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1991-11-25 第122回国会 参議院 環境特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十一月二十五日(月曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         安恒 良一君     理 事                 石川  弘君                 森山 眞弓君                 西岡瑠璃子君                 広中和歌子君     委 員                 井上 章平君                 石渡 清元君                 大島 慶久君                 木宮 和彦君                 須藤良太郎君                 原 文兵衛君                 真島 一男君                 久保田真苗君                 堂本 暁子君                 西野 康雄君                 高桑 栄松君                 沓脱タケ子君                 中村 鋭一君                 山田  勇君    事務局側        第二特別調査室  宅間 圭輔君        長    参考人        筑波大学構造工  椎貝 博美君        学系教授        筑波大学名誉教  山本 荘毅君        授        愛媛大学理学部  水野 信彦君        教授        広島大学名誉教  中村 中六君        授     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (長良川河口堰建設問題に関する件)     ―――――――――――――
  2. 安恒良一

    委員長安恒良一君) ただいまから環境特別委員会を開会いたします。  公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。  本日は、本調査のうち、長良川河口ぜき建設問題に関する件につきまして、お手元に配布をいたしております名簿の参考人方々をお招きいたしております。  なお、本日は、午前を塩害問題、午後を環境問題に分け、それぞれの問題につきましてお二人ずつから御意見を聴取することにいたしております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人方々から忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、本件の参考にいたしたいと存じます。  これより参考人方々に順次御意見を述べていただくわけでございますが、議事の進行上、最初にお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えをお願いしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、これより参考人に順次御意見をお述べいただきます。  まず、椎貝参考人からお願いをいたします。椎貝参考人
  3. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) 椎貝でございます。  それでは、早速本題に入らせていただきたいと思います。  お手元に多分私のつくりました資料が配布されていると思いますが、それに従って御説明をしたいと思います。(OHP映写)  河口部では、海は全部海水でございまして、川は真水でございますから、どこかで真水から順次あるいは急に海水に変わらなくてはならないということがございます。この図は一九五三年ごろにストンメルという方が発表された分類の仕方であります。一つは強混合といいまして、大体上から下まで海水がまざりながらだんだんに薄くなって川の方に入っていくということです。二番目は緩混合でございまして、これは、まざっていることは同じなのですが、少し勾配といいますか塩分の濃い線というのがそれぞれ区別されてきますが、これが寝てくるということでございます。一番極端な場合には塩水ぐさびとよく称しておりますが、海の水と川の水とがかなりはっきりと分かれましてくさび状に入ってくるというのが塩水くさびでございます。この三つ分類するというのが現在でもよく行われている分類でございます。  ところが、実際の河川ではこんなにきれいにはならない。強混合になったり、緩混合になったり、弱混合になったりする。そのときに普通考えられる状況で一番ぐあいの悪いのが、たくさんぐあいが悪いこともありますし、いいこともありますが、一番奥に入ってくるのがこの塩水くさびの形だと考えられております。私多少それには異論はあるのですが、それは順々に申し上げます。  その方程式はといいますと、これは何も御説明しようとするのではございませんが、一番最近のこれは水理公式集というものでございますが、これを見ますと大変難しい式になっています。これを計算するわけですから相当大騒ぎになります。私でも急にやれと言われましても二日や三日ではできなくて、自分でやるのでしたらいろいろデータを入れて一年ぐらいは十分にかかる計算でございます。しかし、それはちょっと若い、若いと申しますと山本先生に怒られますが、若い先生方がいろいろ細かくおやりになることであって、実はそうではないのです。これは割合に簡単に説明がつくことでございます。  それはもしも川に水が一滴もなくなったとしたら、そうすると川の底が水平な場合、これは東南アジアの河川なんかかなりそうでありますが、水は幾らでも奥まで入ってくる。ここの中が全部海になりまして、入り江になるということでございます。これが一番極端な形です。これでありますと幾らでも水が入る。しかし、日本河川は必ずしもそうでございません。よく言われているように、かなり勾配が急でございますからどこかで水が行きどまって、これまたこういうふうな入り江になるということでございます。  ですから、これかこれということでありますが、もちろんどのような河川でも勾配のない河川はございませんので、どちらかというとこれになる。ですからこれが非常に基本になるわけです。これに真水が入ってまいりますと、真水が少し海水を押し戻して塩水くさびという格好が生ずるんですね。塩水くさびというのは、普通だったならばここまで入っているものが、川の水で押し戻されましてこんな格好になる。この格好計算しようといたしますと、先ほどちょっとお目にかけましたような大変面倒くさい式をやらなくてはならない。ですから、学者というものはそのわずかな差を計算するために一年も二年もかけるということになっております。これが基本でございます。ですから大ざっぱに言いますと、川の勾配で海の水深を割りました分だけ入ってくる。  ただいま長良川が問題になっておりますので、長良川は、これまた河床がでこぼこしておりますからそうきれいにはいかないんですが、大ざっぱに言いますと五千分の一ぐらいの勾配を持っておりますので、五千分の一で河口水深の七メートルを割りますと三十五キロという値が出てくる。だから、ほっておけば、長良川は水が一滴もなくなれば三十五キロまで海水が入ってくる。これをわずかな真水が流れたときは少し押し戻し、たくさんの洪水が流れたときはうんと押し戻してくれるという機構を持っておるわけです。  そうすると、ちょっと学問的な話になりますが、この押し戻す機構は何かといいますと、真水が持っております圧力、それからもう一つはここの境ですね。この境界面というのは大変問題なんですが、ここには波が立ちます。水面には波が立たないんですが、水の中に波が立ちます。これはもう十九世紀ごろからヘルムホルツあたり計算をしておったことで、そのこと自体は不思議ではないんですが、この波が立ちましてこれが摩擦役目をいたします。これで真水が下の海水を引きずってちょっと押し戻してくれる。それから、もちろん底にでこぼこがございますので、これも摩擦海水の入ってくるのを少し抑え込んでくれる。ですから、水の圧力とこの摩擦が一体になりまして塩水くさびがどこまで入ってくるかということを押しとどめるということになります。  それからもう一つは、ちょっとこういうことが書いてありますが、これは全部の方が認めているわけではないんですが、塩水くさび先端付近には、私がこれまで観測しました日本の川ですと、ちょっとへっこんで盛り上がるというところができているんです。これは、塩水くさびの中に入りますと流速が落ちますので、多分ここいら辺に土砂堆積が起こるんじゃないかと言われております。これは学者の百人が百人認めている話ではございません。  それではあんな面倒くさい式があるのかどうかということで、私も若いころ同じ疑問を持ちまして、これは昭和三十四年に私がやった実験でございます。学生卒業論文でやったものでございますが、これが百分の一・二七というかなりきつい勾配の小さい水路です。小さい水路大学の中につくってもらいましてその計算をしたんです。そうすると、この黒い線が計算値でございますが、いろいろ流量その他書いてありますが、何となくこういうふうな形になってくる。ここの付近とそれからここのところはちょっと計算が正確にはできない。これはなぜかといいますと、数学で申しますと特異点ということになっておりますので、計算をすると計算機の方が動かなくなってしまう。これは今でも同じことでございます。  ですから、ここのところはちょっと工夫を要するんですが、実際にもここのところはもやもやとしておりまして、ここももやもやとしているということでございます。自然の法則というのはそのようになっておると思いますが、これは実験室の中ですから大変きれいな塩水くさびができることは確かでございます。それがただいま御説明いたしましたような、この境目に立つ波の立ち方でこの摩擦係数というのは変わってまいります。変わってまいりますから、大変に大きな波が立つときは塩水くさびというのはここら辺で押しとどめられるし、それから大きな波が立ってエネルギーをどんどん失っていくときにはこのくらい奥まで入ってくる。したがいまして、いろんな状況によってこの塩水くさびというのは上がったり下がったりする。少なくとも実験室の中ではそういうことは確認をされておることでございます。  ただこの計算は、これは全く私が計算機を使ってやりました空想上の塩水くさびでございます。しかし、この計算一つ一つは適当な波の立ち方を考えてやればこのくらいはあるということでございます。実験室でこのくらいあるのは当たり前でありまして、これをいかにして現場に持っていくかという話になるかと思います。  なお、波のこの摩擦につきましては大変に昔から異論がございまして、これは私がその後昭和三十九年につくりました図表ですが、その摩擦の出方は波によって違うということであります。これを最初に言い出したのは東北大の今名誉教授をされています岩崎先生でございます。私がその図表をつくったんですが、岩崎先生データとそれから私とか、外国データとは少しずれているんですが、しかしいろんな波を考えて理論上計算すれば、抵抗というものはある差異という非常に微妙な係数になりますが、こんなことであるのではないかということでございます。  これが現在では、その後三十年近くたっておりますので大変大勢の方がお調べになりまして、いろんな神通川とか九頭竜川とか利根川その他全部まとめ込みますとこんなふうな形になるのではないかというデータでございます。そして、これは私のつくりましたのを下敷きにしているのは確かで、なぜかと言いますと、浜田、大坪、バレンボア、椎員、この玉井先生というのは今東京大学の、私も指導したと思いますが教授をされておられますが、こういった大勢の方でその後いろいろ確められてこういう形になったということ、これが現在の姿だろうと思います。  この塩水くさびの中というのは大変に妙な形をしておりまして、この中でございますが、この中の流速は、こちらが海でございまして、こちらが川で、上の真水が流れている方は海側に向かって流れていて、その下の層は、その近いところは海側に向かって流れているけれども一番底の方は上流に向かって流れているという非常におもしろい現象を起こします。これが先端にいくとそれではどうなるのかといいますと、先端にいきますとこれが縮まっていって、数学計算がうまくいかなくなりましてもやもやとしてくるということになってまいります。  したがいまして、ここら辺で運ばれてきた土砂が実際の川は、これは私とか私のMITの先生のイペンとかそこら辺が一生懸命計算をしたのでございますが、その後東京工業大学日野教授計算をされまして、実際の川はもうちょっとこういう形になっているのではないかということです。そうすると、ここら辺へ運ばれてきた土砂が沈積をいたしますので、先ほど言ったような堆積が起こるということでございます。それが塩水くさびの大変な挙動でございますが、実際はそう簡単にはいかないということでございます。  長良川、たしか昭和三十七、八年ごろだったと思うんですが、亡くなられました嶋教授とそれから東大の玉井先生、そのころは学生さんでありましたが、長良川で問題が起きまして私がはからせていただきぎした。これをはかるというのは、また一口にはかるといいましても大変な話であって、当時は相当大騒ぎをしておったわけでございます。  ところが、この長良川塩水くさびというのは大変不思議であって、大変不思議というのは実は不思議じゃなくてどこの川もそうなんですが、塩水くさびと一口に言いますけれども、塩水くさび的な緩混合が生じている形になっている。不思議なことは、大潮のとき、海の潮が高いときには意外に奥まで塩水が入ってこない。それから潮汐の潮位差が減ってまいりますと、すっと濃い塩水が入ってきて、当時は北伊勢工業用水の第一取水場、そのころは一つしかございませんでしたが、それがとれなくなったということでございます。  これは、私がこのお話をいただきましてからちょっと古い記憶を呼び起こしまして、それから現在の状況なぞは建設省が出しておりますパンフレットに出ておりますので、それから少しトレースをしてみますが、その北伊勢第一というのはこの十キロ地点よりちょっと上流十五キロぐらいのところにあったと思っておりますが、当時はここら辺まで、ここにマウンド一つありまして、ここに塩水くさびがひっかかってしまう。このマウンドは取ってしまったのかといいますと、そうではなくて、当時でもこのマウンド塩水くさびはある時期にはとまるんです。ところが、大潮でない晩になってまいりますとこの上流塩水くさびが乗り越えてどっと入ってくるということです。それで大丈夫だと思っていると急に濃くなるということで大変に難渋をされている。  それで、当時はいろいろ計算をしたわけですが、当時の技術力、それからお金の問題もございまして、もう少し上流に移せばよかろうと。うんと上流に移しますと、今度は川に水がなくなってきますのでまた別の問題が出てまいります。それでできるだけ下流で運転できるところといいまして、現在でもこのマウンドみたいなものはちょっと残っているように見えますが、こういうところでこれにひっかけてとめておけば十年とかそこいらはもつであろうということでございます。何とお答えしたか私覚えていないんですが、一年に何日かはこの第二でもとめなくてはならないですよ、これは確率上必ず起きますと。いやそんなにとめられてはという話でありましたが、当時はそういうことで今の十七・六キロかなんかのところに移ったんだと思います。  ところが、もう一つ河口部にこんなふうな出っ張りがありまして、これは多分昭和の初めか大正かわかりませんが、昔は恐らくここら辺でとまっていたんじゃないかと、こう思うケースがございます。それからもう一つは、ここにもう一つ怪しいのがある。二十キロメートル地点にまたこれが積もる。これは何かの流量のときに塩水くさびが多分ここまで来ているのではないか。それからこれもちょっと怪しい。これは違うかもしれませんが、これもちょっと怪しい。それからもう一つ昭和四十五年ごろ、ここにマウンドがこうありまして、あったと思うんですが、これがこんな形に今残っておりますが、ここら辺までも来ているときがあるのではないか。これは地形の形でこんなふうな形をしておりますので、これも確かではございませんが、当然渇水で状況が悪いときにはそういう状況になっているのではないかと思います。  ただそのとき工夫をされて、上の方から水をおとりになるとするとある程度は防げますが、長良川の嫌な点はそれが入れかわってくるということです。例えば常にこのようにまざってくる。これは利根川、江戸川、大野川、豊川ですか、私どもが調べた範囲ですとそのくらいですが、それからタイのチャオプラヤ川になりますとこういう形ではなくて大変まざっています。長良川日本の川の一つでございまして、そういう動いている間に今度はこれが砕けてまざり出すと急に上まで濃い水が上がってくるということでございます。そういうことを私は調べまして、これも三十数年前でございますが、ほぼ学問的にはそのようなことだったと思います。  簡単でございますが、これにて説明を終わらせていただきたいと思います。
  4. 安恒良一

    委員長安恒良一君) どうもありがとうございました。  次に、山本参考人にお願いいたします。山本参考人
  5. 山本荘毅

    参考人山本荘毅君) きょうは参考人にお呼びいただきまして大変光栄に存じております。  最初にプレゼンテーションを二十分ぐらいやれというお話でございます。何しろ急にお休みの前にそういう御下命があったものですから、余りうまく準備ができませんでした。このメモを一枚差し上げておきましたので、この順でもってお話を申し上げたいと思います。  私は自然科学の系統の学問をやっておりまして、多少工学の方とは感じが違ってまいります。自然というものは何か。そのために、まず川というものは何かということをお話してみたいと思います。  何か先生方にこういうお話をするのは蛇足であるかもしれませんけれども、非常に大事なことでございまして、ぜひ申し上げておかなければならないということでございます。そこに小さな字で書いてありますように、地面というものは海面よりも必ず上にあるというのが普通でございます。非常に極端に違う例もございますけれども、地面というものは海より上のものを地面というんだ、そういうこと。それから二番目には、海というものは陸地が削られるときのベースレベルになる。つまり、川が陸地を削ってまいりますが、海よりも下までは削らないという大原則がございます。これは浸食地形の大原則でございます。それから三番目には、河床それから川の水面というのは、普通は海面よりも高いところにある。だから水は海面に向かって流れるんだと、そういう三つの大原則がございます。  そういう原則の上に立って川というものを考えてみますと、川というものは水系の水、あらゆる水と水の中に溶けているものを運ぶところのトラックである、運搬軍であるというふうに考えられます。これは川の水だけでなくて、川というものは周り沿岸地下水排水をいたします。水と物質を運搬するトラックである。二番目に、河川地面を削るブルドーザーであるということです。つまり、川というのはもう絶えず地面の上を削ってそれを川に流している。  けさNHKをごらんになった方もいらっしゃると思いますが、富士山の大沢崩れの話が出ておりました。崩れて大変だということで、都立大学先生はあれが崩れるのは自然だというふうに説明をしておりました。要するに、海面と山の高さの差が大きくなればなるほど、それから山と海の位置が近ければ近いほど川というものは急になるわけです。急になればなるほど浸食が行われ山が削られてくるんだということでございます。山をしょっちゅう削っているブルドーザー役目をしている。  それから三番目でございますが、そういうような形で川が地面を削りますと、最終的な形というものは指数曲線というものになるわけです。(OHP映写)  それで、日本の川はこういうふうなことですが、まず外国の川を見ますと、ヨーロッパの川は大抵きれいなこういうような形になっておりまして、これを指数曲線と申しますが、大変平らなスムーズなこういう曲線を川の流断面が描いているのが普通でございます。ところが、日本の川というのはこんなふうな、例えば利根川、富士川、木曽川、吉野川、信濃川、最上川、利根川だけは中流部ぐらいまでこういう形をして指数曲線になっているが、ほかの川はみんなきれいな指数曲線をつくっていない。  これから申し上げる長良川についても全くそういう形にはなっていないわけです。ですから長良川の場合にも、ちゃんと水を流すのが川の役目ですから、この水をちゃんと流してやるためには断面を大きくして、幅を大きくしてあるいは高さを高くして断面形指数曲線にしてやらなければいけないわけです。長良川というのは実際にこういう自然のあるべき姿にはなっていない。そういうものを自然の状態に、自然の浸食法則に従ったところの自然の状態に戻す必要があるということでございます。  五番目に、通水しゅんせつ塩水遡上、河口ぜきと、これは盛んに議論されているところでございますが、しゅんせつをやりますと、先ほど椎貝先生からお話がありましたように、必ず塩水つまり海水というものが上流の方に上がってまいります。どこまで上がるかというのは先ほど来御説明がありましたけれども、塩水が必ず上がる。そのためにはどうしても河口ぜきをつくらなければならない。そのためにはというのは、塩水が上がっても大丈夫じゃないかという御議論もあるわけでございますが、その問題についてはその次にお話しいたしますが、つまり河口ぜきをつくって塩水指数曲線の上にずっと上がっていかないようにすることが一番大切であるということでございます。  それから二番目に、塩水化の問題を取り上げてみたいと思います。  これは私に与えられた課題は、私は地下水専門家でございますので、恐らく川が塩水化した場合にそれが地下にどういうふうに入っていくかといったようなことを話せというふうな御意向であろうかと思っております。  まず、塩水遡上の問題の前に、川というものは川の沿岸地下水と非常に関係があるわけです。つまり、普通の場合には川とそれからその周辺の地下水とはつながっております。そのつながり方でございますが、つながり方は普通の川でありますと、川は先ほど排水をする道具だというふうに申し上げたとおりに、排水をするということは川の水位周り地下水水位よりも低くなってきているわけです。この絵がそうでございます。これが川の水位でありますが、この川の水位よりも両側の地下水というものは必ず高くなっている。水は高いところから低いところに流れますから、そうしないと地下水を川が排水することができないわけでございます。  ところが、場所によっては、例えば扇状地の扇状川といったようなものがございますが、その場合には川の水が地下水よりも高くなっている。この場合には川の水が地下水の方に抜けてまいります。逃げてまいります。普通これを伏流というふうに呼んでおりますが、こういう川は実は例外でございます。  それで、川の塩水化塩水の遡上の問題は今椎貝先生が非常に詳しく数式をお使いになって説明をされておりますから、ここでは私は省略をいたしまして、二番目の地下水の中にどういうふうに塩水がまじっていくかということについてお話を申し上げたいわけでございます。  地下水あるいは湖水みたいなものの中に塩水が入ってくるメカニズムというものは、ここに書いてありますような、これが海の中に浮かんでいるところの島でございます。その島、これは大西洋の島の中でガイベン・ヘルツベルクが十九世紀の初めに発見したと言われますが、島のこういうところに井戸を掘っても、これが海面でございますが、この海面よりも下の方まで井戸を掘っても島の地下水の中に全然塩水が入ってこない。真水である。これは大変不思議なことだということで、その原因を究明したわけでございます。  それで、実はそっとしておきますと、島の地下水水面周り海面よりも高い場合にはその下の地下水の高さの四十倍の深さまで真水である。つまり、海面上の淡水の厚さをhといたしますと、それから下に四十倍のHという深さまでは真水であるという法則を発見いたしました。これをガイベン・ヘルツベルクの法則と申しております。ということは、これは逆に申しますと、例えば仮に島の上で井戸を掘りまして盛んに地下水を上げてやります。上げて、そのために水位がゼロメートル、つまり海面まで下がったとしますと、hがゼロでございますから、ゼロに四十を掛けようと百を掛けようとゼロになるわけですね。つまり、ここにありましたところの塩水がぐっとここまで上がってきてしまいます。それで塩水化というのが起きるわけです。  現在、日本ではいろんなところで地下水をくみ上げ過ぎまして、特に海岸の工業地帯のようなところでは地下水をくみ上げたために塩水化が起きている。水位を必ずゼロメートル以下に下げないようにしてくれというふうに言ってあるんですが、工場などではみんなそれを忘れたか無視したか知りませんが、ゼロメートルよりも下に下げてしまう。そのために地下水が全部塩水化してしまうという現象が起きておるわけでございます。  一度地下水塩水化いたしますとなかなかもとに戻りません。これもいろんな計算の式がございますが、簡単に申し上げますと、一回普通の地下水塩水化をいたしますと大体六十年ぐらいは真水に戻らない。下手をすると、深いところですと百年ぐらいの間もとに戻らないという結果がいろいろ報告されておりますし、計算によってもそういう結果が出ています。地下水というのはなるべく塩水化してほしくない。  それで、今は海岸のことを申し上げたんですが、今度は川のことを申し上げますと、この場合には、この青いのが地下水水位でありますが、地下水水位が川の水面よりも高い場合でございます。この川の中に全面的に塩水が入ってまいりますと、その下の今まで真水であったところがこういう形になって全部塩水になってしまうわけです。それから二番目には、仮に今度は川の水位の方が地下水水位よりも高い場合で、これはもう文句なしに川の水が塩水になれば地下水が全部塩水になってしまうということがはっきりとしておるわけでございます。  三番目に土壌ですが、地下水塩水化が、ちょうど長良川の周辺でございますと水田が多いわけでございまして、水田の土壌をどういうふうに悪化させるかという問題がございますが、これは水田の下の地下水塩水化をする。そういたしますと、例えば稲なら稲の成育期でも水をどんどん稲が吸い上げます。それから耕作をしていない場合には、表面が粘土でございますから水が毛細管現象で上に上がってきて、この塩が全部土の中にたまってしまう。こういう現象は必ずこの地区でも出てくるわけでございます。世界じゅうでいろんなところの土壌が塩類土になっていくという現象、特に乾燥地域でございますが、そういうところでは塩水化が非常に進んでおって、もうどうにもならない。仮に洗い流そうと思っても洗い流す水がない。それから、洗い流すとかえって逆にまた、下の方の塩分を含んだ地下水を上の方に上げてしまうと余計に塩水化する。そういったような土壌の塩水化、塩類土ができるところが非常に大きな問題になっておりまして、ここでも全くその例は同じでございます。  これは先ほど椎貝先生が御説明なされたのと同じでございますが、弱混合という場合がこの場合でございますが、これは先ほどマウンド説明がありましたが、このマウンド、こういうふうに高くなっているところがありましてここでとまりますが、高くなっておりますとその裏が必ずくぼんでまいります。マウンドの裏にはくぼみができます。そのくぼみに塩水がたまりますと、これまた先ほど申し上げましたように三十年とか五、六十年とれない。大洪水になってはっとくぼみまで洗ってくれればいいわけですが、そうでないととれないということがよく起きるわけです。  それで、この二番目のように、この形をきれいな指数曲線に整えてやりますと流れがよくなるわけでございますが、そうしますとゼロメートルの線までずっと全面的に海水になってしまうわけです。それで、ここで河口ぜきをつくりますととまる、上流の方が真水になるということになってくるわけでございます。  私、環境問題をちょっと後でまた時間がございましたら申し上げますが、人間が何か活動いたしますと必ず環境に影響が出るわけでございます。その場合に、それに対処するのにはどうしたらよいか。そこには経済学で言うトレードオフの原則が働くのではないか、特に住民側のトレードオフというのは非常に大切ではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  6. 安恒良一

