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1991-12-03 第122回国会 参議院 農林水産委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十二月三日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――   委員氏名     委員長         永田 良雄君     理 事         鎌田 要人君     理 事         北  修二君     理 事         菅野 久光君     理 事         三上 隆雄君     理 事         井上 哲夫君                 青木 幹雄君                 大塚清次郎君                 熊谷太三郎君                 鈴木 貞敏君                 高木 正明君                 初村滝一郎君                 星野 朋市君                 一井 淳治君                 大渕 絹子君                 谷本  巍君                 村沢  牧君                 猪熊 重二君                 刈田 貞子君                 林  紀子君                 喜屋武眞榮君   出席者は左のとおり     委員長         永田 良雄君     理 事                 鎌田 要人君                 北  修二君                 菅野 久光君                 三上 隆雄君                 井上 哲夫君     委 員                 大塚清次郎君                 鈴木 貞敏君                 高木 正明君                 初村滝一郎君                 星野 朋市君                 一井 淳治君                 大渕 絹子君                 谷本  巍君                 村沢  牧君                 猪熊 重二君                 刈田 貞子君                 林  紀子君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農林水産大臣   田名部匡省君    政府委員        内閣官房長官  近藤 元次君        外務省経済局次  須藤 隆也君        長        農林水産政務次  陣内 孝雄君        官        農林水産大臣官  馬場久萬男君        房長        農林水産省経済  川合 淳二君        局長        農林水産省構造  海野 研一君        改善局長        農林水産省農蚕  上野 博史君        園芸局長        農林水産省畜産  赤保谷明正君        局長        農林水産省食品  武智 敏夫君        流通局長        食糧庁長官    京谷 昭夫君        水産庁長官    鶴岡 俊彦君 事務局側        常任委員会専門  片岡  光君        員     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国政調査に関する件 ○農林水産政策に関する調査  (当面の農林水産行政に関する件)  (派遣委員報告)     ―――――――――――――
  2. 永田良雄

    委員長永田良雄君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、農林水産政策に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 永田良雄

    委員長永田良雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 永田良雄

    委員長永田良雄君) この際、田名部農林水産大臣及び陣内農林水産政務次官からそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。田名部農林水産大臣
  5. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) このたび農林水産大臣を拝命いたしました田名部匡省でございます。  農林水産行政内外両面でまことに重要な時期を迎えておる折から、農林水産大臣の責務の重大さを今改めて痛感している次第であります。  農林水産業は、申すまでもなく国民生活にとって最も基礎的な物資である食糧安定供給のほか、地域社会の活力の維持、国土・自然環境保全等を通じて、我が国経済社会の発展と国民生活の安定に不可欠の役割を果たしております。  私は、皆様方の御支援、御教示を得て、農林水産行政責任者として、二十一世紀に向けて我が国農林水産業に新たな展望を切り開いていくよう最大限の努力をする決意でございますので、よろしくお願い申し上げて、ごあいさつといたします。(拍手
  6. 永田良雄

  7. 陣内孝雄

    政府委員陣内孝雄君) このたび農林水産政務次官を拝命いたしました陣内孝雄でございます。  我が国農林水産行政は幾多の重要な課題を抱えておりますが、田名部大臣を補佐いたしまして、全力を傾けて諸課題に当たりたいと存じております。  委員長初め、委員皆様の御支援と御教示のほどをお願い申し上げましてごあいさつといたします。(拍手)     ―――――――――――――
  8. 永田良雄

    委員長永田良雄君) 農林水産政策に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 村沢牧

    村沢牧君 去る十一月二十一日、ドンケル事務局長から示された作業ぺーパー素案は今後の議論たたき台と見るのか、それともこのペーパーベースにして基本的な合意案が作成されるものと見るのか。外務省ペーパー性格について伺いたい。
  10. 須藤隆也

    政府委員須藤隆也君) お答え申し上げます。  去る二十一日にダンケル議長から提示されましたペーパーは、英語ではドラフト・ワーキング・ぺーパーと言っておりますが、これはダンケル議長説明によりましても、議論素材として非公式会議用に配付されたノンペーパーという性格のものでございまして、議論を促進して、重要な点に関する決定各国において促進していただくように議論素材として配付するものであるという説明を受けております。
  11. 村沢牧

    村沢牧君 素材であることはわかるんですが、これはたたき台なんですか、それともこのペーパー中心にして合意案を作成されようというドンケルさんの意図があるんですか。その辺はどういうふうに判断していますか。
  12. 須藤隆也

    政府委員須藤隆也君) ダンケル議長によりますと、このノンペーパー議論して、それをさらに修正して合意案に持っていくということは考えていないということでございまして、あくまでも議論を促進するための紙であると。それからさらに、この紙にはまだ盛られていない幾つかの点も残っておりまして、そういう意味で、網羅的なものでもないという説明をしておりまして、このペーパーを修正して合意案に持っていくということは考えていないということをダンケル議長ははっきり言っております。
  13. 村沢牧

    村沢牧君 修正して合意案に導こうとすることを考えていないということは、このペーパーベースとしてこれから合意案を作成しようということですね。
  14. 須藤隆也

    政府委員須藤隆也君) このノンペーパーをもとに議論をして、その結果、もし合意案をつくるとすれば別の紙になるんだと思いますけれども、このノンペーパーをそのまま修正した形で合意案に持っていくということは考えていないというふうに聞いております。
  15. 村沢牧

    村沢牧君 今後の交渉日程見通しについて伺いたい。
  16. 須藤隆也

    政府委員須藤隆也君) ちょっと過去のことになりますが、十一月七日に貿易交渉委員会というのがございまして、そこで農業分野を含めて全分野につきましてダンケル事務局長交渉の現状についての報告を行って、その中で、今年中に交渉を終結するという立場から早急に解決を要する懸案事項のリストのようなもの、懸案事項を列挙した文書出したわけでございますが、現在各分野で、その文書に盛られた事項中心合意案作成を目指して交渉が行われているところでございます。  その後、十一月二十九日の貿易交渉委員会におきましてダンケル事務局長は改めて、十二月五日にはすべての交渉を再開すると。と申しますのは、きょうあしたと、三日、四日と通常のガット年次総会がございますので、その間は中断するような形になりまして、十二月五日からすべての交渉を再開して、その後集中的な交渉を行った上で、十二月二十日前には交渉成功したかどうか、あるいは成功が間近であるかどうかがわかるような状況にまで持っていきたいというふうに述べておりますので、そういう方向で交渉が進んでいくのではないかと見ております。
  17. 村沢牧

    村沢牧君 近藤農水大臣、このたびは官房長官おめでとうございます。  ガットの対応は非常に重要な問題でありますので、私は加藤官房長官出席を求めたところ、国会の問題や内閣の問題が多忙であってぜひ勘弁してください、官房長官常任委員会出席したことは余り例がないようでございますけれども長官出席させますという官房長官からの話がありました。  そこで、宮澤内閣の人事を見ておりますと俗に米シフトと言われるんですね。田名部農相羽田大蔵大臣加藤官房長官渡辺外相、元農林大臣、この人はちょっと意見が違うようでありますが、それに近藤長官、今まで農業、米問題にずっと携わってきた人たちです。そこで米シフトというのは、米を守るための布陣として総理がお考えになったものでしょうか。それとも、米の自由化は避けて通れない、その後始末をするためにこういう布陣をしたと言われる人もあるんですが、近藤長官決意を聞きたいところです。
  18. 近藤元次

    政府委員近藤元次君) 米シフトと世に言われておるわけでありますけれども、恐らく大蔵大臣外務大臣官房長官も、私もそうでありますけれども総理から就任時、米の問題が大変だから、ウルグアイが大変だからそれぞれ就任をしていただきたいということはなかったと思います。田名部農水大臣にはあったかもしれませんけれども、ほかの部署についた人たちにはそういうことはなかったのではないだろうかと思っております。  ただ、私ども長年この問題に携わってきた間柄の立場でありますので、我が国の今日までの姿勢をこのウルグアイ・ラウンド交渉の中にいかに反映するかということは、私ども仕事の中で念頭に置きながらさせていただいておるところであります。
  19. 村沢牧

    村沢牧君 今後のこの交渉日程について今外務省から答弁のあったところでありますが、近藤長官はこの交渉にはかなりの時間がかかるというふうにお考えなのか、それともアメリカECとの関係で案外早く決着がつくと思われますか。その辺はどういうふうに思っていますか。
  20. 近藤元次

    政府委員近藤元次君) なかなか難しいきょうの日だ、そう思います。私は今、きょうあたり、あすにかけてアメリカEC交渉をするということを承っておるわけであります。  今も外務省からお話がございましたように、ドンケル事務局長は、五日スタート、二十日というような一つ日程を公表しておるわけでありますけれども、これ五日が若干スタートがおくれるんではないだろうかなと。ということは、我が国もまだ高級事務レベルの、政治レベル会議をやるという案内も来ていないのではないかなと思いますので、そのスタートもおくれるのではないだろうか。アメリカECの問題も、きょうあすの交渉によってこの日程に狂いが生ずるのではないのかなというふうに受けとめておるものですから、今この段階先生の御質問にお答えするには非常に難しいきょうあすの日ではないかな、そう思っております。
  21. 村沢牧

    村沢牧君 田名部農相は衆議院の農林水産委員会で、ドンケルペーパー審議の過程で何かなければと提示したものである、その程度のものと考えているというような趣旨の答弁をいたしておりますが、そのような見方でいいでしょうか。
  22. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) これそのものがどうという意味合いを持つとは思っておりません。素案として出して、会議をやるには何にもなしに議論するわけにいきませんので、そういう意味でお出しになった、これから各国意見を踏まえてどういうところで一致できるかというためにお出しになったものと私は受けとめております。
  23. 村沢牧

    村沢牧君 副長官、今大臣のような見方でいいでしょうか、ドンケルペーパーというのは。
  24. 近藤元次

    政府委員近藤元次君) 先ほど外務省からもお話がございましたし、また大臣からも御答弁がございました。そのものずばりでないペーパーだということは私もそのとおりであろうと思います。特に我が国主張しておる基礎的食糧なり十一条二項(c)なりというものがそこの中に明確にされていないということ自体では、このペーパーがすべてである、このペーパーを基本にしてまとめられては困りますし、またそう受けとめられない、こういう立場でその点も恐らく現地では主張しておるように聞いておるわけでありますから、私は今大臣が言われたような形でいいのではないかな、こう思っております。
  25. 村沢牧

    村沢牧君 政府がそういう考え方であるとするならば、日本政府我が国主張ガット合意文書に盛られるように積極的な行動を起こさなければならないと思います。  私は、先回も申し上げたんですが、昨年のウルグアイラフウンドの最終閣僚会議ブラッセルへ行きましていろいろと政府にも要請してまいりまして、各国とも交流してまいりました。自民党からは羽田団長それから加藤今の内閣官房長官、参議院から北先生大河原太一郎先生も行かれました。そういう中でいろいろと外国動きも見てまいりました。  また、去る十月末に社会党の代表としてジュネーブヘ行ってドンケル事務局長に直接我が国立場、我が党の主張を要請してまいりました。この際、アメリカダボレル大使とも会談をいたして要請してまいりました。フランスやドイツに行きまして農林省幹部とも会談をし要請してまいりました。こういう行動を通じまして我が国外交の弱さというのをつくづく私は感じておるんです。ドンケル氏は、日本例外なき関税化動きをとめるような働きかけをしているけれども自分の知り得るところでは日本努力は功を奏していない、例外なき関税化に反対するのは日本と韓国だけだと、こうぬけぬり言っているんです。全くなめられておるんですね。  しかも、最近になって米国ベーカー国務長官ヒルズ通商代表あるいはECアンドリーゼン代表などが来日いたしまして、日本政府やいわゆる与党の有力政治家働きかけをしておる、全く圧力のかけられっ放しじゃありませんか。米国にしてもECにしても大統領みずからが、首脳みずからが飛び歩いて、自分の国の主張を通すために表面的にも、あるいは水面下でもいろいろ行動しているじゃありませんか。それに比べて我が国交渉に当たる外務省農水省担当者任せ。なぜ内断が動かないか、閣僚が動かないか。相手の出方だけ見ておって我が国主張を貫き通すことができると思うんですか。こんな態度であるから我が国主張を取り入れることをしないようなペーパーが出てくるんです。蚊帳の外に置かれておるんです。どうですか、副長官
  26. 近藤元次

    政府委員近藤元次君) この二年間、今先生からお話しのように、政府はもとよりでありますけれども各党間においても、あるいは団体においても国会においても、国内国外を問わずして精力的に我が国農業の事情なりウルグアイ・ラウンド交渉支援というものを強力に進めてきていただいておりますことはお礼を申し上げたいと思います。  ここのところ米の問題につきましては、そのおかげをもってこの半年の間でも、それぞれ党の代表も行かれて、また団体も行かれて、また農林省顧問という立場でOBも行かれて、従来の農産物とは違った非常に米の自由化については日本は苦しい立場に立っておるという認識は高まったのではないだろうかと思います。先生お話のございましたように、もっと閣僚レベル交渉に当たるべきだということも一面私は考えていいことだと思うんですけれども我が国立場というのは、アメリカECやそれぞれの国の立場と若干違ってくる。それはなぜかといえば、私どもは譲歩はできませんという立場主張して、譲歩できない理由はこうなんですという、譲歩する必要もないんですという立場主張し続けて、それをいかに反映させるかというのが我が国農業分野交渉中心であります。アメリカECの場合には、幾らぐらいお互いが譲歩し合うかという交渉のやり方とその点で一つは違いが出てくるということは御理解をいただきたいと思うわけでありますが、ただレベルの高い人がその立場外国と接するということについては私も仰せのとおりだ、こう思います。  そういう面で、御意見を改めてお伺いしたわけでありますから、そういう立場で今後さらに一層努力をしてまいりたい、こう考えております。
  27. 村沢牧

    村沢牧君 我が国米国ECとはちょっと違う、あるいは他の国とも違う、それだけにやっぱり閣僚クラスが動かなきゃいけないと思うんですよ。外務省農水省担当官が悪いとは言いませんよ。一生懸命やっているけれども、ただ農林水産大臣が最終的な閣僚会議だけに出るんじゃなくて、田名部農相、大事なときです。あなたが出かけて、交渉に臨めとは言わない、外国の皆さんと接触することが必要だと思うんですが、どうですか。
  28. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 今後閣僚レベル交渉が必要な場面というものが出てくるのかな、こう思っております。今やっておりますのは、御案内のように昨年末のブラッセル閣僚会議合意の失敗をいたしたという経験があるわけです。ですから、政治的にこの決定を急ぐということではなくて、もっと技術的に検討をして話し合いというものはなされませんと、上の方で大筋の合意みたいなものをしてみても、この場合というのは各国とも立場が全然違います。特に米というのはヨーロッパの方では余り関係のない話になってまいります。あるいは酪農、乳製品、これが我が国の米のように大事な国もあります。そういうものがいろいろ話し合いをするわけでありますから。  技術的な検討はほぼ終わった。そこで今高級事務レベルのお話し合いというものに上がってきておるわけでありますから、いずれ機会を見て、私の行かなければならぬそういう場面には、なお日本主張というものをはっきりと申し上げてきたい、こう思っております。
  29. 村沢牧

    村沢牧君 事務的な会合や高級事務レベル会談で話がつくものなら私はそんなことを言っていませんよ。アメリカ国務長官ヒルズEC代表日本に来ているじゃないですか。水面下ですよ。なぜあなたはそういうことをしないんですか。時期を見てじゃなくて積極的にやろう、その気持ちを担当である農林水産大臣は持ってもらわないと困る。もう一回答弁してぺださい。
  30. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) お話はよくわかるわけでありますけれども近藤長官お話になりましたように、日本立場というのは九〇がいいのか三五がいいのかという話じゃないんで、この例外なき関税化というのはだめです、この一点で今日までも各党、おいでいだく団体も言っていただく。近藤農林大臣も現職当時おいでになって、その日本立場というものを一体どうするかというのが今の会議内容だと。要するに日本の案を認めるかどうか。別な方法というのはないわけでありますから、そういう意味では外国とは全然違ったレベル話し合いになっておるということであります。私の方は別な案がないものですから、このことで高級事務レベルでの日本立場というものは主張をきちっとしているわけでありますから、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  31. 村沢牧

    村沢牧君 そんな態度じゃ理解できませんよ。近藤農林大臣ドンケル氏に会ってきた。しかし、ドンケルさんに要請したことがペーパーにあらわれておらない。また、ドンケルさんと、日本話し合いをしてきましょうということも約束をしてきた。しかし、それは全然約束を果たしていないし一やないですか。こういうことであるからやはり積極的な閣僚関係いろいろ行動が必要だと。あなたはそんなに楽観していいですか、田名部さん。
  32. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 楽観をいたしておるわけではありませんが、先般アメリカヒルズ通商代表あるいはECアンドリーゼン委員長がお見えになったときも、日本立場というものはこういうことですと明確にお伝えをいたしておりますし、まあ今高級事務レベル段階でやっておりますので、必要に応じて私も出向いてまいりたい、こう思っております。
  33. 村沢牧

    村沢牧君 ぜひそういう態度行動を示してください。  外務省に伺うが、政府は一体である、ウルグアイ・ラウンドに臨む態度については農水省考えとは一致していると思いますが、そうした立場で積極的な外交行動を展開するべきだと思うんですが、どうですか。
  34. 須藤隆也

    政府委員須藤隆也君) 外務省といたしましても、政府方針のもとにウルグアイ・ラウンドにおきまして日本主張が十分に反映されるよ、つに一生懸命やっているところでございます。
  35. 村沢牧

    村沢牧君 そのことは当然ですけれども外務省幹部には政府方針に反するような発言をする者がおる。また、農水省のこの姿勢に対して批判をするようなことが耳に入るんですよ。そのようなことは絶対に許さない。外務省関係者ウルグアイ・ラウンド成功に向けての積極的な取り組み、この成功というのは日本主張を通すためですよ、今後とも取り組んでもらいたい。もう一回答弁してください。
  36. 須藤隆也

    政府委員須藤隆也君) いろいろ報道等されているのは承知しておりますが、外務省といたしましては、常に農水省と緊密に協議の上、政府方針のもとに交渉に当たっているわけでございまして、今後ともそのような態度で一生懸命やっていきたいと思います。
  37. 村沢牧

    村沢牧君 次に移りますが、ドンケルペーパー特徴我が国主張との関係について大臣はどのように受けとめていますか。
  38. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 包括的なと、こういうことでありまして、先般ECアメリカと、またこの間お会いした感じでは全然違うように受けとめておりますが、輸出補助金、まあこれが最大の問題だ、こう思っておるんです。輸出補助金についてはECの方が非常にガードもかたくて、今のところ私どもはそれぞれの国、カナダともお会いしましたし、いろいろお会いしていますが、各国全然受けとめ方が違っております。したがって、先ほど来から近藤長官も申し上げておりますように、見通しが全く立たないという感じを私は持っております。
  39. 村沢牧

    村沢牧君 大臣答弁は、ドンケルぺーパー特徴でもないし、日本主張について何ら述べておらないじゃないですか。そんなことわからないんですか。ドンケルペーパーについてその概要を、長いものですから全文とは言わない、概要をひとつ国会に示しなさいと言ったら、農水省は、これっぽちのものですよ、たった百文字に足らないんですよ。こんなことでもって重要な問題の審議ができますか。  局長に伺うけれども、マスコミはいろいろ報道しています。私の知っている限りにおいては、一番詳しい報道は十一月二十三日読売新聞、一ページにわたって報道していますね。このことは報道に間違いありませんね、あなたが見て。どうですか、そのことに答えてください。
  40. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 作業ペーパー素案につきましては、農業交渉の場では国際的な約束として非公式のペーパー部外秘ということになっているわけでございます。私ども、そうした性格から、こうした場でどういうふうに御説明していいか苦慮しているところでございますが、今先生の御質問がございました内容につきまして私どもが問題であると考えておりますのは、一つ輸出補助金につきまして、直接的な輸出補助金の削減については言及しておりますが、いわゆる国内にもかかわる、共通して輸出補助金に影響のある例えば不足払いのようなものについての言及が不十分であるということで、輸出競争につきましては、私ども主張しているような点が十分でないという認識を持っております。  それからもう一つ、これは一番重要なことでございますが、包括的な関税化ということが基本的な事項として書かれております。しかも、基礎的食糧あるいは十一条二項(c)について言及がございませんので、この点は非常に問題があるペーパーだというふうに考えているわけでございます。
  41. 村沢牧

    村沢牧君 局長農水省の皆さんが御承知のように、我々も今日まで大事な問題としていろいろ論議もし、提案もしてきたんですよ。だから、どういうぺーパーが出されたのか示してくださいと言ったって、概要すら言わないじゃないですか。答弁だってろくにやってないじゃないですか。  重ねて質問するけれども、このマスコミの報道は、あなたたちが見て絶対間違いない、そう思いますか。間違いなければ、これによって私は質問しますよ。
  42. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) そのペーパー性格が先ほど申し上げましたような性格でございますので、それが正しいか正しくないかということにつきましてもお話しするのは差し控えさせていただきたいわけでございますが、どうもそのペーパーにつきましては、私は十分真意を伝えていないのではないかという感じを持っていることだけは申し上げさせていただきたいと思います。
  43. 村沢牧

    村沢牧君 ですから、マスコミの報道が真意を伝えておらないとすれば、あなたが正確なのを出すべきじゃありませんか。こんなふざけた不誠実なことで審議ができますか。  そこで、今局長はこのドンケルぺーパー特徴について二つ言ったんですが、我が国がこれまで主張してきた基礎的食糧の確保、食糧安全保障、このことは盛られているんですか。
  44. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 私ども主張していることにつきまして十分盛られてはおりません。十分と申しますのは、そうした文言が使われている箇所もございますけれども、私ども主張している国境措置について、その点について言及していないという意味でございます。
  45. 村沢牧

    村沢牧君 そのことすら私はわからないんです。国民の支持、各党の支持、議員の支持、特に農林水産委員会支援を得なければ、こんな重大な問題を乗り越えることはできませんよ。どういうぺーパーが出されているのか、公表できないとするならば、理事会ぐらいには概要出したっていいじゃないですか、できませんか。
  46. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 国際的にいろいろこの種のものを一々全部、途中の経過のことでありますから、それが議題となって混乱を生ずるというようなこともありまして、これは外に出さない、国際的な約束でありますから、それはきちっと守っていかなきゃならぬ、こう思っております。
  47. 村沢牧

    村沢牧君 それでは、マスコミの報道も真意ではない、必ずしも正確ではないと言われる。ペーパーは出さない。そんな無責任なことがありますか、どうですか。
  48. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 何らかの形で、真意といいますか、内容につきまして、その伝えているどころをお伝えするというようなことにつきまして御相談させていただきたいと思います。
  49. 村沢牧

    村沢牧君 大臣、よろしいですね。今の答弁で。
  50. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) それで結構であります。
  51. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、日本主張も余り盛られておらない。私は農水省から正確なペーパーをいただいていたわけじゃありませんからわかりませんが、市場アクセス、すなわち関税化ですね。国内支持、すなわちグリーンボックスについてのこの内容は、アメリカが従来から求めていたことである。昨年の最終閣僚会議に、ヘルストローム議長のペーパーと流れは同じだ。山本元農林水産大臣は、そのころ、この本委員会で、このようなぺーパーは私たちは全然問題にしていません、これを素案としてやる気持ちはありませんと答弁している。  そこで、このペーパーはどうしても私は、アメリカ寄りだ、輸出国の立場に立っておる、そういうふうに判断をいたしますが、どうでしょうか。
  52. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) このペーパーにつきます各国意見がそれなりに出ているわけでございますが、今のお話のようにアメリカは比較的好意的な発言をしているようでございますし、ECはやや問題があるという発言をしております。輸出国寄りということ一色ではございません。一方、ケアンズ・グループはそれなりの不満を出しているところもございますので、そんな感じで恐縮でございますが、そんな意見が今各国から言われている。まだ出されて間がないわけでございますが、十分な正式の意見ということではございませんが、そんな発言がなされているようでございます。
  53. 村沢牧

    村沢牧君 そんな発言をなされているんじゃなくて、日本農水省としての見方を聞いているんですよ。こういうぺーパーが本当に公平なペーパーであるのか、私が言うように輸出国の立場に立ったペーパーではないのか。そのことについて農水省はどういうふうに考えているか聞いているんです。
  54. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 先ほど来申し上げておりますように、私どもが一番重要に考えております関税化の扱いについて、包括的な関税化ということが中心的になっておりますので、非常に不満の多いペーパーだと思っております。
  55. 村沢牧

