○谷畑孝君 私は、
日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま
政府から
提案されました
国連平和維持活動等に対する
協力に関する
法律案並びに
国際緊急援助隊の
派遣に関する
法律の一部を改正する
法律案について質問をいたします。
この二
法案は、戦後
日本の原点、すなわち、二度と
戦争への道を歩まないと誓った戦後政治の根本原理にかかわる最重要
法案であります。さらに言えば、
東西冷戦終結後の
世界の平和
秩序をどのように
確立するのか、
人類が、今、手にしている
歴史的可能性、この
歴史の前進に
日本が
貢献するのか、あるいは後退をもたらすのか、その重大な岐路に立った
法案であります。
宮澤総理、あなたは前代未聞の
衆議院での
強行採決を、
国会のことで
政府にはかかわりがないと発言されました。極めて無責任な態度であります。自民党の最高責任者は、
総理、あなたではありませんか。この
法案の参議院での審議は今始まったばかりであります。十分な審議を尽くすこと、そのために総裁にふさわしい指揮をとること、それをここで明言していただきたいと思います。
総理、今あなたはこの二
法案を参議院に付託されました。それでは、あなたは、一九五四年六月二日この参議院でなされた「
自衛隊の
海外出動を為さざることに関する
決議」、この
決議を無視するのでしょうか。この
決議の
提案者は、
自衛隊はいかなる場合にも
海外に出動しない、一度この限界を越えれば際限がない、それは太平洋
戦争の経験で明白であるとはっきりと述べています。
武力行使の有無にかかわらず、いかなる場合にも
自衛隊を
海外に出さないということが明確に述べられているではありませんか。しかも、あなたは当時この採決に賛成をなされたではありませんか。
総理、あなたは国権の最高機関である
国会の
決議を遵守すべき義務があります。私は、この
決議の
立場から、直ちに今
提案された
法案を撤回するよう要求します。
次に、私は
日本が
国際貢献に当たって踏まえるべき根本原理についてお伺いします。
日本の過去における侵略の
歴史を顧みるならば、
日本の外交政策はすべて、
国民の
合意と
アジア諸
国民の称賛と歓迎のもとになされるべきであります。
総理、そして
外務大臣、この
法案に対する
アジア諸国の抗議と懸念をあなたはどのように考えておられますか。
衆議院での委員会
強行採決が報ぜられたその日、フィリピンでは即座に抗議のデモが行われ、
日本大使館前にピケが張られました。韓国と中国は、
自衛隊が
海外に出ることについて、敏感な問題、慎重であらねばならないと再三にわたり反対の意思を表明したではありませんか。この十一月三十日、シンガポールのゴー・チョクトン首相は、
日本のカンボジアでの
PKO活動に言及し、
日本の軍備拡大を警告しました。
アジア・太平洋諸国の第二次大戦の記憶を呼び覚ましているのであります。この
法案への懸念と疑惑、
日本の
自衛隊に対する大きな不信、それは一体どこに原因があると
総理は理解しているのですか。お考えをお聞かせください。
この
法案審議の間に、我々はパールハーバー五十周年の日を迎えます。戦後四十六年が過ぎた今日、
総理、あなたは太平洋
戦争について、そしてそれに先立つ
我が国の
アジア諸国への行為が侵略行為であったと認めますか。さらには、その侵略行為の犠牲となった人々への補償、償いとしての補償をどのように果たすのでしょうか。明確なお答えをいただきたいと思います。
侵略であったことを認め、戦後補償が具体的に開始されない限り、
アジア諸国の懸念は消え去ることはないのであります。それが消えない限り、
日本の
国際貢献の効果は半減するのではありませんか。
総理、あなたの戦中、戦後にわたる
歴史認識を改めて問わなくてはなりません。自民党総裁選挙を前にして出版された「戦後政治の証言」という著書の中で、あなたは警察予備隊の創設にかかわって次のように述べております。「それまで国内の治安は米軍と、丸腰にちかい
日本の警察があたってきたのだが、第三国人の横暴などには手が出せず、そのつど米軍をわずらわせていた。このため、あるていどの装備を持った治安力がほしいと考えていた
日本人は少なくなかった」。
総理、この「第三国人」とはだれのことを指すのですか。(発言する者あり)そして、この表現が差別的呼称として使われてきた
