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1992-04-02 第123回国会 衆議院 科学技術委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年四月二日(木曜日)     午前九時三分開議 出席委員   委員長 近岡理一郎君    理事 斉藤斗志二君 理事 光武  顕君    理事 宮路 和明君 理事 山本 有二君    理事 川島  實君 理事 関  晴正君    理事 近江巳記夫君       河野 洋平君    鈴木 宗男君       中馬 弘毅君    塚原 俊平君       渡海紀三朗君    森  英介君       簗瀬  進君    秋葉 忠利君       竹内  猛君    辻  一彦君       馬場  昇君    長田 武士君       吉井 英勝君    菅原喜重郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長 谷川 寛三君         官)  出席政府委員         科学技術庁長官 林  昭彦君         官房長         科学技術庁長官 山路 順一君         官房審議官         科学技術庁長官 岡崎 俊雄君         官房会計課長         科学技術庁科学 須田 忠義君         技術政策局長         科学技術庁科学 長田 英機君         技術振興局長         科学技術庁研究 井田 勝久君         開発局長         科学技術庁原子 石田 寛人君         力局長         科学技術庁原子 坂内富士男君         力安全局長         科学技術庁原子 谷   弘君         力安全局次長  委員外出席者         総務庁行政管理 久山 慎一君         局管理官         科学技術庁科学 平野 拓也君         審議官         外務大臣官房領         事移住部外国人 宮下 正明君         課長         文部省高等教育 工藤 智規君         局大学課長         文部省学術国際 雨宮  忠君         局学術課長         文部省学術国際 鈴木  宏君         局研究助成課長         文化庁文化財保 吉澤富士夫君         護部記念物課長         厚生省保健医療 有川  勲君         局疾病対策課長         資源エネルギー         庁公益事業部原 荒井 行雄君         子力発電安全管         理課長         特許庁総務部国 植村 昭三君         際課長         参  考  人         (各省直轄研究 畚野 信義君         所長連絡協議         会前代表幹事         (郵政省通信         総合研究所         長))         科学技術委員会 松尾 光芳君         調査室長     ――――――――――――― 委員の異動 四月二日  辞任         補欠選任   今井  勇君     森  英介君   小沢 一郎君     鈴木 宗男君 同日  辞任         補欠選任   鈴木 宗男君     小沢 一郎君   森  英介君     今井  勇君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  研究交流促進法の一部を改正する法律案内閣  提出第四三号)      ――――◇―――――
  2. 近岡理一郎

    近岡委員長 これより会議を開きます。  内閣提出研究交流促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として各省直轄研究所長連絡協議会代表幹事畚野信義君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 近岡理一郎

    近岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 近岡理一郎

    近岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。秋葉忠利君。
  5. 秋葉忠利

    秋葉委員 先日に続いて、この法案について何点か質問をさせていただきます。  やはり基本的な部分は、科学技術研究をどのように行うのか、あるいはその科学技術研究を行うに当たっての基本的な原則となるべきものはどのようなものか、そういった点について、研究の第一線で活躍をされている方々の御意見を伺って、それをやはり基礎に私たち考えていくべきだと思っております。その趣旨に沿って、本日は参考人においでいただきましたので、まず最初参考人の御意見を何点か伺った上で、前回私がいたしました質問の何点かについては補強をし、さらには、触れることのできなかった点についてさらにお尋ねしたいと思います。  まず、最初参考人に伺いたいんですが、私は、科学技術研究というのは、まず一つには、これは科学技術会議の中にも書いてありますけれども、公共財としての科学技術の知識あるいはその方法といったもの、これを充実していくことが非常に大切であるというふうに思っております。その方法にはいろいろなバリエーションがあるわけですけれども、その中で例えば、どうしても国としての責任で遂行していかなくてはいけない分野もあるというふうに思います。例えば、これは手前みそになりますが、数学というような分野、これは科学技術ではないという見方もありますが、数学研究というのはなかなか民間に任しておくわけにはいかない分野でございます。したがって、そこで国の責任ということも出てくるわけですけれども、その科学技術研究のあり方も世界とともに非常に大きく変化をしていると思います。  で、その国と科学技術というところのまさにちょうど交差点にある、一番がなめの部分にあるのが国立のさまざまな研究機関であるというふうに思いますけれども、そのいわゆる国研と言われているこういった機関連絡協議会代表幹事、四月一日から新しい方にかわられたということで、前年度の活動、それ以前の活動を踏まえながら、科学技術研究、さらに、研究交流を進めていく上でどういう点が現在問題なのか、その基本的な原則としてはどういうことを考えていくべきか、その辺をいわゆる直研連と言われている方々、どうお考えになっているのか、まず参考人に伺いたいと思います。
  6. 畚野信義

    畚野参考人 畚野でございます。  先生の御質問にありましたように、現在日本研究を取り巻く環境がかなり大幅に変わりつつございます。御承知のように、日本国力が向上してまいりまして、その国力にふさわしい、科学研究の上でも世界に対する貢献が求められております。しかし、これを逆の方から見ますと、今までの同流型の技術開発が認められなくなってきて、自前の研究をやらなくちゃいかぬというふうになってきたというふうに私たちは把握しておりまして、また、これにつきましては国内的にも非常に認識が広まっておりまして、例えば、今御質問の中にもありましたように、科学技術会議答申、十三号答申なんかでも国研役割変化というものが言及されております。  私たち、国の研究機関役割としまして、大きく分けて二つあるかと思います。一つは、国立研究機関の設置の原点であります国の各省の施策を実施するための技術的な支援でございます。あるいは、国のスタンダードを維持したり向上させていくための役割でございます。もう一つは、やはり国の将来を考えました基礎的な研究推進でございまして、今その中で前者から後者の方へ、日本国力の向上に伴いまして重心を移すことが求められているというふうに認識しております。そのために私たち国研では、いわゆる基礎シフトという、プロジェクトを基礎研究の方にシフトするということですとか体質を改善する、研究環境も含めて改善する、あるいは研究者自身の資質ですとか意識を改革するというようなことも含めまして、活性化努力しているわけでございます。  私たちから申し上げまして、研究かぎというのはまず人材でございます。この人材が、いい人材を得るために魅力ある研究環境というのを整えなくてはいかぬ。この環境といいますのは、十分な研究資金といいますか研究費、あるいは活力を生むような自由な研究環境というようなものを含めましての広い環境でございます。  例えば研究交流、この場で問題になっております研究交流に関しましても、例えば産学官連携というのがよく言われておりまして、これは非常に重要なかぎでございますが、現実を申し上げますと、私たち国研の立場から申し上げますと、さまざまな制約がございます。産学官連携につきましてもいろいろな振興策が打ち出されるわけでございますが、一方、制約が多いために足を引っ張るといいますか、なかなか実現が難しいというのがございまして、私たちから言わせていただきますと、最大振興策制約を外すことである、こういうことでございます。今、私たち国研としまして新しい日本研究を開いていくために、そこのところが最大の問題であると思います。
  7. 秋葉忠利

    秋葉委員 確認をしたいのですけれども、さまざまな制約があって、その制約を外すということが少なくとも国研、全部で幾つあるのでしょうか、百以上の国研があるわけですけれども、その研究者のいわばこれは平均的な意見だというふうに考えていいと思うのですが、その意見の集約の仕方、どういう形でそういった結論が出てきたのか。さらには、今制約を外すことというふうに大きくくくられましたけれども、その中にはさまざまな個別の問題点というのがあると思います。それではそういった方向での科学技術研究政策といいますか、それを動かすために具体的にはどのような努力をされてきたのか、そのあたりを簡潔にお願いいたします。
  8. 畚野信義

    畚野参考人 今おっしゃいましたように、国立試験研究機関全部入れますと非常にたくさんございまして、その中で大学研究機関あるいは文部省共同研究利用機関を除きまして、私たち各省直轄研究所長連絡協議会に属しておりますのが九十三ございます。この組織で私たちがいわゆる国研考え方をディスカッションしまして、考え方をまとめさせていただきました。  今、どういう努力をとおっしゃいましたが、例えば私たち昨年三月から大体定期的に月一回ぐらいのペースで人事院ですとか科学技術庁意見を交換させていただいておりまして、問題点を洗い出してきております。それの結果としまして、例えば昨年十二月に関係省庁要望を出させていただいております。  さらに本年度、四年度から新しい要望としまして、国立試験研究機関における研究環境改善のための制度整備についての要望というのを出させていただこうと考えているわけですが、これらはかなり多岐にわたっておりまして、大きく分けますと三つに分けられるかと思います。一つ人材の確保でございます。もう一つ研究資金に関するものでございます。三つ目身分とか勤務とかそういう制度的なものでありまして、今回の改正案の中に含まれておりますもののほかにも十数項目がございます。  例えば、その中で私たちが特に重視しておりますのは、任期つき任用を実効あらしめるために定員枠外にしていただきたいとか、処遇改善していただきたい。あるいは研究資金に関するものでは、例えば国立大学で認められております助成金の受け入れ、これが国研にも認められるようにしていただきたいとか、あるいは現在の予算の費目が非常に細かいことになっておりまして、これは実際の研究の運用に大きな支障を来しております。これについて改善をしていただきたい。あるいは三つ目身分とか勤務の点に関しましては、勤務時間内の兼業というのを認めていただきたい。これは国立大学では教育公務員特例法の中で認められておりまして、研究活性化には欠かせないものであると私たち考えております。
  9. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。  大体幾つかの問題を挙げられましたので、特にそういった点についてはまだ個々に伺いたいと思いますけれども、そういった問題があって、今挙げられた点については、例えば人事院あるいは科学技術庁その他関係省庁にいわば、陳情というと言葉が悪いわけですけれども、事実の具体的な説明改善策、両方を携えて説得に当たった。  私の理解しているところでは、その結果今回の研究交流促進法の案が生まれたというふうに思っておりますけれども、仮にそれが正しいとして、具体的にはそれではそういった中で今回の法案に至るまでの経過といいますか、それを直研連方々はどういうふうにごらんになっているのか、そして今回の法案が、そういう努力を一番最初の段階で、いわばボールを投げた側として、その投げた意図が本当に今回の改正案に忠実に反映されているのかどうかといったあたりを伺いたいと思います。もし足りないところがあれば、そういう個々の問題についてはまだ重ねて伺いたいと思いますけれども、とりあえず経過と評価について伺いたいと思います。
  10. 畚野信義

    畚野参考人 今、私たち直研連人事院科学技術庁説得に当たったとおっしゃいましたが、これはちょっと違いまして、実は私たち直研連人事院科学技術庁がざっくばらんに検討をさせていただいた、この二機関検討に参加していただいたというか、むしろ科学技術庁人事院の方がリーダーシップをとってそういう場を設けていただいたというふうに認識しております。  私たち、その中でかなりざっくばらんに私たち要望を申し上げました。その中から科学技術庁がやはり科学技術庁判断で、まずこのあたりから改正に取りかかるかというようなものを幾つか集められて検討を開始されたわけでございます。これは昨年の十一月に筑波で行われました全国研究機関交流推進協議会とかいう、これは国研だけではなくて民間研究機関も入ったような会合を科学技術庁が主宰されたところで科学技術庁から発表されておりまして、これ自身は私たち決して全部が全部満足であったわけではありませんが、もしこれが実現すればかなり画期的な改善があるというふうに期待したわけでございます。  その後、科学技術庁でかなり努力していただきました。私たちもそういうことで十二月に要望を出させていただいて、各省、当然科学技術庁人事院も含めてですが、そのほか総務庁、大蔵省その他に要望説明に回りました。しかしながら、やはり制度を変えるというのはなかなか難しいよ うであり、時間がかかるようでありまして、制度を所管しておられる省庁の中で、我々のというか、科技庁の原案の中にありましたものの中の一部といいますか、かなりの部分がなかなか理解を得ることができなかったというのが現状であるというふうに私たち認識しております。  正直言いまして、現状では最初に比べますとかなり後退しておりまして、確かに私たちとしてはこれは一定の前進であると評価しておりますが、ただ、正直申しましてまだ道は遠いなというのが実感でございます。
  11. 秋葉忠利

    秋葉委員 私も実は、道はまだ遠いというところでは同じですけれども、同時に、科学技術庁初め各省庁の努力、それから積極的なイニシアチブがあったというところは私も同様に理解しておりますので、いわば向いているところは同じだけれども具体的にステップを踏むに当たってはなかなか問題が多いというところで、それを起点にして、次に具体的な問題について伺いたいと思うのです。  まず一つは、今回の研究公務員研究交流促進のために任期つき採用を認めるという点ですけれども、先ほどのお話では、これを定員枠外に置くべきであるというふうに直研連ではお考えであると思います。仮にこの法案が通過してもなかなか実際の場面では、この法律を運用して成果を上げるというところでは、その定員枠というところがかなり大きな障害になるんではないかというふうに思いますけれども、その辺の認識はいかがでしょうか。
  12. 畚野信義

    畚野参考人 この任期つき任用というのを実効あらしめるためには、私、先ほど申し上げましたように二点、ポイントがあるかと思います。一つは、今おっしゃいました定員でございます。もう一つは、やはり短期的な任用でございますので、処遇の面、待遇の面で特別な配慮が必要ではないか。  まず、今おっしゃいました定員の枠の問題でございますが、私たち、この制度は基本的に言いまして、一時的に任用するというのは、例えば新しい研究を立ち上げるというようなときに際しまして特別な能力のある人を一時的な助っ人として雇い上げるというような認識をしております。そのためには、私たち定員の枠の中での要員の採用といいますのは、やはり組織として我々がカバーしております研究の各分野のバランスをよく見まして、長期的な計画に基づいて採用しておりまして、この部分を使って一時的な助っ人採用するというのはなかなか難しいことであります。組織としての、研究機関としての長期的な計画影響を及ぼすわけであります。さらに枠の中で一部を取り残してこれを助っ人のためにあけておくという余裕はございません。  私たち研究職定員はどんどん減っております。日本国研、私たち直研連に属しております百近い機関の全部を足しまして研究職定員が今現在約一万人でございます。大体同じようなものを比較しますと、アメリカで六万人、人口比にしますと三倍でございます。ヨーロッパは人口比にしますと五倍とか七倍のところが多いわけでして、もともと少ないところでさらにそういう助っ人のために別枠をとっておくことはできない。  例えば、今回は日本人の任期つき採用が問題になっておりますけれども、外人のものは何年か前から実際に行われておりますが、ことしの初めの時点で十三人ぐらいになっております。これは、石ある研究機関の中で十三人ということです。特に私たちのところはその中で四人採用しておりまして、この四月、昨日からまた二人ふえるわけですが、私たちは、助っ人という意味じゃなしにこの制度を別の意味利用させていただいております。  私はきょうは直研連代表幹事ということで、自分のところの研究所を申し上げてあれなんですが、例として申し上げますと、私たち研究所は、電気通信情報通信分野で唯一の国立試験研究機関でございまして、その分野人材というのが日本は非常に逼迫しております。長期的に考えましてかなり難しい状態にあります。長期的に見まして、外国人研究者採用していかざるを得ないんじゃないかという判断を持っておりまして、外国人採用しますといろいろな問題がありますので、そのための問題点の洗い出しというか予行演習というような形で、長期的な視点でこの制度利用させていただいておりまして、もともとの、この任期つき採用の本来の助っ人というところと違う形で利用させていただいております。したがいまして、本当の意味での、もとの意味での任期つき採用考えますと、さらに実際の利用は少ないんじゃないかというふうに今思っております。
  13. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。ともかく、いわば枠と言われている、研究中心を担う研究者の数がそもそも少ない上に、傾向としてはそれがますます削減される傾向があって、その点に抜本的な対策がまず必要であるというのが一点と、そういう状況の中で、さらに今度は、あくまでも臨時的といいますか助っ人的な性格をとる人たちが、本来の中心になって研究をする人たちのいわばポジションまで奪ってしまうということは、やはり今後の研究に非常に大きな障害をもたらすであろうというふうに理解させていただきました。  実はこの点については、例えば総務庁その他に伺いたいと思いますけれども、とりあえず最初参考人の御意見を伺って、全体像がわかった上で総務庁科学技術庁の方にはお答えをいただきたいと思いますので、その旨御理解いただきたいと思います。  まず、定員法の枠が非常に大きな障害になるというのが今の点でした。実は私の周囲にも研究者がたくさんいるのですけれども、民間から国の研究所に移って例えば短期的に仕事をする際に、やはり非常に大きな障害になるであろうと思われるのが給与の問題です。短期的であれ、自分の本来の研究の場を離れて別の場所で研究をするわけですから、最低限、経済的その他の環境が同一である必要があると思いますけれども、この給与の面で本当にそういった国研とそれから民間研究機関との間の給与格差、それが障害になるかどうか、直研連としてはどのような感触をお持ちなのか、あるいは具体的なケースでも結構ですし、統計でも結構ですけれども、そういったデータをお持ちかどうか伺いたいと思います。
  14. 畚野信義

    畚野参考人 今給与の件で御質問ありましたけれども、毎年人事院には民間に準拠して公務員給与を勧告していただいております。私たち公務員としましても、最近は全体的にはかなり改善されたと思っております。ただ、これは全体的な話でございまして、私たち研究所といいますのは、研究者採用するときに、研究所を持てるような大企業と闘ってとらないといかぬのです。このために、これを比較しますと、まだかなり給与的な格差がございます。  それで、実際にどの程度の差があるかというのは、最近、私たちのところと科学技術庁さんが協力しまして、例えば同級生相場という調査を始めておりますけれども、これを具体、定量的に出そうとしておりますが、現実感覚としましてかなりまだ差がございます。ですから、例えばこういうので民間から任期つきで一時的に採用しようといたしますと、これはもう当然給与は下がります。ですから、そのとき喜んで来てくれるというのは、いろいろな意味国研研究することに魅力を持っていただいている方にはそれなりの道が開けて朗報かと思うのですが、これはまた非常にまれな例じゃないかと私は思うわけです。  現実の問題として、私たちは、現実給与が下がるというだけではなくして、先ほど申し上げましたように、こういう任期つき採用の場合は、助っ人として特別な能力のある方に一時的に来ていただくというわけでありますので、前からずっとおります公務員よりも少しはよくなっても決して不公平だとは思わないのです。私たちは、必要である、こういう制度を実効あるものにするためには、それはやはり必要なんじゃないかというふうに考えております。  それからもう一つは、やはり現在の公務員給与制度といいますのは、終身雇用を前提にしておりまして、長期間勤務して、退職金を含めた上で決められたものでありますから、一時的な給与だけで比較して同じものでないと公平を欠くというのは、むしろ私たちとしては、感覚として公平を欠いているんじゃないか、不公辛なんじゃないか、給与そのものの骨組みを変えるというのは難しいかもわかりませんが、一時的な手当とか何かで実質的に米やすいような枠組みを、仕掛けをつくっていただかないとなかなか実効が得られないんじゃないかというふうに考えております。
  15. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。給与の面でもかなり問題がある。趣旨としては、結局、研究交流を促進するということで、その点については私も含めてここにいらっしゃる方々ほとんど、ぜひもっともっと交流を促進すべきだという点では一致していると思います。  そのためにこの法案が出てきたわけですけれども、具体的に現在の時点でも、一つ定員法による枠がどうも問題になりそうだ、もう一つ給与が問題になりそうだ、そのどちらの一つをとっても、例えば具体的にこの法律ができた際に、では本当に人が来てくれるんだろうかというところにかなり深刻な影響を与える問題だと思いますが、それが二つもそろっていては、具体的にはほとんど来てくれる人がいないかもしれない、法律ができて制度は整ったけれども、それが、十分な措置を法律の中に盛り込んでいなかったために、実際には、例えば五年たってみたら実績がゼロという可能性が出てくるかもしれない、そういうおそれもちょっと感じているわけです。  直研連から見て、では、その現在のような法律案で本当に、例えばこれから仮に一年ということを考えますけれども、百人単位の人が民間から来てくれるのか、あるいはせいぜい多くても十人とまりなのか、あるいはそれも難しくて、一人、二人という数でも動いてくれればいいというような感じなのか、その辺のところの感触はおありなんでしょうか。それともある程度のデータがあって、この人は絶対に来てくれるというような事前のインフォーマルな話があったりということは実際にはあったのでしょうか。その辺を少し、感触でも結構ですから。
  16. 畚野信義

    畚野参考人 先ほど外人の任期つき採用の例を申し上げましたが、これは実施されてからもう数年たっておりますけれども、現在十三人程度、これは日本人のものをあれしますと、具体的には民間から来ていただくというのは今のような制度ではなかなか難しいだろうと思います。ですから、一つたち考えているのはオーバードクターみたいなこともあり得るかと思っているのですが、このごろは、特に理系は大学院ドクターコースが空洞化しておりまして、ここのソースがなくなってきております。ですからかなり難しいのじゃないかという印象を受けております。
  17. 秋葉忠利

    秋葉委員 そうしますと、今おっしゃったオーバードクター等の関係ですけれども、本来であればその定員枠内で任期がなくて、いわば終身雇用の形で、当然研究の本務といいますか中心になって働く研究員として採用されなくてはいけないような人が、実は現在の定員が少ないために、あるいはその条件がよくないために、助っ人であるべき任期つき制度というものを使ってそういった人を雇わざるを得ない。いわば研究者全体として考えると、これは既得権と言うと言葉が悪いですけれども、これまでの研究者に対して保障されていた最低限の条件さえも危うくなるような形での採用につながってしまう、制度の崩壊につながる可能性があるという御指摘だというふうに理解しておりますが、それでよろしいでしょうか。
  18. 畚野信義

    畚野参考人 制度の崩壊とまでは感じておりませんけれども、確かに全体の採用計画にひずみを与えることがございます。  それから、ただ一つ、私たちは、今オーバードクターと申し上げましたのは、現在の研究者採用システム、国家公務員の試験がございますが、これはいわゆるゼネラリストを採用するための試験でございまして、研究者というのはスペシャリストでして、あの試験を通ったからといってなかなか研究者に向いていない場合もございますので、そういう意味で、研究者としての資質を確認するというようなことではある程度使えるんじゃないかなと思うのですが、これはかなりまれなケースではないかと思います。それで、それにつきましてはまた別の制度、もっとそれにふさわしい制度があるべきだと思っております。
  19. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。  今この法案で取り扱っているケースというのは、民間から国立研究所に一時的に研究員がやってくるということですけれども、国研同士の交流あるいは学会等への参加、それから国立あるいは私立の大学との交流といったことももちろん交流の中で非常に重要な位置を占めているわけですけれども、その中で特に障害になっているのが研究兼業ということであるというふうに私は理解しております。これは、何人かの方からこの点についても御指摘もいただいたわけですけれども、この研究兼業について具体的にはどのような障害があるのか、どういった方向で改善されるべきか、これも簡潔にお願いできたらと思います。
  20. 畚野信義

