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1991-12-04 第122回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十二月四日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 浜田卓二郎君    理事 塩崎  潤君 理事 鈴木 俊一君    理事 田辺 広雄君 理事 星野 行男君    理事 与謝野 馨君 理事 小森 龍邦君    理事 鈴木喜久子君 理事 冬柴 鐵三君       愛知 和男君    中島源太郎君       小澤 克介君    岡崎 宏美君       清水  勇君    高沢 寅男君       倉田 栄喜君    中村  巖君       木島日出夫君    中野 寛成君       徳田 虎雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田原  隆君  出席政府委員         法務大臣官房長 則定  衛君         法務大臣官房司         法法制調査部長 濱崎 恭生君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         法務省矯正局長 飛田 清弘君         法務省保護局長 古畑 恒雄君         法務省人権擁護 局長  篠田 省二君         法務省入国管理         局長      高橋 雅二君  委員外出席者         警察庁刑事局刑 事企画課長  泉  幸伸君         警察庁刑事局捜         査第一課長    深山 健男君         警察庁刑事局保         安部防犯企画課         長       津和 孝亮君         警察庁刑事局保         安部薬物対策課         長       鎌原 俊二君         総務庁長官官房         地域改善対策室         長       荒賀 泰太君         経済企画庁国民         生活局消費者行         政第二課長   池田  実君         法務大臣官房審         議官      本間 達三君         大蔵省銀行局金         融市場室長   小泉 龍司君         文部省初等中等         教育局中学校課         長       福島 忠彦君         厚生省児童家庭         局母子福祉課長 冨岡  悟君         通商産業省産業         政策局商政課取         引信用室長   寺坂 信昭君         運輸省鉄道局業         務課長     村上 伸夫君         運輸省鉄道局保         安車両課長   溝口 正仁君         最高裁判所事務         総局人事局長  泉  徳治君         最高裁判所事務         総局民事局長         兼最高裁判所事 今井  功君         務総局行政局長         最高裁判所事務         総局刑事局長  島田 仁郎君         最高裁判所事務         総局家庭局長  山田  博君         参  考  人         (日本弁護士連         合会会長)  土屋 公献君         法務委員会調査         室長      小柳 泰治君     ————————————— 委員の異動 十二月四日  辞任         補欠選任   大内 啓伍君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   中野 寛成君     大内 啓伍君     ————————————— 十一月二十五日  夫婦同氏・別氏の選択を可能にする民法等の改  正に関する請願岡崎トミ子紹介)(第二〇  号)  同外一件(石田祝稔紹介)(第一二六号)  同(岡崎宏美紹介)(第一三七号)  同外一件(竹内勝彦紹介)(第一三八号)  死刑執行停止に関する請願小澤克介紹介)  (第一三二号)  夫婦同氏別氏の選択を可能にする民法等改正  に関する請願田中恒利紹介)(第一三三  号)  同(鳥居一雄紹介)(第一三四号)  同(東順治紹介)(第一二五号) 同月二十九日  夫婦同氏・別氏の選択を可能にする民法等の改  正に関する請願外四件(関晴正紹介)(第二  六四号)  同(武部文紹介)(第二四九号)  同(土井たか子紹介)(第二五〇号)  同(河上覃雄君紹介)(第二七四号)  同(西中清紹介)(第二七五号)  同(二見伸明紹介)(第二七六号)  同外一件(佐藤恒晴紹介)(第五一五号)  夫婦同氏別氏の選択を可能にする民法等改正  に関する請願川端達夫紹介)(第一六五  号)  同(高木義明紹介)(第一六六号)  同(中沢健次紹介)(第一六七号)  同(岩田順介紹介)(第一八一号)  同(加藤万吉紹介)(第一八二号)  同外一件(斉藤一雄紹介)(第一八三号)  同(関山信之紹介)(第一八四号)  同(田中恒利紹介)(第一八五号)  同(高沢寅男紹介)(第一八六号)  同(細川律夫紹介)(第一八七号)  同(岡崎トミ子紹介)(第二五一号)  同(高沢寅男紹介)(第二五二号)  同外三件(外口玉子紹介)(第二五三号)  同(松前仰君紹介)(第二五四号)  同(石田幸四郎紹介)(第二七七号)  同(河上覃雄君紹介)(第二七八号)  同(権藤恒夫紹介)(第二七九号)  同外一件(二見伸明紹介)(第二八〇号)  同(高沢寅男紹介)(第三五四号)  同(細川律夫紹介)(第三五五号)  同(高沢寅男紹介)(第四一四号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第四五二号)  同外一件(貴志八郎紹介)(第五一六号)  同(関山信之紹介)(第五一七号)  同(高沢寅男紹介)(第五一八号)  同(常松裕志紹介)(第五一九号)  非嫡出子差別を撤廃する民法等改正に関する請  願(岡崎トミ子紹介)(第二四四号)  同(岡崎宏美紹介)(第二四五号)  同外一件(外口玉子紹介)(第二四六号)  同(土井たか子紹介)(第二四七号)  同(長谷百合子紹介)(第二四八号)  同(網岡雄紹介)(第三五六号)  同(清水勇紹介)(第三五七号)  同(高沢寅男紹介)(第三五八号)  同(高沢寅男紹介)(第四一五号)  同(伊東秀子紹介)(第四五三号)  同(渋谷修紹介)(第四五四号)  同(常松裕志紹介)(第四五五号)  同(山花貞夫紹介)(第四五六号)  同(渋谷修紹介)(第五二〇号)  同外二件(高沢寅男紹介)(第五二一号)  同(常松裕志紹介)(第五二二号) 十二月二日  夫婦同氏別氏の選択を可能にする民法等改正  に関する請願伊藤茂紹介)(第六一四号)  同外一件(斉藤一雄紹介)(第六一五号)  同(常松裕志紹介)(第六一六号)  同(長谷百合子紹介)(第六一七号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第六一八号)  同(上原康助紹介)(第六七六号)  非嫡出子差別を撤廃する民法等改正に関する請  願(伊藤茂紹介)(第六一九号)  同(渋谷修紹介)(第六二〇号)  同(常松裕志紹介)(第六二一号)  同(小森龍邦紹介)(第六七七号)  同(常松裕志紹介)(第六七八号)  夫婦同氏・別氏の選択を可能にする民法等の改  正に関する請願石橋大吉紹介)(第六七五  号) 同月三日  非嫡出子差別を撤廃する民法等改正に関する  請願菅直人紹介)(第七七八号)  同(宇都宮真由美紹介)(第七七九号)  同(江田五月組分)(第九一一号)  同外四件(小澤克介紹介)(第九一二号)  同(土井たか子紹介)(第九一三号)  夫婦別氏・別戸籍の選択を可能にする民法・戸  籍法改正に関する請願江田五月紹介) (第七八〇号)  同外六件(小澤克介紹介)(第七八一号)  同(江田五月紹介)(第九一四号)  夫婦同氏・別氏の選択を可能にする民法等の改  正に関する請願神崎武法紹介)(第七八二  号)  同(小沢和秋紹介)(第八九二号)  同(金子満広紹介)(第八九三号)  同(木島日出夫紹介)(第八九四号)  同(児玉健次紹介)(第八九五号)  同(佐藤祐弘紹介)(第八九六号)  同(菅野悦子紹介)(第八九七号)  同(辻第一君紹介)(第八九八号)  同(寺前巖紹介)(第八九九号)  同(東中光雄紹介)(第九〇〇号)  同(古堅実吉紹介)(第九〇一号)  同(正森成二君紹介)(第九〇二号)  同(三浦久紹介)(第九〇三号)  同(吉井英勝紹介)(第九〇四号)  夫婦同氏別氏の選択を可能にする民法等改正  に関する請願東祥三紹介)(第七八三号)  同(伊藤英成紹介)(第七八四号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第七八五号)  同(高沢寅男紹介)(第七八六号)  同外一件(谷村啓介紹介)(第七八七号)  同(平田米男紹介)(第七八八号)  同外一件(薮仲義彦紹介)(第七八九号)  同外一件(仙谷由人紹介)(第九〇五号)  同(高沢寅男紹介)(第九〇六号)  同(不破哲三紹介)(第九〇七号)  非嫡出子差別を撤廃する民法等改正に関する請  願(宇都宮真由美紹介)(第七九〇号)  同(江田五月紹介)(第七九一号)  同外四件(小澤克介紹介)(第七九二号)  同外三件(沖田正人紹介)(第七九三号)  同(菅直人紹介)(第七九四号)  同(渋谷修紹介)(第七九五号)  同(田中恒利紹介)(第七九六号)  同(常松裕志紹介)(第七九七号)  同(江田五月紹介)(第九〇八号)  同外二件(仙谷由人紹介)(第九〇九号)  同(土井たか子紹介)(第九一〇号) 同月四日  夫婦同氏・別氏の選択を可能にする民法等の改  正に関する請願井上義久紹介)(第一〇八  一号)  同(小沢和秋紹介)(第一〇八二号)  同外一件(大野由利子紹介)(第一〇八三号  )  同(金子満広紹介)(第一〇八四号)  同外一件(北側一雄紹介)(第一〇八五号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一〇八六号)  同(寺前巖紹介)(第一〇八七号)  同(春田重昭紹介)(第一〇八八号)  同(藤田スミ紹介)(第一〇八九号)  同(古堅実吉紹介)(第一〇九〇号)  同(山原健二郎紹介)(第一〇九一号)  同(吉井英勝紹介)(第一〇九二号)  同外一件(柳田稔紹介)(第一二四五号)  夫婦同氏別氏の選択を可能にする民法等改正  に関する請願外六件(上野健一紹介)(第一  〇九三号)  同外一件(大野由利子紹介)(第一〇九四号  )  同(金子満広紹介)(第一〇九五号)  同外一件(小松定男紹介)(第一〇九六号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一〇九七号)  同外一件(嶋崎譲紹介)(第一〇九八号)  同(菅野悦子紹介)(第一〇九九号)  同(戸田菊雄紹介)(第一一〇〇号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第一一〇一号)  同(藤田スミ紹介)(第一一〇二号)  同(古堅実吉紹介)(第一一〇三号)  同(薮仲義彦紹介)(第一一〇四号)  非嫡出子差別を撤廃する民法等改正に関する請  願外七件(秋葉忠利紹介)(第一一〇五号)  同外二件(大野由利子紹介)(第一一〇六号  )  同(木島日出夫紹介)(第一一〇七号)  同(北側一雄紹介)(第一一〇八号)  非嫡出子差別を撤廃する民法等改正に関する  請願木島日出夫紹介)(第二〇九号)  同(北側一雄紹介)(第一一一〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人  権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所人事局長今井民事局長島田刑事局長及び山田家庭局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 浜田卓二郎

    浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 浜田卓二郎

    浜田委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、鈴木喜久子質疑の際、参考人として日本弁護士連合会会長土屋公献君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 浜田卓二郎

    浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     —————————————
  6. 浜田卓二郎

    浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。星野行男君。
  7. 星野行男

    星野委員 おはようございます。  御承知のとおり、今、世界日本も大きな変化の時代の中にあります。冷戦終結後の世界の激動は今さら申し上げるまでもありません。また、国境の垣根が低くなりまして、人も物も金も、さらに情報地球規模で交流が盛んに行われる時代となってまいりました。このようないわゆる国際化あるいは情報化あるいは経済グローバル化が急速に進展する中で、我が国におきましてもいろいろな面で発想の転換や制度の見直しが必要となってきております。そういう観点から、二点ほど御質問をさせていただきます。  まず第一点は、外国人登録法の問題であります。  十四条の指紋押捺の問題でありますが、本年一月、当時の海部内閣総理大臣の訪韓の際、両国外相署名した覚書におきまして、現行の指紋押捺にかわる手段を早期に開発し、今後二年以内にこれにかわる措置を実施することができるよう所要の改正案次期通常国会に提出することに最大限努力をするとされ、指紋押捺にかわる手段につきましては、写真署名及び外国人登録家族事項を加味することを中心に検討するとされておりますが、指紋押捺にかわる代替手段開発状況はどのようになっておりますか。また、次期通常国会に間に合うのかどうか、あわせてお伺いをいたします。
  8. 高橋雅二

    高橋(雅)政府委員 お答えいたします。  ただいま御質問の点につきましては鋭意政府部内で調整を行っているところでございますが、指紋押捺制度に関する新しい制度につきましては、この日韓覚書の中にございましたとおり、写真署名、それから一定家族事項を組み合わせて、こういう複合的手段によって同一人性を確認するということを念頭に置きまして、今鋭意検討を進めているところでございます。  時期といたしましては、この日韓覚書におきまして平成五年一月までに実施するということ、そのために最大限努力をするということで、何が何でもこの次の通常国会には法案を提出して御承認をいただけるように、今鋭意検討作業を進めているところでございます。
  9. 星野行男

    星野委員 この外国人の同一人性確認手段につきまして、諸外国、なかんずくいわゆる先進諸国と言われる国々ではどのような方法がとられておりますか、お教えください。
  10. 高橋雅二

    高橋(雅)政府委員 お答えいたします。  私たち、諸外国四十六カ国を調査いたしましたけれども、いわゆる先進諸国と言われる国の中で指紋押捺制度を行っているところはございません。アジアや南米諸国等発展途上国におきましては指紋押捺制度を行っている国はございますが、主要先進国で、商用活動者あるいは駐在員留学生等一般在留外国人に一律に指紋押捺を実施しているという国はございません。ただアメリカは、制度としてはございますが、指紋押捺は求めておりません。しかし移民に対しては指紋押捺を求めておるということはございます。
  11. 星野行男

    星野委員 外国からいろいろな立場の方が日本にいらっしゃるわけでありますが、指紋をとられるということは、何だか犯罪捜査の一環のような感じを受けるわけでありまして、とられる立場とすれば決して気持ちのいいものではない、そう思うわけであります。今の十四条では、一年以上在留する外国人には指紋押捺をさせることになっているわけでありますが、そういう点から考えますと、御案内のように衆参両院法務委員会における附帯決議、例えば衆議院の法務委員会における昭和六十二年九月四日の附帯決議によりますと、その二項で「同一人性の確認手段について、指紋押なつ制度に代わる制度開発に努めること。」とありますし、参議院の法務委員会における附帯決議昭和六十二年九月十八日でありますが、一項で「我が国の置かれている国際的環境及び在日外国人人権等を考慮し、当委員会における政府答弁を踏まえ、今後引き続き、多年にわたり在留する外国人立場を配慮しつつ、外国人登録制度の在り方及び指紋押なつ代替措置等、その基本的問題について検討を加え、改善を図ること。」とされているわけであります。  日韓外相覚書に基づきまして、指紋押捺にかわる代替手段開発に努めておられるということで、結構なことでありますし、ぜひ約束どおりこれは実現をしなければならないと思うのでありますが、ただその場合に、在日韓国人だけということでは今日の国際化時代日本の対応としては決して好ましいことではないのではないか。やはり今申し上げたような事情もございますので、この際、在日韓国人以外の対象外国人すべてに対して指紋押捺制度を廃止して、これにかわる同一人性の確認の、今お話しの手段を確立するということが必要ではないかと私は考える次第でありますが、いかがでございましょうか。     〔委員長退席田辺(広)委員長代理着席
  12. 高橋雅二

    高橋(雅)政府委員 新しい制度をどこまで適用するかという問題につきましては、一つには、今検討中の指紋押捺にかわる代替手段、すなわち写真署名一定家族事項の記入、この複合的手段が本人の同一人性確認のために有効かつ十分である、ですから、いろいろな、今先生おっしゃいましたような決議とか国際的な情勢を踏まえて、これを全外国人に適用すべきであるという考え方が一方にあると同時に、この開発している手段というのは指紋押捺にかわるものにはまだなってないんじゃないか、そうすると国際的に約束した在日韓国人だけでいいじゃないかという、二つ考え方がございます。  それで、ただいまこの二つ考え方調整中でございます。まだ結論を出すに至っておりませんが、先ほど先生がおっしゃいました附帯決議等十分に考慮して、いい案を御提出させていただきたい、こういうふうに考えております。
  13. 星野行男

    星野委員 指紋押捺にかわる代替制度につきましては、今申し上げた方向でぜひお進めいただきますようお願いを申し上げます。  第二点は、外国人労働者受け入れ問題であります。  町を歩きますと、外国人が多くなったなとつくづく感じるわけであります。また、都内の盛り場などで外国人がたむろしておりまして、異様な雰囲気を醸し出している光景をよく目にするわけでありますし、また、外国人による犯罪も増加をいたしております。法務省の資料によりますと、不法就労外国人は、平成元年一万六千六百八人、平成二年には前年比約八〇%ふえまして二万九千八百八十四人とされておりますが、実際にはこの何倍、いや何十倍の不法就労外国人がいるのではないかと想像されるところであります。政府単純労働者受け入れないと言いましても、実際にはこのように大勢来ているわけであります。早急にきちんとした制度をつくらないと、将来に大きな禍根を残す結果になりはせぬかと私は心配をいたしております、  この点につきまして、行革審の部会報告も出ていることでありますが、私、思いますに、やはり滞在期間をきちっと一定の年限を決めて、その期間が経過したら必ず帰っていただく、そのためには帰国の費用の積み立てをきちっとやらせるとか、あるいは外国人実習者に対する健康保険制度の適用とか、そのほかいろいろな、送り出し国との間で受け入れに対してきちっと約束を取りつけておく必要があるのではないか。  いろいろな問題があろうかと思いますけれども、この外国人労働者受け入れ問題は非常に重要な問題だと思うのであります。この点につきまして、法務大臣の方から政府の基本的なお考え方をお聞かせをいただければありがたいと思います。
  14. 田原隆

    田原国務大臣 お答えします。  外国人労働者受け入れは、御承知のように大変重要な問題であります。したがいまして、政府としては、専門的な技術を有する労働者については可能な限り受け入れ方向で対処しておりますが、いわゆる単純労働者というか、その受け入れにつきましては、いろいろな角度から慎重に検討しなければいかぬということを基本方針にしております。改正された入管法は、この方針に沿って、専門的、技術的技能、知識を持って我が国で就労しようとする外国人については幅広く受け入れる道を開いているものであります。  しかし一方で、いわゆる外国人単純労働者受け入れについては、我が国経済社会全般に非常に大きいインパクトを与えますので、ただいまのところは、法務省といたしましては関係省庁と深く協議しつつ慎重に検討を続けるという構えであります。
  15. 星野行男

    星野委員 ありがとうございました。  いずれにいたしましても、私のところに、不法就労のある国の女性が赤ちゃんを産み落としてそれきりいなくなった、その赤ちゃんを引き取って育てているのだけれども、こういう何というか不法就労に関連して発生する問題がたくさんあるだろうということをその人は話しておりました。日本の国の法秩序維持の問題とか、良好な社会習慣を守っていくとか、外国人人権、あるいはそういう関係から発生した子供をどうするか、いろいろな問題がたくさんあるように思っております。今大臣から御答弁いただきましたけれども、国際化の中で私は一番複雑な難しい問題ではないかという気がいたしますが、今の大臣の基本的なお考え方に従ってひとつ政府部内でよく御検討いただいて、できるだけ速やかにしっかりとした制度、仕組みをつくっていただくようお願いを申し上げる次第でございます。  さて、この外国人研修あるいは実習に関連いたしまして、財団法人国際研修協力機構というのができたと聞いておりますが、まず、この機構のあらましにつきましてお聞かせをいただきたいと思います。
  16. 高橋雅二

    高橋(雅)政府委員 お答えいたします。  このたび新しく十月一日をもって設立されました財団法人は、国際研修協力機構と申しまして、九月の十九日に設立許可を得まして、十月一日から業務を開始しております。  目的としては、発展途上国等人材育成に寄与するため外国人研修生受け入れを支援することという目的を持ちまして、外国人研修受講希望者等に関する情報の収集及び提供、あるいは入国在留手続に関する助言、援助、その他各種の講演会及びセミナーの開催等いろいろ事業をすることになっております。  現在、基本財産としては十億円程度を目標としておりますが、まず一億円を確保しまして設立許可を得たところでございます。十月一日からもう既にこれまでに千二百件以上来客あるいは電話による照会が来ておりまして、まあフル回転というところまではいっておりませんが、まずまず、まあまあのスタートだというふうに報告を受けております。
  17. 星野行男

    星野委員 せっかくこういう国際研修協力機構というものができたわけでありますが、発足当初ということで、人員も少ない人員で運営をするというようなことでありますし、来年度の予算要求につきましても伺っておりますが、大した額ではないようであります。この外国人労働者受け入れ問題というのは非常に我が国の根幹にかかわる重要な問題だと思いますので、せっかくこの研修協力機構ができたわけでございますので、ひとつぜひ今後この研修協力機構を拡充いたしまして、今お話がありました目的を十分達成できるように御尽力方をよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  それから、もう一点でありますが、最近の国際化の中で、外国人の在留資格を持った方々も随分たくさんおいでになっているわけであります。そういう方とあわせて、先ほど申し上げた入管法違反の方々もかなり摘発をされているわけでありますし、また入管でチェックもされているようであります。これを処理していくという入管の仕事も視察をさせていただきましたけれども、これは大変だなと実際に感じたわけでありますが、入国理事務所の施設とか陣容の強化については考えていないのでありましょうか。あるいは、考えておるとしたらどんなお考え方でおりますか、お聞かせください。
  18. 高橋雅二

    高橋(雅)政府委員 今先生御指摘のございましたとおり、日本国際化を進めていく中で、物の往来に加えまして人の往来が非常に多くなっております。入国管理行政の難しい点は人間を扱うということでございまして、私たちとしては、この増大する事務量を処理するために事務手続の合理化あるいは機械化等を進めておりますが、やはり人間を扱うものですから人間が最終的には必要だということで、関係当局にもお願いして人員の増加を図っているところでございます。
  19. 星野行男

    星野委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、入管事務所のこれからの陣容の確保、あるいはいろいろなコンピューターだとかその他の機器の導入、そういう予算確保については私どもも一生懸命応援させていただきますので、しっかり頑張っていただきたいと思います。  以上で終わります。
  20. 田辺広雄

    田辺(広)委員長代理 御苦労さんでした。  引き続いて、小森龍邦君に質問をお許しいたします。
  21. 小森龍邦

    小森委員 それでは、ただいまから質問を始めさせていただきたいと思います。  まず冒頭に法務大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、既に拘禁二法については二回審議未了、廃案になっておる、この歴史的経過は御存じのとおりでございます。今回もまた、廃案になったものをほとんど無修正のような形で百二十通常国会に提案をされ、そして臨時国会と続き、さらに今回の臨時国会ということになっておるわけでありますが、政府も余り熱意を持たない、あるいは内容に非常に大きな問題がある、そういった問題をなぜ政府は、二回も廃案になったものを出されて、どうしても実現しようとされるのか。その辺につきましては、要するに、次から次へと国会をまたがってやるような形で出る法案というものは私は熱意のない法案だと思うし、我々の方からいえば、こんなもの、国際的な基準に数々違反した問題もあります関係上、もし代用監獄などが本当に正式のものになったら大変なことだと思っておりますので、法務大臣の方で一体どういう考え方で、何回も廃案になったものを国会で審議をさせようとしておるのかという点をひとつお聞かせいただきたいと思います。  それからもう一点、これまた法務大臣にお尋ねしますが、人種差別撤廃条約の問題でございます。これは、先ほどもお話がございました入管行政にも基本的精神のところでは非常に重要なかかわりを持つ問題でありまして、本年の衆議院予算委員会の分科会で外務大臣に問いただしましたところ、外務省としては早期に批准をやりたい、こういうことを言っておられるわけであります。いろいろ調べてみますと、どうも法務省のところがネックになっておるという情報も私の耳には入っておるわけでありまして、法務省は、究極のところこの人種差別撤廃条約の批准ということについては一体どう考えておられるのか。世界百三十数カ国が既に批准をしておる条約でございます。人権ということを口にする限り、あるいは国連協力ということを問題にする限りにおいては、世界のほとんどの国がそういう態度をとっておるということになりますと日本もそれに対して歩調を合わせる、むしろ歩調を合わせるというよりは先んじてやるというのでなければならぬと思いますが、法務大臣はどのようにお考えになっておられますか。  以上二点をまず冒頭お聞かせをいただきたいと思います。
  22. 田原隆

    田原国務大臣 お答えします。  最初の第一点の刑事施設法関係の法案の問題でございますが、我々行政当局としましては、三権分立という立場から、国会における御審議がどうだこうだということについて余り意見を述べるのはどうかと考えられますので差し控えさせていただきますが、法務省としては、少なくとも明治四十一年に制定された現行監獄法は、その後の社会情勢の変化や刑事政策思想の発展に即応した内容のものに改める必要があると判断しておるわけでございまして、これを全面的に改正しなければならない、それで刑事施設法案を本年四月、第百二十回国会に再提出した次第でありますが、現在も継続になっておりますけれども、どうか一日も早い同法案の審議入りが図られるよう希望しているということを申し上げたいと思います。  それから第二点の、人種差別撤廃条約批准に関する法務当局の対応ということで御質問を受けましたが、人種差別撤廃条約の趣旨、目的とするところは私も十分理解できるわけでありますが、憲法が一方で表現の自由とかそういうものを保障しておりますが、それらとの調和の関係で大変難しい問題がやはりありますので、できる限り速やかに所要の検討作業を遂げていきたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  23. 小森龍邦

    小森委員 政治というものは真剣勝負でなければならぬわけでありまして、法案の提出というものがジャブを打つような形で出されると、おのずからそういう問題については政府の真剣な姿勢というものを私どもは疑うわけでございます。したがって、国会は国権の最高機関であり、国民からは注視の的で、その権威というものが非常に大事なんでありまして、だらだらだらだらしておると、しかも、だらだらするような原因を政府側がつくるということは戒めるべきことではないかと思います。  私どもは、この法案というものは大変大きな問題があると思いまして、いろいろと心づもりをいたしておりますが、ぜひ政府当局におかれては、これだけによらず、もう少し国会に対しては真剣な態度で出てこられることが大事だ。つまり、必要に応じて取捨選択をして、国会と政府との関係のいわば技術的なやりくりみたいなことでやられたのではかなわぬと思いますので、その点はひとつ理解をしておいていただきたいと思います。  それから、人種差別撤廃条約の問題でありますが、もちろん我が国は言論の自由ということを問題にしておるし、出版、表現の自由もすべてきちっと憲法に決めでありますが、今批准した国が百三十二カ国になっておるのではないかと思いますが、憲法で言論とか出版とかの自由を否定しておる国が一体ありますか。我が国だけの特徴のようなことを言ってはだめですよ。そして、口では国連協力ということを言うわけでしょう。憲法の原則に反する国連協力は言うけれども、そうでない、世界各国が認めておるようなことについてはやらない。だから得手勝手なやり方ではないかと思いますので、その点について、外務省はやりたいと言っていますよ。私は法務省がネックだと思っていますから、法務大臣、ぜひひとつ十分にお考えいただきまして、早期な取り組みをやってもらいたいと思います。  次に、質問の中身を変えますが、入管行政のことについてお尋ねをいたしたいと思います。  急速な国際化方向に動いておるわけでありまして、当然これはまた国際的な協力、国連を中心とした国際協力ということはだれも否定をする者はいないわけでありますが、要するに入管行政だけ見ておりますと、これほど急激な国際化の波にぶつかっておるときに、旧態依然たる態度が続いておる。それは、まずは私は、入管行政の事務に携わる陣容、もっと具体的に端的に申しますと、この人数ではとてもさばき切れない状況ではないのか、こう思うのでありますが、何かこの入管行政の対応について、今日の時代に合ったような対応策が頭に浮かんでおるのかということをお尋ねします。  同時に、具体的な事例といたしましては、先般私がテレビで見た限りでは二件ほど、不法滞在の状況にある人を収容いたしておったようでありますが、仮釈放というのか仮出所というのか、そういう形で身柄を自由にしたという報道がございました。その点につきましては、既にそのうちの一件については法務省に、永久につなぐということは実情に合わぬじゃないか、いつの時点でどういう論点でこれを釈放するかということが問題ではないかということを申し入れた経緯もございますので、簡単でよろしいですから、その二件についてはどういう判断で釈放したか、その基準をどこに置いたかということをお知らせいただきたいと思います。
  24. 田原隆

    田原国務大臣 三つ御質問がありましたが、第一点の事務量に対する対応の問題ですが、私も昨日だったか、おとついだったか、東京入管局を視察しました。大変混雑し、事務量で手いっぱいという感じを受けました。これは原因がいろいろあると思うのですが、一つは、需要の増大に対して人手が不足をしておる。もう一つは、それに対応するのに人手をふやすことだけでなくてコンピューター化その他で事務処理を早くすることもできるのでありますが、人間対人間のいろいろな話し合いという問題はコンピューター化がなかなかできませんので、どうしても人手をふやさなければいかぬという部分があると痛感しました。  他の二点につきましては、非常に具体的なことでございますので、政府委員に答弁させます。
  25. 高橋雅二

    高橋(雅)政府委員 お尋ねのございました、最近テレビで出た二件のことについて御説明申し上げます。  一件は、多分、中国残留婦人のお孫さんのことではないかと思いますが、よろしゅうございますか。  本人は、中国残留婦人が後妻となった中国人の先妻の孫でございまして、中国残留婦人とは血のつながりはございませんが、我が国に帰国した婦人を頼って昭和六十年十月、我が国入国いたしました。そして中学校に入学したのでございますけれども、やがて不良グループに入って暴行、傷害などの非行歴を重ねるうちに、平成二年七月、傷害事件二件を起こして逮捕され、同年十月十七日、東京地裁において懲役一年二カ月の実刑判決を受けて服役したものでございます。その後、東京入管局におきまして同人に対し、入管法第二十四条四号りによりまして退去強制手続をとりまして、平成三年八月二十日収容いたしました。そして、横浜入国者収容所に収容しておりましたが、同年十二月二日、諸般の事情を考慮いたしまして仮放免を許可したところでございます。  今、先生からその基準は何かという御質問でございましたが、諸般の事情という意味は、確実な保証が認められることなどを考慮いたしまして仮放免を許可したところでございます。  もう一件はパキスタン人の件ではないかと思いますが、本件パキスタン人の男性は、観光目的入国いたしまして、平成元年一月二日以降不法残留していたものでございます。日系ブラジル人の女性と知り合いまして、その方と結婚するため本年七月十五日、長野県箕輪町に外国人登録をしたことから不法残留の事実が発覚しまして、入管法違反、不法残留ということで告発されて逮捕され、長野地裁伊那支部において同法違反で起訴されたものでございます。その後、同人が本年九月十九日、同支部において保釈されましたので、同日、東京入管局は同人を不法残留容疑で収容し、退去強制手続をとりましたが、同年十月四日、諸般の事情を考慮し仮放免許可をしたものでございます。  この諸般の事情ということを申し上げますと、確実な身元保証があったということと、日系女性との婚姻が確実であるということが判明したことでございます。  以上でございます。
  26. 小森龍邦