    村沢牧君 私たち社会党の代表がフランスやドイツの農林省幹部会談した際、関税化といっても関税化の条件についてアメリカと大きな意見の違いがある、また国内保護の削減についても所得補償の直接補助金を削減の対象にしないということ、あるいは輸出補助金を量で削るのか額で削るのかという問題がある、米国の不足払い制度や三〇一条こそ問題であると述べていました。  私たちが接しているアメリカの農民団体代表は、ウエーバーや牛肉保護を廃止することは絶対できない、こう言っております。報道によれば、アメリカ上院では輸出制限措置や通商法三〇一条の廃止は認めないという議員が過半数を突破している、こういう報道もあるんです。  十一月九日のオランダのハーグで行われたブッシュ大統領とドロール委員長の首脳会談農業問題で前進があったとアメリカ報道しています。しかし、十一月二十日前後から日本のマスコミを除く外国のマスコミは、米国ECの歩み寄りの楽観論の流れを変えるような報道が目立ってきておるんです。その後の高級事務レベル会談でも交渉の前進がなかった。  そこで外務省に伺うけれどもアメリカEC会談を今もやっておるようでありますが、前進はあったと見ているんですか。それと同時に、アメリカECの国内情勢をどう見ていますか。
  56. 須藤隆也

    政府委員須藤隆也君) ただいま村沢先生御指摘のとおり、去る九日にオランダのハーグでアメリカECのサミットが行われて、ウルグアイ・ラウンドが協議されたわけでございますが、その後発表されました宣言によりますと、最近のラウンド交渉を活発化していることはアメリカEC双方とも歓迎して、ウルグアイ・ラウンドを年内に成功裏に妥結するために柔軟性を示す用意ありとして、さらに必要に応じ首脳レベル会議をする用意があるということを発表しております。さらにその発表文におきましては、農業分野に関しましては若干の進展があり、残されているギャップを埋めるのは容易ではないが今後埋めるべくコミットすると述べられております。  したがいまして、若干の進展があったということは事実のようでありますが、まだ残されているギャップもかなりあるということも認めているわけでございまして、具体的にどの点が問題なのかということにつきましても、我々いろいろ情報は得ておりますが、今も先生がおっしゃいました点を含めて、かなりまだ問題が残っているというふうに見ております。  それからアメリカの国内におきましては、ウエーバー業界を初め、関税化に反対あるいはウエーバーを放棄することに反対の団体は活動を活発化しているというふうに承知しております。しかしながら、行政府としてはウルグアイ・ラウンド全体が満足のいく合意が得られるならば、ウエーバー全品目を関税化する用意ありということば提案として出しております。  他方、ECの方も、EC委員会が今基本的には昨年十二月のブラッセル閣僚会議の際のマンデートの範囲内で交渉しているということでございますが、アメリカとの妥協点を求めて、試案のような形でいろんな話し合いアメリカとしているようでございますが、メンバー国の中には、EC委員会のやっていることは必ずしも我々が承認しているわけではない、最終的にどういう姿になったのか全部見せてもらった上で判断するんだというふうに言っている国もございまして、特に私が個人的にも接触いたしましたフランスのような国はかなり厳しい態度を持っていると見ております。
  57. 村沢牧

    村沢牧君 次長はこういう外交折衝をやっていますから、よく内容を把握しておるというふうに私も思っております。ここで言いにくいこともあるでしょうけれども、私はそれほどきょうの段階で進んでいるとは思っておりません。各国ともそれぞれ重要な問題を国内でも抱えておるというふうに思います。  そこで、マスコミのことばかり言っちゃ失礼ですが、日本のマスコミは米市場の開放を誘導するような報道を連日行っていますが、外国の新聞は日本報道と異なっている。アメリカECの問題を正確に報道しているわけです。政府はそのことを承知していると思いますが、どんなことが報道されていますか。
  58. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 今御指摘のアメリカECとの関係につきまして、先ほど来お話がありますように、十一月九日の首脳会議ではかなり進展があったという報道が一時なされたわけでございますが、その後必ずしも国内事情はそうではないということ、例えば輸出補助金の削減幅などについて異論があって、もう一度折衝がやり直されるような場面もあるというような内容の記事が出されているわけでございます。そうしたことで、先ほど副長官からお話がございましたように、きょうあすごろ米、ECがもう一度会議を持つのではないかという報道もなされているということでございます。
  59. 村沢牧

    村沢牧君 私も諸外国動きも注視して新聞を読ませてもらっております。政府はもちろん読んでいるというふうに思いますから、やっぱりそれに沿った対応をしなければならないというふうに思うのであります。  そこで、ドンケル事務局長は、私たちに対して、例外なき関税化に反対しているのは日本と韓国だけだと言い切っているんですね。そのことが日本のマスコミにも載った。農水省はどう見ていますか。
  60. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 先ほど来お話がありますように、先週八カ国あるいは三十六カ国というふうな非公式会合が持たれたわけでございますが、先ほど来お話がありますダンケルの作業ペーパー案につきまして意見が開陳されたわけでございます。その中では日本はもちろん米につきまして包括的な関税化について反対を述べたわけでございますが、そのほかカナダあるいはエジプト、メキシコ、スイスというふうな国が、国で数えますと十四カ国、そういう反対の意思表示が出ております。これらの国の立場はそれぞれ異なります。発展途上国などは発展途上国の立場としての反対もございますが、一応そうした国からの反対が出されているということでございます。
  61. 村沢牧

    村沢牧君 今答弁がありましたように、例外なき関税化には十四カ国が反対を表明している。これは百何カ国のうち十四カ国じゃない、発言をした国のうちこれだけが反対しておるわけですね。だから日本が孤立をしているんじゃないんです。日本だけが抵抗してウルグアイ・ラウンドを壊していると言う人があるけれでも、そんなことじゃないんです。ドンケルペーパーの背後にある輸出国の立場、これに対して反対をしているんです。そのことを申し上げておきましょう。  それで、副長官にあえて申し上げることはありませんが、農業食糧問題は、各国がそれぞれの特殊事情を持っているんです。工業製品とは違うんです。だから六年もかかってこの交渉を行っているんですよ。この交渉が最終段階を迎え、特にドンケル・ぺ一パーを受けて、国内では例外なき関税化、米の市場開放は避けて通れないような世論調査も行われている、操作も行われている。政府もマスコミにあおられたのか、あるいは政府自体も関税化やむなしと受けとめたのか、譲歩案の検討に入ったなどということが最近盛んに報道されている。こんなことで今後我が国主張を貫き通すという強い交渉ができますか。火のないところには煙は立たないんです。譲歩案を検討しているんですか。
  62. 近藤元次

    政府委員近藤元次君) 全く譲歩案などは検討いたしておりません。新聞報道がいろいろ出されますけれども、正直、政府がそのような方向に向かってというようなことの立場で一度も会合を持ったこともございません。ただ先ほどから御案内のように、日本のマスコミで聞かれておる設問の仕方も、あるいは情報として流れてくるものも自由化の方向の流れで報道されておるということは私も承知をいたしておるわけであります。これはきょうに始まったことじゃありません。もうかなり前からそういう方向で実は報道が流されておるわけでありますけれども政府としては、譲歩案に対して検討するとか作業をするとかいうことは一度もまだやっておりません。
  63. 村沢牧

    村沢牧君 農林水産大臣にも確認いたしたい。
  64. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 私の方も一切そういうことは検討いたしておりません。
  65. 村沢牧

    村沢牧君 宮澤総理は今国会の所信表明で、我が国の米についてはこれまでの方針のもとと述べています。私は先日の予算委員会でこのごとについて総理にも質問いたしましたが、その際、これまでの方針のもとということは、食糧安全保障、我が国農業の現状から、米については国会決議の趣旨を体し、国内生産で自給する方針を堅持する、こういうことでいいですね。これが内閣としての統一見解である、いいですか。
  66. 近藤元次

    政府委員近藤元次君) 今先生お話のございましたように、国会決議を尊重して国内産で自給していくという方針ウルグアイ・ラウンド交渉に対処していくということはいささかも変わりございません。
  67. 村沢牧

    村沢牧君 農林水産大臣、どうですか。
  68. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 私はもうかねがね申し上げているとおりでありまして、近藤長官と同じ考え方で進んでおるところであります。
  69. 村沢牧

    村沢牧君 政府はそういう見解であるけれども、金丸元副総理だとか小沢元幹事長など自民党の実力者と言われる人が米の市場開放を誘導するような積極的発言をしている。こんなことだからドンケルにも外国にも足元を見られるんですよ。こうした人たち発言交渉の前面に立っている人の後ろから鉄砲を撃つようなものです。交渉に当たっている人はたまらぬですよ。また、日本食糧を守り、農業と農村、環境を守ろうとする国民の切実な願いを逆なでするようなものであり、全く許せません。副長官、どう思っていますか。
  70. 近藤元次

    政府委員近藤元次君) 私の大臣在任中も、実力者と言われるような人たちやその他いろんな人たちから、日米関係を心配したり、ウルグアイ・ラウンドを壊してはならないという立場、それぞれいろんな立場からおもんぱかっての発言はたびたびございました。そのつど、在任中も役所を挙げて現状の説明なり御理解をしていただく努力をしてまいりました。今日でもそのような発言があるときには、現状の交渉の状態等を説明して御理解をいただくようにいたしておるわけであります。  とりわけ政治家の場合にはそれぞれの党に所属をしておるわけですから、党の機関で御議論をいただくことは、自分考え方を述べていただくことは結構でありますけれども、そういう立場で私どもは対処をしておるところであります。
  71. 村沢牧

    村沢牧君 農水大臣、今我が国にとって重要なことは、我が国農業の現状は、輸入国の立場に立って従来の主張各国理解を得てガットの規制の中に織り込むことである、そのことを強調せず、譲歩することばかり考えておるとは言いませんけれども報道されている。こんな弱腰の態度では絶対いけないと思う。どうですか、大臣
  72. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 私は決して弱腰だとは思っておりませんが、マスコミの取り上げ方がどういうところからそういうふうに判断されているのか、私もよく理解できないわけであります。いつも申し上げておりますように、このことは、我が国立場というものを踏まえながら、自由化につながるような関税化というものは受け入れるわけにはまいりません、終始一貫これ以外のお答えはしていないわけでありますから、ぜひ御理解をいただきたいと思います。  もともとスタートが全然違うわけです。アメリカECのように輸出補助金をどんどんどんどん出して、そして世界の市場を支配しようとしている。今になってこれが大変な膨大な金だということからこのことがスタートしてきているわけでありまして、日本輸出補助金出して農産物を外国に売るというのは全くない国でありますから、その辺がもう基本的に考え方が違うわけでありますから、そのことを再三申し上げておりますし、輸入国の立場というものを尊重してくれないと話はまとまるなんというものではありません。輸出国の都合だけで今は議論されておる、そんな気がしておるものですから、このことも再三申し上げておるところであります。
  73. 村沢牧

    村沢牧君 大臣から今答弁があったように全くスタートが違う。しかし、総理は所信表明で、「相互の協力による解決に向けて、最大限の努力を傾注してまいります。」と。そして欧米が譲歩すれば日本もそれに見合った譲歩をすると言っています。輸出補助金もウエーバーも、可変課徴金も不足払いも三〇一条も何ら方向も出ないときにこんなことを言った総理は初めてなんですよ。一体何を譲歩するんですか。  近藤長官は、農林水産大臣当時、本年九月二十六日、私の質問に対して、両国の対立している視点と我が国が対立している視点というのは違った視点である、そういうところで対立しているから、アメリカECが妥協があることで日本が譲歩する考えは持っておりません、こういう答弁をされております。田名部農相はどうですか。
  74. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 総理がどういう考え方でお話をされておるかわかりませんが、一般的にはウルグアイ・ラウンドというのは米だけではないわけでありまして、いろんな分野話し合いがなされておる。これも大変難航しておると伺っておるわけであります。したがって、ウルグアイ・ラウンド成功ということについてはこれはみんなさせなきゃいかぬという考え方に立っているわけです。しかし、個々のその国の事情というものも踏まえて決めてほしいという主張というものは相当根強いものがあるわけでありますから、そういうことでお話をされておるのではないだろうか。これ以上は私の推測の域を出ないわけでありますから、大体、総理国会答弁あるいは各委員会答弁国会決議を尊重してこれからの交渉をいたしてまいりますということは再三申し上げておるところでありますので、また御理解をいただきたいと思います。
  75. 村沢牧

    村沢牧君 私がお聞きをしたもう一つは、大臣のお隣に座っておる前大臣は、アメリカECが対立している視点と我が国が対立している視点とは違っているんだ、だからアメリカECの妥協があったとしても日本が譲歩するという考え方はございませんと答弁をされております。あなたの意見を聞いているんです。
  76. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 私もそのように考え行動しておるつもりであります。
  77. 村沢牧

    村沢牧君 そういう立場で今後とも臨んでください。  そこで、国会決議でありますが、国会決議は通常三度にわたる国会決議というふうに言われておりますが、当参議院農林水産委員会の決議はこのほかにも五回も行っておるんですよ、同じ趣旨の決議を。私はそのすべての決議の賛成者になり、時には提案者になっています。ただこれを尊重するということでなくて、この決議に沿ってこれから政策を展開してもらわなきゃならない。大臣、参議院の決議の特徴を御存じですか。
  78. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 五度にわたる決議全部は承知しておりませんが、三度にわたる決議については承知しております。
  79. 村沢牧

    村沢牧君 どなたか農水省で、衆議院の決議と参議院の決議と若干違いますが、知っている人おりますか。
  80. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 衆議院と参議院の決議の違うことで私ども存じておりますのは、第百一回国会におきまして決議をされたときに、米の自給というところに、衆議院の場合は我が国農業の基幹作物である米の自給を図るためという表現でございますが、参議院の決議におかれましては米の完全自給を図るためという文言が入っている点が違うというふうに承知しておりまして、その決議を引きました次の六十三年九月二十一日の参議院の決議におきましてもその部分が衆議院と違っているというふうに承知しております。
  81. 村沢牧

    村沢牧君 大臣、失礼ですがおわかりですか。そうだとするならば、これは部分自由化も認めることはできない。かねがね私が主張してまいりまして、それなりの答弁を歴代農相はしているんですけれども、どうですか。
  82. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 基本的な方針は、言葉の一つ一つは別として、国会の決議というのは、参議院も衆議院もあわせて決議を尊重していくということでありますから、いずれにしても自給でいくんだという国会決議、これを体して今日までも御答弁も申し上げてまいりましたし、そのことで行動をしておるつもりであります。
  83. 村沢牧

    村沢牧君 私は時間がありませんから、完全自給の内容意味についてはここでくどくど申し上げません。一粒も入れないなんて言っているわけじゃないんですよ。部分自由化、制度的に入れないというのが参議院決議の趣旨なんです。ですから、決議の問題は別といたしましても、大臣、米の部分自由化も将来は完全自由化につながってく る、認めない、そういうことでよろしいですか。
  84. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) その覚悟で今の交渉に臨んでおるということを御理解いただきたいと思います。
  85. 村沢牧

    村沢牧君 政府の見解や決意も聞いたわけであります。  ところで、政府を支えている与党自民党は皆さんどうか。さっき申しましたように、私は、ガットの昨年のブラッセルでも今度のジュネーブでも、自民党の皆さんとも、目的は同じだということで党は違ってもやってまいりました。しかし先ほど申しましたように、いわゆる実力者と言われる人の発言が次から次へと飛び出している。自民党の森政調会長は一昨日、民放番組で、米の市場開放問題で、いたずらに開放しないという時期ではない、口には出さないけれども政府・自民党がいろいろな選択肢を考えている。部分自由化だとか関税化など譲歩案を準備しているようなことを示唆しているんです。米の市場開放後の対策を検討していることを言っているんじゃありませんか。  また渡部通産大臣は先月二十六日の記者会見で、国会決議の見直しに柔軟に取り組むべきだと、こういう考え方を示唆している。これに関連してマスコミは、米の決議見直し、政府・泊民党検討に着手と報道されている。とんでもないことです。こうしたことを、一部の野党も言っている人もありますけれども、これもけしからぬことでありますが、与党の重要な立場にある人らが言うことでありますから、大きな不安を投げかけているんです。近藤長官どういうふうに思いますか。
  86. 近藤元次

    政府委員近藤元次君) 党の方のことにつきましては、報道されたとき政調会長は、自分の真意が伝わっていないというような,とを言われておりました。多分そうであろうと思いますが、政府と党の間での交渉があるようなことの報道の受けとめ方をする方もおられるかと思いますけれども、そのようなことは全くございません。今党のことを私がここで申し上げるのもいかがなものかと思いますが、多分ないのではないかと、私はそういうことを聞いていないわけでありますから、そう信じておるわけであります。その他いろんな人たちがいろんな立場で話をしたということはもう数たくさんあるわけでありますけれども内閣においてそういうことが不統一にならないようなことにつきましては今後も十分注意をしてまいりたいと思っております。
  87. 村沢牧

    村沢牧君 副長官大臣に党のことを聞くのは失礼だと思いますが、私は皆さんにあえて申し上げたい。政府・自民党の名誉のためにも、こういうことを言われて国民は、特に農業関係者は不安に思っておるんですよ。  委員長に要請しますが、さっき私が指摘した問題について委員長自身によってただしてい当委員会に真偽を報告してください。それが自民党の名誉だと思うが、いいですか。
  88. 永田良雄

    委員長永田良雄君) 理事会で相談いたします。
  89. 村沢牧

    村沢牧君 それぜひやってください。午後また委員会がありますから、休憩時間があるようですから、十分話はできるというふうに思います。  それから強いて皆さんに申し上げます。そういうことが問題になっているんですから、そんなことを私から発言されて黙っておるようではいけないと思う。ぜひやってください。  それから、米の関税化自由化に応ずることは食管法の精神にもとることはもとより、法の、規定に照らしても抵触することになるというふうに思います。これは内容によって違うでしょうけれども、食管法との関係はどういうふうに思われますか。
  90. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 現在ウルグアイ・ラウンドでいろいろ論議が行われておりますいわゆる関税化の問題について食管法に照らして考えた場合いかがかというお話でございますが、先ほど来大臣からも御答弁申し上げておりますように、国会決議の趣旨を体して国内産で自給するとの基本方針のもとで交渉しておるという状況下で、率直に申し上げましてそういった問題について私ども細かな検討をしているわけではございませんけれども、仮定の問題としてお答えをいたしますと、現行制度と関税化というものは両立しがたいものであるという理解を持っておるところでございます。
  91. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、自民党を代表してドンケル事務局長に要請に行った羽田現大蔵大臣は、米の関税化の場合には食管法の改正が必要だが自民党内の状況を見ても野党の状況を見ても法律改正、国会通過は不可能である、こうドンケルさんにはっきり言っておりますね。この記録も残っています。加藤官房長官も同じようなことを記者会見で述べております。私どもももち‘ろんそういう考え方であります。  そこで農林水産大臣に伺いたいが、あなたもこういうお考えを持っていますか。
  92. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 改正する必要に迫られるという仮定の話ですけれども、私ども一切だめですとこう言っておるわけですから、それを前提にあえて申し上げますと、仮に改正をしなきゃならぬ部分があるとすれば、国会先生方が決議をされる、満場一致でこれはしておるわけですから、それを改正するというのは一体できるであろうか、そういうふうに考えますと、これはなかなか難しかろうなと。これはまだどうこうという場面でないものですから、各党考え方がどうあるか私は存じませんが、感じとしては難しい、そう考えております。
  93. 村沢牧

    村沢牧君 食糧庁長官は、仮定の話だけれども自由化なんということは食管法に違反をいたしますとはっきり言っておるんですね。だから、私が名前を挙げた皆さん方も、こんなことは国会で法律が通りませんよと言っている。与党の実力者がですよ。私もそう思うんです。  農水大臣は何かあやふやなことを言っていますけれども、そんな通らないようなものをこれからやることはないじゃないか。あなたがそういうことを言っても、いろいろ圧力が加わって政府が受けたとしても国会は通らぬということを自民党の大物が言っているじゃありませんか。ですから、仮定の問題ではあるけれども、そのくらいの決意をあなたは持つべきだと思う。どうですか。
  94. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 予算委員会のときもそのことは明確に、仮定の話でありますけれども国会で通らないものをお約束できません、こう申し上げておるわけであります。ただ、まだそこまで行っていない段階でいろいろと御質問されるものですからお答えしにくいんです。精神は一つしかないのを別な精神の方をお尋ねになるものですから。当面自由化はだめですと、これ一本でいっているわけでありますから、そういうふうに御理解をいただきたい、こう思います。
  95. 村沢牧

    村沢牧君 そんな歯切れの悪いことではどうも私も安心して見ているわけにはいきませんので、これからまた折を見ていろいろと要請してまいりましょう。  そこで、ことしは農業基本法ができてから三十年になりました。現在の農業の現状を見ると、基本法の目的とはるかに逸脱した形になっていますね。例えば新学卒の農業従事者は既に二千人を割って千八百人になっている。自給率は世界の百六十四カ国のうち百四十五番目という低さ。食糧農産物の輸入は世界で最大。にもかかわらず水田面積は三割も減反をしておる。市場開放は世界で最も進んでいる。こういう結果、我が国農業の現状がこういうふうになったんですよ。これで米まで自由化につながるような関税化や部分開放をしたならば、一体日本の土地利用型農業はどうなてしまうのか。農水省、今までのあなたたちが三十年間やってきた歴史を見て、ひとつ答弁してください。
  96. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 先生おっしゃるように、基本法制定以降のデータを見ますれば、例えば専業農家数は昭和三十五年当時二百八万戸ありましたが、平成二年では四十七万戸というふうに減っている、あるいは従事者についても、三十五年に千七百六十六万人農業従事者というのはおりましたが、これが平成二年には千三十七万人になっておるというふうに非常に減っておる。自給率等についても同じでございます。そういう状況にあることを我々十分踏まえまして、これからの日本農業がどうあるべきかということについて、前の近藤農林水産大臣の御指示のもとで、現在、食糧農業、農村政策についての見直し作業を行っているところでございます。
  97. 村沢牧

    村沢牧君 その見直し作業をしていることはわかりますけれども、こういう実態だから日本農業を守らなければならないとあなた方の方が私よりも痛切に感じておると思うんです。そういう気持ちでひとつ今後臨んでください。  農基法にはその条文の中に「輸入に係る農産物との関係の調整」という条文があるんですよ。これ使ったことないじゃありませんか。こんなに輸入がふえて、アメリカの三〇一条でやられているんじゃありませんか。こんな態度だからいけないと思うんです。  そこで大臣、ぼちぼち私の持ち時間も終わりますから申し上げたいと思います。  私は、昭和五十二年以来十五年間ほとんど農林水産委員会に所属して、農政の基本問題や農林水産省の現実問題について質問もし提言もして、法改正や国会決議にも携わってきました。この間、福田内閣から宮澤内閣まで八人の総理がかわった。農林水産大臣鈴木善幸さんから田名部さんに至るまで十七人の農相がかわっている。これだけ農林大臣が十五年間に十七人もかわるということで、日本の農政はたから変わったとは申しませんが、そのように変わってきているんですよ。その結果今の農政になったんだ。この間、十五人の農林水産大臣と論議をいたしましたが、やはり日本食糧安保、日本農業の現状、米はいかなることがあっても絶対に輸入しない、日本立場日本農業を守るということが歴代農相の答弁であったんですよ。同時に内閣の公約でもあった。万一政府が米の輸入に踏み切ることがあるならば農政の大転換であるとともに重大な責任なんです。内閣として責任をとらなきゃいけない、そのように思いますが、どうですか。
  98. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 責任もさることながら、現状では三割も減反をお願いし、一極集中排除をしようという政策を打ち出しておるというときに自由化が行われれば、地方は第一次産業が主たる産業でありますから、これがだめになればみんな都会へ出てきて生活をしなきゃならなくなる。この狭い国土が均衡ある発展をしなきゃいかぬというときにそのことが一体できるだろうかという観点からしても、私どもは何といってもやっぱり国土の均衡ある発展、それには農林水産業、第一次産業を大事にしていく、この姿勢というもので歴代農林水産大臣あるいは政府含めて取り組んできておる、こう承知をいたしておりますし、私もまた所管大臣としてこのことはきちっとしていかなきゃならぬ、全力を挙げて取り組むとむしろ決意を申し上げた方が適当であろう、こう思います。
  99. 村沢牧