    畚野参考人 私先ほども申し上げましたように、私たちが重視しております一つにこの勤務時間内の研究兼業がございます。研究活性化かぎと申しますのはやはり研究交流の活発化でございます。  それで、これには幾つかございますが、例えば企業ですとか特殊法人などとの共同研究の例、これも、共同研究を設定して、それぞれが別のところでこそこそやって、時々会合を開く程度では実効が上がらないのですね。実際に自由に行き来しましてやるということができないと実効が上がりません。そのためには、やはり勤務形態につきまして弾力性を持たす必要がある、いわば勤務時間内に研究兼業が可能であるということが必要であると思います。  それで、例えばそのほかに私たちが重視しておりますのは、私立の大学との研究交流でございます。これはどういうふうな形でやるかといいますと、まず私たち国研の方から私大の方へ講義に行きます。それで学生を受け入れる。こういうことで、非常に活力のある、一緒に研究できるような雰囲気が盛り上がるわけでありまして、これで研究活性化だけでなしに人材の育成ということにも効果があると私たち思っているわけです。  現在、私たちが私大に講義に行くというのは時間外しか認められておりませんで、したがいまして、土曜日の午後ですとか、まあ今後土曜日が休みになりましても、土曜日は一日になりますが、これも休みの日であります。あるいは日曜とか夜とか、こういう時間には学生は余り出てこないですね。実際にはやるなということと同じではないかというふうに私たち受けとめておりまして、国立大学では、これにつきましては先ほども申し上げましたように、教育公務員特例法というのがございます。私たち、前からそれと同じような研究公務員特例法というのをお願いしたいということはいろいろなところで申し上げているわけですが、今度の研究交流促進法の中身をそれにできるだけ早く近づけていただき、そういう中身を盛り込んでいただきたいというのが希望でございます。
  21. 秋葉忠利

    秋葉委員 その点については私も、全く私自身の経験からも今の御意見、大変重要な点を指摘されているというふうに思います。  それからそのほかにも、先ほど御指摘がありました研究の助成ということですけれども、例えば、これは国立大学では奨学寄附金制度、そういった制度があって、それで産学の研究交流が行われているというわけですけれども、私の理解するところでは、国研ではそのような交流は認められていないということで、同じ国の研究機関でありながら、国立大学とそれから研究機関国研とではどうしてそういう違いがあるのか、どういうふうに改善すべきだとお考えになっているのか、伺いたいと思います。
  22. 畚野信義

    畚野参考人 今御指摘のとおり、私たちには現在認められておりません。国立大学には認められておる。これはさかのぼりますと昭和二十三年の閣議決定があるそうでありまして、「官公庁における寄付金等の抑制について」というのに基づいているのだそうでありますが、それ以後のあれにつきましては私たちは全く不明でございまして、正直申しまして、大学が受け入れられて私たち同じ国の研究機関が受け入れられないということについては理解に苦しむというところでございます。
  23. 秋葉忠利

    秋葉委員 閣議決定だけで国の研究の方針といいますか国研のあり方がこれほど大きく、しかも昭和二十三年といいますと一九四八年、戦後すぐの状態で、現在とは国際環境もそれから研究の占める位置というところも非常に大きく違っていると思います。当然、閣議決定で行ったことであれば閣議決定でその方針を変えることもできるわけですから、例えば、科学技術庁長官、こういったところはぜひお考えいただきたいと思いますが、後ほどまた幾つかの問題点を提起するときに改めて申し上げたいと思います。  それから、もう一つですけれども、予算執行面でもいろいろと問題があるという理解をしておりますけれども、具体的にどのような問題があり、どのように改善されるべきであるか、御意見を伺いたいと思います。
  24. 畚野信義

    畚野参考人 予算執行面で、私たち研究といいますのはやはり弾力的な運用がどうしても必要であるといつも考えております。  二年ほど前に、一年半ほどになりますか、科学技術庁科学技術政策研究所が、民間日本の有名な大企業、典型的な企業十幾つかのそれぞれの研究部門の責任者、例えば基礎研究所の所長さんであるとか研究推進本部長だとか、そういう方を一人一人呼ばれまして講演あるいはヒアリングという形で意見を聞かれまして、それをまとめられた報告書がございます。その中で、民間企業が最近基礎研究も進めてきていると。これにつきましては、民間企業が基礎研究をやるについてはそれなりの目的がありまして、将来いずれは自分たちの商品に結びつくであろうというところで必要な基礎研究をやっておられるわけでありまして、かつてはそこの部分は技術導入でやっておられたのですが、それが認められなくなった、あるいは民間企業に体力が出てきたということでやっておられるわけでありますが、それを進めるについてどういうことを注意しておるかということを幾つかの項目を挙げておられます。その中で、例えば「創造的研究に重要な項目」ということの中に「予算運用のフレキシビリティーを確保する」というのがございます。  それで、現実の問題としまして私たちの場合について申し上げますと、今御質問ありましたように、現在の会計法規が予算費目非常に細分化しております。一つ、これも私たち研究所の例を挙げまして失礼なんですが、私たち、先ほど申し上げましたように情報通信関係の研究をやっておりまして、特に御承知のようにNTTの民営化以後、有線分野も含めて全部カバーする責任が出てきております。予算、要員等について手当てがないものですから、非常に責任だけがふえて非常に苦しい状態であるわけでありますが、それは別としまして、そういうことで通信のネットワークの研究もやっておりますが、これには外部のいろいろな機関と共同で研究をやるわけであります。  ここで、今からいいますと一年半前、平成二年の十月ごろですが、その研究計画を進めております中で、通信の専用回線を借りなくちゃいかぬということがわかったわけであります。十月という時期も悪かったのですが、十月というのはもう既に、当時は平成二年でありますが、平成三年度の概算要求を出した後でございます。ところが、この専用回線を借りるには、通信専用回線料という項目で予算を要求して認めていただかなくちゃいかぬ、普通の電話料からはもう払えないというのが現在の予算制度でございまして、したがいまして、平成二年の十月にそれがわかったわけですから、平成三年度の予算に間に合わない、平成四年度からしかない、一年半後しか研究がスタートできないというような状況に陥ったということであります。  そのほか、例えば旅費でございます。外国旅費が少ない。これは私たちだけではなくて大学の先生方も皆おっしゃるわけでありますが、例えば私たち研究所は、先ほど申し上げました九十幾つ国研の中で大きい方から、比較をするパラメーターによりますが、五番から八番程度のところに入っておりますが、職員が四百三十人ほど、そのうち研究者が二百八十人ほどでございます。この中で一年間に、毎年郵政省から国の旅費で認めていただいて外国の学会で発表できるのは十件足らずでございまして、いわば一生に一回行けるかどうかということになります。  これは行政の方とは違いまして、研究というのは、外国の権威のある学会で発表するというのは研究一つの締めくくりあるいはエポックでございまして、ここで成果を発表しないと研究のプライオリティー、優先性を主張できないことになります。そういう意味で、もしここで発表の機会を失いますと、それまでにその研究にかけました費用とか努力というのが全部むだになる、外国のあれになる。これは具体的な例は、例えばオゾンホールの問題なんかでもやはりそれに似たような例がございまして、あれは最初日本研究所がデータを手に入れたわけでありますが、今はイギリスが発見したというようなことになっているというようなこともございまして、そういうようなことがいっぱい起こる。そういう意味で私たちは、この外国の学会で発表するような旅費というのは、研究費の中の一部では当然あるべきだと思っております。  さらに、私が最初申し上げましたように、特に研究者の意識の改善、改革、資質の向上をやっている。したがいまして、中での処遇も今までと違うやり方をやっております。すなわち、成果に基づいてその評価をやって、処遇もそれに大きく基づいてやる、いわゆる成果主義でございますが、ところが、おまえは成果が上がっておらぬじゃないか、いや、発表の機会が得られなかった、なかったというような言いわけすらできるというようなことで、非常にやりにくいのでございます。  この際、ちょっと申し上げさせていただきたいのですが、研究と行政というのはいろいろな意味でカルチャーが違います。違ったやり方をしないと効果は上げられないということでございます。研究の方は行政と違うわけであります。  ところが、例えばこの予算のやり方一つとりましても、外国は非常にフレキシビリティーのあるやり方、年度を繰り越すようなこともできるし、それから、例えばオーストラリアなんかではワンポケットになっております。予算は全部一つ。その中でどういうふうにでも使える。これはアメリカとか欧米の先進国でも、やはりそれに近い仕切りがありましても非常に大ざっぱでありまして、ちゃんとした理屈が通れば、お互いにそれをクロスして使うことができるような形になっております。  ところが、日本の場合、先ほど申し上げましたように費目が非常に細分化されておりまして、これは誤解を恐れずに申し上げますと、極端な言い方をしますと、日本は、私たち研究はもうすべて行政のシステムで動いている。なぜかというと、日本にはかっては本当の意味での研究がなかったのではないか。したがって、いろいろなひずみを抱えながらも、行政のシステムで研究をやってきたような形があった。しかし、やはり一番初めに申し上げましたように、日本研究そのものが変わることが求められて、本当の研究をやらなくちゃいかぬということで今矛盾が噴出し始めているのではないか。今やはりそういうことについて考えていただいて、これを改善する方向へ持っていっていただきたいというのが希望でございます。
  25. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。どうもありがとうございました。  今のお話を伺っておりますと、国の政策の原則として、国は例えば、簡単に言ってしまえば、金は出すけれども口は出さない、研究者のかなりの自由に任せる。もっとも研究者の方では、お金の使い道は自由だけれども透明に、まあ当然公開されなくてはいけない話だと思いますし、それから、研究の評価というのは当然柔軟に行われなくてはいけないけれども、しかしながら厳しくといったあたり原則を守れば、それでかなりのところがうまくいくというような印象を受けました。  それに関連しまして、実は科学技術庁で私たち法案説明を受けたときに、こういう二枚紙をいただきました。それで、このところで、なぜこういうことが必要なのかという理由の中に、例えば論文被引用回数割合、それからノーベル賞の受賞者数、それから研究者交流アンバランスというような三つの、現在の日本で恐らく問題にされているというようなデータが出ています。  これを見て実は考えたのですけれども、例えば今おっしゃった旅費の件ですが、日本研究者の例えば海外出張の費用が、現在の仮に五倍でも十倍でもに倍というのでは余り効果はないと思いますけれども、仮に五倍、十倍になったとする。ということは、海外の学会に今までよりもまあ五倍、十倍の頻度で出かけることができるということになるといたしますと、少なくとも私の経験では、一回の学会に出れば最低十人ぐらいの研究者とは話ができる。実は、論文の被引用回数というのはいろいろな要素が影響していまして、例えば私の経験でいえば、知っている研究者の論文というのは大体よくわかっていますから、どうしてもこの論文でなくてはいけないという引用もありますけれども、そうではなくて、例えばある具体的なデータなり成果を使う際には、十人の人の論文を引用できるけれども、その中の一つだけ引用すればいいというケースも非常に多くあるわけです。すべての研究が最先端の研究ではありません。具体的な基礎を積み重ねる研究も非常に多いわけですから、その際には、例えばきのう学会で会った人の論文をたまたま手に持っていて、ああこれに書いてあるからこれを引用すればいいやということで使うことも非常に多い。  そうすると、例えば十回、今よりも十倍そういった形で海外の学会に出れば、論文の引用数は、私は、少な目に見積もって倍、三倍、五倍ぐらいにはなるだろうというふうに思いますし、それから、十回いろいろな研究者交流をして話をすることによって、共同研究というのは恐らくその中から一つや二つは簡単に出てくるだろうというふうに思います。  そういたしますと、例えばここで科学技術庁が非常に大きな問題だというふうに考えている論文の被引用回数を改善する最大の道は、今おっしゃったような予算をふやすということ、特に、その学会参加のための障害を取り除いて、外国に研究出張として出かける頻度を今よりは例えば五倍のオーダーあるいは十倍のオーダーで増すということ、そのことによってこれは著しい改善ができるというふうに思いますけれども、畚野さんはどうお考えでしょうか。
  26. 畚野信義

    畚野参考人 今一番初めにおっしゃいましたように、研究というのはやはり、一つ一つ実際にやるところに細かいくちばしを挟まないで成果だけを厳しく問うと。研究というのは一種の請負業でございます。例えば研究者にとりまして研究というのは、成果を上げれば全部自分のものになる、自分のレビュテーションが上がるわけです、論文を出しますと。しかし、成果が上がらなければツケは自分で払わなくちゃいかぬ、こういうシステムでないと研究の成果は上がらないのですね。  今旅費の件でおっしゃいましたけれども、今の五倍であるか十倍であるかで、定量的には適正なのはどのくらいかということは、ケース・バイ・ケースで一言で言えない。  また、私が希望しているのは、必要な場合には出せるというシステムでありまして、五倍割り当ててやるよというようなシステムではない。そうなると、五倍割り当てでやる、十倍割り当てでやると、これはもう必要はなくても五倍、十倍使っちゃうようなことにもなりかねないと思いますので、もっとフレキシビリティーのあるというあれですが、ただ、今おっしゃいましたように、学会、国際会議に始終顔を出す、ちゃんと自分の論文を発表するというのは非常に重要なことでございます。  例えば論文の引用でございますけれども、これは、科学研究みたいなもので人間的な要素が出るというのは非常に反対な、非科学的な印象をお受けになるかもわかりませんが、研究者というのは、先ほど申し上げましたように、個人の成果でございまして、研究者のその人に対する信用というのは物すごく大きい。ですから、例えば同じ引用できるような論文がありまして、先生おっしゃったように、前の日に会ったということだけじゃなしに、始終そういう重要な学会に出てきて発表しているということでその人の信用がつくわけですね。何年かに一回しか、たまにしか出てこない、では、あの国でもあいつは大したことじゃないんじゃないかというような評価を受ける。そうすると、どれを引用しようかといった場合には当然、今先生おっしゃいましたように引用していただけなくなるということがございます。  そのほかにもいろいろな、プライオリティーの問題もありますし、とにかく始終そういう第一線の国際的に認められた学会に顔を出して、そこで有名になるといったら語弊がありますが、そこで認めていただくということがこれは非常に重要なことでありまして、また研究者にとりましても、それが刺激になる。いろいろな意味で重要であると思います。
  27. 秋葉忠利

    秋葉委員 実は、こういった問題の認識については、恐らく科学技術庁それから総務庁その他の官庁の方々も同じではないかというふうに思います。問題があるということは皆さん恐らく当然御理解されていると思うのですけれども、それに対する対策現実的な難しさというのはいろいろあるわけですから、今畚野さんの方から挙げられた具体的な幾つかの問題について、科学技術庁それから総務庁の方からお答えをいただければと思います。  幾つかの点というのは、改めて確認しますけれども、定員法にある枠、有限任期の場合にはその枠外にすべきではないか。研究兼業、これは時間内ですけれども、認めるべきではないか。それから給与格差ということについて特別な配慮をすべきではないか。さらに予算の執行について柔軟性を持たせるべきではないか。さらに、国立大学並みに奨学寄附金制度を認めるべきではないかといった点になりますけれども、科学技術庁それから総務庁のお考え。ぜひ、もうそんなことば言われる前に十分やっているんだというお答えであればすばらしいと思いますし、一年以内にすべて実現しようというような英断をここで発表していただければ、畚野参考人も非常に喜ぶと思いますけれども、いかがでしょう。
  28. 長田英機

    長田政府委員 今、参考人の方から、純粋に研究者としての立場から非常にいろいろな点のお話がございまして、私ども科学技術振興に当たっている立場としては、気持ちとしては非常にわかるわけでございます。しかし、片や国民の税金を使い、あるいは国家公務員として全体に奉仕するという立場もございまして、結局はそういうことのバランスをどうやっていくかということの問題だと思うわけでございます。  今先生御質問の私の担当のところを申し上げますと、例えば任期つき外国人及び邦人の採用に関して、定員枠外化という問題でございましたが、これは従来からも議論ございまして、定員枠外化というものはなかなか難しいわけでございます。したがいまして、定員の枠内でありましても、採用とか退職とか、いろいろそういう年々の異動の中でやっていくということで、これを活用していっていただくというのが現在の状況でございます。私聞いている限りでは、平成四年度から工業技術院が機構を改革しまして融合研究所とい うのをつくられる。この研究所の目的は、いろいろな分野の方を課題に応じて集めて、離合集散していくというとちょっと言葉があれかもしれませんが、そういうような目的の研究所もつくられるということでございますので、そういうような分野についてはかなり使われるというふうに通産省の方から聞いております。  また、処遇の件でございますけれども、これも実は研究者の方の処遇が非常に、水準を引き上げる必要があるということで、大臣みずから人事院の総裁のところに毎年毎年行きまして、何とかその処遇改善をしてくれないかということをやっているわけでございます。かなりそれは改善してきたと思います。一方、任期つき採用した場合、参考人の方からちょっとお話ございましたけれども、その方の給与と中の方の給与とのいろいろなバランスの問題とか、そういうこともなくはない、議論があるというふうに考えます。  いずれにいたしましても、科学技術庁としましては、参考人のおっしゃったことはよく理解できます。そういう問題について何ができるか、どうしたらいいかということを一生懸命に検討してまいりたいと思います。  それから、先生御指摘のもう一点のグラントの問題でございます。研究公務員研究助成金と外部の資金を受領するという問題でございますが、これは、外部の資金を受領いたしますと、その資金研究所の中なり、研究所の外でも勤務時間内ということになりますと兼業問題ということとやはり絡むわけでございまして、その兼業がなかなか難しいということになりますとこれは実質的に効果を上げない、こういうことになるわけでございます。現在、私ども制度もございますが、国研民間資金を導入する場合には受託研究という形で一度金が国庫に入って、そしてそれが予算として計上されて出ていく、非常に窮屈であることは確かなのでございます。こういうような制度になっております。しかしながら、科学技術会議におきましてもいわゆる研究資金の多様化というようなことは言われておりますので、私どもとしましても、科学技術庁としてはこういう外部資金の受け入れのあり方につきましてこれから関係省庁ともいろいろ相談しながら検討をしていきたい、考えていきたい、こういうふうに考えます。
  29. 久山慎一

    ○久山説明員 御質問の総定員法の関係についてお答え申し上げます。  いわゆる総定員法と申しますものは、定員の総数を抑制しながら内閣責任のもとに行政需要の動向に応じて定員の適正配置を弾力的、機動的に行うことを目的といたしておりまして、その適用対象となる職員の範囲はできる限り広いことが望ましいというふうに考えておるところでございます。  今回の法案で新設されます任期を定めた研究公務員につきましては、その勤務の実態等から見まして定員内の職員として採用されるべきものでございまして、総定員法のこのような目的からすれば例外とすべきではないというふうに考えているところでございます。また、これまでも国の試験研究機関定員につきましては、国家公務員全体として大幅な縮減を図ってきたところでございますが、そういう中にありまして、業務の実態等を精査しながら、関係各省庁と十分に御相談した上で所要の定員措置を図ってまいったところでございます。  今後とも、本法案による研究交流を進めていく過程で新たな研究需要が生じ、関係各省庁から試験研究機関定員の増員要求があれば、その要求内容を詳しくお聞きし、関係省庁と十分相談しながら適切に対処してまいりたいと考えておるところでございます。
  30. 秋葉忠利

    秋葉委員 今のお答えについて、科学技術庁のお答えですけれども、ちょっと論理構成に異議があります。  今の研究者側のその問題点はよく理解できるけれども、国民の税金を使うのであり、公務員は全体への奉仕であるから、それと現実に存在する問題との間のバランスをとらなくてはいけないということを最初におっしゃいました。私は、科学技術研究は本質的に全体への奉仕になっていると思います。しかもこれは平和研究ですから、あるいは企業が自分たちの利益のために行う研究ではありませんから、これは当然研究自体が全体への奉仕になっていると思います。それから、税金を使う際に慎重でなくてはならない、これはただ単に研究者だけではなくて、公務員もそうですし、当然政治家もそうです。ですから、そういったところとのバランスをとるというふうに言われると、あたかも研究者が全体への奉仕をしていないような感じになる、あるいはその研究をするということが税金の浪費であるというような前提がないとそういう答えは出てこないと思います。  ですから、その具体的におっしゃった現実障害ということはわかりますけれども、一番最初におっしゃったもう一方のバランスをとるバランスのとり方というところで挙げた理由は撤回していただきたいと思います。
  31. 長田英機

    長田政府委員 今私が申し上げましたのは、非常にふわっと申し上げましたのでちょっと誤解があったかもしれませんが、現在のいろいろな制度といいますのは、そういう国の金を使うとか、あるいは公務員制度も全体に奉仕するというような角度からいろんな制度ができておりまして、その現実にある制度と、それから今おっしゃられた研究者のいろいろな問題とのバランスをとりながらいく必要ということで、研究が税金のむだ遣いとかあるいは全体に奉仕しないとか申し上げたつもりは全然ございません。そういう意味では……(秋葉委員最初の言葉は撤回されますね」と呼ぶ)誤解を招きましてまことに申しわけないと思います。
  32. 秋葉忠利