    委員長安恒良一君) どうもありがとうございました。  以上で午前の参考人の方からの御意見の聴取は終わりました。  これより参考人の方に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  7. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 きょうは、椎貝先生山本先生、大変お忙しい中を御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  早速先生方に伺いたいんですが、一つその前に、今お話をお二方から伺いまして、私は、消費税の公聴会それから六ケ所村の放射性廃棄物の公聴会と出ましたが、きょうはちょっと奇異な気がいたします。二つの公聴会のときは反対の立場からと賛成の立場からということで意見が述べられましたが、きょうはお二人とも賛成の先生たちなので大変戸惑っております。  まず私は、今いろいろ数式を並べられましたが、数式でもって果たして何千年あるいは何百年、何十年という人の英知とかそこの住民の知恵によってつくられてきた自然なり環境なりというものが解決するのかどうか、大変に疑問を持ちながらお話を伺いました。そういった学問領域での質問をしようとは思っておりません。それからもう一つ疑問に思っておりますのは、二千二十七人という学会の方たちが反対のアピールをしておられます。そういった先生たちの声、魚類学会とか陸水学会とか生態学会、そういう方たちの声が一切反映されてないということにも疑問を持ち、そういった声も代表したいという気がいたします。  一番最初に、椎貝先生に伺いたいんですが、この長良川河口ぜきの問題に何年ぐらい前から先生はお取り組みでしょうか。
  8. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) ただいまいろいろ御質問いただきましたが、最後の質問は……
  9. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 だけで結構です。
  10. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) 何年前からと言われますと、私は河口ぜきに取り組んだということはほとんどございません。なぜかといいますと、長良川塩水くさびに取り組んでまいりましたのがやや三十年前ということで、この塩水遡上の問題というのは当時大変に深刻な問題でございましたので、それに取り組んだのが三十年ぐらい前からということでございます。ですから、河口ぜきにつきましては、当然新聞に出れば関心はございました。
  11. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 結構でございます。ありがとうございます。  先生にその御専門からあえて離れて伺いますが、川というのは生きておりますが、一合お話しのあった問題以外にいっぱい私は、例えば利根川にいたしましても、それからもっと山の中へ行きましたらば黒部の渓谷とかダムがつくられる前から実は山登りをして見ております。ダムができたための弊害というのもいっぱい見ました。川を加工する、もとの仕事で言えばそういう番組もつくりました。何年もかけていたしました。マイナス面もたくさんあるわけです。河口ぜきによるマイナス面というのは皆無だとお考えかどうか、イエス、ノーだけで結構ですが、お答えいただきたいと思います。
  12. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) 最初に、川は生きておりますかという御質問ですが、大変ぶっきらぼうなお答えになるかもしれませんが、川は残念ながら生きてはおりません。これは、私や犬や魚が生きているような意味では生きていないのです。それで、ただ生きてあってほしいというような気持ちは私は持っております。ですから私は川を愛して川が私を愛してくれれば大変よろしいわけですが、残念ながら川は自然法則に従って動きますので、どのようにしても生きているということではございません。  それから河川ぜきそのものにつきましては、洪水を防ぎそれから塩害を防ぎということでありますと、これまでの利根川その他の実績から見ますと、もちろんトレードオフございますけれども、これでかなりいろいろな問題を解決できるのではないかと考えております。  ですから、イエスかノーかだけでありましたらイエスでございます。
  13. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 私が伺いましたのは、マイナス面はないのかあるのか。
  14. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) マイナス面は当然あると思います。これは、一つはこういうものをつくりますと大変に費用がかかりますし、それは結局は我々の、我々といいますかおつくりになるということは国民の税金を使うことですから、これはそれだけの費用はかかると思います。
  15. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 委員長の指示に従って発言してください。委員長が指名してからそれぞれが発言をする、わかりましたか。
  16. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 手を挙げていますけれども。  お金のことを伺っているのではなくて、マイナス面があるかどうかということです。川に対しての影響、住民に対してのマイナスの影響があるかどうかを伺っているんです。
  17. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) それは私が全部住民のことを調査してみたわけではございませんが、考えられるマイナス面は頭の中で考えれば幾つでも挙げることができると思います。
  18. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 今は時間がございませんので、後ほど、先生が考えていらっしゃるマイナス面、幾つでもあるとおっしゃった、それを一応伺いたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  19. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) 結構でございます。
  20. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 それでは、きょうも長島町の古いらしていると思いますけれども、住民の方から、もう既に塩害に侵されていると、しかし塩害はない、もっと問題は洪水だし堤防の問題だと、この間現地に伺ったときにも言われました。それから朝日新聞の調査によりますと、一時工事をぜひ中止してほしい、そういうことを希望する人が三九%、それから建設を中止すべきであるという人が二三%、合わせて六二%でございます。そういった民意を一体どう包括的にお考えになるかということを両先生に伺わせていただきます。
  21. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) お答えいたします。  民意ということになりますと大変難しい問題になりますが、私は第一には塩害及び洪水に遭って直接被害を受けられる方のことを考えなくてはならないと思います。これを防ぎませんとどうしようもないわけで、三十年前でございましたら、その流域の方は大変に困難をしておる、その後長良川に破堤等もございまして、洪水の被害も大変だということは私は専門でございますから大変によく承知しております。  それから現在私はバングラデシュの水害対策の日本政府とイギリス政府の監理委員長もしておりまして、洪水が起きるとどのような惨状になるかということは日本だけでなくていろいろな国で見ております。したがいまして、そういうことを勘案いたしますと、洪水それから塩害に直接遭われない方の意見というのはもちろん大変重要でございますが、そこで直接遵われる方、それから遣われるけれどもかつて遭われたことのない方、これに対して配慮すべきだと思います。  大変重要なことは、私子供さんから作文をよく書いていただくんですが、洪水が起きるまでは私は人のことだと思っていましたと、洪水が起きたらやはりこれは恐ろしい。それから塩害も同じことだと思います。そういう意味で、私はただ数ではないと思います。これは先ほど先生が言われました数式ではないんですね。数ではなくて、細かく配慮して総括的なことで解決を図らないと、むしろ大変お困りになっている方、それからお困りになるであろう方をできるだけ配慮しなくてはならないと私は考えます。
  22. 山本荘毅

    参考人山本荘毅君) 私は、アンケートというものがどのような形でどこで行われたのか、よく調べないと何ともお答えができないわけです。アンケートによる数の暴力というものを非常に私は憂慮している者の一人でございます。  ただいまお話しのございました一時中断ということには私は理解を示しますけれども、全然やってはいけないということに対しては何ら科学的な根拠のないあるいは住民の方を全然無視している考えだというふうに考えております。
  23. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 山本先生に伺いますが、マイナス面がやはりないわけではないんではないかと思います。そういったマイナス面を椎貝先生同様お書きいただけたらうれしいと思いますことが一つ。  それから、私もマスコミに勤めておりました。朝日新聞の調査、私どものやります調査は非常に、今これは朝日の調査を使いましたけれども、十分に事前調査もいたしますし、科学的データに基づいてやっております。これも自後やはり朝日の調査というのを厳密に先生お調べいただきたいというお願いをして、多分時間だと思いますので終わりますが、最後に、プラス面が大きいという御主張ですが、マイナス面について椎貝先生同様どういうマイナス面があるか先生のお考えを、時間がございませんから後でお書きいただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  24. 山本荘毅

    参考人山本荘毅君) はい。
  25. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 では、よろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  26. 西野康雄

    ○西野康雄君 社会党の西野でございます。  両先生にはお忙しい中、ありがとうございます。  塩害論につきましては、私も大学院で水をやっておりました。修士論文が「吉野川、紀の川分水史」ということで、農水省の事業でございますが、いかにその事業が農業生産の上において役に立つか、こういうことでした。私の恩師が農水省がお見えでございまして山内豊二と申します。農業保険の世界的な権威で、その中で塩害論、干ばつ論をみっち力と仕込まれたつもりでございます。  そういう中で、参考人に来ていただいての質疑はいささか遅きに失した、建設省の論理は既に塩害の部分において破綻を来しておる。つまり、先日開かれました参議院の予算委員会で、佐藤三吾議員の質問に対して建設省の近藤河川局長は、もう塩害というものはほとんどなく、その塩害の克服の原因は淡水かんがいですということをお述べになっております。これは長島町においての例でございますが、長島町では既にパイプラインが馬飼頭首工から引かれておりまして、それがためにこの塩害というものも近藤河川局長、建設省自身がもうほとんどないと認めざるを得ないところまで来ております。これが一点です。  残りの〇・二%について、私は前から排水不良田だ、こういうことを申し上げておりましたが、いやそうじゃない、塩分が時々わいてくるんだということでした。そして、先日、環境特別委員会長良川の長島町を視察いたしました。そのとき案内をされましたのが、それほど塩害があるのならばいろんなところを見せていただければいいんですが、休耕田でございました。ここは排水不良田だと私平成二年の建設委員会で指摘をしておりました。そのときは何も述べなかった。いえ塩害田ですといいながら、聞かないときに答えてくれるんです。  先日、荒井開発課長が何と言ったか。先生方を御案内いたしました田んぼは道路近くにあって排水不良田ですと、こういうことをおっしゃいました。きょうはテープを持ってきてもよかったんでございますが、また自民党の理事さんから苦情が出るといけませんので、後で議事録を見ていただくとわかるかと思います。そして淡水かんがい、恐らく排水不良田のふできな部分を救済するために塩害として〇・二%程度が残ってくる。だから、排水不良田というものに対しての厳密なパーセントというものは出してこなければなりません。  そしてまたパイプライン、これは地下からの塩分を含んだ水、淡水かんがいの前から若干下がっておりますから、非常に異常な下がり方で〇・七%ぐらいまでになっております。あそこは一遍田んぼの土をはがしまして地下からの水を遮断する、そういうふうな遮断材を入れまして上からもう一遍土をかぶせて田植えをしている。そういうふうな方法もございます。どちらにいたしましても、建設省自身がもうほとんどない、こういうふうに長島町において認めております。  続いて、建設省は海津町、平田町、ここの上流三千ヘクタールがしゅんせつによって海水が遡上をいたしますというと塩害になる。ところが、長島町と同じようにパイプラインが引かれております。これは事業開始一九八〇年、そして一九九一年でほぼ完了をいたしました。受益面積が三千百ヘクタール。これは田んぼも含んでおります。そもそもの整備対象区域は二千九戸二ヘクタールです。水の契約量は毎秒十一トンでございます。詳しく言いますと、海津町長良川側で千六十二ヘクタール、平田町で九百八ヘクタール、そして海津町揖斐川側で九百三十二ヘクタールでございます。塩害防止のパイプラインが既に海津町、平田町においても引かれております。そして長島町においてもうほとんどないと言っております。さらにその上流では既にでき上がっております。揖斐川から一つ、そして長良川勝賀地区から二カ所。  そうすると、これは後でまた論じますけれども、塩害防止の対策が既に練られておる中で、海水が遡上をするから塩害が起きるんだという論はもう破綻をしております。もしこれが、いや塩害が起きますよというのならば、今度はそのパイプラインそのものの何十億、何百億というものがむだになります。九十七億六百万円と七十七億九千四百万円というものがこれがどぶに捨てられるということになる。明らかに自己矛盾をここで来しております。論理が破綻をしております。塩害があるのなら、それをば対策で講じておりますから、そういたしますと、今しゅんせつをして塩分が上がっていく、塩分が上がっていきますよといったってもう既に対策が講じられているんです。  そして、海津町の前町長の伊藤光好さんが自分の思い出話の中で、井戸を検査したらもう三五〇ppmの塩分の地下水が上がってきてトマトが枯れましたよということです。その海津町、平田町には六十社、七十工場がございます。工業用水としては一〇ppmがリミットでございます。そうすると、既にもう工業用水として使えない地下水がここに存在をしておるということを海津町長自身が自分の思い出話の中で、井戸の塩分を調べたらそう出ておるということですから、既にこれは工業用水としてはもう使えないというそういうふうなリミットに達しております。それを考えますと、どちらを向いても今の塩害論というものは、これは破綻を来しておるということになるかと思います。  さらに、しゅんせつが必要なのかどうかの論についてでございます。  先日、長島町において開かれた公聴会におきまして、既にしゅんせつしなくても河積が足りているんだという、これは裁判にも出した記録でございます長良川縦断図というもの、この中で懇切丁寧に河積が足りているということをば村瀬惣一氏がお述べになりました。これに対しての有効な反論を出してきなさい。建設省が七割しか河積がありませんよ。私がきっちりしたものを出してきなさい、こう言いましても何一つ出してまいりません。何キロメートルから何キロメートルは十割で足りていますとか、そういうふうなものだけでございます。  きっちりと河床とそして堤防の高さを照らし合わせてみます。そうするというと、建設省が主張する七千五百立米・パー・セク、これに対してはもう十分に流れている。ですから、しゅんせつはしなくてもよい。そこの論に対して有効な反論がまだないわけです。具体的なものは何一つ出てきません。ですから、塩害論としゅんせつ論の中で自己矛盾を今建設省が来しております。内部文書を見ましても、塩害論だけではとても弱いから何かほかのことを考えよと、河川局開発課の方に指示を出したりしているのが昭和四十年代の文書にございました。  ですから、せっかくお越しいただいて本当に申しわけないと思うのは、既にこの塩害についてはもう設備ができてしまっておりますから、これ以上何も申し上げる部分がないと言ってもいいかと思います。取り返しかつかない、そういうふうなことをおっしゃっても、もう既に海津町で工業用水としては使えないし、そして長島町で、これは昭和五十二年から五十七年の調査で、その時点ですら長島町の中央部の第一帯水層、G1と呼ばれているところですが、三千五十ppmという非常に高い塩素イオン濃度の報告がございます。もう既に地下塩水化いたしております。  よしんばしゅんせつをして堤防というものを、堤防のかさ上げというんですか、そういうふうなものができない。道路があるあるいは鉄橋がある、こういうふうなことをおっしゃるんですけれども、堤防を高くしてきて、淀川だとか神崎川の例を見るとわかるんですが、道路橋の方が低いんです、堤防よりも。果たしてそれはどないするんだろうかとじっと観察をしておりますと、そのへっこんでいるくぼんだ部分の堤防の横の方に鉄の遮断するゲートがある。それがぐうっと洪水で危険なときには道路をこういうふうに横断をしてきて、その道路の部分を鉄の扉で堤防として使ってしまう。ボディーには閉鎖中という大きな文字が書かれております。ですから、そういうふうな堤防のかさ上げ論で道路が邪魔になります鉄橋が邪魔になりますといっても、その論も実はそういうふうなゲートがあるんだということです。それを御指摘いたしたいと思います。  余りもうだめなんだと言ってしまうと、せっかく先生方にお越しいただいたのにあれなんですけれども、山本先・生がいいことをおっしゃってくださいました、田んぼの下は粘土なんだと。そのとおりなんです。私、口を酸っぱくして言っておるのがございます。立田村のレンコンの例を出して、下は海成粘土層です、化石水が随分と含まれておるんです。それが長良川の、立田村の場合は木曽川ですけれども、下から通ってきたものがこの化石水を含む粘土層に当たってそこから搾り出しかあるんだ、その塩害があるんだということをさんざっぱら言っているにもかかわらず、いやこれは海水遡上の塩分ですと、こういうふうなことを言っているんです。  本当に山本先生にありがたい、田んぼの下に粘土があるということをば先生みずからがおっしゃってくださいました。そのとおりでございます。こんなところに水をばいっぱいためるというと漏水、漏水はないと建設省は言っていながら、いろんな水道を使って下からはい上がってくるんですということは河川局長の答弁を見ると出てきているんですね。そうすると、そういう粘土層にぶつかった水が当然のごとく、片方で真水の淡水域でありますけれども片方で塩害としてのものが出てくる、こういうことになります。私、前からこれも指摘しているんです。  ところが、これに対しては建設省はそうじゃないと言うけれども、きょう山本先生にお越しいただけて、そして私うれしいと思うのはその部分でございます。かえって塩害が生ずるということをば御指摘くださったかと思います。  そしてまた椎貝先生、私の方に一番新しい河床図がございます。もしお入り用でございましたら、恐らく建設省より我々の方が丹念に調べましたので、それもお渡しをしたいと思います。  ですから、塩害論ではもうこれは論理が破綻を来しておりますから、私質問時間はまだございますけれども、もう設備もでき上がっているし、すべてがもうでき上がってしまって、建設省自身が論理破綻を来しておりますから、もうこれで結構でございます。
  27. 安恒良一

    委員長安恒良一君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  28. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 速記を起こして。  質問を続けてください。
  29. 西野康雄

    ○西野康雄君 そうしたら、今申し上げたことに対して、椎貝先生そして山本先生に何か感想がございましたら、お願いいたします。
  30. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) ただいま大変に重要な御意見をいただいておると思います。ちょっと私、感想をひとつ申し上げて、お答えをしたいと思います。  私は賛成派だと思われておりますが、私は結果として賛成なのであって、さっきちょっと申し上げたように、河口ぜきをつくるときにはいい点それから悪い点、これは必ずございます。どのようなことをしてもいい点と悪い点とがございます。私はぜひ先生方にお願いしたいのは、そういうことを両方踏まえて判断していただくことをお願いしたいと思って選挙をいたしておりますので、最初からこれは反対これは賛成というような人間があるわけではございません。例えばもし反対派の方が私のところへおいでになったら、反対派がお気づきにならないぐあいの悪い点というのは幾らでもあるんですね。しかし、どういうわけだか私は結果として賛成だと言っておりますので、反対派の方が全然来ないんです。これは私、学者でありますから、何も恥ずかしくないのでそれを申し上げております。  それで、大変に長い御質問をいただいて、それに短い時間でお答えするのはやや不公平なんですが、誤解を受けない範囲でお答えしたいと思います。  まず、私どもぜひこの委員会で御審議いただきたいのは、決してきょう、あした、来年、再来年、五年先、十年先という点で御判断をいただきたくないということでございます。やはり私どもは私どもの子孫、二〇一〇年、二〇二〇年、二〇三〇年というところをにらんでぜひ御審議いただきたいと思います。そうしないと、少なくとも私とか私の家族が投票した一票というのはむだになると思います。その点をぜひお願いしたいと思います。  そして、今私思い出しますと、昭和三十年代からこういった問題を扱っておりまして、その当時は米は一粒でもたくさんとりたいというのが日本国民の願いでございましたし、それから農民の方の努力でございました。それで、実はこれと並行いたしまして私はダムの水を一度でも上げるという研究をやっておりました。一度でも上げればそれだけ収量が上がるんだ。一度でも温度の高い水をダムから出してほしい。それから下の方からは、ほんのわずかでも塩分を排除してほしい。  それは昭和三十年時代で、もうそういう時代は過ぎたんではないかと言われるかもしれませんが、私はその腹の減ったときを身をもって体験しておりまして、決してそれは来ない話ではないと思います。そして、農民の方が今休耕田と言っておりますが、決して廃新田ではないんです。そして、国民の方がぜひ休耕田をまた掘り起こして田んぼにしてもらいたいという時代が来ないわけではないと思います。そういうことが来なければよろしいんですが、来る可能性はございますので、それを勘案してぜひ御検討いただきたいと考えております。  それで、ちょっとけさの某大新聞の記事でございますが、これは全部御信じにならないように。カール・セーガンという方が環境問題でシンポジウムをなさいまして、これは高名な学者でございます。どう書いてありますかといいますと、「地球温暖化については不確実な点もある」、ただ「二〇五〇年には主な大陸で平均気温が五度近く上昇する。日本も高温部に完全に飲み込まれる。また広い範囲で干ばつが起きるだろう」、そういうことでございます。私は、これはちょっと大げざ過ぎるのではないでしょうかと思いますが、「干ばつは深刻な水不足を生み、水戦争が起こるかも知れない」、こう言っておられます。  そして、これは決して私が勝手に書いたものじゃなくて、カール・セーガン氏が言っておるんです。こういう予測というのは、決してカール・セーガン氏が細かく計算をされているんではないんですね。御自分の学識をもとにして、それまでのいろいろな体験からいろいろな相当高度な判断をなさった結果だと思います。こういう方もおられます。あるいは大変に楽観的で、いや将来とも日本は米をつくらなくてもよろしいし、水もあり余っているということもあるかもしれません。そうなれば大変結構だと思います。  ただ、今パイプラインで塩害がないと言いますが、それは確かに今塩害はないんです、少ないと思います。しかし、パイプラインの水は枯れることはございます。これは川に水がなくなればダムの水を出すことになりますが、それは維持用水になりますので、かなり早い機会にパイプラインの水はとまります。ですから、現在大丈夫だからといってだめだということではないんです。現に、昭和三十年代はそういう時期でございました。  それからもう一つ、これは私出所が何かちょっとわからなくなっているんですが、明治初年ぐらいの地図だと思います。これは長島町だけじゃなくてこういうところまで干拓をしておりまして、皆さん輪中をつくってお住みになっているということでございます。そういたしますと、ここら辺の方はここら辺から水がとれたということだと思います、それは当時の方は。  私、利根川のときにお年寄りの方に聞いたんですが、米は農林省の方は三〇〇ppmの塩水では育たないと言っているけれども、自分は二〇〇〇ppmでも育ててみせる。しかしその二〇〇〇ppmというのは大変不安定で、ことしとれたかと思うと来年とれなくなってしまう。それから一遍海水をかぶればだめになるし、真水が来てもだめになる。大変に難しいもので、それは決して大学出のあなた方にわかる話ではない。しかしこれは大変に苦労だから、何とか防いでほしいということを私は直接言われています。  恐らく明治初年のこういう方も、パイプラインは当時ございませんので、ここら辺から恐らく水をとっておったということだと思います。しかし、それは苦しいからだんだんに改良されてパイプラインその他ができた。それから当時は、二〇〇〇ppmというのは恐らくここら辺でとまっていたのかもしれないという気もいたします。そうすれば、河口ぜきをつくることは総合的に判断いたしますと、明治までは戻らないと思いますが、大正とかその時代の水質に戻すということでございますので、やはりそれは環境的には私はプラスではないかということでございます。  それからもう一つお考えいただきたいのは、当時と違っておりまして名古屋市が大変に大きくなってまいりました。明治初年の時代というのは、日本の人口が三千万人でございます。今一億二千万人を数えております。ですから私は申し上げているんです。お互いに譲り合ってやらなくてはならない、そこをすれすれに生きている。日本がやってきていることは、二十一世紀の世界の姿を実験しておるのであるということでございます。したがいまして、そこのところをよく御勘案いただきますと、決して今塩害がないからといって大丈夫だということには私はならないと思います。
  31. 山本荘毅

    参考人山本荘毅君) 西野先生は農学部の御出身だということで、大変恐れ入りました。  ただいまのお話の中で前半の部分、つまり長島町に塩害がない、それから排水不良であるという点は全く私もそうだと思っております。それはただ現在そうであるということでございまして、長島町で塩害がないというのはパイプラインで水を引いてきてかけ流しをやっているわけでございます。そういったような方式は、例えば日本では八郎潟の干拓地でございます。今、大潟村になっております。あの場所では、海面以下の土地でございまして、しょっちゅう水を流して塩分を洗い去っている。そういうことでお米がたくさんとれるというような状態になっておりまして、全く同じでございます。  それから排水不良というのは、あそこは濃尾平野の中でも一番地盤沈下のひどいところでございまして、当然排水不良になるわけでございますが、しかしそのことはもしも堤防が壊れるような大洪水があった場合には大変に危険な状態である。だから水でも流して塩害をとめておくことも、もしも水が来なくなったら大変だということです。  それから右岸の方の海津町とそのほかの状態でございます。今私が後で申し述べましたことは、洪水が起きたときにどうなるかということを申し上げましたわけでございますが、長島よりもっと上流になりますと、この被害というのはもっとひどくなりまして、もろに塩害が起きるし、洪水の被害を受けるということになるだろうと思っております。
  32. 西野康雄

    ○西野康雄君 ありがとうございました。  名古屋の人口がふえるというのは、また将来、未来にわたって出生率というものをば勘案すれば有効な反論になるかと思います。カール・セーガン氏に対しての反論としては、やはり温度が上がると水蒸気がどんどん出てくる。そしてそれが雲になってどんどん雨が降るというふうな説があるということ、これが有効な反論になるかと思います。そしてまた、現在水が余っておるというふうなこと。それが使用量の倍ぐらいはあるんだということ。そういうふうなことを一つ一つ積み重ねていくというと、二千何年とかそういうふうなところの類推ですら、水というものに対して非常に過剰なほどの安全度が今見込まれ過ぎておるというふうなことで、この論については、また利水論は利水論でこれはやっていけばよいことではないかと思います。  我々も賛成だ反対だというふうなことではなくて、冷静に考えて、長島町民の生命、財産、そういうものを考えてみたときに、本当に今何が正しいのかというふうなことでございます。その論に立って、既に塩害の論が破綻を来しておるというふうなこと、そういうふうなことを述べさせていただいて、そろそろ時間になりました。  ありがとうございました。
  33. 井上章平