    村沢牧君 最後に申し上げ、質問を終わりにいたしたいというふうに思います。  今まで政府方針によって農民の皆さん方は、米を守るためにひとつ減反にも協力してください、米価の据え置き、引き下げにも協力してください、そういうことで我慢をして歯を食いしばって協力してきたんです。それを裏切っちゃいけない。そして同時に、米の問題では農家、農民の問題だけではなくて消費者の問題だ、環境を守るためには重要な問題だ。だから国会決議があり、全国の自治体の九〇%を超える決議があるんです。私たち、この間も消費者代表が五千人も集まって米の自由化反対の大会を日比谷で行っているんです。  ですから、今まで指摘したような自由化につながるような関税化や部分開放に乗ることは絶対に認めない。あなたは重大なときに農林水産大臣就任したんです。今までの農林水産大臣も、今までの公約を破ることがあったら私が責任を負うというようなそういう悲壮な決意で今までやってきたんです。田名部さん、あなたもそういう気持ちであろうというふうに思います。ですから、そういう決意でもってこれから取り組んでいただく。  それから、委員長にも要請しておきますが、大事なときですから当委員会も必要に応じて行動を起こしてください。同時に私は、場合によっては総理大臣にもこの席へ来てもらわなきゃいかぬ、そういうように思いますので、農林水産大臣決意と、本当に自分で腹を切ってもやるとそういう心構えを示してください。
  100. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 決意においてはだれにも負けぬ気持ちは自分で持っておるつもりであります。いろいろ申し上げることも大事でありますが、やっぱりこれを行動し実行するということが一番大事なことだと自分でもそう思っておりますので、全力を挙げて取り組んでまいりたい、こう思います。
  101. 三上隆雄

    三上隆雄君 それでは、田名部農水大臣、まず今回の農水大臣就任まことにおめでとうございます。ちょっと時期外れの気がいたしますけれども、いろいろ国会動きによって当農水委員会が今回初めて大臣を迎えて委員会を開くことになりました。心からお祝いを申し上げる次第であります。  ただ、先ほど来村沢委員からいろいろ質問が出ました。私の質問するところをほとんど質問したような感じではございますけれども、私は私なりにまた質問を展開してまいりたいと思うし、私も田名部農水大臣と同じ青森の出身でありまして、地元のよしみをもちまして、しかもまだ今まで大臣が地元で選挙民に訴えてきたそれを、今回この恵まれた農水大臣の職務の中でその主張してこられたことを実現していただきたい、そのことを期待しながら今回の決意をもう一度改めてお聞かせいただきたい、こう思います。
  102. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 私も農家の出身なものですから、しばしば選挙区でもお話を申し上げております。実態というものをわかっておりますだけに、今お話しのような考え方で進んでまいりたいと思うのでありますが、ただ時代がだんだん移り変わっていきますと、担い手の処遇でありますとか規模拡大でありますとか、いろんなことの対応に追われていることもまた事実なんです。話ではわかってもそれを実現するということになるとこれはまたなかなか難しい問題もあります。ありますけれども、農家自身の努力というものがなければなかなか農政というものは好転していかないという厳しいことも実はしばしば農民の皆さんに申し上げているところであります。先般も、私も近藤長官とテレビに出る機会がありましたが、そのときにも申し上げました。  いずれにしても、最大の努力は農家にもしていただく。しかし、幾ら努力しても及ばないという部分が出てくる。そこはひとつ国民の皆さんの御理解を得てみんなでこれを育てていくということでなければ、国土の狭い、七割が山に囲まれたこの日本農業を進めていくということはなかなか大変なことだと。しかも、一億二千万の食糧を安定的に供給する、この責任が私どもにあるわけでありますから、その方向に向けて、先ほども官房長からお話がありましたように、二十一世紀に向けて食糧、農村、農業、これを今省内で検討いたしておるわけでありまして、その方向に沿って日本のこれからの農業というのはどうなければならぬのかということをいずれお示しいたしてまいりたい、こう思っております。
  103. 三上隆雄

    三上隆雄君 先ほど来村沢委員もいろいろ質問しでまいりましたけれども日本農業をこれ以上停滞させてはならない。自給率もまたこれ以上下げてはならない。ただいま大臣の弁明にもあったように、食糧農業、農村、それを維持するためには、私は今の日本の価格をこれ以上下げては日本の農村社会が成り立っていかない、農家が成り立っていかない、こう思うわけであります。  そこで、大臣、なぜこう農業が追い詰められてきていると思いますか。その辺の御認識を明快に、簡略にお答えいただきたいと思います。
  104. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 農家の衰退の大きな原因というのは、やっぱり若い人たちにとって魅力がなくなっておる、生活の安定が図りにくいと いうことだろうと思います。
  105. 三上隆雄

    三上隆雄君 極めて簡潔明快であります。そのとおりだと思います。  魅力がないということは、やはり経済的な保証がないからだと思います。農村社会そのものは特殊なものですね。これは生活環境そのものが、今の世の中の感覚を得た人が都会の生活、文化を考えたときに、そこには住んでいられない状況もあるけれども、しかしそういう地帯の農家だけじゃない。そういう地域だけじゃなく、一応生活の環境はよくなっていながら経済的な保証がないがために農村を離れて他産業に従事する。他産業に従事するとしてもそこには適当な就労の場がない。したがって勢い都市に集中しているというのが一極集中、過疎過密の状況をつくっていると思うわけであります。  その意味で、農業をこれ以上衰退させたくないとすれば、現状の価格制度を維持しながら、食管制度も維持しながら、そして経営に生産に努力すればその努力が報いられるようなそういう農業でないと、どんなにいいことを言ったって農家は農業に従事しないし、その地域に住んでいないと思うわけであります。その点について、具体的に田名部農水大臣は今までの方針とは違っての考え方があるかないかをお答えいただきたいと思います。
  106. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) なかなか難しい問題でありますけれども、今お話しのように、一極集中ということがあります。これは何としても防がなきゃいかぬ。そのためには農業の振興あるいは漁業の振興でありますとかそれ以外にない。産業として第一次産業に依存しなきゃならぬというのはやっぱり地方なんですね。価格を維持するということも大事であります。しかし、実態を見ますと余りにも小規模なためになかなか経営として成り立っていないという部分もあると思うんです。ですから全部やれるかというと、中山間地のようなところは、そう言ってみても規模の拡大とかそういうことはできない。できるところは規模を拡大していく。  私はいつも申し上げておるんですけれども、最近の農業後継者というのは教育水準が非常に高いんです。ですから、お年寄りの皆さんがやってきた農業をそのままやるということに対しては余り夢を持っておらない。現に規模を拡大し、この前も農林水産大臣賞をお上げした方々のお話を聞くと、それなりの努力をしておられる。コンピューターやパソコンやファクシミリを置いて、そして近代的な経営感覚あるいは管理、そうした原価計算から何からきちっとやる方もおるわけです。そういう農業ですと、若い人たちが今の自分たちに合った農業経営というものができていくんじゃないだろうか。これは全部とは言いません。そういう環境のところはそういう方向に誘導していかなければならないということを考えております。  しかし、その努力を幾らしてもおのずから限界というのはあると思うんです。米づくりにしてみても、アメリカやタイのように規模を拡大したからあの価格になるかというと私は絶対にならぬと思う。その努力をみんなが認めて、あとはいかに農業に対する国民の理解というものを示すか、みんなが農業を守っていこうという気持ちになっていただく、これが大事でありまして、その努力がないと、そちらだけをお願いしてもなかなか難しいという問題があります。ですから、私どもやれるだけのことはやって、そして農業後継者というものに意欲を持ってもらう。もちろん、何といっても住んでいる環境というのは、先生案内のように農村といっても私たちのような八戸周辺というのはどっちかというと都市近郊型の農村、そうでないところもたくさんあります。そういうことを考えてみますと、道路でありますとか下水道でありますとか、環境の整備というものを図っていかなければならないというふうに考えております。
  107. 三上隆雄

    三上隆雄君 ただいま大臣からそれなりのお答えがありましたけれども考え方、構想、計画はいいにしても、なかなか一向にそれが進まない。日本の国全体として大勢が農業をだんだんだんだん悪くしていくような気がしてならないわけであります。  そこで、そのためには政府みずから本気で農業をこれ以上弱くしてはならない、強化していくという方針があるならば、農業というものをいつも温かい目で見てやらなきゃならぬということを言います。先ほど来議論になっております今回のウルグアイ・ラウンド交渉に向けても、日本の国家、経済、貿易を維持していくためには一部を輸入しなければならない、あるいは関税化をしてもやむを得ぬというような論調もあるわけでありますけれども、その論調に対して政府が敢然とそれを否定する、そういう対策を講じなきゃならぬ、こう思うわけであります。  先ほど来議論になっていますけれども、例えばマスコミが政府の意に反するような、あるいは事実に反するような報道をした場合に、徹底してそれが国民にわかるようなそういう反論をすべきと思いますけれども、それは私は見当たらないと思う。だから我々から見ると、自由化を防ぐと言うけれども、裏では何かそれを進めているような気がしてならないわけであります。  先ほどくしくも自民党に対しても村沢委員から批判がありましたけれども、自民党が国会決議の精神に基づいてそれを主張するならば、自民党の党内議論の中でそういう人を抑えていかなきゃならない。これからそれは理事会で議論されると思うけれども、その姿勢が弱いからこういう反論が出てくると思う。それに対して具体的に政府として、そしてまた今まで主張し続けてきた田名部大臣としてどう対策を講ずるのか、その点についても決意をお伺いしたい。
  108. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 農業や農村の現状というものを国民にいろんな場面をとらえてPRは実はいたしているわけであります。記者会見もその一つでありますし、あるいはパンフレットを発行したりあるいは広報紙、テレビ、そういうものを通じて農政のPRというものは今までも努めてまいりましたし、総理府も政府広報の積極的な活用も実は図っているわけであります。しかし、何といっても豊かになりまして、何でも買えるようになったというこの意識というものは国民の中に多いんじゃないでしょうか。お金があるものですから、なければ買えばいいというその安易な気持ちというのは国内の中に相当ある。しかし一方では食糧というものは安全でなきゃならない。そういう面でのニーズというものも国民の中にはあって、特に米のように重要な基礎的な食糧というものはやっぱり国内でやるべきだと。  しかも御案内のように、ヒルズ通商代表にもこの間話したんですが、農業全体で見ると大変な輸入をしております。トウモロコシに至っては九九%あるいは大豆は九八%、そのほか大麦、小麦等、全体で見たらもう大変な量を買っているわけです。たった一つ米だけが何としても守らなきゃいかぬということで、これが国民の皆さんにも、大分米というものは日本は基礎的な食糧で大事だな、何かあったとき一体どうするかということ等も考え、安全というものを考えて、ああいうマスコミにおける世論調査なんか見ても、米は自給率を高めて、外国から買ってはいけない、こういう反応というものは出てきているんだろう、そう思っております。私どもはこれからもあらゆる機会を通じて農業、農村というものをPRしてまいりたい、こう思っております。
  109. 三上隆雄

    三上隆雄君 それでは、具体的に新聞の論評に対してどのような考えを持っておるか、そしてまたどのような対応をするかをお聞きしていきたい。と思います。  朝日新聞の十一月二十九日の社説に、ガット農業交渉アメリカECと包括的関税化で急速に歩み寄りつつある、非関税障壁は関税化が国際的主流になりつつあるから率先してそれを受け入れ交渉を有利にしたらどうかというそういう表現をしています。そして米はごく一部の加工品を除いて禁止されております。それを自由化して将来は七〇〇%の関税化をし国際価格に近づける、そし て生産者はその期間にそれに対する対応をするというそういういわば提案でございますけれども、しからばそれをどこまで生産者ができると見通されますか。
  110. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 今新聞の社説のお話がございましたので私からちょっとお話しさせていただきたいと思いますが、関税化につきましてアメリカから提案がされていることは今お話がございましたとおりでございます。そこに七〇〇という数字が出されておりますが、これは全く私どもはあずかり知らない数字であることは御承知のとおりであります。そうしたことを論拠にいろいろ社説が書かれているわけでございますので、今の時点の私どもの基本的立場というものは、先ほど来大臣からお話がございましたように、基本方針に基づいて交渉に臨んでいるわけでございまして、そうした中で全く私どもがあずかり知らない数字につきまして論評することは差し控えさせていただきたいと思います。
  111. 三上隆雄

    三上隆雄君 それでは、これまた十一月二十六日の読売でありますけれどもアメリカECがにわかに接近して、日本が置き去りになって米国EC合意案ができている、そういう表現をされておりますけれども、その事実に対してどうお考えですか。
  112. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 先日、ヒルズ通商代表大臣が会見されたわけでございますが、その席で大臣からヒルズ通商代・表に十一月九日の首脳会談の進展状況についてお話を聞きました。そこでは、一部進展はございましたけれども、なお詰めなければいけない問題があるというお答えでございました。  これから先は新聞情報でございますが、その後、幾つかの問題について両者で話し合っているけれどもなかなか難しい点もあるというような情報も流れてきているわけでございまして、そうした段階で、今お話しのような記事が果たしてどういうニュースソースから出ているか私ども存じませんけれども、先ほども長官からお話がございましたように、非常に不透明な状況でございますので、その時点でそのような段階にあったというふうに私どもは承知しておりません。
  113. 三上隆雄

    三上隆雄君 それから、十二月の一日、これまた読売新聞ですけれども、先ほど来議論になっております米の国会決議の見直しに着手したのではないか。それは政府・自民党が解釈の変更などを模索していると報道されておるわけであります。部分開放や完全自由化につながる関税化を受け入れる場合、米の自給や食管堅持の国会決議が大きな壁となっているのだから、解釈の変更や見直しは必至である、こういう書き方をしている。これは政府・自民党の一部から出ているというんです。政府も自民党もですよ。その事実関係はいかがですか。
  114. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 先ほど来新聞を取り上げての御質問でありますが、一連のマスコミで報道されているところを見て、全くどれも私ども一遍も議論もしていなければ相談もしていない、そういうことがまことしやかに報道される。何か意図があるのかな、こう思ってみたりはしておりますが、一切ございませんので、私の答弁を信じていただきたい、こう思います。
  115. 三上隆雄

    三上隆雄君 今きっぱりと否定されましたけれども、しからばそういう事実無根の報道をした場合に政府は敢然とそれに反論しなきゃならぬと思うんですよ。まあ一々反論するのも大変でしょうけれどもね。少なくともこういう事項については反論すべきだと思いますが、それが結局世論構成をしていくわけであります。それに対してどういう対策をしますか。
  116. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 新聞報道において、少なくとも農林水産省が何月何日にどういうことをしたというような報道があるものにつきましては、私の方で省内各部局に確認の上、そういう事実がない場合にはその新聞社なり報道機関の責任のあるポストの人、例えば編集長であるとか経済部長であるとかいう方に対しまして、私あるいは担当局の局長なり長官がそういう事実はない、したがって、その記事については非常に不正確である、あるいは間違っている、訂正すべきであるということを直接申し入れております。多くの場合、それを聞きますと、担当記者はそういう事実があると言ってきているということをおっしゃいますけれども、我が省内を調べてそういうことがないと重ねて言いますと、大体検討しますとか善処しますということで向こうが引き下がるということが多うございます。
  117. 三上隆雄

    三上隆雄君 そこで、大臣にもう一度お伺いしますけれども、よその省庁でそういう発言をしている、それをとらえて政府の一部と言っているかもわからぬですよ。ですから、たまたまきょうは外務省政府委員がおりますから、その点についてはっきりとお答えをいただきたいと思います、あるかないか。
  118. 須藤隆也

    政府委員須藤隆也君) 先ほども申し上げましたとおり、外務省はあくまでも対外交渉を担う政府の一部でありまして、政府方針のもとに、政府部内で違ったことは言わないように完全に統一された方針のもとに交渉してまいっている次第でございまして、今後ともそのつもりでございます。
  119. 三上隆雄

    三上隆雄君 大臣はどうですか。
  120. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) しばしば私も閣議で、私も新聞を見てこれは一体どういうことでしょうと。全然ないんですね。もう一人一人確かめるんです。官房長官にも、政府と、こういうことになっているが、あなたの方でこういうことを考えておるのかと、全然ないと、こういうことでありますから、毎日載るものですから、最初のうちは私もそういう確かめ方を個々にもやりました。あるいは党幹部発言についてもお尋ねをしました。全体で言っているのはそういうことではないんですよね。しかし、記事になるときは全部を載せてくれませんのでそういう表現になっていると思うんです。一々後を追っかけて歩いて全部聞いて歩くわけではありませんが、一、二度聞くとそういうことですから、もうこれ以上新聞を問題にしてやることは私はいたしておりませんけれども、ないことがどういうことで出るのか、私も記者の皆さんに時々どこからこういう話が出るのだということを聞きますけれども、いずれにしても何を意図しているのかわかりません。  この間の森政調会長、私もテレビをずっと見ておりましたが、決してそういう事を荒立てるような内容ではなかったのですけれども、聞かれるものですから仮定の話で言うとああいうことになるのだなと、こう思って聞いておりました。
  121. 三上隆雄

    三上隆雄君 農水大臣はそれほど大きな問題と思わないかもしらぬけれども、少なくとも今の世の中におって、天下の広報紙たる新聞が報道することが世論形成に一番影響力を持つということを皆さんわかっていただいて、そういう誤った報道、事実無根の報道があった場合には直ちに反論すべきだ、このことを私は主張したいと思います。  それから、外務省がおりますから、アメリカガットに加盟しておりますか。
  122. 須藤隆也

    政府委員須藤隆也君) アメリカガットの加盟国でございます。
  123. 三上隆雄

    三上隆雄君 アメリカ政府はそれに協定しておりますか。
  124. 須藤隆也

    政府委員須藤隆也君) アメリカの議会はガットの協定を批准はしておりません。アメリカの行政府の責任でガットに加盟しているというふうに理解しております。
  125. 三上隆雄

    三上隆雄君 アメリカガットの協定を批准していないということは、アメリカの今の世界貿易、自由貿易を実践しようという国としては余りにも横暴ではないか、日本アメリカを親善国として今まで貿易を進めてきたけれどもアメリカアメリカ農業の事情があると思いますよ。アメリカ」の保護と日本農業の保護とは私は性格が違うと思う。アメリカの保護というのはやはり輸出に対する保護でしょう。それは外国農業を攻撃するためのいわば武器に対する保護なんだよ。日本の保護というのは、日本の国内で他産業と農業をやや平準化できるようなそういう条件を整えるための保護なんですよ。その保護は全く違うわけで しょう。ですから輸出補助というものを全くなくした時点で、それで初めて日本と同じスタートラインにつくんですよ。それをアメリカ輸出補助金日本の国内保護もその輸入障壁も全部一緒くたにして論議すること自体私はナンセンスだと思いますよ。そのことを日本日本立場でもっと主張したらいいんじゃないですか。大臣いかがでしょうか。
  126. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) そのとおり実は主張しているわけであります。
  127. 三上隆雄

    三上隆雄君 なぜそれが認められないのですか。まだアメリカのそういう理不尽な主張に負けていなきゃならないお国柄なんですか。
  128. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 先生御指摘のように、輸出補助金ウルグアイ・ラウンドにおきます最大の問題だということは各国とも承知している点でございます。したがいまして、輸出補助金の削減ということにつきましては議論はされているわけでございますが、我が国などが主張している撤廃というところまでにはなかなかいかないというのが現在の現状であると思っております。  この問題につきましては、いわゆるケアンズ・グループ、発展途上国などの輸出国を含む各国におきましてもかなり問題意識を持っておりまして、それがゆえにECアメリカの最大の問題であり、かつウルグアイ・ラウンドの最大の問題になっているというふうに理解しております。
  129. 三上隆雄

    三上隆雄君 時間が来ましたので、これで終わりますけれども農水大臣、極めて厳しい状況の中で大臣就任されたわけでありますけれども、どうぞひとつ、あなたがこの場で日本農業、地方を救うという立場で今までの大臣とは一色違った、具体的に現実的な対応を勇敢にあれしていただきたいということを心から希望を申し上げて質問を終わりたいと思います。
  130. 菅野久光

    菅野久光君 大臣、御就任おめでとうございます。大臣就任されたことは大変おめでたいと思いますが、先ほどからいろいろお話がありますように、今日の我が国農林水産業の置かれている立場考えたときに、本当に御苦労さまです、しっかり頑張ってください、我々もともに頑張りたいとそのことをまず初めに申し上げたいと思います。  先ほど来からガットの問題を中心にしながら、我が党の村沢三上委員から質問がありましたが、農林水産委員会としては水産の置かれている立場もまた極めて厳しい状況になっておるわけでございまして、私は水産の問題について初めに質問を申し上げたい、このように思います。  それはベーリング公海のスケトウダラ漁業の減船の問題についてでございます。去る十一月の十八日から二十日にかけてワシントンで行われましたベーリング公海スケトウダラ漁業に関する関係会議において、アメリカとソ連は来年の漁業活動を一時的に停止するモラトリアムを強硬に主張いたしました。これに対して日本、韓国、中国、ポーランドの出漁四カ国が反対した結果、暫定的規制措置として、来年は実質的に漁獲努力量及び漁獲量を削減することで合意したというふうに伝えられております。  そこでお尋ねしたいんですが、アメリカとソ連がモラトリアムを主張する根拠は一体何なのかということでございます。
  131. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) 先生案内のように、ベーリング公海自身はソ連とアメリカとの二百海里に囲まれた水域でございます。北洋減船が始まって以来、底びき網漁は最後の場所と見てそこに進出したわけであります。日本とあわせまして韓国でありますとかポーランドあるいは台湾、一時ソ連もあそこで漁業をしていたわけでございますけれども、かなりの船があそこで漁業を進めてきたというようなことから、かなり漁獲量が、資源との関係等もあったかと思いますけれども、次第に減少しています。  御案内のとおり平成元年までは百四十万トン程度の漁獲を上げていたわけでございますけれども、平成二年は九十万トン、ことしは四十万トンを割るのではないか、今のままでいきますと、さらにまた来年以降その減少というのが、科学者の論議、完全な資料はございませんけれども、現在得られておる知見からいたしましてもさらに減少するのではないかというようなことで、産卵場所を持つアメリカ、ソ連、ソ連がモラトリアムの主張をしてそれにアメリカが同調した。漁業国側はそれに対して、モラトリアムというのは少し今の状況からいって問題ではないかというようなことで三回にわたって論議を重ねてきたわけですけれども各国ともあそこの資源状態は問題であるという認識は共通しておりまして、そういうことから漁獲努力量を削減するという合意に達したわけでございます。
  132. 菅野久光

    菅野久光君 アメリカは、自分の国の二百海里内のスケトウダラの産卵場と言われるボゴスロフ海域で資源保護のため漁獲を禁止するので、出漁国も公海での操業を禁止すべきであると主張した。そしてソ連がこれに同調したというふうに言われておりますが、このベーリング公海のスケトウダラ資源はボゴスロフを産卵場とする資源のみではないのではないかというふうに思うんです。今長官はそこが産卵場だ、こういうふうに言われましたが、そこだけじゃないのじゃないかというふうに思うんですね。またスケトウダラはサケやマスのように国際的に母川国主義が認められている魚種とは異なります。公海における操業は何らの規制を受けるものではないのではないか。沿岸国からとやかく言われる筋合いのものではないのではないかというふうに思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
  133. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) 御指摘のように、ボゴスロフ水域だけであそこのベーリング公海の資源が形成されておるわけではございません。それ以外のところの資源もあるということで、科学的な論議はそういうことをめぐっていろいろ議論をしたわけでございますけれども、最終的に数字的な合意といいますか、そういうことにはならなかったわけでございますけれども、先ほど申しましたように、いずれにしましてもあの海域の資源が急減しているということは沿岸国側、漁業国側も認めているわけでございます。その結果がああいう漁獲量が減少するというふうなあれになったわけでございます。  漁業につきましては、もう私が申すまでもございません、永続的に資源を管理すれば人類にとって貴重なたんぱく源が供給できるということで、資源に見合った漁業をやっていくというのが二百海里水域の内外を問わずあるべき姿だというふうに思っています。そういうことで、国連の海洋法におきましても、関係国は公海といえども資源の維持管理について配慮する必要があるというような規定がございます。そういうこともございまして、そういう観点から沿岸国側あるいは漁業国側がベーリング公海について数度にわたり会議を重ね、現在の知見によって得られる見通しがらああいう約束に至ったわけでございます。
  134. 菅野久光

    菅野久光君 資源が悪化しているということについては十分な科学的調査というものが必要なわけです。今回の場合にはそういう科学的な調査を待って結論を出したというふうに政府としては考えていると理解をしてよろしいですか。
  135. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) 資源状況は漁獲実績にもあらわれてきておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、三年前には百四十万トンが今年は四十万トンを切るような実態になっておる、そういう事実が一つございます。それからまた、この海域の資源状況につきましては、関係国間で行政担当官それから科学者の間でも論議を重ねたわけでございます。科学者のワーキンググループの議論の結果、完全な資料はないというようなことではございますけれども、現在得られておる知見からいきましても、さらに明年度このままの漁業を続ければ資源は減少するのではないか一というようなこともございまして、そういう科学者の論議も踏まえましてああいう合意を行ったわけでございます。
  136. 菅野久光

