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小森委員 言葉は、抽象的であれば、それとは全く逆の取り組みをしていても場合によったら弁解のできないことはない。言葉はまことに重宝なものでございますが、しかし、こういう公式の場で
質問をし、回答をいただくというやりとりは初めてでございますので、言葉を一〇〇%そのまま信用させていただきたいと思います。
そこで、今度は
法務省自身の所管にかかわる問題でありますが、実は
法務大臣、これまでの
人権擁護行政の経過といいますか流れというものがどうなっておるかということを、
質問の形式を通じて私は明らかにしたいと思うのです。
まず、一九八六年、
昭和六十一年の段階でありますが、
法務省は、自分の持っておる行政的能力とかあるいは熱意とかを棚に上げまして、
法務省人権擁護局というものをどういうふうに定義しておるかというと、整備された
我が国人権擁護行政、あるいは整備された
我が国人権擁護機関と位置づけておるのであります。全然整備されていないのであります。つまり、たとえそれは文部行政の
世界であろうが、それは労働行政であろうが運輸行政であろうが、そこで
人権という問題が十分に取り上げられていないということになれば、その問題点というものは
人権擁護行政がまず感じなければならぬのであります。ところが
我が国人権擁護行政は、整備された
人権擁護行政とか機関とか言っておる。そういう意味では私はしばしば
人権擁護局長とここでかなりきついやりとりをいたしましたが、現在の
人権擁護局長の持っておる私から言うと不満な点というものは、この人に始まっておることではないのです。むしろ受け継いでおるがためにやりにくいという点もあると思うのであります。そういうことで、
人権擁護局というものがそんなに完備されておるという状況ではないということを
法務大臣の耳に入れておきたいと思います。
その証拠を一つ申し上げます。
かつて部落地名総鑑購入の際に、中国電力、これは中国地方の電力会社でありますが、今は非常に同和問題について熱心にやっていただいておりまして、
人権問題についてかなり大きな取り組みをしておられるわけでありまして、それは私ども敬意を表しておるのであります。しかし、当時のことを言えば、部落地名総鑑を購入したということがわかりましたので、その部落地名総鑑を一体どこに保管しておるかと問いただしたら、直ちに焼却をしましたと言い逃れをしたのであります。実際は、直ちに焼却をしてなかったのであります。私は、ついに直接その担当者に会いましてひざ詰め談判をしたら、直ちに焼却をしたというのはうそでありました、こういう
報告であります。どうもうそのような気配があるので、一回、二回、三回、四回と広島法務局の方へ、あれは間違ったことを言っておるのじゃないですか、焼いたと言えばあなたの方へ地名総鑑を提出する必要もないし、非常に危険ですよということを言いましたら、いや私らが調べたら、もう焼いたと言うのですから焼いたことは間違いないでしょう、こういう言い方をいたしましてずっと言い逃れをしておりました。しかし、ついに私は、法務局の四回のうその
報告の後、実は焼いていなかったという中国電力の方からの申し出を聞いた経験があるのであります。
つまり、
法務省人権擁護局は、こういうことについては、簡単に言うと調べたりあるいはそこをきちっと指導したりする能力に欠けておるのではないか、行政能力に欠けておるのではないか、こういうふうに思いますので、そういう事実があったということを
法務大臣にこの際、真剣に取り組むと言われるのでありますから、申し上げておきたいと思います。
もう一点申し上げます。
広島県尾道市の小林百合子という女性が、ある日突然尾道市の教育
委員会に電話をかけてきて、私はうちの子が部落の者と結婚するということになったら
承知しませんよ、そんなことは私は
承知しませんよと、教育
委員会に何のそういう議論があったわけでもないのに突然電話してきた。広島県教育
委員会にもそれと同じことを言ってきた。そこで調べてみたらこの女性であるということがわかったから、我々は強く法務局に要請をいたしまして、啓発してもらいたい、こういう申し入れをいたしました。啓発の動きが始まりました。しかし、七回彼女の家を訪ねて行ったのですよ、極端に言うたら面会できませんで門前払いなんです。これはいまだに何の解決もできていませんよ。だから、どこを押したら整備された
我が国法務省人権擁護局と言われるのか、非常に大きな疑問であります。
私は、八六年の地域
改善対策協議会の総会の際に、部落解放同盟書記長ということで意見を聞きたいということで呼ばれました。そのときに、
人権擁護行政が無力であるということを言いました。そうしたら、そのときの
人権擁護局からは何も回答はなかったけれども、
人権擁護の全国の連
合会の
会長の佐藤先生という方が、いや
小森君、それは
人権擁護局の職員をふやしてこれからやると言っておるのだから信頼してくれ、こういう話でありました。職員はふえていません。併任辞令、つまり戸籍事務をやっておる者にもう一つの辞令を渡して人数だけふやしたということにしておる。そういうふうな糊塗的な欺瞞的なことをやって
人権擁護行政が前に進むわけはないのであります。
法務大臣、ひとつこの点はぜひお考えをいただきたいと思います。
それで、今の人的配置、まあそれは入管の問題について人的配置と言われたのですけれども、これから
世界は
人権を渦に回るわけでありまして、
世界史の動きを見ておればわかるでしょう。私らは再三社会主義国を訪問いたしまして、中国の少数民族政策とか、あるいはソビエトはもう少数民族の対立はないというようなことを言っておりましたけれども、行くたびにソビエト
政府に対して少数民族政策の現地を見たいということを申し入れて、その片りんぐらいは見させてもらっておりましたけれども、今非常に大きな動きとなっておるのはそういう民族間の対立というか民族間の差別の問題でしょう。そういうことになりますと、
日本も国際的な視野に立ってその辺のところをきちっとしてもらわなければならぬ。そういうことで、整備された
人権擁護機関と言うならば、
法務大臣、相当の決意で進んでもらわなければならぬし、また、漏れ承るところによりますと、現在議論が進んでおりましてかなり大詰めに来ております地域
改善対策協議会の議論でも、
法務省の
人権擁護局をもう少し拡充整備をしなければならぬ、こういう議論が交わされたということを聞いております。
そういうこともひとつ受けていただきまして、
法務大臣、この辺で改めて見解を聞きたいと思います。