTACに対する援助をやっておりますし、今後ともカンボジアに対する援助は積極的にやっていこうという考え方でございます。  日本の旗が立っておってもしかるべきではないかという気持ちは全く同じでございますが、これにつきましては国連が管理をしておって、チア・シムさんが伊藤議員や梶原議員の質問に答えてそのようにしたい旨お答えになったそうでございますが、国連に問い合わせたところ、これは国連の参加のしるしであって、この間明石代表が参考人として意見陳述をしたときも述べたように、UNTACは平和のオリンピックと呼ばれるものだ。UNTACにおける国旗の掲揚の基準を部隊を派遣しているか否かということに決めてある、国連の取り決めであるということでございました。
  126. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 わかりました。ありがとうございました。  その基準がそういうふうに決められるというのは、私はどうも納得できないわけでございます。Fを出せば旗を上げてやろう、そうでなければ何ぼ金を出しても旗を上げてくれない、これは私はおかしいと思うのです。UNTACというのは、ただそのFの部分だけを現地で努力されて、それが主たる任務というふうに限定できるのでしょうか。私は決してそう思いません。  例えば、貢献をする国には、一挙にすべてができる国もあれば、さまざま事情もあれば段階的にやる国だってあると思うのです。それを、言うならばオフィサーを派遣をしてくれるのだったら旗が立つけれども、そうでなければ旗が立たないというのは、国連のとるべき役割でなかろうというか姿勢ではなかろうと私は思いますので、その点は我が国の政府というか外務大臣としても、それはちと基準を改めていただいてもいいのではないかというふうに私は言っていただきたいと思います。  何も旗を上げるのが目的じゃないのです。そうではなくて、私が一番重視をいたしますのは、プノンペンの市民が毎日夕方になればあそこにアベックも随分おりますし、涼みながら国連の各国の旗を見ているわけです。こういう国々が我々の和平なり復興のために汗をかいてくれているのかという話題が、さまざまな市民の間では毎日のように繰り返されているということなので、大変重要な関心だと思います。  そのときに、しこしこと言うならば本当に地味な貢献をやっているにもかかわらず日の丸の旗がないというのは、日本にいただけではわかりませんけれども、私は現地に行きますと、これで日本の日の丸の旗が立っていないというのは一体どういうことだというふうに思いますので、どうかひとつ……。  私はその基準についても意見がございます。Fが出なければ旗は立てないのだというのは何か政治的に利用されるようにも思いますから、立てたければFを出せというようなことではこれは聞こえないと思いますので、ぜひともそういう基準なんというものはむしろ取っ払って、いろいろな場面で貢献をしておる国はそこに旗が立てられるというふうにしていただきたいな、このように思います。  大臣、何かございましたら御答弁いただいてもいいのですが、どうでしょう。
  127. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 そのような考え方もあるのでしょうが、お金を出すというのは直接カンボジアに出すわけではありませんから、国連に出すわけですから、国連の旗が立てはそれでいいということになるのでしょう。  それで、国連に加盟している国はたくさんあって、その各国の義務分担というものがございまして、そこで出しているわけですから、アメリカがたくさん出すとすれば、ではアメリカの旗がでっかい旗、ちっちゃく出した国はちっちゃい旗というわけには、金目でつけるということにもなかなかいかないのじゃないのか。国連の方針としては、厳しい環境の中で危険が伴うこともあることを承知の上で参加しておるという各部隊の国名、国の名前をたたえて隊員の士気を高揚せしめるという発想によるものと思われております。  したがって、大部隊を出すという国はないのです。大体八百五十人なら八百五十人、皆決まっておりますから、その一国だけたくさんやるというのはむしろ支配的なことになっていけない。みんなが、多国が協力して多少の危険を冒しても汗をかいてそこで、異国の地で頑張るのだ、そういうような意味でオリンピックと思えばいいのでありまして、余り金、金と金のことばかり言いますと、これまた金でそれでは日本権利だけを主張するのかということになりますので、そこらの兼ね合いが非常に難しいということでございます。
  128. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 確かに兼ね合いは難しいなと思います。  いずれにしても私の言っていることは御理解いただいたと思いますので、人的派遣ということがあれば旗が立つということは、これは私はそういうことであってもいいと思いますよ、人的派遣もいろいろありますから。ただ、いずれにしても疑問に思いましたので、そのような基準を設けて結局汗をかいている国も旗が立たないというのはどうかなと思いましたので、そのあたりはひとつ私の気持ちも踏まえて当たっていただければありがたいな、こう思います。  次に、時間がございませんので、現地の大使館の建設問題ですが、なかなか遅々として進んでいないように私は思っているわけです。仮住まいでやっているというのは大変なことでございまして、他の国は後から取りかかったけれどももう早くでき上がって城を築いて大いにパフォーマンスしているというようなことなんですが、ひとつ外務省の方としても、せっかく手がけていただいた大使館建設の工事でございますから、一日も早い竣工を祝うことができますように建設促進について取り組みをいただきたいな、このように考えるところでございますが、ひとつ大臣見解を伺っておきたいと思います。
  129. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私は、これは同意見でありまして、大使館がいつまでもホテルの中に住まっておるというのでなくて、これこそやはり一軒持って、日の丸の旗をちゃんと立てて、日本の存在を知らしめるということの方がはるかにいいことは間違いありません。  外交活動の拠点になるのが大使館でありますから、一日も早くこれを整備して、今大体八名ですかな、日本は行っておりますが、フランスのように二十二名も行っている国もあります。あとは八、九名とか十名、四名というような国もあるようでございますが、日本の規則はまた本当にやかましくできておって、自由が余りきかない。しかし、そういう中でありながらもなるべく早く、これは御趣旨に沿って独立した大使館というものを整備するように努力をしていきたいと考えます。
  130. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 実力大臣であるだけに、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  一分だけいただきますが、最後日本橋の修復について、大変本格的な調査をやっていただいて、修復工事が近いうちにやられていくのではないか、大いに期待を申し上げているわけでございますが、これとの関係で、もう大臣承知のとおり、その橋を渡りますと国道六号線のアクセスの道路に行くわけですが、このアクセス道路が大体四十五キロございますが、この道が、実際にちょっと私も話に聞きますと、関係者いわく大変傷んでおりまして、結局立派な橋が復元したときに、これは主要道路になるわけですから、全く交通網の要所みたいな一つのポイントになるわけですが、それを渡ればアクセスに向かう四十五キロの、非常に、はっきり言って車も思うに任せないというような傷んだ道路になっておりますが、その道路も言うならば橋の修復とあわせて日本が何とか貢献できないか、こういう気持ちを私は強く持っているわけですが、大臣見解はどうでございましょうか。
  131. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私も二年前に行ったときに橋のたもとに立って見てまいりました。何カ所か落ちておって、日本橋、こう言われるのだそうですが、こんなのはすぐにやってやったらどうだ、そんな何百億もかからないのではないのか、こんなものは何十億——私はわかりませんが、それでやってやったらどうかという話をしているのですが、なかなか一年以内には終わらない。  日本の無償供与というのは何か手続が難しくて、年度がまたがってはいけないとかどうとかいうことがあるのだそうですね。円借款ということになるとなおさら難しくなっちゃう。何とかここらのところは、もう少し融通をきかせて、一年か来年中くらいにはかけられるようなことをできないかと言って、今、超法規的措置というわけにはいきませんが、何か認められるぎりぎりのところでひとつ、日本橋と言っているのだから、あれこそは本当に目に見えますから、一番わかりやすいところですし、そんな大きな金はかからないし、これも御趣旨に沿ってなるべく早くやるように今努力中でございます。
  132. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 まず橋のことからということだろうと思いますから、それとあわせて、私要望しましたように、そのアクセスもできればひとつ検討していただきますようにお願いを申し上げたいと思います。大臣の御努力を心から御期待を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  133. 麻生太郎