    小森委員 こういうことは、外国我が国に対する信頼度といいますか信用というものを考えたときには、それが極めて客観的な基準、つまり人が平等に扱っておるなというようなことで納得をしなければならないわけでございますから、どういう基準かということに対しては、今のところ確実な身元保証、引受人ということが一点出ておるようでありますが、ますます努力をされまして、客観的基準、公平な扱いができる、つまりいささかも行政の恣意的な判断が加わる余地がない、公明正大ということに近づけていただくように、この際強く要請をしておきたいと思います。  そこで、きょうは時間の関係もありますからこのことについてこれ以上申し上げませんが、法務大臣は、ここのところを乗り切るためには人員を、つまり配置するという方法が考えられるということでございますが、現在の総定員法などの枠組みからいたしまして非常に困難な状況だと思います。しかし、この問題に対しては、法務大臣がどれだけしっかりして政府全体の考え方を変えさせていくかにかかっておると思いますので、どうぞ一層の尽力を賜りたい、かように考えます。  それでは、きょうは文部省の方に来ていただいておりますので、総枠から申しますと人権にかかわることでございますので、学校教育あるいはその他の教育の問題であるとはいうものの、この場でひとつお聞かせをいただきたいと思います。  一つは、つい先般新聞でも大変ショッキングなニュースとして国民に伝えられたところでありますが、大阪府豊中市の中学校の女生徒が、数人の生徒にいじめられて、そして傷害を受け、ついに死に至ったという大変な事件でございます。  これにつきまして、その事実は新聞等で見ればわかることだし、事務的に調べようとすれば調べられることでありますから、私が聞きたいことは、かかる不祥事の根底、つまり文部行政というものはこんな事件が起きたときに一体どういう反省をされるのか、あるいは文部行政の中の問題点をどこに見つけ出されるのかということをお尋ねしたいと思うわけであります。もちろん、こういういじめは今日に始まったことではないのでありますから、相当以前から本質的に考えていただければ教育の方針の中にしっかりしたものが位置づいているはずでありますが、そうでなかったことを暴露しておるわけでありますから、この際、文部省の見解を聞きたいと思います。
  27. 福島忠彦

    ○福島説明員 お答えを申し上げます。  この前の夏に広島で風の子事件が起きまして、また半年もたたないうちにこういう大変な事件が大阪の豊中市で起きましたこと、私ども大変残念に思っておるわけでございます。  事件の概要は、委員承知のように十一月十五日暴行がありまして、二十一日に死亡したということでございます。この子供につきましては従来から、特に中学二年生、三年生にかけましていわゆる登校拒否的な傾向がありまして、第二学年では四十九日、第三学年では既に五十六日休んでおります。こういう子供に対しまして、しかもかなり前から複数の生徒によるいじめというものがありまして、最後はこういう暴力が起こされたわけでございまして、現在の問題行動、私どもが抱えております登校拒否、いじめ、校内暴力というのがすべて出てまいったような事件でございまして、深く反省しているところでございます。  私どもは、この問題につきましては、第一にやはり真の人権教育というのをやらなければいけないんだと思っております。豊中市というのは随分人権教育をやっていただいているようですが、やはり本当の意味の人権教育というのがなされなければいけないし、さらには、いろいろないじめ等が過去随分この子供に対してあったわけですから、私どもは、学校としては、それがあるたびに即時即刻対応態勢というものをとらなければいけないと思っておりますし、こういう生徒指導の問題というのは、担任の先生だとか生徒指導主事だとか、本当にごくわずかの先生に任せてしまうのではなくて、校長さんがリーダーシップをとって自分の学校を変えていく、そういう姿勢でやってもらわなければいけないと思っております。  この事件が起きまして、十一月二十日には全国の生徒指導担当者を集めました生徒指導推進会議、あるいは二十七日には全日本中学校長会の理事会等で、今申し上げましたような件を特に公教育として真剣に取り組んでいただきたいということを申し上げたわけでございますが、今後も、全都道府県の指導事務主管部課長会議等のいろいろな場で、この問題について私どもの反省も含めて取り組んでいきたいと思っておる次第でございます。
  28. 小森龍邦

    小森委員 比較的機敏な対応をされておるようでありまして、その対応に対しましては敬意を表したいと思います。  ただ問題は、国を挙げてこの人権というものに対して真剣に取り組む風潮がまだ我が国にはない。残念ながら人権擁護行政を抱えておる法務省人権擁護局というものが、私はいろいろ事例を頭に描くことができますが、人権を擁護する局ならよいけれども、人権をどちらかというと踏みにじる方に身を寄せておる、公正中立の名においてそちらに寄せておるということで、まことに残念に思っておるわけであります。  これはまた後ほど具体的な事例でお尋ねをしたいと思いますが、したがって、文部省に申し上げたいことは、その人権の中身とは何ぞやということになるわけでありまして、人権教育の中身ということが問題なのでありまして、この点につきましてはまた別途機会を改めて私の見解も申し述べ、さらに文部省の考え方も聞きただしたいと思っております。要するに、口で言う人権だけではだめなんでありまして、現実に本当に人間の権利が守られるのかということが教育の中身でなければならぬわけであります。その点は、このことに関してその人権の中身が大事だということの私の指摘にとどめておきますが、真剣にひとつこの中身も考えていただきたい。  次に、風の子学園のことに触れられましたが、この前も私、風の子学園のことについては質問をいたしました。広島県教育委員会へも私の方から話しまして、私が申し出るまでは県教育委員会も、その風の子学園の現地の施設、つまり現場の状況がどうかということもまだ見に行っていなかった。したがって、これはぜひ文部省と一緒に現地を見てもらいたいということを県教育委員会の方へ申し出まして、多分速やかな連絡があって文部省も行っていただいたことと思いますが、もし現地を視察しておられれば、現地を見られての見解、感じというようなものをお聞かせいただきたいと思います。
  29. 福島忠彦

    ○福島説明員 この件につきましては、委員の方から御指摘もありましたように、私ども九月の十九日、ちょうど台風の日で大変な日であったわけでございますが、何とか小佐木島に行かせていただきまして、現地を文部省からは私と課長補佐と二人で見せていただきました。やはり新聞等で読ませていただくのと現地を見るのとでは私どもの感じも随分違ったわけでございます。  一つは、いろいろな広告があの施設に対してはあるのにもかかわらず、実態は非常に粗末きわまりない施設でございまして、私どもが行きましたときは、人がいないというせいもあって非常に廃墟に近いような感じがしまして、こういうところで本当に教育というのが行われるのかという疑問を持ったわけでございます。また、あのコンテナ自体も、ああいうところで人命が失われたということで非常に残念な思いをしたわけでございます。  現地を見せていただきまして、その上で改めて、やはり登校拒否対策というものの充実を私どもしていかなければいけないし、本来、子供というのはああいうところではなくて、公教育で、公立学校、私立学校、すべて公教育でございますが、そういうところで面倒を見て、教育基本法にも人格の完成というのを目標にしておりますけれども、そういう教育というのをやっていかなければいけないと強く感じた次第でございます。  以上でございます。
  30. 小森龍邦

    小森委員 余り具体的なことに入るいとまがございませんけれども、一つだけ、大事でありますから聞いておきます。  コンテナの中で死に至った、これはもう新聞で十分に承知をいただいておるところでありますが、もう一つ、第二内監室というバラックみたいなものがありまして、そこに鎖がつるされておりまして、この亡くなった子が直接そこでせっかんをされた経過があるかどうかは私もわかりませんけれども、あの鎖で縛りつけられた子がおるという可能性というものは、そこにそういう施設があるわけでありますから当然そういう推測が成り立つわけであります。鎖がぶら下がっておったかどうか、文部省が行かれたときにまだそういう状況であったかどうか。それから、そこに犬のようにつながれて、食事はパンとか牛乳とかあるいはお茶かもわかりませんけれども、つながれておる間はそこでまるで動物にえさをやるような形でやっておった痕跡が、パンの食べかすがそこに転がっておるのを私は見ましたが、まだそういう状況であったかどうか。これはひとつ簡単なことでございますからお答えいただきたいと思います。
  31. 福島忠彦

    ○福島説明員 私どもが行きましたときは、かなりいろいろな建物、五つも六つもたくさんありましたけれども、中はもう既にかなり整理されていたような感じがします。その家というのは、それらしきものはあって、多分ここだと思いましたけれども、そういう鎖というようなものは私どもは見ませんでしたし、いろいろな食べ物の残りとかそういうものは整理されていたように感じております。それにもかかわらず、なおかなりひどい状況だというふうな感想を抱いたわけでございます。
  32. 小森龍邦

    小森委員 文部省が見られて、大変殺伐たる状態で、ここで教育が行われるのかと唖然とされたようなことのお話がございましたが、実は、そこへ子供たちを送り込むために姫路市教育委員会が介在をしておった、細かい事実は申し上げられませんけれども。それからまた、残念ながら、私の広島県に今、東広島市という町がございますが、その東広島市の教育委員会が委嘱をしておる教育相談員がそこに生徒を送り込むために介在をしておった。また、愛媛県の方にもありますし、いろいろあるわけでございますが、要するに公教育の無力さというものをまざまざと見せつけられた感じがいたしておるわけであります。  しかし、そういうことになるためには教育自体の問題もあるし、法務委員会の場でこういうことを申し上げるのは、実は我が国の全般的な人権感覚の水準と申しましょうか、そういうものにかかわることであると思います。  以前から私指摘しておりますが、予算委員会の分科会でも文部大臣にも述べておるところでありますが、通常は登校拒否という言葉で表現される生徒が、私どもは登校拒否というと何か拒否する者が悪いというような印象を受けますので不登校と言っておりますが、四万九千人に達しておる。しかしこれは五十日以上の人がそうなのであって、もし四十九日以下、例えば三十日とか二十日とかで切ったら、これの数倍に及ぶでしょう。そういう形で、子供たちの置かれておる状況というものは極めて不幸な状況にあるわけでありまして、そんなことも判断の中に入れられて、子供たちを公教育の行政機関が紹介をして入れたところで鎖で人をくくるとか、あるいはコンテナに入れてかぎをかけるとかというような状況は、人権上忌まわしき事実であると思います。  この際、人権擁護行政を担当される法務大臣は、この事実というものを直視されまして、人権擁護行政に格段の熱意を込めた取り組みをしていただかなければなりません。決意のほどをお伺いしたいと思います。
  33. 田原隆

    田原国務大臣 先生のお話を聞いておりまして、まことにそのとおりだと思いますが、法務省としましては、人権擁護は憲法の柱でありますので、したがって民主政治の基本でもあると理解しており、人権尊重のために私として最大限の努力をしていきたい。たまたまきょうは人権週間の初めの日でございますが、適切な御質問であろうと思っております。
  34. 小森龍邦

    小森委員 言葉は、抽象的であれば、それとは全く逆の取り組みをしていても場合によったら弁解のできないことはない。言葉はまことに重宝なものでございますが、しかし、こういう公式の場で質問をし、回答をいただくというやりとりは初めてでございますので、言葉を一〇〇%そのまま信用させていただきたいと思います。  そこで、今度は法務省自身の所管にかかわる問題でありますが、実は法務大臣、これまでの人権擁護行政の経過といいますか流れというものがどうなっておるかということを、質問の形式を通じて私は明らかにしたいと思うのです。  まず、一九八六年、昭和六十一年の段階でありますが、法務省は、自分の持っておる行政的能力とかあるいは熱意とかを棚に上げまして、法務省人権擁護局というものをどういうふうに定義しておるかというと、整備された我が国人権擁護行政、あるいは整備された我が国人権擁護機関と位置づけておるのであります。全然整備されていないのであります。つまり、たとえそれは文部行政の世界であろうが、それは労働行政であろうが運輸行政であろうが、そこで人権という問題が十分に取り上げられていないということになれば、その問題点というものは人権擁護行政がまず感じなければならぬのであります。ところが我が国人権擁護行政は、整備された人権擁護行政とか機関とか言っておる。そういう意味では私はしばしば人権擁護局長とここでかなりきついやりとりをいたしましたが、現在の人権擁護局長の持っておる私から言うと不満な点というものは、この人に始まっておることではないのです。むしろ受け継いでおるがためにやりにくいという点もあると思うのであります。そういうことで、人権擁護局というものがそんなに完備されておるという状況ではないということを法務大臣の耳に入れておきたいと思います。  その証拠を一つ申し上げます。  かつて部落地名総鑑購入の際に、中国電力、これは中国地方の電力会社でありますが、今は非常に同和問題について熱心にやっていただいておりまして、人権問題についてかなり大きな取り組みをしておられるわけでありまして、それは私ども敬意を表しておるのであります。しかし、当時のことを言えば、部落地名総鑑を購入したということがわかりましたので、その部落地名総鑑を一体どこに保管しておるかと問いただしたら、直ちに焼却をしましたと言い逃れをしたのであります。実際は、直ちに焼却をしてなかったのであります。私は、ついに直接その担当者に会いましてひざ詰め談判をしたら、直ちに焼却をしたというのはうそでありました、こういう報告であります。どうもうそのような気配があるので、一回、二回、三回、四回と広島法務局の方へ、あれは間違ったことを言っておるのじゃないですか、焼いたと言えばあなたの方へ地名総鑑を提出する必要もないし、非常に危険ですよということを言いましたら、いや私らが調べたら、もう焼いたと言うのですから焼いたことは間違いないでしょう、こういう言い方をいたしましてずっと言い逃れをしておりました。しかし、ついに私は、法務局の四回のうその報告の後、実は焼いていなかったという中国電力の方からの申し出を聞いた経験があるのであります。  つまり、法務省人権擁護局は、こういうことについては、簡単に言うと調べたりあるいはそこをきちっと指導したりする能力に欠けておるのではないか、行政能力に欠けておるのではないか、こういうふうに思いますので、そういう事実があったということを法務大臣にこの際、真剣に取り組むと言われるのでありますから、申し上げておきたいと思います。  もう一点申し上げます。  広島県尾道市の小林百合子という女性が、ある日突然尾道市の教育委員会に電話をかけてきて、私はうちの子が部落の者と結婚するということになったら承知しませんよ、そんなことは私は承知しませんよと、教育委員会に何のそういう議論があったわけでもないのに突然電話してきた。広島県教育委員会にもそれと同じことを言ってきた。そこで調べてみたらこの女性であるということがわかったから、我々は強く法務局に要請をいたしまして、啓発してもらいたい、こういう申し入れをいたしました。啓発の動きが始まりました。しかし、七回彼女の家を訪ねて行ったのですよ、極端に言うたら面会できませんで門前払いなんです。これはいまだに何の解決もできていませんよ。だから、どこを押したら整備された我が国法務省人権擁護局と言われるのか、非常に大きな疑問であります。  私は、八六年の地域改善対策協議会の総会の際に、部落解放同盟書記長ということで意見を聞きたいということで呼ばれました。そのときに、人権擁護行政が無力であるということを言いました。そうしたら、そのときの人権擁護局からは何も回答はなかったけれども、人権擁護の全国の連合会会長の佐藤先生という方が、いや小森君、それは人権擁護局の職員をふやしてこれからやると言っておるのだから信頼してくれ、こういう話でありました。職員はふえていません。併任辞令、つまり戸籍事務をやっておる者にもう一つの辞令を渡して人数だけふやしたということにしておる。そういうふうな糊塗的な欺瞞的なことをやって人権擁護行政が前に進むわけはないのであります。法務大臣、ひとつこの点はぜひお考えをいただきたいと思います。  それで、今の人的配置、まあそれは入管の問題について人的配置と言われたのですけれども、これから世界人権を渦に回るわけでありまして、世界史の動きを見ておればわかるでしょう。私らは再三社会主義国を訪問いたしまして、中国の少数民族政策とか、あるいはソビエトはもう少数民族の対立はないというようなことを言っておりましたけれども、行くたびにソビエト政府に対して少数民族政策の現地を見たいということを申し入れて、その片りんぐらいは見させてもらっておりましたけれども、今非常に大きな動きとなっておるのはそういう民族間の対立というか民族間の差別の問題でしょう。そういうことになりますと、日本も国際的な視野に立ってその辺のところをきちっとしてもらわなければならぬ。そういうことで、整備された人権擁護機関と言うならば、法務大臣、相当の決意で進んでもらわなければならぬし、また、漏れ承るところによりますと、現在議論が進んでおりましてかなり大詰めに来ております地域改善対策協議会の議論でも、法務省人権擁護局をもう少し拡充整備をしなければならぬ、こういう議論が交わされたということを聞いております。  そういうこともひとつ受けていただきまして、法務大臣、この辺で改めて見解を聞きたいと思います。
  35. 田原隆

    田原国務大臣 先ほどからるるお話しいただきまして、法務省といたしましては、人権擁護局があるのは法務省でございますから、中心になって頑張っていかなければいかぬと改めて認識する次第であります。個々の現場的問題もございますので、関係各省庁と緊密な連絡をとりながら、啓発活動もやりながら、その中心的役割を果たしていきたいと思うわけであります。
  36. 小森龍邦

    小森委員 さて、今申し上げましたのは、何か事件が起きて人権侵害があって、あるいは人権侵害の言動があって、それを調査するとかあるいはそれを啓発するとかということに対して無力であるというような意味のことを申し上げたわけであります。しかし、それよりは現実はもっともっと深刻なんであります。  例えば、一例を申し上げますと、愛媛県の松山の法務局の職員であると思いますが、若い職員でありますから当然恋愛をし、結婚のことを考えるというのはもう当然のことなんであります。たまたま交際をしておった女性が差別部落民でございました。そこで、結婚式場を二人で押さえにいったり、あるいは結納の日を約束をしたりというような状況があったにもかかわらず、にわかに手のひらを返して、結納の日取りはちょっと延期してもらいたいというような申し出がありました。そして同時に、その経過を我々が察するに、彼女に対して彼がどういうことを言っておるかというと、君は創価学会の信心をいつやめるのかというようなことも言っておるし、君は同和地区の者じゃなかろうな、親がそれは問うておけ、こう言っておるんだというような言動が加わるに従いまして、次第に二人の間は冷たい状況となって、ついに結納を取り交わす日を破棄し、この問題は非常に不幸な状況になっておるのであります。     〔田辺(広)委員長代理退席、委員長着席〕  ところが、これの調査について、先方側の調査を法務局はちょっとやりまして、そして被害者側が指摘をしておることについて、いや、それとは違うことを言っていますよ、この程度で終わるんですね。  この調査は、愛媛県同対といいまして、会長は愛媛県知事であります。だから、それはどういう意味で私が申し上げるかというと、我々の、全く民間団体というならば、行政側から言えばそれは権威のない団体だというふうに思われると思うから、それを推量して私はそういう説明をするんでありますが、愛媛県知事がやっておる団体なんです。その団体が調査したら、そういうことが出てきたんです。ところが法務省は、そんなことはないでしょう、じゃ、もっと調べたい、お父さんお母さんも来てもらいたいと言ったら、法務省に相談したら行かぬでもよい、それが公正中立という名において行かぬでもよいと言うのです。そういう点をぐるぐる回っておるということを、法務大臣、ぜひ考えていただきたいと思います。  もう一例申し上げましょう、これは大事なことでありますから。  今、私どもが一番心配しておるのは、東京都内で実は行政書士と社会保険労務士、これが、お互いの人権を尊重しなければならぬということで、こういう仕事柄からいきますと戸籍謄本などを請求してとらねばならぬことがたびたびございます。したがって、弁護士でも司法書士でも行政書士でも社会保険労務士でも、人権を侵害しないということについて協力体制をとるために、今請求用紙、請求書というものを統一をいたしております。また、地方自治体の窓口はこれに協力をするという格好になっておるのでありますが、法務大臣、実はこういうことなんであります。  行政書士のTという人が、これは名前言うたって構わぬですけれども、それは名前を言うところに本質があるわけじゃないからイニシャルで言っておきますが、Tという人は三千五十枚の請求書、請求用紙というものを行政書士会から入手しておるのであります。その入手をした三千五十枚のものが、確実に使われたと思うものが二百九十七枚です。それは、いろいろなところでその請求書を出しておるからわかるわけですね。残るところ千四百五十六枚がわからないのであります。どういうふうになっとるんかいと言うたら、いや、ごみと一緒に捨てたんじゃろうとか、あるいは焼却したんじゃろうとか、まことに不明なんであります。人権侵害につながるような、原因になるような重要な問題でありますが、これを法務省はどの程度調べたのかという問題になるでしょう。  同じく社会保険労務士、この人は行政書士も兼ねておりますが、Kという人。この人は千百五十枚の用紙を入手しておるのであります。確実に使っておるのは三百五十枚なんであります。あとどこへ行ったかという問題なんであります。ところが、我々のところへはJRサービスという——会社名ですよ。だからこれは、私は疑念を持つから後ほどJRのことを聞くわけですけれども、JRサービスという調査機関がかなり彼らと接触があった。そして、彼らのためにいろいろな調査をしたのを送っておる。それで相当、一枚につき一万円とかあるいは二万数千円とかという形で金を受け取っておるということは、社会保険労務士会とかあるいは行政書士会が調査をした結果明らかになっておるのですよ。  そういう状態でも、結局先ほどと同じことですよ。それを民間団体の我々が当人に会って聞きたいと思ったら、会わなくてもよい、公正中立な人権擁護行政、当事者と会うこと自体が公正中立を損ねる、こういう現状になっているのですよ、法務省人権擁護局は。だから、遠回しに地域改善対策協議会の議論でも、幾ら整備された人権擁護局といって胸を張っても、拡充強化されなければならぬと言われるのですよ。だから、調査が手ぬるいというだけでなくて、逆に中へ割って入って邪魔をしておるというのが今日の法務省人権擁護局なんであります。それは、これまで敷いた路線を今の局長が受け継いで、この人ではどうにもならない世界があるかもしれませんね。しかし、もっと行政の責任ある立場大臣には、それはぜひ聞いておいていただいて早急に一つの本当に人権擁護ができるような方向性というものを見出さないと、これはもう民主主義に対する大変な汚点なんであります。  再々お尋ねするようでありますが、新たなこの私の事実の指摘に対しても法務大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  37. 篠田省二

    ○篠田政府委員 お答えいたします。  今いろいろおっしゃられたわけですが、まず最初に、四国のある事件についておっしゃられましたので、その点について申し上げます。  委員が御指摘のような部落差別につながるものであるかどうかという点も含めて、現在関係法務局において調査中でございます。  なお、付言しておきますと、委員がお考えになっている事実関係と私どもの現在つかんでいる事実関係とはかなり違っております。しかし、どちらが真実であるかということは現段階ではまだ十分にわかっておりませんので、その点については鋭意調査を進めてまいりたいと思っております。  それから、法務省人権擁護行政が逆に人権侵害ではないかという趣旨のことをおっしゃられているわけですけれども、これは、一部の民間運動団体におきまして自由な雰囲気で物事を語ることができないという状況を醸成されている点があった、そういった点について、私どもはそういうことではいけないということを申し述べているわけでございます。  それから、いろいろな点におきまして私どもが侵害しているのではないかというふうにおっしゃられている点につきましては、今までいろいろと法務省の見解を述べているわけですけれども、この際申し上げておきますと、いわゆる確認糾弾闘争に対して、私どもはそれが好ましくないというふうに申し上げておるわけでございます。そういう観点から、いわゆる確認糾弾というようなやり方で行われる事実の確認、そういう会には出ることは好ましくない、そういうことを申し上げているわけでございます。
  38. 小森龍邦

    小森委員 法務大臣から聞きたかったわけですけれども、擁護局長がいたたまれなくなってああいうことを言いました。結局、近代社会における権力、つまり行政機関ですね、権力というものは民間の運動がどうであるかということについてくちばしを入れないのが公正中立なんであります。それを、我々の運動が何をするかということについて、それがあるから行政はこうするんだ。それがあるんならあなた方の方が徹底したことをやったらいいじゃないですか。あなた方の方がようやらないから我々がやらなきゃいかぬのでしょう。  初めのうちはこうだったんですよ。局長、よく聞いておきなさい。あなた、一知半解で物を知らずに言うちゃだめですよ。要するに、初めは、部落解放同盟が糾弾をするからこれが困る、糾弾をして事実が明らかになったら啓発を完全にしなきゃならぬから、それをやる能力がないものですから、根っこの糾弾のところを抑えてきたわけでしょう。そして、初めは解放同盟と言っていたんですよ、どうですか。愛媛県知事が会長の愛媛同対が調べることについても、調べに応じてはいかぬと言うとるじゃないですか。もう少し物をよう考えて言いなさい。あなたがそういうことを言われるんなら、どうして地対協あたりでもこういう問題が出たときにきちっとしたことを早く調査を間に合うようにせぬのですか。なぜそんなにたくさん調査の時間がかかるのですか。そういうへ理屈を言うちゃいかぬのであります。  つまり、例えば法務省人権実務研究会が出しておる「えせ同和行為対応の手引」というあの本の中に、どうですか、今精神障害者の医療担当者が腹を立てて法務省に文句を言いに来とるでしょう。暴力団は怖くないけれども精神異常者は怖いといって、あなた方の本の中に書いてあるじゃないですか。だから、障害者を差別するなど言うとる。そうしたら、いや、精神異常者と言うたんで障害者ではありません、こう言うとるじゃないですか。白馬非馬論じゃないですか、それは。  とにかく、時間がございませんので、法務大臣、そういうことに対して、法務省人権擁護局に対してかなりずっと不信感を持っておるという事実というものを踏まえていただきまして、あなたのこれからの善処をお願いしたいんです。ちょっと見解を聞かしていただきたい。
  39. 田原隆

    田原国務大臣 ただいままでの先生のお話をよくかみしめ、これからも人権擁護のために一生懸命やりたいと思います。
  40. 小森龍邦

    小森委員 法務省人権擁護局というのは、新しくなられた大臣にはちょっと済まぬけれども、これはもう私から言うたら日本の行政機関で一番意地が悪いですね。意地汚いですね。だからそれはまた別に、こういう公式の場でもあるいはまた大臣にでも直接に、まだまだ山ほどの事例がありますので、別の機会に譲りたいと思います。  そこで今度、総務庁にお尋ねをいたします。  地域改善対策協議会の議論というものが大詰めに来ておるということは、日程的に私も承知しておるわけであります。十一月二十九日に意見具申が出るということを聞いておったのでありますが、少しばかり延びておるようであります。慎重審議ということで結構なことではないかと思います。  そこで総務庁にお尋ねをいたしますが、我が国の明治以後の日本の国の歴史、動きといってもいいですね、明治以後の我が国の動き、その中で「広く会議を興し、万機公論に決すべし」とか、あるいは太政官布告第六十一号で「穢多非人等の称廃せられ候」と喝破したにもかかわらず、なぜ今日、現実の事実として同和問題のことを国は取り上げて議論をしなきゃならぬような状況に立ち至っておるのか。つまり簡単に言うと、明治維新から百二十年もたつが、どうしてなお現実に差別が存在をするのか、その主たる原因を同対審答申の分析に照らして、総務庁の地域改善対策室長はその担当の任務の一番最前線でございますので、あなたの認識を聞かしていただきたいと思います。
  41. 荒賀泰太

    荒賀説明員 昭和四十年に出されました同和対策審議会の答申におきましては、我が国の産業経済は二重構造と言われている構造的な特質を持っておりまして、その特質がそのまま社会構造に反映している、また、我が国の社会は、一面では近代的な市民社会の性格を持っておりますが、他面では前近代的な身分社会の性格も持っている、さらには、精神、文化の分野でも昔ながらの迷信でありますとか非合理な偏見、前近代的な意識などが根強く生き残っているという指摘をしておるわけでございまして、どのような我が国の社会、経済、文化体制こそが同和問題を存続させ、部落差別を支えている歴史的、社会的根拠であるということを述べておるわけでございまして、我々もそのような認識を持っておるわけでございます。  政府といたしましては、この同対審答申を受けまして、同和問題が日本国憲法に保障された基本的人権にかかわる課題であるという認識のもとに、昭和四十四年以来二十年余にわたりまして、三たびにわたる特別措置法に基づきまして今日まで関係諸施策の推進を図り、同和問題の解決に努めてきたところでございます。
  42. 小森龍邦

    小森委員 同対審答申に基づく認識を聞かしていただきまして、私も実際の運動を通じてそのとおりであると。運動的に、今室長が答弁されたその同対審の認識というものは全くそごを来していない。少年時代からのこの問題への取り組みで、一度もその命題というかそういう説明に反するような事実というか社会の動きというものを私は感じたことはない。同対審はまことに適切な分析をしておる、こういうふうに思っております。つまり、そういう差別が残る原因というものを社会的、経済的に部落問題に焦点を当てて同対審が分析をしておるのでありますから、人権擁護局はだからこそ、人権が踏みにじられるような要素というものが部落問題に限らず、この社会で部落問題だけが孤立して野中の一本杉のように立つことはないのでありますから、全体との関連においてそうなるのでありますから、人権というものは大事だ、もっと人権擁護行政を進めなきゃならぬ、こういう気持ちになることが大事なんであります。何か言われたらすぐそれの弁解、これだけでは物事は前へ進みません。  そこで総務庁の室長にもう一点だけお尋ねをしますが、そういう二重構造の中で差別、部落というところに焦点を当てると、ハードの面もソフトの面もいろいろあるわけでございますが、私は質問を簡単にするために申し上げたいと思いますが、部落に焦点を当てたら、同対審は、明治以後は国が近代化の方向をたどったとはいうものの、差別によって被差別部落の若い青年労働力が近代産業に平等に吸収されなかったことが最大の要因である、こう書いていますが、総務庁地対室長はその点についてはどういうお考えですか。
  43. 荒賀泰太

    荒賀説明員 もう少し細かく申し上げますと、同対審では、「わが国の産業経済は、「二重構造」といわれる構造的特質をもっている。」ということでございますが、「一方には先進国なみの発展した近代的大企業が」あるのに対して、「他方には後進国なみの遅れた中小企業や零細経営の農業がある。この二つの領域のあいだには質的な断層があり、頂点の大企業と底辺の零細企業とには大きな格差がある。」このようなことを言っておるわけでございます。  また、今委員から御指摘のように、この若い労働力が就業の中に円滑に取り込まれていくといいますか、そういう形のものが重要であることは申すまでもないわけでございます。最近の関係省の分析によりますと、若年労働者の雇用についてはかなり改善されてきておるという分析をしておるわけでございますが、今後の就労の問題については極めて重要であるという認識を持っておりまして、先ほど委員からも御指摘がありました地対協においてもいろいろと議論がなされておるところでございます。近く出される予定の意見具申においてもそれについての御意見が出るものと考えておりますので、その意見具申を踏まえて具体的に検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  44. 小森龍邦