    菅野久光君 漁獲量で見ていけば資源の状況がわかるといえば、そういう部分もあろうと思いま すけれども、十分な科学的ないわゆる調査ということではなかったのではないかというふうに今の答弁を聞きながら思っているわけであります。いずれにしても、もうそのような手続をして、そして減船をするということにしたわけですが、他の関係国が減船を実施するということになっているのかどうか、それから減船の規模などについても日本の国と比較してどうなのか、この辺についての情報が得られているのかお尋ねをしたいと思います。
  137. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) 漁獲努力量の削減の具体的な規制内容につきましては、各国の自主的な判断にゆだねるというふうなことになっておるわけでございます。ただ、各国が導入する規制の内容につきましては、お互いに各国間で通報し合うことになっておりまして、さらにその規制の遵守状況につきまして四半期ごとに各国間でチェックするというようなことで、仮にそれを漁獲が上回っている場合には直ちに削減のための措置をとるというようなことがあわせて合意されているわけでございます。そういうことから、各国とも関係会議合意を受け削減措置を実施するものというふうに考えております。
  138. 菅野久光

    菅野久光君 関係国との間で余り差がないような形での減船ということであればいいんですが、日本の国だけが大きな打撃を受けることのないようにしなければならない問題だというふうに思うんです。  そこで、減船の交付金でありますが、交付期間を九二年から九四年にかけての三年間に限定をしたわけでありますが、これはサケ・マスでもそうであったように、三年後の完全撤退を意味するのかどうなのか、その辺はいかがですか。
  139. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) 御指摘のように、救済措置の骨格を発表したわけでございますけれども、それには平成三年度から五年までの三年間にわたる救済水準を示したわけでございます。これは二百海里から締め出されたとかいうようなことと違いまして、三年後にベーリング公海から完全に撤退するということを意味するわけではございません。漁業者に対しまして、ソ連水域の民間入漁などを考慮しまして、減船の意思決定について時間的な余裕を与えるという意味で三年間ということにいたしたわけでございます。
  140. 菅野久光

    菅野久光君 完全撤退ということではないと。そういうことであれば、九五年以降のベーリング公海漁業についてこれからどうしようとされているのか、その青写真があればお示しをいただきたい、こう思います。
  141. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) とりあえず、せんだっての会議では短期的な措置としての漁獲努力量の削減というのを決定したわけでございます。中長期的な仕組みにつきましては、明年度以降話し合いをするというふうになっています。資源の状態を考えながら、その中で関係国の間で相談していきたいというふうに考えております。
  142. 菅野久光

    菅野久光君 公海の漁業ですから、もう北洋でもここのところだけしかないみたいな感じでございますから、少しでも早くベーリング公海での漁業ができるような状況に持っていくように政府としても努力をしてもらいたいというふうに思います。  今回の減船で中小漁船の交付金は一隻当たり二億五千万ないし四億一千万円と伝えられておりますけれども、余りにも低いのではないかというふうに思いますが、これでいいというふうに考えられている根拠を説明していただきたいと思います。
  143. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) 具体的な交付金額につきましては、それぞれの漁業の実態を踏まえ、また過去における減船の例も参考にして水準を決定したところであります。先ほど示したこの救済水準につきましては、おおむね関係者にも評価してもらえておるのではないかというふうに考えております。
  144. 菅野久光

    菅野久光君 いつも減船のときには大変な問題を抱えておりますので、とてもこれでうまくいくのかなという心配を私はしております。  この漁船についての交付金の金額もさることながら、交付金のうち地方自治体の負担分が四分の一ないし五分の一にもなるのはどうしても私は納得できないんです。減船対象漁船八十一隻のうち北海道は五割近い三十九隻を占めております。北海道の受ける負担は極めて大きいわけでございます。いわば交渉政府の責任で行ったからには当然全額政府が交付をして、地方自治体に対する負担はなくすべきだというふうに思うんですが、この辺はいかがでしょうか。
  145. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) 減船に際しましては、関係都道府県に対しまして負担をお願いいたしておるわけでございます。今回の減船交付金を支出するもとになっております国際漁業再編対策におきましても、従来どおり財政負担を期待しているわけでございますけれども、その負担につきましては適切な対応が図られるよう自治省当局にも私どもの方からお願いをいたしておるわけでございます。  それから、今回の対策の対象となります底びき網漁業等は大臣許可漁業でございます。そういうことから、過去の例を踏まえ、救済費交付金につきましては全額国費で対処することとしまして、不要漁船処理費交付金につきまして一定額を期待しているというような扱いでやっております。先ほど申しましたように、自治省当局にもお願いして、何とか都道府県で円滑にできるように我々としても努力していきたいというように考えております。
  146. 菅野久光

    菅野久光君 これは流し網漁業の問題の減船にもかかわってくることですから、後からもちょっと申し上げたいと思います。  今のスケトウダラの問題で、ベーリング公海漁業に関する条約作成作業が米国のイニシアチブのもとで進められることになっております。ところで、これまでの三回の交渉アメリカは回数を重ねるに従ってヒステリックになっているというふうに言われております。アメリカが提案した条約素案は、加盟国間の協議において、米ソ両沿岸国のみが拒否権を持ったり、臨検、拿捕の権限を持つなど、およそ公海漁業であることを無視した内容のものになっていると言われますが、これは事実でしょうか。この条約案作成に向けての政府の対応方針を明らかにしていただきたいと思います。
  147. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) ベーリング公海の関係会議は二月と八月と十一月の中で三回行われたわけでございます。回を重ねるに従いまして、ソ連、アメリカの沿岸国側の主張が強くなっている、これは御指摘のようなことでございます。これは二月の段階でもし仮に話がまとまればその前年の実績九十万トンというようなことしかデーターもなかったものですから、そういうことを頭に置いた論議がされたわけでございますけれども、八月、十一月とだんだん操業が進展すると、その操業の実績がこれはもう各国わかるわけでございまして、先ほど申しましたように四十万トンを割るような実勢になってきている。先行きこのまま続ければ来年はさらにそれが下回るんではないかというような実態がございまして、産卵場を抱える沿岸国側の主張が強くなっていることは御指摘のとおりの事実でございます。  ただ、私どもとしましても、公海でございますので沿岸国、漁業国それぞれが同じような立場でこの漁場を管理すべきではないかというようなことを漁業国側は一致して主張しているわけでございます。来年以降また行われます中長期的な枠組みの決定に当たりましても、そういう従来の姿勢で対応していきたいというふうに考えております。
  148. 菅野久光

    菅野久光君 大臣、このベーリング公海のスケトウダラ漁は、米国二百海里水域から完全に追い出され、そしてソ連海域においても激減をしている現在、我が国の北洋漁業にとってはなくてはならない漁場になっております。絶対にこの米ソの理不尽な主張に屈してはならないと私は思うんです。もしアメリカやソ連の言うとおりになるようなことになれば、他の公海漁業への悪影響ははかり知れないことになると思います。少なくとも公海の漁業でありますから、この条約作成に臨む政府の対応方針決意を私はここで明らかにしていただきたい、このように思います。
  149. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 私も基本的には公海というものは自由だということをかねがね主張しておりますし、今でもそう実は思っておるんです。しかし、あの二百海里がしかれて以降、漁業界にとっては大変厳しい状況に追い込まれる、そのほかにまた資源管理という環境問題が新たに漁業界の中に世界から言われるようになりまして、資源は保護していかなきゃいかぬ、また流し網等を見るまでもなく、オットセイとか、あるいはイルカとかカメ、そういうものは混獲しちゃいかぬという風潮というものは、もう世界的に今環境というのはどこの国も取り上げることで、それが漁業にまで影響を及ぼしてきておるということは大変残念なことだ、こう思っております。  しかし一方では、漁民の皆さんも、管理漁業といいますか、資源を保護しながらやっていくというこの気持ちがなくなると、これは我々だけの資源ではありません、これから次の時代の人たちにも残してあげなきゃならぬ大事な問題であり、我が国にとってはたんぱく資源の半分は魚に依存しているということからも、これは何もベーリング公海ではなくて、日本の沿岸でも漁業というものは管理していこうという動きというものは大変強いわけでして、そういうことで、大変残念でありますが、長官からお話しのように、漁獲量がどんどん減ってきている。この現実も踏まえなきゃいかぬのかな、こう思っております。  気持ちとしては、公海でどうもという気持ちはありつつも、現実にそうなってまいりますと、これは日本だけの問題でもないものですから、こういう措置をとらざるを得なかった。しかし、あくまでも公海というものは、管理するといっても、今長官からお話しのように、漁業国も含めて一緒になって資源保護をやる、管理もしていくという方向でなきゃならぬ。その主張はこれからも関係国に強く訴えていきたい、こう思っております。
  150. 菅野久光

    菅野久光君 大臣は水産の問題については随分いろいろ努力をされたということもお聞きをしておりますので、漁民の人たち大臣の手腕、力量に大きな期待を抱いておりますので、頑張っていただきたいというふうに思います。  ベーリング公海のスケトウダラ漁の問題とあわせて、公海流し網漁業の禁止ですね。もう次から次にこういったような問題が出されてきておりますが、これは鯨に続いてついには公海流し網でも禁止をして成功をおさめたということで、アメリカの過激な環境保護団体はさらに勢いづいて、我が国を標的にして、次の獲物をねらっているのではないかというふうに私は思わざるを得ないのですが、全く科学的な根拠が薄弱な中で鯨についても、年間二億トンものオキアミが南極の海洋に出て、そしてもう資源の面でも十分大丈夫だと、鯨種によるわけでありますけれども、そういう状況になっているにもかかわらず、利口な鯨を食べるなんていうのはだめだというような全く非科学的なことをやられてしまう。そういうようなことがこれからまた次々に起こってくるということになれば大変だというふうに私は思います。  そういうことに対して、科学的な調査というものをしっかりやって、そして科学的な数字に基づく説得というものが世界の各国理解をさせるもとになるというふうに思いますので、そういう点でも日本というのは頑張っていかなきゃならないなというふうに思います。  ベーリング公海のスケトウダラとそれに伴う減船と、公海流し網漁業の禁止に伴うこれの減船の問題、この二つの漁業に対する減船の問題が非常に大きな問題でございまして、公海流し網漁業だけでも漁船が六百隻、乗組員一万人、関連業界を含めれば六万人に及ぶと言われております。私の住んでいる北海道でも、全国最多の百八十二隻が登録されておりますし、青森県では四十九隻、七百六十八人が流し網漁に携わっているというようなことでございます。  日経の十一月二十六日付の新聞でも、青森県のイカ流し網漁業協会の山崎事務局長は、これは大変な事態になった。流し網漁だけで生計を立てている漁業関係者は約二百人おり、やめてもらっては困る、何とか続けられないのかといった問い合わせが殺到したという。山崎事務局長は、今後の対応は役員会を開いて決めたいと語りながらも、政府で承認した漁法を一方的に停止するのだから、それなりの補償を求めたいと、憤りをあらわにしていたというような報道がされております。このように、公海漁業には非常に政府が大きくかかわってきているわけです。その中でこのようなことがなされるわけですから、それに対する補償については、やはり国としても十分な対策を立てていかねばならぬ。また立てるのが当然だというそういう気持ちを持つのは当たり前だというふうに私は思うんです。そういう点で、これからの漁船の減船補償はもちろんでありますけれども、そこに働く漁船員、それから関連するもろもろの事柄についての政府の対応策、それらについてのお考えを承りたいと思います。
  151. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) 大臣が御答弁する前に、私から若干御説明させていただきたいと思います。  流し網漁業につきましては、国連の場に持ち込まれまして、我々として多数派工作をしたわけでございますけれども、先月二十日からこの流し網漁業をめぐります論議が行われる委員会が開かれるというふうな段階で情勢判断をしたわけでございますけれども、残念ながら日本案を通せるような事態ではなかったということで、その十一月の二十日を少し延ばして、最終的なぎりぎりの話し合いの結果、ああいうことにいたしたわけでございます。  ただ、申し上げたいのは、アカイカをとること自身を否定されたわけではございませんで、流し網漁法に問題があるというようなことでございますので、私ども、残された時間は少ないわけでございますけれども、何とかほかの方法でアカイカをとるということをまず考えていきたい。それからその次に、今先生御指摘のようないろいろな各方面の対策、これについていろいろ考えていきたいというふうな姿勢で臨んでいきたいというふうに考えております。
  152. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 先生は北海道ですので、一番大きな影響を受けるのは漁業なんですね。この問題、私も党の部会長のときに、二回にわたって身を切られるような思いで、徹夜で交渉いたしました。その後、次から次とこの減船問題が出てくるものですから、平成元年の十二月に、閣議で了解いただいたことでありますが、国際漁業再編対策という基本的なことを決めて、ばらばらであっては不公平が生じますということで、これをお願いして、それに基づいて今やっているわけです。  お話しのように、私の地元も、北海道ほどじゃありませんが影響を受けるものですから、先般、先週の閣議で私から発言を求めまして、これは単に漁業者だけにとどまる問題ではなくて、まず乗組員の対策をどうするか、あるいは関連業界まで相当この影響が出てまいりますので、ひとつよろしく御支援方を関係閣僚にもお願いしたいということを受けまして、外務大臣官房長官からお話がそれぞれありました。これはしっかり政府としても対応をしなければならないということでございました。  まあお話の中にいろんなことがありますが、どうも食生活の文化の違いというものがこんなにあるのかなという感じを実は鯨のときも、これは私が部会長でありまして、あのときは水産庁がもう中止をする、こういうことでありましたが、調査捕鯨として細々でも出すべきだという取りまとめをして、今調査捕鯨としてやっておりますけれども、どうも牛や豚やそうしたものはよくて、どうしてこういうものがだめなのかなということを感じます。しかし、昔から日本というのは漁業に多くを依存してきたという歴史がある。向こうは畜産に依存してきた。この大きなギャップというものが、鯨はかわいそうだ、あるいはイルカもかわいそうだ、海産哺乳動物というのはかわいそうな動物だからという環境保護団体動きというのは大変活発でして、感情的なんですね。  先生おっしゃるように、私どもは科学的にきちっとデータを出して、それに基づいて持続していくべきだ、こういう考えを持っておるんですが、なかなかここのところにいきますと、国際あるいは国連等では、IWCでもそうでありますが、賛成が得られないということはまことに残念なことでありますけれども、まあ諸般の事情を考えながらこういう結果になったということは漁民の皆さんにもまことに申しわけないな、こう思っております。しかし後の対策については、今お話にあるように全力を挙げて取り組んでまいりたい、こう思いますので、先生またよろしく御指導を賜りたいと思います。
  153. 菅野久光

    菅野久光君 水産の問題をやっているうちに時間が過ぎてしまいました。  実は減反の問題についても私は質問をしたいと思っておりましたが、多くのことは質問できませんが、ほんの一問か二問ぐらいしか質問できませんけれども、まあ昨日転作の緩和の問題について大臣談話も発表され、続いて減反の緩和について発表されましたが、一番農家の人たちが心配しているのは、単年度の措置としてやるということは、これは物を生産する工場と違って農業の場合にはとても大変だということなんです。しかし、措置としては単年度措置ということになってしまいました。ポスト後期対策と連動する形でぜひ対策をしてもらいたいというのが農民の人たちの偽らざる願いです。  特に北海道の場合には、約五〇%に近い減反をしているわけです。そして一生懸命、昔は厄介道米だとかなんとかということでうまくない米の代表のように言われましたが、最近はきらら三九七を初め品種改良によって本当にいい米を、うまい米をつくるようになってまいりました。何とか専業農家で頑張っている北海道、そしてほかの方では耕作放棄地が大分目立つというようなことなどもある中で、北海道については減反の緩和について特段のひとつ配慮をしてもらいたいというそういう希望があったわけですが、なかなかそれもかなえられない状況であります。ポスト後期対策と連動する形での今回の緩和ということにぜひあってほしいという農民のそういった願いについてどのように考えておられるのか。また、今回のこの緩和で需給操作に本当に支障がないような形になるというふうにお考えなのかどうか、その辺をお尋ねして私の質問を終わります。
  154. 上野博史

    政府委員(上野博史君) 転作等面積の緩和の問題につきましては、今先生お話の中にもございましたように、考え方として二つの要点がございます。  一つは、米の需給の安定を全からしめる、問題がかいようにしなければならないという考え方でございまして、もう一つは転作を含めた農家の営農を安定的に維持していきたいという、この二つの考え方があるわけでございますけれども、この二つの考え方は、突き詰めていきますと、なかなか両立をしがたいところがあるわけでございます。ことしの米の不作に伴いまして、来米穀年度の年度末の在庫というものが非常に薄い状態になる。これを回復するために最低限の在庫の確保を図りたいということで緩和面積十三万ヘクタールということを決めたわけでございますけれども、現在の諸般の情勢から見て、この程度の在庫を持つということがやはり当面最大の配慮を払うべきことだろうというふうに考えて判断をした次第でございます。  ただ、農家サイドの経営の安定、営農の安定ということもまた大事なことでございまして、今後におきましては、ポスト後期の問題も含めまして、安定的に営農ができるように、できるだけ継続してやっていけるように考えたいということでございます。  ただ、来年度の米の生産量というのは、今回の緩和に伴いまして、平年作でございますれば一千五十万トン程度にも上るということでございます。私どもが後期対策として見ております来年度の需要量が九百八十万トン程度であるということからいいますと、これを安定的に続けていくのはなかなか難しいんじゃないかということでもございまして、ポスト後期対策をこれから考えていく中で今後の転作の問題については十分に検討してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  155. 鈴木貞敏

    鈴木貞敏君 朝来、非常に多角的にいろいろの論議がございましたけれども、まず、大臣、御就任おめでとうございました。食糧供給地域としての同じ東北県人として御就任になって大変心強く、これからの御奮闘を心からお祈りいたします。  率直に言いまして、今、日本農業は、大化の改新、廃藩置県あるいは戦後の農地解放、それに続く第四のシュトルム・ウント・ドラングのそういう非常に激しい変化の時代に来ているということ。第一次産業のあらゆる部面がそうなのかなというふうな感じでございますけれども、朝来の非常に深刻な、あるいは真剣な討議を聞いておりまして感ずることは、私も長い間治安関係にずっとお世話になっておったわけでございますけれども日本の治安というのは非常に高水準にある、一体その理由は何だということを外国人によく聞かれました。  そこで、私なりに、それは島国であるとか警察制度がいいとか、全国一本の法律であるとか、あるいは警察に対する民間の協力、防犯とか交通とか、いわゆるボランタリーなそういう組織というのが非常に強力である。あるいはまた、ガンコントロールとか麻薬に対する取り締まりとか、そういう先制的な取り締まり、こういったものが行き届いているということなどいろいろ挙げられるわけですが、最大の理由は、やはり日本民族というものが農耕民族である。水と土地というものを中心に、そこに集落を築き、そこに連帯性を持って、社会帰属意識というものが非常に強い。そういう一つの精神構造といいますか、そんなところがあずかって日本の治安のよさを支えている最大の理由なんじゃないかというようなことを外国人等に申し上げると、うん、なるほどそうかというようなことでうなずかれたような経験が多いわけ。でございます。そんな経験を踏まえて、日本人である人はだれでも日本の農村、農業を何としても守っていかなくちゃならぬというのは、これはもう何人も異存がないわけでございます。  そういう中で、朝来の御議論のように、今、日本がまさにウルグアイ・ラウンドで、最大の輸入国であり、基礎的食糧的なそういう持論で、肉弾三勇士と言ってはなんですが、やっている。そういうときに、日本のそれをサポートしてもらいたい、また、もらうべき立場のマスコミが何で挙げてそういう政府方針なりをサポートする立場に立たないのであろうか。私も大変これは奇異な感じでございまして、相当その面の議論が朝来からあったわけでございますけれども、私なりに、これは戦後の経済原則一辺倒主義というか、あるいは利益追求一辺倒主義というか、そういったものの潮流というか、そんなものにすべてが流されておるのかなというふうなことを考えてみたり、あるい、はまた一面において、日本人の勤労観というか、労働観といいましょうかを私も改めて考えてみました。  大正十四年ぐらいに出ました「代表日本人」という中で、内村鑑三が日本代表的人物として二宮尊徳を挙げているわけでございます。これは農政の聖人として挙げているわけです。そのほか、学者は中江藤樹であり、軍人は西郷隆盛であり、あるいは宗教家は日蓮というようなことで、五人の人を挙げているわけですが、この二宮尊徳が、私も小学校時代に二宮尊徳の銅像とともに育ったという年代でございますけれども、改めてこれを見ますと、小田原藩で農政改革をやった。封建時代ですから、今に当てはめたら古いことを言うなと、こういうことでございますけれども、しかし、ここで内村鑑三が訴えているのは、まさに農民の愛と勤勉と自助ということを非常に強調しているわけですね。要すれば一言、「金銭を與へ租税を免除するは、彼等の困窮を援助するの途ではない。」というふうなことを殿様に綿々として訴え、農民にいかにしてやる気を起こさせるか、その手だて等も書いておる。これを英文で全国に配ったわけですね。その際、代表日本人として二宮尊徳というものが大正時代に世界に知られた。こういうことであろうかと思うわけでございます。  そういう面での勤労観というものが、三Kとか七Kとかいうものを含めて、先ほど大臣の言われた物の豊かさという中においてお米のありがたさなり農業に対する感謝の気持ち、こういったものがどんどんなくなっていく。新嘗祭、神嘗祭なんというのは何か皇室のどこかでやっているというぐらいの感覚で、勤労感謝の日というものに一般化されてしまっておるということを含め、すべて歴史というものが、口では農は国の基と言いながらも、そういうものはどんどん変わっていく。そこには一つの大きな精神構造の変化があるのかなというふうなことも感じます。  また一面において、農業の自己完結化といいますか、例えば経済団体がたくさんある、産業としての農業であればそこに参加して、一緒に窓口を開いて、どんどん生産者め発言がそこに出てきてしかるべきなのに、何か一つ完結して独立しているというようなところにおいて共感性が浮かばない。そこでマスコミも、農業団体なり生産者に対する理解というものは非常に薄いんじゃないかというふうなことを感じたり、あれやこれや、何でこんなに日本のマスコミが、しかも世界最大のマスコミ王国と言われる日本で、挙げてあらゆる新聞が歩調をそろえてこんな論調になるのはどういうことかと。  もう長い間ウルグアイで日本主張を掲げておる。しかも田名部大臣も、大臣発言として、世界最大の食糧輸入国である、自給率は先進国中最低であるということ。最大の課題である輸出補助金、これの撤廃なくして国内支持の削減は受け入れられない。さらにまた、基礎的食糧であり、生産調整をしている農産物の関税化は受け入れられない、負担を負う輸入国が受け入れられるような内容にすべきだと。ある新聞には、系統立てて大臣のその主張もちゃんと書いておる。しかし、残念ながら中央紙はそういう系統立てたことは何も書いていない。むしろ自由化自由化の線に沿った記事だけが、ある意味においては針小棒犬に、ある意味においては先ほど来の論議のように、どうもそっちだけにウエートを置いたあれで書いておるということでございます。これは非常に長い長い一つの下地のもとにそういうふうになっているだろうと思いますけれども大臣は何がどうなのかわからないというふうな御発言も先ほどお伺いしたんですが、マスコミはむしろ日本の国益を守る、あるいは農村、農業を守るという立場から大いにサポートすべきなのに、一体何でこんなになってしまったかということを大臣はいかにお考えでしょうか。
  156. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) なかなか難しい御質問でありますが、人によっては、自由貿易の恩恵を日本というのは受けてきた、農業もその範疇である、したがってそれを拒否するようなことはという人もおります。いろんな立場での御発言だろうと思うんですが、いずれにしても豊かさゆえかなと思います。マスコミの諸君ともしばしば懇談をする機会が多いんですが、自由化賛成だという人がほとんどです。  私は、故事来歴、かつて天明の飢饉のときには、私たちの町は娘を売って、人の肉を食べて生き長らえたというのが寺の山門には書いてあるんです。そういう長い歴史の中で、農業というものが風雪に耐えながらきた。そういう二宮尊徳のお話もありましたが、私たちが子供のころはみんな学校にあったんですが、そういうものもなくなる。だんだん何か金で何でもできるんだという感じというのは日本人の中にそこはかとなくあるんではなかろうか。すべてが金で問題が解決がつくというそういうことが短絡的に、なかったら買えばいいということにつながっていっているのかなと。  しかし、終戦のときは小学校五年生でありましたが、あれ以来というものは食糧不足で、育ち盛りで大変苦しい経験もしました。世界が凶作がないということはだれもわからぬわけです。そういうことを考えると、本当に今日そういう状態になったときに生きていけるのは農家だけなんです。言っている、消費をしている人たちは何もできないんですから、一体どういうことを考えてそういう発言になるのかな、そう思っております。  二宮尊徳の愛と勤勉と自助ですかのお話もありましたが、私もスポーツの監督をしておって、教え過ぎるな、与え過ぎるなということは鉄則なんです。余り手とり足とりいろんなことを教えると、考える力というものはそこに出てこない。やれというとおりやっているだけであって、それを臨機応変にその場面を展開してやるという選手が育たないんです。ですから私は、農家というものは基本的には守っていかなきゃとても成り立つものではないと思います。だからといって農家自身もいろいろと知恵を出し努力するというこの部分がなければならぬ、そういう考え方で、いま少しお互いに人の立場に立って物を考えてあげるというそういうものがなくなったところに今日のいろいろな問題が次々と起きている、これは全部に何か当てはまるような気がするんです。思いやりというものがなくなった、これは経済一辺倒で来た日本一つのひずみではなかろうか、まあお答えになるかどうかわかりませんが、そう感じております。
  157. 鈴木貞敏

