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1992-02-26 第123回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年二月二十六日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 麻生 太郎君    理事 新井 将敬君 理事 鈴木 宗男君    理事 浜野  剛君 理事 福田 康夫君    理事 宮里 松正君 理事 上原 康助君    理事 土井たか子君 理事 遠藤 乙彦君       唐沢俊二郎君    鯨岡 兵輔君       古賀 一成君    長勢 甚遠君       松浦  昭君    山口 敏夫君       五十嵐広三君    井上 一成君       伊藤  茂君    伊藤 忠治君       川島  實君    藤田 高敏君       神崎 武法君    玉城 栄一君       古堅 実吉君    和田 一仁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 渡辺美智雄君  出席政府委員         防衛施設庁労務         部長      荻野 貴一君         外務政務次官  柿澤 弘治君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 佐藤 行雄君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省経済局長 小倉 和夫君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         外務省情報調査         局長      鈴木 勝也君  委員外出席者         環境庁自然保護         局野生生物課長 菊地 邦雄君         環境庁水質保全         局企画課長   小澤 三宜君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生         課長      下田 智久君         外務委員会調査         室長      市岡 克博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  旅券法の一部を改正する法律案内閣提出第二  三号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 麻生太郎

    麻生委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦昭君。
  3. 松浦昭

    松浦(昭)委員 私は、このたび外務委員会に所属することとなりました松浦昭でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。  承るところによりますと、当委員会外交問題一般につきまして御討議をなさいますのは半年ぶりということを伺っておりまして、また、渡辺外務大臣に初の御質問をいたすことになりますし、激動する国際情勢につきまして一番手で御質問をさせていただきますので、かって大臣のもとで働かせていただきました者といたしましても大変光栄に存じているところでございます。どうかよろしくお願い申し上げます。  さて、申すまでもなく、世界は百年に一度あるかないかというような大激動の時期にございます。まさか崩れることがあるまいと思っておりましたベルリンの壁がドイツ民衆の手によって打ちこぼたれました。また、昨年十二月には東西陣営の一方の雄でありましたソ連邦が消滅するという事態にもなりました。ロシア革命以来七十余年の共産主義というものがロシアから姿を消したわけでございます。また、このことは戦後四十六年、東西冷戦構造という形の中で人類の頭にダモクレスの剣のごとくのしかかっておりました対立を取り除きまして、戦争という悲劇を起こさない状態民主主義の勝利が確定したということは非常に意義のあることだったと思う次第でございます。  しかし、同時に世界はまさに流動の時期にございます。東側地域におきましても、計画経済の残しましたいわゆる経済の破綻が大きなものがございますし、またアジアを初めとする多くの地域は、今後このヨーロッパに起きました変動をどう受けとめていくか、その行方が非常に不明な状態でもございます。  また、アメリカを初めとする西側陣営につきましても、突如生じました東側陣営崩壊という事態に対処いたしまして、その処方せんが完全に書けてはいないというような気もいたしますし、国連もまた十分な機能を果たす状態にはなっておりません。  このような世界激動の時期に当たりまして、世界第二の経済大国となった我が国世界の平和と安定に寄与するということは非常に大きな使命でありまして、また我が国一国をとりましても、平和と安全を図る上で外交のかじ取りということが非常に大切な時期に入っていると思うのでございます。  このような時期に当たりまして、どのような基本姿勢でお臨みになるのか、外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 今松浦委員からお話がありましたように、本当に予断を許さない激動の、不確実性時代だと言って差し支えないと存じます。十年前に今のような世界情勢になると考えた人は恐らく一人もいなかったんじゃないか。私もその一人でございます。  ソ連崩壊をして共産主義をやめて市場経済に移行して、民主主義、自由、人権、そういうような社会制度をとるということになったことは大変喜ばしいし、米ソの間で緊張の下地になっておったいろいろな核兵器についても、大陸間弾道弾の削減あるいは中距離核ミサイルの全廃、それから、ひいては戦術核の廃止という方向に将来向かっていこうという話し合いが始まり、一部実現をされた、大変これは喜ばしいことだと我々は思います。したがって、この喜ばしいこと、希望することは、これはどこまでも我々としては平和国家日本として助言もし支援もし推し進めていくというような世界平和のために貢献するということは、一つの大きな外交の柱でございます。  しかしながら、それと同時に世界が非常に、ばらばらの国が幾つもできてくるということになると、それが民族的な対立、宗教的な対立、こういうことになって大きな枠組みでのコントロールがきかなくなって、一方地域紛争があっちもこっちも起きる危険性がないとは言えないわけでございますから、それをどうして未然に防止していくかということでございます。これは一国だけでどうこうということができないわけですから、やはり国連というものの見直し、国連の原点に返った、この時代に合ったような国連というものをつくり、それを強化をして世界平和維持に当たっていく。  そのために日本はどういう貢献ができるのか。日本は今言ったように経済大国だと言われておるわけでございますので、やはり一国だけの繁栄というものは長続きいたしません、今や世界一つでありますから、一つになりつつあるわけでありますから、それらの発展途上国を自立、自活できるようにしむけていって、貧困をなくすあるいは病気をなくすというようなことに対する経済協力、これは欠くべからざるものである、そのように考えておるわけであります。幸い日本にはある程度の資金技術というものがございますので、こういう面での国際貢献というものを果たしていく必要がある、そのように考えております。  その他、環境問題等におきましても、今や一国だけでというのではなくて、地球はちっちゃくなってしまって、多くの開発、工業化が進むというと、野方図にやられればそれは世界環境に影響するし、森林の、アマゾンの伐採その他も含めまして、そういうような環境問題というものも、これは一国だけではなかなかうまくいかないからやはり全世界的なものとしてとらえていかなければならぬ。日本環境面についてはある程度のリーダーシップがとれるという経験と立場にございますので、これらも大いに貢献していかなければならぬ。  また、一千七百万と言われる世界の難民問題、そういうような問題もこれは世界的な問題でありますし、麻薬の問題も、ただ入ってくるのを防止するというだけではなかなか後を絶たないわけですから、これらも世界的な問題でありますので、そういうような問題等について我々は憲法の精神に従って大いに今後貢献をしていきたい。  そのためにはまず何といっても日本自身経済繁栄を持続させる、これが基本でありまして、なかなか厄介な問題が幾つもございますが、日本経済がおかしくなれば日本がおかしくなるということで、日本から経済を引いたら何も残らぬと言われても、全くそう言われればそうかも知らぬなと思うところでございますので、国内閣届もやはりしっかりしていくことが世界に対する貢献だ、さように考えております。
  5. 松浦昭

    松浦(昭)委員 大変ありがとうございました。  いろいろお尋ねいたしたいことがございますが、何分時間が制約されておりますので、激動の目でございます旧ソ連邦、今ではCIS独立国家共同体と言うのではないかと思いますが、この点に絞ってお伺いいたしたいと思います。  ゴルバチョフ大統領がペレストロイカあるいはグラスノスチ路線を推進いたしまして旧ソ連邦民主化市場経済への移行を果たしていったということは特筆すべきことであったと思いますが、昨年八月に生じたクーデターを経ましてエリツィン政権が誕生いたしまして、一方では民族独立の機運の発展とともにソ連邦の解体あるいはバルト三国等独立、また残った共和国による独立国家共同体というものが発足をいたしたところでございます。  しかし、この間ソ連経済は非常に悪化の一途をたどっておりまして、特に端的に、ルーブルの価値が大幅に下落するとか、あるいは流通段階の不備もありまして物資が不足する、また本年一月実施しました価格の自由化にいたしましても必ずしも生産の刺激になっていないのではないかと言われておるわけでございまして、賃金と物価の悪循環ということも懸念されているわけでございます。  また一方、旧ツァーリズムと申しますか、その時代に、あるいはスターリンの独裁時代に行われましたロシアへの各国の併合といったような状態で、これらの国々が次々と独立をいたしましたし、また旧ソ連邦から離れていっただけではなくて、CISにとどまりました諸国につきましても、例えばウクライナというような国は独自の軍隊あるいは独自の通貨を要求するということになっておりまして、これも将来は独立をしていくようなことになるのではないかというふうに言われているわけでございます。  このような状況の中にありまして軍の方はどうかと申しますと、統一軍共和国に帰属する軍隊とに分かれてきたわけでございますが、やはり黒海の艦隊のウクライナ帰属という問題等いろいろな問題もございますし、また一昨日のテレビでございましたか放映を見ておりましたら、キエフ近郊戦略爆撃機の師団が、一体ウクライナ軍に入るのか、それとも統一軍に入るのかということで大激論を闘わせているというような非常に動揺した状況でございます。また一方で、中堅軍人中心といたしました五万人集会というようなものも見させていただきまして、旧共産党と、保守派でございますが、そういったものと軍との動向というのはやはり目が離せないという状況にあります。  このような混沌たる状況が旧ソ連邦現状でありまして、その帰趨は定かではなく、また予断を許さないという状況にあると思うのでありますが、外務省としてはこのような事態に対応いたしまして情勢をはっきり分析しておかなければいけないと思うのであります。このような観点からいたしましてどのように外務省がこの事態を見ておられるのか、事務当局から御答弁をお願いしたいと思います。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 今御指摘がございましたように、ソ連邦の中でも各民族がそれぞれ独立をするということで民族問題というのが一つございますし、一方、市場経済というものに踏み込んでエリツィンさんは非常に短日月でそれを実現しようという大変な意気込みでスタートいたしておりますが、これがうまくいくのかどうか、どういうふうにしてやればうまくいくのか、実際はまだしっかりとつかむことができないという問題がございます。  その次が軍の問題。あそこでは膨大な核兵器を初めたくさんの武器を持っておりますので、これらの管理を本当に、統一的な厳正な核管理というものを本当にしてくれるのかどうか。してもらわなければ困るわけですから。本当はなくしてもらうのが一番いいわけですが、その過程をどういうふうに我々は認識し、それを支援していくかということなど、まだ本当にこうすればいいという決め手というものはなかなか実際にないと思うのですね。ないけれども、しかしながらやはり昔に逆戻りするというようなことは困るわけでございますし、本当に平和的、民主的国家になっていただきたいし、またソ連がしっかりすれば、日本極東においてソ連と隣接をしておって、多くの資源が存在するということでありますから、日本の国のためにもなるし世界にも貢献できる、そういうようなことで、いろいろ向こう現状を見ながら、日本だけの支援ということは到底できないことですので、それは世界の国が集まって、できるものからやっていこうということであります。  最近の目新しいものとしては、科学技術センターのようなものをつくって、ソ連核技術者が海外に頭脳流出しないようにやろうじゃないかというようなことなどは、それは本当に一つの動きであるし、またこの間アメリカで緊急の人道的な当面の援助をやろうということで、我が国も参画をして六十五億円の無償資金及び物資を提供して、しかも日本みずからが北方四島を初め極東に配るとかいう仕事も現に始まっているわけであります。  したがいまして、ソ連との関係はいろいろあるわけでございますが、いずれにせよ我々とソ連との間にはいまだに戦後平和条約が結ばれていないということでございますので、これを片づけないとやはり本格的な支援に踏み込んでいけない。したがって、一刻も早く懸案の北方領土問題を片づけてソ連との間に平和条約を結んで、そして世界先進国と一緒になってそれらの支援体制を構築していきたいという考えてあります。
  7. 松浦昭

    松浦(昭)委員 どうもありがとうございました。  ただいま大臣からもお話がありましたように、いま一つの大きな問題は、ソ理解体に伴いまして、戦略核の方はまだ統一的に管理ができるにしても、戦術核は非常に難しいということを伺っております。特に弾頭数でも四万発とか二万発とか数もわからないような状態でありまして、さらに先ほどお話がございました技術者の流出というようなことになりますと、世界に核の脅威がまき散らされるという事態が起こりますので、日本としても世界唯一被爆国でありますから、そしてまた非核三原則というのを守ってまいった国でございますので、大臣、ひとつ我が国としてどのような協力ができるか、そしてまた将来このようなことがないように十分な御配慮をお願いいたしたいと思う次第でございます。  また、援助お話にも触れられたわけでございますけれども、特にまだ旧ソ連が流動的な状態でありますが、我が国にとってかって脅威でありましたいわゆる怖いソ連邦がもう一度復活するということになりますと大変なことでございまして、特にこの地域を安定化していくということは非常に重要な課題であると思っているわけでございます。もちろん人道的な観点からもあるいは世界の平和、安全に貢献するという観点からも多額援助が必要であると言われているわけでありまして、日本も、ただいま大臣おっしゃられましたように、信用供与二十五億ドル、さらに無償支援六十五億円という援助の約束をしておられるようであります。  しかし、この援助はある意味では泥沼と申しますか、非常に厳しいソ連経済状態の中で、そこに援助をつぎ込みましても、西側と競争できるような産業構造をつくっていくには非常に難しい、多額援助を必要としてしまうのじゃないかという気がいたすわけでございます。やはりソ連自助努力なくして到底経済構造を変革していくというようなことは難しいのじゃないかと思うわけでございますが、そういうことを考えますと、極東地域というものを中心にして、特にまた自助努力援助をしていくような方向でやはりソ連援助というものは行われるべきであるという感じがいたします。  しかし一方で、四島の問題をめぐる政経不可分原則もあるわけでございますけれども、やはりここは旧ソ連邦地域内を安定させるということが急務中の急務であると考えられますので、もちろん政経不可分原則はございますが、やはり一歩踏み込んで、非常にデリケートな問題でございますけれども、ソ連経済再建ということに向かって努力をしなければならないと思います。  ただいま御答弁半ばございましたけれども、もう一度大臣から援助の方針について承れればありがたいと思う次第でございます。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは援助といいましても限りのあることでございまして、どこまでもそれは自助努力でやって、それによってその手助けをする、資金面あるいは技術面。それはもう我々の基本的な考え方であります。  要するに、ずっとあれだけの民族をみんなで、自分たちが働かないでいい暮らしをさせるということはそれは不可能ですから、それはどこの国だって同じですよ。だから一刻も早くソ連の中がまず固まってもらう、しっかり権限も、ロシア権限はここからここまで、州の権限はこれからこれまでというようなことでそれをはっきりさせてもらわないと、せっかく去年二十五億ドルの融資及び保険の枠を提供いたしましてもサインする人がいない、だれがサインしていいかわからないということでは消化できないということで、延び延びになってきているわけですから、やはり国内体制を一刻も早くしっかり築き上げてもらいたい。そのノーハウを教える必要があるのでしょう。ソ連のある学者が私のところへ来まして、ソ連で今一番大事なのは要するに道徳心と市場原理ノーハウだと言った人がいますが、これも私は非常に重要なことじゃないか、そのように思っております。
  9. 松浦昭

    松浦(昭)委員 最後に四島の問題について、これに関連して御質問をいたしたいと思う次第でございます。  北方四島の返還は全国民の長年にわたる悲願でございます。ただ、今まで御質問いたしましたような情勢の中で成立いたしましたエリツィン政権でございますが、エリツィンさんが、この問題の解決につきまして加速化のプロセスに賛成するということを述べておられましたことは、一つの大きな重要な発言だというように承っておるわけでございます。  また外務大臣がこの一月にモスクワを訪問されまして、その際にコズイレフ外相と会談されまして、北方四島に関する平和条約作業グループ会議の開催を決めていただき、また三月の同外相の訪日にも合意をしておいでになりましたことは大きな前進だというふうに受け取っておるわけでございます。  またエリツィンさんも九月にはおいでになるというお話も承っているところでございますが、特にロシア側の態度は、一八五五年の日露通条約を認めたということと、また先般の外相会談でも一九五六年の共同宣言有効性を認めたということは非常に大きなアプローチであると思っておりまして、非常に高く評価するところであります。  しかしながら、四島問題に関しましては、やはりロシア共和国内、特に四島の地に住んでいる人あるいはロシア内部保守派、さらには愛国勢力と称される勢力が反対をするというような状況にありまして、なかなかロシア政府が簡単に対処できないという要素もあるのではないかというふうに思われるわけでございます。  そこで、二月の十日、十一日にモスクワで行われました平和条約作業部会の場において、斉藤外務審議官がお出になったようでありますが、向こうクナーゼ次官との話し合いがどのような路線であったか、簡単で結構でございますからお伺いいたしたいことと、もう一つは、実は昨二十五日の新聞報道等によりますると、四島周辺の二百海里の中で、ロシア韓国との合意によりまして韓国側があの水域で操業できることとなったということを報道されているわけでありますが、この海域は、昭和五十二年に二百海里の交渉で苦労いたしました者たちにとりましてはこの報道は大変なショックでありましたし、また我が国の漁民の感情も刺激されたと思うところでございます。  あの地域は非常に国際法的にも難しい地域でございますので、ひとつ真相はどうなっているのか、またどのような対処をなさるのか、お伺いしたいと思っております。
  10. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 最初の二月十日、十一日に開かれました第一回目の日ロ平和条約作業グループの大要でございますが、一言で申し上げれば、過去八回日ソ平和条約作業グループの中で行われました北方領土問題につきましての歴史的な側面、それから法律的な議論、これは相当詳細にわたったわけでございますが、今回仕切り直しということで、参加する相手も異なりましたので、過去の議論をすべて総括をいたしまして、それぞれの主張点論点を整理し、こういう理解で今後日ロ平和条約作業部会を進めるということでいいかという、この確認に最大の主眼を置いたわけでございます。  この目的は私どもはほぼ達せられた、従来の八回にわたりました平和条約作業グループでのいろいろな議論ロシア側論点日本側主張、その違い等はぼそのとおりの認識でいいというロシア側からの回答があったわけでございます。  それから、二番目に御指摘でございました韓国ロシア連邦政府との漁業に関します合意でございますが、これは昨年ロシア連邦韓国政府との間で漁業協定が結ばれて、それに基づきまして本年度の具体的な漁獲量地域水域あるいは漁期を取り決める交渉を行ってこのほどまとまったということでございます。  早速ロシア連邦外務省並びに韓国政府外務省に照会をいたしました。ロシア韓国両方で、日本海水域サハリン周辺水域と並びまして、確かに報道されましたように我が国の領土でございます北方領土周辺水域漁獲対象水域として含まれておるということのようでございます。今詳細なお確認中でございますが、韓国政府は、日本ロシアとの間で合意に基づいて漁獲をしているその水域自分たちもとることに合意したんだ、こういう説明でございます。  いずれにいたしましても、詳細、細かい点はなお確認中でございますが、ロシア連邦政府につきましては、まさにここがこれから日ロの間で真剣な交渉を始めるという時期に来ている、こういう時期である。にもかかわらず、第三国に漁獲を許容するような合意をつくったという点。韓国につきましては、従来よりこの地域合弁事業等のうわさが絶えなかったものですから、従来より韓国政府に対しましては、この地域における合弁その他の活動については日本政府立場というものをきちっと説明をし理解を求めていたところでございますので、こういう合意ができたということは極めて遺憾な事態だと認識しております。詳細詰めた上で具体的な申し入れを行いたいというふうに考えておるわけでございます。
  11. 松浦昭

    松浦(昭)委員 四島の問題につきましての大臣の御決意を最後に伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  12. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 時間の都合もございますから簡潔に申し上げますが、我々は、この北方四島の解決については、今いろいろお話があったような線に沿いまして、考え方によっては非常にチャンスでもありますし、積極的に進めてまいりたいと考えています。
  13. 松浦昭

    松浦(昭)委員 終わります。
  14. 麻生太郎

  15. 土井たか子

    土井委員 渡辺外務大臣は、御就任のときにごあいさつなさるのをテレビで拝見しておりますと、言葉には気をつけますとおっしゃっている。本来渡辺外務大臣は、はっきり思っていることを、しかもずばずばおっしゃるというところが特徴だと私は思ってまいりました。言いにくいこともおっしゃるというのがまた特徴だと思ってまいりました。大いにそのことを外交の中で生かしていただくということが私は大事だと思います。きょうは私、久しぶりで質問をさせていただくわけでございます。六年ぶりだと思いますが、大臣の意のあるところをどうぞきょうは思う存分お聞かせいただきたいと思うのでございます。  まず初めに、本会議での外務大臣外交演説を承りました。その中で、新しい世界平和秩序を構築するための国際協力を力説なさっておられます。一体中身としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるかというところがまず承りたいのでございます。  と申しますのは、このところ新世界秩序という言葉がよく用いられます。これはアメリカのブッシュ大統領が一九九〇年秋からこの方使われている言葉でもあり、日本でもよく使われるわけでありますが、この新世界秩序という言葉と、外務大臣がおっしゃっている新しい世界平和秩序という中身とは同じなんでしょうか、違うんでしょうか。そういうことも含めて御見解をまず承りたいと思います。
  16. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 この新秩序、世界の新しい秩序という言葉は共通して使っておりますが、これたといって、はっきりした、きちっと微動だにしないというものはないのですね。これは私は、その国々によってニュアンスがそれぞれ多少違っているんじゃないか。  しかし、私の考えている新しい世界の平和秩序というのは、ちょうど第二次大戦が終わりまして国連というものができたわけです。あのときは、もう二度と戦争はやるまい、そして現在つくられた地図ですね、世界の地図というものは武力によって変えることはすまい、そしてみんなが協力し合っていこうという念願を込めて国連というものはできたわけでございますけれども、現実はどうであったかというと、ベトナム戦争も起きたし、朝鮮戦争も起きだし、キューバの革命も起きたし、動乱が世界で何回も起きております。  そこで、米ソ対立というものができまして、西と東の旗頭の米ソが軍備増強をやって、お互いに宇宙開発をやり、また海の支配を目指して軍艦もたくさんつくる。それから核兵器の開発をやる。やってきたんだけれども、これは莫大な金がかかってしまって、どちらも財政的にしんどいことになったということは間違いないのですね。ソ連はあのような状態になったし、アメリカとて三千億ドルからの軍事費を毎年使っていくということになれば、日本の金にすれば四十兆以上の金を使うわけですから財政圧迫にならないはずがない。やはり三千億ドル近い財政赤字はなかなかカットできない、これも現実の姿。  そういうようなことになって、ソ連の方もやはり軍拡競争はやめようではないかということでいろいろな軍縮協定が結ばれ、またさらにそれが深められようとしている。こういうことで、超大国による世界の秩序というものはなかなか言うべくして難しくなってしまった。私は、そういうことでやはり超大国の軍縮というものがどんどん進められて、それからそれが世界にだんだん波及をしていく。軍縮のムードというのが全世界に出てくることは結構なことでございます。  しかしながら、一方においてはイラクのフセインのような人がいたことも事実ですし、今後あらわれないという保証もありません。そういうときにだれが世界の戦争を予防し、そして、あるいは万一地域紛争が起きた場合はだれが調停し、介在し、拡大させないでやめさせるか、やめた後はどういうふうにしてそれを管理していくかということになれば、やはり私は国連しかないと思うのですね。  したがって、世界新秩序というものの中核になるものは、やはり国連の機能の強化ということが方法論としては大事だろう。戦争のない平和な世界をつくっていくというためには、先ほどもお話しいたしましたが、みんなが協力し合ってやっていくほかはないわけでございますから、それは今言ったように軍備管理の問題だってみんなで話し合いをしていかなければできないことでございますし、それからソ連支援ばかりではなくて多くの発展途上国の救済やあるいは援助、育成、こういうものもやはり世界的な話し合いをもってやらなければならぬ。環境の問題もそうだ、麻薬もそうだ、テロの対策もそうだということになって、そういうようなみんなが共通する問題を真剣に話し合いの上で解決していくことによって平和な新しい世界秩序ができる、私はそう思っておるし、経済面でもウルグアイ・ラウンドの成功というのは私は新しい世界秩序をつくるための一つの方法である、そう考えております。  だから、新しい世界秩序というのは何なんだ、定義で言ってみると言われても、明確にきちんとこういうものですと言うことは、ちょっと私はなかなか言えないのです。何となく頭には浮かんでおるけれども、だれしもこれだということを言える人はいないのじゃないかと思いますが、いかがなものでしょうか。もし知っていれば教えてもらいたいと思うのです。
  17. 土井たか子

    土井委員 今の御答弁の中では、国連の機能を活性化させていく、そしてその国連に対してやはり改革もしながら協力していくという姿勢がうかがい聞こえたわけでございますが、そういう問題は時間をかけてまた当外務委員会で、国連のあり方とか国連に対しての協力ということについては大いに審議をする必要があるというふうに私は考えているわけであります。その問題は、また時間をかけて別の機会にいたします。  外務大臣の演説の中で、特にこれは一つの項目を起こして、「旧ソ連邦の国々の国内的な混乱を回避し、その民主化市場経済導入のための努力支援し、成功に導くことは、国際政治の当面の重要課題であります。」というふうにおっしゃっています。そして、それに先立つところで、先ほどおっしゃったとおり、「旧ソ連邦における核兵器管理は、世界の平和と安全に極めて大きな影響を及ぼす問題であります。」と述べておられます。  まず、そこでお尋ねをしたいのでございますが、旧ソ連との間に締結されました条約、交換公文、覚書、それはそのまま継承されていると考えていいのでございますか。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 そのように理解をしております。
  19. 土井たか子

