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1992-03-26 第123回国会 衆議院 科学技術委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年三月二十六日(木曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 近岡理一郎君    理事 斉藤斗志二君 理事 光武  顕君    理事 宮路 和明君 理事 山本 有二君    理事 与謝野 馨君 理事 川島  實君    理事 関  晴正君 理事 近江巳記夫君       中馬 弘毅君    塚原 俊平君       渡海紀三朗君    簗瀬  進君       秋葉 忠利君    竹内  猛君       辻  一彦君    馬場  昇君       長田 武士君    吉井 英勝君       菅原喜重郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷川 寛三君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     林  昭彦君         科学技術庁長官         官房審議官   山路 順一君         科学技術庁長官         官房会計課長  岡崎 俊雄君         科学技術庁科学         技術政策局長  須田 忠義君         科学技術庁科学         技術振興局長  長田 英機君         科学技術庁研究         開発局長    井田 勝久君         科学技術庁原子         力局長     石田 寛人君         科学技術庁原子         力安全局長   坂内富士男君         科学技術庁原子         力安全局次長  谷   弘君  委員外出席者         人事院事務総局         任用局企画課長 尾木  雄君         防衛庁装備局開         発計画官    青山 謹也君         環境庁企画調整         局地球環境部環         境保全対策課研         究調査室長   飯島  考君         外務省北米局安         全保障課長   小澤 俊朗君         外務各国際連合         局科学課長   岩谷 滋雄君         文部省高等教育         局企画課長   草原 克豪君         文部省高等教育         局大学課長   工藤 智規君         文部省学術国際         局学術課長   雨宮  忠君         文部省学術国際         局研究助成課長 鈴木  宏君         科学技術委員会         調査室長    松尾 光芳君     ――――――――――――― 委員の異動 三月九日  辞任        補欠選任   永末 英一君    菅原喜重郎君 同月十日  辞任        補欠選任   秋葉 忠利君    岡田 利春君 同日  辞任        補欠選任   岡田 利春君    秋葉 忠利君 同月十一日  辞任        補欠選任   秋葉 忠利君    日野 市朗君   竹内  猛君    水田  稔君   辻  一彦君    松浦 利尚君   馬場  昇君    和田 静夫君 同日  辞任        補欠選任   日野 市朗君    秋葉 忠利君   松浦 利尚君    辻  一彦君   水田  稔君    竹内  猛君   和田 静夫君    馬場  昇君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  研究交流促進法の一部を改正する法律案内閣  提出第四三号)      ――――◇―――――
  2. 近岡理一郎

    近岡委員長 これより会議を開きます。  内閣提出研究交流促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。秋葉忠利君。
  3. 秋葉忠利

    秋葉委員 社会党の秋葉でございます。  改正案について何点か質問したいわけですけれども、まずこの中に、例えば科学技術に対する基本的な態度あるいは科学的であるとはどういったことかといった観点からの質問をしたいと思いをする。  実はその点を明確にするために、この委員会科学技術委員会でございますので、科学的な実験をひとつ長官の御協力を得て冒頭にやらしていただきたいと思うのですが、マッチ箱を使った簡単なものですので、委員長の許可を得て、大臣発言席あたりまでこれを持っていって、ちょっと長官に御協力をいただきたいと思うのですけれども、よろしゅうございましょうか。
  4. 近岡理一郎

    近岡委員長 どうぞおやりください。
  5. 秋葉忠利

    秋葉委員 どうも御協力ありがとうございました。――他の方には今お見えにならなかったと思いますので、改めて説明をしたいんですが、今長官が一番重いというふうにお感じになったマッチ箱の中には十円玉がこういうふうに三枚入っております。それから、その次に重い、それよりは軽いというふうにお思いになった、お感じになったマッチ箱の中には、マッチ箱二つ重ねてあるんですけれども、上に十円玉が三枚入っております。下には十円玉が一つも入っておりません。それから、一番軽いとお感じになった中には十円玉が一枚だけ入っております。ですから、一番軽いのは確かなんですが、一番重いとお感じになったのはマッチ箱一個の重さプラス十円玉三枚、それより軽いとお感じになったのはマッチ箱二つの重さプラス十円玉三枚です。ですから本当はこっちの方が重いんですが、こういうふうに、見て、手で持ち上げると、どうしても軽い方を重いと思ってしまうというのがただいまの実験のみそでありまして、これはトリックではありません。皆さんでもぜひこれは委員長初め、後でこれは委員長にも差し上げますが、お試しいただきたいと思います。御自分でも実験をしてみて、恐らくそういう結果になると思います。十中八九は大体そういう感じになります。  ここで申し上げたいのは何かと申しますと、科学的であるとはどういうことかというところを問題にしたいわけでありまして、確かに自分の手で何かを持ってみるということは大切なことだと思います。しかしながら、その重さをはかるという目的のためには、ただ単に自分感触、日常的な感触だけでは必ずしも正確ではない。今申し上げましたように、具体的に、例えば十円玉の数を数えて数量化することによって、この場合にはどちらが重いかという具体的な事実が明らかになってくるというのが科学的であるということだと思います。すなわち定量的なデータもとにして議論を行うこと、それを事実と認めて、その上にさらにさまざまな解釈であるとかあるいは判断というものを積み重ねることが科学的であるということかと思います。  実は、この改正案に関してもそういった事実、数量化されたデータ、それをもとにできるだけ議論をしていただきたいというのがただいまの実験の趣旨でございます。  で、その線に沿ってまず最初に伺いたいんですけれども、大体六年前ですけれども、この法律ができました。研究交流促進法というのができたわけですが、今回その改正案提出するに至った動機といったところですね、どういった理由があったのか、それを、まずとりあえずは一般的なところで結構ですけれども、できるだけ具体的な事実に沿ってお答えいただければと思います。
  6. 谷川寛三

    谷川国務大臣 今お話がありましたように、この法律制定されましたのは昭和六十一年でございます。御案内のとおり、国と国以外のものとの交流促進いたしまして、国の試験研究を効率的に推進することを目的とした法律でございます。制定お話がありましたように約六年が経過いたしました。この間に我が国科学技術を取り巻く諸情勢は大きく変化をいたしました。これまたもう御案内のとおりでございます。近年科学技術面での我が国国際貢献必要性が高まってまいりますとともに、科学技術の一層の高度化複合領域化等が急速に進みまして、基礎的・創造的研究積極的推進が内外から強く求められるようになりました。こういった状況に適切に対処するためには産学官及び外国との間の研究交流の一層の促進が重要となりまして、このために国の研究活動を取り巻くもろもろの制度的制約をより一層緩和しなきゃならぬという必要性が出てまいったところでございます。  今度の改正は、こういった状況にかんがみまして、関係各省ともよく協議いたしましたが、特に早急に措置しなければならぬ事項につきまして所要の改正を講ずることにした次第でございます。また詳細は御質問によりましてお答えいたします。
  7. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。  一般的な認識としては、私も同じようなことは確かに感じております。ただ、今のお話の中にもありましたように、それをもう少し具体的に詳細に幾つかの点について吟味をしていきたいと思いますし、この際ですので、昭和六十一年、一九八六年のこの委員会において研究交流促進法案審議した際に提起されました幾つかの問題点について、その後の経過等もフォローしたいと思いますし、あるいはこの研究交流促進法制定されて以来のその運用の実績といったこともこの際確認しておく必要があるのではないかと思いますので、そういった点からさらに質問をしたいと思います。  まず、この改正案提出理由幾つかですけれども、例えば先日来科学技術庁の方から非常に詳細に、しかも長時間にわたって懇切丁寧にいろいろと御説明をいただきました。その御努力に対してここで改めて感謝を申し上げたいと思いますが、その過程で、御説明があった中には、この改正案は三本の柱から成っている。一つ特許権帰属の問題、特許権その他研究成果帰属の問題、それからもう一つは国の研究施設利用に際する幾つかの条件緩和、それともう一つ任期つきの、民間から国の施設への期限つき任命といったその三本の柱から成るという御説明がありました。  それに関連して、一つ最初の例えば特許権その他の帰属ということですけれども、具体的には現行制度あるいは現行法律では、やり方では非常に問題があるというような問題提起でも結構ですし、こういった条件が変われば研究参加できるんだといったような、具体的な要請なり問題提起というものが外国法人なり外国政府なり、あるいは外国研究者からあったのかどうか、まずその点を確認したいと思います。
  8. 長田英機

    長田政府委員 先生の御質問は、最初におっしゃられましたパテント関係のことだと思いますが、このパテント関係の特例につきましては、これに関しまして過去に外国との間でいろいろなケースの話もございまして、そのパテントの取り扱いについてうまく話し合いがつかないというような事情から国際共同研究がなかなか成り立ちにくかったというようなケースがございます。こういう問題につきましては、私どもとしましては、一つ国際共同研究契約でございますから、前もって制度を用意して契約を結んで、そして研究に入るということでございますので、たるべく早くこういう措置を法律上しておきたい、こういうことでございます。
  9. 秋葉忠利

    秋葉委員 今のお答えでは、実はもう少し具体的に私は質問したつもりですけれども、六年前のその促進法そのもの審議の際には、例えばこういった問題は出てきていないわけでありますから、そうしますと、問題そのものがこの六年の間に生じたというふうに考えるのが自然だと思います。この六年の間に具体的にどういった情勢変化があったのか、その具体的なデータを踏まえた上で、ではこういうふうに対処するのがいいんだという結論に達せられたわけですけれども、そのそもそもの情勢変化を示す具体的なデータ並びに、そのデータを踏まえて解決策を探った結果このような改正案になったというところ、その特許権等帰属に関するところに絞ってとりあえずお答えいただきたいと思います。
  10. 長田英機

    長田政府委員 具体的な例示という御質問でございますので、ちょっと非常に専門的な内容のことにわたりますが例示を申し上げますと、アメリカのプラットアンドホイットニー社との関係で、熱応力緩和のための傾斜機能材料開発ということに関する研究をやろうといたしまして、これがパテント関係がございましてなかなか話し合い成立が難しかったというような例がございます。また、免疫の応答機構解明のための基盤技術開発につきましては、パスツール研究所を含む国際共同研究という話がございましたが、これも同様の事情でなかなか成立が難しかったというような、一例で申し上げますとそのような例が幾つかございます。
  11. 秋葉忠利

    秋葉委員 もう少し具体的なお答えが欲しいと思うのですが、つまり、例えば研究プロジェクトにおいて具体的に外国研究所なりあるいは企業なり、あるいは外国政府なりが共同研究参加したいという明確な意思があり、さらに、しかしながらその意思を実現するためには、最終的な研究成果であるその成果物帰属日本法律日本制度ではとても我慢できない、したがって、それを理由にして参加ができないんだという明確な意思表示があったのかどうか。意思表示がないけれどもそうであろうとそんたくをして、その結果改正案を出すことになったのか。そのあたりが私は非常に重要な点だと思いますけれども、いま一度明確にお答えいただきたいと思います。
  12. 長田英機

    長田政府委員 今、最初に申し上げました例で申し上げますと、プラットアンドホイットニー社から熱応力緩和のための傾斜機能材料開発についての問い合わせ等がございまして、当方では東京大学とか金属材料研究所とか、いろいろそういうところと話し合ってみたわけでございますけれども、そういうパテントの問題もありましてなかなか国際共同研究ができなかった、こういうことでございます。
  13. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。事前の御説明ではもう少し詳しい点を伺っております。例えば通産省科学技術庁との政策の違い。通産省の方がこういった問題について門戸が開かれている。同じ政府が行うことでやはり一貫性があった方がいいし、例えばこういった点で柔軟性があればそれに参加できるといったような意向を示したということを事前に私は調べていただきましたけれども、例えばそういった議論というのは説得力があると思います。そのあたりをやはり具体的に示すこと、これは私はただ単にこの委員会だけの問題ではなくて、しかも科学技術庁だけの問題でもなく、研究者だけの問題でもないというふうに思っております。  これからの科学研究というのは、やはり非常に多くの人たち理解を得てその協力もとに、ある意味で、全世界の人間の代表としての研究という意味が非常に大きくなってくるところがあると思いますので、こういった点、例えば制度を変えるに当たって研究者以外の広い層の人たちにも理解を求め、そして支持と協力を得るということが非常に大事になってくると思いますので、説得力のある説明、わかりやすい説明ということを改めてお願いしたいと思います。  それでは、その点に関して今二例ほどそういった例があるということは伺いましたけれども、それ以外のケースについて統計的な調査はなされていらっしゃるのでしょうか。つまり、たまたまその二例だけはそういう要請があるけれども、よく調べてみると、その二例というのは非常に変わったことを考えている人たちであって、一般的な傾向としては、仮に特許権帰属がどうなっても共同研究には参加したくないんだよという意思表示になるかもしれません。そういった意味で、特殊な例を挙げてくるというのはそれなりの事実ですから、それは尊重しなくてはいけませんが、より広範な、より一般的な傾向を示す統計的な調査、そういったものは具体的に行われたのでしょうか。
  14. 長田英機

    長田政府委員 より包括的な、全体を網をかけて把握するような調査はしておりません。私ども行政実務をやっている過程におきまして直面した問題を今申し上げたわけでございます。
  15. 秋葉忠利

    秋葉委員 それでは、その調査はしていなくても、具体的に何らかの研究機関なり、国の機関でも結構ですけれども調査をした結果、それを解釈することによって、こういった制度の改編が必要だという結論を得るに至った、その基礎となるデータというのはどこかに存在するんでしょうか。
  16. 長田英機

    長田政府委員 この法改正法案を検討するに当たりまして、大臣からも申し上げましたが、研究に携わっている方の意見、それから各役所、いろいろそういうところと意見交換をいたしました。そして、どういうことが必要なんだろうかという、そういう意味では調査もいたしました。そういうプロセスで、こういうパテント関係のところがやはりやる必要があるんだというふうに研究者の方から話をいろいろ受けまして、もちろんこれは具体的テーマに照らして個別に、先生がおっしゃるように網羅的に調べたのではございませんけれども、こういう制度が必要なんだということを私どもも調べた上で、いろいろ研究所まで伺いまして、そういうことで法改正案にしたということでございます。
  17. 秋葉忠利

    秋葉委員 実は、先ほどの、マッチ長官にお持ちいただいて実験をいたしましたのはまさにその点でございまして、今いろいろな話を聞かれたというふうにおっしゃいますが、それは非常に定性的な、要するに感触だということだと思います。  研究者にも研究者なりの利害関係というのがございます。研究者も、それは科学的な分野では確かに客観的なことをしますし、一般的な決定をするに当たっても科学的なプロセスをたどって決定をされる方が確かに私も多いという、これは感触でございますけれども、持っております。しかしながら、やはり研究者のエゴがあり、自分たち利害関係を守るというところもあるわけですから、その利害関係を公平に、ほかの利害関係研究者以外の利害関係というのが国の政治の中にも当然あるわけですから、それとの関係優先順位をつけなくてはいけないというのが政治だと思いますが、その際に説得力を持つのは、一つのグループの人たち意見利害関係を背後に持った人たち意見、つまり感触ではなくて具体的なデータ、つまりそういう人たち感触を支持しているような客観的なデータ、つまりこういうニーズが確かにありますというデータだと私は思います。  ですから、ここで何度もそのことを伺っているのは、先ほど申し上げましたように、感触というのは、仮に自分の手でさわったものであっても間違いを犯すというのが私たちの、これは人間の、これはもう制限されているところでございますので、それを超えるためにやはり客観性のあるデータが必要かというふうに思いますのでこの客観的なデータを伺っているわけですが、それでは、別のデータを伺いたいと思います。  この法改正案が通って、このような特許権その他の帰属ということが、例えば共同研究をする際の外国法人、さらにその共同研究参加している日本法人研究所等にも、一部ではありますけれども、それが譲り渡される、あるいは帰属することができるように制度の変更を行った場合に、具体的にはどのくらいの率の、今までなかった共同研究参加というものがこれからどのくらい見込まれるのか、その予測についてのデータはお持ちでしょうか。
  18. 長田英機

    長田政府委員 この国際共同研究の、どれくらい今後できるであろうかという見通しの御質問でございますけれども、今私どもは、例えば調整費利用してどういうことができるだろうかというようなことで、これは相手のあることでもございますから、今の段階で例えば何件、どれくらいできるというふうに具体的に申し上げることはできないわけでございますけれども制度としては早くこれをつくっていただいて、そして、こういう契約ができるような体制、それをぜひ整えていただきまして、そして、私どももあわせてどういう案件がこの対象になっていくかということで検討をしていきたい、こう考えております。
  19. 秋葉忠利

    秋葉委員 私がこれを伺っているのは、ただ単に抽象的な、英語で言いますと、これはアカデミックと言いますが、つまり、学問的な興味だけで実質的な応用のない空理空論を申し上げているわけではございません。  これに関連して、実績の面で一つ伺いたいと思いますけれども研究交流促進法の第九条というのがございます。国有施設使用ということですけれども、これが具体的に国有施設を使うことができるということになっているわけです。この六年間の実績というものをお示しいただきたいと思います。
  20. 山路順一

    山路政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘の第九条の適用、すなわち国有施設廉価使用でございますけれども実績はございません。
  21. 秋葉忠利

    秋葉委員 六年前に法律を新たにつくった。私は、法律をつくるということは非常に重要な国の事項だと思っております。ですから、それをつくるに当たって、やはりきちんとした必要性がある、ただ制度的に形を整えればいいというだけではなくて、やはり具体的な社会的な必要性があるということも非常に重要な法律制定の際の要件になるというふうに思います。  そして、具体的に現在改正されようとしている法律、六年間これが実施されたにもかかわらず実績がゼロであるというものが実は前回法案の中の主要な柱の一本であった。そして、今回の改正案においてもその点についての条件緩和、さらなる緩和一つの柱になっているという点があるわけですから、この改正案のほかの柱についても同様に、本当にこの改正を行った際にそれが社会的に有用な役割を果たすのかどうかということを私がここで質問するのは非常に論理的だと思いますし、それにきちんとお答えいただくのはやはり全国民的な理解を得るという点では必要なことだと思っているからこれを伺っているわけですけれども、しかしながら、この法案改正案提出された科学技術庁においては、そういった、本当にこの改正案が必要かどうか、改正案ができれば本当にこれが利用されるのかどうかといったことについて、具体的な実態としての社会の動きあるいはニーズというものを全く把握されていない、これは非常に無責任な法案提出の仕方だと思いますけれども、それについてどうお考えになりますか。
  22. 長田英機

    長田政府委員 今先生どれくらいのニーズがあるか把握していない、こういうふうにおっしゃられましたが、私どもにおきまして、繰り返しになりますけれども、国立の研究所の人との意見交換をしょっちゅうやりましたり、あるいは各省庁との意見交換をもやっております。こういう過程を通じて、そしてさらに、今回この法改正に当たりましては、春ごろからでございますが、特別の調査を各省庁にお願いしてみんなでやっている、こういうようなこともやってまいりました。その結果として今回の改正内容三点が出てきたわけでございます。  なお、先ほど御指摘施設利用の点につきまして実績がないという点でございますけれども、私どもは六年前に法律ができてから、いろいろなパンフレットをつくったり、あるいは各国研の方にそれをPRする、これは当然のことでありますけれども、いろいろなPRをやってまいりました。どうもその施設利用につきましてはまだちょっと使う方が、国の施設でございますので、この制度を使うことがちょっとふなれであるということ、要件が非常に狭かったというようなことも考え合わせまして、今回要件をより広げるという改正を提案しているわけでございます。
  23. 秋葉忠利

    秋葉委員 今おっしゃったことは、恐らくそういうお答えになるだろうという想像はついたのですが、実はこの研究交流促進法案、六年前に出されたときも当然同じような、調査と言われますけれども、同じような現状把握ということは行われていたのだと思います。今の改正案を出すに至った準備と同様、あるいはこれはもう新しく出る法律ですから、改正案と比べると、恐らく科学技術庁内でもそれ以上の努力を行って、現状把握調査といったことを行われたのだと思います。その結果できた法律。その九条について実績がないというところが問題なんです。前回法案提出については一切調査をしなかった、しかしながら今回は調査をしましたから大丈夫ですというのだったらまだ説得力があるのですけれども前回法案の審査に当たって、あるいは提出に当たって、科学技術庁では当然今回と同じようなことをやっている、にもかかわらず実績がゼロというところがあるから、これは問題だなということで今質問申し上げているわけでございます。  したがって、前回と比べてこれは本当に今回の場合にはそれ以上の調査をやっているのだ、その調査といっても、前に申し上げましたように、客観性のある調査、具体的な社会の情勢研究の動きというものをより的確に反映するような、具体的な定量的な調査をやった上でこの改正案を出しているのですから大丈夫ですという説明があれば、それは私も納得できるのですけれども、今の御説明では、恐らく前にやったであろうような調査、それと同じことを今回もやって、前回はだめだったけれども今回はよろしいということなわけですけれども、そこの論理的な関係を明確に御説明いただきたいと思います。
  24. 長田英機

    長田政府委員 この施設利用につきましてでございますが、前回、六十一年の交流制定をされましたときには、相当長い期間かかって、いろいろ時間がかかりまして実態も調査してやったわけでございます。今回も、改正でございますから、現在の法律もとにおける措置ではどこが不十分かということで、そういう点からは十分な調査をしているわけでございます。  先生指摘のように、六十一年に法律をつくりまして施設利用が少ないという点につきましては、実は私ども調査だけじゃなくて反省すべき点もあると思っております。すなわち、そういう制度ができたということを関係の方にもっとPRすべきであった、もっとわかってもらわなければならたかったという点でございます。そういう点で、これからは要件緩和されるわけでございまして、より使いやすくなるわけでございますので、あわせてPRを今以上にやって、そして使えるようにしていきたい、こういうふうに考えております。
  25. 秋葉忠利