    鈴木貞敏君 ありがとうございます。  大臣も当初所信で、二十一世紀を展望する新しい農政のために努力するというふうなお考え、まことにそういう意味で、ひとつ基本問題検討会ですか、ここでいろいろの面、来春をめどにひとつ検討している、それがまたいろいろ新聞にあれやこれや細切れ的に出て、大変いろいろかんかんがくがくの議論がそこで闘わされてビジョンが出るのを楽しみにしている一人なわけでございますけれども、そういう中で、今の例外なき関税化等の議論の中で、何かマスコミの論調を含めて非常に末梢的なというとおかしいんですが、本質を論せずして、まあとにかくウルグアイ・ラウンド日本は最大の受益国なんである、かるがゆえにひとつ日本はこれに対して方針に従わなくちゃならぬ、したがって米も例外でなくその方針に従うべしというような非常に単純な方程式で、そういう論法ではなかろうか。  しかし、数千年の歴史を有する日本農業というのはそんな簡単なものじゃない。内部改革を含めて、国内的にどうするんだということを含めた上で国際的な中でも考えなくちゃならぬ。まあ、ある意味では二段構えというんでしょうか、そういうあれが必要なんですが、残念ながら今はその国民的コンセンサスがもうそういう意味で必ずしもがっちり一本じゃないような印象も受ける。  村沢委員の御指摘もありましたが、自民党に対する何か御批判的なあれもありましたけれども、まあ我々は自民党の一員として、総合農政調査会その他を含めて、もう今までの方針は一歩たりとも変わらないんだということ、私たちはそれをはっきり聞いておりますし、私たちもその気持ちでウルグアイ・ラウンドでその方針をあくまでもひとつやっていただきたいということをあるゆる会合でも希望を表明をし、その気持ちで政府・党が一体となってやるんだということはもうあらゆる場で確認しているわけでございます。そういう意味で、何か自民党の名誉といいますけれども、やはり自民党の名誉にかけても我々は党員としてもうそれを支持する、もう変わらない確固たる気持ちでやるというふうな気持ちでおるわけでございます。  そういう中で、いろいろイレギュラー発言とかなんかありましたけれども、ローマの城は外敵によって滅びたんじゃない、内部の分裂によって滅びたんだというふうな昔からのことわざがあるわけでございます。農業問題、農政問題、まさにこれは外圧によってどうこうじゃなくて、我々日本国内の問題として、コンセンサスというのか、これが打って一丸となって外向けにどういうふうに方向づけられるのか、これが勝負どころであろうということをかねてこの委員会でも申したことがあるわけでございますけれども、そういう意味で、残念ながら一番影響力のあるマスコミを含めて、そういった日本農業を守るためのとりでが非常に脆弱になっておるということは大変残念なわけでございます。  そういう意味で、最後の段階に至っているこのウルグアイ・ラウンドにおいて、全国民が今の政府一つ方針を強力にバックアップして、最大の食糧購買国としての我が国主張がそこで共感をもって迎えられて決着するように願っている者の一人でございます。その辺を含めて大臣の御見解を伺いたいと思います。
  158. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) ヒルズ通商代表がお見えになったときも申し上げましたが、輸出国の考え方だけでこれをいろいろとおやりになっているようですけれども、私はもっと地球的な規模で、開発途上国の人口というものはどんどんどんどんふえていっておるが、一体食糧をどうするのかという観点からいっても、自給できるのがたったの米だけてありますが、そういうところまで米を生産しなくなる、そして開発途上国と一緒になって依存していくということで食糧というものは賄えるんでしょうか。そういう次元からもこの問題は考えるべきだと私は思う。そうして、日本立場というものは、何といっても経済大国第二位と言われている日本でありますが、我々地方に行ってみるととても第二位になったような状況にはありません。しかし、それを支えているのは第一次産業、農林漁業、こういう人たちであって、これが自由化されて希望を失うということになったら一体何で生きていくか。地方には働く場所がないんですから、これは都会に出てこざるを得ないということになると、さらに一極集中が進むということからいっても、農村というものは何としても我々は守っていかなきゃならぬ。そのためには、自由化につながるような関税化というものは絶対受けられません、こういうことを再三申し上げてまいりました。これからもこの考えは変わりません。  内外価格差のことをよく聞かれますけれども、これは三百六十円が今百三十円になったこの差というものは随分あるんですね。ですから、この差を縮めようとしていろんな政策を出すわけですけれども、これとて最大の努力をしたってアメリカやタイのように同じような価格にはなり切れません。そういうことを踏まえながら、私どもは守るべきものはきちっと守る、そのかわり譲るべきものは譲ってきた。この五年間だって、ウルグアイ・ラウンド、この中で日本だけですよ、こんなに自由化に踏み切ってどんどんどんどん進めてきた。そういうものが全然勘案されない、認められないということではこれに従うわけにはま一いりませんということを申し上げてきておるとおりであります、これからもその気持ちで、国会と一緒になって政府の方も努力をしてまいります。どうぞ御支援のほどお願い申し上げます。
  159. 鈴木貞敏

    鈴木貞敏君 質問がいろいろダブる面もあろうと思いますが、できるだけ重複を避けましてお願いしたいわけです。自民党の一員として大臣決意なり所信を再度改めてお伺いしたいわけでございますが、既にお答えになっておるわけでございますが、三度にわたりまして国会決議があったわけでございます。五十五年以来でございますが、五十九年、六十三年とあったわけでございます。参議院においては特に非常にトーンが衆議院と比べて大変強い調子でのあれであったということもあったわけでございますが、こういった国会決議に対しましてどのようなお考えであるか、再度大臣にお伺いしたいと思います。
  160. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 国会決議につきましては、その趣旨を尊重するというのが政府の基本方針でありまして、その実現に向けて最大の努力をすべき政治的な責務というものを私は負っている、こう思います。したがって、国会決議を体してこれからも国内産で自給する、この基本方針のもとで対処してまいりたい、こう思っております。
  161. 鈴木貞敏

    鈴木貞敏君 ウルグアイ・ラウンドにつきまして、相当村沢委員からも詳細なるいろいろ御指摘がございました。私もいろいろの面につきまして、読売等に出ました新ラウンド農業交渉、議長提示合意案の要旨、こんなものに基づいて、ちょっと疑問に思う点等を含めてひとつお伺いしたいと思うわけでございますが、重複する点については御了承願いまして、二、三お伺いしたいと思います。  まず、農業交渉の現状でございますけれども、これまた情報、毎印の新聞を見ながら、率直に言って一喜一憂しておる者の一人でございます。政府の折衝を信頼し、全面的にそれを信頼しながらサポートするという、一面においては新聞を見ながら一体どうなるんだろうということを危惧しながらも毎日の記事に注目して読んでおる者の一人でございます。きょうからあすにかけてまたECアメリカと何か交渉が行われるというふうなニュースもあったようでございます。  いずれにしましても、先ほどの御答弁のようにそう簡単なものじゃないというふうなニュアンスのお答えもあったわけでございますが、関税化の方向、こういった面についてどの程度固まっておるのか、そういう点を含めましてちょっとお伺いしたいと思います。
  162. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 関税化につきましては、御承知のようにアメリカ、ケアンズ・グループが最も主張していた点でございます。それに対しまして、ECは条件つぎながらこれに同調をする意向を示しているわけでございます。  輸出補助金お話もございましたように、輸出補助金につきましてはECアメリカではかなり対立がありまして、これの妥協と申しますか、それがどの程度図られるかということが一つの焦点ではございますが、曲がりなりにも関税化ということにつきましては、ECアメリカともに、中身につきましてはかなり私は違いがあると思いますが、同調のできる面があると考えられます。したがいまして、交渉の中で比較的同調しやすい関税化というものに流れが今のところ行っているということはそのとおりではないかと思います。もちろん、ECアメリカの間の条件につきまして、ECアメリカの間に今なお対立があると私も思いますけれども、そういう意味関税化の流れというものが。一つの流れになっているというふうに考えております。
  163. 鈴木貞敏

    鈴木貞敏君 この中で、農産物貿易をゆがめておる最大のものは輸出補助金じゃないかと思うわけでございますが、この輸出補助金制度、そしてそれに伴いまする膨大な財政支出、これがガンだと、最大の焦点だ士思うわけでございます。これがいいかげんな格好で残ったままで、ウルグアイ・ラウンドというものの全体が例外なき関税化というふうな格好でまとまるということは非常なる禍根を残すと思うわけでございます。  川合局長の朝来の御答弁の中でも、ペーパーそのもののあれは、不安な要素を相当残す、そういったペーパーである、そういう懸念の表明もあったわけでございますけれども、この輸出補助金、この撤廃なくして公正なる貿易は実現できないんだという、その辺を相当強く主張すべきだ、こう思うわけでございますが、そういう点での決意なりをお伺いしたいと思います。
  164. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 今お話しのように、輸出補助金につきましては、ペーパーの中でも、主たる直接的補助金につきましてはその削減対象にするという内容と私ども理解しておりますけれども、撤廃というところまでそれを進めるというふうにはなっていないわけでございます。  御承知のように、私どもはこの輸出補助金が何よりも今交渉の最大の問題点であるということから、段階的に削減し、究極的には撤廃すべきであるという主張をしているわけでございますが、この点について、ECアメリカともに国内で困難な問題を抱えているということもございまして、なかなか難しい点があるということだと思っております。ただ、この点につきましては、この問題についての問題意識は私どもが持っているというだけではございませんで、いわゆるケアンズ・グループ、輸出国の発展途上国などを含んだグループにおきましても、当然のことながらECアメリカ輸出補助金につきましては問題意識を持っているわけでございますので、その点から、アメリカECのこの問題についての歩み寄りにつきまして今全世界が注目しているというふうに言って過言ではないのではないかと思っております。
  165. 鈴木貞敏

    鈴木貞敏君 ウルグアイ・ラウンドでいろいろ聞きたいんですが、新聞記事その他を前提に御質問するのははばかりながら、あえて御質問しますけれども、米、米、米ばかりがもうウルグアイ・ラウンドのすべてのようなそういう記事の中でございますけれども、それぞれの地域の重要な基幹作物でありまする脱脂粉乳、でん粉、こういったものについてこのウルグアイ・ラウンドの場でいかなる決意で臨んでおられるかというふうな問題。  それからきのうの新聞でしたか、十一条二項(c)、この問題についてカナダとの間でそれぞれ再提案といいますか、修正の上提案するというふうな新たな動きというふうな新聞記事がありましたけれども、この辺の十一条二項(c)の問題をめぐるあれを簡単にひとつお願いしたいということ。  それから転作奨励金、この問題について一部紙上によれば、農産物輸出国側からこの転作奨励金の削減を非常に強く求められておるというふうな記事もありますけれども、これまた今の転作面積の十三万ヘクタールの問題で七十万ヘクタールになるわけでございますけれども、しかしこれがやはり転作する者にとっても大変重要なあれになっているわけでございます。これはひとつ削減しないような線で御努力願いたいというふうな点。  それから、農業生産基盤の整備でございますが、これも青、黄色とかいうことで何かボーダーラインにあるというふうな記事も一部見受けられるわけでございますけれども、何といいましても土地改良、これはすべて足腰の強い農業を育てる基盤でございますから、これはもう青の方に、削減対象にならないという方にどうしても入れていただかなくちゃならぬというふうな問題であろうと思うわけでございます。  そういう非常に細かい点になりますけれども、今の数点について簡単にお願いいたします。
  166. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 十一条二項(c)の対象品目は、生産調整を実施している品目について輸入数量制限が可能であるという現在のガットの規定でございます。これにつきましては、御承知のように見直し、明確化を求めているわけでございますが、今お話がございましたカナダなどもこの品目につきまして非常に重大な関心を持っているところでございます。昨日でしたか、新聞に出ていたような事実はございません。そういう再提案とかあるいは妥協案というようなものを私ども全然考えておりません。しかしながら、カナダとの間あるいはこの条文に関心を持つ国との間では従来からも密接な協議をしております。そうした立場で包括的な関税化に反対するということはこの十一条二項(c)をその根拠にしている国もあるわけでございますので、そういう形で私ども今後とも取り組んでまいりたいと思っております。  それから、国内支持の削減の問題として、今お話がございました転作あるいは基盤整備でございますけれども、転作につきましては、日本の政策そのものが問われているということではもちろんないわけでございます。ルールづくりでございますので。その場合に政策の調整と申しますか、ECアメリカともに過剰問題というものを抱えて、それが輸出補助金につながっているわけでございますから、その過剰を転換するときに、そうしたものに払われる奨励金のようなものが果たして黄色であるか青であるかという議論でございます。それは、ある意味では前向きの政策であるわけでございますので、私どももその点を青にしたいということで主張をしております。これにつきましては、ECども同調している面がございます。アメリカはこれについては反対が強いと思います。  それから、基盤整備につきましても、実は基盤整備といいましてもいろいろの中身があります。いわゆるインフラのようなものにつきましては、これは各国ともに青にすべきだということについてはそう差がないと思いますが、御承知の国内政策そのもの各国によって相当に違いがございます。それにつきまして、具体的にこれが本当に青か黄色がという議論は実際問題として非常に難しいわけでございますので、なるべく国内政策につきます。そういう削減対象になるかどうかということについては、私ども立場といたしましては、国内政策の弾力性をいかに確保するかという観点で臨んでいるところでございますので、今のお話のような点につきましても最大限の努力を続けていきたいと思っております。
  167. 鈴木貞敏

    鈴木貞敏君 晴間もございませんので、最後にしておきますけれども食糧の危機管理という問題で御質問がありました転作目標の削減という問題、一年限りというのはどう考えても農業の本質から見まして、これは後期対策と連続してある程度の期間が安定的な心構えをつくらせる意味でも必要だと思うので、この点はひとつぜひ考えていただきたいということ。  それから共済制度、今回の十九号台風を含めて大変な苦悩を生産者は味わったわけでございますが、今回のこういった未曾有の台風からの先訓といいましょうか、教訓といいましょうか、共済制度の加入率が十何%と非常に低い、そういった問題を含めていかにしてこの危機管理対策の一環として将来こういう共済制度を改正あるいは内容を改善してたくさんの加入者をひとつ引きつけて、いざという場合に備えるかというふうな問題。こういった点ひとつ新たなものを出していただきたいという問題。  それから、農業高等学校それから農業者大学校という学校があるわけでございますが、私、一部農業高等学校にもちょっと行ってみたわけですが、山形県も六つほどあるんですが、一部は合併したり入校者がどんどん少なくなっておるというふうなことでございまして、医者は八千人も後継者があるのに農業者の方は学卒者が千八百余名しかない。もうあらゆる論議の前に後継者がいなくなっちゃうというふうな基本的な問題があるわけでございますので、そういう面での農業高等学校あるいは農業者大学校、こういったものの運営、あるいはまた青年団活動という、いわゆる非常に懐かしい昔からの団活動というものが農村を活性化させる一つの核であったと思うんですが、こういったものに対する農林省の力の入れ方、そういった面について、いろいろまた時間のあるときにお伺いしたいと思いますけれども、御検討願いたいなということ。きょうは問題点だけを提起いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  168. 永田良雄

    委員長永田良雄君) 午前の質疑はこの程度とし、午後二時四十分まで休憩いたします。    午後零時五十六分休憩    午後二時四十五分開会
  169. 永田良雄

    委員長永田良雄君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農林水産政策に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  170. 猪熊重二

    猪熊重二君 午前中から引き続いてのお話で恐縮ですが、米の輸入自由化問題について少々お伺いします。  申し上げるまでもなく、ガットウルグアイ・ラウンドドンケル事務局長から農産物の例外なき関税化内容とする作業ペーパーが去る十一月二十二日に提示されました。日本政府としては、このペーパーの趣旨に従って米の関税化による輸入自由化という方策をとるわけにもいかないだろうし、そうかといって、またこのことが理由でガットの体制が崩壊するような方法を選ぶわけにもいかないという非常に難しい立場にあるわけです。  私の所属する公明党は、現在この関税化の問題にどう対応しようかということでいろいろ検討を進めておりまして、いまだ結論は出ておりません。しかし、我が党は、去年の六月八日に石田委員長が米の部分自由化、すなわち十年間で年産一千万トンの五%、五十万トンを輸入するというふうなことを考えたらどうだろうかということを提言いたしました。これは米の部分自由化ということを全面自由化を阻止するための防波堤というふうに考えて提言申し上げたわけです。その後、八月二十六日に、我が党では農業基本問題特別委員会で種々検討した結果、今申し上げたような部分自由化日本農業再生のために不可欠であるというふうな点を発表したわけです。  去年の六月、八月の話を今ここで申し上げているのは、その当時、この提言に対して政府あるいは各政党から非常にとんでもない提案だというふうなおしかりを受けたわけです。去年そういうふうな方策を講じていれば、昨年末のウルグアイ・ラウンド農業交渉の問題はあるいは決着したかもしれないし、しなかったかもしれません。やっていないんですからわかりません。しかし、何もしないで去年一年過ごして、ことし一年過ぎようとして、今米の関税化による全面自由化という瀬戸際に立たされている。この状況を思うときに、もう少し去年の夏の部分自由化の我が党の提案に対して政府としても真剣に取り組んでもよかったのではなかろうか、このように考えます。現時点において、去年の我が党のこの政策提案に対し、どのように農水大臣はお考えでしょうか、お伺いします。
  171. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 米は日本国民の主食でありまして、また我が国農業の根幹をなすもの、そういうことで私ども、いろんなお考えの方もおるわけでありますが、国民全体のコンセンサスというものは先生の今お話しのような状態ではなかったのではないだろうかということもあり、国会決議のこともあり、また何といっても国土の自然環境の保全でありますとか地域の経済の状態、いろんな角度から考えて、私どもは国内産で自給するという基本方針、これをもとに今その考え方で進めておるということであります。
  172. 猪熊重二

    猪熊重二君 私の質問に対する直接のお答えではありませんが、まあこれは仮定の話ですからやむを得ません。  いずれにせよ、きょうの午前中三時間のお話を伺っていると、政府は現在問題になっている農産物、特にもう米の問題だけに限定してお話を伺いますけれども、米の部分自由化あるいは関税化による自由化ということに対して基本的にどのような方策で臨まれるわけでしょうか。
  173. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) どういう方策でというお話でありますが、今それぞれの国がいろんな形で議論を展開しておるわけです。先ほど来からお話し申し上げておりますように、我が国我が国としての主張というものを従来から、自由化につながるような関税化というものは受け入れられない、この基本方針で臨んでいるわけであります。
  174. 猪熊重二

    猪熊重二君 要するに関税化による米の輸入自由化は承知できない、こういうお立場だろうと思うんです、午前中のいろんなお話をお伺いしましても。  そこで問題は、そのように政府努力するのは結構ですけれども努力しても結局その方針が貫けなかった場合に政府としてはだれが具体的にどのような責任をおとりになるおつもりですか。
  175. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 今交渉中でありますので、これに向けて全力を挙げるというのは私どもの気持ちでありますので、後どうなるこうなると、いろんなケースが出てくるかどうか、それは全くわかりません。仮定の話でありますので、当面は全力を尽くして努力をする、こういうことで御了解いただきたいと思います。
  176. 猪熊重二

    猪熊重二君 それでは特に米をつくっている農民の立場としては非常に困ると思うんです。一生懸命関税による自由化反対だ、部分自由化も反対だ、ともかく反対で頑張る。頑張るのは結構だし一生懸命努力してもらわなきゃならぬかもしれません。しかし、それにもかかわらず、結局部分自由化ないし部分自由化を通じての関税化というふうなことになったときはなったときでそれはしょうがないんだというんであったら、実際にづくっている農民の立場としては迷惑千万の話です。努力するのは結構ですけれども、牛肉・オレンジのときだって同じです。結局だれも責任を具体的にとる人がいない。私は努力するのがむだだと申し上げているんじゃない。努力は大いにしてもらわなきゃならないけれども、それがだめになったときに、その努力が結実しなかったときにだれがどう責任をとるのかということについて、政治家としての責任、こういう問題をもう少し明確におっしゃっていただきたい。
  177. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 農民の皆さんがかわいそうだというお話でありますが、私のところにおいでになります農業団体、農民の皆さんは、この方法で全力を挙げて頑張ってくれと、こういう強い要請でありますので、一生懸命やっているわけであります。いずれにしてもいろんなお話もあると思うんですが、もう恐らくそういうお願いで私のところに来る農民の皆さんというのは皆無でありますので、前段申し上げたことで努力をいたしておるわけであります。
  178. 猪熊重二

    猪熊重二君 この問題は押し問答になるからやめておきます。  いずれにせよ、ガットウルグアイ・ラウンドというのは、言葉のとおり多国間の交渉であります。交渉だとすれば一般的に世の中の出来事としては相互に譲歩する、お互いに自分立場立場として、相手の立場を認めて双方が譲歩するというところに初めて交渉が成り立ちます。ところが、米は部分自由化も、もちろん関税化による自由化などということは絶対できないと、こういうことで相手と交渉するといった場合に、それを交渉というふうに言えますか。自分の方でも何らかの駆け引きというか譲歩というか、そういうものがなかったら交渉というものは本来成り立たないんです。一方的な宣言にすぎないんです。この辺のことをどうお考えになりますか。
  179. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) ウルグアイ・ラウンド交渉は、先生御承知のように十五分野、今七つのグループになっておりますけれども、にわたって多角的に行われているわけでございます。また、農業分野におきましても国内支持、国境措置、そして輸出補助金、この三つの分野、さらには検疫・衛生というような分野まで広げて議論が展開されているわけでございます。したがいまして、そうした大きなパッケージの中でどうなるかということでございますので、一つ米だけが焦点になるという交渉ではないというふうに私ども考えております。
  180. 猪熊重二

    猪熊重二君 それは今局長おっしゃるようにいろんな項目の中なんです。しかし、その項目の中で今一番中核になっているのは、まして我が国にとって一番中核になっているのは、この米の部分輸入自由化の問題なんです。  話をちょっと変えますが、世論調査の結果を一、二点指摘しておきたいと思います。  本年五月、読売新聞が実施した世論調査において六割近くの方が部分自由化に賛成し、全面的な自由化に賛成という方が一割前後おられる。要するに、全面自由化もしくは部分自由化というものについての賛成の意見は七割を超えております。また、本年五月に発表されました主婦連の調査によっても、これは輸入反対の方が意見は多いんですが、それにしても輸入反対は四七・五%、輸入賛成は三八・一%、こういう世論調査があります。ほかにもいろいろ農水省としては御存じだろうと思いますが、要するに、私が申し上げたいのは、政府が米は絶対輸入しないということでいくのも結構だけれども政府日本国民の政府なんだから、もう少し世論調査とか国内の各界の意見というふうなものを虚心坦懐に聞かれたらどうでしょうか。特に大臣には申し上げたい。  ちょうど私もそのテレビを見させてもらいましたが、数日前のNHKの米に関する、何といいましたかシンポジウム、討論会というか研究会とい」うか、これには大臣出席になられました。政府側から大臣と先ほどの近藤長官が出られた。それから具体的な名前は申し上げませんが、輸入賛成の方が三名、輸入反対の方が三名、それでいろいろ御討議されました。ああいう席においてずっと長い時間御苦労さまですが、大臣もそのシンポジウムに加わっておられたんですから国民各界各層に各様な意見があるということは十分御承知のはずだと思います。このような輸入自由化賛成という意見も国民の中に相当数あるんだということについてはどのような御認識をお持ちになりますか。
  181. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 私どものところに市町村議会の九〇%、東京、大阪を除くすべての道府県議会でこの米市場開放反対の決議が来ております。どこを基準にやるかということになりますと、それぞれの代表であります議会の意見というものも尊重しなければならないのではないかな、こう思っているわけであります。
  182. 猪熊重二