    土井委員 それは大臣、どこで決まったのでございますか。
  20. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 旧ソ連と現在のロシアとの関係につきましては、現在のロシアは旧ソ連を継承すると申しますか、それと同一の国家であるという考え方でございます。したがいまして、旧ソ連の締結した条約は当然に現在のロシアによって継承されると申しますか、その権利義務関係は現在のロシアが持っているという考え方でございます。すなわち、同一の国家であるという考え方でございます。
  21. 土井たか子

    土井委員 という考え方でございますとか、というふうに理解しておりますとか、というふうに思いますとか、というふうに認識しておりますという問題じゃないので、これはやはり相互間では条約とか覚書とか交換公文というのは、はっきりお互い同士が確認した上でできている問題でありまして、約束事なんです。思っている限りで、あるいは類推する限り、そのように認識している限りで済む問題じゃないと思うのです。  これは、今おっしゃるのは、ロシア共和国ですか、相手は。ロシア共和国との間に従来の条約、交換公文、覚書、一切全部継承するということをお互いが約束されて、あるいはそのことに対して文書の取り交わしまであるのが大体普通じゃないかなと思われるわけでありますが、そういう場面今まであったでしょうか。
  22. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 ロシア連邦政府との間におきましては、一月十三日付の口上書の交換をいたしております。その中でロシア側の返簡の中にも、「ロシア連邦は、ソヴィエト社会主義共和国連邦が締結した国際約束から生ずる諸権利の行使及び義務の履行を継続する。 同様にロシア連邦政府は、ソ連邦政府に代わって、関係する多数国間条約に関する寄託国としての任務を遂行する。」等々の確認を行い、また我が方からも同様の文書を交換いたして、その点の確認を行っております。
  23. 土井たか子

    土井委員 それは斉藤さんがなすったのですか。相手方はどなたですか。
  24. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 この文書の形式は口上書の交換でございます。したがって、だれからだれにという形式は今回はとっておりません。
  25. 土井たか子

    土井委員 口上書とおっしゃっても、日本国を代表する立場ロシア共和国を代表する立場、お互いがその国を代表する立場において取り交わす中身でしょう。したがって、どなたがそこに行かれたのかということを私は聞いているのです。
  26. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 土井先生もよく御承知の点でございますけれども、いわゆる口上書というものは通常外務省とその国に派遣されております外交使節団、すなわち大使館との間で交換をされるものでございます。したがいまして、今回のただいま欧亜局長答弁いたしました口上書につきましては、ロシア外務省と在モスクワの我が方の大使館の間で交換されたというものでございます。
  27. 土井たか子

    土井委員 そうすると、従来取り交わされてきた条約、交換公文、覚書、一切は有効に存続しているということがお互いの間で確認されている、そしてそれが約束されているというふうに理解してよろしゅうございますね。
  28. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 そのように御理解いただいて結構でございます。すなわち、これまで日露間で締結されました条約その他の国際約束は引き続き有効であるということが確認されたということでございます。
  29. 土井たか子

    土井委員 そこで、それではお尋ねしたいのですが、旧ソ連核兵器不拡散条約を締結している当事国です。それを継承するのはどこですか。ロシア共和国ですか、どこですか。
  30. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 核不拡散条約の締約国としていわゆる核兵器国の地位を継承するのはロシアでございます。
  31. 土井たか子

    土井委員 そうすると、ロシア共和国以外の共和国は非核保有国という認識でこの問題に対しては臨むのですか。
  32. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 ウクライナ共和国並びにベラルーシにつきましては、大統領御自身から非核政策という基本方針についての意図表明があり、核不拡散条約への署名というお話も出たわけでございますが、カザフ共和国については公式な形ではまだ核不拡散条約への加盟ということにつきまして明確な公的な意図表明はなされていない。ただし、一部個々の、例えば外国の訪問客との会談等におきましてそういう意図の表明があったという話は私どもも仄聞はいたしております。カザフ共和国については今そういう状況であろうかというのが私どもの認識でございます。
  33. 土井たか子

    土井委員 独立国家共同体CISには共和国は何カ国加盟しているのですか。
  34. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 現在正式なメンバーとして加盟をいたしておる、独立国家共同体の首脳会議あるいはそのほかの会議に参加をしておるのは十一共和国、すなわちグルジア共和国がまだ正式な形で参画をしていないというふうに理解をいたしております。
  35. 土井たか子

    土井委員 それだけの数がある中で、ロシア共和国以外に今ウクライナ、ベラルーシについてはおっしゃいましたが、そのほかの共和国についてはおっしゃらなかった。なぜ特にウクライナ、ベラルーシを挙げておっしゃったのでありますか。
  36. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 ベラルーシ、ウクライナ並びにカザフ共和国の三共和国について御報告申し上げましたのは、いわゆる戦略核を配備されている共和国は、ロシア連邦と合わせましてこの四つというのが私どもの理解でございます。そのほかの共和国につきましては、戦術核の配備がなされていた。しかし、この戦術核につきましては、ロシア連邦政府基本方針といたしまして、少なくとも核の部分についてはかなり速いテンポでロシア連邦の領域内に引き揚げられておる、ほとんど引き揚げ作業が完了に近づいておるというふうに私どもは理解しておるわけでございます。  したがいまして、それ以外の共和国については私は今御報告から外させていただいたというわけでございます。
  37. 土井たか子

    土井委員 さあ、そこで外務大臣にお尋ねしたいのです。  核兵器不拡散条約、NPT、これは御存じのとおりに核保有国は五カ国なのです。五カ国以外の国は非核保有国なのです。核を持つことができないのです。そこにこの条約特徴がある。今承ると、ロシア共和国以外に、戦略核はこうこうこういう共和国にございます、戦術核はずっとございます。ということになれば、これはどのような取り計らいがこれから考えられますか。  私は、NPTは非常に大事だと思っています。これを形骸化させるわけにはいかない。外務大臣がおっしゃるとおり、これからの世界の軍縮、核廃絶に向けての努力というのは、人類にとって大切な至上命題と申し上げてもいい問題です。どのように考えたらいいでしょうか、これは。
  38. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 この問題につきましての先生の御懸念は日本政府も完全に共有いたすわけでございますが、したがいまして機会あるごとに私どもの懸念というものは表明してきているわけでございますけれども、一番大事なことは、旧ソ連邦の中で存在をいたしました各種の核兵器が二元的な管理体制のもとに置かれるということであろうかと思います。  それで、この点については米国、ヨーロッパを初め認識を同じくしている。したがって、いろいろな形での申し入れ等働きかけを行ったわけでございますが、この一元的管理ということにつきましては基本的な合意はできている。しかしながら、戦略軍、統一目的軍、共和国独立軍と、今三つのカテゴリーの軍組織をどうするかという過程の中で、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、民族主義の動き、ウクライナ等々を中心といたしまして大変に複雑化しております。そういう中で、一応この核の管理は、さっき申し上げました四つの共和国の大統領に関与する問題、その中でロシア共和国大統領がこれらの三共和国の大統領と協議をしながら管理をしていくという合意は一応できているわけでございます。  私どもは、この一元的な管理というものが確実に行われていくということが一番大事な問題ではないかというふうに認識しているわけでございます。
  39. 土井たか子

    土井委員 ちょっと待ってくださいよ。一元的管理とおっしゃるけれども、これは独立国家共同体なんで、それぞれの共和国独立しているんですよ。独立国家として存在している。その独立国家として存在している共和国に核はあるんですよ。核を保有しているんです。核保有国なんです。非核保有国じゃないんです。核保有国なんです。その問題と、今の管理体制というのを一元化するという問題は、これは区別してくださいよ。  NPTでは、核管理は言うまでもないけれども、持っている国、持たない国ということについての区分けをして始まった条約じゃないですか。核保有国は五カ国以外にないんですよ。拡散しちゃいかぬのです。これは既に横に拡散している状況が現実の問題としてあるわけでしょう。先ほど、ロシア共和国が旧ソ連邦条約を継承すると言われた。しかし、NPTについて言うならば、現状は、認められない状況が展開されているんじゃないですか。  先ほどは現状に対しての説明だけ聞きました。外務大臣、これから先どういうふうに考えていくべきだとお思いですか。
  40. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは本当に困った問題であることは事実ですね。しかし、日本としてはいかんともしがたい問題であって、我々は核の一元的管理、それをしてほしいということは強く要請をしておるし、ロシア側もその努力をしている。しかし、それぞれの共和国ロシアとの間で現実的な取り決めや何かがまだきちっとしていないという、これも事実があるんです。軍そのものがそうであって、それは独立軍を持つんだというところもあればそうでないところもあって、これらのところもまだはっきりしないということも事実でございます。  これは日本だけの問題じゃありません。それはアメリカを初め他の国々も全部共通した悩みでございまして、今後どういうふうに対処していくかは世界のそれらの国々と相談をしながら態度を決めていきたいと思っております。
  41. 土井たか子

    土井委員 さあ、そこで一つ外務大臣にお聞かせいただきたいんです。  問題は、今取り仕切っている条約はNPTなんですね。中には、NPT自身がこのことによって破綻しちゃった、もう核は拡散されているんだから、一九九五年の条約の改定期を待たず条約を変える必要があるという声すら出てきているんです。私はこれはもってのほかだと思っているんです。拡散することを認める条約をつくればエスカレートしますよ。今ある条約についての存在意義というのはどの辺にあったかということを考えれば、NPTというものをどこまでもしっかり守る体制を考えなきゃならぬというところが決め手として非常に大事だと私は思うのだけれども、外務大臣、どうお考えになりますか。
  42. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 とりあえず先ほど御答弁申し上げた点を確認かたがた補足させていただきたいと思いますけれども、ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタン、いずれの共和国独立をいたしました結果、それまでソ連邦という一つの領域内であった核兵器をたまたま引き続き存続させる結果になったということでございまして、そのうちのベラルーシ、ウクライナ共和国は、非保有国としてやがてNPTに入るということまで言っているわけでございます。したがいまして、そこの点は、ロシア連邦にあった核兵器独立した国家に新しく配備されるとか拡散される、そういう図式ではないという点は、このNPT条約議論一つの留意すべき点であろうかというふうに思っております。
  43. 土井たか子

    土井委員 斉藤さん、それはきっとあなたの解釈だろうと思いますよ。国際的にそれは確立されていますか、NPTの考えに対してそういう考えが。  大臣答えてください。もうこれは政治問題ですから。——もう要らない、その説明は結構です。これは政治的な問題ですよ。大臣ちょっとその考えを聞かしてください、NPTについて。
  44. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 一言だけ答弁させていただきます。  先ほど大臣もおっしゃいましたとおり、この条約は、趣旨につきましては土井先生のおっしゃるとおりでございますが、結局この条約の締約国、そしてこの条約の締約国には核兵器国と非核兵器国があるわけでございますが、これをソ連の解体に伴って生じました諸国についてどのように考えるかということにつきましては、結局、多数国間条約でございますから、このNPT条約の締約国の間で今後相談して狭めていくべき問題であると思います。  なお、条約上は、御承知のとおり第九条の三項におきまして核兵器国というものを定義しておりまして、この点につきましては先ほど先生のおっしゃいましたとおり、従来ありました核兵器国、すなわち「千九百六十七年一月一日前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国をいう。」というふうにはっきり定義されておりますので、それ以外の国は、この条約上は核兵器国とはみなされないということでございます。  なお、大変恐縮ではございますけれども、先ほど私の答弁の中で、従来日露間で締結した条約ということを申し上げましたが、これは日ソ間ということでございますので、謹んで訂正させていただきたいと思います。
  45. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 今お話があったように、これは日本だけの問題じゃありませんから、全世界的な問題なんです。だから、日本だけでどうするこうすると言ってもそのとおりにならないかもしらぬ。ただ、現在の段階では、やはりとりあえず核の管理だけはひとつ統一するという方向で強く先進国首脳会議等においても言われておることでございますから、それはバックアップしていきたい。それにどの程度まず従うか。  それから、国によっては非核保有国になると言っているウクライナのようなところもあるわけですから、できるだけそれは非核保有国になることを我々はお勧めもするし、それに対してこれからのつき合いの仕方があるわけですから、いずれも経済協力その他はみんな望んでおるわけであって、我々はそれをバックアップするためにあの手この手をいろいろ使うほかないんじゃないか。それはやはり先進国サミット等でも、また核不拡散条約に加盟している重立った国々の間で相談をして、現在の条約がパンクしてしまわないように私はしていくべきだ、そういう相談をこれからしていかざるを得ないと思っています。
  46. 土井たか子

    土井委員 私も、斉藤さんと言った間違いを兵藤さんと改めさせていただきたいと思います。  今の大臣の御発言、御答弁としてまずただいまの段階では、承りましたが、参考までに申し上げておきたいと思うことがございます。  それは、一月の初めに私はOBサミットでボンへ出かけました。その場所で、この問題がやはり緊急問題でありまして、どのように考えるかということでいろいろな意見が出ましたが、NPTのみではこれから安心できないという立場の御発言としてこういうのがあったことを参考までに申し上げます。  それは、核実験禁止条約がどうしても必要でしょう、それのみではありません、先制攻撃をしないというのだけでは弱い、核不使用条約というのをやはり国際的規模、世界的規模で考えていく必要がぜひあるということがそこで討議をされたことも、御参考までに申し上げたいと思います。  さて、ただいまのNPTですが、ただいまのCISにある核の存在を考えますと、核頭脳の流出というのは、非常にこれまた対応は難しい心配の大きな大問題と申し上げていいと思うわけですね。この核頭脳の流出を防止するとか、何とかそうしない状況をつくるということについて、大臣にはお考えがおありになりますか。
  47. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは新聞等でも出ておることでございますが、ドイツのゲンシャーさんなどが提唱いたしまして、ソ連の核開発に携ってきた科学者が、今非常に困っておる。したがって、これが数年たつと外国に出られるようになるので、そいつをなかなか抑える方法がない。したがって、とりあえずソ連の科学者が国内にとどまって、平和利用に役立てるように何かできないか。そのためには、ある基金をこしらえて、そしてそれによって核の解体とかあるいは核物質の貯蔵とか、あるいはさらに進んで将来はそれの平和利用とかいうようなことを勉強させる、研究させる、そういうようなことにひとつ手伝ってくれないかという話がございました。  私は、それに対しまして、その趣旨は大いに賛成だけれども、どれくらいのお金が必要なものか、具体的にどういうことをやるのか、それがはっきりしない、したがって、それは世界の核問題について経験を持ち、知識を持つ学者等に集まってもらって、そこでスタディーをやって、それでこうした方がいいじゃないかということであれば応分の協力を惜しみませんということを申し上げたんです。  なかなか核の解体ということになりますと、莫大な金がかかるそうですね、私はよく知りませんけれども。だけれども、とりあえず科学者をキープしておくというだけならそんな大した金でもございませんし、そういう話が改めて今後、ドイツとロシアアメリカの間で何か話し合いをしたということでございますが、いずれ正式な呼びかけがあるでしょう。そのときに、我々よく話も聞き、これはそういう点の協力はやっていきたい、そのように考えています。
  48. 土井たか子

    土井委員 今おっしゃったのは、恐らくは報道でも公表されております国際科学技術センターという構想のことを指しておっしゃったのではあるまいかと思います。そうでございますね。
  49. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 そうです。
  50. 土井たか子

    土井委員 解体廃棄という問題と、ただいま質問を申し上げた頭脳についての流出を防止するという問題と、この二つはいずれも構想を具体化していこうとすると、やはり資金が必要なんですね。今おっしゃるとおりなんです。  ところで、ミュンヘン・サミットにやがてこの夏いらっしゃるはずでありますね、外務大臣も。そこで恐らくこの問題というのは非常に大きな課題でしょう。そのときにいろいろな状況を見て判断しますとおっしゃっている問に、いつものとおりで、アメリカからこれだけのお金を用立てて出してもらいたいと言われることに対して、こちらはイエスあるいはちょっと考えるというふうな対応が今までの通常だったように思われてならないのですが、やはり外務大臣が初めの方でおっしゃっているとおりで、日本はいかに行動すべきか、今我々はこの問いに対してみずから答えを出さなければなりません。  旧ソ連に対して、ただいまのCISに対して、日本の姿勢、どういうふうなことを考えるがゆえにこの問題について私たちはこういうふうな対応をするんですという、この姿勢というのをいま一たび外務大臣から聞かしておいていただきたいと思うのです。
  51. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それはできるだけ我々は行動すべきことは行動する、しかしドイツが先に言い出したのに、それを差しおいて日本が別な構想を出すというようなことは不適当でございまして、我々同じ考えであるならば、いろいろ話を聞いて、それで一緒にやりましょうというような話はこれからするわけですから、まだ、決まっちゃって日本はこれだけ出してくれという話になっているわけでも何でもないのです。こういうふうな話で、いずれ相談をしましょうということですから、それは積極的に参加をするという考えております。
  52. 土井たか子

    土井委員 もう一点この核問題について確かめをしておきたいのは、先ほどNPTのおおよその基本的な考え方というのはおっしゃってくださいました。今、核を保有しながらNPTに対してどう対応するかというときに、旧ソ連の領域内だからそれだけは認めていこうじゃないかという国際会議の場での討議もあるかもしれない、ないかもしれない。だけれども、NPTからすると、ロシア共和国以外の国というのは、これは核保有国としては認められないはずなんですよね、現行NPTからすれば。そうすると、今のままで加盟したとしましょう。これは査察を受ける対象になりますね、取り扱いとしてはいかがですか。
  53. 丹波實

    ○丹波政府委員 私の方からお答えさせていただきたいと思いますけれども、先ほど欧亜局長からも御答弁がございましたけれども、ベラルーシあるいはウクライナといった国は非核国としてNPTに加入するということを明らかにしておるわけでございますので、そういう非核国として入っていくということでございますので、入ったときには非核国でございますので、NPT上その違反の状態というのは起きていない状況であるというふうな考え方をいたしております。
  54. 土井たか子

    土井委員 したがって、違反であるか違反でないかというのはIAEAの査察を受けるということに相なりますねということを申し上げています。
  55. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  おっしゃるとおりでございます。
  56. 土井たか子

    土井委員 外務大臣は先ほども、ロシア共和国を初めとするCISに対しての協力が国際政治の当面の重要課題だということをおっしゃっていることについて、経済的な支援の問題も少しおっしゃいましたが、日本政府は昨年の九月、あの国連総会のときに二十五億ドルの援助を決定されたというニュースを私たちは知っているわけですが、それはそのとおりでございますね。
  57. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 そのとおりでございます。日本政府の決定として二十五億ドル、全体として二十五億ドルの、当時はソ連でございました、対ソ支援策ということで決定したわけでございます。
  58. 土井たか子

    土井委員 それは既に決定されているのですけれども、既に決められている援助をどのように実行されるのですか。これは実行すること、なかなか難しいという声があるのですが。
  59. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 二十五億ドルの中身でございますが、先生御承知のようにそのうちの十八億ドルは貿易保険関連の枠でございます。そのあとの残りの七億ドルの中の五億ドルは緊急食糧・医療援助として割り当てられたもの、そのほかの二億ドルが一般案件、こういうことでございます。  五億ドルの緊急食糧援助につきましては、一昨年の暮れに決定をいたしました一億ドルの緊急食糧援助の実施が、相手国がまさに変わった、つまり相手のいろいろな機関がすべて変わりましたために、だれが一体保証人になるのかといったような技術的な面も含めて相当に複雑な過程を経ましたために、まだこれが実施、実際に物が買われるという段階に至っておりません。したがいまして、この一億ドルが片づきました後にこの五億ドルの融資枠が動いていくということになろうかと思います。  十八億ドルの貿易保険につきましては一部既に動き始めておるというふうに私は理解をいたしております。
  60. 土井たか子

    土井委員 このときは、つまり昨年九月の国連総会のときも対ソ五原則を打ち出して二十五億ドルが決定されたといういきさつがありますが、渡辺外務大臣も対ソ援助原則というのを公にされております。いずれもその中身を見ますと、北方領土問題を一日も早く解決して、平和条約の締結を目指すというところが必ずございます。これは考えてみますと、北方領土問題が解決しないと協力援助というのはなかなかできないという因果関係にあるのでございますか。どうなんですか。
  61. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは、平和条約を結ばないと本当の友好な国家としての関係は成立しにくいわけでありますから、やはり北方問題を解決する。これが私は今まで会っていろいろな話をしてまいりまして、ゴルバチョフ時代とは違っているのは事実なんですね。  去年の五月、私は外務大臣でありませんが、四月にゴルバチョフ大統領日本に来まして帰りました。国会でもここで報告もしました。日本に来たときに、五六年の共同宣言についてどうもあいまいでありますから、私は五月に会ったときに、北方領土の問題に関した共同宣言確認が行われなかったのは残念だということを直接言いましたところ、ゴルバチョフいわく、私は二枚舌は使っておりませんと彼は言った。そのことは、私が、あなたは国会で、最高会議に行って北方領土の共同宣言は既にその機会を失ったという演説をしたことを知っておりますから、あえて聞いたわけであります。そうすると、二枚舌は使っていないというのですから、それは、もうチャンスを失ったという意味にも当然とれるわけです。  ところが、今度のエリツィン大統領は、この北方四島問題は法と正義によって片づけようじゃないかということを最近言い出しました。私は五月にもエリツィン大統領にも、まだ彼は大統領になっておりませんでしたが、ロシア共和国の議長でございましたが、これもお会いをいたしまして話をした。彼はそのときに五段階返還論というものを展開をしておりました。ところが、クーデター以後その法と正義に基づいた解決ということを言い出したので、それならば我々はもう大歓迎である。法と正義、本当に文字どおり今までの日本ロシア、帝政以来、ソ連邦もありますが、結ばれた条約は当然に有効であって、一方的に破棄されたというようなことはない。スターリンのやったやり方はやはり法と正義に反するというように認めてもらう。それからドイツに対して似たようなことを言っておるわけでございますから、当然我々は法と正義、だれが考えても客観的に法と正義に従った解決の仕方であるならば、これは話し合いの余地は十二分にあるというように考えておるわけであります。
  62. 土井たか子

    土井委員 そうすると、サミットにいらしても、これはロシア連邦に対してどのように経済協力ができるか、援助ができるかというときに、やはり日本に対して援助協力ということに当然のことながら期待が集まると思うのですよ。そのときに大臣は、今おっしゃるように、北方領土問題が解決しないとだめです、平和条約を締結しないとだめですということをきっばりおっしゃるのですか。
  63. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは私としては、平和条約が結ばれない国に友好国として莫大な援助を出すということは日本国民が承知しないというように考えております。  そこで、サミット国は、アメリカ、イギリス等は日本をはっきり支持しておるわけでありますし、ドイツのゲンシャー氏ともこの間、合計六時間、話をいたしました。非常に理解を深めてもらいました。イタリアは、日本の言うのは大変もっともだということで、向こうの首相も外務大臣も事あるごとに、ソ連に行っても言ってもらっておるし、いろいろございます。  したがって、そういう輪を広げまして、そしてソ連政府も、ソ連支援しようという国がみんな全部口をそろえて言っておるわけですから、だから、やはりそういう方向解決の糸口をつくっていく。今ここでそういう問題を抜きにしてソ連をどんどん野方図に応援するんだというようなことは、私は日本国民の立場から申し上げることはできません。
  64. 土井たか子

    土井委員 そこで外務大臣北方領土返還の見通しは、今よい方向に向かっているとお考えですか、あるいはゴルバチョフ大統領当時に比べたら悪化しているなというふうにお考えですか、いずれですか。
  65. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 少なくとも悪化しているとは考えておりません。
  66. 土井たか子

    土井委員 一番手の御質問の中にもございましたけれども、けさほどの報道でもこれはニュースとして出ております。ロシア政府韓国に対して北方領土周辺水域を含むロシア極東水域で漁船の操業を認めたとされています。これも確かめてみますと、今事情について確かめているところですというふうな御発言ですから、事実ですかと聞くと、まだわかりませんというお答えになるのですか、どうなんですか。
  67. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 詳細はまだ確認中でございますけれども、少なくとも三水域の中の一つ水域北方領土周辺水域がそこに入っておる。具体的に日本が実際に漁獲をしております水域と全く同一のものであるかどうか、今確認中でございますが、そこに含まれているということは、ロシア連邦外務省もそれを肯定いたしております。そこまでは確認をいたしております。ただ、どういう地域がという具体的な詳細な点についてはなお確認中でございます。
  68. 土井たか子

    土井委員 先ほど兵藤さんの御答弁を承っていると、これが明らかになったのは、ロシア側から聞こえてきたのではなくて韓国側から聞こえてきたという向きの御答弁がございました。  そこで、それではお尋ねしたいのですが、斉藤審議官が会談をされた節、こういうことは話題にならなかったのですか。また、今国会提出の日本アメリカ、カナダ、ロシア漁業協定、やがて審議しなければいけないのですが、この協議の際に、非公式にもこういうことについて話題にするということが向こうから出なかったのですか。いかがですか。
  69. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 平和条約作業グループの席上におきまして、この問題がロシア外務省の方から言及されたということは私はなかったというふうに承知しております。
  70. 土井たか子

