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1991-12-17 第122回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十二月十七日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  十二月十七日    辞任          補欠選任     栗村 和夫君      森  暢子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鶴岡  洋君     理 事                 野村 五男君                 林田悠紀夫君                 北村 哲男君                 中野 鉄造君     委 員                 加藤 武徳君                 斎藤 十朗君                 下稲葉耕吉君                 中西 一郎君                 福田 宏一君                 山本 富雄君                 糸久八重子君                 瀬谷 英行君                 森  暢子君                 八百板 正君                 橋本  敦君                 紀平 悌子君    国務大臣        法 務 大 臣  田原  隆君    政府委員        法務大臣官房長  則定  衛君        法務大臣官房司  濱崎 恭生君        法法制調査部長        法務省民事局長  清水  湛君        法務省刑事局長  井嶋 一友君        法務省矯正局長  飛田 清弘君        法務省保護局長  古畑 恒雄君        法務省訟務局長  加藤 和夫君        法務省人権擁護  篠田 省二君        局長    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務  上田 豊三君        総局総務局長        最高裁判所事務  泉  徳治君        総局人事局長        最高裁判所事務  仁田 陸郎君        総局経理局長        最高裁判所事務        総局民事幅長   今井  功君        兼最高裁半所事        務総局行政局長    事務局側        常任委員会専門  播磨 益夫君        員    説明員        労働省婦人局庶  佐田 通明君        務課長     —————————————   本日の会議に付した案件 ○裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○裁判官育児休業に関する法律案内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、粟村和夫君が委員を辞任され、その補欠として森暢子君が選任されました。     —————————————
  3. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案及び裁判官育児休業に関する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。田原法務大臣
  4. 田原隆

    国務大臣田原隆君) 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して御説明いたします。  政府においては、人事院勧告趣旨等にかんがみ、一般政府職員給与を改善する必要を認め、今国会一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般政府職員の例に準じて、その給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案提出した次第でありまして、改正内容は、次のとおりであります。  第一に、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給は、従来、特別職職員給与に関する法律適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職職員俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職職員について、その俸給を増額することとしておりますので、おおむねこれに準じて、これらの報酬または俸給を増額することといたしております。  第二に、判事判事補及び簡易裁判所判事報酬並びに検事及び副検事俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職職員給与等に関する法律適用を受ける職員俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。  これらの給与の改定は、一般政府職員の場合と同様に、平成三年四月一日にさかのぼってこれを行うことといたしております。  以上が裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。  次に、裁判官育児休業に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  政府においては、最近における女性の社会進出家族形態変化等に伴い、育児仕事の両立を図る施策への社会的関心が急速に高まり、育児休業制度の普及が進みつつある現状にかんがみ、一般職国家公務員等について育児休業制度を導入するため、国家公務員育児休業等に関する法律案提出しているところでありますが、裁判官についても、これと同様の趣旨育児休業制度を導入する必要があります。  この法律案は、裁判官について育児休業制度を導入するための法整備をしようとするものでありまして、その要点を申し上げますと、第一は、一歳に満たない子を養育する裁判官は、最高裁判所承認を受けて、その子が一歳に達するまでの期間内において、育児休業をすることができることとしております。その承認請求は、育児休業をしようとする期間の初日及び末日を明らかにして、最高裁判所に対してするものとし、請求を受けた最高裁判所は、原則として、これを承認しな ければならないこととしております。なお、育児休業期間の延長の請求は、原則として一回に限り、これを認めることとしております。  第二は、育児休業の効果として、育児休業をしている裁判官は、裁判官としての身分を保有するが、報酬その他の給与を受けないこととしております。  第三は、当該育児休業に係る子が死亡した場合等一定の場合には、育児休業承認は失効することとするとともに、最高裁判所は、裁判官育児休業承認の取り消しを申し出た場合等一定の場合には、その承認を取り消すこととしております。  第四は、裁判官は、育児休業理由として、不利益な取り扱いを受けないことを明らかにしております。  第五は、退職手当に関する育児休業期間取り扱いについて、所要の規定を整備することとしております。  以上がこの法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  5. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 以上で三案の趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 糸久八重子

    糸久八重子君 まず大臣に、法務行政の基本についてお伺いをしたいと思います。  先月二十一日の委員会の際に、大臣から御就任のごあいさつをいただきましたが、そのときに大臣は、「法務行政に課せられた使命は、法秩序維持国民権利の保全にあると考えております。」とおっしゃいました。また、御就任時の記者会見でもいろいろ所信をお述べになっていらっしゃいましたが、当面の課題となっております外国人労働者の問題をも含めて、人権擁護に関する抱負とその御決意をお聞かせいただきたいと思います。
  7. 田原隆

    国務大臣田原隆君) ただいま委員からお話のありましたように、先日私の考えを述べさせていただきましたが、そのとおりでございまして、法務省仕事を大きく分けてみますと、法秩序維持分野と、それから権利保護その他を含めた人権分野とか入国管理分野とかございますが、法秩序維持する分野については検察が主として担当しておりまして、これについては検察を信頼し、厳正、公正、不偏不党、中立にやっておると信じて法務省に参りましたが、そのとおりでございまして、じっと見守っていけば十分果たせるというふうに信じております。  権利保護とかその他の一般的分野については、これも国民権利に属する問題でありますから、厳正、公正にやることはもちろんでありますが、必要書類の書式その他を含め、そして手続をするということについて大変時間を要する仕事が多うございます。そこで、国民に対するサービスの意味からコンピューターなどを導入して、そしてそういう仕事が速やかにできるようにやらなければいけないということ、あるいは入国管理につきましても、その事務が非常に煩雑であると同時に事務がふえてきておりますし、これについても適切に対処しなければならないので、コンピューター化を進めると同時に、定員増を図るとかそういうことで国民のニーズにこたえるように努力してまいりたい、このように考えております。
  8. 糸久八重子

    糸久八重子君 ことしは柳条湖事件から六十年、そしてアジア太平洋戦争開戦から五十年の節目の年に当たります。我が国は、現在まで日本軍国主義犠牲となったアジアの人々に衷心から謝罪することなく、小手先の賠償や経済協力で戦後処理をしただけで戦後補償の誠実な実行を果たしていないと私は思います。  中でも、朝鮮人従軍慰安婦問題は、日本植民地支配侵略戦争の最大の犠牲を生み出した問題であるにもかかわらず、今日まで歴史の暗部に隠され続けてきました。私ども社会党は、機会あるごとにこの問題について政府責任を追及してきましたし、先日、十一月十六日にはシンポジウムも開催したところでございます。今日、この問題は、日韓両国間の政治、外交問題として浮上し始めたといっても過言ではございません。従軍慰安婦問題も含めた戦後責任に対しての大臣の御所見を伺いたいと存じます。
  9. 田原隆

    国務大臣田原隆君) お答えします。  過去の忌まわしい戦争が韓国を初め多くの国々の人に耐えがたい苦しみを与えてきた、あるいは悲しみを与えてきたことは深く反省しなければならないところでありますが、戦後責任の問題というのはいろいろ具体的にはあると思います。いろいろ当省としても検討してまいりましたけれども、どうも当省の所管範囲を超えるものがほとんどでございまして、コメントをなかなか簡単にできるものではないというふうに考えております。  人権擁護的な意味でお尋ねになられる向きもありますが、我が法務省としても人権擁護局ができたのはずっと後のことでございますし、その当時のことにさかのぼってというのも不可能だし、大臣としてはなかなかコメントできないところでございます。
  10. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは先に進みますけれども、さきの国会借地借家法民事調停法の一部改正案成立をいたしました。その中で私が指摘いたしました改正法周知徹底必要性について、附帯決議にも盛り込まれたわけですけれども、法律成立後現在までの広報状況についてどうたっておりますでしょうか。
  11. 清水湛

    政府委員清水湛君) お答えいたします。  御指摘のように、衆参両法務委員会における附帯決議もございまして、私ども法律成立後その広報に努めているところでございます。  これまで実施した主なものといたしましては、政府広報テレビに出演する、これは大臣にも御出演いただいております。私もテレビに出て説明をいたしております。それから、新聞で中央五紙に内容についての大きな広告を出す、あるいは雑誌等にいろんな解説の記事を載せる、これはもう多数のものが出ております。それから説明会を開催する。これは大阪では左藤前大臣も御出席になりまして大変な盛況で説明会を開催したということになっております。そのほかに、パンフレットを作成してこれを配布する、相当大部のもののパンフレットを作成いたしまして、これを関係機関に配布いたしております。  それから、なお今後も予定しているものといたしましては、政府広報を引き続きする、これはテレビ雑誌新聞等を通じてやりたい、こういうことを考えております。それから説明会につきましては、東京で来年早々開催するということを予定しております。そのほかに、弁護士会とか司法書士会宅建業者団体、その他のいろんな団体から説明会の依頼がございますので、そういうものにも来春早々から精力的に出席して説明をいたしたい、こういうふうに考えております。  なお、法務省関係では、法務局長地方法務局長にあてまして周知徹底に向けての通知をいたしております。それから、建設省におきましては、都道府県知事あるいは関係業界団体にあてましてやはり周知徹底についての通達を出しておる。また、建設省では、定期借地権等の利用の推進を図るためにモデル契約等についての研究会を現在開催しておる、こういう状況でございます。  さらにこの周知徹底に対しましては、私ども精力的に努力をしてまいりたい、かように考えております。
  12. 糸久八重子

    糸久八重子君 民事局参事官室への電話による問い合わせ状況はどうなっておりますか。相談件数とか内容とかを概括的に御報告いただきたいと思います。
  13. 清水湛

    政府委員清水湛君) 相談件数は、一時多いときには百件というようなこともございましたけれども、最近は大体安定いたしまして三十件ぐらい、こういうことになっております。  内容につきましても、施行時期に関するもの、いつから施行されるのかというような問い合わせ、それから、既存の借地借家関係には更新等に 関する規定適用がないというふうに聞いているけれどもそれは間違いないかという確認的な電話、それから、定期借地権を早く利用したいんだけれども施行前にそういう契約をすることができるかというような内容のものでございます。  全体的な印象といたしましては、かなり周知が図られてきて、むしろその内容を確認するといったたぐいの電話が多くなっているということが言えるのではないかというふうに思っております。
  14. 糸久八重子

    糸久八重子君 新法施行に向けて所管省庁といたしまして、現在の準備状況はどうなっておりますでしょうか。特に、定期借地権登記に関するコンピューター状況等はどうなっておりますか。
  15. 清水湛

    政府委員清水湛君) 新法になりまして登記記載例が変わるというようなことがございます。そこで、現在登記記載例等について内容検討中でございます。その記載例が確定いたしますと、それをコンピューター処理するという形でのコンピューターのプログラムの変更も必要になる、こういうことになろうかと思います。  なお、建設省関係で先ほど申し上げましたけれども、定期借地権等契約書ひな形作成研究作業を続けておるということでございます。
  16. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、現時点で新法施行日は一体いつごろになる予定でございますでしょうか。
  17. 清水湛

    政府委員清水湛君) 内容周知徹底相当期間を要すること、あるいはそういう諸準備をする必要があるというようなことから、現在のところ来年の夏ごろを施行の時期ということにいたしたいということで準備中でございます。
  18. 糸久八重子

    糸久八重子君 どうもありがとうございました。  それでは、育児休業法についてお伺いをしたいと思います。  本法律案裁判官育児休業法でありまして、裁判官以外の裁判所一般職員、それから検察職員はどの法律でカバーをされるのでしょうか。それぞれの適用関係説明していただきたいと思います。
  19. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) まず、裁判官以外の裁判所のいわゆる一般職員についてでございますが、これは裁判所職員臨時措置法という法律がございまして、裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員、いわゆる一般裁判所職員の任用、給与服務関係について定めておりますが、これらの関係におきましては一般職国家公務員に関するもろもろの規定を準用するということになっております。国家公務員法でございますとか一般職給与法でございますとか、そういうものを準用しておりまして、いわゆる現行の育児休業法女子の教職員ですとか保母さんですとか、そういう方々育児休業法も現在この法律で準用するということになっておりますが、今般の国家公務員育児休業等に関する法律の附則の中におきまして、この裁判所職員臨時措置法改正して、準用する法律の中に国家公務員育児休業等に関する法律を加えるという改正をすることとされております。これによりまして裁判所一般職員一般職国家公務員と全く同様の形で育児休業制度が導入されるということになるわけでございます。  次に、検察官及びその他の検察庁の職員、これは一般職国家公務員ということでございますので、国家公務員育児休業等に関する法律がそのまま適用される、こういう関係に相なります。
  20. 糸久八重子

    糸久八重子君 裁判官育児休業法とそれから国家公務員に対する育児休業法案は同じ趣旨でありながら国家公務員法裁判官法の二本立てに提出をしたわけですけれども、一体その理由はどこにあったのでしょうか。
  21. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 今般の裁判官育児休業法を立案いたしました趣旨につきましては、先ほど大臣の方から提案理由説明で申し上げたとおりでございまして、民間の労働者につきましては先般の国会におきまして育児休業法成立を見て、間もなく施行されようとしているわけでございます。これを踏まえて一般国家公務員及び地方公務員についても育児休業制度を導入するという法制度準備されるという中で、裁判官特別職国家公務員でございますけれども、やはり同様の育児休業制度を導入する必要があるということから、私ども最高裁判所当局とも連絡をとりながら準備を進めてまいったわけでございます。  その中で、裁判官育児休業法をどういう法形式で立法するかということも検討してまいったわけでございますけれども、裁判官一般職国家公務員に比べまして、その地位、職務内容相当特殊性がございます。御案内のとおり憲法で強い身分保障を受けております。しかも、良心に従って独立してその職務を行うべきものと位置づけられておりまして、そういう性格上、その勤務の形態というのも時間単位でとらえることができない。自分の担当する事件については、必要に応じて時間外でも、あるいは休日でありましてもそれに対応しなければならないという特殊性を持っております。そういった特殊性がございますために、幾つかの点において一般国家公務員育児休業制度とは異なった内容にするということが必要な部分がございます。そういった理由に基づきまして検討の結果、国家公務員育児休業制度とは別建ての立法をするということにいたしたわけでございます。
  22. 糸久八重子