    猪熊重二君 もう一つ米の問題について非常に私が遺憾に思うことを申し上げておきたいのは、米の自由化を言うことがあたかも国会の中においてタブーであるかのごとく考えられ、また取り扱われていることなんです。この米の問題というのは日本農業の最重要政治課題なんです。この政治課題について賛成の人もあるし反対の人もある。各種各様の意見があるんです。各種各様の意見がなくて、絶対にこの道が正しくて絶対にこの道が間違っているというんだったらこんなに意見は対立しないんです。どっちがいいか、あるいは世界全体の中でどの方法が妥当かというふうなことを苦慮するから、部分自由化でどうだとか、あるいは何とか関税化までいかないための方策はどうかということでみんな苦労しているわけです。ところが、国会決議ということをにしきの御旗にして、米の自由化についての意見というものがあたかも国会決議に反し、言ってはならぬことを言う、タブー視されているような状況というのはまことに困った状況だと私は思います。  国会決議に関するこの法的性格については、私は平成二年十一月二十二日のこの農林水産委員会において農水省及び内閣法制局の所見も伺っているわけです。細かいことを言っている時間はありませんが、国会決議がにしきの御旗だということを決めているような状況じゃ現在はないということ、時の流れというものがあるということ、この辺のことについて大臣どのようにお考えになりますか。
  183. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) にしきの御旗にしているつもりもございませんが、現実問題として参議院の方では、完全自給を図れ、しかも米国内の我が国に対する自由化要求の動きは極めて遺憾であり、認められないという大変きつい決議というものがなされておるわけでありまして、これを無視して私ども行動をとるということは、先ほども申し上げましたように慎まなければならぬ、またこれを尊重していかなきゃならぬという立場にありますので、そのことは御理解をいただきたいと思います。
  184. 猪熊重二

    猪熊重二君 大臣にお伺いしますが、先ほど大臣は、譲歩案については一切検討しておらない、ドンケルペーパーで言うような農産物の完全自由化に対する譲歩案は全然検討しておられない、こういうふうなお話でした。それはそれでいいんですが、しかし、もしどの程度の部分自由化をしたならばどういう結果が起きるんだろう、あるいは七〇〇%の関税によって、これを十年間にどこまで下げるかは別にして、三〇%にするか五〇%の関税にするかは別にして、こういう関税化による全面自由化という事態になった場合に日本の米農業はどういうことになるだろうかということについての検討はしておられますか。
  185. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 具体的には検討はいたしておりません。しかし、自由化になれば地域経済に与える影響というものは、米農家ばかりではなくて関連産業を含めて大変な事態になるというふうに認識をいたしております。したがって、今自由化になるような関税化は受け入れられないということで対処いたしておりますので、あれこれの検討というものはいたしておらないということでございます。
  186. 猪熊重二

    猪熊重二君 先ほど、努力したけれども、もしこの方針が貫けなかった場合の政治責任はどうされますかと質問したのに対しても、先のことだからわからぬというようなお話でした、一口に申し上げれば。部分自由化をしたら農業自体がどうなるか。それから今大臣がおっしゃったように、これが地域に与える影響だとか、あるいは消費者に与える影響だとかそういうものを検討しないで、それでただ輸入反対、一粒たりとも輸入反対と言ってみたところで全然説得力がない。もちろん、このことを調査して検討して、それを公表するかしないかは別ですよ。そうでなかったら政治として全く先を見ていないじゃないですか。これじゃ羅針盤のない航海と同じです。もし五%輸入自由化をしたらどこにどういう結果が出てくるだろう、どういう影響が出てくるだろう、あるいは五%が一〇%になったらどうなんだろう、あるいは七〇〇%の関税であったとしてもどうなんだと。  大臣がこの間NHKのシンポジウムにおいでになったときも、こういう問題もいろいろ取り上げられて、やれ品種の改良だとかどうとかいろんな問題も出ていました。素人でもいろいろどうなるんだろう、どうしたらいいんだろうと考えているんです。一番農民のための役所である農水省が、反対だから何もやらぬというようなことでは全く筋が通らぬと思うんです。いかがですか。
  187. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 交渉の仕方というのはいろいろあると思うのでありますが、私の考えておりますことは、自由化につながるような関税化というものは受け入れられませんという交渉事でありますので、もう一つのものを持って、二つを並べて交渉というわけにもまいりませんので、いずれにしても国会の決議もあり各地方の道府県の決議もありますので、これを持って私どもが臨むということでやっておるわけでありますから、ここのところはひとつ御了承いただきたい、こう思います。
  188. 猪熊重二

    猪熊重二君 私が言っているのがおかしいのかどうかわかりませんけれども、ただ自分たちの都合はこうなんだと言って、相手がああそうですか、日本の都合はそうですか、結構でございますと言ってくれればそれはだれも問題ないんです。そういうわけにいかぬということで今問題になっているんじゃないですか。向こうが言うとおりになったらどうなるんだと、こんなんじゃ日本の農民はみんな死んじゃうから、そんなわけにはいかないんだということも一つの反対のための有力な根拠になるでしょう。五%輸入したからといって別にどうということはないんだというふうな結果が出たとしたら、向こうにすればどうってことないじゃないの、こういうことになるじゃないですか。交渉なんです。私は、何も自由化しろとか関税化しろとかなんと言っているんじゃないんです。闘うためには闘うための方策というものがあるでしょう。ただやみくもに反対反対と言っているだけで納得するんでしょうか、向こうが。国会決議があるからと言うだけで、国会決議は日本国を構成する一つの機関の一つの意思表示であります。アメリカにとってみれば国会決議があるからもうだめなんだということだけで納得するんでしょうか、あるいはECにしろ。もう少し交渉するためには相手も納得するような理由、根拠というものを持っていかなきゃならないんじゃないですか。  それに関連してお伺いしますが、先ほど局長も言われたように、今農産物の障壁の問題として三つ言われている。国内措置の問題も貿易障害の一つの事由ではあるけれども、それは言ってみれば国内の問題、間接的に貿易に関係してくる。しかし、輸出補助金の問題と輸入関税障壁の問題、これはもう貿易に直接関係する二つのファクターなんです。ところが、自分の方では全然輸入しませんと言っておいて輸出補助金は不当だと言っても、そういうような言い分で言い分が通るんでしょうか。自分の方は関税障壁はもう一〇〇%固めておいて絶対入れませんよ。輸出補助金は自由貿易のために非常な支障になる。自分の方をやってこないで相手だけ責めたってそんなものほとんど役に立たぬと思う。輸出補助金の問題を政府は、先ほどもどなたかおっしゃいましたけれども、もう少し強硬に言わなきゃならぬ。しかし、言うためには自分の方も立場というものを考えなきゃならぬ。この辺の問題についてどうお考えでしょうか。
  189. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 今回のウルグアイ・ラウンド農業交渉の最重要課題と申しますのはやはり輸出補助金であろうと思います。ECアメリカがこういう形で交渉に臨んでおりますのもこの点が最大の課題であるからだと思っております。私どもは、この輸出補助金はやはり段階的に削減し、最終的には撤廃すべきものだという主張をしているわけでございます。一方で、この輸出補助金が撤廃という形にならないまま例外ない関税化という、関税以外の措置の撤廃ということを主張するのはアンフェアであるというのが私ども交渉立場でございます。そういう意味では、やはり輸出補助金とそれから先ほど先生が御指摘の関税化の問題とはそういう形で結びつき、かつ私ども主張は十分論拠のあるものだというふうに考えております。
  190. 猪熊重二

    猪熊重二君 これで総括的というか、お話をお伺いしましたので、主要食糧の自給率についてお伺いします。要するに、米に限らずすべての食糧が国内で自給されれば非常に国民にとっては安心だし、結構なことなんです。しかし、今食糧の国内自給というけれども、実質は米の国内自給について食糧安全保障論というふうなことを言われています。米が完全自給されることは、それは非常に望ましいし、そうあってほしいし、そうなければならない状況ではありますが、私がお伺いしたいのは米以外の食糧の自給卒なんです。  次の主要食糧の過去十年間の国内自給率の推移をおっしゃってください。一つ、小麦、大麦を含めた麦、二つ、大豆、三つ、家畜用飼料穀物、これは直接の食糧じゃありませんけれども、家畜用飼料穀物、この三点について自給率をおっしゃってください。
  191. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 昭和五十五年度と平成元年度の自給率について、十年という話ですから申し上げますが、小麦、大麦とおっしゃいましたが、まず小麦でございますが、昭和五十五年には自給率一〇%でございまして、元年で一六%でございます。大麦は五十五年が一三%、元年が一四%でございます。大豆は五十五年が四%、元年が六%でございます。飼料用の穀物でございますが、これは五十五年ゼロ%、元年ゼロ%、以上でございます。
  192. 猪熊重二

    猪熊重二君 要するに麦の自給率は元年度において一四、五%、大豆においては六%、飼料用穀物はゼロ%、こういう状況において、政府としては今申し上げたような穀物ないし飼料穀物の自給率についてどのような所見をお持ちなんでしょうか。
  193. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 我が国食糧自給率が低下してきましたのは、先生も御案内のとおり、一つは畜産の消費の増大等による飼料穀物の輸入の増加、それから油脂の消費の増大による油糧原料である大豆等の輸入の増加、そして自給品目であります米の消費の減少というようなことが合わさって自給率が下がってきているわけでございます。  非常に狭い国土で一億二千万人を超える人口を擁する国といたしましては、今後とも国民生活の安定、こういう意味でこの食糧自給率の維持向上を図ることが必要だという認識に立っております。そういう前提で、かつまた国内で生産可能な条件というのがございますから、それらを前提としまして、昨年閣議決定におきまして西暦二〇〇〇年を目標年次とする「農産物の需要と生産の長期見通し」というものを出しております。ここで、国内農業の持てる力を十分発揮するということによりまして食糧自給率の低下傾向に歯どめをかける。現在、供給熱量で自給率が四八%でございますが、これを五〇%に引き上げるというふうに示しているわけでございます。  このためには、主食である米につきましては国内で自給することを基本とする。また、良質米はあるいは加工用米の供給を図っていくということによってその生産、需要を維持していく必要があろう。また、小麦、大豆につきましても品質、コスト面での改善を進めることによって生産の拡大を図ってまいりたいというふうに思っております。
  194. 猪熊重二

    猪熊重二君 もっと端的にお伺いずれは、平成十二年を目途とした自給率において、米は一〇〇%、しかし小麦は一四ないし一九%。ほとんど現在と変わらぬというか二、三ポイントアップする。大豆においては六ないし八%、現在が六%ですから八%の自給率。要するにこのように麦だとか大豆だとか飼料用穀物についての自給率はほとんど、平成十二年になると三一%という目標は立っていますけれども、いずれにせよ、なぜ米だけが一〇〇%自給率が達成されれば、麦だとか大豆だとか飼料用穀物の自給率はその程度でまあやむを得ぬということになるんでしょうか。
  195. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 数字の率だけで言えば、確かに米以外のものの自給率の向上の目標というのは非常に低いではないかという御指摘があろうかと思いますが、先ほど申しましたように我が国の国土、そこにおきます農地の状況、それからまたアジア・モンスーン地帯に属します高温多湿な気候において適する作物というようなことを考えてまいりますと、例えば麦あるいは大豆というようなもの、植物的に言えば主として乾燥地帯に発達した植物でありますから、これを品種改良をしながら、あるいは技術の工夫をしながら国内で自給していくというのはかなり難しい面があるわけであります。我々は、行政としてそういう実態を踏まえて目標を定めるわけでありますから、米についてはなるほど我が国の国土に適した作物でございまして一〇〇%自給を図るのは十分可能でありますけれども、今の麦であるとか大豆とかというものについてはいろいろな改良、改善に努めながらも、今先生が申されたような目標を掲げるのが適切かというふうに考える次第であります。
  196. 猪熊重二

    猪熊重二君 観点を変えてお伺いしますが、今のような主要穀物の消費におけるカロリー供給に関し、一人一日当たりの供給熱量とそれの構成比について述べてください。
  197. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 現在の一人当たりのカロリーは一日二千六百二十八キロカロリーでございます。これは平成元年度でございます。そのうちに米が占めますのが二六%、麦類の占めますのが二一・二%、大豆が三%というような形で、穀類でおおむね四〇%強というのが現状でございます。それが将来どうなるかということでございますが、食生活の変化等もありまして、個別のものの割合についてまではカロリーの見通しを立てておりません。
  198. 猪熊重二

    猪熊重二君 大臣、米は一人一日当たりのカロリーの供給割合を構成比で見ると二六%なんです。麦が一二・二%なんです。大豆は少ないけれども三%なんです。米が二六%の供給カロリーの割合を占めている。しかし、米を自給することだけによって何で食糧安保だとか日本食糧が安全なんだとかという結論が出てくるんでしょうか。これは私は嫌みで言っているんじゃないんですよ。  要するに米は一日に一口に言って食べるもののうちの四分の一しか占めていないんです。その米を完全自給すれば麦の自給率は一四%でもいいんだ、大豆は六%でもいいんだとなぜ言えるんだろうか。なぜそれは食糧安保だとかいうふうな問題になってくるのか、その辺の見解をお伺いしたい。
  199. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 先生の御指摘でございますが、私どもはやはり農業生産というものを見た場合に米だけを見ているわけじゃございません。おっしゃるように米のカロリー供給に占める割合は二六%でございますが、麦、大豆をつくっているのも農家でございまして、これらの農家は麦だけ、大豆だけをつくっているわけじゃございません。米をつくり、麦をつくり、大豆をつくっているわけでございます。したがいまして、基幹的な米をつくらなくなれば、あるいはつくれなくなれば麦や大豆もつくらなくなるわけでございます。したがいまして、米だけの二六%があるから食糧の自給ができる、あるいはそれだけが食糧安保だというふうに考えているわけじゃございません。それらを含めて農業生産力を維持していくことが食糧の自給の維持であり、食糧安保だと思っております。
  200. 猪熊重二

    猪熊重二君 あなたの今おっしゃったのをもう少し別の角度から端的に言えば、米の国内自給が食糧安保として必要不可欠なことなんだという立論は成り立たないということを言ったことと同じことでしょうか。
  201. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 私が申し上げたのは、むしろ米を維持することが食糧安保につながるということで申し上げました。
  202. 猪熊重二

    猪熊重二君 二六%のカロリー割合を占める米を完全自給することがなぜ食糧安保という言葉に妥当するのかということを私は聞いているわけです。その辺どうですか。
  203. 馬場久萬男

    政府委員馬場久萬男君) 繰り返すようで恐縮でございますが、米の自給を維持するということは日本の稲作農業を維持することでございます。  先生が御指摘になりました麦とか大豆もそれらの農家がつくっているわけであります。したがって、農家の生産活動を維持することがあって初めて食糧の安保が確保できるわけでございまして、米の二六%は切り離して考えるんではなくて、それをもとに行われている農業生産の維持を考えなくちゃいかぬ、私どもはそう思っております。
  204. 猪熊重二

    猪熊重二君 わかりました。そうすると、要するに米の輸入を禁止することが食糧安保じゃないということです。そう受け取らざるを得ない。  次に、米の管理の実態についてもお伺いしたいと思います。  要するに、米を食糧管理法によって管理していると言うけれども、実質的にどのように国内において米が管理されているんだろうか。大臣は先ほど食管法の改正は政治状況からいっても不可能だどいうふうなことをおっしゃいましたが、では現在の食管法がどのように実質的に米を管理しているか、お伺いしたいと思います。平成二年度における米の生産総量はおよそ一千万トン。この一千万トンの米の政府の管理の形態についてお伺いします。
  205. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 御承知のとおり米につきましては、現在の食糧管理法の体系のもとで政府が一元的に管理をするという建前をとっておるわけでございますが、さらに食管法との関連を持ちながら、御承知のとおり全体としての需給安定を図るための大変厳しい生産調整も行われておるわけでございます。  その中で平成二年産米について申し上げますと、お話がございましたように、作況がややよかったわけでございますが、一千五十万トンの生産量があるわけでございますが、この中で四十九万トン分につきましては、御承知のとおり他用途利用米という形態での流通が行われております。残りの一千一万トンにつきましては、大きく分けまして政府米、自主流通米それから農家消費等という分野に分かれているわけでございますが、政府管理の形態として、一つ政府米が百七十七万トン、それから自主流通米が約四百五十七万トン、農家消費等が三百六十七万トンという形態に分かれておるということでございます。
  206. 猪熊重二

    猪熊重二君 一千万トンのうち政府が買い上げて直接価格的にも品物的にも管理している政府米は百七十七万トン、あと自主流通米が四百五十七万トン。農家消費等という三百六十七万トンはもう少し内訳を言うと、世間で言われているいわゆる自由米、やみ米というのがこの中に入っているんだろうと思いますが、実質的な農家の消費米とそれからいわゆる自由米、やみ米と言われるものとはどんな割合になっていますか。
  207. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) ただいま申し上げました農家消費等という範疇に入る数量は三百六十七万トンあるわけでございますけれども、私ども調査によりますと、縁故米あるいは無償譲渡という形で流通している量が約百八、九十万トンあるんじゃなかろうか、そのほかに種子用に利用されるもの等々がございますが、それらを差し引きますと、いわゆる不正規流通と呼ばれるものは六十万トン程度ではないかという認識を持っております。いずれにしましても、いわゆる不正規流通の実態把握については率直に申し上げまして完全な状況把握は私どもとして手が及びかねている面があることをひとつ御容赦をいただきたいと思います。
  208. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、農家の直接消費するであろうという数量、それから縁故米として今百八十ないし百九十万トン、こうおっしゃいましたが、これの算出根拠等は明確なんですか。
  209. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 私ども調査によります推定値でございまして一直接管理をしている米等と違って現物等の照合をそう厳格にやっているものではございませんで、推計値ということで御理解をいただきたいと思います。
  210. 猪熊重二

    猪熊重二君 食糧管理法という法律はありながら実質的に政府が管理しているのはその二〇%にも満たない。自主流通米は管理していると言うけれども、それは数量を管理しているだけであって、直接的には価格も品物も管理しているわけじゃない。それから、農家消費等三百六十七万トンという中に百万トンないし二百万トンぐらいのいわゆる自由米、やみ米があるというふうなことは世間一般で言われていることです。そうすると、食糧管理法という法律をつくってありながら、全然実質的に政府が管理しているとは言えないと思うわけです。  これに関連して、時間の関係がありますので、物すごく簡単にお伺いしますが、いわゆるにせコシヒカリ事件というのがございました。これは私もう申し上げませんが、食糧庁としては御存じでしょうから。これの食管法違反業者に対する処分なり農水省としてはどのように考えておられますか。
  211. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 今二つの点についてのお尋ねであろうかと思いますが、まず第一点目の、現在の食糧管理法の体制のもとで行っているいわゆる食糧管理の実質が政府米百七十七万トン、そこにしか及んでいないのではないかという点でございますが、私どもは全くそういうようには考えておりません。自主流通米も食管法上明確に位置づけられた政府の管理下にある米穀であるという理解でございまして、これらを含めて食管法に基づく一元的な需給の管理が行われておるという理解でございます。  それから、第二点目の、いわゆるにせコシヒカリ事件でございますが、御承知のとおり、今日なお本件にかかわる問題といたしまして公文書偽造行使にかかわる刑事事件についての捜査が続行されております。この公文書の偽造行使にいわば裏腹の関係でいわゆる食管法上の不正規流通の問題が存在していることは私どもも十分認識しておりますが、その具体的な事実関係につきましては、現在捜査当局の方と連絡をとりつつも、私どもとしての事実確認を実は中断をいたしております。刑事事件の捜査に支障が生じないようにというためであります。いずれ捜査の進展を待ちまして捜査当局から所要の情報提供を受けると同時に、必要がありますれば我々の追加調査を行い、その結果に基づきまして適切な措置をとってまいりたいということで私ども考えておるところでございます。
  212. 猪熊重二

    猪熊重二君 要するに、このにせコシヒカリ事件も、あるいは富山のやみ米商人事件も食管法の規定が全く無視されている。そして、もし本当に食糧庁が食管法を運用しようとするならば、食管法の八条ノ三、農林水産大臣は卸売業者が本法に違反したるときは、その許可を取り消し、またはその業務を停止しもしくは制限することを得という処分規定で直ちに処分するべきだと思う。しかし、そのような処分ないしこれらの食管法違反の刑事事件というものも実際には全然発動されない。それはもう秋田の昭和六十三年一月食管法違反事件で、秋田地検が嫌疑不十分で不起訴にした事案で農水省としては懲りているはずなんです。こういうふうに実質的に効果のない法律というものが存在することは、国民の遵法精神の上から非常に問題だと思うのであえて申し上げた次第で す。  なお、野菜の問題については時間がなくなりまして申しわけない、質問いたしませんので、よろしくお願いします。
  213. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) ただいま一連の米穀にかかわる不正規流通問題についてのお話がございました。私どもも一部の不心得な行為によりまして食糧管理制度についての不信を招きかねないという認識を持っておりまして、大変遺憾に存じておるわけでございます。先ほどにせコシヒカリ事件について刑事捜査が進められて私ども調査を中断しておるということを申し上げましたが、御指摘のございました他の案件につきましても、私どもただいま鋭意事実関係の究明を行っておるわけでございます。私ども決してこのような事態を放置するつもりはなく、ただいま御指摘のございました食管法上の規定の運用を通じまして必要な是正措置を講じていくべく現在努力をしているところでございます。今しばらく事実関係の究明に時間がかかるわけでございますけれども食糧管理制度、大部分の関係者は的確な運用について努力をいただいておりますことを御理解いただきたいと思うわけでございます。
  214. 林紀子

    ○林紀子君 私は、まずガットウルグアイ・ラウンドをめぐって御質問させていただきます。  十一月二十一日の八カ国次官級協議でダンケル事務局長から作業ペーパーが提示され、その中で包括的関税化が明示されたと言われています。そして、二十六日には農業交渉グループの三十六カ国の非公式会合が開かれ、続いて二十八日には公式会合が開かれ、この作業ペーパーについてそれぞれの意見が表明されたということになるわけです。  そこで、この包括的関税化について異議を唱えたり、反対している国は我が国のほかに十四カ国あるというのは午前中の経済局長の御答弁にありましたけれども、今まで日本のマスコミでは例外なき関税化を受け入れなければ我が国が国際的に孤立する、こういう報道が盛んになされておりましたけれども、決してそうではないという例証だと思うわけです。この十四カ国はそれぞれどういう理由で反対しているのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  215. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) この包括的な関税化に対しまして反対している国の理由でございますが、例えばカナダは、御承知のように十一条二項(c)の維持、見直し、明確化を主張しておりますので、この点からの反対でございます。あと幾つかの国は、関税化には柔軟性が必要、あるいはセンシティブ、微妙な産品が含まれているというような物の言い方をしているところもございます。それから韓国は、当然のことながら米を含む基礎的食糧関税化を受け入れる立場にないということでございまして、これは御承知の点でございます。あるいは、いわゆる発展途上国と言われる国々は、発展途上国の現在の状況からそういう関税化を受け入れるわけにはいかないというようなことでございます。いずれにいたしましても、それぞれの国益を踏まえた反対理由であるというふうに考えております。
  216. 林紀子

    ○林紀子君 必ずしも日本と同じ観点でこの関税化に反対をしているということではないわけですけれども、しかしそれぞれの国が反対している理由というのは、やはり環境の問題も含めまして国内の農業がこれでつぶされてしまっては大変だという立場だと思うわけです。そういう意味では農業というのは工業製品とは違うんだという明らかな例であると思います。それからまた、輸入国という立場でこれは大いに反対をしている、そういう意味では、日本は大きな国として輸入国という立場から大いにこうした孤立化ではなくてこういう国々にも支えられているということも含めまして関税化反対ということを貫いていただきたいと思います。  そこで、もし関税化を受け入れれば米については食管法とは両立をしないと、これも午前中お答えがございましたけれども、毎日新聞の十一月二十四日付は、食管法を改正せずに関税化を受け入れるという、抜け道と言うんですか、すり抜けることができるのだというような報道をしておりますけれども、こういうことが実際にできるのでしょうか。
  217. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) ただいま御指摘のございました新聞記事は私は拝見をしておりませんけれども、米の関税化の問題と国内法との関係につきまして、実はこの関税化の概念そのものがまだ論議中であって、まだ概念内容が明確化されておるわけではございませんし、また我々としては、先ほど来大臣から御答弁申し上げておりますように、国会決議の趣旨を体して国内産で自給するという基本方針のもとで交渉に臨んでいる状況でございます。  断定的にこの問題について私ども判断をするような具体的な検討をしているわけではございませんけれども、仮定の問題としてあえて私どもの見解を申し上げれば、いわゆる関税化ということと現行制度とは両立しがたいものであるという理解を私どもとしてはしておるところでございます。
  218. 林紀子