  134. 上原康助

    上原委員 大変短い時間で、どういう質問をやっていいのか、ちょっと戸惑っているのですが、できるだけ簡潔にお尋ねをしますので、お答えも期待に沿うようにお願いしたいと思います。  まず、この世界文化遺産条約なんですが、余りこういうことに詳しいわけではありませんが、この条約の内容を一読していろいろ感じたことは、これは大変重要な条約ですね。そこで聞きたいことは、これは条文ごとにお尋ねすれば、相当時間をかけて、今、種の問題であるとか環境であるとか文化遺産の保存であるとか、国際的にも国内的にも非常に重要視されている状況下での条約審議ですから、それだけに時間をかけた方がよかったと思うのですが、そうなってない点、大変残念に思いますね。  そこで、この遺産条約国会へ提出されるまで、これは恐らく前の方々が質問をしたと思うのですが、大変長い期間が過ぎておりますね。昭和四十七年ですから、七二年の十一月に国際的に採択されて、私たちはそれを早目に出せと今まで言ってきたわけですが、提出しなかった。こうした政府の姿勢は、地球環境の分野で国際貢献を唱えている我が国としては、本当に地球環境保全への取り組み姿勢の一貫性に欠けた面があったのじゃないのか。一方では国際貢献と言いながら、こういう文化遺産とかそういう面では大変消極的な態度を外務省はとってきた、大変遺憾に思うのです。なぜこうなったのか、簡単にその理由を説明しておいてください。
  135. 小西正樹

    ○小西説明員 お答え申し上げます。  非常に簡単にお答え申し上げれば、この条約は基本的には各締約国が自国にあります普遍的な価値を有する文化遺産あるいは自然遺産というものを、自己の能力の範囲内で適当な措置をとって保護していくということを定めておりまして、その措置をとる上に当たって能力が不足しているという国には国際的な協力の体制をとりまして、その体制を通じて援助していくというのがこの条約趣旨でございます。  したがいまして、各国に求められている措置というものは、努力規定的な規定の性格からいたしまして、各国の締約国の裁量にゆだねられている部分が相当多うございます。したがいまして、この条約締結されて、締結国がどのようにこの条約を運用しているかということについて、我が国としてそれを参考にしたいという考えがございましたので、この裁量に任されている部分についての運用の状況をこれまでいろいろと検討してきたわけでございます。
  136. 上原康助