    秋葉委員 それで、全体的な論理構成はそれでいいですけれども、難しさは確かに私もわかります。それは直研連方々、具体的に国研研究をしている研究者個々方々にも十分おわかりのことだと思います。  問題は、そういう困難さがあるけれども、研究者としては当然研究をする際にこういった方向が望ましいということを、これはただ単に一人、二人の人が言っているわけではなくて、九十三の国立研究所研究者たち自分たちの代表を通じて、結論としてかなり明確に、具体的にこういった改善策が必要だということを打ち出してきている問題です。しかもこれは、私の考えをここで差し挟むのは僣越かもしれませんけれども、かなり客観性のある、つまり世界的にもこういった問題があるということは十分納得できる指摘だと思います。したがって、それを改善することは、確かに科学技術研究の振興につながるし、その一部としての交流の振興にもつながるということは明らかだと思います。  問題は、それでは、そういう問題があり、解決策がある際に、具体的に科学技術庁としてそういった解決策を取り上げて、リーダーシップをとって日本の行政の中で実現していく気があるかどうか、気があるんだったらそれはいつ始めるかというレベルの問題だと思います。そのことをぜひ私は、これは質問通告はしておりませんけれども、とりあえずはこういった問題について検討を始めるというところで、大臣に前向きの答えをいただければ大変ありがたいと思います。
  33. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 私も、ただいま畚野さんの話を大変重要な事項として拝聴したところでございます。  実は、きょうは科学技術庁の所轄の五つの研究所の所長さんにお昼休みに来てもらいまして、いろいろ話を聞くことにしておりました。ちょうどこの委員会と重なりましたので困っておるところでございますが。  私どもは、申し上げるまでもございません、積極的に政府としまして基礎研究を進めておりますので、その中核であります国研の皆さんの御意見を十分に聞いて、いろんな面でこれを反映しなきゃならぬ。今度の研究交流法の改正につきましても、十分にいったかどうか心配でございますけれども、お話を聞きました。さっきのお話で、完 全ではないけれどもかなり改善されたという御意見で、評価をしていただいたなと思っておるんであります。  きょうお話しの点は三つに分けて、人材の確保、予算の面、身分の面ですね。人材の面につきましては、私の方もきのう六十数名の新入生を、文科系も入れまして迎えまして、私もさっと皆さんにお会いしたのでありますが、各省で一生懸命掘り起こしに努めておられると思います。  予算の点につきましては、私も主計官を長いことやっておりましたので身につまされる点もございます。確かにこれはいかぬなと思いました。もう少し研究費につきましては、さっき話がありましたように、フレキシビリティーを持たしていかなきゃならぬのじゃないかということを感じました。確かに費目も細か過ぎますね。それから助成金の受け入れでありますが、これは二十三年、どういう経緯で決めたか知りませんけれども、やっぱり綱紀粛正とかいうことを中心にして決めたと思います。それから大学の方には特別会計もございますからやりやすいと思うんでありますが、これも事務方に指示して、財政当局と検討いたします。  それから、旅費でございますが、実は私の長男が私大のプラズマの助教授をしておりまして、国立大学の皆さんとおつき合いしておりまして旅費の話が出て、私も文部省に注文をしたりしたこともございますが、確かに十分ではないようでございます。ろくでもない会議なんかに適当に行くような外国出張は、これはそんなものは必要ありませんが、本当に重要な外国旅行は、お話がありましたように研究費の一部で見てあげるべきだと思います。科学技術庁でもその点を心配しまして、科学技術の振興調整費で若干の御面倒を見ておりますが、今後ともこの点は、すぐできますからやります。うちだけでもやりますから。そのかわり、めったな出張は許しません。遊びに行かれるようなことはいかぬと思います。そういうふうに、できることからやらしてもらおうかと思います。  確かに研究費が行政のシステムで動かされている、そういう感じがいたします。ただ、私きょう申し上げたいことは、科学技術庁のある研究所に参りました。で、若い研究者数人と話をしました。そのときに、研究費が足りますかと聞きました。僕は、これではいけませんと来るかと思ったら、結構でございますと。勉強してなかったらだめでございますが、勉強しておれば、所長さんにこういう研究をしておりますと、そうか、あとどれだけ要るか、これだけ要りますと言うと出していただけます、十分でございますという返事を聞きまして大変心強く思いました。だから、所長さんにおかれてもしょっちゅう研究員の仕事ぶりを評価されまして、その評価に応じて、サボっておる者には出しませんが、研究している人には、十分ではありませんけれども、その中から特別に配慮をするという配慮が必要ではないか。評価が非常に大変だということを痛感いたしました。  それから、給与の面、身分の面、定員の問題とか、いろいろ今総務庁からも話がありましたが、これもよく相談をいたします。なかなかこれは難しい問題でございますね。でございますが、相談をいたします。  それから、勤務の弾力性。確かに、私大に教えに行く、時間内に行ったっていいじゃないかと思います。私のところの長男なんか方々へ行っておりますが、これは私立だからできますが、これもひとつ一緒になって研究をしていきたいと思います。  いろいろ難しい問題もございますが、基礎研究推進、これは大きな課題でございます。今のたくさんの問題、すぐいつからやるとお約束はできませんが、研究をすることを申し上げまして、お答えといたします。
  34. 秋葉忠利

    秋葉委員 大変前向きなお答えをいただきまして、ありがとうございます。私たち基礎研究推進科学技術推進というところでは方向は同じでございますので、障害が取り除かれるように微力ながら一緒に協力をさせていただきたいというふうに思います。  時間が残り少なくなったのですけれども、具体的にもう一つの、三本柱のうちの一つですけれども、国際共同研究の成果の特例という点について何点か伺いたいと思います。  実は、まずこれは今回の特例がなぜ出されなくてはいけないかという点に関連があるわけですけれども、国が委託をした研究あるいは国が受託をした研究、その双方においてその成果、例えば特許権が生じた場合には、それは両方とも国の帰属になってしまうというのが現状だと理解しておりますけれども、その法的根拠を簡単に説明していただきたいと思います。
  35. 長田英機

    長田政府委員 実は明文の規定をもって特に法律に書かれているということではないわけでございますが、従来からの運用といたしまして、国が委託研究する場合には、国が資金を出している、全額出しているというような点にかんがみまして、研究成果、その委託の成果を国に帰属してきた、こういうような考え方でやってきております。
  36. 秋葉忠利

    秋葉委員 今のは委託の研究の場合だけで、受託の場合には、これは特許法の二十九条でいいのでしょうか、ともかく発明者が特許権を持つというのが受託の場合。それは法的根拠があるわけです。ですから、国が受託をした場合にはそれはそれでわかるわけですけれども、委託の場合には今の特許法の原則を当てはめると受託者、例えば民間研究所が当然特許権を持たなくてはいけない。にもかかわらず、法的根拠は何もなくて国がそれを契約によって吸い上げてしまっているというのが現状です。それが特例なのであって、要するに特例法なんかつくる必要はなくて、いわば官尊民卑としか私には考えられませんけれども、きちんとした特許法の原則に従って発明者が特許権を得るという原則を生かせばそれで済む話だと思います。  時間がありませんので、この点について最終的にもう一つ伺いたいと思いますけれども、その前に幾つか前提について申し上げたいと思います。  今おっしゃいました、金を出す方が金を出しているのだからその成果を受け取って当然だというのは、確かに一つ考え方だと思います。しかしながら問題は、仮に金を出した方が特許権を持ってもいいのだということであれば、例えば民間研究所なり会社が国に研究を委託した場合にも全く同じ理屈が通るわけですから、そうするとその場合には、仮に国が特許権を持っていても、契約によって委託を行った民間の方に特許権を譲り渡すということにならなくてはおかしい。ところが、国がもともと特許権を持つ場合には国がそれは譲らないでおいて、国がもともと特許権を持たない場合には、そういう金を出した方が大事なのだという原理を適用して国が特許権を吸い上げてしまうというのが現状です。だから、なぜ国がそういうめちゃくちゃなこと、というのは原理を混用して使っているという点でめちゃくちゃなわけですが、それをやっていいのかということが実は問題になってくると思います。その最終的な原理原則というところで、かなりゆがんだ形で特許法の精神が、生かされているというのはおかしいのですが、ゆがんだ形で特許法が運用されているというふうに思います。  さらに、知的所有権の問題として、工業的な問題だけではなくて、より広い意味での知的所有権の問題が現在世界的な調整を行わなくてはいけないような時期になってきている。そういった点も考え合わせて、この特許権のあり方、特に国とそれから民間、あるいは日本と外国との間といったことを考えた上で、特許権も含めた知的所有権、それを科学技術の立場から特に抜本的な再検討をする時期に来ているのではないかというふうに思います。  それも、抜本的な再検討というのを二十年先にやられてもこれはまた困る話で、少なくとも時間としては十年あるいは五年といったところである程度の結論が出てこないと、世界的に非常に大き な混乱を招くもとになるのではないか。さらにもうちょっと積極的に考えれば、この点について例えばアメリカがとってきた政策というのはやはり世界的に見て異常なところがあると私は思います。そういった面で、日本がこれから将来リーダーシップを発揮するという意味においても、国内での知的所有権のあり方、それをまず抜本的な再検討の対象にするということが必要だと思いますけれども、科学技術庁としてはどうお考えでしょうか。
  37. 長田英機

    長田政府委員 それでは私の方から、先生が御指摘になられました委託と受託の場合にアンバランスがあるじゃないかという御質問でございますが、私どもも見ますと、先生のお話の両方ちょっとちぐはぐでおかしいじゃないかという議論が理解できます。  そういう点から受託につきまして、この交流法を六年前につくりましたときに、共有の道を開くように直したわけでございます。また一方、今回の委託は国際共同研究だけに実は限っておりますけれども、共有の道を開くということで、徐々ではございますが、改善努力をしているということでぜひ御理解いただきたいと思います。
  38. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 今お答えを申し上げました国際共同研究以外の国の委託研究につきましては、御指摘の点もよく検討いたしまして、それから関係省庁とも相談をいたしまして、中期的に検討してまいりたいと思っておりますので、御了承をいただきたいと思います。
  39. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。  特にこの際、たまたまミノルタの特許権に関連してのハネウエル社との和解ということが先日ございました。この点について、やはりこういったケースが今後世界的にもふえると思いますし、これは特許庁の方に伺いたいと思いますけれども、このミノルタのケースについて知的所有権あるいはこれからの特許権のあり方というところからどういうふうに位置づけているのか、特にアメリカのとっている知的所有権の保護を強化するという問題があるわけですが、その点も含めてミノルタのこの和解についてどのようなことを考えていられるのか、将来の指針とあわせてその認識を伺いたいと思います。
  40. 植村昭三

    ○植村説明員 お答えいたします。  先生御指摘のケースにつきましては、一義的には民間企業の問題だと思いますが、近時、日米間におきまして特許権をめぐる紛争が生じていることは事実でございます。これは一般的には、この背景といたしまして、米国も含めまして各国の特許制度の、あるいは運用、こういった違いがあるから、そういった相違から来ることもその要因の一つとして挙げられていることも事実でございます。現在、ガットあるいはWIPO、これは世界知的所有権機関でございますが、こういった場におきまして特許制度の国際的な調和、ハーモナイゼーションを目指しまして精力的に交渉が進められておりますが、政府といたしましては、今後ともこういった国際的な調和の取り組みに対しまして積極的に参加し、貢献してまいりまして、先生御指摘のような特許権をめぐる国際的な摩擦というものが生じないようにしてまいりたいと思っております。
  41. 秋葉忠利

    秋葉委員 実はこの点についてもう少し、何点か問題提起をしたいところがあるのですが、時間がありませんので具体的なその運用について一点だけ伺いたいと思います。  この改正案の中に盛られている特例、国際共同研究の際には特例を設けるということですが、その運用に当たって相互主義を原則にしているということを言われています。例えばその国際共同研究の中にアメリカの研究機関が入っているといたします。あるいは幾つかの国が入っていてもいいのですけれども、非常に難しい問題が幾つか生じる可能性がございます。その点について伺いたいのですけれども、詳細についてはまだ後で時間的な余裕があるときに説明したいと思います。  例えばアメリカの場合には原則的には国が委託をした研究民間がそれを受託した場合でも民間の方で特許権を得るというのが原則になっています。しかしながら、幾つかの例外があります。例えば国防に関連する場合、一つはそれが例外です。それから受託者が外国企業の場合、これも例外でございます。そうすると、アメリカとの相互主義というのは一体どういうことをお考えになっているのか。すなわち日本政府が委託をして国際共同研究が行われる、その中にアメリカの民間企業が入っている、その場合にアメリカのその例外規定をまず取り上げるとすると、それは外国の企業であるから、だから日本政府としてはそれに例外措置を当てはめるのだから、国が吸い上げてもいいという原則が成り立ちます。そうするとこの特例法というのは全く意味がないことになる。  あるいは、アメリカの企業といえども実はこれは民間であるというところが大事なんで、だから民間の業者というか法人というところでそちら側に基本的に特許権が行くというところを相互主義であると考えると、今度は研究者にやらなくてはいけないという問題がございます。  そのどちらをとるのかについて、あるいはそれ以外にも、アメリカの研究の場合には軍事研究絡みになると、軍事研究絡みになるということはアメリカの国防省が最終的に発言権を持つかどうかというところで線引きが行われるわけですけれども、それ以外の非常に複雑な問題も生じてまいります。  そういったことについてかなりきちんとした原理原則を設けておかないと、法の運用の面で非常に大きな不公平さを生じることになるというふうに思いますが、例えば今のケースの場合、あるいはそれをもとにして一体どのような基準を設けて運用の公平、公正さを図るのかというところを伺いたいと思います。
  42. 山路順一

    ○山路政府委員 お答え申し上げます。  先生の御指摘の相互主義でございますが、細部にわたります正確さを若干犠牲にさせていただきまして、この相互主義について御説明させていただきたいと思います。  この相互主義と申しますのは、基本的には委託を受けた外国側に与える特許上の取り扱いを、もし逆に当該外国が日本に委託した場合に、日本側に与えるであろう特許上の取り扱いと同等のものにするというのがこの相互主義でございます。具体的に申し上げますれば、米国の場合の御指摘でございます。  米国は、先生お話ございましたように、外国企業に委託した場合には一〇〇%米国に帰属するというのが現在米国の制度でございます。したがいまして、日本の場合には、日本が米国に委託をしたような場合には、先ほど御説明いたしました相互主義を使いますと、特許権等は我が国に帰属することになるわけでございます。
  43. 秋葉忠利

    秋葉委員 そうすると、例えば今度はフランスが入っている場合には、それは研究実施者であるので、そのフランスの研究所がチームの中に入っている場合にはフランス側に特許権が行くということでよろしいのでしょうか。
  44. 山路順一

    ○山路政府委員 複数の国で共同して国際共同研究推進するという例が、先生の御指摘の例えばフランス、米国、まあ英国が入ってもよろしいわけでございますが、先ほども相互主義と申し上げますのはその国が持っております制度、それに対応して我が国も対応していくということでございます。
  45. 秋葉忠利

    秋葉委員 実は非常に大きな問題点があるので、ちょっと時間が来ましたのであれですけれども、例えば各国がそれぞれの問題に関して、それぞれの実施者に対して例外規定を設けている。その場合に例外規定の適用が、実はアメリカの場合にも対外国企業の場合、すべて国ということではなくてかなり柔軟性のある運用がされていると思います。  その際に、例えばからっとした規則があれば話は別ですけれども、例外規定というものが存在して、その例外規定の運用が柔軟に行われているというのが私は実情だと思いますけれども、その場合に相互主義というのは、要するにそういったこ とについてのきちんとした基準を設けておかないと、運用の際に最終的にはいいかげんなことをやっているというふうに見られる結果になってしまいはしないかというところが問題点一つです。  ですから、それをどのように、ただ相互主義というだけではこれは解決しない問題ですから、かなり細部にわたって詰めていただく必要があるのではないかというのが一点と、それからもう一つ、各国が自分の国でやっている制度に準拠して特例を設けるんだということですと、日本に関しては、日本研究者に対して行っているそのままを適用しなくちゃいけなくなるのじゃないでしょうか。  つまり、この場合には国際共同研究に参加したチーム、それに属している日本研究所に対しては外国と同じように特例を認めるということになっていますけれども、そもそも、そのチームに属している外国の研究所に対しては各国のやり方が適用されるのであれば、公平さという点では当然、それに参加している日本のチームに対しては日本のやり方が適用されなくちゃいけないわけですから、そこのところで、その国際共同研究に参加した日本チームにだけ特例を与える。しかもそれは、今おっしゃった相互主義の原則に反する例外を設けるというところで、法的根拠でも結構ですし、論理的に依拠できる原則というのはそこでは何になるのでしょうか。  しかも、もう一点申し上げますと、その国際共同チームの中に例えばフランスとアメリカが参加していた場合に、フランスの制度とアメリカの制度は違うわけです。そういたしますと、それに参加している国内チームが例外として、国が吸い上げないとして一部分それに渡すとしたら、一体フランスの制度に準拠した特許権の移譲を行うのか、アメリカの制度に準拠した特許権の移譲を行うのか、そこのところも問題になってくるわけです。  そういう意味で、今おっしゃった相互主義というのは幾つかの例を考えただけでもう既に矛盾がその中に内包されているので、それをきちんとした何か原理原則、基準によって整理していただかないと、本当にいいかげんなことになっちゃうと思うのですけれども。
  46. 山路順一

    ○山路政府委員 お答え申し上げたいと思います。  まず一点でございますが、基準を設けたらどうだというお話でございます。(秋葉委員「基準というか、要するにきちんとした考え方でやってくださいということです」と呼ぶ)はい。  今回の改正条項は、必ずそうしなければならないという条項ではございません。そういうことができるということでございますので、個々具体的な共同研究の際に、先方のそういった条件を十分勘案し、相互主義を貫いていくということでございます。先生御指摘のとおり、今後私ども運用に当たりましては、そういう不公平さが出ないような基準等も設けてまいりたいと考えておるわけでございます。  それから、その次に、例えばフランスと米国と日本の法人等が共同研究をした場合に、それじゃ日本の法人はどちらの国の相互主義に従うのかというような御指摘でございます。本邦法人の取り扱いにつきましては、国際共同研究の構成メンバーである各国の法人等のうち、相互主義の最も条件のよい法人等の取り扱いと同様な扱いをしたいと考えております。
  47. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。最後の点については原則としては理解できますけれども、そういたしますと、大多数の受託者というのは実は国内、国際共同研究ではなくて日本国内だけの研究ということになるわけで、そういったいわば日本政府が一番最初考えて当然である日本研究者あるいは法人といった場合に、非常に大きな差別が生じることになるということを十分御理解いただいた上で、時間がなくなりましたので、例えばそういった差別を新たに導入することになるわけですから、それがあくまでも経過措置的な臨時のものであってこれが恒久的な制度にならないように、先ほどお答えいただきました特許権、知的所有権のあり方の再検討ともあわせてこの点についても十分検討していただきたい、そのことをお願いいたしまして私の質問を終わります。
  48. 近岡理一郎

    近岡委員長 竹内猛君。
  49. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 研究交流促進法の一部改正について質問をいたしますが、先般どきょう、秋葉委員からいろいろと詳しい質問がありました。重複を避けていきたいと思いますけれども、それにしても大事なことでありますから、長官にこの際もう一度、基本的な態度について伺っておきたいと思います。  この法案は六年前に制定をされたものでありますが、そのときには中曽根内閣の時代であり、世界が軍事、軍拡の時代であって、東西が大変危険な状態にあった。そういう中でSDIに利用されるおそれなしとしないということからして、社会党としては反対をしたものであります。  その後情勢が変わってまいりまして、米ソの軍事的な対立がだんだん解けてきて、経済体制もかなり大きく変化をしてきた。そういう中で軍縮、平和、こういう方向に向かっております。そういうときに、湾岸戦争が起こったときには日本から金も人も物も出せという形で、自衛隊を出せという要求が非常に強かった。ところが、あれが一応終わってくると、今度はまたカンボジアに自衛隊を出せというようなことを言う者がいる。日本の平和憲法があるにもかかわらず、現地から来てそれを踏みにじったような発言をすることは甚だ不愉快だ。こういうことでは国際貢献といってもできるはずがない。やはり日本日本の憲法を基礎にして国際貢献をやるということについては、何といっても、科学技術を振興してその力を海外に反映をしていくということでなければならない。  そういうことで私たちは、別に閉鎖的ではなしに、民生、そして非軍事の立場から国際的な貢献をしよう、こういう基本的な立場を持っているわけですから、これとの関連で、資源のない日本が加工貿易国として非常に経済大国になった、この日本が国際貢献をするためには何といっても科学技術を振興し、立派な人材を育成をして、その人たちがそれぞれの国々の労働力、土地、資源、こういうものを活用してその国を豊かにしていく、こういう協力が一番必要じゃないのか。それを継続的に進めていくということがより。必要である、これが平和憲法を持っている日本の国際貢献の道であるというふうに考えているわけです。これについて長官の決意を求めたい。
  50. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 全く同感でございます。豊かな経済力を持ち、それからまた高い科学技術力を持つようになりました日本といたしまして、先進国の一員として、科学技術をもちまして今お話しのように国際貢献をやっていく、これが一番大事な使命であると思っております。  いつも申しておりますように、まず日本としましては基礎研究を積極的にやっていく、そうして人類共通の知見を世界利用していただくようにやっていかなければならぬわけでありますが、具体的な、ただいまやっておりますことは、地球環境問題、それからエネルギー問題等、人類共通の課題に取り組んでいく。それから、国際的に共同して研究開発を推進していきますことが有益な、宇宙ステーション計画とかITER計画、それからヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム、ヒトゲノム解析、こういった国際協力に主体的に取り組んでいきますことが大変重要だと思っております。  それからまた、日本といたしましては、いつも議論されておりますように、外国人研究者を積極的に受け入れてまいりまして、そういう面でまた国際協力を果たしていく、貢献をしていく、こういうことをこれから積極的にやっていかなければならぬと考えておるところでございます。またいろいろ御指導も賜りまして国際協力を強力にやっていきたい、こう思っておるところでございます。
  51. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 本法案改正点というのは三つありますが、その三点の中心部分については先般、秋葉委員、川島委員からかなり突っ込んだ質問がありました。私は、筑波研究学園の地域に住んでいる者として、またそこの皆さんとの交流を深めている者として、この際、現場の声をひとつこの審議に当たって反映をしていきたい、こう思っています。  まず第一に、研究者の皆さんは研究の自由を求めています。それから、産官学の間に起こっているところの身分の安定、これを求めている。自由と身分の安定というもの、これは不可分の関係になっていますね。言いかえると、どこであっても誇りを持って研究ができる、こういうことを望んでいる。日本の雇用と賃金体系というものは年功序列型であり、終身雇用型の形態をいまだにとっている状態であります。それがまた基本的に崩れていない。そういう中で生活給というものがまだ成り立っていないわけですから、したがって、一貫して身分を継続する、それから退職金とか厚生年金とかというもの、これも心配がないようにする、こういうことがなければいけないと思っておりますけれども、これに対していかがですか。
  52. 山路順一