    ○井上章平君 私は自由民主党の井上でございます。  本日は、椎員先生山本先生、お忙しいところ御出席いただき、心から感謝申し上げます。  私もかつて大学で密度流の計算卒業論文でございましたので、ただいま先生の御講義を伺っておりまして、あの数式も大変懐かしく拝見したわけでございます。  御承知のように、長良川河口ぜきの建設の是非につきまして、議論が大きく分かれておるわけでございます。しかし本来、私どもが考えますのに、これは今同僚議員からもお話がありましたように、やっぱり純粋に科学技術の分野での問題でありまして、冷静にその是非を判断されるべきものと私も思います。ただいまの議論をお聞きいただいて、いわゆる反対論がどのようなものであるかある程度はお聞きになられたと思いますが、私は、この長良川河口ぜきにもちろん賛成という立場から、河川工学、地下水学の権威であられる両先生に二、三お伺いをいたしたいわけでございます。  まず長良川の治水対策でございますが、これは相次ぐ洪水で、この河川の流下能力を増大させるべく今努力が続けられております。かつて四千五百トン毎秒の計画高水流量を七千五百トン毎秒に上げたわけであります。これは主として昭和三十年代に起きた大洪水の実績に基づいてこのように上げたわけでありますが、これによりましてこの地域社会の洪水に対する安全度を格段に飛躍させようというような意図があるわけでありますが、これをどのようにして行うかということにつきましては、いわゆる木曽三川それぞれの地形等のいろんな条件からおのずから最も有効な手段が決まってくるわけであります。  この長良川につきましては、御承知のように、ほとんどを河道を拡大して流下能力を増大しょうといたしておるわけであります。そこで、当然のことながら下流域全体にわたって広範な河道しゅんせつが計画されたわけでございます。そこで問題になりますのは、ただいまもいろいろお話のありました塩害についてどう判断するかということになるわけであります。河床を掘り下げますと、当然ただいま椎員先生からのお話にもありましたように、塩水は遡上するわけであります。総量は格段に増大される。これは科学的な見地から思考できる論であります。これは何も長良川に限ったことじゃございませんで、私の乏しい経験から見ましても、ほとんどの河川河口域、づまり海水真水とがぶつかるところで、その双方の流れの挙動に対していろんな問題が派生じてくるわけでございますが、その対応に苦慮しているのが現実としてございます。  河床しゅんせつしたりいたしますと、当然のことながら塩害は増大するというのが常識的に考えられることでありますから、当然それに対するしっかりした対応なしてはそういったしゅんせつなどはできない。これはもう地元の反対が強くて到底できない話でありまして、必ず対応する。つまり、地元の強い要請を受けてしかるべくそれへの対応策を講ずる。その最も効果が確実なのは塩水を遮断する施設、つまり潮どめぜきであるわけであります。  このように考えますと、長良川についても一般の河川と同様なことが当然あると私どもは思っておるわけでございますが、しかしなぜか、ただいま議論がございましたように、しかもこの長良川河口域はいわゆるゼロメーター地帯でございまして、海水面より低い土地というような条件にもかかれらず、この治水対策に関連して塩害が極端に過小評価されている。ただいまのやりとりをお聞きいたしておりますと、特に長島町においてはもはや塩害は解決された問題であるというような話があるわけであります。これとても子細に検討してみれば、もう既に地下水はすべて塩水化して利用できない。辛うじて上流から三・四トンの河川水を導入することによって、これをかけることによって塩害を防止している。  この水はどこから来るのか。これはダム開発による水でありますから、つまり河口ぜきに対する反対論と同様な問題がこのダムにも起きておるといたしますと、これは場所のすりかえにすぎないわけでありまして、このような対応で事足りるというわけには、日本全体の環境という面から考えると、これはどういう議論になるかというような感じもするわけであります。ましてや河床をどんどん掘り下げていくということになりますと、これが上流に及ぶわけでありますから、現在はさしたる塩害が生じていないと言われる高須輪中にやがて及ぶでありましょう。これに対する対応をこの地域の人たちは強く望んでおるわけであります。先日も私、視察団に加わりまして参りまして、この地域の方々から切々たるお話を伺ったわけであります。  こういたしますと、いろいろ河口ぜきにつきましては、一〇〇%いい一〇〇%悪いという議論ではなくて、やはり社会的あるいはこの地域のこういった治水対策というような非常に大きなウエートを持つ問題の解決のために、どのような選択が可能かという判断をもってこれの是非を論じなければならない、このように感ずるわけでございます。  椎貝先生は、長良川塩水遡上問題について長く研究されておられるわけでございますが、こういったせきの設置者側の、賛成側の見解につきましてどのような御見解をお持ちでありましょうか、お伺いいたしたいと思います。
  34. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) 御返事申し上げます。  ただいま全般的に大変難しい話だと思いますが、私は自分の経験からいたしますと、利根河口ぜきを建設省、水資源開発公団がおつくりになるときは、私は反対でございました。なぜ反対かといいますと、まず私は、そういう構造物をつくらなくても塩水くさびというのは何とか予測できるではないか、それについていろいろ手を打っていけば十分に防げるのではないかと思っておった点が一つ。それからもう一つは、当時おつくりになっている建設省か水資源開発公団か忘れましたが、とにかくこれはコンピューターを使ってちゃんと制御するから大丈夫なんだと言われて、私はそううまくはいかないのではないか、こう思っておったわけであります。したがいまして、現在でもそういう問題は当然残るんですね。  利根河口ぜきをおつくりになって自然は一部変わったわけです。しかし、当時の利根川の自然というのもまた変わっておりましたので、それはやむを得ないと思いますが、おつくりになった後、最初たしかコンピューターも今で言うと電卓ぐらいのコンピューターであったわけです、当時は最新型のコンピューターであっても。それだけではうまくいかない。実は私はオペレーションの大変うまいと言われる方を呼んできまして、やはり電子計算機を使ったんですが、その方の言うとおりにオペレートしていくとうまくできるけれども、コンピューターに勝手にやらせたんではどうもうまくいかないということを思っておりました。  ところが、実験というのは偉大なものでございまして、やはりつくりました最初は何かどうもへまをやっているのではないかと思っていたところが、大変うまくなってまいりました。そして、それなりに状況判断をしてやる。それからコンピュー夕一の方も進歩してまいりまして、いろんな条件に対していろいろ反応ができるようになってくる。それを見ておりますと、ああなるほどと思います。それから私がどうも自分の専門にやっている研究が余り価値がなくなるのはつまらないと思ったのは大変心の狭いことだと思って、そういうふうに反省しております。  それから、よく調べてみますと、実はこの河口ぜきというものは日本が先祖伝来使っていた方法でございます。それは潮どめという工事でございまして、まあ一〇〇%そうかどうかは学者の立場からいくとちょっとよくわからないんですが、この近くにも新橋の汐留というのがございます。潮どめのせきというのは古来使っていた方法でございます。それによって一〇〇%ではないけれども潮の上がるのを防止していたというのは、先祖伝来全部やってきたことです。  これが、しかし当時はいろいろ機械力もございませんし工事力も小さいわけでありますから、床とめみたいな形をやっておって、洪水には明らかに害があるということであります。したがいまして、これが新型になってきた。いわば昔はかごで歩いていたものが新幹線になるというような感じではないかと思います。それで、そういうふうなところには遠慮なく科学技術を、しかもソフトの領域でお使いになれば私は十分にできるのではないかと。  それからまた、できた後も、ぜひ反対をされている方も賛成をされている方も、そのできた直後、できた次の日、それからできた一年ぐらいはそれで目に角を立てないで見ていただきたい。例えばジャンボジェットの飛行機を導入すれば、最初の間は操縦士はうまくできない。しかし練習をしている間にうまくできる。そして、結局これが十年とか二十年の間に威力を発揮してくれれば間に合うわけでございます。何度も申し上げますが、こういうものは役に立たなければ幸いだと思っていただきたいと思います。  このような河口ぜきのみならず、実は私も反対をされて大変困ったことがあるんですが、三陸にかつて津波が参りましたので防潮堤をつくってあります。そして、あれも環境上悪いから取ってくれという要望をもう十年ぐらい前にいただいたことがございます。それで私は地震研の先生と一緒に説得に参りました。それで、これは取ってもよろしいけれども、取ったのが縁の切れ目だと思っていただきたいと。地震がなくなったと言われる先生は確かにあるんです。あったんです、あの当時は。  しかし、なくなったという科学的な根拠は私にはどうしてもよくわかりませんでしたので、それはそのなくなったと言われる方はどういう考えで言われるかわかりませんが、恐らくその先生がいろんなことを言われたときに、マスコミとか雑誌とかはその一部だけを報道されているんだと思います。これは大変不幸なことです。地震がなくなったのではないかと言うのは自信がなくなったかもしれません。それと同じようなことです。その後、日本海中部地震が起きましてからそういう議論はなくなりました。やはり地震というのはあるらしいということでございます。  したがいまして、長期的に見ますと、私は河口ぜきというのは何か大変な危機が起きたときに必ず威力を発揮するものであると。実際カール・セーガン氏は干ばつが来ると言っておりますが、干ばつも来るかもしれませんが、私は水蒸気がふえてまいりますと来世紀には降雨量がふえると思います。降雨量がふえるということはどういうことかといいますと、一番重要なことは海水の量がふえるということでございます。真水の量もふえますけれども、水の大多数は海にたまりますので、淡水よりは海水の量がはるかにふえてくるということを御承知いただきたいと思います。  そういうことでございますから、いろいろ見ますと、これは建設省の何かいろいろおつくりになっている方も、その場その場の質問でそれに対応した御返事のつなぎ合わせになっているかと思いますが、そうではなくて、私は大学におりますのでそういう少しのんびりした見地から見ておりますと、洪水を防ぐ、それに対して河口ぜきをつくるというのは、結構とは言いませんが、現在できる最上の方法ではないかと思っております。  それで、これは一九〇〇年ごろの木曽川、長良川の河道でございます。(OHP映写)  当時はこのようなことでございました。現在ではこのように河道を修整いたしました。それで大変豊かな自然がその中に育ち、カヌーでも遊べるし、いろいろ水遊びもできる。それはこうやった結果でございます。これは私が今手がけておりますものですが、バングラデシュの河口部というのはやはりこのような状態になっておりまして、大変に複雑なことであります。  ただ現時点で私は、そんなことを言うと地元の方に怒られるかと思いますが、河道をこれ以上広げるということは社会的に考えて無理ではないかということでございます。河川学者は片手を縛られて相撲をとっているようなもの。河川工学の常道からすれば、やっぱり底は掘らないで川幅を広げたいと思っておりますが、これはまた大変な問題を引き起こすと思います。そしてもちろん河口ぜきも大変な問題であると言われるかもしれませんけれども、これだけ整形をしてきたのですから、河道内でもう一度洪水を防ぎ塩害を防止するということを試みるべきではないかと私は思います。
  35. 井上章平

    ○井上章平君 ありがとうございました。  まだお聞きしたいことがございますが、時間も少のうございますので、山本先生にお伺いをいたしたいわけでございます。  海水面の上昇あるいは地盤沈下、日本の低平地において地下水は大変傷んでおると思います。とりわけ長島町ではもう完全に塩水化しているというような事実があるわけでございますが、一たん地下水塩水化すると回復不能だというようなことがよく言われるわけであります。したがいまして、いろいろ考えてみますと、やっぱり国土資源として見ましてもこれは大変な環境破壊そのものではないかと思うわけであります。河川から海水が侵入してまいりまして、だんだん内陸に及ぶということは避けがたいわけであります。  とりわけ、今度のように河道の高水能力をふやすために河床を掘るというようなことになりますと、ますますその傾向は増大するわけでございます。こういったことが全国各地で進行しつつあるというおそれを私は持っておるわけでございますが、こういうことに対してはぜひ何らかの形で歯どめをかけて防がなければならない、あるいは既に塩水化したものも回復するための努力をしなければならない、そういうふうな事態に来ておるんではないかというふうに私は強く感ずるわけでございます。  一般論としてで結構でございますが、先生の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  36. 山本荘毅

    参考人山本荘毅君) 地下水が一度塩水化をしますとその回復は非常に遅いわけです。先ほど六十年というふうに申し上げましたが、地下水流速というのは、一番速いところでも大体日本の平均で一日に一メートルぐらいしか動かない。大変遅いわけです。ですから、一度汚染されますと、一日一メートルしか移動しませんから、薄められるのが非常に遅くなるわけです。  私どもよく地下水流速をはかるのに、井戸の中に色素だとかあるいは昔はよく食塩をたくさん入れて、その食塩がどのくらい離れたところに何日目に出てくるかという試験をやっていたわけでございます。入れた食塩がなかなか出てきませんで、一年ぐらいたって行って水をくんでみても全然塩分が薄まっていませんで、大変恐縮して平謝りに謝ったことがありますけれども、非常に回復が遅くなるわけです。  日本全体でどういうふうになっているかというようなお話でございますけれども、非常に広範囲に地下水塩水化というのが進んでおります。例えば昭和三十三年の利根川の渇水のとき、利根川沿岸にある水田が全部やられてしまった。それからその前に、南海地震というのを御記憶にございましょうか。南海地震のときに四国から近畿あたりの水田が全部塩水化しまして、この地震で地盤沈下が起きたんだというようなことで大変大騒ぎをしました。そういう例もございます。  それから私の手がけた例では、四国の渡川の下流の改修工事で隣に排水の川を掘ったわけですが、その川に塩水がもちろん入り込んでくるわけです。その塩水が入り込んだために、中州で耕作をしておりました田んぼや畑が全部だめになってしまったという例がございました。これは河川の掘削のために排水口をつくった結果海水が上がってきて、それが地下水を汚したんだというふうなことで裁判になりましたけれども、それもよく調べてみますと、別に中州の中の地下水水位をゼロメートルよりも下げなければちっとも海水は入ってこなかったわけです。調べてみますと、軒並みゼロメートル以下に下がっておりまして、先ほど申し上げましたヘルツベルクの法則に矛盾したようなことを地元の人がやっておったわけでございまして、そういう実例はたくさんございます。
  37. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 どうも御苦労さまでございます。  時間もないようでございますので一言だけお伺いいたしますけれども、西野先生はもう塩害問題は解決したと、こういうことで大変びっくりしたわけでありますけれども、三十キロ地点まで遡上しますと、これは取水口が三つありますから、まずこの用水は不能になる。  その問題はそれといたしまして、やはり地下水の汚染問題、塩水化、この問題は私は非常に大きい問題ではないか。特に一番大きい被害を受ける高須輪中、これについては大変な問題というふうに思っておるわけでございます。学問的にこのヘルツベルクの法則ですか、これが本当にいわゆる表層地下水まで河川から効いてくるのか、相当長い浸透路長があると思うわけですけれども、その辺をひとつお聞きしたい。  もう一つは、やはり高須輪中の地下水層というのはいろいろな形になっておるんではないか。西野先生がおっしゃるのは比較的下の方にたまったいわゆる塩水化した地下水があるんではないか、こういうふうに思っておるわけでありまして、今非常に盛んに行われている経済活動、生活活動、そういう面の地下水、これについては相当大きい被害が出るのではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。  その辺の御見解をひとつお伺いいたしたいと思います。
  38. 山本荘毅

    参考人山本荘毅君) 川の中に塩水が入ってまいりますと、川の水と周り地下水とがつながっておりますから、どうしても塩水が先ほど申し上げましたヘルツベルグの法則でもって入ってまいります。一番最初の塩分の被害、そういう影響をこうむるのが表層の一番浅い地下水でございます。しかし、その下の二層、三層の地下水でも同じように影響をこうむります。ある地区でございますと、帯水層、地下水を持っている層が四つございまして、上の方の浅いのが第一層、その次に浅いのが第二層、第三層、第四層と、こういうふうに四つあるわけでございますが、現在既に第一層と第二層は完全に塩水化しているわけでございます。三層、四層は健全なまま残っておりますが、そういう塩水化の影響が下の方にも及ぶかという問題でございます。要するに、今度は下の方の塩水化していないいい地下水をくみ上げますと、上の地下水を呼び込むわけです。  先ほど粘土層の問題でお褒めにあずかったんですが、実は粘土層も多少水を通しまして、下の方の帯水層が水で詰まっていたのが、それが水圧が低下しますと、非常に真空でもって急に来たような格好になりまして、下の方の帯水層の水圧が下がりますと、粘土層を通して上の塩水が徐々に入っていく、そういうことが起こっているようでございます。
  39. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 長島町の話が出ましたけれども、これは御承知と思いますけれども、三十年代、四十年代は相当塩害で苦しんだところだと思います。これは、新しい水を木曽川総合用水で持ってきて、それで相当ふんだんにかけていわゆる農業をやっている、こういう状況でございますから、こういう形でいわゆる塩害問題が農業についてもあるいは別な面についても解決する、こういう考え方は私は非常におかしいんではないか、こういうふうに考えております。その辺、山本参考人の御意見をお伺いします。
  40. 山本荘毅

    参考人山本荘毅君) 私、全く同じ意見でございまして、それは非常に難しいことであろうというふうに考えます。  ああいうふうな水を流して塩分を薄めるということは、大変な水源が要りますし、現在利用できる水源というのは非常に上流の方になってきておりまして、大変長いパイプラインが必要となります。そういう意味で非常に難しい。いつでもそういうふうにパイプの中に水が流せるとは限らない、そういう非常の事態も予測されますので、全く先生と同じ考えでございます。
  41. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 両先生、どうも御苦労さまでございました。  私は塩害とか洪水とかは専門でございませんが、私は医者でございまして、北大医掌部の予防医学の教授をしておりましたので関係が全くないというわけではないということでございますが、ともかく素人でございますので、素人の質問だと思ってひとつ質問させていただきます。  まず第一に、田んぼの塩害につきましてお二人のお話を伺いますと、椎貝先生は年に一度ぐらいくさびが越えて入る説とまた行かないというのがあるとかとさっきおっしゃったかと思うんです。それから山本先生は、一遍地下水海水で汚染をされると六十年または百年はもとへ戻らない、こうおっしゃっているわけです。しかし、長島町の調査によりますと、昭和四十八年から五十一年の四年間でございますけれども、 一%または〇・七、〇・九%という塩害比率でございます、田んぼですね。ところが、五十二年から〇・四になりまして、一番多くても〇・六または〇・二、この間に十三年間あるわけです。そういたしますと、私奇妙だと思うのは、五十一年に大きな洪水があったわけです。それが五十一年は〇・九%の塩害比率でございますが、五十二年で一挙に〇・四に下がった。  お二人に伺いますけれども、六十年ないし百年変わらないんじゃないか、それがもしそうだといたしますと、その塩分の量は塩害に関係ないのではないかと。  もう一つ椎貝先生の方に、そうすると先生がおっしゃっている学説で、くさびが越えて上流まで行く場合も行かぬ場合もあるとおっしゃったが、この十三年間は余り行かなかったのか、あるいは行ってもやっぱり被害がなかったのか、簡単にひとつ教えていただきたいと思います。
  42. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) お答え申し上げます。  まず一番最後のところになりますが、これは塩水をはかるということは大変困難な作業でございまして、昼も夜もはかっていないといけないんですね。もちろん観測地点というのがありまして、何か建設省でおはかりになっているようですが、一番先端のところをどれほどつかんでいたかというのはわからないと思うんです。私も想像で申し上げますが、地形その他から判断しますと、塩水くさびみたいなものは時々は上の方に上がっていたのではないかと思います。  ただ、取水装置その他に工夫を凝らしてございますので、上の方からとっておって気がつかなかったのではないか。条件が悪いときにはいろいろな問題があったかと思います。これは全くそのとおりで、実は昭和三十年代も同じような状況で、ただ昔に比べてそういう頻度がふえてきたということでございます。そして、すべてそういうことは悪いときに起こりますので、例えばことしみたいに雨が多い年というのはそんなに塩水くさびというのは目立たないわけですが、渇水などの年というのはもう相当な大騒ぎになりまして、それが一歩過ぎますと後を引いたように戻る。  それから先ほど西野先生からの御説明にありましたように、やはり農業にパイプラインをお使いになったとかそういうこと、それから休耕田が出てきたとかそういうことも効果があるのかどうか。私もよくわかりませんが、あるいは農業の方で努力をされているのかもわかりません。しかし、私は、パイプラインというのは、何度も言いますように、ぐあいの悪いときはとめざるを得ないということも出てまいりますし、そういうこともございまして、しょっちゅう危ないことはあるんだけれども、ちょうど台風が日本のそばをかすめて通っていくようなもので、余り気がついていないのではないかと考えております。
  43. 山本荘毅

    参考人山本荘毅君) ただいまの問題ですが、実は塩水化の問題というのは二つございまして、私が申し上げたのは、地下水塩水化する、地下水塩水化しますと上の土壌にも影響を及ぼすわけでございます。実際に水稲とかあるいは畑作の作物が塩害を受けるというのは土壌水の塩分化でございまして、土壌水の塩分化と地下水塩水化というのは少し違う問題だったのでございます。  土壌水の方の塩分というのは非常に変化をいたしますが、地下水の方は一度塩害を受けると当分の間だめですと、そういうことでございます。
  44. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 お二人の先生お話はよくわかりました。結果論でございますけれども、少なくとも昭和五十一年の大きな洪水の後はもう〇・二%または〇・六までいっていますけれども、この〇・六%の塩害比率のところがおもしろいのは平均単収が多い方なんですね。だから、塩害比率が高いから平均単収が落ちるというわけではない。つまりパーセントが非常に低いということかなと、こういうふうに私は思いました。ですから実質的に十三年間塩害はないと、私は素人でございますが、非常に少ないからないと見ていいのではないか、平均単収を眺めてのお話です。  それから平均単収をもうちょっと言いますと、昭和五十二年以前には平均単収の少ないのが十三年間で一番から五番まで全部そこに入っている。五十二年は多いんですが、五十三年からは平均単収がむしろ多くなっております。ですから私は、塩害はもう十三年間は少なくともないと考えていいのかと、こういうふうに先生方のお教えからもそう思いました。  もう一つ。これは先生方の責任ではなくて、私は統計学的に物を申したいのですが、現地を見せていただきました。「いきいき中部」に載っていた写真でございますけれども、これは塩害田だと言ったのが実は三月の田んぼであって塩害どころではないと。訂正したらもう一度、建物があるべきなのにない写真であったと。こういう大問題のときにこういう手違いだと称する、これは建設省のデータだったと思いますけれども、そういうデータを出されるのは田んぼにとっては塩害でなくて冤罪ではないか、こう思うわけであります。  それで、そういう手違いというのは偶然起こり得ないわけです。私はやっぱり非常に厳しく考えた結果だと思うんです。仮に百分の一の誤差だといたします。二度続いだということは一万分の一になるんですね、二乗でございますから、百分の一掛ける百分の一で。一万分の一の確率で偶然手違いが起きるということは不可能ということです。これは統計学でございますから建設省を疑っているわけではないんです。統計学では仮に一万分の一の確率、これは大変なことだと思いますから。これは先生方にお答えしていただいてもしょうがないんで、私の演説ということで聞いていただければ結構でございます。  ですから、私に言わせるとやっぱり建設省のデータはしたがって右へ倣えになるんじゃないか。一々本当かどうかを検証していかなければ、気がつかなかったらそのとおり思わされてしまう。私たちは現場を見ましたので、おやこれはひどいと思ったら、あれが写真に載っていたところであったということでございます。これが二番目の質問でございます。  三番目に、長島調査団の方々から平成二年九月に質問書が首長さんあてに出ておりますが、この肩書を拝見いたしますと、岐阜大学日本大学、三重大学の農業経済学、機械工学、地震学、動物生態学、地質学、地質地勢学、科学技術論の方々でございます。この方々の質問書を読ませていただきますと、やっぱり学者先生方の分析でございますので、私はなるほど非常に説得力があるなと思って読みました。しかし、これを論じておりますと数時間かかるかもしれませんので、私がじゃないですよ、先生方のお答えを聞いておりますととても大変だから簡単にお願いしたいんです。  河口ぜきができた場合、あのせき柱は幅が五メートルということになっているわけですが、この横断構造物が洪水時に危険性があるのではないか。それは過去の実績から言っておられるようですね。二番目に台風時の高潮のとき、今度は河口の方から上がってくるやつだと思いますが、これに対してあの河口ぜきは危険性を持つのではないか。三番目に、ちょっとお触れになりましたが、地震によって堤防決壊ということの危険はないか。この三点について、時間のこともございますし次の質問も用意しておりますので、簡単にひとつ両先生からお答えいただきたいと思います。
  45. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) お答え申し上げます。  まず、せき柱が妨げにならないかという話でありますが、これは構造工学の方ではほぼ確立しておりまして、せき柱の抵抗係数というのは、よほどへたにやって〇・四、それから丹念に設計されますと〇・二五というくらいの値になります。これはそういうとまた数字ではないかと言われますが、同じようにスポーツカーの抵抗係数というのが〇・二五とかそのぐらいでございます。今はどのメーカーさんも〇・三五ぐらいの値で競っているということでございまして、スポーツカーよりも抵抗係数が少ないという形、もちろん抵抗の値は違います。したがいまして、普通そうやっておりますと、私も細かく計算したことはございませんけれども、日本国じゅうそのような柱は幾らでも立っておりますので、これはまず問題にならないのではないか。私はそれをお出しになった方の計算をぜひ拝見したいんですが、これは見せていただけないんですね。大変残念に思っております。  それから高潮でございますが、高潮というと何か津波が押し寄せてくるという感じでございますけれども、高潮というのは水面がじわじわと上がってまいりますので、これはせきがなかったと思えば、もうそのときはどうせ高潮があって洪水が来ているという状況であればゲートをあけておけばほとんど抵抗にはならないということで、ただ水位が上がるだけでございます。したがいまして、これに対してもせきがきちんと設計されておれば、そして、私も実は日曜日に参りましてちょっと遠くから写真を振らせていただいたんですが、専門家の目からしますとほとんど問題にはならないと思っております。  それから地震でございますが、これはよく誤って伝えられまして、世の中に大地震が起きて壊れないものはございませんので、どのくらいの地震を想定するかということでございます。この議事堂の建物も恐らく関東大震災ぐらいをちょっと上回るような地震が来ますと、設計された方には怒られますが、皆様方がけがをするぐらいで済ませたいというような設計になってたって壊れるんですね。そのような意味ではどこの堤防も地震があれば壊れますし、それからせきも壊れるわけです。ただこの問題が非常に不幸なのは、せきが地震で壊れるという表現をいたしますと、例えば椎貝はせきが地震で壊れると言ったということになるんですが、大変に大きなマグニチュード八・九ぐらいの直下型の地震が来ればせきも堤防も壊れるということでございます。すべてそういうことで設計してございます。
  46. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 山本先生に御指導いただきたいと思いますが、時間がありませんので大変恐縮ですが次の質問に答えていただきたいと思います。  私は北大の医学部の教授から国立公害研究所の副所長に出まして、したがいまして私は環境に関係がいささか深い立場でございました。今は国立環境研究所と申します。  そこで、この問題につきまして、日本自然保護協会、世界自然保護基金日本委員会、日本野鳥の会、日本陸水学会、日本魚類学会、日本生態学会、そのほか東海三県では研究者が二千何がしという方々が署名で要望書を出している。その要望書の大事なポイントは環境アセスを実施せよと。確かに書類を読ましていただきますと、これはKSTという調査団の報告が中間報告等で出ておったようでありますが、これは開始年度だけ私は目にとまったんですが、一九六三年、約三十年ぐらいたっております。したがいまして、今言っている方々は近代的な手法をもってアセスをちゃんとやれということだろうと思います。その環境アセスの実施とそれまで工事は一時中止せよと。  今申し上げました私の今までのキャリアから申し上げて、私は我が国の国内に環境アセス法がないというのは世界の先進国としては甚だ恥ずかしい。これはしばしば当委員会でも本会議でも私は主張してきております。もう一度ここで言わせていただきます。私はやっぱり環境アセスを当然やらなければいけない。環境アセスがなくて、そしてその個人個人の御意見を承っておりますと百人百様でございますから、やっぱり環境アセスという科学的な手法をもって、そしてなるほどと納得できるようなデータが出て初めて工事を再開すると、これが順序だと思うんです。  そして、朝日新聞のこれはコラムに載っておったのでございますけれども、「土木計画学には「時間の経過に伴う計画の自己矛盾」という有名な原理があるそうだ」。なるほど。計画の自己矛盾というのは、その一例は中海・宍道湖の例でわかります。明らかに三十年ぐらい前には水が欲しい、田んぼが欲しいと言っておったのが、今価値観が変わりまして、そしてしかもあそこ半分閉じただけで中海の水質が変わってきて、アオコが発生するのではないかというデータになってまいりました。窒素がふえたりいたしました。そういうことで、私も当時現地でシンポジウムの座長を仰せつかったことがありまして、私もこれはやっぱり問題であると思って、その現場で私は一応反対というか、ちゃんと計画をやり直すべきだと言った覚えがあるんです。このことはここに当てはまるのではないか。これは先ほど椎貝先生がちょっと言われたと思いますが、水田の利用価値は五十年後にと。  最近、農村医学会の特別講演で、農村のことを調べたんですが、昭和五十年かな、そうすると七五年ですね。一九七五年には日本の農民の方一人当たり国民の食糧を五人分つくっていたんです。そのとき一人一・二トンです、一年間。ところが現在は驚くなかれ一人で二十五人を受け持っている。ただし一人分の食糧が一・〇トン、一年間ですね。だからちょっと減りました。それは食生活が変わったからだと思います。したがいまして、技術の進歩で減反政策をやりながらこれだけの収穫を上げ得るということで、私先生に反論しているわけじゃないんですが、私は農業経済はわかりませんし、その栽培のこともわかりませんが、事実を見ますと、データを見ますと、やっぱりバイオテクノロジーの進展であるとか肥料だとか、それから農業だとか、そういうものの進歩が食糧問題も支えているのではないか。したがいまして、今米の問題がもめておりますけれども、これはやっぱり一つには我が国の農業技術の進歩がその中に一つ加わっているのではないか、こんなふうに思うんです。  そこで、私の申し上げた環境アセスメントをやるべきであるということ、それまでは工事を一時中止すべきであるということについて、御両先生の御意見を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  47. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) お答えいたします。  環境アセスメントは、私、これは私見を申し上げますが、もうもはや遅きに失したと思っております。それはなぜかといいますと、環境問題というのは後からでも解決はできるんですが、災害というのは人の命でございまして、確率は低いと、こう言われますが、実は一万分の一の確率と先生先ほど言われましたが、フランスのボレルという統計学者は百万分の一より少なくなれば日常生活に起きないと考えてよろしいと言っていて、それが学説になっております。それで、ましてやここに洪水の起きる危険性というのは決して少なくはないんです。現にことしもかなり上のところまで水が来たと私は聞いております。  したがいまして、非常に重大な問題が起きなければ、もう現在の段階としてはやはり災害をまず防ぐ。環境というのは長期にわたって人間が生きたときに問題になってまいります。災害を防ぐということは、きょうあした生きるということの問題でございます。そして、きょうあした生きてないと我々の子孫は二十一世紀にいないんですね。私は、今環境アセスメントを丹念におやりになりますと、これは百年かかってもできないのではないかと思っております。私も今バングラデシュでそれを言われて大変困っておるんです。  私バングラデシュに乗り込みますと、環境アセスメントをやってほしい。動物、植物は全部珍種である、新種である。一体何年ぐらい調査やってないんですかというと、二百年ほどやっていないというので、これはもうえらいことなんですね。これは勘弁をしてほしいということで、とりあえず洪水を防いでということになっております。やはりこれは、先生お医者様でありますので、急患を診るのかそれとも長期的な健康を診るのかということで、まず急場をしのいで長期的な健康の立て直しを図るというのが常道ではないかと私は考えております。
  48. 山本荘毅