    土井委員 漁業協定協議の際の場所でも、非公式にもなかったですか。
  71. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほどお触れになりました漁業条約でございますが、これは基本的に二百海里外の公海におけるサケ・マスの漁業に関する条約でございまして、そのような水域においてサケ・マスの資源を保存するということにつきまして四カ国間で協力をするという条約でございます。  この条約の作成に至る交渉の中で、この二百海里の内側の話について議論があったというふうには承知しておりません。
  72. 土井たか子

    土井委員 まさにロシアと新しい関係を結ぼうとしている折なのですね。日本側に無断で韓国に認めるというふうな行為が明らかになってくるということになれば、日本立場というのは全く無視されてきたということにならざるを得ない、固有の領土だと日本主張している海域なのですから。したがってそういうふうに思わざるを得ないと私申し上げたのですが、大臣、どのようにお考えになりますか。これは返還交渉に影響としてよい影響じゃない状況が展開されることを私は非常に心配するのです。  また、日本側に通達をしない、話も出さないということでやったということになれば、韓国とトラブルが起きないかな、日本韓国ですよ、そういうことも懸念されます。従来、御存じのとおり、日本周辺の海域で日韓トラブルというのは頻々として起きているわけですから、そういうことを考えましたら、これはちょっとその辺の御見解なりお考えなり聞かせておいていただかなければならぬという気がいたします。
  73. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 連絡がなかったことは事実でございまして、私は遺憾だと思っております。  実は韓国側に対しましては、北方四島の問題で日本協力してくださいということはもちろんお願いをしておるわけでございます。これは異議はもちろんないのであります。そこで、北方四島に対して韓ロ間で共同の開発とかそういうようなことはぜひとも自粛、御遠慮していただければ大変ありがたいのです、ぜひそういうようにひとつお願いしますということも実は言ってあるわけです。したがいまして、韓ロ間の今回の漁業協定というものが北方四島の解決に、重大な支障とは申しませんが、いい結果になるということではない、むしろなかった方がよかったなと私は思っております。  しかし、どういういきさつでどういう内容になっているかという細かいことをまだ聞いておりませんので、それらについては目下照会をしておるところでございます。
  74. 土井たか子

    土井委員 今照会中ということですから、また明らかになってくれば、その時点でこの問題に対してお尋ねを進めなければならなくなるかもしれません。  いずれにしろ、莫大な援助というのは北方領土解決が不可欠、ということだといたしましても、ただいまの緊急人道的な援助、いわゆる食糧とか医薬品等々も含めまして、これはやはり隣国ですから、隣国として力を尽くすというのは当然のことだと言わねばならないと思うのです。これはこれまでの外務省の方針でもあったやに私は理解をいたしておりますが、旧ソ連が解体するということは地球的危機にその影響が及ぶということにもなるわけですから、日本の積極的な支援というのが必ず必要だと考えております。これはそうですとおっしゃってくださればいいので、御説明は要りません、次に進みたいと思いますから。
  75. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 緊急な人道支援は応分にやるつもりだし、やっております。
  76. 土井たか子

    土井委員 応分にというのがちょっとどうもね……。  さてそこで、日本がよって立つ立場アジアでございます。外務大臣アジア外交を重視されております。宮澤首相は第一の訪問先を韓国にされました。これはやはり外交姿勢を見る場合には結構だというふうな評価があるのは当然だろうと私は思います。  そこで、日本アジアにおける信頼回復にとって大切なのは、戦後補償の問題に対して誠意を尽くすということであると私は思うのでありますが、この種の問題について問われているのは国政関与者の責任ではなかろうかと思うのです。大臣はどのようにお考えになりますか。
  77. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは、アジアについて友好関係を保っていくということは当然我々の責任であります。
  78. 土井たか子

    土井委員 最近非常にニュースでクローズアップをされております従軍慰安婦の問題も含めて強制連行をされた人たち、従軍した人もあれば、あるいは日本の国内で炭鉱やまた建設現場や軍需産業なんかで強制労働に従事した人もございますが、そういう人たちから補償の請求があるときに、もうこの問題は解決済みでございますという答弁を今までされてきた。解決済みとおっしゃる根拠はどこにあるのですか。
  79. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 御承知のとおり、一九六五年の日韓請求権・経済協力協定におきましては、日韓両国及び両国国民の財産請求権の問題は日韓間の問題として完全かつ最終的に解決したということが確認されているわけでございます。これまた御承知のとおり、この解決と並行いたしまして無償三億、有償二億ドルという経済協力を実施したものでございます。いわゆる個人の請求権にかかわる問題につきましても、この日韓間における条約上の処理の対象となっていますことはこの条文上も明らかでございます。したがいまして、日韓間の問題としてこの請求権の問題は完全かつ最終的に解決したということでございます。  根拠と申しますのは、この一九六五年の日韓間の請求権・経済協力に関する協定でございます。
  80. 土井たか子

    土井委員 柳井さんの御答弁というのは、外務省のその条約にかかわる御答弁としては大分に変遷しているのです。  先日予算委員会での御答弁で、今おっしゃった有償、無償五億ドルですね、これは一条の問題だと思いますが、後でおっしゃった完全かつ最終的に解決という、これは二条の問題だと思いますが、これを大きなパッケージとして解決がなされたとおっしゃっておる。これは法的に関係しているのですか。
  81. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この協定上は、ただいま先生おっしゃいましたとおり経済協力の問題は第一条で規定しておりまして、いわゆる請求権、財産請求権の問題は第二条で規定しているわけでございます。  この協定上、直接財産請求権の問題の解決のために五億ドルを支払うというような規定はしておりませんけれども、これも先生御承知のとおり、当時日韓の国交正常化に至る大変な長い、かつ困難な交渉の中で、請求権の問題というのは非常に深く、幅広く討議されたわけでございます。ただ、もう当時既に戦後相当の時日がたっておりましたし、また第二次大戦後におきましても朝鮮動乱ということもございまして、一つ一つの請求権の積み上げ、あるいはその裏づけということができなかった、非常に困難であったという事情があったわけでございます。その結果、日韓間の交渉によりましてこの請求権の問題は一括してこの協定に規定されているような形で最終的かつ完全に解決する、そしてそれとともに経済協力を行うという形で決着したということでございまして、規定上この経済協力の問題と請求権の問題を直接関連づけて書いてはございませんけれども、この交渉の中で、先日予算委員会で私御答弁申し上げましたけれども、一つの大きなパッケージとして関連づけられて解決したということでございます。
  82. 土井たか子

    土井委員 今の柳井さんの御答弁からしますと、請求権はこの日本から出した金額によって放棄するという意味を持つというふうに聞こえるのですが、当時の、これは請求権及び経済協力協定ですけれども、審議をずっと読んでみますと、全く違いますよ。  椎名外務大臣の明確な答弁がある。一条と二条とはどういう関連にございますかという質問に対して、「法律的な関連性はございません。」そうして、「経済協力はあくまで経済協力でございます。もしこれが賠償的性格を帯びるものであれば、協定の細部にそれがあらわれるはずでありますけれども、そういうことはございません。あくまで経済協力として取り扱っております。」そして、経済協力の性格は何かという質問に対して、「経済協力でございます。」繰り返しこれを答弁されて、「請求権問題と経済協力とは、何ら法律上の因果関係はございません」と答えられていますよ。「総計五億ドルの経済協力はあくまで韓国経済建設に役立てるため供与するものでございます。」と明確に答弁されていますよ。  今の柳井さんの御答弁と大分違うのです、これは、いつの間に変わったのですか。当時は、この協定を締結することのための質問答弁、その場所での御答弁が、外務省答弁としてそうだった。大臣答弁としてそうだった。大臣が責任持って答弁された中身がそうだったのですよ。
  83. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 私、先ほども御答弁申し上げましたとおり、この協定上経済協力の問題と請求権の問題が法律的に関連して規定されているということではないということも申し上げている次第でございます。  ただ、この交渉の過程で、この請求権の問題が論じられる一方、それと並行して経済協力の問題も討議されまして、そして最終的には経済協力を行う、そしてそれと並行して財産請求権の問題も解決するという一つの大きな合意ができたわけでございます。したがいまして、私が御答弁申し上げたことと、この協定を審議していただきましたときに当時の椎名外務大臣その他政府の関係者が御答弁されたこととの間に、別段変更とか矛盾とか、そういうことはないというふうに考えております。
  84. 土井たか子

    土井委員 大きなパッケージとしてわざわざ言われるところが紛らわしいのです、これ。よっぽど今私が申し上げた椎名外務大臣答弁で、はっきりしている。はっきりしていることを何だかわからない、誤解を生ずるような紛らわしい表現につくり変える必要はないのです。だから、その辺はまずはっきりしておいていただきたいと思うのですよ。  一条と二条というのは、法的因果関係はない、関連性はないということをはっきり答えられているのですから。大臣、よろしゅうございますね、これは。議事録に従って私は申し上げております。これは大臣からお聞かせいただきたいと私は思いますよ。政治的な判断ですから、はっきり。
  85. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 条文は大変長いので、また先生もよく御存じでございますので、これを読み上げるということはいたしませんけれども、(土井委員「読んでくださらなくて結構です。議事録に従っているのです」と呼ぶ)この協定上は、先ほども申し上げましたとおり、請求権の問題と経済協力の問題が法的に直接関連づけて規定されているということではございません。  また、この協定の締結当時、当時の椎名外務大臣はこのように申されております。これはちょっと短いので引用させていただきますが、「請求権の問題と経済協力、これは、日本の対朝鮮請求権は、軍令及び平和条約等のいきさつを経て、もはや日本としては主張し得ないことになっておりますが、反対に、韓国側の対日請求権、この問題について、この日韓会談の当初において、いろいろ両国の間に意見の開陳が行なわれたのでありますけれども、何せ非常に時間がたっておるし、その間に朝鮮動乱というものがある。で、法的根拠についての議論がなかなか一致しない。それかも、これを立証する事実関係というものがほとんど追及ができないという状況になりまして、これを一切もうあきらめる。そうして、それと並行して、無償三億、有償二億、この経済協力という問題が出てまいりました。」云々というふうに申されております。
  86. 土井たか子

    土井委員 今私は議事録に従って申し上げているので、さらにそういうことの注釈というのは不要だと思うの。この点ははっきり、条文上についてどういうふうに考えたらいいかということを私がお尋ねしたことに対するこれは裏づけになるそのときの議事録でございますから。よろしいですか。  さあそこで、ここで「完全かつ最終的に解決」とおっしゃっていることは、いわゆる個人の請求権そのものを否定してはおられませんね。いかがですか。
  87. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 条約上、先ほども先生がお触れになりましたとおり、第二条でいわゆる財産請求権の問題を規定しているわけでございますが、ここでは要するにこれらの問題が「完全かつ最終的に解決された」ということを言っているわけでございます。ただいま申し上げましたのは第二条の一項でございます。  そして、この同じ第二条の三項におきまして、ここはちょっと短いので読ませていただきますけれども、一定の例外がございますが、その例外を別としまして、「一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であってこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であって同日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする。」この「同日」というのは、この協定の署名の日、すなわち一九六五年の六月二十二日でございます。  このように規定しておりまして、いわゆるその法的根拠のある実体的権利、いわゆる財産権につきましては、この協定を受けて、我が国におきまして、韓国の国民の財産権を一定の例外を除いて消滅させる措置をとったわけでございます。したがいまして、このような法律的な根拠のある財産権の請求につきましては、以後、韓国の国民は我が国に対して、私権としても国内法上の権利としても請求はできない。そのような措置をとることについて、この協定によりまして、ただいま読み上げましたこの二条の三項におきまして、韓国側としては、それに異議を申し立てることはできないということでございます。  この二条の三項で「財産、権利及び利益」ということを言っておりますが、これは当時作成されました合意議事録におきまして、これは合意議事録の二項の(a)というところでございますが、「「財産、権利及び利益」とは、法律上の根拠に基づき財産的価値を認められるすべての種類の実体的権利をいうことが了解された。」ということになっております。したがいまして、この二条の三項で言っております「財産、権利及び利益」以外のもの、すなわち請求権というものがございます。これにつきましては、ただいまの定義から申しまして法律上の根拠のない請求、いわゆるクレームと言ってもいいと思いますが、そのような性質のものであるということでございます。  それで、しからばその個人のいわゆる請求権というものをどう処理したかということになりますが、この協定におきましてはいわゆる外交保護権を放棄したということでございまして、韓国の方々について申し上げれば、韓国の方々が我が国に対して個人としてそのような請求を提起するということまでは妨げていない。しかし、日韓両国間で外交的にこれを取り上げるということは、外交保護権を放棄しておりますからそれはできない、こういうことでございます。
  88. 土井たか子

    土井委員 るるわかりにくい御説明をなさるのが得意なんですが、これは簡単に言えば、請求権放棄というのは、政府自身が持つ請求権を放棄する。政府が国民の持つ請求権のために発動できる外交保護権の行使を放棄する。これであって、このことであって、個人の持つ請求権について政府が勝手に処分することはできないということも片や言わなきゃいけないでしょう、これは。今ここで請求権として放棄しているのは、政府自身が持つ請求権、政府が国民の持つ請求権に取ってかわって外交保護権を発動するというその権利、これでしょう。だから、個々の個人が持つ請求権というのは生きている。個々の個人の持つ請求権というのはこの放棄の限りにあらず、これははっきり認められると思いますが、いかがですか。
  89. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま土井先生が言われましたこと、基本的に私、正確であると思います。この条約上は、国の請求権、国自身が持っている請求権を放棄した。そして個人については、その国民については国の権利として持っている外交保護権を放棄した。したがって、この条約上は個人の請求権を直接消滅させたものではないということでございます。  ただ、先ほど若干長く答弁させていただきましたのは、もう繰り返しませんけれども、日韓の条約の場合には、それを受けて、国内法によって、国内法上の根拠のある請求権というものはそれは消滅させたということが若干ほかの条約の場合と違うということでございます。したがいまして、その国内法によって消滅させていない請求権はしからば何かということになりますが、これはその個人が請求を提起する権利と言ってもいいと思いますが、日本の国内裁判所に韓国の関係者の方々が訴えて出るというようなことまでは妨げていないということでございます。
  90. 土井たか子

    土井委員 結局は個人としての持っている請求権をお認めになっている。そうすると、総括して言えば完全にかつ最終的に解決してしまっているとは言えないのですよ。まだ解決していない部分がある。大いなる部分と申し上げてもいいかもしれませんね。正確に言えばそうなると思います。いかがですか。
  91. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほど申し上げましたとおり、日韓間においては完全かつ最終的に解決しているということでございます。ただ、残っているのは何かということになりますと、個人の方々が我が国の裁判所にこれを請求を提起するということまでは妨げられていない。その限りにおいて、そのようなものを請求権というとすれば、そのような請求権は残っている。現にそのような訴えが何件か我が国の裁判所に提起されている。ただ、これを裁判の結果どういうふうに判断するかということは、これは司法府の方の御判断によるということでございます。
  92. 土井たか子

    土井委員 さあ、ここで外務大臣にお答えいただきたいと思うのですが、これは今しきりに問題になっている、私自身も聞いて胸が詰まる思いがするのですが、従軍慰安婦の人たちの問題、どう抗弁いたしましても日本国民として恥ずかしいです。大変恥ずかしいと私は思っている。外務大臣はどうお思いになりますか。恥ずかしいとお思いになりませんか。いかがですか。
  93. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 人を殺したり傷つけたり、そのような今おっしゃったような不幸な立場を強制したりするようなことは、全く戦争の罪悪であって、恥ずかしいと思います。
  94. 土井たか子

    土井委員 恥ずかしいと思いますとおっしゃることについて、これは具体的に問われているのは国政関与者の責任だということになると私は思うのです。  実は一九八二年の六月に外務省調査をされた結果を裁判所に対して付言という形で、判決が出る資料になっているのです。おもしろいですね。これは私、最近初めて知ったのですけれども、なるほどと思ったのですよ。  これはどういうことかといいますと、台湾人元日本兵士の補償問題、台湾人の台湾に在住しておられる方々十三名が原告となって日本政府に補償請求を求めて東京地裁にそれが提訴されたのです。東京地裁さらに東京高裁に参りまして、八五年の八月に東京高裁。地裁も高裁もいずれも棄却判決になりました。そのときに高裁は付言をこの判決にしたのです。  どういうことを言っているかといいますと、「控訴人らは、ほぼ同様の境遇にある日本人と比較して著しい不利益をうけていることは明らかであり、……早急にこの不利益を払拭し、国際信用を高めるよう尽力することが、国政関与者に対する期待である」と書いてある。  外務省がこの調査をされたのは「負傷または戦死した外国人に対する欧米各国の措置概要」でございまして、ここで調査の対象になっているのはアメリカ、イギリス、フランス、イタリア、当時の西ドイツの五カ国なんです。いずれも外国人となった元兵士に対して自国民とほぼ同等の年金または一時金を支給しているのです。この五カ国を見ますと、植民地を持っていないカナダをここに加えたらまさしくサミットになるのです。サミット参加国の中で、こういう問題に対してそっぽを向いて、解決済みでございます、解決済みでございますと言い続けたのは日本だけですよ。日本だけがこれは特異な国ということになるわけであります。  と同時に、先ほど財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定について二条の一をお出しになりましたが、その二条の二というところを見ますと、「この条の規定は、次のものに影響を及ぼすものではない。」という中に、「一方の締約国の国民で千九百四十七年八月十五日からこの協定の署名の日までの間に他方の締約国に居住したことがあるものの財産、権利及び利益」とはっきり書いてあるのですよ。  そうすると、韓国籍の人でも日本にその間おられる方については、この条約は関係ないんです。そうすると、日本国民と同等の取り扱いをやってしかるべきであるにもかかわらず、外務大臣ここからが大事なんですよ、実はそれが全く外されてしまっているのであります。全く外されてしまっている。  それは外務大臣も御存じだと思いますけれども、平和条約が発効すると同時に日本では、戦争によって被害を受けた人たちに対する援護並びに補償の法ができてまいりました。その皮切りは戦傷病者戦没者遺族等援護法に始まる十三法、以後あります。すべてのその法律から国籍条項を用意しました。日本国民でなければ、日本国籍を所有していなければこの補償の対象でないということに法の上でなっているのですよね。国籍条項と申し上げねばなりません。  私は、難民条約のときあるいは国際人権規約を審議するとき随分、国内の外国籍の人に対する処遇に対して、年金もそう、保険もそう、住宅もそう、改善されたことを覚えています、内国民待遇ということで。ところが、たった一点この問題だけが除外にされてきたんですが、なぜこれが問題にならなかったかといういきさつが吉としてわからない。  なぜこれだけを外されたんですか。ほかの年金にしたって保険にしたって、いろいろとそれ以前と違った、取り扱いを変えましょうというのが難民条約や国際人権規約のときの国内的措置として問題になったんですよ。だけれども、この財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定では、影響を及ぼさないはずの在日の人たちを切り捨ててしまっているという格好になっているのですが、これは一体なぜですか。
  95. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この協定の二項で二足の例外措置が規定されているということは、先生おっしゃるとおりでございます。この二項で(a)と(b)という二つの例外がございまして、その(a)というのが先ほどお読みになった例外でございます。  この意味するところでございますけれども、「千九百四十七年八月十五日からこの協定の署名の日までの間に他方の締約国に居住したことがある」一方の締約国の国民ということを言っておりますが、これは実際には主として在日韓国人の方々を指しているわけでございます。そのような方々の財産、権利及び利益についてはこの規定の例外とするというふうに述べているわけでございますが、先ほどちょっとお答えいたしましたとおり、この財産、権利及び利益というのは、合意議事録におきまして、「法律上の根拠に基づき財産的価値を認められるすべての種類の実体的権利をいう」ということが日韓間で了解されているわけでございます。したがいまして、そのような法律上の根拠に基づく財産的価値を有する権利というものはこの協定上は例外にしている。  そして、先ほど申し上げました財産権を消滅させる法律を当時つくりましたけれども、その中でも、このような在日韓国人の方々の法律上の根拠のある財産権は除いている、すなわち消滅させていないということでございます。その限りにおいて、この協定の処理の例外になっているということはそのとおりでございます。ただ、一般的なそういう法律に基づかないいわゆる請求というものは、この規定の例外の対象ではないわけでございます。  他方、いろいろな国内法で国籍条項があるということにつきましては、これはそれぞれ所管の官庁におきましてその法律の制定の経過を承知しておりますので、必要があればまた照会いたしたいと思います。
  96. 土井たか子

    土井委員 さあ、そこで外務大臣、今の御答弁はまたややこしい、わかりにくい御答弁でしたが、二点しっかり外務大臣に押さえておいていただいて、そして最後に一言言って、私はこの質問は終えたいと思うのです。  それは、今、日韓間の請求権並びに経済協力に関する協定と略して言いましょう。この条文の中では、個人の持つ請求権についてこれは認められているということが一点。二点目は、第二条の二項のところで影響を及ぼさないはずの在日韓国人に対して影響を及ぼして、そして当然認めなければならない戦争による被害に対する手だてというのを、法律の中で国籍条項をわざわざつくって対象としていないという問題です。これは、この条約の二条の二項からしたらおかしい取り扱いなんですよ。間違った取り扱いと申し上げましょう。したがって、二点申し上げたい。  一つは、個人の持つ請求権というのは認められているんだから、したがって提訴ということも当然あり得るんですが、先ほど御答弁を承っておりますと、裁判の判決の結果をひとつ考えてというふうな御趣旨の御答弁でもありましたが、だから私がわざわざ、外務省がかつて調査をなすった結果を裁判所は付言としてこう言われていますよということを言った意味があるのです。  もう一度言います。「ほぼ同様の境遇にある日本人と比較して著しい不利益をうけていることは明らかでありこ裁判を起こした人がですよ、「早急にこの不利益を払拭し、国際信用を高めるよう尽力することが、国政関与者に対する期待である」と言っているんです。裁判所の判決というのはいつ出るかわかりません、これは。二年かかるか三年かかるか、場合によったら五年かかるかわからない。その判決が出るまではひたすら待ち続けますというんじゃないのであって、問題は、「国際信用を高めるよう尽力することが、国政関与者に対する期待である」、この点に対して外務大臣は、先ほど予算委員会の場所でしょう、御答弁の中で心あるこれに対しての対処の仕方ということがあってしかるべきだという御趣旨の御答弁をなすったやに私は知っているわけでありますけれども。この二点、国籍条項を外すということの検討が一つ、あと一つは判決を待つまでもなくこれに対してどのように考えていくかという問題、いかがですか。
  97. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私は両方の意見もこれずっと聞いておるのですが、やはり日本は法治国家でございますから、法律に書いてあるとおり実行しなければならないということが一つだと思います。  ただ問題は、法律問題としては裁判所があとは結論をどう出すかという問題でしょう。しかしこの従軍慰安婦の問題というのは、私は法律の問題ということでなくて人道的な問題であって、政治問題であることは間違いありません。大変痛わしい、胸の痛むような話でございまして、まずその実態を調べなきゃならぬということで今官房を中心にして調べておりますので、そういう実態の上にどういう政治判断をするかということは、これは法律の問題じゃない問題でございますから、何らかの私は、けじめと言っては語弊があるのかもしれませんが、結論を出す必要があると考えております。
  98. 土井たか子

    土井委員 終わりますが、それは外務大臣いつごろですか、今結論を出す必要があるとおっしゃる結論は。
  99. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 調査の終わり次第、日本側でも調査をしているし韓国側調査はしておりますので、そう多年月を要することはないだろうと思います。
  100. 土井たか子

    土井委員 きょうのところはこれで終えますけれども、法治国家としてという立場に立ては、締結した国際条約、国際法規並びにそれに従って制定された国内法規、これを基礎に置いて考えても今の日本の取り扱いというのはそれに反するというおそれが非常にあるということも私は予言しておきまして、これは改めてまた申します。  ありがとうございました。
  101. 麻生太郎