    糸久八重子君 司法修習生扱いはどうなりますでしょうか。
  23. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) お答え申し上げます。  司法修習生につきましては、育児休業の手当てはしてございません。御承知のように、司法修習生法律に関する理論と実務を身につけて法曹にふさわしい能力を備えることを目的といたしまして、二年間の期間の中で修習をする、こういう身分を持っております。そのために、この育児休業制度にはなじまない性格のものでございますので、育児休業制度は設けておりません。  ただ、修習生の中で女子修習生、最近ふえておりますが、そういう方々出産をされるという例も多数ございますけれども、修習生につきましては修習を要する期間のうちで九十日間修習をしなくてもそれは二年間の修習をしたことになるんだという取り扱いをいたしておりますので、その中で賄っているわけでございます。
  24. 糸久八重子

    糸久八重子君 司法修習生は、国家公務員でもなければいわゆる労働者でもありませんから、育休の外に置かれているというのはわかるのですけれども、司法修習生裁判所法とか、それから司法修習生に関する規則とか司法修習生規律等に関する規程とかそういうものを見る限り、労働者と位置づけられないのかなというふうにも考えるわけです。しかし、司法修習生給与に関する規則を見てみますと、その三条に、「司法修習生には、給与月額規定する給与のほか、一般職国家公務員の例に準じて、扶養手当調整手当住居手当通勤手当期末手当及び勤勉手当を支給する。」、そう書いてあるわけですね。これらのことから考えると、もう多分に労働者的要素があろうか、そう思うのですけれども、いかがなんでしょうね。
  25. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 確かに、御指摘になられましたように、司法修習生国家公務員ではございませんが、給与等の面で国家公務員に準じた取り扱いを受けていることは事実でございます。しかしながら、やはり二年間という期限を切られた身分でございますので、いわゆる今回の育児休業制度目的は長期的な勤続を促すという趣旨を含んでおりますが、それには若干なじみません。  それから、何よりも修習生は勉強をするといいますか、いわば学生的なところもございまして、そういった関係で採用いたしていないのでございますけれども、昭和六十年から元年までに採用されました五年間の修習生の中で女子修習生は三百二名おりまして、そのうち出産いたした者が十六名でございますが、この方々はいずれも先ほど申しました九十日間の範囲内で出産を終えまして 修習に復帰いたしまして、全員皆と一緒に卒業している、こういう状況でございます。
  26. 糸久八重子

    糸久八重子君 今もおっしゃいましたとおり、司法修習生に関する規則を見てみますと、六条に「司法修習生が病気その他の正当な理由によって修習しなかった九十日以内の期間は、これを修習した期間とみなす。」というふうに規定してございますね。ですから、私もこれを見まして、それではこれから考えると九十日以内ならば育児休業としてとっても差し支えないのかなというふうに考えていたわけですけれども、それでよろしゅうございますか、確認します。
  27. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 育児休業と呼ぶかどうかは別といたしまして、九十日以内お休みになっても、それは二年間の修習を終えたという取り扱いにいたしております。ですから、趣旨といたしましてはおっしゃるとおりでございます。
  28. 糸久八重子

    糸久八重子君 そうすると、その九十日というのは産前産後休暇も含めて九十日ということになるわけですか。
  29. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) そのとおりでございます。
  30. 糸久八重子

    糸久八重子君 そうすると、やはり育休とは言えなくなるわけで、もう少しこれから司法修習生扱いについても考えていかなければいけないのではないかなというふうに考えるわけです。  あと、国家公務員育児休業等に関する法律案では六カ月以上の臨時職員にも部分休業というものを認めることになっておるわけですね。そういうことから考えると、この二年間の司法修習生育児休業制度を除外しなければならないほどの理由があるのかなというふうなことも考えるのですけれども、これから司法修習生の問題についてももう少し研究をしていっていただかなければいけないと思うのです。もう一言それではお願いします。
  31. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 確かに、女子修習生が年々ふえてまいります。そういった関係修習生出産の問題についても十分研究していかなければならないと思います。  先ほど一言申し落としましたが、実は、来年三月に卒業予定司法修習生の方でちょうど試験期出産を迎えられる方がおりますが、その方につきましては、二年間後、試験が受けられないということで皆と一緒に卒業できませんけれども、六月に臨時の追試と申しますか臨時試験を設けて、若干の期間延長の上で修習を終えていただくと、こういうことも手当てをいたしておりまして、先ほど申しました修習生目的とそれから女子修習生出産に関する母性保護と両面を兼ね備えたような運用にしてまいりたいというように考えております。
  32. 糸久八重子

    糸久八重子君 確かに、司法の場に進出する女性もこれから数多くなってくるわけでございますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。  それでは次に、裁判官育児休業法案特有の問題点等を少しお聞きしたいと思います。国家公務員育児休業法案と大体同様の内容になっておりますけれども、若干相違点もございます。その主な相違点について少しお尋ねしたいのですが、まず国家公務員育児休業法では、職員の定義規定を置くとともに、非常勤、臨時職員等の適用を排除しているわけですね。本案では裁判官についての特段の定めはしていないわけですけれども、このことについて御説明いただけますか。
  33. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 一般職国家公務員の場合につきましては極めて多様な職員がいるということから、そのうちのどれだけの範囲についてこの制度適用するかということを規定する必要があるわけでございますが、裁判官の場合は裁判所法等の規定によりましてその概念は明確でございます。そして、裁判官であればすべての裁判官にこの制度適用するということでございますので、特段の定義規定を直く必要がないということでございます。
  34. 糸久八重子

    糸久八重子君 国家公務員育児休業法では、配置がえ等によって育児休業請求をした職員の業務を処理することが困難であると認めるときは、任命権者は臨時的任用を行うものとされておるわけです。裁判官の場合には、その仕事の上からも身分の上からも配置がえとか臨時的任用というのはなじみませんね。ですから、その辺はわかるのですが、裁判官育児休業をとった場合はどういう処理の仕方を考えておるのでしょうか。
  35. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 御指摘のとおり、裁判官身分保障がございまして、一たん採用いたしますと十年間という任期が伴いますので、臨時的任用ということはできないわけでございます。  それでは、育児休業をとった裁判官のその穴をどういうふうに埋めるかということでございますが、所属しております裁判所の中で配置がえをいたしますとかあるいは事件の配点を調整する、それから現在持っている事件を他に振りかえる、それから近隣の裁判所からてん補でもって応援体制をとる、こういうことを考えておりまして、こういった措置によりまして裁判事務の運営に支障のないように持ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  36. 糸久八重子

    糸久八重子君 そうすると、欠員の形で処理をするということになるわけですね。これはまた後でお伺いをいたします。  それでは、裁判官検察官の定数とか現在員数、現在の欠員数がどのぐらいになるのか、その辺のところを教えてください。
  37. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 裁判官のうち判事の定員が千三百八十五名それに対しまして現在員が千三百六十六名。判事補の定員が六百十四名、現在員が六百五名、欠員が九名でございます。簡易裁判所判事が定員が八百六名、現在員が七百六十八名、欠員が三十八名という数字でございます。
  38. 則定衛

    政府委員(則定衛君) 検察官関係について申し上げますが、検察官のうち検事の定員は千百八十四人でございまして、現在員が千九十七人でありますので、欠員は八十七名ということになります。また、副検事につきましては、定員が九百十九人で現在員が九百十二名、したがいまして欠員は七名という現状でございます。
  39. 糸久八重子

    糸久八重子君 現在でもこのようにたくさんの欠員があるのに、この上育児休業をとる人がいたらこれまた大変にオーバーワークになってしまうのじゃないかなというふうに思うのですけれども、このうち女性は大体どのくらいいらっしゃるのです。
  40. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 女性裁判官は百五十五名でございます。
  41. 則定衛

    政府委員(則定衛君) 検事で女性は四十七名でございます。また、副検事の女性は一名でございます。
  42. 糸久八重子

    糸久八重子君 これらの人たちのいわゆる出産にかかわる年齢というと、裁判官検察官ですからそんなにお若く、二十二、三ということではないと思いますけれども、大体二十五、六から三十代後半ぐらいまでですね。それらの年齢層に当たる男女は大体どのくらいの割合を占めておるのでしょうふ。
  43. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) まず、女子裁判官の方でございますが、三十歳以下が四十名、それから三十一歳から四十歳が五十六名でございます。それから、男子の裁判官の方でございますが、三十歳以下が百八十一名、三十一歳から四十歳が五百二十七名でございます。
  44. 則定衛

    政府委員(則定衛君) 検事四十七名のうち、二十歳代は四人、三十歳代が三十人ということになって貼ります。なお、四十歳以上は残りの十三名でございます。また、副検事は一名でございますが、この方は四十歳を超えております。
  45. 糸久八重子

    糸久八重子君 とにかく、そういうような状態でかなり出産期にかかわる男女の裁判官及び検事の方がいらっしゃるわけですから、こういう方が子供が生まれたら自分の手元で一年間育てたいというようなことで育児休業をおとりになった場合には、そうでなくても定員に見合っての現在員総数の欠員があるのに、またさらに育児休業に対し て配置がえ等で処理をするということになりますと大変なことになりますね。ですから、やはりこれは定員をふやして定数の中で育児休業の手当てができるような、そういう配慮をしていかなければならないと私は考えるところでございます。これはまた後でお伺いをしたいと思います。  それから、あと復職後における給与の調整の問題なんですが、国家公務員育児休業法による職員、それから裁判官以外の一般職員については育児休業期間の二分の一を引き続き勤務したものとみなして俸給月額の調整等を行うことができるとしておりますけれども、裁判官の場合はどうなるのでしょう。
  46. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 一般職国家公務員につきましては、いわゆる定期昇給と呼ばれておりますが、一定の在職期間と勤務成績を要件とする昇給の制度が設けられております。したがいまして、この一定の在職期間の計算上、育児休業をした期間をどういうふうに計算するかということに対応する必要が必然的にあるわけでございます。その内容として、委員指摘のように、二分の一を在職期間とするという手当てをしているわけでございます。  ところが、裁判官につきましては一定の在職期間とその間の勤務成績によって昇給させるといういわゆる定時昇給のような制度は設けられておりません。裁判官にも判事判事補それぞれ号俸がございますけれども、何号俸を支給するということはこれは最高裁判所において個々の裁判官ごとに個別に定められるということで、在職期間といったことに基づいて昇給するという制度になっておりませんので、したがって一般職国家公務員の場合と異なりまして、そういう手当てを置く必要がないということからその規定を置いていないわけでございます。
  47. 糸久八重子

    糸久八重子君 先ほど司法修習生のところで部分休業のお話をちょっといたしましたけれども、この裁判官育児休業法律の中にも部分休業規定がございませんね。これについてはどういう理由でしょうか。
  48. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) この点は、先ほど裁判官の勤務体制の特殊性ということを申し上げましたが、それに由来するものでございます。裁判の事務の中には、例えば令状の事務でございますとか、民事の保全事務など緊急の事態に直ちに対応する必要があるものも含まれておりまして、事件の適正な処理のためには勤務時間外でございましても、あるいは休日でございましても、これに対処することが要求される場合があるわけでございまして、こういった裁判官の勤務の特殊性から、裁判官職務についてはそれを時間単位でとらえるということが困難でございます。  このようなことから裁判官に対しては、いわゆる超過勤務手当の支給がないということになっているわけでございます。したがいまして、勤務しない時間に対応して給与額を減額するというのが一般職国家公務員についての部分休業制度でございますけれども、そういう制度はこういった裁判官職務特殊性からくる勤務体制、報酬等の体系になじまないということから、部分休業制度裁判官については導入しなかった次第でございます。
  49. 糸久八重子

    糸久八重子君 確かに裁判官については、勤務時間等について一般の公務員並みの厳格な明文規定がありませんね。職務とか勤務の特殊性というのはわかっておりますけれども、この際、裁判官に対する勤務時間等の服務に関する明文の規定を整備することも必要ではないかなと思うのですが、最高裁判所当局の御所見はいかがでございましょうね。
  50. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 確かに、裁判官につきましては勤務時間の定めがございません。しかし、裁判官以外の裁判所職員につきましては勤務時間の定めはございまして、裁判官一般的な認識といたしましては、一般職員の出勤時間につきましては、これは当然勤務するという考えております。したがいまして、そこで休む場合にはもちろん年次休暇の承認をとる、こういったことをいたしております。  しかしながら、裁判官について明確な勤務時間を設けるということになりますと、やはり裁判官職務と合わない部分がございます。御承知のように、裁判官は自宅に帰りましても記録の調査でありますとか判決の起案をする、あるいは土曜日、日曜日にも判決の起案をするということが多うございます。特に、土日などは連続しておりますので集中的に判決が書けるということで、家に持って帰って仕事するということが多うございまして、それらを規則でもって裁判官の勤務時間を定め、それを我々の方で把握するということはちょっとなじまないものですから、そこの点は裁判官の自主性に任しているところでございます。
  51. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは次に、育児休業の効果についてお伺いをしたいのですが、国家公務員育児休業法では、第五条一項で「職員としての身分を保有するが、職務に従事しない。」として職務専念義務を免除する規定を置くとともに、その第二項で「給与を支給しない。」としておりますね。ところが、裁判官育児休業法では、第四条、「裁判官としての身分を保有するが、その育児休業期間報酬その他の給与を受けない。」としておるわけですね。単に「給与」としなかった理由と、「受けない。」とした理由は一体何なのでしょうか。
  52. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 御指摘のとおり、国家公務員育児休業法におきましては「給与を支給しない。」という書き方をし、裁判官育児休業法では「報酬その他の給与を受けない。」という受け身の書き方をしておりますが、これは特段の意味があるわけではないと考えております。要するに、裁判官法律の方では、裁判官を主語に書いておりますので「受けない。」という書き方をし、国家公務員育児休業法の方では、これは主語はございませんけれども、隠された主語として、国の側から書いてあるという趣旨で「支給しない。」という書き方をしている、それだけの違いであるというふうに考えております。
  53. 糸久八重子