    秋葉委員 実は、この点は余りこれほど深く質問する予定ではなかったのですが、いろいろと問題点が出てまいりましたので、質問通告の中にはありませんが、何点か申し上げたいと思います。  まず、今のお答えではありませんでしたけれども、六年という間で時間が短いからまだ周知徹底が行われていない、よく知られていないから利用できないのだという趣旨のお答えがありました。しかしながら、私は六年という年限はそんなに短い時間ではないと思います。六年という時間はどのくらいの意味があるかということをよくお考えいただきたいと思います。大学に入って二年間の一般教養の課程を経て、二年間の専門課程を経て学士を得て、例えば工学士でも理学士でも結構でございます、その後、ある程度専門的な教育を受ける大学院の二年の修士課程を終える、それで六年です。その六年という間に、日本の若者だけではありません、世界の若者は、ほとんど専門的な知識のないところから幾つかの分野においては世界的な成果を上げるまでの変化を遂げるわけです。その間には、例えば実験物理とか実験化学とか実験施設を使うような科学であれば、当然実験施設の使い方も全く何も知らなかったところから世界的なエキスパートにまで成長するのに十分な時間、それが六年間という時間だと思います。  したがって、六年かけてできなかったということは、学問的な、一般的な世界的な時間の長さの評価というところから、それは非常におかしい評価ではないかというふうに私は思います。六カ月だったら話はわかります。しかしながら、六年あってそれが十分に活用できないということは、時間の短さということでは全く説得力がないと私は思います。  それからもう一つですけれども、これまたPR、周知徹底が足りなかったということをおっしゃっておりますけれども、実は六年前の本法案審議において、当時の河野科学技術庁長官が答えている言葉がございます。それは、研究者同士、かなり高度の研究施設になれば、研究者の間ではどこに何があるかということは十分知っているのだ、だからそれほどPRということに意を用いる必要はないと思うけれども、しかしながらPRも必要だからやりましょうというようなお答えを河野長官はなさっております。今おっしゃっていることとはまるっきり違うわけですけれども、私は河野長官のおっしゃっている方が真実により。近いというふうに思います。ですから、PRということもやはり問題の核心を突いているお答えではないというふうに思います。  それからもう一点ですけれども、それを反省して科学技術庁としてはこれから施設を十分に使ってもらうために何かやるということですけれども、しかしながら、それでは問題の立て方が逆ではないのでしょうか。前回法案の際にも、共有施設を使うということ、そのことによって、そういうニーズがあるから、そういう必要性があるから法律改正してそれができるようにするのだというような趣旨が盛り込まれております。そうであれば、なぜ新たにPRをして、科学技術庁努力を行って、そういうことが必要ですよということを説く必要があるのでしょうか。  結局、ですから、前法案にこの国有施設使用ということが出てきた、しかしながら、それは実態を踏まえたものではなかったというところをまず率直に反省していただいた上で、それでもなお改正案が必要である、条件緩和が必要であるということをおっしゃるのであれば、それでは具体的に、この改正案によって可能になる施設使用によってどのような科学技術上の研究成果があらわれてくるのか、それが日本あるいは世界の科学技術にどういった意味があるのかというところを十分に分析し、そしてその周知徹底を図った上で、それで何か抜本的な対策を立てるということが大事ではないかというふうに思います。  もう一つの可能性としては、国の持っている施設というのは実は老朽化していてまるっきり使いものにならない、だからだれも使いたくないのだというような可能性もあるかもしれません。あるいは、国の持っている研究施設というものが、古くはないけれども、実際的にその用途が現在の自然科学界あるいは工学界、そういった非常に広い範囲の用途からずれている、したがって研究者は、研究施設は足りないのだけれども、たまたま足りないものが国にないというようなことかもしれません。そのいずれの場合においても、それにかなった解決策というのがあるのだと私は思います。  しかしながら、今お答えがあったようなPRをするということ、それは非常に派生的な問題であって、実は科学技術政策の根本、それから国が一体どのような施設を持ったらいいのかといったような、そういうようなより基本的な問題についての抜本的な反省が必要なんではないかど思いますけれども、それはいかがでしょうか。
  26. 長田英機

    長田政府委員 先生から幾つかの点の御質問がございましたが、私がPRと申し上げました趣旨は、新しい制度でございますから、そういうことが、一定の要件もと施設を使える、その場合にどういう手続で使うのか、今までやったことがないことにつきましてどういうような手続で使えるのだろうかというような非常に手続的なことも含めまして、こういうふうにやればできるのだ、そういうところのPRをいろいろいたしませんと、現実にはなかなか使いにくいのじゃないか、国の研究所でございますからなかなかアクセスがしにくいのじゃないかという意味でございまして、私どもニーズ調査はやっておりますが、それにつきましてPRもあわせ一生懸命やって施設が使えるようにしていきたい、こういうような考え方でございます。
  27. 秋葉忠利

    秋葉委員 手続的なところははっきり言って枝葉末節な問題だと私は思います。  今、ニーズ調査をやっていらっしゃるというお話でしたが、それじゃ、その調査の結果をここで公表してください。
  28. 山路順一

    山路政府委員 お答え申し上げたいと思います。  調査の結果としましては、大変数多くの要望が寄せられておりますので、一、二事例を御紹介申し上げたいと思います。  私ども科学技術庁に、筑波でございますが防災科学技術研究所がございます。そこに大型の降雨実験装置を所有してございます。本来、現行法律によりますれば、その防災研の研究と密接に関係ある研究使用するというのが現行法令でございますけれども、今回の改定によりまして異分野の使用を可能にしたいと考えております。具体的に申し上げますと、郵政省の通信総合研究所で行われております研究一つとしまして、マイクロ波の減衰特性を解明するための研究がございます。これに大型降雨実験装置が使われるだろう。すなわち、降雨の強度のもとにマイクロ波の減衰特性を解明するための研究に使うというものでございます。甚だ専門的で、恐縮でございます。  それから、もう一つ事例を申し上げたいと思います。  通産省に工業技術院の北海道工業開発試験所が、先生案内のとおりございます。そこには低温実験棟を所有しておるわけでございます。これを異分野使用するということになりますと、例えば運輸省の船舶技術研究所の海難事故の原因の一つになっております船体に氷が付着する着氷に関する研究に密接に関係があるということで、この低温実験棟を異分野に使わせる、そういう事例が寄せられてございます。  以上でございます。
  29. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。  実は私は九条を読んでみて、例えば今の最初の防災科学の降雨実験装置、恐らくこれは九条を少し拡張解釈といいますか、柔軟に運用することでその施設を使うことは可能だというふうに思います。しかしながら今の御説明で、ともかくそういう必要性がある、使えば非常にいい記録が得られるであろうということは十分理解いたしました。  私は別に難しいことを質問しているわけではなくて、最初質問したときに今のようなお答えが出てくれば、あえてなぜ私の質問が大事か、お答えいただきたいということを説明するまでもなかったわけですから、ぜひ、こちらも別に質問に答えていただきたいということをくどくど申し上げたいわけではありませんので、データがあるのかということを聞いた場合には、あるのだったら最初からお答えいただきたいと思います。  それから、これで一応その三本柱の一つ国有施設使用については、第一番目の特許権の場合と同じような、少なくとも幾つかのケースに関しては必要性があるということは確認させていただきました。  それ以外の問題、まだあるわけですけれども、もう一点、今度は、例えば民間からの研究者を国の研究機関が登用する場合に任期を切って雇うことができるというのが三本目の柱だというふうに思いましたが、これについて質問をしたいと思います。また、これについてですが、実は前回の議事録を見ますと、この点については必要がないというお答えがあったわけでございまして、その点について確認をさせていただきたいと思います。  これは六年前の四月十日の遠藤委員質問に対する答えですけれども、民間の研究者が国の研究所に来て働くことについては、特に大きな法律的な制約はないというふうにお答えになっているわけです。ですから、今回の場合には、実はその民間の研究者が国の研究所に来て研究をする場合に法律的に制約があるから改正をすべきだというのが改正案なんですけれども、六年前と今と具体的にどのような客観的な情勢変化があってこのような科学技術庁の民間と国との間の研究交流について百八十度の方針の転換を行ったのか。その客観的な変化を示すデータをぜひお教えいただきたいと思います。
  30. 長田英機

    長田政府委員 私、今先生指摘のその前回の国会の正確な答弁をちょっと存じませんので、それとの比較はちょっと申し上げられませんが、今回法律提出するに当たりまして、この国家公務員に任期つきで採用する点、そこに、条文をごらんになっていただきますと、国家公務員法に基づく人事院規則で任期をつけて採用する、こういうふうに私ども改正法案はなっております。すなわち、国家公務員法に基づく人事院規則で決めたところに従ってということでございまして、実は、国家公務員法で従来完全に法律論として、純粋な法律論としてできないのかといいますと、純粋な法律論としてはでき得るわけでございますが、これが任期つき任用を実際上人の穴埋めに使うとかなんとかそんなようなことは好ましいことでございませんし、研究交流の実は上げる、すなわち、真の意味で優秀な方々が集まって研究の実を上げるということを交流法の精神として貫いていくために、ここで国家公務員法に基づく人事院規則で定めるところに従って任期をつける、こういうふうに決めたわけでございます。
  31. 秋葉忠利

    秋葉委員 ということは、私はその六年間の間にどういう客観的な情勢変化があったのか、それを示していただきたいという質問をしたわけですが、それに対するお答えはありませんので、科学技術庁としては、それは少し変化があったかもしれないけれども客観情勢はそれほど大きく変化はしていないというお答えだったと思います。しかしながら、六年前と法律に対する考え方が違ってきたというふうに解釈してよろしいのでしょうか。といいますのは、この中ではこの科学技術庁の立場がかなりはっきりと出されておりますので、それについてやはり改正案を出すというのは、その目的が何であれ、私は方針の百八十度転換だというふうに考えざるを得ないわけですけれども、そこを確認したいと思っているわけです。
  32. 長田英機

    長田政府委員 前回の答弁そのものは私ちょっと見てないのでございますが、今……(秋葉委員「答弁そのことではなくて、方針を伺っているわけですから」と呼ぶ)はい。従来は、従来といいますか、非常勤の職員というような形で国の研究所に来ている、研修生とかいろいろな形はございます。しかし、今回我々が研究交流法でねらっておりますのは、真の意味の職員になっていただいて、常勤の職員になっていただいて、そして研究の一員としてその研究の実を上げる、すなわち責任を持ってその研究に着手し、その実を上げていただく、これが今回の我々のねらいでございまして、そういう観点から今回の改正法に取り組んだわけでございます。したがいまして、従来いろいろ行われているような非常勤の職員の形態というのは、言葉はちょっと悪いですが、便宜的に来ているような感じの点もあるかもしれませんが、ちゃんとした職員としてそこで研究に従事する、こういうことでございます。
  33. 秋葉忠利

    秋葉委員 ますます私は頭がこんがらかってきているのですけれども、非常勤というのはちゃんとした研究員じゃないのでしょうか。それから、前の法律におきましても客員研究制度というのは、お答えの中にも入っております。客員研究員というのはちゃんとした研究員ではないのでしょうか。私はそんなことはないと思います。  ある意味で、仮に、外国なりあるいは国内からでも結構ですけれども、そういった臨時の形、有限の、期限が定まって研究をする人たちがちゃんとしないということはおかしいと思います。それがもう少しちゃんとした形で、ちゃんとしたというのはかぎ括弧つきで私は使っているつもりですが、こういう場合に任命が必要ではないかというふうにお考えになっているというのは六年前の答弁と全然正反対なわけです。はっきり言えば、六年前はそんなものは必要ありませんというようなことを言っている。客員研究制度があるからそれ以上のことは必要ありませんよということを言っているんだけれども、今回はそうじゃないということを言っているのであれば、なぜ科学技術庁としてはそういうふうに態度を変えたのか、その理由説明してくださいということを言っているので、別に、態度を変えたから悪いというふうに言っているわけではありません。  それは、情勢変化だってあるわけですし、それから六年前の認識が間違っていたということだって当然あるわけです。間違っていたら直せばいいんです、それでいいものにすればいいわけですから。ただし、じゃ、なぜ前回間違ったのか、それが間違っているのであれば、なぜ前回の判断は間違いだったのかということは反省していただかなくては困る。同じような間違いを今後も起こさないような改善をしていただかなくては困るということだと思うのです。ですから、そのために、具体的にどんな理由でこの差が出てきているかということを私は伺っているので、それは正面から答えていただいていいことなんじゃないでしょうか。隠すことは何にもないことじゃないでしょうか。ところが、答弁がまるっきりはっきりいたしません。  私は、今回の法律提出の今までのいきさつ、抽象論は結構です。何度も伺いました。それは十分理解しているつもりです。そのレベルの話ではなくて、もっと国民一人一人に説得力のあるような説明を現在求めているわけです。ですから、できないならできないで結構です。できないということに対しては、私は問題があると思いますから別の問題提起をさせていただきますけれども、できないならできないとおっしゃっていただければ別の問題に移ります。時間がもったいないですから回りくどい説明はやめていただいて、単刀直入に、データがあるんだったらデータを出していただきたい。ないんだったらないとはっきり言っていただいて、次の問題に移りましょう。
  34. 山路順一

    山路政府委員 それでは、局長の御答弁申し上げましたことに追加いたしまして具体的な事例を申し上げたいと思います。  私ども、この改正に当たりまして各国研ニーズ調査をいたしました。そのニーズ調査で相当の数が具体的事例として挙がってまいったわけでございますが、そのうち一、二、御紹介申し上げたいと思います。  私ども科学技術庁に航空宇宙技術研究所がございます。そこでは超音速航空機エンジンの研究も行っておるわけでございますが、今後こういうエンジンを開発、実用化するに当たりましては、従来問題視されておらなかった環境に対し。ます評価技術、すなわち、例えばオゾン層への影響など。でございますけれども、そういう評価技術が求められております。しかしながら、航空宇宙技術研究所にはこういった環境の専門家がおりません。したがいまして、外部より環境評価技術を持った研究者と一体となって研究する必要があるということから、任期つきで任用したいと考えたところでございます。  また、これは他省庁にわたることでございますけれども、工業技術院は、平成四年度より国立試験研究所の再編を行うと聞いております。この再編によりまして、多様な研究分野、領域にまたがる横断的、融合的研究領域に対する取り組みを強化したいという趣旨で新研究所を設立する予定であると聞いておるところでございます。その新研究所におきまして、横断的、融合的研究テーマに対しまして、他の国研の研究者、国立・私立大学の研究者、また民間企業の研究者外国人の研究者等を一時的に結集して、時限的に集中共同研究を実施したい、そういう方針があると聞き及んでおります。その場合に、民間企業の研究者に来ていただくということになりました場合に、今回改定をお願いしております任期つき採用が有効に働くのではないだろうか、そう考えておる次第でございます。  以上でございます。
  35. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。  これはまた私の不満を申し上げますと、最初からそういうことを言っていただければ何分か時間が節約できましたし、それから私も、別に不愉快なことを言いたくはありません。何度も繰り返すようですけれども、こういったお答えが出てくれば次の質問に移れるわけですから、そういった趣旨で、二時間という時間をいただきましたけれども、これも、任期ではありませんけれどもやはり有限の時間ですから、二時間過ぎればなくなってしまいますので、できるだけ効率的にお願いしたいと思います。  それで、今お挙げになった二例ですけれども、その二つの場合に、例えば客員研究制度ではなぜだめなのか。といいますのは、例えば私自身の経験で申し上げますと、大体ほかの大学に臨時で、一年でも二年でも結構ですけれども、そういった任期で研究をしに行く場合には客員の方が条件がはるかにいい。雑用もありませんし、それから大体給与その他も客員の方が条件がよくなっております。したがって、私の狭い経験から考えると客員制度で十分ではないかというふうに考えられるわけですけれども、客員ではなくて期限つきの研究員にしなくてはならない理由というのを、その差をはっきりと説明していただきたいのが一点です。  それからもう一点ですけれども、例えばこの任期つきということが恐らく多用されるであろうケースといいますのは、何か大型の期限つきのプロジェクトができるような場合、その際に非常に多数の研究員が必要になる。これを国立研究所で行う場合に、民間あるいは外国から研究員を募らなくてはどうしても研究が行えないというケースが考えられます。現在進行中のプロジェクトにも幾つかそういうことがあると思います。それはそれでいいのですけれども任期つき研究員の雇用ということになると、プロジェクトが終了した時点でその人たちは実は勤め先がなくなってしまう。そのときの景気の状況にもよりますし、それから個人の能力にもよりますが、能力のある人は恐らく引っ張りだこになって、すぐ次の職場が見つかると思います。しかしながら、一つのプロジェクトに参加したことが特定の研究者のメリットになるということは必ずしも保証できないわけですから、その際に失業の危機ということにさらされるわけです。  それであれば、本来の雇用は確保した上で、臨時に例えば客員制度といったものを活用する方が研究者の長期的な身分の安定という視点から考えると好ましいのではないか、そういうことも言えると思いますし、純粋に既得権の保護といったことから考えますと、今までは自然科学の研究者も人文科学の研究者も、あるいは一般職の方々と同じように無期限、つまり終身雇用という形で雇うのが通常であったにもかかわらず、悪い条件で雇うということができてしまった。そうすると、雇用者側、雇う側から考えれば、それは経済的な負担が少なくて済むわけですから、そちらの制度利用する頻度が多くなるだろう。ということになれば、これは研究者全体としての身分の保障の問題にまで発展してくるというふうに私は思います。  それからもう一点、今最後の方でちょっと早くおっしゃったのでよく聞こえなかったのですけれども、この二つの事例については恐らくそういう。形で任命が行われるだろう、それは単なる推測ですね。具体的にかなりの確信があってそうおっしゃっているわけではなくて、例えばこういう事例があるから事によったらこの制度が使われるかもしれないという感触ですね。それとも、もっと具体的に詰めた話があって、こういう制度ができればそれはもう当然使わせてもらいますというレベルの話なのか、そこの点を最後にもう一つ確認したいと思います。
  36. 山路順一

    山路政府委員 先生より幾つかの御質問をいただきました。一点ずつお答え申し上げたいと思います。  まず、任期つき採用などによらず客員研究制度等で十分ではないか、そういう御指摘でございます。  先生案内のとおり、客員研究官として国研に来ていただいております研究者の方、こういう方にも最大限の御協力をいただいて国研の研究を遂行するわけでございますが、現行制度、各省庁によりましていろいろな制度がございますけれども、この客員研究官と申しますのは、主に研究指導等のために民間企業、大学等の優秀な研究者に非常勤で来ていただいておるところでございます。例えば、各省庁によって違いますけれども、一カ月に数回というような状況でございまして、常勤とは相当かけ離れた勤務体系でございます。したがいまして、今回私ども任期つき任用いたしたいということは常勤の研究公務員として勤務していただく、そういう違いがございます。ただ先生指摘のとおり、相当数の客員研究員も来ていただいておりますので、そういう方たちのお知恵や能力をおかりして研究を遂行していくことはもちろんでございます。  それから二点目、先ほど私が挙げました事例でございますが、具体性があるのかということでございますが、先ほど冒頭お話し申し上げましたとおり、各国研ニーズ調査をしたわけでございます。したがいまして、もしこの法律改正が認められた暁にはこの制度を活用したい、そういう希望を各国研は有しておるところでございます。  以上でございます。
  37. 長田英機

    長田政府委員 もう一点御質問の、任期つき任用で役所に参ります身分保障の問題でございます。  国家公務員法におきましては、いわゆる公務員としての身分保障は非常に重要な問題でございまして、先ほど申し上げましたが、国家公務員法に基づく人事院規則でどういう場合に任命ができるのかというようなことを規定いたします。そしてさらに、任命権者だけに任せないで人事院の承認を受けるということにいたしたいと思います。  なお、任期つき研究所に参りましてやめた後、失業の点を先生お触れになりましたが、私ども承認をいたします場合には、親元の方に帰るということをはっきりさせた上で任期つき任用の対象にしたいと思っております。
  38. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。その点について、実は先ほどの調査もそうですし、今回の調査もそうなんですけれども、実はきょう、先ほどの降雨実験装置については御説明をいただいているうちにこれは御教示いただいたものですけれども、今の任期つきの場合の調査をされたということは、事によったらどこかでお聞きしたかもしれませんが、恐らくきょう初めて伺ったのではないかと思うのです。こういうデータ法案提出と同時に、例えばすべての調査について詳細な内容をお教えいただく必要はないかもしれませんけれども、はっきりと私は何度もデータをほしいということをすべての問題について申し上げているつもりでございます。部会でもそういった形での質問をいたしました。それはそれなりに意味があってお願いしているわけですから、やはり法案提出と同時に、法案の背景にあるこういった重要なデータは今後ぜひお示しいただきたいと思います。そうすればいろいろなところで時間が節約できますし、さらに私は重要な問題についてもっと時間をかけて討議することができるのではないか。重要な問題というのはこれから幾つか触れますけれども、具体的に幾つかございますので、そういった点でもこれからぜひ御協力いただければとお願いいたします。これはぜひお願いしたいと思います。実は、幾つかの点についてまだありますし、それから文部省、外務省、防衛庁からも来ていただいていますので、ちょっと時間が足りなくなるといけませんので、次の問題に移りたいと思います。  実は、今申し上げた法案説明を部会等でしていただきました。いろいろと何度もたくさんの方に来ていただいて説明を伺いましたので、それにはまずお礼を申し上げたいと思いますけれども、その際に、B4ですか、この二枚紙の資料を科学技術庁からいただきました。最初の部会が恐らく三月四日だと思いますけれども、こういうのが参りまして、それから三月二十五日、これは昨日ですけれども、こういう同じようなものが参りました。ただし、一カ所非常に――一カ所だと思います、少なくとも一カ所非常に大きな変更がございます。その変更は何なのか、そしてなぜそのような変更を行ったのか、科学技術庁の方はきのうの部会では説明がございませんでしたけれども、御説明いただきたいと思います。
  39. 長田英機