    麻生委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  102. 麻生太郎

    麻生委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。伊藤茂君。
  103. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 渡辺美智雄さんとは税制その他で政策責任者として随分親しいか、あるいは激しい議論を長年させていただきましたが、こういう場で御質問申し上げるというのは初めてでございます。しかし、午前中もございましたように、大変重大な事態でございますので、御健闘を期待しながら、幾つ質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、午前中にも新しい世界秩序、国際秩序という言葉が出まして、どういうシナリオになるのかは模索をしてみなければわからぬ確かに現状であります。そういう話が出されました。私は冒頭に伺いたいのでありますが、この一年、二年、三年、まさに歴史が音を立てて目の前を動いているというふうな状況であります。日本のポジションと日本の役割はかつてなく大きくなりました。いろいろな意味での大きな構想が求められている、世界からそれを見詰められているというのは事実であろうというふうに私は思うわけであります。  もう二年ちょっと前になるのですが、ヘラルド・トリビューンに出た論文を読んだことがございます。オーストラリアのエバンズ外務大臣の論文が載っておりました。翻訳をしてもらいましてみんなで読んだことがございます。もう二年前なのですが、その時点でも、あの方がおっしゃっているのは、アジアにもヨーロッパ型CSCA(全アジア安保協力会議)が必要という論文でございまして、そして、アジアとヨーロッパはまさに経済面でも安全保障の面でも非常に構造と条件が違う。私もそう思います。これは事実であります。しかし、これから先、アジア地域にも同じようなやはり新しい構図が求められているということではないだろうか。  これらについては、その後読みましたニュースでも、カナダの外務大臣やあるいは別の意味でアメリカの国務長官の論文などもさまざま出されておりますが、そういう新しい制度、システムをつくっていくという時代ではないだろうか。確かに現状は二国間あるいは地域単位でさまざまの対話のプロセスを不断に追求して、そして網の目の一本一本の糸をより緻密に粘り強いものにしていくというのが現実的ではある。しかし、そういう展望を常に持ちながら新時代努力をしていこうではないかという論文がございました。  また去年の夏ですが、カンボジアや東南アジアを与野党で一緒に訪問をいたしまして、タイに参りましてタイの外務大臣と首相にお会いをいたしました。タイの首相がおっしゃるには、今バンコクから見て南の方というかASEANの地域は、経済的にもあるいはまた平和中立という意味でも、ほぼ安定した構造になっております。しかし、ここから見て北の方、カンボジア、ラオス、ベトナムなど、これらは今途上にあります。これらが安定したシナリオができた場合には、東南アジア全体に新しい時代の構図ができ上がるでありましょう。そのときに、アメリカとの関係、日本との関係、さまざまな努力をしなくちゃなりません。やはりそういう展望の中でぜひ日本が展望のある、そしてまた同じアジア人としての友情と有益な貢献をしてもらいたいというふうな話がございました。私はそういう意味から申しますと、今日の政治の状態というのは非常に残念な気持ちがいたします。  渡辺外務大臣、副総理としてのまた次を展望する立場にあるわけでありまして、やはり目の前のポリシーとしては非常に困難かもしれない。目の前はさまざまめほぐれた糸をほぐしたり、つないだりしなくちゃならぬ、これは事実であります。同時に、何か新時代の大きな展望を持とうというふうな迫力と申しましょうか、そういうものもまた、日本国民も世界を見詰めていくということではないだろうか。何年か前でしたが、衆議院の本会議場で韓国の盧泰愚大統領の演説を伺いましたが、あのときもそういう意味で非常に感銘を受けた覚えがございます。  それらを考えますと、CSCA構想あるいはアメリカとの関係などなど含めまして、そういう気概と申しましょうか、展望を持ちながら、目の前でどう努力をするのかということが求められている時代ではないかと思いますが、外務大臣の御見解をまず伺いたいと思います。
  104. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 日本は、ヨーロッパの安全保障会議がカナダまで入るというのですから、日本もオブザーバーで入れないかという話は実はしているのです。まだ決まったわけではありません。日本は、アジアにおけるAPECですね、まず経済問題でお互いに助け合いながら発展していこう、開かれたAPECは賛成というところでやっておりますが、アジアの安全保障会議というのを我が国が今言い出す時期ではないんじゃないか。一つの構想としてはそういう話が出てくることは決して悪いことじゃないかもしらぬが、日本がリーダーシップをとるというときではない、そのように私は今のところ考えております。
  105. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 日本がイニシアチブをとるとか音頭をとるとかという意味で私は申しているんではございません。やはり幾つかのさまざまの国が共通の幹事役として汗を流しながら新時代をつくっていくということであろうと思いますし、何かそういう、やはり目的意識的な将来展望というものを常に念頭に持ちながら、目の前のさまざまな問題をこなしていくというようなことがありませんと、またそういうことが求められている今日の時代ではないだろうかという気持ちで申し上げたわけであります。  大臣の御答弁でございますが、外務省全体としてもさまざまの分野でそういう御勉強なり検討をぜひやっていただきたいと思います。また、公式、非公式にいろいろなことを与党、野党などを含めまして、あるいはお役所と政治家の枠を超えましてさまざまお互いに議論しなければならない今日の時代ではないだろうかという気持ちがいたしております。そういうことを前提にいたしまして、幾つ質問させていただきたいと思います。  一つはカンボジアの問題でございます。今UNTACの全面展開という方向に向けまして、この春にはということで動いているわけであります。また、明石さん、緒方さん、日本から出まして活躍をしている方々が大きな責任を担うということにもなりました。それだけに国民の中にも、みんなが合意できるいい方向でまじめに積極的に日本もやらなくちゃという気持ちが大きいというふうに私は思うわけであります。明石さんも緒方さんも、やはり日本から出られた方として、誇りある役割を果たせるようにというふうに私も思っているわけであります。  そういう意味から申しますと、UNTACの全面展開、四月、五月にもそれが完了するかと言われております。二万人前後の非常に大きな規模になっていく、国連史上最大の規模と言われているわけであります。ちょっと心配しておりますのは、本年度予算案の中での外務省予算につきましての説明をこの間伺いましたが、そういうやはり大きな仕事をしていく、それは国連という枠内での仕事もございます。国連の中ではさまざま、分担比率に応じまして日本も支出をする。当然なってくるわけであります。それから、二国間の協力も大いにしなければならないということになるわけでありますが、何か外務省の予算の御説明を伺いますと判然といたしません。相当の額になるのではないだろうか、また相当の額を当然やらなければならないというふうにも思いますが、その辺はどうお考えになっておりますか。
  106. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  昨年だけでもPKOが五つも設立されまして、先生が今おっしゃっておられるUNTACはまさに今週か来週正式な設立の決定を見るというような状況でございます。それで先般ユーゴに対するPKOも決定されたことは御承知のとおりでございます。このUNTACとユーゴのPKOの二つとった場合の総合的な経費につきましては、実はまだ二つとも決定されておりません。しかしながら、一部報道されておりますUNTACの経費につきましては、義務的に割り当てられる全体の経費は二十億ドル前後ではないかという報道がございます。これは私たちとしては当たらずとも遠からずの数字ではないかと考えております。まさにこれが割り当てられる場合、日本は御承知のとおり一二・四五%を少なくとも分担しなければならない。国によっては、アジアにおけるこういう活動であるので、もっとそれを上回る経費を負担してほしいという期待が表明されているというのも事実でございます。まさに今後これを来年度予算でどう処理するかというのが頭の痛い問題であると考えております。  当面処理しなければならない経費は、実は二月の十四日に国連総会決議がございまして、これはUNTACの当面の立ち上がり経費として二億ドルというものが決定されております。これによりまして当面必要な宿舎の建設、下水道の建設あるいは車両の購入、そういった経費に充てようということでございます。これにつきましては、日本としては少なくとも一二・四五%を持たなければならない、かつ、早急に支出をしなければならないということで、どこから出すかということをまさに現在検討中の状況であるということでございます。
  107. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 二十億ドルというお話がございました。しかし、国連で御相談をなさるところの見積もりというものもございます。大臣もいらっしゃっておりましたが、私ども参りまして、これから先、今予測できないあるいは予想以上にと申しましょうか、さまざまの対応が必要になるということも私は考えなければならないというふうに思っております。それらのことを考えますと、しかも四月、五月という段階にほぼ全面展開完了というふうなスケジュールになるようでありまして、これらに対する対応を現在の外務省予算でやれるのですか、予備費でやれるのですか、あるいは将来補正になるのですか、どういう展望を持ってこれらのことをきちんとやろうというふうにお考えになりますか。
  108. 丹波實

    ○丹波政府委員 ただいま最後の方で、まず御説明申し上げました立ち上がり経費に約二億ドルの一二・四五%、絶対額にいたしますと二千五百万ドルになりますけれども、もし今年度予算で処理しなければならないということになりました場合、外務省の予算の中には入っておりませんので、それ以外の方法で処理しなければならないわけでございます。この点について現在大蔵省と相談中であるということでございます。  決定されてはおりませんけれども、二十億ドル前後と報道されておりますところの義務的な分担金につきましては、来年度予算の中から支出する方法を、またこれも大蔵省と協議の上探求していかなければならない、そういう状況にあります。  ちなみに、報道されております二十億ドル前後の数字に加えまして、やはり報道されております九億ドル前後の数字がございます。これは復旧あるいは難民の帰還ということで別途国際社会にツケが回ってくる数字であろうかというふうに見ております。これについても日本は何らかの支出を要請されるというふうに考えております。
  109. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 どちらとしましても二十億ドル、そのほかに緒方さんが御苦労なされる難民の問題などなど、大きな規模でございますから、いろいろなことがあるのでありましょう。外務大臣、そういう中で日本が積極的な役割を印象づけられるような努力をお願いしていきたいと思います。  二国間の関係のことで二つお伺いしたいと思います。  一つは、四月以降にということのようですが、カンボジア復興に関する国際会議を東京、本邦で開催をするという予定になって計画をされているようであります。それについて伺いたいのですが、私は、短期短期、その都度という段階ではない将来展望が求められると思います。例えばUNTACが治安あるいは選挙に向けての一つの任務を完了するというふうなスケジュールになっているわけであります。しかし、それらをやるについても、カンボジア自身の基礎的なインフラも含めた全体の社会経済の安定というものがなければ、これも成功しないと思います。UNTACから、国連管理から、次の段階への展望というものも生まれてこない。同時並行的に国連のやることに協力すればいいのだというだけではない、特に日本が大きな役割を持った計画というものが求められてくるというふうなことがあると思います。  日本で開催をするということになりますと、主催国としてもそれにふさわしい、いい役割またはいい構想を持って対応していくというのが当然のことであろうというふうに思うわけでありまして、まだその具体案というところまでは当然いかないと思いますが、その方向に向けての準備なり心構えというものを伺いたいというのが一つ。  もう一つは、大臣、前にチア・シムさんとお会いしたときも話題になりましたが、私ども行くと象徴的に見てくるのですが、例えばジャパンブリッジ、日本橋の問題とかあるわけでありまして、これはみんなやらなければならぬなと思って、与野党、政府、新しい大使も問わずみんなそう思っているわけであります。二つの調査団が派遣されたというお話を伺っているわけでありますが、こういうことは早く実行するということが必要ではないだろうか。これは向こうの方々からすれば、あるいは世界からいろいろとUNTACに参加をされる方からしましても、日本の活動の象徴的な存在として印象づけられるというふうなことではないだろうかと思うわけであります。  二つの調査団派遣ということを伺っておりますけれども、どうなっているのか、あるいはいつの時点でこういうことは仕上げてやる、仕上げてあげます、そもそも日本援助でつくったものですから、そういうことを具体化をするということが必要であろうと思います。やらなければならないとか、やりましょうだけではないというものが必要ではないかというふうに思うわけであります。これから四、五月のUNTACの展開などを考えますと、当然必要ですから、もう突貫工事で大至急、ことし前半のうちには完了してすぐやりますとかというようなことが内外から見ても適切な対応ではないかというふうに思いますが、東京会議と二国間の援助の構えの問題、いかがでしょう。
  110. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 御承知のとおり先般社会党の委員長が団長でカンボジア視察をやっていただき、いろいろ報告も受けました。そのとき上原さんも行ったですね。それからつい最近は、その後、自民党が団長で、自社公民の各派各党から超党派の調査団がカンボジアに行って帰ってきた。きのうあたり帰ってきたばかりでございます。詳しい報告はまだ受けておりませんが、一致しているところは、今伊藤先生おっしゃったようなことで、せっかく日本がカンボジア和平の宰相東京会談でイニシアチブをおととしとったのだから、積極的に参加をしてやってくれという話でありました。それにつきましては、何といってもお金の問題でございまして、まずは予備費などはもうほとんどございませんので、一日も早く予算を成立させていただいて、年内成立をさせてもらって、すぐに四月早々あなたの御要請に応じたい、そう考えておりますから、予算がいつ成立するかは共同責任でございますので、なるべく御協力をお願い申し上げます。  第二番目は、二万人の中の一万四千人からのPKOを各国から今募集をしておるところでございまして、インドネシアなどは憲法で海外には兵隊を出さないということになっておるんだそうでございますが、しかしあれは軍事的な目的でなくて本当の国際協力だというので、八百人程度出す予定だということをこの間インドネシアの外務大臣が私のところへ来て話しておりました。  日本もカンボジアに行ったときに必ず言われることは、まず何といっても地雷の撤去から始まらなきゃならない。それから治安の確立をしなきゃならぬ。それからやはり武器を供出してもらわなきゃならぬ。そいつをちゃんと保管するなり破壊するなりしなきゃならぬ。そういうふうなことから始まらぬと、文民を入れろといったってそう簡単なわけにはいかないということで、日本に対してもぜひともひとつ、通信とか衛生とかそんなもういろんなことでPKO活動をやれる分野があるんだからお願いしたいという話が来ておるわけでございますので、これもひとつ、どういうように法案をなにするのももう御相談に応ずるわけですから、日本も参加できるようにぜひとも社会党の特段の御協力をお願いを、いい幸いだと思って申し上げる次第でございます。よろしくお願いします。
  111. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 PKOの議論は次にばっちりやりましょう。  大臣、予算案の要望はありましたけれども、私が言ったのは、あのプノンペンの町の周辺でまさに象徴的なわけですよね。大きな川に橋があって、日本援助して、ピアが一本と百メートルほどぶっ壊れている、これを何とかしなきゃならない。今、船で行っているわけですからね。こういうことをどうするのですか。五月には世界中から展開をしていくというときに、ああ、日本が橋を援助してつくったのに内戦でぶっ壊れてそのまま何も手をつけてないで、さあ、ということじゃぐあい悪いでしょう、これは。そういうことを最優先的に、例えばことしの夏中とか秋までとか、まさか年末ということはないと思いますがね。そんなもの、日本技術日本の応援体制で行ったら幾らも時間かからないと思いますよ。そういうことをどうしますかという、向こうからしても関心の一番深い、世界から見ても一番象徴的なことについてどうですかということを聞いているのですね。
  112. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 全く御趣旨ごもっともでございますが、お金がなければできないわけですから、やはりこれも至急予算を成立させていただいて、もう調査団も出したことでもございますし、最優先的にこれは取り上げたい。全く私は同じ意見なんです。
  113. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣答弁の中でPKOの問題がございました。私はこう思います。  今法案が参議院に回っておりますが、衆議院の経過その他を見ても、これは国民の見る目も、あるいは法案内容の国会の議論の中でも数々の重大な問題をはらんでいる、おかしな問題をはらんでいるということが明らかになっているということだと思います。やはり一番正直なのは国民世論で、国民の多くの皆さんは、幾つか新聞の世論調査を見ますと、やはりこういう時代の中で日本世界のためにお金も出し、汗を流し、いろいろな協力をしなくちゃならぬ、これはやはり憲法にあるような国際社会において平和国家として誇りある地位への道だというふうに思うようになっている。これが多数派であります。  同時に、国民のまた多数の皆さんは、今、日本の自衛隊が部隊として旗を持ってどんどん出かけていく、理屈としては確かに作戦、戦争ではない、国連の、あるいは戦後の処理の問題といいますが、しかし、それでもやはり大きなそれについての懸念と不安を感じている、数字でそう出ておるわけであります。  そういう中で、我々政治の責任としては、どのようにその国民の不安を解消しながら、どのように国民の合意できる、あるいは国会の中でも、私は、自公民ではない自社公民など、できれば全政党、大多数の政党が合意できるようなことをやるべきではないか、三党から四党へ移すべきだということを昨年も一年間いろんなことを機会を通じては主張してまいりましたが、そういう努力と知恵でやるのが私は今日の時代における内外の政治の責任だろうというふうに思います。  そういうことから申しましたら、今UNTACの二万名と言われる大規模な展開があるわけであります。外務大臣よく御承知のとおりでありまして、例えば道路にしろ橋にしろ水道にしろ電気通信にしろあるいは宿舎その他の設備にしろ、これは基礎的なインフラが非常に大きく崩壊しているという状態でありましで、世界から参加をする二万名の方々、それをどうバックで支えるのか、大変なことだろうと私は思います。  近辺のいろいろな国の方々がおっしゃっている注文などについても、いろいろな報道などを通じまして私も伺っておりますが、早く積極的にそういう分野で日本が大きな役割を果たす、目に見えるように早く大きな役割を果たすというのが今カンボジア問題についても日本が果たすべき道ではないだろうか。カンボジア問題の処理、カンボジアの和平、その後また近くのアジアで大きな地域紛争危険性が高まっているというなら別でありますが、今そういう状況が目の前にあるとは私は思っておりません。朝鮮半島もいい方向に向がっている、もう後ろに戻ることはないという今日の朝鮮半島の状況であろうというふうにも思っている。わけてあります。  そうなりますと、今のような法案を通そうというのではなくて、そういう意味での、一歩頭を切りかえた現実の発想でもってやる。例えばドイツだって衛生隊とか通信隊とか、世界に先駆けてやっているのですから、日本が役割を果たすのは当たり前なんですね。そういう発想を持つのが今与野党を通じた政治の責任ではないだろうかと思うわけであります。  きょうの新聞を見ましたら、梶山自民党国対委員長が、五つのシナリオがある。何かというと、その中の五番目のシナリオは今の法案は両方とも廃案というふうなこと、四番目は援助隊だけ成立というふうなことをずっと並べてございますけれども、何か小手先の法案の扱いではないそういう発想が必要ではないだろうか。  これからさまざまそういう議論を与野党間でも国会でもやるべきだ、やられるであろうというふうに私は思いますが、これは大臣に対する注文になるわけでございますけれども、きょうの新聞にも梶山さん、そんなことも申しておりますが、大臣、いががですか、そういう発想を持って何か目の前、日本が現実に役割を果たし、与野党間も、国民が合意できる知恵をこの際新しく絞るということが必要であろうと思います。御検討いただけませんか。
  114. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 今の自衛隊を出すといたしましても、戦争に参加するわけじゃありませんので、今すぐ役立つわけですよ。新しく別の組織をつくって民間から募集してというようなことをやっても、半年、一年すぐかかってしまうわけですから、今の法案でもこれもう二年越しになっておるので、それで事は相談だということで、我々としても柔軟な対応をしようということですから、社会党の方も一歩譲って、ここで私はPKOの議論をするつもりはありませんが、問いてみると、個人個人では賛成している人はかなり多いですな、社会党の中も。ですから、必ず私はこれは話はまとまるんじゃないか、そう思って期待をしておるところでございます。目に見えることをすぐやりたいと思っておりますので、何分の御協力をお願いをいたします。
  115. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 渡辺さん、外務大臣になられて、前とは違った、次への意欲も含めて新しい現実に対応するさまざまの新しい発想を持って、しかも積極的に御発言なさるようにと期待したわけでありますが、それとは違うようでありまして、まあここでその議論を、今すぐ解決がつくわけじゃありませんから、しかし、私はそう思っております、  それから、何か我が党という話がございましたが、私も党の三役の一人として申しますが、我が党は、今も私が申し上げたような方向事態が処理されるべきであろうということは、党全体の気持ちとして、田邊委員長も含めまして私はそういうふうにまとめていくつもりでありますし、そういう議論はやはり国民の皆さんにも一番御理解いただける立場であろうというふうに思っておりますから、また真剣な議論はしてまいりたいと思います。  そういう渡辺さんの御発言を聞きますと、ちょっと一つどうしても伺っておかなければならないことがございます。先般与党自由民主党におきましては、いわゆる小沢調査会報告が出されました。内容を見ますと御案内のとおりでありまして、その方向で参りますと憲法解釈論、集団的自衛権の行使あるいは海外派兵が実質的に認められることになる、あるいはその結果、現行憲法の解釈は大きく変質するというようなことになってまいると思います。少なくとも現在の政府が国連軍への自衛隊の参加の問題について言ってきたこととは全く逆の立場ということになるわけであります。  宮澤総理は、党内に幅広い意見があって、その中での有力など申しましたでしょうかね、何か意見としてというふうな御答弁であったようでありますが、私は、外務大臣、やはりこれからの時代を考えますと、日本自身の軍縮とか、それからこれからの、冒頭にCSCAということを申し上げましたが、そういう意味での新しい発想と構想をどう組み立てるのかとか、そういう新しい時代における日本の生き方の大きな枠組みの議論がなければならないと思います。  去年の暮れもドイツのボンにおって、いろいろな議論をいらっしゃる議員の人たちとしてまいりましたが、やはりドイツの場合、僕は偉いなと思いますのは、そういう議論をしている、その上に立って、現実PKOあるいは基本法の対応などを議論しているという点を私は評価して帰ってまいったわけであります。私どもも共同の責任かもしれませんが、そういう議論が非常に少ないというのが今日の議会の状況ではないだろうか、大きなスケールの議論をやらなければならないというふうなことではないかと思います。  前にも本会議で一遍お伺いしたのですが、去年の夏ごろでしたが。ドイツのワイツゼッカー大統領がシュピーゲルにインタビューを書いたのを読んだのですが、それらを見ましても、我がドイツは日本と一緒に安保理事会の常任理事国になるという方向を目指すべきであろうか、そうではないと思う、湾岸戦争は終わったし、これは二度とあってはならないというさまざまの努力をみんながやらなければならない、同時にこれからの世界を考えると、地球環境あるいは南北貧困、さまざま人類的課題がある、ブルーヘルメットに対応するグリーンヘルメットというふうな大きな構図が今世界で求められている、そういうものの提唱者となり、あるいは創設担い手となる誇りある道を行こうではないか、これが我がドイツの新しい世界における生き方だと思うと書かれておりました。私は非常に感銘を受けました。  その是非は別にいたしまして、そういうスケールの議論をしながら考えていかなければならないというのが今日の時代であろうというふうに思うわけであります。外務大臣・副総理にそういう方向でやっていただきたいなと私は期待をしているわけでありますが、それとは違った意味での小沢調査会の報告というわけでありまして、これらを外務大臣としてどのようにごらんになっておりますか。
  116. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 質問の最初のところはわかるのですが、後のところはちょっと私理解ができないので、お答えがうまくいくかどうかわかりません。  小沢調査会が出した案というのは、党で三役とか役員会とか、そういうところで全部真剣に議論されておるということはまだ聞いておりません。一つ考え方だ。これは同じ社会党の中でもこの間朝日新聞に投稿された方がありまして、似たような発想でPKOを考えていらっしゃいますが、やはり達見だな、そう思ったのです。  しかしながら、現実の問題としては国連軍というものもつくられたこともありませんし、したがって、政府としてはそのことについて深く研究したことがないということも事実でございます。今のPKO法案というものは小沢調査会と同じ発想でできているわけじゃございませんから、だからいろいろ苦心をしていろいろな条件をたくさんくっつけて出されておる。小沢調査会の孝之方ならあんな難しい法律をつくらなくたって、もっとすらっと短い法律で私は恐らくできちゃうんじゃないか。しかしながら、そういう考えをとっておらないものですから、現在のPKO法案というものはいろいろな幾つもの条件をつけて、そしてこしらえてあるということであります。  後のところ、もう一遍ちょっとお願いします。
  117. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 後のところは渡辺さんとしての意見ですから。  ワイツゼッカー大統領がシュピーゲルにこういうことを書いている。いわゆるグリーンヘルメット構想とか、ドイツの社民党の中でもそれから大統領のレベルでも議会でもそんな議論をしているんですね。広い意味でのといいましょうか、これからの世界における我がドイツの生き方はどうかという大きな議論を前提にした上で今日ドイツのPKOあるいはPKF参加の問題などを議論されておるという点を評価しているし、またそういうことに我々もレベルを大きく広げた議論をしなければならないという気持ちを申し上げたことですから、念頭にとどめておいていただければいいと思います。  ただ、今小沢調査会の答申、草案ですかについての大臣のお気持ちを伺いました。今出されている、政府として責任を持って出されている、我々は反対ですが、PKO法案はそれとは違います。たしかそのとおりですねということを申されました。そういうことから援用しますと、現役の現外務大臣としてはやはり今ああいう発想を政府で取り入れるとかいう意味での積極論ではない。消極的、否定的といったら大げさですかね、というふうな対応という印象でとらえてよろしゅうございますか。  党内のこともおっしゃいましたが、私も一人の議員が書いたのを読みました。おたくと言ってはなんですが、自由民主党の皆さんの中でも、あの憲法調査会の会長などなど私ども幅広く仲よくお話をしたりさしていただいております。社会党はあれを見て頭にくるだろう、まあ社会党の手をかりるまでもなく党内で始末するなんと言う人もいますし、まあいろんな議論が自由濶達にあるという状況だと思いますが、そのとらえ方として外務大臣としてはああいう報告を今まさか、失礼かもしれませんが導入すべきであるとはお思いにならないと思いますが、積極的か消極的か否定的か、どういう感じで大臣はおとらえになっておられますか。
  118. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは自民党の中でもっと本格的な議論を私はしてもらいたい。多方面から多角的に検討をしてもらいたいと思っております。憲法論議というものがタブーであってはなりません。大いに議論をされたらいい。しかし、現在のところ我が宮澤政権としては、国連軍もできてないので、それを検討をするということは考えていない。したがって、現在の段階において我々は小沢調査会の考え方でその法案の処理をするという考えは持っておりません。
  119. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 次に移らしていただきます。ウルグアイ・ラウンドの問題であります。  外務大臣に特にこれをお伺いしますのは、正月以来、渡辺さんは三、四回ほど目立つ発言をされまして、その経過を見ますと総理大臣と何かこうキャッチボールみたいな格好でだんだん状況を、どう雰囲気をつくっていくのかというふうな流れのような気がいたしますので非常に注目をしてきたわけであります。そして私は官房長官なんかに申し入れて伺いますと、いやいろいろ大臣これはおっしゃっておりますが、閣内不統一というわけではなくて大枠では同じ方針を言っているというふうなわからない話でありまして、私どもはそのときにあなた方は二枚舌だと言って、一枚の舌は農水大臣か、もう一枚は外務大臣かもしれませんが、というようなことをやり合った覚えか実はございます。  渡辺さんは農業問題に非常に関係の深い方でありますから、私が言うまでもありませんが、今日の日本世界最大の輸入国である、それから生産制限が三割にもなっている、こんな国は世界じゅうにない。自給率もまことに低い。それらを含めて、国会決議もおる。そしてまた、これは当面やむなし論で、ガットの成功はもちろん大事です、ウルグアイ・ラウンドの成功はもちろん大事です、しかし、何かやむなし論のように農民に泣いてもらうというふうな形というのは、私はまずいと思います。そういう意味から考えますと、いまいちやはり主体性のある対応が必要ではないだろうか。  一つは、国民食糧の全体の構想がこれからどうなっていくのか、自給卒問題、安全性も含めてですね。それから二つ目には、ウルグアイ・ラウンドがあろうとなかろうと、非常に危機的な構造、後継者の問題も含めてそうですが、そういう正本の状態。それから、重大な影響を持つ緑、水田などの環境の問題。そして、そういうものを踏まえながら世界とどうつき合うのか。しかもそういうものが、七年後、十年後と申しましょうか、十年タームで一体どういうことになるんだということに対して政治は、あるいは政府もそうですが、責任を持たなければならないということだと思います。  そういう意味から申しますと、渡辺さんが正月以来何回か発言をされてきた経過というものは、従来政府がとってきた保護政策の変更と言わざるを得ないし、これは報道、解説、みんなそうなっておりますね。そしてまた、これから先の展望を考えますと、日本の農業だけではなくて、国民食糧全体を含めた将来に非常にこれは困難な状況をつくり出すということになってくるというふうに思います。  きのう、僕は新聞を見ましたら、宮城の選挙もあって外務大臣は貝になったというのが出ておりまして、選挙が終わりましたらまたぱっくり口があくという貝では困りますし、私も明日は宮城県の大きな演説会に参りますので、しかと承っておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  120. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私は、世界経済繁栄を持続させて、より発展させるために、ウルグアイ・ラウンドの成功はぜひとも必要であるというのが基本的な物の考え方でございます。  ただ、アメリカ等に言っていることは、百点満点を全部とろうとしてもそれは無理ですよ、百点とろうとすると、場合によってはウルグアイ・ラウンドはつぶれてしまう。ナッシングになっちやって、せっかくの二年間の苦労が水の泡。それで逆に保守化してブロック化したり、そういうようなことになるとだめになってしまうから、せっかく知的所有権とか金融、サービスとかという新しい分野も今度はこの中に、取り決めの中に入ってくるわけですから、非常にプラスの面も多い。だけれども、農業問題が実はどこの国でも厄介な問題でありまして、日本としては、米問題についてはその例外にしてくれという要求は今でもそれはやっておるんです。米ばかりでなくて、農産物、加工品も含めて例外にしてくれという要求をやっておるわけでございますが、全部その例外にしてしまうということができるかどうか、これは非常に問題がありまして、我々は米というものは何が何でも例外にしてもらいたいということで今後とも交渉を継続していくという考えであって、私が関税化を全部に容認したというようなことはありません。  ともかく、関税化というのはどういうことかということ、わかっておりませんから、だから、部分開放というのはこういうんですよ、関税化で一部開放というのはこういうんですよ、それで実際上は、しかしこれは多額の高額関税をするから実際は入ってきませんよとかというような解説をしたことは事実。したがって、新聞をよく読んでもらえばちゃんと、間違ったことは書いていないんです。ただ、最後のころに、関税化を示唆したものと思われるというようなことが書いてあって、見出しの方は別なことがついているわけですから、大体が示唆したものと思われると、推測記事なんですよね、これ。だから余り文句も言っていけない、見出しだけだったら文句言うんですがね。  そこで、我々の言っているのは、そんな示唆したものではありません、政府交渉で、私の命令で交渉しているわけですから、交渉者が、それは関税化は認めますなんて言っておりませんから、一言も。それで行き詰まっちゃっておるということも事実なんですが、さらに粘り強く交渉を進めるということであります。
  121. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 新聞のことをおっしゃいましたけれども、特に大きな新聞の見出しを見ましても、「コメ、関税化受諾を 外相示唆「部分自由化より得」」、それから「外相 農家所得保障を言明 「コメ開放」重ねて積極論」、「外相、関税化受諾を提唱  「高税率なら影響少ない」」、  こんな大きな見出しですからね。だから、みんなそう思っているわけですよ。渡辺さんはこう言っているんだと思っているんですね。まあ、余りはっきりしたお話じゃなかったのですが、それでもお言葉の中に、米の関税化、それから、ではない方向にということで今後とも努力をしていくというような趣旨のことがございました。どうですか。これは非常にデリケートな問題であると同時に難しい問題なので、私は、正月以来の外務大臣の発言に非常に神経をとがらしているのはこういうことだったんですよ。  去年の十二月十八日、私ども、宮澤総理に申し入れをいたしました。総理とのお話ですから記録をとってございますけれども、そのとき総理の方は、米に関税化という考え方はおかしい、アメリカもECもまとまっていないし、ウエーバー廃止も難しいようだ、国内法、食管法の改正は国会の事情からいってできない、ベーカー長官にもできないことは約束できないとはっきり言いましたというふうに、総理からお言葉をいただきました。そして、年を越しましたら、正月早々から渡辺美智雄発言がどかどか出てくるということになっているわけであります。今お話がございましたが、私もそれでは満足いたしませんけれども、またこういう見出しに続々出るようなことに発言が変わらないように、これは正式に委員会の場ですから、きちんと確認をさしていただきたいというふうに思います。  時間がございませんから、一点だけ簡単に聞きたいと思います。  財界その他からいろいろな議論がございまして、これは特に外務大臣立場が関係することですから御意見を伺いたいのですが、ガットで一番得をしてきた、一番恩恵を受けてきたのは日本である、したがって、日本の都合ばかりそう申し立てるわけにはいかないではないかというふうな言い方が、特に財界などから出されるわけであります。私は、政府、政治の立場から見たらどうそれを考えるのか、大事なことではないかと思います。  確かに日本は、国際経済化あるいは貿易自由化という路線を進んでまいりました。これは日本としては、大きな方向として当然のことであろうと思います。ただ、そういう中で振り返ってみますと、非常にそれで発展した産業分野、あるいはもうけた産業分野と言っていいかもしれません、それから、非常にしわ寄せになる産業分野というのが生まれる。ですから、国際化、自由化経済、あるいはボーダーレス経済、こういう流れの中で、やはりそういう国内摩擦が深刻に発生をする。その一つが農業であり、対極にあるものが例えば金融・証券とか、あるいは大きな輸出業者とか産業とかなのかもしれません。ですから、その得をした、成長した産業分野の論理を持って、しわ寄せを受ける、犠牲になる産業分野の論理を押しつけるというのは大間違いだと思います。少なくとも政治としては、また政府としては、そういう角度から将来を考えるというのが、公平と申しましょうか、ポリシーとしてあるべき方向ではないだろうかという気持ちがいたします。  このウルグアイ・ラウンドの問題になりますとよく出る理屈でございますから、その辺はきちんと踏まえて物事をやる責任が政府にはあるというふうに思いますが、そこはいかがお考えでございましょう。
  122. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 我々はまず国全体の利益というものを考えなげればなりません。日本経済発展したのは、それは自由貿易、自由経済を基盤として発展をしてきたわけです。もう釈迦に説法ですからくどいことは申しません。資源のない国が資源の大消費国になっておるのも貿易のおかげでございます。日本はこれからますますハイテク分野に進んだ方がいいというようなことが言われますから、いろいろな研究による発見、発明というようなものもかなり国際社会において前の方で、進んでいるのです。しかし、こういう特許権のようなものが認められない、勝手に利用されてしまうということは困るわけでありまして、やはりガットにみんな入ってもらって、そういうものは尊重されるということは大事なことであります。  またしかし、農家の問題も、経済がだめになって農家がよくなるということはないのですね。経済がよくなれば農家もよくなるというのが事実でございます。今農家の九割は兼業農家でございまして、七割は第二種兼業、はるかに農業所得よりも農外所得が多い。私の選挙区の中を見ておっても、農家の長男が、日曜日百姓をやるが、輸出の日産自動車に勤めておるとか、あるいは本田に行っているとか、ソニーに行っているとか、どこに行っているとかといって、たぐさんみんな長男、次男が家から通って勤めておるというのが実態ですから。したがって、そういうような、その輸出産業がだめになったがために、弟が首になって労働力がふえたから農家が助かる、こういうことには全くならぬわけですね、これは。  でございますので、景気をどうして持続していくかという一つの方法として、大きな柱として貿易自由化の推進というのがございますから、これはできるだけ多少譲り合って、守るところは守っても、譲れるところは譲ってまとめていきたいというのが基本方針であります。  最終的にはこれは内閣総理大臣が決めることでございますから、私は副総理でございまして、どういうふうにするかということは最終的にはいずれ結論を出さなければなりません。しかし、我々は最後最後まで米は例外だということで頑張っているというのが現状であります。
  123. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 上原さんとかわります。ありがとうございました。
  124. 麻生太郎