    小森委員 大事なことを相互に認識がおおむね一致しておるということで、非常に私もうれしく思っておるところでございます。そうなりますと、要するに、ハードの面においてもソフトの面においてもしっかりとした実態を把握して、そして、今まで御苦労していただきまして約二十三年間法的な措置がずっと続いてまいりましたが、政府なり与党なり、また野党の皆さん方も御協力をいただいて問題の解決を図ろうとされたその熱意には私ども大変感謝をいたしておるのでありますが、ひとつ今度こそ本当の意味の実態を浮き彫りにしていただいて、そしてその実態を一つ一つ解決していくような手だてを講じてもらいたい。これは、現在議論をしております地域改善対策協議会、その意見を総理も尊重するということを海部内閣時代に衆議院予算委員会でも答弁されておるわけでありますから、そういうことになると思いますが、要するに、ぜひ正確な実態を把握していただきまして、その正確な実態というのは、今、地域という法律的な対象になっていないおおよそ千部落あるということはこれはもうみんな共通した認識なのでありますが、全く手のついていない千部落をも含めて実態調査をやっていただきたいと思っております。総務庁地対室長の考えを聞かせていただきたいと思います。
  45. 荒賀泰太

    荒賀説明員 地域改善対策を推進していく上におきまして、実態をよく把握するということは必要なことであると考えております。これまでも総務庁におきましては、昭和五十年、六十年に同和地区の実態把握を行っております。また、その後におきましても、関係省庁におきまして地方公共団体並びに出先機関からのヒアリングあるいは担当者会議等を通じまして現状を適宜把握をしつつ、政府としては適切に施策を講じてきたところでございます。  今後の問題につきましては、先ほど来申しておりますように、来年度以降の方策につきまして現在地対協で審議が進められておりますので、政府といたしましては、その意見具申を尊重して具体的に検討してまいりたいという考え方でございます。
  46. 小森龍邦

    小森委員 実態の調査とか実態の把握というのはすべての政策の根本をなすものでありますから、我々の方も強く、与野党を問わず関係者の皆さん方にその点の必要性を力説をしておるし、恐らく地対協におかれても、この時点、冷静に考えればやはり正確な実態を調査するということが必要だ、こういう考えに至るのではないかと思います。ぜひとも担当省庁の、しかも担当の直接の窓口である地対室においては、その点をぜひ熱意を込めてやっていただきたい、こういうことを強く要請しておきたいと思います。  そこで、時間がだんだん迫ってまいりますので、同じく人権ということにかかわりまして、ある一つの事故をめぐって運輸省の方に聞きたいと思いますのでお願いをしたいと思います。  その事故というのは、既に御承知のとおりでありますが、東京—三島間百二十キロほど一つの車輪が回らないでずっと引きずるような形で行っておりましたために、車輪の鉄が厚み約三センチ摩耗した。円形だから、三センチいきますとこの長さは約三十センチに及ぶ、それが百二十数キロの距離を走っておる、こういう事態が起きまして、これは国民の人命の安全ということについては大変大きな問題であろうと思います。  しかしJR東海は、非常に冷静といえば言葉がよいが、いや大した問題ではありませんという態度をとっておられて、また、恐らく運輸省の方にもそういうふうな報告が来ておるのではないかと思いますが、運輸省にその事実をここで若干説明を願いたいと思います。
  47. 溝口正仁

    ○溝口説明員 お答えいたします。  御指摘の件につきましては、現在詳細の原因について調査中ではございますが、現在までのところでは、台車検査時においてモーターからの動力を伝達する歯車装置への給油がされないまま走行した模様でございまして、そのため歯車軸の軸受けの保持器というものが破損しまして、さらには、直接軸を保持しておるコロが飛散しまして車輪が不回転になった。その結果として、車輪が回らないゆえにフラットが発生したものと推定しております。  その安全性についてのお話でございますけれども、このような摩耗の状況下での走行につきましては、まず脱線を防止するその車輪のフランジは損傷していない。それから、摩擦による車輪の熱劣化は摩擦の表面だけでございます。それから、走るときに一番大事な車軸の損傷は一切ございませんので、脱線等の重大な事故に直接つながることはないと考えております。
  48. 小森龍邦

    小森委員 朝日新聞やその他の報道を見ますと、既にその車両は相当以前に油漏れをしておるということが関係者にはわかっておった。だから、油漏れをしておるので油を補給したというか、油がなくなっているからまた油を入れてその車を使った、こういう意味のことが新聞報道にありますが、その事実はどうですか。
  49. 溝口正仁

    ○溝口説明員 台車検査終了後のいわゆる仕業検査時に、御指摘のとおり、給油が八リットル程度されたというふうに聞いております。
  50. 小森龍邦

    小森委員 それは何十日か前のことだと思うのでありますが、何十日か前にそういうことがあれば、十分そのことだけでこれはひとつ何とかしなければならぬということを考えなければならぬと思いますが、直接のこの事故、事故というか、こういう事実が生まれてくる一日か二日前にもこの油がないということがわかった、そういうことがあったのじゃないですか。
  51. 溝口正仁

    ○溝口説明員 報告によりますと、一日前の仕業検査のときに、これは先ほどの八リットルとは違いまして、三リットル程度給油したという報告がございます。
  52. 小森龍邦

    小森委員 そうなりますと、どうしてこの車両はおかしいということで根本的な対応をしなかったのか。結局、当日対向するもう一つの新幹線の方からの連絡があって、車輪に火花が出ておるよと。それはそうですね、レールをすっていっておるんですから。車輪の三十センチの領域が厚み三センチちびておるんですから。フラットというんだそうでありますが。どうしてそれがちょっとでも異変があったときに直ちに手が打てないのか。そこの、つまりどういいますか、JRの安全管理ということに関する一つのシステムの中の問題というのはどの辺にあるのかということをお答えいただきたいと思います。
  53. 溝口正仁

    ○溝口説明員 御指摘のとおり、仕業検査時において、そういう通常にない油の給油ということが発見につながらなかったということでございますので、私どもとしてもそういう点検の体制では困るということで、中部運輸局長より警告書を出しておるところでございます。
  54. 小森龍邦

    小森委員 新しく運輸大臣になられた奥田運輸相は、これはいつの新聞ですかね、十一月七日、つまり閣僚に任命をされた直後の記者会見で話したようでありますが、安全はすべてに優先する、まず安全な輸送という基本があってその後にさまざまな付加価値でサービスなどを行うという姿勢が大事だと、まことに常識的なことを運輸相は言っていますね。ところが、以前の国鉄時代と比べると、安全管理の基準というのか運転士の心得というのか、大分ダウンしておるんじゃないですか。私が聞いておるのは、運転士が例えば信号が青でもこれはおかしいなと、信楽事件がそうですよね、これはおかしいなと思ったら、まずとめて安全を確認するというようなことが、以前の国鉄時代には心得としてあったようでありますが、何かそれが落ちておるようですね。とりあえず急げと、こういうことになっておるようですね。新聞にも出ていますよ、それは。その点はどうですか、運輸省。
  55. 溝口正仁

    ○溝口説明員 安全規範のことを御指摘だろうと思いますけれども、これは細則の部分もございまして、それをすべて合わせるとJNRの時代とJRの時代では変わってございません。
  56. 小森龍邦

    小森委員 そういうようなことが今回の——一たん横浜でとめたのに、またそのまま三島まで走った、だから対向車が指摘した。そして結局三島でとめたんでしょう。少しこれはずさんじゃありませんか。そして、そのずさんなことがマスコミが報道しなかったら国民はわからない。その事件があって二十日以上過ぎているんですよ、一カ月ぐらいたったんですからもう少しこれは安全ということを注意してやってもらわなきゃいかぬと、JRに対する監督というか指導をしなきゃならぬ運輸省の立場とすれば、そこはひとつ厳格に国民の生命を守る、たったこの間信楽でああいう事件があったばかりでありますから、ぜひとも緊張してやっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  そこで、私はさらにこの場でお尋ねをしたいと思いますことは、国有鉄道公社がJRに衣がえをする、つまり完全に民営になるという状況のときに、当時の内閣は、つまり路頭に迷う者を一人もつくらないとか、なかなか言葉では格好のよいことを言った。しかし現実には千人近い者が、地方労働委員会を経て、まだ中央労働委員会のところに乗っておる。地方の労働委員会が全部これは不当労働行為だと言うとって、JR当局はまだこれを頑として聞き入れない。政治だからある程度折り合いをとってというようなことを中央労働委員会は思って、ぼつぼつぼつぼつにやっておる、そういう状況がございます。したがって、これは去年の段階における予算委員会の分科会で私は強く労働大臣にも要請をいたしましたが、何にしても人権ということを考えて速やかな解決をしてもらわなきゃいかぬ、こういうように思いますが、JRを監督する立場にある運輸省としてはどういうお考えですか。
  57. 村上伸夫

    ○村上説明員 旧国鉄を分割・民営化してJRに移行するに当たりまして、先生御指摘のように人員の問題につきましては、旧国鉄時代から広域の異動の問題とか、あるいは政府としても公的機関における採用その他という形で非常に努力をしてきたところでございます。  今御指摘の清算事業団の千数人の方々につきましては、これはいろいろ努力をした上でこういった事態が生じているわけでございますけれども、現在この問題につきましては中労委にかかっている問題でございますので、運輸省としてはその問題直接につきましてはコメントを差し控えさせていただきたいと思っております。
  58. 小森龍邦

    小森委員 労働運動というものが思想、信条によって差別的処遇を受けたら、これはもう民主主義は真っ暗やみであります。したがって、せっかく我が国の行政機関の中に地方労働委員会があり中央労働委員会があって、そしてもう相当久しきにわたって生活は路頭に迷っておる者が千人近くもおる。そういうことを、今やってもらっておりますのでその状況を見てというようなことでは、人権感覚が問われるのです。だから、そういう点につきましても政府も速やかなる対応をやってもらいたい、こういうように強く要請をしておきたいと思います。  そこで、質問の中身をもう一歩進めたいと思います。  JR東海のある労働組合員が湾岸戦争の問題をめぐって平和の大切さを力説した。そうしたら管理職がやってきて、君、そんなことを言うとったらだめよ、物は考えて言わにゃいかぬよと。そしてまた職場へ、あの人物はどういう人物かなあというようなことを尋ねたりするようなことがあった。間もなくその職場から他へ出向を命じられた。名前まで言う必要はありませんが、そういう事実はありましたか。
  59. 村上伸夫

    ○村上説明員 JR東海において今先生が指摘されました出向人事があったということは承知しております。ただ、この出向大事につきましては、事前に本人に会社側が説明し了解を得たというふうに会社側から聞いております。
  60. 小森龍邦

    小森委員 なるべく深入った答弁をしない方がよいと思っているけれども、それではますます関係者は、国会で議論してもあの程度のことしか言わない、もちろん私の手持ち時間の関係もあるからやむを得ないけれども、そういうことになったのではお互いの疑念というものは取り除かれないのであります。疑念が取り除けなければ、これは人の和というものは成り立たないのですよ。それは労働組合が小さく割れていろいろな組合がたくさんあれば、あっちがこう言うからこっちができないというようなことは、目の先のことはそれで操ることはできるかもわからぬけれども、根本の安全というようなことについては人の和がなかったらだめなんですよ。時の利、地の利よりも人の和にしかずですよ。つまり人権というものが確立されていない国は極めて非能率、これは根本的にそうですよ。今の世界の情勢の動きを見てみなさい。なぜ東ヨーロッパなりソビエトが非能率であったのか、考えたらやはりそれは民族問題の根本的な政策にうまくいっていないところがあったということが次第に明らかになっておるわけでしょう。人の和が大事ですよ。どうなんですか、思想、信条によって動いたのではないと言われるのですか。
  61. 村上伸夫

    ○村上説明員 先生御指摘の出向人事の問題でございますけれども、会社側は当人の適性なりあるいは経理に対する習熟といったような本人の能力なり経験その他を勘案して出向人事を行った、先ほども御答弁申し上げましたように、会社側はその件について事前に本人に説明し、了解を得た、こういうふうに報告を受けております。
  62. 小森龍邦

    小森委員 しかし事実は消えないですね。今私が説明したようなことがあった後に、おまえちょっとあっちへ行っておけ、事実は消えないですね。憲法が決めておるように、すべて国民は個人として尊重される、そして思想、信条の自由ということが明記されておる。しかし、あなたの答弁からその事実に対しては何の納得のいく言葉も出ていませんよ。これはきょうもう一つ二つ私は予定しておる質問があるから先に行きますけれども、別の機会にこの問題はさらに続いてお聞かせいただきたいと思っております。  さて、時間が大分迫ってまいりましたので、もう一点だけ総務庁の方にお尋ねをいたしたいと思います。  総務庁の肝いりで、これにもいろいろ歴史的経過がありまして、言えば山ほど言いたいことはありますけれども、いわゆる啓発センターなるものが存在をしています。これは、部落問題を中心に人権の啓発をやるということのために、大蔵省に予算を認めさせて啓発センターというものができたのであります。  しかし、それは現実には機能を余り発揮していない。だからこれのあり方についても民間ではいろいろ問題になっておるし、また地対協でも問題になったのではないかと思いますが、地対協ももうやがて結論が出るから、今地対協でどういう議論が行われておるというようなことは答えていただく必要はございませんが、要するにこの啓発センターというものは私からいったら打ち切るべきだと思いますね、国費を使うのだから。そしてこの前の「翔べ 熱気球」、直接見ておられぬ方には今すぐここで通じない私の質問がもわかりませんけれども、「翔べ 熱気球」などという、小学校、中学校の生徒に大変融和的な思想を振りまくような書物を漫画形式で啓発センターが出しておるというようなこともありまして、これはもうやめるべきだと思うのです。しかし、いや、これはもうやりかけたのだからこの啓発センターを続けるんだというならば、もっと効果の上がる方法を現在考える必要があるのではないか。もしもっと効果を上げるようなことで今考えつつあるとか、こういう考えに到達しておるとかということがあったら、お知らせをいただきたいと思います。
  63. 荒賀泰太

    荒賀説明員 お尋ねの財団法人地域改善啓発センターにつきましては、昭和六十二年の十月に発足をいたしました。その趣旨といたしましては、民間の立場で行政機関と連携を保ちつつ、人権尊重の基本理念に基づいて実効性のある啓発活動を展開していく、差別を生み出している心理的土壌を変えていくことによりまして、差別意識の解消を促進することを目的として設立をされたものでございます。  私どもとしましては、センターが所期の目的、役割を果たせるようにいろいろと助言指導をしてきたところでございますが、残念ながら現在十分とは言いがたい状況にあるわけでございます。具体的には、このセンターの機能の充実でありますとか、財政基盤の確立等が重要な課題になっておるわけでございます。この啓発センターの問題を含めて啓発のあり方については、地対協におきましても熱心に議論をされておるわけでございまして、その意見具申を踏まえて具体的に検討してまいりたいと思っておりますが、また私どもといたしましては、実効ある啓発業務が実施できるようにさまざまな努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  64. 小森龍邦

    小森委員 まあそういうふうなことをいろいろ考えておられるということでありますから、廃止しないのであるならばしっかりと機能するような、大げさな言い方をすれば国民的な理解とか合意がいただけるような、そういうものにしていただく。しかし、それがとても無理ならばもう要らぬ国費は使わないこと、こういうことを重ねて申し上げておきたいと思います。  そこで、もう一度法務省の方に返りますが、つまり法務省人権問題に対する啓発費はおおむね三億円とか三億五千万円とかが計上されておるようでありますが、これは単純計算をいたしまして、一億二千万人に対する整備された法務省人権擁護局の啓発費とすれば一人が幾らになるのですか。これはほんのわずかでしょう。三億五千万ですから、三円ほどでしょう。そういうことで胸を張るということは、私は常識を疑っているのです。  総務庁の方は何か七億か八億かあるようでありますが、この間、私は浄土真宗本願寺派へ行きまして、浄土真宗本願寺派の内局の総予算が年間どれくらいですかといって尋ねたら、百億ちょっとです。職員どれくらいおられるのですかと言ったら、四百人ぐらいです。そうすると人口辺、五万の町ぐらいの予算規模だなと私は思ったのですけれども、そこで人権啓発費を何ぼ組んでいるのですかと言ったら、そこでも二億何は組んでいるのですよ。寺の数は一万一千しかないのですよ。そこで二億何ぼ組んでいるのですよ。これだけの膨大な、距離的にいっても何千キロという長い列をなしておる日本列島において、三億五千万ぐらいのことでよく人権啓発ができると思っていますね。そういうことについてはどういう感じでおられるのですか。人権擁護局長にも聞きますが、法務大臣には努力をしてもらわなきゃいかぬと思うのです。そういう意味で、後ほどまた法務大臣からも続いて御答弁していただきたいと思います。
  65. 篠田省二

    ○篠田政府委員 お答えいたします。  地域改善対策関係の啓発経費は、平成三年度予算で二億四千三百六十三万四千円でございます。平成二年度が二億一千六百三十万六千円、それから平成元年度が一億九千二百十三万二千円でございます。それで、平成三年度を平成二年度に比べますと一二・六%のアップ、それから平成二年度を平成元年度に比べますと一二・五%のアップで、これは法務省全体の予算のアップ率よりはかなり高率でございまして、わずかながらも、私どもとしては最大限増額に向けて努力いたしております。
  66. 田原隆

    田原国務大臣 具体的な数字についてはただいま政府委員が申したとおりでございますが、私も非常に少ない額でびっくりしたわけであります。今後ますます努力してまいって、来年度予算には今のままで要求せざるを得ませんが、さらにその将来がございますので、徐々にふやしてまいりたい、努力してまいりたい、こう考えております。
  67. 小森龍邦

    小森委員 人権擁護局長としばしば声を大きくしてやらなければならぬということは私は大変不幸に思っておりますが、どうかひとつ人権擁護局長、あなたは常識というものを持ってもらって、私が間違って三億五千万と言ったら、あなたは胸を張って二億何ぼだったといって言うのでしょう。いや、あなたは三億何ぼと言われるけれども本当は二億何ぼですといって頭をかくのなら、あなたの行政姿勢わかるけれども、そういうところがちょっとお互いに感覚がずれているんじゃないでしょうかね。ぜひひとつ常識的な感覚を持っていただきたい。これは人権擁護局長だけに言っておることじゃないのです。あなたの局の主要なメンバーである課長クラスにもぜひ人権に対する常識を持っていただきたい、強く申し上げておきたいと思います。  そして先ほども申し上げましたが、生命財産、あるいはいわゆる人間の生命にかかわる問題でありますから、これにすぐる人権問題は私はないと思っていますから、先ほどのつまり安全輸送という問題、安全輸送の根にある人の和という問題、それにつきましては引き続いて機会を得ていろいろと質問いたしたいと思っております。  きょうはこれで終わります。
  68. 浜田卓二郎

    浜田委員長 この際、一言ごあいさつ申し上げます。  土屋参考人におかれましては、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  鈴木喜久子君。
  69. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 今回質問するときに、ちょうど十月の末に司法試験の最終が発表がありましたので、今年度の司法試験の問題からお聞きしていきたいと思います。  法務省の方に伺いますけれども、ことしの司法試験の合格者、かなり数もふえ、女性の数もふえて、年齢的にもどうであったのか、司法試験改革のまず第一歩のことしでございますので大変注目しておりますけれども、まずその数など具体的なことを伺いたいと思います。  平均的な年齢、それから年齢のばらつきですね、最高の年齢とか一番下の最少年齢というのはどのぐらいであるとか、また女性が何名ぐらいどうなのかというようなことについて、そして傾向が何か特別な傾向でもあるというようなことがありましたら、お知らせいただきたいと思います。
  70. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 突然の御質問で、正確なところはあるいは若干違っているかもしれませんが、ことしの司法試験の最終合格者の人数は六百五名でございます。昨年が四百九十九名であったと思いますので、約百名余り増加したということでございまして、これは御案内のとおり、今般の司法試験改革に関します法曹三者の合意に基づく増員が図られたというふうに考えております。女性の合格者という御質問でございますが、ちょっとうろ覚えでございますが、たしか八十三名ということではなかったかと思います。これは昨年に比べまして十名前後増加しているという数字であろうと思います。それから平均年齢でございますが、正確な数字を覚えておりませんが、二十八歳代でございまして、この数字は昨年の合格者の平均年齢とほとんど変わっておりません。最高年齢の方はたしか四十代だったと思いますが、正確なところは記憶しておりません。一番若い方については、申しわけございませんが、正確に二十二歳であったか二十一歳であったか、ちょっと定かでございません。  それから、百名程度増加させたわけでございますが、その効果につきまして、先ほど平均年齢については申し上げましたけれども、そのほかいろいろな指標につきましてどういう変化が生じているか、生じていないか、この辺は現在詳細を分析中でございまして、御案内の法曹養成制度等改革協議会の場でさらに詳細な検討をしてその傾向を分析していきたいというふうに考えているところでございます。
  71. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 これからいい結果が出て、段階的な何かいろいろな形で司法試験の中でも受験資格それぞれが違ったようなものにならないような傾向が出ていくことを私は祈っているわけですけれども、今後具体的に、ことしからずっと追跡的な調査のようなものを計画されているのでしょうか。
  72. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 先般、司法試験法の改正法を成立させていただいたわけでございますが、その改正の内容といたしまして、平成七年までの合格者の傾向というものを検証して、平成八年からいわゆる合格枠制というものを実施するかどうかを決めていくということになっているわけでございます。そのための検証作業、これを行っていくわけでございます。この検証に必要な作業は、ただいま申しました法曹養成制度等改革協議会の場で行うということになっておりますので、その場で十分な傾向の検証ということをやっていく考えでございます。
  73. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 どうぞよろしくお願いします。  具体的に百五名の増加ということになりますと、司法修習生が今度からかなりふえるということになりますけれども、研修所のスペースでありますとか実務修習地、それからまた、それぞれの実務修習における実施について変化がありますのでしょうか。
  74. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  司法修習生がふえますことによりまして、私どもの方では司法研修所のスペースの確保と、それから実務修習庁におきます受け入れの拡大、この二つの使命を持っているわけでございます。  司法研修所のスペースの確保につきましては、来年度百名ぐらいふえて六百人体制になりますが、この段階におきましては現在の湯島にあります司法研修所でもって対応してまいりたいというふうに思っております。いずれこれが二百人増になりまして七百人体制になりましたときには、別に場所を求めまして十分なスペースを持った研修所を建てたい、このように考えております。  それから今御指摘の実務修習庁でございますが、来年から早速七庁、七カ所実務修習庁をふやす予定にいたしております。現在三十七カ所で実務修習を受け入れておりますが、七庁ふやしたいと思うわけでございます。山口、佐賀、鹿児島、那覇、盛岡、徳島、高知でございます。七百人になりました段階におきましては、残りの庁におきましても実務修習を受け入れていただきまして、五十カ所全庁で受け入れてもらう、こういう計画を立てているところでございます。
  75. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 受け入れの方も非常に大変だろうと思います。東京の裁判所、それから検察庁、弁護士会、それぞれのところで非常に御苦労が多いと思いますけれども、これがまた、百名ふえるのが、来年の試験がありますとまたそこでふえていくわけでございますけれども、先ほどの研修所のスペース、とにかくそう悠長な問題ではないように思われるのですが、どこにどのような形で移転なり増設なりをされていくのか、具体的にはもうお決まりでいらっしゃるのでしょうか。
  76. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 平成五年度の試験から司法試験の合格者を七百人体制にもっていくという計画でございます。そういたしますと、平成六年度から七百人の修習生が参る、こういうことになります。その段階におきましては現在の湯島の司法研修所では受け入れが困難でございますので、先ほど申しましたように別の土地に新しい研修所を建てたいと思っております。現在計画しておりますのは、東京都の練馬区それから埼玉県の和光市にまたがって所在する国有地の一部をこの研修所に充てさせていただきたいというふうに考えまして、関係機関と折衝中のところでございます。
  77. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 私も研修所でいろいろとお世話になってきた経験がございますけれども、この研修所の修習生の生活というものは、やってみますと大変楽しくもあり苦しくもある二年間ということになると思います。先ほど合格者の最高年齢が四十歳代であると言いましたけれども、私たちのときにも、そのときに司法試験を受けずに前に試験に合格された六十歳代ぐらいの方々が入ってこられた、一緒に修習をした、そういった経験がございますけれども、現在もそういったことがあるのでしょうか。  それからまたもう一つ、現在では、公務員試験にも合格していて二つの身分を併有しながら、各省庁の公務員の身分でありながら研修所の修習だけはするというような制度がとられているそうですけれども、それはそういうことでよろしいのでしょうか。
  78. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 最後の方からお答えいたしますが、行政官の試験と司法試験を両方受かられて行政官の道を選ばれたという方は毎年数名おられるわけでございます。現に行政官の方でやはり司法制度について勉強したいという方もおられるということで、そういう要請を受けまして、数年前から行政官の身分を持ったまま司法研修所で司法修習を受けていただくという制度を発足いたしました。この行政官の方は人事院の事務官という身分でもって司法研修所にいらっしゃるわけでございます。現在はお二方おられます。  それから、高年齢で修習生となっている者があるかということでございますが、以前行政官の試験に合格された方につきましては司法試験の一部が免除されます。そういった関係で、六十歳を超えて司法試験に挑戦されて合格なさっているという方がおられます。ことし入所された方にもたしか六十前後の方がおられたことを記憶いたしております。  以上でございます。
  79. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 こうした司法修習というものは、やることによってこれからの法曹界でいろいろと活動していく上で非常に役に立ち、また必要なことであるということでされているのだと思いますけれども、この司法修習の意義、目的について裁判所としてはどのように考えておられますか。特に判検、そして弁護士というような統一的な修習ということについては大きな意義があるというふうに私は理解しているのですけれども、この点についてどのようにお考えか。  またもう一つ。司法試験を受けるときにたくさん試験の勉強をいたします。その司法試験の知識というものと実務修習ということで学ぶ知識というものにはかなり差異があると思うのですが、その点も交えてお示しいただきたいと思います。
  80. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 今御指摘のとおり、現在の教育制度は、裁判官、検察官、弁護士、これを一体として司法修習生として修習を行っております。  このことの意味でございますが、裁判官、検察官、弁護士、これは司法制度の担い手といたしまして強度の使命を自覚し、相互に他の職務を理解し尊重し合うとともに、三者が一体となって司法制度の適正な運営に協力しなければならない、こういう使命を持っているわけでございます。そういう意味におきまして、単に検察官、弁護士それから裁判官の養成ということではなくて、広い意味での法曹を養成する、こういう体制をとっているところでございます。この三者がお互いにお互いの仕事を理解し体験するといった現在の司法修習体制は大変有意義なものであろう、このように理解しているところでございます。
  81. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 実務的に体験し、それぞれの分野の法曹に携わってみるということがいかに重要かということはよくわかります。  研修所を卒業しますときに、私どもも地獄の二回試験というふうに言いましたが、卒業試験というものがございますけれども、この試験の意義というものもございますですか。
  82. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 先ほどちょっと申し落としましたが、司法試験と司法修習とがどういう違いがあるかということでございますが、司法試験の方はあくまでも法律的な基礎知識の試験でございます。それに加えます二年間の司法修習と申しますのは、そういう基礎的な知識の上に立って、実務的な知識それから実務上の技術、そういったことを勉強し法曹として育っていっていただく、こういう体制になっております。  そこで、二年間の修習の終了のときに行われます現在の二回試験、これは、司法研修所を卒業いたしますと直ちに独立の裁判官、検察官、弁護士として仕事をするわけでございますので、そういう法律実務家としてやっていく上においての最低の基準といいますか、それをクリアするかどうか、この点を審査するために二回試験というものを行っているわけでございます。
  83. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 そういった試験ですから、これは実務的な意味合いでの、これから法曹としてやっていけるかどうかということを見るための試験として大変大切なものだろうと私も思いますし、研修所で学んだ修習生はほとんど、そこで不合格となることなく卒業するというふうになっていると聞いています。ただ、それぐらいこの二年間の修習というものが法曹の実務的なことを身につけることにおいては有意義なものであるということをあらわしているのだろうと思います。  こうしたものについて、司法試験を受かっていて一定の職業についている者については実務修習をしないでも弁護士の資格を与えることができるという弁護士法五条の規定がございます。特にこの中の二号についてなんですけれども、これについて立法の趣旨という点を伺ってみたいと思いますが、法務省の方になりますでしょうか、お願いいたします。     〔委員長退席星野委員長代理着席
  84. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 現行の弁護士法は、委員御案内のとおり昭和二十四年に制定されたものでございまして、弁護士資格に関します四条及び五条の規定の骨格もそこで定められたものでございます。御案内のとおり、この立法は政府提案ではございませんで、いわゆる議員立法で成立した法律でございまして、私ども、その立法理由等の詳細につきましては国会における議事録等から承知するほかはないわけでございます。その限度で、あるいはそこから私どもで推測しているところの限度でお答えするほかはない問題であるということをまず御理解いただきたいと思います。  ところで、弁護士法五条二号におきましては、御指摘のとおり、司法試験に合格した後五年間一定の職にあった者は弁護士資格があるという特例を定めているわけでございますが、この趣旨につきましては、昭和二十四年の国会の議事録によりますと、より詳しく言いますと、当時この問題を担当された衆議院法制局参事の方の逐条説明によりますと、この二号の規定は従来の法律にはなかったものであるけれども、司法修習生となる資格を得た後、司法事務の根幹である業務に従事した、しかもその従事の期間が五年以上もされたならば弁護士としての職務をとるに十分であろうという考えのもとに置いたものだという説明がされております。また、その参事の方が後ほど編さんされました「弁護士法」という解説書によりますと、「これらの在職を、司法研修所における二年間の修習を終えたことと同価値とみなして、弁護士の資格を与えることと定めたのである。」というふうに説明されているところでございます。私どももそういうふうに承知しているところであります。
  85. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 そうしますと、今おっしゃったように、修習したのと同価値である、修習を終えた者と同等の法律専門家としての実質を有する者というふうになっていますけれども、五条の二号というところに現在書かれているそれぞれ、簡易裁判所の判事、検察官、裁判所調査官、裁判所事務官、法務事務官、司法研修所、裁判所書記官研修所もしくは法務省設置法に基づく事務をつかさどる機関での教官、それから衆議院もしくは参議院の法制局参事または内閣法制局参事官の職にあった者、これが列記されているわけですけれども、この点について裁判所に伺います。  この実務の方々というのは、今の司法修習生の修習を終えた者と同等の法律の専門家としての実質を有するというふうにお考えでいらっしゃいますか。
  86. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 法務省の方から答弁させていただきます。  これは、ただいま御説明しましたように、そういった法律実務の仕事に五年間ついているということをもって二年間の司法研修所の司法研修にかえるという考え方でできているものと承知しておりますが、もとより、司法研修所における二年間の修習と、ここに掲げられております職務に従事したということと全く同じであるということではないだろうというふうに思います。  ただ、司法試験合格ということを前提にして、弁護士資格を与える上においてそういった実務経験というものをもってこれにかえるのが相当であるという御判断のもとにこういう立法がされたものだというふうに私ども理解しているところでございます。
  87. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 いえ、そういう立法がなされたときは、確かに立法はそういうことだったのかもしれません。今伺いましたのは、実際にどうなのか。  先ほど裁判所の方からもいろいろ伺いました。修習ということをされて、その中で三者いろいろな、裁判所や検察やそしてまた弁護士や、そういうことについてすべて統一的な修習をする、その中から、実務をもうそのときから、卒業した次の日から自分で独立して弁護士という一つの法曹になって業務を行うことができるだけのものを身につける、こういったためには統一的な修習も必要であるし、そういったことで弁護士になる資格というものが担保できるのだというお話を十分に伺ったところでございます。  それについて、ここにいらっしゃる方々は、それぞれいろいろと法律のある側面に非常に精通されたし、それを五年間されたということでありますけれども、それで実際上今言いました統一的な修習ということと同等な修習を終えた者というふうに見ることができるのかどうかという、これは法務省なら法務省の御自身の見解を、立法のときはそうであるということはもうよくわかっておりますけれども、その立法の趣旨ではなく、実情でどう思われるかということ、お答えにくそうにおっしゃっておりましたけれども、もう一度だけ、ちょっと一言だけおっしゃってください。
  88. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘の統一修習ということ、これが極めて好ましい制度であるというふうに私ども考えているところでございますが、弁護士法の基本は、弁護士資格に関する規定の基本は、あくまでも司法修習を終えた者ということになっているわけでございます。ただ、その例外として今こういう者も弁護士資格があるということになっている、そういう関係にあるものでございます。  ところで、これも福原さんという方の先ほど申し上げました弁護士法に関する解説書によりますと、こういった「画一的な弁護士と多少その出身を異にし、その従事した職域における法律的知識と経験を生かして特殊の能力を発揮することにより、弁護士職全体としての職能の充実を期待しうるものであることを想定しているのである。」こういう説明をされている部分もございます。統一修習ということ、それ以外には弁護士資格を与える道はあるべきでないという考え方に立てば、それは先生御指摘のような疑問もあろうかと思いますが、例外としてこういう者も弁護士資格を与えるという考え方が、これが正しいかどうかということについてはいろいろな御意見があろうかと思いますけれども、そういう考え方に基づいてこの立法がされておるものと承知しておりますし、まあそれも一つの考え方ではなかろうかというふうに思っているところであります。
  89. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 どうしても立法趣旨から離れていただけない。法務省御自身がどういうふうな評価と見解を持っておられるかということはなかなかおっしゃりにくいところがあるのかもしれません。  それで、この問題は、五条に関してはこの二号ばかりでなく三号とか四号にもいろいろと問題点があるのですが、今回は時間の関係もありますので、この二号の問題にだけ絞って伺っていきたいと思います。  最近、この五条の二号について、ここにもう少し加えようというような動きがあるように私は聞いています。何を加えるかといいますと、衆議院または参議院の国会議員をという言葉を加えるということです。そういう議員を、五年間ここで務めれば、それによって弁護士の資格を有することになる、弁護士資格を与えよう、そういった動きがあるというふうに聞いています。  このことについて法務省としてはどうお考えか、一言で結構でございますから。
  90. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 国会議員の有志の方が研究会を持たれて、そこでそういう検討をしておられるということを私どもも承知しております。  この問題につきましては、日弁連の方でそういう立法については問題がある、まず法曹三者で協議すべきだということで、日弁連から私ども法務省及び最高裁判所に働きかけがございまして、現在三者で協議をしているところでございます。そういう段階でございますので、現段階ではこの立法の当否について私どもの考え方を申し上げるということは差し控えさせていただきたいと思っております。
  91. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 それでは、参考人の日弁連の土屋先生に伺いたいと思いますけれども、この問題について日弁連はどうお考えなのか。そして、今の三者の協議というものが既に始まっているんだと思いますけれども、その具体的な進行状況等も含めまして、日弁連としての見解を伺いたいと思います。
  92. 土屋公献