    長田政府委員 実は、私ども法案提出するに当たりまして、二枚紙の、先生指摘のこの「研究交流促進法の一部を改正する法律案について」という資料を一緒にしていろいろ関係方面に御説明をしていたわけでございます。先生指摘の点は「基礎研究ただ乗り論」という点だと思います。私ども、資料をつくりますときに、基礎研究ただ乗り論ということもあるしということでそれを書いていたのでございますが、先生から科学技術庁は基礎研究ただ乗り論を認めるのかという非常に鋭い御指摘がございまして、私どももよく検討してみますと、この基礎研究ただ乗り論という概念もひとつはっきりしない点もございますし、またこれを我が国科学技術庁として認めているということでもございませんで、ただこういうような指摘外国であることはあるわけでございますが、そういう点からこの資料からは削除した方がいいだろうということで削除したわけでございまして、そういう意味で誤解を招いて本当に申しわけなかったと思っております。
  40. 秋葉忠利

    秋葉委員 私はこれはかなり重大な問題だというふうに思っております。三月四日にいただいた資料では、基礎研究ただ乗り論、そういった意見もあるしということではなく、これはかぎ括弧つきで強調されて、基礎研究ただ乗り論というのがここに書かれているわけでございます。活字のポイントが落ちていたり、そういう批判もあるということではございません。そうしてその後に、これまで私が何度も何度もデータを出せということを申し上げておりますけれども、そこには「論文被引用回数割合」、日米独の比です。それから「ノーベル賞受賞者数」、それから「先進国との研究者交流アンバランス」という具体的な数字が出ております。これがしばしば基礎研究ただ乗り論と言われる論を主張する方々がお示しになる数字であることはここで申し上げるまでもありませんけれども、ここで、これだけを素直に見ますと、やはり科学技術庁が基礎研究ただ乗り論というものを実は認めているんだ、そのとおりだというふうに、数字まで示して我々にその科学技術庁の態度を示してくれたと私はとりました。そのとり方が悪いのであれば悪いのかもしれません。あるいはこの資料のつくり方が、もしそれが意図でないとしたら、あたかもそれが明確な意図であるような資料をつくるというのは、そもそも非常に大きな問題ではないかというふうに思います。  そこで、もう一点申し上げますと、きのうの部会ではそういったことについての御指摘がございませんでした。それで、実は私たち委員の中にも、この変化があるということに気がつかない方もございました。事によったら、それはもう忙しい中ですから気がつかないのも当然だと思いますけれども、このことは、改めてこういう変更をしましたと言うほどのことはない、そんなに重要な問題じゃない、どうでもいいことなんだというふうに科学技術庁はお考えになったのでしょうか。それとも、余りにも重要な問題であるから、改めて自分たちの方の非を認めることがちょっと恥ずかしかった、言いたかったけれども恥ずかしくって言えなかったということなのか、その辺のところを、なぜそういったところをきちんと指摘されなかったのか、理由をお聞きしたいと思います。
  41. 長田英機

    長田政府委員 この基礎研究ただ乗り論というものが正しいかどうか、それは、役所が認めるのかということは非常に重要な問題だと思います。私どももその後考えてみまして、その表現をそこから削除したわけでございますが、昨日の社会党の部会におきまして私が説明をさせていただきましたけれども、特にこれをそおっと隠してしまいたいとかあるいは重視していないんだというような意味では決してございませんで、そういう意図はございませんで、ただ説明をしなかったということだけでございまして、もしその点がぐあい悪ければおわび申し上げたいと思います。
  42. 秋葉忠利

    秋葉委員 ただ、それはおわび申し上げるというふうにおっしゃいましたが、なぜそれが問題なのかということを認識なさっているのかどうか、ちょっと私わかりませんので、これは蛇足になるかもしれませんが、申し上げておきたいと思います。  科学技術庁は本当にその知的貢献あるいは知的所有権の意味ということがおわかりなのでしょうか。つまり、これはやはり一つの知的生産物です。知的生産物の中に、一国の科学技術政策に対する非常に大きな誤りが含まれていたということだと私は思います。ですから、それに対する責任は当然あるわけですし、それについてはきちんとした形でやはり責任の表示をしていただきたい。  しかしながらそれだけではありません。そういった重大な問題について、今おっしゃいましたように私はそれを指摘いたしました。私は、基礎研究ただ乗り論というのは、誤った日本科学技術貢献の認識だというふうに思っております。ですから、これはおかしいということで指摘をさせていただきました。その結果、科学技術庁はそれが誤りであるということを認めて、これを撤回して新しい。文書をつくられたということだと思います。  そこで私が指摘を申し上げたということは、これは別に個人的に私が偉いとか、何かいいことをやったとかという目的のために申し上げているのではなくて、たまたま身近にその知的貢献ということの実例があったので申し上げるのですが、それは私も、非常に小さな形ではありますけれども知的貢献だと思います。誤りを正すということも立派な知的貢献です。それがもっと積極的な形で、例えば新しい理論をつくるというようなことでその科学的な研究というのは積み重なっていって、最終的にはそれが人類全体の資産になるわけですけれども、そういった意味での知的貢献というのを科学技術庁は認めていないというふうにとれるような態度だと私には思えます。やはりそういったところは、一つ一つの知的貢献それから知的所有権というところの根本まで科学技術庁としてはお考え直しにならないと、これからの科学技術政策を立案するに当たって非常に大きな誤謬を犯すのではないか、そういう危惧さえ実は抱いているわけですけれども、そういった面で今御認識をお持ちなのでしょうか、それともただ単に、あいつが言ったけれども、うるさいやつが言って、それで一言言っておかなかったのはまずかったなというレベルの話なのか、それをちょっと確認したいと思います。
  43. 長田英機

    長田政府委員 先生指摘のとおりでございまして、この問題を契機として、科学技術庁として資料をつくるに当たりまして、そういうことをよく心してつくってまいりたいと思います。
  44. 秋葉忠利

    秋葉委員 私は資料づくりのことだけ言っているのじゃありません。科学技術政策全般です。この改正案をつくるに当たっての態度も、やはり同じように知的な貢献ということ、科学的な貢献のその本質が何であるかということを本当におわかりになっているのかどうかということを私は確認したいんですけれども、ちょっと時間がありませんから、それについてはまだ、一般質問の機会でもあれば学問研究の基本的なあり方についてさらに議論をさせていただきたいと思います。  この問題についてもう一点だけ。基礎研究ただ乗り論ということを三月四日の時点では科学技術庁は認めていた。しかしながら、考え直したらやはりそれはまずいということで撤回した。ということは現時点では、こういうことがあるとあしたはどうなるのかなということをすぐ考えてしまいますが、少なくとも現時点では基礎研究ただ乗り論というのは誤りであるというふうに科学技術庁は認識されているんだと思います。なぜそれが誤りだと思うのか。きちんとした国際貢献は、それなりにという言葉をつけてもいいと思いますけれども日本はやっているのだということをお考えになっているのだと思いますが、その認識の基礎になるデータ、簡単で結構ですからお示しいただきたいと思います。
  45. 須田忠義

    ○須田政府委員 お答えいたします。  基礎研究ただ乗り論、これについてはそのような批判がありますけれども、そのまま受け入れるわけにはいかぬ、そういう受け入れる必要はないというのが現状の我々の認識でございます。ただ、先生おっしゃるように、基礎研究についての日米、日欧について、日本はそれ相応の貢献をしているのかという問題については、威張って貢献しているということはとても言えない状況だ、特に米国との関係においてそう言えると思います。  先生、それについての具体的なデータはということについてでございますが、二、三説明させていただきたいと思いますけれども一つは基礎研究費です。予算でございます。これについては、特に研究成果の公開が期待されるような大学及び政府研究開発機関の基礎研究費は、米国が二・二八兆円であるのに対して日本は〇・七八兆円、これだけの差が現実にあるということ。それから研究者間の交流、これは、日本から欧米先進国への出国者数が十四万一千人ということに対して欧米先進国から日本への入国者数は一・三万人だ、こういうことが実態的なデータとして言えるのではなかろうか、さように思います。
  46. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございます。  そういったことは数字としてはあるんですけれども、ただ、例えば研究費の問題、それから交流の問題についても、これは基礎研究についての評価と考えるか、あるいはそれ以外の要素の反映だというふうに考えるか、微妙に分かれるところだと思います。例えば、アメリカの二兆円以上の予算の中にはかなりの部分軍事費が含まれていますね。ですから、その軍事費を基礎研究まで含めてしまうのかというところで、実はこの日米の比を単純に比べることは難しいんではないかというのが一点ございます。  それからもう一つは、日米は確かにGNPその他で差がありますけれども、私は、よりよいというか、それとはもう一つ別の視点が必要だと思います。それは人口一人当たりの貢献ということですけれども、軍事費をある程度除いた上で、それで比を行いますと、例えば人口当たりは日米の基礎研究に対する投資額はそれほど変わっていないというふうに解釈することもできるわけでございます。  それから、その研究人員の交流ですけれども、これは確かに問題があるということを私自身も認識しております。しかしながら、それがすべて基礎研究の振興ということ、基礎研究に対してどのくらいのことをやっているかということに結びつけていいかというと、必ずしも、まあ十四万対一・三万ですから約十対一ぐらいの比ですけれども、それだけの非常に大きなアンバランスというふうに考えていいのかどうか。つまりこれは、言葉の難しさでありますとか、あるいはもう少し端的に言いますと、距離的に随分離れているという地理的な問題でありますとか文化的な差とか、そういうところがあるわけですから、これをそのまま基礎研究に対する政策あるいは態度の差というふうにとるのもどうかと思いますけれども、ありがとうございました。おっしゃるところは大体理解できますので、その点についてはこれ以上申し上げるつもりはありません。  ただ、もう一つ大事なことは、外国で、海外で基礎研究ただ乗り論を主張されている方々がどういう方々であるかということを認識することも必要だと思いますし、そうではなくて、例えば研究者の中にもあるいは政治家の中にも、日本の貢献が非常に大きいということをいろいろな面で主張されている方々、あるいは例えばMITのILPというプログラムがありますけれども、そこのディレクターが約十年ほど前にMITの中の研究者について具体的に行った、日本科学技術、MITにおいて行われる研究に関しての日本側の貢献度がどのくらいだったかということを調査する、そういった結果もございます。それによると、大体フィフティー・フィフティーというのが一般的な大まかな調査結果でございます。そういったところもあるので、何をどういうふうに取捨選択して考えるかということも非常に大事だと思いますので、あえてこの問題についてはやはり具体的なデータもとにして議論を行うということが大事だろうというふうに思いますので、そのことを一言申し上げて次の質問に移りたいというふうに思います。  実は「基礎研究ただ乗り論」というのが最初説明要旨についておりますので、かなり印象的に強調されておりますので、それが理由で、そういった批判があるということが理由研究交流促進法の一部を改正するという流れになっているわけですけれども、これで見ますと、その最終的な産物として三つのことを行う、改正案の中の三本柱ですけれども。そしてここには論文被引用数それからノーベル賞受賞者数、交流のアンバランス、三つが書かれているわけです。研究交流促進法改正して、これが法律として施行された場合には、ここに書かれているような数字が具体的にどの程度改善される見込みがあると思っていらっしゃるのでしょうか。
  47. 長田英機

    長田政府委員 研究交流促進法改正しますと、非常に近い例士いたしましては、先進国との研究者交流のアンバランスという面で、これは現に外国人を任用するという規定がございますので、改正とはちょっと関係ございませんが、こういう点がかなり進んでいくだろうと思います。そのほか論文の引用数とかノーベル賞の関係は、研究交流法を通じまして基礎研究が大いに振興されて、その結果の成果として出てくるということでございまして、今私どもは非常にこういうものが出てくることを期待しているわけでございますが、具体的、数量的にはなかなか申し上げるのが難しいということでございます。
  48. 秋葉忠利

    秋葉委員 数量的ではなくてもいいですけれども、もう少し感触でも結構ですから、せひお答えを聞きたいと思います。  というのは、誇大広告というのがありますけれども科学技術庁というのはやはり科学技術政策をつくるところですから、そこが実質的に誇大広告をやる、つまり事実に却さないPRをするというのは問題じゃないかと思うのですが、これはPRではありませんけれども、今のお話を伺っていると、例えばやせ薬を売っているような感じがするわけですね。あなたはもう本当に太っていてそれ以上太ると危険だからどうかしなくちゃいけないよ、ここに特効薬がありますよというのでやせ薬を売って、具体的にそれじゃどのくらいやせるのですかと聞くと、いや、やせるともやせないとも言えないけれどもというような感じ、それはやはり誇大広告だと思うのです。  こういった形で人を驚かせる、ショック療法なのかもしれませんけれども、やはりこれが原因である、これが問題だからその対策としてこれをやるのだということを言っているのであれば、やはり最初の問題がどのくらい改善されるのかということについては、仮にノーベル賞受賞者がこれで一人ふえるということが言えなくても、何らかの改善が行われるということはやはり示す責任があるのではないでしょうか。これは時間がありませんからまたいずれ別の機会にお答えいただければ結構でございます。  先ほども申し上げましたように、実は幾つかの省庁の方に来ていただいておりますので、これまでの研究交流促進法の実際の運用、その実績について何点か伺いたいと思います。  まず最初に文部省の方に伺いたいのですけれども、実はこの六年前の法案審議におきましてこういうことが言われております。国立大学においては、この研究交流促進法で改善しようとしているようなことについてはもうすべて国立大学でやっていることなんだ、進んでいるところなんだ、だから防衛庁とそれから国立研究所等の一般職、特別職、それは一緒にして考えるけれども、国立大学についてはあえて考える必要はない、そういう答弁がございました。ですから、国立大学がどのくらいこういった研究交流の面で進んでいるのか、その実態を伺いたいと思います。例えば大学同士の交流であるとか、それも国立と私立というのがありますけれども、国立同士、国立と私立の間それから外国との交流の状態、そういったところをまず伺いたいと思います。その後に、外国研究者の任用数、そういったものも伺いたいと思いますけれども、とりあえず研究機関としての大学が国内、国外でどのような交流を行っているかについてこれまでの実績を伺いたいと思います。
  49. 雨宮忠

    ○雨宮説明員 大学間の研究者交流につきましては、御案内のようにさまざまな機会で行われておるわけでございますが、やや制度的なものといたしましては、例えば大学共同利用機関、これは御案内のように高エネルギー物理学研究所でありますとかあるいは核融合研究所でありますとか、さまざまなものがございます。また、国立大学の附置の研究所で共同利用ということであえて銘打って措置している研究所がございます。例えば東北大学の金材研でありますとか東大の物性研でありますとかというのがそういうのに当たるわけでございます。こういうところに他大学等の研究者共同研究員という形で受け入れまして共同研究に参画させる制度というのがございます。平成二年度、これは一番最近の数字でございますけれども実績といたしまして一万八千九百三十五人という数字でございまして、これらの措置を通じまして、これらの機関を中心といたしました研究者交流を図っておるところでございます。  また私立大学との間におきましても、私学研修員という形でやはり共同研究の形で同じような措置をとっておるところでございます。  民間との関係におきましては、近年、共同研究というのが、大学の立場でいきますと社会的協力連携という立場でございますけれども、非常に数多く行われておりまして、千件近く行われておるわけでございますが、そういう形を通じまして民間の方々との共同研究が幅広く行われておるわけでございます。  海外との関係についてお話がございました。我が国に招聘あるいは派遣された国立大学などの研究者数、これは文部省が直接あずかっておる事業で申しますけれども、大体一万人を超えておるということでございまして、年々この数はふえておる、こういう実態がございます。  以上でございます。
  50. 秋葉忠利

    秋葉委員 それに関連してもう一つ伺いたいと思いますけれども、雇用の形態というのはどうなっているのでしょうか。つまり期限つきのフルタイムのスタッフとしての雇用が交流の際にどの程度行われているのか、外国人と日本人との場合で結構ですけれども。それからさらに、国際交流が大事だということが言われているわけですけれども外国研究者を積極的に掘り出すといいますか、リクルートというと固有名詞としてはかなりイメージが悪くなっておりますけれども、ともかくリクルートする努力としてはどういうようなことをなさっているのか、その点について伺いたいと思います。
  51. 雨宮忠

    ○雨宮説明員 国立大学におきまして外国人の研究者を登用するための施策云々ということでございます。これにつきましては、私ども直接にあずかっております事業といたしましては、日本学術振興会で外国人特別研究制度というのがございますし、また科学研究費補助金におきまして、一つの種目といたしまして国際学術研究という種目がございまして、そういう事業を通じまして、内外の研究者共同研究というようなことで外国研究者との交流を図っておるということでございます。  先ほど、我が国の大学等への研究者の受け入れ数がかなりに上っているということを申しましたが、受け入れ数で申しますと、平成二年度におきまして三千七百六十二人という数字でございます。今後とも、国際交流の推進という観点からこれらの施策の充実に努めてまいりたい、かように考えております。
  52. 秋葉忠利

    秋葉委員 その中で、制度としてはいろいろなものをおつくりになっているようですけれども、具体的な政策として、より優秀な外国人の研究者日本に招聘して日本研究活動参加してもらうという、より積極的な努力ということはどういうものをされているのでしょうか。制度として何とか員制度というのがあるということはわかりましたけれども、それ以上の、具体的にアウトリーチといいますか、こちらから手を出してともかくぜひおいでいただきたいというふうにだれかを引っ張ってくる、そのくらいまでの努力をしないとなかなかこれからの国際交流というのは難しいと思いますけれども、そういった努力はされているのでしょうか。
  53. 草原克豪

    ○草原説明員 国立大学におきまして外国人を採用する仕組みといたしましては、大きく分けて二つございます。一つは、従来から行っている歴史の長い制度ですけれども、国家公務員法第二条第七項の勤務の契約による雇用ということで、外国人の教師あるいは外国研究員を雇用する制度がございます。これについては平成三年七月現在で、外国人教師は三百六十八名、外国研究員百九名、合計四百七十七名が在職しております。それから、昭和五十七年にいわゆる外国人教員任用法が制定されまして、これによりまして外国人を、正規の教授、助教授、講師として任用する道が開かれたところでございます。この制度による任用数も年々ふえておりまして、平成三年七月現在においては百六十五名となっております。  外国人を含めましてどういう教員を大学として。採用するかということは、先生案内のとおり、それぞれの専門分野について大学自身が本人の教育研究上の業績等を勘案しながら判断すべき事柄ではございますけれども、文部省としては、やはりこれらの制度を通じてすぐれた外国人を採用することによって国立大学における教育研究あるいは学術の国際交流の進展が図られるよう期待しているわけでありまして、このような制度の趣旨については各大学の配慮を促してまいりたいと考えております。
  54. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。  今の数字、一非常に少ないと思います。その認識は同じだろうと思いますけれども、この少ない数字のうちで、特に日本に住んでいる外国人、かなりたくさんいますけれども、その中で一番大きなグループというのはやはり在日韓国・朝鮮人の方々だろうと思います。その在日の方々の数がその中にどのくらい含まれているかという具体的なデータがあればお示しください。
  55. 草原克豪

    ○草原説明員 先ほど申し上げました勤務の契約による外国人教師、外国研究員の雇用制度に基づいて採用されております教員の中で、韓国及び朝鮮国籍を持つ教員の数は平成三年度において十名となっております。それから、外国人教員任用法に基づく採用者数百六十五名の中では、韓国及び朝鮮国籍を持つ教員の数は二十三名となっております。
  56. 秋葉忠利

    秋葉委員 わからなければ後で詳しく教えていただ。ければ結構なんですが、その中でいわゆる在日と言われている方、二世、三世の方というのはどのくらいいらっしゃるのでしょうか。
  57. 草原克豪

    ○草原説明員 二つの制度のうち前者の方、つまり外国人教師、外国研究員の制度については、先ほど申し上げた数の中でいわゆる在日韓国人・朝鮮人の方はどのくらいかという数字は私ども把握しておりませんが、外国人任用法に基づく採用数百六十五人中、韓国及び朝鮮国籍を有する者が二十三名、そのうち二十名が在日韓国・朝鮮人である、このように承知しております。
  58. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。  私は、外国からの文化を日本の社会の中に反映させて、これはやはり多様性というところで、非常に多様な文化が日本の自然科学研究の中にも反映される必要があるというふうに思います。これは、例えば湯川秀樹さんですとか数学の岡潔さん、そういった自然科学の方々が、文化的な差というものが自然科学の中においてさえ反映されるというようなことを長く言っておられるわけですけれども、そういう観点からも多様性を確保するということは非常に大事なことではないかというふうに思います。  その中でも、最も近いところに住んでいる多様性を持ったグループである在日の方々を積極的に、しかも人口としては非常に多いわけですし、日本の国内に住んでいるという事情もあるわけですから、もっと積極的にこういった人たちの能力を活用していく。あるいは、小さいときからこういった在日の人たちの教育に我々も積極的に応援をして、能力が開花して、すばらしい研究者として例えば日本の国立大学でその能力を発揮できる。ような、そういった補助的な役割を果たすべきだというふうに思いますけれども、そういった意味での具体的な施策というのは文部省はおとりになっているのでしょうか。
  59. 草原克豪

    ○草原説明員 先生指摘のとおり、大学が充実した教育研究活動を行っていくためには、教員として優秀な人材を広く社会の各般に求めていくということが必要であろうと思いますし、また、その方策の一つとして、すぐれた実績を有する外国人を採用するということも有意義であるというふうに考えております。  しかし、個々の採用につきましてはそれぞれの大学において判断すべきことでございますし、また、外国人の採用についてもその道が制度的に開かれているという現状を考慮いたしますと、特定の国籍を有する方を採用するための特別の施策を講ずるということについては、大学の自治との関係でも問題があると思いますし、必ずしも適当ではないと思いますけれども、しかし、一般的に申しまして、大学における教育研究の推進、それから学術の国際交流の推進という観点からいたしますと、広く、すぐれた教育者、研究者を大学に招いていくということが重要であろうと考えております。
  60. 秋葉忠利