    麻生委員長 上原康助君。
  125. 上原康助

    ○上原委員 外務大臣、連日どうも御苦労さまです。短い時間でちょっと伊藤先生の関連で立たせていただいたのは、緊急にお尋ねをしたい案件がありまして、お願いをします。  そこで、関連ですから質問を関連づけますが、外務大臣にひとつ確認しておきたいことがあるのです。今国会のいま一つの重要案件であるPKO問題は、いずれまた頭をもたげてくると思うのですが、私は平和協力法案から昨年のPKO法案まで大変いろいろ苦労してまいりました。政治情勢も大分当時とは変わってきておりますし、本店でも特別委員会でも、私は前中山外務大臣にも申し上げたんだが、社会党抜きの国際貢献、この種の大きな法案を無理に通そうとしても無理ですよということを言った覚えがあるのですね。まだそうなったとは喜んではいませんが、結果的にそうなりつつある。  最近、今伊藤先生も指摘ありましたが、政府も、Fについては断念というかあきらめざるを得ない、今もありましたが、柔軟に法案の修正には対処していきたいというようなことを言っております。けさの一部のマスコミにもありますように、総理もFはあきらめたというようなことのようですが、外務大臣も、四、五日か前にそういう発言なさっておりますので、政府全体の考え方として、PKFは法案から削除をするということをお考えになっているのかどうかをひとつ確認しておきたいと思うのです。
  126. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 実は、これは国対委員長にお任せをしてあるのです。交渉事でございますから、どういうふうにするか、いずれにしてもPKO法案はぜひとも、ともかくカンボジアヘの協力の問題もございますので、今国会で上げてもらいたい。しかし、自民党の、政府の都合のいいことだけ言っても仕方がないことでありますので、それはやはり各党のできるだけ多くの御参加をいただけるというような形で、しかも現実的に間に合うというような形でひとつやってほしいということでございますから、どこのところをどうするということを私は申し上げるわけにまいりません。これはもう梶山委員長に任せるということで、任じてあるわけです。
  127. 上原康助

    ○上原委員 きょうはその程度にとどめたいわけですが、先ほどもありましたように、社会党が何か個々人でいろいろPKO法案全体に賛成かのような御発言があったのですが、これは大変遺憾なあれで、人を含めて国際貢献することには、社会党もそれは賛成しているのです。方法論ですからね。ですから、皆さんどういうふうな形をとるかしれませんが、これだけの経過と汚点がある以上は、ここは出直して、社会党の立場というものを、考え方も十分入れた与野党合意の国民合意形成をつくっていただくことが恐らく早道になるであろうということを強く指摘して、ぜひそういうふうに御英断を願いたいと思います。  そこで、きょうは在日米軍基地のPCB汚染の件についてお尋ねをさせていただきたいと思うのです。  これは必ずしも沖縄の嘉手納空軍基地であるとか海兵隊キャンプ・バトラーであるとかだけじゃなくして、横須賀、厚木、岩国あるいは佐世保等々、ほとんどの在日米軍基地がPCB汚染で大変な状態にある、問題になっている。米下院の調査報告、いわゆるレイ報告というもの、またいま一つは来会計検査院報告なども出ておるようで、これが明るみに出て、非常に関係者は憂慮している。  この実態について政府はどのように実情を掌握して、またどういう対策を今おとりになろうとしているのか、まず簡潔にそのあたりから御報告を願いたいと思います。     〔委員長退席、宮里委員長代理着席〕
  128. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  率直に申しまして、我々もこのレイ報告を手に入れましてからこの問題についての実態を掌握したわけでありますが、レイ報告自身もいろいろあいまいに書いてあるところもございますので、とりあえずこれまでのところやりましたのは、米軍に対して、環境庁その他の方と協力しながら質問をいたしました。その内容については後ほと簡単に申し上げますが、それと同時に、合同委員会の中に環境問題を取り扱う分科委員会がございますので、近々その場にこれをのせて、少し専門的に究明をしてまいりたいと思っております。  これまでの米側からの回答でございますが、ただいま先生御指摘のように、さまざまな基地に広がっておりますけれども、レイ報告が指摘しておりますのは、基地の数多うございますが、例えば嘉手納につきましては、PCBについて二つの問題が残っている。一つは、PCBを使っている変圧器、大方は撤去したようでございますが、まだ二つ残っている。これも今管理してありまして、いずれ搬出するということを言っております。それからもう一つは、PCB汚染を受けた土地が、土が少し残っているということでありまして、ここを今立入禁止にしてあって、これもいずれ撤去するということを言っております。  それから報告書の関連で、すべてがPCBでないのは御承知のとおりでございますが、PCBが触れられていた、指摘されているところの二つ、横田及び三沢、それぞれについては外国製PCB変圧器の日本からの撤去問題、そういう形で触れてあるわけでありますが、これにつきましては、米軍はいずれも既に変圧器はすべて撤去した、これらの二つの基地についてはPCBは存在しないということを言っております。  もう一つPCBについての言及がありました岩国でございますが、これについてはまだ回答を受けておりません。  現状のところはそういうところでございます。
  129. 上原康助

    ○上原委員 まだ実態を十分把握しておられないような感じを受けるわけですが、在日米軍基地全体について問題があるという指摘がされておりますね。私が言いましたように、海軍横須賀、佐世保、厚木、海軍航空基地、それぞれその危険度のものも指摘をしている。もちろんPCBだけでない。こういうことは、米国議会が調査をし指摘をする、あるいは平和団体がそういう資料を入手していろいろ取り上げていく、そうしない限り、日本政府外務省なり環境庁なりあるいは労働省がわからないというところに僕は問題があると思うのですね、在日米軍基地のこの実態ということについて。その点を指摘をしておきたいと思います。  そこで、このPCBの安全含有量というのか、基準値というのか、それは日本アメリカ、どういうふうになっていますか。
  130. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 私ちょっとその点は詳しく承知しておりませんが、アメリカ側からの対応をレイ報告から読み取る限りにおきましては、国防省の政策として、環境問題について米国の法律とそれから現地の法律があった場合には、その厳しい方を適用するということになっているようであります。  それからPCBについては、これまでの現在使用中の変圧器の問題は別として、基本的には撤去するということで運営をしていると了解しております。
  131. 上原康助

    ○上原委員 いや、その含有基準量、わからないの。労働省かだれか来ているでしょう。発言させなさい。
  132. 下田智久

    ○下田説明員 お答え申し上げます。  労働衛生上の許容濃度といたしましては、〇・一ミリグラムパー立米ということになっております。
  133. 上原康助

    ○上原委員 これは日本ですか、アメリカですか。
  134. 下田智久

    ○下田説明員 ただいまの基準は日本でございます。
  135. 上原康助

    ○上原委員 〇・一なの、〇・〇三じゃないですか。
  136. 下田智久

    ○下田説明員 〇・一でございます。
  137. 上原康助

    ○上原委員 私が聞いているのは、日本は〇・〇三ppm、アメリカが一ppmというふうに伺っておりますが、その点は精査をしてください。いいですね。  そこで、米国あるいは日本の基準量というか安全含有量は、北米局長のさきの御答弁からすると、より厳しいものを適用するように米国の国防政策、方針というか、なっている。それは当然日本側のものを使用するということになるわけですね。どのくらいこの含有量を上回れば、ちょっと上回っただけではまだ大したことないと言うかもしれませんが、しかし、安全度の問題は、これは基準があるわけですからね。そうしますと、今汚染の危険度があるというところについでは日本の基準を適用させていくという方向でこの対策は考えるというふうに理解していいですか。
  138. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  安全基準の相互比較、私、先ほど申し上げましたのは、レイ報告に載っておりました国防省の基本方針について申し上げたわけでございますが、どちらの基準が厳しいかという点については、専門的にいろいろな角度から比較してみなければならないと思いますので、この場で私が、専門でもございませんので、お答えは差し控えさせていただきたいと思うのです。  しかし、御質問最後の点で、日本の法律問題になった今後の取り扱いの問題でございますが、環境の問題は当然極めて重要なものでありますし、アメリカ側の法律の尊重義務というものもあるわけでありますから、今後の問題の解明の過程を通じて、環境分科委員会でこれはどうしたら一番いい方法がということを考えてまいりたいと思っております。
  139. 上原康助

    ○上原委員 短時間でやりとり、なかなか難しい面もあるんですが……。  そこで労働省、人体にどのくらいの含有量以上になると大変危険というか、注意、コーション、危険、そういうふうになっていくかもしれませんが、なるんですか。それをちょっと明らかにしてください。
  140. 下田智久

    ○下田説明員 お答えを申し上げます。  私どもが承知しておりますのは、八時間平均で〇・一ミリグラムパー立米の条件であれば特に問題がないというふうに考えております。
  141. 上原康助

    ○上原委員 それはあなた、含有量の基準値というから、だんだん蓄積されていくわけですね。あなたの答弁に私は納得するわけじゃないけれども、裏を返せば八時間以上、〇・一以上の含有量のところで仕事をずっとさせられるとそれは問題があるということでしょう、結果。  そこで、私がいろいろ聞いてみますと、実に、アメリカは一ppmということですが、何と、ある建物は調査の結果一三〇ppmというのもあるらしいのですよ、一〇、一一とか、四とか五とか。これが過去わからないままにそういうところで労働をさせられておったという実態が明るみになってきている。わけですね。したがって、在日米軍基地全体にそういう危険性のあるところについては、そこで働いている労働者の健康管理の問題あるいは基地外に及ぼしたかもしれない影響、その対策は急がねばならないと思うのですね。それを具体的にどうなさいますか。
  142. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 この問題についての対策を一刻も早くという点は御指摘のとおりだと思います。大臣からの御指示もありましたし、我々も早速一番近い合同委員会の機会にこの問題を取り上げて、環境分科委員会で検討するようにいたしたいと思っております。  先ほどまで申し上げましたのは、その前の段階でのとりあえず報告書を手にした後の我々の質問事項でございましたから、まだもう少し組織的に検討していかなければいけないと思っております。
  143. 上原康助

    ○上原委員 この間私が申し入れしたでしょう、佐藤さん、あなたに。あなた、あのときも合同委員会環境部会で取り上げると言った。あれからもう十日たっている。まだやってないなんて、そんないいかげんじゃいけませんよ。  そこで、もう時間ですから、大臣にもこれはぜひお聞きしておきたい。  今回のこのPCB汚染問題は、基地内外、周辺住民に大変不安と強い憤りを与えていますね。命にかかわる問題でもあるわけですよ、労働安全衛生上の問題を含めて。  そこで、一点はPCB汚染の真相を徹底的に究明し、いつからPCBが使用されてきたのか。それと、職場や施設名を明らかにすること。二点目、基地内立入調査を実施して、PCB汚染の疑いが出てきた職場や施設については、今もありましたが早急に安全対策を講ずること。三点目、PCB使用の関連業務に従事してきた日本人従業員の特別健康診断の早期実施を行うこと。四点目、米軍に対してPCBの全面使用禁止と全面撤去の勧告を行うこと。これは当然やってしかるべき点だと思うのです。  今私が指摘をしたことについてぜひ日米間で早急に話して実行するように要望したいわけですが、これまでのやりとりを聞いての大臣の決意をお答えいただきたい。
  144. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 まず調査をさせるということ、これはやらせます。それからその合同委員会でどうするかという検査の問題は検討いたします。それから日本で捨てる場所がないようなもの、それは米軍は今でもアメリカに運んでおりますし、今後もアメリカのしかるべき安全なところに持っていって捨てる、土とか何かですね。そういうこともやっていただく。  あとは防衛施設庁から答弁させます。
  145. 荻野貴一

    ○荻野政府委員 在日米軍従業員の健康診断の問題でございますけれども、これは実態調査をした結果、従業員がどのような作業にタッチしているかということと、そのタッチの度合いに応じまして適切に対処したいと思います。
  146. 上原康助

    ○上原委員 これで時間ですから終わらざるを得ませんが、もう一つは、労働省あるいは環境庁も関連しますが、時間がなかったのできょう呼びませんでしたが、当然日本の法律適用という面上、基地の実態調査、立ち入りをやらなければいかないわけですよね。これは施設庁、労働省、外務省でおやりになりますね。大臣、答えてください。
  147. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 先ほど申し上げましたように、この問題については分科委員会アメリカともただすべきことはただしまして、その結果を見て必要な措置をとりたいと思っております。
  148. 上原康助

    ○上原委員 きょうも合同委員会があるのでしょう。そこで取り上げているの、いないの。
  149. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 明日が合同委員会でございます。それで、実は先ほど先生御指摘の、この前先生からお申し入れをいただいてからその後初めての合同委員会が明日でございますので、この間お約束したとおり取り上げたいと思っております。
  150. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  151. 宮里松正