    土屋参考人 先ほど濱崎さんが言われたように、既に法曹三者の協議が始まっております。  日弁連としては、去る九月二十日の理事会で、基本的には今のような法改正には反対であるという決議をいたしました。そしてあわせて、この問題についての解決は法曹三者で話し合うべきである、こういうことを決議いたしました。その後、その決議に基づきまして、当該議員、そういった資格、資格といいましょうか、それに当てはまる当事者議員も、法曹三者の協議に任せる、こういう意向を表明されましたので、まず十月十四日が第一回、二十八日が第二回、それから十一月十八日が第三回ですか、次回、第四回が十二月十日の三時ということになっております。  日弁連の見解と言われましたけれども、日弁連も基本的には反対ではあるけれども、現時点では、法曹三者の協議で解決できるものなら解決したい、こういう姿勢をとっておりますので、日弁連の決まった見解というものを申し上げることはできません。しかし日弁連の中では、去る十一月二十二日の理事会で、この問題については理事会内に小委員会を設けて、その小委員会で法曹三者の協議に対する基本姿勢、進め方、解決の仕方、そういった方針を立てていかなければこの協議がなかなか結論に達しないではないかということになりまして、小委員会を設けたわけでございます。そして、その小委員会が今基本的な日弁連としての考え方をまとめつつあるという段階であります。  以上です。
  93. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 この法案というのが一番初めに突如私たちの耳に入りましたのが、先ほどの九月二十日ごろでございます。それで、もうそのときには出そうと思えば出せるような用意ができていたというようなことも耳にいたしました。ですから、非常に速い速度でそういうことが進んでおります。日弁連の方で結論を出されるのに、やはりなるべく早急なそこでの結論というものを出されるようにお願いをしたいと思います。  この問題について、土屋先生の御見解、これは必ずしも日弁連とは言えないのかどうか、そのあたりわかりませんけれども、御見解がございますでしょうか。もしお差し支えなければ伺いたいと思います。
  94. 土屋公献

    土屋参考人 法曹三者の協議の目的について、もうちょっとつけ加えさせていただきます。  果たして、五条二号を改正することによって該当議員が弁護士資格を得るというこの方法が危険を伴わないか、要するに弊害を伴わないかどうかということが一つの論点であります。また、もし五条二号を改正せずに、別の方法、例えば裁判所法六十七条、これは司法修習を終えたということの定義なんですが、要するに二年間以上司法修習をし、そして試験に合格することが必要、これが裁判所法六十七条で、判事補の資格になるわけですけれども、これが同時に弁護士の資格にもなるわけです。この裁判所法六十七条の改正によって、正規の司法修習を経ないで国会議員が弁護士になるという道があるかどうか。仮にあるとして、それは弊害を伴わないかどうか、そういうことを協議する。それからさらに、何も法律をいじくらないで、ともかく、例えば弁護士会の資格審査委員会の運用方法いかんによってうまいぐあいに該当議員を弁護士にするような、そういう便法があるかどうか、これなどが論点となっていると思います。  しかし、日弁連のその後の内部で論議されている状況を私どもが拝見しますと、だんだんと厳しくなってきている。私個人もその厳しい意見を聞いて、なるほどと思う節が大分あり、私もどちらかというとそれに傾いているということになるわけであります。ということは、この弁護士法五条二号、あるいは五条三号、これは大学教授、助教授が五年間の経験で司法試験に合格しなくてもなれる、こういうやはり例外規定ですけれども、五条二号、三号、この問題は、あくまで正規の司法修習二年間にかわるバイパスといいますか、迂回通路といいましょうか、そういうものなのであって、あくまでこれは例外的な特例的な扱いなので、これをどんどん広めてバイパスを広くしてしまいますと、本来の司法修習の制度、法曹の統一修習といいますが、平等で公正で統一、こういう現在の裁判官、検事、弁護士一体となった教育の本来のあるべき司法修習のバイパスばかりが広くなってしまって、将来に禍根を残すのではないかというような議論がだんだん出てきたわけです。  特に、そもそもの弁護士法の資格の特例、これに関する法制の変化のありさまをを見てまいりますと、一番最初の二十四年の立法では、弁護士法第五条の中の法務府事務官というのがありまして、この法務府事務官というのが初めから入っていたわけです。これについては先ほど濱崎さんから言われたような経過があると思いますが、一定の認識のもとに法務府事務官もよかろうということで入れたと思うのですが、その後、法務府事務官がなれるくらいならば衆参両院の法制局参事だって当然になれてよかろうではないかという議論から、議員立法として法務委員会で提出されまして、そして昭和二十六年、二年後に、衆議院、参議院の法制局参事が加わったわけであります。それがまたもととなりまして、しまいに、それならば内閣法制局参事官も当然ではないかというのが、昭和三十七年にそのようにまた加わった。当初十分な議論がなされないで例外規定が設けられたために、それとの比較において、趣旨からいえばこっちの方がもっと上だ、そういうような議論が次々とできるような状態が醸成されてきたわけであります。そういうふうになってきまして、参事官や参事がこの第二号の職務として挙げられるくらいならば、むしろ補佐役であるその参事の主人公役の国会議員が当然含まれてよさそうだ、こういう議論が今回出てきたわけであります。ところが、果たして国会議員が法律実務家的な仕事であるかどうかという議論がまた出てきます。次から次と議論が出てくるわけであります。  そこで、弁護士会の中で今起こっている有力な意見は、このようにしてもともと非常に限界線にあるような職務が加わったことによって、それの現実のあり方、それとの別の職との比較、そして、それならばこれに比べてはこの方が上であるというふうな論議、これが際限なく行われるであろう。今回もその一つであろう。もし今回それが許されるとするならば、まず司法試験に合格し、それから上級職の公務員試験に合格する、両方に合格した人が、まず行政の方に入って仮に五年間、非常に専門的な法律実務的な仕事に携わったとします。そうすると、今の国会議員に比較してさらにもっと生の、現実の具体的な法律問題に直面して、そして法律実務を五年以上やる、その方がはるかに国会議員よりも弁護士としての、弁護士らしい、弁護士の実務にたえる、これが司法研修所の本来の二年間の修習に匹敵するという議論が出てくるであろう。さらに、大企業には法務部というものがあります。司法試験に受かった人が大企業に入りまして、法務部で生の法律実務に携わる、この方がはるかに国会議員の法律実務、国会議員が法律実務家であるかどうかはまた評価の問題でありますけれども、少なくとも国会議員のおっしゃるような法律実務よりもはるかに生の、現実の事件に直面してそれの解決に当たってきたという、その方が法律実務に携わった度合いからいえばずっと大きいではないか。そうなると、またさらに五条二号の改正がまた叫ばれるようになるだろう。このように次々とこの内容を変えていったのでは本来の実務修習が一体何だったのか、本来の二年間の実務修習、そして例外と原則がどっちなのだというふうなことになってしまって、結局、司法制度の根幹にかかわってくる問題である、これは決して該当議員だけのわずかの数の問題の解決ではなくて、やはり遠い見通しを立てると大変なことになるということであります。  さらに続けて言わせていただくならば、五条三号、先ほど言いました法学部の大学教授、助教授、これについてはいろいろな議論もあり、また判例もあるわけですが、結局これが現実に当初立法されたときとは大変事情が変わりまして、初めは、明治、大正時代の帝国大学の法科の教授、非常にグレードの高い、だれからも尊敬され学識の高い人、こういう人を無条件に弁護士に加えてもいいではないかというような立法の精神であったと思います。それが今では大学の数が極めてふえまして、司法試験を受けるよりもむしろ大学助教授を五年やった方が安易な方法であるというふうな誤った見方をして、そのような動きをする向きもないとは言えない、それがだんだんふえてきておるというふうに認識されているわけであります。そうすると、またバイパスが広がる。ですから、今回五条二号が問題になっているのについて、ついでにと申しましょうか、すぐ五条三号の問題が、これもゆゆしい問題だということになってきます。  そこで、もともと今回の論議の出発点となった法務事務官、それから参事とか参事官とか、そういう人たちをこの問題についてもう一度見直して、五条二号からそういう人たちを外すことが検討されなければならない、それから五条三号をさらに見直して法改正をすべきではなかろうか、こういう議論にすら発展しつつあるわけであります。現に昭和五十年ごろから日弁連では、五条三号に、司法試験合格後、大学の法学部で何とかと、こういうふうな司法試験に合格した後というのを加えようではないかという立法案まで出されていますが、現状は今のような方向に進むとますますバイパスばかりが広くなって本来あるべき司法研修制度が破壊してしまうではないか。そういうような見地に立ちますと、弁護士会の大勢は、結論としては、今回の法改正には反対であるという強い趨勢にあるように思いますし、私もその考え方には十分耳を傾けなければならないと考えているわけであります。     〔星野委員長代理退席、委員長着席〕
  95. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 どうもありがとうございました。  私が申し上げたいのもほとんど参考人が今言われたとおりでございますので、時間の関係もございますので、ここでこの五条二号の問題については終わらせていただきます。どうもありがとうございました。  ただ、こういった問題について大臣に一言、今の議論をお聞きになりましてどう思われるか、おっしゃっていただきたいと思います。
  96. 田原隆

    田原国務大臣 ただいまのような問題があることは存じております。しかし、今の御両者のやりとりではっきりしましたように、法曹三者で協議を継続しておる段階でございますので、その当事者の一つである法務省としてそれについてコメントすることは、この隊としては控えさせていただきたいと思います。
  97. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 それでは、事実経過をよくのみ込んでいただきまして、大臣の在任中にいろいろな具体的な問題が出ましたときにはそのことについてしっかりお考えいただきたいと思います。  次の問題に移ります。  戸籍謄本とか住民票を不正に入手して横流しをするというような事件がこの年間かなり相次いで起こりました。平成三年三月の予算委員会分科会においてもこういった問題についての質問が幾つか出ておりましたが、この発生状況ですけれども、私などが知り得るのは新聞に発表になる部分しかありませんけれども、昭和六十年から平成三年までぐらいの間に出ている事件で、特に平成三年度にもこうした問題というのは新聞で報道されなくてもまだ発生しているのでしょうか、そのあたりをお聞かせいただきたいと思います。
  98. 清水湛

    清水(湛)政府委員 お答えいたします。  弁護士とか司法書士等の専門資格職の地位を利用いたしまして戸籍謄抄本を不正に入手するという事件は、平成元年九月に起こりました福岡の事件、これは、弁護士二名が職務上請求書に自己の資格、氏名を記載して、職印を押捺した上で興信所職員に交付して、興信所職員がこれを利用して戸籍謄抄本を不正に入手した、こういう事件でございます。  それに続きまして、平成二年九月、八王子の行政書士二名、このうち一名は社会保険労務士を兼務いたしておりますが、この二名の者が大阪の興信所からの依頼を受けまして、職務上の請求書を使用して謄抄本を不正入手した、こういう事件がございます。  それから、佐賀の方でございますけれども、これも行政書士が興信所の依頼を受けまして不正に入手したという事件がございます。これは、平成元年二月ごろからの事件だということでございます。  それから最近では、金沢で金沢の司法書士が、これはクレジット会社から依頼を受けまして債務者の住所を調査するということから、やはり職務上請求書を不正に使用いたしまして戸籍謄抄本を入手した、こういう事件が起こっております。  これらにつきまして、私ども非常に厳しい対応をしてこのような事件の根絶を期してきたわけでございますが、最近、この種の事件が新たに発覚するということはない。これから起こる可能性もあろうかと思いますけれども、最近の新しい事件としては、以上のものに尽きると言っていいのではないかと思います。
  99. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 こういった問題というのが一番かなり頻発したのはやはり昭和六十年代のことだったと思うのですが、その後、そういったことの発生防止という点から、統一の請求用紙みたいなものを使うようになった。そのことによって一つの歯どめができたとは思いますけれども、これでも統一のその請求用紙そのものを横流しする事件があったわけですね、その福岡などについては。それからまた、全くわからないかもしれませんけれども、例えばきちんと弁護士名またはそれぞれの行政書士何々というようなことでそれを取り寄せる、取り寄せたものをこっそりと流すということではなかなか発覚はしにくいけれども、いろいろな問題があるのじゃないか。このあたりについては法務省としてはどういった歯どめまたは再発防止の策を、統一請求用紙以外に何か考えておられるのでしょうか。
  100. 清水湛

    清水(湛)政府委員 この種の事件は戸籍法改正の経緯からいたしましても絶対にあってはならないことであるというふうに私どもは考えているわけでございまして、こういった事件が発覚した以上は、もう厳正な態度をとるということで従来から対応しているところでございます。  したがいまして、福岡の事件につきましては、直ちに簡易裁判所に通知をいたしまして、簡易裁判所から過料の裁判がされております。ただ、この事件につきましては、弁護士二名につきましても通知いたしたのでございますが、裁判所の方は弁護士については不処罰ということになっております。しかし、福岡の弁護士会としては事態を大変重視いたしまして、一名の弁護士については業務停止五カ月、もう一名の弁護士については三カ月という処分をいたしているわけでございます。  それから、東京の行政書士兼社会保険労務士につきましては、やはり裁判所に通知をいたしまして、ここでは、一名の行政書士兼社会保険労務士につきましては、謄抄本一件について三万円の過料を取る、こういうような非常に厳しい過料の裁判をいたしておるわけでございます。他の行政書士については一件につき一万円でございますが、特に犯情が重いと認められた者につきましては一件について三万円の過料を取っております。また、それぞれ行政書士会、社会保険労務士会におきまして、会員の権利停止の処分、これは期間は六カ月でございますが、六カ月の権利停止の処分をする。それから社会保険労務士の資格を有する者については厚生大臣、労働大臣の方から業務停止七カ月、それから行政書士の関係におきましては東京都知事の方から業務停止七カ月、こういうような厳しい処分がされているわけでございます。福岡についても同様の処分がされております。また、金沢の司法書士につきましては、簡易裁判所への通知というのを現在準備中でございます。  こういうような現行制度上の裁判所への通知とかあるいはそれぞれの会における厳しい業務停止等の処分のほかに、法務省といたしましては、先ほど申し上げましたように、この種の事件がもう絶対起こってはならない。特にこれらの資格を有する者につきましては例外的にいわば特別の扱いが認められておる、こういう趣旨をよく理解し、自覚して、これを認識して適正な行動をとっていただきたい、こういう趣旨から、関係の八団体に対しましては、この統一請求用紙制度の趣旨について改めて説明して、その趣旨を各会員に徹底を図るということをお願いをしているところでございます。  さらに、これの厳正を期するために、それぞれの統一請求用紙に連続番号を付しまして、この弁護士さんあるいはこの司法書士さんであれば何番から何番の番号の統一請求用紙を使っておるということまで明らかにするようにいたしまして、この連番制度は、ことしの三月一日から実施されているところでございます。  こういうようなことをいたしますことによりまして、それぞれ弁護士、司法書士さんの統一請求用紙の使用についての重要性の認識を改めて喚起するとともに、例えば特定の司法書士なり行政書士から大量の請求がされるというようなことが番号によってわかるということがあるわけでございますが、そういうことによりまして、市町村側もそういう事実を知り得たときには法務局に連絡をして適切な対応をとるというようなことも可能になっているわけでございまして、この統一請求用紙の連続番号制度を導入してから後、まあまだわずかな期間でございますけれども、幸いにしてこの種の不正請求の重要なものは起こってない、発覚してない、こういう状況にあるわけでございます。
  101. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 確かに、起こっていないのではなくて、発覚していないということじゃないかと思います。例えば私が個人的にだれかの身元調査をある探偵社とか調査会社に頼んだとする。そうすると、不思議にもその戸籍、どういうところの人かということはちゃんとわかって返ってくるんじゃないかと思いますね。これがわからなくて、身元もわかりません、本籍がどこかもわかりませんというようなことでは調査会社はやっていけない。これが出てくるということは一体どこから出てくるのかということになれば、幾ら今事件として発覚はしていないにしても、何かしらそういったことが行われているということが、要するに水面下ではあるんじゃないか。それをまたこちらが捕捉していくということは非常に難しいことだろうとは思いますけれども、こういった状況は今もってあるわけでございます。  こうした形というのは、それは何も合法的にとったものではないと思うのですけれども、法務大臣に伺いますが、こういう問題が六十年代にも起こった、現在でも幾つかのそういった事例がある。こういったことの根拠といいますか、この後を絶たない原因はどういうところにあるんだとお思いでしょうか。
  102. 田原隆

    田原国務大臣 興信所等が不正に入手するというか、その八団体に対して出してくれと言って、それが入ったというようなことがあったようでありますが、後を絶たないということの根拠については一概に一言でなかなか言えないと思いますけれども、私は、やはり何かに利用するからやるんであって、その利用の目的が何だというと、差別に利用するとか、そういうことなんかにもあるんじゃないかと思います。要するに今民事局長がお答えしましたように、先生がおっしゃるようなわからないもの、発覚しないものがあるということは多分そうだろうと思いますけれども、発覚したものについては相当厳正に対処する方針で業務停止、過料等を含めてやっておりますので、今後もその調査をさらに進めていき、かつ人権問題の一つとして啓発を進め、慎重にやっていきたい、こういうふうに考えております。
  103. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 私、今のお答えは非常に不満でございますね、何か目的があるんだからもらうでしょう、差別に使うのかもしれませんから、そういうことがあっちゃいけないから民事局長が言われたみたいにこれからも厳正にやっていきますでは。もう少しこういった問題について、法務大臣になられたのですから、人権の問題についてはしっかりと認識をしていただきたいと思うのです。この問題についてまず、差別と言っただけでどういうことをおっしゃっているのか私にも理解できませんけれども、もう少しきっちりとした言い方をしていただきたいと思います。例えば就職や結婚にどういうふうに利用したのかとか、そういう形でそれが一体どういうふうなことに差別になるのか。何か、それでは原稿をただ読まれたというだけにすぎないような気がいたします。人権ということについてもう少し、今こういったプライバシーの侵害ということの重要性というものをもっとはっきりした形で認識をしていただきたいというふうに思います。今、もう一つ問題をこの時間内に質問をしなければならないので、私はこの問題はもっと追及したいのですけれども次の機会に、まだまだ法務大臣とは質問をする機会もあると思いますから、今度までにはしっかりとその人権の問題についても勉強していただきたいというふうに思います。  もう一つの問題は、信楽高原鉄道の事故の問題でございます。  この問題については、現在まだいろいろ原因について調査中、捜査の途中だというふうに聞いておりますけれども、刑事事件としてどのような捜査状況で現在まで進捗しておりますか。そしてまた、今後の見通しについて簡単にお答えいただきたいと思います。
  104. 深山健男

    ○深山説明員 お答えいたします。  滋賀県警察におきましては、事故発生とともに水口警察署に業務上過失致死傷容疑事件として捜査本部を設置し、乗客、列車運行関係者等からの事情聴取、現場及び事故車両の検証、押収資料の分析検討、部外の専門家に対する鑑定の嘱託など、全力を挙げて事故原因の究明及び刑事責任の有無について捜査を推進しているところであります。  これまでの捜査により、事故当時、信楽高原鉄道列車は、信楽駅の出発信号が赤から青にならないため手信号による代用運行で出発したこと、一方JR列車は、このような場合、本来小野谷信号所の出発信号が赤を現示し停止すべきところ、青であったためそのまま進行したことが判明しております。このことから、閉塞装置と信号装置との連動システム及び信号システムの設計施工と作動状況、同関連器具の捜査状況、信号故障の際に用いる代用運行の方法などに何らかの人為的ミスがなかったかどうかを明らかにするため、引き続き入手した資料の分析を進めるとともに、部外の専門家に鑑定嘱託を行っております。  今後、これらの結果を踏まえて本件事件の原因がどこにあったかを究明し、刑事責任の有無及び所在を明らかにしてまいりたいと考えておりますが、鑑定書の取りまとめまでになお時間を要するものと聞いております。  いずれにいたしましても、警察庁といたしましては、四十二名ものとうとい命が失われたという今回の事故の重大性にかんがみ、また同種事故の再発防止のため、その原因を徹底的に究明することが肝要と考えており、鑑定結果を得てできるだけ早く結論を出すべく鋭意捜査を推進しているところであります。  以上です。
  105. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 本当にこの問題は重大な事故でございますし、簡単に急いでの拙速は許されない問題だとは思います。しかしこの問題については、慎重の上にも慎重にしていただくと同時に、やはり迅速な処理というものも必要でございますので、その点二つ、二律背反のことを申し上げているような気もいたしますけれども、しっかりとお願いを申し上げておきます。  この問題については民事的な補償の問題が進行していると思いますが、その問題に行く前に、この当事者としては信楽高原鉄道それからJR西日本二つの鉄道会社がこの事件に関与しているわけでございますけれども、私は当事者としてJR西日本とか信楽鉄道とかにも直接お聞きしたかったのですけれども、これは当委員会でとられなかった。これは運輸省から聞いてくれということで拒否されてしまったので、仕方がないということで運輸省からお聞きをしたいと思います。  この中で私が疑問に思っている点というのが二つないし三つあります。  一つは、事故発生当時にJR側から、信号が青だったら進むのが当たり前でしょうといった発言があった。このことについて、責任回避といいますか、それは非常に冷たい発言ではないか、そういうふうなとらえ方を新聞報道によってなされた。この点のJR西日本側の真意は一体どこにあったのだろうかということが一つ。  それからもう一つなんですけれども、これも新聞情報からでしか私にはないのですが、旧国鉄のときには安全綱領というのが非常に重視されていた。安全綱領という中では、「疑わしいときは、手落ちなく考えて、最も安全と認められるみちを採らなければならない。」こういうことが五条に明記されていたのに、JR西日本になってからはこの条項は削除されてしまった。しかも、この安全綱領というもの自身が既に社員手帳にも載っていないというような状況で、安全綱領なしで、もっとそれよりも経営理念というものに重きを置かれたのではないか、こういうことについて私は非常に疑問を感じます。公共の安全な運転ということを本当に目途としなければならない鉄道会社みたいなそういうところが、安全よりも経営優先というようなことであったのではこれは非常に大変なことになるのじゃないか。この点について、運輸省の監督ということも、従来安全綱領とかいうものについてどのようになされていたのか、またこれからもどうされていくのか、事故後変わったのか、この点を第二点目に伺いたいと思います。  それからもう一つ、運輸省としては、同様の単線の路線というのはたくさん全国にあると思うのですが、そういうところでもまたこういう問題が起こらないとも限らない。こういうことについて、その再発防止のための指導というのはなされ、またそのフォローがされているのかどうか、この点について伺いたいと思うのです。
  106. 溝口正仁

    ○溝口説明員 お答えいたします。  まず第一点、事故発生当時、JR西日本が信号が青であったので進んだという発言がなされたという、真意というのはわかりませんが、私どものいわゆる常識というのですか、運転取扱心得上では、青信号というのは前方に列車がいないということでございますので、定時、つまり時間が過ぎ、あの場合には若干おくれていたようでございますが、時間が来ていれば進行するのが当然でございます。  それから第二点の、旧国鉄の安全綱領と現在の綱領が違うのではないかということでございますが、実は準則というのがございまして、それも含めると全く同じ内容になってございます。そういう点では考え方が違っているということはないというふうに我々は思っております。  それから、再発防止につきましては、五月十四日に事故がございまして、五月十五日に通達をもちまして、全国に単線を有する百三十三の鉄道事業者がございますが、緊急に自主点検を指示いたしました。一部の、特に経営基盤の弱いと言われている第三セクターにつきましては、運輸局の職員が総点検結果の確認のため立ち入りを実施してございます。これらにつきましては一応七月末までに完了しておりまして、各社とも特段の問題はなかったというふうに把握してございます。この結果を踏まえまして、一層の安全確保を図るため、異常時の運転取り扱いに関する具体的な作業手順マニュアルの整備、計画的な係員教育の実施、乗り入れ事業者との合同訓練などについて徹底を図るよう通達を別途出してございまして、事故の再発防止に努めております。  以上でございます。
  107. 鈴木喜久子

    鈴木(喜)委員 今のお答えを聞いても、やはり私は疑問に思います。といいますのは、青信号だったらば、時間も随分押していたことだし、行ってしまうのはこれは当然でありましょうという、客観的に普通青なんだから行ったらいいだろうというふうなお答えがまず最初にあって、その次に安全綱領はなくなったけれどもどこかにそれが書いてある、だから同じなんじゃないかと言いながら、しかしこの問題については、先ほど警察の方の取り調べの中にもあったように、対向車が来ていないのはおかしいじゃないか、おかしいじゃないかと思っても青信号だったら行っちゃおう、突っ走っちゃおうというふうに思うところが、安全綱領でしっかりたたき込まれていれば、疑わしいときは、ここでは手落ちなく考えて最も安全と思われる道をとらなければならない、こう書いてある場合には——疑わしいわけですよ。あれ、どうして対向車がいないんだろうということを疑っているのに、青だから行っちゃえというふうな思想というのが一番重要な問題ではないかと思います。明らかに物すごく営利優先で、何でもかんでも突っ走れなんて書いてある綱領はどこにもあるわけではありませんけれども、微妙な違いがこうした大きな惨事を引き起こす一つの原因になっているのじゃないか。だからこそ私は、やはりJR西日本の人に来ていただいて、ここでその微妙な違いを御説明いただきたかった。ところが、今の運輸省の方の御説明でも、やはりその点は突っぱねてしまうお答えしか返ってこなかった。非常に不満でございます。  時間が来てしまいましたので、またこの問題も、この次もこの次もございますので、そういった形で連続的にお聞きすることがあると思いますから、このくらいで今回はやめておこうと思います。  どうもありがとうございました。
  108. 浜田卓二郎

    浜田委員長 午後二時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  109. 浜田卓二郎

    浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。岡崎宏美君。
  110. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 きょう、私は大きく二つの見解を法務省にお尋ねをしたいと思っております。  最初は、外登法の改正に関する問題でございます。  九一年の一月、日韓覚書に基づく外国人の登録法関係、特に指紋押捺制度をなくしていくという方向づけが出まして、九三年廃止に向けて今検討が進んでいる、そういう段階だろうと思うんです。私はこの問題についてはさきの通常国会のときにも幾らかお尋ねをしているわけなんですけれども、だんだん日程も迫ってくる中で、なかなか法務当局の方からは、指紋押捺のかわりにどういうものをやろうとしているのか、あるいは日程的にどうなのか、対象がどうなのか、こういうことがいまだに明らかになっておりません。いろいろ見ておりましたら新聞の報道などではいろいろなことが書かれているわけですけれども、この際、当局の方から作業の状況なり内容を具体的に示していただきたいと思います。
  111. 高橋雅二