    ○山路政府委員 研究公務員が国の共同研究または委託研究の相手方での研究に従事するために休職して出向するような場合がございます。現行研究交流促進法におきまして、退職手当の算定上何ら不利益をこうむらないように法律第五条で措置されているところでございます。  また、御指摘の年金でございますけれども、休職中といえども公務員としての身分を保有するわけでございますので組合員資格を失うものではございません。したがいまして、国家公務員等共済組合法に従いまして休職期間中保険料を納付することになるわけでございますが、また、同法に基づきます保険給付も受けることが可能でございます。したがいまして、研究公務員民間に出向した場合には、退職金及び年金の取り扱いはそのまま継続されるということでございます。
  53. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 職場の声、現地の声としては、特に海外に出向する場合、出向く場合に、国家公務員という身分が非常に大事だということと、それを支えるために研究公務員特例法をつくってくれ、こういう強い要求があります、これに対して、いかがですか。
  54. 長田英機

    長田政府委員 研究公務員特例法と申しますのは、いろんな内容を含んでいるものと思いまして、その内容に特にまだコンセンサスはないんではないかと思うわけでございますが、いずれにせよ、研究者というものが、先生がおっしゃいましたように自由で、十分にその能力を発揮できるようにしなきゃいけないという角度のものだと思います。そのような法律が必要かどうかという議論について、コンセンサスはなかなかまだないと思うわけでございますけれども、先生のお話も伺いながら、これから私どもの検討課題であるとは思っておりますが、なかなか現在では難しいというふうに考えられます。
  55. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 まあ、ひとつその国際貢献をするために、遠慮しないでこの特例法に対してまっしぐらに進むことを要望します。
  56. 長田英機

    長田政府委員 先生のお話よく承りまして、いろいろ研究について自由に、また非常に効率的にできるように、いろいろな措置の面で努力をしていきたいと思います。
  57. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その次には、科学技術庁文部省及び他の省庁との関係、テーマの選択の問題、この問題について、縄張りというものが省庁の間にはどうしてもこれは、ないと言えばうそになる。これは歴史もあることだし、いろいろあることだから、ある。ところが、どうも科学技術庁は金は出さないけれどもようけい物を言う、こういうことが今言われている。いろいろなところで、これはだめだとかいいとか。文部省の方は、金を若干持っている、研究費を持っている。あるところにはかなりある。ないところにはないけれどもね。そういう点で、この縄張りというものをなくなしていくためにどのような努力をするか、これが大事だ。というのは、同じような研究所幾つかあるでしょう。同じようなことをやっているんだよ、これは。あるいは、集中してもっと壮大なものにできないかというそういう声もある。これはいかがですか。
  58. 須田忠義

    ○須田政府委員 科学技術庁では、関係各省庁の予算、これについては、テーマ、課題から含めてヒアリングし、調整し、意見書を大蔵省に出しておる、こういう作業を行っております。  ただし、先生御指摘のとおり、文部省大学のみにかかわるものというのは、これはその建議から除かれていまして、科学技術庁決してヒアリングをやっておるわけでございません。したがって、これについては科学技術会議科学技術会議文部省も含めて、代表も含めて全体についてヒアリングをいたしまして、その場でいろいろな重複の問題とかについては指摘をしておるということでございます。したがって、先生おっしゃる全体的なものは科学技術会議において調整していますし、関係各省庁のものは科学技術庁が調整しておる、こういうことでございます。
  59. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今度は、研究の姿勢及び人事の問題とかあるいは成果に関する問題ですね。特に、この特許の問題について先ほど来がなり突っ込んだ細かいお話がありましたが、最近、ガットの問題に関連をして、今までは価格の内外格差ということで農業、米の問題が新聞に大きく取り扱われてきたけれども、最近は特許における日米摩擦という問題が出てきた。なるほど、日本の場合には、海外の発明したいいものを取り入れて、大いにまねをして大もうけをするというようなことで、頭だたかれるのは無理はないが、これは一体、特許の今問題になっている背景、これについて通産省からひとつ。
  60. 植村昭三

    ○植村説明員 お答えいたします。  現在、特許の国際的な議論はいろんなところで行われておりますが、その一つの大きな場といたしましてガットの場がございます。ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉において特許の問題が取り上げられております。これは技術開発の進展あるいは企業の経済活動のグローバリゼーション、こういった面での急速な進展を背景といたしまして、特許権の保護水準を高めるべく、先進国のみならず途上国も一緒になって今交渉をしておるわけでございます。  それで、その結果でございますが、昨年の十二月二十日、いわゆるダンケル合意案が示されたわけでございますが、この中には我が国が当初目指しておりました項目がとられてないものもございますし、あるいは例えば米国におきましては非常につらい項目も入っておるということでございまして、この五年間にわたる交渉の妥協の産物と申しますか、そういったことでどの交渉参加国にとりましても不満足な点も入っているということでございまして、まあ我が国だけが不利になっているということはないと思いますが、そういう状況でございます。
  61. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 まあこの格差、米の場合には確かに格差があるから、安いから日本は自由にしろ、食管法をやめちまえ、こういうことで随分マスコミから何からその自由化の問題を要求してきた。特許の問題にしても、こんなに格差があるのにそのような話は問題に余り出なくて、ようやく最近になってから問題が始まってきている。それでこれは大変だという形になっているでしょう。一体この基準というものは、内外のこの国際的な基準というものはどういうふうになっておるのか。  それからもう一つは、国内においても大学が独自でやる場合、あるいは研究所がやる場合、あるいは委託をした場合、された場合、それから共同の場合ですね。いろいろとした、その成果についてどういう基準でこの特許というものについて知的所有権というものを保護をしていくのかという、そういう基準はありますか。国際的な基準、それから国内におけるところの基準。
  62. 植村昭三

    ○植村説明員 お答えいたします。  現在、知的所有権、特許権の国際的な枠組みを構築しているものにパリ条約、これは一八八三年 に締結されたものでございますが、がございます。ただ、これは非常に基本的な大原則、例えば内国民待遇であるとか、そういった非常に基本的な点について国際的な取り決めを行うにとどまっておりまして、具体的な特許を設定する基準といったものはそれぞれの国にゆだねられていたというのがこの百年間の歴史でございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、昨今の技術開発の進展あるいは経済活動のグローバル化といったことを背景といたしまして、それではいけない、やはり国際的な制度を調和させていくべきだという声が、そういう認識が非常に高まっておりまして、現在WIPO、世界知的所有権機関、これはジュネーブに本部がある国連の専門機関でございますが、そういったところでどういう調和の仕方がいいかということを今議論しているところでございますので、まだ条約締結には至っておりませんが、我が国といたしましても、そういった取り組みに対して積極的に貢献してまいる所存でございます。
  63. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは農業の場合でも、国内におけるところの補助金が多過ぎるとか少な過ぎるとかという議論、それから税金がどうだのこうだのという議論、こういうようなことがあって、そして、内外格差ということで米に集約されてきたような形がある。同じように特許の問題でも、これからますますこの促進法というものを前進をさせていけばいろいろな形での成果を上げてくるわけでありまして、しかも外国からの研究者、技術者も参加をして共同で研究をした場合の取り扱い等もあるから、早くこの問題については一つの基準なりそういうものをつくって国際的な約束事をしなければ大混乱をしてしまうじゃないかという心配がありますね。だから、この点についての努力を一層早めてもらいたいと思いますけれども、これはいかがですか。
  64. 植村昭三

    ○植村説明員 お答えいたします。  先ほどの答弁の最後にも申し上げましたように、我が国といたしましては、こういった世界的な調和の取り組みに対して積極的に貢献いたしまして、諸問題が発生しないように、制度あるいは運用の差といったことから生ずる問題が生じないように努力してまいる所存でございます。
  65. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 現場の声としては、研究費が少ないという声が大きいですね。それで、とりあえず現在の状況のもとで、研究費科学技術庁研究費については主導しているようですが、人当研究費、一般研究費、それからまた文部省の方でございますけれども、文部省が持っている研究費というものの取り扱い、これを比べて問題にしたいと思っていますが、両方からひとつ説明してください。
  66. 山路順一

    ○山路政府委員 国立試験研究機関文部省を除きましてのお答えを申し上げたいと思います。  御指摘の人当研究費でございますが、平成三年度予算では総額百二十六億円が計上されてございます。
  67. 雨宮忠

    ○雨宮説明員 大学におきます研究費といたしまして、大まかに言いまして二つございまして、今先生御指摘のように人当当たりと申しますか、国立大学の場合、いわゆる校費と称しているものが一つございます。もう一つは、研究者あるいは研究者がチームをつくって申請をして、審査を受けて採択されて研究費を得るという、科学研究費補助金がその典型でございますが、その二つがあるわけでございます。  前者の校費につきましては、その研究の性格が、やや細かくなって恐縮でございますが、実験的な性格のものやらあるいは非実験的なもの、あるいは大学院の充実度合い等々の基準によって算出しているものでございます。
  68. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 科学技術庁の予算の中で、一人当たり人当、一般、これを聞かないとちょっと話ができない。
  69. 山路順一

    ○山路政府委員 お答え申し上げます。  平成四年度予算案をお願いしているわけでございますけれども、一人当たりの人当研究費、百四十七万五千円から九十三万四千円の範囲でございます。
  70. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、問題があるんですね。  筑波で、近藤次郎さん、学術会議の会長さんが中心で世論調査をしましたね。その中で、まとめたものが新聞に出ているからこれを読んでみますと、こういうことになっているのです。   つくばの世界日本に対する貢献で、八割以  上の研究者が達成度が低いとしたのは、世界や  国内の「経済・産業の秩序づくりへの貢献」や  「人類の幸福につながる研究環境整備」など。  「独創的な研究を支援する環境の整備」「トップ  クラスの研究を支援する環境の整備」「異分野  の研究・技術の融合化・統合化」なども七割  以上が達成度が低いとした。こうしたつくばの  研究貢献を妨げている要因としては、五割以上  の研究者が、「研究資金不足」「研究補助員の不  足」「人材育成体制が不十分」「省庁の枠を超え  た人事交流ができない」ことを挙げていた。   つくばの研究人材育成を活性化する方法と  しての「文部省の枠を超えた大学院構想」に対  しては、七五%が「取り組むべき」とし、世界  各国から魅力ある科学技術大学院を誘致し、  そこへの参加を七割近くが希望。八割近くが大  学院誘致の効果を認め、産学共同の研究セン  ター設置を希望していた。 これが、偽ることない、筑波において今研究をしている研究者の声でありますから、これは私がつぐったものじゃない、これに対する感想をひとつ。
  71. 長田英機

    長田政府委員 今先生から、研究費の問題、補助員の問題、省庁交流の促進の問題、あるいは筑波における大学国研等の連携の問題、いろいろ多分野の御指摘がございまして、非常にごもっともだと思うわけでございまして、それぞれの点につきまして、私ども科学技術庁としましてはこれからも一生懸命取り組んでまいりたいと思います。
  72. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 せっかく国が立派な建物をつくって、広い研究の場所をつくってあるんだから、そこで研究する人たちが失望しないように頑張らなかったらどうしようもない。そのことが国際貢献の大きな道であって、鉄砲を持って飛んでいくのが道じゃないんだよ、これは。まあここで言ってもしょうがないけれどもね。  川島委員秋葉委員からかなり細かい話が出たから時間の関係で私は省略するけれども、外国から来る研究者あるいは国内のそれぞれの研究者、官学産あるいは産学官、そういう三者の結合でやっていく場合に差別があってはいけない、不公平があってはいけない。その不公平、不公正というものをどういうぐあいに取り除くかということについて、これは緊急の課題ですよ、どうですか。
  73. 長田英機

    長田政府委員 外国の研究者の点につきましては、日本人が外国へ行っているのと比べますとまだ、外国の方が日本に来る員数は十対一くらいの割合で少ないわけでございまして、私どもとしましては、とにかく外国の方が、外国の研究者の方が日本に米やすいようにいろいろ措置を講じなければいけないと思っているわけでございまして、そのために実は科学技術庁でフェローシップ制度というのを六十三年につくりまして、平成三年度は百八十名なのでございますが、それぞれ外国の研究者に対して旅費を支給したり生活費を支給したりするような努力をしております。また、そういう点だけではなくて、先生おっしゃいますように、いらっしゃった方が非常に環境になじまないということでは困りますものですから、新技術事業団でいろいろ、外国人研究者のための宿舎を整備したりあるいは日本語の研修をやったり、生活環境の整備をする、そういう基盤的な点について努力をしているところでございまして、これからこういう面については大いにやってまいりたいと思っております。
  74. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 外務省は国際交流についてどういうような受け入れ態勢なり措置を考えているか、ちょっと外務省からも聞きたい。
  75. 宮下正明

    ○宮下説明員 外国からの研究者との交流促進と いいますか、そういう視点も踏まえまして、私ども特に査証の発給の関係でいろいろと考えておりまして、一般的に、日本の国内で就業査証を在外公館限りの判断で発給するというためには、法務省入管当局の在日資格認定証明書を提示する必要があるわけでございます。ただ、研究者につきましては、国もしくは地方公共団体の機関または我が国の法律に基づいて設立された法人との契約に基づいて研究を行うものである場合には、在日資格認定証明書の提示を必要としないで在外公館限りで現地で査証を発給する、そういうことをやっております。また、ちなみに大学の教員につきましても、国立または都道府県の大学もしくは高等専門学校に雇用される場合は、在日資格認定証明書の提示を必要とせず、これも在外公館限りの判断で査証を発給しております。このように、できる限りの便宜を図っているところでございます。
  76. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この法案に関連しての質問はこれで大体終わりにして、最後に、文化庁、つくばに関係する問題で一つ、どうしてもこれをただしておかなければならない問題がある。  それは、つくばの小田というところに南北朝時代に北畠親房という人が神童正統記を書いた小田城というのがある。これは昭和十年に重要文化財に指定をされ、戦後、二十五年に文化財保護法によって指定をされた。そして六十年には、合併前の筑波町が、教育委員会がこれに対して管理規定というか管理方針を決めた。けれども、これは二十二ヘクタールの土地が含まれていますが、そこの関係している住民の皆さんは今、自分の土地が押さえられて、どうしたらいいかわからなくなってしまっている。非常に不満です。これについて、文化庁もそれぞれ努力をしたわけだけれども、依然としてこれがなかなか始末ができていない。この間、服部という調査官が現地へ行って、検討委員会をつくればその検討委員会に基づいて一つの答えを出していこうということを国会で、去年の三月十二日に当時の遠山文化庁次長が答弁をしているにもかかわらず、八月二十一日にその三回目の会議に行って文化庁がその審議をストップさせてしまって以来今日まで審議が進んでいない。  そこで、この間の予算委員会の分科会で、私は、公務員が国会の答弁に対して反するような行為をした、けしからぬということで、これは許せないということを申し上げたのです。そうしたら、文化庁の方からは、検討委員会を引き続いて進めたいという答えがあったから、それならよろしいということで、確かに市長選挙があって市長もかわった、助役もかわったし、教育長もやめてしまった、そういう状態で空白があったかもしれませんが、ともかく私有財産を押さえ込んでしまって、そうして一つも状況に変化を与えないというそのことについて、一体どういう感覚で行政をやっているのかということについて非常に疑問があって、その後反省をしたようだから、現地にまた行って、当時のそのところをABCDで区切った責任者、教育委員長、教育委員会の関係者と話をしてきた。そうしたら、かなり明確な答えが出ているにもかかわらず、文化庁は依然としてこれに対して対応が敏感でない。ひとつ文化庁からその後どうなったか、経過報告をしてもらいたい。
  77. 吉澤富士夫

    ○吉澤説明員 史跡小田城につきましては、先生御指摘のとおり、昭和十年に史跡に指定されておりまして、これは南北朝時代の北畠親房が神童正統記を書いたということで、南朝の東北への支配ということで、非常に重要な遺跡ということで昭和十年に指定されておりまして、昭和二十五年の文化財保護法で引き継がれて史跡になっているというものでございます。  全国の指定地の現況を見ますと、国有地、公有地、そのほか民有地にわたって指定されておりまして、都市計画法上の位置づけも、市街化区域、市街化調整区域、それ以外の区域とさまざまでございます。  小田城につきましては、先生御指摘のとおり、昭和六十年度に国庫補助によりまして保存管理計画を策定しております。これに基づいて管理が行われているわけでありますけれども、この管理計画につきましては、民有地の存在、それから市街化区域に指定されているということも十分考慮いたしまして、土塁とか堀跡等最小限のところを中心にして現状変更の規制を行っているということでありますけれども、先ほど先生から御指摘のありましたように、現在、つくば市の方におきまして、平成二年十一月から、その史跡の保存整備のあり方を検討するため、史跡小田城整備検討委員会を設け、検討を進められているところであります。現在中断しているということでございますけれども、これにつきましては、近いうちに再開をされるというふうに考えられております。この委員会につきましては、いろいろな学者の方々、地元の方々、それから指導に当たる茨城県教育委員会、また文化庁などが参加するということにされております。  この委員会、まだ結論が出ていないわけでありますけれども、文化庁としては、全国的視野に立った史跡の保存と地元の方々の利益というものを十分調整いたしまして、将来にわたってこの史跡の保存がなされるよう立派な結論が出ることを現在期待しているというところでございます。
  78. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今度、会議に来られるときには次のことを要請します。  第一は、あの平城、小田の城が今焼き払われてしまって、もうその城跡がない、焼けぼっくいが一本立っているだけなんです。その内情というかその所有権というものが、その地域の者が所有権を登録している、私有財産になってしまったという話を聞いているが、それは一体どうなっているのかという謄本をまず明らかにしてもらわなければならない。  それから二番目の問題としては、平城というのが特徴なわけだから、土塁と堀が非常に珍しい、珍しいというか文化財に値するということだけれども、そこは既に埋められて、そして私有財産にこれもなってしまっている。こういうようなものをそのままほったらかしておいて文化財と言えるかどうか。  それから三番目は、都市計画法によってここが市街化区域で宅地になっている。だから家を建てても何をしても構わない。そんなことを許しておいて、そして今さらそれを押さえるなんということは実際無理じゃないか。  その次に四番目は、国が保存をするのであれば、予算をちゃんと組み立てて、どれくらいの予算で、そこにいる者に立ち退いてもらってそこを買収をして、これを文化財として残すんだ、こういうことをはっきりしなければそれは意味がない。  五番目は、小田域だけではありません、北畠親房は小田城だけで生活していたわけじゃないんだから、その隣には大池があり平沢の観音があり、それから関城という町には関の域がある。そこにも土塁があるし地下壕もある。それから下妻には大宝城という城があって、ちゃんとそこはうまく管理をしている。一番の中心の小田城がいい加減なことになっているから、よそから筑波山へ来て小田城を見に来ても、何だこれはと。これは文化庁の恥ですよ、本当のことを言って。そういうような恥さらしをもう何十年もこうやってやっているんだ。僕が取り上げてからもう既に何年たつかね。ここに僕は写真があるけど、こういう写真で、木が一本、これが文化財、まあよく言えたものだ。これではどうしようもないですよ。  こういうことをしておいて、住民の私有財産を押さえて、それこそ病気が出ても建てかえもできないし移ることもできない。これは憲法二十九条の違反だよ、これはそうなったらおしまいになってしまうから、そこは今我慢をしているわけだから、いい加減にしないと二十九条で告発する、裁判すると大変ですよ。だからそこまでさせないようにするために、もっと腰を入れなきゃ、服部審議官なんというのはとんでもない、あれは。六、七年間住民をおどかして、恐喝して、これはひどいですよ。ということで、文化庁の確たる答えを 聞いて、日程を聞いて、地元は準備するから。
  79. 吉澤富士夫

    ○吉澤説明員 ここにつきましては、十分な管理ができていないというのは先生御指摘のとおりでございます。ただ、非常に民有地が多い。九十数%民有地で、民有地というのはなかなかそこを整備というのは難しいわけでありますけれども、史跡をそのままにしていくというのもやはりいかがかと思います。これは整備、活用されるということが史跡にとって必要だというふうに思いますので、現在行われておりますこの委員会につきまして早急に再開をするように、私の方からも御指導を申し上げましたけれども、今後も一日も早くこの委員会が再開されまして、史跡の保護と地元住民の調整が十分つくように最大努力をしたいというふうに思っております。
  80. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 終わります。
  81. 近岡理一郎

    近岡委員長 辻一彦君。
  82. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間が大分削られたのでなかなか大変でありますが、その範囲内でひとつ質問したいと思います。  まず、研究交流促進法改正案につきましては、同僚の秋葉委員また川島委員、竹内委員それぞれ御質問がありましたので、それにひとつゆだねることにして、私は二点を伺いたい。それは基本的な科学者、研究者交流はこの法案によっていろいろと促進されると思いますが、同時に今非常に焦眉の急といいますか、急がなくてはならない科学者、研究者交流問題があります。それは何といいましても旧ソ連邦、今日のいわゆるCISあるいは東欧の原子力発電所が非常に不安定な状況にある、これの安全確保をどうするかという問題。また、CISが核兵器を解体するときに大量のプルトニウムが取り出される、世界にプルトニウムが過剰に余ろうとしている、これをどう管理するか。こういう面に科学者、研究者、技術者の交流が非常に大事なときに来ているのではないか。そういう研究交流の観点から二点を伺いたいと思います。  まず第一に、私も各国の原子力発電所をアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストリア、ソ連、中国というように随分と見て回ったんですが、中国の場合は秦山原発で、数年前でありますから、まだ稼働していないときでありましたからそれは一応別にして、稼働中の原子力発電所の状況を見ると、ドイツと日本が非常にきれいにされている、整理されている感じがしますですね。それから一番大ざっぱなのは、ちょっと見たところやはりソ連の感じがしました。これはチェルノブイリの原発事故後の、あれは六十二年に参りまして、それから加圧型のソ連のダボロジエという、名前はちょっとしっかり覚えておりませんが、五年前でありますが、加圧、百万キロワットの、五基くらいがやっておりました。ここを見ると、中央制御室等の重要なところはきちんとやっておりますが、一般的にいろいろなところを見ると随分大ざっぱな感じがする。そういう意味で、ドイツと日本はきちょうめんになかなかきれいにやっているなと思いました。ただ、整理整とんされているということと安全性が必ずしも関係があるわけではないので、そういう印象を持ったということであります。  本来なら、他国の原発の安全や運転を云々することはないとは思うのでありますが、今事故が起きるとチェルノブイリの例に見るようにグローバルに地球規模で被害が及びかねない、そういう点で私は東欧、ソ連からアジア一帯における原発の安全確保ということは我が国としても重大な関心を持たなくてはならない、こういうふうに思うわけであります。  そこで伺いたいのは、この旧ソ連、今のCISでありますが、それから東欧の原子力発電所の運転、管理について政府として、科学技術庁としてどういう認識を持っていらっしゃるか、ちょっと伺いたい。
  83. 坂内富士男