    ○宮里委員長代理 遠藤乙彦君。
  152. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 まず、外交基本方針に関連してお伺いをしたいと思います。  冷戦後の世界にあって日本の重要性は格段に高まっておりますし、特に湾岸戦争以降、またソ連崩壊以降、新しい世界の秩序づくりに日本がどうかかわるか、大変大きな課題を背負っているわけでございます。大臣基本的な所信は既に所信表明を通じて理解をしておりますので、特にその中の一点に絞って、外交スタンスについてお聞きしたいと思います。  それは、今後の日米関係のグローバルパートナーシップ、これをどうつくるか、これは最も重要な課題ではないかと私は感じておるわけでございますが、このグローバルパートナーシップが何を意味するか。これは、例えば東京宣言等を読んでみますと、いろいろ世界的な視野に立って日米間で協力をしていく。その課題は非常によく整理されており、幅広い問題に触れておりまして、よくできた文書だと、その限りでは感じておりますが。  ただ、私はまだよくわからないのは、この協力の対象というよりも協力のあり方、態様というものが、いま一つわからない。すなわち、これから世界的視野に立った協力をするとしても、日本がただコストをよつ多く分担していく、ツケだけをより大きく払っていくという協力なのか、あるいはさらに踏み込んで意思決定過程にも日本が積極的に参加をしていく、特に日本だけの独自の意見というよりもアジアの国々あるいは発展途上国の国々の意見も踏まえて日本として意思決定過程に十分に参加をしていく、そういったものを含んでいるかどうか。  こういった点につきましての大臣自身の御見解、そしてこの点についての日米間の了解、そういった点につきましてお聞きしたいと思います。
  153. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 グローバルパートナーシップということは、お互いに立場を尊重しながら、それで手を組んでやれるところは一緒にやっていこうということでありますから、一方的に向こうが決めて押しつけられても、それはグローバルパートナーシップにならぬ。やはりお互いに立場があるわけですから、そういうことは認め合った上で、できるだけ共通のことを多く発見し、譲り合うものは譲り合ってそれでやっていこう、その精神で私はやっていきたいし、アメリカにも言っているのですよ、そういうことは。
  154. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ぜひそういう方向で進めていただければと思っております。特にそういったグローバルパートナーシップといっても、日本自身にビジョン提示能力といいますか、あるいはコミュニケーション能力を相当強固に持たないと、どうしても疎外されがちだというのが今までの日本でございますので、そういった見識、決意、気迫というものをぜひ強く持って、これからグローバルパートナーシップの構築に進んでいただきたいと期待を表明しておきたいと思っております。  続いて、CISの問題を中心にお聞きしたいのです。  ソ連邦崩壊をし、CISに移行した。大変想像もつかないような急激な大規模な変化が起こったわけで、政策当局としても今後の政策立案、対応、大変複雑な要素があって難しい面があるのではないかと同情もしておるわけでございますけれども、いろいろな点で整理をして、このCIS政策というものを考えていく必要があると思います。  いろいろな点で少しお聞きしたいのですが、まずこのCISそのものの見直し、まだ大変脆弱な基盤でございます。内部の民族紛争もあれば、ロシアウクライナの通常戦力の編成をめぐる争いとかさまざまな脆弱な点を抱えておりますし、そもそもCIS自体が定着をし、安定していくのかどうか、この点につきまして見解をお伺いしたいと思います。
  155. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 先ほど、核不拡散の問題でCISの中の国の対応についてのいろいろの御指摘がございましたが、何せ新たに国家が独立したと言いながら、現実はそんなに半年やそこらで国家体制がきちんと取り決められるものではありません。今は過渡期でございますから、不透明な部分とか、また未整備のところがたくさんあるということは事実でございます。しかし、それが共同体をなしていくと。そうでなければそれぞれの独立国家として経済的その他において非常に困る場面も出てくることも明らかだと思うのです。  したがって、共同体に参加しょうということになっておるわけですが、果たしてルーブルが全部安定した形で共通通貨になり得るのかという問題もありますし、また軍が本当に統一的な統一軍というものができるのか、また民族問題というものがいろいろあって、そこに宗教問題も場合によっては絡むというようなことなど、不安定な要素がございます。そして、特に市場経済というものがそんな早急に本当に定着するのか、ここらももう少し状況を見なければわからないというのが実情だと思います。思いますが、そういうことが頭に入った上で我々は旧ソ連邦とは対応していかなければならない、そのように考えております。
  156. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、ちょっと頭の整理のために伺いたいのですが、旧ソ連邦の持っていた条約関係、二国間、多数国間含めての継承の問題ということでございます。  午前中の質疑で、ロシア連邦が旧ソ連邦条約を全体的に引き継ぐということは明解になったわけなんですけれども、それ以外の部分、例えばバルト三国あるいはロシア以外のCIS構成国との関係において、旧ソ連邦の有していた二国間、多数国間の条約関係、あるいは日本との関係、それがどのように引き継がれていくのか、あるいは解消されていくのか、この点につきまして御説明をお願いしたいと思います。
  157. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ロシア連邦との関係につきましてはけさほど御答弁申し上げましたとおりでございます。  そこで、独立国家共同体に参加しておりますほかの諸国、ロシア連邦以外の諸国につきましては、我が国は昨年の十二月二十八日に国家承認をする手続きをとったわけでございますが、これを受けまして、具体的にこれらの国々との条約関係がどうなっているかということを目下具体的に検討をしているところでございます。  基本的な考え方といたしましては、我が国といたしましては、我が国ソ連邦との間で締結いたしました条約その他の国際約束に基づく権利義務関係が、昨年ソ連邦の内部で起こりました事態によりまして実質的に変更を受けるということになりますと法的安定性の観点から不都合があるというふうに考えておりまして、これまでこれらの各国に対しまして、ソ連邦が締結した条約その他の国際約束に基づく義務の遵守を求めてきておる次第でございます。これに対しまして、各国とも原則として異存がないというふうに回答をしております。  また、これらの各国は、独立国家共同体の設立に際しまして発出いたしましたアルマアタ宣言におきまして、共同体の加盟国は自国の憲法上の手続に従い、旧ソ連邦の締結した条約、協定に起因する国際的義務の履行を保障するということも明らかにしておりますので、これらの各国と我が国との間での認識に大きな相違はないというふうに考えております。  なお、具体的にそれぞれ各個別の条約について今後どのように適用していくかという点につきましては、必ずしもこれらの諸国の外交実施体制というものがまだ整っておりませんので、これからそのような体制が整い次第順次話し合いをしていきたいと思っております。  なお、多数国間条約につきましては、基本的にこれらの締約国の間で決定すべき問題だと思いますが、基本的には二国間条約についてただいま申し上げましたのと同じような考え方をしている次第でございます。
  158. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、北方領土問題の位置づけなんですけれども、従来、日ソ間、日本ソ連邦との間の問題だったわけですが、今ではロシア連邦との間の問題になっているというふうに理解をしております。ロシア連邦政府が窓口といいますか、ほぼ専一の窓口として交渉しておるわけでございますけれども、そこでこの北方領土問題は専らロシア連邦日本との問題になっているのかどうか、そのように理解していいのかどうか。
  159. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 平和条約締結交渉は、従来、御高承のごとくソ連邦政府と日本国政府との間で行われてきた。その交渉はそのままロシア連邦政府日本国政府との間で行うということにつきまして、先般渡辺外務大臣モスクワを訪問いたしましたときに、コズイレフ外務大臣との間でそこを確認をいたし、それに基づきまして第一回目の日ロ平和条約作業グループが、それもそのときの合意があったわけでございますが、二月十日、十一日に開催されたということでございます。
  160. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、この北方領土問題は専ら日ロ間の問題というふうに理解をいたします。  そこで、続いて、政経不可分原則の問題なんですけれども、従来、政経不可分原則のよって立つところが、北方領土問題があるがゆえに無原則な妥協はしないということで、政経不可分ということでこの原則を適用してきたわけでございますけれども、今北方領土。問題が専ら日ロ間の問題になったということは、そのいわば論理的な延長として、ロシア以外のCIS構成国、あるいはバルト三国も含めてそっちには適用されないというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。
  161. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 この北方領土問題の交渉相手はロシア連邦政府ということは申し上げたとおりでございます。  全く関係があるのかないのか、これはまさに先ほど御質問もあったわけでございますが、独立国家共同体という組織が今後どういうふうに機能していくのか、その中で一応外交政策についてもいろいろ、独立国家共同体の組織の中に設けられることとなりました、外相理事会と呼んでおりますが、というものがあって、ここでも外交政策の調整その他が図られるということが一応合意されているわけでございます。ここでそういう問題が議論されるのかされないのか、この辺はまだ全く未知数でございます。したがいまして、共同体のほかの加盟国が全くそういう問題に関係がなくなったのかという点は、まだ不透明な部分が若干ございます。  しかし、いずれにいたしましても、直接の交渉相手はロシア連邦政府ということでございます。したがって、それとの関連で、日本政府が堅持してまいりました基本政策というものは、当然のことながら主としてロシア連邦政府というものとの関係でこれからも考えられていくであろうというふうに考えます。
  162. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 そこで、今CIS外相理事会で北方領土問題がどうなるかということで、まだ不透明だという御説明があったのですが、例えばCISとして、北方領土問題は専らロシア共和国の問題であるということが明確になった場合には、ロシア共和国以外のCIS構成国には政経不可分原則は理論的にも適用されないということになると思うのですが、そのように理解をしてよろしいのでしょうか。
  163. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 その点がまだ不明確でございますが、各独立共和国が完全にこの問題についてはノータッチということが確認された時点で、日本政府基本政策をもう一回確認をするという作業が必要かと思います。今ここで断定的に、不透明な事態を踏まえまして、関係がなくなったとか切れたとかいうことをまだ申し上げる段階ではないかと思います。
  164. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私も大変この点非常に理論的に興味を持っているものですからお聞きしているのですが、恐らくロシア共和国が専らこの北方領土問題を担当していくと思われますので、今後の事態として、例えばウクライナ共和国なんかにはむしろ全面的な金融支援があり得る、理論的にはそういうこともあり得ると思うわけでして、ちょっとその点関心を持ってフォローしていきたいと思っておるわけでございます。  続いて、核の問題、大量破壊兵器ですね。そういった問題の廃棄、不拡散についてお聞きしたいのですが、今時にアメリカ、ドイツを中心にしまして、CIS核兵器と大量破壊兵器の廃棄、不拡散に関していろいろな努力が進行しておりますけれども、我が国の場合、対日政策との関連もあり、難しい立場もあるとは理解をしておるわけですが、特に全面的な金融支援は難しいという点があるかと思いますけれども、他方、こういった核兵器の廃棄あるいは大量破壊兵器の廃棄等の問題は、国際的な安全保障に大いに貢献する話である、きばを抜いていく話なものですから、そういった角度から逆に日本として積極的に貢献すべきであるという意見もあるのだと思うのですけれども、この点につきましてはどうお孝之でしょうか。
  165. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 核兵器廃絶という大目標については何人も異議はないわけでございますが、ソ連が具体的に持っております核兵器をめぐる協力問題につきましては、幾つかの分野があるだろうと思うわけでございます。  例えば核兵器そのもの、核弾頭が特に中核になると思いますけれども、これを廃棄していくという分野、恐らく日本は全くこの面についてのノウハウはない、これはどうするのかというような問題。さらに核兵器を実際に製造している、産軍複合体と言われるわけでございますけれども、こういう分野の問題。これはある意味では民需転換ということと密接に関連するだろうと思うわけでございますが、そういう分野。さらにその背後と申しますか、基礎研究も含めましたいろいろな研究開発の分野というのがあるだろうと思われるわけでございますが、こういう分野。これと密接に関係するわけでございますけれども、こういう人たちが外国に仮に出ていくということになると、頭脳流出とともに、そういう基礎技術、知識が流れていくという問題、いろいろあるわけでございます。  今さしあたり具体的な話が出てきておりますのは一番最後の分野の問題で、先ほど外務大臣からも答弁申し上げました、何か一つロシア連邦の中に研究に関しますセンターをつくって、そこで流出しそうな科学者、技術者を働かせるという構想が具体的に今議論をされ始めているということでございまして、日本側も今この構想について内部で検討を進めているという段階でございます。
  166. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私ども、国際の安全保障に貢献する問題であれば、ぜひ我が国も積極的に貢献すべきであるという意見でございますので、この点は一つ申し上げておきたいと思っております。  それから今の問題に関連をしまして、核兵器の廃棄あるいは大量破壊兵器の廃棄に関連しまして、報道によりますと大臣は、専門家で集まってまず議論してはどうかといったようなお考えを述べたようでございますが、恐らくこういった問題について、我が国としてできる問題とできない問題があるのだと思います。  例えば、兵器そのものの廃棄についてはいろいろ問題があってできないだろうと思いますけれども、他方、核兵器を廃棄して出てきた核物質をどう管理するか、あるいは化学兵器を廃棄して出てきた化学物質をどう管理するか、こういった分野はむしろ我が国としてもできる分野ではないかと思いますので、こういった技術的にできる分野、できない分野を明確にした上で、貢献できる分野を明確にして、我が国としても国際的な協力をもっと呼びかけていいのではないかと思うわけでございますけれども、この点につきましていかがでございましょうか。
  167. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 渡辺外務大臣が専門家同士の検討ということを申しましたのは、ゲンシャー外務大臣が参りましたときの会談の中での議論の中で、いわゆるゲンシャー三提案というものの御説明がありまして、それに対して外務大臣の方から、いろいろな考え方があるだろう、その三つの考え方一つ考え方、IAEAというエキスパート、専門家がそろっているそういう機関あるいは知識を利用するのも一つの手だろう、あるいは専門家が集まって議論するということも一つ考え方であろうという形で御発言があったものであろうと思います。そこが先生御指摘お話だろうというふうに考えます。  さらに最後の点、つまり弾頭を破壊して残ったプルトニウム等の利用のお話だろうかと思いますけれども、これもまた各国ともに、各国と申しますのはアメリカ、ヨーロッパも含めまして各国ともに、この点についてはまだ検討の緒についたという段階だろうと私は思います。  いずれにいたしましても、その点も含めまして、今先生おっしゃったようなことも念頭に置きつつ、政府内部でさらにいろいろな角度から検討を進めていくべき問題だと認識しております。
  168. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私は、こういった分野につきましては、安全保障に非常に貢献する問題であって、ぜひ日本としても積極的に推進すべきという立場でございまして、この点につきまして再度大臣から一言御見解をお聞きしたいと思います。
  169. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 核廃絶というのは最終の目標、終局の目標ですから、そう簡単にできるものではないし、かなりの長年月がかかると思わなければなりません。  我が国は原子爆弾も持っておりませんし、製造の仕方もわかりません。したがって、解体の仕方もそんなに技術があるとは思えません。しかしながら、何らかの形でできる協力をしていきたいということで、さしずめそういうような学者の研究会とかその流出防止の方法とかいうふうなことについては協力していきたいと考えています。
  170. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて北方領土問題についてお聞きしたいのですが、ソ連邦が消滅をしてCISになった、特にロシア共和国がこの問題の直接の対象になったということで、北方領土問題がやりやすくなった点と逆に難しくなった点と両方あると思います。特に北方領土地域の住民の意向を無視し得なくなったということが、ある意味で極めて難しい要素が入ってきたと思うわけで、そういった意味で北方領土問題の交渉がある意味で非常に難しくなった局面があると思っております。特に今後は、北方領土地域の住民あるいはその周辺地域ロシア住民の世論対策をどう考えながら進めるかということがポイントかと思うわけでございますけれども、私はこの点、二つのポイントがあり得ると思います。  一つは、北方領土に住む現ロシア住民の地位、処遇を含めた政策をどう日本が打ち出すか。特に彼らにとって日本に返還されたとしても安心でき、かつ展望が持てる、むしろ日本に返った方が有利であるというような状況をどうつくるかという一つの提案です。これは私、実は昨年十月二日の外務委員会で申し上げて、そのラインで今検討をされていると聞いていますので、ぜひその後の検討状況をお伺いしたいと思っております。  それからもう一つ地域交流です。特に我が国日本海側はロシアとの交流に大変関心を持っておりますし、またロシアも、沿海州あるいはサハリン等日本との交流に大変関心を持っておって、こういった住民レベルの経済交流、人的交流、文化交流等を大規模に進めることがやはり対日イメージを改善し、また北方領土返還について一つの大きな世論の状況をつくり出すのではないかと思っておりまして、ぜひこの点も力を入れて進めるべきではないかと思っております。  したがって、まず第一に、北方領土、ロシア側住民の居住権等を含めた問題に対してどのような検討状況であるか、これにつきましてお伺いをしたいと思います。
  171. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 具体的な検討状況については担当局長からお答えをいたしますが、ロシアがあのような形になって北方四島問題は難しくなったのかやさしくなったのか、これはなかなか難しい答えだと私は思います。ゴルバチョフ政権からエリツィン政権にかわった。ゴルバチョフさんは、共同宣言は既にそのチャンスを失った、こう言っているわけですから、領土問題が未解決であることは認めるが、共同宣言確認しなかったというのが事実ですね。  ところが、執行部がエリツィンさんにかわったことによって、法と正義に基づいて解決しようじゃないかということを言っているし、国内の問題では、法と正義の立場から、いろんな古文書などをマスコミが流している。マスコミが発見したのかどうかそれはわかりませんが、やはり正しい情報を民衆に伝えるというようなことがあり、また、ソ連の軍の機関紙赤い星ですか、赤い星なんかも、今までの修好条約以来の日露、日ソ、長い歴史を見れば、北方四島が日本のものでないということを反論する根拠は証拠がないとか、そういうようなことを認めてきていることは、私は前進だと思うんですね。  しかし、その一方で、民主主義というようなことになって、地域住民とか国民の声を聞くとかということを強く言っておりますから、世論が反対すると、事実関係や何かわかっておっても、それは世論が賛成してくれませんとか、国民がだめで中とかという逃げ道、逃げ道と言っては語弊があるかどうか知らぬが、そういうことが言われがちなんですよ。  よくロシアの人は世論、世論ということを最近うるさく言っておるわけです。そうすると、強力なトップだったら、トップで決まれば、下はもうそのままどんといっちゃうわけですが、例えば北方四島の交流問題でも、上の方は決まったんだけれども、下の方へ行ってみると、そんなことはわしもの知ったことじゃない、知らなかった、それで協力しなかったというような現実があるわけですからね、現に。  だから、そういう点は、場合によっては多少手続が厄介になったのかなというように考えないわけではありません。しかし、これも民衆との交流を深めたり、近づいていろいろ援助をする、それから、将来に不安がないとか、サハリン関係も、自分たちの魚をとる権利が失われないとかどうとかこうとか、いろんな個々具体的な交渉事になってきて、安心だということになれはまた変わってくるんじゃないか、そのように思っております。  その後の検討状況は、局長から答弁させます。
  172. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 北方四島に現在現実に居住をしておりますロシア連邦の国民に対して温かい思いやり、配慮が必要だという御指摘、それは私どもも全く同じ認識を持っております。また、そういうことを一般的な形で先方に申しているということもあることは御承知のとおりでございます。  しかしながら、この問題は、ロシア連邦政府がこの問題について明確な決断をした後の具体的な交渉の内容にわたる問題でもございますし、また、先生御指摘のとおり、日本政府が何を今検討しているかというようなことがどういう形でロシア連邦の中に伝わっていくか、特に、直接関係のございます住民に伝わっていくかということは、大変にデリケートな面も含んでいる問題でございます。  そういうことでございますので、私ども静かに内々勉強をし、検討をしているという状態でございます。これを公表をするということは、そういうことで差し控えさせていただきたいという事情を御理解いただきたいと思うわけでございます。  それから、世論が大事だという点はまことにそのとおりでございまして、特にロシア連邦の国民のできるだけ多くの方に北方領土問題というものについて正しい認識、知識を持っていただくということが大変大事だろうと思います。その点で、まさに御指摘のとおり、直接隣接地域でございます極東地域との交流は大変大事である、中でも四島の現実の住民との交流は大事であるという認識は、全く私どもも同一でございます。その認識に基づきまして、四島の無査証交流の話を早期実現に向けて鋭意話しているわけでございますし、また、極東との交流ということもいろいろな形で地道ながら進めようとしておる、また、緊急人道援助につきましてもそういう観点から極東中心に行いたいということて、この面での交流もかなり今往来が活発になってきているというのが現状でございます。
  173. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 時間が切れましたので、最後に一点だけお願いをしたいのです。  この極東地域との交流促進ということに関連をしまして、極東地域の総領事館設置問題ということについてお聞きしたいのです。現在、ナホトカにだけ総領事館があるわけですけれども、将来のことを考えたら、ウラジオストクとかあるいはハバロフスク、イルクーツク、あるいはサハリン州、こういったところにも、一挙には無理としても徐々に、優先順位を付して徐々にこれを充実さしていくことが当然の布石だと思うわけですが、この点につきましてどういう見解をお持ちでしょうか。一言最後にお聞きします。
  174. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 御指摘のとおり、極東地域との交流の重要性については、私どもつとに十分認識しているところでございます。ウラジオストクも本年一月から開放都市になったということでございますので、この点も含めまして、今おっしゃったような認識で、私どももこの隣接地域の総領事館の新設問題という点につきましては前向きに検討を進めてまいりたいと思っております。
  175. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 以上で終わります。
  176. 宮里松正

    ○宮里委員長代理 玉城栄一君。
  177. 玉城栄一

    ○玉城委員 渡辺外務大臣は副総理も兼ねていらっしゃるし、次期総理という呼び声も高いわけであります。それだけに非常に期待も大きいわけでありますので、いわゆる大物外務大臣でいらっしゃるわけですから、その期待にぜひこたえられるように御答弁いただきたい。  さっき沖特委員会でも所信表明されておられましたけれども、ことしは御存じのとおり、いわゆる沖縄県が本土復帰して二十周年という大きな節目になる、そういうことで地域住民の要望、諸問題解決のために全力を挙げて頑張りたいというような趣旨の所信表明も先ほどあったわけであります。  二十年前、昭和四十七年と現在とでは、大分情勢は変わっております。一つ端的な例を申し上げますと、アメリカ経済力が非常に低下をしている、当時は基地経済というものは沖縄においては経済一つの住みたいなものだったわけでありますが、現在では基地経済なんというものはもう全く成り立たない。そういうことで、これ世一つの例でありますけれども、情勢が大きく変化をしておる。したがいまして、御存じのとおり現在でも沖縄県は、県民所得においてもいわゆる四十七都道府県で最下位。御存じのとおり米軍基地は、在日米軍基地の七五%が相変わらず集中的に存在している。それから出てくるさまざまの問題も御存じのとおりであります。  そこで、沖縄県が復帰して二十周年、やはり何とかしなくてはならぬ、特に外務省はお考えになられていると思います。そういう意味で私はちょっと大物の外務大臣ということを申し上げたわけでありますが、ひとつ沖縄県民に本当にこたえられるような何かお考えがありましたら、ぜひこの際お聞かせいただきたいのであります。よろしくお願いします。
  178. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 この第二次世界大戦で、日本の中で実際に戦場になってしまったところは沖縄だけなんです。空爆その他、それはやられたところはございますが、本当のいわゆる戦場になったのは沖縄。そのために、人的、物的被害も国内では一番多かった、これも事実でございます。しかも、アメリカは数万の兵隊を殺して占領した領土であったことも事実。そういうようなものが、世界の歴史の中で平和裏に外交交渉で返還されるというようなことも、数は珍しいケースであります。しかし、占領下、いろいろな御不便等もあり、内地だけの発展をしなくて取り残されてきたというのも現実。  したがって、それらの点をいろいろ考えまして、沖縄に対しては、追いつき、追い越せという心を込めまして、特別立法もし、いろいろな補助のかさ上げその地やってまいりました。もちろんまだ内地並みにならないという地政学上の問題点もございます。しかしながら、私は何年に一回かずつ沖縄に行ってみて、非常に目に見えてよくなったなと思うのは、毎日いる人はわからないかもしれませんが、我々行ってみると非常によくなってきたと実は喜んでおるわけであります。  そういうような点で、今後とも沖縄の発展のためには引き続き重点的にひとつ助成をしていきたい、そう考えておる次第であります。  二十周年の記念でございますから、それらの過去の反省も含めて、また御慰労の気持ちも込めて、式典その他の事業を幅広くやってまいりたいと考えております。
  179. 玉城栄一

    ○玉城委員 今大臣のおっしゃられたとおりだと思うわけでありますが、二十年たちまして、これから二十一世紀というと、あともう目の前ですから、それに向けて沖縄が自立する態勢をつくらない限り、幾ら金も投入した、何もつくった、よくはなっているとおっしゃっても、やはり結局は地元の県民は納得しないわけですね。沖縄が本当に自分の力で立ち上がっていけるような、二十一世紀に向けて、そういうことができるような、いわゆる態勢というものをぜひしていただきたいわけで、それには一つは港ですね。  港というと、どの地方自治体においても、出入り口の港が押さえられているということは、幾らよくなったと言っても、自立ということに対しては非常にこれは問題なのですね。その面で、那覇軍港というものはやはりどうしても返してもらいたいというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
  180. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 那覇の軍港は今も使われておるところでございますが、できるだけ整理をすべきものは整理をして、部分返還でも共同利用でもやれるものはやってもらうように、実は話はして、ずっと続けておるのであります。
  181. 玉城栄一

    ○玉城委員 五月の十五日が二十周年になりますので、ぜひひとつそれを一つの目安といいますか、お願いしたいわけです。  といいますのは、今具体的にこの問題について申し上げますならば、沖縄の知事が昨年の夏ですか、アメリカに行きまして、当時の幹部に訴えました。そういうことは日本政府話し合いをしなさい。日本政府も、いわゆる外務省日本政府の方は、地元がどういう意思が、それがまだはっきりしないということで、この問題も一つのたらい回しというような格好になっているわけですから、港とか、こういう大きな問題はやはり政府が主導して、日本政府の主導でもってやっていかない限り、これはこの那覇の港については、昭和四十九年、第十五回ですね、それから昭和五十一年の第十六回ですか、もう十八年にもなるわけですね。移設を条件とするという。沖縄で、御存じのように港を移設して受け入れますというところはどこの地域でもないわけですから、これはやはり政府が決断して、積極的に米側と話し合いをして、そして沖縄の自立のためにこれはどうしても必要なのだという立場でやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  182. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私も機会あるごとにアメリカの担当者に言っているのです。例えば、国防長官が来たとき、パウエル参謀総長が来たとき、それからこの間は太平洋司令官、それから駐日司令官と私は会食したのですが、そのときなど、機会あるごとに、またベーカー国務長官等に対しましても、沖縄の住民の理解協力がなければ基地運営はうまくいかないのですから、これは十分気をつけてやっていただきたい、訓練その他の問題も含めまして、それから、要らない基地はないのでしょうが、しかし不要ではないにしても、なくても済むというようなところをできるだけ見つけてそれで返還をしていただきたいということも言っておるわけであります。今後とも引き続きそういうことは事あるごとに要求していきたいと考えております。
  183. 玉城栄一