    上原委員 それは理屈と説明はどうにもつくかもしれませんが、二十年近くも温めて国際的な推移を見るとか、そういう内容じゃないと思うね、これはやはり政府の姿勢の問題。これは外務大臣にも聞いておいていただきたい。ですから、今あなたがおっしゃるようなことを条文ごとに聞いて、国際的な面と国内的ないろいろな文化遺産の保存、そういう面が実態がどうなっているかということを掘り下げて議論をしなければならないような内容なんですね。それを指摘しておきたいと思うのです。  時間がないので、今のこととも、この法案とも関連するのだが、しからば政府はこの遺産条約締結することによって世界遺産委員会への遺産の登録をすることになるわけでしょう、たしか。そこで、端的にお尋ねしますが、沖縄には石垣島のサンゴ礁、世界の珍鳥と言われているノグチゲラやヤンバルクイナの唯一の生息地が山原の森林、イリオモテヤマネコが生息する西表の原生林等々、数多く自然地域が存在していることは御承知のとおりだと思う。これらの地域は、専門家によって大変貴重な地域と折り紙つきであることもこれまた指摘するまでもないですね。  今回、この遺産条約締結するに当たって、今私が指摘した沖縄のこれらの地域の中で、世界遺産リストの登録地に値すると思われる地域が私はあると思うのですが、それはどうなのか。また、このような世界遺産の候補地となる地域の選定を今後どのような手順で行おうとするのか。お答えいただきたいと思います。
  137. 橋本善太郎

    ○橋本説明員 御指摘のありましたように、沖縄県におきましては、自然環境保全地域でありますと崎山湾自然環境保全地域、これが自然環境保全法に基づいて指定されております。また、西表国立公園が自然公園法に基づき指定され、それぞれ保護措置が図られているところでございます。なおこのほかにも、国定公園につきましては沖縄県には二つございます。  いずれにしましても、そういう状況で現在保護の措置がなされているわけでございますけれども、どのような物件が顕著な普遍的価値を有し、自然遺産に該当するのかということにつきましては、本条約第三条によりまして、各国の判断にゆだねられているところでございます。  自然遺産の候補地の選定につきましては、条約締結後におきまして、本条約第二条の定義を踏まえまして、自然公園等すぐれた自然環境として我が国の国内法により保護が図られている地域、この中から世界的に見ても傑出した価値を持つところを、自然環境保全審議会等専門家の御意見も参考にしながら選定していくという手順になろうかと思います。
  138. 上原康助

    上原委員 ですから、条約三条において認定というか地域指定というのをやる。二条とのかかわりもある。今までそういう検討をするために長い年月がかかったわけでしょう、皆さん。条約批准というか、採択してからそういうものをやる。外務省の言うことと矛盾するんだよね。既にやっておかなければいけない件じゃないの、これは。指定されるものがあるの、ないのを聞いているのです。それをはっきりさせてくださいよ。  また、この世界遺産の候補地となる地域の選定を今後どのような手順でやるかということと、今私が指摘したようなものは該当するのか、対象になるのかどうかはまだ検討されていないということですか。
  139. 小西正樹

    ○小西説明員 いかなる物件がこの条約で言う世界遺産一覧表に登録すべき物件になるかということについては、現在一覧表に記載されている物件あるいはその一覧表に選定するに当たって用いられる基準等を十分踏まえまして、この条約締結後できるだけ早く選定いたしまして、登録したいというふうに考えております。  また、その手順についてでございますけれども、これはこの関係の国内法を所管しておられる省庁、すなわち文化財保護法、自然環境保全法、自然公園法、この各法律を所管しておられます環境庁及び文化庁それに外務省を加えましてこの三省庁、そのほかの関係省庁も必要に応じ加わりまして、合議を通じまして決定していくということを考えております。  先生が御指摘になられました沖縄のいろいろすばらしい遺産があるということは私どもも承知しておりますが、具体的にこういった物件が登録すべき物件に該当するかどうかということも、その場を通じて真剣に検討していきたいというふうに考えております。
  140. 上原康助