    ○坂内政府委員 お答えいたします。  今先生御指摘のように、原子力発電所の安全性といったものは一国のみならず全世界共通のものである、その重要性は共通のものであるというふうに私ども認識しております。  お尋ねは、旧ソ連、東欧諸国では、主として旧ソ連製のRBMK型、いわゆる黒鉛減速軽水冷却炉、それからまたVVER、加圧水型軽水炉、こういったものが運転中でございます。それで、こういったものの安全問題につきましては昨年七月、ロンドン・サミットでも取り上げられまして、経済宣言の中で安全性に関する特別の関心が示されまして、有効な対策の策定が要請されているところでございます。そういったことで、我が国としてもこれら諸国の原子力発電所の安全性については大きな関心を有しているということでございます。  特に、VVERのうち西側の原子炉にある格納容器がないなど安全性が特に懸念されている旧型炉VVER四四〇・二三〇につきましては、IAEAが一九九〇年九月より安全評価プロジェクトを開始しておりまして、設計、運転、保守の各方面から評価を実施中であります。当庁としても、このプロジェクトに対しまして専門家を派遣する等貢献を行っているということでございます。  なお、もう一方のRBMK型、黒鉛減速軽水冷却炉につきましても、IAEAは本年四月より、これは四月の六日から一応予定されておりますが、四月よりVVERと同様な安全評価プロジェクトを開始するという予定でございまして、我が国としましても本プロジェクトに対しまして資金の供出であるとか専門家の派遣、こういったものを積極的に行うということを考えております。
  84. 辻一彦

    ○辻(一)委員 六十二年の六月にチェルノブイリ原発を三人ほどで我々も調査に行ったのですが、そのとき、事故を起こした当時の現地の所長は事故当時逃亡してしまった、事故直後遠くにいた副所長が呼び出されて、以来後の処理に当たった、そういう話を随分聞かせてくれましたが、そのときにこういうことを言っておるのですね。チェルノブイリ原発でああいう実験をやる前に、レニングラード原発では中央からチェルノブイリ同様の実験要請があった、それをレニングラード原発の所長は、そんな実験はやれないと言って断った、チェルノブイリでも断っておればこんなことにならなかった、非常に残念だ、こう言っておりました。そういう話を聞いて、レニングラード原発は相当しっかりした管理をやっているのかなという感じを持って、機会があれば一遍見に行きたいと思っ北が、その機会はありませんでした。  今お話しのように、IAEAでもいろいろと論議をして勧告したり助言をしておりますが、レニングラード原発は、御存じのようにソ連、今のロシアの第二の大都市でありますから、そういう大都市近郊にある原発の安全度強化は最優先して取り組んでやる、こういうふうに聞いておりますが、そのレニングラード原発に事故が起きたということは、私たちもちょっと聞いてショックを感じたわけなんですね。  そこで、そのレニングラード原発の事故というものがいわゆる圧力管の材質なのか老朽化なのか、一体その原因は那辺にあるのか。今調べに行っておるところでありますから詳しいことはわからないと思いますが、ちょっと今感じていらっしゃるところを、余り時間は長くはありませんから要点だけ聞かせていただきたい。
  85. 坂内富士男

    ○坂内政府委員 お答えいたします。  まだ情報を十分私ども入手してございませんで、結論から申しますと、原因等については私ども一切まだわかりませんというふうにお答えする以外にございません。ただ、報道等によりますと、今先生御指摘の、いわゆる圧力管の材質問題ではないか、あるいはまたバルブに何か問題があったのではないかといったようなことが報道されておりますけれども、私どもとしましては、その原因についてきちんとしたロシア側の発表ないしIAEAを通じての何らの情報もございません。
  86. 辻一彦

    ○辻(一)委員 二十四日、二十五日の共同発の通信ですが、それによると、フィンランドの研究所で検出しているのは放射性ヨード、それからセシウム等が検出された、大量ではないのですが、こ う言っている。これは普通ならば余り出ないもので、燃料棒の被覆管等に何らかの故障があったのではないか、こういうような感じがしますが、そこらはどう思っていらっしゃいますか。これはまだこれからの問題だと思いますが、要点だけで結構です。
  87. 坂内富士男

    ○坂内政府委員 報道に、フィンランドがパーティクルをつかんだといったようなことは私ども情報として知ってはおりますが、燃料棒破損まで至っておるのかどうか、そういったことについて十分なるフィンランド側の確証もないようでございまして、私ども当然のことながら何らの推測もできない、このような状況でございます。
  88. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今科学技術庁、また近く通産もそれぞれ調査に、見に行っておるようでありますから、詳しいことはその結果を待ってまたお尋ねする、こういうふうにいたしたいと思います。  そこで、こういう状況の中で、科学技術庁と通産省は、既に科技庁の方は視察団といいますか調査団を送っているわけでありますし、通産もその前後、繰り上げておるというふうに聞いておりますが、どういうような対応をしようとしておるのか。今やっていること、それから、これからどう対応するのか、簡潔にお伺いしたい。
  89. 石田寛人

    ○石田政府委員 お答え申し上げます。  先生今御指摘のとおりに、レニングラード原子力発電所の事故の報に接しまして、私どもも早急にその実態を解明すべく調査団を送ることが妥当と考えたところでございますし、通産省においてもそういうことを考えられたわけでございます。そういうことも踏まえまして、内々各省庁で協議をいたしておりましたところ、三月二十七日の閣議におきまして、総理より早急に政府調査団を派遣すべしという御指示がございました。これを受けまして関係省庁、これは外務省それから科学技術庁及び通産省の三省庁でございますが、この三省庁で協議をいたしまして、四月三日より約一週間の予定で政府の調査団を派遣するということにいたしておる次第でございます。  今回の政府調査団の派遣の目的でございますけれども、これはレニングラード原子力発電所の視察を含めます事故原因、あるいは影響等を調べること、あるいは原子力発電の安全性確保に関するロシア連邦の考え方を聞くこと、あるいは我が国の協力、これは御承知のように研修員の受け入れあるいは専門家の派遣等を考えておるわけでありますけれども、についての協議等を行うということでございます。こういうことで外務省それから当庁、通産省の関係者が、これはまさに四月三日、あすから出かけるということでございます。  なお、一部の者はほかの目的も兼ねましてもう既に出かけておるところであることもあわせ御報告申し上げます。
  90. 辻一彦

    ○辻(一)委員 通産。
  91. 荒井行雄

    ○荒井説明員 お答えいたします。  原子力開発を推進していく上で、先生御指摘のように日本国内だけではなくて世界の原子力発電の安全が確保されることが重要であるというような認識から、当省としても旧ソ連の原子力発電所の安全確保、これも極めて重要なことであると認識しております。そういう観点から、当省の旧ソ連、東欧の原子力発電に対する安全性向上に対する取り組みといたしましては、従来から国際原子力機関等におきましての旧ソ連、東欧の原子力発電に対する安全支援活動に対しまして、専門家派遣等によりまして積極的に協力しているというところでございます。  また、先月でございますが、ロシア連邦から原子力省の上級職員が四名研修に参ったわけでございます。これを当省として受け入れている次第でございます。  さらに今後の対応といたしましては、本年五月に原子力安全調査のためにミッションを旧ソ連に派遣することにしておりまして、加えて今回のレニングラードの原発事故に際しましてその一部を先取りして緊急に調査ミッションの派遣を決定したところでございます。これは科学技術庁、外務省と一緒に行くわけでございます。  また、平成四年度予算におきまして旧ソ連、東欧それからアジア発展途上国等から原子力発電所の運転保守員、検査員等の人を今後十年間で約千人程度の規模で日本に招聘いたしまして、それらの国々の技術レベルの向上あるいは安全意識の向上を図るための研修事業を開始することを計画しておるわけでございます。さらに、平成四年度予算でございますが、ここにおきましてIAEA、国際原子力機関等の旧ソ連・東欧支援プロジェクトに対しても積極的に支援すべく特別拠出金の支出を計画しているところでございます。そういうことで、今後とも旧ソ連、東欧の原子力発電に対する国際協力を当省としても積極的に進めてまいりたいと思っております。
  92. 辻一彦

    ○辻(一)委員 安全の問題は、一つはハードの面で、設備であるとか機器であるとか、内容にわたる問題があります。それからもう一つは、運転員の心構えというか、ソフトの面がこれはまた非常に並んで大事であろうと思う。ヒューマンエラーが起これはいかにいい機器をそろえておっても問題が起こるわけでありますから、そういう点から考えると、我が国もいろいろと苦労しながら、事故もあり故障もありますが、それらを経験を積みながら努力をしているということは事実でありますから、そういうところへ、現場にもっと早くたくさん来てもらって、見てもらうということが実際は大変大事ではないか。そういう点で十年間に千人という、十年は結構ですが、これは通産の場合、前倒しにしてなるべくたくさんの人をここ数年の間早急に日本にも呼んで、日本のやり方等もひとつソフトの面からも、十分心構えという点で学びとってもらう、こういうことが大変大事ではないか。そういう意味で、科技、通産を通して前倒しでしかるべき対応を早くやる必要があると思いますが、これについていかがですか。
  93. 石田寛人

    ○石田政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘のように、今の事態を踏まえまして、研修事業等につきましてなるべく前倒しでやるということの必要性につきましては私ども重々認識しておるところでございまして、昨日も谷川大臣から私あてに、私どものもともとの案よりもさらに積極的な受け入れを考えるようにという御指示をいただいたところでございます。これにつきましては今後ぜひ努力していきたいと思いますけれども、何分先方の都合等々もあるわけでございます。そういうことにつきまして、先ほど申し上げましたように先方ともよく相談しながら計画を進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  94. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは大変大事なことですから、長官、ひとつその決意を一遍聞かせていただきたい。
  95. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 今、段々御説明申し上げておりますように、できるだけ積極的にやっていきたいと思っております。きのうも原子力局長と相談をいたしまして、そういう指示をしたところでございます。  それから、八日から三日間、横浜で日本原子力産業会議年次大会というのがございます。そこヘロシアのペリホフという科学アカデミーの副総裁が参ります。これは原子力の権威のようでございまして、彼と私、懇談いたしまして、今申しましたこと、原子力発電所の安全性の問題、それからこの間から議論になっております核兵器の廃絶につきましてのいろいろな問題、今の科学技術者の交流の問題、万般十分懇談をしたいと計画をしているところでございます。積極的にやる所存でございます。
  96. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは基本的な、研究所で今研究者を充実をして、外国の人も呼んでそしてじっくりやる研究、これも本法案の内容であって大変大事ですが、今東欧やソ連の方で事故が起きればこれは大変なことになるわけですから、この研究交流もそういう面にもっとうんと拡大をしてやってほしいと思います。  そこで、アジア各地に同様に、韓国、それから台湾、韓国は八基、台湾六基、中国、インドネシア、インドネシアは建設中ですか、というように 今アジアに日本以外にも十五、六基の原発が動いておるわけですが、これらの安全も大変深い関心を持たなくてはならない。中国の秦山発電所が、私も数年前に行って見てきましたが、これはかなり各国のいろいろな機器を集めてやっております。まだ運転に入った状況は承知しておりませんが、それは別としましても、アジアにおける原発の安全の問題、そして、できればひとつこのアジアの原発の安全は日本の問題と考えて、連絡会等々持って、さらにソ連や東欧以上に連絡を密にして安全を図る必要があると思うのですが、これについていかがでしょう。
  97. 坂内富士男

    ○坂内政府委員 お答えいたします。  今先生お尋ねの前半の部分について私の方からお答えしたいと思います。  台湾、中国、韓国等の近隣諸国の原子力発電所は、先生御承知のとおり軽水炉が主体でございます。それで、先ほどのいわゆる旧ソ連型というようなタイプとそこは随分違っておりまして、私どもにとりましては、安全性についてはその国が鋭意安全確保を行っているところであり、最大限の努力が払われているだろうというふうに認識しておるところでございます。  それに加えまして、いわゆるIAEAを通じた情報交換であるとかあるいはまた我が国との間では日韓原子力平和利用協力取り決め、または日中の原子力協力協定、こういった取り決め、協定を通じまして情報交換、専門家の交流等によりまして近隣諸国といろいろの協力をやっておるところでございます。そういった協力を通じまして、各国の安全性の向上に今後とも貢献していきたいというように考えております。
  98. 石田寛人

    ○石田政府委員 つけ加えて、一言だけ申し上げます。  今先生、連絡会のごときものという御指摘がございました。これにつきましては、私どもでは原子力委員会が主宰いたしまして、アジア各国の主なる原子力関係者をそれぞれお招きいたしまして、アジア地域原子力協力国際会議という会議を開いております。ここでいろいろな意見交換を行っておりまして、本年でその三回目を迎えたところでございます。このような国際会議におきましても、安全な原子力発電の導入とその利用というのが非常に大きなテーマになってございまして、これからますます関係各国との連絡を緊密に行っていきたい、かように考えておるところでございます。
  99. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ほかの国に干渉がましいことを決して我々は考えてもいないし、申し上げることはないのですが、日本に事故が起きればアジア全域に大規模な余波が及びかねないし、またアジアの各地で同様の事故があれば日本にも大きな影響がある、こういう意味で、広範な、グローバルな連携と協力がどうしても安全確保に必要であると思っておりますので、その点をひとつこれからぜひ力を入れてほしいと思います。  時間がかなり限られておりますので、CISのレニングラード原発等については、またせっかく行かれた調査団が帰られて、一遍報告を聞かしていただいて、その上でまた論議を改めてやりたいと思います。  そこで、あと限られた時間でありますが、もう一つの問題は、CISの核兵器を解体するとなると、八十トンぐらいのプルトニウムが取り出されるだろう、大体こういうふうに言われておるのですね。今までは軍事用にプルトニウムが非常に貴重で、何とかしてこれを確保しようという動きでありましたが、これから核軍縮等の方向もあわせ考えると、プルトニウムはかなり国際的にだぶついてくるというか余ってくる可能性が大変強いのではないかということが一つですね。  それから、そういう状況の中でFBR、いわゆる高速増殖炉の実用化はどうも三十年ぐらい先でないと本格化はしないだろう、敦賀における「もんじゅ」の状況を見ても、やはりいろいろな試験をやる中で故障が出る、トラブルが出て、臨界等もおくれがちでありますが、この実験炉からさらに次の実証炉という段階を踏むとしても相当な時間が実用化までにかかる。だから、プルトニウムは本来高速増殖炉、FBRの中で使うということがねらいの一つなのですが、その実用化の道がかなり光となりますと、プルトニウムはそういう意味でもまたかなり余裕が出てくるという状況にあろうと思う。そんな中で今、CISの核解体に伴って生じたプルトニウムを早く燃やしてしまう、こういう考え方で専用高速炉、プルトニウムを増殖せずに、燃やすことだけを考える、こういう構想が設計上既に具体化しつつある、こういうふうに聞いておりますが、その実態はどうか、要点を伺いたい。
  100. 石田寛人

    ○石田政府委員 お答え申し上げます。  核兵器の解体に伴いまして発生いたしますプルトニウムにつきましては、これは当面の措置といたしましては安全かつ確実に保管、管理するということが当然必要であるわけでございますけれども、これは真の解決策ではございませんで、何らかの格好で核兵器に再び利用されていくようなことのないようにすることが重要と考えておるところでございます。他方、プルトニウムはウラン脇と同様貴重なエネルギー資源でございまして、原子炉の燃料といたしまして利用し、発電することが核不拡散の観点から最も建設的かつ効果的な方法であるというふうに認識しておるところでございます。  このような観点から、私どもといたしましては、我が国がこれまで蓄積してまいりました高速増殖炉技術等、すなわち高速中性子を用いまして核分裂連鎖反応を行わしめるようなこと、あるいはナトリウムを用いまして出た熱を除去するような技術等々いろいろあるわけでございますが、そういうもみもろの技術を用いまして、核兵器の解体に伴って発生いたしますプルトニウムを燃焼させるための専用の原子炉及びこのための燃料加工、さらには核物質の保管、管理を確実に行うようにするためのシステム等につきまして技術的かつ体系的な検討を行っておるところでございます。  いずれにいたしましても、核兵器の解体に伴って発生いたしますプルトニウムにつきましては、核兵器保有国による核兵器の拡散の防止ということが大事でございまして、この考え方で厳格な管理を行っていくということが基本でございます。その上で我が国は、原子力平和利用の厳格な推進者といたしまして、国際的な枠組みのもとに、国際的な連携のもとに適切に対応してまいるというのが重要ではなかろうか、かように考えておるところでございます。
  101. 辻一彦

    ○辻(一)委員 新聞の情報によるのでありますが、二月十八日に科技庁は、既に設計に入ったというふうに十八日の夕刊は伝えておるし、専用炉の設計は動燃に指示をしたと出ているのですね。それから、早くから専用炉の研究に取り組んできた、こういうふうに伝えておりますが、いつごろからこの問題に取り組んでいたのか、お伺いしたい。
  102. 石田寛人

    ○石田政府委員 お答え申し上げます。  いつごろから取り組んだかということは、始点を明確にすることは非常に難しいことでございますけれども、私個人といたしましても、昨年末と申しますか、かなり年も押し詰まったころかと思いますけれども、そのくらいから動燃の関係者と、こういう構想もあり得るなという議論をしたこともございます。  設計、例えば今先生御指摘の報道には「専用高速炉設計」と書いてございます。設計と申しましても、これは本当にいろいろな段階があるわけでございまして、これは技術的な意味の設計といいますよりも、むしろそもそもどういう概念が成り立つかというようなことにつきまして、これは本来、仕事といたしましては私ども自身でやるべきことであろうかとも思いますけれども、動燃には、先ほども申しましたように専門家もおるわけでございますので、動燃の専門家の方々に、こういうプルトニウムを専ら燃やすという炉を考えた場合どういうことになるかということにつきまして概念を考えてもらったということでございま す。それで、そういう概念は成立し得るという彼らの報告であったわけでございます。そういうことがこういう報道になっておる、かように認識しておるところでございます。
  103. 辻一彦

    ○辻(一)委員 核兵器解体による核物質の処理技術について、科学技術庁の指示に基づいて動燃がまとめた二百ページのレポートはありますか。
  104. 石田寛人

    ○石田政府委員 これは動燃が、私からもお願いいたしましていろいろな検討をいたしました結果をこれくらいの厚さのものにまとめまして、私たち動燃の専門家から受け取りまして、私の机の中に入ってございます。
  105. 辻一彦

    ○辻(一)委員 勉強する必要がおるので、それを資料として提出してほしい。いかがですか。
  106. 石田寛人

    ○石田政府委員 その資料につきましては、何と申しますか、極めてラフな、先ほど申しましたように概念が成立するかしないかということを検討をいたしましたものでございますので、そのまま先生方にお示しする、そういうたぐいの資料ではなくて、もっと事務的あるいは専門技術的に検討したものであるというふうに御理解を賜れば幸いでございます。
  107. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは随分各紙が取り上げて、二月十八日に科学技術庁が公表した設計内容、それから概念図、写真まで随分細かく報道されている。それを、そんなあいまいなものでは新聞がこんなに取り上げるはずがない。確たる資料があるはずだから、これは委員長に資料要求をしたい。ちょっと諮っていただきたい。
  108. 近岡理一郎

    近岡委員長 理事会で相談いたします。
  109. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ひとつ後で理事会で論議をいただいて、これはぜひ提出していただきたい。しかし、法案審議ですから、これはあいまいにしてもらってはいかぬので、きょうの委員会の終わるまでに明確にしていただきたい。でなければ、私はこれは質問を保留せざるを得ない。
  110. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 さっき局長から御説明申し上げましたように、余り権威があるわけじゃありませんで、うちでももっと検討させていただきましてから御説明をさせていただいた方がいいのじゃないかと思いますので、よろしくお願いいたします。
  111. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、これはちょっと聞けない。やはり審議のために、これはかなり確実に準備されてまとめられたレポートだから、そんなあいまいなものでこれだけマスコミの皆さんが書けるはずがない、そう思うのですね。だから、これはそういうあいまいなことなら、ここで出せるか出せないか、はっきりしていただきたい。
  112. 石田寛人

    ○石田政府委員 お答え申し上げます。  これまた報道にもございますように、現在私どもは、解体核物質平和利用問題検討会という検討会も開きまして、関係の専門家にお集まりいただきまして、いろいろな議論をしておるところでございます。そういう専門家にいろいろ見ていただきながら今後固めていくようなものでございますが、その中に入っております一部の図面等々につきましては今先生がおっしゃいましたようなことにもなっておるということもございますので、むしろ何らかの格好でその資料をまとめまして、まとめた格好で提出させていただくことを検討させていただきたいと存じます。(辻(一)委員「保留するしかないですね」と呼ぶ)
  113. 近岡理一郎

    近岡委員長 質疑の後、すぐ理事会を開いて相談いたします。――辻君、質疑を続行してください。
  114. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それでは、若干の質問を保留して、私は今はこれで終わります。
  115. 近岡理一郎

    近岡委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十分休憩      ――――◇―――――     午後二時十三分開議
  116. 近岡理一郎

    近岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。辻一彦君
  117. 辻一彦

    ○辻(一)委員 一分ですから、もう多くは言いませんが、法案審査ですから、枯ればいろいろありますが、必ずしも審査を長引かせるのが本意ではありません。したがって、理事会の扱いもありますから、最大限まずはきょうは努力していただく、こういうことでおさめたいと思いますが、なお基本的にはこの資料は提出されるべきである、これの権利は留保しておきます。  以上です。
  118. 石田寛人

    ○石田政府委員 先ほどの理事会の御指示に従いまして、資料提出させていただきます。
  119. 近岡理一郎

  120. 近江巳記夫

    ○近江委員 まず初めに、国有施設の利用状況について聞きたいと思います。  この法案改正によりまして、それは改善されると思いますが、現状の施設につきまして、その利用状況の実態といいますか、簡潔に御報告を願いたいと思います。
  121. 山路順一

    ○山路政府委員 お答えを申し上げます。  研究交流促進法に基づきます廉価使用の実績はございません。
  122. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、今回の改正によりましてどの程度活発化されるのか、お伺いしたいと思います。
  123. 山路順一

    ○山路政府委員 今回の改正によりまして、使用のための条件を緩和したわけでございます。数量的にどの程度国有施設の使用が活発になるかということは、なかなか数量的に申し上げるのは難しゅうございますが、そういう条件緩和によりまして相当国有施設の使用が促進されると、私ども確信しておるところでございます。
  124. 近江巳記夫