    糸久八重子君 憲法七十九条及び八十条は裁判官報酬に対して、「在任中、これを減額することができない。」としているわけですね。裁判官報酬の減額については、官を保有する限り服務し得ないときでも減額されてはならない、減額はその理由を問わず許されないと一般的に解釈されているわけですね。このことからすると、裁判官育休をとった場合に、身分は有するわけですから減額は許されないはずなんですね。だから、報酬は受けないと受け身で言ったというのですが、私は、国家公務員その他の法律と横並びにするからこういうふうに「受けない。」というような表現で入れたのじゃないかと思うのです。やはり裁判官報酬はきちっと憲法で決められているわけですから、せめて裁判官だけでも育児休業中の報酬は減額をしないで、そしてこれを表にかざしながら、ほかの職種の育児休業をとった人たちも有給制度に持っていくというような、そういうやはり先進的な気持ちが欲しかったと思うのですけれども、いかがですか。
  54. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 御指摘の憲法の規定とこの制度関係でございますけれども、憲法の規定趣旨は、裁判官が経済的な事情に左右されることなく職務に専念できるようにしてその身分を保障し司法の独立を保障しよう、こういう趣旨に出るものでございまして、こういったことを害するおそれが全くないという特別な場合についてまで報酬の減額を否定しているものではないというふうに理解しているところでございます。  ところで、今回の裁判官育児休業制度は、民間の育児休業制度、それから一般国家公務員地方公務員育児休業制度、これに倣った形で導入しようということとしているわけでございますけれども、現段階におきましては、御案内のとおり、民間労働者育児休業法におきましても事業者に何らかの給与を支給することを義務づけるという形にはなっておらないわけでございます。これを踏まえて、国家公務員の場合についても無給の育児休業制度として当面、現在のところはス タートしようということでございます。そういう状況の中で、御指摘のように裁判官だけが特に育児休業中であっても給与を受ける、しかもその報酬の満額を受けるというようなことにするということは私ども必ずしも適当なことと思っておりませんし、また国民の理解もなかなか受けにくいのではないかというように考えているわけでございます。  そういうことで、憲法上も問題はないのではないか、それから政策上も現段階においてはやはり同じような形でスタートするのが適当であるという判断のもとに、こういう法案を準備させていただいたわけでございます。
  55. 糸久八重子

    糸久八重子君 いわゆる私傷病ですね、自分の病気とかけがとかの休職に相当する事例の場合の裁判官報酬というのはどうなっているのですか。
  56. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 私傷病の場合に、一般の公務員の場合には九十日間を過ぎますと休職になりまして、休職後一年間は報酬が八〇%となるわけでございますが、先ほどから委員が御指摘裁判官については報酬の減額をしないというそれを受けまして、私傷病の場合には、裁判官については休職がございませんし、その間給与を減額するということもございません。通常に勤務している者と同じ報酬を受けている、こういうことでございます。
  57. 糸久八重子

    糸久八重子君 私傷病による長期欠勤者に報酬が支給されているということならば、幾ら自己の意思で育児休業を申請するからといっても、育児休業をする者との間にバランスが欠けると思うんですね。だから、そういうような場合もありますので、やはりこれは報酬を受けないというのは何かこじつけのような気がして仕方がないわけです。最近の私傷病者による長期欠勤者はどのくらいありますか。
  58. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 昭和六十一年から現在まで九十日以上の病欠者は六十一名でございます。
  59. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、不利益取り扱いの禁止の規定の問題に移りますが、憲法及び法律等で強い身分保障のある裁判官ということを今までお話があったわけですけれども、その裁判官に不利益取り扱いの禁止規定をあえて置いてあるわけですね。その理由は何ですか。
  60. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 裁判官におきましては、御案内のとおり、憲法上その身分が保障されておりまして、また裁判所法におきましても、免官、転官、転所、職務の停止等については強い身分保障を受けておるわけでございます。したがいまして、特段こういう規定を置かなくても、育児休業理由とする不利益取り扱いは本来あり得ないというふうに考えられますけれども、現在の女子職員等の育児休業法においてもこの点を確認的に規定しております。また、国家公務員育児休業法におきましても、これも一定の身分保障規定があるわけでございますけれども、確認的に規定しているということにかんがみまして、この法案におきましても万一の間違いがないようにということで確認的にこういう規定を置いたということでございます。
  61. 糸久八重子

    糸久八重子君 ちょっと条文関係について確認をしたいところがございます。  裁判官は、最高裁判所承認を受けて、一歳に満たない子を養育するため、一歳に達する日までの期間内において、職務に従事せず育休をとることができると規定されておるわけですね。民間労働者を対象とする育児休業等に関する法律の場合は育児休業権利として保障されておりまして、申し出さえすれば育児休業をとることができることになっているのです。その点、この法案では請求をし、承認するという形になっておりますけれども、裁判官の場合もよほどの事情がない限りほぼ一〇〇%承認されると受けとめてよろしいですか。
  62. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) この裁判官育児休業法におきましては、裁判官に二条一項、二項に定める要件のもとに育児休業請求する権利というものを認めたわけでございます。ただ、三項におきましてその当該裁判官事務を処理するための措置を講ずることが著しく困難である場合を除いて承認しなければならないということになっておりますので、理念的には著しく困難であるということで承認が拒絶される余地もあるということになっているわけでございます。  これは、育児休業制度によってその裁判官事務の処理の停滞が生ずるということがあってはいけませんので、例外的にどうしても対応できないというような場合に承認を拒絶することができる余地を認めたものでございますけれども、この法律趣旨にかんがみまして、この例外に当たる場合は極めて少ないものと考えております。最高裁判所におかれましては、この制度趣旨にのっとり、できる限りその請求に対応できるような、先ほど最高裁から御説明がありましたようないろいろな措置を講じられるというふうに聞いております。したがいまして、運用といたしましては当該裁判官相当期間的余裕を持ってあらかじめ請求をされるという運用がされることが期待されておるわけでございますけれども、そういう運用がされます限りにおいてはこの例外的な場合に当たるものとして承認が拒絶されるという事態はほとんど考えにくいのではないかというふうに考えております。
  63. 糸久八重子

    糸久八重子君 著しく仕事が停滞する場合にはということもおっしゃいましたけれども、そのことはやはり先ほど申しました定員のことにも絡んでくると思うのですね。ですから、そういう意味でやはり申し入れた場合には一〇〇%とれるということになりますように希望したいと思います。  それから、本案では最高裁判所規則で決められる内容が多いわけですね。これは具体的に何を下敷きにして決めますか、いろいろの内容がありますけれども。
  64. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) これは最高裁判所規則で定める場合が幾つかございますけれども、その定める場合に関して、法律自体において例示規定が置かれている場合がございます。例えば二条一項におきましては、「配偶者がこの法律により育児休業をしている場合その他最高裁判所規則で定める場合」ということで例示がございます。それから五条二項、これは承認の取り消してございますけれども、一号、二号があって、三号で「その他最高裁判所規則で定める場合」ということになっております。この場合、三号はちょっと性質が違いますが、一号、二号は実質においてその例示ということになろうかと思います。そういった例示と、それからこの法律趣旨を踏まえて最高裁判所において適切な内容を定めていただく、こういうことを予定して法律規定を用意しているわけでございます。
  65. 糸久八重子

    糸久八重子君 ちょっと具体的にお伺いしますけれども、二条に、既に育休をしたことがある場合であっても、最高裁判所規則で定める特別の事情がある場合は請求することができるとありますが、特別の事情とはどんなものでしょうか。
  66. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 育児休業の終了時に予想しなかったような事情が発生したことにより再度の育児休業をしなければ子の養育に著しい支障が生じる場合、あるいは育児休業承認が産前の休業を始め、または出産したことにより効力を失い、その後当該出産に係る子が死亡したような場合、こういったことを予想しております。
  67. 糸久八重子

    糸久八重子君 配偶者が育休をとっている場合はとれないことはわかりますが、その他最高裁判所規則で定める場合もできないとありますけれども、具体的にはどういうことですか。
  68. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) この最高裁判所規則につきましては、裁判官身分保障、それから職務特殊性に反しない限度で人事院規則で定められる内容と同様の規定を設けるつもりにしております。そういった関係で、人事院規則内容が固まるのを見て私どもの方はやっていきたいと思いますが、これはほぼ人事院規則と同じような内容規定になるのではないかというふうに 思います。
  69. 糸久八重子

    糸久八重子君 この最高裁判所規則はいつごろまでに決める予定でいらっしゃいますか。
  70. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) ただいま申しましたように、一般の公務員につきまして人事院規則が定められる予定になっておりますので、それとの整合性を持たせなければなりませんので、人事院との連絡もとりました上でできるだけ早くと思っておりますが、一月末ごろまでには規則を整備して、十分部内での周知徹底を図りたい、このように考えております。
  71. 糸久八重子

    糸久八重子君 今までいろいろ定員の問題等についてもお話ししてまいりましたけれども、やはり裁判官は枠内定員とされることでその定員の中でやり繰りをしていく。それには現在も欠員があるということもあって、うまくいくのかしらと大変私も危惧をするわけです。やはり来年度以降の定員法の改正に当たっては、育児休業する予想の人数分相当数を上積みして予算要求することも必要ではないか、そのように考えますけれども、今後の定数増要求の基本方針についてはどうお考えになっていらっしゃいますか。
  72. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 女性裁判官出産者、ここ五年ぐらいの平均をとりますと年八人でございます。現在、育児休業施行されております女子職員等の取得率を見ますと七割というふうに聞いております。そして、取得期間が約七カ月というふうに聞いておりますが、その率でまいりますと、年間大体三・三人分ぐらいの戦力ダウンになるということになります。  しかしながら、この育児休業法ができますことによりまして、まず女性修習生からの任官の条件が整備されて任官者がふえることがまた期待されますし、それから女子裁判官が退職しないでそのまま職務を継続できるということで、長期的に見れはこれは大変な戦力アップのための施策であろうというふうに思います。ただ、短期的に申しますと、今委員が御指摘になられましたようなことになるわけでございます。  私どもの方では、ことし判事補の定員を五人ふやしました。それから、来年度の予算要求におきましても七人の定員増をお願いしているところでございます。これらの人数と申しますのは、必ずしも育児休業のためという名目ではございませんけれども、判事補を充員するということには変わりないわけでございます。私どもとしては、この増員要求が実現できるよう最大限の努力をしてまいりたいというふうに思います。こういう定員も含めまして、今後裁判官の人員の充実確保に努力してまいりたい、このように考えております。
  73. 糸久八重子

    糸久八重子君 ぜひ頑張っていただきたいと思います。  それから、最高裁判所では、育児休業法を先取りする格好で、女性裁判官問題研究委員会平成元年十月の提言を受けまして、出産後に育児のため退職した裁判官を一年以内ならば任官同期の者と同じ待遇で再採用するという事実上の育児休業制度を導入したと聞いております。制度の概要とかその運用実績とかをお話しいただけたらと思います。
  74. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) ただいま御指摘いただきましたように、最高裁判所では独自の運用といたしまして退職再採用制度というものを設けたわけでございます。  これは、女子裁判官出産を機会に退職してしまう、弁護士に転身してしまうということを防ぐということと、安心して勤務を継続していただくというねらいを持って始めたものでございます。今御指摘なられましたように、出産のために退職してほぼ一年ぐらいをめどに裁判所裁判官として復帰される場合には、その間の退職を無視しまして同期の裁判官と同じ待遇で扱う、こういうものでございます。一年間のブランクがありましても同期の裁判官と同じ待遇をするというところがこの制度の眼目でございます。  現在までに、この制度によりまして退職いたしました裁判官が四人ございます。実は、来年の四月に育児のために退職したいという女子裁判官が三人ございますが、もしこの裁判官育児休業法をお認めいただけますならば、この三人も育児休業の方に切りかわることができるわけでございます。
  75. 糸久八重子

    糸久八重子君 そうすると、この制度は本育休法が成立をした場合には男性も含めた新法に組み込まれるということになるのでしょうか。それと、この制度は再雇用制度という形で残しておくのかどうか、その辺のところをお聞かせください。
  76. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) ただいま申しました退職再採用制度は男子の裁判官には適用になりません。それと、やはり退職でございますから、その間身分が切れてしまうわけでございます。それに対しまして、現在御審議いただいております法案は男子の裁判官にも適用になる。それから、何よりも裁判官身分をそのまま保有できるという非常た利点がございます。それから退職手当につきましても、この休業期間の二分の一が通算されるという非常な利点がございます。  そういったために、この法案をもし成立させていただきますならば、現在の退職再採用制度は発展的解消と申しますか、なくなるというものでございます。新しい制度に切りかわって、より充実した育児のための制度が完備されるということを願っているわけでございます。
  77. 糸久八重子

    糸久八重子君 この制度導入に当たって研究委員会の提言書の中に、育児、教育上の配慮から遠地への異動を一定期間停止する、それから異動の際も、異動先の保育、教育施設の情報を提供し、異動内示時期なども配慮するとあるのですけれども、新法になった場合もこういうことを配慮されていくのですか。
  78. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) おっしゃるとおりでございます。
  79. 糸久八重子

    糸久八重子君 わかりました。  男女、それから官民全労働者を対象とするこの育児休業制度の確立は、私たちの長い間の懸案でございました。ようやくにして来年の四月一日に官民育児休業法が同時施行されるめどが立ったことは、内容は多少不満があるわけですけれども、私としては大変喜ばしい限りでございます。しかし、施行期日までに残された期間というのは三カ月しかないわけです。この法の円滑な施行のためには、この法律施行に必要な最高裁の規則の制定を——何か一月ころだというお話を聞きましたけれども、急いでいただきまして法の趣旨の徹底を図る必要があろうかと思います。  そこで、大臣それから最高裁判所から、円滑な施行に向けての御決意を承りたいと思います。
  80. 田原隆

    国務大臣田原隆君) この育児休業制度が、今いろいろやりとり、御議論された中で、非常に前向きの制度であるということはよくわかったわけでありますが、民間あるいは一般公務員とのバランスを考えつつやっていることもまた事実でございますので、それらがまた時代とともに、例えば民間においても育児休業中にも給与を払う時代が来るかもしれないし、今のところ余りないわけでございますが、そういうことが一般公務員にも反映し、そしてそれが裁判官に反映してきてさらに充実したものになってくるということを望んでおるわけでございます。  いずれにしましても、現在のような実状を踏まえて今のところ出てきた法律でありますけれども、今後そういう時代が来ましたら、民間、一般公務員等の推移を見守りながら一層充実した制度をやっていきたい、そういうふうに考えておる次第であります。
  81. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 裁判所から一言申し上げます。  先ほど委員から御指摘のありましたように、裁判所におきましては一歩先んじた形で退職再採用制度というものを設けましたわけでございますけれども、この育児休業法ができましたら、早速その趣旨を全裁判所に徹底いたしたいというふうに思っております。そうした上で、該当の裁判官が遠慮なく育児休業ができるように内部でもPRを十分にいたしたいというふうに考えております。
  82. 糸久八重子