    上原委員 これはぜひ十分念頭に置いてひとつ御検討をいただきたいと思います。本当はもう少し議論したいのですが、時間がないから次のことを。  もう一つは、確かに沖縄が本土復帰して二十年になったわけですが、当初は所得水準も大変低かった、まだ今でも残念ながら低いわけですが。その復帰の第一次、第二次振計の過程では、経済開発が優先をされ、自然保護行政というのがおくれをとった感を否めないと私は思う。  先ほど申し上げた世界の珍鳥と言われるノグチゲラが生息する沖縄本島北部のいわゆる山原の森林をめぐっての開発と保全という面が大変対立をしているのは御承知のとおりだと思う。約一万数千ヘクタールのこの山原の森林面積のうち、伐採禁止対象となっている特別鳥獣保護区域はわずか二百十ヘクタールしかないようです。ノグチゲラを絶滅から守るには最低三千ヘクタールの手を触れない保護自然林区域が必要だと言われておりますね。  政府は、こうした地域経済と絡んだ問題についても積極的に保全をするという立場で関与すべきだと思うし、地球環境保全の重要性をPRする立場からも、今私が指摘をした国内の自然保護をしていく行政をこの条約批准に当たってより具体化をしていくべきだと思うのですが、その御意思があるのかどうか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  141. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 御説明申し上げます。  先生御指摘のとおり山原地域は、ヤンバルクイナあるいはノグチゲラその他私どもで発表しておりますレッドデータブックでも絶滅危惧種というようなものに選定される種が大変多いところでございます。  現在私ども、沖縄県と鳥獣保護区の設定等につきまして検討を進めてきておりますが、先生御指摘のとおり、こういった動物の保護というのにつきましては地元の皆様の御理解と御協力が不可欠でございます。そういう点で、現在のところまだ結論を得るに至っておりませんが、今後一層そういった点について協議を調えて、なるべく早く実施いたしたいと思っております。  なお、先般衆議院で御可決いただき、現在参議院で御審議いただいておりますが、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保護に関します新たな法制度を私ども考えております。こういった新たな制度も活用いたしまして、地元の皆様の御理解と御協力がより得やすい方法を具体的に今後検討し、進めてまいりたいというふうに考えております。
  142. 上原康助

    上原委員 いずれも、対象地域の拡大の必要性、またしなければいかないという立場で検討する。これはもう言うまでもなく、そこは国有地になって、今の米軍施設、区域に、演習場に入っている面もあるので、積極的にそれはやりますね。その点だけひとつ。
  143. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 私どももそういった方向で今後と一も沖縄県と協議を進めたいと思っております。
  144. 上原康助

    上原委員 環境庁、ひとつよく頑張って、外務省に負けないように、ヤンバルクイナ、ノグチゲラを大事にしてください。  時間が来ますので、あと一つこの文化問題でどうしても聞かなければいかぬこともありますから、委員長少し、きょうは二時間くらい質問しますので……。  あと一点、世界に散在する琉球文化財についてこの際ぜひお尋ねをさせておいていただきたい。その実態の把握と調査をやっていただきたいと僕は思うのですね。  首里城が復元をしてこの十一月に一般に公開になる。一般論としては大変結構なことだが、沖縄の貴重な文化財が県外に多数流出していることはもうたびたび指摘されていることです。さきの沖縄戦によって国宝指定文化財二十四件を含む幾多の貴重な文化遺産がことごとく灰じんに帰した。かろうじて戦火を免れた文化財が敗戦後に米軍人等によって流出し、海外に飛散してしまった。古くは十五、十六世紀から十九世紀に多数の文化財が海外に流出をしていったと言われております。  私は過日、グライナー・ドイツ日本研究所長とお会いする機会があったわけですが、この方々の大変な御尽力で、ヨーロッパ各国の博物館等に多数、沖縄の文化財が保存されていることが確認された。しかし、まだほかにも多くの文化財があると言われております。政府としても本格的な調査をして、せっかく首里城も復元されたわけですから、沖縄県ももちろんでしょうが、そういったことに積極的に御努力をすべきだと私は思うのですが、この点についてどういう御見解を持っておられるのか。これは文化庁なのかな。  また現在、御承知のように世界に誇る琉球王朝文化遺産展というものを、今年は復帰二十年ということもあってドイツ日本研究所などの積極的なバックアップもあってやろうという企画もあるようですが、こういうことについては政府はどのようにお考えであるのか、またどう協力体制をとろうとするのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  145. 吉澤富士夫

    ○吉澤説明員 我が国の美術品は桃山時代からヨーロッパヘ輸出されておりましたが、近代においては一層多様な古美術品が海を渡っておりまして、それらの数は非常に膨大になっております。  このため、文化庁の指導によりまして平成二年度から日本芸術文化振興基金の助成金を得まして、専門家を中心にいたしまして欧米諸国を中心とする諸外国で博物館などが所蔵する日本古美術品について実態調査を始めているところであります。この調査が進めば在外における沖縄の文化財の実態も明らかになってくるのではないかというふうに考えております。  なお、これらの収集、展示につきましては、この実態調査をも踏まえまして検討される課題ではないかというふうに思っております。
  146. 上原康助

    上原委員 そこで、外務大臣にも御協力いただきたいのですが、今まで申し上げたノグチゲラであるとかイリオモテヤマネコであるとか、沖縄の十五、六世紀から十九世紀にかけた貴重な文化遺産の調査、収集等々には、これはいろいろな省庁が関係していると思うのですが、復帰二十年という節目に当たって、首里城の復元等々の関連で、政府としても内閣としてもこれは積極的にやっていただきたいのですね。それに対する御見解大臣の方からお聞かせください。
  147. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 関係省庁とも協議をいたしまして、できるだけ努力をしてみたいと存じます。
  148. 上原康助