    ○近江委員 この施設の利用を見ますと、一つは、例えば大型の試験研究施設等を見ますと、その施設を動かすための人員といいますか、そういう熟練した人が必要になるわけですね。例えば航空宇宙技術研究所の風洞実験、これは空気抵抗だとかシミュレーションをやるわけですが、聞いてみますと、やはり七、八人要るわけですね。あるいはまた船舶技術研究所、走行試験、人工波等やるわけですが、これも最低六、七人要るわけですね。そういう人たちは、そこで余人にかえることはできないそれだけの技術を持っているわけです。そうすると、また同時にこれは総定員法との関係にもなってくる。どんどんと外部の人にも使わせてくるというようなことになってきますといろいろな影響考えられますね。こういう点、総定員法との絡みでどのように今後対処していくのか、その点についてお伺いします。
  125. 長田英機

    長田政府委員 運転要員の問題でございますが、今回の国有試験研究施設の利用といいますのは、本来その施設が持っている行政上の目的、用途、そういうことを妨げない限度で使用を許可するということでございます。したがいまして、外部利用のために、新たにそのことだけのためにまた運転要員が必要になるというようなことはないと思います。しかしながら、いずれにせよこの運転要員等の研究を支援する業務、こういうことに携わる方は非常に重要でございます。そういうようなことで、できるだけそういう人の員数を充実したいと思うわけでございますけれども、試験研究支援業務を自動化したり省力化したりあるいは外部を活用するとか、いろいろそういう工夫をしながら対応していきたいと思っています。
  126. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう外部に使用してもらう、いろいろあるわけですが、一つは、使用したいという気持ちが起きるだけの中身があるかということなんですね。我が国の国研にしろ大学のいわゆる研究施設にしろ非常に陳腐化しておるし、諸外国の科学者が来ましても余り目をみはるすばらしいものがない。まあないことはないでしょうけれども、一遍あなた方、胸を張って言えるのはこういう施設がありますということを一つは答弁してもらいたいし、全体として非常にそういう点はおくれがある。ですから、今後そういう施設の充実等につきましてどういう計画をもってやっていくのか、それについてお伺いしたいと思います。
  127. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 実はさっきもお話ししたように、我が傘下の五つの研究所長さんとさっきまで懇談をしておりました。例えば、私が主計官時代に航空研の風洞を新しくしたのですが、聞いてみ たら三十年たっているのにまだ使っている、それじゃいかぬ、この際関係の政府関係機関研究所とも連絡をとりまして、大学とも連絡をとりまして、老朽の施設を総ざらいいたしまして、何年計画でこれを改善するか、ひとつ来年度の概算要求までにそれを整備してくれと指示をしておきました。道路や河川のように計画を立てまして、立派な研究施設をつくるようにいたします。
  128. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣も今の答弁は相当自信を持って、意欲を持った答弁のように私は思います。ですから、必ずそういう方向で努力していただきたい、こう思います。  それから、私が今申し上げた、我が国の施設として先進諸国に比して胸を張って、これはもう本当に世界第一級であるという施設があれば、今ここで答弁いただきたいと思います。
  129. 山路順一

    ○山路政府委員 私ども科学技術庁関係で二、三、例を挙げさしていただきたいと思います。  私どもの研究所一つに、航空宇宙技術研究所がございます。そこに大型低速風洞施設を有してございます。また、防災科学技術研究所がございます。そこには大型耐震実験施設、また大型降雨実験施設がございます。ここいら辺は世界に肩を並べられるようなものであろうと考えております。また現在建設中でございますけれども、放射線医学総合研究所に重粒子イオン加速器、これは医療用でございますが、これも私どもとしましては世界の一級品であろうと考えております。
  130. 近江巳記夫

    ○近江委員 胸を張って答えるのは今のところ三つですな。いわゆるあなた方のそういう場をこうして提供しているわけですから、やっぱりこれから胸を張って、このようにいいのをしております、着手しましたと、毎回の委員会でそういう答弁のできるような努力を今後はひとつ着実に積み重ねていただきたい、これを強く要望いたしておきます。  それから、大学初め国研研究費、これがまた低過ぎるということは、これは世界の先進国の中で驚異でございます。文部省の科研費を見ましても六百億を切れていますね。今年度は若干来ているかもわからぬけれども。それで、あとは科学技術庁研究調整費であるとか、貧弱きわまりない、私はこのように思うんです。  そういうことで、非常に大学等も苦労いたしまして、奨学寄附金制度、こういうことでやっておられるということも聞いておるわけですが、現在大学におきまして民間からどの程度の寄附金を受け入れて使用されておるか、この点につきましてお伺いしたいと思います。
  131. 工藤智規

    ○工藤説明員 お答え申し上げます。  国立大学における民間からの寄附のいろんな態様がございますが、一つには民間等との共同研究という形でお金を入れていただきながら、しかも民間研究者と御一緒に研究する態様がございます。また、受託研究と申しまして、お金をいただいて、大学のマンパワー等の研究機能を生かしながら受託した研究を行うという態様がございます。さらには奨学寄附金と申しまして、大学における研究をいろいろな面でサポートする体制がございまして、その一環で寄附講座あるいは寄附研究部門という態様もあるわけでございます。  これらを含めまして年々おかげさまで関係方面の御理解をいただきまして増額さしていただいておりますが、平成三年度の予算額で見ますと、五百七十六億余りでございます。来年度の予算で組んでおりますのが六百三十億余りでございまして、年々予算の伸びもございますけれども、実績の上でも多大の御寄附をいただきながら活用さしていただいている状況でございます。
  132. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、例えば寄附講座であるとかあるいは寄附研究、具体的には何講座あるいはどういう配分をしているんですか、具体的に。
  133. 工藤智規

    ○工藤説明員 お尋ねの寄附講座あるいは寄附研究部門と申しますのは、民間等から一定の御寄附をいただきまして、それを数年にわたりまして継続的に教育研究に充てていただくために寄附講座、あるいは研究所の場合ですと寄附研究部門という形で設けさしていただいているわけでございます。これは昭和六十二年に制度化いたしまして、大学における教育研究の豊富化あるいは活発化でございますとか、あるいは社会との連携の充実でございますとか、さらには民間資金の活用を円滑に図るというような、種々の観点から制度化いたしまして、六十二年の発足以来年々その件数がふえておりまして、平成三年度末現在で見ますと、十四の国立大学それから二つの大学共同利用機関におきまして五十四件の開設に至っております。  具体的には、非常に多様な分野にわたっておりまして、社会科学系でも法学系あるいは経済学系もございますし、一番多いのはどうしても理工系の分野でございます。大学傾向としましても、別に都市部の大学だけではなくて、地方国立大学におきましてもそれぞれの地域の御協力を得ながら活用さしていただいている状況でございます。
  134. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう寄附をされる方という、そういう善意は非常に多とするわけですが、ひもつきといいますか、研究部門の純粋性というか、その辺との微妙な兼ね合いということは今後十分注意しなきゃいけない問題だと私は思うのです。その点についてはどういう配慮をしておりますか。
  135. 工藤智規

    ○工藤説明員 お話しの御懸念は導入当初もいろいろ検討さしていただいたわけでございますが、結局は杞憂な面もございまして、お金はいただきますけれども、その寄附講座あるいは寄附研究部門での教官の任用といいますのは、各大学の教授会の議を経まして、当該分野において最も必要なしかも最も優秀な方を得べく努力しているわけでございまして、今のような御懸念は実態としてもないわけでございます。  一例を御紹介いたしますと、東京大学の先端科学技術研究センターという非常にアクティビティーの高い研究施設がございますが、そこでコンピューター・通信という寄附研究部門がございますけれども、これは日本の某電機メーカーからの御寄附でございます。ただ、実際にこの寄附研究部門に任用されております研究者といいますのはアメリカのプリンストン大学の工学部長をやられた非常にアクティビティーの高い方で、その方の前身は某外国電機メーカーの御出身でございますので、そういう形で、必ずしも御寄附された方に縛られて人事が拘束されているわけでもございませんで、大学の自主的な判断のもとにすぐれた研究者任用されていると私どもは判断しているわけでございます。
  136. 近江巳記夫

    ○近江委員 この種のそういう配慮といいますか、やっぱり絶えずよくフォローしていく、そういうことが私は大事だと思うんですね。ですから、今は公正に行われておると、あなた方の答弁をそのまま受けますけれども、十分よく注意をしてやっていただきたい、これを強く要望しておきます。  大学についてはそういう制度があるんですが、国研についてはどうなっておりますか。また、国研は今後どうしたいと考えておりますか。
  137. 長田英機

    長田政府委員 国研の場合には民間から資金を受け入れます場合におきまして、受託研究制度というのがございます。これは民間資金が国庫に入りまして、国研の場合は特別会計ではございませんので一般の国庫に入りまして、そして歳出予算を計上して使うわけでございますが、金額としましては平成三年度におきまして計上されております受託研究費は七省庁で四億四千七百万円ということになっております。こういう制度がございますが、大学の奨学寄附金制度のように研究助成を目的として民間団体や個人から研究資金を入れてくるというような制度はございません。  こういう現状にあるわけでございますけれども、私どもとして考えてみますと、この基礎研究推進していくためには、やはりその研究の性格に応じた多様な研究資金が用意されている、それによって研究者の選択自由の幅も広がり、競争的な研究環境も形成される、もちろん、先生のおっしゃるようないろいろな問題をもたらさないようにしなければなりませんが、そういうふうに考えております。また科学技術会議の十八号答申 におきましても、そのような資金源の選択の機会を拡充すべきであるという考え方が示されております。こういうような答申考え方に沿いまして、科学技術庁といたしましては、これからも関係各省とも相談しながらいろいろと検討してまいりたいと思っております。
  138. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは大学の今の制度と同じでありまして、ひもつきといいますか、そういう点がやはり危惧されるわけですから、今後新しい制度をおつくりになったとしても十分それは配慮をしていかなければいけない、このように思うわけです。その点を特に要望いたしておきます。  次に、研究者のいわゆる創造性の発揮という問題でございますが、研究者というのはいろいろな機会に絶えず触発を受けなければいけない。そのためには、研究集会等にはどんどん出ていくことも大事だと思うし、研究者もやはりそれを希望しておると思うのです。そこで、この研究集会への参加につきまして、学会出席の旅費の現状につきましてどうなっておるか、それにつきましてお伺いします。
  139. 山路順一

    ○山路政府委員 各国研には学会等へ出席いたします公務出張のための旅費が計上されてございます。そのほか、私ども科学技術庁が所管しております調整費がございます。その中で学会等の出席のための出張旅費が計上されておるところでございます。
  140. 近江巳記夫

    ○近江委員 そんなもの、費用が計上されておるのは当たり前のこと。そんな答弁したらだめなんですよ。何を言っているの。その中身を聞いておるのです。一人当たりがどうなっておるとか、現状はそれで足りておるのか、苦しいのか、もっと実情を把握した答弁をしなさい。
  141. 山路順一

    ○山路政府委員 大変失礼いたしました。手元にございます資料でお話し申し上げたいと思います。  国際研究集会の出席旅費でございますけれども、先ほど申し上げました科学技術振興費、その中に研究集会への派遣の旅費が計上されてございます。現在、平成四年度の予算案をお願いしておるわけでございますけれども、お願いしております予算は二千三百万円、人数といたしましては二十八人の方々に行っていただくための費用をそこの科学技術振興費でお願いしてございます。また同様に、科学技術振興調整費の中で重点基礎研究の外国旅費を計上してございます。これは三年度の予算を申し上げますと五千万円、人数といたしまして九十六名の研究者出席できる費用を計上しておるところでございます。
  142. 近江巳記夫

    ○近江委員 いわゆる国研研究員とか、例えば具体的に一遍言ってごらんなさいよ。一人がヨーロッパならヨーロッパヘ行ってどのくらいの費用がかかって、国からどのくらいの出張旅費が出て、一日何ぼぐらいそれが出て、実情はこうこうこうです、そんなことぐらい研究しているでしょう。もっと具体的に答えなさい。
  143. 長田英機

    長田政府委員 先生の御趣旨に合う回答になるかどうかわかりませんが、私どもが調べましたのでは、国研の平成二年度におきまして海外渡航された方が千二百四十八人いるのでございます。この中で研究者自身の自費で渡航したという人が八百二十六人でございます。もちろん、短期間も長期間もございます。したがいまして、このデータから判断いたしまして、ちょっと今具体的に一人当たり幾らということを申し上げられませんけれども、海外渡航旅費が少ないということの実情は御理解いただけると思います。
  144. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣、要するに国研研究者は、千二百四十八人で自費が八百二十六人、こういう状況なんですよ。しかも、いろいろ聞いてみますと、国際会議に参加する場合、登録料というのが要るのです。これが七、八万円。これは公費負担とするのかどうか。平成三年七月一日、四条による参加人員実績を見ますと、五年間で述べ人数ですけれども海外三千百三十七人。聞いてみますと、平均一人五、六十万円自己負担をしている、こういうことなんです。  ですから、そういう派遣にしろ何にしろやはりもっと費用を出してもらいたい。しかも、例えばヨーロッパならヨーロッパヘ行く。そうすると休暇にしても、いつ終わる、じゃすぐ帰れ。せっかく高い旅費を使って行くのだから、自分が見たい研究施設もある、せめて二日でも三日でもそこで施設も見て、後レポートを出せというなら出させればいいのですよ。そういう余裕をなぜ見てあげないか。そうでしょう、いかに研究者の創造性を高めていくかということ、基礎研究というのは何といったって結局は人でしょう。そういう配慮が本当にがんじがらめだというのですね。その辺につきましてどう思いますか。そういう自己負担があり、日数もぎゅうぎゅうに締められておるというような状況をどう改善しますか。
  145. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 先ほど郵政省の室長からも、外国旅費が少ない話がありました。研究費の一部というふうに見てくれないかという話もありました。私も、余り大した学会でないものはその必要はありませんが、本当に重要な会議は、きょう主計官も来ておりますが、本当にこれは研究費の一部だと思います。もっと十分そこで情報収集し話し合いもできるような予算をつけるべきであると思っております。足らぬ場合は我が科学技術振興費で補充をしてあげるようにしたいと思っております。
  146. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは研究者でそんな物見遊山で行く人はないと私は思うのですよ。みんなやはり真剣に、何とかこの機会に勉強できることは勉強したい、純粋な気持ちという、それを十分我々は本当に受けとめなければいけない。そういう中で、当然それは行くのですから、例えば日数を差し上げた場合においてはどこを視察に行ったかとレポートを出してもらえばいいのです。そういういろいろなフォローの仕方があるわけですから、もっと研究者を信頼して、ある程度の余裕がある、また費用負担にしてもやはりもっと政府自身が配慮してあげる、そういう姿勢に立ってもらいたいと思うのです。今後努力していただけるかどうか。
  147. 長田英機

    長田政府委員 先生が御指摘のとおり、研究者にとりましては国際会議への参加は非常に重要なことでございます。大臣からも申し上げましたとおり、こういう問題につきましては我々もいろいろ努力はしてきているのでございますけれども、そういう予算面等についても引き続き努力をしてまいりたいと思います。  それからなお、先生が御指摘なされました研究集会へ参加に行く場合に日数を限られてしまうという点がございます。現在の研究交流促進法の四条で、職務専念義務を解除して研究集会に出席できるということになっております。しかしながら、この規定の運用につきましては、実はもう少し幅広く研究集会と時間的、場所的に近接している施設を見るとか少人数の集会とか、そういうようにもう少し幅広く見れないだろうかという議論が研究者の間からございます。こういう点につきましても、これからは私どもとしては関係各省庁とよく相談をしてまいりたいと思っております。
  148. 近江巳記夫

    ○近江委員 アメリカあるいはイギリス等聞いてみますと、研究公務員であるとか大学研究者は、二十年ぐらい勤めますと一年ぐらいの休暇がとれるというのですね。国外あるいは国内でも好きな研究ができるようになっておる。今一般の、研究機関でなくても会社でも、何年か勤めた場合には何カ月だとか、勤務年数に応じて一年間だとか半年間だとかあるわけですね。ましてや研究者というのは、やはりそういう自由な、リフレッシュできる期間が非常に大事じゃないかと思うのです。一般民間企業でもそういうことを取り入れてきておるのですから、ましてや研究者大学の教官等にとっては非常にこれは大事なことだと思うのです。この期間がまた新たな蘇生というか創造性に大きく結びついていく。今後そういう制度考えているかどうか、これを私は提案をしたいと思うから、これにつきまして答弁をいただきたいと思います。
  149. 長田英機

    長田政府委員 先生のお話は、研究をしている人が一定期間ちょっとその研究を離れてほかの研 究につくとか、ほかのことをやっていることによって知的の触発が行われるということかと思いますが、私どもも確かに研究の面からはそういうことが非常に重要だと思います。そういう点で何か制度ができるかどうか、これからも一生懸命に検討してまいりたいと思います。
  150. 近江巳記夫

    ○近江委員 十分これはよくまた検討していただきたいと思います。大臣、今局長が答弁しましたけれども、非常に大事なことだと思うのですね。それにつきまして大臣はどう思いますか。
  151. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 今局長から答弁したとおりでございますが、真剣にこれから取り組んでいきます。
  152. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に、この共同研究におきます委託研究、委託研究というのは国から民間、受託研究民間から国ですね。この場合、出資金の負担割合、あるいは研究開発の成果におけるこういう負担割合というのはどのようになるのですか。
  153. 山路順一

    ○山路政府委員 国研が受託研究をした場合には、国以外の者から全額研究費が出ることになってございます。また逆に、国から国以外の者に委託した場合には、全額国が費用を持つことになります。
  154. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、この成果ですね。例えば特許等であるとか、それはどうなるのですか。
  155. 山路順一

    ○山路政府委員 お答え申し上げます。  まず国が受託をした場合でございますが、現行研究交流促進法によりまして、委託者と特許権を共有することができることになってございます。また、国から国以外の者に委託した場合は、現在は、その発生しました特許権は一〇〇%国に帰属することになってございます。
  156. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは今後改善といいますか、どういうように考えておられるのですか。
  157. 山路順一

    ○山路政府委員 今回御提案申し上げております改定でございますけれども、そこの新九条でございますが、国が委託にかかわります研究で、本邦法人とそれから外国法人等との国際共同研究にかかわります研究で、そこから出ました成果は共有する場合、それから例えば国に一〇〇%帰属した特許権であっても先方がそれを使いたいと言った場合には、無償なり廉価なりで使用させるというのが今回の新九条の提案内容でございます。
  158. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから次に、受託契約におきます公益性の範囲、これはどうなっておりますか。
  159. 山路順一

    ○山路政府委員 お答え申し上げます。  受託研究の場合は先ほど申し上げましたとおり、受託者たる国と委託者たる国以外の者との特許権が共有されることになります。その場合に考え方といたしまして、じゃ共有の割合の問題でございます。これにつきまして公益性を考えまして、一つには共有の割合を考えるということでございます。現行法令によりましては、二分の一を下回らないというのが国の持ち分になっておるわけでございます。
  160. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから「有益である研究を行う者」というこの「有益」というのは、だれがどんな方法判断するのですか。
  161. 山路順一

    ○山路政府委員 今先生の御指摘は、国有施設の使用に関しまして有益なというふうに理解をさせていただきたいと思いますが、その場合には、その施設を所有しております省庁の長が現在は有益であるかどうかを判断することになってございます。  しかしながら、今回改定をお願いしております新十一条におきましては、条件を緩和することになるわけでございますが、その条件の緩和としまして、使用いたします当該研究施設以外で国が行っておる研究に密接な関係があるという分野まで、異分野まで今回条件を緩和するわけでございますので、その場合には今回の新十一条の内容では、その研究を行っておる、すなわちその施設を持っておる省庁の長ではなくて、その研究に密接に関係がある省庁の長が有益であるか否かということを判断することになります。
  162. 近江巳記夫

    ○近江委員 それからまた、この施設の利用考えてみますと、これは国の研究公務員、さらにまたハイレベルの研究所を持つ大企業が主になるんじゃないかと思うのですね。問題は、中小企業も非常に創造性、意欲を持って頑張っているわけです。ところが、やはり基盤が脆弱であるというようなことではねられる、そういうことが非常に危惧されるわけです。中小企業への配慮についてはどういう基準を持ち今後判断していかれるのか、その辺についてお伺いします。
  163. 長田英機

    長田政府委員 私どもも、先生のおっしゃるとおり、どうしても大企業の方が人も充実して使いやすいということがあろうかと思います。そういう点から私たちは、いろいろなパンフレットをつくったりしまして関係方面に周知をして、中小企業をもちろん含めたそういう分野へ、関係方面に周知し、さらにその施設がどういうことをやっているかというような普及に努力をしております。現にこの改正法案につきましても、特に中小企業でもあるいはベンチャー的な企業なんかはかなり使う余地があるんじゃないかという気もいたすものでございますから、そういう方面につきましてもこれからも大いにPRをして理解を得て、使う機会をなるべくふやしていくように努力したいと思っております。
  164. 近江巳記夫

    ○近江委員 当初、本法案には五本の柱を用意しておった、ところが二本が抜けておるということが指摘されておるのですね。国研研究者勤務時間内に企業等外部の研究に参加する、いわゆる研究兼業制度、これをなぜ措置をしなかったかということが一つです。もう一つは、国研研究者退職金の不利益を救済する特例措置、改正法第六条ですね、これの対象を例えば特殊法人の推進します。そういうプロジェクトに拡大する措置、これをなぜ行わなかったのか、その二点につきましてお伺いいたします。
  165. 長田英機

    長田政府委員 兼業の問題につきましては、実は大学の先生につきましては現在規定があるのでございますけれども、これも勤務時間内については現実には動いていないというような実情がございます。この兼業問題につきましては、そういうことにも見られますように、公務員制度全般にかかわる原則とかあるいは全体の勤務のあり方というようなことと非常に密接に関連いたしまして、私ども総務庁とも随分議論をいたしました。行革審においても議論が行われました。しかしながら今回は、まだまだ検討の必要があるということで今回の法案には間に合わなかったということでございます。  それからもう一点の、いわゆる休職出向した場合の退職手当の問題でございます。  これにつきまして、特殊法人の委託研究の場合あるいは共同研究の場合に拡大をしようという案がございまして、直研連からもそういう話がございました。これにつきましても、総務庁初め関係省庁といろいろ相談いたしまして、しかし、これは法律改正しなくても運用で何とか対応できそうだというようなことで法律に織り込むことをしなかった、そういうようなことでございます。
  166. 近江巳記夫