    糸久八重子君 この育児休業は、官民ともに将来的には有給になることが望ましいと思いますが、その点について大臣いかがですか。
  83. 田原隆

    国務大臣田原隆君) 先ほど私の答弁で申し上げましたように、そういう時代がもし来れば、民間でも現在は育児休業の間は給料を支払っているところはほとんどないわけでありますが、国家公務員もそれに倣っておりますし、右へ倣えという形で裁判官報酬をいただかないということになっておりますが、そういう時代が来ればやはりそれを勘案しながら充実を図っていかなければならぬというふうに考えております。
  84. 糸久八重子

    糸久八重子君 民間の場合には、法律審議した際に、育児休業をとった場合には奨励金という形で幾ばくなりとも育児休業の手当と申しますか、そういうものが出るということも大臣答弁でいただいてあるわけでございますので、そういう意味では前向きにこれからも検討して育児休業がぜひとも有給になるように要望して、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  85. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私は、大臣に所信の一端をお伺いしたいと思っております。  限られた時間でありますから端的にお伺いしますが、大体、法務大臣というポストは金集めのうまい人だとかその方面の才能のある人だとかがつくポストじゃないんですよね。よく言えば身ぎれいな人がそのポストにつく、悪く言えばやぼったい人、こういうことになるわけであります。汚職やらそういうことと縁のない人が大体つく。それだけに私は、正義感というものを法務大臣というのは十分に持ってもらう必要がある、こう思っているわけです。    〔委員長退席、理事中野鉄造君着席〕  昔、私ども子供のころは人殺しなんというのはめったにないことだったんですね。近ごろはざらにあるんです。このことが果たしてどういうものだろうかということを考えざるを得ません。その殺人事件でも、情状酌量の余地のないような犯罪、本人に罪の意識のないような犯罪、そういうものに対して果たして刑法上の制裁が適当かどうかということについて首をかしげるような事例があります。したがって、私は死刑の是非については問題があるとは思いますけれども、そうかといっており悪いことをする人間がたかをくくるようなことがあってはいけないんじゃないか、こういう気がするんですよ。  その点で私は、大臣としては最近のこの犯罪事情についてどう思われるか。  例えば麻薬なんかでもそうですけれども、シンガポールなんていうところへ参りますと、もう既に飛行機でもって着く前に渡された申告の何かの書類に赤い字でもって、麻薬を携行して売買したような人間を死刑にするというんですね。これほど厳しいんですよ。    〔理事中野鉄造君退席、委員長着席〕  ところが日本の場合は、麻薬を使ってそれでハワイあたりに逃げたタレントが、帰ってくるときはまるでスターを迎えるようにマスコミはこれにたかる。本人も余り罪の意識がない。こんなことで果たしていいんだろうか、こういう気がするんですよ。これはもう麻薬の問題もそうだし、殺人なんかに至ってはなおさらそうなんです。それらに対する法の扱いが果たしていいかどうか。しかもそういう人たちは、あるいはたくさんの金をどこから巻き上げてそして罪になったような人でも、大枚の金を使って保釈になると悠々としてしゃばで暮らしていられる。これらはやはり一般の庶民の感覚からすれば許しがたいという気持ちになると思うんです。  そういう点についての大臣の所見といいますか、所信といいますか、それをお伺いしたいと思います。
  86. 田原隆

    国務大臣田原隆君) 最初に、大臣の立場として法務大臣がやぼったくなければいかぬとかいうようなお話、まことに私もやぼったい方でございますが、そういうことはお説のとおりでありますとして、今の刑事事件等に関するお話は非常に専門的な分野がありますので後ほど政府委員に答弁してもらいますが、ただ、私の所感としては、私が外で見ていた検察はなかなか厳正、公平にやっているなと思っていたところが、来てみたらなおさらその感じがするなということを感じておる次第であります。  具体的な事例、事件についてはこれはもう検察が事実をつかみ、そして法令に基づき判断しておるわけでございますから、大臣としては静かに見守るのがむしろ大臣のあり方ではないかというふうに考えておりますが、静かに見守るといっても、じっと心を静めて見守っているわけでございます。
  87. 井嶋一友

    政府委員井嶋一友君) 今、委員から凶悪事件あるいは麻薬犯罪の最近の動向に関連する御質問がございましたので、若干統計的なことも含めまして申し上げたいと思います。  確かに、凶悪犯罪がふえているように見えるような状況はございますが、統計的に見ますと必ずしもそうではない。例えば、殺人とか強盗あるいは強盗殺人といったような凶悪事件は統計的には横ばいないしは減少しております。ただ、委員がそういう印象をお持ちになるのはむべなるかなと思うわけでございますが、つまり、最近、幼女誘拐殺人とかあるいは保険金を掛けて殺してしまうといったような、非常に凶悪なといいますか、社会の耳目を聳動させるような事件が多いということからそういう印象をお持ちになるのかなというふうに思うわけでございます。いずれにいたしましても、私どもはこの凶悪事件に関しましてもやはりその事案に応じて適正な科刑を実現するということが何より増して大事な刑事政策でございますから、委員が御指摘になりましたような趣旨で私ども日ごろそういった点で適正な量刑を得るために努力をしておるところでございます。  また、薬物事件につきましてはそれぞれの法律につきまして数次にわたって改正を加えておりまして、刑罰もそれなりに加重をいたしておりまして、一番重いところは今無期までいけるようになっておるわけでございます。そういったことで最近の薬物事犯の傾向にかんがみまして刑罰もうんと重くするという方向に向かっておりまして、統計的に見ますと裁判の結果もそういった方向に向いておりますので御安心をいただきたいと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、委員指摘になりましたように、刑罰というのは国民の法意識と申しますか、規範意識といったものに乗っかって運用されるわけでございまして、国民が重過ぎるなとあるいは軽過ぎるなと思うようなことであれはこれは法規が守られないということにつながるわけでございますから、私どもは常に国民の意識といったものをよく考えながら、法・規範意識をよく考えながら適正な刑罰を実現するということが大事だというふうに思っているわけでございます。
  88. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 麻薬のような場合は使った人間に罪の意識が余りないんじゃないかということを案ぜられるんですよ。特に、アメリカなんかでもかなり麻薬というものがはびこっておって、これによる犯罪というのは多いようでありますけれども、例えば交通達反の軽い程度、駐車違反であるとかスピード違反程度のような感覚でもって麻薬事件関係するというようなことは非常に恐ろしいことじゃないかと思うんですね。これが結果的には殺人やらあるいは強盗やらそれらの多岐にわたる犯罪と結びつく可能性が強い、こういう気がいたします。したがって、この犯罪事件というものを防止するためにも、この種の麻薬事件等についてはもっと手厳しく取り締まる必要があるんじゃないかという気がするんです。  大臣、今静かに見守るというふうに言われましたが、余り見守ってはかりいてもこれはまずいんでね、やっぱり厳しくしなければならないところは厳しくする必要がある。すべてに甘くするということは、これはよくないんじゃないかという気がするんですよ。だから、余りこの種の問題については世間様が首をかしげるようなことのないようにする必要があるという気がするんです。特に凶悪犯罪で言うと、幼女を誘拐して殺すとか、あるいはこの前もありましたが、これをばらばらにして捨てるというような、まことに我々の常識からすると考えられないようなことがありまして、あの種の犯罪に対するもっと手厳しい追及というものが行われていいんじゃないかなという気もするんですが、それらの点について、大臣一般的な所見、というものをお伺いしてみたい、こう思います。
  89. 田原隆

    国務大臣田原隆君) 今御指摘のとおりのような事件が頻発をしておりますが、ただ法令に定められておる規定に従って、やはりその事実を調べ、起訴し、裁判されていくわけであろうと私は思います。大臣としては、検察庁法にも検事総長一般的に指揮できるというような規定もございますが、やはり検察の独立性ということが何よりも優先されなければならないと思うし、したがって私は静かに見守ると言っているのは、個々の事件についてああやれこうやれという指揮は到底すべきではないものと思っておりますが、厳正、公正にやらなければいかぬということは一般論として常々刑事局長その他と顔を合わすたびに話し合っているわけでありまして、個々の事件についてああだこうだということは大臣として通常申すべきでないという立場をとっておるわけであります。
  90. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大臣としては、これは法務行政の最高責任者ですから、法の運用等について社会的な常識と余りにもかけ離れたようなことが行われないように監督をするという立場があるんですね。だから、そういう立場からすると、やはり社会正義ということを基本において判断をしてもらわなきゃいかぬ、こういうふうに思います。もちろん、個々の問題について大臣が一々とやかく言うべきことではない、それはもうそのとおりなんです。  そこで、特に私は法務大臣については社会的正義感というものをしっかり持ってもらいたいということを注文するのでありますが、それと関連いたしまして、私の地元で起きた狭山事件の石川被告のことについても質問したいと思っているんです。  実は、この事件は私の地元の埼玉県で起きました。この事件が起きた当初から、これはおかしいなという感じを私は持ったわけです。それは地方版にでかでかと出ました。その誘拐事件でもって犯人が金を取りにあらわれたところ、まさに逮捕寸前、これを取り逃した。そして、このことは警察の不手際ということで大々的に報道されました。だから、既にこのスタートにおいて警察側の大きな手落ちということがあったわけであります。したがって、その手落ちから、恐らく警察側は犯人を何とかして捕らえなければならないというふうな焦りから出発をしたんじゃないかと思うのでありますが、この事件、いろいろと検討してみますと、まことに不可解なことばっかりです。どう考えてみてもこの石川被告が真犯人とは考えられないというようないろいろな状況証拠等もあらわれているんですね。  しかし、今日、この石川君の保釈ということが問題になっておりまして、私も千葉の刑務所を訪れて本人に会いました。ついこの間、北村議員も会ってきたところでありますけれども、かつて読み書きのほとんどできなかった人間が今ではもう読み書きが十分できるようになって、英語まで勉強している、こういうような状態になっているわけです。  こういうことを考えると、私は、もう少し内容的に踏み込んで検討をしてもらいたいという気がするわけであります。この事件が始まってから法務大臣どのぐらいかわったかわかりません。だから新しい法務大臣のたびに私は言うんですけれども、ともかくこの事件は初めからおかしかったということは、もう私どもが感じているところなんです。そういうおかしいと思われることはやはりこれを追及していく、横を向かないということも必要だろうと思うんですが、これらの早期釈放についても、やはり法の温情として考えていただきたいというふうに思われますが、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  91. 田原隆

    国務大臣田原隆君) お尋ねの事件については、最高裁判所の上告棄却決定によりまして、昭和五十二年八月十六日に無期懲役の判決が確定しておる事件であると承知しておりますが、確定判決の当否に当たるような事項についてやはり法務大臣がコメントするということはできないのではないか、そういうふうに私は考えております。  専門的な補足があれば刑事局長見えておりますから答弁していただきますが、私自身はたとえ法務大臣であっても、裁判が確定しておるものについて今法務省の立場からとやかくは言えないということを申し上げておきたいと思います。
  92. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 過去において、例えば松川事件とか三鷹事件だとか死刑の求刑をされたものが無罪ということになった。調べてみたら、どうも証拠その他検討してみた結果これは無罪になったという事例があるんです。だから、罪のない者が死刑になったり、あるいは長期間刑務所に収容されるというようなことがあっては、これはやはり社会正義にもとる。したがって、それらの点についてやはり法務大臣としては一応検討してみていただくということも必要だろう。私は、恐らく大臣以上にこの事件の全容について知っておりますから、初めからおかしかったなということを感じたんだという、地元の一員としてこのことを申し上げたんです。  それから、もう一つ。本人については、例えば規則の網でもって、まことに社会的常識から考えるというと考えられないような規則の網でもっていろいろとひっかけようとする、規則違反ということでひっかけようとする、そんなことはやめるべきではないか。例えば便せんに英語が書いてあった、これは規則違反だと。この種の規則違反というようなことを、細かい重箱の隅をつっつくようなことでもって、それが保釈についての妨げになるようなことがあってはならぬという気がするんでありますが、その点、これは大臣というよりも担当者の見解を承っておきたいと思います。
  93. 飛田清弘

    政府委員(飛田清弘君) 保釈とおっしゃいましたけれども、恐らく仮出獄のことだろうと判断いたしますので、仮出獄という前提でお答え申しますと、受刑者の仮出獄の申請は刑務所長の専権事項とされているのでございますけれども、その申請に当たりましては、受刑者本人の処遇関係、心情関係、犯罪関係及び保護関係を総合的に判断して決すべきものとされております。  そこで、お尋ねの規則違反行為は今の四つの項目のうちの処遇関係に関するものということになるわけでございますが、千葉刑務所長が仮出獄の申請について判断するに当たってはこれだけじゃなくて、全体を総合的に判断して行うということになっておりますので、そのことにとらわれているということではないというふうに考えております。
  94. 北村哲男

    ○北村哲男君 それでは、余り時間もないようですので、最初に育児休業に関する法律案について一、二点聞いてみたいと思います。  まず、第二条でございますが、二条に「一歳に満たない子を養育するため」という「子」という言葉というか概念があります。この定義なんですが、これは嫡出の子に限るのか、正式の結婚をしている中で生まれた子に限るか、あるいは婚姻外で生まれた非嫡出子も入るのか、あるいは今はやりというのはおかしいですが、夫婦別姓なんかに関連して結婚しても入籍しないという中で生まれる子供もいると思うのです。それは法律上は非嫡出子だと思うのですが、しかも育てる場合は何も産んだ母親だけが育児休業の対象になるのじゃなくて、配偶者というか相手も当然この法律適用を受けると思うのですけれども、まず「子」というのはどういうふうに定義されるのかということについてお伺いしたいと思います。
  95. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) ここで言っております「子」というのは、育児休業請求しようとする裁判官とその子供との間において法律上の親子関 係があるということを要件とするものでございます。したがいまして、いわゆる非嫡の子についていいますれば母親は出生によって当然親子関係が発生すると解されておりますが、父子の関係は認知ということによって親子関係が生ずるということでございますので、そういうことで子であるかどうかが決せられるということでございます。
  96. 北村哲男

