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1991-12-04 第122回国会 参議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十二月四日(水曜日)    午前十時二分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第五号     ―――――――――――――   平成三年十二月四日    午前十時 本会議     ―――――――――――――  第一 国際連合平和維持活動等に対する協力に   関する法律案国際緊急援助隊派遣に関す   る法律の一部を改正する法律案及び国際平和   協力活動等に関する法律案趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ―――――・―――――
  2. 長田裕二

    議長長田裕二君) これより会議を開きます。  日程第一 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案及び国際平和協力活動等に関する法律案趣旨説明)  三案について、提出者から順次趣旨説明を求めます。加藤国務大臣。    〔国務大臣加藤紘一登壇拍手
  3. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。世界が大きな変革期を迎え、二十一世紀に向け平和と安全の新しい秩序が模索される中、国際秩序の強化やパートナーシップの構築が求められ、また、国際連合の機能と権威を高めることにより平和を維持することが従来になく強く求められております。先般のロンドン・サミットにおいても、新しい国際秩序構築していくに当たっては、国際連合を中核とする多数国間の努力を重視するという姿勢が明らかにされました。これは、冷戦構造克服後の世界に健全な方向性を与えようとするものであり、従来から国連中心主義を提唱してきた我が国立場にも沿うものでございます。  特に、国際連合平和維持活動PKO)は、世界各地紛争平和的解決を助けるため、中立・非強制立場国連権威説得により任務を遂行するものであって、一九四八年以来、世界の多くの国の参加を得て、国際の平和と安全の維持のため多大の貢献をしているものでございます。また、人道的活動に従事する国連機関及びその他の国際機関は、人道的任務を達成するため、世界各地において重要な活動を行っているところでございます。  我が国憲法は、国際協調のもとに恒久の平和を希求していますが、かかる平和主義理念を具現化するためにも、人道的な国際協力を一層進めるとともに、世界平和を守る秩序づくり国際共同作業には我が国としても積極的に参加し、なし得る役割を担っていくことが必要であります。  このような役割を果たすため、我が国としては、これまでも国際連合平和維持活動及び人道的な国際救援活動に対し資金面での重要な協力を行うとともに、選挙監視団への要員の派遣など人的側面での協力実施してまいりましたが、今後、人的な面での協力を一層適切かつ迅速に行うことができるよう国内体制を整備することが必要でございます。今回提案法律案はこのような認識に基づき作成されたものであり、国際連合平和維持活動及び国際連合が行う決議または人道的活動に従事する国際機関からの要請を受けて行われる人道的な国際救援活動に適切かつ迅速に協力することができるように国内体制を整備することによって、我が国国際連合中心とした国際平和のための努力に積極的に寄与することを目的としております。  具体的には、国際平和協力業務実施計画及び国際平和協力業務実施要領策定手続並びに国際平和協力隊設置等について定めることにより国際平和協力業務実施体制を整備するとともに、これらの活動に対する物資面での支援を行うための措置等を講じることとしております。また、国際平和協力業務実施に際しては、平和国家たる我が国憲法を踏まえ、武力による威嚇または武力行使に当たる行為を行ってはならないことを明記しております。  政府といたしましては、以上を内容とする法律案を提出した次第でありますが、衆議院におきまして、自衛隊部隊等が行う国連平和維持隊に係る一定の業務については、実施計画が決定された日から二年を経過する日を超えて引き続き行おうとするときは、当該業務を引き続き行うことにつき国会承認を求めなければならないこと等を内容とする修正が行われております。  以上が国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案趣旨でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  4. 長田裕二

  5. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ただいま議題となりました国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の御説明を申し上げます。国際緊急援助隊派遣に関する法律昭和六十二年九月に施行されて以来、我が国は、海外地域、特に開発途上にある地域におきまして大規模災害が発生した場合には、国際緊急援助隊派遣し、国際緊急援助活動実施してまいりました。この間、大規模災害に対する国際的な支援の機運の高まりもあり、これまで十九回にわたる派遣を通じて、災害規模によってはさらに大規模国際緊急援助隊派遣する必要があること、被災地において自己完結的に活動を行い得る体制を充実すべきこと及び輸送手段の改善を図るべきこと等の課題が明らかとなってきているところであります。  今回の一部改正の法律案は、現行の国際緊急援助隊派遣する法律基本的枠組みのもとで自衛隊国際緊急援助隊への参加を可能ならしめ、もって自衛隊の保有する能力国際緊急援助活動に活用するとともに、自衛隊及び海上保安庁による国際緊急援助隊または国際緊急援助活動に必要な機材等輸送を可能ならしめることによって我が国がその国力にふさわしい国際的責務を果たし得るよう、国際緊急援助体制の一層の充実を図ることを目的とするものであります。  以上がこの法律案趣旨であり、この法案につき御賛同を得られますよう、格別の御配慮をお願いする次第でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  6. 長田裕二

    議長長田裕二君) 野田哲君。    〔野田哲登壇拍手
  7. 野田哲

    野田哲君 ただいま議題となりました国際平和協力活動等に関する法律案について、発議者を代表して提案趣旨及びその内容について説明いたします。  国際情勢は今大きな転換期を迎えています。四十数年にわたって米ソ二つの超大国中心とする厳しい対立構造が続き、この構造世界各国の政治、経済軍事社会に大きな影響を及ぼし、いわゆる東西陣営冷戦構造形成してきました。その冷戦構造が終わり、対話協調軍縮基調とする時代に入り、世界は平和の中で共存していく新しい国際秩序構築されつつあります。  二十世紀の終わりに生きる我々は、この時代に動き始めた平和への新しい潮流をさらに一層推し進めて確かなものにし、二十一世紀に伝えていく崇高かつ重大な使命を担っているのではないでしょうか。そのために果たすべき課題は数多くあります。  第一は、平和の創造軍縮の実現に向けてのたゆみない努力を続けることであります。とりわけ、アジアにおける核の撤去と軍縮に向けての合意形成、平和と安全保障のための枠組み国際秩序形成は、日本が避けて通ることのできない課題であります。そのた均に、我が国自体軍縮のプランを示しながらアジアにおけるイニシアチブをとることであります。  第二は、南北間の格差の是正、解消についての課題であります。  全地球上の三分の二は経済発展途上国だと言われている中で、どのようにして南北間の格差を是正し、人権を保障していくか、飢餓や貧困からの救済、難民や被災民問題の解決、そして自然災害からの救済、これらの諸課題先進国に課せられた国際的責務であります。  そして、第三は、年々広がりゆく砂漠化熱帯雨林の消滅、大気の汚染やオゾン層破壊など地球的規模環境破壊に対して、このかけがえのない地球をどう守っていくかという人類共通課題に対し、世界各国はどう対処し、日本はその中で経済力に応じでどのような役割を果たすかということであります。  このような国際的な重要課題に対し、世界GNPの一五%を占める我が国がどのようにして国際的な責任を果たしていくかは、ひとり我が国の将来だけでなく、世界の平和と安定にとっても極めて重要な問題であります。  このような諸課題に対し、まず自衛隊派遣ありきとする政府案は、世界潮流に逆行するだけでなく、近隣諸国の反発と危倶を招き、絶対に容認できないものであります。  まして、衆議院における強行採決の暴挙は、議会制民主主義破壊するのみならず、平和と民主主義を望む国民に対する重大な挑戦であり、強く抗議するものであります。  よって、私たちは、日本国憲法の崇高な平和の理念に徹し、それにふさわしい国際貢献のあり方について国民合意形成し、今日の時代要請に的確にこたえるべきであるとの考えに立ち、世界が必要としている各分野に対し、非軍事民生文民による最大限の貢献をすべきであるとの主張を続けてきたのであります。その具体的な行動として、一つは、国連中心とした平和のための努力として、国連の改組・改革を含め、国連中心国際紛争未然防止のため、国連管理査察衛星の保持や国連からの早期調査団派遣武器輸出の禁止、アジア太平洋平和保障体制確立、核の全廃に向けた積極附行動など平和の創造のための努力であり、また、国連平和維持活動、いわゆるPKOに対する非軍事分野での協力であります。  そして、これらの活動を効果的に推進するために、我が国として国連平和保障基金としてGNPの〇・一%程度を国連に拠出してはどうかと提案するものであります。  二つ目は、既に提案してまいりましたが、発展途上国等の自立とそれらの国々の民生の安定、自然災害による被災者救援など人道的立場に立った貢献であり、政府開発援助ODA)のための新たな制度の確立としてODA基本法を制定し、国際災害緊急援助についても、常設の専門機関を創設するための国際緊急援助に関する法律を制定することであります。  そして、三つ目は、地球環境保全に向けて我が国としてなすべき施策として、来年の地球サミットに向けた諸行動を起こすことであります。  このように、人類共生立場に立って、世界平和の創造人道的立場に立った諸課題についての対応、そして、地球環境保全のために、我が国憲法の志向する平和主義国際協調主義のもとで、全力で人的、物的そして技術的、資金協力をもって世界貢献することが我が国のあるべき婆であり、今、自衛隊組織ごと海外派遣しようとすることは、憲法精神理念から見て論外であることを改めて強調しておきたいのであります。  ここに提案する国際平和協力活動等に関する法律案も、非軍事民生文民基調として積極的に協力していこうとするものであります。  その内容を要約いたしますと、第一は、我が国が行う国際平和協力活動基本原則国際平和協力活動の範囲について、非軍事民生文民立場を明確にし、自衛隊海外派遣や、武力行使武器の携帯やその行使は明確に否定しているものであります。  第二には、自衛隊とは別個の組織として、国際連合平和維持活動及び人道的救援活動を行うための組織として国際平和協力機構を創設し、国連及び国際機関からの要請にこたえていこうとするものであります。  その第三は、国際連合平和維持活動及び人道的な国際救援活動を行うために国際平和協力隊派遣しようとするものであります。  その第四は、平和協力活動に当たっては、当然のことながら、関係国の同意、関係国への内政不干渉紛争の処理に対しては厳正中立立場を堅持することであります。  その第五は、国連等から要請があった場合、外務大臣は、平和協力活動実施が適当と認める場合は、平和協力活動実施計画を策定し、閣議の決定を経て国会承認を求め、国際協力機構に対して国際平和協力隊派遣を命ずることができることとなっております。  その第六は、外務大臣は、関係行政機関地方公共団体国家公安委員会に対し、国際平和協力活動に必要な技術能力等を有する職員に、実施計画に基づいてその活動に従事させるよう要請することができるようになっております。その第七は、政府は、国際連合平和維持活動または人道的救援活動協力するため適当と認めるときは、物資等協力を行うことができることとなっております。  その第八は、政府は、国際平和協力活動が終了したときまたは物資等協力を行ったときは、その内容国会に報告することとなっております。  その第九は、国際平和協力機構の設立については、別途、法律で定めることといたしております。  以上が我が党が提出した法律案提出理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)     ―――――――――――――
  8. 長田裕二

    議長長田裕二君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。板垣正君。    〔板垣正登壇拍手
  9. 板垣正