    上原委員 ぜひひとつその点御努力を願いたいと思います。  最後に、これも自然環境問題と関連がありますが、また大変残念至極というか遺憾というか、本当に憤りを禁じ得ない軍事基地強化の問題が出ております。  そこで委員長、これをちょっと外務大臣に見せてください。——今お手元に地元新聞が報道したことを届けましたが、五月二十二日の琉新、沖タイ両紙です。米軍が事もあろうに今ごろ大規模な戦車道なのか軍用道路を基地内へ新たに、新たにというか既存の道路をあのように自然破壊する形でやっている。なぜそのカラーが見えるものを持ってきたかというと、コピーをとったってその生々しい現象はわかりませんね、大臣。余りにもひどいじゃないですか。  復帰二十年ということで、できるだけ基地のこういった新たな動きというものはやってもらいたくないということをあれほど言った。しかも、事もあろうにきょうからまた二十八日まで、佐藤さん、あれだけ百四号線を挟んだ砲弾演習はやめなさいと言ったら三日もやる、二十九日から県会議選挙が始まろうというのに。一方ではこういうふうな赤土汚染。なぜこういうことが今どき無残に自然を破壊して、これはどれだけ赤土を流出し、許田とか久志の簡易水道、水源地あるいは海に流れ込むかわかりませんよ。  このことについては政府はこれまで米側からどういう通告を受け、またこの実態、実情についてどういう御認識なのか、お聞かせいただきたいと思います。
  149. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の基地内の道路建設の問題につきましては、現場で防衛施設局との連絡の上で行われていると承知しておりますので、詳細を私は存じておりませんが、私が聞いておりますところでは、赤土の問題というのは従来から御指摘のとおり問題がございますので、那覇の防衛施設局の方から海兵隊に対しまして十分防護措置をとった上で工事をするようにという申し入れをしているというふうに伺っております。
  150. 上原康助

    上原委員 そんなことじゃいかぬ。これは事前に外務省や施設庁に通告があったのか、その点をまず明らかにしてください。それで、この工事は規模はどのくらいでやろうとしているのか。
  151. 竹下昭

    ○竹下政府委員 お答えします。  施設庁は、沖縄の赤土問題というのは十分認識しており日ごろから注意を払ってきておるところでございますが、先生御指摘の件につきましては、今年二月でございますか、米側の方からこういう工事を行うということを現地レベルでのいろいろな接触の過程で承知をし、先ほども申したとおり赤土問題というのは沖縄では工事の際等に非常に問題になりますので、施設局は直ちに米軍の方に赤土流出に対する施策を十分講ずるようにという申し入れを行い、これに対して米側は、工事区域を遮水シートで囲み赤土流出対策を講ずるとか、大雨や悪天候のときは工事を一時中止するとかいうことを言っております。  それで、この工事の内容でございますが、キャンプ・シュワブそれからキャンプ・ハンセンの中にあります連絡道路の補修というものでございまして、総延長約十六キロぐらいに及ぶと聞いております。  以上でございます。
  152. 上原康助

    上原委員 きょう余り時間をとるわけにはいきませんが、あなた、そんな他人事みたいなことを言ってはいけませんよ。僕は現場に行ってきたのです。  赤土が露出したら、今度はまた砂利を敷いたりコールタールを吹きつけて、今真っ黒になっている。県道一〇八号の許田からとキャンプ・シュワブの部隊内からと両方から挟んで今工事をやっているのじゃないですか。キャンプ・シュワブの基地一帯の野原、山の中も大変な赤土が出ています。私はこの間、日曜日に潜り込んで全部見てきた。冗談じゃないですよ。  大臣、やり方が余りにもひどい。僕は本当に外務省とか防衛庁とかいう職員は、こういう実態を見てどういう感覚を持っているかと思う。あなた方、本当に心が痛くないの。沖縄にはチムグリサンという気持ちもあるのだ、こういう言い方も。自然がこんなに無残に破壊される、このくらいの大木にしても。  そこで、これは皆さんかどう弁解しようが、十六キロもシュワブ内とハンセン内やるというと、これは七七年、十五年前もあった。あのころも大問題になった。国会でも何回か取り上げた。結局、中止をせざるを得ませんでしたが、これは即刻やめさせてもらいたい。今どきこういうことをさせてはいけませんよ。沖縄は治外法権じゃないんだ。外務大臣、ぜひひとつ見解を聞かしてください。これはやめさせてください。
  153. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  先生の御指摘の赤土問題については、先ほど防衛施設庁の方からも申し上げましたように、我々も非常に心を痛めているところであります。  他方、こういうことを申し上げるのは心苦しいのでございますけれども、アメリカ側に提供している施設、区域の中で、その責任において道路の補修を行うことについてまでやめろと言うわけには我々としてはまいりません。したがって、十分赤土の流出を防ぐような措置をとって工事をするようにということで申し入れていきたいと思っております。
  154. 上原康助

