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1991-12-05 第122回国会 参議院 国会等の移転に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十二月五日(木曜日)    午後三時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         井上  孝君     理 事                 柳川 覺治君                 稲村 稔夫君                 矢原 秀男君                 橋本  敦君                 足立 良平君     委 員                 片山虎之助君                 下稲葉耕吉君                 小川 仁一君    政府委員        国土庁大都市圏  西谷  剛君        整備局長    参考人        独協大学経済学  恒松 制治君        部教授     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○国会等移転に関する調査     ―――――――――――――
  2. 井上孝

    委員長井上孝君) ただいまから国会等移転に関する特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国会等移転に関する調査のため、本日、参考人として独協大学経済学部教授恒松制治君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井上孝

    委員長井上孝君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 井上孝

    委員長井上孝君) 国会等移転に関する調査を議題とし、参考人から御意見を承ることといたします。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  恒松教授には、御多忙のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  本日は、教授から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず参考人から四十分程度意見をお述べいただき、その後、約三十分程度委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、恒松参考人にお願いいたします。恒松参考人
  5. 恒松制治

    参考人恒松制治君) きょうは国会移転と申しますか、首都移転ということについて、私平素考えておりますことをお話し申し上げたいと思います。  国会では国会決議として、国会移転、いわゆる東京からの移転ということをもう既に決議なさっているわけでございます。そうした首都移転ということに関しましては、いろいろな形といいますか、形式というものが言われておりますけれども、まず、なぜ首都移転しなくてはならないのかということについて私の考え方を申し上げます。  一番大きな問題は、いわば東京における人口圧力ということでございます。御存じのように、今東京圏人口が約三千二百万、これは一九九〇年でございますけれども、国の総人口の約二六%が、いわゆる一都三県と申しますか、東京圏と言われている地域集中しております。これをそのままほっておきますと、二〇一〇年には三千六百万になるであろう、こういうふうに言われております。これは総人口の約二八%に相当するわけでございます。  この人口の推計は、いわゆる封鎖体系といいますか、東京へ全然外から人が入らない、こういうふうに考えましてもなおかつこのぐらいの人口になるわけでございます。それは申し上げるまでもございませんけれども、これまで地方からどんどん東京に集まってきた人、主として若い人々でございますので、したがって東京人口はこれからは社会的に増加をするということではなくて、むしろ自然増という形で増加をすると予想されるからでございます。したがって、東京へは一人も外から人間を入れないというような極めてきつい想定をいたしましても、なおかつ人口がふえる、こういった状態にあるわけでございます。したがって、これからの東京というのは、むしろ東京に今いる人たちを外へ出すということをやっぱり考えないといけないという事態になっているということが一つの問題でございます。  それから第二番目の問題は、今交通網が大変よく整備されてまいりまして、この一都三県という東京圏範囲がずっと膨らんでまいりました。  例えば東北新幹線の沿線で申しますと、今栃木県の西那須野の方にかなり住宅が建ちつつあるわけでございます。少しかた苦しさから外れるんですけれども、なぜ西那須野かということを栃木県で聞きますと、東北新幹線東京発の最終の列車が西那須野でとまるんだそうであります。最近はどうなっているかわかりませんが、西那須野が終着駅。そうなりますと、東京で幾らお酒を飲んでも西那須野以北へは行かない、しかも時間的には一時間半ぐらいで行けるということになりますということが理由で、西那須野に新しく住宅団地ができている。こういうちょっといささか笑えないような話まで出ているわけでございます。  また、上越新幹線の場合には、上毛高原駅というところがございますけれども、今その上毛高原駅にまで住宅団地が広がりつつあるということであります。また、東海道新幹線については、今静岡からかなりの人口東京へ通勤をしている。こういうように交通網整備されることは大変いいことなんですけれども、一都三県の範囲が非常に広がってきて、そして東京一極集中という現象が、ますます大きな力で国土問題を非常に難しくさせているというのが第二番目の問題でございます。  それから第三番目の問題は、災害の危険というのが非常に大きいということでございます。かって関東大震災を経験いたしました東京にとりましては、例えばマグニチュード七ぐらいの地震がありますとかなり大きな混乱が生じ、政治はもちろん、行政経済の面に至るまで大きな混乱が予想される、したがってどこか首都移転しないと災害のときに対応できなくなる、こういう理由がございます。  それから第四番目には、東京圏人口集中する、あるいは経済的な機能集中するということは、片一方では地方圏といいますか、いわば山村とか漁村とを言われておりますような、そういう地方圏人口が減って活力が低下するということであります。  最近では、山村地域においては六十五歳以上の人口の比率、いわば老齢化率がもう三〇%を超えているような町村も決してまれではないというのが現状でございます。こういう地域では、先ほど申し上げました東京圏人口増加とは全く逆に、むしろこれからは人口自然減が生ずるわけで、言いかえれば、東京とか大阪へ人口が出ていくから人口が減るのではなくて、死亡者数よりは出生数が少ないというような形の自然減という現象が生じているということでございます。今では多くの地方で、工場が進出するとかあるいは企業が進出するといいましても、もう既に労働力不足をする、その定めに出たい企業も出られないといったような地域が、日本全国の中で非常にたくさん見られるということでございます。  こういうふうな条件を考えますと、東京人口やあるいはさまざまな経済的な機能、社会的な機能というものを地方へ分散して東京における人口圧力を弱めていくということが、私は、これから極めて緊急な問題であろうというふうに思っております。したがって、そういうときに国会移転ということを国会みずから決議をされたということは大変意義のあることですし、大変重要なことだと思っております。  しかし、若干勝手なことを申し上げますと、もう既に八十機関の国の省庁が、一省庁機関と言われておりましたけれども、出ることが決まってから、閣議で決められましてからもう何年かたつんですけれども、一向にその気配が見えないというわけでございまして、あるいは移転することが決まっているような地域も、例えば埼玉県の大宮というように、首都圏の中での移転ということにどうも問題が絞られているようで、こういうことは余り効果のないことであって、一都三県はもちろん、東京圏の外へもっと出るということを思い切ってやらないと、日本国土の均衡ある発展ということは望めないのではないかというように私自身危機感を持っております。したがって、そういう点から申しますと、甚だ失礼な言い方ではございますけれども、国会国会移転を御決議なさいましたけれども、一体本当におやりになる気があるのかな、大変失礼なことですけれども、そういうふうな疑問を抱かざるを得ないというのがもう正直な私の感想でございます。  そういう意味から申しますと、ただ単に国会移転するということではなくて、今政府機能としてありますところの立法、行政司法、こういった政府機能が、やっぱり分散するということが必要なのではないかというふうに思っているわけでございます。