    秋葉委員 今のお答えについて二つ申し上げたいことがあるのですけれども一つは、研究実績がある人を登用することにはやぶさかではない、積極的にやるというお話でしたが、そういうことをやるから基礎研究ただ乗り論ということを言われるわけじゃないですか。  そもそも、研究者を育てるというのが国立大学の非常に大事な役割だと私は思います。だからこそ教育官が一緒についているわけでしょう。だから、そこのところで、研究者交流というところで、研究者の登用というところで、実績がある人間だけを連れてくるという発想になってしまうから、だからそれは、どこかの外国で十分にお金をかけて立派な研究者になった、なったら今度は日本の大学に来てその成果を十分日本で発揮してもらいましょうということになれば、それはただ乗り論と言われてもしょうがないじゃないですか。そういう基本的な姿勢のところが私は問題にされていると思います。それは我が国科学技術政策の根本的な姿勢の誤りだというふうに思います。ですから、やはり日本で、日本の国立大学で養成をしなくちゃいけない。養成をする際に、やはり外国人として、仮に外国人に限定するので、あれば、日本の中にたくさんいる外国人を養成する責任というのは当然出てくるわけだというふうに私は思います。  それから、ただ一つの国籍の人たちについて、その人たちを特に登用するための努力をしなくてもいい、それは大学の自治に関するというようなことをおっしゃいました。しかしながら私は、日本人としては韓国、朝鮮の人たちに対して道義的責任を持っていると思います。もともとは植民地として隷属させ、国権をもって隷属させ、そして自分のふるさとを無理やりに捨てさせて日本に連れてきて、しかも強制労働までさせたような人たち、そういう人たちの子供であり孫じゃないですか。そういう人たちに対して我々が特別な道義的な義務を負うということは当然であって、それがどのような場であれ、そういった義務を私たちは果たしていくべきだというふうに思います。特にそれが仮に今は日本に住んでいる形であれ、ともかく我々と一緒に同じ場所で住んでいる我々の仲間として、そういった道義的な責任を仲間に対して果たしていくということは、どうしてもすべきことだというふうに私は思います。  時間がありませんので、次の質問に移りたいと思います。  前回法案審議の中で、SDIの問題が非常に大きく取り上げられてまいりました。そこで伺いたいのですけれども、それに関連して、JMTC、武器技術共同委員会というものの第一案件というものが報告されましたけれども、その委員会のその後の活動を報告していただきたい。それから、SDIの研究参加するのではないかという危惧が表明されましたけれども、その後、この法律を使ってSDIに具体的に参加したのかどうか、あるいはSDIの現状はどうなのかということを、これは外務省の方だと思いますが、伺いたいと思います。
  61. 小澤俊朗

    ○小澤説明員 まず、JMTCにつきましては、昭和五十八年十一月に米国との武器技術供与取極に基づいて設置された武器技術共同委員会でございますが、先生から指摘のありました第一件の関連技術は、携行SAM、地対空誘導弾、これは昭和六十一年に決定しております。その後、三件について決定が行われております。うち二件は、我が国の民間企業が保有する、米海軍の武器たる艦船の建造のための技術でございまして、これは昭和六十一年九月並びに昭和六十一年十二月にそれぞれ決定されております。最後の一件はFSX関連の武器技術でございまして、これは平成二年二月に決定されております。  続きましてSDIについての質問でございますが、SDI研究計画は米国の戦略防衛構想研究計画でございまして、これは一九八三年にレーガン大統領の提唱に基づきまして、米国が将来、戦略防衛システムの開発・配備の可否を決定するに当たって必要な技術的知識を提供するための研究計画として、一九八五年度から行われてきているものです。  しかしこれは、その後、ブッシュ大統領になりまして、一九九〇年一月にSDI研究の方向をいわば縮小する方向で転換しております。すなわち、限定的な弾道ミサイル攻撃に対する防衛に重点を変えまして、米国の本土、それから米国の前方展開戦力、そして同盟友好諸国、こういうものに対する将来の脅威に対処する防衛システムの研究を推進するということを明らかにしてきております。これがいわゆるGPALSと呼ばれる構想でございます。この構想を実現すべく、SDIの関連予算を利用して研究が行われてきております。ちなみに、九二年の会計年度におきましては、前年より約十億ドル余りふえて、四十二億ドルがアメリカで授権されております。
  62. 秋葉忠利

    秋葉委員 で、伺いたいのですけれども、今回の法律改正によって、例えば今お答えの中にありました、限定された形でのSDIの研究あるいは、もう一つ新しいプロジェクトがこのところ話題になっていますけれども、SSCの研究といったところに、日本政府が委託研究を、出際共同チームでもコンソーシアムでもいいですけれども、そういったところに委託を行って、日本政府がつまり金を出す。日本も含んだ国際的なチーム、これは日米という限られた形でもいいですけれども、そういったところが受託をして研究を行う。その結果は日米で、日米の政府で例えば折半するというような形での共同研究が行える道が開かれたというふうに思いますけれども、例えばそういった形で、限定された形のSDIあるいはSSCといった問題について、これから日本がどのような形で参加をしていくのか、その基本的な方針について伺いたいと思いますが、基本的な方針というのはそもそもできているのでしょうか。
  63. 小澤俊朗

    ○小澤説明員 まず、SDIについてお答え申し上げます。  SDI研究計画は、米国の研究計画でございます。我が国につきましては、昭和六十二年に、我が国のSDI研究参加に関する日米間の政府間の協定を締結しております。この協定に基づきまして、米国が昭和六十三年に開始しました中短距離ミサイルからの防衛を対象とする地域ミサイル防衛構想研究我が国の企業が参加しております。日本政府としてこの研究参加しておらない状況にあります。
  64. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。可能性としては、少なくとも法律的な障害はなくなったというふうに考えますけれども、その辺の認識はいかがですか。つまり、日本が、すべてではなくていいですけれどもSDI関連研究のうちの一部を切り離して、恐らく切り離しは簡単にできると思いますけれども、それに対して、日本だけでもいいですし日米共同でもいいですけれども、委託を行って、国際的なチームにおいてそれを受託して研究を行うという形、それに対する道がこの改正案によって開かれると思いますけれども、それについての認識を伺いたいと思います。
  65. 小澤俊朗

    ○小澤説明員 現状におきましても、日本政府の機関がアメリカのSDI研究計画に参加することは可能でございます。具体的に私ども研究機関に照会しておりませんので、なぜ参加しないかについては具体的に承知しておりませんが、恐らく最大の理由は、具体的な要請が米国からない、こういうことだと理解しております。
  66. 秋葉忠利

    秋葉委員 政府が委託するというところが実は大事なんですけれども、それに対しての障害がなくなったというふうに私は考えますけれども、その点についてはどうなんでしょうか。  それと、ついでに、ついでにというか、さっきも申し上げましたけれどもお答えの中になかったSSCについても全く同じことができるということで、これもSSC協力に対する非常に大きな一歩を開くというふうに私は認識しておりますけれども、その点についてもお聞かせください。
  67. 小澤俊朗

    ○小澤説明員 SDI研究あるいはGPALS研究について現時点で日本政府が何らかの形で日本自身の研究を行うということはございません。  SSCについてはほかのところから答弁すると思います。
  68. 岩谷滋雄

    ○岩谷説明員 SSCに関しましてお答え申し上げます。  SSCの関係では、大きく分けて二つの協力の形が今想定されておると思います。  一つは、SSC本体そのものの施設の建設でございまして、これは委託研究という形ではないというふうに理解しております。これは共同で建設をするということで、その可能性を探るために現在日米共同の作業部会を設置いたしましt技術的な検討を行っておるところでございます。  もう一つは、研究者がその施設を使って共同研究をするということでございますが、これも私の理解では委託研究ということではございませんで、共同でそれぞれ費用を負担しながら研究をしていくという形であろうと理解しております。
  69. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。時間がありませんので、もう少し詳細について議論をしたいところなんですができませんので、とりあえず今のお答えの中からそれを少し要約いたしますと、別にこの法律改正案がなくても日本政府が金を出そうと思えば出せるんだというお答えだと思います。それに対して、今のところはそういうつもりはないし実態としてはそういったことは行われていない、SSCについても同じようなことだというふうに理解をさせていただきます。  それで、もう一つなんですけれども、防衛庁、実はこの研究交流促進法の中に防衛関係研究が入っているということがもう一つ法案審議の際の焦点でした。この六年間の防衛庁の関連した研究分野における、あるいは防衛庁管轄の研究所でも結構ですけれども、できたら防衛大学を含めて研究交流の実態それから研究予算、交流に使われた予算がどのくらいあるのかといった実態をお教えいただけたらと思います。
  70. 青山謹也

    ○青山説明員 お答え申し上げます。  研究交流促進法制定されました昭和六十一年度以降、防衛庁におきます研究交流の実態について御報告したいと思います。  まず、研究交流促進法第四条でございます研究集会への参加でございますが、六十一年度が三十一名、六十二年度が百六十六名、六十三年度が百六十七名、元年度百六十六名、二年度二百二十七名、三年度百九十二名、三年度は三月二十五日現在の値でございます。  次に、委託研究でございますけれども、六十一年度以降、六十一年度が七件、六十二年度が七件、六十三年度が六件、元年度が七件、二年度が七件、三年度五件でございます。なお、委託先はすべて国内の企業または公益法人でございまして、外国あるいは外国の公共的団体等に委託を行った例はございません。  最後でございますが、受託研究でございますけれども、六十一年度が七件、六十二年度六件、六十三年度八件、元年度三件、二年度二件、三年度七件でございます。なお、これにつきましても研究交流促進法六条に基づきます研究成果にかかわります特許権等を譲渡した例というのはございません。  以上でございます。
  71. 秋葉忠利

    秋葉委員 実はこの改正案の通過について科学技術庁は非常に急いでおられるわけですけれども、こういうげすの勘ぐりというのはやりたくないのですけれども、事によったら早く通さないとどうしても困る事情がどこかに隠れているのかもしれないというところから伺いたいのですが、例えば防衛庁の研究予算あるいはその他の予算の中で、外国に対して防衛関連の委託研究を行う予定があってどうしても改正案が例えば三月中に通らなくてはいけないというような事情があれば、科学技術庁がこれほど急いでいる理由というのは非常によくわかるのです。そのほかの理由があるかもしれません。そういう事実があるのかどうか。つまり、この改正案を使うことによって防衛庁が具体的に予算を執行して外国の共同チーム、もちろんこれは日本も入っているわけですけれども、何か研究を委託するような予定があるのか、あるいはもう予算がとれているのかどうかについて、それが本当にあるかどうかということをまず伺いたいと思います。
  72. 青山謹也

    ○青山説明員 防衛庁といたしましては、今先生指摘のような案件というのは持っておりません。
  73. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。今後もぜひ持たないように御努力いただきたいと思います。  時間がありませんので、実はもう一つ、これから本論に入る予定だったんですが、特許権等に関連いたしまして幾つか非常に重要な問題があると思います。  それは、一つは国が委託をする、受託をする、そのどちらの場合にも特許権が国に帰属してしまうという大原則があるということ、これは科学技術庁として再検討、根本的に洗い直していただく必要があるところだと私は思います。これについて特許庁の方にも来ていただいて議論をするつもりでいたわけですけれども最初の方で時間を食ってしまいまして、申しわけありませんけれども、この点については日を改めてまた私なりあるいは同僚議員なりが質問を続けさせていただきたいと思います。  さらに、今回の改正案を導入することによって、そういった大原則があるわけですけれども、この改正案の対象にならない人にとっては非常に大きな損害をこうむらせるような、しかもそれがいわゆる官の立場から、弱い立場の人たちが異議を申し立てることのできないような形において強制されることになってしまう、いわば現代版の鹿鳴館のようなことが起こってしまうという不公平を導入する改正案だというふうに考えられるところがあるわけです。しかしながらそれを上回るメリットが当然あるんだという議論もできるわけですから、そこについての議論をしたいと思いましたけれども、時間がありません。  そこで最後に一言だけ、実は科学技術政策を立てるに当たって、本当に科学技術庁が少なくとも科学技術庁政策立案、あるいはその政策立案を国民に示してそれを説得を行って実行していくという態度において、やはり科学的であるということが基本になくてはならない。と思うのです。先ほども申し上げましたように、一番最初実験でお示ししましたように、そしてその後の質問でもはっきりしたと思いますけれども、必ずしもデータあるいは事実をもとにしてこういったことを考えておられないような気がいたします。そこの点についても改めて科学技術庁の自己点検をぜひしていただきたいというふうに私は思います。もし私の考えていることが間違いであれば、そうではないんだ、実質的にちゃんとしたことをやっているんだということであれば、それはまた別の機会にきちんと私の誤解を正すチャンスをぜひいただきたいと思います。  そのことに関連して実は一つ、二つ申し上げたいことがあるのですが、数量化というところに関連があるのですけれども、例えば科学技術庁の方で準備をしていただきました資料の中に非常に非科学的な、科学という観点から考えるとこれはすぐ改めた方がいいんじゃないかと思えるような表現がございます。例えば金額の問題ですけれども、一〇、五〇〇百万円というような表記がある。これをどういうふうに読めばいいのか私にはわかりません。日本語を使っている以上、日本の数のシステムに合った表記法なりあるいはコンマの打ち方、三けたで打つんじゃなくて四けたて打つというような、私はこれは実質に沿った表記法を少なくとも科学技術庁はとるべきだというふうに思います。  それから、これは年号ですけれども、資料すべてについて元号が使ってある、平成とか昭和とか。これに関連して、例えば前回法律案、これは昭和六十一年ですけれども昭和六十一年それからことしは平成四年ですか、それを考えてもすぐ引き算で何年ということが出てこない。実は、科学的なあるいは統計的な数字の処理の場合には、何年たっているかということが基本的に重要になってくるわけですけれども、そういう意味でも西暦を使った方がはるかに簡単にデータの処理ができるというようなところがございます。こういう点について、やはりただ単にこれまでの慣習を踏襲するのではなくて、科学技術庁としてはどういう理由でどういうような数字の処理をするのかという基本原則をはっきりと立てた上で、少なくとも庁内では一貫性のある、例えば数字の使い方ということをすべきではないかというふうに思います。最後にこの点について、これは質問通告にはなかった点でございますけれども、一言お答えいただければと思います。
  74. 須田忠義

    ○須田政府委員 我が国科学技術政策はどういう形で進められているのかということも含めての御質問だと思いますが、我々頭の中だけでやっているわけでは決してありませんで、科学技術会議という最高審議機関が諮問、答申、それを踏まえて実行してきているものでございます。そういう作業部会等においては、いろいろなデータを駆使して我々なりに議論しているというふうには考えておりますが、先生指摘のように年号の問題とかいろいろなデータの問題、そういうものについてはまだ至らない点があると思います。いろいろ反省し。たいと思います。
  75. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。すべて私の言うことが正しいと言っているわけではありませんで、幾つかの問題提起について御検討いただくことが、私は日本科学技術――我々すべてある意味では科学技術庁の応援団だというふうに思っておりますので、その観点からぜひこれからも日本が平和な世界の中で、科学技術の面で貢献ができるような方向でぜひ御検討いただきたいと思います。  その点で、今申し上げたことは老婆心ですけれども、英語の表現でよく使われるのに、ドゥー ホワット アイ セイ ノット ホワット アイ ドゥーというのがあるのです。つまり、私の言うことは聞きなさい、だけれども私のやっていることをまねしちゃだめですよ、これは親が子供に言うことなんですけれども科学技術の振興ということは、要するに若い人たちに科学的な思考法をつけなさい、科学的な態度でいろいろなことを考えなさいということを言っているわけですけれども、それを振興している科学技術庁なり文部省なりが一実は具体的に自分たちの仕事の際においては非科学的なことをやっているのでは、まさにこう」いうことになってしまう。それは我々のような中年になった父親が子供に対して余り説得力を持たないのと同じように説得力を持たないことになりますので、ぜひ科学技術政策立案、それから科学技術庁の中のさまざまな仕事のやり方等についても、ぜひより科学性の高い方向で御検討をしていただければ大変ありがたいと思います。  これで質問を終わります。
  76. 近岡理一郎

    近岡委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  77. 近岡理一郎

    近岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川島實君。
  78. 川島實

    ○川島委員 私は、ただいま議題となっております研究交流促進法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。  政府は、現行研究交流促進法昭和六十一年の制定から約六年たち、この間我が国科学技術を取り巻く情勢は大きく変化した、その理由一つとして、科学技術面での我が国国際貢献必要性が高まった、二つ目は科学技術の一層の高度化複合領域化等が急激に進んだ、三つ目は基礎的、創造的な研究積極的推進が内外から強く求められてきている、以上のような状況に適切に対処するためにこの法律改正して、現在行われている研究交流産学官及び外国との間の研究活動を取り巻く種々の制度的制約緩和して活動を一層促進していきたいと述べております。  そこで、私は政府改正理由に至る事柄について、お尋ねをいたしていきたいと思います。  第一に、昭和六十一年に法律制定されてから今日まで六年間に、具体的にどのような産学官及び外国との研究交流が計画され、実施されてきたか、また計画はあったけれども実施されなかったおのおのの分野についての具体的な事項についてお示しをいただきたいと思います。  また、これらの研究交流促進について、一番大切な研究費が十分でなければ進めないわけでございますけれども、これらについて各分野にどのような予算的な配慮がなされてきておるのかもあわせてお伺いをしたいと思います。
  79. 山路順一

    山路政府委員 御質問お答え申し上げます。  まず一点、六十一年の制定以来、研究交流促進法実績でございますが、逐条ごとに御説明さしていただきます。  まず現行三条でございます。この三条は、外国人の研究公務員への任用を規定したものでございます。データはすべて本年一月一日時点のデータで整理さしていただきます。この外国人の研究公務員への任用につきましては、これまで五省庁におきまして七カ国から十三人の外国人を研究公務員へ任用している実績がございます。国籍別に見ますと、米国四名、韓国三名、中国二名、英国、ブラジル、イラン、インド各一名でございます。  次に第四条関連でございまして、研究集会への職務専念義務の免除による参加でございます。これはこれまでの実績、十三省庁におきまして約一万五千人の参加実績がございます。これは延べ数でございます。  三番目に、第五条関係でございます。退職手当の算定において不利益をこうむらない休職についてでございますが、これまでの実績といたしましては、四省庁におきまして二十一人の実績がございます。  次に第六条関係、受託研究成果にかかわる特許権の譲与でございます。残念ながらこれまで受託研究の中から特許が発生しておりませんので、具体的にこれに該当いたしました例はございません。  次に七条関係でございます。七条は国際共同研究にかかわります特許、発明等の相互無償・廉価の実施でございます。これにつきましては、現在までに同様に特許権が発生しておりませんので、無償・廉価実施させた例はございません。しかしながら、この法律制定していただきましたおかげて、この七条の趣旨を盛り込みました研究協定が締結された実績はございます。  次に八条関係でございますが、八条は国際共同研究にかかわる損害賠償請求権の放棄でございます。科学技術庁と米国航空宇宙局等々との間でこれまで四件の損害賠償請求権の放棄を約束しました共同研究契約が締結されたという実績がございます。  最後に第九条関係でございます。第九条は、国有施設廉価使用でございますが、これにつきましては、これまでに廉価で使用させたという実績はございません。  次に、先生お尋ねの予算措置でございますが、先生御存じのとおり、この法律に直接関係する予算措置というのがないわけでございますけれども、しかしながら、この研究交流に関連いたします予算措置としましては、この制定以来いろいろな努力をしてまいったところでございます。二、三事例を挙げさしていただきますと、研究集会への参加の旅費につきましては、平成三年度科学技術振興調整費におきまして一・五億円を計上いたしまして、六十年当時よりも格段の増額を見ているところでございます。  次に、外国人の研究者の受け入れでございますけれども、六十三年にフェローシップ制度を設立いたしまして外国人の研究者を国研等に受け入れているわけでございますが、それとともに、参りました外国人への支援といたしまして宿舎の整備等、そういう支援を行っておるところでございま」す。平成三年度の実績でいきますと、まだ進行中でございますけれども、百八十名の外国人の研究者を受け入れることがこのフェローシップ制度で認められておるところでございます。予算的にはこのフェローシップ事業といたしまして、平成三年度でございますが、約十五億円が計上されてございます。  さらに、法の趣旨を生かしまして産学官及び外国との研究協力促進するための制度といたしまして幾つかの制度が六十年以降発足してございます。一つには創造科学技術推進制度、またフロンティア研究システム。科学技術振興調整費等で組織、分野の枠を超えて産学官及び外国研究者を結集して創造的な研究開発も推進しているところでございます。  以上でございます。
  80. 川島實

    ○川島委員 今回の改正で、今度は外部からの人材登用を促進するために、研究公務員の採用を任期を定めて行う、こうなるわけでございますが、外国人は今そういう任用制度がとられて、日本人の場合はない。この改正によって、これを採用することによってどういうメリットが生ずるかということが一つと、この任命権者は、各研究機関のだれが任命権者になって、その採用期間における雇用関係というのはどのようになるのか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  81. 長田英機

    長田政府委員 任期つき任用のメリットの点でございますが、先ほど先生からお話がございましたように、科学技術が非常に高度化してまいりまして、特に基礎的・創造的研究をやる場合にはどうしても複数の人が集まっていろいろ知恵を出し合いながらやっていくことが非常に効果的だ。そういうことから考えますと、国立の試験研究所に私学の方あるいは民間企業の方、いろいろそういう方面の方にお集まりいただいて、そこで研究成果を上げるということが非常に重要なわけでございます。そう考えてみますと、研究の期限が大体一定期間限られておりますので、その期間国研にいらっしゃっていただいて、また親元の方に帰るというふうにいたしますと、非常にいらっしゃる方もやりやすくなるという点がございまして、国の基礎研究が非常に進むのではないか、こういうことでございます。  それからなお、任命権者はそれぞれの役所の長でございますが、この任期つき任用で国立の研究所へ来た方は、これはもう純粋な国家公務員でございますので、国との雇用契約が結ばれる、こういうことでございます。
  82. 川島實