    板垣正君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案等につきまして質問を行いたいと思います。  まず第一に、現在の激動する国際情勢に対する総理の御見解を伺います。  宮澤総理は、十一月八日の所信表明演説において、「国際社会は今、激動のさなかにあります。何百年に一度という大きな変化が起こりつつあると思われます。」と述べ、「事態は流動的ではありますが、私はこれを新しい世界平和の秩序構築する時代の始まりと認識したいと思います。」と表明されました。私は、この総理国際情勢に対する御認識は、極めて示唆に富んだ重要な内容を含んでいると感銘深く拝聴した次第であります。  一昨年十一月のベルリンの壁崩壊以来の世界の激変は、まさに枚挙にいとまなく、驚きの連続であります。ついに東西冷戦は終えんを告げ、社会主義陣営経済運営の完全な行き詰まりにより自由主義陣営の圧勝に終わり、イデオロギー対決は過去の夢と化しました。七十余年、世界に君臨し、鉄の規律を誇ったソ連共産党独裁体制は崩壊し、解体に追いやられるに至りました。ソ連国内情勢は混沌をきわめ、まことに今昔の感にたえません。  二十世紀最後の十年を迎えて、今、人類は、目覚ましい情報化時代技術革新を背景に、宿命的な対立と相克の歴史を乗り越え、自由、民主化市場経済共通目標とし、対話協調基調として、新しい世界秩序を模索する方向へその第一歩を踏み出したと見るべきでありましょうか。もしそうであれば、我々はまさに何百年に一回というような、まことに画期的な時代に生きていると言わざるを得ません。  我々は、かつて明治維新をなし遂げました。徳川幕府三百年の鎖国の夢破られ、列強の圧力の中でほとんど植民地または半植民地化したアジアの中でただ一国、近代国家へたくましい発足を遂げたのであります。明治の先覚者志士たちの献身はもとよりですが、ほとんど海外のことを知らず、まさに何百年に一回の維新をやり遂げた当時の人々り意識改革は定めし容易でなく苦難に満ちたものであったと思われますが、改めて敬服にたえません。  さらに、昭和二十年八月の我が国の降伏は、昭和天皇の御聖断によって決せられましたが、これは日本国開闘以来二千年に一回の大事態であり、しかも、敗戦占領という未曾有の悲運に際会したのであります。私自身、若輩ながら旧軍人一員としてこの変革に身を置き、苦悩の体験を余儀なくされたことを忘れ得ません。敗戦占領による後遺症はなお残っていますが、概して日本国民はよく新しい事態に対処し、世界の奇跡と言われる復興を遂げ、今や経済大国と言われる繁栄を遂ぼるに至りました。特殊の状況下とはいえ、二千年に一回の危機を乗り越えたと評価し得ましょう。  今、平成日本及び日本人が、あたかも戦後五十年、またかつて体験したことのない、しかも世界的な大変革時代に際会しているとすれば、思い切って戦後の殻を打ち破って、この激動する国際社会で生き残るために確固としたよりどころを確立しなければならないのではないか。それは明治維新や終戦の体験に匹敵する、否、それ以上のスケールの大きな大事態と言わなければなりません。  我々は、今こそ広い視野に立ってこの歴史的大転換期に対処すべきときと思いますが、新しい国際秩序構築に際し、我が国理念について宮澤総理の御見解を伺いたいと存じます。  第二に、歴史教訓について総理の御見解を承りたいと存じます。  大東亜戦争勃発五十周年を迎え、各方面で論議が盛んでありますが、私は、この際、戦争に対する評価については別の機会に譲り、端的に過去の歴史教訓について伺いたいと思います。現在、我々自身にとって大事な問題であり、また本法案にも関連するところが少なくないと考えるゆえであります。  まず、私自身見解を申し上げます。  第一に、平和に徹すること。第二に、国際社会で孤立しないこと。以上を過去の歴史教訓として肝に銘じております。極めて当然のことであり、我が国立場はもとより、国民の多くが共感されるところと存じます。  しかしながら、平和に関してあえて申し上げますと、戦後、平和問題や平和運動が特定の立場個人グループのにしきの御旗となり、かえって国論の分裂、抗争、対立を招来してきたことは否めない事態であります。加えて、憲法を絶対視し、憲法論議タブー化を招き、さらに、意見を異にする個人ないしグループに対し直ちに平和の敵視し、また反動、軍事大国を目指す者、軍国主義者等のレッテルを張り、みずからのみを絶対是とする偏狭、独善に陥るがごときは、まことに不幸な戦後の風潮と言わざるを得ません。こうした偏向した言論、報道が海外に流され、近隣諸国の誤解や不必要な警戒心不信感を招いていることも懸念されるのであります。  あの戦争で愛する肉親や夫を失った戦没者遺族は、平和を願うことにおいて最も切実であります。再び遺族をつくってはならないという心情は、まさに平和に徹しています。しかし、声を大にして反戦平和を唱えることはいたしません。国のため散華した戦没英霊は、最後まで家族を思い、平和を祈りつつ戦没され、平和の礎となられ、靖国神社に鎮まっています。この悲しみも喜びもともにし今日に生きる日本人は、世界において最も平和に徹した国民であることを信じたいと思います。日本国民の相互が信頼し得ずして、どうして真の国際社会平和交流があり得ましょうか。  冷戦時代の硬直した発想や受け身の自虐的な姿勢を転換し、積極的な平和の創造に向かって行動することが今我が国に求められているところと確信いたしますが、総理の御見解を伺います。  国際社会で孤立化しないことは、広く国際社会との交流なしには存立し得ない我が国にとって、まさに死活的意義を持つと思います。しかし、顧みると、我が国は、日本の顔が見えないとか、日本には真の友人がいないとか評されていることは周知のところです。さきの湾岸戦争に際して我が国対応は、莫大な資金協力にかかわらず、諸外国から、小切手外交ぺーパーだけの同盟とか、日本は肝心のときにうたた寝しているとか、厳しい批判を浴びました。幸い、海上自衛隊掃海艇任務を帯びて遠くペルシャ湾に派遣され、極めて困難かつ危険な作業を見事に無事故でやり遂げたことは、まさに自衛隊に対する国民の信頼を高め、また我が国の名誉を救ったものとして高く評価し、感謝するところであります。  また、湾岸戦争を契機として、国民の間にも我が国国際貢献について、人的側面においても積極的に役割を果たすべきであるとする世論が高まっていることは御承知のとおりであります。  私は、本年六月、国会派遣視察団一員としてスウェーデンほか三カ国を訪れる機会を与えられました。その際、スウェーデンにおいて同国PKO活動についてその一端を見聞し、大変感動いたしました。  スウェーデンは、かねてから国連の優等生として高く評価されていることは御承知のとおりであります。同国は、国土は我が国よりやや大きいが、人口は約八百六十万人にすぎません。しかし、有事には即時に八十五万人の動員が可能と言われる独自の防衛体制を持つ国としても知られています。同時に、スウェーデンは、国連発足以来PKO活動への積極的な参加国として著名であります。既に延べ五万人を超える隊員各地派遣しており、毎年、五、六百人の隊員募集に際し常に五、六千人を超える応募者があり、兵役を終えた優秀な若者が選抜されるということであります。  北欧四カ国による各種PKO訓練センター活動についても知られているところであります。スウェーデン国民は、PKO活動に積極的に参加貢献することが、世界の平和のため、また自国の安全保障のために役立つことであると確信し、それへの参加を当然で、しかも名誉あることと一般的に受けとめられているということであります。  もとより、我が国の場合とスウェーデン立場を同列に論ずることはできません。しかし、私は、限られた見聞ながら、スウェーデンに対し、従来の高福祉国家というイメージから、こうした国こそ真の平和国家と呼ぶにふさわしいのではないかと感動を新たにし、同国民に敬意を表した次第であります。  国際社会で孤立化しないために、我が国歴史教訓に十分こたえてきたと言えるでしょうか。総理の御見解を例えれば幸いであります。  第三に、国連平和維持活動憲法関係についてただした辛いと思います。  この法案によって協力することとしている国連平和維持活動、いわゆるPKOは、既に八十カ国、五十万人が参加し、一九八八年にはノーベル平和賞を受賞していることからもわかるように、その活動国際的に高い評価を得ているところであります。それは、あくまで中立・非強制立場国連権威説得によって紛争再発を防止し、平和の状態を維持するというその基本的な性格にあると思います。紛争が終了し停戦合意が成立した後に、紛争当事者要請を受けて初めて活動を開始する国連平和維持活動は、あくまでも紛争当事者平和回復努力を、国際社会国連の旗のもとに集い、協力して支援するという性格を持っているのであります。私は、このような性格国連平和維持活動協力し、国際の平和の維持貢献することは、国際社会の責任ある一員として当然のことであると信じます。  この法案は、自公民三党の協議を土台として、我が国国連平和維持活動参加の道を開くものであって、まさに国連中心主義我が国是並びに憲法平和理念に合致するものであります。自衛隊派遣をめぐって一部に懸念があるようですが、PKO活動について故ハマーショルド国連事務総長の述べた、これは軍人仕事ではない、しかし軍人でなければできない仕事だという言葉は既に有名であります。我が国PKO活動に際し自衛隊派遣が考えられている根拠も、まさに故ハマーショルド事務総長言葉がその本質をづいていると考えるものであります。  PKO活動は、国連憲章精神を踏まえながら、国連加盟国の英知を結集し、幾多の試行錯誤を経て輝かしい実績を重ね、現に貴重な役割を果たしているのであります。その結果、PKO停戦監視団にせよ、平和維持軍と言われるPKFにせよ、組織的な訓練と専門的な知識を有する隊員によってのみその任務の達成が期待できることが事実によって裏づけられているのであります。我が国の場合、自衛隊とその隊員がその任務に最もふさわしいことは明白であります。  もし、PKOPKFへの派遣が本決まりになれば、当然隊員に対しそのための研修、訓練が必要となることは、法案にも明記されているところであります。しかし、日ごろの自衛隊員としての訓練の素地があってこそ厳しい任務にも対応できることは明白であります。しかも、その任務はあくまで平和目的であり、派遣に関しては、国連決議関係国要請に基づくこと等、法案に定められた諸条件、諸手続等は慎重の上にも慎重な配慮がなぎれていることは御承知のとおりであります。PKO活動への自衛隊参加を殊さらに海外派兵や海外出動と短絡させた反対論は、PKO活動の本質を全く無視した曲解または反対のための反対論と言わざるを得ません。  いわゆるアリの一穴論を含め、私は、こうした論議日本性悪論か日本不信論と言うべきか、ほうりておくと日本軍事大国化したり平和に逆行したり、とにかく日本は悪いことをする国という、余りにも自虐的な、余りに自信のたい主張であり、国民の心情から遠く、かえって国民に不安や誤解をもたらすものと憂慮にたえません。  私は、自衛隊の皆さんが、必ずしも恵まれない厳しい環境のもとで多年黙々として任務に励み、訓練に汗を流し、また災害救援活動等に挺身してこられたことに対し、心から敬意を表するものであります。海上自衛隊掃海艇の皆さんが立派に任務を果たし、日本の若者の心意気を示してくださいましたが、将来、PKO活動に、また国際緊急援助隊参加していただく自衛隊の皆さんも必ずやそれに負けない立派な成果を上げ、世界平和国家日本に対する評価と信頼を高めていただけるものと確信いたしております。  次に、武器使用の問題でありますが、これまたPKO育ての親と言われる前国連事務次長のアークハート氏の著書や講演に接した者として、PKO武器を使用しない、武器を使用したら紛争の当事者になってPKOでなくなるからという有名な言葉を想起いたします。武器は使わないのがPKO権威の源泉であり、ノーベル平和賞に輝くゆえんであります。もとより、あらゆる問題に万一ということが存在することはPKOに限りません。身を守るため万一に備えることが必要以上に大きく論議され、中心問題のごとくみなされるのはいささか非現実的であり、木を見て森を見ないものと言わざるを得ません。
  10. 長田裕二

    議長長田裕二君) 板垣君、時間が参りました。
  11. 板垣正

    板垣正君(続) しかし、武器使用について、憲法との関連でこの法案が慎重な配慮を行っており、運用上においても憲法上何ら問題は生じないよう配慮されていると信じます。
  12. 長田裕二

    議長長田裕二君) 板垣君、時間が超過いたしております。簡単に願います。
  13. 板垣正

    板垣正君(続) 武器使用、撤収の条件については、むしろ国連モデルより制限を加える等、私どもの立場ではそこまで配慮しなくてもと思われる点があることも事実であります。
  14. 長田裕二

    議長長田裕二君) 簡単に願います。
  15. 板垣正

    板垣正君(続) 参議院が、良識の府にふさわしく整々たる審議のもとにぜひ早期に成立されることを期待し、最後総理の決意を伺い、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  16. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま板垣議員がるるお述べになられましたように、また私がせんだっての所信表明にも申し上げましたとおり、世界はまことに大きな激動のさなかにあると考えております。  二年余り前のベルリンの壁に象徴されるような事態がまず東欧国家に及び、そして東西のドイツが統一され、今また我々は目の前で、共産主義に基づきましたソ連邦が崩壊しつつあるのを見ているわけでございます。そして、それらの大きな流れがいわば世界における平和勢力になり、また我々が信奉しております市場経済を目指すというような動きにありますことはまことに喜ばしいことでございますが、この時代をただいわゆる冷戦後の時代ととらえるだけでは、私はそこから将来の展望が生まれてこないのではないかと考えまして、あえて、冷戦後の時代からさらに進んで、これは新しい世界の平和秩序構築が始まった時代、このように認識をすべきであるということを所信表明で申し上げたところでございます。  これは、実は余りにも楽観的過ぎるかもしれないという御批判があろうと思います。絶えず私どもは現実を見てまいらなければなりませんけれども、しかし確かに新しい平和秩序構築が今始まりつつある、我々はそれに積極的に参画をしなければならないと私は考えております。  このような国際社会において、我が国は今これだけの経済力を持つに至りましたので、国際秩序の根本にかかわるほとんどすべての問題に我々は大きな影響を与える存在になりました。好むと好まざるとにかかわらず、そのような存在になりました。私どもはこのことを十分に認識しつつ、単にみずからの平和と繁栄の確保を図るばかりでなく、板垣議員が仰せられましたように、受け身でなく積極的にこの新しい世界平和の秩序構築貢献していかなければならないと思います。  そのような事態の中で、昨年、図らずも湾岸戦争が勃発いたしました。その湾岸戦争で我々の見たものは、米ソの間にいわば冷戦後の協調があり、そして国連というものが戦後初めて国連らしい働きをしたという事実であったわけであります。国連安保理事会の十幾つの決議を重ねて、そしてあの湾岸戦争の処理の前面に国連が立ちましたことはお互いがよく見ておったところであります。それでありますがゆえに、我が国の中で、そのような国連努力に対して我々は何もしなくていいのかという国民的な議論が起こったわけであります。そして、我々は新しい税金を起こしてまで、まず財政的貢献をすることを決めたわけでございます。その上で、しかし国民の間になお、我々は人的貢献はしなくてもいいのか、まさに板垣議員が言われましたように、金だけ出せばいいと世界に言われてそれで済むのかという国民的な議論が起こりましたこともお互いがよく覚えております。  そういう国民的な議論の中で、いわゆる人的貢献について幅広い国民的な議論があって、一方において、我々がしてはならないこと、憲法九条の規定によって我々は海外において武力行使をすることはできないというようなことについても国民的な合意があった。しかし、その他方で、それができないと国際的に言うならば、それならば我々は何ができるのかということを言わなければならない。それが国民的な議論の結果、この法案によって国連平和維持活動に我々は協力しよう、こういう国民的な合意が生まれた、私はそう考えております。  しかも、このことは、板垣議員が御指摘になられましたように、自衛隊掃海艇派遣して世界の平和に貢献してくれた、そのことを国民はよく見ておられました。なるほど我々がしなければならないことがあるということは、この事実によって深く国民に印象づけられたというふうに私は考えておるわけであります。  ただいま御審議いただいております法案でございますが、これからの世界平和の構築に当たって国連が果たす役割はますます重くなるでございましょう。また、そうならなければならない。現実にカンボジアにおいて今国連の平和維持が議論になっておりますけれども、この一事を見ましてもそうでございます。私どもは憲法で、我々は平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼すると申しましたゆえんは、まさにあのときに我々が理想として考えておったそういう国連の力というものが今世界の平和の中心になろうとしている。それに貢献するということは、我々の憲法のもとの考え方じゃありませんか。  このたび御提案をいたしております国連平和維持活動は、紛争の当事者による同意が前提でございます。紛争の当事者が同意をしなければならない。そうして、国連というものの本質上、これは力によるものでない、中立・非強制立場で、国連権威説得力によって停戦確保の任務を遂行。する。そういう国連の平和及び安全の維持のための努力でございます。  我々はそれに協力をしようとしているのでございますが、非常に不安定な状態で、撃ち方やめという状態がともかくも出現した、そこへ平和維持活動を行いますときに、そこで武力を使ったのでは、撃ち方やめのもともとがそれで壊れてしまうわけでございますから、もともとこの平和維持活動というのは武力を使わないことが原則でございます。そうでなければ、撃ち方やめを確保することができないわけでございます。  それでございますから、板垣議員が言われましたように、これまで長い年月の間、世界の多数の国家が参加をいたしました。また、一九八八年にはノーベル平和賞を受賞いたした。それはそういう本質を持った活動であるからでございます。  このような、武力行使目的を持たない自衛隊の部隊を、国連要請により、また関係各国の合意と同意を得て他国へ派遣するということは、もとより憲法上禁じられているものでないというふうに政府は考えておりますし、また法案におきましても、国際の平和と安全の維持のための活動に適切かつ迅速に協力するために、自衛隊が長年にわたって蓄積しました技能、経験、組織的な機能を活用することが最も国連協力する有効なゆえんであるというふうに考えたわけであります。  それから、武器使用に関しましてお尋ねがございましたが、御指摘のとおり、PKO活動中立・非強制立場でございます。国連権威説得によって停戦確保等の任務を行おうとするものでございまして、強制的手段を用いることを目的としているものではございません。また、御指摘のように、武器使用につきまして、要員が自分自身の生命が現実に脅かされる場合に、いわば俗語で申せば正当防衛といったようなときに、これはやむを得ないでございましょう。  しかしながら、国連の標準行動基準によりますと、平和維持活動そのものが脅かされたときにも武器を使ってよろしいとなっておりますけれども、私どもは、それはやはり不測の事態に及ぶおそれがあると考えました。したがいまして、この法案からはその部分を削除いたしております。いわば国連の平和標準規則よりはこの方が厳しくその辺を規制しておりますことも御承知のとおりでございますし、場合によりまして、平和維持活動参加しました前提が崩れました場合には、その業務の中断をする、あるいは派遣の終了等の規定を設けておりますことも御承知のとおりでございます。総じて、この法案に基づきまして自衛隊がこの活動参加することに憲法上の問題があろうとは全く考えておりません。  この法案は、先ほど申しましたようないわば歴史の展望のもとに御審議を願っておるのでございますし、今後、国連がますます世界平和の中心になり、我々としてはできるだけの協力をいたさなければならない。昨年からいろいろ国会において御審議をいただいておるとしろでございますので、何とぞ、速やかに御審議の上、御賛成あらんことをお願い申し上げます。(拍手)      ―――――・―――――
  17. 長田裕二

    議長長田裕二君) 御紹介いたします。  本院の招待により来日されましたアディーロフ・ウラジーミル君を団長とするソ連邦最高会議議員団の御一行がただいまあちらの傍聴席にお見えになっております。  ここに、諸君とともに心からなる歓迎の意を表します。    〔総員起立、拍手〕      ―――――・―――――
  18. 長田裕二