しかし、先ほどもちょっと申しましたように、どうもそういう方向に動いていないというふうに私には感ぜられるわけでございます。例えば国会移転ということが国会決議され青がら、現在の首相官邸のところへ新しい官邸をつくるというふうなことが取りざたされているのは一体どういうことかなと、矛盾も甚だしいのではないかとさえ思っております。そういうかなり緊急を要する課題であるという点では、どうも対応がいささかうまくいっていないのではないか、こういうふうな感じがいたします。  そこで、今まででもお聞きになったと思いますけれども、首都移転するという場合に、完全に遷都という、都を移すということ、しかもそれは新しい都市、いわゆる都をつくるというふうなやり方もございますれば、あるいは首都機能を分割して移転する、例えば分都とかあるいは拡都というふうなことが言われておりますけれども、そういうふうな形式もございます。また、東京圏内に少し分散をする、例えば展都というふうな言葉で呼ばれておりますけれども、大宮とかあるいはつくばとか、そういうふうな形で首都機能移転するということもいろんなその一つでございます。あるいはもっと現実的な立場から申しますならば、むしろ東京自身を改造して、そして首都にふさわしいような地域社会にするということも一つ方法だろうと思っております。  しかし、私がきょう申し上げたいと思っておりますのは、そうした首都機能をいわゆる遷都という形で分散するのではなくて、中央政府が持っている機能をもっと縮小するということが考えられていいのではないかというふうに思っております。それは、その根底には、一つ規制緩和と申しますか、行政権限を非常に小さくしてできるだけ民間の自由な活動に任せるということをやりますと、行政機能そのものが縮小するという意味首都機能が縮小してくる場合も考えられると思っております。  それからもう一つ方法は、そうしたむしろ中央政府機能をもっと地方へ分散する、言いかえれば、政治行政機能東京に置かないようにするということによって東京機能を縮小するということが可能ではないか、むしろ一番望ましい姿ではないかと私自身は思っております。  また話が余談になりますけれども、これはちょっと今名前を思い出せないんですけれども、慶応大学で歴史をなさっていらっしゃる教授がいつか新聞にこういうことを書いておられました。  それは、江戸から東京に、言いかえれば、明治維新を境にいたしましたころに、江戸人口は約百万あったと申します。百万ということは、その当時の日本人口が三千万でございますから、やっぱりその当時としては江戸人口集積というのは極めて大きかったと、こういうふうに言われております。しかも、百万の人口を持つ都市というのは、世界でも江戸をおいてはほかになかったと言われております。なぜこれだけ江戸人口集中したかと申しますと、一つ徳川幕府があったということでございます。その徳川幕府のいわば集権体制といいますか、のために江戸が非常に発達をした、こういうふうに言われております。  ところが、御存じのように明治維新が近くなりまして、いわば徳川幕府権威が失墜をしてまいります。そして、徳川幕府権威が失墜すると同時に、例えば参勤交代というようなのが随分ルーズになって、やるところはやってもいいけれども、参勤交代しないところはそれでも構わないと、こういうふうなことが幕府から通達されます。それによって参勤交代が非常にルーズになって、みんな地方殿様方東京へ、江戸へ出てこなくなった。そのことによって江戸人口がどうなったかといいますと、それができてから三年ぐらいの間に江戸人口は三割減ったと申します。  それはどういうことかというと、中央集権的といいますか、今までの幕藩体制というものがなくなったものですから、したがって地方が、それぞれ自分たちのところでいろんな政治行政をやっていくという体制になったために、江戸人口が三割減ったと、こういうふうに言われております。このことが事実かどうか、私、自分専門家でありませんのでよくわかりませんけれども、大変あり得ることだと思っております。  そのことを考えますと、今東京人口をどうやって分散させるかということよりは、東京が持っておりますところの中央集権的な機能政治行政も含めてでございますけれども、そういうものを地方に分散する。言いかえれば、中央集権体制というものをやめていくということによって、私は、東京人口というのは格段に減らすことができるのではないかというふうに思っております。  それじゃ、これを一体どうやってやるかということになりますと、大きく分けまして二つございます。  一つは、現行制度に比較的近い形での改革でございます。それは、現在全国に約十ぐらいのブロックがございますけれども、そのブロックには中央官庁地方支分局が存在しております。例えば私の郷里の近くで申しますならば、広島には財務局があり通産局があり陸運局があり、あそこは、農政局だけは岡山にございますけれども、そういうふうな形で支分局があります。その支分局にすべての権限集中する。言いかえれば移管すると申しますか、移管して、そしてそれを中心にして行政をやっていく。そうすれば私は、東京へ集まる圧力というものは非常に小さくなるのではないかというふうに思っております。これが一つ方法でございます。  それから、もう一つ方法は、抜本的に中央政府権限をもう地方へ全部移してしまう。これは、例えば全国を十のブロックに分けまして独立の州をつくる。例えばアメリカ州政府もそうでございますし、西ドイツもそうでございますし、あるいはオーストラリアとか、方々でそうしたいわば州政府中心にした政府がつくられております。そうした独立の州をつくりまして、東京にはその連邦政府を置けばよろしい、こういうふうなやり方も決していけないことではないというふうに私自身は考えております。   私、昔、もう二十五年ぐらい前になりますけれども、中央公論に「府県廃止論」という論文を書いたことがございます。それは、その当時私の頭にありましたのは、地方自治体というのが都道府県市町村という二つの、いわばよく二層制と申しますけれども、二層制になっているということが、国民政治行政に対する関心を非常に弱めているというふうに私には思えて仕方がなかったわけでございます。言いかえれば、地方自治体というのは一つであると、そういうことにしますと府県と、いうのはむしろなくてもいいじゃないか。その府県をなくすかわりに、かわりと言っては語弊がありますけれども、なくした場合に、それでは地方政治をどうするかというと、やっぱり道、州といったような、いわばブロック別単位行政に非常に力点を置いたそうした行政をやっていく方が望ましいと、こういうふうに思いました。  しかし、私がそのときに提案をいたしましたのは、中央政府中央政府としてあって、その地方支分局が大きな権限を持ってやればよろしい。したがって、ブロック別単位というものは、例えばその長は中央政府の任命によってそれを行う。地方自治体市町村だけ、こういうふうな非常に簡素化した行政体制が望ましいということを提案したことがございます。その趣旨は、できるだけ政治行政というものを国民の身近なところに置く、これが日本のこれからの民主化にとって非常に大事なことだということを発表したことがございます。  その後、いろんなことを勉強したり経験したりいたしまして、今ではそうではなくて、そのブロック別単位一つの州というふうな形で、独立国家と言うとおかしいんですけれども、独立政治行政形態にしてしまう。そうなった場合には中央政府というのはどうなるかというと、もう明らかにアメリカとかそういうところにありますように連邦制にするということでございます。  私は、そういうふうな行政改革をやれば、東京人口というのは江戸のときと同じようにたちどころに三割ぐらいは減るのではなかろうかと思っております。そして、あらゆる政策が東京中心にして行われるのではなくて、それぞれの地方地方中心として行われることによって、私は、地方活性化といいますか、あるいは国土の均衡ある発展というものが自然にできてくるのではないか、こういうふうに思っております。最近は、むしろそういうふうに思い詰めていると言った方がいいかもしれませんけれども、そうでないと東京が救えないばかりでなく日本の国が救えない、こういう感じを持っております。私は法律学者じゃないものですから時それを裏づけるような法体制とかそういうものはまだよく研究しておりませんけれども、おおむねそういうふうな体制をつくれば東京一極集中を、首都移転するというふうなことをしなくても可能になってくるのではないだろうか、こういうふうな期待を持っているわけでございます。  大変、何というか、とっぴなようなことではございますけれども、こうした連邦制度をとっているところの実態をごらんになればよくわかるわけでございまして、例えばアメリカのワシントンの人口は百万に足りません。オーストラリアのキャンベラは人口が三十万でございます。ドイツのボンも五十万そこそこでございます。