    ○川島委員 次に、国の委託にかかわる国際共同研究成果にかかわる特許権についてお尋ねしたいと思います。  現在、我が国は委託事業の特許権は一〇〇%国に帰属をしており、外国との大きな開きがあって、実施権について日本のおくれをなくしていきたい、こう言っているわけでございますが、諸外国との制度的調和を図り、外国研究機関の参加を円滑にするため、その取り扱いの特例措置を講ずるとしております。そこで、国対外国、国対外国企業、国対外国人、さらに我が国における国対企業、国対個人との間でどのような取り決めがなされるのか、お伺いをしておきたいと思います。
  83. 長田英機

    長田政府委員 特許権帰属の点でございますが、委託によります場合には委託契約で通常は国に帰属するわけでございまして、そして、日本制度は原則的にはそのようになっているわけでございます。これに対しまして、今先生指摘にございましたように、国と民間とのパテント関係日本の場合と外国の場合と違う事情がございます。  そこで、日本の場合も国と民間との間のパテントに関する契約を弾力化いたしまして、あるときは共有を認める、あるときは、国有でありますが通常の実施権を認める契約をするというような形でやっていくというのが今回の改正の趣旨でございますが、諸外国との制度の違いの関係につきましては相互主義という考え方で、アメリカの制度、アメリカで置かれている利益を日本の企業が受ける度合いに応じて日本でアメリカの企業が利益を受けるというような考え方で運用をしていきたいと思っております。
  84. 川島實

    ○川島委員 そこで各省庁からお見えになっているわけですが、特に防衛庁関係共同研究をやった場合の軍事機密に関係することですね。通産省も影響するか知りませんが、ココムのような状況になってはっきりわからないものを研究開発して、それが流れていって後で問題になったような、そういう心配はないかどうか、この辺についてお伺いしておきたいと思います。
  85. 青山謹也

    ○青山説明員 お答え申し上げます。  防衛庁といたしましては、今回の法改正を受けまして国の委託にかかわります国際共同研究を行う具体化した計画というのは現在持っておりません。今後につきましても、具体的な計画実施につきましてはケースごとに判断してやっていきたいというふうに考えております。  なお、一般論として申し上げますと、防衛庁の委託にかかわります研究成果が防衛秘密と申しますか、そういうものに該当するようだ場合については、特許の出願というようなものはなじまないというふうに一般的には考えております。
  86. 川島實

    ○川島委員 あと、相手国との特許の取り扱いが違うとき、それから外国との間での議定書等が外務省の関係では結ばれるわけでございますが、それらの事柄はどういうふうになるのか。それから、相互主義を唱えると言われておるけれども、個々の研究によって相互主義というのは全部変わってくるのじゃないかと思われるのですが、その辺の取り扱いはどうなのか。まずこの三点についてお伺いします。
  87. 長田英機

    長田政府委員 諸外国で特許制度が違っているということで、例えば日本の特許法とほかの国の特許が違うという点をどう調整するのかというのは、実は私ども科技庁の所管ではございませんで、通産省の方でやっていらっしゃることだと思うわけでございますので、今この法律関係いたしまして先生のおっしゃいました相互主義の点を申し上げたいと思いますが、まさにおっしゃられましたとおり、国の、国と民間とパテント帰属関係が財政の考え方によってそれぞれ違ってきております。これは特許制度自身の違いというよりも、国の財政との考え方で違いがございます。したがいまして、その場合にアメリカが日本の企業にどこまで権利を認めるか、そしてそれを十分頭に置いて、日本の場合にはアメリカの企業にどこまで権利を認めるか、それぞれ同様の契約形態を頭に置きまして、そしてケースごとに判断をしていきたい、こういうふうに考えております。
  88. 川島實

    ○川島委員 その中に特許権等の一部を譲り受ける、一部を譲り受けるというのはどういう意味なのか、その辺ちょっと具体的に聞きたいわけでございます。それから、その成果にかかわる特許は各人及び携わった国々が自由に使用できる、また譲渡できるのかどうか、この辺のところ。それからさらに、時価よりも低いものとするというのは、どういう基準で低いか高いかというのは決めるのか。この辺の三点についてお伺いしたい。
  89. 長田英機

    長田政府委員 まず第一点の特許の一部譲渡ということでございますけれども、これは委託の場合のケースでございまして、国が資金を拠出して研究を委託しました場合に、研究の実施を行いますのは例えば民間サイドでございますので、そこでパテントが発生するわけでございます。そのパテントを全部国に持ってきてしまうというのが従来の原則的な制度でございましたけれども、これをこの法律によって一部持ってくるのでいいんだ、すなわち国と民間との間の共有を認めるんだ、こういう意味と解釈していただければいいと思います。  それから、実施者の権利を一〇〇%認める方向でいろいろ考えるべきではないかという点等でございますけれども、今日本は財政の考え方として原則的に国に全部帰属させております。そして受託の場合には、現に民間が一〇〇%出して国が実施した場合にも国に原則的に帰属させておりましたので、六十一年の交流法でそれはどうかということで共有まで認めるようにしたわけでございまして、この委託についても、まだいろいろとそういう原則的な議論があろうかとは私ども思うわけでございまして、そういう点はこれからのひとつ検討課題として、我々も一生懸命この問題に取り組んでまいりたいと思うわけでございます。  それから、特許の廉価の実施ということでございますけれども国有の特許というものを相手に実施権を与えるとしますと、通常物を生産するとその一定割合をロイヤルティーとして払うということになると思いますが、その実施料を安くしていくことができるようにする、そのような意味でございます。
  90. 川島實

    ○川島委員 具体的に例えばきのうの新聞にも出ているわけでございますが、さきの日米関係で、ミノルタカメラが特許の関係で訴訟を受けて、賠償金を支払って和解をしたという例もありますし、大手電機など三十社が特許の関係で提起されて、数十億ドルの賠償要求がなされている、これをどのように受けとめておるのか。さらにまた、今回のこういう研究交流法の改正でこういう事柄が事前に全部チェックができるのかどうか。我が国として対外的に、これらの問題は国民から見ますと非常に奇怪に思えてならないわけで、これからの日米関係、重要な時期でございますので、こういう問題が今後起きないのかどうかについてもあわせてお尋ねしたいと思います。
  91. 長田英機

    長田政府委員 お話ございましたように、最近におきまして我が国のミノルタ社が米国のハネウェル社に対して約百六十五億円の支払いに応じだというような報道がございました。こういう問題がこれからどの程度起こるのかといいますのはなかなか予想が難しいと思いますけれども、いずれにいたしましても、これは個別の企業間の権利関係の調整の問題でございますので、企業間における権利関係の調整として解決されていく問題だと思います。  なお、先生指摘の今度の交流法とはどういう関係にあるのかという点でございますが、交流法のパテントの部分は国と民間との間のパテント帰属関係について規定しているのでございまして、そういう意味では両方の関係は特に関係がないというふうに申し上げることができると思います。
  92. 川島實

    ○川島委員 それなら、なおさらこういう問題が起こるというのは大変遺憾なことでございますので、国の方が企業と連絡をとりながら、今後日米関係でこういう問題が二度と起こらないような形で十分指導をできるようにしていただきたいし、もし指導まで至らなければ、共同研究してこういう形のパテントの問題の訴訟が起こらないような対策を講ずべきだと思いますが、その辺についてひとつ御所見をお伺いしたいと思います。
  93. 長田英機

    長田政府委員 御指摘のように、両国間でこういうパテントに絡むいろいろな係争が起こるということは望ましくないことだと考えますので、これは科学技術庁のみならず、ほかの関係各省も非常に密接に関連しているものでございますから、よく話し合いながら対応していきたいと思います。
  94. 川島實

    ○川島委員 次に、国有施設使用についてお伺いをいたしたいと思います。  使用の対価を、当該研究の効率的推進に有益である研究を行う者に対して時価よりも低い価格で定める、こういうことを言われているわけでございますが、その基準をどのように定めるのか。施設利用を希望する研究者なり企業をだれが集めてそういう審査を行うのか、この辺のことについてお伺いをしておきたいと思います。
  95. 山路順一

    山路政府委員 お答え申し上げます。  まず一点、だれが決めるのかということでございますけれども、これは使用したい者が申請をすることになります。その申請に基づきまして認めるか否かということを認定するわけです。それがまず第一のステップになります。その認定する者は、各省庁、すなわちその研究施設を所有しております各省庁の長が判断するということになってございます。次に、廉価使用の点でございますけれども廉価使用の基準でございますが、基準というものは今特段ございません。国に密接に関係のある、現に行っている研究と密接に関連し、かつ当該研究の効率的推進に特に有益であるという研究、一件一件審査いたしまして実際の使用料を決定していくことになろうかと思います。
  96. 川島實

    ○川島委員 先ほど午前中の秋葉代議士の質問の中で聞いておりましたが、国の施設がどういう形であいておって使う場所があるのかというPRも何もなければわからないわけでございますから、おのおのの研究機関が、こういう研究施設についてこの期間はあけて使用することが認められるという形のPRとか、そういう計画を企業に周知させるなり各大学の研究機関に周知させる、そういうことはおやりになるわけですか。
  97. 長田英機

    長田政府委員 現在、国の研究施設がどういうものがあるかあるいはどういう研究をやっているかということにつきましては、資料をつくりまして、これは立派な本があるのでございますけれども、そういう資料でいろいろ周知を図っておるわけでございますが、あと、いつ研究施設があくかということにつきましては、研究計画の実施の動向とかということによりまして、なかなか前もって決められない面もあるかもしれませんので、その点につきましては、どういうふうにするかもう少し考えさせていただきたいと思います。いずれにせよ、この施設利用が大いに進みますように普及活動は一生懸命やってまいりたいと思います。
  98. 川島實

    ○川島委員 若干今回の改正による個々の具体的な問題点についてお伺いをしたいと思います。  一つは、大学の設備面でのおくれが、先端技術分野での研究がこの交流法によってさらに時代に取り残されるのじゃないか、こういうふうに言われている、それらに対してどういう御所見をお持ちか。二つ目は、現在の国立研究所が深刻な人手不足、さらに研究費の不足、こういうことをやりくりするための交流ではないか、こういう声に対してどういう御所見をお持ちか。この二つの点をまずお伺いしたい。
  99. 長田英機

    長田政府委員 この研究交流法は、国と国以外との間の国家公務員法あるいは財政法などの制度。的なネックを解消しようということでございまして、人、いろいろなサービス、そういう面の交流を活発化するための障害を除こう、こういうことでございます。したがいまして、先生おっしゃいますように、この交流法だけでは、基礎研究成果、その実施が非常に飛躍的に進むということではございませんで、例えば研究費、研究施設研究する人間、そういう面の充実も当然基礎研究を進めるに当たっての重要な柱だと考えております。したがいまして、二番目の御質問でございますが、私どもは、交流法の改正をやって、研究施設の整備とか研究費の充実、そういう方にかえてしまうというような意図は毛頭ございませんで、それぞれの充実を図っていく必要があると考えております。
  100. 川島實

    ○川島委員 しかし現場では、公務員の定員削減が過去七次にわたって行われたという関係で、研究補助員がいないとか研究者みずからが設備の保守管理を行っているとか、事務方がやるべき文書作成までやらざるを得ない現状だ、こういう形態が指摘をされておるわけでございます。さらに、国立研究所への民間人の導入措置と国立研究職員の民間への派遣など、労働条件の民間との違いはどのように克服をしていくのか。さらに、民間資金導入などによる共同研究での成果と費用、収入なり支出なりはどのようにここで管理されていくのかお伺いしておきたいと思います。
  101. 長田英機

    長田政府委員 まず第一に、国研の定員がだんだん減っているじゃないかという御質問がございました。これは、いろいろな事情がございまして、確かに国研の定員は非常に厳しい状況にあるわけでございます。私どもとしては何とかして国研の定員を減らさないように努力したいと思っているわけでございますが、政府全体としての定員の削減計画というものがございまして、なかなか厳しい状況にございます。仕事を外部に出せるようなものがあれば委託の形で出すとか、いろいろなそういう形の工夫をしながら、あわせてこの定員問題についても何とか一生懸命頑張ってまいりたいと思うわけでございます。  また、国研と民間との関係でございますが、実は、国研の職員の給与が民間に比べて低いのかどうか、御案内のとおり、人事院勧告で、いろいろな方面と合わせるように給与勧告があるわけでございますので、トータルとしては差はないのではないかと思うのでございますけれども、それは、その置かれた研究者状況によりまして民間との格差があることはあるだろうと思います。しかし、実は民間の方が国研の方にいらっしゃる場合に、賃金の格差、賃金の問題だけではなくて、例えば研究の自由度がもう少し大きいとか、施設がもう少しいいとか、そういうようなことを総合的に考えてみますと、任期つき任用によって民間の方が、国研に来られる方がかなりいるんじゃないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  102. 川島實

    ○川島委員 今、民間資金の導入の点は答弁が漏れておりますので後で一緒にお願いしたいと思いますが、国立研究所は、ある分野での民間企業で実績を持ったすぐれた人材を一時的に国の研究に籍を移して研究開発活動ができるようにする。そこで、情報交換でノウハウを蓄積をして、国研の研究者が外部から資金を受けて内部で研究を行う場合、現在の職務と民間の資金導入によって行う研究との兼業部分ですか、それらはどういうふうに処理されるのか。先ほどの収入支出の関係もあわせて、その辺のところを含めてお伺いをしたいと思います。
  103. 長田英機

    長田政府委員 先生最初の御質問の趣旨、私、ちょっとよく理解しておりませんでしたので、民間資金の受け入れの点について申し上げますと、国研におきまして研究者が民間から研究資金を受け入れることにつきましては、資金の性格とか相手方とか研究の実施形態によりまして、国家公務員法の規定に照らしましておのおののケースに応じて判断をしていくということだと思います。基本的には、国家公務員の場合には勤務時間内の兼業というのは難しいわけでございますので、勤務時間外、研究所の外におきまして研究資金を受け入れて研究を行うということは問題がないというふうに考えております。
  104. 川島實

    ○川島委員 そういうふうですと本来の研究が十分できないという心配事も従来から言われているわけです。それからさらに、研究費が捻出される、そして人手がふえる、まとまった資金が入る、しかし出資者は何らの期待もしないだろうかという疑問を述べる学者もあるわけです。だから、国立の研究が民間の研究と変わらなくなる、そういうおそれがあるんじゃないか、こういうふうに述べておる学者も見えるわけで、新しい科学技術の成長の妨げになるんじゃないかと唱えているわけですが、この辺についての御所見はいかがでございますか。
  105. 長田英機

    長田政府委員 先生の御指摘は非常に重要な御指摘だと思うわけでございますが、国の研究所に民間の資金が入ってくるというような場合に、国の研究が民間の方に引きずられるのではないかというようなことで、ちゃんとした研究ができるか、こういうような議論だと思いまして、まさにそういう面の問題点がなくはないと思います。したがいまして、民間とやります場合には共同研究契約というものをしっかりと結んで、分担関係を明確にして、そして、それぞれの義務に応じて研究を進めていくというようなことが必要ではないかと思います。
  106. 川島實

    ○川島委員 さらに、国研の研究者が個人的に受け取る研究資金というのはどの辺の範囲まで許されるのか、そういう基準があるのかどうか。それから、研究者が民間企業へ休職出向ができる共同研究対象を、特殊法人が実施するプロジェクトまで拡大するということでございますけれども、その成果研究者が取得することができるのかどうか。その場合は、国としてはそういう研究成果をどの範囲まで受け取るのか。この辺のことについてお伺いしたい。
  107. 長田英機

    長田政府委員 先ほども申し上げましたが、個人の研究者が資金を受け取れるかどうかという点につきましては、国家公務員の立場でございますので、国家公務員として守らなければならないいろいろな義務もございます。そういう意味におきまして、そのケースに応じてやはり判断をしていくということだと思います。  それから二番則の問題点の、休職出向をした人が行った先で何か発明をした場合ということでございますが、これは、発明をした場所の特許権帰属になるということでございます。
  108. 川島實

    ○川島委員 次に、特殊法人の実施する研究開発、それから公・私立大学との連携を図る場合、勤務時間の認定は国立研究所の職員の場合はどうなるのか。それから雇用管理責任はどう変化をするのか。さらに事故等があった場合はどこが主体的にその責任を負うのか。その辺のことについてお伺いしたい。
  109. 長田英機

    長田政府委員 先生の御質問が、例えば民間の方が国に来た場合、あるいは民間にいた場合というふうに考えるといたしますと、任期つき任用で人が来た場合には完全な公務員でございますので、公務員としての雇用管理責任、あるいはそこで職務上の事故が生じましたらそれに対応する法律によって対処されるということでございます。また、公務員の方が休職出向して民間に参りました場合は、民間の方の規律に従って空もちろん、国家公務員でございますから、国家公務員としてのいろいろな義務は負いますけれども、民間の職務につくわけでございますから、そちらの方の職務関係の適用を受ける、こういうふうに考えております。
  110. 川島實

    ○川島委員 その場合やはり心配されるのは、事故や何かの関係で、いろいろな補償の関係が、民間の方が公務員よりもレベルがずっと低い場合、その場合は行った人にとっては非常に気の毒な状況になるわけですが、それは公務員並みに救済できると考えていいわけですか。
  111. 長田英機

    長田政府委員 ちょっと今、その問題について確信を持ってお答え申し上げられないのでございますが、やはり、民間に行きましたら民間の方、国の方に行きましたら国の方ということが基本的な考え方だと思います。もう少し検討させていただきたいと思います。
  112. 川島實

    ○川島委員 先ほど文部省の答弁を聞いておりまして、共同研究参加者が一万八千九百三十五名交流を図っておる、こういうふうにお話があったわけでございますが、今回の交流法の改正で一番問題になるのは、どれだけ研究が進んでいくかということがまず一つ。二つ目は、先ほど議論をしておりましたように、民間や何かの関係の資金が共同研究で入った場合、国立の研究職員のそういう資金に対してどのような対応を、現在でも恐らく行われているだろうと思いますけれども、この交流促進法の改正によってそういう資金の流れの変化というのはあるのかないのか、この辺についてお伺いをしておきたいと思います。
  113. 鈴木宏

    ○鈴木説明員 お答えします。  文部省におきましては、大学が教育研究という本来の使命を踏まえながら、大学の主体性のもとに可能な限り社会の諸要請に適切に対応し協力していくということは、大学が社会に貢献するという観点からも、あるいは大学の学術研究に有益な刺激を与えるといった観点からも有意義なことであるというふうな考えのもとに、民間等との共同研究の推進を図ってきておりまして、基本的には、外部資金等の受け入れに当たりましては学内の審査機構等を通じて適切な受け入れが図られるようにということでこれまで指導してきておりますし、今後ともそういった面での指導の徹底を図ってまいりたいというふうに思っているところでございます。  それから、研交法の改正に伴って共同研究がどれだけふえるかということにつきましては、直接的なつながりはないのではないかというふうに思っております。
  114. 川島實

    ○川島委員 文部省は、今回の改正には余り影響を受けない、促進をする方向づけができない、こういうふうに私は受けとめていいんですか。
  115. 鈴木宏

    ○鈴木説明員 お答えします。  民間資金の受け入れについての事前質問通告がございましたので、研交法との関係については直接の事前通告がございませんので今答弁申し上げましたけれども、基本的には民間等との研究協力がどんどん進んでいくということになりましたら、そういったものが大学等にもいろいろの意味で影響を及ぼしてくるのではないかというふうに思っております。
  116. 川島實

    ○川島委員 次に、利用希望の多い国有設備を利用させる場合どのような規定を設けるのか、先ほど大型の国の施設を、いろいろちょっと答弁があったわけでございますが、これらの共同利用のときの無料だとか安い使用料というのはどういう形で、これは国にとって有益だから安くするとか無料にするとかという基準をお決めになるのだろうと思いますけれども、これらの基準はどういう形でおつくりになるのか、まずその点についてお伺いをしたいと思います。  二つ目は、施設利用は基本的に言うとその施設を管理しているその管理者が、設備についてもいろいろな機械の運転についてもそういう費用が要るわけです。その管理者が実際に動かすことによって機械がきちっと維持されるということもあります。それから、機械を動かす場合の光熱費だとか機械の償却等の負担が考えられるわけでございますけれども、これらは研究がおのおのの国立の研究所の趣旨に合ったものであれば全部無料でやる、こういうふうな理解をしていいのかどうかもあわせてお伺いしたい。
  117. 山路順一

    山路政府委員 お答え申し上げたいと思います。  この研究交流法で手当てされておりますもの、また今後要件緩和するために新十一条を御提案申し上げておるわけでございますが、これは国有財産を廉価で使用させるという特例法でございます。本来、国有財産法に基づく国有施設につきましては、財政法に基づきまして、適正な対価を取るという規定が従来からあるわけでございます。したがいまして、この研究交流法で適正な対価を時価よりも低く定めることができるというのがこの研究交流法の規定であるわけでございます。  まず、料金の算定の出し方でございますが、先生指摘ございましたようにまず時価の使用料というのが定まることになります。それに実費でございます光熱水料、また国研の運転員などがその施設を運転した場合の人件費、そういうものをひっくるめまして使用料になるということでございます。そこで、先ほども御答弁申し上げましたように、ではどういう基準で時価より低くするかということでございますが、現在特段の基準があるわけではございませんで、一件ずつ、国が現に行っている研究と密接に関連し、かつ、当該研究の効率的推進に特に有益である研究であるか否か、そういったものを判断いたしまして料金を設定するということになろうかと思います。
  118. 川島實

    ○川島委員 今答弁を聞いておりまして、国の施設をこの人にはこれだけで貸して、この人にはと、だれが判断をするというのは非常に難しいことだと思いますね。私情を挟んじゃいけないわけでしょう、公的なものですから。だからある程度のA、B、C、Dなり、ランクをきちっとつけておかなければいかぬわけですけれども、これはずっと進んでいってそういう作業はしないのですか。
  119. 山路順一