    参考人山本荘毅君) 環境アセスメントが必要であることは私も認めます。ただいま日本ではないというふうにおっしゃられたんですが、日本の都道府県の中では環境影響評価審議会がある県の方が多くて、環境影響評価をやっておるのが現状でございます。  先ほどいろんな学会の名前をたくさん挙げられました。私はその中の幾つかに関係をしておりますが、その中の主張を見ますと、新聞とかマスコミのリードの部分では河口ぜき反対と、初めにこう書いてあって、それから学会の意見というのが書いてあるんですが、よく見てみますとそういうことではございませんでして、やはり環境アセスをやれということが一つ。それから、そこで問題になるのが今の工事を中断して環境アセスをやりなさいと、その二つになるだろうと思います。  それで、実はこの木曽三川のそういう環境アセスの問題は、今から三十年ぐらい前に岐阜大におられた小泉清明さんが代表になって非常に大規模な五十人ぐらいの方が一緒になって環境アセスをやったことがございます。それが非常に大きくクローズアップしてまいりまして、皆さんそれは御存じで、それ以後ないというのが学者の皆さんの主張のようなんですが、そうではありませんでして、実はその後非常にたくさんの調査がございまして、建設省でもその資料を持っております。ですから決して環境アセスをおろそかにしているのではない。そういうことを声高に叫んでおる学者先生方が御存じないだけであって、私は環境アセスはよく行われておると。  その場合に、工事を中断してやるかどうかという問題でございますが、今になってあそこまで工事が進んでおって、あそこで工事を中断してアセスをやるということは非常に不可能な問題だと思います。それで私は、やっぱり今建設省の言っているように、工事をやりながらアセスを進めていくという方法が一番よい方法だというふうに考えております。  以上でございます。
  49. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 両先生、大変御苦労さまでございます。  私も全く素人でございますので、素人の質問をさせていただきたいと思っております。  きょうは、実は塩水遡上の問題、それから午後は自然の植生、動物が河口ぜきによってどうなるかというふうな問題、こういうことを選択的に問題を限って論議することになっておるわけでございます。  考えてみますと、大変無理があるということを私素人の立場で感じるわけでございます。といいますのは、建設省は治水のために長良川しゅんせつする必要があると。長良川しゅんせつすると海水の遡上がうんと広くなるので、そのために河口ぜきの建設が必要だ、こう言われるんですね。私ども素人の考え方なんですが、治水対策でしゅんせつをする、塩水遡上を防ぐために河口ぜきをつくると。何というのか、問題になっております河口ぜきそのものが治水対策なのか利水対策なのかがごちゃごちゃになっていろいろ論議をされているという感じがしてならないわけです。  一九六〇年ごろから木曽三川協議会等で出されておるいろんな報告を走り読みをいたしますと、長良川の新規利水毎秒二十九トンをつくり出すためには河口ぜきを設置する以外に方法がなく、これによるとさらに塩水侵入もとめられるというのが四十一年三月の長良川河口調査報告書には書かれておるようでございます。だから、最初は利水ということで出発をしたんだなということが非常によくわかるわけでございますが、その後利水を進めるということでいろいろと基本計画が決定される、あるいは閣議決定をされるということでやってまいっておりますが、その間に利水の問題では三重県からクレームがついて、それの調停に大分かかって、やっと一九八七年に関係の自治体協議が、建設省の肝いりでいろいろと調整をしてやっと片がついたという経過を拝見いたしますと、やっぱり利水対策で発足したんだなということなんです。  ところが、昨今の話を聞いておりますと、治水対策ということが大変力説をされるわけです。水資源開発公団がやっておるんですから、これは治水対策ではないはずです。利水対策がなかったら、これは水資源開発公団は関係ないですね。本来目的に合わない仕事を何でやるのかということになるような気がするわけです。そこで、利水対策で発足をしたけれども、その後たび重なる洪水被害というものもあったので治水対策に変わってきたのか。そこをごちゃごちゃにして論議をされているようで私ども素人にとっては大変わかりにくいんです。治水対策というのだったらしゅんせつ一本やりというのはおかしいじゃないかというのはだれでも思うんです。  実は私大阪でして、淀川の右岸の一番端っこに住んでいるんです。だからそこでもこれは治水対策というのは最大の問題でございます。しかし、しゅんせつ一本やりというようなことで治水対策なんて考えないですね。だから、治水対策というのならもっと何とか考えようがあるのではないかと。どうも一本やりというのはぐあいが悪いなということを感じるわけでございます。そういう中で起こってきている諸問題ですので、やっぱり現地の方々もいろいろと頭を悩ましておられるというのが率直なところなんだと思います。  きのうでしたか、私夕べ遅く上京しますと、海津町の方から要請文が来ておりました。それにはどう書いてあるかといいますと、   推進の陳情が多人数を動員して行われる毎に私は腹の底に憤懣やる方ない思いをためこんできました。長良川河口堰は最初利水を強くうちだし私達岐阜県は水をやる方で国や愛知県や三重県が陳情にくるのだったらわかります。それがいつの間にか治水に、ひいては塩害防止と変わりあげくの果てがこちらから推進の陳情です。 ということになっていると。さっぱりわからぬというのです。  私達の町としては治水のための浚渫や堤防改修であればいいのに塩害というえたいの知れないもののために巨大な堰が必要というのは納得のいくものではありません。 という言い方で大変心情を込めて、こんな長いお手紙でございますが出ているわけでございます。  私は、塩水遡上の問題についてもいろいろ御説明を伺って、よく理解しようと思って努力をしたんですけれども、余りよくわからない。そこでちょっとお伺いをしたいんですが、椎貝先生がおっしゃっておられましたように、塩水遡上の場合に塩水くさびですか、そういう形でずっと延びるんだというふうに、底をはっていくんだというふうに言われました。その塩水のまじり方というのは、例えば三十キロまで行くというのは年がら年じゅう行くのか、季節的に変化があるのか、あるいは時間的には変化があって、三十キロまで行くのは頻度は大体どのくらいになるのだろうかということですね。  それからもう一つは、水流の上から見て、さっきも全部まじるというふうな場合のことを大分御説明をいただいたんですが、私ども素人の立場で見ても塩水というのは、塩水は比重がやっぱり水より重いでしょうから、当然のこととして下をはうでしょうね。下へおりると思うんですが、いつでも水流の上から見たら上から底まで同じ濃度でいくのかということなんです。  もう一つは、取り水口が三つあるという問題。これは調節できるんじゃないかと、場所によってはね。そういうことで、農業用水として被害が避けられるのではないかと思うんだけれども、避けられないのかなという感じですか。長島町の例がさんざん言われましたからもう私繰り返しませんけれども、ごく軽微な微少な影響しか今日ではないというふうな状況のようでございますので、そういう点についてどう考えていいのかなというふうに思うんです。こんなわけのわからぬこと、私にはわかりにくいんですが、そういうことがさっきも言われましたけれども、環境アセスメントがもう少しきっちりとやられていて、それで、そうかそうなら話はわかったということになるような状況にならないと、地元住民、推進派や言っているけれども腹の中では実は違うんやというふうなことのままで、莫大な公費を費やすということは大変なことなんで、環境アセスメントをきちんとやって、客観性とそれから地域住民の十分な納得、理解が得られるようなやり方ができるまでやっぱり工事は一時ストップをするべきではないのかと思いますが、御意見をお伺いしたいと思います。
  50. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) お答え申し上げます。  この問題はアメリカのMITでも東京大学でも筑波大学でも五時間ぐらい講義をしないとなかなか学生さんに理解してもらえないんで、先生の御質問は大変重要なんですが、もう一度ちょっと繰り返させていただきますと、上から下まで一様でないときもあるし、一様になるということは長良川ではない、しかし下の方が濃くて上の方が薄い、あるいは下の方がやたらに濃くて上の方は薄いということは年じゅう河口では起きていることだと思います。これはまず間違いないと思いますが、それでは上流側のどこまで上がってくるかといいますと、これが科学の重要なところですが、また常識でもあると思います。そういうことが起きるのは、渇水が起きて大変地元の方がお困りになったときに起きる。  これは、起きてみるまでは信じないと言われますとどうしようもないんですが、津波と同じようなものでございます。そういうことはかっては下流の方が起きたし、学問といいますか常識の問題でありますが、かなり水が少なくなれば上流側に上がってくるというのは当然のことだと私は思っています。ただ、そこの理解に大変難しい式なんか建設省がよく持ち出すもんですから、何だかわけがわからなくなってしまうということだと思います。したがいまして、これは大ざっぱに申し上げますと、そのとおりだと言われますとまたそのとおりでありますが、流況の悪い年ですと例えば五十日とか何とか全部水がとれなくなるというような状況が起き得ると思っております。そういうことが起きなければ全く幸福なんですね。  それからもう一つは治水と利水。さっき言われましたけれども、その輪中地帯にお住みの方は治水と利水がごっちゃになって住んでおられる。おまえのところは利水を考えているから洪水はおまえのところに行かないとか、おまえのところは治水だけ考えているから利水で塩水が入らないようにしてやろうとかということは川はやってくれない。ここら辺の方は、渇水が起きたときは利水問題で苦しみ、それから洪水が来たときは治水問題で苦しむ。渇水が起きたときは利水問題で苦しんでいる方なんです。そこはちょっと大学の責任でございまして、利水と治水と違うもののように教える。しかしこれはそうではなくて、利水をやるとちょっと治水が悪くなって、治水をやると今度は利水の方がぐあいが悪くなって、大変難しい問題です。ですから現在では、ダムでも区別しないで多目的ダムといいまして、これは一部は治水だ一部は利水だというふうに運転できるように設計をしてあります。  ダムを運転するとは何ぞやということになりますとまた長くなりますが、そういうわけで本来はごちゃごちゃとした全く大変な問題なんです。そんなに自然というのは真っ二つに割り切れるものではございませんので、治水と利水はごちゃごちゃの問題だというふうに御理解いただいた方が私は確かだというふうに思います。
  51. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間ですので、もう失礼します。
  52. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 傍聴席の方は静かにお願いします。
  53. 中村鋭一

    中村鋭一君 本日の問題点につきましては、先ほどから各委員が質問をしておられますので、私は一つだけ自分の意見を申し上げ、あとは両先生にお尋ねをさせていただきます。  まず、私の立場は、長良川河口ぜきは問題が多うございますので、ですから御説明いただきましてもやはり環境アセスメントをしっかりとやるべきでありまして、したがってそれが終わるまではただいまの工事は差しとめをするのが妥当である、そういう立場をとっているものでございます。  椎貝先生、先ほどから先生お話を伺っておりますと、例えばきょうの朝日の朝刊に出ておりました学者の説を見せていただきました。二〇五〇年には地球の気温が五度上がる、場合によれば先ほど記事を見でおりましたら、小さな島は水没の可能性があるということをその学者は言っておられるようでございます。それから先生先ほど環境アセスメントは今実施するにはもうツーレートである、もうそれは現実に遅いんだとおっしゃいました。その先生のお考えから私が類推をいたしますと、将来にわたって影響があるかないかは、これははかりがたい面もあるけれども、しかし学者の説では、二〇五〇年には重大な結果を招来することがあるからこういう工事はその五十年、百年先、我々の子孫にまで考えを及ぼしてやらなければならない、このように御主張なさったように思うんです。  ところが、一方では先生は、環境アセスメントを実施するのはもう時期が遅いとか、また三陸沖の防潮堤について地震が起きるとか起きぬとかいうような論をなすことは無用の論であるようなお話でございました。ということは、先生にまことに失礼でございますが、先生の所論がそこで一つの矛盾を来しているように思うんですね。現実に岐阜県や愛知県の皆さんが被害をこうむるおそれがある、こうむるおそれがあるから工事というものはやらなければいけない。これは非常にショートレンジの、目先のことでやっているわけです。  一方では先生は五十年、百年先までを考えてやらなければいけない、こうおっしゃっているわけでございまして、そこに先生の失礼ながら論旨の絶対矛盾が露呈しているように思うんですが、その点についての先生のお考え、今高桑委員も指摘したように、私もこの間の委員会でそれを取り上げたんですけれども、この間の朝日の天声人語に、こういった巨大なプロジェクトというものは、最初に考えられたときには十分説得力があることでも十五年、二十年たつうちにはそこに矛盾が生じてまいりましてほとんどその工事を実施する意義を失ってしまう、こういう原則がこういった巨大なプロジェクトには存在する。中海、宍道湖が全くその好例である、こう思うんです。それとその先生の所論が見事に私は矛盾を露呈しているように思うんですが、その辺についてのお考えをまずお伺いいたします。
  54. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) お答え申し上げます。  私はどちららも大切だと申し上げておるんですが、それには重要度を置かなくてはならない。そしてこれは、私がMITでウィーナーという後でノーベル賞をおとりになりましたその方からオペレーションズリサーチを習いましたときに、口を酸っぱくして言われたことでございます。それには、まず我々はとりあえず生き延びないと五十年先のことを考える必要は全くないのである。その点では、これは違う方もおられるんですが、まず災害を防いで人命を助けるということにプライオリティーを置かなくてはならないという私は信念を持って言っております。それですから矛盾ではございません。  ちょうど交通事故に遣われて重体の方を治すときに、とりあえず命を取りとめるということが必要だと思います。それで、とりあえず命を取りとめられた結果、その方は一生を苦しまれるかもしれないまでは考えなくていいのではないだろうか。とにかくその方が治ればよろしくて、その後を何かみんなで考えたらよろしかろう。  そしてこの長良川につきましては、環境アセスメントは現在の時点で十分ではないと言われる方おられるかもしれませんが、当時の時点ではかなりなことをやっております。そしてまた十年かけておやりになりますと、そのときは科学は進歩しておりますのでまた不十分になってくるんですね。これはもう全く決断というものはできない。したがいまして、私は石橋をたたくのは結構ですが、石橋をたたいて渡らないというのではこれは人間の命を救うことはどうもできないんではないか。そういうことで、ぜひこの順番ということをお考えいただきたいと思っております。  そのようなことで、私は大変に長い話を短く申し上げておりますのでもちろん不十分な点はあるかと思いますが、ぜひこの機会に、きょうここにおられる皆様方の御理解をいただきたいと思います。
  55. 中村鋭一

    中村鋭一君 先生の御説明を私は理解したとはあえて申し上げません。やはり私が先生の所論について抱きました疑問は、今のお話では解明はされなかったように思います。  山本先生、ここにいただいたポジションペーパーによりますと、人間の活動はすべて環境に影響を及ぼす、トレードオフの考えと、このようにおっしゃっていらっしゃいます。当委員会は環境特別委員会でございまして、また午後に生物的な問題についても参考人先生お話を伺いますけれども、山本先生椎員先生も高名な学者でございます。例えばこの長良川河口ぜきの問題について両先生が発言をなさることは大変大きな影響を及ぼすわけでございまして、したがって両先生の例えば環境問題についての考え方が、これはひとつの哲学的なものになるかもわかりませんけれども、結果においてはこの長良川河口ぜきの建設問題に重大な影響を及ぼす、こういうことでございますので、山本先生にお伺いをいたします。  先生のトレードオフという考えからいたしますと、長良川河口ぜきを建設することによって河口ぜきに生息するたくさんの魚類でありますとか自然環境に重大な影響を及ぼすことがあっても、それは人間の活動がすべて環境に影響を及ぼすことであるからいたし方がない。しかもそこにトレードオフという考え方があって、その流域の皆さんに経済的な利便というものがもたらされる。そういう意味での生活の経済的な利益が約束されるのであれば人間活動は環境に影響を及ぼすのですから仕方がない、これは黙視すべきである、そのような先生のお考えでございますか、環境問題についてのお考えを先生にお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  56. 山本荘毅

    参考人山本荘毅君) 今生物に対する影響の例が出てまいりましたが、生物については午後に何かまた質疑があるみたいなのでお答えはいたしませんが、人間が仕事をすればいつでも環境に影響を与えるというのは、これも本当だろうと思うのです。例えば私ども今ここで呼吸しているだけでもこの部屋の中の炭酸ガスがどんどんふえていくわけだから、何か生きていること自身が自然に対して、環境に対して影響を与えている。ましてや人間が巨大ないろいろな経済力を使って仕事をすればますますその影響というものが増大してくるということは、もう先生方も賛成していただけるんだろうと思うんです。  そのときに、長良川河口ぜきに関係しまして、要するにせきができたときにメリットとデメリットがいろいろあるというふうなことになるわけでございますが、メリット、デメリットというもの、そこがトレードオフでございます。よく考えてどっちを選ぶべきかということを私は経済学の言葉を使いましたが、そういう経済学的な単にメリット、デメリットでなくて、いろんな社会学的あるいは心理学的なあらゆる問題も含めてメリット、デメリットを考えて決めるべきだ、それを決めるのが地元の人だと。関係のない人がいろいろ大きな声で言うのは、学者の私が言うのは別にそれは非常にいいことだと思っておりますが、ただその学者の場合でも、自分でちゃんと研究をする。本当に科学的に何がデメリットで何がメリットかという研究をしないで署名集めに奔走するというのは、僕は学者としてとるべき態度じゃないと思うんです。そういうことには学者はもっとまじめに社会の木鐸をもって任じるべきだと。どこがよくてどこが悪いんだということをはっきりさせる。その判断に基づいて地元の人が決めるべきだ。  中海のお話も出ましたけれども、中海も私は多少関係がございますが、その場合に初めに賛成しておいて後からノーと言ったわけです。どうもその原因が何かうまいシジミが食べたいということみたいでして、先般も学会がございまして松江に行ってまいりましたが、小さな余りおいしくないシジミを食べてまいりましたが、しかし地元の人がどうしてもシジミを食べたいんだからこの仕事をやらないでくれというふうな選択をしたら私はもうしょうがないだろうと思うんです。
  57. 中村鋭一

    中村鋭一君 一言だけ。  ただいまの先生お話は、私はやはりオブジェクションを提議しておきたい、こう思います。  ごく簡単に言いますと、先生お話は地元の皆さんがいいとおっしゃれば河口ぜきをつくればいいんだ、それが最終的に環境をいい状態にしないことであっても、それはトレードオフの考えなんだから地元の皆さんの御意見を尊重すればいいと、こうおっしゃいましたけれども、私は、環境問題というのはまさに地球的環境の問題でありますから、一長良川の問題でありましても、長良川の自然環境がそれこそ百年、二百年後まで取り返しのつかないような破壊をこうむるならば、それは全人類のまさに問題として取り上げるべきであって、地元の方の御意見がそうであるからそのようなことについて云々するのは妥当ではないというお考えについては、私は異議を申し上げておきたいと思います。  ありがとうございました。
  58. 山田勇

    ○山田勇君 両先生御苦労様でございます。  私が最終の質疑者でございます。七分ほど過ぎております。簡潔に私はお尋ねをいたしますが、高桑先生が素人や素人や言いはるんで、私になってきますともうその素人に輪をかけた素人でございます。正直言いまして、この委員会の会場の雰囲気などを聞いたり見たりしておりまして、先生方の話は余りに難し過ぎて僕にはよくわかりかねました。  そこで、きょう参考人先生方を四人呼んでやる委員会は、賛成とか反対とかという論を重点視した委員会ではなく、公正、公平に委員長の取り計らいで先生方をお呼びして、質疑をして、そうして先生方の御意見を聞いて、それを参考の資料としようという委員会でして、たまたまおられませんが、第一質疑者が先生は賛成論者であるということをきちっと決めつけて質疑をするのを見て、大変失礼なことだなというふうに正直感じました。  それとまた、私の真っ正面にこの工事を推進する開発課長がおられます。その隣には天野さんというこの自然環境を守るための反対の、反対という言葉はあれですが、急先鋒に立っておられる女性の方がおられます。このお二人を見たら伴いいんです、私はふっと見て御夫婦がなと思うくらい。メモを交換したり、またいやこれはこうだよとかお互いが説明をしながらこの委員会を傍聴している姿を見て、反対も賛成も、僕は山本先生が言われたとおりまず地元を優先してものを判断していく。この河口ぜきができることによって、中村鋭一先生かなりオーバーに地球的環境と言われたんですが、このせきができることがどれだけ地球環境に影響があるのかなと。それは地元の魚がいなくなったりアシが枯れていったりそういう影響はあるけれども、何か地球環境的に余り大きく考えてしまうと、賛成反対の人もまたその論点を失っていくんではないか。やはり治水にしろ利水にしろ塩害にしろ、もう少し地元の皆さんがどうすれば一番いいかなということを論じていってもらったらいいんではないかなというふうに率直に感じました。  そこで、もう時間がございませんので一問だけ椎貝先生にお尋ねします。  先生の話によりますと、海面の高さと同じところまで海の水が川の中へさかのぼってくる可能性があるというお話でございました。その場合、川の上流から流れてくる川の水、すなわち真水はそのときこの川にはどういうふうな形で流れてくるんでしょうか。  この一問だけで、ちょっともう時間がオーバーしておりますので、終わらせていただきます。
  59. 椎貝博美