こういうように連邦制度をとっているところの首都人口というのは比較的小さいということを考えてみますと、東京にあるいろんな機能集中ということを分散するためには、そうした政治行政体制そのものを変えていくというところまでさかのぼらないと解決はできないのではないか、こういうふうに思っております。  そういたしますと、そこにできますところの行政の仕組みというものも当然変わってまいります。例えば、東京にある連邦政府は国防と外交、内政調整、それから司法、大蔵あるいは国土企画、こういった全国に及ぶようなものさえあればいいことでありまして、あとの一般の行政施策省庁は全部ブロックにそれを移してしまうということが大切だと思っております。したがって、行政権限をできるだけ地方に移すということが極めて大事なことであって、その移すことによって私は地方の主体性とか、自主性とかあるいは地方活力とかそういうものが結果として生まれてくるのではないか、こういうふうに考えております。  これは、私もちょっと関係したんですけれども、経団連で首都問題委員会というのがございまして、そこで各社の社長さん方にアンケートをした結果が出ております。このアンケートの結果を要約いたしますとなかなかおもしろい結果が出ております。  例えば、一極集中というのは一体いいのか悪いのかということでは、ほとんどの企業社長さん方が一極集中はよくないと、こういうふうに言っておられます。そのよくないという答えの中の主な理由は、地価が上昇し過ぎる、交通が渋滞する、それから住宅、宅地の不足、こういった問題を取り上げておられる方が非常に多いわけであります。しかし、東京への一極集中のメリットとしてはどういうものがあるかというと、それは情報収集が容易で業務の効率性が高い、それからお客さんを獲得しやすい、そしてその最後のところに、許認可を受けるのに便利である、こういうことで東京へ本社を立地させている企業が非常に多いということであります。  こういうことから見ますと、例えば先ほど私が申しましたように、全国ブロックで、そこにいろんな行政権限を移していきますと、許認可を受けるのに便利だというのは東京ばかりではなくて、全国十カ所ぐらいに、許認可を受けるのに便利だという形で、企業が分散することは可能であるというふうに私は思っております。  そういう意味で、首都機能首都圏以外へ移転した方がいいという意見は、地方分権の推進ということとあわせまして支持する人が非常に多い、約四〇%が、社長さんの中には、こいうことを支持している、こういうふうにおっしゃっている方がいるわけでございます。こういうことを考えてみますと、多くの国民は、あるいは企業者自身もやはり東京一極集中はよくないという人たちが非常に多いということが言えるだろうと思います。  この中で、遷都の形に対していろんな意見が出ております。しかし、十分に理解されてないという点もあるんですけれども、もし遷都するならば、分都とか拡都とかいうことよりは、やっぱり遷都という形の方が一番意見が多い。言いかえれば、すべてどこかへ移転するということが非常に多かったという結果が出ております。  これに伴ってちょっと首都移転とは違うんですけれども、例えば皇居移転ということにつきましては否定的な意見が大部分でございました。約七〇%は皇居移転しなくてもいいけれども首都機能移転した方がいい、こういう意見が圧倒的に大きかったということであります。  こういうふうな民間企業の結果を見てまいりますと、やはりそれぞれの企業者は、こうした首都機能移転ということに対して大きな関心を持っているということがわかります。  最後に、私が申しました地方分権についてといいますか、言いかえれば、道州制といったようなものへの移行ということにつきましては、企業者方々は約七六%、四分の三の方々がこれに対して支持をしておられます。言いかえれば、自治体としても広域的な自治体を設置して、そこにほとんどの権限を委譲した方がいいと。それは道州制、これも先ほど申しましたようにいろんな形の ものがございますけれども、そういう道州制への支持というのは非常に強かったということをここで参考までに申し上げておきたいと思います。  ただ、大変おもしろい結果としては、それでは遷都をしたときに、首都移転をしたときにあなたの企業東京に残りますかどうですかという質問をしたのに対しては、やっぱり六〇%以上の人が東京に残る、こう言っておりますから、したがって、ちょっとそこのところ論理の矛盾はあるんですけれども、やっぱり経済活動東京で、そして行政政治活動はどこかほかのところでと、こういうふうな意見になるであろう、こういうふうに思っております。これは一つ参考意見でございます。  私が、こうした連邦制論というのを大変強く先ほども申し上げましたのは、やっぱりそうでもしないと日本国土の均衡ある発展ということはできないということでございます。しかも、東京集中していることに伴うところの経済的なマイナスの面というのはかなり私は大きいと思います。  私は、郷里島根県でございまして、東京とは違ってまさに過疎に悩んでいるところでございまして、この間もちょっと新聞に資料が出ておりましたけれども、去年の公共投資の額を見ますと、島根県は一人当たりの額にいたしまして日本全国一でございます。これは公共投資という面では相対的に非常に恵まれたと、こういうふうにとられかねない数字が出ておりましたけれども、私は、長年、我が郷土におりまして、一人当たり公共投資額というのがいかに無意味なものであるかということを痛切に感じております。それは、ただ人口が少ないから投資額が相対的に大きいように見えますけれども、社会資本整備をやってまいります場合にはある金額が必要なんであって、それは決して一人当たりで割った金額ではないということを痛感してまいりました。  そういう点では、東京は確かに一人当たりにすれば公共投資額はそんなに多くはないかもしれませんけれども、この東京に投資せられている社会資本整備の額の大きさというのは極めて私は大きいと思っております。逆に言えば、人口の密度が大きいところではそれだけ公共投資の効率が高いということも言えると思いますけれども、そういうのは公共投資の額が問題なんであって、人口一人当たり公共投資額ではないということを先生方にも十分に御理解いただいて、こうした地域むしろ率先して社会資本整備を図っていただかないと、過疎地域といいますか、地方はますます意欲を失ってくるのではないか、こういうふうに思います。  きのうも新聞で第二東名道路であるとか、あるいはそれをまた東京へ結びつけるような道路構想が出ておりました。そういうのを見ますと、そのうちの何分の一かを山陰と山陽を結ぶあるいは南北を結ぶような高速道路の整備に充てられれば、本当に地方というのは活性化するんだなというふうなことをつくづく思いました。また、昔悪口を言っていたんですけれども、例えば瀬戸内海の橋です、何といいましたか、橋が大体総投資額一兆円なんですね。この一兆円の額を日本海の方へ振り向けてもらえばずっと日本海側はよくなるのじゃないかというような気が非常にしまして、あれも決して悪いごとではないと思いますけれども、そういう感じをつくづく抱いたわけでございます。そういう点から申しますと、東京集中がいろんな形でそうした国土開発というか、国土政策の面にむしろ悪い影響をもたらしておるのではないかというふうに思えて仕方がないわけでございます。  これは、私もいつかどこかでそういう皮肉を言ったんですけれども、JRの時間表を見ますと、東京行きは全部上りでございまして、東京発地方へ行くのは全部下りです。ここは余り字句にとらわれるのもよくないかもしれませんけれども、東京へ行くのは全部上り、東京から出るのは全部下りという、そういう感覚自身が、私は日本国土を非常にいびつなものにすることになっているんじゃないかという気がいたします。そのためには、中央政府が持っておりますところのあらゆる権限は全部地方へ移す。移して、そして中央政府が持っている機能というのは国防とか外交とか内政調整とか、そういうふうなものに絞った方が、私はこれからの政治行政というものがスムーズにいくのではないだろうか、こういうふうに思っております。  今私は行革審の豊かさ部会というところに所属して、一応答申をまとめたところでございますけれども、そこでもやっぱりできるだけ地方権限を移す、それが国民全体を非常に豊かな感じを持たせるようなことになるはずである、言いかえれば、地方がそれぞれ自分たち権限に基づいて、そして自分たちの責任によって政治行政を行うというところにこそ初めて活力が期待できるのではないか、私はこういうふうに思っております。  そういう意味では、そうした首都機能とかあるいはもっと端的に申しますならば、中央政府機能というものを地方に分散することによって、より豊かなあるいは豊かさが実感できるような国土というものをつくっていくことが、これから二十一世紀にわたって私は大変必要なことではないか、こういうふうに思っているわけでございます。  以上、大変何か雑駁なお話を申し上げましたけれども、あとはもしいろいろ御質問があればそれにお答えをすることにいたしまして、私の話はこれで一応終わります。(拍手)
  6. 井上孝