    ○林紀子君 マスコミがいろいろな形で世論誘導をするような形で報道をしているということはきょうの朝からずっと論議がされておりますけれども、自民党の森政調会長、これは御自身がテレビに出ておっしゃったということですけれども、さまざまな選択肢を考えている、譲歩案を準備していることを明らかにしたということ。これはけさほど来からお話がありまして、自民党め鈴木委員からも、また理事会でも自民党の立場というのは決してこれは正式のものではないという釈明がございましたけれども、やはり政策決定責任者である森政調会長がこういうことを言った、そして自民党は与党である、そういう意味では非常に大きな影響があるということで、このことについては決しておろそかにできない話ではないかと一つ思うわけです。  それから、外務省から午前中御答弁がありまして、閣内は一致して関税化反対という形で交渉しているということですけれども、その一番のトップの外務大臣が、日本だけが取り残され、世界じゅうから袋たたきに遭うことは絶対に避けねばならない、日本のために交渉がつぶされたとの汚名はいただかないようにしようと考えている、こういうことも意思表明したという報道もまたなされているわけです。そういう意味では閣内一致してということはどうしても必要なことだと思うわけですので、農水大臣、ぜひこれは閣内一致ということで頑張っていただきたいということを強く要望しておきたいと思うわけです。  それから、米以外にも我が国が国境措置を講じている農作物というのはあるわけです。外為法、輸入貿易管理令に基づく輸入数量制限品目は、乳製品やでん粉、魚介類など、現在十四品目、来年四月にオレンジ果汁が自由化されますと十三品目に、また食糧庁や事業団などによる一元的管理を行っている国家貿易品目は、米を初め麦や脱脂粉乳、バター、生糸など、六品目となっております。例外なき関税化ということになりましたら、考え方としましては、これらすべての農産物が自由化される、こういうことになるんだと思うんですが、いかがですか。
  219. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 今包括的な関税化という言われ方をしている関税化の中身は必ずしも明らかではございません。私どもが承知しておりますのはアメリカ提案が一番明確に出ているわけでございますが、これは関税化を次第に引き下げていって十一年目には一定の低さにするということでございますので、この形をとりますと自由化につながる制度になるというふうに私どもは承知しております。
  220. 林紀子

    ○林紀子君 そういうことになりますと、先ほど食管法と包括的関税化は両立しないというお話だったわけですから、脱脂粉乳やバターなどでは加工原料乳生産者補給金等暫定措置法、生糸では繭糸価格安定法、こういうものも改正をしなければならなくなる、両立はできない、こういうふうに理解していいわけですね。
  221. 赤保谷明正

    政府委員赤保谷明正君) お答え申し上げます。  いわゆる関税化になった場合に不足払い法の改正が必要なのかどうなのか、そういう御趣旨の御質問だったと思うんですけれども、乳製品の輸入制限措置については、昭和六十三年、御存じのようにガットの規則違反というそういうパネルの裁定がなされたわけですが、現在私どもとしましてはガットウルグアイ・ラウンドにおきまして輸入制限に関するいわゆる十一条二項(c)、この見直し、明確化を提案しているところでありまして、この基本方針に照らして関税化は受け入れがたい、そういう主張をしているところでございます。  さらに、交渉の場において関税化についてはいろいろと議論がなされているわけですけれども、先ほど食糧庁長官からもお話がありましたが、その具体的な概念についてはまだ必ずしも明確になっておらないというような状況でございますので、御質問のようなケースにつきまして具体的に検討する段階ではございませんので、その点ひとつ御了承を賜りたいと思います。
  222. 上野博史

    政府委員(上野博史君) 繭糸価格安定法の関係についてでございますけれども、今畜産局長からお話がございましたことと同じでございますが、関税化につきましてはその内容自身いろいろございまして議論が行われている最中でございます。したがいまして、具体的な概念が明確になっていないという状況でございまして、私どもといたしましては繭糸価格安定法に関する具体的な検討をまだいたす段階になっていないというふうに考えております。したがいまして、断定的なことを申し上げがたい状況でございます。  ただ、いずれにいたしましても、養蚕業というのは中山間地帯におきます農業経営にとりまして非常に重要な作目として定着をしているわけでございますし、また製糸業は地域の基幹産業の一つとなっておりますので、これに不測の事態を招くことのないように十分に対処してまいりたい、かように考えております。
  223. 林紀子

    ○林紀子君 関税化という実態が明らかでないのでというお答えだったわけですが、しかし、もし関税化の受け入れということになりましたら、米ばかりではなくて、こうした農産物も大変厳しい状態になる、それは明らかだと思うわけです。  せんだって私は、酪農家の皆さんと、畜産局長に要望させていただきました。ことしの四月からの牛肉自由化によって生産者を困らせることはしない、こう言って政府・自民党は自由化したけれども、今になってみるとそれは真っ赤なうそであった、輸入牛肉と競合してぬれ子や老廃牛など個体価格は大暴落している、これは自由化災害だ、政治災害だ、損害に対してぜひとも所得補償するべきだ、次々と怒りの声が出されました。さらに乳製品や脱脂粉乳、バターが自由化されたら一体全体どうなるのか。十一月四日の朝日新聞の投書欄には牛乳の緊急輸入に怒りの声が寄せられておりました。  例外なき関税化を受け入れないということは、現在我が国が講じている農産物の輸入制限措置も維持していく、米以外でも譲歩しない、こういうふうに理解していいわけですね。これは大臣にお伺いしたいと思います。
  224. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 米ばかりが今議論の対象になっておりますが、今お話しのように、いろいろ輸入制限をいたしておるものがあります。それは同じテーブルで今やっております。ただ、この委員会ずっと通じて国会での議論ウルグアイ・ラウンドはルールを決める努力をしているわけでして、何か米を決めるための努力ではないんであります。全体に一体どういうルールでこれからやっていくのかという議論が主でありまして、そのこともまた理解をいただきたいと思います。
  225. 林紀子

    ○林紀子君 もう一つ大臣にお伺いしたいわけですが、今食糧自給率の向上のお話がございましたけれども、私は前の質問者とは反対の立場食糧自給率の向上、そういう意味では、今この例外なき関税化を受け入れないだけではなくて、四八%にまで下がっているカロリーベースでの自給率をもつと向上。させていく、この努力をすべきときではないかと思うわけですので、この食糧自給率の向上に向けた大臣の御決意というのをお聞きしたいと思います。
  226. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 今先生お話しのように、カロリーベースで四八%、世界の主要国の中では最低の状態にあるわけですね。何といっても日本は国土の七割が山であるという条件があります。その狭い国土に一億二千万人が住んでいるわけでありますから、何としてもその中で食糧の自給力の維持向上を図るということは大変な努力が要るわけですね。  しかしながら、こうした中で昨年閣議で決定された二〇〇〇年までに供給熱量で五〇%の自給をする、こういうことであります。ただ、これは言葉ではそういうことになるわけでありますが、今申し上げたように、狭い国土の中でやろうとすれば、何といってもすぐれた担い手の育成でありますとか生産基盤の整備、あるいはバイオテクノロジー等の先端技術の開発、そういうものを織り込んで最大の努力をして五〇%に上げたい、こう思っているわけであります。
  227. 林紀子

    ○林紀子君 次に、公海での流し網操業停止問題についてお伺いしたいと思います。  二十六日の閣議で、大臣は九二年十二月末で操業を停止することを報告し了承されたということですが、これは明らかにアメリカヘの譲歩、屈服ではないのかと思うわけです。  まず水産庁長官にお伺いしたいと思いますが、十月の十七日に私はこの問題で質問をいたしました。そのとき長官は、国連の場での話し合いとあわせてアメリカ中心とする国との話し合いも継続していきたい、こういうふうにお答えになりましたし、また前大臣近藤大臣は、今後の水産の問題に資するにはやはり科学的な調査をして資源管理をするという方針で再生産の可能な資源を持続をしていくということが正しいやり方ではないか、日本としてはそういう点のリーダーシップをとって新しい水産全体、国際漁業についての秩序をつくる役割を果たしていきたい、こういう御決意を述べられたわけですけれども、全くこれと違った結果になってしまったと思うわけですが、どうしてこういうことになったのかというのをまず伺いたいと思います。
  228. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) 私ども先生から御指摘のような方向でこの流し網問題につきましてもその解決の努力に努めてきたわけでございます。  御指摘のように、日米の間での話し合いがつかなかったために、米国側が来年の六月十日をもって全面禁止とするというような決議案を国連に出したわけでございます。私ども早速それに対しまして一昨年の決議を再確認する決議をいたしまして、一方では国連の場におきまして多数派工作に全力を挙げてやってきたわけでございます。また、それと並行いたしまして、十一月の初めには科学者の会合を日本で持ち、またその間私も直接アメリカに参りましたし、次長、審議官、またベーカー長官に随行してきたゼーリック次官とも東京でも会談をいたしまして、積極的に日本側の立場主張し、理解を求めたわけでございますけれども、残念ながら理解を得るに至らなかったわけでございます。  他方、国連での多数派工作につきましても全力を挙げてやりましたけれども日本の趣旨に同情してくれる国はあったことは事実でございますけれども、残念ながら共同提案国になってくれる国は一国もなく、他方、アメリカ側の共同提案国は十六カ国を数えたわけでございます。それで、国連でのこの問題の対応は第二委員会というところで開かれることになったわけでございますけれども、それが十一月二十日、二十一日というような時期に開かれるということをったわけでございまして、それまでの努力の中で私どもとしても模索をしたわけでございますけれども委員会での審議に入りますと一つの譲歩、妥協もできずにそのままアメリカ側の決議が採択されるんではないかというような見通しが立ったために、少しでもその対応について弾力性を得たいというようなことでああいうことにいたしたわけでございます。決して私がこの間申し上げたことにもとるようなことをしたつもりは毛頭ございませんし、そういうことでやってきたわけでございます。  また、近藤大臣が申し上げましたのは、二百海里体制が定着化してきた、それで、さらに従来公海自由の原則ということで、公海では、一定の制約はございましたけれども、比較的自由な漁業が」できてきたというようなことであったわけでございますけれども、資源問題あるいは環境問題から公海漁業についての制約が強まってきている、そういう全体的な流れの中で今後の対応方針近藤大臣は申し上げたわけでございます。  流し網漁業は残念ながらこういうことになったわけでございますけれども、マグロの問題につきましては、アメリカのCITESへの記載を防ぐことができました。ICCATの中で論議をしていく、スウェーデンが提案していますのでCITESの場でも議論をする必要があろうかと思いますけれども、そういう全体的な方向を申し上げたわけでございます。私ども近藤大臣が当委員会で御説明しました方向に沿って今後とも漁業の方向づけはやっていきたいというふうに考えておりまして、御指摘のようにそれにもとるようなことをしたつもりは毛頭ございません。
  229. 林紀子

    ○林紀子君 私は、日本の漁業という立場から考えると、今回のこの決定は撤回すべきだと思うわけですけれども、しかしモラトリアム、一時停止ということになっているわけですね。ですから今後、復活に向けての足がかりということを国連の場でも最大限主張していくべきではないかと思いますが、その辺はいかがですか。
  230. 鶴岡俊彦

    政府委員(鶴岡俊彦君) 禁止という提案に対してモラトリアムということで双方の妥協案を作成したわけでございまして、趣旨としてはそういうことかと思います。  ただ、モラトリアムの場合も、資源問題でのモラトリアムと漁法の問題でのモラトリアムには若干対応へ仕方には違いがあるんではないかと思います。それで、午前中にも申し上げたわけでございますけれども、アカイカをとってはいけないというような決議ではございません。大規模な流し網漁業によってとるということ自身が問題であるという御指摘でありますので、アカイカの漁法につきまして他の漁法でできないかとか、当面残された時間は少ないわけでございますけれども、その間政府としても全力を挙げるし、また業界の協力も得ながらほかの方法で何とかならないか、そういうことも探求しながら可能性を追求していきたいと思っております。
  231. 林紀子

    ○林紀子君 最後に大臣にお伺いしたいと思うわけですが、この流し網漁の全面禁止受け入れというのは、漁民はもちろん、加工業者にも大変大きな影響があるわけです。二十九日には関係者が大会を開いてぜひ続けられるようにというそうした要望を大きく声を上げているということですが、今後、こうした漁民、加工業者に対してどういう決意で臨んでいくのか。そして、これも交渉事なわけですね。ガットの場でも、交渉事であってだめであったというような形で米の関税化、輸入自由化を受け入れるというようなことのないようにということもあわせてお願いして、御決意をお聞きしたいと思います。
  232. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 流し網は今長官からお話があったとおりでありますが、長い間私もこれにかかわってきたわけでありますが、若干またウルグアイ・ラウンドの米の場合と違いまして、五十キロにも及ぶ大規模な流し網なものですから、イカだけをとるのであれば問題ないんですけれども、混獲が問題になったわけです。イルカでありますとかカメでありますとか、大目流しは鯨でありますとか、いろんなものが網に入るということで議論が展開されていった。しかし、今お話しのように禁止ではなくて停止ということで、他の道を今模索しておるということであります。もちろん、どういう漁法でやるかこれからのことでありますが、どうしてもできないという人については減船の対象にせざるを得ないし、あるいはこれの加工業者、関連する人たちがたくさんおるわけであります。あるいは乗組員の対策、これ等も先般の閣議で私からお願いをいたしました。外務大臣官房長官からも各閣僚に万全を期すようにという発言をいただいておるところであります。  ガットの方は、先ほどお話し申し上げましたように、米がどうのこうのというよりも、ルールをどうやってつくるかということに今専念をしておるわけでありまして、そのルールづくりに日本としては日本立場というものを主張し、あるいはカナダはカナダの主張、それぞれの主張があってなかなか困難をきわめておるようでありますが、何としても、これは私ども主張交渉結果に適切に反映されるように努力をしてまいりたい、こう思っております。
  233. 井上哲夫

    井上哲夫君 私は連合参議院に所属しておりまして、衆議院にはない会派ですので、このたび大臣の御就任、改めておめでとうございます。  きょういろいろとお話を伺わせていただきまして、米の自由化の問題について私も勉強させていただいたわけですが、大臣にお尋ねをしたいと思います。  きょう議論を聞いておりますと、ガットウルグアイ・ラウンドの問題も最高政治決定レベル会談というところまでは何もいっていないということがわかりました。  それから、国会決議が三度なされておって、この国会決議の問題は今も議論をされておりますが、私が考えるには政治的な責任の象徴であると思っておるわけでございますが、今政府は米の自由化は一切考えてもいないし、そのことについて仮定の作業もしていない。一方では、国会決議が米の完全自給を目指さなければならないというものがある。そうしますと、外部といいますか、マスコミがひとり米の自由化について憶測あるいは誤報と言われるような記事を出しているということになりますと、外部、マスコミは連日内閣の政治責任になるかもしれない問題について論じているということになるわけでございます。そうだとすれば、この米の自由化の問題について、政府は今政治責任をかけて自由化をしないという姿勢をとっているんだということを言明しない限り、ちょっと論理的に一貫しないし、また国民の多くがひょっとしたら自由化するんじゃないか、あるいは万が一のときはそういうことを準備しているんじゃないかという疑心暗鬼が充満しているということに関して、その疑心暗鬼を一掃することもできないんではないかと思うわけでございますが、この点いかがでございましょうか。
  234. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 国民それぞれの考えを一人一人聞くわけにもまいりませんが、私どもがとっている行動というのは、先ほど申し上げましたように、九〇%の市町村議会が米の市場開放反対の決議をされてきておる。あるいは東京、大阪を除く全道府県議会、これが同様の反対の決議をいたしておるわけでありまして、個々にはそれぞれの考え方があるだろうと思います。  マスコミもいろんな考え方を持つ社がそれぞれにありまして、自由化をした方がという考え方があるとどうしてもその方にペンが走っていくのだろうかなと思うほど、私も随分毎日閣議の後に記者会見もいたすわけでありますが、あるいは夜、記者の人たちが私の部屋までおいでいただいていろんな懇談をする機会が多いんです。正直に申し上げておって、私どもは何らいろんな検討もしていない、こういうことで自由化につながるようなことは、先ほど申し上げたような日本の地域の事情というもの、偏って農村は農村ということになっておりまして、これ以外に何か生活を維持していく場があるかというとないわけであります。  そういうことも含めて、一体日本というものが自由化されて農村が崩壊したときにどういうことになるか。もう自治体も存立がおかしくなるし、あるいはそれによって地域の経済が、冷害でも台風でもありまして農産物に影響が出てまいりますと、その町や村の経済にまで影響が出てくるわけですから、過去の例を見るまでもなく。そういうことを考えると、安易な自由化というものはできませんと、これ一つしか申し上げないんですが、翌日の新聞は何か政府がとか党がということでいろんなことをお書きになっている。これも何回も確かめてみると、いやそんなことは全然言っていない、こんなことは言ったが、ああいうことは言ったがというようなことで、自給をしなきゃいかぬということは前提として言っておっても、どうもそういうふうに受け取られる面というのはあると思うんです。  国会で決議された、満場一致でありますから、決議された国会先生方はいま少し私が努力していることを認めていただいて、国会決議に参加されない財界や国民の皆さんが言うのは自由でありますからそれなりにいいとしても一少なくともこの決議をされた皆さん方は慎んでいただきたいということもお願いをしておるわけであります。一生懸命これからもその気持ちで頑張ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。
  235. 井上哲夫

    井上哲夫君 私がお尋ねをしたかったのは、国会決議が一体どれだけの重要性を持っているのか。これは政治的には内閣の責任、内閣総辞職にまで及びかねない重大なものであると受けとめておりましてお尋ねをしたわけでございますが、実は私も、ことしは七月にはアメリカの方に、あるいは十月にはヨーロッパの方に行きまして、それは別の目的で行ったわけですが、外務省の方とフリートーキングの場がありました。アメリカヘ行ったときもヨーロッパヘ行ったときも、外務省の方の中には、もう米はあけざるを得ないんだというような話が出たことは間違いございません。  そこでお尋ねをしたいんですが、政府としてはいろんな立場意見を集約されると思うんですが、やはりこういう国会決議もあるような事柄に関しては、十分閣内一致といいますか、外から見て不協和音が多いということでは、火のないところに煙は立たないと思わざるを得なくなる、そうするとまたどうだどうだという質問ばかり繰り返すことになるので、その点外務省農水省がこの問題に関しては一枚岩になっていただくことをお願いしたいと思います。  ガットウルグアイ・ラウンドで、例えばきょう午前のお話を聞いておりますと、年末といいますか、十二月の二十日ごろまでに一つの大きな山場が来る。そうなると、その段階で最高政治レベルのいわゆる交渉のテーブルに着くといいますか、そういうこともあり得るかと思うんですが、そういう場合には大臣とされましては、例えば昨年度の延期になった経過を踏まえてどういう形で臨まれるか、その点についてお聞かせを願いたいと思います。
  236. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 一般的に十二月の二十日までに何らかの結論を得たい、こういう話が出ますと、あたかもこれがもう決定のように言われるわけでありますけれども会議を進めるというのは、エンドレスにいつ終わるとも果てのない会合というのはないわけでありまして、私どももこの会議はいついつまでに決めたい、こういうことで始まる。しかし、決まるかどうかはやってみな。いとわからぬわけでありまして、重大な決定決定だという話の方が随分率ておりますが、そこへいくまでにはもう各国とも相当血の出るようないろんな話をしてこなきゃいかぬ。したがって、日本だけが一〇〇%譲らなきゃならぬという話でもないであろう。まとめるということになればいろんなまとめ方があるということでして、そうなれば一体、全体の中でどういうことになるのか、これから進捗状況。というものを見きわめなければならないもんですから。  いずれにしても交渉事というのは、これを決めたらもう全力でぶつかっていく。そこにいろんな話もあったり案もあったりするんではもう交渉にならぬわけですから、そういう意味では二十日という期限を区切っだということは、それはそれなりに受けとめなきゃならぬ、そう思っておりますけれども、これが確約されて、この日に決まるということではないというふうにも一受けとめております。
  237. 井上哲夫

    井上哲夫君 よくわかりました。  次に、けさの新聞にもちょっと出ておるんですが、農協法の改正に関する関係のお尋ねをしたいと思います。  けさの新聞には、農協制度研究会が昨日中間報告を出されたと。その内容が大まかな形で記事として出ているわけでございますが、その中身を見ますと、従来農地の所有を認められなかった農協にも農業経営の本格的な参入への道を開くということで可能にしたらどうか、あるいは子会社方式などでの証券・信託業務への進出を認めたらどうか、さらに総会にかえて常設理事会を設けて意思決定権を持たせて機動的な経営をできるようにしたらどうかとか、そういうことが記事に載っておりますが、農協法について農水省の方で改正の検討もされているやに聞いております。この内容についてお聞かせを願いたいと思います。
  238. 川合淳二

    政府委員川合淳二君) 農業協同組合をめぐる情勢はいろんな形の中で厳しさを増しているというふうに私ども認識しております。農業自体を取り巻く環境もそうでございますし、農村を取り巻く環境も非常に変わってきているということがございます。また一方で、金融問題といたしまして、政府の金融制度調査会などで御議論がありますように、金融業務の自由化あるいは金利の自由化というようなスケジュールが進められておりまして、そうした中で農協の今後がどうあるべきかということは、農協系統組織自身もみずからの問題として取り組まれ、合併促進あるいは事業二段を基本とする組織整備の再編成の問題などの方針を打ち出しております。私どもも、こうした流れの中で、研究会を私的な形で持ちながら勉強を進めてきているところでございます。  きょうの新聞に出ています内容は、まだ中間取りまとめというような段階にも至っておりませんので、かなり先走った記事だと私ども思っておりますけれども、その中の議論一つは、例えば昨今の農業事情からいって、農業経営の担い手がこれだけ地域によってはいなくなっている中で、農協がそうした農業を担うべきではないかというような意見もございますし、一方で、それに対してはやはり農業者みずからが農業経営を営み、それを援助するのが農協であるという立場から農業経営を農協がやることについてやや見解を異にする意見どもございまして、これからこうした意見をよくお聞きして私どもも対処していかなければいけないと思っております。  しかしながら、かなり農協をめぐる情勢の変化が激しくかつ厳しいわけでございますので、私どもは何らかの形で農協法の改正というところまで進めなければいけないのではないかというふうに考え、今検討をしているところでございます。
  239. 井上哲夫

    井上哲夫君 今のお話に関連するわけですが、これは十一月二十二日の全国農業新聞で、御就任の「直撃インタビュー」ですか、その中で大臣が、若者にとってやりがいのある、そして近代的で規模も大きい農業経営に改革をしていかなきゃならぬと。きょうもおっしゃってみえましたが、まず努力をすべきなのは農家だと。その中に、進んだ技術や機械、パソコンも駆使して、複式簿記などによる経営管理を行い、法人化を進めるというか、それによって足腰を鍛えていくと、こういうふうなことが談話ということで載っているわけでございます。  今の局長お話を聞きますと、農協の農地所有の道をつけるということも慎重に考えなきゃいかぬと。つまり、いろいろなケースを考えて、いわゆるメリット、デメリットといいますか、新しい導入のですね。そうすると、一方では若者に農家経営のためのそういうことからいくと、私のひとりよがりですが、法人化ということもどんどん進めていく。そういうふうなことと、今の観点から農協法の改正とその辺の御見解を承りたいと思います。
  240. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 就任のときに申し上げたことは、私の一族も農家をやっております。実態はよくわかっているんでして、もうかったか損したか、関心はあるんでしょうけれども、あらわす手だても何にもないんですね。ですから、若い人はお年寄りがやっているのをそのまま跡継ぎ になって、何となくそれをやっているんでは、今の若い人はもう教育も相当受けていますから。今のお年寄りの皆さんは長男に生まれたばかりに農家の跡継ぎとして残り、次男、三男はみんな都会へ出てきた。したがって、学校へ入れることは農業をやらないからということで、学校も入れてもらえなかった時代の人たち、それは今はもう全然違いますね。  ですから私は、企業的感覚でということを申し上げたんで、言ってみれば原価計算も何でもきちっとやる。そうして、一年やってみて、ここのむだな部分は直していかなきゃいかぬ、もっとここに投資をしなきゃいかぬというのは農家自身が全部把握してやるべぎだ。その結果として規模を拡大して、この間表彰した方は御夫婦二人で十九町歩かなんかの農地をやっておりますが、そういう人たちを見ると非常に成功しておるんですね。いろんな例があります、それは平地のところでやっている方だと思うんですが。ですから、何でもかんでもできるとは思いませんけれども、やりようによってはそういう楽しみのある、言ってみればコンピューターやパソコン、ファクシミリ、いろんなものを置いて、そうしてやっていくようなことならば、若い人たちも喜んで、意欲を持って取り組んでくれるであろう。ただ何となく供出のときにお金をもらってきて、今まで買ったものを差っ引かれて、もうかったかもうからぬかよくわからぬ、機械はどんどんどんどん隣が買ったからおれも買うんだということでそろえていくような農業をやっちゃいかぬ。計算をきちっとして、借りた方がよければ借りればいいし、あるいは自分が持った機械で他の農地も水田もいろいろやってやる、こういうことをしていかないと、世界全体で見ると先進国の中で日本農業に対する補助というものは非常に少ないんですね。そういうことから見ても、日本農業というのは、私は一生懸命頑張っていると思います。  しかしながら、いずれにしても国民の税金を補助金という形で農業でも漁業でも林業でもつぎ込んでいるわけですから、それはサラリーマンの皆さんであり中小企業の人たちでもあるということからすれば、最大の努力をして、安全で、その結果コストも下がって安いものが提供できるのならば、私はいいことだと思うんです。それを高ければいいんだということで、税を納めた人たちに高いものを買ってくださいというのでは、幾ら何でも趣旨が幾らか違いやしないかなという感じ自分で持っておったものですから、そういう意味で企業的感覚でおやりなさい、あるいは企業としてやった方がよければそれも結構だと。いずれにしても最大の努力をしていく、それでできない部分というものは国民の理解を得て、みんなが御苦労さん、もっと頑張りなさいということで援助して一あげるということが日本農業には必要ではなかろうか。ということで申し上げたことであります。
  241. 井上哲夫