    高橋(雅)政府委員 お答えいたします。  指紋押捺制度につきましては、昭和六十二年、外国人登録法の一部を改正する法律案の御審議の際、当法務委員会におきまして、「同一人性の確認手段について、指紋押なつ制度に代わる制度開発に努めること。」という附帯決議をいただいておるところでございます。また、今先生御指摘になられましたように、本年の一月、当時の海部総理が訪韓された際に日韓の外務大臣の間で覚書署名いたしまして、その中で「今後二年以内に指紋押捺に代わる措置を実施することができるよう所要の改正法案を次期通常国会に提出することに最大限努力する。」ということをうたってございます。これらを踏まえまして、今政府部内におきまして鋭意外国人登録法改正の作業を行っているところでございます。  それでは、どの程度進捗しているかということについて御質問でございますので、お答えいたします。  まず、指紋押捺制にかわる同一人性の確認手段といたしましては、写真署名家族事項一定のそういう事項、この三つを組み合わせた複合的手段にしたいというふうに考えております。写真といたしましては、鮮明度の高いものにして、一定の規格に合ったもの、または官署において、法務省入管局の一定のところで撮影したものという規格に合ったものにする。署名は市町村区の職員の前でしていただく。それから、家族事項については、日本にいる配偶者とか、そういう一定の家族の情報を入れるというようなことで検討しております。これで同一人性を確認する手段としたいという考えでございます。  それから、今お尋ねのございました適用範囲につきましては、いまだどの範囲にするか、韓国と約束いたしましたので在日韓国人はもちろん適用いたしますが、それ以上範囲を拡大して、すべての人に適用して指紋押捺制度にかわる新しいシステムを適用するかどうかにつきましては、まだ政府部内において意見調整中でございます。  時期でございますが、日韓の外相間の覚書におきまして、今後二年以内に指紋押捺にかわる措置を実施することができるようにということでございますので、といいますと、平成五年の一月ということになります。そのためには、次の通常国会改正案を提出しなければならないということでございますので、この次の通常国会に出すべく目下鋭意政府部内で意見を調整作業中というところでございます。
  112. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 法務当局も御承知だろうと思うのですが、今対象が、在日韓国人の方は確認されていることですからあれですが、それ以外は調整中である、こういう答弁というか説明がありました。先月、新聞の報道ではすべての外国人を対象にする、法務当局が明らかにしたという大変大きな紙面がございまして、私は結構なことだと思うわけですが、今なぜそういう後ろ向きの説明があるのでしょう。新聞があることないことを勝手に書いたということなんでしょうか。  もう一つお尋ねしたいのは、調整中とすれば、恐らく法務当局にもこの際すべての外国人を対象にしてほしいという要望はあると思うのです。それも検討されていると思うのですが、調整のネックになっているところ、ポイントになっているのはどこなんでしょうか。
  113. 高橋雅二

    高橋(雅)政府委員 お答えいたします。  この新しいシステム、指紋押捺にかわるシステムといたしまして、先ほど御説明いたしましたが、一つの考え方として、これは外国人登録法上非常に有効かつ十分であるという考え方に立ちますと、すべての外国人に適用するのが理屈ではないか、当然ではないかという考えが一方にございます。それから、いや、新しいシステムといってもまだ指紋押捺にかわるほど有効なシステムではないという考えに立ちますと、日韓約束したことだけに限るべきではないかという考えがございます。そういう考え方の違いといいますか、それがネックになっているわけでございまして、これを今鋭意調整中でございます。どこどこがどうということではなくて、基本的な考え方についてもう少し政府部内で詰めていきたいと考えているところでございます。
  114. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 前も論議になっていると思いますし、要請がある部分の声というのはこういうことだろうと思うのです。指紋押捺というのは、それを押せと言われている人たちにとっては、ある意味で犯罪者としての扱いをされるというか、人としての誇りを傷つけられるものとして非常に問題だというふうにこれまで指摘をしてきたわけです。戦後のいろいろな経過の中で、やっと日本が今回覚書の中で在日韓国人の方あるいは朝鮮人の方も対象にしてこれを廃止しようというところまで踏み込めた。これほどこの国の方々にとっても同じだろうと思うのですけれども、人としての誇りを傷つけるような登録のあり方はおかしい、この際、一緒に廃止に向けてどうかというのは非常に強い声だと思うのです。なぜそれにこたえられないか、その障害になっているのは何かということをお尋ねしているわけで、関係省庁が基本的な考え方であれこれでは困るのです。そこをもう少し明らかにしていただきたいと思います。
  115. 高橋雅二

    高橋(雅)政府委員 今先生のおっしゃった議論は私たち十分承知しておりますし、それを念頭に置いて作業を進めております。  ただ、ネックになっていると申しましたのは、要するに、この新しい我々が今開発しようとしているシステム、これが同一人性の確認のために有効でかつ十分であるのかどうかということにかかっておるかと思います。十分であれば、これは当然全外国人に適用しても差し支えないということになるかと思いますし、十分でなければ、日韓だけに約束したものだけでよいのではないかという議論も出てくるのではないかと思います。今そういうことで鋭意調整中でございますので、その辺よろしく御理解いただきたいと思います。
  116. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 同一人性の確認ということがポイントなんだ、こういうことなんですけれども、それはもう少しさかのぼって考えれば、外国人の方を一くくりにして管理をする、そこから出発しているものである、こう指摘できないわけではないわけですね。その中から結局今度は、例えば外国人の登録証の常時携帯の問題も出てくる。これは今回もう一つの大きな問題になってくると思うのですね。指紋押捺制度はなくすることになっても、登録証の常時携帯を義務づけられているということが変わらなければこれは人間としてどうしても許しがたい、こういうふうに思われる方も実はたくさんあるわけです。基本的な問題のところで省庁間でもあれこれということがあったわけですけれども、私は、これはもう一つの基本的な大きな問題として、人権ということを基本に据えられる法務省としてはここも踏み込んで実は考えていただきたいことの一つです。  今回、写真あるいは署名あるいは家族ということも含めてということでありますけれども、その一方で、そういうことを複合的に登録をさせて、登録証は持ちやすいものにしていきたいというふうなことが例えば新聞に出ている。この登録の常時携帯ということで言えば、持ちやすいか持ちにくいかという問題なのではなくて、常時携帯が義務づけられているということが大きな問題だということを、これは私はぜひわかっていただきたいと思うのですね。そして、なかなかネックになっているところは今おっしゃられないようですから、私は法務省当局としてはこれはすべての人を対象にしていくということで努力をしているということで受けとめますから、そのことでぜひお願いをしたいと思うのです。  じゃ、その上でお尋ねいたしますが、例えば家族を記載をしろ、こういうことも考えていらっしゃるようだけれども、その内容については一体どこまで考えているのか。これは、例えばその人の本国の家族というようなことも含めた戸籍のようなものまで考えているのか。そこに対しては非常に問題もあると思いますので、その辺ひとつお聞きしたいと思います。
  117. 高橋雅二

    高橋(雅)政府委員 お答えいたします。  家族事項につきましては、今のところ、本国にまでさかのぼって届けてもらおうということは考えておりません。日本国内におられる家族、父母とか配偶者とか、そういうようなことで考えておるところでございます。
  118. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 それでは登録証の常時携帯の問題はどうでしょう。
  119. 高橋雅二

    高橋(雅)政府委員 登録証の常時携帯の問題でございますが、外国人の居住関係及び身分関係を現場において即時的に確認するためのものであるという制度の趣旨、それから不法残留外国人が多数存在するというような現状から見ますと、基本的には維持すべきものと考えておりますが、現在検討中でございます。
  120. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 これ、さきの国会でも私申し上げたんですよね。これは本当に一つ間違うと犯罪人として扱われてしまう。これまで不携帯ということを理由にして検挙されるという件数も多かった。本当にこの前の委員会のときには、例えばおふろ屋さんに行くのに、あるいはスーパーに買い物に行くのに、そういうときにまで持たせるのか、たまたまそのときに何かがあって、ちょっとちょっとと言われたときに持ってなかった、これで犯罪人にされていく、そういうケースだってあり得る。またそういうこともあった。これは、国会の決議の中でも常識的、弾力的運用に努める、こういうこともあるけれども、私はぜひこの際この義務づけをなくす方向で考えていっていただきたいと思います。これは大きな問題なんです。
  121. 高橋雅二

    高橋(雅)政府委員 先回の六十二年のこの法務委員会における附帯決議におきましても、この問題が附帯決議に盛られているということは十分念頭に置いて作業を進めております。同制度の運用につきましては、今おっしゃったように常識的にかつ弾力的に運用するように、徹底するように努力したいと思っております。  この改正作業を進めるに当たりましては、今お伺いした御意見等を十分に念頭に置いて作業を進めたいと思っております。
  122. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 ぜひこれは、私は後で大臣にも常識的かつ弾力的運用ということをできれば踏み越えていくというか、そういう決断を法務当局はしていただきたいと思いますから、御決意をいただきたいと思うのです。大臣、できれば今御決意をいただきたいわけですが……。
  123. 田原隆

    田原国務大臣 今の指紋押捺の問題は、先生のおっしゃることも、それから局長の答弁も今進行中の状態でありまして、関係各省といろいろ詰めておる状況でありますが、お気持ちをくみながら弾力的かつ広い運用をしていきたいというふうに考えております。
  124. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 引き続き努力を要請をいたします。  ところで、私は前に、登録原票それから原紙それから調製用原紙など、指紋押捺をする際にできてくるいろいろなものの扱いあるいは廃棄の方法についてお尋ねをしたことがございます。今回新しい方法を取り入れていく場合に、それに伴って出てくるいろいろな、また新たな用紙だとかというのがありますね、あるいは登録を入力をする、こういうようなことが出てくると思うのですけれども、それらはどういう扱いを考えていらっしゃいますか。  それと、さっき家族あるいは署名写真、こういうことで複合的に考えているとおっしゃっているわけですが、実際窓口で皆さんが対応されていくわけですね。例えば、写真の写り方一つもそうです。さっき地方の入管のところで写真を写すこともあるということでしたが、例えばそれ以外で写してきた場合にどうかとか、これはいろいろな問題が派生じてくると思うのですね。それで、実際窓口でそれらがうまくいかないがためにトラブルが起きて、当の外国人の方が例えば何度も出頭させられる、こういうふうな不快なことが起きては困るわけで、十分関係の方々それから窓口を受け持つ人たち、こういう方々と話し合いをしていただくとか、事前に十分運絡をとってこれから進めていただきたいわけですが、これをお尋ねしておきたいと思います。
  125. 高橋雅二

    高橋(雅)政府委員 今、先生おっしゃいましたように、実施に当たって現場において混乱が起きては困りますし、また、せっかく出かけていただいても何回も足を運んでもらうというようなことはできるだけ避けたいということで、例えば写真につきましても、厳格なものにいたしますけれどもそれほど非常識なものではないようにやっていきたいということで考えております。要は混乱のないように、現場において、受付のところで来る人、受け付ける人たちが混乱しないように、そういうこともよく意見を聞きながらやっていきたい。それから、決まりましたらきちっと広報をしてむだなエネルギーを使うことがないように、そういうふうに細心の注意を払ってやっていく所存でございます。
  126. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 これはもう十分お願いをしたいと思います。  次に移りたいんですが、婚外子のことに触れてちょっとお尋ねをしたいわけです。  ちょうど一年前になるんですけれども、神戸で海外の友達の家に遊びに行きたいということで、ある小学生のパスポートの申請をしたところ、戸籍がないということで退けられる、実はこういう出来事がございました。きょうはパスポート云々でお話をするつもりはないんですけれども、戸籍がないからということで退けられたこの子供の場合、母親が夫の暴力から逃げ出して転々と隠れ暮らしていた、そうしている間に今現在のパートナーと知り合って、そして今回の小学生が生まれた。この子ができたときに出生届をしようとすれば、その当時離婚が成立しておりませんので前の夫の子供としてしか届けられない、こういうことから実は出生届が出せなくて、まあ夫から逃げていたわけですから、とうとう戸籍がないままこの子は現在まで来た。  それで、きょう私が法務当局にお尋ねをしたいのは、女性差別撤廃条約も批准された、そして国内でもいろいろな運動も展開された、そしてその中で女性の生き方を束縛するような問題点はないか、いろいろな点検がされましたね。そして、例えばここでいえば夫婦別姓の問題も検討される課題になってきた。今回子供の権利条約が国連で採択されて、この委員会でもたびたび論議が起こりましたけれども、日本政府も批准に向けて今進んでいる。こういうときに、戸籍がない、あるいは婚外子の場合、法的に妻である人が生んだ子供とそうでない子供のケースも出てくる、あるいは別姓を選択したことによって生まれた子供はこれまた戸籍上にいろいろな問題が出てくる。いろいろなケースが考えられると思うのですが、今回のようないろいろな事態が出てくるということは一体どういうことなのか、どういうふうにお考えになっているか、お尋ねをしたいと思います。
  127. 清水湛

    清水(湛)政府委員 子供が出生した場合には出生届をする法律上の義務があるわけですから、本来戸籍がないということはあり得ないわけでありますけれども、お尋ねのように戸籍上の夫の子供ではない、こういうことからやむを得ずそういう届け出をしない状態が続いておる、こういうことだろうと思うわけでございます。  法律上の離婚手続がまだ済んでいない場合、あるいは離婚手続は済みましても離婚後三百日以内に生まれた子供は、戸籍上の夫あるいは前夫の子というふうに法律上推定される、こういうことになっております。したがいまして、そういう状態で出生届を出しますと、仮に夫以外の男性との間に生まれた子供でございましても、それは夫の子ということで一応戸籍に記載される、こういうことになります。もし夫の方で、つまり戸籍上の夫あるいは前夫の方で自分の子供ではないということであるならば嫡出否認の訴えを起こしなさい、こういうことになっております。じゃその場合に夫が嫡出否認の訴えを起こさなかったらどうなるのかということになりまして、その場合には永久に本当の実夫ではない父の子供ということで戸籍にとどまることになるというようなことになりかねないという問題があるわけでございます。  法律的に申しますと、そういう推定を受けて嫡出否認をされない以上、そういう形で戸籍をつくらざるを得ないということになるわけでありますが、ただしかし、このような場合に、前夫による懐胎の可能性、つまり戸籍上の夫なりあるいは離婚前の夫によって子供が懐胎される、そういう可能性がないことが客観的に明白であるというような事実がある場合にもこのような嫡出否定の規定が働くということになりますと、非常に不合理な事態がおっしゃるように出てくることがあり得るわけであります。そこで、従来から判例なりあるいは学説で、いわば例外といたしまして、そういうような前夫による懐胎の可能性が客観的に存しないというような場合には、例えば出生届をする前に前夫を相手に親子関係不存在確認の審判を求める、つまり嫡出否認というような形ではなくて、親子関係がそもそも存在しないんだというような審判あるいは裁判を求めるということをする。あるいはさらには、そういう手続を省略いたしまして、直接に本当のお父さんを相手取って認知の裁判をする、認知の審判、判決を求めるというようなことをいたした上で、それに基づいて母の嫡出でない子として出生届をすれば、非嫡出ではございますけれども、戸籍には本当のお父さんの名前が記載される、こういう扱いを従来よりいたしているわけでございます。  法律的にはやや面倒な手続ということになろうかと思いますけれども、親子関係等の身分関係というのは非常に大事な関係でございますので法律的には極めて厳格な規制をしているということになっているわけでございますから、そういう厳格な規制をいわば破るということのためには、やはりそれなりの手続が必要だということに当然ならざるを得ないわけでありますが、御質問のような場合に、そういった手段をとることによりまして、最初から本当のお父さんとの間の子供であるという出生届をすることは現在の取り扱い上は可能であるというふうに私どもは考えているわけでございます。
  128. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 今説明してくださった内容は、例えばそういう相談を持ちかけましたら行政の窓口だとか裁判所だとかが教えてくださる中身なんですね。ただ、いずれにしましても、その方法をとる場合に一日二日でできることではないのです。大体何カ月もかかって、窓口で一々なぜこういうことになったかという説明もしながら、そういう意味では、ある意味では女性としては非常に屈辱的な説明もしなくてはならない場面がいっぱいある。それを、できるからこれでいいというふうに私はお答えをいただきたいのではない。  子供の権利条約を国内で批准をしようとした際に、じゃ法務当局は何を見直さなければいけないとお思いでしょうか。子供が生まれた、その親の社会的な位置だとか、そういうことに基づいて子供が差別されてはいけないということがこの条約にはあるけれども、それからいくと、今問題になっているのはやはり民法だろうと思うのです、戸籍の制度だろうと思うのです。ここは見直さなくていい、こういうふうに法務当局はお考えなのか、お尋ねしたいと思います。
  129. 清水湛

    清水(湛)政府委員 親であるか子であるかということの認定というのは、これは当事者御本人にはわかっていることだと思いますけれども、客観的に、例えば戸籍の担当者なりあるいは裁判所なりその他の機関が、法律上の推定ではこの人の子供になるはずなんだけれどもこれとは違うということを認定するということになりますと、どうしても手続が複雑になる。そういうことを前提に申し上げているわけでございまして、別にそのことは差別にはつながってない、差別は関係ないことである、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  130. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 今おっしゃったことは法務当局が前提としていらっしゃるというふうにはわかるのだけれども、今私がお尋ねをしたのは、子供の権利条約を批准しようと今日本政府は言っている、そのための準備をしていると。それでは、法務当局としては、全く問題がない、例えば民法あるいは戸籍の関係は問題ないというふうに思っていらっしゃるのか、問題があるとすればどこだというふうに思っていらっしゃるのか、お答えいただきたいんです。
  131. 清水湛

    清水(湛)政府委員 恐らく先生の質問の前提には、嫡出、非嫡出の区別の問題だとか、あるいは戸籍の記載における嫡出子、非嫡出子の記載の違いの問題とか、そういうような問題が念頭にあってそういう御質問をされているというふうに私ども理解いたしますが、いろいろな御意見がこの問題についてはあるところでございますけれども、私ども現段階におきましては、基本的にはこれらの問題はいずれもこの条約に抵触するものではないというふうに考えているわけでございます。
  132. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 抵触するものではない、そういう解釈をしているということですね。それじゃ、ちょっと時間が来てしまいましたからあれなんですが、この問題は次の機会にこの続きをぜひやらせていただきたいと思います。  ただ、私は法務当局にぜひ考えていただきたいと思うのは、抵触をしていないと今おっしゃったけれども、実際には、おぎゃあと生まれたその子供は、たまたま嫡出の子でない、こういうことによって、あるいは夫婦が別姓を選んだがために戸籍の上では単に子としか、男とか女としか出てこないとか、こういうことによって、これは最初に挙げた例の子ですと戸籍にはもうないわけですから、そうすると教育の問題あるいは福祉の問題、それから住宅に入ろうとしたとき、例えば今回のように海外に行こうとしたとき、ありとあらゆる場面で、あなたはだめだ、こう言われることはたくさんあるわけです。これは、どう考えてもその子供にとっては非常に差別をされている、非常に不幸な事態なんですね。この差別を生んでいるのが民法であり、あるいは戸籍法であり、あるいはそれを改正しようとしない政治の責任であれば、あるいは法務当局がそれを見ないということであれば、私は法務大臣は非常に大きな責任を負わされていると思いますし、皆さんからそういう指摘があったときにも、実際そういうふうに泣いている人がいる、それは民法を、戸籍を見直すことによって改善できるのにそれが放置をされているということは非常に大きな問題だということを指摘をしまして、これは次に宿題として残させていただきたいと思います。
  133. 浜田卓二郎

    浜田委員長 倉田栄喜君。
  134. 倉田栄喜

    ○倉田委員 公明党・国民会議の倉田でございます。私は、きょうは自己破産に関係する問題と家事調停事件、特に離婚調停事件に関連して御質問をさせていただきたいと思います。  まず自己破産でございますけれども、最近特に自己破産の増加ということが指摘をされておりますけれども、これは裁判所の方にお伺いをしたいと思いますが、自己破産の申し立ての状況及び傾向について裁判所ではどのようにおとらえになっておられますでしょうか。
  135. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  この自己破産の事件でございますが、御指摘のように、最近相当ふえております。ごく最近の統計で申し上げますと、平成二年度、昨年度でございますが、これは自己破産の申し立て件数、自然人と法人に分けまして、自然人では一万一千二百七十三件、それから法人等でございますが、これが七百五十九件ということになっております。これが平成三年度、ことしの事件数を見ますと、これはまだ途中までしかわかりませんが、ことしの一月から八月までで自然人の自己破産の件数は一万二千八百六十一件ということで、既に昨年度を超えておるわけでございます。法人等につきましては七百四十四件ということで、八月時点で昨年とほぼ同じ、こういうことでございますので、十二月まで来ますと、特に自然人については相当ふえるということでございます。
  136. 倉田栄喜

    ○倉田委員 恐らく今お答えいただいた自然人の一万二千八百六十一件というのは八月までの累計ということだと思うんですが、その数字はいわゆるサラ金破産ラッシュと言われた八四年度をも既に上回っている、こういう状況であろうかと思います。  そこで、これは経済企画庁の方にお尋ねしたいと思うのですが、カード破産の問題、それから若い世代の破産等の問題が指摘をされておられます。この実態はどうなのか、窓口相談業務としてどのような傾向であるのか、また、その相談に対してどのようにお答えになっておるのか、簡潔で結構でございますので、お答えいただきたいと思います。
  137. 池田実

    ○池田説明員 御説明申し上げます。  経済企画庁が所管しています国民生活センターと各都道府県、政令指定都市のメーンの消費生活センターとをコンピューターのオンラインで結んでおりますパイオネットという情報システムがございます。各地の消費者相談情報が入っておるわけですが、今先生御指摘の趣旨に一番合致すると思われます多重債務に関する相談件数、この最近の動きを見ますと、八九年度には六百十三件でありましたが、九〇年度には千二百六十三件と倍増しております。九一年度につきましては、昨日、十二月三日までに入力されたものの数字ですが、千七百七十件と既に九〇年度を上回って増加が続いております。  男女別に見ますと、九〇年度で男が五〇%、女が四八%とほぼ半々でございます。九一年度に入っても同様の傾向でございます。年齢を見ますと、九〇年度で二十歳代のシェアが四三%と一番多く、次いで三十歳代が二〇%となっております。若年層のシェアがこのように高いというのが目立っております。ただし、九一年度に入って若年化が一層進んでいるかという点では、そういうことはなく、二十歳代のシェアは三九%ということで、同じ傾向が続いておるというふうに見ております。  それから、多重債務、自己破産等に関する相談の処理につきましては、カウンセリングが必要であるとか破産手続が必要であるとか、そういった専門的な対応が非常に重要でありますので、国民生活センターでは、原則としまして財団法人日本クレジットカウンセリング協会とか弁護士会等、他機関に紹介しているということでございます。
  138. 倉田栄喜

    ○倉田委員 それだけいわゆる自己破産、いわゆる多重債務者の問題がふえているということは、債権取り立てにまつわる相当なトラブルも起きているのではなかろうか、このように考えるわけでございます。  そこで、警察庁にお伺いをしたいと思うのですけれども、例えばいわゆる債権取り立てに伴うトラブル、あるいは暴行、脅迫など違法刑事事件に関連するようなこともあるかもしれませんが、このような問題に関して、債務者がいわば助けを求めて警察に飛び込み、駆け込むことが多々あるかと思うのです。警察としては、このような問題の対応、基本的にどのように対応しておられるのか、あるいはその傾向等について把握をしておられることがあればお答えを願いたいと思います。
  139. 津和孝亮

    ○津和説明員 お答えをいたします。  警察では、全国の警察本部あるいは警察署等でそれぞれ相談の窓口を開いておりまして、防犯の問題あるいは家庭内等の家事の問題あるいは民事上の問題等、広範な国民の生活に関係のある問題についての相談を承っておるところであります。  こうしたところへおいでになる方々は、大体いろいろ大変困っておいでになる方が多いわけでありますので、警察といたしましては、よくお話を伺った上で、警察の力で解決できるもの、捜査する必要があるもの、あるいは保護するもの、あるいは助言し指導するもの、それぞれあると思いますけれども、そのようなことにつきましては、警察自身によって、あるいは他の行政機関、団体等に御相談する方が適当と思われるようなものもございますのでそういう場合にはそうした窓口を御紹介する、そういうふうな方法によりまして、警察を頼ってこられる方の身になった方法によってその解決に向けて努力しておる、そういう状況でございます。
  140. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今、警察を頼ってこられる方のその身になった対応をしていきたい、このようにお答えをいただきましたけれども、まあすべてのケースではないだろうと思うのですが、相談に行きますと、いわゆる刑事事件になるのかあるいは民事事件になるのか、このはざまのケースがいろいろあるので難しいだろうとは思うのですけれども、それは民事の問題ですから弁護士さんに行って相談をしてください、こういうふうに、警察ではちょっとなかなかまだその程度では動けませんというふうなことなのかわかりませんけれども、そういうふうなお答えをされて帰ってこられる方もあるかと思うんですね。この問題に関して、いわゆる民事不介入の原則と申しますか、そのようなことが基本的にはあるだろう、こういうふうに考えますけれども、やはり暴行であるとかあるいは脅迫であるとか、そういうことが行われた場合は明らかに刑事事件であるわけでございますから、この点きちっと対応していただきたい。  大変恐縮でございますけれども、いわゆるこの民事不介入の原則と刑事事件の問題に関連して、もう一度、その警察を頼って駆け込んでこられる方々の身になってひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  141. 津和孝亮

    ○津和説明員 お答えをいたします。  債権の取り立て事案等、刑事事件あるいは民事事件、大変交錯いたしまして、なかなかその区別がつきにくいような事件といいますか、相談のあることは事実でございます。  警察といたしましては、先ほども申しましたように相談受理体制というものをちゃんと整えておるわけでございますけれども、刑事事件の検挙、さらに国民の皆さん方の保護、そういったことを図る見地から、それぞれ積極的な取り組みを行ってきているところでございます。ただいま御指摘のようなケースにつきましても、相談をされる方の身になってどうするのが一番いいのか、検挙すべきものは検挙する、保護すべきものは保護する、そういうふうにはっきりした対応をとってまいりたいというふうに考えております。
  142. 倉田栄喜

    ○倉田委員 多重債務者のこの問題に関しては、いわゆる違法な取り立てはもちろん、不法な取り立てももちろん厳しく取り締まっていく、これが一つの大きな解決策ではないのか、こういうふうに私思っておりますので、その意味では警察がこの問題に果たされる役割は非常に大きいと思いますので、ひとつ債務者の身に立って、またそういう違法、不法な行為を許さないという立場で積極的にやっていただきたい、このように強く要望したいと思います。  そこで、自己破産について、いわゆる自己破産の場合は非常に資金的に追い詰められているか、全くパンクをしている状態で来るわけですから、自己破産を申し立てするについても、弁護士に頼む費用がない、こういう方々も結構おられるわけですね。金がないのに弁護士頼めるかと、そういう状況も多分あるんだと思うのですが、最近、この債務者本人が直接、いわば代理人たる弁護士を頼まないで破産申し立てをしている場合の件数、あるいはその免責に至るまでの割合、その特徴について把握をされておられることがあればお答えをいただきたいと思います。
  143. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 この破産の申し立てにつきましては、一般論としましては、破産原因があるということでいろいろ帳簿等の問題がございますので、多くは弁護士の代理人がついておられるというのが実情でございます。ただ、例えば給与所得者であってほかに収入の道がない、そういう人がクレジット等で非常に借金がかさんで申し立てをするという場合には、御本人で申し立てをするというケースもございます。  それが全国的にどのくらいの割合かということは、残念ながらそういう統計はとっておらないわけでございます。したがいまして、全国のことはわかりませんが、例えば東京地裁あたりで最近の状況を聞いてみますと、これは必ずしも正確な統計ではございませんが、大体二割程度の方が本人で自己破産の申し立てをされるというのが最近の実情のようでございます。これが最近はややもうちょっと、二割よりふえてきたかなというようなことも聞いております。     〔委員長退席田辺(広)委員長代理着席
  144. 倉田栄喜

    ○倉田委員 個人債務者からの直接の申し立て手続について、これは最高裁判所事務総局でしょうか、破産についての説明のパンフを出されているみたいでございます。このようなパンフみたいなものがあるということは、こういう相談に対して裁判所も積極的に対応されておられるということだろうと思うのですが、そういう意味で、いわゆる相談窓口やその制度改善の必要性も含めて、個人債務者が直接破産の申し立てをする問題について裁判所としてはどのような問題意識を持っておられますでしょうか。
  145. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 個人の方が裁判所に来られて相談されるといった場合には、裁判所の方では、そういう方にできる限りの援助といいましょうか、御相談に応じるというような体制になっております。今先生御指摘ございましたように、そういうことに使うために最高裁判所の方では、破産についての簡単なリーフレットでございます、破産手続とはどういうものかとか、あるいは破産者になった場合にどういう権利あるいは義務が生じるか、あるいは破産申し立てにはどういうような手続が必要かとか、あるいは免責についてはどういうような場合に免責がされるかというようなことを素人の方にもわかりやすく書いたようなリーフレットをつくりまして、全国の裁判所の窓口に置いております。これが必要な方にはこれをごらんいただく。また、地方によりましては、破産の申し立てのための書類でございます申し立て書、あるいはそれにつきます陳述書と申しまして、どうして自分が破産の申し立てをしなければいけないかというような陳述書、それから、借金の状況とかあるいは自分の財産の状況、こういうようなものを表にして出すわけでございますが、それについての定型用紙というようなものをつくりまして、それを割と素人の方でも簡単に書けるようなものを備えております。それでも書けないというような方がございました場合には、その窓口で書き方の相談に応じるというようなこともやっておるわけでございまして、裁判所でございますので中立公平という立場からの限界はございますけれども、できる限りのことはしたい、こういうふうに考えておりますし、現実にそのようにされておるというように思っております。
  146. 倉田栄喜

    ○倉田委員 ありがとうございました。  確かに中立公平という観点もございましょうけれども、ひとつきちんと窓口相談を受けていただきたいと思います。  今御説明いただきました最高裁判所事務総局でお出しになっているパンフというかリーフレットの中に、国庫仮支弁制度というものの説明をしてございます。国が破産手続費用を一時的に立てかえ払いする制度、こういうふうに説明をしてあるわけでございますけれども、この国庫仮支弁制度の利用状況あるいは問題点、個人破産に限って言えば、実際上どのような場合に利用をされておられるのか、その予算の問題を含めて予算措置としても十分なのかどうか、御質問申し上げたいと思います。
  147. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 自己破産の場合には、御指摘のように破産法の規定によりまして、国庫仮支弁という規定がございます。この現実の運用状況でございますが、最近の状況を見ますと、件数は必ずしも多くはございません。大体年に数件程度というふうになっております。  これはいろんな原因はあろうかと思いますが、一つは、仮支弁ということでございますので、国庫から出されました費用は最終的には破産者みずからが負担しなければいけないということでございます。それからもう一つは、こういう個人の自己破産の場合には、多くの場合には破産手続費用を賄うに足りる資産というのがございませんので、同時廃止と俗に言っておりますけれども、破産宣告をすると同時に破産廃止をする、こういうような手続になっておりまして、その手続費用と申しますのは、例えば官報の公告費用であるとかあるいは市町村の役場への破産の通知の費用、あるいは債権者に対する通知の費用というようなものでございまして、数万円という単位でございます。したがいましてそれほど金額が多くないということで、それほど利用はされておらないのではないかというふうに考えております。私どもとしましては、これに要する予算というものは、もし必要があれば十分出す用意はございますし、それだけの予算があるというふうに考えておるわけでございます。
  148. 倉田栄喜