    委員長井上孝君) どうもありがとうございました。  それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 恒松先生、大変貴重な御意見をありがとうございました。地方への権限機能の大幅な移譲ということについてはかねがね私もそういう考え方を持っておりましたので、大変いい御意見をお聞かせいただきましたし、また例えで言われましたように、私も日本海側の住人でありますから、大体が裏日本とか表日本ということがけしからぬということから始まって、いろいろと言っていたようなこともございますので、大いに共鳴をするところがあったわけであります。しかし同時に、今の先生のお話の中でお触れにならなかったのでちょっとお聞かせをいただきたいと思いますのは、情報と経済の不可分な状態に現在はなってきていると思うんですが、情報と経済集中というのは、必ずしも今は行政とのかかわりとばかり言えないようなものになってきているんじゃないだろうか。  そういうふうに考えていきますと、確かに江戸時代のお話がございました。江戸時代は、参勤交代は国からついてくる人たちが大勢いて、それが来なくなるということですから非常に大きいメリットがあったでしょうが、やはり今は情報と経済のコントロールがうまくいきませんと、何かこうそこへの人口集中をとめるような役割、あるいは分散させるような役割をなかなか果たせないのじゃないだろうか、その辺の関係というのはどういうふうにお考えになっておられますのか、教えていただければ大変ありがたいと思います。  また、道州制については、きょうはちょっと時間がございませんからあれですが、権限などの問題ではすべてのというふうにくくって言われましたけれども、やはり国の機能をどういうふうに分散できるのかというのも、これも非常に大きな問題になるのではないだろうかというふうにも思いますが、主として今の情報と経済とのかかわりを教えていただければと思います。
  8. 恒松制治