    ○北村哲男君 わかりました。  それでは次に、第五条の一項三号に「当該育児休業をしている裁判官の子でなくなった場合」というふうに規定がございますけれども、これは死亡の場合はもちろんなくなるのですが、その次の「子でなくなった」というのはどういう場合を指すのでしょうか。
  97. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 例えば養子縁組の解消でございます。養子でございましても子であれば入りますのでそういう場合がございます。
  98. 北村哲男

    ○北村哲男君 次に、四条に戻りますが、先ほども糸久委員から質問があったのですが、憲法七十九条六項とそれから八十条二項の減額禁止の規定、これはかなり厳しい憲法上の要請でありますけれども、こういう憲法上の要請がありながらなお一般の公務員に準じて「報酬その他の給与を受けない。」と規定をされたということはやや憲法違反であるという指摘がなされるのではないかという気もするのです。先ほどの御説明はある程度わかるのですが、この辺ほかにこういう例があるかどうか、あるいは例があるとするとどういう基準で減額禁止の例外があり得るのかという点についての御説明をいただきたいと思います。
  99. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 現在の制度のもとでは在任中の減額あるいは報酬を支給しないという場合はないというふうに承知しております。  今回、従来の憲法解釈の場面では全く予定されておらなかった新たな育児休業制度というものを導入するという場面に当たりまして、私ども憲法の規定との関係も十分慎重に検討いたしました結果、先ほど糸久委員にもお答えしましたような理由で、これは憲法の規定に違反するものではないという考え方でこういう制度を採用するということにさせていただいた次第でございます。また、将来ほかにどういうことがあり得るかと言われても、現在の段階では想定しにくいことでございます。
  100. 北村哲男

    ○北村哲男君 憲法の要請の例外であることは明らかですね。明らかであるならば、その基準と申しますか、どういうメルクマールがあってこれは例外として認め得る合理性があるというふうに言われるのかという点について、もう少しお答えをいただきたいと思います。
  101. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 憲法の例外というふうに考えているわけではございません。私ども結論的に申しまして、憲法の規定趣旨にかんがみて憲法が禁じているところの在任中の減額には該当しないというふうに考えているわけでございます。  そのメルクマールということでございますが、一つは現段階において民間の育児休業制度も事業主に給与の支給を義務づけていない。それから、公務員の制度についても無給の制度で導入されようとしている。そういう状況の中で、裁判官についても育児休業中に報酬を支給しないという制度をとることについて、その制度そのものの妥当性について国民一般の理解が得られているものと考えることができるのではないかということ。それから、この制度育児休業請求しようとする裁判官育児休業中は無給であるということを十分に承知の上で、全く自由な意思でその制度を利用するかどうかということを選択することができる。また、一たん育児休業を始めた後におきましても、育児休業状態から離脱してもとの状態に復帰しようと思う場合には、いつでも申し出ることによって育児休業承認の取り消しを受けることができるということになっておるわけでございます。全く自由意思によってそういう制度を利用するかしないかということを判断することができる。しかも、この制度は事柄の性質上、育児休業をとることを他の外部からの圧力によって事実上強制されるということも全く考えられないわけでございます。  この点は、本人が同意すれば給与を減額することができるかどうかというような問題とは若干違った要素があろうと思っております。単に個々の本人の同意によって減額することができるという制度を是認するとすれば、事実上いろんな事情で同意をせざるを得ないという状態に追い込まれるということも考えられるわけでございますが、この制度は事柄の性質上、そういうことは全く考えられないということでございます。そういったことを総合判断いたしまして、この憲法の規定趣旨に反する在任中の減額に当たらないと考えているわけでございます。
  102. 北村哲男

    ○北村哲男君 もう一点ですが、この四条で「裁判官としての身分を保有するがこということと、憲法の八十条にいう裁判官の在任中の報酬の減額はできないというその「在任中」ということの意味と、これは同じことなんですか、あるいは違うことでしょうか。
  103. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 憲法の規定の文理解釈といたしましていろんな解釈があり得ようかと思っておりますが、基本的には私どもは在任中ということに当たるというふうに考えております。
  104. 北村哲男

    ○北村哲男君 それでは、この点については結構です。  時間もあとわずかですが、裁判所にお伺いします。  実は、けさの新聞で「旅費不正で十九人処分」ということが新聞に出ておりました。これはあってはならないことであると思いますし、しかも非常に大きい、構造的な感じの不正事件であったと思うのですが、全国七つの裁判所で、しかも相当多数の裁判官あるいは職員が旅費の不正を行ったということ、しかも昨日処分をされたということなんですが、その処分理由それから事実関係、そしてこれは監督責任を問うただけのようなんですが、実際実行行為を行った人についてはどういうことになっているのかということですね。  特にそれを聞きたいのは、まあこういうところで余り聞きたくないということもあるのですけれども、新聞なんかでオペラ歌手の岡村喬生さんが非常に怒って、本当に今まで信用をしておった、いろいろと難しいあるいは汚職のはびこっているこの世の中で裁判所だけはすばらしいというか厳正申立てあって、それを信じておった、それが裏切られた感じだということを言っておられる。そういう点から、この場でその辺の釈明等を行っていただきたいと思います。
  105. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 今回、会計検査院の検査報告におきまして、全国七つの裁判所において旅費の経理に関し適正を欠く処理が行われたという指摘を受けました。まことに申しわけなく、心からおわび申し上げます。  私どもの方では、会計検査院の検査において適正を欠くと指摘されました東京地方裁判所ほか六つの裁判所関係者に対しまして、昨日までに懲戒戒告を含む処分を行ったところでございます。  その処分の内容でございますが、七つの裁判所に所長として在職しておりました十名の者に対しまして、分限裁判によりまして戒告の処分をいたしました。処分理由は、旅費の支給に関し旅行命令に基づいた旅行内容と実際の旅行か同一のものであったか否かを確認し、また旅費の支給が適正になされるよう職員を指導監督すべき職務を有していたところ、その責務に反し適正を欠く旅費支給が行われるという事態を発生させた、これは裁判所法四十九条にいう職務を怠ったときに該当すると、こういう理由でございます。  それとあわせまして、最高裁判所事務総長を戒告にいたしました。事務総長に対する戒告は、これは裁判官身分を離れておりますために国家公務員法を準用した懲戒処分としての戒告でございますけれども、今回のような事態を発生させたことは、下級裁判所における予算の執行か適正に行われるよう指導監督する者としてその職務の遂行に欠けるところがあったものであると、こういう理由でございます。そのほか、当時の最高裁判所 経理局長に対しまして、最高裁判所で厳重書面注意、それから七つの地方裁判所のいわゆる事務方のトップであります事務局長に対しまして、それぞれ監督高等裁判所長官による厳重書面注意を行ったところでございます。  それから、先ほど実際に精算義務に反した者に対してはどうかという御指摘がございました。本件におきましては、出張いたしました職員が精算義務に違反したものでございますから、個々の職員を処分するのが本来の姿ではないかという御指摘もあろうかと思います。しかしながら、一件一件を見てまいりますと、九千五百円とかあるいは一万六千三百円とかいった比較的少額でございまして、それも既に国庫に全額返納いたしております。それから、精算を怠ったとはいえ、一件一件を見てまいりますと、ある程度宥恕すべき事情を有するケースも多々あろうかと思いますが、各事情ごとに仕分けをするということは今日におきましては極めて困難でございます。  そこで、最高責任者でございます所長等の監督責任を問う一方で、裁判所の全職員を対象といたしまして裁判官会議の議によりまして通達を発しました。この通達は、裁判所職員としての自覚を促し、二度と今回のような事態が生じないよう関係法規を遵守し厳正に予算の執行を行うことなど、職務の遂行に万全を期するようにというものでございます。こういうことによりまして、全職員に注意を与えたところでございます。  私どもの方といたしましては、二度とかかる事態のないよう心を引き締めてまいりたいと思います。深くおわび申し上げます。
  106. 北村哲男

    ○北村哲男君 まさにかかる事態が二度と絶対に起こらないことを強く要望して、私の質問を終わります。
  107. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 先ほどからいろいろ質疑が行われております中に私が聞こうと思っていたことと重複する面もありますので、できるだけ重複を避けてお尋ねいたします。  今回の法案の裁判官検察官報酬俸給表というものを見てまいりますと、実質的——実質というのは、一般行政職とは別個の表にはなっておりますものの対応する行政官と横並びになっているように思われます。その中でも、一応司法という立場で若干の優位が見られるわけですけれども、現在、御承知のように、裁判官検察官の民間に相当する弁護士との所得の水準の格差というものは非常に大きいわけですね。  それで、私がちょっとお尋ねしたいのは、つまり司法試験を合格して新しく職場につく人、そういう方々は、いわゆる判、検、弁という三つの枠組みの中に大体制約されるんじゃないかと思うんです。例えて言えば、医科大学を出てほかのところに就職する人はまずいません。やはり大抵お医者さんになっていく。そういう司法試験を合格した人たちは、判事検事か弁護士さんになっていく。その場合、いわゆる判事検事あるいは弁護士さんとの格差が非常に大きい。端的に申しますと、弁護士さんの中でも、たとえそれが俗に言ういそ弁と言われる人たちであってみても、それが渉外弁護士なんかであるということになれば初任給が六十万であるというようなことさえも聞いておるわけです。そこにもってきて検事判事という方に進む人たちの初任給とかなりの格差がある。こういう点について今回の給与決定の基本的枠組みの中で、こういう点に配慮した十分な妥当性というか、そういうことについてはどのようにお考えになっているのか。  給与がすべてではありませんけれども、やはり人間食っていかなくてはいけませんので、こういうようなことも大きな欠員の要因になっているんじゃないか。現在、検事が八十名ぐらいの欠員があると聞いておりますけれども、これも一つの大きな要素になっているんじゃないかという気がするんですが、その点いかがでしょうか。
  108. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 御指摘のとおり、裁判官検察官俸給につきましては、いわゆる対応金額スライド方式によりまして、戦後定立されました一般政府職員との対比において相当の優位というものをずっと保ってきているわけでございます。  その報酬額を考えるに当たって、弁護士の収入との対比を考えるべきではないかという御指摘、これは一面ごもっともな面もございます。また、裁判官にとっては大変ありがたい御指摘ではないかというふうに感じますけれども、しかしながら裁判官国家公務員の一員でございます。したがいまして、国家公務員一般給与体系と余りにかけ離れた給与体系にするということも問題があるわけでございますし、国家公務員と自由業である弁護士の報酬とを同じにするということについて国民的な理解が得られるかどうかということについては非常に大きな問題があるのではないかというふうに考えております。  問題は、その任官者の必要数の確保という観点でございますが、委員既に御案内のとおり、この観点から初任給調整手当というものを昭和四十六年に設けまして、最近では平成元年にその増額を図ったわけでございます。その結果だけかどうかわかりませんけれども、ことしの春の採用人員を見ますと、裁判官検察官とも相当の数の新任の採用をすることができたということでございまして、任官者の確保という観点からも若干の改善効果があらわれているのではないかというふうに考えているところでございます。  もとより、任官者の確保という観点からやはり報酬の額、給与の額というものが極めて重要でございまして、そういう観点から今後とも給与額の改定についてはいろんな検討をしていかなければならないと思っておりますが、ただ任官者の確保は給料だけの問題ではなくて、例えば司法試験制度のあり方とか、あるいは執務環境の改善等によって職務をあるいは職場を魅力あるものにしていくという努力とも関係する問題であろうと思っております。  司法試験のあり方につきましては、先般の国会におきまして司法試験改正法を実現させていただきました。それに伴って運用として合格者数を増加させていくということに既に着手しているわけでございます。そういった合格者の増加、それから法改正に基づく試験制度の改善ということによって、これはひとり任官者確保だけの問題ではございませんで、広く法曹一般に人材を得る、ということを目的とするものでございますけれども、任官者の確保という面でも相当の効果が期待できるのではないかと思っております。また、執務環境の改善等につきましては、検察当局においていろいろ工夫をし検討をして、実施に移せるものから実施しておられるというふうに承知しております。  そういったことともあわせ考えて、これからも一生懸命研究してまいりたいと思っております。
  109. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 それで、今回初任給調整手当改正を見送った理由についてお尋ねしたいわけですが、今お話があったように、同じ公務員であってみても、例えば国立病院のお医者さんの場合、いわゆる初めて赴任する場合にはその初任給調整手当というようなことで、やはり人材確保の対応策とでも申しましょうか、こういうことで手当てをしております。もしわかっておればお尋ねしたいんですが、この国立病院あたりの医師の初任給調整手当というものは今どうなっているのか、それがまず第一点。  それから、先ほど冒頭申しましたように、この初任給調整手当改正を見送った理由は何なのか。また、弁護士さんあたりの初任給との格差がどの程度にまでなったならば改正しようとされるのか。どんなに開いても改正する意思はないのか。そこも問題ですけれども、それともう一つは、現在裁判官検察官おのおのの定員充足率、それと任官希望者の動向、それから、裁判官あるいは特に検事、そういう人たちが中途退官をされる数がこの二、三年どういうふうになっているのか。一つ一つ簡単にお聞かせいただきたいと思います。
  110. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 簡単にという御指摘でございますが、少し長くなるかもしれませんがお 許しいただきたいと思います。  まず、国立病院の医師等の初任給調整手当がどうなっているかということでございますが、仕組みは極めて複雑でございまして、詳細必ずしも承知しておりませんが、ごく概略承知しているところを申し上げますと、一般職国家公務員のうちの医療職俸給表(一)の適用を受ける医師及び歯科医師につきましては、その勤務地域を一種から五種までに区分いたしまして、一種は最も欠員の補充の困難な離島その他の僻地等、それからその対極にあります五種というのはいわゆる調整手当における甲地、東京、大阪といった大都市でございます。その一種から五種までの地域の区分に従いまして、それから就任してからの年数がたつに従って次第に額を低減していくという区分をして調整手当を支給するということになっております。  具体的な額で申しますと、離島その他の僻地に勤務する、一種の地域に勤務する医師の場合は、初めて勤務した初任の時点で二十六万五千円、東京、大阪等の甲地、五種の地域に勤務する医師の場合は最高額で九万四千円の初任給調整手当を受けるということになっております。なお、この額は今回の一般職給与法改正によりまして、一種につきましては二十七万六千円、五種につきましては九万七千円という額に増額するということになっております。裁判官検察官の初任給調整手当の支給額、現在最高で八万七千八百円でございますので、ほぼ五種の地域、甲地の医師の場合の初任給調整手当に近い額であるという概況でございます。  次に、今回初任給調整手当の増額を見送った理由でございますが、御案内のとおり、裁判官検察官の初任給調整手当の具体的な内容は、裁判官については最高裁の規則検察官については法務大臣の準則で定められておりまして、その引き上げは最高裁判所法務省でそれぞれ検討すべき事項でございますが、先ほど申し上げましたように、最近では平成元年に、旧来の初任給調整手当の額では任官者の十分な確保ができないということから引き上げを実現させていただいたわけであります。その際には、日弁連に初任の勤務弁護士の給与実態調査を依頼いたしまして、そのときの調査によりますれば、大体いわゆるいそ弁と新任の判事補検事の初任給の間には月額にして八万円程度の差があったということでございますが、それを踏まえまして相当額の増額を実現していただいたわけであります。  したがいまして、その引き上げの効果をある程度の期間見守る必要があるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、一番近いことしの春の任官者数といたしまして、裁判官は九十六名、検察官は四十六名の新任を確保することができたということで、かなりの好転傾向が見られるということでございますので、そういった実情から、今直ちにこれを引き上げるということは法務省としては検討をしておらないところでございますし、最高裁においても同様であるというふうに聞いておるところでございます。  それから、最近の任官者数の動向につきまして私の承知している範囲内で申し上げますと、最近三年間を見ますと、平成元年は裁判官五十八名、検察官五十一名、合わせて百九名、平成二年は裁判官八十一名、検察官二十八名、合計百九名、平成三年は裁判官九十六名、検察官四十六名、合計百四十二名、最近の例ではこういうふうになっております。  そのほか、中途退官等の問題につきましては官房長の方から御説明いただきます。
  111. 則定衛