    議長長田裕二君) 谷畑孝君。    〔谷畑孝君登壇拍手
  19. 谷畑孝

    ○谷畑孝君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま政府から提案されました国連平和維持活動等に対する協力に関する法律案並びに国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。  この二法案は、戦後日本の原点、すなわち、二度と戦争への道を歩まないと誓った戦後政治の根本原理にかかわる最重要法案であります。さらに言えば、東西冷戦終結後の世界の平和秩序をどのように確立するのか、人類が、今、手にしている歴史的可能性、この歴史の前進に日本貢献するのか、あるいは後退をもたらすのか、その重大な岐路に立った法案であります。  宮澤総理、あなたは前代未聞の衆議院での強行採決を、国会のことで政府にはかかわりがないと発言されました。極めて無責任な態度であります。自民党の最高責任者は、総理、あなたではありませんか。この法案の参議院での審議は今始まったばかりであります。十分な審議を尽くすこと、そのために総裁にふさわしい指揮をとること、それをここで明言していただきたいと思います。  総理、今あなたはこの二法案を参議院に付託されました。それでは、あなたは、一九五四年六月二日この参議院でなされた「自衛隊海外出動を為さざることに関する決議」、この決議を無視するのでしょうか。この決議提案者は、自衛隊はいかなる場合にも海外に出動しない、一度この限界を越えれば際限がない、それは太平洋戦争の経験で明白であるとはっきりと述べています。武力行使の有無にかかわらず、いかなる場合にも自衛隊海外に出さないということが明確に述べられているではありませんか。しかも、あなたは当時この採決に賛成をなされたではありませんか。  総理、あなたは国権の最高機関である国会決議を遵守すべき義務があります。私は、この決議立場から、直ちに今提案された法案を撤回するよう要求します。  次に、私は日本国際貢献に当たって踏まえるべき根本原理についてお伺いします。  日本の過去における侵略の歴史を顧みるならば、日本の外交政策はすべて、国民合意アジア国民の称賛と歓迎のもとになされるべきであります。総理、そして外務大臣、この法案に対するアジア諸国の抗議と懸念をあなたはどのように考えておられますか。  衆議院での委員会強行採決が報ぜられたその日、フィリピンでは即座に抗議のデモが行われ、日本大使館前にピケが張られました。韓国と中国は、自衛隊海外に出ることについて、敏感な問題、慎重であらねばならないと再三にわたり反対の意思を表明したではありませんか。この十一月三十日、シンガポールのゴー・チョクトン首相は、日本のカンボジアでのPKO活動に言及し、日本の軍備拡大を警告しました。アジア・太平洋諸国の第二次大戦の記憶を呼び覚ましているのであります。この法案への懸念と疑惑、日本自衛隊に対する大きな不信、それは一体どこに原因があると総理は理解しているのですか。お考えをお聞かせください。  この法案審議の間に、我々はパールハーバー五十周年の日を迎えます。戦後四十六年が過ぎた今日、総理、あなたは太平洋戦争について、そしてそれに先立つ我が国アジア諸国への行為が侵略行為であったと認めますか。さらには、その侵略行為の犠牲となった人々への補償、償いとしての補償をどのように果たすのでしょうか。明確なお答えをいただきたいと思います。  侵略であったことを認め、戦後補償が具体的に開始されない限り、アジア諸国の懸念は消え去ることはないのであります。それが消えない限り、日本国際貢献の効果は半減するのではありませんか。  総理、あなたの戦中、戦後にわたる歴史認識を改めて問わなくてはなりません。自民党総裁選挙を前にして出版された「戦後政治の証言」という著書の中で、あなたは警察予備隊の創設にかかわって次のように述べております。「それまで国内の治安は米軍と、丸腰にちかい日本の警察があたってきたのだが、第三国人の横暴などには手が出せず、そのつど米軍をわずらわせていた。このため、あるていどの装備を持った治安力がほしいと考えていた日本人は少なくなかった」。総理、この「第三国人」とはだれのことを指すのですか。(発言する者あり)そして、この表現が差別的呼称として使われてきた歴史を御存じないのですか。今のやじは問題ありますよ。  在日韓国・朝鮮人の横暴を抑えるために警察予備隊が必要であったという認識は、余りにも悪意に満ちた偏見ではありませんか。こうした認識は、戦前、戦中、戦後を通じて韓国、朝鮮の人々を迫害し、人権抑圧した思想と全く同一のものではありませんか。こうした認識がいまだにまかり通ること自体、我々日本人がいかに過去の戦争と侵略の責任に無自覚であるかを物語っているのであります。総理、あなたの見解を伺います。  総理、今こそ国権の最高機関である国会で、戦争責任問題、戦後補償問題解決に向けた決議を行うことが必要であります。与野党一致して国会決議が実現できるよう、自民党総裁として指導力を発揮されるべきではありませんか。あなたの決意をお聞かせください。  戦争責任、戦後補償責任をあいまいにしたまま武装した自衛隊海外に出すという本法案が、アジアの諸国民に重大な懸念と脅威を与え、強い抗議を生み出すことは当然であります。  さらに、この法案PKO協力法案などではなく、国連PKO活動に名をかりた自衛隊海外派兵法案であることはますます明らかになっています。この法案によれば、日本PKO活動国連活動とは言えません。国連の指揮によらず、日本の主権の行使として行われ、中断、撤退も政府が独自に判断をし、武器使用も政府の定める実施要領によるとしています。このように、PKO活動の多くの部分に日本の主権が留保されたこの法案は、国権の発動としての武力行使につながるのであります。これはまさに明確な憲法第九条違反であります。この法案は、審議をすればするほど次々に矛盾が明らかになっていく、まさにガラス細工の法案です。  PKF国連事務総長による統一的指揮を原則にしています。この統一的指揮が行われるか否かは、PKFの成否にかかわる最も重要な原則であります。しかも、この統一的指揮には任務遂行上の武力行使が含まれます。国連の各種のガイドラインあるいはマニュアルの中でもこのことは明らかではありませんか。  政府は、さきの国会では、国連が主宰するのだから国連の指揮の中に入るのかとの質問に、お説のとおりと答えていたにもかかわらず、今何、国連の指揮は武力行使を含むと指摘されれば、指揮ではなく指図だと答弁を変更しました。さらに、総理、あなたは主権国家が国連事務総長の指揮に従う義務はないとまで答弁したではありませんか。国連の指揮下に入らないPKOが一体どこにあるのですか。この答弁はPKOの根本を揺るがすものであります。総理見解を改めてお伺いいたします。  業務の中断はさらに矛盾を深めます。他の国の部隊が応戦をしている場合、日本の部隊だけがその持ち場を離れ、中断することが可能でしょうか。しかも、日本の部隊だけが中断したとしても、PKF部隊全体が武力行使をしているのであれば、その構成部隊である日本も一体のものとして武力行使をしたとみなされるのではないですか。総理見解をお聞きいたします。  武器の使用について、一現場指揮官は、一切、撃てという命令はできないとされています。しかし、そんな軍隊が一体どこにありますか。武器の使用という最も組織行動を要求される場合において、現場指揮官の指揮がないなどということは現実を離れた空論にすぎません。防衛庁長官、これでは自衛隊員の生命の安全も保障されないのではありませんか。御答弁をお願いいたします。  こうした矛盾点を無理やり踏み越えるならば、それは明らかに国権の発動たる武力行使となるのではありませんか。平和憲法枠組みの中で国際貢献を考えるならば、社会党が提案した法案にあるとおり、非軍事文民民生を原則とするPKO協力に落ちつくのであります。国連PKOの諸原則とこの法案との間には余りに大きなギャップがあります。標準運用手続いわゆるSOP、訓練マニュアル等の資料は法案審議に不可欠であります。総理、あなたが国連説得し、これらの資料を国会に提出していただきたい。そのことの確認をこの場でしていただきたいと思います。  あなたは、この法案国連PKO原則との矛盾のすべてを、国連の了解を得ているとの一点で逃れようとしています。それならば、一体いつ、どこで、国連のだれと、どういう内容で了解を得たのか、それを文書で明らかにしていただかなければなりません。我々は立法府の一員として、国会の調査権に基づき、国連に照会し、確認しなければなりません。憲法の原則にかかわる重大な矛盾である以上、立法府として必要不可欠な手続であると考えます。総理、そのことを確認できますか。御返答をお願いいたします。  総理、あなたは冷戦の終結を、単なる軍事力の均衡による平和から、より永続的で安定した各国間の合意に基づく平和を模索する好機と評価されています。私はこの総理の考え方には賛成いたします。冷戦後の世界軍縮協調時代であることは間違いありません。しかし、そうであるなら、総理、あなたはなぜPKOへの自衛隊派遣にこだわるのですか。その真意は何なのですか。お伺いします。  冷戦の終結は、一方で地域紛争や政治的混乱を生み出すこともあるでしょう。しかし、その解決は、あなたが言うように、軍事力によるのではなく合意に基づく平和でなくてはならないのです。再びあの湾岸戦争のような解決手段がとられてはならないのです。湾岸戦争は二十万人を超える死者を出しました。また、その一日半の軍事費でPKOの一年分の経費が賄えるのであります。油田の炎上は地球環境を大きく傷つけました。これらの犠牲と損害が考慮されるならば、決して武力による解決を求めてはならないのであります。国連安全保障理事国となった日本総理として、あなたのお考えをお聞かせください。  東西冷戦後の新しい国際秩序をいかにつくり上げるか、その中で国連PKOをいかに活用していくか、国連PKO活動のあり方が今まさに問われています。  現在、イラン、クウエート間に停戦監視団が展開されています。このPKOは、イラクの同意が取り消されても、国連が必要と認める限り駐留されます。従来のPKOとは違う性格があるのです。しかも、この停戦監視団派遣したアメリカは、その紛争の一方の当事者であるクウエートと防衛協定を締結しました。この協定は、米軍装備のクウエートヘの配備、緊急時の米軍出動を取り決めています。この協定の締結によって、国連PKOが展開しているところへ米軍が割って入ることが可能になっているのです。これは、国連PKO活動が明らかな戦争行為に巻き込まれることを意味するものであります。総理、あなたのお考えをお聞かせください。  人道的国際救援活動についても、との法案自衛隊の部隊派遣を可能としています。そして、その装備には何の制約もつけていません。国連の認める装備という制約がないのであります。したがって、紛争に巻き込まれる可能性のある地域には絶対に派遣しない、武器を持っていく必要もないことを、総理、ここで明言していただきたいと思います。  同時に、国際緊急援助隊派遣法の改正案についても、今、これに自衛隊派遣することについて国民合意があるとは考えられません。アジア諸国の認識にも厳しいものがあることは再三指摘したとおりであります。アジア各国のPKO法案についての懸念や抗議は、日本が防衛力を増強し続けながら、同時に海外派兵のこの法案を提出したことに原因があるのではありませんか。  現在の防衛計画の大綱は、七〇年代の国際情勢を背景に策定されたものであります。しかし、米ソが互いをパートナーと呼ぶ今日の国際情勢のもとでは、大綱そのものの抜本的見直しが必要ではありませんか。新中期防も、実施から三年後の見直しを待たずに、直ちに見直されるべきだと考えます。来年度からの防衛予算の削減を行う用意があるのかどうか、総理及び防衛庁長官に答弁をお願いします。  以上、明快な御答弁をお願いします。  次に、社会提案国際平和協力活動等に関する法律案について、提案者に質問をいたします。  第一に、提案の主な理由は何でしょうか。第二に、政府法案との重要な相違点は何でしょうか。  第三に、憲法の原則に照らし妥当な内容であるかどうか、その点をお教えいただきたいと思います。  第四に、政府は、PKOは平和維持と停戦監視しかないかのように宣伝し、非軍事内容とするPKOの余地はないかのように言っています。これについてどう反論をいたしますか。  第五に、国会承認についてどのように考え、この法案はどのように規定していますか。
  20. 長田裕二

    議長長田裕二君) 谷畑君、時間が参りました。
  21. 谷畑孝

    ○谷畑孝君(続) 第六に、国際平和協力機構を設置する目的及びその背景にある考え方についてお聞きいたします。  第七に、軍縮国際協力関係をどのように考えていますか。
  22. 長田裕二