    参考人恒松制治君) 先ほどもちょっと申しましたけれども、経団連の方の調査によりますと、さっき言ったように、例えば遷都をしまして、遷都をしてもおれはやっぱり東京に残るんだという人が五〇%ぐらいいるわけです。そういう点から申しますと非常に結びついた機能ですから、遷都をしてあるいは政治行政機能東京から外へ出ても、かなりの機能が私は東京に残ると思います。それはしかしやむを得ないと思いますし、その方が日本経済発展にとってはむしろ望ましい姿かもしれないわけです。ですから、それは決して悪いごとではないと私は思います。  ただ、先ほど江戸時代の話で申しましたけれども、むしろ行政とか政治とかというのが立地しなくなることによって人口が減る効果というのはかなり大きいわけでして、私は情報と経済の結びつきというのはそれは残っても構わないんじゃないかというふうに思います。言いかえれば、むしろ東京をより経済的に機能的な都市にすればいいわけでございます。例えば、ワシントンとニューヨークという関係でもありますし、あるいはドイツのようにボンに政府があって、そしてそれぞれの経済機能はフランクフルトであるとか、ジュッセルドルフであるとかハンブルクであるとか、そういうふうに分散するという形も私は行われていいんじゃないかというふうに思っておりますので、情報と経済というのは東京にやはり残るんじゃないでしょうか。
  9. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 その点、ことし私はドイツヘ、ちょうどベルリンに首都移転が決まったそのさなかのときに行っておりまして、ドイツの議員さんたちのいろんな議論というのを、夜中に決まりまして、その決まった日までボンにおりまして、そして決まった翌日ベルリンに入ったものですから、ボンでは余り愚痴は聞かないで、ベルリンに行ってからはよかったよかったという話ばかり聞くような形になってきました。しかし、そのやりとりの中で感じましたのは、やはりドイツの場合もベルリンにどうしても情報とか経済集中性がある。その辺のところが政治的にもそちらへ傾いていかざるを得ないという、そういう感覚の先生方がかなり多かったように思うものですから、ドイツはかなり制限がありますけれども、そのことについて疑問をまた出してこられる人などもおりましたので、今の情報と経済という、言ってみれば下部構造の部分というのがどうしても上部構造の政治だとかなんかも引っ張ってしまうんじゃないだろうか。これが一つ。  それから、先ほど申し上げましたように、政治の方が動いても、人口集中というそちらの方に対するメリット、確かにないとは言いません。ある程度はあると思いますけれども、その効果は江戸時代のような大きなものは望めないんではないだろうかという観点と、この二つだったんですけれどもね。
  10. 恒松制治