    上原委員 どうせやめざるを得ない状況になると思います。これは革新とか保守とかそういうあれじゃないのですよ。全部憤りを禁じ得ない。それはぜひやめていただきたい。こんなことをあなた今ごろ許しては困ります。  そこで外務大臣、今私がお示しをした新聞を見てどういう御認識なのか。今私が指摘をしたことについて事務当局はやめないと言っている。これは本当にやめざるを得なくなりますよ。こんなことが今ごろ黙認できるはずがない。大臣見解を聞かしてください。
  155. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 先ほどお答えいたしましたことで、お気持ちの問題はそのとおりだろうと思いますが、基地の管理権の問題でありますし、我々は米軍に基地を提供しているわけでありまして、その中で道路をつくる、補修するということについて我々のなし得ることは、例えば我が国の環境の問題に照らして言えば、環境に対する破損を行わないように十分注視をしてやってほしいということに尽きるわけでありまして、そういうことにつきましてはもう既に防衛施設庁の方も申し入れていると伺っておりますけれども、必要に応じてさらにアメリカの注意を十分喚起していきたいと思っております。  ただ、先生のおっしゃるようなやめてくれと言うことについては、我々の立場としてはそういうことはアメリカ側に言う立場にはないというのが、残念ながらそういうふうに申し上げざるを得ません。
  156. 上原康助

    上原委員 大臣見解を聞かしてください。
  157. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 ただいま北米局長が言ったとおりでありまして、工事の中止ということを申し入れることは難しいが、赤土の流出防止については万全を期すように申し入れます。
  158. 上原康助

    上原委員 これで終わりますけれども、そんな答弁ではこれは納得しがたい。これは絶対許してはならぬ。ここまでアメリカが勝手気ままに沖縄の県道を荒らしていいというはずがない。きょうから三日間、実弾砲撃演習をする一方では、こんな全くもって戦場地さながらのことをやっている。県民の怒りは県会議選挙参議院選挙で明らかになりますよ。それだけ強く警告して、きょうのところは引きます。
  159. 麻生太郎

  160. 古堅実吉

    古堅委員 我が党は、議題となっております条約の早期批准を求める立場から繰り返し質問をやってまいりました。私自身も、直接そのことに触れても、またそのことに関連するという面でも、昨年そして今年も質問を続けてまいりました。そういうこれまで行ってまいりました質問を前提にして、若干突っ込んだ質問をさせていただきたいと思います。  文化遺産自然遺産について、日本では文化財保護法、自然環境保全法、自然公園法、それらによってその対象が決まっておりますけれども、この条約趣旨はさらに広く対象を検討する見地が重要だというふうに思われますが、所管大臣としていかが受けとめておられますか。
  161. 小西正樹

    ○小西説明員 お答え申し上げます。  この条約は、基本的に各国が自然遺産あるいは文化遺産考えるものについて、その締約国がそれぞれの判断において自己の可能な限度において保護、保存、整備、活用等の措置をとることが規定されております。我が国におきましては、先生が今御指摘になられました文化財保護法、自然環境保全法、自然公園法でこういったこの条約で想定されております物件を認定したり保護、保存したりするに当たって十分な法的な枠組みができておるというのが、私ども関係省庁で検討いたしました結果でございます。
  162. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 ただいま審議官から答弁したことと同じことでございますが、我が国のいろいろな保護法、文化遺産その他の保護方法はかなり厳格にできておりまして、これがきちっと守られるかどうか、守られるということになれば私はこれで十分ではないかと思います。
  163. 古堅実吉

    古堅委員 決して十分であるなどというものではないと思います。  条約前文には、「文化遺産及び自然遺産が、衰亡という在来の原因によるのみでなく、一層深刻な損傷又は破壊という現象を伴うて事態を悪化させている社会的及び経済的状況の変化によっても、ますます破壊の脅威にさらされていることに留意しこのように書かれておるわけです。したがって、既存のものを保護しておけばよいというものではなく、条約批准を機会に文化遺産自然遺産を広く見直して、その趣旨に見合うような形で強化する見地が大事ではないかという立場でお伺いしているわけです。もう一度、大臣、いかがですか。
  164. 小西正樹

    ○小西説明員 関係の国内法律、すなわち文化財保護法、自然公園法、自然環境保全法、この三法によりまして、先生が御指摘するような問題についても十分対処し得るような法的な基盤が与えられているというふうに私どもは存じております。
  165. 古堅実吉

    古堅委員 繰り返しの答弁でありますけれどもあえて申し上げますが、今主張しておりますような立場条約趣旨に照らして、さらに広く問題を真剣に受けとめて強めていくという方向で行政の立場からも対処してほしいと強く要望を申し上げておきます。  次に、具体的な点について二、三お伺いします。  沖縄初め南西諸島には貴重な自然遺産が数多くございます。この分野の研究者として、また保存その他の面でいろいろと重要な役割を果たしておられる元琉大学長で現名誉教授でいらっしゃる池原先生が、最近論文の中で南西諸島についてこう述べておられます。  島嶼生態系における生物を観ると、地学的成因に由来する固有種、固有亜種、遺存種が多く生息している。また黒潮の影響を受けて、島々をとり囲む浅海にサンゴ礁が発達し、そこに豊富な生物相が観られる。   南西諸島の野生生物の貴重性については、国内はもとより、国際的にも高い評価を受けている。同諸島の野生生物は、「世界遺産条約」の“顕著で普遍的な価値”を有する遺産物件としての条件を備えていると思考される。 こう述べておられるのであります。  環境庁、この御指摘は大変重要なことではないかというふうに思いますが、御所見を伺いたい。
  166. 橋本善太郎