    議長長田裕二君) 谷畑君、時間が超過しております。簡単に願います。
  23. 谷畑孝

    ○谷畑孝君(続) 第八に、アジア各国の政府法案への批判をどのように受けとめていますか。戦争体験を踏まえて御答弁をお願いいたします。  以上八点につき明快かつ子細な御答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  24. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) お答えを申し上げます。  いわゆる海外派兵でございますが、一般的に言えば、武力行使目的を持って武装した部隊を他国の領土、領空、領海に派遣することというふうに考えておりますので、このような海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものでございますから、憲法上許されないものと考えております。  PKO法案につきましては、国連決議に基づく国連平和維持活動及び特定の国際機関からの要請等を受けて行われる人道的な国際救援活動に対する協力任務といたしますので、その業務実施は、憲法第九条の禁ずる「武力による威嚇又は武力行使」に当たるものであってはならないことを前提としております。また、国際緊急援助隊法についても、海外の大規模災害等に援助活動を行うわけでありますから、人道的な目的のために派遣を行うものでございます。これが海外派兵ということには当たらないのは当然であろうと存じます。  なお、昭和二十九年の本院における本会議の御決議につきましては、その有権的解釈はもとより参議院において行われるものでございますが、自衛隊が、今申しましたような国際平和協力業務国際緊急援助活動を行うために海外に出ますことについてまで想定をしておられるのではないと私は存じております。しかし、これはあくまで有権的には本院の御解釈によるところでございます。  この法案につきましてのアジア諸国の懸念とその理由でございますが、いろいろな機会アジア諸国には我々の意の存するところを説明いたしてまいりました。概して申しますと、それはわかった、しかし昔のこともありますからよく気をつけてやってくださいよというような、正直、そのような反応であると思っております。  今、ゴー・チョクトン・シンガポール首相の最近の講演にお触れになりましたけれども、この講演の趣旨は、日米同盟関係というものがアジアのために非常に重要であるというふうな趣旨で述べられておりまして、我が国自身が軍備を拡大するとか、そういうことへの懸念、警告ととらえるのは適当でないのだろうと思っております。  中国、韓国につきましては、我が国国際の平和、安定のために国力にふさわしい役割を担うことは理解してくれておりますけれども、もとより、海外派遣については慎重に対処してほしいということを言っておられるところでございます。  そういうことでございますから、私どもとしては、過去の歴史的な経緯もございますので、いずれにしても、いろいろな機会をとらえ我々の意図を説明していくことが必要でありますし、それはまた何よりも、今後平和協力をいたしますときの我々の心構えとして大事なものとして考えておかなければならないと存じております。  それから、日本の過去の行為に対する認識、あるいは補償についてどう考えておるかということでございました。  これは、我が国が過去において戦争を通じて近隣諸国等の国民に対し重大な損害を与えたことは事実であります。そして、我が国の過去のこのような行為について、侵略的事実を否定することはできないと思っております。このような認識は、昭和四十年の日韓共同コミュニケ、あるいは四十七年の日中共同声明、また、本年、海部前総理がシンガポールにおいてなされました演説にも述べられているとおりでございます。我が国としましては、このような基本認識を踏まえ、平和への決意を新たにするとともに、このような過ちを二度と起こさない平和国家として貢献をしなければなら住いと思っております。  それから、請求権等の問題でございますが、これは我々の先輩が非常に苦労されまして、サンフランシスコ平和条約を初め、連合国及び戦後我が国から分かれました地域、今は国になりましたが、との間の請求権の問題については、個々に解決をいたしました。また、賠償協定を結んだ国もございまして、このような条約を誠実に今日まで履行いたしてきているところでございます。  なお、我が国の過去の行為についての国会の御決議につきまして御言及がございました。もとより、国会のお考えにおいてなされることでございます。政府としては、先ほど申し上げましたような考え方をいたしております。  なお、私の著書につきまして御発言がございまして、これは「戦後政治の証言」ということで、過去何十年かの経験を書いたものでございますが、その中で、昭和二十五年の七月に警察予備隊をつくることの指令が占領軍からございまして、昭和二十五年でございますが、当時の状況というのは、いわば我が国自身は多少無警察状態とでも言うような状況でございまして、現実に専ら治安は米軍に頼っておりたというようなことであったわけでございます。  そういう状況について、私は「第三国人」という言葉をこの著書で使いまして、当時この言葉は、実は報道機関を初めすべてに使われておった言葉でございます。それ以外の表現がなかったのでございましたが、しかし、この著書が出ましてから読者から、この言葉は今差別用語であるという指摘を受けました。出版社に調べてもらいましたところ、そのとおりでございました。したがって、これは私の誤りでございます。この著書は第四版から訂正をいたしました。おわびをいたします。  それから、我が国PKO活動国連の指揮との関係でございますが、我が国から派遣する要員は、これは公務員として国連国際平和協力業務を行うものでございますから、我が国の指揮監督権がそれらの人々になくなってしまうということはないのは当然でございます。ただ、その部隊は、本部長が作成いたします実施要領に従いまして協力業務を行います。この実施要領は、この法案の第八条で述べられておりますように、国連の「指図に適合するように」、そのように作成されることになっておりますので、実施要領に従いまして、いわゆる五原則と合致した形で国連のコマンドのもとに置かれる、こういうふうに考えておるところでございます。  それから、先ほど、日本の部隊だけが業務を中断することはできるのか、他のPKF部隊の武力行使日本武力行使とみなされることはないのかという御指摘がございました。  この点は、この法案独特と申しますか、あるいは、我が国がこのような憲法を持っておりますから、よその国と違いましてすべて同じようにできるとは限らない、先ほど申しました憲法の制約に忠実であらなければなりませんから、場合によりまして中断をする、あるいは撤収をするということがどうしても必要になる場合がございます。もともと、PKFというのは国連権威説得によって、強制力で平和を回復するものではないのでございます。したがって、そういう状況が通常生まれるとは思いませんけれども、しかし、もしそういう場合には、我が国としては憲法の命ずる。ところに従って、それに違反しないような行為をしなければならないというふうに考えておるわけでございます。  この点は、国連のいわゆるSOPの想定するところと多少違うところもございますけれども、国連におきまして十分我が国の基本方針を、本年八月に説明をしてございます。相手方は、国連PKO担当のグールディンク国連事務次長でございますが、先方は、もちろん我が国の基本方針について何ら問題がないと言っております。これは当然のことだと思いますので、我が国が自分の意思でいわば自発的に協力をするのでございますから、こういう方法でなければ協力できないと言えば、それは、それなら要りませんと言われるか、それで結構だと言われるか、そのどちらかでございまして、国連としてはそれで結構だと言っておるわけでございます。  国連の標準行動規範SOP、訓練マニュアル等を国会に提出するかという御指摘がございまして、実はこの点は従来何度か国連に問い合わせておりましたが、国連の内部文書であるので、今後の行動に支障を生ずることもあるということで政府間だけにしてほしいという何度かの回答はございました。しかし、衆議院の御審議に当たりまして、何とか公表せずとも審議の便に役立つような方法はないかという重ねての御主張がございまして、国連と再度御審議中に折衝をいたしました。その結果、公表をしない、しかし御審議にはある程度、便に使われることは国連としてもやむを得ないというようなことで、そういう形で御審議に当たって内々にごらんを願ったというような経緯がございますことを申し上げておきます。国連の基本的な立場はそのような立場でございました。  それから、湾岸危機のことがございましたが、湾岸危機の際にデクエヤル事務総長は最後までイラクの説得に努めたことはお互いが知っておりますけれども、サダム・フセイン大統領がこれに応じなかったという経緯がございます。そこで、いわゆるUNIKOMの問題でございますけれども、これは結局イラクも、イラクとクウエートの国境にUNIKOMが活動するということは合意をいたしましたので、紛争当事者が受け入れに同意をしているという状況のもとに派遣されましたPKOでございます。将来イラクが同意を取り消すことがあるかどうかという問題は、考えられないわけではございませんけれども、イラクの同意のもとに現在国境地帯において中立立場で停戦監視が行われておりますし、今日まで紛争が起こったということを聞いておりません。  それから、中期防のことにつきましてお話がございましたが、防衛計画の大綱、これは我が国の基盤的防衛力整備構想でございますから、どういう状況であろうとも持っていなければならない最低のものをただいま整備しつつあるわけでございます。したがいまして、大綱のもとに効率的で節度ある防衛力の整備に努めてまいりたいと思っておりますが、平成四年度の予算編成の時期になっておりますので、御指摘のようないろいろな国際情勢というものは当然に考えながら、一層の効率化、合理化に努めて極力経費を節減いたしたいと思っております。  自余の問題は関係閣僚からお答えを申し上げます。(拍手)    〔国務大臣渡辺美智雄登壇拍手
  25. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) お答えをいたします。  アジアの諸国の抗議とか懸念をどう思うか、実はこれについても総理大臣が詳しく御説明をしてしまったので、それにつけ加えることはないんです。でございますが、余分かもしれませんがちょっとつけ加えさせていただきますと、最初どこの国でも多少不安げなことを言ったことは事実です。それは、中身がわからないということが一つ、それからもう一つは、アジアの中には日本が第二次大戦で侵略をしたり戦火を交えたりという国がたくさんございますから、そういう国の反応は、それは神経質に反応するということは私は当然だと思います。  しかし、よく話をいたしますと、ああそうかと、それならわかったということなんです、一言で申しますと。それは、(発言する者あり)まあちょっと静かに聞いてください、私答弁しているんですから。それは、何といいますか、ただ押しかけていくんじゃありませんよと、国際連合等から頼まれまして、しかも皆さん方のところでどうぞ来てくださって結構ですよと、そういう同意がなければ行かないんですから、嫌ですというところへは行かないんですよと。そうすると、ああそうかというようなことでして、これは実際話してみなきゃわからぬわけです。したがって、私は、心配は一応持っていないとは申しませんが、それは、国連の旗のもとで行くんですと、それから、どうぞというときしかやりませんよと、そういうことをよく申し上げて御理解を得ておるところでございます。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣宮下創平君登壇拍手
  26. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 私に対する質問は二点ございました。一つは武器使用に関することでございまして、もう一つは、今総理から御答弁いただきました中期防と来年度予算に関する件でございます。  まず、武器使用でございますけれども、本法案の第二十四条第三項におきまして、派遣先国において国際平和協力業務に従事する個々の自衛官に対し、生命、身体を防護するための武器使用の権限を与えておりまして、武器使用の主体は、条文上明らかでございますように個々の自衛官でありまして、部隊としての武器使用ではございません。これは武器の使用が要員の生命等の防護のために必要な最小限度のものに限られており、このようなものにつきましては個々の自衛官の判断にゆだねることが基本的に適切であると考えているからでございます。このような武器の使用を認めることによりまして参加する自衛隊員の安全は確保し得るものと考えておりますけれども、いずれにいたしましても、国際平和協力業務に従事させるための自衛隊員を外国に派遣するに当たりましては、自衛隊員の安全確保に万全を期してまいりたいと考えております。  次に、二番目の我が国の防衛力整備に関する御質問につきましては、ただいま総理から御答弁があったとおりでございますが、国際情勢の変化と今後の防衛力整備との関係につきまして、私の方から敷衍してお答えを申し上げます。  昨年十二月の中期防衛力整備計画決定の前日、政府は、安全保障会議及び閣議におきまして「平成三年度以降の防衛計画の基本的考え方について」というものを決定いたしました。これは、国際情勢が変化する中で今後の防衛力整備をどのように進めるかという観点から、防衛計画の大綱に示された国際情勢との比較に留意しつつ、改めて国際情勢の変化に関する認識を明確にしたものでございます。  この基本的考え方の中で、政府といたしましては、国際情勢の動向については今後とも注視する必要はあるものの、大綱策定の際に前提とされた国際関係安定化の流れがより進んだ形であらわれつつあると見ることができるとした上で、かかる状況を踏まえれば、日米安保体制の信頼性の向上を図りつつ、防衛計画の大綱の基本的考え方に従って効率的で節度ある防衛力の整備を図る、これに努めることが適切と判断した次第でございます。  一方、本年初めの多国籍軍によるイラクの侵略排除とクウエートの解放、あるいは八月のソ連におけるクーデターの失敗とその後の新たな国家体制への模索、九月のブッシュ大統領による地上戦術核の一方的廃棄等に関する声明とこれに対するゴルバチョフ大統領の声明等々、国際情勢が昨年十二月以降も大きく変化していることは認識いたしております。総理から御答弁がございましたように、このような国際情勢の動向等を見きわめていく必要もあり、中期防を現時点で直ちに修正することは適当でないと考えております。  なお、中期防におきましては、三年後にその時点における国際情勢等を勘案し必要に応じまして計画の修正を行う仕組みになっておることは御承知のとおりでございます。また、平成四年度の防衛予算につきましては、中期防のもとで、その後の国際関係安定化に向けさらに動き出している国際情勢、あるいは厳しい財政事情、他の諸政策との調整、調和といった事情を勘案しつつ編成作業を進めてまいりたいと考えております。  いずれにいたしましても、昭和六十二年の閣議決定に示されました節度ある防衛力の整備という精神を引き続き尊重してまいることは言うまでもございません。  以上でございます。(拍手)    〔野田哲登壇拍手
  27. 野田哲

    野田哲君 谷畑さんにお答えいたします。  まず第一は、先ほど議題になりました私たち提案した国際平和協力活動等に関する法律案、これを提出した理由は何か、こういうお尋ねでありますが、今回の政府のいわゆるPKO法案は、軍事的な分野だけではなくて文民による民生分野活動まで自衛隊派遣して行わせる、こういう内容になっているものでありまして、初めに自衛隊派遣ありき、こういうPKOではなくてPKF法案と言ってもいいもので、これは憲法上許されない、このように認識をしたからであります。  先ほど宮澤総理は、撃ち方やめになったところへ撃ち方やめの任務で行くんだと、こういうお答えがありましたけれども、本当に撃ち方やめの任務で行くのであれば、いつも撃ち方始めを訓練の主目的にしている自衛隊派遣することはないのであります。私どもは、このような政府・自民党の国際貢献策に名をかりた自衛隊派遣法に強く反対をし、広く国民に訴えるために、非軍事民生文民による国際貢献策を法案として具体的に提出をして国会での審議に供し、成立に努めることが、野党第一党として、また与野党逆転の参議院の責務として対案を提出したものそあります。  二番目に、政府案との重要な相違点は何か、こういうお尋ねでありますが、先ほども申し上げましたように、政府案は、自衛隊武器を携帯させて部隊として派遣をし、そして平和維持軍参加をさせて、軍事分野活動に従事させるだけでなく、非軍事民生分野活動自衛隊任務としています。これは憲法九条の平和主義に照らして許されないものであると考えています。  私どもが今回提案した法案は、国連平和維持活動参加するに当たって、非軍事民生文民、これを基本として、自衛隊派遣は全く考えておりません。したがって、国際平和協力活動の範囲についても、政府案の第三条の三のイからへに定めている軍事貢献分野を削除し、民生分野だけを対象としているものであります。これが政府案との重要な相違点であります。  第三に、憲法の原則に照らして、政府案と比べても妥当な内容であるかどうか、こういう点でありますけれども、政府案は、自衛隊を部隊として派遣軍事的な分野での貢献を行うことにたっており、先ほど申し上げましたように、憲法九条で許されない内容だという認識を持つものであります。  昨年秋の臨時国会国連平和協力法案を審議した際に、政府は、平和維持軍的なものに対して参加することが困難な場合が多いのではないか、こういう立場からの見解を示しました。それが一年たつと、停戦の合意などを参加の前提条件として、そしてまた、平和維持軍と呼ばれておるものを平和維持隊と呼び方を変えたからといって本質が変わるものではないと思います。私どもが提案した法案は、憲法九条を厳密に遵守する立場に立って、自衛隊派遣武力行使武器の携帯や行使は明確に否定したものであり、憲法上からいささかの懸念もないものであります。  第四に、政府の広報活動についての御質問がございました。  政府が発行されている広報を見ると、PKO活動停戦監視団平和維持軍政府の文書では平和維持隊と表現されておりますが、この二つに分けて説明をして、非軍事民生分野に対する文民活動があることは、選挙監視員としてわずかの人が参加したことを紹介しているのみで、政府の広報活動は、国民に対してPKOには自衛隊参加するしか方法がないかのような先入観を与える内容になっています。  現在までに、国連要請によって世界各地紛争地域派遣された平和維持活動は二十三回に及んでおります。その平和維持活動には、平和維持軍停戦監視団による軍事分野だけではなくて、非軍事民生分野が数多く含まれているにもかかわらず、政府は今日までそれに対して何ら人的貢献策をとっておりません。九一年一月の「平和維持活動における文民の活用」という国連事務総長報告に見られるように、近年PKOにおける文民役割が高まり、日本政府も、将来重要な役割を果たすと思われるPKOの一つである文民活動について日本文民貢献を増大させるための責任ある部局の設置を検討している、こういう内容の文書を国連に提出していますが、何ら具体的な措置がとられておりません。  今回の私どもの提案は、憲法精神を守り、政府も今まで自衛隊任務は専守防衛と繰り返し強調しているわけでありますから、それを踏み越えないで非軍事的な貢献策をとろうとするならば、民生分野文民によって積極的に進めることこそ日本のとるべき道と考えているところであります。  第五に、国会承認事項についてお触れになっております。  今回私どもが提案をしている法案で、非軍事民生文民を原則にした国際平和協力隊派遣することになっていますが、派遣に当たっては国会承認を受けることにしています。それは、国連でどのような決定がなされ、それによってどのような協定が国連との間に結ばれ、派遣される協力隊の任務規模派遣先の実情などについては、国会審議を通じて国民のコンセンサスを得ることが非常に重要であると考えているからであります。  また、私どもとは前提が異なりますが、自衛隊派遣について、民社党から国会承認について強い御主張があることを伺っております。自衛隊法の七十六条、七十八条に、防衛出動、治安出動について国会承認が定めでありますが、そのことを考えるならば、今回の政府案海外派遣でありますから、派遣を前提にして考えれば、民社党の国会承認を受けるべきだという御主張は当然出てくるものだと考えます。  第六に、国際平和協力機構を設置する目的と背景について、非軍事民生分野活動は、法案の三条の三に提案しているように、選挙の助言・監視、警察行政への助言、一般行政事務に対する指導・助言のほか、医療活動被災者の救出、食糧や衣料、医薬品等の供与、被災者を収容する施設の整備、被災地の施設の復旧、自然環境の復旧や輸送、保管、通信、建設等広範多岐にわたります。必要な技能の習得と、現地の言語、社会、風土等に適合するようあらかじめ基礎的なトレーニングを積んでおくことが、平和への貢献に極めて必要なことであると考えています。  第七に、軍縮国際協力関係についてお尋ねがございました。  法案提案説明でも述べましたように、世界は、対立と軍拡、冷戦の構造が終わり、対話協調軍縮時代に入り、新しい国際秩序構築されつつあります。この新しい潮流の中で、アジアにおける国際秩序形成日本に課せられた重要な責務であると考えます。日本アジアにおいてこの役割を果たすためには、まず日本軍縮のプランを示し、アジアにおける合意形成のイニシアチブをとるべきであると考えています。その具体的な措置として、自衛隊を漸次削減し、その人員を国際平和維持機構に移管することなどを検討すべきであると考えています。  最後に、政府案に対するアジアの各国からの批判をどう考えておるかということでありますが、自衛隊が武装し、日の丸を掲げて外国に派遣されるという今度のPKO法案は、韓国や中国や東南アジア各国にとって、四十六年前までの悪夢とダブることは当然でありましょう。歴代政府は、自衛隊が年々肥大化することに対する近隣諸国の懸念に対して今日まで、自衛隊は専守防衛のためのものであり、憲法第九条があるので攻撃的なものではないと言い続けてきました。それを変更するのでありますから、外国からの批判や懸念が出るのは当然でありましょう。また、今まで日本政府の閣僚が何回か、朝鮮や中国で日本の軍部が行った行為を正当化する発言をして大変な批判を受けています。  私も、戦争末期の大陸において現地の人たち日本軍に対する怨念を体験した一人であります。アジア各国の批判には率直に耳を傾けるべきであると思います。それは、現地のそれぞれの国の政府の指導者だけの声ではなくて、国民の本当の声を聞いて対処すべきであると考えています。(拍手
  28. 長田裕二