    参考人恒松制治君) ドイツは、私も詳しいわけではございませんけれども、ベルリンに昔首都があったときでもベルリンの人口は二百万ぐらいなものでございまして、それはやっぱりドイツが連邦制をとっている一つのメリットだと私自身は思っております、ですから、今度ベルリンヘ行っても、私はドイツの地方分権の姿というのは依然として変わらないだろうというふうに思っております。  それから、後の江戸時代ほどではないだろうと、こうおっしゃいましたけれども、私は江戸時代よりはもっと大きい効果があるのではないかと思っております。それはどういうことかと申しますと、経済と情報というよりは、むしろ経済行政との結びつきがその当時に比べたら格段に強いと思います。そういう点から申しますと、いろんな許認可権限というのが、東京ではなくして地方に分散することによって私はかなりの経済的な機能地方へ分散するのではないかという感じがして、これはやってみたわけじゃないですからよくわかりませんけれども、そういうふうな期待は持てるのではないだろうか、こういうふうに思っております。
  11. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ありがとうございました。
  12. 片山虎之助

    片山虎之助君 恒松先生から大変貴重な長年の経験と学識に基づく御意見を承りまして、大変ありがとうございました。  先生を言われるように、やはり東京圏一極集中日本じゅうのあらゆる意思決定機能が全部東京に集まっている。結局、情報も集まっているんですけれども、情報というのは意思決定と結びつくことで値打ちが出て大変意味があるんですね。そういう意味では、もう東京は自動的に大きくなるようになっているんです。意思決定機能が全部集まっている、それから情報も全部集まっている、それがドッキングすると。だから、企業にとっては私は一番メリットがあると思うんです。日本ぐらいの人口経済力があって、世界の中で全体主義体制、独裁体制でない国というのは今も言ったように大体連邦制なんです。ただその点、私は日本が考えるべきことではないかと思うんですが、現在地方権限移譲、権限分散というようなのが進まないのは、やはり中央政府地方権限をやるのは嫌なんですね、簡単に言うと。そこで私は、そこはやっぱり発想の転換をするんで、中央の権限地方に渡すんじゃなくて、中央政府みたいなものが地域的にもつか十できる、次官や局長のポストが十倍になる、九倍になるというような意識の転換が必要じゃないかと思うんですが、まあちょっとそれはおいておきます。  そこで、先生が言われるように今日本ブロックごとに分ける、例えば北海道は前から言われるようにデンマークと同じ人口でほぼ同じような経済力、九州はオランダと似ているというんです。東北はスイスだという。東京なんか香港やシンガポールよりもっとずっと上になる、NIESの上の方にいくと思うんですけれども、大変そういうことになるとおもしろいと思うんですが、それじゃ、日本の現状から見て連邦制移行が簡単にできるだろうかということが大変懸念される。コンパクトな、大変マスコミが発達してモビリティーも高い国で、ブロックごとに特色を持って独自の政治システム、行政システムで動いていけるようなことになるんだろうか。ちゃんとそれが国民のコンセンサスを得ることができるだろうかという気がちょっとするんです。日本人は画一志向ですから、隣と似たようなことがしたい、よその地域と同じようにやりたいというようなところがあるものですから、だからそれが、現実に連邦制移行になる場合にどうなるかというのが一つ。  それからもう一つ、連邦は大統領制になると思うんです、今の都道府県みたいに。そうなると、例えば国の権限を全部持った九州州長官ですか知事ですか、北海道州知事、長官、そういう長官というのはもう強力なことになって、この一つの、単一民族の国の中でうまくいくんだろうか。強力になり過ぎて、議院内閣制の連邦、日本の連邦との関係がどうなるんだろうか。アメリカの場合には知事は三選禁止ですね、大統領も大体三選禁止が多い。そうなると、恒松先生は島根県知事をさっと三期でおやめになった、多選の知事さんが多いんですけれども。私はそういう意味で、連邦制になったら多選禁止をぜひせにゃいかぬ、あるいは多選で独裁者になるような仕組みをチェックする何かなきゃ、これは大変なことになるのではなかろうかという気がちょっとするものですから、その辺お考えがあづたらお聞かせいただきたいと思います。
  13. 恒松制治

    参考人恒松制治君) 今一つの御質問でございましたが、連邦制は簡単にできるだろうかと、こうおっしゃったんですけれども、簡単にできないと思います。大変に簡単にできないと思いますのは、やっぱり今憲法の制約が非常に大きいわけでございまして、今の憲法の体制というのは、そういう連邦制というものを前提にしておりませんものですから、あらゆるところで憲法の障壁にぶつかるんではないか、こういうふうに思います。だから、簡単にはできないと思いますが、私のように法律専門じゃなくて経済学専門の者にとりましては、憲法がもし悪ければ憲法を変えればいいではないかと極めて簡単に言うわけでございますけれども、それは国会の方ではなかなか難しい問題だろうと思います。  先ほど申しましたように、憲法にかかわるようなことでない形としては、さっき一番現実的だと申しましたのは、現在約十ブロックに対してそれぞれの中央政府支分局がありますものですから、そこへ実質的に権限をほとんどおろしてしまうということも一つ方法ではないかというふうな感じがいたしております。  それから二番目に、これはもうまさに連邦制なんですけれども、道州といった単位の首長というのはまさに大統領でございましで、大統領制でございますから非常にそこに権限集中するおそれがあるということでございます。それは、おそれはあると思いますけれども、私は、今の都道府県の場合とは違いまして、やっぱり道州という単位になると、決してそういう独裁制のような姿にはならないだろうし、日本国民はそこら辺のバランス感覚というのは非常にあるわけですから、そういうふうにはならないと思います。ただ、現在の知事の場合は下手をするとそういう独裁制になるおそれがあるというのは、やっぱりまだ、何といいますか、地域が狭いから逆にそういう可能性があるのであって、もう少し道州というような単位になれば、そういう独裁的な傾向にならなくて済むだろうというふうに思っております。そこら辺は大丈夫なんじゃないかと思います。
  14. 片山虎之助

    片山虎之助君 道州になった場合の市町村というのは、再編成せにゃいかぬわけですか。
  15. 恒松制治

    参考人恒松制治君) はい。もちろんそうでございます。  ですから、地方団体というのは、私の考え方では一層制が望ましいと思っておりますので、道州制になった場合には、現在の府県というのはもちろん当然なくなるわけでございますし、そのかわりかなりの権限をこなすだけの市町村の大きさと、そして能力を高めるということはもう当然前提にならなくてはならないだろう、こういうふうに思っております。ただ、私の経験上も勉強の結果もそうなんですけれども、今の市町村というのは、私、やろうと思えばそんなに能力がないわけではないと思っております。そういう能力をなくしてしまったのは、むしろ中央集権体制そのものがなくしてしまったというふうに思っておりますので、そこら辺は、権限を移管すればそれだけの能力というものはついてくるものだと私は思っております。
  16. 片山虎之助

    片山虎之助君 ありがとうございました。
  17. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 簡単に伺います。  私も中曽根総理のときに、予算委員会で皇居は残して首都移転すべきであるというような提案をさしていただいたことがありますけれども、各国を見て回っておりまして、そしてまた、日本の昭和二けた生まれの人たちの人生観や感覚的な生き方を見ておりまして、我々の考えとやはり大分変わってくるなど。そういう中で、今先生のお話を伺いながら、今後ぴたっと研究しなくちゃいけない問題があるなと思っていますのは、首都移転をしても企業の六〇%は残りたい、経済活動東京でやりたいと、ニューヨークのような。地方に行きましても、知事さんを初め、活性化のために公害のないいい企業をということで地方に引っ張ってこられているところのその周辺では、遠くへ子供が出なくても非常にすばらしい環境ができている、  だから私は、逆に今後経済というものが、やはりそれぞれの地域地域に応じた――いつも経済で会社に聞きますと、いいものができたって距離が遠い、そういうふうな経費がかかってくる、どうしても便利なところへ集まってくる。こういうようなことがあるんですけれども、経済を逆に分散させてそこで若い人たちの感覚の中でいくとなりますと、今先生からお話がありました十ブロックぐらいのやはり権限というものの移譲の中で、政治経済がおのおの分散していくのではなくして、当然許認可というものも簡素になると思うんだけれども、これは十フロックぐらいに分けた中で、そういうところに経済中心的なものが出てくる可能性というものがあるのではないかな、こう思っているんですが、そういう点ではいかがでございましょうか。
  18. 恒松制治