    政府委員(則定衛君) 検事につきまして最近三カ年の中途退官者の数を申し上げますと、昭和六十三年度五十五名、平成元年度五十六名、平成二年度四十八名となっております。このうち五十歳以上の検事の数が過半数という実態でございまして、ちなみに平成二年度四十八名中、五十歳を超えます者の数が三十二名という状況でございます。
  112. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 先ほどお尋ねの裁判官の充足率でございますけれども、判事は欠員が十九名ございまして、定員充足率は九八・六%でございます。判事補が欠員九名ございまして、定員充足率は九八・五%でございます。  それから、裁判官の方の中途退官者でございますが、昭和六十三年度が判事が四十八名、判事補十二名で合計六十名、平成元年が判事が四十名で判事補が六名、合計四十六名、平成二年が判事が五十二名で判事補十二名、合計六十四名の中途退官者でございます。
  113. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そこで、法務大臣にお尋ねいたしますが、先ほどから申し上げておりますように、検事もかなりの定員不足となっておりますし、そういうようなところから、この間からああいうように合格者を増員するといったような施策もとられておると思います。これはなかなか息の長い対策でございまして、すぐにはそういうような効果が出るかどうかということもかなり疑問ですけれども、そういう欠員が非常に多数に及んでいるということは、結果的にはやはり事件の処理ということに遅滞を来しております。そういうことについて、大臣はこれからどういうようなことをお考えになっておりますか。
  114. 田原隆

    国務大臣田原隆君) 検察官裁判官に中途でやめる人がかなりいるということは、やはり職場としての魅力をもう少し持たせて、やりがいのある仕事にしなければいかぬ。実際、検察官仕事裁判官仕事は我々から見ていると大変やりがいのある仕事と思えるのですけれども、御本人たちから見たときに非常に忙しかったり、いろいろ世間からの注目を浴びたりという立場から見て、何というか、やりがいと別にといいますか、よその方がよく見えて出ていくのかもしれませんが、私はそういうことのないように、処遇を初めできるだけ改善し、本当にやりがいのある職場ということに育て上げていかなければいかぬのじゃないか、そういうふうに考えておりますが、そういうふうに努力していきたい、こう思っております。
  115. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 ひとつ大臣、今おっしゃったようにいろいろ知恵を絞っていただいて、しょせんは他に比べて待遇がよくない、魅力がないというようなことではなかろうかと思います。  次に、育児休業についてお尋ねしますが、安心して育児休業を取得できるようにするためには、官民とも将来的には休業期間中の所得について保障するという方向に持っていくことが望ましいわけですけれども、現在はとりあえず官民ともにノーワーク・ノーペイ、こうなっております。ところが一方、裁判官については強い身分保障が憲法上報酬減額禁止という規定でされているわけです。  そこで、数点についてお尋ねいたしますけれども、つまり、憲法七十九条及び八十条で定める裁判官報酬減額禁止規定というものを法務大臣はどのようにお考えになっているか。本案では裁判官にノーワーク・ノーペイとした理論的根拠というものがどこにあるのか、憲法の保障との関係をどのように考えておられるのかという点です。  それと、私が考えますのに、民間並びにほかの公務員とバランスがとれない点は出てきますが、むしろ裁判官育児休業中の報酬支払いを行うことによって、将来全労働者に対する所得保障への突破口的な役割を果たすことになるのではないか、こう思うんですけれども、その点についてお尋ねいたします。
  116. 田原隆

    国務大臣田原隆君) 御指摘の憲法の規定趣旨は、裁判官が経済的な事情に左右されて職務に専念できないようなことがあってはいかぬということで、その身分を保障することで司法の独立を図るということから始まっておると思うのです。これを害するおそれのない場合の報酬の減額というものが果たして憲法の規定に抵触するのかどうか、私はしないのじゃないかと思うのです。  この育児休業制度裁判官期間中無給であるということを知った上で、その自由な意思でやるということがこの法律の立案のときの考え方であるし、私もそれでいいんではないかと思うのでございますけれども、先ほど他の先生からも御質問があったり、今先生からもおっしゃったような、 むしろ裁判官が率先してそういう処遇を受けることによって他を引き上げるという考えも一方では確かにあるかもしれませんが、ただ民間会社というのは必ずしもそれができない中小企業とかその他いろいろ多種多様にわたっておりますから、世間全体がそこまで引き上げられてくるのは、裁判官が率先して引き上げるというよりも、むしろ裁判官は、今の私が御説明申し上げたような事情でありますから、民間並びに一般職公務員、そういう時代が来たときにすかさず同じように引き上げていくという方が本来の姿じゃないか、私はこう思います。  というのは、繰り返しになりますけれども、民間には経営というものがあって、経営事情のいいところと悪いところによって相当違うわけでございますから、一般的に国が補助して育児休業の金を出してやるということは民間に対してできないわけですから、そういう意味育児休業という点に着目して横に並べてみるのは、やはり今のような並べ方の方が当面正しいのではないかというふうに考えております。
  117. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 大臣のおっしゃられたように、言うなれば今の大臣のお気持ちとしてはむしろ先憂後楽というようなお気持ちでおっしゃったのじゃないかと理解しますけれども、しかしやはり現在のような状況であれば、結果的には、先ほどから申しておりますように、処遇の格差が出てくるということになれば欠員が増大していく。ということは、国民にひいてはしわ寄せが来るということになりますので、そこの点もひとつよくよく御理解をしていただきながら、今後努力していただきたい、こう思います。  最後に、法案以外でございますが、一点だけお尋ねいたしますが、私は去る三月の当委員会のとき、人訴問題についていろいろお尋ねをいたしまして、当時の左藤法務大臣からもこれの改正については鋭意努力し早急にこれを改正するというようなお約束をいただいております。  ところで、この改正作業がその後どうなっているのか。私はそのときの大臣のあのお言葉を聞いて、本来ならば直ちに議員立法で提出しようかとも思ったんですが、早急にやる、確かにこれは緊急な問題である、重要な問題であるというような御答弁がありましたので差し控えておりましたけれども、その後何の連絡もない。ないところか、聞くところによるとそれは五年先か十年先になるんじゃないかというような話さえ聞こえてくる、こういうようなことでございますけれども、なぜ早くやろうとされないのか。民事訴訟法の全面改正とあわせてやるというようなお気持ちやに聞いておりますけれども、これはなぜ切り離してやろうとされないのか。民訴の場合は改正ということで済むんですけれども、人訴のこの問題は全くそこが空白になっておるんでして、何の救護策もないわけなんですね。それなのになぜ一緒に民訴の改正の事のついでのようにしてやろうとされるのか、どうして切り離せないのか、その点まずお尋ねします。
  118. 清水湛

    政府委員清水湛君) 御指摘の問題につきましては、中野先生、前から当委員会でも問題にされ、私どもも答弁してきたところでございます。  この第三者の救済問題につきましては、法務省といたしましても大変重要な問題であるということで、法制審議会の民事訴訟法部会に御検討をお願いしたわけでございます。同部会では、審議の結果、この問題については非常に重要な問題を含んでおりますので、やはり民事訴訟手続の全面的な見直し作業の過程の中で関係各界の意見を十分に聞く必要があるということになりまして、今月の十二日に公表されました検討事項の中に盛り込まれたということになっているわけでございます。一般的な問題といたしまして、人事訴訟において判決の効力を受ける第三者の救済方法について何か法律改正すべき点があるかという第三者再審の問題と、それから、例えばこのような考え方があるがどうかというような例示的な考え方を二点示しまして意見照会をしているところでございます。  この意見照会の趣旨でございますけれども、一般的には平成二年度から作業を始めまして大体五年をめどに全面的な改正作業をするということになっているわけでございますが、この照会事項の補足説明の中で、そういうような審議の日程にかんがみ問題によっては非常に緊急性を要するというようなことであればそういうことにつきましても意見を述べてほしいというような説明をいたしているわけでございます。したがいまして、今月十二日に対外的に意見の照会をしておりますので、どういうような意見が戻ってくるかというようなことについて私ども関心を持って見守っているところでございます。  一つの問題といたしまして、この例示しているような考え方であるということでございますと余り意見の分かれるということはないかと思うわけでございますけれども、例えば純然たる第三者再審ということになりますと、本来の訴訟当事者適格を有しない者が再審になると当事者適格を有するというような問題にも発展しかねない要素があるわけでございまして、そういうようなことになりますと人事訴訟手続あるいは再審制度全般について大きな問題を生む可能性もあるというようなことも考えられるわけでございます。  私どもといたしましては、この照会の趣旨に従いまして関係方面の意見というものが出そろった段階で適切に対応をすべきものであるというふうに目下のところ考えているところでございます。
  119. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 これは、この間から清水局長は私の質問に対する御答弁の中でいろいろ学説的なことをおっしゃいましたけれども、それで解決できる問題ではございませんし、今お話がありましたように、十二日にそういうように——それこそ初めての審議がどうか知りませんけれども、審議会にかけたと。しかし、この間からの答弁を聞いておりましても、まず審議会にかける。そしてそれを今度は一般に照会する。そして各層の意見を聞く。それから、それを今度はまた意見集約したものを法制審議会にかける。そして今度はそれをもとにして、もしよしとなれば試案をつくる。そしてその試案をまた公表する。そして意見を求めて、再びまた今度は審議会で結論を出す。そして今度はそれを法務省で精査する。  こういうようなことで、私これ数えてみただけで八段階あるわけですね。そしてその上で国会にかけるというんですから、そんなことをやっていたらこれはとてもその間何年かかるかわからない。そうなったらもうこれはやっぱり議員立法で出すしかないんじゃないかなと思うんです。その間にいろいろな事件が起きておりますし、何の救護策もないままに抜き打ち判決が出るわけなんです。だから、これは早くするということは何回も言われているんですが、大体いつごろになるんですか。
  120. 清水湛

    政府委員清水湛君) この人事訴訟における第三者の問題につきましてはいろんな考え方があるわけでございまして、私も前々回の答弁でしたか、例えばその第三者が補助参加を申し出ると同時に再審の訴えを提起する、こういうことは現行法上も可能なのではないか、こういう考え方があるということを申し上げたわけでございます。そういう方法によるということになりますと、それを法律の上で明確にするということはそれほど大変な作業とは言えないというふうに思います。しかしながら、一般論として第三者に再審当事者適格を認めるという議論になりますと、これは大変複雑な、いろんな意見を生む可能性がある、こういうふうに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、私ども従来、民事基本法でございますので、こういった基本法の改正につきましては法制審議会という場におきまして関係方面の意見を十分に聞いた上で法務省としての成案を得て国会に御審議をお願いするということにいたしておりますので、基本的にはやはり第三者再審の問題につきましてもそのような方法によらなければならないというふうに思っているところでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、問題の性 格によりましては関係方面の意見におきましてこれだけは切り離して早くもっとすべきであるというような意見もこれは十分考えられるケースもあるわけでございますから、そういうものであればそれに応じてまた適切な対応措置を当然のことながらとらなければならないというふうに考えている次第でございます。
  121. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 最後に一つだけ。  今、学説的なことを申されましたけれども、そういうようなことをやってみても、最高裁で既に行証法のような条文が人訴法にあれば救済できるけれども、これがないから救済できないといって棄却されているわけなんですね。そういう判例があるわけなんですから、私が申し上げるのは、どうして民事訴訟法の改正と切り離せないのか。それをやればできるはずなのに、それをやらないで民訴法の改正のついでのようにしようとされるから時間がかかってしょうがない。これは空白になっているんですから、全く空白になっているんです。民訴法は、それはでき上がっているものを改正するということです。私が言っているこの人訴法は全くその部分が空白になっているんですから、そういうようなことであればやはり今度我々としても、それはちょっとそんなに時間かかるんだったらまた考えざるを得ない、こういうことになってきますよ。  そのことだけを言って、私の質問を終わります。
  122. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 簡単にお願いします。
  123. 清水湛

    政府委員清水湛君) 第三者再審の問題が空白領域であるのかどうかということにもいろんな意見があるわけでございまして、最高裁の判例は、補助参加として再審の申し立てをするんじゃなくてい本人自身が再審の申し立て権があるんだという主張をなさったものですから、それはないというふうに最高裁の判決は示された、こういうことでございます。このことにつきましてそれを法律改正をして認めるということになりますと、大変な議論を生むことになるのではないかということを私申し上げたわけでございまして、そのためにはやはり相当関係方面の意見も十分に聞いてみる必要がある、こういう趣旨でございます。
  124. 橋本敦