    ○玉城委員 この基地問題は、大臣もよく御存じのとおりであります、沖縄の実態については。ぜひともひとつ前進をさせていただきたい、このように強く御要望を申し上げておきます。  これは基地とは直接関係はありませんが、御存じのとおり沖縄には鉄軌道がございませんね。ですから、そういう意味で、モノレールという話が盛んに現地では出ておりまして、このモノレールの建設はぜひやるべきである、そういう要望が強いわけでありますが、いかがでしょうか。
  184. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 どういうものが用なのか、私よくわかりませんが、開発庁等とよく相談をしていただきたい。  沖縄は、立地条件を得まして、最近のレジャーの開発なんかかなり進んで、たくさんの人が沖縄に行っている。そしてパイナップルなんか、自由化したら全部だめになるんじゃないかという心配をしておったところ、現地で聞いてみたら、かえってよくなった。それはなぜかというと、缶詰工場に出さなくても、お客さんが来るので、生のままそっくり送れるから、工場に売るより高く売れて非常にいいという話を聞いて、私は本当に喜んだんです、実際は。  だから、あの地域の立地条件に合ったことを考えていかなければならぬ、それはひとつ地元てよく相談をして御要求いただけば、できるだけ我々としても御協力をしたいと考えております。
  185. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間もありませんので、次はPCBです。  PCBの問題が出ておりますが、これは、従来米軍基地内の環境の問題については、外部からは余り介入といいますか、できなかったんですね。これはPCBだけではありません。沖縄の場合であれば、赤土の問題とかいろいろな自然環境の問題。沖縄は相当広大な基地で押さえられているために、その基地内が、環境がどんどん破壊されますと、沖縄全体の環境にものすごい影響を及ぼすことも当然であります。そういう意味で、最近このPCBという問題が出て、衝撃も受けているわけであります。あした合同委員会があるようですが、先ほどの御答弁の中に、環境分科委員会ですか、当然そこでも話があるということを伺ったわけであります。  その前に、防衛施設庁は来ていらっしゃいますか。防衛施設庁は、日本人従業員の雇用主という責任があるわけですね。その雇用主の方々が、基地内でそういう危険物あるいは公害物質を扱う場合の基準というものはどのようにやっていらっしゃいますか。ちょっとお伺いいたします。
  186. 荻野貴一

    ○荻野政府委員 防衛施設内の在日米軍従業員が危険物質を扱う場合にどうするかというお話でございますけれども、安全管理につきましては、日本国の法令と米国の法令と、その両方見まして、きつい方で一応規則をつくって管理しているというふうに承知しているわけでございます。
  187. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、例えばPCBというものを扱う日本人従業員に対しては、これは、PCBというものは日本の国内法では危険物、いわゆる公害物質とされているわけですね。法律的にもそうでしょう。だから、そういうものを扱う場合はどういうふうにやりなさいという一定の基準を米側に示してさせているのかどうか、その辺をお伺いしたいわけです。
  188. 荻野貴一

    ○荻野政府委員 PCBにつきましては、特定化学物質等障害予防規則というのが、これは労働省令であるわけでございますけれども、こういうものも踏まえながら米軍の方で安全規則をつくって実施しているというふうに承知しております。
  189. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういうことになりますと、今回の沖縄——沖縄に限りはしないわけですが、日本人従業員についてはPCBによる影響はないという報告か何か受けていらっしゃるということですか、雇用主として。
  190. 荻野貴一

    ○荻野政府委員 現在まで、調べましたところ、この間の在日米空軍か何かの発表がございましたけれども、その発表で従業員にかかわることといたしましては、一つは汚染土の搬出というのと、それからPCB変圧器の維持修理の問題とあると思うのです。  まず第一点目の汚染土の搬出でございますけれども、これは米軍人がやって従業員は全くタッチしていないということでございます。したがいまして、これは従業員の作業の安全管理ということには全く関係ないわけでございます。  それからPCBの変圧器の方でございますけれども、これにつきましては、現在従業員がどのようにこの作業、変圧器の維持修理に従事しているかというようなことについては調査中でございまして、今のところわかっておりません。
  191. 玉城栄一

    ○玉城委員 外務省の方に。わかっている部分もあるしわからない部分もある、今のお話からしますと。ですから、あしたの合同委員会ではやはりそれも、その基地内の環境問題については、これは日本だけではなくて、ヨーロッパの諸国はそういうことを厳重にやっているわけです、主体的にチェックしながらやっているわけですから、そういうところも、地位協定によって遵守をというだけでなくて、国内基準に基づくと同じような、ある意味では拘束力を持った、我が国がやる、そういう体制まで話し合う用意がありますか、あしたの委員会で。
  192. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 具体的には明日問題提起をいたします。それから我々の懸念も表明いたしますが、さらに、これは技術的な問題もございますので、分科委員会を開いてそこでいろいろな疑問点も究明し、どうしたら日本の法律の遵守ということが、最も県民の方々あるいは関係の労働者の方々、労務者の方とか皆さんの御安心がいくように、どういう格好で法の遵守が行われ得るかということを検討したいと思います。  ただ、順序といたしまして、問題を提起し事実関係を究明するというところから入らざるを得ないと思っております。
  193. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間が参りましたので、ぜひ今の問題、大きな問題、公害・環境問題として、特に沖縄は重大な関心を持っておるわけですから、あしたの委員会で事実究明——事実究明はほぼわかりつっあるわけですから、だからこれはあしたといわず、とにかくそういう機会があるわけで、そこできちっと話し合うところまでぜひしていただきたいと要望申し上げます。  以上です。
  194. 宮里松正

    ○宮里委員長代理 古堅実吉君。
  195. 古堅実吉

    ○古堅委員 先月の日米首脳会談で、「日米グローバル・パートナーシップに関する東京宣言」が出されました。その中で、「政治・安全保障関係」の項目の中に、「アジア・太平洋地域に死活的な利害を有する国として、日本及び米国は、両国の防衛関係がこの広大かつ多様性に富む地域の平和と安定のために引き続き重要であることを認識する。」このように述べて、「米国は、この地域の平和と安定を維持していく上で必要な米軍の前方展開を維持していく。一方、日本は、安保条約に従い、日本国内における施設及び区域を引き続き米国の使用に供する」、このように述べています。  政府は、これまで在日米軍基地が米軍の前方展開戦略に全面的に使用される、そういう約束を日米会談の文書で表明したことがありましたか。初めてですか。     〔宮里委員長代理退席、委員長着席〕
  196. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  日米間のこれまでの共同声明等で、いろいろな形で安保条約の重要性その他をうたっていることはございますが、このような形で書いているのはあるいは初めてかと思います。私もすべてを精査しているわけでもございませんので、正確ではございませんが、そのように思っています。
  197. 古堅実吉

    ○古堅委員 確かに初めてです。ここで言う「この地域」というのは、アジア・太平洋地域ということを指していると思われるが、そのとおりかどうか、お答えください。
  198. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 そのとおりでございます。
  199. 古堅実吉

    ○古堅委員 これは極めて重大な問題だと言わざるを得ません。日米安保条約第六条の「極東」という範囲をも、安保条約を前提とする立場からも逸脱して、アジア・太平洋地域全域に拡大するというものにならざるを得ないというふうに思うのです。そのとおりでしょう。
  200. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 その点は、私たちは違う考え方をとっております。  この東京宣言の文章の全体で御説明させていただきたいと思うのですが、まず、ここでグローバルパートナーシップということをうたっておりますし、それは日米同盟関係全体がそのような関係であるということを言っている点でありまして、安保条約はその中核であるということは言っておりますが、安保条約そのものがグローバルなものであるということではございません。  それから、今のアジア・太平洋地域の問題でありますが、ここで書いてありますのは、米国の展開がこの地域の安定のために重要であるということでありまして、また、アメリカの展開のために日米安保条約体制が重要であるということを言っているわけでありまして、逆に日米安保体制がアジア・太平洋全域を対象にしたものであるということではございません。
  201. 古堅実吉

    ○古堅委員 今まで日本の安全、極東というふうに絡ませて条約上も言われ、説明をしてきました。今回日米共同宣言で、そのようにうたいました。先ほど沖縄特別委員会で表明された外務大臣のそのくだりでの表現も、アジア・太平洋地域というふうに言われました。同じように使ってきています。ですから、極東と言ってきたそれまでの地域的な広がりに対するところの政府の言い方というのが、今回の日米共同宣言、そこにもあらわれているように、極東と限定的じゃなしに、アジア・太平洋地域というふうに広げていることは、文章上は明確だと申さねばならないと思うのです。  実際に限定的にどこからどこまでということが示されている問題じゃないから、いろいろの言い分がありましょうが、今冷戦構造が崩れて軍事ブロックが解消される、そういう方向が国際世論です。核兵器は廃絶の方向だ、軍備は縮小の方向だ、戦争はあってはならぬ、そういう方向世界の世論であるし、我が国の国民の願いでもあります。そういうものに反して、日米安保条約を軸にパートナーシップをつけて、世界的な規模でいろいろと立ち回ろう、地域極東ということさえも広げてアジア・太平洋地域などということを前提とし、引き続き日本の米軍基地を使っていただきましょうというふうな流れになっておるんです。時代錯誤も甚だしい。  こういう政府の考えに基づいて維持されてきた米軍基地で、先ほど来質問がありますようにPCB汚染が大問題となってきました。具体的なその問題について若干お聞きしておきたいというふうに思います。  PCBについては、その猛毒のゆえに既に国内ではその製造、使用が禁止されて久しい。それなのに、米軍基地ではそれが使われ、事故も起きた、汚染が生じた。そういうことにかかわる問題。それだけをとってみても、事は重大だと申さねばなりません。しかも、働いている日本人労働者がそれに関与した疑いが非常に濃厚、そういうことにかかわる問題です。  それで、最初に具体的な問題についてお答え願いたいと思います。  これまで説明を別に聞いてまいりましたが、嘉手納基地内にあって絶縁液の漏出があったと言われている。それが事故と言われているもの。それはいつからいつまでのことか。漏出汚染のあった場所は嘉手納基地のどこなのか。ただ嘉手納基地ですというふうなことじゃなしに、どこなのか。漏出の量はどれほどのものか。まずこの三点についてお答えください。
  202. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 今御指摘の点は、まさにこれから我々も聞きただしたいと思っているところであります。  我々が今までのところ承知しておりますのは、一九八六年に嘉手納基地の変圧器処理場においてPCB絶縁液が漏出した。それで、その時点では地下水の汚染がないことは確認された。そしてその後、基地内部の要員によってその汚染土の除去努力が繰り返されてきて、今若干残っている部分が本年三月には、時間はかかっておりますが、終了する予定である。それから、使われていた変圧器の相当部分は既にアメリカに持ち帰られて、二つ残っている。その事実が我々が承知している限りのものでございます。  それで、もちろんこれでは十分ではございませんので、先ほど来お答え申し上げましたように、合同委員会を開いて、そして環境分科委員会でいろいろな事実関係を聞きただしていきたいと思っているところであります。
  203. 古堅実吉

    ○古堅委員 十分ところじゃありませんよ。皆さんは照会をしたというのに、回答の範囲が今おっしゃったようなことだというと、余りにもなめられている。なめられる理由があるから、そういう米軍側からの回答ということにとどまるんですよ。ひどい話じゃないか。  一九八六年にそういう漏出の事故があったというときに、日本政府への何らかの形での通報、そういうものがありましたか。
  204. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 その時点では通報はなかったと承知しております。
  205. 古堅実吉

    ○古堅委員 これは環境庁の方にもそういうような通報は入ってませんか。
  206. 小澤三宜

    ○小澤説明員 環境庁の方にも入っておりません。
  207. 古堅実吉

    ○古堅委員 こういう重大な事故が起きて、米軍はひた隠しに隠してきた。それがわかって照会をしても、今言った答えられる範囲という形でしか回答が来ない。これはまさに国対国という形で、我が国の国民の安全にかかわる重大な問題ながら、対等な関係にあるとは思えない、そういう取り扱いですよ。それについて何ら抗議さえもしていない。これが政府の態度でしょう。  それじゃ、具体的な問題、もう少しお聞きしましょう。  この汚染というのはどれほどの汚染の状況であったのか、一つ。汚染された場所の土壌はどれほどの期間そのまま放置されたのか。すぐ片づけられたのか、あるいはかなりの長期にわたってそのまま放置された状態が続いたのか、これが二つ。地下水脈の調査はしたのか。それだけお答えください。
  208. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 冒頭にお断り申し上げておきますが、我々も今までアメリカ側からもらった資料で十分だと思っているわけではございません。その上で申し上げますが、第一の点については、私は、この時点では承知しておりません。  それから、土の期間、最後の部分は、先ほど申しましたとおり、まだ若干残っているようでありますから、私も、相当時間がかかっている、かかり過ぎているのではないかと思っておりますが、反復の掘削のゆえだということのようでありますが、当時から今日までだんだん減ってはいるとは思いますが、若干まだ残っているという状況のようであります。  それから、地下水脈の調査、これもどういう形でやったかはまだこれから聞いてみなければならないことでありますが、少なくともその時点で地下水の汚染がないことを確認したということを言っておりますので、何らかの形での調査は行われたものと思っております。ただ、それがどういう形で行われたかというような点は、まさにこれから聞いてみなければいけないことだろうと思っております。
  209. 古堅実吉

    ○古堅委員 汚染したその場所の土壌がいまだに部分的にしろ残されているということだけでも、一九八六年以来六カ年になりますよ。極めて重大だ、こう申さねばなりません。重大だということにかかわる問題を抱え込みながら、この問題について政府が積極的に、現地沖縄の県民、国民がこの問題に寄せているところの重大な懸念、関心、それにこたえるような積極的な態度をとってないということがまた一つ重大な問題なんです。アメリカも問題だ、政府も問題だということです。  アメリカはこの問題についてアセスメントを実施したというふうなことも聞いておりますが、そのとおりですか。それはいつごろ実施され、地下水の汚染はないということを言っておるというふうな今の御発言ですけれども、そのアセスメントの結果、いつやられたことなんですか。
  210. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 先ほど申し上げました地下水の汚染がないという確認のほかに、撤去作業が進んだ段階で全体の環境評価を行い、その際、さらにもう少しとる必要があるという判断が出たということを聞いております。  ただ、先ほどから繰り返して恐縮でございますが、何分にもこの報告書そのものを我々手に入れたのがごく最近でありまして、それを分析した上で次々と聞いている状況でございますので、まだアメリカ側に組織的に質問している段階になっておりませんので、我々のお答え申し上げることが断片的な点はお許しいただきたいと思います。
  211. 古堅実吉

    ○古堅委員 アセスメントをいつごろ実施したということについても政府は何もわからないということですか。
  212. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 アセスメントを実施したということは承知しておりますが、いつどういう形で実施したかは承知していないという点でございます。
  213. 古堅実吉

    ○古堅委員 PCBは現在も使用されているか。どのように使用され、その量はどの程度のものか。それについてはどうですか。
  214. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 PCBを使用した変圧器の使用については、基地によって状況が異なるようでございます。先ほど申し上げましたように、嘉手納基地につきましては二つ残っているというふうに今は聞いているわけであります。それ以外の日本全体の基地でも、我々今、このレイ報告書の中では撤去したというところもございますし、まだ我々の質問に対して答えが来ていないところもございますので、よくわかりませんが、嘉手納については近々搬出するとは言っておりますが、この聞いた時点では、PCBの入った変圧器が二つまだ残っているというふうに聞いております。
  215. 古堅実吉

    ○古堅委員 米軍施設内で、使用目的で、または使用済みのものとして保管されているものがありますか。それはどこにあるか、どの程度の量か、その事実関係。
  216. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 私は、今の問題について明確なお答えをするだけの材料を持ち合わせておりません。きょうの琉球新報の報道でも、一部全駐労マリン支部の調査というのが出ておりまして、私たち、それを読んだばかりでございますので、それをまた聞いてみようとは思っております。したがって、全体的にどこにどれだけあるかということについて、正確にお答えするものは今持っておりません。
  217. 古堅実吉

    ○古堅委員 先ほど御説明もありましたが、また、さきに外務省の方からもお聞きしたことではあるんですけれども、一九八六年に発生したこの汚染、その土壌除去作業が、近々とかあるいは三月だとかいう表現もございますけれども、三月に終わるにしても、六カ年かけてそれが除去されますというふうな説明になっておるというんですよ。この六カ年の間、どの程度の土をどのように保管するなどとかというふうなことをしてきたのか。その汚染土壌は米国に運んでいって米本国内で処理するとかいうことの説明も受けておりますが、そこらあたりのかかわりですね。六カ年にしてまだ残っている。じゃ、その間とうしておったのか。とって、どこかの建物の中に保管するとか、そういうことをしてきたのか。そういうことなどにかかわることを説明してください。
  218. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 きょうの段階では、流れとして御報告するだけの材料しか持ち合わせておりませんが、アメリカ側は、土を掘り起こした後、その特別のコンテナに入れて、そしてアメリカ本土に持ち帰っているという手続のようでございます。その間にこのようなものを保管しておく場所があると思いますので、そこに一時的に保管してあるということはあったかと思います。全体のどの時点でどれだけの量がどういう格好で流れていったかという点については、私は今材料を持ち合わせておりません。
  219. 古堅実吉

    ○古堅委員 先ほどの他の議員の質問にも答えられて、汚染された地域が立入禁止の地域として今保存されておるということでしたね。そこに汚染された土壌が残されておるということなわけですよ。残されておりながら、地下水については汚染がありませんというふうな報告を受けたという、汚染がないということに結びつける報告もあります。この政府のへっぴり腰にもうあきれ返るという表現しかできませんけれども、これでは許されないわけですよ。質問しても、何一つわからぬと言って過言でない。  百聞は一見にしかずということわざがございますけれども、私はこれは先人が教えてくれた大変貴重なことわざだと思うのですね。こういうものに当てはまる立派なことわざですよ。百間でも一見にしかずというんです。ところが皆さんは、百聞どころか二、三聞しかない。やはり、ただ単に照会をし回答を得るというふうなことだけでは済まされないということに今なっておるんじゃないですか。積極的にこの問題について、あしたは日米合同委員会があるということなんですけれども、その環境分科委員会ですか、そこらあたりの機能も発揮して、米軍とも交渉し、立ち入りによって調査、測定をするなど、そういうことをもって国民の疑惑にこたえられるだけの調査の結果を公表するということにならなくちゃ、これはおさまらぬというふうに思います。外務省側としてどうお考えか。
  220. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 先ほど来。お答え申し上げている点は、これまでの段階で我々がとりあえず手に入れた材料をもとにして、我々が知っている限りのことをお答えしているわけでありまして、我々が今知っていることで十分だと思っているわけでないことは、繰り返し申し上げたとおりであります。  我々は、この問題、非常に深刻な問題だと受けとめております。したがって、従来からの手続に従って、合同委員会にかけて、そして、環境問題を取り扱うために設置されている分科委員会で両方の専門家を入れて検討していきたいということを考えているわけであります。合同委員会は二週間に一遍ということになっておりますので、我々は一番新しい機会の合同委員会でこれを取り上げていきたいと思っているわけであります。  その結果どうするかにつきましては、私まだ専門家ではございませんので、まず、この分科委員会日本側環境庁とか関係の専門家の方も入ってくださっているところでございますの、そこで十分事実関係を究明して、そして、今後の善後策としてどうしたらいいかということを考えていきたいと思っております。
  221. 古堅実吉

    ○古堅委員 環境庁の方、お答えください。  今お聞きのとおりです。聞いた範囲というのも、この時点でこういう状況かというふうにまことに厳しく指摘せざるを得ないような、こういう範囲です。これが仮に二十や三十の回答があったということであっても、実際に現場を見るなどして確かめないと、この汚染にかかわる直接の担当庁環境庁としては、これは安心できぬということにならざるを得ないのが環境庁の立場ではないかというふうに思いますが、積極的に立ち入りなどして調査すべきだというお考えがあられるかどうか、お聞かせください。
  222. 小澤三宜

    ○小澤説明員 私どもが得ております情報というのは、先ほどからの答弁でありますようなものと同じものでございます。そういうものから判断いたしますと、いろいろ回復に必要な措置というのもとられておりまして、問題がないような状況になっているのではないかというような判断もできるわけでございますけれども、なお米軍の対応の細部につきまして、情報を得たいと考えておるわけでございます。  そういうことで、今この時点ですぐに立ち入りをするというふうに考えておるわけではございませんけれども、米軍基地の問題でもございますので、今後とも引き続き、外務省と緊密に連絡をとりながら、この問題に対処していきたいというぐあいに考えております。
  223. 古堅実吉

    ○古堅委員 大臣、この問題についてはお聞きのとおりで、全く政府のこれだけ重大な問題についての仕事のやり方としては、おくれるのも甚だしい、立ち入りなどを含めて積極的にこの問題について対処すべき重大な問題だというふうに考えますが、立ち入りとなりますというと外務省関係です。政治的な問題もございましょう。大臣として、これだけ重大な問題についていまだにわかっているのはほとんどないと言われるような状況のもとで、立ち入るなどして積極的に疑惑にこたえるということをしなくてはいかぬというお考えがあられるか、そういう決意があられるか、大臣からお聞きしたい。
  224. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 米国の出した資料を検討すると、かなり正直にきちっと出して処置をしておる。信頼関係の上に立っておるわけでございますから、我々はそれを信用したい。必要があれば当然に中に入って見せていただくということをやるつもりであります。
  225. 古堅実吉

    ○古堅委員 厳しく指摘しておきたいのですが、六カ年間もそのまま汚染した土壌が除去もされないままに雨ざらしにされておるというふうな事態があるように思われる。そういう中で、地下水の汚染がないなどというふうな報告をされて、これをうのみにするなどということになると、国民を愚弄するも甚だしい、そういうことにかかわる問題です。具体的に立入調査をするなどして厳しく対処してほしい、強く要望申し上げておきたいと思います。  次に、最後にお聞きしたいのですが、来月二日から京都でワシントン条約締約国の会議が開かれます。一昨日ですか、自然環境保全審議会が、新たな法制度の確立が緊急課題という答申を環境庁に行いました。自然環境の保全、絶滅に瀕している種の保存、そういうものについて他外国からも我が国のとっている態度がなまぬるいなどととやかく言われる、そういうふうな状況のもとで、この答申を受けて法律の制定が進めば極めて積極的な意味合いを持ってあろうというふうに期待もいたします。  それでお尋ねしますけれども、法案はいつごろ提出される予定ですか。
  226. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 お答えいたします。  ただいま私ども、政府案を作成するということで鋭意関係省庁と御相談をいたしておるところでございます。法案の締め切りが大体三月中ごろというのがございますが、ワシントン条約会議もございますので、できるだけ早く成案を得て国会に御提出をさせていただきたいというふうに考えております。
  227. 古堅実吉

    ○古堅委員 それにかかわって若干の具体的な問題をお尋ねします。  絶滅危惧種と言われている動物でリストがどの程度か、植物でどの程度か、絶滅危急種と言われているもので動物が幾種、植物で幾種ぐらいのリストが挙がっているか、その具体的な説明をちょっと簡単にひとつ。
  228. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 お答えいたします。  まず動物の関係でございますが、私どもで環境庁の調査一つの報告といたしましては、絶滅危惧種というのでは、脊椎動物で四十九、危急種で五十、それから無脊椎動物では絶滅危惧種が六十一、それから危急種が六十四でございます。  なお、植物に関しましては、これは民間団体の御報告でございますが、植物の方の絶滅危惧種の数はおおむね百四十ということでございます。なお危急種につきましては、数がちょっと私どもの評価と評価の仕方が植物と動物若干違いますので、正確な数は今私どもでは集計をいたしておりませんので、御容赦いただきたいと思います。
  229. 古堅実吉

    ○古堅委員 先日環境庁からいただいた絶滅危惧種、危急種、そう言われているもののリスト、一覧表、動物にかかわる問題です。それをいただきました。数えてみますというと、二百二十四種ほどになっていました。沖縄にこの資料を送りまして、専門家にチェックしていただきました。その中で沖縄にかかわるものが二十八種に及ぶように思われます。これは全体の一二・五%程度に当たります。面積からしますというとわずかに一%足らずのところですが、一割余りが沖縄にかかわる問題です。  それだけ大変重大な問題を抱えているところだなということを感じますが、かつていろんな面からとやかく言われたイリオモテヤマネコ、その保存にかかわる問題で一言お聞きしたいのですけれども、それについての特別の調査を行うということが報道されています。しかし、その西表について、国立公園の指定が行われて二十周年にもなろうというふうな経過がありますけれども、鳥獣保護区としての設定がいまだになされてきてない経緯がございます。その理由、それを簡単に説明してください。
  230. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 お答えいたします。  いかなる場所においても共通でございますが、野生動物と申しますのは地域に住んでいらっしゃる方々と極めて密接なかかわりがございます。ということで、日本じゅうどこでもでございますが、まずは地元の皆さんの御協力をいただくということが前提で進めておりますが、イリオモテヤマネコも含みます国設鳥獣保護区西表につきましては、ことしの間もなくでございますが、三月一日付で国設鳥獣保護区を設定いたすことにいたしております。
  231. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間が来ましたので多くは申し上げませんが、それなりの理由があってなされないという経緯があります。ということは、この自然保護、鳥獣、植物などの種の保存、そういうものには、ただ単にそれを強調するというだけでは成功しないという一面がございます。ですから、地元におけるかかわりを持つものとの整合性を持って、納得のいくように本当に今度こそ成功できる方向に思い切った施策を展開するということが大事です。専門家はみんなそのことを重視し、強調しています。そこらあたりも含めて施策を充実させていただくよう要望申し上げて、終わります。
  232. 麻生太郎