    山路政府委員 御指摘の点でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、最終的にはその研究施設を所管いたしております省庁の長が判断するということでございます。
  120. 川島實

    ○川島委員 次に、政府が二十一世紀に向けてとるべき科学技術政策として答申を科学技術会議から一月二十四日に受けまして、新世紀に向けての科学技術の総合的基本方策が第一章から第二章、第三章と、「重点施策の推進」とか「基礎科学の振興と重要分野の研究開発の推進」等を挙げておるわけでございますが、今回のこの交流法の改正はこれらの分野の促進をどの部分で行おうとしておるのか、この辺についてひとつお伺いをしたいと思います。
  121. 須田忠義

    ○須田政府委員 先生指摘のとおり、通常十八号答申と言われている答申でございますが、一月二十四日提出されたわけでございます。これの目標としては、「地球と調和した人類の共存」、「知的ストックの拡大」、「安心して暮らせる潤いのある社会の構築」の三つを提示してございまして、この目標を達成していくために政府は従来にも増して主体的、主導的な行動をとりなさいということと、これの具体的な手段として「時々の財政事情等を踏まえつつ、政府研究開発投資額をできるだけ早期に倍増するように努める。」こういう提言をされているわけでございます。したがって、この提言については今回の交流法とじかに、ここはここ、ここはここというタイアップはされておりません。ただ、この中で言及されておる、答申に言及されておる中にも、例えば任期つき任用制の採用、こういうものについては、研究システムの整備拡充等によるそういうもろもろの施策と一緒になって研究者の流動化の促進を図りなさいということが明記されてございます。そういう意味では、これは直接的にこの答申にも盛られている一項目だと思います。  それから先ほどの国際共同研究、これについても、今回の答申では、基礎研究の強化と国際貢献国際共同研究の推進ということが二つの柱になっておりまして、それの一つの障害である特許権問題、この問題はこの法律に直接にかかわってきているというふうに解釈してございます。あと、基礎研究の強化、そういうもろもろの側面において、この法律がそれらの提言を踏まえた具現化にいろいろなところで寄与しておる、そういうふうに考えでございます。
  122. 川島實

    ○川島委員 今答弁がございましたように、地球との調和、知的ストックの拡大、潤いのある社会、この目標のもとに基本的な原理原則に立ち返るような基礎研究の強化、ここが非常に大切なところで、国際貢献必要性科学技術面でのと、こういろいろ引用されているところの一つの重要なテーマなんですが、これらに対しての対応がどのようになされておるのか。さらにまた、科学技術庁として指摘を受けております具体的な、五年間で予算を倍増さす、達成さすようにという明記をされているわけですが、これは、大臣はどのように受けとめておるのでしょうか。
  123. 谷川寛三

    谷川国務大臣 科学技術の振興につきましては、従来とも厳しい財政の中で一生懸命頑張っております。  今、いろいろ質疑がありましたように、十八号答申に従いまして、二十一世紀に向けてさらに基礎研究、それから科学技術をもってします国際貢献、これを一生懸命やっていかなければいかぬと思っておりますが、今お話がありましたように、何年で今の研究開発投資額を倍増するかということは、そのときどきの財政事情もありますからちょっと申し上げる自信がございませんが、ただ、指摘されております国立大学とか政府関係試験研究機関の老朽度につきましてはわかりますから、これを川とか道路なんかのように何年計画で改善するということがやれぬものだろうか、これは各省庁とも相談いたしまして、勉強してみたいと思っておるところでございます。
  124. 川島實

    ○川島委員 政府のお抱えの諮問機関が具体的に五年と年限をつけて予算の倍増を指摘するということは、並み並みならぬ問題が中に潜んでおると私どもは受けとめておるわけでございますから、ひとつ大臣頑張っていただきたいと思います。  それから、国際的な大型研究計画のSSCだとか宇宙ステーションだとか熱核融合実験炉など、こういうプロジェクトが今後組まれると思うわけですが、これらの研究交流のあり方が、これから非常に難しい問題が提起されてくるだろうと思います。きょうはこのことはちょっとお伺いをする時間がございません、聞きませんが、こういう先進国を中心とした、重点を置いたプロジェクトでなくて、これからは地球環境を守るために、発展途上国が今国連において要求をいたしております毎年千二百五十億ドル、約十五兆円と言われております地球環境を守るためめ研究資金が必要だ、こう言われているわけでございますけれども政府は、国際貢献必要性を今回の研究交流で挙げているわけですから、これら地球環境に対する国際貢献をどのように果たすおつもりか、御所見をお伺いしておきたいと思います。
  125. 飯島考

    ○飯島説明員 お答えいたします。  地球環境保全のための研究につきましては、環境庁といたしまして、平成二年度から地球環境研究総合推進費という予算の枠組みをつくっております。この研究予算によりまして、国際的あるいは学際的、それから関係省庁、省際的な研究に取り組んでいるところでございます。特に先生指摘国際貢献の観点からは、アジア地域に重点を置きまして、地球温暖化問題の研究であるとか酸性雨問題の研究あるいは東南アジアの熱帯林の問題、こういった研究に取り組んでいるところでございまして、具体的には、私どもの国立環境研究所でアジア地域の方々をお呼びして研究のワークショップを開いたり、研究者の国際会議を開いたりしながら、今後ともアジア地域での地球環境研究協力体制を強化していきたい、このように考えております。
  126. 井田勝久

    ○井田政府委員 科学技術庁も、地球環境問題でございますが、特に開発途上国への協力について積極的に取り組んでいるところでございます。特に開発途上国におきましての協力の中では、やはり宇宙からの地球観測、こういう面の協力が非常に重要でございまして、宇宙からの地球観測は全地球を短期間にカバーできる唯一の観測手段でございますし、長期的、継続的な観測が可能でございます。  こういった観点から、環境汚染の状況などを人工衛星から観測する、この受信のための地上局をタイに設置いたしまして、広く東南アジア諸国に利用できるように提供しておりますし、またこういった東南アジア諸国と協力いたしまして、地域ごとの洪水危険度を示す図の作成などリモートセンシング技術の高度化に向けての共同研究をしております。  また、気候変動を左右いたします熱帯における降雨を広域に観測できます熱帯降雨観測衛星、こういったものも進めているところでございます。特に、本年は国際宇宙年でもございまして、そのテーマの一つは「惑星地球へのミッション、宇宙からの地球観測」ということでございます。  そういうことで、我が国はこういったアジア・太平洋地域の宇宙関係者を集めましたISY会議というものを十一月に開催することになっておりますが、そのメインテーマは地球観測の問題でございまして、先般もこの会議のプレといたしまして、前段でございますが、タイとかマレーシア、モンゴル、バングラデシュ、こういった十三カ国の宇宙機関の代表を集めまして、今後の宇宙における協力、特にリモートセンシング技術によります地球観測のための協力について話し合いまして、今後積極的な協力を進めたい、このように考えているところでございます。  そのほか、海洋でございます。海洋につきましては、やはり地球環境に重大な影響を持つものでございますので、海洋におきます熱、炭酸ガスの循環メカニズム、こういったもののほか、熱帯におきます大気、海洋の総合研究につきまして、アジア・太平洋諸国と協力をしておりますし、黒潮の研究について中国と共同研究をしております。  そのほか砂漠化という問題も一つございます。これにつきましては、砂漠化のメカニズム、これは大変大きな地球環境の問題でございますが、中国のタクラマカン砂漠をフィールドとして中国と共同研究を行っております。また、熱帯林の破壊という問題につきましては、やはりそのメカニズムについてタイと共同研究をしております。そのほかアジア・モンスーンのメカニズムの解明ということで中国とも協力しております。  こういった形で具体的なアジア・太平洋諸国、開発途上国との協力を今後とも積極的に進めてまいりたい、このように考えているわけでございます。
  127. 川島實

    ○川島委員 時間がございませんので、新エネルギー開発の関係については、申しわけございませんが次回に移させていただきたいと思います。  最後に一つだけ、昨日の新聞等で報道がございましたロシアの原発放射能漏れについて原子力安全局はどのように受けとめておるのか、我が国としてこれらの問題は余り影響ないのかどうか、この辺について最後にお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  128. 坂内富士男

    ○坂内政府委員 お答えいたします。  レニングラードの原子力発電所の事故につきましてですが、本事故に関しましてはまだ極めて限られた情報しかございませんで、私ども持っております情報は、ロシア連邦からIAEA、国際原子力機関を通じまして私どもが入手した情報でございますが、それを総合しますと概略以下のとおりというふうに承知しております。  ロシア連邦のサンクトペテルブルク付近のレニングラード原子力発電所三号炉におきまして、三月二十四日、現地時間の午前二時三十七分に燃料チャンネル一本の損傷によって炉室内の圧力が上昇し、原子炉非常防護系が作動し、原子炉が停止したというものでございます。  この事故によりまして環境に放出された放射性物質の量は、事故後二十四時間以内に不活性ガス三百十九キュリー、沃素1310・二キュリー以下というふうにされております。なお、この周辺監視区域の放射線レベルは通常と変わらない。また、ロシア気象庁のデータによれば、サンクトペテルブルクの三月二十四、二十五日の放射線のレベルはバックグラウンドであるというふうな情報もございます。  事故の原因等詳細につきましてはまだ発表がございませんが、事故調査委員会が活動し始めており、損傷した燃料チャンネルの交換のための準備作業が進められている模様というふうに聞いております。  なお、今回の事故につきましては、現時点では国際原子力機関が定めた国際原子力事象評価尺度でレベル二というふうに分類されておりまして、これは施設周辺の一般公衆への影響がないレベルということでございます。  こういったことから、今回の事故は周辺環境に影響を及ぼすものではないと思われますが、当庁としましては、引き続き情報収集に努めておるところということでございます。
  129. 川島實

    ○川島委員 ありがとうございました。これで終わります。
  130. 近岡理一郎

  131. 近江巳記夫

    ○近江委員 基礎研究、それから実用段階とさまざまなレベルで科学は進歩しておるわけであります。時間等の関係がありますので、法案にじかに入る前に、先にその辺の関連のことについてお伺いしたいと思います。  まず、先ほどもソ連の事故の問題がございました。ソ連では二十数カ所の原発が非常に不安である、このように言われておるわけですが、これは我が国としても緊急の支援の体制ということは早急にとらなければいかぬと思うわけでございます。政府としては、どのように現在のソ連の原発を考え、またどういう支援をとろうとされておるか、これをお伺いしたいと思います。
  132. 石田寛人

    ○石田政府委員 お答え申し上げます。  今ほど御質問のございましたソ連のレニングラード原子力発電所、この発電所はRBMK型原子炉という原子炉を使っておるわけでございますが、これはチェルノブイリ原子力発電所と同じ炉型でございまして、その安全性が懸念されておるところでございますので、国際的な協調に基づきまして対応することが必要と考えておるところでございます。  昨年の九月でございますけれども、国際原子力機関が開催いたしました原子力安全の国際会議におきまして、ソ連の代表団は、このRBMK型の原子炉につきましてもVVER型原子炉と同様――このVVER原子炉と申しますのは、西側でいいます軽水炉、特に加圧水型炉と大体同じものだろうと思っておりますが、VVER型の原子炉と同様に国際原子力機関の安全評価を受け入れる旨表明いたしました。これを受けまして国際原子力機関では、RBMK安全評価プロジェクトというプロジェクトを開始するために諮問グループ会合をやるということになってございまして、この四月六日から十日の間にウィーンにおきまして諮問グループ会合を開催するということになってございます。ここでRBMK型の原子炉の安全性に関する意見交換とかあるいは今後の協力プログラムの検討等が行われる予定でございます。本会合には当庁職員も参加いたしますし、日本原子力研究所あるいは動力炉・核燃料開発事業団の職員も参加する予定になっておるわけでございます。  さらに当庁では、平成四年度におきまして、国際原子力機関が行います旧ソ連・東欧原子力安全性の評価と調査のための活動に対しまして特別拠出を行いまして、RBMK型の原子炉安全評価プロジェクト等の国際原子力機関が実施いたします旧ソ連・東欧原子力発電所を対象とする安全性についての調査あるいは評価のための活動に対する資金面を含めた支援を行う予定でもございますし、あるいは国際原子力機関が実施するRBMK型原子炉に対する安全評価調査団に対しましても専門家を派遣するというようなことも検討いたしております。あるいはさらに、日ソの二国間の協力におきましてもいろいろな情報交換等の協力を行うこと、さらには現場の科学者等の資質向上に関しますいろいろな専門家の受け入れ、研修等も行う等々によりまして、旧ソ連等におきます原子力発電所の安全性の向上に貢献していきたい、かように考えておるところでございます。
  133. 近江巳記夫

    ○近江委員 この同型炉が旧ソ連に十六基、ほかに安全性に強い疑念が持たれております第一世代の旧ソ連製の加圧水型軽水炉(V230型)、これは旧ソ連に六基、ブルガリアに四基、チェコスロバキアに二基、旧東ドイツに四基ある、こういう炉の危険性が指摘されておるわけですね。政府としてはこの安全性ということについて危惧していないのですか、どういう判断をしておるのか、それについてお伺いしたいと思います。
  134. 谷弘

    ○谷(弘)政府委員 ただいま原子力局長の方からも御説明申し上げましたけれども、ソ連にあります原子炉あるいはソ連から東欧諸国に対して輸出しました原子炉については国際的に安全性の検討が行われておりまして、もちろん西側の原子炉と比べてみますと、設計面でも若干問題があると言われておりますが、そのほかに運転面とかあるいは基本的な考え方、運転に対する考え方、セーフティーカルチャー、安全文化とでも訳しますでしょうか、そういう点でも問題があるのじゃないかと言っておりまして、西側の国、各国協力しまして、そういうものをこれから是正をしていこうというように会議で判断されておるところでございます。
  135. 近江巳記夫

    ○近江委員 チェルノブイリの例を見るまでもなく、これは非常に心配な点であります。かねて科学技術庁長官は、我が国の原発については国際的に見て安全性という点において評価ができるとおっしゃっているわけですね。しかし、美浜のトラブルの例もあり、我々としては非常に安全性ということに関しては危惧しております。そういうことで、特にソ連の今回のこと、またチェルノブイリにもかんがみまして、我が国が国際支援の中核になっていかなければいけない、このように思うわけです。今後、我が国が中核としてやっていくのかやっていかないのか、さらにどういう点を強力に支援をしていくのか、この点についてお伺いします。
  136. 谷川寛三

    谷川国務大臣 いつも申し上げておりますように、日本のエネルギー供給構造はまことに不安定でございますから、例えばエネルギーの八割が海外に依存している、しかもその大宗を占める原油は、湾岸危機の際にも危惧されましたようにまことに不確定、こういう構造を直しますために、どうしても供給安定性それから経済性、環境影響等から考えまして一番いいと言われております原子力の平和利用をやっていかなければいかぬ、そのためには、今お話がありましたように、安全の上にも安全、九電力の社長さん方に会うたびにそのことを要請しているところでございますが、旨として進めていかなければならぬ、こういうふうに考えております。  それからまた、今のソ連等の非常に不安全な原子力発電所につきましては、さっき安全局長からも御答弁申し上げましたように、IAEAの評価活動にも参加しておりますし、今度の場合も早速外務省を通じまして、モスクワにおります科学技術庁のアタッシェをレニングラード、ペテルスブルグヘ派遣をいたしまして現地調査をするように、それからまた原研とか動燃事業団の専門家を派遣するとかいうふうにいたしまして、実情を把握すると同時に、どういう協力ができるか、早速やっておるところでございます。
  137. 近江巳記夫

    ○近江委員 我が国の基礎研究という点からいきますと、民間が非常に大きなウエートを占めておる。これはまた後でさらに私は詳しくその点を聞きますけれども、民間といいましても結局、例えば難病の治療薬のような、研究開発しても市場規模が小さいとか投資が回収できない分野、地球科学のような経済活動と結びつきにくいような分野、純粋な科学的研究などは、これは民間が非常に投資しにくい分野なんですね。こういう点はやはり特に力を入れていかなければいかぬ。  特に、私は何点か挙げたいと思いますが、一つは、この対がん十カ年総合戦略、これは科学技術庁が中心になって、厚生省、文部省等も入りやっておるわけですが、いよいよこれ、期限切れが来ておるんでしょう。これにつきまして、いろいろな学者等からも今までのこの過去の九年間を振り返って総括をされておると思いますが、これに対して今後新十カ年総合戦略というものを早急に立てなければならない。これに対して、今までの反省とこの新しい十カ年総合戦略をお立てになるのかどうか、この点についてお伺いします。
  138. 林昭彦

    ○林政府委員 御指摘のように、がん対策は国を挙げて取り組むべき緊急の課題であろうというふうに認識をしております。したがいまして、今先生お話ございましたように、従来から対がん十カ年総合戦略に基づきまして、重粒子線がん治療装置の建設、あるいはメカニズムの解明を理研でやるとかいろいろな対策を講じてきておりますけれども、今後とも各関係省庁と連携協力しつつ、この関連研究を引き続き推進をしたいと考えております。平成五年度から重粒子線がん治療装置の臨床の試行く向けましての研究を推進いたしまして、がん制圧に向けて一層努力をしてまいる所存でございます。
  139. 近江巳記夫

    ○近江委員 局長から今そういう答弁があったが、大臣は十カ年戦略を強力に進めていかれるんですね。重ねて大臣から決意を伺います。
  140. 谷川寛三

    谷川国務大臣 強力に進めてまいります。
  141. 近江巳記夫

    ○近江委員 この法案は、研究活動を取り巻く制約除去については一歩前進というか、その点は理解できるわけです。しかしながら、基礎研究の大きな前進という点から考えたときに、これは大きな問題が多々残されておる、このように私は思うわけです。我が国に対しては、今や経済大国、非常にそういう、各国からいろんな点で批判も寄せられておることは事実でありまして、基礎研究ただ乗り論であるとかいろんなことを言われております。  そこで、我が党としては、二十一世紀を開く基礎科学、基礎研究強化のための褒言もいたしております。実際に我が国の基礎分野というものは貢献が非常に少ないと言われておるわけですけれども、この基礎研究のレベルというものは各国と比較をいたしましてどのぐらいの位置にあるのか、それについてお伺いします。
  142. 須田忠義

    ○須田政府委員 基礎研究レベルを各国と比較するには、比較の仕方はいろいろあるわけでございます。例えばノーベル賞の受賞者から論文数から被引用論文の数、そういうもので比較していく方法、それから予算、人員、そういうのでいろいろな角度から比較していく方法があるわけですが、その中の一つとして、科学技術庁は昨年、いわゆる先端科学技術の専門家、国内の第一線級の方々、たしか五百何名について意識調査を行いました。特にこの意識調査のやり方は、ライフサイエンス、物質・材料、情報・電子、海洋・地球科学等の五つの分野についてさらにサブテーマをつくりまして、これについて米国、欧州と比較してどうなのかということを調査いたしまして、それが平成三年度科学技術白書に取りまとめられているところでございます。  それによりますと、アメリカとの比較においては若干の研究課題は日米同等と認識されているものがあることはあるんですが、分野全体ではすべてについて米国優位との回答が多数を占めでございます。また、西欧との比較においては、全体的にはほぼ同等との認識になっております。なお、同じような調査を三年前にも実施しているわけですけれども、三年前の調査と比較いたしますと、日本の基礎研究の水準は国際的にやや向上しつつあるという評価がなされてございます。  このように、研究者の意識としては我が国の基礎研究のレベルは向上しつつあると評価されているものの、国全体として見れば、例えば先ほど申しました基礎研究ですが、中心的な役割を果たすべき政府の投資額、これのGNPの比較とかそういうもの全体を比較していきますと、我が国科学技術構造全体では相当のアンバランスが目立つのじゃなかろうか、いわゆる開発研究、応用研究に対する基礎研究のアンバランスということも認識しているところでございます。
  143. 近江巳記夫

    ○近江委員 いろんなそういう基準といいますか比較という点になってくると難しい問題があろうかと思いますが、ほぼ同等というような御答弁があった。しかし、そこまでに来ておるということは、いみじくも政府努力が足らないという反省も今あったわけですけれども、民間がほとんど力を入れておる、また研究者自身が努力をしておる、足らないのは何かといえば、政府努力が一番足らぬわけでしょう。そういうことを本当に皆さん方が深刻にやはり反省しなければいかぬ、このように思うんですね。  特に基礎研究ということになってきますと、大学なり国研が担っておる、こういう立場というのは非常にウエートが重いと思うんです。ただ、大学においては、研究費が不足である、施設はもう老朽化しておる、外国の学者が来ても、これが日本の大学の研究室ですか、みんな驚いてしっぽを巻いて帰るというのが現状でしょう。また、国研におきましても、研究者の老齢化も進んでおる、そういう状況がある。大学なり国研を真剣に政府が今総括をされてどういう反省をされておるか、どういう点が至らないか、この点についてお伺いしたいと思います。
  144. 須田忠義

    ○須田政府委員 端的に申しまして、我が国政府研究開発投資が少ない、そういうことでございます。これについては、数年間いろいろ厳しいゼロシーリングが続いておりましたので、先生指摘のとおり、大学、国研の施設設備の老朽化、陳腐化、これは非常に著しいものがございます。また研究費の伸びもずっと低迷しておるということ、これは十八号答申でも強く指摘されてございまして、これについての改善、改良、これを早急に図れということが強調されておるわけでございます。なおこの基礎研究とともに、国際貢献、こういうことを踏まえまして、なるべく早期に政府研究開発投資を倍増すべしというのはそこから出てきている問題だというふうに認識してございます。  いずれにしても、我々財政状況厳しい中においても努力はしてきたんですけれども、その努力は足りない、もっともっと努力すべきだ、こういうふうに考えているところでございます。
  145. 近江巳記夫