    ○橋本説明員 御指摘のございましたように、沖縄には大変すばらしい自然があるということは我々もよく認識しております。  しかし、現在この条約によりまして対象にすべきかどうかということにつきましては、条約締結された後に本条約の第二条の定義を踏まえましてもう一回慎重に検討した上で、専門家の意見等も踏まえ候補地として選定していくという作業になろうかと思いますので、現時点では今後の手続にまちたいというふうに思っております。
  167. 古堅実吉

    古堅委員 ノグチゲラやヤンバルクイナのすむ沖縄本島北部の原生林、アオサンゴなどで有名であります石垣島のサンゴ礁、そしてイリオモテヤマネコのすむ西表原生林、そういうところが人為的な開発との関連で極めて重大な危機に直面しております。したがって、その保存、保護というのは、決してぼつりぼつりではなしに、取り返しのつかないことにならないように急がなければならないというふうに考えます。  私は、今引用いたしました池原貞雄琉大名誉教授に最近お会いいたしまして貴重な御意見を伺ってまいりましたが、今引用いたしました論文の末尾にこう述べておられます。これも一部の引用にすぎませんけれども、   この南西諸島の豊かな生物相は、野生生物保護への国際世論が高まる中で、早急に保護対策がとられる必要がある。環境庁の「日本の絶滅のおそれのある野生生物」の中に、南西諸島で記録された種が数多く記載されていることからも、南西諸島の豊かな生物相をその生息地とともに保存して次代に引き継ぐ必要がある。   しかし、現在、南西諸島の野生生物相の豊かさは、開発によって急速に失われつつある。森林伐採、山林の農地や牧草地への転用、ダム建設、河川や海岸の改変、近海の埋め立てや浚渫、河川や海の水質の汚濁と汚染、移入生物による生物相の撹乱などによって、多くの種が絶滅したり、絶滅の危機に追いやられている。   多様で豊かな南西諸島の野生生物を保護することは、現代人に訳せもれた大きな責務である。 このように強調しておられるのであります。  大臣、遺産条約批准され、今ありました第二条に基づいて何を登録していくかということは慎重に検討されるのでしょうけれども、このような位置づけのされている南西諸島が加わって登録されるような努力をすべき、そういうものの一つだというふうな受けとめはあられるかどうか、大臣の御所見を伺いたい。
  168. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは条約の第一条にこの文化遺産の定義がいろいろ書いてありますから、いろいろな点で「学術上顕著な普遍的価値を有するもの」であるかどうかということや、一遺跡等についてはいろいろ学問上その「顕著な普遍的価値を有するもの」かどうか、いずれも学術上の普遍的な価値があるかどうかというようなことの認識でございますから、そういうものも全部そういう観点から検討させていただきます。
  169. 古堅実吉

    古堅委員 同じことについて、環境庁、御意見を賜りたい。
  170. 橋本善太郎

    ○橋本説明員 私どもとしましては、自然環境保全法、それから自然公園法、これらで原生自然環境保全地域でございますとか自然環境保全地域あるいは国立公園、こういうものを指定し、保護しておりまして、基本的にはこれで十分守れるというふうに思っております。  なお、今後の選定につきましては、再々申しますけれども、今後専門家の意見等も踏まえながら十分検討してまいりたいというふうに思っております。
  171. 古堅実吉

    古堅委員 あえて重ねてお聞きしますが、環境庁、その登録の検討の対象にはなり得るというふうに考えますか。
  172. 橋本善太郎

    ○橋本説明員 現在、自然環境保全法によりまして原生自然環境保全地域五地域、自然環境保全地域九地域、それからごく最近秋田、青森の県境にございます自神山地を自然環境保全地域に指定してよろしいという審議会の答申を得ましたので、これが近々なる予定でございますが、そうなりますと土地域ございます。それから、国立公園は二十八地域ございます。  これにつきましては、西表国立公園も二十八地域の一公園として入っておりまして、我々としては、これら国内法で守られているものの中から世界的に見ても普遍性を持っているものということで選んでいくわけでございまして、そういう点ではその枠内には入っておるというふうに思います。
  173. 古堅実吉