    議長長田裕二君) 中川嘉美君。    〔中川嘉美君登壇拍手
  29. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣法の一部を改正する法律案並びに国際平和協力活動等に関する法律案について、総理並びに関係大臣に質問を行うものであります。    〔議長退席、副議長着席〕  今、世界は、戦後四十数年続いた冷戦を克服し、平和と安定を構築するための新たな秩序を模索しております。対立から協調へと時代が大きく動く中、新秩序の中軸を担うのは国連であるとの認識国際的に定着しつつあります。  国連中心主義を掲げてきた我が党は、国連を軸とするこうした流れを確実なものとすることが、我が国国際社会へ果たす大きな役割であると確信しております。もちろん、私たちも今の国連が完全なものとは思っておりません。だからこそ、国連改革委員会の設置や事務総長の権限強化など、常に国連の機能強化への提言を続けておりますが、まず総理に、国連に対する認識、また、安保理事会の非常任理事国にもなる我が国国連の機能強化に具体的にどう努力していくのか、伺いたいのであります。  国連中心とした新秩序づくりの大前提は、冷戦時代に放置されてきた軍縮を包括的に全世界規模で行うことであります。既に米ソ両国が核兵器の画期的な軍縮提案を行い、冷戦終結ともあわせ、各国の安全保障政策にも大きな影響を及ぼしております。米ソ対立冷戦構造を前提とした我が国安全保障政策についても、新しい国際情勢を踏まえて再検討する必要があります。真の国連中心時代を築くためにも、世界軍縮へ向けて我が国みずからが自衛隊の再編縮小に取り組むことが急務だと考えますが、総理見解を伺いたいと思います。  湾岸戦争は、我が国国際協力国際貢献のあり方を根本的に問い直すものであり、我が国が、金、物だけでなく人的貢献も行うべきなどの要請国際的にも国内的にも提起されました。我が国が平和憲法の中で何ができるかもはっきりせず、人的貢献の法的枠組みすらないことも浮き彫りとなったのであります。  私たちは、国際貢献について、平和時はもちろん、平和が破壊され、これに対して国連中心とした平和回復活動が行われ、さらに回復された平和を維持していく過程の中で、我が国憲法の範囲内ででき得る限りの平和への協力参加を行っていくのは当然の責務であると考えます。時には危険と背中合わせであっても、憲法の中で積極的に貢献していくことが、平和の中で経済大国となった我が国が一国平和主義を脱皮し国際社会に果たす役割であると考えますが、日本PKO参加の意義も含めて、総理国際貢献に対する基本認識を伺いたいのであります。  次に、法案に関連してお尋ねいたします。  今回の法案は、我が国国際平和分野に対してどういう人的貢献を行っていくかを明確にした初めての法案であります自法案のもととなる国連平和維持活動、いわゆるPKOは、言うまでもなく、停戦の合意の後、国連要請のもとで紛争当事国の同意を得て出動するもので、中立立場に立って平和を守るとうとい行動であります。私たちは、この活動軍事的知識が不可欠であることから、憲法平和主義に反したいよう五原則の厳格な歯どめを設けた上で、自衛隊の活用も必要であるとの判断に至りました。  そのPKF参加五原則とは、言うまでもなく、紛争の当事国間で停戦の合意が成立していること。紛争当事国、PKF受け入れ国が、PKF自体への同意のみならず我が国PKF参加に同意していること。さらに、PKF中立、公平な立場を厳守すること。以上の三条件のいずれかが欠けた場合、我が国は撤収する。なお、武器の使用は要員の生命等の防護のために必要最小限に限る、の五点であります。この五原則を法案の中に盛り込んだからこそ、平和憲法の範囲内で新たにPKOへの協力という国際平和への貢献が可能になったのでありますが、総理はこの五原則をどのように評価しておられるのか、伺いたいのであります。  次に、衆議院の審議で最後まで議論となったPKO協力に対するシビリアンコントロールのあり方の問題についてお尋ねをいたします。  まず、シビリアンコントロールを最大に尊重すべきことは言うまでもありません。問題は、いかにしてシビリアンコントロールの意味、つまり文民軍人に対する優位性を確保するかということであります。私たち公明党の強い主張によって、閣議決定とか政府答弁ではなく、PKF参加五原則が法律に明確に組み込まれ、これによって強固なシビリアンロントロールが確保されたと考えております。  中には、国会承認制の導入に固執、国会承認制によらなければシビリアンコントロールは満足されないかのような方向論議もあります。しかし、衆議院国際平和協力特別委員会の公聴会で公述人の一人は、「前提としての五原則の法制化という点が抜きにされて、単なる国会承認国会報告かに論議が終始しているのは疑問」とし、「五原則法制化は明らかな歯どめとして機能するだろうし、それに基づいた実施計画の報告によって、シビリアンコントロールは確実に達成される」との見解を示しております。  シビリアンコントロールの究極的論点は、国会の決定に防衛庁、自衛隊は従うということであります。歯どめとしての五原則が内蔵された法律を国の最高議決機関である国会が認知し決定すれば、PKO協力我が国活動はこの法律の枠内におさめられ、逸脱は許されない。国際貢献の実を上げながらも、憲法の平和原則を守り抜く明確な歯どめであると思いますが、これに対する総理の御見解を伺いたいと思います。  また、PKO派遣が長期化し、泥沼化することをチェックする意味から、派遣継続の是非について一定期間経過した時点で国会が判断する必要があるとの立場から、衆議院において、公明、自民両党の提案で、二年を超え引き続き派遣する場合には国会承認を得るものとする等の内容の修正をしたのであります。これによって、国会の関与、シビリアンコントロールの強化が一段と明確にされたと思うのでありますが、この点についても総理見解を承りたいのであります。  さて、PKOには既に世界約八十カ国が参加しておりますが、参加に当たりこれだけ詳細な規定を置いている国はほかにないという識者の高い評価があります。しかし、最近の報道によりますと、国連PKO関係者が、国連がこれまでPKOに関して作成した文書によれば日本参加するに当たって原則とした現地での撤退及び武器使用の条件では国連の方針と食い違うとの疑問を投げかけております。  私たちは、政府国連PKOに関する文書を十分検討し、国連とも協議した上で法案を提出したと認識しておりますが、このような疑問が出るのは極めて遺憾であり、改めて、我が国参加に当たって独自の制約を貫くことができるという根拠と国連側の認識を明確にしていただきたい。あわせて、国連に対して今後どのように理解を求めていくかを明らかにしていただきたいのであります。  PKOには二つとして同じものがないと言われるように、その形態はさまざまであります。その意味でも、我が国が、従来のPKOの実績等にかんがみ、停戦の合意紛争当事者の同意、中立といった参加の五原則を法案に盛り込んだことは大きな意味を持ちます。しかしながら、先日調印されたカンボジア包括和平協定に見られるように、今後は従来のPKOの範疇にない広い分野での活動等が定められる可能性が十分あると思います。また、国連ではPKO紛争の予防措置に使えないかという検討も始まっております。今後想定される広範な任務を持つPKOにどう取り組むのか、総理見解を伺いたいと思います。  なお、カンボジア和平の実現は喜ぶべき事柄であり、我が国としても戦後の復興等に積極的に協力することは論をまちません。一部には、この法案成立後は直ちにカンボジアヘ自衛隊を含めた日本PKO組織派遣しようとの考えもあるようですが、私は、PKF派遣に当たっては十分な準備と訓練を行った上で実施すべきであり、決して拙速であってはならないと考えます。したがって、PKO参加にはできるだけ無理のない方法で段階的に進めていくことが大事だと考えますが、総理の御所見を伺いたいと思います。  実施に当たって重要なのは、研修、訓練の問題であります。PKO及び国際救援活動我が国として積極的に貢献していくことを決めたからには、立派にそれらの任務を果たすことが求められると思います。また、要請があった場合に迅速に対応するためにも、充実した研修、訓練が不可欠であります。今後、要員をどのように教育、訓練するのか。そのためには十分な予算的措置も必要と考えますが、総理のお考えを伺いたいと思います。  さて、今回の両法案は、国際貢献自衛隊を活用することが大きな特徴でもあります。しかし、その任務の位置づけがいずれも自衛隊法上の雑則扱いと狂っており、両法案とも国際貢献と銘打って大々的な論議を巻き起こし、しかも、それが自衛隊の余技という位置づけとなっていることはいかがかと思いますが、国際貢献任務をきちっと自衛隊任務にすべきとの考えに対する総理並びに防衛庁長官の認識を伺いたいと思います。  一方、今回の法案に盛り込まれた国際平和協力乗務の中には、文民参加することが想定されているものもあります。今後は、PKOにおける文民活動分野が拡大することも予想されますので、これには我が国の広い分野の人々が参加することが必要ではないかと思われます。このことは人の面での国際貢献の充実という点でも重要であると考えますが、政府として今後どのように文民参加分野を拡大していくのか、その構想を伺いたいと思います。最後に、PKO協力法案に対する近隣アジア諸国の懸念の問題について見解を伺います。政府は、近隣アジア諸国に対し誠意を持って説明し理解を得ていきたいとしておりますが、今日なお、近隣アジア諸国から懸念の声が伝えられているのが実情であります。総理アジア諸国から背を向けられたのでは、何のための国際貢献かと思わざるを得ないのであります。一度他民族に与えた不信は、何十年、何百年にわたる真摯な努力がなければそれを払拭することができないのは世界歴史が示すところであります。かつて我が国戦争の惨禍をもたらしたアジア諸国の首脳に対し、総理が親書を送ることなども含め、本法案の真意について誠意を持って説明する等の一層の努力が必要ではないかと考えます。また、本法案に基づいて国会派遣計画を報告すると同時に、近隣アジア諸国に対してもその内容を速やかに連絡し、誤解を生ずることのないよう万全の措置をとることも我が国の当然の配慮ではないかと考えます。  この点についての総理の御見解を伺って、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  30. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる冷戦後の時代におきまして国連の担うべき役割が非常に大切にたってきたという御認識については、私も全く同感でございます。しかし、率直に申しまして、国連はここに来ましてにわかに大きな役割を引き受けるに至ったという感じはぬぐえませんで、たまたま昨年の湾岸戦争の場合には、理非曲直と申しますか、比較的事柄が明快でございましたので迷いはございませんでしたが、今後いろいろ複雑なケースが起こることも考えておかなければなりません。  そういう場合に一番大事なことは、やはり国連がすべての加盟国の公平な利益代表者であるということ、いわゆる大国の言いなりになっているものではない、そういう信頼が私は一番大事なことであろうというふうに思っております。  そのためには、しなければならないことがたくさんございますが、我が国といたしまして、今まで国連について、例えば紛争予防システムの確立てありますとか、せんだっても通常兵器移転の報告制度等々を提案いたしまして、積極的に国連外交をやってまいりましたが、事務総長の権限の問題であるとか、あるいは安保理事会のあり方の問題であるとか、平和維持活動の強化、経済社会理事会をどうするか、たくさん実は問題がございまして、にわかに大きな役割を担うに至りました国連としては、やはりそういう役割を担いながら自分自身をこの任務にたえ得るようなものに育てていく、我が国もまた、財政問題を含めましてそれに積極的な協力をすることが大事であろうと存じます。  そのような軍縮時代にありまして、我が国自衛隊のあり方についてもこれは当然考えなければならないところでございますけれども、先ほども防衛庁長官がお答えいたしましたように、今の防衛計画の大綱が基盤的防衛力構想に立っておりますから、最小限度必要海ものを整備するという水準を示したところであろうかと存じます。したがいまして、今後とも、殊に平成四年度の予算編成に際しましては、国際情勢の動きも見ながら、一層効率化、合理化に努めて極力経費を抑制するようにいたしたいと考えております。  それから、湾岸戦争によって我が国国際貢献について大切な教訓を得たというお考えは、私はまことに同感でございまして、先ほども申し上げましたように、資金的な面はかりでなく、人的な側面においてベストを尽くさなければならない。それが国連平和維持活動であり、あるいは海外での災害救済活動である。御指摘はまことに私は同感を禁じ得ないところでございます。  それから、五原則の問題でございますが、おっしゃいますように、このうち三つは、そもそも平和維持活動というものがそうなければならないものでございますから、一般に国連側も考えておるところでございますが、さらに我が国独特の立場から二つを加えまして、そうしてこれをこの法案に盛ることによりまして、我が国がこれから国連平和維持活動の取り決めをいたしますときに当然政府はこの法律に拘束をされるわけでございますので、そのような拘束を法律に明らかにして、平和憲法理念に合致するように考えておるところでございます。  そこで、三原則に加えました他の二原則、いわゆる中断でありますとかあるいは武器の使用の制約でありますとかいうことは、おっしゃいますように、我が国がこのような憲法を持っております。その立場から我々が我々の立場で加えましたものでございますが、これによりまして憲法の枠にきちんと我々の行動が伴うように担保をいたしておるところでございます。  シビリアンコントロールにつきまして、確かにこのような五原則を法律に設けましたことも、その大事なシビリアンコントロールの道であると存じております。  なお、この国連平和維持活動任務が本来暫定的なものである、恒久に続くものではございませんから、二年を超えてこれを継続するような場合には、その妥当性について国会の判断を求めよという修正が衆議院においてなされたところでございます。恐らく、シビリアンコントロールについてより慎重な手続をすることが適当であるとの御判断によるものと拝察をいたしておりまして、政府といたしましては、立法府の御意思を尊重するということはもとよりのことでございます。  なお、我が国がそのような独特な二原則その他をこの法律に加えましたことについて、国連当局との関連でございますが、本年の八月にグールディンク国連事務次長に対して我が国の平和維持隊への参加に当たっての基本方針を説明いたしました。それによって、もし停戦合意が破れるようなことがあれば、我が国活動をする前提が崩れるわけでございますから派遣を終了することがでさる、あるいは武器の使用は要員の生命等の防護のために最小限に限る、いわゆる隊の行動が妨害、阻止されたときに使用するということは我が国としてはしないというようなことは基本方針として説明をいたしてございまして、国連としてそれは十分に了解をしておるところでございます。  それから、そもそも国連平和維持活動というものは本来停戦監視あるいは平和維持隊というPKOであったが、このごろは新しい業務ができてきていると言われたことは、まさにナミビアであるとか西サハラであるとか、あるいはカンボジアの場合も恐らくそうであろうと思われます。それらは選挙管理あるいは行政の監視はかりでなく、カンボジアの場合には行政そのものになる可能性もあるわけでございますから、そういう複合的な、いわば戦争から平和の構築の方に大きな業務が移ってきておる。これが紛争当事国の同意を得、また中立・非強制という原則で貫かれますならば、そういう範囲につきましても我が国は法の許す限り参画をいたすことができるであろうと考えております。  それから、要員の研修でございますが、今度の場合には、隊員に任命される者はかねてそういう種類の訓練を受けておりますから、初歩的な段階からの研修や訓練は恐らくそれほど必要ではない、むしろ、国連あるいは国連平和維持活動とは何か、おのおのの任務は何か、また派遣先の国の国情、社会、文化、ここらが非常に大事なことになってくるだろう、それについての理解が大事になってくるだろうと思います。  予算措置につきましても、遺憾ないようにいたします。  なお、自衛隊法との関連につきましては後ほど防衛庁長官からお答えを申し上げます。  それから、今後文民活動がさらにふえるのではないかということは、そういうことは十分考えられます。PKOの後方支援等にそれが起こってくるであろうということが考えられますが、国連から要請がありましたときにケース・バイ・ケースに考えていくことが大事かと存じます。  それから、アジア諸国の我が国平和維持活動あるいはこの法律案につきましての理解、反応でございますが、基本的には日本が求められる平和的な貢献をするということはわかってくれるところでございますけれども、何分にも過去のこともあるのでそこは慎重にしてほしいと考えられることは無理からぬところでございますから、そういう心構えで運用をいたさなければなりませんし、またいろいろな機会に、現実に我々が活動に移りますときにも十分理解を得て努力をしなければならないというふうに考えております。この法案が成立しました後の運用につきましても、特にアジアの国々の理解を深める努力をいたしたいと存じます。  自余の問題は主管大臣からお答えを申し上げます。(拍手)    〔国務大臣宮下創平君登壇拍手
  31. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 中川先生の私に対する質問は、自衛隊国際貢献任務自衛隊法の雑則扱いにするのはいかがか、つまり三条の本来任務に規定したらどうかという御質問であると存じますけれども、自衛隊法の第三条は、「直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序維持に当る」ことを自衛隊の本来の任務と規定しております。  一方、国際平和協力本部長の要請を受け防衛庁長官が自衛隊部隊等国際平和協力業務を行わせることは、総理から御答弁がありましたとおり、自衛隊が長年にわたって蓄積してまいりました技能、経験、組織的な機能の活用を図るものでございますから、自衛隊法第三条の改正を要しないとするとともに、第八章に規定されております。務と同様の位置づけをしたものでございます。  いずれにいたしましても、自衛隊法第三条を改正し、自衛隊の存立目的を変えるといったような変更を行うためには、我が国における自衛隊の位置づけ、すなわち我が国において自衛隊とは何なのかということ等につきまして、防衛庁あるいは政府部内はもとより、国民的な議論を経た上で行うことが適当であると考えております。  以上でございます。(拍手
  32. 小山一平

    ○副議長(小山一平君) これにて午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十一分開議
  33. 長田裕二