    参考人椎貝博美君) そこはよく御説明したつもりでありますが、もう一度申し上げます。  川に水が一滴もなくなったときは海の水位まで塩水が到達する。ところが、川に少しでも水がありますとそれは押し戻してくれまして、三角形の形をつくるから塩水くさびというんですが、ですからその水の量が少なければ水の勢いが小さいわけですから奥まで入る。したがって、例えば渇水時が二十トンとかそのくらいしか流れてこないという、長良川は御承知のとおり大きなダムがございませんで調節ができませんので、そういう状況になれば、私が目分量でやりました三十五キロ地点よりちょっと下流までは塩水が到達するだろうというお話でございます。ちょっと数学を出しましたのは私まずかったんで、本当はこれは数学ではなくて、要するに常識の話なんです。ただ建設省はこの面倒くさい計算をよくおやりになったというようなところがあるわけで、もう私はちょっと年をとっちゃったんでやる勇気はないんですが、大体三十五キロまで到達して、川の上ではちょっと押し戻すから、五キロぐらい、これは常識ではないかというふうに考えております。
  60. 山田勇

    ○山田勇君 ありがとうございました。
  61. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 以上で午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、長時間にわたり御出席を願い、貴重な御意見を述べていただきましてまことにありがとうございました。質問のやりとりの過程で若干失礼なことがあったかと思いますが、委員の熱心さに免じてお許しをいただきたいと思います。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、休憩をいたします。    午後零時四十二分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十二分開会
  62. 安恒良一

    委員長安恒良一君) ただいまから環境特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題とし、長良川河口ぜき建設問題に関する件につきまして参考人方々から御意見を聴取いたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人方々から忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、本件の参考にいたしたいと存じます。  これより参考人の方に順次御意見をお述べいただくわけでございますが、議事の進行上、最初にお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答え願いたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、これより参考人に順次御意見を述べていただきます。  まず、水野参考人からお願いいたします。水野参考人
  63. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 水野と申します。どうぞよろしくお願いします。  それでは、OHPを使って説明させていただきます。  私と長良川との関係をまず最初に簡単にお話しさせていただきますと、ここにありますように、一九六一年、ちょうど今から三十年前に私が丹羽弥先生と一緒に、この方は木曽川水系の魚の研究に一生をささげたと言っていい方だと思いますが、それまで日本にはカジカは一種類しかいないと言われておったんですけれども、実際はそうではない。これが長良川なんですけれども、ちょっと簡単に申しますと、この下流の方におるのが海との間を回遊しているカジカであります。それに対して、中流から上流の方にずっとおりますのが大卵型と言いまして川の中だけで一生を過ごすカジカであるということを日本最初に発見した、これが丹羽先生と二人で行った仕事であります。  これ以後、長良川とはほとんどごぶさたしておりましたが、たしか一昨年だったと思うんですけれども、日本自然保護協会が河川問題の調査特別委員会というのを発足させまして、その中に長良川河口ぜきの専門委員会というのをつくられたわけです。私もその一員としまして一昨年からまた再び長良川の問題にかかわり始めたということでございます。したがいまして、余り長良川のことは詳しくないというのが本音のところでございます。きょうは準備不足の点も多々ありまして、自分でも本当に皆さんの御期待におこたえできるかどうかわからないんですが、一生懸命努めさせていただくつもりです。  まず、私は淡水魚が専門なものですから、きょうも専ら魚のお話をさせていただきます。  長良川は魚が豊富であるということが言われるわけです。これは確かなものでありまして、私が一九七二年に「河川の生態学」という本を書いたときに、日本の川の魚の種類数、これはお断りしておきますが、川の中だけで一生を過ごす魚の種類であります。だから海との間を往復するような魚は一切含まれておりません。縦軸にその種類数と横軸に本流の長さをとっております。ごらんいただくとわかりますように、大体川が大きくなれば魚の種類はふえるという傾向が大ざっぱに出ております。しかしその中でも、長良川は本当は木曽川より大分小さいんですけれども、長良川の方が純淡水魚が豊富である。その当時で大体四十六、七種類、今は五十種類ぐらいになっております。要するに、同じ程度の川の中でも種類の多い方だということがうかがえるわけです。  それからまた、岐阜大学の和田先生が一九七九年に環境庁の委託で木曽川と長良川調査されたんですが、これはそのときの調査結果なんですけれども、お配りしました説明要旨の二番目ですが、そこにこういうことを書いておられます。括弧書きですが、  長良川本流には人工構築物がほとんどなく、魚類の遡河・降海の障害がない。水質汚染も好転傾向にあり、魚類の生息環境として、良く自然を残している、貴重な河川である。標準河川として学術上重要な価値を持っているため、今後一層の保護に努める必要があろう。 こういうふうに書いておられるわけです。これはもうまことに私は妥当な御意見だろうと思います。  私も環境庁の依頼で同じ調査を四国の川でやったわけですけれども、要するに同じような採集方法でやるわけです。そのときに和田先生がおっしゃるのは、木曽川はこういうふうにダムがずっとつながっているわけです。ですからまずもう採集できる場所がない。しかも採集した結果、たった二科七種しかとれなかったというわけですね。ところが長良川の方では、同じような調査をして十三科二十九種もとれたというふうに書いておられます。そういったことをもとにして先ほどのような結論を書いておられるわけです。それが一つ。  それからもう一つ、これはごらんいただくとわかりますように縦断勾配です。上流の急勾配から下流に向かってずっと緩やかになっている。非常に川の形状が自然なわけです。木曽川の方は、ごらんいただきますとわかるように、これは中流部分だけなんですが、この上にさらに上流と下に下流があるんですけれども、しかしこの中流部分だけでも何か直線的で川としてはちょっと自然でないということが言えると思います。それともう一つは、こうやってたくさんの種類が実に素直に分布しておる。これは少しでも淡水魚を御存じの方でしたならば、この分布の姿というのは非常に乱されておらないということがよくわかります。それに対して木曽川の方は、本来上流におるべきヤマメがこんなところでとれてみたり、これだけの調査で分布が非常に乱れておるということが言えるわけです。  これはちょっと細かくてごらんになりにくいかもしれませんが、これまでの情報をもとにして大急ぎでまとめたものであります。正確な資料だと思いますが、これまでに大体百一種類確認されております。実際にはこのほかに汽水域で子ども時代だけを過ごす魚が八十種類ほどおります、確認されただけで。ですから、それまでひっくるめれば百八十種類。これらはもう調べれば調べるほどふえるでしょうから、恐らく二百種類は突破するだろうと思います。しかし、そういうものを除いても百一種類ということになります。その中には、国指定の天然記念物とか環境庁の指定している危惧種、絶滅を危惧される種類とか危急種とか、あるいはこれから注意して調べなければいかぬという重点種とか重要種といったようなものがここに幾つか含まれておるということがおわかりと思います。  そのほかに狭分布種というのが二つありまして、これは分布が濃尾平野に限られるような非常に分布域の狭い魚であります。その一つの例としてここにスジシマドジョウの小型種というのを挙げましたが、もともとはこれはタイリクシマドジョウ一種類とされておったわけです。それが近年の研究ではここにありますように五種類に分けられています。五種類に分けられて、さらにそのうちの小型種というのはこういうふうに六つの型に細分されておる。この小型種の東海型というのは、文字どおり濃尾平野から東海地方だけに分布が限られているというこういう種類であります。  こういうふうに研究が進みますと、これまで一種類であったものが何種類にも分けられるということもありますし、またそういった種類分けはされなくても、これはメダカの最近の研究なんですけれども、これは一種類ではあるんですが、遺伝的にこういうふうに十ぐらいの地域的なタイプに分けられる、こういったことも続々発見されつつあります。  またこちらに戻りますが、この中に回遊魚というのが今までのところ十九種類あります。さらに純淡水魚、これは川の中だけで一生を過ごす魚が五十種類というふうに一応分けられます。ところが、ここに上り落とし漁というのが書いてありますが、これは、河口から六十キロぐらい上流に関市というところがありますが、そこにお住まいの後藤先生という方が御夫婦で上り落とし漁という漁具を使ってずっと調査を二十五年間続けておられるわけです。その結果得られました魚がここにずっと黒丸で書いてあります。  これをごらんいただくとわかりますように、これは回遊魚はもちろん含まれます。ところが、回遊魚でなどこういう純淡水魚、川の中で一生を過ごす普通は動かないだろうと思われている種類が実は上り落とし漁にたくさんかかってきます。つまり、回遊魚でない魚だちもこうやって川を上り下りしながら生活しておるんだということがこのことではっきり示されていると思うわけです。実に純淡水魚五十種類のうちの三十五種類がこの上り落としにかかってくるわけです。その三十五種類と十九種類を合わせますと、五十種類を超える魚が明らかに川を上り下りしているということが言えるわけです。そのほか、ここに今度は周縁性淡水魚、これが三十四種類あります。これは、海から一時的に川へ入ってくる、川との間を不定期に往復している魚だちです。これも河口ぜきなんかができますとその上り下りに影響を受ける魚たちであります。  そこで、次に河口ぜきの急遽について少し意見を申し上げます。  河口ぜきがここにつくられて、この両側に急遽がつくられるようであります。ただ、今もどんどん改善が加えられているようでありまして、私は古い資料しか知りませんので、最新の情報については中村中六先生の方からお話があると思いますが、私は、場所は変わらないだろうという想定のもとに、本当にこの急遽までたどり着けるかどうかということとそれから急遽を上った後の問題、この二つについてここでお話をさせていただきます。  一つは、これまでの水員源公団の出しているようなパンフレットを拝見しますと、急遽から水を出す、呼び水を出すだけじゃなくて、ゲートも操作してなるたけ魚を急遽の方まで導くようにするんだというふうに書いてあるわけですけれども、実はこれは利根川河口ぜきのときでもそういうことを水資源の方は言っておられたらしいんですね。あのときの漁業補償の調査検討をされた委員方々はそれをちゃんと信じて、こういうふうにゲートを操作してくれればそんなに漁業に対する影響はないんだという報告書を出したらしいんです。  ところが実際に河口ぜきが建設されてみると、これは新聞やなんかでもさんざん取り上げられて御存じだと思いますが、本当に利根川の下流域の漁業は壊滅的とも言えるような打撃を受けたわけです。これは明らかにゲート操作なり急遽からの放水というのが余り水資源が言っておられたように魚のためのようには操作されなかったんじゃないか。これは東京へ水を送るためには当然といえば当然かもしれないんですけれども、そういったことが実態であったらしいんです。  ただ最近は、よく水資源の方は筑後川の大ぜき、筑後川の河口ぜきと言っていいんですが、そこでの急遽が今長良川でつくられているのとよく似ている、そこでの急遽はうまくいっている、アユもどんどん上っているということでここも大丈夫だという御意見をよく見受けるんですが、筑後川と比較する際に注意しなきゃいけませんのは、筑後川の場合には隣に揖斐川に匹敵する川がないわけです。ですから、遠く離れた川に行く場合には別ですけれども、とにかく筑後川に一度入り込めばそこ以外に行き場所がないんです。いや応なしに上に上がらざるを得ない。  それに対して、ここの場合には揖斐川がすぐ隣に流れているわけです。したがって、例えば湛水域の水質が悪化してここから悪い水質のものが放流されるようになれば、恐らく魚だちは揖斐川の方へ避難していく、そっち側の方に行ってしまうだろう。しかも、揖斐川というのは現在の長良川に比べてそう条件のいい川ではありませんから、やっぱり長良川に上れなかった魚だちは非常に不幸せであるということになると思います。  それから今度は、急遽を上ってからの問題でありますが、これも今は若干変わるようですが、ブランケットというのが予定されているようです。これの断面図をごらんいただくとわかるように、なぎさの部分がもうほとんどないわけです。つまり、こういうところでは魚を食う魚からの隠れ場所が全然ないということです。まずハスとかそれから外国から入ってきたブラックバスというような魚を食う魚というのが繁殖するに違いないわけです。したがって、こういう隠れ場所がないということは、せっかく急遽を上がった点もかなりダメージを受けるんではないか。上るときだけじゃなくて、今度は下りに通過するときにももちろんダメージを受けるだろうということが考えられるわけです。  時間が来ましたので、とりあえず以上です。  ありがとうございました。
  64. 安恒良一

    委員長安恒良一君) どうもありがとうございました。  次に、中村参考人にお願いいたします。中村参考人
  65. 中村中六

    参考人中村中六君) 中村です。  これから長良川河口ぜきと魚との関係につきまして御説明申し上げたいと思います。  事前にお渡ししておきました陳述要旨、これ一枚でありますが、それと図が五つばかりございます。それを見ていただきながら聞いていただきたいと思います。  この長良川河口ぜきの建設に反対する運動が非常に盛んになっているということが新聞紙上に報道されることが多いのでありますが、その運動をしていらっしゃる組織ももう非常にたくさんあるさらにその主張されるところも随分多様にわたっているように思われるんですけれども、これを見てみますと、まず治水利水に関する基本的な反対、それから二番目にはせきの建設は長良川の自然環境の破壊につながるんだという立場からの反対、それから三番目には重要な魚であるアユとサツキマスに対する重大な影響が出るだろう、この三点の側面があるだろうと思います。  私は、もちろん治水利水について言及する力もございませんし、その立場ではありません。ただ、せきができるとアユとかサツキマスが絶滅の危機に瀕するんだというような声がありますが、それに対しては私はそうは思いません。ということで、私が感じておりますままを申し上げて、最後に自然を残すための心配りについても触れたいと思います。  まず最初は、長良川河口ぜきの計画の概要についてお話しするのが順序だと思いますが、これは時間の関係もありますので、既に現地もごらんになっていらっしゃるようですし概要は御存じだと思いますので、一切省略させていただいて、話の途中にまた出てくるかもしれません。そこで、この陳述要旨の一番上に書きました長良川における漁業の概要、特に魚、それもアユ、サツキマスを中心に話してまいりたいと思います。  長良川には非常にたくさんの種類の魚がいるということは今水野先生がおっしゃったとおりでありますが、特にアユとサツキマスが重要であります。そこで、まず真っ先にアユの生活史ということ、これも概略は御存じだと思いますが、わかりやすいように二枚目の図の一番上の長良川水系のアユ漁獲量ということの統計の話をしてまいります。  これは三十三年からの統計がずっと出ておりますが、長良川の漁獲量であります。この傾向はおわかりだと思いますが、特にこの図の中に放流漁獲量というものと遡上漁獲量というものが示してありますが、その放流漁獲量ということについてちょっと説明しておかないといけないと思います。その放流漁獲量といいますのは、御承知のようにアユは天然のアユが海から上がってくるのでありますが、そのほかに種苗も放流しております。これについて説明する必要があるんですが、その放流漁獲量というこの一番下の線は、種苗放流量を十倍した値であります。  十倍ということはどういうことかといいますと、全然遡上がないところでの放流量と漁獲量の記録を集めまして、それを割り算やってみますと九・六二という数字が出たことがあります。これは飛騨川でありますが。そういうことと、また一方、一匁のアユが成長しまして二十匁になる。つまり二十倍になるんですけれども、そのうち全部が生き残るわけじゃありませんから、生き残る率と人間がとる傘とそれを掛け合わせて、八〇%生き残って七〇%とるとすれば七、八、五十六で〇・五六というようなことで、大体〇・五、半分とられるということで十倍、結局二十倍になったものの半分をとるということです。そういうことで十倍したものです。  それから全体の漁獲量からその放流漁獲量を引いたものが遡上漁獲量、つまり自然に海から上がってきたものがこれだけとられているだろう、こういうようなことです。ごらんになってわかりますように近年非常に上昇しておりますが、天然の遡上漁獲量もふえているということは非常にうれしいことだと思っております。  そこで、アユとサツキマスの生活史の話をしますと、先ほどちょっと説明しかけました図の二のアユの回遊型。これは塚本さんの図をお借りしたわけですけれども、隣にあるのはこれは琵琶湖のつもりでしょうか。川の右の方をごらんになってわかりますように、春に川を海から上ってきたアユが中流、上流に上って、御承知のようにそこで友釣りその他の漁法でとられる。それで秋になって海にずっと下っていきまして、途中の産卵場で産卵をしてアユは死んでしまう。ふ化した子どもは海に流れついて、半年ばかり暮らしてまた春に上っていく、こういうことを示したものです。  時間が惜しいですからそのくらいにしておきますけれども、サツキマスの方はこれはその下の図で、前の前ですか岐阜の水産試験場の場長をしていらっしゃった本荘さんの図をお借りしたわけですけれども、アマゴがふ化したものがずっと成長して河川残留アマゴになります。ということですけれども、そのうち一部が、これは一年たった途中のものですけれども、それが海に下る準備として体の色が銀色、銀毛と言いますが、銀毛化して海に下っていきます。  これは海に下るのは例えばウナギでもみんなそうです。銀腹というふうになって海に入るわけですけれども、海の中で六カ月ぐらい暮らしまして、その間に体重は六、七倍になって翌年の巻上ってくる。それで、ずっと上ってきたものが岐阜のあたりを通るときがちょうど五月ごろということでサツキマスと呼ばれるようになった。これは本荘さんがおつけになったと思いますが、それがサツキマスでございます。ですから、川におるアマゴの一部分でございます。これについては、また後で少し触れるかもしれません。  次は一番肝心の三の堰の設置による点への影響、こういうことについて触れてみたい、と思います。  これは、影響はないわけじゃなくて、もちろんあります。まず下るときの問題はどうか、それから上るときの問題はどうかということで順々にお話ししてまいりたいと思います。  まず一番最初は、二十二・五トンという取水が行われます。これは左岸からとられるということでございますが、その中に、秋に卵が産まれ、それからふ化した仔魚、これはもうちょうど糸くずみたいなもので一センチ足らずの非常にか弱いものですが、それが流れて海に入る。その途中で、取水口に参りますと吸い込まれます。これは泳ぐ力がないですから避けられないということです。その量はどのくらいかと聞かれれば、そのときの川の流量と二十二・五トンの割合だろうというふうにお答えせざるを得ないんですけれども、それはもう完全にアウトというふうに覚悟した方がいいんじゃないかというふうに思われるぐらいのものだと思います。  しかし、これもそのときの流れの流心を、川の真ん中を流すようにするとか、これは左岸に取水口がありますからそういうふうにするとか、それからまた、さらに手を加えることを主張する人たちは、取水口に入ったものは実際に今度は沈砂地あたりでまた何とか手当てをすることもできるじゃないかというように、こういういろいろ考えられる被害に対してできるだけの対策を講じようという考えもあります。そういうことですが、とにかく迷入は一番大きい問題だと思います。  それから次は、せきができまして、湛水域といいますか、これが約二十キロにわたります。ですからそこへ入りますと、ずっと上から来た流れが緩くなりますからそのままには流れなくて、いわゆる水たまりになります。それでダム湖というところができるんですけれども、そこで海へ向かって流れていくアユが海へ到達する時間が延びるというわけであります。これが問題でして、といいますのは、子どもがヨークと言いまして卵の黄身のような栄養を持って産まれるんですが、それらが吸収されて、それから死んでしまいます。  大体四日ぐらいで吸収されて、それから絶食するわけですけれども、大体一週間ぐらいでアウトになって死んでしまうというふうに考えられている。その一週間、湛水域の中におる期間がそれをオーバーしますと死なざるを得ないということで、それが問題。これはそのときの長良川流量によって、回転が早ければ滞留時間が短いし、渇水で長くとどまりますとそこにおらざるを得ない期間が延びますからアウトになる。そこがもうぎりぎりのところだと思って、これによる減耗も覚悟しなきゃいかぬかなという気もするんです。  一方、これについては救いかないではない。といいますのは、流速が落ちますと、そこに御承知のようにプランクトンが発生します。それが仔アユの、ヨークを吸収してしまった後のアユのえさになる。それを食べて生き延びる。生き長らえるというか死なずに済みます。そういうことの救いが考えられる。事実、そういうことは岡山県のあそこの川の湛水湖でもそういう例が見られます。流れの緩くなった下流では、事実海へ入る前のアユの子どもがえさをとっているということもありますので、まずこれによっては、多少もちろん影響はありますが、大きな心配はいいんじゃないかという気持ちもします。  それからもう一つ言っておきますが、川によっては産卵場が非常に上流にありまして、例えば利根川なんかですと百八十キロから二百四十キロ、それから支流の鬼怒川では百四十キロから百八十キロという遠いところにありますから、そこで産まれた子どもは海に行くまでにかなり長い日数を要するはずなのに、今そこでもちゃんと再生産が行われているということもあるんで、案外耐久力があるのか、あるいは川の中でも何かを食べているのかということも考えられます。  それから三番目には、せきの地点で落下する、それが問題なんですが、その落下衝撃がよく云々されます。これは下に水があってかなり深いですから、まずそう私は心配しなくてもいいんじゃないかと思っております。それから、サツキマスは未成魚と言いますが、おりていくときはかなり大きいですから、取水口の外側にいろいろフェンスを張って防ぎますので、まずそれによって救われるだろう、心配ないと思います。  それから遡上の問題ですが、これは随分いろいろ問題がありまして、まず海におるアユの稚魚、春になって上がってくる稚魚が果たしてその三川河口に行けるだろうかという問題。これは河口全体、三川から入ってくる水が全体として働きますので、長良川で二十二・五トンの取水がありましてもそれは三川の合計の約五%だというふうに計算されるようですから、これはまずそう心配ないだろう。  それから次は、揖斐川と長良川と接しているそこが問題で、今水野先生お話もありましたけれども、三川のうちでさらに長良川へはどうかという問題があります。流量で言いますと、遡上期の流量で木曽川、長良川、揖斐川の順で一・六対一対〇・九五というようなことです。ところが、木曽川の方が流量は多いんですが、長良川の方がアユの遡上量はずっと多い。木曽川も揖斐川も長良川の七分の一ぐらいというふうになっている。これはなぜかといいますと、結局長良川の水がいい水だというように解釈されております。そのほか、水温も長良川が一番高いとか濁度が低いとか、御承知のように揖斐川は濁っておるわけですけれども、そういったようなことがある。  それで、ただ長良川のところまで行きますと、せきからおりた水が広がる。その割合が二十二・五トンをとられることによって減りますから、そこで流速も落ちましょうし、遡上が影響されるということもこれは考えざるを得ないというふうに思いますが、どのくらいかという量はなかなか難しいことだと思います。それからいよいよ急遽への取りつきのことですけれども、これは急遽へ入る水は一部です。そのほかにゲートから落ちる。これはやはり両わきのゲートから落とすようにして、大体川の両わきを魚が上っていきますから、そのようになるように導く、それで行くだろうと思っております。  それから急遽の取りつきですけれども、そういうことで呼び水水路をつくりますので、呼び水で魚は入り口にたどりつく。これがもう一番問題でして、それには呼び水が働くでしょうし、急遽に入ってしまえばまずうまく上っていくと思っていいと思います。それから長良川の中へ入ってしまった、湛水湖に入ってしまったものがうろうろしないかということは、これはほかのダム湖での経験もありましょうし、稚魚に標識をつけてやった実験もありましょう、大丈夫だと思います。そういうことで、今言いましたように、迷入の問題とせきの下での流量の減少から、量はわかりませんが、多少遡上に影響があるということで、全く上らないということはありません。  それから、これからのことですけれども、一番これからのことが大事だと思うんですけれども、まず私が言いたいのは、今水野先生がブランケットのお話をされましたけれども、上の方で全くコンクリートの壁にしてしまうというのは全くとんでもないことで、今ある植物その他をなるべく残すようにする。ブランケットをつくるにしてもそこに植物を取り入れるということが何より大事だと思います。私もついこの間まで河川形態変化というような仕事を水産庁の仕事としてやっておりましたけれども、まず川の岸辺の植物帯を残すということが何より大事だということを結論として言ったわけでございます。  それから急遽のほかにもできるだけ前向きのことをして、多少はどうしても出る影響をなるべく少なくするような努力を惜しんではいけないということであります。それから小さい弱い点への手当て。これは非常に難しいんですけれども、これもなるべく気をつけていかなきゃなりませんし、そういうふうなことを努力しましても必ず影響があるわけですから、私どもこれからのこととして気をつけなきゃならないのは、河口ぜきをつくったらつくったで終わりということでなくて、これから後、長良川全体をどのようにうまく利用したらいいかということについて衆知を集めてやっていくように、そういうことに今お金を使っていただきたい、こんなふうに思っております。  それから決して言い落としてはいけないと思いますことは事後の調査。こういうことをやった後どうなったかという事後の調査を、今まで随分いろんな開発の場合に事後は調査をすると言いながらなかなか余りやられてないように思いますが、必ず事後の調査をやって、その結果問題が恐らくあるでしょう、多少は。そうしたら、すぐそれに対して手当てをする。手当てをして手直しをする、そういう勇気を持っていただきたいと思っております。そのようなことで、一口に言いますと、せきができて二、三の影響は、今は私が気づいただけを言いましたが、あります。必ず何かあると思いますが、それはそれでそれに対する手当てを考えていく。それで少してもいい川として長良川を残していきたい、そういうようなことでやってまいりたいと思っておるものであります。  ちょっと時間が過ぎましたけれども、これで終わりたいと思います。
  66. 安恒良一