    参考人恒松制治君) 今おっしゃったように、日本経済というのはもともと政治行政に非常に左右されるといいますか、政治行政のあり方によって随分変わってくるような性質を持っております。持っておりますというのは言い方がおかしいんですけれども、私はそういう意味では、日本の資本主義経済というのは本当の資本主義経済がなと時々首をひねるんです。  したがって、今のようにいろんな許認可とかあるいは行政との結びつきが強い段階では、十ブロックに分けるということによって、私は経済もまたそれぞれの地域活力を持ち得るだろうと思います。最近では、例えば九州なんかを見ますと、九州自体で、その地域経済自体が韓国であるとか、中国であるとかあるいは東南アジアであるとかというところと結びついて活動をしておりますし、そういう点では、対外的な経済取引というのは東京ですべてやらなければならないような状態ではない状態なんですね。  例えば、新潟では既にソウルとハバロフスクとの間に定期便を就航させておりますし、あるいは千歳もそうでございます。あらゆるところでそういう国際的な取引までも地方でやるような時代でございますから、したがって、十ブロックに分けることによって日本経済がおかしくなる、経済の成長がとまる、そういうことには私はならないだろうというふうに思っております。
  19. 橋本敦

    ○橋本敦君 根本問題として、やはり経済機能の異常な集中を何とか地方に分散するという課題が、社会の構造的基盤の問題として非常に大事だというように思うんです。しかし、さっきの先生に御紹介いただいた経団連の調査でも、なかなかそうはそこのところはいかないという問題がある。そうなりますと、やっぱり情報と経済機能は残るだろうという予測をせざるを得ない。ここのところを何とか打開する道が経済そのものの問題としてないだろうか、いかがだろうかというように思うのが一つです。  それからもう一つは、先生の御意見によりますと、日本は経験したことのないユナイテッドステーツかフェデレーションかと、こういうことになって、そうなりますとこの国会は連邦議会の国会ということになるんでしょうが、そのイメージが我々の感覚からいっても国民的にもなかなか出てこないのではないか。だから、中央集権体制の見直しは必要であり、支公庁への権限の委譲もこれも必要だということはわかりますので、現在の都道府県地方自治の強化ということで、権限の分散と委譲ということをやっていくということでは、先生のおっしゃる目的が達せられない事情はどこにあるだろう。つまり連邦制、道州制にしなければ解決しないよという根本的な問題はどこにあるのだろうということを、ちょっとわかりやすくお話しいただけたらというように思っております。
  20. 恒松制治

    参考人恒松制治君) 最初の経済問題なんでございますけれども、東京に残るという、あるいは本社機能を残すという企業は、私はかなり限られた企業ではないかという感じがいたします。  なぜそれじゃ東京に残るかといいますと、やっぱり情報化の時代ですから、地方東京との間が昔に比べるともっと密接になるわけでございますね。今はまだ、例えば電話の料金なんかにいたしましても東京地方との間にかなり格差がございますので、それが情報を妨げているということを言われますけれども、何といいますか、電話であるとかファックスであるとかいろんな機械を使っての情報が進めば進むほど、私はやっぱりフェース・ツー・フェースと申しますか、人と人との間のつながりというのが非常に密接になってくるだろうというふうに思います。そういう点では確かに東京は便利であるとは思いますけれども、行政とのつながりをそこに介在させますとかなりの部分が東京から外へ出て、それぞれの道州の単位のところで経済活動が行われてくるのではないだろうか、こういうふうに私は若干楽観的には考えております。  それからもう一つの、今例えば議会と――済みません。第二番目の問題の方がちょっとよくわからなかったんですけれども……。
  21. 橋本敦

    ○橋本敦君 中央官庁機構の権限地方分散というのは賛成ですし、また支公庁に許認可権をうんと持たせるというのもいいでしょう。それと、それを進めるということで、現在の都道府県単位地方自治体制の強化を進めるということと並行して、それをやることによって解決の方向は見出せないか、どうしても道州制にしなければならないというのはどこに問題があるのかということです。
  22. 恒松制治

    参考人恒松制治君) わかりました。  それはちょっと直接には結びつかない面があるんです。都道府県というものをやめた方がいいということには権限だけの問題ばかりではなくて、現在の制度の中で、地方自治体と称するものが二つあるということに非常に大きな矛盾といいますか、を感ずるわけでございます。住民は一つであるのにそれが二つの地方自治体に分かれているということが、どうも問題の所在を不明確にしている一つ理由ではないだろうかというふうに思います。それが一つ。  それと、今まで長い間の中央集権体制の中で、都道府県というのは本当に自治体なんだろかという疑問が私の頭から離れないわけでございまして、地方自治体と実際には称しながら、実は東京の出先、中央集権体制の出先と言うと悪いんでしょうか、一分子のように思えて仕方がないわけでございまして、仕方がないというのは、私自身の経験から申しまして、都道府県という体制はやっぱり本当の意味自治体ではないという感じがするんです。だけれども、これはちょっと若干私個人の偏見も手伝っているわけでございますけれども、そういうふうに思います。
  23. 足立良平