    井上哲夫君 あと二、三分しかなくなったんですが、最後に今のことに関連して局長にお尋ねをいたしますが、農機具のバンクといいますか、そういうのが一時いろいろな形で検討されました。農地のバンクといいますか、そういうことについて今どういうふうに作業、検討に入っているか、もしあれでしたらお聞かせを願いまして、私の質問を終わります。
  242. 海野研一

    政府委員(海野研一君) 農地のバンクと申しますと、これほどうも私どもが使っている名前と普通持つイメージとがちょっと違うかと思うんですが、実は私ども農地銀行活動といいますのは、農業委員会中心になりまして、農地についての出したい人、欲しい人の情報バンクの事業をやっております。ただ、最近特にこれまで農地の出し手がいなかったのに出し手が相当出てくる。一方で受け手の方が問題になってきたというような事態になって、そういう意味で農地の現物をプールしなきゃいけないというような議論も出てくるわけでございまして、その機能を果たすのは、現在でございますと県の公社、農地保有合理化法人でございまして、ある意味ではそういう情報バンクと現実のプールとそういうものをうまく組み合わせてやっていくということが必要なんだろうというふうに考えております。
  243. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 大臣、私が最後でございます。お疲れでありましょうが、しばらく御容赦を願いたいと思います。  最後と申しましたが、最後の質問というのは、前の方々がみんな一つ一つ抜き取っていただいて大変質問もしにくいのでございます。準備はしてございますが、ダブる必要はないと思っておりますので、間引きをして二、三御質問をいたしたいと思います。  何と申しましても、ウルグアイ・ラウンドの問題、米の問題については触れざるを得ませんので、その点でこういう世論といいますか、アメリカの場合、アメリカにおける本当の声と申しますか、政府日本政府に米の自由化を迫っておるが、アメリカの米作農民は日本立場をよく理解しておるそうだということを聞くのでありますが、その点について、大臣、お耳に入っておるでしょうか、いかがでしょうか。
  244. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 就任して間もないのでありまして、そういう話までは私のところに入っておりません。
  245. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それから、日本の場合、米の自由化を防ぐんだ防ぐんだ、こうだれそれとなく、大臣も早朝来そのことを強調しておられます。ところが日本政府の中にもやむを得ぬじゃないかという声が聞かれます。徹頭徹尾排除ということは無理じゃないか、やむを得ぬじゃないかと。ところが、米作農民は、あるいは団体は挙げて絶対反対を叫んでおることは御承知のとおりだと思います。  国会においても、幾たびか米の輸入については阻止をするというこういう受けとめ方があるわけですね。そうしますと、本当のことを言うと、政府においても一応有権者に支えられておるから米は絶対反対だと言いながら、内心はやむを得ぬじゃないか、あるいは自由化もいいんじゃないか、こういう声があるのではないか、こう勘ぐられるわけでありますが、ここに私は問題があるここう思います。  アメリカにおいても、政府は米の押しつけを日本に迫っておる、自由化を。ところが、アメリカの米作農民は日本立場をよく理解しておる、農民の立場をよくわかっておる。政府のあの勇ましい自由化の圧力ではなく、むしろ日本の農民に同情しておる、こういう声も聞こえます。また、画本においては米作農民やあるいは団体は、それこそ怒りを込めて自由化反対、明けても暮れても寝ても覚めても。ところが、政府要人はやむを得ぬじゃないか。このやむを得ないという言葉の中に私は問題があるんじゃないか、こう思うんですが、その点大臣の御答弁は先ほど来も十分聞いておりますので、一応問題として提起いたしておきたいと思います。  ならばい一体国会におけるあの決議は、時の流れにおいて世論というのは変わってくるということも現実の問題としてあるわけですので、もしやむを得ぬという前提に立つならば、この国会決議は一体どう受けとめられますか。あるいはどう処理されなければいけないでしょうか。
  246. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 言われておるいろんな意見は、私もその場におって一々聞いておるわけではありませんが、後からいろんなお話をすると、新聞紙上で言われているような内容のものでないということが意外に多いんです。それは自由化につながるようなことはだめとか、あるいは国内自給はやるべきだという話があって、これは理解の仕方が違うと話というのは違ってくるんですね。そう言っても日本は自由貿易の中で伸びてきた国だしなという、その後の部分の方がいかにも出て、前段に申し上げていることは余り表に出ていないというそんな感じが、今まで何人かにお会いして真意を確かめるときにそういう意見が非常に多いんですね。  ですから、政府としては、総理もしばしば国会で御答弁申し上げているところで、私どもは変わっていない。中には日本の態勢がずっとできて足腰が強くなればそれはと言う人もおりますけれども、それは何も今々の話をしていない。ですから、その後にちょっとしゃべるところが取り上げられて問題になっているなという感じは実はいたしております。私も理解の仕方によってはこんなに違うのかと思うのは、長いことかかわってまいりますと実態というものもわかるし、あるいはそもそもが一九八〇年代の中ごろからアメリカECが補助金をつけて、どんどんどんどん余った農産物を売って困ってきて、今みたいな話になってきておるということなんかを見ておりますとまことに不合理だと思うし、そういう意味では理解の仕方によっては意見というものは違うということは私は当然だと思います。  しかし、いずれにしても、先ほど来申し上げておりますように、全然輸入していないというならそれはいろいろ言われてもまあいたし方ないところがあります。しかし、こんなに買っておるわけですから、世界最大の輸入国ですよ。それでECアメリカが困って、そして我々にいろいろ言ってきている。その根拠というのは、じゃ米によってアメリカの赤字が解消されるのかというとそうでもない。何のためにこういうことをやっておるのかということはあります。ですから、先生方は、あるいは皆さんは米、米とおっしゃるが、ウルグアイ・ラウンドというのはいろんな分野があって、そのルールを決めようとして今やっておるんだという私の認識なんですね。ところが、日本では米以外は何にもないというほど米というものがマスコミによっても取り上げられるというので、いささかどうも感じが違うなと思って受けとめておるわけであります。  いずれにしても米に関することについては、先ほど来申し上げておりますように、関税化につながるようなものは一切日本としては受け入れられませんということで一致しておりますので、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  247. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、論点を基幹作物。どの国にもその民族で培った基幹作物があります。この基幹作物は国民の自給自足によって最大限の成果を上げるということは当然の建前だと思います。そして基幹作物は国の責任において保護育成するということも当然の原則だと私は信じておりますが、いかがでしょうか。
  248. 田名部匡省

    国務大臣田名部匡省君) 私もそのように思っております。何といってもどんな事態が起きるかわからぬわけでありますから、どんな場合に立ち至ろうとも政府としては国民の食糧というものはきちっと確保するということでなければならぬ、そのように私も思っております。
  249. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 おっしゃるとおりで、私も同感でございます。ところが減反政策をしておるのが現状であります。そういう状況の中で外米の輸入ということはあってはいけないのではないか、こう思うわけなんです。そういった米というのは日本国民にとって唯一の食物である。これを論ずるのに、余ったからどうする、不足したからどうする。もちろん不足した場合にはそれは国民の命につながりますから、外国から輸入することも当然でしょう。ところが、日本の現状においては輸入しなければいけないという問題点ほどこにもないはずであります。そういう点から、単なる外交手段としてこの食物が扱われたんじゃいけないのではないかと私は思います。  米の話になりますと、実は沖縄では米は一粒でも二粒でも奨励する。多くっくれ多くっくれ、増産の奨励をしておる最中であります。戦争によって敗北し、そしてアメリカの軍事基地のために昭和三十年をピークにして沖縄の水田、米作をつくっている田んぼもサトウキビに切りかえてきたという事実があるわけなんです。そういういきさつから、沖縄においては米は一粒でも多くつくれつくれと今盛んに米作の奨励をしておるわけであります。  沖縄の米作については、水稲稲作でありますが、これ御存じかと思いますが、沖縄は多島県、離島の中でさらに島々が多い。その小さい島の中でさらに沖縄本島で北部、それから伊平屋島、伊是名島、石垣島、西表島、与那国島、しかもその離島の中のさらにまた離島の島で稲作をやっておるわけなんです。このような島々で細々とつくっておる稲作を政府としてはどのように発展させていこうと考えておられるのか、その計画を話してもらいたいと思います。
  250. 上野博史

    政府委員(上野博史君) 沖縄の稲作につきましては、今委員からお話がございましたように、離島にかなり稲作が多いというような事情がございます。それから、全体とすれば沖縄の水田面積というのは総体的に少ないわけでございまして、サトウキビを中心とした沖縄の農業という点からいえば、ややその持っている意味合いというものはほかの地域とは違っているんじゃないかというふうに考えております。  ただ、それぞれの島、あるいはそれぞれの地域におきまして稲作が重要であるということはあるわけでございまして、沖縄県の稲作についても、私どもとすれば生産性向上等のためにいろいろと施策を講じているところでございます。  沖縄県の稲作の問題ということになりますと、低湿地帯にあって排水不良である田んぼが多いということ、それから高温多湿の気象条件によりまして病害虫が多発しからであること、それから台風や干ばつの常襲地帯であるというような事情があるわけでございまして、こういう悪条件をどういうふうに克服するかということが課題になるわけでございます。  まず、どの地域でもそうでございますけれども農業機械の効率的な稼働が可能になりますような区画整理、排水改良等の土地基盤整備を実施してまいる。これは畑地帯整備やなんかと一体的に現在でも鋭意進めているところでございます。  そういうことに加えまして、単収が高く、病害虫抵抗性の強い優良品種を普及していかなければならない、そのための優良種子の生産のための種子生産圃場を設置してまいるというようなことを鋭意やっているところでございます。それからまた、病害虫防除のための発生予察事業というものもこの地域の事情として必要でございまして、これについても力を注いでまいっているところでございます。  さらに、全体といたしまして、生産技術改善のための普及指導事業、こういうことにつきましても力を用いているわけでございまして、今後ともこれらの対策の充実を図ってまいりたい、かように考えております。
  251. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の計画をぜひ実らせていただきたい、実行に移してもらいたい、予算化してもらいたい、強く要望しておきます。  最後になりますが、今沖縄県では米の自給は二%なんです。あとの九八%は、毎日食べておる米を本土米に依存しておる。それで、その米の流通がうまくいかぬために非常にいろいろな問題を起こしておる。こういった詳しい点にも触れたいんですが、まず流通についてどう考えておられるかという問題、できるだけ政府の計画を。  それから、もう一つ抱き合わせて、亜熱帯地域における沖縄の野菜を、本土の東京、大阪を主とした団地に非常に定着しつつあります野菜、その点もさらに具体的に定着させてもらうように計画をお願いしたいんですが、その米の流通と野菜の計画を御質問申し上げて終わります。
  252. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 沖縄の米の需給でございますが、お話にございましたように、県内での供給に限度がございますから、主食用については他地域から政府米あるいは自主流通米等による供給が行われ、また、加工用には一部外国からの輸入米も供給されておるという状況でございます。  現在までのところ、現実の需要量に応じて適切な供給が行われていると思いますが、需要内容の変化等に応じて、今後ともいろいろな形で適切に供給が運営されていきますよう私どもとしても努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  253. 武智敏夫

    政府委員(武智敏夫君) 最後の野菜の振興の問題でございますけれども、沖縄県は冬と春暖かいというようなこともございまして、こういった条件を生かしながら、内地の方の他府県の端境期をねらいまして、いわゆる露地ですとかハウス栽培によりまして、サヤインゲンですとか、あるいはキャベツですとかニガウリ等の生産を行っておるところでございます。  このように、沖縄県の野菜生産は冬春期が中心でございまして、どうしても夏場は高温と台風という気象条件によりまして生産が非常にやりにくいというような条件にあるわけでございますけれども、それでもニガウリなりトウガン等の地域に適したような特産的な野菜の生産が行われておるところでございます。  沖縄県の場合、地域が非常に亜熱帯地域でございまして、それと本土から非常に遠い、それから離島も多いわけでございますし、輸送が非常に難しいというようなこともございまして、必ずしも野菜生産にとっては恵まれた地域というわけではないわけですけれども、これらの条件を克服しながら、冬と春の野菜中心に、それらを県外に移出するというようなことをやっていくことが重要でないかというふうに思っております。  具体的には、こういった沖縄の気候、風土条件に適したようないわゆる野菜の選定、導入を図る。それから、かんがい施設の整備なり、あるいはハウス施設も含めました共同栽培施設ですとか、あるいは予冷庫等の生産出荷施設の整備をやっていく必要があろうと思っております。それからさらには、生産性ですとか、あるいは品質向上を図るための栽培技術の改善等につきましても今後重点的な指導なり助成をやっていきたいというふうに考えておるところでございます。
  254. 永田良雄

    委員長永田良雄君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
  255. 永田良雄

    委員長永田良雄君) 次に、先般本委員会が行いました農林水産業の実情調査のための委員派遣につき、派遣委員報告を聴取いたします。第一班の報告をお願いいたします。鎌田要人君。
  256. 鎌田要人

    鎌田要人君 委員派遣の御報告を申し上げます。  去る十月三十日から十一月一日までの三日間にわたり、永田委員長井上理事、鈴木委員大渕委員刈田委員、それに私、鎌田の六名で、富山、石川の両県におきまして、農林水産業の実情を調査してまいりました。  以下、その概要について御報告申し上げます。  最初に富山県に参りました。  本県は、豊富な水に恵まれ、また水田の整備をさらに促進して、コシヒカリを中心とした良質米の生産基地としての地位の一層の発展を目指しております。今後は、野菜、果樹、球根花卉、畜産等の振興を図り、特産王国づくりを進めていくとのことであります。  また、林業については、多雪地帯である尊厳しい条件にあるものの、林業者が希望を持って林業生産に取り組めるよう今後とも林業生産基盤の整備、定住環境整備の促進に努めていくとのことであります。  水産業につきましては、富山湾における定置漁業等沿岸漁業が中心となっております。今後は、適切な資源管理を図りながら、沿岸海域の自然条件に適した需要の高い魚介類をつくり育てる漁業を展開していくとのことです。  富山県からの主な要望は、米の国内自給方針の堅持、台風十九号等による農林水産業の被害対策について万全を期すこと等でありました。  以下、調査した主な箇所について申し述べます。  まず、婦中町の富山県肉用牛センターに参りました。ここでは、肉専用素牛の改良と優良繁殖牛の増殖・供給、受精卵移植の技術開発と普及等が行われております。牛肉の自由化の進展の中で、本県牛肉生産を乳確から和牛へと転換していくため本センターの役割は大きいものがあります。  次に、立山町の富山県林業技術センター林業試験場に参りました。ここでは本県の森林・林業の実情に即した林業技術の研究開発が進められております。本試験場の最大の課題は、多雪地帯という本県林業のハンディキャップを克服するため雪害防止技術を確立することだそうであります。  次に、黒都市の石田漁港に参りました。本漁港は、近年増大している遊漁船と漁港の分離を図る漁港利用調整事業が全国で最初に事業採択された漁港として注目されております。本漁港は、富山湾に直接面しているため波が荒くなることが多く、沖防波堤の新設が急がれているとのことです。  次に、黒都市の黒部漁港生地中橋に参りました。この橋は、黒部漁港の航路に架設されている旋回式可動橋であり、航路拡張に合わせてかけかえられたものであります。黒部漁港では、本橋のかけかえ、航路拡張により漁船の大型化に対応することができたとのことです。  次に、新湊市の国営射水平野農業水利事業西部排水機場に参りました。本排水機場では毎秒三十二立方メートルの排水が行われておりますが、近年地域開発、地盤沈下等によって排水施設の能力が不足し、しばしば水害が発生するため、排水機場の新設・増設を図ってほしいとの要請がありました。  次に、新湊港に係留されております海王丸で、新湊市から新湊漁港建設促進及び農業振興地域の整備改善事業の早期実現について陳情を受けました。  次に、大門町の県営高度利用集積圃場整備事業に参りました。ここでは大区画圃場の整備を図り、あわせて営農の組織化を行って稲作の省力化、低コスト化を進めております。現在の課題は、土壌の改良、圃場の均平化に努めて、これまで県平均を下回っておりました水稲の単収を向上させることだそうであります。  次に、庄川町の種子集出荷施設に参りました。本施設では、この地域の特産品であります種もみ等の種子についてコンピューターによる案出荷の一元管理が行われております。なお、消毒された種もみにつきましては、転作の対象外にしてもらいたいとの要望がございました。  宮山県で最後に訪れましたのは、砺波市の富山県農業技術センター野菜花き試験場でありました。本試験場は、全国でただ一つチューリップ新品種の育成を行っている試験研究機関であります。オランダのチューリップに対抗していくためには遺伝資源の蓄積に努め品種開発力を高めていくことが必要とのことでありました。  富山県を後にいたしまして石川県に参りました。  本県は、コシヒカリを中心とした良質米生産や畜産、野菜の生産が盛んであります。今後は、消費者のニーズの多様化、個性化にこたえるため需要創造型の産地づくりや生産者の顔の見える流通づくりに努めていくとのことであります。  また、林業については、国産材時代の到来に向けて林道事業等生産基盤の整備や山村地域の生活環境整備を進めているとのことです。  水産業については、漁業規制の強化等により近年沿岸漁業が中心となってきております。今後は、資源管理型漁業の推進、付加価値の向上を中心として安定した漁家経営の確立を図っていくとのことであります。  石川県におきましても、米の国内自給方針の堅持、台風十九号による農林水産業の被害対策に万全を期すことについての要望がありました。  以下、調査した主な静所について申し述べます。  まず、金沢市の石川県農業総合試験場に参りました。ここでは、新しい石川農業を切り開く革新的技術の開発に努めております。一例として、水稲の新品種開発期間をハイテクを利用して通常の半分にする研究等が進められているとのことであります。  次に、津幡町の河北潟干拓地に参りました。ここでは、入植、増反農家による大規模な酪農及び畑作営農が展開されております。近年の高品質農産物へのニーズの高まりの中で、大規模営農のメリットを生かしながらいかに高品質農産物をつくっていくかということが課題であるとのことです。  次に、鶴来町の石川県林業試験場に参りました。ここでは、多雪地帯の育林技術を初めとして本県森林・林業の実情に即した研究が進められております。多雪地帯の育林技術の確立は日本海側各県の林業の大きな課題であり、共同研究も盛んに行われているようであります。  最後に訪れましたのは松任市の松任グリーンパークでありました。ここは一般市民が遊びながら農業に対する理解と認識が得られる農村公園であります。現在、本公園の完成を目指して農林漁業体験実習館等の整備が進められているとのことであります。  以上が、富山、石川両県における農林水産業の概況であります。なお、両県における要望の詳細につきましては、本日の会議録の末尾に掲載していただきますようお願い申し上げます。  報告を終わるに当たり、今回の調査に当たって特段の御配慮をいただきました方々に心から感謝の意を表しまして報告を終わります。
  257. 永田良雄

    委員長永田良雄君) 次に、第二班の報告をお願いいたします。北修二君。
  258. 北修二

    ○北修二君 委員派遣の御報告を申し上げます。  去る十月三十日から十一月一日までの三日間にわたり、徳島、香川両県において、農林水産業の実情を調査してまいりました。  派遣委員は、三上理事、星野委員一井委員、林委員、喜屋武委員、それに私、北の六名でありました。  まず、徳島県の農林水産業の概況についてであります。本県の農業粗生産額は多くありませんが、レンコン、カンショ等の生産額は全国でも上位を占めております。平成九年に明石海峡大橋が完成することを控え、野菜の周年供給体制の強化等を目指すとのことでした。県土面積の八割近くに当たる森林の大部分は民有林であり、林家が零細で、かつ高齢化が進んでいることが問題であるとのことでした。水産業においては養殖ワカメ等の生産量が多く、今後はつくり育てる漁業への転換を推進するとのことでした。  以下、日程に従って御報告いたします。  まず、松茂町のレンコン栽培農家にお伺いし、収穫作業を拝見したしました。この付近の農家では、ユンボ式掘り取り機、自動洗浄機等が導入されておりますが、今後は水を噴射して掘り取る等により、さらに省力化を図るとのことでした。また、消費者が買う場合よりもかなり長い状態でレンコンを出荷しなければ商品価値が激減してしまうことは問題であるとの指摘がありました。  次に、同町内における松茂農協に参りました。本農協は、カンショのウイルスフリー苗を育成、配布しておりますが、生産された高品質のカンショは「松茂美人」という名前で出荷され、好評であるとのことでした。また、管内の農家が後継者に恵まれているのは、本農協が中心となり、高付加価値化、生産性向上を図った結果であり、今後ももうかる農業を目指すとのことでした。しかし、大根生産での連作障害の発生、農協の信用事業での貸出額の伸び悩みが問題であるとのことでした。さらに、米輸入自由化が行われると稲作農家以外の農家も生産意欲が大きく減退すると予想されるため、自由化を阻止してほしいとの要望がありました。  次に、山川町の西川田稲作機械共同利用組合を訪れました。本組合は管内の男性が働き盛りの時期は会社等で勤務し、定年退職後には農作業を受託することを目的としておりますが、オペレーターの養成が課題であるとのことでした。また、管内にライスセンターがないため、国や県からの援助をお願いしたいとの要望がありました。  徳島県での視察を終えた後、香川県に入りました。  まず、香川県の農林水産業の概況についてであります。本県の農業粗生産額は徳島県と同様、多くありませんが「ニンニク、レタス等の生産額が多いことで全国的に有名です。本県の林野面積は広くなく、森林の持つ公益的機能を活用したいとのことでした。本県は我が国養殖漁業の発祥地であり、現在も養殖漁業が盛んですが、赤潮を誘発しかねないこともあり、これ以上の拡大は困難とのことでした。  以下、日程に従って、御報告いたします。  まず、長尾町の大川農産加工コンビナートに伺いました。本コンビナートは、四国大川農協の管内の農家が生産した農産物を活用し、加工食品を生産することを目的としていますが、農産物価格が高騰した場合にも農家に収穫物すべてを提供してもらうこと、消費者が必要とする農産物のみを農家に生産してもらうことが課題であるとのことでした。  次に、高松市の香川県水産試験場、赤潮研究所、栽培漁業センターの三つの施設に参りました。赤潮研究所では、赤潮の発生状況を把握し、その情報を漁業者等に提供しており、また、栽培漁業センターでは放流したクロダイのうち六割に及ぶものが音響給餌で本センターの付近に滞留していることを確認したとのことでした。  次に、満濃町の仲多度地区農協共同カントリーエレベーター利用組合を訪れました。本エレベーターの利用を契機として、管内の農家が出荷する米麦の品質向上を図るため、品質の劣る米麦は引き受けないという厳しい対応をしているとのことでした。さらに、数年前に管内でモデル的な生産組織を設立し、将来は管内の農家すべてを組織化することを目標としているとのことでした。  次に、満濃町と仲南町にまたがる香川県満濃池森林公園に参りました。本公園では、本県内の他地域と同様、葉がもみじのように赤く色づいたり、葉がすべて落ち幹と枝のみの寂しい姿になったりした松が多くあり、松くい虫による被害のすさまじさを実感いたしました。しかし、このような被害を食い止めようにも、人口の密集した地域等で薬剤を散布できないこと、被害を受けた松を伐倒する業者が不足していることが障害になっているとのことでした。  最後に視察したのは、香南町の香川県園芸総合センターでした。花の生産県間競争が熾烈となっているため、本センターでは配布する種苗の供給量を増加させること、民間会社が育成した新品種の種苗配布も行うことが課題であるとのことでした。また、花の栽培技術がますます高度になっていることもあり、農家の高齢化は深刻な問題であるとのことでした。  以上が、今回の調査概要でありますが、本報告で触れることのできなかった地元での要望については、本日の会議録の末尾に掲載していただくようお願い申し上げます。  最後に、今回の調査に当たって御協力をくださった方々に心から慰謝申し上げ、報告を終わります。
  259. 永田良雄

    委員長永田良雄君) 以上をもちまして派遣委員報告は終了いたしました。  なお、ただいまの報告にありました現地の要望につきましては、それぞれを本日の会議録の末尾に掲載することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時八分散会      ―――――・―――――