    委員長安恒良一君) どうもありがとうございます。  以上で参考人の方からの御意見の聴取は終わりました。  これより参考人の方に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  67. 西野康雄

    ○西野康雄君 きょうはお二人の魚類の権威者にお越しいただきまして、いろいろ有意義なお話を聞かせていただきました。ありがとうございます。  お話をお伺いしておりまして、若干の疑問点がございます。まず中村先生でございますが、せきを流下する際の落下衝撃、これは降下に及ぼす影響でございますが、子アユ、仔アユとも申します。ゲートを越流する水流は水脈流となって流下するので、その中に浮遊している仔魚が損耗を受けることは少ないと思われると、こういうことでございます。  ただ、KSTの調査でございますけれども、和田、稲葉のお二人が調査をいたしましたせきからの落下並びに急遽流下のモデル実験の結果でございます。淡水中での仔アユの九〇%生存時間が五十ないし七十時間であることを考慮して、五十時間経過後を比較すると、越流落下はへい死率八一%対一〇%以下、急遽流下は同じく九七%対一〇%以下ということで、こう結論づけております。両者とも対象区に比較して、急激に死亡率を高め影響の大きいことがわかったと明快に書いてございます。それと損耗率が本当に少ないんだということ。私、八一%というへい死率を見るというと、これは先生のお考え方と大変にKSTという建設省が一生懸命やった調査と整合性がない、矛盾が生じるんじゃないか、かように思うわけでございますが、その水脈流を浮遊している仔魚が損耗を受けることは少ないというそういう実験データ等々ございますでしょうか。
  68. 中村中六

    参考人中村中六君) お答えします。  その問題につきましては、近年になりまして岐阜大学の和田先生がいろいろ実験をしていらっしゃいます。和田先生御自身の実験でも、落下による衝撃によってへい死するのほかなりあるというような御論文も最初のうちは、最初といいますか前の方はあったんですが、比較的最近のお仕事で、その落ちた下の方の先が初めはこういうふうに全くフラットなところに落としてやる、それが水が深いところに落とした実験をされております。そういう実験では非常に減耗が少ない、こういう結果が出ておりますので、私はそれが一番事実に近いんじゃないかというふうに思っております。  今お挙げになりましたKSTのあれ、私はそういうかなり損耗が大きいという報告があるということも承知しておりました。承知しておりましたので、気になっていることの一つだったんですけれども、今申しましたような和田先生の最近の実験で、まずこれは、私は今申しましたように水脈流、かなり厚い幅で水が落ちます。その中に先ほど言いましたように糸くずみたいなアユが浮いて落ちるわけですから、下に水があって、かなりそれも深い水であればそのまますっと入っていって、その中にアユは漂っておるわけですから、まず私は大丈夫だろうと思っております。  事実また、これは落下ではありませんけれども、産卵場から流れ下って海に行く途中でもいろんな状態の川のところがあろうかと思います。時には大きな石があってそこから落ちることもありましょう。これは、そのこと自体は小さいにしてもアユの体から見たらかなり大きなあれでして、もちろんうんと下流へ行けばずっとなだらかに流れるでしょうけれども、中流、産卵場の近くではかなりあるだろう。ですから私はそういうふうに落下流の水脈の中におるんで大丈夫だろうと、大丈夫というかそう大きな心配はないだろう、こんなふうに思っておるわけです。
  69. 西野康雄

    ○西野康雄君 さような実験を水野先生はどうでございますか、御記憶にございますか、新たにやり直したという。御記憶にあるかないかだけで結構です。
  70. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 私は知りません。今中村先生から初めて伺ったわけです。
  71. 西野康雄

    ○西野康雄君 尊敬する水野信彦先生でございます。先生の名言というのですか、一九八七年にお書きになった内水面漁場環境・利用実態調査報告書の中に、瀬とふちは夫婦、夫婦は一心同体、こういう名言があったかと思います。  私、植物帯を残すということは当然のことだとは思うのですが、このブランケットだけをやって真ん中に水を流す平瀬と早瀬、ふち、この三つの組み合わせがうまくいっていないと魚種というものは非常に貧弱になってくるかと思います。私、先生の資料を読んでいて、ヨシノボリのことに触れておって、時間切れでちょっと説明が切れたかと思うんです。先生はそういうふうな早瀬と平瀬とふちというのを四国のヨシノボリの旧型共存河川の中流域で御調査なさったかと思います。ですから、今の河川の改修の仕方というのは点そのものの生存にいろんな影響を与えているかと思うんですが、その辺ちょっと具体的に過去の経験からお話し願えればと思うんですが。
  72. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 今のは大変大きな問題でありまして簡単にお答えするのがなかなか難しいんですが、魚にとって必要な条件は大きく二つに分けられると思うんです。  一つは、今言ったその場所に生活できる環境があるかどうか。先ほど御質問で委員がおっしゃった瀬とふちがそろっているということは、その場でやっぱり暮らしていくときの重要な条件、一番基本的な条件だと思っております。従来の河川改修ですと大体ふちは埋められて瀬だけがだらだらと続く、いわゆる漁場が平たん化すると我々は言っているんですが、この改修をされますと、特にアユとかウナギとかコイ、フナ、ウグイ、ああいう大きく育つ魚が非常に大きくマイナスの影響を受けるわけです。  それで、私は、改修するんだったらぜひともふちを残すようなそういう改修方法を、少なくとも堤防を必要としないところではそういうことも技術的に可能なんではないかというふうに申し上げておったわけです。河川管理者側も徐々に、特に昨年は多自然型の川づくりという通達を出されまして、その中に一つふちの保全ということも取り入れていただいております。そのほか、護岸の仕方も魚のことも考えてやるようにと、そこにはいろいろな改善案が盛り込まれておりまして、私は非常に喜んでいるわけです。  それからもう一つの大事な条件は、移動ができるかどうかということであります。つまり、上り下りの障害物をなるたけこしらえないように、もしこしらえる場合にはなるたけ移動を阻害しないようなそういう施設なり障害物なりをこしらえる。急遽はその一つにすぎないと私は思っておりますけれども、急遽以外にもいろんなやり方があると思います。そういったことをまた私は提案しております。これも何か新聞によりますと、ごく最近やっぱり建設省が、これまでのせきや急遽は魚の上りおりを阻害しやすかった、それを徐々にでも改善していくようにという通達を出してくださったそうです。とりあえずはこれを建設省の直轄区間に適用するらしいんですけれども、これも私にとっては非常にうれしい方向だと思っております。
  73. 西野康雄

    ○西野康雄君 今の河川局の多自然工法だとか自然に対してのアプローチの仕方というのが今までと違ってなかなか配慮が行き届くようになってきたな、その方では私自身大変に評価もいたしております。  ただ急遽という面を見ますと、本当にさっさと上るのか。既成のところ、広島の芦田川等々ひっくるめて急遽に対しては大変に懐疑的でございますし、一例を挙げますと、急遽の手前に大変に砂がたまったりあるいは急遽の上に砂がたまったりというところも随分とあるかと思います。そうすると、急遽が幾らよくてもそれは機能しないんじゃないか。そういう例は先生は随分とごらんになってきたかと思いますが、どうでしょうか。
  74. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) お答えします。  先ほど挙げていただいた報告書で全国の漁業組合にアンケートをとりました。その一つに、今つくられている急遽の効果はどうかという設問があったわけです。それに約四百以上の組合が回答してくださったと思うんですが、五〇%ぐらいの急遽はいろんな理由で効果がほとんどないというふうに回答を寄せております。ただ、これまで私は全国各地の川を歩いておりますけれども、そこで見た印象では、漁協の方の評価は非常に甘いように思います。従来の急遽の恐らく九〇%から九五%はもう何らかの形で非常に問題があると私は思っております。  ちょっと時間をここでいただいてよろしいでしょうか。スライドを用意してきましたので、急遽についてスライドで御説明させていただきたいと思います。  これが河川改修のときにつくられる落差工ですね。こういうのが五百メートル置きとか一キロ置きにずっとつくられていくわけですが、そのときに急遽が設けられる。大体これが典型的なものです。これ以外にも発電所のダムとかいろんなところに急遽がつくられております。中には先ほどおっしゃられたように、埋まってしまったり階段が壊れたり下が浮き上がったり、いろいろと壊れたままに放置されている急遽もございます。恐らく漁協が効果がないといった理由はそういったこと、あるいは水がたくさん流れ過ぎるとかあるいは流れないとか、そういったことを理由に挙げておられるわけです。ですから、そういった漁協の目から見れば効果的な急遽ということになるんだろうと思うんですが、実際にはこれは私は一年に恐らく数匹ぐらいしか極端なことを言えば利用しないであろうというふうに思うわけです。  なぜかと申しますと、魚でもエビでもカニでも、川を上るときには岸沿いを上がっていくわけです。我々ですと知能がありますから、ここで行きどまりになればまた後戻りしてどこか上れるところを探すわけですが、魚とかエビやカニは突っかかればそこに一日じゅう、夜になればまた戻るでしょうけれども、とにかく日中は一日じゅうここでうろうろしておるわけです。その間にカラスとかサギにぱくぱくと食べられるというのが現状であります。ですから、もし急遽をつくるとすれば両側につくることです。なぜその工事をやられる方が両側につくりたがらないかというと、両側につくるとどうしても埋まりやすいという面がございます。そういった点で真ん中に持ってこられたんだろうと思うんですけれども、これでは魚やエビやカニには余り役に立たないということになります。  それから、従来の急遽は大体階段状であります。これはアユのためなんですね。つまり、ジャンプのできる魚は上がれるわけです。しかし、魚の中にはジャンプのできない魚、いわゆるカジカとかハゼですね、ああいうジャンプのできない点もたくさんあります。そういう魚たちにとってはこれは非常に上りにくい急遽であるということになります。それからもう一つ、もっと致命的なことは、今度は下りです。先ほども御質問がありましたが、下るときにはこの形ですと運よくここを通過したものはいいんですけれども、こういったところに運ばれたものは文字どおりたたきにたたきっけられて、恐らくそこでかなりのダメージを受けるであろうということが考えられます。  次をお願いします。  これは似たような例ですけれども、こういうのが無数にあるわけです。  次、お願いします。  私が提案していますのは、こういったたきはつくらずに、もしつくるとすれば深いところにつくる。そうすれば、ここが出水のときに振れてふちができます。その掘れたものの一部がここに堆積して山になりますから、山になって落差を少なくする。そうすれば急遽をつくらなくてもジャンプできる魚は自力でジャンプしていける。つまり、どこからでも上りおりできる。そのような実例をお目にかけます。  次、お願いします。  これがそうなんですが、これは昔つくられたんでしょうけれども、あるかんがい用の堰堤です。ここから水を田んぼに引いています。ここにはたたきがありませんから立派なふちができております。これを学生にはかってもらったら一・五メートルあるんです。ここのところに山ができております。したがってずっと水位を上げますから、もしたたきがあれば出水のときにこの山は突き崩されるでしょうから、この落差は恐らく一メートルを超えてしまうだろうと思います。しかし、ふちがあればこの落差が非常に小さくなりますから、どこからでも自由に上りおりができる。しかも下るときもダメージは受けにくいということになると思います。  次、お願いします。  ああいうので、コンクリートむき出しというのが見てくれが悪ければ、これは高知県の例なんですが、こういうふうに落差工に岩を組み込んでこれを急遽にしています。強い流れもあり弱い流れもおりいろんな流れができますから、大きな魚、小さな魚、エビ、カニ、どんなものも自由に上り下りができる。これなどはかなりいい仕掛けではなかろうか。  次、お願いします。  今のは上流域の早瀬をまねた急遽ですが、もう一つ、これもやはり高知県の例なんですが、中流域の早瀬をまねた急遽があります。これは昔ここに階段式の急遽がつくられておったわけです。私も何遍も見ていますが、アユが上がってくるとここにもう真っ黒にアユがたまってしまうわけです。それで鳥にぱくぱく食われる。それを見かねた組合がこの急遽を何とかいいものにしたいということであちこちの急遽を見て回ったわけです。その結果、どこの急遽も気に入らぬと。自分たちで結局考えたのは、自然の早瀬に似せてしまえば上り下りに支障はないではないかということで、この辺からこっちを幅四十メートルにわたって早瀬式の急遽にしたわけです。  これの一番のポイントは、こちらの方が勾配が急なんですが、こちらに来るに従って勾配を緩くしてあります。これはすそがこういうふうにこちら側に引いているのでおわかりだと思いますけれども、これによって流れに強弱をつけている。したがって大きい魚、小さい魚、私はこうなってから調査はしておりませんけれども、組合に言わせると、もうアユでも何でもここに全然とどまらないですうすう上っておると言っております。これが私は瀬の落差の低いせきでは一番いいんではなかろうか。  もっと改良するとすれば、恐らくこの場合は漁協は設置しようとしてもできなかったんでしょうけれども、こちらの方を深くして岸の方に来るほど浅くする、そうすればもっと自然の早瀬に状態が近づいてくる。それでこちらの流れからこっちの流れに向かって流速水深勾配ができます。石もこっち側に大きな石を植えてこっち側に小さい石を植えるようにする、そんなようにすれば恐らく理想的な急遽になるのではないだろうか。落差の低い堰堤ではああいう道をこしらえずに、川の全面にわたってこういう急遽をつくるのが一番よろしい。  ただ、問題は可動ぜきであります。可動ぜきの場合には川幅の大部分を可動にしますから、急遽をつくるところは限られるようになります。そこでも私はこういう早瀬式の方がいいんではなかろうか、長良川河口ぜきについては数年前に意見を言ってくれと言われたときにそういうことを申し上げた覚えがあります。これは岐阜県の水産試験場の方に問われたものですから、そういうふうにお答えしました。  どうも長くなりました。
  75. 西野康雄

    ○西野康雄君 ありがとうございます。  いろいろ日本全国の例を挙げていただきまして、私も急遽をずっと見ておって、両サイドにつくると両サイドは随分と埋まっている、そういう川を見受けます。そしてまた上流域、下流域でも埋まっております。そうなりますと、幾ら実験段階でいい急遽をつくってもそこの河川においては何の役にも立っていない。呼び水式魚道もそうですけれども、見ていきますと本当に流れがむちゃくちゃ速過ぎてこれじゃ上れないというのだとか、いろいろございます。  ですから、本当はこの河口ぜきの是非を問うときには、既設の河口ぜきのところに今ある設計されている急遽を持っていく、ロック式魚道を持っていく、そういうふうなことをしないことには正しい実験結果というのは出てこないんじゃないか、かように思うんですけれども、どうでしょうか、水野先生
  76. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 申しわけありませんが、ちょっと質問の御趣旨がわかりかねたんですが、もう一度……
  77. 西野康雄

    ○西野康雄君 急遽の実験をするときに、今ある河口ぜきのところに今長良川で設計されている急遽を持っていかないことには正しいデータというのは得られないんじゃないか、そんな気がしてならないんですが、即答できなかったらそれはそれで結構でございます。  汽水域の問題が全く述べられてないというんですか、せきで淡水域と急に塩分濃度の濃い海水域とになってしまいますね。そのときに例えばサツキマスですが、これは非常に長い間汽水域に滞在して徐々に体をならしていくかと思います。ところがこのせきができますというと、一気に海水域に入ってみたり一気に淡水域に入ってしまったりする。これに対しての影響というのは大変にきついんじゃないかと思うわけでございますが、水野先生の御見解はどうでしょうか。
  78. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 私は汽水域の方は余り詳しくないんです。それとまたサツキマスについてのそういった研究の成果というのは私まだ知らないんですが、KSTの調査報告にボラとスズキに関する調査結果がございます。それは海水から急激に真水の中に魚をほうり込んだときにどういうことになるかという実験なんですけれども、それによりますと、スズキはそれほどでもないんだがボラは非常に死にやすかった、ダメージが大きかったという実験であります。実際にボラが真水に入ってくるわけですけれども、そのときには潮の干満に応じて上り下りしながらじわじわと真水にならしてそれから川へ入っていくんだと。したがって、河口ぜきができて海水のところと真水のところがはっきりと区分されてしまうと、恐らくボラの遡上は急遽ができても不可能であろうというふうな見通しを立ててあるわけです。  サツキマスがスズキに近いのかあるいはボラの方なのか、今は実験がされているかもしれませんが、その辺の情報は私持っておりません。
  79. 西野康雄

    ○西野康雄君 たしかサツキマスの実験結果でも浸透圧、あれの順化のためには非常に長くかかっている。ですから、いきなり海水の方に淡水から行くというとむしろボラに近いという、そういうふうなことが出てきております。ですから、サツキマスというのを単に急遽を上がっていくから大丈夫なんだということではなくて、そういうふうな魚というのは、全般に今までの急遽論の中で聞いておりますと、淡水域から海水域へ行くときの浸透圧調整というんですか、そういうふうなものが急遽論の中で抜けておるように感じるんですけれども、どうでしょうか、水野先生
  80. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 実験が十分であるか不十分であるかは別にしまして、そうやってKSTの調査でもやはりその点を心配して実験をやっておられるわけですから、抜けておったわけではないと思うんです。ただ、その当時KSTの調査報告は、御存じのように水産生物、漁業補償に重点が置かれておりましたから、そうやって水産的に重要なアユとかウナギとかボラとかスズキとか、そういう種類について調査をしている。当時サツキマスはほとんどとれておらなかったようで、そういう水産的な重要種とはみなされなかったせいか当時は余り調査されなかったようです。現在は調査をされているんじゃないかと思うんですが。
  81. 西野康雄

    ○西野康雄君 その調査結果に基づいて若干コメントを述べさせていただいたわけですが、多分KSTの時分には本当にサツキマスというものの存在そのものがなかったかと記憶をしておるわけでございますが、塩水浸透だとかそういうふうなこともきっちりと考えていかないと、アユでも損耗率だけでやっていくべきものじゃないと思います。  私非常に気になるのは、種の保護から系群変異性への保護というそういうふうな流れが一つ魚類学会にあるかと思います。アマゴを銀毛化させたらサツキマスになるんだというそういう系統ばっかり選抜していくとか、他の河川のアユを持ってきてそれを養殖、放流したりするということは、これは非常に遺伝子レベルにおきまして種の保存というものにおいて撹乱をしているんじゃないだろうか、そんな気がしてならないんですが、水野先生の御見解はどうでしょうか。
  82. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 今おっしゃった、つまり同じ種類の中にもさまざまな性質のものがおるということを我々は多様性と言っております。その多様性を維持するということが非常に重要であるということが近年これは世界的にも認められているというか、その方向に進まねばならぬということです。それをバイオダイバーシティーというんですか生物多様性の保全、これを図るということが国際的にも非常に叫ばれてきつつあります。  どぎつい言い方で恐縮ですけれども、日本人も世界的に見れば一部分、だけどその日本人も非常に多様性に富んでおりまして、東北の人と九州の人とではかなり違う面があるわけです。そのうちどこかが生き延びるんだからどこかはいなくなってもいいんだという行き方は非常に危険ではないか。ただ、他と切り離して言えば、そういう形でとにかくダイバーシティーはなるたけ保っていくということが必要だろうと思います。
  83. 西野康雄

    ○西野康雄君 バイオダイバーシティーの観点から見るというと、アユの人工種苗だとかサツキマスだとか、そんなものをぱっぱぱっぱ放流して、それで漁獲量が上がっているんだとか、それだけでは本当に世界の笑い物になるというんですか、流れの中で本当に何を考えているんだろうかと言われかねないような状況ですし、人工種苗で漁獲量がふえたからということがその川が豊かであるとかそういうふうなことではないと私自身思います。  よく長良川は人工の川、未然の川ではないんだというふうなことを申します。人工化率八十何%だとかいろいろ数値を挙げられる方がございますが、これだけの人工化率でありながらなおかつこれだけの多くの種類の生物が生息をしている、このことが一番重要なことではないだろうか。だから人工河川論、天然河川論ではなくて、これだけ手が入っておるにもかかわらずこれだけ多くの種類がおるということ自身の方が私は貴重ではないか、かように思うわけでございます。  水野先生日本全国の川をお回りになっていて、これだけ豊かな魚種がこれだけ人工化率が肩い中であるような川がほかにございますでしょうか。例がありましたならば、思い出す部分で結構ですし、いやそんな川はないというのならばないで結構なんでございますが。
  84. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) そうですね、魚の種類が豊富であるということを基準にしてすぐ私の挙げられるのは、御存じと思いますが、高知県の四万十川、建設省のあれでは渡川という名前になっていますが、その川が魚類が非常に豊かであります。やはり汽水域の魚を入れますと百五十種類ぐらい今までに確認されております。分布の仕方なんかもかなり自然に近い状態だということです。ただ、縦断面なぞをとりますと、四万十川というのは河口からずうっと緩勾配で上に行きまして、上流のところでくるっと急勾配になるという、何というんですか大陸の川をミニチュアにしたようなそういう感じでありまして、島国の川としてはちょっと縦断面形は不自然であります。その点長良川は非常に自然であるということが言えると思います。  ほかにもう一つ島根県に高津川というかなりいい川があったんですけれども、どうもこれはかなり河川改修が進められて、私が調査したころに比べるといろいろ、何というんですか数が、少なくとも密度なんかは減っているように聞いております。
  85. 西野康雄

    ○西野康雄君 アユをよく取り上げられるわけです。アユの産卵を見ていますと、粘着性とでも申しますか、そう表現する方がいいんでしょうか、非常にきれいなところの川床に産卵をしておるようです。ところが、この長良川でもそうなんですが、上流が開発されたりすると随分と泥が入ってきたり、また河口ぜきでストップして流速が衰えたりしまして、汚泥とでも申しましょうかそういうふうなものが非常にたまりやすい。そういう上に卵を産んでも、これはリュウキュウアユかなんかでやっぱり絶滅に瀕している。上の方の土砂がずうっと河川を覆ってきたりして、それがために産卵床そのものがだめになっている。  私は長良川でもそういうふうな危険性というものはこの河口ぜき建設によって出てくるんではないかと思うわけですが、これは水野先生の御見解としてどうでございましょうか。
  86. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) たしか長良川でのアユの産卵場は河口ぜきの湛水域よりも上流にあると思うんですね。ですから、これが湛水域になってしまえば今おっしゃったように泥もたまるでしょうから非常に大きなダメージも受けるし、恐らくそういう湛水域の中ではアユは卵をもう産まないと思います、その湛水域の上流であれば河口ぜきの影響は受けないと思うんですけれども。  ただ、近年日本の川は全般に湿っぽくなっているわけです。例えば私がずっと見てきている愛媛県のある川なんですが、その川は私が愛媛に赴任したころは非常にきれいで、川底なんかも泥っ気がほとんど見られなかったわけです。それで、長良川でも問題になっていますカジカがたくさんおったわけです。ところが、年々泥っ気がふえてまいりまして、川の水はかなりきれいなんですけれども、私潜っていつも調査するんですが、潜って見ていると川底に年々ほこりがたまるようになってきまして、それで今から十年ぐらい前にとうとうカジカは一匹もとれなくなりました。その川ではほとんど絶滅したんじゃないかと思っておるんです。ですから、そういう形で近年の一般的な傾向としては、だんだんそういう泥つ気が恐らく全国どこの川もふえつつあるというふうに思います。
  87. 西野康雄

    ○西野康雄君 ありがとうございました。  湛水域で泥がたまる。そうすると上流の方にしか卵を産まなくなる。そうすると今度は帰ってくる時間が非常に長くなるということになりまして、それでまた一つ一つ疑問点が解決していくいいサゼスチョンをいただけたと思います。卵黄を持ってずっと行くんですけれども、かなり上流部でしか卵を産まなくなると、逆に言いますと今度は帰ってくるときに非常に時間がかかるということにもなるかと思います。揖斐川へ魚が上っていく。これも私妥当なことだと思います。上流の郡上八幡あたりの人は、そういう意味においては漁業に大打撃があるんじゃないか、そういう新しい疑問点。隣にあるということで筑後川とは全然違うんだということも御指摘をいただきました。  いろいろと、水かけ論になる部分もございますので、アユの損耗率だとか何日で帰るんだとかという部分に関しては避けさせていただきました。おかげさまで揖斐川に上るんだとかまた新たなる問題点が出てきたこと、私自身うれしく思っております。きょうは本当にありがとうございました。
  88. 井上章平