    ○足立良平君 私も、この道州制というのは本当に必要なのではないかなというふうに実は思ったりいたしております。  実は私、大阪におりまして、東京圏の場合の都、県との関係とそれから大阪圏における府、県の関係というものを考えてみますと、今先生もおっしゃっていましたけれども、同じようなプロジェクトなり同じような地域開発なり、それを小さな県なり府単位でお互いに競い合っているわけです。  ですから、今の人間の移動にしましても、例えば兵庫県の人口の半分以上はほとんど大阪に今度は仕事に全部動いているわけですし、当然京都も大阪に行ったり、人間が相当広範囲に今交通事情で動いてきていますと、そういう面では、広域的に地方の産業なりあるいはまた社会のあり方、人間のあり方というものをそういう地方段階においてグローバルに検討しないと、相当むだな動きをしているように思っておりましたので、そういう面で、一つは道州制という考え方でもう一度この地方の分権問題というものを見直してみる必要があるのではないか、こんな感じを実は私持っておりましたので、今先生のお話をお聞きしておりましてまさにそのとおりではないか、こんな感じを受けるんです。  ただ、これはちょっと大変俗なことでまことに申しわけないんですが、例えばの話なんです。本日のものとは全く関係ないのかもしれませんが、政府は、日本の労働時間は長過ぎるのでこれから労働時間を短縮しなきゃならない、こう言っているんです、労働省を中心に。経済界も全部、経団連含めて全部言っているというんですね。それから、労働界も全部言っているんですね。ところが、労働時間の短縮というのは一向に進んでいかないです。それから一極集中ということを言いましても、これ皆さん全部だれが言っても一極集中は排除しなければならないと、もうみんな異口同音に言っちゃうんですけれども、なかなかこれが進まないわけです。  ですから、そういう面から考えてみると、いろんな議論がこういう首都移転といいますか、あるいはまた遷都であるとかいろんなことを言われて、みんながそう言うんだけれども、日本の社会というものは一向にその方向に進んでいかないという、物の見事に本音と建前を使い分ける社会みたいな感じを受けるんです。  これは一体、日本の文化といいますか、この種の大きなプロジェクトを考えていく場合に、アメリカにしてもソ連にしてもそれぞれの歴史があって、連邦制というものがあったりあるいは日本はいわゆる権限集中してやってきたという、こういう歴史を持っているんですが、日本人というあるいはまたそういう文化というもの、そういう面を一体どのように把握するのかということが、理屈なり何とかを乗り越えたそういう感覚的なものが相当背景にあるのではないか、その問題を解決していく場合に。何かそんな感じをしたりするんですよ。  それで、雑誌なんか見ておりましても、ダントツ現象という表現がよくあって、これは余り先生の読まれるような雑誌には出ないです、もうちょっと程度の低い雑誌ですが。例えば、一つのものに全部集中しちゃっているとか、いわゆる今の社会現象というもの、あるいは経済なりあるいは製品の集中にいたしましても、何かそういうふうな傾向が相当日本の場合には強い。車一つとりましても、ヨーロッパヘ行ったらまだミッションのついたこれやってますよね。日本はほとんど今もうノークラにかわってきた。例えば、日本人のそういうふうなものと一極集中というものと大変密接に関係があるのではないんだろうか。こんな感じを受けるんですが、先生いかがなものでしょう。
  24. 恒松制治

    参考人恒松制治君) 後の方から申しますと、おっしゃるような傾向は非常に強いと思います。だから、何が何でも東京でなきゃ話が進まないとか、やっぱり東京こそ一番すばらしいところだという意識は強いわけでございます。  今地方でいろんな活性化事業だとか、地方活力を出すためにといってイベントとかなんとかいろいろやっておりますけれども、みんなやっぱり東京的なんですね。そういう点では私はそれは先天的なものではなくて、やっぱり明治維新以来百二十年間の東京中心政治がもたらした一つ現象であって、これは長い時間かけないと解決できない問題だというふうに私自身思っております。  だから、決して本質的なことではなくて、昔は、少なくとも幕藩体制の中でも、それぞれの地域にはそれぞれの地域の教育があり、それぞれの地域の人材が育ったわけでございますから、あるいはそれぞれの地域の産業というものが育ったわけでございますから、私は日本の文化というか、日本人の性格に固有のものだとは必ずしも思っていないということでございます。  それから最初の方、大阪というのは大変難しい、難しいといいますか、ある意味では易しいのかもしれませんけれども、東京とは違うと、こういうふうにおっしゃいましたけれども、いや、東京も同じじゃないでしょうか。例えば、一都三県、首都圏というようなことを言いましても、みんなそれぞればらばらなんですね。それでは東京都が地方分散と、東京都政の中で、これ東京都政を余り批判しちゃいけないのかもしれませんけれども、東京都が一極集中を排除と言っていることは、東京都の中で例えば丸の内とか有楽町とか、ああいうところに集中するのがいけないことであって、池袋へ分散する、新宿へ分散する、渋谷へ分散するとか八王子へ分散する、今度は臨海副都心計画をつくってそこへ分散する、それは構わないという発想がやっぱりあるんです。  ですから、これはそれぞれの地方団体も反省してくれなきゃ困ることなんで、やっぱり東京都ともあろう地方団体は、国民経済全体あるいは国民社会全体の一極集中排除ということを正しく受けとめてもらわなきゃ困るなと思ってはいるんです。だから、その点では大阪府も同じだと思います。ただ、大阪府の場合には全部周辺が都市部でございますから、府の力というのが非常に弱いという点はあるんじゃないでしょうか。
  25. 足立良平

    ○足立良平君 そのとおりだと思いますね。
  26. 恒松制治

    参考人恒松制治君) そこら辺は、これからだんだん市というものの権限を強くし、その主体性を高めていけばいくほど大阪府というのは、一体府は何をやるんだということにどうもなりそうな一番典型的なところのように思います。選挙はどうか知りませんけれども、選挙は私は知りませんけれども、そういうふうに思います。
  27. 井上孝

    委員長井上孝君) ありがとうございました。  他に御発言もないようでございましたら、本日の質疑はこれにて終了させていただきます。  恒松教授には、大変お忙しい中、当委員会のために貴重な御意見をお述べいただき、また、質疑に対して御懇切にお答えをいただきましてまことにありがとうございました。一同を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時九分散会