歴史を御存じないのですか。今のやじは問題ありますよ。
在日韓国・朝鮮人の横暴を抑えるために警察予備隊が必要であったという
認識は、余りにも悪意に満ちた偏見ではありませんか。こうした
認識は、戦前、戦中、戦後を通じて韓国、朝鮮の人々を迫害し、人権抑圧した思想と全く同一のものではありませんか。こうした
認識がいまだにまかり通ること自体、我々
日本人がいかに過去の
戦争と侵略の責任に無自覚であるかを物語っているのであります。
総理、あなたの
見解を伺います。
総理、今こそ国権の最高機関である
国会で、
戦争責任問題、戦後補償問題
解決に向けた
決議を行うことが必要であります。与野党一致して
国会決議が実現できるよう、自民党総裁として指導力を発揮されるべきではありませんか。あなたの決意をお聞かせください。
戦争責任、戦後補償責任をあいまいにしたまま武装した
自衛隊を
海外に出すという本
法案が、
アジアの諸
国民に重大な懸念と脅威を与え、強い抗議を生み出すことは当然であります。
さらに、この
法案は
PKO協力法案などではなく、
国連の
PKO活動に名をかりた
自衛隊海外派兵
法案であることはますます明らかになっています。この
法案によれば、
日本の
PKO活動は
国連の
活動とは言えません。
国連の指揮によらず、
日本の主権の
行使として行われ、中断、撤退も
政府が独自に判断をし、
武器使用も
政府の定める
実施要領によるとしています。このように、
PKO活動の多くの部分に
日本の主権が留保されたこの
法案は、国権の発動としての
武力行使につながるのであります。これはまさに明確な
憲法第九条違反であります。この
法案は、審議をすればするほど次々に矛盾が明らかになっていく、まさにガラス細工の
法案です。
PKFは
国連事務総長による統一的指揮を原則にしています。この統一的指揮が行われるか否かは、
PKFの成否にかかわる最も重要な原則であります。しかも、この統一的指揮には
任務遂行上の
武力行使が含まれます。
国連の各種のガイドラインあるいはマニュアルの中でもこのことは明らかではありませんか。
政府は、さきの
国会では、
国連が主宰するのだから
国連の指揮の中に入るのかとの質問に、お説のとおりと答えていたにもかかわらず、今何、
国連の指揮は
武力行使を含むと指摘されれば、指揮ではなく指図だと答弁を変更しました。さらに、
総理、あなたは主権国家が
国連事務総長の指揮に従う義務はないとまで答弁したではありませんか。
国連の指揮下に入らない
PKOが一体どこにあるのですか。この答弁は
PKOの根本を揺るがすものであります。
総理の
見解を改めてお伺いいたします。
業務の中断はさらに矛盾を深めます。他の国の部隊が応戦をしている場合、
日本の部隊だけがその持ち場を離れ、中断することが可能でしょうか。しかも、
日本の部隊だけが中断したとしても、
PKF部隊全体が
武力行使をしているのであれば、その構成部隊である
日本も一体のものとして
武力行使をしたとみなされるのではないですか。
総理の
見解をお聞きいたします。
武器の使用について、一現場指揮官は、一切、撃てという命令はできないとされています。しかし、そんな軍隊が一体どこにありますか。
武器の使用という最も
組織的
行動を要求される場合において、現場指揮官の指揮がないなどということは現実を離れた空論にすぎません。防衛庁長官、これでは
自衛隊員の生命の安全も保障されないのではありませんか。御答弁をお願いいたします。
こうした矛盾点を無理やり踏み越えるならば、それは明らかに国権の発動たる
武力行使となるのではありませんか。平和
憲法の
枠組みの中で
国際貢献を考えるならば、
社会党が
提案した
法案にあるとおり、非
軍事・
文民・
民生を原則とする
PKO協力に落ちつくのであります。
国連の
PKOの諸原則とこの
法案との間には余りに大きなギャップがあります。標準運用手続いわゆるSOP、
訓練マニュアル等の資料は
法案審議に不可欠であります。
総理、あなたが
国連を
説得し、これらの資料を
国会に提出していただきたい。そのことの確認をこの場でしていただきたいと思います。
あなたは、この
法案と
国連の
PKO原則との矛盾のすべてを、
国連の了解を得ているとの一点で逃れようとしています。それならば、一体いつ、どこで、