    ○井上章平君 自由民主党の井上でございます。  水野先生中村先生には心から感謝申し上げます。両先生お話を大変感銘深くお聞きいたしました。  両先生お話にございましたように、我が国の河川は大変豊富な生物が生息しておる、特に長良川においては特筆すべきものというふうに私も思っております。しかしながら、河川ということになりますと、特に我が国では治水上、利水上の大きな使命も負担させられておるわけでありまして、長良川においてもその例外ではないわけであります。  それで、今日の河口ぜき建設問題があるわけでございますが、今西野先生から長良川河川の生い立ちについてちょっとお話がありましたので私からも申し上げたいわけでありますが、長良川は今日大変自然豊かな河川とされておりますが、過去を振り返ってみれば、これは特に下流域では一〇〇%人工的に開削された河川でございます。しかし、それだけにいわば理想的な形、安定勾配といいますか、先ほど河川によってさまざまというお話がございましたが、理想的な勾配形状を保って、また良好に管理されているということもございまして、そのために上流から下流にわたって御指摘のように大変豊富な生物相が今日保たれているというようなことであろうと思うわけでございます。  そこに今度河口ぜき建設問題が持ち上がってまいったわけでございますが、この河川、特に長良川には深刻な治水問題がございますので、私はその対策としてこれは宿命として避けられない構造物であると考えております。しかしながら、今日このような豊かな生物相にできるだけ影響を及ぼさないようにするにはどうすればいいのか、どのような努力をすべきかというようなことについて先生方のお考えを承りたいと思うわけでございます。  今日、水資源開発公団、建設省等によりましてこのせきに併設される急遽につきましてもう既に計画されておるわけでございますが、この急遽の機能をどう評価するかということは大変大事なことであろうかと思います。実物実験ということもこれはかないませんので、やはり今日まで多くの河川で多くの実績が積み上がっておると私は思うわけでございますが、歴史的に見ますと、急遽というのはどちらかといえばなおざりにされたというのは水野先生からお話があったようなことでございまして、そのために魚がそこで遮断されたという実例も決してないわけではないわけであります。今後、我が国の河川の生物相をできるだけ後世に伝えるためには、やはりふさわしい立派な急遽をつくっていく、またつくりかえていかなきゃならないということは私もそのとおりだと思うわけでございます。  今日計画されております長良川河口ぜきでの急遽でございますが、私の伺ったところでは、今日考えられる最良の施設として階段式あるいはロック式といったような急遽が計画されておると伺っておるわけであります。特に先ほど来いろいろお話を伺っていますと、生息する生物の多様性の確保ということもございましょうが、とりわけここで問題になるのは、アユそれとサツキマスの遡上の問題が一つあるようであります。それからもう一つは、ハゼといったような底生魚というのでございましょうか、あるいはカニのように遊泳力の非常に弱いそういった魚等について、今日計画されておる長良川河口ぜきの急遽が先生方から見ましてどのように評価され、今までの議論でお考えは少しずつわかってきたわけでございますが、総括してどのような評価をされておるのかお伺いできれば大変ありがたいと思っております。  水野先生中村先生、それぞれお答えをいただいて、終わりたいと思います。
  89. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 急遽に上るまでの問題と、それから上ってからのことは先ほどごく一部ですけれども申し上げました。ただいまの御質問は、急遽そのものの構造に問題がないかどうかということだと承りまして、お答えをさせていただきます。  少なくともこれまで公表されている長良川に予定されている急遽は、開門式の急遽とそれから呼び水式の階段急遽だと思うんです。それで、階段急遽の方は、従来のものに比べれば落差とかその他いろいろ工夫はされておるんですけれども、やはりジャンプのできる魚を頭に置いて設計されているように思うんです。したがいまして、ジャンプのできない代表的なものは例えばカジカ、そのほかにもいろいろあるんですが、そういうものは遡上が困難なのではないかというふうに思うんです。  それからエビやカニの問題ですけれども、これは水中を上がっていくことは困難なんでしょうが、幸いなご士にそういう階段式魚道でも水しぶきで側壁がぬれるわけですね、そんなところをはって上がっていく能力があるもんですから、だからまあエビやカニにとっては非常にしんどいでしょうけれども、全然上がれないというわけではないと思うんです。ただしかし、やっぱりこれは不自然なので、先ほど私が申し上げましたような早瀬式の急遽にすればエビやカニ、ハゼやカジカも普通の川におるのと同じように楽に上りおりができるんだろう、そういうふうに思います。  それからロックゲート式の急遽なんですけれども、これも泳いでいく魚にはかなり効果があると思います。ただ底生魚とかエビ、カニにどうなのかということは、正直な話、私自身調査した経験もありませんし、そういった資料も知りませんので本当のところはわからないというのが実情です。ただ、やはりそういった底生魚やエビ、カニにとってはしんどい装置だろうというふうには思っております。  以上でございます。
  90. 中村中六

    参考人中村中六君) お答えいたします。  急遽をアユとかサツキマスばかりでなくて弱い小さな魚、さらにエビ、カニなどはというようなことだと思いますが、先ほども払お話の中で言いましたように、アユ、サツキマスはまず、もちろん一〇〇%とは言いませんが、もう大丈夫だろうと思っておりますが、弱い小さい魚については非常に問題があるだろうというふうに私申しました。しかし、全くそれも本当だと思うんですけれども、また案外小さいのも弱いのも上っているよという例も私がなりというか、知っております。  といいますのは、これは私の経験をお話しするんですけれども、四国の吉野川の池田ダムの魚道です。私は今のところ日本一の魚道だと思って、これは私が思い込んでいるんですけれども、その池田ダムの魚道で、実は何年なのかちょっと覚えていませんが、水野先生の前任者の伊藤猛夫先生という愛媛大学教授と私二人で仕事をさせていただいたんですが、池田ダムの魚道を使いまして、魚道の途中に網を入れて水をめめてどんな魚が上っているかという調査をやりたいということで私ども考えまして、まず二枚の網を入れまして、それからある一定時間を置いた後、またさらに下流に幾つか網を入れまして水をとめていただきまして、その水をとめるというのはなかなか大変らしいんですけれども、そういう御理解でとめていただいたんです。それで取り上げましたところ、思ったよりたくさんの魚がおりまして、もちろんアユ、ウグイその他ニゴイとか大きい魚は当然だろうと思って種類と数を数えたんですが、もう意外に小さい魚がおりまして、こんなにも上っているんだなということを、今私一々種類その他は言いませんけれども、また覚えてもおりませんけれども、そういう経験があります。  そういう実験は非常に珍しい、いい実験だったと自分で自負しているんです。といいますのは、一定時間にどのくらいの魚が魚道を上ることができるのか、また種類によってそれはどういうふうに違うのか、それから急遽の中に一体どのくらい停留しまして、一遍にすっと行くわけではありませんから、中にはうろうろしたり、時には下がったり上がったり種類によっていろいろでしょうけれども、種類によってどのくらい魚道におるかというようなこともわかりましたし、非常にいい実験だったと思うんです。それは報告を印刷したものもあります。  話を戻しますと、意外に小さい魚なんかも上っているということがわかりました。今エビ、カニ、ハゼ、カジカでしょうか、ありますけれども、伊藤先生は淡水魚の大家で私なんかとても及ばないんですけれども、カジカなんか非常に難しい魚の一つじゃないかと思っておるんです。これから後は私が聞いた話ですけれども、カジかもふだんは底におるわけですけれども、夜になるとすうっと上がってきてぱっと乗り越えるというようなことで、カジカも案外上るんじゃないでしょうかということを私に言ってくれる人もありました。これは私自分で見たわけじゃありませんし、そういう話です。それからカニは、今水野先生が言われましたけれども、縄その他を打ちますとそれに伝わって上る、これは方々でやっております。そういうことでいいんじゃないかと思っております。  それからロック式の魚道、これは階段式魚道のように非常に流れに逆らって勢いよく上っていく、それからジャンプするというようなことじゃなくて、普通に泳いでいる魚でもロック式の急遽の操作によっては上れるんじゃないか、そういう目的でつくられると思うんですが、ただ長良川で計画されておりますロック式魚道を私が見たところでは、右岸の方は開門式、間門が置かれておりまして船も通る兼用でありますので、両方の操作ですうっと入ってきた魚も上流部のゲートを上げれば行くということはいいんですけれども、左岸の方にできるロック式魚道は二段ゲートです。その下流の方のゲートの上げ下げによって間室の中の水を高めたり低めたりすることによって上らせようということで、やはり間室から上流域に移るには普通のゲートを乗り越すと同じことをしなきゃならぬということは問題で、できれば下のゲートの方を上げて本当の意味の間門の働きをするといいんじゃないか、こういうふうに私聞いたことがありますけれども、やはり塩水の遡上を恐れてどうもそれは避けているんだというような説明のようでした。  ですから、今言いましたように、右岸のようにちゃんと普通の本当の意味の開門のようにつくった方がいいんじゃないかと思っております。開門式魚道は、今さっき言いましたように魚によって勢いの弱い魚でも上れるわけですけれども、実例ですと階段式魚道その他よりはやはり効果は落ちているんじゃないかというように聞いております。
  91. 井上章平

    ○井上章平君 ありがとうございました。  終わります。
  92. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 御苦労さまでございます。  長良川につきましては、環境庁の調査によりましても日本で三番目の魚類の生息域ということで、大事な河川であることは間違いないと思います。しかも、そこを横断する大きいせきができるわけでありますから、魚に対する影響は非常に大きいというふうに思うわけでございます。そういうことでいろいろな調査の問題、不足ではないか等あるわけでありますけれども、建設省の弁解ではありませんが、KSTによりましては相当しっかりやっておりますし、その後も補足調査をやっているということだけ一つ申し上げておきたいと思います。  私は、やはりこれだけの大きい。横断ぜきをつくるわけですから、いろいろ上下流のお話聞くと問題がありますけれども、一つはやっぱり急遽が一番このポイントになるんではないか、こういうふうに考えるわけでございます。先ほどの水野先生お話だと、これは日本では何万とあるうち、急遽もその何割があると思いますけれども、いろいろ調査ですと五割あるいは九割も余りうまくいってないんじゃないか、こういうようなお話もありました。これは大小河川、いろいろ急流、平たんあると思いますけれども、先ほど最後に水野先生は仮に今やっている長良川せきに望ましい形の急遽をつくるにはこうしたらいいということをおっしゃったんですが、それをひとつもう一回おっしゃっていただき。たいと思います。
  93. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) お答えいたします。  先ほど、岐阜県の水産試験場の方から意見を言ってくれと言われたときにお答えしたのと、そのときと私考えは変わりません。先ほどごらんいただいた最後のスライドにありましたような早瀬式の、中流域の早瀬に似せたような急遽をあそこに設置するのが一番いいんじゃないかというふうに思うんです。それは流速水深や底質が中央から岸の方に向かってずうっと変化していくわけですね。ですから、それぞれに応じた体力の動物たちが自分の好きな場所を選んで上っていける。その点、階段式魚道というのはフラットですから、一様の流れですし一様の水深です。だから、それにちょうど適したものにはいいでしょうけれども、それに適さないものはもう全部しんどい目に遭うわけですね。それが私は非常に不自然だと思う。  先ほど多様性ということを申し上げましたが、さまざまな動物がすんでいるというのはさまざまな環境があるからなんです。だから、できるだけ一様な環境にすることは避けるべきなんです。ですから急遽の場合でも、そういうふうに水深流速や底質を一連の変化をつけてあげて、なぎさもあっていろんなものが上れるようにするということが大事です。それが一番目です。  それから二番目は、水量が多少変化しましてもフラットですと一様に変化するわけですが、水深に変化をつけていますと、水量が小さくてもそこに大小の流れができる。大きくなってもそこの適した部分は岸の方に移りますから、そこの方を利用して上ることができる。そういうふうに非常に柔軟性に富んでおる。これも自然の環境の一つの特徴なんですが、そういった点で中流域の早瀬に似せたらどうだろうかということを申し上げたんです。
  94. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 中村先生にお伺いいたしたいと思いますけれども、今度のせきには呼び水式とロック式ですか、これを両岸に併設しているわけです。いわゆる通水断面に占める比率を見ますと、何か一一%ぐらいと非常に広い。過去やっておるのは大体三%から六%ぐらいだと思いますけれども、そういう意味では広いということと両岸ということは相当効果を出す、安全性ということが言えるのかどうか、これが一点。  それから二番目には、水野先生からもいろいろお話がありましたけれども、最近でも利根川とか筑後川とかあるいは木曽川、大きいものができておりますけれども、こういうところに関係されておられると思いますけれども、そういう実例を見ながらこの長良川ぜきの急遽としての評価、どういうふうにお考えになっているかお聞かせいただきたいと思います。
  95. 中村中六

    参考人中村中六君) 川の幅に対して急遽の率がという点ですけれども、今おっしゃいましたように今までのは三%、四%、私の承知しておるところではいろいろありまして、平均四%ぐらいというふうに承知しておりましたけれども、今度は一〇%ですか二%ですか、これは確かに悪いことはなくていい方だと思います。  両岸にということは、これは大体魚が河川を上ってくるときには岸寄りに上っていきますから、岸寄り五、六十メーターのところを普通上ってくるというふうに言われて、もちろんその川の、特にせきから下の川の状態によって変わりましょうけれども。ですから、両岸につくるということは、これはまず非常に望ましいことだと思っております。これは悪い例として恐縮ですけれども、今さっき水野先生の写真を見せていただいたときに、せきの真ん中からぱっと出ておりますね。ああいうのは本当にあちこちで見られるんですけれども、あれはまず私は困ったものだなという、つまり余りよくない急遽だということを一見して思います。私は少なくとも岸寄りがいいと。  水野先生は岸寄りだといろいろ秒とかそういう問題のことも指摘されましたけれども、まず魚が上ってくるということからいって、私は岸寄り両岸に急遽をつくるのがいいんじゃないかと思っているんです。もちろんそこにあるだけでいいというんじゃなくて、急遽の働く機能の一つとして入り口にたどり着く、これは入り口に着くのが一番大事でして、それのために下の方に砂がたまったりいろんなことがあってそれが妨げられるということはこれはよくないということですから、そういうことはまた別の問題として考えなきゃならぬ問題ですけれども、位置としてはやはり両岸につくるのがいいように私は思っております。  それから長良川の急遽がほかのところに比べてどうかということでございますけれども、河口ぜきが幾つかある、あるいはその他のせきの急遽を私全部見ているわけではもちろんありませんが、筑後大ぜきも見たりなんかしましたけれども、長良川のあれはまず今までにあったうちでもいい急遽に入るんじゃないだろうかというふうに、私は大体楽観的かもしれませんがそんなふうに思っております。
  96. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 先生方からもこのアフターケア、手直しのようなことをしっかりやれという話もありましたから、その辺はおきまして、最後に中村先生に、今養殖が海の点もふえまして非常に多いわけでございます。これは自然のものは天然物というふうに呼ばれるわけでございますけれども、最近人工種苗養殖が非常に盛んになっております。これはいわゆるサツキマスについてでもいいわけでありますけれども、天然のものと人工種苗のものと差があるのかどうか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  97. 中村中六

    参考人中村中六君) 人工種苗をつくるというものを、今も養殖というような言葉をお使いになりましたけれども、私は養殖という言葉はそういうところには使いたくない。といいますのは、ちょっとこれは気をつけながら物を言いますけれども、養殖という言葉は、ウナギの養殖とかハマチの養殖とかいうように、ある限られたところで個人あるいは企業が営利の目的で種苗を入れ、えさをやり、大きくして市場サイズに達したものを取り上げて売る、こういうそろばん勘定に合ったそういう仕事を養殖というふうに私は考えております。それに対して増殖という言葉があります。これは、今言いました種苗をつくって海に放流する。サケでも何でもありますし、川で言いますとアユでもマスでもみんな種苗をつくって川に放流する。これは養殖ではありませんで、人工種苗生産ということなんです。  人工種苗生産の歴史は昭和四十年代からでしょうか、だんだん盛んになってまいりまして、今はもうどこでもやっているわけですが、アユで言いますと、卵を搾って、子どもにえさを与えて大きくして稚魚にして、そのままぱっと川へ入れますと流れに逆らって泳ぐ力が弱いですから、まずぐるぐる回る水流の中に入れまして流れに逆らって泳ぐことを訓練いたしまして、その間また弱いものは捨てるというようにして選びまして、十分川の現場に入れてもいいようなものを選んで、計画しただけの数量を入れるというようにしております。  それで、種苗の放流技術ということが非常に進歩いたしまして、アユなんかもう放流種苗は天然物とは違って友釣りにもかからないんじゃないか、全然違うんじゃないかというようなお話も聞きますが、そんなふうではなくて、もちろん私はそれを専門的にやっているわけではありませんが、アユのことなんかをやっている友達に聞きましても、このごろはもう非常にそういう点もよくなってきているというふうに承知しております。  サツキマスにつきましても、岐阜県の御努力でサツキマスからとった卵をぶ化してえさを与えて育てて、一年以上たってそれが途中で銀毛化して海に下るわけですから、そういうようなことにしてサツキマスを放流して上がってくる。それをやるようになってから急激にサツキマスの漁獲量がふえております。  それで、先ほどの話にちょっと戻りますが、昭和三十年ごろはサツキマスは一トンぐらいしかとれてなかったように思うんですが、今はどんどんふえておりまして、現在は十トン以上、十五トンとか時には十六トンなんということもありますが、それは本来長良川にすんでいるアマゴから銀毛化して海におり半年後に上ってきたサツキマスと、今言いましたように人間がつくって放流した、その放流についてちょっと言い落としましたが、放流はサツキマスの場合五グラムぐらいの小さなものをたしか九十万尾ぐらい岐阜県の方はかなり上で放流していらっしゃいます。そのほかに銀毛化して大きくなって海に下る直前のようなものを三万尾ぐらい下の方で放流している。そういう努力がなされておりまして、私はもう明らかにそれが効いておると思うんですが、今言いましたようにもう十数トンに上っております。  それでは、そのつくったものがおりて上がってきたサツキマスと、本当に川におってアマゴが海へおりるようになったのと違うのかというと、私はもうほとんど見たところわからないと、聞いたところ見たところわからないように伺っております。またある方、これは岐阜県の前に町長をしていらした詳しい方に伺いますと、現在の長良川では本当の意味で前からおるアマゴというのは非常に少なくなっているんじゃないか。大体人工種苗にかかわった、それはその代かもっと前の代からか知りませんが、そういうような人工種苗放流に由来するというか、それに近いサツキマスが非常にふえていて、本当の意味のもう全く昔からのアマゴは、ほとんどと言ったら言い過ぎかもしれませんが、非常に少ないのじゃないだろうかということをおっしゃっていらっしゃいます。
  98. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 ありがとうございました。
  99. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 きょうは魚のお話をいろいろ伺って、両先生、大変どうもありがとうございます。御苦労さまでございます。  私は聞くことが全部新しいことばかりで、しかし先生方お話を伺っていますと、河口ぜきができた場合の急遽のことは、ジャンプができない魚はアウトだとか、たまたまそこの急遽にたどり着かなかったのもアウトだと。私なんか何も知らぬから、魚だったらアウトだなと思って、これはもう魚でなくてよかったと実は思ったわけでございます。ただ魚について考えますと、偶然運のいいのと力の強いのが生き残るというのは魚に対して大変不公平ではないかと、これはそう思うわけです。  そこで今のお話は、魚にとっては機械的な意味で河口ぜきがどういう役割を果たし、そして急遽というのがどういうものであるかというお話だと思いながら承っているんですが、私は環境汚染の立場から考えますと、私もどこの河口ぜきだったか見たんですけれども、やっぱり半分とめてあるわけですがそれでも底がよどむんです。そして、結局底の部分が富栄養化というか汚れてくるものですから、ヘドロもたまるし、したがって水質が悪くなっていくということなんです。中海・宍道湖の方もあれば半分せきになっていたはずですが、真水が確保されるはずだと言っていたのが真水が確保されたかわりにというか、富栄養化が進んでアオコが発生する条件に近づいてきたということがございました。  そういうことで、六百六十メートルですか、これだけの河口ぜきができて少なくとも一段が抑えていくと、二段目がもう一つあるというような状態で、水質汚染で負あるいはプランクトンに影響がないんだろうかと。こういう環境アセスメントはあったんでしょうか。水野先生いかがでしょう。
  100. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) KST段階では、ちょっとこれは資料に十分当たってないんですけれども、あったように聞いております。  それでそのときの予測では、そんなに問題になるほど悪くはならないであろうという予測だったようです。それに対して、私どもがおととしから持っています委員会では、委員の中に湖の研究の非常に大家がおられまして、その方は、最近長良川の水質は以前よりは少しは改善されているようなんですが、そういったことを考慮に入れてもなお渇水期間中はかなり水質が悪化する可能性があるということをこれはもう既に発表しておられます。
  101. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 中村先生、何かこれに対するデータをお持ちであれば御説明をお願いしたいと思います。
  102. 中村中六

    参考人中村中六君) そのことについてお答えしたいと思います。  今お話しの湛水域、湛水湖でもいいんですが、湛水域に水がたまって水質が悪化しないか、アオコができて泥がたまってどろどろにならないかということがよく言われておりますし、そういう懸念はあると思います。これは、湛水域というものが河口ぜきから上流の方へ二十キロぐらい東海大橋の下の辺まで延びるだろうというふうに伺っておりますが、その水がたまっているところへ長良川から川が絶えず流れ込んでくるわけですから、その流量によってどのくらいたまっているところの水がかわるか、言ってみれば回転率ですけれども、この回転率が問題だと思うんです。  これも私ちょっと聞いてみたんですけれども、どのくらい回転するだろうかということを聞きましたら、もちろんそれは流量によって変わるし、大体今言いました二十キロ延びる湛水域の広さ、平均の深さ、容量何万トンというそれはもうきちっとわかりますから、それに対して長良川から流れてくる水がおるシーズンのいつごろでは例えば百六十トンであるのか百トンであるのかというような数字を入れて計算しますと、多い場合は月に八回ぐらい回転するだろうと。  それでちょっと少ないように見ても五、六回は回転するだろうと。それから一番悪く、つまり渇水時のとき、これは今私はっきり覚えておりませんが、昭和五十九年とかいうふうにあるようですが、その渇水年の数字を使って最悪の状態を考えて計算してみますと、やはり二回とか三回とかというぐらいの回転率だそうです。ですから、私はその点に関してはそんなに、もちろん水の流速が落ちますから植物プランクトンが繁殖することは当然だと思いますけれども、そんなにひどく水質が悪化するというようには私は思っておりませんです。  といいますのは、この水質が悪化するということも、一口に水質と言いますけれども、アオコが、これは植物プランクトンのアオコですが、アオコが繁殖して緑色に、緑色には実際はなかなかなりませんが、緑色から黄色味を帯びた色、それからせいぜい褐色のような色になりますが、そういうような植物プランクトンその他微生物、動物プランクトンもおりましょう。そういったものによる濁りと、それから上流の方から下水その他いわゆる本当の意味の悪い汚れた水が入ってきて水質が悪くなる、この両方あると思います。私は、まず長良川の場合、本当の水質の悪い水、上流からの下水その他のことがちゃんと規制されればそんなに入ってくることはない。今言いましたように植物プランクトンによる濁り、これはもう当然あると思うんですけれども、そう心配したことはないと思います。  それからもう一つ言いたいのは、長良川は毎秒二百トンを超しますとせきを全開してフラッシュする。これはもうちゃんと計画に示されております。その二百トンでオーバーしてせきを全開するというのは一体どのくらいあるのかということを聞いてみますと、年間に六十回、六十日ということのようです。これはもう五月に何回、四月に何回、六月に何回というのは今までの流量の記録を調べていけばちゃんとわかっていくことでして、そういう点もありまして、時々のフラッシュ、それから先ほど言いました月に何回という回転率ということから、もちろん植物プランクトンによる濁りはわくと思いますけれども、本当の意味の水質悪化には私はなることはないと思います。  それから泥がたまるかということも、今言いましたフラッシュで洗われますからそう心配はないんじゃないか、そんなふうに思っております。
  103. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 もう一つ、これは水野先生のブランケットのところのお話で、これが魚に対して悪い影響があるのではないか。隠れ場所がないとかとおっしゃっていたようでございますが、そういったことで、私は今面積というふうなのはちょっとわからないんですが、かなりな量であるとすると、その分の影響というのはやっぱり川幅の何分の一とかという話になるんでしょうか、いかがでしょうか。
  104. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) お答え申し上げます。  私はその方面の専門家ではないので単純に考えますと、ブランケットというのはこれまでの高水敷よりは川の中の方にせり出すので断面積がそれだけ小さくなる。私どもの委員会でもそのことを何人かの方が疑問に思ったわけです。その委員の中に河川工学の方がおられたわけですが、岸の方ほど出水のときの流速は小さい、中央にいくほど速くなる、したがって断面積の減少分ほどは、その影響は小さいんだということは言っておられました。  ただ、私最近非常に気になりますのは、ブランケットは非常に魚の隠れ場所を奪う、その点で影響が甚大である。例えばKSTのときには、このブランケットというのはどうも前提条件には入っておらなかったようなんですね。ですからほとんど言及されていないように思います。ウナギに対する予測なんかですと、湛水域ではウナギはむしろ従来よりふえるのではないかというふうに生物の専門家が予測しているわけです。これはブランケットということを完全に考えておらなかったわけで、その辺、当時どうも建設省の方もああいうブランケットにするのがいいのか、ほかの手段があるのか検討中だったようで、ブランケットは前提条件に入っていなかったらしいんです。  それが確定して現にもうブランケットがどんどん、委員の諸先生方も視察されたようですが、ああいう物すごい形のブランケットが造成されつつあるわけです。それでは陸上、つまり河川敷の動物たち植物たちだけでなくて、川の魚だち川の動物たちにも非常に大きな影響を与えるということを私どもが問題にしたわけです。それかあらぬか、最近の建設省の方では、そのブランケットの前にいろんななぎさをつくって、ブランケット自身にも植物を生やしますけれども、水中の動物のためにはブランケットの前にもいろんな浅瀬をこしらえて、ヨシの生える余地をこしらえたり魚の隠れ場所もつくれるんだということを言っておられるようなんですね。  そうすると、ブランケットで断面積が減ったところへさらにそういうものを前面につくるわけですから、果たしてこれはしゅんせつとの関係でどういうことになっているのか。幾ら流速の小さいところであっても影響するのはゼロではないわけですから、しゅんせつとこれはかなり矛盾してくる行き方ではなかろうか。ですから、たとえそういうことが可能であるとしても、かなり断面積に余裕のある部分にしかこれは治水との関係でできないのではなかろうか。ですから、何か言い方を見ていると、どこもかしこも全部そういうふうに改善するんだというふうな表現なんですが、私は非常に疑問に思っておりますのできるとしてもそういう断面積に余裕のある局地的にしかできないんじゃないか。
  105. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 なるほど、ブランケットにいそをつくってまた散歩させる、よく魚を教育していただかぬとできないわけですね、これは。  そこで私が思うのは、先ほど来メカニカルに魚が行きにくいという話が主であったように思ったんですけれども、そうするといずれにしても相当なダメージが魚にあるということで、それは平等ではなくてやっぱり弱肉強食だと思うんです。適者生存で残る魚は残る、残らない魚はやっぱり絶えていく。これは自然の法則でもありましょうが、それをつくり出すのは人間なわけですから、そうするとやっぱり環境アセスメントがどうしても要ると思うんです。魚のための環境アセスもぎっちりやっていただきたい、こう思うんですが、先ほど中村先生は事後調査が今までやられないのはだめだとおっしゃっていましたが、事前調査がまずあって、そしてそれに沿っていろんなことが企画される。そして今度、結果はそれでよかったかどうか、これが事後調査でございますから、事前調査がなければ、こういう企画というのは本来やはり影響力が大きいですからね。  それに日本自然保護協会長の沼田真さんのお話ですと、川の生態系を保全するというのは人々の生活を守ることだ、つまり川の流れは人間の生活と一緒にいつもあったはずだと。歴史的に確かにそうだと思うんですが、そういう意味で長良川を例に挙げて、長良川の自然を守るのは、初めは利水、今は治水ということで土木工事中心ではないか、こういうことでお話が載っておりました。沼田先生は自然保護の御大将でございますから、まことにもっともなお話をなさっておられると思うんですが、その意味で川と人とのつき合いは、水だけではなくて魚とのつき合い、それからその川に生えるいろんなもの、藻だとか木だとかいろんなものがあると思いますが、そういうことが大事なんだろうと思うんです。  そこで、どうも私が今の急遽問題で余り何だか熱が入らないのは、それは河口ぜきができての話でございますので何となくすっきりしないんですね、私は。ですけれども、それはそれとしまして、もし河口ぜきができたときにこうしたら魚にはどういう影響があるかということを含めての環境アセスメントが私は必要だと思います。だから改めてちゃんとやってもらいたい。今まで三十年もたったんですから、これから何年といったってそんなのは知れていますからやっぱりそれはやっていただいて、その間は工事を待ってもらうのが本当ではないか。中海・宍道湖はそのために待ったところか三十年だったのを中止いたしました。  ですからそれくらいのことは考えなければいけないんじゃないかと思いますので、今の環境アセスメントのことにつきまして、工事との問題につきましてお二人の先生のお考えを承りたいと思います。
  106. 中村中六