    議長長田裕二君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  趣旨説明に対する質疑を続けます。吉川春子君。    〔吉川春子君登壇拍手
  34. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、政府提出二法案及び社会党案に対し質問をいたします。  まず、私は、衆議院における理不尽きわまりない強行採決に対し、厳重に抗議を表明します。我が国憲法基本原則我が国の将来の進路を危うくするこの重大法案強行採決の暴挙で押し通そうとしたことは、断じて許すことはできません。これを強行した宮澤内閣、自民党並びにこれに同調した党の責任は重大であります。衆議院論議では、憲法の平和原則の根本にかかわる問題をめぐって、国連文書と法案との食い違いが明らかとなり、政府は事実上答弁不能に陥り、国民の間にも大きな疑問と批判が広がりました。にもかかわらず、政府・自民党はあいまいな答弁を繰り返し、しかも、国連文書だと審議に不可欠な資料を提出しないまま採決を強行したのです。したがって、これらの重大問題を徹底的に究明しなければなりません。  本院では、審議を尽くし、強行採決は絶対にしたいことを強く求めます。総理・総裁の責任において明確に答弁してください。  第一に総理にただすべきことは、武装した自衛隊海外に出動させ、PKF平和維持軍参加させることは、憲法の平和原則に照らして許されないという問題です。  我が国憲法は、戦争を放棄し、軍備を禁止して平和を貫くことを明確にし、国際協調もこの立場から軍事的関与・協力を一切否定しています。したがって、我が国が行う協力も、いかなる意味でも軍事的関与・協力などあり得ないことは憲法上明白ではありませんが。総理も、つい最近の雑誌のインタビューで、日本軍事貢献はできません、軍事面以外で影響力を行使しなければならない国と述べていたではありませんか。にもかかわらず、武装した自衛隊が外国に派遣され、軍事活動参加することがどうして憲法上許されるのですか。さらに、本法案は、自衛隊海外に出動させないことを明記した一九五四年六月二日の本院決議に真正面から違反するものであることは明白ではありませんか。この決議の本旨は、当時の木村国務大臣政府を代表して、自衛隊我が国の安全を保つため、直接、間接の侵略に対処することを任務とするものであり、海外派遣というような目的は持っていないと答弁していることでも明らかです。参議院議員として当時賛同された総理見解を伺います。  第二に、明確にしなければならないのは、PKOに関する国連文書と法案政府答弁とのさまざまな重大な矛盾についてです。  まず、指揮権をめぐる問題です。総理は、PKF参加自衛隊員は、主権国家として、国連事務総長の指揮に従う必要はないと繰り返し表明されていますが、今も変わりませんか。  国連文書では、PKF軍事要員が活動上の問題に関しては司令官からのみ命令を受け、出身国の政府から受けないことは平和維持活動基本原則だと述べています。さらに、参加国政府もそのような指示をそれらのものに対して与えてはならないと定式化しています。これはお認めになりますか。  衆議院での我が党議員の質問に対し、政府は、国連の現地指揮官が我が国派遣部隊を直接指揮するものではないと述べ、指揮権は日本側にあるとして、具体的には、現地司令官から日本の部隊長にコマンドがあった場合、まず部隊長は我が国実施要領の枠内かどうかを判断し、枠内ならそれに従うが、そうでないときは現地で微調整するか本部長である総理に対して実施要領の変更を求めると答弁しています。この答弁は、PKF派遣された部隊の指揮は本部長である総理自身が行うものであることを表明したものにはかならず、したがって、参加国政府が現地司令官とは別に指示をしてはならないという国連の原則に違反することは明らかではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。  あくまでも、PKF派遣された自衛隊国連の指揮に従わず派遣国の指揮に従うというのなら、国連PKFとは別体系の部隊ということになり、国連派遣国とのモデル協定によるわけにはいかず、日本日本だけの特別の取り決めをしない隈りPKF参加できないことになります。総理日本独自の特別協定を結ぶのかどうか、答弁を求めます。  そのような取り決めが可能なら、国連文書が示しているように、PKFは作戦上重大な混乱と支障を生ずることにならざるを得ず、したがって、日本独自の協定を国連が認めるなどということはあり得ないではありませんか。もしも日本独自の協定が締結できないのなら、日本PKF自衛隊派遣したいと断言できますか。総理の御答弁を求めます。  撤退問題もまた重大な矛盾点です。政府は、停戦合意が破れた場合、同本の判断で撤収すると言い続けています。しかし、国連のモデル協定によれば、派遣国が国連本部に事前に通報することなしに撤収することはできず、現地判断での撤収などあり得ません。それどころか、標準作戦規定SOPによれば、当事者の一方が立入禁止地帯への前進移動あるいは他方の占領地域への砲撃に対処するためにPKOの迅速な行動を求め、国連部隊が中に割って入ることも求められると述べています。ここでも撤退するなどという政府の言い分と全く矛盾するではありませんか。  総理国連文書の規定を無視して日本が撤収するということになれば日本が引き受けていた部分は空白状態になりますが、それでも構わないというのですか。責任ある答弁を求めます。  このような数々の疑問を解明するためには、PKF活動を定式化したSOPやPKO訓練マニュアルの公表が絶対に必要であり、また当然です。国連文書の規定と法案及び政府答弁との矛盾は、憲法の平和原則の根本にかかわる矛盾であり、あいまいにしておくことはできません。政府は、本法案の作成に当たって国連の文書を参考にしたとたびたび答弁しているのに、これを審議する国権の最高機関である国会に提出しないということは断じて容認できません。秘密文書でもないのに、政府のこの態度は国会軽視も甚だしいと言わねばなりません。総理、提出するかどうか、はっきりお答えください。  第三の問題は、PKO参加と集団的自衛権の行使との関係についてです。  この点では、最近、国際平和維持活動への参加の実績を踏まえて、次の段階としては、将来の国連権威のもとでの多国籍軍や国連軍に対して積極的な協力、さらには参加を検討する必要があるなどという論議がなされていますが、これはまさに憲法が禁止する集団的自衛権を公然と行使しようとするものではありませんか。自衛隊の多国籍軍や国連軍への参加、さらには集団的自衛権の行使をも認めるのかどうか、総理見解を倒します。  さらに、本年四月三十日、ワシントン米国防省において行われたチェイニー米国防長官と池田前防衛庁長官との日米防衛首脳会議で、ソ連の脅威を想定してきた日米安保をアジア・太平洋の地域的安定のための枠組みへ発展させる秘密合意がなされたという重大な報道があります。総理、こうした事実があったのですか。事実とすれば、まさにこれは日米安保の地球的規模への拡大と、集団的自衛権への第一歩となるものではありませんか。責任ある答弁を求めます。  総理、この法案のもう一つの重大な問題は、国際協力隊員となるべき自衛隊や海上保安庁職員とともに、それ以外の一般職国家公務員、地方公務員、民間企業の社員まで本法によって動員されるということです。一般の公務員も、自衛隊と一緒に被災民を助けたり、施設をつくる要員として輸送、修理、備品の管理など後方支援性格を有するさまざまな危険な仕事に従事させられます。国連平和協力法を審議した昨年の国会では、政府自身が、その長によって出向を命ぜられた職員は命令に従うことになると断言しています。総理、今回のこのような危険な派遣に職員はノーと言うことができますか。  さらに、法案では、民間労働者への協力要請することも可能となっています。民間企業が平和協力業務への協力に応じた場合、民間労働者も業務命令という形で動員されることになるのではありませんか。労働者がこれを拒否すれば、業務命令違反として懲戒処分になる可能性もあるという極めて重大な問題を含んでいます。明確にお答えください。  PKO法案をめぐる以上のような問題点は、国内ではもちろん、国際的にも懸念を広げています。日本国民世界の人々の前に徹底的に解明されなければなりません。  総理、正本が起こした侵略戦争は、戦場に赴いた男性とともに女性や子供にも多くの苦しみを与え、三百十万人の日本国民と、二千万人を超えるアジアの諸国人民を犠牲にしました。その同本の政府が、あの戦争が侵略戦争であったことすら認めようとしないばかりか、今また武装した自衛隊を公然と海外派遣しようとすることは絶対に許されません。このような法案について、国民の六割近くが反対し、憲法学者の八割がPKFへの参加はできないと指摘しています。中国、朝鮮、シンガポールを初め、かつて日本の侵略によって被害を受けた多くのアジア諸国の厳しい批判の声が上がっているのも当然のことです。総理はこの批判にどうこたえますか。  加えて、衆議院での議会制民主主義を踏みにじる暴挙を見て、アジアはもちろん世界の国々は、このような自衛隊海外派遣日本のたすべき国際貢献だなどとは決して受け取らないでしょう。総理の御認識を伺います。  次に、社会党案について質問いたします。  日本国憲法平和主義の原則に照らせば、日本国際貢献は非軍事的なものでなければならず、政府案のような武装した自衛隊を事もあろうに武カ行使を伴うことを前提としたPKF参加させることができないのは自明の理です。  そこで、お尋ねします。政府社会党案の基本的な違いはどこにありますか。政府案は本院の自衛隊出動禁止決議に違反することは明白と考えますが、いかがですか。また、政府は五つの条件をつけて憲法違反ではないなどと言っていますが、とんだ条件をつけても自衛隊海外派遣憲法上できないと考えますが、貴党の御見解を明らかにしていただきたいと思います。  以上、我が党は、自衛隊海外派兵を絶対に許さず、憲法の恒久平和主義基本原則を断固守り抜く決意を表明します。そして、政府提出二法案の撤回を強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  35. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 午前中にも申し上げたことでございますが、我が国国際的地位の向上に伴いまして世界の平和と繁栄のために一層積極的に貢献を求められつつあることは、お互いがよく気がついておるところでございます。  PKO紛争当事者による同意を前提にしておりますし、本来、中立・非強制立場国連権威説得によって任務を遂行するものでございますから、それに対する協力ということは、憲法のもとでの我が国世界の平和に対する貢献としてふさわしいものだというふうに考えております。武力行使目的を持たないで自衛隊の部隊を他国へ派遣すること自身は、憲法上別に禁じられていないというのが従来よりの政府の考え方でございます。  PKO活動が先ほど申し上げたようなものでございますので、強制的な手段で平和を回復しようとするものではございません。また、したがってこの法案に基づきまして自衛隊参加する場合に、それが武力行使になるという評価を受けることもないと考えております。したがいまして、このPKO法案に基づきまして自衛隊を他国に派遣することに憲法上の疑義はないというふうに私どもは考えておるわけでございます。  昭和二十九年の本院本会議決議でございますが、私どもは、自衛隊国際平和協力業務を行うために海外派遣されることについてまでもこの御決議が想定になっておるとは考えておらないところでございますが、いずれにしても、有権的解釈は本院によって行われるものであると存じます。  それから、主権国家としての国連事務総長の指揮との関連でございましたけれども、我が国から派遣する要員は我が国の公務員としての職務を平和協力業務として行うものでございますから、我、が国の指揮監督権がなくなってしまうということはもとよりあり得ないことでございます。問題は、本部長が作成いたします実施要領に従いまして国際平和協力業務を行うわけでございますけれども、実施要領は、この法案の規定によりまして国連の指図に適合するように作成されることになっております。法の第八条に書いてございますが、そういう実施要領に従いまして我々の持っております五原則と合致した形で国連のコマンドのもとに置かれる、こういう構成になっておるわけでございます。  それから、国連の関連文書で出身国の命令を受けないと書いてあるのではないかとおっしゃいました。その意味は、派遣国はその派遣した要員に対して、国連が当然そのオペレーションについて。権限を持ちますから、そのオペレーション上の権限を侵害するような指示を与えてはならないという趣旨と思っております。したがいまして、この法律におきましては、本部長がその国連の指図に適合するような実施要領を作成いたしまして、我が国の要員がこの実施要領に従いまして国連平和協力業務を行う、こういう構成をいたしておるわけでございます。  それから、我が国から派遣する要員も、国連のコマンドと適合するように作成されました実施要領に従い業務実施するものでございます。したがいまして、我が国から派遣されました者はこの法律の規定に従って行動するのでありますし、また我が国が、これから法案が成立いたしました後、国連PKO要員派遣について取り決めをする、枠組みをつくるといいます場合には、それは当然我が国憲法のもとでなされなければなりませんし、また、その憲法のもとに定められましたこの法律に基づきまして、我が国立場において取り決めを結ぶ、これは当然のことであると存じております。  したがって、我が国独自の協定が締結できないのなら日本派遣することはできないのではないかという御質問は、もうお答えいたしましたとおりで、我々の法律に従ってしか我々は国連とは取り決めができません。それに違反するような形での取り決めをいたすことはできませんし、いたすつもりはございません。  それから、国連にモデル協定というものがある、それとこの法律の定めるところは幾つか違うではないか。幾つか違います。それは、我が国我が国独自の憲法を持っておりますからそこから違いが出てくるのでありまして、例えば、いわゆる派遣国の判断で派遣を終了させるというようなことがございますけれども、これはモデル派遣協定案の規定からいいましても、我々は適切な事前の通告をすることによって我々のそういう方針を実行することができると考えておりまして、これらについては国連側と既に話をいたしておりますし、また、現実に派遣を終了する。というようなことが起こりますれば、当然十分な連絡調整をいたします。  それから、国連の標準行動規範、マニュアル等を提出しなければならないという御指摘でございました。  これは、従来国連当局と何度か外交的に折衝をいたしたところでございますけれども、国連の内部文書であるし、また現実にこれを実施いたしますときのことを考えますと公開をすることができないということであったわけでございますしかるところ、衆議院の御審議におきまして、何とかその審議の便宜に供することはできないかという御主張が強くございまして、改めまして国連と交渉いたしました結果、公表することはできない、しかし御審議の御参考に供することには同意をするということになりまして、委員会で御関係の皆様には御閲覧をいただいたところでございます。  それから、湾岸戦争のときの多国籍軍との関連についてお尋ねがございましたけれども、この多国籍軍は安保理事会の決議に基づいてイラクに対する武力行使したものでございますが、文字どおり国連軍というものではなく多国籍軍でございますから、これに参加することは、すなわち国外において武力行使することになります。それは我が国憲法上許されないものというふうに考えておりますし、また、御承知のように参加をいたしませんでした。それから、我が国憲法の解釈といたしまして、いわゆる集団的自衛権の行使憲法上許されないというふうに従来から考えてまいっております。  次に、本年四月、ワシントンでチェイニー国防長官と当時の池田防衛庁長官との会談において云々という御指摘につきましては、そのような秘密合意はございません。日米安保条約は、このような世界の状況におきましても、なお国際情勢は不安定でございますから、我が国の安全確保にとっての抑止力であると考えておりますし、ひいてはそれがアジア・太平洋の平和と安定にとって大切な枠組みである、そのように機能いたしておるものと考えております。  それから、一般公務員、地方公務員がこの派遣について拒否できるかどうかということでございましたけれども、もとよりこういう仕事に従事してもらいますためには本人にそういう意欲がなければ、これは従事してもらいましても実際上役に立ってくれないわけでございますから、当然のことでございますが、個人的な事情をも考えますし十分な説明もいたします。その上で積極的な意欲のある人々が参加をしてもらうように、そのようにいたしたいと考えております。  なお、地方公務員につきましては、一たん国家公務員になってもらう必要がございますので、その際にはもとより本人の同意が必要でございます。  それから、民間の協力についてもお尋ねがございました。  民間等国以外の者に対して、物品の譲渡、役務の提供等につき、無論適正な対価を払いますが、協力を求めることができるとこの法律案に規定をいたしておりますけれども、これはもとより同意がある場合でございまして、相手の同意がない場合にそのような協力を求める、あるいは強制する方法はもとよりございません。同意が前提でございます。各国の反応でございますが、午前中も申し上げたが、中国、韓国につきましては、過去の記憶がいろいろ生々しいということから、我が国の平和に対する貢献の意欲は理解をしながら、十分に慎重に対処してほしい、そういうことを言っておられます。これはよく理解できることでございますから、法の運用に当たりましては十分注意をしてまいらなければならないと考えております。(拍手)    〔野田哲登壇拍手
  36. 野田哲

    野田哲君 吉川議員の御質問にお答えいたします。  吉川議員の御質問は、社会党と政府案との基本的な違いはどこにあるのか、こういう御質問であったと思います。  政府案は、御承知のように、自衛隊武器を携帯した部隊として派遣し、平和維持軍PKF参加させて、軍事的な分野活動に従事岩せるだけでなく、非軍事民生分野活動にも自衛隊任務として従事させることになっています。これは、憲法九条の理念からして私どもは許されないと考えています。私どもが今回提案した法案は、国連平和維持活動参加するに当たって、非軍事民生文民、これを基調として、自衛隊派遣は全く考えておりません。したがって、国際平和協力活動の範囲につきましても、政府案の第三条の三の中のイからへに定めてある軍事的な貢献分野を削除して、民生分野だけを対象としているものであります。これが政府案との重要な相違点でございます。  以上でございます。(拍手
  37. 長田裕二

    議長長田裕二君) 磯村修君。  磯村君、ちょっとお待ちを願います。  答弁の補足がございます。野田哲君。    〔野田哲登壇拍手
  38. 野田哲

    野田哲君 どうも失礼いたしました。追加でお答えをいたします。  政府案は本院の自衛隊出動禁止決議に違反するのではないか、こういう御趣旨の御質問であったと思いますが、一九五四年、自衛隊法の成立に際して、自衛隊海外出動せざることという趣旨決議を行っており、この決議宮澤総理も当時参議院議員として参画をしておられるわけでありまして、この決議趣旨は極めて明瞭なもので、状況が変わったとか国連要請があった場合は見直すとかいうような条件は一切付されておりません。したがって、この決議が正規の手続を経て変更されない限りは、今回の政府案は参議院決議に違反するものと私たちは考えております。  それから、何らかの条件をつければ憲法違反が解消して自衛隊海外派兵が可能になるのではないかという見解について求められておりますが、憲法九条の解釈がそのときどきの政府の施策にこじつけるように言葉の遊戯によって変えられることは、これは憲法という国の基本法としては当然許されることではない、このように考えているところであります。特に、昨年の国連平和協力法案の審議の際に、平和維持軍への参加憲法九条によって困難な場合が多いのではなかろうか、こういう趣旨の解釈が出されておりますが、今回の政府PKO法案では参加の前提条件を法律で明示したから合憲であるとの説は、こじつけも甚だしいものだと私どもは考えています。(拍手
  39. 長田裕二