    ○近江委員 国立研究機関研究公務員国立大学等へ講義に行く場合、これは併任として勤務時間内にも行けるわけですけれども、公立大学あるいは私立大学、これは現在講義に行けませんね。こういう点は非常に不公平なように私思うわけでございますが、その運用の拡大ということにつきましてどのようにお考えになっておられるか、お伺いいたします。
  167. 長田英機

    長田政府委員 今の先生の御指摘は、国研の職員と私学あるいは公立の方との連携の問題だと思います。私どもは、そういうようなケースがこれからも非常にたくさん出てまいりまして、非常に重要なことじゃないかと認識しております。これを勤務時間内にやろうとしますとまさに兼業の問題でございまして、勤務時間外にやるという方法もいろいろございますけれども、いずれにしましても、これは、兼業という制度をどう考えていくかということで、今申し上げましたようにいろいろな事柄と関係いたしますなかなか難しい問題でございます。ただ、私ども科学技術庁といたしましては、これからも他の関係省庁と一生懸命相談 しながら、何とか問題解決に努力していきたい、こういうふうに考えております。
  168. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはぜひ努力をしていただきたい、このように思います。  次に、いわゆる国際共同研究開発、これにつきましてお伺いしたいと思います。  三月の十日ですか、パリで開催されましたOECDの科学技術会議でビッグサイエンスの国際協力のあり方につきまして討議をされておるわけです。これは、政府を代表して審議官が行かれたということも聞いておるわけでございますが、行かれて、我が国としてどういう点を主張され、また、我が国として今後どのように対処していかれるのか、基本的なことにつきましてお伺いしたいと思います。
  169. 平野拓也

    ○平野説明員 お答えを申し上げます。  去る三月十日、十一日、これは四年半ぶりでございますけれども、OECDの科学技術大臣会合が開かれました。全体のテーマは、一九九〇年代の科学技術政策、これの国内政策及び国際間の政策、その相互関係を議論しよう、こういうことでございまして、御質問にございましたメガサイエシスあるいはビッグサイエンスの問題につきましてはその一番大きなテーマの一つでございました。  我が国は私から基調の発言をいたしたわけでございますが、この内容は一昨年の科学技術会議の国際問題懇談会の報告を踏まえて発言をしたものでございますけれども、要点を申し上げますと、まず、ビッグサイエンスを国際的に議論するに当たりましては、個々のプロジェクトにつきまして研究者間の意見交換を十分にやるということが第一点でございます。それから、構想の初期の段階からその意見交換を行うことが重要であるということが第二点。第三点は、他の研究開発活動、いわゆるスモールサイエンスでございますけれども、そういうものを圧迫することのないように、そういう形の取り組みをすべきである。それから、各国が一たん同意いたしてプロジェクトがスタートしました後は、予算等につきまして継続的に支援が行われるような枠組みを確立することが重要であるといったようなことを指摘いたしたわけでございます。  それから、アメリカ等も基調発言を行ったわけでございますけれども、大体これに賛同するような発言でございました。  この議論の結果でございますけれども、我が国が申した点、OECDの場におきまして情報交換を行う、あるいは国際的にこれを進めるための基本的な問題についてディスカッションする場、それをOECDの中に設けよう、こういう主張に対しまして、結論としましては、フォーラムを設けるということが合意されたわけでございます。  なお、この会合におきまして、メガサイエンスあるいはビッグサイエンスというものをどこまで考えるかということでございますが、従来、一般的に漠然と考えられておりました大型の設備を必要とするようなものに加えまして、例えば地球環境のためのいろいろな観測といったような地域的な広がりを持つものについても、これを内容によってはビッグサイエンス的な扱いにしようということについても合意が成立したということでございます。
  170. 近江巳記夫

    ○近江委員 我が国は、今日、経済大国として、これは衆目の一致するところでございますし、科学の分野におきましても、そういう積極的な発言といいますか、そういうことは今まで非常に消極的だった、こう思います。今後は、そういう国際舞台においてもきちっとリードできるような、胸を張った、そういうひとつ展開を特に今後していただきたい。それを強く要望しておきます。  それから、非常に今世界的に心配になっておりますのは旧ソ連邦、そしてまた東欧の頭脳流出の問題です。これが非常に心配であります。これがその国際会議におきましても十分検討されたのかどうか、我が国としてどういう構想を持っておるのか、この二点につきましてお伺いいたします。
  171. 平野拓也

    ○平野説明員 ソ連の頭脳流出の問題でございますが、これは、今回のOECDの会合におきましては、旧ソ連からの頭脳流出ということに限定した形での議論はなされなかったわけでございます。  実は、私もそちらに行ってから気づいたんでございますけれども、そのOECD諸国の、特にヨーロッパの国々の一番の問題はソ連というよりむしろ中・東欧でございますけれども、その辺から現実にもう何百人、何千人という単位の研究者、技術者がいろんな形で来ておるというそういう現実がございまして、それをどうするかということが最大の関心であるというふうに気がついたわけでございます。  で、その場の議論でございますけれども、要するに、中・東欧諸国が今後市場経済へ移行する、そのためにはやはり科学技術あるいは技術革新、その能力が大変必要であるということで、OECD諸国としては、ぜひこういう科学者、技術者の養成、訓練を行わなきゃならない。それから、それぞれの国の科学技術を振興するためのシステムと申しますか、そういうものを強化しなきゃならぬ。それから、西側諸国からの技術移転ということを、そのプロセスを効率化しなければならない。それから、軍民転換、軍事技術を民間の技術に転用する。こういったものについてOECD諸国がこれらの中・東欧諸国に積極的に支援をすることが必要である、こういうことが合意されたわけでございます。  このために、その科学技術情報のネットワークをつくるとか、あるいは研究者、技術者の双方向の、相互の交流、一方通行じゃなくて相互の交流を促進させる必要があるということでこざいました。OECD諸国、これは我が国も含んで、今後これらの国の科学技術についてのレビューを行っていくというようなこと、そういうことを通じまして、例えば我が国の場合でございますと、戦後から今日までのいろいろな経験がございますけれども、こういうものをそういう諸国に移しかえていくという努力が今後必要ではなかろうかというふうに感じて帰ったわけでございます。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に、こういう研究成果のいわゆる海外への発信の問題であります。  我が国のこういう研究成果を国際的にやはり流通させなきゃいけない、これは非常にやはり大事だと思います。この点につきまして、どういう構想を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  173. 長田英機

    長田政府委員 我が国の研究成果の国際的な普及につきましては、私ども科学技術振興局の監督のもとに情報センターという法人がございまして、ここでデータを整備して、ほかの国からもアプローチができるようになっております。  なお、この場合に、アメリカやヨーロッパのそういう情報機関と提携をしながら、なるべく幅広く利用してもらえるように努力しているところでございます。
  174. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは前にも私が指摘しましたけれども、やはりもう刻々とスピードが変わっておるわけでしょう。したがいまして、リアルタイムということを私は申し上げた。ですから、一層さらにそれは充実をしなきゃいけない。毎年少しぐらいの増額では対処できないと思うのですね。ですから、その辺のところを我が国の発信基地としての、皆さんもそれだけ自信を持っておるならば、国際的にもそれだけの通用できる、そういう情報化時代にふさわしい充実したものが必要だと思うのです。今センターも非常に努力をしてくれているとは思いますけれども、これはバックアップを皆さんがしっかりしなければできませんよ。今後、この充実についてどう考えておられますか。
  175. 長田英機

    長田政府委員 この情報の外国への提供につきましては、外国サイドからも非常に要請が強いわけでございまして、また、国際的な我が国の置かれた立場を考えてみますと、我が国として外国から情報を得るだけじゃなくて、こちらからも当然発信して外国へも情報を提供していかなきゃならない、こういうようなことを考えますと、私どもが取り組んでおる行政の中で極めて重要な部分を占めておるわけでございまして、そのためにデー タの整備をすること、あるいはそれを翻訳して英語にして外国人もアクセスしやすいようにすること、それをまた迅速に提供することというような気持ちでこういう事業の分野を充実させていきたいと考えております。
  176. 近江巳記夫

    ○近江委員 私の質問時間も大分迫ってきましたので、あと二点だけ聞きますが、一つは前にも聞きましたが、具体的な研究テーマとして、一つはがんの問題、それから長寿科学の問題。  一つは、がんのこの十カ年戦略もそれなりの成果を上げておるわけですが、いよいよ次の新たな十カ年戦略ということが当然射程距離に入ってきている。それは科学技術庁文部省、厚生省が中心になってやっておるわけですが、この初めの十カ年計画、これを踏まえてさらに飛躍的な充実をしなきゃいけないと思うのです。ただ、今までのこの十年間やってきたから、それをただ積み重ねをしてまた十年間レールを走ればいい、そういう取り組み、考え方では、これは本当に世界に先駆けするような成果は私は望めないと思うのです。ですから、この十カ年戦略について、各省はどういうように今取り組みをして新しい十カ年戦略に取り組もうとしておるか、それをお伺いしたいと思います。  それからさらに、今申し上げた高齢化社会を控えまして、長寿科学研究ということが一番大事なんです。長寿科学研究なんて、聞いてみたら厚生省が若干やっているだけなんです。世界には長寿科学の研究所なんてすばらしいものをつくっていますよ、西欧の先進国においては。我が国は世界一のスピードをもって高齢化社会を迎えるのでしょう。それに対して余りにも、やってないとは言いませんけれども、力の入れ方が弱過ぎますよ。ですから、その件について今やっておられる厚生省から現状を聞き、また科学技術庁は、それは厚生省がやっているから、そういうことではだめなんです。中枢の科学技術庁が本腰を入れなきゃいけない。ほとんどやっていません、科学技術庁は。そういう姿勢でいいのかということです。今後この問題についてどう本腰を入れていくのか、以上二点についてお伺いいたします。
  177. 有川勲

    ○有川説明員 対がん十カ年総合戦略の御質問でございますが、五十九年から開始しております。現在八年目ということでございます。厚生省、文部省科学技術庁の主要三省庁合同で行っておりますが、私ども厚生省が事務局をやっております。  これまでさまざまな成果を得て今日に至っておりますが、今後の取り組みにつきましては、去る二月の二十八日にがん対策専門家会議を開きまして、ワーキンググループを設けまして、対がん十カ年総合戦略の総括と戦略終了後の問題について専門家による検討作業を開始することが決定されたところでございます。厚生省といたしましては、この検討作業の進捗状況を踏まえつつ、今後対処してまいりたいと考えております。
  178. 井田勝久

    ○井田政府委員 お答えいたします。  ただいまお話がありましたように、厚生省におきまして専門家会議において検討しているところでございまして、この検討をきちっとまず詰めていただくことが第一だと思いますが、科学技術庁といたしましては、従来、がん研究の中で、対がん十カ年戦略におきましては非常に大きな役割を担ってきたわけでございまして、重粒子線のがん治療装置でございますとか、遺伝子の研究でありますとか、担ってきたわけでございます。したがいまして、次の取り組みに向けましてもやはり積極的に取り組んでいきたい、このように考えておりまして、厚生省あるいは文部省関係省庁と協力して取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。
  179. 鈴木宏

    鈴木説明員 文部省におきましては、従前より科学研究費補助金等を中心にいたしましてがん研究については力を入れて取り組んできておるところでございますけれども、対がん十カ年総合戦略後の問題につきましては、先ほど厚生省の方からもお話がございましたが、がん対策閣僚会議のもとに置かれております専門家会議で今後検討されることになっておりますので、そういったものを見守りながら対応していきたいというふうに考えております。
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 寿科学研究のそれはもう一遍答弁聞きますけれども、要するに、八年間を振り返って総括して対処したい、科学技術庁としては十分意欲を持ってやっていく、それはそうでしょう。ですから、要するに私は、がんが解明でき、撲滅できるなら、これはもう人類にとってすばらしい、これ以上の研究はありませんよ。十年間、あなた方が一生懸命やってきたのはわかりますよ。これからもずっと続く大きなテーマでしょう。そうすると、私が聞いておるのは、対処をしますというのは当たり前のことですよ、それは。要するに、新しい十カ年戦略を意欲を持ってやるのかどうか、それを聞いているんですよ。新しい十カ年戦略を掲げて前進するための今検討なんでしょう。十カ年戦略、新しいのをやるのかやらぬのか、どっちなんですか。
  181. 井田勝久

    ○井田政府委員 お答えいたします。  十カ年戦略、これは今厚生省で検討しているところでございまして、こういった検討がまず一義的だと思いますが、科学技術庁といたしましては、この十年間を総括いたしますと、やはり遺伝子の研究、例えばかなり多くの段階の過程で、複数のがんの遺伝子でございますとかがん抑制遺伝子、そういったものの解明が進んでまいりましたし、あるいは多くのがん遺伝子が発見されまして、がん遺伝子産物の機能が解明されてきました。こういった遺伝子研究というのはやはりがん研究では非常に大事でございますので、こういった面を積極的にやらなきゃいかぬということで、こういった施策、これはゲノム分析を初めといたしまして、新たにこういった政策を打ち出しているところでございまして、こういったところをこれから大いに積極的に進めたい、こういうことでございます。  一方、診断だとか治療だとかそういった技術でございますが、これは、科学技術庁では重粒子線のがん治療装置を今一生懸命開発しておりますが、また関係省庁におきましても、胃がん発生には食塩が、あるいは肺がん発生には高脂肪食が非常に促進的に働いているといった、そういった疫学的な研究でございますとか、あるいは供給血、血の供給でございますが、そういった面の感染経路をきちっとするとか、いろんな面からのアタックを進めておりまして、そういうものを総合的にきちっと体系立てて次の段階に進むということでこういったものに取り組んでまいりたい、このように考えているわけでございます。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間が来ましたので終わりますが、要するに、大臣に聞きますけれども、次への新たな十カ年戦略を目指して頑張るのかどうか、それが一点。それから、長寿科学のことをあなた方は一つも答弁しないじゃないですか。何をやっているの。私は終わろうと思っているんですよ。答弁が出なかったら終われないじゃないですか。それを答えてください。
  183. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 私は、先生が日ごろ、がん撲滅に大変な御関心を持っていただきまして、我が放射線医学総合研究所へも時々御視察においでになって研究員を激励していただいている、大変に感謝をしているところでございます。  私は、今さら申し上げるまでもございません、がん対策は国を挙げて取り組まなければならぬ大事な課題でございます。さっきから厚生省やうちの局長からるる御説明申し上げておりますが、今後とも関係省庁と連絡いたしまして、がん関連の先導的な、そしてまた基礎研究推進して、がんの制圧を図っていきたい、こう思っております。  なお、きょうはそのことで松平所長を呼びまして、いろいろ打ち合わせしておりました。患者さんを入れる病棟も不十分でございますから整備しようとか、あれしておりましたが、最近の治療の結果も報告がありました。去年の十二月末でございますが、速中性子線の治療実績が上がっておりますが、治療率が七割です。大変なものでござい ます。それから、陽子線の治療実績も報告がありましたが、これも七割、大変な実績も上がっておりまして、今後ともひとつ一生懸命やっていく所存でございます。  なお、長寿科学の充実の御指摘でございますが、申し上げるまでもございません、急速に高齢化社会を迎えつつあります。科学技術の積極的活用を図りますことによって、活力ある社会経済を維持していくことが大事だと考えております。さっき、科学技術庁は何にもやってないと言われましたが、大変心外でございまして、大変やっているのですよ。もう時間がありませんから余り詳しく申せませんが、長寿社会対策大綱を定めておりますことも御案内のとおり。これを踏まえまして、当庁におきましても研究開発を積極的に推進しております。  具体的に申しますと、老化やリューマチ等高齢者に対する病気の原因解明及びこれらの診断、治療技術等の開発に関する基盤的研究を理化学研究所においてやっております。御承知のとおりです。それから、動脈硬化、高血圧等の発症の研究に使用するモデル動物、まずこれを飼育しなければいけませんので、これを科学技術振興調整費によって各省庁と連絡のもとに推進しております。それから、アルツハイマー病等の遺伝子の異常に起因する難病の根本的解明に資するためのヒトの全遺伝子の解析を、理化学研究所、放射線医学総合研究所等において実施しているところでございます。  当庁としましては、今後とも関係省庁と協力をいたしまして、このような共通的、基盤的分野における長寿科学の開発研究を一層充実してまいる所存でございます。
  184. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間が来ましたので終わります。  それで、一言だけ言っておきますが、要するに長寿科学なんというものは、大きなテーマだけでも私の知っている範囲だと七十はある、今だけでも。科学技術庁が今言ったのはそのうちの何項目ですか。要するに、もっと力を入れてもらいたいということを強く主張しておきます。大臣を中心として今後よく取り組んでいただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。  以上です。
  185. 近岡理一郎

    近岡委員長 吉井英勝君。
  186. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 私は、前回に続きまして、きょうは法律案の第三条関係についてまず質問したいと思います。  この第三条というのは、人事院規則第十五条の二、原則は、「恒常的に置く必要がある官職に充てるべき常勤の職員を任期を定めて任用してはならない。」という、この原則を踏まえた上で、ただし書き規定として任期を定めた任用、これは一九六八年に定めたわけでありますが、その理由というのは、電話自動切りかえに伴う特別の例外的措置、つまり、近い将来官職がなくなるとして特定職種に限定していたというのがそもそもの出発点だというふうに思います。今回の任期つき任用というこの部分は、さまざまな研究プロジェクトに研究職として任用していく、つまり、そういう点では特定職種、例外的という限定的なものでなくなってくるという面があるわけです。私は、これは公務員制度の根幹にかかわってくる問題の一つだと思うわけです。従来の客員研究員の問題とは違うわけです。  そこで、公務員任用のあり方としてこういうことを常態化していくことになるのかどうか。これは内閣の方針に直接かかわる問題でありますから、まず最初に大臣の見解を少し伺っておきたいというふうに思います。
  187. 長田英機

    長田政府委員 今回の任期つき採用趣旨でございますけれども、最近、科学技術が非常に進歩しまして、高度化したり複雑化したりしてきております。そういう点を考えてみますと、異なる研究主体間の知識や発想の交流というのが非常に重要になってきた。特にまた国研におきましても、研究を行っていく場合に、各界のいろいろな人材国研に集めてやるということが非常に効果的だというような研究面からの要請がございまして、この要請を実現するためには現在非常に限られた形でしか認められておりません任期つき任用制度をもっと活用していこうというような趣旨でこの規定が置かれたわけでございます。
  188. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 けさの畚野さんのお話にもありましたけれども、大体この間ずっと定員削減、定員削減でやってきて、そして本当ならば若干研究者を次々と採用して、そして国研の中で本当は育てていかなければいけないのですね、いろいろな種類の研究分野で。ところが、それをやらないできて、いわばパート的にといいますか間に合わせ的にといいますか、そういうふうなやり方でこの任期つき任用という形に今行っている面が非常に強いわけです。しかも、それは単にそういう問題にとどまらないで、これが公務員任用のあり方として実は根幹にかかわってくる問題ですから、こういうことを常態化していく、これが内閣の方針となってしまうと大変な問題なんですね。ですから、これは内閣の方針にかかわる問題ですから、大臣の見解として、こういうものをこれから常態化するのかどうかという点についてはきちっと伺っておきたいと思います。
  189. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 もちろん、当庁もきのう若手の研究員を採用して入庁式があったわけですが、毎年毎年新しい優秀な人材を入れまして育成していきます。しかし、さっき局長から御答弁申しましたように、やはり外におります優秀な方に一時的に来てもらって、いろいろ情報の交換、知識の交換をやる、これも必要でございまして、そういう制度を常態にするということでありませんで、本体のほかにそういう制度も併用しながら立派な研究を達成していくということでございますから、誤解のないようにお願いしたいと思います。
  190. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 まず私は、今日の公務員任用のあり方については、これは非常に根幹にかかわる大事な問題だということを指摘しておいて、これは当然今常態化するものではないという趣旨だと思うのですが、そのことを踏まえた上で、さらに内容に入っていきたいと思うのです。  先日の委員会で振興局長の方から、任期つき任用を承認する場合、親元の方に帰るということをはっきりさせた上で任期つき任用の対象にしたいという趣旨の御答弁がありました。つまり、民間の場合ですと、出身企業と本人の間で、任用の期限が切れた後復職する契約、再雇用の契約をした上で公務員として採用するということになるのかどうか、ここの点はどうなんですか。
  191. 長田英機

    長田政府委員 おっしゃるとおりでございまして、任期つき採用をいたします場合に、その方がその採用になる前に属していた機関に帰るように採用をしたいと考えています。
  192. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 それで、民間の出身企業から国研の方へ行った場合に給与面でダウンする場合がありますね。そうすると、企業の側で差額支給を設けて給与ダウンにならないように措置をするということもあり得るわけです。そういう差額支給を行うということについて、これは法律上排除されないという形に読み取れるのですが、この点はどうですか。
  193. 長田英機

    長田政府委員  指摘のような補てんにつきましては、今お聞きした限りにおきましては、民間企業における労働の対価としての報酬というべきものではないのではないかというふうに考えられますけれども、このようなものにつきましては、国家公務員法によって明示的にそういうものを受け取ってはいけないという規定はございません。しかしながら、考えてみますと、国家公務員は報酬でなくても公務の公正性、中立性、そういうものはございますから、そういう点で好ましくない状態で問題が生じないように取り組んでいきたいというふうに思います。
  194. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 ですから、今のお話は法律上は排除されないということなんですよね。できるだけそうならないようお願いしたいという趣旨のお話は、今の答弁を聞いておりまして、そのお話はお話としてあるわけなんですが、ここには、任期つき任用公務員の方の場合、しかし、もとの民間企業におったときから比べて大幅にペースダウ ンとなりますと、補てんを受けた場合、これは明らかに同じ公務員でありながら賃金に格差が出てくる、そういう問題があるということを今の答弁を聞いておって伺いました。  次に、民間企業から国研研究職任用される、当然国費で研究するわけでありますが、その特許等の問題は後ほど触れますが、その研究の中で得た研究のノウハウ、これを今度三年なり五年なりたって任用期間が終わってもとの民間企業に復職した場合、その実用化について、研究ノウハウを持ってその企業に帰って実用化する、こういうことについて法律上何か縛りをかけているようなものがこの第三条で読み取ることができますか。
  195. 長田英機