    参考人中村中六君) アセスメントの問題は確かに大事なことだと思います。この長良川河口ぜきのことでは、事前の調査はつくる側の建設省、水資源開発公団の方は、恐らくKSTの調査は当時としては最高の調査だったと思いますし、あれを参考にされておると思います。それで、その後もいろいろまた追加的な調査、私は一々知りませんが、必要な調査はありましょうし、KSTの結果から生まれた長良川河口ぜきというものをそのままでなくて、さらにいろいろ改良しておつくりになっていらっしゃると承知しておりますが、アセスメントの問題は確かにやった方がいいと思います。特にまたその時分の知識と今と大分アセスメントそのものについても進歩しておりましょうし、やった方がいいと思います。  しかし、私は先ほど来言っていますように、河口ぜきをつくるということに踏み切ったのは、やはり治水が第一でまず生命、財産を守るということで、もう一昨々年でしょうかスタートが切られております。着々その工事が進行しておるんですから、私はそういうことについて言えば、今の工事は進めながらでもいいから必要な調査はどんどんやっていくべきだと思います。全然とめてしまってということになりますと、先ほど来言っていますように、それだけ工事がおくれるわけですし、万一その間にえらい大洪水でも起きたら騒ぎですし、工事は進行させながらやれる範囲でできるだけの調査をやっていくべきだと思っております。  それで、現に環境についてはどうだとか、その他いろんな委員会もあるわけですから、実は私もそれに関係しているところがありますけれども、そういうこともやっておりますし、これからも必要なことが考えられればすぐそれに取りかかって調査をやる。模めてかからずに、問題が起こったらすぐそれに対してこれはどういうふうにしたらいいだろうかといい方の対策を考えながら、先ほども言いましたように衆知を集めてそれにお金を惜しまずにやっていく、そういうことが必要じゃないかというふうに思っております。
  107. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 結論から先に申し上げますと、私自身も私どもの委員会も、調査をするならば工事を中断してやってほしいというふうに思っております。  ちょっと話がわき道にそれるかもしれませんが、アセスメント一般について理想論かもしれませんが常々考えておることをちょっと申し上げさせていただきます。これは私だけではありません。かなり多くの方が言っておられることですが、日本のアセスメントは事業アセスであると。つまり、事業計画が決められてしまって、それの影響がどうであるかというふうにアセスメントが限定されているわけですね。  ところが、ヨーロッパやアメリカの先進国でとられているのは、私どもは計画アセスメントと言っているんですが、その計画自体が二通りも三通りもまだ考えちれる段階で果たしてどの計画をとるのが一番ベストなのであるかとか、そういうことも含めてアセスメントを行うのが普通のようであります。全部が全部ではないでしょうけれども、先進諸国ではそういう例が非常に多い。ですから本当を言えば、今回の計画が本当に妥当なのであるかあるいは代替の案が考えられないのかどうか、そういったことも含めてアセスメントをすべきであろうというのが私個人の考えてあります。  それからもう一つは、アセスメントを一つ委員会あるいは一つにしか依頼しない。下請、孫請はいっぱいあるかもしれませんけれども、その中心になる委託先は一つである。ですから解答が一つしか出てきませんですね。これも私の理想論からいうと問題なんでして、できれば複数のところに出すべきである。そして二つの委員会などでこういう公の形で論戦をする。それでどちらのアセスが妥当性が強いかということをオープンな形で議論する。そういうことが必要ではないかと思うわけです。  そういったことも含めて工事を中断してやっていただかないと、今の計画に批判的な、少なくとも生物関係、魚類関係の学会と批判的なところがかなりたくさんありまして、少なくとも工事を続行しながらというのでは、これは私自身も含めて余り御協力をする気にはなれない。私自身、数年前には紀の川の河口ぜきの問題、それから今は四国の吉野川の河口ぜき、第十ぜきと言いますけれども、そこの改修工事には協力をさせていただいておりますのですけれども、長良川河口ぜきについては余りにも計画自体に問題が多過ぎるように思いまして、どうしても中断していただかないと私自身は協力する気になれないというのが心境であります。
  108. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 どうもありがとうございました。
  109. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、短時間でございますので一、二お伺いをしたいと思っております。  既にお話が出ておりますように、長良川河口ぜきという大問題を選択的に長良川の中の魚の生態、魚についてということを中心にしての論議に限られてきておるわけでございます。  そこで、きょうは先生方から大変うんちくを傾けたお話を勉強させていただきました。私が一つ中村先生が御開陳になりました御意見の中でちょっと気になるなと思いましたのは、せきを設置した場合の降下に及ぼす影響というところで、仔アユの取水口への迷入というのは避けられないと。これはそうでしょう。その後の御説明の中であったんですが、仔魚が水流が緩くなるので海におりるまでの時間は長くなるであろうというふうにおっしゃいました。我々は全く素人でございますけれども、いろいろお話を伺っておりますのでは、大体二昼夜前後までに海へおりなかったら袋の栄養がなくなって、そこで自分がえさをとれるという状況になければ大体餓死をしてしまうというような説明などを聞いておるわけでございます。そういう点で先ほどの御説明では、栄養分は四日ぐらいあるだろう、一週間になると死亡するだろうというふうにおっしゃられたんですね。しかし大丈夫であろうと、結論としては。そういう御開陳があったのでございますが、非常に不安なんです。私どもが実に初歩的な知識として持っておるのと先生の御開陳とえらい開きがある。ほんまに大丈夫なのかなというふうに思いますので、その点について先にお伺いしておきたいと思います。
  110. 中村中六

    参考人中村中六君) お答えします。  この問題は先ほども言いましたように、もちろん遡上もありますけれども、迷入に次いで降下の中では大きな問題だと思っております。今もお話がありましたように、卵黄を吸収するのに四日ぐらい、それから絶食してから数日で、大体一週間ぐらいは普通の場合に生きているだろうと。では長良川にできる湛水域の中はどうなのかということを考えますと、これは先ほども言いましたように、そのときに流入してくる川の流れの量によりましてたまった水が海の方へ流れていくその速さが変わってくると思うんです。それで、天然の場合産卵場から海へおりるのに普通の場合三十時間、四十時間です。長良川の場合、海まで到達するのに湛水域ができますから延びるわけですけれども、先ほども言いましたように、どのくらい延びるだろうかというのはそのときの流量によって違うんですけれども、ちょうど降下期ですから秋ですけれども、その時分の流量計算してみると五日ないし六日ぐらいが普通のように聞いております。これは、先ほどから言っていますように、その一週間にぎりぎりですけれども入っていますからまずいいだろうと。  問題は渇水のとき。流量が非常に少ないときはどうかということですと、これもそのときそのときで違うんですけれども、まあ十日を超して十一日とかあるいは十二日になることもあり得るということのようです。ですからそういうとぎにはかなりのものが減耗するだろうと。一〇〇%なんということは私も初めから思っておりませんし言ってもおりませんが、滞留時間の延長によってかなり減耗するということはないとは言えない、あるだろうと思うんです。  しかし一方、救われる面もあるというのは、先ほども言いましたようにそこでえさをとるものも出るだろうと。事実、とっておるという例は方々の人工湖でも見られておりますし、また川の下流でえさをとっているという事例もありますから、長良川の場合もそういう面で救われる。そうすればもう大丈夫で、海へ行くまで全くの絶食でなくて若干えさをとりながら流れていくということにつながって、いいと考えられる面もあるだろう、こういうことを申し上げたわけです。
  111. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでまあ大丈夫であろうという話だけでは大変気になるわけです。そういう点では従来から言われている定説、そういうことよりも条件が変わっても生きるのか死ぬるのか、そのあたりがやっぱりはっきりしないと私ども大変不安だと。先ほども同僚委員からアセスメントの問題が出ましたけれども、そういった点がはっきりしないと非常に不安だということを感じますので、あえてお伺いをしたような次第でございます。  次に、水野先生にお伺いをしたいんですが、非常に御意見を明確に御開陳いただきましたので簡潔にお伺いしたいんですが、これはさっきからの御説明をずっと伺っておりますと、急遽というのは大体力〇%以上はほぼ機能しないと。先生の御説明になられた早瀬式ですか、そういったものをつくるのが理想だという御意見でございますから、そういうことになれば今回の御計画の河口ぜきの急遽というのはこれはペケだと、早く言えば。簡潔にと申し上げましたのはそこなんです。ペケと言うたら言い過ぎかな、九〇%以上機能しない範醸に入りそうだという感じがするわけでございます。これは私はお話を伺って感じたことなんです。  そこで、急遽というものは大体どんな魚が対象になるのかという話が気になる。これは中村先生もおっしゃいましたけれども、弱い小さい魚が問題だと御指摘がございました。大体話に出てくるアユとかサツキマスとか水産資源になるような魚だけが何とか行くのかな戻るのかなという話ばかりになったんでは、やはり川の自然というんですか、自然の生態系というものの中での位置づけというのは、そんなアユとかサツキマスだけに焦点を当てたような工作物では話にならぬのではないかというのが素人なりの私どもの感懐でございます。  そういうことを含めまして水野先生にお伺いをしたいのは、特に私気になりますのは、せきをつくったらせきの中に水を海抜一・三メーター湛水をするというんでしょう。それはフラッシュされて息するとかせぬとか言っていますけれども、年じゅうとにかく一・三メーターの水をためるということになったら、少々出たり入ったりするかもわからぬですけれども、これは先ほど御指摘のように水質の汚染はもちろんのこと、あるいはブラックバスですか、魚を食べていくような魚が繁殖して全く生態系が変わってくるというそういう状況というのは、私ども率直に言って望ましくないと思っているんです。  これは魚を初め川の生態系に対しても望ましくないと思うだけでなく、治水治水と盛んに言うんですけれども、治水に言うたかて海抜一・三メーターから水を常時ためられたら、私は淀川の右岸の一番下流に住んでいるんですけれども、そんなはるかに地盤より高い水が毎度たまっているということは、堤防にだって悪影響が起こるし、これはいざといったら危険な側面があるしということで、これはきょうの課題ではありませんけれども、そういう側面もあるので、主として魚という立場あるいは川の自然、生態系に焦点を当てて見ていただきますと先生の御見解はいかがなものかということをお伺いしておきたいんです。
  112. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) ただいまの御質問は急遽の構造の方に重点があるんでしょうか。それとも湛水域の方に重点がございますか。
  113. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうです。
  114. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 湛水域は、日本のような山国ですと、上流の谷間でこれは自然でもたくさんできるんです。中禅寺湖を初め自然の川がせきとめられて、日本は火山国でもありますし山国でもありますから、上流の方にはそういう湛水域が何百何千と自然にできているわけです。ですから、恐らく日本の川魚たちはそういうものに対してはもうなじみでありますから、それに対応する技術は身につけておると考えていいと思うんです。  ところが、下流の平野部に突然二十キロメートルにも及ぶような湛水域ができるというのは、日本の川としては非常にこれは異常な事態であります。ですから、利根川河口ぜきあるいは芦田川の河口ぜきにせよ、やりようによっては物すごく大きな影響を与えているわけです。簡単に言ってしまえばそういうことでございまして、日本の川魚たちにとっては異常な環境ができ上がるんだということであります。その中のブランケットはますます悪くするということなんです。
  115. 中村鋭一

    中村鋭一君 御苦労さまでございます。お二方に一問ずつ質問をさせていただきます。  水野参考人にお伺いいたしますが、木曽三川の河口資源調査いわゆるKSTですね、この内容につきまして、例えば朝日新聞の編集委員の本多勝一さん、NHKの特集番組等で、このKSTがコンパクトなものにされた段階で内容に調査の事実とは違ったものが入っていたということについて、水野参考人はこれを改ざんといいますかそのような事実があったということを指摘されたと伺っておりますが、それはそのとおりおっしゃったのでございますか。
  116. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 私どもの委員会の中でそういう事例が幾つか指摘されまして、それで報告書の中にはその点を指摘したと思いますが、私が個人的にどこかでそういうことを言うたという記憶は余りないんですけれども、それはさておきまして、例えば一例だけ申し上げますと、たしかヤマトシジミだったと思うんですが、KSTの本来の報告書の方では大きなマイナスの影響が出るであろうという結論であったのが、結論報告でしょうかそのコンパクトになったものでは、軽微な影響にとどまるだろうというふうにもうはっきり表現が変わっておるということが委員会でも報告されておりました。そのとおり委員会の報告にも活字にされております。
  117. 中村鋭一

    中村鋭一君 最も科学的な考察を加え、それに基づいて考えるべき調査結果がそのような事実を正確に表現するものでないということは非常に残念である、このように水野参考人もお考えである、こう理解しておいてよろしゅうございますね。
  118. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 科学者の端くれでございますので、もう当然でございます。
  119. 中村鋭一

    中村鋭一君 中村先生にお尋ねいたしますが、これは個人の感懐に属することでありますけれども、私実は釣りが好きでして数十年釣りをやっております。特にフユ釣りが好きでもう四十年近くアユ釣りしております。それで、私ごとですけれども、「愛釣記」という本を一冊実は出しております。全国のアユの生息する河川はほとんど釣り歩いている。年ごとにアユが釣れなくなってきているんですね。それは体験的に言いますと、やはりどこの川へ参りましても川にダムができますと、これは先ほど水野先生もおっしゃいましたけれども、どうしても川の流れが秒とか泥が沈積してきまして良質なアユが釣れないんですね。  これは京大の宮地伝三郎先生が丹後の字川で研究をなさいまして「アユの話」というすばらしい本をお出してございます。アユというのは大体一メーター五十センチぐらいを縄張りにいたしまして、底の石につく良質のコケをはんで、そこに縄張りをつくりまして生活をしているわけであります。それを利用した釣り方が友釣りでございます。その友釣りが可能な場所がどんどんなくなっていっているわけです。ですから私は、要するに魚の立場に立ては、人工の構築物がその種の生存にいい影響を与えることはないと思うんです。  今回の長良川河口ぜきについて言うならば、どんなに理想的な急遽をつくりましても、それは本来その川に生息するいろいろな生物にとりましては百万年以上昔から川全体が広い生息の場所であったわけですから、それを急遽というのは阻害しているわけですから、急遽というのは障害物でしかないわけです。だから、どんなに自然を模したものをっくってもそれは川もどき、川まがい、えせ川でございまして、魚の立場からすればそのようなものはないにこしたことはないわけです。  とすれば、住民の皆さんの生命やら財産を守るために例えば長良川河口ぜきが必要、これは認めます。当然のことでありますが、しかしそのために、午前の質疑でも申し上げたんですが、地球的な環境が破壊されるといえばそれはやがて、場合によれば今その河口ぜきをつくらねばならないと言っている皆さん自身に遠い将来にはしっぺ返しとなって返ってくる心配がある。だからこそしっかりとした調査をしなければいけないし、そしてそれがメリット、デメリットあるわけでございますから、そのことについてのアセスメントは当然しっかりとやるべきである、こう私は理解しております。  一言だけ先生にお尋ねいたしますが、水野先生は工事は一たん中止してアセスメントをしっかりやりなさい、そういうお立場であります。私もそう思いますが、先生は、もう既に工事をやっているんだから並行してやればいい、こうおっしゃいますけれども、並行してやったアセスメントの結果、やっぱりこれはぐあいが悪いということになれば、そのとき工事がもう九〇%終わっていても先生はやめる勇気を持てと、こうおっしゃるんでしょうか。私は、それなちば一たん工事を中止してアセスメントをしっかりとやってからでないとぐあいが悪い、こう思います。  その点について重ねてお伺いして、私の質問を終わります。
  120. 中村中六

    参考人中村中六君) お答えします。  アセスメントをやるために中断をした方がいいということで、これは先ほども私、アセスメントは必要だけれどもどんどん今進んでいますから、それを中断しなくても今からどんどんやったらいいだろうというように申しました。今もそういう気持ちは変わりません。  今、その問題からちょっとそれますけれども、自然の川でなくて、せきができダムができいろいろ川の中の状態が変わるとアユ釣りをなさる場合の釣り場が減ってきたというようなことをおっしゃいました。そういうことは、私は実際アユ釣りやりませんが、そのとおりだと思います。ダムにしろせきにしろ、河口ぜきももちろんそうですけれども、やはり人間生活の必要上やるんで、なければないにこしたことはないものばかりなんですが、ダムができるとその下流の川は一体どういうように変わるだろうかというようなこと、それはそれでちゃんと調査もありますし、私もそういうようなことをやったこともあります。  それからせき。大小のせきも皆そうですけれども、そういうことは多少の影響があることはもちろん当然ですけれども、先ほどもこれは言ったことです。繰り返しになりますけれども、悪いと思うことが見つかればすぐそれを直すように努力をしていくというような姿勢で絶えずおるということが必要だろうと思うんです。今の長良川でのアセスの問題は、やはり長良川で将来どういうような問題が起きるだろうかと、そういうようなことが考えられればそれについてすぐ衆知を集めて相談をしていく、将来いつもそういう姿勢に立っていただけば私はそれでしのいでいけるんじゃないか、こんなふうに思っておるんで、先ほどあのように申したのでございます。
  121. 山田勇

    ○山田勇君 私が最終の質疑者でございます。長時間、両先生御苦労さまでございました。  先ほどから同僚委員であります西野委員お話を伺っておりまして、素人なりに考えたことを率直に参考人先生方にお尋ねいたします。  一つは、極端な塩水濃度の中に魚がいて、そして遡上して極端な真水の方に入ると、ボラの体系でいくと余り効果はよくないということであります。素人の考えですが、一せきがありますと、今はロック式であろうが水路式であろうが二つの急遽をつくって、それをコンピューターで制御して、そして一定の量があるとどのぐらいの量を放水するという計算の上に成り立って放水をします。そうしますと、せきがとまっていてもう何にもなければそこにかなりな濃度の塩水の水たまりができるわけですが、これは常に放流をしてありますのでその辺はかなり薄まってくるんではないか。だから、物すごい濃度の濃い塩水状態の中から真水へ行くというんでなくて、かなり魚なりにならされながら遡上してくるんではないかというふうに思うんですが、水野参考人の御意見をぜひ聞かせていただきとうございます。
  122. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 確かにおっしゃるとおりで、先ほどのボラの実験みたいに汽水から直接真水にぽんと行くんじゃなくて、ある程度の濃度の勾配があるところを突っ切っていくわけですから死ぬというような事態は起こらないだろうと思うんです。ただ、むしろ死ぬか死なないかではなくて、この場合はそういう濃度の急なところは避ける可能性が出てくると思うんです。だから、そんなに急激に塩分濃度が変化するところはもうよう上がらないというそういったことが心配になると思います。その可能性、それの障害は魚種によっては否定できないだろうと思うわけです。
  123. 山田勇

    ○山田勇君 今回、これは急遽について絞り込んでの質問になっているわけですが、とりあえず魚を遡上させなければならない、それが急遽の使命だと思うわけです。  先生の御意見の中で早瀬式だとかいうふうなこと、大変参考になるお話を伺いましたが、魚というものを遡上させるのに魚の好きな音とか、イルカはキンキンという金属的な音がしますと寄っできますから、そういう魚の好きな音、またおとり、魚が遡上してくるようなにおい、それから色。これ色と言うと中村議員笑っていますが、この間の実験、これは大阪のテレビ局で大きな水槽にアユを入れまして、牛ではないんですが赤いきれを見せますと魚がびひゃあと固まって逃げるので、アユは色彩の選別ができるんだというふうに僕は思っているわけです。嫌いな色があったり好きな色があるので、何とかきれいな好きな色をひらひらさせるとか、二週間に十日来い」という歌を流してみせるとか、そういうので魚を誘導するというか遡上させてやる。  もう頭から来ないんだとか悪いのだとかではなく、魚を何とかうまくだまし、言葉は悪うございますが、魚に悪いんですがだましだましでも遡上させてやるというようなことはできないかどうか。その辺を水野先生に伺いまして、もうちょっと質問をしたいんですが、私五時十五分の飛行機に乗って大阪の委員会へ戻らにゃいけませんので、地方の委員会がございますので中村先生には質問いたしませんが、お許しいただきたいと思います。水野先生お話を聞きましで、質問を終わります。
  124. 水野信彦

    参考人(水野信彦君) 私はこういう生理学的な方の専門家ではないので詳しくはないんですが、魚には色を判別する能力が確かにあるようです。夜行性の魚にはちょっと鈍感なのが多いらしいんですけれども、昼間活動する魚は大体色を判別できる。私ども水産庁の方の委員会で、ある県の水産試験場がアユについて好きな色嫌いな色をいろいろ実験したりしまして、その結果を伺ったりしたこともございます。ですから、色を使ってある程度誘ったりあるいは逆に追い払ったりということは決して不可能ではないと思います。  ただ、私近ごろ発電所の方とかそのほかいろんな方からそれを聞かれるんですけれども、いつもそのときにお答えするのは、水の中でいつまでも同じ色を保っていくのは本当に可能なのかどうか。年がら年じゅう手入れをしておかないと塗ったときの色があせてしまったり、あるいは御承知のように川の中の石の表面に藻類が付着する。河原の石はざらざらしていますが、水の中に入れると四、五日もするとぬるぬるしてくるわけですね。これは微細な藻類が一面にべたっと付着するわけです。河原では白い石が水の中では褐色になります。付着藻類ですね。だから、そういうことで四、五日もすれば褐色に変わってしまう、どんな色をしても。ですから、それをいつも赤なら赤、白なら白に保っておくというのは非常に困難なのではなかろうか。これはあくまでも素人考えなんですけれども、そういうことを申し上げております。  それからにおいとか音とか、それらについても可能かもしれませんが、この河口ぜきの計画がほんまに妥当なものであるならば私も自分自身でそんな方法をいろいろ一生懸命考えたいと思うんですが、余りあれなものですから、むしろほかの河口ぜきの場合にいろいろ考えてみたいように思います。
  125. 山田勇

    ○山田勇君 どうもありがとうございました。
  126. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、長時間にわたり御出席を願い、貴重な御意見を述べていただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  以上をもちまして本日の調査を終わります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十六分散会      ―――――・―――――