    古堅委員 貴重な自然遺産ですから、しかも危機に直面しているという事情もございますし、ぜひ早目に検討を加えて、取り返しのつかない、そういうところにだんだん追いやられるというふうなことなどがないように、これは決して一地域のものではございません、日本だけのものでもない、まさに人類の貴重なかかわりのあるものですから、そういう面で御努力を願いたいと思います。  時間も多くありませんが、先ほど上原議員からも御質問のあった仲なんですけれども、私もこれはもう我慢ができないという思いを込めて質問をいたします。  沖縄米軍のキャンプ・シュワブにおける戦車道の工事強行の問題です。  私も、二十三日土曜日、早速帰りまして、その現場調査に行きました。ひどい状況です。見るからに、ただ単に基地の強化というだけではなしに、赤土汚染の大きな原因になると、見てすぐわかりましたし、ちょっと谷間におりたりなどしながら調査もしてまいりました。それに基づいて指摘し、質問するわけなんです。  既に、名護市議会と宜野座村議会、あのシュワブに関連する地域です。その両議会が臨時議会を緊急に開きまして、全会一致で、直ちにそれをやめろ、抗議の意味を込めてそういう意見書を採択しています。近く政府にもそういう要請行動が展開されるでありましょう。  十五年前にもそういう事態がございました。にわかに戦車道が、樹木をどんどん切り払って、赤土を掘り返す、そういうことが始まったので、全県的に大きな世論となりました。こんなこと許せるか、幾ら基地を提供しているとはいえ、勝手気ままなそういうことを許すのかという立場から世論が大きくなりまして、ついにそれは取りやめになったまま十五年間過ぎたのです。  基地の強化、そういう方向ではなしに、基地の縮小撤去、そういう方向での世論が高まり、世論調査でも、沖縄ではそれを求める方が八五%を占めるという事情さえもございます。これは、冷戦構造がなくなった、復帰後もう二十年たったぞ、開発の最大の妨害の要因にもなっている、そういうことなどを含めてこういう県民世論が形成されているわけです。  しかも今、全県的に、赤土汚染が大変だといって、あのかけがえのない沖縄の近海、海やサンゴ礁、それを汚してはならぬという立場でこの防止対策をいろいろと強めている、そういう方向にあるのですね。それに挑戦するかのごとく、関係市、村への何の連絡もなしに、このようにいきなり強行した。これは十五年前の経過もありますし、そういう状況に照らして、米軍のそういうやり方、それを許している日本政府のそういう態度、これは許せるかということで、大きな世論になることは当然です。  ただ単に赤土の対策を強めますなどとかいうふうなことを言っておられるのですが、私もあの地域のある北部の出身です。あの赤土というものが、皆さんがおっしゃるほどに簡単に対策を立てて赤土の汚染というものが防げるなどといったら、事は簡単だ。雨が降るたびに、土砂はとめることができるかもしらぬけれども、あの粒子の細かい赤土が流れる汚染というものは、今の方法をもってしては絶対にとめられないんですから、そんないいかげんなことをおっしゃらずに、今どき戦軍道をつくるなどして基地を一層強化する、そういう方向にもつながっている今回のにわかのこの工事、直ちにやめさせるべきです。  もう一度、大臣がいなくなりましたから、防衛庁でもお答えください。これはいいかげんな対処は許されませんよ。
  174. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  先ほども、上原委員の御質問に対して大臣が申し上げましたとおり、我々としては基地を提供している立場もございますし、工事をやめろということをアメリカに申し入れることはいたしかねます。ただし、十五年前のことも我々も承知しておりますし、赤土問題がいかに深刻な問題であるかということは我々もよく知っておりますので、それに十分注意して工事をするようにということは重ねて申し入れをしたいと思っております。
  175. 古堅実吉

    古堅委員 同じことを繰り返して、それは合点できません。日米安保条約でそういう立場があるというのであれば、日米安保条約、固定期限でさえも十カ年ですよ。何十年過ぎていますか。なぜアメリカの勝手気ままなことを許すのです。安保条約をなくしましょうということで、日本から申し入れることもできる。申し入れたら、一年後には米軍は全部引き揚げなくてはいかぬような、安保条約をこう定めておるのです。なぜ日本政府はそういう立場をとろうとしないのですか。  しかも、今すぐここで日米安保条約をやめなさいなどということを私は言っているのじゃない。安保条約のもとにあっても、こういう重大な問題については、やめなさいと言える立場にありませんなどということではなしに、米軍ともかけ合って要望に沿えるような方向に努力しますということぐらい、なぜ言えないのですか。もう一度お答えください。
  176. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど私が申し上げましたのは、今回の工事の実行に当たって、御心配のような点がなくなるように、十分注意してやるように向こう側と話し合うということでありまして、そういう意味も含めて大臣は、十分に注意をするように申し入れると言われたと私も理解しておりますし、そのつもりで申し上げているつもりでございます。
  177. 古堅実吉

    古堅委員 時間がなくなりましたので、もう質問にはなりませんが、今のような政府の態度は絶対評せません。納得できません。ですから、県民世論にこたえて、せめてアメリカ側に、政府立場から、国民の切実なそういう願いにこたえて努力をしますという立場を踏まえて、いろいろと検討してください。強く要求して、終わります。
  178. 麻生太郎

    麻生委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十七分散会