    ○倉田委員 確かに今お答えいただきましたように、この仮支弁制度の中に弁護士費用が含まれるわけでもないわけでございますので、その費用の点で数万ということで利用者が少ないんではなかろうかということも考えられるかと思うんです。ただ、場合によったら、破産決定、破産免責、それぞれ別個建ての事件ですから、一件について三万円ぐらいかかるとすれば、六万から十万ぐらいの金額がかかるかもしれない。それでも何とか破産の免責決定を受けてその事態を乗り切れればちゃんと返せるんだけれども、その金すらもない、こういうことはやはり多重債務者、破産を申し立てる方にとっては切実な問題ではなかろうかと思うんですね。だからそういう意味では、もう一つはこの国庫仮支弁制度というのが十分周知されてないというか御存じないということで利用されてない点もあるんじゃなかろうか、こういうふうに思いますので、この立派なリーフレットをつくっていただいておりますけれども、そういう意味でもひとつ徹底的にこの点は、こういう制度もありますよということでPRもしていただきたい。御要望を申し上げておきたい、このように思います。  そこで、最近の破産申し立ての実情にかんがみまして、免責不許可という場合もあり得ると思いますけれども、免責許可について最近の特徴的なことは何かございますでしょうか。最高裁にお伺いをいたします。
  149. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 免責制度でございますが、これは誠実な債務者について、これを保護するという趣旨の規定であろうかと思います。  最近の運用状況を見てまいりますと、例えば平成二年度でございますが、免責事件、終わった件数、これが全部で九千八百二十二件ございます。これは自己破産に係る免責でございますが、九千八百二十二件ございまして、そのうち免責決定がされたものは九千二百八十九件、パーセントにしますと九四・六%ということでございます。そのほか不許可決定というのが百四件で一・一%。そのほかに取り下げ等が若干ございます。ほぼ九五%ぐらいが免責になっておる、こういう状況でございます。この免責の割合と申しますのは、昭和六十一年あたりからずっと見てみましても、大体九五%、九六%、こういうような状況になっておるわけでございます。  具体的には、免責事由があるのかないのかということにつきましては、破産法の規定がございますが、その規定にのっとりまして当該事件を担当する裁判官がいろいろな事情を調べて適正に判断をしておる、こういうことでございます。
  150. 倉田栄喜

    ○倉田委員 免責の本質については、今誠実な債務者に対するみたいな御答弁をいただきましたけれども、これを誠実な債務者に対する特典と考えるのか、あるいは債務者更生の手段だと考えるのか、本質論についてはいろいろ御議論もあることだと思いますので、またお伺いをさせていただきたいと思います。  そこで、この自己破産の背景、原因としていわゆるカードの自己破産、これが急増しているというふうにも報道されておるわけでございます。これはことしの六月十二日の毎日の記事でございますけれども、日本は個人借金比が世界一になってしまった。これは経企庁の統計を引いての数字だと思うのですが、従来からはとても考えられないような状況になっている。貯蓄率はたしかよかったはずだけれども、借金率が世界一になったのはどういうことなんだろうかな、アメリカの後を本当に追い抜いてしまったんだな、これは根本的な問題意識として非常に重要なことである、その原因というのを考えていかなければいけない、こういうふうに思うわけですけれども、その大きな背景としていわゆるカードの増加がある。カードで簡単に買い物ができるし、またお金さえも借りることができる。先ほど御答弁いただきましたけれども、若い世代の自己破産の申し立てがふえているというお話でございました。  そこで、このカードというものをどんなふうに考えていくのか。クレジットカードの発行の実態について、多省庁にわたって恐縮でございますが、きょうは通産省の方にもお見えいただいておりますので、御答弁をいただきたいと思います。
  151. 寺坂信昭

    ○寺坂説明員 クレジットカードの保有枚数でございますけれども、社団法人日本クレジット産業協会の調査によりますと、九〇年の三月末におきまして約一億六千六百万枚でございます。この調査が始まりました八三年の三月と比べますと、この七年間で約二・九倍となっているところでございます。  なお業態別に見ました場合には、銀行系がこの七年間で三・六倍で五千七百十八万枚、続きまして、信販系が同じく七年間の伸びで約二・八倍でございますが、五千五百十五万枚、さらに、流通系が三・四倍の伸びでございまして四千一万枚などとなっているところでございます。
  152. 倉田栄喜

    ○倉田委員 通産省の方で所管をしておられるカードというのは物の販売に係る部分でございましょうけれども、その部分のいわゆるクレジットカードの発行に対して、通産省としては、業界に対する規制や指導、どのような対策をしておられるのでしょうか。
  153. 寺坂信昭

    ○寺坂説明員 クレジットカードの発行に当たりましては、そのクレジット会社の信用供与、これがきちっとした情報のもとに行われるということが必要でございまして、既に割賦販売法にも正確な与信情報に基づきます与信という規定がございます。そのようなことで、信用情報機関の情報を活用したり、あるいは各クレジット会社で与信体制の整備につきましてきちっと進めていくよう、また社員教育の徹底、消費者啓発等につきまして割賦販売法に基づきまして指導をしてまいっているところでございます。
  154. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今業界に対してどんな規制や指導等をされておるのかということをお聞きしたわけですけれども、ちょっとお答えいただいた分と重なるかと思うのですが、先ほどはいわゆる若い世代の破産の申し立てが増加をしている、こういう御指摘がございました。中には女性の破産もふえているのではないかという記事もあったりしますが、今御答弁いただきましたように、その背景に過剰与信の問題、過剰与信から来る多重債務者の問題、こういう問題があると思うわけですね。  今、割賦販売法に基づいて過剰与信については対応しているようなお答えをいただいたわけですけれども、もうちょっと詳しく、例えば個人情報の収集であるとか、相互の情報交換、利用等の問題、これについて通産省としてはどのような基本的な姿勢でおられるのか。例えば、この問題については悪用であったりあるいは個人のプライバシー保護の問題点があるかと思うのです。また同時に、そういう情報を収集して集めることによって、いわば借りる債務者をきちんとチェックすることによって果たして多重債務者の問題が解決できるのかどうかということに関しては、恐らくこの問題について、法制審議会がどうかわかりませんが、その審議会の中で東京大学の竹内教授が御指摘なさっていることがあると思うのですね。こういう情報の管理でもって決して管理できるものではなくて、実際はもっと、先ほど私申し上げましたけれども、いわゆる取り立てをきちんと取り締まるべきではないか。これは当然通産省としても承知されておられるかと思うのですが、私今いろいろ申し上げましたのでちょっとお答えしづらいかと思うのですが、この点について、今私が申し上げました問題点も含めて通産省としてどのようにお考えになっているのか、お答えをいただきたいと思います。
  155. 寺坂信昭

    ○寺坂説明員 いわゆる多重債務者の問題に関しましては、先ほど最高裁判所の方から数字の御説明がございましたけれども、私ども通産省の方でこの夏、主要なクレジット会社に対しまして実施いたしました調査におきましても同様な増加の傾向を見せているところでございます。このような状況が続きますことは、消費者信用産業の健全な発展を阻害するばかりでなく、国民生活上の大変に重要な問題になりかねないということから、次のような具体的な措置を講じつつあるところでございます。まず、実態をきめ細かく分析していく、そのような観点から、自己破産者数の推移につきまして夏の調査以降引き続きまして対象企業をふやしますとともに、これらクレジット会社から毎月の報告を聴取、その内容についてのヒアリングを実施してきているところでございます。  また、この問題に関しましては、先生も御指摘のございますように、クレジット会社の信用供与、これが十分な情報のもとに行われていないというような大きな課題があることもございまして、私ども通産省からの要請に基づきまして、社団法人の日本クレジット産業協会におきまして、与信制度向上のための信用情報機関への登録情報内容の拡充、それから信用照会端末、CATと呼んでおるものでございますけれども、信用照会端末などによります信用照会システムの整備について現在検討中でございます。その早急な取りまとめを指導しているところでございます。  また、先ほどの答えと重複いたしますけれども、本問題に関します各クレジット会社の姿勢をより一層適正にするために、各クレジット会社の与信体制の整備、社員教育の徹底、消費者啓発等につきまして、割賦販売法に基づきます立入検査などを通じまして引き続き指導を行ってまいる所存でございます。  さらに、基本的には本問題につきまして消費者意識の向上が必要である、そのような観点から、消費者教育を含めます消費者への普及啓発等の充実に努めてまいるところでございます。  いずれにいたしましても、学校教育あるいは貸金業関係など、当省の所管以外の分野での対応も必要である、そのような観点から、関係省庁と密接な連絡をとり合って対処してまいる所存でございます。  また、先生御指摘のプライバシーの問題でございます。いわゆるクレジットを行うに際しましては、信用情報機関の整備が重要ということで、割賦販売法上も、割賦販売業者等は信用情報機関を利用することにより得た正確な信用情報に基づき、支払い能力を超える購入の防止に努めなければならない、そのような趣旨で、先ほど申し上げましたように信用情報機関の拡充に具体的な検討を行っているところでございますけれども、同じく割賦販売法上、信用情報機関は信用情報を購入者の支払い能力の調査以外の目的のために使用してはならず、また、正確な信用情報を割賦販売業者等に提供するよう努めなければならない、そのような規定がございます。  通産省といたしましては、この割賦販売法の趣旨も踏まえまして、昭和六十一年三月、産業政策局長から関係業界に対しまして通達を発出しております。株式会社の信用情報センター、現在は株式会社シー・アイ・シーと呼んでおりますけれども、それから各クレジット会社の業務の運営に当たりましては、プライバシーの保護に配慮しつつ信用情報の適切な運用を図るよう指導してきたところでございます。また、今回の信用情報の拡充に当たりましては、その具体的作業を行っております社団法人日本クレジット産業協会及び株式会社シー・アイ・シーに対しまして消費者等の意見を十分に聞いて行うよう指導しているところでございまして、今後消費者団体等との意見交換を進める場を設け、その上で検討していく旨報告を受けているところでございます。  いずれにいたしましても、当省といたしましては、この信用情報機関の充実に当たりましては、今後とも引き続きプライバシーの保護に十分に配慮いたしました信用情報の適切な管理あるいはその構築が確保されるよう指導してまいる所存でございます。
  156. 倉田栄喜

    ○倉田委員 多重債務者の問題については大蔵省の方も所管であろうかと思いますので、大蔵省の方にお伺いをしたいと思うのですが、大蔵省としてはこの多重債務者の増加についてどのような対策をお考えになっておられますでしょうか。
  157. 小泉龍司

    ○小泉説明員 多重債務の問題を未然に防ぐためには、まず借り手の側において節度ある消費者信用の利用を行うということが必要であろうと思いますけれども、貸し手の側におきましても過剰な貸し付けを行わないよう適切な顧客審査を行うことが重要であると考えております。この点につきましては、貸金業法において過剰貸し付けが禁止されているところでございますけれども、行政といたしましても、これまで金融機関、貸金業者に対しまして適切な顧客審査の徹底を求めてきたところでございます。  具体的には、基本通達でございますが、窓口における簡易な審査のみによって無担保、無保証で貸し付ける場合の目途は、当面、当該資金需要者に対する一業者当たりの貸し付けの金額について五十万円、または当該資金需要者の年収額の一〇%に相当する金額とするよう指導を行っているところでございまして、今後ともこの点についてさらに指導を徹底してまいりたいと思っております。  また、このほか、通産省からも答弁がございましたが、プライバシーの保護に配意しつつ信用情報機関を活用することも重要であり、この点につきましても金融機関に十分指導を行っているところでございます。信用情報機関につきましては、既に機関相互間の情報交流が六十二年以降行われているところでございますけれども、今後とも引き続き関係省庁及び関係業界とも協力しつつ、情報の整備あるいは機関相互間の一層の情報交流に努め、多重債務の発生の防止に努めてまいりたいと考えております。
  158. 倉田栄喜

    ○倉田委員 ちょっと視点が異なりますけれども、警察庁の方、先ほど御答弁いただきましたのでちょっと教えてください。  いわゆるカードの不正利用に関する詐欺事件、警察庁として最近の傾向あるいはこれを把握しておられますでしょうか。
  159. 泉幸伸

    ○泉説明員 クレジットカード利用の詐欺事件の検挙は、昭和六十年の一万二千八百五十五件をピークにいたしまして、平成元年には五千四百三十一件と約半分まで減少してきたところでございますが、平成二年に増加に転じまして六千四百十四件となってきております。  平成二年中に検挙いたしましたクレジットカードの不正利用事件、これは窃盗も含んでおりますが、それの特徴的な傾向を簡単に申しますと、一つは二十歳代の者の犯行が最も多いということでございます。検挙人員四百七十三名のうち二十歳代が二百十三名、四五・五%となっております。さらに二つ目の特徴としましては、他人名義で不正取得したカードを使用する場合が多いということでございます。検挙件数六千六百二十五件のうち、他人の名義により申し込むなどして取得したカードを使用したものが二千三十三件、三〇・七%ということで、最も多い状況でございます。  以上でございます。
  160. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今御説明いただいたわけでございますが、通産省としてこのカードの不正利用の実態及び対策については何かお考えになっておられることがございますか。
  161. 寺坂信昭

    ○寺坂説明員 クレジットカードに係ります犯罪につきましては、クレジット業界におきまして、警察庁、それから社団法人の日本クレジット産業協会、また社団法人の全国信販協会及び日本クレジットカード協会、この四者から成りますクレジットカード犯罪防止対策協議会を設けまして、従来よりカード犯罪の未然防止に努めてきたところでございます。ただ、最近の増加傾向に伴いまして、これに加えまして社団法人の日本クレジット産業協会におきましては、ことしの三月、加盟店管理の強化、それから信用照会端末、CATでございますけれども、この普及等の必要性を内容といたしますカード犯罪の現状と今後の課題について取りまとめをしたところでございます。  当省といたしましてもこの問題につきましては、クレジット会社がカードを発行する際の一層適切な本人確認を行うという与信体制の適正化に加えまして、加盟店管理の強化、CATの普及を行うことが不可欠と考えているところでございます。この悪質加盟店を排除するために、三年度の予算におきまして加盟店総合情報交換システムについての調査研究委託事業を行ってございまして、業界に対しましてはCATの普及の実行計画の取りまとめ、それから、この調査研究委託事業の実施について、その実施に努めるべく指導をしてまいっているところでございます。
  162. 倉田栄喜

    ○倉田委員 ありがとうございました。  先ほど教育の問題も出ましたので、文部省にもお答えを願いたいと思うのですが、いわゆる破産やカード使用等の教育について、文部省の小中高の教育、どのように取り組んでおられるわけでございましょうか。
  163. 福島忠彦

    ○福島説明員 お答え申し上げます。  文部省におきましても、消費者教育というのを非常に重視しております。学校教育におきましては、社会だとか家庭科という教科を中心にいたしましてこの教育を施しているところでございます。  現在の中学校の例えば学習指導要領というものがございますが、これは教育課程の基準でございますけれども、そこにおきまして社会科では消費者保護という項目がございます。その内容を申し上げますと、近年におけるクレジットカードや訪問販売等を初めとする取引や契約の多様化の実態を踏まえ、「現代社会における取引の多様化や契約の重要性を取り上げ、消費者として主体的に判断し行動することが大切であることを考えさせる」というようにしておりまして、今申し上げましたのは中学の部分でございますが、小学校、高校もそれぞれの教育の段階で、最近のクレジットカードの問題、訪問販売等、いろいろな現在の契約社会の諸問題を教えさせることにしているところでございます。
  164. 倉田栄喜

    ○倉田委員 先ほどるる御答弁の中にも出てきましたけれども、いわゆる若い世代の破産の申し立てが急増している、また、若者を襲うクレジット地獄であるとか、こういうふうな報道が盛んになされております。そこで文部省にこの点に関して教育の観点からお伺いをしたわけですけれども、文部省は教育の中において消費者教育というのをどのように位置づけておられるのか。いろいろ見ると、まだあっちこっちに散発的にある状態ではなかろうか、こういうふうに思うわけでございますけれども、このクレジットカードの問題も含めて何をどのように教えていくのか、その消費者問題というのを教育の中にどのように位置づけていくのか、これはしっかり取り組んでいただかなければいけない問題であろうと思いますので、改めて強く要望をしておきたいと思います。  最後に、この問題、法務省にお聞きをしたいわけでございます。  質問の経過で明らかになったかと思いますけれども、クレジットカード等により多重の債務を負って、自己破産や免責を申し立てる者が急増している、こういうことでございます。このいわゆる消費者破産について法務当局の問題意識、これをお伺いをしたいと思います。
  165. 清水湛

    清水(湛)政府委員 若い人が多重の債務を負担するというような不幸な事態にならないようにするということが第一の問題かと思いますけれども、不幸にしてそのような状態が生じまして、最後のいわば救済手段として破産手続の申し立てをする、こういうような事件が最近ふえておるということはそのとおりでございます。  そういう破産手続の中で法律制度的に何か対応し得ることがあるのかどうかというようなことにつきまして、私ども真剣に現在、問題意識を持って眺めているところでございます。かつてのサラ金破産のときにも問題になったことでございますけれども、例えば司法手続の面で差し押さえ債権の範囲を広げるとか、あるいは差し押さえ禁止債権の範囲を広げるとか、あるいは破産手続と執行手続の関係調整を図るとか、あるいは消費者破産の場合にはほとんどが破産宣告同時廃止というものでございますので、実質的には免責制度というのが非常に重要な機能を営むわけでございます。御指摘のようにそういう重要な問題があるわけでございますが、そういうような問題についてどう対応したらいいかということについては十分な問題意識を持っているところでございます。  現に、昨年開かれました法制審議会の民事訴訟法部会におきましても、当面取り上げるべき問題として種々の議論がされたわけでございまして、最終的には民事訴訟手続の全面見直しということが緊急の課題とされたわけでございますが、このような議論の過程の中におきましても、消費者破産をめぐる破産法制の見直しというようなことが指摘されたわけでございます。法制審議会の内部のみならず、日弁連あるいはいろいろな団体から消費者破産をめぐる破産法制についても見直しをすべきであるというような指摘もされているわけでございます。私どもといたしましては、そういう指摘もあるところでございますので、これらの御意見とか裁判所における運用状況の実態というようなものをよく調べまして適時適切に対処してまいりたい、このように考えている次第でございます。
  166. 倉田栄喜

    ○倉田委員 個人の借金が世界一になったということ、いろいろとらえ方はあるでしょうけれども、十分に問題意識を持って検討しなければならないことであろう、そういうふうに思います。そういう意味で破産法も、先ほどちょっと議論の中に出ましたけれども、免責をどのように考えるのかということも含めてひとつしっかり検討していただきたい、このように思います。  次に、家事事件、特に離婚調停についてお伺いをしたいと思うのですが、離婚調停事件の件数、最近の傾向はどのようになっているのか、最高裁にお伺いをしたいと思うのですが。
  167. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  離婚調停ということでございますけれども、御案内のとおり、家裁の家事調停事件につきましては、申し立て書に書いてございます趣旨が仮に離婚ということでございましても、その真意が円満同居を求めるというような場合もございますし、その道もございまして、円満調整と言いながら内心は離婚を求める、こういうような趣旨の事件も多々あるわけでございます。そういう意味で紛争の実態が流動的であり多様でございますので、離婚調停事件というような形では統計上とっておりませんで、夫婦間の紛争は一括しまして婚姻中の夫婦間の事件、こういう類型で考えているわけでございます。  そういう意味で、ただ婚姻中の夫婦間の調停事件と申しましても、その大部分は何らかの形で離婚に関係があるという趣旨でお答えをさせていただきたいと思いますが、この婚姻中の夫婦間の調停事件の数としましては、平成二年度における申し立て件数が四万三千四百七十四件でございます。平成三年につきましてはまだ全体がとれておりませんけれども、本年の一月から八月までで二万九千五百件、こういう状況でございます。婚姻中の夫婦間の事件の申し立て件数は過去数年来ほぼ四万二千件ないし三千件台で推移しておりまして、おおむね横ばいの状況であるというふうに認識をしております。  申し立て理由等の傾向につきましては、申し立て理由と言いますよりも、新受件数そのものの申し立てではなくて既済事件から見ました申し立ての動機という点で私どもとらえているわけでございますが、申し立て動機から見ますと、夫側の申し立てにつきましても妻側の申し立てにつきましても、最も多いのが性格の不一致というものでございます。次に多いのが相手方の異性関係ということになっております。  若干補足して申し上げますと、夫側の申し立ての動機として一番多いのは性格の不一致であり、約六二%でございます。それから二番目に多い異性関係が二四・三%、三番目が家族や親族との折り合いが悪い、こういうのが二三・五%、こういう順序になっております。妻側の申し立て動機といたしましては、性格の不一致が四九・五%とほぼ半数、二番目が異性関係で三五・一%、三番目は相手方が暴力を振るうというのがほぼ二九%ございます。こういう状況でございます。
  168. 倉田栄喜

    ○倉田委員 現在、法制審議会においていわゆる離婚に関する制度の見直しが検討されているというふうにお聞きしますが、それはどのような内容を検討されておられるのか、簡潔で結構でございますのでお答えをいただきたいと思います。
  169. 清水湛

    清水(湛)政府委員 法務大臣の諮問機関であります法制審議会の民法部会身分法小委員会は、本年一月以来、民法中の婚姻及び離婚に関する規定の見直し作業を進めているわけでございます。検討の対象範囲は民法第四編第二章婚姻の規定全般に及んでいるわけでございまして、この中には夫婦別姓の問題等も含まれているわけでございます。離婚に関しましては、現在特に離婚原因に関する規定、これは民法七百七十条でございますけれども、判例の動向等踏まえましてその改正の要否が検討されております。  御承知のように最高裁判所の判例で、一定の長期間別居状態が続いているというような場合には、そういう状態について責任のある者でも、有責であっても離婚請求をすることができるというような判例が出ているわけでございますが、そういう判例をどのように民法の中に取り込むかというようなことを含めまして検討がされているわけでございます。また、離婚の際の財産分与や離婚後における子供の監護養育等の問題に関連いたしまして、財産分与のあり方あるいは離婚後扶養のあり方等の問題についても、離婚の効果の問題の一環として改正の要否が引き続き検討されるということになっておるわけでございます。  私どもの希望でございますけれども、早ければ何とか来年じゅうにでも同小委員会における検討の成果を中間報告的に発表でもしてもらえる段階になればよいというふうに考えて、現在努力をいたしておるところでございます。
  170. 倉田栄喜

    ○倉田委員 次に移らせていただきたいのですが、家庭裁判所でいわゆる調停離婚が成立をした場合、財産分与であるとか慰謝料であるとか、あるいは、子供がおりますと養育費等の支払いをどうするか、この調停条項がまとまると思うのですが、この調停条項の履行状況について家庭裁判所はどのような問題意識を持っておられますか。また、その履行勧告事件の新受件数として特徴的に把握をしておられることがありますでしょうか。
  171. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  家庭裁判所の調停が成立しまして、その調停条項の履行に関して私どもで把握できます態様は、先ほど御指摘になりました履行勧告の制度に乗ってくるものであろうと思います。この履行勧告の申し出件数は、調停だけではなくて、審判で定められた義務も含めた数しか把握できておりませんけれども、平成二年度の場合八千二十六件でございます。  履行勧告の件数は、過去数年来若干減少の傾向にございます。実際に勧告が行われた事件につきまして見てみますと、これは平成二年度の総数七千六百四十八件についてでございますけれども、その対象が扶養料のみのものが五千五百五十件ございます。それから、財産分与または慰謝料というものが六百三十七件、また、扶養料と財産分与あるいは慰謝料、こういうものが三百九十一件でございます。それからさらに、扶養料とその他の金銭債務という類型が百八十五件でございます。
  172. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私がこのような質問を申し上げております趣旨は、離婚が成立をして、お母さんの場合ですけれども、子供を抱えて、養育費等々いろいろ約束はしてもらったんだけれどもなかなかその約束どおり履行してもらえない、こういうことで非常に困っておられるケースが多々あるわけでございます。そのようなときに、家庭裁判所制度として履行命令がある、こういう説明をするわけです。  今お答えいただいた数字は、八千二十六件ということでございますので、私が持っているこの資料と同じことだと思うのですが、これを見ると、履行勧告についての申し出件数が八千二十六というふうに記載をされて、一方履行命令の申し出件数は四十一件、それから履行命令件数は五件、こういうふうに書いてある。履行命令までいっているのは非常に少ないなとこの数字を見ながら思ったわけですけれども、家庭裁判所として、家事事件、離婚事件等々含めて、例えば履行確保についてもっと親身になって積極的に努力をしていただきたいし、協力をしていただきたい、こう思うわけでございます。例えば相談窓口の充実あるいは人員の確保、予算の要望等々いろいろあると思うのですが、この点どのようにお考えでございましょうか。  これは最後に法務大臣にもこの点について、突然でございますけれども、こういう方向でやっていきたいと御答弁いただければありがたいと思います。
  173. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、家庭裁判所で調停条項ができましてそれが実現をしないということは好ましいことではございませんし、家庭裁判所としては履行勧告の制度というのに非常に力を入れているつもりでございます。特に、強制執行にすぐいけないというような、少額で、しかもいろいろ法律知識にも乏しい当事者の方が多いというのが家庭裁判所の事件でございますので、強制執行に至る以前において、履行勧告の段階で家庭裁判所調査官が中心になりまして積極的に履行勧告を行っているというのが実情でございます。その結果も、正確な数ではございませんけれども、履行勧告の申し出がありました件数のおおむね七割近くは何らかの形で一部履行あるいは全部履行に至っておりまして、全く履行勧告の効果がなかったというものは三割、三分の一程度であろうというふうに認識しております。したがいまして、ある程度の成果は上げておりますので、それでもなおかつ履行命令に至るという数が非常に少ないのではないか、かように考えております。  また、もう一点御質問がございました家裁の窓口の充実ということでございますけれども、これもまた私ども非常に力を入れているところでございます。家事相談その他につきましても、年間三十万件近い数があるというようなことでございますし、家庭裁判所の窓口業務というのは正規に定められた手続ではございませんけれども、国民の方と家裁とが一番密接に接点をなすところである、こういう認識のもとに、例えば担当者にいたしましても熟練した職員をできるだけそれに振り向けるというような運用上の配慮を行っております次第でございます。  この点は御質問にはございませんけれども、裁判所としましては、家庭裁判所だけの問題ではなくて、簡易裁判所につきましても窓口業務の重大さということは同様に考えている次第でございまして、裁判所全体としてこの窓口業務等の充実については努力をいたしていく覚悟でございます。  以上でございます。
  174. 田原隆

    田原国務大臣 先生の御質問の趣旨をよく踏まえて、法務省としても一生懸命やっていきたいと思います。
  175. 倉田栄喜

    ○倉田委員 最後に、厚生省の方にもお見えいただいておりますので、いわゆる片親家庭の支援制度について、特に母子家庭が問題になって今まで母子家庭を中心にしてきておられるでしょうし、また母子家庭が特に問題ではあるわけでございますけれども、父子家庭の問題もあるかと思います。この辺について、母子家庭、父子家庭含めた総合的な対策を厚生省にお伺いをしたいと思います。
  176. 冨岡悟

    ○冨岡説明員 御説明申し上げます。  離婚によりまして母子家庭、父子家庭となった方々に対しましては、家庭生活の安定と子供の健やかな成長に寄与するために各種の施策を講じております。  具体的に申し上げますと、母子家庭につきましては、一般家庭に比べまして所得水準が低いといったような経済的に弱い状態にあることを踏まえまして、子供一人の場合につきましては月額三万七千円の児童扶養手当の支給、子供の修学資金の無利子による貸し付け、母親の事業開始等の低利貸し付け、それから、子育て、教育等につきまして専門相談事業などを実施しております。  また、これは母子家庭、父子家庭共通の施策でございますが、保護者が病気になられた場合の介護人、お世話する人でございますが、その方の派遣、それから、保護者が仕事を終えて帰られるまでの間の施設での子供を預かる事業、それから、保護者が病気になりました場合の一時的に施設でお預かりする事業といったいろいろな事業を実施してございます。  今後とも、母子家庭、父子家庭の実態を踏まえましてこれらの施策の充実に努めてまいることといたしております。  以上でございます。
  177. 倉田栄喜

    ○倉田委員 ひとつ十分な対策を特にお願い、要望申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  178. 田辺広雄

    田辺(広)委員長代理 それでは、引き続いて御質問を承ります。木島日出夫君。
  179. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  きょうは、田原法務大臣が宮澤新内閣の法務大臣に就任して初めての法務委員会での質疑でありますから、まず最初に、法務大臣の基本姿勢について質問をいたしたいと思います。  十一月六日付の新聞報道等によりますと、法務大臣は就任後の記者会見におきましてこのように述べたと報じられております。検察の捜査が政界に及ぶときには正しく中立な立場で厳正に見守っていく必要がある云々であります。  どういう考えに立脚して、どういう言葉を法務大臣は述べたのか、まず明らかにしていただきたい。
  180. 田原隆

    田原国務大臣 法務省の所管事項の中で一つの大きい分野が検察でありますし、他に入国管理、戸籍その他法務関係の仕事がございますが、その今先生のおっしゃった分野につきましては、検察の分野につきましては私は従来から日本の検察は厳正公正、中立、不偏不党にやってきたと信じておりました。改めてそれを確認し、ここに入ってみてなおさらその意を強くした次第でありますが、法務大臣になったそのときでありますから、今まで考えておったとおりに信頼してまいりたい、こう申し上げたわけであります。
  181. 木島日出夫

    ○木島委員 検察の捜査が政界に及ぶときには中立な立場で厳正に見守っておくという言葉を使われたのでしょうか。中立とは一体何と何との間の中立という言葉でこの言葉を使われたのでしょうか。
  182. 田原隆

    田原国務大臣 私は、最初の言葉まで細かく覚えておりませんし、新聞も見ておりませんが、政界に及ぶときはとかいうような表現、使った記憶がないのでありますけれども、要するに、検察は法の番人中の番人でありますから、すべてのそういう法規に照らしてみて、違反的なものがあった場合には厳正公正にやるということも申し上げたのでありまして、どうも表現が、そんな表現をしたような気がしないのでございますけれども、ちょっと私も。     〔田辺(広)委員長代理退席、委員長着席〕
  183. 木島日出夫

    ○木島委員 どうもあいまいになってしまいましたが、かりそめにも法務大臣が、検察の捜査が政界に及ぶときに中立の立場で見守っていくという言葉を使われ、その中立という言葉が、検察と刑事被疑者、被告人との間の中立だという言葉でもし使われたのなら、大変な間違いだと私は思うわけであります。  それは、御存じのように、検察庁法第十四条によれば、「法務大臣は、第四条及び第六条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。」検察機構全体の指揮監督権者が法務大臣であります。「但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」いわゆる指揮権がただし書きにあるわけであります。検察の捜査が政界に及んだときに、法務大臣は断じて中立てあってはならぬわけであります。いかがでしょう。
  184. 田原隆

    田原国務大臣 私は、政界に及んだという表現を使った記憶がございませんが。
  185. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは改めて、検察の捜査が政界に及んだときに、法務大臣としてはいかなる立場をとるべきだとお考えでありましょうか。
  186. 田原隆

    田原国務大臣 政界に及んだときという表現を使ったことはありませんが、今先生がそういう仮定の上で話をされるわけでありますが、私は、初めから犯人だとか犯人ではないとか、そうじゃなくて、事実関係その他を厳正に調べ、法規に照らして判断するということを厳正、中立と申しているわけでございますから、そのように解釈いただきたいと思います。
  187. 木島日出夫