    ○橋本敦君 まず、最高裁にお伺いをいたします。  憲法七十九条、八十条で裁判官報酬については、これは減額をしてはならないということを基本にして、異例の形で憲法上保障されている。この趣旨は、まさに司法の独立、裁判権の独立を擁護しようとするそういった憲法的な精神から出ている重大な規範だと思いますが、御理解はどうですか。
  125. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 御指摘のとおり、この憲法の規定裁判官身分保障、司法の独立を保障しておる重要な規定であるというふうに認識しております。
  126. 橋本敦

    ○橋本敦君 裁判権の独立というのは、外部からの干渉はもちろん許されないし、また内部からの干渉も許されない。そういった意味で、それは当然のこととして考えられているわけでありますが、間違いありませんか。
  127. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 内部とおっしゃいますのが裁判所内部ということであれば、それはそのとおりであろうと存じます。
  128. 橋本敦

    ○橋本敦君 私がなぜその問題を本件の給与法案に関連して取り上げるかといいますと、裁判権の独立に関して重大な疑念を抱かざるを得ない報道が最近なされている問題があるからであります。それは、もうお読みになって御存じのとおりでありますが、大阪空港の最高裁大法廷判決にかかわっての問題であります。  大阪空港騒音公害訴訟は、私も何度も現地も調査し、被害者にも面談をして実情も聞きましたが、極めて深刻な状況でありまして、全国の注目を浴びた裁判であったことは言うまでもありません。その中心問題が、金銭的損害賠償にかかわらず、それだけにとどまらないで、夜間の飛行の差しとめという環境権、人格権に基づく基本的な主張が、これが注目を浴び、重要な課題になった裁判であったことはこれまた明白であります。  その大法廷の最高裁判決が昭和五十六年十二月十六日に、差しとめ請求はこれは却下をするという形で行われたことは間違いありませんね。
  129. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) 委員指摘のとおりでございます。
  130. 橋本敦

    ○橋本敦君 この最高裁の判決に対しまして多くの批判が起こりました。私どもは、これは貴重な二審の判決を破棄して請求を却下したという問題は明らかに国側の意向に沿う判決だというふうに思いましたが、それは私だけの判断ではないわけであります。  例えば、大法廷大阪空港訴訟判決を特集したジュリストを見ましても、東京大学の加藤一郎教授は、「判決の意外性」として、「大阪空港の最高裁大法廷判決は、私たち法学者に予想しなかった大きな衝撃を与えた。」、こういうふうにおっしゃっております。そしてまた、憲法学者の小林直樹教授は、「最高裁判決の基本枠組」ということでこの点をお触れになって、「このようにして最高裁は、被害者住民の「過去の損害」に対する賠償を認めたものの、全体としては空港の「公共性」を重視して、明らかに「国」寄りの判決を下したことになる。」、こういう評釈をされている。私は、こういった学者の評釈はまさに正鵠を得ていると思うわけであります。  ところで問題は、もともとこれは最高裁第一小法廷にかかっていた事案でありました。最高裁の事務処理規則によりますと、最高裁にかかる事件原則としてまず小法廷で審理をすることになっていることは間違いありませんね。
  131. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) 御指摘最高裁判所裁判事務処理規則の第九条第一項という規定がございまして、そこには「事件は、まづ小法廷で審理する。」、こういう規定がございます。
  132. 橋本敦

    ○橋本敦君 当時、最高裁の第一小法廷の裁判長は岸上康夫裁判官であられたわけでありますが、この第一小法廷が口頭弁論を開いて、そして審理の終結を述べたのが昭和五十三年五月二十二日のことであったと思いますが、これは間違いありませんね。
  133. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) そのとおりでございます。
  134. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、第一小法廷で岸上裁判官が退官される九月までには判決が出されるのであろうかという期待が大方広まっていたのでありますが、八月三十一日になって突如この事件は大法廷に回付するということが関係者に伝えられるに至った。ここに一つの問題があるわけであります。  そこで、最高裁にまずお伺いしますが、小法廷で審理した事件を大法廷に回付することはもちろんあり得るわけですけれども、本件の場合は、これは今おっしゃった最高裁の規則のどの規定によって回付されたものですか。
  135. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) これは具体的な事件にかかわる事項でございますので、私どもとしましてはその記録により判明する範囲でしかお答えできないということをまず申し上げておきたいと思います。  それで、記録によりますと、昭和五十三年の八月三十一日に口頭弁論の再開決定、これが第一小法廷でございました。それと同じ八月三十一日でございますが、第一小法廷から大法廷に回付という手続がとられております。その理由につきましては、特にその回付の中では触れられておりませんので、私どもとしては何とも申し上げかねるということでございます。
  136. 橋本敦

    ○橋本敦君 しかし、大法廷に回付するのが相当であると小法廷が判断したという、そういう規定に基づくものであるということは容易に推測されることだと思いますが、いかがですか。
  137. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) 先ほどの最高裁判所裁判事務処理規則の第九条によりますと、その第二項でありますが、「左の場合には、小法廷の裁判長は、大法廷の裁判長にその旨を通知しなければならない。」とございまして、第一号が「裁判所法第十条第一号乃至第三号に該当する 場合」、第二号としまして「その小法廷の裁判官の意見が二説に分れ、その説が各々同数の場合」、第三号としまして「大法廷で裁判することを相当と認めた場合」、こういうことがございますので、そのどれかに当たることは間違いございませんが、そのどれであったかということは記録上は判明しない、こういうことでございます。
  138. 橋本敦

    ○橋本敦君 ではよろしいです。それはいいでしょう。  私が問題にするのは、その点について経過を調べてみますと、結審を小法廷がした後再び弁論を開いて大法廷に回付するという、当事者双方が弁論をし結審をした後回付するというのは、これは手続的には極めて異例だというふうに思いますが、事実はどうですか。たくさんありますか。
  139. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) その点につきましては、実は民事裁判でございますので、この記録というものは最高裁判所事件終わりますと、第一審の裁判所に返るわけでございます。そういうことでございますので、大法廷の事件、一々記録に当たるということをしないと、果たして弁論を開いた後大法廷に回付したという事例があるかどうか、そのあたりはつまびらかに今の段階ではできない、こういうことでございます。
  140. 橋本敦

    ○橋本敦君 あなたの経験から見て、極めてまれなケースであるというようにお思いになりませんか。
  141. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) 経験と申しましても、私は最高裁判所の具体的な事件、特に民事事件については担当したこともございませんので、この席では何ともお答え申し上げかねるということを言わざるを得ないと思います。
  142. 橋本敦

    ○橋本敦君 そんなに消極的に腰を引いた答弁をしなくても法律家としておっしゃったらいいわけですよ。  私の経験からいっても、これはそうざらにあることじゃありません。問題は、大法廷への回付という問題についてどこからどういう話が出てきたのかということであります。結審したんです。その結審した後、裁判所は和解の勧告をされた、これは記録上ありますか。
  143. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) その点先生の方で御指摘ございましたので、原庁に調べさせましたけれども、記録上はそういう形跡はございません。
  144. 橋本敦

    ○橋本敦君 法務省伺いますが、新聞でも報道されておりますが、当時の蓑田法務省訟務局長は、和解の話があって裁判所にお話ししたということを言っておりますが、間違いないんじゃないですか。
  145. 加藤和夫

    政府委員加藤和夫君) 先ほど御指摘のありました第一小法廷の昭和五十三年五月二十二日の口頭弁論期日で、裁判所の方から国の指定代理人に対して和解の意向の打診がございました。
  146. 橋本敦

    ○橋本敦君 今お認めのとおりですよ。最高裁、もっとしっかり調べなさいよ。  この和解の話があったときに、私はきのう木村弁護団長にも事実を確かめたんですが、弁護団側は二審判決の基本に沿う和解であるならばお受けして結構ですという意見を述べたんですが、国の方は、代理人は和解に応ずるかどうかについてはここでは即答しかねる、検討させてもらいたいということで検討された。検討した結果、国の方は和解には応ずることはできない、むしろこの事案は大法廷に回付して判決をしてもらいたい、こういった意見を述べたというように伺っておりますが、事実は法務省どうですか。
  147. 加藤和夫

    政府委員加藤和夫君) 今の事実経過につきましては、橋本委員指摘のとおりでございます。
  148. 橋本敦

    ○橋本敦君 今お認めになったとおり、国の方は大法廷に回してくれと言った。  そこで、大事なのはもう一つありますが、この毎日新聞の記載の証言というところによりますと、「証言ことして、「岡原長官が大法廷へ回してはどうかと言っていると、岸上さんから聞いた時はびっくりした。差し止めも、過去の損害賠償も、基本的には(住民勝訴の)二審判決通りでよいということで、評議の結論はもう固まっていたんです」という重要な証言としての記載がある。このことは私はここで質問するということで、だれかに聞くつもりはありませんよ。そういう状況で大法廷へいって住民要求が却下されたのであるならば、これは重大な問題だということを裁判の公正の問題として取り上げざるを得ないということであります。  そこで、もう一つ伺いたいのは、最高裁に聞きますが、私も何度も最高裁に事件を上告して調査官にお会いしたこともありますが、裁判官は私ども弁護士を含めて当事者には絶対にお会いにならないという立場を堅持しておられると思いますが、間違いないですか。
  149. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) その点も私ども事務当局としましては、裁判官が具体的にお会いになるかどうか、そのあたりは具体的な裁判の進行の問題でございますので、しかとした答弁はしかねるわけでございます。
  150. 橋本敦

    ○橋本敦君 あなた、最高裁の実情をもっとしっかりつかみなさいよ。会いませんよ、裁判官は。やすやすと会いませんよ。  それじゃ聞きますが、このケースで大法廷べこの事件は回付してほしい、和解は反対ですということを直接裁判官が国側の代理人には会って話を聞かれたという事実を私たちは重大だと見ておるんですが、そういう事実があったかどうか御存じですか、最高裁。
  151. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) 一番初めに申し上げましたように、この事件について私どもが承知しておりますのは、この事件の記録からあらわれる事実だけでございます。その記録からあらわれる事実から申し上げますと、先ほども和解についても御答弁申し上げましたけれども、口頭弁論調書なりそのほかの書類におきまして、その和解を勧告したというようなことがあらわれておらないということを申し上げたわけであります。  それから、大法廷回付の問題につきましては、記録によりますと、上告人の国の方から大法廷で審理することを検討してほしい、こういう趣旨の上申書が出ておるということは存じておりますが、それ以上の事実は記録上はわからない、こういうことでございます。
  152. 橋本敦

    ○橋本敦君 私が次に聞こうと思っていたのはその上申書のことなんです。関連して先にお答えになりましたからわかりました。  国の方は、具体的に和解の話が出た裁判官との話の中で和解を断って大法廷回付を要請し、上申書もわざわざ大法廷回付を求めて出していったという事実も今明らかになりました。そういう問題は第一小法廷がどうするかということを決めるのが当たり前であることはもう答弁も要りません、当然のことです。  問題は、最高裁長官であった当時の岡原昌男長官が岸上裁判長に大法廷に回付してはどうかという話をされたという、こういう報道があることが重大だというわけであります。これはまさに最高裁長官として第一小法廷の司法権の本当の独立に関与する、そういった干渉がましい行為だと受けとられても仕方がない。岡原最高裁長官が第一小法廷の裁判官、岸上裁判長だと思いますが、そういうようにお話しになったという事実は、新聞の報道によっても先ほども証言として読み上げた中で、「岡原長官が大法廷へ回してはどうかと言っている」という話を聞いたということがあるのでも明白なんです。  この点について聞かれた岡原元長官自身が新聞のインタビューに対してどうおっしゃっているかというと、こうおっしゃっていますね。「大法廷で審理したらどうかというようなことを、あるいは言ったかもしれない。」こうおっしゃっているんです。これは極めて重大な事実じゃありませんか。最高裁長官が自分が審理していない小法廷の事件について大法廷へ回したらどうかというようなことを、こういったことを内部的に言うということは私は裁判権の独立に対する内部的な司法行政上の地位を利用したとまでは言いませんよ、干渉に当たる重大な問題だと思うんです。  裁判というものが一体どうでなきゃならぬかと いうのは、それ自体厳密に公正でなきゃならぬと同時に公正というのはまさに裁判の使命であって、その裁判の存立を支える重要な問題については裁判所は細心の注意を払って公正を担保する、そしていやしくも当事者その他の関係人から疑惑の目でもって見られてはならぬ、誤解を招きやすい行動に出ないように、まさにその公正さを保障するために全力を挙げるということは歴代最高裁長官が訓示されていることじゃありませんか。どうですか。
  153. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) 御指摘のように、裁判が公正公平でなければならない、裁判官はそれを十分心して職務を行うということは御指摘のとおりでございます。
  154. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、岡原長官が今指摘したような行為をなさったとすれば、これはまさに重大な裁判の独立に対する干渉として厳しくこの点については批判を私たちはしなきゃなりませんし、最高裁としても襟を正してこの問題に対処して、国民の司法に対する信頼の回復と疑念を一掃するために全力を挙げなきゃならぬ、そういう問題だという御認識はありますか。
  155. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) この問題につきましては、第一小法廷が大法廷へ回付をした、こういう事実がございます。その回付をするかどうかにつきましては第一小法廷の裁判官の評議ということで決まるわけでございまして、今言われておる事柄につきましては第一小法廷の評議の内容にかかわることを前提とした御質問でございますので、私ども事務当局としましてはそういう評議の内容については知り得べき立場にはないわけでございます。したがいまして、そのようなことを前提とする御質問にもお答えする立場にはないということを御理解いただきたいと思います。
  156. 橋本敦

    ○橋本敦君 最後に、時間が来ましたから言いますが、質問をすりかえてもらっては困ります。私も法律家ですから、評議の内容を聞くなんという不見識なことは絶対しませんよ。第一小法廷の評議の内容を聞いているんじゃなくて、岡原長官が当時大法廷に回付したらどうかという、こういうことを第一小法廷の裁判官におっしゃったという重要な事実が報道されているから、まさに司法の公正にかかわる重大問題として最高裁は無関心でおっては困るじゃないか、そんなことでおれるのか、そういう意味で、評議の内容じゃありません。岡原長官のこういう行為があったかどうか、これは最高裁として調査するべきであると私は思います。その点を伺って質問を終わります。
  157. 今井功