    議長長田裕二君) 磯村修君。    〔磯村修君登壇拍手
  40. 磯村修

    ○磯村修君 私は、連合参議院を代表いたしまして、まず、政府提案PKO国連平和維持活動協力法案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部改正案について質問を行います。  国際情勢は激しく変動し、冷戦構造の解消によって新しい世界秩序確立が急がれております。これに伴い、国連役割、機能はますます重要性を増大しております。特に湾岸危機、戦争は、国連中心とした紛争平和的解決のとうとさを教え、我が国においても、財政、経済、人的貢献が大きな責務として課せられてまいりました。  このときに当たり、政府はさきの臨時国会においていわゆるPKO法案を提出し、今国会での早期成立を求めております。この法案は、大胆にも憲法論議を引きずる自衛隊海外紛争地域派遣し、PKF国際平和維持軍参加させることを骨格としたものであります。それだけに、PKO平和維持活動自衛隊という強い印象を国民に与えてしまい、本来幅広い分野にまたがる国際平和協力の意義をわかりにくくして、PKO論議の広がりと深まりを妨げていることは確かであります。総理はこの点とう受けとめますか、お伺いいたします。  また、武力による威嚇、武力行使も想定されるPKF国連平和維持軍への自衛隊参加という我が国のこれまでの基本方針を変える重大な事柄について、いまだ国民合意ができていない状況の中でともかく自衛隊をという政府の考えは、そこに自衛隊があるから活用するという、余りにも便宜主義的であり、なぜ今国連平和維持活動自衛隊参加しなければ国際貢献にならないのかという疑問が生ずるのであります。この多くの国民の疑問に対して総理の答弁を求めます。  PKOは、平和の回復、平和の維持、平和の創造的発展への貢献というように、もろもろの段階と分野があります。しかし、これをめぐる論議はこれまで余り行われておりません。これからは、我が国にふさわしいPKO分野を選択していく議論を深め、国民合意形成していくことが肝要と考えます。  私たち連合参議院は、国際平和維持活動の状況を地中海のキプロスに検証しました。御承知のように、ここではギリシャ系住民とトルコ系住民の間に起きた武力紛争の結果、一九六四年三月以来実に二十七年間にわたり平和維持活動が行われているところであります。現地では、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、アイルランド、オーストリア、カナダ、それにオーストラリアとイギリスの八カ国から成る二千百三十七人の軍人と三十九人の市民警察が、紛争の再発防止と秩序維持に当たっております。いわゆる緩衝地帯のバッファーゾーンと呼ばれる停戦ラインではキプロス軍とトルコ軍が対峙しており、狭いところでは数メートルの至近距離でお互いに銃を構えてにらみ合い、周辺にある双方の監視所の様子も確認できました。  平和維持軍の現地指揮官の説明では、停戦の合意後、銃の撃ち合いはないものの、石の投げ合いや悪口の言い合いは日常茶飯事であるということで、一触即発の状況にあることは確かであります。平和維持軍は停戦ラインをパトロールして双方の行動の監視に当たっておりますが、その際武器は持っておりませんでした。この点、現地の指揮官は、武器を持たないことが最大の安全だと強調しておりました。  しかし、一触即発の状況の中で、一たん有事の状況となったときを想定したとき、果たして法案どおり、伊戦合意が崩れてPKOを中断あるいは終了して我が国は撤退できるのか、また武器使用が適切な自己判断によって、身体、生命の自衛のために必要最小限の使用にとどめることができるのかどうか、さらに、国連任務の遂行を実力で妨害されたときどう対処するのか、PKFの一体となった行動の中での指揮権の問題など、さまざまな疑問を払拭することはできません。これは、先ごろ明らかとなりました国連のガイドラインと政府見解とかなりの相違があることでも明らかであり、疑問は深まるばかりであります。  総理は、一たん有事の際の行動法案どおり的確に対処できるとお思いでしょうか。また、政府見解とガイドラインとの相違点についてどのように解釈しているのか、お伺いいたします。  このように、法案による自衛隊平和維持軍への参加は多くの疑問を抱えております。海外に目を向けたとき、中国や韓国など近隣諸国自衛隊海外派遣に懸念する態度を我が国に示しているのは、PKO協力自衛隊のいわゆるPKF参加という一足飛びに飛躍した論理を進めようとする姿勢政府がかたくなにしているからであります。これは、アジアの人々が過去の悪夢からまだ解放されていないからであり、我が国に対する不信感が根強く残っているからではないでしょうか。この点、総理はどのように受けとめておられるか、お伺いいたします。  PKOへの参加は、大多数国民の支持を得てこそ国の誇りとして行える活動であります。その意味において、幅広い国民合意参加の上に成り立つ視点からPKO分野を選択すべきであります。  この視点に立ち、連合参議院は、我が国憲法はいわば非軍事国家として国際社会貢献することを世界に宣言したことを自覚し、その基本的理念にのっとり、次のように考えます。  自衛隊平和維持軍への参加は回避する。平和協力隊は別組織とし、採用された隊員の任期終了後の原職への復帰を保障する。この協力隊は海外への災害救援にも活用する。自衛隊能力、経験を活用する場合、自衛官は退職を条件に協力隊に参加する。この場合、非武装の停戦監視活動への参加は詠める。協力隊の業務民生一般を原則とする。協力派遣の場合、国会承認を必要とする。  以上のことを基本として、法案の見直しを求めるものであります。総理見解をお伺いいたします。  また、協力隊は災害救援役割もあわせ持つ組織として活動できることが望ましいと考えますが、あわせて総理の御所見をお聞かせください。  我が国国際の平和と安定のために貢献していくに当たって、自衛隊は専守防衛という任務目的があっての存在であり、それを安易に他の任務に活用するというのはいかにも便宜主義としか評価できないのであります。自衛隊平和維持軍参加の法制化をむやみに急ぐより、非軍事民生面での協力体制確立することがむしろ我が国の急務であると考えます。今、国論を分けている自衛隊海外派遣問題は、非軍事民生面でのPKOの実績と成果、さらに我が国憲法論議の醸成と国民世論の動向を見守りながら、改めて検討しても遅しとしない課題であることを重ねて強調しておきます。  最後に、連合参議院は政府に対して提案いたします。  国際の平和と安定のために活躍する各国のPKOの要員を育成する国連機関としてのトレーニングセンターを我が国に設置してはいかがですか。これは国連機能の充実を図ることであり、平和憲法理念世界に示すことにもなり、あわせて大きな国際貢献になることと考えます。総理の考えをお伺いし、政府案に対する私の質問は終わります。  一方、社会党提出の国際平和協力活動等に関する法律案について、発議者にお伺いいたします。  この法案は、我が国憲法平和主義国際協調主義理念に沿って、国際平和維持活動と人道的な国際救援活動目的を掲げており、提案趣旨に敬意を表するものであります。  私たち連合参議院は、国連平和維持活動参加していくためには、幅広い国民合意参加の上に成り立つ視点に立った活動分野を選択することが肝要と考えておりますが、社会党が政府案に対して独自の法案を提出した大前提はどのようなことか、お伺いいたします。  また、法案では、国際平和協力活動と人道的な国際救援活動実施するための常設の専門機関を設置することにしておりますが、この機関の具体的な規模と機能はどのような内容が、また設置の必要性についてお伺いいたします。  私たち連合参議院は、政府案に対して、自衛隊は専守防衛という任務目的があっての存在であることを主張しております。これに伴い、非軍事民生面での協力体制確立が必要となりますが、この点、発議者は具体的にどのような構想をお考えか、お伺いいたします。  連合参議院は、国際の平和と安定のためにPKOの各分野で活躍する各国の要員を育成する国連機関としてのトレーニングセンターを我が国に設置することを政府提案しております。これは、平和に対する若者たち国際交流の場としての機能を果たすことにもなり、大きな国際貢献にもなるものと考えております。社会党は、提出法案趣旨に沿ってそのような構想をお持ちか、お伺いいたします。もし構想があるならば、具体的にお伺いいたします。  国際社会での我が国平和協力は、憲法理念に沿って、非軍事民生一般を原則とすることが基本であると考えます。しかし、PKOは平和維持のための軍事知識が求められる分野もあります。この点、議論の分かれるところではありますが、非武装の停戦監視活動に退職自衛官を活用することについて発議者はどのように評価なされるのか、お伺いいたします。  国の法制度は、時代とともに生きながらさまざまな解釈が加えられ、その存在が形骸化していくこともあります。政府提案のいわゆるPKO法案をめぐる憲法解釈はそれを象徴しているかのようにも見えます。発議者はこの点どうお考えがお伺いいたし、私の質問は終わります。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  41. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) PKO自衛隊というような印象が非常に世の中に強くなってしまって、この問題についての広がりと深まりを妨げてしまったのではないかという御指摘がございました。  確かに、こういう問題を国会で御審議願いましても、やはり問題になる点が当然一番御審議の対象になりますし、また報道もそうでございますから、そのようなうらみが確かにあると存じます。したがいまして、私どもとしても、御審議を通じまして全体についての御理解をできるだけ得るように、さらに努力をいたさなければならないと思っております。  御案内のように、事実におきましては、この法案は、国連平和維持活動及び人道的な国際救援活動に迅速な協力をする、そういうための体制を整備することでございますし、また、国以外、政府以外の人々に対しても物資協力等々を求めるということで、広い意味での国際平和努力に寄与したいと考えているところでございます。政府といたしましては、確かに、より深い理解を国民にいただきますために、御審議を通じ、その他の方法で努力をいたさなければならないと思っております。  なぜ自衛隊参加しなければならないのかということについてでございますけれども、この法案は先ほどから申し上げておりますようた目的を持っておりますから、我々が人的な面においても最大限の貢献憲法のもとでいたしたいということからこういう法案を御提案いたしました。PKOそのものは、ノーベル平和賞を受賞したことでも明らかなように、いわば非強制中立説得による行為でございますので、そのことは我が国憲法との関連で問題がないことは御理解をいただけるであろうと思いますが、なぜ自衛隊をという点について考えますと、先ほど磯村議員からキプロスの事例についてお話がございました。  確かに、このキプロスのケースは国連としても非常に異例な長い難しいケースではございますけれども、おっしゃいましたように、武器を持たぬことが最大の安全であるというような、かなりしばしば緊迫した仕事であるであろうと思われます。その場合に、いわば専門的な訓練のないボランティアの方々で果たしてそういう仕事にたえる一であろうか。殊に、各国からそういう経験のある人たちが出てこられまして共同の仕事をするわけでございますから、やはりそれにはかなりの訓練があり組織力がありませんとなかなか難しい仕事をやり切れぬのではないかということを考えておりまして、そのためには、自衛隊にはそのようなノーハウがある、蓄積もあるというふうに考えておるわけでございます。  それから、しかしこの法案は、また我が国独自の立場から国連のいわゆるマニュアルなり標準的な行動規範とかなり違うことを考えておるけれども、それは本当にできるのかというお尋ねでございました。  これは、我が国我が国憲法を持っております限り、ほかの国と同一にならないことは私はこれは当然のことであるし、やむを得ないことだと考えておりまして、例えば紛争当事者間で存在していたはずの停戦の合意がなくなってしまったというようなときには、これは平和協力仕事はできなくなる、平和維持協力はできなくなることでございますから、客観的にそれが明らかである場合にはその認識は一般であろうと思います。我が国だけが派遣を終了させるということでなくて、国連との関係でもそこは十分理解が客観的にできるようた状況ではないかというふうに私は考えております。  また、そのような我が国の特異性と申しますか、この法案の持っております特異性は、国連の事務当局に対して十分我々の方針として説明をいたしておりまして、それは国連の了承いたしておるところでございます。また、現実に具体的な取り決めを結びます場合にも、我が国が自発的に進み出て協力をすることでございますから、それが国連にとって不都合である場合には、これほどうも合意ができないことはやむを得ませんけれども、国連としては我が国立場を十分に理解しておるというふうに考えております。  同じような問題についてでございますけれども、武器の使用につきまして国連は、要員の、メンバーのつまり生命等を守るため、もう一つ、任務の遂行を実力でもって妨げる企てがあればそれに対抗して武器使用をしてもよろしいと言っておりますけれども、御承知のように、後者の方は我が国ではそういうことをしてはならないというふうにいわゆる五原則で定めてございます。そういたしますと、それは我が国憲法に抵触する事態に発展をする危険があるからでございますが、それだけに、この仕事に従事する協力隊員諸君は多少つらい立場に立つかもしれません。しかし、そうではありましても、事態我が国憲法に抵触するようなことに発展することはあってはならないというのがこの法律趣旨でございまして、それは国連当局も了解をいたしておるところでございます。  それから、アジア諸国のこの問題についての反応でございますが、中国、韓国につきましては、過去の記憶がいろいろにございますので、我が国の意図は恐らく了解しながら、十分に注意をしてほしいということを申しております。当然のことであると思いますので、我々もそれは十分に心構えに置いておかなければならないと存じております。  それから、自衛隊について、いわゆるPKFの部分を除く、そのような内容法案を変えることについてはどう思うかというお尋ねでございました。  これは、恐らく冒頭におっしゃいましたPKO自衛隊というやや短絡的な印象にかんがみての御提案であろうかと存じますけれども、やはりこの国連平和維持協力ベの一番大事な部分は、停戦の状態を平和に発展させていくというその部分でございますので、民生一般にそれを限定するということになりますと十分な国際貢献を行ったことにならないのではないかという考え方を持っておりまして、そのこと自身が無意味だと申し上げておるのではありません。無意義だと申し上げておるのではありませんが、苦労のあるところは何となく避けているのかということは、私はよろしくないというふうに考えております。そういうことにはやはり自衛隊の経験と組織を活用いたしたいと思っておるわけでございます。  なお、本法に基づきまして設置される国際平和協力隊は、人道的な国際救援活動として紛争による災害に際しても救援、復旧活動を行いますが、そのほかに、国際緊急援助体制の一層の充実を図りますために自衛隊能力国際緊急援助活動に活用すべく、本法案と並びまして緊急援助隊法改正案を御提案いたしておりますところでございます。  それから、最後に、いわゆるこういうPKO要員の訓練、研修についてトレーニングセンターを考えてはどうかという御指摘がございましたが、ただいまのところ、加盟各国が自分のところで研修をやっておるようでございまして、総合的なそういうセンターを置けという話は出ておらないように存じますが、いずれにしても、我が国として我が国自身の人々の教育訓練体制を整備しなければならないというふうに考えております。(拍手)    〔野田哲登壇拍手
  42. 野田哲