    ○近江委員 局長は、いわゆる国の投資が少ないということは率直に反省しておられるから、わかっておると思いますけれども、わかっておられることをあえて言うことはないと思いますが、例えばこの一九九〇年度研究投資を見ますと、民間の研究開発投資は十三兆七百八十三億円、投資額の八割を超える十兆七千二百十五億円を民間が投資して、国や地方公共団体の投資が二兆三千四百六十六億円。前年度に対する伸びは、民間の投資が一一・六%増加しておるのに対しまして、国などの投資は六・五%しかふえてないわけです。こういう状況です。  それからさらに大学の研究費の国際比較、このデータは若干古いですけれども、これは一九八七年ですけれども日本が一兆六百億円、公費負担割合が五八%、研究者一人当たりの研究費が千五百四十万円、研究費の対GNP比が〇・三%、こういうことですね。先進国の日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、これを見ますと、アメリカの場合は三兆八千九百億円、公費負担割合が八六・七%、しかも研究者一人当たりが三千八十万円。イギリスの場合は、公費負担割合が七八・四%、一人当たり千九百八十万円。ドイツが九三・七%、千九百七十万円。フランス九四・八%、千四百三十万円、こういうことですよ。大学の研究費のそういうことを見ましても、もう本当に、我が国がいかに低いかということがはっきりしていますね。これに対して、きょうは文部省もいるわけですから、文部省と科学技術庁、答弁してください。
  146. 谷川寛三

    谷川国務大臣 確かに御指摘がありましたように、総体の研究投資の額の中で国の占める割合を比較しますと、今お話がありましたように、日本は二割、アメリカは四十数%、ドイツも三十数%、確かに見劣りがいたします。大学の研究費にいたしましても御指摘があったとおりでございます。十八号答申にもございますが、これまでも努力はしておりますが、今後とも基礎研究の充実、それから科学技術をもってします国際貢献の進展、一層の努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。  さっきも御答弁申し上げましたが、大学や政府関係研究機関の設備の更新にいたしましても、何とか早期に立派にするようにしたいと今後とも格段の努力をしてまいる所存でございます。
  147. 雨宮忠

    ○雨宮説明員 大学の研究条件を支える要素として、先生指摘のように施設もございますし、設備もございます。また研究費もございますし、それからさらに、広く人材養成というような点もございます。国立大学協会やらあるいは学術会議やら、さまざまな団体がいろいろな調査をいたしております。また、昨年秋には、私どもといたしましても学術研究ということで、白書で特集号を組んでおりますが、いずれの調査等からいたしましても、やはり大学の研究条件が非常に厳しい状況にあるということは私どもも全く同じように認識しておるところでございまして、何とかこれを改善していかなければならない、かように考えております。
  148. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府自身も、関係者の皆さんも、そういう焦りの気持ちでやっておられる。よくわかるのですね。ですから、私どもがこの提言をして、何回となしに、これをすればどうですかということを言っているわけですね。それは御承知のように、例えば日本版のNSFの設置であるとかあるいは基礎研究振興法、十カ年計画等を策定するとか、レールに乗せなさいと。そうしないと、ただ予算枠のいわゆる増額、対大蔵交渉をやって、そんなことだけで飛躍的に、あなた古いつも五年なり七年で倍増するとかいろいろなことをおっしゃっていますけれども、いけますか、それ。このように私たちが提言しておるのですから、やっぱり政府としてレールを引くことを真剣に考えなさいよ。そうしなければ進みませんよ。毎年どこどこに比べて何%ふえましたと、そんなことだけ言っておってこれは抜本的に解決できますか。この辺の考え方についてお伺いします。
  149. 須田忠義

    ○須田政府委員 先生御提言の日本版NSF、それから基礎研究振興法、科学技術振興法、全くもっともっと我々検討しなければいかぬ重要な御提言だというふうには考えております。ただ、今まで我が国科学技術振興はアメリカと若干違いまして、NSFのようなところというのは文部省並びに科学技術庁からその資金を提供しておったということ、並びに基礎研究振興法で人文科学、文学、そういう社会科学も含むのか含まないのか、いろいろな観点から議論していかなければいかぬ問題を非常に多く含んでおるというふうに考えます。今後も、先生のおっしゃるとおりそういうことを突破していかないと、なかなかそういう実現が難しいという実態も十分理解できるわけでございますが、さらに検討さしていただきたい、さように思います。
  150. 近江巳記夫

    ○近江委員 これはもう毎回申し上げておることでありまして、大臣、真剣に私が申し上げているようなことをやらないと、レールを引かないと、これはできませんですよ。ですから、同じことに対しての大臣の御答弁をひとついただきたいと思います。
  151. 谷川寛三

    谷川国務大臣 公明党の御提言につきましては、せんだってありがたく拝聴したところでございますが、その旨も十分参考にしながら今後とも基礎研究においては最大限の努力をしてまいる所存でございます。
  152. 近江巳記夫

    ○近江委員 この促進法は、国と国以外の交流ということを規定しておるわけでございますが、いわゆる国の機関間の交流、特に国研と大学との交流等も法律の中でどうして処置をしなかったのか、この点につきましてお伺いしたいと思います。
  153. 長田英機

    長田政府委員 この法案は国と国以外との関係でございますが、先生がおっしゃられました国と国の機関の場合でございますと、特に制度的な制約がなくして、出向だとか併任だとかいろいろな形で人事の交流もできるし、施設関係につきましてもいろいろな流動的な対応ができるということでございますが、国と国以外の間につきまして、国家公務員法、財政法というところで規律を受けるわけでございまして、その規律が交流を進めるための一つのネックという点から、そのネックを排除するという意味で、国と国以外のところを対象にしているわけでございます。
  154. 近江巳記夫

    ○近江委員 国のいわゆる機関間あるいは大学との交流、それはできるんだと言っておりますけれども、それじゃ対外的にやっていますか本当に、それを活性化できるように。実際はそういうセクトといいますか、いろいろなことがあって、実際はそんな活発にやってないでしょう。そうしたら、それを活発にできるような、そういうことを考えなければいけない、法律にうたわないまでにしても。それじゃ現状を言ってみなさいよ、どれだけ活発に交流できているのか。また今後活発にするためにはどうすればいいのですか。その点についてお伺いします。
  155. 長田英機

    長田政府委員 今申し上げましたことは制度的な制約がないということでございますが、現在は、国の研究機関の間では、大学も同じでございますが、併任とか出張とかいろいろそういう人的交流が可能でございます。  特に科学技術庁といたしましては、六十二年度から省庁間の研究交流促進する観点から科学技術振興調整費を活用いたしまして、中核となる国研に他省庁研究者とかほかの機関の方とかに集まっていただきまして、研究をいろいろな方を集めてやっていく。この制度によりまして、平成二年度でも六十三人が併任の形で研究参加しております。さらにまた平成三年度におきましては、省庁間の共同研究を推進する主な制度といたしまして、科学技術振興調整費などにおいて六十七億円、百二十九課題というのを計上しております。  このように、科学技術振興調整費を使いまして適切な交流ができるように努力をしている現状でございます。
  156. 近江巳記夫

    ○近江委員 振興調整費、振興調整費とよく言っていますけれども、いつも私が言っているように少な過ぎますよ、それならそれで。ですから、これはもっと増額もして、今やっておられることをもっと大規模にどんどんできるようにして活性化を図る、そういう努力をしっかりしていただきたいと思います。今後努力していただけますか。
  157. 須田忠義

    ○須田政府委員 五十六年度発足したとき三十三・五億でございまして、来年度、平成四年度予算が百五億ということで、それなりに増額はしてきておるつもりでございますが、先生指摘のとおりまだまだ足らないというのは十分我々も踏まえてございます。なおさらなる増強を図るとともに、内部の見直しを図りつつ弾力化させてまいりたいと考えております。
  158. 近江巳記夫

    ○近江委員 さらに努力していただくことを要望しておきます。  それから、この研究交流促進法制定されて六年になるわけでございますけれども、実際の適用実績というものがどれだけ上がっておるかということなんです回私が聞いておる範囲では余り実績は芳しくない、このように私は判断しておるわけでございます。  まず、そういう法律ができて六年間たって、政府として本当に胸を張って、これだけの適用実績が上がって、成果として報告できますか、言える現状であるのかどうか、それについてお伺いします。
  159. 山路順一

    山路政府委員 今年一月一日現在での研究交流促進法実績を整理してございますので、御説明させていただきたいと思います。  まず外国人の研究公務員への任用でございますが、これまで五省庁におきまして七カ国から十三人の任用実績がございます、国籍別に見ますと、米国四名、韓国三名、中国二名、英国、ブラジル、イラン、インドおのおの一名となってございます。  次に、職務専念義務の免除によります研究集会への参加でございますが、十三省庁におきまして延べ約一万五千人の参加実績がございます。  次に、退職手当の算定において不利益をこうむらない休職でございますが、これまでの実績といたしましては、四省庁におきまして延べ二十一名の実績がございます。  次に、受託研究成果にかかわる特許権等の譲与については、現在まで特許を譲りました例はございません。この理由は、受託研究からまだ特許権が生じていないゆえでございます。  次に、国際共同研究にかかわる特許発明等の相互無償・廉価実施についてでございますけれども、現在までに特許権等がこれも発生してございませんので、無償実施をさせた例はございません。しかしながら、この法律制定されましたおかげをもちまして、これまでできなかった共同研究が締結されたという実例がございます。それは核融合分野におきます研究協力でございまして、この特許発明の相互無償・廉価実施という趣旨を盛り込みました協定が締結されたところでございます。  次に、国際共同研究にかかわる損害賠償請求権の放棄でございますが、やはり法律ができましたおかげで、これまで米国航空宇宙局、NASAでございますが、それと科学技術庁との間で、また文部省との間でも、四件の損害賠償請求権の放棄を盛り込みました共同研究契約を締結することができました。  最後に、国有施設廉価使用でございます。これは現在までのところ実績はございません。  以上でございます。
  160. 近江巳記夫

    ○近江委員 外国研究公務員の受け入れにつきましてもたった十三人ですね。五省庁、七カ国であるいは公共施設廉価使用もゼロである。こういう結果でしょう。それなりの努力をされていることはわかりますけれども、なぜ、例えばこういう外国研究者の受け入れ等が低迷しておるのか、どこに原因があるのですか。それをお伺いします。
  161. 山路順一

    山路政府委員 先生指摘のとおりに、いろいろな理由を私どもも考えておりますけれども、まずその一つには、やはり適切な高度の能力を持った研究者を探し出すということがまず一番かと思います。これまでにもそういう方たちに接触したという事例は各省庁からお話をいただいておりますけれども、その外国研究者自分の仕事を持っておって、まだ日本には来れないといった事情もあろうかというようなこともございました。また我が国のこの制度の中では、定員の中で、つまり定められました定員の中で採用するということでございますので、各研究機関に定員のあきがないような場合には、適切な研究者がいる場合でも断念せざるを得ない、そういったいろいろな制約もあろうかと考えております。
  162. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、この法律ができることによって、今いろいろな実績について報告があったのですけれども外国人の人材登用にしろ何にしろ、どのくらいの前進ができると見ているのですか。
  163. 山路順一

    山路政府委員 先生り今の御質問、なかなかお答えしにくい難しい質問がと思います。と申し上げますのは、研究交流、どのくらいの実績が上がるかということは定量的になかなか見通せないという点もございます。しかしながら、私ども、この制度をよりよいものにすることによりまして、人的交流、情報の交換、共同研究の推進、委託・受託研究の進展、そういったものが今後、一つ一つ制度上の隘路を解消していくことによってこういう研究交流促進していくものと信じておるところでございます。
  164. 近江巳記夫

    ○近江委員 大学におきます外国人の受け入れはどの程度進んでいるのですか。
  165. 工藤智規

    ○工藤説明員 大学といいましても、国立大学の場合を中心に申し上げますと、大学における外国人の受け入れにつきましては大きく二つの制度がございまして、一つは国家公務員法の二条七項でございますが、いわゆる勤務契約によるお雇い外国人という昔の沿革を背負った制度でございます。それからもう一つは、昭和五十七年に成立いたしましたいわゆる外国人教員任用法に基づく特別の任用形態によるものでございます。  後者の方から先に申し上げますと、昭和五十七年に成立いたしまして五十八年の四月から任用が始まりましたけれども、当初は助教授三人でございましたけれども、平成三年七月現在で調べてみますと、教授、助教授、講師、含めまして百六十五名の任用となってございます。  それから、国家公務員法二条七項によります勤務の契約による外国人教師あるいは外国研究員の数につきましては、平成三年七月一日現在で合計四百七十七名という状況でございます。
  166. 近江巳記夫

    ○近江委員 国際化と言われる中でございますので、さらに、大学初め国研等も努力をしっかりやっていただきまして、その中で、相互理解、また相互のいろんな共同によりましていいものがまた生まれてくる、このように思います。そういうことで、言葉だけ国際化、国際化ということで走らないで、実の上がる対策をしっかりとっていただきたい、このように思います。  それから、この任期つき採用等の研究者交流ですけれども、現在、国研におきましてどういう形で外部からの研究者を受け入れておられるのか、現状についてお伺いしたいと思います。
  167. 山路順一

    山路政府委員 お答え申し上げます。  先生案内のとおり、各国研には外部からの研究者を受け入れます制度、いろいろございます。一般的な制度を申し上げますと、大学、民間等の研究者を国立試験研究機関に受け入れます客員研究官、また、流動研究制度というものを各省庁持ってございます。こういった制度によりまして、大学、民間等からの研究者を受け入れているところでございます。  ちなみに、私ども当庁の実績で申し上げますと、平成二年度におきまして、大学、民間等の優秀な研究者を、客員研究官といたしまして百二十二名の研究者を外部より受け入れている実績がございます。  以上でございます。
  168. 近江巳記夫

    ○近江委員 それなりの努力をしておられることは認めますが、今回、いわゆる研究公務員につきまして任期つきの採用を導入するということになるわけでございますけれども、これにつきましてもやはりいろいろと問題があろうかと私は思うのでございます。  そこで、任期等につきましては、国家公務員法に基づきます「人事院規則の定めるところ」、このようにあるわけでございますが、人事院規則の概要といいますか、これにつきましてひとつお伺いしたいと思います。
  169. 長田英機

    長田政府委員 人事院規則の中でどういう場合に任期つき任用を行うのか、例えば任期の期間は五年以内、あるいは十分たる研究の能力を持っている人を任期つきで採用するというようなこととか、あるいは任命権者が任期つき任用で採用します場合には人事院の承認を得るようにしよう、ここで身分上のチェックをかけるようにしておりまして、そのような、研究が効率的に行われ、かつ公務員としての身分保障ができるような形の基準をここで決めたいと考えています。
  170. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、任期つきということになってきますと定員上どういう扱いになるのですか。総定員法の枠内定員なのか、どうなのか。その辺のところはどうなのか、ちょっとはっきり言ってください。
  171. 長田英機

    長田政府委員 これは普通の公務員でございますから、通常の定員の枠内に入る、こういうことでございます。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど答弁の中で、結局定員の枠があるからなかなかそういうことが思わしくいかないという話もあったわけですね。そうすると、定員の枠内ということでいった場合に、法律はこのようにつくったけれども実績といいますか、そういうものが本当に前進するかどうかですね。例えば国立学校設置法附則三項、これを見ますと、国立大学、随分と枠外でやっておるわけですね。どうしてこういう制度がとれなかったのですか。人事院もいるから、あなたばかり答弁せぬと、人事院がまず答えて、あなたは次に答弁してください。
  173. 尾木雄

    尾木説明員 今回の任期つき任用に関する人事院規則の予定しております内容につきましては、今振興局長の方からお答えしたとおりであると思っております。今、定員との関係でどうかというお話でございますけれども、そこは、公務員制度を人事の面から所管する人事院としては、申しわけございませんけれども関与いたしておりませんので、答弁の立場としては適切ではないということでございます。
  174. 長田英機

    長田政府委員 国立の研究所研究者が来る場合に、先ほどお話ございました常勤の国家公務員としてではなくて、客員の研究員、研修生、いろいろな形態があろうかと思います。私どもの今回の改正は、常勤職員として、五年以内ぐらいの期間、通常の職員として研究に従事するということでございまして、外から一時的に客員研究員あるいは非常勤で来られる方は、大体時間が限られていると申しますか、常時そこで働くというようなことではございませんものですから、今回はまさに研究所の一員になりまして、研究テーマに職員として職務専念義務を持って取り組んでいただく、こういうようなことでございます。
  175. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは「昭和四十八年度以後に設置された国立大学並びに同年度以後に国立大学に置かれた医学部及び歯学部で次に掲げるものに恒常的に置く必要がある職に充てるべき常勤の職員は、当分の間行政機関の職員の定員に関する法律第一条第一項の職員に含まないものとし、その定員は、一万九千八百七十六人とする。」ということで、以下旭川医科大学初め多くの医科系の大学になっているのですね。その辺は人事院とよく詰めたのですか。どのように仕上げれば一番いいかという中で出た結論なのですか。人事院と両方答えてください。
  176. 長田英機

    長田政府委員 この任期つき任用で採用になりました人は、いわゆる定員何名、こう言われております定員の中に入るものであるということでございまして、これは先ほど人事院の方もお答えになられましたけれども、人事院との間でも問題はないと考えています。
  177. 工藤智規

    ○工藤説明員 直接のお尋ねではございませんけれども、この国立学校設置法の附則定員の関係について御説明申し上げますと、先ほど先生おっしゃったとおりでございまして、この制度昭和五十二年の法改正でこうなったわけでございますが、こういう仕組みをとっておりますのは御案内の旭川医科大学等の医科大学関係が多いわけでございます。  昭和四十七年以降、いわゆる無医大県解消計画等の新たな行政需要に基づきまして、幾つかの大学医学部の新設がなされたわけでございますが、これにつきましては総定員法制定当初予定しておりました趣旨とは違う全く新しい行政需要でございますし、ある程度一時的といいましょうか、恒久に続くというよりは当分の間その需要状況を見たがら総定員法全体の定員管理のあり方を見定める必要があるということで、当面総定員法の枠外にさせていただいているにすぎないものでございます。こういう仕組みにはなってございますけれども、別枠であるからといって決して定員管理が甘いわけではございませんで、毎年の概算要求を受けまして、総務庁でしかるべき総定員法の枠内の定員と同じ厳しい定員管理の中での必要最小限の定員措置をさせていただいているものでございます。御理解賜りたいと思います。
  178. 近江巳記夫

    ○近江委員 身分上はその人は安定して、それはいいということはわかりますよ。わかりますけれども、結局国研のそういう職員等を見ますと、研究テーマはどんどんどんどんふえてくる、人員はもう総定員法でくくられて手は回らない、そういう嘆きの声ばかりでしょう。そういう中でこういうのをやったって、結局は総定員法でやられているから実際に本当にうまく運用できるのかどうか、そういう危惧があるわけです。ですから、これはこれからの問題として人事院と科学技術庁はその点よくフォローされて、やはりまた改正するなりなんなりいろいろなそういう状況に応じた判断をしなければいかぬ、このように思うわけです。そう思いませんか。
  179. 長田英機

    長田政府委員 先生がおっしゃいますとおり、この国研の定員問題というのはやはり非常に研究基盤として重要な問題でございますので、私ども日ごろから何とかしてこの定員がふえないものかというふうに考えているわけでございますが、御承知のとおり非常に厳しい状況にあるわけでございます。しかしながら、国研の活性化のため、その研究成果を上げるため、何とかこれからも一歩一歩でも努力をしていきたいと思います。
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 ですから、急にその辺が変わらないということであるならば、せめて国研の定員をふやすとか、そういうことは考えていかないと、そういう実際の運用がうまく実を上げることができないと私は思のですよ。ですから、これは今後の大きな課題として私も絶えずフォローをしてやっていきたいと思いますから、これは一つの大きな宿題として政府に私は出しておきますから、よく検討していただきたいと思います。大臣、どうですか。
  181. 谷川寛三

    谷川国務大臣 課題としてよく勉強いたします。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、これは研究公務員全体の問題ですけれども、理工系の公務員の志願者が減少しておるということを聞くわけです。これは非常に寂しいですね。科学立国として立つ我が国のそういう国研の、非常に評価もされておる、要するに理工系の公務員の志願者が減少しておる、これに対して政府はどういう危機感を持ってこられておるのか、これが一つであります。それにつきましてはどう思いますか。これは人事院と科学技術庁、両方から。
  183. 須田忠義

    ○須田政府委員 先生指摘の、若者が大学の理工系を避けるようになってきておるということと理工系の卒業者が製造業研究職に入っていかなくなってきているという問題が最近強く指摘されております。これはいろいろな分析また世論調査、統計等から見てはっきりしていることであります。これについては、科学技術に夢と情熱を持った若手の研究者を養成、確保すること、これが創造性豊かな科学技術を振興する上において必要不可欠な課題だと考えておるわけですが、非常に遺憾なことであり、危機感を持っているところであります。  それで、これについては先般の十八号答申においても、科学技術に対する夢と情熱を持った青少年を育成するために、初等中等教育における科学的な実体験を得る機会をもっともっと増大しなければいかぬということ、それから科学技術関係の職業の処遇、勤務環境の改善、それから科学技術の喜びや感動を伝えるなどの普及啓発活動の実施、こういう主に三点については初等中等教育の課題として挙げられており、さらに高等教育の充実のために大学の学部段階の質的な充実、各大学の特色と個性を発揮しなければいかぬということ、修士課程の学生定員の拡大なり博士課程の学生の経済的支援の充実、そういうもろもろの指摘が、褒言がされてございます。これは科学技術庁としても文部省といろいろ協力しながらこういう施策を進めていきたい、そういうふうに考えております。
  184. 近江巳記夫

    ○近江委員 大学院におり、そしてまたドクターを持っておる、そういう人が行きたくてもなかなか行けないのですよ。そういう頭脳も一番活発に働くときでしょう。最高の学府で学び、ドクターも持ち、そういう人の活用を本当に真剣に考えなければいかぬ。政府は一体何を考えているのですか。いや、本当の話、そう言いたいですよ。その辺の現状について率直にどのように把握されているか。また、今後そういう方たちの採用なり活用についてどう考えておられるか。それについてお伺いします。
  185. 長田英機