    最高裁判所長官代理者(今井功君) 新聞報道には御指摘のような事実が書かれておるわけでございます。  ただ、これは先ほども申しましたように、第一小法廷がこの事件を大法廷に回付したということにかかわることでございまして、第一小法廷の評議の内容にかかわるというふうに私どもは考えておりますので、先ほど申し上げたような答弁になるわけでございます。
  158. 橋本敦

    ○橋本敦君 またやります。  終わります。
  159. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 既にお昼も回りまして皆様お疲れと思いますけれども、よろしくお願いいたします。御答弁に際しましては、私の持ち時間二十分でございますので、簡単明瞭に私にもわかるようにお答えをいただきたいと最初にお願いをしておきます。  まず、裁判官育児休業法からでございますが、昭和六十年六月の第百二国会だったと思いますが、女子差別撤廃条約の批准、引き続いて昭和六十一年の男女雇用機会均等法の施行によって雇用における男女平等を貫くべきこと、また労働の各局面での母性保護の充実がされるべきことが政府機関、民間あるいは婦人運動、双方の責務とされてまいりました。その流れの中で育児休業法もことし五月法制化され、現在の婦人の労働環境整備についての諸問題のうち、まだ保育所その他の量的質的不足などによりまして、働く女性が出産育児の負担で退職を余儀なくされるという点について一定あるいは一歩前進の運びとなっておりますのが現状だと思います。  そこで、労働省に簡潔にお伺いしたいと思いますけれども、民間における育児休業制度の定着促進の実態をお聞きしたいと思います。
  160. 佐田通明

    説明員(佐田通明君) 民間の法律は五月八日に成立いたしまして、これに伴います労働省令あるいは労働大臣の指針を十月に公付したところでございます。労働省では十月を育児休業制度普及促進月間ということでシンポジウム、セミナー等の集団的な説明会を開いてまいりました。  その結果、具体的な例を一、二申し上げますと、鉄鋼の大手五社では既に労使の交渉が始まっておるというふうに伺っておりますし、電機労連の関連では育児休業制度があったわけでございますが、それを法律に合うように男女ともとれるような制度にする、こういうことを検討中だというふうに伺っております。全般的にも今四月に向けて具体的な就業規則を作成中というのが民間の実態ではなかろうかというふうに推測しております。
  161. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 ありがとうございます。  今回の裁判官育休法でございますけれども、裁判官はいわば独任官庁的な一人で判断決定する独立の権限を持っていらっしゃるという特殊性を持っていると思います。今回御提案の裁判官育休法導入、それとこのいわば独自性というか、それとのかかわりをわかりやすく御説明いただきたいと思います。
  162. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 御指摘のとおり、裁判官は憲法上強い身分保障がされておりますとともに、良心に従って独立してその職務を遂行しなければならないという職員を負っております。その職務を御指摘のように完結的に処理しなければならないという特殊の責任と、それに伴う特殊勤務形態を持っているわけでございます。そういう特殊性にかんがみまして、一般の公務員の育児休業制度とは若干の点において異なった取り扱いをしなければならないというような観点から、国家公務員育児休業等に関する法律とは別に独立して裁判官育児休業制度に関する法案を用意いたしました。  そういう観点から、若干の点において国家公務員育児休業制度とは異なった取り扱いをしている場面がございます。
  163. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 これまででございますけれども、裁判官育児休暇について内部的にどんな配慮をされてきたか、簡単に御説明いただきたいと思います。  またもう一つ、このたびの制度導入に当たって審議会などで女性裁判官、あるいは女性の要望あるいは意見というものをどのような取り入れ方をされたかお伺いしたいと思います。
  164. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 最高裁判所におきましては、平成元年十月に事務総長の諮問機関といたしまして女性裁判官問題研究委員会を設けました。そこで、出産に伴って育児のために退職した裁判官が退職の日から一年以内に再採用の申し出をした場合には、その者を同期の裁判官と同じ待遇で再採用するという提言を受けまして、これを実施に移したところでございます。これに基づきまして退職した女性裁判官が四名ございます。  それから、このたびの育児休業法をつくるに当たりまして女性裁判官の意見を聞いたかということでございますが、私どもの方では東京近郊の女性に集まっていただきまして、そこで意見を聞いております。ことし採用いたしました裁判官のうち女性裁判官は二十名ございますが、私はそのうちのほとんどの方々にこの導入についての意見を聞きましたが、ほぼ全員の方がぜひつくってもらいたいと、こういう意見を聞いたわけでございます。
  165. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 先ほど提案理由大臣お述べになりましたが、今回の改正は女性の裁判官の任官者をふやし、また中途の退官者を減らすという目的を兼ねているというふうに理解してよろしいでしょうか。
  166. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 今回の制度趣旨は、民間の育児休業法あるいは国家公務員育児休業制度と同様でございまして、最近における女性の社会的進出といった実態を踏まえて、そういう女性が出産した場合に退職しなければならないという状態を回避しようということでございまして、裁判官についてもやはり女性の裁判官としての進出という背景を踏まえて、それを定着させ、推進していこうという考え方を含んでいるものでございます。
  167. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 なるべく長期の期間でお伺いしたいんですが、両三年ぐらいとりまして、女性裁判官の中途退官の理由育児のかかわりというか、それはプライバシーに属することかもしれませんけれども、お調べになっていらっしゃいましたら教えてください。
  168. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者泉徳治君) 女性裁判官の中途退官でございますが、平成元年に二人、平成二年に三人ございます。そのうちの二人は、先ほど申しました育児のための退職でございまして、育児を終えたら間もなく裁判所に復帰することが予定されている者でございます。そのあとの人たちにつきましては、これは中途退官と申しましても相当年配で、定年近くになられて弁護士等に転職されるための退職でございます。
  169. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 先ほどから確認をさせていただきました法案の目的ということに沿いまして、幾たびも同僚委員からの御質問ございましたけれども、あえてお尋ねしたいと思います。  法案の第四条、育休中の裁判官はその身分を保有するが報酬は受けないという点でございますけれども、これは憲法七十九条、八十条、特に後段の方で裁判官身分保障に関して、定期に相当額の報酬を受け、在任中これを減額できないとあるということ、これに違背を本当にしないのかどうかということです。  先ほどもうその御説明がございまして、憲法の規定には違背しないと三つの理由をお挙げになりました。私の聞き間違いでなければ、休業中は無給であるということを本人が知った上でそれを請求するのであるからということが育休中無給でもということの一つの理由に挙げておられました。私はどうもこのことが十分に胸にすとんと落ちないんですけれども、育休請求するということとそれから身分保障の問題というのは別なんじゃないでしょうか、だからというふうにつながるんでしょうか。
  170. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 申し上げました趣旨は、御指摘の憲法の趣旨にかんがみて報酬を支給しないということ、これが裁判官身分保障、司法の独立の保障、そういったものに全く抵触しないという特別の場合には憲法の規定するところの在職中の報酬の減額に当たらないというふうに解すべきだということを前提にいたしまして、今御指摘のように、全く自由な意思に基づいて無給の育児休業であることを知りながら育児休業をとるかどうかを選択することができるという制度である。しかも、現在の社会において、民間の育児休業制度も公務員の育児休業制度給与の支給が保障されない形での育児休業制度が当面の制度として定着しようとしている、そういう状況の中において、裁判官がそのことを理解して自由な意思でとるかとらないかを選択することができるということ、これらをあわせて、先ほど申しましたような憲法の規定に違反しないという考え方を申し上げたわけでございます。
  171. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 私は、むしろ現在無給であるということを定着させないために、憲法の条文もあることですから、これを前向きにお取り上げいただきたいということをお願いいたしまして、時間がございませんので次に進めさせていただきます。  ちょっと戻りまして法案の二条二項ですけれども、裁判官育児休業請求に当たり最高裁の承認を必要とし、最高裁は同条三項で請求に係る期間につき育児休業請求をした裁判官事務処理のための措置を講ずることが著しく困難である場合を除き原則として承認しなければならないとあります。法文上、これは最高裁が著しく困難と判断した場合には育休それ自体を拒み得るというようにも受け取れます。  ここで、現在、裁判所の地方支部、支所ほど出向裁判官の負っている事件件数が非常に多いと聞いています。また、スムーズな事務の引き継ぎが困難であるということも伺っております。こういうことであれば、このような地域における育休請求が事実上抑制されるということにこのことがつながらないかと思うんです。  こういうことを申し上げるのは、最高裁がそれを許すというそのお立場があるということ自体をいけないとかということではないですけれども、裁判官であれば、自分のやっていらっしゃる実務あるいはそれの処理が完成される時点まではそれをやっていくというふうな心構えを持っていらっしゃるのが普通のように思うんです。それだけに、非常に独立した、また自主的なお仕事だと思うのですけれども、最高裁の承認拒否権というようなものは果たして必要なんでしょうか。自主判断に任せるということで、この項目自体ちょっとどうかなと思う節がございます。それから、もし承認拒否がありました場合、不服であれば争う余地というのはございますのでしょうか。
  172. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 後で必要があれば最高裁の方に補足していただきますが、二条三項の規定趣旨は今回の制度自体が裁判事務等の円滑な運営を図るということをも目的としておるわけでございまして、そういう関係からいきましても、また事柄の性質上当然のことでございますけれども、育児休業制度を実施することに伴って裁判の事務の処理が停滞するということになっては困るわけでございます。したがいまして、どうしても事務処理のための措置を講ずることができないという例外的な場合には、やはり事務処理の方を優先させる必要がある場合もあるであろう、こういうことで、これは基本的には一般国家公務員の場合も同様でございますが、こういう規定を置いているわけでございます。  この判断は、具体的には請求を受けた最高裁判所においてこの制度趣旨とそれから実務の実情を総合判断して決定されるものでございまして、一概に申し上げられませんが、私どもが最高裁からお聞きしているところでは、この制度趣旨を踏まえて必要がある育児休業請求しようとする裁判官は、できるだけ例外なく承認が得られるように事務の配点に十分の工夫を凝らされ、あるいは場合によっては全国的な規模の裁判官異動も考えるというふうに聞いております。したがいまして、実際問題といたしましては請求する裁判官がそういった対応をする余裕がある十分な期間を置いて請求されるということを前提にする限り、このことを理由として拒否されるということはほとんどないのではないか。ただ例外的にその対応の余裕もないのに、あすからあさってから育児休業するということを申し出られた場合に、それは困るというような場合があるかもしれませんが、その制度が適正に運用される限りにおいて、例外的な場合はほとんど考えられないのではないかというふうに立案当局としては理解しているところでございます。  次に、不服の争う余地があるのかどうかという点でございますが、最高裁判所育児休業承認しなかった場合には、裁判官育児休業請求権あるいはそれによって担保されている法的な利益が侵害されるということになると思われますので、その不承認という処分に対して最高裁判所に対する異議の申し立てといった不服の申し立てをすることができるものと考えております。
  173. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 本案の実施というものは最高裁規則というのがつくられて、その中でいろいろ運用について明らかになってくると思いますが、他の委員からも御要望がございましたけれども、これは一日も早くこの規則をつくって方向を明らかにしていただきたいというふうにお願いを申し上げておきます。  次に、裁判官報酬等に関する法律の一部改正案検察官俸給等に関する法律の一部改正案についてお伺いいたしますが、時間がちょっとなく なってまいりましたので、一点時間の許す限りお伺いしたいと思います。  司法試験の法改正がございましたけれども、ある程度合格者は増加していっていると思いますが、今の司法試験制度に関しまして、司法試験制度の法案のときにも意見を申し上げたことがございますが、司法試験内容というか、これは相当問題面で改善というのはあったんでしょうか。
  174. 則定衛

    政府委員(則定衛君) 司法試験、短答式それから論文式が中心になりますが、それぞれの出題につきましてはかねてから考査委員の中で出題の改善検討委員会というものがつくられております。  最近、受験雑誌あるいは受験予備校等の出題傾向に対しますコメントなどを拝見いたしますと、相当の改善が見られるというふうに私ども承知しております。
  175. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 最後に、今後の検察官の志望者の増加、あるいは中途退官者防止についての法務大臣の御意見を承りたいと思います。特に、司法試験制度とのかかわりの上でお答えいただけたら幸いでございます。
  176. 田原隆

    国務大臣田原隆君) 志望者がふえることが任官者がふえるということにやはり統計的につながると思いますので、司法試験が改善されて——一回改善されましたが、今後さらに研究して抜本的に変えていく必要があるのじゃないかというふうに考えておりますし、またそのような努力をしてまいりたい。  それからもう一点。やめていく人も減らなければいかぬという点については、やりがいのある職場であるということが一番大事でありますから、待遇の面、それから仕事のやり方とかいうことについて改善の余地がまだあるのではないかということで、この両面から今後の、何といいますか、検察官裁判官等の司法に携わる人、検察に携わる人たちが途中からやめるのを防いだり、やりたがる人がふえるように、そういうふうに努力してまいりたいと思っております。
  177. 紀平悌子

    ○紀平悌子君 終わります。
  178. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより三案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  179. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  180. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、裁判官育児休業に関する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  181. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  北村哲男君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。北村君。
  182. 北村哲男

    ○北村哲男君 私は、ただいま可決されました裁判官育児休業に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党の各会派及び各派に属しない議員紀平悌子君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     裁判官育児休業に関する法律案に対す     る附帯決議(案)   政府並びに最高裁判所は、本法施行に当た  り、次の事項について特段の配慮をすべきであ  る。  一 育児休業制度の実施に当たっては、裁判官   の人員の充実確保に努め、裁判事務が過重に   ならないよう配意するとともに、国民に対す   る司法サービスの低下をもたらすことのない   ようにすること。  二 法の実効ある運営を確保するため、育児休   業をしようとする裁判官事務処理体制等に   ついて総合的な対策を講ずるとともに、国家   公務員の取扱いに対応して適宜制度の見直し   検討を行い、特に育児休業期間中の経済的援   助については、適切な措置を講ずること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  183. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ただいま北村君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  184. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 全会一致と認めます。よって、北村君提出附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、田原法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。田原法務大臣
  185. 田原隆

    国務大臣田原隆君) 委員の皆様方に熱心に御審議いただき可決されましたことに対し、心から御礼申し上げます。  ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重してまいる所存でございます。  なお、最高裁判所にその趣旨をお伝えし、遺憾のないよう配慮いたしたいと考えております。
  186. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) なお、三案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  187. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十一分散会      —————・—————