国連のだれと、どういう
内容で了解を得たのか、それを文書で明らかにしていただかなければなりません。我々は立法府の
一員として、
国会の調査権に基づき、
国連に照会し、確認しなければなりません。
憲法の原則にかかわる重大な矛盾である以上、立法府として必要不可欠な手続であると考えます。
総理、そのことを確認できますか。御返答をお願いいたします。
総理、あなたは冷戦の終結を、単なる
軍事力の均衡による平和から、より永続的で安定した各国間の
合意に基づく平和を模索する好機と
評価されています。私はこの
総理の考え方には賛成いたします。冷戦後の
世界が
軍縮と
協調の
時代であることは間違いありません。しかし、そうであるなら、
総理、あなたはなぜ
PKOへの
自衛隊派遣にこだわるのですか。その真意は何なのですか。お伺いします。
冷戦の終結は、一方で
地域紛争や政治的混乱を生み出すこともあるでしょう。しかし、その
解決は、あなたが言うように、
軍事力によるのではなく
合意に基づく平和でなくてはならないのです。再びあの
湾岸戦争のような
解決手段がとられてはならないのです。
湾岸戦争は二十万人を超える死者を出しました。また、その一日半の
軍事費で
PKOの一年分の経費が賄えるのであります。油田の炎上は
地球環境を大きく傷つけました。これらの犠牲と損害が考慮されるならば、決して
武力による
解決を求めてはならないのであります。
国連の
安全保障理事国となった
日本の
総理として、あなたのお考えをお聞かせください。
東西冷戦後の新しい
国際秩序をいかにつくり上げるか、その中で
国連の
PKOをいかに活用していくか、
国連の
PKO活動のあり方が今まさに問われています。
現在、イラン、クウエート間に
停戦監視団が展開されています。この
PKOは、イラクの同意が取り消されても、
国連が必要と認める限り駐留されます。従来の
PKOとは違う
性格があるのです。しかも、この
停戦監視団を
派遣したアメリカは、その
紛争の一方の当事者であるクウエートと防衛協定を締結しました。この協定は、米軍装備のクウエートヘの配備、緊急時の米軍出動を取り決めています。この協定の締結によって、
国連の
PKOが展開しているところへ米軍が割って入ることが可能になっているのです。これは、
国連の
PKO活動が明らかな
戦争行為に巻き込まれることを意味するものであります。
総理、あなたのお考えをお聞かせください。
人道的
国際救援活動についても、との
法案は
自衛隊の部隊
派遣を可能としています。そして、その装備には何の制約もつけていません。
国連の認める装備という制約がないのであります。したがって、
紛争に巻き込まれる可能性のある
地域には絶対に
派遣しない、
武器を持っていく必要もないことを、
総理、ここで明言していただきたいと思います。
同時に、
国際緊急援助隊派遣法の改正案についても、今、これに
自衛隊を
派遣することについて
国民的
合意があるとは考えられません。
アジア諸国の
認識にも厳しいものがあることは再三指摘したとおりであります。
アジア各国の
PKO法案についての懸念や抗議は、
日本が防衛力を増強し続けながら、同時に
海外派兵のこの
法案を提出したことに原因があるのではありませんか。
現在の防衛計画の大綱は、七〇年代の
国際情勢を背景に策定されたものであります。しかし、米ソが互いをパートナーと呼ぶ今日の
国際情勢のもとでは、大綱そのものの抜本的見直しが必要ではありませんか。新中期防も、
実施から三年後の見直しを待たずに、直ちに見直されるべきだと考えます。来年度からの防衛予算の削減を行う用意があるのかどうか、
総理及び防衛庁長官に答弁をお願いします。
以上、明快な御答弁をお願いします。
次に、
社会党
提案の
国際平和協力活動等に関する
法律案について、
提案者に質問をいたします。
第一に、
提案の主な理由は何でしょうか。第二に、
政府法案との重要な相違点は何でしょうか。
第三に、
憲法の原則に照らし妥当な
内容であるかどうか、その点をお教えいただきたいと思います。
第四に、
政府は、
PKOは平和
維持と停戦監視しかないかのように宣伝し、非
軍事を
内容とする
PKOの余地はないかのように言っています。これについてどう反論をいたしますか。
第五に、
国会承認についてどのように考え、この
法案はどのように規定していますか。