    ○木島委員 実は伏線がありまして、十月三十一日、実は自民党は佐藤孝行氏を総務会長に選出したわけであります。  新聞報道によりますと、本年十月三十一日、佐藤孝行氏は党本部で記者会見をし、「有罪判決が確定し執行猶予期間を終えたロッキード事件について、「疑惑をもたれたことを深く反省している」と述べながらも、「願わくば健全な司法、健全な検察を期待している」と、司法当局への批判をにじませた。」こう言ったとマスコミは報道されております。  事件が政界に及んだ事件、疑獄事件で、有罪判決を受けた者が自民党の最高幹部の一角に就任をして、そのときに「健全な司法、健全な検察を期待している」などという発言はもってのほかだと思うわけでありますが、こういう新聞報道を法務大臣御存じだろうと思うのですが、こういうことを佐藤孝行氏が総務会長就任に当たりまして発言をしたということに対してどういう所見をお持ちでしょうか。法務の総責任者としての法務大臣の見解を求めるものであります。
  188. 田原隆

    田原国務大臣 佐藤総務会長がそのような発言をされたということを直接私は聞いておりませんが、新聞の報道で見て、そういう文言が使われたということは聞いておりますし、その翌日か翌々日かの新聞で見たような気がしますが、ただ私、その発言は佐藤さんが個人の責任においてなされた発言かもしれませんので、一々一個人の発言について法務大臣として批判し、意見を述べることは差し控えていいのではないか、私はそういうふうに考えております。  ただ、我が検察としては厳正公正、中立、不偏不党にやってきた結果、佐藤さんがああいうことであったのであって、佐藤さんかどう思おうと、私はそれについて一々批判申し上げる立場にはないと思っております。
  189. 木島日出夫

    ○木島委員 新聞報道が真実だとすれば、佐藤孝行氏は明らかに司法全体に対する大変な攻撃をかけてきていると見なければならないわけであります。  私は、今ここに佐藤孝行氏のロッキード事件での東京高等裁判所の第五刑事部の判決文を持ってきているわけであります。法務大臣が最高指揮権者であります。そのもとで法の正義のために、秩序のために頑張っている検察官の東京高裁での控訴趣意にどんなことを書かれているか。一審の量刑が不当に軽いということを検察官は述べているわけであります。  全文は読む時間がありませんが、ちょっと引用して読みますと、  運輸政務次官辞任後、衆議院議員の身分を保持する間にその謝礼等の趣旨で二〇〇万円という 多額の現金を収受したという事案であり、国政にたずさわる公務員の廉潔性に対する国民の信頼を著しく傷つけ、ひいては国政一般への国民の不信をも惹起した、およそ一般公務員による収賄とは同列には論じえない重大事犯といわざるをえないこと、すでに原審で取り調べられた関係各証拠により被告人の罪責は明らかであるのに、被告人が事実関係を全面的に否認しているのみならず、多数の関係者をまきこんでのアリバイ工作が行われており、被告人が今なお、己れが潔白であるとして国会議員の地位に執着していることを併せ考えるとき、被告人の犯情はまことに芳しくなく、したがって、本件は実刑も優に考えられる事案というべく、被告人に対し刑の執行を猶予した原判決の量刑が軽きに過ぎる これが東京高等裁判所での検察官の量刑不当の最終意見であります。そして裁判所は、「本件控訴に及んだ検察官の措置はあながち苛酷とはいえない。」しかしながら、いろいろ情状を言って一審判決を維持しているわけであります。これがあなたの指揮監督下にある検察官の立場であります。法務大臣は、こういう検察官の厳正な捜査を見守るということが立場でなければならぬと私は思うわけです。断じて刑事被告人、刑事被疑者と検察との間の中立なんという立場ではないと思うわけであります。  ところで法務大臣は、ミスター検察、検事総長と言われた、亡くなられた伊藤栄樹氏の書かれた出版物、「秋霜烈日」という本をお読みになったことがあるでしょうか。
  190. 田原隆

    田原国務大臣 残念ながら、玩読いたしたことがありません。
  191. 木島日出夫

    ○木島委員 この本は、日本の検察が今どういう現状にあるかを物語っている部分がありますので、厳正な検察、厳正な司法の最高責任者にある法務大臣として、ぜひとも読んでいただきたいと思うわけであります。  亡くなられた伊藤栄樹検事総長は、そこで、「検察の限界」ということで二項目にわたって文章を書いています。  一つは「国会議員と政党員」。要するに、国会議員に対して検察が出動しようとするときに二つの限界がある。一つは「法律による活動の限界」、もう一つは「検察には、力の限界がある。」検察庁の職員は全国で約一万二千人、仕事が忙しい。「見付けた悪いやつを大きい順にやっつけるという方針自体、検事などの数に限りがあることの結果といえる。」こういう言葉も書かれております。  もう一つの「検察の限界」の話は、いわゆる有名な「おとぎ話」としての話が書かれております。この中身を読みますと、私ども日本共産党の幹部に対する電話盗聴事件が不起訴になった事件を「おとぎ話」としてつくり上げました。そして、亡くなった伊藤検事総長はこう言っております。   わが国でも、かりに警察や自衛隊というような大きな実力部隊を持つ組織が組織的な犯罪を犯したような場合に、検察は、これと対決して、犯罪処罰の目的を果たすことができるかどうか、怪しいとしなければならない。そんなときにも、検察の力の限界が見えるであろう。  「検察の限界」というのは、言葉をかえれば、正義の限界ということであろうかと思います。法と正義が限界があって停止する、要するに無法と不正義が放任されるということを意味しているものだと思うわけであります。こういうことは断じて放置できないと思うわけでありまして、ぜひ、これから日本法務大臣としての仕事をされるわけでありますから、伊藤検事総長が書き残した「限界」なるものをしっかり見据えて、厳正な法の運用に携わっていただきたいとお願いいたしますが、所見を求めます。
  192. 田原隆

    田原国務大臣 ただいまの御意見、貴重な御意見として承っておきます。
  193. 木島日出夫

    ○木島委員 きょうは私は、入管行政、特に退去強制手続の問題、その中でも収容手続の問題について質問をいたします。  時間が大分なくなってしまいました。最近、二つの事件が発生しております。事実を摘示して、問題点を質問していきたい。  一つは、私の選挙区である長野県上伊那郡の箕輪町で起こった事件でありますが、一九八八年十二月に入国したパキスタン人男性にかかわる事件であります。パスポートの目的は観光、ブラジル日系二世の女性と結婚を約束して、ずっと在留した。これは入管法違反ではあるわけであります。一九九一年、本年四月に、この女性と結婚をしたいということで、長野県箕輪町で夫婦として同居し始めた。正式に夫婦としての届け出をしたいということで七月十七日に町役場に外登法の届け出に行きましたら、それが町役場の職員から告発をされた。そして七月二十五日に入管法違反で逮捕され、八月一日に起訴され、弁護人がついて刑事裁判が始まったわけですが、問題は、九月十八日に保釈が長野地裁伊那支部の裁判官によってなされた。そうしますと、即日、同日、法務省は、入管局は入管法三十九条で収容するという処分に出たわけであります。  そこで、なぜ保釈の日に入管法上の収容手続を行ったのか、これでは保釈が事実上無意味になるのではないか、弁護権の行使も困難になるのではないか、大変批判が沸き起こっているわけであります。なぜ保釈の日にあえて収容手続を行ったのか、入管局にお尋ねをいたします。
  194. 本間達三

    ○本間説明員 お答えいたします。  私どもの所管いたします退去強制手続は刑事手続とは全く別の目的にあるということは、先生御存じのとおりと存じます。したがいまして、当該容疑者が退去強制事由に当たるというその容疑がある限り私どもは退去強制手続をとらざるを得ない、そういう職員があると考えておるところでございます。その手続の過程において調査それから審査というのが行われますが、審査を進めるということにつきましては、法の規定上、収容をして行うということとされております関係で私どもは収容手続をとった、こういうことでございます。
  195. 木島日出夫

    ○木島委員 入管法三十九条によれば、「入国警備官は、容疑者が」云々「に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときは、収容令書により、その者を収容することができる。」という条文であります。収容しなければならないとは規定していないわけであります。  しかし、法務省は一貫して退去強制手続が発動されたときには全部被疑者を収容するのだ、それが法の原則なんだという立場に立たれておるようであります。出入国管理外国人登録実務六法、法務省入国管理局が監修した文書によりますと、こういう日本入管法は収容前置主義、原則的収容主義、要するにみんな収容してしまうのだ、そして退去強制手続をするのだという立場で一貫しているようであります。きょうはもう時間が全然ありませんから、この解釈論争をするつもりはさらさらないのですけれども、逮捕され勾留された、そして弁護人が保釈申請をした、裁判所が保釈を認めた、そしてこれから粛々と刑事裁判が進められていくわけですが、なぜそんな状況のときに行政手続が横から出てきて拘束しなければならないのですか。  そこで、最高裁判所をお呼びしておりますので、日本の法律、刑事手続上の原則をお聞きしたいのですが、勾留中の被告人の身柄、保釈されたときの被告人の身柄はだれが責任を負うのでしょうか。
  196. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、勾留中及び保釈中の被告人の身柄につきまして、今後その裁判の手続を進行していく。その裁判手続の遂行の確保という観点ではその身柄について責任があると存じます。
  197. 木島日出夫

    ○木島委員 そのとおりだと思うのです。要するに、裁判所が保釈を認めたということは、逃亡のおそれがない、罪証隠滅のおそれがない、釈放して在宅でも刑事裁判を円滑に、スムーズに進めることができるという意思表示であるわけであります。当然弁護人も、保釈保証金を積んだりして被告人の身柄を確保しておく、必要な口頭弁論期日には法廷に出頭させる責任を弁護人だって負っているわけであります。それだけ、刑事裁判が行われ、裁判所、弁護人とも被告人の身柄については安全を、ある意味では俗な言葉では保障されている者に対して、何もそんなときにまで入管法を発動して行政手続としての収容手続に入る必要はさらさらないと思うのですが、法務省、どうですか。
  198. 本間達三

    ○本間説明員 先ほど申し上げましたとおり、手続のそれぞれの目的が違うわけでございます。私どもの職員も司法に携わる機関とはまた異なるわけでございますので、私どもは私どもの持っております職責を果たすために、その必要性を認めて収容という手続をとったわけでございまして、決して刑事手続に対して支障を及ぼすというような、そんな悪意その他は一切ございませんで、現実にその収容者が入管手続上の観点から退去強制事由あり、したがってその手続を進める必要ありと判断しての措置でございます。御理解いただきたいと思います。
  199. 木島日出夫

    ○木島委員 この刑事事件は長野県の伊那地方で行われておるわけです。収容されますと、恐らくこの者は横浜の収容所に収容される。——されたのですね。この事件の弁護人は国選弁護人ですよ。接見に行くのだって大変なことなわけです。事実上、裁判進行の妨害という役割しか果たさない。判決言い渡しまでは裁判官が責任を持っているわけですから、少なくとも入管法がお出ましになるのは判決がおりた後でもいいじゃないかと思うのです。  ついでに法律をちょっとお聞きいたしますが、最高裁判所法務省刑事局でもいいですけれども、それじゃ、執行猶予がついた場合には、その身柄というのは、身柄確保といいますか、だれが責任を負うのでしょうか。保護観察がついた場合はどうなんでしょうか。
  200. 古畑恒雄

    ○古畑政府委員 元来、保護観察と申しますのは、対象者が自助の責任を認めてこそ果たされるということになるわけでございます。したがいまして、身柄の責任というような問題ではないわけでございまして、本人が自分の住居を定めてその上で届け出る、その住居地における観察所が保護観察を開始する、こういう手続になっているわけでございます。
  201. 木島日出夫

    ○木島委員 法律上は、まだ確たるいろいろな論文等を見たことがありませんが、少なくとも執行猶予がつき、仮に保護観察がついたということになりますと、その者は毎月定期に、今自分はどうしているということを保護監督しておる保護司などに報告する義務があるわけです。逆に言いますと、それがまともに行われている以上はどこかへ逃げてしまうなんということは心配ないと思われるわけです。ですから私は、これは法務省にも要望しておきたいのですが、少なくとも執行猶予がついた、あるいは保護観察中の者については、入管法違反があったからといってすぐ収容手続に入るなどという強権発動は差し控えていただきたいと思うわけであります。  もう一つだけ、時間の関係で事件を指摘したい。と思います。  これは、コロンビア船員に係る事件であります。九〇年の五月十五日に、横浜港に係留中のコロンビア船籍の船の上で、コカイン不法所持の嫌疑で男性が現行犯逮捕されました。船の上であります。現行犯逮捕されて司法官憲によって日本に連れてこられた、上陸をさせられた。そして勾留され、起訴され、裁判が行われておりました。ところが、九一年九月三十日に東京地裁で無罪判決の言い渡しがありました。当然釈放されます。ところが、同日この者は、東京拘置所において入管法が適用になりまして、入管法上、行政手続の上で収容されるということがあったわけであります。  警察庁をお呼びしております。もう時間が余りないのですが、今のような手続が行われたということは事実でしょうか。逮捕の理由は、嫌疑は何だったんでしょうか。
  202. 鎌原俊二

    ○鎌原説明員 お答えいたします。  本件につきましては、昨年の五月、情報に基づきまして横浜港に停泊中のコロンビア船籍の貨物船に対する捜索を行いまして、同船の機関室に隠匿されておりましたコカイン約三十三・四キログラムを発見、押収いたしますとともに、コロンビア国籍の船員一名を麻薬取締法違反の現行犯として逮捕したものでございます。
  203. 木島日出夫

    ○木島委員 法務省刑事局長、これは保釈なしに本年九月三十日東京地裁で無罪判決言い渡しになって、検察庁としては釈放指揮をとったということは、よろしいんですか。
  204. 井嶋一友

    井嶋政府委員 お尋ねの事件につきましては、平成三年六月五日に身柄勾留のまま公判請求をした事件でございまして、判決に至るまで勾留をしておりましたが、平成三年九月三十日、無罪判決がございましたので、釈放いたしております。なお、この判決は十月十五日に自然確定をいたしております。
  205. 木島日出夫

    ○木島委員 法務省入管局にお聞きしますが、九月三十日、無罪判決言い渡しの日に東京拘置所で収容したというのは事実でしょうか。収容の容疑は何でしょうか。
  206. 本間達三

    ○本間説明員 御質問のとおり収容いたしております。入管法の二十四条の三号、不法上陸の容疑でございます。
  207. 木島日出夫

    ○木島委員 不法上陸の容疑と言うのですね。しかし、この者は不法上陸しようとしたわけじゃないんですよ。船の中にいたところへ日本の官憲が入り込んで逮捕して、日本の国内へ上げたわけでしょう。何でこれが不法上陸になるんですか。答弁してください。
  208. 本間達三

    ○本間説明員 これは二十四条の解釈の問題でございますが、本件の場合のように逮捕されて上陸したという事実ができたわけでございますけれども、この場合におきましても正規の手続を経ずして上陸したという事実には相違ございませんので、この場合には二十四条三号に当たるというふうに私どもは解釈しているわけでございます。
  209. 木島日出夫

    ○木島委員 不法上陸したんじゃなくて、逮捕されて上陸させられたんじゃないですか。こんなのにまで入管法が適用になって、原則収容主義だからといって収容するなんというのはとんでもないことだと私は思うのですね。  これは無罪になりましたから、勾留中の日数について刑事補償を本来取れるはずなんですね。刑事補償、金払っていますか。刑事補償で金払えば、彼は自分の金で出国できるはずなんですね。私の調べによれば、彼については、九一年十月二日退去強制命令が発行されて、十月十八日シンガポール空港へ送還されたと言われているんですがね。  時間がありません。こういう態度、要するに入管法違反については入管法上収容という手続を必ず踏む、収容前置主義というものをとっているところに根本的な解釈の間違いもあるし、運用の間違いもあるんじゃないかと私は思うのですね。刑事手続だって、身柄を拘束して、勾留して起訴する場合もあれば、逃げるおそれがなければ在宅のまま刑事手続をやっているわけですよ。  私いろいろ調べてみましたら、実は昭和四十八年に法務省は当国会に出入国法案を出してきているわけです。それで、法案の提案理由のうち九番目に、こういうことを書いてあるのですよ。「第九は、現行の出入国管理令では、退去強制手続を進める場合には容疑者を必ず収容しなければならないこととしているのを改め、退去強制事由が明らかで逃亡のおそれがある場合に限り容疑者を収容することとするとともに、収容できる期間を短縮して、より一層の人権尊重を図ったことである。」  要するに、昭和四十八年に法務省は国会に、もう収容原則主義は人権法上だめだと、在宅で手続ができるように法律改正すらやっているじゃないですか。これは残念ながら別の理由で廃案になってしまいましたけれども。こういう立派なことを法務省昭和四十八年に出していたんだから、現行法の運用だって、全部捕まえて収容させるなんというのは、まことに人権が後退したと言わざるを得ないわけであります。  最後に法務大臣に、こういうことをかつておやりになったんだから、入管法の収容問題について原則収容を改めて、必要なときだけ、逃亡のおそれのときくらいに絞るという運用をされることを求め、また法改正も求めていきたいのですが、所見をお聞きして、終わります。
  210. 田原隆

    田原国務大臣 問題点として提起されましたので、勉強してみたいと思います。
  211. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  212. 浜田卓二郎

  213. 中野寛成

    中野委員 人権の問題というのは、それを守ること、そしてまた人権を守るということがいかなることか、人権を侵犯するということがいかなることか、その判断は大変難しい。しかしそれは極めて大切なことであり、基準を明確にしてその人権を守っていくこと、また侵犯をすれば明確にそれを処分をする、是正をしていくということがとりわけ大切だ、こう思うのでありますが、時々、法務省人権もしくは人権侵犯に対する判断基準はどこにあるのかというのがわからないことが多いわけであります。  ちなみに、大阪における部落地名総鑑発行事件がありました。これは私も大変明確に記憶をしているのでございますが、これにつきましては、その後、法務局において「部落差別図書の作成、販売事件について(勧告)」が当該業者に出されているわけであります。  ここに平成元年七月十八日付の写しを持っておりますが、これでいろいろと事実を並べ、最後に「勧告」という部分がございまして、この「理由」の中に、  国及び地方公共団体は、同和対策事業特別措置法、地域改善対策特別措置法、地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律等に基づき強力に同和行政を推進し、部落差別の解消に努力しているところである。   しかるに、貴殿は、職業上、部落リスト及び地区現況が極めて悪質な差別図書であることを熟知しながら、あえてこれらを作成し、これを企業等に販売したことは、部落差別を招来、助長する多大の危険性を含むものであることは明らかであり、その行為は国及び地方公共団体の同和行政に逆行するばかりでなく、人権擁護の観点からも看過することのできない重大な人権侵犯行為であって、極めて遺憾である。 法律違反であるからいかぬ、加えて人権擁護の観点からも看過することはできない、こうしているのですが、何か、人権擁護の観点から看過できないが、その基準はどこにあるのかというのはさっぱりわからないことが指摘をされているわけであります。  そして、最後に「勧告」として、   よって、貴殿におかれては、かかる行為の不当性を深く認識して強く自戒するとともに同和問題の理解を高め、差別意識を完全に払拭し、今後、部落差別にわたる行為のないよう特段の配慮をされたく勧告する。 「特段の配慮」とは何ですかね。私は、配慮などという言葉を使うことによってかえってこの勧告の持つニュアンスというのは大変弱まっているのではないか、「今後部落差別にわたる行為のないよう勧告する」と言った方がよほど明確であるとさえ思うのです。こういうところに、何か法務省の変な配慮が、「特段の配慮」が逆に働いているのではないかとさえ思うのであります。  ちなみに大阪府においても、これを機会に新たなる条例をつくり、いろいろな方策を講じているわけであります。しかし法務省として、これらのことについてどういう基準を持ち、そしてどういう勧告を出されているのか。ちなみに私がお聞きをいたしました三つのケースにおいては、今読み上げました勧告文はほとんど同じなんですね、同一文書。何かこういう一つのパターンをつくっておられるのでしょうか、それともそのときどきにおいて内容は違うのでしょうか、そしてその基準はいかなところにあるのでしょうか、まずお聞きをいたします。
  214. 篠田省二

    ○篠田政府委員 お答えいたします。  まず最初に、人権侵犯事件とは何か、その基準についてお答えいたします。  まず、人権侵犯事件という前に、人権侵犯とは何かということでございますが、国民の基本的人権の実質的保障に反する行為ないし社会事象、これを人権侵犯と考えております。それでは人権侵犯があればすべて人権侵犯事件として扱うかというと、そういうことではございませんで、人権侵犯の疑いのある事案で、しかも個別啓発に適する事案、これを人権侵犯事件というふうにして扱っております。人権侵犯というところまで至らない事件につきましては、予備的に調査するものとか、あるいは事件とは扱わないで一般啓発の資料にする、いわゆる情報収集事案といったようなものがございます。  それから、地名総鑑事件を例にされまして、その勧告文がある程度定型化してないかという御指摘ですけれども、必ずしも定型化しておりませんで、同じような事件について同じような時期になされた勧告文についてはある程度同じような形になりますけれども、時代の変遷とか事案の相違によって勧告文の内容はいろいろ異なっております。  それから、勧告文の最後のところで「特段の配慮」という表現はかえって弱めるのではないかという御指摘ですけれども、そういうことではございませんで、例えば「部落差別にわたる行為のないよう特段の配慮をされたく勧告する」というのと「部落差別にわたる行為のないよう勧告する」というのの差異でございますけれども、私どもは「特段の配慮をされたく」というのを入れることによって意味が強まるというふうに考えております。
  215. 中野寛成

    中野委員 この言葉だけにこだわろうとは思いませんけれども、問題は法務省の基本的な姿勢にかかることだと思うのであります。いかなることをしてはならないのか、なぜしてはならないのかということがより一層明確にされることが大切であろうと思うのです。  また、法務省人権侵犯事件となる基準につきまして、人権侵犯の事実の有無、個別啓発に適する事案、こうされておりますが、さあ、これだけで国民の皆さんはわかるのでしょうか。大変抽象的、そしてまたあくまでも啓発がすべてであるかのような法務省の印象、私はそこに何か法務省の、大変失礼な言い方ですが、あいまいさというものを感じるのでございます。  ちなみに私はこう考えるのです。  教育とか啓発を法務省やまたは関連する関係省庁が積極的に取り組んで行うことによって、その教育や啓発によって明確な基準、明確な人権に対する人間としてのあり方、そのことを、教育、啓発を徹底することによって、それでも侵犯した場合には厳しい対処や処分が行われるということになると思うのですが、逆に中途半端な啓発や中途半端な教育が行われておりますと、あれが中途半端であったから侵犯をしてもまた中途半端な処分しかできないということにつながっていく。基本的人権というものは人間としてのまさに基本なのでございますから、それがいかなる犯罪にもある意味では優先するという性格を持つものだと思うのでございます。そういう基本的なスタンスに立って法務省が取り組んでいただくということでありませんと、決してこの人権侵犯事件というのは、現在減っているわけでも何でもない、むしろふえている。そして内容は悪質になっている。最近はいろいろな啓発が行われているけれども、これは人権侵犯だなとわかっているがゆえにあの手この手を使って悪質化し、陰湿化し、そして特殊な犯罪になってしまう、こういうことが最近の傾向なのではないかと思うのでありますが、改めて法務省として、より一層この明確な基準を設けていくという考えはありませんか。
  216. 篠田省二

    ○篠田政府委員 最近の人権侵犯の動向についてでございますけれども、人権侵犯事件全体としてはここ数年大体年間一万五千件程度で推移しておりまして、ほぼ横ばい状態でございます。減っているとは言えませんけれども、ふえてもいないということでございます。  それから、同和関係事件の推移でございますけれども、法務省人権擁護機関が取り扱った同和問題に関する人権事件数から見ますと、差別事件は増加しているとは見られないわけでございます。  それから、内容的に見ますと、差別言辞とか差別落書きといったものがかなり数が多くございますけれども、人生の岐路に立っ結婚あるいは就職に関する差別というのは減少傾向にございます。
  217. 中野寛成

    中野委員 この数え方にもいろいろありますね。法務省が把握されておられること、例えば文部省、労働省そして郵政省の所管内のものは法務省の数の中に入れなかったりですね。いろいろな問題がまだまだ残されているという指摘があるわけです。そしてまた、法務省の方で掌握されている人数を、件数を今おっしゃられたわけでありまして、むしろ我々がいろいろな生活の場において周囲から聞く内容につきましては、そんなに減ってもいないけれどもふえてもいないという御答弁でありましたけれども、内容的にはむしろ深刻化していると申し上げた方が的確だ、私はこういうふうに思っているわけであります。むしろそういう認識を持って今後教育や啓発により一層取り組んでいくことが大事だ、こう思うのであります。  ちなみに、ちょっと別のことを申し上げますがこれは部落の問題ではありません。  先般、私の地元であります大阪府豊中市においていわゆるいじめ殺人事件がありました。これは文部省にお越しいただいておりますので文部省にもお尋ねしますが、こういう事件を見ておりまして、どちらも被害者だ、私はそう思っているのです。今保護者の間で、そのいじめ殺人事件を起こしたとされる四人の子供たちを大きな目で見てほしいという署名運動も行われているようでありますけれども、また一方では、その殺された女子生徒の日ごろの行状を云々する声もあるわけであります。しかし、いずれにいたしましても、その子供がそういうところへ追い込まれた背景、環境的背景というものがあるわけであります。その社会的な背景、子供が持っている環境的な問題、そういう中で子供の気持ちがいじけていく、またいろいろな問題のある行動を起こす、それをまた理由にしてほかの子供がいじめる、こういうことの積み重ねがだんだん学校の中の荒廃を生んでいった、こういうことなのではないのか。  例えば上級生が下級生を、そして男子が女子を、そしてまた強い子が障害のある子を、むしろそれは守るべき、守られるべきことであって、それが逆にいじめという形で出てくるというのも、ある意味では人間の本質的な差別意識の中で生まれた行為というふうに言わなければならないだろうと思うのであります。こういう意味での教育というものが、豊中の事例を今取り上げましたけれども、私の地元の事例を取り上げたわけで、これは全国的な問題がいろいろと今日まで指摘をされているわけでございまして、まさに人間教育というものを大切にしなければなりません。  そしてまた、例えば最近は南北問題、地球的な意味での南北問題、いわゆる南半球に対するいろいろな開発事業が行われる、そのことによって自然破壊が行われる、またその地域に住んでいる人たちが人間としていろいろ疎外されるという問題も起こっているときに、やはり地球規模において人権を守っていく、または人類愛の精神を持っていくという教育もまた一方で行わなければならないでありましょう。そういう視点に立っての明確な文部省としての指導が行われるべきであると思いますが、文部省はどういう考えをお持ちなのでしょうか。
  218. 福島忠彦

    ○福島説明員 先生御指摘のように、学校の場におきまして非常に重大な事件が起きましたことは、私ども大変残念に思っているところでございます。  先生御承知のように、この事件は現在の中学校が抱えているいろいろな問題行動のすべてがあらわれているような気が私どもいたしております。この子供は中学二年あたりから非常に休みが多くなって、二年生だけで四十九日、三年生になりますと五十六日ということで、いわゆる登校拒否的な状況も示しておりますし、過去幾たびかいじめにも遭っております。そして最後にこういうひどい暴力行為で死亡したということで、私どもも、今の公教育が抱えております、特に公立学校がしっかりしないといけないと思いますいじめ、それから暴力、登校拒否、いろいろな問題がこれにすべて集まっているような気がしているわけでございます。  この事件を私ども反省してみますに、先生一番御存じだと思いますが、豊中市は非常に人権教育をよくやっていただいているところでございますが、やはり真の人権教育といいますか、学ぶだけじゃなくて、みずから差別しない、あるいはいじめはしないという、実行する人権教育というものをやらなければいけないのじゃないかという気がいたします。それから生徒指導の観点でいえば、いろいろないじめが過去にあったわけですから、迅速に、早期に手を打っていただければまた何とかなったのじゃないかという気もしますし、生徒指導の担当の先生や担任の先生、こういう人たちだけに任せるのじゃなくて、やはり生徒指導というのは校長がリーダーシップをとって全校体制でやらなければ決してうまくいかないと私は思います。さらには、家庭ともうまく連絡をとってやらなければいけない、そういう非常に難しい問題だと思っております。  こういう事件、非常に残念ですが、これを契機にしまして私ども、その後、全国の生徒指導推進会議というのも開きました。それから全日本中学校長会の理事会というのにも出させていただきまして、今申し上げました人権問題、それから早期対応の問題、それから校長中心の生徒指導体制の確立の問題、いろいろ要望を申し上げまして、今一生懸命、この事件の反省の上に立って私ども取り組んでいる最中でございます。
  219. 中野寛成

    中野委員 今お答えの中に、豊中市の人権教育についても触れられました。私も地元のことですからよく知っておりますし、私の妹もその事件のあった隣の中学校の教師をしておりますから現場の実態もそれなりにわかっておるつもりでございますが、しかし、例えば同和教育、このことは極めて重要であります。それで、このことを中心にしていろいろな人権教育が行われるのだけれども、そのことに限らずむしろ幅広く、例えば障害者の差別があってはいけないとかそのほかの差別があってはいけない、基本的なことをトータルとして人権教育をすることによって、同和についての意識もより一層高まっていくということなのではないだろうかと思うのであります。言うならば、いわれなき差別の最も典型の例が同和の問題であろうと思うのです。  そういう意味では、一つの教育の基本にかかわりますが、私はこの機会に幅広い意味での教育、啓発というものを文部当局でも考えていただきたい、こう思いますし、また、そういう視点に立っての資料といいますか、手引書といいますか、そういうものもあわせてつくられるべきではないかと思うのですね。  私は今日まで、在日韓国人の権益問題と色覚異常者の問題とを法務委員会や文教委員会でずっと行ってまいりました。この色覚問題についてはこんなように立派な手引書を文部省はおつくりになられました。全国のお母様方から私もお礼の手紙をいただいたりするのですが、ところが聞いたら、一つの学校に一冊か二冊しかこれ行ってないんです。私はてっきりすべての先生方に行っているものだと思っていたわけですよ。例えば、この人権に関する手引書でも十分なものが果たしてあるのかどうか。また、それがつくられていっても、十分すべての先生方に行き渡るだけの部数がつくられているのか、本腰を入れてやっているのかという気持ちを持つのです。せっかく立派なものがつくられても、それが徹底していなければ何にもならない。国会答弁のためにつくったのか、これは皮肉ですが、そうは思いませんけれども、しかしそう言わざるを得なくなってくる。  そういう意味で、せっかくおやりになるとするならば、より一層徹底した教育、または法務省でいえば啓発をやっていただきたいと思うのでありますが、あわせてそのことについて文部省、法務省、お聞きをいたします。
  220. 福島忠彦