    野田哲君 連合の磯村議員にお答えをいたします。  まず第一は、今回私どもが対案を提出した大前提は何か、こういう御質問でございますが、国連平和維持活動の果たす役割、とりわけ非軍事民生文民活動役割はますます重要になってきているにもかかわらず、政府対応は今日まで放置されたままになっています。今回の政府のいわゆるPKO法案は、軍事的な分野だけでなく、今まで放置されていた文民による民生分野活動までこの際自衛隊派遣して行わせようとするもので、初めに自衛隊派遣ありきという、PKOではなくてPKF法案と言ってもいいもので、私どもとしては、これは憲法上許されない、このように考えています。  私どもは、このような政府・自民党の国際貢献策に名をかりた自衛隊派遣法に強く反対をし広く国民に訴えるためには、非軍事民生文民による国際貢献策を具体的に法案として提出して国会での御審議に供するとともに、国民の皆さん方の御検討をお願いすることが、野党第一党として、特に与野党が逆転をしている参議院の責務として対案を提出したものでございます。どうぞよろしく御理解のほどお願いいたします。  次は、専門機関を設置するその規模能力をどう考えているか、こういう御質問でございますが、国際的な平和協力のための活動分野、特に民生分野、人道的な分野活動は広範多岐にわたっており、国連からの要請に対して機動的に対応できるよう、要員を常に確保してトレーニングをしておくことが極めて重要であります。そのために、目標としては千人の派遣能力を確保することとして、当面は三百人の常勤体制を予定しているところでございます。  次は、非軍事民生面の貢献についての御質問でございますが、現在まで国連要請によって世界各地紛争地域派遣されたPKO、いわゆる平和維持活動は二十三回に及んでいると私どもは承知をしております。その平和維持活動には、平和維持軍停戦監視団による軍事的な分野だけではなくて、非軍事民生分野が数多く含まれていたにもかかわらず、今日まで政府はそれに対して何ら人的な貢献策をとっておりません。政府が今までやってきた非軍事民生分野での人的貢献といえば、地方自治体から延べ二十七人の地方公務員を選挙監視のスタッフとして派遣しているだけであります。  本年一月の「平和維持活動における文民の活用」という国連事務総長報告に見られるように、近年PKOにおける文民役割が高まり、日本政府も外務省から、将来重要な役割を果たすと思われるPKOの一つである文民について日本文民貢献を増大させるための責任ある部局の設置を検討している、こういう内容の文書を国連に提出しているわけでありますけれども、何ら具体的な措置がとられていません。  今回の私どもの提案は、憲法精神を守り、政府も今まで自衛隊任務は専守防衛と繰り返し強調しているわけでありますから、それを踏み越えないで非軍事的な貢献策をとろうとするならば、民生分野文民によって積極的に進めることこそ日本のとるべき道と考えているところであります。そのための具体的な構想として、常設の国際平和協力機構を設立することを御提案しているところであります。  次に、連合が御提唱になっている国連機関としてのトレーニングセンター等の問題でございますが、最近の報道によりますと、海外協力事業団への参加の希望が非常に多いということが先般も報道されております。これは、青年の国際貢献への意欲が非常に高いことを示しているものと思われます。私どもの提案は、常設の国際平和協力機構によって必要な要員のトレーニングを行うことにしておりますが、連合参議院が御提唱されている国連機関としてのトレーニングセンターが設置されることについては賛成であり、これと連携をすることでなお大きな効果が期待できるものと歓迎をいたしております。  次は、停戦監視活動に退職自衛官を活用することについてでございますが、今回の私どもの提案では退職自衛官を停戦監視活動に活用することは考えておりません。それは、私どもの承知しているところでは、今までの実例によると停戦監視団の構成は、非武装ではあっても現職の軍人によって構成されるということが国連の決定であると聞いております。また、戦時国際法の上からいって、停戦監視団のメンバーが不測の事態に巻き込まれた場合に、現職の軍人でなければその対象にならないというふうに承知をしております。国連での決定が、今後、退職軍人でも可能ということであり、また戦時国際法でも認められるということであれば、今後の検討にまちたいと考えております。  PKO法案憲法解釈について最後にお尋ねがございました。  憲法九条の解釈が、そのときどきの政府の施策にこじつけるように言葉のもてあそびによって変えられていくことは、私どもは、国の基本法である憲法で到底許されることではないと考えております。昨年の国連平和協力法案の審議の際、平和維持軍への参加憲法九条によって困難な場合が多いのではなかろうか、こういう憲法解釈が政府から出されております。今回の政府PKO法案では参加の前提条件を法律で明示したから合憲であるとの説はこじつけの最たるもので、私どもは到底容認できない立場に立つものでございます。  以上でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  43. 長田裕二

    議長長田裕二君) 猪木寛至君。    〔猪木寛至君登壇拍手
  44. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 私は、民社党・スポーツ・国民連合を代表して、また、私どもに寄せられた多くの国民の素朴な疑問や声を国会に反映させるために、宮澤総理に質問を行うものであります。  さて、ただいま議題となりました国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案に関して質問を行う前に、先日、衆議院国際平和協力特別委員会で行われた強行採決とそれによる国会の混乱の責任を行政府の長である総理がどのようにお考えか、お尋ねしたいと思います。  総理、あなたは、海部前総理を軽量内閣と批判し、今日の政局を乗り切るには本格派内閣でなければならないと総裁選に打って出ました。国民は、政策通、外交通を自任し、本格派内閣を標榜する宮澤総理の登場に対して、歴代二位という高い内閣支持率によってその期待感をあらわしたのです。  ところが、内閣発足後わずか一カ月という極めて短い間に、本格派内閣という看板のメッキがはがれてしまいました。日本の進路にかかわる重大法案を十分に議論を重ねずあのような強行採決という形で突破したやり方は、国民の政治不信を深め、アジアを初めとする諸外国にも自衛隊派遣に対して不快の念を抱かせる結果となりました。また、多くの国民からの批判の声に対して総理はどのような説明をされるのか、お尋ねいたします。  今日、日本国際貢献について多くの国民がその必要性を感じ、国民のコンセンサスが形成されつつある中で、それを踏みにじるような問答無用という力による議会運営は極めて遺憾と言わざるを得ません。  総理、あなたは強行採決の混乱について責任を問われたとき、行政府と立法府は違うので私は関係ないといった談話が報道されていますが、これが事実とするならば、本格派内閣として登場した総理のリーダーシップはどこにあるのでしょうか。あるいは、PKO法案が海部前内閣からの置き土産で、自公の数で押せば何とかなるのではないかといった安易な考えを持っておられたのではないでしょうか。この二点についてお尋ねをいたします。  さらに、委員会の強行採決についてはシナリオがあったとする報道があります。また、委員長席のマイクが飛び、やじと怒号による乱闘劇が筋書きによって行われたとするならば、これは国民に対する重大な裏切りと言わざるを得ません。  総理にお尋ねいたします。まず、この異常な事態の責任と真相を明らかにしていただきたいと思います。日本国は国会開設百年の歴史を持ち、民主主義国家として議会制民主主義の制度を持っております。この立派な制度に魂を入れるかどうかは、それを運用する我々議員一人一人の責任であると同時に、総理、あなたの責任は重大と言わなければなりません。総理は今後このような強行採決による法案処理という前近代的な議会運営を行うことがないよう、その決意と対策をお尋ねいたします。このことは、本格派内閣を旗印に登場した宮澤内閣の責任として、ぜひとも行っていただきたいと思います。  さて、本題の質問に移りたいと思います。  既に各党間でさまざまな論議が行われていますが、いわゆるPKO法案趣旨に関して民社党・スポーツ・国民連合は、国会承認が事前であれ事後であれ必要との見解であります。なぜ。ならば、PKOの先輩であるカナダでも、部隊単位以上の参加は慣例により議会の事前または事後の承認を義務づけています。シビリアンコントロールとは、国権の最高機関たる国会自衛隊行動をチェックすることで、国会承認こそが最大のシビリアンコントロールであります。  また、PKOの前身とを言える北欧国連待機軍は次のような原則をもって組織されました。  第一の原則として、国連平和維持活動のみに参加し、国連憲章第七章の軍事制裁に待機軍を使うことはあり得ない。したがって、攻撃的な任務は持たず、そのような戦闘を想定しない。ただし、自衛権は有するとしています。  第二の原則として、待機軍の参加は、国連総会または安全保障理事会の決議に基づき、その委任を受けた事務総長の要請によって各国が独自の判断で決定する。  第三の原則として、待機軍派遣には、紛争当事国は国連の駐留と活動を認め、派遣国の参加に同意することが前提条件となるとしています。  さらに第四の原則として、国連の事務総長からの要請があった場合でも自動的に応じることはない。それは、各国が独自の情勢判断をした上で、国民の理解と支持が得られた後初めて実施されます。  そして第五の原則として、派遣後、国連の指揮と管理の下に置かれるとしています。  以上のことからも、PKO参加に関して事前または事後の国会承認が必要なのは国際的常識とも言えると思います。総理がこのような国際的常識をどうお考えになるか、お聞かせください。  次に、今日の日本は平和ぼけと言われていますが、総理自身の平和の定義に関してお伺いしたいと思います。  日本においては、戦争のないことが平和であるとする意見が一般的です。それはもっともな意見でありますが、一たび目を世界に転じたとき、貧困、飢餓、テロ、災害、疫病などが多くの国民を苦しめています。その一つ一つの問題が解決され安定した生活が保障されて、初めて真の平和が訪れるのではないでしょうか。  さて、私は、政治の場に出て二年余りが経過しましたが、この間世界の二十数カ国を訪れ、国際社会の中での日本役割について私なりに考えてまいりました。  昨年八月二日、イラクによるクウエート侵攻によって始まった湾岸戦争はまだ記憶に新しいことだと思います。湾岸戦争は、米ソの冷戦構造が崩壊した直後に起きた最初の戦争であり、ポスト冷戦の地域紛争世界がどのように回避できるかを問われたケースでした。イラク対多国籍軍という構造は必ずしも国連のリーダーシップによるものではなく、残念なことに、ことしの一月十七日に戦闘の火ぶたが切られました。  私は、昨年九月十八日に初めてイラクに入って以来、十月二十四日と十一月三十日、そして多国籍軍の空爆のさなか二月二十日の都合四回、バグダッドを訪れました。最初のとき、私は出発の前夜、妻と水杯を交わして出かけたことを思い出します。そのときの率直な気持ちは、戦争を回避するために一体自分に何ができるのだろうか、それを知るためには命がけでぶつかってみなければ道は開けないという思いでした。バグダッドに着いてみると、世界各国国会議員や平和団体が戦争を回避するための方策を探りに集まっていました。そして、それぞれの国があらゆるチャンネルを駆使してイラク政府との交渉を行っていました。  ところが、日本政府はその当時何を行っていたのでしょう。国会国連平和協力法の審議に没頭し、戦争回避のためのリーダーシップという国際的に重要なポジションをみずから無にしてしまったのです。このことは、イラクに行ってみて初めて、日本が平和のための重要なポジションにあることがわかりました。イラク政府日本政府に仲裁に入ってほしいと信号を送り続けていたのです。しかし、当時は、フセインは悪だという情報に覆われ、とても非戦による平和などという議論は主流になり得ませんでした。  私は湾岸戦争の中で多くの教訓を学びました。その一つは、日本には日本の論理があるように、イラクやアラブにはそれぞれの論理があるということです。戦争を回避するために一万の論理だけで物を見ることは、危険性と情報の隔たりが必ずあるということです。  さらに、ポスト冷戦の世界の新しい枠組みは今まさに始まったばかりで、模索の分野であるということです。二十一世紀に向けて世界の平和をどのように達成したらよいのか、そのことに最大の英知を結集すべきときではないでしょうか。湾岸戦争の空爆の下で、一体何人の人々が命を落としたのでしょうか。事実、私も空爆の下をかいくぐりながらバグダッドで眠れぬ夜を明かし、その恐怖を体験いたしました。戦争は絶対に悪です。よい戦争も悪い戦争もありません。  かつて、チャップリンは映画「殺人狂時代」の中で言いました。社会で一人殺せば殺人罪で裁かれるが、戦争で百人殺せば英雄になると。湾岸戦争では日本企業の人々も人質となり、日本に残された家族も眠れぬ日々を過ごしました。私は、日本がリーダーシップをとって、戦争のない世界秩序をつくるために、日本PKOの創設を訴えてもいいのではないかと思います。この点について総理に御所見をお伺いいたします。  さて、PKOであれどのような国際貢献であっても、生命の危険は常につきまどうものであると認識しなければならないと思います。総理はフランスの「国境なき医師団」の活動を御存じでしょうか。彼らはボランティアにもかかわらず勇気ある医療活動に従事し、不慮の死を遂げることも少なくないと聞きます。それに比べ政府提案するPKO法案においては、危険な地域には行かない、あるいは危なくなれば撤退するなどと隊員活動を規定していますが、総理は、こんな中途半端なことで国際的平和貢献のリーダーシップがとれるとお思いでしょうか。  私は、昨年、アマゾンに駐留する軍隊と厳しい自然環境の中で二週間ほど行動をともにし、つぶさにその活動を調査しました。アマゾンにはコカインの秘密工場や犯罪者の越境などがあり、彼らはジャングルの中で命がけの活動をしています。  政府は、国際的なメンツやつじつま合わせにとらわれず、真の国際貢献には生命の危険が伴うことを国民の前に明らかにすべきではないでしょうか。総理にその覚悟はおありか、お伺いいたします。  また、今回のPKO論議では、送られる側の自衛隊員とその家族の気持ちが忘れられていると思います。一たんPKF参加すれば、隊員は常に生命の危険と背中合わせの状態にあると言わなければなりません。総理は、こうした隊員や家族の側に立った気持ちを持ったことがおありでしょうか。そして、隊員や家族に対する新たな制度的補償をお考えでしょうか。  また、私は、隊員日本を代表して、誇りを持ってPKO参加することが大切だと思います。そのためには国会承認によって送り出すことが不可欠だと考えますが、総理はどのようにお考えですか。明快な御答弁をお願いいたします。  以上をもって政府案に対する質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  45. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) PKO法案は、衆議院におきまして長時間にわたり終始真剣な御論議がございましたが、衆議院国際平和協力等に関する特別委員会における採決に際しまして混乱を生じました。まことに残念なことでございましたが、各党の誠意ある対応ぶりによりまして展望が開けるに至りました。関係者の御努力に敬意を表する次第でございます。  なお、私の発言につきまして御指摘がございました。  実は、廊下での立ち話でございましたので十分徹底しないところがあったかと存じますけれども、申しました趣旨は、衆議院PKO特別委員会においては各党の御協力によって時間をかけて慎重かつ御熱心な御審議をいただいていた、また政府としても資料の要求等につきましても誠意を持って応じてまいった、こういうことを申したわけでございますけれども、この委員会の状況について政府はどのような責任を持つかという趣旨の質問でございましたので、それは国会の御審議のことでございますから、三権分立の立場からいえば政府はそういうことについてみだりにコメントをすべきものではない、差し控えるべきであろうという原則論を申したところでございますけれども、徹底を欠いた嫌いがありましたことは残念でございました。  それから、この採決につきまして諸外国の反応ということを言われましたけれども、特にこの採決についてと申しますよりは、先ほどから申しますように、この法案によって我が国国際の平和に協力をしたいということについての理解は、これはわかっているということなのでございますけれども、中国、韓国などについては、過去のことがありますから十分慎重に気をつけてほしいというそういう反応がございます。それはもっともなことであって、私どもとしても十分心にとめておかなければならないと考えております。  それから、この法案は何とか数で押せばいいと考えているのではないかということでございますが、もとよりそういうことはございません。本院における御審議によりまして、各党、また広く国民各位の十分な御理解をぜひいただきたいと思っております。政府といたしましては、国会が十分な御審議をされますために誠心誠意お答えをし御説明をいたしまして、できるだけ多くの方の御賛同を得たいと考えておるところでございます。  それから、PKO参加国会承認が多くの国において必要になっているということを御指摘になりました。  これは外務省を通じてよく調査をさせておるところでございますけれども、国会承認を条件としている国はむしろそうたくさんはないというふうに報告を受けておりますが、なおよく調査をいたしてみます。  それから、平和ということをどう考えるのかということでございました。  これは前にも申しましたが、冷戦後の時代というのは新しい平和秩序構築される時代と考えておりますが、それによって大幅な軍縮が行われる、その軍縮が行われることによって非常に膨大な資源と資金とが放出されるはずでございますから、いわゆるその平和の配当は、まずいわゆる南北問題、南にいる人たちが最大の受益者でなければならないであろう。そういう意味で、国家間や民族間の紛争を初め、貧困、飢餓などの問題にこの平和の配当が費やされる、それが冷戦後の最大の課題であって、我が国としては憲法のもとにそういう思想でやってまいりました。先頭に立ってこの動きを支援してまいりたいと考えておるところでございます。  それから、本当の国際貢献というものには実は命の危険が伴うということを国民にやはりわかってもらわなければならないという御指摘がございました。  昨年の湾岸危機に際して、財政的貢献ばかりでなく人的貢献もしなければならない、汗もかかなければならないというそういう世論が起こりました。その汗をかくということの意味は、確かに平和を構築するためにはただ事態を傍観していていいわけではない、やっぱりそれに積極的に参画することはいろいろな問題があって、決してそれは安易、安楽なことではないということと私も考えております。  なお、これはあってならぬことでございますけれども、万一の場合の政府の補償等についてもお尋ねがございました。  国家公務員災害補償法等による普通の補償措置がございますけれども、賞じゅつ金につきましても検討を進めておりますし、場合によりまして、危険を伴う職務に従事する隊員にはさらに十分な措置をしなければならないのではないかというふうに目下考えております。  いずれにいたしましても、我が国隊員が誇りとやりがいを持ってこのPKO参加してもらわなければなりません。それは、PKOという仕事が非常に困難な、しかし人類の平和に貢献する崇高な使命であるということについての国民的な理解が高まることによって、これに従事する人々が仕事に誇りを持って従事するようにいたさなければならないと考えておるところでございます。(拍手
  46. 長田裕二

    議長長田裕二君) これにて質疑は終了いたしました。本日はこれにて散会いたします。     午後二時五十九分散会      ―――――・―――――