    長田政府委員 私ども振興局でやっておりますポストドク対策というのがございますので紹介させていただきますが、これは国研にポストドク、三十五歳未満の博士号取得者または同等な実力を持っている方ということでございますが、こういう人たちを国研に来てもらうために、給与に相当する諸手当、研究費、そういうものを支給しまして、最大三年間、国研の方に来てもらうという科学技術特別研究制度というのがございまして、平成二年度からやっております。また理化学研究所につきましても、ポストドクの方に来ていただくような形の同様の制度をやっております。
  186. 近江巳記夫

    ○近江委員 要するに、そういう制度をつくったことはいいことなんですよ。私が聞いておるのは、現状では何名採用して、予算もどのようになって、現状の大変な数がいらっしゃる中で何名採用したのですか、どれだけの予算をつけたのですか。
  187. 長田英機

    長田政府委員 今申し上げました国研にポストドクの方が来ていただく制度は、現在受け入れ人数が百三十九名でございます。このほか理化学研究所の方にございますが、これは正確に記憶しておりませんが、今たしか五十五名程度であったと思います。
  188. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは余りにも少な過ぎますよ。それで我が国の基礎研究を振興していく、宝を皆さん方は本当に生かすということをもっと真剣に考えたらどうですか。それが結局、政府が、行政がとるべきあり方だと私は思うのですね。それも一つの大きな宿題として申し上げておきますから、きょうはもう時間がありませんので、また次の機会に残された問題をやりたいと思います。  以上で終わります。
  189. 近岡理一郎

    近岡委員長 吉井英勝君。
  190. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 まず、研究交流ということを考える場合にも一番大事な問題の一つは、現在の国立試験研究機関自身の自主性であるとか主体性を強化するためにも人的、物的体制の強化といいますか、先ほども出ておりましたが、国研の研究基盤を強化していくことですね。そのことに今本当に力を尽くすことが大事なときだというふうに思うわけです。  そこで、最初に少し伺いたいのですが、国立試験研究機関の研究職あるいはサポーティングスタッフの方、研究支援職、技能職、こういった人たちが一九八〇年から一九九一年にかけて何名削減をされたのか。この具体的な数字のところから質問に入っていきたいと思います。
  191. 山路順一

    山路政府委員 お答え申し上げたいと思います。  国研の定員を科学技術振興費に係る十六省庁八十二機関で眺めてみますと、国家公務員全体の定員削減計画が進められた中で、最近十年間におきまして約八%減少いたしました。平成三年度には約一万五千人となっておるところでございます。
  192. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 今のお話は国立試験研究機関の全職員の数なんです。一九八〇年一万百七十九人の研究職の方が一九九一年度で九千六百六十人と、まず研究職は五百十八人削減。それからサポーティングスタッフの方、これは総務庁などの資料に基づいてお聞きをして調べてみますと、一九八一年に三千七百八十五人であった方が、一九九〇年度になりますが、三千百三十六人と、ちょっと数字は研究職の場合と年度がずれますが、六百四十九入減少。これは研究者とサポーティングスタッフ合わせて一千百六十人を超える大変な国立試験研究機関における研究者の削減ということになるのじゃないですか。
  193. 山路順一

    山路政府委員 私の今手元にございます資料に基づきまして再度御説明させていただきたいと思います。国立試験研究機関の定員の推移でございますが、研究者研究職、それ以外の者を含めますと、全職員の合計でございますが、五十六年度より三年度末でございますが、五十六年度では一万六千九十六名、それに対しまして三年度末では一万四千七百七十七名、そういう数字になってございます。
  194. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 そんな数字くらい事前科学技術庁からいただいて、ここで変なやりとりにならないように私は準備しているのですが、今おっしゃったのは全職員の数で、ちゃんと一覧表を科学技術庁はくれているじゃありませんか。それで私は話をしているのです。  研究職の方、それから研究補助、サポーティングスタッフとして頑張っていただいている方たちは合わせて一千百六十名を超える、約十年ほどの間にそれだけの大変な研究者の減が出てしまっている。これが今日の国立試験研究機関におけるいわば危機的状況を生み出しているという点を私はまず指摘しているのです。その危機的状況については、実はきょう参加していらっしゃる委員の中でも関先生などとも昨年の五月に当科学技術委員会として例えば理化学研究所に寄せていただいて、主任研究員の方と直接お会いしていろいろ意見を伺いました。どんなに定数削減がひどいことになっているか。例えば、よその外国の国立研究機関であれば十分なサポーティングスタッフにも恵まれて、そして本当に研究成果を上げるということで力を尽くすことができるのに、どんどんどんどん研究者も削られる、サポーティングスタッフも削られてしまう、その結果、自分は半分研究者であって、半分、以前サポーティングスタッフの皆さんに頑張っていただいた仕事を一緒にやっているんだと深刻な事態を訴えておられるじゃないですか。そしてその中で、定数削減で新しい研究者や若い研究者が入ってこないからだんだん高齢化していっているんだ、若い活力が失われていっているんだ、今これが国立試験研究機関の深刻な事態を生み出しているんだということを、これは私ども科学技術委員会委員として、例えば理化学研究所に寄せていただいて聞いてきているわけですよ。  そういうふうな深刻な事態にあるのに、また定数削減ということでしょう。一昨年十一月七日の日刊工業新聞を読ませていただくと、科学技術庁はこのときに研究職は対象外にしてくれ、こういう意見を出しているのでしょう。だから、科学技術庁もこのままいったら、日本の国研の事態はいよいよ大変だという認識をお持ちだからこそ、見出しには「試験機関を活性化」をということで、「研究職は対象外に」せよと大見出しで書いていますよね。そういうふうに一昨年は言っているのに、昨年の七月五日の閣議決定では、今年度からの定員管理についてということでまた削減を打ち出しているわけでしょう。そうしたら、今も深刻なのに、これ以上研究職または研究支援職とか技能職といったサポーティングスタッフの人を削ったならば、一体どういうことになるんですか。私は、今回の定数削減の計画については、少なくとも国研の研究者またはそれをサポートする研究者補助員については絶対定数削減はしないんだ。それどころか、これは既に私は予算委員会総括質疑でも問題にしましたけれども、今こそふやして充実させなければいけないのだから、そういう方向で本当に数をふやすんだということで取り組んでいらっしゃるのかどうか、これを伺いたいと思います。
  195. 山路順一

    山路政府委員 先生指摘のとおり、研究公務員もその例に漏れず定員削減の枠内に入っております。しかしながら、創造性豊かな科学技術の振興を図る上で政府の果たす役割は極めて大きく、特に国研はその中核となるべきものだろうと考えております。このために国研に必要な人員を確保し、その活性化を図るということが重要な課題であることは先生の御指摘のとおりでございます。また、このため、科学技術会議の十八号答申におきましてもその旨が指摘されておるところでございます。  科学技術会議におきまして、各年度の科学技術振興に関します重点指針等において、人材の養成確保に重点を置くべきことを関係省庁に求めてきたところでございます。また、科学技術庁におきましても、国研の必要な定員が確保されるよう、関係省庁にも働きかけてきたところでございます。  政府全体の定員を抑制するという厳しい状況の中にありまして、科学技術政策において今後国研が果たしていくべき役割の重要性はますます増していると考えます。したがいまして、国研の必要な定員が確保されるよう、今後とも関係省庁協力しながら最大限の努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  196. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 ただ、最大限の努力はいいのですけれども、当然やってもらわなければいけないのですが、審議官が冒頭におっしゃったように、今度の第八次の定員削減の枠の中にも研究職も入っているということなんですね。そうでしょう。削られる枠に入っておって、それで努力するというのじゃ、これは全く矛盾しているんですね。  そこで、私は大臣に伺いたいのですが、全体の公務員の数はこれはこれで議論あるんです、やりたいんですが、これは場がちょっと違いますから、きょうは科学技術庁の所管のところで伺いたいのですけれども研究職とそしてサポーティングスタッフの方たちについて、第八次定数管理、削減の枠には国立試験研究機関については入れない、この立場を貫くということで大臣頑張ってもらえますか。
  197. 谷川寛三

    谷川国務大臣 これもまたよく研究してみます。
  198. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 これは研究の問題じゃなくて、私は大臣が決意をして取り組む問題だというふうに思うわけです。  それで、実は昨年五月に科学技術庁が出した「国立試験研究機関の定員の現状について」というのがありますね。この中の第二ページのところです。これは要旨の方ですが、国立試験研究機関における特別研究で一体不足している要員は何人かというのを出しておられますね。経常研究の場合は今何人不足しておるのかというのを出しておられますね。何人不足していますか。
  199. 須田忠義

    ○須田政府委員 これは国研のアンケート調査でございますが、一つ研究テーマ当たり平均約二名の要員が不足しているとの回答が得られております。
  200. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 今御答弁いただいたように、科学技術庁の出している報告自身が、現在も研究者が、要員が不足しているんだ、特別研究で二人足らぬ、経常研究で一・八人足りない。研究テーマはいっぱいあるわけですから物すごい数になるのですが、そういう。中で、さらに第八次定数削減だということになっているのですから、これ大臣、本当に研究課題じゃないんです。断固としてこれを阻止して、それだけじゃなしに不足している数の補充をやらないことには、国研が危機的状況ということはもうずっと指摘されているのですから、危機的状況を突破するどころか、いよいよもう衰亡、滅亡に至る事態なんですから、そこのところをぜひ踏まえて取り組んでいただきたいと思うわけです。  さて、交流促進法の中では期限つき採用ということを定めているわけですが、これは常勤職員ということになっているわけですね。今議論してきたように第八次定数管理との関係でいうと、今新たに削ろうとしているときですから、これは食いとめなければいけないのですが、ところが、期限つき任用で常勤職員として採用するとなると、枠が限られておるからだれかをぽんと外へ出さないと期限つき採用の人を常勤では雇えないんですね。そうなってくると、この交流促進法の受け入れ枠を確保するために新たに研究者の首を切るということになるのじゃないですか。
  201. 長田英機

    長田政府委員 現在の定員を仮に前提したといたしましても、職員が退職したりそういうふうに定員があいていく要素もいろいろございます。それとともに、今回の任期つき任用につきましては、国研の研究効率を非常に上げるという点から国研の方からも希望のあることでございます。そういう意味で、定員の問題につきましても対応できると思いますし、かつまた研究成果を上げることができるというふうに考えております。
  202. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 今、本当に激しく削ってきたんだから、退職者が出ればまさに大学を卒業した若手の研究者をどんどん採用しなければいけないときでしょう。ところが、退職者が出ればこれ幸いとばかり定数削減の数字の方ばかり追っかけて採用してこなかったのがこれまでの現状でしょう。今度退職者が出たら若手を採用するんじゃなくて、その枠を大事にとっておいて交流促進法の受け入れ枠として使います、これはとんでもない話じゃないですか。ふやさなければいけないときにそんな発想では、この研究交流促進法の言っておられる趣旨そのものが生きてこないと私は思いますよ。やはり大事なことは、研究者、そして研究支援者、技能者とかサポーティングスタッフの人のこういう削減をやめることとか、それから国研の研究費がずっと低い状態、低水準に抑えられてきているというのは、これは昨年の秋の科学技術委員会でもせんだっての予算委員会でも私は議論をさせていただきましたけれども、やはりこれが今諸外国からも指摘されているし、国立大学協会やら財界団体やらあらゆるところから日本の基礎研究費は少なくとも五年間で二倍にふやしなさいということが共通して出てくる、そういう事態を生み出しているわけでしょう。そのことをこのまま放置しておいて、それで期限つき採用だからその枠をとらなければいけないというので退職者が出ても補充しないとか、そんなふうなやり方をするならば、この制度を提案された提案理由説明に照らしてみてもその行き方はあべこべの行き方だと私は思うのですが、どうですか。
  203. 長田英機

    長田政府委員 先生指摘のとおり、研究費を早急にふやさなければいけない、それから定員もふやす必要がある、これは非常にもっともでございまして、こういう点の努力は私どももするわけでございますが、あわせて、研究の効率的実施のために関係者の方が国研に集まっていただいて、それはだれを外にはじき出す、追い出すというようなことを避けつつ集まっていただいて研究の効率を上げていく、これもまた非常に重要なことだと思います。
  204. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 予算、研究費をふやすこと、それから研究者の定数をふやすこと、もっともで大事だとおっしゃりながら、大事なことは手をつけないで、そちらの方は、先ほど大臣研究というお話はあったのだけれども、具体的にこうふやすという、これは私予算委員会質問しても、大蔵の壁もなかなか厚くて五年間で二倍にふやすという具体的な数字は出てこないのですよ。ただ具体的に出てきた話は、この研究交流促進法という名前でもって今出てきている話だけが具体的な一つでしょう。  さらに伺っておきたいのですが、研究者不足を本当に解消するという意味があって、しかも常勤者は雇えない。つまり定数管理をやられてしまっているから。そこで考え出したのが、非常勤の国家公務員として科学技術特別研究制度というものを生み出して、オーバードクターの若手研究者を採用する。三年間という期限つきで国研で受け入れる。しかし、三年たったらもう首にしてしまう。全く殺生なことをやって、若手の研究者にとって三年間で首を切られる、これは身分が非常に不安定なんですよ。だから、その途中で職が見つかったらどこかへ就職していかれるわけですね。国立試験研究機関としては、せっかく来てもらった若手の研究者については、本当は研究の継続性とか安定的発展を考えたときに、あるいはまた若手研究者の受け入れによる国研の、まさにおっしゃった研究の効率化とか活性化とか、そういうことを考えても、本当はその若手の研究者にとどまってもらいたい。しかし三年間という期限つきの非常勤という、身分保障がないものですから、だから科学技術特別研究制度ではそういうことは保障されないというのが今の実態でしょう。  ところが一方、今度の場合は民間企業から来られる人の場合だったら、これは一応企業の方に五年なら五年たって、帰るときはちゃんと間違いなく君は我が社の社員として引き受けますよという契約を会社の方で結んで、それで五年間の期限つき採用でしかも今度は常勤ということで来るわけですね。私はこれは、非常にこういう点では差別的な扱いだと思うのですね。本来身分保障をしなきゃいけない若手研究者には身分保障がなく、ちゃんと会社の方で身分保障されている人については常勤の公務員だという身分保障をさらに厳格にやる。私はこの点では、今なすべきことは期限つき任用ということでの、今回出ている話よりもまず非常勤の国家公務員扱いにされている若手研究者をこそ常勤化する道を開く。つまり定数を拡大する。このことが今一番大事なことなんじゃないですか、どうですか。
  205. 長田英機

    長田政府委員 ポスドク対策として今先生が御指摘になられましたこと、確かに三年でやっておりまして、それは若手研究者でまだ非常に流動性もある段階であるというようなことをも勘案してそういう形の制度にしているのだと思いますが、それと並んで、この任期つき任用制度というものを研究促進のために用意をしておく、それがまた研究促進のためにいいことじゃないか。こちらがあるからこちらは要らないじゃないかというような問題ではないのじゃないかと思います。
  206. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 まず企業でちゃんと身分保障された方の、さらに任期つきの常勤研究員として採用することを考える前に、非常に身分が不安定で身分保障のない若手研究者ですよね、そういう若手の研究者の常勤研究職としての採用こそ今考えるべきときじゃないかということを言っているのですよ。必ずしも私はあれかこれかの議論を今やっているのではなくて、今そのことが本当に国立研究機関として大事になってきているときじゃないか、そのことを指摘しているのです。  それからもう一つは、国研の方が定数削減でどんどん研究者が減ってしまった。若手がいない。そういう点では国研の方も、研究者の補充ということもあって科学技術特別研究制度というのをやっているわけでしょう。だから余りにも私は若手研究者に対して失礼だと思うのですよ、その便宜主義的といいますか、ただ利用するだけという発想は。だからこれはやはり若手研究者をきちっと身分を安定させて、そして採用する。そのためにも、定数削減どころか定数枠をふやすんだということに本格的に取り組むということが私は今何よりも大事なときだと思うのですが、これはひとつ大臣、ちょっと考えてほしいと思うのですよ、どうですか。
  207. 谷川寛三

    谷川国務大臣 私はかねてから、予算のシーリングとか今の定員の問題、それから機構の制限ですね、これはすべて一律にやっていることが問題だと主張している者の一人です。やはり今お話がありましたが、科学技術とか必要なところには特別な配慮をするというふうにすべきではないかと思っておるところでございますが、今後ともそういう意味努力をいたします。
  208. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 それで、けさほど秋葉委員の方からも御指摘がありましたが、今回の研究交流ということで、一九八六年に法律ができてどうなったかということを見てみても、例えば科学技術庁所管の国立試験研究機関における国有試験研究施設の国以外のものへの使用許可実績というのは、航空宇宙技術研究所の風洞施設、これが八九年一件、九〇年五件という六件だけ。実際上は、法律はできたのだけれども、現在これをそう急いで、当初はきょうにでも衆議院採決してくれということでかなり科学技術庁の方御熱心だったけれども、そう急ぐ必要もないわけですよね。  それからまた秋葉委員の方から御指摘ありました、これはちょうど八六年四月十日の衆議院の科学技術委員会における議論ですが、当時の科学技術庁の計画局長は、「民間企業の研究者の方が国の研究所に来て一緒になって働くということにつきましては、特に大きな法律的な制約があるわけではございませんで、例えば客員研究制度とかいろいろな制度がございまして、そういう制度を充実させるということでその逆の場合は手当てができるということでこ問題ないのだ、こういうふうに当時は答弁しておって、期限つき任用ということで今法律化を急がなければいけないという事情は少しも見当たらないのですが、八六年のこのときの答弁からどこがどう変わったのですか。
  209. 長田英機

    長田政府委員 今先生が御指摘の点は、任期つき任用というようなことをしなくても、客員研究制度とか非常勤の制度とかそういうものがあるから何とか対応できるのじゃないか、こういう御質問だと思いますが、私どもの考えでは、やはり任期つき任用として、通常の職員として職務専念義務を持って働くような職員として採用して、みんなで集まって研究をする、どうしてもこういう制度が必要なんだ。客員研究制度や非常勤研究制度も非常に有意義なものでございますけれども、勤務時間が非常に限られているというようなこともありますから、むしろ職員としての制度を新しくつくった方が研究促進上いいだろう、こういう考え方でございまして、各研究所にもいろいろ意見を聞いてみますと、この任期つき任用制度、職員として採用するというようなことをやってほしいという意見があるものでございますから、私どもとしては何とか一日も早く法案を通して、こういうことが実施できるようにさせていただきたいと思う次第でございます。
  210. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 客員研究員の方が職務専念義務を十分果たさなくてなまくらなんですか。これは客員研究員の方に対して失礼だと私は思います。客員研究員だって、研究に当たってのテーマの打ち合わせから、どういう形でやっていくかということも、いつもそこはちゃんとよく検討してやるわけですから、職務専念義務を果たしていないということにはならないと思うのです。法律に縛られる縛られないにかかわらず、客員研究員となられた方たちは、研究者というのは非常にまじめで一生懸命やっていると私は思います。だから、これをこうしないと職務専念義務を果たしてもらえないなんていう発想はおかしいというふうに思います。  問題は、先ほどお話ししましたように、常勤者として雇うためにその定数は必要なんだ、だから今の定数管理の中では新たにだれか首を切られるか、本当は若手の研究者を三年間の身分不安定な形ではなくて常勤として雇うこともできるのに枠をあけておかないとできない、こういうやり方というのはやはり問題があるということを指摘しておきたいと思うわけです。  少し人事院の方にも伺っておきたいのですが、人事院規則の十五条の二で「任命権者は、臨時的任用及び併任の場合を除き、恒常的に置く必要がある官職に充てるべき常勤の職員を任期を定めて任用してはならない。」とある。この原則は、逐条解説等でも載っておりますように、国家公務員の官職が一般的に終身雇用的なものと観念されており、その者の身分をある程度不安定にするような期限を付することは当を得ていないというこの考えが根底にあって、これが原則となって常勤、こういうことになっていると思うのですが、この点はどうですか。
  211. 尾木雄

    尾木説明員 現在の人事院規則におきますところの任期つき任用、任期を定めた任用についての考え方は、基本的には職員の身分保障を図る観点から任期を定めた任用を限定したいということで組み立てられている制度でございます。そういう意味で、基本的には先生御主張の方向にあると思いますけれども、今回の研究公務員についての任期つき任用については、先ほど来御答弁がございましたように、民間企業等から一定の期間を限って国研に来るということでございまして、帰る先も確保されている。そういう状況もとで身分保障上どうなのかということで一応規則等の内容を詰めつつあるということでございまして、身分保障の観点から問題のないような形で、その要件、期間等を定めるということで考えているところでございます。
  212. 吉井英勝

    ○吉井(英)委員 時間が大体参りましたので、残余の問題は次回に回して議論をさらに深めたいと思うのです。  ただ、この改正というのは、単なる民間との交流とか研究の流動化ということで済まない、国家公務員の採用に関する根本問題が一つあると思うのです。それは、恒常的に置く必要がある官職で三年以内に終了する予定の業務を行うことを職務内容とする官職ということで、こういう採用が当然だというふうにされてしまうと、期限の決まった研究プロジェクトにかかわる国立試験研究機関の研究職だけじゃなくて、他の官職についても期限を切った業務内容としてこうした採用がさらに拡大されるとなるとこれはやはり大きな問題を持っているわけです。きょうは、時間がもう参りましたのでここでとどめておきますが、そういう重大な問題を持っているんだ、だからこれは人事院としても相当重い内容を持った問題だとして受けとめて考えてもらわなければいけない、そのことだけ指摘して、残余は次の機会に回して、きょうは質問を終わりたいと思います。
  213. 近岡理一郎

    近岡委員長 次回は、来る四月二日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十五分散会