    長田政府委員 任期つき採用になりました方がそこで研究している内容を企業に持って帰るか、あるいは途中で企業に言うとか、そういうような議論が考えられるのかもしれませんが、現在の国家公務員法では、国家公務員をやめた後も守秘義務がかかっております。そういうような点から、制度的にはそれで担保していけるというふうに考えます。
  196. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 必ずしも国家機密とかそういうことにかかわらない、いわゆるノウハウ、研究を通じて得たノウハウというものがあるわけですから、そのノウハウを生かして民間企業で製品開発その他実用化に当たっていく、これについて法律上の縛りがありますかということなんです。
  197. 山路順一

    ○山路政府委員 法律上の縛りというのはございません。しかしながら、先生がおっしゃいますノウハウなり経験と申しますのは仕事中に得られるものでございまして、逆に言いますと、研究業務以外のものでありましても国との関係で業務を遂行した場合には、おのずからその分野におきます経験だとかノウハウというのはその実際に仕事をした者に蓄積されるのは当然でございます。そういう意味で、例えば委託研究を国から国以外の者にお願いいたしました場合にも、それは委託で実施した者にそういったノウハウが蓄積されるのは当然でございます。  しかしながら、研究の場合にはその成果は何かということでございますけれども、その成果は、やはり最終的には例えば特許権といったもので具現化されるものだろうと考えております。その特許権は、国で行いました、民間から出向してまいりまして公務員になりまして国研で得られましたそういう特許権は、国に帰属するということでございます。
  198. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 特許権の議論はまた後ほどやりたいと思っているんですが、必ずしもすべてが特許権という形で具現されるわけじゃなくて、それはノウハウという形で、いろいろな形で、これは知的財産としてもとの企業へ持って帰るわけですね。それを使っちゃいけないとなると、これまた会社の中であれもいかぬ、これもいかぬとなったら実際上仕事にならないことになるわけですが、そういう点では、法律上はこれは冒頭におっしゃったように縛りがないということ、これを確認しておきたいと思います。  次に伺いたいのは、民間企業出身の方が研究所の所長になることも部長になることも研究主任になることも、それからプロジェクトリーダーといったポストにつくこともできるということになっているわけですね。それで、こういうポストにつきますと、つまり出身企業からの機器購入とかあるいは施設工事請負契約という決裁に関与するわけでありますが、この決裁に関与する職務につくこともこれはできると思うのですが、この点はどうですか。
  199. 山路順一

    ○山路政府委員 現行法令第二条で定義がございます。その定義によりますと、研究公務員の定義をしておるわけでございますけれども、今先生の御指摘の研究所長に例をとってみますと、その研究所長が指定職である場合にはこの研究公務員の定義から外れることになります。
  200. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 いや、所長だけじゃなくて部長、研究主任、プロジェクトリーダーというポストに民間から来られた方が、任期つき任用の方がそのポストにつくことができるわけですね、今度の場合。
  201. 山路順一

    ○山路政府委員 現行二条の定義の、「研究公務員」という定義に入っております場合には、任期つき任用ができることになっております。
  202. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 その場合、あらかじめ伺って確認しておりますが、そういうポストにつかれた場合に機器購入、施設工事請負契約などの決裁にかかわることは当然あるわけですね。
  203. 長田英機

    長田政府委員 今審議官からお答えしましたように、指定職である研究者は対象には入りません。指定職ですと、大体所長、次長、支部長、こういう方が入りますが、そういう方でも研究所によっては実際に指定職じゃない場合があります。今先生の、例えば企画立案、発注、そういうことだけをやる人がこの任期つき任用でどうかという点なんでございますが、法律の上ではそれは入り得ます。しかし、現実に私が申し上げましたように、いろいろな研究者の方に集まってもらって、そしてそこでみんなで研究の効率を上げようということでございますから、管理だけしているというような人をこの任期つき任用制度採用するということはちょっと考えられないというふうに考えていただいた方がいいと思います。
  204. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 いや、私はその管理だけする人を採るとか、そんな議論をしているんじゃないです。当然研究が主たる任務で来られて、しかしポストとしてはプロジェクトリーダーなり部長なり、そういうポストについて研究に携われる、その人の場合に、今もおっしゃったように機器購入その他の決裁に携わることもあり得るんだということの確認をさせてもらったんです。  つまりこういうことなんですね。これが天上がりという言い方になるかどうかはともかくとして、民間企業におった方がそういうポストにつかれて、主たる仕事はもちろん研究であっても、当然契約関係にもタッチをされる。そのとき、もとの出身企業からの契約もあり得る位置になるんだ、こういうこともあり得るんだということを一つ言ったわけです。逆に今度は天下りの場合なんですね。天下りというのは国家公務員法第百三条で原則禁止となっております。ところが今度は、三年なり五年なり任期つき任用公務員になった方が、任期後、冒頭におっしゃったようにもとの職務に復するわけですね。職務に関連するもとの企業に帰ることができるというわけですから、これはこういう点ではいわば天上がりもあれば天下りも両方ともやるということになってきて、私はここにはやはり全体の奉仕者という面でどうなのかという問題、あるいは公務の中立性という点でどうなのか、この点でこうした国家公務員法の大きな前提、原則を形骸化させていく問題が含まれている。私は、この点について大臣はどのように考えていらっしゃるのか、ちょっとこれも聞いておきたいと思うのです。
  205. 長田英機

    長田政府委員 今管理、まあ管理のみをする人はないかもしれませんけれども、それで研究に携わるという方は採用することはあると思いますが、考えてみますと、現在の研究所の中の、例えば先生がおっしゃる発注とか、そういうものというのは何も一人の人が決めているわけではございませんで、みんなが相談して稟議を回して決めるわけでございますから、すぐ直ちにそういうことに接触したからおかしなことが起こるということはないだろうと思うのでございます。特に、国家公務員になるわけでございますので、これは職務専念義務は当然としましても、信用を失墜する行為はやってはいかぬということで国家公務員法に基づく厳しい規律を受けるわけでございますから、そこのところは問題が生じないというふうに考えます。
  206. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 ちょっと誤解してもらっちゃいけないのですが、私は何か問題が起こるということを前提にしての議論なんかやっているんじゃないのです。なぜこの三条の任期つき任用の問題が今日の国家公務員法の各種の規定に照らしても相当突っ込んだ検討をしなければいけない問題を抱えているかということを今言っているわけなんで すね。  ですから、さっきの出身企業からの給与の差額支給の問題、これは法律上できるわけなんですね。縛りはかかっていない。つまり、この点では他の研究公務員より実質的には給与が上になるということがあるわけなんですね。ここに不平等扱いの問題が生まれてくるわけなんです。  それから、研究ノウハウの企業へ帰ってからの実用化ということになると、国家公務員というのはあくまでも全体の奉仕者なんですから、それが特定の企業にとってメリットがあるような、そういう問題を生じてしまうというのはやはり原則的に問題があるわけなんですね。  それから、出身企業との機器購入契約の決裁の問題というのも、私はおっしゃったことはよくわかっているのです。一人の人間が判こをついてできるような、そんなものじゃありませんから。しかし、そこの決裁にかかわってくるということが果たしてどうなのかという問題は、これは考えなきゃいけない問題だと思います。  それから、公務員法第百三条の、これは原則天下り禁止なんですね。しかし、五年たったらいわば直接かかわっておったそこへ、何しろ出身企業なんですから、戻っていくわけでありますから、私はこういった点ではこれは企業代表とか企業ひもつきと言われるような、そういうおそれが出てくるようなことはやはりうまくない、この点では国家公務員制度にとって非常に大きな問題をこれは持っているのだということを、そのことを大臣によく聞いていただきたいと思って具体の話を少しずつさせてもらったわけです。またこれは、研究に必要な自主、民主、公開の原則とか大学研究所における学問研究の自由、研究所自治とかあるいは研究者自治とか、自主性、自立性ということを考えたときにも、いささかもそういうふうなおそれというのが生まれてはやはりよくないわけですから、私はこういう点では公務員制度にとって非常に大きな問題を抱えているというふうに提起しているのですが、この点について大臣はどういうふうにお考えになられますか。
  207. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 確かにまず給与の高い低いありますね。しかし、無理においでいただくのじゃなくて、やはりこの研究所でやりたいなという方をお迎えするように努めていくつもりでございます。それからまた部長やそれ以上になりましていろいろ特権を得られましてもそういうことをなさらぬような方を選ぶし、それからまたノウハウを持っていって自分の企業を発展させ名ということもされないような方をまず選ぶということも心がけながら、確かにおっしゃったような問題が起こる可能性もありますから、十分綱紀の粛正等につきましては注意をしてこの制度を活用していきたいと思っておるところであります。
  208. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 世の中善意を前提としてもちろん成り立っているわけなのです。しかし、善意だけですべて問題がなければ、ほとんどあらかた申し合わせ程度で、法律も何も要らないわけですよね。国家公務員法を初めとしていろいろな法律制度があるというのは、やはりそういうおそれがあるものとか懸念される問題、それをきちっと整理する中から生まれてきているわけでありますから、大臣の今のお話は、あくまでもないであろうとか善意を前提とした話でありますが、ただ我々は法律を新たにつくるという場合にはやはりそこは厳密に見ていかなければいけない話なんです。その点で、大臣も実際上は懸念について述べられたように、この法律については私が指摘したような問題がまず存在しますから、やはりこれはさらに突っ込んで研究が必要だということをまず指摘しておきたいと思うのです。  時間が大分たってまいりましたので、今度は法律案の第九条関係に少し入りたいと思いますが、まず特許権の相互主義の原則を具体的に確認しておきたいと思うのです。  アメリカと日本でアメリカの仕組みを日本でも適用する、フランスのやり方は日本でも適用する、相互主義なんですね。具体的に言いますと、アメリカの場合は、アメリカ政府が委託研究をやる場合、アメリカ国内法人であればその特許権の帰属というのは一〇〇%企業ですね。外国法人の場合には一〇〇%アメリカ政府ということですね。そして、例えば日米企業でアメリカ政府から委託を受けた場合にはどうなのか。これは、日本の企業は持てないですね、アメリカ企業は持てるわけですが。そういう関係にありますから、今度は日本との相互主義の原則ということになりますと、日本の場合は、これまで国内法人については一〇〇%日本政府が持つ。アメリカ法人に委託した場合には、その特許権の帰属は一〇〇%日本政府。日米企業の場合は、これは国際的な共同研究なのですから、日本企業が半分、アメリカ企業についてはアメリカとの相互主義の原則がありますから、その分は日本政府が五〇%持つ、こういう関係になって、他の日仏とか日独の場合だったら、日本政府五〇%、委託先企業五〇%のうち日本企業が五〇%、そしてフランス企業が五〇%、つまり受託企業分五〇%のうちの半分ずつ持つ、こういう関係になろうかと思うのですが、この点はどうですか。
  209. 山路順一

    ○山路政府委員 お答え申し上げたいと思います。  先生御指摘のとおり米国との間での関係を申し上げたいと思います。  米国は、御指摘のとおり対外国企業に委託した場合には一〇〇%米国政府が特許権をいただくというシステムになっておるわけです。したがいまして、今回の法律におきましても相互主義をとりますので、米国に委託した場合には一〇〇%日本国の特許権の帰属になるということでございます。
  210. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 それは日米共同研究の場合にもそうなるのですね。国際共同研究でやる場合、日本法人と米国法人の共同研究です。
  211. 山路順一

    ○山路政府委員 恐縮でございますが、質問趣旨でございますが、委託にかかわりますものと理解してよろしゅうございましょうか。(吉井(英)委員「そうです」と呼ぶ)はい、委託にかかわります場合は、今御説明申し上げましたとおり、米国との場合には相互主義で一〇〇%日本国の所属になります。
  212. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 それで、次に、日本政府が日本のA社とアメリカのB社の、要するに日米間の法人間の国際的な共同研究という形で委託した場合、そこで生じた発明、特許の申請に当たって、確かに特許権は日本政府の方に帰属するわけですが、ただそのときに、発明、特許の申請に当たってアメリカ国防総省のチェックが入って軍事機密特許に当たるという指定を受けた場合には、日本で特許申請した場合もこれは秘密特許という扱いになるのじゃないかと思うのですが、つまり出願公告、特許公告は非公開、こういう形になろうかと思うのですが、この点はどうですか。
  213. 山路順一

    ○山路政府委員 ちょっと説明が長くなるかわかりませんが、お許しをいただきたいと思います。  今回の措置は、国の委託にかかわる国際共同研究の成果であります特許権等の取り扱いにつきまして、我が国が必要な資金をすべて負担していることにかんがみまして、公益性の確保の観点を踏まえつつ、諸外国との制度の国際的調和を図るというために設ける規定でございます。すなわち、特許権の取り扱いにつきましては、国自身の無償実施や国の第三者への実施許諾の権利を留保しつつ国と研究実施者との関係を規定しているところでございます。  ところで、今先生御指摘のとおり、米国法人が米国におきまして特許出願するに当たりまして、国務省が当該発明を国家機密としようとする場合には当該発明について特許権を取得することができなくなるという事態が可能性の問題としては起こることでございます。しかしながら、仮にも共同研究を行う場合には、その成果についてはある程度の予測、予想をつけまして委託をするわけでございます。したがいまして、現実の問題といたしましてはこうした事態が生じることは想定しがたいものと我々考えておるわけでございます。  また一方、日本で特許を出願する場合には、そ れはアメリカとは法制が違いますので可能でございます。日本国で特許を取ることは可能でございます。
  214. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 時間が大体参りましたので、最後の質問をしておきたいと思うのですが、日本は平和研究原則なのです。しかし、その成果の中に軍事転用可能というものがあった場合、このときに日米法人の間で国際共同研究をやる、かなりその研究開発についてアメリカ側も発言権を持った場合、もちろん日本政府に特許申請するのですが、しかしアメリカ国防総省の方でチェックが入って、これは軍事機密特許に当たるということを指定された場合には、これはかつて四年ほど前に議論したことがありますが、これは日本政府への特許申請に当たっても秘密特許扱いになるわけでしょう。ですから、これは特許の出願公告も特許公告も非公開という扱いになるわけですね。私はそこのところを確認をしているのです。もし、そうならないというのだったらならないでいいのですよ。日本政府の委託研究にかかわるものについては、日米共同研究の形になってもすべて特許もノウハウも公開される、これは原則ですということをここで明言していただいたらそれで結構ですから、私、最後にその点だけはっきりとしたお答えをいただいて、質問を終わるようにしたいと思うのです。
  215. 山路順一

    ○山路政府委員 先ほど御答弁申し上げました内容を繰り返させていただきますけれども、理論的にはその可能性は想定できます。それはそのとおりでございます。しかしながら先ほど申し上げましたとおり、この制度の運用に際しましては、テーマの選定であるとか委託先の選定等につきましては細心の注意を払ってやるということはもちろんでございますので、こうしたことが発生しないようにしてまいりたいと考えております。  また一方、先ほど申し上げましたとおり、日本日本国内に招きまして特許を取ろうとする場合には、先ほど先生の御指摘のとおり機密云々というお話はございません。  以上でございます。
  216. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 終わります。
  217. 近岡理一郎

    近岡委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  218. 近岡理一郎

    近岡委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。近江巳記夫君。
  219. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同及び公明党・国民会議を代表いたしまして、研究交流促進法の一部を改正する法律案について賛成の討論をいたします。  我が国が来るべき新世紀に向けて真に豊かでゆとりある社会を実現させ、また、その置かれている国際的地位にふさわしい応分の貢献を果たしていくためには、創造性豊かな科学技術の振興を図っていくことが必要不可欠であることは言をまちません。  今日、我が国の科学技術水準は、多くの分野において世界の最高水準に位置するまでに至っており、とりわけ民間中心とする極めて積極的な研究開発への取り組みの努力によって、製品化技術等の分野のレベルの高さは衆目の一致するところであります。一方、基礎研究のレベルも、多くの研究者努力によって、近年、先進諸外国と比肩し得るレベルの成果が数多く輩出される状況にありますが、我が国の経済力に比較し、また基礎研究から応用・開発研究までバランスのとれた総合的な研究開発能力の涵養を目指す上でも、必ずしも十分とはいえない状況にあります。基礎研究の成果は単に一国の財産でなく、世界共通の国際的公共財として位置づけられるものであり、かかる知的ストックの創出と、世界にこれを発信していくことは、国際社会との協調を図りつつ、その発展を期す我が国に課せられた重大な使命でもあります。  基礎研究の振興が創造性豊かな研究者の自由な発想によるところは言うまでもありませんが、このためには研究組織の枠を越え、産学官及び外国との積極的な交流により、研究者の創造性が発揮できる環境の整備を図っていくことが何にも増して重要であります。特に基礎研究分野研究の重要な担い手である大学国立試験研究機関研究活動についてはさまざまな身分上あるいは財産管理上の制度制約を受けていることから、かかる制約を一層緩和し、自由濶達な研究活動環境を整えていくことが焦眉の課題であります。  今回の研究交流促進法改正案は、こうした現下の要請に十二分にこたえるものではないとしても、我々は今回の改正により、国の内外の研究交流の一層の活発化が推進され、基礎的・創造的研究の振興が図られるものと期待するところであります。  以上、本法律案に対する賛成の討論を終わります。
  220. 近岡理一郎

    近岡委員長 吉井英勝君。
  221. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました政府提出研究交流促進法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、民間大企業の研究者を期限つきで研究公務員任用することは、国家公務員制度の根幹にかかわる問題を含んでおり、国の科学技術行政に対して重大なひずみをもたらすものと言わざるを得ないからであります。  改正案では、個々人の身分保障という側面からの措置とはいえ、任用に当たっての親元の出身企業への復職と官民の給与差額等の保障措置を企業との間で前提にしているばかりか、企業から採用された研究公務員が国費で研究した研究成果のノウハウを持って任期終了後に親元企業に戻り、その成果のノウハウによる技術開発も自由に行うことができるなど、企業のひもつき的性格を持つものと言わざるを得ません。  しかも改正案では、任用される研究公務員について、法律上の明文規定で任用の役職等の制限規定もないことから、着任するポストによっては、施設の機器材の発注業務等の許認可などの職務権限を持ち得ることができ、公務員としての公務の中立性が保てないおそれが非常に強く、公務員のあり方としても問題があると言わなければなりません。  言うまでもなく、国家公務員は憲法と国家公務員法に基づき、国民全体の奉仕者でなければなりません。それゆえに国家公務員法では、成績主義による採用身分保障という任用における根本基準を示し、安心して職務に精励できるように法文化しているのであります。こういう国家公務員法の根本原則があるからこそ、人事院規則第十五条の二でも「恒常的に置く必要がある官職に充てるべき常勤の職員を任期を定めて任用してはならない。」という原則をうたっているのであります。  個々研究者自分の意思で民間企業を退職し、研究公務員になることとは全く違う今回の改正案のような民間人の任用制度は、全体の奉仕者であるべき公務員を営利を追求する企業の奉仕者としかねない問題を含んでおり、研究交流の促進と国民のための科学技術の発展、研究者の自由かつ創造的研究活動活性化の観点に照らしても重大な問題を持っており、また逆に研究公務員役割制度から見て、公務員制度の根幹にかかわる重大な問題を持つものであります。  第二は、国民全体の知的財産を内外の大企業に供与することは、国の財産と財政を損なうものであり、容認することはできません。  改正案では、国の委託による国際共同研究であっても、これまで国に一〇〇%帰属していた特許権などを研究に参加したというだけで特許権を分与した上に、特許の使用料まで無料にするということであります。国の財産は正当なる対価なくして譲渡してはならないという国有財産法と財政法の一般原則に反し、国際共同研究に参加する一部大企業に国民共有の知的財産を供与するものであり、こうした法的措置は研究者を初め国民的な合意を得られないものであります。  第三は、国有施設の廉価使用に対する条件緩和 の特例措置は、施設を利用する大企業に特別の便宜を供与する優遇措置の拡大であり、必要のない措置であります。  国有施設の使用については、国有財産法の規定に基づく特別措置法により、研究所側の業務の支障のない範囲で定められた使用料等を支払うことによって施設の利用は十分できるようになっているのにもかかわらず、現行の研究交流促進法によって、国有の試験研究機関の施設の使用基準を緩和し、民間大企業が廉価で使用できるような特例措置を定めているのであります。通常の適正な対価を支払うことができる大企業にこれ以上特別の便宜を供与する特例措置の拡大は納得できるものではありません。  以上、反対の主な理由を述べまして、討論を終わります。
  222. 近岡理一郎

    近岡委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  223. 近岡理一郎

    近岡委員長 これより採決に入ります。  内閣提出研究交流促進法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  224. 近岡理一郎

    近岡委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  225. 近岡理一郎

    近岡委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、斉藤斗志二君外二名より、自由民主党、日本社会党・護憲共同及び公明党・国民会議の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。川島實君。
  226. 川島實

    ○川島委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提案者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     研究交流促進法の一部を改正する法律案に対する付帯決議(案)   政府は、本法の施行に関し、次の事項について十分配慮すべきである。  一 研究交流の促進は、健全な科学技術研究を促進するための国の総合政策の一部として位置付けられるべきであり、これを含め、総合的、体系的な科学技術政策全般の推進を図ること。  一 研究の成果に係る知的所有権のあり方について、世界的趨勢等にも配慮を行った上、検討を進めること。  一 各国において特許権の所属等についての法規や慣習が異なるため、本法の運用に当たっては、諸外国は勿論のこと、本邦の研究者に対しても不公平にならないよう、注意を払うこと。  一 研究者身分を安定させるために、国が有限の任期の研究者の雇用を行う際には、任期後の前の職場への復帰について配慮すること。  一 研究交流促進のための措置に関し、なお一層の改善について検討を続けること。  一 基礎的、創造的な研究推進の中核的担い手である国立試験研究機関及び大学研究環境の整備に努めること。  一 研究交流を促進するため、研究者が一定の期間本来の職務を離れて別組織において研究を行う場合のあり方について、検討を進めること。  一 本法に基づいて研究交流を促進するに当たっては、日本国憲法の理念である平和国家の立場をふまえ、その成果が全世界科学技術の発展と国際平和に資するよう努めること。 以上であります。  各事項の内容、趣旨につきましては、案文及び委員会の審査を通じ十分御理解いただけることと存じますので、詳細の説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  227. 近岡理一郎

    近岡委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  斉藤斗志二君外二名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  228. 近岡理一郎

    近岡委員長 起立多数。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、谷川国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。谷川国務大臣。
  229. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  230. 近岡理一郎

    近岡委員長 お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  231. 近岡理一郎

    近岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  232. 近岡理一郎

    近岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四分散会