    ○福島説明員 先生今お持ちの「色覚問題に関する指導の手引」、私どもとしては非常に真剣に取り組ませていただいたつもりでございます。学校、教育委員会関係諸機関に私ども全部で十万部これを配布いたしました。  しかし、まさに先生おっしゃるとおりでございまして、教員の数は大変な数いるわけでございまして、予算の関係で全員というわけには現在のところ至っていないことはまさにおっしゃるとおりでございます。このため私どもはいろいろな手だてをしまして、できるだけ全員にこの趣旨が周知できるように努力しているところでございまして、文部省ではいろいろな全国レベルの会議をやっております。小学校、中学校、高校レベル、いろいろな進路指導の人、各教科の人、指導主事を集めて会議をやっておりますが、そういう会議の場でも参加者に配布しております。そのほか、各学校でできれば増刷いただきたいという気持ちでやっております。本来文部省が全部すればよろしいのでございますが、予算の関係ですべてそうは至っていないというような状況です。その他、先生のおっしゃる趣旨をできるだけ生かして、私ども今後この問題について周知方を努力したいと考えております。  それから、同和問題の資料でございますが、私どもは現在、この同和教育資料というものを文部省で刊行しておりまして、これは私ども事務官も全員この資料に基づいて同和問題の研修を受けているわけでございますが、この資料は、各都道府県の同和問題の担当主管部課長会議等で配付して周知しておるわけでございます。  ただ、先生おっしゃった具体的な指導事例を集めた事例集というものにつきましては、現在まだ作成に至っておりません。これは私どもの初等中等教育局で作成方につきましては検討しているところでございまして、地域改善対策協議会が来年の春答申いただくようでございますので、その内容も見させていただいて検討したいと思っておるところでございます。
  221. 中野寛成

    中野委員 法務省には別の問題とあわせてお尋ねをいたしたいと思います。文部省の方は結構でございます。  先ほどお尋ねをいたしましたが、いろいろな説示、勧告が法務省からこの人権侵犯事件につきましては行われますけれども、結局、その報告が被害者になされたというケースは聞かない。また、そういう迷惑をかけた事件を起こした人が被害者に謝罪をしたという話も聞かない。言うならば、説示、勧告を受けて再び同じことをしなければそれでいいのか。そして、結局被害者は泣き寝入りかということになってしまうわけでありまして、むしろ人権というのは、ある意味では心の問題、これは加害者も被害者も心の問題ですね。そういう意味では、被害者に対する心からの謝罪、また心からの償いというものがなされて初めて最終的な一つの決着を迎えることになろうとも思うものであります。そういう意味では、基準がはっきりしない、アフターケアといいますか後始末がもうひとつすっきりしないというケースの中で、今日この差別問題というのがなお深刻な状態で尾を引いている、こういうふうに申し上げなければならぬと思うのでございますが、そのことについてはいかがお考えでしょうか。
  222. 篠田省二

    ○篠田政府委員 人権侵犯事件の調査、処理を担当した結果の報告の問題でございますけれども、それを被害者に報告することが啓発効果を高める上に果たして役に立つかどうかという問題が一つございますけれども、私どもの立場としては、被害者から求められたときには、守秘義務の範囲内で差し支えない限りではその結果を知らせております。
  223. 中野寛成

    中野委員 私は、被害者に対してどういう結末、どういう処理がなされたのか、そして相手がどういう気持ちを持っているのかというものが明確に知らされませんと、被害者は救われないままにそのまま終わってしまうということになると思うのでございまして、そういう処分の仕方、最後の始末の仕方を含めて、法務省としてはやはり真剣にお取り組みになるべきではないだろうか、こう思うのであります。  もう一つ、これは総務庁になりますが、地域改善対策協議会が現在審議を進めておりますけれども、いつごろその答申は出ますか。そして、その内容について、十分答申を踏まえて施策を実行していこうとする決意のほどはいかがですか。
  224. 荒賀泰太

    荒賀説明員 昨年十二月の地域改善対策協議会の総会におきまして総務庁長官から、現行の地対財特法失効後の方策につきまして、昭和六十一年の地対協意見具申の基本的な考え方に沿って一般対策への円滑な移行を図るという観点から審議をお願いしたところでございます。  以来、地対協におきましては、地方公共団体、民間運動団体等、関係各方面から、地域改善対策特定事業の進捗状況でありますとか、啓発活動の状況、現行法失効後の差別解消の方策等について意見を聴取するとともに、事業の実施状況について現地視察を行うなど、幅広く議論を行ってきていただいております。  本年七月二十四日には地対協の会長談話を発表いたしまして、平成四年度予算の概算要求に当たりましては地対財特法制定の趣旨に留意しつつ実情に即して配慮すること、また、改めて創意工夫を凝らして啓発活動をより積極的に推進していくよう努めること、同和問題の解決に向けて行政施策の公平な適用の観点から今後とも行政運営の適正化に努めること、この三点について政府に対して御要望をいただいたところでございます。  さらに、秋に入りまして小委員会を設置して、就労対策及び産業の振興、昭和六十一年の意見具申で指摘されております地域改善対策の今日的課題とそれらを達成するための方策並びに適正化対策、さらに啓発活動及び教育のあり方、生活環境の改善のための方策等につきまして議論を深めていただいておるところでございます。  現在、意見具申の取りまとめに向けまして最終的な審議を精力的に進めていただいておりまして、今月十一日の総会におきまして意見具申がいただけるものと考えております。この意見具申を受けまして、これは総理を初め総務庁長官からも国会でたびたび御答弁を申し上げておりますが、意見具申をいただいた上で、政府といたしましては、その意見具申を尊重して具体的に現行の地対財特法失効後の方策につきまして検討してまいりたい、そのように考えておるわけでございます。
  225. 中野寛成

    中野委員 答申はいつですか。
  226. 荒賀泰太

    荒賀説明員 意見具申の時期は十二月十一日、来週の水曜日の総会でお出しいただけるものと期待をいたしております。
  227. 中野寛成

    中野委員 予算編成も大詰めに来ている状況での意見具申ということになります。これは御努力をいただきませんと後に悔いを残すことにもなろうと思いますし、せっかくの同和行政が進まないということになるであろうと思いますので、御努力を強く要請いたしまして、時間が参りましたので、最後の質問を一点だけ大臣にさせていただきたいと思います。  先ほど来申し上げましたように、この部落解放の問題は、一番象徴的な、そしてまた基本的な人権問題だ、私はこう思っております。同時に、韓国人の問題、在日外国人の問題も先ほど来同僚委員からるる触れられております。それから障害者、そしてまた男女、いろいろな差別がこの世の中には存在をいたしますが、これを基本的になくしていくためにはまさに包括的人権基本法というものが必要なのではないか。そして先ほど、法務省の御答弁をお聞きしながら、人権とは何か、人権侵害とは何か、そのことにつきまして、抽象的な基準の御説明はありますけれども、国民に明確に、例えば教育の場においてもそれを指し示すことができるようにするためにそういうものがどうしても必要になってきたのではないのか。  また、地対協でいろいろ御論議いただいております。今日までどちらかというと鉄とセメントを中心にした行政だ、こう批判されてもきておりますけれども、制度的に、そしてまたソフトの面において、これから進めなければいけないことがまだ山積をしているのではないのか。ある意味ではいろいろな工夫をし、いろいろな努力をしてきた、そして地域によってはそれなりの成果も上げてきた。しかし、ここでそれをもう一度包括的に、総括的に振り返ってみて整理をして、そして本当に、この問題がいつまでも残っているということではいけないわけでありますから、そういう意味では包括的な人権のための基本法をつくって、この日本の社会からあらゆる差別をなくしていくという努力が必要なのではないだろうかと思うのであります。  地対協がそこまでの意見具申をされるかどうかわかりませんけれども、包括的人権基本法ということになりますと、これはむしろ法務省の問題になろうと思います。このことについて、この人権の問題、同和の問題、そして基本法の問題につきまして大臣の御所見をお伺いいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  228. 田原隆

    田原国務大臣 先生が言われましたように、差別にもいろいろあります。外国人の問題とか障害者の問題とか男女問題とか、いろいろありますが、中でも象徴的なのは部落解放の問題だというお話でありましたが、私もそのとおりに思っております。法務省としては、広い意味でも狭い意味でも、とにかく啓発ということを中心に一生懸命やっているわけでありまして、関係各省庁に具体的な問題でまたがりますが、それをひっくるめて象徴的にまとめておるのが人権擁護局だろうと思います。その結果、相当程度、先生のおっしゃったように内容的な問題もいろいろあるとしましても、かなり心理的な面での差別の解消は進んできたと思うのですけれども、具体的な問題として一部に結婚問題等がございますが、なお一層この問題に具体的な効果的な啓発運動をしていかなければいかぬなと考えております。  最後に、基本法的なお話を伺いましたけれども、私は、憲法そのものが基本法だというふうに法務省は今までやってまいりましたが、傾聴に値する御意見であることは十分わかっておりますので、先生の御提案についてさらに勉強を進めてまいりたい、このように考えております。
  229. 中野寛成

    中野委員 終わります。
  230. 浜田卓二郎

    浜田委員長 塩崎潤君。
  231. 塩崎潤

    ○塩崎委員 法務省、特に民事局関係に、不動産の登記に関する問題について御質問をしたいと思うのでございます。  御承知のように、不動産の移転、取引は、バブルと言われるほど増大してまいっていることは御案内のとおりでございます。特に公共事業関係によって不動産が移転をする機会がますます多くなってきていることは御案内のとおりでございます。国民は、不動産の中でも特に土地を重視して、法務省が管轄するところの登記所によって登記という形で保護してもらいたいという要望はますます強まっていると思うのでございます。  そこで、この不動産の登記に関する問題について、ここ六年間ばかりのうちに二回ばかり法律の改正がございました。一つは、昭和六十年四月の司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律でございます。もう一つは、昭和六十三年、不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律でございます。この二つ改正が行われたわけでございますが、私は、明治三十二年にできた不動産登記法という古い片仮名の法律、これが近代化したとは思わないのです。まだまだ法務省によって早く近代化して、国民のニーズにこたえるような改正をしていただきたい、こんなふうに思うわけでございます。このような改正の要望は附帯決議にあらわれているところでございますけれども、この附帯決議は皆様方に御要望を申し上げたところであり、どの大臣もみんな善処するというお答えがあったところでございますので、この善処の仕方等について、恐らく大臣もまた継続してその責任を担われていると思うわけでございますので、御質問したいと思うわけでございます。  歴史的に、まず最初の昭和六十年の改正について御質問したいわけでございますが、法務省の民事局は十年ばかり議論をして、公共事業の増大による登記の受託は、いろいろ考え方があったのでしょう、私は監査法人的な形態による民活形態もあったと思うのですけれども、皆様方が率先して公共嘱託法人という民法三十四条法人でこの嘱託業務を請け負ってやる、そして、司法書士あるいは土地家屋調査士の衆知を集めて公共事業の増大によるところの公共嘱託登記をこなしていこう、こんなふうな改正をされたのです。それからもう六年たちました。結果はどうでしょうか。私どもが一番希望しておりました公共嘱託登記の受託促進はどの程度成功しているのか、民事局長の事実に即した御評価を聞かしていただきたい。  私は、皆様方の御努力にもかかわらずまだまだ努力していただきたい点が多々あると思いますし、受託促進は本当に私ども当初考えていたよりもむしろ少ないのではないか。特に、司法書士の方が土地家屋調査士に比べても受託が少なくて、事務費さえ出せないような公共嘱託登記法人があることも聞くところでございます。全国的に見て、私は皆さん方との間柄ですから資料も提出していただいてやろうと思ったのですけれども、その時間もありませんでしたから後でまた結構なんですが、各県ごとの受託促進の状況等を出していただきたいと思うのですが、まず民事局長の御評価はどうか、お伺いしたい。
  232. 清水湛

    清水(湛)政府委員 お答えいたします。  仰せのとおり、官公署の嘱託登記事件を適正、迅速に処理するということは、登記行政を円滑に進める上からも、あるいは不動産に関する権利関係を公示する面からも非常に重要なことであるということで、公共嘱託関係の協会について法人格を与えるという改正昭和六十年度にされたわけでございます。以来、各県に、司法書士関係におきますと公共嘱託登記司法書士協会が、土地家屋調査関係では公共嘱託登記土地家屋調査士協会が設立されまして、活躍をしているわけでございます。  昭和六十一年度からの事件数を見ますと、司法書士協会についてでございますが、昭和六十二年度が全国で五万五千件、昭和六十二年度が八万六千五百件、昭和六十三年度が九万八千件、平成元年度が約十二万五千件、平成二年度が十五万六千件であると私どもは聞いているところでございます。毎年確実に取り扱い事件数がふえている状況にあるわけでございます。  それから、土地家屋調査士協会関係では、司法書士協会のような件数での事件の数は把握していないということでありますので、そういう事件数の経緯については私ども承知していないわけでございます。  ただしかし、事件数のほかに受取報酬額と申しますか、それぞれの協会がどのような報酬を受けたかという面から申し上げますと、司法書士協会の事件受取報酬額は、全国で昭和六十一年度は二億三千六百万円でございます。これに対しまして土地家屋調査士協会の方は二十億二千五百万円、約十倍の金額になっておる。昭和六十二年度は、司法書士協会の受取報酬額は五億八千八百万円で、これに対して土地家屋調査士協会の方は三十二億五千六百万円。昭和六十三年になりますと、司法書士協会の方が九億五百万円、土地家屋調査士協会の方が四十三億六千九百万円。平成元年度は、司法書士協会の方が九億八百万円、土地家屋調査士協会の方が六十億三千九百万円。平成二年になりますと、司法書士協会の方が十一億七千八百万円、土地家屋調査士協会の方が八十二億九千三百万円、こういうふうになっております。  これは全国の集計でございまして、各県単位の協会については別途統計がございますので、また必要に応じて提出することにいたしたいと思いますが、この受取報酬額の面から見ましても、司法書士協会と土地家屋調査士協会ではかなりの差がありますけれども逐年増加しておるということもまた確かな事実でございまして、これは協会の関係者等の努力が着々と実りつつあるということを示しておるのではないかというふうに思うわけでございます。ただしかし、まだまだ全体から見ますとその数はそれほど期待したほどはふえてないというような見方もまた可能かと思います。
  233. 塩崎潤

    ○塩崎委員 非常に滑らかに御説明になったわけですが、なかなか数字が私の頭に入り込みませんが、簡単に言って、潜在的な、あるべき受託件数に比べて、あった受託件数はどれぐらいの割合になるか、それをどのように考えられるか、これをひとつちょっと。それだけでいいんです。余り難しい数字は私もなかなかわかりませんので、簡単な、あるべき受託件数、あった受託件数をひとつ言っていただいて、御評価はどうですか、何割ぐらい達成しておるか、皆さん方の最初の見通しとどうか、こんなような大ざっぱな感想をひとつ述べていただきたい。
  234. 清水湛

    清水(湛)政府委員 全体的な中でどの程度かということは、ちょっと私ども正確には申し上げがたいわけでございます。ただしかし、平成二年度の公共嘱託登記の受託件数が十五万六千件でございます。一般のこの申請、これはもうあらゆる登記の申請事件を含むわけでございますけれども、そういう登記の申請件数が二千万件を超えておる。その中で、官公署関係の登記の事件比率というものがかなりの数を占める、何百万の単位を占めるというようなことも推測されるわけですけれども、その推測が正しいかどうか、これは余り責任を持って言える数字ではございませんけれども、そういう数字の中で見ますと、司法書士関係の十五万六千件という数字はまだまだ官公署の嘱託登記事件の中の一部にすぎないのではないか、ごく一部にすぎないのではないかというようなことも感想的には申し上げることができるのではないかというような気がするわけでございます。
  235. 塩崎潤

    ○塩崎委員 あるべき受託件数は二千万件、あった受託件数が十万件ぐらいな御報告であったように伺うのですけれども、やはり二千万の受託をこの公共嘱託法人で御期待をされておったと思うのです。一〇〇%あり得ないことは私も認めますが、そこで、なぜこのように進まないのか。この附帯決議を見ますと、四号に「公共嘱託登記が円滑・適正に行われるよう関係諸機関に対し、公共嘱託登記司法書士協会及び公共嘱託登記土地家屋調査士協会の制度創設の趣旨について周知徹底を図ること。」こういう附帯決議がついているんですね。善処するということは歴代の大臣の答弁であったわけですから、どの程度善処されたかですね。どの程度努力されたか、ひとつ民事局長からお伺いしたいと思うのです。
  236. 清水湛

    清水(湛)政府委員 私、先ほど登記事件の総体の件数が二千万件と申しましたけれども、正確に申しますと二千七百万件でございます。これは、官公署の事件だけではございませんで、一般の個人からの登記申請事件をすべて含めまして二千七百万件、こういうのが正確な数字ではないかと思います。その中で官公署関係の嘱託登記事件がかなりの割合を占めるわけでございますけれども、二千万件という数字にはとてもならない、これは間違いないと思います。  そこで御質問でございますけれども、昭和六十年にこの公共嘱託登記制度というものが法制化されまして、この制度を法制化した趣旨というものが、官公署からの嘱託登記の適正迅速な処理を図るというところにあり、それによって不動産登記制度の円滑な運用を期するということにあるわけでございますから、法務省といたしましてもこの制度関係官公署によって利用されるということを大いに期待しているわけでございます。また、そのために関係官公署等に対していろいろな周知措置を講ずるというようなこともいたしました。一方、当時、それぞれの法務局長、地方局長が管下の関係官公署に、このような制度がつくられたから利用していただきたい旨のいろいろな文書でのお願いをするというようなこともいたしましたし、また、司法書士会あるいは調査士会の全国組織が毎年パンフレットをつくっているわけでございますけれども、その冒頭に、私民事局長がこのような制度の利用を積極的にしてくださるようにお願いをするというような趣旨のパンフレットも実はつくりまして、各方面にこれを流しておるというようなこともいたしているわけでございます。  ただしかし、それぞれの官公署には、昔からの一つのやり方といたしまして、退職職員を登記関係の処理職員として雇うとか、あるいはそういうような職員を特別に養成するというようなことがございまして、司法書士協会に特に頼まなくても自前でそういう登記事務の処理ができるというような団体もあるわけでございまして、そういうところは急にはこの公共嘱託登記協会の方に事件を回すと申しますか、そちらの方に依頼するということにはなかなかいかない。そういうことをいたしますとこれまでの職員の仕事がなくなるというような問題もあるというふうに私ども聞いているわけでございまして、それぞれの自治体あるいは公社、公団、県庁等いろいろ特有な事情を抱えているようでございまして、そういうようなこともこの制度の利用がはかばかしく進んでいない一つの原因になっておるのではないかというふうに推測いたしておるところでございます。
  237. 塩崎潤

    ○塩崎委員 今の問題に関して、私はもう田原大臣にぜひともお願いしたい。公共事業といえばもう大臣がにっこりほほえむほど大臣は公共事業について御熟知だし、建設省出身でございます。公共事業に伴うところの不動産の移転に関する登記の嘱託受託の申請等は、まさしく大臣が今法務大臣として声をかけられれば各地方団体あるいは公団公社等の方々はこれに大きな協力を示してくるのではないかと思うわけでございます。ひとつ大臣のこれに対するお考え方をぜひとも聞かせていただきたい。  特に、地方団体や公団公社には、昔からの惰性でしょう、登記専門の係官などがいるために、いや、公共嘱託登記法人に任すのは、事登記に関しては自分がやるのだ、その自分の仕事がとられるような感じで、受託を出さないで自分たちがやってしまうというようなこともよく聞くのですよ。これはもう総務庁あたりも行政の配分の問題として考えなければならぬ。せっかく公共嘱託登記法人という専門職ができているときに、依然としてこれまで扱っていた登記の準専門家ですかね、仕事を扱っていた人たちがやっていくというようなことは、仕事の重複でもあります。そしてまた能率化でもありませんし、仕事の内容の向上にも役に立たぬと思うので、これらについての、公共嘱託登記法人の受託促進を増進する見地から、大臣の御努力を煩わせていただきたいと思いますが、いかがですか。
  238. 田原隆

    田原国務大臣 塩崎先生から私の過去についていろいろお話ありましたが、国会に出てから十二、三年になりまして、その間建設行政に一度も触れたことがないものですから大分素人になっておりますけれども、戸籍はなかなかぬぐい去れませんのであえて否定しませんが、私もこの協会の制度は確かにいい制度だというふうに痛感しております。  ただ、今民事局長がお答えしましたように、数字を見ますと急速に伸びていっておる。しかし、ラジカリーにはいかなかったのだろうと思いますけれども、しかも歴史がありまして、各地方公共団体等も自分でやってきておりましたからまだ職員がやっている、それを生首を切るわけにいかぬだろうという問題もありますので、これからずっとふえていくのではないかと思うのですね。そういう意味で期待できる将来ではないかと思っております。  先ほど二千万件とかいう話がありましたが、一般も含んでおりますので、公共事業がそのうちどのぐらいか、ちょっと私も推計できませんが、公共事業というと大体土木ですから、事業の規模が大きいですから件数としてはそんなにないということになると、十数万件というのは相当パーセンテージとしては高くなってきているのではないかというふうにも私は考えておりますので、なお一層積極的に利用していくように、特有の事情はあろうと思いますが、私どもとしては推奨してまいりたい、そういうふうに考えております。
  239. 塩崎潤

    ○塩崎委員 時間が少ないので次の質問に移りたいと思います。  同じくそのときの附帯決議の五にもありますし、その後の昭和六十三年の不動産登記法の改正の際の附帯決議の七号にもあるのですけれども、特に公共事業の増大によって、例えば高速道路のインターチェンジをつくる、そのあたりの民間の土地を買収してかかるのには大変な手間がかかる、そしてまた権利の移動が多い。しかし、御承知のように、不動産登記法十七条の地図の整備の考え方はいろいろあるのでしょうけれども、ともかくも実際と登記簿、公簿の上との違いが相当ある。したがって、これを公平に公正に買収しようとするにはやはり地図の整備が大事だと思うのですね。ところが、なかなか予算が少ない、あるいは最近は登記所がコンピューターの整備のために人をとられて地図の整備について時間を割くのがなかなか難しいとか、いろいろ言われるのですが、この移動の多いときに実際の権利と公簿上の権利との落差。地図の整備についての予算の増加の努力はどのようなものか、これは後で数字でもいただきたいと思いますが、どのような努力をされているのか。私のところにもう既に発生してきた問題でもあり、発生しようとしている問題でもありますので、これについての努力の仕方を御説明願いたいと思います。
  240. 清水湛

    清水(湛)政府委員 先生よく御存じのように、登記簿がいかに整備されましても、その登記簿に記載されている土地が現地でどこにあるのかということが不明確であるということになりますと、いわば登記簿は砂上の楼閣ということになって、無意味なものになってしまう、こういうことになるわけでございます。そこで、従来から登記所では、当該登記簿に記載されている土地の所在位置を示す図面として地図を備えるということになっているわけでございます。この地図といたしましては、これはかって税務署が保管しておりましたいわゆる公図と言われているもの、土地台帳法に基づく土地台帳の附属地図でございますけれども、それが実は大部分であるという状況にあるわけでございます。  しかしながら、この土地台帳附属地図というものが明治の初期に作製されたという経緯があるわけでございますが、当時は原野であったというような地域につきましては必ずしも正確な測量等がされないで、いわば見取り図的な形でつくられたというようなものも数多くある。そういうところが実は現在になりまして大変開発が進んでおるというようなことから、地図がどうも現地と一致しない。そのために登記簿に記載している登記簿上の土地が現地でどこに具体的に存在するのかということが地図の上ではなかなかわからないというような問題が生起しているわけでございます。  そういうようなことから、例えば国土庁を中心といたしまして国土調査法に基づく地籍図をつくってもらいまして、これが現在登記所にも送られまして、登記所備えつけの地図として活用されるというようなことも数多くなってきております。また、土地改良とか土地区画整理の際に作製されます換地図等がいわゆる土地の所在区画を示す図面として非常に重要な機能を営んでおる。さらには、法務局独自にも地図をつくらなければならないということで、法十七条地図の作製作業を、極めて微々たる面積ではございますけれども、法務局独自で地図作製作業を行っているというようなことで今努力をしているわけでございます。  このような結果といたしまして、現在、全国の登記所にはいわゆる国土調査法に基づく地籍図が二百十万枚あるわけでございまして、このうち百六十二万枚が法十七条の地図としての取り扱いを受けておる。また、土地改良の図面としては七十三万枚ございまして、このうち三十八万枚が正規の法十七条の地図としての取り扱いを受けておる、こういうような状況になっているわけでございます。しかしながら、全国的に見ますと、まだそういつた法十七条の地図に当てはまるような地図がない地域というのが圧倒的に多いわけでございまして、そういう地域を一体どうしていくのかということが実は大変難しい問題でございます。  私どもといたしましては、現在登記簿と地図の一筆対査というような作業、あるいは、税務署から引き継いだ和紙による土地台帳附属地図がいわばぼろぼろになっておりますので、これをマイラー化する、ポリエステルフィルムを用いましてそういうものに移しかえるというようなこと、いろいろな作業を現在推進しているわけでございます。ただ、全国的に見ますとまことに広大な地域についてまだ正しい土地の所在位置を示し得る法十七条の要件を満たすような地図というものは非常に少ない。何とかこれを少しでもふやしていきたいということで、予算的にも毎年大蔵省当局にお願いいたしまして、厳しい予算事情のもとではございますけれどもこれをいただいてその作業を進めておるという状況にあるわけでございます。
  241. 塩崎潤

    ○塩崎委員 時間がなくなりましたが、ともかくも地図の整備は本当に国民の大きな要望でございますので、さらにさらに御努力をお願いしたい、特に大臣にもお願いしたいと思います。  そこで、昭和六十三年の不動産登記法の改正、つまりコンピューター化だけするんだ、その他の改正はしないんだ、依然として明治三十二年の片仮名の法律でいくんだということになっておりますところのこの法律、しかし附帯決議では、あのときはとにかく地面師の横行かあり権利書の偽造があり、いろいろなことがあって不動産が詐取された、こんなようなことが多いときであったものですから、この附帯決議に——片仮名の法律、これはもう法務省だけにしかない法律のようですよ、大臣。私らもたくさん片仮名の法律を持っておったが戦後すぐ直して、今税法には片仮名の法律は一つもないというところでございますが、これが一番古い法律だと思うのですね。刑法、民法も片仮名で、あれがいいと思っておられるから私もどうかと思うのだが、そこで附帯決議の五号に「登記の真正を確保するため、保証書制度の見直し等制度・手続の改善、審査事務の充実、専門家の能力の活用等の諸施策を推進するとともに、登記申請の代理の制度の整備について検討すること。」このような観点から不動産登記法を直していただきたい、こういうふうに私どもは要望して、大臣の例によって善処するという中にもちろん入っているわけですね。しかし、これがどのように準備されているのかどうか。  もう時間がありませんから端的に申し上げれば、特に司法書士を、こういった専門的な、そして複雑な権利の登記による保護について、どのようにひとつ育成していくのか。特に登記申請代理の制度はその核心であろう、こんなふうに思うんですね。コンピューター化になりますれば司法書士の役割というものがどのようになるか、これはやはり私は、登記に関する、特に不動産登記法の専門的知識の活用が重要になってくる。これは仮登記でいくか、これは保全登記でいくか、本登記でいくかと、いろんな法律的な、不動産登記法的な知識が要るかと思うのでございますから、そのような観点から見て、登記申請の代理というのも含めて、司法書士を、司法書士制度というものをどのように育成し、推進していくか、これについて民事局長のお考えをひとつ聞かせていただきたいと思うんです。
  242. 清水湛

    清水(湛)政府委員 先生最初に御指摘のように、不動産登記法も片仮名でございまして、法務省所管の法律はほとんど明治の初期につくられた法律ということでございまして、民法も商法も刑法も片仮名という状況でございます。私ども、そういう基本法につきましては現代語化を図るべきだということで、今内々いろんな研究、検討作業を進めているところでございます。そういう機会には不動産登記法もこれまた全面的に利用しやすい、わかりやすい現代語に書き改める必要がある、当然そういう時期が来ようかと思います。  私どもは、そういう法律の現代語化の問題とともに、制度の抜本的な改善ということでコンピューター化を進めているわけでございます。コンピューター登記所が、本年度末には全国の大きな登記所のうち四十カ所がオールコンピューターで処理されるという登記所になるわけでございます。これが今後大いに展開されていくわけでございますが、そういうコンピューター化というようなものも含めまして、将来、司法書士制度なり土地家屋調査制度というものがどういうようなものであるべきかということにつきましては、これは私ども真剣に考える必要がある。コンピューター化というものを前提とした不動産登記制度あるいは商業、法人登記制度というものがいかにあるべきかということを、私ども今内部で真剣に考えているわけでございますが、それとともに、その制度を支える司法書士制度、土地家屋調査制度というもののあり方も、これは真剣に考えていかなければならないというふうに思います。  私ども従来から、司法書士制度、土地家屋調査制度の充実強化という点については、これは司法書士会の御熱意あるいは調査士会の御熱意というものにもよりまして、法務省法務省なりに大いに努力をしてきたところでございます。登記申請の代理という制度が果たしてその中でどういう位置づけを持つのかということについてはいろいろな議論があろうかと思いますけれども、私どもも基本的にこの両制度の充実強化、発展を願うものであるということについては御理解をいただきたいというふうに思う次第でございます。
  243. 塩崎潤

    ○塩崎委員 最後に、大臣に一つだけお願いをしたい件があるんです。それは、単に不正事件というだけじゃなくて、私は大蔵省の出身ですからというふうに言われるかもしれませんが、先般、裁判所で書記官が訴訟に関する訴状の中の印紙をはいで、そのかわりに写真で印刷した収入印紙を張って二千万円の不正の収入を得たというようなことが出ておりました。裁判所ですから私も驚いたんですけれども、これはまた制度としても考えなければならぬ、このように民事局長も考えておられると私は思うのです。  私は昭和二十八年に登録税法をやっておって、登記所で、登記所の倉庫へ入って古い使用済みの印紙を持ってきた事件があるんです。それで、もういろんなところで問題を起こしている。そこで現金納付の道まで開いたんですが、それが余り利用されていない。これは大蔵大臣の所管かもわかりませんけれども、この間NTTは、もうテレホンカードでも高額の、度数の多いものはやめた。偽造が多いからだ。皆さん、今最高十万円の印紙があるんですが、十万円の印紙の偽造と紙幣の一万円札の偽造、紙幣の偽造などは大変やかましく管理がされておると思うのですけれども、ところが十万円の印紙はどうも私が見るところ簡単に偽造もできるというようなことをよく聞くし、そしてまた、お互いの間の消印等についていろいろの操作があるというようなことを考えれば、これはひとつ不正な者が得をすることのないように現金納付を進める。みずからが誘惑に陥らない方向でのことをひとつ大臣から考えていただいて、不正防止を思い切ってやったらいい。私は、これは大変な収入の欠減がある、こんなふうに聞いておるんです。ひとつよく皆さん方、仲間の人たちに聞いていただきますれば、その点がおわかりになろうかと思います。
  244. 田原隆

    田原国務大臣 ただいま貴重な御意見をいただきましたので、十分検討したいと思います。
  245. 浜田卓二郎

    浜田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十七分散会