    麻生委員長 和田一仁君。
  233. 和田一仁

    ○和田(一)委員 大臣、お疲れでございますけれども、いよいよ私で最後でございます。よろしくお願いいたします。  初めに、最近報道されております問題の中で、いわゆるPKO法案について初めに大臣にお尋ねをしたいと思います。  二月の二日ですか、大臣が民間テレビに御出演になって、そこでの発言がきっかけになったのか、そのときの大臣の御発言が、いわゆるPKO法案の中からPKFについては外すということをおっしゃった、こういうふうに私ども聞いております。それを踏まえてさらにきのうですか、政府はこのPKO法案の扱いについて、PKFをPKOの中から一時見送りにすることにしょうかと、PKFへの参加を一時的に見送る方向でこれを国対レベルに本腰で野党交渉をやれというような取り決めになったような、先ほどの御答弁もそういう意味のように思うのですが、御発言があった、またそういうことになってきている。  私は、PKOの法案の性格、重要性というものについて大臣は十分御認識なさっておるし、重要性については変わらない御意見だろうと思うのですね。ただ、これを何としても成立させたい、特に一月の末、総理がニューヨークにおいて安保理サミットに御出席のとき、PKO法案の成立をなるべく早くやるという国際的な公約をなさったということを踏まえますと、PKO法案をできるだけ早く上げたい、上げるためにはまず問題のPKFを外したらいくのではないか、こういうふうにおとりになって、お考えになってそういう発言をされたのかどうか。この辺、伝わるだけでよくわかりません。昨日の決定も一体これを外すのか凍結をしようというのか、その辺もはっきりいたしませんので、この点について大臣の忌憚のない御意見をぜひお聞かせをいただきたい。  私どもは、PKOの中のPKFというのは、これは非常に重要な、それこそ根幹にかかわる大事なところではないか、こう理解しております。ただ、その出し方について必ずしも御一緒ではない点があるのですが、その一番大事な部分を凍結とか外すとか、こういうような表現で新聞に出ておるのですが、真意のほどはどういうことでございますか、お聞かせをいただきたいと思います。
  234. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 政府としては、いろいろ苦労を重ねましてっくったのが原案でございます。しかしながら、できることならばたくさんの政党の賛成を得られることが一番いいわけであります。いろいろ政党によってそれぞれ立場が多少違いがございます。  そういうようなことで、自公民の方が衆議院段階で一致をいたしまして、そして御承知のように、その一方は国会承認ということを強く御主張になるところもあればそうでないところもある、こういうようなことで折衷案として修正案がつくられたと理解をいたします。つまり修正案は、二年を経過するような場合はそこで見直すということでございますから、これは実質的に二年以上になるものについては国会承認と同じであるし、二年間やった結果よかったか悪かったかということを基準にするわけでございますから、これは事後承認ということと実質的に、実質的ですよ、言葉はいずれにせよ、同じではないか。そういうことであれば承認ということを非常に強くおっしゃった方も御理解が得られるものというように我々は理解をしておったわけでございます。  いよいよ参議院に参りまして、これをどうしても成立させたいというようなことで、今国会対策委員長がいろいろと苦労をして各党と折衝をいたしておるところでありますから、中身について私はとやかく申し上げることは差し控えたいが、原案どおりぜひとも通してもらいたいというのが、一言で言えばそれに尽きるわけであります。  しかしながら、ちょっと直すことによって多数党がまとまるというのであればそれもよかろうと思っておりますが、どういうふうに具体的にやるかは、今国会でやっておりますから、私が用捨をすることは差し控えたい。PKFを外すというようなことは考えておりません。
  235. 和田一仁

    ○和田(一)委員 大臣、改めてここでPKO法案は原案どおり通したいとおっしゃって、ちょっと手直しをして通るならばそれは応じる、ちょっと手直しというのがどの程度かわかりませんが、しかしPKFを外すということはない、こういうふうに明言されました。よくわかりました。あとはどういう妥協点があるのか、手直しかあるのかは、これはきょうここでは議論しないつもりでおります。  それで、今国際社会でこういったPKO活動、国連の平和推持活動に対する要請というのは、ユーゴそれからカンボジアの問題で要請があるのが現状だと思います。私は、先日、カンボジアヘ日本・カンボジア友好議連の超党派の調査団の一員に加えていただいて行ってまいりました。百聞はまさに一見にしかずで、大変実態がよくわかったような気もいたします。しかし、非常に短期間でございましたので、まだまだこれからいろいろ勉強しなければならないと思いますが、押しなべて感じましたことを申し上げますと、昨年来の、あの九一年十月二十三日署名のカンボジア和平協定について日本が果たした役割、貢献、このことについては、お会いをいたしました要人、どの方も大変感謝をしておられました。  私どもお会いいたしました方々はシアヌーク殿下であり、またカンボジア国民政府のソン・サン首相であり、またプノンペンのチア・シム議長さん、こういった要人にお目にかかることができました。そういった方々のお話を聞いておりまして、今和平への道が歩み始められたわけですけれども、小さなトラブルはあるけれども伝わるようにそれが和平を阻害するようなものとは考えない、順調に和平への道が進んでいるという認識をそれぞれお持ちのようでございます。しかし、それはなかなか容易ではない、そのためにはぜひ国連のUNTACが至急に入ってもらいたい、こういう思いはそれぞれお持ちのようでございまして、順調に進んでいる中で私ども感じましたのは、現地でそういった要人お一人お一人の口から今川大使の名前が出て、大変協力をしていただいて感謝している、こういうお話がございました。  また同時に、向こうへ参りまして、渡辺外務大臣外務大臣としての責務からではなくて、外務大臣になる以前に一人の政治家としてこのカンボジア問題を非常に大事にお考えになって、そして努力をされてまいた種が今実りつつあるということを私は感じたわけでございます。まさに外交というのは交渉事で非常に大変なこともありますけれども、要請はやはりお互いに人と人との理解の上に成り立っているなということを非常に強く感じました。あわせて、今川大使が、まさに適材適所、適時にお使いいただいているなということで私は大変喜んだわけでございます。  そういう中で、この日本へ対する感謝と同時に、これから和平と復興に向かってカンボジアが日本に期待しているものは相当大きい、こういうことを感じたわけでございます。私はそういった方々のお話もまた細かく御報告はしたいと思いますけれども、そういう中でこのカンボジアヘの、UNTACへの対応策というものを大臣はどのようにお考えになっておられるか、お知らせをいただきたい、こう思います。
  236. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 まず向こうの御要請に応じてやることでございますが、もちろん財政的な援助ということが一つございましょう。それから、やはり現地では、日本もぜひとも人的貢献についてもできるだけ御協力願いたいということを言っておりますので、一日も早くPKO法案を妥協をして通していただいて、一万数千人の人が出る、あの近隣諸国からも数百あるいはそれ以上の人が恐らく出るでしょう。現にタイなどはもうあそこの軍隊を出しまして道路工事その他危ないところで協力をしている、こういうことでございますから、そういうような面では人的、物的両面の協力をやってやりたいというのが私の願望であります。
  237. 和田一仁

    ○和田(一)委員 経済援助、物的援助、それから人的貢献、人的援助、両方がなう限りやりたい、大変結構だと思うのです。今UNTACが入る前にUNAMICという形で先遣隊が入っておりました。私どもはここへも参りまして、カリム団長、あるいはロリドン将軍あるいは国連から行っておられる川上次長、こういう方々ともお会いをして話をしてまいりました。押しなべてお会いした人はすべて日本への期待というものが非常に大きいことを感じました。  シアヌーク殿下も、日本は非常に和平に対して尽力してくれて感謝しているというお話の中から、ぜひ日本がUNTACへ参加して来てくれることを希望している、こうおっしゃいました。これは日本が決めることですが、文民であれ自衛隊であれ、日本が決めれば歓迎します、こういう御発言がございました。非常に慎重な言い回してはございましたが、そういう言い回しもございました。  また、UNAMICに参りましても、やはりこのUNTACの責任者が明石さんであり、UNAMICの次長が川上さんであり、こういうことから、日本はやってくれるんではないかな、こういう期待が強いわけなんですが、今大臣がおっしゃられた経済的な貢献と人的な貢献と、両方できる限りやりたいというその人的貢献は、どのようなことをお考えになっていますか。
  238. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 UNTACは私はPKOそのものだと思うのですね、UNTACというのは。したがいまして、向こうがどういうようなことを御要求されるか、御要求を待たなければならないわけで、こちらからあれやればこれやるというのでなくて、国連の要請ということですから、どういう御要求をいただけるか、そのいただけた御要求に対しては、我々はともかく応じられるようにしておきたい。  人的貢献はできません。各国のやることができない。しかもカンボジア和平については、海部内閣の当時、東京で和平会談までやって一番最初にイニシアチブをとってきたわけですから、それがだんだん実ってきた。国連の決議、要求、それから中国とベトナムの和解、正常化、そういうようなことから、それぞれの軍事的援助をやめるということになり、日本はイニシアチブはとったけれども、いざみんなが参加というときには金出すから人は出せませんよということでは、これはちょっと国際社会において名誉ある地位にはならぬ。ですから、分担金等も、それは一二・四五%出せばいいというわけにもいかぬでしょう。それはできるだけのことはしなければならぬな、そういうようにも思っておりますし、ぜひとも世間並みのことはやりたいな、このように思っておるわけです。  したがって、どうしても急を要するわけですから、今から新しく組織をつくって訓練をさしてというようなことは何年もかかってしまう話ですから、だからそういうことでなくて、今あるものの中で人的貢献ということになれば、自衛隊のトラック部隊もあるいは通信隊も医療班も、いろいろな食糧の補給も、工兵隊も、場合によってはですよ、要求があればですよ、何らかの分担はしてやってみたい。そのためには、ぜひとも国会の御了解を得て、要するにみんな少しずつ譲ってもらって、なるべく多数の党が参加をしてPKOを、UNTACはPKOそのものですから、UNTACに参加せよ、PKOは出すな、こう言われましても、言葉の矛盾になってしまうわけですから、UNTACに参加するということはPKOに参加するということですから、そういう意味でぜひともお願いしたいと思うのであります。
  239. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そういった人的貢献をなさるためにはやはりこのPKO法案で、さっきおっしゃったようにPKFを外したり凍結したりしたのでは、これはとてもできないと私は思います。  それと、今先遣隊であるUNAMICが行きましたら、二十三カ国ぐらい来ていただいていますといいますが、きょう外務省にお伺いしたら二十六カ国になっております。こういうお話でしたが、その国々の旗が本部に掲げてあるのです。その中にドイツの旗がございました。ドイツがどういう格好で来ているのですかと伺いましたら、医療関係で来ている、こういうことなんですね。これは私はちょっと驚きました。よう出してきて、来ているな、そういうふうに見える形でもう既に努力しているなと思ったわけですね。ただ、やはり医療関係といっても、軍医さんが三人に看護兵が一人、こういう形でしたが、それがきちっとそのUNAMICの中の一員として存在しているということは非常に大事だったと思うわけです。  そういう意味からいうと、今できることとして何があるかといえば、そういうこともお考えいただかないといけないかな。これは自衛隊の軍医さんを使うわけにいかなければいけないなりに方法もあろうかと思うのですがね。ただ、今おっしゃったように、トラックであるとか通信であるとか医療であるとか、あるいは工兵隊であるとか、これは全部PKFでないとできない仕事だ、こう考えております。  一番私が感じたのは、とにかく十三年間の戦火がおさまって、和平の道が進み始めたのですが、まだお互いの信頼度係というのは、小競り合いがあるくらいで、まだまだ一〇〇%ではない。これも認めておられました。ただそういった、対峙していた軍が七〇%の武装削減までやり、武装も解除しようというのには、そこに国連のPKFが存在しないと相互に信頼しない。国連が来ることを皆非常に期待しているのはそこなんだ。国連を信用してやりましょう、武装解除もやりましょう、平和の実を上げましょう、ただしその国連で来る人は軍服着てないとだめだ。  これはやはり軍が武装解除をし、削減していこうというときに、文民の人が来て、私ら国連の使命で来ましたと言ってやるのではなくて、そこに国連の旗を掲げた軍服がいるということによって、対峙していた軍が信頼関係を持って、そして武装解除し、削減にも応じよう、こういうことなんですという話を伺って、これは非常に大事な点だったな、こう考えました。  そういうことを考えますと、やはりこれは日本が今度貢献しよう。さっき申し上げたようにユーゴがありカンボジアがあみ。今、手が余っているというわけではなくて、ユーゴ問題については北欧やらカナダはそっちへ力が入るとなると、カンボジアのPKFというのはどうしてもアジア中心のPKOが組織されてくるとなると、これは口では言っておりませんでしたよ、口では言っていなかったけれども、同じ来てくれるならアジアの大先輩である日本が来てほしい、こういう思いが私には感じられた。それにこたえていくということが非常に大事なこれからの外交政策ではないか、こう私は思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  240. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 全く同感でございます。
  241. 和田一仁

    ○和田(一)委員 きょうは本当に時間が少ないのであれなんですが、カンボジアは今UNAMICがおりまして、そして来年の選挙に向かって着々と準備を進めておりますが、それにしても、できるだけ早くUNTACに入ってもらいたい、こう言っておりました。  入ってまず最初に考えているのは難民の帰還ではないか。難民の帰還ということになれば、その帰還すべき定住地を確保していかなければならない。しかし、そういうところにはまだたくさんの地雷がまかれていて、この撤去も大変な作業のようでございます。今月末から既にUNAMICでもこの作業を始める、こう言っておりましたし、さっき申し上げたUNAMICのメンバーでなく、タイは七百人来て地雷撤去が始まったという話を聞いて、UNAMICですねと言ったら、そうじゃない、これはもう自発的に来ているんだ、こういうようなお話も聞きました。そこまでやはり、何とか早くUNTACに来てもらって、来年の選挙を実施して、そして憲法議会をつくって憲法をつくって復興に入りたい、こういうことでございますので、私どもは日本が果たさなければいけない責務は非常に重い、こう感じました。  そういう中で現地へ行って、まず一つこれは何とかしなければいけないと思ったのはプノンペンの大使館体制。先ほど申し上げましたが、今川大使という大変適材適所を配置されて、その下に篠原さんという、これまた現地の人以上に言葉の上手な、向こうの僧籍にわざわざ入ってまで言葉を学んだという方がおる。しかし、三人しかいない。タイでも十七、八人の要員を持っているし、アメリカは二十人以上の体制で今アジアの一番大事なこのカンボジアヘの対応をしょうとしておられます。これは大臣、このままでいいかどうか。どういうふうにして対応していかれようとしているか、ぜひお聞かせいただきたい。
  242. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは何もやらないのなら三人でもいいかもしれませんが、積極的にカンボジアの復興を手伝おうということになれば、とてもそんな数字では足りません。したがって、何らか工夫をして、全権大使にもして、それで館員も臨時的に、それはやりくりつくはずですから、あの周りにも大使館いっぱいあるわけですから、何か工夫をして、早急に体制を整えたいと考えております。
  243. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 今川大使等に非常に温かいお言葉をいただきまして、どうもありがとうございます。  確かに本官は大使以下三人でございまして、他方、先ほど来お話が出ておりますように急速に仕事がふえておりますものですから、到底三人では急場をしのぎ得ませんので、近隣の諸国からとりあえず二名の応援出張を長期に得ております。それからJICAにもお願いいたしまして、国際協力事業団の方からも一名長期の出張を得ておりますけれども、そういう中で四人目の本官がきょう、二十六日でございますから、ジャカルタの方から大変生きのいい、志の確かな若い職員がプノンペンに入る予定になっております。  いずれにいたしましても、まだまだこれでは足りませんので、早急に手当てしたいと思っております。ありがとうございます。
  244. 和田一仁

    ○和田(一)委員 時間が少ないので、最後にもう一つお聞きしたいのですが、六月下旬をめどに東京でカンボジアの復興のための国際会議をアレンジしておられる、こういうふうに伺っております。今関係諸国に打診中ということでございますけれども、大変結構なことだと思います。ぜひ大臣、イニシアチブをとってこれを成功させていただきたい、こう思うわけでございますが、これの進行状況、討議の対象になるテーマ等について、どんなふうに進行しておるかをちょっとお聞かせいただきたい。
  245. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 今のところ六月下旬と思っておりますが、これはとりあえず日本側がそのように事務的に考えておるということでございますが、六月下旬をめどに、これは閣僚レベルの会議でございますけれども、東京で支援会議を開催させていただきたいと思っております。そのために、現時点でとりあえずワシントンに課長が参りまして、今その辺の下相談をいたしております。そのために、できますれば三月、これも下旬ごろをめどに、閣僚会議の前に下相談のために事務的な会議を、私どものレベルでございますけれども、東京でさせていただきたいと思っております。
  246. 和田一仁

    ○和田(一)委員 食糧やら医療あるいは道路、インフラ、こういったものの整備等があると思うのですが、中期的な立場から、これから復興のための産業の育成等があろうと思いますが、私一つ感じてきて、ぜひお願いしたいなと思うのは、人材の育成についての国際的な尽力を、特に日本が果たせるような会議にしてもらいたい、こういうふうに考えておりますが、いかがでしょうか。
  247. 川上隆朗

    ○川上政府委員 御指摘のようにカンボジアのこれからの復興の援助というコンテクストから見ました場合の技術協力、いわゆる御指摘の人材育成でございますが、その重要性というのは我々もっとに認識いたしておりまして、技術協力自体は前からかなりやってきておりますけれども、今後一層力を入れてまいりたい。特にNGOなども御案内のとおりかなり現地に出ておりますので、そういうNGOとの政府開発援助の連携といったようなことも考えながらやってまいりたいと思っております。
  248. 和田一仁

    ○和田(一)委員 終わります。
  249. 麻生太郎

    麻生委員長 次に、平成四年度外務省関係予算について、その概要説明を聴取いたします。柿澤外務政務次官
  250. 柿澤弘治

    柿澤政府委員 平成四年度外務省予算重点事項を御説明申し上げます。  平成四年度一般会計予算案において、外務省予算としては、六千二百十五億二千四百六十二万四千円が計上されております。これを前年度予算と比較いたしますと、七・八%の伸び率となっております。  現在、国際社会は、ソ連邦崩壊を初め大きな変革を経験しつつあり、その中で新たな国際秩序への模索が始まっております。このような中で国連安全保障理事会非常任理事国に選ばれたことに見られるごとく、国際社会の我が国に寄せる期待は大きく、我が国は、世界の平和と繁栄を一層確固たるものとする新しい国際的枠組みの構築のために、世界的視野に立って主体的に貢献を行っていくことが不可欠となっております。我が外交に課された使命は極めて重大であると言わざるを得ません。  このような使命を果たすためには、我が国は、これまで以上に強力な体制のもとで積極的な外交を展開していく必要があります。  かかる観点から、平成四年度においては、定員等の増強、在外公館の機能強化等の外交実施体制の強化及び国際貢献策の充実強化の二点を最重要事項とし、予算の強化拡充を図る所存であります。  まず外交実施体制の強化でありますが、外務省定員につきましては、本省及び在外公館合計で百三十名の増員を図り、四年度末外務省予算定員を合計四千五百二十五名とする所存であります。  機構につきましては、本省における政策企画・調整担当官房審議官の設置並びに在外公館として在ホーチミン総領事館及び在デトロイト総領事館の新設等を行うこととしております。  在外公館の機能強化につきましては、在外公館施設等の強化及び危機管理体制の強化に要する経費として、二百二十七億四千三百万円を計上しており、前年度予算と比較いたしますと、二十一億九千万円の増加であります。  また、情報収集、分析、提供機能の強化のため、十八億四千五百万円を計上しております。  次に国際貢献策の充実強化に関係する予算について御説明いたします。  国際貢献策の四つの柱は、政府開発援助の拡充・平和のための協力の強化、国際文化交流の強化、そして地球的規模の問題の解決への貢献であります。  まず、政府開発援助の拡充につきましては、昭和六十三年六月に設定されたODA第四次中期目標に盛られた諸施策の着実な実施を図るため、特段の配慮をいたしております。平成四年度ODA一般会計予算については、政府全体で対前年度比七・八%増の九千五百二十二億円となりました。  外務省のODA予算について見ますと、対前年度比三百三十六億円、七・五%増の四千八百八億円となっております。この予算のほとんどは贈与予算であり、ODAの質の改善に寄与するとともに、外交の円滑な推進にも重要な役割を果たすものと考えます。  このうち無償資金協力は対前年度比百五十三億円、七・二%増の二千二百七十八億円を計上しておりますが、その内訳は、経済開発等援助費が一千八百五十五億円、食糧増産等援助費が四百二十三億円であります。また、我が国技術協力の中核たる国際協力事業団の事業費として、対前年度比七・四%増の一千四百四十一億円を計上しております。さらに、援助実施体制め強化の観点より、国際協力事業団の定員につき、三十四名の純増を図ることとしております。  次に、平和のための協力の強化でありますが、我が国は、国際平和の維持、確保等の政治的分野においても相応の国際的責任を果たすことが必要となっており、このため平和及び人道の分野での国際機関などによる活動の支援ロシア連邦、東欧等の改革支援として百九十八億五千六百万円を計上しております。  次いで国際文化交流の強化でありますが、異なる文化間の相互交流を促進し、近年の対日関心の高まりへの積極的な対応を図るため、百七億一千六百万円を計上して国際交流基金事業の拡充強化及び文化協力の推進を図ることとしております。  さらに、地球的規模の問題への対応として、環境問題、あるいは麻薬問題に対し、国際機関を通じて積極的に貢献するため、四十九億三千四百万円を計上しております。  以上が外務省の平成四年度予算重点事項の概要であります。
  251. 麻生太郎

    麻生委員長 以上で説明は終わりました。      ————◇—————
  252. 麻生太郎

    麻生委員長 次に、旅券法の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府より提案理由の説明を聴取いたします。渡辺外務大臣。     —————————————  旅券法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  253. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 ただいま議題となりました旅券法の一部を改正する法律案について御説明いたします。  我が国国民の海外渡航者数は、近年の国際化傾向とも相まって平成二年には一千九十九万人を突破、平成三年は湾岸戦争というマイナス要因にもかかわらずおおむね一千万人に達しました。これに伴い旅券発給件数も恒常的に増加、年間の新規の一般旅券の発給件数は五百万件近くに及んでおります。  このため旅券発給窓口の混雑、旅券事務量の膨脹、旅券管理事務の複雑化等の諸問題が生じてきており、その改善のため、平成元年の旅券法の改正により手続の簡素化、事務の整理、合理化を行い、国民の便宜及び行政効率の向上に努めてきていますが、平成四年十一月に機械読み取り旅券(MRP)を導入することに伴い、申請手続の簡素化と手数料の改定を行い、もって一層の国民の便宜及び行政効率の向上に資するため、及び刑罰規定中罰金刑に係る所要の規定の整備を行うため見直しを図ろうとするものであります。  以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。  第一は、一部申請に際しての提出書類の省略であります。  現在有効な旅券を所持する者が、その残りの有効期間(いわゆる残存有効期間一が一年未満となった場合や所持する旅券の査証欄ページに余白がなくなったこと等の理由から旅券の切りかえをする場合に、当該有効な旅券を返納の上切りかえ発給の申請をするときは、戸籍謄(抄)本の提出を原則として省略し得ることとしたものであります。   第二は、手数料の改定であります。  一般旅券発給に係る手数料等は、昭和五十三年以降据え置かれており、その間に消費者物価については四一・九%、国家公務員の給与については人事院勧告ベースで五〇・三%とそれぞれ上昇しており、旅券の発給に係る行政コストも上昇しております。今回これらの経済事情の変動のもと、手数料の適正化を図るため、基本となる一般旅券の発給手数料につき二五%増の八千円から一万円に引き上げ、その他の手数料についてもこれに準じた引き上げを行うこととしたものであります。  第三は、罰金額の改定であります。  刑法その他罰則法規における罰金刑の額については、経済事情の変動等を理由に既に多くの該当法律について引き上げられており、それら罰金額との整合性を保つため、旅券法の罰則規定中の罰金額の最高限度についてその額の引き上げを行うこととしたものであります。  次に施行期日であります。  この法律は、一部申請に際しての戸籍謄(抄)本の提出省略及び罰金額の改定については平成四年八月一日から、手数料の改定については平成・四年十一月一日からそれぞれ施行することとしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします、
  254. 麻生太郎

    麻生委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る三月四日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十分散会      ————◇—————